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1975-12-03 第76回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月三日(水曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 伊藤宗一郎君 理事 浜田 幸一君    理事 村山 達雄君 理事 山下 元利君    理事 山本 幸雄君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       越智 伊平君    大石 千八君       片岡 清一君    金子 一平君       鴨田 宗一君    瓦   力君       小泉純一郎君    齋藤 邦吉君       塩谷 一夫君    中川 一郎君       野田  毅君    原田  憲君       坊  秀男君    宮崎 茂一君       毛利 松平君    山中 貞則君       綿貫 民輔君    高沢 寅男君       広瀬 秀吉君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    松浦 利尚君       武藤 山治君    村山 喜一君       山中 吾郎君    横路 孝弘君       荒木  宏君    小林 政子君       坂口  力君    広沢 直樹君       内海  清君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      茂串  俊君         大蔵政務次官  森  美秀君         大蔵省主計局次         長       高橋  元君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省証券局長 岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君  委員外出席者         経済企画庁長官         官房参事官   額田 毅也君         経済企画庁長官         官房参事官   藤井 直樹君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十七日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     野間 友一君 十二月二日  辞任         補欠選任   野間 友一君     荒木  宏君 同月三日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     綿貫 民輔君   村岡 兼造君     片岡 清一君   村山 喜一君     堀  昌雄君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     村岡 兼造君   綿貫 民輔君     奥田 敬和君   堀  昌雄君     村山 喜一君     ――――――――――――― 十一月十九日  土地重課制度廃止に関する請願(有島重武君  紹介)(第二七五五号)  同(大野潔紹介)(第二七五六号)  同(高橋繁紹介)(第二七五七号)  同(竹内黎一君紹介)(第二七五八号)  同(松本忠助紹介)(第二七五九号)  同(折小野良一紹介)(第二八四〇号)  同(竹本孫一紹介)(第二八四一号)  同(小川新一郎紹介)(第二九一六号)  同(中尾宏紹介)(第三〇一〇号)  社会保険診療報酬課税特例等に関する請願  (松本善明紹介)(第二八三九号)  同(石母田達紹介)(第二九一四号)  同(小濱新次紹介)(第二九一五号)  同(不破哲三紹介)(第三〇一一号)  同(米原昶紹介)(第三〇一二号) 同月二十日  付加価値税創設反対に関する請願瀬崎博義君  紹介)(第三一三四号)  同(東中光雄紹介)(第三一三五号)  同(浦井洋君外一名紹介)(第三三〇五号)  同(久保三郎紹介)(第三三〇六号)  同(紺野与次郎紹介)(第三三〇七号)  同(正森成二君紹介)(第三三〇八号)  同(野坂浩賢紹介)(第三三二二号)  社会保険診療報酬課税特例等に関する請願  (大橋敏雄紹介)(第三一三六号)  同(北側義一紹介)(第三一三七号)  自動車重量税等引上げ抑制に関する請願外一  件(唐沢俊二郎紹介)(第三一三八号)  同(小坂善太郎紹介)(第三一三九号)  同(羽田孜紹介)(第三一四〇号)  土地重課制度廃止に関する請願河村勝君紹  介)(第三三〇二号)  同(柴田健治紹介)(第三三〇三号)  同外一件(登坂重次郎紹介)(第三三〇四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十日  昭和五十一年度税制改正に関する陳情書外一件  (第二〇八号)  農協共済事業に係る所得税等改正に関する陳  情書  (第二〇九号)  酒、たばこ等値上げ反対に関する陳情書外四  件(第二一〇号)  付加価値税創設反対に関する陳情書外一件  (第二一一号)  さんご原木に対する輸入関税撤廃に関する陳情  書(第二一二号)  赤字国債発行反対に関する陳情書  (第二一三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十年度の公債発行特例に関する法律  案(内閣提出第一一号)      ――――◇―――――
  2. 上村千一郎

    上村委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  去る十一月二十一日の大蔵委員打合会の記録につきましては、本日の会議録に参照として掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上村千一郎

    上村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 上村千一郎

    上村委員長 昭和五十年度の公債発行特例に関する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。増本一彦君。
  5. 増本一彦

    増本委員 公債特例法案についてお伺いをしていきたいと思いますが、その前に、今回のスト権回復問題について、国民の大きな世論も高まっている折でありますから、この点は、大蔵委員会としても当委員会所管である専売公社、それにまた造幣や印刷というような部門を抱えており、非常に重大な問題でありますから、政府当局としても、また当委員会としても、この点に対して、これを憲法の労働基本権原則の線に沿って正しく解決する努力をされるように、まず要望だけしておきたいと思います。  今回の赤字国債発行は、二兆二千九百億円という、かつて例を見ない巨額国債発行ということになるわけで、しかも、これは財政法の第一条の精神、つまり平和財政、しかも民主財政健全財政というような基本原則からしましても、また四条、五条の精神から言っても、文字どおりその原則を破る大変重大な問題であるというように思うわけです。この財政法の決めた精神を破るような問題を特例という形でお出しになって、こういうような赤字国債以外に一体方法や道がないのかという点を私は大変重大な問題としてまた重大な関心を持っているわけであります。  政府もその点はお考えになった結果、この特例国債という道をお選びになったと思うわけですが、一体赤字国債以外に方法や道がないと考え理由と根拠は何なのか、まずこの点について大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 政府としても、もとより財政法特例を設けてまで公債発行をお願いしなければならぬという事態に対しましては、大変残念に思っておるわけでございます。本来そういう措置をできるだけ回避いたしたいと存じてきましたし、また今後もそういう方針を貫いていかねばならぬと考えております。  ただ、今回の場合は、世界的な規模をもちました不況の中にありまして、わが国経済が異常な落ち込みを記録いたしておるわけでございます。これまで高度の成長を誇ってまいりました日本経済であるだけに、この反動として起こりました不況もまた他の国に比べてより深刻なものがありますことは御案内のとおりでございます。  したがって、そのために予測せざる歳入不足を来したわけでございますが、歳入不足がある場合に歳出節減を当然考えるのが財政の運営の基本であるわけでございますけれども、そういたしますと、さらでだに落ち込んでおります経済回復機会をおくらせ、雇用の不安を招来するということになるわけでございますので、この際といたしましては、歳入不足を補う増税その他の措置は遠慮いたしますばかりでなく、歳出面におきましてもこれを節減するという措置を遠慮いたしまして、一日も早く経済回復を図るということが政府のとるべき政策であると考えたからでございまして、やむなく財政法特例をお願いいたしましてこの危機を突破させていただきたい、そして経済に活力がついてまいりましたならば早くその事態から脱却いたしまして、経済財政も健全な状態に取り戻さなければならないと考えておりまして、そのための措置であると御理解を賜りたいと思います。
  7. 増本一彦

    増本委員 今日の不況のもとで増税は無理だ、歳出節減も無理だ、だから特例公債だ、こういう御趣旨のようでありますが、では一体今日のような歳入欠陥が大きくなった原因はどこにあるとお考えになっているのか。これまでとってこられた財政政策あるいは金融政策、いろいろな経済政策においてやはり大きな誤りがあった、高度経済成長のもとで安易にそのまま財政を膨張させてきて、そしてその結果歳入歳出の間に大きなアンバランスが生まれ、その結果をこの赤字国債という借金によって安易にぬぐおうとしている、それが今日の姿ではないかというように思うわけですが、大臣としてこの歳入欠陥が今日までこんなに大きくなった原因はどこにあるとまずお考えになっているのか、過去の財政金融政策等々の大臣がとってこられた政策を謙虚に顧みていかようにお考えなのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 一昨年の十月の石油危機を契機として異常な増幅を見ました世界経済危機わが国に対する影響でございますが、先ほども申し上げましたようにこれまで世界で一番高い成長を誇ってまいりましただけにその打撃もまた非常に大きかったわけでございます。その大きさとその持続する時間の長さというものに対する測定を私どもが誤ったわけでございます。われわれといたしましては、そういう打撃を受けましたけれども、この回復は徐々にではあるがことしの春ごろから期待できるのではないかという見当をつけまして五十年度の予算も組んでまいったわけでございますけれども、五十年度に入りまして、一月、二月、三月ごろまではわれわれの予想した方向経済は動いておったわけでございますけれども、五月になりましてまず輸出が減ってまいったわけでございます。増勢が減ったというのではなくて絶対額が減ってまいったわけでございまして、それが五月、六月、七月、八月と続いてきたということはわれわれの予想しなかったことでございます。雇用もまたそのころから漸次悪化してまいりまして、雇用パートタイマー等機会が減ってまいったばかりでなく、有効求人倍率もかってない低率を記録するようになってまいったわけでございます。  こういった推移は私どもの予想を超えたものであったわけでございます。それは申すまでもなく、いまにして思えばこれまでの日本成長が非常にスムーズであり、そして非常な高度のものであり、そしてその状態が長く続くものであるという想定の中で日本経済がそれになれて、財政もまたそれに依存してまいっておりましたことから、今日この衝撃を受けてつまずいておるというのが今日の姿であろうと思うのであります。  仰せの点につきましては、そういう測定を誤ったことにつきまして財政当局としては本当に申しわけないと思っておるわけでございますけれども、冷静に事態を回顧してみますれば、そういったことが今日の巨額歳入欠陥をもたらした原因であろうと私は考えております。
  9. 増本一彦

    増本委員 いまの大臣のお話ですと、結局経済情勢の変化の度合いとその継続する時間の長さについての測定を誤った、これだけにとどめておられますけれども、そういう石油危機以後の日本経済に与えるショックの大きさをつくった原因は、石油危機以前の、これまでとり続けてきた高度経済成長政策に求められるべきではないかと思うのです。これは単に日本経済自然成長で高度の成長率を記録し続けてきたのではなくて、高度成長を維持しそれを前進させる、さらに高度成長を続けていく上で財政政策金融政策でもこの高度成長政策を続けていく、そういう仕組みを積極的に政府自身がつくってきた、そのために世界に類を見ないより高度の成長日本経済の中で進められるという結果になってきている。そこのところの手直しが高度成長経済のもとでいろいろ議論されてきたときに、たとえば法人税率をもっと以前の段階から引き上げるべきであるとか、あるいは租税特別措置についても高度成長のあの時点ですでに見直しや改廃を進めなければいけないとか、金融についても大口の融資規制をもっと前の段階から厳しくすべきではなかったのかとか、それ以前の段階政府に対してわれわれ自身もいろいろ積極的な提言をしてきたわけですね。  ところが、そういうものを依然としておとりにならずにそういう高度成長を維持する財政金融政策あるいは制度を温存し続けてきたところに原因があるし、そこに政府自身が責任を感じて、そこのところを原点にして今日のこの深刻な経済情勢を見ていかないと、またそれに基づいた政策を立てていかないと、なお一層今日のこうした深刻な事態の継続を許す、あるいは不況のもとでそういう特典を受ける一部のグループや企業だけは一定の好況を維持するというような現象が生まれて、不況の二重構造みたいなものが一段と激しくなるという状況にもなるのではないかと私は考えるわけですが、高度成長の続けられてきたそのときの経済政策あるいは財政金融政策は一体どうだったのか、誤りなかったと言い切れるのかという点について、この点は大臣はどういうようにお考えでし  ようか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 私は日本経済高度成長がなぜ可能であったかと申しますと、これは増本先生も御承知のとおり、長い間、二十何年かにわたりまして、たとえば石油にいたしましても一バーレル二ドル内外でずっと安定した低廉な供給が確保されたわけでございます。その他の資源もいわば買い手市場でございまして、わが国といたしましては、世界各国の中で一番資源を持たない国でありながら、一番資源の獲得に有利な立場であったわけでございます。したがって、こういう環境のもとにおきましては、できるだけそういう有利な条件を活用いたしましてわが国経済成長を促してまいるということは、私は決して政策方向として誤ったことではなかったと思うのであります。  ところが、一番有利であり一番安定しておったわが国経済を支えておった基盤が二、三年前から大きな動揺を来しまして、資源は急に高くなり、しかも供給が非常に不安になってまいり、一部買い手市場売り手市場に変化したわけでございますので、いままでこういう安定した条件のもとで営まれておった経済が大きな衝撃を受けたわけでございまして、その衝撃度合いは、先ほど御説明申し上げましたようにどこの国よりも日本が激しかったということだと思うのでございます。  したがって、与えられた条件のもとで最善状態を模索してまいるということは決して間違いではなかったと思うのでございますが、ただ一点、あなたの御質問に関連して申し上げますならば、しかしいつまでもそういう恵まれた条件が続くものではない、いつかこういう条件が崩れた場合にどうすべきかという用意を前広にやって、財政におきましても経済におきましても産業におきましてもそういう用意があってしかるべきじゃなかったかという御指摘でありとすれば、私は仰せのとおりだと思うのでございます。そういう場合に備えて、経済構造財政構造もやはり弾力性を持った体質をいつも用意しておかなければならなかったと思うのでございますけれども、必ずしもそうでなかったという点はわれわれの大きな反省が求められておると思うのでございまして、その点につきましては、私はあなたの御質問に関連してそういう思いを新たにするものでございます。  したがって、問題は、そういう体質の問題でございまして、法人税法構造でございますとか税制構造がどうなっておるかというようなことではなくて、問題の所在は、そういう財政体質経済構造体質雇用構造体質、そういうところにむしろ問題が関わるべきじゃないか、税制構造とか税制に間違いの責めを帰するというような見解は私はとるべきでないと思っております。
  11. 増本一彦

    増本委員 大臣のお言葉ですけれども、しかし、経済構造とか体質というものを、そのあるべきものに誘導をしていくという点では税制政策とか財政政策というものが果たす役割りというのは非常に大きいのではないですか。それ以外のものからいまの日本経済の、あるいは過去もそうですか、そういう経済体質とか構造というものを変えていくというぐあいにはいかないんじゃないでしょうか。  だからそういう点で、あるべき経済構造とか体質というものに向かって税制財政金融、いろいろな施策がそういう方向にとられることなく、高度経済成長が盛んだというところにいわば酔って、そうしてそれをそのままむしろ拡大再生産するような形で進められてきたというところに実はショックを一段と大きくした原因があるのではないかというように私は思うので、この点では半分大臣はお認めになるようでいながら、自分のその面での、そこではそういう経済体質経済構造をつくっていく上で大臣所管の分野で果たすべき役割りをあるいは果たし得なかったとか、あるいは歴代自民党政府歴代大蔵大臣がその点で手を打たなかったというところに私は問題があるというように思いますけれども、じゃそういうようなぐあいにはお考えになりませんでしょうか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 歴代内閣そして歴代の蔵相が、与えられた条件のもとで最善を尽くして日本経済構造を高度化していき、成長を促進し、そして財政力を培っていこうとされた努力に対しては私は敬意を表します。ただ、それを支えておりました世界的な資源供給状況、そういったものがいつの日か破綻するであろう、いまわれわれが現に見るような姿において破綻するだろうという予見のもとに、そういう破綻が来た場合に経済政策をどうするか、財政金融政策をどうするかということにつきまして前広に対応策用意しながら柔軟な財政体質を常に保持しておったとは言い切れないわけでございまして、その点について努力は私は必ずしも十分でなかったと思うのであります。これは人間の営みでございまして、そんなに予見力を持ち得ないことは御理解をいただかなければならぬと思います。  ただ、こういう状況になりましたわけでございますので、冷静に事態対応いたしまして、わが国財政のあり方につきましては仰せのとおり適正な対応考えなければならぬということで、いま鋭意政府といたしましても施策を進めておるところでございまして、いま御審議をいただいておりますことも一つの手段と御理解を賜りたいと思います。
  13. 増本一彦

    増本委員 大臣は先ほど、赤字国債に頼る以外に道がないという理由一つとして、増税は無理だ、こういうようにおっしゃいました。一体増税一つの問題としては、やはり企業課税を強化するということが、これはもう数年来この国会でも真剣な議論が重ねられてきたわけです。それは単に税制として不公正であるからというだけでなくて、これが特別償却の問題にしても準備金制度にしても、こうした制度高度成長をさらに維持し促進する税制仕組みであるからというところも主要な論拠の一つに挙げられていたと思うわけです。  こういうような高度成長時代税制仕組みを、いま大臣もおっしゃるような低成長とか深刻な経済状態になったこの時点でなお温存していかなければならない理由というのは一体どこにあるのかというように思いますが、これまで調べてみたところでも、高度成長時代の、四十年から昭和五十年まで見ましても、主な租税特別措置新設拡充延長縮小廃止というようなぐあいに調べてみても、新設拡充延長が何と九十もあり、縮小廃止はわずか二十三。昭和五十年で見ましても、新設三の、拡充が三の、延長が三、縮小は三で廃止は一というような状態になっているわけですね。こういうような新たな経済情勢が変わったというもとで、それに照応した税制仕組みというものを当然考え直すということが大事なんであって、高度成長時代のいわば大企業優遇税制仕組みを今日なお温存しなければならない理由は全くないというように思いますけれども、その点は政府はどのようにお考えでしょうか。
  14. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいまの御質問で、租税特別措置と言われておりますものがすべて大企業優遇であるかのような御指摘でございますけれども、再々当委員会でも申し上げておりますように、現在の租税特別措置はそれぞれの政策目的に応じて設けられておりまするが、交際費課税の強化を除きまして、平年度で約七千九百億円の減税になっております中の法人税関係は約三千億円でございまして、しかもその三千億の中の大企業分というのは約六割の千八百億円であるということをまず申し上げておきたいと思います。  なお、従来から租税特別措置がいわゆる既得権化、慢性化しないようにという意味での整理、縮減は毎年私どもなりに努力をいたしてきたつもりでございまして、先ほど御指摘整理のやり方は、項目をお挙げになっておりましたけれども、たとえば私どもの計算では、五十年度の税制改正では整理分が六百四十億、拡充分は九十八億というような姿を示しておりまするし、また、当初予算ベースでの一般会計税収に占めます租税特別措置の割合というのは最近漸次減少してきておるわけでございまして、租税特別措置整理合理化につきましての努力が続けられてきておるというように御理解いただきたいと思います。
  15. 増本一彦

