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1975-10-23 第76回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十月二十三日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹下  登君 理事 谷川 和穗君    理事 湊  徹郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    塚原 俊郎君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       保利  茂君    細田 吉藏君       前田 正男君    松浦周太郎君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       楢崎弥之助君    細谷 治嘉君       堀  昌雄君    湯山  勇君       津金 佑近君    正森 成二君       松本 善明君    大橋 敏雄君       小濱 新次君    河村  勝君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         行政管理政務次         官       阿部 喜元君         行政管理庁行政         監察局長    鈴木  博君         防衛庁参事官  伊藤 圭一君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 松永 信雄君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 後藤 達太君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         国税庁次長   横井 正美君         国税庁税部長 熊谷 文雄君         国税庁間税部長 大槻 章雄君         文部省管理局長 清水 成之君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省立地         公害局長    宮本 四郎君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         運輸省自動車局         整備部長    田付 健次君         運輸省航空局次         長       松本  操君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省河川局長 増岡 康治君         建設省道路局長 井上  孝君         自治省行政局公         務員部長    植弘 親民君         自治省行政局選         挙部長     土屋 佳照君         自治省財政局長 松浦  功君         自治省税務局長 首藤  堯君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 十月二十三日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     細谷 治嘉君   田代 文久君     正森 成二君   正木 良明君     小濱 新次君   矢野 絢也君     大橋 敏雄君   佐々木良作君     河村  勝君 同日  辞任         補欠選任   細谷 治嘉君     阿部 昭吾君   大橋 敏雄君     矢野 絢也君   小濱 新次君     正木 良明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。阿部哉君
  3. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、これから、不況対策、現在の不況の本質、物価問題、国債問題、大体この四点について御質問をいたします。  三木総理、あなたの本会議における所信表明、またこの委員会における政府答弁、これをお伺いいたしまして、賃金を抑え込まれた労働者あるいは失業者、生業の基盤まで破壊された農民であるとか、あるいはまた倒産寸前中小企業不況のもとで家計のやりくりをする家庭の主婦であるとか、これらの国民の圧倒的な多数の人々がどのような感じでお聞きになったかというと、私は、皆さん大変腹を立てておると思うのであります。  皆さんは、二月に第一次不況対策、自来今度九月の第四次不況対策と、こうおやりになった。第一次、二次、三次と余り成果を上げなかったようであります。そこで四次をやった。この四次もまた、これでは立ち直りはないのじゃないかという意見ももうちらほら出ておるわけでありますが、第五次をおやりになるお考えなのかどうか、まずそれをお伺いしたいと思うのです。
  4. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今日のスタグフレーション時代における経済政策というものはどうしても両面政策をとらざるを得ない。いわゆるインフレを抑制しながら不況を克服していくということ。だから、経済政策のかじの取り方というものも、そのときどきの経済情勢というものを見ながら、い、ずれに重点を置くかということを決定をしていく。  いまは御承知のように、マクロ的には日本経済というものは四月以降というものはいろいろ上昇しておるけれども、個々企業というものを考えてみたら、たびたびここでも問題になりますごとく、終身雇用制というような形で、諸外国のように労働者の整理というものは日本はやはり非常にできない。その上、自己資本というものは二〇%にも足らないわけですから、やはり借金でやっておる。そういうことで、金利負担というものも非常に企業の重圧になって、個々企業というものに対する不況感というものは非常に厳しいものがあると思う。だから、実際にミクロ的に見れば各企業というものがなかなか苦しい状態にあると思いますから、政府はこの四次の不況対策というもので今年度三兆円ぐらいの需要創出効果を期待して、これが下期に一兆八千億円ぐらいの需要創出効果をもたらして、じっと置いておけば今度の下期は〇・七%ぐらいの成長であったのが、こういう四次対策によって二・一%、全体で三・一%程度景気の上昇を考えている。年度に直せば六%と言っておるわけですが、こういうことで経済というものはやはり順調な回復を遂げるものと考えておるので、現在のところは、この第四次の不況対策効果というものを、順調な回復をなし得るものという見込みのもとに政府はこの効果を見守りたいというのが現在の立場でございます。
  5. 阿部助哉

    阿部(助)委員 皆さんは、この第四次不況対策を発足させるに当たって、これが決定版だとかいろいろおっしゃっておるのですが、それならお伺いしますが、先ほど私が申し上げましたように、首を切られたこの労働者人たち、あるいは低賃金に抑え込まれた人たちがおるし、あるいはいま出かせぎの先すらなくなって、農林省が発表しておりますように、買わされた農機具の代金も払えないでたんぼの切り売りをせねばいかぬという人たちのことを農林省は心配をしておるわけでありますが、こういう方々にこの第四次不況対策は一体どのような効果を上げるのか、具体的にお答え願いたい。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 雇用条件の悪化というものは不況影響を受けるわけでありますから、雇用条件を改善するためには景気回復というものがなければ根本的に問題は解決できない。だから、いろいろそれに対する応急の対策はとりますけれども、根本は、この深刻な不況というものに対して、この不況というものをできるだけやはり克服していくということであります。  ただ、しかし、これが高度経済成長に返るわけではないわけです。高度成長経済を支えた条件というものはすべて失われたわけです。だから、今度はもう少し緩やかな経済成長になっていくわけですから、高度経済成長の夢をもう一度というような経済をわれわれは期待することはできない。だから、経済一つの大きな転換期である。  そこのいろいろな点で、一つ影響というものは国民生活に及ぼすことはあり得るということは当然に考えなければなりませんが、政府としては、できるだけその犠牲を少なくして、そして安定成長の路線に持っていくというところに政府経済政策責任があるのだ、こういうふうに考えておる次第であります。
  7. 阿部助哉

    阿部(助)委員 総理のいまのお話はどうも風吹けばおけ屋がもうかるみたいな話だけれども、それでは、本四架橋四国と本州の橋をかけるという、そこへ公共事業費をつぎ込んでみて、東北の農民労働者なんかに一体どういう効果があるのです。昔であれば、不況のときには、救農土木事業とか農業の基盤整備とか、そういうものをやりつつこの救済策をとってきた。三木内閣の今度の不況対策新幹線だ、そして本四架橋でしょう。本四架橋と、この一般のいま出かせぎ先もない農民と一体どういう関係が出てくるのです。  風が吹けばおけ屋がもうかるような対策では、これはどうしようもないじゃないですか。それでどういう効果が出るかということをお伺いしているのでして、そこをもう少しはっきりと簡単にお答え願いたいのです。時間が余りないのです。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、新幹線とか四国本土架橋とかいうようなことが不況対策中心であるということは事実を曲げている。今度の不況対策の中には、住宅であるとか生活基盤整備でありますとか、こういうものはたくさんに織り込まれている。(阿部(助)委員「大したことない」と呼ぶ)大したことないと言うけれども、相当に織り込まれているわけでありまして、たとえば新幹線の問題にしても、あるいは四国本土架橋の問題にしても、従来は三本と言っていたのを一本にまとめるということで——部分的にはいろいろこれに対して工事を進める場合がありますけれども、三本のものを一本にするという方針のもとにそういう工事を進めようということで、これは国土の総合的な開発地域開発地域の住民の福祉等いろいろな点で全体から考えてみて、新幹線とかあるいはまた四国本土架橋とか、これが不況対策重点であれば御批判のとおりであります。これは一部分であって、不況対策重点というものはいま私が申したようなところにもっとあるわけでございますから、不況対策新幹線四国本土架橋だというふうなものではないということは御承知のとおりでございます。
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、今度の不況対策中心はやはり公共事業だと思うのです。その中心新幹線であり、また本四架橋だ。住宅とあなたはおっしゃるけれども、それはそれほど対策費の中で大きなウェートを占めていないのです。この不況対策高度成長の再来ではないと言うけれども、仕組みは依然として同じで、この期に及んで列島改造論のやれ本四架橋だとか新幹線を借りてこなければいかぬなんというのは、どうも余りにも知恵がなさ過ぎるのではないかという感じが私はするわけです。  この委員会の冒頭にわが党の堀さんが指摘をしたわけでありますが、大体、皆さん現状認識が誤っているのではないだろうか。現状認識を誤って、これから将来の政策が、きちんとした政策が立つはずがないのであります。皆さんの堀さんに対する御答弁におきましても、何か、石油危機石油ショック責任をかぶせておる。一応堀さんの指摘を認められたようだけれども、やはりここに重点があり、責任回避をしておられるわけであります。私はそこにやはり反省が足らないのではないかという感じがしてならぬのであります。私は皆さん資料——資料はどうした。
  10. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ええ、もらいました。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 皆さんに申し上げたいのは、自民党政権が今日まで、田中内閣まで高度成長政策をやってまいりました。     〔委員長退席塩谷委員長代理着席〕 そうして、私に言わせれば、そう先のことまでは申し上げませんけれども、四十六年の八月、いわゆるニクソンショックIMF体制の崩壊した時点程度からでもやはり過去の分析をし、その上に将来の見通しを立てられるのが政治だと私は思うのであります。  ところが、昭和四十七年、翌年の八月、ニクソンショックのときにはフランスの新聞等クレージー日本だ、気違い日本だと論評したように、先進国ではことごとくが外為市場を閉鎖したにかかわらず、日本だけはあけっ放しで、そうして驚異的なドルの輸入をいたしました。八月だけで実に四十八億八千万ドルという大量のドルが流れ込んだ。日本円で一兆三千億であります。こういう政策をとってきた。その後思い出せば、当時の中曾根通産大臣がおっしゃったような調整インフレ、低金利政策と国債を抱えた大型予算であります。さらに経団連あたりが大々的に宣伝したいわゆる経団連不況、こういう背景の中で鉄鋼を初めとする不況カルテルが行われてまいりました。この政府の一連の政策過剰流動性を生み出したということはこの前の国会でも皆さんがお認めになったところであります。そうして価格は上がっていく、物価狂乱という事態、そういうような事態を踏まえてなおかつ日本列島改造論という無謀な計画が出てくる、ついには米の買い占めまで行われるという狂乱状態がすでにあらわれておったわけであります。そこに石油問題が出てきたということは私も認めるのだけれども、その以前にすでに私がいま述べたような事態が起きておる。そうしてドルインフレドルの価値を落としていけば、当然中東の人たちもそれを値上げをせざるを得ないというところへはまったのでありまして、それを、三木総理所信表明にもあるように、すべてが石油ショックから出発されたというのでは何か事態認識が狂ってくるのではないか。  なぜ言うかというと、これからの政策立案にはやはりこの価格の経緯というものをきちんと踏まえないで立案をするわけにはいかぬのじゃないか。そこで、立案するものは必ず失敗するだろうということで、私はこの認識をもう一度確めておきたいのでありますが、私がいま申し上げたことに御異存があり、間違いがあると言うならばお答え願いたいのであります。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 細かいことになりますといろいろ言いたいこともありますが、大筋において大体阿部さんのおっしゃるとおりじゃないかと私は思うのです。まあ、過去のいろいろなことについて反省をしてみなければならぬ点が多々あると思います。  同時に、石油ショックわが国インフレ不況というものがあれだけでもたらされたのかというと、さにあらず。やはり、その前から蓄積されたというか、醸し出されておりましたインフレの問題、これは非常に深刻な状態であったわけです。石油ショックは一昨年の十一月の末でございますが、あれはその直前の十月の時点でもすでに卸売物価が前年度比で二〇%上がるというような状態であったわけであります。石油ショックがそこへ来たものですからわが国インフレは非常な惨たんたる状態になり、ついに三七%という記録をつくるというようなことにまでなってきたのです。  そういう経過を見ますと、あの石油ショックが今日の事態のすべての原因だという取り上げ方はしておりません。その前にも今日のこの事態を醸し出す要因があった、そういう認識の上に立ちましていま諸施策を進めておる、かように御理解願います。
  13. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ただ、この問題を私がこうやって蛇足のようだけれども申し上げるのは、やはり、労働者農民中小企業の命運がかかっておるわけです。そして、この政策立案に当たっては過去の反省から出発をされないとまた誤りを犯すということで私は申し上げたのでありますが、いま副総理がおっしゃったように、私はその点をきちんと踏まえて行っていただきたいと思うのであります。  さて、時間も余りありませんので私は具体的な問題にまず入りますけれども、いまの物価問題、総理所信表明における物価お話は大変簡単過ぎまして、いままでの総理所信表明施政演説の中ではまことにお粗末だと私は思うのであります。そして、重大だと言いながら——「物価の安定は依然として重要な課題であります。」と言っている。「国民各界各層協力を得て、できるかぎりその安定を期する覚悟であります。」こういうのですが、大体、物価安定に各界各層協力を得て安定するというのはどういうことなのです。  実は、私、五、六年前でありますけれども、物価特別委員会で、皆さん政府のいろいろな審議会委員会委員になっておられる大学教授の方に参考人で来てもらった。その先生物価の問題の本を出しておる。その物価の本の中に、政府企業消費者協力をすれば物価は安定するのだと書いてある。企業消費者はどうやって協力するのだ。これは基本的な矛盾であり、基本的な対立なのです。一体これはどうやって協力するのだという質問を私がごく簡単にやったところが、その先生は二十五分にわたってくどくどと説明をされたけれども、一つもわからない。問題は、これは基本的な矛盾なのです。  そこで、問題は、政府自体がどういう政策をとるかというところへかかってくる。その政策を何も言わずに、各界各層協力を得て安定するというのは一体どういうことなのか。私はまずそれから総理にお伺いしたい。どういうお考えなのか、私にはわからない。
  14. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういう点では、物価に限らず、やはり、今日、国民協力を得なければ政府政策目的というものは達成できないことばかりであります。物価は、阿部さんの言われるように政府がやはり第一次的責任は持っておるでしょう。だから、御承知のように、この三木内閣が出発してもかなり厳しい総需要抑制政策をとって経済を引き締めてきたということは政府の基本的な物価に対する姿勢であったわけですが、そういうことで国民協力を得たからだと私は思いますよ。  物価はやはり安定させなければならぬということで国民各界各層協力を得て、たとえば労働組合においても節度のあるベースアップを行うし、消費者においても大量使い捨てという生活のパターンというものに対して大きな変化が起こっておる。企業自体も、狂乱物価に示したような企業のビヘービアというものに対して社会的な責任感じてきている。こういう国民協力というものがあったればこそ政府政策というものが生きてきたのである。  今日は、やはり国民協力を得ないと、物価問題でもその他の政策でも実現はなかなか困難である。だから、私の施政方針演説の中においての「国民各界各層協力を得て、」ということは、民主政治のもとにおける当然の表現であると考えております。
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それだけでは困るのですね、政府自体にもう少し具体的な、こうやってやるんだということがなければ。労働者賃金抑制だけでこれを抑えていこうなどということになっておるじゃないですか。  それでは、いま酒、たばこ郵便料金値上げの問題がいろいろと論議をされておりますので、まず酒の問題でお伺いしますが、あなたは、この前の質問で、何か、酒やたばこはのむ人もある、のまない人もあるみたいな、だから大衆課税でないかのような発言をされたのですが、これは赤ん坊が酒やたばこを飲んだり吸ったりするわけじゃないのですね。だから大衆課税でないとおっしゃるのは少しおかしいと私は思うのですよ。それは吸う人もあるし、吸わない人もある。だけれども、酒たばこはいわゆる大衆課税という通念の中に入るのだと私は思うのですが、これは大平大蔵大臣、いかがです。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり、大衆の嗜好に根差しておりますので、大衆課税という規定の仕方に間違いはないと思います。
  17. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これも私はもう申し上げるまでもないのでありますけれども、しかもこれが逆進的であるということは、これもまた大蔵委員会等ではいままでもう論議をされ尽くした問題だと思うのであります。  ここに家計調査のあれがありますが、三十万未満の所得の人たち、これは四十七年の調査ですが、二・三%のウエートを持つ。三百万以上の人たちには一・五%のウエートしかない。こういう形で、これが逆進的なものであるということは、これはもう万人が認めるところであります。その中でも、特にビールというのは、これは大きな金持ちも貧乏人もわりかた飲んでおるのですね。  この調査がありますけれども、そういう点でこれは一番逆進的だと私は思うのだが、ビール大びん一本の中身の製造原価は幾らかかっておるのですか。
  18. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまのお尋ねの大びん一本につきましては、ビールの現行の税額は六十七円でございます。(阿部(助)委員「中身の原価」と呼ぶ)ちょっとお待ちください。
  19. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう時間がかかりますから、私が言いますから、間違っておったら指摘してください。  総理、これは私の調べた資料ですからごらんになってください。  私の調べたところでは、キリンビールの大びん一本の中身ですが、製造原価が二十五円八十一銭、金利を含めた総原価が四十九円十銭であります。これが小売で、まあビールのびん代も入りますけれども、一本百八十円になっておる。しかも、これに対する税金は水まで含んでおるのですね。なぜ一体こんなに高いのです。大蔵省は、何かこれは庁内へ出したのか何か知らぬですが、それをPR文書を出しまして、酒は飲み過ぎると中毒になるとか、貧困や事故の原因になるとか、たばこも吸い過ぎては健康を害するとか、吸いがらは火事になるとか、そういうPRをしておるのだけれども、これだから税金をよけいかけるのですか。大蔵大臣、これだからビールに税金をよけいかけねばいかぬという理論が出てくるのですか。私はどうもわからない。これはまあよく言われるけれども、ダイヤモンドの物品税率よりも三倍も高い税率をここへかけておる。どうも私にはこれはわからぬのです。  まず、私の申し上げた原価、大きく狂っておったら言ってください。狂ってなければもういいです。
  20. 横井正美

    ○横井政府委員 ただいま阿部委員から御指摘ございましたのは、いわゆる直接製造原価というものであろうと思います。私ども有価証券報告書から計算いたしましたところでは、大びんが六十四円七十一銭、中びんが五十八円、小びんが四十三円二十四銭、これは管理費等を込めた原価ということでございます。(阿部(助)委員「ぼくは中身と言うておるんだよ。中身が間違っておるかどうか、それだけを言えばいいんだ」と呼ぶ)早速取り調べまして、再度お答え申し上げます。
  21. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは間違いがないんですよ。はっきり質問を聞いて答弁してくれませんか。時間がかかってしょうがない。中身は二十五円八十一銭、これはキリンビールです。金利を含めた総原価で四十九円十銭となっておる。そういうものを、これだけ大衆課税であるこれをやらなきゃいかぬというのは、いま皆さんの出しておるような言い分でこれはかけるのですか。なぜこんなに高い税金を取らなければいかぬのか。大臣、どうです。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 税金は担税力のあるところに納めていただく仕組みになっておりますので、酒につきましては、従来から財政商品といたしまして、その消費に対しまして担税力ありと見て相当高い間接税の負担をお願いしたわけでございます。これはひとり日本ばかりでございませんで、世界各国共通のことでございます。酒が致酔性飲料であり、それが中毒症状を招くおそれがあるから課税するというようなものではなくて、その消費に担税力ありと見て、それに対しまして課税いたしておるものと承知いたしております。
  23. 阿部助哉

    阿部(助)委員 担税力があるからかけるのですか。じゃあ、担税力のある大企業や金持ちにもっと税金をかけるのはあたりまえじゃないですか。それはちょっと、担税力があるからかけるには間違いないだろうけれども、担税力があるというところからかけるなら、大企業や大金持ちにもっと税金をかけるのはあたりまえじゃないですか。累進税率をもっと高くするのはあたりまえでしょう。外国でもそうだ。担税力があるから取る、担税力のないところから取れないですよ。  じゃあ申し上げますけれども、外国のビールの一リットル当たりの税金。日本は百二十九円六十銭、アメリカが二十三円、イギリスが四十一円二十三銭、フランスは五円三十六銭ですよ。西ドイツが十七円三十一銭、イタリアが二円十二銭です。日本だけ、日本のビールを飲む人たちだけがこれは担税力があるんですかな。  大平さん、担税力があると言うけれども、日本人だけ、日本のビールを飲む人たちだけが担税力があって、だから税金が高いのですか。それをまた税金を上げようなんというのは、どうしても私にはわからない。もう一遍答弁してください。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 それぞれの国で国情が違いまするし、消費の態様を異にいたしておりまして、ビールでございますが、ヨーロッパ各国におきましては大変これが普及されておりまして、たとえば日本におきまするお茶がわりのように愛用されて、一人当たりの消費も非常に多いと聞いております。わが国におきましてはビールを愛用しておる階層は諸外国に比べまして相当高い階層となっておると思うのでありまして、その国々によりまして課税の厚薄があるということは、その国の事情によるものでございまして、一概に説明申し上げることはできませんけれども、わが国におきましては、他の酒類に対する課税とビールに対する課税がただいま御提案申し上げておる程度でバランスがとれておると思いまして、御提案申し上げておる次第でございます。
  25. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは驚いたですな。ビールは外国では普及されておる——日本では普及されてないですかね。ビールの消費量は、人口一人当たり幾らになっておるのですか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 その点は事務当局から答弁させます。
  27. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう一つ……(発言する者あり)いや、すぐ本論に入るよ、前段だからな。  ジョニ黒の輸入価格、港へ着いたとき幾らになっておるか御存じですか。これが七百八十五円。七百八十五円のジョニ黒が、町で売られるときには大体七千円とか七千五百円というのですね。一体これはどういうことなんですか、こんなに高くやるということは。それは関税もあります、酒税もあります。だけれども、流通過程が独占されておるからこういうことになるのですよ。もし私の挙げたこの数字がうそだと言うなら、後で指摘してください。  もう一つ申し上げます。日本で一応二千円ウイスキーと言われる、まあサントリーのオールドは二千二百円ぐらいするそうでありますけれども、これの中身のモルトの代金、あとは水ですから、モルトの製造原価は私は百円以下と聞いておる。それがまあびん代も含めるけれども二千二百円というのは、余りにもこれは独占価格であり高過ぎやせぬですか。このウイスキーの原価、私の言うのが間違いであったら言ってください。
  28. 横井正美

    ○横井政府委員 ただいまの御質問につきまして、私どもその点で計算ができておりませんので、お答えを御容赦願いたいと思います。  なお、先ほどのビールのいわゆる直接原材料、これのコストにつきましても、私ども手元にございませんので、御容赦願いたいと思います。
  29. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、酒類のことを聞くから用意しておけと、こう言ってあるのですけれども、まあようございます。私の申し上げたのはおおむね間違いないはずであります。  私がこれを申し上げるのは、これだけやっておる酒関係は、政府がある意味では干渉しておる問題なんです。そして政府みずからが独占集中をさせ、それに独占価格を形成させ、その上に重税をかけていく。この大衆課税という問題、そして物価問題、この独占集中しておる——ウイスキーの集中度は日本では大変なものなんです。ビールだって、大体五社でほとんど全部をつくっておる。ウイスキーはそれよりまた少ないという独占体制、寡占体制がとられる。その上になおかつ大蔵省が指導し、それで税金をかけていく。だから、先ほど申し上げたように、ビールのように外国では本当に安いにかかわらず、日本では大変な高いものになっておるのです。私は、問題は独占価格であり、政府のそれに便乗しての重税だ、これを申し上げたいのであります。  そういう点で、いま物価問題を云々するときに、独禁法の問題を抜きにして物価問題を論ずるわけにはいかぬのじゃないか。あなたが各界各層協力と言うその先に、やはり協力してもらうためには、いまこそあなたが公約された独占禁止法というものを強化し、提案されるのが当然じゃないですか。これなしに各界各層協力物価の安定を期するなんと言ったって、これは全くそらごとじゃないのですか。総理、いかがです。
  30. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 したがって、独禁法は経済の基本法とも言うべきものであります。これは重要な法案でございますので、これが廃案になった機会に、自民党で次の通常国会に上程することを目途として調整をいたしておるということは、しばしばお答えしたとおりでございます。
  31. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほど不規則発言で、これは委員会の問題だ、これは委員会でさんざんやったのじゃないか、こういう発言がありましたが、やったならば、国税庁の方では資料はちゃんとあったはずなんですね。いま持ってきていないからわからないのですか。委員会でやったのだけれども、いま持ってきてないから皆さんわからないのですか。私は、国民にこういう実態も知らさないで、これだけ高い税金を取り上げる、そしてまたビール、酒が値上がりをするというようなことは許されないと思う。各界各層国民協力をしてもらおうと総理が言うならば、この実態をまず国民に知らせて、その上で協力してもらったらどうなんです。私は、それがあるまで酒、たばこ値上げというものはやってはならない、こう思うのです。総理、いかがです。
  32. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 阿部君はウイスキーとかビールのことを非常に詳細に御調査になっておるわけです。確かに阿部君の御指摘のように、諸外国に比べて日本がビールに対する課税が高いことは事実でしょう。税というものは一つ一つその国のいろいろな状態から組み立てられていくもので、やはり全体として税というものを考えてみる必要がある。日本の場合は、いわゆる消費税というものは、確かに阿部君御承知のように、諸外国の中で、いまでも直接税が七三・五%ぐらい、間接税は二六・五%程度で、間接税というものが税体系上非常に低いですね。諸外国では半分は間接税ですからね。そしてフランスのごときは六三・五%は間接税である。だから、付加価値税というようなものを欧州は全部やっておる。ビールだけを取り上げれば阿部君の言うような点もありますけれども、税体系全体として税というものは考えてみる必要がある。  そういうことから考えてみれば、日本一般消費者に対する大衆課税と言われておる間接税というものは、世界で日本が一番低いのだ、アメリカも直接税が中心でありますけれども、そういう税体系全体からこの問題は検討する必要がある。一つを取り上げて、これが諸外国と比較して高いじゃないかという御非難は、税の批判としては少々当たらない点があるのではないか、私はこう思っております。
  33. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はそんな質問をしておるのじゃないのです。あなたは各界各層協力を得て物価を安定すると言う。しかし、酒税を上げればまた酒の値段は上がりますよ。酒の値段を上げない、ビールの値段も上げない、せめて一年間ぐらい上げないのだ、税金は取るけれども上げないのだと、あなた約束できますか。それだけでいいです。
  34. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その点に対しても、大衆の消費に対しては特別な配慮を酒の場合においても加えたわけで、ビールは今度上げる中に入っておることは事実でございますが、やはりこれを上げないというふうなことでは、政府は酒、たばことか郵便料金というものは財政の裏づけの財源として重要視してありますから、これを上げないということを私がここで言明せよということは無理な注文でございます。
  35. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたは私の発言を、私が舌足らずだったのか、よく聞いてない。あなたは各界各層協力を得て物価を安定する、こう言うのでしょう。三木さん、そうでしょう。それならば、国民にいまの酒の原価を公表し、こういう実態をよく知らせて、それでなおかつ協力するというなら別だけれども、いまのように国税庁は発表しない、それでおいて税金は上げる。だけれども消費者に知らせないのだから、それまでは消費者価格を上げさせないのか、とめておくのか。とめておくべきだ、こう言うのですが、どうなんですかということなんです。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 阿部さんの、各界各層協力を得るためには原価も公表し、よく理解を得て、値上げをしなきゃならぬ根拠につきましても十分の理解を得てやるべきではないかという御指摘、ごもっともでございます。私どもといたしましては、可能な限りそういう手だてをしなければならぬとは思いますが、御案内のように、ただいまの体制におきましては、各企業の機密を政府が暴露するということはできないことになっておりまするので、各銘柄別に企業の原価を、これはこうなっておるというようなことを公表することを政府はいたしていないことは、御了承いただかなければならぬと思うのでございます。  ただ、全体として、四十三年度に改定をさしていただきました現在の税金が、他の税目の税金に比べまして非常にバランスを失してまいっております。これは酒につきましてもたばこにつきましてもそうなんでございまするので、そしてそれが家計に及ぼす影響、ウエート等も考えてみまして、これはこれだけの値上げをお願いいたしましても、当時に比べまして決して高くならないという判断をいたしておることにつきましては、いろいろPRをいたしまして、国民の御理解を得るように努力をいたしておるわけでございます。私ども、わざわざ公表すべきものを公表しないというようなことではないのでありまして、公表できないものはできないことは御了承いただきたいと思いますが、できる限りあなたの御主張のようなラインに沿いまして、今度の値上げにつきまして国民の御理解を得るような努力は鋭意いたしておるつもりでございます。
  37. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたはいま個々企業の問題は公表できないと言うならば、ウイスキーならサントリー、ニッカ、いろいろあるわけですね。そこの平均なら平均は出せるのですね。というのは、これは皆さんの方から出してもらった酒についての資料ですよ。大規模の業者、中規模の業者、小規模の業者、こういう形で、清酒一升原価は幾らかかっておる、特級酒の場合に幾らかかっておるというようなのは、ちゃんと資料は出るのです。これが月桂冠であるとか菊正であるとかいうのは皆さんは出せない、こうおっしゃるのです。しかし、大規模だ、中規模だという形で出ておる。ビールだって、何社の平均なら出るはずだ。また、ウイスキーならウイスキーで、何社の平均の、大体二千円のウイスキーなら二千円のウイスキーのモルトの代金は幾らだというぐらいなものは出せるのですね。それは出せますね。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 それは阿部さん御承知のように、企業がその責任で有価証券報告書というのを出しておりまして、それを解明してまいりますと、いまあなたが言われるような原価の推定はある程度つくわけでございますので、私どもといたしましてはそういう数字は申し上げておるわけでございます。
  39. 阿部助哉

