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1975-10-27 第76回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十月二十七日(月曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹下  登君 理事 谷川 和穗君    理事 湊  徹郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       櫻内 義雄君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    塚原 俊郎君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       保利  茂君    細田 吉藏君       前田 正男君    松浦周太郎君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    多賀谷真稔君       楯 兼次郎君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    堀  昌雄君       湯山  勇君    田代 文久君       松本 善明君    鈴切 康雄君       河村  勝君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         行政管理庁行政         監察局長    鈴木  博君         防衛庁参事官  伊藤 圭一君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         科学技術庁原子         力局次長    山野 正登君         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局長 松永 信雄君         大蔵大臣官房審         議官      松永 正直君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         国税庁次長   横井 正美君         国税庁税部長 熊谷 文雄君         農林大臣官房長 森  整治君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         食糧庁長官  大河原太一郎君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 中村 大造君         運輸省航空局次         長       松本  操君         郵政政務次官  稲村 利幸君         労働省労政局長 青木勇之助君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君         労働省労働基準         局安全衛生部長 中西 正雄君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省河川局長 増岡 康治君         建設省道路局長 井上  孝君         自治省税務局長 首藤  堯君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      前川 春雄君         参  考  人         (動力炉・核燃         料開発事業団理         事長)     清成  迪君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 十月二十七日  辞任         補欠選任   岡田 春夫君     中澤 茂一君   正木 良明君     瀬野栄次郎君   矢野 絢也君     鈴切 康雄君 同日  辞任         補欠選任   中澤 茂一君     岡田 春夫君   鈴切 康雄君     矢野 絢也君   瀬野栄次郎君     正木 良明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  本日、日本銀行総裁及び動力炉・核燃料開発事業団理事長出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  3. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 質疑を行います。河村勝君。
  5. 河村勝

    河村委員 最初にスト権問題についてお尋ねをいたします。  政府では、早くからこの秋に結論を出すということをしばしば明言をされております。この一日、二日前、総理もそういうような趣旨の談話を発表されたようであります。この春ごろにこの秋に結論を出すというのであれば、それは一応わかりますけれども、もうすでに秋たけなわであります。だから、いまごろ今秋結論を出すと言うのは、発言としては余り意味がないと思うのでありますが、一体具体的にいつまでに結論を出すつもりでありますか。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が昨日の記者会見で申しましたのは、今秋までに結論を出したい、こう田中内閣のときに言われたのですから、三木内閣の場合も、できるだけその田中内閣意向というものを尊重したいということで、御承知のように、いま専門委員懇談会で、当事者はもちろん、いろいろ各方面の有識者の意見を聞いておる最中でございます。こういうものを踏まえて、最後閣僚協議会政府としての方針を打ち出したいと思っておる次第でございます。
  7. 河村勝

    河村委員 それでは答えにならないのでありまして、少なくとも今秋結論を出したいという意向を表明されて、田中内閣の際の言明であるかどうかは別にして、いまは三木内閣なんですから、三木さんがはっきりそれをおっしゃるべきであります。秋といえば、十二月ばまさか秋ではないでしょう。そうすると、十一月いっぱいに結論を出すということでございますか。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今秋というのですから、できるだけ秋——今秋というようなことを申しておるのですから、そういうふうな線に沿いたいと思いますが、いま河村君御承知のように、専門委員懇談会で盛んにやっておるところですから、そういういろいろ意見の出そろったのを踏まえて、閣僚協議会でこれから政府としての方針を打ち出したいというので——いまいつか、こう言われましても、期日を切ることはいまの状態で困難でございますが、ことしの秋にはできるだけ出したいということで、これからの政府方針もそういう線に沿うて検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  9. 河村勝

    河村委員 長いいきさつのある問題ですから、今秋と言われて、いまもってそういうあいまいなことを言っておられるのは本当に腑に落ちないのであって、これをこれ以上延ばすのは、政府にとっても、一般労使関係にとっても、決していいことではないのです。最後はやはり決断ですからね。専門委員会の話だって大体はわかっていることなんです。ですから、結局は政府自身結論を出さなければならないので、きょうどうしてもはっきりしたことをお言いになれないというなら仕方がありませんが、とにかく今秋と言われたからには、十一月中にやることが目標であるということだけは間違いないのでしょう。いかがですか。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 秋という常識にできるだけ沿いたいと思っております。
  11. 河村勝

    河村委員 それでは、その問題は幾ら言っても同じですから先に進みます。  先般、藤井国鉄総裁スト権条件つき付与論、これを発表したことに対して、三木さん自身がどう言われたかは知りませんが、とにかく一般的に政府与党の中で非常な批判、非難、そういうものがあるようであります。これは本当に奇異に感ぜられることであって、とにかくもうすでに労働組合側はこの専門委員懇談会意見を開陳して、一方の当事者であって、同等あるいはそれ以上に責任のある国鉄総裁がこの委員会でもって自分の意見が開陳できないというばかなことはないので、国鉄の側にも、政府与党のどこか知りませんが、相当圧力があって、その圧力に屈して、それで専門委員懇談会の中では多少あいまいな表現をして、別の場でその意見を開陳したというのは、これはほめられたことではないが、しかし、圧力をかけた方はもっと悪いですね。総理、そう思いませんか。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、圧力をかけた、圧力をかけるということ、どういうことか、そういうふうには私は承知してないわけです。
  13. 河村勝

    河村委員 それはそれでよろしいが、四十八年の春闘以来、政府春闘共闘委員会あるいは公労協との間で、いろいろなストを収拾する場合に幾つかの合意をやっております。そういうものが三年間積み上がって、その中でのいろいろな合意が、非常に巧妙な表現は用いているけれども、だんだんそうしたものか積み重なって、現在では——まあ条件のいかんは別です。相当厳しい条件がつくであろうということも常識かもしれませんが、しかし同時に、スト権を付与するというのが大体常識であるというような環境が、なし崩しにでき上がっているということを総理は認識をされておりますか、どうですか。
  14. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いままでの経過をいろいろ踏まえまして、そしてきわめて慎重に、合理的に政府閣僚協議会結論を出したい、こういうことでございます。
  15. 河村勝

    河村委員 四十八年、これは田中内閣のときですね。田中内閣のときに、四月二十七日の交通ゼネストというものを避けるために七項目合意が行われております。その前に田中総理は、労働基本権問題について衆議院の本会議で、本来国会で審議すべきものをストによって目的を達しようとするのは、「議会制民主主義に対する挑戦以外の何ものでもない」と、非常にりっぱなことをおっしゃっているのです。ところが実際には、このゼネストを回避するために、政府が直接共闘委員会協議をして、それで七項目合意をやっております。その合意内容で、「労働基本権問題については、第三次公制審において、今日の実情に即して速やかなる結論が出されることを期待するとともに、答申が出された場合は、これを尊重する。」こういうことを言っているのですね。これも非常にしっぽをつかまれないようには言っておりますけれども、しかし中立的な発言ではありませんね。「今日の実情に即して」、そうですね。これによって、七項目の七項目目には、「以上の合意を機にストライキは直ちに中止する。」これは処分問題等が絡んでおりますので、ほかにもよけいなことを言っておりまして、「処分については公正、慎重に行う。」とか、あるいは「過去の処分に伴う昇給延伸の回復の問題については、引き続き協議する。」というような——これは処分というのは国鉄部内の問題ですね。それをわざわざ政府が関与をする。これは、公労法体制そのものを、守れ守れと言っても守れないようなことを、政府自身が介入してやっておるわけですね。その問題は別といたしまして、とにかく「今日の実情に即して」というのは、これは明らかに俗に言う前向きであります。  それから四十九年の四月、これも四月十一日のゼネストを前にして国労、全逓などが、スト権処分にめどがつかなければ公労委の事情聴取に応じない、そういう態度をとってゼネストをやっておったのですね。ところが、やはり政府はそれに応対をしまして、それでこのときは、下相談は長谷川労働大臣春闘共闘委員会としたけれども、いざ決定するときには独自でやったようであります。関係閣僚協議会を発足をさせた。そのときにも、やはり春闘共闘委員会との合意の中には、政府関係閣僚協議会を設置することとしたのは、労働基本権問題を真剣に検討する意図であることを確認する。とにかくわざわざ積極的に、真剣に検討する用意がある、これも中立ではありませんね。そうですね。  それから今度は三木内閣になってからであります。これは五十年の六月三日、ことしの六月三日、これは総理も他の委員会でやっておられますが、これもやはり処分に対するストをやろうということであって、これに対して長谷川労働大臣が、社会労働委員会言明をされている。これもやはり非常に巧妙な言葉を使っておられるけれども、スト処分ストという悪循環を断ち切りたいという趣旨発言をしておられる。その発言春闘共闘委員会は高く評価をしてストを中止している。こういう経過をたどっているのですね。  この際、同じくことしの春に三木総理は、三月の段階で、三月二十八日までは処分をやらないというような発言をされて混乱を起こされたのは御承知のとおり。最後井出官房長官が、四月の末になりましてから、処分というのは国鉄自体が判断するものであるというような結論を出してチョンになりましたけれども、本当はこれは手おくれであって、こうした労使間だけの問題を、政府が介入することによって、ますます公労法体制というものが維持できなくしている。片一方で、この三回の合意で、言葉は非常にしっぽをつかまれないようにはしているけれども、とにかくだんだん前向きに前向きにという表現をして、とにかくだんだん与えなければならぬというような環境を醸成してきた。これは政府自身がですよ。  これは、私の一連の経過説明をお聞きになって、総理、どうお考えになります。
  16. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 田中総理が真剣に実情に即して検討するということは当然のことだと思いますね。真剣でなければならぬし、また、実情といいますか、実態に即して物を考えるということは、私はこの問題の処理について非常に必要な要件だと思います。また、労働大臣として、処分スト処分、これを繰り返す悪循環を断ち切りたいという願望を持つことも当然のことでございまして、それは当然、あたりまえの発言をされておるものだと評価をいたすわけでございます。
  17. 河村勝

    河村委員 何を言っておられるのかわからないのですが、しかし、少なくとも中立的な発言ではなくて、とにかく前向きな発言がこの両三年続いているということはお認めになるでしょう。いかがです。
  18. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まあ大体物事皆前向きでないと、後ろを見て歩けるものじゃないし、常に発言というものは前向きであるべきですね。後ろへ向いて歩く政治というものは余りありませんから、そういう点で、それは当然前向きに何とかして早く解決したいという意欲を政権担当者として持つことは、私は当然のことだと思います。
  19. 河村勝

    河村委員 長谷川労働大臣処分スト処分悪循環を断ち切りたいと、こういう発言ですね。断ち切るためにはやはり現状ではだめだという前提に立っての発言だと思いますが、そう考えてよろしいか。
  20. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 おっしゃるように、スト処分、そういう繰り返しというものはやめたいというのが、これはもう国民全体の願いでもあり、また、私たちとしますと、労使の正常な関係というものをつくることが何よりのことだ、こう思っております。そういうことからしまして、長い経過がありましたけれども、幸いにして専門懇がいま非常に精力的に研究いただいておりますから、その結論を踏まえながら、関係閣僚協においてもその意見を尊重して結論を出す、こういう形だろう、こう思っております。
  21. 河村勝

    河村委員 私が聞いておりますのは、公労法の現在の法体系、それをそのままでよろしいということではなくて、何らかこれを打開しなければならない、そういう意図表現であるというふうに考えてよろしいか、そういう意味です。
  22. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いろいろな問題を踏まえながら、私は、専門懇皆さん方に勉強してもらっておる、それを期待しております。
  23. 河村勝

    河村委員 いま公労法というものは、実際もうすでに崩れてしまっている。それでストが頻発をして国民は大変迷惑を受けております。これを何とかしようというのが政府意図でしょう。そうであれば、公労法をそのままにしてこれを立て直すというのは、現状において国鉄部内的な問題だけでは片づかない。そうなれば、公労法をそのまま生かすとすれば、厳重な刑事罰でもかける以外にはないわけです。しかし、公労法をそのままにしておいて、ストに対して刑事罰を科するなんということが、一体総理考えられると思いますか。
  24. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 われわれとしても、これは国民生活にも重大な影響を与える問題ですから、いろいろな角度からこれを真剣に考えてみたいと思っておりますので、いま具体的な内容に触れてお答えをすべき段階ではないと私は思いますが、河村君の御指摘になったいろいろな過去のいきさつ、いまの労使関係実態、こういうものも踏まえて、この問題は国民も注目しておりますし、そしてまた、国民生活影響をするものですから、あらゆる角度から政府は検討をして結論を出したいと考えておる次第で、内容について、まだ私からこういう点はこうだというふうに申し上げられる段階ではない。逃げておるわけでもないのですよ。まだ専門懇でああやって議論がいろいろ出ておるわけですから、政府はそういう結果も尊重したいと思っておりますから、内容についてこうだああだという見解を述べる段階に至っていないということは、河村君もひとつ御理解を賜りたいのでございます。
  25. 河村勝

    河村委員 自民党では、この問題は内部的な政争が絡んでいるというような報道がなされておりますけれども、しかし、こういう国民生活に重大な問題を、そうしたことで曲げてはいけないのです。どうしてももう秋に結論を出すとおっしゃりながら、いまの段階政府に何も意見がないというような、そんなばかなことは本当はないのですよ。しかし、この段階でどうしても御返事にならないというならば、私の方から提案をいたします。私のこれから申し上げることを、閣僚も、それからここに御列席の自民党の諸兄も、よく聞いていただきたいのです。  結論から言いますと、いま条件相当厳しいものになるでしょう。それは、いままでのストを繰り返してきた実績から言えば、国民の納得を得られるためには、かなり厳しい条件はつけざるを得ない。しかしやはりスト権を付与する以外にこの状態を打開する道はございません。  その理由です。私は、公労法下にあっても、絶対に正常な労使関係ができないなどとは元来考えておりません。それは現にスト規制法というものかございましょう。電力石炭——石炭の問題はもう事実上解決しましたから別にして、電力の場合は、争議行為そのもの禁止したのではなくて、電力供給業務をとめることを禁止した法律でありますけれども、電力産業電力供給業務をとめることを禁すれば、事実上ストライキを禁じたのと同じことです。そういう状態で三十年たって、電力産業では事務ストなどはやっておりますけれども、昔の電産ストなどをお考えになればよくおわかりのように、電力はその後一遍もそういうものもとめないでりっぱにやっております。ですから公労法だってできないことはない。だけれども、現実の問題として、これは労使にも責任があるし政府にも責任があるのです。とにかく、もはや公労法そのままでやれる状態ではございません。  なぜかといいますと、ストを全面的に禁止をしておりますから、当然の論理的帰結としてストライキ禁止というかきねが壊れてしまいますと、今度は何でも自由にできるのです。何もルールがなくなってしまうのですね。そこに組合員全体の意思の働く余地がなくなってしまうのです。そうでしょう。労働組合法では、ストに入るためには、組合員の直接無記名投票ストに突入するかどうかを決めなければならない規定がございます。だけれども、ストライキ禁止しておるものだから、そういう法規は適用除外してあるわけですね。それから労調法にはストの予告期間も決めております。それから緊急調整を発動した場合には五十日間ストができないという規定もございます。こういうものもスト禁止しているから適用はない。これはあたりまえですね。ですから、一切のルールがないのです。組合の幹部が決定して号令さえかければ、いつ何どきでもストライキができる、そういう仕組みになってしまうわけですね。そうでしょう。ここのところが大切なところなのですがね。ストライキを年じゅうやって国民に大変な迷惑をかける。だから、国鉄なり郵政なりの職員全体が悪いとお考えになっては間違いなのであって、少なくとも八〇%以上の職員はきわめてまじめで、本当に国鉄なり郵便なりをよくしようという気持ちの持ち主、これが大多数なんですよ。(「九五%にしてもらいたいね」と呼ぶ者あり)九五%でもいいです。大体、私もそうだと思うけれども、少し遠慮して八〇%と言っておるのです。だけれども、とにかくそういうことなんです。  ですから、本当にルールをはっきり決めて、ストライキに入るときには全員の直接無記名投票、そういうことをやった上で、もしルールを破ってストライキに入ろうとすれは——いままではとにかくオール・オア・ナッシングでしょう。スト権は持つべきか持たざるべきか、ストはやるべきかやらざるべきか、二者択一なんですよ。そうなりますと、一回かきねが破れた状態のもとにおいては、もう大勢順応、怒濤のようにやはりスト権は持つべきであるという大勢にずっと流れてしまうのですね。そうでしょう。だけれども、一たんそういういろいろな歯どめのルールが決まれば、それに反して幹部が独走しようとしても、今度は初めて良識が働く余地が出てくるのです。こういうものは、最後組合員の公共性に対する社会的責任の自覚にまつ以外にはないものです。それでなければ刑事罰なんですね。しかし争議行為そのもの刑事罰というのは望ましいことではない。ですからやはり条件つきスト以外にいま選ぶ道はない。条件の中身というものは、だれが考えてもそう違いはありません。専門懇で石川吉右衛門さんが一つの案を出しておられますが、大体ああいうことなんです。  もともとストライキというのは、あらゆる団体交渉をやり、平和的な解決手段が尽きて、最後の手段としてやりべきものですから、その自覚がなければ、どんなルールをつくってもこれは壊れます。しかし、まず団体交渉、それから調停前置ですね。まず調停に入って、調停が済まなければストライキをやってはならない。それからストライキをやるときにも、先ほど申したように組合員の直接無記名投票。これは労働組合法で当然あるのですから。それから予告期間を置く。その上でさらに、そのストライキの態様というものが国民の利益を大きく阻害するものであるならば、総理大臣の差しとめ命令で抑えて、それで強制仲裁に付する。強制仲裁に付したら、それは労使が守らなければならない。  大ざっぱに言いますと、こういうこと以外にはないのです。恐らくきょうお聞きになっている自民党の諸君は、強制仲裁と言ったって仲裁である、仲裁を守らなければならないと言ったって守らなければそれっきりじゃないか、ストをやったらそれっきりじゃないかとおっしゃるだろうと思う。しかし、途中のルールを勝手に破ろうと思えば破れるじゃないか、こういう議論をしたら際限のないことでありますけれども、そこは私が先ほど申しましたように、大多数の人間は本当にりっぱにやろうと思っているのですから、その自覚を生かすためにはこういうルールをつくらなければならぬし、現実に仲裁が出た後にストライキをやった例というのは過去にもほとんどないのです。そういうものです。  どうですか、私の申し上げていることは非常にもっともであり、それしかないと総理大臣お考えになりませんか。
  26. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 河村君の御意見は御意見としてよく承りましたが、先ほどから繰り返して申し上げておりますように、まだ専門懇も継続しておりますし、政府結論も出しておりませんので、立ち入って私の見解を述べることはこの段階では差し控えさせていただきます。
  27. 河村勝

    河村委員 それで皆さんに考えていただきたいのです。こういうふうにしてまず実行することです。私はこれでできると思います。本当に労使の正常化は、これはほかに条件ございますよ。組合員の社会的責任の自覚だけでなくして、経営者側の管理能力ももっとしっかりしてもらわなければ困るし、それから当事者能力という問題がございます。法律的な当事者能力というのは私は大したものじゃないと思う。しかしその気になれば、制度的な制約というものはそれほどではない。だけれども、いまのように完全に破産状態で、金がまるっりきりない状態で、実質的な当事者能力を持てと言っても無理ですから、財政再建というものは思い切って抜本的な対策をやってもらわなければならない。でありますけれども、これでやれば、それさえ具備すればこれはできます。恐らく皆さんは、それでもまだ不安だというお考えがあるだろうと思う。しかし、やらせてみて、それでもなおかつどうしてもいけないというなら、どうしてもどうにもならない状態なら、そのときに緊急立法をやったらよろしいのですよ、われわれ立法府なんですから。それでもどうにも、はしにも棒にもかからぬというなら緊急立法をやって厳重な刑事罰を科したらよろしい。これは諸外国の立法例にもあります。総理大臣の命令違反で刑事罰というのは不穏当かもしれませんから、その場合には裁判所が何らかの形で介入することが望ましいと思います。思いますが、どうしてもいけない場合には緊急立法だってできるのです。いままでの長いいきさつ考えて、現状がもうこのままではどうにもならないという状態まで来ているのですから、それ以外に選択する道はないはずです。きょうは、私もどうせまともな返事がいただけるとは思っていませんでしたけれども、ちょうどよい機会ですから、皆さんに本当に労使間の実態というものを——皆さん本当は御存じないと思うのです。ですから、そこのところをよく理解をしていただいて善処を求めたい。そのつもりで私はしゃべっているのです。これをまたどうだと伺いますと、また同じ返事が出るでしょうから、これはこれでとどめます。  ただ、長谷川労働大臣にちょっとお尋ねしておきますが、いま私はスト規制法の例を引きました。電力の場合には、スト規制法が成立以来三十年近くストライキも何もやらないでりっぱにやってきておる。いまでは逆に、むしろストライキ禁止されているということのために、経営者側の方がその上にあぐらをかいて楽な姿勢になっちゃっているという方に問題ができつつある。ですから、こういうものこそ本当に——いま公労関係はかり議論されて、こっちが議論になっていないのは本当は片手落ちなんですね。組合員の社会的責任の自覚というものも信頼度は非常に高い。こういうものは非常に鉄道以上に高い公共性のあるものでありますから、何らかの配慮が要るかもしらぬけれども、大体原則としてスト権は与えるという方が私は筋道であろうと思うが、労働大臣、いかがですか。
  28. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 スト規制法調査会におきまして、関係労使の参与委員を含めていま十一名の委員の方々に御検討願っているところであります。調査会に非常に熱心に御検討していただいておりますが、今後の審議日程については調査会がお決めになる問題でありますので、審議の状況によりますけれども、私の方も、できれば今秋中を目途に調査会の結論が出されることを期待しているところであります。
  29. 河村勝

    河村委員 この問題は結局何もお答えをいただけなかったのは大変残念でありますが、くれぐれも私が申し上げたことを十分皆さん方で検討していただきたい、それをお願いをしておきます。  次に、預金金利の引き下げの問題についてお尋ねをいたします。  大蔵大臣、四十九年九月の国税庁の調査、これの会社臨時特別税の申告の状況が発表されたものがございます。これによりますと、上位三十社のうちの十七社を都市銀行が占めておりまして、それで特別税だけでもって九十九億円を納めている、こういう事実がございます。一体どうして銀行はこんなにもうかったのでしょうか。
  30. 田辺博通

    ○田辺政府委員 お答えいたします。  四十九年の銀行の利益がふえている理由といたしましては、一つは資金量が急速に伸びている、貸し出しの量がふえている、預金の量もふえている。それからもう一つは、貸出金利が上昇した、こういうことだろうと思います。
  31. 河村勝

    河村委員 貸出金利の上昇ですね。資金量もふえたけれども、貸出金利が非常に上がっている。ちょうど九月期決算の始まる前までの状態を見ますと、公定歩合の引き上げが始まったのが四十八年の四月ですね。四月から始まりまして、わずか八カ月の間に公定歩合は四・七五%上がりました。その間に預金の方はどうかというと、この間にはわずか一%です。預金の金利は一%上がっただけで、公定歩合はその間に四・七五%上がっているのです。利ざやが拡大するのはあたりまえですね。大蔵大臣、いかがでしょう。
  32. 田辺博通

    ○田辺政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の引き締め前の金利の状態から、公定歩合は五十年の三月から引き下げに転じたわけでございますが、その三月の時点が一番高い貸出金利の状態でございました。預金金利も一番高い状態でございますが、その引き締め以前の預金金利と公定歩合の引き下げ直前の時期の預金金利との差は、先生は普通預金でおっしゃったかと思いますが、一%上昇しておりますが、定期預金は二・五%上昇しております。御指摘のように、公定歩合及びプライムレート、標準金利は四・七五%上昇しております。
  33. 河村勝

    河村委員 大蔵大臣、数字のことだからといって何か御答弁にならないようでありますが、しかしこの八カ月の間に公定歩合はとにかく四・七五%上がっております。短期のプライムレートは大体そのくらい上がっておって、平均約定金利はそんなに上がっていないというようなことを普通言われておるけれども、実際はそうではなくて、四十八年四月以前から、もう実際の公定歩合の上がる前から引き締めが行われておりましたから、約定金利の方はもっと前から上がってしまっているから、四十八年四月以降はそんなに上がっていないように見えるだけですね。だから銀行がこれだけもうけ過ぎているのはあたりまえなんです。預金金利もその後上がりましたけれども、しかし、預金金利が上がりましたのは、翌年の九月、四十九年の九月に〇・五%上げて、合計でやっと二・五%ですね。それで公定歩合の方はどかどかと八カ月の間に上げてしまったので、この四・七五%が続いておるわけであります。今回の引き下げ、ことしの春の引き下げ以前までですね。これだけの差があれば、この春から公定歩合が一・五%下がりまして、今度一%下げるとしても二・五%ですね。だから、この九月期のもうけ方だけを見ましても、銀行のふところ勘定というものは非常にもうかっている、余裕がある、これだけは間違いないですね。  であれば、少なくとも、いま公定歩合を二・五%だけ下げるという段階で預金金利を引き下げるという理由はございませんでしょう。まだ物価だってようやく一〇%切れたぐらいのところで、これからどうなるかわからない。過去の預金の目減りというものは非常に大きいのです。ですから、あとう限り預金金利の引き下げというものは、いずれ下げなければならぬにしても、先に延ばせるだけ延ばすというのが政治であろうと思う。いまここでもって預金金利を下げるという理由は私はなかろうと思いますが、いかがでございます。
  34. 大平正芳

    ○大平国務大臣 預金金利の引き下げを慎重に考えなければならぬということは御指摘のとおりでございまして、したがいまして、過去三回にわたる公定歩合の引き下げにかかわりませず、預金金利はそのまま据え置いてまいったわけでございます。けれども、その結果、短期貸し出しプライムレートと一年ものの定期預金の金利とがほぼ同じ水準に並ぶ状態になりました。したがって、もし預金金利を据え置いたまま公定歩合を引き下げたといたしますならば、預金金利が貸出金利を上回るというきわめて不自然な形になるわけでございます。こういう状態は、金利体系から申しまして自然な姿でないと思います。  それから第二に、金融機関の収益状況でございますが、河村先生は、金融機関の収益状況が大変よろしいという判断をされておるようでございますけれども、しかし最近、四十七年からずっと見まして、金融機関の総資金、利ざやの推移を検討してみますと、加速度的に悪化してまいっておるわけでございます。これは後で数字を申し上げて結構でございますけれども、金融機関の増収、増益ということの御指摘でございますけれども、総資金量に対する利ざやの推移は年々低下しておるわけでございます。  それから第三の問題として増収、増益の問題に絡んで一つ御注意いただきたいと思いますのは、先般来問題になっておりまする金融機関の貸し倒れ引当金を引き下げてまいる過程におきまして、年々引き下げに応じた収益が出てくるわけでございまして、それが毎回加算されてまいっておりますので、実質上の増益、増収という中からそういう税制上の調整を控除してみなければいけないということもあわせて御考慮いただきたいと思います。
  35. 河村勝

    河村委員 短期のプライムレートが預金金利よりも下回ってしまったということは事実かもしれませんけれども、わずかに〇・二五%ですね。それで、いま貸し倒れ引当金のこともおっしゃいましたけれども、もともと貸し倒れ引当金というのは名目だけであって、事実上は内部留保ですね。非常に手厚い内部留保を持っているという逆の証明でもあって、それが今度一部、まだほんのわずか取り崩されただけですね。銀行が過保護であるというのは世間の定評であります。ですから、同時に国で非常によくめんどうを見ておられるから、本気にやる気なら、多少一部で逆ざやになろうとも、一般の貸し出しがそんなに逆ざやであるわけではないのですから、まだまだしんぼうできる段階ですね。そう思わないでしょうか。  預金金利を、公定歩合引き上げ、物価上昇の際に、一年半かかってやっと二・五%上げたのです。公定歩合の方は、さっき申し上げたように、わずか八カ月ですね。それで四・七五%上げてしまった。それだけずれがあるのですね。時間的にもずれがあるし、上げ幅においても差があるのです。ですから今度は下げるときも逆でいいんじゃないですか。まだ公定歩合が下げ始まってからやっと半年でしょう。半年で今度二・五%下げになる。それなら、だれが考えても、あと半年ぐらい少なくとも預貯金の利下げを延ばすという相当なる理由があるし、そのくらいのことを銀行にやらせることは可能なはずです。いまの政治が本当に国民生活を大事にするなら、私はそれをやるべき時期だと思うのですけれども、総理、どうなんですか、一体。これはもう、ただ公定歩合と貸出金利とか預貯金金利のバランスとかなんとかいう技術的なことではなしに、それももちろん必要であるけれども、まだ本当にバランスが崩れたというところまで来ていないのですから、この際は、預貯金金利はあと少なくとも三カ月なり四カ月なり先に引き下げを延ばす、それくらいの決断をされることが本当だと思いますが、いかがですか。
  36. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せになるお気持ちはよくわかります。こういう時期でございますので、金融機関がぬくぬくとわが世の春を謳歌しておるというようなことは許されないことでございまして、お互いに助け合いの世の中でございますので、預金者に対しましても、あるいは貸し出し先に対しましても、金融機関の果たすべき役割りというものは仰せのようにあると思うわけでございます。したがって、財務当局といたしまして、金融機関を保護していこう、過当に保護しようなどという気持ちは毛頭ないわけでございまして、なお、かたきところ、金融機関にもっとしんぼうして預金の方を据え置きにいたしまして、貸出金利を下げる余地がぎりぎり全然ないかといいますと、私は、金融機関によりましては、仰せのように若干の余裕があると思うのであります。しかし、金融機関もいろいろの種類がございますし、強弱がございまして、いまの状態におきましてすでに貸出金利を下げるということがほとんど望めない金融機関もあるようでございまして、このあたりで預貯金につきましても若干の利下げを考えていただき、貸し出しにつきまして、全体としての水準の引き下げを考えてしかるべき時期が来たのではないかと判断して、先般の金利引き下げ措置を講じたところでございます。  しかし、この預貯金の引き下げの目的は、貸出金利の引き下げが目的なんでございますから、そういうことに結果がなってまいりますように、金融機関が十分その責任を果たしてまいらなければなりませんし、私どももそれを確保する行政をやってまいらなければならぬと心得ておるわけでございます。  要するに、金融機関がひとり経済界の不況をよそにぬくぬくとしておるというようなことは許されないことでございまして、それなりの責任はこの際十分果たしていただかなければならぬわけでございまして、そういう方向に厳しい行政指導は怠ってはならないと考えております。
  37. 河村勝

    河村委員 いま大蔵大臣おっしゃった、銀行にも強弱があって、まだ余裕があって預貯金を下げなくてもいいところもあるが、弱いところもあるのでというお話でしたね。これが問題なんですね。いままでの国の銀行に対する保護行政というのは、とにかく一番足弱のものでももうかるようにしようというようなやり方ですね、一番条件の、能率の悪い金融機関でもとにかく利益が出せるようにという。これはいま特に不況の際だからひどいわけであるけれども、一般産業ではそういうことはありませんね。銀行はもちろん倒れたりなんかしては困りますから、それについては重大な配慮が要るけれども、こういう全般が不況で苦しんでいる際、それで一般国民は非常に生活に困って、零細な預貯金が目減りをしている際に、その一番弱いところを標準にして預貯金を下げなければならぬという理由はないでしょう。それはそれでもうからなくともいい、多少の欠損があってもやれる、それが決定的な打撃になるわけじゃないのですから、少なくとも真ん中辺のところを基準にして、預貯金が下げられるかどうか、そこを見きわめて判断するというのが政治じゃないんでしょうかね。いかがですか。
  38. 大平正芳

