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1975-11-19 第76回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十九日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 澁谷 直藏君    理事 今井  勇君 理事 中川 一郎君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       伊東 正義君    上田 茂行君       加藤 紘一君    片岡 清一君       金子 岩三君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    佐々木秀世君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       竹内  猛君    馬場  昇君       中川利三郎君    瀬野栄次郎君       稻富 稜人君    小宮 武喜君  出席国務大臣         農 林 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         農林大臣官房長 森  整治君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      今村 宣夫君         農林水産技術会         議事務局長   平松甲子雄君         林野庁長官   松形 祐堯君         水産庁長官   内村 良英君         中小企業庁計画         部長      織田 季明君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         林野庁林政部森         林組合課長   穂積 良行君         建設省都市局街         路課長     渡部與四郎君         日本国有鉄道新         幹線建設局企画         課長      柳田 真司君         日本国有鉄道施         設局踏切課長  八木 純一君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十九日  辞任         補欠選任   粟山 ひで君     加藤 紘一君   諫山  博君     金子 満広君   神田 大作君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     粟山 ひで君   金子 満広君     諫山  博君   小宮 武喜君     神田 大作君     ――――――――――――― 十一月十五日  飼料需給及び価格の安定に関する法律案(角  屋堅次郎君外三名提出衆法第六号)  飼料作物生産振興特別措置法案角屋堅次郎君  外三名提出衆法第七号) 同月十四日  乳価引上げ反対及び二重価格制度の制定に関  する請願田中美智子紹介)(第二一四二  号)  農林漁業団体職員共済組合法改正に関する請  願(瀬野栄次郎紹介)(第二一七五号)  まぐろ類輸入規制等に関する請願瀬野栄次  郎君紹介)(第二一七六号)  全国農村保健研修センター設置助成に関する  請願(林百郎君紹介)(第二二三四号)  超過米全量買上げに関する請願佐野憲治君  紹介)(第二二三五号)  同(古川喜一紹介)(第二二三六号)  同(古川喜一紹介)(第二二七四号)  中国産食肉の輸入禁止解除に関する請願竹内  猛君紹介)(第二二三七号) 同月十七日  農業災害補償制度改善に関する請願湊徹郎  君紹介)(第二三〇七号)  昭和五十年産予約限度超過米政府買入れに関  する請願湊徹郎紹介)(第二三〇八号)  乾繭、絹撚糸絹紡糸絹織物等輸入規制に  関する請願湊徹郎紹介)(第二三〇九号)  同(林百郎君紹介)(第二五三四号)  昭和五十年産米事前売渡申込限度数量増枠  に関する請願(林百郎君紹介)(第二五三五  号)  農林漁業団体職員共済組合法改正に関する請  願(諫山博紹介)(第二五三六号) 同月十八日  乳価引上げ反対及び二重価格制度確立等に  関する請願多田光雄紹介)(第二六二五  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  飼料需給及び価格の安定に関する法律案(角  屋堅次郎君外三名提出衆法第六号)  飼料作物生産振興特別措置法案角屋堅次郎君  外三名提出衆法第七号)  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより会議を開きます。  角屋堅次郎君外三名提出飼料需給及び価格の安定に関する法律案及び飼料作物生産振興特別措置法案の両案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。角屋堅次郎君。     ――――――――――――― 飼料需給及び価格の安定に関する法律案飼料作物生産振興特別措置法案     ―――――――――――――
  3. 角屋堅次郎

    角屋議員 ただいま議題となりました飼料需給及び価格の安定に関する法律案飼料作物生産振興特別措置法案につきまして提案者を代表いたしましてその提案理由並びに主な内容について御説明申し上げます。  御承知のように、わが国飼料需要は、畜産生産拡大に伴い年々増加し、昭和四十九年には濃厚飼料の場合二千百十四万トンにも上っており、約七〇%以上がアメリカを初めとする海外からの輸入によって賄われているのが現状であります。一方、国内産自給飼料生産は増大する飼料需要に即応する積極的な対策がほとんどないまま今日を迎えております。  特に濃厚飼料につきましては、国内での自給対策に力を入れず、いたずらに海外依存度を深め、今日世界の飼料貿易量の約一九%をわが国が買いあさっており、世界的な食糧需給の逼迫の中で絶えず海外市況変動の影響を受けているのであります。  また、畜産経営にとって最も重要視されなければならない粗飼料生産も、優良草地の荒廃、草地造成牧草更新、草の品種改良のおくれから、その単位当たりの収量は先進諸外国に比較して著しく低いものであり、これが改善対策飼料用穀物等国内生産対策の強化とともに、わが国畜産振興のため緊急の課題であります。同時に輸入飼料等を含め、現行流通機構改善を加え、えさ高畜産物価格安現状を打開すべきことは当然であります。  政府は口では攻めの農政、食糧自給をうたっておりますが、ただいま申し上げましたように、濃厚飼料の七〇%以上の外国依存、粗飼料のきわめて貧弱な生産体制の中で、さきに政府は農産物の需要生産長期見通し、また総合食糧政策の展開の中で述べていることは、端的に言えば、わずかの奨励金措置で済まそうというもので、根本的な畜産振興対策にはほど遠く、いまこそ国内畜産飼料自給向上を柱に、輸入飼料流通管理価格安定を含めて思い切った対策を確立しなければなりません。  以上申し上げました国内産飼料現状、また輸入飼料流通管理状況から飼料需要価格安定と国内産飼料作物振興のために飼料需給安定法を抜本的に改正するとともに、新たに飼料作物生産振興特別措置法をもって国内産飼料自給向上を図らなければならないところであります。  以下、この飼料需給及び価格の安定に関する法律案飼料作物生産振興特別措置法案の主な内容について一括して御説明申し上げます。  まず、飼料需給及び価格の安定に関する法律案でありますが、第一に、目的にもうたっておりますように政府による飼料用穀物等買い入れ、保管、売り渡し飼料標準販売価格設定等について必要な事項を定めることにより、飼料需給及び価格の安定を従来以上に強化し、畜産の健全な発展を図ろうとするものであります。これがためまず農林大臣飼料需給計画を定め、民主化された飼料審議会意見を聞き決定するようにしたことであります。この場合、飼料需給計画に定める事項需要数量国内生産数量輸入数量政府買い入れ売り渡し数量備蓄数量等、それぞれ見込み数量都道府県における飼料需要見通しを参酌して定め中央、地方を通ずる計画性を持たせたことであります。  そして、この計画の中には配合飼料混合飼料への原料売り渡しだけでなく、農協等単体をもって売り渡す方途も開いたわけであります。  第二に、買い入れ売り渡しでありますが、国内産飼料用穀類食管法に基づき、麦類買い入れるほか国内産トウモロコシ等について生産費及び所得補償方式によって買い入れることといたしております。また輸入飼料について麦類を除く、トウモロコシ等については飼料需給計画に基づいて農林大臣が許可し政府に売り渡すものとしており、この場合、標準的な経費、適正な利潤を政令で定めることにいたしました。  また、売り渡しについては飼料の原価にかかわらず、畜産業経営安定を旨として定める価格で売り渡すが、この場合、売り渡し政府管理飼料配合単体を問わず品目、数量価格等農林省令によって買受人別に公表しなければならないものとすると同時に、政令によって飼料販売業者養畜を行う者に売る場合には標準価格を定めることとしました。しかし、この標準価格が守られない場合には農林大臣が勧告、これに従わないときは公表することといたしております。  第三に、養畜を行う者及び飼料用作物生産者を代表する者十人以内、飼料製造業者加工業者輸入業者販売業者を代表する者十人以内、学識経験者五人以内、以上二十五人以内をもって飼料審議会を構成し、農林大臣の諮問に応じて飼料需給及び価格の安定に関する重要事項、さらに飼料作物生産振興特別措置法によりその権限に属された事項について審議し、建議することができるようにしたことであります。  以上が飼料需給及び価格の安定に関する法律案の概要であります。  次いで飼料作物生産振興特別措置法案でありますが、第一に、この法案対象となります飼料作物は第二条の定義に示す飼料作物対象とし、十年間の時限立法によって生産振興を図ろうとするものであります。飼料作物生産振興計画はまず農林大臣飼料審議会に諮って飼料作物生産振興基本方針を定めこれに即して毎年度、種類ごと作付面積生産数量等内容とする国の生産振興計画を定めることにしております。また都道府県市町村段階ではそれぞれ農業団体関係団体意見を聞いて都道府県並びに市町村生産振興計画を定めることにしております。  第二に、この計画に基づき、飼料作物生産する者は自給飼料販売飼料別に農地の位置面積を定めて市町村長申請、認定、検認を受けなければならないことにしております。この場合、販売目的として生産する場合には申請時に契約書を添えなければ認定されないようにしております。  第三に、このようにして飼料作物生産振興計画対象になったものについては飼料用穀物については数量牧草等については、面積に応じて生産奨励金を交付することにしておりますが、飼料用穀物については、飼料需給及び価格の安定に関する法律案政府買い入れ価格標準売り渡し価格を参酌して農林大臣が定めることになっております。また牧草等については、大麦の政府買い入れ価格等を参酌するとともに、当該牧草等生産事情需給事情等を参酌して農林大臣が定めることにしております。  第四は、牧草更新農業用機械の共同または集団利用加工施設等について、市町村飼料生産振興計画に基づき、経費の三分の二を下回らない補助を国がすることを義務づけているのであります。  以上が飼料需給及び価格の安定に関する法律案飼料作物生産振興特別措置法案提案理由と主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上速やかに可決あらんことをお願いいたします。
  4. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。      ――――◇―――――
  5. 澁谷直藏

    澁谷委員長 速記をとめてください。
  6. 澁谷直藏

    澁谷委員長 速記を起こして。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。芳賀貢君。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 この際、国有林に関する基本的な問題について、農林大臣質問をいたします。  これは大きく分けますと、一つ国有林経営並びに組織基本に関する問題と、もう一つ国有林野事業がいわゆる国の、公共企業体事業として三公社現業一つに数えられておるわけでありまして、この国有林野事業に従事する、いわゆる公共企業体事業に就業する労働者に対する憲法二十八条に保障された勤労者団結権の柱であるストライキ権付与の問題について、大臣から率直な方針を述べていただきたいと思います。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 争議権の問題につきましては、現在、御存じのように、関係閣僚協議会専門委員懇談会におきまして検討が進められておる段階でございます。したがって、その御意見をいただいてから関係閣僚協議会としての結論を出すことになっておるわけでありまして、現段階におきまして意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに考えるわけであります。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまのスト権付与の問題でありますが、すでに今国会におきましても、十月二十一日の衆議院予算委員会におきましても、社会党の堀委員質問に対しまして、三公社当事者である総裁が、それぞれストライキ権付与の問題について、一定制限条件を付してではありますけれどもスト権を付与することが好ましいという発言をいたしまして、これに対して三木総理大臣も、三公社当事者である総裁発言を確認したという経過があるわけです。したがって、三公社と五現業の場合は、同じ公共企業体でありましても若干組織上の差異はありますけれども、とにかく国の公共企業体の中の国有林事業に対して、まず当事者としての林野庁長官立場で、第一には所管の農林大臣に対してスト権付与の問題について正式な意見を具申しておるかどうか、あるいはまた全林野労働組合との間において、当事者である林野庁長官として、このスト権付与の問題に外して正気な見解等の表明をしてれるかどうか、その点はいかがですか。
  10. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣がお答え申し上げましたように、現在専門懇におきましてスト権問題につきましては慎重な御検討をいただいておるわけでございまして、まだ大臣の方に具体的にその問題につきまして申し上げている段階ではございません。ただ、先生もう十分御承知いただいておりますとおりに、国有林というものが約八百万ヘクタールの土地を所有し、かつ管理いたしておりますし、国土保全とか、あるいは水資源の問題とか、木材生産という場だけでございませんで、公益的機能というような面も大変大事な土地管理いたしておるというような実情もございまして、現在それらを含めまして慎重にこちらも検討いたしておりますが、同時に、先ほど申し上げましたように、専門懇におきましても、それらをもとにして鋭意御検討いただいておるものと私ども思っているわけでございます。  なお、組合に対しましても、すでに二回ほどお会いいたしておりますが、そのような趣旨だけを申し上げているところでございます。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 私は別に公共企業体関係閣僚協議会専門懇についての問題を聞いておるわけじゃないわけです。もうすでに三公社現業のうちの三公社当事者である三名の総裁が、衆議院予算委員会において、スト権付与の問題については、一定条件を付してではありますけれども公共企業体経営上から見ても付与することが望ましいという正式な意見国会を通じて明らかにしておるわけでありますし、その発言三木内閣総理大臣公式発言として認めておるわけです。そうなれば、専門懇との関係いかんにかかわらず、国会に対して必要な場合には、国有林野事業当事者能力を一応付与されておる林野庁長官として何らかの見解を述べるのは当然ではないかと思うのです。
  12. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  私ども、ただいまお答え申し上げましたように、専門懇で御検討いただいておるわけでございますけれども、しかるべき時期には大臣に対しまして私ども意見として申し上げる予定にいたしておるわけでございます。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、専門懇はすでに四名の小委員を上げて閣僚協に対して意見具申の作業に入っておるわけですね。そうなると、専門懇に対しては、林野庁長官としてはいままでも意見を述べる機会がなかったということになるし、専門懇に関する限りにおいては、国有林事業当事者としての意見を述べる機会を放棄したということになるのですが、そう考えてもいいですか。
  14. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  専門懇が発足いたしましてから私どもお聞きしているところ大体三十回ぐらい開かれておるわけでございますが、その中で本年一月十六日でございますけれども国有林野事業につきまして経営状況あるいは当事者能力の問題あるいは経営形態の問題、労使関係問題等につきましての現状あるいは問題点につきまして、それぞれ御説明申し上げたのであります。特に現在の事業実態とか置かれている立場とか、それぞれ詳細に御説明申し上げておるのでございまして、その中で各三公社現業とも同じでございますけれどもスト権の有無についてのこちらとしての意見を申し上げたことはございません。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、政府部内の問題にもなるわけですが、手続上の問題としては、最も適当な時期に林野庁長官として主管大臣である農林大臣にこのスト権付与の問題については意見を具申するということになるわけですか。
  16. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  そのように私ども心得ておるつもりでございます。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 相当長期にわたる問題について農林大臣林野庁長官関係ということになれば、そう他人行儀に、いままで林野行政を進める中においても、一番大事なスト権問題とか国有林経営基本に度するような問題について、何ら内部的な接触とか話し合いがないというのはおかしいじゃないですか。
  18. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  この問題に限定するということだけでなくて、常日ごろ国有林事業実態あるいはその使命達成問題等いろいろ幅の広い面につきまして、大臣には十分御説明申し上げているわけでございます。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 それは結局林野庁長官として、このスト権に関する問題については、いまの林野庁長官に与えられた当事者能力の範囲内においては言及するだけの資格または能力がないという判断で、努めて避けているようにも見えるわけですが、その点はどうですか。
  20. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  避けているというわけでもございませんで、先ほどちょっと申し上げましたように、国有林の置かれている非常な大きな使命とか、あるいはそれを達成するための事業の実行とか、あるいはそれの管理体制とか、いろいろ問題がございますし、また、特に林野庁といたしまして問題になりますのは、他の企業と違いまして、植林、つまり植物を扱う、生き物を扱うというようなこと等の特徴がございますので、その辺を含めて私ども慎重に検討いたしておるわけでございます。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 長官の言われた経営論の上に立った場合は、これは当然のただいまの発言ですが、スト権問題に関していままで全然主管農林大臣に対して、内部的であっても何ら触れていない、これは非常に奇異に感ずる点なんですよ。そうなれば、長官自身として、現在の長官に与えられておる当事者能力をもってしてはスト権問題については言及する能力がないという自己判断の上に立って、これに触れてないのか、あるいは避けておるのかということにしかならぬわけですよ。その辺を明確にしてもらわぬといけないわけですが、どうですか。
  22. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  スト権問題ということは、やはり労使正常化という問題につきましても大変重要な意味を持っているわけでございます。そういうことと同時に、経営という面も幅広い検討を要する問題でございますので、それらを含めて慎重に検討している、こういう段階でございます。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 いま論争されておるスト権問題というのは、憲法二十八条における勤労者団結権という保障条項によってストライキ権というものが保障されておることは言うまでもないわけです。ただ、公共企業体の場合は、公労法の第十七条第一項によってストライキを禁止しておるわけだから、現行法の上に立った場合にはこれはできないという解釈は成り立つわけだが、結局、ストライキ権を付与すべきであるということについての政府の積極的な検討と、やがて二十五日までに結論を出すということになればあと数日もないわけですから、それに対して対外的に林野庁長官として、重大な問題であるから軽々に発言はできないとしても、主管大臣である農林大臣に対して、一言もいままで内部的にも意見を述べてないというのはおかしいじゃないですか。
  24. 松形祐堯

