運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-12-11 第76回国会 衆議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十一日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 藤尾 正行君    理事 越智 伊平君 理事 奥田 敬和君    理事 加藤 陽三君 理事 木野 晴夫君    理事 箕輪  登君 理事 上原 康助君    理事 大出  俊君 理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    竹中 修一君       旗野 進一君    三塚  博君       木原  実君    山本 政弘君       和田 貞夫君    鬼木 勝利君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君  出席政府委員         防衛庁参事官  伊藤 圭一君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁長官 斎藤 一郎君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   堺   司君         資源エネルギー         庁長官官房原子         力産業課長   山本 幸助君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 十二月九日  台湾残置私有財産補償に関する請願外一件(伊  藤宗一郎紹介)(第三三六九号)  公務員労働者ストライキ権回復に関する請願  (瀬野栄次郎紹介)(第三四一八号)  同(木島喜兵衞紹介)(第三四六八号)  官公労働者ストライキ権回復に関する請願(  広沢直樹紹介)(第三四一九号)  淡水区水産研究所の存続に関する請願(米内山  義一郎紹介)(第三四二〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第四号)      ————◇—————
  2. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  3. 木原実

    木原委員 きょうは長官に少しばかりお尋ねをしたいと思うのですが、私どもがこの委員会で防衛問題を審議いたしましたのは六月だったと思います。ほぼ半年がたっておるわけですけれども、どうも報道その他で見ておりますと、だんだんと防衛政策の行方というものが何だか変化の兆しが出ているのではないか、こういう感じがするわけであります。変化なのか、あるいはまた何か別の意図があるのかはわかりませんけれども、少なくともいわゆるベトナム以後の情勢変化があり、あるいはまた財政上の問題その他をめぐって問題を抱える、こういうような要因も考えられますし、一つの転機に来ているのではないかという感じがするわけです。そこへもってまいりまして、長官ずいぶんあちこちで発言もなさっていらっしゃいますし、いろんな構想が出されておるようでございまして、国民の方から見ましても、防衛政策がこれから先どういう方向に行くのか、あるいは着実に変わりつつあるのか、変わっていく方向はどういう方向なのかといったようなところに疑問なり問題なりを持っているのではないかと思います。  そこで、そういう問題から伺いたいと思うのですが、少なくとも長官が御就任になって以来ちょうど一年になるわけですが、この間に情勢変化等を考慮して防衛政策というものは変化をしていっているんだ、こういうふうに私どもは大まかに認識をしてよろしゅうございますか。
  4. 坂田道太

    坂田国務大臣 御質問の趣旨が実は私よくわからないわけでございますが、私自身が就任いたしまして今日一年になるわけでございますが、その間予算編成、そしてポスト四次防をどうするかということについて、四月の二日に第一次長官指示というのを出しました。それから十月の二十九日に第二次の長官指示を出したわけでございまして、私どもとしましては、その線に沿いまして、手続上その線をずっと走っているということでございます。  ただ、国際情勢変化と申しますと、ちょうど一次の指示をいたしましたときの国際情勢見通しの中で一つ誤っております。それは何かと申しますと、サイゴンがあんなに早く落ちるというふうには見ていなかったわけでございます。この点は私たち見通しの誤りだったと思います。しかし、これは米軍も恐らくあんなに早くサイゴンが陥落するというふうには思っていなかったと思いますし、何人もわからなかったのじゃないかというふうに思います。一部の方では、非常に先の見える方もいらっしゃいますから、あるいはそういう見方をされた方も、恐らく有識の方もあったと思いますが、しかし大体は見通しがつかなかったということは言えると思います。しかし、確かに国際的な基調はやはりデタントだということはそう変わらないと私は思います。  しかし、いまいろいろお話がございますように、朝鮮半島につきましては若干の危険は残るということの認識は一貫して持っておる次第でございます。
  5. 木原実

    木原委員 防衛庁は長い耳を持つということになっておりまして、情報その他についても的確な判断をしているのじゃないかと思うのですが、いずれにいたしましても、アジア情勢がまだ流動していると思うのですね。そういう中で、特に四次防以降のやや中期にわたっての防衛政策はどういう方向に行くのかということについては、私どもとしても非常に大きな関心を持っているわけです。そのことによって防衛政策の決着がついていく方向が決まっていくというふうに考えております。しかし、それにいたしましても、情勢なしに真空の中に防衛行政があるわけではありませんし防衛政策があるわけではありませんから、私どもが一番重視するのは、やはりわれわれの周辺、アジア、それからまた特に長官が強調をされる安保条約を持つアメリカとの関係の中でどういうことになっていくのか、こういうところに問題があると思うのですね。  そこで、話が少しそれますけれども、つい先日フォード大統領中国東南アジアをめぐりまして、その旅行の結果ともいうべき、まあ報道によりますと太平洋ドクトリンというようなものを公にされたわけですが、長官日本防衛当局者として太平洋ドクトリンというものをどういうふうにお読みになりましたか、御感想をひとつ聞きたいと思うのです。
  6. 坂田道太

    坂田国務大臣 新太平洋ドクトリンでございますが、これにつきまして、手元にございまする内容を申し上げてみますると、その一つは、米国の力が太平洋における安定した勢力均衡基礎である、二つ目には、日本との協力米国太平洋戦略の柱である、三番目には、中国との関係正常化も新ドクトリン前提条件である、四番目には、米国東南アジアの安定と安全保障に引き続き利害関係を持つ、五番目には、アジアの平和は未解決政治的紛争解決にかかっておる、六番目には、アジアの平和にはこの地域のすべての国の希望を反映した経済協力が必要である、こういうことが述べられておるわけでございますが、特にベトナム後におきまして三木総理大臣フォードとの会談がございました。その際のアメリカとのいろいろの話し合いの結果と今日のこの新太平洋ドクトリンというものとそう変わっておるというふうには実は思わないわけでございまして、あの際も、三木総理が特に強調されましたことは、日米安保条約というものは単に軍事的な意味における協力ということだけではないのだ、むしろ経済その他文化、技術、いろいろなものの相互協力という上に実は日米安保条約が成り立っておる、それから軍事的のみで物事解決しようという考え方ではなくて、広い意味において外交努力あるいは経済援助文化その他のいろいろな協力関係によってアジアの安定を図ろうではないか、こういうことについて日米間の話し合いがまとまったというふうに私は承知をいたしておるわけでございまして、その考え方から言うならば、むしろ新太平洋ドクトリンの出ましたその出発点として、三木総理フォード大統領との会談というものは非常な意義を持つのではないだろうかというふうに思いますし、その後フォード大統領中国に行かれますし、インドネシアへいらっしゃいますし、フィリピンへ行かれますし、そうすることによって、あのサイゴンが落ちました後においては、当然のことながら非常な影響を及ぼして、アメリカ離れと言われるような現象が起こったことは事実だと私は思います。しかしそれぞれの国も、よく考えてみますと、時間がたつにつれ冷静さを取り戻してきまして、いままでのように単に軍事的のみをアメリカに依存をして、それによって力の背景だけで物事解決するということじゃなくて、やはり経済その他の援助アメリカに受けながら、しかもまた中国及びソ連その他の諸国といろいろの関係を保ちながら生きていくという道を見出し始めてきておる、そういうことを今度の中国に行き、あるいはフィリピンに行きインドネシアに行かれて確認をされた後において、この新太平洋ドクトリンというものが発表されたというわけでございまして、私はその意味において三木フォード会談というのがこの出発点だったような気を実は持っておるわけであります。そういう感じを持っております。
  7. 木原実

    木原委員 きょうは外交上の論議をするわけではございませんので、深くは立ち入りません。ただ感想を聞いたわけですが、読み方は当然私ども大分見解が違うのですが、それはおきます。  ただその中で、長官も指摘なさいました軍事的な力関係、力の問題だけではなくて総合的にといいますか、いろいろな分野を総合しながらアジアの安定を図っていくんだという立場だ、こういうことなんです。ただその中で、特に第二項目に強調しておる日本ウエートの問題ですね。その中で防衛政策と関連をして言えば、私どもの危惧するのは、日本とのやはりパートナーシップ——パートナーシップの間はいいんですけれども、いわば軍事的な側面における安保の従来にも増した緊密化長官言葉によりますと運用の円滑化を図る。これが従来以上に、言葉で言えば緊密化ということになるんですけれども、あるいは強化をされていく、そういう方向にやはり動いていくんではないのか、こういうふうに考えるんですが、その点はどうですか。
  8. 坂田道太

    坂田国務大臣 この日米防衛協力の問題については、八月二十九日に前の国防長官でありましたシュレジンジャーと私とお会いをいたしまして、その際私が申し上げましたことは、日本には世界の人にはちょっと理解ができないような憲法というものがあって、その制約がございます。しかし、自衛のため必要最小限度防衛力を持たなければならないという考え方から、わが国に何らかの侵略があった場合に対しては、それに対処する必要最小限度防衛力を着実に進めてまいりたい、こういうふうに考えております。そういうことを申しましたら、そのことはよくわかっておる、特に憲法制約下にあって日米防衛協力をあなたが主張しておるということを私は理解しているんだ、こういうことでございまして、世間によく言われるような、たとえばラロック証言等を読みましても、ちょっとラロックさんはわれわれの日米間の防衛協力をよく理解していないのじゃないかという気がするんです。いままで以上の増強をあるいは強制しておるというようなラロックさんの証言でございますけれども、それは違うんで、私がそういう説明をいたしましたことに対して彼は理解を示したということでございまして、その意味において、その点が非常にはっきりした、明確になった。つまり、われわれは憲法制約のもとにおいて必要最小限度防衛努力をする。しかもそれは、私ども申し上げますように、他国に脅威を与えるようなものでもないんです。それから著しく民生を圧迫するような、そういう過大な防衛力を持つことは考えておりません。こういうことに対しましても彼は了承しておるわけでございまして、その意味は非常に明確になってきたというふうに思います。  しかしながら、私が従来申し上げますように、日米安保条約がある。基地の問題については話し合う場もある。また話し合いもしてきた。しかし肝心かなめ作戦協力、有事の際においての防衛協力の問題について、われわれは何を期待したらいいのか、あるいはアメリカはどういうことをしてほしいと思っておるのか、そういうことが一向わかっておらない。これはおかしいじゃないか。安保条約というものがある以上は、その第五条というものについての最高責任者同士話し合いがない、またその話し合う場も持たれておらないということはおかしい。またシビリアンコントロールという点から考えてみても、ただユニホーム同士でいろいろ研究会同をやっておるようだけれども、それはよくないことであって、やはり天皇主権のもとにおける軍隊と、主権在民下において国会のコントロールを受けて運用されなければならぬ自衛隊とは性格が異なっておる。こういう意味から、いわゆるシビリアンコントロールから考えるならば、こういう第五条の作戦協力についてはやはり両国の最高責任者同士がまず話し合いをして、そして、そういうものについて新しい機関を設けて、そこで話し合うということが筋ではないだろうか。そういう意味合いにおきまして、日米間の緊密化というものはこれから積み上げていかなければならないんだというお話をしたわけです。しかも、日米間の安保条約上の範囲というものは単に軍事的な協力関係だけじゃなくて、経済その他いろいろの面においての協力というものがより重大な意味を持ちます。そういうことによって日本政治経済が安定し、国民が安定し、平和であるということが、同時に朝鮮半島平和維持にも寄与することになるであろうし、アジア全体に対する寄与になるんじゃないか。その意味において、国際政治上の重要なかなめとして日本存在というものは非常に大事なんだ、こういう関係が今度だんだん確立されようとしておるという意味において意味があるんじゃないだろうか。そういうふうな観点でこの新太平洋ドクトリンというものを見るならばよくわかるような気がいたすのでございます。
  9. 木原実

    木原委員 これは問題の存するところでして、深くは立ち入りませんけれどもアメリカ太平洋統合司令部筋などの公表されたいろいろな文書を見ましても、責任のある人たちが、やはりベトナム後のアジア戦略、その中における軍事的な意味での日本との関係言葉で言えば、日米関係はその面におけるかなめだ、日本存在というものはかなめだ、こういう言葉としてもかなり重いウエートのある発言をしているわけですね。ベトナム後の情勢を考える上で、そういう意味アメリカアジア戦略の上から見たウエートというものが高くなってきた。まあアメリカ側意図を察することができると思うのです。ですから、安保ですから、おっしゃるように軍事面だけではなくて、全体的にそれを総合して、こう言うのは理解ができるわけですけれども、しかし、そのことを含めましてやはり軍事面から見た場合に、それは直ちに日本防衛力を増強しろとかなんとかという従来のやり方じゃなくて、少なくとも日本協力がなければ軍事的な面でのアジア戦略というものが遂行できない、こういう観点というものがアメリカの側に確立をしたんではないのか、こういうふうにわれわれは読むわけですけれども、ただそういうような観点から見ますと、これからの政府の言う安保条約の円滑な遂行、緊密化を図っていくという行き方が、やはりそのかなめの位置を強化をしていく方向に行くんではないのか、こう判断せざるを得ないわけです。ですから長官、が繰り返しおっしゃるように、長官が提起されました形になっておるアメリカとの新しい協議機関の中で何をどういうふうにやるんだという話、いまも少し出ましたけれども、それはこちら側の考えであって、アメリカ側としては、この機関等を通じて従来より以上に緊密にあるいは円滑に、もう一つ言えばより自由に日本軍事的な協力を得られるような条件をつくり出したい、こういう考え方アメリカにあるのは私は当然だと思うのですけれども、そういう形でいきますと、従来の安保協力よりもこの協力関係というものは質的に強化されていくのではないのか。大変まどろっこしい物の言い方になりましたけれども、そういう感じを持つのですが、それは間違いでしょうか。
  10. 坂田道太

    坂田国務大臣 少し違うと思うのです。と申しますのは、実を申しますと、この正月発表されましたシュレジンジャー国防報告書並びにブラウン統合参謀本部議長報告書をあわせ読んでみますると、アメリカ世界戦略というものは、ヨーロッパにおきましては中部ヨーロッパ一つストロングポイントに考える、それから東アジアのつまり韓国及び日本というものを一つストロングポイント二つの配置によって世界戦略というものが成り立っておる。これはサイゴンが落ちたことそれ自身アメリカ自身が予期していなかったことでございますけれども、しかしアメリカ軍ベトナムから撤退するということは一九七三年のパリ協定以来決めておることで、いずれその撤退というのは時期の問題だ、こういうふうには見ておったと思うのです。したがいまして、ことしの正月の国防白書はもうそれを予期した形において、それを踏んまえた上で世界戦略というものが組まれておるわけでございまして、その意味におきまして、私が就任いたして以来のアメリカ側アジアに対する戦略というものは大きくは変わっておらない、こう見なければならない。その上に、三木フォード会談が行われた後において、あるいはポストベトナムによって引き起こされましたアジア地域のいろいろの反応というものをある程度見きわめた後においては、単に従来の軍事的な側面だけを強調し、意思の押しつけをやるということは米国政策としても必ずしも好ましいことではないんだという反省があるんじゃないだろうかというのが、実はこれは私の推測でございますけれども、そういうふうに思っております。  それに加えまして、特に六番目のところに、アジアの平和には、この地域のすべての国々希望を反映した経済協力が必要であるというようなことが特に出てきたというのは、単に軍事的側面だけではやはりアジア地域平和寄与にはならないということがあるんじゃないか、むしろその国国の持ついろいろの独立の仕方というものがあって、それをアメリカ一つの距離を置いて見て、そして考えていかなければいけないので、しかしその一番の基礎には軍事的な力というものが背景になっておる、それを否定しているわけじゃございません。それは厳然としてある。しかしそれにかてて加えて、相手の国々行き方動向というものを見きわめながら、あるいは場合によっては経済的な援助を惜しまないような形において経済の安定を図る、そういう行き方というものがあってしかるべきじゃないだろうか。特に中国ソ連とが、ベトナム戦争後の情勢から言うと、同じ社会主義国といたしましても、いろいろのところにおいて確執を続けておるということも、これは歴史的現実でございます。そういう中にあって、アメリカ中国ソ連という、そういういろいろの政治的あるいは軍事的絡み合いの中において、アジアの諸地域はどういう国づくりをしていったらいいか、国の安定を図っていったらいいかという悩みを持ち始めた。その国々に対してのアメリカのアプローチとしては、この新しい太平洋ドクトリン行き方というものが好ましいのではないだろうかということだろうと思うのですが、私はこういう行き方は非常に結構なことだというふうに実は考えておるわけでございまして、もし変わったとするならば、いままでの軍事オンリーの考え方から、少し経済的なものの援助というものを強調し始めた、あるいはその国々国民動向というものを米、中、ソの力の均衡の上において考えてあげるということが、アメリカとして必要なことだというふうに考えておるし、それが平和を追求し、アジアに平和をもたらそうとするアメリカの新しい考え方だというふうに意味づけたのではないだろうかというふうに、これは推測でございますけれども、私は考えておるわけでございます。
  11. 木原実

    木原委員 余り深くこのことでは議論をしません。ただ長官、私ども東南アジア国々を歩きまして思うのですけれども経済協力関係にしましても、日本の資本も進出しています。それからアメリカもかなりいいところにやはりポイントを打っていますね。それぞれの国でニュアンスは違いますけれども、たとえばタイにしましてもフィリピンにしましても、そういう国々がやはりかなり懐疑的なんですね。経済協力というのは、確かにそれで一つの紐帯ができるわけです。それはそれ自身問題がありますよ。しかしそれで結局また、それの安全を保障するのはアメリカ軍事力だ、こういうふうにいろいろ重なってきておりますから、経済協力自体の中にも問題がありますし、ここで余り細かい議論はしませんけれども、それぞれむずかしい問題が伏在をいたしておりますね。なかなかきれいな演説だけでは解決つかない。それと、やはり同じように日本立場というものが、アメリカとの関係で見られているわけですね。それですから、われわれは日米協力、こういう形で言っておりますけれども、やはりそれの受けとめ方というのは東南アジア国々でさまざまにニュアンスも違うし、懐疑的な側面が多い、こういう感じがします。しかしこれは、ここでの論議はやめます。  ただ、もう少し端的にお伺いしたいことがあるのですが、朝鮮半島情勢ですね。これは一言で言いまして、ここは緊張していると防衛当局としては判断をしているのですか。ここは緊張がないと判断しているのですか。
  12. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは言葉としては非常にむずかしいことだと思いますけれども現実の姿としましては、とにかく北と南とがあれだけの兵力を対峙させておるということ、それからもう一つは、ゲリラ等の小規模——小規模と申すよりもうちょっと小さい衝突が、陸でも海でも行われておる、あるいは空でも若干のいろいろの問題が起きている、そういう側面をとらえて申しますならば、やはり緊張があるというふうに見られると思います。しかしながら、それではここで戦争が勃発するだろうかというふうに考えると、私はやはりいまアメリカが撤退しない限りはここでは事は起こらない、戦争は勃発しない。なぜならば、アメリカもここでそういうようなことを望んでおりませんし、中国も、私は望んでおらないと思います。ソ連も望んでおらないと思います。そういう状況において、北も南も事を起こそうというふうには考えない。その意味においては、そういう側面から見るならば、若干の危険は残るけれども基調デタントが維持されているというふうには言えるんじゃないかと思います。
  13. 木原実

    木原委員 もう一つ端的に伺いますけれども日本防衛政策というのは、韓国に、現在は国連軍という形ですけれども、いわゆる在韓米軍存在をしておるということを計算に入れてといいますか、前提にして成り立っているのですか。
  14. 坂田道太

    坂田国務大臣 私どもといたしましては、常に周囲の国際情勢あるいは軍事情勢というものを見きわめた上で日本防衛政策を考えておるわけでございますから、そういう広い意味から申し上げますると、先生おっしゃるとおりだというふうに思います。
  15. 木原実

    木原委員 防衛庁としては、防衛政策上の判断として、在韓米軍存在をする、それがたとえば抑止力として存在をしておるとかあるいはまた間接的には日本の安全にも寄与している、こういう判断米軍韓国存在をしておる、だからある意味では当然それを前提にして日本防衛政策は成り立っている、こういうふうに判断していいんですね。
  16. 坂田道太

    坂田国務大臣 現実の姿として、朝鮮に戦争が起こるということを私どもとしては望まないわけでございますし、またもしあそこで戦争が起こったとするならば、われわれにさまざまな影響を及ぼすわけでございます。あるいは脅威が顕在するかもしれない、そういうものが出てくるわけでございますから、その意味においてアメリカのプレゼンスというものが日本の安全という形になっておるということははっきり言えると思います。
  17. 木原実

    木原委員 もう一つあれいたしますと、けさの新聞にも、われわれの予算委員長アメリカから帰ってきまして、どうもアメリカ日本と相談なしには韓国から軍隊を引き揚げるなんということはなさそうだよというような談話なども出しておりますし、アメリカ筋からの報道では、韓国から米軍を撤退をさせるというようなときには、日本との協議なしにはそういうことはやらないというようなことだとか、何か在韓米軍の問題をめぐってそんなような話がちらほらと出てきているわけです。いまの論理からいきますというと、仮定のことですからあれですが、日本防衛政策韓国に現在程度の米軍存在をするということが前提になっているわけですから、それの撤退が望ましいかどうか、あるいは撤退をされた場合には当然日本防衛政策は変わっていくのか、こういう問題が私はあると思うのです。仮定の問題ですけれども、いかがでしょうか。
  18. 坂田道太

    坂田国務大臣 私どもは、とにかくこの四、五年というものはアメリカの軍隊が韓国から引き揚げる、撤退をするということは朝鮮半島に事が起こるきっかけになりかねない、つまり、そのことは日本の安全にとって脅威となりかねないという意味において、この間のシュレジンジャーと私との会談におきましても、日本の安全のためにあなた方が韓国におるということを考えていただきたい、引いてもらっては困るんですということを私は率直に申し上げているわけです。それは変わらないわけでございます。かと言って、それじゃ朝鮮半島全体の平和機構というものが何らかできなければいけないとも思っておるわけなんです。
  19. 木原実

    木原委員 国連では御承知のように二つの案が通る。これは国連軍の解体ということなのですが、これが直ちに撤退ということに結びつくわけのものではないわけです。しかし私どもとしては、日本の防衛を考える上でさしあたって関心を持たなければならないのは、やはり残念ながら朝鮮半島の問題だと思うのです。これは外交上の問題としてはいろいろむずかしい問題があると思うのです。しかし長官もいまおっしゃいましたように、現実の問題として日本防衛政策を考える場合には、在韓米軍存在を抜きにしては考えられないということが一つ、それから防衛当局としてはここ数年間、四、五年という言葉もありましたけれども、しばらくは韓国から米軍が引き揚げてもらいたくないという強い意思を持っている、こういう形の上に成り立っておるわけですね。  そこで、これは従来もいろいろな形で当委員会、予算委員会等で論議にもなったことなんですが、在韓米軍それから在日米軍、これはたとえば空の問題にいたしましても共通の指揮下にある。大きく言えばハワイの司令部の麾下の部隊ですから、当然連動しているわけですね。私たち自衛隊の場合には、直接的には日本立場から在日米軍に協力をする、しかしそれを仲立ちにして在韓米軍との協力という結果になっているわけですね、日本防衛政策は。ですから、在韓米軍と在日米軍と日本自衛隊が結果において連動する側面というものがかなりある、こういうように判断してよろしいんですか。これは従来いろいろな形から文書が出たりいろいろなことが出たわけですが、判断として率直にあれしてくださいませんか。
  20. 坂田道太

    坂田国務大臣 率直に申し上げたいと思うのですが、御承知のように日本は海外派兵をしないわけでございますし、それから憲法制約がございますから、韓国へ出ていくなんということはできないわけでございます。しかしながら、日本自身が平和であり安全であるということは、朝鮮半島に非常な影響を及ぼす問題だと私は思うわけでございます。これがもしぐらぐらするとするならば、もう朝鮮半島自身も非常に揺れ動くということになるし、アジア全体が揺れ動くということになる。でございますから、日本自身が安全であるということが朝鮮半島にも、アジア地域にも安定的な非常に大きい役割りを果たしておる。それが小さい島国ではあるけれども世界経済にかなりの影響を及ぼす経済力を持った国でございます。ことにアジア地域に与えるこの経済の力というものは相当なものだと思うのです。この国が安定しておるということは、非常に大きい安定的要素を与えているのじゃないか、その意味においての日米安保条約意味は大きいんだ、こういう考え方なんで、われわれは平和国家なんだという考え方日本安保条約はそういう意味における軍事的な側面もございますけれども、しかし同時に、経済力を持った日本の役割りというものがクローズアップされてきたというのがこのポストベトナムの新しい動きだし、そこにアメリカが着眼をしたということで、何だか三木フォード会談が新しいアジアの平和追求への第一歩であるような気がいたしますし、われわれはむしろそうなければいけないんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。ここまで申し上げますと、先生でございますからよくおわかりになるだろうというふうに思うわけでございます。
  21. 木原実

    木原委員 私が聞きたいのは、防衛局長が一昨日この委員会でもお述べになったというのですが、新しい協議機関の中で、協議の対象にする中に、安保条約六条の分野にわたるいわゆる基地使用の問題について広範な協議をやるんだ、こういうふうな説明があったというのを聞いておりますけれども、結局、日本の基地の米軍の使用ということになりますと、沖繩の基地、フィリピンとも連動しておるでしょうし、あるいはするのですが、いずれにいたしましても、韓国との関係は非常に近いわけですね。しょっちゅう、われわれは実情がよくわかりませんけれども、現在でも往来があるはずですね、有事の場合ということは別にいたしましても。しかし、緊張存在をしておる韓国との行き来の中に、情勢変化によって、基地使用がある意味では現在よりももっと便宜を供与する率が高くなることは確かだと思うのですね。そういう形になってくるわけですが、そのこと自体が在日米軍に対する協力ですけれども、しかしその連携を通じて、結果的には少なくとも在韓米軍に対する協力の度合いを深めていくということになるんじゃないかと思うのですね。だから、基地使用の問題についてわれわれも一つ論議を持っているわけですけれども、その辺についての、もうそれは長官のおっしゃるように、日本立場というのはこういうことなんだという政府の説明は従来とも私ども重々よく承知をいたしておりますけれども、しかし、これからの新しい情勢の中で一番心配いたしますのは、やはりアメリカ日本韓国とこういう形の何か一極の軍事ブロックというようなものが仮にでき上がるようなかっこうになれば、これはちょっと日本のわれわれとしては大変なことだ、こういう感じがするわけです。ですから、少なくともそちらへ傾いていくような条件というものはできるだけ、長官がお述べになりましたような立場で少なくともいまの中ではやはり定められた日本の枠内にとどめておくべきだ。韓国情勢は、長官は主として韓国立場で、立場といいましょうか、側の状態を踏まえておっしゃいましたけれども、ここは国交があるわけですけれども、しかし北側の存在があるわけですね。私どもはやはりこの朝鮮の問題につきましては、ここでの議論ではありませんけれども、旧宗主国としての責任もあるわけですね。朝鮮民族に対しては、やはり歴史的に見ますと、私どもは逃れられない宿命といいましょうか責任といいましょうか、果たさなければならない役割りというものがあるわけですね。戦後の成り行きの上で政府もいまのような立場をとっているわけですけれども、もう少し突っ込みましたら、朝鮮民族が統一をして、隣邦が穏やかな、そして繁栄をする国になっていってくれることが日本安全保障にとっては最大の問題なんですね。しかし残念ながら、南の方との国交はあるけれども、北との関係は絶たれたままという状態で防衛政策が論じられているということは非常に不幸なことだと思うのですね。そういう側面もあると思うのです。それだけに、私ども安保条約に基づいて米軍協力をしていく、しかし、それがさらに在韓米軍との協力関係強化するんだという結果を招いて、結果において米日韓の三国の軍事ブロック的な協力関係というものが強固になっていく、こういうことになっていくということになりますと、日本防衛政策というのは質的に変わっていくわけですね。そういう危倶を何か非常に抱くわけなんです。それだから、いまのような質問を申し上げたわけですが、これに対する歯どめか何かお考えがありますか。
  22. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは、第一の歯どめは憲法制約、第二の歯どめは日米安保条約運用の問題について事前協議、こういうことじゃないかと思います。
  23. 木原実

    木原委員 それじゃここであわせて、一昨年問題になりました協議機関の中身のことを少し伺いたいのですけれども局長、あれですか、第六条にかかわる分野の基地の使用その他についても協議の対象にしていこう——具体的に言いますとどういうことを想定されているのですか。
  24. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私ども防衛庁立場と申しますか、つまり自衛隊が有事の際に米軍と共同して対処するということになりますと、御案内のように自衛隊が活動できます根拠を与えられますのは七十六条、つまり日本に対して武力侵攻もしくはそのおそれがある場合ということに限定されておるわけでございまして、したがいまして第五条の場合には、これはおそれがあるという場合は除かれておりましても、明らかに武力侵攻があった場合ということになっておるわけでございますから、日米が共同して対処するというのはそういう事態に限定をされる。仮に日米共同対処でなくても、自衛隊が独自に行動できるということにいたしましても、いまの七十六条のおそれのある場合ということにしぼられておるわけでございまして、したがいまして、いまの自衛隊立場におきまして、日米協力をするためのいろいろな打ち合わせをいたします場合の前提条件というのは、いま申し上げましたような事態、いわゆる五条事態ということになるわけでございます。  また当然この五条の問題に関連をいたしまして、日本の安全のために在日米軍が在日米軍基地を使用できるということでございますので、いわゆる五条、六条という論議をよくされるわけでございますが、ちょっとこれは誤解を招きやすいと思いますので、五条に関連をいたしました六条の問題ということは、当然これは五条の中に含まれる問題でございますが、それ以外の六条の問題という問題もあるのではないかということでございますが、これは実は私ども自衛隊が活動いたします場合は先ほどのように限定をされておりますので、これは防衛庁としての面接関与する問題ではございません。しかしながら、この間から申し上げておりますように、日米安保条約を円滑に実施をするということは、安保条約の持っております抑止力の効果を高めるということがねらいであるわけでございまして、自衛隊が直接関与いたします共同対処の問題のみならず、一般的に広くこの安保条約運用については日米防衛協力の中において考えていかなければならない問題があるわけでございます。  これは役所的な考え方で申し上げて大変恐縮でございますが、要するに、防衛庁としてはいわゆる共同対処の問題でございますが、広く日本政府として考えました場合に、主としてやはり基地使用の問題ということが出てまいるかと思いますが、これは御案内のように政府全体、所管省としては外務省の問題になるわけでございまして、これは外務省の方から御説明申し上げる方が私は妥当かと思いますが、そういう問題もこの協議機関においてひとつ検討していく必要があるのではないかというふうに、私どもまだ事務段階でございますが、申し上げておるわけでございます。もちろんこういった考え方は、最終的に政府の案として決まっておるわけでございませんで、この間も申し上げましたように、アメリカとの関係におきましては公式にも非公式にもまだ折衝段階に入っておりませんし、政府の最終的な腹づもりというところにまでまだ至っておらないわけでございますが、安保条約の抑止力を高めるという意味からは、そういう問題についても検討をしておく必要があるのではなかろうかというふうに、私ども防衛庁直接の所管の事務を離れまして、そういうふうに考えておるわけでございます。
  25. 木原実

    木原委員 それは防衛庁の事務レベルでの考え方だという限定つきの御発言なんですが、局長の話を聞いておりますと、何か双務的なような感じがするのですね。五条でもって有事の際における共同作戦の取り決めをやるんだ、これは日本の防衛ということについての限定された共同作戦ですね。それだから、第六条でアメリカの方の要求に対しても日本の基地を提供して、つまりそういう意味アメリカの要求にもこたえていく、そういう意味で双務的な、当然五条と六条をセットにした話になるだろう、こういう想定で第六条にわたる分野についても考えていかなければならぬのだ——抑止力を高めるということはそういう意味ですか。
  26. 丸山昂

    ○丸山政府委員 抑止力を高めると申し上げております意味は、そもそもが、今回の日米防衛協力の問題が提起されまして、これは大臣からの御発想で出ておるわけでございますが、安保条約が締結をされておっても、現実にその安保条約が動くような具体的なメカニズムと申しますか、そういったものができ上がっておらないというところに一つの問題があったわけでございまして、ただ一片の紙に書いた条約にすぎない、文章にすぎないということでは、いざ日本が外敵から侵略を受けた場合にアメリカが具体的にどのような援助をしてくれるのか、どのような支援をしてくれるのかということで、これは対外的に何らの抑止力にならない。具体的に、こういう侵略があった場合にはこのような支援をするんだということがあってこそ、初めて安保条約意味合いが出てくるわけでございまして、そういった意味でこの抑止力の効果を高めるという意味合いに申し上げておるわけでございます。
  27. 木原実

    木原委員 そうしますと、五条に基づいて共同作戦についての取り決めを行う、それは紙に書いたものよりももっと具体的なものを想定をして、こういう場合にはこうだ、こういうことになる。その共同作戦の展開のいかんによっては、在日米軍がたとえば日本自衛隊の基地を使用することもあり得る、そういう場合には第六条に基づいてこうするんだ、そういうふうにしていかないと話が詰まらない、こういう観点ですか。
  28. 丸山昂

    ○丸山政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  29. 木原実

    木原委員 そうしますと、第六条にかかわる分野の問題というのは、第五条というものを前提に置いて、その範囲内で第六条にかかわる基地使用等の問題についても協議をしていこう、そういう考え方ですか。
  30. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私ども防衛庁立場はそのとおりでございます。
  31. 木原実

    木原委員 ただ、これまた非常にデリケートなところでして、第六条の規定は規定として存在しているわけです。その必要な部分だけ持ってくるというのも、これは話し合いであり協議ですからいろいろな場合が想定されるわけですけれども、しかし第六条の条項というのは、米軍といたしましては、日本の安全に対しても、広く極東全体の安全に対してもそれぞれ責任を持つという立場ですから、抑止力を高めたいという形になれば、これは日本の施設や基地の使用についてのさまざまな要求というものが本来あるはずなんですね。  そうしますと、これまたその辺の歯どめの問題です。これは必要だという形になっていけば、この共同作戦というのは一つの大変な行動ですから、それこそ紙の上でここからここまではこうだと言っておりましても、前の国会でも問題になりましたように、船の追跡をしていってここまでだというのでとまってしまったんでは、それこそ戦にならぬわけです。その辺のやはり問題があると思うのです。そうなりますと、作戦に関することですから、基地使用という形について、結果においてはやはり支援をしてくれるアメリカ側の要求というものが優先をしてずるずると行ってしまいはしないのか、つまり歯どめがないのじゃないか、こういう感じがするわけですけれども、その辺についてのお考えはどうですか。
  32. 丸山昂

    ○丸山政府委員 共同対処でございますから、御案内のように、その想定されます前提は、現にわが国に対して武力進撃が行われておる、こういう非常に差し迫った事態における問題を前提として物事を考えてまいるということでございます。  そこで問題は、そういうことに対処するために当然アメリカからの、在日米軍以外にアメリカ本土あるいは近隣からの増援を求めなければならない、こういうことでございまして、当然現在アメリカが使っております基地だけでは十分でない。その場合に、自衛隊の使っております基地あるいは演習場、こういったものをとりあえず移動してまいります米軍を収容する場所に使うということにならざるを得ないというふうに考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、そういう非常に差し迫った情勢下にあるということを前提にお考えをいただきたいということで、その歯どめといたしましては、あくまでもわが国の安全に寄与するためという、そういう大きな尺度での判断基準と申しますか、それで考えるべき問題であるというふうに思うわけでございます。
  33. 木原実

    木原委員 これは、局長のお言葉によりますと、やはり紙の上に響いたものとしては割り切れる面があると思うのです。しかし、具体的なことを想定しますと、たとえばある日突然侵略を受けるということはまずないわけですね。その前段の緊張状態という段階があると考えなくちゃなりません。それから相手国があるわけですね。そうなりますと、日本だけの防衛ということにも実は問題があるわけです。日本自衛隊は、能力の上から言ってせいぜい自国を防衛するのが目いっぱいだ、こういうことがかりに成り立つにしましても、それに対する支援のアメリカ軍立場というのは、本来非常に多角的ですよね。侵略が行われるかどうかは別にしまして、緊張が起こったという段階で、たとえば支援の増援部隊というようなものをやはり送り込んでおかなくちゃならぬ、こういうことですね。その判断によるわけですね。だから、緊張が大変だ、こういう形になってきて支援部隊がどんどん入ってくる。しかし、それは戦争に至らなかった、こういう場合もあるわけですね。ですから、これの想定をしまして、どういう協議をやられるか、私もよくわからない側面があるわけですが、つまり自衛隊法にもはっきり書いてあるように、ある日突然直接侵略を受けて、あるいは間接侵略を受けて何か事が起こったという状態になればこれはきわめて法律どおりのことなんですけれども、一番動きの激しい問題ですからそう簡単なものじゃありませんね。そういう段階の中で、基地の使用というような問題についていろいろやっておりますと、なかなか想定どおりにはいかない。つまり、ずるずると情勢に応じて増援部隊という形で兵力が増強されてくる。これは素人でもそういう場合が想定されるわけですね。だから、結果において歯どめがないのじゃないか、こういう感じがするわけです。  そこでお伺いしたいのですが、この事前協議との関係はどうなるんですか。
  34. 丸山昂

    ○丸山政府委員 御案内のように、事前協議の問題につきましては、すでにその事前協議を取り扱うべき体制というものができておりますので、この新たに設けられます協議機関においては、この問題は当然協議、検討の対象からは外されるわけでございます。個々具体的な事前協議がありました場合に、現在の事前協議制度にのっとって判断が下される、こういうことになるというふうに考えておるわけでございます。  それから、ただいまの先生の御懸念は、細かい打ち合わせをしておっても実際の逆用の場合にかなり違いが出てくるんではないか、あるいは力によって押し流されるという御懸念を御指摘でございますが、確かにおっしゃるとおりだと思います。こういった問題についてはまさに日本の政治体制がしっかりしているという、大変口幅ったいことでございますが、これが大事だと思います。その場合に、やはり多数の部隊が再配置になるということで、当然一個師団以上でございますればこれはもう御案内のとおり事前協議の対象になるわけでございますから、ある日突然としてアメリカの大部隊が日本の中へ入り込んでくるということはあり得ないことであると思います。当然日本政府に対する事前協議があり、それに対してしかるべく日本側の態度が決まってそういう再配置が行われるということになるというふうに考えるわけでございます。
  35. 木原実

    木原委員 六条の問題ということになりますと、これは米軍の行動半径は広いわけですから、それと日本のそういう危機的な状態というのは必ずしも別のものでない、こんなようなことも想定をしておかなければならぬ問題だと思うのです。ですから、私ども局長の説明を聞いてなおやはり懸念が残るのは、一つは歯どめがないということと、それから米軍自体が行動半径が広い行動半径を持っている、しかも日本は守備しなければならない、こういう多角的な関係が出てくるわけですね。だから文章や紙の上に書く範囲の中ではいろいろな限定ができるだろうと思うのですけれども、事実上は限定できにくいんじゃないのか、こういうことですね。ですから、私のあれはこの段階でなぜそれが必要なのかということに戻るわけです。  長官が当初の構想を述べられた。主として第五条に基づく共同作戦その他についての取り決めが、ある意味ではいわば恐らく制服の事務レベルの話し合いで事が運ばれる分野が多い、これをもっと公然化してきちんとやはりコントロールもしなければならぬ、こういう前提ですね。それならやはりそれに限定をすべきじゃないのか、当然局長が指摘されるような話し合いの中では問題は出てくるように私も思います。思いますけれども、やはりこの段階では余り広げないで取り決めをすべき基本的なといいましょうか、そういうところにとどめませんと、やはり先ほど来の私どもの頭の中にあるいろいろな情勢その他を考慮に入れますと、これ自体が安保条約の運用の円滑化を図るというのですが、事実上は安保軍事的に質的に協力関係強化をしていくんだ、こういうふうな懸念が去らないわけです。ですから、制服が研究と称して、恐らくその場だけだと思うのですけれども、取り決めで事を運んでいるということについては、別の意味で心配があります。ですから、ある意味では長官がそれはやはり公然とするところは公然とさしてきちんとしていくべきだ——この発想はいまの段階の中では適宜な措置だと思うのです。しかし、それにいろいろなものが便乗してまいりまして、そしてふくれ上がっていきますと、それ自体がやはり何か情勢をつくっていくと思うのですね。これはそういう緊密な関係ができるということは、近隣諸国に対しても事軍事に関する問題ですから、恐らくそれなりの心理的その他の影響はなしとしないわけです。そうすると痛くもない腹を探られるわけですから、やはりそういう歯どめがはっきりしないというとおかしいのですが、紙の上だけの歯どめではなくて、むしろ問題を限定をして、必要最小限度の問題について取り決めを行っていく、こういうような運用で運ばないと取り返しのつかないことになるのではないかという懸念があるのですが、どうでしょうか。
  36. 坂田道太

    坂田国務大臣 木原先生おっしゃる意味はよくわかるわけなんで、そういう意味からそういう非常に大事な点が実を言うと従来欠落しているわけなんですね。ですから、いまは直接侵略があるなんということは私たちは考えてもおりません。そういう国際情勢もないと思います。しかし安保条約がある以上は第五条があるわけですから、このことについてやはりちゃんとした、日米安保条約を結んだ当事者同士がはっきりと国民にわかるような、アメリカ国民にもわかる、日本国民にもわかる、そしてそういう問題がはっきりこの国会の場において議論をされて、いまおっしゃるような点はどうなんだ、その点はこう考えておりますということを詰めていくということが私は大事だと思うのです。それをやはりこの新たな機関において詰めなければならない課題でございますから、実際問題とすると、先生おっしゃいますように、それは無限にわからない非常にむずかしい問題かと思います。それ自体が。しかしながら、われわれがわかり得る範囲内において、公然できる範囲内においてはやはり詰めるべきところはちゃんと詰めておかなければいけないということでございまして、この議論はやはりあいまいにしておくということがよくないというのが実は私の考え方でございます。でございますから、先生方の御意見をどんどん私たちに言っていただくし、私たちが足らないところを十分補いまして、そしてそれが円滑かつ効果的な運用ができる、しかもそれは日本の安全にとって憂いのない、やはりきちんとした歯どめをすべきところは歯どめをするという形でこれが整えられなければならないというふうに私たちは考えておるわけでございます。
  37. 木原実

    木原委員 長官のおっしゃることは私もわかるのですが、何といいましても、先ほど来いろいろお伺いをしたように、一つはやはり近隣諸国の情勢というものがあるし、自衛隊は真空の中に存在しているわけではありませんから、いろいろな反応というものもあるわけですし、そういう中でアメリカとの新しい取り決めを公然とやっていくのだ、こういうことですね。これはある意味では慎重の上にも慎重にやらなければならないという側面が出てくるわけですね。そこへもってきて、たとえば施設や基地等について、どう言ったらいいでしょうか、アメリカ側の要求その他に対して提供をするあるいは使用を許可をしていく、それが拡大をしていくというようなかっこうになりますと、これは取り決めではなくて、何といいますか、新しく協力関係の量をふやしていくことになるわけですから、問題が質的に違ってくるのではないか、こういう感じがするわけです。ですから、共同作戦等の問題についてどういう取り決めを行うかということについても、これはいろいろな場合が想定されまして問題がありますけれども、これはきょうの問題にはしたくありません。  ですから、私の希望を繰り返し申し上げておきますけれども、ともかく取り決めという問題については何が必要なのであるのかということと、それから必要最小限度にやはりとどめるべきだということ、共同作戦、いろいろな分野のことが想定をされるわけですけれども、問題を広げないということに限定をしてもらいたい、こういう希望があるわけですが、どうでしょうか。
  38. 坂田道太

    坂田国務大臣 もう私ども考え方は繰り返し申し上げておりますように、第五条を中心として考えるということでございますから、先生の大体包括的にお述べになりました意味のことを踏まえて考えていかなければならないというふうに思っております。
  39. 木原実

    木原委員 もう一つ、ここで端的に伺っておきたいのですけれども、核の問題ですね。これは米軍との協力の場合、日本防衛政策の中でといいますか、自衛隊米軍との協力という場合には、非核兵力との協力か、それとも核を保有しておる米軍との協力ということを含めているのか、その点はどうですか。
  40. 丸山昂