    ○大平国務大臣 金融機関が、他の産業部門に比しまして、不当に利益を聖断し、あるいは不当な処遇を役職員が受けておるというような状態はいけないわけでございまして、私ども金融機関に対する行政に当たりましては、極力その自粛を求めて、社会的な責任を果たすことができる資金的弾力を確保するように努力をいたしておるわけでございます。  ただ、金融機関が不安定に陥るということは、金融秩序を乱すことになりますし、経済不安を招来するおそれがございますので、金融機関はあくまでも健全であってもらわなければならぬわけでございますので、私が先ほど申しましたのは、すべての金融機関が同一の強さを持っておるわけでなくて、強いものにおきましては、いましぼり出せと言えば、若干いまの金利水準でもしぼり出せないわけのものではないけれども、弱い足を持った金融機関がないわけではないということを申し上げたわけでございますが、そういう金融機関も、この際、金融秩序を乱すようなことがあってはならないわけでございますので、全体を見ながら、この程度の預貯金利率の引き下げということと、それから貸出金利の引き下げということは、全体の秩序から申しましても、産業界その他の要請から申しましても、まず金融政策として考えなければならぬぎりぎりの限界ではなかろうかと判断したわけでございまして、金融機関の足取りの弱いものを保護するためにわれわれがとりました政策というわけのものでは決してないということは御了解をいただきたいものでございます。
  39. 河村勝

    河村委員 どうも御説明にならないので、私はそれを聞いておりますと、大量に国債を発行する際だものですから、とにかくそれは結局銀行に押しつけなければならぬ、そのためにも銀行の利ざやを少しでも拡大せねばならぬ、そういう意図が根底にあって、それで非常に急いでいる、そういうふうにしかとれないんですね。大変残念でございます。  そこで国債管理政策の方に質問を移しますが、今度はいよいよ五兆円以上の大量の国債が出回ります。私どもは、こういう事態にまで持ってきた自民党政府の政治責任というものについて議論することは別としまして、いまの時期に赤字公債を発行しなければならぬという実態にあることは理解をいたします。したがってこれはやむを得ないと思っている。だけれども、一体本当にインフレにせずにこの大量の国債——これはことしだけではございませんね。この間も赤字国債についても漸減というお話ですから、赤字国債そのものもまだ続くのでしょう。建設国債はさらに続くはずです。国債というものは昭和四十年に二千億足らず赤字国債が発行されましたね。翌年はもう実際財政収支は黒字でした。減税までやっておる。だけれども、今度は建設国債と名前を変えて国債の導入をされて、今日まで発行残高十兆というところまで来たわけですね。建設国債そのものに一つの理由づけはもちろんあると思います。しかし国債の恐ろしさというのは、一回発行しますと非常に楽なものですから、ずるずる広がって今日に来たという面も私は否定ができないと思う。  これから非常に重大な時期になりまして、一体いままでのような国債発行の方式、九〇%を金融機関に押しつけ、簡単に言えば押しつけて、割り当てて、それで一年経過したものはみんな日銀に吸い上げられる。そういうような方式で市中消化と言っておられるけれども、市中消化という意味は、そういういままでやってきた方式を考えて市中消化を貫くと、そうおっしゃっておられるのかどうか、まずそれから伺いたいと思う。
  40. 大平正芳

    ○大平国務大臣 市中消化は日本銀行引き受けではないということを言っておるわけでございまして、今日までの発行方式、これはあくまでも市中消化の原則を貫いておるものと考えております。しかし、御案内のように、一年たちました既発債を日銀がオペの対象として買い入れるということは現にあるわけでございます。しかし、その場合におきましても、日銀としては通貨供給の方法の一つでございまして、このために過剰な通貨供給を行っておるというものでは決してないわけでございまして、必要な資金、通貨供給のためのオペレーションであるというふうに私どもも考えておるわけでございます。今後もこの方式はとらざるを得ないと考えております。
  41. 河村勝

    河村委員 いままではずっと高度成長時代が続いてきましたから、したがって買いオペというものが一応成長通貨の供給の枠内であったと言い得るかもしれませんね。しかし、これからは一体そういうぐあいにいくのだろうか。五兆円の国債が発行される、来年も似たようなものが発行される、そうなりましたら、一年たった既発債が日銀にそのまま、いままでのようにほとんどが吸収されるということになれば、それは当然成長通貨供給の範囲を超えるようになる。そう思いますが、いかがでございますか。
  42. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういうように信用政策にかかわる問題でございまして、日本銀行としては、先ほども申しましたように、必要な通貨を供給する責任を持っておるわけでございます。仰せのように、これからは恐らくいままでのような成長金融に根差した通貨の供給ということは考えられないと思うわけでございますけれども、それだからといって必要量以上の通貨を供給していいという筋合いのものでは決してないわけでございまして、日本銀行の通貨供給は適度に行われるという大前提はあくまでも堅持してまいることでございますので、それが狂いのない限りにおきましてインフレの心配がないと私どもは考えております。
  43. 河村勝

    河村委員 日銀がうまくやってくれるだろう、こういうお答えのようですね。日銀は見えておりますね。後でお聞きをいたしますが、しかし、まあどう常識的に考えましても、五兆円、六兆円という国債を成長通貨の供給の枠内で吸収できるとは考えられない。もし政府がどうしても国債を金融機関に持たせるということを強行して、それで日銀に、持ち切れない場合に成長通貨の枠を超えて買いオペをやらせるというような方法を、日銀も合意をしてやったとすれば、これは完全なインフレですね。福田さん、いかがでございますか。そうなりますね。
  44. 大平正芳

    ○大平国務大臣 財政面から申しますと、政府が当面の経済の状況に照らしまして、経済界の状況がデフレギャップを生んでおる状態であるという場合におきまして、適度な公債を発行いたしまして需要を喚起してまいる。たとえばちょうど私どもがやっておるような状態でございますけれども、そういう場合には財政面からのインフレは私は起こらないと思うのであります。もし需要が過剰である段階におきまして、さらに歳出を追加して、それを賄うために公債を発行するということでございますれば、その金額がいかに少なくても、これは歴然たるインフレ要因になるわけでございますので、十分戒めていかなければならぬことであると思うのでございます。したがって、財政面に関する限り、今回やっておりますることが新たなインフレ要因を招来するものとは、私どもは考えていないわけでございます。  それから第二に、そういう面で税金の収入が予定どおり入らない、しかし政府はなすべき仕事をやらなければならぬという場合に、まず財政資金の供給を通じて、中央、地方を通じて仕事をやってまいらなければなりませんので、最近にごらんになるように、財政面からの資金の散布が非常に過剰になっておるわけでございまして、これを公債を媒体として吸い上げていくという手順をとっておるわけでございます。こういうことは日本銀行もよく承知されて、そういう前提も踏まえて通貨の供給の手綱を私はとられておることと思うのでございます。
  45. 河村勝

    河村委員 いま二十兆円ぐらいデフレギャップがあるという時期ですから、今度の国債発行がすぐインフレになるとは私どもは考えておりません。いま金融機関に五兆円押しつけても何とかやれると思うのですけれども、ことしだけのことじゃございませんからね。ですから、これから先のことを考えて手を打っていくのが国債管理政策でしょう。今後の経済成長率を考えて、成長通貨の供給の枠ではとても一年以上たった既発債を日銀では吸収できないという場合を想定して、それでもやれるという条件をつくらなければいけないわけでしょう。そういうことは想定する必要がないというのでしょうか。
  46. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま申し上げましたように、そういう国債の発行をやってはいけないわけでございまして、財政面で経済とのバランスを考えながら適度な公債の発行を考えるということが前提になければならぬと思うのでありまして、非常な無理をいたしまして金融の方を圧迫するというようなことをやってはならないわけでございます。日本銀行にいろいろお願いするにいたしましても、前提として政府はそれだけの節度のある公債の発行をしてまいる決意でございます。
  47. 河村勝

    河村委員 そうしますと、これからの国債発行の歯どめといいますか、枠というものは、成長通貨の供給の枠内に発行額をとどめる、そういうふうに解釈してよろしいのですか。
  48. 大平正芳

    ○大平国務大臣 財政面からインフレを招来することのないように、経済とのバランスを考えて公債発行額を決めなければならぬと考えておるわけでございまして、そうする限りにおきまして、金融に大きな迷惑をかけるということはないものと思います。
  49. 河村勝

    河村委員 財政事情というのは、これはいまの私の申し上げた問題とは別です。だから、財政需要と成長通貨の供給の枠というものとかちょうどバランスをしておればいいけれども、しかし、どうしても赤字でこれだけ出さなければならぬという場合にも、いままでの市中消化と称せられる、事実上日銀に最後は全部行ってしまうという方式をそのまま継続すれば、もし財政需要が強ければ、日銀が供給する枠を超えてしまうことがあり得るわけでしょう。そうなった場合も考えておかなければ管理施策とは言えないと思うのですね。もうすでにいまでも、この大量国債発行が決まってから以後、公社債市場では既発債が値崩れをしておりますね。だから、これからは日銀が、もし成長通貨の供給の枠を超えたような状態になってきてしまって、買いオペをしない、ある枠でとめてしまうというようなことになれば、金融機関は当然それは市中に売るでしょう。それをとめるわけにはいかないでしょう。そうすると当然既発債が値崩れする。値崩れすれば、新しい公債だってそれに合わせた値段で売らなければ、もう今度は売れたくたりますね。いままでのように、純粋に市中にある公債というものはほんのわずかであって、一種の国の管理価格で価格支持ができた時代はよろしいけれども、これからはそうならない徴候がもう出てきているわけですね。そうなった場合にどうされるんですか。非常に高い国債を出していくのか。もし無理やりに銀行に売買を禁止するようなことをやっておれば、銀行は自衛上、国債を抱いた残りの部分が少なくなりますから、今度は一般の貸し出しの方にそのしわ寄せを向けていくわけですね。大きな企業なんぞは、財政資金が大量に出てくるわけですから、それの財政の支払い金が手元に入っていって、あるいは手元の流動性が大きくなって、それで自前で行けるのがあるかもしれませんけれども、弱いところはみんなしわ寄せが来て、それこそ中小企業、住宅ローン、そういうところは根こそぎみんなだめになるという結果になりはしないでしょうかね。もし日銀が正しいコントロールをやっていけば、そういう場合は当然私はあると思うのですよ。五兆円、六兆円という国債の消化が出ていって、経済の実質成長率が六%も怪しいんでしょうから、それも考えておかなければ、いま申し上げたように、日銀が国の圧力でむやみと買い上げてしまってインフレを招来をするか、そうでなければ市中に既発債が出回って大いに値崩れしてしまって、後は国債を売ろうと思っても売れなくなるか、そうでなければ、他の銀行から資金を受ける弱いところにしわ寄せがみんな行くか、その三つの一つ、どっちかにしかならないのじゃないのでしょうかね。その辺をどうお考えになっているか。
  50. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まず公債発行計画自体、政府が慎重でなければならぬわけでございまして、財政計画を立てる場合に、先ほど申しましたように、経済とのバランスを適正に図って立てなければならぬと思いまして、財政面からインフレを招来するようなことのないように心がけることが第一だと思います。  しかし、そういうことを踏まえて考えるにいたしましても、一定額の公債を出さなければならぬという羽目になった場合におきまして、政府としては、この引き受けをお願いしなければならぬ金融機関、生保、証券業界等と、十分意思の疎通を図っておかなければならぬわけでございます。したがって、いま御審議をいただいておりまする補正予算にいたしましても、御提出前に出資団の代表と懇談いたしまして、そういう方面の十分な理解をまずもって取りつけておいたわけでございます。また、これを現に、機関別に、また時期別にどのように発行、消化をお願いしてまいるかということについても、周到な計画を立てて、河村さん御心配になるようなことのないように配慮してまいらなければならぬと思っておりまして、日本銀行にきらわれるというような、あるいはまた、日銀ばかりじゃなく他の公債を消化する方面にきらわれるような、拒否反応を起こすような公債発行計画、そういうものはわれわれの方で慎まなければならぬわけでございまして、われわれの方で公債計画を立ててしゃにむにそれを押し切ろうというのでなくて、私どもとしては、十分そういう方面の意向も体し、そういう方面の理解を十分得ながら公債政策を推進しておるわけでございまして、御心配のないようにやってまいりたいし、またやっていけるものと考えております。
  51. 河村勝

    河村委員 いずれこの問題は、私はことしの問題じゃない、来年だと思います。ですから、自信がおありになるというなら、私は経過をずっと見守っていきたいと思います。だけれども非常に心配をしております。大きな国債が出てくるようになれば、今度聞くところによれば、公社債と国債との利回りの開きも大分縮めてお出しになるようでありますけれども、結局は市場で自由に売買できるような実勢価格で国債を出して、それで高くて財政負担が大きくなり過ぎたら、もう出さないんだという以外にコントロールの道はないのじゃないかと私は思っております。  それで、とりあえず将来、いますぐに公社債市場がこういう貧弱な時代にできるとは思いませんが、これだけ国債を出すようになったら、個人消化というものを考えていかざるを得ない時期だと思うのです。本当にこれを魅力のあるものにして、何か証券会社と銀行とのなわ張りとかいろいろなことがあるようでありますけれども、銀行でも郵便局でも、どこでも窓口で売って、それで利回りから言えば預金よりはいいわけですから、本当に宣伝よろしきを得れば売れるであろうし、それが自由に換金できる体制ができれば、全体の三〇%を超えるくらいのものは個人消化ができる可能性はあるのでしょう。何か一体個人消化というものを促進する考えはおありにならないのですか。
  52. 大平正芳

    ○大平国務大臣 個人消化が望ましいことでございまするし、また、それが可能なように考えてまいらなければならぬことも、仰せのとおりでございます。ただ、私どもとしては、公債だけが円滑に消化されるということをもって足れりとしてはいけないのでございまして、他の公社債の消化もまた円滑に進めてまいらなければならぬわけでございまして、公債だけが魅力ある条件を持っておりまして、他に回るべき資金までがそこにシフトされてくるというようなことは望ましい状態ではないと思うのでありまして、したがって、他の公社債と公債との間の条件のバランスというものは慎重に考えていかなければいかぬと思っております。現在も預貯金と同様に三百万円までは非課税になっておりますけれども、国債にはさらに三百万円の非課税限度が追加されておるような状況でございまして、個人消化を促進するような制度が全然ないわけではございません。しかし、今度大量にお願いする場合に、何か新たな工夫をこらすべきではないかという御所見かと思うのでございますが、先ほど申しましたように、ほかの債券類の消化も考えなければならぬわけでございまして、したがって、そういう中で可能な限り個人消化が可能なようなぐあいに極力考えてまいりたい、と思っております。  ただ、貯蓄債券でございますとか、あるいは免税国債でございますとか、過去においていろいろ工夫した経緯はございましたけれども、必ずしも長続きするいい成績はおさめ得なかった経緯もございまするし、わが国のように、郵便貯金制度が発達しているところにおきましては、郵便貯金自体が一つの公債の個人消化にかわる役割りを果たしておるという状況もございますので、大きく個人消化を三割も四割も期待できるような魅力ある条件をここで設定できないかという御相談に対しましては、私は大変むずかしいことではないかと思っております。
  53. 河村勝

    河村委員 いずれにしましても、今明年にわたって問題が出てくると思いますから、私は十分にその政府のやり方を見ながら、また今後の問題として議論したいと思いますが、この問題についての終わりに大蔵大臣にちょっと伺いたいのですが、ことしですでに公債収入に対する公債費の割合は二〇%ですね。来年以降、仮に国債依存度が二〇%ぐらい、利子が七、八分ぐらい——これは予算の規模がどのくらい伸びるかということにもよりましょうけれども、公債依存度が二〇%ぐらい続いたら、公債収入に対して利払いだけで半分を超えるのじゃないか。私も自分で正確に計算してみたわけではございませんが、半分ぐらいになってしまうんだろうと思うのです。恐らくそんなことがたえられるものではないはずだと思うのです。公債費ないしは直接利子の支払いだけでも結構だと思うけれども、公債収入に対して利子の支払いが一体どのくらいになるかというのは一つの歯どめになろうと思いますが、一体常識的にどの辺がめどになりますか、どの辺以上は出さないという。いかがです。
  54. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 河村委員の御質問のとおり、来年の公債規模がどうなるかということによって決まるわけでございますが、現在国債費は大体一兆を超えまして、国債収入二兆に対して半分が国債費でございます。それから、利払い費は全体の予算に対しまして三・七%というようなことになりまして、来年これが何兆出るかわからないわけでございますが、この一定の想定を決めました計算は、まだ来年の公債規模が決まっておりませんのでやっておりませんが、現在の状況といたしましては、公債収入に対しまして、おっしゃるとおり半分というようなことでございます。  なお、世界各国の、ほかの国の国債費の負担というようなものがございまして、対GNPの残高を用いまして国債規模を判断するという考え方はございますが、そういうような考え方からいきますと、わが国は英米に対しましては低いわけでございますが、独仏に対しては高い。ここら辺をどう総合的に判断するかという問題が残っておるかと思います。お答えになるかどうかわかりませんが、そういうことでございます。
  55. 河村勝

    河村委員 そういう懸念が十分にあるので私はお尋ねしたのですが、大体常識的に、収入に対して利払いが三〇%を超えたらもう出すのはやめるというぐらいのことが、感じとして私は正しいと思うけれども、総理、そうお考えになりませんか。いかがです。
  56. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まあ、いまどこまでが公債発行の限度かということはなかなかむずかしい計算だと思いますが、ドイツは二五・三%ですか、二六%というと先進国で一番高いわけですから——これは限度というのはむずかしいけれども、この二六%という依存度は相当に高いわけでありますから、こういう公債依存度をできるだけ減らしていくことが必要で、二六%が、河村君の言われるように三〇%になり、三〇%を超えるということは——私はそういうような方向でなくして、二六%を減らしていくという方向が公債の発行限度として考える場合に必要であろう。しかし、どこまでが限度かということは……。
  57. 河村勝

    河村委員 それは違うのです、総理。私が言ったのはそんなことじゃないのです。まあ結構です。これから公債依存度二六%なんか続いたら大変ですよ。私が言っているのはそうじゃなしに、だんだん公債が累積すると、公債収入に対して利払いが多くなるでしょう。せっかく公債を百円発行しても利子が五〇%も取らろるというんじゃ、もうしょうがないでしょう。だからその辺の歯どめがどっかにないのかという質問であったのです。結構です。  日銀総裁お見えですね。いまここで議論したのをお聞きであろうと思いますが、国債を一たび発行し出しますと、政府はどうしても国の計画の国債を消化したい。無理やりにでもですね。そういう圧力によって行動をするというのは、まあ一般的にいって自然です。それだけにいよいよ日銀の役割りというものは大切だと思います。日銀が、さっき申しましたように、成長通貨の供給という枠を超えてどんどん買いオペを進めていけば、これは国債を消化するのは何でもありませんよね。何兆円でも平気です。しかしそれでは大変でしょう。日銀としてはこれからが一番大事だと思いますが、一体どいうい態度をもって臨まれるか、まず伺いたい。
  58. 前川春雄

    ○前川参考人 森永総裁がよんどころない事情で本日出席いたしかねまするので、私、副総裁の前川でございますが、かわってお答えいたします。  国債が大量に発行されてまいりますと、それが物価あるいはインフレにつながるということが考えられるわけでございますが、その場合に、政府の支払いがふえまして、需要が拡大して、それがインフレにつながっておるという問題が一つあろうかと思います。もう一つの問題は、政府の支払いが進捗いたしますると、民間の流動性というものがふえてまいると思います。この流動性が過剰にふえますると、これは物価にも影響いたしてくると思いまするので、これから日本銀行が金融政策を進めてまいります上におきましては、経済の全体の中の流動性、これの動きを慎重に見きわめていく必要があろうと思います。金融政策といたしましては、もちろん金利政策が重要であることは当然でございまするが、それとあわせまして、そういう量的な規制というものを考えていく必要があろうかというふうに考えております。
  59. 河村勝

    河村委員 インフレないしはインフレになろうとしている時期には、金利の面よりも量の規制という方が大体において有効であるというのが定説のようであります。それで、これから日銀が適正通貨の供給というものを考えていく時期に、何を標準にするかということが——今日まで窓口規制その他でおやりになっておるけれども、どういう目標を立てて、そこに落ちつけていこうという一つの基準というものは、今日までないわけですね。それで、どうやら四十八年当時の狂乱物価、あのときの失敗にこりて、何か一つの目安をつくりたいという考えをお持ちのように聞いております。それで俗に——俗にと言うか、学問的にM2というものですね。現金通貨、預金通貨、プラス定期性預金の合計、これの残高というものが一つの目安になるのではないか。実際、学問的にはどうか知りませんけれども、経験的に言えば、三十六年以降今日までの推移をちょっと拾ってみますと、三十六年から三十九年まで、やや物価が上がり出したという時期、このときにはM2の対前年同月比が平均二〇・二%、それで消費者物価は六%、それから四十年から四十五年、これは非常に落ちついた時期で、このときにはM2の平均残高一六・七%の伸びで、物価は五・四%。四十七、八年の狂乱物価のときですね、これはやはりM2の平均残高というのは二六・四%。平均ですから、瞬間風速ではもっと三〇%を超えているのもあるでしょう。それで消費者物価は二〇%を超える段階に来た。見ますと、そこに消費者物価との相関関係が非常に深い、そういう事実があるのですね。それで、この適正供給率をM2というものを使ってコントロールするということが、われわれ、専門家ではなくて常識的に勉強している者にとっては、非常に魅力のある水準である。何かそういうものを目安に、日銀がこれでコントロールするんだという目標があれば、非常に一般の経済活動もやりやすい。確かに通貨というのは経済活動の結果であるという面も非常に大きいけれども、しかし、どうもこれで見ますると、逆にコントロールも可能なような気がする。だから、今後いかに政府圧力が強くとも、これはやはり一つの基準かでき——この一つの基準というのは何も日銀だけでつくることはないので、福田さんもおいでであるけれども、経済企画庁と一緒につくってもいいわけですね。これはGNPとの関連もあるのだから。そういうものをつくってやったらどうかという考えを持っていますが、いかがでございますか。
  60. 前川春雄

    ○前川参考人 いわゆるM2と言っておりますが、現金通貨と、それから金融機関の持っておりまする当座性の預金並びに定期性の預金、この残高が過剰にふえますると、それが何カ月かおくれまして物価に影響を及ぼしておりまするのは、過去の経験が示しております。そういう点につきまして、各国ともいま適正なM2あるいはマネーサプライ、増加率を持とうという検討が行われており、またある種の国、一、二の国にはその目標値を決めておるところもございます。  M2というものに影響が一番ございまするのは、金融機関の貸し出し、それから財政資金、あるいは対外的な輸出、こういうものがございまするけれども、現在M2に一番大きな影響がございまするのは市中貸し出しでございます。これから国債の発行が大量に行われまするので、財政資金によるM2の増加ということが無視できないことになろうかと思います。現在までのところ民間の資金需要もそれほど多くございませんので、市中貸し出しそのものはそれほど大きくございませんが、これから経済の回復とともに、市中貸し出し、民間の資金需要というものがふえましたときに、財政資金との間の競合ということが起こり得ると思います。日本銀行といたしましては、現在、市中の貸し出しに対しまして、いわゆる窓口規制という方式である程度のコントロールを行っていきたいと思っております。  御質問の適正なM2の増加ということでございます。これはいま各国でも検討されて、ある種の提案も行われておるわけでございまするが、望ましい実質経済成長率、それに、容認される物価上昇率、そういうものを足して考えたらどうかということの提案もあるわけでございます。ただ、何が適正であるかという点につきましてはいろいろな問題がございまして、いま先生の御発言にも、日本銀行だけで何も決めないでもいいではないかというお話もございました。この点につきまして、仮に適正であるというものを探しましても、もう一つの問題は、そういうM2の伸び率あるいは残高というものと、そのときの実体経済あるいは物価との関係というものは、必ずしも安定的な関係がございません。心理的な影響とか、あるいはそういう預金の回転率、そういうものもございまするので、必ずしも安定的な関係がございません。また、現在のように経済環境あるいは構造が非常に大きく変化いたしまするときには、この関係がまた今後非常に大きく変わるということも考えられます。そういう意味におきまして、現在私ども、適正な目標値を設けまして、それを機械的に守っていくということが必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えております。  ただ、現在のマネーサプライの状況が急激に増加するということは、必ず物価等に影響を及ぼす危険がございまするので、このマネーサプライの増加状況を十分注目いたしまして適切な金融政策をとってまいりたいというふうに考えております。
  61. 河村勝

    河村委員 このマネーサプライをコントロールする日銀の能力ですね。仮に、いまおっしゃったように、望ましい実質成長率、それと許容し得る物価の上昇率、だから想定した名目成長率の範囲にマネーサプライを抑えるというふうに考えて、それを日銀でもってコントロールする能力というのは、どの程度ですか。
  62. 前川春雄

    ○前川参考人 マネーサプライに一番大きく影響いたしまするのは民間金融機関の市中貸し出しでございます。それ以外に、先ほど申し上げました財政支出と輸出というものがあるわけでございます。日本銀行が直接金融政策としてコントロールし得るのは、民間金融機関の市中貸し出し、これの増加が過度にわたらないように、これは先ほど申し上げました窓口規制ということで、民間金融機関の企業あるいは一般に対する貸し出しの増加を一定の範囲内にとどめていくということをいまもやっております。これは今後もマネーサプライを管理する上において非常に大きな力を持っておるものだと思います。  ただ、一方、マネーサプライに対する影響力といたしましては、財政面あるいは輸出面ということがございまするが、財政面の変化はこれから非常に大きなものがございまするので、マネーサプライが急増するようなときには、市中貸し出しの管理だけでなしに、財政資金の支払いというものにも適切な調整が必要であろうかというふうに考えます。
  63. 河村勝

    河村委員 福田総理、いまお聞きになったかどうか知りません、居眠りされていたかもしれませんが、経済企画庁でいままでいろいろな経済見通しあるいは経済計画をつくる際に、このM2というのは使ったことはないのですね。ですけれども、こういう国債を大量に発行しなければならぬ時期になると、このマネーサプライというものは非常に重要になってくるのですが、これは一つの基準をつくるというのは日銀だけでもむずかしい。実際コントロールするのは日銀であるけれども。そうしたものは、やはり一つのみんなが合意するものがあれば非常にいいのじゃないかと私は思うのです。そういう意味で私は企画庁に検討していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  64. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあこれから多額の国債が発行される、それをどういうふうに管理してまいるか、これは非常に重大な課題になってくると思うのです。経済が仮に早期に安定する、一、二年の間に安定するということになりましても、財政はなかなかそう簡単に安定をしない、こういうふうに思うのです。そうすると、引き続いて多額の公債に依存をするという状態がある程度続く。それがインフレの要因になるかならないか、こういう問題があるわけであります。  先ほどから大蔵大臣が申されているとおり、基本的には国債を発行すると物の需要を喚起するのです。その需要の喚起が、あるいは国民の消費や設備投資や輸出や、そういうものとあわせまして適正な規模である限りにおいては、基本的にはインフレ要因となると即断はできないのですけれども、同時に、発行した国債が完全に消化されない、こういうことになりますれば、それがまた過剰流動性を生み出す。その過剰流動性がまたどういう需要を呼び起こすかもしらぬ、こういう可能性がありますので、国債の管理、これには特段の配慮をしなければならないだろう、こういうふうに思います。  それと、直接な関係はありませんけれども、M2の問題。M2は、通貨当局である日本銀行、その金融政策運営の非常に重要な資料でありますので、日本銀行でもM2の問題につきましては重大関心を持っておりますが、政府の方でもひとつ日銀と協力いたしまして、なお、さらにそういう問題を掘り下げ、公債管理政策に資するところがあればと、かように考えたいと存じます。
  65. 河村勝

    河村委員 時間がなくなりましたので、外交問題を少しお尋ねをしたいと思います。  先般、この委員会岡田春夫議員の質問がありまして、資料が防衛庁から出されておる。統幕三登第三九甲二八号、これを見まして、実は私は非常に奇異な感じを受けたのです。この返事の資料の中に「有事の際において、日米が共通の危険に対処するための総合的な研究は、四〇年に三矢研究が国会においてとりあげられて以来、行つていないが、統幕・陸・海・空幕は防衛運用上の技術的、専門的な事項について研究を実施してきており、」こういうのですね。これは本当に何にも共同研究はやってないのですか。  私は、日米安保条約についての民社党の立場は御存じでしょうからもう説明をいたしませんが、とにかく、見通し得る将来、当面、安保条約というものはこのアジアの三極均衡の中で一つの安定的な役割りを果たしているのですから、私どもはこれは維持をしなければならぬと思っている。安保条約というものがある限り、やはり共同防衛あるいは共同防衛分担というのはあるのはあたりまえなんで、何か三矢研究でつつかれてから後は何もやっておりませんというのはまことに不可解であると思うが、一体どういうわけでありますか。
  66. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 三矢研究が出ましてから総合的な防衛協力全般につきましての研究はやっておりません。しかしながら、個々の技術的な研究というものは続けておるわけでございます。しかし、このことは、日米安保条約というものが日本の安全にとって不可欠なものであるという認識を持つとするならば、これはやはり、日米防衛協力の問題につきまして当事者同士が話し合うことは当然なことであるというふうに私は考えたのでございますし、また、そういうような研究はシビリアンコントロールのもとにおいて行われるべきものであるというふうに考えたのでございまして、その意味から、実はアメリカの国防長官シュレジンジャーさんと私とこの八月二十九日にお会いをいたしまして、いろいろお話をして、年一回責任者同士が会うということ、そしてまた日米防衛協力委員会の枠内においてサブコミッティーを設けて、そして防衛協力あるいは作戦協力についていろいろ研究をする。もちろんその中におきましてユニフォームもまじえた検討がなされる。しかしその前提といたしましては、わが国は憲法がございます。この憲法の制約のもとに、また自衛隊法あるいは防衛庁設置法等の諸法規に照らして誤りないようにすべきであるというのが私の考え方でございます。
  67. 河村勝

    河村委員 まあ大体お答えはわかりましたが、要するにいままでは、政治レベル、あるいは制服を除いて防衛庁の幹部と申しますか、そういうところでの日米間の大きな意味での戦略的調整、そうしたものが行われていないものだから、制服組は困ってしまって、とにかくどうしても最小限度必要な何か共同の打ち合わせとか研究をやっておる、こういうふうにとれるわけですね。いままでそういう基本的なものを怠っておれば、これは制服組というのは実際仕事をしているのですから、いやでも日米協力をやらなければならない。もとが決まっておらなければ、力の大きさによって動かされるのは当然であって、結局はアメリカの戦略にそのまま追随してしまう。だから、こういう国会での論争で、何か紛糾を避けるために、あれもやりません、これもやりませんと言っているうちに、だんだん結局はアメリカの戦略にまるっきり後を追っかけていくということになる。そういうことではないかと思いますが、総理、いかがですか。
  68. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 河村君の言われるように、やっぱり日米間の安保条約を円滑に運営さすためには、日米間の防衛についての協力関係というものをいろいろと話し合わなければならぬので、今度私もアメリカに参りまして、フォード大統領との間に、安全保障の協議委員会の下部機構として、一つのいろいろそういう当局者の話し合いをする場面をつくろうじゃないかということで、同時に、防衛の責任者である防衛庁長官がやはり年に一回は会おうということで、これはこれから年一回は会うことになる。外務大臣も、この安全保障の問題とも、間接的にであっても関連を持つわけですから、定期的に年二回会うとか、こういう点の努力が従来河村君の御指摘のように足りなかった。シビリアンコントロールのたてまえから言っても、やはりそういう最高の責任者が会って、そして実務的な当局者がやっぱり話し合いをするということでないと、御指摘のようないろんな弊害が起こってくるという点は、お話のとおりだと私も考える。それをやはり改革していきたいと思って、従来の方式に対して改革を加えた次第でございます。
  69. 河村勝