    阿部(助)委員 出せるのですね。
  40. 横井正美

    ○横井政府委員 有価証券報告書に基づきまして私ども計算をいたすべきなんでございますけれども、御案内のようにウイスキー各社、非常に多種類の洋酒を製造いたしております。そこで私どもこれを計算することができない、こういうのが実情でございます。  それで、モルトの含有量につきましては、御案内のように特級酒は二三%、一級酒は一三%等と決まっておりますが、決められましたよりも非常に多量のモルトが含有されておるということが申し上げられるわけでございます。ただ、いずれにしましても原価あるいはモルトの含有量は企業の秘密に属することでございますので、御容赦願いたいと思います。
  41. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それは出せないことはないんですよ。国税庁からサントリーにいろいろと天下りしておる役人が多い。だからサントリーの国税庁部だなんという悪口が出るんですよ。何です、そんなものは出せないことはないじゃないですか。それも出さないで、各界各層協力なんて得られるはずはない。出すまでは、これは総理、酒の値上げはやりませんね。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 政府の立場で提出すべき資料は出しますし、可能な限りのPRはいたして、御理解を得るように努力をいたしてまいります。その努力はいたしますが、あなたの御得心が参るまで定価改定を自重するようにという御勧告でございますが、残念ながらそれには応諾しかねます。
  43. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私が納得しないだけならまだいいのですが、皆さん納得されますか。国民の多数がこれは納得しないんですよ。こういうふうになってこういう経費がかかる、税金をこういただく、そこでこれだけ値上げするということにならないと、各界各層協力を得られるわけがないじゃないですか。だからこれは飾り文句だと私は初めから言うのです。  私はこの問題に余り時間がかかっておると次ができませんので言うのですが、少なくともこういう無謀な課税、七百八十五円で入るジョニ黒が七千円もするなんという、それは輸入業者がほとんど独占しておる、その流通過程を何とかしない限り値段は下がらぬのです。そういう対策をあなたたちは何もとらないで、抽象的な協力国民にお願いするなんと言ったって、国民が言うことを聞くはずがないんですよ。その点で皆さんの演説はみんな抽象論ばかりであります。  私は、この問題を取り上げたのは、これは九月七日付の読売新聞でありますけれども、日本の代表的な企業百七十五社にアンケートを出した。そうしたところが、百二十五社、実に七割以上の会社が、製品の値上げをしたい、こう言っておるのです。全部がいまの不況対策その他を踏まえて、酒、たばこ値上げする、次から次へと値上げ待ちであります。ある意味で言えば、それが福田さんの新価格体系かもわからぬけれども、企業はみんな値上げ待ちなんですよ。その上に三木さんの閣僚である通産大臣は、石油の二段階の値上げであるとか、これは新聞報道でありまするけれども、通産省の首脳部は、OPECの一〇%の値上げはまさにわれわれにとっては神風だ、こう言っておる。OPEC神風論まで出ておる。それぐらい全部いま値上げ待ちなんですよ。これに火を点ずるような酒、たばこ値上げ政府みずからが範を示す。しかもその酒、たばこは、私が先ほど来申し上げましたように、これは独占であり、寡占であります。そして政府みずからそれを指導してきておるというところに私は問題があると思うのです。  三木さん、この対策は私は独占禁止法の強化以外に道がないと思うのであります。石油ショックを受けたのは日本だけじゃないでしょう。西ドイツだって同じように石油ショックを受けておるはずであります。なぜ一体、西ドイツが七%程度物価でおさまっておるのか。日本が二四・何%も上がるときに、西ドイツが七%だ。これは公取の人たちが調査した結果も、これは独占禁止法が強く働いておる、こういうことでしょう。  まあ独占禁止法は総理の方がむしろ専門でありますが、あなたの公約でありますから、私はくどくは申し上げません。その一番大きな独禁の柱はやはり原価の公表であり、価格の原状回復命令、企業分割、持ち株制限、罰則の強化であります。西ドイツの場合には、不当に値上げをした場合にはその不当利得の三倍まで罰金を取ることができるでしょう。そして原状回復命令を出すことができる。日本の場合はどうです。五十万円の罰金が最高でしょう。西ドイツでは、たしか化学繊維だと思いますが、罰金を取られた。五十一億の罰金を取られているんですね。日本では、五十万円払うならばやみカルテルは幾らでもできる、こういうことなんです。ここに大きな差がある。先日、鉄の話が出ましたけれども、力さえあればそれができるのです。それだから、いまこそあなたの公約の独占禁止法の出番だというときに、あなたは酢だコンニャクだと言ってはこれを提案をされないなんというのは、私は、何としてもこれは三木総理の公約違反であり、本当に物価安定に熱意がないんだ、こう言わざるを得ないのですが、いかがですか。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 一言お断りをさせていただきたいと思いますが、阿部さんは酒につきまして、物価政策上これを値上げすることについての懸念を表明されたわけでございます。これは一応ごもっともだと思いますけれども、御承知のように、酒類から、政府といたしましては、一兆円余りの国庫の収入を確保いたしておるわけでございます。したがって政府としては、この酒類業界につきまして、製造から販売に至るまで非常に厳重な統制を加えておるわけでございます。そういったことで、非常な規制を政府が加えておりますのは、担税商品であるということ、財政商品であるという性格を持っておるということについて、釈迦に説法でございますけれども、御理解を得ておきたいと思います。  それから、値上げの問題でございますけれども、そのように政府のコントロールのもとにある財政商品であるだけに、昭和四十三年以来今日まで毎年値上げをしないでがまんをしてきたわけなんでございます。したがって、今度の値上げが多くなっておることでございますけれども、これは、原材料、人件費その他のチャージが上がりましても、政府としては物価政策上これを抑えてまいりまして、今日までがまんしてまいったわけでございますが、先ほど申しましたように、ほかの税金との間にバランスがとれなくなってまいりましたので、最小限度調整をさせていただこうという趣旨のものでありますこと、これも申すまでもないことでございますけれども、この際御了解を得ておきたいと思います。
  45. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ほかの税金とのバランスって、どこがどういうふうにバランスが違うんです、どういうふうに狂ったんですか。大体日本の酒税は高過ぎるんですよ。ほかの税とのバランスと言うけれども、そんなものはあなた、だれがどういうふうにやるんです。  もう一つ政府が管掌しておる品物だから規制しておるとおっしゃるのですけれども、それだからなおさら国民に公表すべきなんです。皆さんや大蔵省と酒屋とのなれ合いだけで、われわれはやっておる、やっておると言ったところで、国民は納得しませんよ。それならばそれだけに、国民の前に、こういうふうに規制しておるんだと言うための材料を出しなさい。先ほど何か国税庁次長資料を出せないみたいな話だし、あなたは出すみたいな話なんだけれども、私が言った程度企業別の——個々企業でなくとも、それは出せるはずであります。種類が幾らあるなんといったところで、たとえば二千円ウイスキー——二千円というか、大体二千二百円ですが、その程度の水準でいくならば出せないはずはないのです。あるんですよ、ちゃんと。出したくないからですよ。そういうごまかしをやる限り、私は、酒税の値上げ、これは認められない。それを出してから皆さんは国会に諮るべきです。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 酒税とほかの税金とのバランスの問題が第一の問題でございますが、酒税は御承知のように大部分が従量税なんでございまして、量目に対して課税しておるものでございます。価格に対して課税しておるわけじゃないわけでございます。しかし、所得税でございますとか、法人税でございますとか、物品税でございますとか、そういったものは、値段に対して、つまり所得に対して、あるいは価格に対して課税しておるわけでございますから、それが値上げになりますと年年歳々値上がりになり、所得がふえていくに従いましてそれが課税標準になってまいっておりますけれども、酒やたばこのような従量税は、四十三年のまま据え置かれておるということからアンバランスが生まれてきておる。でございますから、そのアンバランスは最小限度調整させていただこうというのが今度の改定の趣旨でございます。  それから資料の問題でございますけれども、先ほど申しましたように、有価証券報告書なるものはそれぞれの企業がその責任において公表いたしておるものでございまして、それから推定できる原価につきましては私どもも計算するにやぶさかでございません。そしてこれを申し上げるにやぶさかでございませんけれども、各企業の機密にわたる部分につきましては、政府がそれを公表するということは差し控えさせていただきたいと思います。
  47. 阿部助哉

    阿部(助)委員 バランス、バランスと言うけれども、バランスというのは何かと比較対照しておるわけですよ。日本の酒税は私が言うように高いのですよ。そういう点では大体アンバランスなんです。それをあなたはまたバランスがとれないと言う。一体どこと比べるのです。何が標準なんです。過去にこうだったから、いまどうだこうだと言うのではない。酒税そのものが日本はアンバランスなほど高過ぎると、私はこう言っておるのですよ。それをまた上げると言う。だからあなたのおっしゃることは私にはわからない。皆さんわかりますか。国民はわからぬと思うのだ、アンバランスだなんと言ったって。
  48. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 計数的な問題を私からお答えさせていただきたいと思いますが、大蔵大臣が他の物品との間にバランスが崩れてきておると申し上げました点は、大臣の答弁にもございましたように、従価税の物品と従量税の物品とを比べた場合のことを申し上げたのだと思います。  御承知のとおり、たとえば小型乗用自動車でございますれば、税率を変えませんでも四十三年から現在までに税負担額は一・二倍になるわけでございますし、清酒の特級は一・五倍、ウイスキーの特級は一・三倍ということになるわけでございまして、これに対して従量の酒につきましては、清酒一級についてはこの間全く負担が上がっていないので、課税物品間のバランスが崩れてきておるということを申し上げたのだと思います。  それから、日本の税金は酒税がほかの国に比べてそもそも高いのだという点を御指摘がございましたけれども、これはそれぞれの国の酒の消費の態様がかなり違いますので、比較は非常にむずかしゅうございますけれども、ウイスキーが一番共通でございましょうか。ウイスキーで比べてみますと、小売価格の中の負担率は、現在二千円もので私どもの計算では日本が四〇・七、これに対して一番高いのはイギリスの八三・二でございます。フランスが六六・七でございまして、アメリカで四四・五、西ドイツでも四一・〇でございます。ビールにつきましては、先ほどの御指摘のように、確かに現実に日本のビールの方が負担率は高うございます。これは大臣が申し上げましたように、やはりわが国での消費のあり方としてビールが非常に酒の方に近いもの、外国ではむしろ子供が飲んだり、朝から飲んだりというお茶に近いものという消費の態様の違いから出てきておるのではないかと思います。
  49. 阿部助哉

    阿部(助)委員 とてもこれは話にならないですね、消費の態様が違うとか。日本の場合には酒税法でアルコール一%以上は酒類に皆さんがみなしておるだけなんであって、酒だと思って飲んだから酒であって、これはジュースだと思って飲んだからジュース、だというみたいな話なんだな。これは問題にならない。しかも税率の問題に至っては、従量税だとか何だとか言うけれども、このバランスだ何だと大臣はおっしゃるなら、なぜダイヤモンドの三倍以上も高い税率をかけなければいかぬのです。貧乏人はダイヤモンド持たないですよ。その税率は、物品税はうんと安い、酒税はうんと高いというのは一体どういうことなんです。これがアンバランスだということなんじゃないですか。それをまたさらにバランスがとれないからもっと上げるというのは、皆さんの金持ちの論理から言えばそういうことになるかもわからぬけれども、大衆の論理からいくと、いまですらアンバランスなんだ。ますますアンバランスになる。こういうわけのわからない答弁でこの酒類の値上げなんというものは私は絶対に納得できません。  時間が大変なくなりましたので、私は、堀委員が予告してあります公債の問題に入らしていただきますけれども、念のためにさらに言っておきますが、私は酒の値上げは絶対に認めないということをもう一遍ここで宣言をしておきます。  一昨日、堀さんからの、公債の発行がインフレの要因を内包しておるのじゃないか、こういう質問に対して福田さんは、運用に間違いなければインフレにならないというようなたしか御答弁だったと思うのですが、運用の具体的な内容はどういうことなのかお伺いしたい。
  50. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず、発行されました公債が完全に消化される、こういうこと、これを私は申し上げたつもりだと思います。しかし、基本的な問題があります。運用じゃなくて、もっと基本的な問題です。つまり、公債はなぜ発行するかというと、公債を財源として物の需要を喚起する、その物の需要の喚起によって国民経済のバランスが失せられない、この条件が非常に大事だ。あとは運用です。先ほど申し上げました完全消化、そういう運用の問題に気をつけてまいりますれば、公債を発行してそれが直ちにインフレだというふうには考えない、こういうことを申し上げておるわけです。
  51. 阿部助哉

    阿部(助)委員 副総理が一番最初に、四十年ですか、公債を発行されるときにいろいろと述べられておる。その一つにこういうことをあなたはおっしゃっておるのですね。昭和四十一年一月十九日、銀行会館大講堂において、あなたは金融団体にお話をなさっておる。そのとき、これは短いからちょっと読みます。「最大の消費者である財政の規模が、その時点における経済情勢、つまり今日は物が非常に過剰な状態でありますが、そういう経済時点における状態と見合って、民間の需給を圧迫するという要因がない限り、これはただちにインフレになるということには結びつかない」、そして次に、公債発行の「規模が適正にきめられるならば、つまり好況時には、財政の規模は縮小すべし、不況時には積極的に拡大すべしという大きな線に従って科学的、合理的にきめられる限りにおいてはインフレにつながる形は絶対にないと考えます。」こうあなたはおっしゃっておる。  しかし現実はどうです。過去十年間、公債は、あなたのおっしゃるように不況のときには出した、好況のときには圧縮していったということになっていますか。この十年間累積をいたしまして、この三月末で大体十兆円に達してしまったのであります。  理屈はいかようにも言えるでしょう。だけれども、公債の持つ本質そのものは一つ経済法則だと私は思う。出していったら次から次へと公債に依存をせざるを得ないというのが現実じゃないだろうか。それが証拠に、四十七年、四十八年と景気が過熱し、インフレが高進する中で、公共事業費を前年に比して二六・四%あるいは二八%と増加している。公債はまた多額に発行しておるわけであります。四十七年には、好況時において二兆三千百億円、四十八年度には一兆八千百億円という公債を出しておる。これはあなたのおっしゃることと違うじゃないですか。恐らくあなたはそのときは大蔵大臣だったかどうか私は忘れましたけれども、私ではなかったのだという責任逃れをおっしゃるかもわからぬけれども、それは許されない。一貫した自民党の内閣が継続しておる。その観点において私はこれは納得できないのでありますが、あなたのおっしゃるような経過をこの十年間公債の歴史はたどってきたかどうか、まずそれをお伺いしたい。
  52. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私が申し上げましたそういうあるべき形で運用されなかったということはあると思います。つまり昭和四十一年度から本格的な公債発行ということになっておるわけです。四十二年度は引き続いて多額の発行になっておりますが、しかし、それから後は漸減方針といいますか、ずっと減ってまいりまして、四十五年度ですか、四十五年度のごときは公債発行せぬでもいいじゃないかというぐらいな展望ができるようになり、私は社会党のどなたかの質問に答えまして、いや公債は発行しないような状態、せぬでもいいような状態になっても、多少その火種だけは残しておきたいのだ、そうしたら公債火種論だというような御議論もあったくらいです。そういうところにきて、私はその辺はかなり順調に公債政策が運用されておった、こういうふうに思いますが、四十七年、八年、あのころになりますと、国際情勢のいろいろむずかしい関係があったと思います。そして先ほどお話がありましたように、調整インフレというような議論も出てくるというような状態下において、今日になってみるといろいろ反省すべきところがあったんじゃないかというふうな感じがしますが、その辺につきましては、私もそういうことが感想としてまだ固まっておるわけじゃないのですが、いろいろ反省すべき事態があったということは率直にこれを認めております。
  53. 阿部助哉

    阿部(助)委員 福田さんは反省すべき点があった、こうおっしゃるのですが、私は本当を言うと反省だけじゃ困るのです。やはり政治はある程度責任をとってもらわなければいかぬ。一体これはだれが責任をとるのですか。私は近ごろの政治に本当に責任をとったという例を聞いたことがない。三木さん、こういう事態はだれが一体責任をとるのですか、いかがです。
  54. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはやはり政治責任を持つべきであるという阿部君の御主張は当然のことでございます。国民の負託を受けてやっておるわけですから、国民に対して責任を持つことはもう当然過ぎるほど当然のことでございます。ただしかし、こういう困難な時代でありますから、必ずしも政府考えておったようにはまいらぬ場合もありますけれども、それに対して説明を加えて国民の了解を得る必要はあるということでございます。
  55. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いろいろ複雑な情勢の中で問題があることは承知しております。しかし非常に大きな間違いを犯したというときには、政治責任をとるということがなければならぬと私は思うのです。私はそういう点で本当に責任をとったなどというためしを聞いたことがない。  私は結論から言いますと、公債というものには実際言って歯どめというものはないんだ、こう思うのです。もう一遍公債を出していけば次から次へとやらざるを得ない。しかもIMF体制が崩壊した。固定相場制というならば、ある程度インフレになったりなにかすれば平価の切り下げという問題が出てくる。しかしそのことももうなくなった。そうすればなおさら公債発行には歯どめというものがなくなってしまった。景気や不景気関係なく公債はふえ続けるのではないだろうか。特に、本四架橋だとか新幹線とか高速道路なんというものをやっていけば、次から次へと長期にわたる財政の硬直化を、これはせざるを得ない問題が出てくるわけであります。これがああいう形でいけば、けさの新聞でも出ておりますように、来年は公債費だけで一兆七千億なんということになるのではないかというようなことを書いておりますけれども、公債費だけで一兆七千億もかかるようになったら、一体財政はどうなるのです。しかもそれが市中引き受けと、こう皆さんおっしゃるけれども、その実態はと言えば、その大半がもう市中の手を離れて日銀であるとかそういうところに行っておることも、これはもうこの前指摘されたとおりであります。  政府はいま大量の国債を発行しようとしておるが、歯どめは一体どうする。大蔵大臣、自分のポケットマネーで返すんじゃないのです。公債は結局国民の税金で返す以外道がないのです。国民の借金なんです。それを安易に公債に依存するような体制に持ってきたということ自体が問題がある。私はここに、この歯どめというものは一体どうするのかお伺いしたいのであります。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 理屈から申しますと、先ほど副総理も言われたように、財政の規模が経済に対しまして適正である限り、公債の発行が直ちにインフレに結びつくものとは思いませんけれども、阿部さんの御指摘のように、公債の発行ということがインフレにつながる要因として非常に可能性が濃い、過去の歴史もそのことを物語っておるではないかという点につきましては、私もお説ごもっともだと思います。  そこで、まずこの発行につきまして、その規模自体慎重でなければならぬことは第一でございますけれども、この発行につきまして、いま仰せの歯どめをどうするかということでございますけれども、中央地方を通じまして、また歳入歳出全体を通じまして、財政にもう一度彫りの深い見直しを加えて公債依存の度合いを可及的に小さくしてまいる努力がまず必要であると思います。  第二に、しかしやむを得ず公債を発行するにいたしましても、その場合、先ほどからお話がございます市中消化を忠実に実行してまいることが第二の必要であろうと思います。  第三といたしまして、償還につきまして厳しい姿勢で対処していくというように努めなければならぬものと思います。
  57. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の持ち時間がなくなってまいりましたので、少しはしょってまいりますけれども、政府は五十一年度もまた相当の公債を出す、国債を出す、出さざるを得ない、こうおっしゃっておりますね、来年度、そうでしょう。そういたしますと、これはおおむね六兆とも七兆とも言われておるようでありますけれども、そうすればもう国債の累積は二十兆を超してしまうわけです。  私はまず第一に、今度政府の方でこれだけ大きな国債を発行する、借金をするということですね。一体、借金をするのに返済計画がないで金貸してくれという話はどうなんですかね。中小企業、まあいろいろな企業が銀行へ金を借りに行くのに、十年たったら返すんだ、来年はさっぱりわからぬ、その先の見通しはわからぬけれども、十年たったら返すんだから金貸してくれなんという話で、銀行は金貸しますか。大蔵大臣の所管しておる開発銀行であろうと何であろうと、政府の機関、銀行、金融機関に、まあ何とか返すんだ、しかし計画はないんだ、わからない、だけれども金が要るんだから貸してくれということで、大体金貸してくれますか。こんなことなら倒産なんかないですよ。私は、政府は余りにも安直だと思う。ことしこれだけの公債を出した、来年また出さにゃいかぬ、しかもその間に返済のめどは立たないけれども、十年で返すんだから何とかしてくれなんという話は、私は少し無責任だと思う。返済計画は一体どうされるんです。それをなぜここへお出しにならぬのです。私は、きっちりした——後で多少の変更はあるだろうけれども、こういう計画でこういうふうにして、たとえば財政をどれだけに切り詰めます、そしてこの税収はどういうふうにいたします、それでこれだけのものをこういう年次に返していきますということで、初めて借金をするときの納得はできると思うのですが、いまみたいに返済計画一つもなしに金貸してくれじゃ、私はしゃばは通らぬと思うのですがね。どうなんです。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 きのうもお答え申しましたように、この十年間に返済しますという償還表を今国会に御提出いたしておるわけでございます。しかも、これは借りかえによって返済をしないということでございますので、政府としてはもうぎりぎり背水の陣をしいたわけでございます。したがってこれは、財政運営の基本は、この十年間にこの特例公債は完済しなければならぬという厳しい格率のもとで運営しなければならぬことになるわけでございますので、この点につきましては私はそれなりの理解を得られるものと思うのでございます。あなたがおっしゃるように、年次的な償還計画を私どもも立てたいわけでございますけれども、今日の状況はきわめて不確定要素の多い環境でございますので、とりあえず経済を安定の軌道に乗せることが当面の急務でございまして、そういうことができることを早く期待いたしたいと思いまするけれども、今日できまする最善の道は、この償還計画表に出しましたラインで措置するということで御承知を願いたいものと思います。
  59. 阿部助哉

    阿部(助)委員 皆さん、財政制度審議会は、まあいろいろの計算をしたようでありますけれども、これから五年後、五十五年度には、公債の発行残高が五十兆だとか六十兆だとかこう言っておる。私は、これをいまのようなあなたの答弁で金が借りられるなんというはずはないと思うのです。  あなたはここに、対策として、「税制上の諸問題や公共料金のあり方等につきましても全面的な見直しを行ってまいる必要があると考え」ます、こうおっしゃっておる。「全面的な見直し」とこう抽象論で、これだけ大きな負担を国民にかける。国民の借金ですから、国民に借金を背負わせるのに、こんな程度の抽象論で国会を通そうなどというのは、余りにも国会を軽視しておるということになりませんか。私は、こういうふうにやりたいという問題を具体的に出さないで、国民に借金を背負わせるなんということは、国会議員の私自身の責任においてもできないことだと思うのです。いかがです。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 歳入歳出全般にわたりまして見直しをしなければならない。公債をお願いするわけでございますから、それだけの用意がなければ御納得はいただけないことは、私もよく覚悟をいたしておるわけでございます。  したがって、今度の補正予算におきましても、歳出面におきまして、各省庁の協力を得まして、相当厳しい節約をお願いいたしておるわけでございます。歳入面におきましても、政府の手でできる増収の道は講じてまいったわけでございます。しかし、租税制度は国会の管轄でございまして、国会の御了承を得なければなりません。したがって、私どもとしては、歳入の検討につきましていろいろ勉強はいたしておりますけれども、いま申し上げられますことは、歳入歳出全体にわたりまして精細な検討を加えて、御納得をいくように努力をいたしますということでございまして、歳出につきましては、いま査定を始めておるわけでございます。歳入につきましては、これから所定のいろいろな手順を踏んで検討を進めてまいって、最終的に国会の御審議をいただくまでの成案を得なければならぬと思っておるわけでございますが、いま抽象的であるというおしかりを受けたわけでございますけれども、この段階におきまして私が申し上げられますことは、歳入歳出全般にわたりまして精細な検討を加えて、そして公債財政に移行するにつきましては、それだけの、御納得がいくだけの用意はしなければならぬと心得ておりますということを御了承願いたいと思うのであります。
  61. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の時間が来たようでありますけれども、私はそんなことで——それを出してからこの補正予算の審議をしてもらいたい。私はいずれまた時間をいただければ再質問しますけれども、私はそれを出して初めてこの予算審議ができると思うのです。それを出さずに予算審議をしろなんということは、将来の借金のめども何もつけないで金を借りるなんということは、許されるはずがないと思うのです。私はこの問題について、わが党の理事にもお願いをして時間をとりたいと思うのですけれども、私はこんなことで国民に借金を背負わせるわけにはいかぬと思うのです。  大体、この国債の発行というものは、インフレーションを促進するだけではないのです。国の財政金融政策の質を変えてしまうことになるのです。次から次へと国債に依存するようにならざるを得ないのです。特に、財政スペンディングに道を開くことになると私は思うのです。財政法四条、五条の起草に当たった平井平治さん、この人は「公債なければ戦争なし」と、名言を発したのでありますけれども、このむだ遣いを公債政策というものは必ず行っているということを指摘しておるわけであります。私は、この四条、五条は、第三次世界大戦における死の犠牲をここに凝結したものだ、こう思うのであります。私はこれが平和憲法第九条の担保であり保証だと思うのです。それだけに、安易に皆さんがこの第四条、五条を特例法等で変えていくということに私は大きな危惧を感ずるわけであります。当面する歳入欠陥を埋めるためにという気楽さでこれをやられてはたまらない。それだけに私は、償還計画というものをきっちりお出しなさい、こういうことを申し上げておるのであります。  私先ほど申し上げましたけれども、政治責任がなくなった、赤字公債をもって戦争を遂行した政治家たちは、みずから責任をとろうとはしなかったのであります。だけれども、東京裁判で外国から責任をとらされた。それだけであります。そうして処断されたのであります。国民の血の犠牲、生命の全面的な破壊という重大問題を控えるだけに、総理を初め大蔵大臣は、この国債問題というものに対してもっともっと真剣に考えていただきたいということをつけ加え、また機会があれば再質問いたしますが、公債発行に当たって、せめて、もっともっと具体的な返済計画というものをきっちりつけて、その上で提案されることが当然国民に対して、国会に対しての皆さんの責務であると私は考えるのですが、それを訴えて、私の質問を終わります。(拍手)
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと一言。関連といったって、時間が来ておりますから、あるいは議事進行でも結構です。  いまの阿部委員質問は重大であります。しかがって、社会党の持ち時間内を調整してもう一度、たとえ二、三十分でも阿部委員質問の時間をつくりたいと思っておりますし、また理事会でも提案したいと思います。  いまの問題につきまして責任ある回答というか態度が出ない限り、本当に補正予算の採決なんてできないです。そのことだけをはっきりと申し上げておいて、改めて社会党の持ち時間内で阿部委員質問をやる。そのときにはっきりした答弁ができるようにしておいてください。でなければ、この次にはもう、そこでどうなるかわかりませんから。予告いたしておきます。
  63. 塩谷一夫