    松形政府委員 このスト権問題につきましては、ただいま先生御指摘のとおり、大変重要な問題でございますので、いろいろ関係するところもございますし、私ども十分慎重な検討をしながら、その間の経緯等につきましては、よく大臣に御連絡申し上げているわけでございます。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ大臣にお尋ねしますが、この問題は政府責任において公共企業体等閣僚協議会において結論を出すということに当然なっておると思いますが、そうなると、いまの林野庁長官の答弁を聞く限り、結局、国有林野事業に関するいわゆる全林野労働組合に対するスト権付与の問題ということについては、やはり主管大臣である安倍農林大臣として的確な判断に基づいた方針閣僚協あるいは政府部内において明確にするということになると思いますが、その点はいかがですか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから林野庁長官がしばしば御答弁申し上げておりますように、農林大臣林野庁長官というのは、芳賀さんがおっしゃるように他人行儀な仲じゃないわけですから、私たちは十分、現在までの林野庁長官専門懇等で述べた意見とか、あるいは国有林が直面をしておるところのいろいろな事態、問題点については、詳細にわたって私に対して報告があっておるわけでございます。  こういう報告を踏まえて、責任者である私が最終的に態度を明らかにしなければならぬわけでありますが、いまおっしゃるように、専門懇というものの報告がまだ出ていない。そして、政府全体のいまの統一的な見解としては、結局、閣僚協において結論を出す、したがって、その閣僚協までの間は、意見をそれぞれの主管大臣が明らかにするということは差し控える、閣僚協において真剣に論議をしてその結論を出していくということでございますので、先ほど答弁いたしましたように、私の意見は差し控えておるわけでございますが、しかし、これは林野庁農林省という関係政府一体の中にあるわけでございますし、そういう中にあって、農林大臣というのが責任者でございますし、その立場閣僚協に入っていくわけでございますので、十分今後とも林野庁長官意見を刻一刻聴取しながら、将来にわたって間違いのない方向で責任を持って私も処理したい、こういうふうに考えておるわけであります。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 ここで大臣に明確にしていただきたいのは、いわゆる公共企業体閣僚協専門懇ということになっておるわけですね。ですから、閣僚協議会が、政府部内において意見を取りまとめるための参考意見を徴するために、専門懇というものが設置されたと思うのですね。したがって、法律制度上は何ら専門懇というものは根拠を持ってないものであるということは、これは間違いないと思うのですが、いかがですか。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは法律的な根拠ということになりますと、私もその間の事情ははっきり承知しておりませんが、法律的には根拠はないのじゃないかと思うわけでございますが、中立な立場にあるところの学識経験者を中心にして、公正な意見を各方面から聞きながら答申を閣僚協に対してする、そういう立場にあるのじゃないかというふうに理解しております。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 たとえば閣僚協にしても、現政府においてスト権付与の問題について、政府責任において方針を出すという場合の作業機関として、公共企業体関係する閣僚の協議会というものが設けられておるので、これも政府機関の正式行為ということにはならぬと思うのです。またその私的機関というような専門懇を設けたというのは、これは閣僚協において勝手に設けられたわけですから、とかくの論議は避けますが、結局これは公の、法制上何ら根拠のない専門懇であるということになれば、現政府責任においてスト権付与の問題について結論を出すということになれば、やはり公共企業体のそれぞれの当事者能力を持った責任者責任のある意見を具申するとか、それを十分に受けとめて主管大臣が適正な判断をする、同時に、国有林野事業というものは単に当事者だけの責任において万全の経営ができるわけじゃないわけでありまして、国有林の場合には六万の国有林事業に従事する職員あるいは基幹労働者がおるわけでありますからして、法制上組織された全林野労働組合からも、政府としての意見を取りまとめる以前に、やはり当事者である林野庁長官と同様に意見を徴する、求めるということは、これは当然の手続であるというふうに考えますが、その点は農林大臣としていつごろそういう意見聴取をされるつもりでおるか、その予定が決まっておれば述べてもらいたいと思います。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは非常に重要な問題でありますし、やはり各方面の意見はこれを聞きまして、慎重に検討の上、閣僚協に臨まなければならぬわけでございますので、私としてもいろいろと御意見等も聞いておるわけでございますが、特に林野庁長官を通じてこれまでの労働組合等の意見も承ってはおります。しかし、いま直接承ってはいないわけでございますので、これは組合の方からの申し出があれば、私は直ちにお目にかかってそして意見を聞くことはもちろんやぶさかでないわけでございます。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 これは非常に大事な点ですが、それではいまの大臣のお考えは、林野庁長官から当事者としての意見を徴するのは当然のことですが、それと同時に全林野労働組合に対しては、大臣の方から意見を聞くという働きかけでなくて、全林野労働組合の方からスト権付与の問題について主管農林大臣に対して正式に意見を述べたいという申し出があった場合には、それを受け入れて十分な意見を聴取する、それらを参考にして、政府部内において農林大臣として国有林事業に従事する労働者に対するスト権付与の問題についての責任ある見解を明らかにするというように理解していいのですか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私もいままで林野庁長官を通じて、林野庁長官が先ほど申し上げましたように、これまで全林野労働組合とは交渉を持っておりますから、その交渉の経過あるいは全林野労働組合意見というのは私も聞いておるわけでございます。林野庁長官を通じての意見はこれはもう組合意見であるということで私もよく承知をいたしておるわけでございますが、私が閣僚協に出ていくわけでございますし、そういう面で全林野労働組合としても私に会いたいという前からの御要請もあったわけでございまして、これまで時間的になかなかセットができなかったということで、きょうあすじゃないかと思いますが、お目にかかる予定にもなっておるわけであります。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 それではスト権の問題については現段階までの事情大臣及び長官から説明を受けましたので、次に、国有林経営に関する基本的な問題について明らかにしてもらいたいと思うわけであります。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農林省といたしましては、すでに本年一月林野庁長官から専門委員懇談会に対し国有林野事業使命を果たす上において現行の特別会計方式を基本にその欠点を是正する方向によることが適当である旨を述べているところでございます。  現在国有林経営形態につきましては種々の意見が伝えられておりますが、やはり第一には、国有林野は国土面積の二割に及ぶ広大な面積を占め、また国土の背骨とも言うべき脊梁山脈地帯や水源地帯の重要な地域に位置しておること、第二番目に、木材供給という経済的機能にとどまらず、国民共通の財産である広大な土地及び森林についての適正な管理国土保全、水源涵養等の公益的機能の発揮という高度の公共的使命を担っておること、これらのことがわが国の社会、経済に果たす役割りあるいは使命といった面は、いま申し上げたような点から見まして、非常に重要であると思いますし、そうした点を十分認識をして、これに対処していかなければならないというのが私の基本的な考え方でございます。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの農林大臣の御説明によって、結論的に言えば、国有林野事業経営については、現状国有林野事業特別会計方式を基礎にした現行経営形態内容をさらに充実しながら維持発展させていくということに変わりはないわけですね。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど私が御答弁申し上げましたような基本的な方向で対処したいということでございます。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま農林大臣から昭和五十年の一月に国有林野事業についての農林省としての基本的な方針を固めて、そうして必要な関係方面等についてもその方針内容についてこれを周知徹底させることに努めたというお話がございましたが、これはまことに妥当な措置であるというふうに私も考えておるわけでございます。  どうしてこういう問題についてこの機会に明らかにしてもらうのかといいますと、最近一部に国有林事業の民営移管というような説も流れておることは、これはわれわれとしても承知しておる点でありますが、やはりこの際大臣の言われたような主体的な方針というものをさらに一層明確にして進む必要があると思うわけです。特に最近は、国有林事業に与えられた使命というものは、ますます公益的な事業の拡大という点について国民の要望が高まっておるわけでありますから、そういう面については、やはり国の事業としてこれを行う以外に他に適当な道はないわけですから、この点については、政府部内においてもこの大臣の述べられた方針というものを十分確認して、確固たる国有林野事業の運営というものを一顧強力に進める必要があると思うのです。特に、せっかくの機会ですから、いまの大臣方針については私ども十分これを了承できたわけでありますし、その方針で進んでもらいたいわけですが、林野庁長官として、大臣の述べられた方針というものをさらに国会を通じて国民に理解してもらうということになれば、もう少し具体的に、現状国有林野事業特別会計方式に基づいてあくまでも国の責任において国有林事業というものは全面的にこれを実施していくというような点について、大まかに言えば三項目ぐらいに問題を区分して、この際林野庁長官として発言といいますか説明、それはできるでしょう、これはスト権と違うわけだから。
  38. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  いま大臣からお答えいただきましたような一つの方向というようなものがあるわけでございます。ただ、先生いま御指摘ございましたように、民営論とか、また公社にしたらどうだとか、あるいは分離したらどうだとか、いろいろなことが出ております。それぞれいろいろな理屈があるわけでございますが、私ども、先ほどもちょっと申し上げましたように、国土の二割、森林の三割、しかも非常に貴重な森林としての機能を果たしているというような山を管理いたしておりますと同時に、現在やかましい土地問題、約八百万ヘクタール弱の国有林土地問題ということも大事でございますし、さらにそれらの管理の面につきましてもきわめて重要な意義があるわけでございます。そのようなこと等を考えました場合に、それぞれ現在民営論あるいは土地と立木を分けたらどうだとか、あるいは公社論とか、いろいろそれらございますけれども国有林の置かれております非常に重要な立場というものを考えまして、私どもはそれぞれの検討をいたしておるわけでございます。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 せっかくの大臣の確固たる方針長官が薄めるような発言じゃないですか。むしろ、大臣基本的な方針を十分に敷衍するような発言でないと、何か大臣発言長官の方が薄めるような印象を受けるのですが、この点はどうなんですか。
  40. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  薄めるとかそういうことではございませんで、このような国有林野の置かれている重要な使命なりあるいはその立場というようなものを私どもは踏まえて、その中で出ているいろいろな問題というものをそれぞれ解明しているということでございまして、大臣お答えのような趣旨というものは十分理解いたしているつもりでございます。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 私はそういうことを聞いているのじゃないのですよ。大臣の答弁はそれで十分了承できるわけですが、しかし、かりそめにも国有林野事業責任を持って担当しておる林野庁長官として、大臣の確固たる方針よりも抽象的な説明しかできないというのはおかしいじゃないですか。
  42. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  意を尽くせなかったことをお断り申し上げますが、専門懇で私、一月に申し上げましたことは、たとえば国有林野事業についての先ほど来申し上げております重要性につきまして、民営とすることは適当でないとか、あるいは土地と立木を分けて管理することについてはこのような問題があって問題がある、さらに、企業的な能率性の追求をさらに重視するような公社形態については、このような問題があって、私どもとしては、従来の林政審における答申のように、現在の特別会計方式の欠点を是正する方向でいくことが望ましいということを申し上げたのでありますが、現在もそのように思っておるわけでございます。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、いま長官の言われた、農林省として国有林野事業についての経営基本に関する方針というものを各方面に徹底させておるわけでしょう。その大きな理由として、一つは、国有林野事業は公共性の強い事業であるので、これを民営に移すことは適当でない。それから第二の点については、先ほど大臣も述べられたとおり、国有林野の面積は国土の二〇%を占めており、また、わが国の全森林面積の三〇%を占めておるわけであるし、特に土地と立木を切り離すということは全くできがたいという特徴を持っておるわけだから、したがって、土地管理を国で行い、森林経営を他の公社事業団等に行わさせることは、林業経営の一体性及び円滑な事業実施を図る上から適当でないというのがこの第二の理由でしょう。それから第三の理由としては、公益的機能重視の事業運営を指向するこれからの国有林野事業経営組織としては企業的能率性の追求をより重視する公社方式等を採用することは適当でない。こういう明らかな三点の理由を挙げて、それにまた具体的な説明を付しておるわけでありますし、さらに世界的な林業経営の状態がどうなっているかということについても、これは詳細に事例を挙げて敷衍をしておるわけですから、こういう点については、せっかくの当委員会等においては、むしろ質問に答えるということでなくて、機会を得て、進んで農林省として、あるいは林野庁として国有林の現在及び百年の計である将来の経営についてはこのような確固たる方針で進むということを明確にすべき時期であるというふうに考えるわけです。いまのような長官の答弁では、なかなかスト権問題までに触れることはできないですよ。そうじゃないですか。大臣がはっきりしているわけでだから、それに自信を持って、委員会においても私のいま指摘したような問題については各委員の皆さんにもわかるように、林野庁としてはこういう方針で臨みますということを述べたらどうですか。
  44. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  先ほど特別会計を基本にいたしましてその欠点を是正しながらと申し上げた内容は、先生御指摘の三つぐらいに要約されるというふうに私ども理解いたしておりまして、そのように各方面に御理解を深めるべく私ども努力いたしておるところでございます。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、去る十一月の十三日に全林野労働組合林野庁長官の間において、スト権問題並びに国有林野事業基本的な経営形態の問題について話し合いをされた結果、長官発言というものが集約されて確認されておるわけですが、この点について、別に差し支えない問題であると思うので、長官から説明を願いたいと思います。
  46. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  全林野と私の間でいろいろお話し合いをしたわけでございますが、その要約を申し上げますと、「スト権問題については、何とも申し上げる段階にないが、目下慎重に検討しており、いずれ大臣にも意見を具申する考えである。なお、経営形態問題については、すでに述べたとおり、現行の特別会計方式を基本にその欠点を是正する方向によることが適当であると考えており、厳しい情勢にあるが、今後とも、この立場関係方面への理解を得るべく努力して参りたい。」このような集約になっておるわけでございます。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 最後に大臣にお尋ねしますが、先ほど大臣が言われたとおり、特に国有林野事業改善経営の問題については、昭和四十七年十二月二十二日に、これは当時田中角榮内閣総理大臣が林業基本法の規定に基づいて林政審議会会長の山添利作会長に対して諮問を行っておるわけですね。それは、「国有林野事業の全般にわたる改善のあり方について、林業基本法第二十三条第一項の規定に基づき、貴会の意見を求める。」四十七年十二月二十二日に林政審の会長に諮問を発して、林政審議会は即日総会を開いて、その答申は、同じく四十七年の十二月二十二日に林政審総会の議を経て田中内閣総理大臣に答申を行っておるわけです。同じ日に諮問が出て即日答申というのは異例の答申ですが、経過的には、その前に林業基本法に基づいて農林大臣から林政審に対して、国有林野部会に対して同様の諮問を出しておるという経過があったので、結局同じ日に諮問があって答申が出たということになるわけですが、この中でも、大臣が先ほど触れられたとおり、公社公団方式等の民営論というものはとるべきでないということが林政審答申の中においても明らかにされておるわけです。この林政審というのは、もう明らかに法制上の根拠に基づいた総理府の付属機関として内閣総理大臣の諮問機関であるし、また農林大臣もこの林政審に対して諮問することができるということになっておるので、この点から見ても、国有林基本的な経営並びに組織上の問題は、政府が林政審に諮問を発して得た答申においても明らかにされておるわけだし、それをもって農林省においても、農林大臣におかれても、経営形態の問題については、これを不動なものとして今後ますます充実発展させるというふうに私は受けとめておるわけでございますが、その点はいかがでしょうか。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま御指摘がございました林政審の答申は、これを尊重しなければならないわけであります。私が先ほどから御答弁申し上げましたその背景も、林政審の答申を踏まえての私の基本的な考え方の開陳でございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員次 にお尋ねしておきたいのは、政府としては今月の二十五日までに、特に公共企業体関係スト権付与の問題については方針を明らかにするという予定になっておりますが、その作業は順調にいっているわけですか。これは農林大臣に聞いているのです。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日程等につきましてはまだ何も連絡を受けておらないわけでございますが、専門懇結論ももう非常に煮詰まった段階に来ておるということでございますので、ごく近いうちに専門懇からの意見具申が行われるものというふうに判断しております。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 なおこの機会に、いわゆる公共企業体閣僚協関係大臣はどういう顔ぶれですか伺っておきたい。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この閣僚協の構成というのは、これは閣議決定によって行われておるわけでありますが、この構成メンバーは、大蔵大臣農林大臣、通商産業大臣、運輸大臣、郵政大臣、労働大臣、自治大臣、内閣官房長官、総理府総務長官、行政管理長官、経済企画庁長官でございます。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの閣僚協の顔ぶれを聞きますと、その中で特に安倍農林大臣が非常に少壮気鋭の大臣であるし、それからまた同じ公共企業体の中においても、国有林野事業経営ということになればこれは国家百年の計を基礎にしなければならぬ大事な事業でありますし、先ほども発言がありましたとおり、林業あるいは森林政策というものは毎日毎日成長発展するいわゆる生物を相手にした事業ということになるわけでありますからして、一朝事を誤るともう取り返しのつかない、回復できがたい事態が起きるということは当然なことでありますので、特に百年の計を基礎にした確固たる国有林野の経営基本を確立すると同時に、その大事な国民の山である国有林野事業に従事する労働者の権利関係についても、特に十年来の懸案であった国有林労働者の中の常用作業員並びに定時作業員を対象にしての常勤制付与の問題について、安倍農林大臣の時代になりましてから、ようやくことしの三月、昭和五十二年の四月を目途にして常勤制問題の実施に入る、その準備作業に入るということを大臣からこれは明確にされておるので、われわれとしても非常にこれに期待を持って、そのことの実現をむしろ促進する立場をとっておるわけでございます。したがって、常勤制問題にしても、やはり国が経営する国有林野事業の発展の原動力になるわけでありますし、そういう点についても、困難なスト権問題をいま抱えておる時期でありますが、国民の期待あるいは国有林で働いておる六万の労働者の諸君の期待を十分に満たすように、農林大臣が明らかにされたこの常勤制問題についての方針というものは、必ず五十二年の初頭において実行できるように期待しておるわけでありますが、この点についてもこの機会に明確にしておいてもらいたいと思います。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいまの常勤制の問題につきましては、御存じのように、関係各省庁との了解もあるわけでございますので、この了解に基づいて現在検討を進めておるところでございます。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 以上で本日の質問を終わります。
  56. 澁谷直藏

    澁谷委員長 馬場昇君。
  57. 馬場昇

    ○馬場委員 食糧自給基本的な考え方と具体的な施策について質問を通告しておりましたが、時間が非常に制限されておりますので、当面の具体的な二、三の問題から質問をいたしたいと思います。  最近の農政を見ておりますと、世界的な食糧危機といわれる現在でありますけれども、日本人の主食でありますところの非常に大切な米につきまして、何かこう厄介者扱いにしておるんじゃないかというような感じを受けますし、さらには、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、米退治というような感じもなしとしないような感じを私は受けておるわけでございます。そこで、そういった問題を中心に一、二質問をいたしたいのですが、昭和四十五年に米政策を百八十度転換いたしまして、増産から休耕減反政策をとってこられたわけでございますが、私はこの政策というのは、農民の命でありますところの心の稲を枯らしてしまった、農民の生産意欲も非常に減退した、大悪政であったと私は思うのです。そういうことにつきまして、この減反政策についての大臣のお考えをまず聞いておきたいと思います。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御承知のように昭和四十二年ごろを契機といたしまして大変米が過剰の段階に入って、在庫等も数百万トンに及ぶというふうな事態が出た、その反面、消費の方は非常に減退を続けておる、こういう中にあって、やはり国民の主食であるところの米というものについて、需給の均衡を保ちながら、なおかつ主食である米に対する施策に誤りを犯さないように、そういうふうな基本的な考え方から生産調整が進められてきたものであるというふうに理解をしておるわけでございますが、私は、農村等におけるそうしたいまお話しのような御批判が出ておることは、これは率直に認めておるわけでございますが、この政策は、いろいろの批判はありましたけれどもその後軌道に乗ってまいりまして、そして米について全体的には需給の均衡がとれてまいってきておる。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕 こういうことはそれだけの、ああした事態を踏まえていわば緊急避難的なものであったと思いますが、それだけの効果はあったものである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  59. 馬場昇

    ○馬場委員 議論は避けまして次に進みますが、食糧自給率の向上の視点というものは、やはり一つの農家がみずから自給農家として成り立っていく、そして一つの地域がまたその地域農業として確立される。こういうぐあいにして、それを積み上げて国全体の自給率を高めていく、こういうような方向をとるべきだ。基本的に農家が自分で自給できる、そこを基盤に置くべきだと考えるのですが、どうですか。
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農政の立場からいけば国全体の食糧をいかにして確保するか、これの最大の課題というのは自給力を推進していくということではないかと思うわけでございまして、この農政の最大の課題たる自給力体制を確立するということに重点を置いて今日までも農政は進められてきたし、今後とも進めなければならないというのが私の基本的な考え方であります。
  61. 馬場昇

    ○馬場委員 具体的に入っていきますけれども、米の青刈り問題について、私の県の横島干拓というところがございますけれども、そこで青刈りをいたしましたが、これを中心に質問を申し上げたいと思います。  九月の五日に刈ったのですけれども、そのときの地元の新聞にこう書いてあります。「色づき始めた稲穂の波がブルドーザーのうなりとともに消し飛んだ、全身の力が抜けたように座り込む農民たちの悲痛な顔」こういう見出しでございます。収穫目前の青刈り状態を住民はこんなふうに見ておったと伝えておるわけでございます。このことについて大臣はどうお考えですか。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まあこの青刈りが行われざるを得なかったという背景には、私がいまここで申し上げるまでもなく米が過剰基調であるということの前提に立った開田抑制措置が進められてまいったわけでございまして、大多数の農家の方々も、この開田抑制策に協力をしていただいてきたわけでございますが、一部の農家の皆さんがこの抑制施策の中にあってあえて米をつくられた、これはある意味においては契約違反だとも言えるわけでございますので、そうした点で青刈り等を行っていただかざるを得なくなったわけでございます。  しかし、私は率直に申し上げますと、やはり青刈りをしなければならない、そしてこれが社会的に非常に大きな問題となって喧伝をされた、そして青刈りをなぜしなければならなかったかという背景を考える前に、青刈りということの一般の農民に与える感じというものは決していいものではないわけでありまして、いまお話しのように、私も各地を旅行等しておりますが、農政不信という声にもつながっていっていることは事実だと思います。ですから、そういう点については、今後の農政も、指導等の面について十分検討をするところは検討をし、反省をするところは反省をして、ああした青刈りというふうな事態にならないようにもっと早目に指導をする、あるいは協力を求めるという措置等も今後考えていかなければならない、こういうように思うわけです。
  63. 馬場昇

    ○馬場委員 あと十日もすれば刈り入れられるというものをブルドーザーでつぶしてしまう、こういうようなことはあってはならない、こういうことのないような行政をしなければならない、そういうような意味にとりましたので了解いたしますが、具体的な、事務的なことをちょっとお聞きいたしますけれども、この熊本県の横島干拓というものの干拓工事を始めた目的は何でございましたか。これは局長でも結構です。
  64. 岡安誠

