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1975-12-09 第76回国会 参議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月九日(火曜日)    午前十時十七分開会     —————————————    委員異動  十二月八日     辞任         補欠選任      高橋雄之助君     福岡日出麿君      相沢 武彦君     桑名 義治君      三治 重信君     藤井 恒男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         林田悠紀夫君     理 事                 楠  正俊君                 小柳  勇君                 須藤 五郎君     委 員                 岩動 道行君                 小笠 公韶君                 剱木 亨弘君                 斎藤栄三郎君                 福岡日出麿君                 矢野  登君                 吉武 恵市君                 阿具根 登君                 鈴木  力君                 対馬 孝且君                 森下 昭司君                 桑名 義治君                 中尾 辰義君                 安武 洋子君                 藤井 恒男君    衆議院議員        修正案提出者   中村 重光君    国務大臣        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        通商産業大臣   河本 敏夫君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       植木 光教君    政府委員        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局官房審議        官        水口  昭君        通商産業政務次        官        嶋崎  均君        通商産業審議官  天谷 直弘君        通商産業省産業        政策局長     和田 敏信君        通商産業省立地        公害局長     宮本 四郎君        通商産業省基礎        産業局長     矢野俊比古君        通商産業省生活        産業局長     野口 一郎君        資源エネルギー        庁長官      増田  実君        資源エネルギー        庁石油部長    左近友三郎君        資源エネルギー        庁公益事業部長  大永 勇作君        中小企業庁長官  齋藤 太一君        中小企業庁計画        部長       織田 季明君        中小企業庁指導        部長       児玉 清隆君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        大蔵省主税局税        制第二課長    島崎 晴夫君        通商産業省基礎        産業局鉄鋼業務        課長       石井 賢吾君        消防庁予防課長  永瀬  章君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (私的独占禁止及び公正取引に関する件)  (中小企業不況対策に関する件)  (鉄鋼政策に関する件)  (石油政策に関する件)  (当面の繊維政策に関する件) ○石油備蓄法案内閣提出衆議院送付) ○中小企業信用保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨八日、相沢武彦君が委員を辞任され、その補欠として桑名義治君が選任されました。     —————————————
  3. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 小柳勇

    小柳勇君 福田総理にお願いいたします。  先般来、問題になっております独占禁止法改正案がこの臨時国会に姿を出しませんでまことに残念でありますが、先般の衆議院商工委員会で副総理が、次の通常国会には独占禁止法改正案を提出する、こういうことを約束されたと新聞が報じています。新聞ではちらっと拝見いたしましたが、この参議院では一向にそういう話を聞きませんので、きょうこれを確認しておきたいと思うわけです。  なぜこういう質問をするかということです。原則論を言う必要はありませんが、私どもは、いま、この十数年来の日本経済発展の姿を見て、民主政治基盤経済民主主義を完成する、経済民主主義民主主義政治基盤であるという、そういう原則に立ってかつて労働者ストライキ権が与えられた。その労働基本権が漸次改悪されて、今日のようなスト権論議になった。片や原始独禁法が逐次改悪されて、今日の独占禁止法になってきた。終戦以来三十年たちまして、この占領政策が必ずしも私は日本の風土に完全にマッチしていると思わぬけれども終戦以来三十年のこの姿を見まして、一般大衆の大部分であるいわゆる労働者基本的権利を片や抑えて、抑制して、片一方の言うならば財閥あるいは資本、その方面には独占禁止法を改悪しながら、これも財閥形成に力をかしてきた。こういう片や右に行き、片や左に行った、それがいまのこの経済論争を起こしている原因だと思うわけです。もう釈迦に説法でありますが、したがっていまストライキ権論争がなされた。これは、一方ではこの財閥形成に対して歯どめをかけなきゃならぬ。でないと、スト権論議だけでは私は、本当の労働者基本的権利解放にならぬと思うんですね。  先般来、公正取引委員会調査活動によりまして、十大商社中心にし、都市銀行などが一体になって新しい財閥形成がされている。その財閥形成がかつての終戦前のあの四大財閥、それ以上に力を持ってきた。その財閥の力が現在の日本政治を動かしている。これは副総理も否定できないと思うんです。いわゆる自由民主党を通じて日本政治を支配している。いまスト権論議というものを、各委員会でもきょうやっているようでありますが、スト権論議だけで本当に日本労働者解放はない。その片一方では、先般の通常国会で十分に論議いたしました、しかも、全党一致衆議院を通過した独占禁止法改正案、これは十分ではありません。公正取引委員会の案はもっと進んでおった。それを漸次改悪されて政府案ができた。しかもその政府案は、全党一致衆議院を通過した。しかし、残念ながら参議院ではそれが通過できなかった。後で少し触れますけれども参議院自民党議員の中には、公然とこれに反対をして委員会に来た諸君がいた。あれをあのときに時間があって論議すれば、私はそういう基本的な日本経済民主主義が漸次破壊されておるということを根本に論議したかったんでありますが、論議できなかった。  だから、いまこの国会の大きな任務は、もちろん政府としては財政特例法を通さなきゃならぬ、あるいは補正予算を通すのが大きな任務でありましたでしょうけれども、私どもは、前の通常国会から論議してまいりましたスト権とか、あるいは独占禁止法改正案を十分論議したかったんであります。しかし、今度はできませんでした。したがって、そういうような前提がありますから、福田総理衆議院商工委員会で、次の通常国会では独占禁止法改正案を出しますと言われたことに非常に力を得ているし、私が力を得ておるということじゃありません。日本勤労者階級、特に消費者団体福田総理の言葉に非常に力を得ています。何かこれだけで物価が下がったような錯覚すら持っているとも私は思う。したがって、この参議院商工委員会で再び言明していただきたいが、実は総理にも来ていただきたかったんでありますが、総理社会労働委員会の方にスト権の問題で行っておられるそうです。副総理でありますから、総理よりもっと力があるとわれわれは信じていますから、その副総理言明をここで聞いておきたいと思います。
  5. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 申し上げるまでもございませんけれども、本国会臨時国会でございます。しかも、この臨時国会を召集したゆえんは、まあ経済対策である。そういう趣旨でありますので独占禁止法のごとき非常に恒久的、また基本的な議案を審議するのには適当な場ではないんじゃないか。なおまた、いま小柳さんが御指摘のように、自由民主党の中で完全な意見調整が実はできておらなかった。そのことは、これは参議院段階におきまして独占禁止法政府案審議未了になった、こういう経過からも御察知できるんじゃないか、そういうふうに思うんです。  そこで、まあ自由民主党内の意見調整はなおこの際いたしたい。そして、通常国会になりましたならば政府案を御提案を申し上げたい、これが三木総理大臣考え方でございます。私も閣僚の一人といたしまして、次の通常国会にはこの法案が提出されるよう最善努力をいたしたいと、かように考えています。
  6. 小柳勇

    小柳勇君 その際の改正案内容でありますが、いま衆議院では、前の全党一致で通過しました案を野党四党案として出しています。そしてもう審議に入っておると聞いていますが、少なくともこの改正案よりも後退しないものを期待しているわけです。最大公約数としては前の通常国会各党一致のものを提案されるものと理解してよろしいかどうか、聞いておきたいんです。
  7. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま小柳さんの御指摘の点ですね、この辺に問題があるわけなんです。自由民主党意見調整。これはなぜかといいますと、法案内容があれで統一意見として固まるかどうかという点について、まあ問題があるわけなんであります。そういうことでいま意見調整をしておりますが、とにかく、この独占禁止法改正案が出る以上りっぱな改正案だという評価がいただけるようにいたしたい、かように考えます。
  8. 小柳勇

    小柳勇君 公正取引委員長に質問いたしますが、いまの副総理言明によりまして次の通常国会改正案を出す努力をすると、これも副総理は本当に実力者ですから、副総理が約束されたんですから、必ず出るものと理解をいたして、それを信じてやりますが、次の通常国会独占禁止法改正案が出されます。少なくともこの前の政府案よりも後退しないものと存じますが、その必要性についていま私は大きな原則的なものを申し上げましたが、近く具体的には消費者団体とか労働者とか、先般来の石油ショック以来の物価上昇によりまして独占禁止法改正がみずからの生活国民生活を守ってくれるという、そういう認識を持っているわけです。独占禁止法改正案を出さなければならぬ——石油ショックのときもそうでありましたが、いまもなお、現在の経済情勢においてもこれが必要であると思うんですが、公正取引委員会の案ができました、その後政府案ができましたと同じように、現在の日本経済情勢もあるいは産業構造におきましても、独占禁止法改正案が出される必要性があると私は考えていますが、まず、公正取引委員長のこの点に対する見解をお聞きしたいと思います。
  9. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 私は、独占禁止法がそのときどきの経済政策、つまり、インフレになったらこれを抑えるための財政、金融を中心とした政策をとられる、これはまあ副総理中心になって先般の物価の異常な上昇、これを鎮静させるために非常な強い決意でなされましたいろいろな経済政策、こういうものによって景気の波というものは基本的には調整されるものと思います。その点独占禁止法が、こう一般のもし認識がそれと同じようなものであると考えるとしますれば、私はやや違っておると思います。ですから、個々のインフレ現象に対する対応策としてではない、しかし長期的に見た場合、その景気の波の変動を小さくするという政策努力のほかに、独占禁止法がややもすればインフレを歓迎しがちな経済体質に対してブレーキをかける。個別の現象に対してではありますけれども国民の好ましくない物価の引き上げを共同して個別に行っていくというふうな行為に対して、十分にブレーキの役を果たすようにしなければならぬ。  そういう点、実は消費者代表の方と私はこの前の国会が終わりましたときにお会いしたときには、そういう即時即刻、すぐ効くような即効薬的な効果は独禁法に期待していない、しかしながら、長期的に見て独占禁止法国民生活にとってその強化が欠くべからざるものであるという認識を持っておられることについて、私どもは大変その意を強うしたわけです。つまり、公取が働けば直ちに物価が下がるというふうなものではない、しかしながら、それはロングランで見た場合に大変重要なものであるということについては深い認識を持っておられる。  私はその点について、大変よく理解がそこまで進んでいただいたということで感謝しておるわけでございますが、これからの経済のあり方、かねてから副総理も言っておられる安定型の成長、これは概して言えば、余り高度成長ではないんでありますが、そのような成長政策のもとにおいては、ややもすればこれが収益の悪化につながるとかいう考え方から、人為的に価格を引き上げようとする傾きがより強くなるというふうな傾向もございますし、それから、御指摘財閥とは申しませんが、強力な企業者の間における結束が強化されて、全体の中における民主的な所得の配分といいますか、利潤の配分といいますか、そういうものに対してどちらかというと国民大衆の方にしわ寄せが行われる傾きがないとは言えない。そういった経済構造の面。  私は主要な点だけ申し上げますが、そういった点について独占禁止法強化されなければ、いまのままの法律でありますと、それが十分に機能しない面が私どもの経験上明らかになっておりますので、そういう点から言いまして安定成長型の持続的成長といいますか、そういうことを確保し、国民生活の福祉、実質的な向上を図るためには独占禁止法をぜひとも強化さしていくことが必要である、こういうふうに思っておりますので、景気変動には関係なく私どもも長期的に見てそういう方向でいくべきである。また、たとえば西独のような、私どもの範とすべきに足るところを中心とした世界的な傾向も、独占禁止法強化方向に向かっているということは争えない事実でございまして、そういう意味におきまして、私どもはこの意義を十分評価していただきたい、かように考えております。
  10. 小柳勇

    小柳勇君 第二問でありますが、十大商社あるいは都市銀行などを中心に新しい財閥形成がされておるということの公取調査報告をこの前拝見いたしましたが、その後の調査など具体的な活動についてお聞きしたいんであります。  同時に、現在の経済的な不均衡の是正、どうしてもそういうものを中心に私どもはいまこの産業構造を見ているわけですが、今後の公正取引委員会の取り組みについてお聞きしたいと思います。
  11. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) まあいまおっしゃいました中で、これは財閥というものの考え方をどう見るかでございますが、その定義をより厳格に解することなく、一つの企業集団企業グループ、それらのグループがそれぞれ相寄り相助け合い、その協力によって自己の集団の特別な成長を図っていく、他との競争に打ち勝っていく、そのこと自体必ずしもマイナスのみではございませんけれども、もし戦前型の財閥というふうなことになりますと、これはしばしば時の権力と結びつき過ぎまして、それが政治を左右する、あるいは軍人、軍部が強くなれば軍部に結託するというふうなことが戦前にはあったようであります。  今日においてそういうふうなことが言えるかどうか別としまして、およそ経済面から見まして、やはりその財閥的な存在の肥大化強大化というものは、これは警戒を要すべき問題である。まあ調査をいたしまして、その後トレースはしております。ですから、その後のものは発表はいたしておりません。まだそのトレースをしておる段階でございますが、依然としてそれらの、いわば六つの大きなグループがあり、社長会というものがございまして、その社長会のメンバーは必ずしも同じ数でございませんが、それらの間で相助け合い運動ということになりますと、実質的には株式持ち合い状況等からも見まして、それらの主要社長会で大きなことは皆決まってしまうというのが実態のように思います。そういうことでありますので、いわゆる民主的な経済の運営というものはそういう面からもないと言ってもいい、過言ではないと思います。  ですから、ときにはこれが日本経済民主化の非常な阻害要因になるということでありますので、何とか対策を講じたいのですが、今回の独禁法改正修正で一致いたしました衆議院での案でございますが、これは、いわばそれに対してはやや弱められた形になっており、株式保有についての制限が、当初の私どもの考えよりは大分後退しているように思います。種々の条件も、例外も認められておりますが、なおかつその面で株式保有について上限をつくるということだけにはやはり意味がある。そういう方向をひとつ株式の面からと、それから、これはすでにある程度実施されておりますが、大口融資という形でもって、そういう大きなものだけを特別に助長するような融資政策がとられておったことに対して、まあブレーキをかけることがあります。  さらに、これだけで十分であるというふうには考えませんで、それらの行動は今後、たとえば中小企業に対する優越的地位の乱用というふうなことも十分考慮いたしまして、私どもは力の及ぶ限りそういうものの矯正、是正、防止という面に力を注いでいかなければならない。将来の問題としては、もしその株式の問題から行き過ぎが起こりました場合には、株式持ち合いというものに対しても考えなければならぬかと思いますが、その点は必ずしも独禁法的な立場だけでなくて、資本充実原則というふうな、まあそういうわれわれの独禁法外の面からも検討を要する問題ではないかと思っております。
  12. 小柳勇

    小柳勇君 次は総務長官に。  いま副総理並びに公正取引委員長にお聞きしたとおりでありまして、独占禁止法改正案を次の通常国会には必ず提出されるように、総理にも働きかけてもらいたいと思いますし、担当大臣でありますから、出すという決意をお聞きしたいのであります。  これは余分でありますけれども、十一月三十日付けの大きな新聞の「余録」にこう書いてあります。自民党祝賀パーティーを延期したことに対するあれですが、「祝賀パーティーの延期など、実は大した約束違反ではない。それを言うなら、天下に公約した独禁法改正を早急に実現すべきだろう。大問題の公約違反の方は、ほおかぶりし、小事にこだわるのは、本末転倒だ。」こう書いてある。これは十一月三十日ですね。自民党に対していま世間の人はそう見ているわけだ。  特に私残念だったのは、この間の通常国会の終末で、この与党の議員十名の中で、八名が差しかえで入ってきて、公然と理事会で、おれはこの独禁法改正反対のために入ったんだと堂々と私に名刺を出して公言された。このような自民党体質がいまこの経済構造に反映しておるし、また、消費者団体一般国民大衆に対して非常に大きな悪い影響を与えております。  独占禁止法改正というものは通ったとしても、私は大して現在と違いはせぬと思う。公正取引委員会の機構もそう肝心な動きはできませんですよ。しかし、あれが通らなかったということで自民党に対する失望政府に対する失望三木総理そのものに対するふんまんやる方ない焦りをいま感じています。したがって、いま副総理言明なり公正取引委員長の要望なりありましたが、植木総務長官としても、次の通常国会では必ずこれが通過できるように御努力されるということを期待すると同時に、公正取引委員会事務局調査能力などまだ弱いわけです。  けさの大きな新聞投書欄に、「弱者泣かせる不況カルテル」という投書があります。これも聞きたかったんでありますが、時間がありませんから委員長に聞きませんが……。不況カルテルを許したけれども、これは弱い者泣かせだと書いてある。こういうことで独占禁止法改正案を出さなかった、あるいはもう三木さんが後退してしまったことに対して、三木内閣に対して、自民党に対して非常な失望を感じております。したがって、次の通常国会では少なくとも前の全党一致のあの改正案より以上のものを提出して、これが通過できるように担当大臣として努力されるかどうか、見解を聞いておきたいんです。
  13. 植木光教

    国務大臣植木光教君) 公正かつ自由な競争が促進をせられまして、国民経済発展及び消費者の利益の増進を図るという独占禁止法目的が達成されるような独占禁止政策強化は必要であると、私は確信をいたしております。したがいまして、政府案取りまとめに当たりましても努力をいたしましたし、また、前国会におきましてもこの成立方努力をしたわけでございますけれども、廃案になって今日に至っているわけであります。  ただいま副総理からも、次の通常国会提案をすべく最善努力をするという御答弁がございましたし、総理御自身も、次の通常国会提案をするということを明言をせられているのでありますから、私も主管大臣といたしましてこの提案方について努力いたしますことはもとより、ただいま申し上げましたような独占禁止法目的、理念というものが十分に果たされますように最善努力をするということを、ここではっきりと申し上げておきます。
  14. 小柳勇

    小柳勇君 じゃ、公正取引委員長は退席ください。あと副総理経済問題を十分ばかり質問しますから。  第一は、前の予算委員会でも質問いたしましたとおり、いま日本経済計画基本がありません。言うなら、羅針盤がないまま来年度の予算を編成するわけです。もちろん、いままでの歴史的な経過はありますけど、経済計画というものがいま編成中である。新長期経済計画はいつ一体できるかということ。来年度予算はどういう経済計画を予想しながら組まれるか。もちろん、予算は具体的には大蔵大臣でありますけれども日本経済計画は副総理責任者でありますから、まず具体的には、来年度の予算は一体どこを基礎にして編成するかということと、それから、新計画はいつできますかということです。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一昨年の石油ショック中心として始まりました経済的大混乱、これの収拾には大体三カ年を必要とする、さようにいま考えておるのであります。第一年度が四十九年度、第二年度が五十年度、第三年度が、これが五十一年度になるわけであります。その五十一年度という来年度は、ちょうどその調整期間の最後の年になる。そういうことで、若干まだ流動的要因もいろいろ包蔵しておるという、そういう年柄にはなりまするけれども、しかし、さらばといって五十一年度という年を、これを何のかじなきままに運航する、こういうわけにはいかぬ。そこで政府におきましては、五十一年度を初年度とする新五カ年計画、これの策定を準備しておるわけであります。  そこで、この作業はかなりいろんなむずかしい問題を含んでおりますのは、現在経済を取り巻く環境が流動的である、そういうことでございます。そういうことで、この新中期計画策定はなるべく早くして、そうして五十一年度予算、これをその第一年度目の予算だというふうにしたいのであります。しかし、詳細な新中期計画、これは年末までには間に合いません。したがいまして、当面の措置といたしましては、年末までに新中期計画の概略案とも称すべきものをつくりまして、そうしてその初年度である五十一年度、その五十一年度に適用する、この予算編成の指針とする、そういう考え方をとろうとしておるのであります。したがって詳細な、細かなものじゃございませんけれども、概略案、素案とも言うべきものを年内に作成する、かような考えでございます。
  16. 小柳勇

    小柳勇君 ここに「新計画のスケルトン要約」というのがあるんです、総合計画局がつくりました。こういうものが基礎になってできると思うんですが、これと、もちろん「産業構造の長期ビジョン」という産構審の答申があります。もうこれも数字が相当変わっていますから、ほとんど役はしないと思うんですが、この「新計画のスケルトン要約」を読んでみまして、たとえば新聞で書かれています、これからの予算安定成長予算であるとか、あるいは福祉優先型の予算であるとかいろいろ言われていますが、最近この二、三日の新聞報道なりテレビ報道によりますと、どうも福祉優先の予算などということまでまだ手が回らぬというような印象を受けるわけですね。したがって、まず第一は、来年度の予算については、一口に言うなら一体どういう型の予算であるかということ。その中でわれわれはいま福祉優先、社会福祉関係にうんと予算をとってもらいたい、つけてもらいたいという、そういう希望があります。それはいまの経済不均衡を是正する大きな課題であるからでありますが、けさのテレビですか、きのうのテレビですか、どうも福祉優先の予算というものはなかなか困難だということを報じていますが、副総理としてはどういう予算を期待しながら予算を編成していかれるか、お聞きしたいんです。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 中期計画といたしましては、これは非常に端的に申し上げますと、成長中心から生活中心へ、こういうような性格の経済計画になろう、こういうふうに思います。その初年度である五十一年度は、これは多分に一昨年の経済混乱、それの余波を受けまして流動的な段階、まあ調整過程第三年目という性格があるわけでありまして、その年の大きな課題は、これはやはりいま物価の方は安定基調、こう非常に強く進めておりまするけれども、この経済活動、つまり景気の側面がどうもまだ軌道に乗らぬ、そういう段階でありますので、ただいまこの時点におきましても、政府はその側面に努力をしておるのですが、その引き続きの期間として五十一年度、こういう年度をとらえていかなけりゃならぬだろう、こういうふうに思います。  したがって、中期的には成長中心からこれは生活中心へという基本考え方でございまするけれども、来年度の予算はやっぱりいろいろ工夫をして最終需要を盛り上げる、そうして景気安定軌道に乗せる、つまり、景気対策的側面というものが非常に重視されなけりゃならぬ年柄になる、そういうふうな認識でございます。したがいまして、予算の相当大きな部分というものは公共事業費が占めているというような形にならざるを得なかろう、こういうふうに考えておりますが、先ほど申し上げましたように、中期的には成長中心から生活重視、こういう考え方であるので、その考え方を阻害するようなことは、これはとるべきではないし、そういう福祉、生活という側面につきましては、これはもう十分配慮していかなきゃならぬけれども、それだけの余裕があるかどうかということになりますと、私は、財政的に来年度という年は景気政策中心になるがゆえに、なかなかそれだけの余力を持ちかねる年になるのではあるまいか、これは大ざっぱな私の検討です。
  18. 小柳勇

    小柳勇君 生活中心という言葉は非常に複雑ですけどね、幅が広いし。また、景気刺激といいましょうか、景気中心といいますと、相反するような言葉だと思いますが、景気はどういうふうに回復するという御判断であるか。特に第五次不況対策必要性はないと御判断であるか、お聞きいたします。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 基本的な考え方は、物価はかなり鎮静の方向に進んでおる。他方、景気はかなり政策的な努力をいたしませんとなかなか浮揚しない、こういうことで第四次不況対策までの諸施策をとっておるわけであります。  それらの考え方中心は、財政がそういう景気浮揚の最終需要を盛り上げる、そういう任務を担当しなけりゃならぬだろうという考え方で、財政中心に、それに補完するのに金融その他の諸対策をもってするということでありましたわけですが、そういう対策を背景としてこれから先を見通しますと、景気はそう急カーブじゃございませんけれども、上り坂になっていくだろう、こう見ておるわけです。その上り坂になる経済情勢景気情勢というのを五十一年度には定着させる、こういうような方向経済諸施策を進めていこう、こういう考え方でございますが、いまわが国の経済情勢はとにかくプラス成長であります。先進諸国のどの国をとりましても、本年度という年はプラス成長の国はないです。わが日本だけがプラス成長。  ただ、プラス成長であるにかかわらず、財界は非常に困っておる、事実困っておるのです。それにはわけがあるのでありまして、そのわけというのは、一つは、そういう経済形態の状態ですから、これはどこの国でも操業度が非常に落ちるわけであります。操業度が落ちますれば人手が遊ぶ。その際に諸外国におきましては、遊びになる人手を遠慮会釈なく解雇する、こういうことでございますが、わが国は終身雇用体制でありまして、そういう遊びになる人手を企業内に抱えておるという状況、こういう問題がわが国にはあるんです。  もう一つは、外国の企業というものは、大体その大半の設備資金を自己資本で賄っておる。わが国は逆に大半を借入資金で賄っておる。そこで諸外国では、遊びの設備が出るという状態になりましても金利費の負担というもの、これはそう痛痒を感じない。わが国におきましては、この金利費の負担が非常に強くのしかかってくる、こういうことがありまして、経済全体としては日本はただひとり黒字成長という中におきまして、個々の企業はだんだんと収益が悪化する、そして利益が減る、赤字会社が続出する、こういうような状態になっておる。そこで結局、設備、人員の遊びを早くなくするという政策をとるほかない。それには最終需要を盛り上げるほかはない、そういう考え方でいろいろ努力しておるのですが、その最終需要とはこれはいろいろありまするけれども、当面具体的な施策として考えられるのは財政だというような考え方のもとに、ただいま申し上げましたように財政主導型の景気対策をずっととってきておりまするし、また、来年度もこれはやはり大局から見まして、財政主導という形をとらざるを得ないだろう、こういうふうに見ておるわけでございます。
  20. 小柳勇

    小柳勇君 時間がありませんから具体的に聞きます、簡単に。抽象論では論議になりません。  一つは、景気の底を何月だとお考えになるか。たとえば来年の三月とか六月とかありましょうが、それはどうか。  それと、来年度の実質経済成長率を何%と御判断か。副総理は六%とか考えておられるようだけれども、一体何%と御判断かということですね。  それと、不況対策は、特にもういわゆる第五次不況対策はいま必要ないとお考えか、あるいはやるとお考えか、  この三つの問題を具体的にお尋ねいたします。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 景気の底はことしの三月だというふうに……
  22. 小柳勇

    小柳勇君 来年の三月か。
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いや、ことしの三月。それからずっと生産はふえ、また、品物は出回り、企業の操業率も上昇する、こういう経過をたどって今日に至っておるわけであります。  それから、来年の成長率を一体どう見るかということ、これはいまどういうふうな成長率にしますか、これは財政との関係が実はあるのです。財政をどの辺の規模にするかによりまして成長の高さが決まってくる、そういうようなことで、具体的な数字につきましては、この十日間ぐらいの間に大体の見当をつけたい、こういうふうに考えております。  それから第三は、第五次不況対策を必要とするかというお話でございますが、経済景気の動き、これは生き物を相手にしておるのでありまするから、その動きに応じまして機動的、弾力的な対応をしていかなければならぬ。ですから、いろいろ手を打つということもありましょうが、しかし、第五次と銘打つような性格の対策、これはもう差し迫ってあと十日ぐらいの間に来年度予算の大枠をきめます。これこそが私はこれからの経済運営の大きな指針になっていくであろう、こういうふうに考えておるわけであります。これが銘打てば最大の景気対策である、こういうふうに見ておるわけであります。機動的、弾力的なあの手この手は打ちまするけれども、まとまった政策、手段としてはそのように考えております。
  24. 小柳勇

    小柳勇君 もう副総理は時間がないようでありますから、ただ新聞記事を読みますと、非常に具体的に発言があるのに、委員会の答弁は非常に抽象的で不満です。だから、また別途機会をつくりまして、少し数字的にも意見をお聞かせ願いたいのです。何もこれは抽象論をやるんじゃないんですね。だから、もうきょうは仕上がりませんから御退席ください。あとは通産大臣にお聞きしますからね。
  25. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それじゃ、ありがとうございました。
  26. 小柳勇

    小柳勇君 では、通産大臣にお聞きをいたしますが、景気の見通しとそれからいまの不況対策などについてですが、けさの新聞でも、経済団体が第五次不況対策を切に望んでおる、近く政府に会見を申し込んで何とかしてもらわなきゃやっていけないとか……。それは方々から陳情がありますし、私の周囲にもたくさん、中小企業のめんどうを見ていますが、もうこの年が越せない、三月から四月には相当の倒産が出るだろうと言っておるわけです。その実態を、副総理見解では非常に楽観的に見てありますから、これでは大変だと思いますが、通産大臣の見解を聞きたいのです。
  27. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほども総理からお話がありましたように、私たちも大体景気の底はことしの二、三月であった、こういうふうに判断をしております。まあ三月以降は何回かの景気対策によりまして、徐々にではありますけれども上昇をしてきたわけでございます。景気は回復過程に入った、こういうふうに判断をしておるわけでございます。  ただ、去る十一月二十日現在の経済の情勢、いろんな機能を総動員をいたしまして全国的な調査をいたしましたが、その結果によりますと、どうも九月、十月ごろまでは比較的順調に景気の回復も進んできたわけでございますが、調査時点におきましてはやや足踏みの状態になっておる。まあ一進一退の状態といいますか、そういう状態になってきておるということが調査の結果判明しましたので、その点私たちは非常に心配をしておるわけでございます。在庫の関係ももう一つよくありませんし、それから貿易もちょっと伸び悩みになりました。倒産関係も非常に多いわけですし、それから、労働情勢も需給関係がもう一つよくない、こういうことで非常に心配をしておるわけでございます。  そこで、先ほど副総理からお話がございましたように、いま着々と昭和五十一年度の予算編成が進んでおりまして、昭和五十一年度の予算編成を、景気対策を相当強力に織り込んだ予算にしたい、こういうことを副総理も言っておられましたが、私もそのとおりすべきである、こう思います。  それから、五十一年度の予算が成立いたしますのは順調にいきましても三月の末、こういうことになりますので、その間三カ月半ばかり時間がありますので、その間は第五次という景気対策をやる時間的な余裕もありませんので、これもいまお話がございましたように、この間は弾力的かつ機動的に経済を運営いたしまして、もう少し具体的に言いますと、主として金融面でのいろんな配慮を十分にいたしまして景気の落ち込みを防いでいく、そして来年の予算が成立するまでつないでいく、こういうことが必要ではなかろうか。特に中小企業関係、いろんな面で相当長期間にわたる不況の影響等もありまして、ずいぶん経営も苦しくなっておりますので、この面に対するやはり特別の金融面での配慮が必要ではなかろうか、こういうふうに私たちは考えておるわけでございます。  きょうも閣議で決めていただきましたことは、もし中小企業関係の金融が年未に不足するようなことがありました場合には、ことしの第四・四半期、つまり、来年の一月から三月までに政府中小企業金融三機関で約五千億ばかりの枠がございますから、その分を臨機応変に繰り上げ使用する。そして年度末に足らなくなれば、その分はまた適当な手段で補っていく。それから、あわせて民間の金融機関から中小企業に対する貸し出し等についても特別な配慮を払っていただく、そういうことに対して大蔵大臣の善処を要請したわけでありますが、中小企業対策に対しては特別な配慮が必要ではなかろうか、こういうふうに感じておるわけであります。
  28. 小柳勇