    河村委員 この総理の先般八月の訪米の際の日米共同新聞発表を見ますると、いまちょっと話も出ましたが、安保条約の「円滑かつ効果的な運用のために一層密接な協議を行うことが望ましいことを認めた。両者は、両国が協力してとるべき措置につき、両国の関係当局者が安全保障協議委員会の枠内で協議を行うことに意見の一致をみた。」なぜ「安全保障協議委員会の枠内で」というような限定されたものに合意をしたのか。
  70. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は次々に新しい機関をつくっていくというのはよくないと思うのです。現在ある機関を活用するということがいいので、その機能を十分に果たしてない点があるとするならば、それを補うような方法を考えればいいので、何か協議委員会なるものを次々につくるということは私はよくないと思いまして、現在ある機構の中でいままでの足りない点を補っていくような方法がいいということで、そういうことにいたしたわけでございます。
  71. 河村勝

    河村委員 安全保障協議委員会というものは、岸・ハーターの間の取り決めでできたものでありますが、日本側の出席者防衛庁長官と外務大臣ですね。それでアメリカ側の代表は、アメリカの在日大使、それから太平洋軍司令官ですね。出先です。出先の大使と実施部隊の親方です。日本側は外務大臣、防衛庁長官閣僚ですね。格式はともかくといたしまして、その管掌している仕事の中身が違うんですね。これが日米安全保障協議委員会です。なぜこの枠内でなければいけないのですか。
  72. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先生のおっしゃいますような意味におけるこのあり方も一つのお考えだと思うのです。しかしながら、それでははなはだしく支障を来すかといいますと、ただいま総理からもお答えがございましたような安保協議委員会のサブコミッティーとして、そして両者が話し合う、詰めていく。しかし、もしどうしても詰まらないいろいろの問題が起きました場合は、最高の責任者でございます私とアメリカの国防長官が、年一回話す機会が持たれるようになったわけでございますから、ここでまた話をする。そしてまた、そのことの細かい問題については下におろして協議をさせるということでいけると考えておる次第でございます。
  73. 河村勝

    河村委員 支障がないというのはどういうことかわかりませんが、とにかく出先の大使と太平洋軍司令官を相手にして、それで国と国との間の本当のアジア政策なりあるいは戦略的な調整というのができるとは私は思わない。だから、総理がアメリカに行かれて新しい合意をフォード大統領とされるならば、岸・ハーター取り決めというものがどういういきさつでできたのかは知りませんけれども、それはそのときの条件もあるでしょう。当時と日米間のあり方もまた変わっているはずですね。それこそいま対等に友好関係をつくっていく時期です。そうであれば、安全保障協議委員会などという枠にとらわれないで、これ自体を、外務大臣と防衛大臣と両方が出て、相手もやはり国務長官と国防長官にしたらいいのですね。現に坂田さんがシュレジンジャーと会談をして、年に一回向こうの国防長官と話をしようということになっているらしいですね。それはそれで別にあって、外務大臣の方は外務大臣の方でキッシンジャー国務長官と年に二回話をしようという合意がここでなされているわけですね。であれば、これは外交、防衛、それは問題の性質によりますけれども、事、安全保障に関連する問題については、外交、防衛というのは両輪ですね。であれば、安全保障問題について、両方が外交、防衛の責任者、その両者の会合にするというのが本当の行き方であろうと私は思う。そういうふうになぜ持っていかなかったのか。そういうふうに持っていかれる気はないのですか。
  74. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 安保協議委員会は、御指摘のようにわが国の総理大臣と米国の国務長官との往復書簡において決められたものでございまして、これは安保条約そのもの、ことに第四条に規定しております随時協議をいたします機関として設けたわけでございます。もとより安保条約は日米両国間の関係の非常に重要な部分ではございますけれども、全部ではございません。ことに安全保障という問題が、国の全般的な関係、世界との関連等から、非常に広い意味と基礎づけを持っておりますだけに、そのような関係の討議というものは、この条約そのものの範囲にとらわれることなく、むしろもう一つ高い政治的な背景のもとに行われてしかるべきではないか。それは、防衛庁長官同士の協議であり、外務大臣同士の協議であり、あるいはまた総理と大統領との会談といったようなもので取り扱われるのが至当ではないであろうか。すなわち、日米安保条約の適用という狭い範囲においてであるならば、アメリカを代表する米国大使、あるいは太平洋における太平洋軍司令官といったようなことで足りるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございまして、河村議員の言われますようなもう少し高次の、非常に広い、深い意味でのわが国の全体の安全と繁栄、それはこの条約にとらわれることなく、もう少し高次の政治的なレベルで行われることがむしろ自然なのではないかという考え方からであろうと思います。
  75. 河村勝

    河村委員 話の筋はそれで結構です。ただ、いま当面するものは朝鮮半島問題が前面にあるわけです。きょうはもう時間がございませんから、この問題について長く議論するつもりはございませんが、恐らく当面戦争は起こらぬでしょう、それは現在の国際情勢で。しかし、あり得べきことを想定して考えておかないといけない事態でもあるわけですね。いまのまま両方の政治的な、戦略的な考え方の統一がないと、いざというときに大変困ると思うのですね。たとえば、いま三十八度線に近い韓国の白レイ島あたりでマヤゲス号事件みたいなものが起こって、沖繩の海兵隊が出かけていったらどうしますか。事前協議の対象になるかならぬかという議論がまた出てくるわけですね。カンボジアあたりで起こった場合には、実際日本から行っても、あれは部隊の移動でございましたという答弁もできます。ですけれども、今度は私はそうはいかないと思う。仮に韓国の本土内の基地に一回行ったというならまだいいかもしらぬけれども、多分今度はそうはならないでしょうね。海兵隊というのは常時臨戦態勢にあって、いつでも船なり飛行機なりに乗る態勢にある。だから命令を受けるときには、別段どこに行くという命令は受けないのですね。作戦行動命令というのは、とにかく何々艦に乗艦せよという命令だけ受けている。だから、事前協議を狭く解釈すれば、あれは単なる部隊が船の方に移っただけである、それから先、どこに行こうとわしら知らぬということは言えるわけですね。一体こういう場合、仮にそういうことがあったらどうなさいますか。
  76. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 過日、本委員会の御討議中に、私からシュレジンジャー国防長官との会談の模様を申し上げました際に、米防衛当局がわが国の基地に期待しておるものは主として、補給、兵たん、ロジスティックスであるということを御紹介申し上げました。実はその会談の中で、これは具体的にあるということではなく、物事をわかりやすくするために幾つかの例についても話をいたしたことはあるのでございますが、ただいま河村委員の御指摘になりましたような例で申しますと、わが国の基地から海兵隊が直接現地に投入されるというようなことがございますれば、これはもとより事前協議の対象になります。また、私が会談をいたしました内容から判断をいたしますと、米国国防長官はそのことをよく理解をしておられました上で、わが国の支援活動は補給、兵たん等をもって自分は十分と思うということを言っておられたように存じます。
  77. 河村勝

    河村委員 この問題は、本当は余り議論をしたくないのです。だけれども、そういうこともあり得るのですから、これは単純なる、個々の事前協議とかなんとかという問題じゃないと思うのです。もっと本質的に、有事の際に日米両国はどうすべきかという、そのことについてのはっきりした意見の調整がなければならぬ、そういうことを私どもは非常に重要に思っておりますので、先ほどのように、安保条約に関連するしないは別として、両国間でもっとはっきりした戦略的な調整をする場をつくって積極的にやってほしい、そういう意味であります。  時間がなくなりましたので最後に。来月先進国首脳会議においでになるそうでございます。新聞報道で見ますと、キッシンジャー国務長官に対して、総理は、南北問題を重点に取り上げたいという意思表示をされたと聞いております。また、けさあたりの新聞報道で見ると、第一次産品の輸入価格の安定、そうしたものについても話をしたいというふうに報道されております。結構なことだと私は思っております。われわれの多年の主張であります。ただ私は、ことしの施政方針演説で総理のおっしゃっていることと比べると、余りにも違い過ぎて少しびっくりしているんです。総理は確かに、南北関係に非常に比重が増してきたということは言っておられるけれども、先進工業国と発展途上国との間に、真に対話と協調の関係をつくり出したい——例のごときものですね。それと、あとは何かというと、「たとえば、日本の景気の回復は、発展途上国、とりわけ日本との関係の深い東南アジア諸国の経済にも好影響を与え、また、これら諸国の経済発展に協力することが、日本の経済にも好影響を及ぼすことになります。」何ということはないですね。あたりまえのことを言っているだけで、中身は何もないのです。ですから、南北問題を重視しておられると言いながら、この程度のお話しかなかったものでがっかりしておったら、たまたまキッシンジャー国務長官に対してそういう意見を述べられ、また何らかの準備をされているように報道されております。君子豹変といいますから、急に大きく飛躍をされることは私は結構だと思います。しかし、これは本当に大事なことで、いま経済協力、技術協力についても問題点がうんとあることはことしの春の予算委員会でるる申し上げましたが、恐らく御記憶にはないでしょう。しかし、いまそれ以上に第一次産品の安定輸入、価格と量の安定、これが一番大事な問題になってきております。今度臨まれるに当たりまして、本当にこの問題、たとえばロメ協定のようなものを想定をして、それでこの六カ国首脳会議で主張され、これを発展されようとする明確な意思がおありであるかないか、それを最後にお尋ねをいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  78. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今度の臨時国会は、不況対策というようなことを重点に置いてあるので、南北問題を論ずるという場面ではなかったですけれども、河村君御承知のように、この予算委員会を通じても、私は南北問題というものをいままで一番強調してきたわけですよ。これからの世界の最大問題というものは、二十世紀の後半から二十一世紀にかけて、南北問題というものが調整がつかなければ、世界の平和、繁栄というものは望めないということを、繰り返し繰り返しこの委員会でもいままで述べてきたわけで、私は実際にそう考えておるわけですから、今度の首脳会談でも南北問題というのは議題になっておるわけです。  日本の場合、ことにアジアという、人口が世界人口の半分以上も占めておるような地域で、非常に文化的な伝統を持ちながら生活というものは非常に貧しい状態にある。アジアに位置する日本として南北問題に関心を持たざるを得ないわけです。  そういう点で、この問題は各国の首脳部も、これは議題になっておるわけですから、いろいろな案が提示されると思いますが、日本もこの問題については、できる限り各方面の意見も徴し、また政府自体としても検討して、この問題で日本の考え方というものを述べたいと思っております。
  79. 河村勝

    河村委員 それではまた逆戻りになるのです。いまのは何もおっしゃっていないのですね。ただ、大事なことだから意見交換するだけですね。私が申し上げたのは、本当に南北問題をお取り上げになるなら、経済協力、技術協力の問題ももちろんございます。しかし、いま本当におやりになろうとすれば、第一次産品の価格と量の安定輸入、日本でもすずでは一部すでにやっておる例はございます。いま金のないときですから、それは政府の中でもいろいろな議論があろうと思います。しかし、ないときはないなりに、将来に向ってこのことを日本が積極的にやる意思があるかないかということを言うのは大変なことです。それを言われるかどうかということを私は具体的に聞きたかったのです。
  80. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この第一次産品、地域によっていろいろ違いはあるでしょうが、所得補償という問題については、価格の安定、またそのための所得補償というものは、すでにロメ協定などでこれは実施されようともしておるし、世界的な共通の課題になっておりますから、こういう問題についても日本の考え方は述べなければならぬと思っております。私自身も、この間の首脳会談に臨みましたときに、ロメ協定のようなものが、地域的にアフリカ諸国、ヨーロッパ等が中心になってそういう協定が結ばれようとしておるのですが、これはやはり世界的な規模でこの問題を取り上げる必要があるという提示をワシントンのプレスクラブの演説でしたわけでございますから、私も大変に関心を持っておる問題でございます。
  81. 河村勝

    河村委員 終わります。
  82. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて河村君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後一時十二分開議
  83. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。阿部助哉君。
  84. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は先日、償還計画についてお伺いをしたわけでありますけれども、いま大蔵省の方から出されておるのは、この予算書にあります償還計画、それときょういただいたのでありますが、「特例公債の減債について」というごく簡単なもの、要点は、百分の一・六を定率に繰り入れる、この予算の余った金を繰り入れるという程度のものしかいただいていないわけです。これだけがいわゆる償還計画の全部ですか。
  85. 大平正芳

    ○大平国務大臣 償還計画と申しますと、今度発行しようとする国債は、十年で、つまり十年目に償還する国債でございますので、昭和六十年に償還するということが決まっておるわけでございます。したがって、昭和六十年に全額を償還いたします、こういう計画を国会に添付して提出いたしておるわけでございますが、阿部委員のおっしゃるのは、年次別にどうなるんだということが明快でないという……。(阿部(助)委員「そんなこと言ってないですよ、年次別なんて言ってません」と呼ぶ)いや、昭和六十年に払いますということと、それからそれに要する財源は国債整理基金にこういう方法で積み立てますということを申し上げておるわけでございまして、何年度に幾らこうするという数字的なことは申し上げてないととは御承知のとおりでございます。
  86. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の質問を聞いてないで答えられてもピントは外れるのですよ。皆さんの償還計画はこれだけか、こう聞いておるのですから、これだけならこれだけだと言えばいいし、まだあるならばお出しいただけばいいし、そういうことなんです。  大体、特例法と皆さんおっしゃっておるけれども、これは私の見解ですが、日本の財政法は赤字公債を禁止しておる。憲法もまたその趣旨であると思うのであります。そうすると、憲法、財政法の違反なんだ。しかし私は、これを論議しますと、とても私に与えられた時間では足りませんので、いずれ機会を見てまたこの論議をすることにいたします。  それで私は、本日は具体的に償還計画についてお伺いをするわけですけれども、償還計画は国会の審議にたえるような資料を出してもらわなければ困ると私は思うのです。これは財政学者だれでも言うわけですけれども、償還計画は、国会が起債の可否を決する重要な資料であるから、その国会への提出も起債限度の議決を求めると同時になす必要がある。ただ償還計画は、将来のことであるから変更することもあり得る、しかしそれもまた国会に出す、そうして了解を求めるというのが当然のことであって、ただ、赤字公債をこれだけ出します、十年後に返しますという程度では、これは国会の審議にたえるようなものではないのです。私はそういう点で、もう少しちゃんとした計画というものを出されるのが当然だと思う。  憲法の八十三条には「國の財政を處理する権限は、國會の議決に基いて、これを行使しなければならない。」こうなっておる。八十五条では「國費を支出し、又は國が債務を負推するには、國會の議決に基くことを必要とする。」こうなっておる。私は、日本の財政法、これは財政の民主主義というものであり、同時に国会中心主義に原則はなっておる、こう思うのであります。それについて、将来国民の負担になるだろうというものを、十年後に返しますなんという程度で、われわれがこれをここで見逃してしまったら、私たち国会議員は一体何をもって国民の負託にこたえているということになるのですか。全部政府にお任せしたということになってしまうんじゃないですか。私は、行政権をチェックする役割りもできない、こんなものが償還計画でございますなどと言われてみても、納得ができないのであります。実質的な何物もない。そうして皆さんは、予算は予算で審議してください、特例法は大蔵委員会でやってください。実質的にも何もないし、また形式的に言えばこれは審議権——やはりこれまた国会軽視になると思う。私は、大蔵大臣は一体何の権限をもって、どの条文をもって赤字公債の予算をお出しになったのかわからぬ。皆さんは憲法、法律に基づいて行動しなければならぬのだけれども、特例法は後で出します、後で審議をお願いしますではいけないので、本当言えば、特例法を先に審議しておいて、それでこれに基づいてこういう予算をつくりますというのが、むしろ形式的に言っても私は大切だと思う。あなたは一体何の権限をもってこんな予算をここへ出してきて、われわれに審議してくださいなんておっしゃるのです。私、その根拠を聞きたい。
  87. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおり、財政法は赤字公債の発行を禁じておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、特例法をお願いいたしまして、それによって与えられる権限によりまして特例公債の発行をいたそうといたしておるものでございます。したがって補正予算と同時に関係法律の国会の御審議をお願い申し上げたわけでございます。仰せのように、特例法が先に審議、議決されまして、しかる後に予算をお願いするというのが順序かと思いますけれども、事、取り急いでおりましたので、同時に御提案申し上げて御審議を願うということにいたしたわけでございます。  それから第二に、償還計画は、六十年に借りかえすることなく全部償還いたしますということだけでは十分でないという御指摘でございます。このことにつきましては、四条公債でございますならば、申すまでもなく、六十年という一応の目安を置きまして、その間に借りかえによって償還をするというようなことも従来やってまいったわけでございますけれども、今度の場合は、あなたがおっしゃるとおり異例の措置でございまするので、一切借りかえは認めないという決意を政府としていたしたわけでございます。したがって、また償還財源につきましても特別の措置を講じようということにいたしたわけでございます。私どもとしては、精いっぱいの措置として考えておるわけでございますけれども、十年間に借りかえがなく償還してしまうということでございますので、勝負は十年間でございます。十年間に特例公債を出さなくて済む事態をなるべく早く迎えまして、そして予算上の償還財源の特別会計への繰り入れをふやしてまいるという措置を講じまして、十年間にきれいに償還させていただくというように心組んでおるわけでございますので、いまの財政状況といたしましては、その措置が精いっぱいの措置と考えておるわけでございます。
  88. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は手続の上から言っても国会軽視じゃないかと思う。あなたも認めておるように、本当は法律を先に審議すればいいのですよ。万やむを得ないときでも、これは連合審査か何かやらないと、どっちも中身のない議論をせざるを得ない。予算は予算でやる、特例法は特例法でやるということになってしまう。それであなたたちは、その法律に基づいて予算を出してこなければいかぬのですよ。  しかし、これも論議をしていれば時間がかかりますから、次に具体的な問題に移りますけれども、私は何も、年次計画を立ててこうお返ししなさいとか、何月幾日にどれだけ返す計画を立てなさいと、こう言っておるのではないのであります。皆さんは、十年たったら返しますと、こうおっしゃる。それはある意味で言えば、公債の残高の一・六ずつ積み立てていく。そうすれば、いま出ておる赤字公債の分を返すなら元をふくらます。公債をどんどん出していけば、その一・六掛ければそれなりに大きくなるんだから、それで十年後に返すという計画が立たないではない。一つは私はそれだと思う。問題は、そうなったら財政インフレです。問題は、インフレで返すということなら、そうおっしゃればいいのであります。ただあなたが十年後に返しますと言うだけでは、これは計画にはなりませんと、こう私は言っておるのです。財政インフレで、インフレをどんどん起こせば、またそれに従って自然増収も出るでしょう。そういうことでこれは返済される予定なのか、計画なのか、どうなんです。
  89. 大平正芳

    ○大平国務大臣 財政演説でも申し上げましたとおり、一日も早く特例公債に依存しなければならぬ財政からの脱却を図ってまいることが財政政策の基本でなければならぬと考えておるわけでございます。したがって、特例公債の償還をさらに特例公債に依存するというようなことをやっておったのでは、その趣旨は満たされないわけでござ、ますので、そういうことは毛頭考えておりません。
  90. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたの財政演説で、「堅実な財政にできるだけ早く復帰するよう、あらゆる努力を傾注する所存であります。」と、こうおっしゃっておる。そしてその次に、「税制上の諸問題や公共料金のあり方等につきましても、全面的な見直しを行ってまいる必要があると考えております。」と、こうなっておる。私は、返す手は、インフレによって返す手も一つあるだろう、もう一つは増税によって返済していくというのが次の行き方であろう、こう思っておるのです。それならばどういう税制をやるのか。「全面的な見直し」というのは、これは計画にはなりません。先ほど申し上げたように、あらゆる財政学の本にもあるように、国会の審議にたえるようなものでなければいかぬのです。それでなければ国会というのは全く空文化された、形骸化されたものになってしまうのであります。われわれはこんなことをやっておったって、これは国民の期待、憲法の示すところには何も沿わないということになってしまうのです。われわれは一体何で、十年後に返すという皆さんのその程度のことで、国民の負託にこたえて内容を論議することができるのです。私はこんな程度で論議するわけにはいかぬと思うのですよ。具体的にとにかく出さなければいかぬ。  しかもこの経済白書にもある。これは異例なんです、こういう具体的なことを述べておるということは。私はこれは本当に異例だと思うのですが、「今後付加価値税の創設等間接税の拡充について検討を進める必要があろう。」と、ここに具体的に付加価値税という問題が出てきておるわけであります。そうしてあなたは、国会ではさっぱり本当のことをおっしゃらないけれども、税調にあなたは諮問をしておる。そこでは、わりとはっきりとおっしゃっておるのですよね。「歳出の大幅な削減、公共料金等の受益者負担や社会保険料の引上げ、または一般的な増税を」——いいですか、「または一般的な増税を避けてとおることはできないであろう。」というふうに、あなたは、インフレによらない健全財政に一日も早く移りたいと、こうおっしゃっておるのです。そして「全面的な見直し」、こう言っておる。そして税調等には、「増税を避けてとおることはできないであろう。」という諮問をしておるのですよ。それだけれども国会では何も言わない。しかし、増税で行くという場合、やみくもに国民はふところから金持っていかれちゃ困るのです。国民も税金で取られるなら取られるだけの用意をせなければいかぬのです。あたりまえのことだ、こんなものは。それを国民に何も知らさないで、そして十年後に返しますなんて言ったって理屈合わぬじゃないですか。こんな国会をばかにしたやり方というものは、私はどうしても納得ができないのです。そんなことやっておるなら、私、国会議員やめます。国民の負託に何もこたえないじゃないですか。余りにも私は政府はわがまま過ぎると思うのですよ。あなたが国会にこういう方向でやるつもりだというぐらいのことが言えなくて、どうしてわれわれが国会審議ができるのです。御答弁願いたい。
  91. 大平正芳

    ○大平国務大臣 財政はすべて国会の管轄に属することでございまして、国会の御審議を経ないでできることはないわけでございます。私どもといたしましては、すべての案件は、歳出歳入を問わず国会の審議、御承認を得て財政は運営さるべきものと心得ておるわけでございます。  問題は、そういう段取りにまいるまでに政府はどういう心組みでやっておるかということだと思うのでございますが、まず、このように巨額の歳入欠陥を記録いたしまして、巨額の特例公債に仰がなければならぬという状態になってまいりましたので、これに対しましては、まず歳出を、先ほどお話もございましたように、精細に見直さなければならぬことは当然であろうと思うのでございます。また歳入につきましても、同様に現行の歳入について十分な見直しを行わなければならぬことでございます。そういったことをやり遂げた後で、一般的な増税というような問題につきまして国会の御判断を願わなければならぬことになるわけでございまして、いま私どもが考えておりますことは、そういう前提になることを鋭意やってまいるということが当面の任務と思っておるわけでございまして、いついつからこういう新税を起こす考えであるというようなことを軽々にまだ申し上げられる段階でございません。それは、国会の御審議に十分の用意をした上で実のある御審議をお願いするためにそう申し上げておるわけでございまして、いま私どもが、税制調査会その他の検討も経ないままで、そういったことについて言及することは適切でないと考えておるわけでございます。
  92. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあ、これだけの欠陥を生じたという責任問題もあるのです、本当言うと。私は、本来ならば、これだけ大きな赤字を出したら、大蔵大臣はおやめになるのがあたりまえだと思うのですよ。だけれども、その問題は別にしまして、前提をいま考えておると、こう言う。それなら考えてから予算を審議しようじゃないですか。国民の負担になる。しかも財政は、憲法や財政法の規定から言っても、これは厳密にせなければいかぬのですよ。これが議会主義なんだ。そういうものを、いま検討しておるからいま発表ができないと言うなら、この赤字予算の分だけは少なくとも、皆さん、出し直しておいでになった方がいいですよ。われわれは赤字公債の分は審議ができません。もう一遍答えてください。
  93. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ここでお願いいたしておりまする特例公債で調達をしようとする財源は、歳入の欠陥の補てんでございます。したがって、中央、地方を通じまして、ただいまの予算の執行上必要な財源でございますので、これだけを取りやめるということになりますと予算の執行が不可能になるわけでございますので、その点につきましては御了解を得たいと思います。
  94. 阿部助哉

    阿部(助)委員 困ったことの、こういう事態になったことの責任もとらないで、こういう事態だから何とかしてくれなんと言ったって無理です。あなたのポケットマネーから返すんじゃないのですよ。行く行くは国民の負担です。特に建設公債と違うのは、実物の資産が残るわけじゃないのです。赤字公債の場合に生そうでありながら国民の負担にかかってくるわけです。それを国民に何も教えないで、予算が困るから何とかしてくださいと、こう言うのは、これは、憲法の八十三条、八十五条、そうして財政法の精神にあなたは違反しておるということじゃないですか。こんなものを認めれば、われわれ国会議員もまた、この法律に違反することになるのですよ。私は、この赤字公債の分だけは予算を出し直しをなすったらいかがですかと、もう一遍聞きます。
  95. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは特例公債でございますので、十年間に完済するということ、その間に借りかえは行いませんということ、それの償還財源としてこれこれのことを考えております。その中には年々予算の繰り入れも考えております。その予算の繰り入れを考える場合に、先ほどあなたがお尋ねになりました、歳入歳出全体にわたりまして見直しを行いまして、財政計画全体でそれに対する答えを出さなければならぬわけでございます。政府としては、特例公債なるがゆえに非常に厳重な枠を設けましてその償還を処理いたしておる次第でございますので、何分御了承を得たいと思います。
  96. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私もできるだけ余り荒立てないで終わりたいと思っておるんですけれども、国民の負担になるのですからね。私は繰り返すけれども、これは十年後に返しますと言う。いま建設公債と違った何かと言う。それは書きかえをしないというだけでしょう。あと何かあるのですか。書きかえをしないというだけが建設公債といわゆる赤字公債との違いであって、あと何か違いがあるのですか。
  97. 大平正芳

    ○大平国務大臣 年々の剰余金全額を償還財源として国債整理基金特別会計に繰り入れるというようにいたしておるところも違っておる点と考えるわけでございますけれども、しかし一番最大の違いは、何と申しましてもこれは異例中の異例なことでございまするので、財政政策の厳しい運営を通じまして、早期に償還をして、こういう財政状態から早く脱却せなければならぬということを基本に財政の運営をやってまいるということが、今後一番基本であろうと心得ております。
  98. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたは、そういうことを計画書のどこにお出しになっておるのです。返済計画はちゃんと書類にして国会の審議にたえるようにせねばいかぬのです。財政法の二十八条にも「国会に提出する予算には、参考のために左の書類を添附しなければならない。」こうなっておるのですよ。それで個条書きに九項まであって、第十項には、「その他財政の状況及び予算の内容を明らかにするため必要な書類」というものを出さなければいかぬ。あなたが気分的にここで、こうやりたいという希望的観測を述べられても、それは問題にならぬのですよ。それなら、その書類を出してからここで審議をしようじゃないですか。
  99. 大平正芳

    ○大平国務大臣 償還計画表の説明には、四条公債の場合と違った借りかえを行わない等が明確にうたってあるわけでございます。
  100. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は納得ができないけれども、まあ次へ入ります。  国債を返す財源のつくり方には、私は何か三種類あるような気がするのです。その一つはさっき言ったインフレであります。第二は増税であります。第三は減債基金の運用益だ、こう思うのであります。ところが、わが国の国債整理基金特別会計、これは赤字公債もいわゆる建設公債も一本になって運用されておる。それはさっぱり内容がわからない。これも償還計画のどこにあるのです。私はさっぱりわからない。もっと悪口を言えば、伏魔殿みたいなものじゃないのか。  これは四十八年度決算の説明書、こうなっているのです。ここで見ますと 運用収入見積もりが三億六千百九十五万一千円なんですね。ところが、実際に入ってきたのは幾らか、こういいますと、八十五億七千百四十万五千円なんです。これはパーセンテージで言えば二千二百何十%という伸びなんですね。一体こんなにでたらめな数字というものがあるのですか。五%や六%違うというなら、これはわかるのですよ。二十何倍も狂ってくるなんということは一体どういうことなんです。私はこの特別会計自体の中身ももう少しわからないと審議ができないと思うのですよ。  それで、今度の補正予算ではこれはどういうことなんです。今度新しくさらに基金へ金をぶち込むわけですね。ふえるわけです。約五千億くらいふえるのだと思います。そうしますけれども、その運用益は、当初の予算と改定後の予算は、金額は一文も変わらない。運用するところの金はうんとふえても運用益は一文も変わらないなんということがあり得るのですか。そんな下手な運用を大蔵省はしていらっしゃるのですか。一体どうなっているのかわからない、こんなもの。こんなことで国会を通してくださいなんて言われたって、私たち責任が持てないのですよ。これはちゃんと説明してみてください。
  101. 松川道哉

    ○松川政府委員 四十八年度の当年度運用収入と見込みましたものは、予算繰り入れにかかる金額につきましての運用収入でございます。ただ、国債整理基金特別会計におきましては、逓次繰越の規定がございまして、それ以前におきまして国会での御承認を得ました金額が資金として運用されております。この分が決算書のときには加わって計上されますために金額が大きくなるのであります。
  102. 阿部助哉

    阿部(助)委員 何を答弁しておるのです。こんなに皆さんは見通しが立たないのかと言っておるのですよ。二十二倍もふえるような、この見通しの立たない予算をここに提出されるのか。それならば、なるほど、一年先のことすらこれぐらい大狂いをするのに、十年たったら耳をそろえてお返ししますなんて言ったって、これはだれも信用ができないじゃないか、こう言っておる。それだからこそ、国会に償還計画を出せ、こういう規定をし、国会を中心に財政民主主義を守れ、こう憲法も財政法も決めてあるのですよ。皆さんが幾ら狂ってもいいなんということにはならぬのですよ。こんなでたらめなことをやっておって、十年後に返しますなんということを国民が納得するはずがない。しかも、結局はインフレに、それでなければ増税によって、国民の負担でこれは返す以外にない。皆さんは国民の負担というものをまことに軽視しておる。軽くお考えになっておるのじゃないか。私はこんなことではこの予算審議ができないと思うのです。大臣もっと明確にしてください。
  103. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今度発行をお願いしようといたしますのは、十年満期の国債でございまして、六十年に償還すべき国債をお願いするわけでございます。問題は、十年という期間が問題ではなくて、その期間において償還財源がどのように積み立てられるかということが問題であろうと思うのでございます。それにつきましては、先ほど申しましたように、その間に、十年たちまして借りかえで払うようなことはいたしませんという歯どめを一つ設けてあるわけでございます。それから前年度の剰余金は全部国債整理基金に投入いたしますということを第二に設けてあるわけでございます。第三には、年々予算上の繰り入れを行うつもりでございますということをお約束いたしておるわけでございます。その予算上の繰り入れば、どこまであなたが満足がいくように繰り入れられるかどうかということが、今後の財政計画の運営にかかってくると思うのでございます。  したがって、私が先ほどからも御説明申し上げておりますように、歳入歳出全体にわたりまして、丹念に見直しまして、あらゆる努力を傾注いたしまして、早期に特例公債財政からの脱却を考えるつもりでございますので、何とぞ御了承いただきたいと申し上げておるのでございまして、政府の意のあるところは御信頼を賜りたいと思います。
  104. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは、私たちは努力をするから国民は盲判をしてくれ、こういうことになるわけです、結論は。われわれは一生懸命やっておる、だから国会は盲判を押せ、こういうことなんです。  私は委員長に申し上げたいのでありますが、とてもこんなものでは、いまおっしゃったけれども、全部この剰余金は繰り入れますなら、これは国会に書類として計画書に添付して出さなければいかぬのです。ここで口でいろいろなことをおっしゃったってだめなんですよ。私はこんなことではとても審議するわけにはいかぬと思う。私は一遍この予算は出直しをしてもらいたいと思うのだが、ひとつ理事の皆さんに御相談願いたいと思うのです。
  105. 田中武夫

