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1975-10-21 第76回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十月二十一日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹下  登君 理事 谷川 和穗君    理事 湊  徹郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       越智 通雄君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    保利  茂君       細田 吉藏君    前田 正男君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       楢崎弥之助君    堀  昌雄君       湯山  勇君    荒木  宏君       津金 佑近君    松本 善明君       新井 彬之君    正木 良明君       小平  忠君    佐々木良作君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         行政管理庁行政         監察局長    鈴木  博君         防衛庁参事官  伊藤 圭一君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       西沢 公慶君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         文部省初等中等         教育局長    今村 武俊君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省年金局長 曽根田郁夫君         農林大臣官房長 森  整治君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         中小企業庁次長 土谷 直敏君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         郵政大臣官房長 佐藤 昭一君         郵政大臣官房電         気通信監理官  松井 清武君         郵政省郵務局長 廣瀬  弘君         郵政省貯金局長 神山 文男君         郵政省人事局長 浅尾  宏君         郵政省経理局長 高仲  優君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         建設省河川局長 増岡 康治君         建設省道路局長 井上  孝君         自治大臣官房審         議官      石見 隆三君         自治大臣官房審         議官      福島  深君         自治省税務局長 首藤  堯君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       泉 美之松君         日本国有鉄道総         裁       藤井松太郎君         日本電信電話公         社総裁     米澤  滋君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  板倉 譲治君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十一日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     越智 通雄君   不破 哲三君     荒木  宏君   矢野 絢也君     新井 彬之君   安里積千代君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   越智 通雄君     正示啓次郎君   新井 彬之君     矢野 絢也君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑申し出があります。順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 本日は、現在の政治のあり方の問題、さらにはインフレと不況、金融、国債の発行、補正予算と、数多くの問題を取り上げさしていただくつもりでおりますが、まず、私の質問に入る前に、わが党の田中理事から三木総理に対して、三木総理政治姿勢を含めてお尋ねをしたい、こういうふうに考えておりますので、委員長の方でお取り計らいをお願いいたしたいと思います。
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 田中武夫君より関連質疑申し出がありますので、堀君の持ち時間以内でこれを許します。田中武夫君。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 まず、本格的な質問に入ります前に、基本的な姿勢の問題につきまして、総理に要望を含めて若干の所信伺いたいと存じます。  先日の財政経済演説、これに対する答弁等を聞いておって、果たしてあれで国民期待にこたえたことになるかどうか。新聞等の論調を見ましても、従来どおりの誠意なき逃げと責任転嫁政府答弁等々と批判をせられております。ことに予算委員会は、いわゆる持ち時間制になっておりますので、従来ややもすれば、ともかく持ち時間の間、何とか過ごせばいいんだ、こういうことで、長々と要領を得ない、つぼを外した御答弁が多いという感じを受けております。そこで私は、ぜひともそういうようなことではなくて、この予算審議が、ことに本臨時国会における中心課題と言われておるこの補正予算審議が、いま日本が置かれておるところの経済的な問題を初め外交その他、大きな問題に対する何らかの解決点を見出す、そして国民期待にこたえるように、そういう審議にしたい。すなわち、予算委員会審議権威を高める、こういう意味で以下御質問申し上げたいと思っておるわけでございます。  そこで、まず第一に総理にお伺いいたしたいのは、実はこの点も、きのうの予算理事会で問題になったのですが、いわゆる総理を初め各閣僚答弁について責任を持つという文書による確約書を、議長に総理から出してもらう、こういうことすら問題になったわけであります。ところが、それは議事録に残るのだ、その議事録文書以上に権威あるものである、こういうような話も出まして、そこで、私がまず確かめるということになったわけであります。  そういうことを踏まえて、この審議権威を高め、ここで御答弁を願った総理以下各閣僚答弁には責任を持つ、こういう点をひとつ確約をしていただきたい。さらに、先ほど申しましたように、長々とした要点を外した答弁でなく、明確に要点をとらえて答えていただきたい。この二つをまず総理から明確に約束をしていただきたいと存じます。いかがですか。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 当然のことだと考えます。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 当然のことだと、この一語に終わったわけですが、それは、腹から当然のことである、こういうように考えておられる、このように考えます。  そこで私は、総理になお一歩突き進んでお伺いいたしたいのは、民主政治三権、司法、立法行政関係であります。私は、民主政治基本といいますか、基礎は、三権がそれぞれその本分を守る。本分とは、その基礎憲法によって与えられた権限とでも申しますか、あるいは、これは当然義務を含んでおりますが、そうして三権が相互にその権限を尊重する、そうして相侵さない、これが私は民主政治基礎であるべきであろうと考えております。  ところが最近いろいろな問題が起きております。一々これを申し上げません。しかしながら、一口で言うならば、行政立法権限を侵すといいますか、言いかえるならば、内閣国会関係において、内閣国会を軽視する。よく言われる言葉ですが、その態度が最近特に目立ってきておる。いま突然私が明治憲法と言っても、あなたにはわからないとは思いますが――いや、おわかりでしたら具体的にお伺いいたします。そこで、これは後で法制局長官から、よく総理に申し上げていただきたいと思うのです。  まず、明治憲法五条は、立法権天皇にあり、議会協賛権のみで、四十条、これは議会政府に対する建議権であります。建議という言葉は、いわば当時は帝国議会ですが、議会政府の下にというか、少なくともそういう関係である。だから建議という言葉を使っているのですね。建議権です。さらに四十九条。吉國さん、よう見ておいてくださいよ、四十九条。これは議会天皇に外する上奏権です。この二つ条文と、日本国憲法の四十一条、これはもう言うまでもなく、国会地位、すなわち国権最高機関であるということ。六十二条、国会国政調査権。この二つ条文を対比してみても、明治憲法下における議会と今日の国会との地位は大いに異なり、政府内閣国会との関係は大いに変わってきておるということが、この二条をお互いに対照した場合でも、十分に明らかであろうと思います。もし法律的にそうではないということなら――私は、きょうは総理以外の人には質問をしない予定ですが、吉國さん、もしそうではないとおっしゃるなら、お伺いしてもよろしい。  そこで総理、いま申しましたような三権民主政治、さらに立法府行政府、言いかえるならば国会内閣関係、いろいろとごたごたとした問題が最近多く起こっておりますことは、その根源が、三権の、いわゆるお互いにその権限を尊重し、あるいはその分を守るという点に欠けるところがあったからだと思うのですが、そういうような点について、ごもっともでございますというような簡単なことではなくて、ひとつ総理三権について、立法府行政府関係について、どのように把握しておられるかをお伺いいたします。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 田中議員の言われるように、近代国家民主主義の原則は、三権の分立によって運営をされておるわけであります。しかし、その中においても、国会地位というものについては、憲法の四十一条でしたかが規定しておる国権最高機関である。これは主権在民でありますから、その主権者の直接選挙によって選ばれておる。これを代表する国会でありますから、国権最高機関ということにいたして国会権威づけをしてあるわけで、明治憲法と一番この点が違う点であると考えております。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 いま総理は、いわゆる三権民主政治について、簡単でしたが所信を述べられました。そういう考え方を本当に守っていただきたい。  そこで、先ほども申しましたが、もう一度各点を挙げてお伺いいたします。  まず、その第一点は、国会ではその場限りの答弁をする、そうしてその答弁責任を感じない、約束しても実行しないという点。証拠は幾らでも持っております。  第二点、国会での答弁では、目下検討中でございます等々の答弁をしておりながら、その日の夕刊あるいは翌日の新聞その他を見ると、記者会見等で具体的に発表しておられる。あるいは何とか協会、財界、業界等との懇談会等々で、国会では言わなかったことまでべらべらとしゃべる。それが新聞に大きく出ておる。それを見た場合に、これは野党のわれわれだけでなくて、与党皆さん方でもどう感じられるか。与党といえども立法府構成員の一人であります。したがって、国会権威を高める意味においても、私は、この点は与党皆さん方にも十分に聞いておいていただきたいと存じますが、そのようなことであってはならない。  さらに第三点としては、本来立法事項にあるべきものを、それをできるだけ政令委任する。ひどいのになると、行政指導通達などの名目のもとに、いわゆる行政行為で法に違反したことをやっておる。あるいは法の精神を無視したことが平然としてまかり通っておる。そういうことがないとおっしゃるならば、一々証拠を出して追及をせねばなりませんが、本日は、私は堀質問に対する関連でありますので、抽象的に申し上げておきますが、やがて私の本番質問もあります。今後、この審議次第によっては、政令通達行政行為と法の関係等々、具体的に詰めていく用意のあることを申し上げておきます。これらの点について、総理は一体どのように思われておられるか、お伺いをいたします。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政令に対する委任は、憲法七十三条ですかによって認められておるわけですけれども、この国会が唯一の立法機関であるという、この一つの条件を侵すような政令というものの委任はするべきではない。したがって、この点については政府は、いろいろ法律案提出についても、これは十分に戒めていかなければならぬものだと考えております。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、私は政令を否定しておるのではありませんよ。本来、立法にかかるべきものを政令へ持っていこうとする。たとえば、何とか料金あるいは健康保険保険料等々でも、上限、下限は一応決めるというようなことを考えたこともあるようですが、とにもかくにもこのごろは政令委任が多過ぎる。しかも、それが法律の枠を越えてやっておるという事実を、私はたくさん持っております。政令を否定しておるのではありませんよ。あくまでも政令は法のもとにある、これを忘れてはならない。このことを申し上げておるのです。  そこで、各閣僚皆さん方も、いま総理がお答えになった点を十分に踏まえて、今後この委員会質疑において誠意ある御答弁をしていただきたい。あえて私が堀質問に先立ってこのようなことを申しましたのは、当初言いましたように、その場限りの答弁であってはならない。閣僚答弁したことには責任を持つということを十分に踏まえて、権威ある審議にしたいためであります。総理がおっしゃったのですから、もう一々各閣僚の方に、おまえさんどうかとは聞きません。だが、おまえの言っていることにおれは異議があるという閣僚があるなら、手を挙げてください。外務大臣なんかにはたくさん事実があるのですよ。どうですか。代表して副総理、どうです。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 田中さんのおっしゃること、一々ごもっともと存じます。そういう心構えで、この委員会にも、また国会にも対してまいりたい、かように考えます。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 総理と、あとの各閣僚を代表して副総理から約束があった。そういうことで、大体、私の問わんとしたところは答えていただいた。簡単で十分で、誠意があったかどうかは別として、あったと了解いたしますが、それは、これから堀質問等々において皆さん方がどのような態度をとるか、どのような答弁をするかにかかっております。あえて申します。この約束に違うようなことがあるならば、その場で委員会をとめます。それだけは宣言します。  最後に、委員長にぜひひとつお願いをいたしたいのは、これもきのう理事会で問題になりましたが、この審議の中において答弁せられたことが実行せられておるのかどうか、あるいは答弁に反するようなことを、行政が、あるいは内閣がしておるかどうかをチェックする意味において、仮称でありますけれども、予算審議と執行に関する調査小委員会というようなものを置いてはどうかというようなことが、大体、理事会合意になっております。したがって、この小委員会を必ず置くということ、さらにこの小委員会は、小委員会のときに議事録をとるような先例は、三矢問題のときにあったと思います。言うならば、理事だけが横すべりをするというようなものでなくて、ミニ予算委員会とでも申しますか、そのような小委員会設置を提案いたします。委員長からしかるべき御答弁をお伺いいたしたいと思います。
  14. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの件につきまして、きのう理事会において協議をいたしました。まだ全部の政党の方から了承を得ておりませんが、いずれ近いうちに、これが実現できるように努力してみたいと思っております。できるならば、きょうの理事会等において、これが実現できるようにしたい、そういう希望を持っております。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 一部の政党とおっしゃったが、私の感じるところでは、ほとんど合意というようにも感じております。そこで、きょうの理事会等においてもと、こういうことですが、できるだけ早く、遅くともこの補正審議の中において、それを設置することを正式に決定していただくことを要望し、先ほど来、三木総理あるいは福田総理から御答弁をいただいたことを十分に踏まえて、各閣僚が今後の審議に当たっていただくことを重ねて要望し、私の持ち時間、三分ばかり余りましたが、これで終わりたいと存じます。  それでは、堀政審会長本格的質問に入っていただきます。  以上で終わります。(拍手)
  16. 荒舩清十郎

  17. 堀昌雄

    堀委員 まず最初に、いま田中委員が問題を提起いたしました政府政治姿勢の問題について、私は具体的な問題をひとつ総理にお伺いをいたしたいと思うので凝ります。  前七十五国会の終わりに近づいたころでありますけれども、政府提出をいたしておりました独占禁止法改正案について、私どもは各党の政審会長その他の担当者皆さん協議の上、全会一致によるところの修正案が成立をして、衆議院の本会議を通過をいたしました。参議院においては、政府与党である自民党皆さんの抵抗によって、これが審議のされないままに実は廃案になったという、きわめて不幸な事態が起きているのであります。皆さんは、現在の自由経済を守りたい、かねて至るところでそう言っておられるのでありますけれども、一体、皆さんの言っておる自由経済とは何なのか。自由経済が本当に守られるためには、少なくとも独占禁止法が公正に改正をされ、それが執行されることが、私は自由経済を守る重要な柱であると考えておりますし、三木総理も、恐らくそのような観点に立って、この問題を推進されたと思うのでありますけれども、まず最初に、この問題についての三木総理のお考えを承りたいと思います。
  18. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、日本の国情に照らしてみて、自由経済体制を維持することが一番好ましいと考えておる。しかし、その自由経済体制を守るためには、何でも自由で放任だというわけにはいかない。やはり公正なルールというものが必要である。それはやはり、自由競争の公正なルールによって自由競争というものが公正に行われるような形において、自由経済の長所を発揮することができるわけですから、したがって、よりよい独禁法改正ということをしたいという私の所信は変わらないわけでございます。しかし、堀議員も御指摘のように、衆議院では全会一致で通過しましたけれども、参議院ではいろいろな事情があって、審議をされないままで廃案になったわけです。一回も審議をされなかった。  そこで、この国会というものを考えてみますと、補正予算であるとか、財政特例法であるとか、あるいはまた財政関連法案とか、非常に急を要する問題を抱えておるわけでございますから、経済基本法とも言うべき独占禁止法というものは、廃案になって新しく出直す機会において、自民党においてこれをよりよき独禁法改正という見地から再調整をしようということで、いま党内で検討をしておるわけでございます。その成案を得次第――この独禁法というものの改正というものについての私の熱意は変わらないけれども、その調整が済むまでは、これに対して国会に対する提出はできないということでございます。
  19. 堀昌雄

    堀委員 いまのお話を聞いておりまして、私は一つわからないことがあるのです。自由民主党というのは衆議院参議院は別々でしょうか。一体これは一つの党なのでしょうか。総裁である三木総理にお答えをいただきたい。
  20. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 無論それはお答えするまでもなく一つの政党ではございますが、私が申すのは、参議院において一回も審議をされないで廃案になったわけですから、出直しであります。その新しい出発に対して、自民党としてもう一遍調整をして、そして出直そうということでいま党内でやっておることは御承知のとおりでございまして、これが現在の段階であるということでございます。
  21. 堀昌雄

    堀委員 いまの総理の御答弁を聞きながら、私、この春の予算委員会のことを思い出したのですが、総理はちょっとぐあいの悪いところはそらされるんですね。私がいま伺ったのは、参議院で一つも審議がされなかったということでありますけれども、あのとき国会の会期は、衆議院を通過してからなおかつ一回二回審議をすることが不可能な状態ではなかったわけです。参議院自民党皆さんが意識的にやらなかったと私は判断をしておるわけですから、そうなれば、衆議院では全会一致で通ったということは、私どもは、自民党としてあの案に賛成であった、こう考えるわけでありますが、総理は、一体あの案に自民党は反対であったとお答えになれるかどうかを、ここではっきりお答えをいただきたい。
  22. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 賛成であったればこそ衆議院全会一致で通ったわけでございます、
  23. 堀昌雄

    堀委員 いま総裁である三木総理から、あの案に自民党は賛成であった、こうお答えがありました。そうすると、この案は、いまあなたのおっしゃるように、政府はこの国会にお出しになる意思はない。もし私ども野党が、同じ案をこれから議員立法としてこの国会に提案をするときに、あなたは、いまここで国民の前に明らかに、あの案に自民党は賛成であったとお答えになった以上、この私どもの議員立法に、自民党も議員立法の参加の一員として参加されるのが相当である、こう思いますけれども、総裁としての総理の御意見を承りたいと思います。
  24. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま自民党の党内において再調整のために独禁法改正懇談会を持っておるわけでございますから、いま堀議員御指摘になって、野党が再提出をしたらどうするかというお話でございますが、それはどういう時期にどういう意味合いをもって提出されるか、そのときに判断するよりほかにはないということでございます。
  25. 堀昌雄

    堀委員 いまの総理の御答弁は、だれが聞いても筋が通らないのじゃないでしょうか。あの案に自民党は賛成である、こうおっしゃった。賛成であるものを私たちが出したときに反対するということはあり得ない、こう私は伺っておる。だれでもわかるようにはっきりとお答えをいただきたいのであります。
  26. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 独禁法廃案になった機会に、自民党では、これを再調整、これをいろんな角度からもう一遍検討しよう。経済基本法にも関するわけで、この国会は緊急に必要とするような案件が多いわけでございますから、この国会というものは、ほかにたくさんな案件があるので、必ずしもこの国会までに結論を得なければならぬということではないので、この機会に自民党の方として、この大事な独禁法改正経済基本に関する法案をもう一遍ひとつ再検討しょうということでいま検討をしておる。その結論を得れば、これはわれわれは、その結論を得てから国会の提案というものをどうするかという態度を決めたいということでございます。
  27. 堀昌雄

    堀委員 私はちょっとそこのところが、さっきの国会政府関係で重要な問題があると思うのです。  まず、前回政府が提案をされた独禁法というのは政府提案です。政府提案というのは、与党が承認をして、賛成をして出した法案だと思いますが、その点はいかがですか。
  28. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 長い間党内においていろいろ議論を尽くして、党も賛成をして提出をしたわけでございます。
  29. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、少なくとも今日の時点で、政府が提案したあの案がまず最良の案である、この点を確認をさしていただきたい。最良の案でないようなものを国会に出したということならば、さっきの政府国会関係において重大な問題を生ずる。この点ひとつ総理のお答えを願いたい。
  30. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その出した時点において、最良だと考えたから出したことは間違いございません。
  31. 堀昌雄

    堀委員 そこで、これについて修正が行われた。もちろん国会というのは、あなたの言われるように、対話と協調の場所でありますから、お互いが譲り合って、そうしてお互いの一致点を見出すというのが本来国会の機能であると私は考えておりますから、私どもも譲り合い、そうして政府自民党も譲り合って五党の一致した案ができたと思いますが、その点について、譲歩したところであなたは賛成であった、こういうふうにお答えになっている以上、これが現在すべての政党が一致できる最良の案であることに間違いがないと私は思っている。自由民主党の立場を離れて、総理としてあなたは、政府の提案されたものが全会一致衆議院を通過するということは、特にこのような重要な問題については、私は異例のことだと考えておるわけであります。この点について、少なくとも政府が出したものが最良の案である、そうしてそれが修正をされて全会一致で通った案が乙の国会において考えられる最良の案であった、こう考えるのが相当であると思うのでありますけれども、その点はいかがですか。
  32. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 衆議院において全会一致で可決されたというこの事実は尊重されなければならぬ、それを踏まえて自民党でいま再調整をいたしておるわけでございます。
  33. 堀昌雄

    堀委員 再調整というのは、要するにどこかに不十分なところがある、誤りがある、正さなければならない、これが再調整という問題の主要な眼目ではないかと思うのですが、総理、それはどうなんですか。いまの問題を離れて、再調整ということはどういうことなのか、お伺いをしたい。
  34. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 法律案に対しては、常によりよい法律案にしたいということを考えることは、政党として当然でございますから、そういう点で、この時点に照らしてさらにわれわれとして考える点はないかという点で、いま検討をしておるということでございます。
  35. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、総理はあの時点でおっしゃったと言いますが、六月の末に全会一致で通った。いま十月。四カ月確かにたっていますが、この四カ月の中に、いまの経済情勢、あなたが最初におっしゃった独禁法というものの必要性、そういう情勢は変わっておりますか。変わっておればひとつお答えをいただきたい。
  36. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どういう点が変わって、どういう点を再検討しようかというようなことについては、いま党の方で検討をしておるわけでございますから、国会自民党提出をしたときには、これが何らの支障なく国会審議が行われることが望ましいわけでございまして、われわれは、この国会は緊急に議決を必要とする問題を抱えておるので、この国会提出することには適当でないのではないか。そういう点で、相当時間をかけてこれは検討することが可能であるという判断のもとで、あらゆる角度からよりよい独禁法改正にしたいということで、いろいろと各方面から検討を加えておるわけでございます。
  37. 堀昌雄

    堀委員 私は今度の国会を見ておりまして、九月の十一日に召集されて、そうしてそこへ値上げ三法がまず提案をされてきた。その値上げ三法は、衆議院では十分審議を尽くしたから強行採決によって参議院へ送ろうとしておる、こういう事実が一つありますね。私ども野党が全部反対しておる法案ですね。独禁法全会一致衆議院を通過しておるのでありますから、いまあなたがおっしゃるように、確かに他にも重要問題がありますけれども、しかし今回の重要問題というのは、おおむね大蔵委員会とか逓信委員会予算委員会関連があるもので、商工委員会にそのような重要な問題があるようには私は考えておりません。そうすれば、もし衆議院にあなた方が提案をされれば、衆議院はすでに全会一致で通っておりますから、そう時間がかかるわけはありません。十分参議院審議をする時間があると私は思っておるのでありまして、いまの総理のお答えは私は詭弁だと思うのです。これがいま、これまで言われてきた国会答弁がいいかげんなものかどうかという根源に触れておると私は思うのであります。  総理、いかがですか。あなたはいまここで田中委員にお約束になったではありませんか。国会というのは国権の最高の機関である、そこに対して政府誠意をもって対処するといまおっしゃった。まだその話が終わらぬところでいまのようなお話を承って、私は了承することはできません。総理責任のある御答弁をいただきたいと思います。
  38. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 衆議院では可決になりましたけれども、参議院では審議されないままに廃案になったわけですから、そこでこの法案というものは、新しい出直しをしなければならぬわけです。そういう点で、その機会に、経済基本関係する一つの法案でございますから、自民党でもう一遍よくひとつ検討をして、そして出直そうということでいま検討をしておるのですから、これはもう自民党が、衆議院において全会一致で可決されてきた事実を軽視して、これをそのままに葬ろうというような考えはないわけで、何とかしてよりよい独禁法改正ということにしたいということで鋭意努力をしておるわけでございますから、政府はこれに対して責任を感じておればこそそういう手続をとるわけでございますから、そういう点は御理解を願いたいと思うのでございます。
  39. 堀昌雄

    堀委員 いま総理は、廃案になったから出直したい、こうおっしゃいましたね。それならば参議院廃案になった値上げ三法も出直せばいいではありませんか。同じものをこの国会に提案してきておる。総理の、あなたの発言は、さっきお約束になったことと違うのではありませんか。
  40. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 値上げ三法については、堀君も御承知のように、予算にすでに計上されておるわけで、その予算案は議決をされておるわけです。そういうわけでございますので、予算の裏づけの法案になるわけです。そういうことで一つこの御審議を願いたい。それも、衆議院において附帯決議までついてこれが議決になったということがあっても、これは新たなる出発に立つものであるからというので、この御審議には相当な時間をかけたいとして、れわわれ、国会の召集などについても、そういう点も配慮して国会の召集もいたしたわけでございますから、独禁法の場合と別々に考えておるわけではないわけでございます。
  41. 堀昌雄

    堀委員 予算関係の法案であるから、こういうお話でありますね。私どもも、政府が当初考えたような予算が執行される形で今日に至っておるならば、それにとやかく言いません。政府が提案した予算案は、今日がたがたになっておるじゃありませんか。史上未曽有の歳入欠陥が生じて、赤字国債特例法という、これも、財政法が禁止しておるような法律案を提案をする。このような段階で、予算関係法案だから別の取り扱いというわけにはいきません。あなたはそう思いませんか。  もしこれが、当初予算どおり何事もなく進んでおる中で、要するに、この法案が通らなければ歳入欠陥が生じます、そして歳入欠陥が生すれば特例法を出さなければなりません、これならば私たちも考慮をするにやぶさかではありません。しかしいまは違うではありませんか。三兆五千億に上るところの国債をこれから発行しようという、このような情勢の中でこの値上げ法案の持っておる意味というのは、通常の意味ではないということを国民も承知をしておりますし、私たちもそう考えておるのであります。単に予算関係法案だからということでいまの出直しということに当たらないし、いま総理がこれまでお話しになってきたことは、国民が聞いても納得のできないことだと思うのです。  私どもはそういう意味では、総理にもう一遍、この独禁法の問題について、それでは、この国会に出さないとするならば、次の国会には一体どうなるのか。その中身で譲歩の限界は、何を出してきても全会一致で通ったところに中心が置かれてしかるべきである、こういうふうに私は考えておるわけでありますけれども、その点の問題を含めて、一体この国会でなぜできないのか。この国会は恐らく――問題があろう、こう私は考えておるわけでありますから、その点をもう一遍明らかにしていただきたい。
  42. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 もちろん、通常国会提出を目途として、そしてやっておることは事実でございます。独禁法改正というものは必要であるという考え方は変わらないわけでございますから、通常国会提出が可能になるように、自民党内において現在検討を加えておるということでございます。
  43. 堀昌雄

    堀委員 この問題については、幾らこれから論議をいたしましても、これ以上発展しないと思いますが、少なくとも私は、国民皆さんなり議員全体として、政府が本当に国会を尊重し、国会の議決を尊重するという意思があるのかないのかという点は明確になったと思いますので、中身の問題を少し進めることにしたいと思います。  公正取引委員長にお伺いをいたします。  私は、資本主義という経済の仕組みは、独占禁止法の考えておるところでは、競争原理が生かされることによって公正な取引が行われることが基本である、こう考えておりますが、最近わが国で起きておる問題の中には、先般鉄鋼の大手六社は、その主要製品について六千八百円のトン当たりの引き上げをユーザーに申し入れをして、これをのませることに成功したようであります。ところが、同じ鉄の製品でありながら、棒鋼はカルテルを公正取引委員会は認めておる、形鋼については現在市況が崩れておる、こういうふうになっておるわけであります。同じ鉄という一つの商品の中で、大手のつくるものは堂々と値上げがまかり通り、あとの中小の企業がやっておる形鋼なり棒鋼については、競争があるために値段が上がらない。片やカルテルをやる、片や後発の会社の進入を抑えるために、形鋼の製造メーカーがダンピングのように安くして後発を抑える。  これらの状態を見て、いまの日本の中には、寡占価格がまかり通る世界と、少なくとも市場原理によって価格が決まるものがある、こういうふうに私は判断しておるのですが、このいまの鉄の価格の問題について、ひとつ公正取引委員長の見解を承りたいと思います。
  44. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いま堀委員がおっしゃいましたように、鉄の場合には、明らかに日本の価格形成のあり方について、二つの面が露呈されていると思います。  棒鋼十九ミリ、まあ十九ミリが中心でございますが、小棒と言っていますが、これについては不況カルテルを認めたのでありますが、ところが、その当時、一部の、大手の高炉メーカーではありませんが、形鋼を生産している最有力な会社がありまして、これが急激に一万円値下げしたわけです。そういうこともありまして、値崩れ現象が起こる、そういうことから、参加社が実はわずか六〇%で、四〇%はアウトサイダーになる、そういう条件がありましたけれども、やむを得ないということで不況カルテルを認めた。認めましたが、御承知のとおりその後においても値下がり傾向はやみません。一部にやはり投げ売り的な、換金売り的なものがあると思われます。そういうことで自由経済の適応の原則が十分に働いておるのでありますが、その点については、今後私は、不況対策の本当の意味の需要創出の効果があらわれてこなければ、これは解決されないと思います。それで、それがいいのだ、不況対策というのは、あくまで金融財政によって根本的に末端の需要が喚起されなければ、本来の回復というのはあり得ないというふうに思うのであります。金融も最近本格的な引き下げを見るでありましょうし、その点については解決も遠くないと思いますが、そういう点であります。  それから、もう一方の大手の高炉メーカーを中心にする、これは六社が中心でございます。六社以外にもありますけれども、六社が中心でありまして、そういう大手の高炉メーカーは、いわゆるわれわれが言う典型的な同調的値上げ。しかもその同調的値上げのあり方というものは、ある最も有力な会社が、言ってみればチャンピオンになる。相手のユーザーの側についても一種のチャンピオン制をとった。これは御承知だと思いますが、そういうことによって、そういう不況とかなんとか需給の関係とは関係なく六千八百円が実現し、さらに三千円上積みしようかという動きがあるのでありまして、これについては、日本の寡占による価格形成、しかもそれは完全な姿なきカルテルと申してもよろしいでありましょう。そういうふうなものによって形成されている。こういう矛盾した状況が存在するということは、私は認めざるを得ないと思います。
  45. 堀昌雄

    堀委員 総理、いま公正取引委員長がいみじくも答えましたように、私どもは、いまの鉄鋼の六社の価格の引き上げというのは姿なきカルテルだ、こう思っているわけであります。そうしてその姿なきカルテルの指導者は新日鉄であります。この間、参議院でこの独占禁止法の通過に一番強硬に反対した人は、そこに関係のある参議院議員であるということは、国民周知の事実だと思うのであります。総理、あなたは、日本経済は市場経済を通じて自由経済が行われることが望ましいと言っておりながら、これが望ましい自由経済の姿ですか。総理に御答弁をお願いいたします。
  46. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろ自由経済として一つの自由競争という原理が動かなければなりませんが、具体的な問題につきましては、やはり通産当局からお答えをいたします。
  47. 堀昌雄

    堀委員 私は具体的なことを伺っているのじゃないのですよ。よろしゅうございますか、自由経済というのは、競争原理によって市場でよりよき製品がより安く供給されたときに、国民なり企業がそれを買い求めるということの中から、いいものがより安く提供されることを求める仕組みではありませんか。どうでしょう、総理、その点ひとつお答えください。
  48. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのとおりです。
  49. 堀昌雄

    堀委員 そのとおりだということでありますから、そうすると、そういうのは、いまさっき公正取引委員長が申しましたように、小棒というのでカルテルをつくって、生産を減らしてこうやりましょうといっても、四〇%ほどその枠の外にいる者があるために、値段が下がるのをひとつ食いとめてやろうと思っても下がる。これは競争原理がやはり働いているわけなんですね。ところが、六社の方はそのリーダーである新日鉄が六千八百円、そうして自動車の主要メーカーと話をして、そうしてここで話がつけば右へならえで六千八百円を強行していく。これは競争も何もないわけですね。力でものが決まってくる。力関係で決まる。これは私は、自由競争の原理ではない、こう思っているのですよ。  だから一体あなたは、棒鋼にあらわれておる方に自由競争の原理が働いておるのか、六社の六千八百円の値上げの方に自由競争の原理、言うなれば自由経済の原理が働いておるのか、どちらですかとわかりやすく伺っているのですから、これはどちらだと答えるのが、総理、当然じゃないですか。
  50. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは今日は自由経済の原理が動いておるわけですが、価格の形成については、それぞれのやはりコストの計算もありますから、それをもって一概に独占的価格であると断ずることは、私はできないと思います。
  51. 堀昌雄

    堀委員 委員長、さっきの田中さんの発言で、総理誠意をもって答えると言っておられますね。私はどちらですかと、こう伺っているわけでしょう。要するに二つのものがある。そうすると、どちらかが自由経済原理が働いて、どちらかは自由経済原理の枠外だとなるはずではありませんか。私は、棒鋼の方には自由経済の原理が働いているけれども、鉄鋼大手六社の方には自由競争の原理は働かない。集まってともかく力で押し通った。言うならば、リーダーが六千八百円でいくぞ、後ろは皆わかりましたと言って、手を挙げてその後ろをぞろぞろついていく。これは自由競争の原理ではない、こういうふうに思っているのですよ。総理はそのどちらですかと私が伺っておるのに、どちらも答えないというのは、国権最高機関だとさっきおっしゃった国会に対する侮辱ではないですか。
  52. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 三木内閣総理大臣、はっきりお答え願います。
  53. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 堀君にお答えいたしますが、この棒鋼の価格につきまして、具体的にそういう問題に対して監督官庁である通産大臣からお答えをいたしますということも、全部私が答えるということではなくして、やはり具体的なそういう鉄鋼の価格について力で押し切ったというふうな話でもございますので、その具体的な問題を詳細に知っておる監督官庁の通産大臣からお答えをいたすことが適当だと言っておるのです。私が全部答えなければならぬということは、それは国会の尊重と言っても、やはりよりよく堀君の御質問に対して答えられる大臣が答えるということが、国会を尊重するゆえんだと私は思うわけでございます。
  54. 堀昌雄

    堀委員 私は、具体的な政策の内容についてならば、通産大臣に伺います。物事の基本のところを伺っておるわけです。そしていま、公正取引委員長がはっきりと、これは姿なきカルテルですということを申しておる。詳しく説明がされておる。私も、これは全国の皆さんがごらんになっておることですから、わかりやすく問題を提起しておる。政治的な問題を伺っておるのです。行政の内容を伺うのなら、もちろん私は初めから通産大臣に伺いますけれども、これは言うなれば、そういう政治基本の物の考え方を聞いているのですから、これは総理がお答えになってしかるべきではないですか。  自分でさっき最初におっしゃったではないですか、独占禁止法というものがなぜ必要なのか、それは現在の日本にとっては自由経済という仕組みが必要だからと、それを口にする以上、自由経済とはどういうものかということがわかっていなくて、口にできるはずはありません。それがわかっているのなら、いまの私の提案に答えられないはずはありません。委員長の善処を要望いたします。
  55. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 堀君は、力で押し切って決めたのだ、こう言われるわけでございますが、力で押し切ったという、具体的なそういう問題に対して、監督の省である通産大臣が答えるというどとが悪いでしょうか。あなたは、この問題の決定に対して、新日鉄が力で押し切ったんだ、こういうことを言われますから、私はその問題に対して、監督官庁の通産大臣をしてその事情を御説明申し上げることにいたしますと言うのを、通産大臣はだめだとおっしゃる。私から具体的な問題について全部お答えできるとは限りません。私が各省大臣をして答えさせる場合も、これはお許しを願わなければならぬわけでございます。
  56. 堀昌雄