    小柳勇君 質問を終わります。
  29. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 灯油価格の問題に関しましてお尋ねをいたしたいと思います。時間もありませんので、きょう、実は質問する予定になっておりませんが、緊急にきのう北海道から電話が入りまして、非常に事態が緊迫をいたしておりますので、ずばりひとつ質問にお答えを願いたい、こう思うわけです。  石油審議会で新価格が決定をされました。特に灯油価格につきまして、十二月六日、七日の北海道新聞並びに朝日、毎日等に出ましたが、日石では、正式に北海道の石連業界を通じまして、一キロリッター千二百五十円の元売り価格引き上げの通達を出しました。きのう入った状況では、すでにもう小売店に対しましてこれを示達をいたしまして、現実に十八リッターに引き直しますと、二十二円五十銭、これも、しかも下限指導ということを言われているそうであります。こういう問題につきまして一体、この間の石油、審議会の最終段階における消費者側との話し合いがどういう結論になったのか、これをまずひとつはっきりしてもらいたいと思います。消費者との間の結論。
  30. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) 先日の石油審議会での結論について申し上げます。  石油審議会で標準価格を設定をすべきものというふうに決まりましたのは、ナフサとC重油でございます。したがいまして、灯油については標準価格というふうなものは設定されておりません。したがいまして、標準価格以外の油については本来行政介入をしないというたてまえでございますが、灯油については別であるというふうにわれわれは考えております。  すなわち、ほかの油種は実はほうっておきますと値が上がらないということから、対策を講ずるということで考えておったわけでございますが、灯油についてはわれわれは別の見解を持っておりまして、この需要期を控えまして行政措置を講じないと上がる、そして、それが適当でない価格になるおそれがあるという感じを持っております。したがいまして、本需要期におきましては、従来からやっております通産省の行政指導を継続するという気持ちでございます。  従来からやっております行政指導と申しますのは、家庭用灯油の元売り仕切り価格については極力抑制をしていくということでございますが、その抑制の範囲は、類似の油種、つまり、軽油とかA重油というものとの価格のバランスを保つ範囲内で抑制をしていくという形の指導をやっていっておるわけでございまして、今回、灯油価格がナフサ、C重油について出ました後もその指導方針を継続していくということでございます。したがいまして、今後灯油が上昇傾向にありますれば、それに対して抑制的な指導をしていくということは従来とも変わらないということでございます。
  31. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 これは石油審議会の専門委員に入りました日生協連の勝部専務、消費者代表の田中里子さん、二名入っておるわけですが、   〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕 エネルギー庁と代表と話し合いの結末ですね。実はこの間私のところに来まして、勝部専務から詳細な御報告を受けました。  このときは、エネ庁側ではかなり、指導価格もしくは参考価格ということで、いま私が前段に申し上げました千二百五十円なるものを明示したいというかなり強硬なおたくの態度であったようであります。ところが消費者側としましては、千二百五十円を出されたのでは、結果的にこれは便乗されて、千二百五十円が上限になるんでなくて下限になるようなおそれがある。したがって、価格は絶対に明示してもらっては困る。これをまあ抵抗——相当がんばって、最終的にはいま左近石油部長が言われるように、値上がりの動きがあった場合については極力抑制指導いたします、現在の実勢価格に向かって指導いたしますという、これが最後の結論でありました、こういうふうに勝部専務が私のところに来まして報告をされているわけであります。  そうなるとすれば、ここではっきり申し上げなきゃならぬことは、きのう私に、北海道の消費者協会、北海道生協連から入った、すでに日石を先頭にして皮切りしました通告というのは、千二百五十円が最低であって、千二百五十円は最低を意味したんだと、こう説明しますが、これ以上上げることについては、つまり流通マージンとしてこれを換算してよろしい、こういうことは現に出ているわけです。  そうすると結果的に、もう通産省はうまいこと言っているんだが、相変わらずやっぱりこれは業界の旗を持って参考価格、指導価格という当初の打ち出した千二百五十円、つまり十八リッター二十二円五十銭というものは、現在の実勢価格にプラス二十二円五十銭、こうなってくると、北海道は現在六百八十円です、率直に申し上げて。そうしますと大体七百円台、正確に言えば七百二円五十銭。こういうものを通産省は肯定をしたのかということが私は問題なんです。これをきょうははっきりしてもらいたいということで、けさも電話が入っているわけですよ。それで質問に立ったわけですが、この点そうでないとすれば、私は特にこの間大臣にもこれを確認をしているんでありますが、大臣も北海道へ来られたときに、大量消費地である北海道については、本州よりもひとつ安く行政指導をしていきたいと、これは長官も力説をされているし、再三お聞きになって、九月二十七日に特別通達まで出していただいたという経緯があるわけです。  ところが現実には、北海道の場合は次の点が問題なんですが、二点目は、つまり共同購入、何回も私は言っているんですが、ホームタンク購入あるいは集団購入をやった場合については一割台、一割値引きをする、つまりボリュームディスカウント方式を採用しようということを何回も言われているんですが、現実にいまなお、これは都市は別ですよ、都市部を離れていきますと、つまり分子と分母が変わって、いままでは値段が、結果的にドラムかんで買った場合は十一本分になるわけですから、一割値引きされるわけであります。ところが、現実に田舎の方へ行ったら、逆に十一本分が十本分で値段が査定をされてしまっている。つまり十一本分の価格が、一本分の六百八十円そのままずっと十一本分取られていってしまっている、こういうことです。この点がやっぱり私は問題だと、こう言っているわけです。  何回も言っているんだが、いや、これはそうはなっていませんとか、この間も、いや、調べてみますとかという悠長なことを言っているんだが、いまもう北海道は、けさも雪が降っているんだ、それは、そんなこと言ったってあなた、現実に本当に行ってもらわなきゃ困る、正直な話。向こうは雪でこんなおっとりした天候でないんだから。けさだって零下五度から六度だっていうでしょう、現実に旭川で。そういう状態のときに、相変わらず通産省はこれは新聞にも書いてあるが、わかったようなわからないような、何かそれこそ歌の文句じゃないけれども、「黄色いさくらんぼ」みたいなことを言ってもらったって困るんだよ、これは正直に、率直に申し上げて。  だから、きちっとここではっきりしてもらいたいことは、第一点は、千二百五十円という日石が出しているような、つまり、十八リッターに直して二十二円五十銭というものは、そういった行政指導はいたしておりません、むしろ現在の実勢価格に従って、あの消費者代表と話し合った精神に従って極力ひとつ行政指導をいたしますと、これが第一点です。  第二点目は、先ほど言った北海道における共同購入の場合についての特別行政指導というものについて、もう一回私は長官に、これは部長でも結構ですが、ひとつ現地に係官を派遣してもらいたいということをずいぶん言っているのに、何も行っていないのだ。私が聞いてみたって、問い合わせをしているわけだけれども、この時点で派遣をしてもらいたいんです。それで、札幌へさっと行って帰ってくるようなことをやめてもらって、たとえば稚内の片田舎や、この間も言った羅臼だとか稚内の最果ての地だとか、根室の果てだとか、こういうところへ行って現実にやってもらいたいのですよ。ただ机上のペーパープランで、調査をいたしました、わかりましたというふうなことでは、これは行政指導が行われたということにならないわけです。私はこの点をなぜ言うかといったら、北海道はもう最需要期なんだから、現実に毎日二十四時間たいているんだから、その点はそこではだに触れた行政指導をしてもらわないと、通産省というのは、これはやっぱり庶民の立場ではないんだということになりますよ。この点どうですか、これ二つ。
  32. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) 先ほど申しました灯油の価格指導につきましては、われわれも具体的な値を出してこれであるというふうに言いますと、その値段にいわばいま達してないものまでそこにいくというふうな問題がございまして、昨年以来極力、そういう具体的な価格を早く出し過ぎないような形で行政指導をしてまいりました。今回もわれわれはそういう立場でございますので、決して幾らであるということをあらかじめ示すということはしないつもりでございます。しかしながら、石油製品の価格はやはりOPECの値上げに伴いまして上昇してまいりますし、ほかの油種についても天体平均二千五百円程度の値上げをせざるを得ないという情勢でございますので、この類似の油種、たとえば軽油の値上がり等々を見ながらわれわれは灯油の値段を決めてまいりたい、また、そうしなければ類似の油種との間のバランスが崩れますと、数量の確保も問題になってくるということでございますので、それをにらみながら持っていきたいというふうに考えております。  ただ、付け加えて申し上げますが、今需要期に限りましてはそれでは軽油の動くそのままにどんどん上げていいかと言いますと、そうはいかないというふうにわれわれは考えておりますので、一定の価格でわれわれはとめるように努力をいたしていきたいというふうに考えております。  それから、第二の点でございますが、北海道につきましては、御指摘のとおり大量消費地でございますので、ことにドラムかん売り、あるいはホームタンク売りについては極力割引きをするということを現在特別に指導しておるわけでございます。現地についていろいろ調べておりますが、確かに御指摘のとおり、都市部では比較的割引率が高いという現象がございますが、地方へ行きますと必ずしもうまくいってない点も御指摘のとおりございます。これはわれわれといたしましては極力この割引率を高くする、これは大量消費でございますから、そういう点が可能でございますので、それを現地の通産局、道と協力して推進してまいっておるわけでございますが、まだ足らざるところは十分これからも指導を続けてまいりたいというふうに考えております。
  33. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そこでいま千二百五十円という、つまり新灯油価格というものを明示をしないで協力、抑制するように指導していきたい、こういうことですね。その点は類似油種を考慮に入れながらやっていく、こういうことですから、これはもう一回だめ押ししますけれども消費者団体と専門委員になられた勝部専務あるいは田中さんとの話し合いの考え方どおりひとつ行政指導していくということでしょう。この点どうですか、ここできっちりしておきたいんですよ。これは長官ちょっとお伺いしたい。
  34. 増田実

    政府委員(増田実君) いま対馬先生から言われました、石油審議会におきまして、専門委員の田中委員、それから勝部委員から申し出のありました線で今後灯油の問題については行政指導を行いたいということでございます。具体的に言いますと、具体的な金額は出さない。  それから、政府としては灯油の重要性、ことに北海道地域におきます灯油の生活に対する非常な重要性にかんがみまして、抑制的な行政指導をするということで、先般私どもが両委員に説明いたしましたとおりの線でやっていくということをここで申し上げます。
  35. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 時間がありませんから、それでは、先ほど言った消費者協会との話し合いの抑制的な指導をいたしますということを確認してよろしゅうございますね。——わかりました。  その点をもう一回、北海道の段階で私はここで確認したいのですが、石油連盟に対して、北海道の石連十三社ありますけれども、これに出先の通産局長、道を通じてひとつ行政示達をしてもらいたい、この点が第一点。  二点目は、先ほど左近部長が肯定しておりますから、つまり、北海道における特別行政指導について、私はやっぱりこの段階ですから、もう一回行政指導としてこれも北海道の石油連盟、それから道並びに通産局に対して示達をしてもらいたい。この点どうですか、この二つをやっていただきたい。この点をひとつ確認したいと思います。
  36. 増田実

    政府委員(増田実君) いまの先生の言われました二点につきまして、これを各通産局、関係団体、あるいは道庁への指示あるいは示達という形で行っていきたいと思います。  ただ、この大量割引その他につきましては、これはすでに出しておりますので、形として二重に出すのはあれですから、それを確認する形で出していきたい、こういうふうに思っております。
  37. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 大臣、いま長官からお答え願った灯油の基本的な対策ということで、二点の問題について大臣、了承していいですか。
  38. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 長官の答弁したとおりでございます。
  39. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それじゃ終わります。
  40. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 景気問題につきましては、小柳君から質問がありましたので大体見解をお伺いしましたけれども、それで、中小企業庁長官もまた衆議院に行っておられますが、この第四次対策がスタートいたしましたけれども、御承知のように、非常に足どりが重い。倒産の方もかなりふえてきておりまして、従来の倒産というのは、放漫経営というか、本業以外に不動産なんか買って、そういったところで失敗したというような例もありましたけれども、最近の倒産は、いわゆる不況型といいますか、採算が悪化して企業がもたなくなった、そういうようなことが多発しているようでありますけれども、倒産の実情をちょっとお伺いしたいのですが。
  41. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 倒産件数でございますが、大体この八月までは月間ほぼ千件前後ございましたが、九月からだんだんとふえ始めまして、先般の民間調査機関の発表によりますと、十一月の倒産は千三百十七件とこれまでの一番多い数になっておりますし、金額も二千四百億円と、こういう数字になってきております。しかもその内容が、いまお話がございましたように放漫経営という理由によって倒産するものがだんだん減りまして、もうそういうものはすでに倒れてしまっておるわけですね。減りまして、一つは、二年間に及ぶ長期間にわたる不況から体力がだんだんと消耗いたしまして、もう持ちこたえ切れない、こういう形の倒産が非常に多くなったと思います。いわゆる不況による、一生懸命仕事をしておるけれども、不況のためどうもしようもない、こういう倒産が非常に多くなったということ、その点私たちも非常に心配をいたしておるわけでございます。
  42. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、いま問題になった来年度の経済見通し、そういうものもいまお伺いしましたが、とりあえずの問題として、つなぎとして第五次の不況対策といいますか、第四次の不況対策に補強するといいますか、ちょっと大臣の見解をお伺いしましたけれども経済閣僚会議も近くありますし、ただ金融だけ、第四・四半期の分の五千五百億を場合によったら年末金融に回す、これはいま承ったわけですけれども、そのほかにはないんですか。あなたは通商産業大臣として今後の経済閣僚会議にどういうような態度で臨まれるのか、もう少し詳しく説明していただきたい。
  43. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 景気の実情につきましては、先ほども答弁いたしましたように、十一月二十日現在の調査によりますとどうも足踏み状態が続いておる、倒産も非常に多い、雇用関係もよくない、こういうことで非常な心配をしておるわけでございますが、まだ四次対策は完全に実施されていないわけでございます。そういうやさきにいよいよ昭和五十一年度の予算編成と、こういうことになりましたので、ここで五次対策というふうなものを打ち出す時間的な余裕というものがもうないわけでございます。しかし、来年度予算が成立するまでの間若干の日数等もございますし、この間のつなぎが非常に大変である。そこで、一つは金融対策を弾力的、機動的にやっぱり実施する必要があるんじゃないか。金融対策は、一つは地域別、業種別にきめの細かい対策が必要である、こういうふうに思います。  同時に、中小企業対策でありますが、この件につきましては先ほど申し述べたとおりでございます。  なお、そういうような一連の金融対策のほかに、貿易に対する対策でありますけれども、貿易がやや足踏み状態でありますので、特にプラントものの輸出につきましては全力を挙げたい、こういうふうに考えています。その結果、もし、輸出入銀行等で資金が不足する、今度四次対策で相当金額は増量いたしましたけれども、なお不足するというふうな事態になりますと、この場合にはやはり年度末に緊急の対策というものが必要じゃなかろうか、追加融資というものが必要じゃなかろうか、こういうふうに考えております。  繰り返して申し上げますと、一連の金融対策とそれから貿易の新興対策、それともう一つは、やはり何としましても実施がおくれております四次対策を早急に実施する、こういうことが当面の対策であって、これを先ほど副総理は、弾力的かつ機動的に運用する、この第五次対策という時間的な余裕はないが万全の配慮を払っていきたい、こういう趣旨をお答えになったんだと思います。私も同意見でございます。
  44. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、年末に対するところの対策は一応は承りましたけれども、年末の山を越しますと、来年の三月決算というところでまたかなり倒れも出るんじゃないか、こういうふうに心配しておるわけですね。そして、後の四半期分の五千五百億を年末に回した場合、四半期分の分は当然追加融資というようなことになろうかと思いますが、こういったような点。  それからまた、御承知でしょうけれども、この長期にわたる不況によりまして中小企業は担保力もないし、また、いま借りている分も返済を猶予してほしいという声がある。それから、四次不況対策にも一部触れてはありますけれども、実際に私どもが地方を回って、あるいは地方から電話等も聞いてみますというと、第一線の方はなかなかそうはいかないんでしょう。政府三機関にいたしましても、あるいは担保が足らぬとか、あるいはそんなこと言ったって無理だとか、そういうややっこしいのが私らに陳情に来る。そしてよく実情を聞いているんですが、その辺のところはどういうような指導をなさっているのか、まずそれをお伺いいたします。
  45. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 金融の面につきましては、第四・四半期の分を必要とあらば繰り上げ使用する、これは中小企業対策でございますね。そうして年度末に政府系三機関で資金量が不足すれば、そのときにはそれに対して新しい増額によりましてこれを埋めていく、ことしの三月までそういう措置をとったわけでありますが、必要な資金はそういうことで調達をして年末を過ごしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それからなお、いまお話しのように、長期にわたる不況のために担保力も不足しておりますし、それから返済猶予という問題等も起こっておりますが、返済猶予に対してはケース・バイ・ケースで十分考慮するようにと、こういうことを繰り返し政府系の三機関等には指示をしてございます。それからさらに、担保の見直し等につきましても細かく指示をしまして、十分見直すように、新規の担保も新たに考えるように、こういう指示もいたしております。  なお、必要とあらば、詳細につきまして政府委員の方から答弁をさせます。
  46. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、地域別、業種別の金融とさっきおっしゃったんですが、それはどういうことになりますか。ある業種に一括して幾らと、たとえば商工中金あたりを通じてやるとか、そういうことになるわけですか。
  47. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私が業種別、地域別と言いましたのは、これは中小企業を対象とする融資ではございませんで、一般の産業融資のことを申し上げたわけでございまして、一般の産業融資につきましては、いろんな業種がありますが、その中では回復過程に入っておるものも若干ございます。そういう業種は自力で資金調達が可能でありますけれども、依然として回復過程に入れない非常に悪い業種等も相当あるわけですね。また、そういう悪い業種が地域的に固まっておるケースもあるわけです。そういう産業に対しては、政府の方で個々の事情をよく聞きまして十分な資金のあっせんをしていこう、こういう趣旨でございます。
  48. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、これはまあ油の問題に関連をするわけですが、今度原油が一〇%上がったわけですが、一〇%上がりますと相当なドルが出ていっちゃうわけですが、これが国際収支の面にどういうふうに響くのか。それとまた、それ自体が今後の景気にどういうような影響を及ぼすのか、それをちょっとお伺いしたいんですがね。これはまあ福田総理も帰っちゃったものですから……。
  49. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 一〇%の値上がりがそのまま実施されますと、日本経済に及ぼす影響というものは約二十億ドルの外貨の持ち出しになるということでございますけれども、こういうふうに油が非常に余っておるときに値上げをしようというわけでありますから、実際は一〇%の値上げはできないわけですね。まあ六、七%から七、八%、最終の数字はつかんでおりませんが、大体その見当ではないかと思うんです。でありますから、実際わが国の外貨収支に及ぼす影響というものは、若干それから減ると思います。しかし、間接的な影響といたしまして、今度の値上げによりまして、油の出ない発展途上国の経済というものは非常に大きな打撃を受けておるわけなんです。そういうことがありますので、日本の貿易もやはりその結果伸び悩む、こういう影響が当然出てまいります。どの程度伸び悩むかということについては、まだ正確な見通しは立てておりませんけれども、そういう直接の影響と、それから貿易等による間接的な影響と、そういうことを考えますと相当なやっぱり打撃である、こういうふうに理解をいたしております。
  50. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、かりに一〇%といたしましたら二十億ドルでしょう。あらあら日本円で六千億ですね。第四次不況対策が事業量で二兆円ですか、そうするとあなた、これは公共事業を八千億ふやして事業量としては二兆円、その効果が三兆円ばかり出るというようなことでありますけれども、そうすると、この六千億というのは第四次不況対策事業量の大体三分の一ぐらいに相応するわけです。私は、まあ急に一〇%上がるわけじゃないでしょうが、相当これに影響するんじゃないか、こういうようなことも考えあわせて、景気対策の一つに考えてやってもらわないと、やっぱり景気がなかなか浸透していかないということですから、そり辺はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。
  51. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 確かにおっしゃるように、今度の石油の値上げが国民経済にとって相当な打撃であるということには、これはもう同意見でございます。ただしかし、先ほども申し上げましたように、九月に決めました第四次不況対策が、財投等による対策等につきましてはもうすでに実施に移されておりますけれども一般会計からの資金を必要とする仕事に対してはまだ実施に移されてない、こういうこと等もありまして、第四次対策そのものがまだ進んでないわけですね。そういうやさきに、いま昭和五十一年度の予算編成が始まっておるということでございますから、先ほども申し上げましたように、第五次対策を立てる時間的な余裕はありませんけれども、しかし、そうかといって五十一年度の予算編成まで三カ月半ばかりございますから、その間は積極的な貿易対策、あるいはまた積極的な金融対策、こういうことによって弾力的な経済運営、財政運営をやっていきたい、そして、一刻も早く五十一年度の景気対策を織り込んだ予算が成立するということを私どもは期待をしておる、こういうスケジュールで進めていきたいということでございます。
  52. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、少し議題が変わりますけれども、今度石油の標準価格も決まったようです。それによりまして大体平均九・五%ですか、これから石油の値上げ分というものが石油化学とかあるいは電力、鉄鋼、ずっと影響していくだろうと思いますが、しかし、実際石油がだぶついておるということで、石油業界は何としても値上げをしなければならぬ、石油の供給をカットをしてでも何とかしてやろうというようなことが新聞にも出ております。これはどういうふうにして標準価格のところまで浸透させようと、そういうお考えを持っていらっしゃるのか、通産省はどういう考えを持っておるのか、それともほうっておくのか、それとも通産省からある程度いろいろ指示をしていくのか、その辺のところをちょっとお伺いしたいのです。
  53. 増田実

    政府委員(増田実君) 標準価格につきましては、この十二月一日の告示をもちましてガソリン、ナフサ及びC重油三品種につきまして発表いたしたわけでございます。  それで、いま中尾先生の御質問のありましたこれへの達成というものがどういうふうにして行われるかということでございますが、御存じのように、石油業界が非常に逆ざや、その上にOPECの値上げということで、現在の状態では企業が存続していきますのに非常に危機的状況にあるということで、私どももやむを得ない措置だということでこのたびの標準額を発表いたしたわけでございますが、この標準額は、需要業界の協力と納得によりまして、できるだけ早くこの額に達成することが望ましい額ということで発表いたしたわけでございます。したがいまして、需要業界が、石油業界というものがいかに苦況にあり、また、このまま放置いたしますと、自分たちのエネルギーを供給しております産業が崩壊するということで、共存共栄という立場で十分この値上げの必要性を納得されて、そしてこれに協力を願う、こういうふうに考えています。  先ほど先生からおっしゃられました、供給をカットして、そしてこの標準額を無理やり達成するということは、私は望ましくないというふうに思っております。やはり、石油といいますのは各産業にとりましては原動力になるエネルギーでございますので、先ほど申し上げましたように、この標準額にまで値上げすることの必要性につきまして十分需要業界と話し、納得と協力のもとにこれを達成するということが望ましいものと考えております。
  54. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 とにかく、いま石油がだぶついておるわけですね。このままの状態では標準価格の実現というのはいつになるか、それは私もわかりませんが、各産業界も赤字を相当抱えておるし、石油業界の赤字もあるわけですが、そうすると、減産による需要調整というようなものを指導されるのかどうか、その辺はいかがですか。
  55. 増田実

    政府委員(増田実君) 石油業法によりまして毎年の供給計画政府が定めております。また、それに基づきまして各石油会社から生産計画を届け出さしております。そういうことで、私どもの方は石油というものの商品の重要性にかんがみまして、この供給が需要と均衡するようにということで、従来から行政指導を行っておるわけでございます。  ただいま先生のおっしゃられました、つまり、供給が非常にだぶつきであればなかなかその価格の値上げはできない、あるいは標準額の達成はできないということでございます。そのとおりでございますが、この供給計画につきましては、まだ供給が過剰であるということで、四月の供給計画を九月に改定いたしました。それによりまして、大体供給と需要とが均衡するという供給計画を定めまして、これに基づきまして各社の生産計画を届け出さしておるということでございます。結論的に申し上げますと、現在の石油業法に基づく供給計画による行政指導というものによりまして、生産と需要というものがマッチすると申しますか、均衡するという形の行政指導を行っております。
  56. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、その石油の需給計画は減額修正されたわけですが、あなた方が減額修正されたとおりに実施されておるんですかどうですか。私がちょっとお伺いしておりますというと、計画そのものはそうなったけれども、実際そのとおりいっておらぬ、そういうようなことも聞いているんですが、いかがですか。
  57. 増田実

    政府委員(増田実君) 私どもの方でこの供給計画を定めまして、各社からの生産計画を毎月とっておりまして、また、それを後から全部チェックいたしております。そういうことで、供給計画に基づいた生産というものが行われておるわけでございます。ただ問題は、本年度の上期におきまして、若干供給計画が大き過ぎたということから、供給過剰という問題があったわけでございますが、先ほど申し上げましたように九月に改定いたしまして、それ以降は毎月の生産計画というものをチェックいたしております。そして、その生産計画どおりの生産が行われておるわけでございます。
  58. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、そういうように計画どおり行われておらないというようなことを私も聞いておるんですが、その辺をちょっと聞いておる。あなた、計画どおりぴしっといっておると言っておりますけれども、業界の事情はそうじゃない。それが一つと、その辺の事情はどうなっておるのか。  それから、減産要請をするということは、これは公取に行っちゃったんですが、これは独禁法の違反にはならないのか、この辺のところをちょっとお伺いしたい。
  59. 増田実

    政府委員(増田実君) 石油各社が生産計画を出して、実際の生産はそれより増産するという事実があるかどうかという先生のお尋ねでございますが、私どもはそういうものはないというふうに考えております。これにつきまして、毎月の生産が終わりました後に、直ちに各種の報告を求めております。もちろん虚偽の報告があれば、これはそれ以上の生産になるということでございますが、私どもの方にいろいろの情報で聞いております範囲内では、生産計画を超えまして生産している事実はないものと信じております。  それから第二点でございますが、こういうように供給計画を石油業法に基づいて定め、それによりまして各社の生産計画を出さして実際には生産の行政指導をやっておるということにつきまして、独禁法との関係がどうかということでございますが、これにつきましては、ただいま申し上げました供給計画の作成、あるいは各社別の生産計画につきましての調整というものにつきましては、これは全部通産省資源エネルギー庁でやっておるわけでございまして、決して独禁法違反になるような、つまり業界との間、石油精製会社の間のカルテル行為、あるいは談合というものに基づいてやっておるわけではございませんので、政府からの指示でやっておる。また、これに基づいて独禁法違反になるようなカルテルというものを絶対行わないようにということで、十分強い指導を行っております。したがいまして、この生産の行政指導につきましては、独禁法には何ら触れておらないというふうに私どもは確信しております。
  60. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあこれはまた後でお伺いしましょう。  それで、最後に大臣にお伺いしますけれども、今度の石油の値上げでまたいろんな産業にも響くわけですね。それで物価の面さらに景気の面、どういう影響があるでしょうか。これはそういうときはむずかしいかもしれませんが、こういうような景気振興第五次対策というようなものが議題になっておるわけですから、これは石油の値上げで、せっかく何とか第四次対策を盛り上げて景気をつけようというときに、石油がこう上がってくると、景気の足を引っ張るような感じもするわけです。それと物価の面にどういうふうに響くのか、その辺はいかがですか。
  61. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今度石油の標準価格を設定をいたしましたが、それが私どもは一〇〇%実現するということを期待しておりますけれども、現在の景気の動向では果たしてそのとおりいきますかどうか、これは経過を見ませんとはっきりした断言はできませんが、しかし、いずれにいたしましても相当な値上げは実現すると思うんです。そこで、一番大きく影響を受けますのはやはり電力業界、それから石油化学、それから鉄鋼、それから紙パルプ、セメントと、こういうところが影響を受けるのではないか、こう思います。  ただしかし、たとえば電力業界のごときは相当体力も強いですし、石油だけではございませんで石炭の値上げ等もありましたので、現在の料金体系ではなかなかむつかしい、こういうことを言っておりますけれども、できるだけしんぼうしてもらおう、合理化等によってある程度のものは吸収してもらおう、まあこういうふうに行政指導をいたしておるわけでございます。いずれは新しい価格、つまり、値上げということにはなろうと思いますけれども、できるだけ先に延ばしたい、こういう考え方でございます。  その他の産業等についても、もちろん相当の影響は出ますけれども、これもできるだけ合理化等によって吸収してもらう、しかし、若干のやはり値上げは万やむを得ないのではないか、こういうふうに理解をいたしております。
  62. 桑名義治

