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1975-11-13 第76回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十三日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 澁谷 直藏君    理事 今井  勇君 理事 笠岡  喬君    理事 中川 一郎君 理事 藤本 孝雄君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       片岡 清一君    金子 岩三君       吉川 久衛君    熊谷 義雄君       佐々木秀世君    島田 安夫君       渡辺美智雄君    角屋堅次郎君       島田 琢郎君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       美濃 政市君    諫山  博君       中川利三郎君    瀬野栄次郎君       稻富 稜人君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省条約局長 松永 信雄君         農林大臣官房長 森  整治君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         農林省食品流通         局長      今村 宣夫君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   松形 祐堯君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         国土庁土地局土         地政策課長   松本  弘君         外務省欧亜局外         務参事官    木内 昭胤君         通商産業省機械         情報産業局産業         機械課長    杉山  弘君         建設省計画局宅         地開発課長   川合 宏之君         自治省税務局固         定資産税課長  川俣 芳郎君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十二日  辞任         補欠選任   諫山  博君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   金子 満広君     諫山  博君     ――――――――――――― 十一月十日  昭和五十年産米事前売渡申込限度数量増枠  に関する請願下平正一紹介)(第一八九四  号)  乾繭、絹撚糸絹紡糸絹織物等輸入規制に  関する請願下平正一紹介)(第一八九五  号)  全国農村保健研修センター設置助成に関する  請願下平正一紹介)(第一八九六号) 同月十二日  乳価の引上げ反対及び二重価格制度の制定に関  する請願田中美智子紹介)(第二〇六九  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  3. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は当面の農業問題に関して、特に総合食糧政策あるいはアメリカ日本との穀物協定というか穀物約束、あるいは米ソの問題その他重要な問題について農林大臣にお尋ねしたいと思います。  まず最初に、本年の二月十二日のこの委員会で、私は農林大臣に、農政を広範な意見をまとめて進めるために内外の多くの識者を集めてその意見をまとめ、そしてそれを農政に反映するようにということを提案をいたしました。これに沿ったかどうかわかりませんが、そのときも大臣の方から国民食糧会議というものをつくりたい、こういう表明がありまして、その後二回にわたって国民食糧会議が六十九名のメンバーによって開催をされております。この二回の会議の中で多くの意見が述べられたし、また文書でも出されておりますけれども、この二回でとどめてしまうのか、それとも今後なお続けるのか、この点からひとつお尋ねをしたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国民食糧会議につきましては、御存じのように今日のわが国食糧問題あるいは農林漁業及び農山漁村についての国民的な理解を得るとともに、今後の食糧政策あり方についての各界の御意見を承る意味開催をいたしたわけでございますが、これは前後三回にわたって開催をされております。そして各委員から今後の食糧政策あり方についていろいろと示唆に富んだ多くの御意見が開陳をされましたが、これらにつきましては九月九日に「国民食糧会議報告」ということで集約をされて政府に提出をされまして、一応の区切りはついたわけでございます。したがって、会議としては十分所期成果をおさめ得たというふうに考えておりますので、国民食糧会議という形で今後継続していく考えはないわけでございますが、同報告の趣旨につきましては、今後の食糧政策の推進に当たって十分尊重してまいらなければならぬと思いますし、農林省が発表いたしました「総合食糧政策展開」につきましても、国民食糧会議の御意見もこれを反映をいたしておるわけでございます。私は年来の考えといたしまして、やはり食糧問題はただ農業サイドあるいは漁業サイドからこれをとらえていくということではなくて、食糧問題につきましては広くやはり国民的な理解協力というものが背景になければならないという考えでございまして、そういう意味におきまして、国民食糧会議を開いて熱心な御討議を経て報告を得たということは、大変成果もあったし意味もあったことであるというふうに理解をいたしておるわけであります。
  5. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま大臣から、食糧会議は一応目的を達した、これで終わりにするというような御発言ですが、あの委員の中からは、分科会などを設けて、もっとそれぞれの分野に応じて突っ込んだ討議もしてみたいという意見もあったし、二回ぐらいで本当に深い問題が掘り下げられるかどうかというような点もありました。  あれを読んでみると、それぞれの委員の出している問題点というものは、いろいろな角度はあるけれども、大体いままでわれわれがこの委員会議論をしてきた問題に集約をされると思うのです。要するに、問題は、食糧国内自給というものをどういうふうに高めていくのかという点で、土地拡大やあるいは土地改良価格政策、農民の教育、金融、そうして国際的な諸問題に触れておるわけですが、要約五項目にまとめられておるけれども、この五項目それ自体は非常に抽象的ですが、問題は、その問題を中心として一体これからの農林予算というものがどういうぐあいに変化をするかということによって、これはその成否が出るわけです。  ところが、農林予算の戦後の実情を見てみるというと、必ずしも各委員の要請に沿っているとは思えない。私はこの間も大蔵大臣予算委員会分科会でいろいろ質問した中に、農林省厚生省文部省と同じような形で予算のあれを見てもらっては困る、こういうことで、性格が違うんだという話があったんです。ところが、この農林予算そのものを見た場合に、農業基本法ができたころの農林予算と、あるいはまた生産制限をやるころの農林予算と、こう見た場合に、農林省予算というのは、国の予算を一〇〇とした場合には、補正を加えて一六・七%というのが戦後最高であり、最近は当初予算が一割、補正をして一一%、こういうような状態が続いている。こういうような状態の中では、幾ら各委員が情熱を傾けて議論をしてみても、これは結局議論しただけでどうにもならない。五十一年度予算一体農林省としてはどういうような方向で組み立てられて、そうしてあそこへ出された意見をどういうぐあいに消化をされるのか、この点についてお答えをいただきたい。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国民食糧会議につきましては、これはやはり食糧問題ということにつきまして大いに世論を喚起することにも意味があったと思いますし、その集約された報告は、今後のわれわれの食糧政策を進めていく上におきまして大変示唆に富み、参考になったわけであります。確かにあの委員の御意見の中には、今後これを存続すべきであるという御意見もあったわけでございますが、一応各委員意見が出尽くして、そうしてその中で意見集約されたということで、これを継続をすることをしないで打ち切ったわけでありますが、この国民食糧会議総理大臣のもとで行われたわけでございますし、関係閣僚等出席をいたしておったわけでございますので、内閣にも食糧問題の重要さというものは総理以下相当認識が出てきたというふうに私は理解をして、その意味ではこれは意味のあった会議であったというふうに考えておるわけでございます。  そこで、これからの予算編成をどうするか、せっかくそうした会議を開いてもそれを実らせなければ意味がないじゃないかという御意見でございますが、全くそのとおりでございます。御存じのように、内閣全体で閣議決定として、明年度予算につきましては本年度の一五%増以内に抑えるということが閣議決定をされたわけでございます。それに基づいて農林省といたしては概算要求をいたしたわけでございます。  その内容は、主として農林省が発表いたしました「総合食糧政策展開」と題する新政策に基づいてこれを組み立てておるわけでございます。いわば五十一年度はその長期的視点に立って組み立てた新政策の第一年度というふうに私ども考えて、五十一年度予算は一五%増以内ということで制限を受けておりますものの、その中で極力これを盛り込んで出しているわけでありまして、その内容については事務当局からも御説明をいたさせますが、私は今回の概算要求につきましては、相当密度の高い、質の高い予算要求になっておるというふうに考えておるわけで、これらは何としても実現をしなければならぬと思うわけでございますが、問題は、その後の財政状況等相当変化をいたしております。したがって、五十一年度予算編成というのは、今日の財政事情の悪化という中で、果たしてどういう形で編成をされるかということとも関連があるわけでございますが、しかし食糧問題の重要性については認識も深まったわけでありますから、この食糧政策というものは、その中で選択をされるとすれば、選択をされる政策の中の最も優先度の高い政策として取り上げられるべきものであるというふうに考えるわけであります。
  7. 竹内猛

    竹内(猛)委員 石油に次いで重要な食糧を問題にする農林省として、これはだれが見てもわかるように、戦後の農林予算状況を見ると、最近は一〇%から一%、これは一貫して上がったことがない。年がかわるたびに、大臣がかわるたびに、ときどき妙な言葉が出てくる。農業基本法である意味期待を持たせながら、そのうちに今度は総合農政と言ってみたり、あるいは中核農家をつくると言ってみたり、最近になると今度は総合食糧政策という言葉になる。言葉だけが変わって、中身は何も変わっていない、こういうことでは、これはどうしても農家の方は、何を言っているのだ、こういうことにならざるを得ない。それは確かに、農林省としても他の省との関係があってやりにくいかもしれない。重要性から言ってみれば、それは全部重要です、重要だけれども、とにかく食糧に関する限りは人間の命にかかわる問題なんだ、食うなとは言えないのだから。これに対しては大いにでかい声をしてがんばってもらわなければ困る。それでなければ幾ら発言してみたって意味がない。そういうことで、この食糧問題については、この数字を何としても何%か上げてもらわないことにはぐあいが悪い。去年でも二五%の要求をして、そして厚生省とか文部省は三〇%以上、自治省だって二九%まで上げた。農林省は一九%であって、それについてはそれなりに理由はあるからそれは理解はするけれども、今度はあれだけの内外の名士を集めて、ある程度意見を聞いた以上は、国民食糧会議を経たら少しは数字が変わってこなければ、総合食糧政策だって、結局これは国際分業論肩がわりじゃないか。これではどうにもならない話で、このことについて再度大臣の決意を伺いたいわけであります。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まあ政策の実行につきましては、これは予算だけではありませんけれども、しかし予算が最も大きなファクターであることは申すまでもないわけでございます。したがって、いま私たちの掲げておるところの「総合食糧政策展開」と称する新政策を強力に進めていくためには、その裏づけとして予算十分獲得をしていかなければならぬわけでありまして、われわれが概算要求をいたしました予算も、今日の国の財政の中にあって、なおかつわれわれのこの新政策が実行できるというこの自信のもとに要求しているわけでございますから、これは最小限度としても獲得をしなければならないというふうに考えて、今後とも最大の努力をしたいと思っておるわけであります。  なお、パーセンテージにつきましてはいろいろと御批判はあるわけでございますが、いままでの農林予算をずっと見ましても、この予算比率変化は、一つにはやはり食管赤字の問題がいろいろとその中において絡んできておる、関連をしてきておるということにも問題があると私は思うわけでございます。そういう意味におきましては、来年度におきましても米の逆ざやをこれ以上は拡大はしない、そして食管赤字をこれ以上ふやさない、これは総合食糧政策を推進する上においても絶対に必要であるという観点から、これを実現をいたしたわけでございます。これが実現できる見通しになったわけでございますから、予算比率はもちろん高めていかなければなりませんが、同じ比率の中においても相当密度の高い食糧政策というものが実現できるような見通しにはなりつつある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  9. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題についてはいろいろと要求した事実はわかっておるし、結果を見ないとこれはもうこれ以上言えないから、とにかく声をでっかくしてがんばるということについて、これは大いに努力をしてもらいたい。これはまた後で、次の委員会ででももう一遍やらなければならないことになると思います。  そこで、次にいきますが、八月十二日に大臣アメリカに行かれて、バッツ農務長官との間で千四百万トンの三年間の輸入合意をされた。そのことは一つ意義を認めるわけですが、それと同時に、十月二十日にはアメリカ代表ソ連代表とが行政協定に等しいような状況においての契約をされている。これは六百万トンから八百万トンの穀物輸入約束をされ、同時にそれとの関連石油一千万トンをまたソ連からアメリカへと、こういうかっこうでやられている。日本の場合にはまる腰で、これは合意事項という形になっている。もしアメリカに一たんいろいろな事情があった場合にこの重さ、要するにソ連日本との重さというものについてどういうことになるか、その約束の重さですね。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私とバッツ農務長官との約束というのはいわば紳士協定でございますが、両国最高農業関係責任者の公式的な約束でございますから、これは守られるべきものであるということはお互いに確認をいたしておるわけでございます。同時に、その際における米国側発言は、やはり伝統的な輸入国であるところの日本に対するアメリカからのお約束をした穀物等輸出につきましては、これはもうソ連に対する輸出を抑えても必ず実現をするということははっきりと言っておるわけでございます。その後、アメリカソ連の間に協定が結ばれるという経過の中におきまして、しばしば事前アメリカ側から日本側に対して詳細な説明も受けておりますし、バッツ長官からの書簡もいただいておるわけでございますが、私はソ連アメリカとの穀物協定というのは非常に歓迎をいたしておる。と申しますのは、ソ連は御案内のように一九七二年にも大量に買い付けを行いまして、これでもって世界穀物市場混乱をし、そしてひいては日本畜産危機にもつながっていったわけでございます。そしてまたことしは大量に買い付ける。ときどき非常に思いついたように買い付けを行って、それが世界穀物市場混乱させておるということでございますので、ソ連アメリカとの間に定期的な輸出輸入という安定供給の道がここで確立されたということは、世界穀物市場を安定させるという意味においては非常に意義があることであるというふうに歓迎をいたしております。  同時にまた、ただ、ソ連アメリカとの協定は非常に片務的なものであるというように私は考えております。これは、ソ連側にとって非常に片務的になっておる協定である。ということは、六百万トンまでは義務的に買わなければならないということであります。さらに、八百万トンを超える場合は両国間の事前協議が必要であるというふうなことになっておりまして、むしろソ連側だけが義務を負わされておるというふうな、片務的な形になっておるということでございますし、そういう面では日本アメリカとの間の約束は、これは紳士協定ではありますけれども、全く両国のこれまでの親善関係協力関係に基づきました、非常に安定した約束であって、平等なものであって、なおかつアメリカ側日本に対して何度も保証を繰り返しておるということは、これはそういう意味では今後の日米間の食糧安定供給ということについて、はっきり大きな道を切り開いたものであるというふうに考えておるわけであります。
  11. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いまそういういろいろなお話がありましたが、三年間という期間というものを今後も延ばすということが考えられるか。  それから価格の問題について取り決めはない。量の方は決めたけれども価格はない。かつて砂糖の問題で豪州との間で砂糖協定をやっていろいろ混乱をしたことがある。そういうことは心配ないのかどうか。  あるいはまた、いろいろな学者やあるいは評論家の方も言っているけれどもアメリカという国はいま食糧というものを一つ戦略物資として考えてきている。現にそういう形になっている。ソ連との関係だって、そういうように解釈もできないことはない。こういうような状態のときに、日本はまる裸で、ただ信頼だけしていくということは非常に危険じゃないか。したがって、アメリカだけと約束をするということでなしに、現在輸入をしている国々、たとえばカナダであるとか豪州であるとかブラジルであるとか、そういうような国々との間でも同じような話し合いをし、誠意をもってやっていくという意思はないか、こういう点についてはどうですか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回のアメリカとの間の約束は量でございまして、価格がこの中に入っていないことは事実でございます。日本としては、ソ連の大量な穀物買い付けという状況を目の前にして、やはり量の面においてまず確保しておかなければならない、こういうことを考えまして、アメリカとの間で量についての約束を取り交わしたわけでございますが、価格につきましては、飼料穀物等は御案内のように民貿物資でございますので、アメリカの場合もそうでございますし、日本の場合もそうでございますが、なかなか政府間で価格を決めるということは困難でございます。私の考えとしては、この日米間のわれわれの取り決め背景にいたしまして、今後民間相互間で長期的な、日本オーストラリアとで行いましたような長期的な、いわゆる長期契約といったようなものにこれが移っていく、具体化されていくということを期待をし、そういう方向に行政的に誘導もしていきたいとも考えておるわけでございますが、現在のところは量でございます。  同時にまた、いまお話のございましたように、これはアメリカだけとの間では不十分じゃないか、カナダであるとかオーストラリアであるとか、その他の国々ともやはり安定供給の道を切り開いていく必要があるのではないかという御発言でございますが、私もごもっともであろうと思います。これからの世界食糧事情は小康を得るということはあるでしょうが、しかし全体的には厳しい方向に進んでいくのではないだろうかと考えますから、それだけに日本としては、どうしても日本で自給できない食糧については外国から安定輸入の道をやはりつくり上げていくという必要があるわけでございまして、したがって、アメリカに次いでカナダオーストラリア、そういう国々ともできればアメリカとの間に取り交わしたような約束が取り交わすことができるように今後努力していきたいと思っております。相手のあることでございますから、相手側事情等もございまして、なかなかアメリカとの間のようにはいかないかもしれませんが、努力はしなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
  13. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この際なお一つ確かめておきたいことは、田中総理ブラジルガイゼル大統領との間で約束をしたブラジルにおける開発の問題についても、ブラジルは非常に広範な土地があり、可能性があるわけだ。これについては、農林省としてはその後どのように考えているのか、こういうことについてはどうですか。
  14. 吉岡裕

    吉岡(裕)政府委員 先生ただいまお話のございましたブラジル農業開発に対します日本協力につきましては、すでに昨年九月の田中総理ガイゼル大統領との会談で基本的な合意があるわけでございますが、ブラジルは将来の世界的な農産物供給力を非常に潜在的に持っている国であろうというふうに一般的に見られておりまして、したがいまして、そういう世界的な一つ潜在供給力というものをふやしていくことは、わが国が外から入れなければならない農産物供給源をふやすという意味から申しまして、非常に重要なことではないかというふうに私どもとしても考えておるわけでございます。したがいまして、これは政府だけでできることでもございませんし、民間協力も必要でございますので、官民協調体制を組みましてその農業開発に対する協力を進めていこうという態度で、すでに調査団等も派遣をしてきておりまして、具体的な協力方式について種々検討をしていっておる段階でございます。
  15. 竹内猛

    竹内(猛)委員 続いて質問をしていきますが、食糧会議それから外国との輸入関係等々のことは、おおむねその経過理解をします。  そこで、日本食糧を安定的に確保していくということに対して、現在の政府考え方の中に三つ角度がある。その一つ国内におけるところの生産。それからその二つ目海外からの契約的な輸入あるいは合意に基づく輸入。その輸入の中に海外開発輸入というものがあると思うのです。そして三つ目輸入してこれを備蓄をしていく、こういう考え方が新たに出てきた。  そこで、第一の国内生産については、六十年を展望する見通しが立てられております。これは六十年になってみても現在の農地をそれほどふやすという意思はない。農地拡大が六百万町歩にも達しない状態ですね。五百八十万ヘクタールという形でしかない。あるいはオリジナルカロリーにしても四〇%まで達しない。ある人は三五%になるのではないかと言われるぐらいに低い状態。  だから、したがってこれは海外輸入を依存しなくちゃならない。その場合の主たる国がアメリカである。アメリカとの間では一定の合意をし、信頼の上にこれを進めていくといういまの御答弁があった。それならば、海外開発輸入というものに対して事業団もできたわけでありますから、これはここで答弁を必要としませんが、前からも要求しているのですが、各国々との間の期待量というのは一体どういうことになるのか、これはいずれあとの機会に資料を整理して出してもらいたいと思うのです。その海外開発輸入というものは、どこの国でどういうような方向努力をされているかという目標、それから数量、それからそのために必要な金がかかるだろうと思いますが、そういったものを出していただきたい。最近こういう問題は国際的にも議論になっているわけであります。  それから三つ目が、国内備蓄の方式が出てきた。したがって国内において本当に土地政策あるいは土地改良あるいは価格政策農家の所得政策をやって、本当に食糧の自給度を国内で高めていくという考え方でなくて、食糧でさえあればやはり輸入をしてもいいじゃないか、こういう考え方が依然としてある。それは形の変わった国際分業論だ。国際分業論と言わないだけの話なんだと私は思う。だから国際分業論でないとは言うけれども輸入というものを安定的にして、それを備蓄という形で確保しながら国際的な分業論をそのまま定着させるという考え方にしかならない。どうしても国内で自給度を高めて、困難ではあるけれども農家を本当にふるい立たせ、生産をさせるという考え方が乏しいというように、この新しい政策を見て考えます。  そういう中で私は、当面の重点の問題を三つ指摘をしてお答えを願いたいと思うのです。  その第一は、これは先般予算委員会においてわが党の湯山委員が質問をしておるわけですが、いま全国で開拓をし干拓をして、そこで米のとれる状態になったときに、たとえば秋田県、新潟県、滋賀県、熊本県において、総面積五百三十ヘクタールに及ぶ青田刈りが行われた。その青田刈りの最終が十月十六日である。米が実ってまさに食べられる状態になったときに青田刈りを強制した、こういうことは本当に農民の心を打ち砕くものである。せっかく国が金を入れて土地改良をやり干拓をやり――確かに約束は守らなかったかもしれない、あるいは行政の公平という上から言えば適当でないかもしれない、けれども、青田刈りをさせて、それでその農民の心をあるいは全国の農民の心を打ち砕くようなことは、行政としてはきわめてまずいのじゃないか。しかもそのときに農民にもあきらめさせたのは、その用地の権利を取り上げてしまう、奪う、あるいはまた補助金を出さない、こういうことをやっている。これは私は行政上まずいと思う。約束を守らなかったから用地の権利を取り上げる、補助金を引き揚げるというような、そういう法律なり何なりというものの基本はあるのだろうか。まずこのことを先にお聞きをしたい。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 わが国農政の基本的な課題というのは、やはり自給体制を確立していくということにあることは言うをまたないわけでございます。農林省が掲げておる六十年目標につきましていろいろと御批判があることも事実でありますし、土地の造成等についてはもっと思い切ってやるべきだ。たとえば農林省としては十年目標として八十六万ヘクタールを掲げておるわけですが、社会党さんなどは百三十万ヘクタールですか、もっとやるべきだという御意見、確かに私たちも可能面積は百五十万ヘクタールあると思うわけですが、しかし今日の社会経済情勢あるいは財政状態、今後の投資、またいままでの開発造成の計画の進捗率といったようなものから考えると、現実可能な限りの限界というものはやはり八十六万ヘクタールくらいではないだろうかというふうに目標を立てておるわけでございます。もっと高い目標を立てろというお声があることはわれわれも十分認識をいたしておりますが、私たちは自給力を確立するということを何としても最大の目標にしておるわけで、自給を無視して海外からの輸入を優先して考えるなどというふうな考え方は毛頭ないことは、この際明らかにいたしておくわけでございます。  それから、青田刈りの問題についていろいろと御指摘があったわけでございます。確かに六百ヘクタール近い地域が青田刈りをされたわけでございまして、農民の心情を思えば非常にお気の毒にたえないようにも考えるわけでございます。しかしこれは、正確には後で局長からも答弁させますが、大体六万ヘクタールくらいの開田抑制地区があると思いますが、その中の六百ヘクタールについて青田刈りが自主的に(発言する者あり)行われたわけでございます。大半の入植をされた農家は、やはり農林省といいますか現地における開田抑制の約束をきちっと守って、米をつくらないで畜産だとかあるいは畑作だとかいうものを経営をしていただいておるわけです。大半の農民の方がちゃんとやっていただいておるわけでございますから、その約束をほんの一握りの人たちが破って稲をつくるということになれば、これは行政の公平という面から見て、また大半の農民の方が守っていただいておるというふうな事態から見て、これはやはり刈っていただかざるを得ない。しかし、これも農林省が法律に基づいて強制したということではないわけでございまして、自主的と言いましたらあれでしたけれども、形の上では一応自主的に刈っていただいているということになっているわけでございます。しかし、実際これは全体的にはやむを得ない措置であるし、また全体の行政の公平さという面からいけば、大半の農家の方が守っていただいておるので当然だとも思うわけでございますが、しかしこういうふうな事態にまで至ったということについては、やはり行政の責任者としては責任を感ぜざるを得ないし、確かに行政のまずさというものも私たちは十分反省をしなければならぬと思っております。したがって、来年からにつきましては、事務当局等も督励をいたしておるわけでございますが、ああいうふうに世間を騒がすような青田刈りというふうなことにならないように、農民の皆さんとの間に十分理解を進めて、やはり約束を守っていただくような方向で行政の指導等も進めていかなければならぬ。ぎりぎりまでああいうふうな形で放置して、そして青田刈りというような形になることはやはりまずいというふうに、率直に感じておるわけでございます。
  17. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その同じ委員会大臣は「開田抑制措置というか、生産調整を行うために開田抑制措置をとらなければならぬわけでありまして、その政策を続けておるわけで、したがって干拓というか、開田抑制地区が全国で百八十五カ所」でやっておる、こういうような御発言があります。これに関連をいたしまして、これは当面の問題ですが、霞ヶ浦のたとえば高浜入干拓というのがあります。これは十年ほど前に計画されて、当時は米をつくるためにこれは干拓をする計画を立てた。その後いろいろな事情で畜産とか野菜に変わったわけですが、現在高浜人の周辺では畑を山林に変えている。一千町歩近いものが畑から山林に変わっているという状態なんです。いま茨城県では水資源が非常にない、こういうときに、なおこの高浜入の干拓を続けようとするのか。もうこれは茨城県の県議会でもいろいろな意見のあるところですが、こういう問題に関しては、いま言ったような状態からすれば当然こういうところはやめなければならない、こういうことになるだろう。これはそういうことを明らかにしてもらわないと非常に混迷をする。やはりやるべきことはやるし、やってならないことはやらないようにきちんと締めくくりをつけてもらいたいと思う。この点についての御答弁をいただきたい。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 最近の国際的な食糧事情にかんがみまして、わが国食糧自給力の向上が要請されておることは御存じのとおりでございます。そういう折から農用地の造成、確保は国の基本的な課題でございますし、地域農業の発展、さらに中核農家の育成等、長期的な展望からもこの高浜入の干拓事業は必要ではあるというふうには考えておるわけであります。しかしながら、現在の地元の情勢では、いま直ちに工事に着手することは困難だ、こういうふうに判断をせざるを得ないわけであります。このような地元情勢を背景といたしまして、先般茨城県知事からは、当面は円滑な事業実施を図るための諸条件の整備期間としたいとの要請もあったわけでございますので、農林省といたしましても、このような情勢等をも考慮し、当面は地域住民の理解協力を得ることに努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  19. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これはそういうふうにぜひ住民の意思を尊重してもらいたい、こういうことを要望します。  そこで次の問題に入りますが、新しい総合食糧政策の中に米の援助輸出については「過剰米の発生を抑止し、水田生産力の総合利用を図る視点に立ち、かつ、巨額の財政負担を要すること等の事情も考慮して、米の援助輸出は制度的に予定しない。」こうきわめて明確に断定をしておられますが、米の問題に入りますと、現在日本食糧の中で米だけが自給をして余る、こういうものなんです。ところで、米以外のものはほとんど足らなくて、これはもう各国から輸入をしているということは御承知のとおりなんです。その米が余るからということで減反、生産調整、買い入れ制限、こういうぐあいにしてやってきている。しかし国際的に見ると、発展途上国では五億の人々がいまや飢餓線上にあると言われている。そういうときに、ロンドンにおける国際小麦会議等々においてはアメリカのキッシンジャー等がいろいろ提案するように、三千万トンの国際的備蓄を要求されている。小麦が二千五百万トン、米が五百万トンというものの提案がある。こういうようなキッシンジャー提案というものがいいか悪いかは別にいたしまして、日本のように国際的に大変輸入国になっていて、米だけが余っている国が、自分の国で足りないものだけは輸入する、そうして余っているものは制限をし、青田刈りをさせて、キッシンジャーが提案する五百万トンというものに対しては全然振り向きもしない。そうして新政策では金がかかるからこれはいかぬという形でピリオドを打つというようなことは、近代国家として国際的なモラルに反するのじゃないですか。こういう点についてはもう少し弾力的に、日本は確かに米はあるいは高いかもしれない、しかし農民は高いとは言っていないが、この米を備蓄して、慢性的な飢餓線上にある人々に援助輸出なりあるいはいろいろなことをするという考え方はないだろうか。国際的な近代国家としていまの新農業政策は余りいいやり方じゃないのじゃないか。ここのところが私のどうしても言いたいところなんです。これはどうでしょう。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 備蓄の考え方とすれば、やはり今日の世界食糧事情の中にありまして、今後を考えてみまするときに、わが国としては本格的な備蓄というものに着手する段階に入った、こういうふうに考えております。これは自主的に国内において備蓄をするわけでございますが、同時にまた国際的にもいろいろの備蓄構想が出ておるわけでございます。それはいろいろな配慮があるとは思うわけでございますが、しかし国際的にも備蓄を進めていくということはこれまた必要ではないか。そういう点でいろいろと問題点はありますが、こうした国際的な備蓄構想にも協力をしていきたいということは、私もかねてからお話を申し上げておるとおりでございます。  まず、その国内における自主的な努力によって備蓄をするという中にあって、われわれがまず考えておるのは、やはり米の備蓄が一つの大きなポイントをなしておるわけであります。将来計画として少なくとも二百万トンぐらいは端境期において備蓄を持つ。これは国民の食糧、主食の四カ月分に当たるわけでございますが、少なくとも四カ月分ぐらいの主食を持つということが、国民の主食に対するところの安心感を与えることにもなってくるわけでございます。今後の食糧情勢というものを考えるときにもこれは必要であるということで、将来まあ二百万トンは備蓄をしたい、これを計画的に今後行っていくことを打ち出しておるわけでございます。同時に、その他の飼料穀物であるとか大豆等の輸入農産物についても、少なくとも一カ月程度は政府の手によって備蓄するという方向を確立したいということで備蓄を考えておるわけでございます。私は、われわれの考えておることは今日の国際的な、国内的な情勢に適合した政策であるというふうにも思うわけでございまして、米につきましては確かに余っておる、過剰な基調にあるわけでございますが、われわれは米については二百万トンの備蓄、そしてさらに需給の均衡のとれた米作の体制をつくっていくということじゃないだろうか。そうしてその他米以外のどうしても増産をしなければならぬ農産物があるわけでございますから、これはやはり二百万トンの備蓄をして、需給の均衡のとれた米作というもの以外については、積極的に増産をしなければならない農産物生産にこれを向けていくというのが、農業政策として私は正しい方向ではないだろうかと思うわけでございまして、これは青田刈りという問題とは直接結びつかない。休耕田をつくるということなら問題があるわけでございますが、私たちは水田の総合利用という形で、米につきましてもやはり過剰な生産分についてはこれを積極的にこれから増産をしなければならない農作物の生産ということに振り向けようということでございますから、その辺はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  21. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私が申し上げているのは、国内における備蓄については、われわれ社会党でも備蓄の方針を出して近く法案も出したいと思っているから、それは異議がない。異議はないが、問題は、キッシンジャーが言っておるように、国際的な備蓄という問題について、発展途上国の人々が五億もいま飢餓線上にあるというときに、小麦の二千五百万トン、米の五百万トンというものをキッシンジャーが提案している、こういうことについて、日本政府としてはこれに対しては振り向きもしないで、それで青田刈りをしたり生産制限をしたりするということ、そして日本農家がそれに対しては農林省に対してこれは非常に冷たいと言っている、国際的にもこれは冷たいと見られる、そういうことがよくないじゃないか、近代国家としてGNPが二番だの三番だのという、その国の政治のあり方としてよくないじゃないかということを言っておる。そのことはどうなんです。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ですから、このキッシンジャー構想というものが、私たちもまだはっきりこれはどういう背景のもとに、またどういう意図のもとに打ち出されたのかという点について理解できない面もあるわけでございます。これは私今度行きまして感じたんですが、アメリカの農務省なんかの考え方とこのキッシンジャー構想というものと必ずしも一致していないというふうな感じを私は持っておるわけでございますが、これはキッシンジャー構想とは別に、まあとにかく世界的に一つの、世界の各国、食糧のいわば先進国が食糧の備蓄をお互いの約束で国際的な備蓄機構という中で協力しながら進めていくということについては、日本協力をしていかなければならぬというふうに考える。これはやはりいまお話しのようなこれからの開発途上国等における非常に食糧不足で苦しんでおる国民に対するいわゆる援助ということも、この備蓄構想の中には含まれてもおらなければならないし、そういうふうにも思うわけでございますが、ただ、この備蓄構想というのが全然具体化していないわけで、われわれは、ただ、アメリカのキッシンジャーがどういうふうに考えておるかわかりませんが、これが一つの戦略的な考え方で備蓄構想が進められるとか、アメリカでの備蓄の肩がわりに各国に備蓄をさせるとか、そういうことなら、これはわれわれとしては認めるわけにはいかないわけですが、しかし、やっぱりそうした食糧不足国に対する食糧援助というふうなこと、あるいは将来の食糧の非常な不安ということに対処して国際協力という中で備蓄機構を推進していくという基本的な構想、考え方でもっと煮詰めていくことについては、われわれは協力をしながらいこうということでございまして、キッシンジャー構想をそのままわれわれが認めておるとか、そういうことでは決してないわけであります。
  23. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題はなかなか遠い話で、時間がないからこれ以上言いません。  そこで、どうしても国内における米の買い入れ問題については、これは触れなければならない。日本の米が生産が伸びているということは、これはもう農林省が非常に努力をした。恐らく前にも言ったように農林省のいままでの農政の中心というのが米をつくるということにあったわけです。品種改良、土地改良、それから人づくり、もう大いに努力してきた、それと農民のこれに対する協力と、それから日本の立地条件、いろいろなものが合わさって米の生産が伸びてきた。その伸びたものを今度は主として財政上の理由からこれを摘み取ろうとして仰えつけている、こういう点がどうしてもある。  同じ食糧管理法で、終戦直後には強権発動をして、そして土蔵から物置から家じゅうを捜した。こういうことがかつては行われた。現在は食管法で青田刈りをする。そうすると、この食管法というものの基本的な解釈、これは農民にわかるように大臣から説明してもらいたいのだが、いまの食管法はそう基本的には変わっていないと思うのですね。基本的なものは変えていない。それは政令や何かはどんどんどんどん変えているけれども、これは勝手に変えている話であって、農家から見たらまことにこれは理解のできない話だ。あるときには強権発動、あるときには青田刈り、つくったものは買わない、買うとすれば二段米価、こういうようなことでは、これはかつての日本における官民一体、中央の言うことに対しては従えばまことによかったということだけれども、いまや中央の言うことに従っておったらどうにもならぬということになって、官民がだんだん離れてしまう。こういうことでは非常に困る。だから、きわめてわかりやすいような説明をひとつ大臣からしてほしい。――これは大臣からしてほしいのだ、長官はいいのだ、大臣からやってもらわなければ困る、大臣責任者だから。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはわかりやすく説明できるかどうかあれですが、食管法はもちろん変わっていないわけでございますし、まあ食管法の第一条の目的についての条文がありますが、「本法ハ国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為食糧ヲ管理シ其ノ需給及価格ノ調整並ニ配給ノ統制ヲ行フコトヲ目的トス」と書いてあるわけでございますが、この趣旨に基づいて国が必要とする分についてこれを買い上げる、こういうことが食管法の目的ではないだろうか、こういうふうに理解をいたしております。
  25. 竹内猛