    堀委員 わかりました。いまのは私の感じを言ったのですからね。具体的な事実は、鉄鋼は新日鉄が六千八百円の価格を決めて、あとは右へならえをしたということですね。これは一つの事実ですからね。私がいま力で押し切ったと言うのは、私の感じですから、それは取り除きます。いまの場合の表現としては取り除きます。  要するに、具体的な事実は、新日鉄が六千八百円という話し合いをして決めて、それに基づいてみんな右へならえをした。私どもは、これを要するに協調的寡占の協調価格だ、こう思っておるわけですが、そういう事実があったわけですね。  今度は、次に、もう一つ問題があるのですが、いま通産省は、石油製品の価格についてガイドラインというものを設けて、そして、通産省のお墨つきの価格です、これでひとつ値上げをしましょう、こういうことをいまやろうとしておるわけですね。これも、やや形は違いますけれども、質は同じことですね。私はそう理解しておるわけですね。  ですから私は、後でこれからいろいろとインフレの本質その他を論議するために、この問題をやっておるわけですけれども、本来、資本主義経済というのは、競争原理が働いて市場メカニズムというのが動いている限り、景気がよくなるということは、供給と需要の関係で、需要の方が供給力より多くなるようなときに、要するに生産力をうんと上げようということで新たな設備投資が起こり、そのことがまた需要になって生産全体が大きくなる、このときを景気がいい、こう言っていたわけですね。景気が悪いというのは、これまでは、生産力が大きくなり過ぎて供給量が非常にふえたために、要するに過剰生産という状態が起きてくると、値段が下がって、そして引き合わなくなってくるので、生産が縮小されるというようになって不況が起こる。要するに、好況のときは物価が上がり、不況は物価が下がる、これがこれまでの仕組みだったわけでしょう。  ところが、いまやその仕組みが通じなくなっている一つの具体的な例示を、いま私は鉄鋼でしたわけですよ。これがいまの不況の重要な背景にある、こう思っているから、私は総理にそのことを伺っているわけです。  総理がそれらの基本的な重要問題の認識がなくして、あなたこれから、五大国会議、まあ七大国会議になるかもしれませんけれども、出かけようとおっしゃるわけでしょう。これは経済問題の会議ですよ。私はここで、総理がお出かけの前に、少なくとも基本的な問題について、国民の前に明らかにされるぐらいでなければ、六大国になるか七大国になるか知りませんけれども、何のためにお出かけになるのかわからないというふうに感じるわけですから、せめて私がわかりやすい形でお尋ねをしておることについては、これは政治的な問題としてお答えを願いたいと思うのですが、総理、その点について、私がいま申し上げた経済の仕組みというのはどう御理解になるのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  57. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまの御質問は、力で押し切ったという前提に立って言われておるわけですから、そうではなしに……(発言する者あり)
  58. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 静粛に願います。
  59. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自由経済は、やはり自由競争の原理で動くということが一つの原則でございます。したがって、好ましい形というものは、やはり自由競争によって一般の需要者の利益を守っていくものでございますが、個々の具体的な例について、この場合はどうだ、この場合はどうだという例の御質問については、担当の大臣からお答えをいたしますと言っておるわけで、原則としては、自由競争の原理が動くということが自由経済の大原則であることは、言うまでもないことでございます。
  60. 堀昌雄

    堀委員 通産大臣、どうせ後で伺いますから、ちょっとお待ちください。  総理、要するに自由競争で物の価格は決まるのが原則だとおっしゃいましたね。そうすると、さっき私が言った新日鉄の六千八百円、あとは右へならえで決めた六千八百円というのは、私は自由競争で価格が決まったものではないと感じておるから、そうかどうかだけをお答えいただけませんか。
  61. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その点について、力でひとつ……(堀委員「力はやめたと言った。取り消すと言った」と呼ぶ)やめたにしても、自由競争でなしに、新日鉄がそういう価格を打ち出したがために、右へならえでそれが一つの価格の圧力になったのだ、こう判断をされておりますが、この点については、具体的にその問題について、事実関係について通産大臣からお答えをいたしますと言っておるのです。
  62. 堀昌雄

    堀委員 私がこれほどわかりやすくお尋ねをして、なぜ総理がそこにこだわっておられるのか。これは委員長、私は非常に重大な問題だと思うんですね。私はむずかしいことを言っておるわけでないことは委員長おわかりだと思うんですが、委員長、どうでしょうか。私は大変むずかしいことを聞いて、総理はとても答えられないほどの難題だと思われますか、委員長
  63. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 まあ大体おっしゃるとおりでしょう。
  64. 堀昌雄

    堀委員 委員長は、私の言うとおりだろう、こう言っておられるのだから、総理、あなたがいまやっておられる姿が、私はいまの国会答弁がいいかげんなものだということの一つのあらわれだと思うんですよ。誠意をもって答えていただくならば、私はそれは見解の相違というのはあるんですから、私も何も見解が食い違ってどうこうと言っているのじゃないですよ。しかし、この二つのうちどっちですかということに答えられないというのは、私は誠意がないと思いますね、三木さん。どうでしょうか、それは。誠意があるかないかだけ、それではひとつお答えください。
  65. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その点は、具体的に担当大臣から説明したらもっとできるんでしょうが、鉄の面においてもやはり自由競争の原理は動いておる、こう私は考えておるので、それを動いてないんだ、皆やっぱり自由競争の原理が動かないで力の圧力によって決められていくんだというならば、見解は私は違うということでございます。
  66. 堀昌雄

    堀委員 そうですが。いまの、新日鉄が六千八百円と決めたら、あとの五和が全部六千八百円という価格に決めるのは、自由競争の原理が働いておるからこう決まったんだと、大変いい答弁ですから、私はここまでにしておきますけれども、恐らく外国の新聞記者がこれを報道すれば、いまの五大国か六大国の代表者会議に出席する資格はないという報道が全世界に流れるでしょうね。この問題はここまでにしておきます。  次に通産大臣に一つお伺いをいたしておきますけれども、私らが新聞で承知しているところですけれども、石油製品の価格について、通産省はガイドラインを決めて値上げを指導するというふうに新聞が伝えておりますが、この状態は一体どういうことか、ちょっとお答えをいただきたい。
  67. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 その背景を簡単に申し上げますと、一昨年秋の数倍に及ぶ急激な石油価格の上昇、それからその後に続きました非常に深刻な不景気、この影響を受けまして、現在採算に乗っていない産業は相当あるわけでございますが、その中でも代表的な産業が石油企業でございまして、現在年間数千億の赤字経営を続けておる、こういう状態でございます。  こういう状態が続きますと、経済が破綻をいたしますし、ひいては日本の産業に一番大事なエネルギーの源であります石油の安定供給ということが非常にむずかしくなる。何とかこの価格体系を採算に近いところまで持っていかないと事態は重大になる、こういう考え方のもとに、この価格問題をどういうふうに解決すればいいか、いまいろいろ結論を急いでおるところでございます。最終の段階ではございませんが、とにかく事態は重大でございますので、一刻も早く解決をしたい、こういうことでいま鋭意検討を続けておるところでございます。
  68. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、要するに、石油精製の会社が数千億の赤字がある、これを救済するために、政府がある意味では公定価格を決めて、値上げにひとつ協力してやろう、こういうことですね。
  69. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 そのやり方につきましては、いま検討しておるところでございまして、どういうやり方が最も有効であるか、まだ最終の結論は出ておりませんが、いま結論を急いでおるところでございます。
  70. 堀昌雄

    堀委員 私はいまの問題も非常に重要な問題だと思うのです。福田総理は、今回の国会答弁でずっと伺っておりますと、新価格体系へ早く移行した方がいいのだ、こういうふうな御答弁をしておられたと思うのでありますが、その新価格体系というのは、コストが上がったらコストが償われるように値上げをするのだというのが、どうも新価格体系のようですね。そうすると、ともかく赤字が出たら、赤字が出ないようにするためには、価格を上げる、これは一番簡単な方法ですね。それではどんどん物価がまた上がるということになるのじゃないでしょうか。  私は、いまの市場における価格というのは、自然にできておる価格だと思うのです。資本主義という国においては自然にできておる価格。それが間違っておるから公的に値上げを指導する。こういう問題は、まさに独禁法関連のある問題になってくるわけですね。たとえば二千円なら二千円というガイドライン、引き上げるのをここまでにしようという線を政府が決める。政府が決めても、競争がある限り、さっきのカルテルのように、本来、競争があったら、カルテルで値段が上がるように決めても上がらないといういまの市況の中で、政府が決めたラインに上げていこうとすれば、何らかの話し合いなり何らかの処置、要するに独占禁止法に違反するような処置をやらない限り、そこへ私はいま持っていけないと思っているのですよ。いみじくも公正取引委員長が言いましたように、それを持っていくようにするのは、それはそういう政府の操作ではなくて、本当に需要が喚起できるような政策を打ち出して、その政策の中で、需要がついて景気が回復する中で、初めて市場価格が上がってきて正常な状態にいく。言うなれば、私どもは現在の不況は政策不況だ――これから後でやりますけれども。政策不況のしりぬぐいが企業に寄っておる。そこで、この企業に政策不況のしりぬぐいをさせておるのではかわいそうだから、まあひとつ政府が手をかしておまえら引き上げてやろう、これでは国民は踏んだりけったりということになるのじゃないでしょうか。私は非常にここに問題があると思うのです。  公正取引委員長にお伺いいたしますけれども、仮にガイドラインができたときに――ガイドラインをつくるのは政府が勝手につくるので、これは私は仕方がないと思いますよ。理論的にはこういう価格が赤字が出ないためには必要だというのを決めるのは政府の勝手でいいけれども、持っていく仕組みのところに、私は独禁法関連する問題が出てくると思いますが、公正取引委員長の見解をひとつ承っておきます。
  71. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 一般論としてよりも、まず私はそれを石油について申し上げますれば、石油には御承知のように石油業法がございます。その業法の中で標準額を定めることができる。標準額というのは、国民生活安定緊急措置法の標準価格よりは相当きめの粗いものでいいと私は思います。私はですね。というのは、その書いてあるのが、ほかの国の生産費や輸入価格、あるいはいろいろな外国の価格との比較などをしんしゃくして決めればいいというのですから、その標準額を定めることは、法律上の権限として許されておるわけです。  ただ、それにもよらないで、ただのガイドラインを示されるというのがどういう意味なのか、その辺がはっきりしない。なぜそれを避けて通られるのか。標準額の説明を求められたら困るからそうするのだというのでは、私はおかしいと思うのです。やっぱりそれ相当の理屈があっておやりになる。  しかも、独禁法との関連から申しますれば、それはあくまで目安でございますから、公定価格じゃございません。マル公というものは、私は法律によって特別に定めなければいかぬと思うのです。これは一般的にそうでございますが、マル公でなしにガイドラインという形で上げた場合に、その価格を業界が守らねばならない、それからあと他のユーザーに対してもそれに応じさせなければならぬ、ここまでいくのは、明らかに行き過ぎであると思います。  それは独禁法との関連においても、それを守るために、業界の業者が三十以上あるとして、お互いに横の連絡を全くなしにそういうことができるのかという問題が絡みますから、私は、標準額を示されるならば、それは示しっ放しでよろしいのでございますが、そういうガイドラインというあいまいといいますか、ひょっとしたら独占禁止法に触れるおそれのある方法をとられることは慎重にしていただきたいという考えでございます。
  72. 堀昌雄

    堀委員 いま公正取引委員長が申しましたことが、私は自由経済の原則を踏まえ、現在の法律に基づく公正な見解だと思います。総理はどうお感じになりましたか。その感じで結構ですから、お答えいただきたい。
  73. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 行政指導というものがやはり独禁法を犯すようなものであってはいけないと思います。
  74. 堀昌雄

    堀委員 いま総理は、行政指導独禁法を犯してはならない、こうはっきりここでお約束になりましたから、ひとつその点は国民も十分監視をしながら、今後の石油価格の問題に注意をしてまいりたいと思います。  そこで、これからひとつ、私、一般的な経済問題に入りますが、まず最初に、委員長、資料を皆さんにひとつお配りをいただきたいと思います。
  75. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 はい。
  76. 堀昌雄

    堀委員 総理は、この九月十六日の所信表明演説の中で、こういうふうにおっしゃっておるのであります。「今日、日本経済は、いまだかつて経験したことのない複雑にして困難な局面に立っております。まず第一に、石油危機を契機として、世界的な規模でインフレが起こり、それを克服する過程で不況が広がりました。」こういうふうにおっしゃっています。このとおりでございますね。
  77. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのとおり考えます。
  78. 堀昌雄

    堀委員 要するに、今回起きたインフレは石油ショックによって起きた、こういうふうにおっしゃったわけですから、そのとおりだということでありますが、私は実はそうは考えていないわけであります。  いまお手元に小さい資料をお配りをしておりますから、総理のところにもお配りください。  ちょっと総理、これをごらんいただきますと、これは何を書いたかといいますと、一番左側に「卸売物価の前年同月比」というのを昭和四十七年七月から四十八年十二月まで書いておりますが、御承知の石油ショックというのは四十八年十月でありますから、その九月のところまでで実はごらんをいただければいいわけでありますけれども、それの卸売物価の対前年同月の伸びが書いてございます。その次には「マネーサプライ平均残高の前年同月比」ということで、これは要するに、金融機関以外の国民なり企業が持っておりますところの現金、それから普通預金のような引き出し可能の流動性預金、定期預金、この三者の通貨の量を前年の同月で比べたものであります。右側に「公定歩合の動き」というのを参考のために書いておきましたけれども、四十八年九月というのがいまの石油ショックの前の月ですが、そのときにいまの日本の卸売物価は、すでに一八・七%前年同月比で上がっていたわけです。四十七年七月のところをマイナス〇・三と書きましたのは、日本経済における卸売物価は、それまではずっとマイナスだったわけです。プラスに転じましたのは、実はこの昭和四十七年八月にプラス〇・一というところからプラスに転じて、それが一・二になり、二・四になり、四・二になり、五・八と、倍、倍、倍というのに近いほど、どんどんここから物価が上昇してきて、要するに、石油ショックの前の九月には、一八・七%実は前の年より卸売物価が上がっておる。そこで、マネーサプライという通貨の供給量は、そのときには三一・九という比率で前年に比べて増加をしておった、こうなっておるわけですね。  それは、なぜこういうことになったかというと、右の方に書きました公定歩合が、四十七年の六月、四・五%から四・二五%に引き下げられたわけであります。ですから私は、まずここで、田中内閣は七月からでありますが、佐藤内閣の最後のところで公定歩合の引き上げをして、そこから実は過剰流動性が急激に広がって、その過程の中で卸売物価がどんどん上がってきた。そこで、四十八年の四月に気がついて、五%に公定歩合を上げ、続いて五月に五・五%に上げ、七月に六%に上げ、八月に七%に上げたけれども、実は物価の騰勢はとまらなかった、こうなっておるわけです。  総理、これをごらんになれば、要するに、あなたはいま、日本のインフレは石油危機以来だ、こうおっしゃったけれども、石油危機以前にすでに日本はインフレだったということがおわかりだと思いますが、総理、いかがでしょうか。――ちょっと待ってください。総理の御発言について私は聞いておる。
  79. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。経済の問題ですから……。
  80. 堀昌雄

    堀委員 私は、総理が演説でおっしゃったことについて伺っているのでして、だから演説について、そうかと私が確認したら、そうだとおっしゃっているわけですから、それで伺っていることですから、あとの一般論はまた福田総理伺いますが、これは総理の御発言に関することですから、総理からお答えいだたきたい。
  81. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 確かにいま御指摘のように、過剰流動性に対する処置というものに対しては、いろいろ反省の余地は私はあると思う。しかし、この石油の危機以来、狂乱物価といわれるような急激なインフレを高進したということは事実でご、ざいます。
  82. 堀昌雄

    堀委員 以前にもインフレはあったということでございますね。それは政策的には反省する余地がある、こういうことでございますね。私はそれだけをお答えいただければ結構なんです。何もむずかしいことを聞いているわけではなくて、要するに、いまの所信表明ではそうなっているから、認識が違いますということを確認をしたかっただけでございますから、それはそれでいいのでございます。  そこで、福田総理、企画庁長官にお伺いをいたしたいのは、このことでちょっと何かおっしゃりたいのでしょうけれども、いまのインフレと不況の問題というのは、さっきちょっと申し上げたように、実はこれまでのインフレ、その後で来る不況というものとは、ちょっと違うと私は思うのです、質が違うと思います。質が違うもとはどこにあるかというと、これまでは要するに市場メカニズムというので、売り手と買い手の関係で物の値段が決まっておったのが、実はニクソン・ショック以来、非常に通貨もたくさんどんどん出されたという背景の中で、農産物の不作が中国だとかソ連に起きて、大量に買い付けされる。そうすると、農産物は一遍にだっと上がるけれども、一回上がったら、こういうのはなかなか下がらないというような関係で、世界的に卸売物価、ロイター商品というのが上がってくるという一つの仕組みと、そこへ石油の問題が出て、これは需給関係でなしに価格が決まるという問題が出てきたわけですね。だから、いまや日本経済も世界経済も価格が需給で決まるものと需給で決まらないものと二つ出てきた。私は、これが今日の新しい経済情勢だ、こう認識しておるわけです。福田さん、それでいいですか。簡単にやってください。
  83. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 世界経済の動きという中でとらえてみると、いま堀さんのお考えのようなことで私はいいんじゃないかと思います。つまり資源有限時代、これが非常に大きく経済社会に影響していると思うのです。資源保有国の立場が非常に強化された。そこで、経済的な価格ということでなしに、つまり需給ということ、そういう立場だけでなくて資源の価格が決まってくる。それが国際的にだんだん広まりつつある。そこは、今日までの経済原則とこれからの経済原則というものが非常に変わってくる、こういうふうにとらえております。
  84. 堀昌雄

    堀委員 そこで、福田総理伺いたいのは、政府はこの間、経済見通しの改定を出しましたね、大変な大きな改定です。私も過去にこの経済見通しというのは国会でずいぶん長く論議をしておるのですが、過去には改定というのは、いつでも上を向いて改定したわけですね。初めに出したのが小さ過ぎて、いつでも上へ向けて改定してきた。ところが昨年から経済見通しは下へ向けて改定するようになりましたね。昨年も下向き、今度も下向き、こういうふうになってきましたね。これは一体なぜでしょうか、そこをちょっとお伺いしたい。なぜこれを改定しなきゃならないか。
  85. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一番大きな理由は、世界経済が非常な激動をしておる、こういう問題であろうと思うのです。世界先進国どこをとらえてみましても、成長率なり物価の見通し、これはぐるぐる変わってくる。今日ではみんなが景気上昇のための努力をいたしておりますが、それでも世界経済全体として見るときには、ほとんどの国がマイナス成長にことしはなりそうだ、こういうような状態です。日本経済は、世界の経済の中の重要なる一環でありますから、世界の経済の流れに逆にさお差すというようなわけにいかない。そこに経済見通しをわが国においても変えなければならぬという根源がある、背景がある、こういうふうに考えております。
  86. 堀昌雄

    堀委員 一番大きな見込み違いはどこですか。
  87. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 輸出の不振でございます。
  88. 堀昌雄

    堀委員 もう一つ、私は重要な問題が抜けているのじゃないかと思うのですが、今度の改定見通しで国民総生産が減りました額の総額は八兆九千五百億円。あなたの方の改定で減っているわけです。その減った中身を詳しく調べてみますと、個人消費支出、国民が日常生活に使う費用ですね、この個人消費支出が実は二兆二千五百億円減っておるわけです。その次に、民間の会社が工場を建てる民間設備投資、これが六兆五百億円減っていますね。それから在庫品の増加。要するに、品物が次々に売れていけば、たくさんまた品物を卸や生産者から買わなければなりません。その倉へ積み増すところの商品というのが、実は予想に反して一兆二千五百億円減った。輸出もいまお話しのように三兆八千億円減った、こうなっておるわけですね。あなたは、いま見込み違いの一番大きいのは輸出だとおっしゃったのですが、それは項目としてはわかりますけれども、金額としては、一番大きな見込み違いは、これは民間設備投資なんですね。初めはプラスと書いていたのがマイナスになっちゃったわけですから、これは非常に大きな見込み違いで、金額でもそうなっておるわけです。  そこで、一体この八兆九千五百億円の中で、どういう順序でそれが影響しているかと言えば、マイナスになった部分だけ見れば、いまの民間設備投資が六七%、輸出が四二%、個人消費支出が二五%という順序で実は影響しているわけです。これはいずれも私どもは最終の需要だというふうに言っておるわけですね。本当の需要がなければここは大きくならない、こういうふうに私どもは言っているわけです。ところが、いま政府がやっておられる不況対策というのは、どうも私から見ると、この最終需要というものが増加するような方向に向いていない、こう思うのですが、福田総理はどうお考えですか。
  89. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 最終需要を喚起するための今回の第四次対策なんです。最終需要項目とすれば何があるかというと、個人消費、設備投資、それから政府の財貨サービス、輸出、これが主なものでございますが、個人消費を故意に刺激する、これは妥当でない、こういう見解で、それはしない。つまり減税ですね、そういう政策はとらない。それから設備投資は、設備過剰状態だから、これを刺激いたしましても、なかなかそういう効果を生じ得ない。それから輸出はどうかというと、世界の経済環境が非常に悪いから、これに過度の期待をすることはできない。できるようになれば非常に幸せでございまするけれども、それはなかなかむずかしい。そこで財政による最終需要の喚起以外にはない、こういうふうに考えまして、総額一兆六千億、その財政措置を講ずる、こういうことにしたのです。これは最終需要となってあらわれてくる、こういうふうに考えております。
  90. 堀昌雄

    堀委員 そこで、今度はちょっと大蔵大臣にお伺いをいたします。  大蔵大臣は、去る十七日の財政演説の中で、こういうふうにお話しになっておるわけです。「本年四月以降三次にわたる公定歩合の引き下げが行われ、市中の貸出金利もこれに追随して着実に低下しております。」これは余り着実に低下しておらないことをちょっと申し上げますが、「このたび預貯金金利の引き下げを図ることとして所要の手続きを進めているところであります。幸いに、この引き下げによって国内の各種金利の低下が促進されれば、一段と景気の着実な回復が期待され、」こうおっしゃっているわけですね。いま福田総理は、最終需要については、個人消費は、減税をやらないし、これはだめです、それから設備投資もいまの情勢ではどうやっても期待できない、輸出もそうだ、最終需要は全部だめだと言われたので、公共事業が支えだ、こうなっているわけですね。そのときにあなたは、金利を下げたら一段と景気の着実な回復が期待されるというのは、福田総理のお話と大分食い違うように思うのですね。大蔵大臣いかがですか。
  91. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今度の景気対策は、財政金融両面にわたりましての総合的な施策として展開いたしたものでございます。財政の方につきましては、先ほどお話がございましたが、金融の方につきましては、金利全体についてこれを下げてまいるという方向の施策を進めることにいたしたわけでございます。今日まで、総需要の抑制手段といたしまして金利政策をとらえて、金利水準の引き上げを図ってきたわけでございますけれども、総需要抑制策を緩和し景気対策をやらなければならぬという客観情勢でございますので、金利を政策的につり上げてまいりましたものを、もとの方向に戻してまいるというのが今度われわれがとっておる政策でございます。これは、需要の抑制のためにとられた、そしてタイトマネー・ポリシーをとってまいりました政策のうらはらを、いまやろうといたしておるわけでございますので、これが景気の回復に寄与するということを私どもは期待いたしております。
  92. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと個々のファクターで具体的に伺いますけれども、では、金利が安くなったら、いま設備投資を企業はやりますか、お答えください。
  93. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま直ちに民間におきまして設備投資が活発になるものと思いません。しかしながら、企業がいま多額の金利負担にあえいでおりますことは御承知のとおりでございまして、経済の担い手である企業がこのような状態にありますことは、決して健全な姿でないわけでございます。したがって、その軽減を可能な限り図ってまいります場合、企業の経営の健全化を通しまして、企業経営がノーマルな姿になってまいるということは、当然景気の回復に貢献するものと思います。
  94. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと、時間がありませんから、簡単にお答えいただきたいのですけれども、要するに直接にはそうならないと思うのです。いま大蔵大臣、金利負担が大きいとおっしゃいますけれども、一体、平均して日本の企業の製品コストの中に占める金利負担はどのくらいだと御承知になっておりますか。お答えは経済企画庁長官でも結構です。日本の一般的な企業のコストの中に占める金利負担の割合は一体幾らぐらいか。平均的で結構です。
  95. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、総合した調査はありませんけれども、典型的な企業、その金利負担は五%ぐらいです。
  96. 堀昌雄

    堀委員 金利負担全体で五%、いま、その五%の中の一%を動かすかどうかという話ですよ。よろしゅうございますか。五%というのは百分の五ですから、その百分の五の、またあと百分の一を動かすということですね、金利を動かすということは。それが、いまおっしゃるように、私どもは景気の回復にそんなに大きく影響すると思っていないのですよ。  だから、私が申し上げたいことは、要するに、いま企業は何が一番必要かと言えば、金利負担もいろいろあるでしょうけれども、仕事がほしい、需要がほしいということなんですね。その需要の一番大きなウエートはどこが占めているかと言えば、ことしの場合には、改定見通しで見ますと、個人消費のウエートが五六%ぐらいになっているのですよ、ほかがみんな落ち込んできたものだから。それほど大きなウエートを持っておる国民の消費を、副総理は、減税もしません、こうおっしゃっているわけですね。  アメリカの景気はいま着実に上がってきましたね。副総理も御承知だと思いますが、これは何が一番大きなてこになっていると思われますか。
  97. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 やはりこれは減税なんかが響いているのだと思います。ただ、アメリカと日本が違いますのは、アメリカの当局者なんかとも話してみると、景気政策としては公共投資が一番いい、こういう認識です。しかしアメリカの方は、生活の重要な要素である住宅、これはもう非常な整った状態です。それから生活関連の公共施設、これも非常に整っておる。公共投資を探しても、もうそう目新しい公共投資はないというのです。そこで、景気波及効果としては、公共投資に比べればそう能率的ではないけれども、個人消費を刺激するという考え方、これをとるのだ、こういうことを申しておりますが、私の方では膨大な国債を消化しなければならぬ。これはどうやって消化するのだ。消化されなかったら大変なことになります。消化する道というのは、個人が節約をして公債を直接買うとか、あるいは預金をして、その金融機関が公債を買う、こういうほかないので、貯蓄ということを考えましても、ここで消費奨励政策ということはなかなかとり得ない。また景気対策の効果としましても、公共投資の方がはるかに即効的である、そういうふうに考えております。
  98. 堀昌雄

    堀委員 アメリカは、財政が黒字で減税しているのではなくて、赤字財政で減税しているわけですね。いま必要なのは一体何かというと、さっきからお話しのように、景気が回復をしない限りは物は始まらないというところに、いま来ているのだろうと思うのですね。そのときに、いまあなたは公共投資だけやればいいとおっしゃっていますが、国民はいま何を言ったって急激に昔のように戻りっこはないのです。しかし、物価も大変上がり先行き経済の見通しも暗いから、必要なものも買わないでがまんをしておるというのが、いまの国民の状態なんです。だから私どもは、この国会に、中程度の所得者以下の方たちだけに、年度内に三万円の税額をひとつ控除することによって減税をしたらどうですかという提案をします。さらに、われわれの基本的な考え方としては、減税の影響に浴さない所得の低い方たちに、ひとつ社会保障特別基金というような特別会計をつくって、この納税者でない所得の低い方の方から、たとえば国民健康保険とか国民年金の掛金等を、肩がわりをしてここで払ってあげることによって 減税と同じ効果を、国民の広い、納税者でない、あと一千万世帯以上もあるところの人たちにやったらどうか。そういうことによって、この人たちが自分たちの暮らしに必要な消費ができるようにする道を開くことで、一番ウエートの高い五六%もの個人消費というものを少し上げれば、これは全体が大きいわけですから、政府の財貨サービスの購入というのは二〇%ぐらいしかないわけですから、ここを上げるよりは、その倍以上もあるところを少し上げれば景気の回復に連なる、われわれはこう考えておるわけですけれども、ここは見解の相違でありますから、ここまでにします。  そこで、私は大平大蔵大臣に伺いたいのですけれども、この問われわれは、前の予算委員会のときに、目減り問題というのを大きく取り上げてやらしていただきました。大変に物価が上がって国民の貯蓄は大変な目減りをしたわけですね。そのときに私は、委員会でも御披露しましたけれども、経済企画庁は昭和四十九年度の国民生活白書、これは閣議決定になった文書でしょうから、政府の見解だと見ていいのですが、そこでは、要するに個人部門については、四十八年十二月から一年間の物価上昇、これは二一%になっているのですけれども、二〇%とし、金融資産の平均利回りを八%であると想定すれば、この一年間に八兆四千億円、国民は目減りをした、こういうふうに発表されておるわけですね。一人当たりに私ちょっと計算してみたら、いま一億一千万人ですから、一人当たり七万六千円。一人当たりですよ、みんな貯蓄を損した、こういうことになっているわけですね。  ところが私が、この問題について、では、これは四十八年の十二月から四十九年十二月だから、最近のデータについてひとつ大蔵省つくってみてくれないか、こう申しましたら、大蔵省はつくらないというのです。私は長年、大蔵委員会にいて、いろいろ資料要求します。企画庁でできるものが大蔵省でできないはずがないと思うのに、私の要求に対して大蔵省は、基礎資料になるものはそろえて持ってきましたけれども、料理は先生の方でしてください、こういうことですね。企画庁は、ちゃんと製品にして、料理にして、国民の前にさあどうぞごらんくださいと出しているのに、大蔵省という役所は、国民の前に国民が目減りした額を示しなさいと言ったら、なぜ出さないのでしょうか。大蔵大臣の明快な御答弁をいただきたい。
  99. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たびたび本委員会でも申し上げておりますとおり、私ども、預貯金された方々に対する施策といたしましては、将来にわたって物価の騰貴をできるだけ来さないような施策を前向きに施してまいることを、施策の基本としなければならぬと考えておるわけでございまして、後ろ向きに過去の目減りに対しまして施策をするということに対しましては、政府としては、そういうことよりは前向きに努力をしてまいるという基本姿勢を貫いておりますところから、大蔵省のとりました態度は御理解をいただきたいと思います。
  100. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと大蔵大臣に伺いますが、大蔵省という役所は、会社、企業のためにあるのか、国民のためにあるのか、どっちにあるのか、ちょっとそこからひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  101. 大平正芳

    ○大平国務大臣 申すまでもなく全国民のためにあるわけでございます。
  102. 堀昌雄

    堀委員 国民のためにあるのならば、前向きとか後ろ向きとかということを離れて、国民が具体的な被害を受けた事実について大蔵省が明らかにするのは当然ではないですか。いま金融政策をやっているのは大蔵省です。経済企画庁が出せるものが、大蔵省でなぜ出せないのですか。
  103. 大平正芳

    ○大平国務大臣 預貯金利子の問題は、利子政策として非常に重要なわれわれの政策の一環でございます。しかしこれは、物価との関連におきまして目減りの対策を講ずるというようなことにつきまして、私どもはあくまで慎重でなければならぬと思っております。
  104. 堀昌雄

    堀委員 私は客観的な事実をひとつ出しなさいと言っているのですよ。目減り政策をいまやれなんて、ひとつも言ってないのです。客観的な事実は、政府が、私どもの国政調査権に基づいて出すのが相当ではないのですか。それが政府国会に対する誠意というものじゃないのですか。国民に対する誠意ではないのですか。幾ら目減りをしたかということが出せないというのは、理由がないではないですか。経済企画庁が国民生活白書で明らかにしていることが、大蔵省でできないという理由をはっきりしてください。
  105. 田辺博通

    ○田辺政府委員 国民生活白書に出されましたデフレーター、これは御案内と思いますが、これが普通に用いておりまする消費者物価指数ではございませんので、各世帯の貯蓄目的、そういうものに応じた特別の物価指数をはじいて、企画庁では計算をされておるようでございます。したがいまして、その辺の中身といいますか、やり方、これは私どもでは全く存じていないものでございますので、私どもの方では、あれを延長した数字をつくることができない。できますれば、企画庁の方でその延長した計算をしていただきたい、こう思います。
  106. 堀昌雄

    堀委員 総理大臣、政府というものが国民責任を負っている以上、大蔵省で処理ができないときに、経済企画庁で処理がされておるのなら、当然相談をして、どういう処置でやればいいのか聞いてやるのが、私は相当だと思いますが、総理大臣いかがでしょうか。非常に重要な問題なんです。金利をこれから下げるということは、目減りが現実にあるのに、さらに国民に大きな負担をかけることで実は重要な目安になる資料を、大蔵省が私の要求に基づいて出さない。出さない理由は、いまお聞きになったように、経済企画庁の方が精密な資料があるからできない。私は、いろいろな前提を置いてもよろしい、こういう前提で考えたらこうなりますというのでもよろしい、デフレーターもどういうふうにつくってもよろしいと、私のことですから弾力的に話をしたけれども、結果的には、できません、こう言っているのです。総理どう思われますか。これが誠意のある行政態度でしょうか。
  107. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せの点につきましては、事務当局から申し上げましたような事情があったようでございますが、この点につきましては、政府部内で相談をさしていただきます。
  108. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、当委員会審議に間に合うように出していただくということでよろしゅうございますか。ちょっと大蔵大臣、御答弁ください。
  109. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御審議に支障のないようにいたします。
  110. 堀昌雄

