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1975-11-11 第76回国会 衆議院 本会議 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十一日(火曜日)     —————————————  議事日程 第十一号   昭和五十年十一月十一日     午後二時開議  第一 昭和五十年度における地方交付税及び地     方債特例に関する法律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  永年在職議員山本幸一君に対し、院議をもつ   て功労表彰することとし、表彰文議長に   一任するの件(議長発議)  検査官任命につき同意を求めるの件  原子力委員会委員任命につき同意を求めるの件  科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件  国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの   件  公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同   意を求めるの件  中央更生保護審査会委員任命につき同意を求め   るの件  社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの   件  中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を   求めるの件  漁港審議会委員任命につき同意を求めるの件  運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件  労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの   件  日程第一 昭和五十年度における地方交付税及   び地方債特例に関する法律案内閣提出)  石油コンビナート等災害防止法案内閣提出)  油濁損害賠償保障法案内閣提出)  国会議員秘書給料等に関する法律の一部を   改正する法律案議院運営委員長提出)  昭和五十年度公債発行特例に関する法律   案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑     午後二時六分開議
  2. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  永年在職議員表彰の件
  3. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) お諮りいたします。  本院議員として在職二十五年に達せられました山本幸一君に対し、先例により、院議をもってその功労表彰いたしたいと存じます。表彰文議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  表彰文を朗読いたします。  議員山本幸一君は衆議院議員に当選すること十回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕  この贈呈方議長において取り計らいます。     —————————————
  5. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) この際、山本幸一君から発言を求められております。これを許します。山本幸一君。     〔山本幸一登壇
  6. 山本幸一

    山本幸一君 ただいまは御丁重な御決議をいただきまして、心から感謝を申し上げる次第であります。(拍手)  私は、昭和二十二年四月の総選挙におきまして初めて本院の議席を得、新憲法のもと、第一回の国会に臨むことができたのでございます。  自来、二十五年の長きにわたり本院に在職し、今日の栄誉に浴することのできましたのは、先輩同僚議員諸賢の御厚情はもとより、国会職員諸氏の御協力、郷土の皆様方の御支援のたまものと存じまして、重ねてお礼申し上げる次第でございます。(拍手)  思えば、私が無産者解放運動に参加いたしました昭和三年ごろは、失業者がちまたに満ちあふれ、官憲の圧迫の中に労働争議小作争議の頻発した時代でございました。  私は、汗して働く人々こそ社会の宝であると信じております。にもかかわらず、何ゆえその人々が不遇であるのかという矛盾を痛感いたしまして、労働運動農民運動などに身を投じたのでございます。  当時、私たちの言動は厳しい取り締まりと圧迫を受け、言語に絶する苦しみを重ねてまいりましたが、これに耐え抜くことができましたのは、両親から与えられた健康な体のゆえであったと存じます。いまは亡き父母に改めて感謝するとともに、本日の光栄を両親の目にしてもらいたかったと存ずるのであります。(拍手)  いまや、世界は新秩序を目指す転換期に立ち、日本政治もまた根本的改革が求められていると思います。それゆえに、私たち議員の任務は一層重要であると信じます。  私は、本日のはえある受彰を機会に、初心に立ち返り、先輩同僚諸賢の驥尾に付し、議会制民主主義を根幹として、わが国政治改革に今後とも努力を尽くす決意でございます。  何とぞ、一層の御指導、御鞭撻を賜りますよう切にお願い申し上げ、終わりに、正副議長を初め、議員諸賢の御健康をお祈りいたしまして、一言お礼の言葉にかえる次第でございます。(拍手)      ————◇—————  検査官任命につき同意を求めるの件  原子力委員会委員任命につき同意を求めるの件  科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件  国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件  公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件  中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件  社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件  中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件  漁港審議会委員任命につき同意を求めるの件  運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件  労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