    桑名義治君 最初に通産大臣にお聞きをしたいわけですが、この十一月の十五日に訪中をされまして、中国政府要人との会談をしたように報道されております。この内容はどういうふうな事柄が話がなされたのか、つまびらかにしていただきたいと思います。
  63. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今回私が訪中をいたしました直接の動機は、去る十一月の十八日から十二月の二日まで二週間にわたりまして、北京でジェトロと通産省がバックアップしまして、工業技術展覧会を開くことにしたわけでございますが、この展覧会は、政府が参加をいたします展覧会といたしましては戦後最大の展覧会でございますし、また、ジェトロが開く展覧会といたしましても、戦後最大の展覧会である。日本から二百数十社が参加をいたしまして、出品のいろいろな機械類も七千八百点という、きわめて大規模なものであったわけでございますが、そういうことから私が政府代表といたしまして訪中をしたわけでございます。その機会に中国側の要人と何回かの会談をいたしましたが、会談の内容の一つは石油問題でございます。それからもう一つは貿易問題でございます。  石油問題につきましては、長期契約の話がずうっと前から出ておるのでございますけれども、なかなか問題点がたくさんございまして最終結論が出ない。そこで、これについて主要な問題点をずうっと煮詰めることにしたわけでございます。  それから、貿易等につきましても、日中の国交が正常化されましてから三年間に、貿易が往復で三倍半に増加をしております。昨年度は往復三十三億ドルでございましたが、ことしは約四十億です。こういう非常に大幅な増加をしておりますが、しかし、日本からの輸出が二十五億で向こうからの輸入が十五億、こういうことで片貿易になっておりますので、この問題をどういうふうに考えるかということ。それから、伝統的な商品で若干のトラブル等もございますが、こういう問題の処理をどうするか、こういう問題につきまして話し合いをしたわけでございます。
  64. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、項目的に貿易の不均衡の是正あるいは石油の長期取り決めの問題、あるいは伝統的商品の輸入と日本製品との競合問題、こういった問題が項目としてはいまお話の中で挙がってきたわけでございますが、この中で一番問題になりますのが、貿易の不均衡是正の問題をどうするかという問題と、それから、日本にとって特に重要な今後の問題として石油の長期取り決め問題だろうと私は思うんです。そういった立場から私は、中国の石油輸入について少し大臣のお考えをお聞きをしておきたいと思いますが、通産大臣としては、今後中国からの石油の輸入の見通しについてはどのような認識の上に立っておられるのか、基本的な問題としてまず伺っておきたいと思います。
  65. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) わが国の基本的なエネルギーの戦略でありますが、その第一は、エネルギー全体における石油の占める比率、シェアというものをできるだけ少なくするということが第一でございます。  それから第二は、この輸入ソースをできるだけ分散するということが第二の戦略でございます。そういう意味におきまして、隣の中国から大量の油が産出されるということになったということは、わが国にとりましても非常に大きな関心事でございます。できれば安定的な長期契約をしたい、こういう考え方政府及び民間にもあるわけでございますが、そのためには先方の埋蔵量についてやはり明確な説明を求めなければいけませんし、現在の油の産出量、それから将来の増産計画、こういうこと等についてもやはり説明を求めなければならぬわけであります。  そこで、そういう説明を受けまして、長期契約の問題点に入ったわけでありますけれども、長期契約の一番の問題点は、数量をどうするかということでございますね。その問題につきましては、中国の油の性質上、現在程度であれば問題ありませんけれども、これを将来大量に増加をするということでありますと、設備そのものから変えていかなければならぬ。設備そのものを変えるということになりますと、これは非常に多額の資金を必要としますし、そうするとコストというものが高くなる。現在の日本の石油の精製設備は中東の軽い油を受け入れるようになっておりまして、中国のああいうろう分の多い重い油を精製するには適しないわけでございます。  そういう問題がありますので、私の方からは、もし将来この数量というものを飛躍的に増量しよう、こういう場合には、設備の問題に関連して当然価格の問題が起こってくる。この問題を解決しない限り、わが国としては大量に輸入するということはむずかしい、こういうことを言いましたところが、それに対しては、双方が利益のある形でひとつ相談の上で解決できるじゃないか、そういう提案がございました。  それからまた、数量の問題につきまして、わが国といたしましても、先ほど来質疑応答がございましたように、まだ最終的に新しい五カ年計画が決まっておらぬわけであります。それで、新しい五カ年計画が決まった段階で、今後五カ年間の油の需給量もおよそ見当がつきますし、その段階におきまして価格の問題を解決しながら数量を決めていこう、こういうことで大体の合意に達しましたので、いま事務当局におきまして、その線に沿って詳細を検討しておるところでございます。
  66. 桑名義治

    桑名義治君 いまの大臣のお答えで、今後の日本の石油というものは輸入源の多角化が必要である、そういった立場から中国の石油というものを見直していかなければならない、しかしながら、いま当面の問題として石油のいわゆる需要量の見通しを固める必要がある、第三点には、現在の中近東向けの石油精製設備を改善をしなければならない、そのためにはいわゆるコスト、値段の問題が問題になる、こういうお話でございます。それと中国の石油の埋蔵量というお話がございましたが、現在のエネルギー庁の中ではどのように中国の石油を見通していらっしゃるのか。ことしは大体八百万トン産出したというふうに言われておりますし、五年後には、文献によれば二億トンになるとか四億トンになるとか、あるいはいまから先埋蔵量というものが、五千億トンぐらいの埋蔵量があるんではないか、中近東にまさるとも劣らない埋蔵量があるんではないか、こういうふうなことも言われておるわけでございますが、エネルギー庁としてはどういうふうな認識の上に立ってこれに対処をしていこうとお考えになっていらっしゃるのか、まず伺っておきたいと思います。
  67. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先方の説明を聞きますと、埋蔵量につきましては、正確な数字を挙げての説明ではありませんけれども、その説明を総合いたしますと、中近東の埋蔵量に匹敵する、こういう程度の埋蔵量があるのではないかというふうな印象を受けました。  それから生産につきましては、これは非公式の話でありますけれども、大体昨年は六千五百万トンの生産であった、ことしはほぼ二割弱生産が伸びる、こういうお話でございました。  それから将来の見通しにつきましては、これは向こうも計画生産でございますから、どの程度輸出できるのか、それからどの程度国内の消費を考えるのか、こういうことによって生産量が決まるのだと思います。アメリカの議会筋の報告によりますと、五年後には二億三千万トンないし三億トンは可能であると、こういう報告がありますが、先方のお話によりますと、その程度の数量の生産を達成するためには相当なやっぱり開発機械の輸入が必要であると、こういうことを言っておられましたですね。でありますから、日本が必要とする将来の輸出量に対しては数量的には問題ない、こう思います。むしろ私は、日本側の事情にあるのではないか、こういうふうに理解をいたしております。
  68. 桑名義治

    桑名義治君 先ほどからの説明の中で、いわゆる日本側の新経済五カ年計画の大筋が固まる十二月ないし遅くとも来春には、実務家の話し合いを行った上で解決をしたいというふうな意味のお考えのようでございましたけれども、いまから先の石油輸入源の多角化ということは、これはいまの世界情勢から判断をしても非常に重要な事柄であろうというふうに私も考えるわけでございますが、全体の計画が大筋が固まった場合、大体何%ぐらいをめどにして中国から輸入することが最もベターであろうというふうにお考えでございますか。
  69. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) それはやはり価格の問題等がありまして、価格がわれわれの希望するとおりにいけば相当な量が可能でありますし、そうでなければそう大きな期待はできない、こういう問題がありますので、これはやはり関係業界とも十分話し合いをいたしまして問題点を煮詰めていく必要がある、こういうふうに理解をいたしております。
  70. 桑名義治

    桑名義治君 そうしますと、その問題点は大体いつごろをめどにして煮詰めるようにお考えでございますか。
  71. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 明確な時期をここでまだ申し上げる段階ではありませんが、やはりこの三月には新しい五カ年計画も決まると思いますし、価格の交渉もある程度進むのではないか、こういうふうに考えておりますので、来年の春——三、四月ごろを何とか目標に話し合いを進めていきたい、こういうふうに考えております。
  72. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、通産省としては、中国からの石油の輸入については積極的な姿勢がほぼわかったわけでございますが、新聞のいろいろな報道によりますと、石油業界は、精製設備の建設に金がかかることを理由に一部反対、いわゆる積極的でないというふうな事柄も報道されているわけでございますが、   〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕 この石油業界と通産省との考えの中のギャップというものをどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。あるいは石油業界を説得する自信があるのかどうか。あるいはまた、そういう設備の改善について何らかの処置をとろうというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか、そこら辺をちょっとお聞きしておきたいと思いますが。
  73. 増田実

    政府委員(増田実君) 中国の石油の政府考え方につきましては、ただいま大臣から御説明申し上げたとおりでございますが、石油業界におきましては、この中国石油を将来一つの大きな石油供給のソースにしようという動きも一部にありますが、多方、先ほど大臣から御説明いたしましたように、その品質の問題あるいは価格の問題から、大量に中国石油を引き取ることにつきましては慎重な態度をとっている会社も相当ございます。これは先生御指摘のとおりでございます。ただ、これにつきまして、私どももできるだけ中国石油の輸入を促進いたしまして、石油供給源の分散化というものを図り、また、中国との間の貿易の拡大の一助にいたしたい、こういうふうに考えておりまして、そのために、中国原油の非常に大きな問題点でありますこの重質油である点を技術的に解決いたしますためにも、いわゆる重質分解装置というものを設けるということにつきまして、これを推進していきたいということで、来年度の予算につきましても、開銀資金でこれを促進するということで予算要求をいたしておるわけでございます。なかなかこの重質分解装置と申しますものは費用が莫大にかかるわけでございます。現在石油業界が非常に経営上苦境にありますために、これを設置いたしますことにつきまして相当問題点があるわけでございますが、ただいま申し上げましたような金融的な促進措置を行っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  74. 桑名義治

    桑名義治君 その方向についてはほぼ概略わかったわけでございますが、いずれにしましても、四十八年度のあの石油ショックのときの問題、そこから出てきまして、備蓄の問題が現在出てきているわけでございますが、それとやはり中国との間に長期的な契約が結ばれるということ、これは非常に三つどもえで関連の深いものでございますし、位置的にも非常に近い位置を占めておりますし、そうやった関係から中国との石油輸入の問題については、これはさらに積極的な姿勢で取り組んでいただきたいと思います。  これと関連をしまして、先ほどから、冒頭にいわゆる貿易の不均衡是正の問題も出ておりました。それと同時に、今回の日中貿易、秋の広州交易会では低迷であったというふうに聞いているわけでございますが、今後の日中貿易の見通しについてはどのようにお考えでございますか。
  75. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 日本の貿易を考えますときに、将来大幅に伸び得る対象地域というものはそんなにたくさんないと思うんです。中国は、いろんな事情を総合的に勘案いたしまして、やはり将来は飛躍的に発展し得る可能性が十分ある、こういうふうに理解をしておりますので、私たちは将来の日中貿易の飛躍的な拡大ということを目標にしたい、こう思っております。  そこで、当初に触れましたように、現在でもほぼ年間十億ドル程度の逆ざやが出ているわけでありますが、しかし先方は、相当な逆ざやがあっても、これが将来永続するものではない、いつかは解消できるんだ、こういう見通しがあれば、それはそれでいいんだ、何もあわてて貿易の縮小均衡を図ってまで逆ざやを解消する必要はない、ある程度の期間は万やむを得ない、こういう考え方でございます。そういうことでありますので、私どもも問題点を一つ一つ解決しながらこの貿易の拡大を図っていきたいと思うわけでございますが、やはり問題は、伝統的商品でトラブルをできるだけ起こさないようにやっていく、こういうことが必要でなかろうか、こういう点を痛感をいたしております。
  76. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、今度は少し問題を変えて質問をしたいと思いますが、最近一般家庭でのプロパンガスの爆発事故が多発しておりますし、また、被害の規模も大きくなっております。それと同時に十二月の五日の日ですか、千葉ガスが一般の家庭に高圧ガスを流して爆発事故が起こっておりますが、まず最初に、千葉ガスのこの爆発事故について説明を伺っておきたいと思います。
  77. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 先生御指摘のとおり、十二月五日に午前二時ごろでございますが、千葉ガスが事故を起こしたわけでございますが、千葉ガスと申します会社は、本社が八千代市にございまして、この千葉ガスが隣接の佐倉市におきまして工事をいたしました際に、この工事の対象になりましたのは一・四キログラムの圧力を持っております中圧導管でございますが、この中圧導管の工事をいたしました際に、工事終了後バルブの操作を間違いましたために、この一・四キログラムの中圧のガスが家庭用の配管の中に入ってまいりまして、勝田台団地の家庭の中で、いわゆる瞬間湯沸かし器の種火を消さないで寝ておられました家庭におきまして、その中圧のガスが入り込みましたために湯沸かし器が爆発をいたしまして、火災を生じた。  事故といたしましては、一軒のうちが全焼いたしまして、それから五軒のうちが台所とかふろ場等の一部が損傷いたしたわけでございます。人身事故につきましては、二人の方が軽い中毒症状ということであったわけでございます。まことに遺憾な事故だと存じておる次第でございます。
  78. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、操作を間違えてこういうふうな事故が起こったということですが、夜中の二時ごろであったためにこの程度で一応おさまった、いわゆる不幸中の幸いであったと思うのですが、これが夕食の時間、あるいは朝食の時間、こういう準備の時間であったならば大事故に発展しているんじゃなかろうかというふうに考えられるわけです。そこで、特にこういうガス工事のときに、もう少しやはり注意を必要とするんじゃないか。何かこう規制をして完璧を期していかないと、こういう都市ガスは多数の家庭に影響力がありますので、いまから先、そこら辺を一つの教訓にして、エネルギー庁としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。これが一つ。  それからもう一つ、新聞報道によりますと、石崎社長は、単純なミスによる事故を起こして申し訳なかった、それで、被害者の方にはできるだけの補償をするというふうに発言をしているわけですが、この補償状況についてはどういうふうに掌握をしておりますか。この二点についてまずお伺いしておきます。
  79. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 先生御指摘のように、バルブ操作のまことに初歩的なミスでございますが、これにつきましては、東京通産局が早速千葉ガスの社長を呼びまして、文書によりまして作業管理体制等の強化につきまして指示をいたしまして、この十二月二十六日までに改善の結果につきまして報告を求めておるわけでございますが、指示の内容といたしましては、一つには作業計画を——本件につきましても一応の作業計画はあったわけでございますけれども、作業終了後のバルブの操作等については詳細に触れてないというふうな点がございます。したがいまして、一つには作業計画を綿密に策定する。それから、ただ作業計画にバルブの操作が触れてありましても、その手順が逆になりますとこれは事故を起こしますので、手順等につきましても明確にして、かつそれを徹底させる。それから、何よりも前提といたしまして社員教育ということが問題でございますので、社員教育の徹底を図る。この三点につきまして厳重な指示をいたしまして、現在、報告を求めておるということでございます。  他の東京管内のガス事業者に対しましても、本件事故にかんがみまして、同様な措置をとることを同時に指示をいたしております。  それから、補償等につきましては、実は事故の内容につきましても、本日、ふろ場の一部が損傷したというふうな新しい被害も出てきたような状況でございまして、現在、まだ補償等につきましての話し合いが具体的に進んでいるとは承知いたしておりませんが、いずれにいたしましても、これは誠意を持って十分なる補償をするよう、われわれとしても指導する所存でございます。
  80. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、プロパンガスの問題でございますが、こうやった爆発事故が多発しておる関係上、一月、LPガス法の改正が行われたわけでございますが、その後も事故が続発しているわけです。主な原因は大体どういうところにあったわけですか。
  81. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) LPガスのその後の事故は、やはりガス漏れというふうな単純な原因に基づくものが多いように思われます。それは、たとえばボンベから燃焼器具の間にパイプが連結されておるところ、燃焼器具の先におけるところの漏洩の問題とか、二カ所が可能性としてはあるわけでございますが、そういうことが中心かと思います。
  82. 桑名義治

    桑名義治君 もう時間が余りありませんので簡単に御答弁願いたいと思いますが、事故防止対策強化のために、通産省は、ガス漏れ警報器の普及を五十年度から五十二年度までの三年間に、独立住宅は五〇%、集合住宅は八〇%ということを目指しております。ところがこれを悪用して、ガス漏れ警報器の販売方法が一部問題になっておりますが、通産省には消費者相談室にも多数の苦情が持ち込まれているというふうに言われておりますが、その苦情の内容について、あるいは件数についてまず伺っておきたいと思います。
  83. 天谷直弘

    政府委員(天谷直弘君) 昭和四十九年度におきまして、通信販売、訪問販売等の特殊販売に関する苦情は二千数百件通産省に持ち込まれております。ただし、これの中でガス漏れ警報器に関する苦情というのがどの程度あるかということにつきましては、いまのところまだ把握いたしておりません。
  84. 桑名義治

    桑名義治君 いずれにしましても、この問題は新聞紙上を大分にぎやかしました。その後、通産省としてはどういう手を打たれたのか。私の方にもいろいろと苦情が持ち込まれております。というのは、主婦の方から、特にアパートの場合が多いわけですが、二階の何々の何々さんが留守中でどうしても届けられませんでしたので、あるいはお金がないので下から借りていってくれと、こういうふうに言われてお金を払ったとか何とか、いろいろな問題が持ち込まれているわけです。だから、こういうふうな消火器の問題と同一に、一見詐欺的な行為でこの販売が行われているわけでございますが、これをどういうふうに規制をなさろうというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  85. 天谷直弘

    政府委員(天谷直弘君) 明白に詐欺的手段を用いて売りつけるとか、あるいは居座り、押し売り等々の行為は、これは刑法上の問題でございますので、警察当局に取り締まりを強化していただく以外には方法はなかろうかと存じます。  他方、この通信販売、訪問販売等のいわゆる特殊販売と言われております販売方法、これにつきまして、いろいろ消費者の方から苦情が出ておるわけでございますので、この問題に関しましては、通産省の方で産業構造審議会の答申も受けまして、これを規制するための立法の作業を現在行っておるところでございます。
  86. 桑名義治

    桑名義治君 新聞紙上によれば、次期国会に無店舗販売適正化法案という、仮称でございますけれども、提出をするというような記事が一部出ているわけですが、この点についてはどうですか。
  87. 天谷直弘

    政府委員(天谷直弘君) 無店舗販売等の特殊販売につきまして規制する法律を次期国会に提出する方向で、関係各方面と折衝いたしておるところでございます。
  88. 桑名義治

    桑名義治君 それと同時に、このガス漏れ警報器の中には非常に悪質な販売と、それから不良品が非常に多いというふうに言われているわけでございますが、この点についてのチェックはどういうふうになさっておられますか。
  89. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) ガス漏れ警報器のチェックにつきましては、高圧ガス保安協会におきまして、いわゆる型式承認制度というのを採用いたしております。御存じのようにこれはサンプルにつきまして型式審査、それから書類及び工場の審査をいたしまして、品質管理体制が完備しておるかどうかということで承認を与えておるわけでございます。もちろん、このガス漏れ警報器が開発されて市場に出回りましたのは比較的新しいことに属しておりまして、そのときにおきますところの技術的なデータというものも、必ずしも十分の蓄積はなかったわけでございますが、粗悪品の流通防止ということでこういう制度をスタートさしたわけでございます。その後、ある種のガス漏れ警報器につきましては、経年変化——年がたつとともに変化があるというふうな状態もわかりましたので、ことしの初めから制度をさらに変えて厳重にいたしました。つまり、従来の型式承認に加えまして、ロットから抜き取り検査を加える、こういうことで、毎年一年ごとにその検査を続けていくということにいたしておる次第でございます。
  90. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、業者の中にはこの保安協会の検査も受けずに販売をしておるところもある、こういうふうに言われているわけです。ところが、これは完全な義務的なものにはなっていないし、検査で不合格になっても、それを販売しても別にそれが刑罰に処せられるということもないわけですし、要するに、ここら辺はやはり人命にかかわるような問題なんです。ガス漏れ警報器がこわれておってそれで気がつかないために爆破してしまった、何のために取りつけたかわからないというようなこともあるわけでございます。また一部では、そういう不良品を回収しているという話も聞いているわけでございますが、その点についてはどうですか。
  91. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) 私どもの方で工業品検査所というのがございまして、これが流通段階にありますところのガス漏れ警報器を八銘柄二十三個、任意に町で買ってまいりました。これを部内で検査をいたしました結果が出ております。それは先般八月の十二日に結果を公表いたしておる次第でございます。この中に不適当な商品が二つございました。したがいまして、私どもの方で、直ちに流通段階あるいは消費者段階における総点検をやって不適当なものは全部回収せよ、こういう指示をいたしました。この指示に基づきまして会社側におきまして早速新聞広告を行い、回収の措置をいたしまして、現在十一月の末までの段階で約六五%が回収されておる状況でございます。
  92. 桑名義治