    堀委員 次に、いま私は金利の問題に入っておりますけれども、もう午前中の私の持ち時間が十分にございませんから、あと郵便貯金の金利の引き下げが、きょうかあすかに実は迫っておる情勢だと私は承知をしておりますので、午後の再開から、郵便貯金の金利を一体なぜ下げなければならないのかということを、具体的な問題について提示をしながら伺ってまいりたいと思うのであります。  ただ、ここでひとつ私は大蔵大臣にお聞きをしておきたいのは、大蔵省は国民の味方だとおっしゃいましたが、少なくとも、この金利の引き下げ問題というのは、銀行の問題、企業の問題、国民の問題、こう三つが重なっているわけです。銀行が真ん中に入っているわけです。よろしゅうございますか。公定歩合について、この間の第四次の経済対策のときにお決めになりましたね。金利をできるだけ早く下げる、こういうふうに実は政府は決められたわけでありますけれども、一向に金利はまだ下がってないですね。ここらは私は、政府がいろいろなことを発表しても一向に実施に移されないということで、国民というよりも企業の方は、非常にいらいらしているのだろうと思うのです。私は、預金金利を据え置いても、貸出金利が引き下げられる道がありますから、それは後で午後の再開のときに申し上げますけれども、なぜ政府約束をしてもこんなに約束どおりにいかないのか。これは私は、今度は全体の経済に対しての一つの背信行為になっているのじゃないか、こう思うのですが、大蔵大臣はその点いかがか、お答えをいただいて、午前の質問の締めくくりにしておきたいと思いますので、簡単にお答え願います。
  111. 大平正芳

    ○大平国務大臣 金融機関が、受信の場合あるいは与信の場合を通じまして、新たな契約から新たな金利を適用してまいるわけでございますので、全体として実効金利がどれだけ新たな金利水準に順応して追随してまいったかということにつきましては、堀委員に申し上げるまでもなく、相当のタイミングを必要といたすわけでございます。したがって私ども、この追随ができるだけ的確にまいるように、十分関心を持って見ておるわけでございまして、最近の状況は、比較的順調に追随いたしておるように見ておるわけでございますけれども、今後も、その点につきましては、よほどの注意をもって期待に沿わなければならぬと心得ております。
  112. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  113. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  114. 堀昌雄

    堀委員 午前中に引き続いて、金利の問題について進めたいと思います。  最初に、経済企画庁長官にお伺いをいたしますが、最近、消費者物価はやや安定ぎみに推移をしておりますが、しかし、依然として前年比一〇%程度の物価上昇が続いておるわけでございます。政府は、これを何とか年度末には一けたにしたいという努力をしておられるようでありますが、一けたと言っても、一〇%に近い一けたということであろうと考えるわけであります。現在の預金金利は、二年定期で八%、こうなっておるわけでありますが、いま政府やその他で預金金利の引き下げ等も論議をされておるわけでありますが、しかし、依然としてその間には二%の開きがあるわけですから、私は、物価がやや安定ぎみに動いておるとはいえ、今日依然として国民は目減りの被害を受けておる。量は昨年に比べて減ってはまいりましたけれども、被害を受けておる、こう考えますが、経済企画庁長官、いかがでございましょうか。
  115. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御説のように考えておりま
  116. 堀昌雄

    堀委員 そこで、いま経済企画庁長官は、国民の目減りは依然として続いておる。そういう国民の被害の中で、実は政府は預金金利を引き下げたいと大蔵大臣は言っておられるわけです。私は、実はことしの六月の大蔵委員会で、経済企画庁長官、大蔵大臣、さらに森永日銀総裁に御出席をいただきまして、一つの提案をいたしました。それは預金金利を据え置いても貸出金利が引き下げられる具体的な方法があるということであります。それはどういうことかと言いますと、ちょっと銀行の仕組みについて簡単な説明をいたします。  銀行というのは、国民が預金をしておりまして、この預金をしておる人たちは、貸し出しも住宅ローンなり生活消費ローンで借りておりますけれども、実はこれは預金の方がずっとたくさんになっておる、銀行の勘定の預金の方は個人だ、こうなっておるわけです。今度は会社その他の企業、個人で仕事をしておられる方もありますが、これは会社の仕事をするので銀行から金を借りる。金を借りている方は、貸し出しの方がたくさんになっている。預金もしておりますが、貸し出しが多い。この二つが実は銀行の中にはあるわけですが、国民の方は預けておる方が多いわけですから、金利が高い方がいいわけです。それから、金を借りる方は、預けてもいますけれども、借りる方が主体ですから、借りられる金利は安い方がいい。こういう二つの要求があるわけです。  そこで私は、いまの金を借りる人が、国民と同じような定期金利で高い金利をもらって、高い金利のお金を借りるというのは矛盾をしておるのじゃないのか。要するに、貸し出しを受ける企業やその他は、できるだけ安い金利で借りたいのならば、自分たちの預けているお金を通知預金のような安い金利で預けて、定期預金のような高い利子を銀行から取らないとするならば、いまの預金金利を据え置いても、現在の全国銀行、都市銀行や地方銀行、長期信用銀行や信託銀行を合わせた全部の計算で見ますと、実は一%金利が引き下げられる余地がある、こういう問題をすでに提起をしておるわけであります。  だから私は、そういう意味では、さっきちょっと申し上げましたけれども、公定歩合を下げるときには、先へ下げたって、銀行がやりにくくなれば、定期預金はひとつこの際通知預金にしてくださいという、銀行が自分を守る行動を企業との間にやりさえすれば、私は貸出金利はもっと下げられると思うのですが、具体的には実は下がっていないわけです。  さっき、大蔵大臣は下がっておるというふうに言われましたけれども、実はことしの六月に全国の銀行の貸し出しの約定金利という約束しておる金利は、九・二〇一%にまで下がったわけです、公定歩合がそのときは八%だった。今度、八月に公定歩合を七・五%にさらに下げましたが、逆に、実は全国の貸し出しの約定金利というのは九・三〇二というふうに上がってきておる。今日も上がったままだ。ですから、これは日本銀行の統計ですけれども、実は公定歩合を下げても全国の銀行の貸し出しの金利は下がっていないという現状があるわけです。これは私は、政府がより金融機関を指導をして、もっと下げるようにするのが相当ではないか、こう思っているわけです。  要するに、銀行の金利を下げることによって貸出金利を下げたい、そのためには郵便貯金の金利も下げようというのが現在の政府のやり方です。そこで、ちょっとこの郵便貯金について申し上げておきたいのですけれども、郵便貯金というのは、郵便貯金法で、十二条に「郵便貯金には、政令で定める利率により、利子をつける。」とあって、「前項の規定により政令で利率を定め、又はこれを変更する場合には、郵便貯金が簡易で確実な少額貯蓄の手段としてその経済生活の安定と福祉の増進のためにあまねく国民大衆の利用に供される制度であることに留意し、その利益を増進し、貯蓄の増強に資するよう十分な考慮を払うとともに、あわせて一般の金融機関の預金の利率についても配意しなければならない。」こうなっているわけですね。だから、国民の利益を守る方に主体があって、要するに、金融機関の利率の方との関係は、配慮するということで、私はウエートは低い、こう思うのですが、郵政大臣、いかがでございましょうか。
  117. 村上勇

    ○村上国務大臣 やはり一般の情勢を勘案して決めるべきものじゃないかと思います。(堀委員「何をですか」と呼ぶ)仮に、郵便貯金だけ利子を下げない場合を考えますと、その場合に、ほとんどの預金が郵便貯金に集まってくるということになりますと、それは結局銀行、一般市中に金が集まらないために、やはりそれは経済的に非常な問題があると思います。
  118. 堀昌雄

    堀委員 私が聞いているのは、そのことを聞いているんじゃないですよ。郵便貯金の金利の仕組みは、国民生活の方が優先で、要するに、後の金利との調整というのは次の段階になってくる。法律にそう書いてあるわけですよ。そうではないかと聞いているのです。私の伺ったようにお答えくださいませんか。簡単に、そうかそうでないかだけ。
  119. 村上勇

    ○村上国務大臣 そのとおりです、と申し上げることは、私としてはこれはどうかと思います。二つの場合が考えられると思います。ただいちずに……(堀委員「私、金利をどうしろと何も言ってないんですよ。この法律に書いている趣旨は何かと伺っているんですよ。あなたはちょっと先取りし過ぎる、私は金利をどうするかなんて一つも言ってないんだから」と呼ぶ)いま、その法律の一番後段の方では一般金利も考えなければならぬとありますだけに、ただ、それを、私の方に有利だからと言って、そうでございます、そのとおりだとはちょっと言いかねる……。
  120. 堀昌雄

    堀委員 郵政大臣、何か思い違いをしておられて、いろいろ先走って御答弁になっておるのですが、違うんですよ。私が言っているのは、この法律は「簡易で確実な少額貯蓄の手段としてその経済生活の安定と福祉の増進のためにあまねく国民大衆の利用に供される制度であることに留意し、その利益を増進し、貯蓄の増強に資するよう十分な考慮を払う」、これが前段にあるわけですから、こっちが主体なんでしょう。逆になっていないのですよ。要するに、市中金利に合わせなさい、その次で国民の利益を考えろとなっていないのですよ、この法律は。だから私は、この法律のたてまえを聞いているのに、あなたは先走って、わけのわからぬことをいろいろおっしゃるので、法律の趣旨はそうでしょうと、こう聞いているわけですよ。違いますか、私の聞いていること。
  121. 村上勇

    ○村上国務大臣 前段の法律の趣旨はそのとおりでございます。
  122. 堀昌雄

    堀委員 そこで、実は私は、皆さんもよく御存じない方があるかもしれませんから、ちょっと、別に郵政省の宣伝するわけじゃないのですけれども、郵便局にある定額貯金という仕組みは、私は非常にいい仕組みをわれわれの先輩が考えたと、こう思っておるわけです。  なぜかと言いますと、私ども貯金をしますときに、貯金をする以上は、できるだけ利子の高いのがわれわれにとっては有利なわけですね。だから利子の高い方に貯金したい。ところが、利子の高いものというと、定期預金で見れば一番高いのが二年ですね。二年の定期で八%、こうなっていますね。二年間出せないと、こうなっていますね。そうすると、いまの仕組みは、金利の高いものは長いこと出せない。金利の安いものは、普通預金のように、いつでも出し入れできるけれども、金利が安いというのがいまの普通の銀行の商品なんですが、この郵便局の定額貯金というのは、六カ月預けますと、それから先は出し入れば自由なんです。そうしてずっと置いてあると金利がだんだん上がる、こういう仕組みになっております。ですから、六カ月までは六%の金利ですが、それが一年たつと六・六一%、二年たつと八・二一%という、これは複利で回るものですからちょっと高くなっているのですが、実はそういう利回りになる。ですから置いておけば金利は高くなる。必要なだけそこで出しても、残りはそのまま高い金利でいくわけですから、高い金利がもらえて出し入れ自由という、現在日本の貯蓄方法で国民生活に非常に有効な貯蓄手段だ、こう私は思っているわけですね。だからここでこの制度について、国民の貯蓄増強に資するため利益を増進しろと、こう書いてあるのだと私は思うのです。  ところが、これを調べてみると、それではこの定額貯金の方が金利は市中の銀行の金利よりいいのかというと、実はそうなっていないのです。皆さんのお手元へ資料を配りましたから、ちょっとそれをごらんいただきたいのですけれども、左の方が定額貯金の利回り、右の方が銀行定期預金の利回りです。そこで、その利回りを計算しますと、右の方に利差というのがありまして、これは元本が十万円という金額で運用した場合ですが、六カ月なら三百七十五円実は定額貯金の方が利子が足らない。それから一年になると千百四十五円、こんなに実は銀行の定期の方が高い。一年六カ月になると三百五十二円、しかし依然として銀行の方が有利になっておる。いま二年以上のものは銀行にありませんからあれですけれども、この二年というのが一年で、もう一遍利子を入れてという計算になれば、九十五円銀行の方がいい、こうなっていますね郵政大臣、このとおりですね。ちょっとそのとおりだとお答えください、一言だけ。
  123. 村上勇

    ○村上国務大臣 そのとおりでございます。
  124. 堀昌雄

    堀委員 要するに、現在の金利で銀行金利と比べて郵便局の金利がいいんではなくて、金利が低いのです。ただ、さっき申し上げたように、出し入れが自由にできるからバランスがとれていると思うのですが、私はこの際、銀行金利を一%引き下げるから郵便貯金も一%引き下げなければならない理由はない、こう考えているわけです。  それはなぜかと言いますと、銀行の金は貸し出しとの関係で動くわけですね。しかし、郵便局のは貸し出しの関係で動くわけではない、これが第一点です。第二点は、これが重要なんですけれども、今後の日本経済はどうしても、いまさっき福田総理も言われましたけれども、公共投資を、大変立ちおくれていますから、かなりやらなければならない。社会保障も大変立ちおくれているから、これもやらなければならない。しかし財政の方は、この間の本会議で大平大蔵大臣言われておりますけれども、来年もまた赤字国債をお願いするようになるかもしれぬというような厳しい情勢。そうすると、国が使える金をどこかで確保しようとするならば、郵便貯金がやや市中の金利よりはよろしいということになって、国民が郵便貯金をたくさんすることによってたとえば住宅金融公庫のお金もふえる、住宅公団の家も建てやすくなる。その他、財政投融資の資金がふえることによって、社会保障なりその他の国民生活に役立つところへ使う金はふえる。一般会計の方は、赤字国債を出さなければいかぬような状態では税収はふえっこないんですから、これを財投でカバーしなければならぬというのが、私は中期的な日本経済の展望だと思うんです。  そうすれば、その財投資金の一番確実に伸びるものは郵便貯金です。現在でも確かに伸び率は高いけれども、この時期には、財政で税収が十分上げられないときには、財投資金に国民の郵便貯金を引き出してくることによって国民にも喜んでもらえ、そうしてそのはね返りが社会保障や公共事業あるいは住宅に返っていくことによって、国民生活を高めるということになるのが当面必要ではないのか。中期財政的な展望から見ても、私は財政投融資の原資をふやすことはこの際きわめて重要な政策だと考えますが、福田企画庁長官どうでしょうか。
  125. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これからの中期経済の展望をしますと、やはり政府財政活動、これが非常に重要性を帯びてくると思うのです。御説のように、そういう際に資金運用部資金が充実されておるということは大変必要なことだ、こういうふうに考えます。  しかし、一般金利水準という角度の問題が一つあります。それからもう一つは、さて資金運用部資金が充実されることは好ましいことであるけれども、その資金が低利で運用されるんだということもまた必要なことだろうと思うのです。一般の市中貸出金利の方は下がった、しかし資金運用部資金の対象となる福祉諸施設、そっちの方の金利は下がりません、こういうことでは、これはまた一つの大きな問題を残すことになるのじゃないか。(堀委員「動かすなと言うんじゃないんですよ。差をつけろと言うんです」と呼ぶ)そういうふうに思うのです。そこで、あなたのおっしゃることもよくわかります。ですから、大いに郵便貯金の吸収、これには努力をしなければなりませんけれども、金利の問題はまた金利の問題として、ただいま申し上げたような二つの問題があるというふうに私は考えております。
  126. 堀昌雄

    堀委員 実は、ゼンセン同盟の皆さんがいまの目減り問題で国を相手取って訴訟をやっておられまして、第一審では棄却になったということでありますが、やはり郵便貯金というものが本来いま申し上げたような性格ですから、幾ら差をつけるかの問題は検討する問題としても、現在は市中金利の方が高くて郵便貯金の方が低いわけですからね。だからここのところは、同じにするか、ともかく郵便貯金の方の利率をわずかでもよくするということが、私はこれらの国民期待にこたえる道だと考えておるわけです。  そこで、大蔵大臣にちょっと申し上げておきたいのですが、大体は圧力は大蔵省から郵政省へかかっておるわけですが、大蔵省が私のところへさつきの目減りに関する資料を提出されるまでは、郵便貯金の金利を動かすのはちょっと待ってもらいたいと思うんです。それが出たところで、ひとつこの問題を処置してもらいたい。私は、目減りの実態を大蔵省が明らかにできないような段階で郵便貯金の金利を動かすなどとはさたの限りだと、こう思いますので、ひとつ総理大臣、これは郵政と大蔵両方へかかりますから、総理大臣、どうでしょうか。国民の願いを少なくともその程度に考えてしかるべきだと私は思いますが、総理大臣の御答弁をいただきます。
  127. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 本会議でああいう答弁をいたしましたから、せっかく手続を踏んで今国会提出を促進いたしますけれども、私から期日を約束するということは困難でございます。
  128. 堀昌雄

    堀委員 いや、私は、期日はおくれればおくれたで、郵便貯金の金利を動かすのを待ちなさいと言っているだけですから、だから期日は、大蔵省が早くやればその処理を早くできるし、遅くなればそれだけ待ちなさい。そういう資料が国民に明らかにされもしないで、要するに郵便貯金なり銀行金利を動かすというのは問題がある、こういうふうに私は申し上げておるわけですからね。総理、どうでしょうか。当然のことじゃないでしょうか。
  129. 大平正芳

    ○大平国務大臣 金利の引き下げにつきましては、所要の手続をただいま踏んでおる段階でございます。ですから、国会堀委員から御要求がございました資料につきましては、できるだけ早く大蔵省でも調整をして御提出を申し上げたいと思いますけれども、そのために、ただいま手続いたしております利下げの手順を変更するということにつきましては、われわれの立場を御了承いただきまして、さようなことのないように御了承を願いたいと思います。
  130. 堀昌雄

    堀委員 総理、私は政府行政というものは、国民の納得の上に行われるのが政府行政ではないかと思うのです。現在におけるそういう目減りを明らかにした上で、こういう程度です、だからまあごしんぼうくださいと言うのなら、それもまた一つでしょう。そういう資料も出さないでおいて、自分たちの方の都合だけで行政を進めて、国民の納得もできないことを押し切ってやろうというのは、私は民主主義の原則に反することと思うのですよ。私は、いまの大蔵大臣の態度国民に対する重大な不信行為だ、こう考えます。大蔵大臣、ちょっと申し上げておきますけれども、あなたは今回の赤字国債の発行についても重大な責任があると私は思うのです。だから、いろいろな問題をこう考えてみますと、私は、大蔵大臣がいまとっておられるやり方は、国民の納得できない問題がきわめて多い、こういうふうな感じがいたしてならないわけです。ですから私は、その点だけをちょっと申し上げて、時間がありませんから、国債の問題で一言だけ少し日本銀行の総裁に伺っておきたいと思うのです。  私どもは、私の後で阿部助哉同僚議員が国債問題を主として取り上げられますが、一言いまの問題に関連して申し上げておきたいのは、市中銀行その他の引き受け者はできるだけ資金運用部で国債を引き受けてもらいたいということを皆言っておるわけです。資金運用部で引き受けてくれということはどういうことかといえば、要するに国の方で財政資金で持ってください、市中に余り持ってこられては困ります、こう言っているわけです。なぜそうなっているかといえば、国債を政府が市中銀行に抱かせるということは、それだけ銀行の手元が窮屈になって民間の資金の処理に非常に問題が生じる、こういうことになるわけです。  そこでひとつ、後の審議の参考にもなりますので、銀行に国債を持たせるということは、銀行の信用によってそれだけ通貨が供給をされて国なら国の預金に振り込まれる、こうなるということですが、この信用の膨張という仕組みをひとつ森永総裁に、簡単に国民にわかりやすいようにちょっと御説明をいただきたいと思うのです。
  131. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お尋ねは一般に信用創造がどういう過程で行われるかということだと存じます。信用創造と申しますのは、貸し出しによって預金通貨が創造されるということだと存じますが、初めに預金がございまして、その預金をもとにして貸し出しが行われる。その貸し出しの場合に、全部一遍にその金が引き出されるのではなくて、金融機関にしばらく滞留することが多いわけでございますが、その場合、銀行がその滞留した預金をもとにして再び貸し出しを行うというようなことが繰り返されることによりまして、当初受け入れました預金の何倍かの預金通貨が創造される、そういうことだと存じます。  しかし、これは決して無限に行われるわけじゃございません。預金準備ということもございますので、妥当な預金準備率を現金なりあるいは日銀に対する預金その他で留保いたしますといたしますならば、そこにはおのずからブレーキがかかる、限界があるということだと存じます。しかし、いずれにいたしましても、その信用創造の状況いかんは全体の経済政策の運営、金融政策の運営に至大の関係がございますので、私どもといたしましては、その程度はどの程度がいいのかということを始終考えていなくちゃならぬと存じておる次第でございます。
  132. 堀昌雄

    堀委員 私がいま伺ったのは、銀行とそれから日本銀行も銀行のうちですから、国債が市中銀行に行く、地方銀行に行く、あるいは日本銀行に行く、このことは、いまお話しの政府に対して信用創造が行われて、要するに通貨がそれだけふえるんだ。その点は、銀行であろうと日本銀行であろうと、要するに同じ仕組みだ、こう思うのですが、その点いかがでございましょうか。
  133. 森永貞一郎

    ○森永参考人 貸し出しの場合と有価証券投資の場合とでは、少し作用が異なってくるのではないかと存じます。もちろん国債を保有いたします場合でも、それを担保にして金を借りるということはできるわけでございますので、その面では信用創造の源泉にはなり得るわけでございますけれども、要するに、貸し出しを通ずる信用創造のごとく、その程度が非常に大きなものになるという可能性は含まれていないのじゃないかと存じます。
  134. 堀昌雄

    堀委員 私が一言だけ国債問題をここでやっておきたいと思いますのは、後で同僚議員の質問に便宜を与えておきたいと同時に、国民皆さんが、日銀で引き受けたらなぜいけないのか、市中銀行が引き受けるのならなぜいいのかという疑問をお持ちだと思うのです。私は、いま森永総裁がおっしゃったように、貸し出しといまの国債を買うのとは、それは影響が違うけれども、しかし、方向、量は違ったにしても、銀行が国債を持ちますのも銀行の信用創造で持つ、日本銀行が持ちますのも、日本銀行の信用創造で持つわけですから、この点では、量の問題としては実は同じ性格である。質の問題としても同じ性格である。ただ、日本銀行に国債を持たせると直接通貨が出てくる、銀行に持たせた場合には銀行の払う貸し出したりするものとの影響で実は信用創造にいろいろな形の変化が起こるから、そこではストレートには来ないという差があるだけで、私はいま国債問題の中で一番大事なことは、基本的には信用創造によって受け取られた国債というものが必ず通貨の増発に何らかのかっこうでつながるのだという点が、非常に重要な点だということだけをちょっとこの委員会で申し上げておきたいと思うのです。  この点について、いま総理、お話を聞いておらられて、どうお感じになったか、ちょっとお答えをいただきたい。
  135. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 信用創造に対して、直接の場合と間接の場合がありますが、関連は持つことは事実でございます。
  136. 堀昌雄

    堀委員 大変明快にお答えをいただきました。そういうことですから、後で同僚議員から詳しくやってもらいます。けれども、国債の発行というものが通貨の増発に何らかの関係がある。ただ、いま非常に不況だから、すぐにはその影響が出ないにしても、通貨量が増加すると必ずインフレが起こるというのは、最初に私、皆さんのお手元にお配りをした資料でも実は非常に明らかなわけです。四十七年の七月には前年比一八・四%の通貨量の増大であったものが、四十八年の四月ごろから三〇%を超えるほどの通貨量の増大になって、それがインフレの原因になってきたということでありますから、いまこんなことは起きないと思いますけれども、これは非常に重大なインフレ要因を含んでおるものだという点を私はここで明らかにしておきたいと思います。副総理、それでいいですね。福田さん、国債はインフレ要因を含んでおるものである。
  137. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国債はその運用を誤りますとインフレにつながっていく、こういうふうに思いますが、国債発行自体がインフレにつながっていくという認識は持っておりません。運用を誤りますと、これはインフレにつながっていく、そういうふうに考えます。
  138. 堀昌雄

    堀委員 私は、運用の問題もさることながら、そういう要因を持っておるから運用を誤るとなるんでしょう。だから、基本的にはそういう要因がある、こういうふうに私は申し上げたんですが、その点は同じだと思うんですが、どうでしょうか。
  139. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 運用を誤りますとインフレになる可能性、要因を持っておる、こういうふうに理解しております。
  140. 堀昌雄

    堀委員 私は、ここでこれまでの国民生活の問題からちょっと角度を変えて、実は労働の問題を少し取り上げておきたいと思うのであります。  いま国民の重要な関心のある問題の一つには、企業倒産の問題がございます。戦後最大の倒産と言われた興人の倒産事件というのは、先般、会社更生法の申請が認められたようでありますが、ちょっとこの点について政府に要望しておきたいのでありますけれども、再建の過程において、下請関連企業の従業員等の雇用の問題について十分配慮をしていただきたい。これはひとつ労働大臣あるいは通産大臣に特にお願いをいたしておきたいと思うのであります。  それから、関連下請企業が大変困難な立場にいま立たされておることは御承知のとおりだろうと思いますので、この関連下請企業に対して、制度融資であるとか、あるいは三公庫の融資等の返済の延長なり、あるいは金融機関の融資枠の拡大とか金利への配慮等、ひとつ十分に配慮をしていただきたいということを、通産大臣、大蔵大臣に特に御要望しておきたいと思うのであります。  三番目は、やはり労働大臣でありますけれども、この企業では退職金まで社内預金の中に組み込まれていたということで、大変困難な問題が社内預金としてあらわれておるわけで、今後この社内預金の取り扱いについては、本則の事態を十分考慮しながら、これらの労働者が不測の災害を受けないような処置をひとつ十分やっていただきたいということを特にお願いしておきたいわけですが、政府としてもこの問題について真剣に取り組んでいただきたいと思います。お答えは、ひとつ総理総括して一言だけお答えをいただきたいと思います。
  141. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 重要な問題でありますから、政府は真剣に取り組むことにいたします。
  142. 堀昌雄

    堀委員 それでは、本日二つ目の労働問題として、実はことしの三月に私どもの成田委員長三木総理の間で党首会談が行われましたときに、いわゆるスト権の問題について、スト、処分、スト、処分という悪循環は速やかに断ち切りたい、こういう御発言がございました。私も同席をさしていただいておりましたから伺ったわけでありますけれども、一九七四年四月十三日、春闘共闘委員会政府との間に五項目の了解事項を取り決め、三公社五現業等の争議権等と当事者能力の問題について、五十年秋をめどに結論を出すという約束が取り交わされておると思うのであります。で、五十年の秋といいますと、きょうが十月二十一日でありますから、まあ秋というのは十一月いっぱいでございましょうか、十二月からは師走ということになるわけですから、残された時間も十分にないと思うのであります。  そこで、きょうは三公社の総裁に御出席をいただいておりますので、こういう情勢の中で、その一方の当事者であります公社の総裁の立場で、この問題についてはどう考えておられるのかを承りたいと思うのでありますが、専売公社の総裁からお願いをいたしたいと思います。
  143. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  専売公社といたしましては、阪田元総裁以来、争議権を付与する方向を支持するという立場でまいっております。これは専売公社と全専売労働組合との昭和三十二年から始まりました闘争の過程におきまして、このように処分を行い、処分に反対ストを行い、また処分を行うということの繰り返しでは、労使の関係は改善されない、お互いが信頼関係を持って労使関係を処理していくためには、争議権を付与していくべきであるという見解をとってまいっておるからでございます。  ただ、このスト権を与えるかどうかという問題は、もちろん高度の立法政策の問題でございますので、専売公社の判断によるわけではなく、高度の立法政策によって決定せらるべきことであり、同時にまた、争議権を与えるだけでなしに、当事者の能力を与えてくださらないと、労使交渉を行う場合に、当事者能力なくして片一方にだけスト権があるということでは円滑にいかない、こういうことで、先般、閣僚協専門委員懇談会におきましても、私どもの副総裁からそのようにお答え申し上げておる次第でございます。
  144. 堀昌雄

    堀委員 いまの専売公社の総裁の御意見は、私、結構だと思うのですが、その高度の立法措置の問題は、要するに、政府なり私どもが処理をすることでありまして、公社の当事者としては、公社の当事者の御答弁の範囲でひとつお答えをいただきたいと思います。  それでは引き続き電電公社の総裁にお願いをいたします。
  145. 米澤滋

    ○米澤説明員 お答えいたします。  電電公社は、これまで労使関係がわりあいにうまくいっておると世間から言われております。これは歴史的な事実があるのでありまして、昭和四十年に非常に大きなストライキが行われまして、そうして十五万三千という処分をいたしました。いまのいわゆる訓告でなくて、戒告処分が行われた。その次の年からいわゆる労使関係近代化路線というものが敷かれまして、重要なことは話し合いあるいは団体交渉によって処理するということを進めてまいりました。  いまの御質問の件につきましては、先般、閣僚議会の専門懇談会の席におきまして、副総裁の秋草が答弁しております。その基本的な考え方は、数枚のプリントがございますので、その中に盛り込まれております。私たちといたしましては、この労使関係の問題は非常に重要な問題と考えまして、先ほど堀委員が言われましたように、私は電電公社の問題に限定してお答えしたいと思います。  それは一つは、まず当事者能力の拡大につきましては、いわゆる損益予算を国会の議決からはずすということ。それから第二は、給与総額制度を撤廃する。それから第三は、いわゆる料金の法定主義をやめてこれは国会承認の人事で決められるようなりっぱな委員会、あるいは政府の方針で料金が決められる。そういうような当事者能力の拡大を一方において必要とする。それからもう一つは、この問題につきまして、まあ電電公社の場合には、すでに電話にいたしましても九九%自動化しておりますし、恐らく三年以内には一〇〇%自動化するという、そういう事情もあります。それからまた、先ほど申し上げましたように、労使関係の問題もありますので――時間があればもう少し長くしゃべっても……(堀委員「簡単にしてください、時間がありませんから」と呼ぶ)それで結局、私は、当事者能力を与えないでいわゆる争議権を与えることは望ましくない。先ほど公企体の専門委員会に出しましたように、規制措置を持ったスト権を与えることの意見を私はむしろ望ましいのではないかというふうに思います。
  146. 堀昌雄

    堀委員 いまの御答弁、ちょっとわかりにくいのですね。公社としての必要な条件、当事者能力の回復についてお話がありました。私も、当事者能力がこの争議行為の反対側に非常に重要だ、こう思っておるのでありますけれども、だから、こういうふうにひとつ整理をさしていただきたいのです。  幾つかの前提条件を考慮する必要があるということは私も当然そうあるべきだと思いますが、そういう前提条件の上に立って争議行為を認める方が今後の公社の運営には適当である、こう考えるということだと理解をしたいのでありますが、電電公社の総裁の御答弁をもう一回いただきたいと思います。
  147. 米澤滋

    ○米澤説明員 時間があれば詳しく申し上げますが、大体そういうことであって、先般の専門懇に出しましたプリントが公社の見解であるということも付加しておきます。
  148. 堀昌雄

    堀委員 あなたは何か専門懇、専門懇と言っているのですけれども、私はここでそういうものにかかわりなく伺っているわけですよ、国会ですから。専門懇というのは政府がつくっておる機関でしょう。きょうは三木総理から、国会というのは国権の最高の機関だ、こういうふうにはっきりお答えいただいておるわけですから、要するに、政府よりこちらの方が高い位置にあるということをまず認識をした上で、そんな事務的な話を私はここで伺っておるわけでないのですから、あなたの真意を率直にここでおっしゃってください。
  149. 米澤滋

    ○米澤説明員 先ほどお話しいたしましたような条件でスト権を付与することが望ましいというふうに思います。
  150. 堀昌雄

    堀委員 それで結構でございます。  それでは国鉄総裁、お願いをいたします。
  151. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答え申し上げます。  争議権を付与するか否かということは、立法政策上の高度の政治判断を要するということはすでに申しましたので、これは繰り返しません。しかし、国鉄の意思はどうだという御質問があれば、当事者としての経験から、次のように考えております。  すなわち、現行法制のいわゆる行政処分だけでは争議行為の抑止効果はもう限界にきているのじゃないかと考えます。したがいまして、国民の迷惑を最小限にする、ストを一回でも減らすという現実論から出発しますと、現状のままでいくよりも、一定の条件をつけましていわゆるスト権を付与していく方が好ましいというふうに私は考えております。  国鉄としましては、このような考え方を過日の専門懇等でも述べたのでありますけれども、舌足らずであったために誤解を生じておりますし、国鉄部内においても混乱を生じたということで、十六日に部下の総務部長を集めてその趣旨を徹底さし、さらに昨日組合の首脳を集めて説明したということでございまして、本問題は舌足らずのために非常に誤解が多いようでございますから、関係の機関どこへでも、ひとつ改めて説明に来いという仰せがあれば、行って補足説明をいたす所存であります。
  152. 堀昌雄

    堀委員 三公社の総裁とも大変明確に、前提条件はあるけれども、スト権を、争議行為を認める方がよろしいという御答弁でありました。  ひとつちょっと三公社の総裁にお願いをしますが、いまそれなりの文書が、国鉄もあるようでありますし、専売も電電もあるようでありますから、ひとつ委員長、お許しをいただいて、そういう文書を、私どもも見ておりませんので、ちょうだいをしたいと思うのですが、ひとつお取り計らいを願いたいと思います。
  153. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 それは専門懇に出した文書という意味ですか。
  154. 堀昌雄

    堀委員 いまお答えになった中で、持っておられる文書があるはずですから、それに関連する文書。ですから、それは専門懇に出された文書であるか、あるいは最近の、いま国鉄総裁がおっしゃった総務部長会議等で要するに補足をした文書というものであると思いますから、そういうものがあると思いますので、私の方で御用意はお願いしておりますから、お配りをいただきたいと思います。
  155. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 取り計らいます。
  156. 堀昌雄

    堀委員 じゃ、ひとつ事務当局やってください。  いまお配りをいただいておるようでありますから、これらは私ども十分今後検討をして、しかるべき委員会で論議をさしていただきたいと思いますが、いま答弁がございましたことを体して、私はまず最初に労働大臣に、やはり秋までにはこの問題について結論を出すということはすでにお約束があるようでありますが、私はどういう結論を出されるかのことについて触れるのではなくて、当然こういう問題は当事者の意見が尊重されることが民主的な決定の基本でなければならない、こう考えておりますが、そういう意味でひとつ労働大臣の御答弁をいただきたいと思うのであります。
  157. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えいたします。  合意五項目の中には、当事者、組合の方々、こういう諸君がそれぞれ専門懇等で意見を述べるように、私もまた社会労働委員会でもそういうふうにお答えしているわけであります。いまのような意見もそれぞれ述べられた、あるいは述べられるもの少なかったものがあったかもしらぬが、そういう意見が表明されている、こう思っております。
  158. 堀昌雄