  7. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) お諮りいたします。  内閣から、  検査官大村筆雄君を、  原子力委員会委員に御園生圭輔君を、  科学技術会議議員芦原義重君、黒川眞武君及び米澤滋君を、  国家公安委員会委員田實渉君を、  公害健康被害補償不服審査会委員近藤功君及び鈴木一男君を、  中央更生保護審査会委員菊池省三君及び守田直君を、  社会保険審査会委員岡本和夫君及び小西宏君を、  中央社会保険医療協議会委員伊藤善市君及び看橋正雄君を、  漁港審議会委員松田惣之助君を、  運輸審議会委員津田實君を、  労働保険審査会委員柳澤三男君を 任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。  まず、検査官原子力委員会委員公害健康被害補償不服審査会委員社会保険審査会委員漁港審議会委員及び労働保険審査会委員任命について、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えるに決しました。  次に、科学技術会議議員国家公安委員会委員中央更生保護審査会委員中央社会保険医療協議会委員及び運輸審議会委員任命について、申し出のとおり同意を与えるに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  9. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えるに決しました。      ————◇—————
  10. 羽田孜

    羽田孜君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、日程第一とともに、内閣提出石油コンビナート等災害防止法案を追加して、両案を一括議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  11. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 羽田孜君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。     —————————————  日程第一 昭和五十年度における地方交付税及び地方債特例に関する法律案内閣提出)  石油コンビナート等災害防止法案内閣提出
  13. 前尾繁三郎

  14. 大西正男

    大西正男君 ただいま議題となりました両法案につきまして、地方行政委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、昭和五十年度における地方交付税及び地方債特例に関する法律案につきまして申し上げます。  本案は、地方財政状況にかんがみ、  第一は、国税三税の減額補正に伴う地方交付税交付金減少額について、資金運用部資金からの借り入れ措置を行うことによって当初予算計上額を確保するとともに、地方公務員給与政定に要する経費等財源地方団体に付与するため、地方交付税の総額及び普通交付税の額の算定に用いる単位費用特例を設けることといたしております。  第二は、昭和五十年度に限り、地方税の減収に対処するため発行する地方債については、いわゆる適債事業に充当し、なお充当し切れない部分がある場合においては、適正な財政運営を行うにつき必要とされる経費財源に充当することができる旨の特例を設けることといたしております。  本案は、十月二十五日本委員会に付託され、十一月四日福田自治大臣から提案理由説明を聴取した後、日本社会党及び公明党提案による井岡大治君外八名提出地方交付税法の一部を改正する法律案とともに、慎重に審査を行ったのであります。  同月十日本案に対する質疑を終了しましたところ、本案に対し、日本共産党革新共同から、地方財政の窮状に対処するため、臨時特例交付金交付昭和五十年度における地方債特例地方財政特例債発行等内容とする修正案提出され、三谷委員からその趣旨説明を聴取いたしました。  次いで、討論に入り、自由民主党を代表して高鳥委員は、本案賛成修正案反対日本社会党を代表して山田委員は、本案及び修正案反対日本共産党革新共同を代表して林委員は、本案反対修正案賛成公明党を代表して小川委員及び民社党を代表して折小野委員は、本案及び修正案反対の意見を述べられました。  採決の結果、日本共産党革新共同提出修正案賛成少数をもって否決され、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対して、自由民主党日本社会党公明党及び民社党の四党共同提案により、国、地方を通ずる事務及び税財源の再配分についての早急な検討、昭和五十一年度地方一般財源充実強化超過負担完全解消措置等内容とする附帯決議を付することに決しました。  次に、石油コンビナート等災害防止法案につきまして申し上げます。  本案は、石油コンビナート等における災害がその周辺の地域に重大な影響を及ぼすおそれがあることにかんがみ、石油コンビナート等区域内において石油または高圧ガスを貯蔵し、取り扱い、または処理する事業所に対して防災上の見地からの規制強化するとともに、その区域における一体的な防災体制を確立する等、石油コンビナート等における災害の発生及び拡大を防止するための総合的な施策の推進を図ろうとするものであります。  本案は、十月十一日本委員会に付託され、同月三十日福田自治大臣から提案理由説明を聴取し、慎重に審査を行いました。  本日、質疑を終了し、討論申し出もなく、採決を行いましたところ、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し、自由民主党日本社会党日本共産党革新共同公明党及び民社党の五党共同提案により、コンビナート災害の根絶を期するため、防災体制の一体化、既設事業所に対する規制強化、陸上・海上を通ずる一体的な防災体制の確立、共同防災組織等設置指導等内容とする附帯決議を付することに決しました。  以上御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  15. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第一につき採決いたします。  本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  16. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、石油コンビナート等災害防止法案につき採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  18. 羽田孜

    羽田孜君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、内閣提出、油濁損害賠償保障法案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  19. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 羽田孜君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。     —————————————  油濁損害賠償保障法案内閣提出