    桑名義治君 いずれにしましても、こういうふうな不良販売あるいは不良品の販売、こういう事柄がいまいろいろと問題になっておりますので、この点については少なくともやっぱり必ず検定を受けなければならないという、そういう事項にしていかなければ、この問題はまた解決しないんじゃないかというふうに考えますが、そういう方向でお考えいただけますか。
  93. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) ただいま先生の御指摘の点も十分配慮してまいるつもりでございますが、具体的には私どもの方でリース制度というのを考えておる次第でございますが、このリース制度に乗っけます前提要件といたしまして、検定に合格しておってアフターサービスがきちっとできるというのを条件にしたいと考えております。
  94. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      —————・—————    午後一時二十七分開会
  95. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  96. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 非常に時間が短いんですから、政府当局も簡潔に要領を得た答弁をしていただきたいと思います。  最近、中小企業団体の組織に関する法律に基づく命令の規定による織機の登録の特例等に関する法律、こういう法律に基づく織機の登録に関連して、福井県下で不正事件が発生して問題になっておりますが、事件の概要と、主管官庁としての通産省はどのような措置をとってきたか、お聞かせ願いたいと思います。
  97. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘になりましたケースについてでございますが、中小企業団体の組織に関する法律に基づく命令の規定による織機の登録の特例等に関する法律、略して特例法というふうに申し上げたいと思うわけでございますが、これは御存じのとおりに、昭和四十七年十一月現在において現に存する無籍の織機につきまして特例を開きまして、ある一定のルールのもとにおきまして籍を与える、有籍化するということを目的とする特別の法律でございます。これは昭和四十八年の十一月一日から施行になっているわけでございます。  この法律に基づきまして籍を得るためには、省令で定める一定の時期の間に一定の要件を持った手続をやりまして、通産大臣の登録を受けることになるわけでございます。この仕組みに基づいて登録を受けるためには、先ほど私が申し上げましたように、昭和四十七年の十一月一日現に無籍の織機が存在するということをその織機のある市町村長等が確認をいたしまして、その確認書を受けることが条件になっているわけでございますが、その確認書——いろいろなケースがあるわけでございますけれども、その確認書を受けることにつきまして、不正の手段によりまして市町村長等の確認を示す公文書を発行してもらった、あるいはその公文書を偽造をしたというような事件が福井に起きたわけでございます。  これは、現在私どもの方も通産局、県と協力しながら実態を調べておりますし、場合によっては刑法上の問題であるということで、警察の方も調査をいたしているわけでございます。現在調査中でございますので、最終的にどうだという確たることを申し上げる段階には至っておらぬわけでございますけれども、確かに福井県織物構造改善工業組合の一部の事業者が、先ほど申しましたように、偽造した公文書等を用いて、現実に設置していなかった織機について架空の登録を受けた疑いがあるということは事実だというふうに考えるわけでございます。  先ほど申しました、現在調査中ではございますけれども、現在までに調べた限りにおきましては、相当程度事実であるというふうに考えられまして、まことに遺憾なことだというふうに存じている次第でございます。先ほど申しましたように、県、通産局、あるいは関係の方面と連絡をとりながら、なお実態の究明に努めているわけでございますけれども、違法な行為がある場合には、違法な行為に対しましては厳正に措置を講ずる次第でございます。  具体的にどういう措置をいままでとったかということでございますが、この夏以降、まず先ほど申しましたように、事実の確認に努めているわけでございます。これは何回も当省より調査のために人も派遣をいたしました。そして、さらに現在調査中でございますが、とりあえず以上のようなことがあるということでございますので、中間的な措置といたしまして、十月九日の日に日本絹人繊織物工業組合連合会を通じまして、次の措置をとるように指示をいたしたわけでございます。  これはとりあえずの拾遺でございますが、まず第一に、責任の所在を明確にしろということでございます。第二は、登録事務の改善を行うべきであるということでございます。もちろん最終的には、以上のことにつきまして事件の内容がはっきりいたした場合には改めて最終的な措置をとるわけでございますけれども、十月九日の日付をもちまして、文書と及び責任者を呼びまして私の名において強く戒告し、かつ指示したわけでございます。それに対しましては、やはり中間的な段階におきましてその趣旨を奉じて努めますという回答を受けているわけでございますが、福井県織物構造改善工業組合におきましては、当面問題の人とされている人に対しましては、その責任をとるよう辞職勧告をいたしました。その当の理事者は、そのあれを受けましてやめたわけでございますが、組合全体といたしましても姿勢を正す意味におきまして、十一月上旬、理事長、副理事長その他関係の職員が全部辞職をいたしました。現在暫定的でございますけれども、新しい理事、執行部ができて、本件の善後処置に当たっているわけでございます。
  98. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こういう問題が起こりやしないかと思って、この無籍織機の問題が国会論議されたときにも、そういうことが起こりがちだから十分注意をするようにと、そのとき私は注意をしたと思うんですが、こういうことがいま起こった。  それで通産省、いまの答弁で、要するに不法な行為があったということを認め、公文書偽造の行為があったということも認め、そしてそういう責任者に対しては辞職勧告をし、処理をした、こういうことをいまあなたは答弁されたと思うんですが、それに対して私少し質問したいと思うのですが、通産省は十月九日付で生活産業局長名で、福井県織物構造改善工業組合の責任を明らかにするよう日本絹人繊織物工業組合連合会理事長あて通達を出しておりますが、その結果は一体どうなっておるのか、ここで伺っておきたい。簡単に言ってくださいよ。ごたごたと説明する必要ないですよ。
  99. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) お答えいたします。  その前に一言、私、先ほど答えました中ではっきりさしておきたいと思うわけでございますが、公文書の偽造あるいは偽造された公文書の行使等のことにつきましては、これは刑法上の問題にも絡んでまいりますので、現在司直の手において調査中でございます。その疑いが非常に強いという意味で私の発言をお受け取りいただきたいと思います。  それから組合につきましては、明らかにやるべき無籍織機の申請及び登録に至る一連の手続を、関係の組合は通産大臣の委任を受けてやることになっておりますが、その手続の遂行に当たりまして、法令で定める規定どおりにやっていなかったということは、これは明らかでございます。その面につきまして、登録事務の改善方につき今後厳格に臨むつもりでおるわけでございます。  先生の御質問でございますけれども、私どもが十月九日付で厳格にその責任を追及し、かつ今後とるべき措置につきまして指示したことに対しまして、十一月二十日付をもちまして、中間的なものであるということで断りつきでございますけれども、次のような措置をとるというふうに連絡が来ておるわけでございます。  第一は、私どもの方が指摘した責任の所在の明確化という問題に関連してでございますが、本件につきましては冒頭申し上げましたように、当時の組合の役員——現に役員であったわけでございますけれども、その役員が関与しておるわけでございます。一、二の役員でございますけれども、そういう役員につきましては、通産大臣の委託を受けて特例法の業務をやっている組合の役員として問題があるということで、当時の副理事長に対しましては辞任の勧告をいたしました。それを受けて辞任をいたした方がおります。それから、さらにほかに関係する理事もございますが、この理事につきましてもその後理事を辞任しておるわけでございます。  次に、執行部の責任でございますが、このようなことを起こしました組合といたしまして、管理監督の責めがあろうかと思うわけでございます。そういう私どもの意図を受けまして、全理事は現在執行部はやめたわけでございますけれども、十一月二十日付の文書は、福井の構造改善組合から中央団体でありますところの日絹連に——日本絹人繊織物工業組合連合会の方に提出されたものでございます。さよう御了解いただきたいと思いますが、それによりますると、当寺の、現組合の理事長、副理事長は今回の不祥事件の道義的責任をとって十一月六日に梓表を提出をいたしました。それから関係の常務理事につきましても、辞表を提出したということを報告してきております。  それから第三番目に、当時の職員の責任でございますが、やはり実際の登録事務に関しまして関連しております数名の職員がおります。この職員につきましては、それぞれその仕事にかかわり合った程度によりまして、退職その他の措置をとるということを報告してきております。
  100. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 答弁を簡単にしてください。
  101. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) はい。  第二に、このような事件がなぜ発生したかということにつきまして、いろいろ問題の分析をしておるわけでございますが、そういうことを踏まえまして、今後の登録事務を厳正に行うために次のような措置をいたしますということで、二、三報告をしてきておりますが、その第一は、執行権限の明確化をいたしたいということでございます。それから第二は、今回の登録事務に関連をいたしまして、今後の登録の監視体制を強化をいたしますということで、たとえば産地監視委員会の組織を強化する、あるいは独立をする、あるいは監視に当たっては県の協力を仰いでやるというようなことを言っておるわけでございます。その他事務局組織の改編等、あるいは役員、総代選出方法の検討等もございます。さらには、こういうことにならないように組合員の指導啓蒙も大いにやらなければいかぬということで、幾つかの改善点を述べているわけでございます。  おおよそ以上申し上げましたのが、中間報告ということで日絹連を通じまして私どものところに届いている回答の内容でございます。
  102. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたの答弁、えらい長々とやられて、こっちは時間がなくなるから気が気じゃないんだな。そんなことはこっちはみんな知っているんだ。不正がなかったら警察が逮捕する必要もないんだし、不正があったからそういうことになっているんで、肝心なところへいくと、いま裁判中だからどうのこうのと言って、そして必要な文書は警察が押さえてしまって、われわれの手元にその文書が戻らぬというような、いろいろなそういう工作がされているわけですよ。そういう中であなたたちは、そういうのらりくらりとしたような答弁しているんですけれども、そんなことは私は聞き飽きているくらいのことなんだ。  そこでひとつ、大臣に私は率直に答えてもらいたいのですが、不正を働いた二人の理事は、団体法や特例法の規定から見ましても、当然通産大臣が解任命令を出す場合に該当すると私は思っております。そこで通産省は、みずから辞任して責任をとったことだからこれ以上の処分はしない、こういうことを言っておりますが、それでは伺いますが、もしこの理事が辞任せずに居座っているようであれば、解任命令の処分に該当すると思いますか、どうですか。大臣の所見を伺ってみたいと思います。
  103. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 通産大臣には解任の命令があるわけでございますが、この場合には該当すると思います。
  104. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この場合には解任のあれに該当するという御意見ですね。
  105. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そうです。
  106. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃそういうふうに了承しておきます。  先ほど通産省が言った同じ日に、今後の登録事務を厳正に行うための改善策を出させるように指示されておりますが、どんなものが提出されておるのか。地元の新聞などではいろいろ報道されておるようでございますが、内容をお聞かせいただきたい。
  107. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) お答え申し上げます。  十一月二十日付で出てきておりますのは中間的な報告でございますので、最終的にどうするかということにつきましては若干の時間が要るかと思いますが、中間的な段階におきまして改善策としてこういうことをやりたいと言ってきているものは、次のようなことでございます。  第一は、組合の執行権限に関することでございますが、理事長あるいは副理事長、専務理事、常務理事というような各組合の執行部各部門の長の権限というものをはっきりさせる。これは今月十二月の二十日までにそういう案をつくって、執行体制と及び責任を明確化いたしますというのが第一点であります。  それから第二番目は、監視体制の強化でございますが、現在織機類につきましては、生産設備調整規則あるいは織機設置制限規則等がございまして、それによって規制を受けているわけでございます。この規則の厳正なる実施を確保するために、産地監視委員会の組織を強化改善をいたすということを言っておるわけでございます。これは多岐にわたる幾つかの項目があるわけでございますが、中心は、産地監視委員会の組織を強化するということと、特に監視委員会の事務局というものを強化いたしまして、これを組合から独立した機構にするということが中心ではないかというふうに考えております。  第三番目に、福井の工業改善組合の事務局組織の改編を行いたいということを言っておるわけでございます。組合の事務局の適正かつ能率的な遂行をはかるために、新しく登録のための組織、登録を実行し監視する組織をつくるということで登録室を設けるということを言っておりまして、これも十二月の十日までに事務局をこのように改編するということを言ってきております。  第四番目に、役員並びに総代選出方法の検討でございますが、健全な組合運営をはかるための役員及び総代の選出方法につきまして、来年の三月までに検討し、所要の改正を加えます、こういうことを言ってきております。  第五番目に、組合員の指導啓蒙につきまして定期的に地域ごとの会合を開いて組合員の指導を行う等、数項目にわたりまして具体的な指導啓蒙の措置につきまして報告が来ておるわけでございます。それから、和合の職員の資質を向上するために、内部研修その他教育訓練の場を設けて研修を行います。  簡単でございますが、以上でございます。
  108. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産省は、いまお答えになった内容で十分対策が立っているというふうに考えられますか、どうですか。
  109. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 必ずしも十分とは存じませんが、ともかく新しい執行部のもとにおきまして、以上、時間的なスケジュールまでも入れてやりますということでございますので、この十二月あるいは来年早々までの間、組合としてどういうふうにやるかということをウオッチしていきたいと思っております。
  110. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 十分だとは思っていないという答弁だが、どういう点が十分ではないというように考えるのですか。じゃ、十分でないとあなたは考えるなら、十分だと考えられるような処置をとったらどうですか。どこなんです、十分でないという考えは。
  111. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) その点につきまして、私どもの方も慎重に検討している段階でございます。
  112. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 慎重に検討しているということと、十分でないということを考えたということとは別の問題だと思うんですよ。
  113. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) お断りいたしましたように、十一月二十日付の措置は、組合の方も中間措置というふうに断ってきているわけでございます。冒頭申し上げましたように、本件につきましては、私ども県や通産局と協力して、現在いろいろ実態を調査しておる段階でございますので、最終的な措置は、そういう調査を待って私どもの方も実行いたしたいというふうに考えております。
  114. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 議論する時間がないのははなはだ残念ですが、このような事件を背景とした業務の改善策ということですから、組合の役員だけで決めるのではなく、広く組合員の意見を聞いてまとめるべきものと私は考えます。通産省の見解はどうでございましょうか。この改善策はこのような手続がとられた改善策かどうかということ、簡単に答えてください。
  115. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 今回の改善案が出るまで総代会あるいは総会等にかけたかどうか、私、現在ただいまつまびらかにしておりませんけれども、ともかく先ほど申しましたように、中間的措置ということで一応執行部も臨時的、暫定的ではございますけれども、総入れかえをやって新しい体制のもとに根本的に立て直しを図る、こういうことでございます。
  116. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 今回の不正事件で、不正に登録されたものは何件で何台あるのか明らかにしてほしいと思います。調査中でもあると思いますので、現在判明している数字と、今後ふえるかもわからない、もう大体出尽くしておるというのか、その辺のことを聞かしてもらいたいと思うんです。
  117. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 先ほどのこの中間措置は総代会にかけたものかどうかということにつきましては、理事会でございまして、総代会には諮っておりません。理事会にかけて決めてこちらの方に報告があったわけでございます。  それから、何台ぐらいあるのかということでございますが、現在調査中でございますので、はっきりした台数は申し上げかねるわけでございますが、相当数あるのではないか。件数も、現在わかっておりますのは一件でございますが、いま現在調べておりますので、調べが進むにつれまして若干増加するというふうに見ております。詳細な調査が終わりましてから御報告申し上げたいと思います。
  118. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こういう問題が、理事会だけで、そういう権力を持ったボスだけでやるからこういうことが起こるんですよ。そういうことをしないためには、やはり組合でも民主化という問題が重要だと思うんです。だから、組合員に諮ってすべての問題を相談して、そうしてこういうことは立て直していくという態度が必要だと思う。それがまだとられてない。こういう態度が私は重要だと思いますが、大臣の御意見をこの点でひとつ伺っておきたい。  今回の不正によって登録された機械は今後どのような取り扱いをするのか、その方針を伺いたい。地元の業者の中には、不正で登録されたものは無効にすべきだ、そうしないと正直者が損をすることになる、こういう意見があるんですが、これについて考え方はどうか。
  119. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 組合には理事会で決めるべきことと、それから全員の総会に諮って決めるべきことと、それぞれが定款で決まっておると思いますが、それに従って組合の運営を図っていくべきである、こういうふうに考えております。  それから、この譲渡問題につきましては政府委員から答弁させます。
  120. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 不正な手段によりまして登録をされたものにつきましては、当然はっきりとした措置がとられるべきでございまして、これは登録は無効でございますので、取り消されるべきものというふうに考えております。ただ問題は……
  121. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、こういう不正な行為で獲得した、それは無効だということですね。定款に従ってと大臣お答えになりましたが、その定款そのものにも私、問題があると思うんです。大臣、そういう連中ばかりが権力を握ってやっていくというような定款になっていますから、その定款をもう一遍考え直すということもやはり必要になるんじゃないか、こういうふうに私は思います。もっと民主的な定款をつくるということですね。それは大臣御異論ないでしょう、どうですか。
  122. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 定款は組合員全体の意思で決まるわけでございますから、私がその内容についてまでここで申し上げるのはいかがかと思います。
  123. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 機械の登録証を単独で譲渡できないことになっている、これは皆さん御存じのとおり。今回の不正登録のものはすべて違法でございますから、全部無効にしてもよいという議論もありますが、その点はどうか、これに対して先ほど無効だと、こういうふうにお答えがありました。そうですね、簡単に答えてください。
  124. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 不正な手段で登録したものはそれは無効である、取り消さるべきものであるということは当然でございます。ただ問題は、善意の第三者がいた場合に問題が出てくる……
  125. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それをこれから私が言うから。そんなところまであなた言う必要はない。  通産省は、善意の第三者が取得したと思われる登録は何台あると見ておるか。
  126. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 現在調査中でございますので、何台ということはただいま申し上げる段階に至っておりません。
  127. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産省が本気で実態を調べれば、権利の取り消しをしても被害はほとんどないということに私は気づくはずだと思うんです。それは、今回の事件を起こした人々が従前からの登録を持っておる人々で、自分の織機についている従来のプレートを外して売却し、今回の不正登録によって得たプレートを自分の織機につけているということなんです。したがって、無効になっても自業自得だと私は思います。不正を働いた人々は、従来の登録を持っている人ばかりですから、その人の従前の登録を善意の第三者に渡して、みずからの織機を破壊すればそれでよいわけだと思うのです。そうして、善意で権利だけを買い受けた人々はそのままに残したらどうか、こう私たちは思いますが、そういうことに対する御意見はどうでしょう、大臣。
  128. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そのとおりです。
  129. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ところが問題は、権利を買った人が善意であったか、悪意であったかの判断が実際むずかしいと思いますね。この判断を避けようとすれば、結局のところ、よほどのことがない限り全部の登録を認めるということにならざるを得ないと思いますが、それはどういうふうに処理をなさるおつもりですか。
  130. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 非常にむずかしいことだとは思いますけれども、私ども主として通産局を通じ、通産局と県とが協力をいたしまして、どういうルートで第三者に渡ったのかというようなことにつきまして現在調査中でございます。なかなかむずかしいかと思いますが、やれるだけ詰めてみようということでやっております。
  131. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 特例法によりまして、向こう五年間に特例法による織機を四分の一だけ破砕することになっておりますが、四分の一の数量は、従前の登録織機と特定織機とを区別しないで実施することになっておると思うんです。福井の場合は破砕する数量のうち三〇%を特定織機から、七〇%を従前の登録織機から実施するような案を考えているようですが、これによると、今回の不正登録のために破砕台数が多目になるんで、従前の登録織機の中には、本来破砕しなくてもよいものまで破砕せざるを得ないものが出てくることになるわけです。水増しになるから、現地の業者の中には不当であると、こういう意見がございますが、通産省はどういうふうにお考えになりますか。
  132. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 違法な手段によって間違って登録されたというものが判明いたしました場合に、先ほど申しましたように、それは取り消されるわけでございます。結局それはつぶさなければならないわけでございますので、特例法が本来定めております四分の一をつぶすということに、違法ということでつぶされる分はプラスされてくるわけでございます。
  133. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この問題に関連しまして、特定織機四分の一相当分の破砕の問題について伺いたいと思いますが、特例法制定の際の衆参商工委員会審議経過からも明らかなように、この数量は従来からの登録織機と特定織機とを合わせたものの中から破砕することになっております。石川県織物構造改善工業組合は、特例法の趣旨に反しまして、特定織機のみ破砕を割り当て、強制し、応じないものには資金借り入れのための登録証明書を交付しないということで差別しておるという事態が起こっております。このために、零細な業者は織機を壊せば仕事もできない。壊さなければ資金が借りられない、こういうことになって非常に苦しんでおるわけであります。これをやめさせるように至急指導をすべきであると思いますが、どうでございますか、簡単に答えてください。
  134. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 織物業の構造的な不況を改善いたすためには、この過剰設備の処理というものをできるだけ早く早期に行うということが必要だと思います。それに関連いたしまして、特例法による買い上げも、そういう意味ではできるだけ早く時期を繰り上げて早期に完了したい、こういうことで指導をしているわけでございます。そういうことに関連いたしまして、いま先生が述べられた、ただ、事が関連して起きてきたわけでございますが、そういう精神にのっとってやるために、各組合におきましては、その組合員の、あるいは関連事業者の協力を求める、こういうことでいった場合に、買い上げ事業に対しましてそれぞれの業者の都合によって、なかなか直ちには協力し得ない、こういう方もあろうかと思うわけでございます。先生が御指摘の石川の組合におきましてそういう問題が起きたということを聞いて、現地で問題が起きているということを私どもも聞いたわけでございます。そこで、私どもは名古屋の通産局を通じまして石川県と相談をし、石川県に指導を要請したわけでございます。その結果、最近の話でございますけれども、証明書の発行を保留されていた二人の業者に対しまして、十二月六日に石川の組合より証明書を発行をいたしたというふうに、石川県から報告を受けております。
  135. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういうことをしないようにと言って指導したんですね。
  136. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) はい。
  137. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 わかりました。  それでは、これは最後の質問ですが、最後に、通産省は監督官庁としてどのような責任をこの問題でとるのか。この問題の処理に対する通産省の対応は、問題を根本的に解決するのではなしに、臭い物にはふたをするようなやり方をこれまでしてきている。たとえば現地調査にしましても、現地、地元から要請が来ても、なかなか腰を上げない。やっと行ったかと思えば、短時間業者の話を聞いただけで帰ってくる。しかも不正事件の調査についても、現地の人々が調べてはっきりしたものを提出すると、それだけしか調査せずに、ほかに不正の疑いのあるものについてはみずから積極的に調査する体制をとっていない。こんな状態では、通産省は不正を起こした役員と癒着しておると言われても、私は仕方がないと思うのです。徹底的に調査をしてその結果を文書で詳細に報告してもらいたいと思いますが、約束していただきたい。  それから、質問を終わるに当たりまして、別の問題で大臣の考えを一つ聞いておきたいと思うんですが、この不況の中で借入金の返済について再延長してほしいという要望が、毎日、何回と地方から電話でやってまいりますが、政府系金融機関の融資については、これを認めるよう各地の支店、支所に徹底してほしいと思いますが、大臣、約束していただけますか、どうですか。
  138. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 借入金の返済期限が来たけれども返せない、返済猶予をしてもらいたい、こういう場合にはケース・バイ・ケースで十分実情を聞いて御相談に乗るようにと、こういう指示は政府系の三機関に対して何回かいたしております。でありますから、改めてそういう通達を出すのはいかがかと思いますので、今後は実情の調査と、そういう形でどの程度その返済猶予が実行されておるかどうか、そういう形で調べてみまして、なお不十分であるということであれば、改めて指示をしたいと思います。
  139. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 今回のような事件が起きましたことは、私どもとしてもまことに残念、遺憾至極に存じている次第でございます。  今後はこういうことがないように、先ほどから申しておりますように、責任を明らかにすると同時に、事務処理体制を確立いたしまして、こういうことがないように、努めて厳格に各組合を指導してまいりたいと思っております。ほかの組合等にはこういうことは万ないとは思うわけでございますけれども、私ども、そういうことのないように、立入検査あるいはサンプル調査等でその調査をやっていくつもりでございます。
  140. 安武洋子

    ○安武洋子君 四十九年の九月に鉄鋼長期需給見通し、これが発表されておりますけれども、これは現在も生きているかどうかをお伺いいたします。
  141. 石井賢吾

    説明員(石井賢吾君) 現在、先生御指摘のように、四十九年の九月が最後の設備調整認可の時期でございますので、それ以後改めて公的な中期需給見通しを策定しておりません。
  142. 安武洋子

    ○安武洋子君 ことしの所要高炉銑はどの程度になるか、その見通しをおっしゃってください。
  143. 石井賢吾

    説明員(石井賢吾君) 今年度につきましては、まだ来年一−三月につきまして十分な詰めが終わっておりませんので、現在のところ確たることは申し上げられませんが、上期だけの実績に即して申し上げますと、上期合計で約四千四百万トン弱でございます。
  144. 安武洋子

    ○安武洋子君 いや、本年度はどの程度になるかと見通しをお伺いしておりますので、見通しでお答えください。
  145. 石井賢吾

    説明員(石井賢吾君) いま申し上げましたように、上期が約四千四百万トン弱といたしまして、これがこのまま下期につながるといたした場合には、約八千六百万トン強ということになろうかと思います。
  146. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、この発表されております鉄鋼長期需給見通し、これによりますと、五十年度の所要高炉銑は九千七百九十万トン、こう見込まれておりまして、五%アップした場合もこれは見込まれておるわけですけれども、これで一億二百八十万トン、こういう数字が出ております。そして高炉銑の過不足として、標準的見通しならプラス四十万トン、五%アップなら四百五十万トンの不足、こう見込まれているわけです。さらに五十三年には一千万トン、五%アップなら千六百万トンの不足が生じる、こういうふうに見込まれております。これを前提として、川鉄の千葉の六号高炉、それから住友金属の三号高炉、それから神鋼の三号高炉、この高炉建設が承認されていると思いますけれども、この点間違いないかどうかをお伺いいたします。
  147. 石井賢吾

    説明員(石井賢吾君) 間違いございません。先生御指摘のとおりです。
  148. 安武洋子

    ○安武洋子君 ではお伺いいたしますけれど、ことしは不足どころか、この標準的見通しを立てておられますけれども、これに対して三千万トン前後も超過する見通しだと思うんです。いま新日鉄を初め一斉に減産体制の強化をしておりますし、戦後初めての減産を目標とした高炉の休止まで行っているわけです。これは値上げへの環境づくりの意図ということも明白ですけれども、しかしそれにしても、これほど需要の見通しに誤差が出ているというふうなことで、三割から四割の減産のもとで、高炉建設について私は振り出しに戻るべきでないか、それが当然だというふうに思うわけです。通産省自体も十一月の十日に、第三・四半期の粗鋼生産の見通しこれを大幅に圧縮修正をされて、鉄鋼業界に対して再検討を求めておられる、こういうような状況もあります。ですから、基礎数字が狂ったわけですから、私は高炉建設についてもこれは当然再検討をすべきだ、こういうふうに思いますけれども、大臣いかがお考えでございましょう。
  149. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 鉄鋼の生産は、昨年度は約一億二千万トン、粗鋼生産で。一億二千万トンを二、三百万トン切っておりますけれども、ほぼ一億二千万トン近い水準でございましたけれども、ことしは一億トンを若干割る、こういうことで、昨年に比べまして二割以上の減産というふうに想定をいたしております。  ただしかし、鉄鋼の長期の見通しによりますと、なお現在の能力でも不足するということで、御案内のように、来年の末または再来年の春完成を目標といたしまして、幾つかの新しい高炉をいま建設をしておるわけでございます。いまは世界的に不況でございまして、経済もいまどん底である、こういう非常に深刻な景気の落ち込みの状態でございまして、こういう状態は長く続いてはいけませんし、私どもも全力を挙げてこういう深刻な不況、減産の状態から抜け出したいということで、一生懸命努力を払っておるわけでございます。  そこで、長期的に見ました場合には、なお現在の日本の粗鋼生産設備、製鉄設備というものは不足をしておる、したがいまして、現在の計画は予定どおりやはり進めていった方がよろしい。そうしませんと、不況になったからといって生産が減った、またその設備の計画をやめてしまう。好況になったからといってあわてて設備の増強を始めましても、やはり三年も四年もかかるわけでございますから、そうすると経済計画が混乱してしまいまして、思うような経済の伸長もできない、こういうことでございますから、いまののは、一時的な非常に深刻な不況の状況ということからいまおっしゃったような数字が出ておるわけでございますから、これを変更する計画はございません。
  150. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは長期見通しでお出しになっているわけですね。去年不況でなかったか、去年だって不況なわけです。この中で長期見通しをお出しになってわずか一年、一年の間にわずかの数字の狂いなら、いまおっしゃったようなことも通るかもわかりません。しかし、三、四割もの減産体制に入っているというふうな中で、この基礎数字がかくも狂っている中で検討された高炉の建設というものについては、これはあらためて再検討すべきでないか、私はこれが筋だと思いますけれども、重ねて伺います。
  151. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 去年も不況ではあったと私も思います。であればこそ、おととしと比べましてほとんど生産も増加してないわけでございますが、その不況のさなかにおいてすら一億二千万トンという数字があったわけです。ところが、ことしは国内の不況だけではなくして、世界的な不況の影響を受けまして輸出も昨年に比べまして三割以上も減っておる、こういうことから一億二千万トン近い生産の数字が一億トンを割っておる、こういう非常な深刻な状態に落ち込んでおるわけでございます。したがいまして、こういう状態が永続するとは思いません。私どもは来年の後半からは鉄鋼の生産も相当大幅にふえるのではないか、こういう考え方も持っておるわけでございます。したがいまして、やはり長期の経済計画を考えますと、どうしてもいま程度の計画は予定どおりつくらないことには、日本経済の順調な伸びということはむずかしくなる、予定どおり計画を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  152. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は非常に無責任なお答えだと思います。これを長期見通しと年度ごとにお出しになっているわけです。一年目でかくも大きな数字の誤差を出しておきながら、将来についてはこれでいくんだ、これが正しいんだ、こういう見通しを持っていると言っても、それは説得力ありません。やっぱしいま、お出しになってかくも大きな狂いを生じたということになれば、私は再検討なさるのが当然の筋だと思います。そうして、これを基礎にして神戸製鋼の高炉の建設も許可をされているわけですけれども、神戸製鋼自体だって、五カ月を早めて十一月の初めに神戸の一号炉をとめて巻きかえに入っている、こういう時期なんです。こういう時期になぜ急いで高炉建設をしなければならないのか、なぜ再検討がおできにならないのか、私はこういう点非常に疑問に思いますけれども、どうお考えなんでしょう。
  153. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 何回も申し上げるようですけれども、昨年の不況のときでも一億二千万トンという生産があったわけですね。それがことしは世界的な大不況という影響も重なりまして一億トンを割っておる、こういう一時的な現象なんです。たとえば貿易のごときも、ことしの初めには輸出貿易が六百八十億ドルというふうに想定をしておりましたけれども、これがやはり二割近く落ち込む、こういうことになりましたので、要するに世界経済が非常な不況に入っておるということが理由になっているわけでございます。  しかし、世界経済といたしましても、アメリカの経済中心としてだんだんと回復の過程にありますししますから、いまの状態が私は正常な姿ではない。いまはもう一時的な不況の状態が続いておる、こう思いますので、一時的に生産が減ったからといって長期の生産計画そのものを根本的にやり変える、こういうことは考えておりません。それよりも、いま政府の方で新しい五カ年計画を作成中でもございますが、それが来春にはほぼでき上がる予定をしておりますが、そういう新しい五カ年計画がこれまでの計画と非常に大きく違ってきた、こういうことでもあれば話は別でありますが、しかし、いずれにいたしましても、世界全体の鉄鋼の需給関係を将来にわたって見通しをいたしますと、日本としても現在進めておる程度の新しい設備の増強計画というのはどうしても必要である、ぜひともこれはやり上げたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  154. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまの大臣の御答弁は、いかに通産省として不的確な見通しをお持ちで、甘い見通しをされているかということの私は御答弁だと思うのです。わずかの数字の狂いじゃないということを再三申し上げておりますけれども、それでもなおそういうふうに御答弁なさるということは、見通しについて余りに見通しが悪過ぎるということで、ここは具体的に問題を移してまいりますけれども、具体的に神戸の加古川の第三高炉について、これは地元のコンセンサスが得られているというふうに認識をお持ちでございましょうか、お伺いいたします。
  155. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま地元では、この建設問題につきまして兵庫県の加古川市が中心になりましていろいろ最終の詰めをやっておるようでございます。
  156. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、通産省としてこの地元というカテゴリーですね、これをどうお考えか、ここの点ちょっと明確にしてください。
  157. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) 立地公害の観点からお答え申し上げさしていただきますが、私ども、実際の権限は市が一応直接持っておりまして、県がその審査をし、許可をする権限を持っておられますので、市及び県を指さすものと考えております。
  158. 安武洋子

    ○安武洋子君 県はわかりました。  市ですが、市というのはその工場があるその市だけという意味ですか。そうとっていいわけですか。通産省の地元というカテゴリーです。
  159. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) その当該市の行政にかかわる部分と心得ております。
  160. 安武洋子

    ○安武洋子君 念のためもう一度お伺いいたしますが、被害を及ぼす市町村全域というふうには、おたくの方で地元というカテゴリーはとらまえていらっしゃらないのですね。
  161. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) その点は、関係市町村ということで事実上協議が行われ、関係のある市町村の間で相談が行われ、県がそれを包摂しております場合には、県の方で権限を持っておりますのでそこで処理されるものと心得ております。
  162. 安武洋子

    ○安武洋子君 ちょっとあいまいです。いま工場のある市だけがというふうにおっしゃいましたけれども、被害を及ぼす全域の市町村じゃないんですかということで念のためにお伺いしているんです。どちらなんですか。
  163. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) 地元の判断でございますので、それは権限のある加古川市がお決めになることだと考えております。
  164. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ加古川市だけですね、通産省が地元とお考えの……。
  165. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) 権限のございますのは加古川市と考えております。
  166. 安武洋子

    ○安武洋子君 権限なんて聞いてない。地元というカテゴリーを聞いているわけです。ですからもっと端的にお答えください。
  167. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) 加古川市だと存じます。
  168. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、いま加古川の第三高炉をめぐって、この加古川市で、市の周辺ですね、こういう高炉建設をめぐって地元ではどういうふうな状態になっているかというのを端的にちょっとお知らせください。
  169. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) 第三高炉をめぐる問題につきまして地元の、特に漁業問題に対して影響があるということで、いろいろ議論が行われておるというふうに理解いたしております。
  170. 安武洋子

    ○安武洋子君 そんな御理解だけでは困るわけで、加古川の市議会の中での公害特別委員会の開催をめぐって、わが党の木戸議員が推進派の暴力集団によって暴行を受けて、五日間の治療を要するというふうな状態にあります。これは、推進派の背後には神戸製鋼があるんじゃないかといううわさがたつぐらい、町ではこういうことが言われているわけですし、また、特に県議会の中では、県当局すらも現在のアセスメントというのは十分でないというふうなことも言っております。このアセスメント自体が神戸製鋼でつくったもんですね。ですから、該当する企業がつくったアセスメント、これでは私はコンセンサスもアセスメントもずいぶんと不十分だというふうに思いますけど、こういう状態の中で地元のコンセンサスが得られるというふうに通産省は御判断なさいますでしょうか。
  171. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) 環境問題が非常に重要な要因でございますので、市及び県におきましては当然事前調査をやる必要がございます。それで事前調査をやらせるのに当たりまして、先生いま御指摘のように、神戸製鋼に対して水質及び大気についてアセスメントを行わせたわけでございますが、その結果に基づいて判断をされるのは県であり、市であると存じておる次第でございます。
  172. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、加古川市のい三二号高炉が建設されているだけで、亜硫酸ガスが国の基準の〇・〇四ppmを上回って加古川では〇・〇四三ppmです。それから窒素酸化物、これが〇・二ppmが国の基準ですけれども、加古川の場合は〇・〇五九ppm。それで小学校の入学児童ですね、この気管支ぜんそくが全体の二・八%を占めている。ぜんそく性気管支炎を含めると一五%もの児童がこういう大気汚染で苦しんでいるというふうなことがありますし、二号高炉が火入れが行われてから光化学スモッグ、これは十数回発令されている、こういう問題もあります。それから大量の工場排水によって、これはいままで赤潮を発生させて徳島の漁民から赤潮訴訟が提訴されているんです。そうすれば、この海の底がどういうふうに汚染されているか、こういう調査もちろん必要なんですね。それから水産資源調査、これも必要なんですよ。だけど、こういうことは全然行われていない、こういう点についてアセスメント不十分だ、しかも企業がやっているという点については、これはどうだというふうにお伺いしたいんですけれども、御答弁お願いいたします。
  173. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) いろいろ問題のあることは存じておるわけでございますが、どのようなアセスメントをやり、どのように評価されるということは、その認可の権限を持っておられます県の方で御判断されておることだと存じておりますので、私どもの具体的な意見は差し控えさしていただきたいと思います。
  174. 安武洋子

    ○安武洋子君 通産大臣は諮問機関をお持ちでございますね。産構審の鉄鋼部会のこういう答申をごらんになっていらっしゃると私は思うんです。この産業構造審議会の鉄鋼部会の答申ですら、これは「一九七〇年代の鉄鋼業およびその施策のあり方」、こういう答申の中の部分ですけれども、この「七〇年代の鉄鋼業が解決しなければならない最大の問題は、環境汚染問題」だという書き出しで始まっているわけですね。そしてさらに新規立地の問題についてもここで心しなければならないのは、「複合汚染を生じないような工場配置およびエコロジー的配慮に基づく自然環境の創造を図ること」、こういうことを言っておりますし、それから「当該地域の住民感情や世論の動向に応えること」、また、「当該地域に対する望ましい開発効果を実現すること」と、こういう「三点に十分な配慮を払うことにより」「地域社会との調和ある発展に寄与すること」というふうになっているわけです。環境保全については最大の英知を発揮することを求めているわけです。これは大臣の諮問機関だと思いますけれども、この答申はどういうふうになるんでしょう。尊重されるというふうなお気持ち全然ないわけですか。
  175. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 産業構造審議会鉄鋼部会のお話だと思いますが、加古川の高炉三号もこの審議会の答申を得て着工も承認されたわけでございまして、お話のように、こういうふうに高炉の建設の場合には、公害対策ということも十分考えなければならぬということになっておるわけです。しかし、実際にこれをどう具体的に取り扱い、どういう基準でこれを許可し、指導するかということは、当該の県及び市が責任を持ってやられる、こういうことになっておるわけですね。いまお話しのように、加古川の場合も、兵庫県と加古川市がそれぞれ責任を持ってやっておられるわけでございますが、御承知のように、五十年の六月に加古川市長から神戸製鋼に対して、市及び県当局の公害防止協定案の提示がありまして、同時に市議会議長に審議の要請がなされたのがことしの六月でございます。   〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕 それから、以来九回にわたりまして市議会の公害対策の特別委員会でずっと審議をしてきておるわけです。でありますから、地元としては非常に慎重に十分検討しておられるんだと、こういうふうに理解をしております。
  176. 安武洋子

