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1975-10-24 第76回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十月二十四日(金曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹下  登君 理事 谷川 和穗君    理事 湊  徹郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       大野 市郎君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       塚原 俊郎君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    保利  茂君       細田 吉藏君    前田 正男君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       楢崎弥之助君    堀  昌雄君       湯山  勇君    田代 文久君       松本 善明君    高橋  繁君       渡部 一郎君    河村  勝君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         総理府統計局長 川村 皓章君         行政管理庁行政         管理局長    小田村四郎君         行政管理庁行政         監察局長    鈴木  博君         防衛庁参事官  伊藤 圭一君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         環境庁水質保全         局長      堀川 春彦君         法務省人権擁護         局長      村岡 二郎君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君         外務大臣官房長 大河原良雄君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省関税局長 後藤 達太君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         文部省体育局長 安養寺重夫君         厚生大臣官房長 宮嶋  剛君         厚生省環境衛生         局長      松浦十四郎君         農林大臣官房長 森  整治君         農林大臣官房技         術審議官    川田 則雄君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      今村 宣夫君         食糧庁長官  大河原太一郎君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業大臣官         房審議官    藤原 一郎君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         郵政省郵務局長 廣瀬  弘君         郵政省経理局長 高仲  優君  委員外出席者         郵政大臣官房資         材部長     福守 博一君         会計検査院長職         務代行検査官  佐藤 三郎君         会計検査院事務         総局次長    鎌田 英夫君         日本輸出入銀行         副総裁     星野 大造君         国立国会図書館         長       宮坂 完孝君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十四日  辞任         補欠選任   正森 成二君     田代 文久君   正木 良明君     渡部 一郎君   矢野 絢也君     高橋  繁君 同日  辞任         補欠選任   高橋  繁君     矢野 絢也君   渡部 一郎君     正木 良明君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。安宅常彦君。
  3. 安宅常彦

    安宅委員 きょうは主に経済協力の問題を中心にして質問をさしていただきます。  まず第一番目に、これは朝鮮半島の問題に対する姿勢というのでしょうか、私はほとんどここ数年間、この問題一本で予算委員会では総理やその他の方々と論戦を展開してきたわけですが、このたびの国連総会でこれまでと際立って違うことがある。それはいままで朝鮮民主主義人民共和国を支持する案あるいは韓国を支持する案、そういう表現がいいか悪いかは別として、二つの案に対して、日本がみずから提案理由の説明といいますか演説を買って出て、そして表面切って公然と韓国支持ロビー外交やいろいろなことを必死になってやったということは例がないのです。これは重要なことだと思うのですが、最初から六カ国決議案を持ち回って、そしてわれわれがどうもそういうことは棄権をしたらどうかと、最も近い国々のことでもあるしと、こういういままでの――質問だけしか議事録を調べてみたらやってないのですね。それはそんなに積極的にやるということについてお互いわれわれもあなた方の方も、政府側の方も想定としては思いつかない、こういうことが心の中にあったからだ、そう思っているのですが、これはどういうことなんでしょう。  これは私聞きたいのですが、三木さんの訪米以来新韓国条項、あなたが幾ら否定しても、そうではなくて朝鮮半島のことを考えてそっちの方に力点を置いたんだ、こんなことを言っていますが、そうではない。そういうことをあっさり認めて、そして金大中さんの事件やそういうものはあらゆる条件、ここに大平さんおりますが、外務大臣としてあなたは原状回復やあるいは犯人の引き渡しや処罰や、そういうものを全部こちらが条件取るんだということを累次にわたって答弁している。何にもやらない。それでごまかしちまって、そして本会議ももちろんのこと、本委員会における約束、答弁、また仮谷さんの例を出して失礼ですけれども、いいかげんな答弁でとうとうごまかしてしまったと私は言わなければならない。これは小林進先生が最後に徹底的にやりますから、きょうは私はやりませんが、そういうことで一たん解決をしたと、こういうふうに決めてしまって、それで今度三木さんが訪米ということになるのです。  それで、たとえば韓国に対する経済援助にしても、第三次五カ年計画終了後は、もうすでに政府ベースではなくて民間ベースに移るのだということを第六回、第七回の日韓閣僚会議で二度とも共同声明にうたっておって、七回の共同声明は確信を持ちますと書いてありますね、文章。それをあっさり撤回して、そして第四次五カ年計画大平さん、あなたは、日本経済がこういう混乱をしておる、それに対する見通し、資料なんか出せないとか、福田さんは一年半後ぐらい何とかなるだろうくらいの答弁で、なぜなるのかということを一回もあなたも言ったことがない。まるで五里霧中みたいなお先真っ暗。こういうときにどっちが転んでしまうかわからないような破綻を――第三次五カ年計画が破綻したからでしょう、こういうことをもう一回政府ベースでやろうというふうに考えたのは。第四次五カ年計画まで約束してしまう、こういうところの日韓閣僚会議をやって、巨額の経済援助軍事援助日米韓運命共同体、これをはっきり構想の中に描いてその路線を突っ走る、こういうことは田中内閣以前には見られなかったこと、ある程度はあったのですが、こんなに際立ってこういう情勢をつくったのは初めてのこと、これはアメリカの圧力によってあなた方がやった、私はそういうようにしか見られませんが、見解を伺いたい。
  4. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この日米首脳会談で、御承知のように、従来日韓と、こう韓国だけいろいろ声明などにも出ておったわけですが、今回は朝鮮半島というものに視野を広げて、結局は朝鮮半島の平和と安定というものが韓国の安全にもまたこれは重要であるし、だからどうしても韓国というものばかりでなしに朝鮮半島全体の平和と安定というものを考えなければ、この朝鮮のそのことが日本を初めアジア諸国に対してもいろいろな影響を与えるということで、従来の日韓というものをもう少しこう広げて、日韓と言っても、韓国と言ったところで、北鮮動向というものに影響を受けるわけですから、新聞発表の文句はもう少し視野を広げて朝鮮現状を直視した新聞発表になっておるわけでございます。もっと従来よりも現実をしっかり踏まえて、大きな視野朝鮮半島の将来を考えておるということでございます。  国連決議の問題その他については、外務大臣からお答えをいたします。
  5. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 朝鮮半島の問題は過去において何年か国連において問題になってきておりまして、いわゆるコンセンサス方式というようなことも一昨年は打ち出されたわけでございました。しかし、それから十分な解決が見られませんで、今年決議案がただいま二本出ておるわけでございます。わが国が主唱いたしております決議案は、安宅委員がよく御案内のとおり、国連軍を撤退するということは、これはしかるべきことであろう。その場合、一九五三年のいわゆる休戦取り決めの一方の当事者が失われることになりますれば、平和を維持しております枠組みがなくなってしまうことになりますので、その点についての一つの措置というものは必要ではないかということとともに、そういうことのために関係国がやはり相談をすべきである、対話をすべきであるということを主といたしました決議案わが国共同提案をいたしておるわけでございます。
  6. 安宅常彦

    安宅委員 私はあなた方と論議する気にならないくらいなんです。朝鮮半島全般のところへ広げたとか言っていますけれども、実際の行動を私は質問しているのです。そうでしょう。あなた、そういうことは前例がないことをやって、初めから何らかの手段でこの北朝鮮側提案を通らないようにしたい、堂々と言っているのはあなたが初めてですよ。私はそんなこともう仕方がないから言いませんけれども、ただ重大な皮肉を言っておきます。  一方の当事者というのは何ですか。国連軍が解体したら――当時朝鮮側が去年の秋の国連総会で言ったこと、だからことしの春の予算委員会で言ったのだと思いますが、あのときはいろいろな提案をしていますね。直ちに撤退というところまではいかない時代も――ちょっと表現を変えましたね。そういうことも私は言って、特にアメリカ平和協定を結ぶ、つまり休戦協定というよりも、一歩進んだ平和協定に持っていくのがわれわれの態度だとはっきり言っているのに、朝鮮金日成主席は言っていますね、それを信用しようとしないのでしょう。そんなものは危ない、本当かしらというような顔をしている。人を信頼しないで外交というのはやれるはずがないと思うのです。私、言いますけれども、一方の当事者というのは何ですか。国連軍しかないじゃないですか。国連軍アメリカだ、はっきりしている。もうアメリカ軍隊でしかない。国連軍の構成であった軍隊を派遣しておった国の中で、いま朝鮮民主主義人民共和国承認してしまっている国が何ぼありますか、大部分じゃないですか。実態はアメリカしかない。だからアメリカ平和協定を結ぶ。どだい韓国なんというのは休戦協定当事者じゃないのでしょう。だけれども、韓国がなければおかしいとすぐあなたの方では言うけれども、朝鮮戦争が終わってから十数年間、韓国なしで、当事者に入ってないでしょう、平和は保たれてきているのでしょう。よく奇異に感じないものだと思うのです。頭の中、どうかしてませんか。これは皮肉だけあなたに言っておきます。  それで、アルジェリアの案を国連大使が徹底的に批判をしておりながら、自分の方のそういう頭の中から抜けたことを隠そうともしない、気がつかないで堂々と、りっぱなことだと思ってしゃべっているのかもしらぬけれども、あの外交は世の中、世界の笑い物になる、こういうことを考えなければならないのですね。とにかくあなたの方では、七・四の共同声明を支持する、歓迎する、内閣は一貫してそう言っていると思うのです。しかし、それはたてまえでしょうね。外部勢力の介入なしで、そして自主的、平和的に統一する、この共同声明を支持していながら、北から侵略があるかもしれないとか、誤算によってそういう紛争が起きた場合とか、あなたは国会で、避難民日本に、ベトナムのことを連想したのかもしれませんけれども、敗残の兵隊まで来るような状態を想定した答弁までしておられますね。何か北から侵略がある、北から侵略がある、南が圧倒されれば日本避難民の受け入れなどで困るかもしれないとか、こういうことを平気で言っている。これだけの発想しかないのです。  だから、政府発表をごらんなさい。全部、北が誤算によって襲ってきた場合、坂田さんなんかハト派だなんて昔言われたけれども、防衛庁長官になったら年がら年じゅうそればかり言うようになりましたな。内閣から出るいろいろな態度の表明というものは、そういう発想しかないのです。これは何か。三木さんだってそうですよ。釜山はちょうど九州からお天気のいい日は見えますよなんて言ってみたり、そこまでしかない。だから最も重大なんだと、こうあなたは言っているのです。これはあなたの本心です。朝鮮半島皆広げたなんてうそばかり言って。これは何かというと、朝鮮統一とかなんとかということをあなた方は支持するというたてまえだけで、頭の中にはなくて、日本の国が一体どうなるのか、日本の現体制が一体どうなるのか、そういうことばかり考えて、日本安全保障というものを中心にして朝鮮半島のことを論議しようとするから、そこに基本的な誤りがあるのです。ここが重大な外交上の誤りになる。体制が違った国、ソビエトだって中国だって、全部国交を正常化する方向に持っていって、友好条約を結ぼうという状態になっている。なぜ朝鮮民主主義人民共和国だけは、世界百数十カ国あるうちに、この国とだけ国交を開こうとしないのはどういう意味なんですかということを何回も聞いている。もう情勢は、ベトナム完全解放後、あるいはその前からいろいろと情勢が変わってきているのです。まるで地下水のようにずっと大きく世界情勢が変わっている。よく丹念に調べてごらんなさい。朝鮮側の対応の仕方というものは機敏である。非常に柔軟な態度を示しています。日本とは、何も日韓条約があるからと言って国交を樹立しない、そんなことを言ってない。宇都宮さんにも、われわれ、たとえば日朝友好促進議員連盟の会長は久野忠治さんでありますが、こういう与党の代議士、あるいはこの間自民党の代表団が行きましたね、そういう人たちに堂々と発表している。  だから、たとえばウラジオ会議のあたりからあるいはクロス承認なんという話も出ましたけれども、そんな自主性のないことではいけない。つまり日本が自主的にアジアの問題、特に朝鮮半島の問題を、韓国韓国と言わないで、朝鮮半島全般視野を向けたのがこのたびの共同声明だと三木さんおっしゃるならば、いいですか、何も南の方の韓国承認しているから、そうすると北は承認できないのだとかそんな考え方はおかしいではないかとこの前も私は言ったのです。その時期ではないとあなたは言ったけれども……。この国連総会中国代表権台湾にするか中華人民共和国側にするかで大論戦をしたときも、ちょうどアメリカのしり馬に乗って必死になって台湾擁護のためにやっていましたね。そうしたら、ものの一年もたたないうちに頭越しされてびっくりこいている。同じ情勢がいま来ている。もはや朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立に向かってあなた方は邁進する時期だと思います。これは総理大臣、最高の方針を伺いたい。
  7. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私どももやはり朝鮮民族の悲願は平和的統一にあると考えます。そのためには、朝鮮半島現状に対して急激な変化を与えることが、朝鮮緊張をいまのような緊張でなくして、いまのような均衡状態を維持する道でないのではないか。だからやはり現状を、いまのような平和維持一つ均衡状態を維持しながら、三年前には南北話し合いが始まったのですから、そういうふうな雰囲気をもう一遍つくり上げることができないか。だからそういう点で関係諸国というものがそういう国際環境をつくることに努力をしなければならぬ。だれが考えても、朝鮮半島全体の平和と安定というものがなければ、韓国と言ったって韓国だけが朝鮮半島から切り離されて存在するわけではないのですから、それは北鮮動向というものの影響を受けるわけですから、われわれが絶えず考えなければならぬのは朝鮮半島全体の平和と安定である、そのためにはやはり現在の均衡状態を維持して、その状態の中で話し合いが始まった経緯もあるわけですから、何とかそういう状態にもう一遍南北関係を持っていくことはできないか、われわれもできるだけそういうことに対して国際的な環境をつくることが必要だと考えておる次第でございます。
  8. 安宅常彦

    安宅委員 日朝国交樹立ということはつゆ考えない。バランスとあなた言うけれども、片一方承認して徹底的に援助をし、片一方は不承認にして徹底的に敵視政策をやっておる。それがバランスですか。そんなバランスはない。両方承認したらそれこそバランスがとれる。これは三歳の童子だってわかることじゃないですか。そういうことは考えたことがない、こういうことですか。長くなく簡単に言ってください。あるのかないのか。
  9. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 北鮮との関係はいまのところ人道とか文化、スポーツ、経済、こういう交流を積み重ねていって相互の理解を深めたいと考えておるわけで、いま直ちに北鮮承認ということが外交の日程に上ってはいないわけでございます。
  10. 安宅常彦

    安宅委員 これも田中内閣以前の歴代内閣とは大変違う後退したやり方、世界情勢から孤立した状態をつくる道をあなたはいま歩んでいる、これだけは言っておきます。  それでは宮澤さんに質問いたします。さっき言ったけれども、第三次五カ年計画終了後は政府ベースはやらぬと共同コミュニケで二回も確認しておきながら、なぜ急に転換をやったのか、その理由をちょっと聞かせてください。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は別段急に転換をしておるわけではございませんで、基本的にはやはり韓国経済がかなりよくなっておりまして、よくテークオフと申しますが、いわばそういう段階に達したということは確かではないかと存じます。ことに農業中心に非常によくなってまいっているように思いまして、この点わが国の多年にわたる援助の効果であるということは認められておるように存じますが、たまたまそういう情勢の中で中東の戦争が起こりまして、わが国よりはもう少し強い度合いにおいて外貨危機等々、リセッション、インフレーションが起こったようでございます。その段階で、世界銀行を中心にしましてIECOKという団体が韓国経済長期見通しを出しておりまして、毎年二十億ドルくらいの外貨の補給を必要とするであろうという意見を出しておりますことは御承知のとおりでございます。でございますから、基本的には韓国経済はすでに離陸の段階に達しておると思いますので、援助中心というものが民間の方に重心が移っていくということは今後ともそういう傾向をたどっていくのではないか。ただ、この際、いわゆる石油危機後の何年間かの処置について、当初予測されましたよりは韓国経済の運営が苦しくなっておるということは事実でございますから、その限りで、ある程度政府間のものも入れていくということは必要になろうかと思っております。
  12. 安宅常彦

    安宅委員 大変なごまかし答弁ですね。第三次五カ年計画失敗に終わったんじゃないのですか。ちょうど日本高度経済成長政策失敗に終わったと同じ理屈でしょう。特に農業中心にして安定してきたとか、あなたそんなことを言って、農林大臣に聞きますけれども、韓国の穀物自給率、たとえば圃場の整備状態、こういうことについて統計が出ておるはずですけれども、日本と同じようなものですね、自給率だって。圃場整備率なんて日本の植民地時代のときにやった分を含めて一四%しかまだやっていない。何が大変進んでいるのですか。農業はめちゃくちゃじゃないですか。だからいままで米の援助までやってみたりあるいはセマウル運動の援助をやってみたりしたんじゃないですか。  それからいま石油ショック以来の一時的なものだとあなた言ったけれども、そんなことありません。世界銀行の報告あるいは韓国代表団がいわゆるIECOKの会議に出した資料――世界銀行の資料はなぜあなた出さないか、これはぜひ出してもらいたいのですがね。どうもあなたの言うことは、世界銀行でもそう言っているとおっしゃっていますから、私ら盲でここで論議するわけにはいかない。ぜひ資料を出せと言ったら出さない。韓国の資料を出せと言ったらやっと出してきたけれども、仮訳もできてない。英文の分厚いものをぽかんとおれのところに置いていっただけですね。あなたイギリスの外務省じゃあるまいし、IECOKの会議がやられたのは七月でしょう。仮訳もできてないで、どんな討議をしどういうことを韓国が報告しているかということを外務省は本当につかんでいるのですか。仮訳もできてないというのはうそなんでしょう。なぜそういうインチキをやるのですか。ばかな話はない。そういう韓国自身が、あるいはその会議で言ったことが論議の中心になったと書いてあります。世界銀行の新聞発表によれば、一九八〇年まで毎年毎年二十億ドルずつ外貨が入らない限り韓国経済は成り立たない状態だ、こう書いてあるのですよ。そういうことを報告している国をほめてうまくいっているのだ。うまくいっているのなら何も政府があわててやることないじゃないですか。そういう理屈に合わないことを言ってあなたはごまかすが、それはだめなんです。ここで論戦しませんよ。  ただ、世界銀行の報告書とIMFの報告書の資料の要求を私出したけれども来ませんから、これは本委員会に資料としてぜひ出してもらいたい。どうでしょうか。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国経済がいわゆる発展途上国の経済から今日まで来たことについて、これを成功と見るか失敗と見るかは評価の立場が分かれると思いますけれども、少なくとも世銀あるいはIMFの評定では世界経済の中でやはり模範の一つであるというふうに評定をいたしておるようでございます。ただそれだけに石油ショックから受ける打撃がやはり大きかったであろうということは想像にかたくないと思います。  それから、ただいまのIMF、IECOKの資料でございますけれども、これはIECOK及びIMFのメンバーの政府部内の参考資料であるのでコンフィデンシャルに扱ってほしいという当事者の意思でございますので、この点については御提出を差し控えております。  韓国の資料につきましては御提出を申したわけですが、非常に大きな資料でございますので概略の仮訳を御提出をいたしたわけでございます。お求めがございますれば全訳を御提出いたしたいと思いますが、多少の時日をおかしいただきたいと思います。
  14. 安宅常彦

    安宅委員 体裁いいことを言わないでくださいよ。世界銀行でもIMFでも模範の経済情勢だと言っている、それを出さなきゃあなた論議できないじゃないですか。韓国ではこういう状態が起きて、そうして外貨の累積赤字がここで三十六億ドルと書いてありますね。五十億ドルを超えているという統計もあるのですよ。そういうことを出して、とにかく二十億ドルずつつぎ込んでもらわなければ私ら苦しくてかなわないから頼む、助けてくれというのが何が模範です。そういう情勢にあっても耐え得るような経済情勢がある国こそ模範。あなた経済のこと知らないと思ってよけいな、つじつまの合わないことを言わないでください。そうだったらその報告書を出してください。要点の仮訳は差し上げました――二週間も前から私はこれを全部翻訳してこい、時間がかかってできません、こういうことを言って要請ならば出しますとは何ですか、要請ならば出しますとは。二週間も前にあなたの方には通告してある。べらぼうな話じゃないか。私はあきれ返って、もう何もかにも言いたくないです。  ただ、三木さんに言いますけれども、このたびの農業中心にしてということをいみじくも宮澤さんが言った。この前の六月の予算委員会でもそうですが、ほとんど商品援助じゃないか。このたびの百十億円の交換公文で決まったものも、今後のやり方のいろんな情報をとってみると、農業というような問題についてはほとんど商品援助だ。つまり計画なんかどうでもいいのですよ。その都度その都度金をやるというやり方、はっきり言っています、この答弁で。鹿取さんという人も、今度何か大使に行ったそうですが、はっきり言っています。それはその分は再検討しなければならぬとあなたは私に答えたですね。答えていますよ。どんな再検討したんですか。決まったことは同じですよ、交換公文見たら。何にも変わっていない。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆるセマウル運動等の関係農業援助は二つに分かれておりまして、一つは特定された地域におきます農業基盤の整備について援助をいたしておる。もう一つは、御指摘のように商品援助の形において農業基盤整備のための資金をつくる、そういう二つの方法において行われておるわけでございます。
  16. 安宅常彦

    安宅委員 そのプロジェクトごとに今度は経済援助を開始する。いままでは、これは考えなければならないと大平さんが外務大臣のとき言った。中曾根さんが、たとえばどこの企業にそれをやらせるか、農業機械だったら農業機械でいいですよ、それは公開入札なんかも一つのいい方法だ、こう疑惑を持たれたんではまずいから、中曾根五原則というものを当時つくりまして、そこまで積極的にやった時代があるということを言って、商品援助をまだ出すというのはおかしいじゃないかと言ったら、三木さんの答弁は、「農業の開発のために韓国援助するということは、方向としては正しいと思う。しかし、いま言ったようなそれが、相当な部分が商品援助ということについては、そのやり方は、私は検討しなければならぬと思います。」何を検討したと聞いているのです。検討した結果はどういうふうになったのです。どこで検討したのです。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、地区を限定いたしましてのプロジェクトとしての援助、そのほかに一般的に農業基盤整備のための資金的な援助を主といたします商品援助、この両方でやってまいっておるわけでございます。
  18. 安宅常彦

    安宅委員 さっぱり変わらないということなんですよ。そんなことを言うんなら、この交換公文なんというのはロボットが結んだと同じことです。  ことしの一月十三日にすでに日韓協力委員会第十三回常任委員会がソウルで行われておりますね。岸信介さん、田中龍夫さん、あるいは北澤直吉さん、こういう方々が行って、もうすでにこのことを決めているんです。そうして農業援助の場合には、特別会計をつくってウオンで積み立てておいて、そうして今後そういういろいろな考えとか何かやるんだ、その金に使うんだ、農業開発基金をつくるんだ、こういうことまで相談してきているんです。同じことを交換公文で結んだだけです。それは非常に韓国ロビーだとかあるいは不実企業と結ぶとか、いろいろなことについてのおそれがある。とかく世評がある。それで、今度決まるというと、民間経済合同委員会、今度は植村さんを会長とする業者代表がだあっと乗り込んでいく。そういうパターンはまずいからこれは改めなければならないと大平さんは外務大臣のとき言っているんです。交換公文が結ばれた後、じゃどこの業者にしようかというので会議を開くのです、経済団体の方は。ところが、このたびはそうじゃなくて、交換公文が結ばれないうちに行ってしまっているのですよ、緊急に。  こういうことを考え合わせると、大変おかしいことが幾らでも出てくる。私は、この汚い韓国支配、きな臭い侵略のにおいだけがふんぷんとするようなやり方は、どうしても納得できません。こういうことをやめさせると、これも言ったんです。大平さんが外務大臣のとき言っているんです。同じじゃないですか。体裁のいいことを言っているけれども、ちょうどアメリカの場合に余剰農産物のやつをこっちで円で積み立てておいて、そして古い防衛兵器をアメリカから円で買うようにした。もう全部それはアメリカのひもつきの基金になっておったでしょう。それと同じことを今度日本が繰り返そうとしているんです。こんな重大な軍事援助経済援助というのはありゃせぬ。そのことを私は指摘したい。だから指摘するにとどめます。どうもあなたの方は、幾ら言ったってごまかし答弁ですから。  ただ、そこで聞きますけれども、別な問題ですが、日本は兵器を輸出することができない。特に紛争の当事者間のそういうところへやってはいけない。いろいろ言われて、何か三原則とかありましてね、言っているでしょう。だから韓国には出さないと言っている。たとえば日本の資本が一〇〇%あるいは五〇%入っている韓国の法人の場合でもいいでしょう。直接の会社の出張所でもいいでしょう。こういうところは韓国にいて兵器をつくることができるのですか。どうなんです。
  19. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御案内のように武器輸出には三原則がございますが、韓国の場合は武器輸出をしておりませんけれども、これは外国貿易管理法の四十八条というものを運用いたしまして、そこで韓国には武器を出さないということをやっておるわけです。ただ、韓国内の法人が武器をつくるということは、これは私は日本には関係ない、こう思います。
  20. 安宅常彦