    ○岡安政府委員 この横島干拓は着工が非常に古くて終戦直後でございましたので、当時はやはり当然干拓をいたしまして水稲をつくるということで着工し、工事を進めてきたわけでございます。ところが、最近のようなこういう事情になりましたので、干陸後の土地配分に当たりましては全面的に開畑に切りかえるということで、営農計画等も、水稲を含まない、ほかの作物でやるということでもって指導いたしておるわけでございます。
  65. 馬場昇

    ○馬場委員 最初やはり米をつくるという目的で干拓工事を始めたということでございますが、現在は畑で利用しておるわけでございますけれども、畑としての工事というものは完了しておるのですか、どうですか。干拓地は畑作専業は困難であろうと私は思うのですけれども、その点についてのお考えをお伺いしたい。
  66. 岡安誠

    ○岡安政府委員 この地区の干陸はすでに済んでおりますけれども、地区内の圃場整備事業、これはまだ続行中でございます。予定といたしましては五十一年度完了ということにいたしておりますけれども、まだ途中でございます。そこで私どもといたしましては、圃場整備の段階におきまして十分畑作経営ができるように、そういう配慮をいたしてやっていきたいというふうに思っております。まだ圃場整備は完了しておりませんけれども、すでに入植者がおりまして、いろいろ作付をしております。その過程におきまして、工事等につきまして手直し等が必要であるということであるならば、私どもとしましては、今後の営農が円滑にいくような方向で工事も選択しなければならないというふうに思っておりまして、現在、県と地元ともいろいろ相談をいたしまして、今年度並びに来年度の事業につきましては、さらに追加工事を要するものにつきましては追加工事をいたしまして、畑作営農がりっぱにいくように配慮いたしたいというふうに考えております。
  67. 馬場昇

    ○馬場委員 いまの話によりますと、現在畑としては未完成なものだ、こういうぐあいに受け取ったわけでございます。未完成なところに入植して非常に苦しい農業経営をやっている、こういう現在の状態であるわけでございますが、さらに具体的にお聞きしますと、入植農家の経済状況といいますか、借金をどのくらいやっているのかという一戸当たりのそういう調査がございますか。それからまた、今度は青刈りをいたしまして、これで一戸当たりどのくらいの損害をこうむったか、こういう調査がございますか。
  68. 岡安誠

    ○岡安政府委員 現在入植農家の借金の状況というのは、私ども手元に資料がございませんのでちょっとわかりませんが、今回水稲を作付いたしましたのは三十二ヘクタールでございます。これを青刈りしたわけでございますが、この三十二ヘクタールがまるまる米の収穫が行われた場合にどのくらいの収量があったであろうかということは想像にしかすぎませんけれども、全国平均の十アール当たり四百七十九キロを掛けますと、大体百五十三トンくらいの米が生産されたのではなかろうかというふうに考えております。
  69. 馬場昇

    ○馬場委員 私の聞いたところによりますと、入植農家の借金の平均というのは、国分が六百十五万、県分が三百五十五万、土地改良区の負担分が百万だ、莫大な借財を抱えて苦しんでおるわけですし、青刈りによる損失の計算を聞きますと、大体一戸当たり二十四、五俵とれるような状態であった。それに使いました経費が十七、八万円であった、こういうような状況でございます。全く未完成なところに入植をして、それだけ借財を抱えておりながら、しかもまた一応植えつけをし、つくるのに相当な経費を使った。まさに農民の現在の実態というのは大変な状況に置かれておるのではないか、私はこういうぐあいに思うのです。  そこでまず、農林大臣も最初こういうことがないようにしたいとおっしゃったのですけれども、最初県がこの植えつけというのを大体除塩用に認めておったのではないか、こういうことを私は聞いておるのですが、それはどうであったかということと、この干拓の管理といいますか指導といいますか、そういうものの責任は県にあるのですか国にあるのですか、そういう点をひとつお伺いしたいと思うのです。
  70. 岡安誠

    ○岡安政府委員 私も経過を聞きますと、確かに除塩をするためには一時水田にいたしまして水稲をつくった方がよろしいというような意見があったことも事実でございます。ただ私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、最近のような米の事情でもございますので、これはやはり一時的とはいえ米はつくらないということで指導もしてまいりましたし、そういうような御了解も得ているというふうに考えているわけです。  管理といいますと、干拓地そのものの管理というのはちょっと御質問の意味と違いますので、営農の問題ということになれば、これはやはり農政局、県等を通じまして営農の指導をしているというふうにお答えしたらよろしいのではないかと思っております。
  71. 馬場昇

    ○馬場委員 少しわからないのですけれども、県が除塩用につくってよろしいというぐあいに許可をした、こういう事実があるわけでございます。ところが農林省の方では、米を収穫すると圃場整備の補助金は出さない、先ほど言いましたように、非常に苦しんでおる農民に対して二者択一を迫る、まさに専制的な殿様のような状態でないかと私は思うのです。昔の悪代官がやっているような感じがしてしょうがない。そういうようなことはちょっとおかしいと私は思うのです。  そこで聞きますけれども、そういう米をつくるのは違法なのですかどうですか。違法行為をやるなということですか。それともそういうことをやったならば、こういう報復措置をするぞという悪代官的な行政措置なんですか、どちらですか。
  72. 岡安誠

    ○岡安政府委員 そもそも開田抑制措置につきましては、法律に基づいて私どもは規制をしているわけではございません。それぞれ地元の御納得をいただきまして、開田計画を開畑計画に変えてやっているということで、横島につきましてもそれぞれ地元の御了解を得て、開畑計画に変更して指導をしているというのが実情でございます。  先ほど水稲を作付したら補助金を打ち切るぞというようなお話がありましたが、私どもとしましては、米が過剰な事態に水稲を作付てよろしいということで国の金をつぎ込んでやることは時世にそぐわないものでございますので、私ども方針に御協力をいただく、またお約束いたしました方法で営農をしていただくということで地元の説得、指導をいたしたわけでございます。  先ほどちょっと除塩のために水稲を作付する意向が県にあったというお話でございますけれども、確かに先ほど申し上げましたように、技術的な方法としましてはそういうことが考えられますけれども、県も最終的に水稲を作付て米を収穫するというような意図があったとは必ずしも言えないのじゃないかというふうに思われる節もございます。私どもはいかなる方法であれ、結果的には米が生産をされて、これを国が買い取るというようなことは避けたいというのが開田抑制措置でございますので、来年度以降におきましても、先ほど大臣からお答えいたしましたように、米が作付されるということはぜひ回避をいたしたいと思っているわけでございます。
  73. 馬場昇

    ○馬場委員 県は除塩用にはつくってよろしいという指導をしておるわけです。それからいまお話を聞きますと、だから米をつくってそれを収穫したら圃場整備の補助金を打ち切る、これは別の話ですよ。補助金は補助金だし、つくるつくらないは別の話だ。これをてんびんにかけて二者択一を迫る。そうして農民はさっき言ったように本当に困っておる。これは全く血も涙もない行政だと私は思うのです。そこでいま、県の方もこれを収穫して国に売るというような指導はしなかったのだろうというお話ですが、それはそうかもしれません。しかし最後は、もう十日ぐらいしたら実るんだからせめて飯米だけにはさしてくれ、このことは農家の切なる願いであるし、ともに県もそのことをあなた方の方に言ってきておるはずです。飯米だけでもとらせてくれと言っても、このことさえあなた方は情け容赦なく、血も涙もなく、そういうことをやったら補助金を出さないぞ、こういう農政というのは本当に農民のための農政になるのか。この辺についての考え方というのを、特にこれは大臣の方からも基本的な姿勢としてちょっと考え方を聞いておきたい。飯米だけでもなぜ認めなかったのか。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私が先ほどから申し上げましたように、開田抑制策というものをとっておる今日でありますし、そうした地域等につきましては、膨大な国の助成等も行いまして農地等を造成してきたところでございます。したがって、農民の方が入植をされる場合は、国の政策に協力をして米はつくらない、こういうことをはっきり約束をされて入ってこられたわけでございますし、そうして大半の農民の方々はこの約束をきちっと守っておられるわけでございます。そういう中にあって、一部の方々がこの約束に反して米をつくった。これを野放しにするということになりますと、これはもうすべての農家が米をつくるということになりまして、国の開田抑制策を遂行することは全然できないわけでございます。そうした国の政策を進めていくということと同時に、また大半の農民の方がそれに協力していただいておる、こういう状況でありますから、そういう中で一部だけを認めることは行政の公平という面から見てもできないし、これを認めれば国の開田抑制策というものは根底からがらがら崩れてしまうことになるわけでございます。農民の皆さん方の心情というものはわかるわけでございますが、これはやはり自粛していただく以外にない、こういうことで青刈り等が最終的に行われたわけでございます。私は先ほどから申し上げておりますように、青刈りに至らない前に、植えつけというふうな事態から指導等の面において十分配慮をすべきではなかったかという点は率直に反省をし、そうしてその経過等もわれわれは十分検討して、今後とも青刈りといったようなことのないように事前に農家の皆さん方の協力を求める、あるいは県等に対しても指導を進めてまいる、こういうことで対処したいと思っておるわけであります。
  75. 馬場昇

    ○馬場委員 開田抑制策に日本じゅうのすべての人が服してきたのだというような大臣のお話ですけれども、私の聞いたところによりますと、八郎潟では十五ヘクタールのうち、七・五ヘクタールの水田のほかに畑地とされているところで二・五ヘクタールの米づくりを認めておられるということであります。こういうことを一方では認めておられるという事実を私は聞いたのですが、これはどうなんですか。  それからもう一つ大臣にお聞きしたいのですが、農家の心情として、米をよそから買わなければならないというのはやはりよくないんじゃないかと私は思うのです。だから開田抑制策は抑制策として、それを変えてもらいたいという基本的な考え方もありますけれども、たとえば横島干拓を例にとりますと、いつから米をつくれるのかという一つの心配と、またつくりたいという希望と、そこまで行く前に飯米だけは許してもらいたいという気持ち、これが農民の気持ちだと思うのです。だから、非常に苦しんでいますから、いつから米がつくれる方向に努力するのだとか、少なくとも飯米は来年からは認めますよとか、そういう血の通った農林大臣のお考えをひとつ聞いておきたいのです。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も熊本にも参りましたが、やはりいまおっしゃるように米をつくられた農家の方々から、せめて飯米だけでも残さしてほしいという悲痛な陳情等も受けたわけでございます。まあ心情の上からいきますと、約束は約束であったとしても、それぐらいのことはできればして差し上げたいという政治家としての気持ちにはなったわけでありますけれども、しかし、これで一角が崩れますと、せっかくこれまで進めてきた開田抑制措置というものがすっかり崩れてしまうことになり、それが今後の米政策に大きな影響を与えて、それがひいては農民にはね返ってきて決してプラスにならないというふうなことを判断すると、これは涙をのんでも今回はひとつ自粛をしていただかなければならないということで、県等にも強く要請をいたしまして、最終的にああしたことで事態を収拾いたしたわけでございます。  しかし、こういうことは余り後味のいいことではないわけでございまして、将来にわたってこういうことが起こらないように――確かに農家だけではなくて、国民の皆さんもこういう問題をたださらっと見ると、何をしているんだということにもなるわけでございますから、こういう事態の起こらないように、このやり方等も十分検討し、経過等もわれわれは十分研究して、そして対処していきたいというのが私の考えであります。
  77. 馬場昇

    ○馬場委員 もう少しはっきりお聞きしたいのですけれども、開田抑制策というのは干拓で米をつくらせないのだということですが、つくりたいという気持ちがあるのですから、その気持ちにこたえるような政策の方向を何とか考えてもらいたい。私は、開田抑制策なんかとらずに、ほかの方法をとるべきだと思うのです。その検討と、それから飯米を許したからといって日本の米政策には全然影響がない。飯米を許しただけでこの政策にどれぐらい影響があるか、私はないと思うのです。この辺は来年からでもできるのじゃないかと思うのですが、その辺大臣どうですか。
  78. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 開田抑制策というのは、米の需給の状態、今日における過剰な基調というものを背景にしてとられたわけでございます。これはことしの米の作況から見ましても、今後やはりこれを維持していかなければならないのじゃないかというふうに私は見ておるわけでございます。理想的なあり方としては、米については在庫の積み増しを十分しながら、余裕のある備蓄をしながら、なおかつ均衡のとれた需給状況が生まれるということが米対策としては一番いいあり方だと思うわけであります。そういう点から、私も、備蓄をふやすと同時に、水田総合対策を進めながら、需給の均衡がとれるような方向で積極的に進めていく考えでございますが、そういう中にあって、いまの開田抑制地帯を、最終的にはいま言うように開田抑制はしないで、米の需給の中で、やはり思うように好きな作物をつくってもらうという形になるのが一番いいのでしょうが、それだからといって、いまの状況を見ますとなかなかそう簡単にもいかないという米の情勢でございます。そういう点はやはり理解をしていただかなければならぬと思うわけでございますし、農家の皆さん方もあそこへ入られるときには、とにかく米はつくりません、これは相当続くだろう、ですから、米以外の畜産だ、畑作だということでわれわれはしんぼうします、やりますということでお入りになって、そのためには国は膨大な国費を投じて助成対策等も行って、基盤整備等をやってきているわけでございます。また、大半の人にこれを守っていただいているということからすると、やはり一部の農家の方々でもこれに反するというふうなことが出てきて、これを野放しにするということになりますと――何といってもそれは米をつくることが農家にとっては一番有利であります。この辺には問題があるわけでありますが、しかし米をつくるということが一番有利でありますから、自由な立場で選択できるということになれば、やはりみんな米をつくりたいわけでありますから、米についてはそれは自粛していただかざるを得ない、約束を守っていただきたい。  そこで飯米ということになるわけですが、これは心情としては私もわかるわけです。いろいろとその点について農林省でも協議もいたしたわけです。政治家としての私の立場からすれば、飯米ぐらいはといまおっしゃるような気持ちも現地の方の陳情を受けまして当然ありました。これが全体の政策を左右する問題でもないんじゃないかというふうな気持ちを持って実はいろいろと検討してみたわけです。しかし、飯米ということでも、一角が崩れるということになるとやはり根底が崩れる可能性が生じてくる、いろいろの検討の結果そういう面も出てまいりましたので、今回はやはり約束どおり米は一切つくらないという措置をお願いをして、そして農家の方々も最終的にはこれに協力をされたわけでございます。  しかし、こういうことをいろいろと反省をしながら、今後は何とかいい方法はないだろうか、もっと指導のやり方等も検討をしなければならぬし、いまの飯米問題等も、いまの状態でいきますと一角が崩れるわけでございますから、われわれは認めるというわけにはいかないわけでございますが、農家の皆さん方のそういう心情等もわかるわけでございますので、工夫ができれば工夫もしたいわけでございますが、しかしいまいい案が別にあるわけではないわけでございまして、その点はいろいろ検討してみたいとは思っております。
  79. 馬場昇

    ○馬場委員 農家も非常に苦しんでいるわけですし、また心情もわかるとおっしゃるわけです。そしてまた、これは国民が見て農政不信につながることでございますので、検討してみたいということですので、よろしくお願いしたいと思うのです。  そこで、もう一つの問題ですが、これまたいま大臣が言われました本年度産米の限度額超過の問題です。大体私どもの計算では五十万トンぐらいの超過米が見込まれる。そしてまた消費はこれに応じて決してふえはしない。米の値段も上がりましたし、こうしたスタグフレーションの中ですから消費も伸びない。相当予約限度超過米が出ると思うのですが、現在これに対してどういう処置をとろうとしておるのかということを端的にお答え願いたい。
  80. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまの情勢でいけば、このまま進めば、大体四、五十万トンの超過米が出るのじゃなかろうかというふうに予測をいたしておるわけでございますが、最終的な結果は十二月の初めごろにならないとわからないと思います。  そこで、われわれとしては、これに対処する方向として、まず県間調整でもって調整をするということでございます。しかし、県間調整でも処理できない――去年は処理できたわけですが、処理できないというふうな事態になれば、これはやはり自主流通のルートに乗せてこれを始末をしていくということは一昨年もとった方法でございまして、われわれとしてはそういう基本的な方向でもってこの超過米の問題を解決したい、こういうふうに考えておるわけであります。
  81. 馬場昇

    ○馬場委員 これにつきましては、限度数量を超えた産米でも全量買い上げてくれという強い農民の要求があるのは御存じのとおりでございますし、さらには、備蓄計画というのを早めて、こういう豊作のときに備蓄をするということで全量買い上げてくれということもございますし、さらには、外麦なんかの輸入を制限して、学校給食等にも米を食わせるようにして、何としても消費の拡大を図ってくれとか、最低四十八年度方式ぐらいにはやってくれないか、こういうような農民の願いというのがあるわけでございます。  いま幾つかの問題について私申し上げましたけれども、これは局長でも結構でございますが、もう時間が余りありませんので、ちょっとこういうことに対する考え方をお聞かせ願いたいと思うのです。
  82. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 四十八年には七万トン超過米ができたわけでございますが、これは自主流通に乗せて最終的に処理したわけでありますし、その間の金倉等も助成をしたわけでありますが、私たちも、今回米が余った場合においては、四十八年度に行った措置はもちろんこれは基準として行わなければならぬ、これを最低といいますか、少なくともその線は前提として対処をしていくというのが基本的な考え方でございます。  なお、全量買い上げといいましても、予約制というものがある以上は、全量買い上げということは筋が通らないと私は思っておるわけでございます。  なお、備蓄にすれば簡単じゃないかというお話でございますが、私たちは、最終的には二百万トンの備蓄計画をもってこれを数年間のうちに実現をしたいと思っておりますが、これはやはり段階的に、計画的に行うべきものであって、ただ超過米がうんと出たから、それをぽんと回して二百万トンになるじゃないか、だからことし一遍に備蓄計画ができるじゃないかとおっしゃっても、そうすると来年はそれがさらに二百五十万トン、三百万トンになるというような可能性すらあるわけでありますから、やはりこの備蓄計画というのは計画的、段階的に行うべきものであるというふうに考えておりまして、したがって私は、備蓄問題とは切り離して超過米の処理というものは行っていきたい。その場合に、四十八年に行ったやり方というものは最低の前提になることはもちろんでございます。
  83. 馬場昇

    ○馬場委員 時間がございませんですが、とにかく余り米だなんという言葉がはやってみたり、厄介者扱いという感じがするわけですが、実はそうあってはならないわけでございまして、少なくとも豊作のときには農民も国民も喜ぶという状態の農政でなければならないと私は思う。ところが非常に厄介者扱いみたいな風潮が出て、まことに困った問題ですが、ぜひ豊作を農民が喜ぶような政策というのをひとつ出していただきたいということを要望しておきたいと思います。  それから次に、これは具体的な問題ですけれども、農業用の廃プラスチックの処理問題について担当局にお伺いしたいと思うのです。  熊本県の例しかよく知りませんけれども、ハウス園芸が最近非常に盛んでございます。それに従いまして、廃プラスチックの処理というのは大変な問題になっておりまして、たとえば熊本県の場合、四十七年度より廃棄物対策のプロジェクトをつくっていろいろ検討しておるわけですけれども、大体九千五百トンから、五十二年には一万二千トンぐらいの廃棄物が出るという予想が立っておるわけでございます。それで五カ年計画をもちまして、これは国の補助事業としてその廃棄物処理の工場を五つぐらいつくったのですけれども、四十七年、四十八年、四十九年とやりまして、四十九年ごろ完成したのですが、これがもう全然物の用に立ちませずに、六カ月操業したとかあるいは操業する前にとかということでだめになってしまって、いまほとんど中止されておるわけです。そういう問題につきまして、廃棄物がそのまま放棄されますと、これは公害にもなりますし、環境破壊にもつながるわけでございます。  そこで農林省にお尋ねしたいのは、現在、廃棄物を処理する技術というのがどうも不完全でございますが、この点につきまして、この技術開発というのをどういうぐあいにやっておられるか、それで見通しというのはどうかということについてお伺いしたい。  もう一つは、現在、固めて埋めておるわけです。こういうことで非常に経費も使っておるのですが、これをどう指導されるか、技術開発はどうなさろうとしておるのかということについてお尋ねしたい。
  84. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 施設園芸なりハウス栽培が盛んに行われるということで、プラスチックの使用が進んでおる現在、この廃棄物の処理を適正に行うということが非常に重要なことであるというように私ども考えております。ただ、この廃プラスチックの処理につきましては、その処理の仕方が工学的な技術に絡まるものであって、従来農林省の試験研究機関がやっております専攻分野とは分野を異にするということでございますので、私どもは廃棄プラスチックの処理につきましては、こういう石油製品の処理方法の一環として研究開発をするということが必要ではないかというように考えておるわけでございます。  そういう点から考えますと、幸いにして通産省の方でその点についての開発をやっておられまして、四十七年から継続的に実施されておりますし、それからまた五十年度からは、第二次のこういうふうなものの再生技術について大々的な研究が行われるというふうなことでございますので、そういう方面と重盗をとりながら推進してまいりたいというふうに私ども考えております。
  85. 馬場昇