    竹内(猛)委員 まことに理解ができなくて、農民は何が何やら、どういうことだかさっぱりわからない。それはあるときには強権を発動し、本当に倉捜しから家捜しをやって、それでなけなしの米をみんな駅で取り上げて、警察権力が飛び出してきた。農家は、それでも協力したわけだ。ところが現在は、今度はこれを、同じ食管法が買い入れ制限、青田刈り、二重米価、二重米価と言っても政府米とあれは結局二段米価ですよ。現在現実に二段米価が行われて、やみ米屋が横行しているわけだ。こういうような状態をつくり出しているということは、どう見てももう食管法は壊れてしまって、政令の方が上回っちゃっているようにしか思えない。これは農林省だけじゃなくて、労働省や各省にも本法を上回ったように政令が横行しているところがある。そうして、それがあたかもあたりまえのようになっていて、本法が忘れられてしまう。こういうことがあるので、この点は厳重に、これはまた後のわれわれの仲間も質問をすると思うけれども、ぜひ守ってもらいたいと思う。  もう一つ、もう時間がないから最後に質問をしますが、この間、十一月の七日の日に福島県の農民の代表、農業団体の代表が、自民党の中曾根幹事長、松野政調会長、大平大蔵大臣等に、まあ私は余り米という言葉は使いたくないけれども、いわゆる豊作米の全量買い入れを要求しに行ったところが、大臣食糧庁の長官がここで答弁されるとはやや違った趣で、何とかやりましょう、まあ三百億ぐらいの金を何とか考えればいいというような向きの話もされている。まことに前向きの、しかもちょっとほのぼのとしたような話をする。ここでは全く冷くて、いやそれはもうだめだといつも押えられて、とびらがかたいけれども、自民党へ行けばそういうふうに甘くやるということはどういうことなんですか。これはやはり買い入れるならちゃんと一定の時期に、いま西の方やあちこちの生産状況がまだわからないから、何月何日ごろにはわかる、それがわかった段階で、そのときになったらとにかく全量を買い上げる、あるいは手数料も出すから心配するな、こういうぐあいの答弁をしなければ本当に信頼しないですよ。どうですか、この辺は。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 自民党の幹部がどういうふうな御答弁を農民代表に対してされたか、私もまだ聞いてないわけでございますが、政府与党でございますから、与党との間にはこれが取り扱いについては十分協議をしなければならぬとは思いますが、しかし買い上げる買い上げないということは政府がやることであって、自民党がやるわけではございませんし、十分その辺は判断をしながら詰めていかなければならぬ問題であろうと思いますが、現在のところは相当超過米が出る、作況指数等からそういう見通しになっておるわけであります。私も、これは去年、おととしとはちょっと様子が違うんじゃないだろうかというふうに考えております。おととしも、いまごろは大体三、四十万トンくらい出るというようなことであったようですが、最終的には七万トンに押えられた。ことしは、いまの状況では五十万トンぐらい出るのじゃないだろうかというふうな見通しでございますが、ことしの作柄は相当強いわけですから、最終的にもその辺のところまでいくかもしれません。しかし、まだまだ十二月にならないと御案内のようにはっきりした結論が出ないわけでございます。農林省としては毎年その結論を待って対処しているわけでございますので、われわれもいろいろと研究はしておるわけでございます。その最終的な収穫の数量が決定した段階において最後の決断をしなければならない、こういうふうに思っておるわけであります。
  27. 竹内猛

    竹内(猛)委員 時間が参りましたから私は終わりますが、自治省の皆さんに来ていただいて宅地並み課税と国定資産の質問をする予定でしたけれども、それはできませんので大変恐縮でした。  これで終わります。
  28. 澁谷直藏

    澁谷委員長 芳賀貢君。
  29. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際安倍農林大臣に対して、十月二十三日に発効いたしました日ソ漁業繰業協定の効果的な運用に関してお尋ねいたします。  実は、先日五日の当委員会においても、水産庁の内村長官並びに外務省の橘欧亜局長に対しましてこの件に関する質問を行ったわけでありますが、まだ不明確な点が残っておりますので、担当の安倍農林大臣から明確にしてもらいたいと思うわけであります。  第一の点は、協定が発効したにもかかわらず、依然として日本の北海道の太平洋沿岸あるいはまた東北等の沿岸にソ連のトロール船が船団を組んで繰業し、徐々に南下しておるわけでございます。この協定については、ことしの六月及び八月におきまして安倍農林大臣ソ連の漁業大臣イシコフ氏の間において相当具体的な隔意ない意見の交換が行われ、それが基礎になって今回の協定発効ということになったわけでありますが、特に先般の委員会質疑以後も日本の沿岸漁業に相当の被害が継続的に発生しておる関係もありますので、それらの実態についてこの際農林大臣から明らかにしておいてもらいたいと思います。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連の漁船の繰業に伴うところの漁業紛争を防止するため、御案内のように本年十月二十三日に発効した日ソ漁業操業協定におきまして、漁船の燈火及び信号に関する規定並びに漁船の運航及び漁業の操業に関する規則等が定められておるわけでございます。これらの規定が日ソ両国の漁民によって遵守されれば被害はおおむね防止されるものと考えられるので、政府といたしましては、協定に基づきまして必要な省令を施行したところでございまして、都道府県及び関係漁業者に対しその徹底化を指導するとともに、水産庁、海上保安庁の監視船によりましてソ連船の操業状況を監視いたしておるところであります。また、漁船、漁具に設置する燈火等につきましても、本年度において助成することといたしております。なお、今後特に問題を生ずるような水域があれば、ソ連にわが方の事情を十分説明し、ソ連理解を求めるように努力をしてまいりたいとも考えております。  また、被害が発生しました場合には、協定に基づき設置される漁業損害賠償請求処理委員会により円滑かつ迅速に損害賠償請求の処理を行うことができるように指導してまいる考えでございます。  私は、いまお話がございましたように、イシコフ漁業相との間で、今後の日ソの漁業につきましてはお互いに紛争を起こさないように、紛争が起こらないように努力をしようということを何度も確認し合っておるわけでございます。ソ連側も、私に対しては、今後日本近海で操業する場合においては、自粛をして紛争を起こさないようにするんだというようなことを説明をしておるわけでございますが、しかしことしになってからの状況をいろいろと聞いてみますと、必ずしもわれわれの期待どおりにいっていない点もあるわけであります。ソ連としては自粛をしておるというような判断があるかもわかりませんが、私たちとしては、必ずしもわれわれが期待をしておるような状況にいっていないような点もあるわけでございまして、その点は非常に心配をしておるわけでございます。  なお、今日のソ連漁船の日本近海における操業の実態につきましては、水産庁長官から説明をさせます。
  31. 内村良英

    ○内村政府委員 本年の九月下旬にソ連船約四十隻前後が北海道南部で操業を開始いたしました。昨年より早目に日高以西に出現して操業を開始いたしました。  今日までの状況は、操業の距離はおおむね距岸十五ないし十七海里でございますが、一部には距岸数海里で操業したものもあるわけでございます。今月に入りまして一部は南下いたしまして、現在、八戸沖から金華山沖に南下しております。十一月十一日の海上保安庁からの情報によりますと十一月十一日に北海道の太平洋沿岸に六隻、宮城県仙台湾周辺に十五隻が操業中だという情報を持っております。なお、昨日、土佐沖にソ連船があらわれたということを日本の漁船が見たという情報があったわけでございます。それにつきまして、現在海上保安庁で確認中でございますが、ただいままでのところでは保安庁はまだ確認していないという状況でございます。
  32. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、この協定内容並びに附属書に関する事項について、不明確な点をただしておきたいと思います。  まず、日ソ操業協定の第二条の(c)項に規定されておる損害の範囲という内容が、解釈いかんによっては非常に不明確な点がありますので伺いたいのでありますが、この第二条(c)項では「「損害」とは、漁船又は漁具の間の事故に関連して生じた損害をいう。」という表現になっておりますが、これを具体的に事例を挙げて説明してもらいたいと思います。
  33. 内村良英

    ○内村政府委員 ただいま御質問がございましたように、協定の第二条に定義がございまして、「「損害」とは漁船又は漁具の間の事故に関連して生じた損害をいう。」というふうになっておるわけでございます。この定義の解釈でございますが、この場合の「損害」というのは、この定義により、漁船の損害または滅失した漁具等の被害はもちろん、休漁中の滅失利益、人的損害等もこれに含まれる、こういうことになっています。
  34. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではお尋ねしますが、たとえばソ連側の漁船によって日本側の漁船自体に破損とか、あるいは大破が生じたというような場合は、それ自体の損害の補償というのは当然でありますが、たとえば被害船の復旧、修繕、やはりそれに要する一定の期間というものがかかるわけでしょう。修理をする場合に要する期間、その期間内は当然漁業活動ができないわけですから、そういう修復に要する期間からこうむる損害の場合もやはり損害であるというべきであると思いますし、大破して代船を建造しなければならぬというような、万一そういう事態の場合には、かわるべき漁船が確保されるまでの間の相当期間というものは操業ができない、漁業活動ができないということになるわけです。あるいはまた漁具、漁網等にしてもそういうことが言えると思うわけです。ですから、そうした被害以前の原状に復して正常な漁業活動が営まれるまでの期間というものに対する損害の補償、賠償というものはやはり当然この適用になるとわれわれは判断するわけですが、その点はいかがですか。
  35. 内村良英

    ○内村政府委員 そうした滅失利益も損害として請求できるわけでございます。
  36. 芳賀貢

    ○芳賀委員 できるということになれば、その損害の確認とか認定というものが必要だと思うのですね。今回の協定によっても、発効直前の二年の間に生じた事故で認定された被害については損害の賠償をするということにもなっておるわけですが、その滅失に関する損害の認定というのはいままで行政的に進めているわけですか。
  37. 内村良英

    ○内村政府委員 ただいままでのところ、滅失利益について関係者からの報告を受けておりません。そこで、先生がただいまお挙げになったようなケース、明らかに向こうの過失によってわが国の漁船が損害を受けた、その損害を直すために、修繕するために一定期間かかる。その間漁業ができない。それに伴う期待される利益の損失というものは当然これは請求できるわけでございます。  そこで、その場合の計算方法をどうするかという点は問題がございます。たとえば過去のその期間における漁獲高を基礎にするのか、あるいはいろいろな考え方があると思いますけれども、いずれにいたしましてもそういった算出の方式について若干問題がございますけれども、そういった滅失利益というものは明らかに請求できる、こういうことになっております。
  38. 芳賀貢

    ○芳賀委員 協定ではできるということになれば、手続上の問題としては被害を受けた漁業者自身が申し出なければならぬということになっておるが、これはやはり当事者がそういう被害の一定基準に基づいた計算等をして手続をするということは容易でないと思うのです。従来の例から見ると、やはり地元の都道府県、行政庁等に対して農林省としても漁業制度上の委託業務というのが幾多あるわけでございますから、そういう複雑な、計算に困難を伴うような問題については、行政庁を通じて十分な指導を行う必要があると思いますが、それはどうですか。
  39. 内村良英

    ○内村政府委員 請求自体は当然当事者がやるわけでございます。その場合にそういった滅失利益の計算方式についていろいろな問題があるということでございますので、私どもといたしましては大体標準的な考え方を示して指導はしたいというふうに考えております。
  40. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、協定の第七条が損害の賠償の請求の規定ということになっておりますが、これによると損害賠償請求処理委員会を設置をする、そうして日本政府並びにソ連政府それぞれから二名の委員と専門家並びに顧問の任命を行って、そうして委員会設置の恒常的な個所は東京及びモスクワとするということになっておりますから、当然この委員会設置というのは非常に急がなければならぬと思うわけでありますが、これに対してわが方における二名の委員の選任並びにこの委員を補佐するための専門家及び顧問の任命ということについては、もう農林大臣として行われたわけですか。
  41. 内村良英

    ○内村政府委員 なるべく早く委員会を設置するために現在手続を進めております。それで、委員及び顧問につきましても、現在人選中でございます。
  42. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは大臣、どうしておくれておるのですか。
  43. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはなるべく早くやるということでいま長官も言っておるとおりの準備を進めておるわけですが、相手側の方とも相談しながらやらなければならぬということでもございますので、まだ任命してないわけですが、早急にやりたいと思っております。
  44. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この協定の発効は十月二十三日ですが、これは結局、前の通常国会において両国間において協定が調印されて、これは当然手続上の問題として国会の協定に対する承認の議決が行われて初めて発効するわけですが、前の通常国会の七月四日の最終日に参議院で本会議の開会が予定されておったものが、事情によって開会ができないという不測の事態が生じて、それで予定された協定の承認ができなかったわけです。ですから、国会の承認の時期というものは衆議院においても十月十八日でございますが、それにさかのぼった行政的な準備段階というのは相当の幅があったわけですね。だから熱意を持ってこれらの委員会の設置あるいは人選等をあらかじめ進めるということであれば、もうとっくにおぜん立てができておって、十月二十三日発効と同時に日本側においては農林大臣委員及び専門家、顧問の任命をされて、相手側がまだ委員の人選等ができていない場合にはむしろこっちから督促して、速やかに東京及びモスクワにおいて委員会が設置されるようにすべきだと思いますが、いまだに人選もはっきり進んでおらぬ、いつ決まるかわからぬということであれば、むしろソ連側から催促されているんじゃないですか。その間の事情はどうなんですか。
  45. 内村良英

    ○内村政府委員 御指摘のとおり「各委員会は、日本政府が任命する二人の委員及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府が任命する二人の委員で構成する。」ということで、向こうの二人が来ないと委員会ができないわけでございます。  そこで、御指摘がございましたように七月流れてしまった。そこでなるべく早く協定を発効させなければならぬ、その場合にこういう問題が出てくるということで、外務省とも内々いろいろな話をしていたわけでございますが、いずれにいたしましても、ソ連側に何月何日に発効するということを事前に言えなかったということがございまして、二十三日に発効しましてから発効したという通知をして、同時にこの委員会をつくらなければならぬ。向こうもまた人選の問題、これはモスクワから、あるいはその他のソ連から日本にやってくるわけでございますから、赴任についていろいろ問題もございましょうし、できるだけ早くつくろうじゃないか――またわが方も二名の委員をモスクワに出さなければならぬわけでございます。そこで経費等は予算をもうとってございますし、万端準備はできておるわけでございますが、いずれにいたしましても、人を派遣するとか人が来るという話でございますので、それをなるべく早くやって、年内にはぜひ委員会を発足させたいということで、ソ連側といま話している状況でございます。
  46. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうも腑に落ちないのですが、年内ということになるとまだ十一月一ぱい、十二月大みそかあたりに決めるのですか。大臣からどうしておくらすのか答えてください。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり早く発足をしなければ、損害、被害が起こった場合の認定等に支障を来すわけでございますので、協定が発効したわけですから、一日も早く委員会は発足させなければならぬのは当然でございます。政府としてこれに対して別に怠っているわけではないわけでありまして、ソ連との間の連絡もとりながらこの準備を進めておるということであります。  私がソ連に八月に参りました際も向こう側との間に委員会は早急に発足しなければならぬ、ただその前提となるのがもちろん協定の発効でございますので、その協定の発効について確言できなかった点はあったわけでございますが、協定が発効すると同時に発足させるようにお互いに準備を進めようということは言ったわけでございますし、そういう点でソ連としてもこれについては早く発足したいということで準備を進めておられると思いますし、わが方としてももうほとんどの準備は整っておるわけでございますので、ソ連側にさらにひとつ連絡もとりまして、そして年内、それは年内といっても大みそかに発足するということじゃなくて、これからできるだけ早い時日に発足するということについてはもう最大の努力をしなければならぬと考えております。
  48. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この協定については、特に目的が日本国の沿岸海域における漁業に関する協定ですから、日本の沿岸に関係ある漁業についての協定ですから、両当事国、わけても日本側が重大な関、心を持って、熱意を持って進めるということでなければいけないと思うわけです。この点は迅速に促進してもらいたいと思います。  それから、次にこの協定の付属書のⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳにそれぞれ具体的な記載があるわけでございまして、漁船、漁具等に関する標識及びその他付属書に合意された事項についての実行項目が列挙されておるわけでありますが、これについての準備といいますか、漁船や漁具等に装置すべき標識等の製作とか、それを製作する場合の農林省の指導とか準備作業というものは当然伴うわけでありますが、これらの準備の状況というのはどうなっておるわけですか。
  49. 内村良英

    ○内村政府委員 協定が発効いたしまして、私どもといたしましてはこれに関する通達をまず出すと同時に、北海道につきましては、現地に沿岸漁業課長以下担当官を派遣いたしまして、各地で説明会をしたわけでございます。そこでわが方も漁船に標識をつけなければならぬ、漁具に燈火をつけなければならぬという問題がございますので、その面についてこういうことだという指導をすると同時に、今度の補正予算でそういったものに対する補助金も準備しておりまして、なるべく早く体制を整えるということにしたいと考え、現在進行中でございます。
  50. 芳賀貢

    ○芳賀委員 結局これができなければ相互に確認ができないということになるのでしょう。まず船体に船体の所属を明らかにする表示をしておかなければならぬ、それから漁船、漁具についても規定に適合する標識を付さなければならぬということになっておるわけですから、数においても相当の数量になると思うのです。だから、付属書にこういうふうに記載しておるからやらなければいけませんよという程度の指導じゃだめだと思うのです。これは水産庁として製作についても準備にしても具体的な指導を適切に行わなければいけないのではないかと思うのですけれども、それは余り進んでいないでしょう。
  51. 内村良英

    ○内村政府委員 それは関係の都道府県と協力いたしまして現在進めております。それから補助金等も出して設置することになっておりますので、極力早く整えなければ、わが方も相手方にクレームをつけられないという問題もございますので、現在鋭意準備中でございます。
  52. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうもこの関係事項については平素の内村長官らしくないのじゃないですか、どうもスローテンポのように見えるのですけれども、もうちょっと迅速、明快にいかないのですか。
  53. 内村良英

    ○内村政府委員 迅速にやるようにもちろん努力いたします。
  54. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしますが、これらの準備並びに指導に伴う予算が五十年度予算にも計上されているわけですが、これらの関係都道府県に対する配分とか実施等についてはどの辺まで行っておりますか。
  55. 内村良英

