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1975-11-18 第76回国会 参議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十八日(火曜日)    午前十時二十分開会     —————————————    委員の異動  十一月十二日     辞任         補欠選任      片山 甚市君     加瀬  完君  十一月十三日     辞任         補欠選任      加瀬  完君     片山 甚市君  十一月十八日     辞任         補欠選任      斎藤 十朗君     松岡 克由君      沓脱タケ子君     橋本  敦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         村田 秀三君     理 事                 玉置 和郎君                 丸茂 重貞君                 小平 芳平君     委 員                 石本  茂君                 上原 正吉君                 小川 半次君                 鹿島 俊雄君                 斎藤 十朗君                 高田 浩運君                 徳永 正利君                 片山 甚市君                 浜本 万三君                目黒今朝次郎君                 柏原 ヤス君                 橋本  敦君                 星野  力君                 柄谷 道一君        発  議  者  浜本 万三君    国務大臣        厚 生 大 臣  田中 正巳君    政府委員        厚生大臣官房長  宮嶋  剛君        厚生省公衆衛生        局長       佐分利輝彦君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  山下 眞臣君        厚生省医務局長  石丸 隆治君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省保険局長  八木 哲夫君        厚生省年金局長  曾根田郁夫君        厚生省援護局長  山高 章夫君        社会保険庁年金        保険部長     河野 共之君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        大蔵省主計局共        済課長      岡田 愛己君        通商産業省基礎        産業局非鉄金属        課長       福原 元一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○原子爆弾被爆者等援護法案浜本万三君外四名  発議) ○社会保障制度等に関する調査  (看護婦問題に関する件)  (保育所に関する件)  (大久野島の毒ガス被害者援護対策に関する  件)  (中央医療協議会に関する件)  (厚生年金等各種年金の改善に関する件)  (産業廃棄物処理問題に関する件)  (診療報酬に関する件)  (う歯予防対策に関する件)  (予防接種事故に関する件)     —————————————
  2. 村田秀三

    委員長村田秀三君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  原子爆弾被爆者等援護法案議題とし、発議者浜本万三君から説明を聴取いたします。浜木君。
  3. 浜本万三

    浜本万三君 私は、ただいま議題になりました原子爆弾被爆者等援護法案につきまして、日本社会党、公明党、日本共産党、民社党及び二院クラブ代表いたしまして、その提案理由を御説明申し上げます。  昭和二十年八月六日、続いて九日、広島長崎に投下された人類史上最初原爆投下は、一瞬にして三十万人余の生命を奪い、両市を焦土と化したのであります。  この原子爆弾による被害は、普通の爆弾と異なり、放射能熱線爆風の複合的な効果により、大量無差別に、破壊、殺傷するものであるだけに、その威力ははかり知れないものであります。  たとえ一命を取りとめた人たちも、この世の出来事とは思われない、焦熱地獄を身をもって体験し、生涯消えることのない傷痕と、原爆後遺症に苦しみ、病苦、貧困、孤独の三重苦にさいなまれながら、今日までようやく生き続けてきたのであります。  ところが、わが国戦争犠牲者に対する援護は、軍人、公務員のほか、軍属・準単属など国との雇用関係または、一部特別権力関係にあるものに限定されてきたのであります。しかし、原子爆弾が投下された昭和二十年八月当時の、いわゆる本土決戦一億総抵抗の状況下においては、非戦闘員戦闘員を区別して処遇し、原子爆弾による被害について国家責任を放棄する根拠がどこにあるでしょうか。  被爆後三十年間、生き続けてこられた三十余万人の被爆者と、死没者遺族の、もうこれ以上待ち切れないという心情を思うにつけ、現行医療法特別措置法を乗り越え、国家補償の精神による被爆者援護法をつくることは、われわれの当然の責務と言わなければなりません。  国家補償の原則に立つ援護法が必要な第一の理由は、アメリカの原爆投下国際法で禁止された毒ガス生物化学兵器以上の非人道的兵器による無差別爆撃であって、国際法違反犯罪行為であります。したがってたとえサンフランシスコ条約で、日本が対米請求権を放棄したものであっても、被爆者の立場からすれば、請求権を放棄した日本国政府に対して国家補償を要求する当然の権利があるからであります。  まして、われわれがこの史上最初核爆発熱線爆風、そして放射能によるはかり知れない人命と健康被害に目をつぶることは、世界唯一被爆国としての日本が、恒久平和を口にする資格なしと言わなければなりません。  第二の理由は、この人類史上曽有惨禍をもたらした太平洋戦争を開始し、また終結することの権限と責任日本国政府にあったことは明白であるからであります。  特にサイパン、沖繩陥落後の本土空襲本土決戦段階では、旧国家総動員法は言うまでもなく、旧防空法国民義勇隊による動員体制の強化に見られるように、六十五歳以下の男子、四十五歳以下の女子、すなわち、全国民国家権力によってその任務につくことを強制されていたことはまぎれもない事実であります。  今日の世界平和が三十万人余の人柱の上にあることからしても再びこの悲劇を繰り返さないという決意を国の責任による援護法によって明らかにすることは当然のことと言わなければなりません。  第三の理由は、すでに太平洋戦争を体験している年代も数少なくなり、ややもすれば戦争惨禍は忘れ去ろうとしている現状であります。原爆が投下され、戦後すでに三十年を経た今日、被爆者にとってはその心身の傷跡は永久に消えないとしても、その方々にとっては援護法制定されることによって初めて戦後が終わるのであります。  過ぐる三年前の昭和四十七年八月八日東京の番町会館で日本原水爆被害者団体協議会代表方々と現総理大臣三木さんが会見されております。その当時三木さんは国務大臣であったが、その席で、政府立法というとどうしてもその限界が出てくるので議員自身が勉強して議員立法援護法をやった方がよいと発言しております。また、与党議員の中にも心ある方々原爆被爆者援護法制定について賛意を表しているのであります。援護法案は従来からしばしば野党共同で提出されましたがいまだ成立するに至っていないのであります。  日ごろ議会制民主主義を強調する三木総理国民に対する公約違反の道を歩ませないためにも、また、国民政治不信を解消するためにも、直ちに援護法制定を実現しなければならないと思います。  私たちは、第七十五通常国会の去る六月、原爆被爆者医療及び特別措置のいわゆる原爆二法が制定されて以来初めて、法案審査のため広島長崎の両市へ本院より委員派遣が行われ、その現地調査により原爆被爆者の悲願である援護法制定必要性を改めて痛感したのであります。  私たちは以上のような理由から、全被爆者とその遺族に対し、放射能被害特殊性を考慮しつつ、現行軍属・準軍属に対する援護法に準じて、原爆被爆者等援護法提案することにいたしたのであります。  次に、この法律内容の概要を御説明申し上げます。  第一は、健康管理及び医療給付であります。健康管理のため年間に定期二回、随時二回以上の健康診断成人病検査精密検査等を行うとともに、被爆者負傷または疾病について医療給付を行い、その医療費全額国庫負担とすることにいたしたのであります。なお、治療並びに施術に際しては、放射能後遺症特殊性を考え、はり、きゅう、マッサージをあわせて行い得るよう別途指針をつくることにいたしました。  第二は、医療手当及び介護手当支給であります。被爆者の入院、通院、在宅療養を対象として月額万三千円の範囲内で医療手当支給する、また、被爆者が安んじて医療を受けることができるよう月額七万円の範囲内で介護手当支給し、家族介護についても給付するよう措置したのであります。  第三は、被爆二世または三世に対する措置であります。被爆者の子または孫で希望者には健康診断機会を与え、さらに放射能の影響により生ずる疑いがある疾病にかかった者に対して、被爆者とみなし、健康診断医療給付及び医療手当介護手当支給を行うことにしたのであります。  第四は、被爆者年金支給であります。全被爆者に対し、政令で定める障害程度に応じて、年額最低四十万円から最高三百三十万円までの範囲内で年金支給することにいたしました。障害程度を定めるに当たっては、被爆者原爆放射能を受けたことによる疾病特殊性を特に考慮すべきものとしたのであります。  第五は、遺族年金支給であります。被爆者遺族に対して、年額六十万円の遺族年金支給することにいたしたのであります。  第六は、被爆者年金等年金額自動的改定措置、すなわち賃金自動スライド制を採用いたしました。  第七は、弔慰金支給であります。被爆者遺族に対して弔慰のため、昭和二十年八月六日にさかのぼって、六十万円の弔慰金支給することにいたしたのであります。  第八は、被爆者が死亡した場合は、六万円の葬祭料を、その葬祭を行う者に対して支給することにいたしたのであります。  第九は、被爆者健康診断治療のため国鉄を利用する場合には、本人及びその介護者国鉄運賃無料とすることにいたしました。  第十は、原爆孤老病弱者小頭症等、その他保護治療を必要とする者のため、国の責任で、収容・保護施設設置すること、被爆者のための相談所都道府県設置し、国は施設設置運営補助をすることにいたしました。  第十一は、厚生大臣諮問機関として原爆被爆者等援護審査会を設け、その審議会に、被爆者代表委員に加えることにしたのであります。  第十二は、沖繩における被爆者に対して、昭和三十二年四月から昭和四十一年六月三十日までの間に、原爆に関連する負傷疾病につき医療を受けた沖繩居住者に対して、十一万円を限度とする見舞金支給することにしたのであります。  第十三は、日本に居住する外国人被爆者に対しても本法を適用することにしたのであります。  第十四は、厚生大臣は速やかにこの法律に基づく援護を受けることのできる者の状況について調査しなければならないことにいたしました。  なお、この法律の施行は、昭和五十一年四月一日であります。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  被爆後三十年を経過し、再び原爆による犠牲者を出すなという原水爆禁止の全国民の願いにこたえて、何とぞ慎重御審議の上、速やかに可決されるようお願い申し上げます。  以上でございます。
  4. 村田秀三

    委員長村田秀三君) 以上で趣旨説明聴取は終わりました。  本案の自後の審査は、後日に譲ります。     —————————————
  5. 村田秀三

    委員長村田秀三君) 社会保障制度等に関する調査議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 石本茂

    石本茂君 いただいております時間も大変短うございますので、一つ二つにしぼってお尋ねしたいと思うんですが、その第一点は看護に関することでございますが、あっちこっち歩いておりまして、大変希望的なといいますか、喜ばれつつありますのがナースバンク設置でございますが、承りますと、来年度は全県下に設置したいということのようでございますし、そういうことを含めまして、現在ただいま、このナースバンク設置運営状況でございますね、しかも調査だけではこれはかっこうになりませんので、先般来お願いしておりますように、ぜひ紹介業ですね、実費紹介業というのか、そういうことも含めまして、私の知ります限りでは、なぜ中央で、労働省厚生省の話し合いの中で自動的に、調査だけではなく紹介も営まれるようにしてほしいと言っているのに、なかなかそうなっておらぬと、で、また、一一労働省の所管であります紹介業の認可を得なきゃいけませんので、その辺がちょっと釈然としないかっこうのまま運営されているように思いますので、このことにつきまして、今後の方策と現在ただいまの状況とをお聞かせいただきたいと思います。
  7. 石丸隆治

    政府委員石丸隆治君) ナースバンク事業は、わが国看護婦の不足を補う一つ方策といたしまして、潜在看護婦活用対策といたしまして、昭和四十九年度からこの国庫補助によります助成を行っておるところでございます。それで、昭和四十九年度の設置県数を申し上げますと、十二県につきましてすでにこれが設置をされておるところでございます。昭和五十年度の、今年度の計画でございますが、十八県をこれに計画を立っておるところでございまして、合計いたしますと、本年度末までに三十県においてこのナースバンク設置される予定になっておるところでございます。なお、昭和五十一年度におきましては、これが全都道府県設置されるよう、現在、予算要求を行っている段階でございまして、したがいまして、五十一年度の設置予定が十七県という、かような数字になっておるところでございます。それで、現在実施いたしております補助内容の大まかなところを申し上げますと、一カ所につきまして人件費一人分及び事務費についてこの助成を行っておるところでございます。これは、現在までの事業内容というものが、潜在看護婦登録という事業を行っている関係上、この人件費——事務員一名でございますが、一名の人件費を計上いたしておるところでございます。それで、今後の計画でございますが、特に昭和五十一年度からの計画について申し上げますと、この事業内容を今後拡大してまいりたいと考えておるところでございまして、従来の潜在看護婦登録のみでございませんで、今後はさらに先生指摘のような無料職業紹介という事業を新たに加えてまいりたいと考えておるところでございます。なお、この無料職業紹介につきましてのやり方でございますが、現在これは労働省の方と折衝中でございまして、ただいまのところ、まだ結論は出ておりませんが、いずれにいたしましても、事業といたしましては、無料職業紹介事業昭和五十一年度から実施いたしたいと考えておるわけでございまして、従来、この人件費といたしまして、一カ所当たり一人分を計上いたしておったわけでございますが、これは登録事務に要する人件費でございます。これをさらに無料職業紹介にまで拡大いたします関係上、一カ所当たり人件費を二人分計上いたす所存でございまして、経費といたしまして、さらに事務費の増もございますので、一県当たり百万円の予算でございますのを、来年度におきましては三百万円を予定いたしておるところでございます。
  8. 石本茂

    石本茂君 大変、いま申されましたようこ、国も気を入れていただいておりますし、それからその場合いま局長申されました、百万あるいは三百万という諸経費に対しまして、県は全然上乗せなどする意心なく今日運営しているのでしょうか。それとも、県によりましては多少補助助成などをしておるのでしょうか。その辺ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  9. 石丸隆治

    政府委員石丸隆治君) 県が二分の一、国が二分の一の関係でこの助成を行っております。
  10. 石本茂

    石本茂君 そうしますと、この百万円は五十万、五十万という持ち出しということでしょうか。国が百万出しているから県が百万を乗せるので、実際運営は二百万でございますというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  11. 石丸隆治

    政府委員石丸隆治君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
  12. 石本茂

    石本茂君 わかりました。  そこで、これ関連でございますが、このナースバンクフル活動をすることによって私は解消できるかどうかわかりませんと思いますが、来年の四月から先般の国会で通過いたしました例の女子教員あるいは看護職あるいは保母等育児休業法ができたわけですが、この法律制度そのものを現場の中に実際取り込みまして運営されます段階になったときに、果たして現在おります看護婦などで人材がいわゆるその代替要員を含めて確保できるのかどうか。  それからもう一つは、これは私は非常に単純な計算をしておりますので、給与そのものは要するに無給だと、無給のたてまえをいたしておりますから、財政、予算的には何とか代替要員確保はできるんじゃないかと思うんでございますけど、その辺の対策をどのようにお立てになろうとしておりますのか、現にどこまでお考えをまとめられておりますのか、お尋ねしたいと思います。しかも、これは国家公務員だけではございませんで、民間を含めた全部の看護婦看護職ということになってまいりますので、お尋ねしておきたいと思います。
  13. 石丸隆治

    政府委員石丸隆治君) まず看護婦の問題について私から御答弁申し上げたいと思います。  この育児休業期間中は、先生指摘のように、休業者無給でございますので、そういった意味において代替要員確保という問題は経済的には比較的解決しやすい問題ではなかろうかと考えておるわけでございますが、ただ、問題はこの人員の需給問題だというふうに理解いたしておるところでございます。それで、この休業期間中におきます代替看護婦確保につきましては、これは従来からも大体同じような問題があったわけでございまして、従来の産児休暇、いわゆる産休代替要員確保問題と同種の問題ではなかろうかと考えておるところでございますが、具体的には、従来個々の病院の努力によってこの解決を図ってきたところでございます。しかし、従来のこの産休代替要員と違う点は、今回のこの育児休業期間が非常に長期にわたりまして、一年間という長期間であるという点で、新しい問題が提起されていると考えるところでございまして、この問題に対しまして国といたしましては、従来から実施いたしております看護婦養成施設の拡充に努めるとともに、先ほど御説明申し上げました潜在看護婦活用、すなわちナースバンク活用によりまして積極的に代替要員確保に努めてまいりたいと考えております。
  14. 石本茂

    石本茂君 また話をちょっともとに戻しますが、そこでナースバンクのもうすでに紹介事業にまで入っているところがあるやに聞いているのでございますが、その辺はどの程度の成績を上げておりますのか、これをちょっとこの機会にお聞きしておきたいと思うんです。
  15. 石丸隆治

    政府委員石丸隆治君) 一体現在潜在看護婦がどのぐらいいて、その潜在看護婦の中でどのぐらい就業希望を持っているかということでございますが、これは昭和四十八年に厚生行政基礎調査という調査を全国的に実施いたしたわけでございますが、その行政基礎調査によります数字で申し上げますと、現在、未就業のいわゆる潜看護婦といわれる人が約十五万人、これはラウンドナンバーで申し上げますが、十五万人存在するわけでございまして、そのうち就業の意思ありと回答してきた人が十万人でございます。かようなこれは四十八年の厚生行政基礎調査によります大ざっぱな数字でございます。  それで、そのナースバンクが発足いたしましてからの実績でございますが、これは先ほど御説明申し上げましたように、昭和四十九年度からこれが発足いたしたわけでございまして、現在われわれの手元には昭和四十九年度の数字を持っておるところでございます。先ほど御説明申し上げましたように、この昭和四十九年度におきましては十二県におきましてこのナースバンク設置されたわけでございまして、この十二県の数字を申し上げますと、その県におきます医療機関からの求人数が二万四千十九名の求人申し込みがあったわけでございまして、これに対しましてその県におきましてナースバンク登録をされましたいわゆる潜在看護婦という人たちが一万六千六百三十五名という数字になっております。で、このうち実際にこのナースバンク紹介によりまして就職いたしました数が約六百名、かような実績になっております。
  16. 石本茂

    石本茂君 大変くどいことをまた重ねて申し上げますが、非常にこのナースバンクが実際フル活動することによって、かなり潜在看護力というものの引き出しができると私は信じている一人でございます。そうなりますと、さっきのいわゆる育児休業法等に伴います場合に、長期にわたりながら、しかも、仮に国家公務員の例をとりますと、これは定員の中には入り込めないだろうと、あくまでも非常勤というような、あるいはもっと悪い言葉で言えば仮の雇い人のようなかっこうになりますので、どうしても新しい新規卒業生を導入されるということは非常にむずかしいような気がしますので、もう一遍重ねてお願いしておきますが、ぜひこのナースバンクの本当にすばらしいといいますか、運営随所になされまして、しかも求人が非常に多いということ、就職希望者が多いということと、それから一部聞くところによりますと、非常にお医者様方の方からも求める条件が日々に高まってきているというふうに聞いておりますので、これを何とか、日は余りございませんけれども、来年の四月にはこの育児休業法を実際の職場の中に取り込んでまいったときに、余り苦労しないで後がまをさっと入れていけるような方策もお進めいただいておりますけれどもぜひお願いしておきます。そういたしませんと、せっかくこういう制度がつくられましても後がどうにもできないということで、法律はできたけどかえって職場の中に混乱が起きて、そうして看護婦同士の中に問題提起ができるということになりますと、何のための法律だったかということになりますので、そのことをくどいようでございますが、再三要望いたしまして一応看護の方は終わらしていただきます。  次に、保育のことでお伺いしたいのでございますが、あっちこっち歩いておりますと、行ったところで言われますのは、いまだに保育所は十分じゃないと、一体保育所施設整備、あるいは増強方をいつまでどういうふうにするつもりかということをさんざん聞かれますので、この機会局長さんからどういう状況になっておりますのか、またどういう方針をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。  それから、あわせまして、時間もありませんから、超過負担がまだまだ多いんだということを、これはまた行ったところで頭が痛くなるほど言われるわけでございますけど、私はかなり詰めていただいたと信じておったのでございますが、やはりいま申しましたように国はわずかばかりのものを出して、そうして全部しているようなことを言っておるけれども、超過負担分の方が多過ぎて、保育所運営については自治体はもうパンクしてしまったんだという、非常に厳しく、しかも聞いていて本当に申しわけないと思うような御意見がもう随所に出てまいっておりますので、その辺の実態につきましてもお伺いしたいと思います。
  17. 石野清治

    政府委員石野清治君) 御質問二つございましたけれども、最初の方の、第一点の保育所整備の問題についてまずお答えを申し上げます。  保育所施設整備につきましては、御案内のとおり、昭和四十六年度から五十年度にかけます五カ年計画によりまして一応百六十二万五千人の定員の施設整備するという計画で出発いたしたわけでございます。で、現状を見ますと、ことしの四月でございますのでまだ一カ年早いわけでございますけれども、五十年の四月の状況を見ますと、百六十七万六千九百六十人という定員の施設になりました。したがいまして、計画との対比で見ますればすでに一年早く達成をしたと、しかもその数は予定の数よりもかなりのオーバーをしておると、こういうような状況でございます。  しかしながら、問題がございますのは、地域的な実はアンバランスがややございます。特に、大都市を中心としました地域ではまだまだ足らないという声が強うございますし、それから大都市でなくてもやはり足らない地域もございますので、そういう地域的なアンバランスを考慮しながら、さらに五十一年度以降につきましても大幅な整備を図っていきたいと、こういうふうに考えております。  五十年度におきましては、御案内のとおり七百六十カ所前後の整備、さらに補正予算によりましてさらに若干の整備ができますので、これは大幅に伸びると思いますけれども、五十一年度におきましても、さらに社会福祉費全体の中で検討をいたしますけれども、それを上回る数字整備を図ってまいりたいというふうに考えております。したがいまして、御要望の点については大体満足できるのではなかろうかというふうに考えております。  それから、第二点の超過負担の問題でございますが、これは実は四十七年度までにおきましては定率補助というよりも定額補助方式で、非常に低い額でございました。これを四十八年度から定率補助方式に切りかえまして、その時点ではまた非常に額は低うございましたけれども、特に四十九年度におきまして厚生省と自治省それから大蔵省の三省合同実態調査によりまして大幅な補正をいたしました。四十九年度のアップ率は四五・六%、対前年度比ですね、というふうになっておりまして、約五割ぐらいの増をいたしまして、単価の問題につきましては一応これで実態調査の見る限りでは満足できるという状態になりました。さらに今年度も八・五%のアップをいたしました。したがいまして、現在では単価に関する限りは一平米当たりで申しますと、B地区の鉄筋で申しますと、八万四千円と、一平米当たり。それにさらに暖房費がつきますので、暖房設備費がつきますので約九万円を超えるというふうになったわけでございます。したがいまして、単価の問題は、再三申し上げましたように、一応まあ地域的な若干の問題ございますけれども、まあまあこれでいいんじゃないかなというふうに考えております。  問題は、超過負担一つの問題としまして、実は基準面積の問題がございます。施設側の方は全体で見ますので、単価であるか面積であるか、その辺については非常に誤解もございますけれども、単価の問題についてはいま申し上げたとおりで面積については確かにおっしゃるとおり、現在いかなる定員でありましても一人当たり五平米という面積でございます。これは実際に使ってまいりますと非常にまあむずかしい問題がございまして、来年度におきましてはこれを小規模のものにつきましてはさらに六平米にするというような予算要求もいたしております。これはぜひ実現をしたいなというふうに考えておるわけでございます。
  18. 石本茂