    田中(武)委員 いま阿部委員の質問を聞いておって、とうてい現状のままではこれは審議を進められないし、この補正予算の採決はできません。  そこで改めて大蔵大臣に要求いたします。この補正予算の審議の終るまで、というと一応の予定はあさってです。そのとおりいくかどうかわからぬが。補正予算の審議中にもっと誠意ある員体的な資料を提出する、そういう約束はできますか。償還計画を出すということが約束できますか。いかがです。
  106. 大平正芳

    ○大平国務大臣 阿部委員の大量の特例公債発行に対する憂慮の御趣旨は、政府としてもよく理解できるところでございます。これの償還に当たりまして、ただいま政府が申し上げておることにつきまして、なお十分でないという御指摘でございます。政府としても、全財政計画の運営を通じましてこれにこたえなければならぬわけでございますけれども、田中委員せっかくの御提案でございますので、この予算委員会終了までに、誠意をもって、より具体的な方針を持ち出すことがどこまでできますか、精いっぱいやってみまして、理事会に提案申し上げて吟味をしていただくことにいたします。
  107. 阿部助哉

    阿部(助)委員 誠意をもって努力をするんじゃ困るので、もっと具体的なものを委員会に出していただく、それまで保留して、私は終わりたいと思います。
  108. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま阿部君の御発言、私もごもっともだと考えております。したがいまして、本補正予算の終了までに資料で出すか、あるいは大蔵大臣の御発言か、いずれにいたしましても、阿部君及び委員会の納得できるような処置を講ぜられたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  109. 大平正芳

    ○大平国務大臣 誠心誠意努力をしてみます。
  110. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  次に中澤茂一君。
  111. 中澤茂一

    中澤委員 大蔵大臣、この問題はかつて二年間、問題にしておるのです。私も今度の予算書を見て、一体これは何なのだろう。これは、いま約束されましたが、もしだれが見ても納得できないものなら、この予算はどうしても通すわけにはいきませんよ。先ほど阿部君が言ったように、いまさらこの問題を取り上げたわけではないんです。二年間、この償還計画は建設国債のときに問題にしているんですよ。納得できる償還計画が全然出てこない。今度の償還計画を私も一応調べてみましたが、何が何だかわからない。閣僚の皆さん見ても、これが償還計画かと思うものなんです。これははっきり出してもらいたい。  いまの質疑を聞いておっても、財政はまさに視界ゼロですよ。国会運営も視界ゼロ、三木内閣も視界ゼロ、国民全体がどこへ行くかも視界ゼロ、これがいまの日本の現状だと思うのですよ。そういうような、一体この日本の危機をどう乗り切るかということが、これは三木内閣に課せられた重大な使命なんですよ。私は、本論に入る前に若干具体的に、いま非常に問題になっている問題だけを一、二取り上げて、政府の見解をただしておきたい。  第一に、いま非常に都市近郊、特に三大都市圏を中心に農民が問題にしておるのは、固定資産税の宅地並み課税問題です。これがいま大変な騒ぎになっておる。だからこれについて——実は昭和三十八年に国会で問題になったわけです。御承知のように、固定資産税というものは、かつて明治維新政府時代、税金を取るところがない明治維新政府が地租条例をつくった。地租条例をつくったときの固定資産税の原則というものは、収益還元の原則というものがあるわけなんです。要するに収穫に見合った税金、これが固定資産税の原則なんです。だから、農業の場合は田が一番高いし、畑は田より安いし、山林はなおそれより安いのです。それは収穫に見合った収益還元原則というものがあったのです。ところが、三十八年に政府はこの収益還元原則から時価評価主義に切りかえたわけなんです。ここから問題の発端が出てきておるわけです。だから、収穫のないところへ税金をかけるということ、これは一種のみなし課税じゃないですか。こんなものは税公平の原則からいってもおかしいと思うのです。だから、この固定資産税の宅地並み課税問題というものを一体自治大臣——実はあなたの方の市町村長や知事会の方は、これは早く取れるようにしてくれと陳情しているのです。地方財政の苦しいのはわかるが、それは次元の違う問題なんです。だから、それに対して自治大臣はどう考えておるか、大蔵大臣はどう考えておるか。その還元原則が正しいのか、みなし課税的な宅地並み評価課税が正しいのか、その原則のいずれが正しいかを、ここでひとつ明確にしておいてもらいたい。
  112. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  いま御質問の点は、これは相当長い期間にわたって問題になっておるところでありますが、すでにあなたも御承知のように、三大都市の場合はA、B地区というふうに分けて、まあ宅地をふやそうという意味で一つの課税のやり方をしたということは、御承知のとおりであります。その他の都市においては、農村、農地との関係をどういうふうに調整したらいいかということで、まあいま非常に税源の少ない、税収入の少ないときですから、市から言えば何とかそれに課税をしたいという要望の強いことも御指摘のとおりだと思うのであります。しかしまた、一面から考えると、公平の原則という意味から言えば、やはり農地は農地であるのだから、農地は農地並みの課税にするのが当然ではないかということも、私は一つの正しい物の考え方である、こう考えております。  そういう問題でございますので、これらの点を勘案しまして、五十一年度には、評価がえの状況とか、それから市街化の状況であるとか、市街化がどうなってきているか、生産緑地制度の運用の状況というようなことをよく考えて、そして御趣旨も体しながら慎重に検討すべきであるというのが、いまわれわれ自治省として考えておるところでございます。
  113. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この問題もっぱら自治省の所管の問題でございまして、私どもが関与するところではございませんけれども、自治省におかれて実情に即して妥当な解決がもたらされることを期待しております。
  114. 中澤茂一

    中澤委員 自治大臣、じゃあ明治の地租条例以来の収益還元原則というものは正しいのだ。農地は売った場合はちゃんと所得税課税は大体四割八分くらい取られるのですからね。現に農地、耕しているものに対して、米の収穫以上の課税をしていこうというのが、宅地並み課税なんです。これは一種の全くみなし課税なんです。これはもう税の原則に全く反するわけです。だからその原則だけ確認しておきます。  とにかく一時間しか時間がないものですから、財政問題で基本的な問題を討論したいので、その問題が一点と、いま一つは、農林大臣、あなたにちょっと聞いておくが、養蚕問題がまたこれもいまの大変な問題になっているわけです。前回のときも政府側の方は、どうもガットの関係があるから一元化問題もまずい、こういうような態度だったので、そこで農林水産委員会でそれならばひとつ議員立法で政府責任じゃなくてやろうじゃないかということで、御承知のように一元化立法をしたわけですよ。ところが、その後御承知のように、韓国から膨大な撚糸と繭と織物の輸入、これはもう日本の養蚕はまさに危機的様相に置かれているわけですね。恐らくこのまま何ら手を打たなければ、来春の養蚕は一キロ千五百円を割るのじゃないかと私は見ておる。そうなると、日本の養蚕農民はもうほとんど——現に零細な養蚕農家は皆桑をこき出しております。政府は四十万俵消費に対して三十五万まで上げたいと言ったが、逆にもう三十万俵を割るという事態が出ておる。それに対して、来年五月末日まで議員立法は効力を持っておるんですが、継続するかどうかということが一点。  それから、いま一つ通産大臣に聞いておきたいんですが、これは日本の民族産業なんです。生糸というものは世界の八割は日本が生産しておるんです。あと中国と韓国なんです。ところが通産省は、自由貿易のたてまえから、これは崩せないというたてまえをどこまでも固執しておるのですよ。私は、日本の養蚕業は来年から破滅状態になってしまうと思うのですね。  それで、中国は御承知のようにガットに加盟していませんよ。韓国は加盟していますよ。これは韓国だけの問題なんです。生糸というものは日本の民族産業であって、世界の八割は日本が生産しておるのです。しかも相手国は韓国だけでしょう。その韓国から膨大な撚糸——撚糸なとはもう百二十七倍。繭までいまどんどん商社輸入をやらしておくのですよ。そして、これも日本の古典的な保存しなければならぬつむぎ類、こういうものが韓国で織って奄美大島つむぎの銘を打ってどんどん入ってきておる。これを野放しにしておいて、一体日本の養蚕業というものをつぶしていいのかどうか。これはひとつ通産大臣からも答弁を求めたい。  それから、ガット、ガットと通産省は言うけれども、第一次産品というものは世界じゅうどこも保護政策をとっておる。たとえば先進十カ国を調べてみたって、少ない国で一次産品は十六品目くらいは輸入禁止しているんです、国内農業保護の立場から。多い国は二十三品目くらいの輸入禁止しているんですよ。それを、世界でただ一つの民族産業である生糸というものを、ガットの条項でどこまでも抵抗するというのはおかしいと思うんだ。私は何も長期にやれと言っておるんじゃないですよ。暫定的に通産省はこれに対して考える必要があるのじゃないか。その点について、農林大臣と通産大臣の答弁を求めます。時間が一時間しかなくて、国際問題が山積しておるので、答弁は簡単にしてもらいたい。
  115. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 昨年までの糸価の低迷に対処いたしまして、一元化という措置、それに伴う対策を講じました結果、現在では基準糸価一万一千二百円を上回っておるという状態でございますが、しかし、最近における、いまお話しのございましたような撚糸等の輸入ということによって、将来非常に心配される向きも出ておるわけであります。そうして、これが続くと、せっかくの一元化措置というものも空洞化をするおそれがあるわけでございますので、農林省は通産省とも十分検討をいたしまして、そして今後の輸入の規制措置といいますか、秩序のある輸入措置といいますか、そういうことを抜本的にやらなければならないということで、目下通産省と検討をしておる最中でございます。
  116. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 繭の一元輸入という問題から端を発しまして、いまお話しのようないろいろなむずかしい問題が起っております。そこで、何とかこれを調整しなければいけませんので、農林省といろいろ打ち合わせしておるところでございまして、近く結論を出したいと思っております。
  117. 中澤茂一

    中澤委員 近く結論を出すと言うから、春繭の出るまでにこれを何とかしないと、大体私の見通しでは、春繭は一キロ千五百円を割るだろう。千五百円を割ったら恐らく日本の蚕糸業というものは大体三分の一はもう縮小になるんじゃないか。しかも日本は膨大な消費国なわけです。大体いま四十万俵消費しているわけです。だから三十万俵しか生産がないから、十万俵を計画的な話し合いで需給勘案をしながら入れるんなら、これはいいのですよ。だから、その辺をいま一度通産大臣考慮してもらわぬと、もしあなたここで決意してくれないと、日本の蚕糸業は河本通産大臣が破壊したということになります。その点は念のために申し上げておきます。  そこで、本論に入りますが、いま私は、経済の見通しをマクロの問題とミクロの問題と二点に分けて考える必要がある。マクロの問題は、完全に日本経済というものはいま生産拡大過程に入っておるのですね。ミクロの段階と産業別にばらつきがあるだけなんですね。だから、そういう面においては下手にやると、かつて四十一年不況に福田さんが建設国債を出して、わしとここでさんざんやり合ったことがある。あのとき私が言ったように、やっぱり公債は麻薬だったわけですね。少なくとも四十六年ごろには一たんこれを切るべきだったのですね。それをそのままずっと来ちゃったから、さあどうにもならない。まあ責任田中内閣の失政ですよ。田中内閣の完全に失政なんだ。ニクソン・ショックから御承知のように、財政の引き締めに入るときに財政の緩和に入ってしまった。そして公定歩合を三回も引き下げちゃった。そこへニクソン・ショック以来の過剰流動性が外為の方から流れ出す、日銀から流れ出す。まさに過剰流動性が当時五兆ないし六兆と言われた。それが全部土地投機に走り、あらゆる投機経済に日本を持ち込んでしまったのが、田中内閣の経済政策の失政なんです。しかし、その一つには、私は公債があったと思うのですね。国債があったと思うのです。だから、これをどういうふうにしたらいいかと言えば、恐らくいま福田さんも大平さんも視界ゼロじゃないですか。私は視界ゼロだと見ているのです。  どういうふうに一体やったら、特に五十一年度予算は一体どうしたらいいのかということです。これは先ほど皆さん言ったように、日本の財政というものはまさに破産状態になっちゃったわけです。だから、そこで資本家の一部には、インフレというアルコール中毒患者のような人たちが起き上って、朝酒をよこせ、朝酒をよこせと言っておるわけですね。政府もまた花見酒経済を持続して、再びインフレのかつて来た道へ歩み出そうとしておるのがこの補正予算です。一体日本経済はどうなることだろうかという、国民が非常に不安を持っているのですね。  私がこれから質問することは、何でもいちゃもんをつけるような質問はしませんから、お互いに国会議員としてどうしてこの危機を乗り切るのかということで、いいかげんな答弁はやめてもらいたい。まじめな答弁をしてもらいたい。そして本当に国民がその不安を解消して、なるほどこれなら何とかなるわというような納得のできるような答弁を政府がしてもらわぬと、まさに国民は日本はどこへ行くのだという視界ゼロ感覚を持っておる。不安が非常に強いわけです。その点についてひとつまじめな答弁をしてもらいたい。  これは財界の桜田日経連会長が、ことしの夏のトップセミナーでこういうことを言っているのですね。「企業は大幅増税を負担する覚悟もないのに、景気浮揚策を要望することは利己的であるとのそしりを免れない。多額の公債発行はインフレの要因となるので、発行限度を適正に決め、市中消化に限定すべきだ」これは財界のキャップである日経連の桜田会長がことしの夏のトップセミナーでこういうことを言っているのですね。さらにこういうことも言っているのです。「企業には、これまでの蓄積がまだ残っているはずで、半期や一年の決算が赤字だからといってがまんできないはずはない」と、こういうふうに桜田会長は言っておるんですね。だから問題は、このいまの日本経済の状況、不況回復の状況をどう見るかということなんです。福田さんどうですか。
  118. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一昨年の石油ショック、あれは皆さんからも御指摘がありましたが、石油ショックばかりじゃない、その前からもそういう傾向はあったのですが、そこへ石油ショックによる打撃、これは非常に深刻なものである、これをまず理解しなきゃならぬと思うのです。  それからもう一つは、そういうショックから抜け出た後の日本経済というものは、いわゆる高度成長という夢を再び追うことのできないような内外の環境に置かれておる、そういうこと、これまた理解しなければならぬと思うのです。  そういう前提に立ちますと、私は、あのショックによる打撃というものは、これはもう一年、二年で回復できるものじゃない、三年はかかる、こういうふうに見ておったわけでありますが、今日、一年半経過をしておる、そういう時点に立っておるわけです。そういう時点に立って、わが国の経済の先々を考えて見る、こう言いますと、インフレと景気という二つの問題に当面しているのですが、インフレの方は、私は着実にこれを克服し得る道を歩んでおる、これから先も着実にその道を歩み続けますれば解決し得る、こういうふうに見ております。ただ、景気の問題になりますと、ただいま中澤さんおっしゃるとおり、マクロ的には確かにこれはもう回復過程に入っているのです。しかしながら、ミクロといいますが、業種間のばらつき、さらには個々の企業の間におけるばらつき、こういう角度からとらえてみると、これは容易ならざる時代である。それはなぜそういうことかというと、一昨年の打撃というものが非常に深刻でありますものですから、いまことしの春ごろから回復過程には経済は入っておりますものの、なおその操業度、これが非常に落ちておる現況である。そこで、操業度が落ちておるということになりますれば、過剰の人員を抱えておるということであり、過剰の設備を抱えておるという各企業の現況でございます。そうしますと、人件費負担、金利費の負担、これがよけいにかかっておる、こういう状態でございます。これから脱出しなければならぬという課題があるんです。もちろん物価の問題につきましては配意していかなければなりませんけれども、操業度を上げる。そこで先般、弟四次景気対策をとりまして、そして操業度を、企業稼働率指数から申しまして、年度末までには九〇に持っていく、こういうことを考えておる。明年度のことにつきましては、余りまだ検討は具体的に進んでおりませんけれども、明年ぐらいには九五という、大体その辺が望ましい稼働率指数ではあるまいか、その辺に持っていきたい、こういうふうに考えておるわけで、経済全体とすると、まああと一年半お待ち願わなければならぬが、その辺になりますれば、ひとつまあまあ安定したという状態に持っていける、こういうふうに思っております。そういう展望に立って、企業も自信を持ってその業務に取り組んでもらいたいというのが、私の目下の見解でございます。
  119. 中澤茂一

    中澤委員 そこで、三木総理に集中して質問しますが、総理は、総理就任のとき、社会的公正を確立するんだ、同時に、国民の立場に立っての政治をやるんだ、こういうことをはっきり言われているわけですね。ところが、あなたの政治姿勢を見ていると、だんだん国民の立場から離れていっている傾向が強いのですね。たとえば独禁法一つとってみても、前の国会であなたは最後の土壇場で衆議院を強力に押し通したわけです。それが今度の国会には独禁法が出てこない。しかも与野党完全一致したものです。そうすると、もし参議院で野党側が独禁法を前回の法案そのまま提案した場合、一体政府はどういう態度をとりますか、自民党はどういう態度をとりますか、賛成しますか。野党は提出するでしょう、どうしますか。
  120. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 衆議院の場合はああいうことの共同修正で議決をされたわけです。参議院の場合はこれが一回も審議されてないわけです。そういうことで、これはやはり審議がある程度進んでおったときには、この扱いというものもいろいろ考え方があったと思うが、一回も審議をされてないわけですから、それでこの問題というものは、経済の基本法でもあるし、いろいろ皆、意見もあるわけでしょうが、こういう不況克服ということを一番大きな課題として、補正予算、それに関連する法案の審議というものが中心になるわけですから、何かこういうことで支障を来してはいけないんではないか。だからこの際、これは急ぐと言えば急ぐのですけれども、性格上、不況対策などと違って、経済の基本法である。この機会にひとつ党で十分再調整をして、通常国会を目途にして党でやろうということで、いまやっておるわけです。したがって、これは何か、この問題が衆議院で全会一致可決されたということはやはり尊重されなければならぬという重みもありますから、いろいろなことを踏まえて、いま党でそういう再調整の過程にあるわけでございます。
  121. 中澤茂一

    中澤委員 じゃ、独禁法は参議院側が審議してないから、通常国会には何とかまとめたい、こういうふうに確認しておきますよ。  次に私は、いまのこういうすべてが視界ゼロの中で、やはり政治に一つの大きな哲学がなければいかぬと思うのです。少なくとも政治家に一つの大きな哲学がなければいかぬと思うのですね。終戦後、私はいろいろな総理の皆さんとおつき合いしたが、やはり一つの政治哲学を持っていたのは、いい悪いは別として、吉田茂先生、中途に倒れたが石橋湛山先生だと見ているのです。私は、いまくらい政治に哲学の必要な時代はないと思うのです。  そこで、あなたが五大国か六大国か首脳会議に国会をあけて行くわけですが、一体何を語り、何を話し合おうという考えがあるのか。ただ集まって、集まりました、まあ食糧どうしましょうか、国際経済どうしましょうか、それだけじゃ私はいかぬと思うのです。  私は五大国首脳会議には二つの問題があると思うのです。一つは、それは明らかに南北問題だと思うのです。少なくとも軍事、経済において世界をリードしておる五大国が南北問題をどう処理するか、これが一つの大きな課題だと私は思うのです。それからいま一つは、国際流動性の問題だと思うのです。この二つを少なくとも五大国首脳会談で相当突っ込んだ話し合いをすべきではないか。それには一つの基本方針というか一つの哲学がなければいけない。世界のいまのインフレはどこから出ているか、私の見るところではこれはまさにアメリカです。だからフランスは最初から抵抗しているわけですね。だから、恐らく今度の五大国首脳会議でもフランスは国際流動性問題では相当突っ込んだ意見を出すのじゃないか。フランスの考え方は、これは一つの管理された世界経済というものを考える必要があるのじゃないか。その中でフランスの大蔵大臣の言っていることは、これはIMFの世銀総会の演説ですが、自由な変動相場制は世界経済の不安定要因であり、安定的で調整可能な平価制度こそ、安定的な投資と貿易を可能にする世界経済の調和ある発展に役立つ、こう言っているわけですね。ところがアメリカは頭から拒否しているわけですね。それはドルの維持とドルの威信というものをどこまでも守り抜こうという。しかし世界インフレの元凶はアメリカなんです、どう考えてもアメリカなんです。要するに金の兌換停止をやったところから出てきているわけですね。だからこれに対して一体政府はどういう態度で臨むのか。私はフランスの態度が正しいと思うのです。  国際インフレを防止するにはどうするかということは、これは私見ですけれども、どうしてもSDRを中心にする以外——いまはSDRは全く架空のものにしてしまったですけれども、IMFでSDRを中心にした世界通貨というか、世界の基本になるものをつくる以外に、この資本主義国のインフレ経済というものは抑えられないと私は見ているのです。それならばどうするかと言えば、これは困難でしょう。恐らく当分不可能だと思うが、やはり世界の中央銀行の金というものは、IMFを世界銀行にしてここへ集中してしまう。そしてSDRの裏づけをつけていく。これならば公正な、中立的な通貨として世界経済インフレというものがある程度抑えられていくのじゃないか。だから管理通貨というものがいまのような状態、管理通貨であるからこそ先ほどの大平大蔵大臣のように国債なんか幾ら出してもいいんだという、これはあなたの責任ばかりじゃない、田中内閣の失政がこうなってしまったのだけれども、ひとつ五大国首脳会議では、日本の態度というもの、情勢によって総理が言う言わないは別にして、日本の態度というものははっきりしなければいかぬと思う。  いま一つは南北問題だと私は思うのです。  日本のいまの政府の皆さんに、そう言っては失礼だが、一つも信念と政治哲学がないわけですね。ですから、言うことなすことみんな場当たりなことを言っておるわけですね。南北問題について、総理の所信表明の中でも、対話と協調が大切だ、調和のある国際協力関係の形成に努めるべきだ、こういうことしか言ってない。それからIMFの総会で大平さんは何を言っているかというと、大平さんもIMF総会で何もそういう基本的なことは言ってない。まさに哲学のある発言、日本の基本方針はこうであるというものが一つも出てきてない。だから木村代表の国連経済特別総会における演説で、まあこの辺はどうかなと思うのですが、自由貿易の長所を生かしながら、これを改善、強化することによって途上国の開発努力をも結実させるべきだ、こういうことを言っているだけにすぎないのですね。これじゃ五大国首脳会議に行っても、こういう南北問題と国際流動性問題というものが一つも話し合われないのなら、五大国首脳会議なんて、私は何の意味もないと思うのです、国会を空白にして。だからこの辺は総理はどのように考えておるか。時間がないからなるべく簡単に答弁してください。
  122. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 なかなか簡単に答えるのには大問題を提起されたわけでございますが、とにかくいま中澤君がごらんになっても、どの問題一つをとらえても、いまあなたが提起された問題一つをとらえても、一国だけで解決できる問題はないですね。世界の先進工業諸国の首脳が相談をすることが必要である。世界景気の回復という問題一つとらえても、この問題、一国だけでやると言ってもできる問題ではないわけですから。一発で大きな成果ができるとは私は期待はしませんけれども、自由世界の中に責任を感じなければならぬ諸国の首脳部が、いま景気の回復問題にしてもあるいは通貨、貿易の問題にしても、エネルギー、第一次産品、南北問題、こういうものを皆自由に話し合って、そしていろいろ意見を交換して、何らかの皆一致するような結論を出すように努力をするということは、いまの世界で責任を持っておる国としてのやはり大きな責務でもあるわけですね。  その中で御指摘のように通貨問題、これも一つの大きな問題でしょうが、中澤君の言うように固定為替相場にいま一遍に変えてしまう、そういうふうなことは非常に無理があって、変動為替相場制によって一応のいまの秩序というものは維持されておる。その変動幅というものも、余り大きな変動幅というものは通貨の安定を害しますね。しかし、いま固定為替相場制、またSDRに全部集中すると、ドルはやはりいまだにキーカレンシーとしての役目を持っていますから、やはり中東諸国も皆ドルで持っているわけですから、そういう点で、それは一つの問題の提起として承っておきます。  また南北問題というものに一つの哲学というか物の考え方を少し変えないといけないということは、私も同感なんです。いまのように、皆、援助を受けたにしても、その元利の支払いに援助を受けたものの半分以上も、援助を受けたもので援助の支払いに回すということになれば、それはふえる一方ですからね。だからやはり南北問題というものは何らかの調整策を講じなければ、世界の平和と安定というものはないわけですから、こういうもので、従来の惰性でなしに、この機会にやはり新しい南北問題に対しての考え方を出さなければならぬ時期である。いろいろ第一次産品の所得補償方式など、ロメ協定のようなものを世界的な規模で考えるという意見も出ておりますが、これはやはり真剣に日本も各方面の意見も徴し、野党の意見も徴したい。これは儀礼的なものでなしに、やっぱり真剣に聞きたい。そうして日本としての考え方、これは何も首脳会議で日本が幾ら分担するとかいう金の相談ではない、一つの哲学というか、何か一つの考え方というものが出なければいかぬわけですから、できるだけの努力を衆知を集めて、その時点における日本の考え方というものを述べられるような準備を整えたいと思っておる次第でございます。野党の御協力も願っておる次第でございます。
  123. 中澤茂一

    中澤委員 日本の進路としてひとつ考えなければならぬ問題は、第三世界と言うが、私は世界には第四世界があるという見方をしておるのです。  第三世界というのは御承知のように、いままでは総括して東南アジアからアフリカを含めて第三世界と言っておる。ところがOPEC諸国やこれらはやがてテークオフできる、工業離陸もできるようなこういう経済的基盤が油の値上げでできておるわけです。ところが地下資源も何にもない世界ですね。これを私は逆に、分類では第四世界と考えておる。これは私の勝手な私見なんですが……。第四世界というのは一体何か、私は東南アジアだ。東南アジア諸国は地下資源もない。それはタイなどは若干工業離陸の方向に行っておるが、もし日本の政策の基本を南北問題に置くならば、私は、アジア政策というものに対して、政府は東南アジア政策を本気に考えるべきだと思うのです。田中総理が行って自動車の焼き討ちに遭ったり、一体こんな状況では、五大国首脳会議で日本が世界の指導的立場にあると言いながら、日本は完全孤立化する以外方法はないんじゃないか。少なくとも私の言う第四世界、東南アジア政策というもの、もっと広範に言えばアジア政策というもの、これを一体どう日本は考えていくのか、そしてそれは国政の基本に、政府の基本に、国民の基本にどう据えるのかということを真剣にみんなが考えるべきだと私は思う。これは私の私見ですが、やっぱりこういうことは五大国首脳会議でも言う、言わぬは別として、三木総理はアジア政策というものが日本の中心的な課題であるくらいなことは考えてもいいんじゃないか。これは時間がありませんから答弁も要りませんし、御忠告だけにしておきます。  そこで、財政問題に入りますが、もう時間がありませんから、実は私はここに四つ、五つの項目整理をしてあるわけです。それで、日本経済の進路を一体どう持っていくのかという問題ですね。日本経済の進路をどう持っていくのか。これは二つの考え方があると思うのですね。一つの考え方は、いま政府が補正予算に組んでいるこの考え方ですね。これはかつて来た道をまた歩くのです。再び赤字公債からかつて来た道をまた歩くわけです。これが果たして本当に健全な日本経済の進路かといえば、私はノーという考え方を持っておるのです。なぜノーかというならば、いま景気の落ち込みというものはどこに原因があるかといえば、かつては設備投資が設備投資を呼んでの景気上昇。そこで、いま一番景気が浮揚しないという根本的原因は、やはり個人消費の落ち込みだと見ておる。西ドイツもいま日本と同じ状況ですね。個人消費が徹底的に落ち込んじゃった、設備投資はちっともふるわない、こういう日本と同じパターンをいま西ドイツは歩いているわけですね。  そこで、われわれ社会党としては、先日から予算委員の皆さんからも意見が出たが、むしろ個人消費をどう浮揚させるかということ。このごろ福田さんは、個人消費浮揚と言ったら、それは大変危険である、再びインフレになる、こういう答弁をされていた。私はあれを聞いて、われわれ社会党の考え方と政府考え方は基本的に違うなあと思った。西ドイツでも御承知のように赤字財政ですよ。赤字財政でありながら西ドイツは御厨知のように大減税をやったわけです。そして年金や社会保障をぐっと増額したわけですね。これはやっぱり西ドイツの行き方は私は正しいと思うのです。そこに、一つの個人消費を上げる底入れした浮揚力——福田さんかこのころ危険だと言ったのは私はわかる。これだけ膨大な赤字公債を出して、ここへ個人消費を充てたらえらいことになる、こういう考え方が福田さんにあると思う。だから、その点においてあなたは危険だと言うが、われわれ社会党との考え方が基本的に違う。要するに、個人消費を浮揚の底どめにしてしまう。そうすれば、いまのインフレ目減り問題とかいろいろな問題にあらゆる対策があるわけです。  たとえば、イギリスが出しているインフレ目減りの貯蓄債券、これは、大衆貯金に対してはイギリスはこれでインフレ目減りを完全にカバーしているでしょう。そういう点において福田さんは、いまの状況においてはそれは危険だという答弁でしょうが、やっぱり基本的に個人消費の増大というものを考える必要があるのじゃないか、その点について御答弁願いたい。時間がありませんから、簡単にお願いします。
  124. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、個人消費の伸びを抑制しようという考えじゃないのです。これが自然に伸びていくことは期待する。しかし、いま公債をたくさん出すという段階におきまして、政策手段を考えて、それによって消費を刺激するという考え方はいま妥当でない、こういうことなんです。いま中澤さんは、中澤さんの御議論の前提として、個人消費が非常に落ち込んでいるということを考えておるようですが、実はそうじゃないのです。いまとにかく成長は非常に全体とすると鈍化する、そういう中におきまして個人消費は非常に進んでいるのですよ。これが経済見通し、つまり四・三%成長と見た、その中での個人消費一八%という成長、それよりは落ちますが、とにかく一五%内外の増加を示しておるという状況でありますから、これは景気の下支えという役割りは十分に尽くしておる。それをさらに減税等やって、そして刺激する、こういうことは妥当でない。個人消費が堅実な勢いになっておるということは、これはもうはっきりしておると私は思いますが、これは堅実な国民の消費態度、これをディスカレジするというのじゃなくて。さらにさらに助長し、そして所得の国民全体の配分というようなことを考えますときに、財政支出が多くなっていくというようなことがここ当面のわが国の状態としては好ましいのじゃあるまいか、そういうふうな見解でございます。
  125. 中澤茂一