    ○丸山政府委員 わが国は御案内のように非核三原則をとっておりますので、いわゆる核の持ち込みということは前提としないという考え方でございます。したがいまして、日本におるいわゆる在日米軍でございますが、在日米軍は、アメリカがそういう約束を守って、非核で通常兵器による支援ということを当然考えておるというふうに思います。したがいまして、私どもも共同作戦——共同作戦といいましても、元来がアメリカの部隊の機能、任務というものと、それから自衛隊の任務というものとはもうまるっきり違っておるわけでございますから、同じところに戦線を並べて張るというような形のものは恐らく出てまいるまいと思います。したがいまして、そういった場合におきましても、わが方がいわゆる共同対処をいたしますものは当然アメリカの通常兵器による部隊、在日米軍というものを想定して考えてまいるということになるというふうに思います。  それで、核を持っております部隊、戦略核部隊については、これは当然、広い意味においては戦略核部隊、戦略核抑止力というものに依存しております以上、戦争と申しますか、それ全体の構想の中では当然戦略核の抑止力に依存することになりますし、また攻撃勢力としての戦術核という問題についても、日本直接の領域領海に入る問題とは別に、そういう問題も当然全般の中では入ってくると思いますけれども、私どもがいま考えております日米共同対処というのは、あくまでも在日米軍というものを対象に考えておりますので——在日米軍と申しますか、在日米軍とそれに関連しますもの、たとえば第七艦隊、そういったところのものになると思います。第七艦隊は、御承知のように戦術核を装備する能力は持っておりますけれども、直接の日本との共同対処ということには入ってまいらないというふうに考えるわけでございます。
  41. 木原実

    木原委員 そうしますと、これは繰り返すまでもないことなんですけれども、共同作戦の取り決めを詰めていくという場合には、明確に非核兵力との協力、こういうことが前提ですね。ただ、ここで改めて議論をいたしませんけれども、これはもう本院でもたびたび核の持ち込みの問題というのがいろいろな角度から追及をされ、そして政府の方の言い分も大体一貫して変わらない、しかし疑惑だけ残る、こういう状態があるわけですね。そのために予算委員会のメンバーの諸君がわざわざアメリカまで出かけていったということにもなったわけですが、これは何といいますか、共同作戦の場合には確かに非核兵力との共同作戦に限定をするのだ、これはアメリカも了解をしてそういう形になってくるというわけなんです。しかし動いていく過程の中で、戦略的に大きな核を使用するというような場合は、これはまた別の次元ですから、違ってくると思うのです。しかし、御承知のようにいまはもう実に細かい戦術核の時代ですね。そして恐らく、その気になれば容易に核弾頭が装てんをされる。兵器体系というのは実に細かくでき上がっておるわけですね。その中で、果たして有事の際にこれとの作戦を区分けしていくというようなことができるのだろうか。素人の考え方ですが、それはどうですか。
  42. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私はちょっと先生と変わった考え方を持っております。  御案内のように、核兵器そのものは戦略核から始まりまして、米ソのミサイルギャップを埋めるということでいわゆる核の軍拡競争というのが行われ、それが双方にとってきわめてむずかしい困難な問題であるということで、現在は双方が制限をする方向、つまりSALT交渉に入っておるというふうに考えるわけでございますが、一方、戦略核からより限定された使い方、つまり戦略核というものはそれ自体使えない兵器になりつつある、一つの抑止力としての意味合いは十分持っておりますけれども現実にこれを使うか使わないかということについては大変な決断を迫られる問題でございまして、容易には使えない。そこで限定的な使用、柔軟な使用ということで戦術核が出てまいっております。  で、現に戦術核の配置については、特にNATOについてははっきりした数まで挙げて、その配備はアメリカが公然と認めております。それから韓国につきましては、戦術核があるということは例外的に認めておる——在韓米軍でございますが、認めておるわけでございますが、戦術核といえどもやはり問題は、一たん核の使用に踏み切った場合において、戦術核から戦略核への歯どめというのは実はないわけでございます。実際問題としては恐らく、戦術核が使われたということにより、核に踏み切ったという非常に大きな壁を破ったことによって、勢い戦略核までエスカレートするという可能性は十分にあるというふうに考えておるわけでございます。  そこで核を使用しないため、核のスレッシュホールド、敷居という言葉を使っておりますが、これを高めることが大事であるということであって、そこで通常兵器を整備する。通常兵器で戦えなくなったときに最後の手段として戦術核を使うということを保証として持っておるわけでございまして、核の使用を避けるためには結局通常兵器を整備していく、通常兵器が弱い場合には容易に核に移行する可能性がある、こういうことで、したがって世界的な傾向としては、通常兵器の充実強化という方向に米ソ——いずれまた、ヨーロッパの核を持っておりますフランス、イギリス等におきましても、やはりそのような方向に進んでおるように私どもは受けておるわけでございます。したがいまして、現実日本の周囲における侵略事態、紛争事態というものを想定をいたしました場合に、私どもとしては、やはり通常兵器による侵略事態、通常兵器による紛争というものをあくまでも想定して、それに対処するということを考えていくのが一番実際的ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  43. 木原実

    木原委員 これは長官考え方の問題ですけれども自衛隊の制服の中に、限られた予算の中でやはり精強な部隊をつくっていきたい、実戦にたえられる部隊をつくっていきたい、こういう考え方が——そこまではいいのですけれども、しかし、およそ近代的な戦力といいましょうか、原子力といいましょうか、その中では、やはり核を抜きにしては考えられないのじゃないのか、こういう考え方があるように思うのです。  ベトナム戦争で、あれだけの大工業国のアメリカがあれだけの軍事力を投入して、結果において敗北に終わった。これも、ベトナム戦争等からの教訓というようなことについて、公式にはないでしょうけれども自衛隊の中でいろいろな軍事上の教訓を学ぼうという努力があるやには聞いているのですが、それらの論議の中でも、結局はいわばさまざまに技術的な失敗があった、それの帰するところは、限定をされた核の使用の時期というものが何回かあったのじゃないのか、それの決定的な一打というものを失ったのではないのか、こういう考え方を持つ自衛官があるいはいるのではないかと思うのです。二、三そういうあれが出てはいるのですけれども。  私の考え方としては、局長のおっしゃったように、間違っているとかどうかということよりも、少なくとも方針に反するわけですね。だから、いろいろな教訓を導き出すことはいいのですけれども考え方とすれば、核に到達をするような戦力の増強、少なくともこういう方向を志向するというような論議行き方については、これは部内の問題としてやはり一つの方針の徹底を図ってもらいたいと思うのです。文字どおりの戦略や戦術やいろいろな実践からの教訓というものを導き出して、いろいろな想定をするのはいいと思うのです。しかし、少なくともそれが、いわば政策を下から動かしていくというような形にならない段階で措置をしてもらいたいと思うのです。そうしませんと、共同作戦の問題から横道へそれましたけれども現実ベトナム戦争であれだけの大工業国があれだけの兵力をつぎ込んで敗北をしたということは、ある意味では軍事的に見れば大変なことだと思うのです。しかし、戦争というのは、これは軍事力だけで戦われるものではありませんから、しょせんアメリカが民心を得ることができなかったということにもなるわけなんです。どうしても制服の人たちというのは限定をされた軍事技術的な観点から物を見がちだと思うのです。やはり具体的な有事の際ということを想定に置いて共同作戦等の取り組みのようなものの詰めが片方で行われるという段階でございますから、日本の部隊というものは、核に至らないんだ、持たないんだ、使用しないんだ、こういう原則は厳しく徹底をしてもらいたい、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  44. 坂田道太

    坂田国務大臣 私といたしましては、先生のおっしゃるとおりに考えておりまして、日本のいまの政府がとっております非核三原則は、やはり自衛官の末端まで徹底させるべきものであるというふうに考えております。  いまも防衛局長が申しましたように、世界戦略それ自体は、核の追求の結果、あるいはそれを基盤として力の均衡というものが成り立っておる、この厳然たる事実ということを否定するわけにはまいりません。しかしながら、これが非常に精密に計算され、そしてその破壊力というもの、あるいはその恐怖というものが身近に考えられるこの世の中になりまして、それだけの破壊力と人命の殺傷力を持っておるものを使うという政治的決断というものはなかなかできない。たとえばいま仰せられましたように、ベトナム戦争においても、ある軍人の一部におきましては、純軍事的な合理主義の結果としてはそういう必要性を説いた人もおると思います。しかし現実にはそれは使えなかった。中東においてもしかりだということで、その意味から、全体の仕組みにおきましても、SALT交渉を初めとして、どうやってこれを制限していくかという新たな動きが実は現実にまた出てきておるわけでございます。むしろ、たとえばヨーロッパは東アジアより綿密に、精密にNATOとワルシャワとの両方の核を含めた軍事的対峠があるわけでございますけれども、それを追求していった結果としては、これは使えない。使えないとなると、結局何が優先するかといったらやはり通常兵力だという考え方にまた若干変わりつつある一面が出てきているということでございまして、いま防衛局長が申し上げましたとおりに、わが国の安全ということを考えた場合に、もう決定的にと申し上げてもいいぐらいに通常兵力による直接侵略しか考えられない。そしてそれも非常に限定的なものに限られる。それに対する備えだけはしておかなければいけないというのが私自身の今度の基盤防衛力の実は考え方なのでございまして、確かに純軍事的合理主義の追求ということから考えますと、先生のおっしゃることを考えておる者もないわけではないと私は思います。絶無ではないと思います。しかし日本においては、もう非核三原則によって日本の防衛をやるということを決意いたしておるわけでございます。また憲法制約もございまして、他国に脅威を与えるというようなことをやらないわけでございますから、自衛官に対しましてはそのような考え方は持たないように戒めていきたいというふうに考えております。
  45. 木原実

    木原委員 これは無理からぬところがあると思うのですよ。確かに核を使用しないというのは大前提であるわけなんですけれども、しかし核の兵器体系というものが入っているわけです。ナイキにしましてもホークにしましても、これは通常の弾頭を使うようになっておりますから核兵器ではないということになっておりますけれども、しかし核兵器体系としては、切りかえれば戦術核兵器になり得る体系というものが部分的にはかなり入っているわけです。それだけに核の問題を、これは弾頭が一番問題なんですけれども、弾頭だけの問題に限定すればともかくですけれども、核兵器体系というものが入っておりますから、どうしても軍事技術的にはやはり使うべきところに有効に限定されたものを使えというのは、いわば軍人的な発想としては出てくると思うのです。それだけにある意味では危険だと思うのです。ですから繰り返すようですけれども長官のおっしゃったように、この問題についてはやはり厳しく措置をしてもらいたい、こういう要望を申し上げておきたいと思います。  もうそろそろ時間になりましたから終わりたいと思いますけれども、最後にもう一つだけ。  長官が強調されます防衛力の基盤強化の問題なんですが、これは私一つ提案があるのです。これは委員長にもお聞きをいただきたいと思うのですが、私も長い間この委員会に籍を置いておりまして、三次防、四次防の段階で論議がさまざま行われました。しかしいずれも政府の方から資料が出たわけではありません。直接国会の審議事項ではありませんから、ある意味では間接的に、一体三次防の後は四次防をどうするのだ、四次防の後はどうするのだ、こういう論議でやってきたわけですね。しかし私はいろいろな意味で、四次防以降の問題というのは従来も重要でなかったとは言いませんけれども、かなり防衛政策の上で一つの転機を迎えるような、一面では財政上の制約という面が加わってきております。それからまた情勢変化というものに対応していくだけのものがあるのかないのか、情勢判断の問題もあります。したがって、ある作業の段階で必要な資料を出していただいて、当委員会がある意味ではポスト四次防の問題について集中審議が行われるような場をぜひつくってもらいたいと私は思うのです。先日の委員会でも、もうすでに四次防以降の問題等について同僚委員から大分論議があったというふうに聞いております。春に若干私もそれに触れました。しかし三次防、四次防の場合を振り返ってみまして、やってる方もまるで雲をつかむみたいなんですね。それで長官なり局長なりの答弁を引き出して、それに対してどうだこうだ、こういう形、それが固まってないからなかなか出せないという問題、これは態様はどうであれ、やや長期にわたった情勢判断とか、政治がかかわっていく分野というのは当然大きなウエートがあると思うのですね。ですから、仮に数量的に、数字的に固まらなくても、戦略見積もりなるものを出せとは言いませんけれども、しかし少なくともやや中期にわたる戦略的な見通しについてわれわれも共通の認識を持つことができるように政府の側からも必要な資料を出す、それに基づいて、まあフリートーキングでもいいんですが、集中的に論議をしてみる、こういう場をぜひつくって、ある意味では間違いのない方向をとってもらいたい。あるいはわれわれの要求なり希望なりもそういう場合にびしっと入れていく、こういう措置をとってもらいたいと思うのです。これは委員会の運営に関することでもあるんですが、これは委員長にもぜひお含みをいただきまして御判断をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  46. 藤尾正行

    藤尾委員長 ただいま木原委員から御提唱になられました問題は、当委員会が何といいましても防衛専任委員会である、こういうたてまえから考えましても、当然そうあるべきである、そうなければならぬ、そう思います。しかしながら、それには御承知のとおり当委員会にほかの所要問題がたくさんございますので、それとの関連において考えてまいらなければなりませんから、それにはそれだけの審議日数と審議機関というものを十二分に考え合わせてその運用を期すべきである、さように考えます。  一方、この資料、素材を提供をしていただく防衛庁その他におかれましても、これは単に防衛庁の発想ということだけではいかない面がございます。財政上の問題もございますし、その他外交的ないろいろな関連もございますので、そういった面を十二分に詰めていただいて、われわれが審議をするということになれば、その審議にたえられるような資料、素材をひとつ提供をしてもらいたい、これはお約束を願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  47. 坂田道太

    坂田国務大臣 木原先生のお考えは私非常に賛成なんでございまして、でき得べくんばポスト四次防につきましても、私たちが提出できるものはできるだけ提出いたしまして、審議を詰めていただきたいというふうに私はむしろお願いしたいぐらいでございます。  私、就任いたしまして、どうも防衛の問題、安全保障の問題はやはり国民一人一人の生命財産にかかわる問題でございますから、主義主張は違いましても、その考え方はちゃんとなければならないと思いますし、なかんずくわれわれ政府といたしましては、それについて国民大多数のコンセンサスを得ながらこの自衛隊を運用していかなければならないというふうに思っておるわけでございます。そのために、実は従来の政策意思決定の運びが、ともいたしますると防衛庁だけで考えまして、そして秘密秘密にしまして、国会にお願いするときに初めてそれが出てくるということで、その際時間的制約もあってなかなか十分な論議が闘わされないということは、国民にとってもやはり防衛問題あるいは安全保障というものを理解できなくすることだと私は思うのです。それでございますから、私は自分の考え方といたしまして、政策意思決定の新しい試みという考え方で、各段階ごとにできるだけ皆さん方に御披露申し上げる、そしてそれをくみ取りながらまた修正すべきところは修正し、そしてまた御批判をいただく、そういう過程を通じてポスト四次防というようなものも固めてまいりたい、実はこういう基本的な考え方を持っておるわけです。それをどこまでやるかということにはおのずと見解の相違もあると思いますが、気持ちは実はそういうふうに思っております。  したがいまして、従来、私よく知りませんけれども長官指示をいたしました場合に、世間に発表するとかいうようなことはしたかったのじゃないかと思うのです。それは内部的な指示なんだから出す必要はないんだ、こういうことでございますけれども、それは固まったものじゃない、数量的なものじゃないけれども長官指示をするについては、長官指示をする一つ考え方があってこういうふうな作業をしろということでなければならない。そういうことを踏んまえて陸海空の幕で検討をして作業を進める、そしてそれをまた私のところで見まして検討をして、その数量等を考えながら、いままでいじった観念的な考え方がそれでよかったかどうかということをあわせて修正をする。あるいはその間において第一次あるいは第二次の長官指示を出しました際の新聞報道その他あるいは国会で御議論いただく、そのことの反応をまたわれわれくみ取りながらこれを改めるところは改めていく。そしてできるだけ国民のコンセンサスを得ながら固めていく、こういう段取りをしたい。  それからまた、これは単に防衛庁のみで考えるべき問題でなくて、明らかに総理大臣を中心とした国防会議があるんだから、ここで今度は広い視野から、内政面からあるいは経済的な観点からあるいは外交の点から、そういう広い総合的な視野から今度は防衛の位置づけというものをお考えいただく、そこでいま一遍議論をしていただく。その段階でまた私たちがこれを引き取ってそしてもう一遍これを固め直す。そうして初めて国会あるいは予算措置をするということでいけば、十分国民の意見も聞くことができますし、先生方の御意見も聞くことができるということで、私たち政府の考えというものを皆さん方に御理解いただくことができるのじゃないかというふうに実は思うのです。でございますから、私といたしましてはできるだけ、極秘のことはさておきましても、必要な資料は智さん方に御提示申し上げていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  48. 木原実

    木原委員 委員長にも申し上げて恐縮なんですけれども委員会の運営がなかなかむずかしい側面があるのを私もよく承知をいたしております。しかし、私率直に言いまして、この委員会に九年在籍しておりまして、どうもやはり防衛審議に多少とも反省をする面が多々あるわけなんです。しようがありませんから、ときどき防衛庁が大事にしている資料が出てきたり、そうでもして引き出さなければかみ合わない側面があるわけなんですね。ですから、必ずしも本筋の防衛論議というものにいかないで、ややそういう方面に流れていくというきらいもございました。  それからつい、昔から兵は秘密を要するということかどうか、余りにも秘匿の壁が厚いものですから、たてまえは国会が最高のコントロールの機関だ、おまえたちがコントロールをやっているじゃないか、こういうことにもなるわけですけれども、そのコントロールをする最高機関には必ずしも必要なデータが出てこない、こういう形ですから、ついイデオロギー論争みたいになりまして、自衛隊は必要かどうかという次元でわれわれも議論せざるを得なくなるわけです。これはやはり実のないことですから、当委員会が審議の責任を負っておるのですから、それならば政府の側もわれわれの側も歩み寄っていって、幸いにして藤尾委員長のような名委員長がおられるときに、たとえばポスト四次防の問題等については、ある段階で与野党のタイミングの合ったときに、それからまた、政府の方でほぼ何かの形ができたときに機会をつくって、二日でも三日でもそのことだけについて大所高所からさまざまな議論を入れてみる、こういう状況をつくって、でき上がったものについてはさらにまた批判を加える、こういう段取りにぜひしてもらいたいと思うのです。私も党の内閣部長なんという役職がありますから、私どもの党の方はできるだけそれでまとめてやりたいというつもりでおります。せひお運びをいただきたいと思います。  それから長官のおっしゃいました御発言、私も大事に聞いておきたいと思うのです。ともかくなかなかそうはいかなかったのですから、ぜひこれからの審議に政府側も協力をしていただきたい、お願いいたします。  それから委員長にもよけいなことを申し上げましたけれども、御配慮をお願いをいたしたいと思います。
  49. 藤尾正行

    藤尾委員長 改めて理事会等で相談をいたしまして、必ず御趣旨が通るような運営の措置を考え出したいと思います。
  50. 木原実

    木原委員 じゃ、これで終わります。ありがとうございました。
  51. 藤尾正行

    藤尾委員長 午後一時より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  52. 藤尾正行

    藤尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。和田貞夫君。
  53. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 先輩の皆さんのように防衛問題とか軍事問題はそう玄人じゃございませんし、専門家じゃございませんので、むしろ私のような素人の物の考え方、意見をいろいろと聞いていただいて、そして皆さん方の考え方というものを教えていただくということがあなた方の言っているようなコンセンサスにもなると思いますので、そういう見地から質問したいと思うのです。  現在自衛隊があって、その自衛隊の目的というのが自衛隊法に書かれておるわけですが、その任務に当たっておる自衛隊員が、自衛隊が発足して相当の年月がたっておりますが、いまなお町を大手を振って闊歩して歩いて、おれは自衛隊員だという意識に燃えた隊員というのが一体どれだけあるのか。むしろまだ自衛隊員であるということで胸を張って町を歩くよりも、肩身の狭い思いをして歩いておるという姿の方が私は適当な表現じゃなかろうか。そこらあたりはなぜだろうか、どの辺にその理由があるのか、こういう点について、まずひとつ長官の方から御感想を述べてもらいたい。
  54. 坂田道太

    坂田国務大臣 自衛官の意識と申しますか、これをつかむということは非常に大事なことだと私は思いまして、私できるだけ自衛官と会いたいと思いまして努めてまいっております。一年間できるだけ会っておるわけでございますが、会った感じは、かなりしっかりした考え方を持っておるようでございますけれども、しかし先生御指摘のように町を大手を振って制服を着て出るということはしてないというのが偽らざる実情かというふうに思います。  その原因は何なのか、これにもいろいろ原因はあると思いますけれども、やはり防衛意識あるいは安全保障の意識というものが全体としてまだ定着をしていないというようなことも一つございましょうし、いま一つは違憲裁判等があるということ、それも一つの理由かというふうに思います。それからまた憲法制約を受けておりますから専守防御、そういう形に自衛官が置かれております。ところが世界軍事力を見ますと、やはり軍備とかあるいは軍人とかいうような形で呼ばれておるわけで、これはもう長年の間に定着したわけなんで、何だか世界的に認められておる軍人と自衛官とは違うのではないだろうか、そういう意識の混濁と申しますか、そういうようなことがやはりいま先生御指摘になりましたような形にあらわれているというふうに見受けられるわけでございます。  しかし、最近行いましたたとえば陸上自衛隊の意識調査というものを見てみますと、最初入ってまいりました自衛官、士の段階におきましては、自衛官としての意識は低いようでございます。生きがいを感ずるというのはたしか五一%か二%ぐらい。それがだんだん教育訓練を受けて、日月がたつに従いまして高まりまして、平均いたしますと、幹部、曹、士、合わせまして七四%が生きがいを感じておる。幹部と曹だけで申しますと八〇%近い者が生きがいを感ずるというように変わってきております。今日、職業の選択によりましていろいろの選択をいたしておるわけで、役人になっておる人もございます。あるいは企業に勤めておる人もございます。いろいろございますが、その中で自分の選んだ職業に対して八〇%近い者が生きがいを感じておる、言うなら充実感を持っておるということはきわめて健全なものではないだろうかというふうに思いますし、私はその意味におきまして自衛隊の諸君がそれなりに健全に育ちつつある、こういうふうに承知をいたしておるわけでございます。いま少し国防の問題あるいは安全保障の問題というものが国民の間にわかってまいりますと漸次意識も高まってまいりまして、そして、大手を振ってと申しますとちょっと言葉の言い過ぎかと思いますけれども、ユニホームをつけて町を歩くということについても何ら気がねなく着用ができる、あるいはまた国民の側でそれを見る目も、特異の存在というふうに見ないような状況になってくるのではないだろうかというふうに思います。これは私は時間の問題だというふうに考えておるような次第でございます。少し楽観的過ぎるかもしれませんけれども、そういうような感じを持っております。
  55. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 長官がおっしゃられたような時期というのは、大体いつごろになればそういうような時期になると思いますか。
  56. 坂田道太

    坂田国務大臣 これはいつまでの時期というふうには申し上げられませんけれども、しかし漸次高まってきておるというふうに思いますし、この一年を振り返ってみましても、昨年とことしとでは、たとえば新聞等に掲載されました防衛論議あるいは安全保障についての論議は、量にいたしますと約四倍になっております。これなんかはやはりポストベトナムの影響もあったと思います。しかし、だんだんそういうふうに防衛の問題が非常に身近な問題として、自分たち一人一人の生存と自由にかかわる問題であるということが国民の間に意識され始めてきたのではないだろうかというふうに私は考えておるわけでございます。
  57. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 自衛隊の隊員にそういう意識が高まってくるということと、国民の皆さんが、自衛隊はおれたちの生命財産というものを守ってくれる任務を持っておるんだ、こういう意識とどちらの方が大事だと思いますか。
  58. 坂田道太

    坂田国務大臣 私どもといたしましては、まず国民理解と支持と協力というものが十分でなかったならば、いかに自衛隊が精強でございましても、あるいはわが自衛隊がいい装備を持っておりましても、それは国を守る力にはなり得ないというふうに私は考えております。
  59. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そういう観点に立って新しい防衛構想というのをポスト四次防以降立てられようとされておるわけですが、いまの国民の中に私のような者がおる。私のような者がおる限りにおいては、隊員が町を大手を振って歩くということにはならないわけなんですね。防衛を考える会というのはあなたの私的諮問機関として設置されて一応の結論というものをまとめられたわけなんですが、その際に、私のような自衛隊は認めない、自衛隊は要らないという考え方を持っておる者のコンセンサスを得るという意味での、私的諮問機関にしろ公的諮問機関にしろ、構成メンバーを選ぶのにそういう点に配慮するというようなことがなかったわけなんですか。
  60. 坂田道太

    坂田国務大臣 いまの防衛を考える会のメンバーの選定についてのお尋ねと思いますが、その前に日本列島全体を考えてみますと、かなり意識のばらつきがあると思うのです。でございますから、これはまだ詳細なデータは出ていないと思いますけれども、ある県におきましては、自衛隊に対する反発の度合いが非常に強い県もございます。しかしながら、ある県においてはかなり高い県もございます。これは当然のことだと思うのでございますが、昭和四十七年に総理府で出しました意識調査を見ますと、全体としましては七三%の国民が何らかの形において自衛隊存在を認めております。先生を初めといたしまして、反対をし、認めないという層が大体一二%でございます。一五%がわからない、こう言っておるわけでございます。しかし、一応何らかの形で自衛隊を認めるという人たちも、本当に心の底から確信を持って認めているかどうかというところを考えますと、必ずしも十分ではないんじゃないかというふうに私ども思っておるわけです。したがいまして、この七三%の人たちにももっともっとわかっていただく、そして本当に心の底から認めるというようになってほしいものだというふうに考えております。のみならず、そうじゃなくて、この七三%の人がぜひ七五%、七六%、あるいは七七、八%というふうに次第にわかっていただくということを望んでおるわけでございます。  また、一二%のわかっていただけないという国民の層があるということ、これに対しましてもいろいろの角度から御説明を申し上げまして、そしてわかっていただく最大限の努力をしたい。でき得べくんば、このわかっていただけない一二%の層に対しましても、一〇%なり九%なりというふうに、それが次第に下がっていくように努力をいたしたいというふうに思っております。  それからまた、一五%のわからないという人たちに対してはわからせるような努力をすることによって、またこの一五%が一三%になりあるいは一二%になりというふうに、次第にわからない層がなくなっていくように努めなければならないというふうに私は思っておるわけでございます。  私、就任いたしまして、いま政府で調査したものが客観的なものとするならばこれ以外にはないということで、これをよりどころとして施策を進めてまいったわけで、国民理解と支持と協力がなければ自衛隊存在もそれは力になり得ないという考え方から、防衛の問題、安全保障の問題につきましては国民のコンセンサスを得るということが最大の課題であるというふうに私は考えました。そこで、極端に反対、それから賛成というふうに理論が分かれておりますが、その極端の人たちは別といたしましても、その中間のところ、言うならば一五%のわからないようなところ、あるいは七三%のうちでも何か漠然と自衛隊を認めるというような人たちに対しまして、防衛の問題をわかっていただくという努力をすべきではないだろうかというふうに考えたわけであります。われわれ国民の中で、極端な人たちは別として、本当に平均的な良識を持った人たちが素朴に考えて、素朴に余りイデオロギーにとらわれずに考えた場合に、防衛というものをどう考えておるだろうか、安全保障をどう考えておるだろうか、そういう観点に立って一遍そういう人たちの考えも聞いてみようという意味におきまして、私は防衛を考える会というものを発足させようと思ったわけであります。そういう意味におきまして十一人の方を選んだわけでございます。そうしてリポートも出たわけでございます。そういたしますと、そういうふうに私が考えて選びましたけれども、この十一人の人たちの間におきましてもいろいろのお考えがあるということが実はわかったわけでございます。非常に参考になるというふうに考えておる次第でございます。
  61. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 自衛隊を支持するという国民層が七三%ある、こういうことですが、私は分析の仕方で世論というのはいろいろと変わってくると思いますが、自衛隊というものは必要である、こういう考え方を持っておる人の中にも、それでは具体に自分の居住する周辺に基地があった場合、その基地に対応する住民の考え方というものはおのずから変わってくると思います。あるいは自分のそれぞれの立場から言って、防衛予算は福祉予算を犠牲にしてでも、できるだけの防衛予算を組んでも、食うや食わずでもしんぼうしていけるという考え方の者もおれば、いやそうじゃないという者もやはりあると思います。国民はいろいろな角度に置かれておると思うのですね。新しい防衛構想を立てられるに当たって、そこらあたりを一体どう考えて、そして、新しい構想を立てるにできるだけ経費を切り詰めようというところに重点を置いた形で防衛構想を立てられようとしておるのか、あるいはあなたも再々言われておりますように緊張緩和、これはもう当分続くんだ、外敵の脅威というものはそういまのところではないのだというようなことで自衛力、防衛力というものを極度に抑える方がいいんだというように考えられて立てられようとしておるのか、そのあたりどうなんですか。
  62. 坂田道太

    坂田国務大臣 やはり地域的に、基地のあるところとあるいは基地が全然ないところと、これはまた非常に違うと思いますし、それからまた都市と農村とでは非常に違う、いろいろ違い方はあるというふうに思います。それからまた、所属するいろいろの団体等によって違ってくるというふうにも思います。選んだ職業等によっても違ってくるというふうに思います。これはさまざまであると思いますが、私が今度基盤的防衛力というものを考えましたのは、一つには世界情勢というものが六〇年代以来、六〇年、七〇年代、今日デタント基調にある、このデタント基調というものはやはりこの四、五年は変わらないだろう、そうすると、平和時において最小限度必要な防衛力というものは考えられないものだろうかということ。あるいはまたちょうど経済が曲がり角に来ておりまして、高度経済成長から安定的経済へ転換する時期、その時期にポスト四次防を考えなければならない、こういう経済的要因もございます。  それからまた、四次防までの整備計画ということを考えてみますと、確かに一次防から始まりまして四次防まででございますが、ちょうどその大部分の期間は、創設期から始まりましてちょうど日本経済成長と見合いました時期でございますから、その間に正面装備ということについて重視してきた、しかもゼロから出発するわけでございますから、正面装備に走るというのもこれは当然なことだと思います。しかしこの辺で、経済の曲がり角に来て安定的経済へ入っておる、それから世界基調というものもやはり緊張緩和ということを前提とするならば、それに見合った基盤的防衛力というものを考えたらどうだろうかということで、いままでの正面装備重視の考え方から、どちらかと言うならば後方支援体制あるいは抗たん性という、まあ持久力でございますけれども、あるいは飛行機を飛ばすにつきましてコンピューターシステムであるとか、あるいは基地であるとか、あるいは防空の施設であるとか、あるいは弾薬、油というものの貯蔵というような、そういった面もあわせて考えていくという考え方。でございますから、一つ経済的誘因だけで変えたということでもない、国際情勢変化デタントであるからということで基盤的防衛力を考えたということでもなくて、それはまあ総合的な観点から基盤的防衛力という発想が生まれたというふうにお考えいただいて結構だと思いますが、しかしわれわれといたしましては、日米安保条約というものがあって、これが抑止的な働きをしておるという現実の姿がございます。そういたしますと、現在の置かれておる日本の安全にとって、やはり生起すべき脅威というものがきわめて限定的なものであるから、その限定的なものに対しては基盤的防衛力で即応体制がとれるようなものであってほしい。従来の正面装備だけと考えると、油やあるいは弾薬やあるいは後方支援体制というものが不十分であっては即応体制はできないでしょうし、小ぢんまりとしておるけれどもそれ自体として小規模以下の侵略事態に対しては対処できる、そういう完結的な防衛力という、言うなら防衛のぎりぎりの線、下限でございますね、下限を一つ設定をしたということでございます。もちろんこの国際情勢というのは変わりやすうございますから、デタントがどういうふうに危険な状況が現出しないとも限りません。そういうような場合もやはりこの基盤的防衛力というものを基盤としてある程度手直しができるという、そういう基盤的防衛力というものを想定しておるわけでございます。
  63. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 憲法九条の戦争放棄——一切の戦力を保有せず、こういう九条の規定があるにもかかわらず、従来あなた方の方は、国本来の自衛権というものはあるんだ、最低限の自衛力というものはこれは憲法に許容されたものだ、こういう見解ですね。そうすると、自衛力というのと防衛力というのとどう違いますか。
  64. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは言葉でございましょうけれども、私ども憲法制約のもとに必要最小限度の自衛力を持つことはこれは可能であるというふうに考えておるわけでございまして、政府としましては一貫してそういう立場をとってきておるということでございます。しかし、その自衛力の内容である防衛力というものは、他国に脅威を与えるようなものであってはならない、また一面においては内政を著しく圧迫するようなものであってはならない、過大でもなく過小でもない防衛力、それが自衛力、しかもその自衛という意味憲法制約がありまして、他国に派兵をする、侵略をするというものであってはならないというふうに思います。あるいは兵器の装備にいたしましても、長距離爆撃というようなものは考えておらない、あるいは航空母艦というものは考えておらない、あるいは非核三原則によりまして核というものは保有しないというようないろいろの制約を持っておる、それが自衛力だというふうに考えておるわけであります。
  65. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 所要防衛力から基盤防衛力に転換をさせていくのに、一体どこまで行くんやろ、そういう国民の疑義を解消させることも必要だし、それから防衛予算ですね、防衛費。非常に増大していくのをチェックする、こういうことも考えあわせて基盤防衛力に転換させていく、そういう新しい防衛構想というものを長官は描かれているわけなんですが、ところで、むしろいままでの所要防衛力の場合、自衛隊が中心で独力で守る、そして安保体制というものはこれを補完するものであった。ところが基盤防衛力の場合に、最小限度の軍備を持ってそして直接侵略の場合もきわめて局部的な、奇襲という言葉もここには出ておりますけれども、そういう場合に対処するんだ、むしろ全面的に安保体制というものは新しい構想のもとでは日本を防衛する柱になるんだ、こういう考え方でしょう。そうするとむしろ考え方が、自衛措置というよりもやはり安保体制というものを大きな柱にしてわが国の防衛を考えるということになっていくわけなんですが、その安全保障条約、安保体制、これについてもまだ国民の一人一人がやはり疑義を持っている点がある。この構想からいきましたならば、アメリカが大きな軍備を背景にしておるんだからそう大きな大戦というものはないだろう、大きな侵略というものはないだろうということなんですがね。ところが疑問として感じるのは、アメリカがそれだけの大きな負担を持ってなぜ日本を守るという義理があるか。これは条約がしからしめているところだと言えばそれまでなんですが、現実に南ベトナムの最後を見てみても、あの姿を見て果たしてアメリカが最後まで日本のために自分の国を犠牲にして守ってくれるだろうかという疑問がやはりありますよ。そういう点は、国民の側にどういうように理解させようと考えておられるのですか。
  66. 坂田道太

    坂田国務大臣 私、就任いたしましてからいろいろ考えました末、日本の防衛につきまして三つの原則があるというふうに申しておるわけでございます。  その一つは、やはり自分の国は自分の国民によって守るという気概が国民一人一人になければ国は守れないということであります。侵略があった場合あるいは他国の意思の押しつけがあった場合、これに対して抵抗する強い意思がなければ国は守れない、これが大前提でございます。これが第一。  第二番目は、憲法制約のもとにおいても必要最小限度防衛力というものは着実にこれを保持し、努力していかなければならぬ。しかし、それは先ほど申しますように他国に脅威を与えるようなものであってはならないし、また著しく民政を圧迫するものであってもならないということであります。  いま一つは、自衛隊及び国民のどんな気概がありましても、非核三原則をとっております。核の攻撃に対しては無力であります。したがいまして、核の攻撃あるいは小規模以上の攻撃、大規模の攻撃、そういう侵略事態に対しましては独力ではなかなか日本国民を守ることはできない。国民一人一人の生存と自由というものを守り得ない。そうだとするならば、どうしても安保条約にそれは依存せざるを得ないのだ。つまりその意味においては安保条約というものは日本の安全にとって不可欠な要素である、これが第三の原則であります。  この三つの原則というものは一つ一つ独立してあるものでなくて、この三つがやはり一組であって日本の独立と安全というものが守れるんだ、一つを欠いてもだめなんだという私の防衛についての考え方でございます。安保条約があるからやはり核の使用を慎むであろう、あるいは日本に武力侵略ということはなかなかやり得ないであろう、たまたま日米安保条約の効力というものが薄い部面、あるいは何かそれが欠落するような事態、そういうときに奇襲で攻撃をしてくるという直接侵略事態はあるかもしれない、しかしそれはきわめて限定的なものである、それに対しては独力で対処できるところのものを持っておらなければならない、それが必要最小限度防衛力だ、こういうふうな実は私は考えでございます。安保条約もないという形でもって独力でということでこれを計算をいたしますると、それそのものは軍事力は非常に小さいものであるかもしれない。あるいは相当大きな軍事力を持ったところが一斉に攻撃をしかけてきたならば、これのみでは恐らく抵抗はできない。抵抗するにしてもしょせんたえられない。しかし安保条約と第一番目に申しました国を守る気概というもの、こう加わってまいりますると、なかなか大規模の攻撃というものは起こり得ない。つまり平和維持が可能である。こういう考え方一つの、第二番目の必要最小限度防衛力、小さくともそれなりに大きい役割りを持ち得る、そういう防衛力、こういう意味でございます。これが単独であった場合は、これはなかなかいま申しますようなGNP一%程度ではとても日本の国は守れない。たとえば中立といいましても、安保条約がない場合、どうしても中立自衛というようなことになれば、GNPをもう少し高めていかないことには、国民が安心するような、あるいは国民を説得できるような防御力とはなり得ないのではないか。政治的リスクというものが非常に大きくなってくるというふうに思います。しかしいま申しますような国を守る気概、抵抗の意思、そして必要最小限度防衛力、そして安保条約、この三つが一組である限りにおいては、日本において生起すべき直接の侵略の事態というものはきわめて限定されたものである。その限定されたものに対しては即応力を持ったところの基盤的防衛力を備えておればいいのではないだろうか。それを、軍事情勢がどんどん変化をしていく、そしてよその国の軍事力の内容が近代化されて、技術が進んで高まっていくならば、それに相応する軍事力というものを、純軍事的合理性を追求して高めていくというならば、とても日本のGNP一%程度では整備できないのではないか、これは二倍か三倍かというふうにしなければならない。しかし、二倍か三倍にするということは国民生活を著しく圧迫することになる。それでは国民理解と支持と協力というものはむしろ得られないんだ。だから、手の届かない、予想もつかない所要防衛力というものを目指して整備をするということは、一面において自衛隊のユニホームの人たちも、一体いつになったらその所要防衛力を達成してくれるんだと、こういうことになりかねない。そこにやはり一定のガイドラインを設けまして、整備すべき目標というものを一明らかにして、そして、そのガイドラインまでは実現可能なものだ、なるほどそれは積み重ねて努力をしていくならば実現可能だ、それでもってなおかつ小規模以下の侵略事態に対しては対処できるんだと、こういうことであったならば自衛隊の諸君自身もわかってもらえるだろうし、また国民自身も、そういう基盤的防衛力というものであるならばわれわれも受け入れようという空気が醸し出されてくるのではないだろうかというのが、私が今度基盤的防衛力というものを構想いたしましたそもそもの気持ちであるわけでございます。
  67. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 日米安保条約アメリカ側の陣営の国々については、これは脅威にはならないと思いますが、長官、やはり防御力というものは他国に脅威を与えるような大きなものであってはいけない。なるほど、自衛手段としては独力の防衛力というものは最小限にということですが、しかし安保体制、安保条約というのは、アメリカの同盟側以外の国々、たとえば朝鮮民主主義人民共和国、中華人民共和国、ソ連あるいは他の東南アジア国々、そういうような国々には脅威を与えておらないというように解釈するわけですか。
  68. 坂田道太

    坂田国務大臣 私たちは、日米安保条約というものは日本の安全と独立のために結んだ条約でございまして、日本戦争事態が起こる、あるいは紛争が起こるということそれ自体が朝鮮半島に対しても影響を及ぼしますし、あるいは不安定な要素になりかねない、あるいはアジア全体を揺るがす問題に発展しないとも限らないというふうに思いまして、わが国が安全であること、わが国が政治的、経済的安定を保っておるということそれ自体が、アジアにとって、平和の存立にとって欠くことのできないものである。なぜならば、日本は小国ではありますけれども、あるいは軍事的な力は余りありませんけれども、しかしながら経済的力は非常に持っておる、こういう国がどう動くかということについては非常に関心を持っておるわけでございまして、われわれは他国を侵略することは、憲法のたてまえもあり、また政策上もそういうことは考えておらないのです。それであればこそ非核三原則を主張し、平和外交を展開していっておる、こういうことであります。その真意がだんだんわかってきて、かつては反対をし続けておりました中国におきましても、最近の情報によると日米安保条約というものは脅威を感じていないということを言っておるわけでございます。そういうようなことから見ましても、必ずしも従来の自由主義陣営のみが日米安保条約が脅威にならないというふうに考えているばかりでなく、社会主義国においても、日米安保条約そのものについて考え方が変わってきつつあるということは言えるのじゃないだろうかというふうに思います。
  69. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 日米安保体制の依存度が高まるということは、おのずから在日米軍の基地の安定使用を図っていくという義務を日本が非常に果たさなくてはならないという、こういうことにはなるわけですが、その面での脅威感というものを他国に与えるということはないですか。
  70. 坂田道太

    坂田国務大臣 私どもとしましては、日米安保条約を結んでおる、その代償としまして基地の提供ということをしておる、そしてそれはわが国の義務だと思うんです。その意味におきまして、この基地が平和町において安定的に使用される、演習その他におきましても十分米軍が安定的使用ができるということをやっておくということが、有事の際におきましてもやはり日米間の防衛協力等をスムーズに行う一つの前提であるというふうに私は考えられるわけでございます。それでありますから、私は従来平和時における安定的使用ということを強く主張しております。しかしながら同時に、基地はある、ところが基地がある市町村住民と、それから基地のないところの市町村と比べてみると、これはもう騒音その他いろいろの基地公害というものがございます。トラブルもございます。摩擦もあります。これに対して十分の施策を尽くしておるつもりでございますけれども、十分と言えない部面が多々ある。この点につきましては、やはりもう少し、防衛庁のみでなくて政府全体として基地周辺対策に力を入れていかなければいけないのじゃないかという考え方を、私は就任以来ずっと持ち続けてきておるものでございます。私は基地周辺対策はこれで十分でないと考えておるわけで、もう少し十分な施策が行われなければならぬ、しかもそれは単に防衛庁のみではいけない、総合的な施策があってしかるべきだというふうに考えまして、まあできますならばひとつ、基地閣僚協議会というものがあるそうでございまして、これが最近余り開かれていないということも承知いたしましたので、ひとつこの基地閣僚協議会を開いていただいて、そうして総合的立場から基地問題に取り組んでいきたいというふうに私は考えておるわけでございます。
  71. 藤尾正行

    藤尾委員長 関連質問を許します。上原康助君。
  72. 上原康助

    ○上原委員 いま長官の方から平和時における基地の安定的使用というような御発言もありましたし、また基地提供は日本側の義務なんだということが、安保条約上そうなっているということが強調されているわけですが、一昨日の本委員会でも私この問題を少し取り上げましたが、なかなか納得しかねる面もありますし、相当その考え方の基本において食い違いを見せている感を受けているわけです。  そこで端的にお伺いをしておきたいのですが、もうすでにけさのニュースなり新聞などにも報道されておることですが、昨日沖繩県恩納村の安富祖という部落で野良作業をしておるところに、米軍の演習による実弾射撃であるとのこともありますし、米軍演習による砲弾が流れて着弾をしたという情報が入っております。一方、那覇の防衛施設局なりが調べたら、いや、米軍演習とは関係ないんだということも言われておるということなんですが、この事実関係について政府はお調べになっておるのかどうか。これはきわめて重大な問題でありますし、一歩誤れば県民なりあるいはその部落周辺に大きな被害を与えかねない問題でありますので、事実関係についてどの程度調査をしておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  73. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいまお尋ねの十二月十日のキャンプ・ハンセン演習場の周辺の事故につきましては、こういう事実関係でございます。  まず第一報を昨日夕刻受けまして、その第一報によりますと、十二月十日の午後四時二十分、県警捜査一課長からわれわれの方に、十日の三時五十五分ごろ、先ほどお話がございました恩納村の演習場に隣接する民有地の中で農耕をしていた住民から、キャンプ・ハンセンからの流れ弾が飛んできて爆発した、非常に危険を覚えます。したがって、演習を中止してくれということが役場を通じて石川警察署に連絡があった。それを受けまして、県警の捜査一課長からひとつ施設庁の方で措置をしてくれということでございましたので、四時半ごろに演習場の司令官のクワルス大佐という方に演習の中止を申し入れした。そして演習は中止されました。そこで後、夕刻でございますが、県警から係官が行き、施設庁の方からも現場に人が行って調査に当たりましたが、日没のことでもありますし実情が詳しくわかりませんというのが第一報でございました。  けさ各紙にそれを受けて報道がございまして、私どもも、演習場の周辺でそういうことがあれば大変なことであるということで、実情もさらに詳しく調査しましたが、取り急ぎのことでございますので後日多少変更があるかと思いますが、ただいまの時点で判明しました事実は、十二月の十日の二時から四時までの間に、キャンプ・ハンセンの外の恩納村の字安富祖というところで村当局が安富祖川のダムの建設工事をやっておる。これは実は施設庁がその補助を出して、村当局が村の事業として行っておられる。その事業を行うに当たって、五十年度はまず地質の調査をやろうということで、民間の業者である株式会社建設技術研究所という名前の業者と契約して地質調査の実施をやらせておる。そこで昨日、二時から四時までの間に四カ所に地質調査のダイナマイトを仕掛けた。そうして調査をやった。そういう事実がございまして、これが、先ほど申し上げた第一報のようなかっこうになって伝わってきたのではなかろうかということでございます。その現場にダイナマイトを仕掛けた人も立ち会って、私がここでダイナマイトを仕掛けましたということを言っておるということでございます。  こういう行為が普通行われるときは、警察に許可を得て、そして関係の向きに通知をして、その承諾を得てやられるのだろうと思うのですが、そういう手続がやられておれば誤認がなかったのが、どこかに手落ちがあって、農耕しておられる方々が御存じがなくて、同じような音がするので、これを米軍の実弾射撃の弾が飛んできたということに誤認されたのではなかろうかということがただいままでの調査の結果でございます。
  74. 上原康助