    塩谷委員長代理 ただいまの田中武夫君の議事進行ですか意見について、持ち時間の範囲内において処理することを理事会において諮って、時間の便を図ります。  これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  64. 正森成二

    ○正森委員 それでは、私は主として日米首脳会談に絡んで外交問題について伺いたいと思いますが、その前に、政治姿勢と非常に重大な関係がございますが、公害の問題について一言総理並びに関係大臣に御質問を申し上げたいと思います。  御承知のように、わが党の不破議員が一月三十一日の予算委員会におきまして総理質問をいたしました。この公害の問題というのは、国民の健康と安全を優先させるのか、それとも企業の利益を優先させるのか、それが非常に具体的にあらわれている問題でございます。そして、そのときに指摘いたしましたように、たとえば権威ある研究所の調べによりますと、東京の場合では、政府が決めた環境基準を超えている日数が一年間で九三・九%、大阪では九八・七%でございまして、たとえば大阪を例にとりますと一年の間に五日ぐらいしかない。そうしますと、年末年始に工場が休んでいるときだけがやっと政府の決めた環境基準以下であるということでありまして、そのためにたとえば光化学スモッグでも非常な増加を示しており、七三年には三百二十八回、三万一千九百六十六人の被害者が届けられております。  そこでこういうような問題を指摘して不破議員は、五十一年規制が二年間繰り延べられるというような問題について質問をしたことは御記憶にあると思います。  そこで私は、総理がそのときに所信も表明されましたが、この国民の健康を守るという問題について総理の御決意には変わりがないかどうか、所信をまず第一に伺っておきたいと思います。
  65. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 正森君の御指摘を待つまでもなく、人間の生命とか健康とかいうものを第一義的に考えるということは、これはもう政治の前提であって、生命というものをおろそかにすれば人間社会は成り立たないわけでございますから、これは最優先すべきものだと考えます。
  66. 正森成二

    ○正森委員 御承知のように公害対策基本法は、かつては第一条の二に「経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」いわゆる経済との調和条項がございました。しかし、御承知のように現在の基本法ではこの部分は全文削除されまして、逆に「国民の健康で文化的な生活を確保するうえにおいて公害の防止がきわめて重要であることにかんがみ、」というような文言も挿入されていることは御承知のとおりであります。ただいまの総理の御答弁によりますと、再び経済との調和条項を復活させるというようなお考えは毛頭ないと承ってよろしいか。
  67. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 生命、健康を優先するということは、もうこれは大原則でございますが、しかし、さりとて原始時代に返ることはできない。そこにはやはり環境基準というものを設けて、そして、まあ本当から言えば原始時代のようになってきたら一切の公害というようなものはないのでしょうが、そういうわけにはいかない。やはりこの産業社会に住んでおるのですから、環境基準を設けて、その環境基準というものが人間の生命、健康に関係を持つわけですから、その環境基準というものを守るための努力をしていかなければならぬということでございます。
  68. 正森成二

    ○正森委員 環境基準を守るということになりますと、五十一年規制を二年ずらしましたが、五十三年にはぜひとも実現したい、こういうことですね。それは総理お変わりはないと思います。  それからいまの私の質問で、せっかくいろいろ公害の問題が起こったんだから経済との調和ということで企業の利益を優先させるということがあってはならないから——もちろん企業をつぶせというわけじゃないけれども国民の健康が大事だという点で誤解を与えてはいけないからということで、公害基本法の二条が与野党合意で削除されたと思うのです。それをまたぞろ復活させるというようなことはなさらないでしょうね。
  69. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 公害基本法の基本的な問題を改正する意図は、私は持っておりません。
  70. 正森成二

    ○正森委員 そこで私は伺いたいと思うのですが、御承知のように五十年規制の未対策車、こういうものが五十年の十一月までは、モデルチェンジなんかをしない場合には生産を許されるということになっておりますが、それにつけ込んで非常に未対策車をつくりにつくり、売りに売りまくっておるという企業がございます。  そこでそういう問題について通産省はどういう指導をしておるのか。巷間伝えられるところによりますと、通産省が、局長あるいは課長がいろいろやっておる。局長は通達も出したようでありますが、その問題についてどういうように行政指導しておるか、伺いたい。
  71. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 お答えいたします。  私どもこの十一月までのリードタイムの間におきまして、一般に誤解を与えるようないわゆる駆け込み増産というようなことがあってはなりませんし、またできるだけ早く未対策車から対策車の方に切りかえるよう行政指導をするということで、本年の三月に局長通達を業界の方に出しまして、各月状況を把握しつつ指導を行ってまいっております。  なお、私ども八月の時点でさらに調査をいたしました段階でございますが、七月までの実績その他を見ましたところ、大体予定どおりの生産でございまして、目に余る駆け込み増産といったような事態は見られませんでしたが、ただいわゆる販売業者の段階におきまして五十年対策車、あるいは五十一年対策車、さらには未対策車、三つの車種が混在をいたしておりますので、販売面でいわゆる駆け込みの需要というものが発生するおそれもございましたので、重ねてその点を販売業者等に対しましても注意をし、自粛を求める通達を九月の初めに再度出して現在指導をいたしておる次第でございます。  ただ、私どもごく最近の状況におきまして、とりわけ九月に入りましてからの状況が、これはまだ数字は最終的にはつかんでおりませんが、大体前月の統計がその翌月の末でまとまりますので、私どもの手元に現在詳細のものはまだ確認をいたしておらないわけでございますが、生産面で一部のメーカーに駆け込み、あるいは予定以上の増産が行われているおそれもございますので、現在実態を調査中でございまして、もしそういったような事態がありましたら、直ちに必要な措置をとるべく考えている次第でございます。
  72. 正森成二

    ○正森委員 いま熊谷局長からそういうお話でございましたが、いまの答弁によると、メーカーは悪くはないけれども一部販売関係で妥当でないものが見受けられたように思うというような答弁であります。しかしなかなかさようなものではないということがわれわれの調査からわかっております。  あなた方は九月以降若干メーカーにおいても問題がありそうなので調べるというようにおっしゃっておりますが、十月あるいは十一月の実績——十一月の場合は計画ですが、そういうものはつかんでおられないのですか。伝えられるところによりますと、あなたのところの富永という自動車課長は、これは計画だけならもう問題ないのだということで、計画そのものを認めるというような発言を業者のところに行ってしておるという報道もありますけれども、あなた方はどういうように実態をつかんでおるのですか。
  73. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 お答えいたします。  私ども各社の実績並びに将来の見通しにつきまして逐次各社からお話を聞いておるわけでございます。その計画並びに実績を確認をいたしまして判断をしつつ指導を行っておるというのが現状でございます。
  74. 正森成二

    ○正森委員 それでは、なかなかおつかみになっておらないようでございますから私の方から資料を提出いたします。  これは自工会関係の大体各社の生産台数の見通しあるいは実績というようなものをまとめたものでございますが、これは九月二十五日に作成されました五十年十月版の生産台数の見通しであります。これを見ますと、非常に多うございますけれども、そのうちの上から四番目のトヨタを見てみますと、当月版というところ、真ん中ですね、十月は二十三万三千五百台、十一月が二十一万四千五百台というように、総台数で非常に多量の台数をつくっております。これはトヨタのいままでのいかなる時期の生産実績をも上回るものであります。そして一番右側を見ていただきますと、乗用車の国内向け排ガス対策切りかえ状況というのがあります。そのところを見ていただきますと、トヨタは飛び抜けて対策車が少ない。乗用車のうちで、現行車が十月の場合には十一万七千七百台に対して対策車はわずか三千五百台であります。約二・九%。十一月は未対策車が九万三千台に対して対策車がやっと一万二千八百台、一二・三%というように、圧倒的につくられた台数のうち未対策車が多くて、それを非常な数量でつくっておるわけですね。これはあなた方が行政指導をやる、こういうぐあいに再々言明しておりましたこと、それに全く反するということになるのではありませんか。
  75. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の数字でございますが、この十月、十一月を含めまして最終的に各社のいわゆる対策車がどれくらいの比率になるのか、こういう点につきましてはやはり各社にかなりの差がございます。先生指摘のとおりでございます。  いま御指摘のトヨタにつきましては、平均的に申しますと対策車への切りかえが他に比較いたしましておくれているということは事実かと存じます。これは私ども今日までできるだけ早く切りかえを指導してまいっておりますが、トヨタは車種がかなりございますものですから、型式承認その他いろいろな手続等もあり、生産切りかえがややおくれておるということでございますが、私どもはできるだけ早く切りかえるよう今日まで指導してまいっております。しかしながら、トータルといたしましてはやはり他と比べまして切りかえがおくれがちで今日まで参っておるのではないか、そういう数字でございます。
  76. 正森成二

    ○正森委員 そういう役人的な答弁を聞いておっても仕方がない。あなた、この実績を見てごらんなさい。十二月にいよいよ未対策車が絶対につくれないという時期は幾らかというと、トヨタは前月、前々月に比べて一挙に五割台に落ちて、十三万五千台前後じゃありませんか。つまり、十月、十一月のまだ未対策車をつくれるときには、われわれの調べによると休日を返上して、休日を十二月に繰り延べて、そして必死になってつくっておる。いよいよ十二月の、どうしても未対策車はつくれないというときは、十月、十一月にかけ込みで未対策車をつくったのを売りまくる。だから、この月は生産を下げてもいいんだということで一挙に五割台に落として十三万五千台、こういうことをやっておる。通産省の役人はこういうようなことを知らないのか。知っておっても指導しないんでしょうが。役人に聞いても仕方がないから、通産大臣、どう考えますか。三木総理大臣の政治姿勢からいっても、こういうようなことは絶対に許されないでしょう。ところが、十月、十一月にはしこたまつくり上げてそれを売りまくる。いま非常な販売合戦が行われておる。そしてぎりぎりいっぱいまで未対策車を売りまくって、公害をまき散らして、十二月になっていよいよ規制しなければならないのはがくっと台数を落とす、これがトヨタの作戦じゃないですか。
  77. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 未対策車をかけ込み生産をしないようにということは、この春以降何回か厳重に注意もし、指導もしてきたわけでございますが、何回か調査しましたが、八月まではそう変わった数字はなかったのです。しかし最近になりまして、先ほど局長答弁いたしましたように、特に九月からこの傾向が出てまいりましたので、積極的にいろいろな調査をしておるところでございまして、こういう事実が出てきておりますので、近く呼びまして重ねて厳重に注意をする準備をしております。
  78. 正森成二

    ○正森委員 重ねて厳重に注意しますと言いますけれども、総理、聞いてくださいよ、きょうは十月の二十三日なんです。調べて十一月の一定の時期にやるときには、舌をぺろっと出して、もう済んだ済んだということになるのですよ。そういう悠長なことを通産省はやっておる。それで一体国民の健康を守るというようなそういう政治姿勢が見られるのかどうかという点について、私は非常に疑問がある。だから、これから調べてやるなんというようなことは非常に手ぬるいと思います。一体いつまでに調べて厳重に注意するのか。この計画がもし事実だとしたら、そういうかけ込み車の生産は許さないということを行うのかどうか、大臣、明確に答弁してください。
  79. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、八月時点の調査ではこういう傾向がなかったわけでございます。最近急にこういう傾向が出てまいりましたので、ここ二、三日中に呼びまして厳重に注意をいたします。
  80. 正森成二

    ○正森委員 二、三日中に呼んで厳重に注意すると言われますが、その注意を聞かなかった場合はどうされますか。
  81. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は十分この点は聞いてくれるもの、こういうふうに判断をいたします。
  82. 正森成二

    ○正森委員 私はその問題は、トヨタの関係ではまだまだ悪いことをやっておりますので、それを全部言った後でまとめて委員長にお願いを申し上げたいと思います。  トヨタが非常に態度が悪いというのは、これだけではありません。トヨタに限りませんけれども、たとえば公害規制にからんで、衆議院の公害対策並びに環境保全特別委員会でいろいろ論議が行われたことがあります。そのときに、自工会関係のメーカーの宣伝というのが非常に不適切だということが再々に指摘されております。  たとえば四十九年八月二十一日にわが党の中島武敏議員が指摘したところでは、日本自動車工業会から「窒素酸化物低減の問題点」という資料が出ておるわけでありますが、その中で「NO2環境基準達成の至難性」というところで「自然界のNO2レベルは、〇・〇一ないし〇・〇二ppmであるとされている。」こう言いまして、日本の環境基準が〇・〇二であるから自然基準と一緒なんだ、だからこういうことはできないんだという意味のことを述べておったわけですね。そこで、このパンフレットというのはけしからぬじゃないかということが問題になりまして、環境庁の大気保全局長であった春日さんが「私どもは直ちに自工会あるいはそういったメーカーを呼びまして、それに対して非を正してございます。」ということを答えております。  そこで、環境庁長官に伺いたいと思いますが、こういうぐあいに非を正しておるのに、なおかつ自動車工業会加盟のメーカーがこういうことを現在でも依然としてPRをしておるということになればどうされますか。
  83. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 御承知のように、昭和四十八年規制、五十年規制、五十一年規制と、NOxにしましてもSOxにしましても、非常な低減の規制を強化してまいったわけでございます。さらに五十三年を目途にして完全実施を図りたいというので、総理の御指示によりまして、私の手元に四人の先生方で常時各メーカーの技術開発の状況をチェックする機関を設けまして、この先生方は夏休みも返上して勉強していただいておりまして、私どもとしては当初の目的を達成するように、いろいろな技術指導をやると同時に、この開発状況についても常にチェックをして、厳重な指導を続けているわけでございます。
  84. 正森成二

    ○正森委員 そんなこと何も聞いてないじゃないか。非を正すと言いながら、そういうことをもしやらない、今後もずっと続けているというところがあればどうするのかと聞いているのです。ですから、あなたのところの局長が非を正すと言いましたから、それに対して全然そういうことを無視しているというような会社があれば、これは非を正すどころじゃなしに相当厳重な処置をとらなければいかぬと思うのですね。そういう問題についての決意を伺っておるのです。だから、おいおいとやるというようなことではないのです。
  85. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私ども環境庁の仕事は、とにかく自動車の排気ガスの中でNOxの境環基準を守るように常に努力をすることが私どもの任務であります。業界の方でその私どもの基準につきましてどういうような意見を持つかということも、これは十分関心を持たなければいけませんけれども、もしそれらに私どもが煩わされまして、あるいは制約されまして、私どもの姿勢が変わっておるとすれば、先生の御非難を受けるのはあたりまえでありますし、業界が私どもの環境基準についていろいろな意見を言うておること、それに私どもがもし迎合するようなことがあったら非難をされるのはやぶさかでありませんけれども、私どもは何らそれに影響されておりません。もし先生がそういうことをおっしゃるのなら、私どもがそのことについて一体どういう影響を受けて行政を曲げたかどうかということの方が問題でございまして、私どもはそういう自工会の言い分について、それに影響されてこの規制の態度を緩めるようなことは全くしておりませんから、その点はひとつ御了解を得たいと思うのです。
  86. 正森成二

    ○正森委員 環境庁長官のいまの御答弁を伺っておりまして、私の質問の趣旨を必ずしも御理解なさっていないんじゃないかと思うのです。私は、役所がこういうことによって影響されておる、それがけしからぬとは聞いてないのです。春日前大気保全局長は「私どもは直ちに自工会あるいはそういったメーカーを呼びまして、それに対して非を正してございます。」こう言っているのですよ。われわれの態度はきちんとしておるんだ、だからメーカーがそういう態度だったら非を正すんだ、こういうことを言っておられるから、だからあなた方の態度が変わったとかどうじゃなしに、非を正してあるのになおかつそういう態度を依然として続けておる者があったら断固たる態度をおとりになるでしょうね、こう聞いているので、私の質問はあなた方の態度が変わったとかそれがけしからぬということは、いままでの質問の中で、速記録を調べていただいたらわかるように、一言も言っておらないわけです。それを環境庁長官はお取り違えになって御答弁になっておるのです。それは後でもう一度答弁していただきますが、続けて質問さしていただきます。  これは自工会だけではないのです。たとえば四十九年九月十一日に同僚の土井たか子委員が日産自動車の岩越参考人、社長だと思いますが、お呼びになりまして質問をされているわけです。そのときに、四十九年七月十六日に行われた東京都公害監視委員会のヒヤリングの際に日産自動車が配りました「五十年、五十一年排出ガス規制について」という文書があります。それについては「わが国のNO2環境基準設定の根拠には種々の問題点があり、科学的な調査に基づいた見直しが必要と思われます。」こういうように言うておったのです。それに対して、土井委員が非常にこれは問題ではないかと言いましたら、岩越参考人は「その点については、われわれは取り消したいと思います。」こういうようにちゃんと答弁しているのですね。これは日産自動車の場合であります。  つまり、私が申し上げたいのは、国会のそういうメーカーに対する追及に対しまして、メーカー側はそれは取り消しますとかあるいは環境庁側はその非を正してまいりますと一貫して言っているのです。ですから、取り消しますと言った関連企業やあるいは自工会がその非も正さず、また取り消さずに、依然としてそういう態度をとっておるという場合には環境庁としてはどういうようになさいますか、こう私は伺いたいと思います。御質問の趣旨わかっていただけましたか。
  87. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 自工会が自工会としていろいろNOxの環境基準について意見を言うことは、これはもう自由だと思うのです。しかし、現在の技術上われわれの考える環境基準がとにかく正しい、あらゆる技術上、医学上の観点から見ましてNOxの環境基準というものを決定したわけでございますから、それが間違っている考え方であれば、われわれは率直に私どもの考え方を説明をしまして、御理解を得るように努力をするのは当然でございます。また、それをやっております。先ほどの局長答弁のように注意も申し上げ、その説明もやっているわけでございます。  しかし、私どもの環境基準設定の学問的な根拠につきまして、なお世間ではいろいろの意見のあることも事実であります。われわれの考え方について批判なりあるいはそういうような意見が各界各層にあっても、それをいまの私どもの権限で注意をしても、なおかつ、しかし自分たちはこういうような理論的な技術的な観点からこの環境基準は厳しいと思いますよと言うことについて、わが国の言論の自由のこの制度の中で業界がそういうことを言うことについて、私どもは法律上の処罰をしたりそういうような権限もございませんので、自工会のみならず鉄鋼業界からもNOxの環境基準についてはいろいろな意見を言ってこられます、その際に私は、ただ業界が困るというようなことで私どもの学問的な技術的な見解を変えるわけにいかない、もし私どもの方で考えている学問的なあるいは技術的な見解に対して、技術的な科学的な間違いがあるということであるなら御指摘ください。公害対策基本法にも、先生承知のように、環境基準を決めましてもそのときどきの科学的な知見によってこれを修正するということを法定してございます。したがいまして、やはり官庁が独善に陥らないように、科学的な論争は科学的な論争として十分お互いに相尽くすべきものは尽くしておかなければいかぬと思うのでございまして、公害対策基本法の第九条三項で環境基準についての見直しの規定があるのは、そういう御立法の趣旨だろうと考えております。  したがって、ただいまおっしゃるように、自工会に対しまして、その自工会の意見が私どもの科学的な知見と違う場合には十分注意を申し上げ、理解を得るように、また、そういう非科学的なことを言わないように御注意を申し上げることは、先ほど局長答弁したように、十分やっているわけでございます。
  88. 正森成二

    ○正森委員 私は、いまの答弁を聞きまして、四十九年当時の局長の見解よりも非常に後退しておるというように率直に思います。その点は総理にも後で伺いたいと思いますが、そういうことをおっしゃいますから、私は次の資料の二を提出したいと思います。  これは、「みんなに知らせよう正しい排ガス問題 考えよう……車社会と環境問題」というパンフがトヨタから出ております。そして、広報担当者というのがおるようでありますが、この内容をさらに詳しく説明させるために「パンフレットマニュアル」という表題で、その重点項目と説明の仕方をつくったものであります。これはたくさんと問題点があります。それを一々指摘をしておりますときょうは時間がございませんので、ほんの数点だけ指摘したいと思います。  たとえば、お手元に配りました一枚目を見ていただきますと、四十七年十月に「“日本版マスキー法”方針告示」これは「この項で言いたい点」と書いてありまして、「日本の規制も科学的に算出されたものではない。」こういうことをPRする、こう言っておるんです。  その次の二枚目を見ていただきますと、同じように「NO2〇・〇二PPMがいかに厳しいものか、又その基準値の決定のしかたが科学的でない。」ということを言いたいんだ、そのことを説明しろ、こう言うておるんです。  次のページを見ていただきますと、「大気はきれいになっている。五十年規制実施によってさらにきれいになる。これ以上、規制を強化する必要があるのか。」これが「この項で言いたい点」だからこれをPRしろ。その横には、「光化学スモッグの原因は自動車だけのように言われているが真の原因は解明されていない。」こう書いているんです。その下を見ていただきますと、「日本が環境至上主義であるのは「四十五年の国会で公害対策基本法から“経済との調和”条項を削除」してしまった為。」こう言って、環境至上主義である、こういうぐあいに言うておるんです。  これが宣伝の重点であるということで、こういうパンフを出し、広報担当者用のこういうとらの巻まで出しておる。こんなことをほっておけますか。一方では未対策車の駆け込み生産をわんわんやっておる。後で言いますが、ぼろもうけをしておる。そういう一方で、ずうずうしくも、国会へ出てきたときには、取り消しますとかいろんなことを言っておるけれども、それから一年たった五十年では、しゃあしゃあとしてこういうことを言っておる。  大臣、これは一般的な言論の自由の問題ではありません。社会的責任を有する公害を出しておる企業が、四日市裁判の判決でも重大な責任を負わされておる企業が、環境基準を守らないで、五十年規制も守らないで、どんどんもうけるために未対策車をつくりながらそれでいいのだ、五十一年規制を二年先に緩められて、〇・二五というのが〇・六と〇・八五というように緩められた。それすらする必要はないのだと言わんばかりの書き方をしておるのです。こういうことをPRして、そして自動車を売りまくろう、こういうことが社会的に許されるのかと言うておるのです。言論の自由の問題ではないです。大臣どう思いますか。
  89. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 このパンフレットを私は初めて拝見をいたしました。「大気はきれいになっている。」「これ以上、規制を強化する必要があるのか。」これははなはだ私も遺憾だと思います。それから「日本が環境至上主義であるのは“経済との調和”条項を削除してしまった為。」——いろいろ批判をするのは勝手でありますけれども、こういうことの結果国民に間違った観念を与える、あるいは環境改善の仕事について支障を来すようなことになるおそれもありますので、私ども自工会並びにトヨタそのものに厳重にひとつ注意をして、環境行政に協力をしていただくという企業の社会的責任のあることを十分よく説諭していきたいと考えております。
  90. 正森成二

    ○正森委員 総理、お休みのようでありますが、この問題は総理にも関係があるんですよ。  総理は、わが党の不破書記局長質問に対して、五十一年度規制も、窒素酸化物が、いま御指摘になった光化学スモッグの大きな原因であると言われていることは、学者の間でもいろいろ立証されているわけです、こう答弁しておるのです。それに対して真っ向から違うようなことを、一生懸命未対策車を売りまくっておる会社が言っておる。しかも、この未対策車の会社も含めて、昭和四十九年九月十一日の衆議院の公害対策特別委員会答弁では、全員そろって、大体移動発生源の四割は自動車として責任を負わなければならぬと思っております、こう言っておるのです。自分の言ったこともたなに上げて、それらを踏まえて、総理が光化学スモッグの大きな原因であると言われていることは、学者の間でもいろいろ立証されておる、こう言っておることも全然無視して、そんなことは科学的には原因がまだ明らかになっていない、五十年規制で十分で、これ以上規制する必要があるのか、こういうことを一般の一学者が言うならともかく、トヨタのような企業が言って、PRをして、未対策車を売りまくるというようなことは、企業の社会的責任というものを全く没却した態度ではないですか。総理、いかがですか。
  91. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 光化学スモッグの問題というものはまだ解明されるものがあると思いますが、それは移動発生源ばかりでなしに、これは固定発生源というものもあるでしょう。しかし、自動車による窒素酸化物などの原因というものを学者もいろいろと立証されておりますから、それは私はまだ読んではないけれども、光化学スモッグに自動車による移動発生源というものが大して関係がないということは事実と相違すると考えます。
  92. 正森成二

    ○正森委員 総理がいまそういう御答弁になりましたが、私はもう一点指摘したいのです。  こういうように、勝手ほうだい、自分に都合のいいことは言い、都合の悪いことは触れないということをやって、未対策車を売りまくっておる。そして十二月からの対策車というのは大幅に五割から六割に生産ダウンすることをやっておいて、トヨタが一体どれくらいもうけておるか。非常にコストが高くつくとかできにくいとかなんとか言っております。しかし、五十年規制よりも若干厳しい五十一年規制の対策はもうやっておるのですね。五十年対策のものはちょっとしかつくらないで、もう五十一年の四月ぐらいからは五十一年対策車をいきなりつくった方がコストの上からも、税金の上からもいい、そういうことをやって、いま十一月まではともかく五十年の対策にもならないようなものをつくりまくって、そうして決算はどうかといいますと、六月期決算、決算期変更によって七カ月の変則でありますが、売り上げが一兆百二十五億八千四百万円、昨年比二七%増、六カ月に換算しましても八・九%増であります。経常利益は六百二十八億八千九百万円、六カ月に換算して、一挙に三倍にふえております。そして営業利益をとってみましても、四百八十四億六千三百万円、六カ月に換算して四・六倍になっております。つまり、こういうことをやってもうけているのです。だから公害対策をとったために、しかも不況と重なったからどうも苦しい苦しいと言っておるならともかく、日経の報道でありますけれども、営業利益で四・六倍、そういうことをやっておる。  しかも、この企業が、トヨタが、増産に増産で日曜日も返上して、日曜日は十二月へ持っていくということをやって、十二月には週四日働いたら元が取れるようなことになっておるということまで放言しておるのに、トヨタの企業活動の非常に旺盛な東海地方で一体下請業者はどうなっておるかというと、トヨタのこのPR文書でも、自動車産業というのは全国で十人に一人が何らかの形で関係しておるのだ、非常に大事な企業なんだ、この企業を大事にしてもらわなければいかぬという意味のことが書いてありますけれども、増産にもかかわらず、中小企業は、末端の下請では仕事がない。中小企業者では非常に仕事が不足してきているということが書いてあります。中には仕事の量が大体二分の一から四分の一ぐらいに減っておる。それはなぜかというと、トヨタが大幅なコストダウンを図るために三、四次下請から仕事を引き揚げて単価の切り下げを強行しているためだ。そのためにはいろいろ策略をとっておるようでありますが、詳しくは申しませんけれども、そういうことが調査の結果わかっておるのですね。そうしますと、このトヨタというのは未対策車を一生懸命十一月までにつくる。そのためにはもう非常な労働強化だ。しかも十分の一ぐらいに、仕事を与えておるんだといいながら、もうけを多くするために下請業者の仕事はどんどんカットしていく。そして利益は前期の四倍、五倍というぐあいに上げておる。未対策車は駆け込みでものすごくたくさんつくって、十二月からはどかんと生産を減らす。それを合理化するために、国会でのいろいろの答弁とかそういうものにも反して、自分に都合のいいことだけPR文書でやっておる、こういうことになっておるんです。これで社会的責任が果たせますか。実に悪徳商法じゃありませんか。私は、環境庁長官が説諭したいとかなんとかいま言われましたけれども、もちろん説諭は必要でしょう。しかし、単なる説諭だけでは済まない、もっと強力な行政指導をする必要があるんじゃないかというように思います。  私は、そこで委員長にぜひお願い申し上げたいんですが、こういう文書を出したことについて説諭はなさるようでありますが、かつて公害対策委員会で、トヨタを含めて各社の社長クラスが出てまいりました。そこでは、光化学スモッグ等について少なくとも四割は責任があるとか、あるいは局長の言に対してもあるいは同僚議員の質問に対しても、不届きなPR文書は取り消しますとかそういうことを言うておるわけです。ところが、その後通産省の行政指導を一年ばかりやったけれども、余り効果がないということになりますと、私はどうしても少なくともトヨタの社長は呼んでいただいて、一体なぜこういうPR文書を出しているのだ、一体前に国会で言ったことを守る気がないんじゃないか、国会の権威を無視しているんじゃないか、あるいはそうではないならそうではないということを言え、そうであるならちゃんとそれを訂正するようにということをただすことが国会での質疑を重からしめるゆえんである、こう思います。  そこで私は、トヨタの社長あるいはそれにかわるべき人物について国会へ参考人としてお呼びいただくことを、委員長理事会にお諮りの上お決めいただくことを提案したいと思います。
  93. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 わかりました。理事会で諮ってみます。
  94. 正森成二