    ○馬場委員 通産省任せのような御答弁でございましたが、農業に使っているわけですから、農林省としてもぜひ力を入れて、農林省独自でやるのか、通産省と協力してやるのか、また向こうにお願いするのか、ぜひ力を入れてやっていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  次に、五十一年度から水田総合利用対策が実施されるわけでございますけれども、その対象作物にイグサと葉たばこが実は特認されていないわけですけれども、これはなぜ特認できないのか。これはやはり必需物資だと思うのです。こういう意味で、これはぜひ特認に指定してもらいたいという要望が非常に強いのですけれども、これについてのお考え方をお聞きしたいと思います。
  86. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 来年度から実施を予定しております水田総合利用対策の考え方といたしまして、米につきましては需給の基調がなお過剰であるということでございますので、需給の均衡を図るということ、他方、野菜、大豆あるいは一部の果樹等につきましてはなお供給不足でございますので、そういうものに高い生産力を持っておる水田を転用することによりまして、総合的にわが国食糧自給率を引き上げていきたい、こういう基本的な考えに立っておりますので、原則として奨励の対象作物は食用作物である、こういうように考えておるわけでございまして、ただいまおっしゃいましたたばこだとかイグサとかいうものは、食用作物という点では該当しない、非食用作物でございますので外れるというようなことになるわけでございます。地域農業という観点から重要であるという点はわれわれもそのように思っておりますけれども、ただいま申し上げましたような食糧の総合自給力を高めるというような基本的な性格からすると該当しにくいという面があるわけでございます。しかしながら、これは全国的に現在強い要望にもなっておりますので、今後、来年の需給見通しとかあるいは転作の見通しとかいうようなものも検討する中で、なお慎重に検討はしたいというふうに考えております。
  87. 馬場昇

    ○馬場委員 食糧自給問題について質問の時間がなくなってしまったわけでございますが、この質問につきましては後日に譲ります。  私の質問はこれで終わります。
  88. 今井勇

    ○今井委員長代理 竹内猛君。
  89. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、農家が貴重な農地を提供して、そして国鉄が東北新幹線をつくるということで協力をした、このことと関連して、東北新幹線並びに東北線をめぐる諸問題について若干質問をしたいと思います。  まず第一に、東北新幹線の着工から完成の年次、それの全体の見通しと、予算はどうなっているかということについてお伺いします。
  90. 柳田真司

    ○柳田説明員 東北新幹線につきましては、昭和四十六年十一月に着工いたしまして、当初五十一年度末、すなわち五十二年春完成を目途に工事に着手いたしましたが、御承知のとおり昭和四十九年度並びに五十年度は、総需要抑制によりまして予算が厳しく抑えられました。したがいまして、当初の完成見込みよりはかなりおくれておるのが実情でございます。それから、もう一つの問題としまして、埼玉県南より南の方、ここが新幹線建設反対という動きがございまして、現在まだ立ち入り測量その他ができない状況にございますが、鋭意住民の皆さんの御理解を得ながら、これから建設にできるだけ早く着手いたしたい、このように考えて現在鋭意努力をいたしておる段階でございます。
  91. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いまのお話だと、五十二年を目標に始まった、こう言われて、埼玉県南の反対と、それから景気変動、経済変動によっておくれていると言うけれども、それにしてもこれは大体いつを目標にしてこれにピリオドを打つのか、完成するのか、また総予算は幾らになっているのか、その点はどうですか。
  92. 柳田真司

    ○柳田説明員 予算は当初、総工事費八千八百億ということでスタートいたしましたが、その後の物価上昇等によりまして、大体その工事費はほぼ二倍近く上がるんではなかろうかというふうに現在考えております。それから、現在までに投入いたしました工事費は、先ごろの五十年度の補正予算によりまして、五十年度かなわふやしていただきましたが、これを全部ひっくるめまして、五十年度までにそれが全部使い切るといたしますと、約四千六百億を投入したことになります。これはほぼ倍近い予算に対しましては約三〇%に相当いたします。  それから、いつごろ完成するかというお話でございますが、当初の五十二年春は少なくとも二年以上おくれざるを得ないであろう、今後の予算のつき方によると思いますが、現在のところ少なくとも二年以上おくれるであろう、このように考えております。
  93. 竹内猛

    竹内(猛)委員 おくれるという原因はその二つだけですか。要するに、予算が変動したということと、それから大宮の周辺における埼玉県筋の反対というこの二つが主としておくれた理由でありますが、そのほかにありませんか。
  94. 柳田真司

    ○柳田説明員 そのとおりでございます。なお、埼玉県南以南の問題につきましては、今後の推移を見なければわかりませんが、大体その二つでございます。
  95. 竹内猛

    竹内(猛)委員 具体的にお伺いしますが、東北線に古河市というのがありますが、古河市の大山、中田地区、あるいは茨城県の猿島郡の五霞村あるいは総和町、あの辺の国鉄の買い上げた土地の地価、そしてそれを買い上げるときにどういうような条件をつけて国鉄は買ったか、これについ  てお伺いします。
  96. 柳田真司

    ○柳田説明員 この地区につきましては、現地の説明会を四十六年の終わりごろいたしまして、四十七年度に用地買収をいたしております。  価格につきましては、地権者の方もいろいろございますので、一概には申し上げられませんが、用地買収は一般的に近傍類地の地価を参考とし、また、その主なポイントについては不動産鑑定士の鑑定をいただきまして、適正な時価によって買い上げておる次第でございます。
  97. 竹内猛

    竹内(猛)委員 適正と言っても、その価格はどれぐらいなのか。支払ったわけだから金額が出るでしょう。たとえば坪にして幾らとかいう額が出ないとちょっと判断のしょうがない。
  98. 柳田真司

    ○柳田説明員 用地買収はいろいろその場所場所によりまして違ってまいりますので、一概に平米幾らで買ったということはちょっと申し上げにくい問題でございます。
  99. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは重大な問題でして、それでは、買うときに、直接に国鉄当局が買ったのか、それとも市が入ったのか、あるいは土地ブローカーを入れたのか、それとも第三者を介入したのか、どういうふうな買い方をしたのか、それをお聞きしたい。
  100. 柳田真司

    ○柳田説明員 国鉄が新幹線建設とかあるいは改良工事によりまして常に用地買収をいたしておりますが、これはすべて地権者から直接買収しておりまして、間に自治体とかあるいはそういったものは介在しておりません。
  101. 竹内猛

    竹内(猛)委員 だとすれば、その土地価格は幾らで買ったかということは、これは書類を見ればわかるのだけれども、どうして言えないのですか。
  102. 柳田真司

    ○柳田説明員 五霞村並びに古河市におきましては、平均で申しまして平米四千八百円ないし五千円程度というふうに聞いております。
  103. 竹内猛

    竹内(猛)委員 まあ平米四千八百円から五千円、これは現在の価格としては非常に安いわけですけれども、だから農家は非常に協力しているわけですが、この土地を買うときにどういう約束があったか。反対がかなりあったはずですから、どういう約束のもとにこの価格土地を買ったかということをいま聞いているわけです。
  104. 柳田真司

    ○柳田説明員 用地買収に当たりまして、地権者の皆さん、特に農家の方が多いわけですが、大体御要求の事柄としましては、農地に対する通水路、それから通路の確保、これを御要求されまして、それは用地買収とともに全部国鉄において措置しておる状況でございます。
  105. 竹内猛

    竹内(猛)委員 国鉄当局がやったとすれば、その地元からこういう苦情が来ている。要するに地主層を料亭に集めてかなり至れり尽くせりのことはやったけれども、一般の零細な地元住民、地権者、こういうものは疎外をした、こういうあれが来て、そしてこの間に国鉄当局は何らの説明会を開かない、これはおかしいではないか、こういう地元の町内会の人々からの要請がある。こういうことについて、決定した当初、地元で何か会合を開いて、説明をされたことがあるかどうか。
  106. 柳田真司

    ○柳田説明員 用地買収するに当たりましては地元説明会を開いておりますが、この地区は非常に早い時期、先ほど申しましたように四十六年に地元説明会をいたしました。ここは各自治体の御協力を得まして、各地区ごとに地権者を中心といたしまして事業説明会を開いております。
  107. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は四十八年の春、東北新幹線が着工するという起工式に出席をいたしました。これは総和町の工業団地で開いたわけですが、そのときに総和町の町会議長がこの着工までの経過について幾つかの経過を述べた後で、数多い注文をしていたことを知っています。これは国鉄新幹線当局がよくわかっているはずだ。その中で地元に対する新幹線におけるところのいろいろの騒音あるいは障害こういうものについては十分に地元と話をして心配のないようにする、こういうような形になっているけれども、このことについて話をしたことはあるかどうか。
  108. 柳田真司

    ○柳田説明員 地権者を中心とした地元の方々に対する説明会におきまして、やはりその騒音、振動、電波障害の問題は御説明いたしております。その内容は、騒音、振動対策といたしましては、防音壁の改良とかあるいはけた下遮音板の取りつけとかあるいは制振材の取りつけあるいは構造物を非常に大きなもの、重いものにするとか、その他現在東海道新幹線等に取り入れておりますあらゆる技術を取り入れまして、極力沿線への影響の軽減を図るという方針を御説明いたしております。また電波障害につきましても、現在東海道等で行っております共同アンテナ方式、こういったもので実害は避けられる見込みであるというふうなことを御説明申し上げております。
  109. 竹内猛

    竹内(猛)委員 説明をしたと言われるけれども、現地では聞いたことは一度もないと言っている。  そこで問題は、大山地区、中田地区の方から要求が出ているのは、ここは古河市においてはただ一つの農業地帯です。野栄地帯である。もう一つは、そこは市街化地域にもなっている。ちょうどその分岐点みたいなことになっているところで農家が協力したわけだから、少なくとも土地を売った農民にだけでなくて、そこに住んでいる人々にいま話されたような問題について十分に理解がいくようなお話を事前にしなければいけないと思う。こういうようなことに対して要求があればなおその人々と話をする意思があるかどうか。
  110. 柳田真司

    ○柳田説明員 先生からいまお話がございましたように、最近に至りましてすでに構造物ができ上がった近くの住民の方から非常な騒音、振動その他の公害に対する御懸念、御心配が出ておるということは承っております。したがいまして、私どもの方といたしましては、古河市あるいは総和町とかそういう地元自治体から御要請があれば出向いていって御説明をさせていただきたいと思っております。
  111. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題は早急にきわめて親切な話をしてもらいたいと思うのです。というのは、いま地元の人々は大変貴重な時間を使って山陽新幹線あるいは東海道新幹線等々について見学をし、そしてここでも毎時二百六十キロという形で三分間に一台ぐらいの割りでそれが走るという形になっているということも問題になっていて、相当心配をしているわけです。そういう心配に対して未然にこれを防ぐような処置をぜひとることを私はここで要望したいと思うのです。土地を買ってしまえばあとは何をしてもいいんだ、こういうようなことではいけない。ぜひそのような処置をとってもらいたい。  続いてお伺いをしますが、東北新幹線ができるということによって茨城県全体としては実際は何のメリットもないわけです。農地あるいはその他を分断されていく、あるいは騒音が残るということ、電波障害が出るということに対する心配が残るけれども、具体的にこの地域がそれによってどうこうすることはない。けれども、やはり東北方面が開発をされるということについては協力しなくちゃならないということで、われわれもこれを説得してきたし、それから地元もこれに協力をした。そういうようなときに、いま問題になっているのは――直接それとの関係があるかどうかわからないけれども、東北線の古河の駅を高架にする、そうしてあの東西の二つの踏切の渋滞を何とかして緩和する。大体あそこはいま一日十三時間が閉鎖状態です。そういうような古河の駅を高架にするという計画ができていて、四十八年から許可にはなっているけれども、なかなかこれが進まない。その進まない理由、こういうことについて、これは建設省も関係していると思うから、建設省の方からもあわせて答弁をいただきたい。
  112. 渡部與四郎

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  先生御存じのとおり、この東北本線の古河駅を含んだ約三キロについて鉄道高架事業を実施しておりまして、その事業の概要は環境側道も含んで百二十億、踏切除却数八つ、交差道路十二、うち都市計画道路が二というふうな概要でやっております。現在事業実施状況は、今年の三月三十一日に都市計画決定がなされまして、現地での測量、用地幅ぐいの打設を完了しております。十一月中に事業認可をとりまして、十二月から本格的に用地買収に入る予定でございます。  また、国鉄との事業協定締結についても鋭意進めておりまして、特に貨物駅の移設の問題がございますので、鷲宮付近の交通ターミナルというようなことを含めて、鋭意いま仕事の進捗を図るための協定締結に進んでおる次第であります。
  113. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いまその概略の説明があったわけですが、その場合、この全体の予算の計画というものが問題になると思うのです。少なくとも新幹線をあそこへとめろということは、これはできないわけです。二分三十秒ぐらいしか通らない中で新幹線をとめたら、新幹線の意味がないから、これはできない。だからどうしてもあそこの駅の近代化を図っていくということはぜひ必要なわけで、それに関しては古河の原町から静町の問二千五百八十メートル、これを高架にするわけで、その費用というものが当初は七十何億、それから最近百二十億、さらに二百億というように聞いているわけですが、一体この予算というものは幾らぐらいで、そして何年でこれは完了し、その分担はどうなっているかということについて、主としてこれは建設省の都市計画によってやられる、それに国鉄が参加するというわけだから、これは建設省の方から主として答弁をしてもらいたい。
  114. 渡部與四郎

    ○渡部説明員 お答えいたします。  先ほど申したように、環境上必要な側道を含めまして約百二十億というふうに現在考えております。先生御存じのとおり、これについては現在線の高架ということを主体としますので、国鉄が一〇%負担、その残りの九〇%について国が三分の二の補助をするという形で、残りを県と市が負担するということになっております。私たちとしては、苦しい公共事業の抑圧の中でこれをやっておりますので、仕事だけは何とか進めたい、予算上ちょっとおくれがちでありますけれども昭和五十六年には完成したいという目途で現在努力中でございます。
  115. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その場合に、これも新幹線とやや関連をするけれども、当初計画したときには現在の東北線というものをそのままにして高くするということであったが、今度は騒音防止のために周辺を十メートルずつ右左を買収をして、そして約二万一千平米ぐらいのものを新しく買い上げる。これに対する代替地あるいは移転等々の問題についての新しい課題が出てきているように聞いているけれども、このことについては建設省はそれを景気しているかどうか、承知しているとすればそれは当初の計画の変更になるのだが、その変更についてはどうですか。
  116. 八木純一

    ○八木説明員 かわりまして、施設局の踏切課長でございますが、御指摘のように四十六年の調査段階では、七十二億という試算の数字が得られております。いま御指摘のように、その後この高架橋の建て方が変わりまして、現在線の東側でございますが、そこに新しい高架構造物を建てるための用地取得がございます。この幅が御指摘のように十メートルでございます。したがいまして複線の高架が建ち上がりますと、現在線の線路敷があきまして、その幅がちょうど御指摘の数字に整合いたします十メートルということでございまして、先ほど建設省御当局の御説明のありました二万二千平米のうちの鉄道用地分が一万六千平米ございます。これがいま申し上げました右側に新たに鉄道用地として必要な用地でございます。それとあわせまして、野木駅方でございますが、環境対策上の側道が必要であるということで、それの六千平米ほどの土地が今回用地買収ということで、高架構造物の計画の変更によりまして、現時点では先ほど御説明のございました百二十億ということで、現在国鉄側といたしましても事業主体の茨城県と御協議を申し上げ、具体の協定の締結に鋭意努力しておるという段階でございます。
  117. 竹内猛

    竹内(猛)委員 百二十億と言われましたけれども、百二十億で大丈夫かどうか。要するに、移転費、補償はそれで大丈夫ですか。その点をもう一度。
  118. 渡部與四郎

    ○渡部説明員 お答えいたします。  相当な物価の変動とかがなければ、これで大丈夫でございます。
  119. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは双方に率直に申し上げたいのですが、農家が土地を提供し、そして東北方面の新しい開拓のために努力をするという形で協力をしているわけですから、この点に対する早急な理解を得るために、問題が起こらない前から、あらかじめ新幹線当局は地元の代表と話をしてもらいたい。このことをまず一つ要求する。  それから同時に、古河の駅の高架の問題については、前からこれはいろいろ議論のあったところですが、ようやく着工の運びになったということはいいことですけれども、どうしても予算の面に私は不安があると思う。古河という市は非常に貧乏な市であって、何割負担するかわからないけれども、三割のうちの二割を県が負担するのか、あるいは逆に市が負担するのか、それとも半々になるのか、この負担の区分さえまだよくわかっていないような感じがする。そうなればいよいよこれはまた延期せざるを得ないという形になるだろう。それから、その周辺の十メートル買収の移転の問題についても簡単でないような気がします。こういう問題についてやはり同じように住民の理解を得るために、ともかく住民とともにある国鉄、理解を得てやるという、そういうような基本的な姿勢と態度というものをぜひとってもらいたいと思うわけですけれども、もう一度最後に関係者の皆さんの答えを求めたいと思います。
  120. 柳田真司

    ○柳田説明員 新幹線につきましては、先ほど申し上げましたように、地元の自治体から御要請があれば御説明にお伺いしたいと思っております。今後基本的には住民の理解を得ませんと工事はできませんので、私どももそのとおり考えております。
  121. 渡部與四郎

    ○渡部説明員 金額等についてはいま申したとおりでありますけれども、県と市で折半で裏負担を持つという約束になっております。この負担については、一般単独債の中で起債として求めることも可能でございますので、いわゆる現ナマとしての持ち分は少なくて済む制度もございますので、その活用について指導してまいりたいと思っております。  用地買収については、市街区域がほとんどでございますけれども、その中の代替地を欲しいというような方については、市の方であっせんすることを指導してまいります。
  122. 竹内猛

    竹内(猛)委員 きょうは農業に直接関係がない問題ですけれども、農民が農地を放した中で開発問題に協力をしていくという中で、住民とともに各機関が一緒に物をつくっていくということについて質問いたしましたが、きわめて簡単なあれだったのですけれども、かなり明確な回答が得られて結構だと思うのです。  これで私は終わります。
  123. 今井勇