    石本茂君 よくその辺はわかるわけでございますが、やはり地域の声というのはなかなか、厚生省予算、後追いになってまいりますものですから、その声が厳しいことと、それからもう一つは、これは関連になると思うのですが、いまだに方々回りまして言われますのは、やはり保母さんの数が非常に足りない。要するに国の規定している二十人に一人とか六人に一人とかというものではもはや保育行政はまかり通れないのだろうということをさんざん言われるわけでございますが、来年度予算で保母の定員増といいますか、そこは考えてあったと思うのでございますが、これはどういうふうになっていくだろうか。これは詰めに来ておりませんのではっきり言えませんけれども、そのことと、もう一つ言われておりますのは、私は今年度保母の給与などかなり増強したと、本当はもう十分じゃございませんけれども、かなり、どう言いますか、是正されたと思っておったのですが、ある地方に参りますと、福祉関係でございますが、全然保母さんの給与は前年並みでありまして、そういうものがいまだ実現しておりませんということをごく最近聞いたのでございますが、これはむずかしい問題じゃございませんで、果たしてそういうことがあるんだろうかと、あんなにみんなでがんばって、行政当局努力されて、予算的には増額ができたはずなのに一体どういうことだろうかとちょっと不審に思っておりましたので、いま思いついたようなことをちょっとお聞きするわけですが、この辺、局長さん、どういうことになっていましょうか。
  19. 石野清治

    政府委員石野清治君) 第一点の保母の定員の問題でございます。これは御案内のとおり、実は社会福祉施設全体におきまして労働基準法の違反という状態が非常に多うございましたので、これを何とか解消しなくちゃならぬという形で、五十年度、五十一年度の二カ年におきましてこれらの違反を一掃するという考え方に立ちまして、特に保育所の場合につきましては保母の休憩時間の確保、これが違反の大半でございましたので、これに焦点を合わせまして、五十年度予算におきまして大幅な人員増を図ったと、さらにこれを五十一年度におきましてもこれについて、まあ五十一年度末には何とかそういうものを解消したいという形で実は予算要求をいたしております。したがいまして、そういうものが一番最もいま保育所におきます保母の充足の基本原則でございますので、それに焦点を合わせまして現在努力をいたしておりますし、それから来年度もそれについても努力をいたしたいというふうに考えております。まあ保育所の方がいろいろ将来の保母の定数につきまして、現在の割合が非常に低いとかいうことをおっしゃることがございますけれども、これは現在の時点で言うべきことでなくて、むしろ私は現在の労働基準法の違反の状態をまず解消すると、それに全力を挙げるという形で進んでいきたいというふうに考えております。  それから第二点の給与の問題でございますが、これはむしろ最も一番問題になりますのは、幼稚園の教諭とのアンバランスからくるいろいろな問題がございます。御存じのとおり、措置費の面では、一応現在の行われております施設の平均単価というものを取り上げまして、それを国家公務員に引き直して予算措置をいたしておるわけでございまして、そういう面につきましては、一応幼稚園の教諭との関係につきましては、実は今年度六%の上積みをしましたことによりまして、おおよそその差額は縮まったというふうに考えております。したがいまして、不平が出ますのは、恐らくその措置費ではそういうふうに考えておりますけれども、実際に支給する場合には、たとえば民間の場合でありますと民間の給与の支給規則等によりましてやりますので、それを下回るということがあり得るので、そういうことからのせいではなかろうかと思うわけでございます。そして予算上の面におきましては一応の措置をしているというのが実情でございます。
  20. 石本茂

    石本茂君 いま局長申されているとおりなんですが、日本じゅうあちこちうろうろしておりますと、やはりびっくりするようなことを聞くわけでございますので、個所数も多うございますので大変だと思うのですが、まあ公的なものについてはこれは一応懸念はございませんが、民間のものにつきまして、特に福祉関係のものにつきましてはときどきには実態をお調べ願いまして、そして働く人が決して満足の状況じゃない中で苦労しておられますので、まあ国がここまで保育事業というものに気を使っていてくださるということ、特に児童福祉法の根っこに従った対策が進んでいるのだなあと思っていただけるような、やはりひとつ行政上の措置を私はお願いしたいわけでございます。で、先般もこれはある保育所の所長さんが言われたことですが、生まれた子供は国が保育する責任があるじゃないかと、それなのに一体何だということで、私、ずいぶんおしかりを受けた。で、私はそれに対しまして、保育に欠ける子供を保育するというのがこれがたてまえでございまして、生まれた子供を片っ端から全部国が保育しなきゃならぬという責任ということになるとこれはかなり問題が違いますがねというような話し合いもしたわけでございますが、どうかせっかくの大事業でございますので、国民の皆様、特にその事業に参画される保母さん方が、あるいは保育所を経営なさる皆さんが納得というわけにはまいらないと思うのですが、ある程度よい仕事をしているんだということと、皆さんに喜んでおもらいできるためにはここまで国の努力も出てきているということを、くどいようでございますが、やはりわからせるように、わかっておもらいできるようにぜひ行政上の御指導もお願いします。  最後に、これは私の要望でございますが、さっき看護婦についても申し上げましたように、このたび保母さんについても育児休業制度が導入されるわけでございますので、四月一日以降に、しかも公的なところだけじゃなく、いま話のあります民間福祉全部含めてでございますので、その辺に万遺漏なきようにということは、初めてのときでございますから言う方が無理だと思いますけれども、ぜひ手を打っていただきたい。そうして、こういうふうな対策はもう講じてありますよということをその年度に入ります前にぜひお示しいただきますように御手配方を心の底から私はお願いしたいわけです。そうじゃございませんと、人材確保をめどにして法律をつくっておきながら、人確——人材確保どころか、もうさっき申しましたように、あることが情けない、ない方がよかったというようなことが現場に出てまいりませんように、補充の問題につきましても、あるいはまたその他の対策につきましても、特段の御配慮をお願いしたいと思います。本日そのことについてお聞きするはずでございましたが、時間もございませんので、要望にとどめます。  なお、大臣せっかくお出ましでございますので、いま私が申してまいりました育児休業制度など新しいものがこのたび事業の中に入ってまいりますので、それらにつきましても大臣の御所見と申しますか、お考えになっておられますことを、簡単でよろしゅうございますので、一言お聞かせ願いたいと思います。  以上をもちまして私の質問を終わります。ありがとうございました。
  21. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 育児休業制度の実施に関連をいたしまして、その代替要員確保等については万全の措置をとるよう役所として十分の努力をいたしたい、かように考えております。  また、ただいま先生仰せの保育所超過負担あるいは人件費等の問題につきましては、超過負担につきましては、いま児童家庭局長が申し上げたとおり、できるだけ改善を図っているところでございますが、なお問題もありますし、また過去におけるいろいろそうした不足感の何というんですか、惰性というものがなかなかイメージが払拭できないという一面もあろうと思われます。また、現実にやっているお仕事と国の基準との間の違いというものが端的にこれが超過負担だと受け取られている面もあろうと思います。したがいまして、その辺についてはいろいろと説明をいたし、PRをいたして、よく問題の所在を摘出をいたし、この点について劣る点、まずい点があるならば、私どもとしては処置をいたしていかにやなるまいと。  それから人件費につきましては、私はかねがね民間回復施設における措置費のあり方、そして人間の配置、これについても定型が確たるものはございません。そして人件費措置費の中に含まれておる、しかもその支払いがある程度施設長に任されているといったようなところにまことにどうもその問題があるようであります。ある意味では先生がいまおっしゃったように、せっかくの国会なり政府の親心が末端に通らないという面がございます。この点については将来とも考究をいたさなければならぬと思っているところでございますが、何とか事実上そうした不都合あるいはわれわれの親心というものが末端に通らないということのないようにいろいろと今後措置をいたさなければならぬ一つの問題点を先生はいみじくもここで御披露あったというふうに理解をいたします。これに対しわれわれとしてはできるだけの対処をいたしたい、かように考えております。
  22. 浜本万三

    浜本万三君 私はきょうは大久野島の毒ガス被害者援護対策の問題と、それから中医協をめぐる問題の二つについてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に大久野島の毒ガス障害者の援護対策の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。これはもう御承知だろうと思うんですが、広島県の竹原市の大久野島というところに、旧陸軍の東京第二兵器廠忠海製造所というのがございまして、そこで毒ガスをつくっておったわけでありますが、その毒ガス製造に従事した方たちが戦後三十年をたっております今日におきましても十分な援護対策が行われていないために、その後、社会的にも医学的にも後遺症に悩まされておるような状態になっておるわけなんです。したがって、その援護対策が緊急な課題になっておるんではないかというふうに思っておるわけです。そういう立場から若干お尋ねをいたしたいというふうに思います。  まず第一にお尋ねをしたいのは、大久野島毒ガス障害者の援護対策の現状、さらにその対象者の現在の状態がどういうふうになっておるかという点につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
  23. 岡田愛己

    説明員(岡田愛己君) お答えいたします。  広島県の竹原市の大久野島に旧陸軍の東京第二造兵廠忠海兵器製造所がございまして、その従業員でガスの障害を受けておられる旧令の共済組合員の方々につきましては、昭和二十九年以来行政措置といたしまして、国家公務員共済組合連合会をして種々の救済措置を行わしておるわけでございまして、その費用は全額もとの事業主である国という立場で負担いたしております。その措置内容でございますが、ガスの障害に起因された疾病、そういう疾病にかかられた患者の皆様方につきましては、障害年金、災害年金者の遺族一時金、あるいは障害一時金というような金額の給付、あるいは療養を希望される方につきましては、その療養費、それから医療手当、特別手当、それから介護を要する方につきましては介護手当という手当を支給いたしまして一応の対策を講じておるわけでございます。  なお、いま申し上げました患者の皆様方ほど重症ではございませんが、何らかの障害があり得る方につきましては、一定の傷病を限りまして、これは主としてガスに起因したという確度の高い病気でございまして、慢性気道炎とかあるいは同患者に発生いたしました気道がんとか、あるいはそれに併発した一定の疾病、こういうものにつきまして、こういう疾病にかかられた方々につきましては、医療手帳というのを交付いたしまして、医療費の自己負担を国において肩がわりする、あるいは健康管理手当、それから介護を要する方については介護手当、こういうものを給付しております。  なお、五十年度十月からでございますが、こういう一度かかられた病気が治癒されましたけれども、なお再発のおそれがあると認められる皆様方につきましては、新たに保健手当を健康管理手当のかわりに給付するという制度を新設いたしております。また、これとは別でございますが、四十九年以来、毎年健康診断をこの方々についても実施するように措置いたしております。これが現状でございます。が、昭和五十年七月末におきまして、いわゆる重症の方々、俗にわれわれが認定患者と言っております、一番最初に言及いたしました患者の皆様方の数は三百三人、それからそれ以外の一般の障害の方、これが千七百五十九名というふうに把握いたしております。  以上でございます。
  24. 浜本万三

    浜本万三君 厚生省の方に伺うわけなんですが、いま大蔵省の方から御答弁がございましたのは旧令共済の組合員、毒ガス障害者というのはそれ以外にもあると思うんですが、それは全部厚生省の所管になっておるというふうに聞いておるんですが、その現状並びに援護措置についてお伺いしたいと思います。
  25. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 旧令共済の組合員以外の毒ガス業務従事者は、六百七十九名と報告されておりまして、その内訳は、動員学徒が四百八十八名、女子挺身隊員が百二名、臨時工が八十九名でございます。  これらの方々に対しまして、厚生省は四十九年度から健康診断を行うことにいたしました。また五十年度、本年度からは医療費支給をすることにしたわけでございます。なおそのほか、ガス障害に関する調査研究を行っております。  これらの方々の健康状態でございますが、四十九年の健康診断では約五百六十名の方が受診をなさっておりまして、その内訳を見ますと、慢性気管支炎が一番多いわけでございますが、二三、四%、その次が高血圧でございまして、一八、九%、その次は貧血ということで、これは数%になるわけでございますが、そのような健康状態でございまして、大まかに申しますと、約六割弱の方方が何らかの健康障害をお持ちになっているということでございます。しかし、それらの疾患全部が毒ガス関係があるといったものではございません。
  26. 浜本万三

    浜本万三君 毒ガス障害者の健康状態なんですが、私も最近広島県庁の方から、五十年三月に発表されております広島大学医学部の西本教授の調査書を見たのですが、それによると、ガス障害者の健康状態というのが予想以上に悪い、こういう点を承知したわけでございます。たとえば、先ほど局長からお話がございましたように、一般的に言えば健康者よりも病気または病気がちの者が五〇%以上おるとか、あるいはまた最近まとめられた五百九十一の死亡例の内容を見ますと、そのうち約百七十人、割合から言えば四〇%近い者ががんの障害があったという所見、さらには未来世代に相当な影響がある、これも三九・九%の子供、孫たちは病気もしくは健康でない、こういう統計が出ておるわけなんでございまして、これは組合員であろうが非組合員であろうが、ガス製造に従事した方々に全体に出ておる現象だというふうに思うわけなんです。つまりこれは一般の国民の皆さんの健康状態よりも異常に悪いということが思われるのですけれども、その点、厚生省の方はどのようにお考えでございましょうか。
  27. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) まず当時の毒ガス製造業務に従事した方々の中で、旧令共済の組合員の方々はより危険な業務に従事をされたわけでございます。動員学徒、女子挺身隊員などは余り危険のない業務に従事をなさいました。したがって、そういった意味からも健康状態は旧令共済の組合員の方が悪いわけでございます。そのほかに年齢構成が組合員の方が老齢化しておりまして、学徒等は若うございますので、そういった年齢の関係もございますが、組合員の方が健康状態は悪いわけでございます。また、こういった方々の健康状態の一般の方との比較でございますけれども、こういうふうな健康調査をいたしますとどうしても若干有病率、罹患率等は高く出てくるというのが従来の調査の経験から出ております定説でございまして、そういった点もよく勘案しながら評価しなければならないと思うのでございますが、現在のところでは、ただいま先生が御指摘になりましたように、一般の方々よりも健康状態あるいは死体解剖の結果等が少しぐあいが悪いような状態になっておろうかと思います。しかし、これも健康診断等始めましてまだ一年半程度しかたっておりませんので、さらに数年間よく観察をし、さらに一般の方々とも比較検討をしなければはっきりした結論は申し上げられないと考えます。
  28. 浜本万三

    浜本万三君 局長は、いま一般の組合員と非組合員とのその後の健康状態というのは、多少差はあるにしても、一般の国民の皆さんの健康状態よりは悪い、こういう点についてははっきりした認識を持っておられると思うわけでございます。つまり、一般の国民よりもこの種仕事に従事した非組合員の健康状態が悪いということになれば、私は、もうそろそろ戦後三十年たった今日でございますから、非組合員も組合員と同じような援護措置を講ずべきではないか。もうその時期に来ておるんじゃないかというふうに考えるんですが、その点いかがですか。
  29. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 先ほども申し上げましたように、非組合員は当事危険業務に従事していないわけでございます。一般的な物件の運搬とかあるいは風船爆弾ののりの張りつけだとか、そういった安全な業務に従事するように当時計画をされていたわけでございます。そういう関係で、公平の原則等から考えましても、また医学的な観点に立ちましても、組合員と非組合員が同じであるということはおかしいのではないかと考えております。
  30. 浜本万三

    浜本万三君 それからもう一つ、たとえば人夫とか国防婦人会等の動員があったというふうに当時の従事者の記録に残っているのがあるんですが、その点はいかがですか。
  31. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) そのような御意見が最近出てまいりましたので現在調査をしておる段階でございます。
  32. 浜本万三

    浜本万三君 その種問題の調査はまだ残っておるというふうに思うのでございますが、いずれにいたしましても、戦後三十年たった今日でございますので、しかも一応四十九年度に調査した健康状態もよくないという結果が出ておるわけでございますから、ここ数年のうちに調査検討をして結論を出すというお考えのようでございますが、早急に検討をしていただきまして、援護措置が講じられるような方途をとっていただきたいというふうに思うわけでございます。  それにいたしましても、組合員と非組合員との援護に差が出るということは、私は、厚生省の厚生行政から言ってよろしくないというふうに思うんです。これを同じ立場で援護していくということになってまいりますと、現在大蔵省と厚生省に窓口が二つあるわけなんでございますが、これは一本にすべきではないか。しかも援護の仕事をなさっておる厚生省がその所管になるべきではないかというふうに思っておるわけでございます。先ほど大蔵省の話を伺いましても、国の費用で全部援護措置を講じておるというお話がございました。さすれば、厚生省が窓口になってもその性格は変わらないというふうに思うのでございますが、この点はひとつ厚生大臣の方から、援護の基本的な行政になると思いますので、一本化すべきだと思いますけれども、その点いかがでしょうか、お答えをいただきたい。
  33. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 大久野島の毒ガス被害者、忠海製造所における問題、かなり前から、いろいろ私も議員時代からタッチをいたしておりますが、どうも実態の把握がまだ十分できておらぬようであります。それからまた、いわゆる旧令共済の組合員と、そうでない方々との間の作業の実態、あるいは今日の健康状態等、いま少しく精細に調べなければ施策の確立というものは私はできないものというふうに思いますが、まあ、できるだけこれらの調査等は急いでいきたいというふうに思います。しかし、今日現在までの時点においてはこの間に若干のやはり現実面における違いが、被害程度においてもありますし、施策の程度においてもまた違いが出てきているということで、今日の実態を踏まえた程度では、私はそう国が旧令共済組合員以外についてあこぎななにをとっているとは思えないのでございますが、今後鋭意これらの点について詰めてまいりたいというふうに思います。  なお、窓口の一本化でございますが、これはやはり旧令共済の場合は、使用者としての国、これはやはり大蔵省が旧令共済を扱っている以上、私はやはり大蔵省さんがおやりになるのが正しいのではなかろうか。そして、この制度と、旧令共済がやっている措置と、わが方が今後取り上げるであろう措置というものがどういう形になりますか、そうした中でもって勘案をいたすべきで、現状においては、私はやはり旧令共済の組合員については大蔵省が使用者である国の立場、そしてそれは大蔵省の主計局の共済課がおやりになっているというのは私はやはり実態を反映した制度であろうというふうに思っている次第であります。
  34. 浜本万三

    浜本万三君 この原爆援護法のときに、一番問題になっておるのは国との身分関係、こういうことが一番問題になっておったのですが、この場合、いま大臣からお答えいただきましたように、はっきり旧陸軍工廠であるということははっきりしておるわけなんです。そしてその援護内容を見ましても、たとえば国の援護措置のような援護内容があるわけですね。たとえば障害年金とか、災害年金遺族一時金であるとか、障害一時金であるとか。これは内容を見るとまだ原爆より少し足りないところがあるのじゃない、だろうかというふうな気がするわけなんです。果たしてこの毒ガス障害者の援護対策というものは社会保障の領域なのか、国家補償の精神に沿っておるのかどうかということはどうしても私ども理解ができないのでございますが、これはどのように理解したらいいでしょうか。これは大蔵省の方と厚生省の両方から伺いたいと思います。
  35. 岡田愛己

    説明員(岡田愛己君) お答えいたします。  旧令によりますところの共済組合におきましては、それが現実に運営されておりました当時、その事業の一環としまして、組合員の公務上の災害に対して何らかの措置をとるというような事業を行うというのが一般でございまして、で、現在旧令共済関係者につきましてのガス障害者、これに対する措置を講じています趣旨は、そういう旧令共済組合の精神とか考え方を踏襲いたしまして、もとの使用主である国という立場におきまして、旧共済組合の公務上の災害を補償する、手当てをする、こういう形で便宜旧令当時の規定を準用いたしまして救済措置を行っておるわけでございます。そういうことでございますので、いわゆる国家補償といいますか、そういう一般的な見地、これの救済措置を行っているというふうには沿革的にも現在の時点では考えていないわけです。
  36. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 組合員以外の方々につきましては、先ほども申し上げましたように、当時安全な業務に従事していたはずでございますけれども、いろいろと当時の学徒等が健康上の不安をお持ちになり、御心配をなさっているというようなところを着目いたしまして、社会保障の一環といたしまして救済措置を講ずるという制度を推進しておるところでございまして、今後とも国家補償制度をつくって適用するという考え方を持っておりません。
  37. 浜本万三

    浜本万三君 いずれにしましても、国際条約でつくってはいかない毒ガスを製造しておったと、そしてその製造工場に従事しておった相当数、現在生きていられる方が三千に余るんじゃないかというふうに思いますけれども、毒ガス障害を現在受けておる。しかも、その六割程度の者が健康不安を訴えておるということになってまいりますと、国家との身分関係もあり、かつまた非組合員は特別な国家の命令によって動員されたということになってまいりますと、いずれにいたしましても早急に援護の体制を確立しなきゃならぬと、その方法はやっぱり国家補償の精神に基づく特別立法を制定すべきではないかと、こういうふうに私は思うんでございますが、重ねて大臣の所見を承りたいというふうに思うわけです。
  38. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 旧令共済組合員とその他の方々の施策の違いは、原爆でいろいろ議論があったようなああいう観点からのものではないと私は理解をいたしております。要するに、当時の作業の実態、そして今日における健康被害の実態に着目をして、そうした施策が今日違っているものというふうに理解をいたしたいと思いますが、しかし旧令共済でやっている措置というものは、当時の使用者としての国が自分で使っている者に対していろいろとめんどうを見るというような考え方から出ているということだろうと私は思います。毒ガスというものの国際法上のいろいろな扱いというものが、果たして直ちに国家補償に法理的につながるかどうか、国内法における国家補償国際法における違反兵器、この間の法理を今日にわかに即断することができませんが、要はこうした人々の今日置かれていた健康並びに精神上のいろいろな特別な事態に対応し、どう措置をするかということが今後の課題であろうというふうに思っている次第であります。
  39. 浜本万三

    浜本万三君 いずれにしましても、生き残っておられる三千人余りの方の不安を除去するというのが基本的な考え方でなくちゃならぬというふうに思いますので、そういう点につきましては、仮に国家補償による援護法はできなくっても、着実に毎年政府の具体的な積極的な措置を講じていただくことを私は特に要望したいと思うんですが、とりあえず、ガス障害者の皆さんからの要望もすでに関係省庁にも上がっておるというふうに思うんですが、その要望にこたえ、かつまた政府の積極的な施策を期待いたしまして、さしあたり五十一年度はどういうことを考えておられるのだろうかということが問題になると思います。  そこで、大蔵省と厚生省の方からそれぞれの担当の所管につきまして、五十一年度の計画などについてできれば説明をしてもらいたいというふうに思います。
  40. 岡田愛己

