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1975-10-29 第76回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十月二十九日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹下  登君 理事 谷川 和穗君    理事 湊  徹郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       大野 市郎君    唐沢俊二郎君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       塚原 俊郎君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    保利  茂君       細田 吉藏君    前田 正男君       森山 欽司君    綿貫 民輔君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       阿部 助哉君    石野 久男君       岡田 春夫君    多賀谷真稔君       楯 兼次郎君    楢崎弥之助君       堀  昌雄君    湯山  勇君       田代 文久君    津金 佑近君       増本 一彦君    松本 善明君       林  孝矩君    広沢 直樹君       正木 良明君    河村  勝君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         警察庁警備局長 三井  脩君         行政管理庁行政         監察局長    鈴木  博君         防衛庁参事官  伊藤 圭一君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      堀川 春彦君         国土庁長官官房         審議官     紀埜 孝典君         国土庁土地局長 河野 正三君         国土庁地方振興         局長      近藤 隆之君         法務政務次官  松永  光君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 松永 信雄君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         国税庁次長   横井 正美君         文部省管理局長 清水 成之君         厚生省環境衛生         局長      松浦四郎君         厚生省薬務局長 上村  一君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         食糧庁長官  大河原太一郎君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省立地         公害局長    宮本 四郎君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         運輸大臣官房長 山上 孝史君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 中村 大造君         運輸省航空局次         長       松本  操君         郵政省貯金局長 神山 文男君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省河川局長 増岡 康治君         建設省道路局長 井上  孝君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治大臣官房審         議官      石見 隆三君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省行政局選         挙部長     土屋 佳照君  委員外出席者         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  板倉 譲治君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 十月二十九日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     唐沢俊二郎君   根本龍太郎君     坂本三十次君   松浦周太郎君     綿貫 民輔君   田代 文久君     増本 一彦君   正木 良明君     林  孝矩君   矢野 絢也君     広沢 直樹君 同日  辞任         補欠選任   唐沢俊二郎君     奥野 誠亮君   坂本三十次君     根本龍太郎君   綿貫 民輔君     松浦周太郎君   松本 善明君     田代 文久君   林  孝矩君     正木 良明君   広沢 直樹君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 総理大臣にお伺いいたしますが、戦争に負けて、新しい憲法が生まれて約三十年になんなんといたしておるのであります。この際、この新憲法が旧憲法残滓を払いのけて、国民の間に正しく定着をしているかどうかということを見直すことが、私はむだではないと考えておるのであります。憲法が最も正しく実施されているか、これを正しくテストする場所は、私は国会をおいてほかにないと思います。日本国憲法が正しく国会の中で実施されているかどうか、帝国憲法残滓を払いのけて正しく行われているかどうか。私は、残念ながら、三十年たちながらもまだ新憲法国会の中に完全に定着をしていない、そういう説に立つものであります。  その立場からまず総理にお伺いをいたすのでありますが、その総理にお伺いをするという理由は、この国会に一番責任を持っておられるのが総理大臣でありまするから、その立場でお尋ねをするのと、いま一つは、総理は三十八年の議員の実績をお持ちになっておる。これはすなわち旧帝国憲法時代議員と、それから新憲法による議員との両方の経験をお持ちになっている数少ない議員であるからであります。  そこで、私は特に総理に正確な御答弁をお願いしたいと思うのでありますが、新憲法が旧憲法に比較して正しく国会の中に定着をしているとあなたはお考えになっているかどうか、まずお伺いいたしたいのであります。
  4. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、新憲法国民の間に定着している、いろいろ意見のある人もありますが、やはり国民の間に定着してきている、そしてまた仕組みもきちんと、三権分立によって、国会が国の最高機関である、憲法四十一条の規定というものはこれは貫かれておると思います。国会の場合などにおいても、国会の運営などについてはいろいろ工夫の余地はあると思いますが、小林委員の言われる新憲法一つ仕組みというものは定着しておるかどうかということになれば、私は定着している、こういうふうに考えておる次第でございます。
  5. 小林進

    小林(進)委員 それでは、この際、旧憲法と新憲法の差を明らかにしておく必要がありますので、まず簡単なところからひとつお伺いいたしますが、旧憲法議員と新憲法下における議員と、議員地位は大変変わっているはずでありますが、この点、総理にお伺いいたしたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も九年間旧憲法のもとに議員等経験を持つわけですが、旧憲法時代は大権はすべて天皇に発せられたわけですね。だから、立法権といってもこれは天皇機関である——翼賛機関と俗に言われておりましたが、それ自体としての権限というものは、議員権限にしても、あるいは議員地位にしても非常に違ったところである。新憲法のもとでは直接選挙ですから、主権国民にあるということが規定されておる。その主権者を直接に代表しておるわけですから、したがってこれは国権の最高機関であるということが言われるわけで、条約にしても法律案にしても、すべての権限を持っておるわけです。そういうことで、会期の延長にしても、いろんなことについて皆権限を持っておるわけです。そういう点で雲泥の差がある。ことに議員地位権限について雲泥の差があるのです。
  7. 小林進

    小林(進)委員 まあ総理の御答弁は私はそのとおりだと思います。それをもっと私は具体的に、この国会を通じて国民にも認識してもらうためにあえて具体的な例を申し述べるのでありますが、総理は旧憲法時代に官中に参内をされたことがございますか。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ございます。
  9. 小林進

    小林(進)委員 参内をされれば、いかに国会議員地位が旧憲法時代には低いものであったかは、明確にお感じになったと私は思う。  旧憲法時代には宮中席次という一つのルールがありまして、儀式の場合に宮中へ呼ばれますと、そこに席次が決まっている。それには第一階から第五階まである。その第一階にも十二のランクがある。だからこの席順を決めるには、五階の中で第四十六までの席順が決まっていたわけです。  その第一階の第一番、天皇の一番おそばの一番いいところに座る第一位が大勲位でありました。第二位が内閣総理大臣、第三位が枢密院議長、第五位は国務大臣国務大臣は第五位ですから、地位は大変上だ。それからずっと飛んで、第十一位が親任官です。それから第十二位に、総理大臣からはるかかすんで見えないところに貴族院議長衆議員議長が座ったのです。ここまでが第一階なんです。第二階というと、これがずっと飛んで、第十九番目へ行って高等官一等です。それから第二階の第二十位が貴族院の副議長衆議院の副議長、これもいつも貴族院が先です。貴族院が先で、衆議院が次なんです。国会議員なんかかすんで見えない。これが第三階に至って、第二十四位が高等官二等です。高等官二等というのは何かというと、これは県知事です。それからいわゆる警視総監だ。それからここら辺にいらっしゃる各省局長です。これが高等官二等です。これが第三階級第二十四位の位置に座った。  国会議員はどこへ行ったかというと、第三階に入らないで、第四階層の第三十九番目へ行って貴族院議員衆議院議員と、こうなって、貴族院が先へ出て衆議院が座る。その隣にいるのはだれかというと、第四十位で高等官三等、これは各省課長です。だから旧憲法時代国会議員というものは、各省課長並み地位しか与えられていなかった。これが国会議員の実際だ。だから、旧憲法時代には陸軍大佐などという高等官三等が議員に向かって黙れなどと言って議員を恫喝したり、そういう失礼なことが行われても、そういうランクづけなんだからやむを得なかった。これが旧憲法時代ですね。  だから、くどいようでありますが、旧憲法時代のいわゆる貴族院議員衆議院議員というものは各省課長並み、いわゆる府県会へ行けば部長並みの待遇しか与えられていなかった。だから、ここらにいらっしゃる役人あたりは、旧憲法にあこがれること切なるものがあります。そのころには、みんなわれわれ国会議員の数段上なんだ。第二十四階級に局長連中はとまったのだ。われわれ衆議院議員は、局長さんからはかすんで見えない、第三十九位の、課長さんと一緒に席順を決めている、それほど低かった。  この旧憲法時代が新憲法になってどう変わったかとおっしゃれば、これはもう宮中席次というものはなくなりました。宮中席次というものはなくなりましたから、国会議員地位を決めるものはありませんけれども、あえてこれを求めれば、これはもう宮中には席次はございませんから、佐藤さんが大勲位になられても、宮中へ行かれればわれわれの席のちょっと上くらいに座っていられることになって、時勢は変わったのです。時勢は変わりましたが、あえてこれを尋ねれば国会法の三十五条に、「議員は、一般職国家公務員最高給料額より少くない歳費を受ける。」ということで、これは歳費の面においてランクづけがされて、まあまあ各省で言えばば政務次官並みだ、事務次官よりもランクが上だということが一応明らかになった。だから、新憲法のもとではそういう地位から言えば局長などはるかにかすんで、大臣より若干下の政務次官並みというところへ国会議員地位というものはランクづけられる。これが大きな一つの違いです。  それでいま一つは、なぜ一体国会議員地位が旧憲法時代に低かったと言えば、これはいまあなたもいみじくも言われたように、旧憲法時代国会議員——憲法の第五条に定められた「天皇ハ帝国議会協賛以テ立法権行フ」、立法権主宰者天皇なんです。国会議員天皇お手伝いをする、協賛をするだけの仕事なんでありますからな。そのときのお役人一体何だ。天皇官吏なんです。  天皇は三権を一手に握られた。統帥権も握られていた。天皇はすべての権利を一手に握っていて、国会議員はその立法権お手伝いを申し上げる。お役人一体何だと言えば、すなわち旧憲法——私はくどいようですけれども、これがちょいちょい混乱しているから、私はこの際ひとつくどくやらなければならぬので、あえて申し上げるのですが、旧憲法時代には、いわゆる官吏天皇官吏なんだ、天皇のお役人なんだ。天皇のお役人であって、帝国憲法の第十条で「天皇ハ行政各部官制及文武官俸給ヲ定メ及文武官任免ス」こうなっている。お役人仕事を管掌され、そのお役人俸給を決め、お役人任免権をお持ちになっているのが天皇だから、彼らは天皇官吏なんだから、天皇立法権協賛する国会議員よりは地位が上だったわけだ。これは旧憲法の命ずるところ。司法権はと言えば、あなたも御承知のように、いわゆる旧憲法では裁判官天皇の名において裁判を行った。天皇司法権をお握りになっていた。  だから、天皇という頂点のもとに、いわゆる協賛をする立法府と、天皇行政権に仕える行政官と、天皇の名で裁判をする裁判官、三者はこれ皆平等ですから、むしろ行政を担当する役人立法府よりもやや上であるということが明記せられた。その残滓がいまの国会に三十年たってもまだ残っていませんかと、私はあなたにお伺いしているのですよ。これが残っていたら大変なんですよ。それを、私は残っていることをこれからやるのです。やるために、いま少し原則を明らかにしなければいけない。  その原則を明らかにするために、一体憲法にかわって国会議員はどう変わったか、もはや天皇立法権に対する協賛じゃないですよ、いまの国会は。あなたが言われたように、新憲法の第四十一条には「國會は、國權最高機關であって、國の唯一の立法機關である。」これはもう最高機関になっておるのだ。行政府司法権とは、三権分立とは言いながらも、むしろ立法府優越権が与えられている。まず総理大臣みずからこの点を明らかに、ひとつ日常あるいは国会に対する態度の中にそれを明確にしてもらわないと、私は大変な間違いを起こすということを言いたい。  新憲法の第六十二条には「兩議院は、各々國政に閲する調査を行ひ、」国政というのはあなたがおやりになる行政です。「國政に閲する調査を行ひ、これに關して、誰人の出頭及び證言並びに記録の提出を要求することができる。」われわれは行政府に対し記録を要求することができるのですよ。正直に出す責任があるのですよ。この国会でずいぶん論議しておりますけれども、一体その記録が正しく出されておりますかどうか、後でだんだんやっていきましょう。  そこで、今度は内閣国会関係です。総理大臣、その内閣は、第六十五条に「行政権は、内閣に属する。」天皇ではないのです。内閣に属しておる。しかし六十六条には——だからあなたは行政権の長だとお思いになっておるかもしれませんけれども、新憲法第六十六には何とありますか。「内閣は、行政権行使について、國會に對し連帯して責任を負ふ。」こうなっている。いいですか。行政権はあなた独特のものじゃない、国会と連帯して責任を負うのです。ここらの役人どもが皆行政をおやりになるのは、われわれも連帯して責任を持たされているのです。そういう観念が一つもないのです、いままで見ているけれども。これが国会軽視一つの重大な問題です。  いいですか、いま一回言いますよ。「内閣は、行政権行使について、國會に對し連帯して責任を負ふ。」国会と連帯して責任を負っているのですから、われわれは行政に対して無関心でいるわけにはまいりませんし、行政行使に対してわれわれは責任を持っているのですから、こういう点を総理大臣はひとつ明らかにしていただかなければならないと思います。  なお私は申し上げますよ。第七十二条に何とありますか。内閣総理大臣職務が書いてあります。あなたの仕事が書いてあります。内閣総理大臣職務の第一は、あなたの仕事の中の第一は、「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案國會に提出し、一般國務及び外交関係について國會報告し、」これが第一なんですよ。次に「並びに行政各部指揮監督する。」行政各部指揮監督は第二位なんです。あなたの一番の重大なる仕事は、国会議案を提出し、一般国務並びに外交関係について国会報告する、これが総理大臣としての一番の仕事なんです。その一般国務に関する報告外交関係についての国会に対する報告が、新憲法が生まれて三十年、一体正しく行われておりますか。行われていなければ、新憲法が完全に行われているということは言えないのです。その点をあなたは拳々服膺して、いま少し考えてみてください。ここらに大臣がいますが、後から一人一人皆テストしますから、よく見てください。こういう新憲法の最も中心がともすると外れるのです。  これは、何も国会が偉いわけじゃないのです。しかし、国会だけ国民から直接負託を受けているのですから、国会が軽視されることは、主権者たる国民が軽視されることなんですから、民主政治は成り立たない。民主政治だ、国民主人公なら、その主人公に正しく仕える。正しく報告し、正しく責任を持つというのは、すなわち国会を重視しなければならぬ。これが第七十二条の総理大臣国会に対する責任です。  それから行政官につきましても、国務大臣、あなた、総理大臣責任は、法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を管掌する。この役人ももはや天皇役人じゃなくなった。天皇役人じゃなくて、国務大臣総理大臣管理下における役人なんです。その国務大臣国会に対して第一の責任をお持ちになるのならば、あなたの管理下にあるこの行政官僚諸君も、国会最高責任を負わなければいけないのです。やっていますか。(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)いやいや、まだまだ。  そこで、いま予算国会ですけれども、一体この予算審議はどういうふうになっていますか。私はこの前も言いました。これは田中さんが言うなら、私は言いますが、いわゆる旧憲法の六十四条には「国家歳出歳入ハ毎年予算以テ帝国議会協賛ヲ経ヘシ」と、こうなっている。だから、旧憲法天皇予算権なんです。国会議員天皇がお出しになったその予算書歳入報告書協賛をすればよかった。国会は賛成をする、御協力を申し上げればよかったのです。だから、旧憲法時代には、予算書なんというものはきょう配付資料の中に入れて、あしたから予算審議をしてください、あなた方は天皇のいわゆる歳入権に、歳出権に、予算権に協力すればいいんだから、これが「帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ」だ。それでよかった。  新憲法はそうはいきませんぞ。新憲法には、第八十六条に予算という項目があって、「内閣は、毎會計年度の豫算を作成し、」これはあなたが作成するのだ。これはあなたの権利だ。「國會に提出して、その審議を受け議決を純なければならない。」単なる協賛とは、「審議を受け議決を經なければならない。」というのは天地、水火の差がある。ならば、予算を提出するあなたの責任としては、われわれが審議にたえ得るように、研究にたえ得るように、ちゃんと期日も設け、りっぱに審議権を行使するように協力しなければならないはずなんです。それがなければ国務大臣総理大臣としての国会に対する責任は果たせないのです。これは総理大臣じゃない。大平さん、あなたに言っているのですよ。いいですか。  こういうようなことが、新憲法がしかれて三十年、この予算の八十六条が正しく行われたことがありますか。われわれが十分審議し得るような協力をしたことがありますか。ないでしょう。年の暮れになれば、予算書ができないの、正月の三日、一週間は何しろ印刷が間に合わないから出せませんの、国会が新年の一月の二十四、五日に開かれると、その一日か二日前にボックスの中に予算の資料を入れておいて、さあ審議してくださいというのが、いままでのしきたりじゃないですか。これはすなわち旧憲法時代予算に「協賛ヲ経ヘシ」というのとちっとも内容は変わっていない。変わっていますか。変わっていないじゃないですか。新憲法が正しく実施されてないのです。私はこれを言うのです。  こういうことを言っていると、同志各位がしゃべるのをやめろと言いますから、私は結論を言います。これは重大なことですから、結論を申し上げますよ。いまのことを集約いたします。  新憲法においては、第四十一条において、国会地位最高のものである、これは明らかでございますね。その国会は何をやるかというと、第一には、議案審議する権利があるのです。この議案審議する権利があるならば、あなたは総理大臣として国会のこの審議権を、権利を侵さないように十分しなくちゃいけません。  二つ目は、「國務及び外交關係について國會報告」、あなたは国会報告する義務がある。われわれは国民の代表として権利があるのです。正しく国務を報告し、外交関係について正しく報告する義務がありますよ。皆さん方が正しく報告するかどうか、私はこれからやるのですから、だれに質問するかわかりません。  それから第三番目には、第六十六条には、行政権行使について内閣国会に対して連帯をして責任を負う。あなただけが行政の監督権を持っているのじゃない。国会と連帯をして責任を持っているのです。——まだいい。文句があったら後で法制局長官がのこのこ出てきてもよろしいが、まだあなたの出る幕じゃない。  それから第六十二条では、国政に関する調査を行う権利をわれわれは持っている。調査権があるのです。その調査権に正しく応じておりますか。三木さん、あなたは議会の子だから私は言う。旧憲法と新憲法の区別をお知りになっているから、私はくどくど申し上げる。  それから第五番目には、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を受ける権利をわれわれは持っている。この五つだけはきちっとやってもらわなければ、われわれは正しく国民の負託を受けて審議をまじめにやるわけにはいかないのであります。  そこで、総理大臣に質問するが、いま私は国会に対するあなたの責任を五つ述べました。これが今日まで正しく行われているとあなたはお考えになりますかどうか、どうぞ答えてください。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはもう憲法によって、憲法というものがわれわれを規定しておるわけでございますから、拳々服膺したいという気持ちは変わらぬですけれども、いろいろな点で、たとえば調査の場合でも、時間がおくれたり、そういう点ではいろいろ御批判はあろうと思いますけれども、その大筋においてはこれを侵してはならぬという考え方は、常に戒めて行っておるわけでございます。
  11. 小林進

    小林(進)委員 総理大臣はウグイスだ、声はいいけれども声だけだ、これが国民の世論です。一年たって三木総理のウグイスの声ももう聞き飽いたが、二年たってこの声がどうなるか、また同じ声を聞かなければならぬのか、もうそろそろかわってもらってもいいじゃないかという世論です。そこで、私は、せめてあなたが総理大臣時代に、国会の子とおっしゃるなら私がいま申し上げたこれだけでもひとつきちっと整理をして、後世に憂いのないような仕事だけはあなたにしてもらいたいからまじめに御質問申し上げている。  いま申し上げた五つの項目を正しく行政府なり総理大臣責任を持ってやっていただくためには余りむずかしい条件は要りません。最低にして必要な条件は何か。それは、各大臣とそれから政府委員の諸君が少なくとも議員の質問には正しく答える。第二番目には、要求する資料は可能な限り誠意を持って提出する。第三番目は、国会で公約したことは、ここで発言をし答弁をしたことは正しくこれを執行する。言いっ放しにしないで執行する。第四番目はその結果です。ここで答えたことは正しく執行して、それを正しく国会報告する。報告する義務があることは先ほど申し上げたとおりです。立法府行政府の間にきちっとこの四つの原則が確立されなければ新憲法は空文です。民主政治は空文です。議会政治は空文です。これをいままでおやりになってきましたか。今後もおやりになりますかどうか。答弁を願いたいと思うのであります。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小林君の御指摘は全くそのとおりだと思っています。したがって、これを言われたような一つ原則に基づいて私どもは今日まで努めてまいったのでございますが、いろいろと反省をすべき点も多々あると思いますが、この原則というものは、いま小林君の御指摘になったことは厳重に守っていかなければ民主主義というものは健全に運営されぬということは全く同感でございます。
  13. 小林進

    小林(進)委員 総理、あなたの答弁だけは、私はこれをまじめにお受けしますよ。それをおやりになろうというあなたの誠意はお受けします。しかし、残念ながら、現実は、過去三十年の新憲法下における議会の審議を通じてこれが行われていないのですよ。私はそれが残念でたまらない。だから、私は、予算委員会に際して第一番目に言った。これが行われていないじゃないか、これが行われていなければ議会なんというものはサル芝居だ、全く意味がないから、そういう意味のない予算委員会なら私は開会に応ずるわけにはいかぬと予算委員長理事会で強く申し入れました。その行われていない例をこれから具体的に挙げますから、ひとつ御答弁をお願いいたしたい。  第一番目は、わが日本の独立と主権に関する問題です。別な言葉で言えば、金大中のことに関する問題であり、韓国に関する問題です。幾つかの問題がありますが、まずそれから参りますけれども、韓国の問題に関する金大中の問題です。この問題は何遍も私は国会で申し上げたが、わが日本の主権に関する問題です。  一つは基本人権に関する問題です。われわれ国政に参与する者として、これは最も重要視しなければならぬ問題であることを、私はこの三年間この国会の中で叫び続けてまいりました。何回私は国会の中でこの問題を政府に迫ったかわかりません。それが正しく行われておりますか。私は資料も国会の中に提出いたしました。皆さん方のためにも資料を配付いたしました。理事諸君にもやりました。金大中事件に対しまして、古い話は別といたしますが、今次通常国会が開かれて以来、この金大中の人権問題とわが日本の独立の問題に対して、あなた方は一体何回この国会でお約束をされましたか。十二月二十日には、私の質問に対して宮澤外務大臣は何と答弁をいたしましたか。「金東雲書記官につきましては、韓国側は犯罪の事実が発見できなかったという結論に達した由でありまして、これはわがほうの警察当局の集めました証拠と異なりますので、何ゆえにそのような結論を出したのか、わが警察当局はそれに満足ではないということを先方に通報をしてございまして、したがってこの点は決着をいたしておりません。」「それから閣僚会議、これも開くのであれば、このいまの気まずい関係が解消して、将来に向かって新しい友好関係が生まれるというような環境において開きたい。そういう環境が早く来る努力はできるだけいたさなければならないと思いますけれども、気まずい環境で開くということは、かえってよくないであろうと考えております。」と、開かないと約束しているじゃありませんか。これは十二月二十日です。これ一つじゃない。  十二月二十四日には、参議院の外務委員会のわが党の田英夫さんの、閣僚会議を開くのかどうかという質問に対して宮澤外相は何と言ったか。「当面はそのような会議が開かれ得る、そうして将来への発展の第一歩になるというような環境をつくることが大事である、このように考えております。」と、環境づくりが第一で、閣僚会議を開くような環境でないと言っている。これが十二月二十四日だ。  今度は、ことしに入りまして、一月二十九日だ。これは参議院の本会議場ですぞ。星野力君の質問に対して、総理大臣、あなたは一体何と答えているか。金大中問題について、「国民の感情としては、まだ何かこう割り切れないものが残っておるわけで、」したがいまして、「金大中氏の自由が回復され、人権問題に対するわれわれの懸念が解消されることを政府は願うものでございます。」と、あなたは、金大中氏の自由が回復されなければ日韓問題は正常化されないと一月二十九日の参議院の本会議で答えている。悪かったら、私は出所を明らかにしているのですから、みんな記録を見てください。  まだ言いますよ。今度は五十年の二月三日です。衆議院予算委員会です。わが党の安宅常彦君の質問に対して、あなたは、三木総理大臣は何と答えているか。「できるだけわれわれはその統一」——これは南北朝鮮の統一ですが、「に対して邪魔になるようなことはしないようにせなければいかぬとは考えております」と言っている。南北統一の邪魔になるようなことはしないとあなたはここで約束している。  今度は、昭和五十年六月五日だ。いまを去ることまだ三カ月もたたないほやほやした新しいあなたの答弁だ。これは民社党の受田新吉君に対する宮澤外務大臣答弁です。「朝鮮半島のかなり微妙なバランスに不測の影響を与えたくないという配慮からでございます。」と答えている。これは、「わが国が北朝鮮を承認しておりませんのは、それが共産主義国家であるという理由からではございませんで、」「朝鮮半島のかなり微妙なバランスに不測の影響を与えたくないという配慮からでございます。」と答えている。いいですか。これは六月五日のわが衆議院内閣委員会における受田新吉君に対する答弁だ。  それから、五十年の二月の十八日です。これは参議院の法務委員会です。金東雲問題について中江要介政府委員は何と答えていますか。「納得ができないという申し入れば引き続き行っておるし、これについて満足な説明が得られるまで、日本政府としては韓国側に要求し続けていくという方針には変わりはございません。」と答えている。これは後で聞きますからね。これをまだやっているかどうか。  それから、二月の十九日の衆議院の外務委員会です。堂森芳夫君の金東雲の問題についての宮澤外相の答弁です。「韓国側のそのような結論にはわれわれは納得をしていないということを申しまして、現在回答を求めておるという、これは先月の末でございますけれども、さらにそういう処置に出ております。」と、金東雲事件に対しても満足しないんだ、それをはっきり解決せよということを申し出ていると答弁をしている。われわれに約束をしている。そして、同じく堂森芳夫君の日韓閣僚会議に対する質問について、三木さん、いいですか、宮澤外務大臣は、「環境が改善されたことは私は認めておりますものの、さて、先ほど申しましたような日韓閣僚会議を再び開くような、そうして、それにそのような大きな意味を持たせるような環境が整備されておるかということになりますと、これはやはりもう少し事態の進展を見ておく必要があるのではないかというふうに思っております。」と言っている。どうですか。開かないと言っております。  それから、三月四日です。この衆議院予算委員会の、ここにおける私の質問だ。それに対して、これは三井政府委員ですが、「わが国において発生した事件で、わが国における部分につきまして、日本の捜査当局がこれを取り調べる、事情を聴取するということはわが国において行うことが、捜査といたしましてベストであるというように考えておりますので、関係者のわが国への再来日を求めて調べる、これを基本方針といたして努力を続けておるという状況でございます。」と答えている。これはみんな後で私は答弁を求めるのでありまするが、こう言っておりますよ。また、三月四日の、金東雲、金大中事件に対する小林進君の質問に対して、宮澤外相は何と言っておるか。「この韓国の捜査結果には納得がいかないというふうな立場でございまして、現在、韓国側に対してさらに詳細な説明を求めているところでございます。」と言っているが、求めておりますか。この点。また、「わが国の捜査当局が誠意を尽くしました結果と韓国の捜査当局の結果とが、なお突き合っておりませず、その点については、日本政府としましては満足いたしておりませんので、韓国に対してさらに照会し、説明を求めております」と答えている。  これに対して、三木さん、あなたは眠たいだろうけれども、太い目をあけて聞いてくださいよ。三木総理としては、「金大中氏が日本に滞在を許されておって、それを日本の政府が保護する責任があるわけですね。」——これはあなたの言葉ですよ。「それがああいうふうに強制的に拉致された。したがって金大中氏の人権という問題に対して非常な関心を私は持っておるのです。日本政府としては責任を果たしていない面があるわけです。そういう点で、しばしば韓国政府についても、金大中氏の普通人、一般の人と同じような自由の回復というものに対しては非常な関心を持っておるわけです。」とあなたは明確に言っておる。責任を果たしていないとあなたは言っておられる。そして、「今後とも金大中氏の人権問題というものに対しては、重大な関心を日本の政府は持ってまいります。あらゆる機会を通じて金大中氏の人権が回復されるように努力をしていくつもりであります。」とあなたは言っている。これを受けて宮澤外務大臣は何と言っているか。「実は最近韓国の副総理が見えられまして、私と会談をいたしました。その際この問題が話題になりまして、私から、閣僚会議を開くとすれば、これはいままでの問題がきれいになって、本当に将来への友好ということの最初のステップになる、最初の具体的なあらわれになるというような雰囲気のもとに、閣僚会議を開くとすれば開くべきものだ。どうも私としては、いまそのような環境が熟しているとは判断いたさない」云々と答見ているじゃありませんか。  なお、ここには、四月の二日には星野君に対する外務大臣の同じような答弁がありますが、省略いたします。  なお、三月八日には、田英夫君の質問に対して、これは参議院の予算委員会ですが、宮澤外務大臣は、「閣僚会議を再開するといたしますと、これは、近年のいろいろなわだかまりというようなものを、もうひとつ、お互いにとやかく申さずに、将来に向かって友好の道を開く、そういう契機といたしたい、」「ただいまの状況では、そのような環境が、いわばもう一つ欠けるところがあるというふうに私としては判断をいたしておりますので、ただいまどの時点で開くというようなことを決定いたしておりません。」と答えている。  六月三日の、今度は衆議院内閣委員会で、わが党の大出俊君の、いわゆる閣僚会議をどうするかという質問に対して——これは六月三日ですぞ。宮澤外務大臣は、「この点は、前々から申し上げますとおり、閣僚会議を開くといたしますと、やはりこれは将来の日韓関係が本当に真の友好に立ち返る、十分な友好への再確認の第一歩というものにしたいと私は考えておりまして、そのための雰囲気はまだ十分に熟していないというのが私の判断でございます」と言っている。六月の三日にはこういうふうにはっきりした答弁を、しかも国会の中で約束している。  同じく六月の三日、これは自民党の、元の総監、いまの参議院議員秦野章君の質問に対して、宮澤外務大臣は、「仮に七月なら七月にでも閣僚会議を開く用意があるかとおっしゃいますれば、もう一つ私としては、一たん開きますと、今後文字どおり真の友好の回復の第一歩にしたいと考えておりますだけに、やはりわが国におきましても国民的な納得が背景として」——私は、断じてこの約束は取り消しのできないことだと思うが、「国民的な納得が背景として必要であろうという感じがいたしておるようなわけでございます。」と言っている。国民的な納得がなければ閣僚会議は開かぬということを、六月の三日に、しかも自民党の代議士に言っているんだ。参議院の外務委員会でこういう説明をしている。  六月の六日には、同じく参議院の決算委員会で、三木総理大臣が、「日韓両国の環境といいますか、これをもう少し整える必要がある。そういう点でいまのところ七月に日韓の閣僚会議を開く考えは政府は持っておりません。」と言っておられる。  これほどに明確に、あなたは国会で十六人の議員に対してこうやって数多く、衆参両議院のあらゆる委員会で約束をしている。閣僚会議はいまでもお開きになりませんでしょうな。これだけの約束があるのですからね。お開きになりましたか。総理大臣
  14. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小林君御承知のとおりでございます。
  15. 小林進

    小林(進)委員 御承知じゃありません。約束が違うじゃありませんか。これが国会に対する公約を正しく守ったことになりますか。守ったとお考えになりますか。守ったとお考えになりますなら、私はもう質問いたしませんぞ。そんな予算委員会なら、私はもう審議に応ずるわけにはいきません。お約束を守ったとお考えになりますかどうか。
  16. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 数多く御指摘になりました私の考え方は変わらぬのですが、閣僚会議の開催については、その間の事情を外務大臣から説明をいたさせます。
  17. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま小林委員から、私が昨年十二月以来両院で申し上げておりました答弁並びに韓国政府当局者に申しましたことにつきまして御紹介がございまして、まさしくそのとおり申し上げております。  その背景について御説明をいたしますと、御承知でございますから簡単に申し上げますが、事件が起こりました年の十一月に韓国の総理大臣が大統領の親書を持ってわが国の総理を訪問されまして、この事件について遺憾の意を表明され、なお捜査を続けるということを言われたわけでございます。しかるところ、昨年の八月の半ばに至りまして、捜査をしたけれども十分なこれという証拠は挙げ得なかった、したがって捜査を打ち切るということを韓国から言ってまいりました。それに対して、わが国は、わが国の警察当局の所見は著しく異なるのであって、捜査を打ち切るということにはわが国としては納得ができない、なお捜査を続けてもらうべきであるということを申しておったわけでございます。私が昨年の十二月から今年の六月まで、ただいま御紹介になりました答弁を申し上げておりました背景は、以上のような背景であったわけでございます。韓国側がこの件について、いわゆる金東雲氏の問題について、わが国の警察当局の所見とはなはだしく異なると思われる段階で捜査を打ち切ってしまったということについては、われわれはなお満足をしていないということを申し入れておったわけでございます。したがいまして、私が環境が十分に熟していない云々と申し上げた一つは、金東雲書記官のその問題についてでありました。  ところが、七月の二十二日になりまして韓国側から口上書が参りましたことは、これも御承知のとおりでございますからごく簡単に申し上げますけれども、その趣旨とするところは、八月十四日に一応捜査を中断したけれども、その後もひそかに日本側から提供された数々の資料等も用いて取り調べをいたした、しかし、嫌疑事実を立証するに足る確証を発見し得なかったので不起訴処分としたということと、しかしながら、本件捜査の結果判明した本人の東京における言動は、日本警察当局の嫌疑を受ける等、国家公務員としてその資質を欠き、品位にもとるものと認め、公務員職をやめさせた、と、こういう口上書を受領いたしました。  私ども、この口上書をどういうふうに評価いたすべきかということについて考えたわけでございますが、まず、司法関連の、検察関連の処分としては、公訴を維持するに足るだけの証拠はついに発見し得ない、したがって不起訴処分とするということと、行政処分としましては、しかし懲戒免官にさせたという、この二点であったわけでございます。  したがいまして、この段階で私どもが考えましたことは、両方の捜査当局の所見というものは、その水準におきましては一致していないということがまず一つございます。しかしながら、この点は、主権国家におけるおのおのの捜査当局の所見が一致しないというときに、最終的にこれを解決させる方法というのは、申すまでもなく実はなかなか見当たりがたい。恐らく、韓国におきましてもそのような検察あるいは捜査当局はある程度独立権を持っておるでございましょうから、したがって、そういうことはそういうこととしながら、行政の面においては本人を懲戒処分にした、こういう口上書でございます。  したがいまして、昨年の八月十四日に捜査を打ち切った、中断したもののごとくであったが、なお七月まで捜査が続けられたという点、不起訴処分になったということについては、わが国の捜査当局の一応の所見から言えば十分に納得がいくものかどうかということには問題はございましょうけれども、独立国家主権国家におけるそのような捜査当局の所見に対して私どもがさらに重ねてどうこうするということは果たしていかがなものであろうかということと同時に、一昨年韓国の大統領が遺憾の意を表明されたことに加えて、本人の東京における行為について公務員としての資質を欠き、品位にもとるというゆえをもって懲戒免官にしたこと、これは行政当局としては最善を尽くしたものというふうに判断をいたすべきものと私としては考えましたので、私といたしましては、これをもっていわゆる金東雲氏に関する事件は結着をさせるべきものであろうと、そういう判断をいたしました。この判断の可否につきましては御批判はいろいろにあろうかと存じます。その点は私も謙虚に承りたいと思いますが、私はさように判断をいたしました。  他方の金大中氏の問題につきましては、これは従来から、出国を含めて韓国人一般市民並みの自由を与えられるということであったわけでございますが、選挙違反事件というものが出てまいりました。したがいまして、その後は、韓国においては、選挙違反事件がきれいになった段階においては、出入国を含め韓国市民一般並みの自由を与えるということが確約されておりまして、この口上書発出の際にもその旨韓国の外務部長官からわが国の大使に対して確言がございました。この点も、したがって韓国の国内法に基づくものとしてそのように理解すべきものであろうと考えまして、私どもとしては、この口上書をもって、いろいろ御批判はございましょうが、この事件は、金東雲氏に関する限りはここで終止符を打つ、金大中氏については、なおその確約が遵守されることにわが国としては重大なる関心を持ち続ける、こうすべきものであると考えました。  それで、私がその後間もなく訪韓をいたしまして、そのようなわが国の考え方を伝えました。その際に、先方から閣僚会議の開催について要請があったわけでございます。閣僚会議につきましては、金大中氏事件が起こりましたのが一昨年の八月でございますが、十一月に国務総理が来られて以後、実は閣僚会議を一遍開いております。昨年たまたま陸英修氏の事件がございましたので閣僚会議を開いておらないわけでございますが、このたびこういう口上書が来たことでもありますので、私としては、閣僚会議を開くことをしかるべしと考えておりまして、帰りまして閣議にこの報告をいたしたわけでございます。そうして、それなりの準備も要ることでもございます。九月中旬に至りまして閣僚会議を開いたわけでございます。  以上が経緯でございますが、私が国会に対しまして七月には閣僚会議を開くつもりはございませんと申し上げたことは、これは一番最近の六月でございますか、申し上げておりますが、七月には開いたわけではございません。私は訪韓をいたしましたけれども。また、環境がもう一つ熟さない云々ということは終始申し上げてまいりました。それは、この七月二十二日の口上書をもって、やはり主権国家同士のことでもあり、この程度をもって金東雲氏の関係についてはわが国としても終止符を打つべきではないかと判断をいたしたわけでございます。  判断の可否につきましては御批判があろうということにつきましては、十分謙虚に承りたいと思います。
  18. 小林進

    小林(進)委員 これは参考までに申し上げますが、私は九月の二十四日にニューヨークにおりましたよ。国連のそばにおりましたよ。宮澤外務大臣が国連総会で演説をする日に私はおりましたよ。そしてそのときは演説が済んで、中国の喬冠華外務大臣と日中問題に対し交渉されるときであった。私はそのときには、ジャパンソサエティーにおいてアメリカの各層の代表を前に置いて、そこで江田団長と一緒にわが党の外交政策の演説をしておりましたよ。演説が終わりましたら質問が出ました。今晩の中国の外務大臣と宮澤外務大臣の話し合いをあなたはどう評されますかと言ったから、あれは全然話にはなりませんよ——まだ、かの会談を開く数時間前でした。宮澤というのは日本における優秀な官僚だ、テクニシャンだ、白を黒とも言い含める、テクニックで政治をやろうという男なんだ、あんな者は国内には通ずるかもしれないけれども、外交の世界で通じますか、それは喬冠華外務大臣にいいかげんにあしらわれて、からかわれて終わりますよ、私はそう言った。そうしたら、そのときニューヨークにおける外交関係や宮澤外務大臣についてきた記者諸君が、の国連における演説はりっぱでした、大した演説でございました、あれは明日の新聞にはきっと各紙とも書きますよと言った。ばかを言え、あんな中身のない抽象的な演説をだれが一体書きますか。書くのはわれわれのものだと言ったんだ。これは事実をもって証明するのだから。九月二十五日のニューヨーク・タイムズを見てください、そこにあるだろうから。われわれがジャパンソサエティーでやった演説は、これは五段抜きだ。ニューヨーク・タイムズはじゃあっと書いてくれて、外務大臣の演説の一言半句も出ませんよ。宮澤の「み」の字も出ませんよ。これが国際場裏における外務大臣の評価なんだ。喬冠華との話し合いはどうなっちゃったんだ。十時間やった、十三時間やった、何がまとまりましたか。その次の日になって、そのときに出たアメリカの高官やジャーナリストが全部来て、ミスター小林、君は占い師よりも正確だね、なるほど宮澤・喬冠華会談、あれはあなたの言うとおり何にもできていなかった、からかわれただけで済んだねと言った。そのとおりなんだ。しかしニューヨーク・タイムズは御承知のとおり世界じゅうに発しておりますから、自来私はスウェーデンへ行ってもロンドンへ行っても、ミスター小林、ニューヨーク・タイムズでは君は大変なものだね、君は恐るべき日本のための民間外交をやったねと言われたが、どうだね、宮澤の「み」の字も出ましたか。喬冠華にからかわれて済んだだけじゃないですか。あなた方、いまのその回答は一体何とお聞きになりますか。国会の中でこれほど約束をしていながら、通常国会は七月四日に終わった、終わったらすぐに一週間もたたないうちに、韓国とのいわゆる閣僚会議を開く準備に一生懸命に入っているじゃないですか。そして口上書とは何だ。七月二十一日にもうちゃんと韓国へ行くまでの日程を全部決めて、行くだけの一つのきっかけをつくるために、韓国から口上書が来なければいいの悪いのと、体裁だけをつくっておる。そして体裁だけの口上書を持ってこられて、これでいわゆる一切の問題は正常に化した、両国の人民の了解を得た、日韓の会議はこれで正常化する。そういう愚にもつかない、日程も決め韓国へ行って話すことも全部段取りをしておいたその芝居を一つやって、あの口上書。なぜ一体両国の国民はこれで納得しますか。口上書はそこにあるだろう。ああいう愚にもつかない紙一切れでごまかして、そして日韓会談は去年の十二月九日から国会で数十回も約束したことが、国民の納得がいかなければやらぬと言ったことが、それで正常化をしたと言う、これがすなわちテクニシャンというのです。これが技術だというんだ。これが行政官としてのエリートが生んだ答弁なんです。しかも十一月に金鍾泌が来た、そんなのはあなたの時代じゃない、大平さんが外務大臣のときの話だ。そのときにも私は了承できないと言った、十一月だった。大平のときの話の以後の話なんだ、私があなたと言っている話は。その大平の問題まで持ち出してわれわれをごまかそうという、そういう結論も何もない、権力の宝刀だけを抜いて人をごまかすような答弁はやめなさい。私はこういう愚にもつかない答弁を聞いている暇はありません。  そこで三木総理にお聞きします。あなたも国会の中でしばしば言われた金大中の自由は確保されましたか。確保しなければ日本の国会責任があると、あなた自身の口でもこうやって約束をしていられる。解決いたしましたか。金大中の自由は確保されましたか。されなければあなた自身も閣僚会議は開かないということをわれわれの前で言明せられている。されているか、されてないか、ひとつ承っておきたい。
  19. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が国会答弁をした、私の気持ちを申し述べたことはいまも変わらない。私は金大中氏の自由の回復というものに対しては、非常な関心を持っておる。したがって金東祚外務部長官が見えたときも私はこの問題を話し、六月十六日、佐藤元総理国民葬のときに金国務総理が児えたときもこの問題を話した。そうして、日本人の気持ちの中に釈然としないものがある。そうしたところが、選挙違反事件というものがあって、この事件は、やはり韓国は司法が独立しておる、三権分立ですから、私どもからどうこうこの問題を批判するわけにはいかない、内政干渉になります。だから金外務部長官もまた金国務総理も私に言ったことは、この問題が片づき次第金大中氏の自由というものは、出国も含めて一般の韓国人並みの自由を回復することはお約束できるということでございまして、われわれもそれ以上突っ込んで選挙違反という向こうの韓国の国法によってやられておる裁判自体に干渉するわけにはいかぬわけですから、どうしてもやはり小林君にも御理解を願いたいのは、二回にわたってこの問題を私が取り上げてあらゆる努力をすると言ったのはそういうことでございますが、しかしそこには限界があるということで、一日も早く、まあ今日小林君の気持ちからすればもっと迅速にできぬかというお気持ちだとは思いますが、やはり韓国は韓国としての一つの法制上のたてまえがございますから、選挙違反事件が速やかに片づいて、そして金大中氏の完全な自由というものが回復することを願っておるというのが正直な私のいまの立場でございます。
  20. 小林進