    中澤委員 福田さん、問題は名目的な所得増大を図るか、実質的な経済成長を図るか、あなた方の考えとわれわれ社会党の考え、二つに分かれているわけです。いまの公債発行は、名目的な所得増、それをどうしても図っていかなければ消化ができないわけですね。それは再びインフレの道なんですよ。それをやらなければ、この膨大な国債をどうして償還しますか。だから、そこに基本的な考え方の相違が出ているわけですね。選択は二つしかないのです。いまのような名目成長率をどんどん引き上げて、税金をたくさん取って赤字公債を償還していこうという考え方。われわれのように、そうじゃないんだ、やはりインフレというものをどこまでも抑えるという基点は、これはなくしてはだめです。いままるでインフレなんか忘れちゃって、福田さんが余り自信のあるようなことを言って、もうおさまったなんと言うから本当におさまったかと——私は、こんなものは全然おさまらぬと見ておるのです。だから、その点はどこまで行ってもかみ合わない議論になりますからよしますが、インフレをどこまでも抑えていくんだ——あなた、四%に二、三年後にもっていくというようなことを言ったが、そんなこと全然不可能ですよ。それはいきっこないですよね。それは見解の相違だから、別に答弁してもらわなくてもいい。そこに基本的に考えなければならぬ問題が出ておるということ。私は、何も大幅に減税しろと言うのではないのですよ。四十一年、あなたとここで論争したときもそうでしょう。七千二百億の建設国債で、あのときたしか二千六百億か二千七百億の減税をしているのですよ。だからあのときの姿勢をいま一度考えてみたらどうか。公債を抱えた減税というものは、あのときも私はあなたとここで問題にしたんだけれども、減税分だけ公債を減らした方がいいんじゃないか。公債の危険性を私はあのとき指摘したのですが。あなたは、減税もやらなければ景気は上がらない、そう言ったのですよ。減税もやらなければ景気は上がらない、個人消費を伸ばさなければ景気は上がらないんだと、あなたは答弁しておるのですよ。それといまとは完全に考え方が違っておるわけですね。それは膨大な赤字公債、しかも来年度予算が見当つかない、視界ゼロだ、こういう中での客観条件で、あなたの答弁はわからぬでもないけれども、基本的にそこをひとつ考えておく必要があるんではないか、こういうことだけは申し上げておきます。  それから、問題がたくさんあるのですが、私は、今度のインフレ、目減りその他で公債発行にひとつ新機軸をこらしてみたらどうか。それはどういうことかというと、福田さんも御承知のように、かつて戦争中に公債で臨時軍事費をだんだん賄ってきた、最後にはもう公債の買い手がない、そこで臨時軍事費を賄うため特利公債というものを出しましたよね。特別利息国債、利息の高いやつ、あれを一度考えてみたらどうか。それはいまの金融体系、金利体系の中では考えられないと言ってあなたは答弁するでしょう。しかし、こういう異常事態の中で、しかも国債が完全に日銀しょい込みになってインフレがますます助長してくる、このインフレを内包しておる補正であることは間違いないのです。だから、そこでこの戦時中の臨時特利公債というものを一度検討してみる必要がある。特利公債を検討すれば、私は、これはマネーサプライの増加は防げると見ておるのです。ということは完全市中消化をやっちゃう、個人消化をやっちゃう。それはある程度金利を上げれば個人が持ちますよ。ただし、これは大量に持たせない。私の考えでは、この特利公債を一人最高百万ぐらいに限定しちゃう。幾らでも持たせるといったら、金のあるやつは幾らでも買っちまいますからね。それには金利自由化というものが絶対必要なんですね。もうここへきて日本は金利自由化しなければだめです。だから、そういう金利自由化というものを前提にして、市中消化で一人百万円ぐらい、まあ私の案では年利一割公債、いま八・二三ぐらいでしょう、年利一割公債にする。そうするとどういうメリットが出てくるかというと、日本の一番おくれている公社債市場の育成は、私は個人の手持ち公債からその基本が出てくると思うのです。百万円で三兆円の公債を持ってもらうとすれば、三百万人百万円持たなければならぬわけですね。一割なら、これは年利が六分五厘の銀行預金よりか金利が——六万五千円と十万円、まあこれは一割がいいかどうか別ですよ、私の考えとしては。そうして持たせると、公債市場の育成の端緒がここでつかめるのじゃないか。公社債市場で皆売買できるようになる。  それから、公債発行で財政政策だけのてこ入れをやっているから金融政策が全く硬直化してしまうわけですね。膨大な国債をことしも来年もしょわされる。だから金融政策による景気調整というものは弾力性を失ってしまうわけです。その場合、やはり公社債の日銀の売りオペ、買いオペ操作によってこれをやっていくという、そういう新しい資金循環パターンというものを考える必要があるんじゃないか、そういうメリットも私はあると思うのです。  それから同時に、インフレ被害者の救済になるわけですね。これはどの程度やっていいか、その程度や範囲や問題は、十分財政当局で検討してみればいいのですよ。しかしこれはひとつどうしても考えなければ、来年も膨大な公債発行ですよ。もはや預金部資金は底をついちゃったでしょう。どうするのですか。  だから、これはひとつ私は提案として申し上げておくが、どうしてもこれは考え段階に来ておるのじゃないか。それには金利自由化というものを前提にしなければだめですね。金利がいまのような硬直的な金利体系をとっておいて、そうしてこんなことをやったって効果は出ませんよ。金利自由化というものをもし一挙にできないのなら、金利自由化問題というのは外国でもやっているように二段階制でいいと思うのです。大口はもう自由化していく、小口のものはいまの固定制にしておく、こういう体制で私はいいと思う。そこから金利自由化の端緒を切り開かなければ、これはとうてい収拾のつかないような状態が出てくるのじゃないか、そういう意味で、私はそういう一つの提案をしておくわけです。  それからいま一つ、時間がもうありませんから、マネーサプライを一体どう抑えていくのか。これはきょう日銀の副総裁も来ているが、大変なことになると思うのですよ。最初森永さんの姿勢も大分よかったのです。ああこれは中立性を保っているな、これは政府がちっとは何か言っても簡単に折れないなと思っていたのです。ところが、このごろは森永さんも全然いかぬ。大蔵大臣べったりになっちゃった。これでは国民が困るのですよ。いままで日銀は失敗の歴史を持っているのですよ。そうでしょう。宇佐美さんのときは、山一証券へ、三菱初め千二百億もの支払い準備金を持っていながら、危険負担分を持っていながら、日銀がしょい込んでいる。世界の中央銀行史に汚点を残したのが宇佐美日銀総裁。これはここへ来てもらいまして、私徹底的に宇佐美さんに、おかしいじゃないかと詰めたという経過もあるのです。それから佐々木さんのとき何をミスやったかというと、例のスミソニアン協定で大ミスをやっちゃった。なぜあのとき為替市場を閉めなかったか。これで四千五百八億、日銀は損金を出したでしょう。しかも三百八円と決まっておいて三百六十円で十日間為替市場を開いた。世界じゅう閉鎖しちゃった。これは日銀のミスです。だから過剰流動性問題というのは、日銀が大きな役割りを負っているのです。外為から流れたのが約五千億、日銀から流れ出した金が四千五百億、合わせて一兆円の過剰流動性というものは政策ミスでできちゃった。それが田中内閣の経済失政と絡んじゃって、収拾のつかないいまの日本経済の現状をつくり出した。そういう面において、日銀はいま少ししっかりしてもらわないと困るのですよ。大平さんべったりなら日本銀行は要りませんよ。やはり政府がこういう状態になったとき、政府に対して物を言うのが日銀の中立性でなければならぬ。これは総裁が来たとき、いずれまたお伺いするが、副総裁、今度の公債発行、一番問題になるのは来年度予算ですよ。だからあなたからも一言、通貨護持の番人は日銀なんですから、政府が放漫政策をやったら日銀が歯どめをかける以外方法がないのですよ。その日銀が中立性を失って政府とべったりになったら、これはどうなりますか。一言だけ御答弁願います。
  126. 前川春雄

    ○前川参考人 日本銀行は、通貨価値の安定ということを最大の職務とするものでございます。財政赤字が非常に大きくなりまして、これがマネーサプライにどういう影響を及ぼすかという点につきましては、日本銀行も金融政策今後の運営については重大な関心を持っております。再び大幅な流動性の増加、過度の増加を来さないように金融政策として万全の施策を講じていくつもりでおります。
  127. 中澤茂一

    中澤委員 世界じゅうがいまマネーサプライをどうするかということで非常に苦しんでいるわけです。結局管理通貨になっちゃって世界じゅう裏づけがないという問題、要するにアメリカの金兌換停止からこの問題になっているわけですね。そこで、いま世界じゅうがマネーサプライをどういうふうに制限するかということで、EC諸国は、マネーサプライの増加率は、予想されるその国の実質成長率プラス許容できる消費者物価の上昇率の範囲内にすべきである。じゃ許容できる物価上昇というのはどれだけかというと、EC蔵相会議は四%と決めておるのですね。これはルクセンブルグ会議で四%と決めておるのです。そこへ実質成長率プラスが許容できるマネーサプライの数量に制限しよう、こういうことです。  それから、ことしの五月、アメリカのバーンズ連銀理事長が、これは国会の議論ですが、こう言っておるのですね。今後金融政策をどうやっていくかという質問に対して、長期的に見て、マネーサプライ、具体的に見てM1の年率の伸び率を五ないし七・五の範囲に抑えたい。景気は浮揚してきたが、またインフレが出てきたわけですよ。そこで、このマネーサプライをどう抑えるかということで五ないし七・五に抑えたい、こういうことをことしの五月、アメリカの国会でバーンズ連銀理事長が言っておるのですね。みんながマネーサプライをどう抑えるかということで、EC諸国もEC諸国の蔵相会議でそういう決定をしているわけです。だから私は、政府がどこまでも無軌道に走るならば、インフレを抑えるために、できることならばマネーサプライの増加率を国会決議で抑えたらどうかとさえ考えているのです。非常に窮屈になりますよ。窮屈になってもそのくらいにやらない限りはとてもとても——福田さん、あなた再来年ごろは四%なんて言って、全く漫才のようなことをおっしゃっているけれども、首かけてもなりませんよ。  それより問題はマネーサプライですよ。私はずっと統計を見ていますと、大体いままでの経過で、マネーサプライが一五近くなってくると物価に反応が出てきますね。狂乱物価のときは二七%上昇したでしょう。あれで狂乱インフレにならぬのはおかしいですよ。一五%というのがいいか悪いか別だが、いままでの日本の状況を見ると、マネーサプライの一五というのを私はインフレにこれから入るんだなという一つのめどにしておるのです。だから、もし実質成長率をたとえば六%にするんだといえば、そこへ消費者物価の上昇率をプラスして、これが福田さんの言うように四%なら、合わせて一〇%のマネーサプライの増加率に抑えればいいわけですね。だからその点をこれから慎重に検討してもらわぬと、日銀も本当に五十一年度予算から大変な事態になりますよ。  ことしは国民の貯金の預金部資金で何とか繰り返したが、大平さん、来年どのくらい国債を出しますか。おそらく五兆から六兆絡むんじゃないですか。
  128. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本委員会でも、すでに御案内のようにお尋ねがございましたけれども、来年の国債発行につきましてはまだ数字を申し上げる段階ではございません。ただ、申し上げられますことは、鋭意厳しい予算編成をいたしたいと考えておりますけれども、相当額の公債に依存せざるを得ないであろうということは申し上げられますけれども、金額につきましてはまだ御遠慮させていただきたいと思います。(「テレビに出て、国会で答弁できないとはどういうことなんだ」と呼ぶ者あり)
  129. 中澤茂一

    中澤委員 大平さん、いま予算概算要求出ておるでしょう、二十四兆どのくらい出ておるんじゃないですか。その中でどのくらい整理できるのですか。税収の伸び率が、四十九年が所得が大体六兆四、五千億でしょう。それから法人が六兆二、三千億でしょう。それからその他が四兆くらいでしょう。税収の伸びはそれ以上見られないと思うのですよ、下半期に若干伸びるかもしらぬが。そうなると、どう計算してみても、その予算を編成すれば国債の発行高は最低五兆五千億から六兆五千億いくんじゃないか。あなた、それもちっとも見当もつきませんというのは全然おかしいじゃないですか。それこそはまさに財政視界ゼロじゃないですか。
  130. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおり相当額公債に依存せざるを得ないと思いますけれども、どれだけになりますか、まだ国会で申し上げるような段階ではございません。いろいろな観測がマスコミによって行われておりますけれども、私が責任を持てる数字じゃございません。
  131. 中澤茂一

    中澤委員 いまそこでテレビで出ておると言っておるが、だれか発表したのでしょう。
  132. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私の関知しておる数字じゃありません。
  133. 中澤茂一

    中澤委員 大平さん、ぼくは何もそれで足を引っぱろうとかそんな意図で言っておるじゃないですよ。五十一年度予算、あなたどうしますか。これはどうするのです。まさに先ほど言った破産状態じゃないですか。それがいまから、責任者である大蔵大臣が見当もつかない。それなら、いま出ておる概算要求の中でどれだけ整理できるかね。たとえば租税特別措置法、不公平税制の最たるものだ。これでどれだけ整理する予定かね。そのくらいの目鼻をつけられなければ大蔵大臣はやめてもらいましょう。
  134. 大平正芳

    ○大平国務大臣 概算要求は、原則として前年度の予算の一五%増以内の御要求をいただいたわけでございまして、各省の協力を得ておるわけでございます。十月初旬以来査定にかかっておるわけでございます。  歳入の方につきましては、まず現行税制を丹念にいま見直しておるところでございます。とりわけ、御指摘の租税特別措置等につきまして十分見直していかなければならないわけでございまして、そういう点につきまして鋭意検討いたしておりますので、どれだけが期待できるかという点につきまして、まだ数字的に申し上げられる段階ではございません。
  135. 中澤茂一

    中澤委員 最後に、私はこういうことを申し上げておきたいのですよ。国債は財政の麻酔薬である。政府はいまこの麻酔薬で生き抜こうとしておるが、国民大衆はこの麻酔薬で再び苦難の道を歩かされるであろう。三木内閣が真に国民大衆の立場に立つならば、いま私が提起した基本的な改革問題、これを検討して、財政経済政策の大転換をここで図る絶好のチャンスなんです。その決意がありますか。これは三木総理と大平大蔵大臣と福田経企庁長官、この三人、いまの日本の財政経済を動かす三人の御意見を、その決意があるかどうか。マンネリ的ないままでの予算編成で五十一年度どうなりますか。どうにもならぬじゃないですか。あらゆる新機軸を出して考え段階に来ておるんじゃないですか。三木総理から答弁してください。
  136. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御指摘のとおり、これは来年度の予算編成を考えてみても厳しい条件の中に編成されることは事実でありますから、従来の惰性ではいけない。やはり歳出にとっても厳しい選択というものが迫られるわけでございます。歳入の面についてもいろいろ検討を要さなければならぬでしょう。だからそういう意味において、従来の惰性的発想をやめろということは中澤君と同意見である。相当な決意を持って財政経済の運営に当たらなければならぬ事態であるということは深く認識をいたす次第でございます。
  137. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十一年の予算委員会でも同じ議論を中澤さんから伺ったことを思い起こします。あの当時、インフレのない成長を実現するということを申し上げたわけですが、あの結果は一体どうなったんだろう、こう言いますと、確かに四十一年、四十二年は多額の公債を発行した、しかし四十三年、四十四年、四十五年、四十六年と逐次逓減いたしまして、もう公債依存度は五%を切る、もう公債発行せぬでもいいじゃないかというところまで来たわけなんです。今回におきましても公債が非常に多額に出る。あのときよりはもっと苦しい状態でございますけれども、とにかくインフレにしちゃ元も子もありませんから、インフレのない安定、インフレのない成長、これをぜひとも実現することを旨としてやっていきたい、かように考えております。
  138. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いろいろ示唆に富む御意見を伺いまして感謝します。私どものこれからの財政運営でございますけれども、一日も早く特例公債の桎梏から脱却しなければならぬわけでございますので、それを道標といたしまして最善を尽くしてまいらなければならぬと思っております。
  139. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 これにて中澤君の質疑は終了いたしました。  次に、石野久男君。
  140. 石野久男

    ○石野委員 総理にお尋ねしますが、総理は、経済首脳会議に出られるに当たって所見をお持ちでございますが、先ほど中澤議員に対して一定の、ある程度の所信の表明がありました。私、マクロの立場でもミクロの立場でも、一つの哲学を持ったそういう立場でこの会議に臨むと思いますけれども、特に日本の現状から言いますると、食糧問題、エネルギーの問題、これが非常に大きな問題であると思います。この件について、総理はどういうようなお考えを持ってこの会議に臨まれるか、一応所見を聞かしていただきたい。
  141. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先ほど中澤君の御質問にも答えたように、これは一国だけで解決できる問題ばかりではない、また政治も経済もちょっと分離しては考えられない、こういう背景のもとに首脳会議が行われるわけですが、これに臨む態度というものは、日本としても戦後初めて、戦前にも軍縮会議以外にはこういう多面的な会議というものはないわけであります。日本のために大変に重要な会議である。  それで、私はできるだけ各方面の意見も聞きたいと思って意見も徴しておるし、特に野党との党首会談を私が近く申し出たいと思うのは、国会開会中に出席するわけですから、これは御了解を得なければならぬことは申すまでもございません。もう一つは、野党の立場から、この会議に臨むことについて野党はどういう見解を持っておられるか、こういうことを率直に聞きたいと思っておるわけです。  そういうことを踏まえて、今回の首脳会議の中において、日本はいま御指摘のようなエネルギー問題も大事でございますし食糧問題も大事であるが、そればかりでなく、やはり世界的な不況からの脱出といいますか、これに対する国際的協力というもの、非常に大きな問題があるわけです。  それから、いま石野君の御指摘になったエネルギーの問題、ことに日本はエネルギーの自給力というものが一番先進国の中では弱いわけです。ほとんど石油なども海外の輸入に依存しておるわけですから、そういうふうな、日本としてエネルギーの問題というものは、これはどうしても日本一国だけで解決できない、国際協力というものは必要である。また、代替エネルギーの研究開発というものも、よその国以上に日本は関心を持つわけであります。     〔塩谷委員長代理退席、湊委員長代理着席〕  食糧の問題、これは日本自身も食糧の自給力というものを高めていかなければならぬ。世界的に見れば、食糧不足ということが大きな傾向としては言える。いまでも餓死するような人が気象条件によっては世界の中にある。こういう問題に対して、自国の自給力を高めると同時に、世界の食糧問題というのに無関心たり得ない。  また第一次産品、これはやっぱり南北問題とも関連しますけれども、これによって発展途上国というものが非常な影響を受ける。第一次産品の価格の不安定、所得の不安定ということは非常な打撃を受ける。この問題に対して、工業先進国としての日本としてもやはり何らかの考え方がなければならぬし、また南北問題というのも、これが人類の連帯的な考え方のもとにおいて、この先進工業国と発展途上国との格差拡大のままに放置して平和というものが達成できるであろうか。これはもうできるはずはないわけでございます。しかし、先進工業国としてもみずからの限度もあるわけです。どうしてもこれはやはり一つの連帯的な、自助的な努力、工業先進国の協力、こういうものにやはりどういう新しい仕組みというものが考えられるべきか、こういう問題が私はあると思う。議題になるのはこういう問題なんですね。  それから貿易の問題がございます。日本の場合にも貿易立国の国として、貿易の現状というものに対してはいろいろな意見を持つことは当然であります。そういう議題、また議題になくても、日本が首脳会議というような場面で提起するにふさわしい問題もほかにもあるでしょう。こういう問題をいま言った各方面の意見を徴して政府部内においても準備をいたしておりますが、そういうことで、何らかの日本の考え方というものをまとめて臨まなければ、出席するということだけに意義はないのですから、そのことが明日のよりよい世界のために何らかの貢献をするということでなければ意味はないわけですから、いまここでどういう考え方が固まっておるかということを申し上げる段階ではないわけですけれども、衆知を集めて日本の考え方をまとめたい、こう願っておるわけでございます。
  142. 石野久男

    ○石野委員 いろいろの問題について総理からお話がありましたが、世界の首脳会議に臨むに当たっての日本の総理という立場からしますと、やはり各国に対して先進国としての日本が何かの役に立ちたいという、その土台になる日本自身の問題が一つある。日本における食糧の問題、自給度の問題では他の諸外国よりももっと厳しいものがあるし、エネルギーもそうです。特に食糧の問題について自給度をどういうふうに高めるかということを考えなければ、世界的に食糧が非常に不足をしておる段階では、問題は解決の方向へ進まないだろう。  そこで私は、世界で論ずる問題の前に、日本の中で自給度をどういうふうに高めていくかということについて総理考え方を聞きたいのです。  いまお手元に——これは時間の関係かありますから先に申しますけれども、最近の食糧の自給度は非常に厳しい状態になっておる。特に穀類関係では四〇%を割るというところまで来ている。なぜこういうふうになっているかということを表でごらんになっていただくとわかりますが、四十年から四十八年までの表をここに出しておりますけれども、農林就業人口の減少形態を見ますと、四十年を一〇〇として四十八年は五七%に減っております。耕作面積の面から言いますと九七・五%です。面積はわずか二・五%しか減っておりませんが、就労人口は約半分になっているわけです。こういう状態の中で特に一番問題になる穀類の問題になりますると、これは先般同僚の湯山議員からも非常に細かく質問をしましたことですが、四十年を一〇〇としますると、麦類関係では一八・三%に作付面積が減っているわけです。そういう状況の中で穀物の輸入量はどういうようになっているかといいますと、四十八年で四十年に比較して一八八・三%、このように輸入量がぐっとふえてきているわけです。こういうような情勢の中で自給を確保していくということについては、湯山委員からも話がありましたように、特に麦類の問題それから豆、この穀類と豆類に対しての対策に問題が集中してくる。そういうような状況の中で総理は農林行政に対してどういうような指針を与えておるのか、またどうするつもりなのか。そこを踏んまえて世界の首脳会議に入ってもらわないと、幾ら責任を持つと言ったって、自分の国は何も足場がないのに行ったって何の役にも立たないのではないか。まず総理のその所見をひとつ聞きたい。
  143. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自給率を高めるということは必要でございますが、さりとて食糧の自給というものは日本が達成できるわけはないわけで、どうしてもそこには安定的な輸入というものにも相当依存せざるを得ないわけですが、御指摘のように、自給率は日本は非常に低いわけで、これからは需要の伸びるような面における増産ということは必要になってくる。いま御指摘の麦とか豆もそうでありますし、飼料作物なども、日本は畜産の振興の見地からしても相当力を入れる部門ではないか。こういうふうに、いろいろこれからの需要の伸びというものを考えてそういうことをやらなければ、自給率は高まっていかない。それについてはいろいろ基礎的に言えば、生産基盤の整備というものもあるでしょうね。いろいろな意味において土地の生産力を培養していかなければならぬし、あるいは価格政策もあるでしょうね。あるいは農村人口が減ってくると、いまの農村人口を維持することが適当だとは私は思いませんが、農業の担い手というものはやはり育成していかなければならぬ、そういうこともあるでしょうし、施策の面については、一つにはやはり自給度を高めていくということは大きな目標ですが、そういう目的を達成できるような施策というものはいろいろ多角的にとっていかなければならぬ。最近も政府国民食糧会議などを開きまして、各方面の農業に対して見識を持っておる人たちのお集まりを願って、非常に傾聴すべき答申もいただいておるわけですが、基礎的には、そういう多角的な施策を進めていくことによって自給率を高めていこう。  もう少し具体的な説明は、農林大臣が補足することが適当かと思います。
  144. 石野久男

    ○石野委員 農林大臣からも聞きたいけれども、その前に、総理はここで一つの農業に対する哲学を持たなければいけないと思うのです。食糧計画はいろいろ立つと思いますよ、輸入すればそれも一つの食糧計画ですから。だから自給率を食糧計画の中にどの程度に置くかということ、これは総理の一つの識見でなければならないと思うのです。その点を私は聞くので、ほかのことはいいですよ、いろいろな方策があることは私もよくわかっているのですから。問題は、食糧計画の中で自給率をどの程度に置くのかということ、それを来年度の政策の中に、どういうふうに予算の中にはめ込んでいくのか、この点をひとつ総理から。
  145. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 農林省で農産物の需要と供給の長期的見通しを策定いたしまして、これを閣議においても決定をいたしたわけでございますが、昭和六十年を目標にして一応総合自給率七五%、現在は七二、三%のところでありますが、これを七五%にはぜひ持っていきたい、こういうことで、あらゆる政策を六十年の目標に向かって集中的に講じようということになっておるわけであります。
  146. 石野久男

    ○石野委員 総合自給率七五%というけれども、しかし総合自給率ということと主食である穀物の自給が四〇%というのとではずいぶん違うんですよ。われわれ日本人の生活にとって、この穀物の問題が一番大事なんです。それが四〇%程度に置かれているということでは、とても安心していけるわけはないのです。だから総理としては、日本の食糧計画というやつは、どうしても穀類におけるところの自給率を高めることに焦点を合わさなければいけないだろうと私は思っているのだ。だけれども、いまの農林大臣の答弁から言うと、総合自給率が七〇%いけばいいと言っている。穀類は四〇%か四二、三%でもいいのだというように聞き取れるわけなんですよ。総理考え方をこの点について聞きたい。
  147. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 穀類、その中に私は飼料を入れるわけですよ。こういうもので、やっぱり穀類の自給率というものは、総合的に食糧は考えるべきものですけれども、われわれとして麦にしても大豆にしても、非常に昔に比へたら——それは大体外国の麦なんかでも、三分の一ぐらいの価格で輸入ができるわけですから、そういう価格の面からも、いわば競争条件からもあるわけですが、まあしかし、何かそこで飼料などはもう少し工夫の余地がある。そういうことで穀類の自給率をもっと高めなければならぬという石野君の説は私も同意見です。
  148. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 農林省の立てました六十年目標では、確かに総合食糧自給率は七五%という目標でございますが、いま御指摘がございましたように、穀物自給率につきましては、現在の四二%が三七%に下がるという見通しにならざるを得ないわけでございます。これはどういうことかといいますと、いまの畜産は、御存じのように豚だとかあるいは鶏のえさは、一〇〇%外国から輸入をしているトウモロコシ、コウリャンでございます。そして、今後の畜産も、やはり畜産の消費が伸びていくわけでございますし、人口が伸びるわけでございますから、畜産も成長する、畜産の需要もふえてくる、こういうことになりますれば、やはり現在一千万トンばかり外国からこれらトウモロコシ、コウリャンを入れておりますが、国内においては、何としてもこれらの生産は不可能でございますので、どうしてもこれは外国に頼らざるを得ない。そうなれば、千五百万トンというふうなことにならざるを得ないわけであります。したがって、これが穀物の自給率に影響してきて、四二%が三七%に下がらざるを得ないということになるわけでございますが、しかし、先ほどお話がございましたように、トウモロコシ、コウリャンというものは、これは米とも競合しますから、生産ができないわけでありますが、しかし、麦であるとかあるいはまた豆類、大豆等につきましては、これは大変最近の生産の減少が目立っておるわけでありますが、これらにつきましては、今後増産対策を強力に推進することによって、ある程度自給率を高めることはできる。麦等におきましても、裏作等もいま二十二、三万ヘクタールしかつくっておらないのを七十万ヘクタールぐらいこれをつくりたいということにつきまして、あらゆる助成策を講じて、麦と豆類は自給率を高めていく。しかし、全体の穀物の自給率ということになりますと、どうしても下がらざるを得ないということになるわけでございます。
  149. 石野久男

    ○石野委員 飼料に対しての対策を立てるということは、私も当然必要だと思うのです。ただやはり、この表でもわかるように、飼料につきましては耕作面積は、四十年度と四十八年度を見ると、これは一三七・八%とふえてきている。だからあなた方が飼料の面を重視するということは、農民もそのように耕作面積をふやしていっているんだ。ところが、肝心の穀類については減ってきているわけです。がっと減ってきているわけですよ。ここに政治が目を当てなかったら、対策は立たないのじゃないですか。ますます飼料の方にとられてしまって、そして主食、人間の食べるもの、もちろんそれは飼料の方も人間の食糧に回ってきますけれども、しかしそれはますます自給率が減ってしまうでしょう。だから私は、飼料に対しても麦類に対しても、努力するということはわかるけれども、それならそれに適応するような農業人口の問題についてどういう対策を立てるのだ、作付面積についてどういう指導をするのだということについて明確にしてもらいたい。
  150. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 飼料につきましては、飼料穀物は、先ほど申し上げましたように、トウモロコシ、コウリャンが主体でございますから、これは外国に依存せざるを得ないわけで、安定輸入の道を今後とも講じなければならぬと思いますが、大家畜等の飼料、すなわち飼料作物につきましては、これまでもなおざりにされた面も確かにあると思うわけでございます。これは裏作の振興、さらに林地の開発等によりまして、相当、草、いわゆる飼料作物の増産というものは図っていくことができるのじゃないか。そこで、ことしの予算におきましても総合緊急対策といたしまして飼料基盤の整備の予算を新たに設けたわけでございますが、今後とも飼料作物の点につきましては積極的にこれを進めていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  151. 石野久男

    ○石野委員 政府のそういう考え方を具体的に政治の面であらわしていくとすれば、どうしたって農業人口をいまよりもふやすということがはっきりしてこなければいけないと思うのです。と同時に、やはり作付面積の増大というやつを具体的に指導するということでなければ、いまの問題を素直に聞き取ることはできないわけですね。来年度の予算の中では、金は出るけれども、農業人口をふやすということについての努力はどのようになさるのか。あるいはまた、作付面積の問題でそれの達成されるような方策をどういうふうになさるお考えなのか。それがあればひとつ聞かしてもらいたい。
  152. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 農業就業人口は、農林省がつくりました今後の見通し等におきましても、ふえるというよりは漸減をしていくというふうな見通しを立てておるわけでございますが、しかし、今後とも農地等につきましては積極的な造成を図っていく、さらに、農地の壊廃等につきましては、転用の規制を厳しくして、そして優良農地が壊廃されないように規制を厳しくしていくというふうなこと、さらにまた、基盤整備等につきましても、土地改良等の基盤整備は相当進度がおくれておりますので、来年度予算にも要求しておりますが、この進度を早めて、長期的な土地改良等も進めていく、そして生産性を高めるような基盤の充実を図っていくというふうに考えておるわけでございます。  農用地等につきましては、十カ年計画で、大体現在わが国で農用地造成として百五十万ヘクタールぐらい可能な面積があるというふうに考えておるわけでありますが、いまからの十カ年間でその中の八十五、六万ヘクタールを何としても造成をしなければならない、こういうふうに思います。しかし反面また、農地が他の用途に転用されるものも出てくるわけでございますから、それは相当厳しく抑えていかなければならないとしても、六、七十万ヘクタールぐらいは他の用途に転用される可能性もあるわけでございます。そういうことも含めながら、われわれは農地の造成等につきましても積極的な施策を講じなければならないと考えるわけであります。
  153. 石野久男