    ○内村政府委員 補正予算に計上してある分につきましてはまだ配分してございません。そこで県の方で予算を組んでもらいまして、それに対する補助ということで配分するということになるわけでございます。
  56. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際国から助成あるいは補助すべき予算項目等について一応の説明をしておいてもらいたいと思います。
  57. 内村良英

    ○内村政府委員 日ソ漁業操業協定の実施に伴う予算の内訳でございますが、まず第一に、協定国内指導等に要する経費、これは水産庁の漁業調査取り締まり費に計上するわけでございます。  その内訳といたしまして、第一に、協定の普及及び指導等に要する経費、それから監視船の運航に要する経費、これはロシア語通訳が乗船いたしました監視船一隻を関係水域に派遣するための経費でございます。それから漁船、漁具に標識、信号燈及び警報器を設置するのに必要な経費、これはさらに細かく分かれまして、漁船用燈火設置補助金、それから漁具標識設置補助金、安全操業確保費補助金、この中には警報器とかその他のものが入っているわけでございます。
  58. 芳賀貢

    ○芳賀委員 予算だから、あと数字を……。
  59. 内村良英

    ○内村政府委員 それでは申し上げます。協定国内指導等に要する経費は総額二億一千三百七十八万円でございます。協定の普及及び指導等に要する経費が五百十七万円、監視船の運航に要する経費が三千二百八十三万円、それから標識等に要する経費が一億六千八百八十五万円でございます。さらに漁業操業状況情報交換に要する経費、これは操業に関する情報をソ連側と交換するための経費でございまして五百二十二万円、それから協定実施に伴いソ連政府と協議を行うための必要な経費として百六十九万円、それからさらに先ほど問題になりました漁業損害賠償請求処理委員会の運営費といたしまして千三百三十六万六千円というものを組んでいるわけでございます。さらに日本側委員等の活動に要する経費として四千八百八十八万円を計上しております。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣に申し上げますが、今回の事故を未然に防止するための手段として標識等を準備して装置することになっておるわけですが、これについてはすでに大臣及び長官にも直接地元関係団体等から強い要請があると思いますが、ぜひこの際全額、経費については国が負担してもらいたい。われわれとしても当然なことだと思いますが、それにもかかわらず予定された各関係都道府県を経て交付すべき補助金の配分等についてもまだ具体的に配分が進んでおらぬということは、やはり怠慢と言われても否定できないと思うのです。だから、あらかじめ金額あるいは方針を示して、そしてさらに大臣の手元において十分検討して、できるだけ国が負担をしてこの協定が効果的な運営ができるようにすべきだと思いますが、その点はいかがですか。
  61. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国の負担につきましては、御承知のように三分の一あるいは二分の一の補助でございますが、これはいま補正予算が通ったばかりでございます。そこで、これは緊急を要する問題ですから、緊急にこの予算措置を実施しなきゃならぬわけでありまして、いまお話しのように、ぐずぐずしておればソ連の漁船団が去ってしまって、その後で標識をつけたって意味がないわけでございますので、この点については、水産庁に対してもさらに指示をいたしまして、早急にいろいろの対策が実施できるように万全を期したいと考えております。
  62. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、私の手元に日本国とソ連邦の専門家代表団の会議の議事録がございますが、今後の協定の運用上、損害賠償請求処理委員会等別途に専門家会議というものを設置して運用することになるかどうか、その点はいかがですか。それは処理委員会にも専門家を委員の補助機関として任命することになっておるので、この点の関係が不明確ですから。
  63. 内村良英

    ○内村政府委員 先生御案内のように、協定発効前だったわけでございますけれども、今年の九月モスクワで専門家会議を持ったわけでございます。そこで協定発効後の問題でございますが、損害賠償請求処理委員会の仕事はあくまで損害請求について処理するわけでございます。その他の問題といたしまして、日ソ間の漁業専門家の間で話し合わなきゃならぬ問題が多々ございますので、そういった問題につきましては専門家会議ということで別にやるということになるわけでございます。  ただ人間の問題でございますけれども、イシコフ大臣が私どもに言っておりましたのは、とにかくいまの東京のソ連大使館には魚の専門家は一人もいない。今後この処理委員会委員として二人が来る、それは同時に大使館の館員としての資格を持ちますので、いろいろな問題についてはその二人とよく話をしてくれということを言っておりましたので、あるいは実際上の問題は、東京で専門家会議をやるというような場合には、委員のために来ている二人が別な資格で出てくるというようなことは起こるかもしれませんけれども、一応形式的には処理委員会の事務と専門家会議で処理しなきゃならぬ事務とは別でございます。
  64. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この専門家代表団の会議の議事録の内容を見ても非常に重要な点が協議され、また合意されておるわけです。日本側は水産庁の松下次長と、ソ連側は漁業情報技術経済中央研究所のラフィツキー副所長が首席として出席されたわけでございますが、この専門家会議の中で、特に日本における国内法でありますが、漁業法に基づいた、たとえば共同漁業権の設置海域についてのそれを尊重する問題であるとか、あるいはまた底びき網の禁止海域というものは、これは国内規定に基づいて日本の沿岸全体に設置されておるわけですね。ある区域についてはもう通年的に禁止区域にしてあるとか、あるいはある区域については一定の期限を付して、その期間中はその区域において底びき網漁業をしてはならぬというような禁止区域も設定されておるわけです。それからまた国内法でありますが、沿岸の水産資源開発区域というもの、これも指定海域ができておるわけですからして、この専門家会議においては、議事録の内容をそんたくする限り、こういう点が相互において述べられて理解に達しておるというふうに私は判断しておるわけですが、その点はどうなっておるのですか。
  65. 内村良英

    ○内村政府委員 専門家会議の議事録にもございますように、専門家会議の際わが方の代表は、わが国の沿岸における共同漁業権の設定されている海域それから底びき禁止の規則等については詳細に説明したわけでございます。それに対してソ連側は、公海漁業はあくまで自由である、したがって日本の領海三海里の外の海はあくまで漁業は自由であるということを強力に主張いたしまして、論議が難航したわけであります。ただわが国の底びき禁止区域等が設置されているところにつきましては、沿岸漁民の感情を考慮してソ連側の自粛措置として、ある海域について自粛措置をとろうということで、議事録にもございますように、「専門家は、両国の漁民が北海道南部の一部水域において底びき網及びきんちゃく網漁業を差し控えること及び銭州及び大室出し周辺のさばの産卵水域においてその産卵時期に上記の漁具によるさばの漁業を差し控えることを自国の権限のある当局に勧告することが必要であると認めた。」ということで、そういう勧告を専門家が政府にする。そこで自粛措置はあくまでソ連側の一方的措置として行われるわけでございまして、この点につきましては日本政府との合意に基づいてやるというものではございません。  それから、さらに問題が起こったときには今後協議しようということになっております。したがいまして、今後いろいろな問題が起こってまいりましたら、再び専門家会議を開きましていろいろ協議するということになるわけでございます。
  66. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣にお尋ねしますが、この点の詰めが協定の締結上不備な点ではないかと思うのです。たとえば二十年前にできた日ソ漁業条約にしても、これはやはり北洋の公海の海域においてサケ・マスの資源を両国協力によって資源保護しながら、一定の計画的な漁業を行う、あるいはまた先般行われました日米加の漁業会議にしても、条約に基づいて公海の漁場における三国間の操業に関するあるいは禁止区域の設定に対する合意の上に適法な漁業活動をやるということになっているわけであります。そこで、日本の沿岸といえども、公海に設定された国内法に基づく漁業権にしても、底びき禁止区域にしても、第一義的には資源を保護する、資源の確保を図る、そして特に零細な日本の漁民の生産活動をあわせて保護するということであって、日本の場合はほとんど国内法による許可漁業ですから、大臣の許可あるいは知事の許可にかかる規制を受けた漁業活動というものを秩序正しくやっておるわけだから、やはりその対象海域が日本の沿岸の公海と限定されておっても、この点はソ連側の自主的な判断と協力だけでその内容にするというのはちょっと詰めが甘かったんじゃないかと思いますけれどもどうですか。
  67. 内村良英

    ○内村政府委員 まず、いわゆる日ソ漁業条約と操業協定の問題でございますが、先生御案内のように日ソ漁業条約は公海における漁業活動自体を、漁獲活動そのものをいろいろ規制しているわけでございます。それに対しまして、操業協定は操業する場合の両国の操業の調整でございまして、漁獲規制その他は全然入っていないわけでございます。  そこで、わが国の沿岸につきまして、特にサバについて銭州周辺はわが国の周辺のサバの産卵場であるから、ここでは余り漁業をやらないでくれ、したがって、わが国も一本釣りしか認めていないんだということを強く主張したわけでございます。それについて向こうは、それはわかる、それならばひとつ資源調査をお互いにやって、相互に漁獲高を決める日ソ漁業条約の対象魚種にサバを挙げたらどうかというようなことを言ったこともあるわけでございます。そういたしますと、わが国の沿岸の漁獲についてソ連側といろいろ話をしなければ漁獲量その他が決められないということでは、率直に申しましてそういうことをやるのはまだ時期尚早でございますし、逆に考えてみれば、わが国漁業の手足を縛ってしまうということにもなりますので、現在のところ沿岸につきましてはまだそこまで行っていないというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、操業の調整ということで操業協定を結んだわけでございまして、いまのところ沿岸のサバなりあるいは底魚というものを日ソ漁業条約の対象魚種に挙げるのは時期尚早ではないかというふうに考えているわけであります。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま内村長官が発言をしたとおりでありまして、実は私がモスクワに参りましていろいろと交渉をいたした際も、とにかく日本の沿岸においては、公海上ではあっても日本として資源保護という立場から日本の法律に基づくところの規制措置をとっておる。そして、これは資源保護であると同時に日本の沿岸漁業者の利益を守るという長い歴史的な経過を経てこういうことになっておるので、そういう状況の中へ、公海だからといって大型のトロール漁船等で操業されたのでは、今後の日ソ間の国民感情の間にも非常にむずかしい問題が起こってくるということを強調いたしたわけでございますが、ソ連側としては、とにかく三海里以上は公海であるという立場を厳守しておるわけでありまして、三海里以上は操業の自由はあるんだ、ただしかし日本側の言うこともわかるので、公海ではあるけれども、それではソ連が一方的に自粛いたしましょう、日本との間にトラブルが起こることは決して好ましくないし、これはしたくないと思うので自粛いたしましょうということで、ソ連側の一方的な自粛ということできておるわけでございます。  さらに一歩踏み込んで資源保護というふうな形でソ連と話し合うということになりますと、これはいまの水産庁長官が申し上げましたように、やはりわれわれ沿岸の海域におきまして、日本自体が資源についてソ連との間に手足を縛られるというふうなことになってくるわけでございますので、そこまで踏み込むことはいろいろと今後の問題があるわけでありますから、とにかくソ連側の自粛という措置に期待をし、信頼をして、トラブルが起こらないことをひたすら期待をしておるということであるわけでございます。もちろん操業上紛争等が起こった場合においては、操業協定というものによってこれが処理されるわけでありますが、まず第一にやはりトラブルが起こらない、それにはやはりソ連の自粛ということにわれわれとしては非常に大きな期待をかけて今日に至っておるわけであります。
  69. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今次の協定に対して、国民が見てもあるいは関係漁民が見ても、日本国内法によって、たとえば漁業権の区域というものが設定されておる。それから底びき網の禁止区域というものが設定されておる。これは守られておるわけです。その区域に今度は他国の漁船が操業に入り込んできて、ここは公海だからどういう漁法で漁業をやっても構わぬじゃないかということでは納得はできないと思うのです。こういう点はやはりソ連としても非常に資源論を尊重する国ですからして、対等な立場で十分友好的に話し合いを進めれば、これはもう少し効き目のある協定ができたのじゃないかと思うのです。  さらに一歩詰めれば領海十二海里の宣言の問題が一番の決め手になることは言うまでもありませんが、これはきょうの一時から宮澤外務大臣出席を求めて、農林大臣と両大臣政府としての見解をただしたいと思うわけですが、なぜ当委員会においてそうした禁止区域等の問題を強調するかというと、ちょうど昭和三十三年の九月に、これは国内の漁業の紛争から生じたわけですが、中型底びき網漁業の禁止区域を拡大する必要があるという議論委員会で積極的に出まして、数次の委員会の審議並びに最終的には委員会として国政調査の形で現地調査等もやりまして、それを機会にして底びき禁止区域というものを相当拡大して資源保護と沿岸漁業の擁護についての実績を上げたという経緯があるのです。だから農林水産委員会としてはこういう問題についてもやはり具体的に掘り下げて、せっかく協定を締結したわけですから、両国間の友好と協力を踏まえて十分効果の上がるような努力をしてもらう必要があると思うわけです。  ですからこういう点については、損害賠償処理委員会と別途に両国間の任命した専門家会議において継続的に持たれるということであれば、そうした専門家会議等の場において十分ソ連側にもこの趣旨を理解してもらって、そして本当に協定というものが来年三月からのニューヨークにおける最終的な海洋法会議までのつなぎの形式的な協定に終わらぬようにしてもらいたいと思うのですが、その点の大臣のお考えはどうですか。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はしばしばソ連側と接触をしてまいりましたし、イシコフ漁業大臣とも会談もしてまいったわけでございます。その間におきまして感じましたことは、今回の北洋の問題にいたしましても操業協定の実施についてのソ連の見せた態度にいたしましても、ソ連側としてもやはり日本協力をしていく、日本との間の関係の改善に努めていきたいということは、その態度から見ましてもはっきりしていると思うわけでございまして、そういう意味で私たちもやはり漁業関係は今後とも日ソ間に永続をしていくわけでございますから、したがって日ソの良好な関係というものは何としても持続をし、これをさらに発展をさせていかなければならない、こういうふうに考えて接触もしてまいったわけでございます。  今日の事態では日ソ間の関係は決して悪いとは考えておらないわけでありますが、問題はいまお話がございましたように、日本の沿岸におきまして今後いろいろとトラブルが続発するというふうなことになれば、これは日ソ間にとりましては非常に悪い事態になってくるわけでございます。そうしてそれが起きるか起きないかは一にかかってソ連側の態度といいますか、ソ連側の自粛措置のいかんにかかっておるわけでございますので、せっかく委員会等もできるわけでございますし、われわれとしてもこの委員会の場を通ずるとともに、さらに外交ルート等も通じましてこちらの方の実情も十分説明をし、この自粛措置が徹底をしてトラブルが起こらないように万全の措置を講じさせるべく、これはもう政府としては最大の努力を進めていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  71. 澁谷直藏

    澁谷委員長 この際、午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時六分開議
  72. 澁谷直藏

    澁谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  73. 芳賀貢

    ○芳賀委員 まず、宮澤外務大臣にお尋ねいたしますが、当農林水産委員会においては、十一月五日の委員会におきまして、先般十月二十三日に発効いたしました日ソ漁業操業協定の実効ある運用の問題と、これに重大な関係のある領海の幅の拡大問題について、政府当局に質疑を行ったわけでございますが、われわれの承知しておる限り、前の第七十五通常国会におきましても、また今次の臨時国会におきましても、政府部内において各国務大臣の間にこの領海問題については意見の不一致があるやに受けとめておるわけであります。そこで、きょうは、一番関係の深い外務大臣並びに農林大臣出席を求めまして、この委員会を通じて特に領海問題に対する政府としての積極的な方針を明確にしてもらいたいと思うわけでございます。  そこで、問題といたしましては、まず安倍農林大臣におかれましては、しばしばの国会答弁を通じまして、日本としては現在三海里の領海問題については、世界の大勢にかんがみて、これを十二海里の幅に拡大することに鋭意努力するということを常に明らかにされておるわけでございますが、一方、外交を担当する宮澤外務大臣においては、この農林大臣の方針に対しまして相当、異説を唱えておるわけではないが、後退した見解を国会においても述べられておるわけでございますので、まず、この点について、外務大臣として――農林大臣も外務大臣も、同じ三木内閣のもとにおける同等の国務大臣でもございますので、明らかにしてもらいたいと思います。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま芳賀委員から、私が領海三海里を十二海里に拡大をするために努力をしたい、こういうことをすでに述べているということでございますが、確かにそうでございますが、私はその際、いつも申し上げておるわけですが、水産の立場からいけば、やはり最近のソ連の漁船団の日本沿岸に対するところの進出等もあって、水産を守るというふうな立場からすれば、もはや水産の面では十二海里を阻害する問題はないわけであるし、そういう面で三海里を十二海里に拡張したい、そのために努力をしたい、ただ、政府間においてはいろいろの調整すべき問題があるので、その点は調整をしなければならない、検討しなければならないということを申し上げておるわけでございまして、私の常に申し上げていることにつきまして改めてお話しを申し上げておきます。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま農林大臣がお答えになりましたとおりのことでございますが、確かに外務省として多少世間に誤解を与えておるきらいがございます。実を申しますと、農林水産の立場からいって十二海里を宣言するということが一つ考え方であるということは、私どもよくわかっておりまして、それに対して外務省が、領海というものは外務省の所管であってそれで反対しておるのではないかというような世間の受け取り方がございますが、実はそういうことではございませんで、たまたま私どもが各省を取りまとめる立場で海洋法会議に出ておりますので、それで各省の立場をいろいろ総合調整をしなければならないような位置に外務省が置かれておるわけでございます。  すなわち、農林省はもとよりでありますが、運輸省、防衛庁、法務省、大蔵省等々、その一番最大の国益を、しかも海洋法会議というものを進めながらどうすればいいかというふうに私どもは実は腐心をいたしておりますので、何か領海というものは外務省の権限であるというふうに考えてまいっておるわけではございません。海洋法会議の推移の本来から申しますならば、いろいろな問題、すなわち領海の問題あるいは経済水域の問題、国際海峡の問題等々、いわゆる一つのパッケージで、ばらばらにせずに一括して解決を図ろう、そうでありませんと各国の利害の調整がむずかしいということで、実は海洋法会議の議長からもそういう特段の注意があった、そして、来年の春にはまた海洋法会議を開く、そういう段階でございますものですから、できるならばいろいろな要素を一緒に解決をしたいという気持ちは、会議の当事者として持っております。  ことに、いわゆる国際海峡というようなものができてまいりますときに、わが国のそのような海峡を外国船舶の通過との関連でどう考えるか、あるいはわが国のたくさんの船舶が今後世界のそのような国際海峡を支障なく通過するためにはどうするかといったようなことが、やはり一つの大きな問題であろうと思っておるわけでございます。そういうようなことから、先般来、閣議としてもこの問題については全体の国益を考えて慎重に判断をしようということになっておるわけでございますが、他方で、昨今ソ連の操業をめぐりまして問題が非常に緊迫化しているということも私どもとしてはよく承って知っております。したがいまして、政府としては、海洋法会議をめぐりますいろいろの交渉の推移、それからまたそのほかに国際的な動向がかれこれございますから、それを見きわめつつ、これらの諸問題を検討しまして、十二海里の領海ができるだけ早く実現するように努力をいたしたい、そのように考えます。
  76. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最近特に領海問題が国際会議の中心になってきましたのは、まず昨年の南米カラカスにおける海洋法会議、さらに今年三月からのジュネーブにおける海洋法会議において、ちょうど領海十二海里の問題と排他的経済水域二百海里設定の問題が、あたかもセットになるような形で国際会議で論議が進められて、大勢的にはその方向に結論が推移しておると思うわけであります。ただ、日本政府の国際会議における態度というものを見ますと、全く主体性が欠けておる。あたかも海洋法会議の結論待ちというような、そういう外交態度というものは、国民の立場から見てもこれを信頼し支持することはできないと思うわけです。なぜ政府としてそのような消極的な態度を保たなければならぬか。特に領海問題については、何ゆえに取り残された形で日本における領海三海里を固守しなければならぬかということにわれわれは疑念を抱くわけですけれども、この点については、どうして三海里を固守しなければならぬのか、積極的に十二海里問題に日本として明確に踏み出すことができない具体的な理由を挙げてもらいたいと思うのです。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 詳しくは政府委員から申し上げますが、伝統的に、わが国ばかりでなく世界の多くの国が三海里というものをいままでとってまいりました。中には無論十二海里をとった国もございますし、その中間というようなものもございます。そういう伝統的な考え方であったわけでございますが、他方で海洋法会議というようなものがいまやもう結論に非常に近づいておる。その中で、実はわが国本来の立場から申しますれば、たとえば経済水域二百海里というようなものは、もとから言えば海洋は自由であることが一般論としてわが国のためには得であったろうと思いますが、どうもそうはまいらなくなって、経済水域というようなものもどうやら避けがたいような情勢になってきているといったような、いろいろな要素が海洋法会議には組み合わさっておりまして、その領海の幅というものもそれとの条件でしばしば論じられておりますために、わが国としては全体的に一番国益を大きくしたいという立場をとりますれば、やはり海洋法会議がいわゆるパッケージディールで決まることがわが国の利益として一番大きい、こういう考え方を基本的にはいたしておるわけでございます。しかし、そうはそうでありますけれども、先ほども申しましたような、いわゆる領海についての事態がかなり緊迫をしておるということも考え、また世界各国の中にも海洋法会議のそのような合意はさることながらといったような動きをする国もございますから、その辺もよく見きわめる必要があるというふうに、実は政府としてもかなり差し迫った問題としてこの問題を考えつつございます。
  78. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の手元に国連加盟の各国のジュネーブ四条約への加入状況及び各沿岸国の領海並びに漁業水域等についての各国の国内法の実態の一覧表があるわけですが、単独に領海三海里だけを維持しておるという国はもうほとんどなくなったわけですね。たとえば領海三海里を維持している国があるといたしましても、それは必ず十二海里ないし二百海里の漁業専管水域を設定して、やはり沿岸における自国の漁業を中心とした国益を守るというような、そういう方針に一斉に向いているわけですね。ですから、むしろ孤立したような状態でこの三海里だけを固守するという政府の方針というものは、国民としても理解できないと思うのです。しかも、この海洋法会議において結論として領海十二海里、さらに経済水域二百海里が大勢である場合にはそれに日本政府としては順応するという方針は示されておるわけですから、そうなればやはり主権国としての立場において領海問題等についてはもうすでに明確にする時期だと思うわけです。  たとえば前の国会におきましても、国会議事録を見ると、宮澤外務大臣におかれても、外務委員会発言だと思いましたが、その当時はジュネーブの海洋法会議が進行中でございましたので、政府の方針としてはジュネーブの海洋法会議成果というものに期待を持っておるが、もしも海洋法会議において結論が出ない場合においても、わが国としては領海については十二海里の方針を出さざるを得ないという旨の発言を外務大臣も行われておるわけです。安倍農林大臣の場合には、もう就任以来一貫して十二海里の積極論者ですから、これはもう疑念をはさむ余地はないわけです。また先日の参議院の予算委員会においてもわが党の川村清一委員の質問に対しまして、特に三木内閣総理大臣としても、政府としては十二海里実現というものを方針として堅持しておるが、結局ニューヨークにおける来春の海洋法会議関係もあるが、それを待たずに政府として早い機会に十二海里を実現する方法を検討しています、こういう答弁総理大臣は行われておるわけですから、それを総合すると、結局宮澤外務大臣が十二海里に踏み切るという方針を決めれば三木内閣は一体となって前向きに十二海里宣言に向かって諸般の手続きをとることができるんではないかというふうに思うわけです。  それによって生ずる、たとえば津軽海峡等の国際海峡の問題等も当然これは付随的に生じてくるわけでございますから、そういう場合においても国際海峡については原則としては無害航行の原則というものがあるわけですから、何も日本の場合だけ十二海里の領海を設定したから大きな障害が生ずるということはないと思うわけです。ぜひこの際独自性といいますか、明快に政府の方針というものを統一して明らかにしてもらいたいと思うわけです。
  79. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる国際海峡というものはまだ国際法としては海洋法会議が結論に達しませんのでできておらないわけでございますが、一般に無害航行が認められると考えました場合、たとえばわが国のタンカーが国際海峡と考えられるような地域を御承知のように相当たくさん通過いたしております。それらの沿岸国が今後タンカーの航行というものを必ずしも無害航行とは考えないという立場を表示するおそれがございまして、その辺のところ、これはまあ具体的には運輸省の問題になるのでございますけれども、その辺の見きわめもひとつ必要であるかと考えております。  先ほど純粋に三海里だけでやっておる国がだんだん少なくなっておると言われましたのは、そういう傾向は確かにございまして、たとえばアメリカなどでも領海は三海里でございますけれども、漁業専管水域というものを持っております。実は、各省といろいろお話をしております間に、漁業専管水域ではどうであろうか、これでありますと、海洋法会議との関連も申し合わせに別に反するわけでもありませんし、漁業としての目的を達し得るのではないかというようなことも検討をしておるわけですけれども、これはこれでまた水産の立場からは領海に比べるともう一つ十分でないというようなお考えがあるらしい、その辺のことをあれこれ考えあわせまして、結局これは関係各省の利害を調整しまして、利害というのは結局国益ということになるわけでございますから、調整いたしまして、先ほども申しましたように、できるだけ早い機会にこの問題について一つの結論を出しませんと、どうも現状というものは非常に国民感情の上からも悪い。具体的に漁民が困難をしておられることはもとよりといたしまして、でございますので、何か早い機会に至急に政府としての立場を決めなければならぬのではないかと考えまして、実は各省と至急に打ち合わせをいたしたい、実は従来もいたしておったのでございますけれども、このように事態が急になってまいりましたので、そういうふうに考えております。
  80. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、念を押すようですけれども政府として領海に関する事項を所管しておる省庁というのはどこになっておるのですか。
  81. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 政府の所管官庁――領海一般ということになりますと、どうしても国際法上の問題が非常に大きな面を占めてまいると思います。国際法に関する部面につきましてはやはり外務省が問題についての責任を持っておるというふうに考えておるわけでございますが、それぞれ具体的な事項別にいろいろな省庁、すなわち漁業に関して申しますれば農林省、船舶の問題についてとなりますれば運輸省というふうに、その所管事項はそれぞれの省庁に分かれるということになろうかと思っております。
  82. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると、この領海問題に関連して国益を維持するということになれば、外務省よりもむしろ具体的には農林省とか運輸省の方が領海問題については相当積極的な発言の幅というものが政府部内にもあるのじゃないですか、どうですか、農林大臣
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま条約局長答弁したようなものではないかと思うのですが、国際法上の立場からいけばやはり外務省が総括をしていかなければならぬ立場にあるのではないだろうか、海洋法の国際会議等においてもそうでございますが、そういうことになるのではないかと思うわけですけれども、水産ということについてはあくまで農林省が責任を持って対処していかなければならぬ問題であろうと思います。
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで両大臣にお尋ねしますが、先般、全漁連から各政党に対して、領海十二海里問題と当然関連があるわけでありますが、日ソ漁業操業協定に関し、あるいはまた経済水域二百海里の問題等についての早期実現を含んだ質問書というものが出まして、当然これは社会党としても公党の立場で、領海は十二海里、経済水域二百海里というのは、これは日本の漁業にとって歴史的には相当の影響があるが、しかし、世界の大勢として沿岸国がそれぞれ排他的な経済水域を確保するということであれば、やはり国際的な漁業協力あるいは経済協力の形で日本の漁業実績等も主張して、そうして国際協力の中で排他的経済水域が実施された場合においても、わが国の漁業実績というものを大きく低減しないような、そうした外交的、国際的な努力を通じてこれは解消すべきである。さらにまた、日ソ漁業操業協定の効果的な実現については、単にこれを時間つぶしで、来年のニューヨークにおける海洋法会議の結論を待つまでのつなぎとして協定を運営するということは、社会党としては絶対にそういう点に対してはとるべきでないという点を明らかにしておるわけです。私の承知している限りでは、野党として、共産党におかれましても、公明党におかれましても、また民社党におかれましても、社会党とほぼ同様な方針と見解というものを回答書の中で明らかにされておるわけであります。  そこで、一番肝心な三木内閣を支持する与党自民党としては、領海問題あるいは二百海里の経済水域問題等については一体どういう方針であるか、これは当然政府と与党との関係でございますから、しかも両大臣は与党内においてもそれぞれ各派閥といいますか、相当重要な発言権を維持されておる方でございますので、この際、問題が大事ですから、率直に、与党の方針というものと政府部内の話し合いというものがどうなっておるかという点についてここで明らかにしてもらいたいと思います。
  85. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 基本の考え方としまして政府の持っております考え方ははっきりいたしておりまして、すなわち経済水域二百海里あるいは領海十二海里、そして国際海峡といったようなことは、いまやそれ自身としては海洋法会議の大勢になりつつある、そしてそういう大勢が決定するのならば、わが国もそれに従っていく、ここまでは実はほぼ基本方針がはっきりしておるのでありますが、実はそれが決まっていく過程におきまして、それらのものがお互いに連関しておりますことと、経済水域というものの内容がどういうものであるか、あるいは国際海峡とはどのように定義づけられるものかというようなことが、いま残された海洋法会議の課題であるわけでございます。それでありますだけに、全体のことを一括してやりませんと、各国の利害関係がバランスしないという問題があって、海洋法会議が時間がかかっておるわけでございますが、基本的にはそういう意味政府の態度は明快になっておると思うのでございます。  ところが、ただいまの問題は、そのときまで待てないではないかという問題になってきておるわけでございますから、現実にただいまの時点でこの問題をどうすべきかということが、私どもが先ほどから申しますように、いろいろ内部で協議をしておる問題でございます。もし漁業専管水域で事の処理ができますのならば、これは各国にもたくさん例もありますし、昨年の国際司法裁判所でも専管水域というものは認められるという判決がございますから、国際的にも問題がないし、海洋法会議との関連でも問題がない。これですと、正直申しますと、処理にあれこれ悩まなくてもいいのでございます。が、それで当面の事態が十分には解決できないのだというふうなことであれば、さあそこをどうすべきかということをもう一つ相談しなければならないところだと思います。
  86. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの外務大臣のせっかくの発言ですが、われわれ社会党としては、現在の領海三海里の幅の拡大にかわる措置として漁業専管水域を設置すればいいという、そういう見解は全然持っていないわけです。当然この際領海十二海里を主権国の立場において、日本の主権の立場において宣言をすべきである、こういう明確な方針を決定しておるので、その点は十分認識をしてもらいたいと思います。  たまたま今晩外務大臣は、世界首脳六カ国会議に、三木総理並びに大平大蔵大臣とともに出発されるわけでございますが、この種の問題は首悩六カ国会議において指導性を発揮するべき問題ではありませんが、たとえば先般の日米加漁業会議の推移を見ても、すでにアメリカにおいては下院において経済水域二百海里を決定しておるわけですね。それからカナダにおいてもやはり後進国等との連絡の中で二百海里の実現を促進しておるわけでありますし、また米州のメキシコにおいてもすでに二百海里を独自に決定しておるわけです。ですから、日本関係する国際的な漁場あるいは沿岸国においても積極的に、来春のニューヨークの海洋法会議を待たないで、それぞれ自国の判断で方針を決めておるときですからして、日本世界沿岸国の一番最後に取り残された形でそれに追随するというようなことは、これはあくまでも外交方針としても避けるべきであるというふうに考えるわけです。  しかも、きょう午前安倍農林大臣に対して、発効した漁業操業協定の運用についても質疑を行ったわけですが、元来、日本の三海里の領海の外にある公海における、特に日本の沿岸水域を対象にした協定が、宮澤外務大臣ソ連の漁業大臣のイシコフ氏の間において調印されたわけですね。そういう時代ですから、領海問題等についても、自民党政府としては、関連する若干の問題があるとしても、やはり日本の国益を守る、世界の大勢の中で正しい道を進むということになれば、この際進んで領海問題についても方針を明らかにして、それを実現するということで一層努力すべきであると思いますが、これに対する両大臣の責任ある態度を示しておいてもらいたいと思います。
  87. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ジュネーブで行われましたことしの海洋法の会議におきまして、やはり世界の大勢が領海十二海里、経済水域二百海里という方向に固まりつつあるわけで、日本としてもこれに順応していかなければならない、そういう方向で対処したわけでありますし、ジュネーブにおいて結論が出るだろうというふうに期待をいたしたわけでございますが、残念ながら結論は出なかったわけでございます。しかし、その方向というものは現在においても変わらないわけでありますが、ジュネーブで結論が出なかった事態をいろいろと考えてみましても、果たしてニューヨークで結論が出るかどうか、問題もここに残るとも思います。また最近における、アメリカを初めとして各国が一方的に経済水域等を設定する動きが出ておる今日でございます。そういう中にあって、わが国としてはニューヨークにおける海洋法の会議によって国際的に合意がなされるまで待つというのが方向としてはいいと思うわけでございますが、しかし先ほどから申し上げましたように、最近のソ連漁船団の操業状況等を見ますと、憂慮すべき状況があるわけであります。  私は、最近の日ソ間の漁業を通じての協力関係は、決して悪い方向に進んではいない、むしろ大変いい方向に進んでおると思っておりますし、またソ連側も、私に対してしばしば説明をいたしましたように、日本の沿岸における操業については自粛をして、トラブルの起こらないように努力をするという言明に基づいて、操業自体についても、全体的に言えば、去年あるいはそれ以前の年と比べると自粛措置は進めておるというふうに判断をしておるわけでございますが、しかし個々の問題で必ずしも私たちの期待どおりにいかない状態が出ておることも事実でございます。また今後そういうことが起こり得る状態も十分考えられるわけでございますので、そうした国の内外、さらにまたわが国の沿岸漁業の利益というものを守るという立場からすれば、やはり領海十二海里ということを真剣に政府部内において検討をする時期に来ておる。外務大臣からも、差し迫っておるというお話をいただいたわけでございますので、近いうちに政府部内の検討は積極的に進めるべきだというふうに思っております。私もそういう考え方で対処したいと思うわけであります。  なお、専管水域については、いろいろと農林省内部においてもずいぶん論議もいたしましたし、またわが党におきましてもいろいろと御論議をいただいたわけでございますが、専管水域というのは、やはり操業既得権を直接的に認めざるを得ないというふうな面が非常に強く出るわけでありますので、沿岸漁業者の利益を守るという面からいけば、領海ということ以外に私は十二海里以内の操業を排除することはできないのではないだろうか、こういうふうに考えておるわけであります。
  88. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど、米国におきまして二百海里の漁業専管水域の問題が上下両院において成立し、あるいは討論中であるというお話がございまして、そのとおりでございますが、実は私どもはその帰趨をまた別の意味の国益から非常に案じております。  海洋法会議の打ち合わせもあり、アメリカのようないわば指導的地位に立つ国が、一方的に二百海里の専管水域を宣言するというようなことは、海洋法会議の前途そのものを危うくいたしますし、またわが国も実は重大な利害関係があるということから、わが国としては、米国政府に、そのような議会の議決があった場合にも、大統領としては十分の対処をしていただきたいということを、口上書をもって申し述べておるわけでございます。普通でございますと拒否権を使うということが考えられるわけでございますけれども、いろいろ政情等があって、それが必ずしも明確でないということをわが国は心配をしておりまして、場合によりましては、明日から開かれます会議の場を利用しまして、そのような立場を再度米国に、これは二国間だけの問題でございますが、伝える必要があるかもしれないというようなことを、私自身考えておるわけでございます。  そういう問題が一つございまして、先ほど私が海洋法会議及び各国間の動向等も云々と申しましたのは、そういうことにも多少関連がございます。わが国が米国に対してそういう立場を一つとりながら、今度はというような、その辺の微妙な関連があったりいたしまして、とつおいつ考えておるわけでございますけれども、それはそれといたしまして、先ほど農林大臣が述べられましたように、わが国自身として差し迫った問題になってまいったことはもう疑いがありませんから、至急に関係各省の間で話を詰めなければならない、何とか早く答えを出さなければならないというふうに考えております。
  89. 芳賀貢