    ○上原委員 米軍が演習をやっておったことは確認されているわけですね。
  75. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 米軍が演習をやっておったことは事実のようでございます。
  76. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、いまの御答弁では、安富祖川ですかのダム建設工事をやるための建設会社のダイナマイトが仕掛けられておって、それが爆発したものではないかということだ。これは昨日ダイナマイトを爆発させるということになっておったということは確認はされていないわけですね。
  77. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 そういうダイナマイト爆発をやりましたということは、やった男が現場に行って確認しておるそうでございます。
  78. 上原康助

    ○上原委員 これは事故ということになると思うのですが、とにかくまだ実際の事実関係については十分確認をされていない面もあるわけですよ。  そこで、きょうは関連ですからたくさんは触れられませんが、この八月以降、金武村の伊芸部落近くでも実弾射撃訓練をやっている。しかもその金武村の伊芸部落の近くでやっている射撃というのは、伊芸部落の水源地近くにどんどん砲弾を撃ち込んでいるわけですね。またこの安富祖の部落にしましても、その周辺は簡易水道のいわゆる水源地になっている。森林地帯になっている。こういうところにどんどん射撃訓練をやることまで含めて、坂田防衛庁長官がおっしゃるように安定的使用ということになりますと、百歩譲ったとしても合点がいかなくなるわけです。こういうことは人命尊重の面からしても、私との議論においては基地周辺の公害なりあるいは環境整備ということを強調せんがための安定的使用だということを盛んに長官はお述べになったのですが、実際はそうなっていないのじゃないかというのが私の実感なんです。これについてもっと事実関係を十分確認した上で御報告もいただきたいし、住民地域なりあるいは水源地の環境破壊につながるような無鉄砲な実弾射撃訓練に対しては即刻、たとえ政府立場安保を認めるというにしても、即刻そのような実弾訓練というものは中止をする、再検討に値する問題だと思うのですが、長官のこの件に対する御見解を賜っておきたいと思うのです。
  79. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいまの事実関係は、私取り急ぎのことであるので、後日修正があるといけないと思って少し控え目に申し上げましたが、ほとんどこれに間違いはないのではないかというふうに承知いたしております。  それから射撃につきましては、私どもの事務レベルでは、そういう演習場においていやしくも人命の危険が生ずる、あるいはまた演習の結果大切な飲料水の供給源が荒れるということがあってはいけないので、演習のあり方についてその都度私どもとしては申し入れを行って、たとえば水源地が荒れることについては射撃方向を十分考えていただくということの申し入れをしてその検討をしてもらう、あるいはまた通知漏れで知らずに場内に人が入っておられるというようなことがあってはいけないので、厳重にそういったような演習に際しての関係方面の通告、予防措置というものをやっていただくということをかねがね心がけておりますし、このような事案があった機会にまた私どもいろいろな観点から気のつく限りのことを措置いたしたいというふうに心得ております。
  80. 坂田道太

    坂田国務大臣 私が基地の安定的使用と言うのは、安保条約に基づく日本側の義務ということではございますけれども、これはあくまでも日本の住民を殺傷したりあるいは危険にさらしたり、あるいはいま申されましたような水源地破壊をやるというようなことがあってはならないわけでございまして、そういうことは、わが国といたしましても当然米軍に対しましてそういうことのないように厳重な注意を喚起したいというふうに考えておる次第でございます。
  81. 上原康助

    ○上原委員 少しは前向きの御答弁もあったんですが、水源地とかここの住民の居住地域に被害を与えるあるいはその危険度があるようなことに対しては、最小限度政府という立場でも食いとめていただかなければいけないと思うのです。  そこで、いま施設庁長官の御答弁は、ほぼ間違いないのじゃないかということですが、それで政府は命拾いしたようなお気持ちかもしれませんが、私もいろいろ現地と電話連絡とったり、情報は聞いておりますが、それで夢実確認をやっていただきたいということも含めて申し上げておるんですが、私が受けている情報では、昨日のこの実弾射撃訓練というのが次第に激しくなって、午後二時あたりになるとだんだん不発弾あるいは破片らしいものが近くに飛んできて、二時ちょっと過ぎにはそういう爆発が起きたということなんですね。後で調べてみると、ダイナマイトが埋められておったようだということもあったので、現地で疑問視されていることは、砲弾が流れてきて埋めてあるダイナマイトに当たったがゆえにそのダイナマイトが爆発したのじゃないのか。そうでないと、ダイナマイトというのは一遍破裂すればあっちでもこっちでも何回もやるわけではないわけですよ。これは私が言っているわけじゃなくして、そういう不審については県警も実際に恩納村もまだ十分確認できていないということなんですね。したがって、この種の問題は県民や国民に疑惑を与えたままではいけないと思います。そういうことで、十分事実を確認した上で、先ほど両長官が御答弁されたように、水源地確保の問題あるいは人命尊重、居住地域に少なくともこの砲弾の破片とかあるいは不発弾というものが流れ込まない、そういう最低限度の処置は毅然たる態度で政府もやっていただきたい。外務省も含めて特にこの点要望して、いま私が申し上げたことに対しての答弁を賜って、関連ですので終えておきたいと思うのです。
  82. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 先ほど御指摘のように、弾に当たってダイナマイトが爆発するということもあろうかと思いますので、そういう点も含めて私ども、なお後警察が調査をしておることでございますから、たとえば周辺に砲弾の破片があるとかなんとかいった現場的な状況があるかと思いますが、ただいま報告を受けておるところでは、ダイナマイト百グラム三本の束を四カ所で使って、それが爆発したんだということになっておりますので、あと御指摘の点は、私どももよくいろいろな状況を見た上で終局的な判断を下したいと思っております。
  83. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 基地の安定使用については、米軍の基地もありますし、自衛隊の基地もあるわけですが、いまも上原さんの話にもありましたように、沖繩県民は長い間の歴史的な経過から、基地は安定使用をしてほしくない、むしろ一日も早いところ撤去してほしい、こういう気持ちであろうと思いますし、また沖繩県民だけではなくて、基地周辺の住民にとってみてはやはり基地問題というのは大変なことであるわけですから、今後の新しい防衛構想の中で基地の安定使用を米軍にも与えていき、むしろ自衛隊自身も、長官自身も言われているように、現在の基地というのは最小限の基地さえも確保できておらないというような発言もこれあるわけですが、先ほども少し述べられておりましたが、将来にわたって基地安定使用ということで考えていかれるのであれば、基地周辺の住民に対してその不安感を取り除くという観点に立って、一体どのぐらいの規模の予算でどの程度の対策というものを立てていかれようというように考えておるのか。防衛力整備計画の中でそのことを考えようとしておられるのか、別途に考えようとしておるのか、その点も含めてひとつこの機会に御説明願いたいと思います。
  84. 坂田道太

    坂田国務大臣 来年度の予算につきましては概算要求をいたしておるわけでございますが、ポスト四次防につきましては、考え方といたしましてはやはり基地周辺対策というものもあわせて考えていかなければならない、しかもそれは単に防衛庁のみでない総合的観点に立って施策が進められるべきだという私の考えを持っておるわけでございます。まだそれを具体化する段階で、その内容をいま御報告する段階ではないわけでございますが、やはり安保条約そのものが機能いたしますためには平和時における基地の安定的使用というものが大切でございますし、また基地の安定的使用ということを考えれば、その基地の周辺の住民に対する施策というものが十分なされなければならないということだけははっきりいたしておる、これは今後強調すべき課題であるというふうに思っておる次第であります。
  85. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 GNP一%以内を防衛費に充てるという予算規模の中で、今日の段階におきましてもかなりの人件費あるいは糧食費というものはそのウエートが高いわけなんですが、そういう中で、今後の自衛隊の持っていき方として量より質に転換さしていく、こういうことですが、かなりの装備力の増強ということも必要であるし、それに加えて基地周辺の整備ということを考えたときに、これもする、あれもするということを言われるのですが、実際に一定の枠内でそのようなことは可能なんですか。
  86. 坂田道太

    坂田国務大臣 その辺が実際に作業を、いま長官指示で基盤防衛力に必要な量あるいは考え方等を指示をいたしております。したがいましてその作業の段階で、来年の三月ぐらいをめどにいたしておりますが、それが出てまいりませんと、いまここで一%の中におさまるのかどうなのか、その辺のことを実ははっきり申し上げられないわけでございます。
  87. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 わが党の嶋崎委員が前回の国会でも発言しているわけですが、小松基地周辺の住民訴訟、それに周辺市町村との間のあなたの方との協定が成立しておる。その協定を実施するに当たって、小松基地だけの周辺整備、この協定の内容を着実に実施するというだけで一体どのぐらいの費用が入り用なのだというふうに思っておるわけですか。
  88. 銅崎富司

    銅崎政府委員 内輪の協定ではっきりした事項と、それから今後引き続いて地元側と検討協議する事項と二つございますが、大部分は、これから地元側とどういう事業をどういう計画でどういう年度にやっていこうということでございまして、その具体的な今後の計画というのはこれから作成していくということになります。とりあえず五十一年度で考えておりますのは、これは概算要求中の金額でございますから確定したわけではございませんが、騒音の防止事業、障害の防止、緑地対策の整備、移転措置等を含めまして、約三十億の金額をいま要求しているということでございますが、これは今後地元側と十分に協議しながら、計画を立てて実施していくということになります。とりあえず五十一年度に概算要求している額は、ただいま申し上げました額でございます。
  89. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 五十一年度だけで三十億ですが、五カ年、八カ年、十カ年という計画の中で処理していかなければならぬというものもあるわけですよ。綿密に、この基本対策の協定、民生安定の協定というものが結ばれておりますが、これを見るだけでもけた違いだと思いますよ。けた違いの費用がかかっていく。頭から基地の安定的使用ということを考えるのであれば、これは長官も言われたように、いままでは非常に安易であった、消極的であった、これを積極的にやっていこうと思ったら、一体散在する全基地を——騒音ということになれば、これは空軍基地、飛行場がもちろん主になりますけれども、やはりその他の基地もあるわけですから、そういうのを取りまとめていったら、大変な予算規模がこれから必要になってくるのじゃないかと私は思うのです。そういうようなことを含めて、基地の安定化使用ということをやはり考えていかれようとしておるのですか。
  90. 坂田道太

    坂田国務大臣 どんないい装備をいたしましても、それが実際に動けるようにしなければ日本の防衛は全うできません。したがいまして、単に正面装備だけに力を入れましても、後方支援体制、基地を含めまして、そういうものの施策は今後いままで以上の努力をしていかなければならぬ課題だというふうに思っております。
  91. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そうすると、GNPの一%以内の防衛費ということは疑問視されるのですよ。一%以内で、そのことを含めてやっていけるという自信がおありですか。
  92. 坂田道太

    坂田国務大臣 われわれといたしましては、少し作業を命じておりますから、それが出てきた時点でないと、何ともはっきり申し上げられないわけでございます。しかし一方、やはりGNPの一%程度というのは一つのガイドラインですから、国会でもしばしばわれわれが申し上げておることでございますから、著しく民生を圧迫しない程度というようなことはやはり考えていかなければならないというふうに思っております。
  93. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そうすると、その中で装備の強化もしなくてはいかぬ、基地の周辺整備もやっていかなくちゃならぬ、どちらにウエートを置かれるのですか。
  94. 坂田道太

    坂田国務大臣 必要なものをどういうふうにやっていくかは、これから作業の過程において考えるべきことでございますが、単に所要防衛力に対して、しかもその所要防衛力は、純軍事的合理性から追求してあるべき姿を出して、そしてそれに対してそれ自体がまた即応力を持つというような整備計画というのは、とてもわれわれの手の届くところではない。しかし、一応基盤的防衛力ということであるならば、われわれの手の届くところではないだろうか、実現可能なことではないだろうか、著しく民生を圧迫しない程度においてこれを積み上げていくならば可能な整備計画じゃないだろうかというように頭の中でいま考えておるわけでございます。しかし実際問題は、もう少し量的あるいは編成のやり方等々を考えてみないとわからないことでございまして、明確にここでお答えできないわけでございます。
  95. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 私は新聞を見ただけですが、小松市長が言っておられるのは、あなたの方と協定を結んだ費用は恐らく七百億以上かかるというのです。小松基地だけで七百億。これは実際にやってみたら、八百億かかるかわからぬ、一千億かかるかわからぬ。これは全国のいわゆる基地周辺の住民に波及していくわけですよ。これは想像以上の基地周辺整備費になってくるわけです。それでもなお基地を安定化使用していく、むしろ自衛隊の基地は、米軍からの返還があったら、これは住民に返さないで自衛隊の基地として増大していくのだという考え方を踏襲されるわけですか。基地を縮小してでもという考え方はおありにならぬのですか。
  96. 坂田道太

    坂田国務大臣 現在米軍が必要でなくなったものにつきましては、これを返してきておるわけでございまして、縮小計画というものは、大きいプランがあるわけであります。そういう大きいプランのもとにおきまして縮小するものは縮小するというふうなところで考えておるわけでございます。縮小をやめたとかなんとかいうことではございません。
  97. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 自衛隊の基地は、必要最小限の基地が確保されておらないという考え方なんでしょう。もう十分だというのですか。これ以上自衛隊の基地は広げていかないということですか。
  98. 坂田道太

    坂田国務大臣 いや、私がいま申しましたのは米軍基地について申し上げたわけでございます。でございますけれども、わが国の自衛隊の持っております基地そのものも、従来持っておりますもの、あるいはこれから必要によっては確保しなければならないものもあるいは出てくるかと思います。
  99. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これはやはり手品師でない限りはできぬでしょう。一定の予算の枠、GNPの一%の範囲内で、そうして装備は量より質に転換していくのだ。これは年々技術は進歩していくのですから、かなりの装備の増強というものが考えられますよ。資材の高騰というものが考えられますよ。物価の上昇というものが考えられますよ。それに基地周辺の整備ということになったら、一体どこにしわ寄せがいくのですか。自衛隊の人件費を半分とか三分の一にしてしまうのか。それでも基地周辺の整備をやっていく——住民の理解協力を求めることなしに防御というものはあり得ないのだ、こういうように言われるのですから、住民を納得さすだけの手だてを加えるためには、かなりの予算規模が必要である。装備の増強のためにもかなりの費用が必要である。そうかといって自衛隊の定数を半減するというようなことも考えない、しかも、GNPの一%以内に防衛費の一応の歯どめをかけていくのだ——どこからどうしてやっていくのかはっきりわからないわけです。そのあたりはこれからなお検討と言うけれども、これは素人的に考えましても、手品師でない限りは勝手にできません。そこらあたり、やはり私らのような素人が疑惑を持つ。そこらあたりがやはり私は大事じゃないかと思うのです。そのあたりはやはり明確に国民の前に明らかにしていくという主張が私はあるのじゃないかと思うのですが。
  100. 坂田道太

    坂田国務大臣 私も実は先生と同じように考えておるわけでございます。ただ、いまの段階でそれは申し上げられないということを言っているのです。来年三月ごろ作業がどういうふうに進んでまいりますか、それを受けとめまして、私どもといたしてもまた検討いたしていく、あるいはまた国防会議にもかけます。そして検討いたします。そしてその後もう一遍私たちで検討いたしまして、それで最終的には、ちょうど来年のいまごろ、五十二年度の予算を編成するときに大体その数字がどうなるかということで、五十三年の通常国会で皆さん方の御審議を煩わすというときには、その全貌が明らかになるだろうというふうに思っているわけであります。
  101. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そのときになれば、このGNP一%という枠を超えているということもあり得るということですね。
  102. 坂田道太

    坂田国務大臣 そこが非常に苦心の存するところでございまして、どういうふうにしてそういう工夫をこらすかということで、いませっかく作業を進め、努力をしておるところでございます。
  103. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これはとっととっとと新聞に載せられていって、国民が迷ってしまいますよ。そういう疑問がある、疑惑があるということを、国民の一人として私もおるということをひとつ頭にとどめておいていただきたいと思うのです。  それから、先ほどもお話しになったわけなんですが、防衛を考える会のメンバーの方々が一応まとめられたわけなんですが、これは非常に一方的に——あなたの方は一方的だと思っておらないかわからぬけれども、私らの方から見たら非常に一方的な書き方が随所にあるわけなんです。  たとえば先ほどの憲法と自衛力の問題でも、九条の問題については意見が全く相違するわけなんですが、それはそれとしても、わざわざこれにつけ加えて憲法十三条へ持ってきて、まるで白補力がなければ憲法十三条に政府自身が違反するのだ、そういうことになってはいけぬので自衛力というものは必要なんだ、こういうこじつけた書き方ですね。あるいは私は非常に危険を感じますのは、科学技術力の問題、これもここを見てみましたら、一国の国力だけではとても開発できないものが技術的にたくさんある、「一国だけで有力な兵器を開発し、軍事的に優位を保つようなことはむずかしくなりつつある。それに、精密な軍事技術でさえも、一般の技術水準を高めておけば、情報を集めることによって、多少時間はかかるが大抵のものは開発できるようになった。」「専門家の養成も必要だし、レベルの向上に日ごろから努めていなければならない。」とかということを書かれておるのですが、これは私は外務省の方には後であれですが、たとえば南アフリカ共和国が核軍備を宣言をして、そしてウランの濃縮技術を開発したということを二、三年前に発表しておる。そこに日本の技術が援助をして提携を結んでおる。その中で、非核三原則はあるとしても、やはり一朝事あらんとすれば、そこらあたりから軍事的に非常に精密な高度な技術を導入することができるんだ、いま隠しておいて、原子力発電所の建設だとかあるいは濃縮ウランの工場の建設に民間企業をもって援助をさせておいて、いざというときには、そこと提携してやれば日本も核兵器は十分に開発できるんだということを、私なら私なりでひっつけて考えましたら、こういうけしからぬ疑問が持たれるような書き方なんかが、この考える会の中で出されておる。それをあなたの方が参考にして防衛構想というものを立てていかれるというようにされるとするならば、私たちはこれまた非常にこの面で疑問を持つわけなんです。私たちのような素人で、先ほどもいろいろと具体的に申し上げましたように、新しい防衛構想を打ち立てるについても非常に疑問を持っておる者もあるわけですから、これからもひとつ機会をつくっていただいて、私らの言い分、私らの考え方——単にあなたの方で選任された十二、三人の人たちの意見をもって国民のコンセンサスは終わったんだというようなことで新しい防衛構想を立てていくということは非常に問題がある、こういうように私は考えます。  最後にひとつ防衛庁長官の方から、当初に戻りますが、自衛隊の隊員に大手を振って町を歩かすようにするためにはどうしたらいいかということを、これは自衛隊の隊員の士気の維持ということだけ、自衛隊の隊内におけるところの教育面だけでなくて、国民がなるほどということになるために、国民理解がやはり必要になってくるわけです。そこらあたり、これからどういうようにやっていこうと考えておられるのか、われわれのように反対であるという立場の者をどういうように納得させようという考え方がおありになるのかということをひとつお聞かせ願いたい。
  104. 坂田道太

    坂田国務大臣 防衛を考える会につきましては、十一人の方をお選びしまして、そして防衛庁が洗脳するわけじゃなくて、自分たちでお考えいただいて、われわれのいろんな材料をもととしまして、そしていろいろな考えを持たれたわけですね。ということは、国民の中にはそういう考え方があるということです。(和田(貞)委員「考え方の者もある」と呼ぶ)者もある。それから先生のような考え方もあるということです。自由主義社会というのは、自分の思うことだけがすべてであるというふうに思っちゃならないわけなんです。(和田(貞)委員「お互いにね」と呼ぶ)お互いに、そうなんです。だから、そういう少数の意見であっても、その話は聞いていかなければならぬ。だから、私が総理府の統計を申し上げましたのはその意味で、国民の中に七三%の人は何らかの形で自衛隊を認めておる、こういう人たちがおるということを頭に置いて、そういう人たちはどういう考え方を持って、われわれは反対するなら反対するということもお考えいただきたいと私は申し上げたいのです。私も、一二%の人がどういうふうにして反対なのかということを見きわめたいと思っているわけです。したがいまして、先生の御意見というものを十分私は聞きたいと思っているのです。だから、この開かれた委員会におきましてそういうことを聞きますことを、本当に貴重な御意見だと感じておるわけなんです。そして、反対されるような意見というものも十分聞き、そして防衛構想を固めていかなければならない。私は、防衛を考える会十一人の人の考え方だけで防衛構想を考えておるわけではございません。一二%反対しておられる有力な人たちがいる、国民の層がある。そして、その人たちはどういうわけで反対をしておられるだろうかということを見きわめた上で、やはり防衛構想というものは考えていかなければならないんだというふうに実は思っておるわけです。しかし私の考え方としては、大多数の人々がどう考えておるかということがやはり一番大事だと考えておるわけでございまして、これが私はやはり議会制民主主義である、そういうことでございまして、私も決してその反対意見に耳をかさないどころじゃない、むしろ反対意見にこそ耳をようくかすようなつもりでおるわけでございます。先生方においても、自分の考えと違うからこれはだめだだめだとしないで、もう一遍白紙の立場になって、どうだろうか、七三%の人が何らかの形で賛成をしておるというのは一体どういうことなのだろうか、自分たち一二%の者は反対しておるけれども、七三%の人たちにも何らかの合理性があるのじゃないだろうかというようなことも含めてお考えをいただきたい。それほど防衛の問題、安全保障の問題は、日本国民の一人一人の生存と自由にかかっている問題であるから考えるべきものである。私は、主義主張は異なっておっていいと思う。異なっておっていいと思うけれども、その主義主張に基づいて一体、一人一人の生存と自由についてどう考えるかということをはっきりやはり打ち出して、そしてお互いに議論し、そしてわれわれが先生方の御意見で、なるほどこれは和田先生のおっしゃるとおりだということがございましたならば、私もそれを取り入れるにやぶさかではないわけです。しかし、私どもどうしても、和田先生は一生懸命おっしゃっているけれども、あれは納得がいかないということであれば、そして、それがどうも大部分の国民の意見でもないようであれば、それは残念ながら先生の御意見をとるわけにいかないわけでございます。しかしながら、いろんな方々の意見を聞くということだけは、そういう姿勢でおるということだけは、和田先生もひとつよく御理解を賜りたい、かように思うわけでございます。そうして、本当に自衛隊諸君が胸を張って、このユニホームをつけてでもちまたに出れるような、そういう日の一日も早からんことをこいねがうものでございます。
  105. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 終わります。
  106. 藤尾正行

    藤尾委員長 中路雅弘君。
  107. 中路雅弘

    ○中路委員 この委員会で防衛の論議をやりましたのは八月の二十六日でありますから、その後に八月二十九日に坂田長官シュレジンジャー国防長官会談が行われたわけでありますので、もう一度整理する意味でこの問題からお尋ねしていきたいのです。     〔委員長退席、箕輪委員長代理着席〕  皆さんの発表によりますと、この会談で合意された問題は二つだ、一つが、安保四条に基づきました安保協議委員会の下部機関の、有事の際の日米の共同作戦、防衛分担のあり方、これを協議する新しい機関をつくるということと、もう一つが、日米防衛庁長官国防長官の間で原則として年一回会談を開くということが合意事項だとされていますが、その直後にシュレジンジャー長官は更迭になりまして、ラムズフェルド国防長官にかわった。八月二十九日の合意事項は全体として引き継がれていくのか。この二項目にあります。原則として定期に年一回会談をするということで、前回の報道ですと、今度はアメリカの方のシュレジンジャー長官の方が坂田長官の訪米を招聘したということも報道されていたわけですが、最初にこの問題に関連して、その後の問題を御答弁願いたいと思うのです。
  108. 坂田道太

    坂田国務大臣 八月二十九日に当時の国防長官でありましたシュレジンジャー長官と私との間に二つの点で合意をいたしましたことは、御指摘のとおりでございます。そうして、その際最後に、今度はひとつ坂田防衛庁長官を招聘したいという意思表示がございましたことも事実でございます。その後シュレジンジャー長官はやめまして、ラムズフェルド新長官になりましたが、最近、ラムズフェルド長官から書面が参りまして、八月二十九日に合意をした二点については、これを踏襲するという意味の書面が参っておるわけでございます。
  109. 中路雅弘

    ○中路委員 最近、新しい長官から書簡が来たというお話ですが、いつ書簡が来たのか。それから、この両方の定期の会談ですね、前のお話ですと、本年末には実現の運びだと報道された新聞もあったわけですが、この八月二十九日の合意の定期の会談というのは、その後新長官になって、この書簡では触れていないのですか。今後どういう見通しなんですか。
  110. 坂田道太

    坂田国務大臣 その日にち等、いまちょっとここで記憶にございませんけれども、いまちょっと調べさせますから、はっきりした日時を後で御報告申し上げたいと思います。  それから、もう一つは何でしたか。
  111. 中路雅弘

    ○中路委員 その両方の長官の定期の会談見通しです。
  112. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点につきましては、来年度ということでございます。
  113. 中路雅弘

    ○中路委員 最初の新しい協議機関の問題ですが、いずれにしてもこれは安保協議委員会の下部機関というお話ですから、安保協議委員会で正式に発足を決めなくてはならないと思うのですが、これは発足の時期というのは大体いつごろの見通しですか。
  114. 丸山昂

    ○丸山政府委員 これは外務省が所管しておりますので、私どもではっきり見通しがついておりませんが、大体いままでのペースでございますと、毎年一回は必ず最低限開かれておりますが、昭和五十年度については実はまだ一回も開かれておりません。それで御案内のように、基地の整理統合の問題、こういった問題も含めてこの協議委員会で検討されますので、近いうちに開かれなければならないような事情にあるように私どもは了解しておるわけでございますが、具体的にいつになるかという点については、私どもの方でははっきりしたことはわかりません。
  115. 中路雅弘

    ○中路委員 後で外務省もお見えになった上での質疑もありますので、先へ進みますが、第五条に基づく有事の際の日米の共同作戦ということですから、当然自衛隊と共同対処をする対象があると思うのですが、アメリカの方の陸海空ですね、それぞれ皆さんの方で考えられておられる共同対処の部隊は、どの部隊が共同対処の作戦の対象になるわけですか。在日米軍だけですか。
  116. 丸山昂

    ○丸山政府委員 この問題は、有事の際でございますので、その時点においてどういう変化があるかということを、これはちょっといまの在日米軍だけを対象にしてよろしいのかどうかという問題があるわけでございまして、一応私どもの考えておりますのは、第一次的には現在の在日米軍ということを想定しておりますが、それに対する支援、それから特に第七艦隊などにつきましては、その第七艦隊のうちのどういう部隊が支援を期待できるかということは、いまのところ全く明確でございませんので、まあわりあいに幅広くは考えておりますが、いまのところどの部隊ということを明示してお答えすることはむずかしいと思います。
  117. 中路雅弘

    ○中路委員 有事の際ですから確定はしにくいわけですけれども現実日本にかかわりのあるいまおっしゃった第七艦隊。しかし、海の場合に第七艦隊を除いて、どこが対象になるのですか。第七艦隊は当然対象にならざるを得ないと思うのですね。それから、一、二例を挙げますけれども、沖繩に現にいる海兵隊、これは当然対象になると思うのです。たとえばそういう在日米軍でなくても、現在日本に寄港し、あるいは母港にもその一部がなっている第七艦隊やあるいは沖繩にいる海兵隊、こういった問題については最初から当然対象にはされると私は思うのですが、この点はどうですか。
  118. 丸山昂

    ○丸山政府委員 一応現実性を帯びておる対象ということになりますと、先ほど申し上げましたように在日米軍でございますが、沖繩の海兵隊、あるいは空軍の場合は第五空軍でございますが、それとか、それから西太平洋を管轄しております第七艦隊。第七艦隊のほかにというのは、ちょっと私どもいま海としては考えが及びませんけれども、大体第七艦隊の一部ということになるのじゃないかと思います。
  119. 中路雅弘

    ○中路委員 これは九日の委員会で防衛局長が答弁をされているわけですが、新しい協議機関で協議をする。新しい協議機関の性格といいますか、議題について、日米防衛分担の問題を協議する新しい軍事協議機関の議題について、安保条約五条に言ういままでおっしゃった武力攻撃に対する日米共同作戦、これに限定しないで、在日米軍の基地使用問題など幅広く協議をすることが望ましいという見解を防衛局長は述べておられるわけです。その理由についても、安保条約の抑止力を高める、円滑に運用するために防衛問題を幅広く取り上げる必要があるということで、在日米軍が日本の基地を使用することも含まれるという発言をされているわけですが、これまで、私も八月二十六日に質問した際には、新しい日米軍事協議機関では安保五条に基づく日本の有事の際の日米共同作戦を協議するということを述べてこられたわけです。もう一度整理する意味で、一昨日も答弁されていますが、この軍事協議機関の包括的な議題といいますか取り上げるテーマ、協議する問題、これについてまとめて御答弁願いたい。
  120. 丸山昂

    ○丸山政府委員 いままでの当委員会の御審議の過程において大臣並びに私どもの方からお答え申し上げておりましたのは、有事の際における日米の共同対処についての協議の場を設ける必要があるということで、そういう趣旨から、先般の坂田シュレジンジャー会談におきましても、先ほどお話の出たような合意が成立をしたわけでございます。そういう点から主として安保第五条にありますような事態、つまり日本の施政下にある両者いずれかの一方に対する攻撃に対して日米が共同して対処する、こういうことを中心に考えてまいるという御答弁を申し上げておりましたし、また自衛隊が行動ができますのは、これも御案内のように自衛隊法七十六条の事態で、わが国に対する武力侵略あるいはそのおそれのある場合に限って自衛隊が行動ができるということになっておるわけでございます。したがいまして、自衛隊米軍が共同して対処できるのは、自衛隊が行動の権限があるときだけに限られるわけでございまして、そういった意味で、当庁の関する限りにおきましては、この共同対処という問題は安保第五条を中心にして考える、こういうことで在来御答弁を申し上げておるわけでございます。  そこで、先ごろの私の答弁で、こういった問題以外に広く日米防衛協力について検討すべきではないかという事務的な考え方、これはもちろん、一番前提といたしまして、まだ政府として案が固まっておるわけでございませんし、またアメリカに対しまして、公式にも非公式にもこういった点での打診をしておるわけではございませんので、一に防衛庁におきます考え方でございますが、防衛庁自体の所管に関しては安保第五条の問題、これを中心にして、五条に伴う基地の使用とか、こういった問題がございますので、その五条を中心にして当然考えてまいるべきものというふうに考えておりますが、安保条約全体の円滑な運用ということで、広く日米防衛協力について検討することが望ましいことであるという考え方も私どもは持っておる次第でございます。そういう点につきまして、先ほど私からもそういう趣旨のことを申し上げた次第でございます。
  121. 中路雅弘

    ○中路委員 もう少し聞きますが、安保条約の有効的な運用についてのいわば包括的な協議も含まれるということになれば、あるいはこの前お話しになったように米軍の基地の使用問題ということになれば、当然第六条の運用も協議の対象に含まれてくると思うのですが、五条中心というお話ですが、私が聞いておるのは、皆さんの所管の省庁のことを聞いておるのではなくて、この協議機関について何を議題にするかということを聞いておるわけですから、外務省も含めて相談をされておると思うのですが、その際に、第六条の運用も、米軍基地の使用問題も含めるとすれば、第六条の運用も協議の対象に当然なると思うのですが、間違いありませんか。
  122. 丸山昂

    ○丸山政府委員 第五条に直結した——直結したと言ってはあれですが、わが国に対する武力侵害がございました場合に、アメリカの支援を求めるわけでございまして、その場合には在日米軍だけではこれに対応できないという状態が出てまいれば当然増援軍が来るわけでございまして、その増援軍の配置転換ということになると、現在アメリカが使用しております基地だけでは十分でない。したがって自衛隊の基地なりあるいは演習場なりを使用するというようなことが当然予想されるわけでございまして、こういった問題は当然出てくる問題でございます。広く在日米軍基地の使用という問題につきましては、まことに恐縮でありますが、当庁の直接の所管ではございませんので、外務省からまた御答弁があるかと思いますけれども、そういった問題、これはいま先生の御質問の御趣旨のことであるというふうに私も理解をいたしておるわけでございます。
  123. 中路雅弘

    ○中路委員 いまお話しになったように、その際は米軍の基地の使用が自衛隊の基地にも関連してくる。自衛隊基地のたとえば共同使用という問題も要求されてくるだろうということになれば、当然第六条にも関連してくるということで、そういう意味で、安保の包括的な協議という中には第六条の運用も当然そういう意味では含まれてくるのではないかということで御質問しておるのですが、それに間違いありませんね。
  124. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ただいまの御質問の御趣旨のように私ども理解しております。
  125. 中路雅弘

    ○中路委員 前回の私の質疑のときに、米軍基地の使用の問題について、この協議機関が扱うかどうかということと関連して質問したところがあります。それで長官が、基地の安定的使用ということを常々言っておられるので、この安定的使用というのはそういう米軍の基地使用じゃないかということでお尋ねしましたら、そのときの長官の答弁は、私が安定的使用と言うのは、平時のことに重点を置かれていて住民対策だ、基地の周辺にいろいろトラブルがある、「これについては、やはり政府自身が積極的に基地住民を納得させるような努力をする必要がある。あるいは騒音その他につきましても、特別の配慮をする必要があるんじゃないか、そういうことを私は申し上げておるわけでございます。」ということを答弁されているのですが、いま確認しましたように、この新しい協議機関は、米軍の基地使用、前回に私が質問しました第六条の運用も協議の対象になる、こういう確認だとすれば、前回長官が基地の安定的使用と言っているのは、いや基地をめぐる住民とのトラブル、そのことを中心に言っているんだという答弁をされていたわけですが、ここでそれでは訂正されますか。いま局長が確認されたことが協議の対象になる。私が前回、質問したように、基地の安定的使用と長官が言っておられるのは、こういう米軍の基地使用の問題も含まれるのだという答弁ですから、前回、それはそうじゃなくて住民対策なんだということを言っておられたのはきわめて不十分、不正確な答弁で、その点についてはきょうの局長の答弁で、長官としてもこの前の答弁から見れば非常に中身が違うわけなんで、それでしたら長官の方で前回のこの回答をきちっと訂正をしていただきたいというふうに思うのです。
  126. 坂田道太

    坂田国務大臣 私が前回に申し上げました基地の安定的使用というのは、平和時における安定的使用と、そして私がもしそこで落としておるとするならばそれは間違いだと思うのですが、私は必ずそれをつけ加えておるつもりなんですが、日米安保条約というものがある、そうすると、米軍にだけ依存するんじゃなくて、日本にも義務もあるのです。基地提供の義務もあるのです。その義務はどういうことが内容かというならば、米軍がこの基地を使用するということなのだ。平時において、たとえば反対闘争や何かある。しかし、それがやはり米軍が演習場としても安定的に使用できるようなことを前提としなければ、アメリカ側も、ただ日本の危急存亡のときに守ってやるだけでは安保条約を結んだ何らの意味はないわけなんです。この義務はあるのですよということを言ったつもりですが、それがもし欠けておるとするなら、その点だけは欠けておるわけで、私の言わんとするのはちゃんとそれも含まっておる。そして、それではあるけれども、そういうふうに安全保障のため、日本の独立と安全のために必要な基地であるが、しかし同時にそれも義務である。しかし基地のあるところとないところと考えれば、基地のあるところは住民にいろいろな騒音その他の公害で御迷惑をかけておる、それに対しては十分の措置をしなくちゃいけない。しかし、どうもそれはいままだ十分だとは言えない、もうちょっとやはり手厚い努力をする必要があるのだ、こういうことを私は実は強調したつもりでございます。その後いろいろ実際事務的に詰めてまいりまして、そしてわれわれの考え方としましてはいま防御局長が申しましたようなことで外務省と話し合いをいたしておるという実情でございます。
  127. 中路雅弘

    ○中路委員 第六条の運用も含めた安保の有効な運用について包括的な協議をやるんだということですが、その中の一つは、在日米軍の基地使用の問題はいまおっしゃいましたが、それ以外に、米軍の基地使用以外に、包括的な協議という中には具体的にどういった問題がありますか。
  128. 丸山昂

    ○丸山政府委員 これはこれから具体的に協議をしてまいりませんと、いまのところ、どういう問題が出るかということの予測がはっきりつかないのでございます。これはまことに恐縮でございますが、実態がそういうところでございます。私ども、これ以外の問題でいまのところこういう問題が詰められるべきだというふうに思っておりますのは、後方支援の問題があるのではなかろうかと思っておりますが、しかし具体的にその後方支援にどういった部門でどういう問題が出てくるかということは、それぞれの有事の際の事態の様相を詰めてまいりませんと出てまいりませんので、一般的にいま申し上げましたような部門の問題もあるのではなかろうかというふうに存じておるわけであります。
  129. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一問、これと関連して。後方支援とおっしゃったのですが、たとえば補給、レーダーによる支援あるいは対潜哨戒、こういうものはいまおっしゃった後方支援の中に入りますか。
  130. 丸山昂

    ○丸山政府委員 この間もある新聞に出ておりましたが、レーダーによる支援とか、それから対潜哨戒というのは、私その意味がよくわかりません。補給は後方支援の中のあれでございますから、これは問題になるだろうというふうに思うわけでございますが、後の二つについては、私その意味がよくわかりませんので……。
  131. 中路雅弘

    ○中路委員 後でこれに関連してはもう少しお聞きしたいのですが、いずれにしても第六条の運用も協議の対象になるわけですから、安保の六条というのは極東の平和と安全のために施設を提供するわけですから、事実上、日米防衛協力というのは、地域的な関係で言いますと、五条、六条の関係で言えば、極東まで範囲が広げられてくる可能性があるというふうに思いますし、先ほどおっしゃったように、自衛隊の基地を米軍が再使用する、共同使用するということになりますと、ここで五条、六条の区別そのものも実際的には非常にむずかしい問題が出てくるのではないか。こういう点では、日米の共同の対処、作戦というのは非常に積極的な、地域も広がり、文字どおり朝鮮半島の有事の際を理由にして米軍日本の基地を使用するという問題や、その問題と関連した共同の対処ということに踏み込んでいくという危険を持っているわけですが、この面について長官のお考えもこの際お聞きしておきたい。
  132. 丸山昂

    ○丸山政府委員 この六条の場合、ただいま御指摘がございました極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するということ、これがアメリカ日本の施設区域を使用する一つの目的になっておるわけでございますが、私どもこの点に関しましては、あくまでもやはり日本国の安全に寄与するということが目的であろう。極東における国際の平和と安全ということであっても、日本国の安全に寄与するという立場から判断すべきものではないかというふうに考えております。  それから自衛隊の基地を使うということでございますが、これもまず第一番目に、第五条を中心にして考えてまいります場合には、当然これはわが国に対する直接の武力攻撃でございますので、これは問題がないというふうに思うわけでございます。それから仮に朝鮮半島の問題でございましても、これがわが国の安全に重大な影響があるということでありますれば、私ども自衛隊立場から申しますと、その事態が即いわゆる七十六条のわが国に対する武力攻撃のおそれのある場合に該当するかどうか。これは全然判断基準が違いますので、その七十六条のあれに該当すれば、これは自衛隊が行動することになりますが、そうでない場合においては、自衛隊は行動をしないということになるのでございまして、自衛隊自体としては、こういった事態においてこの共同体制の中に入っていくわけではないわけでございます。基地を提供するということは日本政府としての一つの意思決定でございますから、その関連として自衛隊の基地が共同使用というようなことになる場合があると思いますが、これは即自衛隊が行動として作戦の中に組み込まれるということになることではないというふうに考えるわけでございます。
  133. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほどの続きですけれども自衛隊の基地をアメリカが使用する、再使用する、共同使用する。いま、それは基地の提供であって、自衛隊との共同の作戦ではないというお話ですが、私がさっき質問した、たとえばレーダー支援という場合、自衛隊の航空基地を再使用する、共同使用するということになれば、当然そのための支援活動というのは自衛隊の施設が問題になるわけですね。そういう意味では、単に施設を貸したというだけじゃなくて、事実上、その面では自衛隊との共同の行動がそこで発生するのではないですか。
  134. 丸山昂

    ○丸山政府委員 これは、いまのレーダー支援というのは攻撃機の誘導やなんかの支援をおっしゃっておるんでしょうか。少なくともいまのところ日米の間には、先生も十分御存じのように松前・バーンズ協定によりまして、これは平時に限られておるわけでございますが、領空侵犯についての協定があるわけでございます。いわゆる有事になりました際にはまた新たに、この前も先生にお答え申し上げたかと思いますが、別個の協定を締結する必要があるのではなかろうかというふうに私ども考えておるわけでございまして、それでただいまの施設の使用でございますが、自衛隊の方で考えておりますのは、要するに居住施設の提供、居住施設に伴う光熱関係、水とかいうようなものは、これは当然入ってまいると思いますが、そういったものを考えておるわけでございまして、わが方の指揮系統あるいは統制系統にある施設をアメリカに提供するということは全然考えておらないわけでございます。
  135. 中路雅弘

    ○中路委員 若干外務省と関連した問題がこの問題にはありますので、あとの部分にしたいと思うのですが、さらに進めまして、少しこの協議機関の構成の問題で、構成メンバー、前回に私の質問についてこの協議機関は、局長の答弁だと思いますが、従来の日米安保運用協議会、これを改組してここに決定権を持たして、戦略戦術問題を協議するようにも検討しているというお話もありました。その点でこの協議機関の構成、運用をどうされるのか。またこれと関連して前回も答弁ありましたが、「この安保協議委員会に関連している組織というのはこのほかに二つ三つほどあるわけでございます。したがいまして、できるだけ簡素にするためには、やはりスクラップ・アンド・ビルドをやりまして、あるいは在来のものを改組して」云々という答弁もありますが、この安保軍事協議機関の構成、あり方、それからそれと関連して、いままでこの安保協議会に関連してあった組織のスクラップ・アンド・ビルドというお話、この点はどのような検討を具体的にされているのか。
  136. 丸山昂