    増本委員 準備金とかいわゆる特別償却と言われるものの多くが大企業に適用をされ、これが高度経済成長時代にその経済成長を維持していく上で大きな役割りを果たしてきたという点は、主税局長はお認めになるのでしょうか。
  16. 大倉眞隆

    大倉政府委員 特別償却につきましては、機械を取得したという事実に基づいてフェーバーが与えられるわけでございますけれども、その経済効果はいわば通常の償却に比べまして償却が早い。その期間についての資金融資をしておるというものとほぼ同様でございまして、償却期間全体を通じますれば、いずれは取り返しになるわけでございますが、いずれにしても、こういう制度があるために設備近代化合理化が間接的であれ推進される、それは当然だと思います。むしろそういうことをねらってこそ、こういう制度を設けた。ただ、特別償却がすべて大企業向けのものであるということはございません。中小企業機械設備の取得についての特別償却ももちろんあるわけでございまして、特別償却イコール企業優遇であるというふうに断定をなさることにつきましては、私どもとして異論を持っておるということを申し上げたいと思います。
  17. 増本一彦

    増本委員 特別償却民間設備投資を促進する上で大きな役割りを果たして、民間設備投資の大部分が、大宗がいわゆる大手の企業によってもたらされたものであるという事実も、これは数字の上からも明らかなんでお認めになるだろうと思います。  では、そういうようなこれまで高度成長を維持するあるいは促進するために、その目的でつくられてきた税の仕組みというものは今後どういうように直していくのか、これからの経済成長がいままでのような高成長を見込めないという状況のもとでどういうようにお考えなのか、その点をもう一度確認しておきたいと思います。
  18. 大倉眞隆

    大倉政府委員 租税特別措置全般につきまして、大蔵大臣がたびたびお答えいたしておりますように、現在、税制調査会にその全面的な再検討をお願いいたしております。その場合出ております御議論といたしまして、やはり従来からある特別措置というのは、それぞれの政策目的に応じてつくられておるので、現時点においてその政策目的の角度から吟味をして、残すべきものは残すということを考えるべきである。さらに、残す場合に従来ほどの幅の恩典が必要かどうか、残すとしてもその幅については縮小の余地があるものは縮小すべきだというように、やはり個々のものを取り上げて議論をすべきだという見方が大勢を占めておりまして、特別措置であるからすべてをやめてしまえという御議論は出ておりません。  今後の特別償却についての考え方でございまするが、これは設備投資を税を通じて促進する、誘導的な効果をねらっておるものでございますが、現在ございます各種の特別償却につきまして廃止してもいいものと、なお継続すべきものとの振り分けにつきまして、関係省庁と現在議論を続けております。結論が出ますまでになお約二、三週間の時間が必要かと思っておりますが、結論を得ました段階で、なぜ残したか、なぜ縮めたかというようなことにつきまして、一々についての御議論はいただけるものと思います。
  19. 増本一彦

    増本委員 いま深刻な経済状況のもとで勤労者が、国民が非常に深刻な生活を送っている。しかし、そういう中で日本経済全体がこういういまの状況になっていますから、一方では、かつてのような好況を謳歌するような状況ではないけれども政府のいろいろな意見を見ても、あるいは私たちが調査をして試算をしてみても、まだ大企業といいますか、大手の企業にはいわゆる不況の耐久力というものがずっと強いということも明らかだというように思うわけですね。  それにもかかわらず、なぜ今度、この赤字国債を出すことによって結局は増税を呼び、国民全体の税負担を重くするというような、そういう結果を生むことが明らかな赤字国債方向をとったのか。もっと大企業の、いまこの時点で総体的に見れば不況耐久力が依然として強い、そこのところから税を取ることによって歳入欠陥の解決を図っていくというような手だてがなぜとれないのか。大臣は単純にいま増税状況にはないというようにおっしゃるけれども、果たしてそうなのかということを私は強く感ずるわけです。たとえば大手の倒産といっても興人以外にはないわけでして、中小企業や勤労者と比べれば、ずっとそういう点では不況耐久力があるということ自身政府が発表した経済白書でも明らかなことでありますし、内部留保の積み増し率が依然として非常に高くなってきている。そういう時点でこういう内部留保を、これまでの税制あるいは企業会計原則仕組みで積み上げてきたものをも吸収することによって今日の財政危機の打開を図っていくという手だてこそ私はとるべきではないかというように考えますが、その点はいかがですか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 こういう時期におきまして大企業は耐久力があるので増税考えたらいいじゃないか、考えられるのではないかというような御指摘でございます。  まず御理解いただきたいのは、こういう時期でございますが、減税していないということです。そこで、現在の税制の中でできるだけ税収の確保を政府として図っておりますことはまず御理解いただきたいと思います。先進諸国におきまして、アメリカでございますとかあるいはドイツでございますとかは、こういう時期には投資促進の減税をやりますとか所得減税とかいうようなことまで考えて、現にやっておるわけでございますが、増税どころか、逆に今日の景気対策といたしましてそういう政策まで講じておるわけでございますが、日本としてはまだそういうことは私は考えていないわけなんでございます。あなたの言われるように増税をやりますと、この経済の異常に落ち込んだ事態、これは世界の先進国の中で私は一番ひどい打撃を受けている国だと思うのでございますれけども、一層の落ち込みを記録することになるわけでございまして、ひとり景気の問題ばかりではなく、大変な雇用の不安、動揺を招来するに違いないと思うのでございまして、むしろそういうことは絶対にすべきでないと考えておるわけでございます。私どもといたしましては、現行税制によりまして適正な収入を確保するということ、しかしながら特別措置等につきましては相当厳正な洗い直しをやりまして、そこに不公正が残っておるというようなことがないようにしなければならぬという点につきましては、鋭意洗っておるわけでございますので、ただいまとっております姿勢が、今日の事態におきましては私は政府のとるべき姿勢としては一番適当な姿勢ではなかろうかと考えております。
  21. 増本一彦

    増本委員 しかし、たとえば五十年度の経済白書では、従来の不況期は生産単位当たりの固定費が増大してコスト高になったが、今回はインフレの影響で実質的には金融費用負担が低下し、簿価による減価償却コストも低下したこと、四十年の不況期は内部留保の総資本に対する比率が製造業大企業で九%、今回は四十九年上期で一三%に上昇しているので、取り崩しで耐えることができたという点の指摘がありますし、日銀の調査月報によりましても、主要企業不況抵抗力は実質内部留保率で見る限り、過去の不況期を上回っていると見られるという指摘が、実際の数字と結論の上で出てきているわけですね。ですから、いまの全体の状況をにらんで大企業に相応の負担をさせるというような手だては十分にとる条件があるのではないかというように考えるのですが、その点ではいかがでしょうか。
  22. 大倉眞隆

    大倉政府委員 この点はいろいろ御議論の分かれるところかもしれませんけれども、私のただいま持っております感想といたしましては、主要国同じように実質成長がとまる、あるいはマイナスになるいうと状況のもとで、なぜ日本が失業率がほかの国に比べて格段に低く済んでおるのか。結局それは実質生産がほとんど伸びない反面で、ある程度物価は上がりましたけれども、それ以上の率で人件費が上がっておる、しかも人員整理はやっていないということで企業収益に圧迫がきているというのが、ほかの国に比べての非常な特徴ではないのか。アメリカでも西独でも、日本ほど企業収益は減っておりません。減っておりませんが、それは一つは自己資本が大きくて金融費用の負担が少ないこと、もう一つは、日本と違ってわりあい簡単にレイオフをして人件費の圧迫を逃れていること、どうもその点に大きな原因があるように思えてなりません。したがいまして、過去の蓄積がまだあるはずだから当期の収益に対してもちろん応分の負担をいましてもらっておるわけでありますが、当期収益に対する負担以上に過去の蓄積に対して追加負担を求めるということが、結果的に果たして雇用問題に悪い影響を与えずに済むのかどうか、その点につきまして私は率直に、やはりいまの時期に過去の蓄積に対しての課税の強化というのを考えるのは必ずしも適当ではないだろうという見方をとっております。
  23. 増本一彦

    増本委員 しかし千人以下の従業員の企業というのは、いま一番深刻な状態なんです。しかしそれを超える企業の場合には、それは当然いままでのいろいろな蓄積その他あるでしょうけれども、しかしやはり格段の相違があるわけですね。そしてそういう主要企業といわれる大企業が、特にこれまでの税制企業会計原則仕組みによって内部留保の積み増しの伸び率も非常に高く、しかも実額でも非常に大きなものを抱え込んでいるという実態から見れば、そこに相応の負担を実態に即してとっていくということはとれないやり方ではないというように思いますが、そういうような単純な感想ではなくて、具体的な実態を踏まえた詰めと調査というものを主税局でおやりになっているのかどうか、その点を伺っておきましょう。
  24. 大倉眞隆

    大倉政府委員 増本委員の御所属の党からいろいろな御提言が出ておることは私も十分承知いたしておりますが、たとえば引当金、準備金——資本準備金、利益準備金、それらについて臨時に特別の課税をしたらどうか、それを踏まえてのただいまの御質問だと思います。  それにつきましては、私どもとしてまず利益準備金というのは一度課税済みのものでございます。資本準備金は、これはまさしく資本そのものと考えるべきものだと思います。したがって資本に対していま課税をしていいかどうかという点につきましては、先ほど申し上げたような考え方で私としては必ずしも適当だと思っておりません。  引当金につきましては、これは非課税で留保されているということはもうおっしゃるとおりでございます。ただ、これは商法上、企業会計上、期間損益を適正に計算するためのシステムでございまして、問題として洗い直すべきことは、その引当率が果たして適正であるかということであろうと思いまして、それにつきましては私どもなりに検討もいたし、なお縮減が適当であると思うものにつきましては、くどくは申し上げませんが、政令でできるものは政令で措置をいたしておる。  各準備金につきましては、これは先ほど申し上げました租税特別措置の全面的検討の中で、やめるべきもの、残すべきもの、縮減を図るべきもの・ということを現在研究中でございます。
  25. 増本一彦

    増本委員 いま御意見伺いましたけれども、それでは率直に申し上げますが、資本剰余金の中心はプレミアムですね。これはシャウプ勧告以前には課税がやられていた。それが高度成長のあの時期に時価発行が行われ、プレミアムを相当に抱えた企業が出て、その時点でも、ちょうど四十七年、四十八年にかけて当委員会でも相当な議論が行われたことは御承知だと思うのです。それをそのときに課税をしないで、積み残しになってそのまま来ている問題について、いまこの際財政危機が深刻だ、国民の方はもうにっちもさっちもいかない状態雇用不安も増大をしている。しかしその一方で、これまでのいろいろな税制財政上の恩典を受けて、そうして内部留保を抱えている、そういうものに対して相応の負担を求めるということが、いまのこの危機から見たら、臨時的な一時的な問題にしろ、この危機を乗り切る上ではそういう手だてをとる根拠というのは十分に私はあると思う。経過から見ても、プレミアムについてはその都度課税をするという手だてがかつて税制上とられてきた経過もあるというところから見たら、これは当然おやりになってしかるべきではないか。  それからもう一つ、引当金について言えば、いま現実に皆さんも実態にそぐわない面があるということはお認めになって、それについての手直しを始められているという事実が雄弁に物語っているように、だからこそ財政危機のこの時期に、それに対しても相応な負担を求めるということはあってよいと思いますし、それから、利益の留保分については、これもこれまで法人税率が国際的に見ても非常に低かった。国際的にも、日本の法人税企業負担については批判が強まっていた。それを四〇%までようやく引き上げたということがあるわけですが、しかしそれ以前の問題や経過を考えたり、あるいは企業そのものの資本階級別に見ても、実効税率は百億円以上が異常に低いというような事実から見ても、やはりそれなりの相応の負担をその点から求めるということで、いまのこの財政危機を乗り切る上で臨時的な手だてをとるということが私はあってしかるべきではないかというように思うのですが、その点はいかがですか。
  26. 大倉眞隆

    大倉政府委員 まず御指摘のプレミアムでございますが、これは戦前にこれを課税対象としていたことがあるのはおっしゃるとおりでございます。ただ、十八年以後は全額課税ではなく二分の一課税というような時期もございましたし、それからシャウプ勧告の前に、二十五年にすでにこれは益金にしないということになっていたと承知いたしております。  現在での考え方でございますが、商法におきましてプレミアムの考え方は、これは資本金と全く同じだという考え方が二十五年の商法改正で確立したというふうに私ども考えておりまして、二十五年改正以後の商法におきましては、プレミアムはその以前と違いまして全額を資本準備金として積み立てなくてはならないということが強制まれております。しかもこの取り崩しは、欠損を埋めるためにしか崩してはいけない、しかも取り崩しの順序としては、まず利益準備金を全額これに充てて、その後でなければ崩してはいけないということが強行法規として決まっておりまして、現在商法上の考え方として、いわゆるプレミアムは資本金と全く同じものというように観念されておると申し上げて間違いではないと思っております。企業会計原則の方でも、確立された原則としてそのように取り扱うということになっておりまするし、やはり四十七年に非常に巨額のプレミアムがあったということはおっしゃるとおりでございますけれども、これを課税対象とするということにつきましては、資本に対して課税をしていいかどうかという問題として考えるべきであろうと、依然として私はそう思います。現状においては、資本に対する課税をするに適当な時期とは考えておりません。  引当金につきましては、貸倒引当金について経過期間を設けながら縮減するということを実施いたしました。御指摘の中で金額的に大きいのは退職給与引当金でございますが、これにつきましては私どもとしては、結論だけ申し上げて恐縮でございますが、現行の引当制度、累積限度の制限というのは合理的なものであるというように考えておりますので、現時点でこれを縮減するということは適当ではないだろうと考えております。  各種準備金につきましてはもうくどくなりますので、現在全般的に検討を続けておるということで御答弁にかえたいと思います。
  27. 増本一彦

    増本委員 この企業会計原則にのっとって税務会計を処理していくというやり方がもちろんこれまでとられてきたわけですが、しかし、企業会計を外れた部分で、たとえば準備金のような制度租税特別措置でとられるという点からいったら、それは資本そのものに対する課税が、商法の規定は仮にあっても、臨時特別の措置として、この緊急事態について一回限りの課税をするということは全然背理ではないというように私は思うのです。  その点はしかし、議論が平行いたしますからそれにとどめますけれども、では、いま御指摘になった退職給与引当金ですね、実際から見てたとえばどうなんですか。引当金を企業会計で損金として認めるということにいまなっている。しかし、圧倒的多数といっていい中小企業等々にあっては、そういう制度があっても、この退職給与引当金すら積み立てることができないという企業の実態がある。これはお認めになると思いますね。だから、この退職給与引当金について言えば、それだけの力のあるところが、現行のこの十分の五までは課税されないということでそのまま内部留保になっている。しかし、これは債務性引当金だとはいえ、実態から見ますと、それは退職給与で実際に取り崩して目的使用をしていくという点は、これはもう実績から見たら非常に、異常に低いということも事実であると思うのですね。  まずお伺いをしておきますが、では、この退職給与引当金について、目的使用で取り崩されている分というのは、全体の引当金の積立額に対して何%ぐらいの実態になっているのでしょうか。
  28. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ちょっと突然のお尋ねでございますので、いま資料を調べました上で……。
  29. 増本一彦

    増本委員 私の方で、いわゆるベストテンの大企業についての退職給与引当金の状態を見てみますと、目的使用率でいくと、新日本製鉄が四十九年の下で七・六です。日本鋼管が七・八、三菱重工に至っては一・〇、みんなパーセントです。東京電力が四・八、第一勧銀が三・二、住友銀行で二・六、富士銀行で三・二、自動車のトヨタ自工に至っては〇・五です。だから五割が非課税で、引当金として全くそのまま積み上げられているというようなことは、いまのこの数字で実態に即しているもので、それは置いておいていいものだという議論には私は絶対にならないというように思いますが、いかがですか。
  30. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ちょっとお言葉を返すようになって恐縮でございますけれども、退職給与引当金の引き当てを行うべきだという考え方は、当期に予想される退職給与の支払い額を期首に引き当てておけばいいということで御議論になっているんだと思うのですが、実はいまのシステムの考え方はそうではない。当期の期間利益が幾らであったのかということを計算するためには、労働協約その他におきまして、勤続年数に応じて退職金がふえてまいりますから、当期にこれだけの人数の人がこれだけの退職給与のいわば請求権を新たに持つことになった、その金額は当期の利益にチャージするということによって、当期の利益が適正に把握されるという考え方を基本的なスタートにしておるものと了解しております。  その意味では、先ほど、企業会計原則で言えば、すべて税法が受け取るのかという御質問もございましたが、企業会計の側の方々からは、いまの税法の二分の一限度というのがおかしい、全額積むべきなんだという御議論もあるわけでございます。私どもの方は、やはりそれは当期にそれだけの将来債務が発生しておることは計算上そうであろうけれども、期末に引き当てるべき金額の累積としては、それは将来の平均的な勤続年数を予測し、平均的な支払い額を予測し、それを年金現価で換算したものにとどめるのがむしろ妥当ではないかということで、いろいろ保険数理的な計算をやっていただいた結果が現在の二分の一ということになっているわけでございます。極端なことを申しますと、当期支払い予定額だけを引き当てるというならば、引当金は要らないのだろうと思います。当期支払い額は当然に損金になってしまいますから、事前引き当てという観念はなくなってくる。やはりそこに基本的に立場の相違が出てくるかという感じを持っております。
  31. 増本一彦

    増本委員 それでは、しかし債務性のものだから引き当てを認めるのだと言うけれども、実際には引き当てすらできない多数の中小企業がある。そして、そういう点では力のある大手の企業だけだ。しかし、いざそういう引き当てているところでも倒れてしまえば、実際にはどこかへそういうものが飛んでしまうという実態もある。ですからそういう現実を踏まえると、本来の引当金で十分の五までこれについては非課税だといういまの事態のままで済ませておいてよいのかというのは、やはり実態論から来る一つの議論だと思うのです。そこが一つの問題だと思うのです。この点については主税局長はどういうようにお考えですか。
  32. 大倉眞隆