    ○芳賀委員 以上で終わります。
  90. 澁谷直藏

    澁谷委員長 津川武一君。
  91. 津川武一

    ○津川委員 外務大臣にお尋ねしますが、ソ連の漁船団が北海道の南部に来て操業最中に私現地を見てまいりました。そうしたら、虎杖浜というところで、ソ連船が来る前は毎日二百箱あったのが、ソ連船が来てから二十箱か三十箱に減ってしまった。そのために非常に大きな精神的、財産的な損害を受けている。今度は跡継ぎがいなくなるという。襟裳岬に行ってみました。タコなわ、こちらは七・五トンの船に五人乗っていく。向こうの操業船は三千トン。おっかなくてそばに寄れない。そこで十一月からカレイの刺し網をしていいかどうかわからない。このためにお嫁さんが来なくなってしまったという。三つ目は浦河です。百万円の漁網がやられると、漁ができなくなるために二百万から七百万の損害になる。したがって何とかしてくれ。一つには、十二海里を宣言してくれると、この八割の被害がなくなるのだが、これが漁民の心からの願い、心からの要求です。農林大臣はこれを支持している。外務大臣として、この農民の気持ちをどう考えて、これを援助なさるか、この御心境をまず伺わせていただきます。
  92. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういうことはよく承っておりますので、先ほど申しましたような困難な事情がいろいろございますけれども、これについては政府として早く結論を出さなければならないということで、関係各省の打ち合わせを詰めてまいりたい。これは先ほど申しましたように、外務省に独自の主張があるあるいは外務省が領海を主管しておるということではございませんが、どこかが取りまとめなり幹事役をいたさなければならないでしょうから、各省の話を急いで詰めなければならないと思っております。
  93. 津川武一

    ○津川委員 この漁民の気持ち、十二海里を宣言してくれたならいいんだがなあという気持ち、これを宮澤さんはどう受け取られて、この気持ちに何とこたえますか、この席から北海道の漁民に答えていただきます。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま申し上げたとおりでございまして、そういうことを承っておりますから、いろいろ困難がございますけれども、各省でできるだけ早く詰めて結論を出したいと思っております。
  95. 津川武一

    ○津川委員 外務大臣は、十二海里を宣言したら漁民たちの被害がうんと少なくなる、漁民の気持ちが楽になるとお思っていますか。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、少なくとも十二海里の専管水域あるいは領海ということができますれば、それだけ問題が処理をされるであろう。実情として、いまの操業状況が何海里のところで最も行われておるのかというようなことにも実は関係をするであろうと思いますけれども、現在よりは少なくとも事態がよくなるということはもう間違いないだろうと思います。
  97. 津川武一

    ○津川委員 よく答えていただきました。  とすれば、外務大臣が先ほど芳賀委員の質問に、関係のいろいろなあれがありまして、そういうものの利害を考えなければ判断は下せない、こう言われたわけですが、農林省も水産庁もその方がいいと言っているのです。海上保安庁でも、私たちが現地で聞くと、その方がいいと言っている。だれがこれを邪魔しているのか。通産省はどう考えているのか。防衛庁がどう考えているのか。あなたが、外務省がどう考えているのか。ここのところを明らかにしていただきたいのです。そうでないと、漁民も納得しない。国民も納得しない。関係官庁の利害がと言っても、どこに利害があるのか。漁民たちは現地で海上保安庁の人たちとしょっちゅう仲よくやっているし、取り締まられもしている。非常に話し合いをしているのです。現地の人たちが海上保安庁のことをはっきり言っている。農林大臣が言っているのに、水産庁長官が言っているのに、だれがこれを邪魔しているかという問題、何のためにどこに障害があって宣言できないのか。この点をもう少し明らかにしていただきます。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 邪魔をしているというふうにおっしゃいますと、恐らく関係各省も不本意であろうかと思いますけれども、少なくとも問題になっております問題は、たとえばわが国が、これは運輸省の関係が一番多いわけでございますけれども、運輸省と申しますよりはわが国の海運と申し上げるべきでございましょう、相当長い海上航路をわが国がエネルギー、原材料等をわが国輸入をし、また製品の輸出をしておりますが、その間に世界の相当狭い海峡を御承知のように幾つか通っております。そこで、国際海峡というものの合意ができませんうちに問題がなしくずしに解決されてまいりますと、わが国の海運が世界の海峡を通過しておりますときの今後の通航に支障が出るおそれがある。ことにタンカーの場合には、御承知のように汚染というような問題だのいろいろございまして、無害航行だとばかりは言い切れないということを沿岸国が申す心配がございます。そういたしますと、わが国の海運にとりましてというより、わが国の国民生活にとってかなり大きな影響があるといったようなことを、たとえば海運を主管する役所としては心配をいたします。これは一つ十分わかることであろうと思います。各省に少しずつそういういろいろな面からの関心がございまして、そういったようなことをまず調整をすることか――これは外務省が調整をするというのも本来その任でないように思いますけれども、一応海洋法会議で各省を代表しておるようなことでございますから、そういう努力を至急にいたさなければならないと思っておるわけでございます。
  99. 津川武一

    ○津川委員 そうおっしゃってくだされば非常に問題が明らかになってくるのです。  そこでついでにもう一つ、ある政党のところ、それからある省庁で、宮澤さんがためらっているのは非核三原則のためじゃないか、こう言っているのです。この点はいかがでございますか。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点につきましても、かなり複雑な問題がありますことは事実でございます。すなわち、現在わが国の北方の海峡は、各国の艦船が通過をしておりますから、ただいま言われましたような問題がいろいろな国との関連で恐らくあることであって、これが国際海峡という一つの国際法上の地位をはっきり与えられますれば、それなりにわが国としての解決策があるわけでございますけれども、そうでない中途半端な段階においてどのように扱うべきかという問題が、これは申してみれば防衛の関係からでございますけれども、防衛庁として問題を持っておりますことは事実でございます。
  101. 澁谷直藏

    澁谷委員長 津川君、時間が来ていますから……。
  102. 津川武一

    ○津川委員 いまの発言、漁民が防衛をどう考えるかということに対して非常に大事な答弁であります。  そこで、外務大臣にもう一つ。漁業協定発効前の損害は、民事的には権利はあるけれども協定になじまない。もう一つ、スケソウダラで刺し網しているときに、網を置いてきて帰るのです。二日も三日も帰るのです。そこにソ連漁船が来る。確認できない。したがって、協定ができても、確認できて賠償の請求ができるものは二割ぐらいしかないだろう。この協定前のもの、これから確認できないで八割くらい漏れるもの、これは民事があるからといってもソ連政府相手じゃだめなので、この点で外務省が被害漁民にかわってこの折衝をやってくれないか、民事の権利があるなら民事を起こしてくれないか、こういう考え方なんです。もう一つには、それでもできない場合があるから、この間原因者不明の油の汚濁の場合国で弁償するような基金をつくったでしょう、そういう制度をつくってくれないか、こういうことがかなり漁民の中にあるわけです。この二点を外務大臣に。  時間がないので農林大臣に一問だけ。今度の北海道の場合は刺し網だったりなわだったために五百メートル。去年の八戸と岩手沖では、イカ釣りやまき網が十七件、四千六百七十七万。これは千五百メートルの距離が必要なんです。確認できるわけです。したがって、今度の協定発効で、これは守らせるにいい、守れる、こういうのが漁民たちの気持ちなんだけれども、これは守らせるにいい、今度は北海道のスケソウの刺し網と違ってこういうまき網やイカ釣りはかなりやれると思うのですが、協定見通し、これを守らせる農林大臣の方針、これだけ伺って、時間が十一分と非常に制限されたので、外務大臣には二点、農林大臣には一点、答えていただきます。
  103. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先に誤解があるといけませんので申し上げておきますが、私は領海十二海里がいいと思っているわけですが、しかし、その一番いい形に決まるのは、やっぱり海洋法会議で国際的な合意ができるのが私は一番いい方法だと思うわけです。これで合意ができない中で日本だけが一方的に十二海里を宣言するということになりますと、いままで各国がいろいろとやってきたことに対して抗議を申し込んでおるというふうなたてまえもあるわけでありまして、あるいはソ連との関係もあるわけでございますので、私は一番いい方法は、やはり国際的な合意の中でセットされるのが一番いいと思うわけですが、そのために日ソ問のトラブルが起きないように、起きなければ十二海里問題というものに対しても時間的にも猶予をしていただける時間もあるというふうに思って今日まで努力を続けてきておるわけです。なかなか思うようにもいかない面もあるわけでございますが、引き続いてトラブルが起こらないようには全力を尽くしたいと思っております。  それからいまの協定ができてその後の実施につきましては、先ほどもお答えをいたしましたが、これに対する補正予算等におきましても予算措置も講じましたわけでございまして、さらに監視委員会もできる、これも年内には発足させなければならぬわけでございますし、とにかく万全の措置を早急に講じて、せっかく協定が結ばれたわけでございますから、これが完全実施をされるように努力を傾注いたしたいと思います。
  104. 木内昭胤

    ○木内説明員 協定発効前の損害の賠償につきましては、これは当然民事上の請求権がございまして、それを私どもとしてはソ連外務省に取り次いでおります。しかし、なかなか困難な面もございまして、そこで、このたび御承認いただいた協定によりまして、近く東京及びモスクワにそれぞれの委員会ができまして、過去二年にさかのぼっても審査するという体制が早急に整うということになりますので、その場におきましてしさいに検討してソ連側に申し入れるということに相なっておるわけでございます。  それから基金の設置の問題につきましては、その実行が可能であるかどうか、これは農林省及び大蔵省とも十分検討してみないと結論は出ないと考えております。
  105. 津川武一

    ○津川委員 これで終わりますが、外務大臣ちょっと……
  106. 今井勇

    ○今井委員長代理 津川君に申し上げます。御協力ください。
  107. 津川武一

    ○津川委員 はい、わかりました。  木内参事官が基金のことを検討すると言ったから、宮澤さん、これはぜひひとつ検討していただきたい。  農林大臣に、八戸の沖は船と船なんで、北海道よりもやりやすいのだが、漁業操業協定で少なくすることができるかどうか、そこらの見通しをちょっとお話しいただいて終わります。
  108. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 八戸は何ですか。
  109. 津川武一

    ○津川委員 八戸沖は、イカ釣り、まき網、船と船の関係、北海道の場合は刺し網、タコなわなどといって関係が違うのですよ。したがって、これはかなりやりやすい態勢になるので、これの見通しです。
  110. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その点については、先ほど申し上げましたように、標識その他を明らかにするための、紛争防止のための予算措置等も講じて、これをいま実施に移しつつあるわけでございます。これらの措置を講ずることによって紛争は防止されるものである。その他監視的措置も講じなければなりませんけれども、とにかく紛争防止のためには万全を期したいということであります。
  111. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  112. 今井勇

    ○今井委員長代理 瀬野栄次郎君。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 宮澤外務大臣が本日世界首脳六カ国会議出席されるので、いま国民の食料確保の上から緊急の問題となっております日ソ漁業について質問いたします。  時間が厳しいので、はしょって質問いたしますが、領海十二海里の宣言は、日本政府が一方的に宣言し、世界に公知せしめることによってできるわけであります。今日の国際政治から見て、領海十二海里は世界の趨勢でありまして、いま世界で領海三海里を宣言している国は三カ国であるというふうに私は理解しておりますが、まず第一にお伺いしたいことは、宮澤外務大臣に、領海十二海里宣言がやれない理由、これはどういう理由であるか、そのネックは何か、改めてひとつ冒頭伺いたいのであります。
  114. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、改めてと言われますので、先ほど御説明申し上げたことの繰り返しになるわけでございますが、漁民の立場から言えば、領海十二海里宣言がその利益に沿うというふうに考えることはそのとおりであろうと存じますが、先ほど申しましたようないろいろなわが国の国益全体あるいは海洋法会議との関連におけるわが国の国益等々から考えまして、従来、海洋法会議の結果を待つことが望ましいのではないかというふうに考えてまいったわけでございます。が、事態が差し迫ってきたということにつきましての認識も先ほど申し上げ、政府部内で協議を急ぎたいということも実は申し上げたわけでございます。  純粋に法律的に申しまして領海十二海里の宣言というものができない理由があるかとおっしゃれば、私は純粋に法律的にそれができない理由はないであろうと思いますが、全く一方的に宣言をすれば明日にでも足るかということになりますと、多少問題がございます。と申しますのは、過去何十年かの間にわが国がよその国と締結いたしました条約の中に、一応領海というものを当時の常識に従って三海里だと考えまして、それを前提に結んだような条約が多少ございます。そういう場合には、それがそうでなくなることについてやはり一つの了解を求めておく必要があろうかと思います。しかし本来的には、領海の宣言はそれが非常に非常識なことでない限り、十二海里というのはいまや非常識だとは思いませんが、それはいわば本来的には一方行為の性格を持っておると思います。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外務大臣は、ニューヨークにおいて海洋法会議が開かれるわけですけれども、その結果を見て、領海十二海里が採択されればわが国もそれにならう方向である、こういうふうに言われるわけでありますが、ニューヨーク会議の結果、結論がまだ出ないということが起きた場合には、どういうふうに対処されるのか。それと、私はたとえニューヨーク会議で結論が出たとしても、五百数条に及ぶところの条約がまとまるわけはない、こういうふうに実は思うわけでございます。だから、早急にわが国独自でこの領海十二海里の宣言を、一方的に宣言できるわけですから、やるべきであると思う。そして漁民の窮状を救うべきである。一部大企業の反対等は押し切って、当然やるべきだ、こういうふうに考えておるのですけれども、その点どうですか。簡潔にお答えください。
  116. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ニューヨーク会議が一応結論が出ましても、これが国際法になるまでには相当の時間がかかるだろうということは、そういうことが確かにあろうかと思いまして、そのような議論から実はアメリカの二百海里宣言といったような上下両院の議論も行われております。実は、本来的に申せば、それですとわが国の国益が十分には実現しない心配があるというのが私どものおもんばかりであるわけですが、しかし実際の事態は、ニューヨーク会議がまとまりましてもまだ時間がかかるということでありますから、やはり先ほど申し上げましたようにいろいろな国益、近いもの遠いものを考えまして、政府部内で早くこれは話を詰めなければならないのではないかというふうに思っております。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の関係でちょっとはしょりますが、そこで外務大臣にお伺いしますけれども、領海十二海里宣言の問題については、幅の狭い津軽、対馬、宗谷海峡はすべて領海となるために、これまで自由航行できた核積載艦は通行できなくなるということから、政府は領海内に航路帯を設ける、一キロとかいろいろ言われておりますけれども、そんなものはとても問題外ですけれども、そういう航路帯を設けてそこを通す案を考えているというふうにもいろいろ聞き及んでおります。これを仮に認めた場合、非核三原則のうち、核を持ち込まずという一つの原則が崩れてしまうということであるわけで、この辺が一つの大きなネックになっている、こういうふうにわれわれは理解をしておるわけですけれども、宮澤外相は、国際海洋法会議での新国際法によって処理する、こういうふうに再三答弁しておられますが、これは国際海洋法会議で領海内の自由航行が決まればそれに従うという考え方であるわけですから、実質的には非核三原則を空洞化させる危険性の強いものである、こういうふうにわれわれは考える。その点も、ニューヨークの会議を待ってということをあなたは言われますけれども、大変心配になるわけでありますが、その点はどういう見解をお持ちであるか、お答えいただきたい。
  118. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題につきましての本来の政府考え方は、海洋法会議の結果、新しい海洋についての国際法が生まれる。その中で国際海峡というものが法律上の定義を与えられます。そういたしますと、それは国際法でございますから、その国際法に従ってわが国の方針は決められなければならない、こういう形で処理をすべきものであろうと考えておるわけでございます。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、外務大臣は、いまのにも関連するわけですけれども、さきに、ジュネーブ会議以後政府は結論を出す、こう言っておきながら、それがまたニューヨークへと延びた。過日の予算委員会の席でわが党の渡部委員からの質問によって、いろいろと検討を進めていく、煮詰めていくというようなことを言っておられますけれども、恐らくニューヨーク会議がまたカラカスへと延びていくのではないか、こういう不安を感ずるわけであります。  そういった意味で、もう時間もございませんが、わが日本の領海十二海里宣言は、大体いつをめどにやる、こういうふうに外務大臣考えておられるのか、さらに明確にひとつお答えをいただきたいと思う。
  120. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先般参議院の予算委員会総理大臣があのような答弁をされましたのも、事態が急迫をしているという認識と、確かにニューヨークで海洋法会議がまとまりましてもこれが法典になりますまでにただいま御指摘のように相当時間がかかるであろうといったようなことを踏まえまして答弁をされたものと考えております。したがいまして、私どもとしてはできるだけ早くこの問題についての各省間の結論を煮詰めたいと考えております。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一、二点ちょっと簡潔に伺いますが、日ソ漁業操業協定についてですけれども協定が行われても協定前と何ら現在変わってないというのが実情であります。また準備もされてない、かように私は指摘したい。すなわち予算配分も決まっていないので県の方に対しての配分もできていない。二つには標識すら設置されてない。先ほどからいろいろと話がある。霧が深いと標識も見えない。見えない前に、標識をつけていないという問題がある。三つには専門官の委員もまだ任命されてない。こういった状態でありますが、この協定は混迷国会のさなかに特に各党協力一致して異例の措置として成立したいきさつがあるわけで、漁民の熱望であったわけであります。それなのにまさに紛争の後処理のための協定になってしまっている、かように私は感ずるわけでございます。十二海里内の被害発生は五十年五月以降三八%も起こっております。こういったことで紛争はとまらないわけでありまして、初めからこんなふうでは先々とてもお話にならぬ、かように思うわけです。協定の実効上がらぬのは、一に外務大臣、あなたの責任である、政府の怠慢である、かように私は思っております。また農林大臣にも一応責任があるわけですが、この協定の実効が上がらぬ点についてどういうように外務大臣考えであるか、その点もこの機会に答弁をいただきたい、かように思います。
  122. 内村良英