    ○丸山政府委員 前に御答弁申し上げておりますのは、まだ検討の段階で、いろいろの構想が出ております段階でのお話でございまして、現在もまだ最終的に煮詰まったという段階でございませんので、私これから申し上げますことも最終的にはまたあるいは違った結論になるかと思いますけれども、現在私どもの方で考えておりますのは、事務レベルの構成メンバーということでございまして、防衛庁に関しましては、私とそれから制服の方の代表としては統幕の事務局長ということを考えております。外務省の方はアメリカ局長にお願いしたいと思っておりますが、これはまた外務省のお考えがございますので、そのほかに追加があるかと思います。それからアメリカサイドにつきましては、まだ打診をしておりませんので私どもの方でははっきりしたことは全然わかっておりませんが、いずれにしましても国務省の方の代表ということで大使館のだれか、それから在日米軍の方の代表ということで在日米軍司令部のだれかというようなことになるのではなかろうかというふうに思っております。  それから在来の機関の、いま御提示のございました運用協議会でございますが、これは運用協議会それ自体が、前に外務省の方でも御答弁がありますように、ここでは戦略戦術を取り扱わないという明確な限定がございまするので、この運用協議会をいまのようなものに改組するということは適当でない。それからまた、本来この運用協議会は問題を特定せずして自由な問題についてフリーディスカッションをするという場になっておりますので、これはそのままの形に存続されるのではないかというふうに思います。これも外務省の方でございます。  それから、第九回の安保協議委員会で設置をされました幕僚研究会同でございますが、これは御案内のように、統幕の事務局長とそれから先方は在日米軍の参謀長でございますが、この間において在日の米軍基地についての防衛面における検討ということで、在来ずっとこれが続けられてきておるわけでございますが、私どもの意向といたしましてはこれを解消いたしまして、今度できます協議機関の中にその事務を引き継ぎたいというふうに考えておるわけでございます。  その他、外務省の方では全般的に日米安保条約運用についての各種の機関があるわけでございまして、それらについては全般的に整理統合を考えたいという御意向のようでございます。これは外務省の方からお答え申し上げるのが適当ではないかと思います。
  137. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一点お聞きしますが、いま大筋の構成はお話しになったのですが、有事の際の共同の作戦の問題ですから、当然外務省、防衛庁レベルだけではいかないわけですね。いろいろの専門的な対策が必要になってくると私は思うのですが、たとえば国内の治安体制をどうするとかあるいは運輸の問題、国鉄だとかそういう輸送の問題、海上保安庁、国鉄あるいは気象だとか科学技術だとかいろいろの、いま国防会議を構成されておる所管の省庁も何かの形で組み込まれてこないと、この共同対処という場合に、外務省と防衛庁だけではいかないだろうと私は思うのですが、三矢作戦の計画書を見ますと、こういった問題が具体的に扱われてあるわけですが、こういう問題を扱う機関はどこになるのか、あるいは専門的なものができるのか、別の機関ができるのか、この点はどのようにお考えですか。
  138. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ただいまのところ、いま申し上げましたように外務省と私どもの方で基本的な構想についての詰めをまず始めてまいりたいと思っておるわけでございます。この協議委員会にはそれぞれの必要に応じて小委員会を設置をいたしまして、それぞれの専門分野についての検討ということが必要な段階になった場合にその小委員会を設けて御検討いただくということになると思いますが、いまのところ、先ほど申し上げましたように、どういった部門についてどれだけの問題が出るかということがはっきり予測がつきませんので、まず基本的な問題について、先ほど申し上げましたような構成メンバーでとりあえず出発をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  139. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほどどの部隊が海や空で対象になるかということで御質問したのですが、具体的には作戦調整が必要なわけですね。この作戦調整の機関やこういった問題については、さっきは幕僚の研究会同についてはこの協議機関の中に吸収したいといいますか、前回の答弁では、ワーキングのそういう組織にしたいというお話もありましたけれども、こういった問題と関連して、具体的にたとえば海、空ですね、共同作戦の態様、作戦調整はどういう機関を考えられているわけですか。
  140. 丸山昂

    ○丸山政府委員 この作戦につきましては日米それぞれ指揮系統を別にするということになりますので、特に調整連絡というのは非常に重要な意味を持ってまいるというふうに思っておりますが、私どももこれはNATOあるいはそれぞれ外国の事例を参考にいたしまして、その点についてわが国独自のものを編み出していかなければならないと考えておるわけで、この点は一番重要な問題になるわけでございまして、この前シュレジンジャー国防長官が来日をいたしました場合に、外人記者団との会見の際にも、この問題についてはいずれやはり協議の場において決めるべきことであるが、恐らく一番最後に決めることになるだろうという言い方をしております。私どももやはりいろいろな問題を詰めて、一番最後にこの指揮の連絡調整という問題になってくるのではなかろうかというふうに考えておりますし、この点についてはやはり作戦の運用上指揮の連絡ということが非常に重要な意味を持っておりますので、相当慎重によく検討してまいりたいというふうに思っております。要するに、いろいろな問題を詰めた最後にこういった問題についての検討をいたしたいというふうに考えております。
  141. 中路雅弘

    ○中路委員 たとえば空の場合は、先ほどおっしゃったように、対象は当然五空が問題になるわけですね、総隊と五空の間で。前回の私の質問でも、いまおっしゃったようにまだ具体的には詰められてないけれども、たとえばその作戦の機関は、場所として通信連絡、それからコマンド・アンド・コントロール、情報収集、そこへ情報が集約されるようなシステムを考えなければならない、あるいは当然最近のように大きな表示板、ディスプレー装置を全部設けなければいかぬとか、要するに金のかかる云々とずっとありまして、その場所をどこに置くかということについても検討していかなければならない。やはりわが国の政府機関あるいは防衛庁の各部隊、幕僚監部、こういったものに連絡のよろしい場所ということになると思います。そういうようにいろいろ幾つか構想の一端をお話しされているんです。  いま航空総隊司令部があるのは府中ですから、こういう作戦調整が具体化される段階でどういう問題があるんだろうかということで、私たちは先日衆参含めて四名の議員で府中の航空総隊司令部をひとつ見せていただきたいということでお話をしましたが——これは最初に一言長官に私は話しておきたいのですが、その中のいわば中心ですね、COC。作戦指揮所の建物については、今度は立ち入ることをお断りするという御返事が官房長から何回か私のところへあった。いままでは、委員会の視察だけじゃなくて、党の議員団として私も、たとえば北部航空方面隊の三沢のCCDCも入って見せていただいておりますし、中部航空方面隊の入間のCCも行っていますし、南西航空混成団の那覇のCCも視察をさしていただいておりますが、今度初めて府中については断ってこられました。長官は常々開かれた、できるだけオープンでというお話をされているんですが、その長官のもとになってからいままで以上にそういう制約が厳しくなってきている。これはどういう理由でCOCについては拒否をされたのか、お尋ねしておきます。
  142. 丸山昂

    ○丸山政府委員 保全上の問題でございますので、私からお答えを申し上げたいと思います。  保全上の問題につきましては、四十八年の九月に、当時の山中長官からの御指示がございまして、要するに、防衛上秘密にしなければならない場所、これは詳しく申し上げる必要はないと思いますが、相手方に公にすることによって当方防衛上非常に支障を来すという部門があるわけでございますが、そういった場所につきましては、内部につきましてもその資格のある者しか出入をせしめませんし、一般に公開を行わないということを原則にしておるわけでございまして、その場所については、国会の審議権に基づきまして委員会でこういったところについての御視察をされるということ、これはもう当然御視察を受けなければならないところでございますので、そういうことにしておるわけでございます。したがいまして、在来の運営の方法から変わりまして、先生にも大変御迷惑をかけておるわけでございますが、できるだけ国政調査権の発動という形でこういう場所についての御視察をいただきたい。その場合には当方としては御要望に応じてできるだけの便宜をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  143. 中路雅弘

    ○中路委員 私たちは納得はしてなかったのですが、それではCOCを除いて見せていただこう、そのかわり現地でよく説明をいたしますからというお話があったんです。現地へ行きまして、たしか鈴木空将ですか、中心で説明をいただきましたが、その際に、私たちが入れてもらえなかった建物には、昨年の十一月に例のアメリカの第五空軍司令部が横田基地に移転して以来はアメリカの将校は一切いないんだという説明をされました。私たちは連絡将校がいまなおそこには常駐しているのではないかという質問をしたわけですが、いないという答弁をされました。そして説明が終わって、中をバスで見て回るときに、係の人が走ってきて、私だけに、いまの説明は訂正をします。いまもアメリカの連絡将校の常駐要員がその作戦指揮所に配置されているということを訂正をされたのですが、説明をしましても、実際はこういう非常に重要な問題について事実と違う説明をされる。そして、この建物はまあ自衛隊に返って自衛隊が使用しているわけですが、後で施設庁の皆さんにお聞きしましたら、この作戦指揮所の中にはいまもアメリカに提供をしている専用の部屋がある、提供施設があるということも、施設庁から私たちが質問してやっとお答えになったわけですが、府中のCOCの建物の中に現在も地位協定によって提供している施設があるということも、この委員会でひとつ明確にさしていただきたい。
  144. 玉木清司

    ○玉木政府委員 官房長としまして御視察のあっせんをいたしましたので、その点からお答えいたします。  鈴木司令官が、米軍の連絡員の駐在につきまして説明を申し上げて、後に訂正をしたというお話でございます。走っていって訂正をしたというところにあらわれておりますように、司令官の説明のときの不注意であったというように感じられます。  それから、なお米軍提供施設が残っておるというお話でございますが、施設庁の方からその点については御答弁いたします。
  145. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 お尋ねの府中の空軍施設は、現在米軍が通信施設として、私ども承知しておるのはマイクロウエーブの中継基地として使用しておるものがございます。それは、土地使用面積が三万二千平方メートル、建物二十一棟、七千平方メートル、そのほか電気、水道、通信ケーブルなどのイーズメント、土地約二万五千平方メートル、こういうものが米軍が使用しておるというふうに承知しております。
  146. 中路雅弘

    ○中路委員 そのことを聞いているのじゃないのですよ。それは私たちもよく知っているのです。私がいま言っているのは、その作戦指揮所がある建物、COCの建物——アメリカが府中から横田へ移ったその後は皆さんが入られたのですね。その建物の中に、一室を米軍専用として地位協定の二条一項に基づいて提供しているということは、私たちが視察から帰ってきてから後いろいろ質問しまして、施設庁がお答えをされているところなんです。それを私は聞いているわけです。     〔箕輪委員長代理退席、木野委員長代理着席〕
  147. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 お尋ねのものずばりが、ちょっとにわかにお尋ねなんで、まことに申しわけございません、確認できませんが、ただいま申し上げた建物二十一棟の中にそれが入っておるんではないかというふうにただいまのところ思っておりますが……。(「正確に言えよ、違うと言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)
  148. 中路雅弘

    ○中路委員 それじゃ後でこれは調べてください。  私は建物があると言っているんじゃないのです。皆さんの建物の中にその提供の部屋があるということを言っておる。それも、私たちが立ち入りを断られたその作戦指揮所の中にあるということを言っているわけなんです。だから、私たちに十分現地で説明しますといっておきながら、いま言ったように、最初説明された方は、米軍の連絡将校はいないのだという説明をされる。それから中にそういう提供施設が、後でお答え願いますけれども米軍専用の部屋もある。私たちが追及してやっとそういうものがあるのだということをお答えになるということで、もし立ち入ることが困るのだというならば、やはり正確に現状について説明をしていただきたい。  というのは、先ほどからお話ししています作戦調整の機関ができた場合、空の場合には恐らくこの府中は一つの重要な個所になるでしょう。その場合に、現在もアメリカに提供された施設があり、米軍の連絡将校もいるということならば、当然ここに有事の際になればアメリカの司令官もやってくるでしょう。そこで総隊との共同の作戦調整が行われる場所に間違いないわけですから、そういうところを私たちはどういう現状にあるのか、今後どういう運用をされるのか、この国会論議と関連して視察もしたいし、説明も受けたいということで行ったのが、まあ後から飛んできたので善意だ、失念したんだと——私はそうは思っていないのだけれども、これは隠しておいたんじゃまた問題になるということであわてて訂正をされたのかもしれないけれども、しかしそういう説明も事実と反するような説明をやっておられた。それで中も見せないということならば、これは長官の言われる、ますます自衛隊は秘密のベールに隠されていくということが事実で証明されるわけなんで、私は時間もないので簡単に言いますけれども、今度府中を見せていただきたい。それから横須賀の海の方の問題についても、皆さんは断られています。それで私たちはまだ横須賀には行かないということですが、長官どうですか、そういう点で、説明だけでは非常に不十分なんで、やはり自衛隊が開かれて、しかも重要な協議機関や作戦調整についてこれから論議をしていくわけですから、私たちも国会で正確な事実に基づいて論議をしたいという立場から、ひとつ今後の視察については、いま言ったような個所については説明も受け、そして私たちの視察を受け入れていただくということについて、もう一度検討していただけませんか。
  149. 玉木清司

    ○玉木政府委員 視察の基準その他の問題でございますのでお答えいたしますが、先生御承知のとおり、この問題は昨年の十二月の終わりに参議院の方で論議になりまして、その際に総理から御答弁申し上げておるところでございますが、先ほども丸山局長から触れましたように、国政調査権の発動としての視察、こういう形でございますならば、行政機関としましてこれに一〇〇%の協力をするのは当然でございます。また、ある党の議員あるいはその議員の集団、こういう方々の御視察に対しましても、明文の規定はございませんが、国政調査権を背景にした視察であり調査であることに変わりはございませんので、われわれとしましては、総理答弁の際にもございますように、制度の立場から許される最大限の協力をするという立場をとらなければならないことは当然のことだと思います。  ただ問題は、議員御自身の御視察でなくて、議員以外の方々の随伴を伴います場合は、これは国政調査権との間で非常に微妙な問題を生じてまいりますので、これにつきましては、今後の御視察の際にそういう角度からの御協力も賜りつつ、前向きの対処をさせていただきたい、このように考えますので、御了承をお願いいたします。
  150. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの点については、論議はここではまだ時間がかかりますから、個別によく相談をしたいと思うのですが、しかし今度の場合は、いまおっしゃった議員も全部拒否されたのですよ。米軍基地の場合は議員に不当に制約されておりますけれども、私たちは横須賀の基地に行った場合も、核の疑惑があるということで、弾薬庫から何から全部要請しました。一応私たちが要請したところは全部入れたのですよ。しかし自衛隊に限っては、議員についても、今度の場合、私たちが要請した幾つかの個所については断わられるということなんで、いま前向きに検討というお話なので、ひとつそれを踏まえて相談をさせていただきたい。というのは、私たちは一般的な視察を言っているのじゃなくて、いま問題になっている今後の共同作戦や作戦調整、国会で論議になっている問題、そういった問題と関連があるから、私たちは現状を知りたい、そして十分の論議をしたい、事実を踏まえて論議をしたいということで要請しているわけですから、この点についてはひとつ長官も検討を、いま官房長も答弁しましたけれども、前向きで今後の点については対処をしていただきたい。一言お願いしたいと思います。
  151. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま玉木官房長から申し上げましたとおりでございまして、これは秘密のところはいたし方ないといたしましても、そうでない限りにおきましては、任務に支障のない限りにおいては——やはり防衛上の重大な問題でございます。またそれをお考えいただくことが国会審議の上におきましても非常に重要だと考えますので、できるだけ御趣旨に沿うように努力をいたしたい、かように考えている次第でございます。
  152. 中路雅弘

    ○中路委員 同じような問題でもう一点だけお聞きしておきたいのですが、沖繩のCCですね。この建物は二4(a)なわけですが、いま自主的には自衛隊が運用しているわけですね。南西航空混成団の指揮下の防空管制群が運用しているわけですが、ここには当然嘉手納を初めとして米軍航空機がいるからということもあるのでしょうが、米軍の幹部もいるわけです。こちらの方に返されて、そして建物だけなぜまだ二4(a)で米軍が管理をしているのかという点について一問お尋ねしたいと思います。
  153. 平井啓一

    ○平井政府委員 那覇基地にありますところのADCCの建物は、御指摘のとおり米軍に提供しております那覇空軍、海軍補助施設の中の一部の地域にある一部の建物であるわけでございます。ただこの部分につきましては、やはり物理的にここだけを、このADCCの機能を自衛隊が引き継ぐときに、施設区域として分離して返還するという措置をとることがむずかしかったので、地域的には那覇空軍、海軍補助施設の中に含めて機能面を自衛隊の方が引き継いだという形になっております。
  154. 中路雅弘

    ○中路委員 施設の問題については私は改めていろいろ論議をしたいと思いますが、那覇の場合も府中の場合も、いずれにしても有事の際に米軍がまた入ってくる、そして自衛隊とも共同で運用していく。沖繩の場合は米軍が主体になってくると思いますが、こういったものはいまの施設の中で——先ほど米軍自衛隊施設の再使用の問題というのを少し質問しましたけれども、全体関連があると思いますので、改めて施設の問題に関連してはまた御質問したいと思います。  時間があとわずかしかありませんので、きょうはこの問題をもう少し時間をとってやりたいと思っていたポスト四次防、長官の第二次指示の問題について幾つか御質問したいのです。  長官が、この長官の防衛理念というのをいろいろのところで語っておられるわけです。それでこれが第二次指示の概要になっているのですが、これはある新聞で、長官が内外情勢調査会の月例午さん会の講師として行かれて、時間が都合がつかなくて、久保次官がピンチヒッターを務めて、当日長官が講演する予定のために用意されたメモだというので、ある新聞に出ているのがあります。これを見ますと、長官はこの中で、日米防衛協力の問題に触れて、シュレジンジャー国防長官の今年度の国防報告を読んで非常に感銘を受けた、この防衛理念に強く引きつけられた、そして私なりに日本の防衛のいわゆるいまおっしゃっている三原則を考えてみたというようなことを含めてお話しになっているのです。私はこういった幾つかの長官の外での発言等を見てみまして、第二次の指示にあらわれている防衛構想、長官の防衛理念、これはいわばシュレジンジャー国防長官の、ここでも言われている国防報告の防衛理念を読んで非常に引きつけられた、それで次期防衛構想を考えたというお話のように、この構想が率直に言うとアメリカ仕込みといいますか、シュレジンジャー仕込みの構想だということを自分で語っていられるのじゃないかというふうに私は思うわけですが、長官のこの第二次指示を出されたお考えの基本をまず簡潔にお伺いしたい。
  155. 坂田道太

    坂田国務大臣 まずその前に、ラムズフェルド長官からの手紙でございますが、これは日付が十一月二十五日になっております。それから私が受け取りましたのは、リン在日米軍参謀長から直接いただきました。その日は十二月一日でございます。  それから、私がシュレジンジャー国防長官が書きました国防白書に対して感銘を受けた点が二つあると申しましたことは事実でございます。しかしながら、彼は彼なりのディフェンスフィロソフィーを持っているのですが、私は私なりのディフェンスフィロソフィーで、シュレジンジャーのまねをしたわけでは絶対にございません。しかしながらその考え方は非常におもしろい、興味深く、印象的に感じたということでございます。  その第一点はどういうことかというと、平和時において防衛費か社会保障かということにつきまして、彼がサー・ジョン・スレッサーという英国のこれはやはり軍人だと思いますが、この人の書いた中で、防衛というものあるいは安全保障というものは社会保障の最大のものだという意味のことを申しております。そういうことは恐らく世界各国、特に自由主義社会の国々にとって、平和時においてどうやって常備兵力を維持していくかということは非常にむずかしい問題を含んでおるということ。社会主義の国でございますと、もう平時も戦時もないようなそういうような国柄になるわけでございまして、大してこの問題が問題にならないのではないかというような気もいたします。  それからもう一つ世界デタントに対する考え方ですが、どうもデタントというと緊張緩和、緊張緩和即平和な状況なんだ、こういうふうに思いたがる。しかしながらそうではないのだそれは力の追求の結果として出てきたものである、     〔木野委員長代理退席、委員長着席〕 こういう考え方。そしてデタントというものと緊張緩和というものと、それからディフェンスつまり防衛力というものとそれから出た抑止力、この三つは相矛盾するものではないのだ。つまり抑止力が効いておるならばディフェンスは要らないんだという議論がある、しかしそういうことではない、やはりディフェンスが必要なんだ、あるいは、緊張緩和、デタントだ、だからディフェンスも要らなければ抑止力の効果をねらうということも不必要だという議論があるが、そうではないんだ。ディフェンス、デタレンス、デタント、この三Dというものは絡み合っておる、相矛盾するものではない、一つを欠いても成り立たない、こういう考え方。  これは非常におもしろいことで、日本の社会においても、考えてみますと、三十年間平和であり得た、それはやはり自衛隊存在並びに日米安保条約という抑止力が効いておるがために平和を享受しておる、こういうふうに私は考えるわけでございます。しかし、世界基調デタントである、平和で何らの危険も起こり得ない、だからもう防衛も要らないんだ、あるいは中立さえ唱えておけばそれでいいんだ、こういうような議論も一面にありますけれども、そういうものではないのではないかという意味において、緊張緩和、それから防衛力、そして抑止力、この三つはやはり国を守る一つの重要な要素になる、こういう認識は非常におもしろいという意味を私は申し上げたわけでございます。  これにつきまして、私は相撲の話を持ち出しまして、相撲が四つに組んでおる、観客から見るならば静止した状況である、これはまさにデタントのような状況だ、しかし、それじゃこの両方の力士は力をかけていないかというならば、そうじゃない、ちょっと力を弱めれば寄り倒される、こういう状況がデタントなんだ、こういうふうに説明をいたしておりますし、たとえばNATO、ワルシャワ、米ソの関係において、この力の均衡というものは、大体広島爆弾を六十五万発両方が支えておって、その中にあって緊張緩和が六〇年以来続いてきておる。そうしてその中において、その上限のSALTI、そしてまたSALTIIということで、この核競争を何とか制限していこうという空気が出てきておる。しかし、それはやはり力の均衡の上に立っておる。しかし、それらにいたしましても、何も軍事力を無視して言っているんじゃなくて、やはり膨大な軍事力背景として平和共存ということを言っておる。そういうふうに、イデオロギーは違うし、力の均衡を前提としながらも、なおかつ両国の間において話し合う場があるんだ、お互いの国々に利益になることもあるんだという形でいま外交が進んでおるんじゃないか。  こういう見方というものは、今日の世界情勢を見ていく上において非常に大事な点ではないだろうか。そういう力の追求の結果としてのデタントということを忘れてただ平和だけと言ったのでは、実は平和は維持できないんだ、こういうふうに私は解釈するわけなんで、その彼のディフェンスフィロソフィーというものは非常に興味深いものがあるということを申し上げたつもりでございます。
  156. 中路雅弘

    ○中路委員 その坂田長官の防衛理念に基づいて出された第二次指示というもののポスト四次防の基本目標ですね。これを見ますと、中心が日米安保体制を有効に機能させ得る、そういう軍事力の整備に置かれているわけですし、自衛隊が間隙のないようにすき間を埋めるんだ、そして均衡のとれた基盤整備の計画を立てるというのが目標にされているわけです。非常に短い、全文千二百字足らずの中に、五カ所にわたって日米安保条約について言及しておられます。そしてその中には、日米首脳会談でうたった、安保体制が「アジアにおける国際政治の基本的構造の不可欠の要素」という共同新聞発表の表現を取り入れて、ポスト四次防というのは、これを有効に機能させ得る、またそれに対応したというか、その間隙を埋める、そういう自衛隊づくりを進めるというのが私は柱になっていると思うのですが、いま防衛計画が転換期に来ているとか、あるいは防衛力の欠陥を根本的に見直すのだとかいう長官指示背景は、この考え方基礎になっておる。  一方、たとえばシュレジンジャー国防長官がしばしば発言していますが、自衛隊の兵器が老朽化しておる、特に対潜水盤機能や防空作戦、兵たん能力の質的向上が必要だということで、相当あからさまに要求しているわけですが、この長官の言う防衛力の見直しというのは、まさにシュレジンジャーや、あるいはかつてのブラウン米統合参謀本部議長が言っているのと軌を一にしておるわけですし、基盤力整備ということは、この機能を備えるということがポスト四次防の計画の核心になっておると、私は短い長官指示でも思うわけです。しかし、この問題を具体的に論議するためには、この長官指示に基づいていま見直しのための作業をやられるためのそれぞれ具体的な通達が出されているわけですね。第二次の指示に基づいて久保次官からこれに関連した通達が出されているわけですが、私は、この第二次指示に基づいたポスト四次防の問題、考え方防衛力の見直しと言われている問題、こういった問題を論議する上で、具体的なこの久保次官の通達をできれば出していただきたい。それに基づいて、先ほどどなたかの質問にありましたように、各段階で考え方を披露して、そうして十分論議をするのだという話の趣旨からいっても、またこれは決して秘密の文書でもないわけですから、ひとつこの通達を示していただきたい、説明していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  157. 坂田道太

    坂田国務大臣 私の考え方をちょっと申し上げておきたいと思うのでございますが、シュレジンジャー長官と私との会談の中で、彼が対潜能力云云とか、自衛隊はこういう増強をとかというようなくだりは全然ないのです。私が説明したのです。日本は海洋国だ、資源を非常にたくさんな国国から受けて、そうして一億の国民をこれまで発展させてきておる、今後もその意味において平和外交をとっていかなければならない国なんだ、そのためにやはり防空というもの、あるいは海洋国家としての対潜能力というものを高めていく努力をしなくちゃならぬという説明を私がした。あるいはまた、憲法制約がある、したがって自衛のために必要最小限度防衛力というものは着実にこれを整備していくというのが日本人を守るゆえんなんだということを私が言ったわけです。  私は、日本の防衛というものは単にかつての軍国主義時代のような他国に脅威を与えるようなものであってはならないと考えておるのです。それからまた、内にあっては著しく民生を圧追するようなものであってはならないということを言っているのです。過大でもなく過小でもない、そういう基盤的防衛力ということを念頭に置いておる、あなたの話はよくわかりました、こう言ったのです。彼が新聞発表いたしておるところにはいろいろなことをしゃべっておりますけれども、実際彼と私とで話しましたことは、いま私が先生に申し上げることが本当なんでございます。彼が言ったから私が対潜能力をこうするとか、彼が言ったからどうだということじゃない。私が言ったのです。ここの点だけはまずはっきりさせておいていただきたいというふうに思います。  それからもう一つ、わが国を守る三原則、先ほども申し上げましたけれども一つは抵抗の意思です。二番目は必要最小限度防衛力、しかもそれは他国に脅威を与えないもの、著しく民生を圧迫しないもの。第三には日米安保条約は不可欠だ。もし安保条約というものがなかったならば、これは根本的に私の防衛構想を変えなければならない、そういうものであって、三番目の日米安保条約と一番目の国を守る気概と、二番目の必要最小限度防衛力、この三つがあって初めて日本の独立と安全、国民の自由と生存とが守られるというのが私の考え方であります。  私のこの防衛構想、考え方からいたしまするならば、日米安保条約がある、したがって、核の攻撃に対しても日本国を目指して侵略的な核の攻撃はなかなかできないでしょう、抑止力が働いているがゆえにであります。あるいは日米安保条約がかたく結ばれておるとするならば、そしてその機能が十分に発揮されておるとするならば、生起すべき可能性のある脅威というものは非常に限定的なものになるであろう、その限定的なものである脅威というものに対しては、必要最小限度防衛力を持って十分対処できるのだ、そういう基盤的防衛力を考えてみよう。つまり非常に著しく防衛力を高めないでも、安保条約があるがために相当の役割りを果たす、日本国民の独立と安全を、間隙のないような姿において守り得る一応のめどがついたという考え方でございます。そういう意味日米安保条約の不可欠なゆえんをるる申し上げておるわけでございます。  単独にわが国の防衛力そのものを考えれば、それはいまのソ連でも中国でも、その他顕在化しておりませんけれどもそういうものが顕在化してまいりましても、それに対しては無力で非常に不十分でございましょう。しかし、安保条約と、日本の国は日本自身によって徹底的に守るんだというこの気概と、この三つが合わさったならば、そう簡単に日本を攻めることはできないのだ、つまり平和維持ができるのだというのが私の防衛構想なので、この日米安保条約がもしなかった場合に、中立自衛というような形でやったにしても、国民を説得するだけの力を持つとするならば、どうしてもGNPを二倍も三倍も上げないことには、国民を説得するだけの防衛力を備えることができないのじゃないかというふうにさえ私は思うわけでございます。そういう形において私はいまわが国の防衛の三原則というものを考えております。その意味においての長官指示をいたしたわけでございます。  それから、これは長官指示でございまして、普通の場合でございましたならば、こういうものは世間に発表しないのが従来の防衛庁行き方だったと思うのです。しかし、先ほどの木原先生の御質問に対してお答えを申し上げましたとおりに、できるだけやはり、長官指示をいたさないにしても、その考え方は、どういう考え方長官指示をしたのだということはある程度は国民に知っていただくということ、あるいは議員の皆さん方にもおわかりいただく方がいいだろうというふうに思いまして、実はあえてこれを発表いたしたわけでございます。それに基づきまして、細かいいろいろな次官通達等についてまで公にした方がいいかどうかというところについては、いろいろ問題があるかと思います。しかし、これは別に秘密にするものではございませんので、それを先生がお尋ねでございますれば御説明申し上げてもいいと思います。
  158. 丸山昂

    ○丸山政府委員 次官通達につきましては十一月の五日に、さきの第二次の長官指示を受けまして出されておるわけでございまして、ただいま長官からもお話がございましたけれども、これは長官指示の線に沿いまして内部的に出しましたきわめて事務的な業務指針と申しますか、そういった性格のものでございまして、非常に簡単なものでございます。  まず編成関係につきましては、一つは基本的任務部隊のあり方でございます。これは、陸につきましては師団の編成、充足の見直し、それから海につきましては対潜兵器体系の見直し、それから空につきましては防空部隊の即応体制の合理化、こういった問題を含めて基本的な任務部隊の組織、定員、編成、装備及び配置についての検討を行えということでございます。  それから、その編成につきまして有事所要と平時所要との問題の解決を図るべきである。現在、御案内のように特に陸においてその傾向が強いわけでございますが、有事所要を基本としながらも、平時の実際の実員充足のあり方は、たとえば音楽学校とかあるいは地連であるとか、業務隊であるとか、こういったところへ圧倒的に人数が集約されている。そういうことで平時と有事との問題の区分けを明確にし、要するにいまは前提が平時であるという前提に立ちまして、その平時編成と申しますか平時所要と申しますか、そういったものをひとつ中心にして、そこでその充足のあり方を検討してみよう、こういうことでございます。  それから当然のことながら、組織の三番目でございますが、組織の整理統合、これは特に陸海空の統合運用という問題も含めまして、部隊、機関等の運用の合理化を図る、こういう見地からの整理統合を検討してみようということでございます。それが一の編成、私どもは編制と申しておりますが、編制と編成、これの関係の検討項目でございます。  それから二番目は人員充足関係でございまして、これにつきましては要員の急速養成の可能性を考慮して、あわせて、御案内のように人件費と糧食費が非常に増大をしておるわけでございます。そういう実情も踏まえて平時における人員充足のあり方、これを検討しようということでございます。  それから三番目は装備関係でございまして、装備品の充足基準、これをもう一回見直してみよう一ということでございまして、この緊急調達その他の面についての態勢と、それから現在のいわゆる平時においての所要量保有態勢、こういったものも再検討してみようということでございます。  それから装備関係の二番目は取得方式……
  159. 中路雅弘

    ○中路委員 ちょっと、長かったら後で出していただきますから……。
  160. 丸山昂

    ○丸山政府委員 それでは……。大体そういうことをやっておりまして、これ自体は秘でもございませんし、ただこういうものは外に出すべきものであるかどうかということは、きわめて事務的なものでございますので、先生の御要望でございましたら、後で参上いたしまして、係員から御説明申し上げたいと思います。
  161. 中路雅弘

    ○中路委員 前半の時間ですので、まだ残っておりますが一応区切りにしたいと思います。  いまの通達の各幕の作業を進めるポイントとして出された指示を聞いていましても、たとえば海については対潜作戦ですね、この問題が中心になっていますし、空の場合には防空即応体制ということで見直しがやられているわけですが、先ほど長官は私が先に言ったんだというお話ですけれども、それまでブラウン統合本部議長やシュレジンジャーが言ってきたことと符合を合わせて、あるいはいまの通達にもそのことが今度の中心に置かれているということだけは事実なわけですね。いままで侵略について自衛隊で小規模なものは守る、そして安保によって補完するという言い方を大体されてきたわけです。今度の長官の防衛構想は、日米安保体制を有効に機能させるということを中心に置いて、自衛隊がこの間隙を埋めるのだということになっていますから、この点では防衛力構想といわれている問題が、新しく構想の転換が行われている。ポスト四次防の自衛隊の新しい計画が、いわばその点で、有事の際の安保に基づいた米軍自衛隊との共同作戦体制をどう仕上げていくか。アメリカの体制の間隙をどう自衛隊が埋めて、そして本格的な体制を確立するというところに置かれているのは事実じゃないか。規模が小さいものだというような印象を与えておりますけれども、たとえばあと五年の一つの構想を考えても、十兆円ぐらいにはなるという答弁もされている。そうすれば、いままでの倍々になってきた二次防以来のと全く変わらないわけですし、また一たん問題があった場合には、いつでもそれが大規模なものに移行する歯どめもない計画に、長官指示を見てもなっている。だから規模においても膨大な新しい防衛力一つ強化になってくるわけですし、それだけではなくて中身に、私がいまお話ししましたように、明らかにベトナムの後、朝鮮半島に焦点を当てているアメリカアジア戦略というものと一体化していくような自衛隊の新しい構想づくり、そういうものが基礎になっている、この点が非常にまた危険なものが含まれているというふうに私は思います。憲法制約や専守防御と皆さんがおっしゃっている立場からいっても、非常に大きな問題点があると考えるわけですが、四時になっていますので、また改めて論議を続けることにして、一応終わらしていただきたいと思います。
  162. 坂田道太

    坂田国務大臣 いまの中路先生のお話でございますが、先ほど申し上げますように、わが国の防衛力というのはわが国の国民の安全を守るために考えたことなのです。そして海洋国であり、資源の多くを諸外国から入れて今日の経済的な力をかち得、福祉政策等もやれるようになってきたわけなのです。そういたしますと、どうしてもこの海洋を守るということは、自衛、安全ということを考えれば、だれが考えてみても当然出てくることなのです。それを考えないというのはちょっとおかしいと私は思うのです。  それからもう一つの防空につきましても、飛行機が飛んでくるかもしれない、そういう形で侵略が行われるかもしれないのです。どうやって日本列島を守るかということについて、最小限度の防空ということを考えるのは、日本国民を守る上において当然のことなのです。何もアメリカが言ったからこうだではないのです。日本自身がそう考えなければならないものだと私は考えております。これは多くの国民が支持することだと私は思うのです。  それから、私は先ほどあえて申し上げましたのは、国を守る気概がなければならないのだ。憲法制約があるけれども必要最小限度防衛力がなければならないのだ。しかしそれでは核の攻撃に対してはわが国だけでは守れないから、これはどうしても安保条約に頼らざるを得ないのだ。あるいは限定的なものであっても、それ以上のいろいろの通常兵器による攻撃に対してもわれわれが守らなければならないとするならば、やはり日米安保条約というのは必要なものなのだ。そういう意味で全体三つの要素が絡まるならば、ある程度日本の国を守っていくことができるだろう、こういうことなので、先生のおっしゃることと発想は違うのです。  私は日本防衛庁長官として、日本の安全をどうやって守るかということを追求した結果として、ああいう防衛を考える三原則ということが考えられ、そしてポスト四次防をどうするか、いままでの四次防のやり方を見直してみて、そしてこうあるべきじゃなかろうかということでいま指示しておる、こういうふうにひとつ理解をしていただきたいと思います。
  163. 藤尾正行

    藤尾委員長 和田貞夫君。
  164. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 外務省の法案の審議の関係発言をしたかったわけですが、時間がなかったので、せっかくの機会をつくっていただきまして、外務大臣に質問したいと思うのです。  昨年の十二月十九日の衆議院予算委員会におきまして、わが党の岡田春夫委員が、国連ナミビア理事会の布告一号、天然資源の保護に関する布告、これに違反して日本の企業がナミビアのウラン資源の買い付け契約を行った、こういうことについて質問したのに対して、大垣は、最終的には国連の安保理事会の決議のような強制力は持たないが、拘束力を持つものであるというように答弁されておりますが、そのとおりですね。
  165. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年の十二月にそういうお尋ねがありましたことはよく記憶をいたしております。その後、このナミビア理事会の布告というものは法的にどういう性格のものであるか、何分にも前例のないものでございますので、わが国も研究をし、各国もいろいろと研究をいたしております。幸いにして、ナミビア理事会の方々が、マックブライド氏を初めわが国に来られたものでございますから、今年の何月ごろでしたか、私一緒に食事をしたりして、かなり長いこといろいろ御意見を聞かしていただきました。  その結果、私の理解としてほぼわかりましたことは、ナミビア理事会なるものは、本来ならば、ナミビアに出かけて、そこで住民の支持を得て一つの国をつくり上げるという使命を終局的に持っておる。ところが、現実には、ナミビアに入れないわけでございますから、いわば入らないまま、よそのところで、将来のナミビア国建設に備えていろいろの準備をしたり、研究をしたり、訓練をしたりしている。したがいまして、ナミビア理事会布告なるものは、将来ナミビア国政府ができましたときに、その政府が発するであろう諸法令を、いまの段階でその理事会の名において出しておるものである。性格はそういうものである。これは私の理解でございますが、そういうことがほぼわかってまいりました。そういたしますと、ナミビア理事会の布告というものは、非常に厳密に解釈すれば国内法にでもなるべき性格のものが、まだ現地に国ができていないというような性格のものだということがわかってきたわけでございます。でありますから、それ自身は恐らく、国際的な機関である国連あるいは安保理事会の決議の中で、拘束力のあるものも拘束力のないものもございますけれども、それとは多少性格を異にしたものであるということが、その後私どもの研究及び直接にそれらの人々と議論をいたしました結果わかってまいりました。  そうではありますけれども、もともとこの布告が出てまいりましたいろいろの経緯というものがある。ナミビアにおいて人種差別が行われていることは適当でない、したがってここにナミビア人の国をつくれという国連の意思が背後にあるわけでございますから、私どもとしてはできるだけその趣旨には沿うべきものであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  166. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 大臣、いま詳しく説明されたわけでありますが、であるならば、ナミビア理事会が決議をしたこの布告というのは、近い将来にナミビア国の独立によって拘束力を持つということでありますし、日本政府自体も国連決議を支持しておりますし、また、いま大臣が言われたように、ナミビア理事会代表団を日本に招聘をするということもあったことであるわけですから、民間の企業であったとしても、国連中心外交をモットーとしている日本政府が、しかもナミビア決議をしておるこの種の問題について、日本の企業がその布告に違反するようなナミビア産のウラン賢い付けの長期契約というものは当然破棄をさせていく、契約を解除させていく、そういう行政指導というものを、これは直接外務省じゃありませんで当該通産省のことでありますが、外務省としてはそうあるべきだ、こういうようにお考えでございますか。
  167. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこで、そのようなナミビア理事会の布告なるもあの法的性格を、昨年岡田委員の御質問がありまして以後、最近に至りますまでの間にほぼそういうものとして私ども理解をするに至りましたので、マックブライド氏が見えましたときにこういうことをおっしゃるわけでございますね。あそこでいま現に有効な支配をしておるのは南アでございますから、現在有効な支配をしている南アのもとで日本がいろいろな資源を売り買いするというのは実はどろぼうをしているようなものだというふうにマックブライド氏が言われるので、私は、おっしゃることのお気持ちはそれはわかります。しかし、正確にあなたのおっしゃることを私流に考えたら、それはいま有効な支配をしている人たちがナミビア人からどろぼうをしておるのであって、われわれはどろぼうをしているわけではないでしょう、あなた方は、不幸なことだが、現にナミビアにいらして統治をしていらしてそうしておれのものだとおっしゃっているのではない、そこにいらっしゃらないでよそのところであれはおれのものであるべきだとおっしゃっているのであって、あなた方と私どもが取引することは日本の企業はできないわけですから、現実に現地で有効な支配をしている人たちと取引をしている、金も払っている、ですから、それは少しも悪意でもどろぼうでもないので、もしどろぼうの行為をしているということであれば、現地で有効な支配をしている人が実はナミビア人の物を勝手に処分をしている、こういうことになるんではないのですかとまで実は申し上げたのであります。それはまさにそうだなあというお返事がありましたのですが、しかし物事の道理から言いますれば、ナミビアはいずれはナミビア人のナミビア国にならなければならぬ道理でございますから、わが国の企業がそういうことも考えられてやはり十分に自制をし、注意をされた方がいい、それが望ましいことであると私どもは考えております。
  168. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 したがって、布告の一号に「ナミビア産の 天然資源を輸送中とみなされたところのいかなる車輪、船舶、コンテナも、国連ナミビア理事会あるいは同理事会に代わり権限を委託された者の権限により、拿捕、没収の対象とされる。」ということまで——ただ資源を操作をしたり売ったり買うたりしたらいかぬということだけではなくて、それを犯して企業が日本に輸入してくるという場合に、公海でナミビア理事会が、またそのナミビア理事会から権限を受けたものが盗品とみなして没収をする、あるいはナミビア国が独立した暁においてはそれ相当の損害賠償を日本国に訴えるということがあるということをこれは明記しておるわけですね。将来にわたって——いま天然エネルギー資源を買ったり売ったりしたらいかぬのだということだけじゃないわけなんです。しかも、いま買ってくるわけじゃないのだから、来年から昭和六十年まで十年間の長期にわたってウランの購入契約、買い付け契約というものをやっているわけですから、必ずその間にそういう問題が起こってくると思うのですね。そのナミビア理事会を日本国が支持しているわけですね。現在国外にある、ナミビアの合法的な政府にかわる機関であるということをナミビア理事会設置の際に日本政府が支持しているわけですよ。その支持をしたナミビア理事会が、いま申し上げましたような過程をくぐってきて布告を出しているわけですからね。それに違反をした、長期にわたる契約をした企業に対して、これは当然政府責任として、国連の決議を尊重するという立場にある日本外交行政として、日本の企業がそういうことを起こしておるわけですから、その企業をたしなめて、契約を解除しなさい、こういう行政指導を——これは外務省がやるんじゃなくて通産省でありますが、外交責任者としての外務省としては当然そうあるべきである。やるやらぬは通産省のことですが、外務省としての外交姿勢としてはそうあるべきである、こういうお考えになられるわけでしょう。
  169. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何分にも全く前例もありませんし、今後もめったになさそうなユニークなケースになっておるわけでございますが、いま現地を一応統治していると申しますか、とにかくコントロールしておりますのは南アであるわけでございますね。ところが、その南アの統治は不法であるというふうに国連は判断をしているし、われわれもその判断は支持をしておるわけでございます。そこで、ナミビア理事会なるものがその外にありましていろいろな布告をして、こうしてはいかぬ、こういうものはこうみなすというようなことをいろいろ言っておる。で、そのナミビア理事会の布告そのものは、現在のところこれを有効に実施する力はない。それは現地におらないわけでございますからないのだが、先ほど仰せられますように、いつかはナミビア理事会の手によってナミビア人のナミビア国というものができましたときに、恐らくいまのような警告あるいは布告というものは将来においては実施をされる筋合いのものでございますから、わが国の企業は少なくともそういうことはいまからよく知っておかなければならないというふうに私どもは思うので、そういう意味で自制をされ、用心をされるべきものであると考えておりまして、これは通産省においても、そのような事情は、通産省の広報であるとかあるいはジェトロ等を通じて周知徹底方を図っておられるというふうに承知をいたしております。
  170. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 きょうは通産省来てないですね。
  171. 藤尾正行

    藤尾委員長 来ております。
  172. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それでは伺いますが、昨年の十二月十九日のわが党の岡田委員の発言以来一年を経過しているわけですね。外務省としてはその後いろいろと検討をした結果、いま大臣の発言のとおりの見解なんです。通産省はその任に当たっておられる所管官庁として、これは一年間経過しておるわけで、具体的に言えばこれは関西電力ですね、その関西電力に対してどのような行政指導をされましたですか。
  173. 山本幸助

    山本説明員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。  ナミビア地域からの天然ウランの購入計画をわが国の電力会社が進めているというただいまの先生のお話は私どもも聞いております。しかし、買い付けが開始されるといたしましてもまだ大分先のことになる、一九七七年以降ということでございまして、現在までのところ、私どもの省としましてはこの問題についてまだ態度を決定するということには至っておりません。本件の処理に当たりましては、現在ナミビアの情勢が流動的であるということもございますし、同地域やその国の動向を十分フォローしてまいりたいということでございますが、基本的にウラン資源というものが今後のわが国のエネルギー源としては非常に重要である、それからまた、ウラン資源は世界的に埋蔵とか生産が限定されておりまして、簡単にいろいろな地域からソースが得られるということでもございませんので、そういう点も十分に考慮いたしまして、十分慎重に事態の推移を見守りながら最終的な方針を決定するというふうに考えております。
  174. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 ナミビア産のウランだけじゃなくて、私たちは南ア産のウランも——これはやはり人種差別、特に契約労働の中で産出されている資源なんですよ。南アフリカ自体の中にも問題がある。けれども、南アフリカの場合は国連で承認している独立国でありますから、それはそれとしても、少なくともいま大臣が言われたように、ナミビアを南アフリカがいま占拠しておるということは不法である。国連でも決議され、日本政府もそのことの決議に参加しているわけです。支持しているわけです。少なくともナミビア産のウランの買い付け契約というものは、先だからということでもう契約しておるわけだから、実際には具体に輸入される時期というのは二年先以降になるとしても、このままほっておけばそれが二年後、十年間の間に輸入されてくるわけですよ。だからいまから行政指導をやって手を打っておかないと、必ず国際的な問題になるんじゃないか。一年もたっておるのにいまだに検討というのは何事ですか。外務省の方としてはいま大臣が発言されたように明確になっておる。外務省の方針がそうであるにかかわらず、通産省がいまだに何も手だてを打たない。これから検討するんだ、そんな悠長なのんきな考え方でいいのですか。いま申し上げたように、私はナミビア問題だけでなくて南ア問題まで発言したいわけです。少なくともナミビアを現在南アフリカ共和国が不法に占拠しておる。不法であるということを言いながら、そのようなことで国内的な企業に対する行政指導をやらないということは、言いかえれば南アフリカ共和国の誤ったナミビア不法占拠というものに加担しておる、こういうことを言われてもいたし方ないじゃないですか。そこらあたり一体いつの時期にどういうように処理をされようとしておるのか、その点ひとつ再度お答え願いたい。
  175. 山本幸助