    堀委員 いや、私が言っているのは、それはそこで述べられるのはいいんですが、最終的には関係閣僚会議でお決めになるわけでしょう。だから、それは中心的には労働大臣のお仕事のうちだと思ったものですから、そういうものが尊重されて決められるべきだと思いますよと、こう伺ったんですから、その点についてお答えをいただければ結構なんです。
  159. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 手続といたしますと、政府の方で専門懇を開いておりまして、こういう、いまも申されたような方々がいろいろ意見を述べているわけです、組合の方々も。そういう意見を集約しまして、そういう結論の中から関係閣僚、ここいらでもいろいろまた決断を下す、こういうかっこうになる、こう思っております。
  160. 堀昌雄

    堀委員 総理大臣、この問題は、私、国民にとって大変重要な問題だと考えておるわけであります。これからまた年末になりますから、そういうような問題を回避するためには、私は、総理がかねて私どもとの党首会談でお話しになりましたように、当然この問題については、きょうのこの委員会での取り決めのように、政府誠意をもってひとつ処理をしていただくというふうに期待をいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  161. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 堀君御指摘のように、国民生活にとってきわめて重大な問題であります。したがって、政府は専門委員懇談会で慎重に各方面の意見を徴しております。その意見を踏まえて閣僚議会において最高の判断をいたす所存でございます。
  162. 堀昌雄

    堀委員 いまの総理答弁で、私は、秋までに結論が出る、それもいまの公社の当事者の意向が尊重されるということでありますから、一応ここでこの問題の質問を打ち切りまして、最後に、わずかしかありませんが、補正予算の問題についてちょっと私の納得のできない点がありますので、お伺いをしておきたいと思うのであります。  実は補正予算の中で私どもが反対をいたしております問題が三つあるのです。一つは新幹線に対する予算の増額の問題、一つは高速道路に対する予算の増額の問題、一つは本四架橋に対する問題、この三点は私どもがかねてから反対をしておるプロジェクトなんであります。  実は調べてみますと、まず新幹線につきましては、今回の補正で四百五十億円補正がつけられております。この四百五十億円というのを少し調べてみますと、これはある大手の建設会社の役員の方の話でありますけれども、すでに立てかえで工事が行われておるために、新規の今後の工事に当たる分は七十億円しか需要を創造することにならないというふうに実は述べられておるものを私は承知をしておるわけであります。これが第一点です。  その次に、今度は高速道路でありますけれども、高速道路は今回六百億円予算が増加をされました。ところが、この六百億円の中で用地買収として予定をされておるのが四百億円、立てかえ払いが百億円、実際にこれからの仕事に結びつくものは百億円しかない、こういうふうに今の役員の方は述べておられるわけであります。  さらに、今度は本州四国架橋の問題を調べてみますと、本州四国架橋については、昭和四十八年に当初予算で二百億円予算がつきました。そうして四十八年には六十四億しか使われなかった、この予算は。四十九年に四十五億使われて、ことしの五十年に八十一億使って、不用額が十億となっておる。四十九年にも二百億円実は予算をつけた。ところが、いまのあれですから、四十九年に五十六億でことしへ百四十四億繰り越しになってきておる。そこへ持ってきて当初予算で百六十億円つけておるので、ことしの予算は三百八十五億円もある。しかし、実は工事はまだ着工するところにいっていない。  これは大蔵大臣、皆さんは今度の不況対策で二兆円の事業規模だというふうにおっしゃっておるけれども、ちょっとこの間大蔵大臣に私、NHKの討論会で、羊頭を掲げて狗肉を売るものだというので、三公庫の融資が四千八百億円ですとこう言って、ことしのいまの二兆の中に入っておる。去年四千五百億円ついておる。そうすると、去年もついておるのなら、ことしも特別についたのではなくて、あとの三百億だけが本当の不況対策じゃないのか。  いまのこの本州四国架橋の問題についても、実はいまのは、計算から言うと、中身としては要するに東北新幹線と高速道路で百七十億しかない。さらに、建つか建たないかわからないところに三百八十五億も実は予算が積み上がっておる、こういうことですね。だから私は、政府は今度、七百五十一億ですか、財政の削減をした、こう言っておるわけですけれども、本州四国架橋で今後一体幾ら仕事に金が使えるのか。ちょっとこれ建設大臣の方がいいんでしょうかね、本州四国架橋は。大蔵大臣がいいのかわからぬけれども、こんなに三百八十五億もここへ金をためておいて、いまの非常に重要な国債発行をしようなどというときに、これでいいのかどうかという点はきわめて重要だと思いますので、ちょっとお答えをいただきたい。
  163. 大平正芳

    ○大平国務大臣 新幹線について申し上げますと、建設業者の工事費の立てかえ払いにつきましては、東北新幹線工事におきまして、八月末には当初予算の工事費残がほとんどなくなっておりまして、工事の全面的な中止とか雇用の不安が取りざたされておる状況にありました。その後、第四次不況対策が発表されまして、今次補正予算に追加工事費が計上される見通しがついて以降、国鉄としてあえて工事の中止をしないために事実上そのようなことを防ぐ措置がとられたわけでございます。今回の補正による追加がなければこれらの工事を行わないことを考えれば、実需に結びつかないことになるわけでございます。  高速道路の方でございますが、これは事業費追加分の年度内消化を図るために、契約済みの当初予算分の事実上の工程の促進を図るということでありますが、すでに施行済みの工事に対しまして、追加予算の計上によりまして支払いを行うという事例はないと承知いたしております。  本四架橋につきましては、これは補正予算の問題ではございませんで、既定予算に三百八十五億御指摘のような予算が計上されてあるわけでございまして、その施行を一部解除いたしまして工事の遂行を図りたいということをもくろんでおるわけでございます。
  164. 堀昌雄

    堀委員 答弁になっていないのですよ。要するに、本四架橋の三百八十五億という金が置いてあるわけでしょう。これは私は、補正予算というよりも削減の対象になるのではないか、こう言っているわけです。だから、これからいろいろの作業を始めるとして、三百八十五億のうち一番近い時期にスタートをしたとして、一体幾ら金が使えるのか。三百八十五億もこれから一挙に使えっこないと私は思っているのですよ。当然これが余ってくるのじゃないか。それならば、できるだけいま減らして、要するに国債発行の額を減らすというのが私は財政当局として当然の努力ではないのか、こう思っておるので、いますぐ着工したとしたら、三百八十五億のうちで幾ら経費が使われることになるのか。ここをはっきり答弁しなければ、あなた方は誠意をもって予算の削減をしたということにはならぬではないですか。お答えください。
  165. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 お答えいたします。  五十年度の予算で百六十億が決定をいたしたわけでありますが、お説のように、繰越額が四十八年、九年を合わせまして二百億余りあります。両方合わせますと三百八十億になるわけでありますが、私どもは、現在の経済情勢でありますけれども、地元の強い御要望もありますから、われわれ建設省側としては、一日も早く着工したいという気持ちでいろいろ努力をいたしておるわけで、もし工事が着手になれば直ちに必要なものであり、これは要る。そういう意味で五十年度当初に百六十億を計上したわけであります。もしいま工事を始めるといたしますなれば、これは漁業補償の問題とかあるいは用地補償の問題とかいろいろございまして、三百八十億は当然必要なもの、さように考えておるわけであります。ただ、工事が直ちに着工できて直ちにやれるかという問題については、いま検討しておることは御承知のとおりであります。
  166. 堀昌雄

    堀委員 ですから、私はこの三百八十五億は、実際には着工の時期はそう簡単に決まらない、こう思っていますから、これは恐らく繰越額になってくるだろう。これは来年度の予算委員会で一体どうなったのかは明らかになることでありますから、私は、要するに、細々としたものだけを全部集めて今度七百五十一億ですか、削減をされました。それは努力は評価いたします。しかし、肝心のこういうところに要するに金が十分たまっておるのをなぜ減らさないのか。これが国民の方に向いてはけちけちするけれども、大企業の側については甘い手で処理をするということを国民が感ずるもとだと私は考えておるわけです。これは非常に重要な問題ですから、大蔵大臣、いま建設大臣はああいうふうにおっしゃいましたけれども、どうなるのか、ちょっと一言だけお答えいただいて、ひとつ総理に最後のお答えをいただくことにしたいと思います。
  167. 大平正芳

    ○大平国務大臣 歳出はもとよりでございますけれども、歳入につきましても彫り深く見直しをしてまいりまして、明年度の予算の編成に対処しなければならぬと心得ております。
  168. 堀昌雄

    堀委員 この問題は一応ここまでにいたしますが、いまの年末金融の問題ですね、これはもうあなたもお認めになるでしょう。去年四千五百億あったのですから、ことし四千八百億やったのが新たな不況対策でも何でもない。三百億だけが新たな不況対策だということですね。そうでしょう。だから私は、ともかくことしは大変な不況が長い期間続いてきたわけですから、中小企業の皆さんは、もうしんぼうし切れないくらいのところに来ておると思うのです。十分ひとつ、この中であなた方も述べられておるように、返済の猶予あるいはその他の問題についてしっかりやってもらいたい、こう思うのですけれども、大蔵大臣、それはいいですか。
  169. 大平正芳

    ○大平国務大臣 十分心得てやるつもりです。
  170. 堀昌雄

    堀委員 総理大臣、それでは私も質問時間が終わりに近づきましたので、最後に総理に少しまとめてお伺いをしておきたいわけであります。  きょうは田中理事からの御発言もあり、私も現在の政府国会関係というものを明らかにしながらいろいろと御答弁をいただきました。依然として不十分な感じがいたしておりますけれども、しかし、少なくとも重要な論議をきょうは尽くさしていただいたと私は思っておるのであります。いま三公社の総裁が公式にこの国会の場で発言をいたしましたことが、最も権威のある発言である。何か政府の専門懇、専門懇とさっき盛んに出ましたけれども、それは政府部内の一部局であって、少なくとも、きょう総理がおっしゃったように、国会国権の最高の機関でありますから、この予算委員会において発言されたことが三公社の真意であるということを総理も確認をしていただいた上で、今後の問題の進め方について御配慮をいただきたい、こう思いますが、よろしゅうございますね。これが今日の一つであります。いまの国会政府との関係における問題として伺っておきたいと思います。
  171. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三公社の総裁の発言に対して、私はこれに意見を申すわけにはいきません。ただ、私もここで聞いておったのですが、一体、言ったという事実は、私もやはり一緒に聞いたわけでありますから、そのとおりでございます。
  172. 堀昌雄

    堀委員 よく意味がわかりませんね。そこにいて聞いたということですね。しかし、この場所で述べられたことが最も公式の発言であると私は理解しておるので、三木総理もそういうふうに御理解をいただいただろうと思って――聞こえたという話じゃだめですよ。公式な見解として聞いたと言っていただけばそれで結構です。
  173. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 議会の場において述べたのですから、公式の見解を述べたものと考えます。
  174. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  175. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 これにて堀君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田春夫君。
  176. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は社会党を代表して、外交、防衛問題を中心に御質問いたしてまいります。  最初に、簡単に経済外交の問題について若干質問をいたします。  来る十一月十五日から三日間、パリで世界経済首脳会議が開かれることになりましたが、この会議に収穫は余り期待できないと一般に伝えられている。今日の日本経済はいままでにないスタグフレーションのもとで、国民は大変苦しんでおりまして、政府はそのために全力を挙げなければならないときであります。そこで十一月十五日ということになりますと、このような重大な問題を審議しております今度の国会の最終盤の段階に入っておりますきわめて重大なときであります。それにもかかわらず、三木総理を初めとして大平大蔵大臣あるいは宮澤外務大臣がそろって不在になるということは、果たして適当であろうかどうか、これはよほど慎重に検討する必要があると私は考えるのであります。また、日本としては、エネルギーを初めとして資源の輸入に依存しなければならないということは言うまでもないわけでございますが、経済外交の最大課題というのは何と言ってもいわゆる南北問題、すなわち第三世界との関係であります。しかるにこの点では、他国に比べて全くわが国は立ちおくれていると言われている。その証拠に、この間行われました国連経済特別総会において木村前外務大臣の自己批判がありましたことをもっても、これは明らかであります。  こういう点から考えました場合に、首脳会議に出席する日本態度というのは、いままでのように無内容な抽象的な発言をするとか、あるいはアメリカにただひたすら追随するというような態度であってはならない。少なくとも第三世界との関係を基調として独自な提案を行わなければならないと思う。こういう点について総理の見解をまず伺いたいと思います。
  177. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今日の問題、どの問題をとらえても、岡田君の御指摘になった南北問題にしても、エネルギー、食糧、通貨、貿易、一国だけで解決できる問題はない。皆やはり世界的な協力によらなければ解決できない問題であります。こういうときに、主要工業先進国の首脳部が一堂に会してこの経済の危機、混乱、これを防ぐためにどのような相互の協力が可能かということを話し合うということは、戦後いままでかってなかったことであります。日本としても、こういう多角的な首脳会議に出席することは初めてのことでありまして、直ちに大きな収穫というものができるかどうかということについては、これは必ずしも今日予言はできませんけれども、一つの国際協力の新しい試みである、新しい大きな出発点である。日本としても、これは一三木内閣の問題というよりかは、日本が果たしてこれだけの経済力――今日は非常な困難に直面しておりますけれども、経済力を持った日本がいかなる世界的寄与ができるかということを世界で問われる場面である。だから私は、いま岡田君の言われるように、ただ出席するというだけではなくして、日本日本としての見解を述べなければならぬ会議である。したがって、これは野党の諸君の御意見も聞きたいと思いますが、衆知を集めて、日本の真価が問われる会議でありますから、日本日本としての立場から今日の世界に対してどのような貢献ができるかということは明らかにしなければならぬと考えております。
  178. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ちょっと簡単に伺っていきますが、たとえば、日本が寄与をするという、その寄与の問題として、総理もよく御存じでしょうが、ロメ協定というのがこの間締結された。このロメ協定を三木総理としては支持されますかどうですか。
  179. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、岡田君御承知のように、八月に訪米をいたしましたときに、ロメ協定というもの、ロメ協定に加盟する国々の協定でありますが、この問題を世界的な規模で取り上げるべきではないか、そういうことを提案として私がプレスクラブで演説をしたぐらいでございますから、このロメ協定というものには重大な関心を私は持っておるということでございます。
  180. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私もプレスクラブの演説を拝見いたしました。しかしあれには輸出所得補償方式の問題が出ている。しかし、対外援助の中で贈与その他の問題については触れてない、ロメ協定はその点が非常に重要な点であることを見逃してはならないと思う。私は、この問題は、取り上げてまいりますと時間がなくなりますので、ロメ協定に非常な関心を持ってこれを支持するという総理の御意見をそのまま信用いたしまして、続いて進めてまいりたいと思います。  先ほども総理もお話しになりましたように、日本の対外政策の基調にあるのは、何といっても第三世界との関係である。そこで、この第三世界の国々の場合に、政策にはいろいろあるけれども、共通した点が基調としてある。それは何かというと、長い間の植民地支配からみずから解放されている、それだけに帝国主義と覇権主義に対しては徹底して反対するという立場が堅持されているという点が共通した点であります。この点を無視して第三世界に対する外交は私は成り立たないと思う。特にわが国の場合は、かつて中国を初めアジア諸民族に対して侵略の過ちを犯した。われわれの政策として考える場合、この過去に対する厳しい反省として、再び侵略や覇権を求めないということを明らかにすることは必要である。  そこで、この立場を堅持するのであるとするならば、当然、第三国の覇権行動に反対するということも、日本態度でなければならないと思う。それにもかかわらず、総理の場合には、覇権を求めず許さずという日中共同声明の第七項を日中平和友好条約に明記することをなぜか渋っている。キッシンジャーでさえ一昨日北京で覇権反対と言っているじゃありませんか。フォード大統領が行くと言っているのに、三木総理はなぜ行かないのですか。三木総理が訪中をして平和友好条約を締結することの方が、世界経済首脳会議に出席するよりも日本にとってはきわめて重要である。総理はこの決意をお持ちになっているのか。いまだに渋っているのは、何か陰で内外の牽制をするような役割りをしている人があるからあなたが渋っているのかどうなのか、この点を伺いたい。
  181. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 何人も牽制を受けることはありません。何人からの牽制も私は受けない。ただこの問題は、岡田君も御承知のように、先般、国連総会に出席をした宮澤外務大臣と喬冠華中国外相との間に、長時間にわたって話し合いをいたしたわけでございます。そして両国の理解を深める上において重大な会談であったと私は考えておる。それを踏まえて今後この問題を両国において検討し促進していこうという立場でございますから、こういう外交交渉の推移をしばらく見守りつつ、この問題は、できるだけ早く日中平和友好条約の妥結を図りたいと考えておる次第でございます。
  182. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃあなたは、行く決意はある、外交交渉の経緯を見守っておるということで、決意はあるが、実行はいつするのです。
  183. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 外交交渉というものは相手もあるわけですから、私がここで、いつ行くとか、こちらの予定ばかりにはいきません。相手もあることで、先方との間に――ついこの間ですから、十時間にわたって、話し合いをしたわけですから、したがって、その話し合いの中心というものは、平和友好条約についての話し合いであったわけでございますから、そういうことで私は、どこへでも私が必要だったら行くことをいとうわけではないわけでございますが、まだついこの間会ったばかりでございますから、そういう会談を踏まえてこの問題について両国において検討を加えるわけでございますから、その検討を待って私としてどうするかということを決めるべきだと考えております。
  184. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなた、交渉を始めてから、あなたになってからでも、もう一年たつじゃありませんか。ついこの間じゃないですよ。あなた、もう早く決めなければならない。いつも決意はあるあると言って延ばしているじゃありませんか。それはいつものあなたの常套手段と言わざるを得ない。相手ははっきりしているじゃないですか。あなたはそういう点で、決意はあると言って引き延ばされることは、国民はこれは納得しない、これを申し上げておきます。  そこで一番中心の覇権問題ですが、日本を取り巻いている米ソの覇権行動について若干触れたい。  アメリカの帝国主義的な覇権行動の問題については、後でこれは詳しくやります。しかし、最近のソ連の覇権行動も、目に余るものが出てきているじゃありませんか。たとえば、ことしの春の第二次オケアン作戦、ついせんだっての伊豆諸島における領空侵犯事件。そればかりじゃありません。ごく今月になりましてから、再三にわたって、北海道の太平洋沿岸においてソ連漁船団の暴挙が行われている。このために北海道の漁民は生活できなくなっている。  安倍農林大臣、来てますね。あなたは、このソ連漁船団の行動について、ことしの八月モスクワで行われた日ソ専門家会議の決定に、これは明らかに反しているじゃないですか。しかもそのときイシコフ漁業大臣は何と言っているか。ソ連漁船団は日本漁船の千五百メートル以内には近づかない、刺し網の五百メートル以内には入らない、こう言っているじゃありませんか。にもかかわらず、今日は刺し網をどんどんぶち壊しているじゃないか。公約に反しているじゃないか。安倍農林大臣、これに対して抗議をしましたかどうですか、それが第一点。  第二点は、これは今日皆さんもぜひとも知っておいていただきたいのは、刺し網をやっている北海道の零細漁民というのは、船は二トンか三トンの船であります。こういう船で海上において漁獲をやっている。ところがソ連が使っている船は大体三千トンの船であります。このような大きな船で、どんどん漁獲をオッタートロール船でやるのでありますから、魚は根こそぎなくなってしまうのであります。この問題は日ソ漁業操業協定の問題で解決できる問題ではない。これは領海十二海里の宣言をしない限りにおいては解決ができない。ところが安倍さん、あなたはどうですか、私に何度も約束しているし、北海道の漁民に公約したじゃないか。五月までに十二海里宣言をやりますと、あなた言ったじゃないか。それこそあなたいいかげんな発言をしたのですか。仮谷さんだけじゃない、あなたもいいかげんな発言をやっているの。十二海里の宣言はいつやるの。これははっきりお答えなさい。
  185. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 毎年のことでございますが、ことしも、いま御指摘がございましたように、最近、襟裳岬の大体十五海里から二十海里付近に、三十五隻から四十隻ぐらいのソ連の南下船団がやってまいりまして、そして操業を行い、わが国の沿岸漁業者に対しても被害を与えておるということも報告を受けておるわけであります。  私たちといたしましては、何としても操業協定を一日も早く成立をしていただきまして、この協定に基づいて、ソ連側に対しても、被害の弁償その他、被害の発生の未然防止といったことにつきまして、協定の発効を待ってやらなければならない。またさらに、私はソ連に参りましたときに、いまお話がございましたように、イシコフ漁業大臣との間に、操業協定は、国会において九月、十月になるか、その辺のところははっきり言えないけれども、しかし、日ソ関係では漁業協力を進めていかなければならないということである以上は、まあ操業協定が発効しないといたしましても、しても、ソ連漁船によるところの紛争が起こることだけは絶対にやめてもらいたいということを強く述べました。これに対してイシコフ漁業相も、ソ連から出漁する船団の船長も集め、厳重にこの点については日本側とトラブルを起こさないように注意する、操業協定の発効前においても紛争が起こらないように努力をするということを述べたわけでございます、しかし、最近において、二、三、紛争といいますか、被害事情が起こっておることは大変残念に思っておりまして、操業協定が成立したならば、直ちにこの協定に基づいて厳重に補償措置等をとるように手段を講じたいと思っておるわけであります。  それから、十二海里の問題につきましては、確かに、農林大臣として私は水産の立場から申し上げますれば、十二海里を実現することに対して阻害する何ものもないわけでございまして、沿岸漁業を守るという意味からいけば、一日も早く十二海里を実現したい、こういうふうに思うわけであります。これはしばしば申し上げてきておるわけでありますが、この点につきましては、ただ一農林省だけの問題ではなくて、その他、国際通航の問題であるとか、海洋法の問題であるとか、政府部内においてそうした調整を要しなければならない問題があるわけでございます。私は、十二海里は漁業、水産の立場から言えば実現をすべきであると、こういうふうにいまも考えておるわけでございます。そういう方向で今後とも努力を続けてまいりたいと思います。
  186. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなた、いつまでにやるのですか。その方向とおっしゃるが、いつまでにやるのですか。
  187. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 調整の問題がありますから、なかなか私の一存で、いつまでにできる、やりますということをお答えをすることはできないわけでありますが、私としては力を尽くして十二海里の領海実現のために努力をしたい、こういうふうに考えております。
  188. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そのような答弁では私は納得いたしません。これは速やかにやらなければ、あなた、公約違反じゃないか。はっきり公約したのじゃないですか。いいかげんなことを言っちゃいかぬですよ。  それでは、この問題ばかりやっているとあれですから、次に進みますが、次の点は、三木・フォード会談の問題です。  三木・フォード会談の問題で非常に大きな問題は、いわゆる新韓国条項と言われている問題です。その部分を私この場で読んでみますが、「両者は、」――両者というのは総理大臣と大統領。「両者は、韓国の安全が朝鮮半島における平和の維持にとり緊急であり、また、朝鮮半島における平和の維持は日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり必要であることに意見の一致をみた。」と、こう言っている。これについて宮澤外務大臣は、佐藤・ニクソンのときの韓国条項とこれは実質的に同じである、こういうことを言っている。ところが総理大臣は、必ずしもそうじゃないという話に言っているようだが、私の見解で言うならば、今度のこの新韓国条項というのは、三木さんらしい持って回った表現を使っているが、それによって実体はあいまいになっているけれども、その前後の関係から見れば、日米韓の軍事関係をもう一歩発展強化させたものであると受け取らざるを得ない。なぜか。それはその次の条項を見ればわかる。  その次に何と書いてあるか。「両者は、かかる平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」このように書いてある。ここで重要な点は、「現行の安全保障上の諸取極」、この問題であります。これは言うまでもなく日米安保条約であります。米韓相互防衛条約であります。それ以外にもあるかもしれませんが、この二つは少なくとも含まれている。とするならば、韓国の平和の維持のためには、米韓、安保両条約の存在することが重要であるということを言っている。また逆に言うならば、平和が侵害される場合においてこの両条約が作用するということを日米間において確認したことを意味する。しかも三木さん、佐藤・ニクソン共同声明の中にはこの条項は入ってないのです。あなたの場合に初めてこれを入れたんです。これは明らかに米韓と安保とが連動して韓国の平和のために作用を及ぼすということを明確にしているじゃないですか。韓国条項よりも新韓国条項の方が、日米韓一体の軍事体制というものを強化するということを明らかにしていると言わざるを得ないじゃありませんか。三木さん、この点について、新韓国条項をどういうように解釈されるのですか。
  189. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 新韓国条項と岡田君がこれを呼ばれますが、私とフォード大統領とが朝鮮半島の問題について話し合ったのは、いかにして朝鮮半島において武力衝突のような事態を防ぐかということが中心であったわけです。この問題に終始したわけでございまして、そのために一つの安保条約を強化するとか、そういう話は一切出てないわけでありまして、とにかく、朝鮮半島に武力衝突が起こることは、日本もアメリカも、また関係諸国においても、だれも望んでいないわけである。したがって、こういう不幸な事態が、あるいは誤算によって、あるいは過度の不安といいますか、そういうものによって起こるようなことをどのようにして防ぐかということが中心であって、その新聞発表に書かれたものは、従来は韓国と日本という関係から見ておったわけですが、韓国というものは朝鮮半島から独立して存在しておるわけではないのです。韓国の安全のためには、朝鮮半島の平和と安定というものが絶対に必要なんで、だから今度の場合は、視野を少し広げて、朝鮮半島全体の平和と安定を願うという気持ちから出た新聞発表であって、これを新韓国条項などと私は呼んでないわけです。現実を直視すれば、そうじゃありませんか。韓国だけの安全というのは、ひとり独立して存在してないのですから、だから朝鮮半島全体のやはり平和と安定というものが必要である、そのことを強調したところに、従来よりももっとずっと視野を広げて朝鮮半島の平和と安定を願うわれわれの気持ちが表明されたのが、このいま岡田君が読み上げられた条項でございます。
  190. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたのおっしゃるのは、韓国の地理的状態がどうであるかということをおっしゃったんで、私の聞いているのは、その後にある、韓国の平和のためには「安全保障上の諸取極」が存在することが重要であるということを、かつての韓国条項には書いてなかったのにことさら強調するところに、日米韓の軍事体制の問題があらわれているじゃないかということを言っているのです。あなたはその点についてお答えになっておらないじゃありませんか。
  191. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまお話しするように、二人の会談というものは、日米の軍事体制を強化しようという話は一言も出ていない。どうして武力衝突を防ぐかということに終始したわけでございまして、そのためには、現在の一つの体制といいますか、これを急激に変化することが朝鮮半島の平和と安定に役立つとはわれわれ考えてない。それは将来変化するときはあるでしょうが、いますぐに現在のこの仕組みを急激に変化することは、かえって均衡を破って朝鮮半島の平和と安定を害する。したがって、現在の一つの体制というものを維持しながら、朝鮮半島の緊張を緩和して、南北の間にできるだけ話し合いができるような体制ができて、そして平和的な統一ができるということを将来に描きながら現在の朝鮮半島の平和と安定を維持したいという願いが込められておるのが新聞発表でございます。
  192. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 現行の安保上の諸取り決めというのは非常に重要ですが、これは具体的な問題で別の角度から伺ってまいりましょう。  本年六月十九日、韓国東岸の浦項一帯において在韓米軍と韓国軍とがイエロードラゴン作戦と称する実戦訓練を行った。その際に、現地の指揮官から、沖繩からF4E戦闘機十機が参加をしているということを複数の日本人の記者に話をしたということが確認されている。まず事実関係伺いたい。こういう事実はどうであったのか。その点について、外務省がよろしいのですか、外務省から御答弁をいただきたい。
  193. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ただいま御質問のございました米韓合同演習という問題でございますが、これに関しまして、われわれは当時アメリカ側に問い合わせた次第でございますが、アメリカ側の回答といたしまして、沖繩におります米軍機を含めて在日の米軍機は、一切この演習には参加していないということを回答してきております。
  194. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これはあなた重大ですよ。あなたの方はそういうことを聞いていると言うが、現地におった新聞記者一人だけじゃないですよ。各社の記者がこれを確認しているのですよ。どっちが本当なんですか。新聞記者が間違いなのか、アメリカ局長が間違いなのか、どっちなんですか。これははっきりしてもらいたい。どっちが本当なんですか。
  195. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この問題につきましては、新聞でそういうふうに報道されましたので、われわれとしても特に問い合わせたわけでございますが、アメリカの回答は、先ほど申し上げましたように、この演習には在日の米軍機は参加していないということだったのでございます。
  196. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私はそれでは納得しません。じゃ、伺いましょう。条約上そのことは可能であるのかどうなのか。もう一度言うと、在日米軍が安保条約六条に基づいて日本の基地の使用を許されていることは言うまでもない。それならば、日本の基地であるたとえば沖繩を使用した在日米軍が、韓国の軍隊と演習できるという法的な根拠があるかどうか。
  197. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 在日米軍は、日本の安全を守るため、また極東の平和と安全の維持に寄与するために駐留しているわけでございますから、その目的に合致する範囲であれば、仮にそういう演習に参加することがあったとしても、安保条約に違反することはないと存じます。
  198. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは重大な答弁をされたのですよ。安保条約の目的に従うならば、日本にいる米軍、在日米軍が韓国の軍隊とも共同演習をすることができる、こういう答弁ですね。間違いないですね。  それじゃ逆に伺いましょう。それならば、在韓米軍が自衛隊と合同演習をすることも法的に可能である、そういうことになりませんか。法的根拠をお答えください。――もう一度言いましょうか。
  199. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 わかったでしょう。
  200. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 だめだよ、そんなことじゃ。時間をとられて困るよ。外務大臣、あなた答えてください。――ちょっと時間を、これは計算から外してくださいよ。困りますよ。まだまだこれから、本論に入らないうちにそんなことじゃ困る。
  201. 丸山昂

    ○丸山政府委員 自衛隊の立場で在韓米軍と訓練をするということはできないというふうに判断しております。
  202. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなた、法的にできないのかどうなのか。国際法上できるのかできないのか。あなた、国際法やるのですね。国際法をやるのならあなたお答えください。外務省が答えるべき問題じゃないのですか。委員長、外務省の問題、安保条約六条の問題を聞いている。
  203. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 政府答弁することは、外務省であろうと何であろうと、そんなことは差し支えありません。
  204. 丸山昂