    ○今井委員長代理 中川利三郎君。
  124. 中川利三郎

    中川(利)委員 今日経済不況は全般的な業種、業界に広がっておるわけでありますが、とりわけ私の地元である秋田県の能代、山本かいわい、ここは木林業界が町、市の経済の大部分を占める重要な地域でございますが、たとえば十月二十一日の地元の新聞を見ましても「ドロ沼不況に沈む木材業界 秋需要も期待外れ 増える借金 金利倒産の不安も」なんというようなことで「お先まっ暗の状態の中で逆に手形の期限は長期化し、各工場では借金で経営を維持するのがやっと。借金の額は雪ダルマ式に増えており、どの業者も一様に緊張した面持ちを見せている。」ということをずっと書いておるわけでありますが、このような木材業界の状況に対して、林野庁長官はこれを深刻な不況の実態と見るのか、それとも他産業と比べてまあまあのものだというふうに理解していらっしゃるのか、その点をまずもってお聞きしたいと思います。
  125. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  全般的な日本あるいは世界を含めての不況でございますが、とりわけ木材業につきましては、ただいま御指摘のような大変な不況の中にあるわけでございまして、実は昨年来、昨年の七月以来でございますけれども、いろいろ金融対策あるいは生産調整等を含めました対策をとっておるわけでございまして、現在もなお住宅産業等の不振というようなこと等もありまして、大変な不況の中にあるというような認識を持っておるわけでございます。
  126. 中川利三郎

    中川(利)委員 大変な不況という認識がある、こういうことでありますが、たとえば秋田県の製材不況の実態を示す一つのデータとして、一般競争入札の状況などがあるわけであります。十月二十八日に大曲営林署が六件の入札をしたのですが、落札したものはゼロ。和田営林署は九件のうち落札したものはゼロ。十一月十日の状況でありますが、藤里営林署八件中四件、能代営林署五件中二件、二ツ井営林署六件中一件、大館営林署三件中二件、十和田営林署二件中二件、五城目営林署七件中四件、こういうかっこうで、不落ないしは非常に状況が悪いということはそれを端的に示しているものだと思いますが、それであるならば、このような深刻な不況だと言いながら、いつの間にやら、九月時点におきまして、何ゆえにこの木材、製材関係を国の不況業種から外したのかということですね。私もびっくりしたわけでありますが、いつの間にやらこの業種が不況の指定から外れているわけであります。その理由は一体何だということをお聞きしたいと思います。
  127. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおりでございますが、製材業の経営状況は、全国的に見ますと、生産量、出荷量が急激な落ち込みを示しました四十八年度に比較いたしまして、本年に入りますと、需要の本格的な回復というものは示しておりませんけれども生産量、出荷量ともさらに著しい落ち込み傾向を示しておるというわけでもございませんで、在庫量につきましても減少傾向は続けておるというような状態でございます。このようなことで、中小企業の信用保険法に基づきます指定をさらに継続することについては現在困難であるという理解のもとに、九月でこれを打ち切ったわけでございます。
  128. 中川利三郎

    中川(利)委員 まあだんだんよくなってきている――あなたは、不況だと一方で言いながら、だけれどもだんだんよくなったから不況業種から除外するのはあたりまえで、とても不況業種ではなくなっているようなことを言っていますけれども、その理由として、いま挙げました生産、出荷、在庫、これらのどの点を見ましても依然として深刻な不況の実態は変わっておらないわけですね。  たとえば生産で見ましても、昭和五十年度の各月の状況を前年度に比べますと、どの月も一〇〇%台になっておらないわけですね。出荷も同じです。一方在庫はふえておる。こういうことは、指標としても何もよくなってきているということは言い得ないのではないかと思うのです。そういう状況がありながら、しかも先ほど来深刻な不況だと言いながら、不況業種から外していること、そのこと自体矛盾だというふうに私は思うわけであります。  なお、そのようなあり方については、秋田県の信用保証協会の関係者の論文が「秋田木材通信」の十一月三日付にも載っております。こう言っているのです。「製材関係は九月末で不況業種から解除されたが、われわれの見た範囲では急速な回復の見通しも立っていない模様であり、腑に落ちない。」と言っているのですよ。  しかも、政府自身が出したデータから見ましても、いずれも、ことしの一月から六月時点くらいまでの生産の指標を見ましても、八四、九〇、八九、九三、九四、九四、こういう状況ですね。出荷を見ましても、八三、九〇、九一、九六、九五、九六、どこがよくなってきているのですか。こういうことの中で、いま現に能代かいわいでは倒産騒ぎあるいは連鎖倒産の問題がずっと深刻になって起こっているということです。こういう点でぜひとも上町指定をしてほしい、こういう要求が不況業種の地元からもほうはいとして起こっておるわけでありますが、この点についてはどう考えるのですか。
  129. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  先ほど私申し上げましたのは、四十八年度に比較して四十九年度というような現状につきまして、九月現状でございますけれども、そのような御説明を申し上げた次第でございます。現在の能代地方、特に東北地方でございますが、大変いろいろな意味で不況であるという深刻さについては私どもも認識いたしております。したがって、今後についても製材業の経営状況を十分見守りながら、業種の再指定を含めまして適切に対処できるように私も努力してまいりたいと思っております。
  130. 中川利三郎

    中川(利)委員 通産省からも来ておるようでありますが、信用保証協会の関係者自体が「腑に落ちない。」と言い、根本的に景気がよくなったというようなデータはどの点から見ても出ておらないにかかわらず不況業種から外したということ、これは通産省の方ではどういう受けとめ方をしておりましたか。また今後の再指定せよという問題についてはどうお考えになりますか。
  131. 織田季明

    ○織田政府委員 お答えいたします。  九月末をもちまして業種指定を解きましたことにつきましては、先ほど林野庁長官からお答え申し上げましたように、本年に入りまして需要の本格的な回復は示していないものの、生産量、出荷量ともさらに著しい落ち込みは示しておりませず、また在庫も減少傾向にあるというようなことから指定を外した次第でございます。  また、お尋ねのありました再指定の問題でございますが、御承知のように、初めは六カ月ごとに指定を見直すということでやってまいりましたが、最近におきます経済の変動は非常に激しいものがございますので、三カ月ごとに見直しをしておりまして、現在行っておりますのは十月一日から指定をいたしまして十二月末で期限が切れるものでございます。その際には、いまお話のありましたようなことも含めまして十分検討しながら、全般の指定に臨みたいと思っております。
  132. 中川利三郎

    中川(利)委員 絶対的な不況という点から言えば、深刻な不況に変わりはないけれども、その中の部分的な状況にジグザグがあるのは当然なわけであります。だからそのジグザグをとらえて、絶対的な不況がここにあるにかかわらずこれを外すということは、関係の信用保証協会の職員でなくても、これはだれしも蹄に落ちないと思うわけであります。  そこで、参考までに長官に申し上げたいのですが、いま能代地区の製材協同組合のアンケートがここにあるわけであります。「資金ぐり」について「楽になった」と答えた者は一人もいなかった。「きゅうくつ」が五八%、「同じ」が四二%。「市況」についても、「よくなったと思う」は全く一人もなかった。「悪くなっている」が一一、「同じ」が八九です。「これからの見通し」についても、「よくなると思う」というのは全くなし、「悪くなる」が四二、「同じ」が五八。こういう状況が業者の実感として出ている。この点を強く注意を喚起したいと思うわけでありますが、いまお話を聞きますと、十一月二十日、つまりあすですが、この再指定の問題が協議されるというふうに聞いておりますが、この中で林野当局として製材関係を主とした木材の再指定の問題を提起するのかどうか、この点をはっきりしていただきたいと思います。
  133. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  十一月二十日ということにつきまして、私ども実は聞いていないわけでございます。先ほど御答弁申し上げましたように、また通産省からもお答えございましたように、大変大事な問題でございますから、再指定等を含めまして通産省とも十分相談させていただきたいと思います。
  134. 中川利三郎

    中川(利)委員 そうすると十一月二十日はわからなくても、この次の再指定、つまり三カ月ごと云々という言葉がありましたけれども、この機会には林野当局としても積極的に再指定に向かって働きかける、こういうふうに理解してよろしいですね。
  135. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  再指定については、先ほど御答弁申し上げましたように、出荷量あるいはその価格の動向、さらには流通状況、あるいは在庫量といろいろ因子がございますので、私ども十分その辺を調査いたしまして、必要があれば通産省とも相談いたしまして再指定等を含めて検討させていただきたいという意味でございます。
  136. 中川利三郎

    中川(利)委員 一般論としてはあなたの言うことはわかるわけですが、ただ、全体的な木材の不況といいましても、地域的に非常に片寄りがあることは現実だと思うのですね。そうすると、その一般論の中に地域の深刻な問題を放置しておくことが事実上出てくるわけでありますが、そうするとそれが全体の木材産業に波及するということにもなると思うのです。そういう意味からいたしましても、ただ全国おしなべて平均的な不況の度合いだとか生産量とか出荷量とか、こういうことだけで判断するのではなくて、場合によればそういう地域指定、特に能代、山本なんというのは、秋田県全体がそうでありますけれども、木材の出荷量を含めまして日本の主産地として、そこの町の経済がほとんど木材に頼っているという状況であれば、それをおしなべた全国的なかっこうの中でどうだこうだということだけでやられますと、全く手が行き届かなくなるので、林野当局としてもいままでのような状況もさることながら、もう一歩踏み込んだかっこうで、新しいそうしたかっこうの再指定の問題について、もっともっと踏み込む必要があると思いますけれども、この点についてはどうですか。
  137. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  全国的な不況の進行ということでございまして、同じ製材業でございましても地域によっては、あるいは取り扱っている外材、内地材、外材の中でもソ連材とか米材とかいろいろ種類がございまして、そういう不況の度合いというものはある程度差がございます。これはもう当然であろうと思っておるのでございますけれども、ただ製材業というのが主として建築用の木材を生産することには変わりないわけでございまして、特殊な産地を形成しているというふうには理解していないわけでございまして、ただいまのところ特殊な地帯を限ってということはなかなか困難だろうと思っておるのでございます。しかし、単にこの保険法の指定によるというようなことだけに限定せずに、年末金融等を含めました緊急融資等のことがございますので、それらを含めまして総合的な対応が必要であろうと思いますが、そういう総合的な対応をする中で細かく地域的なことも配慮してまいりたい、かように考えているわけでございます。
  138. 中川利三郎

    中川(利)委員 そうすると林野庁長官は一般的な事態の中の一つとして全体的にこれをとらえる、こういう観点からいまの御発言が出たわけでありますが、そうしますと、いま不況業種に再指定してほしいという私の要求に対しても、それに該当するのかどうか、あらゆる角度から検討しなければならないというようなことをおっしゃっているわけですね。ところが十二月も迫ってまいりまして、あるいは倒産が、現実の問題として連鎖倒産というかっこうで事実が能代に出つつあるわけでありますが、もうそういう進行のあれを目で見ながらも手をこまねいているということにもなりかねないと思うのですね。そういうことではなくて、いま林野庁が当然業界全体の内部的な状態を把握しているわけでありますから、いまの時点、いまの状態の中で、今度再指定の問題が出たときにあなたはどうするのかということを聞いているのです。したがって、これからどう調べるのかじゃなくて、一日もゆるがせにできないような緊急の事態でございますので、再指定方についていまの状況ではだめなのかいいのか、あなたはやる腹があるのかないのか、この点をはっきりしていただきたいと思うのです。
  139. 松形祐堯

    松形政府委員 この再指定の問題でございますけれども、これは通産省の方で指定していただくわけでありますが、ただいまいろいろ御指摘ございましたような倒産の現象、あるいはそれに引きずられての関連倒産というようなことは、まことに大事な事態でございますので、それらを含めまして私ども検討した上で通産省にも働きかけたい、かように思っているわけでございます。
  140. 中川利三郎

    中川(利)委員 だから、そういう検討の中身が現実の状況を踏まえた上でどうなっているのかということを私は聞いたわけでありまして、その再指定をしない限りは、私はもう大変な状態になるだろうと思うのですね。ところが、その点については余りお触れにならないようであります。  通産省にお聞きするわけでありますが、林野庁からそういうかっこうできた場合に、おたくの方では再指定することについて、また独自にいろいろな調査をもちろんすると思いますが、いまの製材木材関係の不況から見ましてどのような御見解を持っているのか、もう一回念を押したいと思います。
  141. 織田季明

    ○織田政府委員 この不況業種の指定につきましては、原則的には全国ベースで考えることになっておりますので、産地指定というような考え方は原則としてとってないわけでございますが、ただ法律の中にも都道府県知事の意向を十分に参酌しというようなこともありますので、現実に林野庁の方から話がありました際には私の方自体も十分検討をし、また林野庁の話も聞きながら対処していきたいと思っております。
  142. 中川利三郎

    中川(利)委員 私は地域指定にこだわるわけじゃありませんけれども、地域指定の問題についても場合によれば都道府県知事からそういう進達があり、林野庁からもそういう話があれば一応考える。いわんや、地域指定でない一般不況業種の指定に対しては、前向きに早急に働きかける、この約束をひとつしていただかないと、私もいま地元に帰るわけにはいかないような状況があるわけであります。第一、見ていられないのですよ。この点について、くどいようでありますが再度長官の御決意を伺いたいと思うのです。
  143. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、いろいろなそういう実数的なものを全国的にもあるいは地域的にも十分検討し、あるいはそれをそろえる必要があるわけでございまして、現在それを検討している段階でございますので、直ちにここでどうのこうのということは申し上げられないのは残念でございますけれども、私どもこのような実態ということがよくわかっておりますので、そういうことを踏まえまして本当に真剣な検討をいたしまして通産省にも働きかけたいと思っているわけでございます。
  144. 中川利三郎

    中川(君)委員 実態を十分つかんでいると言う。私もつかんだ上で申し上げているわけでありますが、これ以上は深く追いませんけれども、ひとつその点は十分前向きに検討しているということに了解して、次の問題に入りたいと思います。  第二の問題は、この非常なインフレ、不況の中で、それを認めたがゆえに皆さん方は国有林野の産物の売り払い代金の延納等について、業者サイドといいますか、その立場からそれなりの延納措置をずっとやってきたわけでありまして、新たに十月一日から十二月三十一日までの分についても一カ月の延納を認める、こういうことを措置されたようであります。私はこのような政府の恩典といいますか思いやりのあるやり方を高く評価するものでありますけれども、実際中に入って調べてみますと、なかなか行き渡っておらないといううらみがあるわけですね。つまり画龍点睛を欠くという言葉もあるわけでありますが、そういう状況になっているわけであります。たとえて申しますと、能代営林署における五十年四月から九月までの素材一般競争入札の販売実績を調べてみますと、これはちょうど前の方の延納措置に該当する分でありますが、善通は三カ月以内ということになっておるわけでありますが、いわゆる皆さんの恩典といいますか延納措置として認められたものの比率は、金額的に言いますとわずか三三・六%にすぎないわけですね、つまり四カ月になったものは。あとはそれなりに三カ月物件だとか二カ月物件あるいは四十五日物件、さらには現納物件というかっこうでそれぞれ除外になっているわけであります。現に皆さんの競争入札の物件の明細書、入札当時のいろいろな資料を見ましても、延納措置をすると言いながら、内部的に見ますと、入札番号や入札条件によりましてはそれに何ら該当しておらない。だから、せっかくおやりになっても、零細な業者の方々でありますけれども、われわれには何にも関係ないじゃないかということで、そういう言葉も出てくる状況があるわけでありますので、ひとつお願いしたいことは、そういう画竜点睛を欠くようなことではなくて、大蔵省でさえもこの事情については十分了解しておるというわけでありますから、皆さんに均てんできるようなかっこうでそういう手だてを全面的にとる必要があると思うが、この点についてはどうですか。
  145. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  現在のような木材の需給動向から来ます価格問題等もございます。また、民間取引等がある程度手形等の延期をやっておりますこと等を勘案いたしまして、大蔵省と協議いたしまして、原則的には素材――丸太でございますけれども、素材の場合は三カ月以内ということになっておりますのをさらに十二月いっぱいまで一カ月延長いたしまして四カ月以内といたしたのでございます。したがって、実際運営いたします場合には、ただいま先生御指摘のとおり四カ月のものもございますれば一カ月、二カ月、三カ月あるいは現金即納というようなそれぞれの運営をいたしておるというのが実態でございます。  特に御理解いただきたいのでございますけれども国有林野事業の一方の資金事情というものも大変窮屈になっておりまして、御承知のような、価格が低迷しているとか生産が十分でないというようなところ等がございますと同時に、一方では国有林野の伐採、造林、林道とかいろいろな支払いもございますので、それをからめまして資金の調達なり資金回転というようなことを考えておるわけでございます。そのような情勢の中でございますので、経費の節約とかあるいは支出の繰り延べあるいは二百億の借り入れというようなこと等もやっておるわけでございまして、その辺も業界の方々にも十分御理解いただくように私どもも御説明申し上げておるところでございます。ただ、特に不況の中にございます零細な方々につきましては、随意契約販売等に際しましては、極力延納期間を四カ月にするというような運営をいたしておるところでございます。
  146. 中川利三郎

    中川(利)委員 そうした延納をやっても結局は一面営林当局のふところ勘定の方も二律背反の関係で問題があるんだ、こういうお話でありますが、確かにそのことは私わかるのですよ。しかし、実際に業者のふところがどうなのかということ、すぐ払える業者もいるし、払えない業者もいるわけですが、この選択は全くきかないようになっておりますね、一般競争入札の場合は。つまりこの物件については現納だぞ、この物件については二カ月以内だぞということはおたくの方が一方的に上の方から指定してくるわけですから、払える業者も払えない業者も、そういうことは何ら関係なしに、つまりおたくの恣意的なかっこうの中でやられているというところに問題があるわけです。随契についてはあなたおっしゃるようなかっこうでやられることは、私はそれなりに大変評価するわけでありますが、一般競争入札も、何か入札する前にでも、支払い条件だとかそういう点について、おたくの苦境を訴えることはもちろん大事なことだと思いますけれども、とにかく競争入札の場合は選択の余地がないわけですから、せっかくの皆さんの措置が皆さんだけの都合で、また業者のふところ勘定に関係なしに行われているところに若干問題があるだろうと思いますので、この点に対する御見解はいかがですか。
  147. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  確かに公売等では、私ども粒と申しておりますけれども一つのグループごとに展示いたしまして、これは三カ月延納の物件であるとか、四カ月だとかあるいは即納の分であるというようなこと等を表示いたしまして公売に付しているわけでございまして、その範囲内では競争ということでございますので、そういう契約の条件的なものは御理解いただいた上で入札していただいているわけでございまして、その点は私ども各局ごとに十分配慮するように指導をいたしているのでございます。特にその椪をつくります場合には材種とか数量あるいはその周辺における需要の度合いとか、そういうことを勘案いたしまして椪の大きさなり樹種をまとめるとかあるいは単独で掲示するとかいろいろ工夫しているわけでございまして、業界の方々がその辺の木材が入手できるような措置というものはその地帯ごとに、あるいはそういう樹種ごとに、私ども配慮しながら契約条件的なものを御提示申し上げているわけでございまして、今後もそのようなことで運営したいと思いますけれども、特に先ほど来御指摘ございますような事情がございますので、なるべく地元の方々の御理解がいただけるような方法で私どもは対処してまいりたいと考えているわけでございます。
  148. 中川利三郎