  21. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 油濁損害賠償保障法案議題といたします。  委員長報告を求めます。運輸委員長木部佳昭君。     —————————————  油濁損害賠償保障法案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔木部佳昭登壇
  22. 木部佳昭

    木部佳昭君 ただいま議題となりました油濁損害賠償保障法案について、運輸委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、一九六九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約及び一九七一年の油による汚染損害補償のための国際基金の設立に関する国際条約内容に沿った国内法を整備するためのものでありまして、その主な内容は、  第一に、タンカーによる油濁損害について、天災地変等の例外的な免責事由に該当する場合を除き、船舶所有者が無過失賠償責任を負うこと、  第二に、船舶所有者は、その賠償責任について、船舶トン数に邦貨に換算して約四万八千円を乗じた金額または約五十億円のうちいずれか少ない金額責任を制限することができること、  第三に、二千トンを超える油を輸送するタンカーについて、責任制限を認められている金額まで船舶所有者賠償能力が確保されるよう、責任保険契約等の締結を強制すること、  第四に、被害者は、国際基金に対して賠償を受けることができなかった油濁損害金額について、最高約百八億円、国際基金の総会の決定があった場合には最高約二百十六億円まで補償を求めることができること、  第五に、船舶所有者等は、油濁損害賠償額の支払いの責めに任じた金額のうち、船舶トン数に約三万六千円を乗じた金額または約三十億円を超える部分の補てんを国際基金に対して求めることができること、  第六に、国際基金財源として、石油事業者等年間十五万トン以上の海上輸送された油を受け取った者は、国際基金拠出金を納付しなければならないこと等であります。  本案は、去る九月二十日本委員会に付託され、本十一月十一日政府から提案理由説明を聴取し、質疑を行い、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  23. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  25. 羽田孜

    羽田孜君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、議院運営委員長提出国会議員秘書給料等に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会審査を省略して、この際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  26. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 羽田孜君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。     —————————————  国会議員秘書給料等に関する法律の一部   を改正する法律案議院運営委員長提出
  28. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 国会議員秘書給料等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長趣旨弁明を許します。議院運営委員会理事小渕恵三君。     —————————————  国会議員秘書給料等に関する法律の一部を   改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔小渕恵三登壇
  29. 小渕恵三

    小渕恵三君 ただいま議題となりました国会議員秘書給料等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、今回の一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律により政府職員住居手当の額が改定されたことに伴い、国会議員秘書住居手当についても、これと同様の措置が講ぜられるようにしようとするものでありまして、本年四月一日から適用することといたしております。  本案は、議院運営委員会において起草提出したものであります。  何とぞ御賛同くださるようお願いいたします。(拍手)     —————————————
  30. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 採決いたします。  本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。      ————◇—————  昭和五十年度公債発行特例に関する法   律案内閣提出)の趣旨説明
  32. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 内閣提出昭和五十年度公債発行特例に関する法律案について、趣旨説明を求めます。大蔵大臣大平正芳君。     〔国務大臣大平正芳登壇
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました昭和五十年度公債発行特例に関する法律案趣旨を御説明申し上げます。  すでに昭和五十年度補正予算において明らかにいたしておりますが、本年度におきましては、租税及び印紙収入並びに専売納付金が、当初予算に比べ大幅に減少するものと見込まれる状況にあります。  一方、現在の経済情勢のもとにおきましては、景気回復機動力として有効需要造出に寄与する財政支出に多大の期待が寄せられているところであります。  内外の経済情勢及び現時点の財政に課せられた重大な役割りを考えますと、現在の状況のもとにおきましては、大幅な歳出の削減や一般的な増税を行うことも適当とは考えられません。このため、昭和五十年度財政運営はきわめて困難な状況に直面しているわけであります。  もとより政府といたしましては、一般行政経費等の節減、金融機関等貸し倒れ引当金繰り入れ限度額の引き下げなど、歳入歳出両面にわたり、現在の状況のもとにおいてできる限りの見直しを行い、また、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債追加発行を行うこととしておりますが、それでもなお租税収入等減少による歳入の不足を補うことは、残念ながらとうてい不可能な状況にあります。  このため、昭和五十年度特例措置として、財政法規定による公債発行のほかに、補正予算で見込まれる租税及び印紙収入並びに専売納付金減少を補うため、国会の議決を経た金額の範囲内で、特例公債発行できることとする法律案提案するものであります。  財政健全性を保つことは、国民生活の向上と経済安定的成長の基盤であり、特例公債に依存した財政は、申すまでもなく財政本来のあるべき姿でないと考えております。特例公債に依存しない堅実な財政にできるだけ早く復帰するようあらゆる努力を傾注してまいることは、今後の財政運営基本であると考えております。  以上、昭和五十年度公債発行特例に関する法律案趣旨について御説明申し上げた次第であります。(拍手)      ————◇—————  昭和五十年度公債発行特例に関する法   律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  34. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。これを許します。松浦利尚君。     〔松浦利尚登壇