    大倉政府委員 中小企業で税法上認められている範囲の引き当てすらとれない企業がかなりの数あるというのはおっしゃるとおりでございます。私どもとしてはそれが引き当てられるほど収益力がついてくれることを期待するしかないと申し上げたいと思います。  それから、引当金を計算上持っていても、実際に倒産した場合に払えない、何のために引き当てているのかわからぬではないかという点もかねがね御論議が出ております。これにつきましては、くどくなって恐縮でございますが、退職給与引当金というのは、私どもの立場から申しますれば期間損益を合理的に計算するためのシステムでございまして、本当に従業員の退職金請求権を担保するためにいかなる手段があるかということになりますと、それは退職金請求権の、他の各種の法人に対する請求権との優先劣後の関係をどのように考えたらいいかという問題ではなかろうか。ほかの債権との優先度をどう考えたら労働者の退職金請求権が保護されるか、そちらの角度からの問題ではなかろうか。  ただ、それらの角度を全部合わせまして、税制上の制度としていまの制度よりもむしろ望ましいかもしれないものは社外拠出であるのかもしれません。適格退職年金のように、社外に拠出すれば、拠出した分だけは損金にいたしますが、社外で担保されまして、仮に倒産した法人がありましても、その倒産した法人とは別のところで支払い原資が持たれておるということになりますので、将来長い期間にわたっての望ましい姿としては、なるべく社外拠出の形で年金が保護されるということの方が望ましいのかもしれません。ただ、現状におきまして退職給与引当金を必ず税法上退職給与の支払いに充てるべきだというようにはなかなか規定ができないし、またそれは税法の規定の範囲の問題ではないのではないかというように私は考えております。
  33. 増本一彦

    増本委員 いまの企業会計では一〇〇%だ。しかし税法では十分の五だ。目的使用の実態はさっきお話ししたような状況だ。これを全部取ってしまえというのじゃないのですよ。これをたとえば十分の三ぐらいに下げるというだけでも、七千億を超える税収の確保というのは可能なのじゃないですか。だから、いまこういうように、歳入欠陥だとか、それを将来にわたって借金の返済という形になるような赤字国債で賄うのではなくて、この辺のところも十分に検討して財源の確保を図るという手だてが、財政危機に直面している今日では必要なのではないかという趣旨で申し上げているのですよ。その辺の見直しと検討については、大臣はどういうようにお考えですか。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 技術論は主税局長にお願いすることにいたしまして、私の立場での問題でございますが、まず、税制はその年の都合でいろいろいじるべきものではないと私は考えます。国家の生命は悠久でございますから、税源というものはいつも健全に培養しておかなければならぬわけでございますので、いま都合が悪いから大いに企業の方のふところをねらおうじゃないかということであたふたと政府が動くということは、私は賢明でないのではないかと思うのです。したがって、企業会計の原則あるいは商法の原則というものはやはり尊重してまいるということでなければならぬのではないかと思います。  わが国は申すまでもなく企業国家でありまして、われわれも一歩出たらもうそこに企業にぶつかるわけでございまして、企業が健全でないと国の経済は健全でないし、企業が健全でないと国の財政も健全でないわけでございますので、企業というものは私は非常に大事な国家存立の基礎だと思うのでありまして、企業会計というものに対しましては、政府としては非常に慎重でなければならぬのではないかと考えております。したがって、できる限りそういった原則を尊重し、税源の培養を図ってまいるということに忠実でなければならぬと私は考えております。  それをどの程度、しからばどうするかということでございますが、これにつきましては、先ほどから主税局長からお答え申し上げているところで御了解をいただきたいと思います。
  35. 増本一彦

    増本委員 それでは、大倉さん、退職給与引当金の繰入率の十分の五を十分の三にしたらなぜいけないのですか。全部なくせと言っているのではないのですね。たとえば、そういうことで繰入率を当面下げる、そうして税収を確保するということは、これはたとえば皆さんの方だって貸倒引当金について、非常に不十分だと思いますが、一定の手直しをして、これはまた後で伺いますが、十分の三にしたっていいのじゃないですか。なぜ、十分の五でなくちゃならない、十分の三ではいけないのか、そこのところを明確に説明してください。
  36. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど申し上げましたように、現在の二分の一というのが腰だめで決められておるものでございますれば、これを時宜に応じて動かすということも場合によって考えられるのかもしれません。その意味で私どもなりにいまの二分の一の根拠というものは、いつも議論をいたしておりますが、先ほど申し上げましたように、通常予想される現在の従業員の将来の退職時までの予想期間、それに対する現在の現価というもので現在説明され、またその説明は私としてもある程度合理的なものと考えておりますので、理屈なしにこれを四割方縮減するということはなかなか税制としては考えにくいと申し上げるしかないと思います。
  37. 増本一彦

    増本委員 では、わからないのですね。企業会計でいけば、その企業は一〇〇%必要なものは積み立てるというのはいいんですよ。しかし非課税分が半分でなくちゃならない。そうじゃなくて三割にしてもいいじゃないか、十分の三までしてもいいじゃないかという問題でしょう、いま言うておる問題は。だからそこのところがなぜ二分の一じゃなくて、十分の三にまで下げてきちんとするということがいけないのかという、そこのところを伺っているんですよ。
  38. 大倉眞隆

    大倉政府委員 でございますから、企業会計の方では、現在価格という観念をとらずに、全額期末に持つべきだとおっしゃる、それに対しで私どもは、将来価格をいま全部持つ必要はないではないですか。それはたびたび申し上げて恐縮ですが、現在価格という字を使う現価で積めばいいんで、期末に全員が一遍にやめてしまうということはないんだから、期間損益を計算して期間経費を配分をするということで、当期純増は認めますけれども、累積額として二分の一を超えるということには必ずしも合理性はございませんよということで、税法の立場を決めておる。したがって税法の方が、お金がいまないから二分の一は変えちゃいますよということにはなかなかならない。貸倒引当金の方は従来からの経緯で率が決まっておったけれども、これは予想される実績値にある程度バランスをとったものであるべきなんであって、予想される実績値というものとの差が大きいから企業会計上から言ってもそこまでの引き当てをしなくともいいじゃないかということで実現に移っておるということでございまして、腰だめで決まっている率につきまして合理的な範囲での縮減を考えるということはもちろん今後とも引き続きいたします。ただその二分の一というのは腰だめで決まっているものでないということを申し上げたいわけでございます。
  39. 増本一彦

    増本委員 腰だめでないのはいいですよ。だけれども、そこの二分の一の数字を十分の三に移したっていいじゃないかというそこのところの理由はまだあなたのそれでもわからないんだな。それでは、これはあとまた引き続いて議論させていただきます。  貸倒引当金なんですが、金融機関についてこれは千分の九・五になって、二年がかりで千分の八までしようということになった。それについては一挙に削減すると非常に問題が大きくなるという理由が説明されてきましたけれども、もっと率直に、たとえば一挙に千分の五まで削ると一体どこにどういう困る理由が出てくるのか。実際の純損で見てみると、皆さんの方から報告があったとおり、四十九年で千分の〇・〇二のときに地銀が千分の〇・〇五、相互銀行で〇・三二であり、信用金庫で〇・四七だった。実際には、都銀では純損で見てみると四百七十五倍だとか地銀で百九十倍、相銀で二十九・七倍、信用金庫で二十・二倍という状態にいまあるわけですね。だから、ここを千分の五に削りなさいというのは、私たちもまたほかの委員からも絶えず指摘をされてきたのですが、なぜ一挙に削ると困るのか、その理由をまず明確にしていただきたいと思います。
  40. 大倉眞隆

    大倉政府委員 私どもがこの夏に改正いたしました政令で、将来にわたって引当率を千分の五に引き下げていきたいという趣旨は明らかに出ておると思います。  なぜ一遍にやれないかという点につきましては、これは過去に蓄積したものに対する課税でございますから、やはり一度にやるのは適当でない、ある程度の経過期間を置いて、ならして納めていただくということを考えざるを得ない。それは仮に今後、現在ございます準備金をあるものについて廃止するという結論が出た場合にも、私は同様の措置をとらしていただきたいと思っております。現在持っておる準備金を一遍に全部課税対象にして全額を一期で納めてくださいということはやはり無理があると思います。その意味で計算上、それは仮に現在一挙に半分にいたしますれば三千億とか四千億とかいう増収は出てまいりましょう。ただ、大ざっぱに申しまして、現在金融保険業で従来のシステムで納めていただいている税額というのは恐らく五千ないし六千、大体五千五、六百億ではないか。これは統計がおくれますのでよく正確にはわかりませんけれども、これに対して今回の経過期間中の負担増というのは毎年五百七十億でございまして、毎年いままでのシステムに比べて一割ずつふえていくという乙とでございますから、それを一遍に倍にして払ってくださいということはやはり適当ではないという判断であのような措置をとらしていただいたわけでございます。
  41. 増本一彦

    増本委員 じゃあ、この引き当てられた引当金というのは一体何に使われているのですか。その点もちょっと答えてください。
  42. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは貸倒引当金に限りませず、各種引当金、準備金というものは負債勘定の方に勘定として留保されるわけでございまして、それに対応する資産勘定が何であるべきかという限定はございませんから、したがって、その意味では、引当金相当分は一般的に資産として運用されるとお答えするしかないと思います。
  43. 増本一彦

    増本委員 だから巨額の非課税資産がまたさらに利潤を生んでいくわけですよ。しかも、私はいまのお話を聞いていて、二兆三千億もの赤字国債発行する、それでこれから来年度以降も大変歳入欠陥が当初から出てくるだろうというような事態で、これをいかに解決するかというようなことで本当に取り組んでおられるのかという気がするのですね。これをたとえば二年で千分の八というんじゃなくて、じゃもっとピッチを上げて二年で千分の五まで下げるというような方途の検討というのはできないものなんですか。
  44. 大倉眞隆

    大倉政府委員 下げ方のピッチにつきましては私どもの部内でも十分議論いたしました。予想される増収額が一度だけでなくて、毎期毎期重なっていく増収でございますから、現在の、先ほど申し上げた数字で大体五千五、六百億に対して毎年五百七十億という負担の増加を重ねていくという意味におきましては、私自身もこの辺が限度だと考えてあのような改正をお願いしたわけでございます。
  45. 増本一彦

    増本委員 ここが納得ができないのですね。  お昼までもう時間がありませんから、あと一つ。  もう一つは、せっかく取ったというか納めてもらった税金を、たとえば法人税法の八十一条で戻してやるという制度がありますね。私は、繰り戻しというのは企業会計原則の損益通算の点からいっても論理必然的な原則ではないと思うのですね。これは繰り越しでやるということも十分あるわけで、企業維持の原則からいったらむしろ繰り越しを原則考えていいのではないか。だから、こういう戻し税というような制度はむしろいまこの時期だからやめて、そうして繰り越しを原則にし、支障のある場合もそれは資本規模や所得階級別には出てくるから、それに応じた繰り越しの期間に違いを設けるというようなことで手だてをとれば、同じような結果は十分に得られるというように考えますが、その点はいかがですか。
  46. 大倉眞隆

    大倉政府委員 事業所得につきまして欠損が生じた場合に、これを会計年度をベースにして税を負担していただくというシステムをとって、会計年度をまたがってその損益調整をした方がいい、これは一つ原則であるように思います。ただ、おっしゃいますように、それは繰り越しだけでいいという制度をとっている国も現実にございます。たしかドイツ、フランスは繰り戻しはなかったと思います。アメリカ、イギリスでは繰り戻しを認めておる。繰り戻しを認める場合でも、これを無限にさかのぼっていいというシステムの国もございますし、まあ一遍納めていただいた税をお返しするのだから、お返しする方には一年分だけ、後は繰り越してくださいという制度もあって、日本はその最後のタイプになっているわけでございます。  それで御主張は、大法人だけ臨時的に繰り戻しをやめてしまったらどうかという御主張であるように私、理解いたしておりますが、税全体の働き方といたしましては、この制度があるために景気の下支え効果があることは否定できない。繰り戻しを受けている法人は、いずれも当期相当の欠損を生じている法人であることは当然でございますから、現金で繰り戻しを受けたことによりまして、たとえば下請に払う金がおくれないで済むとか、あるいは一時帰休の方に払う金が調達できるとかいう下支え効果というものは無視できないと思いますので、私どもとしましては、そういう効果の面から見まして、やはりこの制度はいまのような時期には経済全体のためにはむしろうまく働いておるという評価をしてもいいのではないかと思います。  もう一つ、財源対策といたしましては、確かにいま停止いたしますれば、今年度恐らく三千億を超えるような増収になったかもしれません。すでに二千億以上還付いたしておりますから、停止いたしましても、今後出てくる増収というものはその差額程度ではございましょうけれども、ただ、それは繰り越しまで御否定なすっているわけではございませんから、今年度千億とか千何百億助かるにしましても、来年度予想される税収はうらはらにそれだけまた減るわけでございますから、財源対策としても恒久的対策でないという意味で、私どもなかなかこれを採用する気になれないというのが現状でございます。
  47. 増本一彦

    増本委員 あなたはそうおっしゃるけれども、たとえばユニチカを例にとると、二十一億円納税したのがそのすぐ次の期には十四億円戻してもらう。これはそういう企業なんかにとっては確かにいいですよ。しかし、それじゃ、勤労者は家計が赤字になったからといって前の税金を返してもらえますか。これは国民感情からいったって大変不公正なんですよね。企業維持の原則からいったって、この繰り越しを認めていくというたてまえはそのまま残すわけですからね。いませっかく確保した税収を、はい、今度は欠損になりましたということで現金で返してやる、そうしてよけい歳入欠陥をつくっている。赤字国債まで発行しようとしている、そういう直面しているいまのこの財政危機状況のもとで、税制を担当する当局がそういうことだけでいいのか。将来のことと言うけれども、しかし、それは損金の繰り越しについての期間等について一定の調整をすれば、後の税源の培養についてはショックをやわらげる手だてだって考えられるわけで、そこいらのところをどうしてもっと真剣に考えて具体的な財源対策として考えていくというような前向きの姿勢がとれないのか、そこを私は非常に疑問に思うのですよ。そういうような検討の余地というのは政府は全く考えていないのですか。どうですか。
  48. 大倉眞隆

    大倉政府委員 この制度が、個別の企業を通じてではございますけれども、非常に欠損を抱えて難局にある企業に対して下支え効果を持つということは私どもなりに評価をしておるというふうに先ほど申し上げました。したがって、一般論といたしましては、いまの時期に一般的な企業増税をしていいかどうかということと共通の問題として判断するのだろうと思います。その意味で、いまの時期での一般的な法人税率の引き上げというのは必ずしも適当でないと先ほど大臣が申し上げました。同じような意味で、いまの時期に欠損還付を停止するということもやはり適当でないと考えられる。その意味で、私どもとしてこれをいま法律改正いたしまして、おっしゃるように大法人だけは返さないというような制度を採用するという考え方は持っておりません。  なお、御質問の中で、勤労者は家計が赤字になったら税金を返すかということをおっしゃいましたけれども、これは、先ほど事業についての考え方を申し上げたわけでございまして、個人の事業所得については、青色申告を出していただいておりますれば同様に繰り戻しも繰り越しもございます。それで、勤労者の家計の赤字と申しますのは、それは何千万円使ったって赤字は赤字だということをまさかおっしゃっているのではないだろうと思いますから、基礎的な生計を償うに足るだけの支出に対して、収入が足りないという状態をおっしゃっているのだろう。その場合には、所得税といたしましては、所得があり、それに対応する支出が幾らであるかという問題でございますから、それは事業上の欠損とは全く違う問題なんで、それはどの程度の所得水準の方から税を納めていただくべきかという問題でございまして、最小限必要な支出を賄うだけの収入がないという方からいま税を納めていただいておるとは私は毛頭考えておりません。
  49. 増本一彦

    増本委員 じゃ午前中の質問、あと一点で終わりたいと思いますが、いわゆる法人税の、税構造の上では、この実効税率で資本階級別に見ると、逆累進の構造が依然として残っておる。この実効税率の逆累進を改めるいうと点では、政府はどういうようなことをお考えなんですか。この点だけ伺っておきたいと思います。
  50. 大倉眞隆

    大倉政府委員 逆累進とおっしゃいますのは、私どもの推計で大蔵委員会にお出ししております資本階級別の実効税率の比較についての御質問だと思います。これにつきまして、本来の姿として、資本金の大きい方の実効負担が資本金の小さい方の実効負担よりも低いということが基本的に妥当であるというふうには私は考えておりません。これを是正する方向努力をいたしたい。  ただ、問題は二つございまして、一つは配当軽課の影響がございます。これは配当軽課という制度を今後どう考えていくかという、いわば法人税の構造と、法人税と所得税の調整と絡んだ、長年にわたる議論の続いておる問題でございます。もう一つは、いわゆる特別措置によって実効税負担にどれだけの差が出ておるか、その差を縮めることができるならば、それは縮める方がベターであると思います。ただ、特別措置につきましては別の面から、これは政策目的に応じてつくるものでございますから、政策目的に応じてつくったものが結果的に大企業の利用度が大きいものが出てまいりましょう。しかしそれは、大企業の利用度が大きいからやるべきでないとだけ簡単に断定できるものとも思っておりません。いろいろな角度からの検討を続けながら、将来なるべく、いまおっしゃったような差が縮まり、むしろ資本階級で言えば大きい方がやはり実効負担もそれなりに多少は大きいという結果になるような全体の税制が導き出されることの方が、長い目で見れば望ましいだろうと私も思っております。
  51. 増本一彦

    増本委員 いままでのお話でも、単に、大臣高度成長後のこの不況になった時点での打撃の大きさ、それから不況の長引いた時間の測定を誤ったというようにおっしゃったけれども、しかし財源対策そのものから見ても、やはり取るべきところからきちんと取って財源の対策をとるというような手だてに立っていないという点でも、私はこれまでの御答弁はきわめて遺憾に思います。  午後改めて、引き続いて質問をさせていただくことにして、大臣の御都合があるそうですからこれで私の午前中の質問は終わりにしたいと思います。午後引き続きやらせていただきます。
  52. 上村千一郎

    上村委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。    午後零時四分休憩      ————◇—————    午後一時四十九分開議
  53. 上村千一郎