    安宅委員 韓国日本の企業のことを外国法人と言っている、それがつくることができるのかと聞いている。これは日本人ですよ。日本人ですからどこへ行っても日本の憲法の制約を受けているはずですよ。いいですか。つくることができるのですか。
  21. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 武器の輸出あるいは武器の製造設備に関する輸出に関しましては、先ほど大臣から申し上げましたように、武器三原則あるいは貿易管理法の規定に従って規制いたしておるわけでございます。特に韓国に対しては、前国会でも、武器関連製品については輸出しないということを申し上げておるわけでございます。  ただいまの先生の御質問でございますが、仮に日本側資本が韓国資本と合弁いたしまして韓国内に法人を設立する場合、これはあくまで韓国法人でございまして、韓国法の規制を受けることになるかと思います。ただ、それとの関連におきまして、そういった合弁企業も含めて、武器製造関連設備、特に専用の製造設備は輸出しないことにいたしております。
  22. 安宅常彦

    安宅委員 もっと詳しく聞きます。  合弁事業のことをあなたは言った。これはもう一回答弁してください。それから、合弁事業でなくて、私が韓国に行って一〇〇%の資本で、私が代表者になっていって、韓国から見れば外国法人ということになるが、事業所、製造工場を韓国に持っている外国法人という立場で行った場合でもつくることができるのかできないのか。この二つについて。
  23. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 韓国における合弁企業は韓国法人でございます。
  24. 安宅常彦

    安宅委員 だれか答弁してくださいよ、大臣が。政治的な話だから。そんな答弁なってないじゃないか。何を言っているんだ。
  25. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと質問答弁と食い違っている……。
  26. 安宅常彦

    安宅委員 合弁事業をまず聞いたんですよ。だからつくることができるのかということを聞いているんです。それからそうではなくて、直接投資一〇〇%で、私が代表者で、そして韓国に工場を持っている、こういう場合はつくることができるのか。二つ聞いているのです。
  27. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘の場合も、それは韓国の法律に基づいて韓国内に設立されておるわけでございます。したがって、当方といたしましては、外資法上、企業進出する場合にこれをチェックし得るか否かというところが問題になるかと思いますが、現在御承知のとおり、外資法上資本進出は原則として自由化されておるわけでございます。
  28. 安宅常彦

    安宅委員 これは重大なことですね。たとえばいままで瀬戸物をつくっておった工場が一〇〇%向こうへ資本を持っていって兵器産業なんかやれません。こっちでも同じ物をつくっている工場があっちへ行くだけの話なんですよ、プラントを持って。そういうのは常識でしょう。日本の国内でつくって輸出をしては悪いけれども、韓国に行っちゃったらこれは資本輸出じゃないですか。そんな製品なんかよりももって重大なことじゃないですか。それは構わない、そんなばかな論理がありますか。日本人ですよ、日本国憲法の制約を受けているはずですよ。三木さん、これはどうですか。あなたの見解だけを聞いておきます。――いや、三木さん。
  29. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと待ってくださいよ。
  30. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど来政府委員答弁しておりますように、韓国の法人でございますから、日本がこれに対していろいろ条件をつけるということは、これはできぬわけでございまして、これは先ほど政府委員答弁したとおりだと思います。(発言する者あり)
  31. 安宅常彦

    安宅委員 私に食ってかかっていますが、注意してくださいませんか。食ってかかられたってこわくも何にもないけれども……。
  32. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 注意をいたします。食ってかからないようにしてください。(笑声)
  33. 安宅常彦

    安宅委員 まるでチンみたいでうるさくてかなわない。スピッツみたいじゃないか。キャンキャン言うな、スピッツみたいに。(笑声)  それでは次の質問に入りますが、韓国では最近防衛税というものを設けましたね。これは日本から行った法人、個人、いま言った類の法人あるいは個人に防衛税がかかるというふうに受け取っていますか。外務省はどういうふうに見ていますか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは先般閣僚会議の際に私が説明を受けたのでございますけれども、防衛税というのは所得税、法人税等々の付加税として課する方針のようでございます。したがいまして、韓国における個人、韓国における法人が一般的に負担をするのではないかというふうに私ども考えております。
  35. 安宅常彦

    安宅委員 個人もそうでしょうか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国の税法におきます所得税の納税義務者、法人税の納税義務者が付加税として恐らく負担をすると考えております。
  37. 安宅常彦

    安宅委員 ただ韓国の外資導入法で馬山やそういうところの自由地域にある企業や個人は、ある一定の期間は免税されていますね、所得税も法人税も。これが非常に大きな民族的反抗を、あるいは不愉快な感じを韓国に与えている原因になっている。これは免税になっているのですよ、やはりその分は。そうすると大変おかしなことになる。これははっきり書いていますから、軍事力を増強するために新たに設けた法律だということを。大統領緊急措置第九号を発して以来こういうことになった。こういうはっきりした韓国軍の近代化計画アメリカに余り迷惑かけないでやるつもりでありますということを、七月の中旬にワグナー米下院議員らと会見した韓国総理府担当秘書官がとくとくとしゃべっているのですね。そのために防衛税も全部払わなければならない、日本の法人も個人も。そうしてまたある部分はさっき言ったように支払わなくていいように、私はちょっとこの法律を見たら受け取った。これは外務省として、この問題についてはいろいろな意味で重要な問題を惹起する恐れがあるから、厳重にその状態をどういうふうになっていくのか、推移を見ていただきたいと思うのです。日本の憲法下において制約されている日本人が、韓国においてこういう韓国の軍事力の増強のための税金を払い、外国法人であるがゆえに韓国の法律に従わなければならないという、そういうことによって直接軍事的な力の増強に寄与しているという事実だけは、これはぬぐうことができない。結局、結論的にそうなりますね、事の良否は別として、三木さん、そうですね、そうなりますね。ちょっとこのことについて見解を聞きたい。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘のうちで私どもか調査をする必要があると思いますのは、付加税でございますから本税が免税になっている場合に付加税というものがあり得るかどうかという点は、これは仰せられますように調査をしておく必要があると思います。  なお、本論につきまして私の考えておることを申し上げますと、そのような課税が仮に一般的に所得税の形あるいは法人税の形でなされました場合でも、それは歳入としてどのような歳出に使われるかということはその国の主権に属することであろうと考えますので、それがどのような名前で呼ばれるかということは、恐らくその国において、その国の法令に従って行動をする個人、法人は、その国の法令に従わなければならないという一般論に私は帰着するのではないかと考えております。
  39. 安宅常彦

    安宅委員 ただ、こういうことを結果的に言って非常に上品な言葉を使いましたけれども、兵器を輸出したいならば政府援助によってそういうものをつくれる工場を韓国に資本投下をして、輸銀にしょうか、あるいは開発銀行、あるいは長期信用銀行にするか、私はわかりませんが、どんな場合でも民間の企業が乗り込んでいって兵器を生産することができる。輸出を禁止なんかしたってそれはまるでしり抜けなんというものじゃない、堂々とやれるということ、幾らでもやれるのですから三原則なんというものはもうしり抜けだということですね。これはあなた方認めたことになる。そういうことだけはきょう指摘しておきたいと思います。  あと、三木さん、宮澤さん、先ほどずらずらと言ったためにそのままになっていますが、世界銀行の資料を出してもらいたい、こう言いましたね。これはひとつ本委員会に出してもらいたいということを委員長からお取り計らい願いたいのですが、ついでにもう一つ私申し上げておきたいのですが、外務省は韓国経済協力調査団報告書というものをお出しになりました。ところが、これをつくられた方々、九人ほどですか、七人でございましたか、おられるのですが、この人々の原稿は――調査団は去年の四月行っているのです。その報告書は五月に外務省に出しているのです。ところがこの発行になったのは八月の日付ですね。われわれには最近になってきました。一年半投げておいて、そしてそのときには民間ベースに移るであろうなんて書いてあるのだから、まるっきり用をなさない報告書と言ってもいい、今度は政府ベースにまた逆戻りしたのですから。そういう報告書。ところがこの調査団に加わった学者先生方の報告書は、政策課でこれを全部第一課、第二課あたりに配付して、検討するということでチェックをしておるのですね。これは外務省の当時の経済協力局の政策課の藤井崇弘という、いま建設省の近畿地建福井工事事務所にいる方ですが、この人がやったということをはっきりみんな言っております。そして、チェックして原稿を全部直した。全部じゃないですが、相当部分直した。だから、われわれが出した報告書とは異質なものが出されているのだ、こう言っています。したがって、この報告書の土台になった原本を資料として本委員会に出していただきたい。この二つ。
  40. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお尋ねいたしますが、世界銀行の何の資料だというのですか。世界銀行の資料と言ってもわからないでしょう。
  41. 安宅常彦

    安宅委員 略称IECOK、これはイーコクと言っているのです。その会議が七月にあった。そのときに出した世界銀行の報告書であります。パリで開かれた会議です。
  42. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 わかりますか。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おっしゃっておられます資料のことはわかっておりますのですが、実はこれは日本政府が出したものではございませんで、そういう国際団体が各国の内部検討用に出したものであるので、公にしたくないということを実は申しております。重ねてのお話でございますから、もう一度私ども提出することができるかどうかをIECOKとIMFに照会をいたしてみます。
  44. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 外務大臣、なるべくひとつ出せるようにお骨折り願います。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 発行者とよく相談させていただきます。
  46. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それからもう一つ韓国経済調査団、何の韓国経済調査団ですか。
  47. 安宅常彦

    安宅委員 そのままでいいのです。
  48. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 そのままだが、それは議員団のあれですか。
  49. 安宅常彦

    安宅委員 外務省は知っておるのです。外務省が派遣した韓国経済協力調査団です。
  50. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それでわかりますか。
  51. 菊地清明

    ○菊地政府委員 わかります。
  52. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 では、わかったら出せますか。
  53. 菊地清明

    ○菊地政府委員 お話の韓国経済協力調査団の報告書でございますけれども、それは先生お手元に持っておられるものでございます。ただ、その原稿につきましては、作成の段階でいろいろなことがございましたけれども、最終的にまとめたものでございまして、現在その原稿は手元に残っておりませんので、保存しておりませんので、残念ながら……。
  54. 安宅常彦

    安宅委員 出してください。
  55. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 出せるのですか、出せないのですか。
  56. 菊地清明

    ○菊地政府委員 保存しておりませんので、お出しすることはちょっとむずかしいと思います。
  57. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 出せないのですか。イエスかノーか、どっちだ。
  58. 菊地清明

    ○菊地政府委員 保存しておりませんので、出すことはできません。
  59. 安宅常彦

    安宅委員 保存していないということはありません。ごく最近までありました。それは私知っているのです。防衛庁と同じみたいなことを言うのですか。廃棄したと言うのですか。そんなこと絶対にないよ。絶対にないぞ、それは。  これは非常に奇怪なことでありますので委員長に申し上げておきますが、ぜひ知ってください。こういう質問通告をやったら、福井まで、あるいは団員であった学者先生方みんなに全部電話をかけて、川野さんという東大の名誉教授が団長で行ったのですけれども、その人は団長で参ったのですから、まとめておりませんから、さすがに私はその方に資料を出せとは言いませんでしたが、その方々に、全部そういうものはないと言えと手を打っていますよ、おとといの晩。その先生方が書いたのですから原稿なんというものじゃない。報告書なんですよ。それが報告書ですからそのまま書けばいいのです。それをまとめて改ざんをして、結論があべこべになったような文章もありますと言っているのです。だからそれを出してくれと言ったら、直ちに夜中じゅう手を打ったじゃありませんか、あなたの方で。全部知っているのです。保管してないなんてことありません、保管しているはずです。
  60. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 菊地経済協力局長、出せないのですか、それは。
  61. 菊地清明

    ○菊地政府委員 はい、ございません。  この調査団報告書を作成する過程においていろいろな原稿がありまして、団員が分担してやりまして、最後に川野東大名誉教授がおまとめになりまして、それを委託先である国際開発センターというところから外務省に御提示がありましたのが本年の三月末でございます。その後開発調査団の方から……
  62. 安宅常彦

    安宅委員 そんなこと聞いてないじゃないですか、時間がたってかなわない。(「われわれは聞きたい」と呼ぶ者あり)
  63. 菊地清明

    ○菊地政府委員 それでは経過をちょっと申し上げさしていただきますが……
  64. 安宅常彦

    安宅委員 いや、経過は要らない。
  65. 菊地清明

    ○菊地政府委員 その原稿はございません。
  66. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それは何とかして出せるのですか、出せないのですか。
  67. 菊地清明

    ○菊地政府委員 これが報告書そのものでございますので……
  68. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 出せないのか。
  69. 菊地清明

    ○菊地政府委員 はい。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと私から申し上げますが、報告書はお出しすることができますが、報告書のもとになったたくさんの人の原稿は出せないということです。
  71. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 原稿は出せないんじゃ、そんなものはだめだ。調査書は出せるなら出しなさい。
  72. 安宅常彦

    安宅委員 原稿ではないのです。原稿というのは、ことしの三月にまとまってきたというのは、これは責任者としてやったのは堀内さんでございましたかな、この人がやって、一章、二章のところはこの人がずっとまとめたようですね。そうでしょう。それはことしの三月ですが、先生方が出したのは報告書であって原稿ではない。それは二章、三章以下は、今度はそこでまとめるのではなくて、その具体的なプラントごとのあれですから、まとめられるものじゃないのです。見学してきたこと、調査してきたことをそのとおり先生方が書く、報告書なんです。それをそのとおりまとめればいいけれども、そうではなくて、都合の悪いところは全部直したというのです。直したのとまとめたのとは違うのです。直したのは外務省の政策課を中心にして各課に配って、検討だということでやった。それはだれも、この人もまとめていないのですよ、それは直したのですから。そのために文書がぐるぐる回っているのですから、ないなんてことはないです、あるのです。それは原稿ではないのです。  それで、今度外務省の調査官に採用になっておりますね、この行った人一人が。この人なんかは別として、そのまとめた分はそれは原稿でもいいですよ。しかしこれはあくまでも調査報告書です。外務省が直接行くよりは、こういう民間の人方が行った方が客観的に正しい結論が出るであろうなんて、うまいことが書いてあるのですが、出ないじゃないですか、直したのですから。おかしいです。ないとは言わせない。
  73. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 言わせないそうだ。どうだ。(笑声)だから、出せるものは出し、出せないものは出せないとこう言えばわかりいいのだが、御答弁願います。
  74. 安宅常彦

    安宅委員 学者先生が出すときには、報告書というものは、自分の原本をとっておいて、コピーでもって出しておりますよ。原稿ではない。だから、その行った方々が数人おりますから、その人から、原本をコピーして、どっちか、コピーの方を外務省に出したはずですから、政府としては、その原本をもう一回写させていただけませんかということでやったら、それは外務省にはなくても、先生方は持っておられると思うので、それはぜひ出していただきたい。それでないと、経済援助のことについて正しい論議ができないからです。
  75. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 どうであっても出せないものは出せないと言っているし、出せるものは出せるだけ出せと言っているのです。後ほど理事会で検討しまして、出せるものは出すように努力いたしましょう。
  76. 安宅常彦

    安宅委員 とにかく資料を出すのは当然でありまして、できるだけ出すようにいたしますと言うが、できるだけ出さない方が多いのですよ、外務省は。そういうことをしないでくださいよ。国会は知らなくていいのだ、こういうことじゃいけません。  あと、私はこの経済援助について、特に農業援助の問題に触れなければならない、こう思っております。外務大臣も、農業は非常にうまくいっていると言っておりますからね。  これは農林大臣に聞きますが、ちょっとさっき触れましたけれども、あなたは一耕作反別、人口、それから今日の韓国の圃場整備の進捗率、自給率、こういうもの、それから外貨をどれだけそのために韓国は食わなければならないかという問題、こういう問題を総合して非常に発展しているというふうに考えておられますか、どうですか。外務大臣はそう言っていますがね。
  77. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 韓国農業につきましては、基盤整備などは、先ほど安宅委員もお触れになりましたが、一四%程度、日本が三十数%でございますので、日本に比べるとずいぶんまだおくれておるというふうに考えておりますが、その他の農産物等の自給率等は徐々に向上しておる、こういうふうに思っております。
  78. 安宅常彦

    安宅委員 徐々に向上してないでしょう。自給率は日本と同じような傾向をたどっているのじゃないですか。あなたの方の統計なり資料というものを私もらって言っているのです。そうおっしゃらないでくださいよ。  とにかく、それはそれとして、日本農業を一体どうするか。ゆうべNHKのテレビを見ていましたら、何ですか農業の国際化に伴う、それに対する食糧問題懇談会というのができて、それで十年後は食糧事情は日本はどうなるだろうか、悪くなるというのが五八%、よくなるというのは五%だと放送していましたね。そして食糧というものは国内でできるもので間に合わせてもらいたいという意見が七一%、外国から輸入してもいいじゃないかというのはたった一〇%しかない、こう言っていますね。だから、自給率というものは非常に重要なことで、三木さんが訪米した後、あなたがバッツ農務省長官のところに頭を下げて、食糧を武器にして世界戦略をやろうというアメリカにわざわざ自分から巻き込まれて乗り込んでいって頭を下げて、そしてぜひ三年間の食糧の確保のために長期安定的に売ってもらいたい、こういうことをあなたがお願いにわざわざ行っているんですね。そういう国柄であるのに、なぜ――たとえばことしなんかは余り米を政府が買い上げない。農民団体は大騒ぎしているでしょう。そういうときに備蓄をする制度をつくるなり、これらの米もひとつ引き取ってあげましょうというくらいの熱意があるならばいざ知らず、自分の農業、農民を破壊しておきながら、韓国の方に巨大な農業援助をやるというのは理路整然としていない、一貫していない態度ではないですか。どうですか。
  79. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまの国際的な食糧事情の中におきまして、わが国におきまして自給力を高めていくというのがわが国の農政の最大の課題でなければならないのは当然でありますし、自給率そのものも、穀物等は非常に低いわけでございます。総合自給率等も七一・二%ですから、これを七五%にするということで、十年計画で自給力を高めるために最大の力を注いでいかなければならぬのは当然でございますが、同時にまた、海外に対するいわゆる経済協力という面におきまして、海外諸国の要請にこたえて農業協力もその中で行っておるわけで、対韓経済協力の中において、やはり韓国農業の基盤等が非常に弱いというようなことから、韓国等がセマウル運動の中で日本農業協力を求めておるということで、経済協力の中の一環として農業協力をやっておるということであろうと思います。
  80. 安宅常彦

    安宅委員 あなた、韓国の農民のことを考えている農林大臣なのか、日本の農民のことを考えている農林大臣なのか、はっきりしてもらいたいのです。  あなた、自給率を二%十年後に高める計画を持っていますと言っても、あれは、よく計算してみますと、オリジナルカロリー計算でいうと、かえって三%ぐらい――いま四〇%台やっとでしょう、そういう計算でいくと。いま七十何%なんと言ったけれども、それが十年後には逆に三七%ぐらいに減る計画でしょう。たとえば飼料穀物なんかは逆に輸入がふえる計画になっている。そういう計画なんですよ、あなた方の計画は。だから、みんな国民は、それをこのごろ新聞やテレビが取り上げるから、国内で間に合わせてくれというのが七一%も、ちゃんと世論調査に出ている。それを全然手をつけないでおいて、自給率の減るような計画をふやすのだとごまかしておいて、そうして韓国農業援助をやらなければならないという理由はない。  それくらいのことは、たとえば圃場整備の問題で言うならば、韓国は、日本の植民地時代のときにやった圃場整備、ずっといまの農業のような近代的なものではありません。耕地整理という程度でしょうね。それが一〇%入って一四%なんですよ。だから、あの国で自分の力でやったのは四%しかないということになる。それくらいの自分の食糧は――これはアメリカに対してあなたが言ったのと非常に対照的で申し上げにくいのだけれども、韓国だって、そういう日本の資本で農業を構造改善するのじゃなくて、それこそ自助というのですか自力でやる。そのように農業という民族の問題、食糧を解決しなければならない。この農業の開発というのは、外国に頼るのは間違いだと私は思っている。そういう意味で韓国が自分の力でやるのが正しいと思っているのです。そういうところまで援助する必要はない、私は断固として中止を要求いたします。  この問題はこれだけにしておきますが、さらにわが日本政府は、韓国のことというと何でも便宜を図るんですね。ここに韓国の新聞があるのです。これはソウル新聞、東亜日報、それから朝鮮日報、韓国の新聞が皆あるのです。これは発行所を、発売所をゴム判で押しまして、実はソウルで発行されているのですけれども、ここにびたっと押して、第三種郵便物の認可の印刷もなっていないから、これはゴム判で押して、そして第三種郵便物として認可して、郵政省、きょうあたり何か衆議院危ないなんて新聞に出ておりますが、値上げはしなければならないなんて言いながら、こういうのは安い値段で出せるように便宜を計らっておる。こんなゴム判でぺたぺた押してやっている新聞は、ニューヨークタイムズやロンドンタイムズや、そういうものを含めてどこの国にありますか、日本の第三種郵便物。どこかありますか。韓国だけじゃないですか。郵政省、どうですか。
  81. 廣瀬弘

    ○廣瀬政府委員 ただいま外国語であらわされた刊行物で第三種の認可を受けておるものはたくさんありますが、ゴム印によるものにつきましては、余り私ども承知いたしておりません。
  82. 安宅常彦

    安宅委員 余り承知しておりません、だから、ここだけじゃないですかと聞いておるんですよ。――まあいいや。  そして今度朝鮮の方でも、共和国で出している新聞、労働新聞、民主朝鮮とかいろいろあるんです。だから、南の方でゴム判でやっていますから、私のところもそうしていただけませんかと言ったら、初めいいと言ったそうです。後、上の方と相談してみたら、だめだ、これは好ましくないから、ゴム判じゃなくて印刷してくれというふうに指導している最中でありまして、あなたの方は許可するわけにまいりません、そういうところはなぜバランスじゃないのだ。差別をつけているんですよ、三木さん。いいですか。こんな細かいことまで言っては失礼だけれども、そんなばかなことがありますか。直させますと言ってくださいよ。郵政大臣、言ってください。
  83. 村上勇

    ○村上国務大臣 現在、第三種郵便物の認可を受けている新聞の中には、朝鮮語によるものが数種類ありますが、これらの新聞は、いずれも日本国内の発行所で発行しているという申請に基づいて認可しているものであります。それらの中には、御指摘のように発行所等をゴム印で表示しているものもありまして、日本の発行所等の表示が必ずしも明確でないので、明確にするよう指導してまいりたいと思っております。
  84. 安宅常彦

    安宅委員 いつまでにその指導を完了するのですか。国会で問題になって――ただし、これは記載すればいいと書いてありますから、ゴム判で合法じゃないかとこの発行所に言われたら、あなたの方どうします。だから、どっちにするにしても、バランスをとって、三木さんいいですか、同じ処遇をすればいいじゃないですか。北はだめだ、南はオーケー。北の方にも言ったのです、ゴム判でなんてさもしい根性を起こすな、第三種郵便物だったら郵便物の印刷をすればいいじゃないですかと。東亜日報なんかちゃんとしているのです。そういうふうにきちっとするのが正しい。あなたは何かやる、指導するそうですが、二年も三年もかかるわけじゃないでしょうね。半月とか一カ月とかでしょうな。
  85. 村上勇

    ○村上国務大臣 可及的速やかに善処いたします。
  86. 安宅常彦

    安宅委員 可及的速やかにというのは、年内などを想定してよろしゅうございますか。
  87. 村上勇

    ○村上国務大臣 なるべく早い機会に処置いたします。
  88. 安宅常彦

    安宅委員 それでは郵政省にまた続いてお聞きいたします。  年賀はがきは発行部数などを決定されたのはいつで、そしてそれを大蔵省印刷局で例年やっているようですが、以下何社かのところに印刷を契約したのはいつですか。それをお聞きいたします。
  89. 福守博一

    ○福守説明員 年賀はがきの発行枚数については、まだ決定しておりません。
  90. 安宅常彦

    安宅委員 発行枚数を決定しないで印刷するというのはおかしいじゃないですか。印刷は始めていて、発行枚数を決定していないというのはおかしいのじゃないでしょうか。
  91. 福守博一