    ○正森委員 総理、私は時間が予定より長くなりましたので、この問題について終わりますが、総理の御所見を、そういうのはやはりぐあいが悪い、正せるところは正さなければならないという御見解を、もしございましたら伺いたいと思います。
  95. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 正すべきは正すべきであるということは、まことに当然のことと考えます。
  96. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんので、私は日米首脳会談の問題について伺いたいと思います。  総理は、八月五日と六日にフォード大統領と会談をなさいました。ところが、新聞報道によりましても、大方の予想に反しまして、あるいは総理自身は反しておられなかったのかもわかりませんが、八月五日のワーキングディナーの前にフォード大統領と、日本流に言えばさしで個人会談をなさいました。それは一体どういういきさつでなさり、何をお話しになったのでしょうか。
  97. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 首脳会談のときにさしで会うということをいろいろ問題にするようですが、日本の場合は、首脳会談というと何かおぜん立てをして儀式張って会うのが首脳会談だという考え方が日本にはまだあるわけです。しかし、首脳会談というものはさしで話すのはあたりまえですから、したがって、ヨーロッパなんかに行ったらもうしょっちゅう二人だけで話をしているし、私にだって、外国の大統領から直接私に電話をもらったこともあるんですよ。電話で話しているんですからね。だから、当然に首脳間で日本のように儀式張らないで、気安くざっくばらんに話せるような首脳会談に持っていかなければならぬ。これは二人が会うことがいかにも大問題に言うようなことは、今日の首脳会談の世界の慣習とは合ってない。  大統領とは、第一回の会談のあとで、もっと時間がとれれば二人で話そうということで個人的に会ったわけで、いろいろ外交案件を話をするというようなものでなしに、フォード大統領とは旧知でもございますし、ちょうど彼が副大統領のときに、私は副総理のときにも会って長く話をして、そして二人が今度会ったときは大統領であり総理である。長い議会人としての経歴もあって非常に親しい関係があるわけですから、いろいろな問題について、外交の案件を処理するということでなくて話し合いをするということであったわけでございまして、外交的な意味は持っていないわけであります。
  98. 正森成二

    ○正森委員 何か総理は初めからコンプレックスをお持ちのようでありまして、私は何もフォード大統領とお二人だけでお会いになったのが悪いというようなことは一言も言うてないんですね。お会いになったのはいかなるいきさつで、何をお話しになったのでしょうか、こういうように聞いておるわけですね。  ところで、私は新聞報道を詳細に読みましたけれども、あのフォード大統領とのお二人の会談というのは、フォード大統領の方から二人だけにしたい、こういうようなお話があったようですね。
  99. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ざっくばらんに申しますと、第一回に会ったときに、時間も余りないので、二人でもう少し話したらいいなと私が言って、私もヨーロッパからゆうべ帰ってきたばかりだから、スケジュールを見て、そういう時間があったらそういう時間をつくって君に知らすということで、会議の前に、晩さん会の前にそういう電話があって会って、議会人同士でもあるし、旧知の間柄でもありますから、いろいろな話し合いをしたということでございます。
  100. 正森成二

    ○正森委員 いろいろのお話の中には、たとえば総理のブレーンの一人である平沢和重さんが「現代」の十一月号などにもちょっとお書きになりまして、国内的なことを話したんだ。おれは当選十四回でおまえは十三回だ、おれは三十八年でおまえは二十六年だと言ったら、向こうがいや二十七年だと訂正したとか、そんなことを言うたんだ。ほかには五大国首脳会談のことがちょこっと出ただけだというようなことが書いてあります。あなたのいままでの新聞報道でも大体それを敷衍するようなことですけれども、しかし考えてみますと、そういう題材こそまさにワーキングランチやワーキングディナーで言えばいいことではありませんか。だれが考えたってそういう話題こそワーキングランチやワーキングディナーで和気あいあいとやればいいことで、四十分も、伝えられるところによりますとお二人だけでお会いになるというような、それほど首脳会談というのは気楽なものではないと私は思いますね。私はまだ総理になったことがないからちょっとわかりませんけれども、大体そういうものだと思うのですね。  そこで、この問題をもう少し伺っていく前に外務大臣に伺いたいと思いますが、外務大臣は非常に外交経験が御豊富でございまして、共同声明あるいは今回の場合は共同新聞発表でございますが、そういうのをつくるためにいかに長い間準備が要るかというようなことについてもよく知っておられるところだと思うのですね。今回の場合では、伝えられるところによりますと一カ月以上も日米双方で詰めに詰めてできたもの、少なくとも四日段階ではそれでいこうとなっておりましたものが、フォード大統領及びキッシンジャー長官が四日のワシントン時間十一時に帰着した。それまでヨーロッパで全欧首脳会議があったというために事務当局と十分に詰め合わせができなかった。そこで、事務当局から説明を聞いた上で、五日に至って若干の部分について日本側と相談した上、変更が行われたということになっておりますが、それは事実でございましょうか。
  101. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように共同新聞発表の方は、これはもう正森議員よく御存じのように、長い間の両国の懸案を事務的に詰めてまいりまして、頂上会談を機会に両首脳の承認を得て共同の合意とするという性格の、しょっちゅういたしますもので、事務的には非常に必要なものでございます。この準備は確かに言われますように一月ほど長いことかかってやっておりました。その中途の段階におきまして、これは総理大臣がアメリカへ行かれる前でございますけれども、これもこれで事務的には必要なものであろう、しかし、自分とフォードとが本当に二人で大所高所から話して大きな合意ができたときには、これは新聞発表というような形でなくて、そのものをそのまま素直に発表する方法はないだろうかと言われまして、私は、それは大変にごもっともなことだと思いました。それで、そういうものができましたら共同声明という形にいたしたらいかがでございましょうか、共同新聞発表という事務的な詰めばそれとして別途にさせていただきますということでわが国を出まして、たまたま御指摘のようにアメリカ側の首脳が欧州旅行中でございました。それで、先方から、総理大臣とフォード大統領の共同声明について異存のない旨の返事が最終的に参りましたのは、先方の首脳がワシントンに帰りました後でございます。しかし、その間に何かこれについてこう、ああという特段の注文があったというふうには私存じておりません。
  102. 正森成二

    ○正森委員 私は、いまの外務大臣の御答弁は、非常に御丁重ではございましたけれども、問題をすりかえておられると思います。それで、御承知のように共同声明と共同新聞発表というように分けられました。なるほど共同声明というのが、三木総理の哲学といいますか理念を入れたいということで渡米の少し前に御発案がありまして、最終的に、そういうことでいままで準備されてきたものを共同新聞発表にする、それはオーケーだというのがまいりましたのは恐らくお着きになってから、八月四日の夜か八月五日の朝だったろうと思われるのですね。しかし、私が申しておりますのはそのことだけではございませんで、共同新聞発表という形式になりましたものについて、それまで日米双方の事務当局で詰めに詰め、また宮澤外務大臣を含む外務省が、日本側としては少なくとも了承しておったというものが五日、六日の首脳会談で若干変更された部分がおありなのではないか、こう申しておるのであります。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わかりました。いま仰せられるのは、そうしますと共同新聞発表の方のことでございます。共同の新聞発表でございますので、両国の最終責任者が合意をいたしますまでは最終的な案というものは決まらないわけでございまして、確かに両者の意見を出し合いまして最終的な姿にまとまりました。そのとおりでございます。
  104. 正森成二

    ○正森委員 いま非常に遠回しな御発言でございましたが、私の申したことをお認めになったと思います。それで、そのどこが直されたかという点につきましては、八月十三日の読売新聞が、原案になかったものが両首脳の会談で結局挿入されることになったということで大きな記事を出しております。それを見ますと、最も重大なところが変わっておるのですね。  たとえば、御承知のように当初は韓国条項の前に「両者は、アジアのすべての国々の間で安定的、かつ、建設的な関係が樹立されることを期待した。」こう書いております。「アジアのすべての国々」でございますから、南北ベトナムも当然入っております。あるいは朝鮮民主主義人民共和国も入るかもしれません。ところが、この重大な部分が両首脳の会談によって欠落しております。  その次に、四日まで一応同意されておったものでは、韓国条項のところは「朝鮮半島における平和の維持がアジアの平和と安定にとり緊要であることに意見の一致をみた。」こうなっております。この部分はどう変わっておるか。「両者は、韓国の安全が朝鮮半島における平和の維持にとり緊要であり、また、朝鮮半島における平和の維持は日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり必要であることに意見の一致をみた。」明白に「韓国」という文句が入っており、そして「日本を含む東アジア」というように拡大されております。  それだけではありません。その次に、もとの案では「両者は、かかる平和を維持するための現行の安全保障の仕組みの重要性に留意した。」こうなっております。ところが両者首脳が会談した後では「両者は、かかる平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」つまり「仕組み」じゃなしに「現行の安全保障上の諸取極」明白に米韓条約と日米安保条約を含む、それが明らかにわかるようなものに変更されております。  総理、この直された点こそ、まさにフォードさんとあなたがお会いになったときの主要な議題だったのじゃないのですか。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一言だけ事務的なことを御説明申し上げますが、このような共同声明、共同新聞発表は、文字どおり両国の共同作業の結果できるものでございます。しかも、それも両国の事務当局のいろいろな段階から私どものところに参り、さらには最高首脳に行ってでき上がる性格のものでございますので、先ほど某新聞に掲載された原案云々というようなことを仰せられたかと思いますが、事の性質上、原案というものがあってそれに修正を加えたというものではなく、段階を経ての共同作業の結果最後にでき上がりましたものが、これがただ一つのものであるというふうに御解釈を願いたいと思います。
  106. 正森成二

    ○正森委員 両者が最終的に合意して発表したものが唯一のものだ、それはよくわかっております。しかしそれに至る前に、私どもが正確に確かめたところでは発表まで極秘ということで——しかもこれは読売新聞だけではありませんよ。私が当時の新聞を丹念に見ますと、たとえば日経新聞でワシントン五日発で、金指特派員がほぼ同様のことを打電してきているのです。これはどういうことを打電してきているかというと、三木総理が共同声明と共同新聞発表というふうに分けるということを言っておったのに対して、米側が日本側の共同声明にするということを同意したということを言うたときに、これは日本側の三木首相同行筋が明らかにしたということで、恐らくこの同行筋という人は、共同声明発表ということに同意したんだから、共同新聞発表の方も大体支障がないんだろう、こう思って漏らしたのだろうと思うのですが、ちゃんと五日の朝の段階で共同新聞発表の案が書いてある。それを見ますと、読売新聞のこのいわゆるすっぱ抜きですか、それほど一言一句書いてありませんけれども、ほぼ同じことがここに指摘されておる。ですから、四日の段階までは、読売新聞が言っているような、発表まで極秘というものであったということは明らかではありませんか。私は、何もあなたが四十分くらいお話しになったときに細かい字句までお詰めになったというようなことを言おうとは思っておりません。しかし、大きな考え方として、以心伝心、有無相通ずるというものがあって、五日から六日にかけて最終的にこういう案になったのではないか、これはだれだって考えることです。それだけではありません。まだほかの条項についてもトップクラスでいろいろお話しになったと思われますけれども、だれが考えてもそう思わなきゃおかしいじゃないですか。ワーキングディナーで和気あいあいと言ったらいい。おまえは十三回だ、おれは十四回だ、二十六年じゃなしに二十七年だ、そんなことを言うためだけに四十分も二人だけで会いますか。  そこで、私は何としてもその疑惑はぬぐい去れないということを指摘したい。そしてこの違いというのは実に重大な意味を持っているんではないでしょうか。同僚議員も質問いたしましたから外務大臣に直接お伺いすることは避けますけれども、また外務委員会で一部局長が答えましたけれども、この諸取り決めというのは、これは休戦協定、そして米韓安保条約、そしてそれに関係のある限りで日米安保条約、それから米軍の駐留といいますか、そういうようなものを含むんだという御答弁がアメリカ局長からあったと思います。それから、いわゆる韓国条項に「韓国の安全は」という文句が入ると入らないでは、これは大変な違いである。かつて木村俊夫外務大臣がいわゆるもとの案に近いことをおっしゃいましたが、それがわざわざ韓国ということが入っておるわけですからね、それは重大な違いがあるわけでしょう。これは、韓国で何か事が起こったときに、日本が安保条約第六条に基づいて事前協議の問題について決断をする場合に、一定の重要な意味を持っているんではありませんか、総理大臣。
  107. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今度の場合に、最初のお話のように原案があってそれが修正だったということはないんで、最終的に決められたものが原案ということでございます。しかも今度の場合は——要するに今度の共同新聞発表に発表されましたことは、現実に見ればそうですからね。韓国の安全というのは、朝鮮半島の、北鮮の動向にやはり影響されるわけですから、朝鮮半島全体の平和と安定というものが日本の安全に大きな関係を持つわけですから、何も別にどうということではないんで、いままでは韓国韓国ということであったのをもう少し視野を広げて、現実に朝鮮半島の平和と安定ということを今度の新聞発表の中にも重視しておるわけでございまして、これはより現実に即したような新聞発表になって、だれが考えてみても当然のことだと考えるわけで、特別に別な意味を持って言ったということではない。
  108. 正森成二

    ○正森委員 もし御趣旨のようであれば、原案という言葉をおきらいのようでございますが、途中まで作成されていたように、「朝鮮半島の平和は」というようにだけお書きになった方がよほどよくわかると思うのですね。それをわざわざその前に「韓国の安全が朝鮮半島」と、こういうぐあいになったのは、やはり韓国の安全を日本の平和と安全に結びつける、その中間項として朝鮮半島の平和ということを入れたのだ。なぜ入れたかと言えば、安保条約の第六条では、米軍は極東の平和と安全のためにわが国の施設、区域を使用できるけれども、それはいままでの政府の国会答弁では、極東の平和と安全だけではだめなんで、日本の平和と安全ということにやはり関連するということでなければ、これは事前協議でなかなかイエスと言えないのだ、こうなっておりますから、今度の韓国条項では、韓国の安全というのは朝鮮半島の平和というのを仲介項として日本の平和と安全ということに結びつけられておりますから、だから、事前協議でイエスと言う場合に、韓国の安全が脅かされたということになればそれは日本の安全が脅かされたということで、安保条約の第六条のイエスと言う発動の条件が非常にしやすくなる、あるいはイエスと言わざるを得ないようになっておる。そのためにこそ米側は、初めの案にはなかった韓国の安全はということを入れるのを固執したのでしょう。しかも諸取り決めというところで米韓条約というものをきっちりと入れて、それと安保条約と関係づける。碁で言えば、ぴしっと押さえているわけです。アメリカ側は名人クラスで押さえておる。わが国はどうかと言えば、どうもそこまでいかないで、名人に押し切られたということにどうしたってなるのじゃないですか。
  109. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は正森君の言うことはよくわからないのですがね。韓国と日本との関係考えてみたら、釜山から対馬まで三十海里ですよ。韓国がどうなっても、日本影響ないのでしょうか。韓国の安全というものは、韓国の動向というものは、日本の安全に無関係だと言い切れるでしょうか。これは関係ありますよ。目と鼻の先じゃありませんか。だから、当然のことですよ。韓国の安全は日本の安全に対してもやはり大きな影響力を持っている。否定することはできない地理的な条件じゃありませんかね。その韓国というものはまた、北鮮の動向というものに影響を受けて、結局日本が願わなければならぬことは朝鮮半島全体の平和と安定でしょう。  私がフォード大統領と話したのも、そんな、安保条約の適用を強化するとかどうするということは一つも話をしない。朝鮮半島の中に武力衝突のような、こういうことが起こるような不幸な事態をどうして避けるかということが話の中心である。だから、いま正森君の指摘になるような、事前協議がどうの、あるいは安保条約、米韓条約のなにがどうのと、そういうよりも、どうして朝鮮半島の武力衝突を避けるかということがすべての話の中心である。アメリカも望んでいないし、日本も望んでいない。南北朝鮮だって望んでいないし、関係諸国も望んでいないでしょう。世界がだれもが望んでいない。朝鮮半島に何らかの誤算に基づいてそういうふうな不幸なことが起こらないように、それを防ぐ道は何かということが話の中心である。それを、いかにも何かこう、日米の軍事提携を強化する話が中心であったように言うことは、これは全く事実と相違する。われわれ、アメリカ大統領も私も願っておるものは、朝鮮半島の平和と安定である。両方の安全保障体制を強化するためにどうしたらいいという話は、一つも出ていない、どうしてそういう不幸な事態を防ぐかということだけが話のすべてであることを明らかにしておきます。
  110. 正森成二

    ○正森委員 いま三木総理から、有名な、対馬と釜山は非常に近いんだという言葉を想起させるような御答弁がありまして、影響がないと言えるだろうか、こういうぐあいにおっしゃいました。しかし、もう少し別のことを聞いてから、最後にその問題に触れたいと私は思いますが、影響があるとかないとかいうことと、韓国の安全というのが回り回って日本の安全に緊要、必要であるというのとは違うんです。影響があるというのは、風が吹いてもいろんな意味で影響があります。影響があるというのと、いよいよ事前協議でイエスと言うほどの場合とは違うんです。ですから、私はその問題について申し上げますが、その前に、三木総理が、事前協議とか何とかそんなことは一切ないんですとおっしゃいますから、少なくともそういうことは十分意識なさって交渉をなさったはずである実務の責任者といいますか、政治家でもある宮澤外務大臣に伺いたいと思います。  宮澤外務大臣は、まさか事前協議の問題は何も考えなくてもいい問題だというようなお考えで交渉はなさっておられないと思います。そこで宮澤外務大臣に伺いたいと思いますが、八月十三日に米下院議員団が来日されました。韓国を訪問してから後来られたのでございます。その方々の、韓国に武力紛争が起きた場合、在日米軍が日本の基地を使用することを日本国民はどう考えるのかという質問に対してお答えをなさっておられます。時間の関係で私の方から申し上げますと、そのときのお答えは、北が南下してきたときと、韓国内でちょっとした紛争が起きた場合とでは日本国民の反応は異なろう、こう述べられて、日本国民の反応が異なるというのは、政府の対応が異なるという意味に受け取られてもやむを得ない。ちょっとした紛争とは、半島以外の韓国領の島、西海岸にございますそういう島での紛争などを指すという意味のことを言われたんだというように、これは一紙だけではありません、多くの新聞が報道しております。そうなりますと、これは一定の意味を持ってまいると思いますが、外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  111. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 つまり、朝鮮半島に紛争が起こりましたときに事前協議の問題がどうなるかという質問に対して、それは、どういう事態が起こり、それがわが国の平和と安全にどのような関係があるかという具体的な場合に即して考えなければならない、イエスもありノーもあるであろう、総理大臣が以前からおっしゃっていらっしゃることを申し述べたわけでございます。
  112. 正森成二

    ○正森委員 いまの御答弁は、真正面からの答弁ではないと私は思うのです。それは、なるほどイエスもあればノーもあるというように言うたのでございますと言えるかもしれませんけれども、私が指摘しました各紙に載っておる内容を大臣は否定はなさらなかった。そうしますと、大臣のおっしゃっておるのは、韓国領土の西海岸に小さな島が五つか六つありますけれども、そこら辺で何かトラブルが起こった場合は別だけれども、陸軍部隊が南下してくるという場合は受け取り方が違う。つまり、イエスだと言うことを示唆されたものであるということになりますと、朝鮮半島本島そのもので事が起こった場合には、やはり事前協議でイエスと言うことを相当はっきりした形でおっしゃったものと受け取らざるを得ないのじゃないか、こう思うのですね。  外務大臣がそういう御答弁をなさるということを受けまして、シュレジンジャー氏が二十七、八とソウルへ参りました。ソウルへ行かれまして、新聞記者会見をしております。ここに原文がございますけれども、私は英語が余りできませんので、訳が間違っておったら、堪能な宮澤外務大臣が御指摘をいただいたらいいと思いますけれども、その途中のところで、韓国で紛争が起こった場合に、軍事的に日本との関係はどうだという意味の質問がございまして、その質問に対して、日本は一定の非直接的な参加だ、それは日本の基地組織あるいは基地機構は、もちろん朝鮮に対するいかなる攻撃に対しても現地のわが軍、米軍ですね、これを援護、サポートすることにおいて関係を持つ、こういうぐあいに言い切っているのですね。そうしますと、シュレジンジャー氏は、日本軍が直接参加するということまでは考えておらないけれども、わが軍に対する攻撃があれば、当然に日本の基地機構というものが、韓国におけるわが軍をサポートしてくれるためにそういう働きをするのだということを言い切っているじゃありませんか。そのことと、あなたが八月十三日に米議員団にわざわざ言明なさったことは、ぴたりと符合するじゃありませんか。これこそ、いわゆる韓国条項の中に「韓国の安全は」ということを入れた法律的な意味になる。米側はそのことを百も承知していたのではないのですか。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 アメリカのシュレジンジャ一国防長官は、たしかその足で東京に来られまして、私もいろいろ話をいたしました。私にシュレジンジャー氏が言われることは、韓国に思わざる事態が起こった場合に、わが国から兵たんであるとか補給であるとかそういうことは、自分の方としては期待してもいいであろうという意味のことを申しますとともに、いわゆる事前協議の対象になるということになりますと、直接発進というようなことになるわけでございますけれども、そのような事態は、自分は普通の常識では考えていないということを申しております。  わが国のとるべき立場は、もとよりわが国独自の方針に従って決すべきでございますけれども、いまお述べになりましたシュレジンジャー氏すらが、もしそういうことが起こったときに、わが国に期待するものは、補給あるいは兵たん的な機能であるということを申しております点から見まして、事前協議という問題にそれはかかわってこないというふうに解しておくべきであろうと思います。
  114. 正森成二

    ○正森委員 宮澤外務大臣のいまの御答弁によりますと、シュレジンジャー氏はハト派であって、八月十三日の宮澤外務大臣の米議員団への答弁は逆にタカ派であるというようにとられかねないのですね。向こうが言いもしないことをこっちが先に言っておる。  しかし、宮澤外務大臣に伺いますが、シュレジンジャー氏はあなたに何とおっしゃったか知りませんけれども、それほど甘い政治家ではないんじゃないでしょうか。私はここにパシフィック・スターズ・アンド・ストライプスの八月三十日付を持っております。その八月三十日付によりますと、在韓米軍というのは朝鮮の九日間戦争、こういう構想を打ち出しておるのですね。これは八月二十八日に発言されたものであります。それを見ますと、在韓米軍の第一統合軍団の司令官のホリングワース、こういう人が、「北朝鮮からの攻撃は、火力と、沖繩からのB52の出撃により重みを加えられた空軍の支援とによって、九日間で撃破することができる。」こう言うておるのですね。そしてその中で、「一時間あたり三十波で二十四時間じゅう飛ばすことができる沖繩基地のB52によって支援されるだろう。」こういう九日間戦争の概念について、シュレジンジャー氏は「私に一〇〇%同意した」こういうように言うておるのですね。そうしますと、在日米軍というのは、シュレジンジャー氏やあるいはフォード氏などがたびたび言明しておりますように、ベトナム戦争の経験にかんがみて、ただいたずらに敵に対応するというのではなしに、敵の心臓部に決定的な攻撃を加えるのだというように戦略転換したことが知られておりますけれども、そういう考え方から、攻撃がもしあった場合には、どちらが先にしかけたかは別にしまして、その場合には、沖繩からのB52の一時間三十波にも上るような猛烈な爆撃を予定した上での戦略を立てておる、しかもそれはシュレジンジャー氏が一〇〇%同意をしておる、こういうことを言い切っておるではありませんか。これは結局事前協議においてわが国がノーと言うようなことはあり得ないという政治的な確信を持っておるから、こういう戦略を立てて、しかもそれを公言しているんじゃないですか。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が米国の議員団に対してかくかくの話をしたということにつきまして、それが非常にタカ派的ではないかとおっしゃったように思いますが、私の申しましたことは、米国の議員は大ざっぱでございますから、韓国に戦争が起こったときにとか、北が出てきたときにとかいう、そういう大ざっぱなお話としてはこの話には答えられないのであって、具体的な対応において、わが国が国益を考えて決断をいたしますということを申したに尽きるわけでございます。それはハトとかタカということに関係なかろうと思います。  それからいまのスターズ・アンド・ストライプスのことでございますが、私、そのことをよく存じませんが、先ほどシュレジンジャー氏が私にこういうことを申したということを御紹介いたしましたのは、実は私だけがそれを聞いたというのではございませんで、その後幾つかの機会にシュレジンジャー氏がそういうことを言っておられるということを私は確認をしておりますので、あえて御紹介をいたしました。米国の国防の最高責任者の話でございますから、しかも私は直接に聞いておりますので、ほかにどのような報道、推測がございましょうとも、私は私の聞きましたことが間違っていないというふうに考えます。
  116. 正森成二