    上村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。増本一彦君。
  54. 増本一彦

    増本委員 午前中に引き続いてお尋ねいたします。  歳入欠陥というのは、歳入引く歳出で赤字が出た場合だと。先ほどの大臣のお話ですと、今日の経済状態では、歳出を削るということができない。しかも午前中お尋ねしていった点でいくと、妥当な限度でにしろ歳入をふやしていくということもできない、こういうことになるんですけれども、しかし、今後の問題として、歳出の中で不要不急のものについては現状の実態を踏まえてやはり削減もしていかなければならないというように思いますが、特に、私たちがかねてから問題にしているのは、一つは防衛費です。すでに今年度分で、最近の数字を見ますと未執行分が七百七十三億円ぐらいある。継続費等の分も含めて、一体累積の未執行額というのはどのくらいに上っているのか、まずその点の数字を確かめたいと思います。
  55. 高橋元

    高橋(元)政府委員 防衛関係費、補正後で本年度一兆三千六百七十三億を計上いたしておりますが、その中で、九月末現在契約未執行の金額は五千九百六十五億でございます。
  56. 増本一彦

    増本委員 憲法上の問題はもちろんあります。しかし、この点について議論をしてもなかなかかみ合いません。そこで、大臣はいままで、これからの景気対策との関係でいっても歳出の削減をいまやるということが妥当でないというお答えがありましたけれども、しかし、少なくとも防衛費に関して言えば、これはきわめて消費的な経費でありますし、しかも累積額で五千九百六十五億という膨大な額を抱えている。これの歳入補てんも含めて今回の赤字国債というぐあいになってくるわけで、このところのこういう、現に未執行のままでいて、そしてこれについて必要なメスを入れて削るということで歳出の圧縮を図るということは、当然やるべき手だてではないでしょうか。この点ではどういうようにお考えですか。
  57. 高橋元

    高橋(元)政府委員 先ほど申し上げました防衛関係費一兆三千六百七十三億というのは補正後の数字でございますが、当初予算に比べますと、人件費で約四百八十七億円補正増をいたし、それから不用節約で八十六億の減をいたしてそういう形になっているわけでございます。防衛費一兆三千六百七十三億の中で五五%に当たります。千五百六億というのは人件費でございます。残る約四五%というものの中で国庫債務負担行為または継続費という形で前年度以前にすでに契約をいたしておりまして、当年度その現金支出が回ってまいります分は約二割ございます。残ります二五%の中でいかほどのものが節約できるかということでございますが、これは、国の平和とその独立を守っていくという防衛費の性格からして、漸進的に施設の整備を図っていくという観点で本年度の予算を計上いたしておるわけでございまして、それの五十年度分の契約をいたしてまいるのに必要な金額と、およそ防衛庁が官庁として、燃料費を払い、営舎費を払い、教育訓練費を払う、そういう通常の官庁業務を執行していくのに必要な経費でございまして、これについて大臣から午前中御答弁がありましたように削減ということを考えるのは適当でないということで、冒頭に申し上げました八十六億円の不用節約ということをやっておる次第でございます。
  58. 増本一彦

    増本委員 四次防後の問題ということで経済成長率との相関関係で防衛費がどのぐらいの伸びを示すか、あるいはどのぐらいの所用額が必要になるかということが、先般の予算委員会等でも議論になりました。しかし、大臣も、この財政法の一条や四条、五条を含めた今日の現行法の精神は極力守っていかなければならないという態度を明確に午前中一応お示しになっておられますけれども、そうだとすると、この種の消費的な経費に対して、では一体今後どういうようにこの防衛費の圧縮削減を図っていくのか、その辺についての大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 財政役割り資源の適正な配分を期することが大きな目的でございます。したがって、今後どういう方面に国の資源を振り向けてまいるかということにつきまして、われわれがどういう財政政策をとるかということが非常に重大な影響を持ってまいるわけでございます。もとより防衛費でございましょうと、その他の経費どれをとってみましても、聖域はないわけでございまして、財政が厳しい、緊張した段階におきましては、どの費目におきましてもそういう状況を受けてそれぞれ緊張した財政のもとにおいて支出に節減を加えていただかなければならぬものと考えておるわけでございます。したがって、防衛費であろうと何であろうと、私ども全体として資源の配分を公正にやってまいるということと、そしてそれはそのときの財政状況との関連におきましてバランスがとれておるというものでなければならぬと思っております。そういうことでございますが、とりわけ防衛費だけをねらい撃ちにいたしまして、これは特に節減を重くする、大幅にする、それからあるいは防衛費だから特に少ない節減でとどめる、そういうような考えは、私いま持っておりません。全体の財政状況を見ながら資源の配分が適正にまいりますように防衛費も全体の予算の中で座り、位置づけが正しく行なわれるように配慮してまいりたいと考えております。
  60. 増本一彦

    増本委員 今日の二十兆円の歳出予算の中で一兆三千六百七十三億円、そのうち人件費を除く部分で防衛施設あるいは武器その他の関係諸費用というものは、どれをとっても全部、これが再生産を生むようなものではないし、だから、この点での経費の切り詰めというのは、これは当然やるべきことなのではないですか。いわゆる建設国債赤字国債ということで、建設国債について財政法でも一定の限度で発行認めているけれども赤字国債発行を禁止しているという点から見ますと、それはやはり後世代にその施設が残り、それを負担させていくということが、一定の施設そのものの中身や内容、目的というものとにかかわりますけれども、それなりの合理的な根拠や理由づけも可能になる。しかし、事防衛費で見る限りはそういうものを残さないわけですね。しかも、いままでの高度経済成長の土台の上で、防衛費についても前年対比で見て、今年度の予算がかなりな伸び率を示した。今後経済の高成長が望めないということは政府自身がみずからおっしゃっている状況の中で、やはり今後それではどういうような見通しなり展望を、予算の総枠の中で防衛費の位置づけを考えていかれるのか、その点についてはどのような見解をお持ちなんでしょうか。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 すでに御案内のように、いわゆる四次防にいたしましても、相当な積み残しと申しますか、不消化の部分を残しておるわけでございます。財政の都合で予定どおり消化ができなかったわけでございます。すなわち、防衛費でございましても、一般のこういう財政状況の影響を受けまして、相当御不自由を願っておるわけでございます。そして、全体としてあらゆる方面に御不自由をかけておるわけでございまして、資源の配分がバランスのとれた状況になり、苦しい中でもそのバランスは維持していかなければいかぬと存じておるわけでございます。今日までもそうやってきたわけでございますが、今日以後におきましても、別段、基本の方針は変わらぬわけでございます。全体として予算の中で防衛費がどういう比重を占めてしかるべきかという点につきましては、ただいままでわれわれが考えてきたことと特に変わったポリシーをいま念頭に置いておるわけではないわけでございます。防衛費といえども財政全体の緊張した状況下におきましては、相当節減を覚悟していただかなければならぬものと考えておりますが、全体の予算の中のバランスというものにつきましては、いままで政府がとってまいりましたような方針と同様な方針で臨んでいきたいものと考えております。
  62. 増本一彦

    増本委員 ほかに、たとえば大手の企業に対する補助金の制度がありますね。特に、たとえば電算機の振興対策費ですね。いま三系列六社ですね。富士通・日立、それから東芝・日本電気、沖電気・三菱電機というこの三系列六社に百四十六億円出しておるわけですね。これは一体どういう目的と根拠に基づいてやられているものなんですか。なぜ主計局としてこういう制度予算措置として認めておられるのか、まずその点を説明してください。   〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
  63. 高橋元

    高橋(元)政府委員 四十七年に電算機の資本自由化及び輸入自由化という方針が定まってまいったわけでございますが、その際、電算機が機械工業、ひいてはわが国の産業の先端的な部門として将来の日本の工業、産業、それにとって非常に重要な役割りを果たすものである。したがって、国産電算機の振興を図るということで、これに対して自由化後の国際競争にたえ得るように必要な助成を行うという方針が決定に相なりました。その後、四十九年にさらに追加の自由化措置が定まりました際に、その助成額がつけ加わりまして、合計七百六億というものを電算機の開発促進、それからIC、いわゆる集積回路の技術開発の促進、ソフトウエア産業の技術開発の促進、三つの項目に分けまして、四十七年から五十一年の五カ年間について補助を出すということになっておるわけでございます。  ただいまの電算機六社でございますが、現在までのところ、それぞれ二社ずつ、鉱工業技術研究組合法による技術研究組合というものをつくりまして、そこで共同してそれぞれの担当いたします機種、部品、周辺装置、ソフトウエアというものの開発を行っておるわけでございまして、これに対する補助というものは、冒頭に申し上げましたような理由で、日本経済政策にとって非常に重要な役割りを持っておるものであるというふうに理解しております。
  64. 増本一彦

    増本委員 しかし、それがこういう企業に補助金として出しても、そこで得られる科学技術の開発が、それぞれのこういう三系列六社のグループの、あるいは個々の企業のノーハウになって、それがそれぞれの企業そのものの技術開発というだけにとどまってしまって、国民の利益に直接なっていくそういう意味での問題じゃないですね。だから、こういうものはむしろこの際大幅に削るなりやめるというような手だてをとって、この面でも歳出の削減を図るというようにすべきではないんでしょうか、この点はいかがです。
  65. 高橋元

    高橋(元)政府委員 お答え申し上げます前に、先ほど私が申し上げました自由化の時期でございますが、ちょっと一年ずつ誤っておりまして、第一次が四十六年、第二次が四十八年でございました。訂正させていただきます。  ただいまの御指摘でございますけれども企業に一方的に、補助に基づく技術開発の成果が企業内の利益としてとどまってしまうということは、確かに問題がございます。そこで、この電算機開発の補助金につきましては、いわゆる収益納付という制度にいたしまして、将来これによって開発された技術またはノーハウに基づいて上がってまいります収益は補助金の償還をさせるということにいたしております。  繰り返しになりますけれども、電算機産業というものは、非常に重要な先端的な産業分野であり、また将来、知識集約化を進めてまいりまする際に、この電算機のハードウエア及びソフトウエアの両面が非常に重要な役割りを果たすということは、世界共通の考え方であろうと思います。そういう意味で、企業に対する補助金という御指摘はございますけれども、そういった先端的な産業分野を生かしていく、それを急激な資本自由化及び輸入自由化の波に対して競争力を培養させるために必要な施策であるというふうに私ども考えておる次第でございます。
  66. 増本一彦

    増本委員 先端科学産業としてその科学技術の開発をわが国としても進めなければならない。しかし、これは、わが国が独自に政府の中で企業からも中立的なそういう仕組みやシステムというものをつくる、企業も個々の企業でその担当の分野の産業ではそれぞれが自己の資金と努力でそういうものを進めていくということをすべきであって、これを政府がいまこの時期にそういうものの助成を積極的に進めるということで、財政危機のこの時期に改めて特別のグループの企業についてだけそういうものを認めるという、そのことが企業と政界との間のいろいろな癒着の問題になるし、いまあなた自身認めたように個々の企業のノーハウになって全体のものにならないという非常にへんぱな補助金制度をそのままにしておくという、この問題自身を正当に解決することにならないというように思うのですよ。こういうような問題については大臣どうなんですかね。だから、これはこういう補助金をやめて、科学技術体系の中で科学技術の開発振興については別途の手だてをとるということにむしろすべきではないですか。財政当局として大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 電算機産業、これは仰せのように先端産業といたしましてわが国で定着できるかどうか確かに問題の産業であったわけでございますが、幸いにいたしましてわが国では、国内の需要が半分ぐらいはわが国の電算機産業によって満たされておるということは世界に誇っていいことだと思うのであります。アメリカ等の強大な企業によりまして席巻されるというようなことを許すかどうかということの判断を求められますと、でき得ればわが国においても定着できる可能性のあるものはわが国の産業の将来の休戚を担う一つの柱として育て上げることができればそうすべきであると考えていくのが政府として素直な考え方ではなかろうかと私は思うのでございまして、従来そういう方針でやってきたわけでございます。もとより増本さんのような考え方がないわけではございませんけれども政府がとりました選択はいま申しましたような趣旨でやったわけでございまして、企業に帰属する利益につきましてはそれを国庫に還元する道を将来に開いておるわけでございますので、私は別段とがめられるべき政策であるとは考えておりません。
  68. 増本一彦

    増本委員 たとえば、そういうことであるのだったら融資であっていいわけで、一般会計から補助金としてこういうものを出すという必要もないのじゃないですか、将来国庫に還元するというのだったら。だからそれを一般会計からこういうような形で出すことによってそれで特定の企業の技術開発のてこ入れをする、しかしその開発された技術は公開されない。で、収益が上がったときには国庫に還元してもらうというようなことでなくて、金融的な制度でそういうものは本来済ませる性質のものじゃないですか。だからそこのところのやり方から見たって再検討の余地は十分あるのじゃないですか。
  69. 高橋元

    高橋(元)政府委員 電算機が先端的な産業分野であるということは、同時に電算機のソフトウエア及びハードウエアの開発を通じてその技術的な水準というものは次々に波及してまいる、それによって日本経済の国際競争力というものは強くなっていく、それが全体として国民、国家の利益につながる、こういうところがこの補助金の創設の趣旨であります。四十六年及び四十八年の自由化の際に全体のスケジュールというものがセットされまして、それに従って計画的に補助金の予算を計上、執行いたしております。現在までに通産省から私どもが聞いておりますところでは、かなりの成果が上がっておるというふうに承知いたしております。  ところで、この補助金を融資の形でやったらいいではないかという御指摘でございます。確かにそういう面が、そういう考え方があるとは思いますけれども、この最も巨大な技術と申しますかビッグプロジェクトと申しますか、こういうようなものを単に融資だけでやっていくということが可能であるかどうか、やはりそこには開発のリスクというものもございましょうし、単純に開発のコストをすべて製品にかけるというのでは、やはり産業としての国際競争力と申しますか日本経済の自立性と申しますか、そういうものが保てないという面があるわけでございまして、いろいろ補助金創設の際に検討いたしました結果、現在のような補助制度で収益還元、こういう経緯になっておるわけでございます。
  70. 増本一彦

    増本委員 それからこれは第四次不況対策等とも絡むのですが、むしろ不況対策ということで、国の資源の配分を大型プロジェクトにかなりウェートをもって振り向けたわけですね。今後もこういうようなやり方が不況対策の財政支出の裏づけとしてやられていくのでしょうかね。その点は大臣はどういうような方向やお考えをお持ちなのですか。
  71. 高橋元

    高橋(元)政府委員 本年度の補正予算で、景気の浮揚を図るという意味もございまして、公共事業の追加を必要な額計上いたしておるわけでございますが、その内容としてどういう種類の事業を組むかということについては内部でいろいろ検討をいたしました。当面経済に対する効果が大きくてしかも経費支出の緊要性の高いものということで、先般補正予算でお認めいただいたような補正の形になっておるわけでございます。  今後ともこのような、先生のお話でございますと大プロジェクト中心の公共事業の配分になるかということでございますけれども、その点につきましては、五十一年度以降の公共事業費の内容でございますので、質量ともにできるだけ国民生活の向上に資するようなものにしていきたいというふうに考えておりますが、いまその公共事業の種類別の配分まで頭の中に持っているわけではございません。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 一言申し添えておきたいと思いますけれども、公共事業計画にいたしましても財政投融資計画にいたしましても在来からとってまいっておりまする方針が、財投でございますならば大体基幹産業中心でありましたものが、漸次生活環境整備中心に移ってきておるわけでございます。また公共事業にいたしましても、道路でございますとか河川でございますとか港湾でございますとか、そういう公共事業プロパーのものも続けてやっておりますけれども、最近の傾向といたしまして、上下水道でございますとか公園でございますとかそういった生活環境の整備でございますとかあるいは水源の涵養であるとかあるいは農業基盤の充実であるとか、そういったものに漸次力点を移しつつあるわけでございます。したがってそういう傾向を踏まえた上で、今度の補正予算もそのラインに沿ってやったわけでございまして、特に大プロジェクトを抜き取りいたしましてそれに特に予算を加えるというような操作をやったわけでは決してないのでございまして、従来とってまいっておりまする財投でございましても、公共事業計画にいたしましても、それが景気対策として役立つというものにつきまして一割強の補正増額をいたしたというのが今度の補正の意味でございます。
  73. 増本一彦

    増本委員 いまのあれでいくと、次長の答弁とは大臣の答弁違いますね。公共事業の中で経済的な波及効果の高いものということで、次長は大型プロジェクトに予算の配分をしているという趣旨の答弁をいまされたでしょう。
  74. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ちょっとお答えに言葉が足りないところがございましたので、正確に申し上げますと、事業の緊急性ということを私は一つ申し上げました。それから各事業を施行してまいる、それによる経済効果ということが、当面の経済情勢にかんがみてやはり考慮の内容として必要だということを申し上げました。そういう観点で公共事業の追加をいたします際に事業別、施設別の配分を行ったのだ、したがってあと具体的な内容は水資源なり国土保全なり農業基盤なりそれぞれ大臣のおっしゃったような内容でございますけれども、その結果、高速道路なり新幹線なりという大規模なプロジェクトについても、やはり国土の均衡ある発展とか国民生活の向上、それに役立つものという意味で今度の補正追加の中に入っておるということを申し上げたわけでございまして、いわゆる大規模のプロジェクトを強いて取り上げるということで補正を行ったのではないというわけでございます。
  75. 増本一彦

    増本委員 日本経済不況の立て直しという点では、何といっても国内市場の拡大をはかっていくということでやらなければいかぬわけですね。局地的な大型プロジェクトで経済の波及効果が強まるなどというのは、これは私はナンセンスだと思うのです。そういう点で、資源配分については、来年度の予算以降で、特に赤字国債を当初から抱え込まなければならないという、そういう状況だというのは、先般来の政府側の答弁ですから、特にこの点は強調しておきたいと思うのです。  次に移りますが、赤字国債は五十一年、五十二年までは続くというように先般大臣は答弁をされたと思います。五十一年度の予算編成にいま取り組んでおられらわけですけれども、五十一年度予算予算規模は大体どれくらいになり、その中でいわゆる赤字国債発行額というのはどのくらいになるのか、その点の最近の見通しはいかがでしょうか。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 いまそういうことにつきましていろいろな材料を集めまして検討いたしておるところでございますので、来年度の予算の規模、したがって、またその中で公債費がどのくらいになるか、特例公債がとりわけその中でどれくらいになるかというようなことにつきまして、ここで正直に申してまだ御報告を申し上げられる段階に至っておりません。
  77. 増本一彦