    ○福守説明員 年賀はがきは大量に売りさばくものでございますが、さきの国会で郵便法の改正案の成立を見ることができませんでしたけれども、大量の年賀はがきを調製する期間、配送などを考えますと、決定を待ってかち調達を行うということの余裕がございませんので、印刷に着手したわけでございます。     ―――――――――――――
  92. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと申し上げます。  質疑の途中でありますが、ただいま英国下院議員団団長アイフォー・ディヴィス氏外御一行七名の方々が傍聴に見えられましたので、御紹介申し上げます。     ―――――――――――――
  93. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 質疑を続行いたします。安宅常彦君。
  94. 安宅常彦

    安宅委員 発行部数はわからないけれども、まだ決定できません、しかも、それは郵便料金の値上げを期待して、御決定があったときに発行枚数を決定するつもりだ、こういう答弁ですね。そういうことはおかしいと思いますが、郵政大臣どうですか。一たんこの間の国会で廃案になったのでしょう。それを七月に印刷を開始しているんですよ。そうですね。だから、上がるか上がらないかわからないでしょう。上がるか上がらないかわからないときには、私は上がらないと思いますが、もとのままの料金でのはがきを刷るのが当然じゃないでしょうか。そして枚数もこれぐらいだろうということを決定して――請負をさせると言ったって、発行枚数も決定しないでできやしないじゃないか、郵政大臣。ただ請負は勝手にいいあんばいぐらいでやったのですか。これはどうなんです。郵政大臣どうですか。これは責任問題じゃないですか。
  95. 村上勇

    ○村上国務大臣 昭和五十一年用のお年玉つき年賀はがきは、現行郵便法に規定する郵便料金の料額印面で目下印刷、調製中であります。
  96. 安宅常彦

    安宅委員 おかしいと思うんですよ。発行部数が決まらないで請負――たとえば家を何十万で何ぼつくるかわからないで大工さんに注文したなんてことありますか。そうでしょう。発行部数が決まらないのにもう印刷にかかる、何ぼ刷ってくれと言うのでしょうか。契約書をちゃんと取り交わしているはずですよ。そんなばかな話はないと私は言っているのです。
  97. 村上勇

    ○村上国務大臣 部数につきましては、大体例年の例を基本にしてその部数を決めております。
  98. 安宅常彦

    安宅委員 部数を決めてないと言うのですから、おかしいじゃないですか。おかしいですよ、そんな請負契約があるでしょうか。どんな契約をなさっているのですか。重ねてお伺いいたします。
  99. 福守博一

    ○福守説明員 七月に二十三億の調達の契約で進めてございます。
  100. 安宅常彦

    安宅委員 ところが、私は、これはまたばれると困るので、この文書を見せるわけにいかないのですけれども、「ことしは発行部数も決まってない。発行部数未定のため各局別配分枚数も確定していない状況であるが、輸送体制の現情勢から見て」云々と書いて、やはりそういう文書が出ているんですね。そして配給局にはだあっと八月上旬あたりからもう配付し出しているんです、印刷も開始して。いいですか。配給したところが――配給局というのは、県庁所在地とか比較的大きい局です、そこに到達したものは郵袋、昔の郵便行のうですが、郵袋に詰めたままで後は開いてならないと言うのです。中身は見て悪い。何ぼ入っているのかわからないのに領収証を出せと言うのです。これは、あなたの方の会計処理規程で、切手類なんかあけるときは立会人をつけて厳重にしてあけろと、ちゃんと細々と、これは時間がないから言わないけれども、規定しているんですよ。いいですか。それは中身を見ることもできない、袋だけ見て領収証を出せ、そんなばかなことがありますか。  時間がないから続けて言いますが、今度政府が郵便料金の改正案、値上げ法案を九月の下旬に衆議院に提出した。同じころに、今度はそれを「配給局から下の方まで配ってよろしい」そのかわり、その時点では郵袋はあけてもよろしい、しかし――皆さんお買いになるときは大体二百枚の袋ですね、二百枚の包装になっていますでしょう、あれは四千枚が段ボールに入っているのです。四千枚の段階まではいいけれども、それ以上は「ばらしてはならない」こう書いてあるのです。(発言する者あり)だから、これも中身を点検しないまま領収書を出せ、こんな指導をしているんですね。絶対あけてはならない。だから、恐らく二十円で刷ったんだろうとか十円で刷ったんだろうとか、みんな想像をたくましゅうしておるんですよ。さっき不規則発言でありましたが、私は申し上げます。あけてびっくり玉手箱、何が出るかわからないけれども、ぜひお年玉はがきを出してください。ここへ現品を出してくださいよ。そうしてあけてみようじゃありませんか。二十円になったら大変ですよ、三木さん。それはわからないんだからしょうがないです。いつもならば料額というものは包装紙に至るまでちゃんと書いてある、何円のはがきでございますと。切手もそうですよ。そうして郵送になっているのを、ことしだけは料金も額も書いてないんです。そしてその区別は赤と緑で区別しろ、十一円という寄付金付のやつは赤、ついてないやつは緑とかいう、そういうふうにして区別しなさい、包装紙もそういう色になっているから、料金、金額は書いてないから、例年書いてあるんだが、ことしだけは書かないから、だから間違うななんて書いてあるんです。間違うなと言ったって、中身見なければ、十円のものやら二十円のものやらわからないじゃないですか。郵政省、出すことできますか。さっきちょっと不規則発言なんと言って、途中で言葉をやめましたが、堀先生だと思いますが、その印刷の際の契約書ですね、それを含めて両方出してくださいよ。とにかく現品はすぐ持ってきてくださいよ。
  101. 村上勇

    ○村上国務大臣 昭和五十一年用のお年玉年賀はがきにつきましては、料額が確定していない段階でありましたので、製造、配達期間の関係から、現行料額のはがきの配分をいたしました。配分に当たり、本省から開袋するなというような指示をしたことはありません。しかし郵便局におきましては、料額がすでに決まったような印象を与えることを避ける配慮から、御指摘のような指導をしたところも見受けられましたが、間もなくこの措置も改められました。
  102. 安宅常彦

    安宅委員 あなた笑っていますけれども、あんなに厳重な手続規程をつくっておいて、中身も見ないで領収証を発行しろなどということを言。たら、従業員の綱紀というんですかね、そういうものをあなたきちっと押さえることができますか。でたらめなことをしろということを指導しているんですよ。郵政省が出した覚えはありません、そんなことはありません、あなたの方でそういう文書を出さない限り、郵政局がそれを受けて通達を出すはずがありません。  きょうは、ここでは私は時間がないから詰めませんがね、そんなに厳重に立会人も設けてあけろというのに、このたびは赤と緑で区別して、間違えないようにしろなんという、そんなことをしたら従業員に示しがつきますか。そんなばかなことがありますか。だから、私は最後に言いますよ。これはどうですか、年賀郵便の発売日は例年のとおり確定しているでしょうな。
  103. 廣瀬弘

    ○廣瀬政府委員 ただいまのところ、まだ発売日は決定いたしておりません。
  104. 安宅常彦

    安宅委員 そこがずるいんです。これはおかしいと思うんです。発売日はよほど前に言わないと、印刷する人もいる。ことしは何の年でしたか、何か漫画なんかかく人もいる。そして十二月の何日だかまで出さなければ一月元旦に配達してやらないぞ、二十九日ごろ死んだらどうするんです。そんな制度もおかしいのだけれども、発売日を、何か国会をにらんで、そして立法府へ何か圧力をかけるというのでしょうか、あるいは守る本分というものを乗り越えて非常に微妙な意思表示をしながら期待しているなんということは、私、許すことができないんです。大変不便になりますね。そうでしょう。どうするんですか、発売日をおくらせたら。実際にみんな肉筆で書く人なんか間に合わないですよ。それは例年のとおりにしてもらいたい。  それからもう一つは、これは確約できるか、あなた答弁願います。ちょっとはがきの見本を持ってきましたね。これは一枚なんか持ってきたってわからないんだ。本当は裂いてみるということをしなければわからないんだけれども、現物をそこへちょっと持ってきた後、だれか持っていったけれども、あれはどうしたんだ。あれはどういうふうにするつもりなのか。まあとにかく十円で刷ったんですから、もうあきらめなさいよ、郵政大臣、発売日も。印刷もしなければならないし、肉筆で書く人もいる。何百枚書く人もいる。それは十円で刷ったんだから潔く……。  何か新聞の報道によると、午後から強引に本会議を開くとか開かないとか言われていますが、こういうことを郵政省自体がやっているところに問題があるんです。いいですね。大変な、あなた方の部内の規程にまで違反してやっていることは、部内の職員に示しがつきますかと言ったのです。あなたの見解をひとつ承って、この問題はこれで終わりたいと思います。はがきは出してください。
  105. 村上勇

    ○村上国務大臣 例年におくれないようにということをいま考慮に入れております。発売日は大体例年どおりにいたしたいという……。
  106. 安宅常彦

    安宅委員 大体……。
  107. 村上勇

    ○村上国務大臣 大体。
  108. 安宅常彦

    安宅委員 大体を抜けよ。それじゃ間に合わないのだよ。
  109. 村上勇

    ○村上国務大臣 間に合うようにやりたい、やります。
  110. 安宅常彦

    安宅委員 それでは確認しておきますが、印刷のための契約書の写し、それからはがき、出せと言ったら持ってこないじゃないか。せっかくここまで二枚ほど持ってきて、何で持っていっちゃったの。それを出してくださいよ。いいですね。私は十円だか二十円だかわからなかったのです、本当に。ごまかしているんじゃないかと思ったのです。まさかあそこを空白にはできません。郵便法には料額を記載しなければならないと書いていますから、それはわかるんですがね。はがきどうしたのですか。ちらりと見せて後返したのはおかしいじゃないですか。
  111. 村上勇

    ○村上国務大臣 ちょっと先ほどの私のお答えの中で、発売日は例年におくれないようにということでありましたが、例年は十一月五日でありますので、例年どおりということになりますと、いろいろと都合がありまして、なるたけお急ぎ願って、急いで私の方も発売するようにいたしたいと思います。(笑声)
  112. 安宅常彦

    安宅委員 笑い事じゃないです。一たんあなた、大臣が答弁したのです。それで郵務局長から耳打ちされて、そして再答弁する。再答弁を要求していないのに勝手に出てきた、こんなことは認めることはできません。
  113. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 いや、私が催促して出てきたのです。
  114. 安宅常彦

    安宅委員 何です、質問もしないのに出てくるのは。
  115. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 いや、質問していたのです。
  116. 安宅常彦

    安宅委員 質問しないのに何で指名したのですか、それはおかしいではありませんか。
  117. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 委員長が呼び出したのでありまして、委員長の権限で呼んだのだ。
  118. 安宅常彦

    安宅委員 一たん出たものは、綸言汗のごとしということもあるのだが、どうなんですか、それは。おかしいじゃないですか。それは承服できない。
  119. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 何が承知ができないのですか。
  120. 安宅常彦

    安宅委員 同じ問題について、あわ食って二つ答弁するなんておかしいでしょう。
  121. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 おかしくありませんよ。これはあなたが質問して、全員にわかるような答弁を大臣がするのはあたりまえです。
  122. 安宅常彦

    安宅委員 じゃ、はがきは持ってきてください。なぜ持ってこないのですか。ちらりとちらちらさせて持っていったのはどういうわけかと聞いているのだ。
  123. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 はがきはなかったのか。
  124. 安宅常彦

    安宅委員 あったでしょう。ここまで持ってきたじゃないか、さっき。なぜ持ってこれないのですか。
  125. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 持ってきて見せちゃ悪いのか。
  126. 廣瀬弘

    ○廣瀬政府委員 ただいままだはがきの規格につきましては、告示前でございまして、これをまだ公表はいたしておりませんので、ただいまのところは提出することはできません。
  127. 安宅常彦

    安宅委員 そんなばかな話ありませんよ。印刷しているのと告示とは違うのでありまして、せっかく持ってきて出さないというのはおかしいじゃないですか。どういうわけですか。出せないのだったら、初めから持ってこなければいいのです。それはおかしい。(「審議できない」と呼ぶ者あり)
  128. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それは審議とは別なものでございまして……。  見せてはまずいんですか、どうなんですか。見せちゃまずいのかね。こうやって見せればいい。見せろ。見せてまずければ見せるな。
  129. 安宅常彦

    安宅委員 見せたっていいじゃないですか。今度改めましたと言ったじゃないか。ばらして悪いということは改めましたとさっき言ったじゃないか。持っているんだよ。
  130. 福守博一

    ○福守説明員 これは、まだはがきというよりは試し刷りの見本でございます。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行。  いま大臣が答弁をしたのを役人から耳打ちをせられて訂正する、まさにロボットですよ。私が常に言っておる行政府の国会に対する態度が、しかも大臣でなくて官僚の諸君によって軽視せられておるという事実が明らかになりました。それだけを指摘しておきます。  もう一つは、いま安宅委員が要求いたしました契約書の写し及び印刷した実物を提出していただく。これは公表じゃありません。ここへ出すことは公表ではございませんから、それだけは確認していただきたいと思います。
  132. 村上勇

    ○村上国務大臣 先ほど耳打ちで云々ということでありますが、私が昨年、一昨年の発行日を承知していなかったので、発行日はいつかということを聞いたことだけであります。  しかして、安宅委員のただいまのその契約書等を出せという御要求でありますので、これはなるべく早く出したい、かように思っております。
  133. 安宅常彦

    安宅委員 三十億枚も試し刷りをするばかはいないので、そういう官僚的な感覚じゃなくて――私は郵政省の飯を食った人間なんです。だから、資材部長がかわいそうで見ていられないみたいなものですが、試し刷りということはない。それは四千枚のダンボールをあけてはならぬということを改めましたと、にこにこしながらあなたは私に答弁したでしょう。だから、ここに公表ということはどうか、予算委員会に出すのは公表じゃないでしょう。出したっていいじゃないですか、印刷したものをなぜ出せないのですか。それは試し刷りじゃないですよ。それは訂正した上で出しなさいよ。それでいいじゃありませんか。出すんですか、出さないんですか。契約書は出すと言ったからいいですよ。現物を出しなさいと言っているんです。
  134. 村上勇

    ○村上国務大臣 何も隠す必要はございませんので、それは出しますからどうぞ……。
  135. 安宅常彦

    安宅委員 いま出しなさい。いま持っているじゃないですか。取り消しなさい。ちゃんと取り消して出しなさいよ。
  136. 村上勇

    ○村上国務大臣 公表でありませんので、これは委員長の方から……。
  137. 安宅常彦

    安宅委員 試し刷りというのは訂正いたしますね。
  138. 村上勇

    ○村上国務大臣 これは訂正します。
  139. 安宅常彦

    安宅委員 大変申しわけないのですけれども、ごたごたしてしまってなんですが、最後に外務省にお伺いしておきます。  時間がないので、これは後であなたの方と相当打ち合わせなければならないことなので重要なんですが、最近、ここ数年間、私どもが把握しているだけで中村正雄さん、夏谷進さん、あるいは沢本三次さん、それから伊東玄太郎さんなどの日本人が、スパイ罪で、あるいは未遂罪で起訴されて、一審、二審死刑や三審まで死刑という例が四人ほどあるのです。これは日本人です。  これは時間がないから簡単に言いますが、早川、太刀川事件なんというときには、あなた方はいろいろ外交折衝を、私から見ればボス交渉、取引みたいなという批判を私は持っておりますが、そこまでやってあの人たち日本に帰したんですね。韓国側も、拷問されたとかあるいは韓国側のやったことをうそを言ったりしない、宣伝しないという条件ならば帰すなどという公式な表明をしながらあの二人を帰してよこしましたね。  この四人については、外務省は、この判決があったときに、あなたの方のアジア局長や、あのときちょうど次長から局長になられた日かその辺でしたね、そういう人々に、これは重要なことだからというのでちゃんと話をしているのに、外務次官が一日置いて、まだ報告を受けていない、こういう新聞記者会見をやっているんですね。これは新聞に載っていますよ。そうしたらあわてて、それは大変申しわけないと後で謝ったそうでございますけれども、こういうやり方。大体、日本人が外国に行って外国の法律の規制を受けるなんというのは、私どもは万々わかっておるんですよ、しかし、日本政府が発行した旅券でもって諸外国に行って、いいですか、そこまで罪名の中に挙げられている、そういう起訴状まであるのです。それから、この前も言いましたけれども、起訴状や判決文というのは家族によこさないんですよ。よこすと弁護士さんがやられると言うのです。だから、弁護士さんは出せませんと言うのです。だから、何のためにお父さんが死刑になったのかわからない家族がいる。ほとんどなんですよ。そうしたら、外務省から資料を要求したら、最初は二、三人分出してよこして、それこそ仮訳みたいに韓国の文字の上に日本文をがしゃがしゃと書いてこんなものをよこして、そうして資料でございますなんて、そういうことをやってみたり、どういう手を打ったかと言ったら、口上書をもってやりました。口上書というのは文書でやりましたか。全部口頭でやりました。口頭ということはないでしょうと言ったら、口頭だろうが文書だろうが実体的には効果は同じであります。こういうばかなことを言いながら、日本国の政府として、日本人が韓国で死刑の判決を受けて、そして牢屋に入っておる者に何らの手を打たない。こんなばかな政府が世の中にあるでしょうか。このためにアメリカあたりでは、韓国が民主化がならないうちは経済援助を打ち切るべきだという議論があったり、西ドイツなどは、これに対して経済援助を打ち切ったことさえもあるじゃありませんか。少なくとも、大体こういうものは好ましくない人物だから国外追放とかなんということはあり得るけれども、全部びたびた死刑。こんなファッショ的な、言論の自由も何もない国に経済援助をやるというのは断固中止してもらいたいということを最後に言いながら、この問題については日本国らしい、政府らしい措置を、この人たち日本国民として将来、生活も何も保障されるような措置を必ずやってもらいたいということを要求して、あなたの見解をただしながら、これで質問を終わります。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘の人々は、日本国籍を取得いたしておりますので、私どもとしては事件の成り行きにつきまして実は深い憂慮を持っております。実は何もしておらないわけではございませんで、いろいろなことをいたしておるのでございますが、ことにその中の一人の人は、やや心神を喪失しかかっておるような心配すべき状態でございまして、そういうことにつきましても、私どもいろいろな意味での接触をいたしております。最善の努力をいたしたいと思います。
  141. 安宅常彦

    安宅委員 三木さん、なぜ日本人といって早川、太刀川さんは政府の折衝で帰ってきたけれども、これらの人は帰ってこないか。血統主義というのでしょうか。つまり帰化人だからなんです。何もしないのです。少なくとも早川、太刀川さんと同じような行動を政府がとるならば、これは日本人として――われわれの先祖は帰化人かもしれないですよ。その本人が帰化人だからというだけで、これは非常におくれた考え方ですね、この血統主義というやり方は。こんなばかな話はないです。日本人なんです。帰化された人だからというので何もしない、昔からの戸籍、明治からずっとあるのだったら、それは帰してもらうために必死の努力をする、こんなばかなことだけはやめてくれ、こんなことだけはやめてくれ。しかも、この前の国会で政府答弁で、日本人だけではない、日本人を初め在日韓国人だって、税金を納め日本の中で生活しているのだから、当然そのことをやらなければならないのだという公式な議事録があります。あと小委員会予算委員会に出したのに、そのとおりやってもらいたいという意味で。私は全部調べて出しますけれども、このことについて三木さんどうですか。あなたの見解を最後に承って終わります。
  142. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 邦人保護という見地から、政府はできるだけのことを努力いたす所存でございます。
  143. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて安宅君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時三分開議
  144. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  145. 渡部一郎

    渡部(一)委員 本日は、国連が発足をいたしましてからくしくも三十周年でありまして、日本外交をもう一回見詰め直すためにも非常に意議ある日であると考えるものであります。ますます多角化し、多極化する日本外交の諸問題を理解するという立場で、キッシンジャー国務長官が、日本を経過して中国を訪問しているわけでありますが、その前後に日本の各閣僚と懇談をなさった旨、伺っているわけであります。  そこで、行く前あるいは行って帰った後、さまざまな問題点につきましてお話し合いが行われたと思いますので、その点をまずまとめまして外務大臣から御報告をお願いしたい、こう思っているわけであります。よろしくお願いいたします。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 キッシンジャー国務長官は、訪中の行き道及び帰り道に東京を訪問されたわけでございますが、このたびのキッシンジャー氏の訪中は、近く予想されますフォード大統領の訪中を予定どおり行うべきか、どのように行うかということについての先方との打ち合わせといったようなものが主であったように存ぜられます。     〔委員長退席、小山(辰)委員長代理着席〕 したがいまして、その点についての結論は、フォード大統領が予定どおり年内に訪中をするということをほぼ決めたように承知をいたしております。  また、しかしながら、その訪中に際して、従来と違った非常に大きな進展が米中間にあるというようなことは、概して双方とも考えていない、あるいは期待していないということのようでございました。概して米中とも一現在の関係が望み得るベストではないにしても、まず友好的な関係であり、上海コミュニケの精神に沿って今後発展すべきものであるというところでは合意があったようでございます。  次に、キッシンジャー氏の訪中を機会に幾つかの問題が論ぜられたようでございますが、一つは、アメリカが考えておりますいわゆる緊張緩和と申しますか、デタントというものについて、中国側はソ連の脅威あるいは意図というようなものについて中国としての見解をかなり強く述べたようでございますが、この点は、当然のことながら米国の見解と中国の見解とは必ずしも同一ではないということ、いまに始まった話ではございませんけれども、そういうようなやりとりがあったようでございます。  また、当面国連で問題になっております国連軍の撤退の問題に関して、朝鮮南北当事者その他を合わせました何かの対話ができるかどうかということについても多少の話し合いがあったようでございますけれども、中国としてはこの問題に積極的な関心を示さなかったということのようでございました。  なお、米国のサイゴン撤収以後の問題についても何がしかの話し合いが行われたようでございますが、別段結論らしいものはなかったようでございます。  概括いたしまして、そのようなことにつきましての話をキッシンジャー氏から聞きましたし、また私も、自分の当面思い当たっております幾つかの問題について話をいたしたような次第でございます。
  147. 渡部一郎

    渡部(一)委員 なお、その際に、日本側として当然、問題になっておりますところの日中平和友好条約の問題であるとか、国連における朝鮮問題の討議についてであるとか、あるいは緊急水産物保護法案についてであるとか、そうした問題について打ち合わせをなさっただろうと思われるわけでありますが、それらの問題についてはどういうお話し合いをなさったか、お差し支えない範囲内においてお答えをいただきたいと思います。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日中平和友好条約の問題につきましては、私は、基本的にはこれは日中間の問題であるので、第三国を煩わせる必要はないという考えを持っておりますので、先方の問いに応じて、先般のニューヨークにおいて行いました私と喬冠華外相との会談の一部紹介をいたしましたけれども、それ以上に深く話をいたしておりません。したがいまして、昨日、訪中後のキッシンジャー長官との話し合いでは、この問題については一切触れておりません。  朝鮮半島の問題につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、わが国としては何かの形での対話ということへ導きたいというのがかねての主張でございますし、それはキッシンジャー氏にもすでに何度か伝えてあるところでございます。訪中の行き道にもそのことは申したわけでございますけれども、帰られましての話は、先ほど申し上げましたように中国側は余り積極的な関心を示さなかったということでございます。  なお、経済水域二百海里の問題につきまして、米国の議会でかなり急な動きがあるようでございます。わが国としては、海洋法会議に先立って一方的な宣言を行うということは好ましくないという立場を伝えてあるわけでございますが、それにつきましても昨晩話がございまして、両者の間の討議がございまして、アメリカの行政府としては一方的な宣言ということは適当でないと考えておるけれども議会における趨勢というものは必ずしも楽観できないというような話がございました。  大体以上のようなことでございます。
  149. 渡部一郎