  35. 松浦利尚

    松浦利尚君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案のありました昭和五十年度公債発行特例に関する法律案について、反対の立場から幾つかの問題点を指摘し、政府の明確な答弁を求めます。(拍手)  その前に、政府が二兆二千九百億の赤字公債発行しなければならない事態になりながらも、なお国民に対して経済見通し政策誤りを反省する気持ちのないことを、大変残念に思います。  昨年、一昨年の急激な物価上昇に関して、政府には全く責任がなく、また、今回の不況が長期にわたったことにも責任がないとする政府三木総理の姿に、国民は失望を通り越して、失笑すら感じています。政府は、肝心の経済国民のため望ましい方向に進むと宣伝はするが、そのときどきにスケープゴートをつくり上げて、そのせいにしておくやり方に国民は苦しめられ続けてきたのであります。  昭和四十八年以来の狂乱物価インフレが、石油危機食糧危機に便乗した大手商社を初めとする大企業の独占的地位を利用した投機活動によってもたらされ、いまインフレを克服するとして、戦後最大の不況という代償を国民は払わされています。加えて、本年の春闘にこだわった三木内閣の姿勢が、よけいに政策転換のテンポをおくらせてしまったことは否定できません。  現に、昭和五十年度予算の裏づけとなる主要経済指標は、昭和五十年度名目成長率は対前年度比一五・九%、実質成長率四・三%程度とし、物価については卸売物価年度上昇率七・七%、消費者物価年度上昇率九・九%等を挙げていますが、消費者物価目標を除くほかは、ことごとく補正予算案提出とともに改正せざるを得ない情勢をつくり出してしまったではありませんか。  その結果、いままた厳しい現実として巨額赤字公債発行という形で国民にツケが回ってきました。このことは、過去の対応策が適切でなかったことを示す重大な結果なのであります。  三木総理、あなたは政府自身経済見通しを誤った結果が、後世代の国民負担増大につながる巨額赤字公債発行につながった今日でも、なお反省する気持ちの一毛だにないと断言されますか。多弁を弄せず、反省している、いない、あなたはそのいずれを国民に対する答弁として選ばれるのか、しかと承りたいと存じます。(拍手)  さらに、四十九年十二月二十五日、経済審審会計画推進委員会から出された「経済社会基本計画フォローアップ 昭和四十九年度報告」は「物価目標を早期に達成するために引締政策強化するとすれば、一桁台物価上昇率目標はかなり早く達成することができようが、雇用情勢の悪化や倒産の続発といった経済社会の混乱が著しくなることが予想され、また投資意欲も冷えきり、中期的潜在成長能力設備能力の面から大幅に引き下げてしまうおそれなしとしない。」また、この逆の場合をも指摘しながら、極端な政策を避けるため「急激な総需要抑制策による調整によって短期間に物価を安定させようとすることには問題があり、調整期間の長さについて多少余裕をもって考えておくことも必要」だと指摘をしておるのでありますが、経済見通し誤りなし、経済政策誤りなしと強気の答弁に終始なさる副総理昭和五十年度物価経済成長指標は、初めから同時達成は無理だったのではないのですか。指標のとおりなら今日の深刻な不況はなかったはずであります。  一月二十四日に発表した「五十年度経済見通し経済運営基本的態度」は、仮谷発言ではありませんが、いいかげんな政府指標だったのでありますか。経済担当総理からもぜひお聞かせをいただきたいと存じます。  また、従来から大蔵大臣は、国債利払い償還財政硬直化をもたらす一因となってきたと強調し、国債整理基金特会は五十年度三兆八千億に上り、蔵相自身、五十年度予算では国債発行を極力抑え、当初予算に対する依存率を前年比一二・六%から九・四%まで低下させたと財政演説で述べておられます。それだけに、あなたは、建設国債の枠を超えて赤字公債発行し、公債依存率を二六・三%にも高められることは耐えられないはずであります。  あなたは四月十五日、すでに歳入欠陥を予知して非常事態宣言を発しておられますが、五十年度予算審議の段階では野党の質問にも言を左右して明らかにせず、予算通過後半年を経過した今日、前代未聞の税収見込み違いから、巨額赤字公債発行に踏み切らざるを得ない大蔵大臣としての財政運営責任はないのですか。あなたからも責任の所在を明らかにしていただきたいと存じます。  また、私は、このことは、ひとり大平大蔵大臣責任というより、三木内閣全体の責任だと思うのでありますが、財政担当の大蔵大臣からも明確にお答えいただきたいと思うのであります。(拍手)  また、昭和四十二年度にまとめられた財政制度審議会の答申は、公債依存率は五%以下に引き下げることを目標とすべきだとしていますが、あなたは望ましい依存率は何%だと思っておられるのですか。また、その目標を達成させる方針は、いつわれわれに明らかになさるのか、承りたいと存ずるのであります。  次いで、具体的なことについてお尋ねをしてまいります。  現行財政法は、第四条第一項において、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債発行し又は借入金をなすことができる。」としているとおり、本来、建設公債自体も例外規定なのでありますが、今日までの経過を見ますと、実質的に例外のはずの赤字公債であっても、公共事業費の範囲内であれば建設公債として発行してきたわけでありまして、建設公債赤字公債との区別は、名称だけで、実質的に変わりはないと思いますが、大蔵大臣の考え方をお聞かせいただきたいと存じます。  同時に、今後低成長下で歳入が大幅に減少することが予想され、財政を従来と同じ発想で運営するならば、赤字公債はますます累積することは間違いないと思います。現在の公債発行残高は、十兆に達しました。一度予算に組み込まれた公債は、麻薬のように予算からはずせず、七月二十一日の財政審中間報告を待つまでもなく、五十五年度末の普通国債残高は、およそ四十兆から六十一兆に達することも予想されると言われております。  このような多額の国債発行は、財政健全性と節度を失わしめるばかりでなく、わが国経済に大きなインフレ要因を持ち込むことになると考えざるを得ません。