    山本説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  ナミビアに関します法律的な解釈問題につきましては、私ども外務省と全く同意見でございまして、今後とも外務省と御相談をしながら進めたいと思っております。  ナミビアからのウランの買い付けにつきましては、輸入申請が出てきた段階でその申請の内容とか、そのときにおける国際情勢の推移、ウラン資源のわが国としての重要性等々のさまざまな要素を考慮に入れまして、慎重に検討して結論を出すことができると考えております。
  176. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これは外務大臣にもう一度お尋ねしますが、通産の方は慎重にこれからまだ検討するらしいのです。少なくとも、国連の設置をしたナミビア理事会が布告をした法令、その内容について、日本だけじゃなくて、これを支持した国連に加盟しておるそれぞれの国の政府が、国内的な行政措置というものを行うということは義務づけられておると私は思うのですが、どうですか。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは場合によりましては政府委員からお答えをいたしますが、先ほど申しましたようなナミビア理事会布告というものについての解釈でございますから、受け取り方は各国によって恐らく違うのであろうと考えます。つまり端的に申し上げれば、南アの不法統治の事態が早く解決をして、ナミビア理事会の手によってナミビア国が成立して、そういたしますとナミビア理事会の過去に出しました布告は恐らくその新しいナミビア国のものとなって効力を持続していくことになるのであろうと思います。そうしますと事態はきわめて明快になるわけでございますが、通産省の説明員の言われたことは、とにかく現実にそのウランの積み出しが行われるというようなことはまだ大分先なのであって、その間にもし物事が理性的に処理されるならばナミビア国というものが成立しているはずであって、その国との話し合い——いま不当なことをしておるわけではないのですから、その国との話し合いにいままでした仕事はつないでいけるであろう。恐らくナミビア国といえども、その持っております自分の資源を有利に活用するということに異存はないのでございましょうから、話はそこへ継続していけるであろう、こう想像し得る理由はあるわけでございますから、そういうことを通産省としても可能性を考えておられるのだと思うのであります。ですから私どもとしては、しかしひょっとするとそのナミビア国というものが、ナミビア理事会が考えているほど早く実現しない危険だってあるわけでございます。いろいろ努力しても、南アが不法だと言われながらその不法を続ければ事態はそんなにすぐ解決するとは決まらぬかもしれぬ、そういう非常にいろいろな危険、不安定要素をはらんでおるわけでありますから、企業はそういうことを十分注意していかれませんといけませんよというふうに私どもは申しておるわけであって、扱いは恐らく各国によっていろいろ違っておるのではないかと思います。
  178. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 各国の場合は違っておることは確かにあると思いますが、少なくとも日本政府としては、先ほど大臣が言われたように、しかとした考え方を持っておられる。人種差別という問題について国連で大問題になったわけですから、積極的に——先ほどの大臣の言葉じりをつかまえるんじゃないですが、直接日本の企業が盗んできたんじゃない、それは先方の言うところの南アというどうぼうがおるんだ、そのどうぼうが盗んできたやつを買うているまでじゃないか。そこまでは言わなくても——そうでしょう。どろぼうには原因があるわけですよ。どろぼうの幇助をするものがおるからどろぼうという商売があるのでしょう。幇助をするものがなかったらどろぼうは成り立ちませんよ。南アの不法行為を幇助しているということにならないですか。だから、もっと積極的に言うならば、ナミビアにおけるところの経済活動は少なくとも日本がやるべきでないというところまで強い行政指導をやることによって、南アのナミビアの不法占拠というものは解消することにもなるし、またそのことが、積極的に国連の決議に対する支持をした日本政府として、このナミビアにおけるところの人種差別というものを人道的に道義的に解消しようという日本政府の姿というものを証明し、表明することができるのじゃないかというふうに思うのですが、やはりそういうような積極的な姿勢で国内的な企業に対して行政指導をしていく、そのことが国連決議に基づくところの外交を進めるという日本政府のあり方じゃなかろうかというふうに私は思うのですが、どうですか。
  179. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どろぼうという言葉はマックブライド氏が使いましたので私はさっきのようなことを申したので、これは比喩的な表現ですから、何もまあ日本の企業がいわゆる臓物をどうかしているという——厳格な意味でそう申しては当を失するかもしれないのですが、いずれにしても、非常に前例のない事態だものですから、これがたとえばローデシアのような場合でありますと、国連の決議がはっきりしておりますし、したがってわれわれの行政措置も非常にはっきりとれる、また、とっておりますが、多少前例のないナミビア理事会布告というようなものの解釈であるものですから、扱いをどうしたら一番いいのかということにいろいろ問題があるというのは、私は事実だろうと思います。けれども、事の本質は先ほど来申し上げておるとおりでございますから、これはもうわが国の企業も十分その点は注意をされる必要があるというふうに私どもは考えております。
  180. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 くどいようでございますが、宮澤外務大臣は、日本外交責任者として、南アフリカがとっておるアパルトヘイト政策というもの、人種差別政策というものについては、支持をなさっておらないのでしょう。南アフリカのナミビアの不法占拠というものについては、これはけしからぬというお考えにあるわけでしょう。そうすると、そのことを排除し除去していく姿というものは当然やはり必要になってくるのじゃないですか。それにはやはり私が言いましたように、そのことを積極的に進めない限りにおいては、南アのナミビアの不法占拠というものはこれから長く続いていきますよ。盗品を買う国がたくさんあり、盗品を買う企業がたくさんあれば、何ぼでも続けていきますよ。買わないということ、買わないようにさせていくということ、経済活動を少なくともナミビアにおいて停止をさせていく、やらさないように国内的な行政指導というものを積極的に日本政府はやっていくということが、南アがナミビアから撤退をするという時期が早まることにもなると思いますし、あるいは南アの人種差別政策というものを世界的に、国際的な世論としてなくするということになっていくのじゃないですか。そういう意味から、私は、むしろ日本外交政策というものはこうなんだということで、通産大臣とも詰め合ってもらって、そうして通産省をしてそういう日本の誤った企業のやり方について積極的に行政指導をしていくという姿をやはりとってほしいわけなんですが、どうですか。
  181. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これがローデシアのような場合でございますと、国連の拘束力を持った決議がはっきりしておりますから、わが国としては、これはもうどちらでもいいという問題ではなく、こうしなければならないというはっきり国の意思が決定できるわけでございますし、それを法令によって行うこともできるわけでございますが、このナミビアの場合には、先ほどから申し上げておるような経緯であるために、これをどう判断していいかということにかなり、必ずこうなければならないということでなく、国によってもあるいは所管官庁によりましても、いろいろ判断のあいまいな余地があるということは、事実残念ながら認めざるを得ません。ですから、国によってはきつい措置をとらない国もある、とる国もあるというようなことでは——これを申してもいけないのかもしれませんが、実は日本だけがやりましても、よそがやらなければ一向に南アはへこたれないというような議論というのはすぐにあり得るわけでございますので、どうもその辺のところが非常に扱いがむずかしい。しかし、私どもとしては、企業には十分そういう注意をしていただきたいということは、これはもういわゆる行政指導で申し、お伝えしておいても間違いはないというふうに思っています。
  182. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これは大臣、よその国のこともあろうと思いますが、ナミビアを含めまして南アがウラン鉱石を一番たくさん供給している国というのは日本なんですよ。日本自体もまた南アからの購入量というのが一番ウエートが高いわけです。だから、よその国のこともさることながら、やはり少なくとも国連で問題提起になって、南アフリカがそういう人種差別政策を続けていく限りにおいてはこれは南アに任せておけないということで、国連が直轄で信託統治するということに移行したわけですからね。そこで、日本と南アとの関係、そのことを考えたら、よその国はともあれ日本こそが、よその国の顔色をながめるというのじゃなくて、そういう関係にあるわけですから、率先して積極的に南アの人種差別政策をやめさせていく、南アのナミビアの不法占拠をやめさせていく、こういう立場に立ってやはりやってほしいと私は思うのですがね、どうですか。
  183. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大体私の考え方は先ほどから申し上げたとおりでございますが、また通産当局ともよく協議をいたしていきたいと思います。
  184. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これは通産、いつまでもほっておいたらだめですよ、外務省がそう言っているのに、通産省がウランが限られたところであるからどうであるとかと……。限られたところであるからどうであるとかと言うのじゃなくて、なぜ日本の企業が南アフリカに目を向けて南ア産のウランを賢い付けることに精力的になっているか。これは、安いからですよ。高かったら行きはせぬですよ。きわめて安いからです。その安いという原因は、やはり人種差別によるところの契約労働からそれだけの安いウランの価格になっているわけですよ。そこに企業が目をつけているわけだ。世界じゅう探してもナミビア以外にウランがないということはないわけです。そこに日本の企業が目をつけているというところに問題がある。そういう観点に立って、積極的にしかも早急に、将来にわたって国際的な問題にならぬためにも、いま手を打つべきですよ。そうすることによって、ウランが必要であるというならば、またよその地域に買い付けしに行くんじゃないですか。そのときになってやっても遅いですよ。契約をしてしまったんならその契約を破棄しなさい、契約を解除しなさい、こういうことを通産省としてやるべきじゃないですか。やられますか。
  185. 山本幸助

    山本説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。  私どもといたしましては、外務当局とも十分に御相談をいたしまして、慎重に検討してまいりたいと思います。
  186. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 相談をして相談をしてと——外務大臣自体がこう言うておるじゃないですか。相談もへったくれもありはせぬ。責任者が、外務大臣がこう言っているのだ。あなた耳あるでしょう。相談する必要はない。外務大臣も、通産省に十分外務省の方は相談する、そういうようになってもらうように、行政指導もしてもらうように働きかけるということも含めて答弁していただいているわけです。あなたの方が、耳が二つあるわけだから、ここで聞いた以上はやはり積極的にやってもらいたい。そして国際問題化しないように努力してもらいたいと私は思います。今後一切、国会においてこのような発言がないようにやってもらうという約束はできますか。
  187. 山本幸助

    山本説明員 先生の御趣旨に沿いまして、十分検討してまいりたいと思います。
  188. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 したがって、そういうことでありますから、時間がまだあるわけでございますが、議事に協力する意味で、この辺で終わりたいと思いますが、外務大臣、先ほど御答弁いただいたように、通産大臣にもひとつ会ってもらって、国連決議を支持した日本政府立場として、また国際的な問題になっておる人種差別を日本自体が積極的に解決していく、こういう立場に立って通産省を督励して、安かったらいいんだという誤った考え方で買い付けておる関西電力を初め日本の企業のそういう誤った商行為、これは禁止する、取りやめさせていく、そういうようにひとつ努力をしてほしい、こういうふうに思いますので、最後に大臣の方からもう一度承って終わりたいと思います。
  189. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 通産省が苦労しておられるのもよくわかるので、わかりましたということでありますと行政指導は成り立つわけでありますけれども、法的にどういう根拠で政府はそういうことをおっしゃいますかということにもやはり答え得るだけの準備がありませんと行政指導というものはなかなかやりにくいものでございますから、その辺のことをいろいろ苦労していらっしゃるのであろうと私は思っております。  先ほど申し上げましたように、私として努力をいたすつもりでございます。
  190. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 終わります。
  191. 藤尾正行

    藤尾委員長 中路雅弘君。
  192. 中路雅弘

    ○中路委員 質問の最初に外務大臣に一言お聞きしたいのですが、きょう十一日付の夕刊をいま見たのですが、夕刊の各紙に出ているのですが「十日公表された米下院国際関係委員会アジア調査団報告書で、同調査団のメンバーの一人、ガイヤー議員は「もし韓国に対する明白な攻撃があれば、日本は在日米軍基地の使用を認めるだろうと、宮沢外相が(調査団に)示唆した」ことを明らかにした。同議員の報告は、この点についてこれ以上詳細に触れていないが、この「宮沢発言」が、朝鮮半島で武力衝突が起きた場合の在日米軍当地からの戦闘作戦行動発進をめぐるものであり、日本政府が事前協議でそれに「イエス」をいうことを外相が米議員団にかなり明確な表現で示した」、これは朝日新聞ですが、新聞報道が出ています。ほかの新聞にも出ておりますが、この報道について外務大臣の御見解を最初にお伺いしたいと思います。
  193. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 こういう調査団が見えまして私と話をしたのは事実でございます。当時の記録がありますともう少しはっきりしたことが申し上げられるのですが、大体私が記憶しておりますことでございますと、質問は、要するに、この調査団は韓国にも行ったかと思いますが、当時いわゆるベトナム直後でありまして、韓国の南北の緊張が非常に高まっておった段階でございました。  それで、北鮮が韓国に侵入してきたときに日本がどういうふうに対応するかということの質問であったわけです。当然のことながら、この質問はかなり大ざっぱな質問でございましたから、私が、ただ北が南に侵入したときというような雑なお話ではこのお答えはできないので、いろいろな態様があるでありましょう、つまりいきなり軍事的にするのでなくて、いろいろないわゆる浸透といいますか、浸透作戦というようなものもあり得るであろうし、あるいは侵入したといっても、まあごく小さな地域において小競り合いが起こったというようなこともあるでしょうし、あるいは非常に極端な場合には、大軍が実際なだれ込んできたという場合もあるでしょう、それはその態様を具体的に考えないといけないので、もしその態様において、これがわが国の平和と安全を直接脅かすものであるというような、そういう種類の態様でありました場合には、わが国の基地の使用について事前協議があり縛るかもしれない、制度としてはそういうことができることになっております。その場合、日本政府はイエスと言うこともありノーと言うこともある、それは、それが日本の安全、平和にどのように関係があるかという具体的な判断をして日本政府は事前協議に対して態度を決する、こういうたてまえであるという説明をいたしたのであります。
  194. 中路雅弘

    ○中路委員 同じきょうの夕刊でもう一つアメリカ太平洋軍司令官ゲイラー司令官が「在日米軍基地の役割をめぐっては、日本の基地を通じての海上輸送、空輸能力が重要であり、この面で米国日本協力することが大事だと、兵たん補給、中継基地としての重要性を指摘した。」云々という記事もあるのですが、先ほどの新協議機関論議の中で、外務省の方は先ほどお見えになりませんでしたけれども長官、防衛局長も、安保の六条の運用、米軍基地の使用という問題も協議の対象になるんだということを答弁されていたわけです。そして、事基地の使用については補給、後方支援、こういった点については、当然自衛隊基地についての再使用、共同使用を、要求があったときにもこれは認めるという趣旨の答弁があったわけですが、この新協議機関が、六条を含めた米軍基地の使用の問題まで含めて包括的な協議をするということになりますと、事前協議制度との関係、これはどういうふうに扱われるわけですか。事前協議の問題もこの協議機関の中で検討をされるわけですか。
  195. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 アメリカ局長がおりませんので、私からお答えいたします。  御承知のごとく、事前協議の事項といたしましては三つの項目が挙がっているわけでございます。これにつきましては、アメリカ側がそういう項目に該当する事項について日本の施設区域を使用するというような事態が出てまいります場合は、日本政府とあらかじめ協議をして日本政府の同意を得てから使用するということになっておるわけでございます。今度の日米間で行われます防衛協力に関する協議におきまして、この事前協議の問題が具体的な問題として取り上げられるということは恐らくないのではない、だろうかと思います。恐らく今度の協議におきましては、一般的な形で日米間の協力体制をどうするかというような話が中心になる、だろうと思いますが、事前協議の問題はすでに条約上はっきりと決まっておりますので、そのことについて改めて協議をするという必要はないものと考えております。
  196. 中路雅弘

    ○中路委員 事前協議の問題が恐らく協議条項から外れるだろう、確立しているから、といういまのお話ですけれども、しかし、この協議機関で在日米軍基地の使用の問題、六条といいますと極東の安全ということにかかわってくる問題ですが、その問題の協議もやるんだということになれば、そこで米軍基地の使用ということを認めるということになってきますと、一方で事前協議制があっても事実上事前協議はたな上げされるとかあるいは空洞化されるという危険が出てくるんじゃないかというふうに私は思うわけです。その面で、この事前協議制で言われている三つの問題がありますね。そういった問題の制約、歯どめといいますか、これと、新しい協議機関での在日米軍基地の使用の問題と、この関係をもう少し明確に私はお聞きしたいと思います。
  197. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 前から申し上げておりますごとく、もし仮に事前協議の三項目のいずれかにつきましてアメリカ日本政府に協議をしてまいるという場合には、そのときに発生しております状況、事情を具体的に承知した上でなければ状況の判断ができないということを申し上げているわけでございます。したがって、あらかじめこうこういう場合は同意を与えるという性質の問題ではないというふうに私どもは考えているわけでございます。事前協議の項目について日本政府にあらかじめ同意を求めなければならないという制度自体はきわめて明白でございますから、今度行われます日米間の協議でこの問題を協議するという必要性はないというふうに考えているわけでございます。
  198. 中路雅弘

    ○中路委員 私が心配しているのは、その新しい協議機構で、これは皆さんも同じ意見だと思いますが、先ほど防衛局長は六条の運用にかかわる米軍基地の使用の出題も協議の対象になるということですから、この中では、有事の際の極東の安全と関連した米軍の基地の使用という問題も広く言えば包括されてくる。その場合に、事態によっては事前協議を要する問題も出てくる、かけられるという事態が考えられますね。その場合に、いままで確立している事前協議制と、そしてこの新協議機関での協議との関係ですね。事実上事前協議制というものが別にたな上げされちゃって、この協議機関で基地の使用が全体として相当包括的に論議されてくるということになれば、空洞化されるわけですから、その辺についての関係はもう少し明確にさせていただきたい。
  199. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 事前協議制につきましては、従来から申し上げておりますように、これは政府責任において運用されるわけでございますけれども、もちろんこれは外交チャンネルを通じてやるべきものでございますから、今回新設されることになると思われますこの研究協議機関で研究協議すべき問題ではないと存じます。
  200. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの問題はまた改めて私論議をしてみたいと思います。  もう一点、これはやはり外務省と防衛庁で相談されている問題ですから、協議機構でどういう議題を扱うかという問題や構成等については、外務省の方に、あるいは防衛庁の側にも、一緒におられるところで聞きたいのですが、いま相談は、協議機構の構成についてアメリカ局長そして防衛局長等の参加を先ほどお話しをされていたのです。私は、有事の際の共同作戦が問題になれば、先ほどお話ししましたように、当然国内の治安体制から、あるいは鉄道、運輸、それから気象だとか科学技術、そういった関連する治安の問題ということが全体として問題になってくるだろう。その場合に、先ほど防衛局長は、小委員会等で包括的にそういう問題を検討していきたいというような趣旨の御発言があったのですが、たとえばどういう小委員会が考えられているか。もう少し具体的に聞きますと、治安体制はどうするのか、どこでどういう相談を、協議をされるのか。それから輸送ですね、運輸について、国鉄とか、そういう問題はどうされるのか。そういった点について、幾つか区別して私が提起した問題一つ一つについて、ひとつお考えを話していただきたい。
  201. 丸山昂

    ○丸山政府委員 先ほども申し上げましたように、相当いろいろな分野についての問題が提起されるというふうに想像されるわけでございますけれども、まず、私どもと外務省とが一緒になりまして、基本的な問題についての詰めをやってまいりたいというふうに考えております。その過程においていろいろな分野の問題が出てまいると思いますので、それらについては先ほどもお話を申し上げましたように、いわゆるアドホックベースでのパネルというものをつくりまして、それぞれの専門の分野での検討を行っていきたいというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、輸送あるいは治安という問題について具体的にいまの段階でどういうふうに考えているかということについては、まだ明確な考えを持っておりませんので、はっきりとしたお答えを申し上げられない状態でございます。
  202. 中路雅弘

    ○中路委員 いずれにしても、外務省と防衛局長が入ったこの協議機構だけで、日米の有事の際の共同の作戦に対応したそういう機構、対策というものは十分でないことはわかり切っているのですね。そういう点で私は、当然検討されるべき問題としてお聞きしているのですが、じゃ細かい点は抜きにして、当然考えられるたとえば国内の治安体制、あるいは大きく国鉄や海上保安庁を含めた輸送ですね、そういった問題を一、二点しぼってお考えを聞きましょう。  それは、先ほどお話しになったその関係の小委員会的なものはつくられるわけですか。
  203. 丸山昂

    ○丸山政府委員 繰り返すようでございますが、そういう日本に対する武力侵攻ということでございますから、当然国内が騒然とした状態ということが考えられるわけでございますし、したがって、治安上の必要措置というのも当然講ぜられなければならないだろうというふうに想像はつきます。しかしながら、私どもの方は一つの前提を置きまして、アメリカと当方との関係の問題でございますので、その他各分野にわたるところにつきましては、実際の協議が進行する過程においていろいろ具体的に問題が出てくるということが考えられますので、その時点でひとつ問題を詰めていけばよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  204. 中路雅弘

    ○中路委員 まだなかなか具体的にお話が聞けないわけですけれども、いずれにしてもお認めになっておられるように、治安上の対策の問題もいずれ必要になってくるということですね。そうしますと、この日米の共同作戦を協議する協議の機構を中心にして、治安対策を含めた全体の国内の体制の大きな動員の問題が、その有事の際の動員に向けて検討せざるを得ないものになってくるという点では、この協議機構の問題は非常に重要な意味を持ってくるというふうに私は考えるわけです。  いまもう少し具体的に、たとえば国防会議閣僚懇談会、そういうところに参加されている科学技術庁長官を含めて、恐らくその関係の省庁の問題は当然検討せざるを得ない問題に私は直面するのじゃないかと思うのですが、もう一つ長官からその点についてどういうお考えかお聞きしておきたい。
  205. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ちょっと補足させていただきます。ただいまの先生の御指摘は、ある画において大変重要な問題を示唆されておられるわけでございますが、問題は、この自衛隊米軍との間の問題でございまして、ただいま先生の御指摘の問題は、日本に対して武力侵攻がありました場合において、自衛隊だけが動く場合にいたしましても当然そういう問題は全部解決をしておかなければならない問題でございます。しかしながら御案内のように、自衛隊法の百三条の政令にいたしましても、まだ制定をされておらないという状態でございまして、日今日体でアメリカと相談するということではなくて、日本自体がみずから決めていかなければならない問題がたくさん実は未解決で残されておるわけでございまして、こういった問題については、それ自体としてこれから長い時間をかけて解決をしていかなければならない問題だと思うわけでございます。  それで、私どもがいまここで申し上げております日米間の有事のときの調整と申しますのは、そういう問題が一応その形で処理されるものという前提のもとにおいて、日米間だけでの連絡調整ということに問題をしぼってまいりませんと、これは大変膨大な作業になってしまうというふうに考えるわけでございまして、したがいまして、ただいま御指摘のありました治安の問題とかいろいろな問題につきましては、それはそれとして日本自体が固有に解決をしていくべき問題として、ひとつ今後長い時間をかけて処理してまいるべきではないかというふうに考えるわけでございます。
  206. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほどそういった問題をこの協議機構で専門的なあるいは小委員会的なものをつくって検討していきたいという御答弁なんです。それだから私は、それに関連をして御質問しているわけです。だから、問題を一般的にそらさないで、共同作戦といっても、輸送をどうするかということを抜きにして、じゃ、外務省と防衛庁が中心で、あとアメリカ関係者と共同作戦自身の問題を全体が詰められるか、私はそうはできないと思うのですね。だから先ほど当然皆さんの方も、小委員会的なものを持って検討したいとおっしゃっているから、もう少し具体的に一つ一ついまお聞きしようと思ったのですけれども、それ以上御答弁がないので、改めて論議をしたいと思いますが、長官の方は、いまの問題はまだ発言がないのですか、いいですか。  それから、ちょっときょう後の時間が非常に限られていますので、駆け足で進みますけれども、もう一つは、外務大臣がおられますからこれも一点お聞きしたいのですが、先日も、九日ですか、漁業危機の全国漁民大会が武道館でありまして、領海十二海里の即時宣言についての強い要請が、宣言も決議もされているわけですが、これは先日来の新聞の報道ですけれども、他の委員会でも、この十二海里の宣言の問題と関連して、いわゆる国際海峡、津軽海峡を初めとした国際海峡について、当然ですが非核三原則を領海について厳守をするという、核を持ち込ませないというこの宣言を崩すような発言の示唆、自由航行だとかあるいはシーレーンを設けるとかいうことが出ているという報道も出ているわけですが、私は、この非核三原則をあくまで厳守すべきでありますし、この運用の問題が十二海里宣言のいま検討されている障害の一つとしていろいろ内部で調整されたとすれば、大きな問題だと思うのですが、この委員会で皆さんの方から、このことについての外務省のお考えを一言お聞きしておきたいと思うのです。
  207. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 政府といたしましては、従来、領海十二海里問題については、海洋法会議の結論を待ってから実施することが適当であるという考えで臨んでまいったわけでございますけれどもソ連の漁船の日本近海における操業に端を発しまして、領海十二海里を早急に実施してほしいという強い要望が日本の国内で高まってきているというのが現状であろうと認識いたしております。  そういう状況にかんがみ、従来は海洋法会議の決着を待ってということでございましたけれども、海洋法会議を待たずに領海十二海里の問題を検討をして、できるだけ速やかにその結論を出したいということで、現在関係省庁間で鋭意検討中でございます。  それで、国際海峡の取り扱いの問題につきましても、その検討をいたします場合に当然検討される問題であるわけでございますけれども、これにつきましては、現在目下検討中でございまして、まだ何ら結論が出ている段階ではございません。
  208. 中路雅弘

    ○中路委員 私はこの問題を扱う場合、当然いままでの非核三原則を盛り込んだ、国際海峡についても無害通航の立場をとるべきだということをこの場でも強く主張し、要求しておきたいと思うわけですが、これと関連して津軽海峡などの国際海峡がたとえば無害通航ということになった場合、防衛庁の側からのこれについての検討なり見解を一言、十二海里問題と関連して局長からお聞きしておきたいと思う。
  209. 丸山昂

    ○丸山政府委員 まず単純に三海里が十二海里になるということでございますが、この場合は防衛の区域がふえるわけでございまして、領海領空がそれなりにふえるわけでございますが、全体的に見た場合にはネグリジブルでございますので、特にこのために次の時期の防衛整備計画において特別に手当てをしなければならない、こういう問題はないと思います。  それからいまの国際海峡の問題でございますが、国際海峡につきましては結論的にどういう新しいレジームができるかということがはっきりいたしておりませんので、私どもいまの立場で、軍事的に見てどういう影響があるかということははっきりとした見解を申し上げる段階にございません。
  210. 中路雅弘

    ○中路委員 伝えられるように、たとえば国際海峡の中にシーレーンを設定するとかあるいは自由航行という問題になりますと、文字どおり非核三原則をそこで崩すということになってくると私は思うので、この点ではこの原則をあくまで厳守するという立場でこの問題を一日も早く、また、この前私も大会に行きましたが、漁民の皆さんの一致した要求でもありますので、早期にこの実施に踏み切るようにこの席では強く要望しておきたいというふうに思うわけです。  あと、さっきの事前協議の問題とも関連してくるので幾つかお聞きします。防衛局長に最初お聞きしますが、現在横須賀を母港にしている艦船がミッドウェー初め何隻あるのか、簡単にその装備、能力を含めて、アメリカ局長ですか、どちらからでもお答えいただきたい。
  211. 丸山昂

    ○丸山政府委員 現在横須賀におります第七艦隊の陣容でございますが、まず旗艦のオクラホマシティー、それから空母ミッドウェー、戦闘需品艦ホワイトプレーンズ、この三隻、それから第十五駆逐隊を構成いたしますミサイル巡洋艦ウォーデン、ミサイル駆逐艦パーソンズ、駆逐艦ボーセル及びフリゲート艦三隻、この合計九隻でございます。  それから主要装備といたしましては、空母ミッドウェーの艦載機といたしまして戦闘機のファントム二十四機、攻撃機A6イントルーダー十二機、攻撃機A7コルセア二十四機など合計約八十機の航空機を積載しております。それから、ミサイル巡洋艦には艦対空ミサイルタロス、これは核、非核両用でございます。それから艦対空、ミサイルのテリア、これも核、非核両用でございます。それから対潜ミサイルアスロック、これも核、非核両用でございます。それからミサイル駆逐艦には艦対空ミサイルのターター、これは非核、通常型でございます。それと対潜ミサイルアスロック、これは核、非核両用でございます。これを装備を  いたしております。
  212. 中路雅弘

    ○中路委員 一昨日のこの委員会アメリカ局長が、肝前協議の対象になる配置の変更の問題について、現時点でのお考えですか、基準のようなものをお話しになったわけですけれども、この配置の変更の問題、海も含めて、これは安保改定交渉時の藤山・マッカーサーの口頭了解だということでいつも答弁をされているわけですが、この問題について、たとえば一九六三年の当時の国会の答弁を見ますと、いわゆる一機動部隊、配置の変更で対象になるタスクフォース、これは六三年三月十八日の内閣委員会の議事録を見ますと、当時の防御局長が、空母一ないし二隻を基幹として、それを護衛する駆逐艦六ないし十隻を含むものが一機動部隊と判断するのが常識的であるという答弁もされているわけですね。私はこの答弁から見れば、現在横須賀を母権にしている、根拠地にしているミッドウェーを中心に、それから第七艦隊の旗艦、いまお話しのように佐世保から今度戦闘補給艦が移ってきましたから、こういったのを合わせますと、さみだれ的な形ですけれども、事実上一機動部隊の横須賀配備というのがある意味では完成をしている。かつての国会答弁に従えば事前協議の対象になるというふうに考えるわけです。この口頭了解に基づいた当時の六三年の国会答弁というのは当然アメリカ側も承知しているんじゃないか、アメリカ日本の間で全く中身が違うということでは意味をなさないわけでありますけれども、先日アメリカ局長が答弁をされたのは、これよりはるかに大きい規模を一機動部隊として、それが配置の変更の対象になるんだという答弁をされておるわけですが、いつ見解が——佐世保にエンタープライズが入った時期の三木外務大臣の答弁あたりから変わってきているわけですが、解釈が変わってきたのはアメリカとも打ち合わせをされたのか、いつそれが変わったのか、その辺の経過、問題をひとつ説明していただきたい。
  213. 丸山昂

    ○丸山政府委員 それでは、昭和三十八年三月、衆議院の内閣委員会におきます当時の防衛局長海原氏の発言でございますので、私の方から最初にそれだけ申し上げておきたいと思います。  海原政府委員は「通常空母一隻ないし二隻、これを基幹といたしまして、これを護衛いたしますところの駆逐艦、これも六隻ないし十隻、これは任務によって非常に変って参ります。」ということで、これが一機動部隊の勢力であるという説明を当時いたしておるわけでございます。当時の第七艦隊の実態を過去にさかのぼりまして調べましたところが、当時は空母が五隻でございます。五隻のうち、攻撃型の空母が三隻、それからあとは対潜水艦ヘリ搭載の空母一隻と、それからやはりヘリ搭載の空母一隻でございました。第七艦隊の直轄の五タスクフォース、これは空母タスクフォースのほかに、あといわゆるタイプコマンドと言われるタイプのタスクフォースでございますが、これが当時ございました。それと並行いたしまして、第七艦隊に直轄いたします五つのタスクグループがございました。この関係につきましては、このほかの場所で当時の海原局長から、第七艦隊は五個のタスクフォースと五個のタスクグループからできておるという答弁が出ておるわけでございます。そのうちの空母のタスクフォースは、先ほど申し上げましたように攻撃型空母がそれぞれ三隻ございまして、その一隻について、ここで出ておりますとおり大体六隻ないし十隻の駆逐艦がついて一つのタスクグループを構成をいたしておりました。  したがいまして、当時の海原政府委員の答弁から見ますと、いまここで読み上げましたものはタスクグループをタスクフォースと思い違いをして発言をしておるように私ども思うわけでございます。結局、これだけの規模のタスクグループが三個集まりまして、そこでタスクフォースが当時構成されておったというふうに思うわけでございまして、その点、海原政府委員が勘違いをしておったというふうに私ども判断をせざるを得ないのでございます。
  214. 中路雅弘

    ○中路委員 それは乱暴な論議じゃないですか。いまの六三年に国会で答弁があった問題ですね。しかもこれは事前協議にかかわる重要な問題ですね。それを今日になってあの答弁は思い違いだったということは、じゃ思い違いだったらどうしてその後で訂正をされてないのですか。六三年に国会で答弁されているわけですよ。それが今日まで思い違いだったと言う、タスクフォースはグループのことをフォースと言ったのだということで、事前協議の対象になる一機動部隊をですよ。アメリカの方もそれで何も言ってこなかったのですか。それは間違いだということで、以後今日まで何も言ってこないのですか。当然国会のあれですから、アメリカの方もそういうことで、口頭了解における一機動部隊は、海原局長が国会でこう答弁しているということについて、アメリカ側から何も訂正がない。それはグループのことだということがなければ、アメリカの方もそれを了解しているということを私たちが考えるのは当然じゃないですか、それが基準だというのは。それをきょうになって、それは思い違いだったのだという訂正をされる。これは余りにも乱暴な答弁だと私は思うのですよ。いっそれがはっきりしたのですか。
  215. 丸山昂

    ○丸山政府委員 この海原政府委員の答弁は、これ一回でございまして、その後はずっとすべて実態に即した答弁をしてきております。たまたま先生の御引用になりました最初の海原政府委員の答弁が、いま申し上げたようなことになっておるわけで、この点についてよくいろいろな事情を調査いたしますと、先ほど私が申し上げたようなことであるということでございまして、このタスクフォースの実態につきましては、その後の歴代の防衛局長はすべて実態に即した答弁を申し上げておるのでございまして、その点については矛盾するところはないというふうに考えるわけでございます。
  216. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの第七艦隊の現状と、先日アメリカ局長が現時点での基準だということでお話しになったので見れば、もともと事前協議というのは普通の場合考えられないのですね、あり得ないわけですよ。そういう規模での配置の変更というのはいまの現状ではあり得ないことなんですね、先日のアメリカ局長の基準で考えたら。事前協議があります。配置の変更でいっても。じゃ、いま第七艦隊の空母は何隻全体でいるのですか。そうしてアメリカ局長の答弁から見れば、事前協議とはもともと海においてはあり得ないじゃないですか、そこまで事前協議の配置の変更ということを拡大解釈されれば。
  217. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 現在第七艦隊に配属されております空母は三隻だと承知しております。  そういう事態はあり得ないのではないかというお話でございますけれども、われわれとしてはまさにそういう第七艦隊の三隻の空母が配置されるような事態は平常な事態ではないということは考えます。しかしまさにそういう非常で、正常でない事態の場合における配置における重要な変更であるからこそ事前協議の対象にするわけでございまして、その意味でこの配置の問題について事前協議が行われることは私たちとしては意味があると考えております。  なお、中路委員からミッドウェーその他が現在横須賀を母港にしているということをおっしゃっていらっしゃいますが、この母港という意味は必ずしもはっきりしない概念でございますけれども、われわれの考えております配置というのは、米軍がわが国にあります施設区域を本拠あるいは根拠地として駐留する場合を言うのでございまして、現在のミッドウェーその他の駆逐艦の横須賀におります状況はそういう状況とは異なっておりまして、家族が横須賀及びその周辺に住んでおるために日本への寄港は確かにふえておりますが、これを配置というものとして呼ぶのは適当ではないのではないかと考えております。
  218. 中路雅弘

    ○中路委員 ますます乱暴な言い方になってきているわけですね。家族も全部皆移ってきて、じゃミッドウェーの母港というのはどこだということになるわけですね。横須賀が根拠地であることは間違いないわけですよ。ここを根拠地にして三年間行動している。家族もみんな一千世帯から横須賀へ移ってきている。これがいわゆる配置の変更じゃないということになれば、配置の変更ということももともと海ではあり得なくなりますし、それで基準からいっても普通考えられないような基準を持ち出してやる。全くそれでは事前協議というものは空文に等しいと私は思うのです。かつてタスクフォースということで答弁した基準をいまはグループだ、何分の一かの単位にして、現実にそういう事態が起きているというのに対して、それは事前協議の対象にならないのだということですね。私はこの点では、ミッドウェーが入ってくるときに少し長く論議をしましたから繰り返しませんけれども、いまの答弁は少なくとも海においては出前協議というのは全く空文になっているに等しい。あり得ないのだ。極端に言えば、国民をごまかすための一つの煙幕にしかすぎないというふうにならざるを得ないというふうに考えるわけです。  この問題は改めてまた事前協議の問題全般にわたって論議をしたいと思いますが、もう一つお聞きしておきたいのは、ミッドウェーの問題ですが、かつてミッドウェーが横須賀を根拠地にする際に、当時の大河原アメリカ局長は、大体三年ぐらいか三年半くらいをローテーションにしてミッドウェーは半年ぐらいオーバーホールするのだということを聞いているという答弁をされています。来年は三年目になるわけですが、このミッドウェーの後の問題ですね。たとえばローテーションでオーバーホールで戻るという後の問題について、いま第七艦隊に配置されているキティーホーク、だとかコンステレーションだとか空母がありますけれども、そういうどちらかにかわるのか、あるいは原子力空母エンタープライズがやってくる可能性があるのか、そういった問題についてのお考えと、それから時間もあれなので省略して一緒に聞きますけれども、最初に、ミッドウェーが横須賀へ、根拠地に入ってくるときには、たしか公文書で横須賀市の市長にアメリカ局長の名前で事情を説明した手紙が、私信が出されているわけですね。こういった点で、もし後の艦船について提起があった場合に、地元の地方自治体、県や横須賀市にまたそういう点での事情説明なり何らかの文書を出されるのかどうか、その点をあわせてお聞きします。
  219. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 いま御引用のありました昭和四十八年十月九日のこの委員会におきまして、当時の大河原アメリカ局長がミッドウェーの第七艦隊への配偶は大体三年で、その期間後はアメリカ本国へオーバーホールのために帰国するものと承知しているということを申し上げたことは事実でございます。ただ、その後、実際にこれがいつオーバーホールのために米本土へ帰るのかということは、われわれとしてはアメリカ側から聞いておりません。また、それが仮に三年ぐらいとして、来年の後半以降に帰る場合に、そのかわりの空母が来るのか、またどういうふうな空母が来るのかということにつきましても何ら承知しておりません。これが実情でございます。  それから、仮にそういうふうに来るようになった場合にどうするのかということでございますが、その当時は確かにアメリカ局長から横須賀市長に対して、ミッドウェーが横須賀に来ることについて御説明申し上げる文書を送付いたしております。そのときに、通常型空母(ミッドウェーの予定)というふうに書いてございます。そういう意味で、もしミッドウェーが横須賀を去って、オーバーホールのために米本土に帰るようなことになり、さらに別の空母が来るというふうなことになりましたときは、その前の諸般の経緯からしても、適当に御説明申し上げる文書を出すことは検討いたしたいと考えております。
  220. 中路雅弘

    ○中路委員 これは新しい施設の提供じゃないというお話でありますけれども、しかしミッドウェーが入ってくるときもそうですし、事実上の母港化として、そのときは相当数の家族も移ってくるわけですね。現実にミッドウェーが入ってきた後も地方自治体の行政にも大きな影響を持ちます。たとえば家屋自身もどうするかということで、現にミッドウェーの家族の家屋のあっせんについて横須賀の不動産業界全体に対して米軍の方から協力の申し入れがあって、断られた事実もあります。あるいは市の清掃をどうするとか、こういった問題まで影響していますし、また先日私は、これは局長に直接お電話したのですが、ことしの夏、ミッドウェーの家族の子供が横須賀で由緒のある八幡神社に昼間花火を打ち込んで全焼させて、一千万に上る被害を与えているそれに対してミッドウェーの艦長が来て、五万円の見舞い金を置いたままでそのままになっている。これはいわゆる地位協定で言う軍属でないので、雇用者でないので、家族は補償の対象にならないということでそのままになっている。これも地域では大きな問題になっているわけですね。こういった、地方の住民あるいは行政にも大きな影響を与える問題ですから、私は、当然後の問題が問題になる場合には関係の自治体には少なくとも相談をされる、あるいはさっきの説明の手紙を出される、これはきちっとやっていただきたい。そしてその住民の意思も十分聞いていただきたい。ただ横須賀は、先日初めてですが、与野党一致で市議会として米軍基地の全面的な返還を要求する決議をされているのは御存じだと思いますが、こういう事態だということもよく承知の上で扱っていただきたいというふうに、ひとつ要望も述べておきたいと思います。  あと二十分余りなので、ちょっと二点ばかり駆け足で、施設庁と関連した問題ですがお尋ねしたいと思います。  一つは横浜のノースドックの問題です。新聞報道によりますと、八月二十七日にアメリカの会計検査院が在日米軍基地の統廃合問題などについて議会に報告書を出しているわけですが、その中で、横浜のノースドックを閉鎖して横須賀の海軍基地を使用することで年間約百万ドルの支出削減を図るべきだということを提言しているわけです。横浜の市議会も、関係省庁に対してこのノースピアの全面返還の要求をいま行っているわけですが、施設庁として、この返還について現在までアメリカの方とどういう交渉をやられたのか、日米合同委員会で取り上げられているのかどうか、どのように処理されようとしているのか。伝え聞くところによりますと、アメリカの方は全面返還に難色を示しているということも伝えられていますが、最初にこのノースドックの問題について御答弁を願いたいと思います。
  221. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ノースドックとお尋ねですが、ノースピアだと存じます。横浜のノースピアについては、いまお話がございました報道があったことを私も新聞で拝見しまして、非常に関心を持って見ておるのでございますが、その使用状況は、だんだん船の使用の隻数は減っております。昭和四十七年ごろには年間三百二十七隻入っておったというのがその後ずっと減っておりまして、昨年は百二十六隻、五十年には、十月までですが七十五隻というぐあいに減ってまいっております。  一方、民間の船舶は非常に岸壁の不足を訴えておりますので、このノースピアが果たしてどの程度必要であるかということが大変問題になっておりますが、いまのところ地元の強い要望で、民間船が係留するためにはこのノースピアの岸壁を使うという状況でございます。  そこで、いまお話がございましたように、この返還問題はどうかということでございますが、使用度は先ほど御説明申し上げたようにだんだん減ってきておりますけれども、在日米軍は、この施設が日米安保条約の目的を達する上で必要である、基本的な基幹的な役割りを果たす輸送施設であるというふうに理解しておる、必要な場合に短期間に設置することはなかなか困難な性質の施設である、そういう意味でこれを常時維持したいというふうにしておりますので、現在の使用状況だけを判断のもとにして、これを全面的にすぐ返せということはきわめて困難なことであるというふうに思っております。ただ、先ほど申し上げたように、一方において民間の岸壁の必要は非常に増しておりますので、こういう状況を緩和するため、今後関係機関とよく連絡しまして、米軍に対して便宜の処置がとれるように、先ほど申し上げました係留の要望にこたえるようなことは努めてまいりたいと思っております。
  222. 中路雅弘

    ○中路委員 時間もないので私の方である程度しゃべりながら御質問しますが、ノースピアの使用の問題で、自衛隊の部隊が共同使用しているところがあります。昭和四十八年三月から京浜港湾処理隊が事務所と倉庫の共同使用を合同委員会で決定しているわけですが、もう一つ自衛隊の艦船がこのノースピアの岸壁を使用しているということです。これは何を根拠にして使用されているのですか。
  223. 銅崎富司

    銅崎政府委員 この岸壁使用につきましても、事務所、倉庫の二4(a)の使用承認を得るための合意がありましたときに、このノースドックの岸壁施設、野積み場、それから軌条及びハイウエーへの出入りの使用につきましては、現地の在日米軍合衆国陸軍司令部代表と調整するという合意が成立しまして、それに基づいて使用しておるわけでございます。それで最近の使用では、四十八年にはLST一隻が使用しております。それ以後は使用しておりません。
  224. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの岸壁も共同使用だという問題は、官報告示で出ていますか。
  225. 銅崎富司

    銅崎政府委員 官報告示には出ておりません。
  226. 中路雅弘

    ○中路委員 官報の告示でもこの共同使用については出しておられない。そして私が聞いたところでは、したがって神奈川県や横浜市にも通報してない。だから、神奈川県の渉外部は、ノースピアの共同使用分は倉庫と事務所だけだと施設庁から連絡を受けているということを言っておるのです。そしてまたその旨を横浜市の渉外部にも連絡しているということで、実際にいま全面返還の要請が市民に強いところを、官報告示もしないで、現地の要請している自治体にも連絡をしないで、自衛隊がすでに共同使用しているという経過を見ると、長官が先ほどお話しのように、仕事も相当減っているけれどもアメリカの方が手放さない、そういう意味だけじゃなくて、自衛隊が後押えたいということで、官報告示も出さないですでに岸壁まで共同使用しているという面もあるんじゃないかと疑わざるを得ないわけですね。決められた官報告示もしないで、どうして自衛隊が共同使用しているのか。そして現地の自治体にも伝えない。そういう使用形態をとっているのですか。
  227. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いま御指摘がございましたが、官報告示をしておられない点についてはちょっと事情をつまびらかにいたしておらないので即答しかねるのでございますが、自衛隊がこれを黙って先に既成事実をこしらえて使っていこうというような魂胆はございませんので、その点はひとつ御了承いただきたいと思っております。
  228. 中路雅弘

