○
中澤委員 福田さん、問題は名目的な所得増大を図るか、実質的な経済成長を図るか、あなた方の
考えとわれわれ社会党の
考え、二つに分かれているわけです。いまの公債発行は、名目的な所得増、それをどうしても図っていかなければ消化ができないわけですね。それは再びインフレの道なんですよ。それをやらなければ、この膨大な国債をどうして償還しますか。だから、そこに基本的な
考え方の相違が出ているわけですね。選択は二つしかないのです。いまのような名目成長率をどんどん引き上げて、税金をたくさん取って赤字公債を償還していこうという
考え方。われわれのように、そうじゃないんだ、やはりインフレというものをどこまでも抑えるという基点は、これはなくしてはだめです。いままるでインフレなんか忘れちゃって、
福田さんが余り自信のあるようなことを言って、もうおさまったなんと言うから本当におさまったかと
——私は、こんなものは全然おさまらぬと見ておるのです。だから、その点はどこまで行ってもかみ合わない議論になりますからよしますが、インフレをどこまでも抑えていくんだ
——あなた、四%に二、三年後にもっていくというようなことを言ったが、そんなこと全然不可能ですよ。それはいきっこないですよね。それは見解の相違だから、別に答弁してもらわなくてもいい。そこに基本的に
考えなければならぬ問題が出ておるということ。私は、何も大幅に減税しろと言うのではないのですよ。四十一年、あなたとここで論争したときもそうでしょう。七千二百億の建設国債で、あのときたしか二千六百億か二千七百億の減税をしているのですよ。だからあのときの姿勢をいま一度
考えてみたらどうか。公債を抱えた減税というものは、あのときも私はあなたとここで問題にしたんだけれども、減税分だけ公債を減らした方がいいんじゃないか。公債の危険性を私はあのとき指摘したのですが。あなたは、減税もやらなければ景気は上がらない、そう言ったのですよ。減税もやらなければ景気は上がらない、個人消費を伸ばさなければ景気は上がらないんだと、あなたは答弁しておるのですよ。それといまとは完全に
考え方が違っておるわけですね。それは膨大な赤字公債、しかも来年度予算が見当つかない、視界ゼロだ、こういう中での客観
条件で、あなたの答弁はわからぬでもないけれども、基本的にそこをひとつ
考えておく必要があるんではないか、こういうことだけは申し上げておきます。
それから、問題がたくさんあるのですが、私は、今度のインフレ、目減りその他で公債発行にひとつ新機軸をこらしてみたらどうか。それはどういうことかというと、
福田さんも御
承知のように、かつて戦争中に公債で臨時軍事費をだんだん賄ってきた、
最後にはもう公債の買い手がない、そこで臨時軍事費を賄うため特利公債というものを出しましたよね。特別利息国債、利息の高いやつ、あれを一度
考えてみたらどうか。それはいまの金融体系、金利体系の中では
考えられないと言ってあなたは答弁するでしょう。しかし、こういう異常事態の中で、しかも国債が完全に日銀しょい込みになってインフレがますます助長してくる、このインフレを内包しておる補正であることは間違いないのです。だから、そこでこの戦時中の臨時特利公債というものを一度検討してみる必要がある。特利公債を検討すれば、私は、これはマネーサプライの増加は防げると見ておるのです。ということは完全市中消化をやっちゃう、個人消化をやっちゃう。それはある程度金利を上げれば個人が持ちますよ。ただし、これは大量に持たせない。私の
考えでは、この特利公債を一人最高百万ぐらいに限定しちゃう。幾らでも持たせるといったら、金のあるやつは幾らでも買っちまいますからね。それには金利自由化というものが絶対必要なんですね。もうここへきて日本は金利自由化しなければだめです。だから、そういう金利自由化というものを前提にして、市中消化で一人百万円ぐらい、まあ私の案では年利一割公債、いま八・二三ぐらいでしょう、年利一割公債にする。そうするとどういうメリットが出てくるかというと、日本の一番おくれている公社債市場の育成は、私は個人の手持ち公債からその基本が出てくると思うのです。百万円で三兆円の公債を持ってもらうとすれば、三百万人百万円持たなければならぬわけですね。一割なら、これは年利が六分五厘の銀行預金よりか金利が