    説明員(岡田愛己君) 大久野島のガス障害者の方々につきましての対策は、昭和二十九年以来年を重ねまして逐次整備をしてまいっておるわけでございます。五十年度におきましても金額の引き上げなり、あるいは所得制限の緩和なり、撤廃なりというようなことをやってきておるわけでございます。五十一年度につきましては、現在、実は具体的な問題を含めて検討作業を進めているという段階が実態でございます。何さま他制度との関連、バランスがございますので、まだ結論を得ておりませんので、その内容についてはまだお話でき得ない状況でございます。
  41. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 明年度は、従来からやっております調査研究、健康診断をさらに充実すると同時に、慢性気管支炎あるいはそれに関連した心臓等の障害、こういった一定の患者さんにつきましては原爆特別措置法健康管理手当金に類したようなものを制度化してみたらどうであろうかと考えております。
  42. 浜本万三

    浜本万三君 大蔵省の方へちょっと伺うのですが、僕も調べてみてよくわからぬのですが、原爆特別措置と、それから毒ガス障害者の違いの点はどういうところにありますか。  それからちょっともう一つ。さっき保健手当をことしから実施するようになったということなんですが、支給条件をついでに教えてもらいたいと思います。
  43. 岡田愛己

    説明員(岡田愛己君) お答えいたします。  現在の時点で、ガス障害者と原爆被害者の方々の場合の措置の違いでございますが、われわれが調べた範囲では、ガス障害者につきましては先ほど申し上げましたように、障害年金あるいは障害一時金の支給あるいは遺族に対して災害年金遺族一時金、こういう一時金とか、年金制度を持っておりますが、これに対しまして原爆の方には葬祭費というものがあるようでございます。この違いは先ほど来申し上げておりますように、われわれの措置の、考え方のたてまえが旧令の共済組合の、当時のそういう措置をできるだけ準用するという立場からおのずから違ってきている。また、国家補償というよりも元の使用主という立場で行っている、こういうところに一つの差が出てきているのだろうと思います。  それから、お尋ねの第二点の保健手当でございますが、ただいま浜本委員の方から御指摘のありましたように、本年の十月から新たに措置いたしておるわけでございます。この方々支給状況と申しますのは、一般の比較的軽い方々で、一般障害者とわれわれ言っておりますが、そういう一般障害者の方々のうち、すでに病状が去って、一応治癒された、そういうふうにわれわれの指定いたします医療機関から認定される、しかしながら、やはり再発のおそれが強い、こういうことで、指定医療機関から認められたそういう人々につきまして、健康保全という観点から月六千円を支給するということで、これは原爆被爆者に対します保健手当の例をしんしゃくして定めておるわけでございます。なお、この保健手当を受給され得る方は健康管理手当を支給されない方々というふうな要件もございます。したがって、併給はございません。
  44. 浜本万三

    浜本万三君 時間がないので、これ以上お尋ねをすることはないんですが、私の手元に、ことしの七月七日に大久野島毒ガス障害対策連絡協議会の、つまり被害者の皆さんから要望が出ておるんですが、その中を見ますと、窓口一本化の問題を初めとしまして、障害者に対する諸手当の増額及び改善、医療制度の充実、それから疾病制限の緩和、検診の徹底及び保養制度の確立、その他ガス障害者に対する制度の拡充等々、たくさんの要望が出ておりまするし、また広島県からも一定の要望が同様に出ておるわけなんでございます。したがって、先ほど局長のお話では、二、三年健康診断調査をした上でないとさらに積極的な姿勢が出せないというふうな趣の答弁があったのですが、これじゃ生ぬるいというふうに思います。できるだけ、二、三年と言わずに五十一年度予算ないしは来年、再来年、一、二年のうちに問題の解決を図るように積極的な施策を講じていただくように要望したいと思うんですが、重ねて大臣からそれに対する決意を伺いましてこの問題の質問を終わりたいと思います。
  45. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、これにつきましては、こうした人人の当地における作業の実態並びにただいまにおける健康被害等を把握をいたすことが今後の施策を策定する上にぜひ必要なことでございますので、そうしたことについて努力をいたしたいと思っております。故意にこれをおくらせるようなことは考えておりません。
  46. 浜本万三

    浜本万三君 次に中医協をめぐる諸問題についてお尋ねしたいと思うんです。  実は大臣、十七日の各朝刊を見まして、大臣と武見医師会の会長が並んで写っておるんですが、えらい大臣がしょんぼりしたようにいずれも写っておるもんですから、実はきわめて遺憾に思っておるわけなんですよ。それで、中医協をめぐる問題が、医療費値上げの問題にからみまして非常に重要な時期に来ておるもんですから、若干この問題を伺いまして、大臣のひとつ決意を促したいというつもりです。  そこで、まず最初にお尋ねをいたしたいと思いますのは、国民医療確保のためにも適切な診療報酬が必要であるということは、私もよくこれは承知をしております。ところが、この診療報酬審議いたします中医協が長い間中断をされておるし、また、やっとこの間開かれたと思いましたら原則問題でまた対立をして中断をしておる。こういうことになってまいりますと、医療に対する国民の期待が強ければ強いだけにやっぱり心配になってくるというふうに思うんですが、その中断をしておる原因というのがなかなか堂々めぐりでよくわからない点が多いと思います。大臣は中断の原因をどのようにとらえていらっしゃるか、まずそこから伺いたいと思います。
  47. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 中医協ができるだけ速やかにこれが円滑に審議が行われ、できるだけ速やかに妥当な答申をいただきたいものであるというふうに思っておるわけでございます。  ちょっといま、最初先生の冒頭のお話で、しょんぼりしたとか、あれはそういうことはございません。いろいろなスナップをたくさん撮った中に、私が式次第を読んでおったのと、片一方が顔を上げておったのとの間を撮ったのでありまして、決してそういうことはありません。現に内情を話しますと、あそこに出てこれから式が始まりますというときにはみんなよそいきの顔をするもんですから、そういう場面を撮ったわけでございまして、あの前に、控え室では大分談笑を交したという事実がございますから、決してさようなことではございません。  ところで、中医協ですが、私も、従来の経緯を踏まえまして、その前にいわゆる中医協委員辞任届けというものがございましたから、したがって、これについてはひとつ翻意を求めるべくいろいろ努力をいたし、それが御翻意あったわけであります。そこで、かねがねの経緯にかんがみまして、そろそろ診療報酬改定というものをやらなけりゃなるまいかと思いまして、円城寺会長等に御相談もいたし、お願いをし、円城寺会長が九月九日に招集をいたしたわけでございます。ところが、招集いたしましたところが、いろいろと医療側あるいは厚生省側の今日までとってきた施策あるいは態度について支払い側においてはいろいろと御意見がございます。一部には医療側にも御意見がございます。したがって、非常に御不満の空気がことに支払い側の間に出まして、審議は、当時、当日一時間半ぐらいだったと思いますが、それ以来、次の開会の日にちを設定することなしに終わったわけであります。その後、支払い側は、私どもに対しまして中医協再開の要件としておおよそ三つのことを言ってまいりました。要するに、中医協の正常化を確保していく、特に医療側に確保してもらいたいということであります。もっとわかりやすく言えば、いろいろな理由を構えて中医協の委員をおやめになるとかあるいは出てまいるとかいうような反復継続の過去の歴史をここでもって終結をいたしていただきたい、分区点を打っていただきたいといったような御趣旨であったようであります。第二は、薬価調査と医業経営実態調査を確実にやることをしていただかなければわれわれとしては審議に入れぬということを言ってまいりました。第三は、歯科の差額徴収問題等々につきましていろいろと施策をこの際策定をするような作業をしていただかなければ困る、こうしたことがない以上私どもの方では諮問をしてもらっては困ると、こういうことを、私どもの方から諮問をしてもそれは応じ切れない、実質審議には入れないと、こういうことであったようであります。実質審議の前に、いろいろとわれわれの今日までとってきた態度あるいは医療側の態度等々についていろいろと御意見があるそうでございまして、そうしたことについていろいろと審議をいたすことはこれは別であるが、諮問案の実質審議には入りがたい旨の表明がございました。そういうことで、この三つの条件と言われるものについていろいろ関係当事者の間でこれをどう処理をいたすか、どうこたえるかということについていろいろ協議をいたし、関係方々とも御相談をいたしましたが、現在までのところ、こうしたことについてこれに対応するようなお答え、あるいはそれに対してある程度こたえるといったような具体的な事実が出てこないものでございますから、したがって停とんしたままであるというのが今日までのおおよその実態でございます。
  48. 浜本万三

    浜本万三君 いずれにいたしましても、支払い側委員と診療側の委員の基本的な対立というものが先ほど大臣からの御報告にあったわけですが、それにいたしましても、武見会長の中医協の正常な運営をめぐる問題につきましての発言は、相当われわれから見まして不穏当な点が多いんじゃないかというふうに考えるわけなんでございます。しかし、この事態収拾は、あくまでも、やっぱり厚生大臣がおやりにならないとなかなかむずかしいと私は思うんです。  そこでもう一回大臣に御答弁をいただきたいと思うんですが、年内に事態収拾のめどが立つのかどうなのか。また事態収拾をするためには特にどういう点について、どちら側に譲歩を求めなければならないというふうに思っていらっしゃるのか、その点むずかしいかもわかりませんが、できるだけどんずばり答えていただきたいと思います。
  49. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 中医協の円滑なる御審議をもたらすということは、これはもとももと診療報酬改定を合法的かつ合理的にいたすということのための必須の要件であるわけでありまして、診療報酬改定をできるだけ速やかに、合理的にやりたいというふうに考えている私にとっては、そのことはまことに願ってやまないところであります。しかしもともと中医協というものは、これは私の診療報酬改定に関する権限というものを勝手に行使をすることのできないというふうな仕組みになっている独特な諮問機関でございまして、そのことはかつて裁判所等においても判示されたところでございますので、したがって私は診療報酬改定を速やかに合理的、合法的にやりたいという意味においてこれの正常化というものを非常に心配をいたし、及ばずながら努力をしているわけでございますが、本来中医協というものは私の諮問機関でありながら私の外にあるものでございますから、したがってこれについての正常化をあらゆる努力をいたしますが、中医協の、三者構成における中医協の内部でいろいろまた御努力を願わなければならないということは、これは論を待たないところであります。かような意味で中医協の正常化については私もお手伝いをいたし、また私も率先してやりますが、やはり中医協の会長以下のいわゆる公益委員方々の御努力も願わなければなりますまい。それからまた中医協における三者構成のうちの一号、二号の方々のいろいろな御理解と御努力も私は願わなければならないものというふうに思うわけであります。ただいままでのところこの一号、二号の方々はそれぞれ自己の主張を強調するだけでございまして、これについていろいろと歩み寄りを見るというような傾向が出てきませんものですから、したがって停とんをしたままである。何とかそこのところをひとつできるだけ話がセットができるようなかっこうをしていただきたいというふうに私はいろいろとお願いをしているわけですが、その域にまだ達しておらないということでございます。
  50. 浜本万三

    浜本万三君 一号、二号委員が自己の主張をいま双方主張し続けておるということなんですが、問題はそうすると中医協の構成に問題があるのかということもひとつ考えるわけなんでございますが、私がまあ前から厚生大臣のこの種問題について見識の高い点を伺っておるんですが、その中で中央医療協議会の解体とか改組とかいうことも時として口にされておったことがあるやに思うんですが、現在の中医協は一号、二号委員がそれぞれ八名で、公益委員が四名という構成なんです。私は行政委員会にもたびたび出たんですが、労働委員会というのは三者構成になっておりまして、公益・労・使委員ともこれは同数だということなんですが、中央医療協議会の場合、公益委員が非常に少ない。一号、二号委員の発言が非常に強くて公益委員の調整がうまくいかないということになってくると、もとへ戻りまして、大臣がかねてから言っておられた改組とか解体とかいうことがまた頭に浮かぶのでございますが、中医協の改組、解体について、構成を含めまして何か思っていらっしゃることがあれば大臣のお考えを聞きたいと思うのです。
  51. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 私はただいま厚生大臣でございますから、したがいまして現在法律に厳然として規定されている中医協というものを尊重いたし、この中医協というものの機能を十分に生かして、診療報酬の改定等をいたすことについては、万々これにたごうことのないようにいたさなければならないという所信でございます。立法論的ないろいろな問題については、改善策等については私、在野時代に私の所信を表明したことをいまさら私は隠すわけではございませんが、これは当時私が自由な立場でいろいろと考えておったことを表明をいたしたわけでございますが、ただいまの状態、置かれた立場としては、中医協の制度というものをこれを十分に尊重したし、この中から問題の解明をいたさなければならないという所信については、これは間違いのないところでございます。
  52. 浜本万三

    浜本万三君 いずれにしましても、こういう三者構成の行政委員会の委員の基本的なあり方、あるいは回りの者の基本的なあり方といたしましては、結局相手の人格を傷つけるような発言をすると、これはどうにもならないところにくると思うのです。私は今回の中央医療協議会の各種の批判の中で、特に武見会長のその種発言があったときから、さらに何といいましょうか、混乱が非常に強くなっておるというふうに思うんですが、それに対して大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  53. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) いま中医協を先生さっきおっしゃるとおり何とか正常化をし、これが円滑に運営するように私は努力中でございます。したがいまして、各当事者のいろいろな御発言等を私の立場であれこれ申すことについては、そうしたことの目的に私は遠くなるゆえんだろうと思いますから、できるだけ論評はいたさない方がよろしいと思っていますが、要はそれぞれの立場で御意見が違う場合があったといたしましても、中医協そのものを円滑にこれを運営するように、各当事者はそれぞれ留意し、努力をいたしていくというのが私は一番いいんじゃないかと、こういうふうに思っております。
  54. 浜本万三

    浜本万三君 まあ、できるだけひとつ早く中医協の正常な運営ができるように、一層の御奮闘をお願いしたいというふうに思います。  次は、中医協正常化の第二の理由の中に、支払い側委員から薬価調査あるいは経営調査の問題について特に要求されておるということなんですが、私もこの診療報酬を決める場合に、薬価とかあるいは経営事情がどうなっておるかということは、当然前提条件として把握すべき問題だというふうに思っておるわけです。その中のこれは第三の問題でございましたか、歯科の差額徴収の問題でございますか、歯科の差額徴収の問題は、これもまたことしの春以来大きな社会的な問題になっておるわけでございます。私がこの資料を入手して、そういう点についてどんな問題があるかということをいろいろ調べてみますと、「歯科診療等苦情・質問相談受付及び内訳表」という資料を見ましても、歯科の差額徴収に関する苦情がもう圧倒的に高い数値を見ているわけです。そうなってまいりますと、一号委員が主張しておりまするように、歯科の差額問題の解決が医療審議一つの前提条件になるというふうに思いますので、この点は早急に解決すべき社会問題だとするならば、この中医協の正常化の問題は別にしましても、厚生当局としてはこの問題に対するきちっとした考え方を出すべきだというふうに思うんですが、この点いかがでございましょうか。
  55. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 歯科差額の問題につきましては、先生から御指摘のとおり大きな社会問題になっておるわけでございまして、一部患者の納得を得ることなく差額徴収が行われておったというような事態にかんがみまして、四十九年、昨年の三月に歯科差額問題につきましての基本的な通知を出した次第でございます。さらに本年の三月におきましては、各知事に対しまして、苦情相談の窓口を設置するように対処をいたしてきた次第でございます。最近の苦情相談なりあるいは処理の件数を見てまいりますと、一ころよりはやや鎮静化してきたというような点がうかがわれるわけでございまして、ちなみに本年の三月の質問の件数が三百五十一件に対しまして、本年の七月では百十一件、それから苦情につきましては、四百七十二件に対しまして七十六件というふうに、逐次質問なり苦情件数というのは減ってきているという数字があらわれている次第でございます。しかしながら、この問題は非常に大きな問題であるわけでございますし、基本的にこの問題の解決を図らなければいけないわけでございます。そういうような意味におきまして、すでに中医協におきまして、厚生大臣の方からこの歯科差額の問題の解決につきまして諮問をしているというような状態であるわけでございます。中医協の場におきましても歯科部会が設けられまして、歯科部会におきましてこの歯科差額の問題を論議しておったというような状況でございます。現在、中医協が中断されているわけでございますので、私どももその意味から見ましても、中医協が一刻も早く再開されまして、この歯科部会の再開を待ちましてこの問題の結論を得たいというふうに考えている次第でございます。
  56. 浜本万三

    浜本万三君 それでは、中医協再開の一号委員のもう一つの要求であります薬価調査とそれから医療経済実態調査というんですか、この必要性はどうでしょうか。お認めになるんでしょうか。
  57. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 医療費審議を行います場合に、当然、一つの大きな要素になりますのは薬の問題——薬価の問題でございますし、医療経営実態調査の問題であるわけでございます。従来からも中医協におきまして、この問題につきましては薬価調査なりあるいは医療経済調査を実施するということが一つの大きな合意にもなっておったわけでございます。ただいま、この問題につきましてなかなか解決の糸口ができておらないわけでございますけれども、当然この問題につきましても、中医協の今後の正常な運営という問題で、大きな問題であるというふうに考えておる次第でございます。
  58. 浜本万三

    浜本万三君 必要だということなのかどうかよくわからない御答弁をいただいたんですが、私はこれは非常に必要だというふうに思っておるので申し上げたんですけれども、やっぱりもうちょっとそこらはっきり厚生省の方で態度を示されないと、なかなか中医協もうまく回転しないんじゃないかというふうに思うんですが、その経営実態調査の資料ではございませんが、それに関係することは、例の医療費問題に関して医師の優遇税制の問題があると思うんですが、大蔵省の方で資料をいただいてみますと、特別措置で、この優遇制度が医師に設けられましたのが昭和二十九年でございますが、そのときの事情を調べてみますと、その措置によって税金が有利になった額が約十二億円、全体の租税特別措置による減税額は六百五十八億円でございましたので、その割合が一・八%というふうに、非常に社会的には少ない額であったというふうに思うんです。ところが昭和五十年になりますと、全体の特別措置による減収額が五千六百十億円に対しまして、医師の特別措置による減収額が千三百二十億円、全体の割合で言いますと二三・五%というふうに、非常に大きくなっておるわけです。それからまた、各地区の高額納税者の一覧表が毎年出ますけれども、それを見ますと、われわれの方、田舎だからかわかりませんけれども、大体各税務署の百番以内には大部分が医師の方が入っていらっしゃるというような事情を見受けるわけなんです。そういたしますと、お医者さんは相当もうけておるんじゃないかというのが一般の社会通念としてあるんじゃないかというふうに思うわけなんです。そこで、私どもとしましては、社会的にきわめて重要な仕事をなさっているわけなんでありますから、憶測で物を判断してはならないと思います。したがって、そういう租税特別措置に関する減税の問題等も考えますと、これは一刻も早く医療経済実態調査というものを行うとか、それから薬価の問題も早くきちっといたしまして、調査もいたしまして、そして医療の実態というものを国民に知らせる必要があるのではないか。そこから初めて国民医療の信頼関係を取り戻すことができると思うんです。そのためには、すべてをガラス張りにするという意味で、二つの調査は早急にやるべきではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。  また、先ほど申し上げましたような資料の中で、この医師優遇税の特別措置の減税に占める割合が非常に大きくなってきたということを考えますと、これは廃止に向けてあるいは修正に向けて一定の方針を出すべき時期に来ておるのではないかということを思いますが、これは担当局長と、後段の方は特に大臣から所見を承りたいというふうに思うんです。
  59. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 医師税制の問題につきましては、租税政策の問題でございますので、私の方から申し上げる立場ではないわけでございます。  なお、先生お話ございました薬価調査なりあるいは医療経営実態調査、これは診療報酬の論議を行います場合の基礎になる資料でございますので、従来からも中医協でもこれの必要性というものは認識されておる次第でございまして、私どもといたしましてもこの両調査がスムースに行われるということを期待しておる次第でございます。
  60. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 先生医療経営実態調査と税金との関連を断定的にお話ありましたが、これ関連があってこういうことになっているとは、私の口からこれを即断することはまあ、よくないんだろうと思います。しかし、いずれにしてもこういう調査をぜひしなければならぬというふうなお声もございますから、したがって、私としてはできるだけそういう調査ができるように努力をしているところでございます。  なお、社会保険診療の租税特別措置の件ですが、これは元来租税政策でございますから、したがいまして、厚生大臣があれこれ、これについて断定的なことを申し上げる立場ではございません。しかし、この問題は制度の発足の当時診療報酬との絡みにおいて出てきた制度でございますから、したがってその向きでは厚生大臣としても大いに関心を持ち、またいろいろと今後の対策について献策するところがなければならぬというふうに私は思っているわけでございます。まあ先生ごらんのとおり、今日税制大綱ではいまの診療報酬じゃやらぬぞと、こういうことをあすこに書いてあるわけであります。しからば、今後の診療報酬というものが一体どういう姿になるかということが、これの実施のポイントだろうというふうに思うわけでございまして、今後の診療報酬のあり方というものについてはほぼ推察ができますが、私どもとしてはあの制度をこれをなくするような、そんな大きな診療報酬改定ができるだろうかどうか、そういったようなこともいろいろと今後の考察の基礎になるものというふうに思うわけであります。ただいまこれの、いわゆる租税特別措置による減税の額とかシェアというもののお話がありましたが、これについては計数のとり方がいろいろのようでございまして、経費率をどう見るかなどということ等いろいろ見て、これが全くなかったときにどうなるだろうかと、いろんなまあ仮定の上の数字だろうと思いますから、ただいまの先生の御指摘になった数字は、そのままこれをわれわれの考え方の基底に置いていいかどうかということは、もう少しやはり慎重に考えにやなるまい、かように思っております。
  61. 浜本万三

    浜本万三君 租税特別措置法がありますために、かえっていま緊急な診断、緊急な医療行為に障害ができておる分野があるんです。たとえば、例を申し上げますと、老人健康診断でありますとか、それから学童の例の予防注射でありますとか、これは実際特別措置のこの医療行為に入ってないんですよ。それで、あるお医者さんなどに言いますと、これはもうからぬからやらないということです。そうすると、採算がとれるように協力をしていただくためには採算をとるようにしなきゃいかぬ。それが地方自治体の超過負担になっておる、こういう例もあるんですよ。ですから、必ずしも診療を円滑に行うという面から考えますと、よくない面もございますので、そこはひとつ十分考えていただきたいというふうに思うんです。  時間がないのでこれ質問をする予定でございましたが、質問をやめて要望にしてそれに対するまとめた御見解を承りたいというふうに思います。  まず第一は、差額ベッドの問題でございますが、医療確保という面で考えますと、歯科の差額のほか、差額ベッドの問題もございますし、また付添看護婦などいわゆる保険外の負担も問題になるというふうに思いますので、その負担が軽減されるような措置を講ずるべきではないかということでございます。  それからその次は、少なくとも国立病院や自治体立病院の差額ベッドはこの際廃止すべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。  それから、この公立病院の採算をとるための具体的な措置というものが最近非常に必要になっておりまするが、これを積極的にやっていただきたいということでございます。  それからもう一つは、相変わらず例の救急患者のたらい回しが社会の問題になっているわけなんでございますが、年末を控えましてますますこの種問題が起きますと困りますので、救急医療体制の確立を急ぐ必要があるというふうに思うんですが、そういう積極的な対策もぜひ講じていただきたいということでございます。  以上、申し上げましたことにつきまして、特に関係局長、あるいは最後に大臣の方から締めくくりの御発言をいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  62. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 差額ベッドの問題につきましては、差額ベッドのために必要な医療の機関が妨げられると、これはあってはならないことであるというふうに考えておる次第でございまして、ただ、一方では差額ベッド、特別室のニードと、患者のニードもあるわけでございますから、これを全面的に否定するわけにはまいらぬわけでございます。そういうような意味から、従来明確でございませんでした差額徴収ベッドの割合でございますとか特別室の基準、差額徴収の要件等につきまして明確な指導方針を立てまして、昨年三月以来指導をしておるわけでございます。特に、先生から御指摘ございました国立病院等につきましては、一般の差額病院の比率が二〇%であるのに対しまして一〇%というような基準を設ける等配慮している次第でございますが、いずれにいたしましても現在定めました基準につきまして明確な実施が行われますよう指導を徹底してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  63. 石丸隆治