    ○中路委員 それではこの問題について、アメリカの方もほとんど使用度は少なくなっているわけですし、皆さんの方でも、それを先取りして後で肩がわりをするつもりはないというお話なんで、そうだとすれば、地元が挙げて要望している問題ですし、伝え聞くところによると、飛鳥田市長がアメリカまで行ってもこのことを要請したいというお話も伝わっています。こういう要望をされている問題ですから、ひとつ施設庁の方で外務省とも相談して、この返還の問題について爼上に上せて強くアメリカと交渉するということを要請したいのですが、アメリカの方と話をされますか。
  229. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 先ほどお答えしましたとおり、この施設は一時期の使用状況を見て、それでもって判断をして、全面的に直ちに返せと言える性質のものでございませんので、全面的な返還を直ちに迫るということはきわめて困難なものがあるというように思っておりますが、地元の要望もございますし、それからまた、現実に一般の民間船の岸壁が非常に逼迫しておるという事情もございますので、その辺のところを含んで私ども関係機関と十分協議をしたいと思っております。
  230. 中路雅弘

    ○中路委員 時間なのですけれども、一、二問だけお聞きしたい。  一つは、この委員会でも一、二度取り上げてきた問題ですが、逗子の池子弾薬庫の問題です。先日私が取り上げました久木中学校の運動場として要望されているところですね。今度一部返還をするということになりましたけれどもお話を聞きますと、この後アメリカの方から代替施設の問題を要求しているという話も聞いておりますし、相当高額な施設の要求も出ているそうです。また、代替施設の要求がありますと、その施設ができないと返さないということになると、せっかく長い間の懸案であった中学校の校庭用地、これがまた何年か先になるという事態になれば大変なことですから、私はこの問題について、施設庁の方でいま交渉はどうなっているのか、どこにまだ問題があるのか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  231. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 池子弾薬庫の久木地区については、この前の委員会でも先生のお尋ねでお答え申し上げたのですけれども、返還の条件として、保安さくをこしらえる、それから現在、返還予定地の中に倉庫が十三棟ございますが、そのうちのあるものについては移設をしてほしいという条件がついております。そこで、そういう条件について対米折衝を行った結果、この保安さくについては通常のものでよろしいということ、それから先ほど申し上げました十三棟のうち二棟だけひとつ移設をしてくれ。これは私も現場へ行ってみましたが、相当しっかりした建物で、現在利用価値のあるものでございますから、これを移設をするということは条件として無理からぬことだというふうに話が煮詰まりまして、原則的な合意が成立いたしております。  そこで、これからやることは、この二棟をどこへ建てるかとか、あるいは二棟の建て方についての要望だとか、そういう細部の折衝と、それから予算措置が必要でございます。そして米側とそういう条件についての最終的な話し合いができた後に所要の工事をやって地元に返還するという、返還がいわゆる条件の完成ベースの返還になっておりますので、そういう段取りになってまいります。ただ、いま御指摘にあったように、地元の方も大変熱望しておられまして、早く返してほしいということをかねがね私どもも伺っておりますので、いま申し上げた手順をできるだけ最短距離で取り運ぶように努力してまいりたいというふうに思っております。
  232. 中路雅弘

    ○中路委員 これで終わりますが、かつて、平井さんが施設部長のときですか、池子のもとの部分返還のところの問題で御質問したことがあります。あのときも代替施設の要求があって、そしてりっぱな給油ステーションをつくったんですね。そしてその代替施設のもとの給油ステーションというのは、掘っ立て小屋にドラムかんがほうり込んであって、これを給油施設だと言ってアメリカの方は鉄筋コンクリートのりっぱな施設をつくったじゃないかということで、当時そういう不当な代替施設のあれは今後やらないようにしたいという意味の御答弁もありました。今度の場合、私も現地を見ているのです。りっぱなものだといったって、あれは木造の小屋ですよ。中は幾らか鉄筋が入っているのかもしれませんけれども、木造の小屋なんですよ。十三棟というのは木造なんですよ。聞くところによりますと、一億五千万とかいろいろ言われておりますけれども、あれは壊してしまっても、十三棟処理してもいいくらいなんです。その点もよく詰めていただきたいのと、たとえば代替施設ができてから返すというのではなくて、予算措置ができるとか、あるいは工事に着工するということになればとりあえず地元に返すとか、学校の施設の問題ですからね。あるいはいま整備できるところが大部分ありますね。そういうところは早く整備をするとか、最後に要望を述べておきたいのですが、その点はお話しのように市長の強い要望ですから、ひとつアメリカ側とも強く交渉していただいて、不当な要求については、やはりその点では国の予算も使うわけですから、そういうことにならないようにひとつ交渉を詰めていただきたい、できるだけ早くこの問題を解決していただきたい、このことを終わりに一言述べまして、質問を終わりたいと思います。
  233. 藤尾正行

    藤尾委員長 鬼木勝利君。
  234. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 先般宮澤先生とお約束いたしておりますので、きょうはひとつゆっくり、たっぷりお尋ねをしたいと思います。しかし、七時半までとかいう話ですから、それまではひとつ腰を落ちつけて、坂田防衛庁長官にはその後でまた十分いたしますので、しかしその途中であなたにも関連したことがあるかもしれませんので、御迷惑でしょうが、おつき合いを願います。  宮澤先生にちょっとお尋ねしたいのですが、十日公表されました米下院の国際関係委員会アジア調査団報告書で、同調査団のメンバーの一人であるガイヤー議員はこういうことを報告書に言っておるのですね。「もし韓国に対する明白な攻撃があれば、日本は在日米軍基地の使用を認めるだろうと、宮澤外相が示唆した」これは非常に重大な問題で、去る八月十日に調査団が来日した際に宮澤外相が話された内容に基づいた報告書であると思う。朝鮮半島で武力衝突が起きた場合、在日米軍基地が直ちに戦闘作戦行動、直接発進、その事前協議でイエスと言うことを宮澤外相が米議員団に明確に言われた。私はこれはきわめて重大な問題だと思う。  そこで、まず宮澤外相がそういうことを発言されたか、あるいは言われなかったか、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  235. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は先ほどお答えをいたしたことに関係いたしますが、ちょうど鬼木委員が御在席でいらっしゃいませんでしたので、重複いたしますことをお許しいただきたいと思います。  八月ごろであったと思いますが、このような調査団の方々が、米国の議員でありますが、来られまして、私、会談をいたしました。わが国ばかりでなく、韓国等々周辺の国を回ってこられたのであります。韓国を視察されたのでありまして、当時は今日に比べますとベトナム撤退後の緊張した状態がまだかなり高い状況であったのですが、北鮮が韓国に攻め込んだときに日本の基地の使用はどうなるのかという質問がございました。ただ、この問題については、当然かもしれませんが、私どものように細かい知識を持ってではなく、かなり大ざっぱな質問でありましたので、私がそれに対して、北側が侵入すると言ってもいろいろの態様があるはずである、たとえば何となくいわゆる浸透作戦でじわじわ南に入ってくるというようなのもあり得るだろうし、あるいは国境あたりでちょっとどこかで紛争があるという場合もあり得るであろう、またあるいは大軍をもってなだれ込んでくるという場合もあり得るであろう、そういう態様を具体的に判断をして、それがわが国の平和と安全、朝鮮半島の安定というものに具体的にどのように関係があるかということをまず考えなければ、われわれはただ抽象的に御質問にお答えするわけにはいかないというのが一点です。  それから、確かに基地の使用という質問であったのですが、これは私がちょうどいまここに持っておりますのが今日の夕刊で、恐らく鬼木委員が御使用になっておられますソースと同じと思います。というのは、私どもまだこの報告を手に入れていないものですから。この電報によりますと「もし韓国に対する明白な攻撃があれば、日本は在日米軍基地の使用を認めるだろうと、宮澤外相が示唆した」そのとおりなのでございます。当時の問答もそのとおりなのでして、基地の使用ということを言っておるわけですけれども、これについていわゆる事前協議とかなんとかいう話にはなっていないわけでございます。この点もどの場合が事前協議で、どの場合がそうでないかということも、当然かもしれませんが、この議員の方々は御承知でなくて、したがって私は、どのような場合が事前協議、そうでない場合はそうでないというようなことも、現在の制度を御説明をしておいたのですが、ともかく具体的にどのような侵略があって、それが具体的にわが国の安全と朝鮮半島の平和というものにどういう関係があるかということを具体的な態様で判断をしなければ完全なお答えはできないのであるということを申しまして、もとよりそれがわが国の安全を脅かすという性格のものであれば、事と次第によってはいわゆる基地の使用、さらには事前協議ということが制度の上ではあり得るわけであって、その場合にはわが国はわが国の安全にそれがどのように関連するかということを具体的に判断した上で、制度上イエスと言うこともノーと言うこともある、こういうお答えをいたしたのであります。でございますから、恐らくいわゆる普通の知識を有する米国の議員として、朝鮮半島に非常に大規模な北からの侵入があった場合に、日本にある米軍の基地というものは何かの意味で使用できる可能性があるということをこの調査報告に書かれたものであろうというふうに想像をいたします。
  236. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまあなたの御説明を聞きますと、それは事前協議の対象になるので、規模が大きいか小さいか、いろんなケースがある、十分具体的に検討しなければお答えすることができない、こうあなたはおっしゃった。これは当然のことのようでありますけれども、それでは報告書にあるようなことはあなたおっしゃっていないということであれば、いやしくも権威ある調査報告書が、しかもアメリカの下院において報告された。それがうその報告書だ、それは間違った報告書だ、このようにあなたがおっしゃるとするならば、私はこのままじゃ済まぬと思う。権威ある調査報告書ですからね。しかも、来日して、あなたとひざを突き合わせてお話をなさっておるんだから、その結果をまとめて報告してある。だから、それはおれの言ったことと違う、おれはそんなことは言った覚えはない——事ほどさように、そんな簡単なことでこれは片づけられる問題ではない。いまあなたのおっしゃるように、なるほどきょうの夕刊にも載っている。これは、私はあなたにこんな夕刊まで突きつけてやろうという考えはなかったんだけれども、あなたがそうおっしゃるから申し上げますけれども、私もその夕刊はここに持っておりますが、きょうの夕刊の各紙に全部出ておる。恐らく全国民は皆あなたはそのようにおっしゃったとこれは解釈しますよ。全然これは自分の言ったことと違った報告書だ、このようにおっしゃるわけですか。
  237. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど私はそのようにお答えをしておりませんつもりでありまして、いまここにございますこれは一つの新聞でございますけれども、それによりますと、何議員は「「もし韓国に対する明白な攻撃があれば、日本は在日米軍基地の使用を認めるだろうと、宮沢外相が(調査団に)示唆した」ことを明らかにした。同議員の報告は、この点についてこれ以上詳細に触れていないが、この「宮沢発言」が、朝鮮半島で武力衝突が起きた場合の在日米軍基地からの戦闘作戦行動発進をめぐるものであり、日本政府が事前協議でそれに「イエス」をいうことを外相が米議員団にかなり明確な表現で示したことをうかがわせる。」この部分は、だれかがうかがって、うかがわせると言っておるのでございますね。ですから、その報告書に何と書いてあるかは私は一遍、確かに読んでみようと思っていますが、この新聞で報道された限りでは「うかがわせる」という推測部分は別にいたしまして、この紹介だけでは間違っているともすぐには言えないのでございます。先ほど申しましたように、私が申しましたことは、侵略という行為の態様によって具体的に日本政府が自分の安全との関連で判断をしなければならない問題である。いわんや、それはまだ事前協議の話にまで実はいっていないわけです。質問そのものは。そこまで質問される議員団が御存じなかったわけなんですけれども、ですから詰めて申しますと、三木総理大臣がしばしば答弁しておられますように、朝鮮半島の事態がわが国の平和と安全に関係があるようなことになって、仮に事前協議が起こってくれば、そのときに日本政府は具体的に判断をして、イエスの場合もノーの場合もありますと答弁を何度もしておられますが、いわばこのことを申しておるということになるわけでございますが、実は、質問された米国議員団自身がその辺の理解がきわめて大ざっぱで、これは無理もないと私思いますけれども、専門家でございませんから。大ざっぱであったので、私が具体的な場合を分けて、たてまえ、制度を説明をいたしたわけでございます。
  238. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ところが、いまあなたは「うかがわせる」というような、そんな字句の問題でおっしゃっておるが、いやしくもそういう煩わしい、まぎれやすいようなことをあなたが御発言なさったからこういうことになったんじゃないですか、私一歩譲りましてね。ようございますか。向こうの方にそんなふうに受け取られる。あなたはそういうことは真意でなかったと仮におっしゃっても、いやしくも私が先ほど申し上げておりますように、権威ある調査団の調査報告書ですからね。それをそうあなたのように簡単におっしゃっても、これは容易に私は納得できない。これは重大な問題ですよ。  それでは私が申し上げたいのは、あなた報告書をまだ見てもいないと、こうおっしゃっておる。それじゃひとつその報告書を取り寄せていただきましょう。ようございますか。そして、あなたのおっしゃるような点が、ここは食い違っておる、こういうところは違っておる、直ちに先方にかけ合っていただいて、訂正すべきところは訂正するようにして抗議をしていただきたい。そうしないとこれは国民は納得いたしません。これは重大な問題ですよ。イエスと言う場合もあればノーと言う場合もあるとあなたはおっしゃっております。それはそうでしょう、事前協議の結果ですね。でございましたから、大規模な武力攻撃があった場合はイエスと言う。あなたの御発言で私は申し上げておるのですよ。今度は小規模なものに対しては認めない。そういう点においてもお話し合いになったんじゃないですか。いまあなたのお言葉にもちらちらと出てきたが、大規模の場合、小規模の場合、そういうような場合にはイエスと言う場合もあればノーと言う場合もある。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕 そういう場合の問題についてもお話し合いになったんじゃないですか。どういうふうにその点はお話し合いになりましたか。
  239. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは仰せられるまでもなく、この報告書が公になりましたら私どもも取り寄せて見ておきたいと思いますので、御入り用があれば資料として必要部分をリコピーするなりしてお届けいたしてよろしゅうございます。もし私の言うことが違って書いてございましたら、これは調査団の委員長に私から正式に訂正を申し込みたいと思いますが、しかし私の受けました印象では、どうもそんなに私の言うことを取り違えていないのではないかという感じがいたしますのは、質問も大変に大づかみでございまして、それで私が、ですから攻撃の侵略の態様にもまずよりましょうしという話から、基地の使用ということ自身は、わが国の安全、極東の平和ということに関連があれば、基地というのは普通、現に使用されているわけでございますから、今日でも。ですから基地が使えるかという質問は、実は質問としては余り意味がないので、そこまで私はいろいろ話をしておるので、事前協議なんということが実際は先方から質問になっていないわけなんでございます。それは玄人でございませんから、私は無理もないと思いますけれども、その程度のやりとりでございましたから、余り間違ったこと、そこまで深く書いてないんではないかと私想像しますけれども、想像だけではいけませんから、報告書を取りましてよく検討いたしましてお目にかけますとともに、もし間違っておりましたら私から訂正方を申し入れたいと思います。当時の会談記録は、簡単なものですけれども外務省にもございますと思いますので、それとも比べまして、間違っておりましたら訂正を申し込むことにいたします。
  240. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、韓国が侵略を受けたような場合は、報告書にあるようなことは、あなたは自分の真意でない。そうしますと、韓国に対して大規模な侵略というか攻撃が行われた場合に、わが方としては在日米軍基地からの直接発進を認める、イエスと言う、こういうお考えでございますか。
  241. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでは一応この報告との関連を離れまして、鬼木委員のお尋ねとして、韓国に大規模な侵略が行われた場合、わが国はわが国の基地からの直接戦闘行動を認めるつもりであるかどうか、こういうお尋ねにお答えをいたしますが、それは韓国に行われました侵略の態様、その大きさ等々をまず考えなければならないと存じます。そうしてそれがわが国自身の安全にどのように関係するかということを考えなければならないと思います。そういう状況の中で直接発進についての事前協議がございましたら、それはわが国の安全との関連において、もちろんこれは最終的には総理大臣のされることでございますけれども、具体的に判断をいたすことになろうと思います。条約論といたしましては、その場合にイエスと言うこともあり、ノーと言うこともあるという点はしばしば総理大臣がお答えになっておられるとおりでございます。
  242. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これは私はちょっと不思議に思いますのは、大規模な武力攻撃があった場合、これは大小というよりも、事前協議で、日本国民の総意において在日米軍基地から発進を認めるという場合は、わが国の安全が脅かされるということが第一の問題じゃないですか。戦闘行動の大小にはかかわらぬと私は思うのです。そうじゃないですかね。もし大規模な戦争が起こればすぐに在日米軍基地から発進を認めるということになれば、これは明らかに軍事一体だ、日本韓国と一緒だ、一体だ、こういうことになると思う。われわれには韓国関係ないのですよ。わが国の安全が脅かされるということではないですか。
  243. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのとおりでございますから、先ほどからしばしば、わが国の平和と安全との関連を具体的に判断をいたしまして、と申し上げておるわけでございます。
  244. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 具体的とおっしゃるけれども言葉は具体的だけれども内容は抽象的ですね。だからもう少し丁寧に御説明いただくと私も納得しますけれども、大体いまおっしゃるので——しかし、ただしそれも事前協議において、国民の総意においてそうなった場合は、それはそういうこともあり得るかと私は思いますが、いかなる場合といえども基本として在日米軍基地から発進を許すということは、今度の報告書によるとそのようになっているが、これは断じて許されない。そういうことは、われわれは絶対これを納得するわけにはいかない。今回の報告書によりますと、これはもうあなたのおっしゃる日本の安全が脅かされる場合なんということじゃなくして、それをはるかに大きく越えた飛躍した報告書だと思うのです。先ほどからあなたが十分報告書を見たい、取り寄せたい、そして内容の食い違いがあれば十分これは訂正する、こういうふうにおっしゃっておりますので、その点は私も了承しますが、必ずそれを取り寄せていただいて、こういう点が間違っておるとはっきり訂正していただいて、公表してもらわぬと困る。全部国民はこれを見ていますからね。こんなことで宮澤外相ともあろう人がアメリカ追随一辺倒じゃないか、アメリカに屈服しているのじゃないか、私はそういう非難は免れないと思う。かねがねから、先般も申し上げましたように非常に頭脳明晰、有能の大臣と言われた方が、何ということをやられるのか、われわれ国民を何と思っているのか、私は憤慨にたえなかった。  また私が非常に遺憾に思いますのは、この報告書に、朝鮮は日本の心臓に向けられたあいくちである、こういう政治的決まり文句を使って朝鮮半島に対する関心をあなたが表明された——そういうことをあなたは御説明なさったのですか。いや、わが輩は知らぬとおっしゃるならば、一体だれがそんなことを言ったのか、この点もこれはひとつはっきりしていただきたい。また宮澤外相御自身が、朝鮮は日本の心臓に向けられたあいくちだというようなことを日ごろお考えになっておるのかどうか。何でも話は食い違い、おれは言った覚えはないとおっしゃっておるけれども、あるいはこれに似たようなことでもおっしゃったのじゃないか。宮澤先生、これは笑い事じゃないですよ。  もう一つ言いましょうか。ガイヤー議員によりますと、宮澤外相は、日本国民は心の中では米国なしでは生きられないことを知っている、こういうことをおっしゃったという。いいですか。日本国民は心の中では米国なしでは生きられないことを知っている——あなたは日本国民の心をよく御存じですね。心の中まで、何か高島易断の易者か、あるいは……。何ぼ宮澤外相が頭脳明晰といっても、人の心の中まで全部は……。しかも、日本国民はこう言っている——これもあなたはこのように日ごろからお考えになっておるのですか。じゃあなたはアメリカの外務大臣におなりになったらどうですか。アメリカなしでは生きられぬ——日本の外務大臣としてあなた生きておるじゃないですか。こういうことを憶測してははなはだ相済まぬけれども、宮澤先生はわれわれのわからないところで、アメリカと話し合う場合にはいろいろなことを、国民の知らないところで勝手なことをあなたおっしゃっているんじゃないですか。防衛庁長官が横から友情応援をしておるようだが、その点をひとつ承りたいと思います。
  245. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 正直を申しましてこの報告がございませんので、いまのお尋ねにお答えすることがちょっとむずかしゅうございまして、いわんやアメリカの外務大臣というようなことをおっしゃいますと私は迷惑に存ずるわけですが、その「あいくち」という部分ですが、この某新聞によりますと「また同報告書は、日本国民の間に「朝鮮半島日本の心臓に向けられた短剣だとの常用句が再び表面化している」と指摘した。」こう書いてございます。これは日本国民の間にそういう声があるということを言っておるわけでございましょう。報告を書いた人の観察であると思います。が、それは私が言ったとは別に書いてございませんし、私の使う表現ではございません。等々、報告書がございませんので、こう言ったかああ言ったかと報道でお尋ねがありましても、ちょっと私もお答えをしようがないのでございますけれども、私の申しました結論は、要するに私がこういうことを言ったということについて報告書が述べておりまして、それが違っておりましたらこれは訂正をいたしますし、訂正を申し込めますし、もちろんその訂正につきましてはこれは公にして一向に差し支えないものでございますから、委員会で申し上げて一向に差し支えないと思います。
  246. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 報告書がないから答えができない答えができないという一点張りでおっしゃっておるようですが、あなたがおっしゃったかおっしゃっていないかということはお答えできるはずです。わが輩がそんなことを言った覚えがない、何らかの間違いじゃないか、報告書を見ていないからつまびらかにはわからないけれども、いま鬼木議員が言ったようなことはおれは言った覚えがない、断じてない、こういうくらいのことはあなたおっしゃられるはずなんだ。報告書を見ていないからわからないわからないとおっしゃることはどうも私には理解できない。だから、先ほどから申し上げましたように仮に一歩譲って、それに似通ったようなことをおっしゃったんじゃないか、もしあなたがおっしゃっていないならばだれがそんなことを言ったんだ、こういうことを私は申し上げておるので、これも、私も何も一緒に立ち会ったわけでもなし、私がそこにおったわけでもないから、そういうことが伝わっておるがということでいま大臣に伺っておるわけなんですからね。どうですか、大臣。
  247. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうも私の言った覚えのないことなんでございますけれども、実はこの報道においても「あいくち」云々は宮澤が言ったと書いてないので、日本国民の間にそういう常用句が再び表面化していると報告書が指摘していると書いてございましてね。これは私の言ったことだと書いてございませんから私の関知しないことなので、報道によりましてもそうでございますから、一々どうも自分が言ったと書いてないことについては私が言いませんと申し上げたって構いませんけれども、言った覚えがないわけでございます。
  248. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、それはあなたがおっしゃった、宮澤外務大臣がこのように言ったということはそれには書いてない。書いてないが、いやしくも日本外交のトップである外務大臣がそんなことを言って——あなたはさっき、そんなことは報告書では書いてあるけれども私は言った覚えはないとおっしゃった。その報告書を取り寄せるとおっしゃっているでしょう。そして間違っておるところは訂正するとおっしゃった。そしていまになって、これは宮澤が言ったと書いてないからと言う。そんなことは詭弁です。とんでもない。言語道断です。そんなことをふざけるようだったら承知しませんよ。いやしくも責任者は外務大臣でしょう。だったら、おれの責任じゃない、おれだと書いてないからこの報告書関係ない——さっきあなたは責任を持って取り寄せる、間違っているところは訂正するとおっしゃったじゃないですか。そうしていまになって、宮澤の名前が書いてないからおれは関係ないと言ってにっこり笑うなんて、ふざけている。私はそういうことは承知できません。そういうことをおっしゃるようだったら、七時半までというお約束だけれども明朝まででもやりますよ。許せませんよ。
  249. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何か誤解があるのではないかと思います。そうおしかりを受けるわけは私は実はないと思うのです。つまり私の申し上げておりますことは、報告書は私は取り寄せるつもりなんでございます。そしてその中で、この調査団が自分の意見としてでなく、宮澤がこういうことを言ったという部分について間違っておりましたら、私は訂正を申し込みます。それから、調査団の意見としてこうこうああこうと言うことは、これは私に関係のない調査団の責任でございますから、訂正というようなことではそれはないわけで、意見の相違だというだけのことでございますから、それは私は何も申しません。私の申した限りのことで間違ったことが引用されておりましたら、それは私は訂正をいたします。
  250. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だったら責任者としてあなたがだれがこういうことを言ったかを調査してもらいたいと思うのです。いやしくもこれは調査団からわが国の外交上の問題に対して報告書が出ているのですから、それは責任は外務大臣にあるわけなんですから、あなたが言ってないことを書いてあるというならば、その出所をあなたは調査されることは当然の責任だと私は思う。  そういうことを私が申し上げるとすぐあなたはおっしゃるけれども、あなたが言葉じりをとらえるなら私もとらえますよ。先ほど、報告書を取り寄せます。間違っているところは直します。そして国民に公表します。こうおっしゃった。宮澤が言ったところで間違っておるのはとあなたはおっしゃらなかった。いまあなたはそういうことをおっしゃっている。これはあなたの逃げ口上というものです。
  251. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 つまり報告書はこの米国の調査団の意見でございますから、意見についてはこれは私が何もかれこれ申すつもりはないわけでございます。自由の国の自由な議員が視察をして報告を出す、これは日本政府に報告したわけではない、アメリカの議会に報告するのでございましょうから、それが意見としてどんなに見当違いでも、それは私は何も訂正を申し込む立場にはないわけで、日本の名誉に関するとかいうことがあれば、これは全然別の意味で考えなければならぬことがございますけれども、一般にこういう意見であるということをこの方々が国会議員として米国議会に報告する自由はあるわけでございますから、訂正申し込みというようなことにはそれはならないのだと私は思うのでございます。  それから、「あいくち」というようなことが日本国民の間に常用句になり始めたというようなことも、日本国民のだれがというようなことを聞きましてもこれはちょっとあるいは無理ではないか、一般論として言ったものだろうと思いますけれども、私の責任ある立場でございますから、言ったと称する引用されておりますことに関する限り間違っておりましたら、これは私は訂正を申し込まなければならない、こう思っておりまして、それは報告書を見まして検討をいたし、そういう部分があればそれは公にして一向差し支えないことでございますから御報告もいたします。こういうことでございます。
  252. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それはあなたのおっしゃるとおりですよ。調査団の意見であれば、意見は他人の意見を束縛することはできません。当然のことです。しかし、八月十日の日に調査団が来日した際にあなたと話し合った結果、話し合ったことをまとめて報告書を出している、われわれはこう解釈する。ようございますか。——まあちょっとせかんでいいから、そうせきなさんな。ゆっくりお考えになって、あわてる必要はないのだから。だからいろいろなもろもろのことを、それを調査団が調査して報告しておるのですから、だからいまあなたのおっしゃったように彼ら自身の主観的な意見もあるでしょう、あるいは客観的に彼らが調査した点の意見もあるでしょう。しかし、こういうことを言われた、それが宮澤、宮澤と書いてないからとあなたはおっしゃっているけれども、だから意見と実際のあなたとのお話し合いをなさったことというのはそれはおのずから別の問題だ、それはわかりますよ、私だって。そんなことを言っているんじゃない。ですから、少なくとも国民は、こういう報道があればあなたのおっしゃっておるようなふうには全部解釈していないのですよ。これはとんでもない、重大な問題だ、これは大変だという考えを持っておるから、もし間違ったところがあったり食い違いをしておるところがあったならば、これをよく向こうと話し合って、申し入れて、連絡をとってこれをお直しになったらどうですか、こういうことを私は言っているのですよ。何も筋の通らぬことを言っているんじゃない。どなたにでもわかる話を申し上げておる。だからもう少し的確に、率直に御答弁していただかないというと実際の話困るのですよ。どうも私が言っていることが、何もそんなむちゃくちゃなことを申し上げておるのじゃない。日ごろから私が格別御尊敬申し上げている宮澤先生に何もそんなことを申し上げておるわけじゃないのだから、いかがでございますか。
  253. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も決してふまじめにお答えをするつもりではございません、当初から。あるいは誤解があると思いますのは、この報告書米国の下院議員十何名でしたが、わが国、韓国フィリピンインドネシアなどを訪問しまして、そして「新時代のアジア、今後の米政策への意味あい」という表題だそうでありまして、七十五ページというふうに報道されておりますけれども、その中で日本に関する部分も当然のことながらあるわけでございます。そして、わが国ではもちろん私も会いましたが、そのほか政府関係、民間の関係たくさんの人がこの調査団と会っているようでございます。したがいまして、そういう中から各国についての報告、総合的な報告、日本についての所見というものを調査団がまとめたものであろうというふうにほぼ推察して私は誤りないと思いますので、したがいまして、その中で、私がこうこうのことを申したというような部分がございましてそれが違っておりましたら、これは私もこういう立場でございますから訂正を申し込まなければなりません。が、この報告全部がこの調査団と宮澤とのいわば討論集であるあるいは対話集である、そういう性格のものでしたら、これはいろいろな部分について仮に私がこう言ったと書いてなくても私としては私がただ一人の相手でございましたらいろいろなことを申さなければならぬ立場にあると思いますけれども、報告はそういうものではないわけでございますから、私に関しました部分について誤りがありましたら訂正をしなければいけないと思っております。
  254. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは当然なことだと思います。調査団が各国を調査しておるのですから、そしてたくさんの人と会見したと思います。だが、しかしながら、私が先ほどから申し上げておるように、やはり外交最高責任者である大臣がこの点ははっきりすべきである、国民に対して大きな疑惑を与える、不安を与えるということに対してはあなたの責任である、でございますから、その点を明瞭にしていただきたい、こういうことで御了承いただけますか、いいですか。
  255. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わかりました。つまりわが国についてのゆえない誹謗であるとか、あるいはわが国の外交政策についての基本的な誤解であるとかいうものがありましたら、これはやはり私の言った言わないにかかわらず、重大なことでございますから、それとは意見を異にするということを申してやる必要があるであろうと思います。お説は大体わかりました。
  256. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ですから、いまおっしゃったように、そういう点があったらとおっしゃるけれども、事実あるから、あったらじゃない、ここにこういうことが出ておるから、その点を明らかにしてもらいたい、こういうことでございます。
  257. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 したがいまして、訂正を申し込むあるいは所見を異にする旨を伝えるというために、まず報告書を取りまして、それを見まして検討いたしまして、そういう処置を必要であればとりまして、それはまたそれで御報告を申し上げます。
  258. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それで私も一応それは了承します。先ほどは大臣に御了承願いたいと言ったけれども、実は私の方が了承した方であって……。  長官、お退屈でしょうけれどもしばらくお待ちください。  次に、これは先般から連日のように問題になっておるようでございますが、十二海里の宣言の問題でございますが、これも先日新聞にもあるし、外務委員会ででもあなたがいろいろお話しなさっておるようでございますが、五月ごろには法文化するというようなお話も聞いておりますが、この十二海里を宣言された場合、まだ宣言はしていらっしゃらないのですが、従来どおり日本政府の基本である非核三原則はいささかも変わることなく堅持するということは間違いないですか。その点をまず前提にお尋ねをしたいと思うのです。非核三原則ということは、これはいやしくも国会で決議しました国是でございますから、この点に私は何ら変化はないと思いますが、その点についてちょっと、まず大臣のお答えを願いたい。
  259. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは少し背景がございまして、そこをちょっと御説明申し上げる必要がありますので、お許しをいただきたいと思います。  ただいま御指摘になりましたような問題、その他領海を十二海里にいたしますと、わが国の関係各省庁に関係いたしますたくさんの問題が実はございまして、大変に処理が複雑でもございますので、かねて海洋法会議の議長が要望しておられましたように、世界の海洋法会議がまとまって国際的な合意ができた段階で、わが国としても十二海里の問題を考えることが適当であろうというふうに政府は従来考えてまいったわけでございます。またその方が、各国が自分に都合のいいところだけを早く先取りをいたしますと、ひょっとしますと海の国際法というものがついにできずに、無法律状態になってしまうという心配があって、そうなりますと、海洋国であるわが国は、恐らく相対的には国益は損をするという心配がある、そういうふうに実は考えておりましたので、この問題の決定は、海洋法会議の終結を持ってというふうに政府は従来考えてまいったわけでございます。  しかるところ、ソ連漁船のわが国近海での操業が今冬も始まりまして、漁民が非常にいろいろな難儀に遭っておるという訴えがたくさん出てまいりましたので、そうなりますと、本来の政府の考えておりましたことはさておきまして、何とかこの問題を考える方法はないか、等閑に付すこともできないという雰囲気に、環境になってまいりましたので、十一月の中旬でございましたが、ともかくこの際領海十二海里の問題を関係各省庁で再検討をしてみようということで、農林大臣と私とで内閣官房にそのような労をとってもらいたいということを申し込みまして、ただいま各省庁が自分に関係のある部分を持ち寄りまして検討いたしておるわけでございます。したがいまして、伝えられるごとく、領海十二海里をすることが決まったのだということではございませんで、ただいまいろいろな各般の問題を検討しておるということでございます。  ただいま鬼木議員の御指摘になりました問題もそのうちの大切なものの一つでございます。したがいまして、検討がまだ始められたところでございますので、それにつきましての最終的な決定はもうしばらくお待ちをいただきませんと申し上げられないというのが現状でございます。
  260. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、海洋法会議の結果待ちだということになりますと、そういうことになった場合あるいは特別な特例を設ける——自由航行を許すとかあるいは航路帯をつくるとか、海洋法会議の結果を待つということになればそういうことになるのじゃないですか。ですから、これは一方的にいわゆる十二海里ということを宣言して差し支えはないのじゃないですか。
  261. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はその結果待ちとかつて思っておったわけでございますけれども、それだけではなかなか現実に、この冬もソ連の操業が始まりまして、それが南下をするというのが昨年の経験でもあったわけでございますから、結果待ちとばかりも言っていられないような緊急の問題が生まれてきましたので、一遍再検討してみるかということになったわけでございます。  それで、宣言ならばいつでもできるのではないかというお尋ねでございますが、漁業専管水域の宣言であれば恐らく何どきでもできますし、外国にもそういう例はたくさんあるわけでございますが、領海ということになりますと、現在の領海三海里はそのようないわば国際法が事実上できておりましたから、わが国も同じことを宣言するということでよかったわけでございますけれども、現在のところ十二海里というのがまだ国際法上の合意になっておるとは思いにくい。そうしておる国もございますけれども、三海里でとどまっておる国もたくさんあるということでありますから、ただ宣言ということではなくて、そのための立法が要るのではないかという意見が相当強いわけでございます。この点も実は政府部内でまだ検討中でございます。したがいまして、単純な宣言では足りないのではないか。実際その宣言を実施いたさなければならぬわけでございますから、有効ならしめなければならぬとすれば、そのためには法的な幾つかの措置が要るのではないかという有力な意見がありまして、それでその点もただいま検討いたしておるわけなんでございます。
  262. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 海洋法会議の結果を待つというようなことになった場合、それでは、たとえば津軽海峡のごとき、十二海里ということになると、全部日本の領海ですね。そうしますと、その中に自由航路帯をつくるとかということになった場合、これは国際法的にどういう地位になるのか、あるいはまた日本の主権はどのように働くのか、あるいはまた日本の領海でありながらそれは公海と同じような性質のものになるのじゃないか、こういう問題がたくさん出てくると私は思うのですよ。ただ、海洋法会議の結果待ちだ結果待ちだなんということをおっしゃっておると、そういう問題が出てくるのじゃないか。そういう点をどのようにお考えになっておりますか。
  263. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、それでは詳しく政府委員から御説明申し上げますけれども、海洋法会議が結論を出しましたらば、それは海に関する新しい国際法典というものができてくるわけでございますから、これは国際法にいわばなるわけでございますが、御承知のようにまだそこまでいっていないわけでございます。前回ジュネーブ会議が終わりましたときに、各国に配付されました統一草案と申しますか、そういうようなものでは、いまのようなケースは新しく国際海峡という観念を導入しよう、つまり国際法上新しく国際海峡というものがそういう場合にできていく、こういうことを統一草案は示唆をしておって、多くの有力国がそれにいわば賛同をしてきておるわけでございます。ですから、それが国際法になりますれば、当然これは世界各国そういう制度を採用するということになることになろうと存ぜられます。しかし、まだそこまで最終段階に国際海洋法会議はいっていないというのがただいまの状況でございます。
  264. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 この領海十二海里ということはこれは条約法ではないとしても、すでにもう世界各国の大勢だと私は思う。また、いかなる国も領海十二海里ということに対して抗議とかあるいは反対を表明している国はないと私は承知しておる、世界の大勢としてですよ。そうしますと領海十二海里は条約法ではなくて一つの慣習法だと考えても差し支えない。外務大臣は慣習法じゃないとおっしゃるかもしれぬけれども、私はそのように考えても差し支えないんじゃないかと思う。現在の領海三海里も各国の宣言によるもので、各国が皆三海里ということを宣言した。ですからこれを十二海里ということに、何もいまおっしゃるように右顧左べんされる必要はないと私は思う。その点どうですか。
  265. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 若干技術的な点がございますので私から御説明申し上げます。  まず領海十二海里はすでに国際法的には慣習法として確立されていると考えるべきではないだろうかという点の御指摘があったわけでございますが、私どもは現時点においてはまだ国際慣習法として確立していると判断すべきではないであろうと考えております。  その理由といたしましては、私どもが調査いたしましたところでは、五十四カ国が現在十二海里を実施いたしております。これは総数百二十三カ国でございますから約五分の二が実施しているということになるわけでございます。これに対しまして三海里をとっております国が二十五カ国ございます。これはしたがいまして約五分の一ということになります。十二海里をとっております国の数からいいますとその約半数ということでございます。したがいまして、非常に多数の国が十二海里を実施しているということは申せられますけれども、まだそれが圧倒的多数を占めているという状況ではないと考えております。なお、この三海里をとっております国を世界の船腹保有量、海運という観点から見ますと、商船の船腹保有量——領海三海里それから四海里という立場をとっておる国、それにリベリア、御承知のごとくリベリアには非常に多数の置籍船が置かれているわけでございますが、このリベリアの船腹を加えますと、過半の国は三海里をとっているという状況が出てまいるわけでございます。  それからもう一つの理由といたしましては、先ほど大臣も申されましたけれども、漁業専管水域につきましては昨年国際司法裁判所の判決が出ておりまして、その判決の中で、現時点においては十二海里の範囲内において漁業専管水域を設定することは国際慣習法上の権利として確立されていると認めるということが出ております。しかし領海に関してはこういう趣旨の国際司法裁判所の判断というものはまだ示されていないわけでございます。したがいまして、現状におきまして領海十二海里が国際法上すでに慣習法として確立されているという状況はないものと考えております。ただ、多数の国がすでに十二海里を実施いたしておりますから、その事実にかんがみましてわが国が対外的な関係において十二海里を実施いたしましても、そのこと自体について抗議をしてくる国は恐らくないであろうというふうに現在私どもとしては判断しているわけでございます。
  266. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だから私がさっき言ったとおりですね。これは条約法で縛られるものじゃないのだから慣習法によってやっていいんじゃないか。百二十三カ国のうち五十四カ国だ、しかし三海里を現にとっておるのはわずかに二十何カ国ですからね。だから私が言っておるのは、海洋法会議の結果を待っておる必要はないんじゃないか、それはどうですか、条約局長
  267. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 先ほど大臣が申されましたごとく、従来は政府としては海洋法会議の結果を待つという態度をとっておりましたけれども、最近の国内の情勢にかんがみ、海洋法会議の結果を待たずに十二海里領海を実施するについての問題を検討し、できるだけ早急にその結論を出すという方針で現在鋭意関係省庁の間で検討を進めている段階でございます。  その際に、現時点においてわが国が一方的に領海十二海里を実施することについては法律を制定する必要があるのじゃないかという意見が出てまいっているわけでございます。これは先ほど私が申しましたように、対外的な関係においては十二海里を実施してもそれに対して異議を申し立ててくる国は恐らくないであろうという判断からしますると、対外的な関係においては実施できるということだと思います。しかしながら、他方日本の領域が広がるわけでございますから日本の法令の適用範囲がそこまで及ぶということになります。その場合に、主として取り締まり管轄権という観点から十分実効的な取り締まりが行われなければならないということになるわけでございますけれども、現時点においてまだ領海十二海里が国際慣習法として確立されていないという観点から考えますと、そこは法律が制定されなければならないのじゃないかという点が出てくるわけでございます。この点はまだ結論が出ているわけではございませんで、そういう有力な意見が出ているというのが現在の段階でございますので、実はまだ確定的な結論を申し上げるには至っておりません。しかし条約の成立を待って実施するということでございますれば、条約は当然のことながら国会に提出して御承認を経た上で批准をするということになりますから、それは直ちに国内法的な効果を持つわけでございます。しかし、その条約の成立を待たずに実施する場合にはやはり法律が必要ではないかということも、問題点としては十分検討しなければならないということで現在検討をしているわけでございます。
  268. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それではわが国が領海十二海里とする場合の手続として結論を出してもらいたい。  そこで、私は結論としてお尋ねしますが、それではわが方の宣言のみでいいのか、それから条約化しないでいいのか、それから各国政府に通告してその承認あるいはまた了解を得る必要があるのか、手続の問題としてその三点をまとめて、くだくだ言わぬでいいからきちっとお答えください。
  269. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 おしまいの方から申し上げますと、各国に対する通報が必要であるかどうか、各国に了解を求める必要があるかどうかということにつきましては、仮にわが国が領海十二海里を実施しました場合にその特段の必要はないと考えます。しかしながら、宣言のみで足りるか、法律が必要であるかという点は、まさしく現在実は検討中でございまして、いまこの段階で私から宣言のみで足りるあるいは法律が必要であるということを確定的に申し上げられない状況でございますので、御了承をいただきたいと思います。
  270. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 もう一つ条約化……。
  271. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 条約によって領海の幅員を拡張する方法は確かにあるわけでございます。まさしく現在海洋法会議で進められております検討の条約案というものが、その中に領海の幅員を十二海里までは各沿岸国が設定することができるという趣旨の規定を入れておるわけでございますから、条約という手続によって設定するという方法は可能であります。しかし、いま申し上げておりますのは、それによらずに実施するということを検討しているわけでございますので、そこで単なる宣言によってできるか、あるいは法律が必要であるかということが問題になるわけでございます。
  272. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それともう一つ念を押しておきたいのは、先ほど大臣もあなたも、海洋法会議の結果を待っておる、いままではそうだった、しかしその必要はないと思う、こういうことをちらっとおっしゃったようだが、海洋法会議の結果待ちということは必要ないんですね。
  273. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その方がわが国の全体の国益とかということを考えますと本来望ましいと私ども思ってまいりましたけれども、それをやっておりますと、ソ連船の操業がこれからどんどんわが近海に及ぶということで、漁民が非常に心配しておられるというもっともなところがあるものですから、少し急いで再検討できないかということでやっておるわけでございます。
  274. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 わかりました。時間がないので急いで聞きますが、領海十二海里は世界の趨勢だということを先ほど条約局長も言われ、私も申し上げた。だから、第三国からこれに対する反対だとか文句は出ておらぬというのは承っておる、そういうふうに承知している、私はこう言ったのですよ。すると、あなたも条約局長も大体これには反対はないものだと思う、反対はあっておらぬということを先ほど言われました。そうしますと、百二十三カ国あるうちの五十何カ国だ、だから率からいけばまだ少ないけれども、しかし反対はない、こういうことをおっしゃった。すると、十二海里に対する第三国の反対は今日の情勢ではない、このように理解してよろしゅうございますね。
  275. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 一つ補足して申し上げなければなりませんのは、なぜ従来海洋法会議の結果を待つことが適当であると政府が考えておったかと申しますと、御承知のように、海洋法会議におきましては領海の問題のみならずいろいろな、非常に多くの問題が討議されているわけでございます。その中でなかんずく領海の幅員の問題、海峡の通航の問題、それから経済水域の問題、この三つの大きな問題がパッケージディールとして論議されておるというのが実情でございます。したがいまして、その中の一つをある国が自分の利益にかなうからといって一方的に実施するということになりますと、いわば海洋法会議における結果の先取りをするということになるわけでございます。その面からしますると、わが国がこの段階で一方的な措置をとるということは、実は国際協調という観点から見ますると余り望ましくないと私どもは考えております。特に二百海里につきましては、現在メキシコあるいはアメリカ等において立法化の動きが進んでいるわけでございます。これに対してわが国は重大な関心を表明しあるいは抗議をするという立場をとっておりますものですから、その日本がみずから一方的な措置をとるということになりますと、これはそういう国々に対しては非常に大きな口実を与えることになる、そういう側面がございます。したがいまして、その観点からしますると余り望ましいとは言えないと思います。しかしながら、現実日本の国内において高まっております領海十二海里に対する要望、それについては政府としても真剣に検討をしなければならないということで現在検討をしているというのが現状でございます。
  276. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 わかりました。  これに関連して、防衛庁長官も少し御退屈のようだからお尋ねしたいと思いますが、十二月十日、きのうですか、毎日新聞の報道によると、防衛庁は南西諸島から沖繩にかけての海域には年に数回、米ソの核装備潜水艦の通航を確認しておる、こういうことが出ておりましたが、いかなる方法によってこれを確認されたのか、またこの米ソ核装備の潜水艦の航路は、わが国が領海十二海里とした場合にわが国の領海に入っておるのか、わが国の領海となる水域であるかどうか、その二点について防衛局長ちょっと……。
  277. 丸山昂