したがって、特定財源の一般財源への振りかえや、好況のときの増収を景気調整準備金としてプールするなど、財政運営を抜本的に改める必要があると存じますが、大臣のお考え方をお尋ねをいたします。  また、建設公債自体も、今日まで安易に発行され過ぎたのではないでしょうか。この際、建設公債のあり方についても、将来のために検討しておく必要があると思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。  さらに、悪性インフレ防止の意味で、財政法第五条は日銀による公債の引き受けを禁止していますが、現実的には、発行後一年を経た公債は、日銀の買いオペレーションの対象となり、間接的な日銀引き受けの抜け道をつくり出しています。日銀の買いオペ機能を活用すれば、大量発行を合法的にスムーズにできる道を開くことになりはしないでしょうか。現に大蔵省は、金融機関の手持ち公債を日銀に買い上げさせ、市中金融機関に余裕を持たせる方法をとりつつあると聞きますが、事実ですか。事実とすれば、日銀直接引き受けと同じことになりはしないのか。通貨膨張、インフレの危険はないのか。また、本年だけはという気持ちが、結果的に、将来にわたって便乗的な歳出増をも要求する赤字公債乱発という重大な禍根を残しはしないか。そのために、日銀買いオペについて一層の法律的制約を厳しくする方針はないのか、お尋ねをいたします。  また、日銀の買いオペ機能によらずして、十一月以降毎月六千億近くの公債を市中消化することはそう簡単ではないと思いますが、どのような方法を考えているのですか。また、金融市場に圧迫が加わり、本来の業務である企業や個人に対する融資をふやせないばかりか、公社債市場では金融債、事業債の増発は不可能になりはしないか。また、地方債計画四兆二千億及び特別会計債等の消化が困難になり、地方自治体行政を阻害しはしないか。また、国債とともに地方債、政保債を含めた公共債発行のルールをこの際確立しなければならないと思いますが、大蔵、自治両大臣から明らかにしていただきたいと存じます。  さらに、償還は十年全額現金償還と言われていますが、あなたは、一般会計剰余金は全額を国債整理基金特会に繰り入れる、毎年度予算でも同会計に新たな繰り入れを行うと言っておられますが、今後も赤字公債発行が予定されている状況下で、利払いと償還に追われ、ツケを後世代に回し、財政硬直化、他の財政需要の圧迫要因となりはしないか。他方、市中消化、特に個人消化を活発にするため、短期高利の貯蓄国債発行すべきだという意見もありますが、大臣の御意見を承りたいと存じます。  同時に、五十年度に生じた高額の税収不足の後遺症は相当長期的なものになり、一般会計は、かなりの長期にわたって赤字公債に依存せざるを得なくなるのではないでしょうか。五十一年度は、当初予算から赤字公債発行が前提となると思いますが、大蔵大臣赤字公債発行予想額をお示しいただきたいと存じます。  同時にこの際、償還財源、利子負担軽減措置などの国債の管理政策の確立を明らかにするとともに、償還計画をわれわれに向かって明示していただきたいと存じます。  次いで、副総理にお尋ねしますが、第四次公定歩合の引き下げと、十六日予定の預金準備率の引き下げに伴うコールレート七%台引き下げが、ある程度の企業への貸し出し増を伴い、第四次不況対策とともに、来年三月ごろには通貨供給量が対前年比で一八%以上に急増し、公共料金の相次ぐ引き上げと重なり、五十一年度半ばから再び物価上昇のおそれはないのですか。  また、あなたが大蔵大臣当時の昭和四十年、初めて赤字公債発行にわが国は戦後踏み切ったのでありますが、対前年比四・六%程度の物価が六・四%に上昇し、物価引き上げに一役買ったことを記憶しておるのでありますが、今回も物価上昇の一因となりはしないのか、お聞かせいただきたいと存じます。  いずれにいたしましても、補正後は国債発行残高約十六兆と、税収の十七兆とほぼ変わらないものになり、日本財政は、借金財政という底なしの沼に足を引きずり込まれかねない情勢にあります。いま大切なことは、第一に、財政支出の削減と再検討が必要だということであります。公共事業費は、産業基盤投資の整理と抑制、防衛費の思い切った削減、また、予算の三分の一を占めている各種補助金を整理する方針はないのか、お聞かせをいただきたいと存じます。  第二に、わが党の赤松、武藤代議士の代表質問にも示したとおり、この際、税制を思い切って抜本的に改める必要があるということであります。  年度内増税が可能な政令部分を、なぜ大蔵大臣は断行しなかったのでありますか。九月、十月から、わずかに千分の〇・五ずつ引き下げはいたしましたが、貸し倒れ引当金繰り入れ千分の十の積み立てから千分の五に変更する課税や、減価償却資産耐用年数の大企業のものだけ一五%圧縮、一千万以上高額所得者への付加税等を、なぜあなたはやらなかったのですか。予算通過後に、税収不足が非常事態宣言を発しなければならないぐらい明らかであったにかかわらず、なぜ手をつけなかったのでありますか。手をつけなかった理由だけ国民の前に明らかにしていただきたいと存ずるのであります。(拍手)  一方、税制改正の方向として租税特別措置法の見直し、利子配当優遇を改めて総合課税に、法人所有の土地評価益税、富裕税の新設を断行する気持ちはありませんか。  また、新財源として、大衆課税強化になる付加価値税を意図しているといううわさがありますが、事実なのか、これまたお尋ねをいたします。  同時に、本年の地方財政の混乱から見ても、福祉財政充実の観点から見ても、地方財政の拡充が重要であります。五十一年以降、自主課税権の強化、制限税率の撤廃ないし幅の拡大、交付税率の引き上げ等、地方自治体の自主的な決定が行われる保証を与えるべきだと思うのでありますが、五十三年からと言わず、五十一年度から実施するお気持ちがあるのかどうか、大蔵、自治両大臣の方針をお聞かせいただきます。  以上、幾つかの意見を入れて質問しましたが、財政制度審議会は、その中間報告として、現下の財政危機は、単に経済の激変のみによるものではなく、従来の財政運営と無関係ではあり得ない。これまでの経済の高度成長を前提とした財政運営問題点が、経済の激しい変動を契機として表面にあらわれて出たものと考える。したがって、この機会に従来の財政運営を改めて見直し、再検討まることが、現下の財政危機を克服するためにも、さらには、今後に予想される安定成長下で財政国民の負託に適切にこたえていくためにも、強く求められていると指摘をしています。  いまこそ、財政支出の効率的使用という立場から、支出の洗い直しや所得税の不公平、大企業優遇税制の是正による増収などを直ちにやるべきだと思います。今後の財政がどのような構造をとり、財政支出がいかなるバランスをとるかなどを明確にさせていくためにも、三年ないし五年の中期財政計画を策定する必要があると思うのでありますが、三木総理の御見解を求めたいと存じます。  三木総理、安易な国債発行が、やがて借金の重荷を軽くする手軽な手段として、将来政府が借金に苦しんだあげく、財政を膨張させながらインフレを進めていくという誘惑に駆られないという保証はないではありませんか。  しかも、高度経済成長のつめ跡は、いまなお深刻な環境破壊と過密過疎、農業の衰退、人間疎外、地域格差拡大、社会保障、福祉の立ちおくれ、不均衡は、いまや日本列島全体を覆い、国民の生活を不安に陥れています。これらの不均衡是正を財政基本政策に置かない限り、日本経済の立ち直りは必ず行き詰まることを三木総理は知るべきであります。  最後に、「過ちて改めざる、これを過ちと言う」という言葉を政府・自民党に献じて、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  36. 三木武夫