    政府委員石丸隆治君) 差額ベッドの取り扱いにつきましては、ただいま保険局長から御説明申し上げた線に沿いまして国立病院におきましても対策を講じておるところでございます。特に国立病院につきましては必要最小限にこの差額ベッドの設置を制限するように努力をいたしておるところでございまして、特に治療上必要な患者さんが治療のために個室に収容せざるを得ないと、そういったような場合には、差額ベッドに収容いたしましても差額を徴収しないというような方針で現在指導を行っておるところでございます。  それから、次に、救急医療の問題でございますが、先生指摘のように、最近この救急患者、特に小児科あるいは老人病等の内科系の救急患者の取り扱いに際しまして、この診療が必ずしも十分行われないというような実態があるわけでございます。従来、この救急医療につきましては交通災害等の外傷患者を主としての体制整備を行っておったところでございますが、最近におきます疾病構造の変化、すなわち先ほど申し上げましたような実態に即しまして今後休日あるいは夜間診療所の設置につきまして努力をしてまいりたいと考えております。
  64. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 差額ベッドについては両局長から申したとおりですが、私は基本的に差額ベッドというものが全然なくていいとは考えません。やはり特殊な疾病方々治療のために個室が要る場合もあろうと思いますが、これはいま局長の言ったように差額は徴収しないと、問題は要するに一定のやはり社会的環境にある方がやはり特別な部屋に入らにゃならぬという場面が間々あるものでございまして、これはまあ非常に用事のあるお客さんがしばしばにわたって出入りをするような患者というのは、入院のときによくあるわけで、私自身がそうでございます。そうしたことで、これが全然なくていいというわけじゃございませんが、いやしくも差額ベッドによって病院の収入を上げるという観点から差額ベッドをつくるということば私は絶対によくないと、かように思って、その趣旨に従ってこれは指導をしていきたいというふうに思っております。  救急対策については、先生おっしゃるような事案がときどき新聞に出るわけでございます。厚生大臣としてはまことにどうもじくじたるものがあるわけでございます。今後の救急対策については、先生御案内のとおり明年度救命救急センターの設置あるいはその他の施策についていろいろ努力をいたしておりますが、これについては今後とも十分な問題意識を持って、これのできるだけ速やかな、また完全な解決というものをいたすように努力をいたさなければならない一つ厚生省の今後の大きな宿題であるというふうに認識をいたし、今後ともこれについては十分な努力をする所存でございます。
  65. 村田秀三

    委員長村田秀三君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  66. 村田秀三

    委員長村田秀三君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、斎藤十朗君が委員辞任され、その補欠として松岡克由君が選任されました。  午後一時から再開することとし、休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  67. 村田秀三

    委員長村田秀三君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き社会保障制度等に関する調査議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  68. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 厚生省が厚生年金国民年金を五十一年度から改正するということでいろいろ御検討をしていらっしゃるようでございますが、その内容について少しお聞きしたいと思います。  最初妻の年金権についてお尋ねいたします。このサラリーマンの妻の年金権が加給年金として取り扱われております。そのために、妻の年金権が非常に不安定である、これはずっと問題になっております。私もこの点について予算委員会でどういう解決をされるかということをお聞きいたしました。そこで来年度はどういう改正がされるのか、この点をお尋ねいたします。
  69. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 妻の年金権のお尋ねでございますが、妻の年金権ということが議論されます場合に、幾つか問題があるわけでございますが、一つはいま御指摘のように、妻自身の老齢年金というものが考えられないか、加給金ではなくて老齢年金が考えられないかということ。  それからもう一つは、万一の場合に妻が夫に死に別れたような場合での遺族年金、これをもっと改善できないかという問題、それから妻自身の廃疾等でございますけれども、この妻の年金権、基本的にこれを解決するためには、現在御承知のように被用者の妻は国民年金に任意加入が認められておりまして、これがすでに四十九年度末で五百万を上回る、そういうような実態もございます。したがいまして、そういう実態を踏まえまして、妻の年金権を厚生年金保険の方で拡充するということは、非常に基本的ないろいろ問題が出てまいりまして、来年度の改正にこういった問題をすべて解決することは、率直に言いまして非常にむずかしいのではないかと、そこで来年度妻の年金権にかかわる問題としては、現行制度のもとにおける改善、すなわち現行の加給年金のレベルをできるだけ引き上げる。あるいは、またこれも各方面から問題になっております遺族年金の改善、そういったことに当面重点を置いて作業を進めておるところでございます。
  70. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それでは加給年金をまず引き上げるということのようですが、どのぐらいになさるおつもりでしょうか。
  71. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 加給年金の取扱いにつきましては、この八月でございますが、厚生年金部会の意見書等が出されておりまして、できるだけ引き上げるようにという御意見でございまして、目下具体的な案についていろいろな案を検討しておりますけれども、一つの考え方といたしましては、これは従来の考え方でございますが、勤労者の扶養手当等が一つの参考になるのではないかというふうに考えております。
  72. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その扶養者の手当に大体準ずるという考え方は、私は非常におかしいと思うんですね。納得いたしません。年金というものを何かつけ足しみたいな、加給金という考え方が私はおかしいと思っているわけです。その加給金を上げるとしても、扶養者としての金額ということでは私は満足できないのですが、その点はどうでしょうか。
  73. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 先ほど申し上げました厚年部会の意見書にもちょっと触れておるのでございますが、この機会に加給金というものを従来のルールにとらわれないで、思い切って引き上げると、そうしてこの単身者と夫婦の場合の年金レベルに、現行以上の格差を設けると、そういうのが一つの方向ではないかという御意見も確かにございますが、しかし、これは場合によれば、単身者の場合の年金レベルの実質的なダウンと申しますか、そういう問題にもつながることでもございますので、どうも私どもそこまで踏み切るのはいかがなものであろうかということになりますと、やはり冒頭申し上げましたように、従来からとっております考え方というのが一つの妥当な考え方ではないかというふうに考えております。
  74. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 押し問答になりますが、結論的にこれは改正されたとは私は言えないと思います。それから、たとえその加給年金というものの額が上げられたとしても、私は本質的な改正ではないのじゃないか、やっぱり妻の不安定な面というものは解決されない、こういうふうに思いますが御意見いかがですか。
  75. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 確かにこの妻の年金権、最近非常にいろいろな方面から論議されておりますけれども、ただ率直に言いまして、諸外国等の例を見ましても、被用者保険サイトで、本人以外の家族等の処遇を考える場合に、たとえば配偶者なら配偶者を独立の被保険者とするということは、これは全然立て方が違ってまいりますけれども、ほとんどそれに近いような独立の年金権まで付与するというところまでやっております国はむしろ非常に少ないのでございまして、日本の場合はたまたま国民年金制度がございまして、ここで任意加入という形ではありますけれども、一応独立した被保険者としてとらえ、年金権がそういう意味で確保されておりますので、被用者側が年金の方で、完全にいまおっしゃるような意味での年金権を確保するということについては、少なくとも現在の被用者保険の仕組みでは基本的な問題があって、来年の改正でこれを一遍に改正するということはちょっとむずかしいのではないかというふうに考えております。
  76. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 くどいようですけれども、加給年金という考え方では、あくまでも妻は扶養者扱いだと、扶養者だれだれという個人に与えられた年金権には絶対にならないと、これをその個人にきちっと与えた年金権に改めなければならないというお考えはあるのですね。それはそれともないのか。
  77. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 一つの検討課題だとは思いますけれども、いまの段階で直ちに加給金を妻自身のいわば取り分的な意味での年金としてとらえるということは、被用者保険の枠の中では非常にむずかしいのではないか、ただし、そういう御意見が非常に有力でありますし、なお今後引き続き検討いたしたいとは思いますけれども、来年の改正の問題としては、ちょっとここで来年これは解決いたしますと言うには余りに大きい問題であるというふうに考えます。
  78. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 大臣にも一言お聞きしておきたいんですが、加給年金というのはあくまでも扶養者扱いだと、その個人の年金権というものにはならない。将来むずかしい問題ですけれども、妻の年金権というものがその個人にきちっと与えられるようなふうに改正する御決意があるのか、その点、大臣いかがですか。
  79. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 妻の年金権については、年金制度の中でいろいろ論議のあるところであります。したがいまして、非常に中間的な案ですが、さっき局長が言ったように、被用者の妻を国民年金に任意加入して、この分を一応びぼう的に手当てをしておるわけですが、これでは抜本的な解決にならないということだろうと思います。しかし、被用者の妻を一体それでは特別な——特別なと言うか、独自な年金権を発生させるためにはやはり妻が被保険者として保険料の拠出というものを続けるというような制度につながってくるものというふうに思うわけでありまして、これが一体わが国の社会の中でどのように定着してやれるかということについてはいろいろ議論があろうと思われます。しかし、妻の年金権がいろいろな面でもって確立をしないために非常に不利に泣く妻がおるということに対しては、これはいろいろな方法をもってそのようなことがなくなるようにいたさなければならぬが、基本的に一体その妻の独自の年金権というものはどこから発生するかというところに掘り下げて物を考えにゃなるまい、そうでない限りには、やはりもともと被保険者だった御主人の年金というもの、これだけに尽きるという考えもありますが、やはりそれを奥様の存在というものを無視できないということからいわゆる加給年金制度というものを起こしているわけでありまして、こうしたことをめぐって今後いろいろと改善策は講じなきゃなりませんが、そうした基本の問題がありますので、明年のところはこの問題の解決は私は困難である、残念ながら困難であるというふうにお答えせざるを得ないということだろうと思います。
  80. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 国では皆年金というたてまえからやっているのですから、この妻の年金権というものはぜひ、困難であっても、根本的に考え直さなければならないとしても、それはきちっとやっていただきたいと思います。  次に、厚生年金遺族年金についてですが、現在は老齢年金の五〇%となっておりますが、これはどの程度まで引き上げることを検討されていらっしゃるのでしょうか。
  81. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) この問題については国会の内外でいろいろ議論があり、たしか先生からもいろいろ御質問があったろうと思うのであります。一つの大きな宿題としてわれわれはその後作業を進めております。しかし、いまの段階で何割上がりますというふうにお答えすることは私はやや軽率かと思うんです。なぜかなれば、これはこれからの予算折衝においてセットをいたすことでございますから、したがってはっきりしたことを申し上げて誤解を生ずるといけませんから、私どもとしては、これはかねがねのお話もございましたし、私も積極的な姿勢を示しておったことでございますので、引き上げをいたしたいというふうに思っております。しかし、全部の一体それじゃ遺族についてこれをやってよろしいか、あるいは独特な環境にある遺族にこれを引き上げるべきか、まだいろいろ議論が実はあるわけであります。もっとわかりやすく言えば、非常に若い未亡人まである程度上げなきゃならぬのか、あるいはまたお子さんを持っていて相当年配になった方で稼得能力がほとんどないという人にこれをやっていいか、いろいろ実は当事者の間にも議論があるわけであります。こうしたことをめぐっていま最終的な詰めをいたそうということで検討をいたしておりますが、基本的にはいまのままにしておくという考えは私はございません。何とか引き上げたいと、かように思っております。
  82. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 何%とはいまは言えないと、それはごもっともだと思いますが、ILO百二号条約などには最低水準というものが示されております。それよりもはるかに下回っているわけですね。どこの国を見てもそれより下回ってはいないわけです。上回っているわけです。ですから、その世界的な水準以下ではならないと思います。それ以上にするというくらいのことはお答えできないんでしょうか。
  83. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 百二号条約の批准問題が前の国会からこうやっておるわけであります。したがいまして、これを遺族年金の水準を向上させるからにはあの百二号条約に定めている基準はこれをオーバーいたしたいと、かように思っていろいろいま作業をいたしております。
  84. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、五〇%を上回るようにするということと同時に、最低保障額、これも問題だと思います。これはどのくらい引き上げますか。
  85. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) これも目下いろいろな案につきまして検討中でございますので、具体的な数字はちょっと申し上げかねますが、いずれにいたしましても定額部分なりあるいは標準報酬の下限、そういった点で相応の改善を行う考えでおりますので、定額部分等の引き上げに見合っておのずから最低保障の額も従来以上の額になることは間違いございませんので、数字はひとつこの段階では御勘弁願いたいと思います。
  86. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この最低保障額の問題は、現在のモデル水準五万円年金に対して二万円という線が出ておりますが、これは非常に私は低いと思うんです。しかも四十九年度十二月末の調査によりますと、遺族年金の受給者が九割、ほとんどですね。しかもそれが最低保障額の受給者だ、たとえ老齢年金の五〇%がそれ以上になったとしてもその引き上げられた額が最低保障額以下であったならば、遺族年金は豊かになったとは言えないと思うんです。そういう点、計算してみますとどのくらいになるかということは、またお考えになって検討されると思いますけれども、最低保障額以下の受給者が現在九割いるということを考えたならば、この最低保障額を上げなければ遺族年金の充実とは言えないと思うんです。そういう点お考えの上で、最低保障額という点をぜひ上げていただきたい、こういうふうに思います。大臣、いかがでしょうか。
  87. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) ですから、われわれとしては最低保障額はこれを引き上げるようにいまいろいろ検討作業をいたし、その方向に持っていく所存でございます。
  88. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 遺族年金障害年金の通算制度、これを来年度は実施なさるおつもりかどうか、この点もお聞きしておきたいと思います。
  89. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 遺族障害の通算問題はかなり以前から各方面で要望されたことでもございますので、実は本年当初から関係省庁でこの問題について協議を重ねておりまして、近々その最終結論が出る運びでございますので、それを待って対処いたしたいというふうに考えております。
  90. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それを待ってとおっしゃっていますけれども、これは実施する方向にいっているのでしょうか。それとも現状維持なんでしょうか。
  91. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 実はこれ厳密にやるとなかなか、私も手を染めてみるとむずかしい、細かい点についてはいろんな問題がありまして、事務方としてはいろいろ首をひねっておるところでございますが、どこまで精細にやるかという問題は残っておりますが、基本的に申しまして遺族障害年金の通算措置は、私はこれをぜひ実施いたしたいということで、いま作業をしているところでございます。
  92. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、脱退手当金の支給についてですが、国民年金という点から考えておかしいと思います。この点改正をするお考えがおありかどうか、お願いいたします。
  93. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) お尋ねの趣旨が国民年金体制のもとでこの制度を存続させることに問題があるというふうに受け取ってよろしいかと思うんですが、御承知のように、脱退手当金は非常にまれなケースではございますけれども、たとえば高年齢になって外国から帰化するというような場合もありますから、制度として全くなくしてしまうことは問題があると思いますけれども、一番問題になっております現在女子につきましてこの特例措置がなお残っておりまして、これが昭和五十三年の五月末だったと思いますけれども、それまで一応存続することになっております。そこで、これの延長が具体的には問題になろうかと思いますけれども、私ども御指摘のような趣旨からこれの延長は適当ではないんではないかと、目下そういうふうに考えております。
  94. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、障害年金についてですが、これはいろいろ検討されているようでございますが、認定日以降重症になった場合とか障害手当金との接続の関係、こういう点から認定及び支給の方法にぜひ改善が必要だと思いますが、これはどのように検討されておりますでしょうか。
  95. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) お尋ねの点は、一つは現在の廃疾認定日、発病の日から三年、初診の日から三年というのをもっと短縮できないかという問題と、それから爾後重症という制度が厚生年金にございませんが、これを考えないかというこの二点だろうと思いますけれども、この二点とも現在前向きの方向で検討いたしておるところでございます。
  96. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それはどの程度に検討されているか、内容についてもう少し詳しくお聞きできますでしょうか。
  97. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) この制度についていろいろ実は御意見がございまして、できるだけのことをいたそうというふうに思っております。理想的にはいま先生がおっしゃったように、傷病手当金と障害年金との認定が全くすき間なくやるというのが理想だろうと私は思うのでございます。しかし、健康保険法における傷病手当金、そしてこちらの障害年金、これがそれぞれ違った観点からできておるものですから、これの穴を埋めるということは実際問題として私はやりたいんですが、いますぐにはこれはできないだろうと。しかし、できるだけ縮めたいと、かように思っておるわけでございまして、かなりの年数を縮めたいと思っていま作業をいたしております。しかし、まだ完全に落着をいたしたわけではございませんし、この後財政当局とのいろいろ折衝もございますから、私としてはここでどれだけ縮めるかということを明言することは、いささかまずいんじゃないかと思いますが、かなりの意欲を持ってやっておることで、ひとつ御了解を願いたいというふうに思います。
  98. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 特に、そういう点努力していただいていると思いますが、認定日以降重症になった場合の再認定日というようなものを設けるというような考えは検討されておりますでしょうか。
  99. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 先ほどお答えいたしましたように爾後重症、廃疾認定日以降症状が悪化した場合の救済策でございますが、これは他の制度にもございますので、厚生年金でもぜひこれを今回の改正で取り入れたいというふうに考えております。
  100. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 最後に国民年金の特例納付についてお聞きしたいと思います。  今回の特例納付を現在どの程度に利用されているか、どのくらい特例納付の実績が上がっているか、おわかりでしょうか。
  101. 河野共之

    政府委員(河野共之君) 特例納付の実施につきましては、老齢年金の受給権を満たし得ない者を重点に納付書の送付を行うとともに、私どもとしましては市町村、民間地区組織の協力を得まして、関係者に対する説明会等を通じ、特例納付に対する理解を得るよう努めておるところでございます。  その対策といたしましては、前国会で御指摘ございましたように、総理府の政府広報等も利用いたしまして、当庁としましても広報に努めておるわけでございまして、テレビ番組、それから全国紙、地方紙、週刊誌等を通じまして、制度の周知徹底を図っておるところでございます。で、その結果といたしまして、現在まで特例納付の収納金額といたしまして、昭和五十年八月末現在でございますが、百九十九億円ということで、私どもの当初の予定よりも、はるかにこの事業は進んだと考えておるわけでございます。
  102. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 人数はわかりませんか。
  103. 河野共之

    政府委員(河野共之君) 個々の人数はわかりませんが、収納件数にいたしまして百三十万件の収納ができておるわけでございます。
  104. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私も機会あるたびにこのことを呼びかけてきておりますけれども、まだまだいるんですね。そういう方たちがことし手続すれば老齢年金をもらえる資格がつくのに知らなかったとか、考え方があいまいであったためにだめになってしまう、こういう人たちがどのくらい残っているかということが問題だと思うんですが、それはおわかりでしょうか。
  105. 河野共之

    政府委員(河野共之君) 国民年金の強制加入対象者というもので、未加入となっておる者の数でございますが、これはいろいろな推計方法があるわけでございますが、私どもといたしましては約三百万人と推計をいたしておるわけでございます。そのうち特に年齢三十五歳以上のいわゆる年齢該当者ということで、年金権に結びつかなくなるおそれのある者は、約百七万人程度と見込んでおるわけでございまして、これらの者につきましての適用の実施あるいは特例納付制度活用ということに、私どもとしましては全力を尽くしておる次第でございます。
  106. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ですから、今後どのくらい残っているかということはわからないんですか。
  107. 河野共之

    政府委員(河野共之君) ただいま申し上げましたように正確な数は把握いたしておらないわけでございます。ただ特例納付、あと一カ月あるわけでございますので、中央地方を通じましてその解消に努力をいたしてまいりたいと考えております。
  108. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこでもう一カ月ですから、何とかこれもう少し強力な徹底をした方がいいと思うんですね。一つの村とかある地域を見れば、だれとだれとだれということがわかっているわけだと思うんですね。そういうところには、はがきなどを出しているところもありますけれども、チェックしてもう一回ぐらい徹底的に加入するようにということをやったらどうかと思うんですね。そういう点いかがでしょうか。
  109. 河野共之

    政府委員(河野共之君) 未納者等につきましては、これは社会保険事務所等で把握いたしておりますので、これらの未納者を拾い上げまして、これらに対して納付書の送付をするということは全国的に実施をいたしております。
  110. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで強制徴収、こういうものをやる必要があるんじゃないかと私は思います。それはできないとおっしゃるのか、それともやるお考えがあるのかどうか。特に強制加入すべき者が入ってないと、そういう人たちが三百万人いると、けれどもことしじゅうに何とかしなければ老齢年金をもらえる資格がなくなるというような人を、ただ、はがきでお入りなさいというようなことじゃなくて、強制徴収をやってもいいんじゃないか。また、国民年金に入っていながら途中で滞納している人も大分いるんですね。こういう人にはむしろ強制徴収をやった方がいいと私は思うんです。そういう点、どうお考えでしょうか。
  111. 河野共之

    政府委員(河野共之君) 国民年金につきましては、制度発足以来の経緯もございまして、自主納付、こういうようなたてまえで参ってきておるわけでございます。このような年金時代になったわけでございますが、私どもとしましては、従来の伝統を踏まえましてこの納付促進に努めてまいりたいと、かように考えておるわけでございますが、強制徴収云々の問題につきましてはさらに検討さしていただきたいと思います。
  112. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ぜひ滞納者なんかはどんどん強制徴収をしていただきたいと、私はこう思います。  最後に、低所得者の免除措置、これは申請の手続によって救われていくわけですけれども、この申請手続をしていない場合もわりあいにありますね、見てみますと。これをもっと促進して強化すべきだと思うんです。この点、いかがでしょうか。
  113. 河野共之