    小林(進)委員 いま私はあなたの答弁に反論する前に、総理大臣としてあなたもいま宮澤外務大臣答弁を聞いていられた。国会に対する責任なんか一つも考えてない。口上書というものをお互いにでっち上げ、もう国会が終わったら国会答弁なんか弊履のごとく捨てて、一生懸命に日韓会談をする段取りにもう入っておる。七月から入っている。国会の約束なんてものはへほどにもかけない。そうしておいて、もう七月二十三日にはすでに飛んで行った。そしていま機械的に、やったのは七月でございません、九月でございます。こういう見え透いた実にずうずうしい答弁で人をごまかそうとしておる。  あなたは憲法の第六十八条を御存じでありますか。なければ私が言いましょう。それは急には憲法学者でもわからないから言います。憲法第六十八条には「国務大臣の任命及び罷免」といって、「内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。」これは、旧憲法の第五十五条は「国務各大臣天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス」、旧憲法総理大臣の指揮下に入らないんですよ。国務大臣は全部天皇お手伝いするだけの話でありますから、あなたが首切ろうったって首切れないんだ。いやなら総理大臣にも反抗して、内閣不一致で辞職というのが旧憲法内閣のあり方だった。いまあなたはオールマイティーだ。気に入らないやつは首にできる。あなたならだれを一番先に首にするか。総理大臣責任国会に対して一番重いということを私は先ほどから繰り返して、あなたはそれを了承せられた。この閣僚の中で、日本の主権や独立に関する問題までもごまかして、国会を一番軽視し無視しているのは、この外務大臣だ。この第六十八条によって首にしなさい。罷免をしなさい。罷免するかしないか、この責任を問うか問わないか、まず総理大臣に私お聞きしたい。
  21. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三木内閣の閣僚は、こういう困難な時局にも全力を挙げて閣僚としての責任を果たしておると私は考えておりますから、罷免をする考えは持っておりません。
  22. 小林進

    小林(進)委員 このときに全力を挙げて何をやっているんです。全力を挙げて国会を軽視しているんですか。全力を挙げて国会の公約を無視しているんですか。私は、無視していることをこれほどつまびらかに言いました。しからば、あなたは無視していないとおっしゃるんですか。おっしゃるなら私は寝ますよ。これほどまで国会を軽視し、侮辱しておきながら、これでりっぱなんだ。りっぱに成功しているなら、私どもはこんなサル芝居やる必要はない。一体何のために議論を重ねる必要があるんだ。なぜ汗をたらして、これほど国会の尊厳のために、権威のために闘っているか。国会の権威のために闘うためだ。私個人の問題じゃない。国会の権威を重んぜられるということは、国民が重んぜられるということなんだ。主権者が重んぜられることなんです。私は、こんな人を小ばかにした答弁に、国民の代表として、民主主義の代表として論議を重ねることはできません。委員長、こんなことじゃ私はできませんよ。こういう答弁じゃ私は質問できません。総理大臣責任ある答弁をお聞きしなければ、私は質問を続けるわけにはいきません。
  23. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小林君も御承知のように、まあ永井君の場合は別でございますが、全閣僚とも面接の選挙で選ばれてき、ほとんどの議員が長い議会政治の経験を持って、国会を軽視するというような考え方を持つはずはない、国会議員である限り。そういう意味でありますから、それはいろいろそのときの情勢の変化によって、そして外交にしてもいろいろ相手もあることでございますから、それに対応はいたしますけれども、国会をだまかそうという意図で、国会のときだけ何とか言い逃れて、それが終わればいいんだという考え方は絶対に持ってないということは、小林君にぜひとも御理解を願いたいのでございます。そういう考えを持って、一日たりとも国会議員が勤まるわけはないんです。主権在民のもとで、直接国民に選ばれてきておる議員であります。
  24. 小林進

    小林(進)委員 私は、それだから先ほど念を押して、あなたは私の言い分を承服したじゃないか。この憲法を正しく守るためには、各大臣、各政府委員は四つの条件が最低必要ですよ。その四つの中で、議員の質問には正しく答えることだ、要求する資料は可能な限り提出することだ、国会で公約したことは正しくこれを執行することだ、その結果を正しく国会報告する、この四つが各大臣と政府委員の最低の条件じゃないかと言ったら、あなたはそのとおりだ。そのとおりと言ったじゃないか。そのとおりの中の第三の、国会で公約したことは正しく執行していないじゃないですか。国会を軽視しておるじゃないですか。あなたが約束したことと違うから、この違う外務大臣を、あなたが任命権があり罷免権があるのだから、これを処置しなさいと言っておるのだ。あなたの言葉は、いまごもっともですと私に言ったことと合わないじゃないですか。これをどう処置しますか。  いま一回言いますけれども、議員の質問には正しく答え、国会で公約したことは正しく執行するということが各大臣国会に対する最低の責任であり責務であると私が言ったのに、あなたはそうだ、ごもっともだと言ったじゃないですか。やっていないじゃないですか。やっていない大臣をどうするかと私は聞いておるのです。反対のことをやっておる。
  25. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 閣僚の答弁は、そのときに国会をだまかそうという答弁は絶対にないわけです。ただ、外交の問題などは、情勢の変化を追って対応しなければならぬということで、そうでなければ外交というものはできないわけです。ただ問題は、憲法の規定にもあるように、そのときに約束したことは守らなければならぬこと当然でございますが、そのときに心にもないことをこの議場で三木内閣の閣僚が言っておることは絶対にないということは御理解を願いたいのでございます。
  26. 小林進

    小林(進)委員 この問題は譲るわけにはいきません。本当の気持ちと言ったが、私は気持ちを論じておるのじゃない。公約したことは必ず執行するということが最低の条件だと私は言っておるのだ。気持ちなんかいいんですよ。いいかげんじゃない。いいかげんはだめだ。いいかげんはだめだが、気持ちでないことを言っても、ここで言ったことは必ず執行するということが最低の条件だと言っておるのだ。執行したかしないかを私は言っておるのであって、気持ちを問うておるのじゃないです。執行していないじゃないですか。約束したことをやっていないじゃないですか。やっていないことに対して一体総理大臣はどれだけの処分をするか。あなたは任命権と罷免権を持っておるのだから、何をやられるかと言っておるのです。これは黙って素通りするなんということは私は了承できません。
  27. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私の言っておるのは、外交などの場合はいろいろな情勢の変化があるわけですから、そのときは自分の気持ちというものを——国会というものは一遍限りでないんですから、閣僚はずっと毎回の国会に出て責任を問われるわけですから、その一国会をだまかして過ごせばいいというような考え方を持つはずはないのであります。したがって、正直にそのときは自分の考えておることを述べたわけですが、外交のごときはいろいろな情勢の変化、たとえば、いま宮澤外務大臣は口上書の話をしておりましたが、そういうことも勘案して、国益を踏まえて、最善の方法というものを判断して、そういう方針をとることが国益に沿うゆえんでもありますので、そういう点で、国会に対しての憲法の条章を踏みにじるというような精神は絶対にないということは御了承願いたいのでございます。
  28. 小林進

    小林(進)委員 この問題は国会行政の接点です。私は、基本問題ですから譲るわけにはまいりません。私は、金大中事件において国際情勢は変わったとも思いません。条件が変わったとも思いません。金大中は依然として軟禁の状態にある。何も変わっておりません。ただ国会が六月の六日までやらないと言っておきながら、七月四日に終わったら一週間もたたないで、もはや閣僚会議の段取りに入ったその行為が、これが国会軽視ではないと言うのか。気持ちに変わりがないと言ったって、そんなことはだめです。  委員長、私は、もし委員長国会審議の過程に、こういう答弁でこれを押し通すとおっしゃるのならば、もうやれません。やれません。これは理事諸君、行ってひとつ段取りをしてくれたまえ。この問題をきちっとしない限りは、私はもう次の質問を続けるわけにはまいりません。やれませんよ。そんなことを繰り返して、情勢が変わったからと言っては次のたびにぼんぼんぼんぼんと変わったことをやられたのでは、これはサル芝居と同じです、国会の中では。委員長、サル芝居と同じです、われわれは。こんなことを繰り返したら、国会審議することは全部状況の変化で、次の日からみんなごまかされてしまう。
  29. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 三木内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。三木内閣総理大臣
  30. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政府の答弁は、答弁の時点におきましては誠心誠意申し上げたのでありますが、しかし、その後における韓国側の環境改善の努力があり、国会後における政府の行動が国会を軽視したという疑いを抱かしめましたことは、まことに遺憾に考えておる次第でございます。  また、金大中氏事件については、本人の自由回復のためさらに格段の努力をいたし、その経過については国会に御報告をいたします。
  31. 小林進

    小林(進)委員 いま総理の御発言の中に、遺憾の意を表されましたのと、金大中氏の自由のためにさらに最善の努力をするという二点が明らかになりました。私は、遺憾の意を表せられたものを、深く陳謝をせられたものと理解をいたしまして、今後の政府の行動は予算委員会の中に設置せられました小委員会を通じてさらに厳重なる監視を続けるということを申し上げまして、一応この質問を終わりたいと思いますが、しかし、小委員会の開催その他については委員長権限に属しますので、この点委員長にひとつ御確約をお願いいたしたいと存じます。
  32. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいまの小林君の発言に対しまして、予算審議とその執行に関する調査委員会において検討することにいたします。
  33. 小林進

    小林(進)委員 それでは質問を続けたいと思いますが、私は、金大中氏の事件について、さらに総理大臣に念を押しておきたいと思います。  ただいまも、金大中氏はいわゆる裁判が係争中である、これは韓国の国内法の問題だから日本政府としては手をつけ得ないという答弁がございました。この前の国会でも同じような答弁を宮澤外務大臣がやったのであります。しかし、これも事実と相違いたしております。金大中氏が裁判中であるので執行されないと言っておりますが、この裁判は選挙に対する裁判でありまして、金大中氏が一九七二年、昭和四十七年の十月にわが日本に参りましたその当時に、もうすでにこの選挙違反の裁判は係争中であったのであります。係争中であったにもかかわらず、朴政権は金大中氏にパスポートを出しているのであります。  なお、この裁判はいつから始まったのかといいまするというと、現在行われている金大中氏の裁判は一九六九年の六月から始められているのであります。決して彼が拉致された以後の新しい問題ではありません。  しかも、これは正確ではありませんが、ここにいる宮澤外務大臣田中総理大臣も知っているはずでありまするけれども、七三年、四十八年の十一月二日に金鍾泌首相が来日したときに、金大中氏は選挙違反で係争中であるが、病気治療のため特別の配慮で一週間の出国を認めたのであるという話をされたはずであります。あなたは知っているでしょう。そういう話なんであって、あなたたちはそういう古い話まで持ってきてわれわれをごまかそうとしておる。  したがいまして、日本政府が真に国家の独立を守り、金大中氏の人権を守るという熱意があるならば、いまでも、裁判が係争中であろうとも、この問題を原状に復帰して、問題処理のためには来日を要請しても何ら不当でないはずであります、経験があるのですから。しかし、いまの御答弁の中に、原状復帰のために努力されておりましたから、時間の関係上、これは略しますけれども、念のために申し上げておきます。  それから、私は警察当局にお尋ねしますが、先ほどから、警察当局の同じこの国会における約束、私はるる公約のことを申し述べた。現在公約どおりやっておるかどうか、答弁してください。
  34. 三井脩

    ○三井政府委員 金犬中氏事件に関しましては、警察としては引き続き継続捜査に付しておるところでございます。
  35. 小林進

    小林(進)委員 継続して捜査しておると言うなら、中間報告の一回や二回あってもいいだろう。何も持ってこないじゃないか。何も報告がないということは——先ほども申し上げたようにあなた方は報告の義務がある。なぜ一体やらない。  それから、新しい問題を提起して言うが、あのときの問題を起こした金東雲は、もはや国家公務員——向こうでは国家公務員かどうか知りませんけれども、韓国における公務員の地位をなくして、いまは一般市民になったはずだ。一般市民であるならば、改めて来日を要求する、日本へ来ることを要求することは可能なはずであります。これを一体やったかどうか。やる意思があるかどうか。もし、ないと言うならば、私は問題にいたします。確かなる指紋というものがある。この指紋があるということに対して警察は一体何をやったか。  時間がないから、私は一つの例をとって申し上げますけれども、これはことしの八月三十日、日本の警察は指紋一つで外国人に逮捕状を出しておるという前例があるのです。新聞報道によると、警視庁捜査三課と赤坂署は、現場に遺留された指紋から、八月三十日、米国ジョージア州生まれの貿易商、窃盗など前歴二件、ジェームス・キャンベル三世を犯人と断定し、同日に窃盗容疑で逮捕状を請求し、国際刑事警察機構を通じて、キャンベルを国際手配しているはずだ。指紋一つでこれだけの手続をしている。明らかに人的証人もいて、指紋という明らかなる事実があるのは金東雲だから、この前例にならって当然逮捕状を出してもいいし、来日を要求してもいい条件だと私は思うが、それを一体やる気があるかどうか、明確な答弁をしてください。
  36. 三井脩

    ○三井政府委員 指絞は大変有力な証拠でございますので、警察といたしましては、金東雲が本件事件の重要な容疑者であると考えております。ただ、すでに御存じのように、七月二十二日の口上書によりまして、外交的に一つの決着をつけられた、こういう段階でございますので、捜査といたしましては本人について十分に事情を聴取するということは大事でありますけれども、いま改めて出頭要請をするという考えはございません。また、われわれの国内における捜査について、国内でできることを鋭意継続捜査をしておるということでございます。
  37. 小林進

    小林(進)委員 できることなどという抽象論をあなたは何回も繰り返してきた。そうして、国会が終わったら何もやらないじゃないか。何にも報告しないじゃないですか。私が先ほども言ったように、口上書の問題は金東雲の被疑の問題とは別だと外務大臣答弁しておる。あなたが七月二十二日の口上書があるから来日を要求することもできない、逮捕状も出せないと言うのはおかしい。答弁が違っているじゃないですか。  委員長答弁は違っていますよ。これじゃ私はとても審議を進めるわけにはいきません。外務大臣ははっきり言っているじゃないですか。
  38. 三井脩

    ○三井政府委員 外交的決着の問題とは別に、捜査としては継続をしておるということでございます。したがいまして、この捜査の方法につきましては、一応外交的決着がつけられたということが一つの事情でございます、条件でございますが、われわれとしてはできること、たとえば国内における共犯関係その他について捜査を継続しておるところでございます。
  39. 小林進

    小林(進)委員 これは私の質問に答えていませんよ。答えていないじゃないですか。私は一市民となった外国人に対しては、あなたに先ほども言ったように、いま八月の例を言ったろう。ちゃんと指紋が残った、指紋を唯一の犯人、被疑者として、あなたたちは逮捕状を、国際刑事警察機構を通じて手配をしているじゃないですか。こっちの方も一市民として指紋があるのだ。指紋は両方とも一つだ。なぜ一体金東雲には出せないのか。あなたたちがやっているのと同じことを、一市民になったのだから金東雲にもやれるだろうから、それをやりますかと言っているのだ。やれないならやれない理由を言いなさい。外務大臣は、七月二十二日の口上書は金東雲の犯罪事実とは関係ないと言っているのだから、明確に言ってくれ。
  40. 三井脩

    ○三井政府委員 金東雲が有力容疑者というようにわれわれは判断をしたわけでございますが、犯行当時、金東雲は外交官として外交特権を持っておりました。したがいまして、本日現在は外交官の身分を持っておらないといたしましても、犯行当時その身分を持っておった、外交特権を持っておったということによるわけでございます。
  41. 小林進

    小林(進)委員 現在一市民であることには変わりはないでしょう。いま言ったとおりだな。あなたは現場に遺留された指紋一つで、ジェームス・キャンベル三世という者を犯人に断定をして、国際警察機構に国際的な手配をしている。同じことが一市民の金東雲になぜできないかと私は言っているのだ。その理由は何だと言っている。やりますか。
  42. 三井脩

    ○三井政府委員 金東雲につきましては、ただいま申し上げましたように犯行当時外交官としての身分を持っておったという点を考慮しなければならないというように考えておるわけでございます。
  43. 小林進

    小林(進)委員 現在は何だ。現在は市民だと言う。市民の身の上に、前歴にこだわって、片方には逮捕状をできるけれども、片方は前歴があるからできないという、その根拠をひとつ示してくれというのだ。前歴があるからできないということになれば、われわれも国会議員として、これは国会議員をやめても前歴はあることになる。国務大臣になっても前歴があることになる。前歴があれば、どんなに犯罪を犯かして指紋を残しても逮捕しないというのか、一体、逮捕できないのか。一等書記官の前歴があるから平のいわゆる市民になってもできないという理由は、それは警察当局の一般的な原則ですか。こんな原則があるということならば、これは民主主義はやみだ。これは大変な問題だ。どうですか警察庁長官。公安調査庁長官でもよろしい。長官はいないか。
  44. 三井脩

    ○三井政府委員 金東雲が事件当時外交官としていわば特権を持っておったわけでありますが、現在はその特権を持っておらないというふうに私たちは考えておるわけでございます。特権を持っておる当時、出頭を要求いたしましたけれども、韓国側としてはこれを拒否いたしましたので、実現に至りませんでした。したがいまして、金東雲が今日一私人の立場で再入国をするというようなことがあれば、当然われわれは捜査できるわけであります。したがいまして、この点につきましては今後の捜査の中で新たな事情、その他のデータが出てきたときにやっていきたい。(発言する者あり)
  45. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えを申し上げます。  警察当局といたしましては、御案内のように従来指紋の問題等もこれあり、この金東雲の問題については重大な関心を持って捜査を今日まで続けて……(小林委員「何にもやっていないんじゃないか」と呼ぶ)いや、国内的にはいろいろな問題でやっております。それはやっておりますが、まだ新しい事実が出てきておらないのでありますけれども、もちろん新しい事実が出てくればこれは当然外交ルートを通じてでも向こうに要請することができると思います。しかし、日本と韓国との間にそういう警察関係に関する協定とかそういうものがまだございません。そういうことになりますと、新しい事実が出てこない場合においてどう処理すべきかということについては、これはやはり外交当局ともよく相談をした上で処置を考えてみる、こういうことにいたしたいと思っております。
  46. 小林進

    小林(進)委員 現在、金東雲も一市民。ジェームス・キャンベル三世も一市民。その片っ方の一市民には指紋があった。指紋一つなんです。しかし、その指紋一つで犯人と断定をして、そして国際警察機構を通じて国際的な手配をしている。片っ方も指紋はあるが、ただ前歴が公務員であった。韓国の公務員であった。だが、その公務員の地位を失っていまは全く一般市民であるにもかかわらず、新しい事実ができてこなければ逮捕状も出せなければ来日の要請もできないということは司法権に対する重大な不公正です。こういう国の都合や前歴によって司法活動や司法権の発動が左右されるということになれば、われわれは安心してこの日本に住むことはできない。これは絶対だめです。この問題に対しては明確な返事をしなければ、これは日本国民全般に関する基本人権の問題ですから、これはだめです。
  47. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま御指摘になりましたジェームスの問題につきましては、犯罪人引き渡し条約というものが結ばれておる中でのことでありますからこれはできますが、韓国との間にはそういうものがございません。だから、これは事情が違う、こういう考えをしておるわけであります。
  48. 小林進

    小林(進)委員 文世光の方はどうなったんですか。文世光の場合はどうなんですか。わが日本の兵庫における警察からピストルの二丁も三丁も盗んでいって、そして韓国へ行って光復節だかなんか知らないけれども、厳重な警戒があるのに、入場券もなければ身元もはっきりしないようなそういう重大な——そういう光復節だか知らぬけれども、その会場へのこのここのルンペンみたいな男が入っていって、朴大統領の前へ行って座っていて、そしてピストルの三発も撃ったら、そのピストルの弾が左側の上の方に飛んでいってしまったのに右の方にいた陸夫人が四十一秒もたったらやられたといって倒れた。そういうような摩訶不思議な問題についてもわが日本にちゃんと逮捕状の請求があるじゃないか。わが日本の総理大臣にも陳謝を要求したじゃないか。そういう不可解なことに対して、韓国に理由なくして頭を下げながら、これほど明らかな指紋があるものがなぜできないんだ。私は国際機構のことを言っているのではないんだ。逮捕の要求がなぜできないかと言っているんだ。余りにも韓国の問題に対してだけは隷属も従属もはなはだしいことをやっているから私は了承できないんだ。何を言うか。そんなことは私は承服できない。(「重大問題だ。何をやっているんだ」と呼び、その他発言する者あり)
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行について発言をいたします。  ただいまの問題につきましては、これは日本の主権に関する問題であると私は解釈をいたします。さらにこれは日本の司法権の問題あるいは捜査権に対して外国の介入を許すのかどうかというような問題、こういう問題が政府ベースにおいていろいろと左右せられるようなことであるならば大きな問題であります。したがいまして、これの協議のため、ちょうど時間もお昼を過ぎておりますから、休憩をし、理事会においてその取り扱いを協議していただきたいと存じます。
  50. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいまの田中武夫君の動議、よろしゅうございますか。
  51. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいまの田中君の動議のとおり暫時休憩いたしますが、午後一時を再開する目途として休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ————◇—————     午後三時三十二分開議
  52. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  先ほど小林委員から、金東雲事件に関し、本人の出頭を要請するよう要望がありましたが、私もごもっともな御発言と思いますので、委員長として政府に対し善処方を要望しますが、外務大臣いかがでございますか。
  53. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府は、国会の御審議を尊重し、ただいまの委員長の御発言の御趣旨を体し、責任を持って委員長の御要望が実現するようお約束をいたします。
  54. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 小林進君。
  55. 小林進

    小林(進)委員 ただいま委員長の御要望に対し、外務大臣の御答弁がございました。その御答弁の中には、私の要求をいたしております金東雲の出頭要求も含めて努力をされることをお約束されたものと私は理解をいたしますが、この問題については公安委員長としてどういうお考えであるのか、承っておきたいと思います。
  56. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  ただいま外務大臣がお答えをいたしました線に沿って善処いたします。
  57. 小林進

    小林(進)委員 法務大臣、この問題に対する御回答をお願いいたしたいと思います。
  58. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ただいま外務大臣及び国家公安委員長答弁を申し上げたとおり善処いたします。
  59. 小林進

    小林(進)委員 その結果については、小委員会に報告することも確認をしておきたいと思いますが、この点については、委員長権限でございますので、委員長から御答弁をお願いいたしたいと思います。
  60. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 二十一日に小委員会ができておりますので、これに、回答の各大臣から報告をいたすことにいたします。
  61. 小林進

    小林(進)委員 それでは、この問題はきょうのところは一応終止符を打つことにいたしまして、次の質問に移りたいと思います。  同じく次の問題も国会に対する各行政府の軽視の問題に関連するのでございますが、実は昭和四十八年の十月九日に、私は外換銀行東京支店の融資の問題について質問をいたしました。これは一九七二年の八月五日付の朝鮮日報で、外換銀行不正融資の問題で洪頭取が懲役五年の宣告を受けたという問題でございまして、この問題を九月十四日、決算委員会で当時の大平外務大臣に質問をいたしました。そのときに大平外務大臣は、「本件と政界との関係を政府の手でただせということでございますか。——承りまして、検討してみたいと思います。」という答弁がございました。  ところが、その後の四十八年の十月九日であります。外務大臣答弁が返ってまいりませんので、当時の愛知国務大臣に同じ質問をいたしました。ところが愛知外務大臣は、「外換銀行の在日支店、これは東京と大阪にございますが、一億円以上の融資額を調べてみましたところが、東京支店で十一件、それから大阪支店で十六件ございますが、その総計二十七件で融資額が七十二億千三百万円、こういうことに相なっております。これが四十八年三月末の残高の現状でございます。」と言って私の質問をきれいにすりかえて、そして答弁を逃れておるのであります。私はこのときからこれは恐るべき国会軽視の、いわゆる思い上がった答弁だと思ったのであります。  私はそれから心に深く期するところがありました。亡くなった人の悪口を言うのはなんでございますけれども、大体官僚上がりの秀才というものはいつでもこういうふうな白を黒と巧みにすりかえて、そして国会答弁をごまかしていく。死んだ人に愛知揆一、生きているのに宮澤何がし、実に行政府の官僚の、エリートの意識にすぐれている者が国会を軽視するもはなはだしいという一つの前例なんです。  そこで、私はこの外換銀行の不正融資の問題について、今度は同じく四十八年の十一月十三日だ、また大平外務大臣に質問をいたしました。大平さんの答弁は、これはさすがに愛知、宮澤よりは一片の良心的なところがあります。これは調査をいたしまして報告いたしますと言うので、いささか人間らしい答弁がありますから、三人並べたらあなたが少し人間的です。これは私は認めますが、そのことに対して当時の——そうです、良心的であるというのは、その十一月十三日の大平国務大臣答弁で、「先ほどの韓国の銀行の東京支店の問題につきましての調査は、大蔵省のほうで実施いたしましたので、大蔵省のほうから御報告申し上げます。」とあなたは答弁された。そのあなたの答弁を受けて、当時の大蔵政務次官の山本幸雄君はこういう答弁をしている。「十月九日の御質問は、五十億の不良貸し付けをしたのではないか、これはだれに貸してどう投資されたか、こういうこと。特に町井久之氏なる者に貸したのではないか、こういうお尋ねのように伺いましたが、韓国外換銀行の東京支店は、町井久之氏個人ではもちろんなく、東亜相互企業なる会社、これは社長は町井氏のようでありますが、これに、貸し付けではなく支払い保証を約六十億、そういう信用供与を与えたということがございます。この六十億の支払い保証に基づいて、日本不動産銀行が五十四億の融資をいたしております。その内容は那須、白河高原の総合開発事業というものに三十三億、それからTSK・CCCターミナルビルの建設に関するもの二十一億、合計五十四億となっております。これにつきましては、韓国大韓銀行は東亜相互企業の土地建物に対して抵当権を設定をしておりまして、債権確保の上でも手は打たれておるということでございます。こういう貸し付けにつきましては、もちろん法的には問題は一応ない、こういうことになっておりますが、この融資の内容について、できるだけ将来についてはさらに慎重にやるように指導をしてまいりたい、こう考えております。」こういうことになっておるのでございますが、一体その後のこの融資の状況がどうなっておるのか、監督官庁としての大蔵大臣にその後の経過をお伺いいたしたいと思います。
  62. 田辺博通

    ○田辺政府委員 お答えいたします。  四十八年十一月にそのような答弁がございましたときの貸し出しは、白河の土地の開発関係で三十三億円でございましたが、その後は新しい貸し出しは不動産銀行からは行われておりませんで、本年三月末現在では三十一億円の残高になっております。
  63. 小林進

    小林(進)委員 私は、一体この東亜相互企業なる会社に外換銀行が保証をいたしまして六十億円の貸し付けをやって、そして土地の買い付けをするあるいはターミナルビルの建設に使用するというふうな、そういう貸し付けの中に非常に不明朗なものがあることを聞いておるのであります。一体こういう融資、貸し付けが銀行として好ましいものとお考えになっておるのかどうか。その後厳重にこれを監視するとおっしゃいましたが、いまのお話では、白河に土地を買った三十三億の投資の中にまだ三十一億円の残高がある、返したのは二億足らずの金という勘定になるのでありますが、これは不良貸し付けじゃないのですか。  時間がありませんからもっと申し上げますけれども、町井久之氏というのは御承知のとおり韓国の国籍がある。韓国の名前は鄭建永という方であります。昭和四十年までは東声会の会長であられた。東声会というのは、御承知のとおりわが日本におけるいわゆる警察のマークをした強力な暴力団でありまして、千五百名からの暴力団員を持っておられたのでありますが、警察の暴力団解散の指示に従ってこれを解散された。その後は不動産業者をやられたり、あるいは銀座にバー、クラブなどを十数軒開業されたり、あるいは銀座や上野等に秘苑などという韓国の妓生を輸入——人間の輸入というのもおかしいのでありますけれども、これを輸入して妓生のサービス風俗営業をやられたりして非常に不可解な人ですけれども、政界との結びつきは非常に深い。たとえて言えば、この六本木におけるTSK・CCCターミナルなどの竣工式には元総理大臣の岸信介氏等が主賓となって出席をされたり、あるいは町井氏が韓国へ行くと、これは風評でありまして私は実際見たわけじゃないけれども、京城の飛行場には朴大統領の特別の車が迎えにきてそのまま大統領官邸にも御案内を申し上げるというふうな、いわゆる政商に近い実力者であります。こういう方々に外換銀行のいわゆる保証で日本不動産銀行から五十四億もの多額の金を——これは不動産銀行は無担保であります。こういう貸し付けをしている。しかも今日まで、その五十四億円の中の二億円近くの金しかまだ返済をされていないというこの事実を、一体監督官庁としての大蔵省はそれが正当な貸し付けであるとお考えになっておるのかどうか、ただ手をこまねいてお待ちになっておるのかどうか、いま一度大蔵大臣、あなたからひとつ答弁をしてください。
  64. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一般的に申しまして、二、三年前の金融の超緩慢期におきましては、ひとり不動産銀行ばかりでなく、銀行の貸し出しにやや行き過ぎの面があったと思うのであります。政府としては、土地取得関係の資金などで投機、思惑につながるようなおそれのある資金、その他いわゆる不急不要の資金につきましては、その融資を厳に抑制するよう指導いたしておるものでございまして、最近ではそういう方面がずいぶん改善されてまいっておるわけでございます。  いま挙げられました事例につきましても、ちょうどそういう金融緩慢期における一つの事案として大変残念でございますけれども、そういったことの改善につきましては終始大蔵省といたしましても指導をいたして、改善に努めておるところでございます。
  65. 小林進

    小林(進)委員 私は大蔵大臣の御答弁を一応は信用いたします。しかしこの問題は、今後どのように指導し、どのように一体これを解決をせられるのか、その実際をひとつしばらく静観させていただきます。事によってはまた質問をさせていただきますが。  その五十四億の融資の中の三十三億円を投ぜられた白河郷であります。私はこの地図を持っておりますが、その白河郷には、その近くに東北新幹線が敷設をせられておる。そしてその近くに東北新幹線の新しい駅が予定せられるようにできております。また、買収した約四十万坪から五十万坪ですか、私は正確にわかりませんけれども、そのまた近くにいわゆる東北高速道路の予定地ができておる。そこには公団やターミナルができる。この土地は、いわゆる入植者が七十七戸入っている。そして一戸平均田畑、山林を合わせて七ヘクタールずつを与えて開墾をしておる土地だ。それを、いわゆる外換銀行保証、不動産銀行からの三十三億円の金で、この原野を十万ないし十一万で町井久之氏の主宰するこの企業会社が買い付けておるのでございますが、この問題を地元の人たちは、やはり日韓癒着に基づく強力な政治力で、こういう新幹線の道路を予定することでこの入植者から買った、あるいは高速道路ができるターミナルの地区だからこれを買ったんだ。いまではもはやこの地域のまん中には、四車線の実にすばらしい道路もできておるのであります。こういうふうな不可解な土地の売買が行われておる。しかもこの土地は入植者の土地でありますから、国家の補助金を与えて売った土地であります。純正な個人の土地とは言えない。政府の補助金を受けた土地を買っているのでありまするが、こういうような不可解な風評に対して、運輸大臣はこの事実を知ってこういうところに特に新幹線の駅を設けられたのか、あるいは建設大臣はこういう事実を明らかに知って政治的にこういうところに設けられたのか、それぞれ御答弁をお願いしておきたいと思うのであります。
  66. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 私はいま承るのが初めてでありまして、ここで正確な御答弁を申し上げることはお許しをいただきたいのでありますが、よろしければまた後で調査をして申し上げます。
  67. 木村睦男

    ○木村国務大臣 ただいまの話は初めていま承ったものですから、よく調査をいたします。
  68. 小林進

    小林(進)委員 これはどこかの新聞がこれを報道いたしまして、最近でありまするけれども、これは何か朴大統領亡命先の土地を町井氏が先駆けて準備をしたのであるというふうなことも書いて、某方面から大変おしかりを受けたそうであります。私もそこまでこの土地と朴政権との因果関係はあるとは思いません。これは私はそのとおりだと思っておりまして、そこまでは疑いません。  しかし、この広大な地域の中で、いわゆる農公園というものが設けられておる。これも町井氏が社長です。この相互企業が主体になって農公園という別会社——農公園というのは観光牧場という意味なんだそうでありますが、これができ上がったときには、これは朴鐘圭という、いわば現金鍾泌首相とともに朴政権の二大柱と言われて、お互いに勢力争いをした韓国の朴政権におけるトップの実力者でありますが、その人がやはりこの農公園を視察に来ていられることは、これは事実であります。これは事実だ。まさかそういう亡命の地などということは、私も毛ほどにも考えませんが、朴政権の最大の実力者の一人がそこへ視察に来ていられることは事実であります。  なおまた、その農公園の竣工式には当時の韓国の在日大使館の金永善大使がお見えになっていることも事実であります。もちろんそれは町井氏の実力の前に敬意を表するためにお見えになったのかもしれませんけれども、そういう事実が明らかになっておるのでありますから、この農公園といい、この農地の買収といい、入植者の買収といい、非常に世間の人たちは大きな疑惑を持っていることは事実であります。  一体、こういう広大な、しかも国の補助金を入れてやったその土地を転売をすることは、これは農地法違反ではないのでありますか。これは農林大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  69. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま初めて聞くお話でございますから、どういう実情であったのか、早速調べて調査をいたします。
  70. 小林進

    小林(進)委員 その農公園は、これは農業法人としておやりになっている。いま牛だか馬だか二百頭前後をお飼いになっておりますから、これは農地法違反ではないかもしれません。あるいはその手続がしてあるかどうか、私はあわせてひとつお調べいただきたいと思います。  現にその土地をこの企業は転売をいたしております。その一部を買ったものが東京女子医科大学であります。この女子医科大学は研究室をつくるということで、これは転用許可願を出しております。昭和四十七年に条件つきでその転用願は許可をされました。設備は四十八年十二月までに完成するというのが条件でございますが、今日までこれは完成をいたしておりません。これは一体転用の条件に違反していることじゃございませんか。なお、そのほかに、この広大な土地の一部分は三越が買っております。なお、われわれの調査によりますと、三越と町井社長との間に販売契約ができておる、こういうことでございますが、三越が一体この企業と結びついてなぜこの土地を買っているのか、こういうことも非常に風評は飛んでおります。風評の段階で私はこの権威ある国会の中で申し上げませんが、私は、これも農地法違反ではないかと思う。なお、神戸製鋼もこの土地の一部を買っております。価格はいずれも入手したときの十倍以上の価格で転売されていると承っておるのでありますが、こういうような事実を農林大臣はお知りにならないということであります。  私の前の問題もありますから、深追いはいたしません。深追いはいたしませんが、私は大蔵省には、大蔵大臣、いまの質問を重ねて申し上げますけれども、大蔵省としての監督権をひとつ実施をしていただいて、私が納得いくような報告をひとつ出していただきたい。大蔵大臣、いいですか。  それから建設大臣、あなたはあそこにちゃんとインターチェンジをおつくりになるような高速道路を持っていって、入植者が入植をしている土地の中に広大なインターチェンジの契約をお持ちになっているのだから、一体どういう計画でおやりになっているのか、それもひとつ文書で提出をしていただきたい。  いいですか運輸大臣、こういう土地の中にあなたたちは——いままで何もない。しかもこれは那須の御用邸だ。自民党の皆さん方が一番尊敬しなければならぬ那須の御用邸の裏側です。この高地の上へ上がってみると、天皇のお住まいになる那須の御用邸が眼下に見えるという、そういう風光明媚なところであります。そういう何もないところへ新しく新幹線の駅をおつくりになるというのだが、どういう関係でそこへ駅をおつくりになるのか、そういうこともひとつ文書で回答していただきましょう。  よろしゅうございますか。異議があったらここへ出てひとつ異議のあることを述べてください。——大臣とも御異議ございませんな。御異議がございませんければお約束をいただいたと思って、この問題は、一応ここで提起をいたしておきますけれども、私は、この土地が一体幾らで抵当権が設定されているか、もろもろの事情を全部調査をいたしました。この土地は九十九億円で抵当が設定せられている。  なお、この東亜相互企業は、この西白河郡西郷村という買収した土地の農協からも三千万円の金を借りておりまして、この農協の組合長は私文書偽造で農協組合員から連名でいま告訴をされております。しかし告訴の最中に、これは大韓銀行の支払い手形で三千万円の金が返されているという事実もありますが、実に不可解な問題が幾つも重なっていることだけを私は申し上げて、あとは関係閣僚の調査の結果をお待ちいたしまして再び御質問を申し上げる、こういうことにいたしておきたいと思います。  次に、私はいよいよ本論に入りたいと思いますが、総理大臣、あなたは八月六日にフォード大統領とお会いになりました。共同声明をお出しになりました。同時に共同新聞発表というものをおやりになりました。その中にはいわゆる韓国条項というのがあるのでございまして、「日米両国は、このような努力に対し引続き援助と協力を行う用意があることを述べた。両者は、韓国の安全が朝鮮半島における平和の維持にとり緊要であり、また、朝鮮半島における平和の維持は日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり必要であることに意見の一致をみた。」これが有名な韓国条項であります。この問題に対してはあなたは、一衣帯水じゃないか、こういうふうなことで言おうとするが、宮澤さんは、これは一九六九年のいわゆる佐藤・ニクソン会談の焼き直しだ、あのままのものを再びここで確認し合ったのだということで、総理大臣と外務大臣の間には大変ニュアンスの違いがあるのであります。しかし私は、今度のこの新たな韓国条項を非常に重要視しているのであります。  なぜかならば、あなたも御承知のとおり、朝鮮半島の人民は、国民は、北を問わず南を問わず、わが朝鮮は一つである、わが朝鮮の統一が悲願である、民主的に自主的に平和的に統一をするのがわれわれの願望であると言う。こういうことをあなたは御存じになっている。しかるにあなたは、フォード大統領に呼びつけられてと言ってはなんでありますけれども、呼ばれて、そうしてこの韓国が、直接ではないのでありますけれども、間接ではあるが、日本の平和に一衣帯水だから大事だからといって、韓国にてこ入れされることを約束してきた。二つの分裂国家、統一を願っているその朝鮮国民の意思を土足でけって、南の朝鮮だけにてこ入れをする。これに経済援助をし、これを強めることは、分裂国家を固定化さすだけだ。二つの国家の分裂を固定化し、なおかつ戦争を激化する以外の何物でもない。私は大変な間違いをお犯しになってきたと思いますが、一体何の権限があって、何の法律を根拠にしてこういう韓国だけにてこ入れをされるのか、その根拠を私はひとつお伺いをしておきたいと思うのであります。
  71. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小林君は新韓国条項という名前をおつけになりました。私はそういうようには思ってないわけであります。一九六九年の佐藤総理とニクソン大統領との共同声明は、日韓という韓国だけの問題を取り上げて言っておるわけですが、韓国と日本との関係というのは、韓国、あそこにいろいろな平和が乱されるような事態が起これば、日本に影響ないというようなことは言えません。国民は理屈でなしにはだで感ずるでしょう、すぐ目の先にある韓国ですから。その韓国の安全というものは一体何から来るかと言えば、朝鮮半島のやはり全体の平和と安定がなければ、韓国の安全というものは達成できませんね。韓国だけが朝鮮半島から孤立してあるのでないのですから。  そういうことで、従来の日韓——日韓と言っておるのに対して、北鮮の動向というものを重視したわけですね。韓国全体の平和と安定というものが必要であるという視野を広げた声明になっておるわけでございまして、特に二つの分裂国家を固定化するという考えはないのですよ。朝鮮民族の悲願は平和的統一だという考え方は、私も小林君と意見は同じなんです。そういう意味で、固定化するためというよりかは、現実に朝鮮半島というものを直視すればそういうことだということをありのままに新聞発表の中に入れたわけでございまして、韓国との間には外交関係がありますから、韓国の平和と安定というものをわれわれも望んでおるわけであります。しかし北鮮との関係というものも理解を深めたいと思っておりますから、あるいは文化、人事、経済、こういうものを通じて、これを積み上げることによって北鮮との関係も理解を深めていきたいということで、二つの朝鮮を、二つの分裂国家を永久に固定さそうという考えは全然ないということでございます。
  72. 小林進