    ○丸山政府委員 実はその記事を見まして、私どもの方でございますと海上自衛隊でございますが、そういう事実があるかどうかを調査させましたところが、そういう事実がないということでございます。結局そういう潜水艦を見たこともございませんし、それからもちろんその領海を通過したというような事実ももちろんないわけでございます。潜水艦はございません。
  278. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これまたおかしな話で、奇々怪々なことばかりだな。防衛局長も知らない。防衛庁長官も御存じないだろう、知らぬ顔しておるから。だれも知らないこういう情報がどこから出るのですか。     〔木野委員長代理退席、委員長着席〕 これは重大な問題ですからね。日本の領海、南西諸島から沖繩にかけての海域には年に数回、はっきり、しかも米ソの核装備の潜水艦の通過を確認しておる。これはどういうことで確認したのですか。またそういう事実はないとおっしゃるのだが、これは事実があるといったら大変ですよ。防衛庁長官はさっそく首だ。そういうことを厳重にひとつ調査してくださいよ。あなたどこにお聞きになったか知らないけれども、そんなことはありませんなんて簡単に言われるが、これは厳重に調査してもらいたい。いますぐというわけにはいかぬでしょうがね。せっかく防衛庁長官がお見えになっているからちょっと目覚ましにひとつ……。  次にちょっとお尋ねしたいのですが、一九三六年の海峡制度に関する条約、これは無論日本は入ってないようですね。ヨーロッパ諸国のようですが「海峡ニ於ケル海路ノ通過及航行ノ自由ノ原則ヲ承認シ且確認ス」こういうことを規定してあるようです。ところが今日の新しい事態において、この条約に類似の海峡に関する国際条約をつくるという動きはないのか、そういう動きがあるのか。しかしこの場合でも、わが国は特例を設けちゃいけない。つまり非核三原則の国是があるから、これに反する条約には参加できない、こう私は思う。これは日本はこの海峡制度には入っていませんから、そういう条約には関係ないと思いまするが、政府の見解を私は聞いておきたい。非核三原則ということは、先ほども申しましたようにこれは国会で決議した重大なる国是でございます。いかなる場合といえども、これは絶対堅持しなければならぬ。その点について外務大臣あるいは条約局長でも……。
  279. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 海峡におきます軍艦の通航に関する条約は現在何ら交渉されておりませんし、また政府としてはそのような条約を交渉する意図を全く持っておりません。
  280. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 わかりました。じゃ、そういう意図は全然日本はない。  先ほど条約局長もちらっとお話しをされたが、わが国が領海十二海里とする場合、何らかの法改正あるいは立法化が必要になると思うが、これについて、まず条約局長で結構ですがお答えを願いたい。漁業についてあるいは出入国管理法ですね、あるいは防疫検査あるいは密輸防止とか、いろいろこういう取り締まりのあれもあるのですが、こういうことについて、領海十二海里とすること自体について何か立法化の必要があるのか、まずそれをお聞きして、その次ちょっとあるのですが、ひとつそれを話してください。
  281. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 その前に、先ほどの私の答弁ちょっと補足させていただきたいと思いますが、海峡の軍艦の通航について特別の条約を交渉する意向は現在政府としては何ら持っていないわけでございます。ただ、海洋法会議において作成されます海洋に関する総括と申しますか総合的な条約、その中では船舶の問題、軍艦の問題というのは当然入ってまいります。しかしそれはいわば一般条約という形で出てまいりますので、特別の条約については交渉するあるいは締結するという考えは現在全く持っていないということでございます。  それから、ただいま御質問がございました、領海を十二海里に拡張することに伴って生じます国内法上の問題につきましては、まず第一番に領海の幅員を十二海里まで広げること自体について法律が要るか要らないかという問題を、現在の時点では関係省庁間で詰めている段階でございます。その結果、法律が必要であるという結論が出ますると、その結論に従って今度はいろいろな関係省庁、これは恐らくほとんどの省庁の所管事項に関係してくると私どもは予想しておりますけれども、について国内法上の手当てが必要であるかどうか、現行法の改正なりまた新しい関係法をつくる必要があるかどうかという問題を検討していかなければならないだろうと思います。  現在の作業の段階では、まず領海の幅員を広げること自体について法律を制定する必要があるかどうかという問題点を詰めている段階でございまして、その結論が出ました上で、今度は関係法、いろいろな現在ございますところの国内法について手当てをする必要があるかどうかということを詳細に全面的に検討していかなければならないだろうというふうに考えております。
  282. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、関係法案とかあるいは国内法の、つまり法の改正というようなことになりますと無論国会の承認を求めなければならぬ、このように理解してようございますね。
  283. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 法律を制定するということになれば、これはもう当然国会に法案を提出いたしまして御審議をいただくということになります。
  284. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 十二月十一日の読売新聞に出ておったのでございますが、政府は領海十二海里を設定するからこの中間に自由通航を認める、いわゆる航路帯を設置する、こういうことが言われておる。このことは非核三原則を無視したことであり、重大な問題であるが、どうだ。こういうことが出るというのは、条約局長は、あれは参議院であったかな、答弁したですね、そういうことを認めたようなことを。いや、時間がないから、ここへ新聞を持ってきているんだ、あなたの言ったこと。何でも持ってきているから、言えと言うなら一晩でも言うがね。条約局長が、領海内であっても非核三原則の適用例外もあり得るとの考え方をほのめかした。いいか。これはまた宮澤外務大臣に言わせると、そういうことは断言しておらぬとか、言った覚えはない、こう言われるけれども、あなたじゃないんだ。ほのめかした。なかなか新聞というのはうまいことを書く。だからこういうことが出るんだと私は思うが、非核三原則というようなことを条約局長が、勝手にそんなことをあなたは発言しましたか。無論これは議事録を見ればすぐわかる、大体見たけれども。ちょっと言ってください。
  285. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 そのとき、それは衆議院の外務委員会でございますが、その席上でも私が申し上げましたけれども、私の立場において非核三原則を変更するあるいは修正するというようなことを申すべき筋合いではないということは十分に私自身心得ているわけでございます。  その自由通航でありますとか航路帯の設置とかという問題は、海洋法会議に関連しての御質問がございましたので、海洋法会議においてそういう考え方のもとに現在単一草案というものが各国に配付されているということを御説明申し上げたわけでございます。
  286. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いやしかし、たとえ海洋法会議がどうなろうとこうなろうと、ようございますか——これは今度は大臣に聞こう。いかなる海洋法の会議でどんなことの結果が出ようが、あなたいまおっしゃった、それは以前は海洋法会議の結果を待っておった、今日はもう待たないと先ほどはっきり言われた。だったら、いま、松永さんですか、あなたは。松永条約局長だな。何の根拠であなたはこんなことを言うのですか。あなた方の言われることはどうも首尾一貫しない。以前は海洋法会議の結論を待ってからということにしておりましたけれども、もう今日はその必要はないと、こう言っておきながら、いまあなたは、その結果によってどうでございますというようなことをほのめかしたんだね、これね。とんでもない。何回も私が申し上げますように、非核三原則ということは、いやしくも国会において決議をしたことですよ。いかなる場合といえども、天地転動しても非核三原則は堅持し、厳守しなければならぬ。それほどこれは、いやしくも国是ですよね、厳粛なものです。それを松永局長は、あなたがどんなに偉いか知らぬけれども、国会で決議したことを自分の自己判断、自分の主観によって、いやしくも国会において、外務委員会においてこういうことを答弁するというのはもってのほかだ。何と考えておるのか。外務大臣いかがですか。
  287. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 私のことでございますので、私自身から御説明申し上げたいと思います。  いま申し上げましたように、非核三原則は三木総理大臣もたびたび国会で言明しておられますように、これは忠実に遵守するというのが現在の内閣の最高方針と申しますか、基本政策であると私も了解いたしております。したがいまして、その原則を修正するようなことを私の口から、私の立場から申すべき筋合いのものではないということも私は十分承知しておりますし、そのようなことを委員会において申し上げたことはございません。
  288. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これは先ほどから何回も言っておるように、同じことを繰り返すようですけれども、いやしくもそういうようなことに受け取られるような発言があったということは、これは私はまことに遺憾です。それはあなたのお気持ちではなかったかもしれぬけれども、このように皆大きな見出しで「津軽など自由通航」ようございますか。「領海十二海里へ政府首脳、非核一角崩れる」持ち込みは許すということになればですよ。持たない、つくらない、持ち込まないという、持ち込まないということは崩される。領海十二海里宣言の場合、非核三原則にも例外が認められる、このように出ている。じゃ大臣にお尋ねしますが、いかなる場合といえども日本は非核三原則は絶対厳守する、堅持するということを外務大臣からお言葉を承りたい。
  289. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのとおりでございます。  そこで、先ほどから条約局長にいろいろお尋ねもあるいはおしかりもありますのは、それはこういうことなんでございます。この間衆議院の外務委員会で、前回の海洋法会議の最終に出されました統一草案というものがございまして、その中に国際海峡というようなものについてこういうことでいったらどうかということが書いてございます。そのことを御紹介したわけでございますけれども、これはもう政府委員としては当然、どういうことが書いてあるかといえば、公になったものですから、御紹介をしたわけです。  その考え方は、つまり現在われわれは非核三原則というものを持っておりまして、これは領土、領海、領空、わが国の領海に適用があるもので、公海に適用があるわけではございません。公海にはわが国のそのような権限が一般的に及ばないわけでございますから。ところで、その今度領海を広げることになれば、従来公海であった部分がそれだけ領海に変化していくわけでありますけれども、わが国のタンカーがあちこち通っておりますように、その通っておる部分について領海になってしまって、もう自由に通さないというようなことを主権国が言い出したのでは、世界の海運というものはどうもしようがなくなってしまいますから、お互いにそれではいけなかろう、したがって一定の国際海峡というようなものをつくる方がいいということがその統一草案に書いてある、そういう国際法が生まれる可能性があるということを御紹介したわけでございます。
  290. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 その国際法の紹介、説明をされたことは、それは結構だと思う。じゃ松永条約局長の説明は舌足らずであった。そういう国際法の関連はございますけれども、わが国におきましては非核三原則の鉄則がございますので、国是がございますので、これは断じてわが国においては適用いたしません、どうですか大臣、そこまではっきり言わないと、こういう紛らわしいことになってくる。どうだ、条約局長
  291. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 そのときは御質問が、海洋法会議との関連において御質問が出てきましたものですから、その御説明を私は申し上げたわけでございます。  なおその海洋法会議日本政府がとっております立場、これはいま大臣からも簡単にお触れになりましたけれども、わが国が資源の大部分を海外の供給源に依存しているという事実、また貿易立国、海運立国としてわが国自身の生存を確保しているという基本的な立場がございます。そういう立場から、いわゆる国際海峡については一般領海に比してより自由な通航が認められることが望ましいというのが海洋法会議に対して私どもがとっております立場でございます。  それからさらに、そのときちょっと申し上げましたけれども、単一草案に示されているような国際海峡に関する制度、これは来年の三月からニューヨークで開かれます海洋法会議においてその案を中心としてコンセンサスをまとめるような努力が恐らく展開されるであろうということを申し上げたわけでございます。
  292. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、だから海洋法会議の事情をあなたがいろいろ話されて、海洋法会議ではこういうことがありましょう、こういうことも向こうでは望むかもしれません、いろいろなことを、もろもろのことをあなた説明されて、だがしかし、日本におきましては自由航行とかあるいは航路帯をつくるとかいうようなことは絶対いたしません、非核三原則の立場を堅持いたしますということまであなたがおっしゃればこういう問題は起こらなかったと思うと、私はいま愚見を述べているのです。舌足らずじゃなかったか。見たところはなかなかりっぱな貴公子だけれども、わからぬところにわからぬことがあるようでは舌が短いのじゃないかということを私は言っている。どうですか、私の考えは。
  293. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 そのときに私は申し上げておりますが、非核三原則に関する基本政策については私も十分認識しているわけでございます。それで新しく領海を日本が一方的に実施することに伴ってきます問題につきましては、海峡の問題も含めまして現在まだ何ら結論が出ておりませんで、まだいま検討中でございます。  いま検討中でありますのは、先ほど申し上げましたように、法律的な側面関係省庁間で詰めて検討しているという段階でございまして、新しい問題としての、すなわち日本の立法的な措置としての領海の問題、これについては現在、もっぱら関係省庁の間で検討中でありますということを申し上げておりまして、そのことはこの間の委員会においても私ははっきり申し上げているわけでございます。
  294. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ところが、あなたのおっしゃるのはそこがはっきりしていないんだ。大臣、お聞きになるとわかるでしょう。そういう国内法がどうだとか海洋法がどうだとか会議がどうだとか、私は何もそれを否定しているのではない、その説明は結構だと思う。しかし、質問をしている方は、聞きたいところは非核三原則を堅持するかということを聞きたいのだから、その点のとどめをあなたが刺さないから、ただそういう説明ばかりに終わるから、では説明のいかんによってはこういうことになるのだ。というのは、いいですか、新聞にも載っておるのですよ。先ほど言ったように、あなたがほのめかした。「野党側はこの発言をとらえ、政府が領海内への核艦船の自由航行を認め、非核三原則を後退させるものだと強く反発しており、」この検討中ということが、領海十二海里のああいう津軽海峡みたいなところを通すか通さぬかということを検討している、この意味に解釈しておる。通すということになれば自由航海もありましょうし、航路帯をつくることもあろう。無害通航ということになればこれはチェックするということになるのだが、だからどうして通すかということを検討している、こうおっしゃる。こうしか解釈できない。いかなる場合といえども、いかなる事態になりましても、断じて非核三原則は堅持しますから御了承願いたい、なぜあなたはこう言わなかったか。だからこういう物議を醸すではないか、こう私が言っているのがあなた御了解できないのですか。わからないのですか。大臣、どうですか、私が言っているのは。
  295. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それで私が先ほどのようなことを実は申し上げたわけでございます。従来、領海というものがあり、公海というものがあるわけでございますが、領海を仮に十二海里に広げるとすれば、これが全部完全な国家主権の下に入れば、わが国のようにたくさんのタンカーがあちこちの海峡を通っている国が世界にたくさんございます。そういうところで自由に航海ができなくなれば、世界の海運に非常に支障を生ずるおそれがございます。そこで今度の場合、いわゆる国際海峡という新しい制度を設けることが必要ではないかということを単一草案が言っておるわけでございますから、そういう結論になる可能性が高い。その場合わが国は、御指摘のようにそれにどう対処すべきかという問題があるわけでございますから、それはやはり政府部内で検討しなければならない一つの大切な問題である、こう申し上げておるわけでございます。
  296. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 どうも隔靴掻痒の感があって、委員長にちょっとお尋ねしたいのですけれども、外務大臣の時間が七時半までということになっているのです。まだ外務大臣にお尋ねしたい点がいっぱいあるのですけれども、これはどういうふうにしていただけますか。
  297. 藤尾正行

    藤尾委員長 鬼木委員に申し上げますが、外務大臣の所用は前々から申し上げてございますように渉外事項でございまして、相手があることでございますので、約束はできるだけ守ってやらなければいけない、そう思います。しかしながら、来週になりますと外務大臣は外国にお出かけになられまして、来週の私どもの審議日には外務大臣は御臨席はできません。そこで、もし鬼木委員の外務大臣に対する御質問がございましたならば、それは書類でお出しをいただいて、それに対して外務大臣の書類による御答弁をつけさしていただきたい、かように考えますが、いかがでございましょう。
  298. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いま委員長お話で、私も七時半までということのお約束でございましたから、約束はお守りいたします。  なお、外務大臣に対してお尋ねしたい点がたくさんございますけれども、お約束の時間内に私が全部お尋ねができなかったということは、私にも罪がございますので、外務大臣も急におかわりになるということもないだろうから、ますます御発展だと思います。機会もあるかと思いますし、あるいはまた、要すれば書面ででもお尋ねするということにいたしまして、一応これで外務大臣に対する私の質問は終了いたします。  大変外務大臣、いろいろ御無礼なことを申し上げましたけれども、その点はあしからず。
  299. 藤尾正行

    藤尾委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  300. 藤尾正行

    藤尾委員長 では始めてください。  鬼木君。
  301. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 防衛庁長官にお尋ねをしたいと思いますが、朝鮮半島において有事の際、在韓邦人の生命財産をどのようにして守られるのか、これは大体外務大臣に大部分お尋ねをしたいのですが、坂田長官は十一月二十日ですか、当委員会で、サイゴン陥落の際問題となったように在外邦人の救出については真剣に考えなくてはならぬ——これは抽象的ですからね、これは無論真剣に考えなければならぬことは当然なんだ。救援機を自衛隊で運航することを検討する、こうした方針を明らかにされておるようでございますが、その議事録はここへ持ってきております。邦人を救出するということは自衛隊法にはどこにもないと私は思う。これはどういうお考えでこういうことをおっしゃっておるのか、まずその点についてお尋ねを申し上げたいと思うのです。
  302. 坂田道太

    坂田国務大臣 これはサイゴン陥落の際に、サイゴンに在留いたしました邦人が安全に引き揚げたい、こういうことでございましたが、あのときの実情は、アメリカもまたサイゴンにおるアメリカ人及び関係人たちを何とかして救出しなければならぬということで非常に忙殺をされておった。その際、独立国たる日本、そしてその日本人が忙殺されておるアメリカ軍に要請をして、何とか救出方をお願いするというような事態であった。またわが政府としましては、たしか日本航空機をマニラに差し向けたというようなことでございまして、そういうような事態に対して対応するすべがない、これでいいのだろうかというふうに考えたわけでございまして、何らか平和的な方法でもってこれを救出する道はないのであろうかという根本的な疑問を私自身持ったわけでございます。これはやはり何か考えなければいけないのじゃないかというふうに率直に思ったのでございます。  しかし、たとえばそういう救援機を出すにいたしましてもこれはいろいろの法的な制約もございましょうし、やはり自衛隊法等の改正ということも要するかと思います。しかし自衛隊法を改正するにしましても、またこれは国会に御提出を申し上げ、そして国会議員の皆さん方の御了承を得てでなければ自衛隊法そのものが変わらないわけでございます。国会に提出いたすにつきましてもやはり国民のコンセンサスを得なければならないわけでございます。  しかしこういうようなことは、もし朝鮮半島に事があるという場合において、邦人の救出というときにどうするかという問題については真剣に考えておかなければならない問題ではなかろうか。これは政府ももちろんそうでございますけれども、各政党においてもともに考えるべき課題ではないだろうかというように思いましたので、その気持ちを実は率直に申し上げたというのが実態でございます。
  303. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それはやはり朝鮮半島の有事の際に、在外邦人を何らかの方法で救出しなければならぬということは、これはお互いですね、これはもう絶対大事なことでございますが、長官のおっしゃったようなことが可能であるかどうか。「真剣に考えるべき問題だというふうに私は思っております。」それはもう当然のことです。「たとえば民間航空機でございますと、その搭乗員の人たちで組合をつくっているというようなこともございますし、危険なことに対して拒否をするということは、これはまた私は当然なことだと思うわけなのです。」「やはり何か工夫があってしかるべきじゃないか。」それから予算で飛行機を買い、そしてその日ごろの管理運営等については自衛隊がお引き受けをするというふうなことだって考えておるのでございますと。この辺のところがどうも私は了解に苦しむ。どういうお気持ちでこういうことをおっしゃっておるのか。じゃ民間機を買ってやれば、これは自衛隊の出動にならないのか。搭乗員なんか自衛隊の方でやるのか、航空自衛隊でやるのか。一体、これを購入したということになれば、それはたとえ民間機であっても、購入したら所有権は自衛隊になるわけだと私は思うのですね、所有権は。そうすると、その飛行機は自衛隊機じゃない、それは公有機だ。一般の船舶が公船というように、それは公有機だ。自衛隊機じゃない。それで自衛隊の出動ということに相ならぬというような意味でおっしゃっておるのか。ところが管理運営は自衛隊でやる。そういうような点が、これは決定的じゃない、いろいろ工夫——いろいろあらゆる点で工夫している、こうおっしゃったんだと思いますが、事実上これは一体どうなるのか。これは海外出動にはならぬのか。派兵にはならぬのかということですね。あるいはその際の命令は一体だれがするのか。出動の基準、出動基準は、どういう場合にそういうことをやるのか。自衛隊の現行法でそういうことが、海外に出るということが可能であるかどうか。そういうような点が余りに複雑だから私は理解できませんがね。長官の方から……。
  304. 坂田道太

    坂田国務大臣 このときも私、工夫しているわけで、実は確とした考え方があって申し上げたわけじゃございません。  ただ御承知のとおりに、南極観測という事業、これは文部省の大体の所管で、科学技術で極地圏のいろいろな観測をやっていることは先生も御承知のとおりだと思うのです。そしてこの観測隊員の輸送につきましては、わが自衛隊が実は担当しておるわけでございます。行き帰りにつきまして。しかもこれが帰ってまいりまして、次の年度まで、出航をいたすまでは、もちろんのことながら海上自衛隊で管理運営をやっておるわけでございますが、これの修理であるとかあるいはヘリコプターを買いかえるとかいうような費用は、たしか文部省の予算で出しておる、こういう事例があります。しかし、もちろんこれは自衛隊法の中に、たしか学術研究のためにあるいは南極観測のためにという定めがございまして、それに基づいて行動をしておる。そうして南極の地球観測の成果を実は年々おさめておるというわけでございます。でございますから、もしこういうような考え方国民のコンセンサスが得られ、そしてまた国会の御承認が得られるとするならば、自衛隊法の改正をするならば、あるいはこういう国民的課題、朝鮮半島でもしわが邦人を救出しなければならぬという事態が起こった場合には、自衛隊法の改正を得るならば、あるいは可能ではないだろうかというように実はちょっと考えたわけでございます。まあちょっと考えたわけでございまして、それがあちらこちらに影響するところも多うございましょうし、これは十分工夫をし研究をし、慎重に検討しなければならぬ課題だ、こういうふうに御答弁を申し上げておるということでございます。
  305. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、大事な邦人を救出しなければならぬということは、これはもう大事な絶対のことでございますが、先日あなたが当委員会でおっしゃったことを議事録で拝読したのでございますが、これは非常に私は紛らわしいと思うのです。こういうことをおっしゃると。結局自衛隊法の任務としては邦人救出というようなことは明記してないんです。これは防衛局長もそこにおられるが、明記してない。どこを見てもそんなことはない。そこで、いまおっしゃったように法の改正をやる。自衛隊法の改正をする。そして何らかの方法でこれを救出しなければならぬ。そうしますると、どのように法の改正をなさるのか。つまり憲法との関係憲法に違反するかしないか、海外派兵になるのかならぬのか、そういういろんな調整もあると思いますが、大体どのようにお考えになっておるのか。結局自衛隊法の現行法においても、また将来においても、いやしくも派兵というようなことは絶対私はあり得ないと思うのですよ。また、あってはならない。そうしますると、法改正をなさるとしましても、災害出動あるいは治安出動、防衛出動とあるようですが、いずれにこれをなさろうとお考えになっておるのか。これは十分もうお考えはあると思うのですが、そうしなければあんなことをこの当委員会で軽々に——慎重そのものの坂田長官、日ごろのお人となりにもこれは私は奇異に感ずるのです。日ごろ慎重の上にも慎重にやっていらっしゃる長官にしては、えらい軽々に簡単にこういうことをおっしゃっている。諸外国の例まで挙げて、総理の専用機まで、日本にありもしないものをおっしゃっておるようですが、これはどういうことなんですか。
  306. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは二つの面に分かれておるわけで、一つは、いま申し上げましたように自衛隊法の改正をしなければできないことだというふうに思います。そしてその研究はまだ実はやっておらないわけです。でございますけれども、鬼木先生一緒になって考えてみたいという問題提起の意味もあるわけなんで、お知恵を拝借したいという気もあるわけです。朝鮮半島でもし事が起きる、その場合、邦人を救出しなければならない、それは大事なことだと先生もおっしゃっておられる。その場合に他の手段方法がないという場合に、何かそういう手段というものはないものか。たとえば、全然武力を持たない自衛隊の船を使いまして救出する方法というものはないものか、そういうものは許されないのか、あるいはそういうものは憲法に抵触するのかしないのかということを十分検討しておかなければならない課題ではないだろうか。わが自衛隊の任務と申しますのは、やはり日本国民の一人一人の生命財産を守るということ。それは他国の侵略によることもございましょう。しかし、たとえば大震災とかあるいは災害とかという場合におきましても、やはり国民一人一人の生命財産が脅かされるという状態である。こういうことに対して、現地の消防団あるいは警察力をもってしてはいかんともしがたいというような状態においては、国民一人一人の生命財産を守るために自衛隊は災害出動をしておりますし、またその実績を積んでおります。またその結果として、国民から非常に喜ばれております。そして自衛隊に対する信頼もそういうようなことから積み重ねられてきておるというふうに思っております。私はそういう意味で、自衛隊の任務の中における災害出動というものもやはり国民一人一人の安全を守るのだ、それは単に侵略だけじゃないのだ、大震災が起こったら一体東京はどうなるんだ、あるいはあちこちに起こる大災害に対して警察力及び消防団をもっていかんともしがたい場合においてこの自衛隊が出動をするということは、非常に大事な任務ではないだろうか。  それから、かつての軍国主義時代のように、先生がおっしゃるように派兵をすることは禁じられております。したがいまして他国に出て戦闘するということは絶対やってはならないことである。もし侵略を受けて戦闘状態が起こるとするならば、日本の領海、領空、領土内において行われることである。その場合、いろいろな橋がやられる、家が倒れる、その下敷きになる。そうすると、それを排除しながら救援活動を開始しなければならない、あるいは戦いをしなくちゃならない、侵略者に対して抵抗しなければならない。そういう場合においては、やはりふだん災害に出動をしておるその経験というものは生々しく生きてくるのではないだろうかというふうに私は考えるのです。演習も結構です。やらなければならないことです。しかし同時に、災害活動を通じて、もし万一事が起こった場合の役に十分立てるのではないだろうか、こういう一連の考え方を持っておるわけであります。  諸外国におきましても、やはり自由主義諸国でございますと、組合とかなんとかいって——民間の航空機や船があります。しかしいろいろのストライキやその他の事情でどうしてもそれはいけないという場合がございます。したがいまして政府が専用機を持ち、あるいはVIPの飛行機というものは大体どこの国でも持っておるという実情にあるわけでございます。それで総理大臣あるいはその他の閣僚が災害を視察に行ったりいろいろするというようなことだってあり得るわけですが、もちろんわれわれ自衛隊機でできるだけ御用立てをしているわけでございますが、そのほかにVIPというものがあってしかるべきではないだろうか。その費用は防衛庁の費用でなくて別の所管でお買いいただいて、その運営は自衛隊に任されて、そしてそのVIPを国内的には使用するということは可能ではないだろうかというようなことも実は考えてみたわけなんです。  私もこれで防衛庁長官になりまして一年でございますが、やはり日本国民の安全ということを守るためにいろいろなことを実は考えておるわけでございます。先生もいろいろこの点について御意見があり、あるいはお知恵があれば拝借いたしたい、かように考えている次第でございます。
  307. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 よくわかりました。おっしゃるように国民の生命財産を絶対に守るということは、これは私は第一義だと思うのです。他国を侵略するとか攻撃するということは全然あり得ないことなんです。  そこで、国内出動の場合は、いまつぶさに御説明いただきましたように、災害出動の場合、あるいは治安出動の場合、あるいは防衛出動というようなことが当然考えられます。しかし他国に出ていくというようなことは、アメリカは海外派兵ということも結構というか認めてあると思いますが、日本においてはこれは認めてない。そういうものはいま長官もおっしゃったとおり絶対にあり得ないことなんです。  そこでお尋ねしたいのは、議事録にもああしておっしゃっておりますが、いかなる場合といえども国連憲章第五十一条ですか、直接攻撃を受けたという場合でなくして、全然こちらは関係がない、しかし交戦国の間にわが在外邦人が非常な苦難に立っておるというような場合に出動するということが、いまいろいろ考えているとおっしゃったから、それをいま考えておるとおっしゃればそれでしまいだが、憲法にも違反しない、自衛隊法にもない、どうしてそれをなさろうとしておるのか。いろいろいまお考え中で、いい知恵があればかしてくれというような非常な謙虚なお言葉でありましたが、そうしますと、いずれにいたしましてもこの議事録を見て、私はちょっと懸念する点があるから申し上げておるのでございますが、いかなる場合といえども日本は自衛権の発動はやらない、海外派兵はやらない。それは、何らかの名目をいまお考えになっておるから、その邦人救出のことはなさるかもしらぬが、それ以外は絶対海外派兵はやらない、このように断言できますね。
  308. 坂田道太

    坂田国務大臣 海外派兵はやらないということ、これはもう厳然たることだと私は思っております。
  309. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、別途自衛隊法を改正するとか、いろいろな方法があると思いますが、可能な方法で、しかも憲法には違反しない、自衛隊法でも可能であるというふうにこれを改正でもして、そして最も国民の納得するような、国民の総意を得て、そして出動する、このように解釈してようございますか。
  310. 坂田道太

    坂田国務大臣 そのとおりだと私は考えておるわけでございます。
  311. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、先ほどもちらっと防衛庁からお話があったようですが、自衛隊が一これは攻撃ではありません、先ほど侵略を受けた場合とか他国から攻撃を受けた場合には、戦争状態にでもなればこちらは自衛権を発動する、その範囲、限界ですね。領海領空というようなことをさっきちらっとおっしゃっておりましたが、その自衛隊の自衛権の行使の及び範囲、それをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  312. 坂田道太

    坂田国務大臣 先生おっしゃっているこの平和的な問題ですね。たとえば、極地圏というのはもう地球の向こう側まで行くわけですから、現に自衛官は行っているわけでございます。もう何十年と行っている。これは何も自衛権の発動で行っているわけじゃないのです。科学技術の調査、これに対して輸送の任務を負っておるというわけで、邦人の救出という場合に、そういうような考え方自衛隊法を改正して、憲法違反になるかならないか、その辺を詰めなければなりませんけれども、それならば国民の側においても御納得がいくのではないだろうか。そういうことが派兵という概念に当たるかどうか、それはもう恐らく、私はそういう場合は派兵じゃないというふうに思っておるわけでございます。派兵は絶対にいけませんから。だから自衛権の発動は、他国にはもう絶対に行かない、派兵はいけない。派遣という言葉があると思いますが、南極探検に行っているのは派遣だと思います。だから派兵は絶対にいけない。というのは、派兵というのは武力を持っておる。形の上において武力は持っていない、そして何らか救出の方法はないものかということで、これは一つの研究課題じゃないだろうか。これはわれわれ政府も考えますけれども、各党としてもお考えいただきたいというのが私のいまの心境なのでございます。  まあ自衛力の範囲、自衛権の及ぶ範囲ということになりますると、これはひとつ防衛局長から正確にお答え申し上げたいと思います。
  313. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、私が言っていますのは、たとえば有事の際ですよ、そういうような場合に、むろん侵略じゃないですよ、自衛権の発動の範囲ですね、どこまでかと。先ほどあなたは領海領空とおっしゃったが、それでとまるのか。これは想定で御返事ができにくい点もあるかもしれぬと思いますけれども、実際有事の場合はそのことは考えられるのですよね。だから、わが方の領海はここだ、それから今度は公海になる、それからまた向こうの、先方の領海、こういうような場合にどこまで、わが方の領海だけで一歩も公海には出ないのか、あるいはすぐ向こうの領海まで行くのか。侵略じゃない、こちらが攻撃を受けた場合、その範囲、限界を——私の質問はわかりますか。
  314. 坂田道太

    坂田国務大臣 わかります。防衛局長から……。
  315. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私からお答え申し上げます。  在来、国会におきますこういった問題についての見解は、終始いままで同じ見解がずっと示されておるわけでございまして、わが国の自衛権を発動いたします場合の範囲でございますが、これは領海領空、これを主体といたしまして、これはそのときどき、いま先生の御指摘にありましたように、この侵略の態様その他によっていろいろ変化をするわけでございますが、必要な限度において公海公空に及び得るということ、そういう解釈になっております。  相手方の領土領空に入り得るかということについては、それは入れないという解釈でございます。
  316. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 わかりました。  それでは、先ほど長官からお話がありましたように、派遣の場合と派兵の場合の御説明がいまあったのですが、派兵の場合といえども領海領空は越えない、これが限界だ、それからいかなる場合といえども日本は派兵をやらないということの確約をとれば、大体この項の解決は私はこれでいいです。また後で、防衛庁たくさんございますので、お楽しみにひとつお願いいたします。  せっかく通産省から見えて待ちくたびれていらっしゃるから、中にちょっとこれを入れて。  これも実は新聞に報道されておることですが、準兵器扱いの二機種、航空機業界が陳情をしておると、実際は陳情はまだ来ていないとお話しになっておりましたが、これは御承知のとおり、兵器の輸出禁止三原則があるわけであります。共産向け、それから国連決議で禁止された国、紛争当事国あるいはそれに対するおそれのある国、それに従来——これは、防衛庁長官防衛庁の方もお見えになっているから、関連しておるのですが、US1、救助艇ですな。これは、海上自衛隊で持っておる、水陸両用の非常に精巧な、諸外国が皆欲しがっている国産機です。それからC1、これは輸送機で航空自衛隊が持っている。ところが、御承知のとおり近ごろ非常にどこも業界が不況で困っている。企業がインフレで生産が非常に行き詰まっておる。そこで、航空機を輸出することによって企業の落ち込みの活路を求めよう、こういう意図があって、これを準兵器として見ないで認可してくれ、海外に輸出することを認可してくれ、こういうことなのでございますが、そもそもこの兵器、これは準兵器となっておりますが、もともとこれは防衛庁が発注したものであって、そして兵器として取り扱っておる。ですから、準兵器として取り扱っておられたものを、業界の方から、緩和してくれ、そして兵器でないということを認めてくれ、そうするとそれを海外に輸出ができる。いままで自衛隊機として生産してきたもの、自衛隊向けのものであった。先ほど言いましたように、これは海上自衛隊が発注したものです。だから海上自衛隊用として生産されたものです。これは一般民間企業には関係ない。自衛隊用として開発されたものです。  まず通産省にお聞きしたいのですが、これをどのように考えておるのか。これは先日もお話ししたのですけれども、これが兵器でないということであれば、何も業界からこれを海外輸出するのを特に許可してくれというようなことで陳情する必要はない。ところが、陳情するということになれば、これは準兵器として、軍用機として国産であるから、それを緩和してもらいたい、こういうことで業界がこういうことを通産省に——出願じゃないのですよね。出願なら、許可してくれ、これでいい。陳情するというその辺のところは、どうしてもこれはただごとではない。だから国産軍用機輸出認可をと、こう書いてある。だから、その点について、ここへ防衛庁長官以下お歴々もお見えになっておるから、まず通産省からひとつ御答弁願いたいと思うのです。
  317. 堺司

    ○堺説明員 実は、航空宇宙工業会からまだ通産省の方に申請書、要望書は来ておりません。したがって、その意図が那辺にあるかということについては、正確に私ども了解しておりませんけれども、航空宇宙工業会の方に電話をいたしまして、どういう趣旨であるかということを問いただしました。航空宇宙工業会の方は来週にでも要望書を持ってくるという話でございましたけれども、その中に書いてありますのは、私どもがやっておりますYXの共同事業の促進及びその補助金の確保、それから次期対潜哨戒機たるPXLの国産化の要望。第三点といたしまして、C1、US1、それからヘリコプター等についても輸出の促進という書き方になっておるそうでございます。したがいまして、輸出の促進という以上に細かい内容が記載されておりませんので、どういう意図で書かれたか必ずしも明確でございませんけれども、輸出する場合に、価格面その他でいろいろハンデキャップがある場合に、促進できるようにしてほしいということではないか。これは私が、まだ文面を読んでおりませんので、そういうふうに解釈しておるわけで、必ずしも妥当な解釈かどうかわかりませんけれども、そういうふうに判断をいたしておるわけでございます。  したがいまして、先生おっしゃいました、武器輸出三原則で輸出できないものを輸出するのではないかということを、要望書でみずから相反して書いているというようには考えられないのではないかというふうに思っておりますが、そもそも武器輸出三原則について、先生十分御承知でございますけれでも、一つ補足させていただきますと、これは通産省が輸出を認める際の運用基準、内規でございます。それで、御説明がございましたように、共産圏に輸出する場合、ココムリストに該当する品目は輸出承認をしないとか、国連の禁輸対象国になっている場合に、その禁輸品目については輸出しない。第三点といたしまして、軍隊が使用するものであって直接戦闘の用に供するもの、これを紛争当事国またはそのおそれのある国に輸出するというような場合には、通産省は輸出承認をしないということになっております。  それで、紛争当事国またはそのおそれのある国については外務省に御判断をいただいておりますが、軍隊が使用するものであって直接戦闘の用に供するかどうかというのは通産省が判断をいたしております。本件の海難救助艇、もっぱらそれを目的にいたしておりますUS1につきましては、これは軍隊が使用するものという第一の条件には該当するというふうに考えられますけれども、直接戦闘の用に供するかどうかという点については、私ども、直接戦闘の用に供するものではないのではないかというふうに現在の時点で考えております。  ちなみに、軍隊が使用するものでございましても、たとえば軍服とか軍靴というものは、これはもちろん戦場にも着て行きますけれども、ふだん常用するものでございますので、その点は、軍隊が使用するものであっても直接戦闘の用に供するというふうに解釈すべきではないのではないか、このように考えております。
  318. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまあなたのおっしゃったことは、いろんな関連したお話で、まだ根本に触れていないようですが、結局するところ、あなたもこれには御列席なさっておるようです。「生殺しの日本航空機産業」ということで軍事研究をやっていらっしゃる。その出席者は、業界の方と通産省航空機武器課長堺司と書いてある。あなたのことでしょう。
  319. 堺司

    ○堺説明員 はい、さようでございます。
  320. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 「縮小しつつある航空機生産。このままでは日本の航空機生産業は亡びる。活路を求めて一堂に会した」。そのメーカーがここに書いてある。  そこで私がお尋ねしたいのは、いろいろその経過なんかもいまお話しになって、まだ陳情書が出ていない、見ていないというようなお話でございますが、問題はUS1を武器輸出三原則の枠外にあると通産省では解釈していらっしゃるか。その通産省の判断、私はこれが問題だと思う。これをお聞きしたい。まずその点をひとつ明確におっしゃってください。
  321. 堺司

    ○堺説明員 US1につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、遭難等の救助を目的とする飛行艇でございます。したがって、これは水陸両用になっておりまして、各種の装置がございまして、これを戦闘用に改造するという場合には、実は飛行機自体の性能を基本的に変えなくちゃいかぬ。すなわち、いわゆる軍用には使えないような飛行機になるという話を聞いております。これは仮定の議論でございますので、まだ申請も出ておりませんし、必ずしも明確な御回答にはならぬと思いますけれども、もしそういうことであるとすれば、輸出をしてもいいのではないかというふうに判断されますが、これは申請が出ましたときに慎重に検討さしていただきたいというふうに思っております。
  322. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、申請が出なくたって、US1はどういう構想で、どういう国産機で、どういうものでということはおわかりになっておるはずだ。文書で何か出なければわからぬというのは、ちょっと私は理解できない。あなた方のところに、こういう航空機、こういうのがある、これは武器輸出には該当しない、これは該当するというのがあるはずでしょう。それを私はお尋ねしている。
  323. 堺司

    ○堺説明員 私ども、実はすべての航空機につきまして、これは武器である、これば武器でないというような内部での作業はいたしておりません。輸出に関しましては、あくまでも武器輸出三原則に照らしまして、申請が出ましたときに判断いたしております。  ただ、ちなみにUS1について申し上げますと、これは初飛行が四十九年でございまして、防衛庁から発注をいただいておりますが、五十年の十一月末で三機と、それからエンジンが二千七百八十五馬力のもの四基とか、最大離陸重量が四十五トンであるとか、最大速度二百七十ノットとか、そういうような数字はございます。二百七十ノットというスピード、これは非常に遅い飛行機でございます。
  324. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、あなたは通産省の航空機武器課長となっておる。武器課長はこれは書類で出てみなければわからぬ。いままでUS1はもうたくさん出て、やったのでしょう。それがおわかりにならないというのはおかしいじゃないですか。だから、これは準でもいい、準兵器であるのか、あるいは純然たる兵器であるのか、その答弁ができないというのはおかしいじゃないですか。あなたを責めているのじゃないけれども、あなたはいやしくも武器課長だ。その武器課長がわからぬじゃ、だれがわかるのですか。これは武器課長の上にまただれか武器課長を一人置かなければなりません。どうだい、堺さん。
  325. 堺司

    ○堺説明員 実は武器の定義といいますのは、武器等製造法にございますけれども、これはあくまで国内で製造する場合の法律でございます。それで、いま先生が御指摘になっておりますのは、海外に輸出する武器がどういう基準であるかという御質問ではないかと了解しておりますが、海外に輸出します武器といいますのは、先ほど申しましたように、一応通産省の運用内規として武器輸出三原則がございまして、国連禁輸対象国については、それぞれココムなり国連で禁輸したリストがございまして、それで自動的に武器ということで除外されております。  それからもう一つ、第三の点でございますが、軍隊が直接戦闘の用に供するということにつきましては、一応通産省の運用基準では、輸出貿易管理令の別表がございまして、この一九七から二〇五の中身が一番武器として該当するものが多いということにしております。ここで全部を申し上げてもいいかもしれませんが、その中で、全部が全部であるかということになりますと、たとえば猟銃のように武器ではない物も含まれておりますので、輸出貿易管理令の別表が特に輸出三原則を前提にいたして武器だけを集めた別表になっておりませんので、これは先ほど申し上げましたように、申請があります都度ケース・バイ・ケースで判断をいたしておるということでございます。
  326. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それではどうもはっきりせぬが、国産化しておるところの、しかも自衛隊の発注による兵器並びに装備品、その一覧表を出していただきましょう。あなたの方で調べて出してもらいましょう。そして武器であるかないかの基準、いま言っていらっしゃったが、その基準を示すそれを資料につくって出してもらいたい。それから、要すれば武器、兵器という定義を全部ひとつ書類にして、私のところに持ってきてください。
  327. 堺司

    ○堺説明員 いまの御要望については、防衛庁が発注いたしております武器、装備品等は、私は全部記憶いたしておりませんが、相当膨大な数に上るのではないかというふうに思っております。それで先生、特に今回飛行機の御質問でございましたので、飛行機についていろいろそれを分類せいということであれば、内部で検討させていただきまして、なるたけ御要望に沿うように善処させていただきたいと思います。
  328. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それでは防衛局長にちょっとお尋ねいたしますが、これはおたくの方では、US1なんかは、兵器として、武器として取り扱っていないのですか。
  329. 江口裕通

    ○江口政府委員 防衛庁の取り扱いといたしましては、いわゆる装備品という扱いをいたしております。装備品の中に、いわゆる俗称甲類装備品、乙類というふうに分かれておりますが、航空機等につきましては、いわゆる甲類装備品的な扱いをいたしております。そういう意味で、いわゆる武器、兵器という呼称は必ずしも用いておらないということでございます。  それから、現実の問題といたしまして、先ほど御質問のありましたUS1でございますが、蛇足でございますが、これは従来ございましたPS1という対潜哨戒飛行艇がございますが、この飛行艇をUS1という海難救助を目的とする水陸両用の飛行艇に改造いたしております。  改造の中身といたしましては、従来ございました対潜装置、あるいはソノブイと申しまして音響探知をいたしますブイがございますが、そういったものの関係指示装置、あるいは魚雷、対潜爆弾、ロケット弾等のランチャー、発射装置でございますが、それを取り払いまして、担架、救命艇あるいは医薬品等の搭載もできるように改造をいたしております。そういう意味で、一応いままでの通産省の説明に準拠いたしますと、直接戦闘の用に供するものとは考えておりません。
  330. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 では防衛庁の方としては、兵器とは解釈していないというのですか。そういうわけですね。水陸両用の艇、そういうのを装備品と解釈するのですか。ちょっとおかしいね。
  331. 江口裕通