    ○石野委員 農地造成に努力をすると言われても、その農地造成したものが生産性にどのようにはね返ってくるかということになると、やはり就業人員をふやしていくということが一つ必要になるし、もしそうでないとすれば、機械化をするか、組織化をするか、どちらかの方策がそれに加わらなければ、その成果をかち取ることはできぬと思うのです。だったら、機械化あるいは組織化の問題をどういうふうに考えているのか。農業人口は漸減の方向にあるということを言われるのですから、どうしたって機械化か組織化をしなくちゃいけませんが、そういうことについての的確な指導方針を持っておられますか。
  154. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 きょうも社会党の統一要請の中で、いまの集団生産対策並びに農業の機械化等につきましての御要請があったわけでございますが、政府としても、今後の農業の近代化ということを進めていくためにも、農業における集団的生産組織を育成をしていく、また機械化等も同時に進めていくということは必要であろうというふうに考えて、それらの施策も講じておるわけでありますが、さらに今後これを強化していかなければならぬ。麦等をつくるにいたしましても、米麦一貫体系といいますか、同時にまた麦についても、生産的な集団組織、麦作集団といったものによることが麦の増産につながっていくわけでございますので、農家が個々に孤立をして生産を行っていくということではなくて、集団的生産組織の中で生産意欲を高めながら、生産を高めていくということの方に農業政策としては重点を置かなければならぬということで、そういう方面に対してもこれから大いに力を注ぐ考えでございます。
  155. 石野久男

    ○石野委員 時間がありませんからそれから中へ入りませんが、もう一つ聞いておきたいのは、魚介類とそれから海草類でございますが、これの輸入量は四十年に比較して約六〇%から五〇%の増大を来しておるのです。わが国におけるたん白資源としての海産物の占める位置は非常に高い。海洋法の設定ということが世界的に論議になってきておる。あるいは領海十二海里説も出てきておる。いろいろそういうものを総合して、日本の漁業がだんだんと沖合いからずっと近海へ追い込まれてくるという段階で、しかも現在の状態でなおかつこの魚介類、海草類の輸入の量がうんとふえているということは非常に重大な問題だと思うのです。自給率の問題では、確かに魚介類は一〇〇%を超えております、四十八年で。海草類は八三%です。しかし輸入の量はいずれもやはり四十年から比較すると六五%、あるいは五〇%の増大を来しております。こういうような問題について、いわゆる漁業対策という問題、これは非常に新しい要素を抱え込んでおると思いますが、そういう問題についていまどういう方策を持たれておるか。
  156. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 漁業につきましては、いま御指摘がございましたように、国際的にも国内的にも非常に厳しい危機的な状況にあると言っても過言ではないと思うわけであります。大体、わが国における水産物漁獲高は一千百万トンでありますけれども、そのうちの五百万トン近くが他の国の経済水域二百海里以内で漁獲をしておるという状況でございますので、経済水域が設定をされるということになりますと、この影響ストレートに日本の水産業に出てくるわけでございます。どういう形で経済水域が設定されるかということをわれわれは非常に心配をし、重大な関心を持ってこの会議に参加をいたしておるわけであります。われわれとしては、日本の漁業権、操業権というものを維持する、操業権が確保される形で経済水域が認められることを期待をし、これに対する積極的な外交活動も続けておるわけでございますが、いずれにしても、しかし影響は厳しいわけでございます。同時にまた、最近いろいろと漁業協定を二国間あるいは多数国間で結んでおりますが、その漁業協定におきましても、毎年毎年わが国の漁獲高が制限をされる。鯨についても、捕鯨条約等でことしは四割も削られるというように、毎年毎年制限をされるというようなことで、そういう遠洋漁業資源というものは厳しい状態にあるわけでございます。同時にまた、沿岸におきましても、沿岸における公害等の発生のために、沿岸漁業についてもいろいろと問題が生じておるわけでございます。しかし、これからの動物性たん白資源を確保するという意味におきましては、いままでも動物性たん白質の半分は漁業、水産物に日本人は依存しておりましたので、そういう厳しい中にあっても、何とか工夫をこらし、政策を集中をして、一千百万トンに近い水産物の確保のための努力をしていかなければならぬ。新資源の確保であるとか、あるいは沿岸漁業における裁培漁業等の振興であるとか、そういうものを積極的に今後とも漁業対策として打ち出していかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。いま漁業は、そうした厳しい資源状態の中にありますが、同時にまた、経営の方も、燃油等が非常に上がりましたために、経営が漁業のいろいろの業種において危機に陥っておる。魚価の方はなかなか上がらない、燃油の方は数倍上がったということで、経営が非常にピンチに陥っている面もあるわけでございまして、そういう経営対策も来年度予算等におきまして積極的に講じなければ、今後の漁業の安定ということは図られないというふうに考えております。資源の面、経営の面、そういう面につきまして、今後とも最大の努力をしなければならない課題であろうと思うわけであります。
  157. 石野久男

    ○石野委員 総理に聞きたいのですが、いまのような状況で、食糧自給の問題は口に言うほどそう簡単でないということがはっきりしているわけです。これは少なくとも、いままでのように自由民主党の政府として減反政策で来たとか、あるいは輸入依存オンリーで行くというような、そういう発想ではもうとても食糧自給の方策は立たない。この政策転換を明確にしてかからないと、私は、海でもおかでもいずれも食糧自給というものはとても達成できない、こういうように思います。総理はそういう問題についてはっきりした態度でひとつ指針を出さなければいけないのではないか。どういうふうにお考えですか。
  158. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 石野君、先ほど穀物の自給量を高めるというお話があった。飼料も含めていろいろ国際価格との間に非常な差を持っておる。そういう条件の中で、どうして穀物の自給量を高めていくかということもなかなか従来の発想では達成できぬものがありましょうし、またいま問題になっておる漁業でも、国際環境というものは日本に非常に厳しくなるわけですね。海洋法の会議結論を見なければわかりませんが、大体の方向としては、やはり非常に厳しい規制が行われる。日本の遠洋漁業なんかもこのために非常に打撃を受ける。外交的努力も伴わなければならぬけれども、しかしその条件は日増しに厳しくなるわけであります。また漁業の経営自体も、いま農林大臣も言われたように、油の値上がりとか、いろいろな条件というもの、非常に厳しい条件というものが漁業経営をめぐってあらわれてくる。そうしてまた、沿岸漁業にしても漁場というものは少なくなる。こういうことを考えてみると、やはり食糧政策、水産も入れて、これは確かに御指摘のように、従来の惰性ではいかぬと私も思いますね。ここで、したがって、漁業にしても、どういうふうにして漁業経営を安定させ、この厳しいいろいろな国際環境の中で日本の操業権を確保していくかというようなことを考えてみると、相当本腰になって力を入れないと、なかなかこの問題はじり貧になっていく可能性がありますので、これは一つの食糧政策というものを、こういういろいろな変化した環境の中で一遍考えてみる時期に来ておるということは、全く同感であります。そういうふうな問題をそういうふうに把握して、この問題は政府が真剣に取り組んでいきたいと思うわけでございます。
  159. 石野久男

    ○石野委員 食糧自給の問題については非常に厳しい状況だということを総理はお認めになられておりますが、しかしそれは認めておっても、それに対する対策が出なければだめだし、外貨が必ずしも輸入の保証をするだけ予見できないということになれば、どうしたって自給度を高めなければいけない。それがなければ——実際に総理はこのライフサイクルを出しておられる。このライフサイクルというのは総理の個人的ななにだということですが、しかし総理は、この中で少なくともやはり豊かな社会への対応ということを考えていろいろなことを出しておりますけれども、実際このライフサイクルの中には、そういう食糧問題というようなことはほとんど一言も出ていないのです。そういう食糧問題などに対する感覚を持たないでライフサイクルを出されても意味がないと思うのですが、総理はこういうようなものについてどういうような考えを持っておりますか。
  160. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはもう食糧問題からエネルギー問題、いろいろあるわけですが、そんなに全般としての問題は、これはエネルギー政策とか農業政策というものがまた検討されなければなりませんが、そこに言おうとしたのは、いろいろなお互いの生涯、人間の一生を考えてみると、戦後非常な変化が起こって、第一、人間の寿命なども三、四十年の間に二十歳ぐらいはやはりみんな長命になってきておる。だから、福祉というようなもの、お互いに生きがいのある、希望のある人生を皆送りたいと願っておるわけです。これにこたえることが政治でもあるわけです。そういうお互いの生涯というものは、いままでのものと非常に変わってきておる。ライフサイクルというものも変化してきたのですね。昔のように御婦人の人たちでもたくさんの子供を生まなくなっている。育児期間を過ぎた後の人生というのは二十年、三十年もあるということですね。そういうふうにお互いの生活設計というものに変化があって、福祉というものを考えたときに、年金なら年金、社会保障と、こう言うばかりではないと私は思うのです。人間は生まれて死ぬまでの間、やはり人生の段階ごとに福祉政策というものはなければならぬわけです。もう少し福祉を、社会保障というだけでとらえないで、生涯を通じての総合福祉という、こういう考え方でいかないと、なかなか一つの希望のある、生きがいのある人生というもの、そういう生活設計は立たない。そういうことですから、これをずっと人生を通じての段階ごとに、ばらばらに考えるのでなしに、生涯を通じての総合福祉ということで福祉社会の建設を考えてみる必要があるのではないか。そういうことで、やはりこれは大きなビジョンですから、しかし、それはそのときの経済情勢、財政事情の制約も受けますけれども、しかし、やはりこれから日本が目指す社会のビジョンというものが何かなければ、ただそのときの財政事情でこれは金がないからできませんということだけでは済みませんから、金がなければどうやって——金がないからできぬと言うのじゃなしに、これをやらなければならないとしたならば、金はどうしてつくるかという発想であるべきでしょうね。そういうことで、いま政府の部門においてもこれに対する連絡会議を開いて検討しておるし、自民党も、長期ビジョンですから、いますぐにきょうあすできるというものではないが、しかし、これを各政党ともやはり考えてみる時期に来ておるのではないか、こういうことで、自民党の方でも大調査会を開いていま検討しておる最中でございます。
  161. 石野久男

    ○石野委員 このライフサイクルというのは、そういうようなビジョンであるけれども、同時に、失業という問題については、まず失業がないということが前提になりますね。そういう観点でこれはつくられるものだ、そういうふうに理解してよろしいですね。
  162. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 失業のない社会をつくりたいということでございます。
  163. 石野久男

    ○石野委員 このライフサイクルは、そういう意味では、確かに希望であっても、現実の現在の日本の実情では高ねの花だ、実際には裏づけるものがないというふうに見てしかるべきだというように私は思いますが、その点は総理はどういうふうに考えますか。
  164. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はそれは見解が違います。高ねの花、そういうぐあいに、書いてあることが実現しないで——日本がこれだけの一つの国力を持ってきて、そういう社会を目指して努力をするということは、高ねの花だとは私は思わない。だから、これは物の考え方を細切れにするのでなしに、福祉というものを生涯を通じて総合的に考えてみよう、この考え方です。そして、それをやれる程度というものは、そのときのいろいろな事情もあるでしょうから、一つの構想というものは、それは高ねの花というものでなくして、現実の政治がまさに取り組まなければならぬ課題である。あなたはどうもそういうふうに、それを高ねの花だというような——私はそういうふうには考えないのですよ。これくらいのことはやらなくてどうするのだ、こういうことです。
  165. 石野久男

    ○石野委員 そのくらいのことはやらなければならぬけれども、足場がないというところに問題があるので、恐らくこれは高ねの花になるだろうと思います。  時間がありませんから、エネルギーの問題で、大臣は今度の首脳会議に臨むに当たって、エネルギー問題ではどういうふうに各国の首脳との間で話し合いをするつもりでおられるか。
  166. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先ほども申しましたように、これはいろいろ各方面の意見も聞きたいと思うが、私の基本的な考えの中にあるエネルギー問題は、資源は有限である、大事に使わなければいかぬ、こういうことですよ。やがては石油にしたところで寿命が来るわけですから、そうなってきたら産油国というものは資源を持たないのですから、だから皆が大事にしなければならぬ。そのためには節約も必要でしょうし、また一面においては、これにかわるエネルギーの開発というものにも力を入れなければいかぬと思いますね。そういうふうな基本的な考え方でございます。
  167. 石野久男

    ○石野委員 資源は有限である。特に日本の場合は資源がない。そこで日本は、エネルギーの問題ではあれこれ言っても、結局は石油に頼らざるを得ない状況もまだずっと続くと思うのです。そこで、石油について当然やはり中東の問題との絡みが出てくることは間違いありません。そういう外交的な、石油外交といいますか、特に三木総理はかねて特使として向こうに赴いたこともありますし、その後石油が一定程度出回るという状態のもとでは、アラブに対する姿勢というものが、あのときは頭を下げて頼んだけれども、いまはもう知らぬ顔の半兵衛だというふうに見受けられるような、そういう雰囲気であると思われます。総理はそういうような考え方はないだろうと思うんだが、一応アラブの外交、中東をどういうふうに考えておるかということをこの際聞かしていただきたい。
  168. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 知らぬ顔の半兵衛というのは取り消してもらいたいぐらいのことでございます。そういうことは断じてありません。日本は石油の大半を中東から輸入しておって、ただ危機のときにわあわあ言って後は知らぬ顔の半兵衛だということは、日本外交に対する侮辱であると思うわけでございます。政府間で約束したことは大体において履行しているのですよ。ただ問題は民間協力なんですね。この問題がおくれておることはやはり事実です。これはいろいろな条件はあるけれども、それは何かと言えば、民間の、やはり採算の点もございますし、何分にもアジアと違って日本とはいろいろな慣習も違いますから、そういう点で、向こうのいろいろな社会的な施設という問題も、港湾とかその他ありますし、しかし、これは何とかして中東との関係というものは——向こうは金は持っているのですからね。やはり日本の技術協力などは積極的に、まあこういう財政的な困難なときでもやれる余地もあるわけですし、何とかしてやはり先方の経済的な自立といいますか、ある程度工業化もやりたいというわけですから、そういうことに対して協力を本当にしたいという気持ちを日本は持っておることには変わらないし、その努力もしているのですよ、実際は。また一方において、あの石油というものが、世界経済がこういう混乱状態に陥ったのは、やはり異常な石油の値上げですから、なぜそういうことになったかということは、いろいろな原因もありましょう。しかし、やはり中東が不安定な状態ということも無関係ではないですね。そういうことで、中東紛争の平和的解決ということも、これは非常に必要になってくるわけで、日本の役割りというものは限られておりますが、やはり日本もできるだけの協力をしなければならぬし、また、産油国との間に、対決では解決できませんから、産油国は産油国の悩みがあるわけですね。あの石油資源がなくなったらあとはどうなるのだという中東の悩みというものは、われわれもよくわかるわけですから、そういう国々の経済的な自立の達成というものに対していろいろ相談相手にもなる必要がございましょうし、まあ日本とすれば、いろいろな面で中東に対してはできるだけのことをしたいという気持ちは実際に持っておるわけですが、なかなかやはりいろいろな日本の考えるようにいけないような条件というものもある。日本が何か役に立ちたいという気持ちは、これはもう変わらないものがあるわけでございまして、中東は非常にやはりわれわれとして大きな関心を持っておる地域であることは間違いございません。
  169. 石野久男

    ○石野委員 中東問題はいろいろな問題があってなかなか思うようにいかない。しかし中東問題で一番大きい問題は、やはりイスラエル、パレスチナの問題だと思うのです。特にパレスチナ問題については、石油問題との関連で、アラブ問題の中心課題ということでこれは見なければならないのだが、PLO関係についての日本の対処の仕方というものにもうひとつ、まだ三木さんが特使として行かれたときのあの雰囲気を受けとめるような態勢のものが出てこないというところに、中東問題と日本との関係がどうも接点が十分にいかないのではないか、外交上そういうふうに見られる側面が多く見受けられる。私は、あのPLO問題、特に代表部の問題について、やはり三木内閣はもっと大胆にこれと接触をすべきでないだろうか、こういうふうに思いますが、代表部の設置という問題は、依然としてまだ問題が残るのですか、どうなんですか。これはなぜ代表部の設置ができないのか、そこらのところをひとつはっきりしてもらいたい。
  170. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 中東問題の中で、いわゆるパレスチナ人についての考え方は、今年一月の総理大臣の施政方針演説においてきわめてはっきり内外に宣明されたわけでございます。  その後、ただいまの事務所設置等の問題につきましてPLO側から何度か接触がございましたが、その間にPLOの内部におきましても多少の混乱があったように思います。しかし、ただいま現時点で申しますと、わが国の立場というものはきわめてはっきり先方に伝わっておることは、先方と申しますのはアラファト議長でございますが、社会党の使節団等々の御活動によって明快になってきております。  その立場をもう一度簡略に申しますと、われわれはいわゆるPLOがパレスチナ人の正規のスポークスマンであるということを認めておるということ。第二に、PLOがその推薦される人をわが国に一般旅券をもって入国をさせて、事務所を開くということについては、私どもとして別に反対をする理由はない。そのような一般旅券をもって入国された外国人及び設けられた事務所は、わが国の憲法に従って他の外国人と同様の権利を持ち保護を受ける。それに対して差別待遇をするというようなことは、わが国のたてまえとしてできないことでありますし、また、するつもりもない。ただし、そのような活動は当然のことながらわが国の法令に違反しないこと、また、静穏なる秩序を害するものでないこと、これは当然のことでございますが、そういうことがわが国の立場であるということは、すでにアル・フートというPLOの有力者が参りましたときに伝えてございますし、また、その点は簡略な文書にいたしまして先方にも伝えてございます。  その後多少事態がPLO側の事情で混乱したようでございましたが、アラファト議長が先般述べられたと伝えられるところによりまして、われわれの立場は正確に先方に伝わっているものと考えております。ただいまのところPLOの方からそのような動きはまだございませんけれども、わが国の立場はただいま申し上げたとおりでございます。
  171. 石野久男

    ○石野委員 一つだけ聞いておきたいんですが、わが方の意向はアラファト議長のところには十分伝わっている、こういま外務大臣のお話ですが、いままでこの代表部設置の問題でPLOの方からの申し入れの中には、いわゆる法令並びに日本の秩序を乱すというような、そういうような内容なり該当するような条件があって受け付けばされなかったのかどうなのか、いままでの経緯について簡単にひとつ……。
  172. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国からも、この問題について関心を持たれる方がたくさんおられまして、いろいろな筋でPLOの代表と称する人々と接触が幾つか行われておったようでございますが、そのうちで、私どもが一番はっきりしたお話だと考えておりますのは、PLOのベイルートの所長でございますアル・フートという人が来日をされて、そして外務省にも接触をされ、私もお会いをいたしました。この人の話されることの内容はきわめて慎重であり、かつ正確でございました。その後また別途の方がわが国に出入りをされて、これが多少事態を混乱さしたように思いますけれども、結論として申しますと、われわれがアル・フート氏に伝えましたところが、そのとおり正確にアラファト議長に伝わっておるということのように思います。アル・フート氏の話の中には、PLO自身がわが国の法令に違反し、あるいはわが国の秩序を害するような、そういう活動を考えていると思われるような向きは一切ございませんでした。
  173. 石野久男

    ○石野委員 そうしますと、近くPLOの方からそのような申し入れがあれば、政府としては、もう問題なくそれを受けとめられるという姿勢だけは持っていられるわけですね。
  174. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま私が申し上げました条件に合致するものであれば、そのとおりであります。
  175. 石野久男

    ○石野委員 石油の問題は、アラブ、特にPLOの問題との関連でやはりきわめていろいろな問題を残すと思うのです。そこで、エネルギーの自給度を高めるということ、それから食糧の自給度を高めるということと関連して、米ソの間に行われた穀物協定というものは、いろいろな意味でわが国にとっては重要な問題を投げておると思うのです。  先般、総理はアメリカに行かれて、農林大臣も行かれたわけですけれども、この米ソの穀物協定というものと、日本が海外から穀物の輸入をしようとする場合の構えとの間の食い違いというものを、今後政府としてはやはり一応考えなければならないんじゃないかというふうに考えさせるものがこの中にありますが、総理はその点についてはどのようにお考えになっていますか。
  176. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先般、米ソで取り決められました穀物輸入の取り決めは、すでに御承知と思いますので詳しくは申し上げませんが、平年度において六百万トンないし八百万トンの輸入を五年間ということで取り決めたわけでございます。ただ米国の収量が仮に一定数以下であった場合には、米国はその取り決めには必ずしも拘束されないということでございますが、この協定を見ますと、これは御承知のように麦とトウモロコシについてでございますが、恐らく米国にとりましては、農産物に相当増産の能力があり、むしろ需要の面を心配しておるというような面もないわけではございませんので、全体的に食糧増産に寄与するものというふうに考えられます。  なお、わが国の場合には、安倍農林大臣がそれより前に行かれまして、これは非常にいい取り決めをされたと私ども思っておるわけでございますが、その後にソ連との取り決めができました。数量は六百万トンないし八百万トンでございますから、わが国の場合よりはるかに少ないということと、なお、米国の収穫が一定以下であった場合に云々というのは、わが国のような伝統的な安定した需要者を優先するという意味である。わが国との協定にはそのような部分はございませんので、あれこれ考えますと、米国の農産物の増産に寄与するという面ば多いように考えられますので、この点は、わが国にとりまして何ら不利と考えられる理由がないのみならず、むしろ歓迎すべきことではないかというふうに私どもは判断しております。
  177. 石野久男

    ○石野委員 穀物、食糧の自給の問題については、日本自身が自給度が低いだけに考えなければならぬ問題があります。これは政策の転換ということを含めて、総理にひとつ十分考えてもらうべきだと思うのです。  エネルギー問題について、特に代替エネルギーとして原子力というものが常に言われておるわけですが、しかし、地下資源としての石炭の問題、自給度はまだ期待ができるものがあるわけでありますから、この石炭に対する問題を無視することは許されないと思うのです。やはり政府としては、この石炭の見直しということについて積極的に考えるべきじゃないかというふうにわれわれは思うのだが、政府はどのように考えておられるか。
  178. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先般、石炭鉱業審議会から答申がございまして、新しい石炭対策といたしまして、国内炭を今後毎年二千万トン確保していこう。それを中心といたしまして、なお十年ぐらいを目標といたしまして一般炭を約千五百万トン程度輸入していこう。国内はいろいろ検討いたしましても大体二千万トンが精いっぱいである、しかし二千万トンの水準だけは維持したい、これが中心でございます。
  179. 石野久男

    ○石野委員 その二千万トンは、まだ掘れば掘れるものであるだけに、政策の方向によってはもっと伸びるんじゃないかという考え方はとりませんか。
  180. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これは、全国の石炭の掘れる場所をもう全部詳細に検討して積み上げまして、そして出した結果でございます。二千万トンがいまのところは大体いっぱいである、こういう考え方でございます。
  181. 石野久男

    ○石野委員 原子力の問題でお尋ねしますが、代替エネルギーとしての原子力ということがかねてから言われておりますが、しかしこの問題は、今年の初め、ここでも論議になりまして、六十年度六千万キロワットを四千九百万キロワットに方針を変えるというところまでいきましたが、問題はやはり、原子力開発について地域住民がこれに対して素直に乗ってこない、反対運動が非常に強い。その反対運動が強いということについて、政府としては非常におもしろくないという立場をとっているようですし、昨日は原子力の日で、テレビ、ラジオいろいろ通じてずいぶん宣伝しておりました。佐々木長官もテレビに出ていろいろ説いておられたようですが、原子力問題で地域でのいろいろな反対運動が起きていることについて、どうしても政府の方でも、われわれと一つの認識の統一をしておく必要があるという問題があります。それは、この原子力について従来われわれがいつも問題にしております安全性という問題です。安全性の問題は、私の意見では、原子力に関する限り安全性と言えば放射能についての安全性ですから、発電炉だけで安全性は確保されているものじゃない。発電炉、それからそこで出た使用済みの燃料を処理する再処理工場、それからそれらのものから出る廃棄物の管理、処理の問題、こういうもの全体を通じて安全性が地域住民に保障されるかどうか、こういうことでなければ安全性というものの観念の統一ができない、こういうふうに私は思っておるのです。しかし、ややもすると再処理の問題や廃棄物処理の問題を抜きにして、炉だけで安全性の問題を論議する、こういうようなことが行われておる。これは間違いだと思う。この点についてひとつ長官の意見を聞いておきたい。
  182. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 原子力の平和利用に関しまして安全性を考える場合、お説のように、原子炉自体の安全性の問題と、原子力に特有であります燃料サイクルの安全性と、両方を慎重に考慮しなければいかぬというふうに考えております。ただ、質問の事前にこういうお答えをするのはいかがかと思われますけれども、燃料サイクルの面の安全が即原子炉そのものの安全と混淆されるということは大変おかしなことでございますので、原子炉の安全という範疇と、燃料サイクルの面における再処理なりあるいは放射性廃棄物の処理なりの範疇と、一応分けて考えていくべきではないかというふうに考慮しております。
  183. 石野久男

    ○石野委員 いま大臣がことさらにそれを断られたという意味は、原子炉についての安全の問題は再処理などの燃料サイクルの問題とは違うのだということの意味は、発生したところの使用済み燃料というものを日本では処理しないということを前提としてそういうふうにお話しなんですか。
  184. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 燃料サイクルの安全性の問題でいま問題になっておりますのは、主として再処理設備あるいは放射性廃棄物の処理、そういう問題が大変問題になっておるわけで、それは個々にそれぞれ対策を立て、処理をしております。まだ最終的な結論のつかぬものもございますけれども、それはそれなりに大衆に被害を加えぬように保存、温存しつつこれを保護しているわけでございます。  ただ私、いろいろ地方に行ってみますと、放射性廃棄物の処理ができないから原子力発電の設置は反対であるというふうにすぐ結びつけて議論している人も大変多うございまして、これは大変私どもも説明にむずかしいんでございますが、いま申しましたように、やはり発電用原子炉そのものの安全性と、それから出ましたものの処理あるいは投棄、そういうものの安全をどう確保するかという問題とは、一応分けて考えていくべきじゃないかという気持ちであります。
  185. 石野久男

    ○石野委員 処理の仕方は別ですからそれは別でしょうけれども、原子力についての安全性という観念からすれば、炉の出した放射能は東の方へ向いてきた、それから再処理工場で出た放射能は西の方へ向いていったというものじゃない。それはやはり全部その地域へ入りますから、地域住民からすればやはりこれは双方とも一つにひっくるめて、しかも原子力を代替燃料として皆さんが位置づけるゆえんのものは、プルトニウムならプルトニウムができると、それが半永久的に燃料になり得るという、その過程を含んでおるわけです。だから炉だけではだめなんですよ、再処理をしなければ。再処理をしなければ、これを代替燃料として位置づける理由はないですから。そういうことを片方では言っていながら、片方では安全そのものでは別個だという、その理屈は成り立ちませんよ。これは間違っておりますよ。
  186. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 それは間違っているんじゃなくて、同地域で原子力発電所があり、あるいは再処理工場もあり、あるいはその周辺で廃棄物を処理したということになった場合にはお説のようになります。しかし、そうじゃなくて、私の言うのは、物の考え方としては一応分けて考えるべきだ。たとえば、ある地区で発電だけやった、残ったものはほかの地区へ持っていくという場合にはお説のようにはなりません。
  187. 石野久男

    ○石野委員 炉自体だけで言う場合と、再処理なら再処理工場だけ一つ一つでやる場合と、それをグローバルに考える場合との物の考え方を別個にしたのでは原子力の行政は成り立たないから私は言うのです。  もう一つ意見を聞いておきたいことは、原子力の問題で常に試行錯誤という言葉が出てきます。これは産業として非常に新しいから、当然試行錯誤しかるべきだということが常に言われるのです。しかし、この試行錯誤という言葉は、文明の発達する過程の中では常にわれわれがそれを抱え込んできた部面でございますから、それはそれなりでよろしゅうございます。しかし、原子力における試行錯誤というものはどういうところで使われるべきかということについての意思統一だけはしておかなければいかぬ、認識の統一をしておかなければいかぬ。原子力における試行錯誤というものは、実験研究の段階における試行錯誤は何も否定する理由はないと私は思うのです。しかし、一応商業炉として出ていって、それが試行錯誤を許されるということになると非常に危険だ。ここのところをしっかりと押さえないと私はいけないと思います。  よく大臣あるいはまた政府は言うのですが、現在の原子力行政は、とにかく何か事故があればモニターして、それを事前に防ぐから、こういうことを常に言われる。そういうモニターするということを前提として試行錯誤というものをどこへでも使うということになると、これは非常に危険なんで、この試行錯誤という言葉は、やはり原子力の実験研究という段階では使うけれども、商業炉に及んだときにこの試行錯誤ということは慎むべきであるというふうに私は考えております。この点についてどのようにお考えですか。
  188. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 試行錯誤という一般的な用語でやられますと、これは大変どうも困るのでありまして、わけがわからなくなるのであります。そうでなくて、基礎的な実験はやります。そしてだんだん実用に向けていってもよろしいという場合には、まず実験炉をつくります。そして発電その他であれば、原型炉でさらに念を入れまして、原型炉が済んだ過程でいよいよ実用炉となります。実用炉の過程になった場合におきましては、安全に関しましてはもうこれ以上詰められぬほど十分設備その他で実験もし、理論的に検討を進めて、そして何重にも安全装置をつくってやるわけでございますから、それは試行錯誤という名前には該当しないと私は思っております。
  189. 石野久男

    ○石野委員 その点ははっきりとひとつ思想統一をしておきませんと、これからいろいろの問題が起きたときにどうも困ってしまいますから、よく……。わかりました。  そこで、原子力問題について総理にお聞きしますが、原子力の平和利用というのは原子力基本法でもうたっておりますことですが、安全性の確保というのは、もう三原則の前提にあるというふうな観念の統一をしておかなければいけないと思います。この点は御異議でございませんですね。
  190. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 将来新しいエネルギーが開発される時期はあるでしょう。しかし、石油の次の時代、原子力発電の時代というものは、相当な期間日本のエネルギーの中においてウエートを占めていく。世界各国とも、ヨーロッパなんかでも原子炉の建設というものは非常に大々的にやっておりますし、アメリカもそうですが、日本の場合は地理的な条件も欧米とは違いますから、しかもまた、これは日本自身がみずから開発したというよりも、原子力は輸入に仰いでおる場合が多いわけですから、どうしてもこの安全性の確保、これは国民も信頼されるような安全性の確保というものがないと、なかなか原子力発電所などの立地も進んでまいりませんから、石野君の言われるとおり、この大前提は安全性の確保であるということは同意見でございます。
  191. 石野久男

    ○石野委員 六十年度四千九百万キロワットの計画に改定して、六千万キロワットは二年おくれでやるのだ、こういう方針のようですが、達成されるという可能性の見通しはお持ちでございますか。
  192. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この八月にそういう方向に大体考え方を修正したわけでありますが、これを実現するためにはやはりあらゆる努力を集中的に払っていかなければ不可能だと思います。先ほど来御指摘の安全性の確保の問題、それからそれに対する地域の住民の理解と協力、それから、御指摘になりました数々の諸問題、相当努力をする必要があろうかと思われますが、やはりエネルギー全体に占めます原子力発電の大変重要であるということにかんがみまして、達成をしたい、こういう方針で進んでおります。
  193. 石野久男