    ○正森委員 外務大臣のそういう御答弁でございますが、しかし、同じシュレジンジャー氏が韓国において責任ある人々にはこう言っておる。しかも、そこがまさに紛争が起こりそうなところですから、それはやはり注目しなければいけないんじゃなかろうかというように思うのですね。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕 しかも、ホリングワース氏がシュレジンジャーに言った短期決戦の戦略というのは、これは八月二十八日に突如として言い出されたものではないのです。私はここに六月二十四日付のやはりスターズ・アンド・ストライプス紙を持っております。そこでホリングワース氏はまずそういう戦略を打ち出したのですね。そしてその中で、これは米軍がソウルよりも南に下がっておるというようなことでは大変だ、だから米軍は休戦の境界線の近くへまで出しておく、そして絶対にソウルを失陥するというようなことはしない、その失陥をしないためには、大量の航空兵力によって敵をたたく必要があるんだ、それはB52の大量爆撃を含む通常火力の非常に大きな爆撃である、こういうことを言いまして、そういう戦略に対して、朴大統領は熱狂的に支持した、こう言うておるのですね。それを今度八月二十八日にシュレジンジャー氏が来たときに言いまして、シュレジンジャー氏が、私は一〇〇%同意だ、こう言うたのです。  しかもそれだけじゃないのです。坂田防衛庁長官、私はあなたに伺いたいと思いますが、あなたは八月二十八、二十九日、シュレジンジャー氏が来られて会談をなさったと思うのですね。そのときにどういうお話をなさったかということについては、もちろん私たちは局外者ですからわかりませんけれども、あなたが神谷教授にお話しになりました、どういう話をしたかという責任ある新聞に載っておるものを読みましても、韓国内の政情について主に話したのではなしに、軍事情勢について話したんだ。防衛庁長官ですからしかるべきことだと思うのですが、軍事情勢について話した、こういうように言うておられるのですね。ところが、あなたとお話しになって、シュレジンジャー氏は八月三十日に羽田を立ちまして、九月一日にアソドリュース空港に着かれました。そのアンドリュース空港でまた発言しているんです。これは九月三日のスターズ・アンド・ストライプス紙に載っております。その中でやはり、米軍の統合参謀本部は韓国において新しい戦略を採用したのだ、それは大量の空軍を使って敵を短期間に制滅するのだという意味のことを言い、そうして一番最後に、きょうは日本が第二次大戦で降伏をしてからちょうど三十周年になるけれども、日本とアメリカとの関係がいままで以上にいい時期はなかった、こう言っているんです。ということは、六月に言い、八月に言い、坂田さんと会って、坂田さんは軍事情勢を話したと言うんですから、そのあとで九月一日に帰ってきて真っ先にそのことを言って、しかも日米間がいまほどいいことはなかった、こう言っておるところを見れば、あなたはこういう戦略についてやはりごもっともだというように思われたんじゃないですか。あなたが責任ある防衛庁長官として、シュレジンジャー氏あるいはホリングワース氏が韓国でそういうことを言うているということを御存じなかったとは私は言えないと思うんですね。私は調べましたけれども、外務省はもちろん韓国に大使館がありますが、防衛庁も二名武官を韓国に駐在しておられますね。そうしてあなたはかつてこの席でも、弱いウサギは耳が長いというようなことを言って、いかに情報が大事かということで、こういうかっこうをなさいましたね。ですから、そういう情報も知らないで会談をなさるというようなことはあり得ないと思うのですね。しかもあなたは、基地の安定的使用というのが大事だ、何遍も何遍も言っておられる。その基地の安定的使用というのは、やはりシュレジンジャー氏に九月一日にアンドリュース空港でこういうことを言わせるようなそういう内容のものがあったんじゃないですか。
  117. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 シュレジンジャー長官とは、八月の二十九日二時間ばかりお会いしました。私、英語があまりできませんので、結局往復でございますから、内容は一時間でございます。  かねがね私が申しておりました日米防衛協力の問題、年一回原則として責任者同士が会うということは必要じゃないだろうかということで、これは合意をいたしました。それから、従来そういう問題について話し合う場がないというのもおかしいことであって、やはり日米安保条約が本当に有効に働くためには、防衛協力についていろいろ話し合う場がなければならない、そういう機関が新しく設けられてしかるべきじゃないだろうかという提案をいたしました。この点も了承いたしました。  その前段としまして、韓国を含む朝鮮半島の軍事情勢、それから対アジア戦略、特にポストベトナムからのアジア情勢について、彼から非常に詳細にお話がございました。軍事的な問題と申しますと、とにかくいま北朝鮮と韓国との間に強力な軍事的対峙がある、それから小規模な衝突も起こっておる、しかし、米軍が駐留しておる限りバランスはとれておる、しかも通常兵力をもってこのバランスはとれておる、しかし、中国もソ連もともにここで戦争が起こるということを望んでおらない、もちろんアメリカも望んでおらない、むしろアメリカの駐留ということが朝鮮半島の平和維持に必要であるというふうに考えておる、こういう意味における軍事情勢の話はいたしました。私もやはりここに戦争が起こっては困るので、その意味において、現状変更が起こらない、軍事的なアンバランスがここで起こるというようなことのないことが必要だと私は思うということを言ったわけでございます。  それから私、率直に私の防衛についての考え方、それから四次防の進捗状況、そしてオイルショックによってなかなかこれが来年度で四次防を達成しなくちゃならないのだけれども、十分それを果たせ得ないということ、それからポスト四次防についてまだいませっかく努力をしておるところだけれども、しかし正面装備だけじゃなく、やはり抗たん性とかあるいは支援体制とかいうような部面についてやりたい、重点を置いて考えていきたいというお話をいたしました。そうしたら、どうもロジスティックベース、つまり補給、そういう面が弱いんですねと、こういうような指摘はいたしました。われわれは日本の安全にとってやはりその点が不十分だと思うので、この点はやはり満たさなきゃいかぬというようなことで、二時間——英語は余りよく話せませんでしたけれども、通訳が非常にうまい人でございましたので、実に和気あいあいに話したのです。和気あいあいに話したことを、恐らくアンドリュース空港に立ちまして、日米関係が何かスムーズにいっているな、ことにポストベトナムのときアメリカ軍隊帰れということがあちこちの国々で言われた、ところが日本ではそういうようなことじゃなくて、非常に静かに和気あいあいに話ができた。それに、やはりいままでとは違っているなとあるいは思ったかもしれません。それは彼に聞いてみなくちゃわかりませんけれども……。そういうことで、アンドリュース空港の記者会見になったんじゃないかというふうに私は思っております。
  118. 正森成二

    ○正森委員 いまお話を伺っておりますと、和気あいあいとお話しした。何か、シュレジンジャー氏がアンドリュース空港で言いました三十年間これほどいい関係はなかったというのが、もっぱら坂田防衛庁長官の玲瀧玉のごとき人柄による個人的な印象から言われておるかのように、そういう答弁ですけれども、あなたが玲瀧玉のごとき人柄であろうということについて私はあえて異議は申しません。しかし、政治の世界というものはそれほど、人柄がいいなということで日米関係が三十年間いまほどいいときはないというようなことを言うほどのことはないと思うのですね。やはり会談の内容全体から受ける政治問題についての印象がシュレジンジャー氏にそういう発言をさせた、こういうように見なければいかぬと思うのです。  そこで、いま非常に御丁寧に御答弁になりましたけれども、しかし肝心の私の——一体坂田防衛庁長官は、六月二十四日にスターズ・アンド・ストライプス紙でも言われておるという、それから八月二十八日に日本へ来る直前にシュレジンジャー氏が韓国でホリングワース氏と話をしておるという内容、そういうのはいままでも、あるいは二十九日の会談のときにも全然御存じがなかったのでしょうか。私は、もし御存じがなかったとすれば、わが国防衛庁長官として非常に重大な問題だと思うのです。何のために自衛隊は情報を収集しているのですか。情報といったって、他国にスパイを送り込むというような、こんなんじゃないですよ。ちゃんと正常に新聞を読んでおれば、わが国にやってくるシュレジンジャー氏が当該韓国で一体何を言うておるかということは最も関心のあるはずであります。私どもがここで質問することでさえ、防衛庁の役人が何を質問されますかと言って聞きに来ます。まして、シュレジンジャー氏が当該韓国でどういうことを言ってからこっちに来るかというようなことは、それこそ耳をこうしなければならないことじゃないですか。それをあなたは全然知らないで、和気あいあいとやっていたのですか。本当に事前協議でいつもかもイエスと言うのじゃないと言うのなら、B52の一時間三十波、二十四時間連続のそういう支援を受けて九日間で戦争を終結するんだというようなことを、わが国に何らの断りもなしに戦略として決めてしまう、しかも、申し上げますが、六月二十四日のスターズ・アンド・ストライプスによれば、これこそアメリカ国民と議会が喜んで支持する外国での戦争の唯一の形態である、こう言っているのです。それ以外の戦争形態はないと言っているのです。大困りじゃないですか。韓国で何か起これば、これ以外の戦争形態はない。そうすると、必ず沖繩からB52が出ていって、じゃんじゃんやる。明白な戦闘作戦行動でしょう。重大な問題を一度ならず二度まで言っておる。それに対して、防衛庁長官がチェックをしない、あなたはそう言っておりますけれども、日本としてはそこまで言いませんよ、そんなことで戦略をお立てになったら在韓米軍が困ることがありますよ、それを言うのが国益じゃないですか。それを言いもしないで、和気あいあいとやって、三十年間日米がこんないい関係はなかったと九月一日にアンドリュース空港で言わすようでは、防衛庁長官わが国の国益を守ったと言えますか。そんな物騒な状態わが国は置かれているのですか。独立国なら、あらかじめ事前に了承を与えているのでなければ、こういうことを言ってもらっては困ると言うはずじゃないですか。いまからでも遅くない。二十九日に言わなかったのなら、こういう報道があるけれどもここまで日本は言うておりませんよとくぎを刺す意思があるかどうか伺いたい。
  119. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 スターズ・アンド・ストライプスですか、それは私、読んでおりません。しかしながら、いろいろな情報、シュレジンジャーがどういうようなことを言ったか、書いておるか、そういうことは私なりに、日本の安全を踏まえて十分に検討いたしております。その上におきまして、日米安保条約というものがどういうふうに有効に働かなければならないかということについて、私どもとしては検討いたしておるわけでございまして、御心配のことはございません。
  120. 正森成二

    ○正森委員 私はいまの答弁を聞きまして、わが国国民はこれは安心できないな、肝心の国防長官がこういう重大なことを一度ならず二度発言して、坂田防衛庁長官と会ってから、前ほどは露骨じゃないけれども似たようなことを言うておるのに、これを読んだことがありませんと、そんなことでよく防衛庁長官がお務まりになるなという気が、非常に失礼ですが、してまいりました。  そこで、私は坂田防衛庁長官に伺いたいのですが、二階に上がってはしごを取られるというのは、日本語ではどういう意味でしょうか。これは本来文部大臣に聞くべきことかもしれませんが、坂田防衛庁長官は前に令名さくさくたる文部大臣でございまして、私はかねがね自民党内における文武両道の達人ではないか、そういうぐあいに思っておりますので、あなたの庁に関係のあることですから、お答えください。
  121. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 これは難問だと思うのですが、二階に上がってはしごを取られればおりられないということだと思います。
  122. 正森成二

    ○正森委員 まことに御名答だと思うのですね。二階に上がってはしごを取られるとおりられない。つまり、おりられないということは、その人間にとってはもう非常に困るということでしょうね。  ところで、私がなぜ永井文部大臣に伺わないで坂田防衛庁長官に伺ったかといいますと、あなたのところの久保次官がそう言っているのですね。久保次官が九月十三日に防衛庁で開かれた隊友会主催のゼミナーで講演しておるのです。その中で、米韓相互防衛条約があっても日米安保条約がなければ、米軍は二階に上がってはしごを取られたようなものだと、こう言っているのです。どうです。防衛事務次官がこういうことを言う。つまり、米韓条約があったって安保条約がなければ非常に困るんだ、役に立たない、こういうことをちゃんと言っているじゃないですか。防衛事務次官がこういうことを言うというのは、しかも講演の中で公言するというのは、言っても大丈夫なんだ、これが総理以下のわが国政府の態度なんだ、こういうことが広く官僚にまでしみ渡っているからこういうことを言うのでしょう。  スターズ・アンド・ストライプスのシュレジンジャー氏の発言といい、若干薄められましたが宮澤外務大臣の九月十三日の言明といい、そして、気になる三木総理のフォード大統領との個人会談といい、日米共同新聞発表が首脳会談で修正されて、最終的にああいう形のものになったことといい、それらをすべて貫いている一条の琴線は何かといえば、結局韓国で何か起これば——西海岸の島は別だけれども、半島の正面で何か起これば、米軍はどうぞ行ってもらってもいいんだ、これが日本政府の態度だということじゃないですか。すべての問題はそのことを示しているのじゃないですか。しかもアメリカは、これがアメリカ国民と議会が喜んで支持する外国での戦争の唯一の形態であるということを言っておりますね。ですから、いまからでも遅くない、この問題について米側に問い合わせて、わが国の真意というものを説明する、少なくともそれだけはなさる気持ちはありますか。
  123. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 正森君の話を、話といって御質問を承っておって、何かこうアメリカというものは常に何か日本に押しつける、私がフォード大統領と会えば何か重荷を背負わされると、私はそういう考え方は日米間に捨てなければならぬ時期が来ておると思いますね。今度の首脳会談をして私は非常に強く感じたことは、アメリカは日本国民の意思に反して物を押しつけようという考えは全然ないということです。これからの問題を考えたときに、いろいろな問題を日本を除いては——日米間のことはもう当然のことですが、世界の問題についても日本を除いてはなかなか解決できない。お互いにやはり協力してこの困難な世界の情勢に取り組みたいということがアメリカの真意であって、何かこう被害妄想のような感じを持つことは日米関係のために私は役立たない。だから、民社党の塚本書記長ですか、江田、社会党の方々も行かれていろいろな感想を漏らしておるけれども、一つもそういう感想はありませんね。だから、それを正森君はいつも前のようなそういう古い時代のことを頭に置いて、常にアメリカはもう日本人のいやがることを自分の、自国の利益のために押しつけるんだという観念は、私は捨てなければならぬ。そうでないのですよ。一つも押しつけない。これはもう私のこの首脳会談をして驚いたことは、私がアメリカからも、これをぜひ三木総理やってくれと言われたことはありませんよ。一つもない。やはり何とかして——いろいろ経済問題でも、これは世界的に世界各国が苦悩しているのですよ。こういうふうな問題。朝鮮半島の問題にしても、アメリカだってあそこに戦争が起こったら大変ですよ。それはわかるでしょう。日本だってあそこに戦争が起こったらどんな影響を受けるのですか。恐ろしいことですよ。プエブロ事件が起こったときに、そのときに日本国民が、私が自動車に乗ったりすると、どうなるんですか、朝鮮は。はだで感じていますよ。ベトナムとは違うですね。だから、みんな日本人の願っておるものは朝鮮半島の平和と安定ですよ。二人が話ししたこともこれが中心ですよ。  どうか野党の各位が従来の日米関係の惰性で考えないで、新しい日米関係に入るために、何かこう被害者意識というものを捨ててもらいたい。そうですよ。これはそういうふうな時期になっているのですよ。私がついこの間アメリカの首脳会談を終えた実感ですよ。それを持たないと日米関係というものはこれからうまくいかないですね。そういうものでないのですよ。  そういうことで、いま正森君のいろいろ御指摘になった発言は、何かこう言ったから日本に対して何かするんだ、皆そこから出発されているでしょう。そこにやはり発想の転換が必要であるということを私はお願いをしておきます。
  124. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いま韓国やあるいは朝鮮半島で事が起こりますと、日本の安全にとって非常に影響を及ぼしてくる。これもそうでございますが、日本でもし混乱が起こったりあるいは戦争が起こったりあるいは武力侵略が行われたりとなったら、これまたアジアにとってもあるいは朝鮮半島にとっても影響があるわけです。その意味においてやはり日本の安全というのはアジアの平和にとって非常に大事なかなめにあるという認識は、これはアメリカにあると思うのです。その意味合いにおきまして、やはり日本とアメリカとの安保条約というもので平和が維持されておるということは、朝鮮半島の安定のためにも、アジアの平和のためにも必要なことだ。その意味合いにおいてやはり日米安保条約というものの意味というものを言ったわけで、二階のはしごを引きおろされた話の、たとえ話はたとえ話でございますけれども、この日米安保条約とそれから米韓条約と、これは両方の意味がやはりあるというふうに御理解いただきたいと思います。  それから、日米関係の新しい始まりということをあえて言うといたしますると、私はやはり、いま三木総理もおっしゃいましたが、いままでどちらかというと、ベトナム戦争を続けておった間にはなかなかこういう関係はやりにくかったと思うのですが、先ほどお話しのごとく、アメリカの意思を強力に押しつけていくという態度が、やはりポストベトナムを契機として変わってきつつある。まあ来年大統領選挙もあることもございましょうけれども、ここでアジアというものを見直していこう、アプローチを考え直していこう、あるいは日本の行き方を見守りたいという、そういう気持ちは確かに変化が出てきているんじゃないか、そういうふうに思いますので、その意味において、たとえば野党の方からも本委員会において、非常に防衛努力を、GNPの二%とか三%とか要求されるんじゃないか、今度シュレジンジャー会談をやるとそうなるぞというような御注意を受けたわけでございますが、そういうような意思の押しつけというものは全くなかったということ、これはひとつよく御了承を賜りたいというふうに思います。
  125. 正森成二

    ○正森委員 御懇切な御答弁をいただいてありがたい点はあるのですが、残り時間が少なくなってまいりましたので簡潔にお願いしたいと思います。  それで、いま総理並びに防衛庁長官からも御答弁がありましたが、何か被害者意識で押しつけられた、そういうものではないと言われておりますが、私の口から被害者意識で押しつけられたというようなことは一遍も言うてないのです。総理がそういうようにおとりになっただけなんです。私があえて言いますと、国民にとってはとんでもないことだと思っていることを、現在の三木内閣はアメリカと同じ見解を持って、そして喜んでやっておるという場合だってあるわけですから、だからその場合には被害者意識も持たないのは当然だし、押しつけとも感じないというのは当然の場合があり得るわけであります。  時間がなくなりましたので次の問題にちょっと移らせていただきますが、共同声明の第四項を見ますと、核抑止力の問題が書かれております。私は、いままでの日米首脳のすべての共同声明あるいは共同新聞発表、それを見させていただきましたけれども、これほどはっきりと「米国の核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行うものであることを認識した。」それから「核兵力であれ通常兵力であれ、」何々するというように書かれたのはもう初めてなんですね。しかも、私がつかんでおります情報では、これまた当初の草案にはなかったんじゃないですか。あるいはあったのかもしれません。しかしその後で、総理は「日本は同条約に基づく義務を引続き履行してゆく旨述べた。」と、こう書いてあるだけなんですね。総理、八月六日というのはどういう日か御存じですか。——ちょっと首をかしげられましたから御存じないかもしれませんが、八月六日というのはわが国に広島で初めて原子爆弾が破裂した日なんです。この日に共同声明をつくる場合に、いままでのすべての共同声明、共同新聞発表になかった核抑止力とか核兵力というような言葉がぎらぎらと入っておる場合に、わが国の首脳ならば、きょうはどういう日であるかということを考えて、国会でも言明しておられる非核三原則を含むわが国政府の見解を述べられて、そして当然ここに記入なさるべきじゃないですか。そうしないで、ただ単に「日本は同条約に基づく義務を引続き履行してゆく旨述べた。」ということになれば、義務ということだけの条文解釈ですから、言えば、事前協議について、核兵器の持ち込みについてもイエスもノーもあるというのが総理の一貫したたてまえですから、だからイエスもあるんだなとアメリカはとるでしょう。どうしてこの千載一遇の機会に、向こうがわざわざそういうこと、あるいはこちらが望んだかもしれませんが、核抑止力とか、核兵器の攻撃でも守ると言うておる場合に、日本はいやいやこういう原則があるのですよということを書き入れなかったのですか。
  126. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今度の日米首脳会談というものは未来に目を向けようという会談で、パールハーバーとか広島の原爆投下とか、そういう過去というものに対していろいろこの問題というものをそこで取り上げるというのでなくして、これからの日米関係、これを話し合うということが日米会談の性格であったということでございます。  またその核の問題については、これはもういままで、共同声明の中にもそういう文句は出ておると私は思いますが、そのものと同じかどうかは別として、これはもうわれわれが常に言っておるわけであります。日本がこういう核に対しての脅威を受けるとか脅迫を受けるというような場合に、日本は、日米安保条約によって、核を持たないという決意の背後には、やはりアメリカの核抑止力というものも背景にあるということでございます。そういうことで、これはまた、日本が通常兵器とか核兵器によって攻撃を受けたときに、アメリカはいかなる種類の攻撃であっても日本を守るという責任はもう繰り返し繰り返し言っておるわけで、四月でありましたか、宮澤外務大臣とキッシンジャー国務長官とが話し合ったときもそういうことを話し合って、何も目新らしいことではないわけで、常に言っておることでございます。特に今度の首脳会談によって新たなることをということではない、常に言っておることであります。  また、広島の原爆投下とかパールハーバーとか、そういう問題に触れなかったのは、未来に目を向けた日米関係をつくり上げるということが日米会談の性格であったということから来たことでございます。
  127. 正森成二

    ○正森委員 宮澤外務大臣に伺いたいと思いますが、宮澤外務大臣は昭和三十一年ごろに「東京−ワシントンの密談」という著書をあらわしておられますね。私は内容を読ましていただきまして、才気あふれる文章であるというように敬服いたしました。しかも、この「東京−ワシントンの密談」という題名は、なお今日的意義を持っておるというように私は非常に敬服したわけです。  その中の三百七ページを見ますと、宮澤外務大臣は、こういう非常に傾聴すべき見解を述べておられる。「このように抽象的ではあるがしかし十分に吟味されてできた声明を読む場合、その中に“何が書いてあるか”ということと同じくらい、“何が書いてないか”に注意しなければならぬ」これは宮澤さんの本に書いてあるのです。  宮澤さんは池田・ロバートソン会談にも終始参加されました。また吉田総理の訪米で共同声明をおつくりになるときにも非常に陰の働きをなさったことが書いてあります。時間がありませんから多くは申しません。  あなたがまさにおっしゃっているように、この第四項で、非核三原則なり日本国民の核兵器についての感情が述べられていないという、まさに書いていないということに大きな意味があるのじゃないんですか。
  128. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 二十年ほど前の著書でございます。御引用いただきまして恐縮に思いますが、いまおっしゃっていらっしゃいました部分は、先ほど総理が言われましたように、私が四月にキッシンジャー国務長官と確認をいたしました文言そのままでございます。  確かに、過去におきましても、たとえば佐藤・ジョンソン共同声明、「いかなる武力攻撃に対しても、」という表現はございますけれども、核ということを申しましたのはこのような共同声明では過去においてはなかったかと思いますが、この四月に私がキッシンジャー国務長官とこういう話をいたしましたことの背景は、正森委員がよく御承知のように、わが国が核拡散条約を国会に御承認を求めるということが背景であったわけでございまして、したがいまして、仰せられるところとはむしろある意味で逆に、わが国が非核三原則を貫いていく、その一環としての核拡散防止条約の御承認を求める、そういうことの関連から出てまいりましたことは御記憶であろうと思います。
  129. 正森成二

    ○正森委員 最後に一問だけお願い申し上げます。  三木総理に、先ほどお触れになりました対馬と釜山というのが三十海里だ、天気のいい日には見えるのだ、これで関係がないと言えるかということをおっしゃいましたが、宮澤外務大臣は、七月に東京の外人記者クラブでは、その関係のことを一衣帯水という言葉で御表現をなさっておられます。私はそれを拝見いたしました。つまり総理のおっしゃりたいのも、結局日本と韓国とは、特に対馬と釜山などは一衣帯水だ、そういうところで何か起こって関係がないと言えるか、こういう御趣旨ですね、違いますか。
  130. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これははだで感ずる実感を言ったのです。そうでしょう。朝鮮半島の目と鼻の先のようなところにいろいろな武力衝突が起これば、日本の安全に影響がないとだれが考えるでしょうか。皆はだで感ずる実感を私は言っておるわけであります。
  131. 正森成二

    ○正森委員 私は、そういう御見解というのが、実は新しい考えではなしに、非常に古くからのわが国考え方であるということを指摘したいと思います。  私がここに手元に持っておりますのは、明二十七年十月十九日の貴族院の速記録であります。日清戦争が終わった直後です。もう一枚は、明治三十七年三月二十三日の衆議院の議事録であります。  ここで、明治二十七年には内閣総理大臣の伯爵伊藤博文さんが演説をしております。その中でこう言っているのです。「朝鮮我と僅に一葦帯水を隔つ其國の治亂盛衰我に於て緊切の痛癢を感ずる最も深し然るに其國力微弱にして國勢振はす政治も亦從て其宜を失し動もすれば内亂を釀し上下相訌くに至つて而して政府の力遂に之を鎭壓すること能はず」「我帝國の権利利益を保護せんと欲せば断じて其獨立を輩固ならしめ以て東洋大局平和の基礎たらしめざるべからず、」これが伊藤博文氏の演説であります。  明治三十七年の外務大臣男爵小村壽太郎君の演説は、「御承知の如く韓國の獨立及領土保全二事は帝國の康寧と安全の爲緊要缺くべからざる事でございまして實に我帝國博來の國是でございます」、こう言っております。  つまり、三木内閣が現在とっておる政策というのは、日清、日露から韓国併合に至り、そしてわが国をあの太平洋戦争に導いた、そういう考えと同じなんだ、それを新しい装いを講じているだけなんだということを申し上げて、私の質問は、時間が参りましたから終わらしていただきたいと思います。
  132. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはもう全然いろいろな条件を無視した、これは余りにも飛躍はなはだしい議論でありまして、明治二十何年の速記録で、もう各国も日本状態も変化をしておるときにそれを言われることは、まことに承服いたしかねる。それは韓国との関係が重大なことは、これは地理的な条件ですから、両方とも引っ越しはできぬのですから、地理的な条件がそうするわけでありますから、その重要だということについては、明治もいまも変わりはないということであります。その言われた内容は、もうすっかり時代は変わっておるということです。
  133. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  午後二時二十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時四十分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  134. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。細谷治嘉君。
  135. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、今回の補正予算について、主として地方財政対策の問題について御質問をしたいと思います。  最初に三木総理にお尋ねいたしたいのでありますけれども、十月十三日の新聞紙上で「三木内閣支持二三%に急落」、こういう全国世論調査の結果が発表されております。     〔委員長退席、湊委員長代理着席〕 私はこの世論調査を拝見いたしまして、歴代の内閣の支持率というものは、ある程度波を打って高低があったわけでございますけれども、三木内閣に限り支持率は、四十九年十二月の四七%から一直線にかなりの勾配を持って下落いたしまして、五十年の九月になりますと二三%。ほぼ一年後でありますけれども、そういう結果になっております。逆に支持しないというのが、内閣発足当時は一二%でございましたけれども、これもまた直線的に大きくなっておりまして、五十年九月には三三%、こういう状態であります。内閣をつくってから一年間、支持率は直線で下がってくる、不支持の率が直線で上がっていくということは、とりもなおさず、三木内閣は何もやっておらない、こういうことを示しておるのではないかと思います。新聞によりますと、物価対策にしても、公共料金の値上げの問題にいたしましても、不況対策にいたしましても、何らなすところがない、これがこの世論調査の結果だ、こういうふうに新聞では報道しております。これについて総理、どういうふうに受けとめていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  136. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、物価不況対策に対しても、物価のごときも狂乱物価の後を受けて鎮静に向かいつつある、また不況対策についても第一次、第二次、第三次と、まあ第四次の不況対策をとって、現在の考えられる経済政策としては最善を尽くしておると考えております。
  137. 細谷治嘉

    細谷委員 総理としては最善を尽くしておると考える、こういうことでございますけれども、こういう支持率の推移、こういうものは国民としても重大な問題として受け取らなければなりませんし、総理みずからもやはり重大な問題として受け取っていただかなければならぬ、こう思います。  そこで私は、こういうような世論調査になったことは、やはり総理の言われることは、抽象的にはうなずけるものがあるけれども、具体的なものが何もない。言葉をかえて言いますと、言葉はあるけれども実行がない、こういうところに根本の原因があると思うのでありますけれども、いかがですか。
  138. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そうは思わないのであります。いままでやっておることは、いま物価不況対策についても対策を講じておりますし、また、独禁法は残念ながら次の課題になるわけですけれども、政治資金規正法であるとか、公職選挙法の改正であるとか、いままでかつてこういう大改革はやったことはないのですからね。こういう改革を行って、なるべく政治に対して金のかからないような選挙をやり、また政治資金というものが節度を持って、国民の疑惑を受けないようにしようということで、私は少しやり過ぎるという非難をも受けておるぐらいです。いろいろなことを一遍にやり過ぎるという非難を受けておるぐらいであって、そして短期間としてはなかなかやはり非常に実行をいたしておる。こういうことが国民によく理解されてない点については私も反省はいたします。だけれども、何にもこう、有言不実行であるという非難は、私は承服をいたさないのでございます。
  139. 細谷治嘉