——六万五千円と十万円、まあこれは一割がいいかどうか別ですよ、私の
考えとしては。そうして持たせると、公債市場の育成の端緒がここでつかめるのじゃないか。公社債市場で皆売買できるようになる。
それから、公債発行で財政政策だけのてこ入れをやっているから金融政策が全く硬直化してしまうわけですね。膨大な国債をことしも来年もしょわされる。だから金融政策による景気調整というものは弾力性を失ってしまうわけです。その場合、やはり公社債の日銀の売りオペ、買いオペ操作によってこれをやっていくという、そういう新しい資金循環パターンというものを
考える必要があるんじゃないか、そういうメリットも私はあると思うのです。
それから同時に、インフレ被害者の救済になるわけですね。これはどの程度やっていいか、その程度や範囲や問題は、十分財政当局で検討してみればいいのですよ。しかしこれはひとつどうしても
考えなければ、来年も膨大な公債発行ですよ。もはや預金部資金は底をついちゃったでしょう。どうするのですか。
だから、これはひとつ私は提案として申し上げておくが、どうしてもこれは
考える
段階に来ておるのじゃないか。それには金利自由化というものを前提にしなければだめですね。金利がいまのような硬直的な金利体系をとっておいて、そうしてこんなことをやったって効果は出ませんよ。金利自由化というものをもし一挙にできないのなら、金利自由化問題というのは外国でもやっているように二
段階制でいいと思うのです。大口はもう自由化していく、小口のものはいまの固定制にしておく、こういう体制で私はいいと思う。そこから金利自由化の端緒を切り開かなければ、これはとうてい収拾のつかないような
状態が出てくるのじゃないか、そういう
意味で、私はそういう一つの提案をしておくわけです。
それからいま一つ、時間がもうありませんから、マネーサプライを一体どう抑えていくのか。これはきょう日銀の副
総裁も来ているが、大変なことになると思うのですよ。最初森永さんの姿勢も大分よかったのです。ああこれは中立性を保っているな、これは
政府がちっとは何か言っても簡単に折れないなと思っていたのです。ところが、このごろは森永さんも全然いかぬ。大蔵大臣べったりになっちゃった。これでは
国民が困るのですよ。いままで日銀は失敗の歴史を持っているのですよ。そうでしょう。宇佐美さんのときは、山一証券へ、三菱初め千二百億もの支払い準備金を持っていながら、危険負担分を持っていながら、日銀がしょい込んでいる。世界の中央銀行史に汚点を残したのが宇佐美日銀
総裁。これはここへ来てもらいまして、私徹底的に宇佐美さんに、おかしいじゃないかと詰めたという
経過もあるのです。それから佐々木さんのとき何をミスやったかというと、例のスミソニアン協定で大ミスをやっちゃった。なぜあのとき為替市場を閉めなかったか。これで四千五百八億、日銀は損金を出したでしょう。しかも三百八円と決まっておいて三百六十円で十日間為替市場を開いた。世界じゅう閉鎖しちゃった。これは日銀のミスです。だから過剰流動性問題というのは、日銀が大きな役割りを負っているのです。外為から流れたのが約五千億、日銀から流れ出した金が四千五百億、合わせて一兆円の過剰流動性というものは政策ミスでできちゃった。それが
田中内閣の経済失政と絡んじゃって、収拾のつかないいまの日本経済の
現状をつくり出した。そういう面において、日銀はいま少ししっかりしてもらわないと困るのですよ。大平さんべったりなら
日本銀行は要りませんよ。やはり
政府がこういう
状態になったとき、
政府に対して物を言うのが日銀の中立性でなければならぬ。これは
総裁が来たとき、いずれまたお伺いするが、副
総裁、今度の公債発行、一番問題になるのは来年度予算ですよ。だからあなたからも一言、通貨護持の番人は日銀なんですから、
政府が放漫政策をやったら日銀が歯どめをかける以外方法がないのですよ。その日銀が中立性を失って
政府とべったりになったら、これはどうなりますか。一言だけ御答弁願います。