    ○内村政府委員 協定の発効が当初七月を予定しておりましたのが十月になったということで、いろいろな面でそごが生じたことは事実でございます。しかし、協定が通りましたので、同時に補正予算も成立した今日、急いでいろいろな手続を進めまして、協定の実効が確保できるように一層の努力を傾けたいと思っております。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に一点簡潔に伺っておきます。  外務大臣にお伺いしますけれども、この領海十二海里説について担当部局がはっきりしてないという問題。従来からの質問、答弁をずっと聞いておりますと、総理は知らぬ顔をしているし、外務省は反対、ニューヨークの結果を待ってという、また農林大臣は替成、それもきょうの答弁ではニューヨークの会議を待ってというようなことでおっしゃったようですが、いわゆるまとめるところがない。総理府ではないかというふうに私は思うのですけれども、この領海問題について何とかまとめるところがなければいかぬのじゃないか、これが何となく漠然としている、こういうように私は思います。領海問題協議会というようなものでもつくって、連絡協議会を設けてやるというような、何かこんなことが必要じゃないかというふうに思うのですが、時間も参りましたので、両大臣から簡潔にお考えをお聞きしたい。現状のままでいいかどうか、お答えをいただきたい。
  124. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国内法上領海の主管官庁というのが明確でないことは仰せられるとおりでございますが、そういうことも申しておられませんので、今回の問題につきましては総理府の総務副長官に各省の事務当局の取りまとめの中心になってもらいまして、その結果を関係閣僚で検討してまいるのが、この際さしずめ有効な方法ではないかと考えております。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間も参りましたので、以上で終わります。
  126. 今井勇

    ○今井委員長代理 稻富稜人君
  127. 稲富稜人

    ○稻富委員 私持ち時間が十分でございますので、農林大臣にはまたいずれお尋ねする機会があると思いますから、外務大臣がお急ぎのようでありますから、もっぱら外務大臣に対してお尋ねしたいと思います。これはもう先刻から同僚からもお尋ねしたような問題で、重複する点があると思うのでございますけれども、簡単に御答弁願えば結構だと思うのであります。  冒頭まずお尋ねいたしたいと思いますことは、過般朝鮮民主主義人民共和国との間に発生いたしました松生丸事件につきまして、今日外務省はどういうような解釈をなさっておるか、さらにまたこれに対してどういうような処置をおとりになろうとしておるのか、今日その事情がわかっておりますならば、この機会に承りたいと思うのでございます。
  128. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今日までの経緯の中でいわゆる松生丸事件が北鮮当局の意図したものであったのか、あるいは何かの事情で偶発的に生じたものであるかということにつきましては、いろいろなことから、やや後者の事情もあるのではないかというふうに思っておるのでございますけれども、負傷いたしました二人が一両日中にはわが国に帰ってまいりますので、事態がそこで、少なくとも関係者につきましては終了いたしますから、それを待ちまして私どもとしても真相を知りたいと考えておりますし、それによりまして、その後政府がとるべき措置を考えたいと思っております。正直を申しますと、負傷いたしました二人が帰還をいたすのを待ちましていろいろなことを始めたいと考えております。
  129. 稲富稜人

    ○稻富委員 それでは松生丸事件につきましてはただいま大体大臣の心構えを承ったのでございますが、次にお尋ねしたいと思いますことは、御承知のとおり、北の海は、連日松生丸事件のような、流血事件ではないけれども松生丸の事件と似たような事件というものが非常に起こっておる、こういうことは先刻から同僚各位からずいぶんお尋ねした点であるのであります。現に最近におきましていろいろ北海道の事情等を見ましても、八月の二十九日には釧路の南三十キロでエビをとっておった第十一栄運丸、これは約十トンでございます。これが千五百トン級のソ連トロール船に網を絡まれて四時間も引きずり回されたあげく網を切って脱出したというような事実もあります。十月の十六日は第二十亘泉徳丸、これは九十六トン、これは室蘭沖三十キロでやはりソ連の三千トン級のトロール船に網を絡まれて約一時間半海上を引きずり回されたという事件もあります。十月の十九日は登別の沖合いの二十七キロで第八観晃丸、十五トンですが、ソ連トロール船に網を絡まれて、そして観晃丸は大きく傾いて転覆の危険が出てきたため網を切って逃げてきたというような、こういうような事実がたくさんあらわれておることはすでに御承知であると思うのでございます。こういうような問題が頻々として起こっておることに対しまして、いままで外務省としてはソ連に対してどういうような交渉を進めてまいっておったのか、この点をこの機会に承りたいと思うのであります。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お許しを得まして、先ほど私がお答えをした部分を一部訂正さしていただきますが、本件、と申しますのは十二海里の問題でございますが、取りまとめを総理府総務副長官と申し上げたそうでございますが、誤りでありまして、官房副長官に事務当局の取りまとめをお願いをするのが便利であろうと考えておるというふうに訂正さしていただきます。  それからただいまの稻富委員のお尋ねでございますが、いわゆる日ソ間の漁船の紛争につきまして、それが北方諸島周辺水域におきます拿捕事件につきましては、場合によりましては、これはわが国の本来固有の領土であり領海であると考えておる地域で起こっておるものもあるわけでございます。そういうものにつきましては、われわれはいわゆる領土問題に対する基本的な立場を害することなく、人道的な見地からソ連に対して解決を求めておる、交渉をしておるということ、この点は、ソ連の漁業大臣わが国との間でしばしば交渉になりますことは御承知のとおりでございます。  それから公海上で起こりますただいまのような事件、いわゆる民事上の財産等に対する損害は、請求権という形で本来処理されるべきものではないかと考えますが、なお政府委員から補足をいたします。
  131. 木内昭胤

    ○木内説明員 公海上の損害につきましては、関係者からの要請に応じまして、これをソ連外務省に取り次いでおる次第でございます。ただ、実際問題としてなかなか困難な側面もございますので、先般御承認いただきました日ソ間の操業協定におきまして、モスクワ及び東京に委員会を設置し、そこでソ連側及び日本側委員によりましてしさいに検討して、和解に達するように努力するという道を講じてあるわけでございます。この協定は発効したばかりでございますが、そのためにまだその結果は出ておりませんけれども委員会も早晩発足されることでございますので、その面から漁業関係者の利益をできるだけ救済するという道ができるものと期待いたしております。
  132. 稲富稜人

    ○稻富委員 大臣、非常に時間がないようでございますので、もう結論を私申し上げたいのでございますが、ただいま御答弁になりました日ソ漁業操業協定が結ばれました後、これは御承知のとおり、二十三日から発効しておるわけでございますが、もうその翌日の二十四日、二十五日、二十七日というように、次々にいろいろな事件が発生しておるというような状態であるのでございまして、われわれはこういう点は実に遺憾だと思うのでございます。今後、これに対しては委員会等が開かれて折衝をなさるというのでございますから、こういう問題につきましては少なくともひとつ事実の上に立って、そして外交的に、個人的な損害の補償の問題こういうものに対しては十分外務省といたしましても腰を据えて交渉していただきたいということを特に申し上げたいと思うのでございます。  特にここで参考までに申し上げたいと思いますことは、この損害賠償等の問題になりますと、巡視船が従来は証拠写真等を撮って、あるいは船名とか船の番号というものははっきりわかりましても、しかしそれに対して、網を引っかけている写真でなければいけないとか、あるいはこれが日本近海であらなければいけないというようなことで、日本近海が写るような写真であらなくちゃいけない、証拠にならないのだ、こういうようなことでなかなか交渉がうまくいかない。損害要求した場合も、その点の証拠がはっきりないのだということで逃げられるおそれがある、こういうことをよく現地で聞くのでございまして、こういうことに対しましても、特別に何とかその点は考慮を払って、外交的に、やはり事実被害のあったものに対しては被害に対する問題をひとつ十分考えてもらいたい、こういうことを私特にこの際要望したいと思いますが、これに対してどういう考えか承りたいと思うのでございます。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 委員会の運営に当たりましても当然そのような心構えでなければならないと存じますが、そもそも協定ができました精神から申しまして、これは先ほど農林大臣が言われましたように、日ソ間のかなりの理解の上に協定ができた。そういう背景、雰囲気であったと思いますが、協定の実施の段階になりまして、そのような精神がソ連側に失われつつあるというふうに考えられるようでございますと、これは改めまして外交の問題といたしまして、協定運営についてのソ連側の心構え、誠実に協定を履行してもらわなければならないということにつきまして、やはり注意を喚起しなければならない事態があればそういうことをいたさなければならないと思っております。
  134. 稲富稜人

    ○稻富委員 最後に、一点にしぼりましてお尋ねいたします。  これは先刻から津川、瀬野両君からもお尋ねしておった問題でございますが、十二海里の問題であります。日本の沿岸から三海里の領海――これは、三海里と十二海里の間でいろいろなトラブルが起こっているということは、すでに事実の上に立って御承知であると思うのでございます。十二海里説をなぜ日本が今日までちゅうちょしたかということは、先刻からも話がありましたように、津軽海峡が日本の領海になって、核兵器を積んだアメリカの軍艦は通れなくなってしまう。通ると非核三原則に反する。だから政府は三海里を固持しているんだ、こういうような疑惑さえ持たれているわけでございますので、こういうことのないように、やはり今後海洋法会議等におきましては、この日本の主張のあるところはひとつ十分に主張していただきたい。先刻から話を承っておりますと、三月にニューヨークで開かれます海洋法会議の前にこれを決めないで、海洋法会議の後から日本は十二海里問題その他に対しては考慮するというような御答弁がさっきあっているようでございますけれども、これはやはりその前に日本の立場というものは何かの機会において表明しておくことが非常に必要ではないかということを私は特にここでひとつ申し上げておきたい。そういうことを率直に私はお願いしたいと思います。  最後でございますが、今日まで室蘭の海上保安庁の調べによりますと、戦後ソ連に拿捕されたのが約千七百隻、人員にして八千人、うち二十三人が死亡しております。今年だけでも二十三隻、百五十一人が拿捕されたというような形になっておりまして、これに対しましては今回補正予算として七十七億かの補償をなされるということを承っておりますが、こういう問題は、日本政府から補償することはいいんだけれども、損害を与えた国にその損害の賠償を要求することが最も妥当であるので、こういう損害の事実の上に立って、これに対しては遠慮なく外交的な立場において折衝を続けるべきだ、私はかように考えております。これは、外務省としてのこういうことに対する腹構えというものを、外務大臣、特にひとつ腹に入れておいていただきたいということを最後に私は希望として申し上げまして、いまの十二海里問題等に対しましてもひとつ十分腹構えを持って臨んでいただきたいということを申し上げて、外務大臣としてのお心構えを聞きたいと思います。
  135. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御発言の御趣旨、よくわかりました。留意をいたします。
  136. 稲富稜人

    ○稻富委員 それでは終わります。     〔今井委員長代理退席、藤本委員長代理着席〕
  137. 藤本孝雄

    ○藤本委員長代理 諫山博君。
  138. 諫山博

    諫山委員 私たちは、農地に対する宅地並み課税には強く反対してきました。しかし、三大都市圏の一部の農地ではすでにこれが強行実施される、こういう事態になったわけですが、この宅地並み課税がどのくらい不合理で非現実的なものであったかということを証明しているのが、大部分の関係自治体で行われている縁地保全の制度だと思います。東京都内を例にとりますと、低いところで町田市、三鷹市などで五〇%、高いところでは八王子市、府中市などで七五%、これはいわゆる宅地並み課税に相当する金額をさまざまな名目で農家に還元するということが行われておるわけです。町田市の場合は生産緑地保全要綱によって、小平市の場合は農業緑地保全要綱によって、小金井市の場合は緑地保全条例によって、根拠はさまざまでありますが、なるべく農家に負担をかけないというような措置がとられております。大阪府の例を見ますと、関係している三十一市のうち二十九市で生産緑地制度が採用されている。その中で十九市では一〇〇%農民に還元する、残りの十市の場合も八〇%以上農民に還元する、こういうやり方が行われてきました。  ところが、現在は大変な地方自治体の赤字で、こういうことがだんだん自治体としてもやりにくくなる。もし五十一年度からいまの制度がもっと広げられてきたらどういうことになるのかという点で全日本農民組合大阪府連の山口事務局長が計算しているわけですが、これまでどおり税金の還元をすれば還元額は九倍になる、課税限度額五〇%を廃止すれば一八%になる、自治体としても大変だという計算が公表されております。地方自治体が現在三大都市圏で行っているような生産緑地制度が非常に困難な状況になっているということを自治省としてはどのように認識しておられるのか、御説明ください。
  139. 川俣芳郎

    ○川俣説明員 現在三大都市圏内の百八十二市につきまして、A・B農地につきまして課税適正化措置を実施しておるところでございますが、百八十二市のうち百十八市におきまして緑地保全等を目的といたしました補助金、奨励金等が交付されているのは御指摘のとおりでございます。ただ、数におきましては百十八市でございますけれども、その交付対象面積は現在課税適正化対象になっておりますA・B農地の総地積の中では約四〇%、それから交付をいたしております補助金等の額はA・B農地に係ります税収額の二八%弱であるというふうに承知をいたしております。  こういう実態ではございますけれども、現在各市におきまして交付をいたしております補助金、奨励金等の趣旨といたしますところは、一昨年の十月から施行されておりますところの生産緑地法に基づきます生産緑地制度とほとんど同一であるというふうに私ども理解をいたしておりまして、将来はこの法律に基づきます生産緑地制度に移行すべきものである、かように考えております。ただ、それが実現いたしますまでには一定の時間を要するでありましょうから、それまでのいわばつなぎの制度として各種の補助金、奨励金等が現在交付されておる、かように考えておるところでございます。
  140. 諫山博

    諫山委員 私が聞きたかったのは、いま深刻な自治体財政の中でこういうやり方がだんだん困難になりつつあるのではないかということだったのですが、もうこの点はあたりまえのこととして議論を進めます。  現在の制度がどのくらい不合理であるのか、その一例として、たとえば大阪府の衛星都市の市街化区域内A農地の単位面積当たり平均評価額が堺、泉北の臨海工業地帯の土地評価額を上回るというような例が幾つも出ております。大阪市内の場合にはコンビナートの土地評価額の四倍というような評価が農地になされているところもあります。こういうところを現に農民が耕作しているわけです。同じ面積からつくり出される収益を考えてみますと、野菜をつくったり果物をつくったりしている農地とコンビナートの敷地が比較にならないようなものだということは当然です。ですからいわゆる宅地並み課税というのが農業の発展という点から見て当然認められないものだということをこの数字は証明していると思います。  そこで、もう一度自治省に質問しますが、私がいま指摘しましたように、農地の評価額が大阪市内でコンビナートの土地評価額の四倍になるという事例が指摘されているのですが、同様な事例が三大都市圏で幾らもあるのじゃないかと思うがいかがでしょうか。
  141. 川俣芳郎

    ○川俣説明員 ただいま御指摘のお話につきましては、実は手元に資料を持ってまいっておりませんので、正確にお答えできないかと思うのでございますけれども、現在の市街化区域内の農地につきましては、評価といたしましては、その農地がございますところの近傍の土地と均衡を図って評価をいたすということに相なっております。したがいまして、評価といたしましては、ただいま御指摘のございましたような評価額になっておると思います。そしてそれは評価額といたしましては、そこの近傍の土地の評価と均衡がとれておるものと考えております。  コンビナートの周辺にございます、コンビナート地区の、いわゆる大工場地区の固定資産税におきますところの評価につきましては、これはやはり大工場地区につきましての売買実例価格等を基準といたしまして評価をいたしておりまして、この評価額と近傍の宅地なりあるいはその近所にございますA・B農地の評価額と比較いたしますと、これまた均衡がとれておるわけでございます。ただ、三大都市圏内のA・B農地につきましては、現在課税適正化措置を実施いたしておりますけれども、この評価額の二分の一の額を最終的に課税標準として課税をするという仕組みになっておるわけでございます。
  142. 諫山博

    諫山委員 いずれにしましても野菜や果物をつくっている農地の方が同じ面積でコンビナートの敷地の何倍もの評価を受ける、こういう実情が現にあるわけですが、こういう中でストレートに宅地並み課税が行われることがどんなに不合理であるかということを農林大臣考えていただきたいわけです。  そこで、都市近郊農業がこの宅地並み課税によってどういう影響を受けるのかということですが、私は福岡市について最近の資料を調査してきました。福岡市の場合は昭和四十八年度、福岡市内の野菜の消費量が十三万二千トン、福岡市内における生産高が二万七千トン、一割五分くらいが市内で生産されている。残りはほとんど福岡市周辺の近郊都市で生産されているわけですが、ここにもし宅地並み課税がストレートに適用されてくればほとんどこういう都市近郊の野菜というのは全滅するというふうに考えられます。この点について農林省としては、いや調整区域でやればいいじゃないかというようなことをしばしば言われますが、福岡市の野菜をつくっている農地の内訳を見ますと、市街化区域が四五%、調整区域が五五%、鶏卵のための養鶏は、市街化区域が七一%、調整区域が二九%、こういう状態です。市街化区域における都市近郊の農業というのが不可欠の要素であるということは福岡市を例にとっても明らかですが、この傾向は大体全国共通だと思います。もしいわゆる宅地並み課税がすべての地域のすべての農地に適用されてくるとすればどういう影響を及ぼしてくるのか、農林省としては計算をしたり見通しを立てたことがありましょうか。A農地、B農地、C農地でそれぞれどういう影響が都市近郊農業に及んでくるのか、農林大臣でおわかりでしたら御説明願いたい。
  143. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 お尋ねの市街化区域におきます野菜の作付面積は私たちの調査では六万九千ヘクタールで、全国の野菜の作付面積の約一割を占めております。ホウレンソウなど野菜の種類、出回り時期によってはかなりの供給シェアを持っておるわけであります。そういうわけ合いでございますが、最近の野菜生産の地域的な動向は次第に大都市周辺から遠隔地というふうに移っていっておるのが実情でございますけれども、御指摘のようになお都市周辺のウエートはかなり高いものがございます。したがいまして、私たちといたしましては、野菜の安定供給を確保するために、一方で市街化区域を含む都市周辺の産地にかわり得る新しい集団産地の育成に努めますと同時に、他方で残っております都市周辺の野菜産地の維持、保全にいろいろな対策を講じてまいっておるところでございまして、都市圏の産地にかわります新産地の育成のための諸事業を実施しますほか、都市圏産地におきます特定野菜の一定規模の産地を対象に生産、出荷施設の整備でありますとか、あるいは価格低落時における価格差補給金の交付等を内容といたします野菜供給確保特別事業を実施をいたしておるわけであります。市街化区域に指定になり、A・B農地のような地域になりますとやはり野菜としましては施設野菜等特定な野菜でなければなかなかつくれない状況になりまして、露地野菜としては非常にむずかしい状況に相なりますが、しかし私たちとしましては、そういう対策を講ずることによって一方では都市圏の野菜の保全をできるだけ図るとともに、これにかわるべき新しい産地の育成を図っておるところでございます。
  144. 諫山博

    諫山委員 都市に住んでいる人が都市でつくられる野菜を食べるのではなくて、遠隔地でつくられる野菜を食べなければならない、こういう結果が出てくることは明らかですが、これは農民の打撃であるだけではなくて消費者にとっても非常に深刻な問題です。  すでに三大都市圏では宅地並み課税が進んでいるわけですが、この実績に照らしてみて、これが全国的に広げられたらどのような影響が及んでくるのか、統計的な数字農林省ではわからないのですか。
  145. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 全体的な農業の統計につきましては私の方としては把握をいたしてございませんが、先般先生からも御指摘がございましたので、野菜につきましては、昭和四十九年の八月十六日に農林事務次官名をもちまして、各都市圏の野菜の生産状況及び実態を把握をいたすために調査をいたしたわけでございます。それによりますれば、現在の都市圏の野菜の生産状況といたしましては、四十八年度の作付面積は六十五万一千七百ヘクタールでございますので、四十五年の当時から比べまして約五%全国で減っておりますが、都市圏の埼玉、東京、神奈川、茨城、京都、大阪、奈良等の地域についてみますと、トータルとして約一〇%を超える減少を見ておるわけであります。しかしながら、全体の野菜の需給につきましては、先ほど申し上げましたように、そういう都市圏の野菜の産地の保全を図ると同時に、全体的な新産地の育成を図りますことによって対処いたしておるところでございます。
  146. 諫山博

    諫山委員 福岡市で宅地並み課税が実施されたらどういう影響が出てくるのかということを福岡市宅地並課税対策協議会が調査しました。この協議会は福岡市農協、福岡市東部農協、福岡市農業共済組合、全日農福岡市協など十一の団体でつくっている組織です。この調査によりますと、A農地の場合は、五十年度を基準にしますと、固定資産税、都市計画税合わせて五十一年度に九十九倍になる、五十二年度に百九十八倍になる、五十三年度に三百四十六倍、五十四年度に四百九十五倍という数字が出ています。B農地の場合は、五十年度を基準にすると、五十一年度が二十九倍、五十四年度が百四十六倍、C農地の場合は五十一年度が十三倍、五十四年度が六十三倍、大変なテンポで税金が高くなってくるわけです。  こういうやり方が収益の面でどういう影響が出てくるかという調査ですが、全日農福岡県連の小川委員長は次のように語っております。十アール当たり稲作の年所得が五万九千円から七万七千円程度だ、市内A農地の固定資産税だけで六万六千五百円になる、とうていこれでは農業は引き合わない、畑作の場合はもっと収益が低いから一遍に壊滅してしまうというような説明をしております。そしてこの数字の正確性を福岡市当局で確かめたら大体間違いないようですというふうに言っております。  こういう状況に対して福岡市農協の坂口武雄副組合長は、農業収入の何倍も税金をかけられては農業はとても浮かばれません。都市農業を守るためには農地に宅地並みの税金をかける方式は何としても白紙に戻してもらいたい、こういうことを十一月九日の赤旗日曜版の記者に対して語っておられます。  福岡市の例を引きましたが、状況はどこでも同じことです。ですから、全国的にこのような宅地並み課税に反対するという動きが広がっております。こういう状況に対して農業に責任を負うべき農林大臣はどのように考えておられるのか、御説明ください。
  147. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 宅地並み課税につきましては、これは都市計画策定上のたてまえで、市街化区域とその他の区域というのが区分をされておるわけでございますので、そういう区分がある以上は、税制のたてまえからいえば区別するのは当然だと思うわけでございますけれども、いまいろいろとお話がございましたように、市街化区域の中においても依然として農業をずっと続けていく意欲を持って努力を続けられている農民もあるわけでございます。そういう方たちの担税力ということも考えなければならぬわけでございますので、そうした面も十分考慮に入れて、今後とも慎重に取り扱っていくべきじゃないか、私はそういうふうに考えておるわけでございます。そうしたたてまえで各省庁とも農業、農政のたてまえからいろいろと話をいたしておる状況でございます。
  148. 諫山博

    諫山委員 この問題については、農民、農業団体が各省庁といろいろ交渉をして、その中で政府側の見解がしばしば示されております。たとえばことしの九月二十七日付の日本農業新聞の中には「金丸国土庁長官にきく」という表題で国土庁長官が次のように語ったと紹介されております。宅地並み課税は現行課税区域内のC農地の一部にも来年度から実施する方針だ。地価の上昇によってB農地と同水準になったC農地など極端なものに限りたい。情勢は流動的だが、C農地見通しは税の公平、土地政策上から必要だ。こういうことが書かれております。同じ日本農業新聞で、ことしの十一月十一日の記事では、「金丸長官が要請に答える」「C農地拡大せず」こうなっております。そのほかいろいろ態度の説明がなされているわけですが、現在の時点で、国土庁としてはどういう方向自治省などと話し合っているのか、国土庁の方から説明してください。
  149. 松本弘

    ○松本説明員 市街化区域内農地の課税の適正化につきましては、御承知のように宅地供給の促進と宅地に対する課税の均衡という目的から、四十八年度以降段階的に実施されているわけでございます。国土庁といたしましては、土地政策の観点から、直接これを御担当になっておられる自治省に対しまして考え方をまとめまして要望を出しているところでございます。  その考え方は、四十八年以降実施されております三大都市圏内の市の区域内のA・B農地に対しますいわゆる宅地並み課税、課税の適正化の措置は、最近におきます宅地需要の状況等から考えまして、これは継続すべきであるというふうにまず考えるわけでございます。現在適正化の対象になっておりません農地につきましてはどうするかということでございますが、三大都市圏以外の区域につきましては、四十八年度に現在の措置が講じられました折の経緯等を勘案いたしまして、これを拡大すべきではないというふうに考えておるわけでございます。現在課税の適正化措置が講じられております三大都市圏の市の区域につきましては、先ほど申しましたようにA・B農地に対します適正化の措置を継続いたしますとともに、その後の情勢によりまして、A・B農地並みになったC農地については、一部でございますけれども、やはりA・B農地並みの措置を適用すべきではないかというふうな考え方でございます。
  150. 諫山博

    諫山委員 そうすると、私がさっき読み上げた九月二十七日付の日本農業新聞に書かれている線だと聞いていいのですか。
  151. 松本弘

    ○松本説明員 現在の国土庁の考え方は、先ほど私が申し上げたとおりでございます。
  152. 諫山博

    諫山委員 建設省に質問します。  建設省もこの問題と非常に関係があるわけですが、ことしの九月二十四日付の毎日新聞に、三大都市圏のC農地のうち、五十一年度評価額が三・三平方メートル当たり約二万五千円以上のものには宅地並み課税を実施するという方針を固めたと書いてあるが、そのとおりでしょうか。
  153. 川合宏之