    政府委員(河野共之君) 保険料の納付をできない者につきましての申請免除の御質問でございますが、先生指摘のようなことがあるといたしましたならば、私ども積極的にそういうようなことのないようにいたしたいと考えます。現状といたしましては、年金意識の高まりと申しますか、保険料の収納状況というのはかなりよくなっておりますので、私どもといたしましては、保険料の徴収問題等につきましてもいろいろ努力をして、改善すべきところがあれば改善してまいりたい、かように思う次第でございます。
  114. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 何だかお答えの仕方が熱意がないような、国民の自覚を待つ以外にないというような感じにも受け取れますけれども、まだまだ年金に魅力がないといいますか、年金が非常に複雑なので、もっとこれは広宣活動といいますか、末端の事務を扱うところが本腰でやっていくべきだと、こう思います。そういう点、いかがですか。
  115. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 年金の加入、拠出につきましては、今後ともいろいろと努力をいたしまして、皆年金の実を上げるようにいたしたいというふうに考えております。なお、強制納付の話ですが、国民年金ができたときに、これについていろいろ議論がございましたが、やはりそうした制度をとらずに、自分に返ってくるフェーバーというものを考えて自分がボランタリーに拠出をしていただくということになっておりますが、一つの問題点であるというふうには認識いたしておりますが、いまだこの問題について踏み切る段階までは来ておりません。
  116. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、産業廃棄物について質問をいたします。特に産業廃棄物の中でも、きょうはメッキのスラッジに限って質問をいたします。  厚生省は、中小零細企業の圧倒的に多いメッキ業界の、そのメッキの産業廃棄物はどのように処理されているかということを、実態を把握しておられますか。おられる実態を御説明いただきたい。
  117. 山下眞臣

    政府委員(山下眞臣君) 実は産業廃棄物の処理の実態につきましては、この夏いわゆる六価クロム問題が起こりまして直ちに九月に全国の課長を招集をいたしまして、有害産業廃棄物を含む産業廃棄物の処理の実態の総点検ということをやりたいということで九月に指示をいたしまして現在進行いたしておるわけでございます。その中でメッキ工場等クロムを使用する工場につきましては今年度中にその全体の報告を求め集計をするという段取りにいたしておりますために、現在全国の実態をすべて把握をいたしておるという状況にはございませんけれども、これまでの間におきましても十数県につきまして私どもいろいろと調査をいたしまして把握をいたしておるわけでございますが、県によりまして若干の差があるわけでございますけれども、おおむねメッキ工場の汚泥の処理状況といたしましては、全般的な傾向といたしましては自社工場内に保管されている部分が相当に多い状況にあるというのが一つの特徴でございます。  それから、処理業者なり等により中間処理をいたしておるものも相当ございますが、その処理の態様といたしましては、単に埋め立てをいたしておりますものからコンクリート固型化をいたして埋め立てておりますものまで形態に大きな幅があるようでございます。ごく一部につきまして資源化再利用という見地から山元還元をしておるという例も見られますが、その比率は比較的にまだ少のうございます。  なお、地方公共団体が乗り出しましてこの処理に長野県等のごとくいたしておる例もございます。  非常に不十分でございますが、現在把握いたしております状況は以上でございます。
  118. 小平芳平

    ○小平芳平君 その調査した中に岡山県は入っておりますか。
  119. 山下眞臣

    政府委員(山下眞臣君) 岡山県につきましては把握をいたしておりません。
  120. 小平芳平

    ○小平芳平君 そう部長は簡単に自社の敷地内に積んでおくのが一般的だように言われますが、これは岡山県の実例ですけれども、ドラムかんに百二十本、このドラムかんももう二年、三年たちますからドラムかんの上に上がっただけでふたがぽんとはずれちゃう。これではその工場を動かせば毎日出てくる汚泥ですね、しかも敷地内といってもそんな大きな敷地を持っている企業はまだいい方でしょう、もうどうしようもない、どうしますか、これ。
  121. 山下眞臣

    政府委員(山下眞臣君) 一般的に産業廃棄物につきましては法令上事業者の責任によってこれを処理するというたてまえがあるわけでございますけれども、先生が御指摘になりますように、中小企業の場合につきましてはそれがそのとおり必ずしも実施をするのが非常に困難な場合が多かろうということは容易に想像ができるわけでございます。そういう見地に立ちまして、できるだけ中小企業者につきましてはその共同的な共同施設設置等、共同による処理の形態でございますとか、なお、ただいまこういった産業廃棄物の処理に対しまする公共関与の方針について懇談会等で検討いたしておるわけでございますが、そういう場におきましても中小企業についてはできるだけあっせん、お世話をするような努力をしなければならないという感じが強くなっておるわけでございます。そういう見地から長野県等は非常に進んでおるわけでございますが、幾つかの府県におきましてもそういったお世話をしようという動きが相当に出てきておりますので、こういったものにつきましてできるだけの応援をしていくような努力を私ども続けていかなければならぬのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  122. 小平芳平

    ○小平芳平君 共同処理についてお世話をするというのは、県がお世話をするということですか。だれがお世話をするのですか。
  123. 山下眞臣

    政府委員(山下眞臣君) 現在の事例といたしましては、都道府県、地域の実情等によりまして幾つかの形態がございまして、事例を典型的に三つ、四つ申し上げてみますと、一つには、みずから中小企業等協同組合等を組織いたしまして、その組合で行うような場合等もございます。
  124. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうことはわかっているのだよ。
  125. 山下眞臣

    政府委員(山下眞臣君) また、県によりましては、県内の処理業者のうち、しっかりしたものを選びまして、そこへなるだけ処理を委託するような指導をいたしますとか、あるいは県自体が乗り出しまして、民間と共同で第三セクターというようなものをつくって処理いたしますような場合でございますとか、あるいは県が直接の事業として行う場合というような場合等、さまざまの形態があるわけでございます。中心的には、そういった第一線の地方公共団体等において御努力をいただくわけでございますが、もちろん国といたしましてもそういった施策、やり方が進めやすいように、あるいは税制上、あるいは金融上、できるだけの努力をいたさなければならないと、かように考えております。
  126. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣、大臣はメッキは国民生活にどの程度必要だというふうに考えておられますか。——大臣はどう考えておるかということです。
  127. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 突然のお尋ねでございますので、的確なお答えができるかどうか知りませんが、やはりわれわれの人間生活にかなり密着をしているものですから、したがって、メッキというものが完全になくてよろしいとは考えられないということだろうと思います。
  128. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省は、かなり密着程度ですかどうか。どう通産省は考えていますか、簡単に。
  129. 福原元一

    説明員(福原元一君) メッキにつきましては、御承知のように時計、カメラ、ミシンあるいは自転車、自動車、テレビ、ラジオ等々金属の表面を美しくするということのほかに摩耗を防ぐ、あるいは腐食を防ぐというようなことで非常に重要な技術でございます。メッキ産業がなければ金属産業は成り立たないというふうに私ども理解しておりますし、特に、日本の場合、メッキ業は中小企業が中心の産業でございまして、中小企業にとりましてもきわめて重要な産業分野でございます。私どもといたしましてはメッキ産業の健全な育成ということは、非常に大事な仕事だと思っております。
  130. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣、メッキのしてない自転車なんて考えられないわけでしょう。かなりどころか、いま通産省が挙げた中で、大臣が日常用いているものもあるわけでしょう。そういうメッキがドラムかんへ百本も積んだまま、これは岡山県の例ですけれども、もうこれ以上汚泥が出たら全く置き場所がない、これは大臣どう処置されますか。
  131. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 廃棄物行政、特に産業廃棄物については、あの法律改正をいたした節に、私どもの役所で、これを厚生省が主たる役所として機能をいたす所存でやってきたわけですが、率直に申しまして、私はこの産業廃棄物についての処理というのは、わが省は非常に、何というのですか、肯綮に当たる仕事をしておらなかったというふうに私はみずから判断をいたし、また、反省をいたしているところであります。したがいまして、今日、そうした点についてのいろいろな御指摘がございますので、私どもとしてはできる限りこうした廃棄物行政、産業廃棄物については特にその点がややルーズでございましたものですから、これについては法制上の整備をいたすと同時に、実態上も、これについて、もう少し、いままでよりもはるかにえりを正した姿勢でもってこれに真剣に取り組まなければいけないということを、私は事務当局といろいろ協議をいたしまして、事務当局は従来のそうしたことの反省の上に立って、いま、いろいろと作業を急いでいるところでございます。ですから、いままでのやり方についてあれこれおっしゃられれば、私はある意味では、これについて抗弁をいたしたり、弁解をするつもりはございません。  なお、ただいまの事例につきましては、これが社会的に有害な影響を残さないような、完全な処理をいたさなければならないということだろうと思います。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほど部長からも説明がありましたように、県によりましては、たとえば長野県の場合は、全額県費で環境保全センターをつくりまして、ここでメッキの汚泥——そのほかにも引き受けますけれども、そうした汚泥の処理を有料で引き受けているのです。ですから、長野県でできることは、ほかの都道府県でも全くできないということはなかろうと思います、それは県知事さんなり、県議会の問題でありますが。問題でありますが、現に、こういうふうに業界が困り果てているという実態から、これは厚生省責任を感じておられるという大臣の御答弁でもありますので、こうした全く行き詰まってもう動きがとれないという、そうした岡山県のような例はほかにもあろうかと思いますから、これは厚生省が直接行って何かつくるというわけにはいきませんが、県当局に対して、メッキのこういう現状を何とか打開する方策を立てるように、厚生省として働きかけていただきたい。いかがですか、具体的に。
  133. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) もうそのことについては言うまでもないことでありまして、私どもとしては、できるだけの地方公共団体に対する督励、あるいはまた協力等をいたさなければなるまいというふうに思っております。何か岡山県でも、そうしたようなことについてのいろいろ工夫があるようでございますが、しかし放置しておってはいけませんので、国といたしましては、やはりそうしたことについての督励なり、あるいはまた実態の調査なり、あるいはまた、これに対するできる限りのコーポレーション、協力といったようなことをやらなければなるまいというふうに思います。
  134. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、ごくわずかではあるがと部長がつけ加えて説明された、資源として回収するということですね、これは全く汚泥——この廃棄物は、資源として回収できるということは一番理想じゃないですか。それは無害化して一般の環境へ捨てるか、あるいは有害のまま密閉して海の底へ捨てるかということだろうと思いますが、そういう無害化して捨てるとか、あるいは有害のまま密閉して捨てるというよりも、資源として——これは福島県ですね、会社側の説明によりますと、捨てるものは何にもない、完全に資源として回収しているという説明をしておられますが、その点通産省はわかってますか。
  135. 福原元一

    説明員(福原元一君) 先生おっしゃいますとおりに、メッキ作業の後に出ます汚泥の中には銅であるとかニッケルであるとか貴重な資源が多分に含まれておりますので、これを省資源の観点から回収するということは私どもも積極的に推進しているところでございまして、現に非鉄金属公団を持ちます企業におきまして関連会社をつくりまして、そういうメッキ工場から汚泥を集めて精錬所へ送りまして再精錬をするということは現実に二、三の企業が始めておりますので、そのほかの企業に対しましてもこういうことをするようにただいま指導中でございます。
  136. 小平芳平

    ○小平芳平君 二、三の企業というと、どこでどういうような回収をしておりますか。
  137. 福原元一

    説明員(福原元一君) 現在私どもで承知しておりますのは住友金属鉱山それから同和鉱業、この二社が関連会社をつくってやっておるということでございます。
  138. 小平芳平

    ○小平芳平君 福島県の日曹金属というのは御存じないですか。
  139. 福原元一

    説明員(福原元一君) 知っております。  東京都及び長野県のメッキ汚泥につきましては先生おっしゃいましたように福島県の日曹金属へ送られております。
  140. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生省ないかしら。
  141. 山下眞臣

    政府委員(山下眞臣君) 福島県の日曹金属存じておりますが、長野県の公社の処理の委託を受けて処理をいたしておるようでございます。もう釈迦に説法でございますが、申すまでもなく廃棄物の立場からいたしますと、まず第一にはやはり排出量を少なくする努力をするということがございますし、それから排出いたしました廃棄物につきましてはできるだけその有効利用、資源化を図るということがきわめて大事であろうと考えておるわけでございます。国としてもその技術開発等に大いに努力をしなければならぬと思うわけでございますが、現在のところまだすべての分野についての資源化技術が完成をいたしてない面もございますし、あるいは技術がございましても実際の実用化の段階におきましてコスト高でありますとか、あるいは再資源化してつくられた製品がバージン製品に比べまして値段が高いとか、幾多の障害があるようでございまして、長野県の日曹金属への委託の場合におきましても相当に高い料金を逆に日曹金属側に支払うというようなことがございまして、そのことが長野県の公社自体の経営が赤字を生じておるというような実態になっておるということも承知をいたしております。十分に勉強いたしたいと思います。
  142. 小平芳平

    ○小平芳平君 日曹金属は長野県と東京とそれから東北六県も集めるわけでしょう。ところがいかにせん全国のすべての汚泥をさあ福島へ運べということにはならないわけです。県民感情もあります。したがって、資源として回収するためにどれだけ国が努力をしているかということをお尋ねしたい。これは資源として回収するということ自体通産省ですか、厚生省ですか、どちらですか。
  143. 山下眞臣

    政府委員(山下眞臣君) 廃棄物処理法全般につきましての施行責任官庁でございますので、厚生省としても当然責任を有するものだと思っておりますが、同時にそれぞれの事業所管官庁におかれましても研究なり努力をいたされておるところでございまして、そういうことは非常に適当なことだと私ども考えておるわけでございます。  従来、厚生省としていかなる具体的施策を講じたかということでございますが、一般的に、税制面、金融面の努力はそれなりにいたしてきておるわけでございますが、資源化、再利用という見地だけでの、それだけのための特別の施策というのは従来ございませんけれども、従来やりましたことは、そういったことにつきましての委託研究等を一部において実施をさしてきておるというのが実情でございます。
  144. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省。
  145. 福原元一

    説明員(福原元一君) 通産省におきましては、汚泥対策につきましては昭和四十七年から指導基準をつくりまして、「(電気めっき業)産業廃棄物処理技術指導書」というものを立地公害局の予算でまとめまして、これによりまして現在各通商産業局において巡回指導員を委嘱いたしまして、現場の巡回指導をさせておるわけでございますが、主としてその目指しますところは、先ほど申し上げましたように、汚泥の中には銅、ニッケル等も含まれておるので、なるべくこれを精錬所へ再び送って再利用をするという観点から、汚泥の発生量をまず大幅に減らすと、これはメッキの浴の中へつけたり出したりする場合に、その浴を十分に切るということによって汚泥の発生というのはかなりの量を減らすことができます。それからメッキの工程内におきまして、金属の回収、再利用のための技術開発に対する補助金等による指導、それから廃棄物をなるべく量を少なくすることがあるいはその非鉄金属成分の濃度を高めて、精錬をする場合にも有効でございますので、汚泥の容積を大幅に小さくする、そのために水分を十分に除去するというようなこと、あるいは先ほど来お話の出ました共同処理方式の促進等々を実施しております。
  146. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうふうに等々を実施しているということで、現実問題、スラッジが山と積まれて困っているということを、第一この岡山県の業者の方からお話を聞きますと、排水規制ができたというその段階で、通産省から、とにかく水をきれいにしろ、出たスラッジはどうするんだと言ったら、通産局かと思いますが、出たスラッジはドラムかんに入れて積んでおけと。通産省の指導どおりやった業者が、いまはドラムかん百二十本で困り果てているじゃないですか。ですから、そういう等々じゃなくて、具体的に資源として回収するために幾らの予算でどういう研究をやりましたか。
  147. 福原元一

    説明員(福原元一君) メッキから生じます汚泥を有効に処理するための……
  148. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、後でいいです。  これは厚生大臣にもお聞き願いたいんですが、先ほど来お話が再三出ますように、メッキ業者は中小零細企業です。で、この業者の方とお話をしてみますと、不況で下請のために単価をたたかれるというわけですね。それから材料費、材料費はむしろ大企業の製品で一方的に値上げをされるという、それから公害企業、公害の社会悪のもとみたいに地域からはきらわれる、いっそのことメッキを廃止するという法律でもつくってくれ、そうすれば腹決めて廃業して転業資金でも出してもらって転業したいと、口々にこう言っておられるわけです。ですから、そういう現状にあることをただ厳しく指導しますと、それだけでは問題解決が進んでないということを申し上げたいんです。それについてのお考えをお聞きしたい、それが一つです。  それから、時間がありませんので次の問題としまして廃棄物処理法の不備について、この不備についてもいろいろ指摘をされておりますから、また新聞報道では厚生省でも現在の法制の不備を研究し直していこうという姿勢であるやに伺っておりますが、そういう点、どの辺まで作業が進んでおられるか、以上二点について伺いたいと思います。
  149. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 先ごろ来われわれが答弁いたしましたとおり、メッキというものは人間生活に欠くべからざるものであるということになりますると、メッキ工業というものが現在置かれている経済的な立場というものがいかようなものであれ、やはりこれについてこの工業から出る公害というものはこれをなくするためにいろいろと努力をしなきゃならぬ、それには先生おっしゃるように、取り締まりだけではなく、これが有効にできるように、国や地方公共団体もできるだけの督励、助成といったようなものをやっていかなければなるまいというふうに思っているわけでございまして、思っているだけではございません。実際これをやらなければならぬというふうに思って、過去の反省の上に立ってそのようなことを今後ひとつ鋭意努力をいたしたいというふうに思っております。  廃棄物処理法につきましては、先生いま御唱道のとおり、どうもかなり厚生省に不備な点があるということを私もあの節にいやというほど痛感をいたしました。いろいろ検討すると、こういうことを原局は申しておったんですが、私の判断でこれはむしろ改善をするというふうに言い切って背水の陣で進んだ方がいいというふうに判断をいたしましたものですから、私から前国会においてそうしたような答弁をいたしたわけであります。答弁した以上はやらにゃなりませんから、現在この生活環境審議会の廃棄物処理部会とかの制度部会というのをしばしば開いておるようでございます。大臣室の前でしょっちゅうやっておりますから、やっているなということは私も見ておりまして、ただ詳しい内容については私も余り聞いておりませんから、いま問題になっている点等々については、ひとつ政府委員から答弁をいたさせますが、ただ私ここでもって余り完全なものを施行するということになると、おくれて仕方がないもんですから、当面急ぐものだけでもとにかくまとめろと、こういうことを言っております。そういうことでいま問題点になっているもの、議論の置かれている状況等については、ひとつ水道環境部長から説明をいたさせます。
  150. 山下眞臣

    政府委員(山下眞臣君) 大臣の御指示によりまして、十月一日から実質的にスタートをいたしまして、本日までに約五回の審議をいたしまして、一応問題点についてのワンラウンドのフリートーキングを終えたところでございまして、これから具体的な委員会としての、審議会としての詰めと結論を出していくと、大体めどといたしましては、十二月いっぱいにはというつもりで先生方おられるわけでございます。したがいまして、その問題点につきましては、委員方々によりまして、いろいろと意見が出ておりますために本日の段階におきまして、これについてはこのようなという結論的なことを申し上げるというわけにはまいらぬわけでございますが、問題になっております非常に代表的な例を申し上げますと、やはり一つには廃棄物の処理につきましての記録でありますとか、あるいはそういった保管義務というものもちゃんとしていただきたいと、あるいは事業所における廃棄物の処理についての責任者と申しますか、そういったものも定めていただきたいということでありますとか、あるいはこの処理につきまして排出事業者と、許可処理業者との関係をもう少し明確に整理をしていきたい。たとえば無許可の業者に対して委託いたしました場合につきましても、有効な担保措置が現在法令上十分でない面もございます。そういった点全般につきましての第一ラウンドのフリートーキングは終了したという段階でございます。
  151. 小平芳平

    ○小平芳平君 これで終わりますが、公害は防がなくてはならない、それをもちろん私も前提にして申し上げているし、また中小零細企業という一口に言われましても、メッキ業者の方で、いや公害は出しっ放しにしようという人はおりません。一生懸命国の決めた、あるいは都道府県の指示、こういうものに、いかにしてそれを守って公害を防いでいくかということは、私のお会いした方々はもとより、皆さん一生懸命なんです。皆さん一生懸命で、この何回も申し上げるように、ドラムかんにスラッジがたまったということも、それだけ水をきれいにして流したということだろうと思います。したがいまして、私はそういう環境汚染を防ぐということは、これは厳しく遂行していかなければならないことが一つと、それからもう一つは、国や県のやる責任もはっきりさせておいて、これははっきりそれはやり通していかなくてはならないということを申し上げたいのです。ただ水をきれいにして流せ、出たスラッジはどうする、出たスラッジはドラムかんに入れておけ、こんな指導がありますか、大臣、まあ、どこの地方公共団体でも、真っ先に困るのは土地ですね。用地ですね。これはもう施設をつくるにしてもそうだし、あるいは捨てに行くにしてもそうだし、県によってはいまなお盛んに捨てに行っている、そういう県もあるわけですが、メッキの汚泥をですね。しかしそれも限度がある。ですからそういう点厳しくするということが一つと、それについては国も県もこういう責任を持って、こういう点はやりますと、これをはっきりしてほしい、以上大臣の御決意を伺いたい。
  152. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 産業廃棄物については、当初例のPPPの原則というものが打ち出されまして、一見まことに結構なプリンシプルのように思えて、この点を強調する余り、ただいま先生のおっしゃるような点についての配慮が欠けておった、不十分であるということをわれわれはただいま反省をいたしておるわけであります。したがいまして、これについてどういうふうに公共が関与をいたし、これについていろいろと助成の道を講ずるかということも、今後の産業廃棄物行政の中の私は大きな問題であろうというふうに考えているわけでございまして、そうしたことについてもひとつできるだけの有効な結論を出すようにいたさなければなるまいと思って、せっかく検討努力中でございます。
  153. 福原元一

    説明員(福原元一君) 先ほどお尋ねの点でございますが、メッキ関係の技術開発の補助金といたしまして、通産省といたしまして五点、約一億円の補助金を現在までに交付してございます。
  154. 柄谷道一