    小林(進)委員 どうも総理は、朝から聞いていると、やれそういう気持ちがないとか、気分がないとか、何か恋人同士が話をしているように、気分だの気持ちだの心だのと言ったって、私どもは心や気分を言っているのじゃないのです。あなたの行動と実際おやりになった実績を私は申し上げているのです。ああやってアメリカへ飛んでいって、二つの国民一つになりたい、われわれのことはわれわれに任してくれと言っているにもかかわらず、あなたは飛んでいって、そして韓国のてこ入れだけを決めていらっしゃるが、その行動自体は一体韓国の統一に何の力になりますか。それは分裂国家を強めて、固定化して、戦争の危険を強めるだけだと私は言っているのです。なぜそれをおやりになったかと私は申し上げているのだが、しかも、そのことに対してあなたは——三木さんとは関係ないと言うけれども、宮澤さんは、繰り返し、一九六九年の佐藤・ニクソン会談の焼き直しだ、それと同じだと理解してくれればいいと彼は繰り返し言っています。あなたとは全く違う。  しかし私は、時間もありませんから、あなたの行動が本当に北朝鮮のことも考えて、朝鮮半島の平和をお考えになるなら、言葉じゃなしに、文化でも経済でも交流を具体的におやりになったらどうですか。何にもおやりにならないじゃないですか。いま漁業協定一つ北朝鮮と結ばない。みんな外務省はノーコメントだと言って手を出そうとしないじゃないですか。だから、そんな言葉の問題ではなしに、態度で示してくださいよ、態度で。おやりになりますか、いまあなたのおっしゃったことを。いつ、どこで、何をおやりになりますか。それをはっきり言ってください。
  73. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小林君、ごらんになってもわかるように、人事とか文化、経済の交流というものは従来からやっておるわけですから、これを積み上げていくということでございまして、北との交流というものをわれわれは遮断していこうという考えではないわけですから、従来やっておること、これを積み上げていって北鮮との間にも理解を深めたいということですから、これはもういつ、どこで、何をやるのだということは、歴史的に続いておることですから、これを積み上げていこうということでございます。
  74. 小林進

    小林(進)委員 私はアメリカへ参りまして、朝鮮問題では舌が痛くなるほど議論してまいりました。これはアメリカの権威のある政府の要人です。しかし強いて名前は申し上げません。個人的にお聞きしたいとするならば、後でちゃんと申し上げます。  朝鮮問題についてアメリカは一体何を考えているんだ、われわれに対しまして四つの原則を示しました。第一番目には、アメリカは朝鮮半島で戦争の起こることを防止する、あくまでも交戦は防ぐ。第二番目には、韓国の防衛についてはアメリカは公約がある。すなわち米韓防衛条約でございましょう。公約があるから、その公約を維持し、これを守っていく、これが第二番目です。第三番目は、朝鮮で緊張を緩和させるために南北朝鮮の対談を続けさせるように努力をする。第四番目は、韓国に対し共産圏側、すなわち北と条約を結んでいる国、防衛条約を結んでいる中国とソ連でございましょう。その国が南の朝鮮と接触をした場合には私の方も北の朝鮮といわゆる話し合いをすることにいたしましょう。現状のままで、まだ北朝鮮といわゆる防衛条約を結んでいる関係国が南と接触をしない先に、私どもは北と接触する意思がない。これが四つの原則だと言われた。  私どもは、その中で第一と第三は日本社会党の主張とあなた方アメリカの主張と同じじゃないか、二つの国を戦わせない、二つの国に話し合いをさせる、これは全く同じだ。しかし第二番目の、アメリカは防衛条約があるから、韓国を維持しやはり守っていく責任があるからこれは続けていくとおっしゃる。聞いてみれば、その条約をおやめになったらどうですかというのでありますけれども、あると言われればそのとおりだ。しかるに日本政府は、一体何の権限に基づいて韓国にこれほど深入りをし、これほど強い援助をおやりになるのか。これはアメリカと日本と全然立場の違うところだ。われわれは韓国と防衛条約があるわけじゃない。何も権限がないじゃないですか。何のためにこういう深入りをされるのですか。閣僚会議を無理につくり上げたり、国民の血税で一生懸命に援助したり、そして南北朝鮮の対立を激しくしている。何のためですか。こういう出しゃばったことをおやりになる権限、根拠は一体どこにあるかを私はお聞かせ願いたいと思います。
  75. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最初に、十八年ぶりに社会党がアメリカに行かれて、小林君も有力な団員の一人として日米の対話をお始めになったことは、私は、日本の野党の社会党がそういうことをおやりになったことはやはり非常に有益であった、今後もでき得べくんば社会党とアメリカとの間にそういう対話が継続されることを望むのですよ。日米関係を破綻に陥れるようなことは日本の国益に合致するものではないわけです。そういう点で野党の社会党がそういう対話を始められたことは大いに結構である。小林さんの御労苦を多とするものでございます。  また、援助をするのは何の条約というが、いわゆる発展途上国などに対する援助というものは、これは当然に世界はやはり連帯というものですよ、結局は。日本だけの一国の平和といったって、それは守れるものでなし、やはり世界が平和である、日本の平和のためには世界の平和というものに日本は寄与する、平和に寄与するためには、非常に貧困な状態にあるということは平和と両立しないことは明らかですから、そのために発展途上国に対してできるだけの援助をするということは、条約とかいうよりも人類としての一つの大きな責任ですよ。これはやはりできるだけやらなければいかぬということでございます。
  76. 小林進

    小林(進)委員 私の質問に答えていない。朝鮮半島の二つの国の中で、アメリカはそういう軍事条約があるからそれを守るために韓国を援助する、あるいは継続していくけれども、日本にはそんな条約はないじゃないか。一体日本はなぜその二つの朝鮮のうちの南だけに出しゃばって援助をしたり金を投げかけたりされるのか、その根拠をお示しいただきたいということを私は申し上げているのです。
  77. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 韓国との間には日韓条約があって外交関係はあるのですからね。まだ残念ながら現在の段階では北鮮の間にできておりませんから、外交関係のある国、ない国というものは、いろいろ国のつき合いの態様に変化があるということは、これはやむを得ない面がございます。
  78. 小林進

    小林(進)委員 私が申し上げているのは、たった日韓条約があるというだけを根拠にして戦争に深入りしているじゃないか。二つの国の対立をむしろ激化させているじゃないか。そこまで出しゃばる権限がどこにあるかということを申し上げているのですけれども、もう時間がありませんから、私はこれはネックにしておきます。また外務委員会等でやりましょう。  次に申し上げますが、これは第三の問題として南北朝鮮の話し合いを大いにやらせることを政府は非常に進めているとおっしゃった。国連等でもそういうことをおやりになっているそうだけれども、宮澤外務大臣や政府がやっていることは、南北朝鮮に話をさせると言いながら、北の方は冷淡に扱って、いわゆる右の方だけに一生懸命に手厚い援助を与えておいてこれが強くなることの努力をしながら、片方は頭を殴っておいて、二つで仲よくせい、仲よくせいなんというごまかしの政策にだれも国民は納得するわけはないのです。ないのだから、そういうばかなことはやめて、話し合いをさせるなら、日本が第三者の立場で冷静な公平な立場で二人に話をさせたらいいじゃないか、私が言いたいのはそこだ。  そこで、言うけれども、一体本当に南北の話し合いをさせるという熱意があるならば、そのための努力をすべきじゃないですか。南と同じように北にも公平な手を差し伸べながら、北も南も話しができるようなそういう政策を一体なぜおやりにならないのか。話し合いをさせるために具体的にどういう手をお打ちになるのか。いつどこで何をやるのか。もうあなたの抽象論はいいです。ウグイスの声はいいから、具体的なその政策をひとつ示してください。
  79. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 北鮮の頭を殴っておいてという小林君の言葉はちょっと過ぎるんじゃないですかね。できるだけそういう交流を積み上げていきたいと誠心誠意考えておるわけでございます。  また、南北の対話は、先般もあの金大中事件のときに私が言いましたように、金鍾泌国務総理が見えたときも、私、口を酸っぱくして言ったんですね。南北の対話というものがせっかく三年前ですか始まったんですから、全然できてないんなら——始まった歴史があるんだから、何とかひとつ話し合ったらどうだという話をしたわけであります。あらゆる場合に私はそういう機会に話をするわけです。  また、アメリカの場合でも、何か小林君のお話を聞くと、フォード大統領と私が、朝鮮半島の緊張を激化させるような話、そういうものは全然ないんだ。朝鮮問題に対するフォード大統領の話はもう初めからしまいまで、どうして朝鮮半島の武力衝突を避けるかということに終始しておるわけですね。これに対して、多少小林君と違いますのは、一つの現実を踏まえてやらぬと外交というのは足が地につきませんから、いろいろ小林君のお考えになっていることはわかりますけれども、いきなりそう現実を離れた大きな飛躍をするということは、かえって外交としては非常に地につかない結果になりますので、そういう点に小林君の意見との距離はありましょうが、日本の場合だって朝鮮半島に武力衝突が起こったときのことを考えてごらんなさい、これは戦慄すべきことですよ。そういうことで、アメリカだってそうだ。ベトナムというああいう一つのいろいろな苦い経験もあるし、再びそういう事態がアジアで起こるようなことは避けたいということで、終始武力衝突を避けるのにはどうするか、しかも、それは現実の条件を踏まえて話をせなければならぬわけですが、そういうことに終始した。もう日米間の防衛力ですか、軍事面の強化という話、全然そういうことではないんですよ。何としてそういうことを防ぐかということに話が終始したということが真相でございます。小林君もアメリカにおいでになって、アメリカがいかに武力衝突というものを避けようかということが、どういう方にお目にかかったか知らぬが、だれもかれも一様に出る言葉に違いない。だから、どうか軍事力の強化の話をアメリカと会ったらいつもするという、それは少し、そういう先入観念だけは捨てていただきたいと思うわけでございます。
  80. 小林進

    小林(進)委員 私は、このアメリカと南北問題で書いた資料をこれだけ持っております。時間が来ましてさわれぬのが残念ですけれども、私が直接アメリカの高官に聞いた話と三木総理大臣のお話とは大きな開きがあることは残念です。いやしくもあなたはそれほど南北の統一を希望し、話し合いを希望されるならば、その話し合いのできるように努力をあなたされればいいじゃないですか。何も努力をしないでおいて、われわれの国会内だけであなたは調子のいい話をしておられる。それでは了承できません。  それから、時間もないからちょっと飛び飛びになりますけれども、いま金大中のお話をされました。金大中の問題で一言あなたに伺っておきますが、これは十月の二十六日です。きょうは二十九日ですから——これは慶応大学の医学部の教授の五島雄一郎氏が、人道上の見地から健康相談を受けるためソウルの金大中氏宅を訪れた。その健康相談には、現地日本大使館も立ち会っておるんだから、これはあなたのところに情報が入っておるでしょう。その結果、二年前の診察のときよりも病状は悪化している。金大中氏は股関節変型症で、座りにくく、寝るときもうつ伏せでないと眠れない。また、精神障害も来しており、神経過敏症になっていることが判明した。金大中氏は治療のため外国に出ることを希望しているが、五島教授もその必要を強調をしたという話ですよ。あなたは金大中氏を、日本の法下にあったんだからこれはやはり責任があって、日本に再び帰すのがあたりまえだし、金大中氏もこれを希望しているが、それに加うるに病状はこのとおり悪化している。もはやあなたの気長な話はだめだ。これをいつ一体日本に来ていただくような措置を具体的にお進めになりますか。どうお進めになりますか。一言でよろしいです、お聞かせをいただきたい。人道上の問題です。
  81. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは日本の国内の問題でございませんし、韓国という相手もあることですし、本人のいろいろないまの立場もございますから……。そういう医師の判断であるということはよく理解をいたす次第でございます。
  82. 小林進

    小林(進)委員 何ですか、私は聞こえません。いま一回言ってください。
  83. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは韓国にいま現在おられるわけですし、また、金大中氏の現在置かれておる立場もございますから、五島さんという医師がそういうふうな意見であったということは私たちもよく頭に入れて、どういうふうな措置というものにこれをするかというような問題は、いまここで私がどうこうということを答えられない。相手の国におる、また、金大中氏自身の現在の条件もございますから、そのことは十分に留意をしておく次第でございます。
  84. 小林進

    小林(進)委員 時間が参りましたので、私も余り時間をオーバーすると失礼でございますから、これは本当に簡単に一間で私は終わります。韓国問題について、いまのあなたのお話を早く具体化して、そして強力におやりになるものと私は理解をしまして、これもこれからのひとつネックにさせておいていただきます。  あと一問ですから、もう簡単にやります。中国問題です。日中平和友好条約が締結をされない。これはあなたはどのように考えているかしれませんけれども、これはあなたは責任があるのでございますよ。一九七二年の田中・周恩来総理の共同声明に対して、あなたは当時副総理でおいでになったのだ。——いや、副総理ですよ。あなたは田中内閣のときの副総理じゃないですか。しかも、あなたは副総理に就任するときには、日中問題を解決するために、それを条件にして田中内閣に入ったんだし、副総理をおやりになったんだ。だから、共同声明に対しては、調印者は、それは田中、大平の二人であるかもしれませんけれども、あなたはその責任を背負わなければならない重大な責任者だ、副総理として。そして、その共同声明を進められたあなたが、その第七項目に決めている覇権条項一つにこだわって、副総理のときにはそれを推進する責任の半分を負担し、総理になったらそれをおやりにならないというのは、これも国民に対する重大なる公約の違反であり、総理大臣として実に国会軽視国民軽視の行動でないかと私は思う。あなたは一体どういう責任を感じておいでになるのか。  いま一つ、この問題に関連して、この第七項目の共同声明の内容は、「日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。」と明確に入っている。「両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。」という第七項目が入っている。ところが、その前に行われた周恩来・ニクソン、いわゆる上海コミュニケの中にも同じ文章が入っている。このコミュニケはこういう文章だ。「どちらの側もアジア・太平洋地域で覇権を求めるべきではない。いずれの側もいかなるその他の国あるいは国家集団がこうした覇権をうち立てようとすることに反対する。」このニクソン・周恩来のコミュニケと田中・周恩来のコミュニケと全く同じです。これを言いかえれば、アジア・太平洋地域におけるいわゆる四つの大国、アメリカ、ソ連、中国、日本、このアジア・太平洋における四つの国の三つまでがいわゆる覇権国家にはならない、アジア・太平洋地域においては覇権は行わないと言っているのだ。その一つのソ連がこの中に入ってくれれば、太平洋・アジア地域はわれわれの言う非武装平和地帯、日本海も太平洋も平和の国にできる。なぜ一体あなたは、こういう重大なアジアと日本の平和に関するという基本問題——あれは歴史的な実にりっぱな共同声明だと私は思う。なぜこれをおやりにならないのですか。おやりにならないのみならず、一つのソ連に、積極的にこのいわゆる覇権条項に賛成してくれるような協力をなぜ求められないのですか。あなたが一体これを求められない理由はどこにあるのか、おやりにならない理由はどこにあるのか。これこそ日本国家が平和の国としていける大変重大な問題だ。なぜおやりにならないのですか。私はこの問題は不思議でたまらないのです。あなたの副総理としての共同声明に対する責任、あわせてこの日本の永遠の平和、アジアの永遠の平和、太平洋における永遠の平和のこの歴史的な条項を、ソ連も仲間に入れて一緒にやろうじゃないかという積極的な政治交渉、外交交渉が一体なぜ三木さんできないのですか。教えてください。
  85. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 共同声明に盛られておる精神というものは、これはもうあれによって後退することは許されない。あれによって日中の国交正常化ができたんですから、やはり厳粛にその共同声明というものは日本が守っていく責任を持っておるわけです。だから、少しも反対ではないわけです。それをどういうふうに条文化するかというようなところに外交のいろいろな折衝があるわけですから、基本的にそのことが反対であって、日中の平和友好条約を結ばないということではないわけで、条約作成の技術的な話し合いにいま入っておるということでございます。したがって、これに対しては私も責任を感じておるわけですね。したがって、日本があらゆる努力を——先般も宮澤外務大臣が喬冠華外務部長官と十時間にもわたって話をしておることも、その熱意のあらわれでございます。
  86. 小林進

    小林(進)委員 喬冠華・宮澤会談は、私が先ほど批判したとおりです。お茶話で終わって、相手は笑って相手にしておりませんよ。それよりは私は、この前もわれわれの岡田代表が言いましたけれども、こういうふうな民族の永遠の平和に関する、アジア・太平洋の平和に関するような重大問題になれば、どうですか、ああやってニクソン大統領も国家存亡のときにはウラジオストクへも飛んでいく、北京へも飛んでいく。外務大臣になんかに任しておりません。しかも、また今度フォード大統領も北京へ飛んでいかれるという、これくらいトップ会談をつづめて民族、国民の要望に備えている。あなたは一つも動かないじゃないですか。なぜそれだけの度胸ができないのですか。わが日本だって田中総理が飛んでいったのだ。なぜそれができないですか。  私は三木さん、欲しいのはあなたの腹と度胸です、決意です。あなたがそういうことだけを国会の中でしゃべっていられれば、私はことしも来年も同じじゃないかと思う。まことに失望にたえません。失望にたえませんが、時間が参りましたから、これをもっと追い詰めたいのですが、残念ながら時間がなくて追い詰めることができません。あなたは時間で救われた。けれども、この問題は場所をかえてやることにいたします。きょうはこのほかに農林大臣、労働大臣、特に銀行協会の会長さんにも午前十一時から来ていただいて、あなたにも政治献金から貯金の目減りから、詰問を兼ねて御質問をしたいと思いましたけれども、時間がありませんですから残念ながら質問はできません。せっかく来ていただいてまことに申しわけございませんけれども、質問が至りませんので、日を改めてまた来ていただくこととして、きょうは御勘弁をいただきたいと思います。  委員長、どうも時間をオーバーいたしまして大変失礼いたしましたが、これで私の質問を終わります。
  87. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  88. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、大平大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大平大蔵大臣
  89. 大平正芳

    ○大平国務大臣 昭和五十年度の公債の発行の特例に関する法律(仮称)の規定により発行を予定する公債の償還計画表に関しまして、補足的に説明いたしたいと思います。  昭和五十年度の特例公債につきましては、満期が到来する際、すなわち、昭和六十年度に全額を現金償還することとし、財政法第四条第一項ただし書きの規定に基づいて発行される公債について行われているような借りかえ債の発行収入による償還は行わないことといたします。  それで、特例公債の償還は、次に述べる三つの財源によって行うことといたします。  すなわち、第一に、国債整理基金特別会計法第二条の規定に基づく前年度首国債総額の百分の一・六の定率繰り入れ、第二に、財政法第六条の規定に基づく剰余金繰り入れ、第三に、国債整理基金特別会計法第二条ノ三の規定に基づく必要に応じて行う予算繰り入れの三つの財源であります。  この場合、第二の剰余金の繰り入れに関しては、従来は、原則として剰余金の二分の一に相当する金額を充ててきましたが、特例公債償還までの間は、その全額を充てる予定であります。  第三の予算繰り入れに関しましては、特例公債に依存しない財政を実現した後に、昭和六十年度に特例公債を円滑に全額現金償還できるよう、これを行なう考えであります。  なお、この際、今後の財政運営の方針について申し述べたいと存じます。  今後の財政は、従来の高度成長下におけるような多額の税の自然増収は期待できず、引き続き財源面での厳しい制約を免れ得ないものと思われるが、財源の多くを安易に公債に依存することは適当でないと考えます。財政の健全な運営は、国民生活の向上と経済の安定的発展の基盤でありますので、できるだけ早く特例公債に依存しない堅実な財政に復帰するよう努める必要があると考えております。  このため、五十一年度以降の予算編成に際しましては、既定の制度、経費の厳しい洗い直しを行いますとともに、新規の政策については、原則として既存のものとのスクラップ・アンド・ビルドにより対処する方針のもとに、極力予算規模の圧縮に努めることとし、租税につきましても、当面は政策税制の全面的な再検討を行いますことを最重点として、現行税制の仕組みの中での増収を図りますとともに、経済情勢の推移に応じて将来における新規財源の検討に着手することとし、今後税制調査会において十分の審議をお願いしたいと考えております。  これらの措置により、できるだけ速やかに財政再建の基盤を確立する必要があると考えております。
  90. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 ただいまの大蔵大臣の説明に関し、阿部助哉君の質疑を許します。阿部助哉君。
  91. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは私の要求した償還計画とは違います。不満足であります。しかし、私の質問時間の持ち時間がありませんので、私の質問の真意を述べて、終わりたいと思います。  赤字公債の発行は、禁止されております。わが国の財政法は、日本国憲法の平和主義、財政民主主義の厳格な規定を受けて、赤字公債の発行を一点の疑いもなく明白に禁止をしております。したがって、政府が特例法などというまやかしの表題を付して、あたかもこれが財政法の適用であるかのごとく装っているが、これは財政法また日本国憲法関係規定を覆すものであります。だから、赤字公債を出そうとしても、準用する規定が全くない。たった三条の法案をつくって、まさに法三条でこの蛮行を強行しようとしております。  私は、百歩、千歩譲って、私の赤字公債発行反対の努力が果たせず、赤字公債がまかり通る場合、最小限度、厳格な償還計画を出してもらいたいと要求いたしました。財政法第四条の建設公債の場合と違って、これが担保は国民であります。この公債の担保は国民であります。補正予算が成立すれば、直ちに国民の負担義務が生ずる。国民に犠牲を強いることになるのは、大蔵大臣のいまのお話でも明らかであります。それがどういう形のどの程度の負担なのか、国民にはさっぱりわかりません。こういうことがあってはならないから、戦後日本国憲法が財政民主主義を確立したのであります。  そういう観点で行った私の要求は、この程度のことで満足するはずがないのであります。このことは、いわゆる与野党の争いの次元で考えてもらっては困るのであります。日本国憲法のもとで国民から選ばれたわれわれ衆議院議員の共通の責任の問題であることを、私はここに強調しておきたいのであります。  私は、不満の意を述べ、時間がありませんので、これを主張いたしまして、私の質問を終わります。
  92. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  93. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 次に増本一彦君。
  94. 増本一彦

    増本委員 わが党の予算に対する主張につきましては、後ほど、組み替え動議で御審議をいたかくことになっております。  そこで私は、まず三木内閣の政治姿勢、特に田中金脈問題に対する三木内閣の処理の仕方についてこれからお尋ねをしていきたいと思うのです。  その初めに、この十月の十一日の未明に、右翼の国防青年隊が日本共産党本部を襲撃して、勤務員ら六人に重軽傷を与えました。これについて私たちが調査をしてまいりましたところ、わが党が金権、金脈政治の追及をしていることに対する暴力的な威圧であるという事実も明らかになりつつあるわけです。こういうようなことは、もう断じて許すことができないと思うのです。  初めに、総理は、一体このような金権、金脈の政治の追及に対して暴力による言論抑圧があるとしたら、これに対して断固たる処置をとる決意があるかどうか、まずその点をお伺いしておきたいと思います。
  95. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 申すまでもないことですけれども、民主社会を守っていくためには、法の尊重、社会秩序の維持ということが絶対に必要な要件でございます。暴力は絶対に許すべきではないわけであります。  十月十一日の未明の共産党本部の襲撃事件というものは、これは直ちに捜査をいたしまして、十三名だと聞いておりますが、その犯人は全部検挙をして取り調べ中であるという報告を受けておるわけでございまして、今後といえども、暴力によって言論を抑圧するようなことが許されるならば、民主主義というものはこれはもう生命を断たれるわけでありますから、断固として取り締まっていく考えでございます。
  96. 増本一彦

    増本委員 いまの総理答弁に対して、松本委員より関連の質問がありますので、お許しをいただきたいと思います。
  97. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 松本善明君より関連質疑の申し出があります。増本君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松本善明君。
  98. 松本善明

    松本(善)委員 この十月十一日の日本共産党の本部襲撃事件といいますのは、政党の本部に対する襲撃であります。そうしてしかも、私がきょう取り上げますのは、いま私たちの党の機関紙であります赤旗が、小佐野賢治氏、田中前首相の盟友というふうに言われておる、この人の、「日本の黒幕」ということでキャンペーンをやっておりますが、それとの関係で暴力事件が起こっているという有力な疑いが出てきております。その点についてお聞きしようと思うわけでありますが、もう一度総理にお聞きしたいのは、こういう政党本部が襲撃をされるということは、政党政治、議会制民主主義の根幹にかかわりますし、それから、政党の機関紙がキャンペーンをやっているのに対して暴力がふるわれるということになりますれば、言論の自由という根本問題にかかわる、いずれにいたしましても民主主義の根本的な存立にかかわる問題であると思います。この点を総理もそのように認識をされているかどうか、この点を伺いたいと思います。
  99. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も同じように考えております。
  100. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、具体的にお聞きいたしますが、この本部の襲撃事件と申しますのは、国防青年隊という右翼団体に所属をする者が約十名以上、いまの話では十三名ですか、殺してやるとか、やっちまえとかいうことで、鉄パイプを振りかざして、殴るとか頭に消火器をぶつけるとかあるいはけるとかいうことで、本部勤務員など六名に全治三週間、頭部外傷、顔面挫傷などを初めとする傷害を負わした事件であります。しかも、これは計画的でありまして、かねてからそういう暴力行為に及ぶということを公言をしておった。そして、八月十二日、八月十五日、九月一日にそれぞれ襲撃をしてきた。こういう経過がございます。  私どもは、直ちに、十一日にすぐ青柳衆議院議員、それから内藤参議院議員が背後関係調査を警視庁に申し入れました。それから、十二日には被害者が告訴をいたしました。この背後関係の捜査がどうなっているか、御報告をいただきたいと思います。
  101. 福田一

    福田(一)国務大臣 私から一言お答えをいたしたいと存じます。  詳しい内容については警備局長からお答えをいたしますが、ただいま総理からも御発言がありましたように、私たちは暴力というものを断じて認めることはできない、いかなる理由があろうとも暴力を認めるということは、民主主義の、また議会政治の破壊でございますからして、これは絶対にできないということは、私、本会議でも申し上げたとおりであります。今後もその方針で臨むつもりであります。  詳しい事件の内容その他につきましては、警備局長から答弁をいたさせます。
  102. 三井脩

    ○三井政府委員 ただいまの事件の内容でございますが、十月十一日の午前三時十分ごろ、千駄ケ谷四丁目の共産党本部内の赤旗の発送所で、国防青年隊員ら十三人が作業中の本部員らに対して暴行を加え、六人に全治三日間から三週間を要する傷害を負わせて逃走したものであります。本件につきましては、十月二十四日までに十三名全員を逮捕して取り調べを行っておるところでございます。  現在までの調べによりますと、この十三名のうち、国防青年隊員は七名でありまして、その他の六名はその友人等でありますが、たまたま都内の喫茶店で一緒になって飲食等をし、十一日の午前二時三十分ごろ自動車に乗って渋谷駅方向へ向かったところ、午前三時十分ごろ共産党本部の機関紙発送所の先の北参道交差点で信号待ちのため停車したわけであります。そのうちの一人がこの発送所の入り口へ行きまして赤旗をくれと申し入れたところ、余分がないというふうに断られまして、さらに再度申し入れたわけでありますが、これを断られたので、立腹をして暴行をするということがきっかけでありまして、この騒ぎに対しまして、一緒におりました他の車に乗っておった十二人が下車をしてくる、また共産党本部の方からも数人の人が出てまいりまして、そこで現場にあった鉄パイプその他を使用して暴行を加え、六人に傷害を負わせたという内容であります。  ただいまお尋ねの、この事件は計画的な背景に基づくものではないかという点でありますが、私たちもそういう観点から十分に捜査をいたしておるところでありますが、現在までのところ、先ほど申しましたように七人の隊員とあと六人の友人がたまたま一緒になって飲食をした、その帰りの出来事であるということが当時の状況並びに調べの結果一応わかっておるところでありまして、現在までのところ格別の背後関係はないというように見ておるわけでございます。
  103. 松本善明

    松本(善)委員 国防青年隊といいますのは、広域暴力団の稲川会の三本杉一家岸悦郎総長の肝いりで結成されたと言われておりますが、この国防青年隊と稲川会との関係について御報告をいただきたいと思います。
  104. 三井脩

    ○三井政府委員 この国防青年隊が創立に当たりまして三本杉一家の幹部の援助があったということは判明いたしております。三本杉一家は、また一方稲川会系のものであるということもわかっておりますが、この国防青年隊と稲川会自体は直接の関係はないというのがただいままでの捜査の結果でございます。
  105. 松本善明

    松本(善)委員 資料を示して質問をしたい。配ってありますか。  この国防青年隊、それから稲川会と小佐野賢治氏との関係について、私のところに手紙が参りました。これは、内容を後で申し上げますのでそのときにおわかりいただけると思いますが、あるいは脅迫とも見れる内容でもありますし、あるいは善意の情報提供であるかもしれません。いずれにしても真偽を確かめる立場にありませんので、そのまま紹介をするわけであります。物はこれでありますが、筆跡その他、そういう善意の情報の提供者であった場合には御迷惑がかかるといけませんので、タイプに打った物を資料として配ったわけであります。  この内容をまず読み上げてみますと、差出人は港区三田三丁目の西口正とありますが、これはこの場所にそういう人物はおりません。その中身は、   赤旗印刷局へ向った右ヨクの背後関係に関する情報を通知します。右青年隊と称する頭首は稲川組系西山行輝(右ヨクと自称)であり、御承知の通り小佐野賢治の側近で、稲川組石井理事長と共に常に小佐野氏の一番のブレーンとして毎日の如く出入りして居る重要な小佐野氏の用心棒的存在である。「赤旗」に記載された小佐野氏の記事妨害が主目的であり今後も種々な手を使って妨害を行ふとの事なり。勿論小佐野氏は関知せずとの行動、念の為。  猶 東宝、今井正氏演出予定の映画化妨害の件も小佐野氏の指示ありたる事念の為通知します。私は小佐野の側近です。  こういう手紙であります。私どもは、このすべてが真実であるかどうかわかりませんが、別の情報で同じような趣旨が私のところに参っております。ある関係者の情報によりますと、田中金脈や「日本の黒幕」、赤旗のキャンペーンでやっておりますが、田中、小佐野を共産党が追及しているということもあって、国防青年隊の党本部襲撃の背後には小佐野賢治がいるのだという趣旨のものであります。その情報によりますと、小佐野氏は稲川会の理事長であります石井進という人物、いまの手紙にもありました石井進という人物と同郷のよしみで相当長いつき合いをしている、石井進がラスベガスの賭博場で遊ぶときの資金も小佐野氏が出しているというような情報も入っております。そういうようなことでありますので、私どもはこれに重大な疑いを持ちますし、先ほど総理も言われましたように、あるいは国家公安委員長も言われましたように、日本の民主主義の根幹にかかわるものでありますから、この背後関係というのは徹底的に追及されなければならないというふうに思うわけです。この小佐野氏と稲川会あるいは国防青年隊との関係についてどのような調査がなされているか、御報告をいただきたいと思うのであります。
  106. 三井脩

    ○三井政府委員 ただいまのお話のございました松本委員あての投書につきましては、恐らく松本委員からの御指示があったかと思いますけれども、十月二十三日の夕方、日本共産党の法規部員の方から所轄原宿署の担当課長に電話がありまして、弁護士を差し向けるので話を聞いてほしい、こういうことでありました。五時過ぎに弁護士が見えまして、その資料を提出をいただきました。したがいまして、私たちもその時点から内容を存じておるわけでございますが、この内容はちょっと私たちが見ますところ、どうもおかしいというように思います。ここに「西山行輝(右ヨクと自称)」と書いてあり、これが稲川組系と書いてあるわけですけれども、「西山行輝」は「行」の字ですが、「幸」という字の人で右翼団体の盟主といいますか責任者が確かにおります。この人との取り違えではないかという気はいたしますが、この人は稲川会系あるいは小佐野賢治氏との関係につきましては、特にこれという関係はないというように私たちは承知をいたしておるわけでございます。
  107. 松本善明

    松本(善)委員 西山行輝という人のことについては、いま言われたことについては私ども承知をしておるのでありますが、いま答えのなかった石井進という人物との関係は全く報告はされなかったわけでありますが、これは私どもの調査でもかなり関係があるようであります。小佐野氏の主宰する国際興業が青森県六戸の大曲団地の造成工事をやっておりますが、その下請をやっておるのが石井進氏のやっている巽産業というところであります。それから、昨年の春小佐野氏一家がラスベガスに行ってぼろ負けをしたということが週刊誌でも大きく書かれたことがありますが、そのときに石井氏が行っているという情報もあります。こういう点については私どもの提供いたしました情報をすべて十分に調査をしなければならない。私は、ここでも石井進氏との関係は全く報告をされなかったというのはどういうことかわかりませんが、それがいまわかっているならば御報告をいただきたいし、それから、やっていなければこれは厳重に捜査をすべきであると思いますけれども、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  108. 三井脩

    ○三井政府委員 この中にあります石井理事長と小佐野賢治氏との関係につきましては、私たち承知いたしておりませんので、今後その点についても調べたいと思います。
  109. 松本善明

    松本(善)委員 それは大変怠慢であると思います。いま、捜査をするということでありますので厳重に捜査をして、委員会に御報告をいただきたいと思うのでありますが、その点お諮りをいただきたいと思います。
  110. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 ただいまの松本君の要求に対して警備局長は誠意を持って答えるように。
  111. 松本善明

    松本(善)委員 それでは次の質問に……。  これはこの事件だけにはとどまらないで、赤旗のやっております「日本の黒幕」キャンペーンというものは非常に影響が大きくて、そのために右翼暴力団がいろいろな形でこれを抑えようとしている。一昨日も八紘会という右翼暴力団が私たちの党の本部に電話をかけてきまして、赤旗の編集長などに、首の根っこを洗って待ってろというような電話をかけている。昨日は現実にその人たちが面会を強要してきました。本部のところへ来て、日本刀でやったろか、こういうようなことを言って脅迫をする。その場で原宿署に引き渡しましたけれども、そういうようなことがありまして、その連中が持っていたビラ、これをまこうとしたのですが、「おごりたかぶる日本共産党への直言」その中に、その見出しに「日本の黒幕」という赤旗のキャンペーンが入っているわけです。これは「小佐野賢治氏の巻」ということであります。語るに落ちるといいますか、これとの関係で目指してきたということも明らかであります。私は、こういう言論を暴力で抑えよう、言論で反論するならばこれは当然でありますけれども、暴力で抑えようということが現実に行われてきているという問題は、これはとうてい許すことができない。改めて総理の御決意を伺いたいと思います。
  112. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろな主義を皆持っておるわけでございまして、反対もあることは当然でございますが、それはやはり言論をもってそれに対抗すべきで、自分の気に入らぬからといって暴力を使うということでは民主主義は成り立たない、厳重に取り締まらなければならぬと思います。
  113. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つ伺って終わりにしたいと思いますが、先ほど私が読み上げました私への手紙の中で「東宝、今井正氏演出予定の映画化妨害の件も小佐野氏の指示ありたる事念の為通知します。」というのがありますが、これは、東宝が金脈追及の問題で、亡くなりました児玉隆也氏の伝記映画をつくろうとして、それが圧力で制作中止になって、藤本真澄副社長が辞任をしたということがいろいろ取りざたをされました。金脈追及の映画制作に圧力をかけるというようなことがあれば、これまた絶対に許すことができないというふうに私は考えますが、この点についての総理の御見解を伺いたいと思います。
  114. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私、その事件はよく知りませんけれども、とにかく何か圧力をかけて人間の意思に対して圧迫を加えるということは、民主主義からいえば好ましいことではないことは当然だと思います。
  115. 松本善明

    松本(善)委員 私がきょう申し上げましたようなことについて厳重な捜査と調査を要求いたしまして、関連質問を終わりたいと思います。
  116. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 増本一彦君。
  117. 増本一彦

    増本委員 いまの松本委員の関連質問で、一つは背後関係、この点は厳重な調査をされて、そして国家公安委員長は当委員会にその調査の結果を報告をしてくださるように要求をしておきたいと思います。——よろしいですか、うなずいておられるけれども。
  118. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまの御要望にお答えをいたすようにいたしたいと思いますが、その時期は、調べた上でないといまここでお約束するわけにはまいりません。
  119. 増本一彦

    増本委員 そこで、こういう金脈と関連をして、いわゆる田中金脈が政治問題化してからもう一年です。この間の総理答弁は、国民の疑惑を残さないような適切な処置をとるとか、これだけ問題になっているのだからうやむやに済ましてはいけないとか、それだけ聞くと何かをおやりになるようなそういう印象を持ちますけれども、しかし、この一年間ずっと見てみますと、お話だけであって実行が何も伴っていない。一体この一年間に疑惑が解明されたものがあったろうか。何もないじゃないですか。それをよいことにして、実は田中氏の方はいまだに釈明を一つもしていない。そうですね。そればかりか、この金脈問題をうやむやにして、いまや政界復帰に勢いづいているという状態ですよ。七月二十七日に地元の長岡で越山会の大会を開いて、そこで田中カムバックに総力を挙げるというような意思統一までやっている。この後援会長のあいさつを見てみますと、「田中先生は最も実力のある政治家です。」後援会長の言うことですから半分ぐらい値引きしてもいいかもしれません。「それが一部マスコミや政界の反対派のために引退をしたことは日本にとって大きな損失であります。世間の、田中をもう一度という声にこたえるためにもがんばりたいものです。そしてその中核をなすものは越山会です。年末に予想される総選挙を目指し、団結を深め、この難政局を打開したいものです。」これが謹慎中だと言われている人の周辺の言葉ですか。この田中氏の秘書がこの大会へ来て祝辞を述べている。その中で「田中ファミリー問題では、該当者が六ケ月に亘つて調べられたが、正に泰山鳴動して鼠一匹のたとえの如く、山田泰司氏が宅建法違反で出ただけでした。宅建法による許可期限が切れていたのに気がつかなかったためのもので、運転免許の期限の切れていたのにうっかりしていたという様なものです。」この本間幸一の言うことは全くうそですね。  きょう新星企業の問題で、あの宅建業法違反等、特別背任で東京地裁で第一回の公判がありました。しかし、彼らは、この外形的事実を認めることによって、東京地検の特捜部の検事がつくった五百ページにも上る冒頭陳述で、金脈解明、特に、これまでもずっと問題にされてきた新星企業が土地を一度売ったのに戻して、五千六百万円の金を、株を山田泰司が売ってそうしてもうけた。そのお金の使途がどういうようになっているのか、こういうようなお金の使い道の解明を封じて、田中氏とのつながりが明らかにならないように、そういうことまでやっている。一体この田中総理の周辺のこういう言動について、総理はどのようにお考えになりますか、まずお伺いしたいと思います。
  120. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 田中氏であるからといって、法の前に特別の配慮がなされるわけではこれは絶対にないわけですから、法に照らして違法なことに対しては、これを処理するということで今日までやってきたわけでございます。今後も変わりはないわけでございます。
  121. 増本一彦

    増本委員 税金の問題もうやむやでしたね。いまだに疑惑が残っている。宅建法と特別背任の問題も依然としてそのままだ。それを封じ込めようとしている。一体田中総理が退陣するほどのことはなかったというような、そんな小さな問題なのかということです。私は、田中氏といえども、法のもとであるいは厳しい責任の追及を受けるのは当然だというように総理がおっしゃるのでしたら、この東京地検の特捜部が五百ページにも上る冒頭陳述をつくられた、これがきょうの公判では簡単な冒頭陳述に、結局罪状認否で外形事実を認めたからというので隠されてしまって、簡単なものしか出なかった。そこまで検察庁で捜査をし、できているものだったら、これは当然、少なくとも法務省はこういう冒頭陳述については国会に資料として提出してもしかるべきだと思うのですが、いかがですか。
  122. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 お答えいたしますが、事件はいま具体的に進められておるのであって、きょう冒頭陳述が行われて、これからどんどん厳重な捜査に進むわけでございますから、そういう途中の段階で資料を出しますことはなるべく差し控えさせていただきたいのでありますが、差し支えない範囲においては、あなたの御要望に応じて、こういう点について手心を加えているかのごとき疑問がありますならば、そういうことは絶対にありませんから、そういう点について公明正大な態度をとってまいりたい、こう思っております。
  123. 増本一彦