    ○川合説明員 お答えいたします。  建設省の自治省に対する税制改正要望は、先ほど国土庁から御答弁申し上げたのと全く同様であります。
  154. 諫山博

    諫山委員 建設省や国土庁から自治省に対していろいろ折衝がなされているそうですが、自治省としては現在の段階ではどういう結論に到達しているのか、御説明ください。
  155. 川俣芳郎

    ○川俣説明員 三大都市圏内の百八十二市のC農地、それからその他の市街化区域農地の課税適正化の問題につきましては、先ほどからもお話がございましたように、国土庁からはお話しのあったような要望を受けておりますし、一方また各種の団体からも別の意見もいただいておるわけでございます。いずれにいたしましても、五十一年度までにこの問題について結論を出さなければならないわけでございますが、やはりこの問題が国全体の土地政策とも関連するところが非常に大きいというふうに考えておりまして、昭和五十一年度におきますところの土地の評価がえの状況あるいは市街化の状況、さらには生産緑地制度の運用の状況等々を見きわめながら、税制調査会等にもお諮りをいたしまして慎重に検討すべきもの、現在のところはさように考えております。
  156. 諫山博

    諫山委員 国土庁とか建設省からは具体的な要請がなされているわけですが、同じ三木内閣自治省としては方向は打ち出していないのですか。慎重に検討しますというのは、私たちに任してくれというような言い方であって、これは本当に責任ある答弁にならないと思いますから、もっと誠意のある答弁をしてください。
  157. 川俣芳郎

    ○川俣説明員 現段階におきましては、先ほど申し上げましたように検討をいたしておる段階でございまして、この問題につきましては税制調査会等の御意見も承る必要がある、かように考えておるわけでございます。
  158. 諫山博

    諫山委員 農林大臣に質問します。  農民団体が農林省と話し合いをして非常に憤慨している点があるのです。それは、宅地並み課税の問題で交渉に行くと、よそごとのような態度をとられる、これは自治省の問題だからということで自治省はああだこうだという説明をして、農林省としてはどのようにしようとしているのかという積極性が少しも示されないというわけです。いま国土庁、建設省からそれぞれの立場が表明されましたが、農林省としては成り行きを傍観しているのか、それとも何らかの働きかけをしているのか、御説明ください。
  159. 岡安誠

    ○岡安政府委員 農林省としましては、先ほど大臣から基本的な考え方を申し上げたわけでございますが、いろいろ検討いたしておりますけれども、まだ自治省の方もどういう案がいいかというような具体的な御提案がない段階でございますので、農林省としましては、五十一年度までに見直すべき政府の態度について、そのうち農林省はどう考えるかという態度はまだ表明しておりません。しかし、やはりこれは農地の問題でもあり農業者の問題でもございますので、先ほど大臣から申し上げました線に沿いまして、今後とも私どもは検討し対処したいと考えておる次第でございます。
  160. 諫山博

    諫山委員 いまのような説明に農民が不満を示すわけですよ。あれはまさによそごとという態度じゃないですか。われわれがここで問題にするのは、日本の農業をどうして守るのかという観点です。こういう観点で宅地並み課税を論議するのは、省庁としては農林省しかないわけですね。だから農林省としては、自治省の方がまだ具体的な案が出ませんからというようなことではなくして、こういうふうにしてもらいたいんだ、こうでなければ日本の農業は大変だという積極的な姿勢をなぜ示さないのかということを私も要望したいし、農民団体も言っているのです。そういう立場から、成り行き任せにするのではなくして、農林大臣が積極的に自治大臣とひざ詰め談判するというような姿勢が必要だと思いますが、そういうことはやられていないのか、これからやろうとされないのか、いかがでしょう。
  161. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 決して成り行き任せにしておるわけではないわけで、いま局長が申したとおり、やはり農民の問題でございますし、農地の問題でございます。したがって、この件につきましては、農林省としては非常に重大な関心を持っておりますし、非常に慎重な態度で対処していきたいというふうに考えております。ただこの所管の官庁が自治省でありますし、さらに関連関係官庁というのが先ほどから意見を申し上げました国土庁であるとかあるいは建設省であるとかいうようなのがあるわけでございます。また自治省が申し上げましたように、税制調査会等の意見等も十分聴取しなければならないというわけでもございます。そういう中にあって、農林省は重大な関心を持ちながら市街化区域内における農民の担税力の問題とも関連があるわけでありまするので、その点は十分配慮しつつ慎重に対処するということでございます。国土庁長官とかあるいは建設大臣、自治大臣等とは、この問題は非常に大きい問題でございますから、いろいろと個々には話し合いをし、意見の交換も行っておる状況でございます。
  162. 諫山博

    諫山委員 全国で宅地並み課税に強い反対の運動が起こっていることはもう御承知だと思います。福岡市でも今月の十一日約八百名の農民の代表が集まって大集会を開いております。きのうの日本農業新聞で報道されておりますが、そこで三つのことを決議したというんです。これはぜひお読みください。その中で「線引き後、五年経過しようとしているが、市街化区域においては、都市施設は遅々として進まず、また市街化調整区域においては農業投資も何の手だてもなく、都市利用規制をしたまま放置され、大企業の買い占め、宅地開発など逆にスプロール化が進行している」こういう分析がされたということを報道しております。実態はそのとおりです。  私は、日本の農業を本当に大事にする、直接的には都市近郊農業を守り抜くという立場から農林省がもっと積極的に、よそごととしてではなくて、自治大臣と大げんかするというぐらいの構えでこの問題に取り組んでいただきたいと思います。その点では、私は農林省のこの問題に対する取り組みが全体として傍観者的だったという感想を持っております。非常に深刻な問題として論議されていることですから、今後の積極的な取り組みを要望したいと思いますが、農林大臣、最後に私のいまの提案に対して感想なり決意を聞かしてください。
  163. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私が先ほどから基本的な態度を申し上げておりますように、きわめて重大な関心を持っておりますし、この問題に対しては真剣に取り組んでまいりたいと考えております。
  164. 藤本孝雄

    ○藤本委員長代理 瀬野栄次郎君。
  165. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣に、「総合食糧政策展開」に対し、さらには超過米問題その他農政の数点について質問いたします。きょうは久方ぶりの農林大臣出席でありますが、時間にもかなり制約がございますので、今後の審議にも関係する重要な点を若干指摘しながら、はしょって質問申し上げたいと思います。  農林省は、八月二十二日に食糧の自給率向上を目的とした「総合食糧政策展開」と題する八項目からなる基本政策を発表しております。そのあとで農村の福祉対策が一項目追加になっておりまして九項目になっておりますけれども、これについては私が去る九月十日当委員会政府の見解をただしたのでありますけれども、当日は森官房長が出席して答弁をされました。本日はさらに農林省の方針を大臣に伺うわけでありますが、時間の制約の関係で全部を質問することはできませんので、特に重要なものだけについてお尋ねをしだいと思います。  「総合食糧政策展開」、これはことし四月農政審議会が答申したところの昭和六十年を目標に食糧自給率向上を目ざす農産物の需要と生産の長期見通しに基づいて出されたもので、世界食糧危機時代の到来という背景に対処したものであると私は思っております。と同時に来年度予算に対する安倍農林大臣の攻めの農政、こういうふうに言っておられますが、この姿勢の基本方針であろうかように受けとめておるわけであります。  農政審議会の答申は、世界食糧危機到来ですでに破綻を余儀なくされておるところの食糧国際分業論に相変わらず依存しておるような感がいたしておるのは私一人ではありません。そういったようなことから、私はこの答申に沿って内容をつまびらかに見てみますと、いわゆる策定の内容が、今回の基本政策というものは自給率向上を目ざすものではなくて、農業者と国民が待望する農業の復権を図るものとはほど遠い内容に見えてしようがありません。このような印象を強くするわけでありますが、本当に今回の基本政策というものが農林省の言うように疲弊した日本農業の立て直し策になるかどうか、私は疑問を持っております。土地改良一つ見ても莫大な金が要るわけでありますが、これすらも画餅になるのじゃないかと思っております。  農林大臣から、この「総合食糧政策展開」を八月二十二日に出され、基本方針を出されたについて、大臣の決意というものをまず冒頭にしかと承りたいのであります。
  166. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私たちが出しました「総合食糧政策展開」と題する農林省政策、方針というのは、今後の食糧政策あり方を長期的な視点からとらえて、そしてこれを五十一年度を起点として順次実施していくという構想のもとに打ち出しました農政の基本的な姿勢、方向でございます。  この総合食糧政策展開を打ち出すにあたりましては、私が大臣に就任をいたしまして以来農政審議会の御答申も得、さらにまた御承知のような農産物生産と需要の長期見通し等の閣議決定も経、さらにまた国民食糧会議で国民各層の御意見集約し、さらにまた国会等の御意見も十分お聞きをいたしまして、そういう上に立って、農林省全省挙げてまさに農政の転換期であるという観点から取り組んだ結果、「総合食糧政策展開」ということで打ち出したわけでございます。私たちはこの方向に沿ってこれからの農政を進めなければならないし、これを進めるために全力を注いでいく決意でございます。
  167. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、長期的視点に立った計画であるということでありますけれども、農業生産の中期目標の策定並びに重点作目についての地域生産指標、年次別計画の樹立、こういうものがこれにないわけです。私はこれをつまびらかに見てみますと、今年の春、昭和六十年を目途とした農産物の需要と生産の長期見通しを発表されたわけですけれども、それをより具体化した中期目標や地域生産目標といったものを策定すべきじゃなかったか、かように思うのですが、これらがないわけでございますので、これらについて政府はどういうふうに考えておられるか、まあこういった問題については、農業諸団体と真剣に話し合った上で策定をすべきじゃないか、こういうふうに思うわけです。その点、大臣からこの発表に当たって検討された内容をお答えいただきたいと思います。
  168. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは六十年を目標にいたしました農産物の需要と生産の長期見通しをもとにいたしました政策でございますが、この長期見通しにつきましては、作物別年次計画を積み上げて作成したものではないわけでございまして、今後の長期的な需要の趨勢と、これに対応した農業生産の長期目標を決めたもので、長期にわたる農政のいわゆるガイドラインといったものを示したわけで、目下のところ、これをブレークダウンしたところの中期目標あるいは地域生産目標について、全作物を対象に一律に設定するというようなことは考えてはおりません。しかしながら、今後の具体的施策の計画的な推進のために、必要に応じ作目別の中期目標、地域生産目標の設定を行いたいと考えております。また、長期見通しにおける生産目標を現実のものとしていくためには、農業の立地条件等を十分考慮した地域ごとの生産、農業技術、経営のあり方等について今後、これはまあ時間がかかる問題でございますが、時間をかけて十分検討してまいりたいと考えております。
  169. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいまもちょっと申し上げましたが、はしょって申しますけれども、この計画の中で農業基盤整備の問題一つ取り上げましても、農林省は農業基盤整備事業の実施が計画と相違して相当おくれているというふうにみずから言っておられる。また事実、昭和四十八年度以降十カ年間の総額十三兆円に対し、前期五カ年に五兆二千億円を計画的に実施するということにしておられますけれども、すでに前期の三カ年を経過しておりますが、その達成状況はまことに遅々としておくれておる。その辺をどういうふうに見ておられるか。土地基盤整備事業というものを果たしてこの計画のように進める自信があるのか。また、このおくれている原因にはいろいろありますけれども、こういったことをどういうふうに認識して、今後どう是正して土地改良を進めていこうとされるのか、その点ひとつ簡潔にお答えいただきたい。
  170. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御指摘のとおり、現在ございます土地改良長期計画、総枠十三兆円でございまして、五十年度予算までの合計の実績は一五・五%でございます。今後この計画を予定の十カ年間で達成するためには、予備費を除いたといたしましても毎年一八・五%ぐらいの伸び率でいかなければ達成ができないということで、私どもも今後熱意を持って取り組みたいと思っているわけでございますが、このようにおくれました理由は、一つにはやはり物価の上昇がございまして、資材並びに労務費等の単価が上がりましてなかなか進捗しなかったということが第一でございまして、第二番目は、やはり総需要抑制の関係から公共事業費がここ二年ばかり横ばい同様の姿できたということがおくれた原因であろうかと思っております。そこで私どもは、国家の財政なかなか苦しい折でございますので、いろいろ工夫をこらしまして、来年度以降ぜひ進度を伸ばし所期の目標を達成いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  171. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 米対策について農林大臣にお伺いします。  この「総合食糧政策展開」を見ますと、米対策については従来の減反政策を今後さらに三年間継続していくことが柱になっておるわけでありますが、国民の主要食糧であるところの米の位置づけが明らかにされておりません。それは依然として米対策でなくて、米減らし対策というふうに基本方針はなっております。これは皮肉な言い方ですけれども、結果的にはそういうふうになっておるわけです。いかにして米を減らすかという計画です。米作がわが国農業の基幹作目であり、米が国民の主要食糧である点を十分考慮し、米作農家に対しましても、また米の消費者に対しても、積極的な施策を明らかにすべきである、私はかように思うわけでございます。この点がこの計画に抜けておりますけれども、その点どういうふうに政府考えておられるのか、大臣から御答弁いただきたい。
  172. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米というのは国民の主食でございます。したがって、米に対する農政というものに最大の配慮を払っていくことは当然でございますし、今日まで配慮を払いつつやってまいったわけでございます。しかしまた、今日において米が生産過剰の基調にあることも事実でございます。したがって、私といたしましては、主食の確保ということは当然第一に考えなければならない課題でございますが、そういう中にあって、米の需給の均衡を図りつつ、国民に安心感を与える備蓄を米について進めていくということが、やはり米に対する基本的な考え方ででございます。したがって、そういうたてまえに立てば、過剰基調にあるわけでございますので、水田総合利用対策等を今回計画いたしておるわけでございますが、これは、米以外の農産物について特に増産を必要とする農産物があるわけでございますので、そうした農産物を水田総合利用という形で積極的に生産をしていきたいということが私の考え方でございます。
  173. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、稲作転換対策に触れてみたいと思いますが、水田総合利用対策として農政の転換を図るというふうになっておりますけれども、従来の稲作転換はたくさん問題があって、農林省としても十分反省をしておられると思うのですけれども、その最たるものは、米の買い入れ制限を前提として、減反面積を全国一律に画一的な方法で農民に強要したという点が問題であろう、こういうように思うわけです。北海道から九州に至るまで一律でやったというところに問題がある。昭和五十一年度からの水田の総合利用対策の実施に当たっては、米の主産地形成を強く打ち出して、転作目標面積を示す政策の転換をすべきだと私は思うが、こういったことはこの計画の中に見えないけれども、どういうように考えておられるか。  もう一つは、政府の稲作転換対策について、先ほど申しましたように、米減らし政策になっておりますけれども成果があったと一応は評価しながらも、現在転作の定着性について農林省は大変不安を持っている。またわれわれもいろいろと問題視しております。そういったことから、転作の定着性について、施策の面でもっと農林省は確固たる方針を打ち出す必要があるのじゃないか、また、この点十分反省して今後の計画にこれを織り込むべきじゃないか、かように思うのですが、この二点について、さらに大臣から簡潔にお答えをいただきたい。
  174. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米減らし政策、米減らし政策とおっしゃいますけれども、米は何といっても基本でございますから、政策の最重点を米に置いていることは、これはもう農林省の今日までの行政の歴史が示しておるとおりでございますし、今後ともそうであるわけであります。ただ、米が過剰な基調にあるわけでございまして、その備蓄を図ってさらに過剰であるということにかんがみまして、わが国の全体的な国民食糧の確保という見地からいけば、やはりこれから増産をしなければならない農作物の生産を図っていくということは当然であろうと思います。  そこで、今後水田総合利用対策というものを進めていくわけでございますが、水田総合利用対策は、現在のところの農林省考えとしては、これから増産を図らなければならない食糧農産物を中心にして、今後水田総合利用という形でこれが生産を図っていくという考えでございますが、やはり地域それぞれの特産物といいますか、農産物も地域の特性を持った農産物もあるわけでございますので、やはりそういう面も今後考慮していかなければならない点もあるというふうに私は考えておるわけでございます。  いずれにしても、これからの水田総合利用対策というのは、農林省としての六十年目標をもとにいたしました一つ方向を示して、そして農民の皆さんの御協力を得ながら進めていくという基本的な考え方でございます。  なお、これが実施の細目等につきましては、局長から御答弁をいたさせます。
  175. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 五カ年間の稲作転換対策によりまして、単年度需給を均衡させるということとあわせまして、できるだけ転作が定着するように努力をいたしてまいっておりますが、一部の収益性の高い果樹なりある一部の野菜等につきましてはかなり定着しておる面もございますけれども、全体といたしましてはなお十分定着したというところまでには至っておりません。したがいまして、今回の水田総合利用対策におきましては、計画的に転作作物を定着させるという観点から、需給上生産をふやす必要があるような農産物について、それぞれの振興地域というものが、畜産であれ、果樹であれ、野菜であれ、それぞれ設定してございますので、それらの地域を重点に転作目標というものを県別に配分をするということにいたしたい。それによりまして、ガイドラインといたしまして各県別に作物別に転作目標を示すというようなことをやってまいりたいということで、現在各県から転作の可能性、これまでの実績等の資料もとり、近くヒヤリングも行いまして、地域の実情に応じた定着性のある転作を重点的に推進をしてまいりたい、かように考えております。
  176. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 超過米について農林大臣に伺います。  農林省は十月三十一日、米の最終的収穫予想を公表したわけであります。それによりますと、予想収穫量一千三百十万一千トン、これは水稲、陸稲合わせてでありますが、史上第四位ということが言われております。従来から農林省の最終予想表というのはほとんど間違ったことがないというので、私たちもこの農林省の最終予想表はますこのとおり収穫があるものだ、かように思っております。ますことしは大豊作ということが言えるわけであります。そこでその結果、もう御存じのように七十五万トンが総需要量を上回る超過米となりそうであるということが言われているわけであります。農家が自家消費用をふやしても、仮に二十五万トンこれがふえたとしても、五十万から五十五万トンは超過米になるということは、これは常識的に言われております。全国の一カ月分の配給量というようなことになるわけでありますが、政府生産調整に対して農民は一一三%という目標以上を達成したわけです。ことしの超過米はいわば豊年米でありまして、農民の血と汗と努力によってできた米である、いわゆる天の恩恵によってできた米であります。こういったことから、私は何としても政府はこの超過米の全量買い上げをぜひやってもらいたい。農民もまた各種団体も、大臣を初め国会にもそのような強い要請がなされておるわけです。きょうも先ほどお昼の休みに大臣にもいろいろと団体からの要請があっておりましたが、政府の責任において買い上げる義務がある、かように思うわけです。その点、農林大臣からひとつ明快に、どういう決意であるか、お答えをいただきたい、かように思います。
  177. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 予約限度超過米の発生量は、まだ集荷を完了しておらず、また実際の予約限度超過米の量は例年この時期の見込みよりは減少していることもありまして、的確な見通しは集荷のほぼ完了する十一月の中旬以降、十二月のころでないと立てがたいわけでございます。したがって単純にいまの予想に基づいて本年の予想収穫量と計画生産量を差し引きますと、いまお話がありましたように七十五万トンということになるわけでありますが、今回の予想収穫量が昨年の生産量に比べて増収となる一方、本年の予約限度数量は昨年の実際の集荷量よりもふえておるわけで、これは二十七万トンくらいふえております。これらの関係を考慮して、あえて申し上げれば五十万程度という計算ができるわけでございます。しかしいずれにいたしましても、できるだけ早い機会にその集荷見込み数量を的確に把握するように努力をしなければなりませんし、しておるところであります。  仮に各都道府県において予約限度超過米が発生した場合には、従来と同様出来秋の県間調整によって措置することといたしておりますが、出来秋の県間調整を行っても全国的に作況が良好なためなお発生する予約限度超過米については、従来どおり極力自主流通ルートで販売させたいと考えておりますので、現段階につきましては、政府買い入れにつきましては申し上げる段階でないわけでございまして、いずれにいたしましても、予約限度超過米の集荷状況を見ながら、他方米の需給調整対策を引き続き実施する必要がある事情に配慮しつつ、必要な対策はとってまいりたいと考えております。
  178. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 超過米については農林大臣は県間調整や自主流通米ルートで消化に努めたい、こういう趣旨のようであります。まだ予想段階なので最終的に超過米がどの程度になるかわからない、こういうようなことをおっしゃいますが、従来の経過から見ますと、自主流通米の販売ルートに乗せる方式も実際の効果はほとんど期待できないというのが実情です。  ちなみに申し上げますと、昭和四十八年に自主流通米に乗せる方式をとったわけですけれども、そのときは超過米は七万トンでありました。ことしは超過米が大体七十五万トン出るであろうというように言われている。量的にけたが断然違うわけです。売れ行きが落ち込むと効果が期待できないという不安がございます。それで、大臣は口を開けば十一月か十二月はっきりした数字がわかってからとおっしゃいますけれども、十月三十一日に最終収穫予想の発表があったわけで、農林省の最終予想というのは従来それほど狂っておりません。その点はわれわれも信用しておりますが、そういう意味で、この超過米の分については県間調整の結果を見た上で対策をとっていく、こういうふうにおっしゃいますが、そうなりますと、超過米対策の本格的実施というのは結局来年以降になるということが当然考えられます。  では来年になったら名案が出るか、その保証はあるかというと、私たちも大変疑問なんですが、その点はいわゆる主管大臣としての農林大臣はどういうふうに農民にお答えになるのか。私は生産者はもちろん、国民のすべてが納得いく対策をぜひとってもらいたい、こういう悲壮な決意で訴えております。大臣は全国の農業者にこたえてもらいたい。その点明快にお答えいただきたい。
  179. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 しばしば申し上げますように、最終的には明らかでないわけでございますので明快に申し上げるというわけにもまいりませんが、ことしはいままでと様子が少し違ってきておるということも予想としては十分われわれも考えざるを得ないわけでございます。そういうことで、全国の農民の皆様方からも早く政府の態度を決めろという声が殺到しておることも事実でございます。したがって、そうした全国各地の御要望等もあるわけでございますので、来年というわけにもいかないと思いますので、ことしのうちには方針ははっきり打ち出して、そして農民の皆さんのこれからの対処に当たりまして、それにおこたえをしていかなければならない、こういうふうに思っておるわけであります。
  180. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ことしのうちには方針を打ち出して農民にこたえるということですが、ぜひともひとつ先ほどの要望を含めて方針を打ち出してもらいたい。  それで、あわせて大臣に伺っておきますけれども、自主流通ルートで流通する予約限度超過米については自主流通米と同一の助成措置を講ずること、すなわち全量を買ってもらいたいわけですが、自主流通米と政府買い上げと二つしかないわけですから、二段米価としないようにしてもらいたいということでございます。これにぜひ大臣は最大の努力をしてもらいたい。と同時に、超過米については政府買い上げに至るまでの金利、保管料の助成等についてもひとつ最大に努力してもらいたいと思うのですが、この二点についてさらに大臣にお答えいただきたい。
  181. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農業団体その他からいろいろの御要請が出ているわけでございます。そういう御要請も受けていま政府でいろいろと検討いたしておるわけでありまして、農林省としてはこれらの問題に対する態度は今年中に決定をしたい、先ほど申し上げたとおりでございます。
  182. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これは皮肉った言い方ですけれども農林省から出しぎした「総合食糧政策展開」、これの五ページ二行目(二)に「いわゆる余り米は従来どおりの方法で処理する。」と書いてあるけれども、これは「いわゆる」と書いてあるので一応おっしゃる気持ちはわかるけれども、せんだっても政務次官が余り米と言ってこれをずいぶん厳しく追及しましたが、余り米と言うといかにも悪い米で、くず米か何かで余っているように感じて、農民感情に対しても悪い。あの炎天下汗を流し、そしてまた苦労してつくった米であります。農林省の言ういわゆる生産調整にもよくこたえ、そして達成率は一一三%というふうに目標以上に上げた、しかもその上に天気がよくてこのような米がとれた、いわば自然の恩恵であります。そういったことでありますから、これを自主流通にただ乗せるのではなくて、政府が買い上げないとまた犯罪が起きて、食管違反が起きるというのでは、これは農民に対して罪をつくらすことになる。そういう意味でも、食管法の精神からぜひこれは買い上げるべきである。そしてまた二段米価をすべきでない、かように思う。これは天の恵みであります。また毎年豊年とは言えません。こういったことで、この「余り米」という言い方、これは超過米または豊年米というようなことでありまして、いわゆる限度数量を超過した米でありますから、私は超過米というぐあいに直すべきだと思う。この基本的な方針の中に「いわゆる」とは書いてあるものの、「いわゆる余り米は従来どおりの方法で処理する。」となっている。これを「いわゆる超過米」、括弧して「(俗に言う余り米)」とかと書いてあれば私も納得するわけでありますけれども、こういったことをこういう基本方針に書くということは不見識、農民を全く愚弄しておるものであると私は思うのですが、大臣、これは訂正してもらいたい。どうですか。
  183. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そこに書いてある「余り米」というのは生産調整に協力をしない場合に起きる超過米、こういうことで「余り米」という表現を使ったわけであろうと思いますが、全体的にいまの作況が大変よくて、そして米が余ってきたということにつきましては、われわれは予約限度数量超過米、いわゆる超過米ということで統一をして、ここで御説明もいたしておるわけでございます。
  184. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の制約がありまして、時間が詰まってまいりましたので、総合食糧政策問題点については去る九月十日にもいろいろ質問したことでありますけれども、残余の問題はいずれ機会を改めてまた聞くことにして、柱だけ若干お聞きして、一応これは終わります。  次に、林業関係で四点だけお尋ねをしておきたい。  まず一つはスト権の問題ですが、これは農林大臣林野庁長官にお尋ねするわけですけれども、三公社五現業の中で国有林野事業を担当している林野庁長官は、国鉄など三公社にならって五現業当局もスト権を対与すべきである、こういうふうにわれわれは考えておるわけですけれども、国有林野事業を担当している林野庁はどういうふうに考えておられるのか、これに対する農林大臣の見解、こういったことをひとつ公式の場で表明してもらいたい。いろいろ経過その他を省略しますけれども、現在世上問題になっておるわけでありますから十分承知しておられると思うので、時間の関係で簡潔にお尋ねしますが、明快にお答えをいただきたい。
  185. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  スト権の問題につきましては、三公社五現業とも専門懇におきまして現在真剣な、慎重な御検討をいただいておるところでございまして、その御検討の結果が二十数日には出されるというふうに私ども聞いておりまして、その後における閣僚協等における検討の中でまた私どもも検討してまいる、このような姿勢を持っているわけでございます。
  186. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま林野庁長官が申し上げたとおりでございまして、専門懇の結果が出て閣僚協という段階になるわけでございますが、私としての意見はここでは差し控えたいと思います。
  187. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一応聞く程度にしまして、時間の関係がありますので、次に通告しておりました林業総合改善資金制度の問題について農林大臣に見解を求めます。  かねて林業関係者の要望の強かったこの事業は、間伐の推進、林業労働災害の防止、林業後継者の育成、確保を助長し、林業の総合的な改善を促進するため、林業者等に対し短中期の無利子資金の貸し付けを行うものというふうにわれわれは思っておりますが、これに対して制度の仕組みとか国の助成、資金の内容等いろいろ政府考えておられますけれども、特にこの五十一年度予算要求、これはぜひ確保してもらいたい、こういうように私は思うわけですが、これに対する予算獲得について大臣の決意を聞いておきたい。ぜひともこれはひとつ要求どおり確保していただきたい、こういうように思うのですが、大臣どういうふうにお考えですか。
  188. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 近年の林業の動向にかんがみまして、間伐の促進、林業労働安全衛生の推進、林業従事者の育成等についての林業関係者の自主的な努力を助長し、林業の総合的な改善を図るため、必要な中短期の資金の無利子貸し付けを内容とする林業総合改善資金制度を五十一年度に創設する方向予算要求を行っておるわけでございますが、そのための立法措置を講ずることも準備を進めておるわけでございまして、私も実はこの総合資金制度につきましては、全国各地を歩くたびに林業の関係者から非常に強い御要請を受けておるわけでございます。これからの林業の振興あるいは後継者の育成といった見地からもこの制度はぜひとも実現をさせたい、こういうことで熱意を燃やしておるわけでございますが、来年度予算編成、なかなか厳しい状況にあるわけでございまして、これの実現には最大の努力はいたしたいと思いますが、なかなか私だけの力でも及ばない面もあるわけでございまして、各方面の御協力をぜひともお願いを申し上げる次第であります。
  189. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 林業総合改善資金制度については大臣も最大の努力をするということですが、ぜひともこれは実現に向かって努力をしていただきたいと思います。  それからもう一つは、激甚災害に対する特別緊急整備事業について伺うわけでありますが、本日も砂防会館で第十九回国土保全大会がありまして、これが主要な問題点に挙げられております。私も大会でこれの実行についていろいろ強力な要請をし、またあいさつしてきましたが、御存じのように、台風、集中豪雨等によって突発的に発生する激甚な災害に対して、再度災害防止のため実施する現行の治山事業として二つありまして、緊急治山事業、特殊緊急治山事業等があるわけですけれども、その復旧進度が、予算上の制約等種々制約があります関係から遅いというのが従来からの問題であります。緊急を要する再度災害防止対策の推進上、従来から大変問題となってきたところでありますが、特に昭和四十七年度、四十九年度、五十年度等に激甚な災害の発生した地域の復旧進度に著しいおくれが見られて、地域住民が大変心配をし、また抜本的対策の樹立を要望しておることは御承知のとおりです。これら地域住民の要望にこたえ、かつ、このような実態に対処するため、抜本的対策として、ただいま申しました激甚災害対策特別緊急整備事業の制度を創設して、再度災害防止のため必要な整備事業を緊急かつ集中的に実施できるよう、予算要求にこれまた大臣努力をお願いしたいと思うのですが、これもぜひひとつ今後の国土保全の上からも、林業推進の上からも、われわれの多年の念願の懸案でありますので努力してもらいたい。これについても大臣の見解を承っておきたい。
  190. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 昭和四十七年、四十九年に続いて本年も激甚な山地災害を受けたことにかんがみまして、所要の立法措置を講じて、治山治水事業との連携のもとに激甚災害対策特別緊急整備事業を実施して、再度災害の防止を図る必要があると考えておりまして、その線に従ってこれからも努力を続けてまいりたいと考えます。
  191. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一点林業問題で。  中核林業振興地域育成特別対策事業というのが今回新規に出されておりますけれども、林業を振興することによって、従来から地域全体の発展に中核的な役割りを担うと見込まれる優良林業地帯で、林業生産条件の整備、林業と農業等の他の業種の適切な組み合わせ等による労働力の定着化の促進、林業労働安全衛生対策の充実、林産物の生産流通対策その他の諸施策を総合的、計画的に推進することが焦眉の急務とされています。  これも来年の事業の中で大変大事なものであるので、あえてここで大臣に見解を聞くわけですが、林野庁の構想としてはいろいろ考えておられるようですけれども、事業内容、国の助成、予算要求、これらもぜひひとつ実現を図るために最大の努力をしてもらいたい、かように思うわけですが、構想の一端と大臣の決意をこれまた承っておきたいと思います。
  192. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 近年、森林・林業に対する経済、公益両面にわたる多角的機能の総合発揮という国民的要請の高まる中で、山村の過疎化の進展等森林・林業を取り巻くところの情勢は厳しいものかございます。  しかしながら、このような情勢のもとにおきましても、全国各地の林業地帯において林業を主体として山村の振興を図ろうとする意欲的な努力が続けられており、わが国林業の発展のために、これら林業地帯を育成整備していくことが必要であることは言うをまたないわけでございます。  中核林業振興地域育成特別事業は、このような観点から構想をしたわけでございますが、これらの積極的な推進を図りたいと考えております。
  193. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので以上で終わりますが、いまの林業四点についてはまたいずれ、詳しくは来週、委員会でいろいろ重ねて質問をすることにしまして、きょうは中心的な問題だけ農林大臣に伺いました。  残余の問題は、時間の関係でできませんが、次の機会に譲りまして、以上で質問を終わります。
  194. 藤本孝雄