    柄谷道一君 診療報酬等に関しましては浜本委員も質問をされたところでありますけれども、大臣答弁は率直に言ってきわめて歯切れが悪い。歯切れの悪い答弁をせざるを得ない背景というものについて承知するものでありますけれども、国民医療というきわめて重要な当面の課題であるだけにあえて質問をいたしたいと思います。明確な答弁をお願いをいたします。  私は国民皆保険下における中医協の存在意義を評価し、中医協みずからの民主的な運営を通じて適正な診療報酬の是正が解決されることを期待いたしてまいりましたけれども、診療側委員の引き揚げによって九カ月間の空白、そしてその運営をめぐる委員間の対立によって、もうすでに合わせて十一カ月事実上公的機関としての審議機能を失っているというのが率直な実態でございます。  一方、公私病院連盟、保険医団体などは経営実態の窮迫を訴えまして、その陳情等によれば、年末手当の支給期を目前に最も資金需要を必要としているにかかわらず、その調達は難航をきわめ、給料不払いの発生しかねない状態にある、病院危機が病院組織医療の機能を麻痺させ、さらに医療を荒廃に追い込むことによって国民を一層深刻な社会不安へと陥れることを深く憂うといたしまして、中医協の即時開催、診療報酬の緊急是正が速やかに実施されることを強く求めております。厚生大臣はこのような中医協と、またこのような実態に対し、今後どのように対処しょうとしているのか、また具体的にどのような見通しをお持ちになっているのか、お伺いをいたします。
  155. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 私、歯切れが悪いというんですけれども、これはいま微妙なときでございますので、余りどうもはっきり物を申して物議をかもすと、うまくいくものもいかなくなるというおそれがあるものですから、大分慎重に物を言っているわけであります。いま一生懸命やっているところでございますので、おまえはきのうの委員会でこう言ったではないかなどということからまた問題が新しく派生をいたしてもいけないということから、珍しく、歯切れよ過ぎると言われている私が歯切れが悪いというのはお察しを願いたいというふうに思うわけであります。  そこで、中医協の再開でございますが、何としても中医協というものはやはり三者がそれぞれのテーブルに着いて有効に審議をしていただかなければならないということであります。しかし、今日不幸にして両当事者の間にはかなり御意見が鋭角的に対決をいたし、しかも御自身の主張というものはこれは絶対に正しく、相手方の主張というものはこれは違うんだと、こういうふうなことを繰り返しているだけでございまして、したがいまして、この再開ができないでいるということであります。しからば一体この間にあって厚生大臣はいかがいたすべきものかということについていろいろと議論があります。中には、私が全責任を持って、挙げて私の責任であるというふうに論評をいたす向きもございます。私も診療報酬の速やかな、そして適当な改定というものは、これを今日の時点においてやらなければなりませんし、やるべきだと思っておりますから、したがって、その限りにおいては中医協というものが一日も早く円満な形でもって作動をすることを私はこいねがってやまないわけでございますが、しかしもともと中医協に対しまして、私は中医協の構成メンバーではございません。かかる意味において、やはり中医協の内部においてこの問題が処理をされることが最も望ましい姿でございます。かようなわけで、私は圓城寺会長等々の公益委員にもお目にかかって、この方々の御努力も願っているところであります。新聞等でごらんのとおり、中医協会長圓城寺さんがみずからいろいろな点についていろいろと御説得もいたしたこともございますが、なお解決をいたしません。私もまたそういう意味でいろいろと自分の立場においてあるいは圓城寺さんを助ける意味においていろいろと努力をいたしておりますが、残念ながらまだ両者の主張というものは平行線をたどっておりまして、中医協が現実に審議をいたす雰囲気にないということが今日の状況でございます。したがいまして、私としてはいつ、いかなる姿においてこれが正常化するかということについていまここで申し上げることができないのはまことに残念でございますが、私としては今日のこの事態でございますので、できるだけ早く中医協が正常に審議が始まるようにこいねがってやみませんし、またそのことについて最大の努力を払う所存でございまして、いろいろと今日やっているわけでございます。
  156. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は昨年十月二十五日、この委員会で医療保険制度に関する質問を行いました。その中で中医協問題にも触れまして、中医協を昭和四十六年九月社会保障制度審議会が答申した基本方針に沿って改組すべきではないか、それによって中医協が本来の機能を発揮できるよう大臣として勇断をもって取り組むべきではないかと指摘をいたしました。それに対して齋藤前厚生大臣は、中医協が本来の機能を発揮できるように全力を尽くす、将来どうしてもその機能を現在の機構では発揮できないということになったときは今日までの各方面の意見を十分尊重して善処すると、こうお答えになりました。大臣は、現在の中医協が、いま御答弁にもあったような現状でございますが、中医協が現在十分機能している、また今後も十分機能すると認識されておりますかどうかお伺いします。
  157. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 中医協の構成、あり方、また運営の仕方等々についていろいろな方からいろいろな御意見が出されております。私自身もこの問題について大臣になる前にいろいろとコメントしたことがございます。このことが今日私に大変災いをいたしまして、いろいろと委員会等でしかられておるわけでございますが、私は今日厚生大臣でございますから、したがって、行政の責任者である私はやはり法律制度にのっとって問題を解決するというのが私の当面の職責であろうと思いますから、あの法律なり、あの存在というものを無視して事を図るつもりは毛頭ございません。ただ衆議院でも御質問がございましたが、それじゃ中医協というものについて今後ともおまえはこれを改善をいたす、あるいは再検討をするということをしないつもりかと、こういう御質問がございましたが、これはやはり人間のつくった制度でございますから、したがって、立法論的な考察をいたすことについては、私はその必要がないとは申し上げないと言っておきましたが、しかしこのような発言というものがやはり今日の時点と絡みましていろいろと物議をかもすもんですから、私は当分の間これについてのコメントは差し控えたいとは思いますものの、過去における中医協の歴史は、非常に関係当事者の間にいろいろとトラブルを起こし、またその衝にあった歴代厚生大臣はこれの運営なりあるいはこれの扱いに困ったということだけは事実のようでございます。
  158. 柄谷道一

    柄谷道一君 十一月五日、これは日本医師会発行の「日医ニュース」の三四〇号でございますけれども、これによりますと、「対敵攻撃なき大会は念仏に等しい」、こういう見出しのもとに武見会長が十月二十一日の全理事会で、支払い側に攻撃を加えることなしに診療報酬問題は解決しないことを十分承知しなければならない。支払い側委員は無学の徒輩という一事に執着を持っているが、一番の問題点をつかれると一番痛さを感ずる。無学の徒輩が薬をいじり過ぎたために薬価がむちゃくちゃな形になり、正しい学問の進歩が入ってこない。現在のような弱肉強食の状態では薬価調査を行うことは弊害があり、これに応ずることはできない。医療経済実態調査は、究極的には診療報酬引き下げの口実であり、技術評価はこの調査から正しい返答は返ってこない、こういうことを強調されたということが日医ニュースに載っております。きわめて強硬な姿勢であります。私は、それと同時に非常に注目いたしますのは、同日の全理事会で、法律が存在しているため出席しているのであって、日本医師会は中医協の解体要求を出している以上、尊重する意思は毛頭ないという態度を決定したということを同じく報じております。中医協の一方の大きな構成要員である日本医師会が、このように出席はするけれども尊重しないということを明言されているというこの事実は、現行の中医協の機能が損なわれている現在の機構や運営をもってしては今後対話と協調によって合意が得られない、こういうことを物語っているんではないかと思いますが、大臣はどうお考えでございますか。
  159. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 確かに日医はそのようなことを全理事会で発言をしたように聞いております。中医協を尊重するかしないかということは、これは一方の当事者の価値判断の問題でございますから、私がここであれこれ申し上げるというのはいかがかと思いますが、要は、私はやはり現実に法律制度の上にある制度であり、これのスクリーニングを経てこなければ、診療報酬の改定ばできないというのは厳然たる制度でございますから、したがって、この中医協というものの、中医協という制度にのっとって問題が解決するということにしていただかなければ困るわけでございます。かような意味で価値評価については、いろいろとそれが具体的に派生するいろんな問題との関連はないわけではございませんが、しかし、このことをしばらくおくといたしましても、やはり中医協の参加メンバーである二号側委員というものは、やはり中医協で的確な審議をいたしていただき、そして問題が正当に解明されるように努力をしていただきたいものだというふうに思っている次第であります。
  160. 柄谷道一

    柄谷道一君 一方支払い側委員は、医療経済実態調査の完全実施、薬価調査の実施、今後中医協に出たり入ったりして混乱させないことを三師会が確約する、これが再開の条件でございます。  週刊社会保障の十月十三日号によりますと、支払い側総評選出の安恒委員は、診療側の支払い側責任論、目減り是正論は天井につばを吐いているようなものである、こういう発言をしたと報ぜられております。私は、このように考えますと、現在の中医協の中はきわめて強い相互不信と深い対立関係にあると思うのであります。しかも、一方病院経営等を行っている者はそのことによってただ漫然として時日が遷延するということについて重大な医療の危機を訴えているのであります。私は、このような実態を考えますならば、圓城寺会長を中心として、確かに形式上はそれが筋でしょう。しかし、わが国国民医療をあずかっている厚生大臣として、もっと本当に勇気を持って真情を吐露して両側の委員に働きかけ、その解決の道を積極的につくっていく、圓城寺会長にもっと強い姿勢で協力をするという姿勢がなければ、この混迷からの脱出を図ることはできないと思うわけでございます。大臣の決意と、大臣はいつを目途に再開させるべく努力していこうとしておられるのか。くどいようでございますけれども、大臣の明確な御回答を賜りたいと思います。
  161. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 確かに先生おっしゃるとおり、中医協の長い歴史の中にはかなり鋭い対決あるいはそういうことを申しちゃいかぬですが、ある面では感情的なものもあるように私見受けられるときさえあるわけであります。そうしたことでありますんで、非常に容易なことではないということだろうと思います。私は国民医療が健全にこの際伸展をするために、やはり中医協が有効に作動して、そうして速やかに答申を得るようにいたさなければならないということで、ただいま先生が真情を吐露してやれということで、本当に真情を吐露して申し上げているんですが、私の真情の吐露の仕方が十分じゃないせいか、なかなか御了解の点に到達をいたさないわけであります。そしていろいろとまた、一切挙げて私が何とかしろということをおっしゃっている当事者もありますし、また片一方は絶対にこの要件をのまなければ、もう二度とおれのところに来たってだめだと、こういうことを言っている。片一方はそれは全然考慮に値しないと、こう言われておるものですから、私としては何とかこういうときには両方が棒をのんだような姿では問題は解決しないんだということをいろいろ申しているわけでございますが、今日なおお互いに歩み寄る傾向は、はっきりとは見受けられないわけであります。今後とも強力にひとつ真情を吐露して問題の解決に進みたい。いつやるんだ、私は一日も早くということを申し上げる以外にないと思います。
  162. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間もありませんので、問題を次に移しますけれども、私はるる申し上げましたように、きわめて現在重要な局面にあることは、もう大臣十分御承知のとおりであります。この解決に当たるためには、文字どおり厚生大臣の職を賭してこの解決に当たるという強力な姿勢で片方の側に偏することなく、大臣としても公正な立場を訴え、正常な中医協の再開が一日も早く行われることをこれは強く希望いたしますとともに、あわせて今後とも中医協の機構というものを現状のまま存続することが果たして妥当だろうかどうか、この点についてこれはなかなか恥部ではございますけれども、厚生大臣としての真剣な検討が行われることを強く期待をして、次の質問に移っていきたいと思います。  私は、次の問題は支払い側の再開条件の中に、歯科の差額徴収問題がございます。歯科医師会の脱保険の方針と差額徴収問題が各方面から鋭い指摘を受けてきたことは御承知のとおりであります。私はこの問題に対して関係者が謙虚に受けとめ、反省すべきは反省し、国民の歯科医療確保のための施策を誠実に行うことに努力する、それを強く求めることはこれは当然でございます。しかし、同時に私は、こうした問題を起こした背景と基本問題にやはりメスを入れ、どうすれば歯科差額をなくすることができるのか、その対策に目を向けなければ根本的な解決にならないのではないかと思います。  そこで三つの問題を御質問いたしますが、まず第一はわが国の歯科医療行政の考え方を、治療中心から予防中心に移す必要があるのではないかということであります。差額徴収と同時に、計画診療がかねて問題になりました。しかし、わが国には乳幼児の虫歯罹患率が九〇%をこえております。したがいまして、この歯科予防というものにもっと行政上の力点を置かなければ、計画診療ということを解消することはできないと思うわけであります。ということになると、現在幼少年を主体とする専門技術者というのが不足している。幼少年専門の歯科病院施設というものが乏しい。しかも、行政機構は文部省と厚生省、文部省の中でも各局に分かれております。もっと行政の一元化を含めまして、この歯科予防対策の充実ということについて根本的な検討がいま要請されているのではないか、こう思うわけでございますが、その所信をお伺いいたします。
  163. 石丸隆治

    政府委員石丸隆治君) 歯科医療行政、あるいは歯科診療のあり方、こういったものが現在の治療中心から予防中心に変わるべきではないかという御意見でございますが、これは一般の医療につきましても、治療より予防という点が強調されておるところでございます。それと同じように、歯科治療につきましても同じことが言えるわけでございますが、ただいま先生指摘のように、特にわが国におきまして乳幼児の齲歯罹患率が非常に高い、そういった歯科疾患の現状、あるいは非常に待ち時間が長い等の歯科治療の現実、そういったことから考えますと、特にこの歯科疾患の予防が大切な問題であろうかと考えておるところでございます。それで、われわれといたしまして、この歯科の部面におきます予防対策といたしましてどういうことをやっておるかということでございますが、従来から、歯の衛生週間の行事などを通じまして、国民の歯科衛生思想の普及等に力を入れてまいったところでございます。さらに保健所では、母子保健法に基づきまして、妊婦あるいは乳幼児に対する歯科衛生教育、歯科の健康診査、あるいは歯科の保健指導を行っておるところでございまして、また、鶴歯予防措置といたしまして弗素塗布等も実施しておるところでございます。このように従来もわれわれといたしましては、歯科医療の面での予防対策ということには努力をいたしておるところでございますが、さらに今後このわが国の現状等を踏まえまして、さらにこの面に努力を払ってまいりたいと考えております。  それから次に、小児歯科医療の問題でございますが、これは一般の医師と歯科医師とも変わらないところではなかろうかと思うわけでございまして、一般の医師につきまして、やはり医師の資格を持てばすべての患者を取り扱えるという制度になっておるわけでございまして、歯科医師につきましても、小児を含めましてすべての歯科診療を行うことができるという、この原則はあろうかと思うわけでございますが、先ほど先生指摘のように、特にわが国における乳幼児の齲歯の罹患率が高いという、こういうような現状を踏まえまして、特に選科に対する——医科診療を専門に行うそういった歯科医師の要請が要望されてはおるところでございますが、この制度そのものにつきましては、なお慎重な検討を要するものと考えております。  それでとりあえずの現在の措置でございますけれども、小児に固有の歯科診療技術につきまして、学校教育の中でどういうことを行っておるかということでございますが……
  164. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間がないから、簡潔にやってください。
  165. 石丸隆治

    政府委員石丸隆治君) この歯科大学設置基準の中におきまして、昭和四十三年から小児歯科学の教育を行っておるところでございます。さらに一方、卒後教育といたしまして、厚生省におきましては昭和四十八年度より日本歯科医師会に委託いたしまして、小児歯科診療に関する研修会を行っておるところでございまして、今後とも卒後教育の面を通じまして小児歯科診療技術の普及を図ってまいりたいと考えております。
  166. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま御答弁があったんですけれども、確かに努力してこられたことは認めます。しかし、その後罹患率が一向減ってないということは、現在の予防対策というものがなおきわめて不十分であることを数字が物語っていると思うわけでございます。厚生省の組織令二十六条、これを見ましても、歯科衛生課の主管事務から歯科医療、歯科保健衛生が除外されております。しかも、その現状の厚生省内の人員というものは、きわめて少ないものでございます。大臣、このような実態でございますので、きょうは具体的に時間がないので詰められませんけれども、行政機構を一挙に改革するというのはなかなか問題でしょうけれども、関係省庁及び各関係局というものがひとつ予防の充実ということに対して、やはり相互に緊密な連携をとって、体系的にも、またこれを裏打ちする予算的にも、この際大臣もうひとつ抜本的にここにメスを入れてみる必要があるんではないかと、こう思うんですが、大臣いかがでございますか。
  167. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 歯科の分野における予防の面の今後の充実、なかんずく小児歯科、そしてその小児の歯科の予防、これは諸外国でもいろいろ努力をしているところであり、日本歯科医師会からもそういう要望書が来ておるところであります。これに対応する施策というものはいま医務局長からいろいろ申し上げましたが、率直に言うていまだ十分なものとは思えないわけでありまして、今後ともこれについてはいろいろと充実をいたしていきたいと思っております。  そこで、この歯科衛生に関するわが方の行政組織あるいはその協力体制等々についてはいろいろと今後改善、検討を加えるべき必要があろうと思われますが、しかし何分過去においては医務局歯科衛生課を廃止をいたし参事官制度にいたしたことがございまして、あの当時、いまそこにおられる鹿島議員などは大いに奔走してこれの復活に努力をいたしたような経緯も、私若い議員のころございますので、いまいろいろと努力はいたしておりますが、今後先生のお説のような点についてさらに積極的な前向きの検討をいたすことについては異論がございません。
  168. 柄谷道一

    柄谷道一君 第二の問題は再診料の問題でございます。  現行診療報酬体系の中で、再診料は点数表にはありますけれども注釈の制約によりまして事実上算定できないという結果になっております。時間の関係もございますが、日歯公報三九四号、この中には、診療において初診以降の経過の観察と術中、術後の判断を行う再診行為はきわめて重要であり、医の基本である。一般医科で抜歯や口腔内処置を行えば自後の処置ごとに再診料が算定できるが歯科においてはできない。これは大きな矛盾であり不公正であり、また、歯科医師の頭脳評価を軽視するものである。また現在、厚生省の述べている再診料規制の理由には大きな矛盾がある。——ということを相当の紙面を割いて強調いたしております。この問題もまた歯科の差額徴収解消の一つの関連する大きな問題であると思うんでありますが、大臣はこのいま申し上げましたような考え方をどう評価し、今後どう対処しようとしておるのかお伺いします。
  169. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 再診料の問題につきまして先生から御指摘ございましたように、現在では処置等を行わなかった場合にのみ算定するということになっておるわけでございます。再診料をどういう形で評価するかといういろんな見方もあろうかと思いますけれども、現在厚生省におきましては歯科診療の特殊性というのを考えた場合に、個々の再診行為ということではなしに各診療行為の評価を含めましてその際に再診行為の評価を行うというような考え方をとっているわけでございますけれども、御指摘のような問題点もあるわけでございます。今後の研究問題にさしていただきたいというふうに考える次第でございます。
  170. 柄谷道一

    柄谷道一君 この問題も短時間でどうするこうするはなかなかむずかしい問題でございますが、大臣、いま私の申し上げましたこの再診療という問題の取り扱いが差額徴収問題解消という中で一つの大きな課題であるという認識はされておるわけですね。
  171. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 日本歯科医師会からいわゆる再診料の扱いの改定を求めてきていることは事実でございます。私もしばしば陳情を受けました。これについていま確たる御返事を申し上げる段階ではございません。何分にもまだ中医協に……最終的には中医協でこれを決めることでございますし、また、そうした形式論を別にいたしましても、まだ諮問をいたすような段階までこぎつけておりませんので、いろいろいまおっしゃったようなことを踏まえて今後の検討課題といたしますが、要するに、しかし、診療報酬の立て方の問題とも関連するようでございます。いずれにしても、これは今後の検討課題だろうと思いますけれども、しかし、さればといって、それが差額徴収の問題と直ちに論理的に牽連をするというふうに判断をいたすということもいかがかと、こういうふうに思われるわけでございますが、ただ、言えることは、総医療費の中に占める歯科のシェアというものが微減していることは事実でございますので、そうしたことのリカバリーということについては、やはりわれわれとしては今後診療報酬改定について考えていかなければなるまいものというふうに思っております。
  172. 柄谷道一

    柄谷道一君 そのほかにも、乳幼児診療に対する加算、治療の技術料評価の低さ、金属冠修復と義歯の評価の不適正、いろいろ問題があるわけでございます。それぞれが非常に経緯を持ち、重要な問題でございますけれども、国民がいずれも強く望んでいる歯科の差額徴収を根本的に解消し、そして計画診療という形から脱するためにはいずれも並行して解決しなければならない重要な課題であることを十分御認識を願いまして、本日は問題提起の形にとどまったかもしれませんが、追って、引き続き質問を行うこととして、大臣の善処を求め、時間もありませんので次に進めます。  十一月六日、健保連の全国大会で、医療費支払い方式の改革、逆立ち医療保険の改善、公費医療制度の拡充整備医療供給体制の整備、健保財政の確立という五項目が決定されております。その内容の細部はいろいろ問題があるにしても、この項目が現在の医療問題解決の重要な問題であるということで、その方向は今日まで各種審議会が建議してきたところであります。いわば、この建議によって国民の大方の合意が形成されていると言わなければなりません。しかも、この健保連大会に出席いたしました各党の代表は、いずれもそのごあいさつの中で、大綱について賛意と激励を行っておられるわけでございます。いわば、政策的にも合意があり、政党間においても大筋の合意ができ上がっていると言わなければなりません。この情勢の中で、今日まで何回も頭をもたげながら、医療抜本改正問題は審議が一向に進展いたしておりません。これに対する大臣の所見をお伺いいたしたい。  あわせて、最後の質問でございますが、私は、昨年十月二十五日の社労委員会で、支払基金制度の改革について質問をいたしました。これに対し、同じく齋藤前厚生大臣は、支払基金の果たしている役割りと職員の努力には敬意を払う、法律改正を要するものは引き続き検討するが、予算措置ではできるだけ国の負担、補助をふやすよう努力をしたい、こういう回答をされております。しかし、現実に基金理事会で、公益、診療側、支払い側、保険者側は一致して、満場一致で、基金の当面の改革について大臣に意見を具申しているわけでございます。中医協と違って、すでにこれは各側意見の完全一致した改革案でございます。たまたま、明年の通常国会には健保改正の法律が出されると聞いておりますけれども、大臣は明年度通常国会に、この基金の改革問題についてあわせて提案するという確約が、この席でぜひ願いたいと思うのでございますが、いかがでございますか。  以上、二点をお伺いいたします。
  173. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 第一点の問題は、十一月の健保連の全国大会で出ました五つの決議の問題でございます。ここに触れられております問題は、いずれも医療保険制度の根幹に触れる問題でございまして、その意味から申しますと、従来からもいろいろな方面から御論議されておった問題であるわけでございます。それだけにまたむずかしい問題を含んでおるわけでございまして、現在、医療保険制度の根本的なあり方等につきまして、当面の問題を含め、あるいは今後の問題を含めまして、社会保険審議会の健康保険等問題懇談会におきまして御論議を賜っているわけでございまして、私ども社会保険審議会におきます、健康保険問題等懇談会の今後の御論議等を踏まえまして、今後の問題に対処してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  それから第二点の御質問でございますけれども、支払基金制度につきまして、先生から御指摘ございましたように、前の国会におきましても、齋藤前大臣に対しまして御質問があったわけでございますが、先生から御指摘ございましたように、各側一致しました意見としまして、今後の支払基金制度のあり方につきましての御意見が出ているわけでございます。支払基金制度につきましても、制度発足以来、今日では大きな情勢の変化があるわけでございますし、特に今日の医療保険制度の中で占めております審査、支払いという大きな重要な使命、役割りというものを考えました場合に、今後の支払基金制度のあり方という問題につきましては、私どもも真剣にこの問題を受けとめ、考えていかなければならないというふうに考えておる次第でございます。出されております御意見の中には、制度の根幹に触れるもの、法律改正を必要とするもの、あるいは予算措置、行政措置、いろいろな問題があるわけでございますが、ただいま先生から御指摘ございました来年の健康保険の改正の際に、支払基金制度についてどう対処するかという御質問でございますけれども、私どもこの問題、真剣に現在検討している段階でございまして、いまの段階におきまして、どうするというお答えをすることができないのは残念でございますけれども、この問題、先ほども申し上げましたような意味で、真剣に検討さしていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  174. 柄谷道一