    内閣総理大臣(三木武夫君) 松浦君の御質問にお答えをいたします。  第一番は、この大量国債発行財政経済政策政府が誤った結果ではないか、こういう責任はどうするのかというお話でございましたが、政府経済政策については絶えず反省は加えます。しかし、今回の場合、大筋において政府経済政策が誤っておったとは考えないのでございます。  御承知のごとく、三木内閣が成立をいたしましたときは、もう卸売もあるいは消費者物価も異常な値上がりの中にあって、それをそのままにしておいたのでは、日本の健全な経済の運営というものは破綻に瀕することは明らかでございます。したがって、やはり経済政策は、インフレ不況を両方とも解決をするということが経済政策であることは御指摘のとおりでございますが、しかし、そのときの経済状態によって、どこに重点を置くかということは、おのずからその経済情勢によるわけでございます。  三木内閣が成立したときには、どうしてもやはり物価を抑えなければいかぬということで、物価の安定に経済政策の重点を置いた。その結果、物価も鎮静の傾向に入り、そこで本格的な景気対策に乗り出したというこの経済運営の大筋は誤ったとは思ってないわけでございます。その結果、いまは世界の景気も非常に悪く、また日本におきましても、第一次、第二次、第三次と景気対策を講じましたけれども、景気の回復は非常に遅くなった。そういうことで今回の景気対策もとったわけでございますが、この巨額の税収不足が生じたことは事実でございますので、一日も早く安定した適正な経済成長に持っていくように努力をいたしますとともに、特別公債に依存しない財政の実現することに全力を尽くしたいという考え方でございます。  今後の財政がどのような構造をとるか、中期経済計画のようなものをつくる必要があるのではないかというお話でございます。  財政のあり方としては、単年度だけでなく、中期的に考えるべきだという松浦君のお考え方には私も同感でございます。しかし、実際問題として、日本経済は大きな転換期にあって、財政構造についても、歳入歳出ともに、全面にわたって見直しをしなければならぬ時期でございますので、予算編成の基礎となるような中期計画をこの段階でつくることは容易ではございません。しかし、お話しの点については、今後の研究の課題であることは申すまでもございません。  第三点は、この大量な国債発行インフレをまた逆戻りさせるのではないかという御指摘でございます。  松浦君御指摘のように、国債に依存する財政はえてして安易に流れやすいことは、これは御指摘のとおりでございます。政府としては、なるべく早い時期に特別国債に依存しないような財政に戻すために全力を挙げたいと思っております。そのためには、財政全体の規模を経済全体とのバランスのとれたものにして、過大にならないようにする、歳出内容についても厳しい選択をいたす所存でございます。また、公債についても市中消化を図るよう、この原則というものは堅持する覚悟でございます。そうして、節度ある財政運営を行い、この大量な公債発行インフレを招かないように、最善の努力をいたす覚悟でございます。  お答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣福田赳夫君登壇
  37. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 「経済社会基本計画フォローアップ 四十九年度報告」を私が正しく理解し、そう実行しておるかという御質問でございます。  この報告では、調整期間中の政策目標としまして、第一、消費者物価、卸売物価ともども一けたを第一とし、あわせて第二、雇用の安定を図ること、三、経常収支の均衡を目指すこと、四、調整期間後の長期的成長率を、先進国の平均をも勘案しつつ、従来よりかなり低目と見ること、この四点を指摘しております。  私は、この指摘は妥当であると考え、このような方向で対処してきておるのでありますが、この対処の姿勢というものは、物価一点張りとか、あるいは景気一点張りとか、そういう硬直した姿勢であっては相ならぬ、かように考えます。いわば二刀流の構えでなければならぬ。このインフレが燃え盛る、そういうときにおきましては、きき腕の方でインフレを断ち切る、しかし、左手では常に景気に備えなければならぬ、逆に、いまインフレが鎮静しつつある、そういう段階にありますれば、きき腕で今度は景気の方を支える、さような役目を持たせなければならぬ、かように考えておるのであります。  昭和五十年度経済見通しでは、お話しのように、成長率におきましては実質四・三%、それから消費者物価につきましては九・九%、そういう目標を立てたわけでありますが、ただいま申し上げましたような姿勢のもと、これらの指標はどういうふうになってきておるか。消費者物価九・九という目標は着実に実現される過程にある、私はそういうふうに判断しております。また、この「フォローアップ」で指摘しておる国際収支、これもやや改善をされておる、こういう状態にあります。  ただ、景気の側面、この景気の回復がはなはだ緩やかな調子である。この点は、見通しと非常に違った結果になってきております。  これは、とにかくいま世界じゅうが非常な混乱状態、停滞の状態です。そういう中におきまして、わが国だけがというわけにもまいらぬ。実質四・三を二・二ぐらいに改正しなければならぬと思いまして、そういうふうな見通しでございますが、しかし、世界じゅうが、先進諸国ですが、これが全部ことしは恐らくマイナス成長になるだろう、そういう中におきまして、わが国がひとりとにかくプラス成長であるという点も篤と御理解を願いたい。  しかし、とにかくこの成長の速度だけが見通しと大いに狂ってきたという点につきましては、私も率直にこれは認めます。これはもう残念で残念でたまらぬ。はなはだこれを遺憾とします。問題は今後にある。御承知のように、全力を尽くして下半期年率六%成長を実現をいたしたい、かように考えておるのであります。  また、松浦さんから、現在もさらに物価抑制政策をとり続けるのか、こういうお話でございますが、これはもうもちろんそうです。物価の安定こそは、健全な社会、健全な経済の基盤である。これをないがしろにすることはできません。しかし、この物価の安定は基調が固まりました。そういう状態でありますので、もう一つの問題である景気に、より重点を置かなければならぬ、さように考えまして、速やかにインフレのない成長、これをぜひ実現したい、かように考えております。  