    ○藤本委員長代理 稻富稜人君
  195. 稲富稜人

    ○稻富委員 安倍農林大臣にお尋ねします。  農林省はさきに「総合食糧政策展開」と題する考え方を発表されております。これは私たちはこう解釈しております。私たちはさきに食糧基本法の制定をやるべきではないかという希望を申し上げておったのでございますが、これを立法化するのでなくして、行政的な処理の仕方によって総合食糧計画を立てていこう、こういうようないわは食糧基本法の焼き直し的な――焼き直しと言っては安札かわかりませんけれども、そういう意味を含んでの食糧政策ではないか、かように私たちは踏まえまして、これはいいことであると思うのでございますが、こういうような計画をお出しになるならば、実は本委員会等でも、政府は積極的にこういう構想をもって食糧政策を打ち立てるんだという意思をなぜ表明されないのか。私たちも新聞によってこれを知ったのでございますが、新聞に先に発表する。そして委員会ではほっておいて、われわれはつんぼさじきに置かれている。  私は、きのう農林省から来られまして、どういうことを質問されますかと言うから、「総合食糧政策展開」というものを出して、われわれに何も言わないで、新聞にだけ発表して、新聞にだけPRしているが、それでいいと思っておるのかと言ったところが、にわかにこういうものでございますと言って届けられたのでございますが、こういうことは私は実に遺憾であって、やはりこういうような構想を打ち立てたならば、早い機会に農林委員会等において政府の所信を述べることが、私は議会政治に対する政府の態度でないか、こういうことを強く思うわけでございますが、これに対して農林大臣はどうお考えになっているか承りたいと思うのであります。
  196. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 「総合食糧政策展開」を作成するに至るまでの間、長い期間がかかったわけでございますが、その間にありましては、やはり国民食糧会議も開いたわけでございますが、同時にまた通常国会という長い国会を通じての与野党の真剣な御論議等も十分お聞きをいたしまして、これを踏まえてこの政策をつくったわけでございます。したがって、これはちょうど国会が開いておれば、もちろん早速発表すべき問題でもありますし、またみずから求めて委員会に発表すべき問題でもあったと思うわけでございますが、その点については、いま御指摘を受けると、委員会の開会をお願いしてまず発表すべきであったのではないかというふうにも考えているわけでございます。  また、これらの具体化に当たりましては、何としてもこれを予算化しなければなりませんし、あるいはまた立法化しなければならぬわけでございますので、こうしたことは今後この国会におきまして委員会等におきまして十分御論議をいただくことになるわけでございますので、国会というものを離れて総合食糧政策展開というものはあり得ないわけでございます。ただ、そうした発表等につきまして、いま思えばむしろ積極的に委員長委員会の開会をお願いをして、みずから積極的に御説明を申し上げるのが筋であったのではないかと反省いたしております。
  197. 稲富稜人

    ○稻富委員 私大臣にお気に召さぬことを申し上げて失礼かと思いますが一私が今回その感を最も深くしましたのは、これは前にも大臣に言ったことがありました。本年ですか米価審議会のときに、元来、米価審議会における政府の諮問内容というものは、まず米価審議会に諮問するということが米価審議会そのものに権威を持たせるものだ、かようにわれわれは考えております。それで米価審議会を開催される前に農林委員会等を開いたところで、恐らく政府といたしましては諮問内容等は委員会等には発表されないだろう、またすべきものではない、米価審議会を開催した以上は、米価審議会の権威を保つためにも、米価審議会に最初にその案というものは諮問すべきであるという元来からのたてまえを私たちはとっておりましたところが、本年度の米価審議会におきましては、前の晩に大臣みずから新聞社に発表された。そのときも、この取り扱い方というものは米価審議会の権威を非常になくするものであって遺憾だ。その問題に対しては私はそのときは時間がなかったので保留いたしました。そういうような点が前にもありまして、米価審議会に諮問する諮問案というものを、米価審議会に諮問する前にほかに発表するということは好ましいことではない、なぜこれを前にPRされたか、その点がわれわれにはわからない、その点に深く思いをいたしておりましたので、今回のこの総合食糧政策の発表に対しましても、またそういうようなことをやられたのかなという感がいたしましたので、特に私はそのことを念を押しまして申し上げた次第でございます。それで、今後国会を重視するという立場からも、あるいは米価審議会の問題等に対しましても、十分心の中に入れてひとつ対処してもらいたいということをこの機会に強く希望を申し上げると同時に、大臣の率直な意見を承りたいと思うのでございます。
  198. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題につきましては、いろいろといま記憶をさかのぼって思い出しておるわけでございますが、御存じのように新聞の競争というのは非常に激しくて、これはほっておけばそのままもっと早く新聞等にも掲載されるということもあるわけであります。これは農林省が中心としてつくる諮問案であります。しかし、同時にこれは関係各省庁にも連絡をしなければならぬわけでございます。その他の関係者にも連絡しなければならぬわけでございますので、そうなってくると、勢いこれはその日、米審の委員説明をする前に明らかになるということでありまして、これはいままでも事実そういう状態でずっと来て、米審の委員等からもいろいろと批判も受けてきたわけでございます。  ことしもそういうふうな状況の中にあっていろいろと考えたわけでございますけれども、結局米審の委員の皆様には十分了解をとって、その上で事態の説明をして、そして公表等につきましては、これは一つ約束をお願いして、発表という形ではないわけでございまして、レクチュアということになりますか、事前内容についてはある程度お話をしたということでございます。したがって、米審の委員の皆さんはその点については十分に御理解をいただき、そしてわれわれに対してもこの点に対するおとがめはなかった、こういうふうに思っておるわけであります。
  199. 稲富稜人

    ○稻富委員 この問題、実は私は深く重ねて質問するつもりはなかったのですけれども、いま大臣から御答弁なさったのが先般来の私の質問に対する答弁と違いますので、私は繰り返して申し上げますが、実はこの間の米審の翌日本委員会を開きましたときに、いままでは米審に諮問する前に諮問案というものを発表したことはなかったのだ、それがその朝の新聞に載ったということは、これはどこでその内容が漏れたのであるか、好ましいことじゃないではないかという質問を私したところが、実は早く知らした方が便宜がいいだろうと思って、いままで例はなかったけれども、私が発表しました、こういうことを大臣はおっしゃったので、これは米審というものの権威を保つ上からもそれはやるべきじゃないのであって、発表されたということは非常に遺憾である、この問題はいずれまた次の機会に論議するとして、きょうは保留をいたしておきます、こういう発言を私はいたしておったのでございます。  これは米審の委員は後で納得されたらそれは結構でございましょうけれども、われわれ農林委員会等では、米審に諮問する前に米審の諮問案を農林委員会等で取り上げて論議するということは米審の権威にかかわるのだ、また政府としても米審に諮問をする前にほかの委員会、ほかの機関に発表するということは差し控えるのが当然じゃないか、こういうことで本委員会でも実は遠慮をして、毎年米審を開いてそして諮問された後に本委員会を開いてその米審の諮問の内容等を承っているというのが、いままで毎年やってきた慣例なんです。その点から私は申し上げたのであって、そのときの私に対する大臣答弁ときょうの答弁が非常に違いますので、私はこれは深く問いはしませんけれども、その点は今後慎重にやられた方がいいのじゃないか、私はこういう点を特に申し添えておきたいと思うのでございます。
  200. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 前に私がどういう答弁をいたしましたか、今回の答弁と本質的にはそう違っていないと思いますけれども、非常に重要な問題で判ございますので、この点については慎重に今後取り扱いをしなければならぬ、こういうふうに考えます。
  201. 稲富稜人

    ○稻富委員 この総合食糧政策内容を見ますと、第二の「対策の概要」第二項に、「買入制限の実施」と明記してあります。そしてその(一)には「買入制限措置は、現行どおりとし」「いわゆる余り米は従来どおりの方法で処理する。」こういうことを明記されておるのでございますが、これはどういうような意味であるか、本年もそのようにしようと思っていらっしゃるのか、この点を承りたいと思うのでございます。
  202. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 超過米につきましては、第一にやはり出来秋を待っての県間調整、さらにそれでもって処理できない場合は自主流通ルートに乗せてこれを処理していくということで今日まで対処しておるわけでございます。今回の場合も基本的にはそういう方向で進めたいと考えておるわけでございます。
  203. 稲富稜人

    ○稻富委員 この問題につきましては、先日、六日ですが、大臣出席なさらなかったときに次官と食糧庁長官が御出席なさいまして、この超過米の処分の問題について私たちお尋ねしたのでございますが、その当時、政務次官並びに食糧庁長官から御答弁のありましたのは、素直に大臣意見である、政府としての意見である、かように受けとめて差し支えございませんか、この点、承っておきたいと思うのでございます。
  204. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政務次官並びに食糧庁長官が答えたとするならば、それは公式なこの委員会の場でございますので、もちろん政府意見でございます。
  205. 稲富稜人

    ○稻富委員 その当時私たちが一番心配いたしましたのは、本年度のいわゆる超過米でございますが、これの全量買い上げを政府がやらないんじゃないかという不安が非常に農民間にあることは、先刻からもいろいろ論議されておりますし、大臣も御承知であると思うのでございます。  ところが先日は、これに対して食糧庁長官が、そういう超過米に対しては備蓄米に回すか、あるいは自主流通米にするかということによって、農民に不安を与えないよう、政府の責任においてこれを処理するという御答弁をはっきりなさっておりますが、その点は大臣も同じ考え方として承って差し支えございませんか。
  206. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは別に差し支えないと思います。農民に不安を与えないような方向で処理をするのが政府の責任であると考えております。
  207. 稲富稜人

    ○稻富委員 それではもう一度念を押します。  本年度生産量と政府が買い上げる量の間に、どれほどたくさんのいわゆる超過米が生じましたところで、これは政府の責任において農民に不安を与えないように処理する、こういうことであると大臣からはっきりこの点は明言をしていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  208. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本方針としては、先ほどから申し上げるとおり、私がしばしば予算委員会でも申し上げましたとおり、県間調整と自主流通ルートに乗せて処理するということをたてまえにして行いたいと思っておるわけでございます。現在の状態では、最終的にはまだ収穫量の決定を見ないわけでございますから、その処理の仕方等につきましても明言はできないわけでございますが、方向としてはそういう方向で処理したいということであります。そしてその対処の仕方というものは、全体的にはやはり農民の皆さんに不安をかけないように処理をするということは、これは五十万トン出ても六十万トン出ても政府の責任であろうと思うわけでございます。  ただ、その不安というものがどういう不安であるかとか、あるいは御迷惑をかけないよう政府の責任において処理するといっても、政府の限界というのはあるわけでございますが、政府としては誠意をもって、責任をもって、なるべく不安を与えないような方向で処理しなければならぬというのが私の考え方であります。
  209. 稲富稜人

    ○稻富委員 大臣、その後段がどうも不安なんですよ。超過米ができた場合は、超過米は全額政府の責任において処理する、これをはっきりしてもらわぬことには、いまのように、そういう方針であるけれども、それはいよいよ量がわかった上でまた処していくというようにぼかされると、そこに農民の不安というものが生ずるわけです。この点は、どれほどの超過米ができようとも、政府政府の責任において、備蓄米にするなりあるいは自主流通米に回すなり、農民に不安を与えないように処理するのだというように、ただし書きをつけないではっきりしてもらわぬことには農民は不安を持つわけですから、その点をはっきりしていただきたいと思うのでございます。
  210. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 備蓄のことは食糧庁長官も言ってないのじゃないかと思います。長官は自主流通ルートに乗せて処理をするというふうに言ったと思うわけでございますが、いずれにしても政府が責任を持って処理をしなければならぬわけであります。ただ、いま稻富委員のおっしゃる幾ら出ても政府が責任を持って処理をするというその内容がどういうものであるのか、どういうことを具体的にお考えになっておるのか、その辺は私もわからないわけでございますが、とにかくこれは不安を与えないような方向政府としては処理していかなければならぬことは当然のことでございますから、そういう点ではひとつ誠意を持ってやりたいと思っております。
  211. 稲富稜人

    ○稻富委員 この前は備蓄米の問題も出ましたが、端的に申し上げますと、そういう過剰米ができた場合は政府が全量買い上げる、この点をはっきりしてもらえばそれでいいのです。
  212. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはいまはっきりするわけにいかないわけでありまして、食管法のたてまえを崩すことはもちろんできませんから、食管法を守りつつ処理をしていかなければならぬのは当然でございます。同時にまた、いまの方向としては、県間調整と自主流通ルートに乗せて処理をする、この二つの方向だけははっきりしておるわけでございますが、その後どれだけの事態になっていくのか、いまの段階でいろいろと憶測をしてこれに対してお答えを申し上げるということはかえってどうかと思うわけでございます。われわれはいろいろと想定をいたしまして対策を検討いたしておるわけでございますが、そういう想定だけでお答えをするのはいかがかと思うわけでございます。したがって、現在のところはっきり言えることは、県間調整をまず行って、それで余った米については自主流通のルートに乗せるということでございますし、同時に、食管法のたてまえというのは崩さないでこれを実施していく、これは当然政府の責任であるということであります。
  213. 稲富稜人

    ○稻富委員 どうも、だんだん話を聞いておるとぼけてきますがね。食管法のたてまえを崩さないとおっしゃるのですが、私たちは食管法をこう考えるのですよ。これは、私はこの前も数字を挙げたので、くどくど申したくございません。しかしながら、わが国食管法が実施されまして、農民は、あの米の不足の時分には食糧管理法違反として大変な処分を受けているのです。これはこの間言ったことだから、速記録を見てもらえばわかりますので、いま申す必要はないと思いますけれども、私は大臣の耳に入れたいと思います。  「司法統計年報」の二十八年のものを見ますと、その「刑事編」に食糧管理法違反による有罪人員というのが載っております。それによりますと、食糧管理法違反による有罪人員は、昭和二十三年に十万七千七百七十二人出ているのです。二十四年は十三万六千二百五十三人、二十五年は十一万九千七百七十七人、二十六年は九万三百七十八人、二十七年は六万七千九百六十一人、二十八年は四万六千二十人、これだけの食管法違反による有罪の決定をされた問題があるのですよ。     〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕 これは食管法によってやられております。こういうように、米が足らないときには米を供出しなかった者に対してこれだけ有罪にしておきながら、余ったからといって今度は勝手に政府は買わないんだということは、昔の悪代官がやった農民に対する政治よりももっと過酷だと言っても言い過ぎじゃないと思うのです。こういう点を思い、本当に食管法の精神を考えるとするならば、余ったら余ったところで農民が困らないようにこれを全量買い上げて、そして農民が次の生産に挺身するようにやることが農民を思う農政であると私は考える。この点から、農民に不安を与えないような全量買い上げをなすべきことが食管法の精神であると私は思う。食管法の根幹は崩さない、しかしながら買い上げに対してはどうもできぐあいを見なければどうすると言えないんだ、こういうような逃げの一手では農政が農民に忠実なるゆえんではないと私は思うのです。しかも食糧庁長官は、ここにおられますので少し悪いかわからぬけれども、心配を与えないようにするということを言われておりました。私は食糧庁長官意見政府意見であると思って聞きとめております。それを農林大臣は、先刻は食糧庁長官が言ったことは政府意見としてお認めになって結構だとおっしゃりながら、今度は内容をぼかしたような答弁をなさるということは私たち腑に落ちません。全量買い上げをしてもらえないことになるんではないかということが農民の不安なんですよ。その農民の不安をなくすると言うのならば、全量買い上げをするんだという態度を政府がはっきりとることが農民に忠実なるゆえんだ、私はかように考えます。この点はぼかさないで、農林大臣日本の農林行政をつかさどる責任者としてはっきり農民の前にこれを明示していただきたいというのが私のあなたに対する要望であります。
  214. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ぼかしておるわけでもないわけですが、収穫の予想はいままで何度もあったわけでございますが、まだ実際収穫そのものが決定したわけではない。これは十一月の末か十二月の初めでないと決定的にはわからないわけでございますし、そしていままでの例から見ますと、四十八年のときでもそうでございますが、いまごろは四十万トンぐらい余るであろうと言われておったのが、いよいよ最終的に収穫が決定した段階においては七万トンということで、これは自主流通のルートに乗せて処理ができたわけでございます。昨年も相当余るだろうというのが最終的には県間調整で処理ができたわけでございます。今回はいままでとは多少様子が違うようには思うわけでございますが、しかし最終的にはやはり十一月の末、十二月の初めにならないとこれははっきりわからないわけでございます。  したがって、いままで政府は県間調整と自主流通に乗せて処理をしてきた、今後ともその処理によって対処していくという基本方針をここで申し上げることは、これはいままで政府がやってまいったことでございますので、当然のことであろうと思うわけでございます。それでもなおかつ超過米が出るというふうな段階に至れば、これは事実上は十二月にならぬとそういうことになるかならないかわからぬわけでございますが、予想はいたしております。そういう段階になった場合等も考えまして、そうしたときにおいても農民の皆さんに不安を与えないように処理をし、対処しなければならないということは、私もそういう気持ちで取り組んでいるということであります。  ですから、いまここで全量買い上げをいたしますということは、これは改めて申し上げるまでもないわけですが、ここで明言をするわけにはいかないわけであります。県間調整、自主流通ルート、そしてなおかつ余ったときにおいては誠意をもって対処していく、こういうことでございます。
  215. 稲富稜人

    ○稻富委員 大事なときに時間がなくなったと言ってきたのですが、それでは、たとえこの十一月の終わりか十二月になって超過米が政府考えておるより以上にもしできたとした場合があっても、農民には不安を与えないように政府は処理をするんだ、こういうような考え方を持っておられるんだということにここで受けとめていいのですか。
  216. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん政治のあり方としては、そういち方向努力するのは農林大臣として当然のことであると考えております。
  217. 稲富稜人

    ○稻富委員 それでは、まだ聞きたいことがずいぶんありますけれども、時間が来ましたのでその他のことは今後に譲りまして、本年度の超過米につきましては、いま大臣が明言されましたように、超過米ができて、そして自分たちがその米の処理の仕方に困るということが生じはしないかというのが農民の不安でございますので、農民にその不安を与えないようにするという大臣の言明でございますから、私はこの点を深く信じまして、そのことを農民にも伝えたら農民もまた安心するだろうと思いますから、その点は私も責任を持って農民に伝えることにしまして、私がうそを言ったということのないように大臣も処してもらいたいということを最後に希望申し上げまして、私の質問を終わることにいたします。
  218. 澁谷直藏

    澁谷委員長 美濃政市君。
  219. 美濃政市

    ○美濃委員 若干質問いたしたいと思いますが、大変時間が遅くなっておりますのでできるだけ短く、早く切り上げたいと思いますのでよろしくお願いいたします。  まず最初に、千島海域における拿捕、その補償等が行われるということが新聞に出ておりましたが、その内容、拿捕だけなのか、それとも最近やかましく言われておりますその水域の網が破られたような問題は入っておるのか、拿捕だけであれば何年から何年にわたるもので、概要どういう考え方の補償が行われるのか、こういうことについて御説明をいただきたいと思います。
  220. 内村良英

    ○内村政府委員 北方四島周辺海域におきます拿捕漁船の船主、乗組員等特別給付金につきましては、先般国会を通過いたしました補正予算に七十七億五千八百六十四万円が計上されておるわけでございます。これの救済対象者でございますが、昭和二十一年四月三十日から昭和四十九年九月三十日までの間に北方四島周辺海域において拿捕、抑留された漁船船主及び乗組員に対する救済処置でございます。  そこで、まず最初に対象漁船数でございますが千六十四隻、そのうち未帰還が四百三十四隻でございます。対象乗組員数は七千七百六十一名、このうち死亡が二十三名、障害が二名入っております。  そこで特別給付金の内訳でございますが、漁船が十七億五千七百九十一万円、積載物が十三億四千三百九十六万円、それから事件出費が四億八千四百二十八万円、休業の損失が二十六億一千百四十四万円、これが船主に対する給付金でございます。  それから乗組員に対しましては、抑留者が十三億六千九百四万円、死亡者に対しまして一億八千四百万円、障害者に対して八百万円の救済特別給付金が支払われるわけでございます。  そこで、これの支払い時期でございますが、いずれにいたしましても、予算は今年度予算に組んでございます。ただし、経費の性質上、繰り越し明許がしてございますので明年の一月初めから五十一年度末までに支払いが行われる、こういうことに相なるわけでございます。
  221. 美濃政市