    柄谷道一君 きょうはもう三十分という時間の制限がございましたので、それぞれの問題きわめて重要ですが、深く突っ込むことができませんでした。  国民医療運営責任者は、申すまでもなく厚生大臣であります。医療行政が、有効な措置をとれずに時間をただ過ごしているということは、まことに憂慮にたえません。議論や政策はすでに出尽くしていると思われます。残された問題は、大臣の勇断と、そして園児の合意を得るための公正な選択と、行動にかかると思うわけでございます。どうぞ大臣、歴代かつてなき名大臣と言われるように、これらの重要課題に対して、少なくとも前向きに解決するその姿勢を今後強く出していただきたい。大臣の公正な意見に対しては、国民も深く耳を傾けるであろうことを強調いたしまして、私の質問を終わります。
  175. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) ありがとうございました。
  176. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 関連。  ただいまの柄谷委員の御質疑の中で、歯科診療に関する点について、二点お伺いをいたしたいと思います。  ただいま、まことに卓見な御質問が行われまして、大臣の御答弁も、私はこれを多とするものでありまするが、一点、まず第一点として、歯科の予防措置でありますが、これについては、かねがね乳幼児の予防というものは、歯科疾患を今後減少せしめる大きな要素である、そうなりますと、これを何とか強力に進めるために、齲蝕予防法のような措置は講ぜられぬものか、これは相当歯科医師会でも強く要求しておるところでありますが、これについて、大臣の御所見を承りたいと思うわけであります。
  177. 石丸隆治

    政府委員石丸隆治君) 虫歯予防法の制定の問題でございますが、これは従来からもその必要性はいろいろ議論されていたところでございますが、やはりその方策等につきましてまだ必ずしも十分議論が出尽くしていない段階ではなかろうかと考えておるところでございまして、先生の御指示を体しまして今後さらに検討を進めさしていただきたいと思います。
  178. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 一言大臣から、ちょっと。
  179. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 鶴歯予防法についてはかねがね歯科の関係者からの御要望もあり、また先生からも強く御主張があり、ただいま私厚生大臣ですが、かって議員時代には先生と一緒になって齲歯予防法の制定についていろいろと考究をいたしたことがございます。現在、これを法体系にまとめることについては、なお検討を必要とするものと思われますが、私はやはりこうしたことの政策要請というものは十分あるというふうに思われまするものですから、これを法律の上にのっとってやるか、実質上これをやるかということを含めまして、私は施策の向上については今後努力をし、努めなければなるまいと思っておりますが、やり方についての、ことに立法を伴うか伴わないかということを含めての今後の扱いについては、なお検討をさしていただきたい、かように思います。
  180. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ただいまの大臣の御答弁で大体わかりますが、御意見はいただきませんが、一言、申し述べたいことは、御承知のとおり、歯科医療というものはきわめて予防措置が効果をあらわすことでありますから、これによってむしろ私は社会保険医療等を考えましても、その経済を考えましても、予防措置によってむしろ私はそういった社会保険医療経済の圧縮が図り得るようなものにつながってくると、こういう点について大臣はひとつ深く留意をされて御善処を願いたいと思います。  もう一点、先ほど柄谷委員の御質問の中で、歯科のたとえば抜歯、これ医師がやった場合には再診療は取れる、専門家である歯科医師がやった場合には取れない。このことはいろいろいま御回答がありましたが、どうしてもこれは納得できぬというのは当然だと思うのです。したがって、こういった診療報酬体系ですね、いろいろまだほかにもございますが、特に顕著ないま御指摘になったようなことは、これは当然早急に、保険局長もおられますが、十分な検討をして実施にひとつ踏み切っていただきたい、このアンバランスをひとつ縮小してもらいたい、こう考えます。御回答を願いたいと思います。
  181. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) これは柄谷委員にも御説明申し上げましたが、歯科における診療報酬体系の問題とも絡み合っていると思います。また、いろいろ当事者の間の、関係者の間の御意見、御議論も実はあることを私も承っておるわけであります。また現実の問題としてこれは相当やりようによっては多額の診療報酬の追加要因にも実はなるわけでございますんで、したがいまして、今後行われるであろう診療報酬改定がどの程度になるかということも現実の問題として考えてみなければならないという一面もあろうと思います。まあ、いずれにいたしましても、今後これについては検討をいたしていきたいということでございます。
  182. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 終わります。     —————————————
  183. 村田秀三

    委員長村田秀三君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、沓脱タケ子君が委員辞任され、その補欠として橋本敦君が選任されました。     —————————————
  184. 村田秀三

    委員長村田秀三君) 質疑を続けます。
  185. 橋本敦

    橋本敦君 私は、いまちょうどインフルエンザの予防接種が行われている時期ですが、これに関連をいたしまして、かねてから国会でも取り上げられましたし、大きな国民世論ともなっている予防接種に伴う副反応、それの被害者の皆さんの救済、これを一体国としてどうやっていくのか、こういう問題について大臣並びに局長から御見解をいただきたい、こう考えております。  その質問に入るに先立ちまして、私は何よりもまず被害の実情なり被害を受けた子供たちあるいはその両親がどんなにいまなお苦しんでいるかという実態、この実態を率直に大臣に御認識をもう一度改めていただきたい、そういう気持ちが強いわけです。たとえば私の手元に「毎日グラフ」がございますが、これはことしの九月二十一日のものです。この「毎日グラフ」の中には、「たった一回の注射のために」ということで、子供たち被害を受けた悲惨な実情が写真で収録をされております。大臣は御多忙ですから、お読みになったことがないかもわかりませんが、これはお目を通されたことございますか、まだございませんか。
  186. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) そのグラフは私は見ておりません。しかし、予防接種による事故のお子さんの実態は拝見をしたことがあります。
  187. 橋本敦

    橋本敦君 大臣、ちょっといまごらんいただくようにしていただきたいと思います。   〔資料を手渡す〕
  188. 橋本敦

    橋本敦君 じゃ、結構でございましょう。  もう一つの写真もごらんいただきたいと思います。——その写真をごらんいただきましてもわかりますが、一目見て、本当に言葉もないほど悲惨な状況でございます。たとえばその写真の子供、顔を見ますと本当に澄んだひとみで、かわいい顔をしております。しかし、その体を見ますと、本当に言葉もないありさまですが、大臣、その写真をごらんになりまして、その子供が幾歳ぐらいか御見当がおつきでしょうか。御見当おつきにならないと思います。それは、この「毎日グラフ」にも出ているんですが、生後七カ月、そのときに百日ぜきとジフテリアの混合ワクチンを受けまして、その被害でそういうことになった。いま十九歳なんです。とてもその写真で見ますと十九歳と思えない状況でございますね。私がきょう大臣に見ていただきました写真は、たくさんの被害を受けた子供たちのほんの一、二例だと、こういうことなんです。  ところで、この問題につきまして、この「毎日グラフ」の中で、東北大助教授の吉原賢二さんの言葉として、こういう言葉が大臣載っております。「ワクチンに害かあろうなどとは知るはずもありませんでした。わが子を破壊した元凶がワクチンと知った時、(中略)何万人か何十万人に一人かは必ず重大な被害を受けることをわかりながら〃社会防衛〃の名目で国が予防接種を強制していたことを知った時、悲しみは怒りに変わりました」、こういうように当助教授は言っておられます。私は、こういう思いはすべての父親の、母親の思いだと、こう思うんですが、このような被害の実態があるということについて、確かに法律的には、言うまでもありませんが、法律によって予防接種を強制しているとわが国の法たてまえになっています。それを受けなければ罰金の制裁まで課せられるという体制になっている。そういう状況の中でこういう被害が起こっているという国について、基本的な問題としては、やはり国は国の責任において救済するということの基本姿勢をまず明確にする必要があるのではないか、私はこう思うのですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  189. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 確かに先生おっしゃるように、やはり予防接種というものは社会防衛のために行っていることは事実だろうと思います。しかし、不幸にして非常にレアなケースでございますが、いま先生が御提示になったような人が出るわけでございまして、このようなことはまことにどうも残念なことでございますが、さればといって、これ予防接種をすべてやめてしまうということは、実際問題としてまたできない一面もあろうと思うのでありまして、そういうことに相なりますれば、やはりそうした社会防衛のために予防接種をやったことによって非常にまれなケースにぶつかった、そういう方々に対してはやはり国はこの人たちに償うところがなければいけないだろうということで、今日われわれとしては何とか予防接種事故についての救済制度というものを確立をいたそうということでせっかく今日努力をいたしているところでございます。
  190. 橋本敦

    橋本敦君 ところで、いま大臣がおっしゃるように、この被害を受けた国民に対して救済処置をせっかく検討というお話がございました。私も大変結構だと思うんですが、まずもってこのような被害の実態について、今日までどれほど国がつかんでいらっしゃるだろうか、その問題について私はまず一つの疑問を持つわけです。たとえば厚生省からいただきました資料によりますと、四十五年以後つくられました救済処置、これについての申請件数が五十年九月五日現在で二千二百九十四件に上っております。この数字はいただいた資料ですから間違いないと思います。ところで、実際にこれは申請をみずからなさった数でございますから、したがって、申請をまだしていない、あるいはしょうと思ってもできない事情がある等々のために申請をしていない方がたくさんあることも推定されるわけです。この二千二百九十四件の申請以外に、この被害を受けている方が実際どれほどいらっしゃるかというような推定、これは厚生省の方ではどのようにごらんになっていらっしゃるでしょうか。
  191. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) まだ申請をしていらっしゃらない方々の推計でございますけれども、四十五年以降は都道府県が事故が起こりましたときによく御援助、御指導いたしまして、申請漏れはほとんどないものと考えておりますが、四十五年以前が問題でございます。しかし、私どもの従来からの経験では、いま先生がおっしゃいましたように、そのようにたくさんはないであろうと考えております。
  192. 橋本敦

    橋本敦君 そのようにたくさんとおっしゃいましたが、私は数を申し上げたわけじゃないものですから、数の議論をいましているわけじゃないんですけれども……。  そこで私は一つ伺いたいのは、昭和二十三年以降、WHO世界保健機構の方に国の方がこの予防接種による副反応の死亡事故については昭和三十九年までで三百九十八件という報告をなさったという資料を目にしておるんですが、その事実は間違いございませんか。
  193. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) この資料がどういうものであるか、はっきりしないのでございますけれども、たとえば予防接種によりまして死亡事故を起こしましたような場合には、人口動態統計の事故死の中に出てまいるわけでございまして、そういう形では報告はされております。
  194. 橋本敦

    橋本敦君 したがって、いま私がお聞きしたのは、積極的な調査によってつかんだ数というより死亡事故、人口動態、こういった中から偶然的にしろ拾われた数を報告されたということになると思うんですが……。  そこで局長にお聞きしたいのですが、これまでこの予防接種副反応事故について厚生省として積極的に実情調査をなさったことがございますか、ございませんか。
  195. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 私どもは、現在先ほど先生が御説明なさいました四十五年の秋から始まりました救済制度の申請件数、申請の事例、そういったものをもとにいたしましていろいろな角度から分析をし、判断をしておる現状でございます。
  196. 橋本敦

    橋本敦君 だからしたがって、いまの局長の御答弁は、私が申し上げる実態調査ということではやっていない、こういうことでございますね。
  197. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) この申請件数というのも一つの実態をあらわしているものでございまして、結核の実態調査とか精神の実態調査のようなものではございませんけれども、非常に貴重な資料であると考えております。
  198. 橋本敦

    橋本敦君 局長ね、私が申し上げている実態調査というのは、申請者がみずから申請したというその申請をそれぞれ調査なさると。これは受理された以上調査なさるわけですから、そこからまた一定の統計をおつくりになる、これ結構です。やっていただきたいと思いますが、私が申し上げているのは一それは四十五年以降のことでございますね、局長のおっしゃる申請に基づく調査。こういう事故は四十五年以前からもあったわけなんで、私が申し上げているのは、四十五年以前、これは実態的な調査厚生省としておやりになったということはないんじゃないか、こういうことでお聞きしているんですが、いかがですか。
  199. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 種痘につきましては明治四十年から、その他の予防接種につきましては昭和二十三年の予防接種法の制定以降全部申請していただくように各都道府県市町村が勧奨いたしておりますので、これは最近始まった制度ではございますけれども、昔のものもほとんど申請されて出てきておるものと考えております。
  200. 橋本敦

    橋本敦君 それでは局長伺いますが、実際、昭和二十三年以降で結構ですが、調査をしたとおっしゃるならば、各予防接種に基づく副反応作用の事故がどれくらいあったかということは、統計的に厚生省は明らかになっておりますか。
  201. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 四十五年以降申請の形で出てきておりますので、それを分析してさかのぼって判断するということはいたしております。
  202. 橋本敦

    橋本敦君 だから、私が言うのは申請があったものを分析してなさっているだけで、申請の有無にかかわらずこの被害実態を全国的に調査するということをおやりになったことはないんじゃないですかと、ただこれだけの質問なんですよ。ないというように私おっしゃっていただいていいんじゃないかと思うんですよ。
  203. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) そのような実態調査はいたしておりません。
  204. 橋本敦

    橋本敦君 そうですね。
  205. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) しかし、やり方としてはやはり昔のケース等についてもこういうふうな救済制度があるのだというようなことを御指導しながら調べていくというようなことで、実態調査をやるとしても余り変わった方法にはならないのじゃないかと考えております。
  206. 橋本敦

    橋本敦君 その点については意見を申し上げたいことがいろいろあるわけですが、そうしますと、たとえば種痘に関して言いますと、米国の場合は数字で統計的に言いますと百万人について一・九ないし二・九人、英国の場合には一四・六人、こういう数字が出されているようですが、わが国の場合はどれくらいになるのか、厚生省としてはどうつかんでおられますか。
  207. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 種痘の場合も年によりましてかなり事故の発生状況は違っております。そこである程度の幅があるわけでございますけれども、日本の場合ここ十数年をとってみますと、毎年百万人について五人から十人ぐらいの死亡事故が、また三十人から三十五人ぐらいの後遺症を残すような事故が出ております。
  208. 橋本敦

    橋本敦君 いま局長は四十五年以降のこの申請に基づいて調査を進めているというお話でしたが、実際こういう救済臨時処置があるということでこの手続を知らないという人がまだあり得るというように私どもは考えて心配しておりますが、その点について局長は実情はおわかりかどうか、いかがでしょうか。
  209. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 全国津々浦々詳細に調査いたしますれば、そのようなケースもあるかもしれませんが、こういった救済制度につきましては、第一線の市町村の役場が住民に対しましていろいろと御指導をし、申請を出すように努力をいたしておりますので、先ほども申し上げましたように、それほど申請漏れはないのではないかと考えております。
  210. 橋本敦

    橋本敦君 私の手元には、予防接種事故研究会、これは関西にございますが、これが関西の被害者を各家庭訪問等によりまして実態を調査した資料がここにあるんですが、それによりますと、二十九例に当たりまして、そのうちの十九人の方がパーセントで言いますと六五・六%になりますが、このような救済処置があることを知らないという事情であることがわかったという研究会報告がございます。そこでいま局長がおっしゃいました各市町村を通じてということで、厚生省は一応通達、示達をなさっているというたてまえですが、それが各市町村で実際に被害を現実に受けていらっしゃる家庭に周知徹底されているかどうかについては、この私の提起をした数字から言えば、大いにまだまだ疑問があり、改善しなきゃならないという問題があるように私は思うんですね。だからこの点について、もっと抜本的に改善をするということを強力に指導する必要があるのではないか、こう思いますがいかがでしょうか。
  211. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) その点につきましては、御提案のように一人の脱落者もないように強力な指導をしなければならないと考えておりますが、ただいま例示なさいました関西のケースにつきましては、本当にこんなに脱落者があったのかということを少し疑問に思っているところでございます。
  212. 橋本敦

    橋本敦君 通達をお出しになった局長からすれば、疑問に思われる節もあることは私も立場上そうかもしれないと思います。実際に調査をすればこういう実態だったということが逆にわかっているわけですね。だからいま局長がおっしゃったように、さらに積極的な示達をしていただくということは、これはまあ必要だと思いますが、さてその現行の救済制度の問題なんですが、これはすでに御存じのように、四十五年六月十五日に出されました伝染病予防調査会の答申書に基づきまして救済処置がとられることになったわけですが、この答申書でも「国が被害者を簡易な手続により迅速に救済し得る制度を、早急に確立すべきである。」という答申がなされております。で、また同時に、厚生省が四十五年七月三十一日付で閣議了解に基づいてお出しになったものを見ましても「恒久的な救済制度の創設について検討することとするが、——当面緊急の行政措置として、」ですね、救済処置を設けるということでとられているということが明らかなわけですから、当面の緊急の救済処置ということである性格ははっきりしております。ところで、この救済制度によって、十分救済が現になされているかどうかという点について、若干の御質問をさせていただきたいと思うのです。  まず第一点といたしまして、申請手続の問題がございますが、この申請手続につきましては、事故審査会で書面審理を原則とするというようになっております。ですから、したがって医師の診断書、あるいは母子手帳、そういった接種したことの公的証明、そういったものをそろえて出さなければならない、こういうことになっているのと、もう一つは接種を受けた市町村を通じて出さなければいけない。こういう制度になっているということに関連をいたしまして、まず第一に、この四十五年以前の方で、四十五年に救済制度ができたということを知って申請しょうとしても、もう古いことですから母子手帳がなくなっているとか、あるいは接種を受けたということを証明するのに、公的証明をもらうということで大変苦労をするということを私はしばしば聞いております。そういう問題については、この事故審査委員会においては、どういうような判断でお取り上げ願っておるのか、その点について実情いかがでございましょうか。
  213. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) ただいまいろんな申請書類を例示なさったわけでございますけれども、一番大切でございますのは、その時点でどういう予防接種を受けたか、また予防接種のあと、どういう経過をたどって発病したか、そういったことが一番大切なわけでございまして、この証明はどうしても必要でございます。しかし、母子手帳その他につきましては、場合によっては必要ではないという運用をいたしております。
  214. 橋本敦

    橋本敦君 ところで、医師の診断書の場合、お医者さんが診断書を書いてくださらないというようなことがあって、大変申請するのに困っておられる、申請できないという話も聞くのですが、これはそういうことはあり得ることだろうかと私も疑問を持ちますが、そういうお話をお聞きになったことは局長ございませんか。
  215. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) ときどきそういうお話を承っておりますけれども、多くの場合には地元の市町村が間に立ちまして、うまく解決をしているように思っております。
  216. 橋本敦

    橋本敦君 いまおっしゃったうまく解決している例として、たとえばどのような解決方法があるでしょうか。たとえば市町村が特定の医師を指定して、その人の診断を受けるような便宜を図ってやるとか、そういうようなことでしょうか。
  217. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 診断書は、これは公的医療機関どこでもよろしいわけでございますから、市町村の病院、診療所があればそこでも診断書をお書きできるわけでございます。問題は当時本当に予防接種を受けたかどうか、またその後の経過がどうであったかということになりますと、予防接種をしたお医者さんに判断をしてもらうことになろうかと思うのでございますが、そういった場合に、大変古いケースでございますと、いろいろとトラブルが起こることがございます。しかし、役場の方の職員とか、あるいは保健婦だとか、そういうふうな人たちも当時の模様の証明等に御援助をいたしまして、できるだけそういう証明が得られるようにしているのではないかと考えております。
  218. 橋本敦

    橋本敦君 申請の結果、処置が妥当だと判断されなくて、却下をされるというケースですね。これがやっぱりかなりの数あるわけですが、その中で理由としては因果関係がないというような判断をされたものが、この神戸の研究会の資料によりますと、十一例のうち六例、資料不備が五例ということで、因果関係がないというのがかなり半数以上あるという実情が、実情調査の結果明らかになっておりますが、この因果関係の有無について、たとえば閣議了解の点でいきますと、「予防接種の副反応と認められる疾病(副反応の疑いのある疾病を含む。)」ということで広く救済するために異例の言葉書きまでお入れいただいておるというような実情が実際ございます。こういう立場について言うならば、因果関係の存在の立証を申請者に厳密に負わせるということは、古いときの問題になりますとなかなか容易でない、そこらあたりの御配慮が十分に審査会でなされているかどうか、この十一例のうち六例が因果関係なしということだということから、私は危惧を持つのですが、局長としては、この点の配慮を十分に審査会に伝えてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
  219. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 現在、予防接種事故審査会におきましては、疑いのある者は全部認定をいたしております。で、その際には、たとえば西ドイツの認定基準、これは蓋然性に基づいて行っておりますが、そういったものも参考にし、また、ときどきは西ドイツの当局とも相談をして運用をいたしております。そこで、いつも問題になりますのは、たとえば具体的な例でございますが、種痘いたしました場合に、予防接種を受けてすぐ膿症が出てきたいということは、医学的にも実験的にも、また経験的にもないわけでございまして、そういったものは因果関係がないとされるわけでございます。種痘の場合には、通常三日目ぐらいから膿症が出てくるわけでございます。また、種痘の後六カ月、七カ月たって膿症が出てきたということも、これは従来そういう経験、証明がないわけでございますので、これも因果関係がないとしておるわけでございまして、そういった特殊な例が却下になっているわけでございまして、日本の現在の審査の運用は、むしろはっきり申しますと、西ドイツよりも甘くなっておると私どもは考えております。
  220. 橋本敦