    中川(利)委員 地元の人々、業者の納得を得られるようなかっこうでわれわれはやっておるんだということでありますが、そういう業者の理解なり納得とは全くかかわりなしに入札の場合にはやられるところが問題なんですよ。つまりそのことが別に話し合いの前提にも何にもないわけでありますから、皆さんの方から、この物件はこうだ、この物件はこうだというかっこうで、それを入札せざるを得ないから入札するわけなんですね。いまあなたのお話はいろいろありますけれども、この点は私はちょっと納得できかねるところだと思いますが、時間の関係もありますので、随契の問題については十分そこを配慮するというお答えが前段あったようでありまして、いずれこれは確認したいと思うのですが、一般競争入札の場合にも、画一的に支払いできる業者を延納せいと言っているんじゃないのですから、そういう点で、そういう契約で実際は入札したけれども、その途中で何か行きがかりができたとか何か困ったことが起こったという場合はある程度柔軟なかっこうで対処していただければありがたいんじゃないか、こういうことを申し上げているわけであります。  もう一つは、そういう深刻な不況の中で延納の問題については大変ありがたがっているわけでありますので、秋田の言葉で言えばめんこいといえば抱かれるというのがありまして、かわいいというと抱かれちゃうという言葉がありますが、そういうことじゃなしに、本当に業界の深刻な不況の中から出てきた要求として、来年三月までの延長を何とか経営悪化の歯どめとしてやっていただけないだろうかということを、県の木材産業協同組合が県に対してもそういう要求をいま出して、国にもその要求が出てくると思いますけれども、こういうことを言うておるわけであります。したがって、この点については前向きに検討できないかどうかということですね。そうしてことしの不況倒産を少しでも防がなければなりませんし、どうしても年度内の問題が全体として出てくるわけでありますので、この点を長官に特段の御配慮をいただきたいと思うわけでありますが、大蔵省の関係もあるということはもちろんでありますけれども長官の御意見を承りたいと思います。
  149. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  国有林の延納問題でございますけれども、今後の延納期間につきましては、業界の資金事情あるいは樹材種ごとの需要動向に対応いたしまして、国有林野事業計画的な遂行に必要な資金の状況等も考えながら、関係業界に協力をお願いしながら一層きめの細かい取り扱いをやっていきたいと思っているわけでございます。ただ御指摘ございました契約後の条件変更というのがあったように思うのでございますが、契約した後ということになりますと、契約前に表示されたことと条件が違うということによりまして、国の債権管理に関する法律上からもこれはできないというのがたてまえになっておりますので、御了解いただきたいと思います。  なお、最後にお話ございました三月まで何とかならぬかということでございますが、現在この十二月までの延期をいたしておるわけでございまして、その後の補正予算等における住宅対策とかいろいろとられておりまして、その後の市況の動きとかあるいは木材の動きとかそれらを十分考えまして、またそれを検討いたしまして、十二月の時期になりましてこの態度を決定させていただきたいと思うわけであります。
  150. 中川利三郎

    中川(利)委員 もちろんこれから十二月の状況を見なければわからないということは当然でありますが、私がお聞きすることは、全体的な業者のいまの感覚からいたしましても、それからふところぐあいからいたしましても、もう十二月の状況の中で一定のそういうより深刻な状況が出るということは避けられないことだと思っているわけでありますが、いまの長官の御発言では、十二月の時点に改めて検討し直して、場合によればそのことは考えてもいい、考える余地がある、場合によればその状況の中で、こういうことだと思いますがそうですね。
  151. 松形祐堯

    松形政府委員 十二月の段階になりまして検討いたしまして、必要があればわれわれはそういう処置もとらざるを得ないであろう、こういう意味でございます。
  152. 中川利三郎

    中川(利)委員 次は原木高の製品安、これはいつも言われていることでありますが、この問題で若干お聞きしたいのでありますが、製材不況の実態として、この前私は能代の営林署長のところへ行っていろいろお話してまいりましたのですが、私が業者から聞いたことは、皆さんの方の造杉、これは一石平均四千円の赤字だと言うけれども一体どうなんだと言ったら、おたくの署長さんは、いやそうじゃないんだ、秋田銀行調査によれば三千五百円の赤字でございますというようなお話なんですね。どっちにしても、その事態は四千円が三千五百円であっても赤字であることを認めていらっしゃるわけです。  これは原木高の製品安という一つの典型だと思うのですけれども、私若干それを調べたところによりますと、原木の丸太は、五十年の一月を一〇〇とすれば十月には一一〇になっているんですね。ところが製品は、同じように五十年一月を一〇〇とすれば十月時点では一〇六になりまして、四%の逆ざやが当然出るというようなかっこうになっているわけです。しかも昭和四十年一月に比べますと、その逆ざやというか値上がり率を調べてみますと、丸太が二五四になっている。製品が二〇五になっているんですね。このような逆ざやが四十年来ずっと続いているわけであります。したがって、造杉製材で一立方当たり六千九百十九円の赤字になるということで、県製材協会が秋田営林局に出した十月の陳情書にもそう書いてあるわけです。先ほど言いましたように、秋田銀行調査によっても三千五百円の赤字だ、こういうふうに書いてあるわけです。私たちの党の調査によりますと、随意契約では一立方当たり六千百二十一円の赤字になるという計算が出ております。公売では一万八千七百二十四円の赤字になるというふうに出ておるわけですね。  そこで、業者の言い分ではこう言っておるんです。私たちはもう入札した瞬間に今度のものは何万円損するなということを最初から予定して落札するというんですね。こんな悲しいことといいますか、こんなことがあってよいものだろうかということです。そんなに赤字になるものを落とさなければいいじゃないか、落札しなければいいじゃないかとあなたは言うかもわかりませんけれども、自分の営業を続けていくために、従業員に給料を払うためにどうしても仕事を続けなければなりませんね。いまはその仕事も操業短縮でなかなか十分続けられなくなっておりますけれども、こういうことはやはり根本的には原木高の製品安という問題が基調にあるということを言わざるを得ないと思うのです。したがって、適正なマージンだとか適正な労務費というものが当然製品の中に――おたくから払い下げた原木をちゃんと製品化してやればそれも得られるというような、市況逆算の中でいまの払い下げ価格を決めるということでない限り、いつまでたっても根本的な問題は解消されていかないし、いまの業者の深刻な事情はなくならないということです。この点について、私はかねがね、この前も御指摘申し上げたわけでありますが、どのように改善されてきたのかさっぱりわからないわけであります。したがって、この点について長官の御意見を承りたいと思うわけであります。
  153. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  原木高の製品安という、特に杉、ヒノキという造林された山から出てまいったものにつきましてそのような現象があるということは、一般的、全国的な傾向でございまして、そういうことはやはり需給のバランスと申しますかそういうことでございます。したがって、私どもは、先ほどもお答え申し上げましたが、住宅というものの戸数、建築着工というものをいかにふやしていくか、こういうことが基本にありまして荷物が動いてそのような逆ざやという現象が解消される、こういうことでございますので、補正予算等につきましても、そういうことを中心として私どもはお願いしたわけでございます。  なお、それに対応いたしまして、先ほども申し上げました、とりあえず年末の緊急融資とかつなぎ資金とかそういうことを私どもは一方では考えておるわけでございまして、少なくともそういう住宅建築が准むことが逆ざやの解消になる、それが基本であるという理解をいたしておるのであります。  ただ、御指摘ございましたような価格算定について、これは先般の御質問にもお答え申し上げたのでございますけれども、製品逆算価格を直接採用できないかということでございますが、このことにつきましては、造林されました杉、ヒノキというものは民有林から出材するものがほとんど大部分でございます。そういう実態でございますので、民間における流通価格との不均衡を生ずるというようなおそれもございますので、製品の逆算価格を造林の杉から適用するということはまことに困難であろうと思うのでございます。ただ秋田杉とか木曽のヒノキとか国有林の独占材的なものにつきましては、製材品価格を反映させろような措置というものを現在もとっておるわけでございます。
  154. 中川利三郎

    中川(利)委員 長官は住宅建設を促進すればこの逆ざやはなくなると言いますが、いまの時点で行政としてどうするかということを考えるならば、もちろん住宅建設の促進は大変大事なことでありますけれども、この逆ざやの現象が示していますように、原木丸太と製品の値上がり率なんか見ますと、四十年来ずっとこういう傾向が続いているわけですね。そうするならば、いまどれだけ原木買って製品にしたところで、この中から適正利潤も労務費も出てこないことは明らかなわけです。そのことを住宅建設の責任にしても問題は解決しないと思うのです。だからこそ聞いているのであって、この点についていまのような御認識である限り、私は業界というものはよくならないことはもう明らかだと思いますが、ここに来てあなたは、民木の方の市場が天杉以外は主なウエートを占めて構成しているからしようがないのだ、こう言いますけれども、私はここでこそ国の林野行政が、いやそうじゃないのだということで、あなた方が先頭を切ってもらうといいますか、こういうかっこうでやっていただかないことには、いまの局面の打開はできないだろうと思いまして、このことは基本的な問題でありますから、いま一回御答弁いただきたいと思うのです。
  155. 松形祐堯

    松形政府委員 私ども原木を公売いたします場合、公売でございますから競争入札ということになるわけでございます。その中であらわれてまいりました価格の中値というものをとりまして、私ども価格にいたしておるわけでございまして、一般的国の産物の売り払いといたしまして、そのような価格を積算するためにも公売においてあらわれた価格をとらざるを得ないという面もあって、原木荷というようなことがある程度減少されているのじゃないかとも思いますけれども、先ほど来申し上げましたように、民間における流通価格との不均衡が生じまして、民有林あるいは民有林に関係する生産あるいは所有者の方々にもこのことが影響するということになりますと大変問題がございますので、製品の逆算価格を一般の造林地から出てまいります杉、ヒノキに適用することはなかなか困難だというふうに御理解いただきたいのでございます。
  156. 中川利三郎

    中川(利)委員 時間も参りましたので、いまの問題については後々徹底的に御論議申し上げたいと思います。  同時に、一つだけ言い残したわけでありますが、木材備蓄の問題を林野庁がいま改めて提起しておるわけでありますね。こういう点で、政府責任で製材製品をこういう場合には買い上げるということをもう少し積極的にお考えになっていいじゃないかと思いますが、この点に対する御回答と、最後の最後でありますが、私は栃木県日光市の林業構造事業にかかわる阿寺沢林道問題について一つだけ聞きたいと思うのです。これはもう再質問しませんから。  この林道事業昭和四十六年度に指定され、昭和四十七年六月二日、事業計画の承認を林野庁より受けているものであります。その後、四十九年五月三十一日に幅員を広げるということで事業計画の変更申請がされています。このときには路線の問題は出されておりませんが、こういう経過の中で昭和五十年一月十日に日光市、栃木県、森林所有者の参加で受益者会議が開かれまして、事業着工の合意がなされ、一月十四日に四つの業者が参加して入札が行われ、落札者が決定したわけであります。ところが、その後十六日になって、計画変更をするので入札の取り消しをする、そういう旨の話がありました。  そこで、入札の取り消しとは異常な事態であり、調査してみますと、森林組合の一部幹部が、自分が出資する会社に仕事させるということに事前工作をしていることがはっきりしたわけであります。ところが、入札の結果思いどおりにいかなかったので、入札取り消しという暴挙に出たことが明らかになりました。そこで、市当局、県当局、また林野庁も合意した計画に基づいて入札が行われていながら入札が破棄されたということについては一体どう考えるかということです。  もう一つの問題は、この林道は林道規程にも合致したものであり、受益者会議で確認されたものなので、通常は変更は考えられないものであります。しかし、年度末の三月二十日、再度事業計画の変更申請がされたのでありますが、その理由を見ますと、線形の工部というか、その工部が、用地の関係でということを理由にしていますが、依然、本当の理由が明らかでないまま計画変更が申請されています。新しい計画は、当初計画に比べ予算も増額され、事業も翌年度に繰り延べられました。当初計画に重大なミスがあるのならともかく、林道規程に合致したものであり、何ら変更する理由はないと思います。年度内に着工ができなかったことについて問題をはっきりすべきであったと思いますが、この点はどうか。  また事業が翌年度に繰り延べられ、増額変更されるというような場合、特に内容の把握が必要だと思われるがどうか。  それから、当初計画に規則違反などの問題がない以上、地域住民の生活にも役立つ当初計画事業を推進していくのが当然と考えられるがどうか。  一部の者の圧力によって路線が変更されるということがあってはならないと考えますが、林野庁は一部の者の圧力を排除し、再度前の計画の指導を行うべきである。とりわけ、国から五割の金が出ているわけでありますので、このような不当なことに対して、総体的に林野庁見解を求めたいと思います。  以上であります。
  157. 松形祐堯

    松形政府委員 第一点の木材備蓄機構についてでございますが、御承知のような備蓄機構が昨年スタートいたしておるわけでございます。この備蓄対策というのは、木材需給の一時的な不均衡によりまして、木材の価格が異常に高騰する、あるいは高騰するおそれがあるという場合に備蓄いたしておるわけでございまして、それで木材を放出することによって需給状況を緩和しまして、木材価格を鎮静化させよう、こういう趣旨でございます。現在、価格の低迷時にこれを買い支えるというようなことを目的としたものではないわけでございます。ただ、昨年スタートしたばかりでございまして、直後ということでいろいろ検討すべき問題があるわけでございまして、今後、基本的な洗い直しをいたします場合には、これも一つの課題であるというような理解をいたしておりますので、課題といたしまして検討したいと思います。  なお二点目の、栃木の日光市の林構事業に係る林道の関係でございますが、突然なことで十分私資料を持っておりませんけれども、十月の二十四日に、日光市の方からお見えになったようでございまして、そしてこの林道問題につきましての御説明があったのであります。このとき、事前に県の方を通じまして林道の変更等につきましていろいろ話があったようでございますが、入札後であるとか、そういうことを私どもは実は承知しておりませんで、調整されて申請がなされたものだというような信じ込み方をしておったのでございますが、いまのような入札後であったというようなこと等でございまして、現在、現地での調査なりあるいは調整等を行っておる段階でございまして、そのまま凍結をしておるというような処置をとっておるわけでございます。  なお不十分なところは森林組合課長からお答え申し上げると思います。
  158. 中川利三郎

    中川(利)委員 後でまたやることにしてこれで終わりにします。
  159. 今井勇

    ○今井委員長代理 瀬野栄次郎君。
  160. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 山地酪農、松生丸事件、生糸の一元化輸入制度の恒久化等について農林大臣及び当局に質問いたします。  まず本題に入る前に、わが国飼料需要というものが畜産生産拡大に伴い年々増加いたしております。昭和四十九年には濃厚飼料の場合二千百十四万トンにも上っておりまして、約七〇%以上がアメリカを初めとする海外からの輸入によって賄われているのが現状であります。一方、国内産の自給飼料生産は、増大する飼料需要に即応する積極的な対策がほとんどないまま今日に至っているという現状でございます。特に濃厚飼料につきましては、国内での自給対策に力を入れず、いたずらに海外依存度を深め、今日世界の飼料貿易量の約一九%をわが国が買いあさっておりまして、世界的な食糧需給の逼迫の中で、絶えず海外市況変動の影響を受けていることも御承知のとおりです。こういったことで、本日、飼料需給及び価格の安定に関する法律案並びに飼料作物生産振興特別措置法案、この両案を四党共同提案として国会に提案したわけでございますが、優良草地の荒廃、さらには草地造成牧草更新、草の品種改良のおくれから、その単位当たりの収量は先進諸外国に比較して著しく低いものがありまして、これが改善対策というものは飼料用穀物等国内生産対策の強化とともに、わが国畜産振興のため緊要な課題であるということから、本日の提案となったわけであります。  こういったことで、政府は、本日野党四党から出しましたこの飼料法案、別名えさ二法と言っておりますが、これに対してひとつ十分検討し、さらには対策を講じてもらいたい、かように思っておるわけですけれども、本日の四党提案に成るえさ二法に対して、まず政府の所信を承りたい、かように思います。
  161. 大場敏彦

    ○大場政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたように、今後の日本の畜産の帰趨を決するものは、その生産資材でありますえさの問題をどうやって解決するかということにかかっている、かように思います。     〔今井委員長代理退席、中川(一)委員長代理着席〕 えさの問題は、結局つまるところ、いかにして飼料自給度を高め、ことに粗飼料の自給度を高めていくかといったことが一つと、それからもう一つは、濃厚飼料につきまして、その供給の円滑化を図ると同時に価格の安定を図っていく、こういったことに尽きるのじゃないかと思います。そういう意味におきまして、御提案なさっていらっしゃいます法案の中身は今後検討させていただきますけれども一つの問題として、流通飼料需給の安定、価格の安定、そういった事柄と、それから飼料作物国内における増産体制の促進、こういったことにつきまして目指していらっしゃるわけでございますから、非常に重要な事柄だと私ども思っております。具体的な中身につきましては、非常に大切な事柄でございますので、慎重に検討させていただきたいと思っているわけであります。
  162. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 えさ二法案については政府としても慎重に検討をさせていただきたいということでございますので、本日提案したわけでございますので、将来にわたって重要な問題でございますから、ひとつ慎重な検討を進められるように特に要求をいたしておきます。  そこで、政府が示した六十年を目標とする農産物の需要生産長期見通しによれば、昭和四十七年度の飼料作物作付面積七十六万八千ヘクタールを昭和六十年には百四十六万九千ヘクタールに拡大することとしております。その方法としては、一つ、草地の開発、二つには稲作等からの転換、三つに水田裏の積極的活用等が考えられておるようでありますが、特に次の点に対する政府のお考え等をお聞きしたい、かように思うわけであります。  最初に草地の開発利用についてでありますけれども土地改良長期計画によれば、四十八年以降十カ年で約四十万ヘクタールの草地開発を予定しておられますが、しかしながら、最近の公共事業の予算等の抑制、事業単価の上昇等から見ますと、目標の達成はとうてい不可能であるということで、九月十日、また十一月の初めに農林大臣に指摘をしてまいりました。こういったことを踏まえまして、わが党はかねてから山林原野の有効活用を図る方策として山地酪農の普及を提言してきたのでありますが、これが国の施策として実施されれば、相当量の粗飼料供給に寄与するということは、火を見るよりも明らかであります。むしろ、いままでこういったことをやらなかったのが問題だ、かように私は思うわけであります。  そこで、山地酪農の振興、また山地酪農の重要性については、山地酪農を進めるについての最小限の定義というものがあるわけです。すなわち、わが党では、山地酪農三章、こういうふうに言っておりますけれども一つには牧草地で草を創造し、二つには草を乳牛に処理させる、三つには人は調整して牛乳それから牛体を生産する、こういうような三つの原則があるわけです。従来の日本の酪農が都市近郊の搾乳業で始まったことに起因して、輸入飼料や都市廃棄物等に依存した加工・処理業的なものになっているのに比べまして、わが国の広大な山地を利用し、日本の恵まれた気象条件や乳牛の食性等から見て最も適した在来の雑草である芝、すなわち山芝と普通言っておりますが、これを牧草とする牧山を創造し、その草を放牧した乳牛に処理させ、健康長寿な乳牛を育成する。草の育成、刈り取り、詰め込み、運搬、牛の管理等に要する多大な人力を省き、人間は採草地や飼料畑から冬越しのための飼料を確保したり、一定量の濃厚飼料を調整投与して牛乳、牛体を生産するというもので、従来の草地観、乳牛観、酪農観と著しく異なる独特の酪農形態であります。  時あたかも世界的な飼料穀物の高騰によりわが国畜産農家の経営が未曽有の危機に直面している一方、畜産製品は高騰し、同じ動物たん白源として重要な水産資源にしても、経済水域の拡大により大幅な縮小が余儀なくされていることからも、このような自給飼料型の酪農を振興する乙とは、国民食糧の安定確保のためのエース的存在であるばかりか、畜産公害のない緑豊かな山地の造成は、環境保全、国土の有効利用の立場からも重要な意義があると言わねばならないが、農林省の山地酪農に対する見解を承りたいのであります。  なぜ私がこういったことを申し上げるかと申しますと、従来から農林省は、いわゆる大規模草地改良等を推進してまいっておりますけれども、これにもいろいろ問題がございまして、私たちは今後農家の所得を増すためにも、こういった山地酪農は目下の焦眉の急である、かように思います。そういった意味で、提案を兼ねて背景を申し上げ、まず冒頭、農林省見解をお聞きするわけでございます。
  163. 大場敏彦