    増本委員 いま法務大臣は、係属中だから出せない。それならば、この裁判が確定をしたら、五百ページに上る冒頭陳述書は国会に提出できますね。
  124. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 裁判の公判記録は、済めば原則として何びとにも見せることになっておりますから、そういう段階になりますれば提出しても差し支えないと思っております。
  125. 増本一彦

    増本委員 いや法務大臣裁判の公判に出されたのは、罪状認否で外形事実を認めて、臭い物にふたをするということになったから、簡単なものに変えられたのです。本体の方は、向こうが争うということを前提にしてつくった五百ページに上る冒頭陳述書があると言われているのです。これは本当は公判には提出されていないものなんですよ。だからいまでも出せるはずだ。その前提で私は提出してほしいということを申し上げたのです。しかし、それが係属中の事件にも影響を与えるというのであるならば、きょう始まった公判で裁判が判決が確定をしたら、その関連する、いま幻になってしまった冒頭陳述書もこれは出していいでしょう。そちらの方を国会に提出をしてほしい、こういうお話をしているのですよ。
  126. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 御質問の趣旨がよくのみ込めました。そういう事実関係にあるかどうか私存じませんので、刑事局長にその事実関係を明らかにしてもらいます。
  127. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほどから増本委員の御意見を伺っておりますると、いかにも東京地検は冒頭陳述として五百ページにわたるものを用意したということを前提にしてのお尋ねでございますが、そういうことは報告を受けておりません。したがいまして、それを前提とした事柄につきましては、提出をするというまでもなく、提出のしようがございません。  なお、本日冒頭陳述をいたしておりますが、その冒頭陳述の内容は訴訟記録となるものでございますので、公判係属中は、われわれの一存で提出するわけにはいかないものでございますし、仮に本件が確定いたしました場合におきましては、訴訟法にありますように公開されるものでございますから、何人でも閲覧ができるということでございます。
  128. 増本一彦

    増本委員 では、この点はさらに事実関係を調べた上で折衝をしたいと思います。  そこで、田中総理とその周辺の人たちは、総理も釈明を待つと言ったけれども、この金脈問題には全然答えていませんね。それどころか、いまでは信濃川河川敷問題を利用して何か田中さんが一つよいことをやろうとするというような美談までもつくろうとしているんじゃないですか。田中氏があの河川敷のあの土地を長岡市に提供するというような話ですよ。おとといの委員会で仮谷建設大臣がそういうようなことを言った。仮谷建設大臣も、いろいろな報道によるとその片棒を担いでいるということになる。総理は、この信濃川川河敷問題は一点の疑惑もない問題だというようにお考えですか。そうじゃないでしょう。もし仮谷建設大臣が言うたようなことになると、総理も公共用地のことを答弁されたけれども、疑惑が追及されて、もし詐欺だなんというようなことになったらどうなりますか。これは臓物故買だということになるでしょう。しかも、こういう黒い霧に包まれた土地を地方自治体に勧めてよいものかという基本的な問題がある。特に地方財政も深刻なときですよ。広さからいったら七十五ヘクタールでしょう。羽田空港の三分の一です。甲子園球場や後楽園球場は五十個から五十一個も入るというような土地です。時価だとかなんとかいうようなことになったら、これで交付税だとか地方債なんかでめんどうを見ることができますか。交付税や地方債でめんどうを見るのは、それぞれそういう対象がもう決まっている。だから結局、つい先日も、先月の二十日に、総理自身も参議院の本会議答弁でも、総理は「信濃川河川敷の問題というのは、これほど国会でも問題になり、国民の疑惑を残さないような適切な処置をいたすことにする次第でございます。」と、こう言っているわけですね。いま長岡では、二人の農民が、あの土地の売買契約は詐欺だから取り消す、田中さんが堤防をつくり、橋をかけ、バイパスも通したというようなことは地位利用ではないか、そうだとしたら民法九十条等で無効だから土地を返してくれ、こういう裁判を起こして、この裁判は十一月の二十六日にも口頭弁論が開かれる。新潟県下の労働組合や民主団体も刑事告発までやっている。一体総理はこのような事態をどのように認識しておられるのか、この点をもう一度お伺いしておきたいと思います。
  129. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題の内容について私は深く知ってはおらないんですけれども、私がお答えをしておるのは、信濃川河川敷のこの土地の処理について、楢崎君は先般の質問で、原価にやはり金利ぐらいをつけた程度の売却であるべきだという御質問があったので……(増本委員「いや、楢崎さんの質問はいいですよ」と呼ぶ)いや、そういうことで、私もやはりそういう処置が国民から見ても納得のいける処置だと考えますから、建設大臣にもそういう方向で考えるように私は申しておるわけですが、まだこれに対しては、建設省でも正式に私にも報告がないわけでございますから、その内容については私も詳細に知っておらない。しかし、その土地の処理については私が国会答弁もしておりますから、これに対しては私自身もその処置についていろいろと責任を感じて相談に乗りたいと思っております。
  130. 増本一彦

    増本委員 まだこのコップの権利者がだれかということも確定してないんですよ。その点をめぐっても疑惑があるということで国会でも問題になっている。だれのものかわからぬものを、これをおまえにくれてやるよというようなぐあいにはいかぬでしょう。ですから、いまのままで公共用地を云々するというのは、室町産業が正当な権利者だというようなことが前提にならない限りは問題にならない。だから、疑惑の解明こそが先決なんじゃないですか。その上に立って土地の用途をどうするかということは考えたって遅くない。それよりも、早く疑惑の解明をすることが大事だと思うというように私は主張しているんです。  そこで、行政管理庁も行政監察をなすったわけです。一体この行政監察で何がわかったのか。いままで霞堤という国会答弁がなされていたのに、なぜ堤防がつながって連続堤になったのか、このことを明らかにする文書がないということがわかったんですね。そうでしょう、行政管理庁。長官、いかがですか。
  131. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 率直に御回答を申し上げます。  信濃川の蓮潟地区における霞堤建設については、昭和二十八年以降数次にわたって検討が進められてきましたが、これを締め切るか否かは懸案とされてきた推移によります。昭和四十年、治水五カ年計画に基づき、昭和四十年度から四十二年度までの間、霞堤計画による工事が行われたのであります。また、昭和四十一年十月、建設大臣は、霞堤を締め切る意思はない旨国会答弁しているが、建設省には、締め切りを取りやめたことに関する検討経過及び結論についての記録がない。第四として、昭和四十三年七月の北陸地建と本省との協議により、霞堤を締め切り連続堤とすることに計画変更され、その変更理由は、種々検討した結果とされており、あわせて施工費が四千六百八十万円節約されること及び治水上問題となるような影響がないことが挙げられておるものであります。なおまた、霞堤部分を通ることとされた長岡バイパス建設と霞堤締め切りとの関連については、特に指摘すべき問題はなかった。そうして連続堤への計画変更の経過についての現存文書はきわめて限られており、客観的な資料に基づいて問題の全般にわたり確認することはできなかった。  これは重要な工事の経過に関する原議の保存が十分でないためであって、文書管理に慎重な配慮が欠けていたものと認められる次第であります。
  132. 増本一彦

    増本委員 大変御丁寧な答弁をいただきましたので、これはこの後一つずつまた伺っていきたいと思いますが、要するに、この霞堤が連続堤になった。その間に橋本建設大臣国会で、本堤にする意思はない、霞堤だというような答弁をしているのに、なぜ変わったのかというようなことを明確にするような文書がない。一体、この文書が紛失してそれ以降の疑惑が解明できなくなったことについて、じゃ建設省はどのように責任をとるのですか。
  133. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 いま行管長官からいろいろ経緯の御報告を申し上げたわけですが、私の方からも少し御説明をさせてもらいます。  橋本大臣が四十一年十月に国会答弁をいたしておりますが、御承知のように、三十八年から四十二年までの総体計画では、霞堤か連続堤かということについていろいろ議論があったわけでありますが、結局、結論が出ないままに、従来のように霞堤でいこうということになった。したがいまして、橋本大臣もその時点での発言でありまして、私は真意であったと思います。  ただ、ここで御理解を願いたいのは、実は四十三年は第三次の五カ年計画策定の年であったのであります。そこで、従来の経緯もありますから、ここで根本的な検討が加えられて、その結果、先ほど行管長官も申し上げましたように、工事においても四千六百万円ほど軽減されるし、あるいは遊水効果や河川の管理上からも支障がない、こういうことの結論に達しまして、そして連続堤、いわゆる本堤に決定をしたという経緯が実はあるわけであります。  そこでもう一つ、書類の紛失の問題でありますが、これは行管長官の申されたとおりでありまして、書類が紛失されたことについては、管理上のミスであって、私どもはきわめて遺憾でありますという意思を表明いたしておるわけであります。  ただ、率直に申し上げまして、伺い書の方のいわゆるかがみでありまして、その伺われた方の建設大臣の承認書や調書や図面は現に保存をされておるのでありますから、残されておる調書は私は真正なものであるという確信を持っておるのであります。この点に対して何かそこに意図的なものがあったのではないかということがいろいろ議論をされてされておるわけでありますけれども、私どもは決して意図的な、たとえば証拠隠滅といったようなことを断じて考えたわけではございませんし、また、そういうことがあろうはずはありませんし、それほど深い意味のある書類ではないというふうに感じておりまして、これはぜひひとつ御理解を賜りたいと思うわけであります。
  134. 増本一彦

    増本委員 そこが理解できないのですよ。まず、橋本建設大臣答弁のことを言われましたね。橋本建設大臣答弁したのは、「これが本堤になるのかどうかという御質問に対しましては、その意思はない、霞堤として、いわゆる流れの調整をはかる導流堤である、かように御承知置きを願いたいと思います。」そうでしょう。ところが、あなたのいまの説明でいきますと、昭和二十八年から三十八年の総体計画でも懸案事項になっていると、こう言ったでしょう。懸案事項になっていたら、何で霞堤としてやるのであって本堤にする意思などないなんという答弁が出てくるのですか。そうでしょう。これはもうでたらめな答弁なんだ。  もう一つは、行政管理庁でも言っているように、あなたが幾らそういうことをるる言ったって、それを客観的に証明をする文書がないじゃないか。あなたは、決裁伺いの部分だけがない、大臣の承認文書だけがくっついている、だからそれでちゃんとした文書になっているんだ、その間には毫もやましいところがないというような趣旨の答弁をいましましたね。だけれども、行政管理庁長官、どうなんですか。この決裁伺いのかがみと言われるものがなければ、その文書はまず真正に成立しているのかどうかということ自身が明らかにならない、そういうことなんでしょう、あなたの方で言っているのは。ちょっとそのことをはっきりさせてください。
  135. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 正しく言いますと、いまおっしゃるようなとおりに相なるかと思います。
  136. 増本一彦

    増本委員 だから、決裁伺いのない文書というのは、それが信用できるかできないかという以前に、その文書が適正な手続でちゃんとつくられたものかどうかという、中身の信用性以前の問題なんだ。成立そのものの信用性に疑惑が投げられているんだ。それはもう信用できないということで行管庁ははねているわけだ。それをあなたはまた持ち出してきて、だけれども大臣承認があるから——あなたは、一体行政管理庁の監察結果というものをどういうふうに受けとめたのですか。文書の管理についてはこうあるべきだということを、それを職責としている行政管理庁が結論を出しているわけでしょう。それに従わないといういまの答弁じゃないですか。
  137. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 決して、行管の方の調査やあるいは行管庁の言葉に、私は反対のことを言っているわけじゃございません。まず第一に、紛失したものは、まことに管理上ミスであって、心から遺憾の意を表しております。そして、そういうことのないように直ちに次官通牒を出しまして万全を期しておることは申し上げるまでもございませんが、ただ、その書類の内容自体がいいか悪いかという問題、これは私自体が素人でわかりませんけれども、その失った書類そのものは、御承知のように伺い書のかがみであって、そのことが問題を特に何か意図的に考えておるような性質のものではないと私どもは思っておりますので、これは御理解をいただきたいと、こういうわけです。
  138. 増本一彦

    増本委員 あなたのおっしゃることは客観的な裏づけがないんですよ。まず、文書が適正に成立をしているということが前提になって、中身の信用性というものが次に問題になってくる。ところが、入り口の玄関のところで行管ははねた、原議がないと。だから、文書が真正に成立をしていない、そういうことなんだということを長官は言った。  そればかりじゃないですよ。いいですか。一体大臣の承認文書というのはどういうものですか。これはタイプで印刷をしたタイプ用紙半蔵のものですね。それを、ただそのもの一枚を、この例で言えば北陸地方建設局に送りつけるんですよ。だから、それを受けた北陸地方建設局は、別の文書にそいつをとじておいたって、それはもう中身は何にもわからない。どうなっているのかというのはわからないですよ。あなた、そういう一定のつづりが来て、それに決裁伺いがくっついて、そして本省に持ってこられて、それに大臣の承認の文書がくっつけられて返されるというのじゃないんですよ。建設行政というのはみんなそうなんです。きのうも私は建設の本省の河川局でちゃんと確認をしているのです。大臣承認文書というのは、タイプで打った、たった一枚の紙です。それに判こが押してある、何々の件について承認をすると。ただそれだけのものなんです。それを送りつけたものを、北陸地建はその一枚の紙を自分の持っている文書にとじ込むのです。だから、かがみがなければ、その受けた方の建設局のその文書つづりというものが、ちゃんとでき上がったものなのかどうかということがわからないのです。あなた、かがみがない文書というのはどこにあった文書ですか。北陸地方建設局にあった文書でしょう。そうですね。だから、あなたの言うことも実際には大きな疑惑がある。そんな口先だけのそういうことではごまかせないのですよ。
  139. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 何か私がそんなことに一枚加わっておるような、冒頭からお話にありましたけれども、……(増本委員「そんなことは言ってないですよ」と呼ぶ)あなたは一番最初におっしゃった。私はまことにその点は遺憾でありまして、そのことははっきり申し上げておきます。  私どもはまじめにやっておるわけでありまして、たとえば大臣承認書が、半紙一枚であろうとも、承認をしたということではっきりと大臣の名で捺印をしておるとすれば、これは私は当然りっぱな承認書として認めてよろしいと思います。  細かい書類の問題は私もよくわきまえておりませんから、直接の担当者から御返事を申し上げることにいたします。
  140. 増本一彦

    増本委員 そんな感情的になることないじゃないですか。私もあなたに何か文書管理の問題で言ってないですよ。
  141. 増岡康治

    ○増岡政府委員 決裁伺いの部分につきまして、その後私ども調査いたしました。どうしてこの面が亡失したのであろうかということで、それだけお答え申し上げたいと思ったのですが……(増本委員「そんなこと聞いてないからいいですよ。その答弁は要らないですよ」と呼ぶ)はい。
  142. 増本一彦

    増本委員 そんな、なぜなくなったかなんということは、まだ聞いてない。  私が言っているのは、この決裁伺いという、なくなったかがみという文書というのは、だれがつくって、だれが承認をし、どうしたということを全部、局長以下、河川部長だとか河川課長とか係長とかいうものが判こを押している。そういう文書でしょう。そういう人たちがかかわり合ってつくったということが証明される文書なんです。そうしてそれの一部は本省に来て、それで、大臣が承認しますという回答をよこすときには、大臣承認文書というタイプで打った、つくられた一枚の紙だけが北陸地建に来るんだ。それを受けた北陸地建がとじ込むのです。だから、そのときに決裁伺いの文書と大臣の承認文書とが二つなければ、その下にある図面にしても調書にしても、そういうものが本当に成立したのかどうかということがわからない。こういう仕組みなんだ。だから、頭に大臣の承認文書がくっついているから、それで中身は正しいものなんだとかいうようなぐあいにはいかない。あなたは知らないから無責任答弁をしているのです。そのことを言っているのですよ。
  143. 増岡康治

    ○増岡政府委員 いま先生がおっしゃいましたとおり、一つの毎年度の工事実施計画書というものを承認なさいます場合には、地方建設局長から大臣あての上申書が一番上につくわけです。それから調書と図面がついて本省に来るということでございます。それで、いま先生おっしゃったように、その後審査を経て本省で今度大臣承認が出るわけです。その経過は先生のおっしゃったとおりでございます。  ただ、私がいま申し上げたいのは、この四十二年と四十三年、四十五年のみがあの伺いがなかった……(増本委員「その点はまた後で聞きますから」と呼ぶ)はい。そういうことでございます。
  144. 増本一彦

    増本委員 ほれ見なさい。そういうことじゃないですか。だから、北陸地建でできた文書が、大臣が承認をした文書なのかどうかということはわからないのだ。何もないのだから。だれがつくったか、だれがかかわったのか、決裁伺いとかかがみというものは、そういうものなんだ。だから、あなたの答弁というのは、いいかげんな答弁だと言っているのですよ。それは、あとは北陸地建のお役人たちがまじめにやったので、そんな間違ったことを書いたりはしない、そういういかがわしい文書というものはつくらないだろうというのは、それはあなたの主観的な判断であって、文書そのもので客観的にその成立が証明されるかどうかという問題とは全く別なんですよ。行政監察というのは、そういうように客観的なもので判断をしなくちゃならないというところから出発して  いるのでしょう。だから、そのときに主観を交えた釈明を幾らしたって、それは通用しない。あなたも、いま河川局長が言ったことは、それはそのとおりでしょう。——もう局長はいいですよ。建設大臣答弁してもらいましょう。
  145. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 御承知のように、調書と図面と、それに伺い書がついて、そしてその調書、図面を見て伺い書の方にサインをするというのは綱承知のとおりでしょう。それがたまたまサインをした伺い書のかがみがなくなったからといって、それに対する大臣の承認書もついて——これは絶対とは言いません。大臣の承認書も、当時のものもついておりますから、その下の調書や図面が適当にでっち上げたものだというふうにおっしゃるなら、これは皆さん方の御見解でありますけれども、私どもは決してそんなことをでっち上げていいかげんなものをつくっているのじゃないし、昔のまま、そのままのものが残っておりますから、決裁伺い書、かがみがなかったというだけでありますから、私どもは、まじめに一生懸命に努力してきた職員の努力を率直に認めて、御理解をいただきたいと思って申し上げておるわけであります。
  146. 増本一彦

    増本委員 だから、主観的にあなたがそういうように思うと言っても、それが真正にできた文書だということは立証できないのだよ。  松澤長官、いまの建設大臣答弁は承認できますか、あなたの方では。——いや、もう大臣でいいですよ、そんな細かいことは要らぬから。
  147. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 決裁伺いがなくなっておりました部分は、先ほど河川局長が旧したとおりのところでございますが、これは工事を施行いたします際に必要な決裁伺いでございまして、私どもが締め切りに至りました検討をいたします際の資料とは、ちょっと違っているように感じます。
  148. 増本一彦

    増本委員 あなたのいまの答弁だと、それじゃあなたの方は、この締め切り決定についての「箇所別変更調書」も、三十八年の総体計画も、本来永久保存文書でなくちゃならぬ、そういうように認められるべきだということも言っているでしょう。行政監察の結果の中に書いてあるのですね。そうでしょう。わからないかな。読んでごらんなさい。あなた自分で書いたんじゃないの。いいですか。八ページの最下段のパラグラフですよ。「また、永久に保存すべきものと認められる総体計画及びその変更については、」「永久に保存すべきものと認められる」というのはあなたの方の判断なんです。これは後で聞きますよ。建設省は、それは内部資料だ、こう言っていて、あなたとの間でけんかをやって書簡の交換をやったのだから。だけれどもあなたの方は、自分の見解は依然として変えないということまではっきり言っているじゃないですか。建設省の回答についての報告、この次に出た文書ではっきり言っているじゃないですか。  私がいま問題にしているのは、そういうものも原議はないわけだ。ですから建設大臣が、大臣承認文書があるからそれで実施計画を策定する上で支障がない、というようなことは言えないのですよ。しかも、この決裁伺いのかがみのない文書というのは、局長も言ったとおり、四十二年、四十三年、四十四年と三年間でしたね。あなたもいま言いましたね。この中間の四十三年に霞堤から連続堤に計画変更したと、こういうふうに言っているわけでしょう。だったら、四十三年のその工事実施計画、これに決裁がないというようなことになったら、その工事は計画変更をして延長をする工事なんだから、その工事実施計画という一番基本的な文書が本当に成立しているのかいないのかという、そのこと自身が問われているときに、だからこれも、連続堤になぜ変わったのか、どうしてそうなったのかということの手がかりすらもつかむことができなくなってしまっているということは、同じことじゃないですか。計画変更と関係がないというようなものじゃない。  仮谷建設大臣、そうでしょう。冷静になって落ちついて聞いてください。余りかっかしたりすると質問のすれ違いになるから。あなたの方は、総体計画の変更というものは内部資料だ、だから「箇所別変更調書」も内部資料なんだというふうに言ってきた。そうしてそれが具体的に現実化するのは毎年度の工事実施計画関係書である、そういうことでしょう。これは建設大臣わからないんだ。あなた、そのことをイエスかノーかだけ、ここへ来て答えてください。
  149. 増岡康治

    ○増岡政府委員 いまおっしゃいましたように、総体計画がありまして、箇所別変更した結果の最後のオーソライズは、毎年度におきます実施計画書の承認でございます。おっしゃるとおりです。
  150. 増本一彦

    増本委員 ほら見なさい。だから、行管の方はこの「箇所別変更調書」、これによって計画変更になったというように言うけれども、建設省の方は、それは内部資料なんだ、本体はこの工事実施計画なんだと、ここでこの方が問題なんだというふうに言っているわけですよ。だから、なおさら決裁伺いの文書が、この工事実施計画関係書のかがみがないということは重大問題なんですよ。建設省の言い分に即すれば即するほど、このかがみがないというのは重大な問題なんだ。なぜこの三枚だけが特別になくなったのかなんというような、そんな悠長なことを言っているような問題じゃないんだ。  そこで、もう一つは、この決裁伺いのかがみのない文書というのは、これは北陸地建にあった文書ですね。そうですね。ところが、上申書と一緒に、大臣承認願として建設本省の方に北陸地建から文書が来ているわけだ。そっちの方の文書というのはどうなっちゃったのですか。
  151. 増岡康治

    ○増岡政府委員 毎年の工事実施計画の決裁伺いというのは、先生御承知のように、北陸地建から大臣あてに、こういうものを出しますという一つの送付書のような形式でございまして、この判こをつくのは、先生おっしゃいましたように、局長なり地建の河川部長、計画課長等が押したものの一枚でございます。  そういうことを前提に置きまして、これが保管される責任は北陸地方建設局の文書管理者でございまして、私どもが今回問題にいたしましたのは、やはり北陸地方建設局の文書管理者、これは総務課でございます。そこにある書類を正式のものと認めておるわけでございます。
  152. 増本一彦

    増本委員 本省の方はどうなっちゃったの。
  153. 増岡康治

    ○増岡政府委員 本省の方は、これは永久保存になっておりません。
  154. 増本一彦

    増本委員 それはいいんだが、それでは保存期間は何年ですか。
  155. 増岡康治

    ○増岡政府委員 本省でございますか。
  156. 増本一彦

    増本委員 ええ。
  157. 増岡康治

    ○増岡政府委員 ちょっと担当となにしますけれども……
  158. 増本一彦

    増本委員 わからない……。そうするとなくなっちゃっているんだね。
  159. 増岡康治

    ○増岡政府委員 お答えいたします。  本省の場合は三年でございますので、いまございません。
  160. 増本一彦

    増本委員 これも実は大変重大なんですよ。四十一年の十月二十日に、さっきも言ったように共産党の加藤議員の質問に答えて橋本建設大臣が、これは霞堤だと言ったんです。それが四十三年に変更になった。しかし疑惑の追及は四十一年からずっと始まっている。四十七年にもさらにその追及がこの予算委員会でもやられている。木省の方は、そういうように国会でも問題になっているときに、持っている文書についてはもう消却してしまった。片っ方の北陸地建の方は、永久保存文書であるにもかかわらずそいつがない、決裁伺いのかがみがない。  建設大臣、問題はこういうことなんですよ。だからあなたが、大臣承認文書があるからそれで通用するのだというぐあいにはいかないのです。だから私は、こういう文書が、行管が指摘するように、その決裁伺いのかがみの部分がなくなっているという、そのことについてどういう責任をおとりになるのか、あなたはいまどういうようにこの責任の問題については考えているのか、このことをはっきりとさせてもらいたいのですよ。
  161. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 一体なぜなくなったのかということを、私どもは私どもなりに現地へ行っていろいろ実態も調査をし、当時の責任者からもいろいろ事情を聴取をいたしたわけでありますが、四十二、四十三、四十四と、これは信濃川だけのかがみではございません、北陸地建の河川関係の全部の書類の中のかがみが実はのいておるわけであります。一体なぜのけたのかと聞いてみると、頻繁に出し入れをするものですから、紛失してはいけないので、全部のかがみだけを取りのいて別にとじて保管をしてあったというふうに言っているのです。それが実は見当たらないのだということで、そのとおりであります。現実に紛失したのでありますから、言いわけはいたしません。まことにこれは遺憾のきわみでありまして、このことはお断りをいたします。  それでは、一体その処分をどうするかという問題でありますが、実は別々にその文書をとじて、別とじにして保管をして、そしてその紛失した者がだれか、長い経過でありますから、実はそれがなかなかわからないのでありまして、そういうことを考えてみると、特定の者を、紛失ということで、いわゆる公文書毀棄ということで処罰の対象にするということもなかなかむずかしいわけでありますから、私どもは、決して故意にやったものではないし、あくまでも善意にやった職員の努力というものを信用いたしまして、そうして今後絶対そういうことのないように、極力厳重に戒めまして、そうしてそれをひとつ今後の事務を進めていくための指針にしてもらいたい、こういう意味で厳重注意で実は終わっておるわけであります。
  162. 増本一彦

    増本委員 私は、あなたはどういう責任を感ずるのかと聞いた。あなたは、自分の就任時代のことじゃないから、前任者、その前の話だから、それは関係ないというような涼しい顔をしていられないですよ。首かしげますか。この場に直面した建設大臣として、どういうことが責任のある態度なのかということ、そのことが問題なんですよ。  それで、職員の努力でこの決裁文書が別にとじられていたとかいろいろ弁解をされるけれども、あの決裁伺いの文書というのは半紙半截ですね。わら半紙半蔵の文書なんです。そうでしょう。私、建設省から一つだけもらったのです。これですよ。これ、わら半紙半分ですよ。ゼロックスでとってある。そうですね。このわら半紙半分のものを、これだけ別にしてとじておくなんというにこんなことが考えられますか。  しかも、これはわら半紙だから、あるいはもう少し上質の紙だったら——こっちの方が丈夫なんだ、あの大臣の承認文書。あなたは一生懸命持ち上げるけれども、さっきも言ったように、大臣の承認文書というのは、タイプ用紙にタイプで印刷をした文書なんですよ。これだけ、破れて棄損したり破損したりなくなっちゃうから、別とじにしておくのだというような、そんなものではないのですよ。だから、これはもう何かあったのじゃないかと考えざるを得なくなってくるのですよ。だから、そういう具体的な事実まで詰めた上で、いまその衝に当たっている建設大臣としてどういう態度をとることが責任ある態度なのか、そのことをあなたにいま問うているのですよ。
  163. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 私の何代の前の大臣がしておることでありましょうとも、私は、前任者がやったことだといって、決して涼しい顔をしておりません。これは重大な失態でありまして、このことについてはきわめて責任を感じておりますから、この席を通しましても、きわめて遺憾の意を表明をいたしておるわけであります。そしてこのことについては、現地へも行かし、事情を聴取し、調査を徹底的にいたしました結果、いま御報告申し上げましたような結果になりましたものですから——しかし、いずれにしても文書がないのでありますから、弁明の余地ありませんけれども、そういった面を踏まえて、今後いかなることがあってもこういうふうなミスは許されないということで、厳重注意をして戒めて努力をさせておるというのが現在の状態であります。
  164. 増本一彦

    増本委員 そこで建設大臣、こういうように、この肝心な文書が、決裁伺いがないということで、それ以上先に進めない。だから——まだそこで首を振るのですね。そうでしょう。行政管理庁の長官がそう言っているんだ。だから、それだったら、なぜ霞堤から連続堤になったのか、大臣答弁まであることがなぜ変更になったのか、この点についての疑惑というか、疑念というかの問題、こういうものは依然として残っている。まだはっきり解明されていない。このことはあなたはお認めになると思うのですが、どうですか。
  165. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 私どもは誠心誠意やっておりまして、決して何か意図的に隠滅しようとかいう、そんな考え方でやったものは断じてありませんから、そういう意味で、現地調査も十分し、関係者に事情も聴取した結果、ただいま私が申し上げ、主管の局長が御答弁申し上げておるとおりでありまして、私どもは、そういう意味においては、これは紛失したことは心からおわびをいたしますと同時に、その問題は決してそれでうやむやに過ごしたと、こういう考え方は持っておりません。われわれは、現在の文書によって十分に解明ができると、こう思っておるわけであります。
  166. 増本一彦

    増本委員 じゃ松澤長官、あなたは、こういうように、四十二年、四十三年、四十四年、これも工事実施計画関係書、これの決裁伺いの文書もない。それから行管庁は、ほかの文書も、総体計画とか、あるいはその変更というのは永久に保存すべきものと認められるというような文書ですね、それについても原議は保存されていない。こういう段階で行管庁が問題にして行政監察に入った。この目的は達せられたのか、そうでないのか。依然として問題は残っているのか。そのことだけはひとつはっきりさせてください。
  167. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 いまおっしゃるようにお話がございましたが、現実の問題として、率直に言ってそれ以上に進みようがなかった、かように申し上げた方がいいだろうと思います。
  168. 増本一彦

    増本委員 そうすると、問題は残っているわけですね。
  169. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 残っているというようなことになるかと思います。
  170. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 前に御指摘いただきました八ページの表現のところでございますが、総体計画、その変更については、行管といたしましては、総体計画を全体計画と見まして、永久保存という認識をしたわけでございます。しかしこれは、建設省の方では全体計画と総体計画が違うという認識でございますので、これは必ずしも合わなくて、永久保存になっていないわけでございます。  それから、私どもが締め切りに至りましたその経過がわからなかったということは、ただいま先生御指摘になりました四十二年から四十四年までの工事実施計画の部分ではなくして、三十八年度総体計画以降四十三年度までに至ります件と別の体系の文書だろうと思うのですが、それがなかったということでございます。私どもの監察結果を通告いたしました後に建設省が調べました結果、それは四十一年度大臣発言の際、当時のいわゆる関係者に当たりましたところが、作成していなかったのだということがわかったわけでございます。作成していないというものにつきましては、これは検討の余地がございません。記録というものは残されておりませんので、これはいかんともできないと思います。したがいまして、私どもはこの今回の監察以上のものは、もう再びやりましても結果は同じであろうというふうに見ておるわけでございます。
  171. 増本一彦

    増本委員 その経過はまた後から少し詰めて聞きます。しかし、結論を言いますと、建設大臣の方は問題が残ったとは思わないと言っている。松澤長官は、問題がまだ残っている、それ以上進めない。局長もそういうことを言っていますね。  これは、三木総理、お勉強中失礼ですが、建設大臣と松澤長官との間で違いがあるのですよ、この問題で。行政監察をした行管庁長官は、問題はまだ残っている。ところが、片や建設大臣は、問題が残っているとは思わない、こう言っているわけですね。ここのところははっきりさせてください。私は、行政管理庁というのは、各行政機関の業務の実施状況について監察をするという、そのことを目的とした行政官庁だから、ここでわからないと言っていることは、やはり内閣としては、そのもとに裁断を下すべきだと思うのですよ。ですから、問題が積み残されているというように判定を下すべきだと思うのですが、その点についてひとつ総理の見解をはっきりさせてください。
  172. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も両大臣答弁を聞いておりましたが、行管の言うことは、かがみがついてない、これ以上行政監察を進めることができない。何もその書類がどうこうということではないのですね。内容についてではなくして、書類が不備だというところで行管はとまっているわけですね。建設大臣は、それをごまかすというような理由は何も必要もないことですし、そういうことはないのです。ただ、かがみを失ったということに対してはやはり非常に責任を感じますので、これに対しては、厳重に将来についていろいろ建設省の者どもを戒めたし、今後再びこういうことのないようにいたしますと、こう言っておるので、両方が事実関係を言っておるので、私自身もどちらが——皆それぞれの役所の権限に従ってありのままのことを言っておるのですが、そういうことで、特に何かごまかそうという気はないわけですね。両方が事実に基づいて両大臣が言っておるもの、こういうふうに私聞いておって判断をいたすわけでございます。
  173. 増本一彦

    増本委員 総理、それはもう私の質問に対する御答弁じゃないですよ。問題の趣旨がよくおわかりになっていない、御勉強されていたから。  委員長、ひとつこの問題ではっきり結論を出してください。その上で次の質問に移らしていただきます。(発言する者あり)——総理、よく聞いてください。いいですか。松澤長官は、資料がない、これ以上進めない。だから行政監察で最初に意図した目的というものは積み残したままで、これ以上先へ進まないわけですよ。それはなぜかというと、かがみの問題もあるし、それから後の総体計画だとかその変更書だとかいうようなものについての、ちゃんとした文書の保存もないというところから出てきているわけですね。ところが、建設大臣の方は、そういうものはあって、行管であれやこれや言うけれども、しかし中身は正しいんだ、疑惑は解明できる。ところが、監察に入った行管の方は、監察される側のものはもう証拠にならない、採用できないんだ、こういうように言うているわけですよ。だから、松澤長官と仮谷建設大臣との間には天地の開きがあるわけでしょう。これをどうしてくれるんですかということを、はっきり御答弁いただきたいのです。
  174. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 私からもう一度御回答申し上げます。  昭和四十一年十月の建設大臣国会答弁が行われた経緯を示す記録を除いて、築堤工事の実施に必要な文書として工事実施計画書等が保存されているが、決裁伺いの部分が保存されていないものがあり、現存する文書が厳密な意味で原議の一部であったかどうか確認できない状態にあるのは、行政機関事務処理として妥当でないという点については、両者の見解は一致しておるのであります。このことについて建設省では、今回の監察を契機に、さらに地方建設局の文書管理の適正化を図るための措置をとっており、特に問題として取り上げるべきものとは考えない。  第二として、昭和三十八年度総体計画策定後、建設大臣国会答弁が行われた昭和四十一年十月までの検討経過を示す記録は現存していないが、このことについて、建設省が、監察結果の通知後、改めて当時の関係者に聴取したところ、総体計画の内容にかかわる重要事項に関する検討は行われず、検討記録も作成されなかったとのことであります。  したがって、当時の関係者の説明以外に現存する記録からこの間の経緯を明らかにすることができないという点については、両者の意見の一致を見ておるのであります。  以上であります。
  175. 増本一彦

    増本委員 ですから、先に進めないというところでは両者が一致しているというのに、じゃ、何で建設大臣はそれでいいんだというさっきからの繰り返しの答弁が出るんですか。かがみの決裁文書もない、もう文書が紛失してしまって、ないんだ、だから、行管が入った目的、対象というものは、もうこれ以上行政監察が進められないというところでは、松澤長官は両者が一致しているなんと言っている。ところが、あなたのいまの答弁じゃ一致していないじゃないですか。だから総理国会での答弁は誠心誠意ちゃんとした答弁をするということになっているんでしょう。いま松澤長官が読んだのは伝聞証拠だ、だからはっきりさしてくださいというのですよ。ここで総理の目の前で言っている両大臣の中身は違うんだ。そのことをはっきりさしていただきたい。総理答弁をお願いします。
  176. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が先ほど申しましたごとく、行政官庁の文書というのは一つの体裁があるわけですよね。そのかがみというのはなかったので、そういう点で文書が非常に不備であった。これに対しては、文書管理の不用意さというものに対しては、行政管理庁が建設省にやはり厳重な警告を与えた。それから建設省は、その会議でつくらなかった面もあるけれども、その計画書について当時の人々の話をいろいろ聞いてみて、それは文書の事実に相違してなかったので、そのことが何も特別に文書が事実と違ってつくられた文書ではない、こう建設大臣は言っておるわけですね。だから、一つのいまの行政管理庁と建設省との問題は、行政管理庁として、文書管理というものはこういうことではいけないぞ、これから厳重に注意しなければいけないぞということで、ごもっともです、これから注意をいたしますということで、行政管理庁と建設省の関係というものはあっておるということだと考えます。
  177. 増本一彦

    増本委員 総理はまだおわかりになっていないのですよ。いま松澤長官が朗読的な答弁をされた中身は前段と後段二つあるのですよ。後段の部分は、これからの文書管理をどうするかというところでは、これはいま総理がおっしゃったようなことです。もう一つ前段の部分があるのです。それは、この霞堤から連続堤に計画変更になった、そのことについて関連する文書ですね。これがともかく原義もないし、保存もされてないというような状態で、これはもうこれ以上行政監察が進められない、こう言っておるわけです。そうでしょう。松澤長官そう言っているんだよね。局長だってそう言った。だから、やれるだけの資料がない、建設省にはもう手元に資料がないから行政監察ができないという、ここへ来ちゃっているんだ。ところがその資料が、大臣承認の文書があるだとかいうようなことをいろいろ言って、疑惑を持たれる方が不思議だというようなことを言うている。しかも建設省の方は、行政管理庁が霞堤から連続堤に計画変更をするときに重視をした総体計画とか箇所別変更というのが大事なのではなくて、実は毎年度大臣承認をする工事実施計画関係書という、総理が言ったかがみがないというその文書が大事なんだ、こう言っているわけです。ところが、それは行管の方は、かがみがないから文書の成立自体、そのものがいわば否定されるべきものなんだ、証明力以前の問題なんだということで監察をやった。だが、そのことについてまだ承服をしないで仮谷建設大臣は、それでも大臣承認の文書だから大丈夫だとかいうようなことを言って、行管が言っていることと相反する答弁をしている。だから、そこのところをはっきり交通整理して、どっちなのかということを決めてください。それは、行管が前へ進めないというのは、当初の監察目的の一つである、なぜ連続堤になったのかというこの行政監察の目的が、もはや資料がないということで果たせないというところになってしまっているから、だから当初の目的が達成されてない、その意味で行政監察で解明すべき点が解明されていない、問題が残されているんだ、こういうように言うわけですよ。だから、問題は残されているというように、内閣自体として統一的に見解を出されるのかどうなのか、このことを私はさっきから答弁を求めているのです。
  178. 林百郎

    ○林(百)委員 総理答弁の前にちょっと議事進行。いまの増本君の質問に答えると同時に、これについては行管と建設大臣との間に明らかに食い違いがある。総理にそれに対する責任ある統一した見解を求めても、われわれの納得するような見解が出ません。そこで、いま増本君の質問に答えると同時に、委員長からこのことを総理に確かめていただきたいと思うのです。  行管と建設の両大臣から、当委員会の中に設けられている小委員会に書面をもって責任ある報告を出す、で、小委員会でそれを検討している間は本件の問題になっている土地は処分しない、そのことを総理は約束できるかどうか、あわせてそれも答弁してもらいたい。
  179. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 増本君の御質問、私は事実を見れば私の言うとおりだと思いますけれども、増本君はなかなか御納得がいきませんから、これは小委員会でこれを引き取りまして、それで事実を、両者の違いというものを明らかにして、それが明らかになるまでは信濃川の河川敷の処分はいたしません。
  180. 増本一彦

    増本委員 そこで、建設大臣、もう一つ一体この霞堤が連続堤になったというのは、三十八年の総体計画を四十三年の七月に箇所別変更をすることによってなした、そういうように行政管理庁には説明をしているのですが、その点は間違いございませんか。
  181. 増岡康治

    ○増岡政府委員 いま先生おっしゃいましたように、三十八年の総体計画で霞堤で計上されておるわけでございまして、これがずっと踏襲されておるわけでございますが、四十三年に至りまして、三十八年の考えました霞堤もちょうど終わりますし、長く懸案になったものを、第三次五カ年のときでもございますし、ちょうどいろいろな事情がございまして、また本省といたしましても、四十三年につきましては、現地へ行ったりなんかしてこれはもう一度再検討しょうと、そういう時期が四十三年に出てきたわけです。したがいまして、一つの計画を変えるにつきましては、昭和三十八年の総体計画に基づきましてこの箇所別変更という一つ会議を行ったわけでございます。その結果、締めた方がいろいろなことによってよろしい。これは理由はいろいろ、大臣答弁されておりますので申し上げませんが、そういうことが決まった結果、これを四十三年のその年の工事実施計画で承認された……(増本委員「私が言ったとおりなんでしょう。」と呼ぶ)そういうことです。
  182. 増本一彦

    増本委員 私が言ったとおりなんだ。それだったら、そうだと一言言えばいいんですよ。  そうすると、この行政管理庁に示した「箇所別変更調書」ですね。これがその箇所別変更の会議の結果を記載したものだということになるわけですね。イエスかノーかだけでいいです。
  183. 増岡康治