    ○丸山政府委員 お答え申し上げます。  自衛隊の任務は、わが国の安全を守るというのが目的でございます。したがいまして、わが国の安全を守るという目的に合致しない行動については、自衛隊法の関与するところではないというふうに判断をいたします。
  205. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 防衛局長、私は国際法上の点を聞いているのです。あなたは自衛隊法のことを言った。在韓米軍という外国の軍隊、これが安保条約上自衛隊と――もっと具体的に言いましょう。日本の領域の中でそれはやり得るかどうか。日本の領域内でやり得るか。
  206. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 国際法上の問題という御質問でございますので、私からお答えいたします。  在韓米軍と日本の自衛隊が日本の領域内におきまして合同演習ができるかという御質問かと思いますけれども、国際法上それは当然にできるということは言えないと思います。現在、在韓米軍、すなわちアメリカの軍隊であるわけでございますけれども、それと日本の自衛隊が合同演習を行うということは、安保条約上定められている事柄ではないだろうと思います。そういたしますと、それは一般国際法の問題として処理されるということになると思います。一般国際法上そういう合同演習を行うことが禁止されているということではないと思いますし、そういう両国間で合意があればできると思いますけれども、合意がない状態においてそういう合同演習が行われるということはないというふうに私は考えておるわけでございます。
  207. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは条約局長、国連軍としての在韓米軍ならやれますね。
  208. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 国連軍に対する日本国の援助は、いわゆる支援活動ということに限定されているわけでございます。でございますから、いまの御質問のありました自衛隊と在韓米軍との共同した行為は、国連軍に対する協定で日本約束しております援助の範疇には当然には入ってこないと考えます。
  209. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 松永さん、支援活動であると限定しておりますか、協定の中で。してないでしょう。国連軍に対する日米の協定でしょう。問題はその点よりも――ここの点に余りこだわっていると、私、本論に入れないのです。しかしこの点ははっきりしておる。先ほどの山崎アメリカ局長の御答弁によると、在日米軍は必要な場合韓国の領域内において韓国の軍隊と合同演習ができる、このように答えた。はっきり言った。在韓米軍は日本の領域内において日本自衛隊との演習は必ずしもできるものではない、こういう答弁だ。国際法上それは必ずしも認めてはおらない。国連軍協定との問題においては、支援活動に関する限りは合同でやることができる、そういう解釈にもなる。ところが、在日米軍、在韓米軍というのは、軍隊の編成の問題でしょう。第五空軍のもとにおいて、在韓米軍というのは決まり切っていつも韓国にいるというわけではない。たとえば一つの飛行機をとってF4Eファントムならファントムは、場合によっては、韓国にいるときには在韓米軍であり、沖繩に入ってきたときには在日米軍としての呼称を使う。在日米軍の場合でも、私はアメリカ局長はこう答弁するかと思ったのだ。在日米軍は、日本の基地を使う場合には在日米軍であります、韓国の領域に入ったら、編成上の問題ですから在韓米軍でございます、ですからできます、こう答えると思ったのだ。あなたはその答えもしなかったのだ。編成の問題なんですよ。  だから具体的に言いますと、一つのアメリカの部隊が、韓国にいるときには米韓相互援助条約の第四条に基づいて韓国の基地を使用することができる。ところが同時に、その同一部隊が日本に入ってまいりました場合においては、安保条約第六条に基づいて、その部隊は在日米軍という編成に基づいて日本の基地を使うことができる権限を持っている。そしてその場合に、韓国では韓国軍と共同演習をやり、日本においては自衛隊と合同演習をやる、そういう同一部隊がやる権限を持っているということを意味している、こういう解釈にならざるを得ないじゃないですか。実戦の場合は当然のことなんです。安保六条の交換公文、事前協議の条項を除いて、実戦の場合一緒に全部やれる。これが三木さん、新韓国条項ですよ。現行の安保条約の安全保障上の諸取り決め、これなんですよ。これなら日米韓の共同作戦になるじゃありませんか。たとえばアメリカの部隊が、日本においては自衛隊とやり、その同一部隊が韓国においては韓国軍と一緒にやる。これは日米韓の共同演習じゃありませんか。共同作戦じゃありませんか。はっきりしているじゃありませんか。どうですか三木さん、条約上解釈してください。
  210. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 在日米軍は、安保条約に基づきまして権利を持ち義務を負うわけであります。在韓米軍は、米韓条約に基づいて権利を持ち義務を負うわけであります。この二つのことは全然別問題であります。
  211. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ああいう官僚的答弁をやっている。そんなことはあなた、ABCですよ。それの上でどうするのだということを聞いているのですよ。軍の編成は一つじゃないか、第五空軍の中で在韓米軍があり在日米軍があるじゃないか、アメリカの必要によって、指揮によってどっちにでも変われるじゃないかと言っているのですよ。あなたの言っているのは、私は条約課長の答弁だと思う。そんな解釈なんか前からわかってますよ。
  212. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一つの航空部隊が日本に置かれましたときには、これは在日米軍でございますから、安保条約上の権利を持ちその規制を受けるわけであります。たまたまその部隊があるときに韓国に行きまして、在韓米軍に編入されることがあるかもしれません。それはわが国の安保条約とは関係のないことであります。このことは、何度申し上げてもきわめてはっきりしておると思います。
  213. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この問題では国民は納得いたしません。外務大臣は条約は明るいかもしれないが、そういう官僚答弁は納得はいたしません。これだけははっきり申し上げておきます。これは全く納得できません。しかし、これはかりに時間はとれません。続いて次の重要な問題に入らしていただきます。  それは、坂田・シュレジンジャー会談で合意された、有事の際の日米防衛協力のための協議機関について御質問をいたしたいと思う。  この新しい協議機関の協議事項として、六月の十六日に外務、内閣、科学技術等の連合審査会で坂田防衛庁長官は、作戦協力の大綱とか情報交換、補給、支援などを例に挙げて、これが協議事項になると答えられた。また翌日の内閣委員会では、丸山防衛局長が、「そういう有事の際の日米の作戦の調整といいますか、こういった面についての機関につきましては、もう当然それの設置が必要である」と答えている。すなわち、有事の際においては制服だけの日米作戦調整機関を設置するということについても合意をしたいと、丸山防衛局長はそのように答弁をされておる。以上の答弁から見ると、今度の新機関を通じて有事の際に関する日米共同防衛の全般にわたりこれを整備しようという考えのようだが、それならば坂田防衛庁長官伺いたいが、そのようなことを必要とする差し迫った内外情勢の変化が今日あった、こういう認識に立っておられるのかどうか、この点をまず伺いたい。
  214. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私、就任いたしまして、日米安保条約がある、これは日本の独立と日本の安全のために不可欠なものである。ところが、この日米安保条約のわが国の義務としては基地の提供がある。基地の問題については、日米安保協議委員会というものがあって、そのもとでいろいろ協議もされておる。しかし、安保条約の大事な点であります有事の際における日米防衛協力の問題、作戦協力の問題、それにつきまして話し合う場がない。しかもまた、安保条約の相手国である責任者、国防長官と日本防衛庁長官の間に、これについていろいろ話し合いをしたようなことはない、これでは果たして、日米安保条約というものはあるけれども、本当に有効に機能するだろうかというふうに考えたわけでございます。そしていろいろ調べました結果、やはりそういうものは何らかの話し合う場があってしかるべきではないだろうかということで、シュレジンジャー国防長官ともお会いをしたいし、先般、去年のことでございますが、山中長官が招待を受けまして、今度は日本側からシュレジンジャー長官を呼ぶというようなことにもなっておりましたので、参議院の上田哲君の質問に答えまして四月の二日、シュレジンジャー長官を呼んで、そして話し合いをしようということを表明いたしたわけでございます。  その結果といたしまして、八月の二十九日に二時間ばかりでございましたけれども、わが防衛庁におきましてお話し合いをいたしまして、そして一年に一回は原則として会いましょうということを合意いたしました。それからまた、日米安保協議委員会の枠内において新しい機関を設ける、それについては日米防衛協力の諸問題について話し合う、こういうことを合意をいたした次第でございます。
  215. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私が伺いたいのは、坂田さん、この間、先ほど読みましたように、委員会答弁しておりますね。こういう有事の際における日米の防衛分担といいますか、防衛協力といいますか、こういうものを全部決めてしまおうというのがあなたのお考えですね。こういうことですね。そしてこれはいままでに決められてなかったのですか。どうなんですか。
  216. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その問題につきましては、わが方におきましても、外務御当局とわれわれとでいま詰めておるということでございまして、あの際は、たとえば情報交換であるとか、あるいは作戦協力の大綱であるとか、そういうようなことも……(岡田(春)委員「補給支援」と呼ぶ)補給支援というようなことにもなろうか……(岡田(春)委員「制服の連絡調整機関」と呼ぶ)そういうこともその話し合いの中において詰めようということは申しました。
  217. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もう一つ私が伺っているのは、そういうのはいままでにやってないのですか、どうなんですかということです。
  218. 丸山昂

    ○丸山政府委員 日米間の作戦調整といいますか、その前提条件の調整でございますが、こういった問題については、技術的な分野において在来統幕あるいは各幕でそれぞれ研究はいたしておりますけれども、取り決めという形で日米間で合意をいたしておりませんし、それからまた、元来それぞれ合意をすべき権限をゆだねられておるものでもございませんので、いま御指摘のような問題については、在来なかったと申し上げてよろしいかと思います。
  219. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 制服の間では技術的な面ですり合わせをやっている。丸山さんの得意の言葉だ。すり合わせ、研究をやっている、こういうことですね。合意はないんだ、こういうことですか。
  220. 丸山昂

    ○丸山政府委員 取り決めというものはございません。
  221. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 合意はあったのですか。合意はなかったのですか。取り決めはあったか。合意はあったのですか。ないのですか。
  222. 丸山昂

    ○丸山政府委員 研究をいたしておりますので、その研究者相互間においては、こういうことでいけるという……(岡田(春)委員合意はあったか」と呼ぶ)その合意という言葉が、先生どういうふうにお使いになるかでございますが……(岡田(春)委員「両者の意見の一致です」と呼ぶ)両者の意見の一致ということでございましたら、それはあったと思います。しかし、取り決めではございません。
  223. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、あなたが言う取り決めとは何ですか。
  224. 丸山昂

    ○丸山政府委員 取り決めと私が申し上げておりますのは、日米の両政府の授権に基づいてそれぞれの権限をもって両者の合意をなす、こういう意味合いで申し上げておるわけでございます。
  225. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたは、それでは、政府間の取り決め、合意、それが取り決めだ、しかし制服の間での合意はある、こういうことですね。そうしたら実戦の場合には、制服の取り決めで行動できるわけですね。両者間に研究、すり合わせならいいですよ、あなたのおっしゃる。あなたの得意の言葉だ。すり合わせ、研究、それならまあいいとしても、合意しているならば、制服の間では共同行動をやれますね。そういう意味ですね。
  226. 丸山昂

    ○丸山政府委員 その研究をいたしました結果が、いま直ちに実際の場合に共同作戦ができるような状態にはなっておりません、御案内のように、実際的に共同作戦をする場合には、各種の諸条件の解決を待たなければならないことは、先生十分御承知のとおりでございまして、したがってこれはただ、そういう意味においては、両者において研究をしたということにとどまるものであると判断をいたします。
  227. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなた、共同作戦がそれによってできないのだという法的根拠も何もないじゃないですか。実戦部隊が、制服自身が合意をしておれば、いつでもやれるじゃないですか。  では、あなたに伺いますが、時間がだんだんなくなってきたから続いて進みますけれども、六月十八日の衆議院外務委員会でわが党の楢崎委員が、統幕会議と在日米軍司令官の協議事項であるFTC、FTS、FTGについて、「これは存在をかつて海原防衛局長の時代に認められましたが、ずっとそれは続いておりますか。」という質問にあなたが答えて、「ただいまそういう名称では呼んでおりませんが、実体的にはいまその後継的な形で続いております。特別に名称は付しておりません。」こう答えておる。それでは、日米制服だけでこれらの協議機関が、少なくとも過去十年以上にわたって、今日まで常設的に設置、運営されていることになるのだが、その常設的な協議機関の根拠となるべき日米間の合意は、いついかなる形の取り決めによってこれが行われているのか。いかなる取り決めがあって十年間も常設機関がつくられているのか。それは一体いつなんだ、この点を伺いたい。
  228. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私は特別の取り決めはないと思っております。また、現実に、現在行われております連絡の根拠と申しますものは、安保四条によります随時協議の一形態であるというふうに判断しておりますので、特別の取り決めは必要ないというふうに判断をいたします。
  229. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 取り決めがないんですね。
  230. 丸山昂

    ○丸山政府委員 取り決めはございません。
  231. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 政府間の取り決めもありませんね。
  232. 丸山昂

    ○丸山政府委員 この件に関しての政府間の取り決めはないと思います。
  233. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その件に関しての取り決めはないのですね。
  234. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ないと思います。
  235. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その取り決めは、昭和三十八年三月三十一日付了解覚書だと思いますが、どうですか。
  236. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ただいま先生の御指摘になりました了解覚書については、ただいま私どもの方にはそのメモの存在がございませんので、それに基づくものであるかどうか、また当時の関係者等にも聞きましたところ、その点については明確でございません。
  237. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたメモとおっしゃいましたね。メモという言葉はメモランダムのメモでしょう。そうですね。それなら日本語で言えば覚書ですね。そういうことでございましょう。違いますか。
  238. 丸山昂

    ○丸山政府委員 正確にはただいま先生の御指摘になった文書と申し上げるべきであったかと思います。
  239. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたは正確にはメモという言葉を使った方がきっと正しいのです。あなたの上司であった小泉防衛庁長官、松野防衛庁長官も、メモランダムをメモと言っておりますから、この文はメモと言った方がいいのですよ。  そこで、この昭和三十八年三月三十一日付了解覚書こそ、非常事態における日米共同作戦の計画策定のために日米政府間だけで作成合意された秘密の軍事文書でおり、しかもこの覚書の中には、FTC、FTS等の設置、その任務が定められております。その点、重要なんですよ。任務がはっり書いてある。あなたは先ほど、名称はないけれども、FTC、FTSに該当する常設機関が現に運用されていると答えた。とするならば、この常設機関を使って、日米制服が今日でも有事の際における日米共同作戦の諸計画を作成し――研究だけではない、合意し、その計画は現実に効力を持って運用されている。この点が重要な点です。あなたはそれをお認めになりますか、どうですか。
  240. 丸山昂

    ○丸山政府委員 まず、その文書それ自体について、私ども中身を拝見しておりませんのではっきりいたしませんが、少なくとも日米間において、ただいま先生の申されたような合意政府間の合意として成り立っておるということはございません。私ども伺っておりません。したがいまして、いまそこに中身を掲げられましたけれども、そのようなものを私どもの方の制服がアメリカとの間に研究し、また作戦計画を策定するという権限も制服には任されておるという事態ではございません。
  241. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 はっきりしておいてください。そういうものはないのですね。
  242. 丸山昂

    ○丸山政府委員 そういうものとおっしゃいましたのはいまの文書でございますか。
  243. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 答弁で、日米制服の間でそういうことを合意をして取り決めたような事実はないと……。
  244. 丸山昂

    ○丸山政府委員 日米制服間で取り決めた事実はないと思いますし、それからそのような権限もゆだねられておりません。
  245. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと防衛局長、ないと思いますとか言うのでなく、ないのならない、あるのならある、こういう返事をしなさい。
  246. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ただいまの御指摘のような事態でございますね、つまり制服が日米間において有事の際の作戦計画をつくっておる、合意しておるというようなことにつきましては、それはございません。
  247. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、了解覚書とちょっと別な文書をいま私ここで言います。  あなたはさっき、了解覚書はないと思う、こういう話だったから、それに結びつく問題なんだが、「統幕3の登第三九甲の二八号という文章はございますか。」と私は昭和四十年五月三十一日の衆議院予算委会で質問した。小泉防衛庁長官は、当時、「ただいま御指摘のような番号の文書はございます。しかし、その件名や内容については、この際申し上げられません。」このように答えた。ところが、この間行われた新潟地裁の小西事件の裁判で、裁判所からこの文書提出命令が出された。ところが防衛庁は、その登録番号の文書はすでに廃棄処分にしているので提出できないと断った。廃棄処分にしたのはいつですか。
  248. 丸山昂

    ○丸山政府委員 四十一年の二月ごろでございます。
  249. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、廃棄されたこの文書の登録の日にちは昭和三十九年四月六日。登録したのは三十九年四月、廃棄したのは四十一年の二月。そうすると、その間、約三年間はこの文書は有効であったということになる。そうですね。これが第一点。  第二の点、この登録番号から見て、この文書は、あなたの方の庁秘訓令第五条、秘密の格づけの中のトップシークレットである「機密」である。私がかつて取り上げた三矢研究は、これはセカンドクラスである「極秘」である。「機密」の文書である、トップシークレットであるこの文書は、日米の制服間の訓練についての方針が出されている。これは単なる研究とか訓練だけでトップシークレットになるなんということはあり得ない。合意があるということだ。効力を持って運用されているということだ。私はここで伺いたいが、この登録番号のものはトップシークレットである、この点についてもあなたの御意見を伺いたい。
  250. 丸山昂

    ○丸山政府委員 いまの文書から、その文書が機密であったかどうかという点については、ちょっと調べさせますので、御猶予願いたいと思います。
  251. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃそれを調べてお答えください。  この文書の題名は何と言いますか。廃棄処分にしているくらいなら名前を出せるでしょう。
  252. 丸山昂

    ○丸山政府委員 この文書の件名につきましては現在わかりません。
  253. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 わかっているはずです。廃棄処分にしているからわからないとおっしゃるのでしょうが、自民党の代議士の中で少なくとも三人は知っている。福田篤泰代議士、いま予算委員ではないけれども、井原岸高代議士、元理事、それから加藤陽三代議士。そのときは福田さんは防衛庁長官、井原氏は政務次官、加藤氏は事務次官、これは知っているはずだ。  そこで、そういう点で時間をとりたくない。この秘密文書を坂田さん、提出できますか。廃棄されているからできないとおっしゃるのじゃありませんか。
  254. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 廃棄してありますから提出はできません。
  255. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃお出しになれないそうですから、私の方が出します。     〔岡田(春)委員、書類を示す〕。
  256. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私がこれを公表いたしますが、  これをごらんください。  登録番号は「統幕3登第三九甲-二八号」、そして発令者は「防衛庁統幕会議および在日米軍司令部日本、東京」、日付は「一九六四年四月六日」、秘密の格づけは「機密」。あなたは、坂田さん、言われないとおっしゃった件名は、「フライングドラゴン改訂のための計画指針」、これですよ。いいですか。  そこで、この秘密文書の次のページをおあけください。3をごらんください。委員長、3を見てください。次のページの五行目に3があります。「昭和三十八年三月三十一日付了解覚書に基づき、協同企画委員会(FTC)は、非常事態における日本防衛のため日米陸海空部隊の協同運用に関し、有効な諸計画を確実に準備する責務を有する。よって、協同企画小委員会(FTS)は、上記に概述された情勢を考慮して、現行の緊急計画大綱を改訂するよう指示された。この計画大綱は承認後、了解覚書の第4項に記述された目標を達成し、下記第4項に述べられる使命の遂行を助けるものである。」明らかになっているじゃありませんか。  そこで、この文章で明らかになったのは、次の四点である。  第一は、丸山防衛局長は、名称はないが、現在も後継的な形で運用されていると答弁したFTC等に該当する常設機関は、非常事態における日本防衛のため日米陸海空部隊の協同運用に関し、有効な諸計画を確実に準備する義務に基づいて設置されたものである。したがって、現在運用されているこの常設機関は、その目的のために置かれているという点が第一点であります。  第二点は、3の劈頭にあるとおり、この常設機関が丸山局長の言うとおり現存するのであるとすれば、その合意基礎になっているのは、昭和三十八年三月三十一日付了解覚書があるということであります。これは3で明らかである。  第三点は、「現行の緊急計画大綱を改訂する」云々と書いてあるが、これによって緊急計画大綱が存在しておったこと、しかもまた、これを必要に応じて改訂して、現在においても緊急計画大綱が現存していることを意味している。しかも、これについて申し上げますが、私がかつて取り上げた松前・バーンズ協定は現在生きていると言われている。この松前・バーンズ協定の中にも「戦時緊急計画の実施」と書いてある。ですから、明らかに今日でも緊急計画大綱または戦時緊急計画なるものは現存するということを確認することができる、これが第三点。  第四点。この常設機関における日米制服だけの作業は、丸山局長は先ほど、すり合わせとか研究とかいろいろなことを言われたが、決定事項が合意され、効力を持って運用されていることを示している。その証拠に、どうですか、先ほど読んだ文章の一番終わりに、「この計画大綱は承認後、」――「承認」という言葉が使われている。それだけではない。二ページ目の一番下の方に6がある。6のところに、「この計画の有効期間は、」となっている。効力を持って運用されているじゃないか。有効期間じゃないか。明らかに効力を持って運用されていることを意味しているじゃないか。  私はこの四つの点が少なくとも明らかになっていると思う。  そこで、それに対して、きっと坂田さんも丸山さんも、こう答えるだろう。破棄されているからそういうものは生きておりません、こう言うだろう。そうじゃないですよ。この文書自体は破棄されている。しかし内容は全部生きている。内容はしかも運用されているのです。その証拠に、どうですか、あなたの言った常設機関があるじゃありませんか。常設機関に基づいて、非常事態の計画はつくられているじゃないか。ここに読んだとおりです。了解覚書だってあるでしょう。それがなかったら根拠にならないじゃないか。あなたはないと言った。これはあるじゃありませんか。はっきりしているじゃないか。緊急計画大綱または戦時緊急計画、あるいは類似の名前による有事の際の計画はある。断じてある。あるのかないのか。あるのならば、この計画を出してもらいたい。常設機関内の日米制服の作業は、先ほどから言っているように、すり合わせだけではない。効力を持って運用されている。この事実はこれで明らかじゃありませんか。これについて防衛庁長官、御答弁いただきたい。どうですか、この点は。――いや、防衛庁長官だ。彼も知らないはずだ、との文書はないと言うんだから。防衛庁長官。(「ないと言ったじゃないか」と呼び、その他発言する者多し)
  257. 丸山昂

    ○丸山政府委員 いや、ございません。ないことは、私、先ほど申し上げたとおりに、ございません。  それから、あとの、いまの制服間の問題についての御指摘でございますが、制服間においては、そのようなことはやっておりません。これは、私が前の答弁で後継的と申し上げておりますのは、ここの名称と違いまして。FTCというのは本来フリー・トーキング・コミッティー、それからFTSというのはフリー・トーキング・サブコミッティー、これのそれぞれ略であるというふうに言われておるわけでございますが、現在はそういう名称を付しておりません。  それで、機能その他につきましては、私どもよく存じておりますが、全く技術的な研究、検討でございまして、ただいま先生が御指摘のような実体は一切ございません。これははっきり申し上げられると思います。
  258. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 納得しません。これはもう明らかに楢崎委員への答弁と食い違っている。いいですか。長いから私は全部言わなかったんだ。六月十八日、外務委員会の丸山政府委員答弁。「ただいまそういう名称では呼んでおりませんが、実体的にはいまその後継的な形で続いております。」「特別に名称は付しておりません。」続いて、「FTCと言われておりましたものは、ただいま御指摘がありましたように、統幕の議長、事務局長、先方が在日米軍の司令官、参謀長、こういったレベルでございます。」こう言っているじゃないですか。「FTGと言われるものは、フリー・トーキング・グループという訳のようでございますが、これは各幕の各部長とそれに対応する米陸海空軍のそれぞれのスタッフということでございます。FTSというのは、フリー・トーキング・サブコミッティーの訳のようでございますが、これは統幕の事務局の各室長と、それから在日米軍の参謀スタッフ、こういうところのレベルでの話し合いということでございます。」これは後継的にやっていると言っているじゃないか。ここまではっきり言っているじゃないか。違うじゃないですか。だめだよ。いまの答弁じゃだめだよ。
  259. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ただいまの先生の読み上げられました前の答弁と、そっくり同じことを私は申し上げておるわけでございます。後継的と申しますのは、そういうレベルでの会合はずっと現在も続いておりますということを申し上げておるわけでございまして、その先生の御指摘されたような中身を、日米の有事の際の作戦計画を立てるというようなことはやっておらないというふうに申し上げてあるわけでございます。
  260. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 やっておらないと言ったって、あなたはそれじゃ日米間の取り決めの根拠は何かありますか。私が言っているのは、その根拠は昭和三十八年三月三十一日付の了解覚書である。あなたはそれは別だと言うのなら、何か別なものがあるのですか。あるのなら、それを言ってください。それが一つ。  時間がないから第二点。了解覚書というのは、この文書の中にあったんだが、当然この了解覚書というものもあったということは、あなたお認めになるわけでしょう。そうでなければ、この文書自体は約二年半の間有効であったんだから、それは当然あるということになりますね。そうでしょう。そうでなければ、これは答弁にならないじゃないですか。
  261. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私どもはこの文書そのものを知っておりませんし、ただいま初めて拝見をいたしておりますので、まず先生の御質問は、この文書が真正なものであるという御前提のもとの御質問でございますので、そういう御前提での御質問に対しては、私どもはわからないというふうにお答え申し上げざるを得ないと思います。
  262. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いまの答弁ではわかりません。全然わかりません。
  263. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと待ってください。ちょっと待ってください。  丸山防衛局長、はっきり答弁しないからわからないんだよ。はっきりしなさいよ、それは。
  264. 丸山昂

    ○丸山政府委員 もう一回繰り返して申し上げます。  ただいま岡田議員からお示しのありました文書は、そのもとになると言われる文書については、もちろん私どもは、廃棄をいたしましたので、見ておりませんので知りません。したがって、ただいまのお示しをいただきましたこの文書が真正なものであるかということについて、はっきり見解を申し上げる立場にございません。いずれ当時の関係者に調べさせなければ、はっきりしたことはわからないと思います。少なくとも現在ここで御指摘をされておるような実体というものは、現在、制服間において行われていることはないということははっきり申し上げられます。
  265. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは責任を持って出した文書です。これが廃棄以前において有効であったことは先ほど認めた。二年半の間有効であった。その事実と、この文書、そのときの文書とこれを同じものであるかどうかは確認できないといま言った。そうですね。間違いないですね。それは証拠をいただけますね。
  266. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。  あなたはその時分、防衛局長じゃないんだろう。防衛局長なのか。(丸山政府委員「はあ」と呼ぶ)はあじゃない、どっちだ。(丸山政府委員「最近の防衛局長でございます」と呼ぶ)だから、これは見たことはないんだろう。(丸山政府委員「見たことはございません」と呼ぶ)その後、これを継続してこの作戦計画をやっているわけじゃないんでしょう。(丸山政府委員「やっておりません」と呼ぶ)そういうふうに答えればいい。やり直しだ。(笑声)  防衛局長。(「誘導尋問だよ」と呼び、その他発言する者多し)いやいや、誘導尋問じゃない。――はっきりしなさい。防衛庁長官にそう答えさしたらどうだ。めちゃくちゃだ、これは。めちゃくちゃだ、これは。錯覚を起こしているんだ。防衛局長。しっかり答えろ。
  267. 丸山昂

    ○丸山政府委員 まず、この文書についてでございますが、この文書は岡田先生からついいまし方お示しをいただきまして、これを私どもも初めて拝見をいたしますので、かねてから問題になっております統幕三登第三九甲二八号ということに該当する文書であるかどうかということにつきましては、私どもそれを判断をする立場にございません。と申しますのは、私どものこの文書は、すでに先ほどもお話がありましたように、四十一年の二月ごろに廃棄になっておりますので、私どもの方にもこういう文書のもとがございませんし、したがいまして、それと比較検討するということができませんので、この文書自体が真正なものであるかということについては、はっきりと私ども申し上、けられない立場てございます。  それからもう一つ、この文章が廃棄するまで有効であったかどうか、こういうことでございますが、したがいまして、ここにお示しのこの文書これ自体につきましては、その間において有効であったかどうかについても、はっきり申し上げられる立場にございません。(岡田(春)委員「さっき有効と言ったじゃないですか」と呼ぶ)有効であったというのは、そのもとのものは有効であった、しかし、これは有効であったか……(岡田委員「もとのものは有効だったですね」と呼ぶ)もとのものは有効でございます。しかしながら、ここにお示しのものがそのものであるかどうかについては、はっきりいたしておりませんので、有効であったかどうかについては、はっきりしたことを申し上げられないと思います。  それから、繰り返して申しますが、現在ここにあるような中身のものについては制服はやっておりません、こういうことでございます。
  268. 荒舩清十郎

  269. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実は、いまの点がはっきりしないと、これから先の質問に移れない。ということは、これは現在日本の防空に対して生きております松前・バーンズ協定と中身が関係するからであります。たとえば、岡田委員も指摘しました戦時緊急計画、それから同じく松前・バーンズ協定の中の(五)の「総隊の要撃機は航空自衛隊の要撃準則を守り、五空の要撃機は太平洋空軍の交戦準則を守るものとする。」このくだりが実はこの取り決めから出てくるのであります。したがって、いわゆる廃棄処分になったものと岡田委員が出されたものが合致するかどうか明確にされないと、後の質問に移れませんので、ここでひとつその取り扱い方を御協議いただきたい。
  270. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの楢崎君の質問に対しまして、坂田防衛庁長官からはっきりした御答弁を願います。
  271. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 お答えをいたします。  第一に、いまお示しになりました文書は、われわれの関知しない文書でございます。  第二番目といたしまして、統幕三登第三九甲二八号というのは四十一年二月に廃棄されておりまして、現在ございません。  それから、わが制服におきましては、十分シビリアンコントロールのもとにやっております。
  272. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が言ったのは、その文書は廃棄されておるということで通るかもしれないが、実は松前・バーンズ協定は生きておるのです、この問題と関係するから、さっき岡田委員が出した中身が廃棄されたものと同一であるかを確認してもらわないと、後の質問に移れないと私は言った。松前・バーンズ協定の中に生きておるのじゃないですか、まだ中身が。
  273. 丸山昂

    ○丸山政府委員 松前・バーンズは御案内のとおり生きております。これはアメリカとの間の合意文書でございますので、アメリカの了解を得ませんと、中身について御提示をするということは困難でございます。
  274. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 坂田防衛庁長官、丸山局長答弁では、私、納得いたしません。この文書が防衛庁にあった文書と同じものであるかどうかを確認いただきたい。その点は、昭和四十年に小泉防衛庁長官が、先ほど私が言いましたね、この登録番号のものはあります。しかしその内容についてはこの際申し上げられませんと、はっきり言っているわけであります。したがって、これがあるのかないのかという点は、これは廃棄したという事実まで認めておるのですから、これが同一物であるかどうかを確認いただきたい。
  275. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ただいまの統三云々と申します文書につきましては、先ほど申し上げましたように、四十一年の二月に廃棄をしておりますので、現在ございません。したがって提出はできません。  それから、松前・バーンズ協定は、これは現在も有効でございます。しかしながら、アメリカとの関係がございますので、先方の了承を得られない場合においては提出が困難と思います。
  276. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いまの御答弁では納得いたしません。というのは、廃棄しているから提出できませんという答弁だけであって、これが同じ物であるかどうかという確認は現在してない。これは確認してもらわなければなりません。その点が第一点です。  第二の点。いま第二の資料を委員長にまずあれしますから、ちょっと見てください。
  277. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 じゃ第一の点。これはいまはないが……。
  278. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それに結びついておりますから……。
  279. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 だから、ないが、確認をするかしないかということを……。
  280. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、ちょっと待ってください。これをまず照合してもらわなければなりません。
  281. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、廃棄をされているから、これは原案があるはずです。  その次に、ぜひこれも実はお調べをいただきたい。これは廃棄されておらないはずです。廃棄されておらないのにフライングドラゴン計画についての計画本文が、登録番号は「統幕三登三九甲五七」と書いてありますが、これは間違いです。「五六」です。ここに「五七」と、ミスプリントしておりますが、「五六」です。これは昭和三十九年八月六日、久須美英治二佐、第三室。この人が日本側の担当であります。文書がないわけありません。こういうように担当まではっきりしている。別紙A、部隊区分及び主要戦闘部隊、同じく統幕三登三九甲五三、三十九年八月三日、三谷庸雄二佐。別紙B、作戦構想、統幕三登三九甲五七、三十九年八月六日、久須美二佐、三室。別紙C、指揮関係、統幕三登三九甲五一、三十九年七月二十一日、富沢二佐、第三室。別紙C付録、統幕在日米軍作戦調整所、統幕三登三九甲五一、三十九年七月二十一日、富沢二佐。坂田さん、どうです、これがあれですよ、日米共同作戦調整所ですよ。あなた、もうできていますよ。別紙F、兵站、中尾二佐。通信電子、統幕三登三九甲五二、三十九年八月一日、徳武二佐。別紙K、救難、統幕三登三九甲五四、三十九年八月三日、三谷二佐。別紙L、交戦規則、これがいま楢崎委員の言った交戦規則の問題ですよ。松前・バーンズで生きていますよ。これははっきり生きていますよ。はっきりしているじゃないですか。三谷二佐。別紙O、心理戦、統幕三登三九甲四四、三十九年七月十六日、富沢二佐。別紙Q、民事、統幕三登三九甲四五、三十九年七月十八日、岩崎一佐、第一室。全部できているじゃないか。制服の間で全部計画はできていますよ、あなた。坂田さん、あなたどうなんですか。松前・バーンズでもやっているし、これは全部できているじゃないか。これは廃棄文書じゃありませんよ、全部生きていますよ。これは一体どうするんですか。  三木さん、三木総理、いいですか。あなたとフォード大統領の会談で新機関をつくることになった。坂田・シュレジンジャーで新協議機関をつくることになった。それをつくるのは、もう制服で全部できているものを後であなた方が追認するだけですよ、これは。オブラートで包むだけですよ。もう全部制服の間でひとり歩きをして、独走して、これは全部できているじゃないか。どこにあなた、シビリアンコントロールがあるのですか。明らかに憲法違反じゃありませんか。軍国主義はここまで来ているんですよ。はっきりしているじゃないか。これは現実にあるのかないのか、まずそこから伺いましょう。
  282. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 これは、すでに先ほど申し上げましたように、廃棄処分にしておるわけでございまして、ありません。そして現在もやっておりません。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連して。いいですか、松前・バーンズ協定の(五)における航空自衛隊の要撃準則、これは米軍のやつを写したものですよ。そのもとは「五空の要撃機は太平洋空軍の交戦準則を守るものとする。」ここにあるのです。だから、この交戦準則と要撃準則が、これがいま別紙しの日米交戦規則、それに該当するものです。ちなみに言っておきますが、空軍の術語の辞書によると、交戦規則とは何か、こう書いてあります。「戦時非常事態に至るまでの間、対象軍の兵力と交戦するための特定条件、すなわち武力攻撃の判定とこれに対処する武力行使の基準等に関する事項を定めた規則」、そうなっておる。したがって、この松前・バーンズ協定が生きておる限りは、この別紙L、日米交戦規則は生きておるのです。  だから同時に私は要求する。この松前・バーンズ協定における最初の戦時緊急計画、並びに(五)のところに出てまいります航空自衛隊の要撃準則及び五空の交戦準則、これを同時に出してください。これを要求しておきます。
  284. 丸山昂

    ○丸山政府委員 松前・バーンズにおきます戦時緊急計画というのは、特定名詞ではございません。特定の計画を指しておるものではございませんで、いわゆる戦時になって適用される諸計画という趣旨でございます。(楢崎委員「それがフライングドラゴンじゃないか」と呼ぶ)それでございます。  それからもう一点、その交戦規則でございますが、松前・バーンズで言われております五空の交戦規則は、この協定、取り決めができました当時のものと現在とでは違うようでございまして、いまのところ……(楢崎委員「とにかく出しなさいよ」と呼ぶ)これは五空のものでございます。アメリカのものでございますので、先方の了承を得ればそのとき御提出をしてよろしいかと思います。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 したがって、全部出てこないとわからないわけです。そのもとになるのは、岡田委員が要求をいたしましたこの中身が、廃棄処分の文書と同一であるかどうか、そこから始まるわけです。したがって、それを私は明確にしてもらいたい。それでなくては以後の質問ができない。架空の質問になってしまいます。全部われわれは出していますから、はっきりしてください。どうしますか。
  286. 丸山昂

    ○丸山政府委員 提出を御要求になっておられます資料を大きく分けまして、一つはすでに廃棄をしておりまして、私ども御提出を申し上げようにも現物がない。それから照合をいたしますにも照合する対象がないというものでございます。それから、次の種類につきましては、これはアメリカの持っておりますものでございますので、先方の了承を得なければならない、こういう二種類でございます。
  287. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 じゃ長官、廃棄する場合に、廃棄の件名簿がなければ、どれを廃棄したかどうかわかりませんね。そうでしょう。廃棄件名簿の中には、登録番号と件名は書いてありますね。その点どうですか。
  288. 丸山昂

    ○丸山政府委員 件名簿につきましては、いま存否を確認をいたします。
  289. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 役所というものには、処分をする場合に処分簿というものは必ずある。廃棄しているのなら、廃棄簿というのは当然ある。それはないんですか、あるんですか。廃棄簿はあるんでしょう。それはどうなんです。――こんなことじや時間ばかりとってだめだよ、話にならないよ。
  290. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 廃棄簿はあるのかないのか、どっちだ。
  291. 丸山昂