    増本委員 不況対策の中心に公共事業費を置くということになると思われるわけですが、大体来年度は公共事業費の規模をどのくらいにお考えになっているのですか。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 ここ去年ことしと総需要抑制政策のため公共事業費は抑制ぎみで編成してまいりまして、ノミナルな金額が前年度同額ぐらいで推移してまいりましたことは御案内のとおりでございます。ようやく総需要抑制策が奏功いたしまして物価等も安定の徴候を見せてまいりましたので、景気政策を進めなければならぬということになってまいりましたので、この補正予算におきまして一一%ばかり公共事業費を補正増額いたしたことも御案内のとおりでございます。これが今日までの経過でございます。  来年度の公共事業費をそういう経過を踏まえてどのくらいのものにいたしますかがまさにいまわれわれが検討いたしておる最中でございまして、今日の経済がこういう非常に落ち込んだ状態にございますので、財政の力におきまして相当圧力を加えてまいらなければならぬのではないかと考えておりますので、公共事業費も相当われわれとしては見たいと考えておりますけれども、こういう赤字財政下でございますので、どのくらいの金額を盛り込むことができますか、またいろいろな角度から検討しなければならぬと存じまして、せっかくいま検討中でございますので、幾らかという点につきましての具体的なお答えはしばらく御遠慮さしていただきたいと思います。
  79. 増本一彦

    増本委員 従来私たちは、この公共事業費については産業基盤向けと生活基盤整備向けの二つに分けて、従来の比率を逆転させて、少なくとも生活基盤整備向け二、産業基盤向け一というようにすべきだというように主張してきました。いまやますますその必要性がむしろ逆に高まっているというように思いますし、政府はその方向で生活基盤整備に重点を置いていきたいという趣旨のいまも答弁がありましたけれども、このことは、国内市場を拡大していく、そうしてそれを均てんさせていく、どこの地域、地方自治体でも事業が興り、そしてそれが生活基盤として住民の暮らしも暮らしやすくなるし、事業も興り、仕事もふえるというような点で一石二鳥、三鳥の効果を上げるわけですね。来年度のこういう赤字国債を抱え込んだという状況のもとで予算編成をされる場合に、この公共事業費の産業基盤整備向けと生活基盤整備向けについての予算配分の比率をどういうようにお考えになっておるのか。この点は、額としてではなくて、振り向けの度合いをどういうようにするかという点では御方針もおありでしょうから、その点について明らかにしていただきたいと思います。
  80. 高橋元

    高橋(元)政府委員 一般公共事業費を一〇〇といたしました際の生活環境施設整備の割合でございますが、四十八年から順次申し上げますと、一六・七、一九・六、五十年の当初で二一・七、補正後で二一・五というふうに逐次その割合は高まってきております。それに国土保全、これは治水治山といった系統でございますが、それがやはり四十八年に一七・二、四十九年に一六、五十年の当初で一六・九、補正後で一三・一というふうにふえておるわけでございます。それで、この生活環境施設整備というものが住宅、下水道、環境衛生、公園、離島、電気といったようなものをあらわしておるわけでございますが、この割合が逐次高まってまいっておるということで、先ほど大臣からお答えのありました国民生活の基盤的な公共事業を充実していきたいという考え方があらわされておると思うわけでありますが、五十一年度及びそれ以降の公共事業費をどういうふうにしてまいるかということにつきましては、五十一年度の予算がまだいませっかく編成の準備中でございますし、五十一年度以降の問題につきましては、長期経済計画との関連もあると思いますので、いまこの段階ではっきりした内容を申し上げるわけにいかないと思います。
  81. 増本一彦

    増本委員 そこで、いわゆる五兆円、六兆円というような巨額赤字国債になる危険性というものを非常にはらんだ来年度になるという状況のもとで考えてみますと、建設国債は、ある意味では、全く純粋に考えると、先ほどもお話ししましたように後世代にも残るから、その負担を後世代にもしてもらうということでこの先行投資をするんだという意味は、それなりに一つの理屈として成り立つ。しかし実際には、この建設国債関連の公共事業の範囲とか対象というのもだんだんあいまいになってきた。そこのところに加えて赤字国債が膨大な額に上って、事務費を初め全く後に残らないものに対しても後世代の国民に負担をさせるというような状況にもなっている。   〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 こういう事態で今後の経済運営、財政運営をしていくということで、一つお伺いしておきたいのは、いつまでこういうようないわゆる借金政策というか、赤字国債発行でやっていこうと考えているのか。そういうことでこれからの財政経済の運営をした後、国民への増税ということに当然ならざるを得なくなる。果たして国民に増税を期待するほどに五十一年あるいは五十二年に景気がよくなるというように考えているのか。その点については、大臣はいかがお考えですか。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 大変長い不況でございまして、回復の展望がまだ定かに見えないのは大変残念でございます。けれども、ようやく輸出の先行きにも明るさが若干出てきたようでございまするし、経済はどうやら回復の底固めを終えて回復の軌道に乗りつつあるというように考えております。しかしながら、経済が仮にことしから来年にかけまして回復いたしましても、税収にそれが結果として出てまいりますのはタイムラグがございまして、来年の歳入として直ちに期待できるものはそんなに多くないわけでございますので、私は来年の予算は非常に苦しい予算にならざるを得ないと考えております。したがって本委員会におきましても、明年度も、非常に残念でございますけれども、引き続き特例公債発行ということはやむを得ないものとしてお認めをいただかなければなるまいと考えておるという旨は申し上げておるわけでございます。  しからば五十二年度以降はどうかという問題になりますと、仰せのとおり建設公債にせよあるいは特例公債にいたしましても、いずれにせよ公債でございまして、長く公債依存の財政を続けるわけにはまいりませんので、五十二年度から少なくとも特例公債を減額してまいる方向財政運営はどうしても持っていかなければならぬのではないかと決意いたしておりますことも、先般来申し上げておるところでございます。  一方、それでは増税ということについてどう考えておるかということでございますが、けさほどからあなたとのやりとりにおきましても申し上げておるとおり、いま一般的に法人税とかあるいは所得税とかいうものの増税考えられるような時期でないと考えておりますことは、お聞き取りいただいておると思いますが、しかしそれじゃ、いつごろになれば財政の必要に応じて増税について国民にお願いができる環境ができるかということになりますと、その前にやはり租税特別措置等現行税制につきまして十分な周到な見直しをまずいたしまして、現行税制に不公正な部分が残っておるというようなことでは、なかなか次の御相談を国民に申し上げるにいたしましても御理解を得にくいわけでございますので、まず五十一年度はそういう一般的な増税というようなことを考えるべきでなく、現行税制の中をもう一度洗い直してみるということでお願いをしたいものと考えておりまして、そういったことの作業を終えた後で、経済の景況を見ながら、ひとつ五十二年度以降、増税というような問題につきまして改めて御検討いただくようになろうかと考えますけれども、まだそれはどういう程度のものになりますか、またどういう形のものになりますが、そういった点につきましては具体的な展望をまだ持っておりませんので申し上げるわけにはまいりませんけれども、段取りといたしましてはいま申しましたような筋合いで考えております。
  83. 増本一彦

    増本委員 いま大臣増税をお願いすることになろうかというお話をされた、この点はきわめて重大だと私は思うのですね。経済社会基本計画では終了年度までに二、三%税負担が上がるのはやむを得ないというように言ってきた。しかしこれは高度経済成長時代の話ですね。いまその見直しをやっている。ところがその見直しをする時期、それから今後を見ても経済成長が望めないと政府が言っているそのときに、国民の税負担を上げる基盤が一体どこにあると考えておられるのか。その点はどうなんでしょう。
  84. 大平正芳

    大平国務大臣 増税をお願いする——いまちょっと言葉が足らぬわけでございますが、増税についての検討をお願いしなければならぬ段階が来るのではないかという意味で申し上げたので、そのように御訂正いただきたいと思います。  いまあなたが御心配のようなこともございますので、いずれ五十一年度におきまして現行税制のいろんな見直しをやり遂げながら、五十二年度以降そういった点も含めまして、いろいろ負担を求めるべきか求めるべきでないか、求めるとすればどういう姿でどの程度求めるべきかというようなことの検討に、順序としては入るべきじゃないか、いまはまだそれは時期尚早でないかというように考えております。
  85. 増本一彦

    増本委員 政府は、そうすると、こういう特例公債赤字国債はいつまでお続けになるつもりなんですか。特例公債をもう続けないで済むというようになったときには歳入欠陥というのは、いまのような税制あるいはその後租税特別措置の見直しをやるとおっしゃった、そういう手だてを踏んで、しかも期待する税収がそれで確保できるというようにお考えになっておるのか、その辺はどうなんですか。
  86. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいまの御質問の諸点を含めまして、ただいま経済審議会の方で各分科会を設けられて、五十一年度を初年度とするフレームの策定の作業に入っておられます。十二月中には、計画全体はもう当然間に合わないといたしましても、計画の概要のようなものをできるだけ間に合わせたいということで作業を進めておられると理解いたしております。税制調査会におきましても、学者ばかり二十数名の方にお集まり願いまして基礎問題小委員会というのをつくっていただきまして、現在までに二回、企画庁の作業の進捗状況紹介を中心として御議論を願っております。あと一回あるいは二回御議論を願いまして税制調査会の総会に、これは結論はとうてい出ないと思いますが、中間的な御報告を願いまして、税制調査会の五十一年度以降の税制の御議論の参考にしていただきたいということで作業が進んでおりますが、もちろんこれはまだ結論が出たわけでもございませんし、基礎問題小委員会の学者の先生方の中にも、現在の作業そのものについていろいろと御質問があり、御注文が出ておるということでございますが、見通しと申しますか一種の感じといたしましては、五十一年から五年間の間に税制を全く手直しをしないと申しますか、増減税を制度的に一切しないということで特例公債がなくなってくれるかどうかについてはかなりの疑問があるというような結果が出そうでございます。もちろんこれは歳出をどう置くかにもよります。歳出を固定的に伸ばしてしまえばどうもそうなるのではないか。ただこれは経済計画の全体のフレームでございますから、歳出を縮めれば逆に成長率が縮む、税収も縮むという、お互いに絡み合った問題でございますので、ある程度国会に御報告できるような姿になるまでにはまだ相当の検討を必要とするだろう、ちょっといまどちらかの結論は出せないというのが現状でございます。
  87. 増本一彦

    増本委員 新聞などに伝えられるところによりますと、五十二年度から付加価値税を導入したいというようなことで準備をされているというように報道をされていますけれども、大蔵省としては税制調査会にかけて来年度税目の検討に入るという趣旨を前回の当委員会大倉局長自身答弁されていますね。その動きで行くとこの付加価値税あるいは間接税、一般消費税の導入という状況に進んでいくのではないかというように思いますが、その点はどうなんですか。
  88. 大倉眞隆

    大倉政府委員 たしか先日この委員会で松浦委員の御質問にお答えいたした記憶がございますが、そのときに申し上げましたのは、段取りといたしまして、先ほど申し上げました基礎問題小委員会の検討をまずやっていただきます。その結論が仮に計画期間中に現行税制プラス何らかの負担の増を考えざるを得ないかもしれない。もちろん、これはくどくて恐縮ですが、歳出をどう考えるか、経済情勢をその都度どう判断するかということを前提にしてでございますが、長期的な視野に立ってみると現行税制にプラス何らかの負担の増をお願いをせざるを得ないという経済の姿が出てくるかもしれない。そうなりました場合には、それではどのセクターに負担をお願いするのかあるいはなべてお願いするのかという問題になりましょう。セクターとして大ざっぱに申し上げれば、それは個人所得の部分か法人所得の部分か個人消費の部分かということしかないわけでございます。その場合に個人所得に対して負担を求めるのかあるいは個人消費に対して負担を求めるのかというのは、これは私どもが専権的に決めてしまっていい問題ではなくて、選択の問題として税制調査会で十分御議論いただかなくてはなりませんでしょう。その選択の一つとして、個人消費に対する課税のあり方としては、EC諸国で付加価値税というのが現に採用され、かなり定着しておりますので、この税目も検討の対象には入ってまいることが予想されます、そう申し上げたわけでございまして、いま大蔵省の事務当局が付加価値税導入に踏み切ったとかあるいは何年度から必ずやるとか、そういうことを専権的に決めておるという事実は全くないわけでございます。
  89. 増本一彦

    増本委員 しかし、事態からいくとそういう方向に進むという趣旨で理解してよろしいですね。
  90. 大倉眞隆

    大倉政府委員 同じことを繰り返しまして恐縮でございますが、増税を検討せざるを得ないかどうかの判断がまずなくてはならない。検討せざるを得ないとした場合に、それをどのセクターに求めたらいいのかということをまさしく中心課題として、時間をかけて十分な御審議を願いたい。大蔵省事務当局がAかBかの中ではBしかございませんというように決めつけておるという事実はないわけでございます。
  91. 増本一彦

    増本委員 しかし、そうしますと五十年の十一月二日に毎日新聞が「付加価値税、五十二年度から 来年諮問、まず一〇% 大蔵省、導入方針固める」これは誤報ですか。
  92. 大倉眞隆

    大倉政府委員 新聞の取材は自由でございますし、書き方も自由ございますけれども、私ども個々の観測記事につきまして一々責任を持つことはとうていできません。
  93. 増本一彦

    増本委員 しかし大蔵省自身としましても委託研究を木下先生とか館先生というような先生を通じてやっておられるし、社団法人の日本租税研究協会、ここにもやっておられるとか、欧州の税制調査も小山先生とか水野肇先生というような先生で去年の二月までにやっておられる。大蔵省の独自の調査も四十七年から四十八年にかけてずっとやられて、最近本も発表されておられるわけですね。  そこで、いま主税局長がお話しになったEC諸国がやっている前段階控除方式を仮に採用して一〇%の税率ということになると、わが国では幾らの税収が予測できるのですか。
  94. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは計算はできますけれども、計算をいたしまして、いかにもそれだけ増税をするのだというふうにお受け取りになられてははなはだ困りますので、計算はどういう計算をするかということを申し上げますと、ECタイプの付加価値税を全く免税物品なしに導入いたすということを全くの仮定として議論いたしますれば、それは個人消費に対して税率を掛けたものだけの税収が平年度分に出てくる。問題は複数税率を入れるかとか、中企小業をどうするかとか、どういうものを免税物品にするかということをきめ細かく議論してみませんと、付加価値税をやったら何兆円になりますということだけを申し上げることは避けさしていただきたいと思います。
  95. 増本一彦

    増本委員 これでいきますと、結局個人消費支出が最近の四十九年でいくと八十六兆円ですか、それで免税その他を抜きにすれば、単純にその一割ということで結局八兆六千億。しかし、いろいろ減免税を採用するようになっても、半分と見ても四兆円を越える税収ということになるわけですね。赤字国債やあるいは累積しているこれまでの国債の償還の財源も非常に限られた財源の中でやっていかなければならないということで、従来からも財政硬直化の一つ原因として挙げられてきた。しかもここに赤字国債を抱き込むということになると、なおさらそれに必要な財源を得なければならない。しかもいつまでもそれを続けていくことができないということになると、当然相当な規模の税収を確保するという方向政府はその意味でいま検討されているのではないか。そこに付加価値税の導入ということが現実的な問題として新聞でも報道され、議論をされる。そしてその可能性もあるということは、いまの主税局長の答弁でも否定はされない。だってそうでしょう、いまその中の一つにそういう一般消費税の問題もあるという趣旨のことは答弁されているわけだから。そういう事態になり得るということになるのでしょうかね。その辺のところも、結局いままでの基礎問題小委員会そして中期の経済計画の検討がされ、そしてそれ以降の問題として、税制調査会でも来年度以降は具体的な問題についての検討に取り組むというスケジュールでいくと、種々のいままでの財政の実態を踏まえて、しかも経済見通しがどうなるかという点では決していままでとさま変わりした好況になるというような状態でもないわけですから、大蔵省の方では考え方としても現実にそういう方向にいくというようにお考えではないかと思いますが、どうですか。
  96. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど申し上げましたように、経済計画のフレームを決める作業の途中でございます。歳出の、と申しますよりも経済計画の場合には、政府の財貨サービス購入と政府の固定資本形成の伸びをどの程度のものと想定するかということが一つございます。その場合に、今後の実質経済の伸びが資源の制約その他を考えた場合に最大限どこまでいけるかということが同時に考えられておる。そのときに設備投資というものは、先ほど来の御質問の中にもございますように、恐らく従来の高度成長期のような大きな伸びは出てこないのではないか。そうすると、最終需要項目の中で個人消費の伸びと個人住宅投資の伸びと政府固定資本形成の伸びと政府財貨サービス購入の伸びと、そういうものがどのようにあんばいされて出てくるかという問題がある。そこから先に参りまして、仮に政府固定資本形成にある程度の伸びを期待し、政府の財貨サービス購入にある程度の伸びを期待しないと、従来に比べては減速ではあるけれども望ましいような福祉向上のための実質経済成長というものが出てこないということにもしなれば、それを支える政府の収入というものが現行税制のまま推移したときに不足するかどうかという問題になる。そこはまだ結論が出ておらないと申し上げたわけでございます。  仮にそこに不足が生ずるだろう。生ずるだろうけれども経済計画としてはやはり政府セクターの財貨サービスの購入なり固定資本形成なりはその中に盛り込まれるような伸びを確保しないと経済が伸びないということであるならば、しかも特例公債は脱却するのだという命題があるならば、それはやはり現行税制に加えまして、どのセクターからかの負担の増加を求めなくてはならない。それがどの程度であるかということを十分時間をかけて御議論を願いたいということを申し上げておるわけでございまして、いま大蔵省事務当局が何年度を目標に必ずどの税をやるとか、その税の大きさは幾らであるかというようなことを決められる状態にはまだないわけであります。それらの作業を経て、税制調査会の十分な御審議を経た上で、増税方向での税制改正をどうしても議論せざるを得ないということにコンセンサスが得られてそこから具体的な議論が始まる。そういうことを先ほど来申し上げておるつもりでございます。
  97. 増本一彦