    ○増岡政府委員 そのとおりです。
  184. 増本一彦

    増本委員 じゃ、この「箇所別変更調書」というのを見てください。行政管理庁長官、あなたも見てください。ありませんか。——ありますか、写しが。  この表紙にまず「箇所別変更調書」、その下に「長岡地区(蓮潟、旗下地区)」と、こうなっていますね。ところが、作成年月日が、日付が入ってない。そして作成者が下に書いてあって「北陸地方建設局 長岡工事々務所」、こういうように出ている。その次に一枚めくると、鉛筆か何かで「2」「3」というようにページ数みたいなものを振ってあって、その左側のところに——まずその前に、この不同文字で「建設省北陸地方建設局」という文字が書いてあって、左側に「蓮潟、旗下地区箇所別変更調書」と、またもう一つこの表題が出てくる。そうして次に「1.説明書」として、ここにこの霞堤を連続堤にした理由と称するものが書かれているわけですね。「霞堤の上流堤を延長して下流堤にとりつけることに計画の変更を行なうものである。これにより今後の施工費において四千六百八十万円節減され法線的にも流過能力に支障を及ぼさない。」というようなことが書いてある。  ところが、もう一枚めくっていただいて、またこの一番上を見てください。上欄にまた「1.説明書(蓮潟、槇下地区)」と出ていて、ここはもう全く空白になって、これは非常にタイプが薄いんですね。私、原本も見ました。そうして「2.予算書」として金額と数字が欄になって出ている。  そしてもう一つ、建設大臣も、それから松澤長官、見ていただきたいのですが、この表紙と、それからこの下欄に「予算書」と書いてあるこの部分と、それから不同文字で書いてある「建設省北陸地方建設局」というこの「2」「3」と書いてある部分ですね。つまり表紙から二枚目の部分と表紙から三枚目の部分とを比べてみてください。まず文書の体裁が違うでしょう。片方は、いいですか、表紙と四ページ以降については、この用紙を縦にしてタイプを横で打った。ところがこの「2」「3」と書いてある「建設省北陸地方建設局」と書いてある不同文字のこの部分ですね、つまり「説明書」としてなぜ連続堤にしたかということが書かれている部分については、これは用紙を横にしてタイプを横書きにしているわけですよ。しかもタイプの活字も違うんですね。簡単に言うと、表紙に「蓮潟、槇下地区」と書いてあって「蓮潟」というのはタイプの活字です。ところが、この二枚目の不同文字の横になっている部分というのは、「蓮潟、旗下地区箇所別変更調書」という表題、表紙に当たる部分も、「蓮潟」の「蓮」の字は手書きをしているんですね。手書きをしている。わかるでしょう。建設大臣もおわかりになりますね。  これは一冊の文書にしているけれども、実際には文書が二通あるのと同じですね。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕 これは、箇所別変更によって霞堤を連続堤にしたというようなことを言うているけれども、作成年月日もわからない。同じ文書の中でタイプの活字も違う。文書のつくり方も、縦の横書きの中にたった一枚だけ、しかも理由が書いてあるというこの部分、肝心かなめの部分だけが横書きになっている。これはどういうことなんですか。これはもう文書を改ざんしたという疑いだって持たれるんじゃないですか。表紙があって、またもう一つ表紙が出てくる。こんなでたらめな文書で連続堤に変更した。こんなもの信用できるわけないじゃないですか。  まず、行管庁の方ですがね、この文書についてはきちっと調べたでしょう。これはきわめて怪しい文書じゃないですか。どうですか。
  185. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 ただいま御質問を受けました点については、率直に言いまして私が全然まだわかりませんので、事務当局から答弁させます。
  186. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 私どもの所見表示の中で取り上げておりますように、文書全般についての管理という点につきましては適当でなかったということでございますが、御指摘の箇所別変更の調書につきまして、そういういわゆる指摘の中に含んでいるつもりでございます。個々の内容が間違っているかどうか、あるいはその内容に欺瞞性があるかどうかというような点につきましては、そういう疑問を感じませんでした。
  187. 増本一彦

    増本委員 こんな話があるか。これは結局、「個所別変更調書」というのは、後からつくって後から理由をつけたのだ。だって作成年月日もわからない。建設省は、四十三年の七月に締め切り決定したなんて言っているけれども、どこを見たって四十三年七月に締め切り決定したなんという記載だってありはしない。だから、締め切り工事を予算だけつけて後で体裁をつくろうとした、こういう疑いがきわめて濃厚なんです。これは建設省は一体どうやって釈明しますか——いいですよ、大臣答弁してください。
  188. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 しっかり答弁しなさい。
  189. 増岡康治

    ○増岡政府委員 いま先生のおっしゃいます箇所別変更の調書は、北陸地方建設局の文書管理者のところにあったものが今回出てきたわけでございます。そういうことで、これが保存されておったわけでございます。私どもも、今日になってはこの「箇所別変更調書」が唯一の調書でございます。しかしながら、こういうような大きな問題を決めます場合は、先生御承知のように、建設省におきましては大きな会議をやるわけでございまして、いろいろと現場の人なり本省等が集まって、どうしようかというたくさんの議論をやるわけでございます。その中で書類が残されておったものが、北陸地方建設局に保管されたものがその書類であるわけでございます。私どもは、その形式がいかんであれ、確かにこの時限におきましてこの議論がなされた。当時の治水課長に聞きましても、その当時議論してやったということもちゃんとありますし、私どもはそういうぐあいに確信しておるわけでございます。
  190. 増本一彦

    増本委員 私の質問に対して何も答えてないじゃないですか。文書の体裁がまずおかしい。表紙に「箇所別変更調書」というのがあると思ったら、一枚めくったらまた「箇所別変更調書」という表題が出てくる、そうしてこれは用紙を横にして横書きになっている。しかもこれを使って変更したのだ、こう言っておるだけなんだ。ところが、それからまた見ると、次のページにまた「説明書」というのがあって、これが空欄になっていて、そしてタイプの活字もこの二枚目と全く違うのだ。これは疑惑を持つじゃないか。改ざんされているのじゃないか。そのことをどういうように説明するのか、これを聞いているのですよ。すりかえた答弁をしないではっきりと答えてください。
  191. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 内容につきまして、横書きの部分、あるいは縦書きの部分、あるいはタイプでない部分等がございましても、これは必ずしも内容が間違っているということではなかったと思います。
  192. 増本一彦

    増本委員 私が聞いておるのは建設省の釈明ですよ。それを行政管理庁の局長が出てくることはない。行政管理庁は、この文書については成立を否認しているのだから。
  193. 林百郎

    ○林(百)委員 いま増本委員が質問しているのは、明らかに白紙のところがあったり、縦書きがあったり、横書きがあったり、そうしてタイプがあったり、手で書いたり、しかも一番問題になっている点ですよ。そんな公文書なんかありっこないですよ。これはだれが見たって公正に成立した文書だと思いませんよ。だから、行管と建設と両省がちゃんと相談をして、われわれが納得するような答弁をしてください。それまで質問は続けられませんよ。こんな公文書はどこにありますか。大事なところはブランクになっている、あるところはタイプで横に打ってある、あるところはタイプで縦に打ってある、あるところは文字を肉筆で書いてある、そんな公文書はどこにありますか。どこの役所にそんな公文書がありますか。それはだめですよ。行管と建設両大臣がよく相談して、われわれが納得するような答弁をしてください。それまでは質問できませんよ、そんないいかげんな答弁では。——あなたじゃないですよ。両大臣に求めている。
  194. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと待ってください。質問を聞いて……。
  195. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 御指摘のとおりの形態でございますけれども、これはすでに建設省の方も、文書を今後においてはそういうことのないように十分注意すると言っておるわけでございますし、過去の時点のこれは、結局内容が間違っているかどうかで判断すべきものだと思います。
  196. 増本一彦

    増本委員 それはそういう問題じゃないんですよ。いま霞堤がなぜ連続堤になったのかということを証する唯一の文書として出てきている「箇所別変更調書」というのは、縦の横書きもあれば、横の横書きもある。タイプの活字も違う。手書きの部分もあれば、片方ではタイプで活字になっている部分もある。しかも一枚だけ異質の北陸地方建設局という不同文字の用紙まで使っているんだ。だからこれは、行政管理庁じゃなくて建設省がはっきりと、——これはもう改ざんされている。だから建設大臣答弁を求めているのです。
  197. 増岡康治

    ○増岡政府委員 お答えします。
  198. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 静かに願います。
  199. 増岡康治

    ○増岡政府委員 箇所別変更は、先ほど申し上げましたように、書類の扱いとしてはまだ永久保存ということになっていなかったわけでございますが、われわれはこれは重要だと思って、実はこれを保存しておったということでございます。それで、いま先生がおっしゃった問題は、先ほど申し上げましたように、保存されたものをそのまま出してきたものでございますので、私どもは、この線に沿ってなされたものと、一つもそういうことに疑義を持っていなく今日まで来ておったわけでございまして、先ほど申し上げたとおりでございます。  私どもは、ちょうど四十二年におきまして、その時期にこの問題が取り上げられたわけでございますと先ほど申し上げましたように、現地に行きまして、その結果がこの資料が残っておるということだと思います。
  200. 増本一彦

    増本委員 もうこういう答弁じゃ先を続けられませんよ。ちょっと正確な答弁責任ある大臣からちゃんとしてもらうようにしてください。
  201. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 いま局長からも御答弁を申し上げたのですが、私どもは、書類は必ずしも百点満点とは思っていませんけれども、残存した書類であることには間違いないのであって、意図的に別に改ざんしたものでないということはわかっておりますが、しかし、行管との間にいろいろ食い違いもあるようでありますから、行管とよく相談をして、意見を一致して御報告申し上げることにいたします。
  202. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。乙の件につきましては、先ほど林委員から要求がありましたとおり、行政管理庁並びに建設省とよく相談の結果、小委員会に納得できるように移したいと思いますが、いかがでございますか。
  203. 林百郎

    ○林(百)委員 これは三木内閣の政治姿勢にも関する重大な問題で、こういう疑惑をこのままにして三木内閣が通り過ぎることはできないと思うのです。したがって、いま増本委員が質問に出しました書類、三木総理が聞いても確かに疑惑があると思う。そういうことをはっきり三木総理から言っていただいて、そしてそれについては、行管と建設省と両省に責任を持って調査させて、その結果を小委員会へ報告させます、そういう疑惑が小委員会で論議されている間はその土地は処分しません、そういう答弁総理からされたい。そうでなければ質疑は進みません。
  204. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 行管と建設省から、よく両省が相談をして小委員会に報告書を提出いたします。徹底的に小委員会で御論議を願いまして、それが済むまでの間は処分はいたさせません。
  205. 林百郎

    ○林(百)委員 総理も、いまの増本議員の質問をお聞きになって、やはりこれは増本議員が疑惑を持たれるのも無理からぬ点がある、こういうことを認められますか。あるいは、少なくとも納得し得ない点があるということが認められますか。そうじゃなければ困る。
  206. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいま林君の御発言のとおり、総理はそういうことに対してお認めをいただけますか。
  207. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は言っておることはよくわかるのですよ。いろいろここで聞いておっても、両方が食い違いがあるように見えるから、両省がよく相談をして報告書を出しますから、徹底的に小委員会で検討していただいて、それまでの間は処分はいたさせません、こう言っているのですからね。明白だと思います。
  208. 林百郎

    ○林(百)委員 その点はもう三木総理から先ほど答弁をいただいているわけです。しかし、新たにいま増本議員から、大事な四十三年の霞堤から本堤に移るときの書類、その部分が、あるところはブランクになっていたり、あるところはタイプで縦打ちになっていたり、あるところはタイプで横打ちになっていたり、あるいは肉筆で書いた部分もある。公文書でそういう文書があるはずないじゃないかという新しい疑問を提出しているわけです。だから総理としても、そういう点については不審と思われる点もあると思うから、十分両省に調査をさせて報告させます、そう言われたいのです。そうでしょう。この文書自体おかしいのですから、だれが聞いてもね。だから総理も、両省によく調査させて報告書を出すと言っているのですから……。
  209. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 林君に申し上げます。  総理もそういうことをお認めになっておりますし……(「認めてないんだよ」と呼ぶ者あり)お認めになっております。したがって、委員長責任を持ってそういうふうにいたすことを取り計らいます。
  210. 林百郎

    ○林(百)委員 総理、一言言ってください。
  211. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が言っているのは、不明確な点があるので、両省でよく相談をして報告書を出すということで……(林(百)委員委員長の言うとおりですね」と呼ぶ)林君、私の発言に対して、あらかじめあなた圧力を加えることはよくありませんよ。それはね、不明確な点がありますので、両省が、そうでしょう……。
  212. 林百郎

    ○林(百)委員 委員会を代表して委員長が、林君の言うような点も総理もお考えになっているんだから、だから両省に調査させて、そして責任ある書類を小委員会へ出すように言っていますと委員長が言っているんだから、委員長の言うことをあなたお認めになるかどうか。委員会を代表して委員長が言っているのですから、私、何もあなたに個人的に圧力なんか加えていません。
  213. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはね、私が言うことをこう言えと言って、言わなければ審議しないということは、これは圧力です。やはり私が言うのは、こうやって皆さんがいろいろ質問を続けられるところを見れば、非常に不明確な点があるので、その内容がどうかということは、徹底的に皆さんで小委員会で検討してもらいたいということでございます。
  214. 林百郎

    ○林(百)委員 ですから、委員会を代表して先ほど委員長の言われた、それは総理もお認めになるでしょう。行政立法府関係ということは、もうこの予算委員会で当初から言われていることなんですから、当委員会を代表して委員長がせっかくまとめようとして発言されていることは、あなた認められるでしょう。要するに、林君の言っていることを総理も同様に考えられているからこそ、行管と建設省に十分調査をさせて、書類を小委員会へ出させると言っているのですから。
  215. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、疑惑があると言うまで、その内容は徹底的に小委員会で検討してもらいたい。不明確な点があることは事実ですよ、こうやって質問されるのだから。それを内容に立ち至って私は発言をしないで、それはやはり小委員会で徹底的に論議をしてもらいたいということでございます。
  216. 林百郎

    ○林(百)委員 総理が先ほど言われたのは、委員長委員会を代表して言われたことをお認めになったというように私は了解をして、私の議事進行の発言を終わります。
  217. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 私もさよう了解しておりますから、どうぞ疑義を持たないでください。  これにて増本君の……(増本委員「ちょっと待ってくださいよ」と呼ぶ)もう七時過ぎているよ。七時以後じゃ田中さん困ると言うんですよ。——増本君、もう時間来ているよ。急いでやってください。
  218. 増本一彦

    増本委員 はい、わかりました。(「委員長、興奮するな」と呼ぶ者あり)
  219. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ばか言え。何を言うか。冷静にやっている。
  220. 増本一彦

    増本委員 総理も、それから全閣僚の皆さんも聞いていただきたいんですが、結局この「箇所別変更調書」、これに基づいて、実は昨年以来の建設委員会、決算委員会、衆参両院で全部答弁もなされてきているわけですよ。文書は出てなかったけれども。だから、これに疑惑が投げかけられると、これまでの委員会の政府の答弁というのは、そのことだけでも大きな問題や影響が出てくる、そういう性質の問題なんです。だから、慎重の上にも慎重に、しかも徹底的にひとつ審議をして明らかにしていただくということを私からも特にお願いをしたいと思うのです。  それでは、まだもう一つ、この「箇所別変更調書」に基づいて……。
  221. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 時間が来ておりますから、もう次の質問者が待っておるのですから、どうぞひとつ……。
  222. 増本一彦

    増本委員 ですから、そういうことでこれでは——まだ終わってないですよ。
  223. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 じゃ、一分間許します。それ以上は御免こうむる。
  224. 増本一彦

    増本委員 それでは、あとほかに、この「箇所別変更調書」に基づいて、当初の四十三年の工事実施計画がなされているという、これについても実は締め切りを決めたのは四十三年の七月だというのに、四十三年の四月に北陸地建は予算要求をし、五月一日付で大臣の承認が出て、締め切り変更前に工事の許可を事実上おろしてやっているというような問題もあるのです。ですから、この廃川敷の問題というのは、ちゃんと堤防工事が適正、適法に行われた、そういう手続を踏んで行われたということが前提になって次の処分に移れるわけで、そこのところに重大な疑惑や問題点があるという限りは、その点がはっきりとするまでは、当然廃川敷の処分はすべきでないですね。そのことが大事なんで、その点についても、総理に対して、さらに一段と、こういう河川敷の問題についても、徹底的な疑惑の解明のために、政府みずから進んでおやりになるというようにすべきであると思いますが、その点についての御意見を伺っておきます。
  225. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 増本君も御承知のように、繰り返し私が声を上げてここで申し上げた答弁のとおりでございます。
  226. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて増本君の質疑は終了いたしました。  次に、田中武夫君。
  227. 田中武夫

    田中(武)委員 私は質問に入る前に一言、委員長総理以下の各政府閣僚に対して申し上げます。  いまもう七時を大分過ぎています。これはすべて、閣僚間の意見の食い違いがあったり、答弁がちぐはぐになったり、その結果、最終の質問者がこんな時間にやらねばならぬということはまことに遺憾であります。したがいまして、当初から約束しておるように、七時を回ったらもう翌日に回す、こういうように申しておりましたが、すでに回っております。どうですか。
  228. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 田中君に申し上げます。  そういうこともありましたが、どうぞひとつきょうは質疑を続行していただくようにお願いをいたします。
  229. 田中武夫

    田中(武)委員 私が先ほど言った点については、委員長を初め与党の各委員総理を初め各閣僚、十分に心していただきたい。それでなければ、こんな雰囲気で最後の質問ができますか。どうなんです。
  230. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 まことに私として遺憾の意を表しますが、きょうのような事情で、どうぞ御了承の上質疑を続行していただきたいと思います。お願いをいたします。
  231. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃあらかじめお断りいたしておきますが、きょうじゅうに終わらなければいかぬとかなんとかいうような制約がつけられるなら、もうできません。ゆっくりとやらしていただきます。  そこで、まず第一に、去る二十三口、楢崎委員が質問したLPG税に関する大タク協の問題について、私は、三木総理にこんなことはないことを信じておりますが、しかし、この問題については、三木総理がみずから進んで解明すべき問題である、こう考えておりますが、総理、いかがでございますか。
  232. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 田中委員もいまお察しくださいましたように、私はさようなLPGのことに関係を持ってはおりません。利権に関する政治姿勢にはみずから厳しく律してまいった私でございますから、さようなことのないことを申し上げておきます。
  233. 田中武夫

    田中(武)委員 ここで実は、楢崎委員がいまの総理の質問に関連して質問をいたしますので、関連質問をお許しいただきたいと存じます。
  234. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 楢崎君より関連質疑の申し出がありますので、田中君の持ち時間の範囲でこれを許します。楢崎弥之助君。
  235. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 井出官房長官の方から何も発言がございませんでしたが、後であるものとして一—されますか。
  236. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 去る二十三日の楢崎委員の御質問を受けまして、私もいろいろ調査をし、記憶はたどってみたのでございますが、御指摘のLPG税問題につきましては、私が関与したりしたことは絶対にございません。ただ、協同主義研究会の届け出の件につきましては、何分にも十年も前のことで、帳簿も見当たらず、会計責任者の記憶も定かではありません。しかしながら、先ごろ御指摘を受けましたような事実がありとしまするならば、当時の私の監督不十分でありまして、その点まことに遺憾に存じております。当然のことでございますが、今後十分配慮をしていきたいと考えております。
  237. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ総理
  238. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先般の楢崎委員の質問に対して、私もお答えを申し上げておきたいと思います。  前回も楢崎委員に申し上げましたとおり、私は、長い政治生活の中で至らぬ点の多い男でございますが、一つだけ言えることは、自分の地位を利用して利権をあさったことは一度もないということでございます。このことは明白にいたしておきます。  なお、私の関連する近代化研究会の代表者平川篤雄君に問い合わせましたところ、受け取った一切の政治資金は正規の手続をいたしており、それ以外の政治献金は受け取っておらないということでございます。  重ねて申しますが、政治姿勢については、厳しくみずからを律し、今後においても、この態度は変わることはございません。
  239. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいまの総理並びに官房長官の御発言に対して、私の見解を申し述べておきたいと思います。  まず、私が指摘した部分は、公判記録を取り寄せられれば明白になることであります。たとえば某代議士が「通産大臣は将来総理にもなられる人……」というようなくだりは、たしか公判記録六十回の十六問の中に出てきているはずであります。それから、新大阪ホテルロビーで多田氏外大タク協幹部と会われたくだりは五十三問、そのほかにまだ三木総理の名前が出てくるのが、私はまだ明らかにしておりませんけれども、三百九十七問並びに四百問、領収書の問題が出てくるのは、九十四、九十五間であります。なお、昭和四十五年三月四日の第十一回公判、これは阪急タクシーの口羽——当時の社長でありますが、ここでもこの公判の報道が読売新聞に四段見出しで出ておる。見出しは「三木、大野両派に三百万円 口羽氏が献金証言」、こういうことになっております。さらに、せんだっての私の質問に対する大阪地検のコメントは、新聞報道のような証言があったというようなことを聞いたことがあると、否定しておりません。  ただ私は、三木総理あるいは井出長官の御発言は信じたいと思う。そうするとそこにどういう問題が起こるかであります。つまりこの某代議士の行動というものが非常に問題が出てくると思います。と同時に、この問題が今後の裁判を通じて明らかになるかどうかは別として、明らかになれば、当然、証人の証言の内容について、これは偽証という問題が出てくる可能性もある。あるいはもし証人の方で自信があれば、いまのような御発言に対して証告罪という問題も出てくる可能性がある。非常に重要な問題を含んでおると思います。重ねて言いますが、いまの総理あるいは長官の御発言が真実であればの話であります。  もう一つ私が問題にしたいのは、この事件がなぜ一審が十年間もかかって係属されておるかというこの問題であります。御案内のとおり、この贈収賄事件の時効は、刑訴法の二百五十条によってたしか三年でありましょう。なお、非常に収賄性の強い金をもらった方があと二名出てくるはずであります。兵庫県の某代議士、元代議士で現在某県の知事をされておる人、そういった人たちも出てくる。だから、この裁判を引き延ばすことによって、これらの問題が時効にかかって、寿原あるいは関谷両氏だけの起訴に終わらしめるという意図が、この十年間という長期の裁判をしておるそういう状態の中で、私は疑いが出てくるわけであります。いま一つは、まあ時間かせぎでしょう。この種の事件は、のどもと過ぎれば熱さを忘れるで、おおよそ世間が忘れ去ったころと、こういうことではないかと思うのです。そういう点で私は、検察のやり方に、非常に検察の公正さについて疑いが生ずるわけであります。  それでいま一つは、けさの新聞によりますと、きのう第六十四回の公判があっておる。この記事の中で、裁判長に対して弁護団が、「国会から証言調書の提出要請があっても、裁判所は応じないでほしい」という申し入れをした旨報道されております。これは実にけげんなことでありまして、あってはならないことであるけれども、一応の圧力がかかったのではなかろうかという疑いがある。それは、先ほどの増本質問の中にも出てきた問題でありますけれども、きょうの、例の田中金脈にかかわる宅建業法違反あるいは特別背任罪、この公判でも、検事が用意しておった陳述がその一部しか明らかにされない。これとよく似ておりまして、実はきのう弁護側の反証のための冒頭陳述は、これは二回目でありますけれども、提出した冒頭陳述の文書に書いてあった献金に関する部分は、文書は提出されておると思いますが、実は読まれていないのであります。そういう点にも非常に政治的な介入があったのではないかという疑惑を私は感じます。あってはならないことですけれども。だから、司法権の独立を守るためということでこの公判記録国会が要求しても出さないということになれば、これはむしろ形式的な司法権の独立であって、私どもは、そういった司法権の独立、司法の公正を守るために、いやしくも政治的介入があってはならない、あるいは政治的な圧力がかかってはならないという立場から、そういう司法権の独立なり司法の公正を期するために、公判記録の提出を国会法百四条及び刑訴法四十七条によってお願いをしたのであります。この点については、裁判官の話では、まだ国会から要求があっていないというような記事になっておりますが、その点はひとつはっきりしておっていただきたい。  したがって、いずれにいたしましても、井出長官もおっしゃったとおり、これは裁判が進めばわかることであります。願わくは、内閣の長である総理と、かなめである官房長官の名前が出てきておるということは大変なことでありますから、私は、公益上これは絶対必要である、そういう観点で四十七条の「公益上の必要」から提出をいただきたい、こう言ったわけです。しかし、いずれにしても、これは裁判の進行にまつ以外ないし、裁判が終わった段階で全記録が公開されれば明白になることであろう、このように思いますので、私は、本件についてはそれを待ちたい、このように思います。
  240. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 楢崎君に申し上げますが、ただいまの御指摘の資料については、確かに去る二十四日、最高裁判所当局に提出方を要請いたしましたが、いまだに回答がございません。これはそうなっております。
  241. 田中武夫

    田中(武)委員 いま楢崎委員も申しましたが、この件につきましては、私は読売を持っておるのですが、実はきょうの新聞にも、弁護側からこういうものは出さないようにということを言った、それに対して裁判所側は、まだ国会から何も言ってきていないというようなことを言っておるという意味の記事が出ております。これははっきりともう委員長の方からは照会をされたということは私も確認しておりますので、これ以上は申しません。しかし、このことが結局は、立法と司法の関係、あるいは国会の国政調査権との関係、いわゆる国会法百四条、刑事訴訟法等々をめぐって論議になろうと思います。したがいまして、この件につきましては、これだけに時間を費やすわけにもいきませんので、一応この点はきょうはここでとめておいて、改めて小委員会において十分論議をしたい、このように考えておりますが、いかがでしょうか。なお、法務大臣等々にも質問いたしたいのですが、それはその際に行うことにいたします。
  242. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいま田中君から御発言がありましたが、小委員会でさよう検討することといたします。
  243. 田中武夫

    田中(武)委員 小委員会がどうも問題が混乱したときの逃げ場所になるような感じを受けるので、そういうような意味で私は冒頭に提案したのじゃないのですから、その点だけはだめを押しておきます。
  244. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 その点は、いま御発言中の田中武夫委員等もおいでですし、小林委員もおいでですし、林委員もおいでですし、山田委員もおいででございまして、みんなそれぞれ有能な方がおそろいでございますから、そんな隠れみのになったり、あるいはまた、それが消えてなくなるようなことはないと重々信じておりますから、御安心をいただきたいと思います。
  245. 田中武夫

    田中(武)委員 それではそういうことで次に入ります。  そこで、実は昨日の公明党の山田委員の質問に関連し、宮澤外務大臣あるいは総理にお伺いいたしたいと存じます。  昨日の宮澤外務大臣答弁は、従来の答弁にない新解釈を示した点が二点ございます。すなわち、安保条約との関連において、一点は、北朝鮮は極東の周辺にも含まれない、第二点、在日米軍の行動は北朝鮮にも及ぶ、以上の二点であります。これに対し松永条約局長は、北朝鮮が極東の範囲及びその周辺にも含まれないということは、在日米軍が日本の基地を使用しての行動は北朝鮮には及ばないということだという意味の答弁をいたしております。これは明らかに宮澤外務大臣答弁と食い違っております。宮澤答弁は、従来の一般の行動と日本の基地を使用する在日米軍の行動とを完全に混同しておられるようである。もし混同していないとするならば、安保条約の危険な拡大解釈であると思います。日本と直接関係のない紛争に日本が巻き込まれる危険がというか、危険性がますます増大するという点で、絶対に承服はできません。これこそ、われわれが指摘してきた三木・フォード会談の新韓国条項そのものである、このようにわれわれは解します。この点に関しまして、総理及び外務大臣の御答弁をお願いします。
  246. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょうどいい機会をお与えく、ださいましたので、昨日、山田委員にお答えいたしましたことをもう一度整理をして申し上げます。  昨日の山田委員のお尋ねは、実は、安保条約の第五条との関連において北朝鮮が、というお尋ねで始まりまして、その後承っておりますと、第六条との関連にも及ばれたようでございます。そこで、両方の関連について整理をして申し上げます。  まず私が、北朝鮮はこの安保条約にというところの極東の範囲というものに入らないと、これは第六条の関係でございますが、申し上げました意味は、わが国におります米軍が施設、区域を利用いたしまして行動する場合の対象として北朝鮮が入るか入らないかということにつきましては、私どもはそれは入らないというふうに考えておりますと、こう申し上げたわけでございます。  それはなぜかと申しますと、昨日も申し上げましてくどいようでございますけれども、北朝鮮にどういうことが起こってもいいと決して申している意味ではなく、北朝鮮が仮に——これは全く仮定でございますので、くれぐれも誤解なきようにお願いいたしますが、仮に、中ソ等、世界の情勢の変化などによって、どこかから攻撃を受けました場合にも、それは、この安保条約に申しますところの、われわれが共通の関心を持つ、平和と安全に関心を持つ極東の地域ではない。すなわち、したがいまして、その場合にアメリカ軍がわが国の基地あるいは施設を利用して介入することはできない、すべきでもない、こういう意味でございます。この点は明瞭におわかり願えるのではないかと思います。理由は明白であると思います。  それから次に、第五条との関連においてと言われましたので、私が後につけ加えたのでございますが、私が申し上げましたのは、これも決してあるという事態ではありませんが、理論上の問題といたしまして、北朝鮮からわが国に対しまして攻撃を加えられた場合というのが、山田委員の言われます五条の場合になるわけでございます。その場合には、これはわが国に対する直接攻撃になるわけでございますので、第五条の規定によりまして、米軍がわが国の施設、区域を利用して、これに対して対抗措置をとることができる。その場合には、その対抗措置は、わが国の領土、領海のみならず、その攻撃のよって来る源に及ぶということは、これはあり得ることである。そういう意味で、この第五条における自衛の行動というものは、いわゆる極東の範囲に北朝鮮は入らないわけでございますから、ここにいう極東の範囲には入らないが、しかし、それがわが国に対する直接攻撃の源になったときには、やむを得ずそれに対抗措置は及ばざるを得ない、こういうことを申し上げたわけでございます。  なぜこういうことを申し上げたかと申しますと、山田委員が第五条との関連において北朝鮮をどう考えるかという最初のお尋ねでございますから、これはそのようなお尋ねとして解するのが理論的に正しい。それ以外に北朝鮮と第五条との関連はないわけでございますので、さように申し上げたわけでございます。  したがいまして、これは従来の解釈に新たに加えるものでも、また差し引くものでもございませんで、従来から私どもは、第六条の関連では、いわゆるわれわれの平和と安全の維持が共通の直接の関心でない地域は、当然アメリカ軍の行動の対象になるべき地域ではないわけでございますから、そういう意味で領域ではない。しかし、そこから直接攻撃が行われた場合には、これは場合によっては自衛のためにそれに対する対抗措置がそこに及ぶことがあり得る。いずれの場合も仮定の問題でございますので、誤解なきようにお願いいたしますが、さように申し上げたのであります。
  247. 田中武夫

    田中(武)委員 総理は。
  248. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 外務大臣の説明は明白だと思います。私もさように考えております。
  249. 田中武夫

    田中(武)委員 この問題に関連いたしまして、専門家である楢崎委員に関連質問をお許し願いたいと思います。
  250. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実は先ほども、この新韓国条項の問題について総理は、日本の安全は当然韓国の安全とかかわり合いがある、今度はそれを朝鮮半島に含めたんだ、あたりまえではないかという認識を明らかにしただけだとおっしゃいました。ところがこれは認識だけに終わらないわけであります。じゃ、そういう認識のもとに何が具体的に起こってくるか、それがいわゆるわれわれが言う新韓国条項というやつであります。  どういう点であるかというと、まず日米共同新聞発表で御承知のとおり、「韓国の安全が朝鮮半島における平和の維持にとり緊要であり、また、朝鮮半島における平和の維持は日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり必要であることに意見の一致をみた。」実はこれから先であります。「両者は、かかる平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」そこで、過般の外務委員会におけるやりとりで明白になったのは、この「かかる平和」の「かかる」とは朝鮮半島である。これはアメリカ局長答弁であります。それから「安全保障上の請取極」、これは休戦協定、米韓条約及び日米安保条約、こういう答弁であります。  だから、これを読みかえてみます。いいですか。朝鮮半島の平和を維持するために、現行の米韓条約、安保条約は非常に重要である、こうなります。ということは、朝鮮半島ですから北朝鮮も含むわけでしょう。そこで、北朝鮮でもし紛争が起これば、あるいは有事の際は、安保条約が当然かかわり合いを持つという認識である。しかも、米韓条約は当然発動されますから、そこに米韓条約と安保条約が非常に絡まることになるわけであります。絡まるわけであります。それをわれわれは言っておるので、実はきのうの外務大臣答弁は、私は、この新韓国条項を、あなたアメリカに行かれましたから忠実に答弁されたと思った。つまり、条約局長の方は旧来の韓国条項のとおりを言った。つまり、北朝鮮が六条の極東の範囲及び周辺に含まれないということは、在日米軍、つまり日本の基地を使う在日米軍は北朝鮮有事の際にも行動を起こさないのだという答弁をされたわけですね。ところが、外務大臣の方はどういう答弁であったかというと、必要によれば在日米軍の行動は、自衛という言葉を使われて、これはそういう範囲に縛られない。つまり北朝鮮にも及ぶ。それをきょうはあなたは、五条の場合と、そのように言い直されたわけであります。  しからばこれはどうなりますか。これは私はかつて昭和四十五年三月十八日の予算委員会で取り上げた問題である。つまりプエブロ号事件のときであります。この詳細については、一九六九年七月二十八日、米国下院軍事委員会プエブロ号特別小委員報告の議事録が明らかになっておる。この中で統合参謀本部議長のウエーラー大将が証言をしておる。この証言でどういうことが明らかになったかというと、まずウエーラー将軍はこういうことを言っています。「北朝鮮の艦艇によって攻撃を受けた際には、米国は、国連憲章第五十一条で国際的にも条文化されているように、攻撃の程度に見合い、自国艦船を保護するに必要ないかなる自衛行動もとり得る歴史的な権利を有しておる。」これが一般的なあなたがきのう言った米軍の行動ですよ。これを言っておる。  ところが、その次に、あのとき在日基地が使用可能な状態にあったかという問題が提起された。このときに「在日の十六機の攻撃機は使用可能であったと証明している。それは三沢のF4十一機、横田のF105五機であった。しかしこれらの航空機の搭乗員は他の基地から移転してきて訓練中であった。それで実際には使えなかった。」つまり、プェブロ号事件のようなときにも、アメリカは在日米軍基地、横田あるいは三沢の戦闘機に発進命令を出したかった、ところがたまたま搭乗員が新米であったからできなかったという証言であります。  これは五条とは関係ない。完全なる米軍独自の行動ですよ。それでもなお、在日米軍基地の横田、三沢を使ってこれに対処しようとした。このときは沖繩から戦闘機F105が飛んでいって、そして烏山でまず給油した。ところが、この給油した段階で、それから元山に飛ぶとすれば夜になるから一体どうしましょうか、それでとうとう烏山で給油したまま待機させられたんですよ。これが飛んでいっておったら、実力でこれを奪回するということになっておった。これが具体的な事実であります。  だから、そういう五条の発動でないときでも、日本の基地を使って在日米軍が行動を起こせるか、それを明確にしてください。もしそうならば、こういう場合はだめですね。
  251. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまお尋ねの点は非常に明確でございまして、一つ一つ申し上げたいと思います。  まず、昨日、条約局長が最後に御答弁いたしました点でございますが、これは非常に平易な表現を使いまして、すなわち、北鮮において、かつてベトナムに起こったようなことが再度起こるかと申せば、これは起こらないとお考えくだすって結構でございますと、こういう御答弁をいたしました。その意味は、北鮮の内部におきましていわゆる武力紛争が起こるという場合でありましても、これはわれわれがこの安保条約において極東の範囲と考えておらない地域でございますから、それに対して米国が介入をするということは、この条約のいかなる条項によっても認められない、そういう意味でございます。  それから次に、しかし韓国が武力攻撃を受けたというような場合には、これはもう楢崎委員がよく御承知のように、これは六条との関連になるわけでございまして、事情の展開によりまして事前協議の対象になり得る地域である。これは韓国は何となれば極東の範囲に入るからでございます。  それから次に、一番むずかしいのはプエブロのケースをどう解釈すべきかということでございますが、私が昨日、北朝はこの極東の範囲に入らないと申し上げましたときに、その意味は厳格に解するならば、北鮮の領土、領海、領空ということで解釈すべきものと思います。すなわち公海上は、公海というものは北鮮そのものではないわけでございますから、公海においてプエブロ号類似のような事件が起きたときにどうなるかということになるわけであろうと思います。これが北鮮の領海で起こりましたときには、北鮮は極東の範囲でございませんから、当然にこの条約関係ではない。しかし公海で起こったときにどうなるかということであります。この点は理論的には、これが第六条の「日本国の安全に寄与し」云々ということであれば事前協議の対象になり得ると私は思いますけれども、実はこれにつきましては……(楢崎委員「周辺にも入らないと言ったんでしょう」と呼ぶ)はい、さようでございますが、それは公海というものはまた北鮮とは別であるというふうに観念すべきであろうと思うのでございます。  ただ、実は先般ちょっと御紹介をいたしましたシュレジンジャー国防長官とのいろいろな話し合いでございますが、わが国の米軍基地の施設の利用について、補給、兵たん、ロジスティックスには期待をする、それ以外には期待をしていないというシュレジンジャー長官の話のときには、実はプエブロ号のようなケースについて具体的な議論があったわけでございます。そしてそれはマヤゲス号が話の発端になったわけでございましたけれども、シュレジンジャー長官は、そういう場合でも自分たちは日本の基地から直接発進をさせるという必要は実は認めていないということを申しております。したがいまして、理論的には第六条の対象になり得るケースかと思いますけれども、実際上はそういうことは起こらないであろうというふうに考えております。  以上、三つのケースについてお答えいたしました。
  252. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから、まとめて三問お伺いをいたしておきます。  一つは、もし朝鮮半島で有事の際に在日米軍基地を使って在日米軍が直接出撃をするについて、イエスという事態になったときには日米韓の共同作戦体制になる、それはどうか。それが一つ。  二番目に、シーレーンで、日本の自衛のために必要とあれば、つまり公海上ですね、米国の艦船を守ることになるのかどうか、それが二問。  三番目に、米ソの間でもし紛争が起こった場合に、在日米軍の日本の基地を使って行動を起こせるかどうか。その三問をお伺いしておきます。
  253. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前二問は、正確に申しますと所管の坂田大臣がお答えになるべきかと思いますので、もし私が不正確でございましたら、また防衛庁の政府委員からでもお願いをいたします。  第一問は、韓国が攻撃を受けました場合に、場合によっては第六条の事前協議が行われ得るであろう、その場合は自衛隊との共同作戦になるのではないかとおっしゃる点でございますが、私どもは、自衛隊というのは海外派兵というものは一切できない、実際の運用としてはやらないものというふうに承知をいたしておりますので、それはやはり原則としてそう考えなければならないのではないか。  それから、その点はシーレーンの場合にもやや類似でございまして、すなわち、集団自衛はわが国のためにはあるわけでございますけれども、日本からアメリカのためにはないわけでございますので、わが国の自衛隊が米艦を守るためにシーレーンで戦時に行動をするということは、そういうことを目的としてはないと考えるのが相当ではないか。結果として、わが国の自衛艦もそういう場合には自衛に立ちますので、その結果として、米艦隊が何がしかの保護を受けるということは、これは当然あり得るだろうと思いますけれども、自衛隊自身がそれを主たる目的として行動するということは、自衛隊のいわゆる海外派遣等々の問題があるのではないかと存じますけれども、この二点は、しかし実は私が有権的にお答えをしていい問題では本来はないかと思います。  第三の点は、米ソ紛争の場合にわが国の米軍がどうこうという問題でございますが、ソ連邦は極東の範囲に、この条約上入っておりません。
  254. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 第一問でございますが、これはかつて昭和四十四年二月六日、衆議院予算委員会、川崎寛治君の質問に対して、当時の佐藤条約局長はこのように明確に答弁しております。もし沖繩が返還されて沖繩から直接米軍が出撃をした場合には一体どうなるのか。これに対して佐藤条約局長は、返還された「沖繩から直接作戦行動が行なわれる、これが何らかの形で行なわれるという場合には、当然これは日、韓、米というものは軍事的には一緒になるわけでございます。」つまり軍事的に日米韓共同作戦状態になる、これは明確な答弁であります。いまのと違いますね。  それから二番目の答弁でありますが、これは私がことしの六月十八日の外務委員会でお伺いをしたときに、そういうことはあり得るという防衛局長答弁でありました。つまり米艦船を結果的に守る、「あり得る」と。その結果的というのも実はおかしいのですけれどもね。ところが、これは四十八年六月二十一日の、当時の久保政府委員答弁及び大河原さんの答弁はそうじゃないのですね。そういう「日本の自衛隊は有事の際、米国の艦船や航空機を防衛する責務を負うことになりますか。」という私の質問に対して、「それは安保条約の運用の問題だと思いますけれども、日本側としては責任を持たないと思います。」そこで私が重ねて、「持たないというのは次の三つのうちのどれですか。まず第一番は能力上持てないということなのか、あるいは憲法上それはできないということなのか、三番目に安保条約第五条の制約からできないということなのか、どれでしょうか。」と聞いたら、こういう御答弁です。久保局長は「第二と第三の両方からであると思います。」つまり、憲法上の制約及び安保条約第五条の制約からできない、こう答えております。そして私が外務省もそれでいいかと聞いたら、大河原さんは「ただいま防衛局長答弁のとおりでよろしいと思います。」全然答弁が違うじゃありませんか。三番目の点は明らかになりましたから、それはそれでよろしゅうございますが、一番目と二番目のケースについては明らかに過去の答弁と違いますよ。
  255. 丸山昂