    渡部(一)委員 一応前提を承ったわけでありますが、わが国外交の諸案件のうち、言うまでもなく最大の問題になっております日中平和友好条約の問題につきましてお伺いをしたいと思っているわけであります。  このたびの政府総理大臣所信表明演説及び外交演説、九月十六日の分でありますが、その中において「平和友好条約交渉についても、日中両国は、その早期妥結の熱意において一致しており、両国民の願望である日中永遠の平和友好関係の基盤とするにふさわしい条約の締結を期しております。」と三木総理が述べられておられますし、また、ほぼ同趣旨のことを宮澤大臣も述べられているわけであります。ところが、この共同声明が結ばれてから三年間、各種政府間実務協定はことごとく締結されたのにもかかわりませず、両者の話し合いは暗礁に乗り上げ、特に覇権問題を中心として暗礁に乗り上げていると伝えられておりますことは、決しておもしろいことではないと思うわけであります。そして、私たち国民が見ておりましても、この間の交渉の一番不明確な点は、総理が一体何を考えられているのかがきわめてわからないところであります。総理は、平和友好条約を結ぼうと思われているのか、それとも、中国側の難に事寄せて、これを結ばないように結ばないようにされているのか。日本のあらゆる解説を見ましても、これがもう端から端まで散らばっているのが現状であります。総理がかくもいろいろな意思を持たれているように見られているということは、国民の間にいろいろな意見を生ずるだけではなく、外交当事者の間においてさえも、総理は本当にこの問題を進めようとされているのかどうかわからないという評価を生み出しており、まあ、前の田中内閣がまたわかりよ過ぎたというアンバランスもあってわかりにくいという点もあるのは私も理解するわけでありますが、まず総理のこの問題に対する基本的見解を明確に伺いたい。少し明確過ぎるほど明確に伺いたいと思います。
  150. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 明確にお答えをいたします。過ぎるということもないでしょうが……。  私は、中国日本との関係というものは、両国の平和友好の基盤を強化することがアジア・太平洋地域の平和と安定にきわめて重要である、したがって、一日も速やかにこの日中平和友好条約を締結をしたいという考え方はもう変わらない。日中の国交正常化にも私は非常に熱意を持った人間の一人でありますから、これが結ばなくていいというような考えは持つはずはないわけであります。ただ、結ぶについて、いま問題になっておる覇権の問題についても、これがやはり強権によって自分の意思を押しつけるということは平和の原則に反するわけでございますから一普遍的な平和原則であって、そしてこれは第三国を目標にするものでもなければ、また中国との間に共同の行動をとるものでもないというような形で、こういう問題が両国の理解を得られるということが一番必要なことであるということで、中国との間にも話し合いを続けておる次第でございます。
  151. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、いいですか、総理のいま言われたことを、私は目をさらのようにして、耳を広げて聞いておるわけです。ところが全然わからないわけであります。何がわからないかといいますと、総理がいまお話しになったように、日中平和友好条約の交渉が覇権問題のみである、大体それはお認めになりました。そして、覇権問題の中でいまこう三つ言われた。覇権をもって自国の意思を他国に押しつけるのは平和の原則に反する、そして第三国にこれは関係がない、そしてこれは日中共同行動を意味するものでない、三つ言われました。もしそうだったとしたら、中国側との間に議論の相違するところはないはずです。全くない。きょうでも結べるはずです。なぜその差があるか。総理は巧みにそこをかわして言っておられるのか、それともあとの部分は異議あると仰せられておるのか、そこを私は理解をしかねているわけであります。この点はいかがお思いでございますか。
  152. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういう点で、そういうふうな覇権問題というものが両国の共通の認識として、そしてこの問題のお互いの理解を深めていくことがやはり平和友好条約締結のために必要であるということで、日本の考え方というものを述べておるわけでございまして、これが今後両国の間にさらに理解を深めて、そして、これは将来に対して、子々孫々にわたる日中友好関係を樹立する基礎になるわけでございますから、国民の納得を得るということが必要でございます。そういう点で今後できるだけ早期に締結できるような努力を続けてまいりたいと考えておりますから、そうこれをわれわれはおろそかにしておるわけではないわけでございます。
  153. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、いまから公明党の竹入委員長の発言をちょっと読んでみたいと思います。これは、中国側がこの演説を聞いて、公明党の態度は明確であると述べて評価している覇権に対する文書でありまして、今度の党大会におけるあいさつであります。これはいまあなたがおっしゃっていることとほとんど相違がないので、私、読み上げます。   また、日中平和友好条約の締結に関しまして一九七二年の日中共同声明の精神を後退させることなく条約に遵守させることはもちろんであり、日中平和友好条約は早期に締結されるよう推進すべきであります。さらに、懸案となっている「反覇権主義」問題についてでありますが、反覇権主義は、平和国家としての日本の根本的立場でもあります。先ほども申しましたように、わが日本は、世界の平和なくして存立も存続もできない立場にあり、また、平和憲法の精神からいっても、わが国自ら覇権を求めず、他のいずれの国が、覇権を求めることや、樹立することも反対しなければなりません。したがって、わが国の恒久平和指向の基本として明確に定義づけ、これが直ちに特定の国を名指しで敵視するものでないとの見解のもとに条約を締結すべきであります。そして、この条約が日本の国是としてとるべき等距離外交政策と合致するとともに、日中両国のよき関係の維持・発展と、世界のあらゆる国との平和的共存を確立する精神と決意を示すものであることの立場から誠意ある交渉を積極的に進めるべきであります。この部分、これに対して総理は別段の御異論はないと思いますが、いかがでございますか。
  154. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大体において私もそういうことだと考えます。
  155. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしますと、問題は、三木総理が何をためらって、日中平和友好条約交渉に対して、やれという最後の断をお下しにならないかという微妙な問題が残っているわけです。総理が先ほど言われたのは、日中平和友好条約交渉は継続している。長い意味では明らかに継続しているのです。しかし、具体的には中断しておる、これはもう明快ですね。ですから、何でその状態で放置していられるかというのが問題です。私はそこが不明確だと思うのです。総理が一番心配されているのは、私は自民党内の派閥関係のいろいろな出来事ではなかろうかと思う。しかし、いま総理が首振っておられるように、そんなことはあり得ない、自民党はりっぱな政党だろうと私は理解したい。ですから、この問題は私はここでは触れない。それはまた当然だろうと思うのです、そんなことに触れないのは  そうすると、何かというと、あとはソビエトの関係の問題であろうと思う。総理はソビエト関係を御心配になってこの問題を進めないでおられるのですか。それはどういう配慮をされているのですか。それもちょっとお伺いしたい。
  156. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先般、宮澤外務大臣と喬冠華中国外相との間で、長時間にわたって日本の立場というものをいろいろ説明をして理解を深め得たと思うのです。こういうことを踏まえて、この問題はできるだけ早期に打開の方向に今後促進をしていきたい。また、われわれとしても中国の立場というものをよく理解し得られるし、日本の立場というものも先方はよく理解したと思いますから、これは日中の平和友好条約交渉の一つの新しい段階――いままで外相レベルで話をしたことはないわけですから、こういうものを踏まえて両方の理解が深まったものと思いますから、こういうことで今後促進をしていきたい、こう考えております。
  157. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、やはりあいまいでよくわからないところがある。私は総理より世代が若いですから、そういうあいまいな言い方では私の世代には通じないのです。もうちょっとはっきり言っていただかなければならない。  もう一回やりますけれども、総理は、日中共同声明の問題になっている覇権の項目、第七項、これについては別段反対とか、それから異論があるとか、いまの時点では意味合いが変わったとか、そうおっしゃるつもりは毛頭ないわけだろうと私は思いますが、その点いかがでございますか。
  158. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは当然尊重して、そして平和友好条約を締結しなければならぬことは当然でございます。
  159. 渡部一郎

    渡部(一)委員 第七項ももちろん支持なさる、こういう意味でございますね。
  160. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは当然。そこで日中の国交正常化ができたのですから、それを尊重するということは当然でございます。
  161. 渡部一郎

    渡部(一)委員 喬冠華外相と宮澤外相の、日中外相の報告の内容がどういうものであったかは私も詳しくいたしませんけれども、少なくとも新聞に報道された際に、見出しとして、わが国としては平和友好条約の締結を急がない、それは日中関係を悪化させるものとはならないはずだというニュアンスのものが日本の新聞各紙に報道されたわけであります。その際に、それを見て中国側が非常に機敏な反応を示されたのは御存じのとおりであります。すなわち、鄧小平副首相は訪中中であった小坂善太郎氏に対して、「これははなはだ遺憾である。われわれは早期締結を放棄する意思は毛頭ない。早期締結をしたいと熱願しておるのである。こうした形で平和友好条約の締結をわが方が急がないようなニュアンスを伝えるということはもってのほかである」と、非常に強い意向を表明したと承っているわけであります。  私は、いま覇権問題で両国が、言葉の上の争いもありましょうし、微妙な将来性も考えることは必要であろうと思いますが、少なくとも日中間の不幸な事態のある意味の決着を本当につけることがなければ、日本外交は結局、日本やその他の国々の間で、玉突きの玉のようにあっちへ転がされ、こちらの圧力でまた向こうへ転がりというような状態を長く続けなければならない。それは日本外交を安定させる道ではなかろうと思うわけなんです。ですから、その立場からいって、中国側が熱願しているもの、中国側はまた、原則には強固であったとしても、具体的応用問題にきわめて柔軟なことは、共同声明の交渉の際にもおわかりのはずであります。本当の意味で東洋に戦争をもたらしたくない、少なくともたくさんの犠牲を払った日中関係というものをこの際安定させるという立場であるならば、わが国は当初に加害者であった立場でありますし、また東洋における唯一の先進国としてのプライドもわが国はあるわけでありますから、ここのところで覇権交渉についてはひとつある決断が必要ではなかろうか。私は総理の胸の中に訴えたくていま申し上げているわけですが、いかがでしょうか。
  162. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 交渉をおくらす考えはございません。両方の外務大臣が初めて長時間話し合って立場が理解されたわけですから、それは日中の平和友好条約一つの新しい展開と考えて、今後熱意をもって促進をしていきたいという考え方は、私ども、本当の考え方でございます。
  163. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、ここにありますのは、これはもう一つ申し上げますが、小坂善太郎さんが覇権についての中国側の説明を述べているわけであります。御当人の言葉で書いてありますから、そのまま引用いたします。   覇権、英語でいうヘジェモニーという言葉は、中国側はどのように理解しているのだろうか。   私の聞いたところでは「実力をもって、他国を侵略、支配、内政干渉、掠奪、転覆活動を行うこと」とのことであった。   私は外交交渉を行う政府に次のことについての双方の理解をつき合わせ、他日問題とならないようにしておいてもらいたいと思う。 そして三つの提案をいたしております。   一、経済上、貿易のインバランス、例えば日本の資本投資が多額に及んだり、日本側の輸出が他の国よりの輸入に比較して著しく多い場合、これを覇権というのかどうか。前掲の定義には当てはまらぬと思うし、貿易立国の日本として一般的な経済行為を覇権として条約上規制されては困ると思うのだが。   二、良好な日米関係は、わが国外交の中で極めて重要な基軸であるが、国民の一部には日米安保条約により米国は日本国内に覇権を確立しているとするものがある。これも前掲の覇権の解釈からすれば覇権とはいいえぬと思うがどうであろうか。   三、一部に覇権反対というと、日中間に攻守同盟でも結ばれるように考えて反対するものがあるが、日本国憲法は自衛以外の一切の行動を禁じているのだし、日中両国はそれぞれに社会制度を異にしているので攻守同盟などあり得ないと思うがどうであろうか。共同声明第七項には「第三国に対するものでない」となっているのだから、これは日中両国間の条約としての基礎である。 こういうふうに提案をしております。  この提案はかなり穏当な提案である。しかも、この覇権に対する解釈は、中国側からいままで伝えられてきた各種類の覇権に対する解説よりも日本政府側の立場を顧慮した説明になっていると私は思うわけです。これなら結べるではないか。私は不思議に思うのです。  これから外務大臣の話を伝聞で申し上げるので、私は直接伺ったのではないのだが、一つだけ申し上げると、外務大臣アメリカへ行って交渉された際に、いろいろな交渉をしたけれども、喬冠華さんと話したけれども、すべての問題を全部詰めてしまうと抜き差しならないので、ちょっと一歩手前で、お話し合いを全部ちょっとずつ手前で、最後の落とす直前のところで全部とめて帰ってきたというようなニュアンスのお話を帰ってきてから記者団たちにお話しなさった、私はそう伺っておる。外務大臣が本当にまとめる交渉をするのだったら、それはやはり総理が指示なさらないといけない。それでまた、中国という国は東洋の国であって、われわれが中国側と交渉したときも、末端官僚に交渉させるのではなく、相当の大物がどんどん乗り込んで交渉しなければまとまらない。田中大平さんの組み合わせが中国との間で面期的な一歩前進をしたのは、両氏の、少なくともよし悪しは今日批評があるかどうかは別としても、私は高く評価はしておるが、その両者の決断があったからこそあれだけのことができた。ところが、田中大平さんの組み合わせに対して今度の三木さんと宮澤さんの組み合わせが決断を欠く。下僚に号令してやってこいと言う、そういうニュアンスでしか受け取れない。これは総理、まずいのじゃないか。私は、いま何も三木総理の政治的立場を言うために申し上げているのではないが、少なくとも三木総理、これだけの大問題、三木総理の今期のそれこそ最高の政治的判断として、また政治的行為として、みずから中国政府に乗り込むだけの気概を持って外務大臣とお話し合いになって、君が行けとかおれが行くとか、そういう立場からお話し合いを進めれば、私は道は完全に開くと思う。総理は先ほどから何にも反対なさるポイントがないじゃないですか。総理が何で覇権でためらっているか、ここで一つも明快になっていない。総理、いかがでございますか。この問題は言いにくい点があるかもしれない。言いにくい点があるかもしれないけれども、少なくともトップ交渉が必要なのは東洋の国の例である。これはひとつ銘記していただいて、決断を持っていただかなければならない。対話と協調は優柔不断の代名詞ではない。私はそれは強く申し上げたい。総理、どうでしょうか。
  164. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 早期に日中平和友好条約を締結したいという熱意は変わらないのです。積極的な指示を常に外務大臣にも行って、外務大臣もまた、この平和友好条約の締結というものをできるだけ速やかにしたいという熱意について変わりはないわけでございます。しかし、外交交渉には一つの手続もございますから、そういうことでいま外務大臣と喬冠華との間に、十時間にわたってやったのですから、両国の立場というものをよく理解したわけですから、これを一つの転機として、さらにこの妥結のために熱意を持って努力をしたいという考えは変わらぬわけであります。
  165. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、こうまで繰り返して申し上げるのももう失礼の域にわたる可能性を感じておるのですけれども、総理に申し上げたいのは、そのいまのお話や言葉は美しくて、そして希望の持てる言葉であるにもかかわらず、私は、このまま後ろへ下がっていくと事態はますます混乱するのではないか。少なくとも激動する国際政局の中で、日中間で交渉を行い得る時間というものはそうたくさんあるわけではない。しかもそういう不安定要素、日本外交が抱えている不安定要因というのはもうたくさんあって、いつどこがはじけてくるかわからないようなときに、日中平和の問題が少なくとも安定した要因にならないということは問題だと私は思う。  総理は議会生活三十有余年のベテランの議員でおられて、あらゆる方策は御存じのはずです。それをどういうふうにして突破するかの対策も御存じのはずです。私は、結論として欠けているものは何かというと、有能な官僚もいるし、有能なアイデアマンもいるし、たくさんの陣容も擁しており、日本国民の日中問題に対するほぼ大きな合意があるときにそれが進まないというのは、欠けているものはたった一つではないか、それは総理の決断ではないか、残念ながら私はそう思うのです。それを単なる言葉の表明でこの予算委員会に何か言うだけでなくて、具体的な政治行動としてあらわしていただけないかと、私は心から日本国民の大半の意向を代表してお願いしておるわけであります。いかがでございますか。
  166. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、お願いを受けるまでもなく、私自身も日中関係というものを安定さすということの必要性を痛感して、われわれとしてのあらゆる努力を傾倒して、そしてこの問題を早期に妥結をしたいという考え方には変わらぬ。したがって、もう当然にこの問題はいつまでも放置できる問題でございませんので、今後はできるだけこの妥結のために最大の努力を払いたいと思っております。
  167. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私も全部わかっているわけでは決してありませんが、中国側の代表が先日訪日した際、彼らのある者が、日本側と交渉した際に、覇権問題を扱うのは前文、本文のうちの前文だとか本文だとかという議論をわれわれに教えたと、前文は外交上権利義務関係を生じない、本文は生ずるのであるというようなことを教えた上、前文に入れることはできないというような説明をした、はなはだ遺憾である、なぜかと言えば、われわれは前文、本文などという立て分けをして前文の方は意味がないからそこに入れるというのでは余りにも失礼な言い方ではないか一そういうことを言うからには本文に前文一字も残さず入れるというふうにがんばるしかない、などと激高した言い方で言っておりました。私はこの交渉のしぶりがどうであったかはわかりませんけれども、こういうニュアンスをもって受け取られるところに積み上げ外交の、欧米型の外交失敗が生じてくるんだと思います。日中関係の交渉は心のとびらが開かなければいけない。三木さんが向こうから見ると信用できない人物に映っているんでないかと私は思うのです。その信用を回復しなければならない。信用を回復するためには何をしなければならないかと言うと、中国人を相手にして交渉の明確な意思表示をすることから始まらなければいけない。私はそう思っているわけです。私は決断を求めて、先ほどから、最大の努力を払うといま総理言われた。総理のお言葉は信用がならぬという人もあるけれども、私はその言葉を信じたい。そこで私はもう一回申し上げるけれども、その中国側の心のとびらが開くように総理御自身の意思表示を明快にしていただきたい。総理御自身がこの問題だけは交渉の前面に出ていただきたい。これをもう一回お願いしますが、御返事いただけませんでしょうか。
  168. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 外交交渉というものはおのずからやはりいろいろな手続もあって、私の信頼する外務大臣が前面に立ってやっておるわけでございますが、むろん私が最後の責任は負うわけでございますから、あらゆる場合を考えて私は最善を尽くしたいということが私の決意であることを申し上げておきたいと思います。
  169. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理外務大臣にゆだねて交渉なさるというなら、私はそれでもいい点もあると思いますが、その場合は外務大臣に本当にすべてをゆだねなければならない。そうでなくて、部分的にやらしておいて、帰ってきて悪いと、後からノーと言うような交渉の仕方ではとてもできない。その辺はもうおわかりで、百も承知でいらっしゃるでしょうが、私はそれを申し上げたい。日中問題だけは総理が傷つく決意で臨まなければ片づかない。その点田中さんは勇敢だった。田中さんは男らしかった。その点われわれは、余りにも差があり過ぎると感じている。それをしつこく申し上げて悪いけれども、総理に決断をお願いしたい。また、私の言っていることは、総理がこの際それこそ政治的な権威を確保なさる道でもあるから、私は申し上げている。こんなにくどくど公開の席上で言わなければならぬということはまさに悲しみでしかない。総理、ひとつぜひお願いしたい。  その次でありますが、中国側との交渉の中で、石油の問題について一言だけ伺っておくわけであります。  石油の輸入数量が累年急増いたしておるわけでありますが、この輸入数量が中国側と約束した数量より大幅に下回ってしか受け取られていないというのはどういうことなんだろうか。日本側の政治的姿勢とあわせて議論されている向きがありますので、これについての御説明を承りたい、こう思っているわけであります。
  170. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中国との油の取引は、一昨年が百万トン、昨年は四百万トン、ことしは約八百万トンでございます。いまお話しの件は、昨年の分が四百九十万トンという約束でございましたが、それが四百万トンになった、この点のお話だと思います。昨年は石油ショックの影響を受けまして日本が非常に不景気になった、こういうことのために九十万トンだけ減ったわけでございます。
  171. 渡部一郎

    渡部(一)委員 こういう社会主義諸国との交渉の際に、日本側のような資本主義諸国との間とルールが違いますために、配慮しなければならぬのは当然でありますが、中国側の弱い経済状態というのを考慮すれば、こういう二割に近い大幅な数量の変更というものを来すような取り決めの仕方というものは、ある意味で大きな打撃とそして政治的な不信を買う可能性がある。その点は今期以後十分の配慮をしていただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  172. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 そういうことがございますので、来年以降長期契約の話も出ておるのですけれども、もう少しいろいろな諸条件を見きわめまして長期契約をする。軽々にいたしますと数字の違いが出てくる危険性もありますので、今後の取引については十分配慮をしていきたいと考えております。
  173. 渡部一郎

    渡部(一)委員 先ほど外務大臣から漁業専管水域の問題につきましてキッシンジャーとのお話し合いがあったように多少お話もありましたが、次に、わが国の領海問題についてちょっと申し上げておきたいと思うわけであります。  わが国の遠洋漁業は、過去に他国の十二海里以内に入って操業するものがきわめて多かったわけでありますが、現在他国の十二海里以内に入って操業できる漁場というものは、何らかの政治的な承認あるいは経済的な交渉の結果入るものを除けば、ほとんどないと言って過言ではないかと思います。したがって、従来の領海十二海里説に対する反対の根拠というものはわが国に関する限りは消滅しつつあるのではないかと思われます。特にわが国の零細沿岸漁民保護のためには領海十二海里を速やかに宣言すべきではないか、こう思っておるわけであります。  安倍農林大臣は、突然申し上げて悪いのでありますが、十二海里の問題は何とか実現したいということを国会で明快にお述べになりましたが、その後どういうお約束というかどういう努力をなさったか、この辺を明らかにしていただけないか、こう思っておるわけであります。たしか農林大臣の御発言は当予算委員会において行われた発言であり、零細沿岸漁民の保護の立場から十二海里にすべきであるが他との関係調整がある旨言葉を濁しておられます。どういうふうに関係を調整され、どういうふうに努力されたか、ひとつ伺いたい。
  174. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 領海沿岸十二海里の問題につきましては、いまお話がございましたように、わが国の遠洋漁業の立場から見ましても、さらにまた沿岸漁業という立場から見ましても、十二海里を阻害をする要因というものはないわけで、私たちは領海十二海里というのが世界の大勢になっておりますので、また、日本の沿岸漁業の今日のソ連の漁船団とのいろいろな紛争状況等を見ますと、十二海里を実現したいというふうにいまも思っておるわけでございますが、ただ問題は、水産の立場だけで沿岸十二海里ということを宣言できない。やはりその他の国際海峡通航の問題であるとか、また、ジュネーブ会議におきまして領海問題が実は決着すると思っておったわけですが、これが流れてしまって、経済水域二百海里の問題も含めて領海問題も来年のニューヨークの会議に待たざるを得ないというふうな国際海洋法の問題等もあるわけでございます。  そういうような関係もありまして、ただ水産だけでこれを決定することができないということで、その他の省庁とも調整を行っておるわけでございますが、なかなかその調整が整わないという状況にあるわけであります。しかし、私たちは何としてもこの十二海里は実現をしたいものだ、こういうふうに考え、今後とも努力を続けていきたいと思っております。
  175. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしますと、農林大臣は国際会議の様子を見ながら判断するというような意味合いであったようであって、少なくともこの問題に対して積極的に取り組まれなかったというニュアンスが出てくるので非常に遺憾に存じております。  ですから、むしろ国際会議の問題ですから外務大臣にその先は伺いますが、外務大臣は海洋法会議の推移を待って十二海里にするとおっしゃいましたけれども、来年の三月から始まるニューヨーク会議で領海の幅というものが決定するとお考えになっておられるかどうか、どういう見通しを持っておられるか、これがまず一つ。  それから、ここの会議で結論がつかない場合でも、当時、ことしの二月二十六日の御発言でありますが、ジュネーブ会議で結論がつかない場合、私案ではあるけれども十二海里にしたいと、かなりはっきりと衆議院の外務委員会で述べておられます。ところが会議の結論がつかなくなりますと、海洋法会議の推移を待つというふうに答弁を変えられたいきさつがあります。ニューヨーク会議においても結論が出るか出ないか、いま私の見るところではわからないような気がいたしております。したがって、そうしますと、わが国の領海の問題については、海洋法会議の決着がつくまではそのまま三海里にしていくというような外務、農林両省のお話し合いになっておられるのかどうか、その辺の見通しをお伺いしたいと思います。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど、私がキッシンジャー国務長官に対しまして、二百海里の経済水域をそれだけ切り離してアメリカが宣言されるということは、海洋法会議の精神にかんがみ云々と申し上げたわけでございますけれども、それがまさしくいまの問題につきましてのわが国の立場になるわけでございまして、領海の幅というものは経済水域の幅、性格あるいは国際海峡といったようなものの性格、そういうものとみんな関係をしておりますので、海洋法会議では一括処理して、新しい海の国際法をつくろうということで進んでまいっておるわけでございます。したがいまして、そういうような観点から、農林大臣のおっしゃいますことは、その立場からはまことにごもっともでありますけれども、他の要素もいろいろございますので、ニューヨークの会議というものもございますから、慎重に御検討いただきたいと申し上げておるわけでございます。  それで、いま閣議で申し合わせましたことは、ジュネーブ会議で結論が出なかったときにはその時点において検討をしようということであったわけでございますが、ジュネーブ会議では結論が出ませんでした。したがいまして、この問題もそのままになっておるわけでございます。  ニューヨークの会議がまとまるかまとまらないかということは、それ自身で申しますと非常にいろいろ複雑な問題を含んでおるわけでございますが、もう世界の各国が、実はアメリカの例でも御案内のように、そういつまでもこの問題は待てないという雰囲気になってまいっております。したがいまして、問題は出尽くしておりますから、ニューヨークの会議において、ひとつ諸要素を一括して合意をいたしまして、それを条文化する会議がさらにその後の機会になろうと思いますけれども、要素を最終的に一括して合意をするというところまでは、何とかニューヨークの会議で持っていきたいというふうに私ども考えていますし、また各国も、ややそういう空気になってまいっておるように観察をいたしております。
  177. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この十二海里の問題に関しまして、わが国が十二海里を施行した場合に外国艦船、外国の船舶がわが国の領海内を無害航行する権利というものが認められるわけでありますが、わが国の場合は核積載艦、核兵器を載せている艦艇の通過というのは無害航行と認めないというのが従来からの国会答弁で一貫されております。したがって、これはわが国の非核三原則という大きな合意からも当然な政策であると思います。したがって、いま領海十二海里をまとめる方向にいく可能性がきわめて濃い旨の御発言がありましたけれども、その場合に、日本が十二海里を宣言することによっても非核三原則を変更あるいは一部改定、妥協するということはあるべきでないと思いますが、政府の御意思としてはいかがでありますか。
  178. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、渡部委員もつとに御承知のように、非常に混雑した問題を含んでおるわけでございます。すなわち、領海が十二海里に新たに国際的に設定されるといたしますと、新しい国際海峡というものが生まれてくるというふうに考えられます。しかし、その国際海峡というものが、今度できます海の国際法の中でどのような位置づけを持つべきか、国際海峡に関する沿崖国の権利義務、これを通航する船舶の権利義務といったようなものがどのようになるかということは、海洋法会議によって決められまして初めて国際的な定義ができるわけでございます。したがいまして、私どもは、海洋法会議で国際海峡というものをどのように定義づけるか、そのような新しい国際法に従って、ただいま言われました、わが国の持っております問題も処理していかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  179. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ここのところは総理にお伺いいたしますが、ただいま外務大臣の言われた問題に敷衍しまして、十二海里をわが国が宣言するとしても、わが国政府としては、非核三原則において妥協あるいは改定をするというような取り決めはしないということに関しては変わりはございませんか。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは少し技術的な問題になりますので、私から申し上げさせていただきますが、そのような国際海峡ができましたときに、わが国としては通過をする立場と通過を許す立場と、御承知のように二つあるわけでございます。  通過をする立場から申しますと、タンカーその他の船か新しくできます国際海峡においてどのような権利を与えられるか、どのような義務を負うかということでございますし、通過をされる立場から申しますと、わが国の周辺に新しく認められます国際海峡において通過をする船舶にどのような権利を与え、どのような義務を課すかということになるわけでございます。これは渡部委員よく御案内の問題でございますから、いまの問題についての処理は、国際海峡というものがその新しい海の国際法でどのような位置づけを与えられるか、わが国としてはやはりそれに従いまして方針を決めていくべきものかと思います。
  181. 渡部一郎