    ○安武洋子君 私先ほど申し上げました、この公害特別委員会で、わが党の議員が推進派の暴力をふるう人たちによって五日間の加療をしなければならないという暴力を受けた。それがなぜ十分に審議をして民主的に開かれているというふうなことになるんでしょう。なぜ暴力がふるわれるようなことが行われなければならないかというふうなことがあるし、それから、私はいまどれだけ公害がひどいかということを数字を挙げてお話をした、そしてアセスメントが抜けている、海の状態についてもそういうことが全然なされていない、こういうことを申し上げたんです。ですから、権限は通産省にはありませんというお返事ですけれども、行政指導の責任はもちろん通産省にあるわけで、こういうふうに産業構造審議会の答申に全く沿わないような状態が現実にあるということについて、通産省としてはどう行政指導をなさるかというところを明確にしていただきとうございます。
  177. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そこで、この六月以降九回の特別委員会審議が慎重に行われて、つい先ごろ十回目の委員会で、いまお話しのように若干のトラブルがあったと、こういうふうに聞いております、大変遺憾であったと思いますが。トラブルは十回目にあったんですけれども、しかし、通産省の方といたしましても公害問題は非常に大事な問題である、こういう理解をしておりますので、地元の方でもそういう理解に従って公害問題を非常に重大に考えておられる、そこで何回も何回もたくさんの委員が集まって議論をしてこられた、こういうことでございまして、決して地元で公害問題を軽視しておられると、そういうことは毛頭ないと思います。
  178. 安武洋子

    ○安武洋子君 地元から公開質問状とか、そういうふうなものが再三出ているにもかかわらず、そういうものに対しても返事もしないというふうな問題だってあるわけなんです。ですから、いまのは一方的な認識で、私は実情の調査をなさるべきではなかろうかというふうに思うわけです。地元では決していま大臣の言われるような平穏無事な形で三号高炉の建設はいいですよというふうにはなっていないわけです。しかも、この三号高炉というのは四千五百立方メートル、世界最大級の高炉なんですね。ですから、二号高炉ができただけでも加古川は大変な状態になっている。ここに三号高炉を設置するということについては、これはやっぱり最大限の注意を払わなければならない問題なんです。いま工場立地法というのがつくられておりますけれども、この地域指定というのは現在まで一件も行われていない、私はこういうふうに思うんですけれども、すでに法律改正されて二年になろうかと思うんです。これは一件も行われていないということはどうでしょう、間違いありませんか。
  179. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) 御指摘のとおり、四十八年に工場立地法の法改正が行われまして、その第六条第一項に、産業公害総合事前調査に基づきまして、特に配慮する必要がある場合には、通商産業大臣にその地区の指定がありました後届け出るような規定になっております。まだ指定は行われておりません。   〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕
  180. 安武洋子

    ○安武洋子君 これね、二年たってもそういう該当地域が通産省としては、ないとお考えなのかどうかというのが一つなんです。しかもこれは、加古川のような既存の工場過密地帯にはこの法が適用されないということがあるわけですね。しかし、先ほど私が申し上げたように、これは大変な、高炉たった一つというような問題でなくって、大きな影響を地域に与える。しかも加古川だけでなくって、これは与えるのは瀬戸内海というこの大変な地域、それと加古川だけでなくって、高砂市、それから播磨町、それから稲美町、こういう三つの町ですね、それと二つの市、ここが全部影響をこうむるわけなんです。こういう法の適用が除外されるというのは、私はやっぱりこの工場立地法が不備だというふうに思います。で、この法の私は改正は必要だろうと思いますけれども、さしあたってこういうことがいますぐにはできませんから、少なくとも通産省としては産構審の答申のこの趣旨を尊重して環境保全のために強力な行政指導を行うべきだ、こういうふうに私は思いますけれども、これ、いかがでございましょう。
  181. 宮本四郎

    政府委員(宮本四郎君) 先生御案内のように、確かに法律上規定はできたわけでございますが、地区の指定を考えます背景になっております考え方は、これは第二条の第四項に「公害の防止に関する調査は、大規模な工場又は事業場の設置が集中して行なわれる」ことにより云々という思想が背景にございまして、現在この地区に対しましては直ちに要件を満たしておるかどうか、私どもこの法律改正されましたときの経緯を踏まえますと、直ちには満たしているとは言いがたいと思うわけでございます。ただ、後段の、しからばいまのような状況でアセスメントもしないでいいのか、こういう点に関しましては私どもも、行政上の問題としてはやはり十分な環境に与えるところの調査を行って、通産省は通産省としての態度をあらわすべきであるという感じは持っておりますので、別途このような個別の問題につきましてもアセスメントが必要な場合があるので、それを私ども調査をしたいんだけれども、いろいろ関係省庁、自治体と関係が深うございますので、そういう話し合いを一般的にさしていただいておる状況でございます。
  182. 安武洋子

    ○安武洋子君 伺いますけれども、大臣、地元住民のこのコンセンサスを得る、同意を得るということが私はこういう場合には何よりも必要かと思うんですけれども、その点大臣いかがですか。
  183. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そこで、こういう場合には県であるとか市が中心になっていろいろ十分な公害対策が行われるように指導されるわけですね。そしていろんな手続を経た結果、その工場の存在する市におきまして最終的にこれを検討される、こういう手順に私はなるのではないかと思います。そこで、まあ加古川の場合はいま最終段階として市議会でいろいろ検討しておられる、こういうことだと思います。
  184. 安武洋子

    ○安武洋子君 だから私申し上げているんですけれども、地元というのを加古川だけだと。だけども、瀬戸内海一帯に大きな汚染を起こして、徳島の漁民からも赤潮訴訟を起こされるというふうな被害を与えている。しかも高砂、そして播磨もありますしね、稲美町もあるというふうに、付近全体に、そして明石の漁民にだって大きな被害が出る、ノリ被害が出るというふうなことが憂慮されているんです。そこのところで加古川市だけが、しかもその加古川市の中で暴力ざたまで起こらなければならない、こんなような状態の中で、こういう手順だけでスムーズにものごとが運ぶとお考えでございましょうか。
  185. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そこで、この場合の手続として、先ほど局長が答弁をしたわけでございますが、工場立地法第二条第四項では、加古川が責任を持ってこの問題を処理する、こういうことになっておるわけですね。周辺全部がこれに関係して処理する、こういうことではなくして、加古川が一応責任を持ってこの問題を処理する、こういうことになっておるわけでございますが、先ほどもお話しいたしましたように第十回目の公害対策特別委員会におきまして、若干のトラブルがあったということは大変遺憾に思います。そこで、せっかくここまで話し合いをしてこられたわけでございますから、どうかひとつ、一刻も早く円満にこの問題が地元で処理されることを強く期待しておるわけでございます。
  186. 安武洋子

    ○安武洋子君 明石の住民だって大きな被害を受けるということを申し上げたわけですね。明石の住民はじゃどこにこう反映すればいいわけですか。そして、播磨町だってそう、高砂の住民だってそうなんです。その住民には何の相談もないわけなんですね。住民の意向を十分に尊重するというのがたてまえじゃないですか。被害を受けるのはそこに居住している住民なんですから、現にそこの学校に通っている子供たちが小児ぜんそくになるというふうな問題、それから、農業の方はネギが先枯れをするというふうな被害も受けておられるわけです。何も加古川に住んでいる人たちだけでない。加古川が行政機関を通じて云々、そんなことでなくて、住民もたくさんいろんな組織を持っております。そういう住民の声も十分に聞くべきでないかどうか、通産省の御意見を伺います。
  187. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そこで、お話のように、加古川の周辺の一部の方々は自分たちも関係があるんだ、そういうことを言い出されまして、いまその問題をどう処理するか、県の方でいろいろ考えておる、こういうふうに聞いております。県の方の処理の仕方をもう少し見守っていきたい、こう思います。
  188. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、県の考えがまとまるまで需給見通し、そういうふうな関係もありますし、それから環境保全の問題もある、住民のいまの状態もあるというふうなことで、何も強行していま急いでやるべきではないと思うんです。私はこういう点で、急いでやるべきでないというふうなことを通産省としては会社に言われるべきだと思います。この点を私は要求いたします。  そして、もう時間が迫っておりますので、一つ大きな問題だと思うことは、申し上げますけれども、この鉄鋼部会の構成、これは大変なメンバーなんですね。これは部会はもちろんのこと、需要分科会です。これを見てみますと、委員長は川崎製鉄調査部長です。ほか一名、これは調査部の副部長さんが入っていらっしゃる。そのほか十一名ですね。その委員さんたちは新日本製鉄から三人、いずれも課長です。それから日本鋼管、これは市場調査部の課長ですね。それから住友金属調査部長ほかです。それから神戸製鉄所の管理部の鉄鋼調査課長、それから大同製鋼それから日新製鋼と、いずれも大手企業の七社です。その中で新日鉄三人。  それから環境分科会ですね、これは二十四人おります。これがまた新日鉄が三名ですね。工作本部長ほか二名です。それから日本鋼管が環境管理部長ほか三名。川崎製鉄が設備計画部長ほか三名。それから住友金属東京総務部長ほか五名。神戸製鋼環境技術本部担当部長ほか一名。それから日新製鋼、大同製鋼、大谷重工、中山鋼業、企業の代表ばっかりですね。  それから立地分科会、これは新日本製鉄二名と住友金属一名、いずれも役職。  こういう中で、住民に直接関係のある先ほどのような高炉の建設の問題が審議をされるというのはこれは大変なことだ。企業代表ばかりでこういう問題をなぜ討議するのか、ここに住民代表を加えるなり学者を加えるなりして、私はこのメンバーを再検討されるべきだ、こういうふうに思いますけれど、大臣はいかがお考えでございますか。
  189. 石井賢吾

    説明員(石井賢吾君) ただいま先生御指摘のメンバーは、七〇年代の鉄鋼業の答申作成のための臨時的委員でございまして、通常設備調整等を行います鉄鋼部会の本委員は、学識経験者及び産業界から出ております。
  190. 安武洋子

    ○安武洋子君 それもお名前は学者がほんのわずかで、企業代表がほとんどでございますでしょう。ほとんどが企業代表だ。私はこういう企業代表ばかりというふうなことでなくて、もっと住民代表も加えて、民主的な運営ができるように検討すべきだ、こういうことを思いますが、その点いかがでございますか、重ねて伺います。
  191. 石井賢吾

    説明員(石井賢吾君) 鉄鋼業に関しましては、きわめて鉄鋼業特有の技術問題あるいは資金問題、非常に広範な分野にわたりまして高度の学識経験を必要とするところが多うございます。そういう関係から鉄鋼業のあり方等を検討いたします場合には、そういう現実の実態をよく把握した方方の意見をまず吸収し、その上で中立委員見解を徴しまして、そういう実態から生じてまいりますいろいろな意見をろ過いたしまして地方行政に反映する、そういう仕組みをとっておるわけでございます。
  192. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 時間が来ました。
  193. 安武洋子

    ○安武洋子君 はい。最後にじゃ一問伺いますけれども、環境分科会、住民に直接関係あるじゃありませんか。こういう環境問題だって討議をしなければならないというふうに思います。高炉なんか建設する場合に、だから私はこういうところに住民の声を反映するように、もっと民主的に検討すべきだ、こういうことを要求申し上げて、質問を終わります。
  194. 藤井恒男

    藤井恒男君 まず、大臣にお伺いいたします。  景気対策に関する問題でございますが、先ほど来の委員会で二、三の方からこの問題について触れられておるところでございますが、重ねて大臣にお伺いいたします。  昨日、全国の通産局長会議を開催なさっておるわけでございますが、報道によりますと、それぞれの地域における景気の動向については、先行きに対して見通しが立たないという報告がなされているように聞いております。つまり景気の現状というのは、四次にわたる不況対策を行ったものの、回復がはかばかしくない。そのことは鉱工業生産指数あるいは需要の動向、在庫の動きあるいは設備投資、倒産、貿易あるいは雇用の問題などを見ても、これらのすべてのデータが先行きをさらに暗くしておるように判断されるわけでございまして、倒産件数を一つとってみましても、十月の倒産件数が千二百七十九件、十一月が千三百十七件、これはまさに戦後最高を毎月更新しておるという大変憂慮すべき事態になっております。繊維産業の例をとってみましても、八月以降十一月までの間、倒産件数は累増いたしております。この傾向をたどっていきますと、まさに年末の倒産多発は必至でありまして、さらに一−三月における倒産ということも多発されるように見受けられるわけです。  午前中の会議で副総理は、第五次不況対策というものはいまの時点で考えられない。これは通産大臣御自身も時間的余裕がない、金融問題でカバーする以外にないというふうに言われ、さらに、五十一年度予算そのものが景気回復予算になるべきものであるというふうに言われるわけでございますが、第四次不況対策それ自体が現在効を奏していないし、五十一年度予算執行までの間のブランクの期間を、手をこまねいていてかまわないのかどうか、この辺のところをもう少し突っ込んで大臣の景気の現状並びに見通しについて、あるいはこれからの打つべき施策について総括的な御意見を承りたいと思います。
  195. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 景気の問題につきましては、いまお述べになりましたとおりでございます。  この春を一番の底といたしまして、比較的この秋までは順調に回復するのではないか、こういうふうに考えておったわけでございますが、最近になりましてからどうもいろんな指標が一進一退を続けておりまして、足踏み状態になってきた。これはいまお話しのとおりでございまして、昨日通産省で調べました各地の動向、業種別の動向等におきましてもそういう数字が出ております。  そこで、これからの対策でありますが、第四次対策が九月の十七日に決定をされまして、そして、財投で実施することのできる分野につきましては直ちに実施したわけでございますが、一般会計から支出を必要とするものにつきましては、国会で関係の法律案等を御審議をしていただいておりますので、なお実施に至ってない、こういうこと等もありまして、私たちは、第四次対策そのものは一刻も早く完全に実施されるということを強く期待をしておるわけでございます。それと、それからこの年末等も控えておりますし、景気の動向がはかばかしくありませんので、地域別、業種別に必要な緊急の金融対策はやはり講じていかなければならぬ、こういうふうに考えております。  それから同時に、貿易の分野ではプラント輸出を大幅に伸ばしたい、こういうふうに考えまして、この面でいろいろ努力をいたしておるわけでございまして、もしこの分野で輸出入銀行等の資金が不足をするという場合には、これも当然臨時に追加をしなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、産業金融と貿易金融、この分野で臨機応変の弾力的な対策を三月までは続けたい、そうして、一刻も早く景気対策内容といたします昭和五十一年度の予算が成立をいたしましてそれが実施に移される、そういうふうに期待をしておるわけでございます。  スケジュールといたしましては、第五次対策、いま申し上げましたような第四次がまだ一部実施過程にある、こういうことを考えますと、第五次をやる時間的な余裕もありませんし、いま申し上げましたような金融対策で何とか補強していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  196. 藤井恒男

    藤井恒男君 財政を主導にして金融を従とする形でこの難局を切り抜けたいというのが大方のお考えのようですが、実際問題として需要創出効果を求めなければ経済の立ち直りはないというのが、これはもう偽らざる事実であろうと思うんです。第四次不況対策財政が全部功を奏しても、需要創出効果は多く見ても三兆円程度だと、需給ギャップそれ自体は十八兆円とも二十兆円とも言われておる状況の中ですから、そういった中で民間の設備投資を刺激するということも、操業率それ自体が八十数%なんだから、これはもうとてもじゃない、できっこない。輸出それ自体も、仮にかなり進んだとしても、全体のやっぱり一七、八%じゃないでしょうか。そうだとすれば、需要に占めるウエートは何といったって個人消費が過半数を占めておるわけですから、もっとこれをドラスチックな形で喚起する方法を講ずべきである。  政府の立場からは常に、減税は行わないということを言っておるわけだけど、産業界を預かる通産省の立場として、現在の冷え切った需要というものを立て直そうとすれば、やはりこの辺のところを刺激して何らかの形で方向性を見出さなければ、経済が失速してしまうというふうに私は思うわけです。アメリカなどにおいても、やはり一番先に手がけたのがこの減税の措置でございまして、通産省の事務次官などもややそれに類するような御発言をしておることを私も間接的に間々承っておるわけです。したがって、そういった面、経済閣僚協議会のメンバーということよりも、通産当局としてこの問題を現実的にとらえてどうするのかということをもう一度聞きたいと思います。
  197. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いろいろ景気を浮揚させるための財政、貿易、民間設備投資等についてのお話がございましたが、大体おっしゃったとおりであると思います。特に国民消費は国民経済全体の半分近くも占めておりますし、これがある程度伸びるか伸びないかによりまして景気の動向が大きく変わってくるわけです。でありますから私たちは、国民消費がある程度伸びるということを強く期待をしておるわけです。  しからば、それにはどういう対策が一番いいのかということが問題になるわけでございますが、これにはいろいろ方法があろうかと思います。しかし、やはり最終的には、国全体の財政運営を一体どうするのか、国民経済全体の運営を一体どうするのか、こういう総合的な判断によって最終判断が下さるべきであって、その方向がもう十日もたたない間に決まる、こういういまの段階でございますから、私から、国民消費を伸ばすための具体的な方法はこういうふうにすれば一番いいんだというようなことについていま申し上げるのは適当でないと思いますので、ちょっと答弁は差し控えさしていただきたいと思います。
  198. 藤井恒男

    藤井恒男君 昨日あるいはきょうの新聞で、拘束預金問題が大きく取り扱われておるわけです。いわゆる歩積み両建ての問題でございますが、日経の調査を見てみますと、連続四期減益という深刻な企業業績に陥っておる中で、企業の金利負担の重圧が一段と深まっておる。日経の調査によりますと、東京証券の一部上場百社の調査によるものではございますが、拘束預金が二兆三千五百億円、こういうべらぼうな数字になっておるわけです。期末の現金預金残高の五六・七%に当たるこのいま申しました二兆三千五百億に及ぶ金、これは企業の借入金や手形割引高の一一・九%、実に資本金の七八・六%になる。つまるところ資本金の八割の資金が企業にとっては自由にならない金である、眠っておるということになっておるわけでございまして、仮にこれを借入金の返済に回した場合には二千二百億円近い支払い金利が減少する。企業が営業活動によって得た利益だけでは金利の支払いすら賄えないほど企業の体力が衰弱しておる。  こういった、拘束預金が企業の財務体質の悪化をますます増しておるという実情について、これはもうしばしば国会でも論議されるところなんでございますが、通産省の立場としてこの問題をどう見ていくのか。こういうふうに過大な、どちらかと言えば公取の問題にもかかわるわけですが、まあ広義の解釈になるかもわからないけれど、優越的な地位を利用した不公正取引ということにもなりかねない状況にあるわけでございまして、通産省としてこの状態を見たときに、私は異常な状態だと思うんだけれど、どのように感ずるか、またどのようなアクションを起こすべきか、大臣にお聞きしておきたいと思います。
  199. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 景気対策の非常に重要な一環といたしまして低金利政策を推進しておるわけでございます。そのために公定歩合を四回にわたりまして引き下げたわけでございますが、実際は政府の期待しておるように低金利政策は進んでいないということも事実でございます。  その一つの大きな原因に、この拘束預金があるということも事実だと思います。大変遺憾なことだと思いますが、大蔵省の方におかれましても、非常にこの問題を重視されまして、常に調査をしておられるようでございますが、こういう問題が一刻も早く解消することを期待をいたしておるわけでございます。これは産業界にとって非常に大きな問題であろう、こう思います。
  200. 藤井恒男

    藤井恒男君 日本企業が総体的に重い金利負担の中にあるということは、もう公知の事実でございますが、そういった中で、さらに過大な預金を日本企業が持っておるという状況でございまして、これからの国際競争力というような問題に照らしても、私はもう少し通産当局として、大蔵省に対する強い姿勢でアクションを起こさなければならない問題じゃないかと思います。前段の景気の浮揚策についても、先ほどの大臣の御答弁の範囲では、これはとてもじゃない、年末年始を越せないぞということになりかねない。五十一年度予算があと十日もすれば決まるというふうにおっしゃるけれども、現実に、第四次不況対策それ自体が完全に始動していない状況の中で、求人倍率はさらに悪化するし、なお企業倒産は戦後最高を月々記録しておる。こういう状況の中ですから、後手後手の政策に回ることなく、前向きに行動を起こすべきだと。特に所得減税というような考え方もこの際は十分考えなきゃならない。そうしなければ、五二、三%を占める個人消費を刺激しないことには、景気浮揚の道につながらないというふうに思いますので、その辺のところをよろしく御検討いただきたいと思います。  時間がありませんから、繊維の問題に入りますが、最初に国際関係。  いろいろわが国と外国との間に繊維の交渉が持たれておるわけですが、いま懸案になっております日本とECにおける繊維交渉の、現在行われておる交渉の推移と見通しなどについて最初にお伺いいたします。
  201. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 現在、ブラッセルにおきまして、日本とECとの繊維協定の最終的な討議が行われております。御存じのように、ガット繊維取り決めができましてから、各国ごとの取り決めはこれをMFAに基づく取り決めにしなければいけないわけでございまして、そういうことで、先日、日米が終わり、ただいまECとの交渉に当たっているわけでございます。  ECは御存じのように、対日差別の輸入制限を長い間にわたって実施してきたわけでございます。それに対しまして、日本といたしましては、繊維貿易の自由化を目指しまして、年来ECに対しましても主張をしてきたわけでございまして、ことしになりましてからも、四回開いているわけでございます。四回の会合を通じまして、大分双方の対立点も煮詰まってきておるわけでございます。  当方は、日本は強く自由化を迫っているわけでECとの繊維貿易の現状から申しまして、EC側が厳しい制限を残す理由というものは、なかなか主張しにくくなっている立場はECも認めているわけでございますけれども、何分十数年あるいは二十年にわたる輸入制限というものを一挙に撤廃することにつきましては、やはり何と申しましても、ヨーロッパの繊維業界の中に経済的な支障あるいはさらに社会的な、もっと言えば心理的な不安というものもあるので、そういうことに対しましても一挙に自由化はできない、最小必要限度の規制というものはやはり存続すべきであるというようなことを主張しているわけでございます。  いずれにいたしましても、今週末ぐらいには妥結に持ち込みたいと考えているわけでございまして、双方の対立点も大分煮詰まってまいりました。ただいまのところは、要は数品目についての対日規制の枠を残すか残さないかというようなところになっているというふうに聞いている次第でございます。
  202. 藤井恒男

    藤井恒男君 日本とECの繊維製品の貿易収支は、日本側の大幅入超になっておるわけでございますから、これまでの繊維品を取り扱う外国との繊維交渉とは趣がこれはがらっと違うはずなんです。いま局長もおっしゃったように、EC側にしてみれば、ECという単位で見る限りにおいては、輸入規制をする存在理由はないわけですから、この交渉はひとつすかっとまとめてもらいたい。下手なまとめ方をすると、今後これがいろいろ他に影響を及ぼすし、東南アジアのそれぞれの国々にもいろいろな影響を及ぼすものと思います。  もう一つ別な問題ですが、欧州の繊維業界がEC本部に対して、東南アジア、東欧諸国の繊維に対しての特恵関税の供与を撤回せよという動きを示しておるということが一部報道されておるわけです。これは後ほど御質問いたしますが、繊維の基本問題の懇話会での提言の中身にも、わが国と東南アジア諸国との貿易にも関連する問題ですから、この欧州繊維業界が起こしておる問題についての現状を報告してもらいたいと思います。
  203. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) ただいま御質問の点につきまして、実はそういう事実があるかどうか、私ども段階においてはまだ耳にしておりません。ただECは、いま日本と繊維取り決めの交渉中でございますけれども、それに先立ちまして、あるいは日本が終わってからもアジア諸国あるいは後進国とMFAに基づく協定の交渉をしたりしようとしているわけでございます。それとの絡みにおきまして、この後進諸国からの繊維品、特に二次製品関係のヨーロッパへの進出に対し、ヨーロッパの業界がかなり不安の念を持っているということは、そのECと後進諸国とのこのMFAに基づく二国間協定の過程において大分出ていると察することができるような気がいたします。ですから、そういうような背景を考えますると、先生の言われたことを私聞いておりませんけれども、あるいは将来にわたってそういう動きが出てくるかな、こういう気はするわけでございます。  ただ現実的には、先般開かれました国連の特別総会におきましても、特恵関税制度の延長に関する決議が成立しているわけでございます。ヨーロッパを含めまして各国、先進国ともそれには賛成をしているわけでございますので、仮に業界にそういう動きがあるといたしましても、ヨーロッパの国々がそういうことを根拠にいたしまして特恵の撤廃をしようということの動きに出てくることはまず考えられないことではないかというふうに見ております。
  204. 藤井恒男

    藤井恒男君 先般、「当面の繊維対策について」という提言が稲葉秀三さんを座長として出されたわけでございますが、十一月六日この提言がなされて、かなり日にちがたっております。この提言は、いろいろな面について政府のとるべき態度、業界のとるべき態度というふうに部類分けして骨子が羅列されておるし、なおこれを煮詰めるために、早急に政策委員会を設定すべきであるという提言で結ばれておるわけです。政府としては、これをさらに煮詰めて前向きに実行していくに当たっての繊維工業審議会のもとに置かれる政策委員会、これは仮称でございますが、これをいつ発足さすのか、その構成がどういうものになるのか明確にしていただきたいと思います。
  205. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 稲葉提言——稲葉氏を座長とする繊維問題懇話会の提言を受けたのが十一月六日でございます。その提言の中には、直ちに政府としてあるいは業界としてやるべきこと、あるいはやれることがあるわけでございますけれども、その多くはさらに別の機関をつくりまして、具体化をし、かつ実施のための具体的な措置を検討するのが必要である、こういうふうに提言の中に言っておるわけでございまして、それを受けまして私どもの方は、通産大臣の諮問機関でありますところの繊維工業審議会というのがございますので、その繊維工業審議会の中に総合部会という総括的な機能を持っております部会がございます。  したがいまして、この総合部会を活用しようというふうに現在考えているわけでございまして、総合部会の委員の方々をさらに必要に応じて追加をする、あるいは適当な方を差しかえていただいて総合部会というものを中心にやっていくわけでございますが、ただ、総合部会というのは何分にも人数が多うございます。したがって、現実的に仕事を進めていくにはさらにその下に小委員会をつくろう、仮にこれを政策委員会と名づけるといたしますと、この政策委員会中心に先ほどの提言の具体化とフォローアップをやっていきたいというふうに考えているわけであります。  人選、いつごろ第一回を開くということは、鋭意目下詰めている段階でございますが、できるだけ第一回の総合部会及び小委員会は年内に開きたい。十二月の中ごろか、日はまだ確定してございませんけれども、中ごろか下旬に開きたいというふうに考えているわけでございます。  それから、御指摘委員、どういう方が委員になるのかと、委員の構成等の御質問でございますが、やはり何と申しましても通産省の審議会でございます。前回の懇話会はたいへん急いだということもありますし、非常に具体的な問題を取り上げるということでございましたので、どちらかと申しますと業界の方中心でございましたけれども、今回は審議会ということでもございますし、いろいろ基本的な問題もやがて取り上げるというようなことも考えられますので、繊維業界の方のみならず、さらには商社、流通業界の方あるいは学識経験者の方々、いわゆる第三者委員も加えまして妥当な構成にしたいというふうに考えて、鋭意いま候補者を選定中でございます。
  206. 藤井恒男

    藤井恒男君 この委員会が持たれるもとをなした懇話会の構成についても、通産省にはしばしば申し上げたことだけど、現在の繊維産業の実態から見て、繊維の雇用問題にすべてこれは波及してくるわけです。構造を改善しようとすれば必ず雇用問題に波及する。したがって、そこで働いている方たちを、つまり労働組合をメンバーから除外する理由は見当たらないということを指摘し、稲葉さんもこれは肯定なさっておるわけです。ただ、懇話会が発足するという時期との関係においてメンバーを洗い直すことができないという状況であったわけですから、当然これを詰めていく専門委員会などに当たっては、いままでの経緯にかんがみて雇用問題が当然出てくるわけですから、繊維に働く労働者代表をメンバーに入れるべきだと私は思います。それを入れるのか入れないのか。  それから、十二月の大体いつごろになるのか。もう早い時期から局長は新聞記者会見などで、十二月には開きたい、入選を詰めておりますということを発表なさっておる。それからまたかなり日がたっておるわけですから、もうメンバーも決まっておらなければ、年内には開催おぼつかないわけですから、はっきりその辺のところを知らしていただきたいと思います。
  207. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) メンバーの件でございますが、繊維問題懇話会は少数の方というようなこととか、あるいは極力急いでおったとかいうようなことがございまして、労働関係の方はお入りをいただくことができなかったわけでございますけれども、そのときもいろいろ労働界の御意見も並行して聞くということはやってきたわけでございます。今度の繊工審の政策委員会につきましては、先生のおっしゃられたことを踏んまえましてその方向で現在考えております。  それから時期でございますが、現在まだ最終的には日が決まっておりませんけれども、大体来週の後半ぐらいには開きたいということで段取りを進めております。
  208. 藤井恒男