    ○大場政府委員 山地酪農は一般の耕種農業ではとても利用できないような急傾斜地帯を畜産的な立場で利用する、その場合に、場合によっては牧草を栽培する場合もございますけれども、あるいは主として草地を利用いたしました放牧形態によって省力的な酪農経営を営むということで、日本の国土の七〇%が山林で占められているわけでありますから、そういう意味におきましてもきわめて意義のあるものであるというふうに思っております。日本でも、現実的に先駆者の方々がすでにやっておられまして、そういうグループも結成されておられます。私どもにもいろいろ御提言がありますので、いろいろ拝聴しております。山地酪農につきましてはいろいろ問題がないわけじゃないわけでありますけれども、たとえば草の生産力が低いわけですから、かなり広大な面積を要するとか、あるいは急傾斜の通例といたしまして機械力利用が非常に困難だとか、あるいは冬場のえさをどうするかとこういった問題があるにはあるわけでありますけれども、しかしこれは解決できない問題ではありませんで、それ相応の解決は可能であります。逆に、日本の酪農が今後の課題としております経営規模の拡大ということに対しましては、何といたしましてもその制約条件でありますのは、一つは労力問題あるいは土地問題ということが制約条件になっているわけでありますが、山地酪農はそういった土地条件土地の取得の困難性あるいは労働を省力化という形で解決する、こういった利点がありますので、それ相応の位置づけを日本の酪農の中にいたしまして進めていくべきものだというふうに私どもは理解しております。
  164. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 現在の畜産危機が酪農家数や乳牛の飼養頭数の急速な減少を引き起こしておりまして、生産農家にはもちろん、国民の食生活にも大きな先行き不安を与えていることは言うまでもありません。これを根本的に解決し、酪農日本の建設を実現するためには、近年ほとんど利用されていないまま放置されている薪炭林等の雑木山等を初めとする広大な山地から潜在的生産力の可能性を引き出す山地酪農を振興する以外にない、こういうのが私の提案でございます。  この考えの上に立って山地酪農開発の可能性を見てみますと、一つには、山地酪農経営基本に沿って忠実に努力して成功をおさめている農家あるいは成功しつつある農家がすでに東北、関東、四国、九州等の一部で存在しております。いまも局長からそのことは承知しているという答弁がございましたとおりでございます。ここにおいては一般の酪農家に見られる後継者難は見られず、むしろ経営への従事を希望する子息が多いわけであります。  二つには、日本における山地酪農の対象面積は、傾斜度だけに関して言えば放牧可能面積は千五百万ヘクタール以上ありますが、経済的に飼料生産量の多い草地をつくることができて牛乳、牛肉の需要圧力が強いということを考慮すると、七百万ヘクタールがその対象面積と見られるのであります。  また、安定した専業経営として成立する標準的な経営規模としては、傾斜地を主とする牧山が十ないし二十ヘクタール、段地、緩傾地を利用した宅地、飼料畑、採草地、普通畑等で五ヘクタール、合計十五ないし二十五ヘクタールあれば十分であるが、こうした安定農家が三十ないし四十万戸創設され、飼養頭数は成牛六百ないし八百万頭、育成牛六百ないし八百万頭、合計千二百ないし千六百万頭を新たに飼育できる可能性があるわけです。ちなみに四十八年度の全国の飼養頭数は、成牛、育成牛合わせて約百七十八万頭にすぎないわけであります。  したがって、こうしたわが国の潜在的可能性を現実のものとして引き出し得るかどうかは、山地の利用権確保、基盤整備資金、指導機関の設置等について国が適正な対応策を思い切って実施するかいなかにかかっておるわけですけれども、この点について政府はどういうふうな見解をお持ちであるか、ひとつ簡潔で結構ですからお答えをいただきたい。
  165. 大場敏彦

    ○大場政府委員 事業の実施につきましては、まず助成面でございますが、草地改良事業という公共事業でございまして、その中には、単なる牧草だけではございませんで、野草地の利用ということも取り組んでおりますから、それを弾力的に活用していくということは一つの方法ではなかろうかと思います。  それから資金の手当てにつきましては、農林漁業金融公庫資金の長期低利資金を活用するということも一つの方途であろうかと思っております。それから問題は、先生も御指摘になりましたように利用権をどうするか、利用関係の調整をどうするか、こういったことに来るわけでありますけれども、それにつきましては、一つは農地保有合理化法人による土地の先行取得、そういった対応もございましょうし、あるいは農地法による草地利用権の設定という対応もございます。あるいは国有林の場合には国有林野の活用法に基づきます解決の仕方もございます。あるいは入会権が非常に錯綜しております場合には、入会権を近代化する入会に関する近代化の法律に基づきます対応の仕方、いろいろ措置はあるわけでありますが、ケース・バイ・ケースに即しましてそういった対応をしていきたい、かように思っておるわけであります。
  166. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 山地酪農の振興によってもたらされる成果というものは莫大なものがあるわけでございます。後ほど農林大臣にも最後にお聞きしますので十分お聞き取りいただきたいと思っておりますが、まず第一に、国民食糧の安定確保の上から見て、先ほどから申し述べてまいりましたように、標準規模農家で牛乳、乳廃牛等によるものも含む牛肉を、栄養的に見ても年間百人年分を生産できることになります。これを成牛のたん白質に換算すれば八十九頭分に相当し、米の熱量に換算すれば三百二十六俵となり、三十万農家の総供給熱量となると全国の米の年間生産量の総熱量の約半分に達する、こういうような試算が出てくるわけであります。しかも、ここから生産される牛乳、牛肉は農薬等による汚染度が少ないばかりか、牧草は懸念される異常気象に対しても強いわけでありますので、この点の安心感があります。  第二には、安定農家の創設と過疎対策ということでございます。乳飼比――飼料の購入費が、生産される乳代と牛代の合計の中に占める割合をいうのですが、乳飼比が三〇%以下に抑えられ、都市近郊における搾乳農家ではこれが五〇%前後でありますが、輸入飼料価格の高低に対して左右されず、前述の標準規模農家の粗収入は、四十九年一月現在の評価によれば一千万円を超し、収益で見ると十五ヘクタールの米作農に匹敵する安定農家が低生産性の山地に創設されることになります。これがひいては過疎対策となり、林間放牧方式等とミックスさせるならば林業の生産性向上にも大きく貢献するというのが第二の理由であります。  第三は、国土の自然環境保全の上から、畜産公害等を軽減するばかりか、芝草地は土壌浸食防止、国土保全の面からもすぐれた草生を持つとともに、国土の美観を呈するということになるわけです。  こういったことがまだたくさんありますけれども、本山地酪農提案に当たって重要なポイントとなるわけです。私はこういうように理解し、今日まで長年研究して指導してまいりましたが、このことについて農林省はどのような見解を持っておられるか。このことは事前に当局にも私の論旨は通告して研究していただいておるわけですから、その点、当局の見解を承りたいのであります。
  167. 大場敏彦

    ○大場政府委員 先ほど申し上げましたように、わが国の酪農振興上の立場からは、規模拡大の制約条件を回避できるという大きなメリットが山地酪農にはある。それからいま先生が御指摘になりましたように、国土の高度利用という観点からも、これは単に畜産ということだけじゃなしに、もっと広義な立場からの意味や、日本の国土の七〇%を山地が占めているんだということから考えて非常に意味がある。それから、日本の都市近郊の酪農と違いまして、糟糠類等の濃厚飼料等を使ってやっているものとは違い、また公害等の心配もございません。そういう意味で山地酪農というのは、日本の酪農が当面しておりまする公害問題をどうするかというような桎梏条件から解放できるやはり一つの舞台ではなかろうかと思います。と同時に、いま御指摘のありましたように、エロージョン防止といったような側面、そういう意味での国土の保全的な側面もありますから、非常に多方面的なメリットはあるわけであります。  そういう意味で私ども先覚者の方々からいろいろ御提言をいただき、お教えを願っているわけでありますが、今後ともそういった点に着目いたしまして勉強はしていきたいと思っているわけであります。
  168. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一点、山地酪農振興のための具体的政策についてでありますけれども、山地酪農の振興を図るためには、まず国策の中に山地酪農振興政策を積極的に位置づけ、次のような政策の展開を図るべきである、私はかように思っております。  一つ土地政策の整備、すなわち、国公有林を初め未利用の雑木林等、山地酪農のために活用できるよう法改正をするなり、行政指導の改善を図るということであります。  二つには、金融政策の改善、すなわち基盤整備のための資金及び事業を開始して数年間は十分な収入が得られないことを考慮し、生活資金として国が十分な資金を融資できるように金融制度の抜本改善を図るということであります。  三つには、指導、技術研究機関の設置、すなわち山地酪農についての技術研究や指導、普及活動のための機関を国や地方公共団体の助成で設置するということであります。  四つには、環境基盤整備への助成強化、すなわち山地は一般に農道、水道、電気などの整備に要する資金が膨大になり、個人負担の限界を越えがちである。公共的性格を持つこのような基盤整備事業に対する国や地方公共団体の助成の拡充強化を図るということであります。  この四つのことをわれわれは提案しておるわけですが、これに対する農林省の対処方針を伺いたいのであります。
  169. 大場敏彦

    ○大場政府委員 土地の利用関係の調整の問題につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、たとえば国有林の場合には、国有林野活用法によりまして適地の選定をする。現に、まだそう大々的ではございませんけれども国有林の場合におきましても、草地開発のための活用面積が一万数千ヘクタールという程度まで次第に伸びてきております。あるいは農地法に基づきます農地利用権の設定で、市町村または農業協同組合が知事の承認を受け、あるいは知事の裁定によりましてその土地を利用するための賃借権、草地利用権を設定する、こういったこともいろいろ岩手だとか福島だとか北海道だとか、そういった地域で次第にその芽が出てきているわけであります。  それから、入会林野の近代化法に基づきまして入会権の消滅、所有権だとかあるいは地上権等の権利の設定等の手続法もあるわけでありますから、これにつきましての整備もやはり進めております。農地保有合理化法人による農地保有の合理化ということも各県で進めておるわけでありますが、こういったことにさらに積極的に今後力を注いで、線を太くしていきたい。  それから、国の財政面での後押しといたしましては、単に平場におきまする高度集約的な牧野の利用だけではなしに、そればかりが万能ではございません、もちろんそれも必要でございますけれども、やはり山地等におきまして天然の草地を改良して、野草地を改良して、それを粗放的に利用するというような態様も必要でございますから、団体営草地改良事業を弾力的に活用いたしまして、それによりまして事業の助成を図っていきたい。  それから低利長期資金につきましては公庫資金の活用等の措置をいたしたい、かように思っているわけであります。  技術指導につきましては、これは改良普及事業あるいは畜産会のコンサルタント、そういった普及陣営というものを活用いたしまして、率直に申し上げまして、現在までのところ十分ではございません、ございませんが、早急にそういった陣営の力を充実いたしまして対応していきたい、かように思っているわけであります。
  170. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣にお伺いしますが、いま冒頭から申し上げてまいりましたように、えさ二法案を本日、野党より提案しました。えさがいかに重要であるかということは御承知のとおりです。その経過は抜きまして、その一環として飼料対策の上から、日本の限られた土地農林省も粗飼料生産に力を入れておられることは事実であります。そういった面で私もかねがね山地酪農については再三政府に申し上げてまいりましたが、一向その進展が見られないまま今日に推移しておりますけれども、すでに民間団体ではかなりの成果を上げて、まさにまたその効果も莫大なものがございます。日本の将来のことを考えたときに、健康な牛に健康な乳がもたらされるように、公害のない、そしてしかも日本の国民に農薬被害のかかっていない純粋な乳、肉を提供して、そして将来、健康な牛の生産に携わるということからも、山地酪農について従来から申し上げてまいりましたけれども農林省はどうかすると、従来から草地改良というようなことで何かぱっと目立つようなことをやらなければどうもやったようではないというふうなことも言われておりまして、どうも山地酪農とかこういったものに力が入らない。もっと国有林の活用を図ると同時に、これにうんと力を入れる。そして農家のいわゆる生産コストも下げると同時に、今後農民にも普及し、そしてまた、山地酪農が大いに振興できるような環境づくりをしてやるということが大事である。こういった意味で初めて公開の場できょうは通告をし、このようなことを申し上げたわけです。  今後この問題については、機会あるごとに政府見解をただしていくつもりであるし、予算措置等いろいろ考えてもらいたいと思いますけれども、ややもすれば、従来の農林省の施策が、このことを強く打ち出すと何かむだであったかのように、または失敗であったかのような印象を受けられるというので、そういった心配というのですか懸念の上から、積極性がないというのが一般の批判であります。そういったことを打ち破って、国民のために勇断をもって山地酪農の推進を図ってもらいたいというのが私の本提案の趣旨であります。そういった意味で、農林大臣から最後に一言これに対する見解をお聞きしたい、かように思います。
  171. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 食糧自給体制を推進するという立場からいけば、山地酪農が非常に大きな意味合いを持っておる、私はこういうふうに考えております。私も各地をあちらこちら歩いておるわけでございますが、農林省もこれに対して何もしないというわけじゃなくて、局長がいま申し上げましたように、だんだんと施策は進めております。林野庁の実験事業として行っておる林間放牧事業であるとかあるいは国有林活用化法に基づくところの里山利用であるとか、こういうことも山地酪農の一端であるというふうに考えておりますし、またこの重要性については、さきに発表されました国土庁の中間報告にも触れておるわけでございます。これからのわが国の食糧を確保するという点からも、この山地酪農というものを私たちは非常に意味のある重要な課題であるというふうに考えて施策を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  172. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、松生丸銃撃事件について若干お尋ねをいたします。  九月二日朝、朝鮮半島西側の黄海で操業中の佐賀県東松浦郡呼子町、浦方漁業協同組合所属フグはえなわ漁船松生丸、田川三喜男船長ら九人乗り組みは、北朝鮮の警備艇から銃撃を受け拿捕されたわけであります。その際、柳原増太郎さん四十九歳、前川三千男さん三十七歳の二人が死亡しまして、前川源一郎さん、磯口満志さんの二人が負傷したことは御承知のとおりでございます。心から亡くなられた方に対して哀悼の意をささげるものであります。また、遺体と松生丸は、事件発生から十二日たった九月十四日に帰ったわけでありますが、負傷した二人は十一月十四日、愛知県衣浦港に入港の朝鮮民主主義人民共和国の貨物船で帰国されたわけであります。  政府はこれに先立って十一月十一日、井出官房長官から同事件の死者、負傷者に対し弔慰、見舞い金を贈っておられますが、まず農林大臣はこのことを御承知でございますか、時間もありませんから端的に聞いてまいります。お答えいただきたい。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいまのお話につきましては官房長官から、その後、内閣の予算でもって見舞い金を出した、こういうことで聞いております。
  174. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この弔慰、見舞い金は死者二人の遺族に百万円ずつ、負傷者二人には三十万円ずつ、計二百六十万円と言われておりますが、この点についても御承知でございますか。
  175. 内村良英

    ○内村政府委員 私どもが内閣官房から聞いておりますところによりますと、この金額等につきましてはその性格上、一々外部に発表しないことになっておりますので、ここでお答えすることはお許し願いたいと思います。
  176. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣も、この見舞い金の出所についてはわからないわけですか。同じでございますか。
  177. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 見舞い金を出したということを聞いております。
  178. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 見舞い金、弔慰金については、井出官房長官からも聞いたということは確認できたわけですが、政府の出所については農林大臣明確でございませんけれども、これは政府の公金なのか、ポケットマネーなのか明確でないのでいろいろ疑問が持たれておるわけです。官房長官のポケットマネーということになれば多過ぎる、こういうふうに思うわけでありますし、また内閣名義か、首相名義か、あるいは官房長官か、井出一太郎名義なのか、あるいはよく俗に言われますところの幻の機密費と言われます出所はあるともないとも言われますところの内閣官房機密費からの支出かということが疑問視されておるのですけれども、その点については大臣は全然わからないわけですか。どういうふうに聞いておられるか、その点さらにお聞きしたいのであります。
  179. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回関係者にお見舞いとして差し上げた金額は内閣の交際費から支払ったものであり、交際費の支出目的である慶弔、見舞い等に当たるものと考えております。なおこの支出については会計検査院の検査対象となることはもちろん言うまでもないわけであります。
  180. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま内閣の交際費、慶弔、見舞い費から出した、会計検査院の検査の対象になる、こういうふうに明確にされたわけでありますが、そうしますと、農林省でいろいろ検討しておられましたところのソ連に近い北方海域や中国大陸の周辺で拿捕、抑留された漁船員との関連からお尋ねするわけですけれども、たしか三十四年の五月の閣議決定に基づく救済措置があっておりまして、一つには一カ月以上抑留された場合、一カ月につき一万円、二つには死亡した場合には七万五千円が支給される、こういうふうに私記憶しておるのですけれども、松生丸の死傷者の場合は、厳密に言って中国大陸、ソ連邦海域周辺の範囲に含まれるかどうか、この点もあわせてお伺いしておきます。
  181. 内村良英

    ○内村政府委員 水産庁といたしまして、内閣官房から聞いているところによりますと、今回の事件は国際的にも微妙な状況の中で発生した異例の事件であり、関係者にとってはまことにお気の毒なことであったので、死亡者の遺族、負傷者に対するお見舞いとして差し上げたものであるというふうに聞いております。今後このような事件が発生しないよう切に念願しており、このようなケースは今回限りのものと考えておるのだというふうな説明を受けております。
  182. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それて異例のことはわかりましたが、さっきの北方海域、中国大陸周辺の範囲内、こういうことで水産庁は理解しているか、水産庁のお考えを聞くわけです。いわゆる水産庁としてはこの点なかなか解釈がむずかしい、行政レベルでは現在判断中というふうにも聞いておったのですが、その点はどうですか。
  183. 内村良英

    ○内村政府委員 今般のお見舞い金はただいま申し上げたような理由で内閣でお出しになったものというふうに承知しております。
  184. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そうすると、水産庁長官、いま言いましたような三十四年五月の閣議決定に基づく救済措置、一カ月以上抑留された場合は一カ月につき一万円とか、死亡した場合は七万五千円支給されるという、これによる該当ということも将来考えて検討している。またそれに該当するというふうに理解してよろしいですか。その点どうですか。
  185. 内村良英

    ○内村政府委員 先ほども申し上げましたように、異例の措置であるというふうに思っております。
  186. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 なかなか、平行線であれですが、あと一、二点ちょっと聞いておきますけれども、日本漁船が松生丸以外に北朝鮮に拿捕された事件、件数、死傷者、現在までにどのくらいありましたか。概数お答えください。
  187. 内村良英

    ○内村政府委員 北朝鮮側に拿捕された事件といたしましては、昭和三十一年三件五隻、昭和三十五年一件二隻、昭和三十七年一件二隻、昭和四十七年一件、昭和四十八年一件、計七件十一隻ということになっております。それで拿捕されまして最も短いものは六日、最も長いものは三十四日で保釈されておりまして、船体及び人員はいずれも全員保釈されております。
  188. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまおっしゃったのは七件十一隻ということでありましたけれども、それに対する措置はどういうふうにしてこられましたか。
  189. 内村良英

    ○内村政府委員 これらの件につきましては、船体、人員いずれも全員保釈されているわけでございまして、政府としては特別の措置をとっておりません。
  190. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、いろいろお聞きしたいのですけれども水産庁長官、今回のこの弔慰、見舞い金は決して大きな金額ではないし、悪いという性格のものではないというふうに国民も理解しておると思いますけれども、何となくはっきりしなかったためにいろいろ疑問視されたわけですが、私は決して出して悪いとは言うわけではありませんけれども、先ほど大臣から明確に交際費から出したということではっきりしましたので、その点ははっきりしましたが、私も今後十分検討してみたいと思いますけれども、こういう正式な名目の支給となれば一応また研究するのにやぶさかでありませんが、従来も七件十一隻の事件も起きておりますし、今後こういったことがあってはなりませんけれども、こういったことがあった場合にはこれが前例となる、また他の場合、同じ性格の事件にも適用しなければならないということにもなってきます。私はこういったことについてもっと堂々とやるべきでなかったか、かようにも思うわけです。その辺、どうも釈然としないものがあったわけですから、今回こうして改めてお聞きしたわけですけれども、将来こういった問題が起きてはなりませんけれども、将来こういったことが前例とならないのか、今度は特別な配慮だということでありますけれども、その点、農林省はどういうふうに理解していますか。
  191. 内村良英