    渡部(一)委員 もう一回総理に伺います。今度は総理ですよ。大臣はちょっと座っていていただいて、総理に伺います。  通過する立場であろうとされる立場であろうと、わが国は非核三原則を堅持する、ここのところにおいては間違いございませんね。どうでしょうか。
  182. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、公海の場合はわが国の権利は及びませんが、権利が及ぶ範囲内においては非核三原則というものは当然に堅持すべきものだと思います。
  183. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はそれで結構だと思うのですが、実を言うと私は、総理が非核三原則の問題になった途端にそのように慎重になられるところがこわいのです。  ということは、この領海十二海里の問題は漁民保護という大きな命題がある、これは早くやらなければならぬ、一刻も早くとみんなが叫んでおる問題であります。この立場からはもうとっととやってもらいたいという一つの面がある。これが一つ。  それと同時に、新しく生まれる国際海峡において、アメリカあるいはソビエトの原子力潜水艦がそこを公然と通ることを要求した場合に、わが国は非核三原則を擁して、ある決断を要する、少なくとも非核三原則を世界に向かって宣明していくという立場を明快にしていかなければならぬだろうと私は申し上げておるわけです。しかし、非核三原則をある意味で一部削って、そしてこの国際海峡の外国艦船の通過に対して譲るようなことがあってはならないのではないかと申し上げておる。そこで、この問題は非常にめんどうな問題を含んでおることは私も少々は理解しておるけれども、外務大臣ほど私は理解していない。それで私は何回も伺っておるのでありますが、総理は非核三原則は堅持する、これを明快に言っていただくかどうかが問題なんです。ところが、総理はこの非核三原則の問題で非常に怪しげなニュアンスでお答えになったので、私はまたちょっと信じられなくなった。ここのところは総理どうですか。
  184. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 わが国の権限の及ぶ範囲内において当然に三原則は堅持されなければならぬと思います。
  185. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題は将来もう少し詰めたいと存じます。というのは、総理のお言葉は非常に巧みにでき上がっておって、わが国の権限の及ぶ範囲と申されたけれども、十二海里の中にわが国の権限の及ばない海域をつくる可能性がある。それを私は決して認めることはできないと、この際明快に申し上げておきたい。  次に、時間がなくなってきましたので、恐縮ですが質問を少し飛ばさせていただきまして、総理、PLO問題を初めアラブ問題等につき非常に熱意を持ってこれまで対処してこられたようであります。そして総理は、総理に御就任の前、中曾根、小坂氏らと特使として中近東地域に派遣されて、油問題が発生した際に一斉に経済援助その他の約束をなさいました。その後これがどうなっているか。及びPLOの事務所の問題等に触れて御質問したいと思っておるわけであります。これらの約束とその実施状況についてはどうでしょうか。それをひとつまとめてお答えいただけましょうか。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは概括のことは私から申し上げまして、細かいことは政府委員からお答えを申し上げます。  概して申しますと、わが国が約束しました対象の事業が、相手国の公共事業あるいは公的性格を持つものにつきましては、プロジェクトの中身が固まりやすいこともございまして、かなり早く片づいております。それからまた、国別に申しますと、エジプトの場合には、スエズ運河でございますとか商品援助でございますとかが早くまとまっております。それからイラクとは、経済協力協定ができましたことと、円借款の交換公文が締結されております。サウジアラビアとの間にも経済技術協力協定が今年の三月にできたわけでございます。  なお、具体的な案件といたしまして、イラクとの間には、先月肥料の大きなプロジェクトがようやく決定をいたしました。イランとの間には、ペトロケミカルの大きなプロジェクトが実は八分どおりまとまりかけておるのでございまあうけれども、一点を除きまして、現在まだ完了をいたしておりません。やがてまとまるということを私ども希望をいたしておるわけでございます。そのほかで申しますと、政府系統のプロジェクト、つまりいわゆるテレコミュニケーション、通信といったようなものあるいは道路、電話、これらはヨルダン、アルジェリア、スーダン等、それからモロッコにもございますが、この中でヨルダン、アルジェリアは円借款交換公文の締結を完了しております。スーダンとモロッコの関係がいまだ締結に至っていない。概してこのような状況でございます。
  187. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理は余り詳しく報告を受けておられないかもしれませんと思いますから、私の方に政府側からもらってきた文書があります一ここに赤いチェックがついているのは、私がチェックしたものでございます。後で見ていただきます。この中でできてない方を申し上げますと、三木特使、四十八年十二月二十二日、カタール、両国の協力分野を見出すため経済使節団派遣というものを先方が提案しておる、これについてはできておりません。小坂特使、四十九年一月二十九日、イエメン・アラブ共和国、これは発電所の建設の要請がありましたけれども、向こうの要請待ちということでできておりません。それからその次に中曾根大臣、四十九年一月十四日、これはイラクであります。これは円借款及び民間信用合計十億ドルの借款、それからLPGプラント、製油所等の建設協力、また十年間に九千万トンの原油、LPG及び石油製品を日本が受け取る、それから研修生を引き取る、こうしたような約束ができておりますが、これもできておりません。それからシリア、これは三木特使でありまして、四十八年十二月二十二日、製油所プラントでありますが、価格の折り合いがつかずということでシリア側で対象プロジェクトを選択中、こういうことであります。またモロッコは、いま外務大臣がお話しになりましたように、小坂特使、一月十六日の分は実施されておりません。またスーダンの分が三十億円の円借款供与方ができておりません。  こういうふうに見ますと、私は一部のところからも伺いましたが、日本政府は石油がないときは非常に気前よく言うが、自分が今度は不況だというと、一遍にそういうものに熱意を失う。逆に不信用の種にこうしたものはなっているという面がございます。そういう面があると申し上げている。これはちょっと問題ではないかと思うわけなんです。  そこで、総理、こういうふうに特使を派遣したりしていろいろなさるのはいいですけれども、後始末がきちっとできなければいけないし、わが方の不況の事情その他でできない場合は、できない意思表示を、新たなる特使、あるいはしかるべき方法で明快にする必要がある。これはちょっとまずかろうと思うわけですね。総理、何とかちょっとお答えになっていただきたい。
  188. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはそれぞれの理由があると思いますが、政府委員からお答えすることにして、私は、やはりそれにはそれぞれの事情があると思いますが、日本政府が約束をしたことは、これはぜひとも実行せなければならぬということで、この点については、しばしば関係当局にも私、督促をしておるわけでございます。しかし、いろいろ相手国の事情もありまして、たとえばいま御指摘のシリアなどに対しても、製油所についてなかなかこういうインフレの時代で話し合いの妥結がおくれておるようでございます。ことさらにこれを延ばそうという意思はないので、ぜひとも促進をしたいということでやっておるのですが、民間協力の場合が多いんですね。政府のやれるようなことというものは、いま宮澤外務大臣が申したように、大体片づいていっているのです。民間経済協力の場合でなかなか話が妥結をせないでおくれておることもあることは事実ですが、そういう問題に対して政府委員の方から補足して説明をいたします。
  189. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中東との経済協力でございますが、ことしの一月の総理の施政方針演説におきましても、この問題について非常に大きくスペースを割かれまして論及されたわけでございますが、特に中東との経済協力を進めるために、量、質、それからその方法、こういう面で十分検討して積極的に取り組むように、こういう演説の内容になっておりますので、それを受けまして通産省でも、外務省と連絡をとりまして積極的に取り組んでおるわけでございます。  先ほど外務大臣がお話しになりましたように、公的な関係のもの、それは比較的順調に進んでおるのです。ただ、民間のものは非常に大きなプロジェクトが多い、物価が激動しておる、こういう状態でなかなかスムーズに進まない。たとえばイラクの話が出ましたけれども、イラクなどは肥料工場も、これは二年間かかってまとまったわけでございますが、あとリファイナリーとかペトケミ、さらにLPG、こういう大きなプロジェクトについて話をしておりますけれども、いずれも一兆円近い大計画でございまして、やはり問題点が次から次に出てくる。こういうことで、懸命に取り組んでおるわけでございますが、若干の時間がかかる。いずれも前進はしております。あるいはまたイランの問題につきましても、これも外務大臣がお答えになりましたが、石油化学の大計画でございます。これもほとんどまとまっておるわけでございますが、ただ一点だけ問題点が最後に発生しまして、これで調印がおくれておる。こういうことでございまして、全体的に見れば順調にいっておる、私はこういうふうに理解をしております。
  190. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは物は言いようということもありますからね。私、悪いけれども、公的なものは全部できてきて、民間のものはできてないとおっしゃるけれども、データを見てごらんなさい。民間のものは全部できてないなんということはないですよ。それは民間のものは多少できてないものは多うございますよ。十億ドルの借款なんて、あれは民間だけで十億ドルの借款なんかできるわけがないじゃないですか。できたものだけを大声で言う、できないものだけを小さい声で言う、それは悪い癖だと私は思うのです。少なくとも通産大臣は、そんな不見識な、小役人が言うようなことは言っちゃいかぬ。もう少しりっぱなことを言わなければいかぬ。そういう言い方をすれば、向こう側から見たら、どんなにいやな気をして聞くかわからない。少なくとももう少し信義というものを立てた言い方をしなければならない。それは遠く離れた国なんですから、よけいまずいことになるのじゃないか。それは私は遺憾だと思いますよ。この援助の政治効果は結局人の心になってはね返ってくる。その人の心にいいものを与えたかというと、そうでないものが与えられて浮かんできている。だから、金額の高しをもってとうとしとしない、心がはね返ってくるような細やかなものがなければいかぬのじゃないかと私は特に申し上げたい。そうしないと、政府間の方はうまくいっておる、民間の方は遅いんだ、日本国民はばかばかりだからこういうことになるんで、しょうがないよ君、まあしっかりがまんしてくれたまえというような調子で物を言ってごらんなさい。それ自体が日本外交の敗北じゃないですか。総理、こういう政府委員答弁の中に非常にまずい点がある。総理が自分で行かれたことの後始末がこのざまなんですから、その点もひとつしっかりお考えいただいたらどうか。  また、イランとイラクのように、両方けんかしている国に一遍にあのとき行ったのですから、これはかなりの乱暴であった。そして、その辺の配慮も余りしないでどんどん仕事が行われている。これはまた乱暴を通り越しておる。まあ、あのときには急いでいたという事情もあったでしょうし、緊急事態だと言って大騒ぎもしたのでしょうけれども、少なくともそういうところは深い反省をもって取り組まれたらどうか。経済協力局というのもあるはずだ。海外技術協力事業団もあるはずなんだ。こんなあいまいなことばかりやっていて後始末ができないなんて、本当にみっともない。  総理、少ししっかり監督していただけませんか。こういうことが三木内閣の信用を失墜させ、日本国の信用というものをだめにする。約束したら守る、かっきりしなければいけない。そんなことはあたりまえじゃないですか。
  191. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはもう当然のことでございまして、政府が約束したことは必ず万難を排して守らなければならぬわけでございます。したがって、政府が約束したようなことに対しては、われわれも努力をして、その大きな約束というものはもうほとんど解決をしたわけでありますが、ただ民間協力の場合は、民間ベースのいろいろな企業の採算の点もありまして、そして相当大きなプロジェクトが多いわけですからね、小さい問題ではないわけです。そういう点で、なかなか私どもの考えておるような速度にはまいらぬ点もございますが、中東に対して日本経済協力というものを今後本当に親身になってやろうという政府の方針は、これはもう変わらぬわけでございますから、そういういろいろな困難があっても民間を督励し、政府として協力のできるものは協力して、この問題をできるだけ早く解決をしなければならぬということは、もう私どもも非常に口を酸っぱくして言っておるわけで、ことに中東へ自分が行ったことでありますから、私は責任を感じておるわけですよ、中東の経済協力に対しては。そういう関係当局に向かっても、絶えずこの問題に対しては特に注意を喚起して、せっかく協力するならば余り時期がおくれないように、できるだけ迅速にこれを処理するように努力をしてきたわけでございますが、今後ともこの点は、日本自身の中東に対する姿勢にも影響するわけですから、私どもは責任を感じて、この促進のために大いに努力をしてまいる決意でございます。
  192. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それからPLOの東京事務所ですけれども、政府は、そういう事務所開設については申し出があった段階で回答したいというようなことを前におっしゃいました。当予算委員会でも言われたわけであります。ところが最近に至ってPLO側から日本側に接触してきた。また、アラファト議長の直接の意思表示というものも行われております。それによりますと、こちら側の意向と大分話が違っておるわけであります。特にPLO側は、この事務所を開設するに当たって日本側に安全の保障を求めておるが、その安全の保障について全く保障してないような印象を持たれておる。また、PLO側がその事務所に、外交特権そのものではないとしても、外交特権の一部を与えてくれという問題に対して、日本側の非常に冷たい仕打ちを受けたというふうに理解しているわけです。こういうことは後々余りおもしろい結論を招くものではないのじゃないか、こう思っているわけであります。  この辺でひとつ、PLOの東京事務所の設置についてどういう考えを持っておられるか、もう一回御説明をいただきたい。
  193. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先に結論から申しますと、先般ある国会議員がアラファト議長にお会いになりました結果を伺いますと、私どもが申し上げていることがアラファト議長には正確に伝わっているようでございます。その間、実はいわゆるPLOの代表と称する何人かの方がわが国に見えまして、多少混雑があったわけでございましたが、結果としては、エルフート氏に私どもが書き物をいたしましてお伝えしたことが、正確に先方に伝わっておるようでございます。  それは、まず私どもは、やはりPLOというものをいわゆるパレスチナ人の正式のスポークスマンというふうに考えておるということ。次に、PLOがいわゆる一般旅券でしかるべき方を入国をおさせになって、そして管理令の審査を普通のようにお受けになって、その上で事務所を開設されるということは、これは日本政府として反対をする理由はない。そうしてそのような事務所は、日本憲法のもとに一般外国人が受けると同様の権利を持ち、義務に服する。事務所の活動はわが国の憲法の認める限り自由でございますから、したがいまして、法令に違反する、あるいは公の秩序を害するというようなことは別といたしまして、それ以外であれば、日本憲法下において一般の外国人と差別を受けない自由と権利を持つ、こういうふうに申し上げてございまして、この条件は、承るところによりますと、アラファト氏自身も別にそれ以上のことを望んでおるわけではないと言っておられる由でございます。したがいまして、そのような条件を御理解の上で一般旅券を持って入国をしてこられるというようなことがございますれば、ただいま申しました線に沿いまして処理をいたす用意がございます。
  194. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは次に、核防条約について承っておくわけでありますが、今年の八月六日の日米共同新聞発表において次のような総理大臣の言明が載っているわけであります。「総理大臣は、日本ができるだけ早い機会に核兵器不拡散条約を批准するための所要の手続きを進める意向を表明した。」また、九月十六日の外務大臣演説の中でも、「核兵器不拡散条約の批准のための承認が、できるだけ近い時期に得られるよう強く希望する」旨御発言になっているわけであります。  さきの七十五国会におきまして、非核三原則をいかなる場合にも堅持する附帯決議あるいは内閣宣言をわが党は要求いたしましたが、衆議院承認が得られる状況が明確であったにもかかわらず、政府及び自民党はこれを流産させ、継続審議という形に持ち込み、かえって酒、たばこ法案の混乱の中にこれを投入し、結果的にはこれをつぶすという、拙劣なと申しますか、意図的なと申しますか、わかりませんけれども、そういう形でつぶしてしまったわけであります。結局、これは日本の核武装に対する国際的な疑惑を払拭できない、非常に遺憾である。また、ある意味でこれは、極端な議論をするグループが自民党の中にもあるのでありましょうが、そうした極端な意見だけで平和国家としての日本の国際的評価を見失うということは、きわめて遺憾であったと私たちは考えておるわけであります。  ここで総理に伺うのでありますが、核防条約の問題について、非核三原則をいかなる場合も堅持されるかどうか。有事、平時にかかわらず堅持されるのかどうか。また、それを意思表示をなさるつもりがあるのかどうか。そしてまた、この核防条約をどういう取り扱いをしようとなさっているのかどうか。その辺を少し明快にお示しをいただきたい。
  195. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 非核原則というものは、世界的に日本の基本的な一つの姿勢であると受け取られているわけで、これはあらゆる場合に非核三原則は堅持してまいりたいという考えでございます。したがって、そういう世界的にも知られておる非核三原則を持っておる国が、核防条約の批准というものを、もうこれは調印後五年を過ぎるわけですが、そのことは国際的にもなかなか説明をしにくい立場でありますので、政府としては、目下外務委員会において継続審議中の核防条約のこの国会の審議を進めていただきたいという考え方でございます。
  196. 渡部一郎

    渡部(一)委員 自由民主党の党幹部は、聞くところによれば、というのは新聞報道によれば、本国会におきましては核防条約を取り扱わない、推進しない、こういう意思を表明されたと伺っておりますが、その点はどうですか。
  197. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま国会の外務委員会にかかっておるわけですから、当然に外務委員会としては、この法案の審議を進めていく責任を持っておると私は考えます。
  198. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務委員会を指揮しているのは、自民党の国対であり、議運であり、そして自民党の幹事長です。彼らの意思がまとまらなきゃ自民党の理事でどうしようもない。すでに彼らはその意思表示が党の中央からないことを嘆いておるわけであります。ここに自民党の外務委員の諸君もおられる。聞いてごらんになればわかる。自民党はやはり、核兵器を持つために、フリーハンド論を持つために、自民党内のタカ派というよりもむしろワシ派に遠慮するために、この問題を取り扱いたくないという意味じゃないのか。私はもうそう思えて仕方がない。ちゃんとしっかりした意思表示を、党内、上から下まできちんと言わなきゃいけない。どっちを向いているのですか。核兵器を持とうとするなら持とうとするらしく、早く言ってもらいたい。われわれもそれならやりようがある。  私は、もうこんないいかげんな、自民党の外務委員会理事すらわからなくなるような自民党の国会の指揮ぶりでは、これは核防条約を初めとして、自民党は国際的に恥をかくのは当然のことだと私は思う。総裁としてのお立場と両方ありますから、総理にお答えを願います。
  199. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 核防条約は早期に批准すべきものである。私の考え方は変わりません。
  200. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは今国会でやるという意味ですか。
  201. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今国会において外務委員会の審議を促進してもらいたいという強い希望を私は持っております。
  202. 渡部一郎

    渡部(一)委員 審議を促進すると言っても、審議を促進して継続審議をまたやるという意味じゃないかとしか受け取れませんですよ。いままでの自民党のビヘービアでは、それしか考えられない。そうじゃありませんか。あと一回の審議で終わるものを、いきなり打ち切りにしたんだ。それも自民党の党幹部の命令で後ろから打ち切りにして、前国会であれだけの核防条約をつぶしたのは自民党じゃないですか。私は弁明のつけようがないと思う。これはどうなんですか。どこまでおやりになるつもりですか。悪いですけれども、もう少し先まで伺います。
  203. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはやはり、こういう長期にわたって日本を拘束する条約で、ございますから、できるだけ各党の賛成を得るということが必要である、こういう問題については。そういう努力もしなければならぬわけですね。前回は公明党の諸君の態度というものはわれわれもよくわかったのです。各党全部の御了承というわけにはいかなかったわけですが、今後こういうふうな条約はできるだけ超党派に取り扱うことが好ましいわけで、そういう努力もいたしたいと思うわけで、自民党が核兵器を持つなどというようなことは、これはもうそういうものは何か正常な常識を持っておる者としては考えられないことであります。日本はやはり核兵器を持たない、これはもう国民的決意でありまして、自民党が核に対してフリーハンドなんかを持とうなんかいう考え方は毛頭ありません。非核原則の上に立って日本の平和国家の建設をしていくということが自民党の変わらざる基本的な立場であるということは、渡部君も誤解のないようにお願いをしたいと思います。
  204. 渡部一郎