    藤井恒男君 それじゃ、その次の輸入成約統計に関する問題ですが、「輸入成約統計の利用方法を改善することにより輸入情報を生産者団体にも適宜提供」せよというのが、今度の提言の中にある「政府のとるべき対策」の第一項になっておるわけです。まあ「成約統計の利用方法を改善する」という中に入ってくる問題かもわかりませんが、これまでも輸入急増という状況の中で成約統計をつくってきたわけですが、それが自主申告制によるためにカバー率に問題がある、あるいは発表する品目が少し分類が大き過ぎるんじゃないか、したがって、生産者側がこれを参考指標にして取り組むについては、具体的に資料の効果が薄いというような声も間々聞くわけでして、その辺のところを、少し技術的な問題にわたりますが、今度の検討改善方法の中でどのようにカバーしていこうというふうに考えておるか、それをお聞きします。
  209. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 輸入成約統計を秩序ある輸入の道具として十分に活用すべきである、現状においてはどうもその使い方が十分でないではないかという御批判が懇話会の席上でも表明されていたわけでございます。私どもはそれを受けまして輸入の成約統計をどのように役立てるべきであるか、秩序ある輸入のための有効な道具立てに生かしていくべきであるかということについて、現在いろいろ検討をしているわけでございます。  そのときに問題になりましたのは、確かにカバー率が問題になりました。これは任意、自主的な申告、届け出でございますので、そういう意味で強制力がないわけでございます。したがって、そこで一体どのくらい現実の輸入をカバーしているのだろうかということについて一部に不安があるのはわかるわけでございますが、現在のところで大体七五%ぐらいはカバーをしております。それから、この統計を報告いたします企業数も当初は二百社から二百二十社ぐらいでございましたけれども、その後さらに報告を提出する企業数はふえてまいりました。この十月では大体三百三十社を超えるような状況でございまして、カバー率も七五%を超えるような状況になっております。したがいましてこのぐらいのカバー率を維持できるものでありますると、十分先行指標といたしまして、先行き輸入がどうなるかということを把握する役に立つというふうに私ども見ておるわけでございまして、むしろ、輸入成約統計をめぐる問題はこの活用方法にあるんだということになっているわけでございます。  その点に関連いたしまして、先生御指摘になりました発表する項目が非常に粗過ぎるではないかという点、あるいはどういうふうに業界がこれを知っているのか、数字やあるいはその中身を知っているのかというような問題があろうかと思うわけでございますが、この点につきましては、ただいまいろいろと私どもの役所の中では検討しておりまして、差し支えない範囲内においてできるだけ詳細な情報を関係の業界には流していく。それで同時に、そういう数字がどういう意味を持つかということを関係業界、すなわち、輸入あるいは貿易業界含めてそういう場で検討するということを通じまして輸入成約統計の持っている効果を十全に発揮いたすようにいたしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  210. 藤井恒男

    藤井恒男君 大臣、これは大臣にお聞きしたいんですけど、同じ輸入問題についての「政府のとるべき対策」の中の第四項の(ハ)の号に「関税の二〇%引下げ措置の停止を行う。」というのがあるんです。これは私は、直ちにいまこれを実施していいんじゃないだろうかという意味でお聞きするんですが、この関税の二〇%引き下げというのは、四十七年十一月の円対策、要するに外貨準備の急増という事態の中でとられた措置でございまして、これは関税暫定措置法の改正に伴って繊維産業がこの対象品目に挙がっておるわけです。この品目を指定するには政令でこれを行うことができるわけです。  なお、この関税暫定措置法の中には、円対策として行った二〇%の引き下げをもとに戻す条件というのが書かれてあるわけです。それは、予期せぬ輸入の急増によって、特定の業種の貨物が輸入増大によって産業に損害を与えた場合、その産業を緊急に保護する必要がある場合、こういうことになるわけですから、まさに繊維産業にとってみれば、そもそも二〇%引き下げた外貨急増の事態と客観情勢が違うし、また、繊維産業がこのために侵されておる状況もこれをもとに戻す措置とまさに合致しておるわけですね。予期せぬ輸入の急増、あるいは特定の種類の貨物が輸入増大によって産業に損害を与えておる、あるいはその産業を緊急に保護する必要がある、こういうことになっておるわけだから、政令でこれすぐやったらどうですか。
  211. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 懇話会からいただきました内容は、構造改善事業とか関税問題とか、あるいは輸入規制とかいろいろ書いてあるわけでございますが、非常に私どもは有益な答申をいただいたと喜んでおるわけでございます。  そこで、関税問題でありますけれども、いまおっしゃったような要件が整えばこれはやるわけでございますが、全体に繊維産業の状態を申し上げますと、繊維産業は不況が早かっただけやや上向いておりますし、それから、輸入もごく一部のものを除きましては大体鎮静化をしておる、こういう状態でございます。  そこで、いまおっしゃいましたことにつきましては、要件を満たすかどうかということにつきまして検討いたしておるところでございます。
  212. 藤井恒男

    藤井恒男君 要件を満たすかどうかということで検討しておるということは、この適用をしようということで検討するわけですね。  その前に、前段で大臣の言われた点、繊維産業が不況の波が早かったがゆえに立ち直りもしてきておるし、輸入に関しても一時のようなものはないというふうに当初言われたわけだけど、先ほども私ちょっと申し上げたように、繊維産業の倒産件数は激増しておる。これは民間団体の調べによるものであるが、先ほどもちょっと述べたところですけど、八月が四十五件、九月が五十件、十月が六十四件、十一月が六十九件、こういう傾向をたどっております。  輸入問題は後で私、生糸の問題で申し上げますけど、とんでもない話であって、織物その他の絹撚糸の輸入によって産地が大騒ぎしておる。だから、全体の総額での輸出入のバランスという見方をしていくなら、なるほど四十八年、四十九年における逆転をしたときのような状態にはない。しかし、特定品目については、これはまだまだ日本の国内産業を脅かすほどの輸入増になっておるわけです。だから、ここで言う条件というのも、予期せぬ輸入の増大、特定の種類の貨物が輸入増大によりその産業に損害を与えた場合にはもとに戻す、こういうことになっておるわけですから、繊維産業全部についてということでなくたって、その品目についてはこの措置をとることは政令で可能である、こういう言い方をしておるわけです。
  213. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) この関税の二〇%暫定カットをもとへ戻すということは、まだ先例がないわけでございます。したがいまして、どういう仕組みでそれを戻すかというようなこと、それから、どういう場合に戻すかというようなことにつきまして、いわばフレームワークと申しますか、仕組みと申しますか、実はそういうこともあわせて検討しなければならないわけでございます。たとえば緊急関税でございますると、これは関税率審議会の中にそういう部会がございましてそこで検討する、こういうことになっているわけでございますが、そういう緊急関税に準ずるような仕組みでこれを取り扱うのかどうか、こういうこともいまのところ未定でございます。したがって、この仕組みにつきまして、それから現実にどういう場合に適用するかという要件につきまして、現在通産省及び大蔵省の中で検討中でございます。  一方、具体的にどういうものが適用になるかということでございますが、要件についてはまだはっきり決まっておりませんので、ただいまのところこれだと言うわけにはまいらぬわけでございますが、ただ先生が御指摘のように、一部のものについては確かにことしになりまして輸入がふえているものがございます。繊維製品全般としては対前年同月六割ぐらいでございますけれども、一部のものについてはふえている。特に絹関係に輸入の急増が見られるわけでございます。したがいまして、もしこの制度を適用するものがあるとすれば、まずその辺あたりから考える、検討するということになるかと思っているわけでございます。
  214. 藤井恒男

    藤井恒男君 わかりました。蚕糸の問題は後でまた申し上げたいと思うんです。  この輸入問題について、第五項ですね、第五項に「国際ルールに基づく強力な措置をとる。」、こういう条項があります。しかし、この「政府のとるべき対策」という書き方を見てみますと、一から四項までの措置を講じて、なお輸入が急増した場合には第五項の措置をとるということに書き方はなっておるんです。しかし、この第五項それ自体は国際ルールに基づく措置ではあるが、それは緊急避難の場合の措置であるわけですね。  そうなってまいりますと、通常の緊急避難をするという状態はどういうことかと言いますと、四十八年、四十九年の繊維事情の経緯を見てみましても、輸入が急増すると、その急増した状態が国内の需給を悪化せしめる、そしてそのことが不況を呼び起こす、不況になったら今度は輸入が鎮静化するわけですよ。現在まさにそういう傾向をたどっておる。だから、この一から四の経過をたどって五の措置をとるということになるなら、私は五項というものは書いたって書かなくたって同じだ。まさにこのしょっぱなの輸入急増のときにこの緊急避難の措置がとられてしかるべきだ。これは並列されて提起されるべき内容だと私は思っているわけです。したがって、政策委員会論議するときにはその辺のことをひとつ踏まえて論議していただきたい。それでなければこれは実効性もないし、まさに飾りみたいな文言にしかならないというふうに思うわけですが、その辺についてどのようにお考えですか。
  215. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 輸入の急増に対処する手段方法というものはいろいろあろうかと思うわけでございます。私どもがやっておりますところの貿易輸入業者あるいは流通業者に対する輸入の自粛の要望、あるいは行政指導というようなこと、あるいは関係輸出国に対しまして話し合いで物事を解決しようというアプローチの仕方、いろいろあろうかと思います。  先生が御指摘になりましたようなガットあるいは国際繊維取り決めに基づく手段方法、こういうこともあろうかと思うわけでございますが、やはり何と申しましても、わが国はできるだけ貿易は自由であるべきだという原則に立っているわけでございまして、できるならば国内的な措置、先ほど申しましたような輸入業者に対する指導、あるいはさらには、先ほど説明いたしました輸入成約統計の活用というような方法によりまして秩序ある輸入というものが実現できる、あるいは関係国との話し合いによって、相手方の自主的な輸出の自粛によりまして目的が達成できるというようなことでありますれば、ガットあるいは繊維国際取り決めに基づくいわば直接的な輸入規制の措置をとらないで——そういうことによりましてとらないで済むならばそれがよりベターである、こういうふうに考えているわけでございます。  したがいまして、現実的ないろいろな仕組み、あるいは政策的な措置をいつどのように使うかということにつきましては、やはり具体的な状況に応じて具体的な措置をとるということがよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。輸入が急増していく場合、特に四十八年のようなときに、このMFAに基づく強力な措置をとるべきではなかったかということも一つの考え方かとは存ずるのでございますけれども、私どもは、できるだけソフトな手段でアプローチをいたしたいというのが基本的な考え方でございます。
  216. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは今度持たれる専門の委員会で十分御検討いただきたい。局長、ソフトなということだけど、置かれておる業界の実態は必ずしもソフトな問題では困るわけでして、いつでも、やる、やらぬはこれはいろいろな問題がありましょうけれども、緊急避難としての措置が講ぜられるんだという道はやはりつけておくべきであろう。しかもそれは国際ルールに基づくものですから、悪いことをするわけじゃないのだから、明確にしておいてもらいたいと思います。  構造改善の問題についてですが、この法案が定まるとき、私はこの委員会でもお願いしておったんですが、今度の垂直統合の知識集約化の構造改善というのは非常に難解だと。したがって、中小企業を対象にしてこれが行われる場合に、的確な構改についての情報を提供しなければこれは機能しないというふうに私は申し上げたわけですが、いろいろ産地を回ってみますと、やはりその声を依然として聞くわけです。県の商工課あたりでも指導員がいろいろ努力しておられるようだし、それなりの資料も整えていらっしゃるようだけど、現実に産地の中までこれが入っていないといううらみがあるわけでして、どうかこの点については今後なお金もかけて、これは時限立法でして、あともう四年しかないわけですから、的確に情報を提供していただきたい。  なお、現在の進捗状況というのをお聞きしようと思ったけれども、時間がないからこれはもうやめますが、はかばかしくないと私は見ております。そういった意味で、大臣承認に至るまでの件数かもっとあって本来はしかるべきだというふうにも思います。審査をシビアにするということは、私はある程度必要なことだとは思うけど、しかし、広域問題なども出てきておるし、県段階での一〇%の予算措置が滞っておるというところもあるし、この運用についてはなお弾力的に運用できる道も、それはルーズにやれという意味じゃなくて、弾力的に運用する道というのも考えておいていただきたい。  それから三番目の問題ですが、現在の団体法に基づくところの設備の登録制に関する問題ですね、このことと、今度の垂直的な統合との関係が少し競合するきらいがあるのじゃないだろうか。これは非常にむずかしい問題でございまして、今後の重要な検討課題になっていくと思うのだけど、その辺のところについてどのようにお考えになっておるか、構造改善の事業を進めるという立場に立って、ひっくるめてひとつお聞きしたいと思うのです。  それから、設備規制の問題と一応関係あるわけですが、先ほど須藤委員から指摘された福井県の織物構造改善工業組合の織機登録業務にかかわる刑事事件の問題、これはやはり、あのときの特例法が議員立法として緊急になされたというようなきらいもあるわけでして、この法案それ自体を整備する必要がありはしないかという気がします。これは単なる指導だけでできるものかどうか、その辺のところもあわせて一括してお聞きしておきたいと思います。
  217. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 新しい構造改善事業は旧構造改善事業と違いまして、異業種間のいわば垂直的な結合による知識集約化グループというものを核として進めることになっておるわけでございます。前構造改善計画のように、設備の近代化あるいは生産スケールの大型化というような目標に比べますると、なかなかむずかしい課題をしょっているかと思うわけでございます。時あたかも不況に際会いたしまして、新構造改善事業の進捗の状況がややおくれているという点につきましては、御指摘のとおりかと思うわけでございますけれども、新しい内外の環境に対応いたしまして、日本の繊維産業が将来、その地歩を固め発展さしていくための手段方法としてはこれしかないというふうに考えるわけでございまして、構造改善事業の推進につきまして、私ども一層努力をしてまいりたいと思うわけでございます。  ただ、その過程におきまして、いろいろ問題が出ていることは事実でございまして、新構造改善がどういうものであるかということにつきましての、たとえばPR不足というような問題等がございます。そういう点は繊維問題懇話会におきましても指摘された点でございますので、通産局、県等とタイアップしながらPRなり趣旨の徹底には大いに努めてまいりたいというわけでございます。それから、制度の動かし方につきましても、先生御指摘のように甘くなっても困るわけでございますけれども、構造改善事業の目指す方向を追求するものである限りにおきましては、できるだけ目的達成のために弾力的な考え方で臨みたいというのも私どもの立場でございます。  先生が御指摘されました、設備登録制の問題と知識集約化グループとの関係においてむずかしい問題があるんではないか、そこをどういうふうに考えたらいいのかという御指摘があったわけでございます。この設備登録をやっておりますのは各産地の工業組合でございます。一方、新しい構造改善のための知識集約化グループというものは、必ずしもそういう産地の組合には限られないわけでございますし、特に流通機能を持っているものも取り入れてよろしいというようなたてまえになっているわけでございますので、そういう意味では、産地に限らずあるいは一府県に限らず、かなり広範な地域にもまたがるグループができるかと思うわけでございます。  そのときに、工業組合を中心とする産地の組合とこの知識集約化グループとをどのようにうまく調和、両立させるかということは、私どもの一つの課題でございまして、今後検討してまいりたいと思うわけでございますけれども、新構造改善事業における知識集約化グループというものは、私どもかなり弾力的に考えているわけでございます。産地組合とのうまい結合、調和の方法は必ずあるというふうに考えているわけでございますし、最近幾つかの申請が中央にまで上がってきているわけでございます。そういうもののケーススタディーを通じながら合理的なうまい解決の方法を見出していきたいというふうに考えております。
  218. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは非常にむずかしい問題だし、奥の深い問題だと私思います。要するに団体法に基づく設備規制、これは自体二十二年継続しておる問題ですから、へたに動かすともう大混乱に陥る。しかし現実の問題として、いま私が指摘し、局長が答弁なさったように、垂直統合、しかもそれを広域に広げていくわけですね。実際問題として織りと染めと縫製というぐあいにつなげていこうとすれば、一産地一工業組合の中の問題じゃない。そうなってくると、設備規制の問題とこれはやっぱりかなり関連するわけです。したがって、これはもう十分慎重に検討してもらわなければいけない大きな宿題であろう。だから、七〇年代の繊維産業を展望するという意味においても、この問題はよく検討してほしいものだと思います。  時間がないから、蚕糸問題について私申し上げますが、非常に問題になっておる生糸の一元輸入、そしてそれにまつわる絹撚糸の輸入の問題あるいは織物の輸入の問題、これは中国との関係、韓国との関係、それぞれに問題を派生させておると思います。大臣が中国に行かれた折も、この絹織物の問題について論議があったものと承知しております。あるいは、日韓の貿易会談が絹問題について物別れになっておるというのも現状だと思います。一面、業界が言っておるように、生糸の一元輸入規制によって、糸価の安定と養蚕農家の保護育成ということはある程度の効果を奏しておるけど、同時に、物価上昇にスライドした基準糸価の高騰で国際間の生糸の価格差が増大しておる。したがって、安い人件費と安い生糸によって生産された絹製品が日本へ集中する道をむしろ開いておるのじゃないか。このために各織物産地は、文字どおり原料高の製品安という状況になって、蚕糸行政を継続するなら、今度は織物業界を陥れる、結果として日本の蚕糸絹業界は衰退する。まあ目先の養蚕農家の保護に専念するなら、国外の蚕糸絹業界を繁栄させて、わが国の業界を衰退に導くようなことになりはしないか、こういった要望なりが出ておるわけです。  これも一面の私は真理だと思うわけでして、これは農林省ともかかわり合いのあることでございますが、今日的な問題でございますので、この蚕糸行政を通産省サイドでどのようにしようとしておるのか。生糸の一元輸入というものは継続するのかどうか、あるいは絹織物またより糸——撚糸の輸入急増に対する貿管令による措置を今後どのような形へ導いていこうとしておるのか。それにまつわる中国とわが国との関係、わが国と韓国との貿易関係、それがどうなっておるか、話し合いはいまどのような経緯をたどっておるのか、今後どうするのか、これはまとめて聞いておきたいというふうに思います。  時間がありませんから、もう一つだけつけ加えさせていただきますが、それは商品取引所法の改正に基づいて、上場品目を政令で整理して一月一日から施行することになっております。私も当委員会で、少なくとも工業製品であるところの繊維品は上場品目から外すべきであるということを主張してまいりました。先ごろゼンセン同盟が各党にアンケートを行ったところ、やはりこのような考え方を持つ政党が多うございます。そういった状況にかんがみて、現在すでに一月一日施行ですから、いま繊維は四品目上場されておるわけですが、それをどのような形にしていくのか、明らかにしておいていただきたいと思います。  以上御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  219. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) ことしになりましての絹糸、絹織物等絹関係の製品について輸入の著しい増加が見られることは、先生御指摘のとおりでございます。どうしてそうなるのかという問題、いろいろな原因があろうかと思うわけでございますけれども、その一つに、原料でありますところの国産生糸が、近隣諸国で生産される生糸の価格に比べて著しく割り高であるということが指摘できるかと思うわけでございます。したがいまして、私どもの方はことしの六月に生糸の一元輸入制度が継続されるときに、農林省とも話し合いまして、次の生糸年度までに何とか絹業も蚕糸業も共存共栄できるような方策を講じようではないかという立場に立ちまして、現在検討をしているわけでございます。  ただ、いろいろ複雑なむずかしい問題がございまして、これだというずばり決め手というものがなかなか見出し得ない現状でございますけれども、ともかく時間が限られておるわけでございます。現在、鋭意検討中でございます。その場合、当然一元輸入制度をどうするかということも含めて、蚕糸業及び絹業両方に対してとるべき措置を検討中でございます。できるだけ早い機会に合意を得たいというふうに考えておるわけでございます。  韓国、中国の問題、これは当面の問題でございまして、いま私が申し上げたそういう基本的な方策ができるまでの、いわばもちろんつなぎの措置でございます。絹糸及び絹織物の増加の状況は放置し得ない状況だというふうに考えた次第でございまして、強力な行政指導を絹糸、絹織物につきましてとっているわけでございます。その行政指導の効果を確認するという意味におきまして、羽二重類につきましては事前承認制を、韓国の絹糸につきましては事前許可制を現在ひいているわけでございますが、この両方の制度も、秩序ある輸入を確保するための当面暫定的な措置としてやっているわけでございます。  それから、最後に商品取引所の改正に伴う政令の話が御質問にございました。前国会改正された法律を施行するために、現在施行のための政令を公布すべく準備を進めているところでございまして、いまの予定では、来年の一応一月十四日から施行という線で関係政令の準備を進めているわけでございますが、どういうものを指定するかということにつきまして、法律制定のときからいろいろ問題があったことは存じているわけでございます。ただいま政令で指定をしようというふうに予定されておりますものは、当省、通産省所管物資で言いますると、ゴム、綿糸、毛糸、スフ糸ということでございます。今回の指定から外されるものは当省の関係で申しますと、綿布それから人絹等でございます。とりあえず政令で指定をし、上場を続けるということでございますけれども、従来いろいろ問題になりました取引所のあり方、運営につきましては、厳しい監視と指導を続けてまいるつもりでございます。     —————————————
  220. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 石油備蓄法案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。河本通産大臣。
  221. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 石油備蓄法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。  わが国は、国民生活国民経済を支える重要なエネルギー源である石油のほとんど全量を輸入に依存しており、一昨年の石油危機の経験に照らしても明らかなように、石油供給の削減や途絶といった事態が生じた場合、きわめて大きな影響を受けることとなります。  世界の主要先進国は、このような石油の供給不安に対処するため、すでに、かなりの水準の石油の備蓄を確保しておりますが、わが国としても、緊急時における石油の安定供給を確保するため石油備蓄の増強を図ることが、国民生活国民経済安定を確保する上で不可欠であります。  このため、新たに昭和五十四年度末を目標とする九十日石油備蓄増強計画を発足させることとし、このために大量の資金負担が必要となることから所要の財政、金融上の措置を講ずることとしておりますが、今回の石油備蓄法案は、こうした財政、金融措置とあわせて所要の石油備蓄量を確保するための備蓄水準の計画的な引き上げと、その水準の維持に必要な法律上の措置を講じようとするものであります。  次に、この法律の要旨について御説明申し上げます。  まず第一に、石油備蓄の増強を計画的に実現するための措置として石油備蓄目標の策定、石油備蓄実施計画の届け出等に関する規定を設けております。  すなわち、通商産業大臣は、毎年度、石油審議会の意見を聞いて次年度以降四年間についての石油備蓄目標を定めることとし、これを受けて石油精製業者、石油販売業者または石油輸入業者のうち一定の要件に該当する者は、毎年度、それぞれ次年度以降の四年間についての石油備蓄実施計画を作成し、通商産業大臣に提出することとなります。この場合において、通商産業大臣は、石油備蓄目標の達成のため特に必要があるときは、届け出のあった石油備蓄実施計画の変更勧告を行うことができることといたしております。  第二に、増強された備蓄水準を維持するための規定であります。すなわち、石油精製業者等は、毎年度通商産業大臣が通知する基準備蓄量以上の石油を常時保有しなければならないものとしております。  この基準備蓄量は、石油精製業者等の前年の石油製品の生産量、販売量、輸入量等を基礎として、その総量が、わが国の前年の石油消費量の七十日分から九十日分に相当する範囲内に入るよう算定されることとしております。  また、この基準備蓄量以上の石油の保有を担保するために、通商産業大臣は、石油精製業者等が、正当な理由なく基準備蓄量の石油を保有していないと認めるときは、基準備蓄量以上の石油と保有すべきことを勧告し、また、一定の要件に該当するときは命令することができることとしております。  以上のほか、本法では基準備蓄量の変更、石油保有量等の帳簿記載、石油需給適正化法に基づく対策実施の告示期間における本法の規定の適用除外等について必要な規定を定めることといたしております。  なお、石油備蓄の確保を進めるに当たっては、安全、環境対策上遺漏のないよう万全の配慮を払う必要があることは言うまでもないことであります。この点に関しては、関係法令の厳格な運用、整備等により万全を期してまいりたいと考えております。  以上が石油備蓄法案の趣旨でございます。  何とぞ、慎重御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  222. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、補足説明を聴取いたします。増田資源エネルギー庁長官
  223. 増田実

    政府委員(増田実君) ただいま大臣が御説明申し上げました提案理由及び要旨を補足して簡単に御説明申し上げます。  わが国の場合、石油供給のほぼ全量を海外に依存しており、また、輸入石油の供給地域が特定地域に偏在していることなどから、石油供給の削減や途絶による影響を受ける度合いが大きく、かつ、一次エネルギー供給の大部分を石油に依存している事情から、石油の供給不足がエネルギー需給全体に影響を及ぼし、国民生活国民経済の混乱に直結するという脆弱性を持っていることは、先般の石油危機においてわが国が経験し、いまだ記憶に新しいところであります。したがいまして、わが国にとって緊急時における石油の安定的な供給を確保することはきわめて重要な課題であり、このためには石油の備蓄増強を図ることが強く求められております。  わが国と同様石油供給をほとんど海外からの輸入に依存している西欧主要先進国においては、すでに相当の水準の石油備蓄を確保しているのに対して、わが国においては石油備蓄はまだかなり低い水準にあり、わが国としては早急に備蓄の増強を図っていくことが国民経済国民生活安定を確保する上で必要不可欠であります。このため、従来から四十九年度末を目標として国内石油消費量の六十日分に相当する石油の備蓄を達成するよう、所要の指導及び助成を行ってきたところでありますが、最近における国際石油情勢の推移等にかんがみ、今回新たに五十四年度を目標とする九十日石油備蓄増強計画を発足させることとしております。この九十日備蓄を達成するためには多大の資金及びコスト負担が必要でありますので、政府としても石油企業に対して備蓄増強が円滑に推進されるよう所要の財政、金融上の措置を講ずることとしております。今回の石油備蓄法案は、こうした助成措置とあわせて、石油備蓄の計画的な増強と備蓄水準の維持を図ることを目的とし、このため所要の法律上の措置を講じようとするものであります。  以下、法律案の主要な点につきまして若干補足説明を申し上げます。  まず第一に、石油備蓄目標の策定及び石油備蓄実施計画の届け出等石油備蓄の計画的な増強を図るための規定を設けております。  すなわち通商産業大臣は、石油精製業者等が行う石油備蓄事業の指針として、毎年度、石油審議会の意見を聞いて次年度以降の四年間について、石油備蓄の目標数量及びそのために必要な新たに設置すべき石油貯蔵施設の貯蔵能力等の事項を内容とする石油備蓄目標を策定し、公表しなければならないものとしております。石油精製業者等は、この石油備蓄目標の策定を受けて、毎年度、次年度以降の四年間において当該企業が実施すべき石油備蓄増強についての計画、すなわち石油備蓄実施計画を作成し、通商産業大臣へこれを届け出なければならないものとしております。この場合、通商産業大臣は、この届け出に係る石油備蓄実施計画について石油備蓄目標の確実な達成を図る見地から審査を行い、特に必要があると認めるときは、当該届け出に係る石油備蓄実施計画を変更すべき旨の勧告をすることができることとしております。  第二に、確保された備蓄水準を維持するための措置について規定しております。  すなわち通商産業大臣は、まず、石油精製業者等の前年の石油製品の生産量または石油の販売量もしくは輸入量を基礎として、その総量がわが国の前年の石油消費量の七十日分から九十日分に相当する範囲内にあるようそれぞれの基準備蓄量を算定し、毎年、石油精製業者等に対してそれぞれの基準備蓄量を通知することとしております。石油精製業者等は、毎年度この通知を受けた基準備蓄量以上の石油を常時保有しなければならないものとしておりますが、その実効を期すために、通商産業大臣は、石油精製業者等の石油の保有量が基準備蓄量に達していない場合に、その達していないことについて正当な理由がないと認めるときは、基準備蓄量以上の石油を保有すべきことを勧告し、また、石油の保有量が基準備蓄量に達していない程度またはその達してない期間が一定の基準に該当すると認めるときは、基準備蓄量以上の石油を保有すべきことを命令することができることとしております。  以上のほか、本法では災害その他やむを得ない事由による基準備蓄量の減少、石油保有量等の帳簿記載、石油需給適正化法に基づく対策実施の告示期間における本法の規定の適用除外等について必要な規定を定めることとしております。  なお、石油備蓄施設の設置に当たっては、安全、防災、環境対策に万全の配慮を払う必要があることは言うまでもないことであり、この点に関しましては、今国会提案しております石油コンビナート等災害防止法案を初め関係法令の整備、厳格な運用等により万全を期してまいりたいと考えております。  以上、この法律案につきまして提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  224. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 本案に対する質疑は後刻に譲ることといたします。     —————————————
  225. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。河本通産大臣。
  226. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。  中小企業信用補完制度は、創設以来一貫して発展を遂げ、現在三兆二千億円を上回る保険規模に達しており、中小企業者に対する事業資金の融通を円滑にする上で、大きな役割りを果たしているところであります。  政府は、経済活動の停滞に伴う中小企業者の経済的困難に対処するため、これまで数次にわたり中小企業金融対策強化してまいりましたが、中でも信用補完制度につきましては、昨年の第七十二国会におきまして改正をいただきました中小企業信用保険法に基づく倒産関連中小企業者に対する保険特例、保険限度の引き上げ等の措置の機動的運用等により、中小企業不況対策に大きく寄与しているところであります。  しかしながら、中小企業の中でも最も零細な小企業者層におきましては、不況の長期化に伴い、担保力、信用力等の限界からその資金調達の円滑を欠くおそれも生じており、その面での信用補完制度の拡充が必要となっております。  本法律案は、このような事態に対処するため、中小企業信用保険法改正し、小企業者層の資金確保につき一層の円滑化を図ろうとするものであります。具体的には、小企業者向けに設けられております特別小口保険の保険限度額を現行の一企業者百五十万円から二百五十万円に引き上げることとしております。  なお、無担保保険につきましては、その保険限度額を現行の一企業者五百万円から八百万円に引き上げることとする内容修正衆議院で行われています。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  227. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、補足説明を聴取いたします。齋藤中小企業庁長官
  228. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げます。  現在、全国で五十二の信用保証協会が、中小企業者の金融機関からの借入債務を保証することにより、担保力に恵まれない中小企業者の信用力の補完に大きな役割りを果たしております。  中小企業信用保険制度は、この信用保証協会の行う保証について、中小企業信用保険公庫が保険を引き受けることにより、その推進を図ろうとする制度であり、創設以来、一貫して発展を遂げ、中小企業者に対する事業資金の融通を円滑にする上で目覚ましい実績を挙げてまいっております。  ちなみに、昭和四十九年度の保険利用状況を見ますと、利用件数で百万件となり、保険引き受け規模では対前年度比一六七%増の三兆二千億円に達し、中小企業金融を支える大きな柱となっております。  しかしながら、長期にわたる景気の停滞の中で、担保力、信用力等の劣る小企業者層を対象としている特別小口保険の一件当たりの利用状況は増大傾向を示しており、現行保険限度の百五十万円では不十分となるおそれが生じております。  このため、特別小口保険につきまして、中小企業者一人当たりの保険限度額を昭和四十九年度改正による百万円から百五十万円に引き上げたことに引き続き、これを二百五十万円に引き上げまして、小企業者の資金確保の円滑化に資することにしております。  以上、この法律案につきまして簡単でございますが、補足説明をいたしました。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  229. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員中村重光君から説明を聴取いたします。中村重光君。
  230. 中村重光