    ○石野委員 現在の炉の稼働の状況は、お手元に配りました資料、これは通産省の資料ですからおわかりのように必ずしもよろしくない。特に美浜一号炉のごときは、昨年度は七・四%ですが、本年に入りましてもほとんどまだ動かないというような実情ですね。こういう情勢の中でこれらの事故というものは、率直に申しまして、扱う人たちの作業上の不慣れからきているとか、経験不足からきているというようなものなのであろうかどうか、その点について、ひとつ科学技術庁の長官にお聞きします。
  194. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 ただいま九基、発電炉ありますけれども、四基は稼働しておりまして、五基は御承知のように休んでおります。しかし、主として定期検査のために休んでいるもの、あるいは定期検査等でいろいろ設備に不備がありまして、それを補修しなければならぬもの等ございます。  いまの御指摘は、第三者に対する被害がどうとかという問題ではなくて、原子炉のそういう故障を修理しているわけでございますが、その故障がどういう原因で起きるのかという御質問かと存じます。これは主として材料とかあるいは水あるいは冷却装置と申しますか、水等に対する配慮とか、あるいは溶接部門における欠点とかいったようなことで主として起こるものでありまして、従業員の不始末、不注意等から起きているというふうには考えておりません。
  195. 石野久男

    ○石野委員 これは昨日の原子力の日にちなんで新聞社がいろいろな解説をしておる中に、やはり事故は経験不足によるものだなどということを書いている解説がありますから、こういう間違った解説がされると住民は非常に迷うということもありまするので、私はあえて聞いたわけです。原子炉の問題はいろいろの事故を起こして、また研究所の方では、炉の冷却管が折れたということでJRR3ではとまりましたですね。だから、いろいろと問題が多くて、まだ研究自体に未熟なものがあって、まだまだ勉強しなくちゃならぬものはたくさんある。そういうものを踏んまえながら、やはり安全性に注意すべきだ、こういうように思うのです。  そこで、もう再処理工場は建設が終わり、いま稼働といいますか実験段階で、ウランテスト段階まで入ってきております。先般事業団でこのウランテストをしている間、被曝をしておりますが、その被曝しているのはペレットを扱ったときに、そこへ液が親指と人さし指についた。その人さし指についた液を、実はウランの液だというふうに考えて、作業者は水でさあっと洗ってまた次の作業をして、約一時間後に出てこようとしたところが、フットモニターのところで非常に大きなレントゲンの反応があったということで問題になったわけです。  この間の事情について、どういうふうにその後問題の処理をなさっておるか、そしてまた、このペレットについてやはり分析をすべきだということで分析をしたようでございますが、分析結果はどういうふうになっているのか、ここでお聞かせ願いたい。
  196. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 原子力局長にお答えさしたいと思います。
  197. 生田豊朗

    ○生田政府委員 ただいまの先生御指摘の問題でございますけれども、問題が起こりまして直後に動燃事業団から報告がございましたので、とりあえずその原因を調査さした次第でございます。  その調査の結果でございますけれども、かねがね労働組合から指摘がございました要修理個所に該当しているものではございませんし、この取り扱い方につきましても、マニュアルあるいは周知徹底等におきまして一応の措置をしているということでございました。なお、この軽微な汚染をいたしました本人の作業員でございますけれども、それから事情を聴取したわけでございます。  次に御質問のこの調査でございますが、使用いたしましたウランにつきまして分析をいたしました。その分析の結果でございますけれども、特に問題の放射能を帯びました生成物は分析の結果発見されていないことが確認されております。
  198. 石野久男

    ○石野委員 分析の結果、どういうふうないわゆる核種が出てきているかということをお聞きしたいのです。
  199. 生田豊朗

    ○生田政府委員 分析いたしました結果、まず劣化ウランでございますけれども、質量分析をいたしました結果、劣化ウランにつきましてはウラン二三四、ウラン二三五、ウラン二三六、ウラン二三八、これがそれぞれ出ております。大部分はウラン二三六が〇・〇〇二%でございます。天然ウラにつきましても同様でございまして、やはり大部分がウラン二三八でございます。
  200. 石野久男

    ○石野委員 ただそういうものが出たんだが、量の問題で問題ありませんかということを聞きたいのです。ウラン二三六はどのくらい出たんですか。
  201. 生田豊朗

    ○生田政府委員 劣化ウランにつきましては、ウラン二三六が〇・〇〇二%でございます。天然ウランにつきましては〇・〇〇一%以下、測定の限界以下でございますので、正確にはわかりかねますが、非常に微量でございます。
  202. 石野久男

    ○石野委員 ウラン二三六については、天然ウランの中で出るものとして想定されるのは、大体やはり〇・〇〇一ぐらいというようなところであって、〇・〇〇二%というのは少し問題があるということで組合としては論議をしておるが、それ御承知ですか。
  203. 生田豊朗

    ○生田政府委員 承知いたしております。
  204. 石野久男

    ○石野委員 これは使用済み燃料また再処理等をなにすることから出てくる疑いはないのだろうか、こういうやはり心配があるのですが、そういう問題についてどのようにお考えになっておりますか。
  205. 生田豊朗

    ○生田政府委員 今回のウランテストでございますが、先生御承知のように、天然ウラン及び劣化ウランを使用することに相なっております。劣化ウランを使用いたしました場合、天然ウランと比べましてウラン二三六が若干多いわけでございます。ただ天然ウランにも御承知のように、天然ウランの自然核分裂によりまして新しい核種が多少ともできるわけでございますので、問題は、このウラン二三六がこの程度でございましても安全管理上の問題はない、かように考えております。
  206. 石野久男

    ○石野委員 この使用した材料でありますペレットについては、サンゴバンから受け入れたものと思いますが、違いありませんね。
  207. 生田豊朗

    ○生田政府委員 サンゴバンで加工したものだと承知いたしております。
  208. 石野久男

    ○石野委員 このサンゴバンから受け入れたときに、このペレットについての質量分析をしておりますか。
  209. 生田豊朗

    ○生田政府委員 受け入れました後で質量分析をいたしております。
  210. 石野久男

    ○石野委員 それはいつやっているのです。
  211. 生田豊朗

    ○生田政府委員 正確な日時はただいま記憶いたしておりませんが、比較的最近になっていたしました。
  212. 石野久男

    ○石野委員 比較的最近というのは、事故が起きてから分析したんですよ。きょう清成理事長おいででございましたね。これは理事長にお尋ねしますが、なぜこれを受け入れたときに質量分析をしなかったのですか。
  213. 清成迪

    ○清成参考人 お答えいたします。  われわれのところでは、いまの材料を注文しますときに、明確に劣化ウランということを指定しまして注文をしております。それで入ってきましたものには、それのいろいろな分析の結果の表がついておりますので、大体それを信頼をいたしますけれども、しかしながら、この核分裂生成物だけはどうしてもチェックしておかなければいかぬということでございまして、ガンマスペクトロメーターで検査いたしまして、そうして核分裂生成物の入っていないことを確かめるということでございまして、質量分析を最初にする必要はないというふうに理解してやったわけでございます。
  214. 石野久男

    ○石野委員 これは作業をする者からすれば、ということよりも、むしろ実際にこの種のものは、どんなところだって注文して受け入れたときにはそれの検査をする。その検査の仕方はいろいろあると思いますけれども、事こういうような問題を起こすような性質のものですから、当然やはり質量分析などということをやるべきでないのでしょうか。
  215. 清成迪

    ○清成参考人 われわれが必要と思う検査をやりまして、フィッションプロダクトが入っていないということを確認してありますので、質量分析を受け入れの際にやる必要はない、こういう見解でやったものでございます。
  216. 石野久男

    ○石野委員 今度分析をした結果として、ウラン二三四、五、六、そして八もあるわけですが、そういうようなものがいろいろ出てきている。劣化ウランだからということだけじゃなしに、やはりウラン燃料におけるところの二三八の場合は、孫核種というものが濃縮されるはずがないという観念を、皆一般の人は、作業者は持っているわけですね。しかし、こういうような種類のものが出てくると、どうも劣化ウランの中で、これがどういうような性格でどういうような筋道を通ってきたかということの疑義が出てまいりますと、現場で働いている者に一つの安心感というものが出てこない。だから、これはむしろ注文した品物が入ったときには、あらゆる角度から分析をして、そして働いておる者に対して安心感を与えるという態度をとっていくことが、これから非常に大事であると私は思います。やはり理事長はそういう形で今後の問題の処理に当たって処理すべきでないかというふうに私は思いますけれども、その点について理事長はどういうふうにお考えになりますか。
  217. 清成迪

    ○清成参考人 作業員が非常に不安を持つというようなお話でございますが、作業員には十分な教育もやっておりますので、ウランの系列でこういうものを扱いますと、必ずそれには微量のドーター核種というものがあることは、十分にこれはもう知らしてございます。そういうようなことで、これがいまのミキサセトラの工程中では多少の濃縮があるということは予見しておりましたが、これはわれわれは実際にどのくらいどういうふうになるかということをやってみてはっきりさせようということで、実際の操業にはああいうところの調査をする必要はないのですけれども、われわれは参考のためにぜひこれを知っておきたいということでやっておりました。その結果、相当濃縮されているということがわかったわけで、しかしながら、そのくらい濃縮されても十分に安全なだけの数値にはなってもおりますし、私は、まあ全員が不安を感ずるということは、あるいは新しいことをやるときにはやむを得ぬかもしれませんけれども、これはわれわれがあくまでいろいろ教育をしながら仕事を進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  218. 石野久男

    ○石野委員 そこで、ウランテストの過程で、労働組合の諸君が、作業者の教育について事業団に対してはやはり厳しく要請をしているわけです。いま、理事長が教育を十分しているからと言うのですが、教育が十分に行き渡ってないのですよ。率直に言って、この汚染をした人の話を聞いてみますと、液がついたんだ、ついたんだけれども、これはウランの液だと思ったから水で洗えばすぐなくなってしまうという、こういう観念を持っておったのです。そうしてまた、皆さんのこのマニュアルの中で見ますると、ウランのことは書いてあるけれども、ウランのほかの核種のことはここには全然書いてない。だから、作業する人たちはウラン以外のことは全然考えていませんから、トリウムがどうなったとかなんとかいうようなことは全然頭にないわけですよ。したがって、やはりいままで人形峠以来ずっとやってきた皆さんの経験からすると、ウランであったならば水でさあっと洗ってしまえばすぐに落ちてしまう、そういう考え方があるからそういうつもりで、次の一時間作業をしたんだ。一時間作業した後、出てくるときのカウンターは、レントゲン二百何十から千幾らまで出てきたわけでしょう。その後二時間、一生懸命に今度はいろいろな中性洗剤なんかで洗っても、なおかつ三百から二百というところまで残っておる。こういうことになりますと、これは教育が徹底してないわけですよ。  私は、この事実の中から、やはり教育が徹底しているという理事長の考え方は間違っていると思うのです。労働組合は、もう少し教育を徹底させてくれと言っていることについて、教育が徹底しているというその考え方の食い違いが事故を起こす大きなもとになってきますが、その点について理事長は反省はございませんか。
  219. 清成迪

    ○清成参考人 教育訓練の問題でございますけれども、この教育訓練が必要なことは、これはもう先生おっしゃるとおりでございます。そういうようなことでございますが……(石野委員「どうか意見だけ、簡単でいいんです」と呼ぶ)一応申し上げませんとわかりませんので……。  われわれは、いまおっしゃいましたこの作業者に対しましては、高校を卒業しました作業員に対しまして二百数十時間の座学と実習をやっております。その座学ではいまのウラン系列のことは全部教えてございますので、ドーター核種があるというようなことは、これはもう十分承知しておるところでございます。  それから、ひとつこれは先生に——私は、これは組合にもそういうことを申すのですけれども、要するに、この運転員と申しますか作業員は、その担当の作業とそれに関連のある知識というものが絶対に必要なのでございますが、設計者とかあるいは研究者とかあるいは管理者とかいうようなものに要求されるような広範な知識というものは、これはもちろんあれば大変結構なのでございますけれども、いま直ちに作業者に必要ということではございません。したがって、われわれがいままで実施しましたところの教育訓練というようなものをやってあれば、ウランテストに入るというのにはこれは十分な教育でございまして、その点が非常に食い違っている認識だというふうに私には思われる。それで、そういうふうにいたしまして、オン・ザ・ジョブでだんだんと経験を重ねて、そうしてそのほかとの関連を知るというようなことはこれは非常に大事なことでございまして、全体の部分に対して自分の作業がこういう位置づけにあるというようなことを認識することは生きがいを感ずるとともに、非常に張りが出てくるということでございますからして、こんなことはちゃんと大切でございますけれども、それは一つ一つトレーニングを重ねていってやれるということで、初めからこれを望むということは私は無理であろうというふうに考えております。
  220. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 原子炉の運転に従事する従業員につきましては、労働安全衛生の観点から、労働省におきまして労働安全衛生法に基づいて所要の監督、指導を十分行っておりますが、なお各官庁と連絡をとりまして十二分の体制をとってまいりたい、こう思っております。
  221. 石野久男

    ○石野委員 なお一つだけお尋ねしますが、理事長は、経験を積み重ねて進歩するんだということですけれども、しかし現場では、二百何十時間のいわゆる勉強をさせておるんだといいましても、そこでは徹底したものにはなっていないし、またマニュアルの中では、そういうウランのほかにトリウムだとかなんかいろいろなものについての警戒心が行き届いていない。だから、当然のこととして手袋などは使わさなかった。この事故に遭って初めて手袋を使わすというような結果が出ておるのですから、自分たちのやはりやっていることで足りなかったものについては率直に認め、また、組合の側が要求しておる訓練期間、もう少し勉強させろ、もう少し訓練させなさいということについてはもう少し徹底させませんと、事故が次から次へ起きるだろうと思います。  このほかに、後でくつの裏にやはり被曝をしているという事故が出ておるわけです。なぜ全然漏れてないものがくつの裏にそういう核物質がついてくるんだと、こういうような問題も出てくるわけでございますから、この点はひとつ十分やはり配慮してもらわないと困る。そういうことから、私は最後に、これは総理とそれから通産大臣とに聞いておきますけれども、やなり安全性についての物の考え方をあんまり安易に考えると事故が出てくるのですから、現場の指導は念には念を入れる安全教育というものをさせなきゃいかぬということが一つ。  それからもう一つは、先ほどから言いましたように、再処理工場とかあるいは使用済み燃料等廃棄物の処理の問題について、イギリスの方に、やはり原子炉廃棄物の処理を、一九八〇年代の半ば以後十年間、四千トンの廃棄物を処理するという話し合いをしておるということが新聞で出ておりますが、これは事実なのかどうか、この点、通産大臣、ひとつ後で御答弁いただきたいと思います。  総理にひとつ安全の問題で……。
  222. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 石野君の言われますように、安全の問題については念には念を入れて考えるべきだということは全く私も同感でございます。
  223. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 お話しの件、英国と折衝中でございます。
  224. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて石野君の質疑は終了いたしました。  これより楢崎君の留保分の質疑に入ります。  この際申し上げます。去る二十三日に楢崎君から御発言がありました資料要求の件につきましては、ただいま先方へ照会中であります。本件に関する楢崎君の質疑の機会は後日に約束いたしますので、残余の質疑に入っていただきたいと思います。楢崎弥之助君。
  225. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 かしこまりました。それまで待つことにいたします。  ロッキード社の贈賄事件の問題に関して、外務省にお願いをしておった、アメリカ上院銀行委員会あるいはまた上院外交委員会多国籍企業小委員会の問題に関する資料等々の提出はどのようになっておりましょうか。
  226. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 楢崎委員から御要望のありました、八月二十五日の米国上院銀行委員会の議事録及び九月十二日の上院外交委員会の多国籍企業小委員会の議事録に関しましては、早速ワシントンの大使館を通じまして問い合わせましたが、いずれもまだ作成、刊行に至っていないということでございまして、それが刊行されましたら、できるだけ速やかに入手して御提示申し上げたいと存じます。
  227. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではいまの問題も含めて、委員長からお許しの出た時間にそれを問題にしたいと思います。  それでは次に、田中金脈の問題について若干触れてみたいと思うわけであります。  御案内のとおり刑法的に問題になったのは、例の新星企業の宅建業法違反あるいは特別背任罪の起訴の問題ですが、それ以外に三木内閣としては、この田中金脈問題について政府として解明のためにやるべきものはすべてやった、済ましたという判断でございましょうか。
  228. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま問題になっております信濃川河川敷の問題、この問題については、国民の納得のいくような解決をしなければならぬものだと考えております。
  229. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私どもとしては、依然として疑惑がまだ残っておるわけであります。たとえばいままで衆参両院で、国政調査権に基づいて私どもがいろいろとお尋ねをしても、いわゆる守秘義務というものを盾にしてなかなか内容が明らかにならなかった。あるいはまた証人喚問の問題も、委員会で拒否をされて実現をしない。そしてとうとう参議院の決算委員会では、結局は六月の六日に政府に対する警告決議を採択をしただけに終わった。また関連企業に対するいわゆる脱税がありはしないかという問題も、国税庁が見直しをやりましたが、残念ながら故意の脱税の事実はなかったということで、追徴金なりあるいは申告漏れ——しかし、その追徴額の内容についてもあるいは申告漏れの内容についても、ついに公表されないままである。  一方、先ほど挙げました土地転がしの関係会社の分については、東京地検の特捜部が六月二十三日にいわゆる新星企業の宅建業法違反の問題について現社長あるいは前社長を起訴した。前社長については特別背任がついておる。果たしてそういう違法な手段によって一体その利益はどこに行ったのかということも、まだ全然明らかにされないままであります。たとえば、この新星企業前社長の山田泰司という人ですか、この方の特別背任にしても、土地の方は、室町産業の社長でありました入内島さんですか、この東洋ゴーセーの大株主であった入内島さんはなあなあの関係でございますから、そこに土地を売って、そしてこれは二千余万円で売ったと言われております。これを新星企業が買って、そして今度は何か登記に錯誤があったということで、また東洋ゴーセーに返した。そしてそれで結局五千六百万円ほどの損害を新星企業に与えたということで特別背任になっておる。しかし実際には、五千六百万円の損害を新星企業に与えたかもしれないが、そういう登記のインチキをやって東洋ゴーセーの株価を高めて、そしてその全株を売りましたね。これは四十八年三月の上旬と言われておる。どこが買ったかというと、埼栄開発ですね。これは有名な谷古宇グループの一社である。その全株を売ったためにもうけた金が二億数千万円と言われておる。一体その金はどこに行ったのかということも明らかでない。二十九日に公判がありますけれども、恐らく明らかにならぬでしょう。しかもこの埼栄開発というのは、先ほど申し上げたとおり谷古宇グループ、これは私は予算委員会で取り上げました。そこで、結局いま谷古宇甚三郎さんがその社長になられておる。そして四十八年三月の段階の、たとえば谷古宇産業の借入金を見てみると、一番膨大な借り入れをした時期になっておりますね。私、ここに谷古宇産業の決算報告書を持っておるのですけれども、たとえば四十八年三月三十一日の段階で銀行からの借入金が百七十五億、あるいは四十八年九月三十日の段階で二百六億、そしてその銀行は埼玉銀行なりあるいは日本信託銀行、こういうからくりになっておるわけです。ところが、今度の特別背任の起訴によってそれらが明らかになるのかどうか、これは見てみないとわかりませんが、恐らくならないでしょう。したがって、疑惑は依然として残っておるということを私は言いたいわけであります。  最後に、総理がおっしゃいました例の信濃川の河川敷の問題でございます。これは私は行管と建設省にお伺いをしたいのですけれども、一体行管は今度の監察目的を果たせないほどの文書の紛失があったという認識でございましょうか、どうでしょうか。
  230. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 さようでございます。
  231. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 建設大臣はどのように判断をされておりますか、行管の監察目的は、残っておる書類でも十分解明できるという判断でございましょうか。
  232. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 お答えいたします。  行管の方は、原議の保存が十分でないので、その内容の確認ができない状態であると指摘をされました。早速それによって私ども実は調査をいたしたのでありますが、調査の結果は一部決裁の伺い部分の、役所ではかがみと言っています、表紙ですが、それがなくなっておりまして、それについておる調書も図面も計画書も全部あるわけであります。しかも、伺い書でありますから、伺いを受けた大臣のそれに対する承認書もちゃんと保存をされておるわけでありまして、そういう意味から工事の計画の内容を確認をする上においては格別支障はない、こういうように考えまして、その趣旨を私ども、行管の方へ御説明申し上げているわけであります。
  233. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 お聞きのとおり、行管の方は紛失した部分が監察目的を果たすのに欠くことのできないものであったとおっしゃっているわけですね。建設大臣の方は、建設省としていやそういうことはないのだ、残っている部分で十分いいんだ。お聞きのとおりですよ。一体どうなっておるのでしょうかね。これはこういうことを言っちゃ失礼ですけれども、行管か建設省かどちらかがごまかしと言うと悪いけれども、何かおかしいんでないか。それとも陰ではいわゆるなあなあでやっているんではないかという疑惑がやはりいまのお話を聞いておって残るんじゃないでしょうか。その辺は総理大臣として、二つの省の意見があんなふうに違っておるのですが、総理としてはどう判断なさいましょうか。
  234. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 この問題は、行政管理庁といたしまして率直に申し上げてどうかと思いますが、検討する材料がないといった方が早口的に言い得るんじゃないか、かように思います。決裁伺いの部分が保存されておらないし、現存する文書が厳密な意味で原議の一部であったかどうか確認ができない状態になっております。したがいまして、これらの問題等に対しましていかにすべきかどうかというようなことでいろいろ苦慮いたしましたが、昭和四十五年度に地方建設局の文書管理規程を定め、地方建設局の文書管理の適正化を図っているが、さらに今回の監察の結果に基づき文書管理の適正化を一層早めてつくっていくようにしたい、こういうふうに言うておりますので、万やむを得ない、かように思って、私たちは率直に言いまして、いまの御質問等に対しまして満足のいくような答弁ができなかったというふうなことだけを申し上げておきたいと思います。
  235. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さらにいま大臣が重ねて、解明するには文書がなかったとおっしゃっているわけですね。建設大臣の方は、いや、それは一番最初の表紙ですね、決裁をしたかがみというのですか、そこだけがないのであって、ほかのはそろっておるのだと言っておる。内閣首班として総理は、双方の言い分が違っておるのですが、これからどう御指導なさいますつもりでしょうか。——いや、もう時間が余りないですから、大体のところはわかっているのですよ、総理の御見解をちょっと聞いておきたいのですよ。
  236. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 行管としては、いろいろ監察をするに対して対象になる文書がなかったということで、内容かとうという——それが十分な文書がなかったということで目的は達成できなかったということでございまして、今後文書に対しては適正な保存の処置をとらなければならぬということを注意をしたということで、事実関係を述べておるわけで、両方の意見が違っておるというわけではないと思います。
  237. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、いまお聞きになったでしょう。建設大臣は、一番上の表紙の決裁したかがみの部分がないだけだ、後はそろっていると言っているのです。だから解明できるとおっしゃっているのじゃないですか。そうでしょう、うんとおっしゃっているから。
  238. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 一部書類が紛失したことは、これはもう私ども管理の不行き届きでありまして、これは率直に認めて、今後そういうことのないように十分注意をしてまいりたいと思っております。ただ、先ほど申し上げましたように、建設大臣に対する伺い書でありまして、伺い書は何々の件についてという表紙がついて、その下に説明書がついて図面がついて、そして持ってくるわけです。その一番最初の伺い書が実はなくなっておるわけでありまして、伺いを受けた建設大臣はそれに対する承認をしたというものはぴしっとあるわけでありますから、調査する上においては不便では決してない。しかもそのことは故意でやったものでも全くない、そういうふうに私どもは思っておりますから、これは現物を見ていただいても結構でございます。さように思っておりますから、どうぞよろしく。
  239. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の耳が悪いのかどうか知りませんが、ますます明確になったんじゃないでしょうか。ちっとも調査には差し支えないはずだと言っているのですよ。この辺は、内閣の首班として三木総理は指導をしてもらわないと、これは問題はずっと残ると私は思うのですね。  そこで、仮谷建設大臣にもう一つお伺いしておきますが、一番上のいわゆるかがみがない。当時の関係者がずっと判こを押しておりますね。その人たちは、そのかがみがなくても、どういう人たちである、いまどこいらにおられるというようなことはすべてわかりますか。
  240. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 それはいつでもわかります。
  241. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もしそうであれば、行管としてはその人たちを呼んで調べればいいじゃないですか、かがみがなくてもその人たちがはっきりしておるというのですから。どうもその辺がわからないのですね。したがって私は行管長官にお願いしたいのですが、これはやはり追加監察という形ででも、その関係者がわかっておる、判を押した人たちはわかっておる、どこにおられるかもわかっておるというのですから、その人たちを呼んで調べたらどうですか。事情を聞いたらどうですか、監察目的に合うように。どうでしょうか。
  242. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 ただいまのお話、ごもっともだと思いますが、私の方といたしまして呼び出して聞くというふうな権限は、実は率直に言ってないと申し上げた方がよかろうと思います。そしてまた、その方々を呼び出すにいたしましても、建設省当局の方で調べた結果においての答弁であるというふうに聞いておりますので、それでは仕方ない、かような立場をとって現在まで進んでおるような現況であります。
  243. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ、やはり私は、総理責任においてこの問題は処理しなくちゃいけないと思うのですね、関係者わかっておるのですから。これがこのままで過ごしていいということにならないと思うのです。皆さんお聞きになってもそうだと思います。大変疑問が残る。  それで、いずれにしても三十八年の段階で現地の長岡の北陸の地建の方としては、三十八年に信濃川上流の総体計画をやって、そして霞堤が含まれており、これを本省に建議しておる。本省に建議すれば、あの地区には国有地があるのです。国有地の所管は大蔵大臣、当時の大蔵大臣は田中角榮氏であります。だから知らないはずはないのです。相談は当然、国有地が含まれておりますから……。そうすると、その室町産業が三十九年から四十年、四十一年にかけて土地の買収を始めた。当然そこにおかしいじゃないか、事情を知っておったんじゃないかという疑惑は、依然として私は残ります。これはずっと今後参議院段階にかけて——いま私が短時間質問しただけでもあれはどの矛盾があり、疑惑が出ておる。あのかがみの紛失は、かがみというものがそれほど重大な文書であれば、当然刑法の二百五十八条、公文書毀棄罪の問題が出てくるし、証拠隠滅の問題が出てくる。だから、かがみ紛失の意味というものは非常に重大です。これがなかったためにいわゆる行政監察目的が果たされなかったというそれほどの重要な文書であれば、この紛失については相当責任が問われなくちゃいけない。もし故意であれば当然証拠隠滅なり公文書毀棄罪が出てくる。たとえ過失であっても相当責任を免れない。私はこのように思うわけですが、これは先ほど申し上げたとおり、問題を残しながら参議院段階でもその解明が同僚議員からなされると思います。  そこで、そういう疑問点はこれから解明するとして、つまり、疑惑は解消されていない、それはそのままおきましてわれわれは追及をするとして、当面この信濃川河川敷の問題について私どもは一つ提案をしたいのです。  まず、河川敷の全部を長岡市に有償提供さしてはどうか。ただとは言いません。有償で提供させる。二番目に、ただしその提供の価格については、所有者の室町産業さんが不当な利益を得ない程度の、原価に若干のだれが見ても納得し得るくらいの価格をプラスアルファをすることはやむを得ないであろう。こういうことが実現をするまでは、いわゆる廃川敷の処分は見合わせるべきである、ストップすべきである。  これを、総理も納得のいく解決とおっしゃっていますから、お約束できましょうか。
  244. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 ただいま行管の長官に御質問のありましたことに関連いたしまして、若干補足させていただきたいと存じます。  まず第一点でございますが、行管の監察は、霞堤が締め切られるに至りましたその経過、理由等について主として調査いたしたわけでございます。その部分につきましては、まず第一点といたしまして、表書き、かがみと言われます原議でございます。一枚紙であれば決裁伺いでございますが、それがなかったということで、実際現在残っております書類が厳密な意味でもとのものであったかどうかという点を一つ文書管理の問題として指摘いたしたわけでございます。  それから、本当の目的でありましたその検討をされたかどうかという点につきましては、四十三年の締め切りが決定いたしました段階のものは、理由が若干述べられている資料がございますが、三十八年度以降どのような経過でこの霞堤が連続堤になったかという点を見るような資料はつくられていなかったということが後ほどにわかったわけでございます。したがいまして、検討をいたしたくても、その部分の資料は全くないわけでございます。  それから国有地の問題につきましては、現在も河川敷は国有地でございますので、これまた特別の建物が建っているわけでもございませんので、河川管理上の問題は現在ない、こういうふうに見ております。
  245. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 答弁を承れば承るほど、私が先ほど言った疑惑は拡大していくわけですね。それで、あなたがそういうことを言うからもうちょっと言いますと、つまり、四十一年の十月二十日ですか、当時の橋本建設大臣が当委員会で霞堤を本堤に変えることは絶対にないと言っているのです。それがその後変わってきた。しかもかがみが紛失しておる。だから、橋本建設大臣が答弁されたときから本堤がつくられるまでにどう事情が変わってきたかということは、四十二年、四十三年、四十四年、この二、三年のものが必要なんです。ところが、どうしたわけか、その四十二年、四十三年、四十四年のものがないのでしょう。非常にそういう点も疑惑に満ちているのです。だから、それはこれからも先ほど申し上げたとおり解明を続けるとして、先ほどわが党として提案した本問題、信濃川河川敷の現実的な処理の点については、どのようなお考え総理お持ちでしょうか。
  246. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 楢崎君の御質問の中に言われた趣旨は理由のあることだと私も思います。したがって、そういうことが実現をいたしますように、建設大臣に私からもよく申すことにいたします。
  247. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは私どもの提案をいたしております措置が明確になるまでは廃川敷処分はしない、そういう措置を建設大臣にさせるという御答弁と承りました。
  248. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 時間をとって済みませんけれども、総理にまだ正式に報告してございませんので、ちょっと経過を申し上げさせていただきます。  廃川敷処分というのは処分後の土地の利用とは無関係に行えるのがたてまえであります、法定上は。ただ、国民の疑惑を受けないように適正に処置したいという総理の御方針に従いまして、私どもはそういう意味の行政指導を積極的に実はやってきたわけであります。  そこで、その結果、長岡市長からいま報告があって申しますことは、第一が、今後における土地の利用は長岡市発展の見地から市民全体の利益を優先して行うこと、それから第二が、この場合長岡市が必要とする用地は提供すること、第三が、なお廃川敷処分後の土地利用計画の決定は小林長岡市長に一任することということが一応室町産業との方で合意に達しておるようであります。したがいまして、長岡市の必要とする土地は無償か有償かはまだ決まっておりませんけれども、いわゆる私どもは国民の納得する線で必ず実現するものと確信をいたしておるわけでありまして、そういうふうな見通しが明確に立つことによって、私どもは総理にも十分報告もし、その指示を受けて遺憾なきを期していきたい、こういう考え方でおるわけでありますから、一応御報告申し上げておきます。
  249. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結構でしょう。総理のいわゆる指導力をこの点でも国民の納得いく解決の方法にひとつ発揮していただきたいと、このように思います。  それでは防衛問題に移りますが、防衛庁長官にお伺いしますけれども、次期防ですね、次期防衛力整備計画案作成の長官指示はいつ出されるのか、それが一つ。次期防の期間はどのくらい、五年なら五年なのかどうか、名称はどうなるのか、そしてこの次期防作成の前提となる防衛構想についてどのようなお考えをお持ちであるか、その指示される防衛構想の骨格なりあるいは骨子をひとつ明らかにしていただきたい。
  250. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ポスト四次防の長官指示、第二次でございますが、これは近く出したいと思っております。今週中にも出したいというふうに考えております。  私は、やはりこういうポスト四次防構想というものは、国民のコンセンサスを得ることが非常に大事だと考えますので、従来のように防衛庁だけで考えるということでなくて、一応長官が指示をいたしまして、来年の三月ごろをめどにいたしまして成案を得る。そのあたりから国防会議懇談会等にも諮りまして、広い視野で外交、経済あるいは民生、そういうような面から考えていただく。それでまた最終的に検討いたし、またもう一度正式の国防会議に諮った上でこれを発表をいたしたいというふうに考えております。それが手続でございます。  それから名称でございますが、これはまだ決まっておりません。第五次防にするか、あるいはどういうふうに長期計画を考えるか、名称も決まっておりません。  それから内容でございますが、内容につきましては、基本的には昭和三十二年の「国力国情に応じ」云々というあの基本方針のもとにおいて行いたいと思っておりまして、根本的な変革はございません。  それから基盤的防衛力というものの充実というふうに考えておるわけでございまして、最近の国際情勢、この基調はあくまでも力の均衡ではございますけれども、緊張緩和の状況にある、この五年間は恐らくそうであるだろうという前提であり、いま一つは経済が安定的経済へ入っていくという一つの変わり目でございます。その中においてどうすべきかということでございまして、その意味合いにおきまして、かなりの経済的な影響を受けるということを前提といたします。  それからいま一つは、現在行われております四次防計画を反省をいたしてみますると、やはり十分だと言い切れない面もあろうかと思います。そういうようなことで、たとえば正面装備というものに重点が置かれてきた、これもまたやむを得ないことであったと思いますけれども、抗たん性であるとかあるいは後方支援の補給面であるとか、そういったものをどうするかという、そういった量から質、簡単な言葉で申しますとそういうようなこと、小規模ではあるけれども、質の高い、反撃力のあるものにしたい、充実をしたいというのが私の実は考えでございます。
  251. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結局こういうことですか。いまおっしゃっているのを要約すると、国際情勢は大勢としてデタントの方向に向かっておる、次に日米安保体制は安定をしておる、これが今後とも抑止力として有効に機能する、わが国の防衛力というものはこの日米安保体制の間隙を埋める、そういうことを目標とする、大体そういうふうに要約してよろしゅうございますか。
  252. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 大体先生おっしゃるとおりに考えております。
  253. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこでお伺いしますが、大体来年度は、御案内のとおり四次防の最終年度になるわけであります。来年度の防衛費について、四次防の最終年度ですが、何も新しいことは全然やらないと仮定して、自然増、当然増と申しますか、当然増だけで大体本年度より何%ぐらいふえる見込みでございますか、長官。
  254. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  概算要求は、閣議了解の線に沿いまして一五%の枠で御要求申し上げておるわけでございますが、これには先般の人事院勧告に伴いますベースアップが含まれていないわけでございます。(楢崎委員「当然増」と呼ぶ)それで、当然増と申しますと、人件費の増加額それから国庫債務負担行為、継続費に基づきます装備品等の歳出がございますが、最終的にどういう数字になりますか、厳密な計算はまだいたしておりませんが、一二、三%を超えるような水準になるだろうと思っております。
  255. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 当然増一五%ですか。大体一四、五%だと思うのですが、その中でいまおっしゃいました国庫債務負担行為なりあるいは継続費等後年度負担分の占める比率はどのくらいですか、一五%と仮定して。
  256. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいま要求いたしております概算要求一五%が一兆五千二百六十三億円でございますが、そのうちでいわゆる歳出化、既定の国庫債務負担行為及び継続費に伴いまして義務的に歳出の必要を生ずるものが三千五十四億円、約二割を占めております。
  257. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま当予算委員会でもいろいろ論議したとおり、一般社会というのはこのスタグフレーションのもとで大変な困難な情勢にある。新規の民間設備投資は見合わせる、あるいは首切りなりレイオフなり、こういった失業や雇用問題が起こっておる。私は、防衛費だって決してタブーではない、聖域ではない、こういう経済情勢の影響を最も受けるものであろうと思うのですね。これは大蔵大臣の判断になりましょうけれども、もし先ほど言った当然増ぐらいしか認められないというような状態になったときには、防衛庁としては、たとえばいわゆる七四式戦車みたいなものはとても高くて、新規のものは買えない。あるいはもしやりくりするとしたら、当然、法律で決められた定員はともかくとして、予算定員に手をつけざるを得ない、そういう状態が来ると思われますが、防衛庁長官の見通しはどうでしょうか。
  258. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 来年度の予算につきましては、いま概算要求を出しておるわけでございます。しかしながら、いま経理局長が申しますように、人件費の占める割合というのはかなり高いわけでございますけれども、来年度の予算は別といたしまして、ポスト四次防につきましては、いろいろの工夫をしていかなければいけないのじゃないだろうかというふうに考えております。
  259. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その中に予算定員をいじる問題が出てくる見通しかということを聞いているのです。
  260. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その点につきましては、いま長官指示で出しまして、ポスト四次防をやるに当たりまして、組織あるいは各種機能あるいはまた配備等のバランスというようなことも重要なことであるというふうに考えておりますので、その意味においての問題意識を持ってひとつ検討してもらいたいという指示をいたすつもりでおります。
  261. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 来年度になってみないとわかりませんけれども、当初計画よりも四次防は相当落ち込みがある、そういう答弁も長官なさいましたね。そこで、その落ち込んだそのライン、つまり、来年度どういう予算がつくかわからないけれども、その落ち込み分を埋めることは私はできないという見通しを持っている。せいぜいこの落ち込んだラインの中の新旧装備の代替、その程度ではなかろうか。これから次期防に入ってもそういうことではなかろうかと私は思うのです。なぜならば、これからのGNPというものは、これは企画庁長官にお聞きしなければならないところですけれども、常日ごろの主張から推測すれば、GNPは安定成長になる、大体五、六%のところだ。そうすると、私は、これはもういまの四次防の落ち込んだところが一つのラインになる、せいぜい消耗していく、減耗していく部分をかえていくにすぎない、そういう見通しを持っておりますが、長官はどうでしょうか。
  262. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 これは四次防それ自体につきましても、来年度概算要求をしておりますものがまるまる大蔵折衝におきまして満たされたといたしましても、たとえば船については七七%、それから陸の戦車につきましては九三%、航空機につきましては一〇〇%ということでございますが、しかしながらポスト四次防につきまして五年間あるいは十年間を考えました場合において、やはり日本の独立と安全とを守るために、あるいはもう少し平たく申し上げますならば、国民一人一人の生存と自由というものを守るためには、どうしても一定の防衛力というものは欠かすことができないものだと私は考えておりますので、その意味合いにおきまして、著しく内政を圧迫しない程度、そしてまた他国に脅威を与えない程度の基盤的防衛力というものは充実していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  263. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、これは見通しになりますけれども、次期防とGNPの関係について、政府は五十年度のGNPの見通しを百四十九兆五千億とされております。それを前提として、しかも五十年度の価格がそのまま続く、五十年度の価格で試算をした場合に、次期防を五年計画とした場合に、いろいろ仮定がありますけれども、前提は、五十年度のGNPは百四十九兆五千億、次に五十年度の価格、そして次期防を五年計画とした場合に、一体GNPと次期防の予算の関係はどうなるのか、これを明らかにしていただきたい。試算で結構です。
  264. 亘理彰