    渡部(一)委員 もう言葉だけで自由民主党を評価するのは非常にむずかしい。だから私は何回も伺っているわけでありまして、その御答弁は御答弁として、今国会のやり方をまた見さしていただく、こう思っております。  では、根本的大問題がまだたくさんあるのですけれども、時間がますますなくなりましたので、今度は外交問題でない話をさせていただきます。私たち国民の権利を守るために、あるいはわれわれの命を守るために重要な問題を幾つか扱いたいと思います。  一つは、国会図書館の問題であります。国会図書館は、国会議員の国会活動を支援するために、その中に調査立法考査局を擁しております。調査立法考査局を擁しておりますが、その手勢はきわめて貧弱であります。私が三年前アメリカを訪問した際、アメリカの国会図書館に参りましたところ、向こう側では、立法考査局員が実質五百名を擁しており、そして現在においてはすでに七百名に――そのときに増加すると言っておりましたから、恐らく七百名になったものと思われます。したがいまして、国会議員の質問という質問、資料収集、あるいは諸種サークルにおける演説に至るまで、アメリカ国家を代表して、みごとな見識と演説が行われるようなシステムができているわけであります。  例を申し上げますと、たとえば手紙が参りますと、翻訳も二通りもしくは三通りめ翻訳系統を通して行われる。必要書籍の翻訳も一小さい出版物なら二、三日のうちにたちまちできてしまう。そうして議員に提供されております。私が見ておりましたときに、目の前であったのですが、細胞遺伝学について科学技術関係委員会で質疑が行われようとしておりましたら、厚さが約二寸ぐらいの膨大な資料が、トップレベルの遺伝学者の手によって書き上げられ、しかもそれがサマライズをつけて当人に提供されており、しかもその同文のものは約二百通が印刷されて、アメリカのデポジットライブラリーに配付されておるというようなシステムであります。また、目の前でこんなのもありました。アラスカへ行って演説をする議員がいる。アラスカの漁民の前でどういう冗談を言ったらいいだろうかという質問があった。二つ冗談を書いてもらいたいというお話だった。そうしたらそれがたちまち書き上げられて机の上に載っておった。  私は、冗談はともかくとして、少なくとも当委員会での質疑を通しましても、各党の政策審議会その他を通して膨大な資料収集その他が行われておるが、必ずしもそれはシステム的に優秀とは言いがたい。一方、行政の方は五万の人員を擁して、ある意味では情報を集めておる。ところが国会の方の職員というのはたかだか千人程度である。そしてそれは実際的な警備の職員や運転をする諸君まで加えてその程度である。これではわが国の国会のレベルを引き上げるためには非常にマイナスではないか。アメリカのこの国会図書館の考え方、少なくともレファランサーの考え方というのは大いに取り入れるべきではないか、こう思ったわけであります。  質疑応答をのろのろしていては間に合いませんから私の方から申し上げますが、国会図書館の立法考査局関係は、アメリカ七百に対して日本では百五十四。そのうち調査員と称するのは九十五であります。そしてその九十五のうち、実際に、そう言ってはなんですけれども、ある意味でベテランとなっているのは約三分の一、三十名余りであります。したがって、どんなことになっているかといいますと、国会議員から寄せられる年間の質問は多いときで一万二千、少ないときで七千。したがって、過飽和状態を超えて、これではほとんど回答が不能であります。私が何かの質問要請をいたしますと、非常に御丁寧な返事はいただきますけれども、時間がまずかかることと、それから内容的に突っ込んだ質問に御回答いただくためには、余りにも人員が不足で気の毒であります。したがって、立法考査に属する九十五人の調査員を、アメリカのように七百人と一遍にはいかなくても、少なくとも五十人ないし百人を急増したらどうか。アメリカの場合は、その立法考査局のメンバーというのは、大学の助教授クラスとの交流が非常に自由に行われており、日本で言う嘱託制度みたいなものも多用されておる。こういったところにお金を投下されたらどうか、こう思っているわけであります。これは私の意見です。  さて、私の意見だけではなんでありますから、国会図書館の館長に来ていただいておりますから、私の意見に対して、これをもう少し敷衍して述べていただきたい。よろしくお願いします。
  205. 宮坂完孝

    ○宮坂国立国会図書館長 お答え申し上げます。  常々、国会図書館の件につきまして、特に調査局の仕事につきまして御高配をいただいておりまして、まことにありがとうございます。  御承知のとおり、わが国立国会図書館は、国会法に制定されておるとおりでございまして、国会に所属する国会図書館でございますので、われわれは、国会議員の各位の立法活動を御援助申し上げるのが第一の使命でございまして、一部局、一課にとどまらず、全館を挙げて一致して御奉仕申し上げる体制になっております。特に調査及び立法考査局は、国会へのサービスを担当する部局といたしまして、国会サービスの中心をなしておるものでございますから、国会に対する調査の件につきましては、この局が専管をいたしておるわけでございます。  ただいま先生がアメリカの例を引いてお話しになりました点につきましては、私らもよく存じ上げているところでございまして、何と申しましてもアメリカは歴史が長く、伝統の古い調査局でございまして、議会図書館は世界に誇るべき図書館でございます。四千三百八十九名を擁しておりますので、私どもの八百四十五名に比較するとけた違いの数字でございます。ただいま先生がお述べになりました議会調査局の件につきましては、ただいまは七百名を超えております。七百十四名という数字を私は持っておるのでございますが、私どもの調査局は百五十四名でございまして、このうち、庶務、それから資料の収集等を担当する職員を抜きまして、実際に調査事務を担当するのは九十五名でございます。十三室十四課を形成して行政庁に対応して調査機構を持っておりますが、一課に室長、課長、調査員六名ないし八名のような情勢でございまして、一省を取り扱うのに七、八名という現状でございますが、これは現実の問題でございます。  最近の調査の御依頼の数もふえてまいりましたので、昭和四十一年に比較いたしますと、昭和四十九年は八千三百九十三件でございまして、約二・五倍の数字を持っておりまして、特に四十六年度のごときは、九千二百六十九、一万件に近い調査の依頼を受けております情勢でございますので、何と申しましても定員不足ということは否めないことでございますが、われわれは、現実の段階におきましては、いろいろな方途を講じまして、現在職員をフルに動員いたしまして御期待に沿うように努力はいたしておりますけれども、非常に至らないところが多々あるかと思いますが、われわれは諸方策を検討いたしまして、御期待に沿えるように努力をいたしておるつもりでございます。
  206. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、これは総理、わかっていただきたい。いま、私の言ったこととほぼ同じような話が続いたわけです。国会議員の質というか、レベルというものを維持するためには、国会議員一人だけの努力にまつのでなくて、そういうサポートする組織が必要である。そのサポートする組織が欠けておるんじゃ、日米議員が話し合いをしても、いつだってこっちは頭を下げなければならなくなってしまう。そればかりでなくてわれわれが資料を集めたり何か行動するたびに、行政当局に迷惑をかける、そうしたことも生じてくる。したがって、この立法考査関係の陣容をもうちょっと何とかしなければいけない。ところが、昭和四十五年以来、人員の増強はゼロなんです。大蔵大臣、聞いておいていただきたい。五年間ゼロなんです。それで予算の方の措置も全然少ないですね。大学との交流なんかも全然できない。だれかがちょっと本気になってこんな問題を取り扱えば、たちまちできることではないかと私は思っておる。この点十分お考えいただけないか。まず大蔵大臣からお金の面で今期はひとつ考えていただけないのか。こういうふうに基本的な知能の部分に当たる部分の経費をあれするということは非常に遺憾なことだし、新たなる視点で考え直していただきたい。それは議会全体の問題として考えていただきたい、こう思うのですけれども、どうでしょうか。
  207. 大平正芳

    大平国務大臣 国会図書館の予算は五十年度四十五億ばかりございますけれども、前年度に比べまして約三割の増加でございます。これは渡部さんのおっしゃるように、人員はここ数年八百四十数名、定員がそのままでございますけれども、承りますと、機械化を進めておる段階のように聞いておりますので、一般の予算の増額率よりは比較的に多く配分になっておるように承知いたしております。しかしながら、国会図書館の仕事は、仰せのように大変重要な仕事と思いますので、御要求につきましては、十分慎重に検討させていただきたいと思います。
  208. 渡部一郎

    渡部(一)委員 やはり総理大臣にお答えいただかなくてはだめみたいな気がいたしますので、総理、これはどうお考えですか。
  209. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題は、国会議員の活動にも関連をいたしますが、いろいろ財政の面もございましょうし、また国会自身のいろんな意向もございましょうから、十分やはり将来の検討の課題にいたします。
  210. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま御事情を聞かれたばかりで、余りよくわかっておられないと思いますけれども、レファランサーの充実は、国会議員の活動をいまの十倍にも二十倍にもする能力がありますので、ぜひ御考慮をいただきたいと存じます。  さて、時間が本当になくなりましたので、最後に、どうしても日本の将来のために大きな問題を一つだけ申し上げておきたいと思います。それは、今度の三木総理の所信表明演説の中で、私は一つ大きく質問したいことがあります。それは、冒頭の一ページのところに、「第四に、世界各国の経済の相互依存度の深まりとともに、不況、物価、エネルギー、通貨、資源、食糧等の問題は、世界的な規模での解決を必要としております。」と記されておりますが、この中に人口、ポピュレーションという文字がないことであります。いま日本では、人口がもうとんでもなく多くなっているわけであります。日本は山岳地帯が多いので、国土面積のうち平地で利用できるのは一八%、そこへ一億九百万人の人間が住んでおりますから、人口密度は西ドイツの四倍、オランダの五倍、イギリス、イタリアの六倍、フランスの十倍、アメリカの三十五倍、こんな数字になっております。     〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕 また、このような状況ですから、もし日本の国が西ドイツ並みの密度であるといたしますと、二千七百二十万ぐらいで住む。オランダなら二千六百万程度。日本の面積にですよ。イギリスの場合だったら千八百万人、フランス並みなら千三百万、アメリカならば四百万、カナダ並みとするならば七十五万人しか住んでいないことになる。日本がどれぐらい超過密で暮らしているかということは、この数字を見ても明らかであります。しかも、このようなやり方の中で、日本の場合は、もう環境、エネルギー、資源問題というのは、全部人口問題とくっついて起こりつつある。食糧の自給自足を求める国民が、内閣調査室の発表でも七一%というような高率でありますけれども、穀物の自給率は、四十八年度で四一%、六十年度で三七%になろうとしている。しかも、人口が増し、経済活動がふえれば農地は減るばかり、自給率は下がるばかりである。  こういうような人口を抱えておりますと、結局石油の方も、GNPが年率五%ずつ増加するということで、これは十四年後に倍、二十八年後に四倍というような石油を必要とする、このまま真っすぐ行きますと。これは理論的に言っても、実際的に言っても、不可能な数字だ。したがって、人口の抑制というか、人口のブレーキというか、そうしたことを基本政策に立てて考えなければいけないことじゃないか。私は厚生省に申し上げておるのではない。いままで厚生省所管の問題として扱われたが、これは農林省の問題である。農林省は食糧をつくればいいと思っているかもしらぬが、食糧の自給度は下がるばかりである。また、住宅の問題で建設省の問題である。これは外交の問題である。これは通産省の資源、エネルギーの問題である。そしてこれは教育の問題である。こういう多方面の問題です。そしてそれを統括なさるのは総理大臣、あなたです。  日本は、人口を抑制しブレーキをかけるための的確な基礎的な考え方が現在ない。これは早急に何かの手を打たなければならないのではないか。イギリスの保守党は、すでに一九七一年の十月、人口抑制を決議した。私、時間がありませんからどんどん言ってしまいますが、現在の日本の自然増加は一九七三年で一・二七であります。ところが、イタリアでは〇・六七、イギリスでは〇・三、この辺になると人口減少が行われておる。そして西独ではマイナスの〇・〇四、こういうことになっております。これらの国は全部減少になっております。ところが、日本だけは一・二七などという、まるっきり乱暴な増加に次ぐ増加を示しておる。これは母子保健の問題であるとか、あるいはそうした小さな一つずつの政策を論じているのではなくて、人口をふやすということは政策の上に物すごいはね返りになるという基礎的な考え方のもとに、政府が指導して、基礎的な政策構造をつくらなければいけないと私は思っているわけでありますが、総理の御所見を承りたいと思っております。
  211. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 人口問題はすべての問題の基礎的な課題であって、重要な問題であります。日本も戦後大きな人口の転換が行われて、戦前は多産多死型であったものが、最近は少産少死型というか、こういうことで非常に静止状態にある、日本の人口は戦前に比べて。これは一つの好ましい傾向だ。一年に百二、三十万ぐらいふえておりますから、一応戦前なんかに比べたら静止状態である。しかし、渡部君の御指摘のように、人口問題というのは、食糧問題、エネルギー問題等にも関連をする問題でありますから、人口教育といいますか、こういう問題については、やはり今後重要な課題として取り上げていかなければならぬ。しかし、戦前に比べたらこの問題は非常に大きな転換日本は遂げたということだと思いますが、こういう静止状態にある状態、これをさらに人口教育を通じて、人口と食糧とかエネルギー、そういう関係というものは、将来バランスをとって考えていく必要があるという問題の提起に対しては、私も同感でございます。
  212. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、時間が参りましたようですから、私は人口問題の最後を、まとめでこう申し上げておきたい。  一つは、人口を静止させ、これを減らすというところまで急速な政策判断が要りますので、人口問題を政策の基本として取り上げることをまず私は政府に求めます。  その次に、人口問題に関して、いま日本じゅうの十大都市では六五%の人か、人口は多過ぎる、減らした方がいい。極端な人は二千万ぐらいがいいなどと言う方もいますが、とにかく減らした方がいいということで、日本国民の三分の二の人はそういう意思表示をしております。このところで、人口問題を政策の基礎に据えて、他の政策との調整をする機関をつくっていただきたい。これが第二番目です。  第三番目は、この人口問題について、環境とかエネルギーとか資源とか、その他さまざまの問題にはね返ってくるこうした問題というものを十分検討するために、国会の中で常設の委員会をつくるほどの問題だろうと私は思いますけれども、その基礎的な研究をひとつ政府の皆様方に十分していただきたい。  三つ申し上げたい。これを私の質問とさしていただきます。
  213. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、渡部君のような、何千万に日本の人口を急激に減らすという政策はとらないわけでございます。現在のような、人口の急増するのが静止状態にきた、この静止状態というものを長く持続していくような政策をとりたいということで、いま日本の一億ある人口を、何千万という人口に急激に減らすというような人口政策というものは考えてない。こういう静止状態というものを持続していきたい。しかし一方において、食糧とかエネルギー等、あるいは社会環境、こういうもののバランスを考えるために、人口問題は絶えず政策の基本として、この問題は、それを踏まえて政治は考えなければならぬというその説には、私も同感でございます。
  214. 渡部一郎

    渡部(一)委員 機構をつくっていただきたいと申し上げたのには、どう答えられますか。
  215. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題は少し検討させていただかないと……。いまここでそういう問題に対して即答をいたすことは適当でない。
  216. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。次に、湯山勇君。
  217. 湯山勇

    ○湯山委員 私は、質問に先立ってというか、堅頭に、先ほどの安宅委員質問に関連して大蔵大臣にお尋ねいたしたいと思います。  今度の補正予算におきましては、酒あるいはたばこ、郵便料金について減額補正が行われております。その額は、大体当初予算の半分が減額されておるように承っております。そこで、その実施の時期については十一月一日から改定ということで組まれておりますが、十一月の一日に果たして実施ができるかどうか。できない場合には相当な歳入欠陥ができてまいりますが、それについては、改めてそういう場合には補正を出されるのかどうなのか、その点について大蔵大臣から伺いたいと思います。
  218. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、補正予算をお願いする場合の歳入の見積もりにおきまして、酒、たばこにつきましては、その定価の改定が十一月一日からお願いできるという仮定のもとで計算をいたしてあることは、御指摘のとおりでございます。もし十一月一日にそれが実現することができないという場合におきましてはそれだけの減収、それが早くお決めいただきます場合には増収が結果的に出てくると思うのでございます。それが最終的にどういう姿になりますか、再度補正をお願いしなければならないようなものになりますかなりませんか、これは将来のことでわかりませんけれども、私どもといたしましては、御提案申し上げておるようなところになるべく近い期日で国会の御承認が得られることを期待いたしておるところでございます。
  219. 湯山勇

    ○湯山委員 いまの問題は、なお経過を見てお尋ねすることにいたしまして、私はまずOPECの原油価格引き上げの問題について……。  ちょっと関連がありますから……。
  220. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと一言だけ。  いま湯山委員が言ったように、初めは十月、今度は十一月ということで補正を組んでおられるようです。ところが、もう十一月に通るわけないんですね、十一月一白から実施ということ。じゃ、また補正をと言っておられるが、そういうところにも私は政府の姿勢があると思うのです。その点だけ指摘しておきます。いわゆる行政府の国会軽視の問題については改めて論議します。
  221. 湯山勇

    ○湯山委員 OPECの原油価格引き上げの問題について伺いたいと思います。  総理も、そして外務大臣も、総理の所信表明演説において、外務大臣外交方針演説において、このことにお融れになっております。お融れになったというよりも、その演説の具体的なものとしては、一番大きくお取り上げになったというように理解しております。この演説をなさったのが九月の十六日、そして、それから約十日たった九月の二十七日にはOPECの値上げが発表になっております。そこでわずか十日くらいの間に大変大きな変化があったわけでございまして、ちょうど所信表明演説をなさった時点における状態は一体どういう状態であったかと申しますと、OPECにおいて値上げをするかどうかということについては、するだろうという意見もありましたし、しないんじゃないかという意見もございました。するだろうという方は、インフレが高進していって、産油国の実質収入がそのために低下してきているというようなこと、そういうことから大幅値上げを要求している国もございましたから、そういう点から言えば、上がるのじゃないかなという観測もありましたし、逆に上がらないのじゃないかという見方もございまして、これは総理もお触れになっておりますけれども、エジプト、イスラエルの兵力の引き離しの問題、あるいは石油はだぶついてきているというような問題、あるいはサウジアラビアあたりで値上げについては慎重にやるべきだという慎重論もありましたし、イランなどは、早くやってもらわないとというので、ユーロダラーに何か借金を申し込んでいるといったような要素は、これは値上げはないのじゃないかという観測につながっておったと思います。  そこで私どもは、これは非常に重要な問題だと思って、総理の演説や外務大臣の演説をお聞きしたわけですが、その演説をお聞きした範囲では、どうも上がらないのじゃないかという立場をとっておられるように感じました。それはどういうことかといいますと、総理は、かつての石油ショックのときに、アラブの国々へ、特にそういう国々とは、当時副総理でございましたか、三木総理でなければならないというのでいらっしゃった方で、こちらとのつながりは非常に深い。それからまた外務大臣は、外務大臣ではありますけれども、経済企画庁長官等もなさって、経済にも明るい方である。しかも非常に慎重な方だということを考えますと、このお二人の演説というものは大体間違いないものだと、こう受け取っておりました。そこで出てまいりましたのは、私が承った範囲では、これは値上げはないと見ておられるなということを感じたわけです。そこで、そう感じた理由をいま会議録から申し上げてみたいと思うのです。  三木総理はこういうふうにこの問題についてお述べになっています。「エジプトとイスラエルの間に第二次兵力引き離し協定ができ、戦争の危険が一歩遠のきましたことは、まことに喜ばしいことであります。」その次です。「石油問題で中東と深いかかわり合いを持つ日本にとっては、特に歓迎すべき成果であります。」ですから、これはまあうまくいきそうだ。「しかし、他方、原油価格の値上げがOPECで討議されつつあります。輸入石油への依存、エネルギー源としての石油への依存、そのいずれの度合いもきわめて高い日本としては容易ならざる問題であります。」これはもう当然です。その後「この困難な時期に工業製品と原油価格とが果てしない値上げの追いかけっこをしていたのでは、世界経済は不況から脱出することができません。」その次に、「私はこの機会に、OPECの産油諸国が、少なくとも、目下開催準備中の産油国と消費国との間の会議の結論を得るまで、あるいは少なくとも世界経済が不況から脱出する目途がつくまで値上げ問題を白紙のまま決定を延期するよう強く訴えたいのであります。」これが総理の演説でした。ここで大変重要になってくるのは、産油国と消費国との間の会議の結論というものに大変大きな期待をかけておられます。後の、不況が克服されるというのは、これは別に具体的に何ということありませんから、この会議というものがポイントになってきている。  それを受けて、宮澤外務大臣の演説はもう少しはっきりいたしております。「原油の価格がこれ以上引き上げられれば、」――「これ以上」という時点は九月十六日です。その時点を指して「これ以上」と私は受け取っております。「これ以上引き上げられれば、世界経済の低迷状態が長期化する恐れがあります。この点について産油国の理解を得て、産油国と消費国とが対決ではなく、あくまで対話と協調により相互の繁栄のため調和ある解決を導き出していくべきであると考えます。」その次です。特に、こういう言葉が使ってあります。「幸いわが国を含む関係国の努力により、産油国との対話は近いうちに再開される見込みであります。従来から一貫して産油国との間に調和ある関係の樹立に努力してまいりましたわが国としては、あくまでもかかる観点からこの対話に積極的に取り組んで行く所存でございます。」と、こう述べておられます。  そうすると三木総理も、条件は、イスラエルの問題がこういう状態になったので、いい条件だ、そこで次の会議を目がけて呼びかけをなさった、強い訴えをなさった。それから宮澤外務大臣は、やはりこれ以上上がったんじゃ大変だ、そこでこれはとめなければならないが、幸い日本にはこういう条件がある、それに力を入れてやるんだということですから、特に、最初申し上げましたように、アラブと総理との特別な御関係、それから外務大臣のその御判断からいって、私はこれをお聞きしたときに、ああ何か成算があるんだなということを感じたわけです。  しかし、これから十日もたたないうちに、一〇%の値上げが発表された。この間の政府の動きも、時間がありませんから詳しく申しませんけれども、石油問題で非常に苦心しておられたのは通産大臣でした。その通産大臣の動きも、九月二十七日のOPECの値上げというようなものは全然頭にも眼中にもなくて、ただ今日逆ざやで起こっておる赤字をどうするかということから、電力会社関係の働きかけをなさるとか、あるいは生産を抑えるということについて勧奨なさるとか、あるいはまあひょっとすると独禁法違反になりかねないようなガイドラインをつくるというようなことまでおっしゃって、とにかく現在のその時点までの赤字をどうするかで一生懸命であって、それ以後の問題については一向お触れになっていない。これは行動を通してもそういうことになっています。そうすると、一体この演説のときに、九月二十七日のOPECの値上げというものを意識しておられての演説であったのか、それはそうでなかったのか、その点をまず伺いたいと思います。
  222. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 湯山君の御質問の、OPECが値上げをしないだろうという見通しならば、ああいう演説は、相当な部分を費やした部分でありますから、するわけはないのであります。ところがそうではない、値上げの可能性が多分にあるということから、その値上げをすることによって、日本はもとより世界経済全体に憂慮すべき事態を引き起こすから、どうか節度のある一つの決定をしてもらいたいということを訴えたことは、私は非常に有意義だったと思う。この訴えは、国連総会あるいはまた外交チャンネルを通じて直ちにアラブ諸国にも伝えたわけですが、そして私は十分慎重な検討をしてくれたと信じていますよ。それはなぜかといったら、二十数%という声が高かったわけですからね。そういう点で一〇%ということに対しては、相当慎重な検討をしてくれたものと私は信じます。  産油国と消費国との関係というものは、やはり対話と協調といいますか、対決では問題解決できぬですからね。日本日本の考えておることを率直に述べて、相互の理解を深めていくという態度をとるべきであって、何も黙って日本の意思表示をしないで、決定したことに対して日本がいろいろと批判を加えるような行き方でなくして、事前に日本の意図を伝えて理解を深めるというような態度を、産油国との間には将来においてもとっていかなければならぬものと考えておる次第でございます。
  223. 湯山勇

    ○湯山委員 総理の演説がAP、UPで当時伝えられたことは私も存じております。ただ問題は、もうその段階では、考慮を加えられた加えられないの問題じゃなくて、大体どれだけ上がるんだということを予期しておられたのですか。  それから、総理はこの会議に大きな期待をかけておられます。この会議というのは一体いつ開かれる予定であったのですか。
  224. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 産油国準備会議は十月十三日から開かれる予定で開かれました。
  225. 湯山勇

    ○湯山委員 この会議に期待をかけられて――この会議は十二月十六日からなんです。そして準備会は、いま宮澤外務大臣がおっしゃったように十月十三日です。九月二十七日に上がったのを、この会議に訴えてもとへ戻すとか訂正するという、そういう期待がかけられたのですか。白紙にせよというのが三木総理の訴えです。そういう期待をかけられたかどうか。――まあ、ようございます。  外務大臣にお尋ねします。  外務大臣は、この問題について、幸いにという言葉を使っておる。言葉にひっかかるんじゃありませんけれども、あなたは非常に慎重な方ですから、めったにこういう言葉をお使いにならないと思う。その外務大臣が、幸いにわが国を含む関係国の努力によって産油国との対話が近いうちに再開される、これへ働きかけて、これ以上上がっては大変だから上がらないようにするということをおっしゃったのですが、これは具体的に何を指していらっしゃるか。
  226. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国は石油価格があれ以上上がりませんことを切願をしておったわけでございますが、それが入れられなかったことは、やはり非常に残念なことであると存じます。  私が、幸いにとあのときに申しましたのは、産油国の準備会議は一度四月に開かれましたけれども、何らの成果がないまま、いわば一遍閉じられたわけでございます。その後、わが国を初め各国の努力がございまして、十月の十三日に開かれる予定でありました会議においては、すでにいわゆる石油の問題ばかりでなく、一次産品の問題、あるいは通貨に関する問題、あるいは開発に関する問題というふうに、かねて産油国側が主張しておりました幅広いそれらの問題を討議するための委員会を設けようということが、事実上関係国の間で合意に達しつつございましたので、したがいまして、この産油会議以後準備会議を開くことによって、かねて産油国側が主張しておった幅広い経済問題、ただ石油にとどまらない、そういうものを先進国、発展途上国との間で相談をする場ができつつあるではございませんか、したがって、そこまで来たのですから、それをひとつ見てはくれまいかという意味で申したわけでございます。
  227. 湯山勇