    衆議院議員(中村重光君) 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案衆議院における修正につきまして御説明申し上げます。  修正点は、中小企業信用補完制度を拡充して中小企業者の資金調達の円滑ならしめるため、無担保保険の付保限度額を現行の五百万円から八百万円に引き上げることにしたことであります。  以上であります。
  231. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 本案に対する質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  232. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 石油備蓄法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  233. 森下昭司

    ○森下昭司君 それではまず最初に、先般の石油審議会におきまして石油業法第十五条による標準額が決定をされたわけでありまして、この問題をまず前提といたしましていろいろとお尋ねをいたしておきたいと思うわけであります。  昭和四十九年末の指導価格の廃止後、石油会社の思惑どおりに、たとえばC重油でありますとかナフサなどの値上げが大口需要家が値上げに応じないために、その浸透度は約六〇%にとどまっていたと言われています。そういう状況の中におきまして、石連におきましては、石油業法の第十条または第十五条の発動を求める声が強く、中には不況カルテルの結成を要望する声もあったわけであります。当初通産省は、そういう石油業界の意見を聞き、通産省設置法によりまして強力な行政指導を行いたい、そして価格への介入を強調いたしておったのでありますが、その後、本年の十月末に参考価格なるものがまず行政指導として行われ、そして先ほど申し上げました十一月末の石油審議会の議を得て、言うならば業法十五条の標準額となったわけであります。  これら一連の動きをながめてまいりますと、いわゆる一貫した行政姿勢というものが貫かれていない。言うならば、最初は設置法を強調し、落ちついたところはいま申し上げた石油業法第十五条でありますが、このように最初の構想から石油業法第十五条で標準額を決めた経緯についてお尋ねをいたしておきたいと思います。
  234. 増田実

    政府委員(増田実君) 石油業界につきましては、先生御高承のとおり、昭和四十八年の十月の石油危機以後、原料であります原油価格が非常に大幅な値上がりをいたしまして、石油危機以前に比べまして現在は四倍以上の価格になっております。それに対しまして石油製品の価格は、これも相当上がってきてはおりますが、しかし、依然として原油価格の上昇に見合った販売価格にはなっておりません。大幅な逆ざや、つまり、売れば売るほど損が出る、こういう状況が続いてきておるわけでございます。このために昭和四十八年度の下期の決算から大部分の会社が赤字でございまして、五十年度の上期まで四期連続赤字ということで、ほかの産業界も現在非常に苦しい状況にありますが、その中でも特に石油業界が長期にわたる赤字を負担をしている、こういう状況でございまして、それに加えまして、九月二十七日のOPECの総会で約一割の原油価格の値上がりがあったわけでございまして、従来の逆ざやに加えまして、さらに一割のOPECの値上げというものにはとうてい負担し得ない、こういう状況に石油業界が相なったというわけでございます。  このような状況をこのまま放置いたしますと、産業の基盤でありますエネルギーを供給いたします部門が崩壊に瀕するということで、私どもとしてはこのまま放置できないという判断で、この価格につきまして何らかの手当てをしなければならないということで、OPECの値上げ後、当初考えておりましたのは、指導価格という制度をもってこの値上げにつきまして措置をする、こういうことを考えていたわけでございます。これにつきましていま先生のお尋ねは、初め指導価格でやるということを発表し、その後標準価格になったという経緯はどうかということでございますが、これにつきましては私どもの方は、標準価格という制度も、それから石油業法十五条を適用いたします標準額と、それからいわゆる行政指導、つまり、設置法に基づく価格指導というものは、いずれも一つの指導価格制度だ、こういうふうに考えています。  と申しますのは、石油業法十五条におきましても、これは通商産業大臣が標準額を告示するというのだけでございまして、それ以上の規定はございません。そういう意味で、片方は業法に基づいて定められた指導価格、もう一つは、いわゆる通商産業省設置法一般においてその権原のもとに行う指導価格、こういうことで両方を考えておるわけでございます。その意味におきまして、九月二十七日のOPEC以後、何らかしらの指導価格制度をしくということにつきましては、設置法に基づく指導価格をとるか、あるいは石油業法に基づく標準額というものをとるかにつきましていろいろ議論をし、またその問題につきまして、独禁法との関係もいろいろございましたために検討いたしまして、一応十月の終わりに発表いたしましたのは、指導価格と申しますより参考価格ということで、十月三十日に発表いたしたナフサとC重油の価格がございます。  それから、十一月二十八日だったと思いますが、石油審議会の議を経ましてガソリン、ナフサ及びC重油で定めましたものは、石油業法十五条に基づく標準額ということで行ったわけでございます。これにつきましては、先ほど申し上げましたように、両方とも一つの行政指導価格だというふうに私ども考えておりますが、やはり、石油業法にはっきりと標準額の制度がある以上、そちらを適用した方がよいのではないかという議論が非常に多く、また、石油審議会に諮りましたときに、むしろ標準額でやるべきだという議論でありましたので、第二回目にやったときには標準額で決定をし、これを通商産業大臣の名前で告示の形で出した、こういう経緯でございます。
  235. 森下昭司

    ○森下昭司君 まあ設置法、石油業法、それから行政による介入、すべて行政指導だ、いずれにいたしましても出てきた回答、結果論は、行政指導による価格であるというお話でありますが、それならば、なぜ十月の末に第一段階の値上げを実施をする場合に、いわゆる設置法に基づきまして価格介入を行って参考価格と呼ばざるを得なくなったのか。長官の言う、設置法によろうが、石油業法によろうが、また行政介入の指導価格によろうが、すべて行政指導価格だという見解が成り立つならば、十月末の価格もまた指導価格として発表しても差し支えなかったのではないかと思うのでありますが、なぜ参考価格という表現を使わざるを得ないのか、それをお尋ねいたします。
  236. 増田実

    政府委員(増田実君) 私どもの方は、いま先生の指摘されました十月の終わりに参考価格を発表いたしました時点では、今回の価格の問題につきましては、標準価格制度が適当ではないかということで、大体そういう結論に達しておったわけでございます。ただ、標準価格を出すことにつきましては、これは石油審議会の議を経なければなりませんので、一応内部的にはそういう結論になっておったわけでございます。  そういう意味で、この十月の三十日にとりあえずナフサとC重油二品目だけの参考価格を発表いたしましたのは、標準額を決めますまでには石油審議会の議を経なければならないということで、まあ時間が相当かかるということで、一応経過的に二品目だけを挙げまして、私どもの方で計算いたしました金額で、さしあたりこれで石油会社が需要会社と交渉してもらいたい、そのときの参考の価格であるということで、これは石油会社だけに示しまして、そして、この役所で計算いたしました価格を参考にしてひとつ需要者とよく話し合ってもらいたい、こういうことで出したわけでございます。そういう意味から言いますと、いまの参考価格の性格が、いわゆる行政指導価格というものに比べましては非常に弱い性格のものであろうと。それで、先ほど言いましたように、標準額を決めるまでの一応暫定緊急措置として発表いたした、こういうことでございます。
  237. 森下昭司

    ○森下昭司君 これはひとつ大臣にお尋ねしますが、私は五月二十九日、本委員会におきまして、石油業法第十条、第十五条の発動を、先ほど申し上げたように、石連等が非常に強い意見として求めている、あるいは不況カルテルを申請したらどうだという意見もある、その中で備蓄問題との関連におきまして、将来の石油価格問題をどう決めるんだということを質問いたしました。それに対しまして大臣は、不況カルテルは考えてないということを一つ、二つ目は、石油業界、これはもう体質改善——私はそういう理解をしておる——体質改善、業界の再編成問題なども含めて、石油業界全体のあり方の中から価格というものを考えていかなければならぬと答弁してもいるんですよ。なんだったら五月二十九日の議事録をお読みになってもいいと思う。  いま長官の御発言を聞いておりますと、十月末の参考価格は、C重油とナフサだけ二品目についての緊急措置だというお話がありますが、私は、十月末にC重油とナフサだけを、二品目だけを緊急措置をしなければならぬ条件というのがあったのかどうか疑問視せざるを得ないのであります。これは明らかに五月二十九日の私の質問に対する答弁と、現に通産省がおやりになっておりまする標準額に至る経緯とは、合ってないんですよ。また私は、できるならばこの標準額を決定する際には、この五月二十九日の答弁にこだわるわけではありませんが、業界再編成の問題はどうあるべきか。また、各企業が再編成に至るまでの体質改善についてはどうあるべきかというような具体的な付随する問題も、やはり総合エネルギー調査会ですか、そこで時期的に合うような形において答申が得られるように私はやはり考慮すべき、また配慮すべき事項ではなかったかと思うんでありますが、五月二十九日の答弁を前提として今回に至った経緯について、妥当とお考えになっておるのかどうか、お尋ねいたします。
  238. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 石油業界には、いま二つの大きな課題があるわけでございます。一つは、石油価格が非常に大幅な逆ざやになっておりますので、経営が破綻寸前に来ております。何とかこの破綻寸前の経営状態を立て直すということが第一の課題でございまして、そのために価格問題を需要家との間に再調整しなければならぬという一つのこういう大きな課題がございます。  それからもう一つは、御案内のような状態で、石油業界は非常な乱立状態にあります。体質が非常に弱い。でありますから、体質強化ということがどうしても必要であります。そこで、いま考えております手順といたしましては、とにかくこの価格の問題は緊急を要しますので、先ほど長官が申し述べましたような方法で、とりあえず価格問題を解決いたしまして、経営を軌道に乗せまして、そして引き続いて体質強化に取り組んでもらう、こういうスケジュールでいま作業を進めておるわけでございます。
  239. 森下昭司

    ○森下昭司君 この逆ざや問題は何もことし、先ほど長官がお答えになった九月二十七日、OPECが約一〇%の原油を値上げした時点で始まったわけではないんであります。これは、四十八年の石油危機以来の状況の中で長年続いた結果、赤字経営にならざるを得なかったと、石油業界はそう説明をいたしております。いろんな意見もあるようでありますが、そのことは別におきましても、要するに、そういう逆ざや現象というものが、もうここ少なくとも一年有半続いておったという経過の中で、私はこだわるわけではございませんが、五月二十九日に大臣からそういう御答弁をいただいておるわけなんです。  でありまするから、いま言った体質強化でありますとか、いろんな点が必要だということは、私自身はそのときに十分承知もいたしておりまするし、大臣の石油価格の決定もそういったことを踏まえて、将来日本における石油業界はどうあるべきかという前提で私はお答えをいただいたものであると思うのでありますが、いまの答弁では、私非常に不満でありまするし、また、今回の石油価格の改定というものが、いま申し上げた体質改善等に一応の寄与をするかしないか、あるいは日本の石油業界はどうあるべきかという点についての関連性については、私認めるにはやぶさかではございません、しかし、通産省当局の指導という点については、何だか一貫性のないということを率直に感ぜざるを得ないのであります。  私は、再三新聞報道あるいは衆議院商工委員会等における高橋公正取引委員会委員長の答弁あるいは新聞報道、談話等を見てまいりますると、終始一貫公正委員会は今日まで、ガイドラインを示しまして価格を指導するということは、これは間違いである、それはカルテルにつながる方向に非常になりやすいというような見解を実はおとりになっておりまして、石油業法第十五条というものがあるのであるから、業法によって価格改定を行ってみたらどうなんだということを非常に強調されたというふうに理解をいたしておりますが、このいわゆる公正取引委員会見解というものが通産省の今回の標準額の決定に大きな影響を与えたのではないかと思うんでありますが、その点について長官にお尋ねいたします。
  240. 増田実

    政府委員(増田実君) 私ども公正取引委員会意見につきましては、これは事務的にも十分相談しながらいろいろやっておりますので、公正取引委員会委員長の御意見も、私どもが今回標準額をとることに至りました決定の一つの要素にはもちろんなっておるわけでございます。  ただ、この独禁法違反と行政指導価格との関係で言いますと、これは標準額であっても、それに基づいて業界間でいわゆるカルテル行為、談合行為というものが行われれば、これは独禁法違反でございますので、標準額が定まったからといって、それですべて独禁法違反になるとは思っておりません。その点につきましても、十分公正取引委員会との間で意思統一をいたしましてこの問題に当たりたい。つまり私どもとしては、絶対独禁法違反のようなことが起こらないように十分行政指導を行っていきたい、こういうふうに思っております。
  241. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで公正取引委員会にお伺いをいたしますが、いまいみじくも増田長官は、拘束性のないガイドラインの設定で行う、つまり、この石油業法第十五条は拘束性がありません、したがって独禁法違反ではないという見解でありますが、後段でお述べになりましたように、ただ運用ですね、運用と申しますか、石油会社の要するに動きいかんによっては独禁法違反になるおそれがあるというようなお話がありますが、この点について公正取引委員会はどういうお考えですか。
  242. 水口昭

    政府委員(水口昭君) この石油業法第十五条に基づきます標準額、これはただいま通産省の方からお答えになりましたように、あくまで標準額でございまして、強制力を持ったものではございません。しかし、これは石油業法という法律に基づくものでございますから、この法律によっておやりになることについては、公正取引委員会としては異存はございません。ただ、この標準額の陰に隠れてと申しますか、石油業界の間でカルテル的な行為がありますれば、それは標準額が定められているからといっても、そういうカルテル的な行為をやれば当然に違法になるということは、ただいま通産省からお述べになったとおりでございます。
  243. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで、もう一つお尋ねいたしますが、仮に拘束性のないガイドラインの設定が可能だといたしましても、そのガイドラインそのものの妥当性あるいは正当性と申しますか、そういうものについての公正取引委員会のお考え方はあるんですか。妥当性がこのガイドラインにあるのかないのかというようなことは対象にならないのかどうか。
  244. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 公正取引委員会といたしましては、価格というものは、自由な競争を通じてその需要と供給の関係を基礎として定めるべきものであるというのがあくまで基本でございます。しかしきわめて異例な、あるいは特殊な場合に政府がこれに介入をする、本来望ましくないのでございますが、そういう特別の措置をとらざるを得ないという場合には、やはり法律に基づいてやるのが正しい態度ではなかろうか。単に設置法に基づく行政指導、これによって価格介入をする、あるいは生産数量を制限するというふうなことは望ましくないというのが、一貫した公取見解でございます。
  245. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで、再び増田長官に実はお尋ねをいたしますが、この前の昭和三十七年ですか、あのときに、いわゆる標準額というものが決められまして、その標準額が実際に浸透いたしましたのは、二年間ぐらいの期間を経て、そして二年後に浸透いたしましたけれども、実勢価格に合ったというだけで、いわば業法十五条で言う標準額は形骸化したのではないだろうかというような批判が実は残されたわけであります。  そこで、皮肉な見方をいたしますと、今回の標準額の決定並びにこの実施に当たりましては、二度と再び形骸化を起こさないというようなことから、逆に見れば、通産省の行政指導能力がテストされている、つまり、標準額が実勢価格として業界に浸透するかどうかということは通産省の指導いかんだと言われているわけであります。先ほどあなた自身御指摘になりましたように、カルテル行為が業者同士で行われないといたしましても、通産省の行政指導が強力に行われれば、結果論から見ますとカルテル行為と同じような結果が生ずるおそれがある。そこで、通産省の今後の行政指導のあり方というものは、限界としてはどの程度だというふうにお考えになっているのか、もしも具体的にお答えがいただければ幸いだと思います。
  246. 増田実

    政府委員(増田実君) 標準額を定めまして、私どもはこれにつきましてはできるだけ早くこの価格に石油価格が到達するということが望ましいものというふうに考えております。そのために、需要業界とそれから石油業界の間で、両者間で十分話し合いが行われ、石油業界のいまの逆ざや状況、ことにOPEC値上げによってさらに加わりました逆ざやというものを需要者側が十分理解をして、そして、石油産業が存立の危機に立っておるということを理解して協力を願うということで価格交渉が行われることを望んでおるわけでございます。そういう意味で、先ほど先生からお話ありました、昭和三十七年にありました標準額というものが相当長期にわたってそれに達しなかったし、また、これにつきましても形骸化しているということの批判があるわけでございますが、私ども考え方といたしましては、この十二月一日の告示で発表いたされました三品目の価格につきましては、需要業界ができるだけ早くこの額というもので石油を購入するということが望ましいものと思っております。  ただ、御存じのように、いま需要業界も非常に苦況にあります。そういう意味で、一挙にこの価格に達成するということはなかなか困難な点があると思っております。全体の経済がやはり立ち直らなければそれだけの余裕がないと申しますか、むしろ、需要業界において相当大きな犠牲も負担せざるを得ないということになるわけでございますが、ただ、標準額と相当差のあるままの価格が続きますと、石油業界がこのままでは成り立っていかない。成り立っていかないと、石油を原料として使っております各需要業界にも悪い影響を与える。それがひいては国民生活にも全般的な影響を与えるということで、そのつらさというもの、あるいはOPECの値上げによりますいわゆる犠牲と申しますか、そこの逆ざやというものを需要業界の方も十分理解して、そしてできるだけ早くこれに達成するということが望ましいと思ってます。  それで、先生のお尋ねのように、通産省が自己の標準額の決定を、権威にかけて強引にこれに達成させるということには私は考えておりません。やはり需要業界が十分石油業界の苦況を理解し、また、先ほど申しましたように、この石油が成り立たないことがその業界にもいろいろ悪影響を及ぼすということの認識のもとに協力していただくということで、できるだけ早くこの標準額に達成するように、私どももこれを誘導していきたいというふうに思っております。
  247. 森下昭司

    ○森下昭司君 まあ、言葉の上では私はそうならざるを得ないと思うんでありますが、実際問題といたしましては、まず、ことしは十一年ぶりに五十年度の石油供給計画が年度途中で改定になったわけですね。これは私は、景気の見通しの誤りということも一つあると思うんです。まあ大臣は第四次不況対策まで実施をさせるほど御努力をなさったようでありますが、景気の回復がない。  私も五月二十五日、長官にお尋ねいたしましたときは、変える考え方はないというお答えになりましたが、その後変更になったわけでありますが、私どもの立場でものを見ますと、もともとこの生産計画というもの、供給計画というものは長期のいわゆるエネルギー政策、そして当年度の工業生産との見合いの中から生まれてきたものでありまして、   〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕 いわば業界のこの値上げを思惑どおり実現をさせるための生産計画の変更ではないと理解をすることはやぶさかではないのです。しかし、結果論からまいりますと、生産の減少は即値上げにつながるというのが、先ほど言われました需給との関係から生まれてくるわけなんであります。でありますから、この生産計画の変更も私は、今回の標準額等の推移等からながめてみますると、相当問題になるのではないだろうかという点をまず一つ指摘をいたしておきたいと思うわけであります。  第二の問題は、現にこの十月末の参考価格が出されまして以来、一番はでな戦争は、ナフサの問題で石油精製業者と石油化学業者との間において冷戦が展開をされているわけであります。住友化学がゼロ回答を出光興産にいたしましたために、一時は供給ストップと、最近はやや相談がまとまってまいりまして、まあ千円ぐらいの値上げなら認めてもいいのではないかというようなことでありますが、なお出光が拒否をしているというようなことが実は行われているわけであります。すなわち、その供給の削減ということは、言うならば生産の削減から生まれてくる問題でありまするから、この点について生産計画の変更、つまり減少ということは供給への減少につながる。供給への減少は、これは価格へはね返ってくるという単純な需給計画の図式ができ上がってくるわけであります。  しかも、この石油化学工業はどういうことをいまやっておるかというと、これは通産省の指導で、ずっとこの九月以来生産の計画を変更して減産をしているわけであります。たとえば、一番よく利用されておりまする高圧ポリエチレン、あるいは中、低圧ポリエチレン、ポリプロピレンの三つの樹脂関係につきましては、生産が三分の二ぐらいに、八月に比べますと九、十は減ってきておるはずであります。その結果加工業者に卸しまする原材料費は、平均一〇ないし一五%実は値上がりをしておる。末端の中小零細企業のこういう樹脂加工メーカーというものは非常に苦しんでおるというのが今日の実態ではないかと私は思うのであります。  これは明らかに、通産省の示しましたいわゆる石油化学工業界におけるガイドラインによる生産の減少、これが一斉に各社が遵守したところに問題があるのではないだろうか。いわばプラスチック加工メーカーは兵糧攻めに遭って無理やり値上げをのまされた形になっておる。で、独禁法の網の目をくぐったカルテル値上げと言われても仕方がないというような実は批判があるわけであります。でありますが、最近通産省は、先ほど申し上げた標準額の決定以降、十二月の一日に告示されておりますが、第二段階の生産減少計画といたしまして、来年はこの標準額を浸透させるという意味ではございませんけれども、来年は相当思い切った減産を各石油精製会社等に指導するということが言われておりますが、そのいわゆる減産の実態について見通しを明らかにしていただきたいと思います。
  248. 増田実

    政府委員(増田実君) まず、お尋ねありました九月の生産供給計画の変更でございますが、これはことしの四月から七月の実績が出てきまして、これが供給計画と比較いたしまして、実績が七・四%の減少、まあ非常に経済の落ち込みがはなはだしくて、特にナフサとC重油が大幅に需要が落ち込みましたために、供給計画で組みました数字に比べて、いま申し上げましたように実績が七・四%も落ちたということで、これを需要と供給と均衡するようなものに直さなければならないということで、九月に改定いたしたわけでございます。  それで、この改定内容につきましては、ただ石油価格の値上げをさせるということではなくて、供給が非常に過剰であるという分につきまして、需要に一応合わして改定いたした、こういうことでございます。  それから第二番目に、ことにナフサの問題についていろいろの点の御指摘がございましたが、ナフサの需要が非常に減っております。ところが、そのナフサ価格につきましては、御存じのように非常に低い価格になっております。   〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕 これは諸外国でも、ナフサはわりあいにほかの油脂に比べて低いわけでございますが、特にほかの品目に比べてナフサが低過ぎるということで、ことしの四月から石油業界が石油化学業界に対して価格の改定を要求いたしておったわけでございますが、御存じのように、最近の石油化学業界が非常に不況になっているということで、常にこれに対して値上げが通らないという状況であったわけでございます。  それで、これをできるだけ早目に直さなければならないということで、先ほど申し上げましたように十月の三十日に、標準額を決めます前に一応参考額を示しまして、石油会社から石油化学工業会社に対しての交渉を促進させるということでいたしたわけでございます。その間におきまして、いまお話のありました出光と住友化学の間の供給停止の問題が若干あったわけでございますが、私どもは、基本的には石油というものは産業の基礎燃料でございますので、価格交渉の武器として供給停止を行うということは、これはやるべきことじゃないという基本的姿勢に立っております。そういうことで、この供給停止の問題につきまして私どもが中に入りまして、一応解決さしたわけでございます。  ただ、ここで一言申し上げたいのは、価格につきまして、何ら価格を決めないでそして供給を続けるということは、非常な、ことに逆ざやになっている品目につきまして値段を決めないで、ただ数量だけよこせということにつきましては、これは原料である点からいっていたし方ないと思いますが、やはり需要業界も、この価格の交渉についてはできるだけ早くテーブルに着いて両者の言い分をお互い述べ合って、そして理解と協力のもとに価格を決定してもらいたい。ただ、値上げを要求すると、それに対しましてゼロ回答で席に着かない。そうすると切る、切らないということは、私どもは非常に不幸な事態だと思います。そういうことが繰り返されないように、私どももまた需要業界の方もともにこれを指導していきたい、こういうふうに思っております。
  249. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまお話があった中で、実際は不当に安く押えられておった反動がいまあらわれているというふうによく言われておるわけでありますが、価格は、何度も繰り返すようでありますが、自由経済行為でありまするから、需給の関係によって決められるというならば、いま長官が言われましたように、当事者同士が話し合いで決めていくというような形態がとられることは望ましいのでありますが、今回の標準額の決定にあたりまして、各関連産業の代表者等の言を見る限りは、押しつけだ、非常に高いというようなことが実は強調されているわけであります。価格の問題は後ほどまた質問いたします。  そこで、公正取引委員会にちょっとお伺いいたしますが、新聞の報道によりますと高橋委員長は、「生産数量にガイドラインを設けることは、カルテルに至らない限り目くじらを立てるつもりはない。需給をある程度引き締めるためにガイドラインによるしぼりをかけるのは急激な値上がりを誘わない限り仕方がない」と言うが、この見解というものは先ほどお話があったように、独禁法のたてまえからいって疑問はないのかどうか、お尋ねいたします。
  250. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 私、高橋委員長が述べたというその新聞を見ておりませんが、従来の公取見解から申しますれば、単なると申しますか、設置法のみに基づく行政指導、これは好ましくない、それは価格に対する行政指導ももちろん好ましくないし、生産数量を制限するような行政指導も好ましくないという見解でございます。たとえば生産数量を制限する行政指導、これは先生御承知のように、昭和二十年代から勧告操短という形で長年にわたって繊維とかあるいは鉄鋼とか、まあ石油もございましたが、いろんな物資について行われたわけでございます。これについて公取としては終始一貫、これは好ましくないという見解を取り続けてきたわけでございます。
  251. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は、あなたは委員長でありませんからおわかりにならないと思いますが、たとえば、先ほどちょっと事例を一つ挙げておいたのでありますが、事実上値上がりになっているわけなんですよ。で、委員長の言われまする「急激な値上がりを誘わない限り」と、一体具体的にはどの範囲を指すのか。これは私は非常に疑問に感じているわけなんです。本質的には影響度の問題によって判断をせざるを得ないということかもしれません。ある業態によっては十円上がることも問題でありましょうし、ある業種によっては百円上がっても問題ではないというような見解が成り立つかもしれません。私はこういうような問題を実はお尋ねをいたしたかったのでありますが、きょうお見えになりませんので、また、後ほどの機会にひとつ譲りたいと考えております。しかし、もしもこの新聞報道が事実だとすれば、この高橋委員長の談話は、非常に将来私は禍根を残す問題になりはしないかという危惧の念を持っております。  それで私、長官にお伺いいたしますが、今回の標準額の決定に従いまして、先ほど申し上げました他の関連業界におきましては、われわれの業界の方にも、ひとつ通産省は介入して指導価格をつくってもらいたいというような希望が言われておるようでありますが、そういう点についてはどうお考えですか。
  252. 増田実

    政府委員(増田実君) 需要業界の方も大部分の業界が赤字でございますので、今回の標準額というものを受け入れることによりましてさらにそのコストの増がふえるわけでございます。そういう意味で、そのコストの増を需要業界の方が価格を上げないで、合理化とかその他で受け入れられるだけ受け入れるというのが本則だろうと思いますが、しかしながら、それではカバーしきれない分につきましては、これはその分の最小限度の値上げをせざるを得ないというのが実態ではないか、こういうふうに思っております。
  253. 森下昭司

    ○森下昭司君 いや、私がお尋ねいたしておりますのは、そういう最小限度の値上がりは趨勢として認めざるを得ないということはわかりますが、たとえば、いま私がポリエチレンの問題を出してまいりましたが、生産数量を削減させることによって価格問題を末端において上げていく、これは実態はそうなっているんですから。そういうようなことは関連各企業についてもおやりになる考え方があるのかどうかということなんです。
  254. 増田実

    政府委員(増田実君) 需要産業がこの石油価格の上昇を受け入れて、そして今後どういうようにこれを持っていくかということにつきましては、これはどうも私の方の所管ではございませんので、先ほど一般論で先生に御答弁申し上げましたように、最小限度の価格上昇はやむを得ない、ただ、それに伴って便乗値上げをするとか、あるいは合理化の努力を行わないで、石油の値上げにかこつけて値上げするということは、これは望ましくないと思いますが、しかしながら、最小限度のものはやらざるを得ないであろう。  それから、先生の御質問にありますように、それをやります方法として、通産省の各需要業界を所管しておりますところがいかにやるべきかということにつきましては、これは品目によっていろいろ違うと思います。それからまた、私の方からどうやるべきかということはあるいは不適当かと思いますので、この点についてはちょっと御答弁しかねるところでございます。
  255. 森下昭司

    ○森下昭司君 大臣にお伺いしますが、新聞によりますと小松事務次官は、今後石油関連企業の間において、それぞれ指導価格を通産省が行政指導でつくってもらいたい、あるいは介入してもらいたいというような意見が出てまいりましても、石油価格だけは業法十五条で介入をするけれども、関連産業の価格については介入する考え方は全くないということを新聞で述べているようでありますが、そういう理解の仕方でいいですか。
  256. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そのとおりであります。
  257. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで私は、先ほど公正取引委員会にお尋ねいたしましたこの高橋委員長の談話の生産数量のガイドラインの問題なんです。私は、石油供給計画に従いまして、経済成長の実態に見合わせまして、先ほどお話がありましたように一応七・何がしという削減をした、それはわかります。しかし、いま大臣がお答えになりましたように、事実上価格にはね返るような行政指導というものは行うべきではない。たとえば、いま申し上げた石油化学工業におけるポリエチレンの生産のいわゆるガイドラインを示して削減をするというようなやり方は、私はすべきではないと思うのであります。もしも私の質問で、化学工業界のポリエチレン関係についての生産ガイドを通産省が指導していないというならしないでいいんです。はっきりしてもらえればいいんです。もしも指導していることが事実だとすれば、それはいま大臣がお答えになりますように、結果論においては価格に反映するわけでありまするが、そういうような行政はやるべきではないということだと思うのでありますが、この点についてお答えをいただきたい。
  258. 増田実