    細谷委員 この問題について、これ以上物を言う気持ちはございませんけれども、ただ、いまの総理の言葉だけでは、これではやはり、本当の意味の内閣の首班としての反省といいますか、そういうものが足らないのではないか、この点だけを申し上、げておきたいと思います。  ところで、いま私が申し上げました新聞の報道後、十月十五日に首相官邸で政府の主催で全国の知事会議が開かれたわけであります。この全国知事会議において総理は、新聞の報道によりますと、次のようなことを述べられております。超過負担の解消、地方債における政府資金の充実などに努めてきたが、今後とも必要な地方財源の確保、国庫補助負担制度の改善に努力する。二番目には、地方公共団体が自主性と責任ある行政を運営するため、国と地方公共団体との事務配分、財源配分について改善を図ることが緊要であるとの判断に立って実現に努力をする。こういうふうに述べられております。  今後とも必要な地方財源の確保、国庫補助負担制度あるいは事務配分、財源配分等について、緊要であるとの判断に立って実現に努力するという政治の基本姿勢について、総理考え方、私はそのとおりであろうと思います。ところが、こういうことを総理が表明をしておりながら、知事会の代表がその後幾つかに分かれて総理なり関係大臣に質問をいたしておるわけでございますけれども、たとえば知事会から地方交付税率の引き上げをぜひしていただきたいという質問に対しては、そういうことは考えておりません。それから地方財政を圧迫しておる、そしてこれから大変な事態になります高等学校の新増設等に対する補助措置をしてもらいたい、こういうことについても、これは賛同しがたい。さらには、地方税の充実強化の必要性は認めるけれども、法人住民税の引き上げは、国、地方の税の配分にもかかわることなので慎重に対処していくのだ、こういうような答弁に終始いたしまして、いま私が申し上げたことは、主管の大臣の御答弁もありますけれども、総理の姿勢というのが、具体的な答弁の形では、基本的な点を意思表明された内容とは大きく食い違っております。  私は、六月十日のこの予算委員会におきまして、総理が年度の初めに施政方針演説で述べた態度、その後に開かれた地方制度調査会における態度、五カ月間の経過があるにかかわらず何ら具体的に進んでおらぬじゃないか、こういう点を指摘をいたしました。今度の知事会議におきましても、言葉はりっぱでありますけれども、具体的な質問に対してはもう全然お答えが進んでおらない、こういうことでありますから、その翌日の新聞では、全くお茶濁しの知事会議であった、全国知事会議では失笑を買った、こういう記事すら出ております。これが知事の財政問題あるいは地方財政対策に対する現実の姿でありまして、おっしゃることとはずいぶんな違いがあると、こういうふうに申し上げなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  140. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、これから国民生活、福祉というものを重視するについて、地方公共団体の役割りというものはますます大きくなる。だから地方財政の運営を困難ならしめるようなことがあってはいけないということで、今回の場合も、地方財政対策として、地方税の減収一兆六百億円、これに対しては地方債で補てんして、うち政府資金は二千億円支出をすることにしておる。交付税の減額であります一兆一千億円は運用部から借り入れる。また景気対策二千六十六億については地方債で処置する。また給与改定等の追加財源要素として四百十五億円を臨時交付金と運用部で借り入れる。運用部からの借り入れの補てんは、一般会計から二百二億円出す、超過負担の解消に百九億出す。こういうことで、今年度の地方税の減収、あるいはまた交付税の減額に対しては、政府はできるだけの処置をいたしまして、地方財政が運営の困難に至ることのないように処置をいたした次第でございます。  高等学校の校舎などに対しても特別枠を設けて、五十年度で三百億円、五倍にいたしたわけでございまして、したがって、この財政困難なときに、政府としてはできるだけの処置はとって、地方財政の運営を困難に至らしめないような処置はとってきたつもりでございます。  ただ、地方の知事の間から交付税の引き上げというものの説がございましたことは御指摘のとおりでございますが、交付税率というものは、そのときの国の、あるいは地方の財政事情を勘案して決めるべきもので、国としても大幅な国債を発行せんならぬような実情にありますので、いまここで交付税の税率を上げるということは困難であるということを述べたわけでございまして、政府としては、誠心誠意、知事会議の要望に、できることはできる、できないことはできないということを答えたわけでございまして、地方自治体の苦労をしておる知事に対して不親切な態度をとった覚えは絶対にございません。
  141. 細谷治嘉

    細谷委員 不親切な態度をとった覚えはないというわけでありますけれども、いま申し上げましたように、翌日のある新聞には、「国会答弁より、もっといいかげんなものだった」と批判する者もいた。地方財政計画で歳入を確保したのだから十分やっていけるはずと総理考えておるとしたら大変なことだ。こういうような記事すら載っております。私はいまの総理の御答弁をお聞きいたしまして、やはり、基本的な抽象的なものの表明と現実の具体的な問題については、かなり大きな距離があるということを認めざるを得ないと思うのです。  そこで、私は問題を次に進めたいと思いますけれども、最初に大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今度の補正予算に関係する地方財政対策について、大蔵大臣と自治大臣との間に覚書が交わされておると承っておりますが、その事実はございませんか。
  142. 大平正芳

    大平国務大臣 いま仰せのとおり、自治大臣との間でメモを交わしております。
  143. 細谷治嘉

    細谷委員 自治大臣、メモとおっしゃいましたが、覚書を交わしておりますか。
  144. 福田一

    福田(一)国務大臣 覚書でございます。
  145. 細谷治嘉

    細谷委員 その覚書をここに出していただけませんか。いかがですか。どうしても出さない……。
  146. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 覚書は手元にございますので、読み上げてよろしゅうございましょうか。    覚 書   昭和五十年度の地方財政対策を講ずるに当り、次のとおり申し合わせる。   一、両大臣は、毎年度の国、地方おのおのの財政状況を勘案しつつ、交付税特別会計の借入金の返還について、協議の上必要があると認めるときは、その負担の緩和につき配慮を行う。   二、地方税の減収を補てんするため及び総合的な景気対策昭和五十年九月十七日経済対策閣僚会議決定)として実施される公共事業費等の財源に充てるため発行される地方債のうち政府資金引受け以外のものについて、両大臣は、その円滑な消化に努めるものとする。       昭和五十年十月三日              大 蔵 大 臣              自 治 大 臣  以上でございます。
  147. 細谷治嘉

    細谷委員 印刷した物があるのなら……。私が要求しても出さないのですよ。覚書があるということは認めながらどうしても出さない。いまのそれは何ですか。どうして出さないのですか。
  148. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 私どもまだ資料の提出要求があったことを聞いておりませんが……。
  149. 細谷治嘉

    細谷委員 私はこの覚書があるということを仄聞いたしましたから、主計局長には申し上げませんでしたけれども、地方財政対策でありますから、自治省にその覚書を持ってきてくれと言ったら、大蔵の方がなかなかオーケー言わぬから出せぬと言ったのですよ。どういうことなんですか。
  150. 福田一

    福田(一)国務大臣 行き違いがございまして、まことに申しわけございません。恐らく事務の方では、これは大蔵省ともよく折衝した上でないと出せないというような意味でお答えを申し上げておったのだと思うのでありまして、私はこれは何も秘密にすべき内容ではないと思っておりました。したがって、これがあなたから正式な御要求があったとしたら、もうわれわれとしてはおわびを申し上げたいと思います。
  151. 細谷治嘉

    細谷委員 私がこの覚書を出せ、審議が進められぬじゃないかと言ったら、大体において自治省から出た資料の中の摘要の中に書いてありますから、こういうものが覚書としてあるのだろうと言ったら、どうも結ばれておりますと言う。持ってこいと言ったら、だめだと言うのですよ。それでとにかく私はこそっと一部どこかからくすねてきました。くすねてきましたけれども、予算委員会のところでは問題をやってはいかぬというわけですよ。これはどうしてこういうことですか。
  152. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 細谷君に申し上げますが、資料の要求を……(細谷委員「全部出してください」と呼ぶ)だから、資料の要求がありましたら私に要求していただけば、理事会にかけて出すようにでもどうにでもいたしますから……。
  153. 細谷治嘉

    細谷委員 私の承知している範囲では、この覚書があり、これが今度の地方財政計画の重要な柱になっておるわけでありますけれども、出せない、どこに問題があるのだと言ったら、私は大蔵省の主計局長には直接要求しておりませんけれども、大蔵省でこれを出してもらっては困る、こういうことですよ。まことにけしからぬ話だと思います。とにかく、委員長、この資料は、かつて四十年の際に、当時福田総理が大蔵大臣であったときに、やはり覚書が手交されました。それはやはり予算委員会でぱちっと出ているのですよ。今度は隠しているのです。けしからぬと思うのですよ。  そこで質問を続けますけれども、この覚書の内容として、「国、地方おのおのの財政状況を勘安しつつ、交付税特別会計の借入金の返還について、」おおよそ一兆一千億円について「協議の上必要があると認めるとき」、これは具体的に内容はどういうことなんですか、大蔵大臣、御説明いただきたい。
  154. 大平正芳

    大平国務大臣 交付税特別会計からの借入金の返還につきましては、据え置き期間の満了後返済をいただくことになっておりますけれども、毎年度、国、地方おのおのの財政状況を勘案しながら、地方の負担の緩和ということについては、その都度ひとつ配慮を加えなければならないではないかという趣旨のことでございまして、これは、いわば後年度に対する大蔵、自治両大臣の姿勢として今日こういう申し合わせをいたしたことでございまして、そのときの大臣がどなたが担当されておるかわかりませんけれども、およそ中央、地方の財政調整の任に当たる者といたしましては、こういう配慮で対処すべきでないかという精神をうたったものでございます。
  155. 細谷治嘉

    細谷委員 自治大臣に御質問しますけれども、「協議の上必要があると認めるとき」とは、具体的にはどういうことですか。
  156. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま大蔵大臣から申し上げましたとおり、その返還する時期が来たときにおいて、地方財政が非常に困窮しておるような場合においては、場合によっては繰り延べることもあり得る、あるいはまた、非常に収入がふえるというようなときには、あるいは増額して返す場合もあり得るというような、伸縮自在の意味でその文言を入れておるものと考えていただきたい。
  157. 細谷治嘉

    細谷委員 そんなばかなことないでしょう。「必要があると認めるとき」というのは伸縮自在だ、そんなものでないでしょう。「国、地方おのおのの財政状況を勘案しつつ、」「協議の上必要があると認めるときは、その負担の緩和につき配慮を行う。」こうなっておるでしょう。私が聞きたいのは、「必要があると認める」というのは、具体的にはどういうものを指すのか。あなた自治大臣でしょう、具体的に説明をしてください。わからぬですよ。
  158. 松浦功

    松浦(功)政府委員 もう少し事務的な要素を加えまして御説明をお許しを願いたいと思いますが、先生一番よく御承知のように、毎年度の地方に対する財源措置は、地方財政計画というものをもって保証されておるわけでございます。したがって、ここで言っております「必要があると認めるとき」というのは、これは五十三年以降の問題になるわけでございます。五十三年以降、各年次について地方財政の適正な運営が行われるように財政計画をつくるということは当然でございます。その場合において、必要な財政需要、これを適正に算定をいたしまして、それに見合う当該年度の制度のもとにおきまする財政収入を比較をいたしまして、歳入が足りないということになりますれば、こういった償還を行うということになればさらに財源が不足という事態が起こってくるわけでございます。そういう場合には、地方財政の運営に非常に大きな支障が生ずるじゃないか、その場合を私どもとしては考えて、大蔵省と覚書にああいう趣旨のことをうたい込んだ、こういうふうに御理解をいただきたいのでございます。  逆に申し上げると、その年度において、将来の問題でございますが、わかりません。先生指摘のように、交付税率が上がっておる、あるいは税制改正で地方税がうんとふえておるとか、そういう形になりまして、必要な財政需要と財政収入とが十分見合う、返還をしてもなお見合うということであればそのときは必要はない、こういうふうに御理解をいただけたら結構かと存じます。
  159. 細谷治嘉

    細谷委員 もう一度確認いたしますが、大臣、よく聞いていてください。「必要があると認めるとき」というのは、地方財政計画上収支がとれない、そういう場合が必要あると認めたんだ、こういうことですね。  その次に「その負担の緩和につき配慮を行う。」というのは、いまの局長の説明からいきますと、交付税率の引き上げも含めて、あるいは後年度に返還を送る、こういうことだけなのか。「負担の緩和につき」という内容について、ひとつ御説明いただきたい。
  160. 松浦功

    松浦(功)政府委員 「負担の緩和につき配慮を行う。」ということが覚書の中にございますが、この内容について具体的にどういう方法があり得るということを、大蔵省と協議を詰めておるわけではございません。したがって、私どもといたしましては、五十三年以降の国、地方の財政の実情というものを総合的に検討した上で、これからどういう方法をとるかということは、大蔵省と協議をすればいい、こういうふうに考えております。  ただ、大臣がおっしゃられましたように、その年度に償還能力がなければ償還を繰り延べるということも、配慮の一つの方法でありましょうし、あるいは、さらには臨時特別交付金というような形で一部を一般会計から補てんをしていただくというようなことも、一つの方法ではなかろうかとわれわれとしては考えておりますけれども、どういう方法をとるかについてまでは、そのときの財政状況がいまから予断ができませんので、どういう方法でやるかという協議は遂げておらない、このことを御理解いただきたい。  なお、交付税率の引き上げという問題は、私が申し上げたのは、交付税率が引き上がっておって交付税が非常に多額であれば、償還に苦労がないわけですからという意味で申し上げたので、この覚書の中に書いてありまする「配慮」の中に交付税率の引き上げということを含めてということについては、私どもとしては、そのように考えておりません。
  161. 細谷治嘉

    細谷委員 自治大臣にお尋ねいたしますが、この覚書の第一項は、五十一年度の予算編成、五十二年度の予算編成を拘束するものではないということは確認してよろしいのですか。
  162. 福田一

    福田(一)国務大臣 覚書の内容に五十三年以降という意味になっておりますから、これは拘束いたさないと考えていただいて結構であります。
  163. 細谷治嘉

    細谷委員 大蔵大臣、いかがですか。
  164. 大平正芳

    大平国務大臣 いま自治大臣のお話があったとおりです。
  165. 細谷治嘉

    細谷委員 この問題については、後ほど具体的に質問を進めたいと思いますけれども、その前に自治大臣、あなたはこの間の全国知事会議におきまして、五十年度の地方財政対策として大変な地方税収の落ち込みが起こっておるわけでありますけれども、その落ち込みについては標準税収の範囲内でしか地方債の充当はしないんだ、こういうことをお答えしたように新聞で書いてありますが、そのとおりですか。
  166. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま御説明のとおりと考えております。
  167. 細谷治嘉

    細谷委員 それで地方はやっていけるとお思いですか。五十年度において地方の財政運営ができるとお思いですか。お答えいただきたい。
  168. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは細谷さんの方が、地方においてお仕事もちゃんといままでしておいでになったことでもあるし、地方財政のことについては、あなた専門家であられますからして、大体私が申し上げることもおわかり願っての御質問かと思うのでありますけれども、いままでやはり高度成長でございましたからして、地方財政計画というものをつくった場合においても、その地方財政計画よりは約一割前後の増収が行われてずっと来たわけであります。ところが、自治省といたしましては、そういうものがどれだけ続くかどうかということについて、確たる見通し、一割ずつずっと続くか、二割増収があるか等も明らかでありませんし、そこで一定の基準を設けて、その基準に従って地方財政計画というものを組んでおるわけでございます。それが、この五十年度の予算、いわゆる地方財政の予算でございますが、そのときに私は、実を言いますと、昨年自治大臣に就任をいたしましたときに、当予算委員会においても申し上げたのでありますが、五十年度のいわゆる地方財政収入は非常に苦しい、そこで、人件費の問題にいたしましても、あるいはまた単独事業にしても、あるいは見込みが将来必ず支払い得るのでなければ、福祉予算等についても地方は十分お考えを願わないと、非常に苦しい状態になるであろうということを申し上げておったわけであります。その見地に立って地方財政計画というものを組みまして、そしてそれを地方に内示をいたしたわけでございます。  ところが、その後の結果を見ますというと、当初よりはなお財政関係が苦しい状況になってきておることも私は承知はいたしておりますが、この点については、中央もまた、いま財政、税制その他の面において、公債発行についても、あるいは税収入についても非常に苦しい状態にあるということでございますので、そこで、地方におきましても、われわれが当初予定しておったところの、これだけの交付金、これだけの起債は認めるという範囲内で地方財政の運営をやってもらいたい、こう私たちは申し上げておるのであります。いま非常に財源が国にあるとか、あるいは今後非常に好景気になるというような見通しがすぐに立っておりますれば、それはまたわれわれとしても、中央に対して、あるいは大蔵省に対して交渉をするということもあり得るのでありますけれども、私は、今度の対策が、もう大蔵省としてはわれわれの言い分をほとんどのんでもらった。たとえば、この前これが決まる前に知事あたりから、とにかく地方交付税特別会計で借りる一兆円余の金については金利負担をしてもらいたい。それは国から言いますと、赤字公債を発行した分で埋めるわけになるのでありますから、赤字公債には金利がついておる。その金利負担もひとつ認めてもらいたいというような話もあったわけでありまして、この点については、知事あたりはわれわれに向かって、対策について最小限これだけはぜひやってもらいたいということを強く要請されておりました。これらの点については、私は知事の要望はみな入れたつもりであります。  ところが、この間の知事会議におきまして、いろいろそういうような御要望もありましたが、しかし、ある知事さんのごときは、これは名前を言うとかえってあれだから申し上げませんが、私は非常に感銘を受けたことは、ここ一、二年はトンネルをくぐるような時代である、しかしトンネルをくぐるのはがまんしても、二年後においては何か明るみへ出るような財政経済政策をとらなければいけないということを仰せになった。私は、なるほどりっぱなお考えを持っておいでになるなと思って実は感服をいたしたわけでありますけれども、それはそれぞれの府県によってそれぞれの財政事情も違います。また、いままでどれだけ単独事業をふやしてきたか、福祉予算をやってきたかということは一律ではございません。これはあなたも御承知のとおりである。そうすれば、そういうようなことをよけい——よけいというか、多額にやられたところほど、この段階に来ると苦しい内容になることも事実でありまして、その意味では、何もそれをやったことは知事が悪意でやったわけでもない、やはり地方住民のことを考えてやられたんだということは、われわれもよく理解しておりますけれども、しかし、このような国並びに地方の財政困難な事情において、知事さんの言うことを全部お受け入れするというわけにはいかない。われわれはやはり、一つ政策一つ考え方に基づいて約束したことだけは全部やっておるわけでありますから、それ以上してもらいたいと仰せになっても、われわれとしてはいまのような状況では非常に困難であるということを知事会議でも私は述べたつもりでございまして、それでやれるかどうかということについては、これは地方自治体というものは独立しておるわけでありますから、ある意味においていわゆる自治でありますから、自治体においてお考えを願う以外に方途がないと考えておるわけであります。
  169. 細谷治嘉

    細谷委員 私の質問に的確に答えていただきたいと思う。いま長々と答えましたけれども、あなたが言うように、地方団体というのは三千三百あるわけですから、まさしく多様であります。それを画一的に地方財政計画を押しつけているのは、あなたじゃないですか。政府じゃないですか。私は、先ほど質問したように、地方財政計画に盛り込まれておる標準税収以上は穴埋めをしないのですか、そうだとするならば地方財政は運営できないじゃないかということを質問したわけです。  ところで、私が指摘するまでもなく、ちょっと申し上げてみますと、せんだっての知事会議でも知事から出ておりますけれども、一番新しいのは、四十八年度の地方財政計画と決算額とがどれほど乖離をしているのかということがわかっております。言ってみますと、あなたがつくりました地方財政計画の四十八年、それも暮れの人事院勧告等の補正を含めて修正したもので、計画の規模が大きくなっております。決算額というのは、当初の計画に比べますと、歳入で一九%上回っているのです。歳出の方では、あなたの方の計画よりも決算の方は一七%上回っているのです。かつて地方財政が苦しかった、国の財政も苦しかった、そのために赤字公債を発行したというその時期、その時期でも、地方団体の計画と財政はどうなったかといいますと、やはり大きな乖離が計画と実績の間に起こっておるわけです。一本の地方財政計画で全部押さえるということはできないのですよ。だとするならば、やはりその団体の実情に応じて、その税収の欠陥というものについて配慮をしてやる必要があるんじゃないかと私は思います。いかがですか。
  170. 松浦功

    松浦(功)政府委員 四十八年度の地方財政計画と決算の乖離でございますが、先生指摘のように、相当多額の開きがございます。大きく申し上げますと、収入面で、地方税が約七千億、地方債が六千億、雑収入で一兆三千億、歳入面ではそういったところが目立った乖離でございます。歳出におきましては、人件費が一兆円、投資的経費が六千億円、それからその他の行政経費の九千五百億円というところが大体目ぼしいところでございますが、起債の六千億と投資的経費の六千億とは、公有地確保のために枠外で認めておる起債でございますから、これは見合っております。雑収入のうちには、貸付金等で年間に返還されて雑収入として上がってまいりますものが入っておりますが、その他行政費は、財政計画にそういった種類のものは見込んでおりませんので、それが大体一兆三千億のうち九千億ぐらいは見合う、こういう形だと達観して申し上げて間違いないと思います。そういたしますと、税収の七千億と、それから雑収入の、私の方で若干緩めに計画を見ておるという結果だと思いますが、四千億ばかりの金が出てまいりますが、それが一兆円の給与費と見合ったという形になっておるというふうに私どもは判断をいたしております。  あるいは御反論があるかもしれませんが、達観としては私は間違いないと思っておりますが、そういう形でございますので、財政計画ベースにおける穴を全部補てんをすれば、人件費等の特殊の問題を除きますればバランスはとれるはずでございます。仮に地方債を増発するということになりますと、計画外にございます人件費に地方債を認めるということになるわけでございまして、先生と御意見を私どもは異にいたしておりますけれども、私どもとしてはとうていそういう政策はとりがたい、こういうことにならざるを得ないと思います。  決算上の乖離との問題から問題をつけばそういう形になると思いますし、さらに財政計画ということから見ましても、いままでの財政計画のルールで、地方の職員の給与費というものを実態で計上するという方向に切りかえるなら話は別でございますが、国家公務員並みの給与水準でしか財源措置をしないということになりますれば、地方債を発行するにしても、それに見合う歳出がないということに理論的にどうしてもなってしまうわけでございます。  したがって、大臣からもはっきりしたお答えがあったと思いますが、私ども事務当局といたしましても、そういう方途には賛成いたしかねるというのが現在の立場でございます。
  171. 細谷治嘉

    細谷委員 案の定、決算との乖離というのは一兆円の給与関係費、こういうところにしぼってきたわけでありますけれども、せんだっての全国の知事会議でいろいろな問題が要求されております。たとえば地方財政計画の定数と実人員との間に乖離があるじゃないか。しかも教職員なり警察官の人数というものは政令で押しつけられる、そういう形であってどうにもならぬものだ。機関委任事務による一般職の増加等に対しても適正な財政措置を講じてもらいたい。あるいは今度の補正予算でちょっぴりと超過負担の解消が出ておりますけれども、この超過負担というのは、昨今の新聞にも出ておりますように、莫大なものになっております。人件費が地方財政に大きな重みを持っておる。新聞等ではこの人件費について、四十八年度を見ますと、あるいは今度の補正を見ますと、地方税の収入よりも人件費の額の方が上回っておる、こういうことを指摘しておりますけれども、これは十年前の四十年でも同じだったんですよ。地方税全体の収入額よりも人件費の決算額の方が四十年でも上回っております。今度に始まったことではありません。そういうことでありまして、私はやはり、この地方財政計画で想定しておる地方税について、標準税収だけの穴埋めだけでは現実に地方財政は決算ができないのではないか、こういうことを強く指摘しておきたいと思います。  そこで、今度の補正によりまして地方財政計画の修正が行われたわけでありますけれども、この修正を見てみますと、これはきのう来この予算委員会でも議論されておりますけれども、言ってみますと、地方財政の中でふえていっているのは公共事業であります。地方財政計画の中でも公共事業費が三千二百三十五億の修正増、こういう形になっていっております。言ってみますと、不況というその対策を地方財政に押しつけておる、これが今度の補正予算だ、こういうことが言えると思うのですね。これはもういろいろ指摘されたとおり。従来のパターンそのままの形で補正予算、いわゆる第四次の景気刺激対策というのを行われた、それをそのまま地方財政の方に押しつけておる、これが実態ではないかと思うのですよ。大蔵大臣、どうお思いですか。
  172. 大平正芳

    大平国務大臣 中央、地方を通じまして不況対策を講じたわけでございまして、いまの制度の上におきまして、地方財政に御担当いただく部面につきましては若干の負担をお願いいたしておりますけれども、それは当然のことと考えております。
  173. 細谷治嘉

    細谷委員 後ほど私は申し上げたいのでありますけれども、たとえばいま東京都を初め地下鉄をやっておりますね。そういうところの補正は一つも行われておらないでしょう。新聞等によりますと、その地下鉄は業者に金が支払えない、こういう事態になっていると新聞は報じておりますね。たとえば最近の新聞によりますと、日本経済新聞の十月十七日に、「都の地下鉄建設資金底つく起債を認められず 業者支払い止まったまま」、こういう事態に現に直面しているのですよ。そういうものについては何らの補正はないでしょう。言ってみますと、国が決めた大型プロジェクトを中心とした公共事業に地方財政を動員しておる、こういうふうに申し上げて差し支えないでしょう。いかがですか。
  174. 福田一

    福田(一)国務大臣 細谷さんの御指摘のとおり、東京地下鉄の追加は今回認めておらないのでありますけれども、大体今回の補正を組むに当たって、どのような業種をどのように処置したらいいかということについては、いろいろわれわれとしても意見も述べておったのでありますが、できるだけまんべんなく地方にも負担をしてもらいたいという意味では、上下水道というようなものを特に私は主張をいたしておったわけであります。  東京都の問題につきましては、私のところへはそのような希望はございませんでしたが、やる場合にどれだけの財源でどういう効率的なものをやるかということで考えていく場合に、それは、これもやりたいあれもやりたいというのは当然でありますけれども、しかし、それだけの財源がない場合においては、ある程度しぼらざるを得ないことも、これはもう細谷さん御承知のとおりでございます。その意味で、抜けておるという意味で非常に遺憾であるということであれば、われわれとしても、それだけの財源がなくて、また、そういう手当てをする余裕がなかったのだということでお答えを申し上げる以外に道はないので、何もこれは東京都だけではございません。ほかのところでも、ずいぶんいろんな、これもやりたい、あれもやりたいというようなことを全部お引き受けして、そうして補正予算に組んだわけではございません。
  175. 細谷治嘉

    細谷委員 話が出たわけで申し上げますけれども、東京都だけではございません。私の手元にある資料によりますと、地下鉄をやっておる団体からの地方債の要求額というのは二千五百九十億円、執行見込み額は二千三百四十七億円、このうち現在地方債が許可されておるものは千四百四十七億円。どうしても五十年度の措置としてやっていただきたいというのが、札幌市が三百億円、東京都が百九十五億円、大阪市が百四十億円、その他の六都市で三百五十八億円、合計いたしまして不足額は九百億円ですよ。新聞によりますと、こういう地下鉄を地方債でやっていきますと、来年度以降若干の補助金が必要になってまいります。新聞には、大蔵省と運輸省が対立しておる、こう言っております。まあ九百億円でありますから、仮にこれを認めますと、その半分くらいの補助金が必要でありましょう。その半分くらいの補助金というのは四百五十億円ですよ。四百五十億円を六、六、六、五、五、五という形で六年間で分割して補助をしてやればいいんですから、一年間には三十五億か四十億でしょう、地下鉄が。その問題で大蔵省と運輸省が対立して、そうしていまや工事をしておる業者に金が払えない。これは倒産するでしょう。どうしてそれができないのですか。  総理、いま私の実情を訴えたことからいって、これは問題があるでしょう。私が言うのは、新幹線とか本四架橋、こういうものを中心とした不況対策になって、鉄鋼やセメントは潤うでありましょうけれども、地下鉄の工事をやっている者は現に金をもらってないのですから。しかも私が申し上げたとおり、大蔵大臣が緊縮予算を今度編成しなければならぬというのでありますけれども、三十五億か四十億の補助金を出せば地下鉄は順調に進んでいく。これも景気対策じゃありませんか。大蔵大臣、どう対処するのですか。
  176. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、昭和五十年度の地下鉄の建設費は起債ベースで二千四百七十五億円となっておりまして、八月末までの執行済み額が千二百五億円、四八・七%になっておると承知しております。このうち公営地下鉄をとってみますと二千七億円でございますが、そのうち千七十五億円、五三・六%が執行済みになっております。いま御指摘の東京都営の場合は四百二十四億円でございまして、そのうち六七%に相当する二百八十四億円が執行済みでございまして、他の業者の中では特に進捗度が早いようにわれわれとしては承知いたしております。  このように地下鉄工事は、他の事業に比べまして相当大きな投資額になっておるわけでございます。これは国、地方を通じまして協力して当たっておる公共的な事業でございまして、他の事業につきましても、いま、ほかの新幹線でございますとかその他のプロジェクトについても言及がございましたけれども、政府としては、地下鉄工事につきまして特に資金の供給をちゅうちょいたしておるというような事情は毛頭ないのであります。全体といたしまして、予算で計画いたしましたこと、そしてそれを年度の途中におきまして改定いたしました、つまり計画の執行に支障がないように私どもは資金の配分、充当をやってきておるわけでございまして、特に地下鉄に制約を加えておるという性質のものではないと承知いたしております。
  177. 細谷治嘉