    ○湯山委員 それもやはり間に合いませんですね。この会議は、おっしゃるように、まあ準備会というのは、従来の名前から言えばエネルギー国際協力会議で、今度は名前も改まって、何か国際経済協力会議ということになるということですが、これはそういう今度の改定に伴う何らかの期待がかけられるという御判断でしょうか。総理、いかがですか。
  228. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 消費国と産油国とか話をする会議で、それはエネルギーばかりでもございませんけれども、エネルギーもやはり主たる問題でございますから、そしてお互いに消費国の立場というものも産油国の理解を深める場になるわけでございますから、それはやはり、そういう話、その理解の上に立って石油の値上げというようなものは決定をしてもらうということになれば、これはやはり原油の価格の引き上げにも影響が考えられる会議でございます。
  229. 湯山勇

    ○湯山委員 それはそうなればそうでした。しかしそれの前提は、値上げが行われてないという前提でなければいまの話にはならないわけで、これが上がった後の問題ならば別です。しかしそうじゃないのですから、そうすると、この演説も、外務大臣の演説も、これはOPECの値上げをしたということが前提にはなっていない。そこで、この演説当時と今日では大変情勢が変わっている。こういうことは当然お認めにならなければならないと思います。いかがでしょうか、総理
  230. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはそうです。一〇%原油の価格が上がったことによって、日本経済にもそれなりのやはり影響を受けるということでございます。
  231. 湯山勇

    ○湯山委員 したがって、そういうことにどう対応するかということについては、この演説には何もないのです。大平大蔵大臣は、財政演説のときにはやはりこれにお触れになって、そしてこのOPECの一〇%値上げを含めて、流動的で前途は楽観できないというように述べておられます。これは私は、それなりにそのとおりだと思いますけれども、ただ問題は、総理のこの演説、外務大臣の演説が、そういう大きな基盤に、前提に変化があったことを触れていないまま今日来ています。そこで、そういう大きな変化があったときには、私はやはり、何らかの所見、所信を御表明になるべきではないか。このことについては、総理御自身、きのうですか、だれかの質問に対して、思うとおりいく場合もある、いかない場合もある、ところが、いかない場合には、それはそのときの事情、理由等を説明してやはり了解を得るようにしなければならないという政治姿勢のお話がございました。まさにこの場合、あのときに上がらなかったのと上がったのとでは、非常に条件が違っている。大平大蔵大臣は前途楽観できないという御表現ですけれども、一体今後どうしていくのかという問題についてはお触れになっていないのです。  そこで、今日もう世界の目というものは次の六月のOPECに向けられている。これは世界の常識です。その場合に、たとえば日本などがこの景気対策が成功して不況から脱却しておれば、これは当然もう値上げの条件はできてきている。なお国際的なインフレがおさまっていなければ、目減りを埋めていくためにも、やはり値上げを要求してくるということも考えなければなりません。そういうことを考えると、お互いの目というものは、重要であればあるほど、もう六月対策に移っていなければならない。ところが、それが何も触れていないで、ただ、まあ仕方ないな、向こうが決めたのだから、残念だが言うとおりにならなかった、総理も強く訴えたけれども防げなかった、期待しておった会議には、それはもうとてもじゃないが間に合わない、こうなってくれば、これは私はこう考えるのです。  施政演説、あるいはこの国会の所信表明なり外交方針というものは、今日私たちが審議しておる基調なんです。総理外務大臣の演説を基調にしていまこの審議を続けています。その基調に変化があったのですから、そのことについては、、総理みずからが、あるいは外務大臣も、こういう変化があった、これについてはこう対処していくのだということを進んで御表明になる、これが私は正しい政治姿勢、民主的なあるいは議会尊重のあり方ではないか、こう考えますが、総理いかがですか。
  232. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、施政方針演説というものは、施政方針演説を通じて世界にアピールする意味もあるわけでございます。あの時点では、何とかして石油の値上げというものを延期してもらえないかということで訴えたわけですね。それなりの私は効果を持っておったと思うのです。もう少し大幅な値上げをやはり強く主張しおったわけです。その間、サウジアラビアのヤマニ石油相などの動きは、湯山君も御存じのとおり、大変に努力をされた跡というものは、われわれもよく知っておるわけでございます。しかし、全体の会議でございますから、サウジアラビア一国だけの考えではなかなかそうはならぬという面もありますけれども、大変に努力をされたということは、いろんな報道を通じてわれわれも承知をしておるわけです。  この石油の値上げに対しては、政府としては、原油の一〇%の値上げというものは年内の輸入に十八億ドルぐらいの増加をするものだ、卸売物価への波及効果は一%程度卸売物価上昇の原因になる、消費者物価は〇・五ぐらい、これだけの影響を持つ。この六月以後、これは一体どうなるんだろうかということは、OPECの方も、単にインフレばかりでなしに、国内の自分の開発に要する資金なども勘案の上ということもございますので、いまの時点ではなかなか、これは一体どうなっていくかということは困難でございますが、十二月には国際経済協力会議が行われるわけでございますから、現在の世界経済状態、ことに石油を産出しない国々における打撃というものは非常に深刻なものがある。だから、こういう会議を通じて産油国の理解を得るようにわれわれとして努めてまいりたい、この値上げによる影響日本経済の中に吸収していかなければならぬ、こう考えております。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕 今後、値上げに対しては、できる限りそういう会議を通じて産油国の理解を深めて、その問題に対処していかなければならぬ、こう考えております。
  233. 湯山勇

    ○湯山委員 私は、実はそれ以後の石油政策、これについてもお尋ねしようと思っておりました。それは、今日石油業界についてはいろいろ御指導にもなっているし、それから従来の蓄積赤字と今度の値上げ分、二段階に分けて価格操作もやっていこうということをお考えになっているということも存じております。  ただ問題は、では石油業界だけよくなったら次はどうかというと、電力業界がそのしわ寄せをかぶる、こういうことになってくる。それについてまた通産省は何かしなければならない。そこいらまではいいのですが、そうじゃなくてもっと端っこの方、つまり、たとえば漁業なら漁業をとってみましても、日本の漁業が使っている石油は国内で大体六百万トン、それから外国で仕入れるのを入れれば大体七百万トンでしょう。それで漁獲は一千百万トン程度、その中には油を使わないのもありますから、極端に言えば、漁獲高と消費する石油と余り変わらないという状態、これらが一体どういう影響を受けるか。それは石油業界、電力業界に一生懸命世話してあげるのは結構ですが、これらについても同じように世話できるのかどうなのか。家庭生活をやっておる人も、電力も影響を受ける、石油も影響を受ける、それを受けた製品からの影響も家庭に響いてくる。それに対してどうするかということなくして、単に石油だけ、電力だけということでは不公平です。そうなれば大企業優先ということにならざるを得ない。  また私どもが考えた中では、石油業界というのは、そんなに過保護の教育ママのようにしてやらないとできないか、やっていけないかというと、先般の狂乱物価のときには千載一遇、あるいは今度の場合、宮澤外務大臣は、幸いという言葉はそれはこういう意味だとおっしゃいましたけれども、今度OPECが上げてくれたから値上げがしやすくなったと喜んでおる業界もあると聞いています。そんなにこれは過保護の教育ママのようにしなければならないのかどうかということも問題なんで、こういう問題もお聞きしたかったのですが、時間の関係で、これはまたの機会にいたします。  総理外務大臣にお願いいたしたいことは、かなり具体的にこれにお触れになっていますから、これの変化に対応する政府の考え、そういうものを、いまのお言葉だけでは私はわかりかねます。そうかといって、ある意味での訂正もおありになると思いますので、こうなった、それについてこうしていくのだということについて、私は、それに匹敵する何か文書でお示し願えないか。そうすれば、またそれによっていろいろ判断させていだくということにしたいと思いますので、ひとつその点お諮りいただきたいと思うのです。
  234. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、先ほど申しましたように、OPECの石油値上げの動きに対して日本が訴えた演説でございますから、その時点においては、これは節度のある態度を望むということを訴えることは当然でございます。いまは一〇%値上げをされたわけですから、それ自体の効果はあったと考えるということは、申したとおりです。  一〇%の値上げに対しては、これは政府は、現実にそうなったわけですから、これに対応するべく通産省を中心としてこの対策を講じておる。これ以上お答えを文書でせよと――ここで答弁をしておるとおりであります。
  235. 湯山勇

    ○湯山委員 総理が言われるように、これは効果があったといたしましょう。だからそれは、仮にそういう不安はあったけれども、強く訴えるためにこう言ったのだ――しかしやはり一〇%というのは大きいです。それは三〇%、二〇%の要求もありました。しかし五%というのもあったし、いろいろなそこでの合わさったものがそうなって、それについて日本は対処しなければならぬ段階へ来ています。過去の累積赤字に匹敵する欠損が出てくるという状態ですから、これをほっておくという手はないのです。だから、言われたのは、その時点でそのとおりです。しかし審議中に変わったんですから、それに対応するものはやはり出していただきたいということです。そうでないと、私は、先ほど来御指摘がありましたように、今度の問題でも、日本は情報を一方的に片寄ったところからしか取っていない、このOPECの中の力関係の判断を間違っているという批判もあることは御存じだと思います。  それから、いろいろありましたが、私は、外交の面でもっと考えていただきたいのは、先ほど来、日中平和条約の問題も出るし、核拡散防止条約の問題も出るし、それから国連経済特別総会で、日本の途上国対策がどうも大変不熱心だということを明らかにされたこともこの委員会で明らかにされました。それから、海洋法会議等についても、よく聞いていると、外務大臣と農林大臣とにはニュアンスの違いがあります。外務大臣は、いまのように、この会議の結論が出るまで決めるのは好ましくないとキッシンジャーに言った。しかし農林大臣は、そういうことも考慮の一部に入れるけれども、やはりやるのだということを言っているし、その結論いかんにかかわらずやるのだという御表明も数回ありました。だからうんと食い違っているのです。閣内でも食い違っている。何月何日の答弁というのはあるんですよ。けれどももう言いません。  それから、この海洋法会議についても日本は最初反対でしょう。それから次には賛成、その次は、今度はそれを使ってやっていこうというので、どうもまちまちです。それから捕鯨の方も、きのうもう最後の各社別のが出たそうですけれども、とにかくあの国際捕鯨委員会においても日本は初め反対した。次には条件をつけで賛成した。私はこのことが今日の石油の問題にも響いていると思う。  そこで、やはりもっとしっかりした外交をやらなければ、六月だってまたあわてますよ。そういうことの指摘もせざるを得ないことになりましたので、この問題は、だから委員長の方で何か適当な時間をとって釈明いただくか、文書で出していただくか、お計らいいただきたいと思います。
  236. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ちょっと事実関係について御説明をいたしますと、九月の末にOPECが原則的に一〇%の値上げを決定したことは事実でありますけれども、これは数日間かかりまして、激論に激論を重ねましてようやく結論に到達した、こういういきさつ等もありまして、油の種類等については細かい決定がないのです。それから支払い方法についても決定がないわけですね。そういうことでございますので、いまいろいろ具体的に折衝しております。  アメリカあたりは、表面はそうなっておるけれども大体は六、七%ぐらいな値上がりに落ちつくのではないか、こういう見通しをしておるようでございますが、わが国におきましても、むしろ実質それ以下になるように努力しなければならぬ。こういうことで、各国ごとにいろいろ具体的な作戦を練りまして努力をしておるわけでございます。したがいまして、一〇%と言いましても、それは表面のことでございまして、実質的にはどの程度になりますか、目下懸命にやっておるところでございまして、なお二カ月ぐらいかかると思います。  そういう実情でございますから、いま油の一〇%値上げ決定による影響等を具体的に申し上げるという段階ではまだないと思います。
  237. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣おっしゃいましたように、石油業界が逆ざやだと言うけれども、電力業界にはそうでないという意見もあることも御存じだと思うのです。だから、なかなかそんなに簡単にいくものではないということは、よく知っています。ただ問題は、これは非常に重大な問題なんで、それについて一体政府はどうなのかということが、もっと明確に、そしてこういう時間制限もなく、ゆっくり読んで判断できるようにしていただきたいということですから、それをお願いしておいて次の質問に移ります。
  238. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま通産大臣が言いましたように、もっとはっきり情勢がわかるようになってきたならば、これに対してどう対処するやということは、政府態度は明らかにいたします。
  239. 湯山勇

    ○湯山委員 外交もしっかりやってください。  次は、やはり食糧の問題です。  これは三木総理を評価すべき点が多々ありまして、たとえば所信表明で食糧の問題にお触れになっていること。それから総理の私的な諮問機関として国民食糧会議をおつくりになったこと。それから国際化に対応した農業問題の懇談会に十月の十三日に御出席になったということ。そこでは、五十一年度予算は困難だけれども、食糧問題を最重要課題として予算措置もするというお約束をされたこと。それから今度の補正予算においても、縮小の中で農業基盤整備については四百九十七億という増額を見たこと。これらは私は非常に高く評価しておるのです。  ところが、その三木内閣のもとで、先般来、青田刈りが行われています。つまり、米として収穫するんじゃなくて、その前に稲を刈り取ってしまうということです。それも七月の二十七日が初めで、これはやむを得ないとしても、九月の九日、九月の十日、九月の十五日、もう穂が出ているのをやっています。最後は十月の十六日、つい数日前、もうこれははっきり米になっているのを、青田刈りというので米として通用しないようにしている。  これについては、農林省からいただいた資料では、全部で五カ所、秋田、新潟、新潟、滋賀、熊本とありまして、総面積五百三十ヘクタールに及んでいます。農林省としては言い分のあること、これもよく知っています。それは米をつくらないと約束をしておったのにつくったというのが理由ですが、さて、私が申し上げたいのは、言い分はともかくも、これはとにかく約束しておって、米をつくらないと言っておったところへつくったというのですから、いいとは申しません。しかし、青田刈りというのは、これはもうせっかく努力した米がその分全部ふいになるわけですから、公務員やその他で言えば減俸ぐらいでしょうか。それからその際、補助を打ち切るとか使用権を取り上げるとかいうことの条件でいろいろやらしています。使用権を取り上げると言えば、これはもう停職か首に当たるようなことです。つくったのは米なんです。アヘンのケシをつくったり、あるいは大麻をつくったりしたんじゃないのです。悪いものをつくったんじゃなくて、米をつくったのです。中には逆に、国が造成した土地へ米も何にもつくらないで、あのオオアワダチソウとかブタクサとかいう公害草をぼうぼうと生やして、それでいて何のおとがめも受けない。米をつくった者が言い分のいかんを問わず処分を受けるというような農政は一体あっていいものかどうかということについて、総理の常識的な御判断を伺いたいのです。  これについては、年をとった方はもったいないことをするなあと、こう言っています。それから若い人は、この補助打ち切りとかあるいは使用権を取り上げるとかという権力的なやり方、昔の悪代官のようなやり方に対してずいぶん反発を感じている。これも事実です。そこで、いまのように、こうやって米をつくった者にそうやって処分する農政というのは、一体総理は、それは仕方ないのか、そういうことはあってはならぬのか、どちらでしょうか。
  240. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは農民として、もったいないことだという感情を与えますことは残念ですけれども、これにはやはり、米の作付転換、米の過剰事態のいろいろな処置があって、やむを得なくとった処置であろうと思いますが、具体的なことは、農林大臣がなぜそう言ってその措置をとらざるを得なかったということは、そういうときの処置に基づいてとったのでしょうから、さらに補足して説明をいたすことにいたします。
  241. 湯山勇

    ○湯山委員 構いません。まだたくさん聞きますから、違っておったら言ってください。  約束を守らなかった、米をつくらないという約束をしておったのにつくったということが理由だということです。違いますか。
  242. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまおっしゃいましたように、約束を農民の方が守られなかったということで、他の大半の農民の皆さんは守っておられる、そういうことから、行政の公平という面もありますし、したがってそういうふうな措置をとらざるを得なかったわけで、農民の心情は理解できるわけですが、これは行政の公平のためにはやむを得ないと思っております。
  243. 湯山勇

    ○湯山委員 行政の公平という点とか約束を守らなかったというのはわかりますけれども、悪いものをつくったのじゃないのですよね。総理、ケシをつくったとか大麻をつくったとかというのじゃないのです。それに対して、もう取り入れ間際のものに青刈りをやらせるという農政というのは、一体あっていいかどうか。総理、遺憾だと言われますから、それを私もそのまま受け取っておきましょう。そこで、そういうことが農政に対する不信感につながってくるということも、これは否定できないのです。  そこで私は、きょうはもっと積極的なことを申し上げたい。そうやってとにかく米以外のえさとか麦の増産を図っておられる。そのやっておられる政策というものは、成功していると農林大臣は御判断になりますか。というのは、麦の増産対策を打ち出したのは四十九年、五十年。四十八年は十五万五千ヘクタールで、麦の収穫は四十一・九万トン。四十九年は奨励金が出ました。それでいて面積は十六万ヘクタールで四十六・五万トン。ことしは十六・八万ヘクタールでやはり四十五万トンか四十六万トン程度。ことし二〇%増産と言っておられたのですね。できましたか。
  244. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先に青田刈りの問題についてちょっと補足させていただきますが、大体、先ほど総理答弁されましたように、開田抑制措置というか、生産調整を行うために開田抑制措置をとらなければならぬわけでありまして、その政策を続けておるわけで、したがって干拓というか、開田抑制地区が全国で百八十五カ所ばかりあるわけであります。この地区に入植をされる農民の皆さんとは、約束で米はつくらないということで大半の方が畑作をしていただいておるわけでございます。したがって、その地区で全部米をつくるとなると大体五十万トンぐらいできるということになって、いまの米は過剰な基調にあるわけでございますから、したがって、今後ともこの開田抑制というものは続けていかざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。  なお、いま麦のお話が出たわけでございますが、確かに麦につきましては、昭和四十八年までは非常な減産が続いておりまして、年間三〇%の減産が続いてきたわけでございます。ようやく四十九年から増産対策を進めたわけでございます。その結果、四十九年が三%、五十年は五%。非常にわずかではございますし、いまお話のありましたように、二〇%の目標にはとうていいかなかったわけでございますが、いままで三〇%以上毎年続いた減産にようやく歯どめがかかって、これからその対策を強化していけば、私は麦の増産も今後相当進めることができる、こういうふうに考えておるわけであります。
  245. 湯山勇

    ○湯山委員 そうおっしゃいますけれども、この状態では増産といううちに入らないですね。  そこで、その理由等はまた後で触れますけれども、農林大臣は総合食糧政策というのをお立てになって、そして今度はそれだけではいかぬということから、十アール当たり五千円の奨励金をさらに出すという構想を持っておられるようですが、これは間違いございませんか。
  246. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまの麦増産対策として、今後十年間というか、昭和六十年を目標にいたしまして、裏作にいたしましても、いま大体二十二、三万ヘクタールぐらいしか裏作が行われておりませんが、これを七十万ヘクタールぐらいには持っていきたいというふうな目標のもとに進めたい。そのために、麦に対する奨励金とともに反別の助成金といったものを現在考えておりまして、今後ともこれが実現のために努力を続けていきたいと思っております。
  247. 湯山勇

    ○湯山委員 これは何年産麦に適用されるのですか、いまおっしゃった十アール当たり五千円の助成金というのは。
  248. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 来年度予算からぜひ実現をしたいというふうに……。
  249. 湯山勇

    ○湯山委員 いや、何年産の麦に適用……。
  250. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 来年産麦でございます。
  251. 湯山勇

    ○湯山委員 五十一年産ですね。
  252. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 はい。
  253. 湯山勇

    ○湯山委員 五十一年産の麦はいつまくのですか、農林大臣。
  254. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ことしの秋でございます。
  255. 湯山勇

    ○湯山委員 ことしの秋まくのにいま努力していますというのでは、一体農民が、じゃつくろうという気になりますか。最初の年もそうだったのです。私が農林委員会で言ったら、農林大臣は責任持ってやりますと言われたけれども、当時一俵について二千円という約束だったのが、二千円と千八百円というような段階をつけられて、かえって不信感を大きくしたばかりです。いま農林大臣はこの段階で――いままく段階ですよ。適用する麦をまく段階に、まだこれから努力する。これはどうなるかわからぬですね。そういうことで一体五十一年産の麦が増産できますか。
  256. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、反別助成金の方は来年度予算の関係もあるわけでございますので、今後の予算を編成する中にあってこれを確定していかなければならないわけでございます。したがって現在の段階においては、ぜひともそれを実現したい、こういうふうに言わざるを得ない状況にあるわけであります。
  257. 湯山勇

    ○湯山委員 予算が成立してからだと五十一年産麦に適用できますか。予算が成立してこれでやるのだということをやって、五十一年産麦にそれが適用されますか。適用になるけれども、それからつくったので間に合いますか。
  258. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろん秋にまかなければ間に合わぬわけでありますが、助成金の支払いは、その来年度産麦の収穫とか、そういうときに払えばいいのではないかと思っております。
  259. 湯山勇

    ○湯山委員 総理、大蔵大臣、あれだけ農林大臣が一生懸命苦しい答弁をしておるのです。一生懸命ですよ。そこで問題は、私は政府の姿勢にあると思う。予算が通らなければ、自信持って五千円の奨励金出すから麦つくってくれというのは言えない。いままく真っ最中です。もう十一月中にやらなかったら、これは一年おくれるのです。  そこで、予算できなければわからないというような、そういうしゃくし定規なのじゃなくて、総理ももちろんその実現に努力する、大蔵大臣も責任持ってやれるようにするというようなことをここでおっしゃれば、農林大臣も自信持って進められる。これはあたりまえでしょう。いまのように、予算が通らなければ言えないので、そのために一生懸命努力します、だから皆つくれじゃ、これはつくりっこないです。総理、ひとつ農林大臣を援助する意味で、責任持ってやるとはっきりした答弁をなさってください。あるいは大蔵大臣でも結構です。
  260. 大平正芳

    大平国務大臣 お説はよくわかりますけれども、五十一年度の予算に関連した問題で農林省からそういう要求がございますことは承っておるわけでございます。せっかくの御要求でございますので、精いっぱい考えてみます。
  261. 湯山勇

    ○湯山委員 考えてみます――大蔵大臣ではやはりそこまででしょう。では総理も努力されるかどうか。
  262. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私もできるだけ努力をいたします。
  263. 湯山勇

    ○湯山委員 この程度でやめますが、農林大臣はひとつ自信持って増産するようにやってください。  それから、それと関連して大事なのは、やはり生産調整というのは、いまのような青田刈りをやらしたりしなければならない。米をつくって処分受けるというようなこと、そういうことにつながるので、生産調整というものをもう一ぺん考え直したらどうかということを私は提起したいのです。これはかなり安易に生産調整に頼りますからね。石油でもそうだと思うのですよ。これも減産せいというようなことを言っていますが、これまた雇用に響いてきますし、収入に響いてきますし、やはりなるべくとらない方がいい。  その一番適切な例はミカンです。生産調整で価格維持のためにミカンの摘果をやりました。ところがどうだったかというと、どうにかキロ百円は維持できましたけれども、政府や都道府県、団体等が借りたりいろいろやって、それに対しては余ったミカンを処理するためにジュース工場をつくりました。かけた費用は大体総額で農林省の計算によると二百数十億に及んでおります。二百七十億、もっとでしょうか。ところが、それだけ金をかけてやったジュース工場がどれだけ稼働したかというと、六〇%くらいしか稼働しない。これはむだなことです。一生懸命、余るからというので、摘んで落として摘果をやっておいて、さてジュース工場へ向けるのはいまのように稼働六〇%くらい。昨年五十五万トン程度の目標に対して、四十万トンもなかったのです。大事な投資したものを遊ばしている。これは何に問題があったかというと、生産調整にあったこと。それから流通機構にもあります。あるけれども、結局生産調整というのは常にそういうものを伴うのです。  米の豊作が喜べない時代とか、米をたくさんつくったら処罰するというような時代が、日本の歴史のどこかにありましたか。農林大臣、どうでしょう。御記憶ありますか。
  264. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 生産調整といいますか、米をつくって処罰するというふうな、そういうふうな時代は聞いておらないわけでありますが、いまの生産調整のお話で、ミカンの生産調整等につきましても問題があるというお話ですが、おととし御存じのようにミカンが大暴落をいたしたわけでございまして、そういう結果を踏まえて、生産農家の皆さんの自主的な調整というものが去年行われました。その結果ミカンの価格というものは妥当に維持されたのではないかというふうに私は思っております。  確かに加工用に回されたミカンは、お話しのように六割程度であったわけでありますが、これも大体需要に見合った数量じゃないか、こういうふうに私は思っております。加工用施設いっぱいがフル操業した場合には、むしろ価格が暴落をするというふうな点も憂慮されるわけで、大体六割といったところは一応の需要に見合った程度ではないだろうかと思うわけでありますし、またミカンの自主調整も、ことしも裏作ではありますが、やむを得ないとも思っておるわけでございます。  同時に、米につきましても、米が過剰な基調にあるわけでございまして、一応稲作転換事業は終わりましたけれども、今後三年間水田の総合利用という形で、増産をしなければならない農産物を稲作転換という形で推進をしなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  265. 湯山勇