    ○亘理政府委員 申し上げます。  ただいま先生が申されました前提によりまして計算いたしますと、これは単純な算術計算でございますが、仮に今後の実質成長率が年五%といたしました場合をまず申し上げます。防衛費のGNPに対する割合をたとえば〇・八といたしますと七兆二千九百億円、〇・八五といたしますれば七兆七千四百億円、〇・九といたしますれば八兆二千億円、〇・九五で八兆六千六百億円、一%ちょうどで九兆一千百億円ということになります。  また、仮に実質成長率が年六%で推移したといたしますと、GNPに対する割合が〇・八%の場合に七兆五千八百億円、〇・八五%の場合に八兆五百億円、〇・九%の場合に八兆五千二百億円、〇・九五%の場合に九兆円ちょうど、一%の場合に九兆四千七百億円という計算になります。
  265. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これも見通しになりますけれども、来年四次防全体は一体GNPの何%ぐらいになりそうですか、最終的な見込みは……。
  266. 亘理彰

    ○亘理政府委員 四次防全体の数字がどういうことになりますか、まだ五十一年度予算と経済見通しが固まっておりませんので確としたことは申し上げられませんが、いままでの四次防期間中の防衛費の当初予算のそれぞれの年度におけるGNPの当初の見通しに対する割合が、四十七年度が〇・八八、四十八年度が〇・八五、四十九年度が〇・八三、五十年度が〇・八四でございます。  なお、ちなみに、ただいま御審議をお願いしております補正後の五十年度の防衛庁の予算と先般改定されましたGNPの政府の改定見通しとの割合は、〇・九一でございます。
  267. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いわゆる実績からいましますと、一次防がGNPの〇・三七、二次防が一・一三、三次防が〇・八三、そして大体四次防が〇・九ですか。そうすると結局、次期防五年間とすれば、いまもお答えのありましたとおり、大体五、六%というGNPの伸びで試算すれば、七兆五千億ないし九兆五千億という幅の中に入ってくる、このように見通しを持っておっていいわけですね。
  268. 亘理彰

    ○亘理政府委員 先生が仰せられました前提で五十年度価格で計算いたしまして、実質成長率が六%といたしました場合には、おっしゃるとおりの数字でございます。ただ、現実にポスト四次防計画が策定されます段階で、どういう価格基準が経費見積もりに使われるか。たとえば五十二年度の価格を基準とするということであれば、これから五十一、五十二の物価なり賃金のアップが加わるということになります。
  269. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうなんですね。結局、物価の今後の値上がりを考えれば、やはり次期防は十兆を超す。そうすると、四次防の二倍にやはりなっていく。そういう見通しを私は持っています。だから、こういうことであれば、いま世上、もういわゆる高度成長時代は終わったのだ、安定成長、GNP五、六%というところを基礎にして経済の構造的な変革をしなければいけないということが言われておるわけですね。もう田中さんのようなああいう時代は来ないのだ。だから、当然、防衛費もあるいは防衛構想自体もこれは変えざるを得ないのです。その変えざるを得ない変革が、先ほどの坂田長官の次期防の作成に対する骨子になっておる。  そこで、坂田長官の言われましたいわゆる次期防の構想について特徴的なことを挙げると、こういうことになるのですよ。一次防から四次防までは自主防衛力が主体であって、安保は補完であった、ずっとこれは言い続けております。私は文書を持っておりますよ。佐藤総理もずっとそれを言い続けた、安保は補完だと。ところが今度の構想ではそれが逆転した。つまり安保が主であって、自衛力というのはその間隙を埋めるのだ、自衛力は補完という形に今度なってきた。逆転ですよ。だから私が言いたいのは、結局はこういうことじゃないですか。これからは安保、つまり米軍の間隙を埋める。では米軍で足らざるところはどこか。対潜作戦であろうし、あるいは防空作戦であろうし、あるいは海上輸送を守る兵たん作戦である、こうなってくるのです。そのとおりでしょう。それが安保体制の間隙なんですよ。そうでしょう。  だから結局結論を言えば、私が解説をしてみましょうか。四次防というのは、もう当初の計画より落ち込んだ。次期防でも結局この落ち込みを直すことはできない。直すことはできませんよ、われわれそんなに防衛費は認めないから。ほかが一生懸命苦労しておるのに、防衛費だけどんどん一六%というような平均で上げていくわけにいきませんよ。それは覚悟しておったがいいですよ。まあ今度私も当選してこなければいけませんけれども、絶対認めませんよ。それで結局この四次防の落ち込みの分、つまりいままで一次防から四次防まできた防衛の目的、つまり通常兵器による局地戦以下の侵略に有効に対処し得る防衛力を整備するというのが一次防から四次防であった。それが落ち込んだのですから、つまりその落ち込んだ分は当然米軍が補完するのですよ。そこまで米軍も範囲を伸ばさなくちゃいけません。それはそうでしょう、間隙を埋めるのだから。そうすると、局地戦以下まで米軍に頼らざるを得なくなる。そうすると米軍の発言力というものは増しますよ。だから、これからの装備にしたって、たとえば次のFXはどうするか、PXL対潜哨戒機はどうするか、あるいはAEWはどうするか、米軍の発言権は私はずっと増してくると思う。つまり非常に米軍優先の形になってくる。そして、かつてレアード長官が言ったいわゆるトータル・フォース・コンセプト、総合戦略構想、つまり自衛隊は米軍の中の一部隊にならざるを得ない。これは経済財政事情の変化を考えれば当然そうなりますよ。どうでしょうか。
  270. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 少し違うのですな、私どもが考えておりますのは。  私は、就任いたしましてから、わが国の防衛について三つの原則を考えておるのです。その一つは、とにかく自分の国はやはり自分の手によって守るという、そういう国民の気慨がなければ日本の独立と安全とはあり得ない。つまり抵抗意志というものです。それからまた、その抵抗意志があっても能力がなければならない。つまり憲法の制約のもとにあっても、必要最小限度の防衛力はこれを保持し、これを常に高める努力をしなくちゃならぬということであります。しかし、高くしなければならないけれども、それは他国に脅威を与えるようなものであってはいけないし、また同時に著しく民生を圧迫するようなものであってはならないということであります。いま一つは、大規模の攻撃あるいは核の攻撃、これに対しましてはわが自衛隊のみによって対処はできませんから、これは日米安保条約に依存せざるを得ない、したがって、日米安保条約というものは不可欠なものである。この第一、第二、第三の三つは一組であって、一つを欠いても日本の国民の一人一人の生存と自由は守れない、私はこういう一つの考えでございまして、あくまでも日米安保条約を基調といたしまして、そして日本の独立と安全とを守るための基盤的防衛力を考えていこう、こういう考えが長官の第二次指示をいたしました内容でございます。
  271. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 マスコミを通じて漏れ聞いたところでは、防衛力の保持は他国に安易に武力侵略を行わせないためのものであり、日米安保体制と相まってすきのない体制をつくる。つまり先ほど言った、自衛力というものは日米安保体制の間隙を埋める——さっきあなたは、私か要約したときにそうですと言ったじゃないですか。そうでしょう。そして常備すべき防衛力のところでは、経済財政事情等の制約を勘案して、従来の通常兵器による局地戦以下ですか、限定的な侵略自体に有効に対応し得る防衛力を整備する、そういう考え方を変えなくちゃいかぬ、そういう考え方から、常備防衛力としてはそのための基盤をつくるんだというように変わってきたじゃありませんか。これは重大な変革ですよ。それはあなたがいつ発表されるかわからぬが、私が言ったとおりだったらどうしますか。これはいままでの一次防から四次防に至る変革ですよ。いままで一次防から四次防にかけてやってきたその考え方を変えて、一次防から四次防に至る目標の、今度の五次防は基盤をつくるのだというふうになってきたのですよ、当初の四次防までのあれはあきらめて。また、そうせざるを得ない。先ほど言ったとおりですよ。財政経済の変革からそうならざるを得ない、私はそう思うのです。それはまた、あなたが発表されたのを見て議論しましょう。  そこで、あなたはずっとこの二、三カ月来、有事の際はどうなるかということを考えなければいけない。それがちっとも日米の間でできていないから、日米防衛分担——分担という言葉はきらいなようで協力という言葉に直された。有事の際の日米防衛分担は一生懸命やっておられるが、一体有事の際の国内体制はどのようになるのですか。どう考えておられるのですか。
  272. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 日米共同対処の場合であると否とを問わず、わが国が外部からの武力攻撃のような有事に際しまして、現在の防衛関係法制のみで足りない部分のあることは事実でございますが、現在の緊張緩和の状況下におきまして、取り急いで防衛関係の法令の整備を行わなければならないとは考えておりません。
  273. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうしてですか。そんな緊張緩和でそういう国内体制を考えぬでいいと言うのなら、何で日米の防衛分担だけ先にどんどんやるのですか。おかしいじゃありませんか。もしそうならば、私は国民不在の有事対策だと思うのですよ。有事の際に一体日米はどういう分担をやるかと一生懸命やられている、やれシーレーンがどうだとか、対潜作戦がどうだとか。そういう有事のときに一体国民はどうしておるのですか。国民はじっとそれを見ておるわけにいかぬのですよ、有事のときには。それは全く軍事優先じゃありませんか、考え方が。国民不在じゃありませんか。もしそれほど国内体制を考える必要なかったら、有事の際の日米防衛分担なんて考える必要ないじゃありませんか。じゃ研究もしたことないのですか、日米防衛分担ばかりやって。一体どうなっているのです、そのときわれわれは。
  274. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ただいま大臣から申し上げましたのは、国内の有事の体制に対する、有事の場合の対処対策に関連していわゆる有事立法を現在作成しておるかどうか、こういう問題について、現在はその作成をやるべき客観情勢にないので現在やっておらない、こういうことを申し上げたわけでございます。  ところで、日米の問題でございますが、日米の有事における共同の対処という問題につきまして、当然日本の国内の問題に触れてくるわけでございますけれども、この問題については、かねてから申し上げておりますように、わが国の立場からできること、できないことということを明確にしておく。したがいまして、現在の法制下において可能なこと、それから手当てをしなければならない、そういうことを検討するということを考えておるわけでございます。
  275. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は立法のことを聞いておるのです。国内体制はどうなるのであろうか。何もないじゃありませんか。それを聞いておるのです。そういういわゆる非常立法について研究もしていないのかと聞いているのです。どうですか、長官。
  276. 丸山昂

    ○丸山政府委員 これは先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、日本の場合につきましては、本来有事のときに自衛隊が有効に活動するために立法上の措置が必要でございます。必要でございますが、その立法の問題というのは現在差し迫った事情にございません。したがいまして、長官からこういった問題について作成を……(楢崎委員「研究もしてないかと聞いているのですよ、時間がないのですよ」と呼ぶ)長官の御指示に従って研究はしておりません。
  277. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しておるじゃないですかね。これは私はずっと昔にやったのですけれども、昭和三十九年六月三十日に発行されました「日本の安全保障」、この中で元防衛庁長官増原さんがちゃんと言ってあるでしょう。たとえば戒厳令の問題について言いましょうか。「戒厳令がなければいけない、これは前々から私どもは政府部内で話をしておるのですけれども、戒厳令を研究してみるということはよう言わないのです政府にしても長官にしても」内々でやっているのですが、こう言っておるのですよ。内々でやっておるのですよ。やっておると言っておるじゃありませんか、元防衛庁長官が。どうして研究もしていないと言うのですか。時間がないから私の方から申し上げますけれども、三矢作戦の中ではずっと出しておりますね、こういう立法が必要だということを項目だけ。その項目内容については余り明らかになっていない。たとえば国家総動員法とかそういうものが出てきていますね。ところが、全部その研究をやっているのです。これはすでに一九五八年「自衛隊と基本的法理論」研修資料別冊第一七五号、防衛研修所が出しておる。この中に全部ありますよ。たとえばいまの戒厳令のところを言ってみましょうか。   旧戒厳法をもととし、新戒厳法に最低限度必要な事項は、次のとおり。   1 戒厳地区内の知事、地方総監、又は戒厳司令官は、次の非常警察権を有すること。    a 集会、多衆運動等の禁止、制限解散    b 新聞、放送、雑誌、文書等の停止、禁止    c 郵便、通信の検閲    d 銃砲刀剣、火薬類等の使用所持等の禁止、検査、押収    e 運輸通信の停止統制    f 船舶、航空機、車輌等の立入、検査    g 食糧その他必需物資の移動の禁止    h 民有家屋等の立入、検査    i 特定地域内の者に退去命令、立入禁止、外出禁止    j 緊急止むをえぬとき、動産、不動産の使用、破壊焼却    k 国又は地方公共団体の動産又は不動産の必要な範囲での使用   2 関係主務大臣その他政令で定めた者は、次のような権限を有する    a 必要な物資の生産、集荷、販売、配給、保管又は輸送を業とする者に対し、物資の保管命令、使用、収用、調査の権限    b 病院、診療所、旅館等の施設の管理、使用の権限    c 医療、輸送、通信、放送、土木、建築工事等に従業する者に従事命令 そして三番目に軍事裁判所の問題、研究しておるじゃありませんか。この戒厳法が施行されたら、まさにいまのあの韓国の状態になるのです。だから、こういうことはやはり国民に知らせぬといけませんよ。私はそう思うのです。私はそれだけ指摘しておきますよ、もう時間がなくなったから。  それで、最後に一問だけ私は問題点を指摘しておきたいと思うのですけれども、実は今度の日米会談、その日米会談の日米共同新聞発表、これでは安保条約の「円滑かつ効果的な運用」という言葉があります。それから八月二十九日の坂田長官とシュレジンジャー長官の会談の中には、「在日米軍基地の安定的使用」という言葉が出てきておる。一体具体的にその中身は何であろうか。それは、有事の際に防衛分担がどうか、どうかということも大事です。しかし、この問題は現実の問題です。いま進行しておる具体的な問題ですから私はこれを取り上げる。それはどういうことかというと、返還された在日米軍基地の米軍によるりエントリー権、つまり再使用権の問題であります。私はずっと問題を先に指摘しますから……。  これは地位協定のいわゆる二条一項(a)、同じく二条四項(a)、同じく二条四項(b)、(a)というのは提供させるということですね。それから二4(a)というのは米軍に管理権があって、日本側がときどき使う。それから二4(b)は日本側に管理権があって、米軍が必要ならばときどき使う、簡単に言えばこういう条文であります。一度日本に返還された在日米軍基地を有事の際に米軍が直ちにリエントリーできるか、この問題は米側が最も重視してきた課題であります。だから一九七一年のアメリカ上院の外交委員会サイミントン委員会でも、その聴聞会で非常に激しい論議になった。実はこの課題が先ほど言った日米共同新聞発表、あるいは坂田・シュレジンジャー会談の、基地の円滑かつ効果的使用とか安定的な使用とかに絡んでくる問題であります。  サイミントン委員会ではどういうことが論議されたか、ちょっと披露しておきますけれども、まず議事録の千二百七十ページから千二百七十一ページ、これは板付基地を例としてこの問題を論じております。ポール委員はこういうことを言っている。「板付は日本の福岡市における活発な民間空港であるが、米国の前進作戦基地でもある」「韓国への作戦のための有事用の基地として、……再使用といった場合、(現在)米軍がいなくても民間空港の形で利用可能ではないか」。あるいはまたこういう項目がある。「米軍人の完全撤退の場合における日本との間の再使用権(Reentry)取極めの可能性」について。これは千二百七十一ページから千二百七十二ページにある。ポール委員がこういうことを言っています。「危機の場合の米国の再使用を見込んで日本側と米軍の完全撤退につぎ取極めを結ぶ見通しはどうであろうか」。これに対してジョンソン次官はこう答えておる。「日米双方とも現行協定と法令の枠内で実施できる方法を引続き探求している」「わが方の法律専門家は現行地位協定の枠内で何らの変更、又は改正なしにそのような取極めが可能であると考えている。これまでのところ日本の法律専門家はこのような結論には達していない」。  さらにまた「板付運営経費の分担」という項目のところでは、これは千二百七十二ページから千二百七十三ページにかけてであります。ポール委員がこう言っている。「むしろ朝鮮における危機の際、板付のような基地へのなんらかの再使用を認めてもらえるよう日本側の善意に期待しうべきもののように思われる」これに対してジョンソン次官は、「私も同感である。……原則に関する限りは、日本政府も同意している。……われわれは、その方向に進むべく絶えず努力してきたし、また今後も引続き努力してゆきたい。事情が許す限り、この方向に進むことができるよう日本側にずっと圧力をかけている。」ジョージ在日米大使館員、これは政治軍事担当官でありますが、この人はこう言っておる。「東京で話合った際、日本側はこの考え方に全面的に好意を示していたことを申しそえたい。」こういうやりとりがあっているのです。  だからここで明らかになったことは、結局朝鮮半島の有事の際には、たとえ板付国際空港になっておってもいつでも再使用するんだ、そして直ちに前進作戦基地にするんだ、そういうことですね。そしてその交渉の途中ではいろいろと日本側は抵抗したけれども、結局は日本側は原則的に同意をしておるんだ。これは七一年の段階です。ところが七二年に板付が返還されました。この事実は、そういった日米の交渉が妥結をした、私はこう見ざるを得ない。そうでしょう。  そこで実際にはどういう状態になっておるかというと、一度日本に返還した米軍基地というのは、いざというとき直ちにはリエントリーできないのです。そういう法的根拠は現行地位協定のもとではない。だから日本側の法律専門家は、それはできませんと言っておったわけです。  それで、日米双方は、現行地位協定を改正しないで、実際には一体どのような便法でその解決策を見出したのであろうか。これを私はいろいろ探ってみた。これが板付の場合に出てきておる。どういう便法をするかというと、まず滑走路は日本側に返して二4(a)の地域にする。つまり日本側が維持費を出すわけです。そして滑走路のほんのそばに、ちょびっと二1(a)の地域を置く。つまり米軍占用地域。そしてそこに出入りするためと称して、つまり通行権あるいは通過権というやつです、それでその滑走路を使う。滑走路は飛行機はどのくらい飛んできておるか、資料は私後で出しますけれども。だから結局そういう名目で使っているのですよ。それでしかも米側は使用料は全然払っていないのです。これはどういうことでしょうかね。  一方の例は何であるかというと、横須賀の例ですよ。横須賀のドックを例にとってみる。この横須賀のドックは二4(a)です。米側が管理し、維持費を出しておる地域です。それを二4(b)と同じような使用状態にしているのです。私は使用状態を調べてみた。結局何のことはない、日本側にどんどん使わして、日本側に使用料を払わして、そして米軍の維持費に充当しておるのですね。一体どこでこういう使用方法が許されておるのか。いいですか。二4(b)を米側が使うときには、使用料は米軍は出さぬのです。今度は二4(a)の方を日本側が使うときには、日本側は使用料を出さなければいかぬ。そんなばかな話が一体どこにあるのですか。こういうやり方はどこで決めたのですか。つまり私の想像では、恐らく現地の制服同士がやっておるのだろうと思うのですよ。もしこういうことが許されるのだったら、ますますこのケースは今後ふえていきますよ。そして日本側がどんどん維持費を出さんならぬようになる。大蔵大臣、こういうことが許されたら、今後日本の予算の上から見ても大変な事態になると私は見ているのです。したがって、私はこういう点で問題を提起をいたしておきます。時間がありませんが、もしお答えがあったらお答えをいただきたいし、時間の関係で無理ならば、文書で私は御回答をいただききたい、このように思います。  私は、いまの要約した点は文書で私もやりますから、どうぞひとつそのようにお取り計らいを願いたい。
  278. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私の関係では、シュレジンジャーと私との会談において基地の安定的使用ということを申したのは、安保条約がある、しかしその基地あるいは施設の提供というのは日本の義務だ、これがやはり平時において安定的に使用されなければならない。ところが日本には、この基地に対して非常に反対闘争等もある、あるいは騒音等の公害もある、したがって、基地のない市町村に比べてその地域住民は非常に迷惑をこうむっておる、そういったところについては十分の施策をやるべきである。そういう意味において安定的使用ということを申したのでございます。平時における安定的使用ということを強調したというふうに御了解を賜りたいと思います。
  279. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、言葉はどうでもいいのです。内容がこんなになっているではないか。たとえば板付で言えば、米軍が管理しておった二4(a)あるいは二1(a)の時代よりもただで使う二4(b)の今日の時代の方が米軍機の発着回数が多いのですよ。こういうばかな話がどこにあるのですか。  横須賀の場合を言ってみましょうか。横須賀の場合はドックの使用料を四十九年度だけで二千万円出していますね。そのうちで自衛隊は使用料を約一千万出している。それを維持費に充てているのですぞ、米軍は。こんなことが便法なんですよ。つまり二4(b)の拡大解釈なんです。こういう拡大解釈、あいまいな解釈をすれば、あのサイミントン委員会で論議されたとおり、現行地位協定を改正しなくてもできるんだというアメリカ側の解釈に合わしたのでしょう。そうじゃありませんか。これは今後私は論議を続けたいと思うのです。  いまの点で文書で回答なさいますか、それともいま回答なさいますか。重要な点ですから、私は文書で明確に回答していただきたいと思うのです。
  280. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 一言御説明申し上げておきたいと思いますが、板付の場合、これは滑走路は二4(b)による使用でございます。しかし、その二4(b)による使用でございましても、これは、その滑走路を使用する限りにおきましては、米軍に対する施設、区域の提供でございます。したがいまして、その意味におきまして、地位協定の二十四条の第二項の規定に従いまして、わが国はこういう施設、区域を、この協定の存続期間中、合衆国に負担をかけないで提供するというふうになっておりますので、その意味で、無償でその滑走路を一時使用させることはできるわけでございます。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから非常に均衡を欠いたやり方だと言っているのです。こっちが使うときには使用料を払って、アメリカが使うときには無料だなんて、そんなばかな話が一体どこにあるのですか。これが米軍基地の円滑かつ効果的な運用の内容なんです、板田さん、言葉はどうあっても。あるいは米軍基地の安定的使用の内容はこういうことなんです。  それで、一つだけ資料を要求しておきます。一九七二年三月七日付日米施設委員会に対するメモ、FSJG−二七六−一一一三−AC/MA、件名 「板付基地FAC五〇〇一」、これはわかっているはずですから、これをひとつぜひ資料として出してください。これを見れば、米軍がどのような形で無料で使用されるか、これが出ているはずです。ぜひ私は資料として出していただきたい。これを要求して、あとは文書で御回答いただきたい。
  282. 銅崎富司

    銅崎政府委員 お答え申し上げます。  米軍との関係の資料でございますので、米側に相談いたしまして、どういう資料が出せるか検討さしていただきます。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、この予算委員会が終わるまでに、例によってひとつ出していただきたい。それを要望して——いいですか、文書で御回答いただくことは。どうでしょうか、この点の返答がございませんが。
  284. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 文書で出せるか、どうだ。
  285. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 米軍との関係がございますので、出せない場合もございますけれども、極力出せるようにいたしたいと思っております。
  286. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 資料はそうですが、さっきの外務大臣、これは地位協定の問題でございますから、米軍のリエントリー権の問題について私が指摘した、問題提起した点について文書で御回答いただきたいと私は言っておるのです。
  287. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの二条4項(a)、(b)による使用の形態について、これはリエントリーを約束したものであるとか、あるいはそれを回避するための方法であるとかいうことではございません。板付、厚木ともわが国が管理をしておるのでございますから、そういうことは一切ございません。
  288. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何を言っていらっしゃるのですか。厚木をいつ私が言いましたか。板付は私は言いました。厚木のことは言っていない。私は板付と横須賀のことを言っているのです。だから、私は文書をやりますからこれについて御回答くださいと言っているのです。
  289. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 リエントリーを回避する措置ではないということを申し上げておりますので、それで明らかであろうと思います。
  290. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうして私の要求に答えないのですか。文書をやりますから文書で御回答くださいと言うのに、どうして御返事なさらないのですか。
  291. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまお答え申し上げました以外のお尋ねがございましたら、それについてお答え申し上げます。
  292. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんな、いままで言ったこと以外は回答……。そんなことを言わないでいいのじゃないですか、お互いの中で。そんな四角張ったことを言うのだったら何ぼでもやりますよ。
  293. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ち下さい。防衛庁長官と外務大臣に申し上げますが、アメリカとの関係で資料を出し得ないという以外は、全部出していただくことでよろしゅうございますか。
  294. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのは、楢崎委員のお尋ねが、尋ねるから答えるかということでございますから、お答え申し上げます。
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃこれで終わります。
  296. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それじゃ資料いいですな。  これにて楢崎君の本日の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時二十四分散会