    ○丸山政府委員 まず二番目の問題、これは六月の先生の御質問に対する私の答弁であったと思いますので、それから申し上げたいと思います。  あのときに申し上げましたのは、五条に基づいて日米が共同対処をいたしております場合に、日本の自衛隊がアメリカの艦船を守るということがあるかという御質問だったと思います。それにつきましては、いまお答えいたしましたように、結果としてアメリカの艦船を守ることがあり得るという答弁を申し上げております。さきに引用されました久保局長答弁でございますが、これは日本の自衛隊がアメリカの艦船を守る責任があるかという御質問でございました。それに対しましては、日本の自衛隊はそれは責任はございませんという御答弁を申し上げておるわけでございます。責任の有無、つまりそういう任務を与え得るか
  256. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうじゃない、違っていますよ。答弁の方は、憲法上、それから安保条約五条でもできないと言っているのですよ。
  257. 丸山昂

    ○丸山政府委員 いま申し上げましたように、責任の有無については、責任はございませんという答弁を申し上げ、これは外務省も同じ考え方でございます。
  258. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なぜないのかと聞いているのです。
  259. 丸山昂

    ○丸山政府委員 なぜ責任がないのかということでございますが、それは先生が幾つか挙げられました中で、憲法上の理由、そういうものによるものだという御答弁を申し上げておるわけでございまして、私の申し上げました答弁と内容的には違っておらないというふうに判断をいたします。  それから第一番目の御質問でございますが、これは外務大臣がおっしゃったとおりでございます。ただ、多少敷衍させていただきますれば、韓国におきます事態、これは先ほど先生のお話で、いわゆる事前協議でイエスと言う場合という御指摘がございましたが、これが直ちにわが国にとって、わが自衛隊が行動をいたします準拠になる七十六条の、わが国に対する外部からの攻撃あるいは攻撃のおそれに該当するか否かということが、わが国の自衛隊が行動をする根拠と申しますか、これであると思うわけでございます。そういう七十六条に照らして、わが自衛隊が動き得るかどうかということが別の要素として考えなければならないというふうに思いますので、いわゆる事前協議でイエスと言う場合が直ちにそこへつながるかどうかということは申し上げられないと思います。
  260. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、これは違うのですよ。答弁が違いますよ、前の答弁と。そんなことじゃないのですよ。どうして責任がないのかと聞いたら、憲法上、それから安保条約五条の制約からできないと言っておるのですよ。あなた方が、結果として守ることになる、そんな言葉のあやはだめです。守るということでしょう。結果として守ることになっても、米艦船を守るという事実に変わりはないじゃありませんか。だめですよ。ここへ来てごらんなさい。答弁書ありますよ。  それから、日米韓の共同作戦体制に入るということは、佐藤条約局長は軍事的に一緒になると明確に答弁しておるのですよ。また、イエスと言うときはよほど重大なときだ。そのよほど重大なときとはどういう場合かというと、自衛隊法で言えば第七十六条を発動しなければならないようなときしかイエスは言わないのですよ。それを佐藤条約局長は頭に描いておるから、当然日米韓の軍事コンプレックスになるのだ、こう答弁しておるのです。そういうことでしょう。だから、七十六条を発動しないでもいいというような状態のときにはイエスはあり得ないのですよ。直接わが国に重大な危機のあるときしかイエスを言わないのだ。重大な危機があるというのは七十六条の発動ですよ。なぜならば、武力攻撃が直接に着手された場合のほかに、おそれある場合というのが自衛隊法の七十六条にはあるのだ。だからそれに該当するときしかイエスは言わない。だめですよ、はっきりしてもらわぬと。そんな前の答弁と、いままたもし答弁をあなた方が変えるとしたら、それはまさに今度の日米会談の結果ですよ。つまり安保条約が拡大されたのだ、アジア安保に拡大された、そして米軍のトータル・フォース・コンセプトの中へ自衛隊が入ったということですよ。私はそれは承服できませんよ、そんなに前の答弁をくりくり変えてもらっては。今度の予算委員会で政府答弁の重みというものを何回われわれは問題にしましたか。小林委員がけさ問題にしたのもまさにその点ですよ。一遍答弁したことをくりくり平気で変えられる。もし変えられたとしたら、何回も言いますが、そこに情勢の変化があったということでしょう。私は承服できませんよ。
  261. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどと同じような意味で私から便宜申し上げるわけでございますが、私はこういうことであろうと思います。  確かに防衛出動が、七十六条が発動されるような事態を想定しておられる話であるということは、私もそのように思いますが、つまり、仮にわが国に直接の危険がありまして、そうして米軍と自衛隊とが共同作戦をせざるを得ないというようなときに、自衛隊の艦船が米軍の艦船を守るか守らないかというのがいまのお話でございますが、実は一番危殆に陥っておりますのはわが国自身でございますから、そのときに、共同作戦をしておって共同の艦船を守らないということは、普通常識的に考えればいかにも奇妙なことになるわけであろうと思うのであります。しかし実際には、自衛隊の海外派兵というもの、あるいはそういう危険というものをわれわれは冒してはならないというふうにかたく考えておりますから、結果としてそういうミスを犯すようなことがあってはならぬというのが、従来から政府が強く思っておることであろうと思うのでございます。それがゆえに米軍の艦船を守る責任はない、あるいはそれを主たる目的とするような行動をとることは差し控えるべきである。しかし結果として、一緒に共同して敵勢力に当たっておるわけでございますから、それがその共同の艦船に対して何がしかプラスになるという結果になったとしても、そのこと自身までを否定し得るかということになれば、それには常識的に問題があるのではないか、というのじゃなかろうか。  それからもう一つ、韓国の問題をお挙げになったわけでございますが、この場合、わが国に危険が現実にございますれば、わが自衛隊はそれに対処するのが当然ではございましょうけれども、その場合にも、米軍といわれる楢崎委員の言われます共同作戦ということになれば、自衛隊がわが国の領域を越えて外国の領域に入るということを、ちょっと共同作戦といえば普通受け取るわけでございますが、そうなりますと、それは再び、自衛隊の海外派兵という、われわれが最も避けなければならない危険に陥っていきますから、その辺もやはり消極的に解しておくのが、少なくとも運営の問題あるいは政府の方針の問題としては正しいのではなかろうか。私は法律の専門家でございませんので、その点が憲法上、法律上どうなっておりますかは私に申し上げられませんけれども、そのように政府は終始考えてまいったのではないかと思います。くれぐれも、私が答弁をしますことは少し出過ぎでございますけれども、そう考えてまいっておると思います。
  262. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長、じゃ一問だけ。  非常に重要なことをきょう言われました。に紛争が起こって、そのときにイエスもあり、ノーもあるとかつて総理答弁されました。少なくともイエスと言うような事態のときは、自衛隊法七十六条が発動されるような事態のときであろうと外務大臣がいまおっしゃいましたが、それを確認してください。少なくともイエスを言うという事態は、自衛隊法七十六条を発動しなければならないほどの差し迫った危機が日本の自衛上ある場合だという、その点、総理大臣はっきりしてください。
  263. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が申し上げたことに関連しますから。  私の申し上げましたのは、楢崎委員が防衛局長に対して、七十六条の場合を考えているんではないか、自分の想定している場合はこうだぞと仰せられましたので、楢崎委員の御想定は、七十六条が発動される場合をおっしゃっていらっしゃるんだろうということは私もわかって、お答えいたしますと申し上げたのであって、そのことと第六条の事前協議の場合とがイコールだというふうには、私はお答えしておりません。
  264. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が総理に聞いているのは、それから進んではっきり聞いているのですよ。総理がもしイエスと言うような事態のときには、当然わが国も紛争に巻き込まれるわけですから、よほどのことでなくちゃイエスは言えないはずです。イエスを言うという事態のときは差し迫った危機が日本に及ぶ、そういう場合にしか言わないんだ。つまり自衛隊法上で言えば、七十六条を発動しなければならないほどの危機が迫ったときでなければイエスというのは言わないんだ、そういう見解でよろしいかということを改めて総理に聞いているのです。
  265. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 具体的にいろいろな問題が起こりましたときに、結局は日本の国益というものを踏まえて判断するよりほかないので、いろいろな起こり得る事態というものを想定することは困難ですからね。だから、そのときの国益を踏まえて判断をするということでございます。
  266. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が聞いているのは、具体的に聞いているのです。イエスと言うときにはよほど慎重でなければならない。それは、わが国の国益とおっしゃるのはそういう言葉であって、急迫不正の侵害が行われる危機が現実に生じたときしかイエスというものは言うべきじゃないのですよ。それは自衛隊法から見れば、自衛隊法七十六条は、現実に攻撃がかけられないでも、そういうおそれのあるときも発動するんですから、七十六条発動のような、そういう状態のときでなくちゃ容易にイエスと言っちゃならぬのだ、それでよろしゅうございますかと総理の判断を求めておるのです。具体的に言っているのです。——いや、総理の判断を求めているのです、一番重要なところですから、総理が判断するのです、イエスかノーは。
  267. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自衛隊の機能と米軍の機能と違いますから、常に七十六条だというふうに断定をすることは私はできないと思います。
  268. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、先ほど言いますとおり、七十六条が安保の五条と違うところ、国連憲章の五十一条と違うところは、自衛隊法七十六条は、実際に武力侵害が行われたときのほかに、そのおそれがあるときというのが重大なんです。だから、そういう場合でなくちゃイエスというのは言えないはずです。なぜならば、イエスを言ったときには、わが国は紛争に巻き込まれるのですから。だからそういう事態のときしか言えないのです。安易にイエスもありノーもある、そのときの事態で考えるというような安易な問題じゃないのですよ。
  269. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私から御答弁申し上げますが、総理が言われましたように、両方ともきわめて重大な事態であって、安易に起こるべき事態ではないと思いますけれども、それから七十六条の方には、おそれある場合というのを含んでおることもそうでございますけれども、そうかといいまして、六条のいわゆる事前協議は交換公文で定められておるような場合を言っておるのでありますから、極端に仮定の問題といたしますと、仮に七十六条が発動される条件がない場合でも事前協議というものは行われる場合は考え得るわけでございますし、それに対して、わが国の国益から見てイエスと言う場合もありノーと言う場合もあり得る。あり得るということを私は申し上げます。  それから、逆に七十六条が発動されまして、この事前協議というものが行われない、あるいはイエスと言わないという場合もあり得る。それは、具体的にやはり自衛隊の持っております防御機能と米軍の持っております防御機能は異なりますから、それが常に一緒だということは私は言えないのではないかと思います。
  270. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 失礼ですがね、外務大臣はいつも一言多いのですよ。より議論をあなたは巻き起こされるのですよ。いいのですよ、逆の場合があることは事実ですよ。七十六条が発動されてもイエスと言わない場合もありましょう。それはいいのです。イエスと言う場合のことを聞いているのです。イエスと言わない場合のことを聞いているのじゃないのですよ。だから、イエスと言う場合には、先ほど言ったとおり、七十六条が発動されるような事態のときしか言えないではないか。イエスもありノーもあると言うけれども、実際にイエスと言う場合は、それほどの急迫不正の危機が迫ったとき、つまり七十六条の発動のような事態のときでなくちゃイエスと言っちゃいけませんよと、私はこれを言っているわけです。
  271. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最後のお話でありますと、事前協議にいやしくもイエスと言うような事態は、自衛隊法の七十六条が発動されるような、少なくともそのような重大な事態でなければ安易にイエスと言ってはならぬぞと、そういう趣旨であれば、私はそのとおりであると思います。それで両方がイエスと言えば必ず七十六条が発動されるのかとおっしゃいますと、それはそうは言い切れぬと思っておるわけであります。
  272. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはいいのです。それは別ですから。  総理、いま外務大臣は認めましたがね。少なくともイエスと言うような事態のときは、相当のこれはわが国に直接の危機がある場合だ、つまり自衛隊法上で言えば七十六条発動の事態だ。ような事態ですか、ような事態だ、そう考えなければいかぬ、いま言ったでしょう。——じゃ議事録見てください。そんなあなた……。
  273. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もう一度申し上げます。  事前協議は軽々にイエスと申すべき事態ではありませんから、それがイエスと言わなければならないような事態はきわめて重大な事態であって、それはあたかも自衛隊法七十六条が想定しているような事態と同じような深刻な事態であろう、こういうことは言われるとおりと思います。しかし、その場合に必ず七十六条が発動される、こういうことだなとおっしゃいますと、それはそうは言い切れないと申し上げているわけです。
  274. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは自衛隊法七十八条の事態のときはどうですか。待機をしておるという、防衛待機ですよ。少なくとも防衛出動の待機をしておる、そういう事態のときしかイエスは言えないんだ、これはどうですか、一段下がって。——あなたがどうして答弁するんです。総理の判断を求めているのです。あなたはイエスかノーか言うのですか。直接出撃のイエスかノーをあなた言うのですか。イエスかノーを言う立場の人に私は聞いているのですよ。
  275. 田中武夫

    田中(武)委員 実は岡田委員からも関連質問の申し出があったわけなんです。それをわれわれは協力する意味において、岡田さんにも遠慮してもらったわけです。ところがこういう状態ではもうだめです。もうきょうはひとつ私の質問は留保して、十分に岡田、楢崎両君によるところの防衛論争を続けてください。私はやめます。
  276. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと田中君、お待ちください。  防衛局長といえども政府委員でございますから、時によっては委員長が指名し、答弁をさせ得ることもあります。どうぞその点は了解してもらいたいと思います。——総理、発言ありますか。
  277. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま御質問の楢崎君の七十七条の待機の場合も、これはやはりそのときそのときのケースによって判断をするよりほかにはないわけです。そのときの事前協議によってノーとかイエスとか言うわけですから、そのときはもう必ずイエスと言ったりノーと言ったりというものでなくして、その事態ごとの国益を踏まえて判断をするよりほかにはない、私はこういうことを申しておるわけでございます。(岡田(春)委員「関連して」と呼ぶ)
  278. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。関連質問、関連質問とそうはいきませんよ。——田中武夫君。
  279. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと待ってください。——それじゃ楢崎君から。
  280. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 楢崎弥之助君。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がくどくこのことを言っているのは、こういう重要な問題についてイエスもありノーもあるというようなことで、もはや見過ごすわけにはいかない。時代は進行しておりますから。日米の防衛分担問題も話すというような状態のときですから。しかも有事を想定してそれをやるんでしょう。だからこの点ははっきり歯どめをかけなくちゃいけない。なぜならば、イエスと言った場合には、日本が紛争に巻き込まれる可能性がある。いいですか。だから、少なくともイエスと言う状態のときは、第五条のときは当然ですよ、現実にわが国への侵害がもう着手されておるのですから。問題は、この七十六条による「おそれのある場合」です。こういう事態のときでなくてはイエスは言うべきではない。これだけの歯どめをかけておかぬと、そのときのケース・バイ・ケースによるんだ、そんな安易なことではこの問題は見過ごされない。  かつて、これは昭和四十年ですか、与党の鯨岡さんが外務委員会で質問した。ベトナム戦争に日本の基地を米軍が使ってやるときに、日本は国際法的に見れば中立ですかどうですかと聞いた。そのとき椎名さんは何と答えましたか。厳密に言えば中立ではないでしょう、しかしベトナムは離れておりますから、現実の危機はございませんと答弁したのです。今度は距離が離れておるどころかお隣ですよ、韓国は。だからもしイエスと言う場合は、日本は当然中立ではなくなる。だからここに厳密な歯どめをかけておかないと大変なことになる。それで私は、これは絶対にここで明白にしてもらわぬと見過ごすわけにはいかない、このように言っておるわけです。
  282. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 楢崎君の七十六条という御指摘は、武力攻撃を受けたり、おそれのあるという——まあ実際に事前協議でイエスと言う場合は、そんなに簡単にイエスを言えるわけでもないし、これはもう日本が大変な事態ですよ。したがって、いわゆるこの事前協議でイエスと言うような場合、そういうことは私はないとは思っておりますが、ここでそういう事態を御想定をされての御質問でありますから、事態はないと思いますが、これはそういう事態を想定されての御質問であるとするならば……(楢崎委員「想定されて自衛隊法はつくられているんだ」と呼ぶ)これは七十六条が発動されるような事態というものが想定される、一つのイエスと言う場合というものは、こういうものでありましょうと私は思いますよ。しかし、これはやはり自衛隊の出動を規定してあるものであって、六条の事前協議とは直接の関係は持ってないですね。したがって、やはりこのイエスと言う事態というものは、楢崎君の御指摘のような、こういうふうな事態でなければ大体考えられぬと思います。しかし、事前協議というものはこれ以外にないのだという断定をすることは、私は無理だと思いますが、しかし、もうまさに七十六条なんかで規定してあるような、こういう事態でなければイエスなどと言うべきではないということは、私もそれはそのように考えます。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの点は非常に明確になりました。  それで、もうちょっと言っておきますけれども、事前協議にかけるべきではないと言っておるんじゃないのですよ。そこを誤解しないでください。事前協議にはかかるのです。それは否定しませんよ。かけなくちゃいけませんよ。その際に、事前協議にかかったときに、イエスと言う場合は相当の歯どめをしておかないと、国民は心配しますよ。  その歯どめとは何かというと、この自衛隊法七十六条の「おそれのある」という、こういう事態でなくちゃ——もう現実に着手されたときは必要ないのです。安保条約五条の問題だから、何も私は言うことはないのですよ。そうでしょう。六条の問題じゃないのだから。六条の問題というのは、おそれのある場合なんですよ。だから、七十六条のこの「おそれのある場合」というときでなくてはイエスは言えないのだ。三木総理大臣の政治判断としてはそうだ。政治判断なんです、これは。それを私はいま、そのとおりだとおっしゃった、こう思いますが、もう一遍再確認しておきます。
  284. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 七十六条は、いま楢崎君の御指摘のように、安保条約の六条の事前協議とは別個のものですよね。しかし、これは自衛隊の出動でありますから、日本が大変な事態である。日本の安全に対して非常な危機が迫った、攻撃を受けるとか、おそれがあるとか、そういう事態でなければ事前協議でイエスと言うべきではないという考え方は、私もそのように思います。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃもう一つ確認をいたしておきます。  先ほど私が七十八条と言ったのは七十七条のことです。防衛出動待機命令、つまり「事態が緊迫し、前条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合」が七十七条、こういうときは、もちろんのことイエスは言えませんね。それだけはっきりしておいていただきます。
  286. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この待機命令でありますが、この問題も、いま言った武力攻撃とか武力攻撃のおそれとか、そういうものが考えられるから待機命令をするわけですからね。そういう事態でありますから、いま事前協議とそれをそこの場合に直接結びつけて、この場合にもノーと言いイエスと言うというようなことを、これを私から答えることには無理がある、この問題は。
  287. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしたら先ほどの答弁と違うじゃありませんか。違いますよ。(発言する者あり)
  288. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 静粛に願います。重要なときだ。
  289. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が言っておるのは、やはり事前協議でイエスと言うような場合は、七十六条の場合はきわめて明白ですからね。待機命令というものも、やっぱりおそれのあるというようなことを想定するのでしょうが、七十六条とはやはり多少性質の違う点もありますね。そういうことで、この問題については、事前協議でこれはノーとかイエスと言うことを、いまこれを想定して、あらかじめ楢崎君にこういうことを言うことは、私は適当じゃない。これは事前協議は別の一つの条項でございますからね。
  290. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、事前協議でイエスと言う場合のことを聞いているのですよ。逆に聞いているのです。先ほど総理は、イエスと言うときは大変な事態だから、こういう七十六条のときでなくちゃそれは容易には言えないのだ、それは私と同感であるとおっしゃった。もしそうであるならば、七十七条のようなときにはイエスは言えませんね、こう私が聞いているのです。(「おかしいじゃないか、何の資格で相談するんだ」と呼ぶ者あり)
  291. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 政府委員ですよ。政府委員が相談し合うことがどこが悪い。(「悪いじゃないか」と呼ぶ者あり)悪くありません。(「権限はない」と呼ぶ者あり)権限あり。
  292. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が言っているのは、七十六条の場合は、これは大変に重いわけでしょう。また七十七条の場合はそれよりも軽いですよね。だからしたがって、その場合について事前協議を、楢崎君にこの場合に——私は、あなたの質問というのは、いろいろなどういうことが起こるか、事態というものをいまここで想定して、そして言うわけですから、大変にこれはむずかしい御質問だと思いますよ。しかし、少なくとも事前協議でイエスと言うときは、楢崎君の御指摘のような、七十六条のような、こういう重大な本当に日本の安全に危険が迫るような場合であろうということは言えます。また七十七条の場合は、少しそれよりも軽いことは事実です。そういうことですから、これはやはりいろいろとそういう場合の条件というものは、楢崎君自身が考えられるわけでございましょうから。しかし、いまここでこれに対して、事前協議は必ずイエスでございます、ノーでございますと言うことは、こういう問題、紛争というものはいろいろな形がありますから、だからイエスと言う場合に、これは重大な問題でありますから、いま言った七十六条のような場合も考えられましょう。そういう場合、それ以外のいろいろな場合に対して、皆一切安保条約の事前協議を私がここで答弁をして縛ることは、楢崎君、適当でないと思うのです。しかしイエスと言う場合は、あなたの言われるようなことだと私も思うのですよ。それ以外のいろいろなケースを縛ることはどうかということを申し上げておる。
  293. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 前段はわかりました。しかし、この七十七条のような状態のときには、総理のいまの答弁は、ノーもありイエスもある、そういう意味ですか。
  294. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 七十七条の場合は、これは自衛隊のやはり待機命令ですから、そういう場合に、多少事前協議をやらなければならぬような事態でない場合もありましょうし、そういうことはそうでしょう。それはそのときのケースになってみないとわからないので、いろいろな起こり得る事態……(楢崎委員「事前協議にかかった場合を私は言っているのです。かからない場合は行くはずないですから。」と呼ぶ)それは、イエスという場合というものを前提にして言われたときは、重大なことですから、私は楢崎君の言うような場合であろう。それ以外のいろいろなケースをここでお挙げになって、これに対して私が、ここに事前協議を拘束した定義を下すことには無理がある。だから、そういう問題に対しては、ノーもありイエスもあるというお答えをしなければならぬ。しかし、イエスというような場合はどうかと言えば、それはあなたの言われるような、そういう場合だろうと私も考えます。
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではもうこの点は、これで私も打ち切りたいと思います。  もう一遍明確にしておきますが、イエスという事態のときは、この七十六条発動のおそれある場合、そういう事態のとき以外はイエスは言わない、それだけは明確に答えられた、このように思いますので……。
  296. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 イエスと言わぬと、こう言えということは、それは事前協議の性質からいって、何かここで拘束するのは私はいかがかと思いますが、これは大変なことですから、それはいま言われたような、日本の安全が脅かされるとか、おそれがあるとかいう大変な事態でありますから、そんなに簡単に事前協議でイエスと言えるものでありませんよ。これはやはりだれが考えても、そんなに簡単な場合にイエスと言うような考えは私は持っておりません。非常に重大な事態以外にはイエスと言うことは、考えは持っていない。
  297. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その非常に重大な事態というときは、七十六条が発動されるときなんですよ。そうでしょうが。非常に重大な事態というときは、そうでしょう。だから、七十六条発動のとき以外はノーだ、こういうことでしょう。
  298. 田中武夫

    田中(武)委員 さっきから聞いておりますと、どうも法律論におきましても、政府内に必ずしも統一した見解がない。その上にもってきて、政治論というか、政治的な発言が加わる。こういうことだから、よけい混乱しておるわけなんです。  そこで、ひとつどうでしょう。法律論あるいは政治的な問題については、双方ひとつ政府の統一見解を示していただいて、それまではこのままでもよろしい。このまま少しお待ちいただきます。
  299. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは非常に重大なところなんですからね。あいまいな答弁では困るのです。
  300. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 楢崎君、法律論から言えば、安保条約というのはノーもありイエスもあるということでしょう。私が言っておるのは、田中氏のそういうときの判断というのは、総理大臣責任ですからね。その政治的なものが加わりますよ、そのときの判断は。それは、イエスと言う場合というのは、七十六条に規定されるような、現実に日本が侵略される危険があり、おそれがある場合以外に、私はそれはイエスと言うべきではないと思いますが、法律論としては、事前協議というものはノーもありイエスもある。これは法律論としてそう言わざるを得ない。
  301. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、いまのはややはっきりいたしました。法律論としてはイエスもありノーもある、それはそのとおりです。ただ、そのイエスかノーかを言う場合は、非常に政治的な決断の時期です。政治的な決断としてイエスを言う場合は、自衛隊法七十六条発動の事態だと思います。いいですね、それで。
  302. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 イエスと言う場合には、これは国民の非常な重大な運命に関係するのですから、現実に日本の侵略というものがされ、あるいは侵略のおそれがあるという以外に、イエスと言う考え方は私は持っていない。
  303. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それが七十六条です。だからそう了解します。いいですか。——じゃ、この点は私これで終わります。
  304. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどからいろいろと防衛問題というか、論議が続けられました。しかし、どうも閣僚間の答弁あるいは総理のいわゆる政治的な判断を加えての答弁、ますます混乱をしております。まあしかし、もうここで一つお願いしておきたいのです。そういうことでありますので、私はこれから用意しておった質問に入るわけなんですが、機械的に時間が来ましたからはいさようならというようなわけにはいきません。それだけははっきりと委員長に要望しておきますが、いかがでございますか。
  305. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 私も人間でございますから、機械ではございません。したがって、あなたの意見と全く同じです。
  306. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは質問を続けます。  まず予算の提出時期について、これは前国会でまず私が問題を提起し、小林理事があと論議を重ねました。     〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕 その結果、大蔵大臣は、少なくとも予算の大綱はできるだけ早く出したい、こういうような答弁で終わっていると思います。しかし、大正五年に一回あっただけで、今日までいわゆる十二月中に予算を提出するということはいまだかってなかったわけです。  そこで、大蔵大臣、いかがでしょう。ことしというか来年度、あるいはそのとき選挙かもわかりませんが、予算の大綱を示すのはいつごろか。  さらに私が言いたいのは、常に守られないことがわかっているなら、法律を改正したらどうです。守られないことがわかっておって、大正五年一回あったきりでそれ以来もう何年間も一回も守られないような法律なら、法律を改正しなさい。どうでしょう。いかがですか。
  307. 大平正芳

    ○大平国務大臣 十二月中に予算案を国会に提出することを常例とするという規定が忠実に守られないばかりか、現に守られた例が一回もないということは御指摘のとおりでございまして、(田中(武)委員「一回だけある」と呼ぶ)これを改正したらどうかという御提案でございますが、これは国会法との関連もございまして、立法政策の問題として確かに御指摘のように検討に値する問題であろうと考えます。  第二の問題といたしまして、しかしながら、先国会におきまして、予算の大綱につきまして、御審議の便宜のためにいつごろ政府から国会に大綱を示すことができるかという御質問でございますが、従来政府は、予算案の提出とともに、予算と財投計画の説明というものを各議院に御提出申し上げておることを例としてまいったわけでございますけれども、先国会におきまして田中委員から、審議の前に大綱を示すべきでないかという御意見がございまして、それにつきまして、三月一日に本委員会におきまして、私から検討を約したことがございますことは、御指摘のとおりでございます。そこで、その後検討をいたしておるわけでございますが、その当時申し上げましたように、年内編成の場合は官庁御用始め後一週間以内、それから年越し編成の場合は政府案決定後一週間以内の間には配付できるような大綱を用意いたしたいと考えておるわけでございまして、目下その内容、構成等について検討をいたしておるところでございます。
  308. 田中武夫

    田中(武)委員 予算の概要という言葉を使っておられますが、そこで、これは選挙でもしておったら別ですが、五十一年度の予算の概要はいつ示すことができますか。
  309. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまお答え申し上げましたように、年内編成の場合におきましては、官庁の御用始め後一週間程度時間をいただければ差し上げられると思います。年越し編成の場合におきましては、政府案決定後一週間ほどの余裕を与えていただきますならば、概要をお手元に差し上げられると考えております。
  310. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、年内か年を越すかという点についてはまだわからない、そういうことですね。しかし、いずれにしても、十二月中に出すことはできないわけなんです。したがって私は、これは国会法と財政法と二つ関連しますが、守られないような法律なら改正しなさいと強く要求をいたします。いかがです。守られないような法律なら、初めからつくりなさんな。改正することを約束するか。どうですかね。検討するか。どうです。
  311. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは先ほど申しましたように、改正すべしという御提案は、立法政策上の御見識として私はあり得ると思うのでございます。しかし、先ほど申しましたように、国会法との関連もございますようですので、検討していかなければならぬと思うのでございます。政府といたしまして検討に値するテーマだと思いますけれども、いま改正をいたしますということをお約束申し上げるわけにはまいりませんで、よく検討さしていただきたいと思います。
  312. 田中武夫

    田中(武)委員 まあ前向きで守られるような法律にする、そういうような考え方であるということに理解してもよろしいか。
  313. 大平正芳

    ○大平国務大臣 あなたの御提言はよく理解できます。
  314. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは次に、これはまあ詳しくは申しません。これも前国会において私が取り上げた問題ですが、いわゆる外為会計と国庫債務負担行為、これはもう言わなくてもアラブの王さんの云々ということで、そこで大蔵大臣は、次のように答えておられます。  まず第一は、国会に対して事後報告を行うことも一つの方法である。第二に、予算総則上債務保証の限度について規定することも一つの方法である。さらに第三の方法としては、法律上債務保証の限度を明確化することもある。この三点を財政制度審議会に諮って決めたい。それはいつかと言えば五十一年度、来年度の予算の編成の時期、すなわち十一月ごろ。まだ十一月には二日ほどありますが、もうどのような方向で検討が進められておるのか。これはまだ中間報告ということになろうと思いますが、この前国会におけるあなたの御答弁と、財政制度審議会にお諮りになって、いまどのような段階まで審議が煮詰まっておるのか。これは中間報告ということでも結構ですが、ひとつお答え願いたいと思います。
  315. 大平正芳

    ○大平国務大臣 前国会の当委員会におきまして、あなたから御指摘がございました外為特別会計の本邦為銀に対する債務保証供与の問題につきまして、三つの観点から検討を約したことは御指摘のとおりでございます。そこで、四月になりまして、政府は財政制度審議会にこの問題の御検討を要請いたしたわけでございます。財政制度審議会におきましては、法制部会を設けられまして、前国会予算委員会における論議の内容及び問題点の概要を、政府としては法制部会に御報告いたしますとともに、その検討を依頼いたしました。その後、この法制部会におかれましては小委員会を設けられて、具体的な対処案につきまして検討いただいておるところでございますが、まだ結論に到達したという御報告はいただいていないわけでございます。  先ほど田中委員も言われたような三つの接近の方法がございまして、国会に事後報告をするという問題、あるいは予算総則で処理するという問題、あるいは法律上限度を設けるというような問題、そういった問題につきましてそれぞれ御検討をいただいておりますが、いずれによられるのが適切であるかということにつきまして、まだ結論をちょうだいいたしていないのがいまの段階でございます。しかし、仰せのように五十一年度の予算編成を間近に控えておるわけでございますので、できるだけ早く御答申をちょうだいするように督促をいたしたいと考えております。
  316. 田中武夫

    田中(武)委員 では三月の答弁と現在同じことなんです。三つのうちのどれになるような方向で行っておるかということがまだはっきりしません。十一月と、こうあなたおっしゃっておるのですよ、どうなんです。この三つのうちでどれに重点を置いて審議が進められておるのか。どうです。——では、政府委員をして答弁させましょう。
  317. 大平正芳

    ○大平国務大臣 では、主計局長から答弁させます。
  318. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 御指摘のとおり三つの方法を検討しております。それで、私どもといたしましては、そのあとの二つの方の、総則で金額を確定する、あるいは法律である形の限度額を書くという問題につきましては、前の国会でたしか田中委員からも御指摘があったと思いますけれども、事、外国からの機密を要する借り入れに関する件なのでなかなか問題があろうがというような御質問もあったわけでございますが、そのあとの二点の方には、なかなか金額的に大きな金額を書きますと、それはまた外国にいろいろな影響を与えるとか、いろいろな問題がございますので、私ども平後報告の形で何かならないか。しかも、その事後報告が余りおくれては問題がございますので、しかも前国会田中委員の御指摘は、国が法律に基づいて債務を負担することが一応違法ではないとしても、これが巨額に上って相当問題になるということは非常に問題になるというような御指摘もございましたので、私どもといたしましては、事後報告をできるだけ早くするという形で御報告することが適当かといまのところ考えております。
  319. 田中武夫

    田中(武)委員 もっと詰めたいと思いますが、次へまいります。  次は、私がこの予算審議の冒頭で、行政と立法の関係、すなわち行政府の立法に対するいわば国会軽視のことを取り上げました。ところが、あのときには総理、もっともだ、こうおっしゃったのですが、それが必ずしも守られていない。  一、二の例を挙げます。まず財政投融資関係です。これは資金運用部財政について、戦前の預金部は伏魔殿といわれた。今日でも資金の収支の相当分が国会の目の届かないところで行われておる。なるほど、資金の長期運用については国会の決議を必要とするという法律が出された。しかしそれは五年以上。したがって五年未満の問題については法律的根拠はございません。しかも弾力条項ということで、五割まで自由に動かされるというようなことになっておりますが、これ自体法律的な根拠がない。弾力条項については法律的な根拠がない。一体資金運用部にはどれだけの余裕資金があるのか。国会提出資料も、議員がこれらの判断をなし得るような明瞭な資料は出ていない。資金運用部においては九千六百億円の資金増加を見込んで融資を拡大することになっているが、何ゆえに資金運用部特別会計の補正をしないのか。歳入歳出予算の弾力条項があるのでと言われるかもしれませんが、他の特別会計が補正せられておるのに、この会計については行われていないわけなんです。  もう続けてまいります。だからよく聞いておいてください。これは大蔵大臣あるいは総理。こういうことで、いわゆる憲法八十三条の財政処理の基本原則、俗に財政民主主義といわれておるが、それでいいのですか。どうですか。  さらに国鉄運賃におきましては、これは先日後で訂正をせられたようでありますが、一口に言えば、これはもう運賃法という法律であるならば、どうも法律の成立には時間がかかり過ぎる、だから他の方法、すなわち法定事項からはずすということについて、総理も運輸大臣もそういう意見を述べておられます。議事録の写しもここにあります。いいですか。いや、首を振っているなら、はっきりしてください。  この二点をまずお伺いします。
  320. 大平正芳

    ○大平国務大臣 財政投融資でございますけれども、この資金を供給する給源になっております資金運用部の資金は今日三十五兆程度に上っているわけでございまして、田中委員が仰せのように、わが国の財政計画の運営にとりましてきわめて重要なものでございますことは、御指摘のとおりでございます。したがって、政府がただいまこれを管理いたしておるわけでございますけれども、これが適正に管理されなければならぬことは当然でございますが、同時に、国会におかれまして、その内容が詳細にわたって明らかになっており、そしてその管理の内容が国会において十分掌握されておる状態は、財政民主主義のあり方として、御指摘のように私はきわめて根本的なことと思っておりまして、その点、全然私は異論はございません。そこで、御案内のように昭和四十八年に法律ができまして、そういう趣旨から、資金運用部の長期資金の運用につきまして国会の議決を必要とすることになりましたことは、御説明するまでもなく御承知のことと思うのでございます。  ただ、いま御指摘のように、五年未満の期間にわたる資金の運用につきましては国会の議決の対象となっていない、これをどうするんだということでございます。これはいわば資金運用部の資金、政府が預かりまして、これは有利かつ確実に運用してまいらなければならぬ非常に重い責任を持っておるわけでございますので、その性質上、もっぱら流動性と収益性を考慮した短期の運用が保障されねばならぬことでございますので、私どもとしては、従来どおり政府の管理にお任せをいただきたいと念願いたしておるものでございます。しかし、国会の御審議に当たりまして、この内容につきましては、その都度詳細に御説明することは当然でございますけれども、制度のたてまえといたしまして、運用につきましての弾力性、機動性は政府の手にとどめさしていただきたいと念願しております。
  321. 田中武夫

    田中(武)委員 国鉄の運賃については後にしますが、政府の運用にお任せくださいというところがどうも気に入らないのだ。また先ほど言ったように、ほかの特別会計は補正しておいて、これだけはやっていない。さらに、これは損益計算書とか貸借対照表なども当然に変わっておるはずなんです。そういう資料が全然出されないということは承服できません。どうです委員長、そういう重要な問題について、資料が出るまでちょっと待たしていただきましょうか。どうでしょう。
  322. 松川道哉

    ○松川政府委員 この資金運用部特別会計は、いわゆる経費の収支を明確にいたす特別会計でございます。ただいま委員の御指摘になりましたのは資金そのものでございますが、この分につきましては、特別会計の予算参照書の中に損益計算書と貸借対照表を参考資料としてつけて、御審議の便に供しておる次第でございます。
  323. 田中武夫

    田中(武)委員 私が言っておるのは、いつか、福田さん当時だったか、参考資料というようなことじゃだめだ。参考資料というのはあくまで参考なんですよ。国会議決の対象にならないんですね。だからそれは当然、国会議決の対象になるように出すべきだということなんですよ。どうなんです。参考資料とは何だ。
  324. 松川道哉

    ○松川政府委員 この特別会計は、資金の管理をいたすための特別会計でございます。その意味で、従来とも資金そのものには触れられてなかったのでございますが、先生の御指摘もございまして、先ほど大臣が御説明のございましたように、昭和四十八年度からはそれを明確にいたして、そして予算総則で御承認を願う。さらにこれは参照書的なものではございますが、従来は一般会計だけの説明書をつけておりましたものを、財政投融資につきましても、より細かくしたものにして現在御審議の便に供しておる。これは議決ではございませんけれども、そのようにいたしまして、予算総則に出てまいります部分の御審議に便になるようにということで、私ども配慮いたしております。
  325. 田中武夫

    田中(武)委員 これは何年か前に私が指摘し改革したものなんですよ。しかし参考資料というのと議決の対象とは別なんですよ。それが果たして財政民主主義、憲法で言う財政の基本的原則からいっていいのかどうか、その点について明確にしていただきたい。明確じゃないです。明確だとおっしゃる方、どうぞ答弁に立ってください、質問します。
  326. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいま仰せのように、それが国会の議決の対象になっていないということは御指摘のとおりでございまして、そういう制度にいまなっておるわけでございます。で、政府としては、現行制度に基づきまして予算案の提出をいたしておるわけでございます。議決対象にすべきものを参考書類で済ませておるわけでは決してないことは御了承をいただきたいと思います。  ただ、それは議決対象に進んですべきでないかという立法政策上の問題でございますけれども、五年以上の長期運用につきましては、すでに四十八年に立法がなされまして、国会の議決を経ることになっておりますことは御案内のとおりでございますけれども、あなたが御指摘の五年未満の問題につきましては、先ほど私から御答弁申し上げましたように、政府を御信頼いただいて運用の機動性を確保させていただきたいということを申し上げたわけでございます。
  327. 田中武夫

    田中(武)委員 その点なんですよ。そういう制度になっておるというのは一体だれが決めたのですか。どこにそういう制度になっておる根拠が法的にあるのですか、説明してください。
  328. 松川道哉

    ○松川政府委員 五年以上のものを審議の対象にすると申しますことは、四十八年の法律でございます。
  329. 田中武夫

    田中(武)委員 それはわかっておる。わかったことは言うな。五年以上のことについては法律が出ておることは知っておるのだ。それ未満は政府を信用せよとおっしゃる。それは私は大平さんを信用したいと思うのだ。ところが、これは本当のことを言うと、政府が政策的というか、あるいは自由に使えるようなやつを持っておって、それを政治的に運用する、こういうことなんですよ。違いますか。だから、そういう制度になっておると言うから、五年以上については法律的根拠がある、だが自由にさしてもらいたいとか、弾力条項で五〇%とかなんとかいうことは、どこに法律的根拠があるのかと言うておる。それが果たして憲法上の財政の基本的原則に合うかどうか、立法府行政府との関係においてそれでいいのかということを言っておるわけなんですよ。どうなんです。
  330. 大平正芳

    ○大平国務大臣 長短期全部にわたりましてあらかじめ国会の御承認を得るというようにすべきか、ただいまのような、長期運用について国会の議決の対象にし、短期運用につきまして政府に任すというようにすべきか、これは立法政策上の考量の問題だと思うのでありまして、私は現行制度が望ましいということを先ほどから申し上げておるわけでございます。
  331. 田中武夫

    田中(武)委員 それは大蔵大臣なり政府が都合がいいからそう言っておるのだ。法的根拠はないのですよ。  もうこの問題は、そういうようにして、ひとつこれは真剣に検討するということでどうです。政府委員が出てきたって、これはろくな答弁ができぬ。もうよろしい。大臣、どうです。
  332. 大平正芳