さらに、今回の預金準備率やコールレートの引き下げ、また、さらに公共料金値上げ、そういうものが山積みされておる、来年度物価が心配だという御懸念でございますが、いま経済全体を見てみますると、これは供給超過、そういう状態でありますので、これは多少景気を刺激するというようなことに相なりましても、これが物価に大きな影響を与えるということはないと思います。  公共料金の問題なんかがなければ物価政策は非常に楽なんですが、しかし、この公共料金も、これを長く据え置いて据え置きっ放しというわけにはまいらない。そこで逐次これを改定しなければならぬ。それが物価政策をやっていく上の大きな重荷になっておるわけでございますけれども、それにいたしましても、この諸政策、整合を得まして、五十年度消費者物価一けたの目標は、何が何でも、万難を排して実現をいたしたい、かように考えております。  さらに、大量の公債発行物価をまた上昇させる、またその歯どめはどうか、こういうようなお話でございますが、私はしばしば申し上げておるとおり、公債発行いたしましても、そのことが直ちにインフレにつながるというふうには考えておりません。  公債発行いたしましても、その公債発行によって運営される財政、この財政国民経済全体の中において均衡のとれた地位にある、また、公債発行財政を膨大化したその結果、国民経済全体が、この規模が大きくなって破裂をするというようなことになれば格別でありますが、節度ある運営下における公債発行、これは直ちにインフレにつながるとは考えておりません。  しかし、松浦さんが御懸念されるように、これはうっかりすると、インフレにつながるおそれがあるのです。その歯どめは何だというと、これは私は完全消化ということにあると思います。  もしこれが消化されない、そして日本銀行の通貨をもって公債を消化するというようなことになれば、それは通貨の増発になる。そして、それはまた過剰流動性を生むというようなことにもなる。これは、それこそ日本経済に対して非常に大きな影響をもたらすということに相なるのでありまして、そういう点を踏まえ、公債政策の運営につきましては、その完全消化を旨とし、慎重な態度をもって臨んでいかなければならぬ、さように考えます。(拍手)     〔国務大臣大平正芳登壇
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一の御質問は、巨大な歳入欠陥をもたらした政治責任をどう考えておるか、受けとめておるかということでございます。  もとより、財政当局の最高責任者といたしまして、痛いほど責任を痛感いたしております。さればこそ、こういう局面にありまして、中央、地方を通ずる行財政の水準をどのようにして担保してまいりますか、経済の不安、雇用の不安を起こさないようにどうするかということに対して、最善の努力をすることによってこの責任にこたえたいと考えております。  第二の御質問は、財政公債依存率はどのくらいが適正なものであると考えておるかという御質疑でございます。  松浦さんがおっしゃる昭和四十二年度財政制度審議会は、五%ぐらいが適当であるという御答申をされたことは、私も承知いたしております。恐らく、これは当時の先進諸国の依存率が五%内外でありましたことからヒントを得られた着想でないかと思います。  しかし、本来公債の依存率というのは、一概に何%が適正であるという考え方は私はとらないわけでございます。財政経済がバランスのとれた姿において運営されている限りにおきまして、依存率が高目でございましてもよろしい場合もあれば、低い場合でも許しがたい場合もあろうかと思うのでございまして、その年々の客観的状況に応じて望ましい依存率を考えていくべきであると考えております。  第三の御質問は、建設公債赤字公債との差異についてのお尋ねでございました。  申すまでもなく、建設公債によりまして国民の資本がそれだけ見返りとしてふえてまいる、けれども、赤字公債の場合はそれが期待できない、根本の差異があるわけでございますけれども、仰せのように、建設公債といえども、公債に間違いがないわけでございます。安易にこの発行に流れてはいけないと思うのであります。公債発行は、建設公債も含めて慎重でなければならぬと考えております。  景気調整準備金制度についてどう考えておるか、こういう必要があるのではないかという御指摘でございます。  私は、御提言の趣旨はよく理解できます。事実、財政自体が一つの景気調整的な役割りを果たしておりますことは、松浦さん御案内のとおりでございます。財政に余裕がございますならば、こういった準備金制度を採択いたしまして、ある程度の財源を留保してまいることは、私はより望ましいと考えておりますけれども、ただいまのような状況におきましては、そういった余裕がございませんで一後年度財政運営の問題として真剣に検討すべき問題だと思います。  それから、既発公債の日銀の買い入れはインフレを招く危険もあるし、これを法的に規制すべきではないかという御指摘でございます。  既発公債は、一年たちますと日本銀行がオペレーションの対象にいたしておりますことは、御指摘のとおりでございまして、これが乱に流れますと、インフレを招来するおそれがあることも御指摘のとおりだと思いますが、日本銀行が適正な通貨を市場に供給するという場合に、公債をその対象として選ぶ場合、それが適正である限りにおきましては、インフレを起こす心配はないわけでございまするし、このオペレーションは、そのときどきの金融情勢に応じて機動的にやらなければならぬわけでございますので、法的に規制するということは、私は適切でないと考えております。いわんや、大蔵省が日銀に干渉を加えておるというようなことは一切ございません。  それから、これからの公債の市中消化は心配ないか、六千億も月に出すという計画では、他の債券類の消化あるいは産業資金を圧迫するおそれもあるし、また、その消化自体が心配でないかという御指摘でございます。  たびたび申し上げておりますように、ことしは上期下期ともたくさんの公債を出すわけでございますが、それも含めまして、財政資金の散布超過が相当ある年でございまして、マクロ的に見ますと、ことし発行いたしまする公債を消化するには十分の資金が市場に用意されておるはずだと考えます。しかしながら、金融機関別に、あるいは時期的に仰せのようなヒッチが起こらないとは保証できないわけでございますので、その点は十分われわれも気をつけてまいりたいと思いまするし、国債の市場の整備、国債発行の条件を適正にするというような点に特に配慮していきたいと考えております。  ただ、あなたが御指摘のように、貯蓄公債発行してはどうかということでございますが、そういう御意見も、確かに有力な御意見としてあるわけでございますが、昭和二十八年でございましたか、貯蓄公債発行いたしました経緯にかんがみまして、意外にこれが成績が芳ばしくなかったわけでございます。わが国におきましては、郵便貯金制度自体が一つの貯蓄公債的な機能を持っておるわけでございますので、いま直ちにそういう制度を導入しようという考えは、目下、政府は持っておりません。  