○渡辺武三君 私は、民社党を代表し、ただいま提案されております
昭和五十
年度の
公債の
発行の
特例に関する
法律案に対し、
反対の
討論を行いたいと思います。(
拍手)
わが民社党は、国庫が空になり、またはなろうとしている現時点における
赤字国債の
発行はやむを得ないという態度をいち早く打ち出したことは、すでに御承知のとおりであります。
申し上げるまでもなく、
わが国経済は、
政府・
自民党のたび重なる
経済政策の
失敗によって、二年続きの深刻な
不況に陥り、
政府の第四次
不況対策にもかかわらず、今年の
経済成長率も一%前後の超低成長が予想されている実情であります。これがため、特に
中小企業者、勤労者が深刻な打撃をこうむっていることはいまさら説明するまでもありません。この倒産、
不況、雇用不安から一刻も早く脱出することが、現下
最大の急務であることを考えますならば、現に生じている四兆円の
歳入欠陥を、すべて今
年度内に行政経費の節約と
増税でもって賄うことは、非
現実的であるのみか、ますます
不況を深刻化させるばかりであります。
したがいまして、現在の
国民の
生活を守るという大前提に立ち、この時点においては
赤字国債の
発行もやむを得ないという
立場を明らかにしてまいったのであります。
しかし、翻って、
赤字国債発行の政治的責任については、断じて
政府の責任が免罪されることはないのであります。ましてや、
予算委員会、
大蔵委員会の
質疑を通じても、なおかつ
赤字国債の有効な歯どめ
措置が示されず、また
償還計画も具体的に示されていないことは、
政府・
自民党の全く無責任きわまりない態度を露呈したものであり、断じて容認することはできないのであります。(
拍手)
わが国財政は、現在重大な曲がり角に立たされております。戦後の
財政をたどってみますならば、大きく分けて三つの時期に区分できるのであります。
第一期は、
財政法が
昭和二十二年に制定されてから
昭和三十九年までであり、この時期に、曲がりなりにも
財政法で認められている
建設国債の
発行も行わなかった超均衡
財政の時代であります。
第二期は
昭和四十年から昨年までであり、
昭和四十年の
赤字国債発行を皮切りに、その後は
財政法による
建設国債を毎年
発行し、この間の
一般会計に占める
国債依存度は平均して一〇・三%を記録しているのであります。
第三期は今
年度以降であります。今年の
国債発行額は、すでに御承知のとおり五兆四千八百億にも達し、
一般会計に占める
国債依存度も二六・三%に達しております。なおかつ、この膨大な
国債発行と異常に高い
国債依存度が、ことし限りのものではなく、今後数年にわたって続くことが必至の
情勢にあることであります。このことが持つ意味はまことに重大なものがあると言わざるを得ません。
すでにある学者によっても
指摘されていますように、
一般会計の
国債依存度が三〇%前後になったのは、終戦直後の一時期を除けば、戦前戦後を通じて、
昭和七年から十年までの高橋
財政の時代のみであります。この高橋軍事
インフレ財政が二・二六事件によって終止符を打たれたことは、その時代的背景が違うとはいえ、厳しく銘記すべきであります。
果たして
政府・
自民党に恐るべき
インフレに対する認識がありや否や。全くなしと言わざるを得ないのであります。
同じく
財政困難に直面している西ドイツを見るならば、すでにこのような危険のあることを予測し、一九六七年に
経済安定成長促進法を制定し、
財政五カ年
計画の作成を
政府に義務づけているのであります。この
財政五カ年
計画において、西ドイツは、今
年度から一九七九年までの五カ年間に、現在の
国債依存度二五・三%から五年後には五%にまで引き下げる
計画を発表し、広く
国民の理解を求めているのであります。
ところが、
わが国においては、
政府は何ら将来の
財政計画を
国民に示さず、
国債発行の
削減計画も明らかにしていないのであります。余りにも無責任な態度と断言せざるを得ません。また、このような大量の
国債発行が持つ
経済的影響、なかんずく
財政インフレ回避を図る諸方策についても、
国民の納得できる対策を示していないのであります。
政府は、一刻も早く、現在の銀行にのみ偏重した
国債消化の方法、御用金的低利回りの
国債発行条件、不明確な
償還計画などについて、具体的、抜本的な対策を確立し、
国民の将来に対する
インフレ懸念を一掃すべきであります。
以上、私は、今後の大量の
国債を抱えた
財政が持つ意味の重大性を
指摘し、
政府が認識を新たにしてこの問題に取り組むことを強く切望いたしまして、
反対討論を終わります。(
拍手)