    ○大平国務大臣 法律論でございますので、松川理財局長をして答弁させます。
  333. 松川道哉

    ○松川政府委員 資金運用部資金法というのがございます。昭和二十六年三月三十一日法律第百号というのがございます。この法律に基づきまして、郵便貯金を「確実且つ有利な方法で運用する」ということが書いてございまして、その運用の方法は七条に規定いたしております。これを受けまして従来やっておったのでございますが、その中の長期のものについては、先ほど来御議論のありました法律に基づきまして、改めて国会の議決を得るようになっております。そしてまた、この入れ物でございますが、資金運用部特別会計法、この立て方でございますけれども、「この会計においては、資金運用部資金の運用利殖金及び附属雑収入をもってその歳入とし、」云々というように、資金そのものにかかる金の収入というのは特別会計法では扱わないということで、これに関連する経費その他を特別会計をもって処理する、こういう立て方になっております。
  334. 田中武夫

    田中(武)委員 そのことについては、あなたと理事会で大分やったね。この問題については、特別会計法の問題とかなんとかは、理事会で二時間にわたって吉國法制局長官とやり合ったのですよ。だからそれはわかっているのだよ。しかし、五年にした根拠は何か。五年までなら自由にさせてもらいたいということは、結局は政府の都合ですよ。だから、その点についてひとつ検討する、こういう答弁が出るまでは、これは本当にどうにもならぬですな。それはあしたになってもしようがないですな。
  335. 大平正芳

    ○大平国務大臣 検討することにやぶさかでございませんが……。
  336. 田中武夫

    田中(武)委員 それでいいよ。あとの答え要りません。検討することにやぶさかでないということでとめたらいいのだ。大抵前段に言うておいても、しかしながらと続くから混乱するのだよ。みんなそうなんだよ。だからそこでとめなさい。  それから国鉄運賃について、総理、運輸大臣、どっちがやりますか。
  337. 木村睦男

    ○木村国務大臣 田中委員御承知のように、国鉄は破局的な危機というほど大変なひどい状況でございまして、五十一年度から再建計画を実施いたしたい、こういうことで現在いろいろと検討いたしております。  再建の要件としていろいろあるわけでございますが、公共事業であり、また公共負担等もやっておりますので、従来どおり政府の大幅な助成も必要でございます。また内部の合理化も必要でございます。それと同時に、経費の大半を支弁いたします運賃収入が国鉄経営の一番大きな問題になっております。その運賃収入につきまして、運賃改定が適時適切にできるということが非常に必要なことであると私は考えております。従来の国鉄再建が一年、二年にして挫折いたしました大きな原因もそこにあるわけでございます。  そこで、国鉄運賃の決め方につきましていろいろ現在検討をしていただいておるわけでございます。八月に出ました国鉄監査委員会の報告というものがございます。(田中(武)委員「それはいいよ」と呼ぶ)では簡単に申し上げます。それにおきましても、国鉄の運賃は適時適切に改定することが可能となるような規制方法に改めるという意味のことが出ております。  なお、新聞等におきましても、たとえば運賃法定制を見直せというふうにいろいろ出ておりまして、われわれはそういういろんな意見を現在聞いております。また、私が司会をしております国鉄再建問題懇談会におきましても、同じような問題が出ております。その御意見の中には、国鉄の運賃の決め方をもう少し簡略といいますか、改善の方法はないであろうかという意見がいろいろ出ておりますので、それらの意見を十分にくみ取りまして、検討して、再建案の中にこれを取り入れたい、こう思いまして、現在検討いたしておるわけでございます。  前回のときに私が不適当な発言をいたしましたことは、その席で取り消しましたので、ひとつ御了承を願いたいと思います。
  338. 田中武夫

    田中(武)委員 要は、いや何とか懇談会とか、いやどうとかと言っておるけれども、結局は行政ベースの問題なんです。そうでしょう。わかりますか。したがって、本来法定事項であるものを行政ベースに移そうとする動きがあるということは私が指摘した。その一つなんですよ。そうなると自由自在に運賃は上がる。いや、そういうことはしないように歯どめをかけますと言っておるけれども、結局は行政ベースなんですよ。そうでしょう。これ以上論議はいたしません。しかし、私が指摘したように、行政の立法に対する挑戦であると受け取っております。ひとつ総理から、先日の御答弁は当然だと言われたが、そういうことを踏まえて御答弁をいただきます。
  339. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は挑戦だとは思いません。ただ、国鉄の再建について、運賃の決定が法定主義では適宜適切な決定ができないからという意見も……(「そこが問題だ」と呼ぶ者あり)そういう意見があることは事実でしょう。したがって、私が法定主義はいかぬと言っておるのではないのですよ。こういういろんな意見を再建問題をめぐって検討するということは——検討してはいかぬのだということは、これは独断ですからね。しかし、法定主義はいけないと考えて検討するように政府が指示しておるのではないということは、御承知を願います。
  340. 田中武夫

    田中(武)委員 不満ですが、総理から、いま言ったように、政府からそう言っておるのではない。したがって総理は、国会というか、立法の権限に属するもの、それはひとつ尊重する、そういう御答弁であったと解釈しますが、よろしいか。いかがです。
  341. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは立法事項ですからね。現在は法定主義になっておるんだから、これは尊重することは当然でございます。
  342. 田中武夫

    田中(武)委員 時間の関係もあるから次へまいらざるを得ないのですが、法務大臣にお聞きいたします。  七十一国会、四十八年七月三日、商法改正がなされた。そのときに附帯決議がつけられていますね。その附帯決議は、会社の社会的責任ということを言っている。ひとつ読みましょうか。「会社の社会的責任、大小会社の区別、株主総会のあり方、取締役会の構成及び一株の額面金額等について所要の改正を行なうこと」、こういうものがつけられております。そして最近、経済団体連合会から、商法で社会的責任の明文化をすることは反対だという意見が出されておる。ということは、ある程度前向きに商法改正が、ことに私の言う社会的責任の明示ということを検討しておられる証拠であろうと考えます。  続けてまいります。そこで私は次のように御提案をいたしたいんです。  これは商法百六十六条ですが、定款の必要的記載事項が一号から十号までありますね。それに一項目、社会的責任についての条文を入れて、定款にそれを書き入れるように百六十六条を改正する。さらにもう一つは、たとえば資本金十億でも二十億でもよろしいが、一定規模以上の企業で、そして財政投融資資金、いわゆる政府資金、これは国民の金なんです。     〔小山(長)委員長代理退席、谷川委員長代理着席〕 それを、輸銀とか開銀とかその他について融資を受けているところ、こういったところ、あるいは公害発生源の企業とか公共性の強い企業、これらにつきましては地元住民——これには労働者とか婦人団体とかいろいろ入ると思いますが、地元住民あるいは学識経験者から成る経営管理委員会、仮称ですが、これを設ける。現在では、ただ単に企業が利潤追求の場ではなくていわゆる社会的存在である、こういう点からそういうようにひとつ改正を検討せられたらいかがか、私はそういう点を御提案をいたしますが、いかがですか法務大臣
  343. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 田中さんのおっしゃる企業の社会的責任については、当然のこととして、附帯決議にもあり、法務省といたしましては、この附帯決議の趣旨にかんがみまして現に検討を進めておるわけです。  法制審議会商法部会で昭和四十九年九月から会社法の基本的な問題点についての討議が開始されている。同部会の意を受けて、事務当局からいまおっしゃったようなことも含めて、各方面の意見、たとえば裁判所、弁護士会、学界、各種の経済団体、中小企業団体、労働界、そういうものに対して意見の照会をしております。それらの意見を本年中に取りまとめ、これを資料として法制審議会商法部会において会社法改正について審議は行われるものと思います。詳細につきましては、民事局長を呼んでありますから、お聞きください。
  344. 田中武夫

    田中(武)委員 その検討の中に、私が言っているような、商法の百六十六条の定款の問題、あるいは経営管理(仮称)委員会のような問題も入っていますか。
  345. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 百六十六条のいまおっしゃったような事項の改正追加、具体的に第三者に経営管理権を与えるような経営委員会というのは、そういう名前は挙げておりません。したがって、そういう問題も含めてすべて検討をするにやぶさかではない、こう申し上げているのです。
  346. 田中武夫

    田中(武)委員 私の提案は何回か法務委員会等でもやっております。したがって、これを踏まえてひとつ検討していただくことを申し上げて、次にまいります。  次に、補正予算の問題に入ります。  今回の補正予算は、異常ずくめの補正予算と俗に言われておる。これは結局は政府の経済見通しの誤りから出てきた補正なんです。ところが、総理を初め副総理、あるいは大蔵大臣等々の本会議における答弁等を見ておりましても、結局は、これは世界的なインフレだとか石油ショックのせいだとかいうようなことで責任を回避される、こういうように思うんですが、総理あるいは副総理、大蔵大臣、それはちょっとひきょうじゃないですか。補正予算を出さねばならなくなったことは、結局は政府の経済見通しの誤りであったことを率直に認めなければだめなんですよ。だからこそ補正予算を出していま審議しておるわけなんです。どうなんです。ただ外的な原因に責任を転嫁するというような態度ではだめだと思うんです。これは率直に経済見通しの誤りがあったことは認められてはどうですか。これはいかがです。
  347. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済見通しに誤りがあったことにつきましては、まことに遺憾とし、これを残念に思います。ただ、経済政策については誤りがあったか、こういうふうに本会議なんかで聞かれておりまするものですから、経済政策につきましては、その大局において過ちをしたとは思っておらぬ、こう申し上げているのです。見通しにつきましては誤りがあったということは、まことに残念でした。
  348. 田中武夫

    田中(武)委員 いつもそうなんだ。前段はいい答弁するんだけれども、あとになるとまた一口言わざるを得ないということになるんだが、率直な副総理の、残念である、こういう発言があったから、まあいいことにいたしましょう。  それから、今日、異常インフレと同時に不況だ、こう言われておる。私は、スタグフレーションですか、そんなむずかしい英語を使いません。不景気と物価高、インフレとが同居しておる。田中内閣は調整インフレと列島改造で超インフレ、投機経済をあおり、そして三木内閣になってからは、今度はその本質を見抜くことができなくて、公定歩合を引き下げたとかなんとかやられたが、これはもう時すでに遅いという感じです。  したがって、今日、この状態を招くに至ったのは、田中三木内閣の共同正犯であり、福田、大平両大臣もこれは共犯だと申し上げたいのですが、総理どうですか。それとも副総理どうですか。共同正犯であり、あるいは共犯……。
  349. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 何せ大変な時局でありまして、世界じゅうがいまインフレまた不況に悩んでいるのです。そういう中におきまして、わが国の物価の情勢、これは世界の中でもとにかく先端を行っていると、こういうふうに考えております。また、景気の情勢につきましても、いまOECDで各国の状態を検討しているのですが、恐らく本五十年におきましてプラスの成長になるのはわが日本だけではないかと、こういうふうに思うのです。非常に困難な中でありまするけれども、全力を投入してやっておる、こういうことでございますが、とにかく至らないところはいろいろあります。反省いたしまして、ひとつこれからインフレのない成長を実現する、これをわれわれ政府の全責任でやっていかなければならぬ、かように考えております。
  350. 田中武夫

    田中(武)委員 ここでちょっと論議をしたいんだが、もう時間もないししますから……(「ゆっくりやろう」と呼ぶ者あり)ゆっくりやりましょう、秋の夜長というから。  そこで、若干飛ばします。例の列島改造論で土地投機に日本じゅうが狂奔した。これは事実なんですね。否定できない事実。興国人絹の倒産なんかもその一つですよ。それはいいとして、地方自治体が、無計画と言えばちょっとひどいかわかりませんが、いわゆる土地先行取得ということで、県や市の土地開発公社、あるいは第三セクター等で、主に地元の銀行等で金を借りてやっておる。そして膨大な借金と土地を抱えていま四苦八苦しておるというのが実情です。また建設省関係では、公共用地の取得とかなんとか、新聞の記事も持っていますが、新聞の記事によると、これは何か公共用地七千億、先行し過ぎた先行取得等の新聞の記事も出ております。また、これはちょっと古いのですが、自治体に対してこれが重荷になっておる。まだ千四百五十九億円が残っておるというような新聞記事ですが、そういう記事も出ておる。また通産省は、工業団地、流通センターなどをつくるということで、農地をつぶして用地造成をやった。ところが、こういう不景気で企業は来ない、したがって土地は売れない、こういう状態が起きておる。これは地価が鎮静したのがいわば裏目に出たといいますか、そういうこともあろうと思いますが、結局は資金のむだ遣いであり、地方公共団体等では利子も大変だと思うんですよ。  そこで、自治、通産、建設、各大臣から、いま申しましたようなことについて、その実態をここでひとつ明らかにしていただきたいと思います。いかがですか。
  351. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  田中さんが御指摘のように、自治体あるいは八社において、非常にいまそういう面で苦労をしておることは事実でございます。いま数字を挙げてということでございますから、われわれの方で調べたところによりますと、大体七千百四十三億円建設省の関係がございまして、そのうちで直轄事業で二千五百九十億円、補助事業で四千五百五十三億円というようになっております。  ただいま御指摘のように、実はこの点は、非常に地方自治体が、一時、これは私そういうことを言うのはいかがかと思いますけれども、土地は先に買っておいた方がいいぞというようなことがあって、買ったことは事実でございます。そうしてみると、そういうことがあるのに、いまここに来て非常に困っておるということであれば、これは何としても、建設省あるいは運輸省その他、買った土地をできるだけ消化をしてもらうような努力はいま続けてやっておるわけでありますけれども、しかし、まだこれ全部を処理しますには五十三年ごろまでかかる可能性がある。そうなりますと自治体が困るし、公社も困りますので、実はいま、何としてもこの問題についてはわれわれとしてもある程度責任を感じなければいけない、こういう感じで、何とか処理をしたいという意味で、実は建設省、運輸省等々関係省とも連絡をいたしまして、起債等でできるような面があれば起債を認める方法とか、その他の面でひとつ対策を考えたいということで、いま研究をいたしておるところでございます。
  352. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 お答えをいたします。  建設省関係の先行投資は、ただいま自治大臣から申し上げたとおりであります。私どもは、現状の場合はできるだけ再取得の時期を早めていきたいと思っておりますし、これからの新規の取得はできるだけ抑制をしていきたい、こういう考え方を持っておりますが、やはり自治大臣の申し上げたように、完全に解消してしまうには三年、場合によっては四年ぐらいかかるかもしれないということを心配しております。それが地方財政にも大きな影響を及ぼしておることはもとより当然でありまして、できるだけひとつ各省庁相談の上でこの対策を考えてまいりたい、かように存じております。
  353. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 四十九年の通産省の調査でございますが、昨年の九月現在で全国で工業団地が千二百七団地、その面積は約七万三千ヘクタールでございます。現在売却済みの面積がおよそ半分でございます。残っております面積が約半分、こういうことでございまして、各方面にこれが非常に大きな負担になっております。景気の回復とともに順次売れるとは思いますけれども、しかし、いずれにいたしましても、この問題は再検討する必要があろうかと思います。(田中(武)委員「金額は」と呼ぶ)金額はまだ出ておりません。
  354. 田中武夫

    田中(武)委員 総理は。
  355. 谷川和穗

    ○谷川委員長代理 ちょっと……。
  356. 田中武夫

    田中(武)委員 後は総理に聞かぬとね。——総理、いまいわゆる土地の先行投資の問題で各省に聞いたわけなんです。その答弁を得たのですが、これはいわば政府が指導したというか、政府の指導と推進でなされたこと、そういう結果であります。したがって、これは政府の責任においてどう処理するのか、あるいはどのように対策を持っておられるのか、明らかにしていただきたい。いかがですか。
  357. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 委員長の許可を得てちょっと参りましたので……。  いろいろ質問があったのでございますが、田中委員の御指摘になるように、昭和四十七年、八年、金融も緩慢になり、土地というものに投機の対象が向いたという事実は御指摘のとおりでございますが、土地がこういう投機の対象になるということは好ましいことではないわけでございますから、昨年の十二月でしたか、国土利用計画法というものをつくって、これからやはり土地の処理というものに対しては厳重な規制を加えていくことにいたしたいと思っております。四十七年、八年の事態は非常に異常な事態で、政府としても反省されるものがあることは事実でございます。
  358. 田中武夫

    田中(武)委員 だから具体的にどのような対策をお持ちなのですか。
  359. 大平正芳

    ○大平国務大臣 土地の問題につきましては、御案内のように、これを投機の対象、思惑の対象にしたものについてまで政府が責任をとるというわけにはまいりません。けれども、まじめに経営いたしておる企業が金融等に困りまして、非常に困窮の立場に立つというようなことは忍びないことでございますので、政府資金はもとよりでございますけれども、民間資金の動員もあわせて考慮いたしまして、そういった事態に対応いたしましてのあらん限りの措置は講じてまいっておる次第でございますし、今後も続けてまいるつもりでございます。
  360. 田中武夫

    田中(武)委員 まあよくわからぬが、ともかく対策は立てます、金融の道も考える、こういうことであったと理解いたします。  そこで政府は、四回にわたってですか、公定歩合を引き下げたり、いわゆる低金利政策をとった。それでいかぬから第五次も近くやるというようなことも言われておる。そういたしますと、水が低い方へ流れるように、金は今度は金利の高い方へ流れるわけですね。そうしたら、金利を引き下げた場合には、日本の資金というか、これがやはり金利の高い外国へ出ていく危険がある。したがって円安傾向というのが出てきておるわけですね。そこでドル買い円売りというか、そういうことが起こっておる。それが今度は輸入価格に反映して輸入価格が上がる。まあ輸出はしやすくなるが、また採算の合わぬ輸出をせにゃいかぬ、こういうようなことになろうと思います。そこで、こういうようなことを含めて、どうです、国際収支に不安はないと思うのですが、国際収支に対する不安はないのかどうか。  ついでですが、これは外貨準備金とか金保有とかいうことをかつてはようやりました。しかし、この際外貨準備金はどの程度あって、大丈夫か、その辺のところをお伺いいたします。
  361. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、為替相場が安定しておりますことが、物価政策その他経済の安定にとりまして不可欠の要因でありますことは、御指摘のとおりでございます。ただ、いま為替市場はごらんのようにフロートいたしておるわけでございまして、政府がこれを規制するわけにはまいりませんけれども、ただいままでのところ、御指摘のように若干円安の傾向が出ておりましたけれども、最近になりましてその傾向もやや是正されておりますし、きょうの為替市場三百一円六十五銭というところで引けておるようでございまして、比較的安定した推移を見ておるわけでございます。私どもといたしましては、これが安定した状態において推移いたしますように諸般の施策を懸命に推進してまいらなければならぬと考えております。  仰せのように、これが輸入価格に端的に響いてまいりますことは御承知のとおりでございまして、大体五、六%ぐらい、卸売物価の中での輸入物資のシェアはそのぐらいになっておると思うのでございますから、これは大変重大な問題だと心得て、為替の安定ということにつきましては、十分政府として注意を払ってまいりたいと考えております。  それから、外貨準備はただいま百三十二億ドル内外保有いたしておるわけでございまして、今日の為替操作におきまして支障はない状況でございます。
  362. 田中武夫

    田中(武)委員 外貨準備はどうなんです。いま幾らぐらいあるのですか。
  363. 大平正芳

    ○大平国務大臣 百三十二億ドル強でございます。
  364. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、物価の問題等々、ここに用意しておるのですが、石油製品の値上げにしぼります。  これは昨年の三月、当委員会において、私がカルテルと行政指導の関係を質問したことに対して、吉國法制局長官がこの問題に対する政府の統一見解を示した。それを一々読むと長くなりますから要点だけを申し上げます。  それは、事業者がカルテルによって価格操作を行うことは独禁法違反である。第二に、最近のように物価抑制が最大の国民的課題となっていることを考慮するならば、物資所管官庁が、価格抑制の観点から価格に関する行政指導を行うことは必要やむを得ないものである云々、その根拠は各省設置法だ、こういうことでした。これは、通産大臣との間に通産省設置法について論議をしてもいいのですが、それはまあやめておきましょう。しかし、これは物価抑制が最大の国民的課題であって、万やむを得ない場合ということで、緊急避難的なものであろうと私は理解しておる。それで第三点は、価格に関する行政指導が認められるとしても、指導を受けた事業者がさらに共同して価格操作を行うことは独禁法違反である。こういう三点でしたね。それに対して公取委員長は、行政指導により個別的に事業者を説得をして価格設定をされることは可能としても、それらの個々の事業者が全く横を振り向かないで応ずるということは少し不自然で考えられない。したがって、法律に基づいてやるべきであるという意味の見解を述べておられる。議事録はここにあります。  そこで通産大臣、これは伝えられるところによると、石油業界の逆ざや解消のために、石油価格、石油製品価格というか、一々は触れませんが、二段階でやる。こういうことで、第一段階はガイドライン方式、そして第二段階は石油業法に基づく標準価格というように考えておられるように聞いております。しかし、第一段の問題については、これは問題がある。  第二の、いわゆる石油業法では、標準価格を決める場合、これは条文の一部を読みますと、十五条のところですが、「石油製品の価格が不当に高騰し又は下落するおそれがある場合において、石油の安定的かつ低廉な供給を確保するため」となっていますね。だから、この十五条でやられることは法的根拠があるわけです。ところが、先ほど言ったように、行政指導でやることは緊急避難的な要素があるとして、私は吉國長官から政府の統一見解があったと思う。また、十五条は、著しく高騰しまたは下落するおそれがある場合という歯どめがかかっておるんですよ。だから、同じやるのなら、そういうことでなくて石油業法十五条でおやりなさいね。そうすると、法律的根拠があるが、標準価格の決定には十五条による歯どめがかかっておる。こういう点について、二段階で上げるとかどうとか言っておられるが、どうですか、大臣
  365. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 石油業界の状態は御案内のとおりでございまして、いま逆ざやが非常に大きな数字になっております。したがいまして、現状では年間数千億の赤字が出る、こういう経営状態が続いておるわけでございまして、もしこういう情勢が続きますと、経営の維持はもちろん困難になりますし、またこの石油の安定的供給という点も非常にむずかしくなる、こういう点を心配いたしまして、いまいろいろ対策を考えておるところでございますが、あす石油審議会を開きまして、とりあえずこの逆ざや分をどう解消するかということについていろいろ御意見を聞いてみたいと思います。そういう段取りでいま運んでおるところでございます。  それからなお、引き続きまして後何回か審議会を開いていただきまして、先ほどお話の標準価格の問題等も含めまして、今回のOPECの値上げ等がございましたので、その分をどう処理するかということにつきまして引き続いて検討をしていただく、こういうスケジュールでいま進めておるところでございます。
  366. 田中武夫

    田中(武)委員 もう一度私、申し上げますよ。  昨年の統一見解の場合は、第二点、これは緊急避難的な要素であると理解しております。そして石油業法の十五条の場合は、著しく高騰しまたは下落するおそれがある場合という歯どめがかかっておる。このことについて論議をいたしたいのですが、残念ながらもう時間もありません。  そこで公取委員長、この問題について公取委員長の見解を遠慮なくずばり言っていただきたい。
  367. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 余り問題を広げたくありませんので、石油の問題について申しますと、行政指導が行われましても、その行政指導の有無とカルテルの存在とは関係ありません。ですから、いま委員おっしゃいましたように、横の連絡があればこれはカルテルになります。そして、なお行政指導によるやり方は、昨年の場合ですと、これは三月の統一見解で、私も実はそれは参加しておるわけでございますが、緊急避難的な意味でやったのだ、それは物価を抑制するということが最大の眼目である、ねらいである、こういうことでございました。ですから、値上げをするためにやるということが、果たしてそういう緊急避難的なものと同じと解釈できるかどうかに実は問題があると思います。ただし私は、いかなる場合も行政指導がいけないと言うほど、頑迷固陋に物を言いたくないのです。  先生のおっしゃるとおり、確かにこれは、急に高騰したり、非常に著しく高騰するとか、また著しく下落する、そういう不安定な状態のときに石油業法の標準額の発動があるわけです。しかし、これは実は誤解がないように申しますが、私は、この標準額の設定ですね、標準額を決めることは統制価格を決めるのじゃありません。これはやはり行政指導の一種でございます。ですから、行政指導の一種としてそういう方法を用いられること、それは他の方法によるよりははるかに明朗ではないかというふうに考えるものでございますから、おやりになるのでしたら、そういうふうにやっていただきたいが、必ずしも法律の趣旨にぴったり合ったものではない。およそ値上げに政府が価格介入するということはかなり異例なことではないかと私は思います。また、それからそれへと波状的に、たとえばナフサを上げれば石油業界がまた値上げをしなければならぬとかいうふうな問題が生じまして、大変めんどうなことになります。その点、十分慎重におやりいただきたいということを私は切望するものであります。
  368. 田中武夫

    田中(武)委員 これで通産省と公取委員長の見解ははっきりしたと思います。——もう時間が来たということだが、これは機械でないとおっしゃったんだから……私も無理に引っぱろうとは思いません。まあこれは、はっきりしたところで、ひとつ後へ積み残します。  次に、中小企業でもこれだけをお聞きするのです。  もうまとめて言います。政府は、大蔵省の第四次不況対策を編成するに際して、中小企業に仕事がいくように公共事業をアレンジしたのかどうか。また、八千億の公共事業のうち、幾らが中小企業に回ると考えられておるのか。またその時期はいつか。建設、運輸、農林等、関係の閣僚からお伺いいたします。  続けてやります。倒産が急激にふえておるということは事実です。これはもう統計も持っております。だがそれは別としても、法務大臣伺いたいのですが、いわゆる会社更生法の——これは裁判所の問題ですが、法務省の方で調べていただくように前もって連絡しておると思うのです。いわゆるここ一、二年といいますか、における会社更生法申請の件数と、そのうち開始決定があった件数、それを規模別にひとつお知らせ願いたい。  私の言わんとすることは、会社更生法の適用は、第一条に「再建の見込のある」云々というあれがありますから、これはそういうことでございますが、もう中小企業はこの会社更生法の適用も受けられないんじゃないか、こういう感じを持っております。そういうような点について、ひとつ法務大臣の方から御答弁をいただきたい。  それから公取委員長からは、いわゆる不景気だということで、親企業からの下請に対する支払いが現在どういうようになっておるのか。また、手形サイトも長期化しておる、こういうことを聞いておりますが、下請代金支払遅延等防止法の二条の二とか四条とか、四条の二等々、これは一々挙げませんが、その現状及び対策というか、公取はどう考えておられるか。一括して中小企業問題をぱらぱらとやったわけですが、それぞれ御答弁をいただきたい。
  369. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 お答えをいたします。  建設省関係は、国費二千八百億、財投四千億、大体七千億余りが公共事業であります。これは総事業規模を考えますと一兆一千億ぐらいになりますけれども、その中で、たとえば道路は一般が一千億で、高速が六百億、それから治山治水も大体全部で一千億ぐらいですけれども、ダムの五百億があります。河川四百億、砂防が千二百億と、下水道が六百億、住宅金融公庫は御承知のとおり二千六百億、公団が八百五十億、災害が一千億、こういうふうに今度の補正ではなっておるわけでありますが、その中で特に大規模のものといえば、高速の六百億、道路の直轄、ダム五百億、住宅公団の八百五十億、これが大企業的なものであって、その他はやはり地方の補助事業になるわけでありますから、従来の実績から申しますと、やはり直轄関係が四〇%、補助関係が六〇%余りぐらいが中小企業にいけるのじゃないか、こういう考え方で努力をいたしております。
  370. 香川保一

    ○香川政府委員 四十八年以降、会社更生法の申請のあったのと開始決定のあった数を申し上げます。  四十八年は四十三件、開始決定がございましたのはそのうち三十件でございます。四十九年は百四十件、開始決定がございましたのが九十九件であります。五十年度は九月末現在でございますが、七十件申請があって、二十三件開始決定がなされております。  それからこれらの会社の規模を申し上げますと、大小いろいろございますが、資本金が一億以上の会社が七件、それ以下が五十件ぐらいございます。小さいのは百万円以下のもございます。  それからもう一つ、規模の参考として従業員の数でございますが、千人を超えるものが一件、それから十人以下のものが四件というふうに、途中ばらつきがございますが……。したがいまして、先ほど御質問の小規模の企業につきましても、株式会社でございますれば会社更生法の申請ができるわけでございます。株式会社以外の会社、あるいは個人企業、さようなものは会社更生法の適用がないのでございますが、これは立法当初は、和議法によって破産をとめる、こういう考えであったわけでございますが、今日においては、いろいろ諸情勢を見てやはり検討すべき問題だ、かように考えております。
  371. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、その申請と決定、これを見ていろいろと詰めていきたいと思っておったのですが、これは時間の関係でやめますが、感じとして、もう小さなところは、ほとんど会社更生法による申請すらできないうちに、ばったばったといってしまう。法律は、会社更生法第一条で株式会社ならどれでもやれるとなっておるけれども、どうも私の感じは、これはひとつ大臣の方がいいと思うのですが、こういう状態の中で、小規模事業というか、中小企業は会社更生法の申請をしても、どうも開始決定には至らないのじゃないかというような感じを受けておりますが、どうでしょうか。
  372. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いま、民事局長がお答えしたように、実際は小さいのもたくさん開始決定をしておるわけでございますから、そう先生の心配なさるような状態にはないように思います。
  373. 田中武夫

    田中(武)委員 通産大臣中小企業庁長官でもよろしい。これは統計も持っていますが、ともかく会社更生法の申請に至らないで倒れる、これが多いと思うのですがね。そういう点については、通産省あるいは中小企業庁、何か統計を持っていますか。
  374. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 最近の倒産は、大体負債額一千万以上のもので九月で千件を超えております。そのうち資本金一億円以上の企業の倒産は例月一、二件でございまして、ほとんどが中企業でございます。  そのうち、会社更生法を申請いたしておりますのは、いまも法務省の方からお話がございましたように、年間で数十件という件数でございますので、大半が会社更生法には至らないで倒産をいたしておるという状況かと存じます。
  375. 田中武夫

    田中(武)委員 といったような状態なんです。したがって、これはやはり総理、それとも副総理、どうでしょう。ばったばったと中小企業が倒れていく、しかも会社更生法の申請すらできないのが多いということは、いまの答弁にあったとおりです。このような点について、中小企業に対して今後どのような対策をとるのか。これはやはり通産大臣だな、ひとつお答え願います。
  376. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまの中小企業の倒産の状態につきましては、齋藤長官が答弁したとおりでございます。  そこで、まず第一番に考えておりますことは、とりあえず年末が参りますので、年末の金融対策を十分考えなければなりませんし、それから返済期限が来ましても、仕事がないために収益を上げて返すことができない、こういう企業が非常に多くなっております。そこで、返済については弾力的に運用する、そういうことでやるわけでございますが、中小企業の中には株式会社にしていないところも相当あるわけですね。そのために会社更生法が適用されないという事例も多いわけです。そういう場合には和議法などを適用する、こういう場合もあります。いずれにしましても、年末を控えまして金融面におきまして十分配慮していくつもりでおります。
  377. 田中武夫

    田中(武)委員 時間を節約し、できるだけ協力する意味において、私は一つ一つまとめてやっていきますから、しばらくお許しを願います。  次に、公害問題でもずっと用意しているのですが、これをざっと一遍にやりますから、それぞれの関係大臣、よく聞いていて答弁願います。  まず第一は、代替物質の公害について。たとえばPCBが毒性があるということで、これの使用を禁止した。そうすると、それにかわるものということでいろいろなものを使う。ところが、後から見ると、その代替品の方がより有害であったという事実がたくさんあります。そこで、そういうようなことについて、有害性あるいは危険性について十分の検査がなされなければならないと思う。これは環境庁。  飛ばします。次に、レモンの防腐剤としてOPP、これを使用したものを厚生省は禁止した。ところが、これは聞くところによると、農林大臣が例の小麦を買い付けに行って、米農務長官と交渉した際に、ともかく、このOPPを使ったというか、塗ったといいますか、これのレモンの輸入をなにしておる。そこで厚生省は、今度アメリカに対してその毒性を照会したが、それが来ておるのか来ておらぬのか。あるいは来ておるのを発表せずに食品衛生調査会にかけているのか。こういうことでありますので、そのような状態。  それから次は、不況と公害防止投資、これはもう数字なんか挙げません。ともかく不況だということで、公害防止に対する投資が急激に減っております。このことは、結局は企業が本気で防止協定をやるということではなくて、実は世論とか社会の批判とか、あるいは政府、自治体等から行政指導というか、基準を決められ、いやいやながらやっておるというのが本音でしょう。したがって、こういう不景気になってくると、ややもするとそういうことはおろそかになっておる。数字を持っておりますが、これはやめますが、たとえば去年に比べて本年度は、これはもう二〇%以上は増加するだろうと見ておったのが、現在では三〇%減少しておるのです。そういうような状態について、環境庁、どういうように考えておられるか。  それからこれは通産省、いわゆるソーダ工場の水銀汚染の問題で、水銀法から隔膜法へ転換ということで、まず本年の五十年九月、三分の二をやる、あとは五十三年の三月までに完成する。ところが現在では、全然そういう数字でなくて約半分の三四・五%だ。一体どこにそういう原因があったのか。聞くところによると全然手をかけてい々い企業がある。名前はいま申しませんが、そういうのもある。こういうことで、五十三年三月末までには、予定どおり隔膜法にというか、そういうことに転換をさすような自信があるのかどうか、そういう点。  それからさらに、いま問題になっておる塩化ビニールモノマー、これによる死者が出てきた。しかも八年前に死んだ従業員が、私は会社に殺された、だから私の体を死んだら解剖してくれ、こういう遺言をしておる。いわゆる内部告発が行われており、その火元である三井東圧化学の名古屋工業所長というのですか、これは危険の認識があった、こういうことを言っておるのです。そういうような問題。  ことに、この問題に関連して労働省にお伺いしますが、労働安全衛生法の五十八条ですか、これは新たな原料を使用する場合にはあらかじめその毒性を調べなければならない、そういったような規定がある。ところが現在は、これは空文化しておるような問題だ。だからこれについてどう考えるのか。これは労働安全衛生法の実施状況及び塩ビ問題とをあわせて、労働省の態度を伺います。
  378. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先生御承知のように、昭和四十九年の四月十六日に化学物質の審査及び製造に関する規制法律が施行になったわけでございまして、新しく輸入または製造する物質は全部事前にチェックすることになっておるわけでございます。ところが、先生御指摘のものは、これ以前のものの化学物質の有害の問題だと思います。実は通産省では、その物質の分解性、蓄積性を検査いたしまして、それに基づいて今度は怪しいというものは、その毒性検査を厚生省がやります。私どもの方は環境の調査をやるわけでございます。この既存の化学物質が数が非常に多いわけでございまして、そのうちにどうもやはりよく調べる必要があるなと思うものが四百くらいある。それをいま通産省で鋭意分解性と蓄積性についての検査をやりまして、厚生省で有毒性の分析調査をやっているわけでございます。できるだけ各省庁とよく連携をとりまして、御趣旨のような弊害のないように私どもも努力してみたいと思います。  それから第二点の、公害防止投資がずいぶん不況を理由にして減っているじゃないか。実は全体的に見ますと、ここ二、三年は非常にふえているわけでございまして、ことしの二月に通産省所管の業種の一億以上のものにつきまして通産省が調査をいたしました結果では、去年の九千七百億に対しまして一兆三千七百億、こういう推定をいたしておる。これはもちろん推定でございます。そこで、先生おっしゃるような事態があってはいかぬというので、最近また通産省でも調査を願っております。  それで、私どもの公害防止関係の融資でございますが、これを拝見いたしますと非常に申し込みが多いわけでございまして、必ずしも前年度より意欲が減っているようにはちょっと見えないのでございます。開銀の方の公害防止の枠も当初九百二十三億でありましたのが、第三次で四百億追加し、第四次でまた四百億追加いたしました。公害防止事業団も九百億でございましたのが、今度の補正、弾力条項の発動で三百六十五億の追加をいただきましたが、これもまだ足らぬぐらいだというようなことでございますので、マクロ的にはそんなに減っていないのじゃないかと思うのでございますが、御指摘がございましたから、私どもも、不況なるがゆえに公害防止を節約するということは許しませんので、ひとつ、できるだけ通産と一緒になりまして、指導を徹底していきたいと思っております。  それから苛性ソーダの製法転換の遅延の問題でございますが、これは理由の細かいことについては通産省でございますけれども、三分の二の転換の指導でやりましたのがおくれておりまして、大変残念に思っております。ただ隔膜法の転換については、また隔膜の弊害等もございますので、私ども環境庁としては、できるだけ例のイオン交換樹脂法を徹底してもらいたいと思っておるわけでございます。  あと塩ビの問題は、御承知のとおり大変な問題でございますので、労働者の方の対策と相まって、私どもは大気や水の汚染についてできるだけの対策をとってまいりたいと思っております。
  379. 田中正巳

    田中国務大臣 レモンの保存料につきましては、過日農林大臣が渡米した節にも向こうから要請があったということは、私も聞いておりますが、そういったことではなしに、ことしの夏のレモン等の需給状況、ことにかなりの腐食をして値段が上がったという実況にかんがみまして、もしオルトフェニールフェノール、サイアベンダゾールが使える、安全性が確保できるものならということで、いま資料をいろいろと求めております。しかし、この資料の中には、一応の毒性に関するものは入手ができましたが、催奇形性、つまり遺伝の安全性に関するものが実はまだ入手できておりませんので、したがって今日まだ食品衛生調査会に付議するところまではいっておらないというのが現況でございます。
  380. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま厚生大臣もお答えいたしましたが、私が八月に渡米いたしましてバッツ長官にお目にかかりました際に、向こう側からOPPにつきまして日本側で使うようにしてほしいという要請があったわけでございます。これは農林省の管轄でないので厚生大臣にその要請は伝えますということで、帰りまして厚生大臣にその旨を伝見たわけであります。
  381. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 塩化ビニールの問題については、四十四年から私の方はずっと手当てしておりまして、今度ああいう事故が起こりましたから、車速そういう労災をかけること。それから、いままで勤めた人、下請、こういうものも全部洗って万全の策をやります。
  382. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 苛性ソーダの製造法転換の現状につきましては、いまお話しのとおりでございます。少しおくれておりますが、大体来年の三月に約六割転換をいたします。残りは五十三年の三月を目標にいたしております。  それから塩ビの問題につきましては、設備の改善につきまして開銀から金を出させるように指導いたしております。
  383. 田中武夫

    田中(武)委員 論議はしたいのですが、いまの不況と公害防止投資の問題については若干違うのですがね。私の調べたところでは、一月から三月までは千二百五十億円を使っておる。これは四十九年度に比べて減少しておるわけです。それから四月から六月までは八百六十五億円、これは前年同期に比して三〇%の減少になっておるのです。こういう問題についても論議をしたいのですが、委員長に協力します。  そこで、次にもう一点だけ、これは災害の問題ですが、これもばっと読みます。したがって、よう聞いておいてください。  まず地方公共団体の財政が極度に逼迫しておるということは御承知のとおりである。ところが、本年度の被害地方公共団体に対する国の財政援助については、全般的に特別の措置を講ずる必要があろうと思います。ということは、特別交付税とかあるいは地方債の問題であります。これは自治大臣、大蔵大臣。  それから次に、激甚災害法の適用について、これは国土庁ですかどこですか、激甚災害としての指定基準について、激甚災害として政令指定をする場合の気象による区別の現行制度、たとえば、本年の北海道における九月上旬のあの秋雨前線による被害、あるいは東北地方における七月下旬の集中豪雨による被害等々の問題について、その指定について私は、弾力的というか、さっきは弾力条項いかぬと言ったのだが、今度は弾力的に運用する必要がある、こういうように思います。  それから集団移転の問題。これは建設、国土だと思うのですが、集団移転促進事業については、現行は基準戸数を十戸としておるが、基準に達しない場合の救済措置との関係から、現在の予算措置、すなわち、国の二分の一補助によって行っておるがけ地近接危険住宅移転については、この補助率を上げてもらいたい。これは現在の二分の一から四分の三にしてもらいたい。この点をこの法律に組み込むことを検討すべきである。  それから災害が指定漏れとなった実例等も挙げたいのですが、これはやめます。  中小企業関係の激甚災害として政令に指定する現行制度、たとえば高知における特に中小企業関係の災害が、所得推計による基準に、これは一〇%というのが基準ですが、これが七%程度で三%足らぬ。ところが隣のところでは適用になっておる。こういう実例があるから、そういう点について検討してもらいたい。  それから個人災害に対する救済。これは厚生省だと思うのですが、個人災害に対する救済制度の確立を早急に検討してもらいたい。これは福祉行政として補償とかを考えるということになろうと思います。  それから現行の災害の弔慰金百万円の支給及び災害援護資金、これも百万円ということの貸付限度があるけれども、これを引き上げるとともに、これは一律ということになっておるが、所得制限、幾ら以上の所得の者、あるいは低所得の者については配慮を払うべきではないか、そういうように思います。  それから移転事業の積極的推進についてその行政指導、たとえば、被害地住宅の危険性とか、いわゆる再被害が起こらないように居住者への指導、こういう点について、これは国土庁かな、関係閣僚からお答え願いたい。  一括して読みましたが、わかりましたか。
  384. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  激甚地の災害につきましては、お説のとおり、非常にわれわれとしては特別の措置をしなければなりませんので、起債の面並びに特交において十分措置をするように考えをいたしております。
  385. 金丸信