    細谷委員 支障ないと承知していると言いますけれども、現実にはいま私が数字的に申し上げたとおりでありまして、起債の追加認証全体としては希望額九百億円でありますけれども、それが認められないために、業者に支払いがとまったまま、こういう実態であります。  私がお願いいたしたいことは、大蔵大臣、自治大臣、そして運輸大臣、運輸省にも関係があることになると思いますけれども、少なくとも今日のこの段階において、今日の都市問題の重要なポイントでありますこの大量輸送機関、そういうものについての工事を支障なくやるということも、総理、これは環境整備の重要な一環でしょう。でありますから新聞に、どうも大蔵省と運輸省の補助金をめぐる対立、こういうものがあるように見受けられると書いてありますけれども、この種の問題は、やはり今度の不況対策の中に取り入れられるべきであろうと私は思うのです。  そこで、実態を調べた上で、こういう新聞に書かれておる事態にならないように、また、私どもが各市から聞いておるような実態にならないように特段の配慮を願いたいと思いますが、いかがですか。
  178. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもは、計画ベースで事業に支障がないように資金の手当てを考えておるわけでございまして、個々の事業につきまして、必ずしも満足がいく姿になっていないという御指摘でございますが、それは計画の中におきまして、早目に事業の進捗が行われて、残された期間に資金の残額が残っていないというようなケースが間々あり得ることでございまして、そういう点に対する不満はあろうと私は考えておりますけれども、政府のいまの立場は、申すまでもなく、計画ベースで資金の手当てをしておる。それに沿ってやっておる限りにおきまして、資金の心配がないようにはいたしておりますという答えをいたしておるわけでございます。  しかし、細谷さんがおっしゃるように、物事計画どおりいかないことも、私どもも十分わからないわけではないわけでございまして、ぎりぎりどうしてもこれはめんどう見なければならぬというようなものが現実にあり得ることと思うのでありまして、自治省の方から御協議がございますならば、そういった点については慎重に配慮してまいらなければならぬと思います。
  179. 細谷治嘉

    細谷委員 自治大臣、私が九百億円不足だということを——四十九年度の許可額と比べますと、札幌市は今年度は伸びております。東京都は昨年度は四百四十億円でありますが、ことしはまだ三百二十億円しか、去年より減った形でしか許可がされておりません。大阪市の方も昨年は三百八十億でありますが、二百十億円しか許可がされておらない。その他の都市も、七百五十億円の去年の許可に対して、ことしは四百八十四億円、こういう実態でございますから、これは新聞が書いたような事態が起こるのは必然でありましょう。しかも、この不況対策というのが今日重要な問題になっておる以上は、いま大蔵大臣が自治大臣と協議してやるということでありますから、実態を調査した上で善処していただかなければならぬと思いますが、大臣、いかがですか。
  180. 福田一

    福田(一)国務大臣 細谷さんが御指摘になった問題、私もよく了承をいたしております。したがいまして、どうしてもこの程度はということであれば、実態を見た上で大蔵省と折衝することにいたします。
  181. 松浦功

    松浦(功)政府委員 ただいま札幌、東京都について去年より減っておるというお尋ねでございますが、誤解をいただいては困りますのでつけ加えさせていただきたいのですが、昨年度の起債枠が多くなっておりますのは、去年地方団体からの強い要望があって、大蔵省の理解を得て、相当多額の政府債をもとにする起債を年度末に実は許可をいたしました。それが入っております。その事業は全部ことしで執行する事業費でございます。そういう措置が去年特例的に行われておるためにそういうケースになっておるということを御理解おきをいただいて、なお、地方団体はその事情よく知っておりますので、それらの点を踏まえて、大臣がおっしゃられたように、御希望の向きについては慎重に検討させていただいて、大蔵省の方にも御協議を申し上げたい、こう思っておりますので、御了解ください。
  182. 細谷治嘉

    細谷委員 そこで、これから、五十年度の地財対策の具体的な問題について、まずお聞きしたいと思います。  私がこの六月十日のこの予算委員会におきまして質問いたしました第一点、四十九年度の補正予算におけるいわゆる税収の落ち込み、それがダイレクトに地方交付税に響いておりまして、おおよそ五百六十億円程度の過払いが起こっております。これについてどうするんだ、こういう質問を私がいたした際に、自治大臣はこう答えております。「数字を考え違いしたのは」——いわゆる税収の落ち込みですよ。「数字を考え違いしたのは大蔵大臣かもしれぬけれども、これは内閣の責任として問題の処理に当たるべきであるというのが私の考えでございます。そこで、その場合に、地方財政に悪影響を与えないように問題の処理をいたさなければならないということを、私はお答えをいたしておるわけでございます。」こういうふうに答えてあります。私は、総理もうなずいておりましたから、「地方財政に悪影響を与えないように処理する、」それを確認いたしますとこの議事録に書いてあります。  ところが、今度の地方財政対策の中では、この五百六十億円は五十一年度の予算編成の段階において返済をするということが決まったと新聞で報道されております。事実だとするならば、この予算委員会における自治大臣の答弁総理がうなずいたのと内容が違っておって、まさしくいいかげんな答弁、こういうことにならざるを得ないと思うのですが、どうなんですか。
  183. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま御指摘になった五百数十億円の問題は、処理の仕方としては、五十年度において返還するか、あるいはまた五十一年度においてこれを処理するか、二つの方法があるわけでありまして、その場合に私が申し上げておったのは、本年度でやることは非常に困難であろうと思いましたので、できるだけ本年度はやらないようにして来年度において処理をするという方針を含めてお答えをいたしたわけであります。
  184. 細谷治嘉

    細谷委員 含めてということは、返すということは、地方財政からそれだけ五百六十億円国庫に返すわけですから、悪影響があるんじゃないですか。そういう理解でしょう。そういう答えですよ、あなた。総理はそのときうなずいておった。私はこの問題についてかなりの時間を費やしたのです。議事録はそうなっているのです。頭を振っても、そうなっているのですよ。これはそれ以外考えられません。その前に、どうしてこんなに税収の見積もりを誤ったのかと言ったら、大蔵大臣が、私の責任ですと、こうはっきり答えている。そしてこういう答弁をあなたがなさったのですよ。いまの答弁は、これはまたいいかげんな答弁です。
  185. 松浦功

    松浦(功)政府委員 先生非常によく御承知のように、交付税の過払いが起きました場合には、翌年度または翌々年度に精算しなければならないように法律が書いてございますので、本年度精算をしないということは、法律的に来年度精算をするということになるわけでございます。したがって、私どもが精算することを決めたということではございません。法律の規定に従ってそうせざるを得ないということでございます。ただ、五十一年であるか五十年であるかということについては、これはいままでに二つの例がございますので、当省としては、ことし非常に大穴があくときにこれの精算は勘弁してほしいということで大蔵省に御納得をいただいて、来年返すことにいたしております。これは法律上返す義務が生じておるわけでございます。その場合に地方団体に悪影響を及ぼさないようにという問題を、大臣は五十年度、五十一年度の問題を含めてお答えになられたというふうにただいま御答弁になられました。  先のほうの悪影響を及ぼさないというのを、一体どういうふうに私どもとして考えているかということでございますが、これは先ほど申し上げましたように、来年度につきましても、私どもは財政計画をきちっといままでのルールにのっとって歳出を計算いたします。その場合に、所要の措置をとって五百五十八億円返還することによって穴があくようなことになったら大変でございます。そういうことのないように何らかの対策を講ずるという意味を大臣はお答えになっておるというんうに御理解をいただきたいと思います。
  186. 細谷治嘉

    細谷委員 私もそのことを承知して、過払いになった場合、あるいは不足、余分が起こった場合にどういう措置をするかというのは法律にぴしゃっと書いてあるわけですから、それを承知の上でどうするかと言った。そういう問題について、かつてそういう穴が出た場合に国庫で埋めたという例もあるわけです。ですから、私はそれを申し上げて、はっきりとしておきたいということであったから、悪影響のないようにすると言うから、なるほど悪影響のないということは、地方財政にマイナスにならない、こういうふうに理解をしておりました。いまの点については、法律上の措置はそのとおりでありますけれども、予算委員会におけるやりとりの経過、こういう問題からいって私は承服できません。  そこで、私はお尋ねするのでありますけれども、かつて十年前に赤字公債が発行された際に、いわゆる地方税が落ち込んだ際に地方財政対策としてはどういうことがとられたのか、自治大臣、お答えいただきたい。——時間がありませんから、私の方から申し上げましょう。  四十年度の赤字国債が発行された際にとられた四十年度の地方財政対策というのは、当初に計上されました地方交付税の落ち込みは全額国で見たのですよ。そうでしょう。今度はどうなっていますか。
  187. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおり、四十年度の場合には国が見たわけでありますが、そのときの財政事情と今日の財政事情とでは大きく変わっておることは、あなたも御案内のとおりでございます。実際に起債といいますか、国が公債発行した分も予算に対して七%程度であったし、今度はもうかれこれ二〇%を超すような公債を出さねばならないという事態になっております。  それから、そのときの全部見たと言っても、金額は五百億円足らずでございました。しかし、今度の場合には一兆一千億円以上も足らないということになっておるのでありますからして、そのときとは事情が非常に変わっておるわけであります。これを全部国でもってめんどうを見るということは、私は国の財政としては非常に困難である、われわれとしてはそれは見てもらう方がありがたいのでありますが、国の財政編成の上からいって非常に困難であるから、ひとつやはり特交で、特別会計の方で入れて、そうしてそれは一応後年度において返すという形をとってもらいたい、こういう大蔵当局の意見でありますから、私は、それはなるほど現段階においての財政事情から見れば無理からぬことである、こういう意味で四十年度とは違ったやり方をしたわけでございます。
  188. 細谷治嘉

    細谷委員 四十年度には初めて国債というのが特例の形で発行されたのです。初めてですよ。それまではゼロだったのです。そのときと国家財政の現状、地方財政の現状が違っていることは明らかであります。間違いなく地方財政が大変な危機に陥っているということも明らかであります。あなた、数字を申し上げましたけれども、当時の国税三税の総額は二兆四千億円ですよ。五十年度の総額は十七兆七千億ですよ。三税の規模だって六倍ぐらいになっておるんですよ。深刻さが違うことははっきりしております。けれども、四十年度にとったような措置、あるいはそれは全部国庫で埋めないにしても、四十年度の際にとった程度の国庫のいわゆる臨時特例交付金という方式はとるべきであったと私は思うんですよ。それすらもとらない。四十年の不況、四十六年の不況、そして今度の不況、だんだんだんだん地方財政対策について後退してきているじゃありませんか。言ってみますならば、地方交付税率、これは後で申し上げますけれども、その四十年度の不況対策、赤字国債を受けて四十一年度の予算の際にどういう地方財政対策がとられたかと言いますと、地方交付税率を二九・五%から三二%に、二・五%上げたんですよ。それだけでは補えませんから、臨時特例地方交付金というものをつくったんですよ。それだけでも交付税の計算ができませんから、特別事業債というものをつくって、公共事業についての裏負担を特別事業債で見たんですよ。この三つで四十一年度の地方財政対策を講じたのです。当時の大蔵大臣は福田総理です。     〔塩谷委員長代理退席、湊委員長代理着席〕 五十一年度の問題はこれから議論しますけれども、四十年度のものについては全部穴埋めをして赤字国債を出した。そのときでも国の財政は苦しかったわけですけれども埋めて、四十一年度には三つの方式でやったんですよ。どうするんですか、これは。私どもはやはり、全国の知事会なり全国の地方六団体が叫んでおるように、利子は国で見るということは決まって、そうして自治大臣は全国知事会議で、五十年度の地方財政対策はこれですべて済んだとふんぞり返ったそうでありますけれども、四十年度、四十一年度、四十六年度にとった措置と比べますと、雲泥の差ではありませんか。どうお思いですか。
  189. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、政治は常にそのときそのときの時期によって問題を解決すべきであるし、またそれが至当なことであると思っておるわけであります。今回の予算編成の場合におきましては、それはもう非常に中央の財政も苦しい事態にあり、しかもそれをそういうような意味で補った場合において、今後どういうふうにその穴埋めを中央でするかというようなことについては、やはり考慮すべきであると思うのです。中央と地方との財政のバランスをとるということは、そのときそのときの財政事情というものを十分に、そうしてまた税収を十分に、あるいは公債をどれくらい増発できるかというような、いろんな状況をよく見ながら中央と地方で話をして、いわゆる自治省と大蔵省がよく話を詰めて、そうして予算案をつくるのが当然なことだと思うのでありまして、私は、今回の場合において、自治省としてとった措置は、自分ながら、これより以上はもはや大蔵省に求めることは困難である、こういう考え方に立って措置をいたしたわけでございます。
  190. 細谷治嘉

    細谷委員 時間がありませんから、詳しくこの辺をお聞きすることはできないのでありますけれども、今度は大変に税収が減っておりますね。そうしますと、基準財政収入額は激減をしているわけですね。あなたの方の地方財政計画の変更を見ましても、少なくとも基準財政収入額はおおよそ八千三百億円程度落ちているのですよ。言ってみますと、現在の交付税法にのっとって計算してないわけであります。これから交付税の特例について単位費用を設けて再算定をするわけでありますけれども、再算定をしても、法律にのっとって計算できないのですよ。  私は時間がありませんから、次にお尋ねいたしますけれども、この予算委員会でも議論されておるように、五十一年度の予算編成に当たっても、大変な国債の発行、七兆円か六兆円になるだろうというのは、きょうの新聞あたりに書いてあるとおりであります。大蔵大臣ははっきり言いませんけれども、間違いなく、地方交付税、国税三税が落ちてくることは必至であります。そうしますと、恐らく五十一年度におきましても、地方交付税は、法律に基づいて計算しますと、一兆円以上の基準財政収入額と需要額との間の開きができてくると思うのです。そうなってまいりますと、大臣、五十一年度は、先ほど四十一年度はどういう対策をとったか、交付税率を上げた、こういうことを申し上げましたけれども、交付税法第六条の三第二項にどう書いてあるかといいますと、「毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が引き続き第十条第二項本文の規定によって各地方団体について算定した額の合算額と著しく異なることとなった場合においては、地方財政若しくは地方行政に係る制度の改正又は第六条第一項に定める率の変更を行うものとする。」言ってみますと、第十条に基づいて基準財政収入額と需要額を計算して、その差額が国税三税の三二%というものと大きな隔たりが——国会に対する政府答弁によりますと、一割程度の開きができた場合には、交付税率の変更をするか制度の変更をしなければならぬ。五十一年度は、これは何とかしなければいけません。どうするのですか。大蔵大臣と自治大臣のお考えをお聞きしたい。
  191. 福田一

    福田(一)国務大臣 私からまずお答えをいたさせていただきますが、いま御指摘の条文もわれわれ了知しておるところでありますが、その場合には税率の変更だけが要件ではございません、法律的に条文から見ても。それをしなければ違法であるということではないのでありまして、私たちとしては、このようないわゆる経済の状況が大きく変化する段階において、この税率の変更を急にいますぐにやるということがいいか悪いかという問題も考えてみなければなりません。もちろん、それだからといって、地方の行財政の運営が困るようなことになっては大変でありますけれども、場合によってはまた、起債あるいはその他の国の交付税特別会計への繰り入れ等々の問題を通じて、そうして問題を解決をして、来年度においては大体そのような方向で処理をいたしまして、そうしてその間において、三木内閣が常に言っておるのでありますけれども、ここ二、三年の間に財政経済を立て直していくんだというこの方向に沿って、五十二年度あたりにこういう問題を考えてみるということは私は意味があることだと思いますが、いまこういうような激変のある段階において、いまあなたのおっしゃったような法律の条文がございましても、法律の条文のうちには必ずしも交付税率を必ず上げなければいけないということにはなっておらないわけでございますからして、別途の方途によって一応問題を解決するのがいいのではないかと私は思っております。  大体、いま来年度の予算の編成のことを言いますけれども、まだその問題については、補正予算さえ上がっていない段階でありまして、補正予算の効果がどうなっておるかということさえまだ明らかでない段階におきまして、私はこの問題について確たる御意見を申し上げることは非常に困難だと思いますが、これは私たちとしては、やはり、来年度の景気の問題とか、あるいは税収の問題とか、いろいろなことを今後の政治の動きその他によって判断をいたしまして、そうして来年度予算を編成するに当たって考えなければならないと思うのであります。しかし、そのときにも、いま私が申し上げたような趣旨でやってはどうであろうかというのが、今日私が考えておるこの地方財政に対する考え方でございます。
  192. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの自治大臣の答弁納得できないのです。引き続いてという言葉はどういうことかというと、二年続いたらということが、これはもう国会の答弁ですよ。著しく違ったというのは、先ほど申し上げたように一〇%程度ということです。引き続いてというのは二年ということでしょう。あなたの答弁では、全く法律無視のいいかげんな答弁です。五十一年度において措置するということになりますと、交付税法によって制度を変更するか、あるいは交付税率の変更を行うものとするということを書いてあるのですから、言ってみますと、五十年度も、あるいは五十一年度も交付税法というのはたな上げして、交付税法に基づかないで恣意的に交付税を運用する、こういうことになるのであって、この交付税法を変えるなりしなければなりません。  私が申し上げたいことは、昭和三十年から四十一年までの間に、交付税率は昭和三十一年の二五%から四十一年の三二%まで七%上がってきたのです、十年間に。それから四十一年から今日までは全然上げてないですよ。上げてないためにどういう交付税の計算をやったかというと、あっちへ転がしこっちへ転がして、そしていいかげんな補正係数という形で、その補正係数をつけることによって、世界に冠たる精緻、巧緻の交付税制度だと自画自賛して、そして法律とは全く違った形で計算されておるというのが実態じゃないですか。私は、そういう意味において交付税法の精神にのっとって五十年度、五十一年度は対応していただきたい。その好例は、四十年度と四十一年度の赤字国債を発行したあの財政危機の際に行われた好例があるじゃないかということを申し上げておるわけです。大臣どう思いますか、総理大臣。
  193. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまの問題は、法文の解釈の問題も含めておりますから、政府委員から答弁をいたさせます。
  194. 松浦功

    松浦(功)政府委員 ただいまの地方交付税法の解釈でございますが、四十八年の五月三十一日、衆院の地行委における先生の御質疑、この中で先生も明確に御発言になっておられますように、「これは昭和二十九年五月四日の、当時の自治庁長官である塚田さんが答えている。参議院での議事録ですが、「「引き続き」というのは二年以上ずっとやはり赤字だと、それから又見通される三年以降も赤字だというときに大体「引き続き」」と言っているのです。」と言って、先生もこの御説をお認めになっておられます。私どももそのように考えております。二年引き続けば直ちに六条に該当するという解釈はとっておらないのでございます。それから「著しく」という場合は、先生のお説のとおり、いままで大体一割程度になれば「著しく」だろう、これは私どももそのように考えております。  いずれにいたしましても、差が出てきた場合において、制度の改正を行うか、交付税率を引き上げる、こういうことになっておりますので、五十一年が直ちにバランスがとれないとしても、その条項に該当はしないだろう。五十二年の見通しがはっきり赤字だということになれば、これは六条の条項に該当するというふうに私どもは考えております。
  195. 細谷治嘉

    細谷委員 時間が参りましたので、最後に要望等を申し上げておきます。  総理は、専門的な機関である地方制度調査会の答申等を待って、そしてこれからの地方財政問題に取り組みたい、こういうことを申しておられます。すでに地方制度調査会の答申も出されております。私ども、そのすべてに賛成ということではありませんけれども、地方財政の面からかなり前向きの点も多々ございます。知事会の答申もございます。そういうことでございますから、税の問題なり、あるいは交付税制度のあり方なり、あるいは超過負担の問題なり、機関委任事務の問題なり、そういう問題について、地方制度調査会の答申も出ておることでありますから、総理として十分な有言実行をひとつこの調査会の答申に基づいてやっていただきたい、断行していただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。  なお、自治大臣に申し上げておきますが、いま土地問題で公社等で、国の機関から委託を受けて買った土地を国の方で買わない、公団の方で買わないために、大変な財政負担等が地方に起こっております。こういう問題についての実態を自治省でも調べておるようでありますが、その実態がすでにまとまっておると思いますから、その資料をひとつこの委員会に提出していただくように要請をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  196. 湊徹郎