    橋本敦君 しかし、いまおっしゃるようなことかどうかについては、私の手元にある研究資料からは直ちに言えない資料があるんですね、たとえばいまおっしゃったように、高熱を発したのが接種後二十四日目である。そうすると大体二十一日かあるいは二十日ぐらいまでに起こった場合は因果関係が相当と認められるが、二十四、五日ぐらいではというような判断で却下をされたというような事例があるという申し立て書があるんですね。だからそこらあたりについては、なお局長がおっしゃった立場で、救済の立場で御検討願いたいと思うのですが……。  もう一つ指摘をしたいのは、これは予防接種事故審査委員長から、四十九年六月十八日付予審第三六号で、神戸市長あてに意見通知書で出されている却下の事例のケースがあるんですが、これは後遺症一時金却下の理由として、「一、予防接種を行ったかどうかの事実を公的機関によって証明するものがない。」、これがまず第一に挙がっておるわけです。で、二番目に、「発病時の症状及び発病日時を客観的に証明するものがない。」これが二番目になっております。これの申請者がどういう添付書類を添えているかと申しますと、これは、三十二年に接種を受けたということで、保健所に一緒に行った人の証言を書いた調書を添える。それから、お医者さんの証明書をいただいて、当院において治療したときの状況をお医者さんが間違いないということで証明をしていただいていると、まあ、こういう資料を添えているわけですね。ところが、これがいま言ったように、公的機関で証明するものがないという理由で却下をされたと、こうなりますと、この公的機関で証明するものがないということになりますと、まさに、お役所が予防接種を行ったという事実の記載を怠っでいたのではないか。そういうことならば、そういう責任を申請者、被害者に嫁するのは余りにも酷ではないかという問題が一つあるんですが、こういうような点については、こういう事例については、局長、どうお考えでしょうか。
  221. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) そのような事例は初めて承るわけでございますが、市町村にも市町村の議会等もございますから、その辺は厳重に監督されているはずでございまして、市町村が故意に証明を拒否したりするようなことはないと思われます。ただ、具体的にそういうケースがあるとすれば、これはひとつ調査をさせていただきたいと存じますし、また、先ほどのような発熱の期間の問題等につきましては再審査の道も開かれておりますから、再審査の申請をしていただけばどうであろうかと考えております。
  222. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、御調査をいただくということに加えて再審査のお話が出たわけですが、再審査の道が開かれているということを申請者は皆さん御存じだろうか、こうなりますと、却下をされた方が、再審査ができるということを知らない方が多いのではないか。  そこで私は、一つ局長に提言をしたいのですが、たとえば行政不服審査法ができまして、行政庁の行政不服審査に対して不服がある場合、抗告することができる。抗告書はこうこうであるということを申請者に示達するようにという制度になっておるわけです。この場合でも親切に、こういう点の書類は不備であると、こういう点がそろうならば再審査の申し立ては、あなたはできますというようなことを、この事故審査会からの通知書に再審査の申し立てができる旨を記載してあげるというように改めるならば改善される余地があると思いますが、そのような点はいかがでしょうか。
  223. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) その点につきましてはよく検討いたしまして、善処いたしたいと思います。  不服審査法に持ち込む前に、もう一度この審査会で見直すというようなこともやっておるわけでございますから、そういう点の指導は遺漏がないように改善いたしたいと思います。
  224. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、現在の閣議了解に基づいて行われております臨時の緊急の行政処置なんですが、この点について、私は当然被害を受けた児童や父兄の立場から見て納得できない不十分さがあるというように考えざるを得ないのですが、まず第一点としてお伺いしたいのは金額の問題なんですけれども、死亡弔慰金の場合、現在十八歳以上七百二十万円ということになっております。これを累年逐次値上げをされているわけですが、どういう基準で順次毎年値上げをされていらっしゃるのか、厚生省のおとりになっている基準についてまず御説明願いたいと思います。
  225. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 労働省が行っております毎月勤労統計の賃金の上昇率を使いまして、スライドしております。
  226. 橋本敦

    橋本敦君 そういたしますと、たとえば四十九年度六百万円、これが五十年度で七百二十万円に上げていただきました。これは二〇%の増でございます。いまおっしゃった賃金総額の前年比対比統計をとりますと、この年度では二六・八%の上昇ということになっているように私は資料をいただいて承知をしておりますが、この二六・八%に比べましても二〇%のアップ率では、局長がおっしゃった基準に必ずしも正確に沿っていないと、こうなりますが、これはどういうことでこうなったのでしょうか。
  227. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) スライドが一年おくれになっておる関係もございます。
  228. 橋本敦

    橋本敦君 四十八年度は二丁四%、四十九年度は二六・八%、これはスライドが一年おくれと言いますけれども、どれをとってみても若干低いという現状があるのですね。だから、これについては、そういう基準でとおっしゃるけれども、完全にその基準にスライドしていないのではないかという問題を一つ指摘をさしていただいて、次の問題としては、弔慰金の額がこれ自体で果たして十分であろうかどうかという問題について考えますと、そもそもこの臨時措置弔慰金が出発したときに、たとえば自賠責の自動車損害保険を見ますと、五百万円のときに三百二十万円から出発しておりますね。現在では一千万、一千五百万ということに人の生命価値が自賠責ではそういうことで上がってきておる。ところが七百二十万ということでは、それと比べても低いというように私は言わざるを得ないと思うのですが、この点については、この金額で十分だとはお考えになっていらっしゃらないと思いますが、これをさらによりよくするということについての局長の御意見はいかがでしょうか。
  229. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) この金額は自賠責の支給金額の中から慰謝料を除いて逸失利益だけを支払うという方針をとっております。そういう関係で、十分とは申せないでございましょうけれども、こういった事故は大部分は無過失の、不法行為のない事故でございますので、慰謝料を除いた逸失利益だけで相当の救済をしておるのじゃなかろうかという感じを持っております。
  230. 橋本敦

    橋本敦君 いまおっしゃったところがまさに裁判で争われて、各地で出されている訴訟とも関連をして、救済ということを十全にやるために国の責任どうあるべきかということと関連をいたしましてこれから大問題にまさになってくる問題なんですね。その点は、私どもの立場、考えからいきますと、これは逸失利益だけじゃなくて、まさに慰謝料的なものも含めるに相当する事案だというふうに私ども考えているわけです。なぜかと申しますと、先ほども申し上げましたけれども、ワクチンによってそういう副反応、そういったものがあるという危険性、これを全く知らない、善意でわが子の健康のために、社会の予防、防衛のためにということで国が行う強制接種の予防注射を受けた、これがほとんどの国民の声だと思うんですよ。たとえば、私の手元にある予防接種事故研究会の資料でも、昭和四十五年以前の例数について調査をした結果を申し上げますと、副反応あるいは禁忌事項についての知識がなかったというのが七七・二%を占めております。そして、厚生省が四十五年の八月以降問診、予診、そういった処置を示達をなさって指導強化されたわけですが、それから以後の調査でも、五四・五%が知らなかったという実情にあるわけです。これは実情ですよ。だから、したがって私は、こういうように副反応の危険性があるということをゆめゆめ思わないで、世の中のため、わが子のためという善意からこの予防接種を国の施策として受けてこの事故を起こしたということを考えますと、被害を受けた者の側からすれば、逸失利益だけではなくて、まさにいま写真でお見せしたように、日夜呻吟しているわが子、死んだわが子のために慰謝料も含めて十分な処置をとってもらいたいという要求は私は当然だと、こう思うんですね。だから、そういう立場で、いま局長がおっしゃった金額の低さという問題については、今後積極的に審議会、各界の意見を徴して検討していただくというようにしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  231. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 現在審議会で御検討願っているところでございます。  なお、予防接種の行われますのは、やはり第一義的には個人の伝染病の予防ということがねらいでございまして、それが積み重なって初めて社会の伝染病の予防ということになるわけでございます。しかし、残念なことに、ごくまれに事故が起こってくるわけでございまして、そういった事故も大部分の場合には過失だとか故意だとか、そういった不法行為のない事故でございます。そういう関係で、諸外国においてもいろいろ議論が分かれるところでございまして、西ドイツとかフランスは保障制度を設けておりますけれども、アメリカやイギリスは保障制度がないわけでございます。また日本の現在の制度では去る四十五年にいろいろ検討いたしました結果、そのような事故であるから慰謝料は払わないで逸失利益だけを払うという制度をつくったものでございますけれども、なおこの点については現在専門の方々にいろいろと御意見を承っておるところでございます。
  232. 橋本敦

    橋本敦君 いま局長がおっしゃった諸外国の例も私も調べてはおりますけれども、閣議了解の先ほど私が指摘した言葉でも、今後恒久的な救済制度が必要だと、そこへ向けて国が施策を進めるという、大臣がさっきおっしゃった国の立場での救済、これを完備するという方向で動いておるわけですから、積極的な御検討を願いたいと、こう思うんです。  それからもう一つは、後遺一時金の場合に、三級以下が切り捨てられる、これは医療給付じゃありません、一時金の場合。これを労災と比較してみますと一級から七級までは年金支給がありますし、八級から十四級まで一時金が支給される。労働者災害補償ではそこまで一応前進をしておりますが、この場合には三級以下が切り捨てられるということも一時金給付の場合には十分の処置とは言えないのではないかという気がいたしますが、この点についての問題も含めて将来御検討していただくことはしていただけるでしょうか。
  233. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 現在三級の中には非常に軽い障害まで含めておりますので、ほとんどのものは三級に対する後遺症一時金で救済がされていると思うのでございますが、特に労災の十四級ぐらいになってまいりますと若干問題があるのかもしれません。その点は今後の検討課題であろうかと思います。
  234. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、四十五年に閣議の臨時処置ができましてすでにもう五年を経過するわけですが、あくまで答申の趣旨からいっても、閣議了解の趣旨からいっても恒久的な抜本的な救済制度の確立が急がれてきたと思います。現にそのことを訴訟をやっている皆さんもやむにやまれず訴訟をお出しになっているし、日夜子どもたちを抱え呻吟している父兄も待ち望んでいるわけですが、これが今後どのような段取りで、どのような展望で厚生省としてはこれに向かって前進なさっていらっしゃるのか、現状について明らかにしていただきたいと思います。
  235. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 現在厚生省の伝染病予防調査会の予防接種部会で予防接種制度そのもののあり方を再検討していただいております。これは定期の予防接種、臨時の予防接種ございますけれども、たとえば種痘を今後も続けていくかどうか、また続ける場合に強制接種にしておくのか、あるいは任意の接種にするのかというような問題がございますし、また接種する場合も、現在の一期の種痘の八カ月から二十四カ月という接種の時期が果たしてそれでいいのか、また一方現在任意の接種としてかなりの数行われております麻疹の接種あるいは破傷風の接種、こういったものを任意の接種に残しておいていいのか、そういったことを検討しておるわけでございますが、予防接種制度のあり方そのものが固まってまいりますと、いよいよ救済の制度を固めるわけでございまして、これは制度改正特別部会の方で、一体新たに設けるべき制度は救済制度であるか補償制度であるかというようなところから始まりまして、給付の種類はどんな種類にするか、額はどういう額にするかということを検討している次第でございます。
  236. 橋本敦

    橋本敦君 いまの局長のおっしゃった検討が大体いつごろ検討として出されて、そして厚生省としては、たとえば五十一年度から救済もしくは補償制度の確立の上で実施ができる体制を組めるのかどうか、そこらの展望をもう少し具体的にお見込みをおっしゃっていただけませんでしょうか。
  237. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 事務当局といたしましては、できるだけ早く新しい制度を確立してまいりたいと考えて鋭意努力しておるわけでございますけれども、特に救済制度の場合には、その内容が各方面の御満足がいけるようなものでなければならないわけでございまして、それにはまず財政当局との折衝もございますし、また法律にする場合には法制局関係、法務省関係との折衝もございます。そういう関係で五十一年度からやりますというふうにいまお約束はできませんけれども、できるだけ早く実施に移したいという考えで努力をしておるところでございます。
  238. 橋本敦

    橋本敦君 いまの点について大臣、大臣のお考えはいかがでしょう。私は、これはもう臨時の処置ということで閣議了解が行われて五年たつわけですね。そしていま写真でお見せしたように、日夜このことで呻吟なさっている家庭、子供たちがたくさんいると。そして世論的にもこの前の四十五年の国会でも大きな問題になりまして、これの救済措置、補償制度が要るということがはっきりされておる。この問題を重ねて私きょう質問さしていただいているわけですね。そういうことで、いま局長おっしゃったように、事務当局としてはできるだけ早くやるということをおっしゃっていただいたわけですが、大臣としても大体のめどとして、どういうようにやりたいというようなお考えがはっきりありましたらお述べいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  239. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 予防接種事故の救済制度、これについては私が就任した節に、すでにいま局長が答弁したような方向で検討を始めておったところであります。私もいろいろ所管事項の説明を聞きまして、これはぜひひとつ急がなければいけないということを考えまして、自来事務当局者に対し、できるだけ速やかに、しかもできるだけいい制度をこの際実施するようにしていただきたいということを指示をしております。白来、私も忙しいものですから、細かい内容については逐一聞いておりませんが、ときどき私は担当局長に、あれはその後進んでおるか、その後どうじゃと、間違いなしにおくれはしまいなと、こういうことをしばしばにわたって言っているわけでございます。そういう私のいま御説明申し上げたところから御推察願えると思いますが、私としてはできる限り早く、できれば明年度というふうに思っておりますが、いま局長はいろんな方面の御意見を伺わなきゃなりませんし、財政当局との折衝のことも事務的には非常に重大なことでございますので、いま非常に慎重に御説明を申し上げているところだろうと私も思いますが、目標としては明年度、制度として発足をいたしたいものだというのがただいまわれわれの考え方でございます。
  240. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、その問題がいま局長がおっしゃったように、各界の意見なり、あるいは大臣がおっしゃったようによりよいものとしてでき上がるということのために私は二、三の提言をさしていただきたいと思うんです。  まず第一の問題は、この被害を受けた父母たちが切実に要求し、望んでいるのは何かということを正確につかんでいただきたい。たとえば、私どもがいただいているこの資料によりますと、現実に被害を受けた子供たちの実態を調査しますと、調査対象の中で四、五歳児の十二名中、保育所あるいは幼稚園への通園を希望しながら、心身上の障害理由に拒否されている事例がきわめて多いということが一つ挙がっております。それからもう一つ調査によってもリハビリテーション、職業訓練、こういった機能訓練の問題がこれが十分でないということもいろいろの資料から出ております。あるいはさらにこの子供たちを抱えて特殊学校へ連れていくのにタクシーに乗せる、電車に乗せる、それを背負っていく母親や父親の苦労、あるいはそういう費用、こういったものについての切実な要求もあります。  そこで私はこういった問題を含めて国が救済処置をする上で一つ厚生省にお願いしたいことは、この父母の会あるいは被害者の会の皆さんとお会いになって、この切実な状況を実情調査としておやりになっていただきたい。そしてその中から父母の要求というものが実情から出てまいります。そういうような実情調査を早急に父母の会あるいは被害者の会の皆さんと連絡をとって実情をお聞き願う、調査をしていただくということをまずひとつおやり願いたいと思いますが、この点局長いかがでしょうか。
  241. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 私どもは、父母の会、被害者の会から実情は何回も承っております。また、たとえば私北海道におりましたので、北海道にいるときには、事故が起こればお見舞いをしておりましたし、その後も半年に一回ぐらいはお見舞いをして現場をつぶさに見ております。そこで、いま先生提案の実態調査でございますが、これも最近なかなか調査がむずかしくなってまいりました。身障者の調査をやりたいと思いましても三割とか四割の自治体が返上する、反対をするというような時代になってまいりました。そういうこともございますので、いま直ちに実態調査、特に社会的側面に重点を置いた調査を行うということはお約束できませんが、先ほど私申し上げましたように、父母の会等のチャンネルを通していろいろ実態を把握することにつきましては今後も努力を積み重ねてまいりたいと考えております。
  242. 橋本敦

    橋本敦君 それからいま御検討中の救済もしくは補償制度の中に、いわゆる介護手当、あるいは介護に要する費用、たとえば難聴の場合は補聴器を買うその費用、こういった細かいことも含めて、いわゆる医療給付、一時金だけでなしに現実にいつまで続くかわからない介護手当、それから特殊学校への通学、こういったことの補償及び補助、こういったことも含めて御検討願いたいと思いますが、厚生省としてはそういうお考えがおありかどうかはいかがでしょう。
  243. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 実際に、初めに御指摘がございましたような重度障害のお子さん方もいらっしゃるわけでございますから、介護手当が必要であるということは当然のことかと思われます。で、そういう方向で検討をいま進めております。しかしながら、後から御提案になりました特殊学校へ通学するための車馬賃と、こういったものにつきましては、ほかの社会保障制度との関連もございまして、こちらの方だけそういうふうな給付制度を設けるということも困難でございます。したがって、非常にむずかしい問題ではございますけれども、いろいろ検討はしてみたいと考えます。
  244. 橋本敦

    橋本敦君 といいますのは、この調査でも、そういうような車馬賃が足らない、あるいは車いすがない、自動車がないということで、高い年齢になっても特殊学校や養護施設へ行けないで在宅しているという数の実情を私つかんでいるから、何とかしてやってほしいということを申し上げておるわけで、まあ、ほかとの関連もありましょうが、いま局長がおっしゃった実情を把握していただいて御検討願いたいと、こう思うんですね。  そこで、そのような救済制度なり補償制度の確立を目指して厚生省が鋭意御検討願うということのお約束を期待して待っておるわけですが、それと同時に、こういった副反応作用の事故を起こさないということのためにさらに進んだ抜本的な体制を厚生省としておとりいただくということも必要があろうかと思いますが、一つの例で申しますと、いま行っておられます問診票ですね、あれに基づく検討あるいは予診、こういったものを指示されておられますが、実際は現場のお医者さんあるいは現場の人たちの声を聞きますと、あのとおりやっているということがなかなか容易でないということが報告されているわけですね。たとえば、公衆衛生学会——二十八回公衆衛生学会があったそうですが、厚生省が示達されたとおりのことをやろうと思えば、予防接種を行うのにとてもじゃないが一日や二日でできない、三月、四月もかかるというような声も公衆衛生学会で出ている、こういう現状もあるわけですね。だからそこらあたりの改善、それからさらには安全なワクチンの開発、こういった問題についても鋭意御努力願っておると思いますが、ここらあたりの展望はいかがでしょうか。
  245. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 事故防止の出発点は、予診、問診の徹底にございます。そういう意味で、私どもとしては、できるだけ集団接種ではなく、かかりつけの医者による個別接種を推奨しているところでございますが、大都市以外はなかなか個別接種もむずかしいものでございますから、やむを得ず集団接種をやっております。そこで、この予診も最新の医学を駆使いたしまして至れり尽くせりの予診をいたしますれば、これは大変なことになるし、また事実上不可能でございますけれども、四十五年の秋に示しました問診票のようなものでやるのであれば、多くの市町村ではあらかじめお母さんに記入をしてきてもらいまして、それを保健婦がチェックして、足らないところは追加させる、あるいは間違っているところは訂正させて最後に医師が判断をするという形をとっておりますので、公衆衛生学会で御発表があったように、何日も何週間もかかるということはないと思います。あの程度の問診、予診は必要最小限度のものとしてどうしてもやっていかなければならないと考えております。  また、ワクチンの改良でございますけれども、たとえば種痘のワクチンについては、最近LC16m8という新しい弱毒のワクチンを開発いたしまして製造承認を与えたところでございます。来年の春ぐらいには新しいワクチンが出てくると考えております。  また、百日ぜきのワクチンにつきましては、これは世界各国非常にその改良に苦心をしておるところでございますけれども、日本もよく英米とも連絡をとりながら、その改良の研究を進めております。  なお、少し旧聞に属しますけれども、インフルエンザのワクチンにつきましては、アメリカと日本はいち早くもうすでに三、四年前になりますが、新しいワクチンを開発いたしましてそれを実用に供している次第でございます。
  246. 橋本敦

    橋本敦君 厚生大臣にひとつお聞きしたいことは、この安全なワクチンの開発という非常に大事な研究開発ですね、これに対する国からの研究補助金が、日本は非常に少ないというように私はお医者さんから聞いておるんですが、これをうんとやっぱりこういう大事なことについては補助金をふやすという必要があるかと思いますが、いかがでしょうか。
  247. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 確かにそれほど多額のものではございませんけれども、しかし、自然科学の研究費もお金があればそれだけ研究が促進されるというものではございません。マンパワーの問題もございますし、また医療技術的ないろいろな隘路もございまして、やはり相当の研究費ということは言えるのではなかろうかと。そういう意味でそれほど十分ではございませんけれども、研究が推進できる程度の研究費は毎年差し上げているつもりでございます。ただ、特に開発が早急に行われるであろうと考えられるような、たとえば流行性肝炎のワクチンのようなものにつきましては、ある程度のめどが立っておりますので、これはたとえばことしも五千万円研究費を差し上げまして、開発を促進するというような特別な補助金の助成制度活用しておるところでございます。
  248. 橋本敦

    橋本敦君 いま局長がおっしゃったように、まあ、きょうは時間がありませんので詳しい数字申しませんが、わが国の厚生行政として、基礎医学部門を含めた研究開発補助金が少ないということも大臣ひとつ御検討願いたいということですね。  それから、さらにいまの臨時救済措置で実際に出しておるお金の額、これも四十七年、四十八年実際の決算額を見ますと一億円程度ということで、全体予算から見ればきわめてわずかです。だから私は最後に大臣にお願いしたいことは、思い切った予算措置で安全ワクチン開発の思い切った研究を促進する、被害者には年額決算一億というような程度しか出さないんじゃなくて、思い切った救済措置をとる、このことを切にお願いをしておきたいと、こう思うんです。大臣、そういう点いかがですか。
  249. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 被害者救済についてはいま局長ないしは私が答弁いたしたように、制度化をいたしてできるだけのことをいたしたいというふうに思って努力をしているわけであります。しかし、私率直に言って心配していることがあるんですよ。あんまり完全なものを要望する余り、これがいろんなところへ壁にぶつかって制度ができないというようなことになったんじゃこれは困るんだと、本当にやりたいものですから私そう考えるんです。ですから、すべてを取り込みたいと思いつつも、あるいはその八〇%の場合でも、私はやっぱり制度を起こした方がいいというふうに思うもんですから、完全な制度というものを希求する余り、事がおくれてはいかぬという一面も、これはやはりわれわれは政治家として考えにやなるまいと思います。  それからいま一つの安全なワクチンの開発費でございますが、これは私どもとしてもかなり実は私なりには計上をいたしておるところでございますが、どうも私は素人でよくわからないんですけれども、この種の開発費についてはどうも研究者の方々からは恐ろしく少ないと、こういうお話がちょいちょい出るんですが、これは絶対額が少ないのか、諸外国との間における比較が少ないのか、あるいは当事者のもう少しいただきたいという端的な希望が、そういうところに話がいくのかいろいろあるだろうと思います。またそれのコンバインしたものかもしれません。いずれにいたしましても、私はそういったような実の上がるようなお金の計上は惜しんではいかないというふうに思いますんで、事国民の生命身体にかかわることですから、財政不如意な折ではございますが、できるだけのことはやっぱり努力をいたさなければなるまい、かように思っております。
  250. 橋本敦

    橋本敦君 もう時間が参りましたので、最後に一問だけ、これは予防接種の問題じゃございませんで、伝染病予防補助額の増額に関する陳情が厚生省課長のところへも行っておりますが、これは大阪の高槻外二市でございます。  一つの点は、伝染病予防隔離病棟、これを持っております地方自治体に対する補助額をアップしてもらいたい、これが第一点です。  第二点については、他の市町村からその病院へ救急の場合お入れした場合も、その病院を持っている市町村の負担になる。住んでいらっしゃる市町村の負担にならない。これはやっぱり住んでいらっしゃる市町村の負担ということの原則を厚生省の指導で明記してほしい。  これの陳情が厚生省に行っておりますが、この点について善処していただけるかどうか、この点だけお答え願えればお答え願いたいと思うんです。
  251. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 補助額のアップにつきましては、これは一種の超過負担の解消問題でございまして、ただいま大蔵財政当局ともいろいろ相談をいたしておりますので、一気に大幅に増額ということはできないかと思いますが、少しずつでも改善をしてまいりたいと考えております。  次に、患者を送りました他の町村の費用負担の問題でございますが、現在の制度としてはなかなかむずかしい問題があります。結論といたしましては、その伝染病院または隔離病舎を持っております市町村の特別交付税の増額というようなことに落ちつくかもしれませんけれども、この問題も一つの御提案として慎重に検討いたしたいと考えております。
  252. 橋本敦

    橋本敦君 終わります。ありがとうございました。
  253. 村田秀三

    委員長村田秀三君) 本調査に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時九分散会      —————・—————