    ○江口政府委員 通常、武器あるいは兵器という呼ばれ方をいたします。いたしますが、その武器あるいは兵器というものの使う場所あるいは法律等によりまして、おのずから中身が変わってまいると思います。  いま問題になっております武器という言葉をとりますと、先ほど通産省の説明にありましたように、輸出貿易管理令によりますところの承認基準というのがございます。その基準の際の武器輸出三原則というのがございますが、その際における武器というのは何かという問題であろうかと思われます。その点について通産省の方では、ただいま御説明になりましたように、軍隊の使用するものであってもっぱら戦闘の用に供するという解釈をしておられるようであります。そういう意味の武器という使い方は、私どもの方では装備品の中には使っておらない、こういうことでございます。
  332. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 通産省もはっきりせぬが、結論として、結局これは武器ではない。通産省も、それから防衛庁も、これは武器にあらずと、こういうことですか。このように理解していいですか。何かごたごた言うけれども、私はそんなごたごたを聞いているのじゃないのだから、方程式を聞いているのじゃないのだ。答えを聞いているんだ。それをはっきりして言いなさいよ。そんないいかげんなことを言ったらただじゃおかぬから……。
  333. 堺司

    ○堺説明員 先ほど申し上げましたように、実は、武器の定義がケース・バイ・ケースによって異なっておるわけでございます。それで、国内の武器等製造法の兵器と、それから私ども輸出する場合にこれが武器であるかどうかという定義と違っておりまして、先ほど何度も申し上げましたように、輸出三原則には、軍隊が直接戦闘の用に供するということでございますので、これに該当するかどうかということは、その別表の一九七から二〇五までを見まして、それで判断をしておるわけでございます。それで、その中に軍用飛行機というのがございますが、軍用飛行機の中でも、目的がもっぱら海難救助に向けられるものというものについては、紛争当事国でなければ輸出することも、それはその際ケース・バイ・ケースでございますが、検討することもあり得るということだろうと思います。
  334. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、業界の方からそういう陳情が出てきたというような場合に、これはどういうふうに使うのか、どこへ向けて輸出されるのか、あるいはこれをちょっとでも改造したならば兵器にでもなるおそれがあるのではないかというようなもろもろの点をよく検討されて、その判断の上に立って、これは兵器だとか、これは武器だとかいうことを決定する、こういうことですか。
  335. 堺司

    ○堺説明員 私、言葉足らずで大変申しわけなかったのですが、まさに先生のおっしゃるように、その申請がありましたときに、その飛行機の用途、相手国、それからその飛行機の構造、性能等を判断いたしまして、そこで決定することになっております。
  336. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 じゃ大体そういうことで了承しておきましょう。私はそれで間違いないと思いますからね、あなたのおっしゃったことに対して。防衛庁の言うことは余りはっきりせぬけれども、案外あなたの言うことははっきりしている。——それではあなたはもうよろしいです。大変遅くまで御迷惑をかけました。  委員長にちょっとお願いがありますが、十二時まではよいというお話でございましたけれども、そのようにはかかりません。しかし、ちょっと時間が延びると思いますけれども、どうぞ御了承を……。
  337. 藤尾正行

    藤尾委員長 結構でございます。
  338. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 防衛庁長官にお尋ねいたします。  第四次防は、もう来年度からは新しい防衛計画となると思うのでありますが、来年度以降五カ年の防衛計画に要する費用はどのくらいに見積もっていらっしゃるのか、まずその点をお尋ねしたいと思います。
  339. 坂田道太

    坂田国務大臣 ポスト四次防につきましては、先般長官指示をいたしまして、いま作業をいたしておるわけでございます。それにつきましての物の考え方というものは指示をいたしました。しかしこの作業の結果は、大体来年の三月にならないと出てまいりません。したがいまして、数量あるいはどういうような編成になるのか、そういうようなことが出てまいりませんと、実は幾らになるかということをここではっきり申し上げるわけにはまいらぬわけでございます。
  340. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 予算要求もありましょうと思いますから、来年度のことを私はお尋ねしたのですが、大体、国民総生産、GNPの一%以内、こういうことであります。大体一%以内ですから、〇・八%か〇・九%というのがまあ私は普通だと思うけれども、仮に一%程度だとするならば、私は八兆円以上になると思う。これは経済成長率が六%ぐらいと見て私はそうなると思うのですが、三月にならぬと全然わからぬというようなことをおっしゃっているが、本当に防衛庁長官は頭の中にも全然何にもないのですか。ないならますますおかしいですがね。行き当たりばったりの出たとこ勝負ということになる。
  341. 坂田道太

    坂田国務大臣 むしろいまここで申し上げるとするならば、それがおかしいと私は思うのです。やはり本当に数を積み上げまして、そして作業をいたしました結果でないと出ないのが本当だと思います。  ただ、GNP一%で計算して、そして経済成長率をどう見るかということをただ数学的に計算すれば、その結果は出ると思います。そしてそれは経理局長から、もしそれがお尋ねの気持ちならば、それはお答えをさせます。しかし、ポスト四次防のことにつきましてここで数を示せとおっしゃいましても、それはできません。
  342. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまあなたのおっしゃったように、国民総生産の一%以内ということで考えていくと、今度は新しい五カ年計画に対しては八兆から十兆ぐらい要るようになる、そういうことを私は申し上げておるのであって、的確な何兆何千億何万何千何十何円何銭何厘と、そこまで言えなんて、そんなことを申し上げているのではない。
  343. 坂田道太

    坂田国務大臣 それは経理局長から申し上げます。
  344. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいま大臣から御説明申し上げましたように、ポスト四次防計画につきましては五十二年度からでございますが、まだ五カ年計画にするのかどうかということも決定しているわけではございません。いろいろな前提を置きまして、GNP対比を一定の仮定を置きまして計算した場合にどのくらいの数字になるかということは、これは単純な算術的な計算の問題でございますが、そういう計算例はいろいろできるわけでございます。で、先月十三日、国防会議の議員懇談会が開かれました折に、一つの説明資料といたしまして私どもから計算例を申し上げたものがございますので、それを御参考に申し上げたいと思います。  これは、まず前提といたしまして、仮に五十二年度から五十六年度までの五カ年の計画ということにいたしまして、今後の実質成長率を六%と仮定いたします。それからGNPに対する防衛関係費の比率を、一%の場合、〇・九%の場合、〇・八%の場合、その三つにつきましてお示しした表を御説明したわけでございます。  それからもう一つの問題は価格の基準でございます。価格の基準をどこに置くかによって、その前提によりましても変わってくるわけでございますが、ここで申し上げますのは、一応想定いたしました五十二年度価格によるわけでございます。従来から、たとえば四次防で四兆六千三百億円と申します場合は、その四次防計画が策定されました年の価格、つまり四次防で申しますと四十七年度価格で計算された数字でございますが、同じようにポスト四次防が五十二年度からの五カ年と仮にいたしました場合に、その初年度である五十二年度価格で計算する、そういういろいろの前提を置きまして計算いたしますと、それから出発点であります五十年度のGNPは、先般の政府の改定見通しによります百四十九兆五千億円というのを前提にいたしますと、GNPに対しまして、〇・八%の場合に八兆三千五百億円、〇・九%の場合に九兆四千億円、一%の場合に十兆四千四百億円という数字が出るわけでございます。これはあくまで、いま申し上げましたいろいろな前提を置きました五十二年度価格の想定による数字、計算例でございます。
  345. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だから、先ほど長官がおっしゃったように、はっきりしたあれじゃないけれども、あなた方が計算されたことによると、私が先ほど申しましたように、八兆三千五百億、それから十兆四千四百億、こういうことに相なるわけで、三月にならなければわからぬというような、そういう雲をつかむような話でなくして、私はもう少しそういう点ははっきりしなければならぬと思う。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕  そうしますと、私がずっと過去今日まで十数年間防衛関係に携わってお邪魔になっておりますが、ずっとこれを考えてみますと、防衛予算は毎回の計画のたびに二倍以上になっているのですね。そうしますと、これは一体どうなるかというわけなんですよね。三次防において二兆三千億ですか、今度は四兆六千三百億、やっぱり倍になっている。倍、倍、倍でいく。しかも五カ年計画になって、いまあなたのおっしゃるように十兆円以上になる。これはもう際限のない防衛費に増大するということになる。このままでよいと防衛長官はお考えになっておるのか。国民に非常な重税をかけて、国民を苦しめて、それでよいのか。ここらでじっくり考えなければならないときに来ているんじゃないか、こう防衛長官に私はお尋ねしたい。だからそのことを申し上げておるわけです。
  346. 坂田道太

    坂田国務大臣 確かに先生おっしゃいますように、計算いたしますと、八兆三千五百億の場合一・八倍、九兆四千億の場合二・〇三倍、十兆四千億の場合二・二五倍というふうに名目上はなるわけです。しかしながら実質で申しますと、これが八兆三千五百億の場合一・一二、九兆四千億の場合一・二六、それから、一%で十兆四千億になった場合一・三九ということでございます。ということはどういうことかと言うと、それだけしか数量的には整備できないということであります。(鬼木委員「わかっています」と呼ぶ)そこまでは、おわかりいただけると思います。  そこで、しかしながら、いまお話しのように、防衛費というものは著しく民生を圧迫するようなことがあってはいけないというふうに私も考えておるわけです。そうして平和時におきまして、各国とも防衛費が非常に民生を圧迫するということは非常につらいことでございまして、どこの国でも実は防衛費かあるいは社会保障費かという悩みを持っておるわけでございます。世界各国の例を見ますると、三%あり四%あり五%あり、わが国はGNP一%なんでございまして、私は、GNP一%ぐらいでもしわが国の独立と安全、そして国民一人一人の自由と生存というものが守れるならば、この程度はひとつ考えていただきたいというのがわが防衛庁長官考え方なのでございます。そういう考え方なんです。
  347. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 その点に私は異論がある。坂田防衛長官ともあろう人がそんなことをおっしゃる。他国では五%だとか三%、八%とやっているところがある。冗談じゃありません。日本は、軍隊を持たない、戦争放棄の国ですよ。平和国ですよ。それが軍隊を持っているところの他国とその軍事費を比較すること自体が間違いだ。とんでもない。日本は第七位だ——私はそんなことはない。七位じゃない、日本は一位か二位だ。それは表面上では七位かもしれないけれども、五カ国は核を持っていますよ。これは別格ですよ。日本は核を持たないから、五カ国を外したら二位じゃないですか。それだけの防衛力を何のためにやるか。それを防衛庁長官、あなたでさえもそんなことを言う、よそは五%も八%もやっていると。軍隊を持って、戦争を好んでいる国はそうかもしれないけれども日本は平和国家ですよ。全然話が違う。そういうものと比較ができるわけがないじゃないですか。
  348. 坂田道太

    坂田国務大臣 中立で平和を標榜しているスイスにおきましても、あるいはスウェーデンにおきましても、かなりの防衛費を積んでおります。それでなければ実は、平和ということをおっしゃいますけれども、平和を維持はできないのでございます。私はそう信ずるのでございます。私は自衛のために必要最小限度防衛力は持たなければならないと確信をいたしております。そしてそれは、もしやらなかったならば非常に危険であるというふうに私は考えます。あるいはその点は先生と意見を異にいたします。しかし私はそういう信念を持っております。日本の独立と安全と国民一人一人の生命と財産とを守るためには、この程度のことはやっていかなければならぬというふうにかたく信じております。
  349. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そこで、わが日本の独立と平和を保つために最小限度の自衛のための——それは私どもも認めている。だけれども、最小限度というのが一体どこにあるのか。毎回毎回二倍にもなって、実質的には一・何ぼとあなたはおっしゃっているけれども、いやしくも防衛費としては毎回二倍になっておる。それじゃ一体行き着くところはどこだ。しかも赤字国債は三兆円も出すというような、そういう来年度の予算で一兆五千億というような防衛費を支出する、しかも低成長時代の中で五年間で十兆円に及ぶ防衛費が予想されるということは決して適正ではない。量よりも質だ。  そこで、大体いま方針はお聞きしましたが、長官のおっしゃる基盤防衛力構想というのは一体どういうものであるか、長官のあり方をお聞きしたいのです。どのように考えておるか。
  350. 坂田道太

    坂田国務大臣 この基盤的防衛力というのは、先生のおっしゃる、実は量より質だというふうに考えております。それから、従来はゼロから出発し、しかも経済成長の高度の状況のもとにおいて、ともいたしますと正面装備に重点が置かれてまいりました。しかしそれでは、後方支援体制であるとか、あるいは持久体制であるとか——抗たん性という言葉で専門用語で言っておりますが、そういうものがアンバランスになっておる。正面だけではいけない、後方支援体制、そういうものが必要だ。それがバランスのとれた、小ぢんまりとしておるけれどもまとまった防衛力だ。これは、現在の安保条約というものが存在しておる以上、生起すべき侵略の可能性というものは非常に限定的なものであるだろう。しかし、この基盤的防衛力で小規模以下の限定的な侵略事態に対しては十分即応力を持って対処できる、こういうのが今度考えておる基盤的防衛力であります。  しかしながら、たとえばウサギの耳と私がしょっちゅう申しております情報関係について、やはり平和時における基盤的防衛力の線を超えまして少し高くしておかなければいけないだろう。あるいは警戒体制、警戒監視のスクランブル等を含めましたその点につきましては、基盤的防衛力の線を超えるものでなければならない。それから人的基盤防衛力というものは、この基盤的防衛力を少し超えるものであってしかるべきではないだろうか。といいますのは、たとえばパイロットの養成にはかなりの時間がかかります。一朝一夕に練度を上げることはむずかしゅうございます。そういうことで、従来の考え方は、周囲の軍事情勢が、あらゆる兵器体系がどんどん近代化されて、兵器の内容も破壊力が強くなりますると、それに対応する防衛力、いわゆる所要防衛力というものは、これは純軍事的合理性を追及した結果といたしましてはかなり高いものになります。普通計算いたしますると、それは膨大なものになると思います。しかし、それでは、先生おっしゃいまするように、どこまで一体お金をつぎ込んだら侵略事態のあらゆる場合に対応できるか、即応力を持ったものになり得るかということについては、とても手の届かない状況であります。そのことは自衛隊諸君といえども非常に心配なところでございまして、現在、毎年GNP一%程度で整備する現実というものを見て、そして目標は所要防衛力ということでございますと、これは気の遠くなるような話だということでございます。  それに対して、私の考え方は、国際情勢が一応緊張緩和の状況にある。若干の危険は存在するけれども基調としては緊張緩和の状況である。それから、いま先生御指摘のように、高度経済成長から安定的経済成長へ転換するこの時期である。こういうようなことを踏まえ、かつ四次防までの整備のあり方等を反省をいたしまして、そうして基盤的防衛力という考え方で、平和時においては一定の限度を設けて整備をする。そうすることによって国民の方々にもある程度御納得がいくのではないだろうか、こういうふうに私は考えるわけでございます。その意味合いにおいてGNP一%は非常に高いのだ。これはそれ自体として二倍にもなる計算になりますから、かなり高いものだと私も思います。しかしそれは、先ほどから申し上げまするように、日本国民のいわゆる生存と自由というものを守るためには、年間のGNPの一%程度はやはりこれをつぎ込んで、そして国を守る体制を整えるということが、防衛庁長官として国民に対する親切なやり方ではないだろうか、こう私は考えたのでございまして、従来の考え方に対しましてある程度の上限を決めた。しかも実際これは実現可能な一つの線ではないだろうかというふうにいま考えておる。この程度のことならば国民の方々のコンセンサスをある程度得ることができるのではないだろうかというのが私の考え方なのでございます。
  351. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 基盤防衛力お話は非常に微に入り細にわたって御説明を聞きましたが、私の申し上げるのは、その御計画はよくわかりますけれども、このままでいけば際限がない。しかも、防衛予算の中で最も大きな、大部分を占めておるのは人件費で、五三%から人件費があっておる。それに今回の防衛二法案によりますと、海上と航空で八百五十三人も増加しようというこの法案である。ですから、自衛官の定員増を中止すべきではないか、定員の削減を図るべきではないか。私いろいろ防衛予算を拾ってみますと、昨年が一兆三千億、今度五十一年度は一兆五千二百六十三億、人件費、義務的経費、それから糧食費、こういうので六百八十三億伸びておる。それから国庫債務負担行為と継続費で三百二十九億の伸びである。ベースアップ分を含めると義務的経費の伸びが千九百十億。そうしますと、防衛予算の一五%の伸びは全部それに食われちまう。先ほど実質的ということをおっしゃっておったが、よくわかっています。こういうことです。ですから、むしろ私は定員削減。定員増は中止さるべきではないか。非常にこれははなはだしいですよね。こういうことまで書いてあるんですよ、「防衛費は財政難から大変な大なただ。食費も切り詰めなければならぬ」と。冗談じゃありませんよ。国の安全、防衛を担っているところの自衛隊諸君の食費まで切り詰めなければならぬ、これはとんでもないことですよね。切り詰められるかどうか知らぬけれども。  こういう批判を受けておる。時間がありませんから、もうあなた方もこれはお読みになったと思いますが、大変なことですよね。そして一面、F4ファントム戦闘機、あれは一機が三十八億。十五億から上がっているんですよね。そういうものを買って、そして隊員の食糧費は切り詰めなければならぬなんというのはとんでもない。衣食足って礼節を知る、これは大事なことだ。坂田防衛庁長官は文教行政の大家だから、隊員をこよなく愛せられる長官だと私は思っておる。それがこういうことで一体どうなるかというんですよね。だから例年二倍、二倍と上がっていくようなことはお考えになったらどうですか。それはしかし、なかなかお聞き届けがないようでございますが、その点どうですか。
  352. 坂田道太

    坂田国務大臣 先生おっしゃいますことも、非常にごもっともなことだと存じます。人糧関係が五三%にもなる、あるいは来年度以降はかなりそれが高くなっていくだろう。しかし陸につきましては、やはり十八万が一応の限度だというふうに考えます。しかし、やはり量より質だということから考えまして、どうしても兵器の交代というものはやらなければなりませんので、そういう意味から、海、空につきまして若干の定員の増をお願いしておるということでございます。  それから、もう一つは食糧費の問題でございますが、これは実は先生の御質問をこの前お待ちしておったのですけれども、私、昨年の就任いたしまして早々の予算編成におきまして、曹士の、つまり二十四時間法律でもって自由を拘束されておる、そして営内に居住する一番末端の士の諸君、それから曹の半分、約十二万名の人たち、これが従来食糧費を給与の中から引かれておりました。それはどうしても私は不都合だと考えまして、その予算をとらせていただきまして、そしてこの委員会、本会議、参議院の委員会、本会議を通過させていただきまして、そして成立を見ました。したがいまして、来年の二月から平均いたしまして九千七百円、実はこの曹士の営内居住の人たちには差し上げることができるわけです。これは公明党さんも御賛成をいただきまして、私は非常にうれしく思っておる次第でございます。隊員たちも非常に喜んでおるわけでございます。やはり食糧の問題につきましては、今後といえども十分手当てをしていく覚悟でございます。人糧そのものにつきましての各省並みの節約というものは、やはり考えていかなければなりません。だが、隊員たちは十分御飯が食べられるというような状態になければ、精強なる自衛官、そして身命を賭して隊務に当たっておるわけでございますから、そういう人たちのためには、十分ひとつ今後とも気をつけてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  353. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 坂田長官のお人となりから考えれば当然そうだと、私はありがたく思っておりますが、防衛庁の幹部諸君もよく御承知と思いますけれども、私は、十数年来、自衛隊そのものに対しては、違憲、合憲、それはいろいろ甲論乙論あるかもしれぬが、それはそれとして、隊員自体には罪はない。隊員は徹底的にこれを優遇しなければいけない。二十四時間勤務で非常に苦労している。ですから、健康保持の問題、医療の問題、あるいは定年制の問題とか、あるいは昇給問題だとか、常に私は今日まで隊員の優遇ということを叫び続けてきておる。四十三年でございましたかね、初めて自衛隊に帰郷制度というのを私はつくってもらった。私が提唱したのです。いままで帰郷制度というものはなかった。少なくとも隊員はかわいがってもらわぬと困る。そういう意味からいたしましても、食糧費まで切り詰めるなんということはとんでもない。そういうことは長官の温情ある温かいお気持ちに対して、そういうことはないと思いますけれども、いかなることがあっても隊員を不遇に置くようなことは断じてなさらないようにしていただきたいと思う。それから、私が先ほど申しましたように、これもここにも出ておりますけれども、主力戦闘機の三十八億からするF4ファントム、そういうようなものはこの際一時中止をされてでもお考えになる必要はあるんじゃないかと、このように思いますが、そういう点はどういうふうにお考えですか。
  354. 丸山昂

    ○丸山政府委員 御案内のように、ファントムは来年度十機の要求がございますけれども、これでファントムの整備が終わるわけでございます。一方、現在現役の要撃機として活躍をいたしておりますF104J、これが昭和五十五年ごろから本格的に用途廃止が始まってまいります。そういたしますと、五十五年から毎年大体一飛行隊ずつ数が減っていくということになるわけでございます。わが国の防空の主要任務を要撃機が担っておるわけでございまして、したがって、この104Jの用途廃止に伴いまして、次期の対潜機の導入というのは絶対に必要なことでございます。わが国の防空力を維持するためにこれは当然考えてまいらなければならないことでございまして、そのためにFXの調査団をことし派遣さしていただきまして、当初外国の七機についていろいろ資料を収集いたしまして、これをただいま検討中というところでございます。
  355. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だんだん時間が参りましたので、最後に私お尋ねしたいのでございますが、これは長官はよくお聞きを願いたいのです。  去る九月十九日の護衛艦の「おおなみ」における体罰事件。これは体罰事件じゃない、拷問事件ですね。佐世保において起こったことでございます。長官はこれを御存じであるかどうか私は知りませんけれども……。
  356. 坂田道太

    坂田国務大臣 質問がございましたから、大変よく知っております。
  357. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 御存じですか。大変なことですよね。護衛艦「おおなみ」、これは百八十六名の乗組員がおるのです。ところが、九月十九日の真昼、しかも「おおなみ」の甲板。だから鉄板が焼けてしまっているのですよ。そこへ二十五名が正座させられた。甲板は厚さが七ミリ。太陽熱をたっぷり吸い込んでいたからたまらない。十四名がすねに大やけどを負ってしまった。余りのことに二名は退職した。私はここにその写真を持ってきている。長官はこの写真はごらんになったかどうか知らぬけれども、実に哀れ、こういう状態です。これを見てください。何ですかこれは、冗談じゃありませんよ。とんでもないことです。拷問ですよ、これは。私は、ジンギスカンの鉄板焼きは聞いたことがあるけれども、人間の鉄板焼きなんというものはいまだかつて聞いたことがない。これは体罰じゃない、拷問です。まだ今日まで二名は入院しております。あるいは病院へ皆通っております。こんなのを見たらもう身ぶるいしますよ。その写真は、先生方が済んだら防衛庁の幹部連中にもひとつ……。だれか一人こっちへ取りにこい。先生方に持っていってもらうなんて、そういう考え方が横着というんだ。そういう考えを持っているから間違いが起こるんですよ。  これは自衛隊法施行規則には、いかなる場合においても「部下の隊員を虐待してはならない。」とある。「虐待してはならない」とあるから拷問はいい、こういうわけか。学校教育法でも、いかなる場合においても体罰は相ならぬ。これは防衛庁長官は文部大臣もなさっておるからよく御承知でしょう。ところが、体罰はよくない、あるいは虐待してはならないとあるから拷問は差し支えない、こういう考え方か。これを皆さんは何とお考えになるのか、まず長官のお考えをお聞きして、教育局長も来ているはずだから、いいかげんな答弁じゃ承知しませんよ。
  358. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点は、事件を承知いたしまして私も非常に驚いたわけでございます。いやしくも国民の中からわが自衛隊に入りました人をこういうような扱いをしたということは、まことに遺憾千万なことだというふうに考えております。こういうようなことは絶対今後あってはなりませんし、またならないように厳正な考え方で進むつもりでおります。また、本事件を起こしました、この行き過ぎた事件の中心となりました海士長三名を停職処分にするとともに、艦の責任者でございます艦長を戒告処分といたした次第でございます。  しかし、いまこういう処分はいたしましても、こういうようなことが二度と起こらないようなことをすべきであると考えまして、海幕長を呼びまして十分その点は注意を行った次第でございます。単に海幕長だけではございません、陸幕長、空幕長も呼びまして、全自衛官に対しまして、こういうようなことが二度と起こらないようにいたしたいというふうに考えておる次第でございます。まことに遺憾千万なことでございます。
  359. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 この事件のてんまつについてお話を願いたい。そして被害者の状況は現在どのようになっておるか。また防衛庁としてこの事件に関してどのような処置をとったのか。まずその三点について、教育局長以下どなたからでもいいから……。
  360. 今泉正隆

    ○今泉(正)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生がおっしゃいましたような事件が起きて、まことに申しわけなく思っております。  簡単にてんまつを申しますと、千七百トンの護衛艦「おおなみ」、乗員は百八十三名でございます。この「おおなみ」が、九月十四日から半月定係港である佐世保港に停泊中に起きた事犯であります。  海上自衛隊で、最近、外出あるいは外泊を許可された者で艦に帰ってくるのに遅刻する者が、年とともに若干多くなってまいりまして、これは規律維持上非常に大変なことでありますから、遅刻について厳しい指導をかねていたしておりました。ところが、九月十八日と十九日に、この「おおなみ」の中の第一分隊に所属しております海士長三人が相次いでおくれたという事犯が起きたわけでございます。  そこで、これに対しまして、幹部は幹部なりに注意をしたのでありますが、第一分隊の海士長以下全員、これは御存じのように任期制隊員であり、艦内居住勤務の隊員でありますが、この中の先任海士長三人が、反省会を開くということを考えたわけであります。規律維持のためにお互いに反省をしようという会そのものは、動機においてはそう悪くないのでありますが、そこから先の方法が間違っておりまして、まず一つの間違いは、反省会を開く際には幹部の許可を得て開くという点において違反しておりまして、幹部の許可を得てない。しかも反省会をやるには、それなりの妥当な方法でやるべきであるにもかかわらず、お話のありましたように、当日摂氏三十五度で、「おおなみ」の前甲板も鉄甲板も相当焼けております。そこへ二十六人を作業衣のまま正座をさせました。正座の時間は五分ないし十分でありますが、その約半数の十五名がやけどを負ったわけでございます。しかも中に、途中熱いから立った者に対して、これを無理やり座らしたというようなこともありまして、その結果、いま申しましたように、やけどを負った者が十五名に及びました。やけどを負いました中の二人の二等海士は、かねてから海上自衛隊の団体生活に自分の性格が合わぬということで、退職の意向はあったようでありますが、この事件を契機に九月二十九日に退職しております。艦長の側からは、退職するにしても治療してから、全治してからやめてはどうかということは申しましたが、どうしてもやめたいということで、やめております。簡単に申しますとそういったてんまつであります。  先ほど長官答弁にもありましたように、これは、部下の隊員を虐待してはならないという規定の存否にかかわらず、方法としてきわめて不適当、違法でありますので、三人の海士長を停職にいたしますと同時に、艦長につきましても、戒告という正規の懲戒処分をとりました。  なお、こういった事件について、幹部がなぜそういう点を見ていなかったかという点がありますが、航行中でありますとそれぞれ部署についておるわけでありますが、当日停泊中でありまして、しかも十二時三十分から五分ないし十分の間に起きた事犯で、幹部層は昼食中でありました。それから第一分隊は一時から前甲板で訓練をやる予定であったものですから、そういった特異な事犯に気がつかなかったということではございますけれども、艦長の責任も免れがたいものとして戒告処分に処しました。一方、反省会を企てました三人の海士長につきましては、刑事事件として傷害罪及び強要罪で長崎地検に送致をいたしております。  以上がてんまつでありますが、これに対しまして防衛庁がとりました処置であります。  まず、十五人の被害者のうち、在職しております十三人は十一月中に全治いたしました。それから退職をいたしました二人の海士は現在通院中で、今月中に全治する見込みであるというふうに伺っております。  そこで、これに対する措置でありますが、そういった上司の許可も得ない反省会でありますから、反省会をやった三人の海士長側から言いますと、これはとうてい職務とは言いがたいものがあります。しかし、上命下従の非常に厳しい自衛隊で、先任海士長が上司の許可を果たして得たかどうかもわからないで、反省会という名のもとに正座をさせられた側から言いますと、これはやはり職務の一つでありまして、そのためにやけどをした者については公務災害の扱いをいたすようにいたしております。この点は退職した二人についても同様であります。退職した二人は現在やめました後の治療費は個人で負担しておる。もっとも、これに対して在職者が拠金をしておるというようなことを聞いておりますが、それはともかくといたしまして、これは公務災害扱いといたしたいと思っております。  簡単でありますが、以上であります。
  361. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 てんまつ、被害者の状況、そういうことは大体わかりましたが、私もその点をはっきり調査いたしております。問題は、こういうことが日ごろから艦船の中でいつも行われておるのじゃないか、そういう懸念を持つ点があるのです。  そこで、純然たる反省会ならば結構ですけれども、こういう体罰、拷問を加えるような反省会、しかも、遅刻してきたというのですが、遅刻していない者まで連帯責任だということで座らせられている。そういう行き過ぎた拷問、制裁というようなものを一体だれが命令したのか。この本人が言っておるのですよ。日ごろから、きのうもありました、全部整列しろといって。それから急降下爆撃。名前があるのですね。そういうのをばんとやらせられる。そういうことがしょちゅう行われておる。しかもいまの教育局長の話では、そのときには皆が知らなかった、幹部もいませんでした、そんなふざけたことを、あなたは教育局長でありながら。防衛庁長官はそんなことは許されませんよ。これは学校教育においても同じですよ。授業の終わった放課後、運動場で遊んでおったとか、これは先生の責任ですよ、おらぬでも。あるいは休憩のときにでも、先生が仮におらなかったといっても、これは先生の責任ですよ。そんなことは、教育局長ともあろう者が。あなたはもっとはっきりしているかと思ったら、案外元警察官だったとかなんとかいうが、そんなことで何が警察で人命保護、取り締まりができますか。余り冗談のようなことを言うちゃ困るよ。  だから、命令系統は艦長が戒告だなんて言うが、戒告というのは、こんなことしちゃいかぬぞ、承知しました、それで終わり。もっと系統立って、これは艦内で起きたことは全部艦長の責任だと思う。これは陸上、航空、海上、おのおのあると思うのですね。一体責任はだれがとるのか、艦長だけじゃないわけなんです。陸には幕僚長、方面総監、連隊長とかいろいろある。空にもある。海にもある。幕僚長、あるいは自衛艦隊司令官とか、あるいは現場の指揮官、いわゆる艦長とかいろいろある。そういう点をはっきりしてもらいたいのですよ、必賞必罰ということは。  しかもその処置について、あるいはその後の状況について、あるいはてんまつについて落ちている。そういう被害者に対しては、直ちに艦長でも、あるいは要すれば防衛庁長官でも、本当に鞠躬如として、申しわけない、大事な皆さんをお預かりしてこういうとんでもないことをしでかして申しわけない、そんなことをだれがやったんだ。そういうことをやっていないから被害者は非常に怒っています。これを公務災害にしますとか、入院しておるところの治療費は払いますとか、あたりまえのことだ、そんなことを聞いているのじゃない。本当に国民に親しまれるところの自衛隊というならば、大事な大事な国民の子弟を預かっている、しかも「自衛官の心がまえ」として、自衛隊は常に国民とともにあると言うが、全然国民とともにじゃないじゃないか。しかも「僚友互いに真愛の情をもつて結び、公に奉ずる心を基とし、」こう書いてある。何が「僚友互いに真愛」だ。鉄板焼きまでやって、そうしてこういう無残な、これは一生かたわです。  長官、よくお聞きくださいよ。父兄は嘆いています。夏でも半ズボンをはかれない、足はただれてしまっている。海水浴に子供を連れていったり、将来家庭でも持って海水浴でも人に足を見せられない。夏の暑いときでも足は出されない。一生かたわだ。こういう封建時代における拷問よりも以上にひどい。昔からよく水責め、火責めということはあった。今日こうした時代に、しかも国民とともにある自衛隊国民から親しまれる自衛隊で、それにも増した残酷きわまりないところの人権を無視した、人道を無視した拷問に等しいこういうことをやって、ただ一片の申しわけなかったで済みますか。これは大変な問題ですよ。長官は日ごろから、先ほどからもおっしゃっておるように、自衛隊員をこよなくこよなく自分は愛しておると、その長官のお気持ちは下部に達していないじゃないですか。もと足りて末生ず。もとがはっきりしておれば末もはっきりするはずだ。だから私は、先日教育局長にも私の部屋に来ていただいて、自衛隊における教育方針はどういう方針だ、われわれは学校教育三十年もやった、校長経験も十年も持っている、教育はどういうことをやらねばならぬというようなことをわきまえておるはずだ、君らはどうしてやっておるのだと、私はただしたわけなんですよ。  だから私は、先ほどから長官に申し上げておるように、これは同じ公務員でもちょっと性質が違いますけれども、警察官なんかの採用には第一次試験、第二次試験、家庭調査と非常に厳しい。ところが自衛隊はどうか。いつもいかがわしいことばかり。はなはだしいのになっては駅において客引きまでしている。極端な言い方をして言い過ぎだったら、取り消しますけれども、半ばだまかすようなことをして連れてきている。だから、自衛隊は二万名から不足している。だから私は、長官のおっしゃっているようなことをもっと徹底して教育をやってもらいたいと思う。その点ひとつ長官どうですか。
  362. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点につきましては、まことに申しわけないわけでございまして、いやしくも国民からお預かりをしておる隊員にこういうような人道上許すべからざるような状態を引き起こしたこと、二度と再びこういうことがないように相努めてまいりたいというふうに思います。  そのためにはやはり陸海空におきましてその長たる者に対しまして十分今後とも注意を喚起してまいりたいと思います。  まことに私の不徳のいたすところでございまして末端まで徹底いたしかねたところにつきましては自戒をしまして、今後かようなことのないようにいたしたいというふうに思っておる次第でございます。
  363. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これはたまたま「おおなみ」にこういう事件が起こったということではないんですよ。これも御参考に長官のお耳に入れておきますが、この事件の直後に各地より私のところに報告、連絡が来ております。それによりますと、これは私が一方的に向こうから来た連絡を受けとめただけですから、その真偽のほどはあるいは当たっていないことがあるやもしれません。その点は前もって申しておきます。  長崎県の大村に陸上自衛隊があるのですが、ここではレインジャー部隊というのがある。これも私、何回も行ったことがあります。いわゆる特殊訓練で、くノ一忍法みたいな綱渡りみたいなことばかりやるんだ。この部隊の訓練は週に二回やっています。朝から晩まで一日がかりで。ところが訓練中一回でも失敗すると三食抜きだ。朝、昼、晩飯を食わせない。これはどういう考えでこういうことをやるのか、常識はずれなんですね。常識を逸脱している。常人のやることではない。こういう報告が私のところに参っております。  ところが、この「おおなみ」事件があんなに大きく報道されるやいなや、大村のレインジャー部隊のこうした制裁のようなことがぱっととまったという。だからこういうことは自衛隊ではもう日常茶飯事ではないか。表面にたまたま出てきたのだけがわかったのであって、「おおなみ」事件なんというのはほんの氷山の一角というか、九牛の一毛にすぎないのではないか。先日もこれは東京です。殷鑑遠からず。反戦自衛官であるということを理由に、自衛隊内で中隊の幹部等が監禁してしまった。まる三日間も監禁された。そして退職を強要された。相次いでこういうことをやっている、反戦思想だからといって。私は、自衛隊員は全部反戦思想でなければならぬと思う。自衛隊員であって軍人じゃないんだから、戦うことが目的じゃないんだから、侵略攻撃が目的じゃないんだから。反戦思想を持っているというのでまる三日間も監禁して、そしてやめろと退職を強要した。こういうことが相次いで起こっているのですよ。  もうどんどん来るのですよ。いろいろ私そういうことを記録してみましたところが、九月十九日に「おおなみ」事件、それから十一月十八日に自衛隊員が、女の高等学校の生徒との交際を断られたので、逆恨みをして妹の中学生を殺害しております。わかっていますか。それが十一月十八日。十一月二十二日、わずか四日ばかり後だ。陸上自衛隊市谷駐とん地内で、駐とん地出入り業者の長女、八歳の小学校三年生を植え込みに連れ込んでいたずらをしておる。それから数日前の十二月三日、先ほど言った市谷駐とん地で、反戦思想の持ち主ときめられて隊内に三日間も監禁された。わずかここ一、二カ月の間に頻々と相次いでこういう不祥事件が起きておる。ですから「おおなみ」で起こったことはたまたま起こったことじゃない。いかに自衛隊内の教育が不徹底であるか、紊乱しているか、これを長官にはっきり知っていただいて、厳重にこれが対策を講じていただきたい。先ほどちらっと仰せになっておったようですが、陸海空の全自衛隊に対して長官の通達というのですか、訓令というのですか、厳重にそういうものを出していただきたいと思います。今後はこういうことがあった者は厳罰に処す。どうですか。
  364. 坂田道太

    坂田国務大臣 私、長官に就任いたしまして一年になります。そうしますと陸海空二十六万おりますと、実は毎日のようにいろいろな事故の報告がございます。世間に出ていないものもあるわけでございます。その報告を受けながら、実は胸の痛む思いをいたすわけでございます。しかしまた一面、できるだけ私は、現場を視察したり、あるいは防衛庁を警備しております人たち、これは付近の部隊からやってくるわけでございますが、その人たち長官みずから接触することがいいことだということで、時間の許す限り集めまして、五、六分私の話をすることにいたしております。そして一緒に写真を撮りまして、もう三十回以上やりました。恐らく三千人以上の人たちとお会いをしております。その間、たとえば勤務しておるときに奥さんが子供さんを持った、長官、名前をつけてくれというようなほほえましい事例も実はあるわけでございます。その他いろいろの機会に会っております。私と会う自衛官というのは、あるいは選ばれた人を会わせるのかもしれませんけれども、しかし、会ってみますると、小中高でいろいろ生徒たちと会ったり学生たちと会ったりしておりました私でございますが、なかなか頼もしいという一面を私ははだ身で感ずるわけでございます。  それから自衛官の意識調査をやってみますと、自衛官となって生きがいを感じているというのが、平均いたしますと七四%あるのです。入りましたばかりの士の層でございますが、その人たちはやはり五一%くらいです。だんだん教育訓練を行ってまいりますと、自覚してまいりますのか、意識が高まってまいりまして、曹及び幹部だけをとりますと、八〇%近い者が生きがいを感ずるということでございます。官吏になっておる人、あるいは警察官になっておる人、いろいろございますけれども、八〇%近い人たち、七四%の人たちが自分の選んだ職業について生きがいを感じておるというのは、私は全体として見れば健全に育ちつつあるなという気がいたします。  それから、いま御指摘になりましたような問題は別といたしまして、自衛隊で厳しいかという質問に対して、余り厳しく感じない、もっと厳しくあってもいいんだというようなことを求めておるのが七〇%ぐらいございます。これは学生の調査をしましたときもそうでございますが、どうも終戦後、少し甘やかしてみたり、あるいは放任したり、そういうものが非常に過剰にある。そこで学生たち自身も、あるいは一般の青少年の中におきましても、もう少し規律ある、秩序ある、そういうことを求めておるというような調査結果が実はあるわけなんで、大人たちがもうちょっと厳しくしつけてもらいたいというものを求めておる、若者たちは。そういう一面もある。  それからもう一つは、同じ自衛官の意識調査でございますが、公務の時間はそういう厳しさを求めるけれども、自由な時間、わずかな時間でございますけれども、その時間についてはプライバシーを守ってもらいたい、もう少し自由を与えてもらいたい、あるいは外出等について二重、三重のチェック、ああいう問題についてはもう少し何とかならぬだろうか、普通の世の中と同じように考えてもらってもしかるべきではないか、われわれを信用してもらいたい、こういうような気持ちが実は出ておるわけでございまして、一般の青少年の層とそう変わらない意識、つまり同質の意識にある。自衛隊が別な意識を持った集団であるならば、これはまた一面においては危険であるというのが私の考えなので、その意味におきまして、私は全体としては健全に育ちつつあるなという感じを持っておるわけでございます。  しかし、私は毎日のそういうような事件等を見ますと、これではいかぬというふうに思います。もう少し適切な教育訓練のあり方があるものだというふうに思って日ごろ注意をいたしておりますが、私、事故が頻発しておりましたので、いろいろ考えました末、一年間の統計をとってみますと、大体七月から八月にかけて事故が激増するのでございます。そういうグラフができたのです。どういうわけだろうかと私は私なりにいろいろ考えてみました。そこで私は、六月の中ごろ全自衛隊に向かいまして、安全週間というものをそれぞれ各部隊で工夫をしてやりなさい、とにかく事故の起こらないような状況をつくってみなさいということで、それもただ一片の通達だけでなくて、相当丁寧な指示をいたしました。その結果、最近、中間報告及び本報告が出ましたが、昨年一年の事故率に比べまして、大体半減いたしております。内容を調べてみますと、大体七月一日というのがユニフォームの人たちの人事異動の時期なんです。私が考えましたのは、なぜ七月、八月が多いか。季節的なものもあるかもしれないけれども、一面においては、七月の人事異動前後においては、指揮官それ自身の心が動揺しておる。おれはどこかへ行くのじゃないだろうか、おれは出世するのだろうか、そういうような心の動揺が指揮官にある。あるいはまた、七月に任務についたばかりで部下を掌握しておらない。つまり、指揮官が末端の一人一人について注意が十分でない。その結果ここだけが非常に急激に事故が起こっておるのじゃないだろうか。こういうふうで、もし指揮官がそのとき注意をするならばどうなるだろうかという指示をやってみたら、その結果が実は出たわけで、これは私は非常にうれしかったわけでございます。  やはりわれわれの指導、助言というものを適切にやるならば、事故というものもだんだん少なくなっていく。しかし、やはり一般社会の青少年と同じで、しかもその募集等については、先生御指摘のような状況もございまして、二十六万おりますと、いろいろのことが実は起こっておるわけなんで、これを精強なる自衛隊員となり、しかも健全なる常識と広い視野を持った自衛官の一人一人に育てていくということがお預かりした私の責任であるというふうに考えております。  実を申しますと、率直に申し上げまして、この一年間を振り返ってみますと、私の文部大臣を経験いたしましたその面における教育訓練の実態については、まだ私自身が余り顔を突っ込んでおりません。私は、この地位におる間は、ひとつその方面にもう少し力を入れてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  365. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大体これで私の質問も終わりますが、いま長官が最後の締めくくりとして結論を出していただいたのでございますが、全く私も同感で、自衛隊全員が決して悪いとは思いません。けれども、こういうことが頻々として相次いで起こるということは、やはり考えるべきではないか。先ほどからお話があっておりますが、規律を厳重にするということは私は結構だと思いますけれども、こういう行き過ぎた体罰というようなことは、体罰じゃなくして、「打たれても親のつえ」というように、打たれたつえにうれし涙で取りすがってくるような、その手に取りすがってうれし泣きに泣くというような、大将のおっしゃったことは永久に忘れませんというような、徳をもって導くのが本当だ。「徳孤ならず、必ず隣あり」、この精神で私はやってもらいたい。ですから、先ほど教育局長の御答弁もありましたが、本事件がいま裁判の係争中でありますとか、あるいは検察庁の方にいっておりますとかいうようなことで事足りるのじゃなくして、私は教育局長に宿題を出しますが、その後、そういう被害者の方々の御両親とかあるいは家族の方と、どのように本当に誠心誠意お話し合いをなさっておるか。私はそれが一番大事な結論だと思う。公務災害の問題はこうやっておりますとか、補償はどうしますとか、それは当然のことであって、そういうことを言っているのじゃない。精神的に、本当に国民自衛隊であるならば、国民とともにあるならば、大事なお子さん方をお預かりをしておるという気持ちがあるならば、被害者の御家庭とどのようにお話ができておるのか、その点を私は宿題に出しておきますから、教育局長、あすでもあさってでもいつでも、後日でいいから。あなたを何も責めているのじゃないのだから、それをひとつお尋ねをしておきます。そしていまの長官の意を体して自衛隊の隊員をこよなく愛していただきたい、そのように私は希望いたしておきます。  大変どうも長いこと、防衛庁長官も御退屈であったろうと思う。まことに相済みません。いろいろ御無礼なことも申し上げましたが、あしからず。じゃこれにて……。
  366. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 次回は、来たる十六日火曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十時十一分散会