    ○丸山政府委員 それをいま調べております。
  292. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もう一度確認をしておきます。  廃棄簿の中には、廃棄をした登録番号並びに件名簿というのは当然なければならない。その中には、計画本文、部隊区分及び主要戦闘部隊、作戦構想、指揮関係、統幕在日米軍作戦調整所、兵站、通信電子、救難、交戦規則、心理戦、民事、少なくともこれだけは件名簿の中に明確にあるはずである。その当時は、これは有効としてあったはずである。現在やってないという理由にはならない。その点は、現在の問題は別として、これらは事実としてあったものである。これはわかるはずである。(楢崎委員「もしそれがなかったら、違法の廃棄処分ですよ。」と呼ぶ)
  293. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ただいまの御指摘の文書につきましては、これも先ほどのお話になりますが、この文書自体の真正性については、私どもはっきり証言をする立場にございませんので、ただいまこの書類をという点でございましたら、はっきりお答え申し上げかねます。  それから、いまの件名簿の問題でございますが、件名簿は、いま統合幕僚本部につきまして調査をしておりますので、その結果を待ちましてお願いしたいと思います。これは明朝までには必ず御返事を申し上げます。(田中(武)委員「議事進行」と呼ぶ)
  294. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。
  295. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 突然のお尋ねでございましたので、調査をいたしまして、あすの朝までにはっきりいたしたいと思います。お許しを願いたいと思います。
  296. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行。  先ほど来の質疑応答を聞いておりますと、一番冒頭に私が申しました誠意ある答弁、あるいは誠意を持って質問に答えようという態度が出ておりません。したがって、しばらく休憩をしていただき、後の取り扱いを協議していただきたいと存じます。
  297. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま田中君の動議ですが、どうぞそこで理事が集まって協議してください。
  298. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 防衛庁長官に申し上げますが、明日、開会までに、いまの御質問に納得できるような、廃棄したなら廃棄したというような、あるいは番号を照合した問題、そういう答弁できますか、それをひとつ。
  299. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 明朝までに調査をいたしまして、御報告を申し上げたいと思います。御了承願いたいと思います。
  300. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 坂田さん、あなたさっき、これは廃棄したと言いましたね。廃棄簿がないのに、わからないのに、廃棄したのはどこから廃棄したとあなたはおっしゃるのですか。その理由をはっきり言ってください。どこで廃棄したか、廃棄簿がないのに、どうやって廃棄したとあなたは言えろのですか。その理由をはっきりおっしゃいよ。――だめだめ、長官でなければだめです。長官が答えたんだ。
  301. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 はい、わかりました。
  302. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 統幕から廃棄をしたということを言っておりますので、われわれはそれを承知いたしておるわけでございます。(発言する者あり)
  303. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 統幕のことであなたの役所の中に文書の整理簿はないのですか。統幕の言うことを何でも信用する。だからあなた、制服の独走になるんじゃないですか。何でも統幕の言うことなら信用するのか。そんなのは理由になりません。それが第一点。  大体、こういう重要な問題をあなたは、整理簿もない、わからないなんて、そんなことは理由しして成り立ちますか。それで防衛庁が仕事をやっておりますなんということになりますか。これを廃棄処分にした件名簿もないなどというのは、これは話にならぬじゃないか。毎年毎年簿冊としてあるはずです。あなた、文書課で調べなさい。文書課に全部ありますよ。あしたの朝それをお出しになるのなら、文書課のその部分をコピーして持っていらっしゃい。資料としてお出しなさい。これが第二点。  いいですか。まずそれではとりあえず二つお答えなさい。
  304. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 とにかく十年前の問題でございますし、しかも突然ああいう書類をここへ出されまして、すぐこれはどうだ、ああだとおっしゃいましても、それはやはりわからなかったわけでございますが、やはりわれわれは誠意を持って、お答えをいたしたいと思っておりますので、あすの朝までぐらいはひとつ御猶予を願いまして、そしてひとつ十分われわれの方でも調査をいたしまして、万遺漏のないようにして御報告を申し上げたいと思いますので、御了承を賜りたいと思います。(発言する者あり)
  305. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 坂田さん、あなた十年前、十年前とおっしゃるけれども、そんなトップシークレットのものなんかたくさんあるわけじゃありませんよ。機密の文書、マル秘文書の――一般の文書ならば、調べなければわからないということもあるでしょう。しかし、あなた、機密の文書というのは、そんなにたくさんあるわけはない。廃棄処分にしたところで、毎年毎年それだけで一括してかためているわけはないです。機密の文書は、機密の文書だけの扱いがあるはずです。セカンドクラスのシークレットなら、セカンドシークレットの問題としてあるはずです。十年前ですからだめですなんていうことは理由になりません。すぐわかるはずだ。文書課に行ってすぐ調べなさい。すぐわかるはずです。それが一つ。  もう一つは、廃棄にしているのならば、当然アメリカと廃棄することを合意してなければなりませんね。そうでしょう。日本だけが廃棄して、アメリカは廃棄しないでいるわけですか。この文書は、アメリカと日本と一緒になってつくられている文書ですよ。これを廃棄するのならば、両方で合意して廃棄しなければならないはずです。合意して廃棄しているとするならば、どういう機関においていつ合意して廃棄したかという、これも明らかにしてもらいたい。いいですか。明日までにそれならそれをはっきりさせてもらいましょう。
  306. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 そのとおりだ。(発言する者あり)
  307. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 とにかく誠意を持ちまして十分調査をいたしまして、あしたまでに御報告を申し上げたいと思います。
  308. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いまのは答弁にはならない。とにかくではだめです。
  309. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 とにかくでなく、返事を……。
  310. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 先ほど私が質問したように、アメリカと廃棄するのについて合意をしているのならば、どのような機関においていっそのような会議が行われて、それによって廃棄をされたものであるかどうか、日本だけが廃棄してアメリカは生きているのか、この点を明らかにしてもらわなければならない。こういう点もあしたの朝御答弁いただけますね。その点をはっきりしておいてもらわないと話になりません。そうでないと、あしたまた質問の中でそれを出していかなければならない。
  311. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 わかりました。――それはいいですね。
  312. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 岡田さんおっしゃった、そのとおりだと思いますので、あしたまでお待ちをいただきたいというふうに思います。
  313. 荒舩清十郎

  314. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行で提案をいたします。  いま理事会がといいますか、ここで場内で理事が、委員長を含めて打ち合わせいたしましたように、この際、三十分ひとつ保留質問というか、残っている時間も合わせて出てきたところで質問をする、ただし、それをどこでやるかということは、また理事会において相談する、そういうことで、岡田議員の質問は留保のままきょうは一応終わり、他党との関係がありますから、次に入っていただくことにいたします。わかりましたね。
  315. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 わかりました。  それでは、ただいま岡田君の質疑関連して楢崎君の質疑に対しまして、田中武夫君から緊急の発議がございました。三十分あと残しまして質問をしてもらうことにいたしますが、いつそれをやるか、どの場所でするかというようなことは理事会で御相談願う……(岡田(春)委員「明日のうちのいつの時間という意味ですね」と呼ぶ)理事会にひとつお任せ願って、他党のなにもあったりしますから……
  316. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうことで、やはりあすじゅうにということで相談いたしたいと思います。
  317. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 後ほど理事会を開きますから、理事会のところでよく御相談をいただく。  なお、防衛庁当局に申し上げますが、まことに醜態なわけでございまして、これはもう緊急事態でも起こったとき国の防衛がどうなるか、まことに遺憾千万であります。どうぞひとつ、本当にそれこそ三権分立の立場に立って、立法府として厳重に注意いたします。  これにて岡田君の質疑は、留保のまま一応終了いたします。     ―――――――――――――
  318. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  本日、全国銀行協会会長板倉譲治君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  319. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ご異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――
  320. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、荒木宏君。
  321. 荒木宏

    荒木委員 私は、いま国民の大きな関心である物価問題からお尋ねをしたいと思います。  政府は、物価が鎮静の傾向を示したと、こう言っております。来年春、前年同月対比で一けた台、こういうことを言っておるのですが、しかし、国民の実感からしますと、物価はとても鎮静の傾向を示したという感じではない。  そこで私は、この指数の問題ではなくて端的に、たとえば三木総理総理に就任されたのは昨年の暮れでありますが、そのときの千円の値打ちが、それを基準にしていま幾らになっているか。総理は、物価が政策の最重点と、こう言われたのでありますが、そのときの価値をもとにして、いま当時の千円は幾らぐらいになるとお考えになっているか、ごれをまず総理伺いたいと思います。
  322. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 去年の暮れから八%程度やはり購買力が落ちているということでございます。
  323. 荒木宏

    荒木委員 いま声が小さくて、私はよく聞き取れなかったのですけれども、それよりも、当時のお金の値打ちがいま幾らくらいになっているか。総理はすぐにお答えになることができずに、隣の大蔵大臣に御相談になった。ところが、その大蔵大臣もはっきりしたお答えがなかった模様で、お隣の副総理に御相談なすった。総理も大蔵大臣も副総理も、いずれもすぐに、大体どのくらいにだっているか、その見当もおつきにならないような模様で、政府の役人を呼ばれたようでありますが、私は、はっきり申し上げたいのです。  物価の問題に関してはたびたび指数のお話が出ます。しかし国民は指数で買い物に行くわけではありません。百円硬貨や千円札を持って家庭の主婦は買い物に行くのです。そしてこの同じ千円が一体幾らの値打ちになっているか、このことを毎日毎日身にしみて物価高で苦しんでおるわけですが、試みに私は申し上げておきたいのですけれども、三木総理総理になられて、来年の三月、三木内閣の公約どおりに、前年対比で一けた台におさまったとしましょう。そのときに、昨年暮れの千円の値打ちは八百九十四円になるのです。八百円台になるのです。一年そこそこの間に百円以上も値打ちが下がる。つけ加えて申し上げておきますが、十年前、昭和四十年一月、これは佐藤さんが総理になられたころでありますが、このときの値打ちをもとにいたしますと、当時の千円は、三木さんが総理に就任されたときには四百十五円に下がっています。自民党皆さんが、佐藤総理から田中総理に、そして三木総理にと代がかわる間に、十年前の貨幣の価値を基準にして、当時の千円は半分以下になってしまった。そして来年春にはついにこれが四百八円になるのであります。  私は、こうしたところから、物価の問題についていま実際に金の値打ちということを問題にするとき、やはり国民の大きな関心の問題は物価問題であろうと思います。そのときに自民党は、酒とたばこ、そして郵便料金の値上げ法案、衆議院関係委員会で単独で強行可決をいたしました。  私がお尋ねしたいのは、この指数の問題で物価をごまかすのではなくて、実際にお金の値打ちということを問題にするときに、今度のこの値上げ三法案が国民の生活にどういう影響を与えるか、総理はどう思っていらっしゃるか、このことをお伺いしたいと思います。
  324. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まあ、酒では〇・一、郵便では〇・二、たばこでは〇・六ぐらい消費者物価に対して影響を与えると考えております。
  325. 荒木宏

    荒木委員 先ほども申し上げましたが、私たちは国民の生活に責任を持っていますから、そういった机の上の数字だけでごまかすことは許されないと思うのです。  たとえば今度の値上げ三法案の中で郵便料金があります。郵便料金の中には三種の郵便料金が含まれていますが、これは今度五倍に値上げになります。この五倍の値上げで、たくさんの団体、たくさんの人たちが大きな被害を受けますけれども、これは郵政省の管轄ですから郵政大臣に伺いいましよう。  この三種郵便物の五倍の値上げで実生活にどのような影響が起こるとごらんになっているか、ひとついままで調査されたところについてお聞かせをいただきたい。
  326. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。  ただいま御指摘の三種の問題につきましては、この法案が、郵便法が成立したその上で検討することになっております。しかし、郵便が家計に占める割合といたしましては〇・一二%ということであります。
  327. 荒木宏

    荒木委員 大臣、私が伺ったのは、指数の問題ではなくて、国民の各界各層に、たとえばこの三種の郵便料金の値上げが、現実にどのような影響を及ぼすか、これを伺ったのです。どうですか。
  328. 村上勇

    ○村上国務大臣 ただいま私がお答え申し上げましたのは、物価指数の問題でなくて、家計に占める割合を〇・一二%というようにお答えいたしたのであります。  なお、第三種につきましては、郵便法が成立した上で決定することであります。
  329. 荒木宏

    荒木委員 それじゃ大臣は、たとえば新聞協会日本専門紙協会日本機関紙協会あるいは日本農業新聞などなどを初めとして、たくさんの新聞、報道、言論出版関係の団体がありますが、これが三種郵便料金の値上げでどういう影響を受けるかということは、全くつかんでいないのですか。どうですか。
  330. 村上勇

    ○村上国務大臣 つかんでおりますが、いま御指摘にありましたように、五倍とか六倍とかいうようなことにするか、あるいは、いろいろな影響を考慮いたしましてそれをそれ以下にするかについては、まだはっきりしたことが郵便法の成立を見た上でなければ言えないということを申し上げておるわけでございます。
  331. 荒木宏

    荒木委員 いま郵便については、最初、たとえば五倍ということが言われておりますが、もしそうなればどういう影響があるかということはつかんでいるとおっしゃった。つかんでいるならそれを言ってください。実際にどういう影響を受けるか、大臣がつかんでいるところを国民にはっきりと説明していただきましょう。
  332. 村上勇

    ○村上国務大臣 これはもう各種各様にわたって非常に影響するところが大きいと思います。
  333. 荒木宏

    荒木委員 そんな抽象的なことを伺っているのじゃないのです。政治は実際の国民の生の生活を扱っているのですから。  私どもが、いろいろな機会に陳情を受けたり、そしてまた、それぞれの業界団体や関係者の方へ出向いて、どういう状態ですかと伺ったところの一例を申し上げますが、わが党の津川代議士が弘前の駅頭で街頭演説をやっておりました。今度三木内閣の手で郵便料金と酒とたばこの値上げ法案が衆議院関係委員会で単独で可決をされました、こういう街頭演説をやったわけです。そうしますと、周りにいた聴衆の中から一人の人が津川代議士のそばへやってまいりまして、どうか共産党、しっかりがんばってほしいと言われた。その方は青森県のりんご協会の役員の方であります。青森県下二万五千のリンゴ農家のうち一万数千を組織しているその団体の役員の方が、いま年に会費二千円をもらっている、郵送料が三百円かかる、もしこれが五倍になれば千五百円になる、とてもリンゴ農民の皆さん協会の会報をお送りすることはできない、この気持ちをくんで、どうか今度の公共料金の値上げを抑えるようにがんばってほしい、こういう話なんです。  総理伺いたいのですが、先ほど三木内閣皆さんがおっしゃっておる机の上の数字の問題ではなくて、実際に国民の生活にどういう影響が出るか、このことをしっかりつかむということが、国民のために政治を進める上では何よりも必要なことではなかろうかと思うのですが、総理のお考えを伺いたいと思います。
  334. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 酒、たばこ、郵便料金にしても、値上てげというものは人気のいい政策ではないわけですけれども、しかしどこの国でも、これは財政の相当大きな財源にしておるわけですね。それは、酒を飲む人、たばこを吸う人、あるいは郵便を利用する人、そういう人に対してある程度の御負担を願う。もしそういうことをしないでやるということになれば、ほかに財源を求めなければならぬわけですね。たばこを吸う人も、あるいは酒を飲まない人も、郵便を利用しない人も、一般に負担をしてもらわなければならぬ。そういうことで、これは各国とも相当な財源にしておるわけで、最近でも、フランスの景気対策を見ても、酒、たばこなどというのは、やはり第一番に値上げをやっておるわけですね。日本の場合も、公共料金というものは、やはり、利用される人、あるいはそれを消費する人にある程度の御負担を願わなければ、国としてもどこかに財源を求めなければならぬわけです。そういう点で、これは有力な財源の一つになっておるということでございます。政府もそういう意味から、今年度の予算にも五千百億ばかりの収入を予定して計上をしたわけでございます。  予算は通過いたしましたけれども、裏づけとしてのこういう値上げ法案というものが参議院でもうちょっと――一日かからなかったでしょう、数時間あれば議決をされたというところまで行って成立をしなかったわけでございますから、やはりこの機会に国民の方々には――いろいろ国としても財政的な支出というものはふえていく一方でありますから、どこかに歳入がなければ、国としては、財源を持たずにいろいろな国の行政を行うことはできないわけでありますから、まあいろいろと国民の方々には、値上げするというのはいつの場合でも人気はよくないわけでございますけれども、そう言ってはやはり国の財政というものは成り立たないわけでございますから、われわれもでさるだけ国民の納得を求めてこの値上げ三法の成立を期したいと願っておるわけでございます。
  335. 荒木宏

    荒木委員 私は、そういう教科書に書いてあるようなことをお聞きしたのじゃないのです。実情をつかんでいらっしゃるかと聞いたのです。実情をつかむ必要があるのではないかと伺ったのです。どうですか。
  336. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはやはり、これがどういう影響を国民生活に与えるかということは、政府として実情をつかまなければならぬことは、御承知のとおりでございます。
  337. 荒木宏

    荒木委員 先ほどりんご協会の例を言いましたけれども、こういう例はほかにも幾らでもあります。  京都に「家庭と学校」という月刊誌を出している教育団体がありますが、ここは一年契約で先に月額百五十円の会費をもらっている。郵送料はいままで十八円でした。もし五倍になりますと九十円になる。先にもらっていて、百五十円で九十円も郵送料がかかってどうして教育団体がやっていけますか。  総理、あなたは実情をつかむ必要があるとおっしゃった。青森県のりんご協会皆さん、京都の教育団体の皆さんはどういうふうにしていったらいいか、ひとつ総理の方から教えていただきたい。
  338. 村上勇

    ○村上国務大臣 第三種を御指摘のようなことに持っていった場合には、荒木先生御指摘のように、方々で非常にお気の毒なことになってくることを十分検討いたしております。でありますから、私どもも、少なくともこういうことに対しては、できる限り余りに大きな影響のないようにということを心がけております。  郵便料金につきましては、いろいろと御意見ありますけれども、これはもうどうしても経営的にやっていけない。こういう状態でもしこのまま放置しておりますと、三年間に七千億からの赤字が出るということになりますれば、どうしてもこの際御理解をいただかなければならないと思っております。
  339. 荒木宏

    荒木委員 大臣、いま実情は一端を申し上げた。大臣も、そういうことについては十分考えなければならぬということをいまおっしゃった。しかし、いま私が申し上げるまで、たとえばこの青森の例だとか京都の例は、大臣の方では御存じなかったと思うのです。こうした実際の例を十分つかんでその実情を――いま酒、たはこ、郵便料金を国会審議しているのですから、実際の国民の状態がどういう被害、影響を受けるか、大臣は郵政関係が御所管だから、せめてあなたの御所管の範囲だけでも実際の国民の状態をつかんで、審議をしておる国会に御報告をいただきたいと思うのです。
  340. 村上勇

    ○村上国務大臣 御報告ですか。わかりました。
  341. 荒木宏

    荒木委員 いま大臣の方から、実情を調査をして、値上げによって国民がどういう状態になるか、これを報告するというふうにはっきりおっしゃったので、私はそのことをひとつ念頭に置きまして、次の質問に移りたいと思います。  郵便とともにいま国会にかかっておるのは、たばこの小売定価であります。端的に言いまして、たばこは大変な黒字です。いままで出された専売公社の資料によりますと。これは昭和四十八年の計算ですが、ハイライトの総原価が一箱二十七円五十二銭。それからいま百円で売っておるセブンスターが、総原価が一箱二十八円七十二銭、そして同じく百円で売っておるチェリーが総原価が一箱二十八円二銭。専売公社の総裁見えていると思いますが、この事実に間違いありませんか。
  342. 泉美之松

    ○泉説明員 昭和四十八年におきますハイライト及びセブンスターの総原価はお話のとおりでございます。ただ、この総原価に小売人の小売マージンを見なければなりませんし、それから御存じのように地方消費税があります。これは税金でございまして、専売公社はどうしても払わなければならないものでございますから、これも足してお考えいただかなければなりませんので、その結果、専売益金として出てまいりますのは、いま申し上げましたセブンスターで申し上げますと、四十八年で三十八円程度、ハイライトで二十一円程度でございます。ところが、四十八年から本年までに、御存じのように石油ショック後諸物価の上昇がありまして、この総原価がさらに上がっております。そのために益金率が低下いたしまして、このままでいきますと、昭和五十年度にもし定価改定を行いませんと、四六・五%に益金率が低下する。それでは専売公社としての専売納付金がきわめて少なくなってしまう、財政物資を専売事業として扱っておる公社の使命が果たされなくなる、こういうことから定価改定をお願いいだしておる次第でございます。
  343. 荒木宏

    荒木委員 総裁、いま御説明があったけれども、それは赤字だということですか。黒字だということですか。
  344. 泉美之松

    ○泉説明員 昭和五十年度はまだ赤字ではございません。ただ、このまま推移いたしますと、五十二年度には専売納付金がゼロになります。
  345. 荒木宏

    荒木委員 現在黒字だというお話があった。赤字じゃございませんという言い方ですけれども、つまり黒字だということですが、益金率が下がってくると、こういうお話ですが、しかし総裁、いま公社はこの国内向け総原価以下で売っているたばこはありませんか。国内向け総原価以下で商社に出しているたばこはあるかないか、これを簡単に言ってください。
  346. 泉美之松

    ○泉説明員 荒木委員の御質問は、輸出しておるたばこについての値段かと存じます。輸出いたしておりますたばこは、製造原価で販売いたしておりますので、いまの総原価、つまり製造原価に一般管理販売費を加えた値段よりは、その一般管理販売費を引いた製造原価で売っているだけに、その分が低くなるわけであります。しかし、製造原価に対してはプラスで売っておりますから、総原価よりは低くなっておりましても、公社として損になっておるわけではございません。
  347. 荒木宏

    荒木委員 いま国内向け総原価以下で輸出商社にたばこを出している、こう言いました。私どもの調査によれば、本年ハイライト一箱二十六円で出しておる。この二十六円で売っているのは、製造原価以下じゃありませんか。
  348. 泉美之松

    ○泉説明員 ハイライトにつきまして、本年四月から九月末まで、ソ連向けのものは二十六円で販売いたしました。これはしかし、昨年の契約の続きで引き取りがおくれましたために二十六円でありまして、その製造原価は二十五円六十銭であります。わずか四十銭でありますが、一応の利益はございます。なお、その分につきましては、十月一日から三十一円八十銭に改定いたしております。したがって、製造原価より以上に相なっておる次第でございます。
  349. 荒木宏

    荒木委員 いま東欧向けという話がありましたが、そうじゃありませんよ。香港に二十六円で出している。二十七円五十二銭というのは、これは昭和四十八年の総原価です。いいですね、昭和四十八年。去年一年間で物価の値上がりが二四・五%ありました。そうしますと昭和四十八年の二十七円五十二銭というのは、去年三十四円二十六銭なんだ。一方製造原価の方は、今度の公社の方から出されました政府関係機関予算書によりますと、売上原価が四千五百十八億、それに占める販売費及び一般管理費は九百八十七億、二二%です。だから、国内総原価が今度三十四円二十六銭だとすると、この比率で計算をした輸出商社向けの製造原価は二十六円七十二銭ということになる。それを二十六円で売っているんじゃないですか。益金率が下がってきたと、こう言って国民に対しては値上げをしながら、コストを割って売っているんじゃないかということになる。この数字はどうですか。
  350. 泉美之松

    ○泉説明員 先ほど申し上げましたように、輸出品は製造工場渡しで売っておりますために、製造原価に若干プラスするところで販売いたしております。いまお尋ねの二十六円というのは、香港向けは五十年の四月一日から、先ほど申し上げました三十一円八十銭で売っておりまして、香港向けには昭和五十年度になって二十六円という販売はございません。その二十六円というのは四十九年度でございます。
  351. 荒木宏

    荒木委員 だから四十九年で計算しているじゃありませんか。四十九年の年間の値上がり率を見て、そうして計算をすれば、コストを割っているじゃないですか。
  352. 泉美之松

    ○泉説明員 お話の総原価は割っておるかもしれませんけれども、製造原価で申し上げますと、いまの五十年度のハイライト三十一円八十銭で売っておりますものの製造原価は二十九円九十二銭でございまして、それを割って売っておるわけではございません。
  353. 荒木宏

    荒木委員 製造原価二十九円なら、二十六円で売っておれば、製造原価を割っているじゃないですか。
  354. 泉美之松

    ○泉説明員 香港向けは二十六円では売っておりませんと、先ほど申し上げたのであります。ソ連向けだけ、昨年の契約の続きで引き取りがおくれましたために、四月から九月までの間に若干二十六円で出たものがある。ただ、それは昭和四十九年度のものでございますので、その製造原価は二十五円六十銭で二十六円より若干低い、こう申し上げたわけでございます、
  355. 荒木宏

    荒木委員 ことしになってから香港に二十六円で出している。もしあなたがどうしても製造原価を割っていないとおっしゃるなら、製造原価をひとつ示していただきましょうか。どうしても割ってないと言われるなら、製造原価をここへ出してください。私どもの調査では、はっきり香港に出している。この事実については、あなたの部下が来られて、名前は出さないでほしいと一生懸命頼まれるから、いまのところは具体的な事実関係、名前、出していませんけれどもね、どうしてもとおっしゃるなら、原価を出して説明したらどうです。国民に五割もの値上げをしようというときに、原価を割って出している事実についてはっきり説明をしないまま値上げをするということが許されるでしょうか。製造原価の関係について資料をはっきり提出されるように要求をします。
  356. 泉美之松

    ○泉説明員 私が先ほど申し上げましたように、輸出品は製造工場渡しでありますから、一般のたばこのように、販売及び一般管理費をかける必要がないわけでございます、したがって、製造原価に若干のプラスがあれば、販売していい品物であります。香港の場合は、本年四月一日以降三十一円八十銭で売っておるのでございまして、したがって、先ほど申し上げました製造原価の二十九円九十二銭より高くなっておる、こう申し上げておる次第でございます。
  357. 荒木宏

    荒木委員 前に大蔵委員会で、公社に原価の説明を求めました。そのときに出してきたのが専売公社監査報告書であります。これは総裁、御存じでしまう。この専売公社が国会に出してきた監査報告書を見ますと、五十二ページから五十五ページまでページが飛んでおる。なぜ飛んでおるのだろうかなと思ってよく調べてみますと、その間二枚むしり取られている。わが党の増本議員が資料要求をしたときに、公社が国会へ持ってきたものが二ページむしり取られている。なぜだと聞けばその部分については原価の記載がある。いま値上げをしようというときですから。しかも、いま言いましたように、外国に向けてコストを割って売っている疑いがある。販売費と、それから一般管理の費用、これはさっきの計算でちゃんと控除してある。国民に疑惑を与えたままで値上げをするということは、これは私は許されぬと思うのです。  委員長に申し上げますが、この審議を進めるに当たって、いま私が申しましたように計算をすれば、いま輸出商社に向けて出しておる公社の販売価格は原価を割っておる疑いがある。前の審議のときにも、その部分をわざわざむしり取って国会に出してきた。十分な審議をするためにこの原価の提出方を公社に求めたいと思いますが、理事会でお諮りをいただきたいと思うのです。
  358. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事会で研究して結論を出します。
  359. 荒木宏

    荒木委員 私のその部分の質問は、理事会で結論が出まして後、必要があれば続けさせていただくということを申し上げておきたいと思うのです。  物価の問題について続いてお尋ねしたいのは、国鉄の運賃の問題であります。国鉄の運賃につきましては、いま国会の議決で決めることになっています。ところが一部には、国鉄運賃を決めるについて、国会の議決を経ないで決めることができるようにしよう、こういった動き、声があるように聞いておりますけれども、これは運輸大臣に伺います。  この国鉄運賃の国会議決について運輸大臣はどのように考えておられるか、ひとつお考えを聞かしていただきたい。
  360. 木村睦男

    ○木村国務大臣 御承知のように、いま国鉄の財政再建の問題と取り組んで苦労をいたしておるところでございますが、すでに過去十年にわたりまして何回か再建計画を打ち立てました。しかしそれがいずれも中途で挫折せざるを得なかった。これらの原因をいろいろ考えてみますと、財政再建のためには政府の助成も必要でございます。また、内部の合理化も必要でございます。しかし交通事業でございますので、やはり交通運賃というものが非常に大きなウェートを占めておる。その交通運賃である国鉄運賃が適時適切に改定をされないところに、過去の財政再建の挫折の大きな原因があったわけでございます。現在は国鉄運賃は、いまお話しのように法定主義になっております。念には念を入れることは非常に私も結構だと思いますけれども、このためになかなかこの法案が通りにくい。国会のいろいろな事情で予定のようにいかないということが、やはり再建に大きな支障になっておることは、事のいい悪いは別として事実でございます。  そこで、国鉄運賃法は国会にかかっておりますけれども、その前に、他の交通運賃と同じように運輸審議会にも諮問をいたしますし、その答申も得ておるというようなことでございますので、仮に国鉄運賃法によって国会にかけ得なくても、運賃抑制の方法はいろいろとあるわけでございますので、できることならそういう方向で合理的な運賃が適時適切に決められるようになれば非常にいいことであるという意見が、実は国鉄の監査委員会の報告の中にも示されておりますし、それからいま各方面におきまして、いろいろとそれらの問題を論議をいたしてもらっておるわけでございますが、それらの議論の中にもそういうことが意見として出ておりますので、この問題は、国鉄の再建と相まちまして十分検討をいたしたい、かように思っておるわけでございます。
  361. 荒木宏

    荒木委員 大臣、いま国会審議がいろいろな事情があって時間がかかる、こう言われた。国民の立場から審議をする場所はどこにありますか。ここで審議をするのじゃないですか。時間がかかるというのは、政府から出されたものについて、国民の立場から見て審議をする必要があるから、時間がかかるのでしょう。政府が思うとおりに何でもやるのだったら、それはファッショ的なやり方です。国会なんかなくたって同じことだ。こういう考え方に通ずるものじゃないですか。この国会議決主義ができたのは、そういうものじゃないでしょう。この財政法三条が決められた趣旨については、会計検査院で説明がありますけれども、国民の立場から見て、国鉄の運賃やたばこの価格などが、国民の知らない間に政府の一方的決定で決められるようなことがないために設けられた制度です。制度の趣旨ははっきりしているのでしょう。  いま運輸大臣はああいう答弁をされましたけれども、総理はどうお考えですか。ああいう、国会がいろいろな事情があって時間がかかる、手間がかかると言わんばかりの言い方は、あれは三木内閣の方針ですか、総理からひとつその点について、国会審議をどう考えるか、国会議決というものについての考えを述べていただきたい。
  362. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 値上げ法案というものは、いつの経過を見ても簡単にはいかないわけでございます。それはまた国民の立場からいろいろ御審議を願わなければならぬ点もありますが、一つのたとえば国鉄なら国鉄を考えてみましても、やはり当事者能力というものは国鉄自身は持てないわけです。こういうところにもいろいろ問題として提起されておるわけでございますから、われわれは、こういう国民生活に影響のある問題というものは、政府が独断的にやろうという考えはありません。やはりそういうふうな国会の法定主義でない場合には、厳重なそういう国会の承認を得た審議会などの議を経なければならぬ。政府が独断でやることはよくないし、やはりこの問題は私がどうしようという考えを持っておるわけじゃないけれども、ひとつ検討の課題では私はあると思います。
  363. 荒木宏

    荒木委員 そうすると、国会で議決をするということははっきり言えないわけですか、総理は。これは肝心なところです。国権最高機関である国会で、国民生活に重要な影響のある幾つかの公共料金、これを国民の立場から審議をして決めよう、こういうことになっておる。その原則を守りますと総理は言えないのですね。
  364. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 言えぬわけはないです、いま御審議を願っているわけですから。現行においては、国会の御審議を願う以外に現行のたてまえとしてはないのですから、言えぬわけはありません。それだから、こうやってわれわれとしても苦心に苦心をして、いろいろ御審議を促進してもらいたいと努力をしておるわけでございます。
  365. 荒木宏

    荒木委員 現在の制度は特に言われなくたってわかっているのです。いまあるとおりなんです。これを原則として守っていくということが言えないのですか、こう伺っておるのです。
  366. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまのたてまえとしては、政府はやはりこれは原則だと考えておりますが、ほかにも意見があることは事実ですね、この問題について。だから、この問題はやはり検討の課題であるということは否定できないと思う。政府はいまこの原則を守っていきたいと考えておりますが、どうもこういう状態というものは改革の余地があるのではないかという声は相当に強いわけですから、こういう強い声がある以上、われわれとしても検討をする一つの課題ではあると思っておる。政府はいまのところこの原則を曲げようという考えはないわけです。
  367. 荒木宏

    荒木委員 先ほどの運輸大臣の発言については、この国会議決主義という原則のたてまえから、私どもはこれを守るべしということを要求した。総理はいまそれに答えて、原則であるということは認められた。  運輸大臣の先ほどの答弁について私は厳重に警告をしておきたいと思う。もしその警告を受けるいわれがないと言われるのなら、運輸大臣も、これを原則としてはっきり認めるとこの場でおっしゃるかどうか。国会審議をしておることが時間がかかるとか手間がかかるとか、そういう言い方は国会軽視につながるものでしょう。運輸大臣の方から、この点について、ひとつ原則としてあなたもお認めになるかどうか、はっきり答えていただきたい。
  368. 木村睦男

    ○木村国務大臣 現在は御承知のように法定主義になっておるわけでございますが、いま総理からも答弁がございましたように、いろいろの意見があるわけでございます。もし仮にこれを運賃法から外すということになりましても、これはそれ自体をやはり国会に法案を出しまして、国会の賛成を得なければできないことでございますので、現在はいろんなそういう声がございますので、再建案の達成と相まってこの問題をどういうふうに処理していくかということを検討をしておるところでございます。
  369. 荒木宏