    政府委員(増田実君) 生産につきましてのいわゆるガイドラインというものにつきまして、私も昔、鉄鋼行政をやっておったことがありました。これは四半期別に一応公開の生産のガイドラインを示して、過剰生産あるいは過小生産にならないように通産省がそれを示すということは、これは従来からもやっておったわけでございます。そういう意味で、やはり政府が一つのガイドラインを示して、そしてその生産が過剰、過小にならないようにするという制度は従来から続けてきたわけでございますので、ガイドラインの性格もいろいろあると思いますが、ガイドラインそのものがすべていかぬということではないというのが、私の所管とは離れますが、考え方でございます。
  259. 森下昭司

    ○森下昭司君 大臣に重ねてお伺いしますけれども、長官は、所管事項ではないというお話でありまして、一般論でお述べになったようでありますが、私は実態問題といたしまして、そういう生産のガイドラインを示すことが価格にはね返っていることは否定できないのです。そういう否定できないような現状下におきまして、石油関連企業についての指導価格等については一切今後介入をしないというお答えがあったわけでありますから、そういうような問題については、通産省がはっきりとした態度をとるべきではないかというように私は思うのでありますが、その点はどうですか。
  260. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今回、石油に対してこういう措置をとりました理由につきましては、長官からも詳しくいま申し上げたとおりでございまして、石油業界がこのままではもう崩壊寸前になっておる、それでは日本のエネルギーの中で一番大事な役割りを果たしております石油の安定供給ができない、産業全体に大きな影響がある、これは大ごとである、こういうことで今回は標準価格の設定ということをやったわけでございます。しかし、いま自由経済の世の中でありますから、価格というものはできるだけやっぱり市場メカニズムと申しますか、需給関係によって自然に値段が決まる、こういうことでなければならぬと思うのです。私は、今回の措置というものは特例中の特例である、こういうふうに理解をいたしております。  そこで、今度の値上げによりまして大きな影響を受ける産業といえば電力でありますけれども、電力の方は比較的体力も強うございますので、電力業界に対しては、石炭の値上げ、石油の値上げもあるけれども、できるだけこれを吸収して、今年度は値上げしないように、とにかく来年以降の課題として持ち越してもらいたい、こういうふうに言っておるわけでございます。  鉄鋼業界なども若干の影響を受けますけれども、しかし、これは全体の経営規模が非常に大きいわけでありますし、年間に使用する数量もほぼ一千万トンと、こういうことでありますから、若干のC重油の値上がりがありましても、これは全体の経営から考えますと大したことはない。むしろ、紙とかセメントなんかがある程度の影響を受けまして、これは比較的体質が弱いものですから、やっぱり若干の値上げ問題等も起こってくるのではないかと考えてはおります。しかし、いずれにいたしましても、若干の影響を受ける業界におきましても、できるだけこれを合理化によって吸収してもらう、そしてできるだけ値上げは避ける、こういう努力をしてもらいたいと思います。ただしかし、どうしても合理化で吸収できないものは、これは万やむを得ないと思いますけれども、そういうふうにそれぞれ担当の局からそれぞれの業界に対してそういう趣旨のことを言わしておるわけでございます。  そういうことでございますから、今度の石油の値上げが産業界全体にこれが起爆剤になりまして値上げムードが起こらないように、十分気をつけてやってまいりたいと思います。
  261. 森下昭司

    ○森下昭司君 それでは私、価格問題のさらにちょっとしさいなことをお尋ねいたしておきたいと思うのであります。  今回の標準額の算定に当たりまして、いろいろ計算の係数等が出ておりますが、その中で企業の利潤をどう見るかという点について相当の論議があったようであります。その結果、一応数字的には百八十円の係数として上乗せをする、そして配当は公営事業並みの配当ができるようにするということが伝わっておるわけでありますが、一応この公営事業並みの配当にしたというのは、標準額として行政指導をした結果、そういう考え方が生まれてきたのか、石油企業の実態からいって百八十円を上乗せをすればこの程度の配当ができるとお考えになって決めたのか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  262. 増田実

    政府委員(増田実君) ただいまお話のありましたように、今回の標準額を算定いたします基礎として石油製品全体のコスト計算をいたしました。そのコスト計算の中にこの利潤を入れるか入れないかにつきましては、いまお話のありましたように、いろいろ議論がございました。御指摘ありましたように、百八十円の利潤というものを込めてコスト計算をして、それから標準額を割り出したというのが今回の石油審議会で決まりました結論でございますが、この利潤につきましては、最小の利潤を入れるということで百八十円として計算されました基礎は、資本金に対しまして八%の配当が可能な計算ということで、これは八%の配当金とそれのための必要な準備金、それから法人税というものを全部計算いたしまして、百八十円として計算いたしたわけですが、ただ、いま先生がおっしゃられましたように、石油企業が全部八%の配当をすべきだと、こういうことでは計算しておりません。また、そういう考えではございません。ただ、政府が一つの価格というものを発表いたしますに当たりまして、これを利潤を全然なしにするというのはやはり現在の経済体制からいっておかしいんではないか。たとえば電力料金を算定いたしますときにもフェアリターンとして一定の利潤に値するものは組み込むわけでございます。そこで、いまのような考え方で百八十円組んだわけでございますが、これが結果的には大体いまの石油企業のうちの、加重で計算いたしまして、六割がこれで収支を償う、それから四割の企業はもちろんその利潤もなく、それで収支ぎりぎりのところがこの点を超える、こういうことで相当この百八十円を上積みいたしたんですが、それにもかかわらず石油業界の実態に照らすと非常につらい、つまり四割の企業がこれでは収支ぎりぎりの線より以下の査定を受けた、こういうことになるわけでございます。  それからもう一点は、従来非常に累積赤字、過去の赤字がございますが、これについても一切見てないということで、先ほどの御質問に対するお答えとしては、こういう累積赤字があり、また四割以上がこれによって収支が償わないという計算でございますので、石油業界が八%の配当をするということを目指して計算いたしたわけではございません。先ほど申し上げましたような最小の利潤を組み込む、こういうことでございます。
  263. 森下昭司

    ○森下昭司君 そういたしますと、平たく言えば、いままでの勘定はすべてたな上げをして、たとえばこの実施をされた時期から計算をすれば八%の利潤を生むということになるわけなんですね。  そこで私は、石油のいわゆる各販売会社の実態をながめてまいりますと、精製業者等を含めまして一応日石が五十年上期で一割二分、それからゼネラル石油が一割、昭和石油が六分、この三社以外は皆赤字で、配当ゼロということになっておるわけでありますが、企業間の体質が違うからと言えばそれまでのことでございますが、同じような条件下と申しますか、それはメジャーとかいろんな民族系、外資系ございますが、平たく一様に言えば同じような条件下に置かれている中で、企業格差によってこれだけ利益率が違ってくるわけであります。そういう中におきまして、一般論として標準額八%の利潤を見込むということは赤字会社から見れば干天に慈雨かもしれません。しかし、今度は一割二分を配当する日石の需要家から見れば、それほどその利潤を見込む必要はないではないか、多少のこの間において格差があっていいのではないかと。それを是正するためには、たとえば赤字会社に対しましては赤字を一時たな上げをして、新しい産業再編成をさして、いわゆる再出発させてもいいのではないかという問題も出てくると思うんであります。でありまするから、既存の配当率とこの八分の問題はどういうふうに御判断なさったのか、この点重ねてお尋ねいたします。
  264. 増田実

    政府委員(増田実君) いま御指摘のありました中の、たとえば日石が一割二分の配当を行っておるわけでございますが、これにつきましても、実際に日石のコストその他を計算いたしますと、そう余裕がある形ではございません。これは日石が精製を日石精という会社に全部やらしておるわけでございますが、その日石精の方に相当赤字が積んであるということで、日石自身は経常収支その他黒字が出ておりますが、実態から言いますとその下部の精製会社の方に相当大幅な赤字が積み込んであるということが言えるかと思います。  ただ、確かにいまおっしゃられましたように、企業によって相当差がございまして、ことにいわゆる外資系の企業というものがコスト的に安くなっております。それから、民族系の企業がコストが割り高になっておるということは、これはもう事実として否めないわけでございます。そういう意味で今回の標準額を策定するに当たりましても、私どもも非常にその点を苦慮し、また、審議会の先生方もそのことについてどういう計算方法をとるかということであったわけでございますが、先ほど御説明申し上げましたように、全部の石油企業の平均のコストをとりまして、そしてそれで標準額をはじいたわけでございます。ただ、その平均のコストに先ほど申し上げました百八十円を加えたものですから、それが五〇%でなくて、六〇はこれで収支ぎりぎりのところになるということで一〇%ばかり上がったわけでございます。その結果、この四割の石油会社は今回の標準額に価格が達成いたしましてもやはり赤字が続く、累積赤字がさらにふえるという形になっております。また、一部の会社におきましてはこれによって若干余裕が出るということは、これはやはり価格を一本で定めるに当たっては私はやむを得ないんじゃないかと思います。ただこの標準額は、これは公定価格でもその他でもございませんので、やはりコストの安いところはそれなりにまたいろんな意味の価格について、標準額でなくて、それより安く供給するということが行われてしかるべきものと個人的には考えております。
  265. 森下昭司

    ○森下昭司君 いや、いま最後の答弁が一番気になりますよ。それをやるから業界が過当競争になるんじゃないですか。いま長官が言われましたように、日石はまあこうやって利潤を上げているのだから、日石の供給するナフサにしろC重油にしろ、何かわかりませんよ、需要家に安く供給できると個人的には考えるというただし書きがつきますけれどもね。石連自体が、たとえば販売面で通産省の肝いりでつくった共石が非常に廉売をやって、そうして値崩れの張本人だと指摘を受けるぐらいのことが行われておるわけですね。いま長官がいみじくも言いましたが、もうける会社が安く供給すればその会社はますますもうかるという理屈になるでしょう。ですから私は、いま長官の最後のところは、個人的とお断りになりましたけれども、やはり取り消していただかなくちゃいかぬと思うのです。そうすると、赤字の会社はますます物は売れなくなってきますよ。標準額の浸透は前回と同様、二年間形骸化するか、三年間形骸化するか存じませんけれども意味がなくなるおそれがあると私は思うのでありまして、この点ひとつお取り消しを願った方が妥当ではないだろうかということを率直に感じます。
  266. 増田実

    政府委員(増田実君) あるいは私の発言が不適当であったかとは思いますが、ただ標準額につきまして、全部の石油企業がこれとぴしゃり同じでなければならぬというふうには思っておりません。やはり価格につきましては、コストに差がありますので、そのコストに応じて若干の差があるのはこれはやむを得ない。そうしますと、やはりコストの安いところが標準額より若干安く売るということは、これはまあ現象的に当然あらわれると思います。  それからもう一つ、私どもの方でこれはけさ対馬先生に御答弁申し上げたんですが、灯油につきましては若干抑制するという政策をとっておりますので、その分の負担がこれは見てないわけでございますから、そこら辺の負担を各業界に、これだけは実質的にははね返って赤字累積の一つの原因になりますから、そこら辺に余裕を持たせたいというふうに考えております。ただ、確かに先生のおっしゃられますように、石油業界が体質が弱くて、そうして安定供給の任を果たすのに非常に不安定であるという原因は、御指摘のやはり乱売にあると思います。そういう意味で、この販売競争あるいはシェア獲得のための値下げをやって、そうして乱売をして、そうしてみずからその産業の体質を弱くするということは、これは避けなければならない、こういうふうに思っております。
  267. 森下昭司

    ○森下昭司君 まあ日石が、灯油の精製のシェアはどの程度になっているか存じませんけれども、私はいま申し上げましたように、業界みずからがやはり正すべきものは正していくという姿勢がなければいけませんし、もっと私は率直に言うならば、日本石油のようなところは、言うならば配当制限を勧告して、これこそ行政指導で勧告して制限してもいいと思うのです。そうして余った利益は、それこそ地元と交流を強化するという意味じゃありませんが、防災対策とか保安対策とか、それから地元のいわゆる環境保全のために使ってもらうというような政策を考え出しても、私は決して間違いではないと思うのです。そういう点で、これは一つの検討事項としていただきたいんであります。  そこで、先ほど大臣から——公益事業部長にこれからガスでちょっとやりますから……。先ほど大臣から電気の問題についてはお話がありました。ことしじゅうは値上げをしないというお話でありますが、そこでもう一つだけ確認をしておきますが、この標準額が決まります前に、たしか北海道だったですか、北海道電力だけは電気料金の値上げを申請せざるを得ないということが言われているわけでありまして、さらにこのいま申し上げた標準額が決まった今日では、その条件は切迫しておるのではないかと思うのであります。ことしじゅう電気料金を値上げしないという大臣の御答弁の中に、北海道電力は入っているのか入っていないのか、それをまずお伺いします。
  268. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 北海道電力も入っております。
  269. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで、実は今回のこの標準額が決まります前に、大臣は加藤電気事業連合会会長にお会いになりまして、電力業界は決して石油業界に迷惑をかけていない、言葉をかえて言えば、いわゆる逆ざや現象は電力業界では起きていないということの実は説明を受けられたようであります。私は、もしもこの加藤電気事業連合会長がおっしゃるような内容だといたしますと、ことしどころか、なお相当な期間電気料金は値上げをする必要はない、多少の企業格差はありますが、一般論としては電気料金を値上げする必要はないというような感じがありますが、事業部長はどう思われますか。
  270. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 加藤会長がお話しになったのは私も新聞で見たことがございますが、多分あの会長の言われた趣旨というのは、一つは、多少こういった標準価格の設定の機運に対しまして、若干、何といいますか、値切りたいといいますか、そういう気持ちもあったかと思います。それからもう一つの要素といたしましては、加藤会長がおやりになっております中部電力等におきましては、いわゆるローサルファの重油というのがかなりなウエートを占めております。そのローサルファの重油につきましては、価格の計算が従来から、これはミナス等の特殊な原油によるものでございますから、個々に原価計算をいたしまして石油業界との間で値決めをしているというふうな実態がございまして、余り逆ざや現象にはなってないという事実はございます。ただ、電力会社の使っております燃料といたしましては、ローサルファの重油だけではなくて、ハイサルファの重油、これは今度相当上がりましたし、それからナフサもやはり相当上がりますし、それから、原油の高騰に伴いましてLNG等の価格につきましても、やはり値上げ攻勢が相当厳しいわけでございますので、いわゆる電力料金への影響につきましては、これらの点を総合的に判断して考える必要があるというふうに考えております。
  271. 森下昭司

    ○森下昭司君 具体的に私も承知はしていないのでありますが、いまお話がありました低硫黄分については、ミナス原油全体として電力業界は燃料の比率、パーセントが三六・五%使っているようであります。それからいま高硫黄分、これは全体の二三%。ただ、加藤電気事業連合会会長は、このいわゆる高硫黄部分の二三%使っておるものが若干逆ざや現象を起こしているかもしれないということは御認識のようであります。ただ、三六・五%を占めている低硫黄分、硫黄分〇・三%のいわゆるミナス原油については輸入価格が二万七千五百円、それに対しまして電力会社が二万九千三百円を払って買い入れているので、決して逆ざや現象ではないということを説明しておみえになります。したがって、この点につきまして、大臣は直接お話をお聞きになったんですが、そのお聞きになった内容と、先ほどお話がありました、ことしじゅうは電気料金を値上げする必要はない、値上げは各社の企業合理化で解決をするというお話でございましたが、私は、いま申し上げたように、この加藤さんの御説明が正しいといたしますならば、ことしだけでなく相当期間電気料金を値上げする必要はないというように思うんでありますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  272. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 電力会社は、経営内容は個々に違うようであります。したがいまして、中には相当期間値上げをしないで耐えられるという企業もありましょうし、しかし中には、先ほど部長が言いましたような油以外の値上げのほかに石炭の値上げ等もありますので、比較的早い機会に値上げをしなければならぬ、こういう企業もあろうかと思います。いずれにいたしましても、年度が変わりましたならば、経営状態の悪い企業から事情を聞きまして、どう取り扱うかということについてよく検討してみたいと思っております。
  273. 森下昭司

    ○森下昭司君 いま大臣の御答弁で年度という言葉がありましたが、ことしじゅうというのは昭和五十年度という理解でいいんですね、電気料金値上げしないというのは。  そこで、次はガスです。次のガスは、私も新聞情報だけで恐縮でありますが、安西日本瓦斯協会会長の談話によりますと、この標準額の決定に当たりまして会長は「大手ガス業者は個別折衝で段階的値上げに協力するが、中小企業者の八十数社は値上げ幅の大きいナフサを主原料とし、すでに赤字経営をしているので、値上げに応ずる余地は全くない。ただちにガス料金の値上げを申請し、認可された時点でナフサ値上げを受け入れる。この点については通産当局の了承を得ている」という談話が出ています。こういう事実があるのかどうか、まず最初にお伺いいたします。
  274. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) ガス業者に対しますナフサ値上げの影響につきましては、今度の標準額設定の前にいろいろ議論があったことは事実でございます。
  275. 森下昭司

    ○森下昭司君 事実があったことはどうかというのじゃなくて、事前に通産当局が了承しておると言うから、そういうことはあるのかと聞いておるわけなんです。
  276. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) このナフサを使っております事業者は、大体、全ガス業者二百五十の中で九十事業者程度でございます。そのうちで、ナフサだけでなくてほかの原料を使っておるのもございますし、それからナフサのみ使っておりますのが三十二ございます。それから、この九十事業者の中には大手の事業者もおりますし、それから中小の事業者もおります。  それで、たとえば東京瓦斯とか大阪瓦斯といったような大手事業者におきましては、ナフサだけでなくて、最近LNG等の比率が相当高くなっております。こういうところにつきましては、今回のナフサの値上げはございましても、相当期間体力的に耐え得るというふうに考えられるわけでございますが、ナフサの比重の多い中小ガス事業者につきましては、これは、ナフサの値上げがありましたならば、現在でも大部分が赤字会社でございますので、とても耐えられない。したがいまして、やはりこれにつきましては早晩料金改定ということをナフサの値上げの浸透状況等にらみ合わせて考えていく必要があるけれども、値上げと言いましても、これは公聴会その他の手続もございますので、やはりそれとのにらみ合わせでナフサの段階的な値上げについても十分配慮してほしいという話がございまして、それにつきましては石油部の方とも相談いたしまして、そういうことで考えて業界を指導するようにしようということに相なっております。
  277. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまの事業部長のお話にも私は問題があると思うのであります。ガス事業法に基づきまして、料金の値上げも、いまお話があったように、公聴会等のいろいろな手続がございます。そういう手続を経る前に、それを監督いたしまする公益事業部は、実態というものは理解するけれども値上げ問題についてどうのこうのと言うようなことは、私どもが言う公聴会の形骸化じゃないか。これは通産当局も公徳会だけでなく、運賃だとか国鉄の料金だとか、いろいろな点がすべて入ると思うのでありますが、やはり行政当局みずからが手続を形骸化する傾向ということを否定できないと思います。ですから私は、ナフサの値上げ問題を通じてのガス料金問題については、やはり実態というものを理解した上で法に基づく手続を通産当局は進めたいという御回答をするのが一番いいのじゃないかと思うのです。それを、石油部と相談して云々というふうなことは、私は多少、業界との癒着という言葉がよく使われますから、そうだとは見たくありませんけれども、そういう御答弁を聞きますと、そんな感じが実はするわけであります。  でありまするが、いまお話がありましたように、ナフサを主体といたしておりまする三十二社、これは直接影響を受けるわけですね。それから、大手の方はどちらかと申し上げますと、非常に企業自身の合理化の努力によってこれは解消することができる企業も多いと思います。そういう点について、一応このガス料金の値上げのめどについては、いまお話があった東京、大阪、東邦瓦斯、大きなところでありますが、こういう大手業者の値上げの時期は、いまの試算からいって大体どの時期になるだろうというような考えを持っておいでになるのか、この点を明らかにしてもらいたいと思います。
  278. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 先ほど大臣が申されましたように、大手ガス事業者、いまおっしゃいました東京とか大阪とか東邦といったような会社につきましては、これは、今年度内の値上げということはないと考えております。来年度に入りまして、影響度等を検討いたしまして考えるべきものというふうに考えておるわけでございます。
  279. 森下昭司

    ○森下昭司君 それでは、大蔵省お見えになっていると思いますんで、若干ガソリン税とそれから石油ガス税の問題についてお尋ねをいたしておきたいと思います。  これはどうしてお尋ねいたしますかと申し上げますと、一応予想されまする昭和五十一年度の予算原案を作成するに当たりまして、歳入不足という観点から制度を改正いたしまして、ガソリン税並びに石油ガス税の大幅な引き上げが予定をされているというふうに聞いておりまして、一応私どもは三〇%程度ではないかと思いますが、ガソリン税並びに石油ガス税の引き上げの点についてどの程度お考えになっているか。
  280. 島崎晴夫

    説明員(島崎晴夫君) ただいま検討中でございます。御承知のように、二年前に揮発油税につきましては、暫定措置として引き上げが行われております。その期限が来年の三月に参りますので、これを延長するかどうかという問題がございますけれども、現下の財政事情でございますから、撤廃というわけにはなかなかいかぬと思いますが、さて、その後の措置といたしまして、これを延長いたしますか、また延長するとしましてどの程度の税負担をお願いするかということにつきましては、まだ政府部内でもまとまった意見はございません。ただいま検討中でございます。税制調査会の御審議を経て決めるということに相なろうと思っております。
  281. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまお話がありましたように、ガソリン税は昭和四十九年度の税制改正の際に石油消費税等の増税を経て、いま二年間の臨時措置、暫定措置が切れるわけであります。ところが今度は制度を改正いたしまして、一般財源に繰り入れるという制度にいたしまして、現行税額を既成事実といたしまして、若干の増税を行うというような計画だとわれわれは聞いておるんです。そこでいま申し上げたように、三〇%程度ではないかというお話でありますが、検討中であるというお話でありますが、現在の現行額はガソリン税で一キロリットル当たり三万四千五百円、これは間違いありませんか。いいですね。  そこで長官にお尋ねいたします。九十日備蓄でこの費用が各種の石油製品にどの程度はね返るかという点につきまして、試算しますと、大体一キロリットル当たり二百八十円から二百七十円というような数字が出ているというふうに私は承知をいたしております。ところが、このガソリン税が三〇%も上がりますと、これは一キロリットル当たり一万四百円程度ですか、上がっちゃうわけですね。このはね返りというものは、従来はいわゆる消費者に転嫁しないで、企業努力で解消しなさいという指導が行われて、この税負担というものは余り問題にはなっていなかったわけであります。ところが、先ほどから御説明がありましたように、三期連続超赤字、しかも赤字を解消できるという会社は、今回の標準額が仮に浸透いたしましても、そうたくさんないというような先行き非常に暗い見通しの中でこのような税制改正がもしも行われたと仮定をいたしますと、相当私は製品販売価格に転嫁せざるを得ないんじゃないかと思うんですよ。この点についてはどういうふうにお考えになっているかということをまず尋ねたいです。
  282. 増田実

    政府委員(増田実君) ガソリン税が上がりますと、それがガソリン価格に転嫁されて、消費者いわゆるガソリンを買われる方がその分を全部負担されるということであれば、これは国の財政が非常に苦しいときですから、一つの財源対策として考えられるものであるというふうに思っております。  ただ、これは先生もよく御存じのように、ガソリンが最も乱売競争が激しくて、これが私はいいと思いません、直さなけりゃならぬとは思っておりますが、現状のままの石油業界にあって、もしガソリン税が増徴になりますと、恐らくこれをガソリン価格にその分だけを転嫁するということは非常に困難ではないかと思います。そうなりますと、転嫁できませんと、これはスタンド業者がその分の負担をするか、あるいはそれがもとへ戻りまして、いわゆる石油精製会社、元売りがこれを負担するかと、こういうことになるわけでございます。現状ではこれ以上の赤字はふやせない。また、ふやすことによって石油企業というものが存立の基盤がくずれてこようとしている。そのために今回標準額という若干異例の措置をとらざるを得なかったわけでございます。  そうなりますと、ほかの品目へ転嫁できるかどうかということでございますが、ほかの品目につきましても、いずれも需要業界が非常につらいということでなかなか製品の値上げができない。また、灯油につきましても、これは政策的配慮を加えるということになっておるわけです。そうなりますと、恐らくこれは業界負担というものが大部分になっていくことになるんではないかということで、このガソリン税の増徴の問題につきましては、転嫁が可能であるかどうかというのが一番問題であろうと思います。
  283. 森下昭司

    ○森下昭司君 これは本当に長官のいまの答弁を聞いておりますと、どうもガソリンスタンド屋、仮に言えば中小零細企業のガソリンスタンド屋さんもあるわけでありまして、業者転嫁ということは余り感心した制度ではありません。私はこれは自動車工業界、関連運輸団体を初めすべての団体がこのガソリン税の増税に対しましては反対の意向を唱え、かつ二年間という暫定措置でありますから、廃止を実は言っているわけなんですよ。そこで大蔵省当局には、そういう意向というものが非常に強いという要望をこの機会に伝えておきたいと思いますし、また私は、通産当局といたしましても、備蓄によってキロ当たり二百七十円、二百八十円というようなコストはね返りがあるという試算が出ておりまする以上、こういう税制問題は、これは業者が転嫁できないとなりますと、今度は逆にいわゆる消費者にも転嫁することにもなりまするし、かえって物価の高騰というような問題にもなるわけでありますから、そういう税制問題についても絶えず大蔵当局と交渉していただきたいという希望を、私は最後に申し上げておきます。  最後の質問で、消防庁の方、おくれましてまことに申しわけありません。実は石油備蓄の問題と関連をいたしまして一番よく再々問題になりますのは、水島事故と関連をいたしまして保安対策上の問題が出るわけであります。まあ石油問題は、石油コンビナート等災害防止法ができましたので、一応の目安というものは置かれたようでありますが、実態は、特別防災区域に指定をされた地方自治体の消防能力は非常に貧弱であります。また、地域内のいま申し上げたコンビナート等の自衛消防隊もこれから整備を図ろうというので、非常にこれもまた貧弱な組織であって、いまもし緊急な事態が起きれば、果たしてそれに対応できるかどうか疑問である。  そういたしますと、結局予防という点に重点を置かざるを得ないということになるんでありまして、まず第一にお伺いしたいのは、貯油タンクの検査というものは、これは定期的に行うことが望ましいと言われておるわけでありますが、この前一回全国的に実施をして、まだその後の調査というものが全国的に行われておりませんけれども、その後の調査についてはどういう方針で臨んでおるかということが一つ。  それから、前回、欠陥タンクというもの、たとえば一%以上についてはそれぞれの地方自治体の消防から石油会社に対しまして改善命令等が出されておりますが、その改善命令の出された中で修復されたものがあるのかどうかという、現在の現況についてお尋ねいたしておきたいと思います。
  284. 永瀬章

    説明員(永瀬章君) 先生お尋ねのタンクの欠陥と申しますか、沈下のあるもの、あるいは中の腐食等のあるものの調査の件でございますが、水島の事故以後、直ちに全国的にまず一万キロリットル以上のタンクについて調査をいたしました。これの調査の結果、百九基のタンクが非常に沈下をしている、不等沈下を起こしているという結果でございまして、その後、このタンクにつきましてさらに内部の開放検査をさせまして、そして内部に腐食等の異常がありますものについてはこれの修理をする。それから、基礎の状態で二百分の一以上の傾斜のあるものは内部開放もあわせましたが、特にその中の百分の一以上の傾斜のあるもの、これにつきまして、基礎修正をするように指導いたしたわけでございます。その結果、一部のタンクにつきまして内部開放検査が未着手であったんでございますが、一応今月中にすべて開放に着手するという結果でございます。  大体十月の末の状態について申し上げますと、内部開放の検査を当時実施いたしましたタンクが、百九のうち七十四基でございます。その当時検査未着手のタンクが十三基ございまして、それ以外の中間の二十二基が検査を実施中という状態でございましたが、内部を開放しました七十四基のうち、異常の認められましたのが十四基ございました。この十四基につきましては、十月の末の時点におきまして補修済みが四基、それから未補修が九基で、一基は廃止予定でございます。これは異常のあったタンク十三ということに相なるわけでございます。それから基礎関係につきましては、当時で六基が修正済みでございまして、一基が修正中、そしてあと十一が未着手、そのほかに廃止一基という状態でございました。  この内部開放検査の結果といいますと、底板に腐食があったり、あるいは大きく底板が変形していたり、穴があいていたりという状態の異常でございますので、この内部のそういう状態のものにつきましては、底板の大きな変形のもの以外はわりに簡単に直せるものでございますので、現段階ではほぼ完了しているのではなかろうかと思っております。  それから、この一万キロリットル以上のタンク以外のいわゆる以下のタンクにつきましては、その後引き続いて検査をするように指導いたしておりますが、何しろこの数が全国で九万七千八百基以上ございますので、これの集計につきましては、現在まだ取りまとめておりません。報告を求めているところでございます。  なお、五月の二十日に、既存のタンクの保安点検等につきまして通達を出しまして、年一回外部からの検査をする、その結果沈下の大きいものは内部をあけて検査をするという趣旨、それ以外にまた修正方法等につきましても、あわせまして五月の二十日に通達を出して指導しているところでございます。
  285. 森下昭司

    ○森下昭司君 結構です。
  286. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 他に御発言もなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時三十四分散会