それから、一般会計が明年度以降赤字公債をどのような額で出していくことになるのか、その展望を言えということでございます。  実は大変むずかしいこれは御質問でございまして、五十一年度予算がいま検討に入ったばかりでございまして、五十一年度自体がまだ展望が明らかでないわけでございます。  ただ、私の感じで申し上げられますことは、ただいまの景気回復の足取りから申しまして、多くの歳入を期待することはなかなかむずかしいと思いまするし、経済状況がこういう状況であります場合に、歳入歳出に大きななたをふるうというような時期であるとは考えられませんので、明年も相当巨額公債をお願いしなければならないのではないかという展望は持っておりますけれども、金額がどの程度になりますか、まだ申し上げる自信を持っていないわけでございまして、しばらく時間の余裕を与えていただきたいと思います。  それから、国債の償還計画についてのお尋ねでございます。  この償還計画というのは、松浦さんのおっしゃる意味は、償還財源国債整理基金に毎年積んでいくんだが、そのもくろみはどうかというお尋ねであろうかと思うのでございます。  これは、特例公債は全部発行が終わりました段階で、それから本格的に一般会計の予算から整理基金特別会計予算財源を繰り入れることを考えるわけでございまして、いま、いつ特例公債発行どめになるかまだ見当がつきかねておるわけでございますので、計画らしい計画をいま立てることは、私は非常に至難なことと考えておるわけでございます。  しかしながら、これは異例な公債でございますので、できるだけ早く償還しなければならぬと考えておりまして、十年満期の公債を出すことにして、途中の借りかえは許さない、六十年に全部完済するという決意で当たっておりますことは、予算委員会でも繰り返し御説明申し上げたとおりでございます。  次の問題は、こういうときであるから、防衛費あるいは公共事業費等について、思い切った節減を考えるべきでないかという御指摘でございました。  こういう時期でございますので、私ども、あらゆる費目について節減を考えていただかなければならぬ時期だと考えておりますが、防衛費とか公共事業費だけをねらい撃ちするということは適切ではないと考えております。  それから、税制改革でございますが、これは毎年毎年税制調査会の審議を経まして国会に御審議をいただいておるわけでございます。ことしも、土地譲渡益でございますとか、あるいは利子配当の選択課税率でございますとか、そういった点の改正はお願いをいたしたわけでございまして、毎年毎年、特別措置を中心にいたしまして見直しを続けておるわけでございます。しかしながら、こういう時期でございますので、政府としては、毎年見直しをしてきたものでございますけれども、なお一層彫りの深い検討、見直しをことしはやはり遂げなければならぬと決意をいたしておるわけでございまして、税制調査会に、そういうラインでいま真剣な御討議をお願いしているところでございます。  土地再評価税、富裕税、付加価値税、そういったものを、いま政府は直ちに取り入れる考えは持っておりませんけれども、税制調査会でどのように御検討いただきますか、いま税制調査会にお願いしておりますことは、特別措置の徹底的な洗い直しと、それから、課税負担をどのような率にするのが適切かという点まで御諮問を申し上げておるわけでございます。まだ具体的な税目につきましての御検討はこれから後でございますが、そういった前提になる御検討をいただいた段階におきまして、税目別の御検討をお願いした上で、政府としての考えはお答え申し上げたいと考えております。  最後に、地方の自主税源の問題についての御質問でございました。  地方経済力に凹凸がある今日でございまして、これが余り不均衡にならぬように、そして、このことと中央の税源との間の調整に大きな支障がないように配慮しながら、地方の自主税源につきましては、自治省と相諮りながら真剣な検討を続けてまいるつもりでございまして、以上、御答弁申し上げます。(拍手)     〔国務大臣福田一君登壇
  39. 福田一

    国務大臣(福田一君) 松浦さんにお答え申し上げます。  地方の縁故債を今度は八千億円ばかり募集いたしますので、それが中小企業に影響を与えることがないかというような御質問と思うのでありまするが、確かに担保不適格債でありますからして、なかなかこれの応募が困難であるというような事情が出ましたときには、ただいま大蔵大臣からもお触れになりましたけれども、自治省へ連絡があれば、直ちに大蔵省と連絡をとってそのようなことがないように、すなわち、応募してもらって、地方自治体の行政が運営できるように措置をいたすことにいたしておる次第でございます。  なおまた、福祉行政をやらなければならないということについては、ごもっともなことでございます。これにつきましては、歳入歳出の両面から考えてみなければならないのでございますけれども、歳入の面につきましては、地方税源をどう処理するかということは、ただいま大蔵大臣からお答えがございました。  もう一つ、交付税率を引き上げてはどうかという問題があるのでございますが、交付税率の引き上げは四十一年に一度行われました。そのときには二九・五%を三二%にしたわけでありますけれども、当時は、減税をいたしまして、そうしてその結果、地方税に大きな影響がある、しかもまた、公債を多額に発行いたしまして、政府において相当な収入といいますか財源があったのでございますので、そこで税率の引き上げということが行われたのでございますが、今年度におきましては、御案内のように、国の方も非常な赤字でございまして、税収が二六、七%も減るというようなときでございますから、今回はこれは困難でございます。  そこで、五十一年度にどうするのか、こういうことでございますが、この点につきましては、地方税法第六条を適用するということに相なりますというと、五十一年度はあるいは赤字が出るといたしましても、必ずしもこれを実行するわけにはいかない。特に、今度のような国、地方を通じて非常に財政が苦しいときでございますので、来年の秋にはこの問題を真剣に検討して、五十二年度の税収その他の点をよくにらみ合わせて、われわれとしてはこの問題を考慮いたさなければならないと考えている次第でございます。(拍手
  40. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  41. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十四分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         自 治 大 臣 福田  一君         国 務 大 臣 井出一太郎君         国 務 大 臣 小沢 辰男君         国 務 大 臣 佐々木義武君         国 務 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君      ————◇—————