    荒木委員 いや、人の意見を聞いておるのじゃないのです。あなたが原則として認めるかどうかと聞いておるのです。
  370. 木村睦男

    ○木村国務大臣 現在は御承知のように認めておるわけでございます。
  371. 荒木宏

    荒木委員 あなたはどうなんですか、これからは。
  372. 木村睦男

    ○木村国務大臣 いや、私は認めておるわけでございますが、今後の国鉄の再建と関連がございまして、国鉄運賃を法定主義でいくか、あるいは他の厳重な制約の方法でいくか、こういう問題についてはいま各方面の意見を聞いておりますので、それらを総合いたしまして、その判断の上に立ってどうすべきかということを今後決めていきたい、これが私の……(荒木委員「現在は認めるか認めないか、これを言ってください」と呼ぶ)現在は認めております。
  373. 荒木宏

    荒木委員 それじゃ今後は認めないのですか。
  374. 木村睦男

    ○木村国務大臣 今後認めるとか認めないとかいうことではございませんで、いま申し上げたようなことで、現在国鉄の再建と相まって国鉄運賃をどういうふうに決定すべき仕組みにするかということを検討いたしておる、こういうことでございます。
  375. 荒木宏

    荒木委員 あなた、原則として認めると言ったのでしょう。  大臣、国会審議が国鉄の再建に支障を来たすと思っているのですか。国会審議をすることが国鉄の再建に支障なんですか。これはどうですか。
  376. 木村睦男

    ○木村国務大臣 支障を来すという意味で申し上げておるのではございませんけれども、適時適切な運賃を実施するためにどの方法が一番いいであろうか、いまの国会法定主義はどうであろうか、いろいろな意見があるわけでございますので、いま総理答弁をされましたと同じような理由で現在検討いたしておる、こういうふうにしておるわけでございます。
  377. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっと議事進行。運輸大臣は先ほど、運賃法定主義で運賃を国会審議することは国鉄の再建に支障を来すと言っているのですよ。法定主義に基づいて国会国民にかわって審議することが何で国鉄の再建に支障を来すのですか。それは国会軽視もはなはだしいですよ。ことに国民の税金を財政的に投資する場合もある。そういうような場合に、国会が当然国鉄の再建について慎重に国民にかわって審議することはあたりまえだし、また、運賃の値上げが国民の生活に切実な影響を及ぼすのですから、国民にかわって国権最高機関である国会審議することはあたりまえですよ。だから、支障を来すという言葉は取り消してください。取り消さない限りこれは審議が進みませんよ。
  378. 木村睦男

    ○木村国務大臣 国鉄再建に支障を来すと言っておったといたしましたら、私の発言が不適切でございます。私の申し上げます真意は、適時適切な運賃改定ができなければなかなか国鉄の再建が計画どおりいかないという過去の事例を申し上げたつもりでございますので、表現が悪ければ、これは取り消します。
  379. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、支障を来すということを言ったとすれば取り消すと、そう聞いていいですね。
  380. 木村睦男

    ○木村国務大臣 はい。
  381. 荒木宏

    荒木委員 いま国会法定の問題について、総理と運輸大臣から考えを伺いましたけれども、私たち共産党は、この公共料金の問題について、これが物価急騰の引き金になる、こういうところから強く反対をして、今日まで国民の暮らしを守ってまいりましたけれども、いまの国会で議決をするというたてまえについて、運輸大臣の発言がありました。取り消しはしましたけれども。この点については、今後さらに私たちは厳しく監視をし、追及していくということを申し上げておきたいと思うのであります。  国鉄に続いて、あわせて私鉄の問題を伺っておきたいのですが、いま私鉄の運賃の値上げの申請が出ております。ところが、私鉄は軌道部門だけでなくて、ほかに不動産部門初めたくさんの兼業部門があります。たとえば私鉄十四社で全国各地にたくさんの土地を買い占めておる。全部で二億平米、六千六百億円にも上る土地を買い占めていると言われています。しかもその場所が、たとえば東京の京成電鉄について言いますと、東北新幹線の車両基地、この周辺に広大な土地を買い入れておる。あるいはは南海電鉄が本四架橋のかかる鳴門周辺の島田島というところに広大な土地を持っておる。そうした土地を取得するための借入金の費用は、また金利が莫大なものになってくる。当然このことは私鉄の経営の上でも大きな負担になってきておるわけですから、こうした点から、この公益事業である私鉄の兼業部門についてのあり方をこのまま野放しにしておくのか。三木内閣は、この私鉄の兼業についてこのまま放置してくつもりかどうか、これをひとつ運輸大臣から伺いたい。
  382. 木村睦男

    ○木村国務大臣 私鉄が兼業といたしまして、不動産事業あるいはバス事業等やっておりますが、これは法のたてまえといたしまして、私鉄事業に悪影響を及ぼさない限りは、別にこれを規制することはできないわけでございます。  そこで、現在私鉄の運賃申請が出ておりまして、いろいろ審査をいたしております。その審査の一つの眼目も、こういった不動産事業初め傍系事業をやっておりますそのしりが、私鉄の経営そのものに数字的に経理的に悪影響を与えることがありはしないかということを重点に調査をいたして、いやしくもそういうことのないように十分監視をいたしてこの申請を審査をいたしておるわけでございます。
  383. 荒木宏

    荒木委員 同じ公益事業で電気事業やガス事業は、これはどういうふうになっていますか、通産大臣。
  384. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 電気事業とガス事業の場合には認可事項になっております。
  385. 荒木宏

    荒木委員 いま御承知のように、この私鉄運賃の値上げ問題についても、国民の間には強い反対があります。いままでの運輸省のこの料金認可のあり方についても、大きな批判が寄せられています。電気事業やガス事業などが兼業するについて認可が要る、野放しになっていない。こういうふうなたてまえも考え合わせて、いま運輸大臣は厳しくこの料金の査定を進めていく、こう言いましたけれども、兼業部門の規制の問題も含めて検討するべし、こういう声があることは御承知と思いますが、その点について今後検討課題として進めていくかどうか、運輸大臣の考えを聞かしてください。
  386. 木村睦男

    ○木村国務大臣 そういう声が相当あるということは十分承知しておりまして、それゆえに、今回の検討に当たりましても、厳重にその辺を審査をいたしておるわけでございまして、将来にわたって御説のような方向で検討はいたしたいと、かように思っております。
  387. 荒木宏

    荒木委員 いま当面問題になっておりますこの郵便料金、それからたばこの価格、国鉄、私鉄運賃と、公共料金についてお尋ねをしてきましたが、さらに電報電話料金、それから大学の授業料、この三木内閣のもとで次々に公共料金が上げられようとしている。はっきり言えば、政府の手で上げようとしている。しかも民間の物価は、バターから鉄鋼までと言われるように、十数品目、場合によっては数十品目あると指摘されるほど、これから値上げの大津波が来ようとしています。こういうときに、先ほど言いましたこの郵便料金の値上げ、たとえば三種料金の値上げについては、国民にどういう被害を与えるか、郵政大臣はこれを調査をして国会に報告するとお約束をされた。また、いま国会にかかっておるたばこの小売定価の改定については、これは製造原価を本委員会理事会提出するかどうかを諮ると委員長はお約束をいただいたわけです。  そこで私は、こういう物価情勢のときに、いま国会にかかっておる郵便料金、それから酒、たばこの値上げ法案、これを自民党としてなおかつこのままにして強行するつもりかどうか。郵政大臣は調査をして報告すると言った。製造原価についても、この理事会で相談をして提出をさせるかどうか検討するということになった。  総理自民党の総裁として伺いますが、このときに、まだこういう状態で、この委員会審議も待たずにこの値上げ法案を強行なさるつもりかどうか、国民の前にひとつはっきりと答えていただきたい。
  388. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題は、われわれとしてもしばしばいろいろ御審議を願いたいということで、野党の各党にも呼びかけたことは御承知のとおりであります。残念ながら絶対反対ということで御審議を願えなかったわけです。そういう場合に、われわれとして、どうもそれならば、絶対反対ということで御審議を願えないということで、いつまでもそのままでずるずると日が過ぎていけば、国会というものは何も一つの結末がつかないところになってしまうわけです。そういう点で、まあ自民党で単独で採決をするような不幸なことになったわけで、われわれはそういうことを最初から願っておるわけでない。だから、しばしば委員会を開いて、もう何回も自民党側から申し出たことは御承知のとおりでございます。そういうことで、しかしこの法案は衆議院において十分御審議を願っておる法案であって、新たに臨時国会で出してきた法案とはちょっと性質が違う。附帯決議もつけられて――共産党は入っていなかったかもしれませんが、つけられて国会では議決をされたわけであります。何も新たなる法案を出して、いきなり自民党で単独採決というような不幸な結果になれはこれはまあ――そういうことはわれわれとしてもするわけはないのですけれども、十分な御審議を願って、参議院においても五十余時間もやったわけでございますから、そういうことで国会は十分尊重して、われわれとしてもできるだけ御審議を願いたいということでやったわけでございましたが、不幸ああいうふうな結果になったわけでございまして、ほかの新たなるこの臨時国会に初めて出してきた法案の取り扱いとは、私は性質が違うと考えておるわけでございます。
  389. 荒木宏

    荒木委員 いままでの過去の事実について私は伺ったんじゃないのです。それもあります。ありますが、私が聞いたのは、いまここで予算委員会審議をやっているでしょう。国民皆さんはこの国会審議を注目している。この国会予算委員会審議中に自民党の総裁として、あの値上げ法案をさらに進めようとするのか、それを伺っているのです。
  390. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは委員会審議を終えて本会議に、この扱いについても議長の裁定も出ておることでございますから、この扱いは議長の処置に任したいと思っております。
  391. 荒木宏

    荒木委員 総理にひとつ聞いていただきたいと思うのですが、ここに新聞に載った投書があります。「小学生も嘆く物価値上がり」、ボンドを買ったんだが、二百円の定価がついていて、それをはがしてみたら下に百五十円のが張ってあった、それもはがしてみたら百円になっていた、それも取ってみたらもとは八十円だった、こう言うと、友達が、そんなのは珍しくない、絵の具だってスケッチブックだって、そんなことは幾らでもあるよと、小学生でさえこういう話をしていますと、ある学校の先生が投書をしています。つまりそれだけ、いま国民の実際の生活からすれば、物価の値上がりの生活への苦しみというものはひどくなっている。その上に、先ほど来いろいろ質疑をした公共料金の値上げがあります。民間の諸物資の値上げもまた物価値上げの津波といわれているのです。  そういうときに、総理伺いますが、国民はいま物価の問題について政府はどういう要求をしているか、総理としてそれをどう受けとめておられるか、国民の声をどう見ておられるかという点を伺いたいと思います。先ほど議長に預けたというようなことをおっしゃった。総理国民の声をいまどういうふうにごらんになっているか、伺っておきます。聞かせていただきたい。
  392. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 物価をできるだけ低く安定してもらいたいという国民の声というものは、われわれは非常に厳粛に受けとめて、御承知のごとく、三木内閣というものができてから、もう物価抑制ということに全力を挙げたわけであります。総需要抑制政策もそういう見地からとったわけで、インフレというものが社会的公正、不公正の第一番のものである。どうしてもこのインフレを抑制しなければ健全な日本経済というものは破綻に陥るということで、全力を挙げたわけでございますから、いろいろ景気刺激政策をとっても、なおかつ物価というものに対するわれわれの関心は捨てていないわけであります。  ただしかし、いま御指摘のような公共料金でありますが、国民には人気の悪いことですよ、これは。しかし、国鉄を一つとってみても、今年度だけで八千億くらいの赤字、累積赤字が三兆円くらいになるわけですね。郵政にしましても三年間に七千億円の赤字ですからね。専売益金も、五十二年が来たらもう専売益金はなくなるというんですからね、こういう状態であって、物価問題が大事であるからといって、このままこの値上げの問題を延ばしていけば、さらにこれを改定するときにはもう少し大きな改定をしなければならぬことになって、かえって国民に御迷惑をかける。したがって、公共料金が安いにこしたことはないけれども、しかし、これだけの赤字というのは、結局は国民の負担に返ってくるわけですからね。そういう点で、いろいろ最初言ったように、値上げというのは人気のいいものじゃないですよ。政府は人気のいいことばかりできないということですよ、財政に対して責任を持っているわけですから。だから、公共料金も全部なるべく安く、原価を割って、そして安い値段がいいんだということは、ちょっと見ればそういうふうにも考えられましょうが、日本財政というものを考える者には、考えてくれる人たち、冷静な人々は、必ずしもそうでないと思いますよ。これはやはり、その利益を受ける人、受益者といいますか、そういう人たちが応分の負担をして、そんなに赤字が何兆円も累積するような事態は、これは根本的に改革せなければならぬというのが冷静な国民の声だと思う。私はこれしたくないですよ。人気がよくないんだ、この料金値上げは。しかし、責任を持っておる政府としたら、こういう累積赤字が毎年毎年たまっていって、それでも値上げは人気が悪いからといってやめることはできるでしょうか。やはり政府としてはそれはできない。そういう点で今回はごしんぼうを願いたいということで国民の理解を求めておる次第でございます。
  393. 荒木宏

    荒木委員 いま総理は、公共料金が赤字だということをおっしゃった。一体どうしてそれは起きたのですか。たとえば国鉄の赤字とおっしゃるが、われわれが国会で追及したように、貨物は赤字となっている、旅客は黒字となっている。つまり、大きな企業の輸送のためにどんどんサービスをしていって、その赤字を旅客にかぶせようとするから、運賃の値上げということにならざるを得ない。たばこはどうですか。先ほど専売公社の総裁も言いましたけれども、現在まだ黒字でしょう。それからいま郵便料金ということも言われましたけれども、これも郵便の現業部門を見れば、これは八つの地方郵政局の段階で、実際に国民のために郵便の仕事をしておる人たちの、その間でとってみればこれは黒字じゃないですか。つまり、総理が言う赤字というのは、輸送の問題にしても、あるいは通信の問題にしても、いずれも政府が大きな企業のためにサービスをする、そしてそのしわを国民に寄せようとするから赤字だということになってくる。いまの総理の考え方を変えない限りは、これはもう公共料金の問題を解決する余地はない。  そこで問題はどういう立場に立つかということです。ですから私は、国民の立場に立つということを先ほどから言っておるわけです。いま国民の声は、物価の値上げを抑えてほしい、これを言っているでしょう。現に総理府が発表した本年の八月の世論調査でも、物価の値上げがあっても大丈夫だと言っておる人はわずか七%しかない。物価の値上げがひどくてついていけない、もうそれに追いついていくのが精いっぱいだと言っておる人たちが六十数%もあります。ですから私は、きょうの質疑の一番最初にこの物価問題を取り上げて総理の物価政策をただしましたけれども、この中で指摘できることは、まず第一に、総理が物価の問題について国民の生活の立場に立たないで、指数の問題、数字の問題だけとしかとらえていない。つまり本当に国民の苦しみがわかっていないということが明らかになったと私は思うのです。同時に、それを解決していく道筋として、依然として従来のような考え方を取り続けている、このことも明らかになったと私は思うのです。しかし、これはいずれ総選挙で国民の審判はあるでしょう。私たちは、そうした物価の安定とともに、いま何よりも必要な不況対策、この問題についても政府の考え方をひとつ問いただしたいと思います。  この不況対策でありますが、先日来の政府演説を聞いておりますと、景気を戻していく一番大きな手がかりになる最終需要、この中で一番大きなのは個人消費だと思う。このことは副総理も演説の中で言っていらっしゃる。ところが、その個人消費を過度に刺激する、人為的に刺激をするとまた大量の使い捨て時代がやってくる、だからこれはだめだ、こういう話ですが、共産党は、いまこの厳しい不況インフレの中で何よりも必要なのは、その不況とインフレを最もはだ身にしみて感じておる人たち、年金生活者の人たち、低所得者の人たち、そうした国民の人たちの所得を向上させなければならない。それには年金の引き上げも必要でしょう。また生活保護費、失対賃金、こういったものの引き上げも必要です。私たちは、そうした国民の購買力をつけるということこそいまの景気を立て直していく道であると思います。  この点について総理伺いますが、年金生活者の年金を引き上げる、生活保護費を引き上げる、また身体障害者の皆さんや社会福祉施設におる人たちの処遇を改善していく、これが副総理の言われたような過度の刺激、人為的な刺激だと総理もお考えになっていますか。この個人消費の問題、生活を守っていくという問題と、不況を切り開いていくという問題、この関係について総理の考えを伺いたいと思います。
  394. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 不況というものが一般の所得の減少を来すことは御承知のとおりです。それは第一、失業も起こりましょうし、あるいはまた時間外労働というものもなくなってくる。どうしてもこの際、一般の国民生活を確保するためには、雇用の確保ということがやはり必要である。そういう点で政府が今回の第四次不況対策というものを講じまして、そして三兆円程度の需要効果を編み出していこう、つくり出していこうということで、そのために下期年率六%程度の経済成長を見込んでおるわけです。こういうことになれば、雇用というものの状態もやはり改善をされてくるでありましょうし、そういう見地から国民生活というものをわれわれは確保していこうという政策をとっておるわけでございます。  何としてもこの物価というものに対してわれわれが力を入れなければ、いろいろな物価の異常な値上がりというものは社会的不公正を起こすわけでございますから、こういう社会的公正の大前提はインフレの抑制にあるということで、この内閣も当初目標を掲げたときは、皆これは実現できないだろうと言っておったにかかわらず、政府の目標というものは達成されつつあるわけです。昨年度のごときは、内閣が出発したときには卸売物価は三一・三%、消費者物価は二四・五%、こういうところでわれわれは、やはり物価を抑制さすということが国民生活を守り国民の所得を守るゆえんであるということで努力をしておるわけでございます。
  395. 荒木宏

    荒木委員 総理ははっきり質問に答えていただきたい。私が伺ったのは、副総理は、個人消費を過度に刺激する、人為的に刺激することはよくない、こう言ったのです。共産党はいま、国民の生活を守って所得を向上するということを言っているんです。本会議で青柳議員があなたに質問したでしょう。年金の引き上げ、生活保護費の引き上げ、失対賃金の引き上げ、そして、身体障害者の皆さんや、また社会福祉施設にいる人たちの生活を向上させることを要求した。総理はこれを本会議で拒否をされた。これは人為的に消費を刺激することでしょうか。これが過度な消費の刺激だと言われるのでしょうか。このことを伺っているのです。
  396. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 減税ということを政府がやらないということは、それはやはり、まあ各国とも減税をやっておる国が多いわけですが、日本はやはり諸外国に比べて生活環境というものの整備がおくれておる。諸外国ではそういうものは済んでおりますから、減税をすればすぐに個人消費というものに回っていくわけでございますが、日本の場合は生活環境の整備というものがまだ立ちおくれておるので、政府はそういう面から景気政策をとろうとしておるわけであります。諸外国と例が違うわけです。その上、日本の場合は小資源国ですから、外国の場合と違って資源というものをほとんど海外に仰いでおるわけですから、高度経済成長のときのような、大量消費、大量使い捨てということは日本としては適当でないということで、今回の景気対策においても、むしろ、そういう立ちおくれておる生活基盤の整備など、あるいはそれから住宅とかいうものに重点を置いて景気対策をとったわけでございます。  また、年金のことについては、まあ厚生年金や国民年金にはスライド制というものを採用しよう。また、福祉年金なども掛金なしですからね。これを七千五百円を一万二千円に一挙に上げたわけですからね。これは相当思い切った政策をとってきておるわけでございますから。しかし、この年金というものは、この際全般的に見直さなければならぬという考えのもとに、厚生省において、五十一年度を目標にして年金制度というものを全般的に検討しておるので、いまのところ、この年金制度というものに対して何らか改革を加えるという考えではないわけでございますが、われわれも年金制度というものの重大性を考えて、これは全面的に再検討をいたしたいと考えておる次第でございます。
  397. 荒木宏

    荒木委員 総理はお答えのときに横を向いてお答えになっていますが、私の質問も横を向いて聞いておられるのじゃないでしょうか。お尋ねしておることにはっきり答えていただきたいのですが、私が言っているのは、いままでの経済は、自民党政府のもとにあって個人消費が落ち込み続けてきた。この二十年間の経過を見ればこれは明らかです。日本経済全体の中で占める個人消費の割合が二十年前は六〇%を超えていました。いまはもう五割を割るか割らないかというところまで落ち込んできた。一方、大企業を初めとする企業設備は、これはどんどんふえ続けて、全体の中で占める比率は二十年間に約倍になりました、     〔委員長退席、湊委員長代理着席〕 これはずいぶん片手落ちでしょう。国民の立場から見れば、経済全体の中で占める比率がどんどん下ってくる。一方、大企業を初めとして企業設備の方は、比率がどんどんふえてくる。いま不況インフレの中で、そういったしわ寄せを受けておる人たちの生活を改善することがまず第一の不況対策ではないか、これを伺っておるわけです。  そして、本会議では、特にわが党の青柳議員がその一つの分野として身体障害者の皆さんの雇用問題を取り上げました。身体障害者の雇用については、その促進に関する法律があります。そして、こういった率以上は身体障害者を雇用しなさいということも決まっておる。ところがこれがなかなかやられない。どうするのだ。このことはたびたびいままで国会でも要求をしてきました。昨年の臨時国会予算委員会で、わが党の村上議員がこのことを取り上げて労働大臣に質問をしました。大臣、そういったことに協力をしない企業名は公表すると、あなた、こうおっしゃった。身体障害者の雇用促進に誠意を示さない企業の名前を公表するとあなたはおっしゃったが、公表しましたか。あなたが前に国会でお答えになったことに関して、ひとつどういう処置をされたか伺いたい。
  398. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 御承知のとおり、身体障害者の雇用の法律はございますけれども、これは強制力のない法律でございます。そして国民の連帯をうたっている法律です。でありますから、審議会の中においても、何とかこれを促進する意味において、協力しないような事業所は公表すべきであるという意見も出ております。そしてまたそういう御質問皆さんからも出たわけでありまして、これは十月に一年間の各地における事業所の雇用状況を調べまして、数字を取りまとめてみたい。私といたしますれば、健全なる者が働いているときに、やはり身体不自由な方が、障害の方が働く、こういう連帯の気持ちというものを何とかレベルアップさせる、これが大事なことだと思っております。  そういうことからしますと、持っている行政機能というものを、強制はありませんけれども、そうしたことに推進しながら今日まで来ており、また来年度においても、こうした公表制度を含めながら、何とか率を上げるとか、さらにはまた納付金でも出して――どうしても自分の事業所では仕事の関係上身体障害者は雇えないんだ、そのかわり納付金を出す、こういう制度などはいかがなるものかというて研究していることもお伝えいたします。
  399. 荒木宏

    荒木委員 大臣、あなたは去年の国会答弁されたことを覚えておられるでしょう。村上議員がこういうふうに質問しているのです。「大企業中心に雇用の強化を図れ、雇い入れの計画作成の命令を出せ、消極的な事業所は公表してもっと促進せよ、」この質問に対してあなたは、「いまのような事業所で非常に雇用率の悪いところは、近いうちに公表いたします。」こうお答えになった。これはいつのことですか。昨年の十二月十九日です。もう一年たとうとするのですよ。近いうちに公表しますとあなたは去年おっしゃった。なぜ公表しないんです。
  400. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 私は、国会というところは非常にいいところだと思うのです。公表しますと申し上げたところが、事業所の中には、自分の事業所は一体何%おっしゃるものを入れているだろうか、こういうことで問い合わせなどもありまして、いま、少しずつそういうところも、事業所が雇用しているかっこうがございます。そしてそれらのものを踏まえながら、推進しながら、この十月に集計をとった暁にはあわせて公表したい、そしてレベルアップしたい、こう思っております。
  401. 荒木宏

    荒木委員 去年あなたが、近いうちに公表するとおっしゃった。まだその約束が実現されていない。ことしの二月の予算委員会に労働省の方から提出された資料があります。これによりますと、従業員が千人以上の企業が十企業挙げられておりますけれども、そのうちの八つまでが雇用率がゼロです。あなたの方から出た資料ですよ。よくないところは公表するとおっしゃった。そして出された資料の、十のうち八つがゼロだ。この企業名は労働省ではわかっておるのでしょう、あなたの方から資料が出たのだから。どうです。この企業の名前をここで言ったらどうですか。
  402. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 ここで公表の話が出ましてから二月の審議会に諮りまして――質問が出たのは十二月でございます。その後いろいろな方面で雇用促進を進めておるわけでありまして、いまその十の事業所ということは、私は理解しておりません。いずれにいたしましても、この十月以降に、ことし全国のやつがまとまった場合には公表したい、こう思っております。
  403. 荒木宏

    荒木委員 大臣、理解しませんとはどういうことですか。この資料はあなたの方から出たのですよ。あなたが調べた結果こうでありますといって出してきた。労働省の事務局に聞きますと、企業名はわかっていると言う。大臣、理解しないとはどういうことですか。
  404. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、現在の身体障害者の雇用促進法は、強制力を持たない、いわば善意に訴えて身体障害者を雇ってもらいたい。その努力目標として、民間の事業所につきましては一・三%、こういうことに相なっております。したがいまして、昨年の暮れの委員会におきまして公表の問題が提起されました。私どもは、二月の審議会でこのことをお諮りしまして、二月の委員会でも大臣から、近く公表の制度を取り入れます、こういう御答弁がございました。私どもは例年、この身体障害者の雇用率の実施状況は毎年十月現在で調査をいたしております。その結果に基づいて、ただいま大臣から御答弁がありましたように、この制度を実施いたしたい、かように考えております。  それからいま御指摘がございました十企業につきましては、ことしの初めの時点でこの公表制度が問題になりました際に、東京の飯田橋の管内で、主要な企業についてどういう状況かということを事例として調査いたしたわけでございます。これはもちろんわかっておりますけれども、行政の公平、平等ということからいたしまして、ましてこの法律が任意制のいわゆる努力目標を規定したものでありますので、まあねらい撃ちにこれを公表するというわけにまいりませんので、全国的なこの実施の結果に基づきましてこの制度を考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  405. 荒木宏

    荒木委員 国会に出してきた資料でしょう。去年、近く公表すると、大臣がこう言ったのですよ、この場で。そうして出された企業は八つまでがゼロです。これは一年に一遍調査していると言いましたが、この前の四十八年調査もゼロでしょう。ゼロが続いているじゃないですか。まさにあなたが、大臣が約束したこの公表に値する企業だということになるじゃありませんか。  あなたの方がおっしゃらないなら、私の方で企業名を言いましょう。旭化成、三菱化成――大臣よく聞いておいてください。富士通、日本配合飼料、野村証券、東京電力、時事通信、山一証券、三井造船、そして明治生命。大臣、どうですか。いま、私が言ったこの十企業に、あなたの方でわかっているはずです、ここにあるかないか、答えてください。
  406. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 ただいま申し上げましたように、この公表制度につきましては、公表という制度をとります以上は、これは行政の公正、公平性を保たす必要がございます。したがいまして、特定の事例として調査いたしました結果をその分だけ公表に付すわけにまいりませんので、毎年十月現在で調査を実施いたしております。その結果に基づきまして公表するということは審議会にもお諮りしたわけでございます。いまお挙げになりました具体的な事業所名を私どもでいま承知いたしておりませんけれども、私どもの方で調査をすればわかると思いますけれども、私の記憶では、ただいまお挙げになりました例は、十事業所の名前には該当しないのではないかと思っております。
  407. 荒木宏

    荒木委員 きょうは一年越しに公表という話がある。本会議でもお尋ねをした。企業名を聞くから調べておくように、わかっているか、こう聞いたのですよ。事務局では、企業名はわかっています。きょうの委員会が始まるまでに連絡してあるのです。いま局長はよく知らぬと言いましたが、大臣、どうですか。いま私が言った企業がこれに該当するかしないか。あなたは公表すると言ったのだからね。
  408. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 あなたの方からいま企業名が発表になりましたけれども、私の方としますと、いま全国的な調査をしておりますので、そのときにあわせて全部を公表する、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  409. 荒木宏

    荒木委員 いや、これが含まれているかいないかを聞いているのです。あなたが公表しないから、私の方からお尋ねしているのです。含まれているかいないかと聞いているのです。
  410. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 現在調査を実施いたしておりますので、その調査の結果出てまいりましたものについて、ただいま御指摘になりましたものが含まれれば、もちろん公表の対象になると思います。
  411. 荒木宏

    荒木委員 大臣、ちょっと言ってください。
  412. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 特別に隠すわけではありませんけれども、一つ一つを抜き打ちといいますか、抜き書きしていまここで発表するわけにはまいりません。この十月に全国調査したときに、昨年と比較してどの程度に上がっていくか、そういう実績などを見ながら、全国にこういうところで発表したい、こう思っております。
  413. 荒木宏

    荒木委員 私、先ほども言いましたけれども、長谷川労働大臣は予算委員会で、近いうちに公表しますと言ったのです。覚えておられるでしょう。これは去年の十二月の十九日のことです。まあ三日、五日、一週間、半月ならいざ知らず、近く一年になろうとしているのです。ですから、あなたの方からおっしゃらないから、私は企業名を申し上げた。この中にありますかどうか、これを聞いているのです。あなた公表しますと言ったのでしょう。国会責任を持って答弁をなさったのかどうか。去年のこの調査の企業名に該当するかどうかを私は聞いているのですが、あなたは国会の去年のこの答弁責任をお持ちになるかどうか、これをまず言ってください。
  414. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 昨年の答弁責任を持ちます。ただしかし、いまの一つ一つの企業について、それがそうだということは私は承知しておりませんし、また、この際に全国一斉に十月に企業を調査いたしますが、問題は、御質問にもありましたように、強制力がないのですね。こういうことがあります。刑罰もないのでございます。そういうことからしますと、いろんなデータに基づいて各事業所に対してよけい雇用してもらうような推進をする。そういう国会の議論の中から、ここ一年間で私の方にも、私の方は何%一体雇用しておりましょうか、こういうことで雇用を促進している実例などもありまして、行政の効果が上がっている。なおかつこういう御議論のあるときですから、十月に全国トータルができた暁には、それぞれ各府県において公表する、こういうふうな態度をとっております。これは国会を軽視するのじゃありません。そうしたことによって身体障害者の方々の雇用が促進されるというところに、私は大きな意味を持つと考えております。
  415. 荒木宏

    荒木委員 大臣が公表するとここで約束しているのです。これははっきりしているのですよ。ですから、この二月に出されたこの十の企業がありますが、見れば悪いことは一目瞭然です。ずっと上からゼロなんですから。そして、これは従業員が平均しますと二千人以上ありますが、十社で二万人。法律で決めた一・三%ということをやれば、これだけで二百六十人の身体障害者の人がすぐ雇用できるのです。公表すれば。いままでゼロで続けてきた企業は、恐らく社会的な批判を受けるでしょう。社会的批判を受ければ、これはその方向に向けて実際に効果が上がるようにしなければならないということになるでしょう。つまり、現実に身体障害者の人たちの職場を確保する具体的な手だてになる。しかも大臣が約束しているのですからね。私は、この委員会で労働大臣が去年国会でした約束を守るように、委員長から指示をしていただきたい。そのことを委員長に要求します。国会答弁しているのですから。もし何だったら議事録をごらんください。
  416. 湊徹郎

    ○湊委員長代理 労働大臣において誠意をもって処置されんことを期待します。
  417. 荒木宏

    荒木委員 私がお願いしましたのは、公表するように処置をするように約束を守れということを委員長から言っていただきたいのです。そうでなければ、幾ら委員会審議をしても、幾ら大臣が答弁をしたって、何にもなりやしません。約束を守れということを言っていただきたいのです。
  418. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 公表制度を含めまして、こういう時代でございますから、身体障害者の方々が職場を得るように一生懸命とがんばります。
  419. 荒木宏

    荒木委員 労働大臣。昨年の国会答弁したことについて履行しないということは、これはきわめて遺憾なことだと思うのです。いまあなたが、制度を含めてと、こう言っていますが、私は、そのことよりも前に、約束を守らない大臣が三木内閣にいる、このことをはっきりと申し上げておきたいのです。厳重に内閣全体に対して抗議をします。国民の代表に約束をしておきながら、一年たってその約束を履行しない。しかも、公表制度を含めて検討すると言いながら、時期も明示をしない。これは不誠意きわまる態度だと思うのです。厳重にこのことは抗議をしておきます。大臣、何か言うことがあるのですか。
  420. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 国民連帯で、しかも刑罰のない法律でございますから、こうしたいろんな議論の中から連帯の空気を盛り上げていただいて雇用率を達成させる、これが一番大事なことでございます。そしてまた公表も、この十月に全国一斉の統計が生まれましたときには、公表をはっきりいたします。
  421. 荒木宏

    荒木委員 いつですか、期限は。大臣、いつですかと聞いている。
  422. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 十月中に全国の調査をやりますから、それらの集計をまとめましてから御報告申し上げたい、こう思っております。心ずこれは公表いたします。(荒木委員「期限はいつですか」と呼ぶ)期限というのは……。統計やら調査やら集まった機会に必ずやります。
  423. 荒木宏

    荒木委員 期限を言ってください。近くと言うて一年たって公表せぬ人が、期限を言わずに信用せよと言って、あなた信用できますか。大臣、ひとつ期限を言ってください。
  424. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 年内にはやるように努力をいたします。
  425. 荒木宏

    荒木委員 さっき委員長からも注意がありましたけれども、年内にやると約束をするように言ってください。近くとか努力とか、そういうことばかりでいままで皆さんごまかしてきたのでしょう。それなら大臣、ひとつはっきり期限を確約してください。
  426. 湊徹郎

    ○湊委員長代理 重ねて労働大臣に、年内に必ず約束を守ることを要求いたします。
  427. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 承知しました。
  428. 荒木宏

    荒木委員 年金について伺っておきますが、厚生大臣見えていますね。――財政再計算を来年に繰り上げて、そして改正をするというお話を前々からたびたびおっしゃっておりますけれども、いまこういった厳しい不況、インフレの中で、厚生大臣として、お年寄りの皆さんのために、厚生年金を初めとして年金の額の引き上げ、改善のためにどういう決意を持って取り組んでいらっしゃるか、このことをひとつ伺いたいと思います。
  429. 田中正巳

    田中国務大臣 前々から申しておりますように、今日の社会保障の最重点は、老後保障を中心とする所得保障にあると思っておりますものですから、昭和五十三年度に行うべき財政再計算を二年繰り上げまして、五十一年度にこれを実施いたすべく諸般の検討をいたしているわけであります。内容については、まだ固定をいたしておりませんで、鋭意五十一年度予算に間に合うように努力をいたしている最中でございます。
  430. 荒木宏