    ○内村政府委員 ただいま申し上げましたように、異例の措置でございまして、今後このようなケースが起こった場合におきましてはまたそのケースとして考えなければならぬ問題だと思っております。
  192. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では最後に農林大臣、いまいろいろ質問してまいりましたけれども、この松生丸事件については、大臣からはっきりと内閣の交際費、慶弔、見舞い金に当たる、会計検査の対象になるということでありますけれども、いまちょっと席をはずされましたのであえて申し上げますが、従来も七件十一隻の事件が起きておりますし、今後も起きないとも限らない。それからまた、内閣の決定を見ております昭和三十四年五月の救済措置の問題にも関連してくるわけです。そういったことから、将来起きてはなりませんけれども、仮にまた起こるとなると大変な問題ですが、またこれが公平の原則という意味からいきますと、今回ばかりに限らず従来もまた今後もということになるわけで、その点は内閣官房長官とも十分協議の上対処されていると思いますけれども、今回の事件は冒頭申し上げましたように、農林大臣は後で知ったというようなことで、実際相談がないままに行われているというところにまだまだ釈然としないものがいっぱいありますが、時間も参りましたので、本日はこの程度にとどめておいて、後日また必要な問題は伺うことにし、この点についての今後の問題を含めた農林大臣のお考えをお聞きしたい、かように思います。
  193. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはいまお話がございましたように、私も後で内閣の措置を知ったわけでございます。そしていま水産庁長官から答弁をいたしましたように、異例のことであったわけでございます。今後につきましてはケースに応じて処置されるべき問題だ、こういうふうに思っております。今回は異例の措置だというふうに受け取っておるわけであります。
  194. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、残余の問題は後日に譲って、以上で質問を終わります。
  195. 中川一郎

    中川(一)委員長代理 小宮武喜君。
  196. 小宮武喜

    小宮委員 私は農林省畜産行政について質問します。  今年七月、行政管理庁は農林省に対して、飼料に関する行政監察結果に基づく勧告をなされております。この勧告の中で政府操作飼料について、政府飼料価格の安定のため多額の財政負担が行われているが、その大部分を占める単体政府操作飼料、つまり専増産ふすまの畜産農家に対する配分が不公平であるという指摘をされて、早急に改善するよう勧告いたしておりますが、農林省はこの勧告を受けてどのように措置をされたのか、その点まずお伺いします。
  197. 大場敏彦

    ○大場政府委員 ただいま御指摘のありましたように、本年の七月に行管から専管ふすまについての勧告を受けたわけであります。その要旨は、要するに畜産農家に対する専管ふすまの配分が家畜飼養頭数等によりまする実際の需要量と比べまして必ずしも公平にはいっていない、ばらつきが多いというようなことがありますので、実需者中央団体を指導しろ、こういったことでございます。これに対しまして、私ども指摘を受けましたことは非常に残念に思っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、それに対応することが一番先決問題であるということで、残念ながら指摘を受けましたように、現在専管ふすまの地域的な配分あるいは農家に対する配分を見ますと、やはり必ずしも万全とは言い得ない点がございます。ばらつきがございますので、いまその是正について努力を払っているという過程でございます。  御承知のとおり、そのばらつきが出てきております原因は、長くなるから詳しくは申しませんが、使用慣行というものが、ふすまに対する依存がかなり強いというのが日本の酪農の一つの慣行でございまして、これが都市を中心といたしました酪農の発展の基礎にもなったわけでありますが、その反面、北海道あるいは九州等草地資源に恵まれたところにおきましては、ふすま等の需要というものについては比較的なじみが薄かったといったことで地域の偏りがあった、それが勢い需要面に反映いたしまして従来地域的なアンバランスがあり、また農家につきましても、そういったばらつきがありましたために農家に対する配分が必ずしも公平にいっていなかったといううらみがあったわけでございます。その点につきましては、私ども具体的に、これは過去からもやっておるわけでありますが、本年さらに一歩を進めるという意味におきまして、ふすまの地域配分調整というものをいたしております。具体的に申し上げますれば、北海道、九州をふやしまして、その反面、東海、北陸、近畿といった従来厚かったところを薄くする、こういった対応をしております。
  198. 小宮武喜

    小宮委員 この件については、昭和四十二年にも会計検査院及び行政管理庁から指摘をされていた問題なんです。にもかかわらず、農林省は何ら改善されていないために再度の勧告になったわけですが、農林省はこの八年間なぜ改善に取り組もうとしなかったのか、その理由について聞きたいと思います。いま、私が質問しておる趣旨とあなたが答弁されておる趣旨とは若干違う、私の質問に正確には答えていない。しかし、それは後で質問いたしますが、八年間も改善されていなかったというその根拠、あるいはこの勧告書の中で指摘されておる点は、あなたが答弁されておることとは若干違うのですよ。「その大部分を占める単体政府操作飼料畜産農家に対する配分は各需要者中央団体及びその下部組織とも主として前年度実績を基礎としている。このため、同一規模の畜産農家の中にも、単体政府操作飼料により購入飼料の大部分を賄っている者がある反面、配合飼料価格の高騰に伴い単体政府操作飼料を希望しても全く購入できないでいる者があり、財政負担の効果が均てんしていない。」とこうなっているわけです。希望しても購入できない人たちがおるということなんです。だから、配分の中にでこぼこがあるのを是正しろということではなくて、全然希望しても配分を受けられない人たちがおるじゃないか、そこでいわゆる「財政負担の効果が均てんしていない。」ということを言っているわけです。これはまた後続きますから、八年間改善されなかったという理由について、根本的な認識がまず私とは違っておるようです。しかし、まああなたはあなたなりにひとつ答弁してください。
  199. 大場敏彦

    ○大場政府委員 問題は、先生から御指摘のありましたように、一つは地域的な配分の問題もございます。それから、その地域の中での農家の配分という問題もあるわけで、その農家の配分の中にばらつきがあって、希望どおりいっている農家とそうじゃない農家かあるということでございます。  四十二年に同様の勧告を実は私どもいただいているわけで、その間何をしておったかという御指摘でございますが、私ども四十二年以降も、勧告をいただくと同時に地域別配分の是正の問題、つまり過去の使用実績ということだけではなくて、家畜の飼養頭羽数を勘案して地域別配分を決める、それから地域内の農家の配分等につきましては、具体的にやはり同様の基準で、過去の実績ということだけにこだわらず、頭数とか実際の需要というものを勘案して地域内に配分するよう、これは都道府県知事に特に委嘱した、こういった努力はいたしたわけでありますけれども、しかし残念ながらその努力が完全には実を結んでいないというような実情でありまして、まことにその点につきましては遺憾に思うわけでございます。  その理由といたしましては、結局いろいろな制約条件がありまして、一つは、先ほど申し上げました使用慣行というものが根強く残っておるという問題、それから、輸入麦を入れる場合の港湾施設が地域的に偏在しておって、具体的に申し上げますれば、東北だとか九州にはそういった港湾施設が非常に整いが悪かったということがあるのと、それから先生御承知のとおり、ふすまというものは小麦粉をつくる場合の副産物として出てくるわけでありますから、そういった小麦粉をつくる製粉工場の立地条件にも制約されるわけでありまして、そういった制約条件があったためにどうも従来われわれの意図したごとく動いていなかったということがあるわけでありますが、これは言いわけになるわけであります。その点、一度と勧告を受けたということにつきましては私ども非常に残念に思っておるわけであります。
  200. 小宮武喜

    小宮委員 まああなたは残念に思っている、残念に思っているばかり繰り返しておるようだけれども、それでは具体的にお聞きします。  配分については全国生産者の実需者団体を通じて行っておると聞いておるのですが、四十二年以降、専増産ふすまの生産量とその生産されたものがどこの団体にどれだけずつ配分されておるか説明を願いたい。
  201. 大場敏彦

    ○大場政府委員 四十二年度以降は団体別にはいま手元に数字がございませんが、四十九年におきます取り扱い量を申し上げますと、全体で専増産ふすまの取り扱い数量は七十万九千トンでございます。     〔中川(一)委員長代理退席、委員長着席〕 それは合計七団体に分けておりまして、全国農業協同組合連合会が三十三万六千トン、比率で申しますと四七%、それから日本養鶏農業協同組合連合会が一万九千トン、これは三%、それから全国畜産農業協同組合連合会が七万八千トン、一一%、全国酪農農業協同組合連合会が十二万九千トン、これは一八%、全国開拓農業協同組合連合会が四万四千トンで六%、それから社団法人北海道飼料協会が一万トンで、これは約二%、全国飼料卸協同組合が九万三千トンで約一三%ということになっております。
  202. 小宮武喜

    小宮委員 配分を受ける資格として、実績だとか従業員数だとか出資額だとか、経営の規模及び状況等はそれぞれこれは規定をされていますね。いま説明のあった七団体以外にもいわゆる資格のある団体があるはずであるが、いかがですか。ありますか、ないですか。
  203. 大場敏彦

    ○大場政府委員 私ども政府の取り扱っている飼料を売り渡す団体として指定をいたします条件といたしましては、最大の条件といたしましては、現に相当量のえさを取り扱っている、そういった実績があるものということにしております。そういう意味で、当面ただいま申し上げました団体、もちろんこれはえさによって取り扱い団体が必ずしも同一でございませんが、現在指定しております団体以外に指定する考えはございません。
  204. 小宮武喜

    小宮委員 そういうような団体はないということですか。
  205. 大場敏彦

    ○大場政府委員 ないと思っております。
  206. 小宮武喜

    小宮委員 それでは質問しますが、たとえば全国鶏卵販売農業協同組合連合会等は資格がないですか。
  207. 大場敏彦

    ○大場政府委員 具体的に団体の名前を御指摘になられたわけでありますが、全鶏連でございますが、それはえさの取り扱い実績がございませんので、私ども指定の資格要件は満たしていないというふうに考えております。
  208. 小宮武喜

    小宮委員 その資格要件のないという理由、またどの点が資格要件がないのか、はっきりひとつ説明してください。この中にも資格要件はあるわけですけれども、これに該当するからこの配分を受けたいということでいま皆さん方に要請がなされているはずです。ないと言うなら、ないと言う理由をはっきりひとつここで説明してください。
  209. 大場敏彦

    ○大場政府委員 ただいま申し上げましたが、当該団体はえさの取り扱い実績がございません。よって、指定する考えはないということを申し上げたわけであります。
  210. 小宮武喜

    小宮委員 その点は時間がなくなりますから、一度ひざを突き合わしてひとつ話したいと思います。  それでは動物用ワクチンについて質問します。  去る十月八日、公正取引委員会は、動物用ワクチン業者のワクチン販売について、今年一月協定されたやみカルテルに対して破棄の勧告を行っていますが、この勧告に対して農林省はどういうような行政措置をとりましたか。
  211. 大場敏彦

    ○大場政府委員 先ほどワクチンを取り扱っておりまする会社、これはたしか十一会社だったかと思いますが、間違ったら訂正いたしますが、それぞれ動物用ワクチンあるいは鶏のニューカッスル病のワクチン等につきまして、物別によって若干対応は違いますけれども生産カルテルあるいは販売カルテル等を結んでおります。それにつきまして独禁法違反の疑いがあるということで、公取からそういった協定破棄の勧告を受けたわけであります。それに対しまして、各会社ともその勧告を受諾いたしまして、その結果、公取から改めて勧告内容と同様の審決がおりたということでございまして、私ども当該団体に対して審決に直ちに従うよう指導をしているということでございます。
  212. 小宮武喜

    小宮委員 この勧告の内容を見ましても、鶏のニューカッスル病ワクチンの販売価格の協定、狂犬病ワクチンの値上げ協定、豚コレラワクチンの生産数量の協定等々となっておりますけれども、それでは勧告を尊重して協定を破棄したとした場合に、これらのワクチンは価格面においてはどうなりますか。
  213. 大場敏彦

    ○大場政府委員 これらの会社が価格カルテルを結んでおりましたバックには、実は供給が需要を上回っておったというような事情があるわけで、そういう意味でダンピングを避けたいというような彼らの願いがあったのじゃなかろうかと推察するわけであります。現実に協定価格よりも実際の価格はかなり下がっておるのもございますし、かなり幅があります。ばらつきがございます。業者によっても、時期によってもばらつきがございます。そういう意味で、実質的な意味においてはその協定というものは守られていなかったということも言えるわけで、当然公取の審決がおりた以上、その価格協定を破棄するのは当然のことでございますけれども価格がそれによって直ちに下がる、変動を生ずるということには、そういった従来の実態関係からしては必ずしもならないのじゃないかというふうに思っておるわけであります。
  214. 小宮武喜

    小宮委員 この件については、これはもう畜産農家から早くから指摘されていた問題なんです。農林省は独禁法違反を行っておるということを知らなかったのかどうか。その点いかがですか。
  215. 大場敏彦

    ○大場政府委員 農林省の指導が十分でなかったじゃないかという御指摘は、これは甘受しなければならないと思います。ただ、豚コレラワクチン等の事情を申し上げますと、これは、いわばその供給につきましては、たとえば各県の予防注射計画というものに合わせなければならない、こういった行政需要に合わせなければならないということもございますし、そういう意味で秩序正しく供給しなければならない。それから、一方動物、医薬品検査所の国家検定を受けなければならないということもございますので、それの検査能力にやはりマッチしないと困る、こういったことがございますので、やはり供給というものにつきましては、ある程度秩序あることが望ましいということは言えるわけであります。それが高じまして生産カルテルにいってしまったということは、これは何と申しましても申し開きが立たないわけでありまして、これは直ちに是正すべき問題であると思っております。  また、価格の面につきましても、いわばワクチンの注射液の価格というものは、注射代といいますか、そういう農家の方の側からいたしまして必ずしも変動が激しいということは好ましくないという面もございますので、それがややもすれば価格カルテルにいったということ、いろいろ業界の過当競争と関連して価格カルテルにいってしまったということがあるわけで、私ども、そういったことにつきましては、事前にもちろん承知しておりますれば、直ちに矯正すべきであったわけですが、どうもそこまで監視の目が届かなかったということでございます。その点につきましては、私ども反省はいたしておる次第でございます。
  216. 小宮武喜

    小宮委員 いまの答弁からすると、農林省は知っておったということになりますね。そういうような、農林省が独禁法違反をワクチン業者がやっておるということを知っておったなら、公取から指摘されるまでもなく、破棄するように当然農林省は指導すべきであったと思う。それなのに、知っておりながら知らないふりをしておる。そういうようなところから農林省とワクチン業者の癒着の問題を云々される原因も出てくるわけです。そういった意味では、ただいまの専増産ふすまの配分の問題にしても、今回の動物ワクチンにしてももっと農林省はしっかりせぬと農林省としては余り名誉ではないでしょう。その意味では農林省としても今後の業者に対する指導というのはやはり十分厳格にやっていただかぬと、まあそのうち何とか会計検査院なり公取なりあるいは行管から指摘されるだろうからそれまではほっとけというような感じがわれわれから見れば出てくるわけですから、そういうようなことがないようにひとつ今後の畜産行政はもっと業者に対する指導を強化してもらいたい。私は農林省責任までは申しませんけれども、この点を知っておって黙認したということであれば、本来ならば当然責任問題まで私は追及したいと思ったのですが、それは一応ここらで矛をおさめたいと思います。  もう一つ。各畜産農家が動物用ワクチンを買い入れる際は各都道府県の家畜畜産物衛生指導協会を通じて購入する仕組みになっているわけですが、今度は衛生指導協会はどういうような方法でワクチンを購入しておるのか、また農林省はどのような指導をされておるのか、その点を御答弁願いたい。
  217. 大場敏彦

    ○大場政府委員 各県で家畜畜産物衛生指導協会というものがございまして、そこでいろいろ自衛防疫の普及をしておるわけでございますけれども、この協会がワクチンを買うときの買い方でございますが、各協会ごとにそれぞれ地域の動物用ワクチンの販売業者から購入しておる。買う方法はワクチン等によって違いますが、指名競争あるいは随契という形で購入しております。
  218. 小宮武喜

    小宮委員 時間が近づいてきましたので先を急ぎますが、三年前にワクチンが、特にニューカッスル病のワクチンが要指示薬に指定されたわけですが、その際私は本委員会で、このワクチンを要指示薬に指定することによって農家が負担にならないようにしてほしいという質問をいたしたのであります。その際、当時の足立農林大臣それから大河原畜産局長は、農民の負担にならないようにいたしますという答弁をしているわけです。ところが、今回ワクチンが要指示薬に指定されたことによって各都道府県に衛生指導協会なるものがつくられたわけです。そして、衛生指導協会に分担金を負担するようになっております。現実には従来と同じように畜産農家は自分で注射をやっておるわけです。獣医師はワクチンを購入する陰にたた指示書に判を押すだけなんです。したがって、この問題についてやはり畜産農家からも、三年前に大臣あるいは畜産局長からわれわれの負担にならぬように処理しますということが言われておりながら、結局は要指示薬にこのワクチンがなったために指導協会に分担金を納めなければいかぬということで、やはり農家の負担になっておるじゃないかというような指摘があるわけですが、私はその際もこの制度というのはいわゆる獣医師のふところを肥やすための結果にしかならないのではないかということを指摘した記憶がありますし、また議事録にもはっきり載っておりますが、そういうようなことからやはりこの要指示薬、いわゆる指示書に対して農民が負担にならないように措置すべきだというふうに考えますが、所見はいかがですか。
  219. 大場敏彦

    ○大場政府委員 三年前に先生がやはりこの席で私どもの先任者にそういう御指摘をなさいまして、先任者が農家の負担にならないように努力するというお答えをいたしました。私も先任者同様にそういうお答えを申し上げたいと思います。  現在、指導協会に対しまして、指導協会が行う予防接種事業につきましては国庫補助をしております。五十年度の例で申しますと三億八千万、これは豚コレラ、あるいは鶏、牛、いろいろございますけれども、予防接種対象疾病はこういったある特定のものに限られておりますけれども、鶏なんかにつきましては国と県が補助いたしまして農民の負担の軽減を図っているということでございます。ただ、これは衛生指導協会のかさのもとに入った場合にそういう助成が行くということでございます。それ以外の一般のルートで獣医師とダイレクトに結ぶという場合には必ずしもそういう助成はございません。農家の負担になるわけであります。そういうことで、農家の負担を軽減する意味でできるだけこの衛生指導協会のかさのもとに入って、獣医師との関係というものを緊密にし、また農家負担の軽減を図っていきたいと思っているわけであります。
  220. 小宮武喜

    小宮委員 愛知県では農家の負担がなくなったということを伺っておりますが、事実かどうかということと、どういうような方法で実質的に農家の負担がなくなったのか、その点についてわかっておれば御参考までに説明を願いたい。
  221. 大場敏彦

    ○大場政府委員 先生からの御指摘がございましたので愛知県に照会して調べたわけでありますが、愛知県の場合には別に衛生指導協会の会員として鶏病対策協議会というものがつくられているようでございます。農家は指導協会が実施するニューカッスル病予防接種事業の場合に、鶏を飼っている農家はワクチン代金のほかに鶏病対策協議会に事務費を納める。同協議会はワクチン代と自分のところに納まった事務費を衛生指導協会に納めている、こういったかっこうになっておりますので、他県の場合には直接に衛生指導協会に農家が納めているということになっているわけですから、直接、間接の違いはありますが、愛知県の場合におきましても農家は間接的な形で負担しているというふうに県の方から報告を聞いている次第でございます。
  222. 小宮武喜

    小宮委員 時間が来ましたから質問はこれぐらいでやめますけれども、ワクチンの指示書によって農家の負担にならないように、三年前もはっきり農林大臣畜産局長も答弁しているわけですから、そういった方向にぜひひとつ持っていってもらいたいということを要望して、私の質問を終わります。
  223. 澁谷直藏

    澁谷委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時八分散会      ――――◇―――――