    ○美濃委員 これはお聞きしただけで、早口ですから、後で個人的に、いまお話のありました内容をお知らせ願えるでしょうか。
  222. 内村良英

    ○内村政府委員 はい。
  223. 美濃政市

    ○美濃委員 お願いいたします、全部書きとめることができませんでしたので。  次に、過般てん菜、サトウキビ等が決まりました。決定した後でありますから決定時のような話はいたしませんが、実は地元の北海道新聞にも出ておりますが、北海道の網走管内というと二十五、六町村あります、そこの町村長が寄りまして、もうこのビートの価格決定では来年つくってくれと言って奨励はできない。ということは、ことしの春、各町村長、北海道農協の組合長は農民に、大体一万八千円の見通しはついた――砂糖の高かった、外国糖の高かった関係もあろうかと思うのですが、大体射程距離に入っておるからつくってくれという指導をしたわけです。それが一万六千円ですから、ものすごくいま北海道は意識的に紛争しておるわけですね。何だ、責任を持てという動きもあるわけです。そこで、網走管内の町村長は集って、そういうことを決めた。それで、近く国なり道なりに、もうこれでは来年度のあれはできませんということを態度を明確にするというように記事に載っておりました。十一日です。ですからまだ来ていないとは思いますけれども、そういうことが起きておる。  そこで、おそらくサトウキビにも同様の問題が起きておるだろうと想定いたします。私の地域から遠いですからこれは私の想定であります。  それともう一つは、十八日に同様に私の地元で、農協の組合長、町村長が集まって、この問題を中心としてどうするか話し合う、ぜひ私にも出席せよという要請があるわけです。そこでこれはどういうふうに言ったらいいのか、私にはわからぬわけです。  それで、農林政策上もう甘味対策の自給は放棄したのか。農協の組合長も町村長も北海道では手を挙げてしまいました。これでは所得にならないから、農民にビートをつくれということは言えない、もうつくる、つくらぬは自由だ。同時に、困ったことには、やはりこれは寒地の畑作農業の基幹作物でありますから、つくらなかった場合に、しからばビートをやめてしまって他の作物をつくれば安定するかという問題が出るわけですね。それもまた不安定な要素があるわけです。ただしかし、この価格ではビートをつくって生活ができない。所得の保障が低くて生活のできないものでは、いたずらに負債ばかり増加して結局は農家がつぶれるようになるから、つくれということが言えない。  もう一つの問題は、北海道は非常に離れた地域でありますから、特に輸送事情が青函連絡船で悪いわけです。ですから肥料等につきましても、九月上旬から輸送開始をしておるわけです。十二月中には、大体農家の庭先へ半分の肥料が仮渡しされるわけです。ですから、いま十八日にそういう会議を持つということは、もうすでに来年何をつくるかということ、種子の問題、肥料の対策、そういう問題が差し迫っておるわけですね。いまのところつくる気持ちはもう大幅に減少してしまっております。もうビートの耕作意欲というものは大幅に減退してしまっておるわけですが、どういうふうにすればいいのか。十八日あたり、私自身が帰ってこいと言われておるのだが、帰った場合に、大臣、どういう話をしたらいいか。もうビートというものは、ことし決まった価格はあたりまえなんだ、来年だってそんなに上がりませんよ、いやならやめてしまえ、輸入して食べるんだからと、そう大臣は言っておるという答弁をしたらいいのか。ここで聞かしてください、あなたの言ったとおり私は帰って言うから。お願いします。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度のビートの価格の決定につきましては、春に行うといういままでの慣例があったのを秋に持ってきたわけでございまして、そして畑作物について秋で統一して、同じパリティ計算のもとにこれを決定するという方式を打ち出したわけでございまして、これは私は、今後の農政考えていく場合に、価格政策の面から一つの前進であったと思うわけでございますが、いまのビートの価格につきましては、これは何といっても、私が申し上げるよりもよく御存じのとおり、昨年とことしではすっかり砂糖事情というものがさま変わりをしておるわけでございます。  砂糖は、昨年は非常な高い時期、ことしは非常に国際糖価も安くなっておる。そういう中にあって、砂糖会社等の経営の内容等もうんと違っておったわけでございますから、昨年は、御案内のように、会社の補助金と奨励金というような形で上乗せをして、そして生産農家の手取りは一万五千円と、こういうことに決まったわけでございます。  ことしは、先ほどから申し上げましたように、砂糖を取り巻くところの事情がすっかり変わってしまった。そして会社等も、とうてい助成金や奨励金を出すというような余裕も全くなくなった、こういう中に価格を決めなければならない。そこでわれわれが苦慮いたしましたのは、そういう中にあって、さま変わりになったからといって、農家の手取りが昨年の手取り以下になるようなことになっては絶対に相ならぬ、少しでもこれに上乗せをして生産意欲を持っていただかなければならぬと、こういうことで局長以下実に苦心惨たんいたしまして、最終的に生産農家の手取りが一万六千円ということに決定をいたしたわけでございまして、私は、そういう意味におきましては、農林省も最善の努力をしたし、あるいは財政当局もこの非常に厳しい財政事情の中においては非常に協力をしていただいたというふうに考えておるわけでございます。砂糖につきましては大体二割という自給率でございます。この自給率をやはり安定をしていき、むしろこれを伸ばしていくという方向へ今後とも、国民食糧の中の一翼を担うものでありますし、甘味資源でございますから、そういう方向に、これは今後の価格対策も含め、生産対策とともに進めていくというのがわれわれの基本的な考えでございます。
  225. 美濃政市

    ○美濃委員 大臣はそういうふうに言われるけれども、現実は私が申し上げたように農家の所得は伴っていない。それはこの前も申し上げましたから繰り返しませんけれども、減っていくわけです。  それともう一つ、事実かどうか事情を聞きたいのですが、あるかなり集まった会合で某代議士が、もうことしの財政当局や何かは上げられる条件じゃなかったんだ、おれががんばって千円ボーナスをつけてやったんだから高安は言わないでその努力だけは買ってくれよ、こういう話をした、そしてこれが地元のローカル紙に出て、切り抜きにして私持っておりますが、社会党などというものは百害あって一利なし、こういう表現をしておるわけです。そのいきさつはどうなんです。そういうものを決めるときは特定の代議士が決めて、法律上では農林大臣が告示するということになっておるけれども農林大臣などというものは全然ことしのビートを値上げする意思もなかったのかどうなのか、そのいきさつをここで大臣の口からちょっと明確にしてもらいたい。
  226. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 新聞に出たそのいきさつというのは私全く知りませんが、これはことしの予算委員会、まだビート価格を決める前の予算委員会で野党の質問もしばしば行われたわけでございますが、その際にも私ははっきり申し上げたわけでございますが、これは先ほど答弁いたしましたように、少なくとも生産農家の手取りが昨年は一万五千円であった、ことしは砂糖事情がさま変わりしたからといってこれを下回るようなことが絶対あってはならない、これは少しでも上乗せをして生産意欲を持たせる方向に私としては最善を尽くしますということを、いまから始めるという前に私も答弁をいたしました。農林省としても、そういう私の考え方に基づいて事務当局も挙げて努力をいたしたわけでございます。もちろん政党政治の時代でございますから、党の関係者とも協議をしながらやったことも事実でございますが、これは行政価格でございまして、責任はあくまでも行政官庁であるところの農林省がこれを負うわけでございます。最終的な財政当局との話し合いにおいても、そういう面で農林省の責任においてこれを決定したわけであります。
  227. 美濃政市

    ○美濃委員 いまの話は私も本気にしておりませんから。けれどもそういうことが出ておるからちょっと申し上げたのです。  そこで問題は、これは大臣は二割確保したいと言うが、来年は二割になりません。六十万トンの砂糖は大幅減退して、二割確保じゃなくて北海道においてはこのままでいけば九工場恐らく全部操業できないだろう。甘味資源特別措置法によって休業補償や何かの問題が出てくると予想せざるを得ない状態です。ですから、こういう重要作物は生産費所得補償方式、少なくとも価格の算定方式は米と同じ算定方式を採用すべきである。国際糖価が高いからどうだとか安いからどうだとかというのは、こういう変動性のある国際糖価を対象に価格を決めるのはきわめて不安定で、いま申し上げたようにもう安心してつくれない、生活ができないから、やめざるを得ないという現象が起きるわけです。これは前の国会にも出しましたが、この国会にも社会、公明、民社三党共同提案で出しておるわけですが、糖安法そのものは政府提出の法律でありますから、この国会で処理できるかどうか、私どもは賛成を得て処理したいと考えておりますけれども。しかし、この国会で処理できないにしても、やはり重要農産物については、これは来年の通常国会には法改正を出して来年度価格決定には間に合わすというようなことが真剣に検討できるかどうか。そういうことがあれば、また農家も安心してまきつけ前に――具体的な価格は秋決めるというのですから秋決まるとしても、政策方向がはっきりしてくればまた安心して耕作意欲もつくと思うのですけれども、このままの条件であれば、もう甘味対策、二割自給率を保ちたいといってもそれは泡沫のごとくになってしまって、同時に畑作農業が崩壊していくと思うのです。とにかく沖繩や奄美の、特に沖繩の農業も北海道の畑作農業も崩壊していくだろう、このように思うわけです。それほど重要だと思うのです。一定面積はやはりこの作物をつくらなければ、他の作物ばかりつくるということでも安定しないわけです。輪作の関係があり、あるいはいろいろの条件がございますから、いますぐ他の作物に転換してしまってそれで本当に安定するのかといったら、これはしないわけですね。だからといってサトウキビやてん菜をつくって生活できるのか、できない。そういういわゆる二者択一のところへ農民は追い込まれておるわけです。それに対してどうお考えになっておるか。
  228. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 てん菜の本年の価格決定につきましては、あるいは農家の方から見れば非常に不十分であったかもしれませんけれども、ただいま大臣がお答え申し上げましたように、てん菜の、特に農家の手取りの価格を、昨年の一万五千円を下がらないで、しかもこれを引き上げるにはどうしたらいいかということにつきましては、私たちとしてもできる限りの努力をいたしたつもりでございます。農家期待が非常に高くて、いまお話のように一万八千三百円が射程距離に入ったというふうな話が北海道にあったことは私も承知をいたしておりますが、それがどういう経緯でそういうことになったのかについてはつまびらかにしないわけでございますけれども、四十八年のてん菜の価格は八千円台であったわけでございまして、これを昨年一万五千円とし、ことしは農家手取り額を一万六千円にしたという従来の経緯から見ますれば、農家にとってはまだまだ御不満ではありましょうけれども価格の水準の伸びとしては相当な水準ではないかと思います。同時に、片やてん菜は、御指摘のとおり北海道における基幹農作物でございますから、輪作体系のうちで欠くべからざる作物でございますので、その間の両方の事情を十分御理解をいただく、あるいはまた道庁の適切な指導と相まって、てん菜の生産奨励とあわせて、てん菜の作付が今後も増加していかなければならないと私たちも考えておるわけでございます。  それから同時に、御指摘のてん菜の価格の決め方でございますが、これは私がいまさら申し上げますまでもなく、農産物価格には、その作物の特性に応じまして、あるいは制度の組み立て方に応じ、あるいは流通の形態に応じ、それぞれの価格の決定方針が決められておるわけでございますが、てん菜のように一つの加工過程を通ります価格決定につきましては、必ずしも米と同様に決めることが適当であるかどうかについては十分検討する必要があると考えております。  私たちは、糖安法の制度の改善につきましては、常に検討を続けていくつもりでおりますけれども、現在の糖安法を直ちにどういうふうに変えるべきものかという成案は持っておりませんが、いろいろと、たとえば輸入糖価の安定の問題、生産価格の決定の方式その他を含めまして、今後とも十分に検討はいたしてまいりたいと考えております。
  229. 美濃政市

    ○美濃委員 大臣、どうでしょう。局長もかわったんですし、砂糖類課長もかわっております。いま最盛期ですから、いま行ってもらえば私の言っておることがよくわかります。ここで、やりますと言わなくてもいいですが、もう少したつと雪が降ってしまって、収穫が終わってしまいますから、検討はすると言っておるわけですから、十分明年度の作付意欲が持てるような前向きの政策展開するように、それには百聞は一見にしかずというような言葉がありますので、局長ないしは砂糖類課長等を現地に派遣するような配慮をひとつお願いしたいと思います。  時間の関係もございまして、いまこういう委員会でそういう派遣について、大臣がよしやります、これではちょっと大臣の権威にかかわると思いますから、要請ということにしまして、きょうは終わります。どうかひとつ慎重に取り扱ってください。
  230. 澁谷直藏

  231. 中川利三郎

    中川(利)委員 まず初めに農林大臣にお聞きするわけでありますが、かねて全量買い入れについては、この前の委員会でも私強く発言したわけであります。ことしの超過米に絡みまして、農協や全農においては、農民に迷惑をかけるわけにいかないということで、銘柄米には一万二千円、普通米には一万一千円の概算払いをやっているわけでございますが、それについていま大きい問題になっていることは、これに伴う金利、倉敷料の負担の問題であります。今回の超過米は、農民が生産調整に協力して、なおかつ多くとれたものでありますから、先ほどの御発言にありましたように、超過米そのものも農民の責任でないとするならば、これらの金利、倉敷料そのものも全く責任の範囲外だと思うんです。したがって、お聞きしたいことは、これらの金利、倉敷分は当然政府が配慮すべきものだと考えるわけでありますが、皆さんの方では大蔵省に予算要求しているのかどうか。しているとするならば、それは政府がこれらの金利、倉敷を見るんだということと了解してよろしいかということで、まず最初の御質問を申し上げます。
  232. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この超過米の措置につきましては、私もしばしば申し上げたとおりでございますが、四十八年度に行った措置が前提となるわけでございます。その四十八年度におきましても、自主流通ルートに乗せた米につきましては、金利、倉敷について助成をいたしておりますので、四十八年度措置を前提として今回の措置を行うということになるわけでございますから、当然これは行うということであります。
  233. 中川利三郎

    中川(利)委員 じゃこれは前年どおりやるんだということで了解してよろしいですね。  それでは次に、農業機械の問題であります。御承知のように、いま十二月価格をどうするかということで全農とメーカーが交渉しておるわけでありますが、私たちは十一月七日にも、この点について申し入れを行っているのであります。一つには、深刻な農村の不況の問題があるし、またメーカーサイドから見ますならば、この前のやみカルテルで大もうけをしておる。こういう状態からいたしましても、今回の値上げは許すべきではないという点について申し入れたわけでありますが、農林省はどのように全農、メーカーを指導してきたか。その結果、値上げの据え置きというわれわれの強い要求、農民の強い要求が一体どうなっておるのか。これは緊急に、あすあさってに解決するとさえ言われておるわけですが、この点についての御回答をいただきたいし、また、据え置きをするならば、今回の値上げ据え置きは大体いつごろまでのものになるのかもあわせてはっきりしていただきたいと思うのであります。
  234. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農業機械等の農業生産資材の価格につきましては、農林省としては、これら資材の農業生産における重要性にかんがみまして、極力値上げを抑制する方針のもとに、従来から関係者を指導してきたところでございまして、この点についてはよく御承知のとおりであります。  農業機械につきましては、去る七月が価格改定期であったが、値上げを認めないで、次の改定期である本年十二月の前までは据え置かせてきたことは御承知のとおりでございます。  そこで、十二月の国産農機具の価格改定については、原材料の値上がり、人件費のアップ等、値上がり要因はあるわけでありますが、農林省としては、全農に対し極力値上げを抑制するように指導し、全農としては、向こう一年間は現状価格を据え置く方針で関係メーカーと交渉しておるところでございます。その結果、すでに大部分のメーカーにつきましては、農機具価格を少なくとも来年の六月までは据え置くことを了承しております。残余のメーカーに対してもこの線でなお交渉を進める方針と聞いております。遠からず妥結を見ると思われるわけでございますが、これは大体据え置きということでいけるというふうに私は考えております。
  235. 中川利三郎

    中川(利)委員 そうすると、ことしの七月に引き続いて十二月価格、私たちが要求したこと、あるいは農民の切なる要求にこたえて、そういう点を強力に指導して、十二月に価格決定ですからもう緊急なわけでありますが、さしあたって来年六月までは値上げをさせない、こういうことに理解してよろしいですね。
  236. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そのとおりです。
  237. 中川利三郎

    中川(利)委員 通産省がおいでになっておるのでお聞きするわけでありますが、いま農林大臣は、諸般の情勢からいたしましても、これからの一年間はできるだけ値上げをさせないのだ、そういう厳しい前提の上でいろいろ指導してきた、こういうことをおっしゃっているわけであります。通産省の姿勢は、農林省がせっかくそういうふうにがんばっても、何か企業寄りであるという批判がかねてあったわけであります。とりわけ、昨年の春に私がやみカルテルの問題で大企業、大メーカーのそういう状況を指摘した際におきましても、終始メーカーの主張を代弁いたしまして、メーカーのセールスマンの役割りを果たして、結果的にはそのメーカーにうそをつかれて、裏切られておったということが明らかにされたわけであります。いまこそ通産省はこういう状況の中でえりを正して、大手メーカーの不当を許さない、こういう農機具業界に対する特別の指導が必要だと思うわけでありますが、農林大臣答弁との関連で、おたくの基本態度はどうかということについて御回答いただきたいと思うのであります。
  238. 杉山弘

    ○杉山説明員 お答え申し上げます。  通産省といたしましても、農業機械につきましては、農業の基本的資材であるという観点から、その適正な価格の維持ということについては、従来からもそれを基本としまして指導をいたしてきております。本年の七月の価格改定の際にも、そういう方針に従いましてメーカーを指導いたしまして値上げを抑制させたという経緯もございます。最近の価格改定につきましても、いま先生からお話のような各種の状況を踏まえまして、農林大臣からも御答弁がございましたように、来年の六月までは据え置くということで決まるものと思います。私どももそういう方向でメーカーを指導いたしております。
  239. 中川利三郎

    中川(利)委員 それでは次に、農機具の安全対策の問題でお聞きしたいわけでありますが、ことしの二月の予算委員会におきまして、私は安全対策についていろいろ農林大臣にただしたわけであります。つまり一現在出回っている各種の農機具が未検査品も、ましてや不合格品でさえも堂々として何にもチェックされないで市中に出回って販売されておるという事実ですね。その中で農林省統計の中でさえも見られますように、農機具による死傷事故がどんどん続出しておるという事実も出ておるわけであります。これに対して農林大臣は、法改正も含めて早急に抜本策を検討する、こういうお約束をいただいたわけでありますが、あれからでさえもずっと死傷者が続出しているわけであります。したがって、大臣にお会いするたびに、私はあの問題が気がかりでしようがないですよと言う。ただ気がかりということではなくて、具体的にどのように検討してどのような対策を立て、およそその時期的なめどは一体いつなのかということを、この機会にはっきりとわかるようにひとつお答えをいただきたいと思います。
  240. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 農業機械の安全性を確保するために、農林省といたしましては主要な農業機械につきまして原則として全機種について安全性のチェックを行うことを目標といたしまして、この具体的な実施方法、実施体制の整備のやり方等につきまして現在種々検討をいたしておるところでございます。具体的な結論にまではまだ至っておりません。鋭意検討を進めておる段階でございますので、まだ結論を得るに至っておりませんが、現在のところ、私どもといたしましては、農業機械化研究所が行っております農業機械の現行の型式検査の中で安全性の検査を行うということのほかに、それとあわせまして全機種について安全性の確保を図りますためには、安全性のチェックだけを別途早急に行うということが必要ではないかというふうに考えております。そのような方向で現在なお検討を進めておりますが、早急に結論を得まして、安全性の確保に万全を期していきたいと思っております。型式検査で安全性の検査まで全部やるということになりますと、機構なり定員とかあるいは予算の問題でなかなかそこまでは一気にはいかないというふうにも思いますので、安全性のチェックだけを別途検査といいますか、できれば短期間でやるというような方向で検討しておるところでございます。
  241. 中川利三郎

    中川(利)委員 大臣、あれから十カ月以上もたつのだ。あなたも気がかりでしようがないと言う。ところがいま話をすると、部分部分に何とかしたいというだけの話で、しかもなるべく早急にと言う。法改正も含めて抜本的に検討なさるということをあなたはお返事なさっているわけでありますから、もっと根本的な前提に立って当然しかるべき検討をやっているものだと思っていたわけでありますが、いまの局長お話を聞きますと、まだ内部の技術的な問題だけであって、依然としてこうした不合格品や欠陥品、つまり未検査品が堂々と出回る、そのことについては何ら手だてが尽くされておらないということであれば、全く換骨奪胎したというか、あなたの検討するという御趣旨と離れてしまうじゃないかと思いますので、農林大臣から責任ある御答弁をいただきたいと思うのです。
  242. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題についてはいま中川委員から御指摘がありましたように、たしかことしの通常国会の予算委員会においても御質問があったわけでございます。私はその際、やはり農機具の安全対策というものは非常に大事であるから、早急にこれに対する対策を講じたいということを申し述べたわけでございますし、この問題はただ単に国会で答弁したというのみにとどまらず非常に大事な問題であるので、その後事務当局にも指示をいたしまして、早速これが対策を立てるべく検討を進めさせておるわけでございます。そしていま局長が申したように、全機種のチェックということも含めた検討段階に入っておるわけでございます。実は来年度予算要求の中にも、こうした全機種のチェックを含めた対策についての要求もいたしておるわけでございます。ただ、予算要求の段階でございますので、局長はその点については答弁を差し控えたと思いますが、農林省としては積極的にこれに取り組んでおる、そして来年度予算にもこれを要求をしておるということでございまして、私はこの一年間の検討を通じまして安全対策の姿勢は大いに前進をしてきたと思っておりますし、さらにこれを前進させるためには、今後とも大いに努力をしなければならないというふうに考えております。
  243. 中川利三郎

    中川(利)委員 つまり私の質問の趣意を、肝心の位置づけをなくして別のところで対策を立てたと言ったところで始まりませんし、ましてやその時期についてはいま早急にというようなかっこうで、せんだっても役人のうそつき答弁の問題がありましたけれども、早急にだとか検討するなんというのはいつのことかわからないということを言っていますから、時期的めどはいつかということもあわせて聞いたわけでありますので、何月だということをはっきり言ってください。
  244. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 まだ結論は得ておりませんけれども、先ほどお答えをいたしましたような方法でやるといたしますと、人員なり予算措置が必要になりますので、ただいま大臣からお答えいたしましたように、予算要求も現在しておるところでございますので、予算が成立いたしますれば来年度早速安全性のチェックを全機種についてやりたいというように考えております。
  245. 中川利三郎

    中川(利)委員 最後に農機具の部品の問題でありますが、農機具の本体は買ったけれども部品がそろわない、不足だ、こういう問題がいま全国的な農民の声になって出ておるわけであります。私の地元の例で申しましても、秋田県の琴丘町ではことしの九月、農協が買って農民に利用させるために貸し付けたヤンマーの最新型コンバインのわらを切るカッターの心棒、そこだけがいつも壊れるそうでありますけれども、これが作業中に折れてしまった。部品が県の経済連にもなくて、あちこち探してやっと届いたのは作業が終わってから二カ月近くもたってからであった。また、同じく秋田県の比内というところの農協の修理センターのお話でありますが、修理を含めて年間一億五千万円程度販売しておるけれども、部品の在庫は常時六百万円ぐらいしかないのだというのですね。したがって、あれこれの事故に対しては即応できないことが間々ある。県内で供給できるのはおよそ八割程度と見ておるけれども、残りの二割の部品のうち仙台管内で調達できるものもあるけれども、それも考えてみると最終的には一割しか対応できないのだというのですね。あれこれたくさんありまして、特にきのうはまた福島からこういう例が参りました。井関の「うわこぎの太郎」、テレビでにぎやかに宣伝しているものでありますが、二百万円もかけて八月に買ったが、使い始めて三日目で脱穀の主軸についておるギアの部分が壊れた。福島井関にも部品がなくて、とうとう四国本社から空輸してもらって八日間かかった。この間作業が中断した。こういう問題が次から次に寄せられているわけでありまして、特に問題があると言われておるのは、社名を挙げて大変悪いわけでありますが、久保田鉄工の農機具部品の供給が特に悪い。農機具の中ではコンバインの部品供給が悪い。こういうことを指摘されておるわけであります。それらの状況の中で、このような部品の来るのを待っておられずに新しい機械の買いかえをやるとか、あるいは部品不足で腹が立っても農作業は中断できないのでしようがないと言って半ばあきらめてしまう例だとか、まさに枚挙にいとまがない状態があるということです。  そこでお伺いしたいことは、これらの部品を販売店あるいは小売屋さん、そういうところの責任で全部が全部そろえると言っても、これまた無理だと私は思うのです。私はそこら辺に確かに問題があると思うわけでありますので、一つの提案でありますけれども、全農を含めて各メーカーごとに部品などの苦情処理部門の窓口を設けさせて、それらの部品があることの周知徹底を図ることがどうしても必要でなかろうかというふうに思うのです。さしあたってその窓口がこういうふうにあるんだということを周知徹底させる、つまりカタログでちょっと印刷すればいいとか、あるいはテレビでもしょっちゅうやっているわけでありますから、そういうふうな指導をしたらどうかということでありまして、そうなれば電話一本で農民がすぐわかる、すぐ送ってもらえる、こういうことも成り立ち得るだろうと思うのですね。いつも壊れるものでなくて、たまにしか壊れないものであればなおさらそういう必要性が出てくると思いますが、そういう指導はぜひひとつやるべきであると思いますが、この点についての農林省の御見解を承りたいと思います。
  246. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 部品の供給体制の整備につきましては、各メーカーごとの部品センター等、ブロックあるいは県にございますが、それらに十分円滑な供給ができるようにするように通産省とも御連絡をしながら指導しておるわけでございます。また、全農におきましては、メーカーとの基本契約におきまして部分の供給を義務づけるということをいたしておりますので、それらをさらに徹底するように指導をしてまいりたいというように思います。  ただいま御提案のございました御意見については、非常にごもっともな点でございますので、私どもといたしましては全農その他流通関係業者を指導いたしまして、どこへ行けば部品が買えるのだというようなことの周知徹底については、指導を徹底したいというように思います。
  247. 中川利三郎

    中川(利)委員 いま一つ、いまの問題について通産省がその窓口をつくってそういう処理をしろ、この点について通産省の指導方針もあわせて伺いたいと思います。
  248. 杉山弘

    ○杉山説明員 お答えいたします。  使用者である農民の方に補修用の部品の供給が不円滑になるため、御不便をおかけするというのは非常に不本意なことでございます。いま先生から御提案のございました件は、早速私どもの方も、従来からも指導いたしておるわけでございますけれども、重ねて具体的にどういう措置をとるかということを検討させていただきたいと思います。
  249. 中川利三郎

    中川(利)委員 終わります。
  250. 澁谷直藏

    澁谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会