    ○湯山委員 農林大臣、もっとやはり大きい立場から見ていかないと、目の先だけ見ていくと間違うのです。ジュースの需要が大体そうだと言いながら、やはり外国のジュースも入っていますし、学校給食へ拡大するとか伸ばしていこうと思えば方法はあるのです。問題は、とにかくそれだけたくさんできておるものを摘んで落として捨てて、逆に国が、二百五十七億一千四百八十三万三千円、こんなにたくさんの資金を投じてつくったジュース工場が六割しか稼働しないという状態は、これはやはりほっておけない。ビールじゃなくてそういう事態がほっておけないということを考えなければならないと思うのです。  そこで私は、ここでひとつ、三木総理を初め農林大臣、皆さんに考えていただきたい点は、米はあれだけつくっちゃいかぬと言っても、処罰を受けてもつくるんでしょう。青田刈りをやらされたように、つくってはいかぬと言われた米は、処分を受けてもなおかつつくろうとする。それから麦は、これだけ奨励して今度五千円の奨励金が出れば、私は家族労賃というのは大体米に近づいてきておると思います。そこまで、一俵について二千円出し、それから総理もいまおっしゃったように、今度また反当五千円努力しますと、これだけ手厚い政策をとっても、なおかつ二〇%に届かない。ここに私はポイントがあると思うのです。ほっておいてもつくろうとする米、こんなに手をかけてもやっぱり生産が伸びない麦、ここの間違いをやはりしっかり認識しなければならない。米を調整するというのは、平たく言えば、安倍農林大臣はお若いから野球なんかおやりになると思うのです。王とか田淵ですか、ホームランを打ちますね。田淵は右で打つし、王は左で打つ。このきき手が米づくりなんです、日本農業にとっては。その米をつくるなというのは、これを抑えるというのは、王に右で打て、田淵に左で打てというのと同じじゃないですか。これじゃホームラン打てない。これじゃ自給率を伸ばせと言ったって伸びないです。だから懇談会だって、幾らやったって四〇%の穀物自給はできない。長期見通しだって、やればやるほど三〇%台に落ち込む。それはきき腕を使わせないで、そうでない不得意な方を伸ばしていこうという、この農政の間違いがこういう状態を起こしている。ここに気がつかなかったら、私は食糧自給はできない、いつまでやってもできない、こう思うのです。  そこで、それに関連していろいろお尋ねしたいのですが、確かにそうだからといって米をほっておるわけじゃなくて、消費も拡大しなければならないというので、学校給食を進めてこられました。これに対しては政府の方でも、無償で研究用というので、本年は千六百トン、二億余りの支出をしておられます。これもいいことです。ことしでこれ切れますね。この後、無償供給が切れたら、この米の給食というのはがたっといくのではないかという心配と、それから実際は、米の学校給食を阻害している要因の一つに無償のものがある、無償がかえって阻害しているのだという意見と両方あります。ただ、今日幾らか、十万トン近い学校給食が行われているということですが、無償を打ち切ったために米の学校給食が後退するという心配はないか。その後の対策はどうなのか。これは文部大臣の方の御所管かもしれませんが、伺いたいと思います。
  266. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これからのわが国の食糧の確保あるいは自給力を高めるという意味からいきましても、食生活の改善といった点から見ましても、学校給食にやはり米を拡大をしていくということが必要であると私は思うわけでございます。  その中にありまして、いまお話しのように、実験校を指定をして無償で米を配付しておって、それによって学校給食も多少は伸びてきたわけでございますが、これがことしで打ち切りになるわけでございます。しかし農林省としては、文部省にお願いをし、また私も文部大臣にもお願いをいたしておるわけでございますが、今後新しい形を工夫をいたしまして、そうして今後とも米の学校給食が積極的に推進されるような方途を講じたいということで、いま具体的に検討いたしておる段階でございます。(湯山委員「予算的に何か考えていないか」と呼ぶ)もちろん予算を伴うことにもなってくるわけでございまして、いまその点につきましても研究をいたしまして、来年度はぜひとも実現をしたい。文部大臣にもお願いをしたいと考えておるわけであります。
  267. 湯山勇

    ○湯山委員 文部大臣から……。
  268. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいまの学校給食の問題でございますが、先生が御指摘になりましたように、無償の米で、そうしていままでいわゆる指定校という形でやってきております学校が相当あるわけでございます。昭和五十年度について申しますと、三百六十九校でございます。しかしながら、それが昭和四十五年から始まった制度でございますから、一応本年度で打ち切りということになると、さてその後は米食という方向に向かないのではないかという先生の御心配の御指摘と思いますが、実はこの問題に関しましては、そういう指定校以外に、すでに学校それぞれの判断に基づきまして米を使っております学校が、昭和五十年度で申しますと、おおよそ四千六百校、これは小学校、中学校、高校などを含めましてそうなりますので、四千六百校から三百六十九校を引きますと、四千校余というものがいろいろな形で自主的にもうすでに米食という方向を打ち出しているわけでございます。  そこで、そういう趨勢がございますから、またそればかりでなく、先ごろ開かれました国民食糧会議などにおきましても、米食給食の問題というようなことも非常に今後の問題として十分検討すべきであるという御意見もございましたから、文部省では、ただいま保健体育審議会というものがございますが、その中に学校給食分科審議会というのがありますので、そこで米食給食という方向に向かっていきます場合に生じます幾つかの問題がありますので、御検討を願っております。具体的に申しますと、米食とパン食との場合の栄養の問題ですとか、あるいはおかずの問題もございますし、それから施設の問題もありましょうし、あるいはそれに働く人々の問題もあるわけでございます。こうしたことをいま審議会で御審議中でありますから、一方においてそういう四千六百校で動いているという事実があり、他方そのような御審議を願っている、こうしたものを踏まえまして、先ほど農林大臣からも、この米食の重要性についての御意見がありましたとおりでございますので、私どもの方は、実情と審議を踏まえて農林省と協議をいたしながら、この問題をどういうふうに進めていくかということを考えていきたい、かように考えている次第でございます。
  269. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、文部大臣に一つお願いがあるのですが、これで無償給与がなくなって今度新たに発足をするということは、子供が乳離れしたようなものだと思うのです。これからの施策が非常に大事なんですが、学校給食に米を使っていいという規定がないのです。これを規定したのは学校給食法施行規則の第一条で「完全給食とは、給食内容がパン(これに準ずる小麦粉食品等を含む。)、ミルク及びおかずである給食をいう。」こうなっていまして、米が出てこないのです。米がどこへ入るかと聞きましたら、「これに準ずる小麦粉食品等を」という「等」の中に入るんだ、こういうことですが、これだけ大事な米ですから、また、ひとり立ちしていこうというときですから、これは法律事項でもありませんし、簡単に変えられると思います。施行規則を改めて、はっきりここへ米を入れていただきたいと思うのですが、お約束いただけますか。
  270. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいまの問題でございますが、学校給食法施行規則第一条の二項でございます。完全給食というのは、「パン」括弧いたしまして「小麦粉食品等」ということになっているのが実情でございます。そこでお米はというと、その「等」の中に入っている、こういうふうなのがいままでの状況でございました。そこで、これをどうするかということでございますが、これは先ほどから申し上げましたように、もう四千六百校もあるわけでございますから、しかしそういうところは従来の価格で買い入れておりますから、また、この価格などの問題につきましても、十分農林省と御協議申し上げる。他方、給食分科審議会の御意見も出てまいりますでしょうから、こうしたものがはっきりした米食給食の方針として打ち出されますのに対応いたしまして、ただいま御指摘の文章というようなものは、これは検討いたさなければならないものと考えております。
  271. 湯山勇

    ○湯山委員 検討じゃいかぬのです。検討じゃなくて……。
  272. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ですから、ただいま申し上げましたように、その文章を改めて進めていきますのには、非常にきちんとした具体的な政策の実現というものの裏づけを伴わなければいけないと思いますから、いまその政策の実現というものの裏づけを伴いますように審議会でも審議をしていただいている。そしてまた、この買い入れ米価の問題などにつきましても、農林省と私どもの方で、私どもの方が御要望申し上げて協議しているということでございますから、そうしたものを進めていく。それを踏まえていまの一条の二項でございますね、これの文章というものは変えなければならない問題であるとして検討いたすべきものと、かように考えているわけでございます。
  273. 湯山勇

    ○湯山委員 なるべく早くやってください、手続は簡単なんですから。  それからいよいよ最後になりますけれども、もう時間が余りありませんが、実はこれがきょうお尋ねしたい食糧問題では最重点です。  それは米と麦というのは代替性のない食品じゃないと思うのです。その代替性というのは何からできるかというと、いろいろありますけれども、値段が非常に大きな要素をなしている。安ければやはり米の方へいく、麦の方が比較的安ければ麦の方へいく、代替性を持っている食品です。  そこで、価格について農林大臣にお尋ねしますが、大部分の麦はアメリカとかカナダから入っています。それを政府が払い下げるのですが、麦の払い下げ価格は、昭和四十九年以降どれだけ売り渡し価格は上がりましたか。ついでに米の方の政府の売り渡し価格は、昭和四十九年の一月をベースにしてどれだけ上がりましたか。
  274. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 麦につきましては、売り渡し価格は四十八年十二月以来上げておりません。米につきましては、御案内のように四十九年度三二%、五十年度が一九・一%……。
  275. 湯山勇

    ○湯山委員 ですから合計を言ってください。五一%……。
  276. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 そうです、五一%。
  277. 湯山勇

    ○湯山委員 ただいま農林大臣言われましたように、四十九年の一月、これで大体どっちがどうか一応落ちついておった。ところが小麦の方は、アメリカ、カナダから輸入した小麦の政府売り渡し価格は、それ以後一文も上がっていない。一方米の方は五一%上がっている。そうしたら消費はどっちを向きますか。これは麦の方にいくのは当然ですね。ここでバランスがとれていたものが、一方は据え置き、一方は五割上がった、そうなればこれはもう麦の方へいくことは当然である。こうやって、一方学校給食で二億円余り、今度四億ばかり御請求になったというのですが、力を一方で入れておるけれども、逆にいまのように価格の決め方というものが、消費者価格というものが、米を食べないように食べないように持っていっている。そこからいまのような青田刈り事件ができてくる。これは政府の責任ですね。  それからまだあるのです。その外麦の輸入勘定へ、国の資金といいますか、これは一体どれだけ出しておられますか。
  278. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの外麦の損失に対する補てんの金額は、千三百七十五億が五十年度予算になっております。
  279. 湯山勇

    ○湯山委員 予算は千三百九十億じゃなかったですか。
  280. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 輸入食糧勘定全体か千三百九十億でございまして、沖繩等のしょうちゅう用の輸入砕米等が若干ございまして、その損失が十五億ございますので、正確には千三百七十五億でございます。
  281. 湯山勇

    ○湯山委員 大蔵大臣にお尋ねします。  小麦は、カナダもあるでしょうし、ほかもありますけれども、主としてアメリカです。その小麦を買って、そしてそれに対して国が金を出して安く売っておる。それに使われておる国の資金というのは千三百七十五億です。これは言いかえれば、アメリカ、カナダから買い入れた小麦については、国がそれだけの金を出して安くして、なるべくこれを食べさせるようにしている。つまり極端に言えば、外麦に対しては国が千三百七十五億の国の資金を出している、それによって麦の消費を促進している、こういう考え方になるんじゃないでしょうか。これ大蔵大臣どうお思いになりますか。
  282. 大平正芳

    大平国務大臣 かつて外麦からは相当の益金を確保いたしておった時代もありましたが、いまは千四百億近く一般会計から資金を繰り入れなければならぬという状況になっておりますことは、御指摘のとおりでございます。しかし、これは一般に麦の消費を奨励するという趣旨でそういたしておるのではなくて、米も上がり麦も上がるという状態は望ましくないという物価政策上の配慮から、政府として抑制してきておるものでございまして、趣旨としては物価政策上の配慮から出ておるわけですけれども、結果として外麦に補助金が出ておるということになっておることは、御指摘のとおりでございます。
  283. 湯山勇

    ○湯山委員 この文書は大蔵省の文書ですから。「輸入麦の逆ざやによる財政負担は、一面では麦製品の消費者負担を軽くしていると同時に、他面では麦の消費を促進することにより、外国の生産者に対して補助金を出していることにもなります。このように、輸入主食に対して価格差補給金を出すような政策をとっている国は、諸外国にその例をみないところです。」。大蔵省の見解です、これ。このとおりでしょう、大蔵大臣。
  284. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 ただいま湯山委員の御指摘のとおり、外麦に千四百億近くの補給金を出している。これはやはり私ども考えまして、全体の価格体系を少し乱しておるのじゃないだろうか。と申しますのは、対米価比でございますが、昭和三十年には八〇幾つというのが、すでに昭和五十年の九月には全体で四一というぐあいに、米麦の価格体系の問題、これは農林省もいろいろ御研究になっておると思いますけれども、この輸入麦の価格がこのような価格で抑えられている以上、国内麦の増産も、あるいは米の増産も、なかなか問題があるのではなかろうかと私どもは考えております。
  285. 湯山勇

    ○湯山委員 これだけ国が財政的に困っているときに、いまの対米比価、いまおっしゃったとおりです。当時八一であったのがいま四〇台です。半分になっているのですね。そうやって麦の方へ金をつぎ込んで、そしていま大蔵省の言うとおり、宣伝して消費を伸ばす。これは全く政策が間違っている。こんなのだったら学校給食に四億出した、五億出したといったって、とにかく一方は千四百億ですからね。力の入れ方は千四百億対四億です。これじゃ米が余っていくのはあたりまえですよ。そういう政策をとっている。  そこで、価格政策からと言われますけれども、それなら私は米の消費者価格も――これは上げないのですから、外麦を上げないなら米も上げなければいい。それなら話はわかります。笑われたらいかぬです。本当ですよ。それを考えてくるなら両方上げなければいい。それでもいかなかったら、外麦のこの千四百億はやめて、これをやはり逆ざやにならぬようにしたらいいのです。その千四百億分を米の値上げを抑える方へ使う。同じでしょう、ふところは。おわかりですか、大蔵大臣。つまり千四百億は逆ざやにならないように売り渡し価格にかぶせていいです。そのかわりその千四百億を、今度一九・一%消費者米価を上げましたが、ここへ持っていけば、一九・一じゃなくて、千四百億ですから、まあ七%下がれば米は一二・一%上げたので済むのです。大ざっぱな計算ですが。それで食管はとんとんでしょう。いいですか、大蔵大臣。米を本当に考えるならばそういかなければうそなんです。そうしないと、こうやって一生懸命米を余らすために千四百億金を使って、この乏しい中から金を使って――千四百億は大きいです。これだけあったら、たばこなんかことしは値上げしなくていいのでしょう。それを使ってとにかく米征伐をやって、それで今度は余ったからというので、血も涙もない悪代官式な――農林大臣じゃありませんけれど、とにかく青田刈りをやらす。これは根本が間違っておるでしょう。これを直さなかったら、米を中心にして食糧政策、自給対策を立てなかったら、日本の自給は進まぬです。ここを考えていけば、私はとにかく両方上げぬのが一番いいと思いますけれども、いかなければ麦を上げなさい、外国麦を。それで余した千四百億をなぜ消費者米価へ持っていかぬか。そうしないかち、一方で一五%ガイドラインをつくっておく、それはいいですよ。まあ仕方がない。国が取り上げる方は一五%をはるかに超えて消費者米価で一九・一取って、どこにガイドラインがあるのです。たばこがまた四〇%以上上げるとか、酒は二〇何%。ガイドラインというのは、物価政策から来た面もあるのですから、国民も政府も守らなければ。総理、きのうえらい文句を言っておられましたけれども、国民各界各層の協力を得てったって、政府の方でガイドラインなくて一方買い上げる方だけつくったって、それは不公平です。いまのようにすれば、消費者米価もガイドライン以下におさまる。政治は信頼を得ます。間違っておるでしょう、根本が。どうお思いになりますか。そういうくらいなことを、大蔵省はこれだけ知恵者が、わかる人がいるのですから、なぜ一体これをやらないか。これひとつ大蔵大臣、どうですか、もう一遍考え直したら。
  286. 大平正芳

    大平国務大臣 湯山さんの御所見、傾聴すべき御意見だと思います。それで、私どもの方といたしましても、その問題は、農政上の配慮もございましょうし、財政上の配慮もあるし、物価政策上の配慮もあるわけでございまして、政府といたしまして、そういった各般、各方面からの要請をその年度においてどのように配慮してまいるかということを考えながら現実の施策を行っておるわけでございます。今年度だけをとってみますと、仰せのようなやり方をやった方がリーズナブルじゃないかという御主張、私もよく理解できるところでございますけれども、きょうの御所見につきましては、農林大臣もよくお聞き取りいただいておるようでございますから、これは今後の課題といたしまして、財政政策の立場からも十分検討してまいりたいと思っております。(発言する者あり)
  287. 湯山勇

    ○湯山委員 いや、そういう次元の低いことに考えてはいかぬのです、これは本当に。こういって麦を上げる口実ができたなんて思ったらとんでもないことですよ。そんなことだったら、私はもう一遍やり直します。そうじゃないんです。日本の食糧をどう自給していくか。七五%もの人が自給してもらわなければ困る。上がってもいいから自給してくれというのが五八%あるのです。これにどうこたえるかの問題ですから。そう考えていくと、やはり間違っているでしょう、入れかわっておるでしょう、逆に。これを直していくのが私は農林大臣の最大の責任だと思う。それができなければ、農林大臣要らないんですよ、本当に。ただ、足りないのをどこから持ってきて埋めたらいいとか、それじゃいけません。これは農林大臣が余りたびたびかわるからいかぬのです。何遍、どの大臣も言ったんです。そのときは、わかる、ああそうですと言って。今度かわったらまたいかぬ。ソ連なんかのイシコフというのは、田舎の漁協の役員は皆知っていますわ、イシコフといったらあれだと。日本の農林大臣はだれかと言ったら、残念ながら知らぬ人が多いんですよ。これじゃやはり本当の政策はできないと思うので、総理も御配慮願いたいと思う。そのかわり、なった農林大臣は本当にいまの問題を真剣に考えて、米で自給率を伸ばすんだ、これ以外日本の生きる道はない、このことをひとつ真剣に考えて取り組んでいただきたい、こう思うのですが、農林大臣いかがですか。
  288. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 米につきましては、いまお話がありましたように、やはり備蓄というたてまえもこれから本格的に進めていかなければなりませんし、そういう中にあって需給の均衡のとれた米対策を進めていかなければならぬ、こういうふうに考えると同時に、また米の消費拡大につきましても、いま文部大臣からも非常に力強い御答弁をいただいたわけでございますが、学校給食等を通じて消費の拡大にひとつ全力を尽くしてまいりたいと思います。  また、麦の政府売り渡し価格につきましては、いま御指摘のありましたような問題点があるわけでありまして、農政上の見地からもバランスを失しておるわけでございますので、十二月には米価審議会もあるわけでございますので、米価審議会の御審議を得てひとつ妥当に適正なところで決めなければならない、こういうふうに考えるわけであります。
  289. 湯山勇

    ○湯山委員 農林大臣、残念ながらまだわかってないですね。それだと困るのです。十二月に米価審議会があるからというのは、何をやるのですか。そこでは何を決めるのですか。それを一遍言ってください。
  290. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 十二月に米価審議会が行われて、麦の政府売り渡し価格について米価審議会の答申を得て、政府がこれを決めることになっております。
  291. 湯山勇

    ○湯山委員 それじゃ全然わかってないです。いいですか。物価問題が大事だというのはいまの政府の大課題でしょう。そこで私が言うのは、仮に麦をそれだけ上げるなら上げていいです。同時に米をやらぬといかぬです。     〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕 消費者米価はその分だけ下げると、これで損得ないでしょう。そういうことを言いましたね、大蔵大臣、私は。麦で持っておったのを浮かして、その分で値段を下げる、消費者米価の。同じことですから、代替性があるのだから。そうすれば、米と麦との比価が米が有利になりますから、消費はそっちへ伸びていく。両方やるというのならわかりますけれども、麦だけ言うたら全然それは半分です。どうも合格点を上げられない。せっかくあんなに言ったけれども、不合格点ですね、農林大臣。そんな米審ならおやめなさい。そうでしょう。総理大臣、どうですか。あなたは統轄するお立場にあるのですから。
  292. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 湯山君の御意見、私も拝聴いたしまして、大蔵大臣も答えてますように、これは農政、財政、物価、いろいろな点から非常に検討すべき示唆に富む御意見である、こういうように思います。
  293. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで農林大臣、麦の払い下げ価格だけやるんなら、米審は開くのをやめなさい。どうですか。そうしないと、いまの総理の言われたことや大蔵大臣のお答えと違うじゃないですか。
  294. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今後の農政を進めていく場合におきまして、やはり対米比価ということも考えながら、米と麦とのアンバランスというものは改めていかなければならない、こういうふうに考えております。
  295. 湯山勇

    ○湯山委員 もっと大きい立場から考えてください。そうしなかったら、いまのように、十年たったって二十年たったって、自給率はふえません。私たち社会党も、これは新聞に出た。御存じのとおりです。いまの点ずいぶん検討して、無理をして、とにかくこれは八〇%というようなとき九〇%の自給をしなければならぬ。そうしなかったら、あなたはこの間アメリカに行って、バッツ長官と会って、千四百万トンの安定供給を約束したと言いますけれども、これについても、それじゃまだ弱いという意見もあるのを御存じでしょう。一方ソビエトの方は、穀物と石油のバーターでやっていますから、穀物を持った者でなければ石油を買うことはできない、石油を持った者でなければ穀物を買うことができない、そういう事態になるんじゃないか。だから安倍農林大臣、もう一遍正式な協定をすべきだという意見もあります。こんな大事なときです。そういうときに、目先のちょっとしたつり合いだけの問題を見て、そのために米審を開くというんじゃなくて、もっと大きく、いまのように一体輸入食糧にどう依存して、その価格はどういう方針で臨むべきか、国内の麦についてはどう臨むかというような、そういう諮問ならいいんですよ。じゃなくて、ただ麦の値段だけを幾らにしますか、つり合うために試算はこうなります、そういう米審ならぜひやめてもらいたいし、私はもしそういう米審が開かれたら農林大臣に面会に行って、一日ぐらい米審期間中にお話ししますわ。それならわかっていただけると思いますから、どうでしょう、もう一遍再検討願えませんか、いまの問題。
  296. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 十二月には米審は一応開かれることにはなっておるわけでございますが、米審におきましても、米あるいは麦についての今後の基本政策というものについても、十分論議が今日まで行われてきておるわけでありますし、今後も、価格問題だけではなくて、長期政策も含めて論議は行われるわけであります。同時にいまの、米と麦とのバランスが崩れておる、長期的な立場に立ってやはり米の自給体制を確立すると同時に、麦につきましても基本的な長期的な施策を進め、そして増産をしなければならないという御意見には、全く同感でございます。そういう面につきまして、特に麦につきましては全面的に力を尽くしてまいりたい、こういうふうに思うわけであります。
  297. 湯山勇

    ○湯山委員 米と麦との価格のバランスをとるのには二通りあるのですよ、農林大臣。あなたは片一方しか言わない。それは麦を上げることも一つです。しかし米を下げることも同じようにバランスをとる道なんです。これが片一方だけ言われるから、私はもうやめぬと委員長から言われそうなんですけれども、びくびくしながら言うのはそれなんです。いいですか。ここを忘れたら、とにかくあと半分また話に行かなければいかぬのですよ。おわかりいただけましたか、ぎりぎり。
  298. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 湯山先生のおっしゃられることは本当によくわかります。
  299. 湯山勇

    ○湯山委員 わかってもらって大変結構でしたから、ひとつぜひそうしていただきたいということをお願いして終わります。
  300. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて湯山君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十五日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十一分散会