    ○湊委員長代理 これにて細谷君の質疑は終了いたしました。  次に楢崎弥之助君。
  197. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 当委員会は、いまこの未曾有のスタグフレーションという現実に直面して、その問題に対処するために補正予算案を審議しておるわけであります。もちろんその中で景気対策も打ち出しておるわけです。幾らいい政策であってもやはり国民協力がなくてはいけません。したがって、この不況を克服するためには、総需要の五〇%を占めております個人消費者、つまり国民であります。この国民皆さん政治に対する信頼、あるいは政策に対する協力、これがやはり不況対策一つとっても不可欠の要素であると思いますが、その点はどうでしょうか。
  198. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 全くお説のとおりでございます。
  199. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、そのためには、この補正予算案を十分内容のある審議を行いまして、そして早くこれを成立させなければならない。で、伝えられるところによると、この予算案審議の中で、酒、たばこ等の値上げ法案をどうも処理するということが伝えられております。しかし、果たして、いま出ておりますかつてない歳入欠陥を埋めるのに、酒、たばこ値上げをやることによってその一部を埋めるということが適当であるかどうか。そのような判断というものは、この補正予算案で十分審議をして、そしてこの審議が尽くされて最終段階に判断をするのが至当ではないか、そのように思うわけですが、総理はどう思われますか。
  200. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この酒、たばこ郵便料金については、臨時国会で新しく提出をしたものではないのでございます。前回の通常国会であれだけの時間をかけて御審議を願って、相当の疑問というものは、国民の声を代表してその御審議を通じて出し尽くされたものであると考えるわけでございますが、なおいろいろと御意見があれば承ることにいたします。
  201. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはいずれは処理しなければいけません。しかし、先ほど申し上げたとおり、その問題も含めて、いま重大な補正予算案の審議をしておる最中ですから、この審議が十分尽くされて、最終段階になって判断するというのが常識じゃないでしょうかね。私はそう思うのですよ。そこで、やはりそういう私がいま申し上げたようなことがわれわれの常識でもあるし、また国民皆さんの常識ではなかろうか。したがって、もし伝えられるように、この補正予算案の審議の途中でこの問題の法案を無理押ししてくるというようなことになれば、いよいよ国民皆さん方の政治に対する不信というようなものが増大する。あるいは幾らこの補正予算案の中で不況対策を論議しても、その対策に対する協力が得られないのではなかろうか。したがって、これはいずれの場合でも、国民の理解なり協力、これが必要でありますから、政治というものに不信が起こってはいけない。政策遂行の根本になるわけですから。  そういう点で、私は以下、政治に対する信頼の問題で非常に憂うべき問題を知りましたので、これは冒頭、私は総理の御見解を承っておきたいと思うわけです。  まず、最近非常に官庁の職員の汚職が続発をしておる。私が調べただけでも、ざっと十件ですよ。申し上げてみましょうか。まず、これは検挙された日付ですが、一月八日に福岡労働基準局職員のボイラー等の検査をめぐる贈収賄事件、それから一月二十日の水産庁及び運輸省中国海運局職員の漁船検査をめぐる贈収賄事件、さらに五月十七日の甲府地方法務局職員の不動産登記をめぐる贈収賄事件、それから同五月二十日の東京天文台職員の光学機械納入をめぐる贈収賄事件、それから六月五日の横浜地方法務局職員の不動産登記をめぐる贈収賄事件、次に七月八日の高知労働基準局職員の労災保険をめぐる贈収賄事件、七月二十五日の国立神戸大学事務局職員の通信設備工事をめぐる贈収賄事件、九月二十日の国立がんセンター薬剤科長らの薬品納入をめぐる贈収賄事件、九月二十五日の鹿児島公共職安の職業紹介をめぐる贈収賄事件。そしてつい最近、十月、今月の十一日でありますが、環境庁職員の公害委託調査に関する贈収賄事件。一体これはどういうことでしょうかね。総理は一体行政府の長として、こういう官公庁職員の頻発する汚職事件に対して、どのような見解をお持ちでございますか、お伺いしたいと思います。
  202. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御指摘のような国家公務員の汚職事件ということは、われわれとしてもまことに責任を痛感をしておるわけでございます。国家権力に関連をする者は、身を持すること一般の者よりも厳しくあることが当然でございまして、そういう汚職事件が起こることはやはり行政に対する信頼というものにつながることは、楢崎君の御指摘のとおりでございまして、政治の信頼には政治モラル、清潔な政治、こういうものが絶対に必要であるということで、この点に対しては人一倍注意はしておるようでございますが、いま言ったような事件が起こりましたことは、私もまことに遺憾至極に考えておりますが、ただ、おざなりでなしに、今後は国家公務員の官紀粛正のために一段と努力をいたしてまいりたいということを心から申し上げて、お答えといたします。
  203. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これらの一連の官庁職員汚職事件に見られる特徴は、もらう方が強要をしておるのです。強制をしておる。そして相手方から賄賂をもらっておる。これはもう全部共通しています。  そこで私は、いま非常に心配をしておる問題があるというのは、実は事件そのものはいまから十年前の事件であります。LPガス税法の問題に関する大タク、大阪タクシー協会の汚職事件であります。この汚職事件と関連をして、四十二年の十二月六日には寿原元代議士が百万円の収賄容疑で逮捕された。同じく同年十二月二十五日、關谷代議士が百万円の収賄容疑でやはり逮捕された。現在大阪地裁において第一審係属中であります。  以下申し上げることは、いずれ公になる問題であろうと私は思っております。したがって私は、当委員会を通じてもし明白にできるものがあれば、そちらの方が国会の権威を高める上においてよろしかろう、そういう判断で私は取り上げておるのでありますが、井出官房長官は、この大タク汚職事件について、警察当局から事情聴取か何かされたことはないでしょうか。
  204. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 ございません。
  205. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大阪タクシー協会、以下略して大タク協と申し上げますが、政治献金をお受けになったお覚えはございませんか。
  206. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 そういう記憶はございません。
  207. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大変失礼ではありますが、三木総理はそういう御記憶はございませんか。
  208. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私自身は記憶はございませんけれども、私の関連する政治団体は、調べてみないとわかりません。
  209. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この大タク協のLPG汚職事件に関する大略をちょっと申し上げておきますと、大体御記憶にあると思いますけれども、このLPガスに税金がかかっていなかった。だから大蔵省はこれに税金をかけようとした。で、LPガス法、これが国会にかかってきた。この法案は、四十年二月十一日、第四十八国会に提出をされました。四十年六月一日、第四十九国会へ継続審議、四十年十二月十三日第五十回国会で審議未了、廃案、四十年十二月二十日から二十九日にかけて第五十一国会で修正可決をされた法案であります。国会提出から成立まで約十カ月かかった。そして実施の時期等についてもいろいろな手直しが行われた。この審議をめぐって実はタクシー業界と政界との黒い霧が当時問題になったのであります。で、大阪地検特捜部が捜査に入った。この法律成立の裏に、政治資金規正法による自治省への届け出の正規の政治献金、これは正規ですから問題をはずしまして、問題は、当時の金で約千五百万円と見られる未届けの裏献金が問題になったのであります。業界の方からは五名贈賄容疑で逮捕された。収賄の方は先ほど申し上げたとおりだ。この当時、三木総理は通産大臣であった。通産大臣といえば、LPガスはその所管ですね。この中で、実は事件は古いけれども裁判は続いておる。  実はことしの六月二十四日であります。いまから約四カ月前、六月二十四日の第六十回のこの大タクの公判で証人が呼ばれました。実はこの証人は、四十七年十二月八日、三十四回大タク公判で同じく証人に出ました方の証言を補強する形で、ことしの六月二十四日の六十回の公判で証言が行われた。その証言によってやや全貌が明らかになってきた。で、三十四回大タク公判の証人は井上奨という方であります。これは大タク協の専務理事であります。大タク協の協会長である多嶋太郎氏は逮捕された。それから五十年六月二十四日、六十回の大タク公判で証人に出たのは市田実二郎という相互タクシーの専務であります。この相互タクシーの社長、多田さんも逮捕された。自分の上司がどちらも逮捕されておるその関係のお二人が証人として呼ばれて、そこで証言を実はされておる。もちろん傍聴人が入っております。私は傍聴人から聞いたわけであります。それを総合いたしますと、実はまさにこの事件の四十年六月二十日前後、三木さんの関係の某代議士が大阪に行かれて、そして通産大臣があした来られる、通産大臣は非常に実力のある人で、やがては総理にもなられる人だ、何かの役に立つはずだからひとつ献金をしてくれないか。  で、途中は私は省きますが、この逮捕された多田という相互タクシーの社長にこの時期に総理はお会いになったことがございますか、大阪で。ちょっと昔の話でお覚えがないかもしれませんけれども、お覚えがなかったらなかったで結構です。
  210. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どうも十年も前のことで、たくさんの人に会いますから覚えておりませんが、ただ一言だけ申し上げておきたいのは、私は長い政治経歴の中で至らぬ点は多いわけでございますが、一つだけ私が言えることは、やはり自分の地位を利用して利権をあさったことは一度もない、このことだけは明白にいたしておきます。
  211. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、当然そうであろうと思います。ただ、これは私が言っておるんじゃなしに、証言者が公判廷で言っておるのでございますので、そこに問題があるのであります。  そこで、新大阪ホテルのロビーで会ったということになっておる。そして、実際に総理が金をもらわれたことにはなっておりません。それははっきり申し上げておきます。その多田氏からはですね。ただ、これから以上私ははばかりますけれども、結論として三百万円が某代議士に渡された。そして、そのうち半分の百五十万円は協同主義研究会代表井出一太郎氏、もう半分が近代化研究会、平川篤雄という方ですか、百五十万円ずつ。実はこの領収証が大阪地検から裁判に出されまして、押収番号百六十二ということになっておる。全然井出官房長官、覚えがございませんか。
  212. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 お答えいたしますが、私もあの協同主義研究会というのは承知しておりますけれども、これは私が代表ということはないのでございます。そういう次第で、このことについては全く関知しておりません。
  213. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実際はそうかもしれないけれども、あなたが受け取った形の領収証が証拠書類として公判廷で出されておるという事実は動かしがたい事実であります。  そこで、この近代化研究会の百五十万円、多田さんの分は正式に政治資金規正法によって届け出がされております。したがってこれは正式な政治献金となるかもしれません。ただ、協同主義研究会の方の井出官房長官が受取人になっておるこの分については、届け出が私が調べた範囲内ではなされていない。もしなされていないとすれば、まさに問題の裏献金と言わなければならない。したがって私は、これは傍聴を通じて知り得た事実でございます。しかもそれは公開の席上ですね。公開の席上、四、五十人がどちらの場合も傍聴人として聞いておる。だからいずれこれは公になると言うのはそこなんですね。それで、その傍聴人から聞いたところによると、三木総理が大阪の新大阪ホテルのロビーで多田氏と会ったのは六月の二十二日ということを言っておりました。これは日本経済新聞四十年六月二十二日の朝刊でありますが、こういう記事が載っておる。「強力にテコ入れ 不況対策で通産相語る」「関西財界との懇談と、千里丘陵の大阪国際博開催予定地視察のため二十二日大阪入りした三木通産相は、午後一時半から新大阪ホテルで記者会見し」と、これが記事であります。六月二十二日に新大阪ホテルに行かれたことは事実のようであります。まことに信憑性は高い。  そこで、かつて田中金脈問題は、私はまたこの問題についての解明ができたら次に取り上げたいと思いますけれども、田中金脈問題の解明に当たっても、最終的には御本人の田中さんが釈明をされないとわからないとおっしゃいました。それと同じ論理でいけば、まさに三木さん御本人に関係する問題ですから、御本人がこれは解明される責任があろうと思います。  そこで、問題の本質は、これが平常時の政党献金と違って汚職に絡んだ、しかも問題の裏献金というところに問題がある。一方においては百万円もらった壽原さんと關谷さんが逮捕された、じゃ、こっちの方はどうかという問題は必ず起こるはずである、法の公平から見て。問題は、そこに、その献金との間にLPガス法を何とかしようというそういう影響力があったかどうかにかかわる。ところがこの某代議士は大変なことを言っておるんですね、先ほど申し上げたとおり。何かの役に立つから出しなさい、非常に際どいところであります。  そこで、私はもう一つ申し上げたいのは、実はその六月三十日に、そのとき新しく運輸大臣になられた方、これはやはり三木さんのグループであったと思いますが、この方も某代議士を通じて強要をしておるんですね、出せ出せと。これがもし事実なら私は大変な問題だと思います。そこで、内閣の総理でありますから、これはどんなことがあっても明確にしなければならない。そうしなければ、国民政治に対する信頼なんかはとうてい起こり得ない。  そこで私は——法務大臣おられますか。これは法務大臣の所管かどうか知りませんが、非常に事柄が重大であるだけに、しかも今日に尾を引いておる問題であるだけに、あるいはもしかしたらこれから事情聴取をされるかもしれないという可能性がある問題として、私はここに、四十七年十二月八日の第三十四回大タク公判記録及び五十年六月二十四日の六十回大タク公判記録を資料としてひとつ当委員会に御提出をいただきたい。  自治大臣おられますか。選挙の関係は自治大臣かもしれませんが、協同主義研究会への四十年上期、下期の献金百五十万円が届け出がされておるかどうか。私が調べたところでは見当たらないのでありますけれども、それを確かめていただきたい。以上、どうでございましょうか。
  214. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまの御要求の資料でございますが、いますぐに調べろとおっしゃるのですか。後刻でよろしいのですか。(楢崎委員「急いでください」と呼ぶ)急いで——じゃ、すぐに調べさせます。
  215. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 楢崎君、総理大臣の名誉のために言っておくのですが、私が何か一応関連があるようなお話でありましたけれども、私は絶対にそういうものには関連はございませんし、本人自身からもし必要があったらお聞きくださったら、そんな事実はないのですから、もしそういうふうなことを言っておるとしたならば、実に不届きな発言であると私は考えておる。
  216. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうあっていただきたいと私は思います。だから、これは重大ですから、しかも公開の席上で、裁判の席上証言されておるんですね、いま言ったような内容が。私は全部読んでもよろしゅうございますよ、筆記したやつを。しかし私は、名誉のために——だから公判記録を法務大臣に資料として出していただきたいと言っておるんです。
  217. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 楢崎さんも御承知のように、裁判所に係属する事件について、その公判記録を法務省が出したり、そういうことをすることはできないわけです。ですから、裁判所の方へ御要望いた、だきたい。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私もその辺よくわかりませんが、御承知のとおり、国会法百四条では「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。」同じく刑事訴訟法四十七条「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」ここに言う公判の開廷前とは、私に言わせればこの三十四回と六十回の公判の開廷前だったらだめですけれども、三十四回と六十回はもう終わっているのですから、当然公開ができる、公にされる、このように思いますが、これは委員長、どうしたらいいでしょうか。
  219. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 私の名前が出ておりますので一言申し上げておきますが、私、こういうことには特に注意を払う人間でございまして、いまおっしゃる大阪の何協会、全く知らないのでございますから、申し上げておきます。
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はお人柄から考えてそうだろうと思いますよ、あえて言いますけれども。しかし何回も言いますと、私は暴露しているのではないのです。公になっている。公の公判廷で傍聴人を入れて、たまたま、そのとき新聞記者の方がおられたかおられないか知らないが、新聞に載っていないから、おられなかったんでしょう、十年前の事件だから大したことなかろうと。もしおられたら、新聞には当然書かれるかもしれません、私がきょう明らかにする前に。だからこれは、単なる暴露とか、そういう内容の問題ではないということは御理解いただきたい。しかもそういう形になっておりますから、これは総理並びに井出長官の名誉のためにも、私は、率先してこの公判記録というものは明らかにする必要があろう、このように思うわけです。重ねて委員長、どうしたらよろしゅうございますか。
  221. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 楢崎君に申し上げます。  ただいま理事で相談しましたが、やはり三権分立の立場において非常にむずかしい問題だと思われますので、理事会で研究しまして、そうしてその結論を出すことにいたしたいと思います。
  222. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま理事皆さんお話をやっておったときに、法制局長官はそこに相談におられたわけでしょう。この四十七条、御存じでしょう。「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」この判例はどうですか、公益上の必要の例。私が挙げた国会法百四条、報告、記録提出の請求、まさにこれに該当する。公益上必要ということが判例になっている。だから判例をすでに要求しているのです。判例になっている。書いてあります。読んでください。どうですか、法制局長官。このただし書きのところに書いてあるでしょう。刑訴法四十七条に書いてある。
  223. 吉國一郎

    吉國政府委員 刑事訴訟法第四十七条では、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」と言っておりますが、「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」その「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる」かどうか、これはまさに裁判所が判定すべき問題であろうと思います。したがって、もちろん国会も、国会法第百四条の規定に従って、官公署に対して報告、記録提出の請求の権能がおありになるわけでございますから、裁判所に御請求になりまして、裁判所が相当と認められるかどうかということを、これは三権分立でございますから、司法権として独自の判断をした上で、相当と認めれば提出に協力をいたしますでしょうし、裁判所が相当と認めないという場合に、それを強制する道はこれはございません。さようなことに相なると思います。
  224. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの御説明でもわかりますとおり、国会にはその権限があるわけでございますから、しかももしこれが、いま三木総理あるいは井出官房長官がおっしゃったとおり間違いであるとすれば、その証人は偽証罪になるわけであります。重大な問題であります。したがって私は、これは意地悪で言うのでも何でもありません。この証言によれば総理が出てくるわけでありますから、私はこの問題は愉快な問題ではないのです。読んでみますか。必要なら明らかにした方がいいですか。——これは先ほど申し上げたとおり、私も決して愉快な問題ではありません。総理もそうでしょう。——何かおっしゃいましたか。——それで、これは以後、私、質問を続けるについても、他の問題に移るについても、大変ひっかかりがあるのですね。これは総理あるいは官房長官の名誉のためにも明確にした方がいいのじゃございませんか、これから何をやるにしても。これは時間はかからないと思うのです、どなたかその気になれば。私はここに資料として——見ないでも結構ですから、私が申し上げたようなことが事実かどうか、適当な方法ですぐ調べられたらどうですか。それほどやはり内閣の権威というものは私は高いと思うのです。この種の問題を通り越して、ほかの問題にさらさらっと質問を移していいものでしょうかね。私は非常にひっかかりがあるのです。内閣の権威というものはそれ相応の高いものでなくちゃならない。だから、この問題にはっきり決着をつけて、明るい気持ちで私も質問したいし、総理も晴れ晴れとした気持ちで御答弁なさった方がいいのじゃないでしょうか。一応この点、短時間でよろしゅうございますから、もう一遍ひとつ理事皆さんで話し合っていただくわけにまいらないか、こう私は思うのですが。  先ほども申し上げましたとおり、私の質問の半分は政治姿勢の問題、以下続くわけでございます。この問題が国会の努力によってできるだけ明らかにされる段階まで、ひとつ以下の質問を保留をさせていただきたい。私も非常に問題が重要でありますから、やや自制しながらやっておりますが、ああいう形で、三木総理も非常に気持ちが悪いだろうと思うのです。それで、もし三木総理が必要であれば、その三木総理関係しておる証言者の証言の部分をちょっと明らかにしてみましょうか。そして反論がございましたら反論をされた方がいいんじゃないでしょうかね。私はもう総理なり井出長官の御発言を信頼します。もしそうなれば、片一方にもう一つ犯罪が起こるわけです、偽証罪という。それで、そのくだりだけもう少し明らかにしますか。御要求があればいたします、総理
  225. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 楢崎君に申し上げます。  先ほど来、理事の各位が協議をいたしました結果、裁判所当局に御要求の資料の提出を要望いたします。どうぞ御了承願います。  続いてどうぞ質疑をお続け願いたいと思います。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほども申し上げたとおり、少なくとも内閣の長が出てくる問題でありますから、これが国会の努力によって明確になった段階で、私は以後の質問を続けたい。しかし、やってくれということですが、こういう問題があって、あと私の気持ちとしても、とても続ける気持ちにならぬのですよ。——それでは、協力をするとしまして、政治姿勢に関する部分だけ、もう一つやります。一般的な外交、防衛に入ることはできないんです。政治姿勢の問題をもう一つやります。  実は、私きょうの報道を見ておりましたら、大阪空港にエアバスを乗り入れる、十一月中旬か十二月初旬までに。エアバスというのは、つまり御利用の方もありましょうが、たとえば日航が飛ばしておる747SRあるいは全日空のL一〇一一トライスターです。これを大阪に、いままでは騒音問題があって地元の了承を得られなかったが、大体騒音対策協議会か審議会かの結論が出たので、運輸省としては十一月中旬か十二月上旬には乗り入れたいというような報道を私聞いたんですが、その事実を運輸大臣に確かめたいのですが。
  227. 木村睦男

    ○木村国務大臣 大阪空港にエアバスを投入いたします問題は、かなり相当前から、空港の過密を解消するためにも、輸送力が非常に大きいものですから、投入すべく計画をいたしております。しかし、それに対して地元からいろいろ反対がございまして、いまそういう反対をしておる方々とこの問題についていろいろと相談をいたし、また一部調停の申請もございまして、これは一部出ております。それから訴訟も出ておりますが、これが来月の二十七日判決の出る予定になっておると聞いております。そういう現在経過にございますので、運輸省といたしましては、エアバスを、けさの新聞に出ておりますように、いつ幾日乗り入れるというふうな計画をいまだ持つに至っておりません。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ロッキードの一〇一一トライスター、俗称エアバスと称するやつです。これが日本に就航したのは昨年であります。この輸入をして運航するというのを決めたのは三年前のちょうど四十七年十月であります。ところが、このロッキード社がトライスターを諸外国に売り込むについて、その外国の政府、外国の高官、政党の役員等等に多大の賄賂が流されておるという、こういう問題がいまアメリカの上院外交委員会、多国籍企業委員会及び上院の銀行委員会でまさに現在取り上げられて、その追及が行われておるさなかであります。私どもは三年前にこの問題を取り上げた。期せずして私どもが指摘をしておったことがアメリカの国会でいま証明されつつあるわけであります。  そこで、その当時言われたことは、ロッキード社が多大の金を使って地元民にも働きかけて、そして有利に導いたということが問題になる。だから私は、この騒音対策の問題でも、あるいはロッキード社の賄路が渡っていやすまいかという心配をするのであります。そういう点で、いま防衛庁あるいは民間航空を通じて、ロッキード社の航空機はどういうものが日本の空を飛んでおりますか、防衛庁長官と運輸大臣にお伺いしたい。
  229. 木村睦男

    ○木村国務大臣 航空局の次長から御説明申し上げます。
  230. 松本操

    松本(操)政府委員 お答えいたします。  現在、民間航空といたしましては、ロッキード一〇一一型が十四機就航しておるわけでございます。
  231. 丸山昂

    ○丸山政府委員 自衛隊の関係の航空機は、要撃機のF104、それから対潜哨戒機のP2V7、それから練習機のT33、この三種類でございます。これはいずれもライセンス生産でございます。
  232. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実はポスト四次防の装備の問題と絡んで、PXL、次の対潜哨戒機、これが輸入か国産かというのはまだ決まっていない。伝えられるところによると、大体ロッキードのP3Cを輸入するのではないかということが言われておる。したがって、私どもとしては、このロッキード社の賄賂が日本にも関係があるということが、実は米上院銀行委員会委員長、民主党のプロクシマイヤー委員長によって示唆をされておるわけであります。これはまことに重大であると私は思う。  そこで、まず、わが国会におけるこのエアバス問題の追及が、過去どういう形で行われたかということを明らかにしておきたい。これはちょうどいまから三年前に、ボーイングの747SR、ロッキードのいま言った一〇一一、ダグラスのDC10、この三つが非常な激しい売り込み合戦を日本で展開した。これにはそれぞれ商社がついておる。ダグラスDC10は三井物産、ロッキードのL一〇一一は丸紅、当時は飯田がついておった。ボーイング747SRはもちろん日商岩井であります。それぞれ商社が絡んで空中合戦をしておった。私どもは、こういう狭い日本、そんなに急いでどこに行くでして、これほど騒音問題が起こっておるのに、さらにこういう大型のエアバスは必要ではないではないかという観点からいろいろ追及したのです。  まず、四十七年の三月二十四日、予算委員会で私はDC10を取り上げた。不思議なことに、このDC10は三井物産が中に入っておったのですが、私が調べたところ、思惑買いをして、ロングビーチの生産工場にちゃんともう全日空の印をつけて置いてあった、決まりもしてないのに。その問題を私は証拠を示して取り上げたんです。そしてその次に、いよいよこの決定が迫ってきた四十七年九月十九日、今度はわが党の上田哲君が参議院の内閣委員会で、まさにこのL一〇一一を取り上げた。どういう観点から取り上げたかというと、これは議事録のとおり読んでみましょうか。「アメリか大統領選挙に間に合うような時期に機種を設定し、」「ロッキードに金を落としニクソンを勝たせようということになるんだという推定があったら、これをノーだと言えますか。」これは上田君の質問。それで、私どもはそのとき、政治的な背景を非常に問題にしたんですよ。まずそのときの政治的な背景を言ってみましょうか。  四十七年六月、まだ当時補佐官でありましたキッシンジャー氏が日本に来た。そうして亡くなられた佐藤首相と会われて、そうして日米貿易不均衡の是正のために十億ドル程度の緊急対米輸入を亡くなられた佐藤総理に要請をされておる。ニカ月後の四十七年八月、鶴見さんとインガソル駐日大使の会談が行われて、ここでこういうことが合意された。日本の民間航空会社が四十七年度及び四十八年度において約三億二千万ドル相当の大型機を含む民間航空機十数機の購入計画中、まさにもうこのとき半分以上決まった。そうして佐藤さんとかわられた田中さんが、四十七年九月一日、ハワイに行かれてニクソン会談を持たれた。そこで三億二千万ドルのこのアメリカの航空機の緊急輸入が決定をしたのであります。このときに、すでに機種はL一〇一一トライスターに決まったという密約があった。この時点で流れた情報はどういう情報であったかというと、機種はロッキードに決定、一機について五千万円ないし三億円、百万ドルのコミッションがメーカーから商社、これは輸入商社です。輸入商社を通じ日本政界の一部に流された模様、これはアメリカの方からの情報であります。  その時期は政治的に見てどういう時期であったか。四十七年秋ですから、大統領選挙がこの秋ある。ニクソンさんのあの大統領選挙が控えておる。わが日本の方では総選挙が控えておる。そういう政治決戦の時期が日米双方一致をしておった時期である。そうしてニクソン大統領とこのロッキード社のA・C・コーチャン社長とは非常に密接な関係があるのはもう国際的に有名である。インガソル駐日大使がロッキード社の副社長であったことも周知の事実。田中総理の側近と丸紅との親密な関係、これも周知の事実。したがって、こういう日米双方の政治的な背景が期せずして一致した時点でありました。その時期にロッキード一〇一一の機種決定の時期がわざわざ設定されたのです。わざわざ設定をされたのです、政治献金の問題があるから。そこで、どういう小細工を運輸省がやったかというと、通達を出した。通達を出して——いいですか、四十九年度にこのエアバスを輸入、運航させるという通達を出した。なぜ四十九年から運航すると決定したかというと、これは機種を決定して実際に運航するまでに準備期間が十八カ月かかる。だから四十七年の秋決定して政治献金をもらいたい、四十七年秋に決定するためには、十八カ月先の四十九年度から運航するということを先に決めて逆算すればちょうどだから、四十九年度から運航します、だから四十七年の秋決定しなければなりません、こういう小細工をやったのであります。  そこで、われわれが国会で追及した点と、アメリカの国会における現在のロッキード社の汚職問題の追及の点と、期せずして非常に一致した点が出てきておるんですよ。  まずピックアップしてあれしてみましょう。私はアメリカから取り寄せた。いま申し上げましたアメリカの上院の銀行委員会の八月二十五日の公聴会、それから九月十二日の——ことしの九月十二日ですよ。ほんの一ヵ月くらい前なんです。議事録を取り寄せてみた。これはザ・ビューロー・オブ・ナショナル・アフェアーズ、ワシントンにある政府刊行物センターの発行であります。その中から拾ってみると、日本関係のある点を、われわれの三年前に追及した点とまさに一致した点を拾い上げてみましょうか。  まず、八月二十五日の銀行委員会公聴会の議事録から拾ってみます。このときサイモン財務長官とホートン・ロッキード社の会長が証人として呼ばれた。ホートン・ロッキード社の会長、この問題についてこう証言しております。われわれの過去の販売活動の詳細を明らかにすることは、外国の役人の大衆的な告発をもたらす。つまり外国の役人がその国の大衆から告発される、大変なことになるから詳細なことは言えないと。プロキシマイヤー委員長はどう言ったか。ロッキード社の贈賄が広胴型のジェット旅客機トライスターの日本、カナダ、英国、サウジアラビアの半官半民航空会社に対する売り込みに関係しておる、これが委員長の証言であります。それを示唆したわけであります。そしてさらに二百十万ドル、五百万ドル、二百万ドル、この三つに分けて、最初の二つは外国の役人、三番目の二百万ドルは外国政府及び政党役員に対してリベートされた、こう述べております。これに対してホートン会長はどう答えたかというと、私はいまの時点で——「アット・ジス・タイム」と書いてある。いまの時点ではその質問に答えたくない、それを繰り返し言っておる。そこで今度は、共和党のジョン・タワー上院議員、テキサス州出身でありますが、この人がこう言っているのです。われわれはいま非常にデリケートな、過敏な事柄を取り扱っておるのだ。もしかしたら、まあやり方によれば、われわれは外国政府一つや二つ崩壊させることができるかもしれない。大変です。外国政府一つや二つは崩壊することができるかもしれないという、これがその証言ですよ。  しかもそのホートン会長は、さらにこういうことも言っていますね。つまりこれは、ロッキードがつぶれかかって、アメリカの緊急貸付保証法によって、二億数千万ドル、ロッキードはアメリカ政府の保証を受けて金を借りたわけですね。その金の中から賄賂を出しておるから、こんなばかな話があるかという追及ですよ。これはアメリカ国民の金でもあるから、アメリカ国民の金で賄賂するとは何事かという指摘、つまりアメリカの大衆がロッキード社の賄賂のコストを埋め合わせているのではないか、こういう指摘に対して、ホートンさんはどう答えたかというと、ほとんどのリベートは航空機の販売価格に上乗せすることによって取り戻しておるから、何もアメリカの国民には損害は与えていない。逆に言うとどういうことになりますか。売られた相手方は、それだけ、賄賂の分だけ高く買わされて、その賄賂は航空会社が取っておるのじゃないのです。政府が取っておる。あるいは政党の役員が取っておる。その分だけ上乗せされて、日本関係があるのは日本の全日空が買っておるのです。だからその高く買った分はどこで取り返す、結局、乗っておる国民日本国民がその賄賂を穴埋めしておるということになるじゃありませんか、この証言から言うと。  そしてこの問題に関して、ロッキードの副社長が自殺をなさっていらっしゃるのですね。このことを聞かれてホートン会長はこう答えておる。外国へのリベートと、先週の金曜日、つまり八月二十二日朝、ロバート・N・ウォーターズという財務担当の副社長が自殺をされたわけですが、それは二十二日の朝、自宅の台所で頭に銃弾を撃ち込んで自殺された。このウォーターズ氏は独身でありました。そして死体のそばに二十二口径のライフルが置いてあった。そうして遺書が置いてあったんですね、メッセージが。この関係を聞かれてホートンさんは、いまの問題と自殺の間には何の関係もないと信ずる、彼は働き過ぎであったというのが正しいと答えられてはおります。ところが調査官は、最近のウォーターズ副社長のパーソナル・セットバック、これは私はどう訳すか知りませんが、個人的な敗北とでも言うのでしょうか、を記したメッセージが発見された。調査官が発見しておる。ところがこのメッセージには、再建の賄賂の事例が書かれているといわれている。で、プロキシマイヤー委員長も、そのメッセージの個個の名前を挙げなかったけれども、さっき言ったとおり日本、カナダ等々の例示を列挙した。列挙したところに、いまのところとどまっておるわけですね。だから私は、これは大変な問題だと思うのですね。一つや二つの外国政府が倒れるというのだから。  そうしてこの賄賂のもらい方は、どういうふうにしてなされておるかというと、これはプロキシマイヤー委員長指摘であります。外国の会社が、その外国の高官によって指定された銀行への払い込みのためのトンネル機関になった。つまり輸入会社がトンネル機関になってその高官に賄賂が渡された、指定された銀行勘定へ払い込んだ上。これが仕組みであります。まさに三年前に流された事実と全く一致しておる。そこで私は、これは重大な問題だと思うんですね、アメリカの国会での証言ですから。しかも銀行委員長自身がこれをやっておるんです。日本で言えば、荒舩委員長がここでやられたというような形になるわけですね。
  233. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 そんなところに荒舩委員長を出されちゃ困りますよ、迷惑千万。(笑声)
  234. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、権威があるということを言いたいわけです、委員長の権威があるということを。(笑声)  それで私は、これは大変な問題だと思うんですね。国際的な大問題。しかも、太平洋を渡った向こうで日本の名前が、いま言ったとおり国会の委員会で出てきておる。これはほっておけない問題だと思うんですね。それで私は、以下のことをお願いをしたいわけです。強い言葉で言えば要求をいたします。  まず八月二十五日の上院銀行委員会公聴会の議事録を、ひとつ外務省を通じて取り寄せていただきたい。それから九月十一日に、今度は上院外交委員会の多国籍企業委員会が、そのロッキード社の社内資料を、二百五ページにわたるといわれておりますが、それを公表しております。それをぜひ取り寄せてひとつ資料として提出願いたい。この問題の解明について、私はゆゆしい問題ですから、政府責任においてひとつ明らかにしてもらいたい。またでき得べくんば、これは当委員会としてもプロキシマイヤー氏がどうして日本の名前を出してきたか、その出してこられた根拠が一体何であるか。その根拠、情報源等があるはずでありますから、それについてぜひ私は当委員会から照会をプロキシマイヤー委員長にしてもらいたい。もちろん社会党も公式に党としては別途やっておりますが、いかがでしょうか、この点。
  235. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 なるべく外国で起こったことには注意をしているつもりでございますけれども、いまのことは、これはちょっと私の記憶が必ずしも鮮明ではありませんが、ロッキードが売られている国はどこどこであるかというようなことについて、その中に日本が入っておるということをプロキシマイヤー氏が言われたようには私も記憶しておるのですが、そのことといわゆるリベート関係とがくっついて言われたように私は実は思っていなかったのでございます。しかし、いずれにしましても、公になりました資料であれば、これはとりまして委員会に御提出することはできると思いますので、それによって御判断をいただきたい。
  236. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど申し上げましたとおり、以下は一般問題、外交、防衛に入るわけですけれども、この二つの点について、ひとつ努力をしていただいて、理事会の適当な判断された時期に再質問をして、以下の質問時間は保留をして、それを待ちたいと思います。
  237. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。  楢崎君に申し上げます。  ただいま理事で相談いたしまして、残り時間五十二分でございます。これは理事会で相談をいたしまして、適当なときに発言をされるよういたします。よろしゅうございますか。  なお、資料の問題は、なるべく速やかにこれを提出するように督促をいたします。よろしゅうございますか。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長についても、当委員会としてそのプロキシマイヤー委員長に照会をしてもらいたいとお願いをしたわけです。
  239. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 外務大臣、どうですか。
  240. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどお尋ねがございましたプロキシマイヤー委員会等の速記録、議事録、公表されておりますものでございましたら、できるだけ早く取り寄せまして委員会にお届けいたします。
  241. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 よろしゅうございますか。
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長の仰せのとおりいたします。
  243. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それでは、本日はこれにて散会いたします。  次回は、明二十四日午前十時より開会いたします。     午後五時二十三分散会