    増本委員 今後の赤字国債発行とそれに伴う償還財源の確保ですね。この点では、従来のというか、現行の税制なり歳入仕組みのままでその償還財源は可能だというようにお考えなんですか、その点はどうですか。
  98. 大倉眞隆

    大倉政府委員 そこのところが、これは経済計画と一般会計とは直に結びつきませんけれども経済計画ベースで申し上げますれば、一体どの程度の政府の財貨サービス購入と政府の固定資本形成が必要かということとあわせて判断いたしませんと、非常に端的に申せば、歳出をどんどん切って、しかも経済が伸びてくれるというならそれは増税しないでも大丈夫でございましょう。そういう絵がかけるかどうかという問題だと思います。
  99. 増本一彦

    増本委員 それはこの法案の二兆九百億の今後の償還財源にも関係があるわけですね。そうでしょう。そうすると償還財源がどうなるのか。実はそのこと自身がこれからの検討課題だとしたら、しかもそれが中期経済計画あるいはそれの裏打ちになる中期の税制計画というようなものによって決まってくるということになったら、返す当てが現実に決まっていないいまの状態で、ただ借金をすることだけ認めろというのでは、これはもう審議そのものに実はならないんじゃないですか。だからそのことを明らかにしてほしいということで、実は午後以降の質問で、一体、増税をするのかどうなのか、その辺の見通しはどうなっておるのかということを伺っておるわけですよ。  いまここで、それではこの二兆二千九百億円に限ってでもいいのですが、これがいまの税制をこのまま続けていくということで償還が確実にできる、そういう保証というものがあるのですか、どうなんですか。
  100. 高橋元

    高橋(元)政府委員 先般来お答え申し上げておりますように、特例公債の償還財源といたしましては、現行の百分の一・六の定率繰り入れ、それから剰余金の全額の繰り入れ、それから特例公債脱却後に行いますところの予算繰り入れ、この三つをもって充てる。それによりまして、六十年度の満期にはこの特例公債を全額償還をいたしますということは申し上げておるわけでございまして、今後、財政全体の運営を通じて確実な償還をしてまいりたいということは、繰り返しになりますが、いまの私ども考え方であります。
  101. 増本一彦

    増本委員 ですから、私が言っているのは、そういう基準で償還をしていくその財布があるわけなんです。その中身のお金というのは、いまの税制なり歳入を立てていく現行の仕組みだけでその財布のお金というものは間に合うという見通しなのか、それの保証というのはあるのかということで聞いておるので、高橋さんに聞くのではなくて、大臣なり主税局長ですか。
  102. 大倉眞隆

    大倉政府委員 現行税制を全く修正をしないで、それが各年度にどの程度の増収をもたらすであろうかということにつきましては、各年度の経済成長の見方、セクター別の伸び方に依存するわけでございます。そこのところを私どもだけで想定いたしましても、それはほかの経済活動なりほかのセクターの伸びなりと整合性のないものになってしまいますので、国会で責任を持って御答弁できるような数字は出てこないわけでございます。  同時に、償還財源が幾ら出てくるかということは税だけでは決まらないわけでございます。歳出が幾ら必要かということと一緒でないと決まらないわけでございますので、税の立場だけでこの二兆二千九百億円を返すために増税をするのかしないのかとおっしゃられましても、それは今後の検討を待つしかないというお答えしかいまの段階ではできないということでございます。
  103. 増本一彦

    増本委員 これは二兆二千九百億も結局いま返せる確実な財源の見通しというものは持っていない、こういうことになるわけですね。その点はどうなんですか、大臣
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう財源があれば、発行いたしません。
  105. 増本一彦

    増本委員 そういう性質のものなんですよ。一体この中期の経済計画というのはいつできるのですか。それの裏打ちになる中期の税制計画というのはいつになるのですか。
  106. 大倉眞隆

    大倉政府委員 本来企画庁計画局がお答えすべき問題だと思いますが、いままでの答弁との関連がございますので、私の知っておる限りのことでお答えいたしますと、計画そのものの全体ができ上がりますのは、いまの作業の目標としては三月末ごろということだそうでございます。ただその前にできるだけ大ざっぱなアウトラインでもいいから、もはや月がかわりましたので今月中に出してみたい、しかもそれはできることならば予算編成のときには大ざっぱにわかっているようにしてみたいという希望を持って現在企画庁は作業をしておられるように聞いております。
  107. 増本一彦

    増本委員 この中期経済計画あるいはその裏打ちになる税制の計画というものを策定する上で、大蔵省の主税局の方でも一定の資料はお出しになっていらっしゃるわけですか。
  108. 大倉眞隆

    大倉政府委員 税収の伸びを想定いたします前提は経済の各セクターの伸びでございますので、ただいまの作業段階では企画庁の各種の試算を私どもはいただきまして、私どもなりの検討はいたしてみておりますが、企画庁の試算は、学者の意見を聞きましてもこれでいいだろうというものまでまだ煮詰まっておりません。非常にいろいろな試算があるというのが現状でございます。
  109. 増本一彦

    増本委員 じゃあ、皆さんの方のその結果に基づく検討の資料をぜひ当委員会に提出をしていただきたい。その検討の上に立って、さらに、この問題は将来にもわたりますから、詰めたいと思いますが、その資料の提出はよろしいでしょうか。
  110. 大倉眞隆

    大倉政府委員 十二月に予定されております概要と申しましたか、概案と申しましたか、そこで  一体租税負担率というものがどう動くのかということは、これはお示しできると思いますので、企画庁としての成案が出ます時期にお示しをいたしたいと思います。
  111. 増本一彦

    増本委員 じゃあ、その点についてそれ以降のその問題についての質疑は実質的に留保をいたしまして、とりあえず私の質問を終わります。
  112. 上村千一郎

    上村委員長 広沢直樹君。
  113. 広沢直樹

    ○広沢委員 公債特例法の具体的な法案の審議に入る前に、その前提となっております諸問題についてまず最初にお伺いしてまいりたいと思います。  と申しますのは、これはまずこの赤字国債発行しなければならなくなったその原因といいますか、その責任の問題につきましては、しばしば予算委員会あるいは本会議、それぞれの所管のところで議論になってきているところでございます。しかしながら、やはりこういう赤字国債は去る四十年に一度赤字国債発行され、財政特例法という形で国会に法案が出されました。その折にもこれは今回限りである、特例中の特例なんだということで、その当時の議論を見ておりますと、そういうお話がなされております。  それから約十年、ここにいまだかつてない大きな財政欠陥ができた。それに対してどうしてもその特例法を出さなければならない、やむを得ないというか、いたし方ない。いままでそういう論議を聞いておりますと、そういうふうに聞こえるわけであります。  したがって、赤字国債発行するに当たってのいわゆる前提になる歳出の再検討だとか、あるいは税収を図るにはどうすればいいかだとか、あるいはまた発行に当たってはどういうふうにしてそれを返していくのかだとか、そして大量の国債を建設公債と合わせるといまだかつてない大きな額に上るわけでありますから、これをどういうふうに消化していくのかだとか、こういった諸般の問題が明確にならないままに、ただ、いま大きな赤字を抱えて財政運営上何とか処理しなければならないから仕方がない、こういうふうなやりとりになってきているわけです。  したがって、やはり私は、これだけの大きな財政欠陥をこしらえたというこの原因につきまして、そしてまたその責任について当局者としては、これははっきりすべきじゃないか。先ほどの議論を聞いておりましても、確かに経済の見通しを誤った、ですから、もう少しその点については検討する余地があったのではないか、反省しているということも答弁なさっていらっしゃるわけでありますけれども、それならば、私は具体的にその反省の上に立って言うならば、どういうふうに今後やっていくかということを明確に国民に示さないで、ただその見通しが誤ったからこうなったんだということだけでは、これは納得がいかない。  そこで私はまず具体的に聞きたいというのは、いわゆる補正予算は通過しておりますので、この五十年度において諸般のいわゆる税収をどうするかだとか、あるいはその他の問題を検討すると言っても、すでにもうこれは補正予算が通過しておりますから、具体的にできないと思いますけれども、振り返って考えてみると、この欠陥が生じてきたということがわかったのは、すでに当初予算を審議している段階で当局はもう明らかにこれはわかっておったんではないか。というのは、四十九年度の補正においてもやはり約八十億くらいですか、歳入欠陥があるんじゃないかということで、五十年度の四月の税収を繰り上げてこれを組み込んでいる。したがって、その当時大蔵大臣は、五十毎度の当初予算を出されるにおいて、国債を二けたでやってきたのを一けた台に抑えるということをやはり財政方針演説の中で述べていらっしゃるわけですね。ですから、減らそうとした努力というのはわかるんですが、そのときにはすでに財政のバケツの底は抜けておったということははっきりしておるのではないか。それにおいて、そこから五十年度の補正を出すまでの間についてどれだけの財政支出の問題の検討をしたのか、あるいは税収を図る努力をなさったのか、こういったところは、時間がないとかあるいは後日に回すということだけで、今日やむを得ないというような言い方では私どもは納得できないわけです。  その点で私どもが伺っておりますのは、いわゆる税収を図るにおいては、金融機関の貸倒準備金をいままでの千分の十を若干いじった。しかし、それの税収も、計算してみると二百数十億にしかならない。ですから、今日の赤字国債としていま政府発行しなければならぬといわれる二兆二千九百億から見るとほんのわずかですね。  そこで五十一年度の当初予算、これもできるだけ大蔵省は年内に編成をしたい、年内ということは、もう十二月ですから今月だと思うのですが、原案をつくりたい、こういうことで作業に入っているやに聞いているわけでありますけれども、それらは五十一年度で具体的に税収の問題にしましても、歳出洗い直しの問題にしてもどう図っていこうとなさっていらっしゃるのか。その大綱、具体的な煮詰めは先ほどからのお話を伺っておりましてもまだ検討段階ではありましょうけれども、こういうふうにしてやっていきたいという大枠くらいは決まっていなければ具体的な検討はできないと思うのです。それについて大蔵大臣はいかようにお考えになっていらっしゃるか、まず伺っておきたい。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 五十年度の予算が成立いたしましたのは四月二日でございます。参議院段階に入りまして御審議を願っておる段階におきまして、四十九年度の歳入欠陥というものがだんだん具体化してまいりましたわけでございまして、私どもはとりあえず、まず四十九年度の歳入欠陥についての対応策を行政府の責任において講じたわけでございます。その経過を見ておりますと、あるいは相当の歳入欠陥が五十年度に起こるのではないかという予想は立たないわけではございませんでしたけれども、それまで私どもの手に届きました税収の実績というものは、必ずしも前年度に比べて悪い数字ではなかったわけでございます。それから三月の十五日の確定申告を初めといたしまして、もろもろの指標が予想から大きく外れまして、ああいう結果を来したわけでございます。  したがって、五十年度、それではどのくらいの欠陥になるであろうか、予想見積もりを直さなければならぬかということにつきまして、若干の懸念は持っておりましたけれども、国会で自信を持って申し上げる確たる数字はなかったわけでございまするし、また政府経済の見通しを変えていなかったわけでございますし、従来立てておりました経済の見通しをベースにしてお答えしなければならなかったわけでございますので、私どもが知っておってわざと言わなかったとかいう性質のものではなかったということは、まずもって御了解いただきたいと思います。  ところが、それでもこの春から夏にかけましての経済が順調に推移いたしておりますならば、今日見るような補正をお願いすることもなく、あるいは特例公債をお願いするような事態に至らなかったと思うのでございます。一月、二月、三月と出荷も伸び、生産も伸び、在庫の調整も進んだわけでございますので、したがって、私どもは必ずしもその後の経済の推移が、五月からこんなに急に悪化するとは考えていなかったわけでございます。したがって、当時そういうことを十分知っておって、黙って予算の成立を図ったということは当たらないわけでございますので、その点は御理解いただきたいと思うのであります。   〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕  そこで、こういう大きな歳入見積もりのそごというようなことは今後繰り返してはいかぬわけでございますので、五十一年度の取り組み方につきましてはよほどこういう轍を繰り返さないようにやらなければならぬと存じて、鋭意努力をいたしておるところでございます。  五十一年度は、それではどうやるかということについてのお尋ねでございますが、これはたびたび申し上げておりますように、大きな法人税あるいは所得税の増税または減税、そういったものを考えられる時期ではないとわれわれは判断いたしておるわけでございまして、増税をお願いするほどの経済状況ではない、減税を考えるほどの余裕はないということでございますので、それは基本の認識として持っておるわけでございます。しかしながら、こういう厳しい財政状況でございまするので、現行の歳入体制、とりわけ現行税制につきましては十分きめ細かい、従来よりも彫りの深い見直しを行わなければならぬ責任があるのではないかと存じまして、これはたびたび申し上げておりますように、いま税制調査会を中心に御勉強を鋭意願っておるところでございます。  歳出面におきましては、行政的な事務費というものは五百三十九億の節減をお願いいたしたわけでございますけれども政策的な太い経費につきましていま大きななたをふるうというようなことは考えていない。そういうことはさらに一層経済不安を招来することでございますし、ひいては雇用不安を招きかねないわけでございますので、そういうことはすべきでないと考えておるわけでございます。  来年度の予算編成に当たりましても、そういう意味におきまして、ことしの予算の体制を大きく崩して、いまの歳入体制に合ったような、歳入能力に合ったような乏しい歳出でがまんしていただくというわけにはまいらぬだろうと私は思っております。したがって、歳入歳出とも今日のような経済状況を十分踏まえた上で、非常に用心深くやらなければならぬ年ではないかと考えておるわけでございます。  しからばどのくらいの枠組みで考えておるか、また公債はどの程度のことを念頭に置いておるかということでございますけれども、正直に申しまして、まだそこまで委員会で御報告するような段階ではないのでありまして、いま国会の御審議を早く済ましていただきまして、来年の予算に専念さしていただきたいと思っておるわけでございまして、いま、まだ全体の枠組みを、この程度に抑えていこうというところで、政府等の首脳の御相談のフレームをつくっておるというようなことも一切まだしてないわけでございますので、この段階は、まだ一般論といたしまして、いま歳入歳出両面にわたりましてこういう心構えでおるのだということで、ひとつ御了承いただければ幸せと思います。
  115. 広沢直樹

    ○広沢委員 長々と御答弁いただいたのですけれども、結局はまだ何もわからないということで、ただ困っているということだけはよくわかる。そういうことではやはりわれわれは納得できないので、具体的な煮詰めというものは、それは時を追ってそれぞれ税制調査会にもそれは答申を求めているんでしょうし、あるいは財政制度審議会にもいろいろ意見を聞かなければならないでしょうし、いろいろなことがあると思います。  しかしながら、やはり財政当局者としては、今日これだけの大きな歳入欠陥を生じ、赤字国債発行しなければならないということに対して、国民にはこういうふうな方向で問題を解決していくのだという枠組みは明確にしなければ、あなたの方がさっぱりいま検討中でわからぬのだ、だけれどもこれだけの大きな赤字ができたのだから、これは何とかしてもらわなければいけない、これだけは認めてくれ、こう言われても、それはなかなか納得しがたいものになろうと思うのです。  そこで、これはまず参考のためにも聞いておきたいわけですが、どうしても財政運営上は経済見通しということが頭にくる、その経済見通しが狂ったからやはりそれに応じて税収の見込みも狂ってしまう、そして今日のような財政危機という状況も招来することになった、こういうようなお話なもので、一応これからの経済見通しについて、経済企画庁にお越しをいただいておりますので、若干伺ってみたいと思うわけです。  そこで、まずお伺いしたいのは、五十年度の経済見通しを十月に変えられました。それで、下期を通して、経済見通しを変えたわけでありますけれども、大体その見通しどおりいきそうなのかどうなのか、まずそこからお答え願いたい。
  116. 額田毅也

    ○額田説明員 お答えいたします。  経済見通しの改定以後、一般に景気の回復力が弱いと言われております。ただ、私どもマクロの面で、指数で見てみますと、御案内のとおり、鉱工業生産指数は二月を底といたしまして十月までに約八ポイントの上昇を示しております。また、稼働率も三月を底といたしまして九月まで約七ポイントの上昇を示しておる。こういう指数の面におきましては、ある程度の回復軌道に乗ってきたのではないかと考えております。  また、先ほどお話がございましたように、国際収支の面でも、上半期は低調でございましたが、下半期に至りまして、最近輸出ないし輸入とも若干増加の傾向にある、こういうふうに考えております。したがいまして、このような基調のもとで第四次の景気対策が本格的に動き出しますと、本年度私ども改定見通しで予定いたしました年率二%強の成長を達成できるのではないかというふうに考えております。
  117. 広沢直樹

    ○広沢委員 第四次不況対策が本格的に動き出せば目標は達成できるのではないか、こういうお話でございましたけれども、これはそれぞれの業界の意見はともかくとしまして、実際にその第四次対策が有効に働くというのは、具体的に大体いつごろになるのだろうか。といいますのは、第四次不況対策の柱になっているのは、公共事業、住宅投資、こういった二本の柱が大体大柱になっているわけですね。  公共事業にしましても、御承知のように地方財源も非常に窮迫しているので、なかなか進行率が進んでいないということも結果として出てきております。具体的に言うならば、大型プロジェクトを組んでいろいろやろうとしたことについても、具体的にこれはまだ諸般のいろいろな関係があって進んでいないことも私ども聞いているわけです。それがいい悪いは別問題ですよ。  さらに、住宅の問題につきましても、過般建設省が新設の住宅の着工の面からいろいろな予想を出しておりましたけれども、その見通しによりますと、これは四十九年度よりも着工件数が減るのではないか、そして、第二次五カ年計画の最終年度でありますけれども、これも予想より下回るのではないかという予測を立てている。それだけではありません。確かに住宅金融公庫に対する貸し付けは相当大幅にふやしておりますけれども、それで賄えないぐらい多くの申し込みがある、需要があるということはわかるのですけれども、これも予算の限度がありますから全部消化することはできなかった。それを加えても、全体的に見ると、やはりいま申し上げたように目標達成がむずかしいという状況にあるやに発表されているわけです。  さらに、過般の報道によりましても、大量の国債発行されるということで、それぞれの金融機関においては住宅ローンに対して多少渋り出しでいる。特に住宅専門四社に対する融資が落ちてきたという面にも出ておりますね。  まだ細かく言えば、たとえば輸出が落ちているということで第四次不況対策でいわゆる輸銀の融資枠を若干増加させていますね。しかしながら輸出の落ち込みに対してそれだけの追加をして果たしてもとへ戻っていくだけの力があるだろうかということも一つは疑問視されている。  それから、開銀の融資についても、これは設備投資が主だろうと思うのですが、これにつきましても、やはり今日のような不況期において設備投資が伸びないということは指標にちゃんと出ていますね。あるいは公害問題が問題になっておりますけれども、そういったものに対する余力というものが余りないのではないか。そういう面が具体的には設備投資も横ばい状態、停とん状態である。輸出は、先ほどちょっとお話がありましたように、指標的には上向くような傾向にあるけれども、はっきりとそれが軌道に乗ったということは言い得ない。  こういうことを考えてみますと、あなたはいま四次対策が効果を得てくればということをおっしゃっておりますけれども、果たしてそういうことが可能なのかどうかということは、大いに疑問だと思うのですね。その点いかがですか。
  118. 額田毅也