    荒木委員 再開五年年金、時効消滅年金というのがこの年末に期限が来ますが、まとめて保険料を払い込むために、政府は、この払い込み保険料が用意できない人たちに、どういう手だてを考えておりますか。
  431. 田中正巳

    田中国務大臣 この特例納付につきましては、いろいろ事情があって払えない人がありますものですから、したがって、世帯更生資金の福祉資金をもってこれに充てることができるように、各都道府県に通達をいたしているところでございますが、各都道府県においては、そのほかに単費事業でこれに充当すべき資金の貸し付けをやっているところもあるというふうに存じております。
  432. 荒木宏

    荒木委員 ここで総理に伺っておきます。  いま福祉の問題、年金の問題、身体障害者の問題など伺っておるのですけれども、今度の補正予算を見ますと、老人福祉費が減額になっている。老人の就労あっせん事業の予算が削られている。身体障害者の皆さんのための、たとえば点字図書館あるいは盲人連合会の補助、精神薄弱者の更生福祉費など、これが減額されています。それじゃ、予算をずっと見てみて全部減額されているのかというと、これがふえているところがある。財投まで含めますと、御案内のように高速道路、新幹線はふえているでしょう。  たとえば高速道路を例にとってみますと、これは昭和四十八年の計算ですけれども。一キロメートルで大体八億三千万円。高速道路を今度の分を三十メートルつくるのを縮めれば、三木内閣皆さんが削った老人福祉費を初めとして福祉費はふやすことができる。これは総理伺いますが、お年寄りの関係皆さんの予算を削って、そして高速道路をもう三十メートルふやすというのは、これはどういう政策選択によるものですか。
  433. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 高速道路は、道路として全体の均衡のとれた開発といいますか、地方住民の福祉を全般的に考えるので、これをやったらこれができるじゃないか、そういうふうには考えていない。国政全般の上において均衡のとれた予算をつくりたいという意図から出たわけでございます。
  434. 荒木宏

    荒木委員 その全般の中でどれを先にしどれを後にする、この選択の順序を伺っているのです。いまあなたが高速道路を三十メートル延ばすということを先に考えていらっしゃるのか。あるいは、先ほど私が言いました老人の施設に対する補助費、老人の就労の促進に充てるような費用、これを先だと考えていらっしゃるのか。明治、大正、昭和と苦しい世間を生き続けてきて今日に至ったこういうお年寄りの皆さんの予算を削ってまで、もう三十メートル高速道路を延ばすことが大事だ、総理、こう考えておられるのですか。
  435. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今度の補正予算はその前提に当初予算をまずお考えいただきたいと思うのでございます。当初予算におきましては、社会保障、文教その他三十数%の増額を図っておりますし、大変な歳入欠陥でございますけれども、この計画は予定どおり遂行することにいたしておるわけでございまして、荒木さんがいま精細に御審議をいただいております年金等につきましても、相当大幅なアップを実現することができておるわけでございます。  今度の補正予算は、第四次の不況対策を予算的に裏づける任務を持ちまして編成いたしたわけでございます。したがいまして、当初予算におきまして、公共事業等につきましては対前年比ほとんどふえていない状況で、需要を抑制することにいたしておったのでございますけれども、需要をむしろ喚起しなければならない状況になってまいりましたので、この方面に一割一分強の予算の増額を図ったわけでございまして、公共事業を入れるために福祉予算を犠牲にするなどということをやった覚えは毛頭ないのであります。しかし、今度の補正予算の中におきましても、福祉予算につきましては、先般本会議でもお答え申し上げましたように、若干の経費を計上いたしてありますことをあわせて申し上げておきます。
  436. 荒木宏

    荒木委員 いま私は高速道路の例を申し上げたのですけれども、不況対策としてどういう公共投資を進めるか、そして福祉との関係をどう考えるか。共産党はこう思っているのです。まず何といっても、この不況、インフレの中で苦しい生活を続けている人たちの所得を高めて生活を守らなければならない、これが個人消費を拡大していく、このことが同時に購買力をつけ、需要を起こしていく。そうして公共投資については、今度の政府の予算では、高速道路や新幹線、いわゆる高度成長の表看板でありました列島改造計画の中に出てきたこういった事業が復活をしておりますけれども、こうした事業と、公営住宅、学校、保育所、上下水道、病院、この生活に密着をしたいわゆる生活基盤に重点的に投資をしていくことと、つまりどちらが先に必要か。高速道路や新幹線、これと公営住宅――いま全国で一千万世帯が住宅困窮世帯と言われます。小中学校は全国で九千校も足らない。二百万人保育所に入れないで待っている子供さん方がいる。これが先じゃないでしょうか。そしてそこへどんどんと国の財政の力を注ぎ込んでいくということが、かえって仕事を大きく起こしていく近道ではないか。そうでしょう。  高速道路を初めとする大型プロジェクトでは、受ける企業は限られるでしょう、大企業だから。なるほど、それから波及効果があると皆さん方おっしゃるけれども、しかし、それは下請企業や、あるいは孫請企業や、だんだん下へ行くほど細くなっていくでしょう。この川は、川上は太いけれども、川下に行くにつれてだんだん細くなっていく。そうではなくて、いま、公営住宅だとか、保育所とか、学校とか、保健所とか、病院とか、あるいは上下水道であるとか、生活に密着したこういった部門にどんどん投資を広げていくことは、地元の業者の人たちがすぐ受注できるでしょう。そして身近なところで仕事が起こるでしょう。しかも、それは子供や孫の代に至るまでどんどん活用できる生活に密着した投資になるのです。大体、諸外国に比べてさえ日本はずっと低いじゃありませんか。ですから、それを取り返す意味からも、こうしたところに重点的に投資を進めなければならない。このことを共産党は主張しているのです。  問題は、これを進めるかぎとなる地方財政ですけれども、地方財政をしっかり立て直して、身近なところで仕事を起こしていけば、生活を守るとともに日本経済を立て直していくことができる。私たちはそのことを主張し、そして全国の自治体関係者の皆さん、それから仕事を求めている業者の皆さん方とともに、政府にこうした政策を実施することを、この委員会でも審議を通して要求をしております。  そこで、不況対策についての共産党の考え方は申し上げましたけれども、地方自治体の財政を立て直すという上で自治大臣にお尋ねをしますが、御承知のように、減収補てん債の政府資金による引き受け、それから地方自治体独自でやっておる事業が税収減のためにやれない、枠外債を認めてほしいという要求が非常に強く起こっています。これをやらなければ、身近なところに起こす仕事も起こせない。したがって、地方財政の立て直しはきわめて急務でありますし、そういった地方自治団体関係者から出ておる要求について、枠外債を認めるかどうか。さらに一いまの地方債の中の政府資金による引き受け、これを大幅にふやして地方債を全額政府資金で引き受ける、この要求にこたえるかどうか、自治大臣から伺いたいと思います。
  437. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  確かに景気浮揚という意味から言えば、中央も地方も一体になって仕事の量をふやすということは、非常に有意義なことであると思うのでありますが、いまあなたの仰せになりました点で、地方が年度当初においてやろうとしておる事業につきまして、単独事業というものもある程度は認めておりますが、その他の問題については、地方財政計画というので大体指針を示しておるわけであります。そして、その指針の範囲でやってもらいたいということを言っておるのでありますが、今日、中央も地方も非常に財政的に困難を来しておるような段階でありますから、そこで、なかなかこの地方債をそれほど認めるということが、たとえば認めても、これが縁故債その他になって引き受けてもらえるかどうかという財政計画全般の問題とも関連をすると思うのであります。  そういう意味合いにおきまして、ただいまあなたが縁故地方債を認めるかどうかということをおっしゃいますけれども、その地方債を認めろといううちには、国の直轄事業の分も、負担金が支払えないから認めてもらいたいということもありますし、それから単独事業の仕事ができなくなるからひとつ認めてもらいたいというものもあります。それから、いままで一応計画に載っておるのだけれども、ほかの経費が非常にふえたために、その分を削らなければならぬのでそれを認めてもらいたいというような、いろいろの種類のものがあると思うのでありますが、われわれとしては、当初計画した地方財政計画で認めたものについては、これはもう認めるにやぶさかではございませんけれども、しかし、単独事業というようなものは、大体自分のところでは収入がこれぐらい入るであろうということを考えて、そしてその範囲内で計画をしておるという例が多うございます。私は、去年もこの予算委員会で申し上げておったのでありますが、去年の暮れに、もうことしは非常に景気が思わしくないと思われるから、そこで、単独事業というような、いわゆる歳入を当てにしたようなことはなるべくひとつ注意をして処置をしてもらいたいということも言っておるのでありますけれども、いままでのずっとした経緯といいますか、いままではこういうふうにやってきたのだから今度も大体いけるだろうというような安易な気持ちで財政計画を地方が立てられておったことも、私は事実だと思うのであります。  そういう意味から言いまして、いまここで急に、そういう意味で金が足りないから単独に仕事をしておるようなものでも何でも全部認めろ、こういうことであっては、どうもわれわれとしては納得いたしかねるという意味で、これはにわかに全部認めるというようなことを申し上げることはできません。  それから、いま第二の問題であなたがおっしゃった意味は、いわゆる地方の税金、収入が減った、その分について埋める分をどう措置するか、その分はできるだけ政府資金でもって賄うようにしたらいいじゃないか、こういうお言葉であります。ごもっともな御意見だと思うのでありまして、われわれといたしましても、何とかしてできるだけ政府資金でやってもらいたいと思って大蔵省とも折衝をいたしたのでありますが、大蔵省の方から言いますと、やはりこの政府資金というものは方々いろいろの方途に使われるものがあって、十分に地方財政に回すことはできないということでございました。われわれは、少なくとも一兆六百三十二億円に対して七割ぐらいはひとつぜひやってもらいたいという希望を強く出したわけでありますけれども、それはむずかしい。そこで二千債円だけ認めましょう。二千億円ではとても問題にならぬというわけで大いにがんばりまして、そのほか二千三百億円は政府資金と同じような金利負担するように中央から補助をするから、それでひとつ何とか認めてもらいたいということでございまして、われわれといたしましも、中央の苦しい立場がわかっておりますから、実はそういうことで決めたわけであります。しかし、この一兆六百三十二億円という縁故債の消化等につきましても、いろいろな問題がありますけれども、これを返します場合、すなわち返済するというような場合においては、今後のいわゆる地方交付税の中におきまして十分配慮をいたしていくということにいたしておりますので、われわれ自治省といたしましては、大蔵省も十分協力をしてもらったと思っておるのでございまして、これがいまの段階においては最善の努力をした結果であると私は思っておるわけでございます。
  438. 荒木宏

    荒木委員 財源の問題、いま地方財政のことに関して自治大臣から話がありましたけれども、私どもは、財源はある、地方財政をもっと力のある活力のあるものにしていく財源はあると言うのです。幾つもあります。  具体的に言いますけれども、たとえば郵便貯金の利子を優遇をして、そして財政投融資の原資を豊かにしていく。しかしそうなると今度はコストの問題が起こってくる。郵便貯金の利子を上げれば、それを運用する場合に利息が高くなるという問題がある。しかしこれは、いまの制度で三木内閣皆さんがやっているやり方を逆にすればできる。産業投資特別会計というのがあります。あれは一般会計から、つまり一般の税金の中から特別にその会計の中に五百億、六百億と入れて、そしてこれは言うなれば利子のつかない金ですから、アルコール分の強い分、それと、この郵便貯金で集まってきた利子のついているお金、アルコール分の弱いものをカクテルにして、いまの皆さんのやり方だと、そのカクテルにした分を、主として大企業向けに貸し出しをする開発銀行だとか輸出入銀行、そういうところにどんどん出している。私たちはそれを逆にしたらどうか。つまり国民生活を安定するために、そのために第一線でがんばっておる地方自治体の皆さんが仕事がやりやすいように、ちょうど一般会計から皆さんがいま産業投資特別会計に出しておるようなものを、生活安定特別会計というものをつくって、そこへ一般会計から利子のつかないお金を入れる。そうして郵便貯金など財政投融資をそこへ集めて、これを地方自治体も十分使えるようにする。私どもは現にこうしたやり方が――これは何も社会主義の世の中だとか、あるいはよその国の話をしておるのではなくて、いま日本の国の中で自民党政府皆さん方が大企業向けにやっておるそのやり方を国民生活向けにやれば、いま自治大臣がおっしゃったような地方財政の財源問題は解決できるめどがある、私たちはそういうことを主張し、そのことを各委員会でも質疑の中で述べ、そうしてまた先般大蔵大臣にも申し入れをしたところであります。  第二に財源を解決するには不急不要の歳出を削るということ、これも大事なことであります。そこで私は、その問題について、まず自衛隊の防衛予算というものを取り上げたい。いま七四年型戦車が一両で三億一千九百万円、これを四十両つくる。ファントム戦闘機が一機で約三十四億円、それを十二機つくる。DDHの護衛艦が一隻で三百九十五億といいます。いま自治大臣がるる言われた地方財政の困難な状態、そしてこういった戦闘機や戦車や、あるいは軍艦、いまのこの財政窮迫の時期に、このどちらを優先させるか。私は、国民の立場から見ますと、この結果は明らかだと思う。  生活を守ること、そして地方財政を充実さして身近なところで仕事を起こしていって購買力をつけて、危機を打開をしていく、こうしたやり方を提起をしておるわけですけれども、そのことに関連をして私がいまお尋ねをしたいのは、自衛隊のあり方については防衛論争がいろいろあります。しかし、特にこの財政危機の段階で、自衛隊が人が集まらないで無理やりに集めてきてまで維持しようとしている。  ここに私はいまから例を申し上げたいのですけれども、京都で防衛庁の募集に関して驚くべき事態が起こっております。自衛隊の制服が、地方から出てきた青年をどんどん引っ張ってきて、そのまますぐに入隊させるわけにいかない。そこで、あるトラック会社に頼んで、すぐにそこへ就職をさせる。どんどんそのトラック会社へ就職をさしていく。これはどういうことなんでしょう。そうしてそのトラック会社から、大体一カ月たって手順が済んだ段階で、今度は自衛隊の方へ引き取っていく。しかし働いておる間は、自衛隊の制服がかわりにそのトラック会社から給料を取り上げておる。  労働省に伺いますが、こうした自衛隊のやり方は法律に適合しておりますか。
  439. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えいたします。  自衛官の採用等につきましては職業安定法の適用はありませんけれども、民間事業主に対しましては、教育上の見地、求人秩序の維持などから、新規学校卒業予定者の求人選考期日を定めまして、遵守を求めております。防衛庁も含めまして、国、地方の任用機関に対しましても、三月二十八日付公文書をもって協力方を依頼したところであります。  ただいまお話のありました、十月一日選考開始以前に模擬試験を行う、この方針は好ましくないと……
  440. 荒木宏

    荒木委員 大臣、ちょっとお話し中ですが、大臣は答弁のメモを読み違えておるんです。私がお尋ねしたのはそのメモじゃないんです。  労働大臣、もう少しまじめに答えていただきたい。私が言っているのは、自衛隊の制服がどんどんその辺から青年を集めてきて、そうしてトラック会社へ送り込む。職業紹介事業にならぬかと言っているんです。この四月から六月までの間で九人あります。この九月だけで四人あります。こんなにどんどん送り込むことは、職業安定法に言う職業紹介事業にならぬですかと、こう聞いているんです。それから大臣、聞いてくださいよ。給料を自分がどんどん取り上げちゃう、これは労働基準法違反にはならぬですか、こう言っているんです。あなた、別の答弁のメモを読んでいる。
  441. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 ただいま、給料を取り上げたとか、そういう突然出てきた話なので、いまのところ…
  442. 荒木宏

    荒木委員 そうじゃありません。言ってありますよ。ちゃんと事前のレクチャーで言ってありますよ。
  443. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 ただいまのところよくわかりませんので、一遍調べてみます。――いまここで言われたことですから、わかりません。
  444. 荒木宏

    荒木委員 大臣、こんな簡単なことが、あなたにおわかりにならぬのですか。いま労働者は、働いたら自分で直接賃金をもらう。労働基準法二十四条に直接払いの原則というのがあるでしょう。それを、働いた本人でない防衛庁の制服が、三人も四人も五人もの賃金を自分が取ってくるというのは、労働基準法違反ではないかと聞いているのです。
  445. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお挙げになりました具体的事例につきましては、詳細承知いたしておりませんので、よく調査いたしまして検討の上お答えしたいと思いますけれども、一般論といたしまして、直接事業主でない者が法律上の許可を受けないで職業紹介活動をする、募集行為をするというようなことは、法に触れる問題でございます。  それから賃金につきましては、もとより事業主が直接労働者に支払うということが労働基準法二十四条に明記されておるところでございます。
  446. 荒木宏

    荒木委員 それでは具体的な事実を申し上げましょう。  京都に丸市運輸株式会社というのがあります。この丸市運輸株式会社に、京都の自衛隊の地方連絡部直轄広報隊総括担当官の一等陸曹の木村節夫という――これ防衛庁、いますね、この人は。確認したから。それから同じく京都地方連絡部直轄広報隊の第一班長二等陸尉森川勝美という人。この人が、先ほど言いましたような十数人の労働者を丸市運輸株式会社に次から次へ紹介をして、そしてその間の賃金を自分が受け取って、自衛隊の方へ送り込んでおる。ここに森川陸尉の、自分が署名をした丸市運輸株式会社あての、労働者のアルバイト分だとした領収書があります。労働大臣、この事実は、これは法律違反じゃありませんか。
  447. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 お答え申し上げます。  ただいま初めて詳細に伺ったわけでございますが、いま先生がお挙げになりましたような事案でございますれば、かなり問題があるというふうにに考えます。
  448. 荒木宏

    荒木委員 局長、違反じゃないですか、これは。
  449. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いま申し上げましたように、詳細を調査してみなければわかりませんけれどもも、お挙げになりましたような限りでは、法違反のにおいが相当するという意味で私は申し上げたのでございます。しかし詳細は調査した上でなければわからないことでございます。
  450. 荒木宏

    荒木委員 しかも、この中に野村数敏という労働者がいますが、これは本年の九月初めから二十三日まで、同じように自衛隊によって丸市運輸に紹介を受けました。ところが丸市運輸の方では、職場の労働者は、また自衛隊から連れてきた、こう思っておったところが、実はこれが強盗犯人だったのです。九月の二十三日に逮捕されて、いま山梨の方で裁判にかかっておるはずです。つまり防衛庁の制服が丸市運輸へ紹介をした労働者が実は強盗犯人だった。これはどうですか、防衛庁。長官、これに対してどう思われますか。
  451. 今泉正隆

    ○今泉(正)政府委員 お答えいたします。  一般に、自衛官を希望して試験に合格した者が入隊するまでの間、一時的に自衛隊の広報員がつてを求めてアルバイトの紹介をするということは、ときどきございます。  それから、ただいま挙げられました後の事例でございますが、これは試験に合格しましたある隊員について、いわゆる身元調査を行いましたところ、そういった事実が入隊前にわかりまして、採用を取り消したものでございます。
  452. 荒木宏

    荒木委員 そういうことを聞いておりませんな。私が聞いておるのは、それを紹介をしたでしょう。防衛庁長官、これをひとつ見てください。森川二尉と書いてある。
  453. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま突然のお話でございますから、よく調べまして報告をいたしたいと思います。
  454. 荒木宏

    荒木委員 この問題は、調査の結果報告を受けて――質問を留保しておきたいと思います。よろしいですね。長官、これは調査の結果国会へ報告しますね。
  455. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 調査をいたしまして、御報告を申し上げたいと思います。
  456. 荒木宏

    荒木委員 いまの分については、なお質問を留保しておきたいと思います。  なお、財源問題に関して申し上げておるのですが、こういうふうなやり方で人を集めておるその自衛隊の七四戦車、それからファントムあるいは護衛艦があります。そうした不急不要かつ不当な、もちろん憲法違反という、そういう歳出を削る。そして先ほど申しましたような産業投資特別会計を国民生活安定特別会計に変える。こういったこととともに、さらに具体的にいま財源問題として提起をしたい第三の問題は、戻し税の問題であります。  この国の歳入が乏しいというのに、三木内閣は企業に税金を返している。それも中小企業にじゃありません。ほとんど大企業が使っている戻し税、制度というのがあります。これは数千億円になろうかと思います。大蔵大臣、この戻し税というのはどういうものでしょうか。ことし赤字になったからといって、去年払った税金を返してやる。東洋レーヨンとか帝人とか、大手四社だけで約七十億円もあると言います。  私が言いたいのは、企業が外部にお金を払うことはいろいろあるでしょう。たとえば配当もあります。大蔵大臣もアジア航測という企業の大株主で配当を受けていらっしゃると思いますが、そのアジア航測が今度は経常利益ゼロです。株主であるあなたは配当を返しますか、会社へ。配当はもらって、もらうままになるでしょう。これは世間の株主の方はそういうふうにしている。ところが、国の財布ということになりますと、これは国民の税金です。それを大蔵大臣、あなたの方でどんどん返している。この歳入欠陥の折に、こうした数千億にもなろうかというこの戻し税制度をやめれば、財源は出てくるのではありませんか。私たちはこのことを主張して申し入れもいたしました。大蔵大臣、これをやりますか。
  457. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この制度は、わが国ばかりではなく、先進諸国共通に持っておる制度でございまして、ひとり大企業ばかりでなく、法人でございますならば、その規模のいかんにかかわらず認められておる制度でございます。特定の年度に損失が出た場合に、その前年に納めました税金を、直前の年度の税金を繰り戻し還付いたしまして、その企業の維持を図るという趣旨のものでございまして、もしこれをやめますと、当然その次の年度から税金がいただけなくなるという性質のものでございます。したがって、私は、この制度をいまやめるつもりがあるかということに対しましては、直ちにやめるということに賛意を表するわけにはまいりません。
  458. 荒木宏

    荒木委員 諸外国にもあるとおっしゃいましたが、西ドイツやフランスにありますか。そうした国はやってないでしょう、この戻し税というのは、還付というのは。しかもこれは地方自治体にもないでしょう。勤労者はいま物価高で家計は赤字です。ことしになって春闘の後の五月、そして六月、七月、いずれも実質賃金は前年に比べてマイナスです。下がっているんです。世帯が赤字になっても、自民党政府皆さんは勤労者には税金を返さない。しかし大企業には数千億円も返してやる。西ドイツやフランスでもやってないようなそういう制度を、こんなに歳入が足らない足らないと言いながらまだどんどん返してやるという、これはやめるべきではないでしょうか。  私たちは、こうした歳入欠陥というのは、三木内閣皆さんがそうしたやり方を続ける限りは、これは直らないと思う。こういう歳入欠陥の問題は決して一夜で起きたものではなくて、たとえば国債を大型発行して、そしてその財政のかわり金で大企業のめんどうを視てやる、そういうやり方の結果、国の財政が破綻をしてきた。ですから、いまその立て直しのために、現実に財源はあるんですから――いま幾つか言いました。それを、この質疑を通して私どもが提案をしておる内容を検討して、その実行を進めるべし、こういう主張をしておるわけです。  時間が大分迫ってきましたので、あと二、三の問題についてお尋ねをして質問を終わりたいと思いますが、全国銀行協会の会長にお見えをいただいておりますけれども、いまこの時期に民間企業に対する都市銀行の貸し出しの態度はまた偏っている。たとえば日本銀行から出た資料がありますが、繊維に例をとってみますと、ことしの四月から六月まで、資本金一億円以下の企業に貸し出したのが一億円です。ところが昨年は五百六十四億。つまり繊維の小企業に対しては貸し出しは五百六十四分の一になっているのです。ところが、資本金十億円以上の大企業に対しては、昨年よりも貸し出しはふえている。鉄鋼にしても同じことです。  こうした銀行のやり方について逐一お尋ねをしたいのですけれども、時間が迫ってまいりましたので、協会の会長としてお見えになっておる立場からこれをどういうふうに見ておられるか、どういうふうになさっていくかということをお答えいただきたいと思います。
  459. 森永貞一郎

    ○森永参考人 ことしの一月ないし六月の数字で見ますと、大企業向けの融資は三五%ぐらい増加いたしておりますのに対しまして、資本金十億円未満の企業に対する貸し出しの増加額でございますが、これは前年同期より三八・三%の減少――大企業の方も前年同期に対する二五・三%の増加ということでご、ざいまして、中小企業向けの融資の増加額が大企業の増加額より下回っておるという統計の結果になっておるのでございますが、これは、中小企業におきましては、このたびの不況に際し、比較的早く在庫調整その他の順応態勢がとられましたので、資金需要が鎮静化するのが早かったという事情がございます。これに対しまして大企業では、鉄鋼、化学等、素材産業の関係の在庫調整がおくれまして、その資金需要がことしの上半期に集中いたしましたというような事情がございまして、統計的にはただいま申し上げましたようなことになっておるわけでございます。  そこで、これが大企業偏重、中小企業に対する融資軽視の傾向ではないかというお尋ねだと存じますが、私ども別に調査いたしておりまする短期経済観測、年に四回ずついたしておりますが、それによりまして調べてみますと、金融機関の融資態度に対する大企業、中小企業の厳しさの判断は、むしろ厳しいと見ておる企業の割合が中小企業では本年に入ってから急速に低下してきておるのでございまして、特に中小企業に対する融資が圧迫されておるというようなことはないのではないか。ざらにもう一つは、企業の流動性でございますが、これはむしろ中小企業の方が大企業に比べ比率は高い水準になっておるということもございます。さらにはまた、資金繰りが苦しいかどうかということについての判断をいたしておりまする企業の割合も、大企業に比べ中小企業の方が特に高いわけではないようでございまして、これらの結果からも、資金需要がむしろ鎮静化したということが主因であって、銀行の中小企業に対する融資が圧迫された結果であるというふうには思われないのでございます。  銀行その他の金融機関では、中小企業救済融資基金というような制度も特に設けておりまして、特に困っておりまする中小企業には優先的にめんどうを見るという制度も活用されておるわけでございます。  私どもといたしましても、中小企業に対する融資につきましては、今後とも十分留意するように金融機関を指導してまいるつもりでおります。  以上であります。
  460. 荒木宏

    荒木委員 赤字国債の問題も含めて、先ほど具体的な財源を提起をしました。こういうやり方で財源を確保すれば、赤字国債を出さなくても済む方法がある。共産党は赤字国債の発行には反対であります。そして赤字国債を出さなくてもよいというやり方を具体的に提起をしております。  私は、時間がもうありませんから、参考人として見えました日本銀行の総裁に、この問題について、一つは、いままで大銀行が、預金利子の引き上げ以上に貸出利子を引き上げて、今度は貸出利子が余り下がらないのに預金利子を下げようとしている。つまり、上がっても下がってももうけようとしている。こういう事実について総裁はどう見ているのか。  それから二つ目には公定歩合。公定歩合はいま七五%ですが、国債の利子は八%です。そうすると、このクレジットラインで日本銀行から都市銀行がどんどんお金を借り受ける。その借り受けたお金で国債を引き受ければ、払う利子は七・五%だけれども、受け取る利子は八%。つまり引き受ければ引き受けるほど、それはもうけにつながるではないか。  それから三つ目に、いままでの資金需給の実績を見ますと、いろいろな項目の相殺はありますけれども、結局のところは、国債が出た分だけ資金不足になって、そしてその資金不足に対して、日銀の信用、日銀貸し出しでどんどんその穴を埋めている。日銀の貸し出しがふえれば、当然これは通貨の量の増発となっていく。そのことは物価高につながっていく。つまり通貨量の増発ということになれば、そのことがインフレにつながっていくではないか。こうした問題についてお尋ねをし、あわせて、先ほどの大企業と中小企業の貸し出しの不公正な点は、都市銀行の融資態度の問題でありますから、先ほどの日本銀行総裁の見方を受けて、全国銀行協会の会長の答弁を伺って、質問を終わりたいと思います。
  461. 森永貞一郎

    ○森永参考人 貸出金利の低下でございますが、ことし三回にわたりまして公定歩合を下げましたことに対する市中貸出金利の追随状況は、過去の類似の事例に比べまして大変順調でございます。八月までに公定歩合引き下げ額の二五%の追随でございますが、九月の数字を加えますと、さらに五〇%くらいの追随になるのではないか。今後さらにその追随を期待をいたしておるわけでございまして、預金金利が下がりますれば、さらにまたそれが貸出金利の低下の促進につながるということを御了承いただきたいと存じます。  それから、公定歩合七分五厘で国債が八分四厘ぐらいでございますが、日銀から借りて国債を買えばもうかるというお話でございましたが、私どもの貸し出しは、金融市場全体の資金が不足する場合にのみ行っておるわけでございまして、市中銀行が国債を買い入れますのに見合って安い公定歩合でどんどん貸しているというような事実は全然ございません。日銀が貸し出しておる金額そのものは一兆数千億でございまして、金融機関全体では資金量百兆くらいでございますが、それに比べればわずかなものでございまして、それは金融市場における資金不足の実態に合わせて厳密に審査して貸し出しておるという事実を御理解いただきたいと存じます。  さらに、今後国債が出ますに伴いまして、短期間で巨額の国債でございますので、金融界には相当の負担が伴うのは事実でございますが、本年度は資金が余剰ぎみに推移しておりますことと、それからいまのような景気情勢でございますので、産業の資金事情も比較的低調であるというようなことから、その消化については、問題が全然ないわけではございませんが、何とか消化できるのではないか。ただ、その間、時期的に資金の過不足が起こりましたり、あるいは、国債を引き受ける金融機関と、国債の買い入れ金による支出増加によって預金が集まります金融機関との間にヒッチが起こります。そこで、金融市場における資金の需給が起こってくるわけでございますが、それに対しましては、私どもの任務といたしまして、金融市場全体が摩擦なく推移いたしますように、金融調整をそのときどきの情勢に応じて実行をいたしておるわけでございまして、ことしもそれらの問題がこれから私どもの重要な任務になってくると存じます。  大銀行云々のお話でございましたが、大銀行の立場にかわりまして私からお答えすることはお控えした方がいいんじゃないかと思います。私どもの見解といたしましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
  462. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 板倉全国銀行協会会長。大変お待たせいたしまして失礼いたしました。
  463. 板倉譲治

    ○板倉参考人 全国銀行協会の板倉でございます。  先ほど荒木先生の御質問でございますが、この四月-六月間の全国銀行の貸出資金が、中小企業の面におきまして大企業の面よりは増加が少なかったのではないか、そのシェアが減ったのではないかという御指摘がございました。確かに、この四-六月だけをとりますと、中小企業に対する融資は低調でございます。その原因を私どももいろいろ調べてみたわけでございますが、これは商工中金の調査リポートにも出ておりますのですが、この四-六月間には中小企業の金融が非常に緩くなっておった、非常に余裕があったということでございまして、そういった関係でこの貸出資金の需要が少なかったということで、銀行だけに限りませんで、全国の中小金融機関を含めました全金融機関の中小企業に対する貸出資金が、この四-六月は昨年の四-六月あるいは一昨年の四-六月に比べまして増加が少なかったということになっております。  それから、もう一つ申し上げられると思いますことは、この四-六月と申しますのは、三月末の残高と六月末の残高の比較の増加額でございますが、三月末の中小企業の手元流動性、いわゆる手元資金でございますが、売上高をもちましてこの現金預金のあり高を割りましたその割合でございますが、これがたしか一・三カ月分くらいに達しております。それまでずっと一カ月あるいは一・二カ月がせいぜいであったのが、この三月には非常に高まってきておりまして、その関係でこの四-六月に限りますと、中小企業の資金需要が非常に少なかったということでございまして、先生が四-六月をおとりになりまして、少なかったのではないかとおっしゃいます。日本銀行の資料でも確かにそうなっていると思いますが、それは確かに事実でございます。ただ需要が少なかったということでございまして、決して私どもが中小企業に対する融資を消極的に扱っているというようなことではございませんで、この間におきましても、中小企業特別救済融資につきまして、新たな業種を二回にわたって追加いたしておりまして、積極的にこれには協力することにいたしております。  それから、先ほどちょっと申しおくれましたが、四-六月の中小企業貸し金は若干低調でございましたが、その後の七-九月、この統計はまだ出ておりませんので、全国銀行としての実態はまだつかんでおりませんが、私ども一行だけの関係で見ますと、この七-九月は一転して非常に大きくふえております。これは私どもの大店ではございませんで、いわゆる中小企業金融を主体として扱っております中小企業の多い周辺にあります店、こういったところの貸し金が特にふえておりますので、そういう点から考えまして、中小企業貸し金が、この七-九月に非常にふえたということははっきりいたしておりまして、数字的にもその点は、確定数字ではございませんが、出ておるわけでございます。  そういう次第でございますので、決してこの中小企業融資に対しまして銀行が消極的であるというふうに御理解いただかないように、お願い申し上げたいと存じます。ありがとうございました。
  464. 荒木宏

    荒木委員 これで終わりますが、幾つか国会に報告するということを大臣が約束をしましたので、委員長にもそのことを御確認いただきたいと思います。郵政大臣、それから防衛庁長官、それから労働大臣、調査、回答するという約束をしましたので、委員長に確認していただきたいと思います。
  465. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 荒木君のそのいまの御発言、よく理事会検討いたします。  これにて荒木君の質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  466. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、お諮りいたします。  本日午前中の田中武夫君の質疑において、立法府権威を高めるために小委員会設置せられたい旨の御発言がありまして、理事会協議により、予算の実施状況に関する事項につきまして、議長に対し、国政調査の承認を求むることといたし、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  467. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ――――◇―――――
  468. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に小委員会設置の件についてお諮りいたします。  本委員会に小委員十五名より成る予算審議とその執行に関する調査小委員会設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  469. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次に、ただいま設置することに決定いたしました小委員会の小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  470. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  小委員及び小委員長は追って指名することといたし、公報をもってお知らせいたします。      ――――◇―――――
  471. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  明二十二日、日本銀行総裁及び全国銀行協会会長の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  472. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明二十二日午前十一時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時四分散会