    ○金丸国務大臣 九月上旬の北海道の豪雨につきまして、八月上旬あるいは五号、六号の台風と一緒に一括激甚災の指定をしようという考え方で検討をいたしましたが、気象状況が北海道の九月上旬の状況は違うというようなことで、やむを得ず指定から漏れたわけでございますが、しかし、財政的にも、あるいは金融的な面につきましても、漏れたところは局地激甚災の指定とか、あるいはそれから漏れたものにつきましても金融財政措置を十分にしていただきたいということを、閣議でも私は要請いたしたわけでありますし、また、その地方からの陳情も切なるものがありましたから、ぜひひとつ、いろいろ困る問題につきましては国土庁が窓口になって皆さんの御要望にできるだけこたえたいと、こういうことで善処をいたしておるわけであります。
  386. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先般の四国の高知県における被害でございますが、高知市の中小企業関係はいまお話しになったとおりでございまして、基準に達しなかったものですから指定から外れております。この際この基準を見直せ、こういう議論もあるのですけれども、これはなかなかむずかしい問題でございまして、関係各省と十分連絡をとりまして検討してみたいと思います。
  387. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 御質問の要旨は、がけ地近接危険住宅移転事業の補助率を引き上げようということと、それを防災集団移転促進事業の特別措置法の体系に組み入れよというのでありますが、実はこのがけ地の危険住宅移転事業というのは、住宅災害から個人の生命を守るという事業でありまして、もう一つの措置法は集団移転事業を促進しようというのでありますから、若干集団移転事業と個人の場合と対象が違うわけでありまして、そういう意味で、いますぐ特別措置法の体系に入れるということには少し無理があるようでありますから、検討さしていただきます。  なお補助率の問題でありますが、現在は二分の一、同和地区は三分の二でありますが、これも集団移転促進事業ではなしに個人の住宅対策でありますので、そういった面で、いますぐ補助率を引き上げることには、若干各省との検討も必要かと思います。そういう面でひとつ御理解をいただきたいと思います。
  388. 田中正巳

    田中国務大臣 災害の個人救済につきましては、先般、議員立法でもってこの制度が初めて起こったわけでありまして、その後の改正も議員立法でやっているわけであります。したがいまして、委員とよく相談をいたしまして善処をいたしたいと、かように思います。
  389. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは最後に一言。  これは審議に協力する意味で大分やってきたんだが、最後に一亘二木総理に申し上げたいのですが、総理は常に対話と協調を口にしておられる。ところが、いままでのところ、どうもそういう点について欠けるところがあると思うのです。そこで、対話と協調は、常に真実を語り誠意を持って当たることから生まれると思います。官僚的なごまかしと無責任からは対話は生まれないのでありまして、そこで、総理は野党との党首会談を考えておるというようなこともおっしゃると思いますが、これはまだ国会中なんですから、むしろ国会の場において、各党の委員長、党首、あるいはそれにかわるべき人との間に、前に、総理はだれだったか忘れたが、社会党の河上委員長のときにそういうことをやったことがあるわけなんです。そういうようにやられたらどうか、このように、これは私見ですが、考えております。  大先輩の総理に大変失礼ですが、議会の子として自任せられておる三木さんが官僚のとりこにならないように、あえて一言苦言を申し上げて私の結論といたします。
  390. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 田中君のまことに御親切な御注意、ありがとうございます。言われることは、党首会談の点は、これからいろいろ問題がございますが、他につきましてはお説のとおりに考えております。
  391. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして昭和五十年度補正予算三案に対する質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  392. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 昭和五十年度補正予算三葉につき編成替えを求めるの動議が提出されております。  これより、本動議について趣旨弁明を求めます。田代文久君。     —————————————   昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)につき編成替えを求めるの動議     —————————————
  393. 田代文久

    田代委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、昭和五十年度一般会計補正予算昭和五十年度特別会計補正予算及び昭和五十年度政府関係機関補正予算につき、撤回の上編成脅えを求めるの動議を提出し、その提案の趣旨を説明いたします。  案文はお手元に配付しておりますので、その概要を御説明申し上げます。  今日、国民生活は長期にわたる深刻な不況と高進するインフレの同時進行のもとで、戦後最大の危機に陥っています。失業者の増大と就職難、中小企業の深刻な経営難と倒産の増大、農村の荒廃と農業危機の激化、労働者の実質賃金の連続的低下、福祉水準の実質切り下げなど、各界角層における国民生活の著しい破壊が進んでおります。  いま国民が求めておるのは、この危機をもたらした根源である大企業奉仕の高度成長型の税制、財政経済の仕組みをできる限り取り除き、国民本位の危機打開の緊急対策を直ちに実行し、国民の切実なる要求にこたえることであります。  しかるに、政府提出の補正予算三案は、国民の切実な要求にこたえるどころか、徹底して国民犠牲、大企業奉仕のものとなっております。すなわち、当初予算に盛り込まれた大企業本位の経済政策の仕組みを受け継いだ上、不況対策の名のもとに、財界の要望にこたえて、高度成長の表看板であった高速道路、新幹線など列島改造計画の大別プロジェクトを復活させ、そのための財源を、亡国的な大量の赤字国債の発行と酒、たばこ、郵便料金の大幅な引き上げに求め、一方では、国民のための支出を無慈悲に削減しておるのであります。  わが党は、政府補正予算案提出に先立って、出る九月十六日、経済危機打開の緊急政策を発表し、不況とインフレを解決して国民生活を守るための実行可能な具体的な方策を財源問題をも含めて提起し、本年度補正予算において実行するよう強く主張してまいりました。  わが党の緊急政策の眼目は、第一に、不況とインフレから国民生活を防衛し、物価高を抑え、国民の所得を高めること。第二に、生活基盤投資を重点に国民本位の不況対策を実行すること。第三に、財政危機打開、財源確保のための緊急措置をとること。第四、経済の自主性回復に向かうための措置をとることであります。  本動議は以上の基本的立場に立って、本補正予算案の根本的な見直し、再編成を要求しております。  まず、歳入関係についてであります。  第一に、大企業、大資産家への特権内減免税の是正を行うことであります。  わが国の税制ほど大企業を優遇した不公正税制はありません。実際の貸し倒れ損の約四百倍の計上を許し、大銀行に巨額の内部留保を保障する貸し倒れ引当金など各種準備金、特別償却を初め、不況を口実に、大企業が利益を隠して欠損企業になると、前年払った税金を還付するという戻し税制度があり、現に最近の四カ月でも一千三百億円以上が大企業に戻されています。こうして大企業の方が中小企業より実効税率が低いという逆累進の措置となり、たとえば新日鉄のごとく世界一の鉄鋼会社でありながら、実際の法人税の負担率はわずか一八%にすぎず、他方、中小企業は四三%を超えるという驚くべき状態であります。  このような大企業奉仕の高度成長型税制にメスを入れ、適切なる是正措置をとることによって、不公正が是正されるとともに、優に二兆円に及ぶ財源を得ることができます。  あわせて国民が不況、インフレによる所得水準の低下に苦しめられている現在、消費支出を増大させるためにも、勤労者の所得税につき一万円の税額控除を行い、年内減税を実施いたします。  国債の発行は、将来の長きにわたって国民に過酷な重税をもたらすものであり、激しいインフレ促進要因でもあります。本補正予算においては、収支の適正化を図って、特例法による赤字国債の発行は不必要となります。  次に歳出についてであります。  まず、大企業奉仕の不要不急の経費は大幅に削減いたします。  憲法に違反する自衛隊の四次防推進のための航空機、戦車、艦船など新規装備品の購入費の未契約分、研究開発費、装備整備費などの未執行分は大幅に削減します。米軍基地移転集約のための施設移転整備費の未執行分も全額削減し、米軍に負担させることとします。これらによって約二千億円以上を節減することができます。  公共事業費については、高速自動車道路建設費、国鉄新幹線建設費など、産業基盤整備のための支出を大幅に削減し、生活基盤整備に回すことが必要であります。また、YX開発費、外航船舶建造利子補給金など、大企業への補助金は大幅に削減します。  第二に、国民生活防衛と国民本位の不況打開のための緊急対策についてであります。  酒、たばこ、郵便料金など公共料金の値上げはやめて、物価の安定を図るため、独禁法の改正と国会における物価対策特別委員会の権能の強化を図ることといたします。  国民生活を防衛するため、失業者の失業給付金の引き上げ、給付対象の拡大を行うほか、失対事業の就労制限を撤廃し、これを拡充することといたします。  中小企業に対しては、中小企業危機打開対策本部を設置して、要求に迅速に対処するほか、中小企業への官公需発注の強化、大企業による中小企業分野への進出規制の法制化を図ります。  福祉水準の低下を防止する措置としては、老齢福祉年金を一万五千円に引き上げ、生活保護基準の大幅な引き上げ、社会福祉施設入所者の処遇改善を進めることとします。  国民の生活基盤整備として、低家賃の公営住宅一万二千戸の建設を促進し、下水道、屎尿処理施設、公園など、生活関連投資を思い切って広げ、保育所の増設、小中学校プレハブ校舎、危険校舎の解消も含めて、約一千百五十億円を予定することといたします。  農林漁業の振興のため、土地改良、休耕田の復元などに一千六百億円を支出いたします。  石炭産業についても、石炭及び石油対策特別会計の中身を組み替え、石油備蓄費や石炭大資本への補助金を削減し、鉱量調査、炭鉱開発、産炭地域振興事業などに振り向けることといたします。  地方財政の危機打開のためには、地方交付税減額分の全額臨時特例交付金による補てん、地方税減収額に対する全額政府資金による減収補てん債の発行、地方公営企業に対する金利負担軽減などの財政援助の強化など、特段の措置をとることといたします。  国民生活最優先の立場から、これらの諸措置を講じ、収支を適正に調整することによって、赤字国債を発行することなく編成することといたしております。  以上、組み替え動議の要点のみ、御説明申し上げましたが、これは、国民にとって緊急かつ最小限の要求であります。  委員各位におかれましては、本動議に御賛同くださらんことをお願いしまして、趣旨説明を終わります。(拍手)
  394. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 以上をもちまして動議の趣旨弁明は終わりました。     —————————————
  395. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより討論に入ります。  昭和五十年度補正予算三案及びこれに対する編成替えを求めるの動議を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。塩谷一夫君。
  396. 塩谷一夫

    ○塩谷委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十年度一般会計補正予算外二案に対し賛成し、日本共産党・革新共同提案の組み替え動議に反対の討論を行おうとするものであります。  本補正予算の内容を一言にて申し上げますと、三兆八千七百九十億円に達する歳入不足の大部分を、建設国債一兆一千九百億円、赤字国債二兆二千九百億円の国債の増発で埋めつつ、景気の回復と雇用の安定を図るため、さきの第四次不況対策で約束された公共事業費等を追加しようとするものであります。  例年における補正予算は、公務員の給与改定、米価改定、災害復旧などの歳出増加分を、いわゆる税の自然増収で埋めるのが基本的パターンであったことを考えると、まさに隔絶の感があり、今日の日本経済がいまだかつて経験したことのない困難な局面に立っていることが理解されるのであります。  すでに所信表明演説、経済及び財政演説にて明らかにされているとおり、一昨年の秋の石油危機により、わが国経済が大変な事態に陥ったことは、いまだなお記憶に新しいところであります。前年同月比、卸売物価は三七%、消費者物価は二六%を上回るという狂乱状態となり、国際収支は四十八年度わずか一カ年間で基礎収支百三十億ドルという巨額の赤字を記録したのであります。  この事態の克服のため、調整過程の第一年目に当たる四十九年度には、総需要抑制政策が強力に推進され、物価の鎮静と国際収支の改善が図られたのであります。そして調整過程の第二年目に当たる本五十年度は、物価安定が次第に定着していく中で、いかに景気を浮揚させていくかが重要な課題とされているのであります。  すなわち、個人消費は伸び悩み、民間設備投資も沈滞を続け、輸出は世界経済の停滞から予想外の不振に陥っているのであります。これが、法人税を初めとする三兆八千七百九十億円の税収の落ち込みにつながっているのであります。  したがって、全治三カ年のわが国経済の療養期間においては、財政による需要喚起のためにも、赤字国債の発行によって事態を乗り切ることは、やむを得ない措置と判断するものであります。私は、むしろ補正予算成立後の経済運営こそ重要であると考えるものであります。  大幅なデフレギャップが存在している今日、国債の発行は、市中消化の原則を堅持し、資金需給の動向を慎重に見守り、その円滑な消化を図るならば、決してインフレの火をつける事態には至らないと信ずるものであります。景気とインフレの両方をにらんだ経済のかじ取りには、従来に増して柔軟性と機動性が要求されるのであります。  こうしたとき、公定歩合の引き下げを含む一連の金利改定は当然のことと考えるものであります。また将来の財政運営も重要であります。歳出と歳入の全体を洗い直し、国債依存度を引き下げ、財政の健全化を回復しつつ、しかも福祉を拡充する方向を打ち出さなければならないからであります。  かかる見地に立って、本補正予算の内容に関連し、一、二の点について賛意を表したいと思います。  まず第一に、一般公共事業、災害復旧事業及び社会福祉施設、文教施設等の各種施設の整備のほか、住宅対策、公害対策を含め、事業規模にして約一兆六千億円の追加を行い、これに中小企業に対する金融措置を加え、合計約二兆一千億円の施策を実施することであります。  しかし、調整過程の道のりはいまだ半ばにしか至っておりません。総仕上げの五十一年度にインフレなき繁栄を定着させるため、昭和二十二年財政法施行以来、初めての減額補正の中で、不況対策を生活基盤投資に重点を置いて適正な規模にとどめたことについて、まず賛意を表するものであります。  第二は、地方財政対策として、国も苦しい借金財政の中で地方財政計画に計上した歳入の確保に努力したことであります。国税三税の減額に伴い、地方交付税は一兆一千五億円の減少となるのでありますが、当初予算のとおりの額を確保し、さらに、地方公務員の給与改定等の財源として四百十五億円を追加したことであります。このため、一兆一千二百億円に上る額を資金運用部資金から融資する道を開き、その利子を国の負担とするほか、本年度限りの措置として、臨時地方特例交付金二百二十億を計上したことであります。また、地方税の減収、公共事業の追加に伴う地方負担の増加に対処し、総額一兆二千七百億円の地方債を追加したことであります。今日の自治体の財政難を緩和するために払われた努力は十分評価されるべきであると考えるものであります。  第三に、人事院勧告の完全実施のための国家公務員の給与改善のほか、米価改定に伴う生活扶助基準の引き上げ、地方自治体の超過負担の解消のための運営費の補助単価の引き上げ等の予算を計上したことであります。苦しい財政の中で、賃金、福祉などの面にわたり個別的対策が十分配慮されている点にも賛意を表するものであります。  最後に、日本共産党・革新共同提出に係る組み替え動議について述べますと、個々の問題については、今後の課題として検討すべき点はあるとしても、全体としては、実現性に乏しい架空財源に頼り、歳出は場当たり的で全体のバランスを乱すものと言わざるを得ません。  この際、私は、インフレのない繁栄を実現するための政府の適切かつ強力な政策運営を期待し、政府原案に賛成、共産党・革新共同の組み替え案に反対の意を表明するものであります。(拍手)
  397. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に、湯山男君。
  398. 湯山勇

    ○湯山委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十年度補正予算三案に反対の討論をいたします。  以下十項目について順次申し述べます。  第一は、今日の異常な事態を招いたことに対する三木内閣責任についてであります。三木首相は、これを石油ショックを初めとする世界的現象であって、三木内閣の政策に誤りはないと強弁しておられますが、中央、地方を通じての深刻な財政の危機、仕事と生活に対する国民の不安等々、すべて総理を含めた自民党施政のもとで起こったことは紛れもない事実であります。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕 まず、この事実に対する責任の自覚と反省に欠けている点のあることは、きわめて遺憾なことと言わなければなりません。  第二は、政府がこの臨時国会の任務を正しく把握していないことであります。本臨時国会の最大の任務は、第四次不況対策を中心とする補正予算審議であります。わが党の反対を押し切ってまで、九月十一日、国会を召集しておきながら、補正予算の案が提出されたのは、一カ月もたった十月九日でありました。これは国民の期待を裏切り、国会を軽視したことになるのでございます。しかもその予算審議の最中に、国民の望んでいない酒、たばこ、郵便料金の値上げ法案の審議をあ見て強行いたしました。これは最優先すべき予算審議を妨害したことであります。四兆円を超える国の歳入欠陥よりも、酒、たばこ等三千億円の歳入欠陥が重視されたことになります。これらは、本国会の任務を忘れ、事の前後、軽重をわきまえない、非常識な、かつ暴挙とも言うべきものであります。  第三は、経済の見通しの誤りであります。不況による租税収入は三兆七千五百億円、当初見込みに比し二二%の減少となっております。この巨大な見通しの誤りは、もはや誤差の問題ではなくて、政府の姿勢、能力の問題であります。この重大な時期に間違った海図で安全な航行をしようというのは不可能であります。第一次から第三次に及ぶ不況対策の失敗の原因もここにあります。これほど大きな前代未聞の誤りを犯したことは、それだけで総辞職に値する重大な責任問題であります。  第四は、その歳入欠陥を補うための公債乱発についてであります。この補正予算では、本年度の国債発行額が五兆四千八百億円となり、歳入総額の二六・三%になります。国の歳入の四分の一以上が借金によって贈れるという不健全な財政であります。これによって国債の累積は十六兆を超えます。国債を除く歳入は十五兆三千五百億円でありますから、正常な一年間の歳入では借金が払えない。まさに倒産財政と言うべきであります。しかも、そのうち二兆二千九百億円は特例公債、すなわち赤字公債であって、その償還計画も明らかでなく、来年度出すかどうかも不明ということでありますから、これは認めよというのが無理であります。三木総理はインフレを抑えて経済を健全化したと言っておられますが、不況による不健全さはますます拡大しております。右手の荷物を左手に持ちかえても、荷物が減ったことにはなりません。まして、歳入の欠陥は赤字公債に頼る以外に方法がないならばともかく、すでにわが党が本会議及び当委員会で指摘したとおり、大企業の所有地の地価再評価、各種準備金、引当金、交際費、租税特別措置等について大企業優遇の税制を是正することによって充足可能であります。それを採用しないで安易な公債政策をとることは全面的に反対であります。  第五は、公共事業を中心とした不況対策についてであります。財源が枯渇している地方財政で、果たして公共事業が遂行できるかどうか。高騰した土地代金に多くを食われる非能率的な事業になるのではないか等、疑問が残ります。高速道路、新幹線、本四架橋等の大型プロジェクトは直接大企業を潤すでしょうが、それが国民大衆に及ぶ前に、その効果はシャボン玉のごとく途中で消えうせてしまうでしょう。公共投資はあくまでも化活関連のものに切りかえるべきであります。景気対策としては、減税その他、個人消費の拡大を図ろことが有効であることは世界の常識であります。それを無視されていること、及び弱者に対する配慮が欠けていることは、この補正予算案の重大か欠陥であります。  第六は、公定歩合の引き下げと預貯金金利の引き下げであります。このたび、日銀の公定歩合一%の引き下げと、これに伴って郵便貯金初め預貯金金利の引き下げを行うことになっております。貸出金利は、一流企業へのプライムレート初め、順次大企業から中小企業に及ぶことになっておりますが、中小企業向けについては、金利の引き下げがかえって歩積み両建ての強化につながるおそれがあります。なおまた、貸出金利引き下げに伴う金融機関の利ざやを確保するため預貯金の金利の引き下げを行えば、国は国債の金利負担が少なくなるので、発行額が五十銭高くなっております。そのため、応募者の利回りは逆に〇・一%悪くなっております。つまり、今回の措置によって財界と国は喜び、金融機関はまあまあというところ、今日でも目減りで損をしている預金者、国民大衆は、さらに目減りが拡大して最大の犠牲者となるのであります。これはまさに非民主的なやり方というよりも反民主的なやり方であって、強く反対を表明いたします。  第七は、物価対策であります。今次補正予算には、常例になっていた食管会計への繰り入れが計上されておりません。これは、生産者米価を低く抑え、逆に消費者米価を九月から大幅に引き上げたためであります。生産者、消費者にしわ寄せして政府は涼しい顔をしていることをこの予算自体が告白していると言っても過言ではございません。やがて莫大な公債の日銀引き受けによるマネーサプライによる通貨の膨張が予想されますし、物価を抑制すると言いながら、先日はあの酒、たばこ、郵便料金等の引き上げの強行をしようとしております。石油、電気料金、運賃、電話等々、公共料金を初め独占、寡占価格の値上げが待ち構えております。このときに当たり、前国会で全会一致で本院を通過した独禁法改正案を本国会に提出しないことは、まさに国民に対する総理の公約違反であり、最大の裏切り行為とも言えるのであります。なお、十二月に麦の売り渡し価格引き上げだけの米審を開くことについては、強く反対を表明いたします。  第八は、中小企業対策についてであります。インフレと不況の中で、中小企業の倒産は上半期で六千件を超見ております。自殺さえも相次いで出ています。中小企業の不況対策として四千八百億の資金を見込んでいると申しておりますが、その実体は、昨年の年末融資四千五百億円に比べて、わずか三百億円しかふえておりません。中小企業に資金と仕事を確保するためには思い切った対策が必要であります。  第九は、地方財政対策であります。交付税交付金の財源と地方税の減収と公共負担分として、国、地方を通じ二兆三千九百億円の借金が見込まれています。国も借金をするのだから地方も借金でやれという露骨な地方自治の侵害であります。地方税等の減収を補う地方債のうち、借り入れ先を自分で見つけなければならない分九千億円の地方債の消化は果たしてできるでしょうか。自然増収が当然のようにあった時代は過ぎて、大幅に歳入不足の時代に入っております。交付税率を変えないということ自体が誤りであります。わが党は交付税率の引き上げと、当面の対策として第二交付税の創設を提案することにいたしております。このままでは財源、資金、そして権限まで中央に掌握され、地方自治は存亡の危機にさらされることになってしまいます。  第十は、失業と雇用対策についてであります。失業者の数について、政府の発表は八十万、九十万、百万以下になっております。しかしその実数は三百万以上と言われております。出かせぎ、内職、パート等の失業はなお増加の傾向にあります。農村へのUターンがふえていると報じられておりますが、農村はすでに労働力の調整機能を失っております。大量の解雇の歯どめ、失業給付の改善等は緊急の課題であります。この春闘では首か賃金かの選択を迫られて、低賃金をのんだ組合も少なくありません。雇用対策が諸外国に比してわが国は特に劣悪であることを強く指摘いたします。  以上のほか、数え上げれば際限がありません。要するに、誤った見通しの基盤の上に誤った政策を立て、それに固執して大資本擁護にきゅうきゅうとしている三木内閣がその根本姿勢を改めない限り、国民は五十一年度予算三木内閣の手によって作成することは断じて許さないであろうということを厳粛に警告いたします。  なお、共産党提案の編成替えの動議につきましては、理解できる面も多々ありますけれども、なお検討すべき点も多く、直ちに賛意を表しかねます。  以上をもって、政府三業並びに共産党の動議に反対の討論といたします。(拍手)
  399. 谷川和穗

    ○谷川委員長代理 次に、津金佑近君。
  400. 津金佑近

    ○津金委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となりました政府提出の補正予算三案について反対、編成替えを求める動議に賛成の討論を行うものであります。(拍手)  激しい不況、インフレの長期化という未曽有の経済危機の中で、何よりも物価を抑え、仕事を確保し、国民生活を防衛すること、これこそが、国民が今国会に大きな期待を寄せた緊急かつ最大の課題であったのであります。  今日の深刻な経済危機が、国民生活を犠牲にし、生活環境、農漁業を破壊し、石炭など自国のエネルギー産業を破壊した上に、大企業の世界一速い資本蓄積と設備投資を推し進めた自民党政府の大企業優先型の経済政策の結果であることは、すでに国民的常識となりつつあるのであります。  ところが三木内閣は、口では転換を言いながら、第四次不況対策とその裏づけであるこのたびの補正予算でも、大企業を優先した高度成長型の経済政策の枠組みを依然として維持し、不況とインフレの二重苦にあえいでいる国民には一個の圧迫を加えようとしているのであります。  その第一は、物価の安定を願っている国民要求に背を向けて、文字どおり物価値上げの補正予算としたことであります。三木内閣は、さきの国会国民の世論により廃案となった酒、たばこ、郵便料金の大幅値上げを、何の反省もなく再び盛り込み、しかも、その値上げ法案成立のため、国会ルールを踏みにじり、その審議機能を破壊してこれを強行採決するという暴挙をあえて犯したのであります。これは、議会制民主主義を力づくで踏みにじるものであり、断じて容認できないのであります。しかも、その上に、国会議決の要らない国鉄の料金の値上げまで盛り込んでおります。そればかりか、財政演説では、今後公共料金を大幅に引き上げることを公言し、予算審議の中でも、この値上げ三法は新価格体系への移行であり、単に値上げするという角度の問題ではない、こう答弁をしたのであります。  これは、政府がみずから今後の相次ぐ公共料金引き上げの突破口をつくるとともに、バターから鉄鋼までといわれる一連の大企業製品の値上げを助長しようとするものであり、国民に対する許しがたい挑戦であると言わねばなりません。  私は、政府が、国民の切実な要求にこたえ、国民本位の立場に立って、今後の物価上昇の引き金となるこの値上げ三法を撤回することを重ねて強く要求するものであります。  第二は、厳しいインフレ、不況のもとで特に深刻な生活難に苦しんでいる年金生活者や身障者など社会的に弱い立場にある人々の暮らしを守る対策が全く放置されているということであります。  補正予算案は、老人の憩いの場である老人クラブ助成費、老人就労あっせんの事業費や身障者のための点字図書館の費用などを削減しておりますが、地方、憲法違反の自衛隊の艦船、航空機など新規装備費は予定どおり実行すること、これと対比するならば、その不当性はさらに明らかであります。  三木内閣は、食べる物も、着る物も切り詰めて苦しい生活に耐えでいる国民の声には、聞く耳を持たないのでありましょうか。明治、大正、昭知の苦しい時代に働き続けてきたお年寄りに、また不自由な体で懸命に生きようと努力している人かに、限られた財源の中でも福祉年金をせめて当布一万五千円に、生活保護費や失対賃金、福祉施設入所者の待遇などを五割引き上げることは、その意思さえあるならば十分にできることであり、わが党はこの実施を強く要求するものであります。  第三は、中小企業の倒産の激増や、実際には三百万人を下らないといわれておる失業者の増大する中で、仕事を求めている国民に対し、政府はあくまでも、まず大企業が大もうけできる新幹線、高速道路、本四架橋など列島改造計画の大型プロジェクトを復活させる補正予算としたことであります。その上経済演説では、雇用不安の解消は今年度内はできないと冷酷に突き放したのであります。これは高度成長が生み出した経済のゆがみを一層拡大する以外の何物でもありません。  いま緊急に必要なことは、住宅難解消のための低家賃の公営住宅、下水道普及率の低さ、小中学校の教室と高校の不足、保育所を初め社会福祉の施設劣悪さなどを打開するための生活基盤投資、災害復旧や治山治水のための投資、農業再建や石炭産業復興のための投資など、高度成長が残した大きなゆがみの是正のために重点的に投資することであります。これこそが国民本位の不況打開の道であります。わが党が提起した本予算案に対する組み替え動議こそ、まさに不況を克服し国民生活の向上を願う国民の期待にこたえるものであります。  三木総理は、政府案について、大企業本位との批判は当たらない、生活関連、住宅等の環境整備にはできるだけの予算を計上したと答弁しております。しかし、生活基盤整備事業の推進のかなめである地方財政については、この補正予算で追加した事業に伴って、ただでさえ苦しい地方自治体に一層負担を重くし、さらに地方税減収分一兆一千億円の大部分をも自治体独自で借金しなければならないのであります。これでは、住宅や生活基盤整備事業は放置し、大企業のための産業基盤整備事業の遂行だけを重点としたものであることはだれの目にも明らかではありませんか。  また、地方交付税の不交付団体として、東京都、大阪府などに押しつけている財政調整の名による交付制限も、見直しの必要があるにもかかわらず放置されており、大都市財政をも一層の苦境に追いやるものとなっているのであります。  第四は、財政赤字の穴埋めと大資本本位の公共事業などの財源を、国民の犠牲によって捻出するということを露骨に示しているという問題であります。  すなわち、大平蔵相は、防衛費の削減や電算機六社と海運への補助金はそれぞれ理由があり、やめるつもりはない。公共投資の産業基盤二、生活基盤一の比率を逆の二対一にせよという道理ある提案についても、五十年度予算の組み替えをしないことはたびたび述べている。さらに大企業への法人税還付も、やめるわけにはいかないなどと答弁し、国民本位の財源対策の提案をすべて拒否したものであります。そして、公共料金引き上げなどと加えて、財政法違反の赤字国債を大量に発行し、三割近い借金まみれの国家財政にしようとしているのであります。  一般会計の三割近い五兆四千八百億円という巨額の国債発行が、市中銀行の金を吸い上げると同時に、日銀信用が供与される現在の金融の仕組みのもとで、直ちにインフレと結びつくものであることはきわめて明らかであります。また、その使途が、一兆二千億円を超す防衛費や事業費で見れば、八千五百億円もの新幹線、高速道路などの大企業本位の公共投資などのための財源であること、また巨額の元利償還費を必要とし、国民に対する増税の先取りである点など考えるならば、まさに亡国国債と言わざるを得ないのであります。  最後に指摘しなければならないのは、この補正予算の性格を先取りした第四次不況対策についてであります。それは、七月の財界首脳と三木内閣や自民党首脳との会談の結果、財界から自民党への政治献金再開と軌を一にして、三木内閣が財界から注文された不況対策をすべて実行しつつあるという問題であります。三木内閣のこの施策は、国民生活の安定と国民経済の正常な発展を無視したものであり、低成長下で大資本の利益を図るため、高度成長型経済政策の仕組みをそのまま引き継ぎ、金脈で結ばれた大資本本位の発想に基づくものであり、国民の期待を完全に踏みにじったものと断ぜざるを得ないのであります。  以上、申し述べたように、政府三案はとうてい容認できないものであり、これに対して反対、日本共産党・革新共同提出の編成替えを求める動議に賛成の意見を述べて、私の討論を終わるものであります。(拍手)
  401. 谷川和穗

    ○谷川委員長代理 次に、山田太郎君。
  402. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十年度補正予算三業に対し、反対の討論を行います。  具体的に反対の理由を述べる前に、政府・自民党の国民無視の国会運営について一言申し上げたい。  政府は、九月十一日に国会を召集しておきながら、補正予算案を国会へ提出したのは十月九日でありました。酒、たばこ、郵便料金の値上げを先行させることを目的とした悪らつな国会対策の手段に使うために、強いて補正予算案の提出をおくらせたと言わざるを得ません。政府みずから今国会は不況克服の中心施策となる補正予算審議するために開催したと称していた以上、今国会の冒頭に提出するのが政府の責任なのであります。あまつさえ補正予算案の審議中に、補正予算案と重要なかかわりを持つ酒、たばこ及び郵便料金値上げ法案を、政府・自民党は衆議院を強引に通過させてしまったのであります。数を頼みとするこのような暴挙は絶対に許すことはできません。私は政府・自民党に対して強く反省を求めるものであります。  以下、反対の理由を申し上げます。  第一は、今回の補正予算案は、政府の政策の失敗にほおかむりをしているばかりではなく、不況、インフレの被害を受けている国民生活を最優失する内容になっていないことであります。  当面するわが国経済は、戦後最大の深刻な事態に追い込まれ、失業者、企業倒産は、一向に減少する気配もありません。このような事態は、いかに三木総理が強弁したとしても、政府の政策の失敗であることは明らかであります。すなわち、経済成長を四・三%確保し、その上で物価を安定させるとする政府の公約を放棄し、物価一点集中主義の政策をとってきたことであります。その物価も依然として一〇%以上の上昇を続けているとあっては、何をか言わんやであります。  私は、今回の補正予算は、不況、インフレの被害を最も受けている国民生活を救済するために、低所得者層に対する所得税減税、さらには老人、生活保護世帯、母子家庭等の生活を守る社会保障政策の拡充がまず優先されなければならないと思うのであります。さらに、景気対策のための公共事業は、大型プロジェクトよりも公共住宅、上下水道、学校、保育所など、国民生活関連の公共事業に重点を置くべきなのであります。この点は配慮のない補正予算案に反対せざるを得ないのであります。  第二は、歳入、歳出の洗い直しを積極的に行わないで、しかも償還計画をあいまいにして巨額な赤字国債を発行していることであります。  巨額な赤字国債の発行を余儀なくされたのは、高度成長期における放漫財政、インフレ、さらには五十年度税収見積もりの方法に重大な誤りがあったからであります。赤字国債発行に追い込まれた政府の責任はまことに重大なのであります。にもかかわらず、歳入欠陥を生ぜしめた放漫財政にメスを入れ、歳出の見直しや不公平税制の是正による歳入確保に積極的な努力をしていません。強いて言えば、金融機関の貸し倒れ引き当て金の繰り入れ率を千分の十から当面千分の九・五にし、既定経費の節減として七百四十一億円削減した程度なのであります。  一方、償還計画も全く体裁程度だと言わざるを得ません。借りかえをせず、十年間で二兆二千九百億円償還することは容易なことではないはずであります。低成長下において飛躍的な税の増収が望めない現在、償還財源対策の明確化は当然であります。われわれは、大企業保有の土地に対しその再評価益課税を創設し、これを十年間分割納付させるよう要求したのでありますが、これにも耳を傾けようとしていないのであります。これでは付加価値税等の創設によって国民に新たな負担を課そうとしているとしかとれません。償還財源の明確化をあくまで要求するものであります。  さらに、市中消化とは名ばかりのわが国の実情において、インフレを誘発しないための具体策も講じていないことも納得できないのであります。  反対理由の第三は、困窮に追い込まれている地方財政の救済策が地方自治体の巨額な借金にゆだねられていることであります。  政府の財政経済運営の失敗による地方交付税交付金の減額分については、国が全額責任を持つことは当然と言わなければなりません。百歩譲っても、地方自治体が資金運用部資金に返済するための財源対策を明らかにしなければならないはずであります。よもや政府は、高度成長期のように自然増収が期待されるとは思っていないでありましょう。だとすれば、全く成り行き任せと言わざるを得ません。地方交付税の交付税率を引き上げる等の具体策を要求するものであります。  また、地方税の減収に対する補てん措置も納得できるものではありません。不況の影響を直接受ける地方税制の改善に努力を払わず、地方税の落ち込みを地方債に任かせ、その地方債も大部分を地方自治体の民間資金調達に任せてしまっているのであります。  租税特別措置や地方税の非課税措置などの洗い直しや法人事業税の外形課税及び事業所税の範囲の拡大を図るべきであります。さらに地方自治体の超過負担の解消に真摯な努力を傾けず、地方自治体の一時借入金、すなわち財政調整資金の確保についても具体的な対応策を持っていない補正予算案を認めることはできないのであります。  第四は、中小企業対策及び雇用対策がきわめて不十分であることであります。  中小企業の倒産、失業率の高水準という事態は、政府のように、景気対策をやってみよう、それが成功すれば景気は回復し倒産や失業問題は解決するだろうといった発想は、説得力を持つものではありません。  中小企業を倒産の危機から救済するためには、中小企業が直接潤おう国民生活関連の公共事業の遂行を初め、公明党が提唱している先業資金を確保する無担保、無保証、無利子の融資制度の創設、さらには中小企業減税、大企業の不当な中小企業分野への進出規制など、総合的かつきめ細かな対策がとられるのは当然であります。  雇用対策にしても、新規学卒者の就職対策、中高年齢者や身体障害者の失業回避、不払い労働債権の保全等についての具体策や雇用調整給付金の支給延長について、明確な方針が必要なのであります。  政府は、物価を安定させるために、失業や倒産の激増は耐えてほしいとは言っていないはずであります。政府の政策の失敗によって生じた深刻な事態の解消に責任を持つべきなのであります。  反対理由の第五は、補正予算案が多くの国民が反対する酒、たばこ、郵便料金の値上げを前提して編成され、また赤字国債を含む三兆四千八百億円の国債を発行するという、物価を上昇させる要因を数多く抱えていることであります。  物価は依然として一〇%台の上昇を続け、原油値上げを理由に大企業製品の値上げが予想される今日、公共料金の値上げは絶対に避けなければならないことは言うまでもありません。もし、酒、たばこ、郵便料金に続いて国鉄、私鉄、電話、電報料金などの値上げが強行されるならば、不況の上にさらに厳しい物価高という事態に直面しなければなりません。さらに、国債の市中消化が名ばかりのわが国においては、実質日銀引き受けと同じであり、通貨の増発を招来し、インフレを促進することも必至の状況であります。  公明党は、酒、たばこ、郵便料金の値上げ撤回、国債の市中消化と償還財源確保、さらには、低成長下において急務である独占、寡占の弊害を除去する独占禁止法の強化改正を要求するものであり、物価を押し上げる要因の多い補正予算案には反対するものであります。  以上、数点について反対理由を申し述べましたが、国民生活無視の補正予算案の内容を編成替えするよう要求致します。  なお、日本共産党・革新共同提出の編成替えを求める動議については、いささか意見を異にするため反対するものであります。  以上、討論を終わります。
  403. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に、河村勝君。
  404. 河村勝

    ○河村委員 私は、民社党を代表し、ただいま提案されております昭和五十年度政府提出の補正予算三業並びに日本共産党・革新共同の組み替え動議に対し、一括して反対の討論を行いたいと思います。  政府補正予算案に反対する第一の理由は、その作成時期が余りにも遅く、不況の深刻化と長期化を招いたことであります。すでにわが党は、昨年の十月以来、わが国の経済が中小企業雇用を中心に非常な危機に直面している現状にかんがみ、経済運営は物価の安定、不況克服の二正面作戦を展開すべきことを強く主張してまいったところであります。しかるに、不況の深刻化については、政府はきわめて楽観的な態度をとり続け、三木総理は、さきの通常国会では、景気浮揚策をとる必要はないとさえ言っておられたのであります。このような政府の誤った経済運営の結果は、雇用情勢の悪化、倒産の増大、一%前後の超低成長、ひいては戦後最大の歳入欠陥と赤字公債の発行を余儀なくさせたのであります。三木内閣の政治責任はきわめて重大であると断ぜざるを得ません。  補正予算案に反対する第二の理由は、その不況対策の性格が産業基盤整備中心であり、国民生活の、向上に直結する施策を軽視していることであります。わが党は、景気回復対策の早期実施を主張してまいりましたが、しかしそれは、いかなる対策でもよいというものでは断じてありません。景気回復対策は同時に、立ちおくれている生活環境基盤の充実、中小企業の経営安定、国民生活の向上を図るものでなければなりません。ところが、今回の政府の不況対策は、このわれわれの要求を軽視し、本四架橋の着工を初め依然として産業基盤整備投資による景気対策を講じているのであります。  私が政府補正予算案に反対する第三の理由は、戦後最大の歳入欠陥をもたらした責任の所在が不明確であり、かつ赤字国債の安易な大量発行を予定していることであります。いまさら申すまでもなく、今年度の歳入不足は戦後最高の四兆円にも達しているのでありますが、政府は、この歳入不足があたかも自然現象的、不可抗力的なもののごとく装い、予算委員会における答弁においても何ら反省の言葉が聞かれず、責任の所在が明確にされなかったのであります。まことに責任逃れもはなはだしいと言わなければなりません。  また政府は、歳入不足の大部分を三兆四千八百億の国債発行によって処理しようとしているのでありますが、大量の国債発行がもたらす将来の財政インフレの危険性に対し、国民が納得ができる防止策は何ら示していないのであります。さらに、来年度以降の財政がどのような姿になるのか、政府はいかに今後大量国債を抱えた財政に対処しようとしているのか、全く不明確であります。政府のその場しのぎの場当たり的財政策については厳しく批判しなければなりません。  わが党は、この見地から、今後の経済・財政政策の基本として、経済安定・計画化基本法案の制定を提唱し、国民参加による経済五カ年計画の策定、これに伴う長期財政計画の立案並びに景気調整基金の新設などを提案してきたのであります。三木内閣は、わが国の新しい時代の切り開く第一歩として、これら大胆な提案を積極的に取り上げ、経済政策の抜本的な転換を図るべきであります。  以上でありますが、なお、日本共産党・革新共同の組み替え動議に対しては、多くの点において考え方が相違いたしますので、反対をいたします。  これをもって反対討論を終わります。
  405. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  406. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより採決に入ります。  まず、林百郎君外三名提出の昭和五十年度補正予算三案につき編成替えを求めるの動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
  407. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 起立少数。よって林百郎君外三名提出の動議は否決されました。  これより昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。
  408. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 起立多数。よって、昭和五十年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  409. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————      ————◇—————
  410. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る二十日より補正予算審議開始以来、終始真剣な議論を重ね、本日ここに審議を終了いたしましたことは、ひとえに委員各位の御理解と御協力のたまものでありまして、委員長といたしまして、衷心より感謝の意を表する次第であります。ここに連日の審査に精励された委員各位の御苦労に対し、深く敬意を表し、ごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。     午後十一時三十七分散会      ————◇—————