    ○額田説明員 お答えいたします。  先生すでに御案内のとおり、景気の回復力というものにつきましては、いろいろの見方がございまして、強気、弱気の見方がございます。  御指摘の中で住宅建築の状況でございますが、先行きの情勢はまだ正確にこれを予断することができませんが、現在までの指標では、着工戸数も上半期相当の伸びを示しておるわけでございます。そこに住宅金融公庫に対する追加融資ないしはこれから基調的には昨年よりも民間金融はやはり緩和の傾向にあるだろうというふうな状況考えますと、私どもとしては住宅建設の増加というものを期待しておるわけでございます。輸出につきましては、すでに御存じのとおり、指標の面で明るさが見えてきたということでございますが、漸次これは具体化してくる。なお、設備投資は確かに相当に落ち込んでおります。私どもの見通しでも、設備投資は四十九年度に比較いたしまして減少と見ております。現在の景気の回復力の主たる力というのが政府支出と民間住宅投資であろうかと思うわけでございます。そういう意味で、民間住宅につきましては、先ほど申し上げました事情から、やはり将来の増加というものを見込み得る。また政府支出につきましては、この一兆六千億に上る効果というものは相当大きいものがある、こういうふうに考えまして先ほどのように申し上げた次第でございます。
  119. 広沢直樹

    ○広沢委員 まだ具体的にこれが落ち込むということを言えないのかもしれませんけれども、公共投資にしましてもあるいは住宅投資にしましても、これはすでに指摘されておりますように、具体的に工事に着工して、それがねらっているような波及効果が出てくるというのには相当タイムラグがあるということは、御承知のとおりなんですね。そういうことから考えてみましても、今日の経済の動向あるいは企業の実態面から見て、果たしてそれが具体的な効果を上げられるということは非常に疑問じゃないか。すでにそれぞれの機関においても、これは一々読み上げておったら時間もかかりますので申し上げませんけれども、やはり先行きそれが不安定になってきたということを示唆する向きもあるわけです。経済企画庁としてはまだそれを修正するところまでいかぬのかもしれませんが、いずれにしましても、経済の実態というのは、大蔵大臣、こういうふうに相当厳しい状況にあることはおわかりいただけると思うのですね。  そこで、そうなってまいりますと、五十年度下期に修正されたいわゆる経済見通しに基づいて税収等も考えていると思うのですが、それが狂ってくれば当然税収にも影響してくるんじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  120. 大倉眞隆

    大倉政府委員 補正後の税収は、改定見通しをベースにいたしておることはおっしゃるとおりでございます。ただいままでのところ、十月末までしか実績としてはわかっておりませんけれども、十月の税収は、前年比で申しますと九四・四%でございました。四月から十月まで累計いたしますと、前年に対しまして九三・七%になっております。補正後の税収が前年に対して幾ら入ればよろしいかというのは、これは九二・二%で補正後税収に到達するわけでございますので、現在の累計の姿から見ますと、若干のアローアンスがあるということは一応言えるわけでございます。  ただ、補正を組みまして以後の九月、十月がこういう姿で推移いたしておりますけれども、九月分、十月分ともそれぞれ金額的には一月当たり七千億ちょっとぐらいの月でございます。非常に大きな月というのは、やはり九月決算の法人税が納期限の参ります十一月分の税収と、年末のボーナスが税収になってまいります一月分の税収と、それから一年決算法人がかなり多い十二月決算が入ってまいります二月税収、その辺が九月、十月に比べますとウェートの大きい月でございますので、いまのところ、補正に組みましただけの税収は必ず大丈夫ですということを申し上げるだけの自信が、正直のところとうていございません。と申しますのは、たとえば十一月税収で法人税が昨年幾ら入ったかと申しますと、昨年の十二月三日、一日で約九千億入ったわけでございます。ですから、九月、十月の一月分以上のものが入った、そういう大きさでございますので、これが一体予想どおりになってくれるか、あるいはいま報道されておりますようなもっと悪い姿になるのかで金額的に相当大きなぶれがございます。それから年末のボーナスが予想どおりになってくれるかどうかという点もございます。  ただ、ただいまの御質問に関連して申し上げますと、個人所得の方につきましては、未確定要素となりそうなのはやはり申告所得税の分でございます。法人所得の方は、実は経済見通しで予測しておられるものの中で補正後の税収に直に響いてくるのは、タイムラグの関係でせいぜいことし一ぱいぐらいの生産活動でございます。来年の一−三からどの程度上向くかということは、実は五十一年度の税収の方に響いてくるファクターでございますので、ここから先は、繰り返して恐縮でございますが、九月決算が本当にどういう姿で入ってくるかということ、年末のボーナスがどうなるかということ、三月確定申告のときに土地がどの程度出てくるかということの方が五十年の税収としては大きな要因で、五十一年一月以降の経済活動は税収的にはむしろ五十一年度の問題になる、そのように御理解いただければ幸いでございます。   〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  121. 広沢直樹

    ○広沢委員 それは大体わかりますけれども、第四次不況対策の影響が五十年度下期の税収その他に全然影響しないということはあり得ないと思います。大体、大枠は五十一年度の影響になるということはよくわかりますけれどもね。  そこで、もう一つそれに関連してお伺いしておきたいのは、九月期の決算はすでに出ているわけですね。すでに発表になっているところによりますと、経常利益においていまだかつてない非常に大幅な減益になっているということが出ております。これは期待どおりにいくならば、こういう減益にならないだろうということを期待されておったのではないかと思うのですが、これは大きな減益になっております。ということは、これは直に考えていきますと、税収に響いてくるということははっきり言い得ると思うのです。それから十月の法人税収だけを見ましても、過般大蔵省が発表したところによりましても、前年同月に比べて四四・一%も減っている。したがって、八月以降三カ月連続で四〇%を上回る落ち込みをしている。こういうふうになってきている。そこで、いまの九月決算の状況を抽出的に調査されたところによりましても、十一月の法人税収の落ち込みはそれ以上になるのではないかという予測さえされているというふうに言われているわけですね。  このことから考えると、今日、下期に考えているだけの税収が果たして図られるかどうかということは大いに疑問があるのではないかと思われるわけです。四次対策のある程度の影響というものをそこにプラスしたとしても、下期の改定経済見通しというのは、原油の値上げだとか、あるいはその後の諸般の状況を織り込んだ改定見通しでありますから、それが全体で落ち込むということはやはり税収に影響をしてくるのではないか。  それともう一つは、税収予定をしております補正予算の中に組み込まれておるいわゆる酒税あるいはたばこ、郵便料金、こういったものが十一月からの予定を組んでいるように予算の中には組み込まれておるわけですが、実際にこれはもうそれが狂っておるわけですね。この収入もやはり大きな影響があるのではないかと思います。  そうすると、税収の面から見ますと、当初皆さんが予定されておった税収が三月末に果たして図られるかということについては、いまからはっきり断定はできないにしても、相当厳しいものがあるのではないだろうか。そうなった場合、第二補正を組まざるを得ないのではないかと私は思うのですが、その点についていかがお考えになっているか、承りたい。
  122. 大倉眞隆

    大倉政府委員 九月決算は非常にいろいろな推計が出ております。一番最近のものは日本経済新聞の集計だと思いますが、これで見ますと、前期比で五三%の減益になりそうだということが言われております。私どもの方は独自に、従来の六カ月決算の大法人につきまして係員を派遣いたしまして聞き取り調査をいたしてみましたが、私どもの方の聞き取りの結果では、経常利益の減少率は日経よりも若干大きく出ております。減少率が大きく出ておりますが、これは経常利益でございまして、各社とも何とか最小限の配当は無理してでもやりたいということで、御承知のように土地が売れれば売ったり、多少損してでも株を売ったりというふうに決算をなさるところもあるものでございますから、税収の方のベースになります申告所得と申しますか、そういうものといたしましては、日経の予想ほどには落ちない。まあ一般産業の方で、前期比で六割五分見当で六カ月決算の大法人は出てくるのではないかという予測をいましておりますが、これはあと一週間ぐらいの間にどっちになるか勝負がつくわけでございます。その勝負のつき方次第では、先ほど申し上げたように、根元が大きいものでございますから、かなりの影響を持つことになる。  そこで、補正後の税収が十月末までであれば、先ほど申し上げたように若干のアローアンスがまだある。そのアローアンスを食いつぶしてしまうほどのことになるかどうかやや心配で、私として決して楽観的になれないというのが現状でございます。しかし現在の私どもの聞き取りのような姿で動いてくれるのであれば、これは二次補正というような事態に追い込まれずに済むであろう、そのように考えております。
  123. 広沢直樹

    ○広沢委員 これは予測の問題でありますから、ここで問い詰めてみましても結論が出る問題ではありません。ありませんけれども、当初予算に税収として法人税収を見積もったのと、それから補正で修正された部分、これはどれぐらい減収になるというふうに一応計算されておったわけでありますか。
  124. 大倉眞隆

    大倉政府委員 補正予算におきましては、法人税収を当初に対しまして二兆一千三百二十億の減というふうに見ております。その理由は、当初につきましては生産が前年比九九%と見ておりましたものが、補正予算段階までの実績と経済見通しを複合いたしまして八八と見直す、物価を一一二と見ておりましたものを一〇七と見直す、所得率を九五と見ておりましたものを七五と見直すということで、税額ベースで当初一〇五と見ておりましたものが七一になったということで、それで二兆一千三百。細かく申し上げますれば、そのほかに貸し倒れの増税の二百九十億が入りましたりいろいろございますけれども、一番根元のところの狂いの原因は生産、物価、所得率のそれぞれで出てきてしまったということでございます。
  125. 広沢直樹

    ○広沢委員 いまのところ法人税収の面から見るとぎりぎりのところだという状況じゃないかと思うのですね。それはあと一週間くらいすればはっきり結果が出てくるということでありますから、それを見ましてまた次の機会にいろいろ伺いたいと思います。  そこで、次に公債特例法案の中でまず財政法について基本的にお伺いをいたしておきたいと思います。  財政法第四条の精神というものは、言うまでもありませんけれども、いわゆる不特定財源に充てるための公債は禁止されている。そういう第四条でいわゆる赤字公債といいますか、それが禁止されてきた背景というものは、すでにいろいろと議論がなされておりますように、過去の戦争などのいわゆる浪費の拡大、それを補うための財政的裏づけに赤字国債をどんどん発行せざるを得なかったとか、あるいは歳出の拡大を埋め合わせるためにやむを得ないということで財政の節度を破って大量に赤字国債発行された、それがひいては悪性インフレを引き起こして国民生活を窮地に陥れた、こういうふうなことで、やはり赤字国債発行しないのだということが第四条の基本精神でなければならないわけであります。  ところで四十年に、わが国経済の発展に伴って、金融はもとより財政におきましても、経済的あるいは社会的要求にこたえるという意味で、財政の果たすべき役割りの見地から財政法第四条のいわゆるただし書きによる第四条公債というものを発行して、それから公債政策というものが具体的運用されることになったわけであります。  しかしそのときの論議の中でも、やはり国債に対する依存率は五%以内にとどめなければならない、それをめどにしていこうということが財政審の答申にもありますし、当時大蔵大臣も、健全財政の立場からそれだけのガイドラインというものを設けているということ自体は、財政法第四条ただし書きで認められている建設国債についてもできるだけこれを抑えていかなければならないという非常に厳しい見方をして運用してきたということである。ところがその当時も議論がありましたように、今日十年たってみると、それがだんだん当然のように拡大されてきている、こういう結果になってきているわけであります。  そこで今日、これだけの赤字国債発行して今日の財政危機にこたえなければならないということは、やはりこの第四条国債の運用の仕方が誤ったのではないか。確かにこれは対象的なものがあって、それに対して公共事業に引き当てた国債発行ということになっておりますけれども、実際の運用に当たっては、御承知のように歳入を補てんする運用がなされているわけですね。ですから当然そのときの財政の事情から勘案してみるならば——これが四十五年ころには五%以内にとどめたことがありますけれども、六年以降はずっと、財政的に非常にゆとりがあったにかかわらず一〇%以上の国債発行してきている。それはそのときどきによって、年度によって、大きいときも小さいときも多少ありますけれども、そういう運用の仕方をしながら今日そういう安易な発行の仕方をしてきた、こういうことだと思うのです。  それは基本的に考えていくと、私は財政法第四条の精神というもの、国債発行しないという基本的概念に立って、やむを得ざる場合においてただし書きに決められた運用の仕方をするということに徹していかなければ、これはどんどん大きくふくらんでいくだけだというように考えるわけですが、その基本的概念についてはいかがお考えになっているのか、大蔵大臣お答えいただきたい。
  126. 大平正芳

    大平国務大臣 いま仰せのとおりでございまして、財政法で本来認められていないことを特例措置として国会に特にお願いしてその道を開いてもらうわけでございますので、そして今度お願いしているのは五十年度の措置だけについてとりあえずお願いしておるわけでございます。後年度まで展望してお願いするということは特例措置としては私は行き過ぎであろうと考えておるわけでございますので、したがって、この考え方は当然できるだけ早くこの特例措置から脱却する道を考えなければいかぬわけでございます。しかし、五十一年度は、少なくともまだ経済の立ち直りがいま仰せになったような状態でございますので、財政が、当面この経済回復財政としての責任を果たさなければいかぬ段階であろうと思いますので、五十一年度は依然としてお願いしなければならぬのではないかということを申し上げておりますけれども、五十二年度以降は少なくともこれを減らしていくという方向に持ってまいりますことが財政運営の基一本の方針であると考えております。
  127. 広沢直樹

    ○広沢委員 私が申し上げておりますのは、当面する問題、確かにいろいろ問題があるのですが、基本的な考え方が食い違っているのでは幾ら論議しても平行線ですから——ですから、私が申し上げているのは、第四条国債にしましても、これもやはり単に公共事業をどんどん拡大していくために、公共事業だからいいんじゃないかということでそれをずっと拡大してきた。片方においては御存じのように高度経済成長ですから自然増収も相当あったわけですね。ですから財政需要が大きいということ、それは当然それにこたえていかなければならないけれども、これは節度の問題だと思うのですよ。そしてまた具体的な計画を立てなければならない。一遍に財政需要を全部賄うことはできないわけでありますから、当然そういうことによって考えていかなければならないのですけれども、やはり結果的に見ますと目いっぱい建設国債というものを使っているということになりますれば、こういう事態が来ました折には赤字国債をどうしても出さなければどうにもならない。  たとえば五十年度の予算を見ましても、補正で公共事業をプラスしましたから、その分に見合う建設国債、いわゆる第四条国債は出すことができた。それを差し引いて足らぬ分の二兆二千九百億、これはどうしても対象がないから特例で赤字でお願いしなければならぬ、こういう形でお出しになったわけでしょう。ですからやはり第四条は赤字国債を全然認めていないわけですよ。しかしながら、いまの経済動向に合わせて今日の財政役割り考えれば、国債というものは全然出してはいかぬのだということではなくて、ただし書きに、これは公共事業に充てるためとか、貸付金だとか出資金の場合は、これはちゃんとした対象があるからよろしい、よろしいけれども、しかし、これは対象があるからよろしいということでどんどん拡大してもいいのかというと、そうではない。やはり財政審の答申においても、当時の論議においても、あるいは大蔵大臣のその当時の答弁においても、予算に占める割合というものは小さくしていかなければならぬ。これは財政運営ですから、あるときはちょっと大きくなるかもわかりませんよ。またあるときはずっと縮めていかなければならぬ。ところがこれまでのことを考えてみますと、ふくらますだけふくらまして、小さくすることはいま急にはできない。ですからそういう状態の中でこういう財政危機を迎えると、どうしても赤字国債を大量に出して埋め合わせをしなければ財政運営ができないというかっこうになっているでしょう。  これはそもそも財政法精神から考えて、やはりそれがだんだん国債というものに依存し過ぎる形に財政というものがウェートを置き過ぎてきた。ですからこういうふうになったのではないかということを私は指摘しているわけなんですよ。  したがって、赤字国債を出しているときにこれをどうするかということは、赤字国債の問題は赤字国債の問題でまた私は別にお話ししますから、四条国債の中で考えてみても、やはり予算に占める割合が、四条国債だけではなくて予算と対比する場合は、赤字国債も四条国債も一緒に入れての依存度になりますから、ことしみたいに二六・三%にならざるを得ない。来年もそれ以上になるのじゃないかというような予測もあるようなことですから、それは来年度のことはまた後から議論するとしても、そういうような状況になっている。ですから、これをどの辺の目安にしていくのかということは、この段階において大蔵大臣はやはりはっきりとガイドラインというものを考えておくべきじゃないかと思うのです。いま急激に来年からこうしろとかという意味じゃないのですよ。予算に対して大体どれくらいの国債というものに依存していこうという運用をなさろうとしているのか。十年前はこれからの国債政策は、予算に占める割合というのは大体五%以下が適当ではないかというガイドラインで運営しようということでやってきたわけですよ。これからどうなさるおつもりですか。
  128. 大平正芳

    大平国務大臣 五%という公債依存率、これは当時先進諸国が大体ほぼその見当でありましたので、一応常識的な依存率として考えられた線でなかったかと思うのであります。しかし財政は本来経済とのバランスで考えなければいかぬものでございまして、五%でも重いときも確かにあるのではないかと私は思うのでございまして、五%以下であればそれは非常に健全財政であると逆に胸を張って言うことは、私はなかなかできないのではないかと思うのでございます。ただしかし今日われわれが直面している事態は非常に異例な事態でございまして、大変高度の成長を続けてまいりました日本経済が、突然世界的な不況の激浪を浴びた段階でございますので、歳入はうんと減るし、歳出は思うに任せず節減できないというような、そんな状態でございますので、今日の状態からノーマルな状態公債依存率は幾らにすべきであるということを申し上げるのは、この時期は私は決して適当な時期でないと考えております。ただ、この時期をできるだけ早く脱却して、ノーマルな財政状態に返さなければならぬということが当面のわれわれの悲願でございまして、それを早くなし遂げた後で、あなたの言われる公債論が日本の土壌にどういう姿で定着するのが健全な状態であるか、経済との関係において、民生との関係において、日本経済構造との関係において、金融構造との関係においてどういうものであるかというような点が、私は詰められていくべき性質のものではないかと考えております。いま特例法案を御審議願っておる段階で、ノーマルな財政状態におきましてはこうだというようなことをいまお話し申し上げる勇気はないわけでございますので、御了承いただきます。
  129. 広沢直樹

    ○広沢委員 ですからやはり最初はそういうような目標を立てながら——四十年の国債のときにも、これは特別なんだ、今回限りなんだと、ちゃんと大臣答弁にはっきり出ているのですよ。そういうふうにおっしゃっている。そしてその後だんだんこれがふくれ上がってくる。確かに約束したとおりその後五年たって五%以下に一遍下げたことはあるのですけれども、それから四十六年以降はその倍にはね上がって一〇%、それからずっとそれが続いているわけです。そしてこれが減るのじゃなくて、ことしは確かに当初予算のときはその二けたが九・四%の依存率に下がったですよ、こういう口の下から、そのときにはもうすでに今日の五十年度予算国債に二六・三%も依存しなければやれない状態になっているわけです。  ですからやはりこれを反省してどんどん減らしていく、これはあたりまえの話です。だれが考えたって借金は減らしていった方がいいに決まっておりますから、減らしていこうという気持ちは当然でしょう。そういうことを聞いているわけじゃないのです。減らしていくのならば、実際のあるべき姿というものはこういうふうな運営をしていきたいのだ、こうおっしゃるのが適当じゃないでしょうか。ところが、それはその当時の金融情勢で、まず借金をして、その借金、赤字の方がうんと大きくなったから、これを返すまではそのめども立ちません、返した後でこれから考えてみましょうというのでは、一体どこに節度ある公債政策をやっているのか、いわゆる財政運営をやっているのかと言わざるを得なくなるわけですよ。そうじゃありませんか。第四条の精神をだんだん形骸化してやってきたところに、いま言うような今日的財政危機というものを招来することになった。前は自然増収がありました。今度は公債発行して、どんどんその財政というものは需要もいっぱいにふくらんできております。だから経済状態ががらっと変わって、そういうことを満たすだけの経済成長ができなくなってくると、当然それを埋め合わせるためには増税か、歳出を切るか、あるいは赤字国債か何かしなければやっていけないことになる、それは目に見えている話です。それをいま急にことしこうしろとか来年こうしてしまえとか言っても、それはできない相談でしょう。ですから、将来にあなたが財政当局者として借金というものに対して財政を運営するに当たってはこれだけのめどを置いて運営していくのだという方針は、もう一度四十年に立ち返って、国債発行しようとした時点で論議されたようにここではっきりしなければいけない、私はそう思うのですが、いかがですか。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 やはりそれは仰せのとおり、本来の財政法の原理に立ち返らなければならぬと思います。財政法は、公債発行は四条公債以外認めていないわけでございますので、このことはあくまで銘記しておかなければならぬわけでございます。私どもといたしましては、いまの特例法律を五十年度限りの措置としてお願いしておるのもその精神でございます。つまり、こういうことが習い性となっては困るわけでございますので、異例の措置であればその年度限り、その特定の目的のためにこれだけのものをお願いするというように限定しなければならぬというように考えておるわけでございます。  だから、健全な財政運営はどうあるべきかというお尋ねでございますならば、これは申すまでもなく財政法精神に立ち返りまして公債依存はできるだけ慎しみ、これをお願いする場合におきましても、四条公債の範囲内で極力抑えてまいることが当然の道行きであると考えております。しかし、四条公債にいたしましても公債にほかならないわけでございますので、これに許されているからといってこれに甘えて依存することも私はいかがと思うのでございまして、できるだけその範囲内において低目に努力してまいるのが財政当局者の当然の責任と思います。
  131. 広沢直樹

    ○広沢委員 ですから、くどいようですけれども、これは大体国債政策を具体的に財政の中にビルドインするときに決めたラインというもの、財政審も大体それが適当ではないかと言った。さらに大臣も当時の議論の中で、それを一つのめどとして努力していくんだということを言われた。それはやはりそういう節度あるやり方というものを今後も踏襲していくことにしていかなければいけない。これはパーセントですからね。幾ら財政は大きくなったって、その占める割合というものをどうするかということについては、もう別にそれを変える必要はないと思うのです。それはどれだけが適当であるかということをお考えになっているのか、そしてまた、その適当な健全な財政の運営、節度ある公債対策というものはどのラインなのかということはやはり一つ——それだけではありませんよ、ほかにたくさんの要因がありますよ。たとえば予算一つ組むについても、それをどの辺のラインにしておくことがその面で見た場合におけるいわゆる節度あるあり方であるかということは、それは大蔵大臣、やはり明確にしておかなければなりませんよ。  いまあなたは、先のことはいろいろわからないんだ、いまこうなったことは申しわけない、こうおっしゃっている。それはそのとおりでしょう。しかし反省なさるならば、当然あるべき姿はこうなんだということをきちっと明示される、それに向かって、そのとおりになるかならないかということは、これは経済だって生き物ですよ。全部が全部はずれてしまったから責任をとってやめなさいとは私は言いません。間違いは直ちに直して、そしてあるべき姿に近づけていく、こういうやり方をやっていかなければいけない。少々狂ったから全部やめなさい。やめて事が足りる問題じゃありません。国民に対してはっきりしためどを示して安心をさせるといいますか、そういうことが義務じゃありませんか。そういう意味でこれを具体的にお伺いしたわけなんですよ。いかがですか。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 財政法認められた建設公債の枠内に公債発行をとどめるべきだと思いますけれども、その枠内におきましても、その消化から考えましてもまた財政公債費の負担から考えましても、五%以内にとどめることが常識的な財政運営の道標であろう、そう私は考えます。
  133. 広沢直樹

    ○広沢委員 そのように努力していくということことで一応その方向をいまお述べになったと思います。  そこで次にお伺いしておきたいのは、特例法の第二条です。これもさんざん議論になっておりますけれども、私はこれは財政法十一条ないし十二条に違反していると言わざるを得ません。五十年度の出納整理期間、いわゆる五十一年度五月三十一日まで特例公債発行をすることができるというところでありますけれども、これについて、特例国債のいわゆる目的歳入不足を補う、そのためのものであるから、その歳入不足がはっきり掌握できるのがこの出納期間いっぱい、いわゆる五月末までかかる、こういう御説明なんです。確かにそれはそうでしょう。三月十五日に確定申告を受けて、それがわかるのは大体四月、五月と、最終にわかるのは五月だろうと思います。しかしそれならば、なぜ四十年の財政不足によって特例公債を出したときにもそういう処置をおとりにならなかったのか。どうして今回に限って財政法十一条で単年度主義と決められておるものをこういう形で処理しようとなさっているのか、これをお伺いしたい。
  134. 高橋元

    高橋(元)政府委員 四十年の公債特例法の際には、発行されました歳入欠陥補てん債の発行権限の繰り越しの規定がございまして、したがって、年度内は実際上特例公債の過剰発行にならないようにしぼっておきまして、翌年度になってその未使用の残額を発行することができる、そういう規定になっておるわけでございます。これは財政法の四条のただし書きとの関係がございまして、四十年の当時には、まだ財政法の四条ただし書によりますところの公共事業費等の公債対象経費の枠があったわけでございます。したがいまして、発行権限を繰り越ししました際にも、やはりそれは財政法四条ただし書きとの関係で、発行の繰り越しをして適法な状態だった。  しかしながら今回のこの特例公債は四条公債の外でございますから、したがって繰り越しをするということがあり得ないわけでございます。原則として余り大きく期待できないわけでございます。したがって、繰り越しの規定を置いてもこれは余り実益がないと申しますか、そういうものを置くべきでないという考え方でそれはとらなかったわけでございます。したがって、今回の特例公債につきましては、この事柄の性質にかんがみまして、歳入不足を埋めるという限度を超えて発行することは非常に問題でございます。二月末に契約をいたしませんと三月に発行というのはできないわけでございますから、二月末時点でわかっております歳入状況からいたしますと、三月の申告所得税、その辺の実績がまだ把握ができない、したがって四月、五月にわたりまして歳入状況が固まるのを見て必要な金額を発行してまいる、そういう四月、五月に発行できるという第二条の規定を置いておるわけでございます。
  135. 広沢直樹

    ○広沢委員 四十年のときにおいても、やはりこれは赤字国債でありますから、法律的な考え方においては税収の不足を補う、そのために四十年のときにも特例法で処理しようとした。そうなれば私はやはり同じ問題だと思うのですよ。四十年のときからいま今日まで、三月十五日の確定申告というものは変わったわけではないわけでありますから、当然そのときを見なければ、いまのようなやり方をしなければきちっと帳じりというものはプラ・マイ出てこないことははっきりするわけですね。  予算の中でも、また補正予算の中でも、これだけの赤字国債は皆さんの方で必要なんだ、どう処置してもこれだけがなければ歳入欠陥が起こって財政運営はできないということで承認を受けておるわけですね。受けている。ですから当然その受けたものについてはやはり発行して、そして別に剰余金を出すのがおかしいという見方もあるかもしれません、あるけれども、それがやはりまた皆さんが償還の中で申されているように、全額それを償還に充てるということですから、それを返すという形をとっても私は一つも不思議ではないんじゃないか。むしろそういうことよりも、単年度主義になっているこの財政法精神から考えてみましても、やはりそれを二月延ばして歳入、いわゆる整理といえば整理かもしれませんが、発行できるということは、収入金を得ることができるということに枠を広げることですから、やはり私は財政法の十一条、十二条の形骸化につながるのではないか、こういうふうに思うわけですよ。  さらに、これも後から触れますけれども、剰余金が出るのはおかしいとおっしゃる。だけれども赤字国債の償還に当たってはいろんなやり方もやるでしょうけれども、御説明の中に、剰余金も全額入れますよ、だけれども赤字国債が出ているときに剰余金が出るわけがないということですよ、ちゃんとそこを合わしていくということですから。そうでしょう。剰余金がない、そうしたらあと予算繰り入れしかないだろうということになる。もちろん定率繰り入れの分もあるでしょうけれども。これは後の償還計画の中で具体的にお伺いするとして、やはりそういう面から考えていくと、いろんな理屈をつけているけれども、要するに国債発行に当たっては、非常に多額の国債発行するについて短期である、ですから非常にいまの市中消化の方法にまで影響してくる問題を考慮した形じゃないのかと勘ぐりたくなってくるわけですね。確かに一つの理屈はいまおっしゃるようにわかりますよ。最終的なプラ・マイを考えようとすれば、どうしてもそれは整理期間の中でそれを整理さしてもらうようにしなければならぬという。しかしその前の四十九年度の皆さんのやり方を見ましても、これは発生原因が四十九年度に起こった税収なんだから、五十年四月にもしもこの収入があった分についてはこれを繰り上げて四九年度の収入にしますなどということをしてつじつまを合わせていらっしゃるわけでしょう。そういうことから考えていきますと、どうもやはり財政法というもので決められた単年度主義というものをきちっと守ってその中においてきちっとあなた方が財政運営をやろうというのがだんだん形骸化されていくようにしか読み取れないわけですよ。いかがですか。
  136. 高橋元

    高橋(元)政府委員 四十年度の話にさかのぼりまして申し上げますと、四十年度の財政処理の特別措置に関する法律に基づいて発行されたいわゆる歳入補てん公債、これにつきましては議決金額のうち四十年度の歳出予算の繰越額の財源として必要な金額の範囲で四十一年度に起債を繰り越して行うことができるという規定がございました。したがって公共事業費、出資金、貸付金、いわゆる公債対象経費でございますから、それの年度内執行を翌年度に送った分だけ起債権限も送った、そういう形で公債の過剰発行ということは避けることができたわけでございます。  ところが今回の公債の対象といたしております経費は、そういう意味の四条公債対象経費ではございません。したがってそういうものについて大きな繰り越しということがあるというふうに従来の例では考えられないわけであります。したがって特例公債を過剰発行しましてその利子負担を将来にわたって負うということがないためには、やはりそれと同じような趣旨の制度として今回お願いいたしております法律の第二条ということが必要であるわけでございます。
  137. 広沢直樹

    ○広沢委員 言わんとしていることはわかるのですがね。四十年のときもいわゆる特例でやるのかあるいは四条国債というその範囲に縮めるかという議論があったように聞いているわけですよ。そのときも、これは普通だったならば財政法の範囲内でやるべきじゃないか、それをわざわざ特例にしたのは何だということで、当時厳しい議論がありましたよ。そのときは、それは税収不足なんだ、それを補うためにはやはり節度を設けなければらなぬから特例として財政特例法を出して、今回限りでこれを処理するのだ、以後財政が要求しているならば、四条国債のあり方については自後きちっと方針を立ててやる、こういうことだったのですから、いまの言い方、いまから考えてみれば、確かにいまの四条国債の範囲にあったのかもしれません。しかしその出したときは、これは赤字国債だということになっているわけですね。そういう感覚でとらえて、そしてこれを厳しく償還もはっきりしましょうというような形でやってきたわけでしょう、額が小さかったかもしれませんけれども。ですからそれをそういうふうにすりかえてしまうと、いま言うようにおかしくなってくるんじゃないかと思うのですよ。このことについてはやはり財政の単年度主義、こういうことについてもう一遍検討してみる必要があるのではないか。やはりこういうふうにして財政法で決められた財政民主主義に基づいてこういう形がとられている、それをだんだん財政当局の都合によって、やりよいようにやりよいように、改正しているんじゃなくて、形骸化して運用しているような、先ほどの四条国債の問題についてもそうなんです、後からまだ問題がありますからそれに触れますけれどもね。そういうふうにしか私にはどうもとれない。  ついでにそれではもう一つ。そういうふうに形骸化しているのではないだろうかという面について、今度は財政法の第五条、日銀引き受けの問題について関連していまの問題出ておりますのでお伺いしておきたいと思うのですけれども、現在発行している第四条国債は十年ですね。七年が今度十年になっています。十年一括償還である。そしてその償還に当たっては借りかえでやっていく、こういうことなんですが、実際の法律上の運用は借りかえのためとはいえども新たに発行している、こういうことになっていますね。こういうふうに説明をされているわけです。確かに十年一括償還という形をとっているけれども、借りかえのために発行するものは新しい国債である、新しい発行である、こういうふうな御説明なんですね。そうすると、これは第五条で日銀の直接引き受けを禁止しておりますけれども、この問題との関係というのはやはり疑義が出てくるわけですね。これは以前にも大変問題になったようでありますけれども、この際これまたはっきりしておかなければならない、こう思うわけですが、この点いかがですか。
  138. 高橋元

    高橋(元)政府委員 財政法の第五条では、仰せのとおり、日本銀行からの借入金の制限をいたしておりますが、そこに「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」ということがございます。日本銀行の直接引き受けを制限しております趣旨は、申すまでもなく、財政資金というパイプを通じて信用を過剰に創出するとこれがインフレーションのもとになるということを避けることにあるわけでございますから、したがいまして借りかえの場合にはすでに金融機関にありますところの公債を、同じ金額を置きかえるわけですから、したがって新たな信用のもとになることがない、それで四十七年度以降毎年度予算総則でこの御議決をいただいて借りかえ発行をいたしておるということでございます。
  139. 広沢直樹

    ○広沢委員 借りかえ発行をしてはいかぬと私は言っているのじゃないのですよ。一応財政法精神に基づいて考えていくならば、やはり法律のたてまえ上おとりになっている処置というものは一貫性がなければいかぬということを私は申し上げたいのです。  というのは、確かに財政法の第五条にはただし書きにそういうふうに書いてあるのです。おっしゃったように、特別な理由がある場合においては国会の議決を得れば日銀引き受けもよろしいと書いてあるのですね。ところが、その本文は日銀引き受けをしてはならないということが本文なんです。これがたてまえなんですね。借りかえなければならないということは全部特別な理由なのかということです。これはいろいろな解釈の仕方があるかもしれませんけれども、たとえばどうしてもいま国債を大幅に発行しなければならないという段階で、いまの消化方法ではなかなかうまくいかないとか、あるいはいまのような割り当て的といいますか押しつけ的といいますか、そういうようなやり方ではなくて、個人消化というものが浸透していった場合において、急にそういうことになった場合なかなかいかないというようなときにひとつ十分討議をして、そしてその場合は何とかするとかいう、何か特定な、そのときにおける突発的なといいますか、予測もしない理由が出てきて財政運営上非常にやりにくいという問題が出た場合には、何か特別な理由という理由もつくのでしようけれども、ところがいまのように初めからちゃんとわかっている。六十年債を発行したって魅力がないから、いまの日本金融情勢にはマッチしませんからそういうことはできないと思いますけれども、しかしながら結局それをあえて十年ということにした。また最近においてはもっと短いのを出せというのもあるわけですね。そうなると、結局これを無理なく償還していこうと思うと、後ほど申し上げる償還計画の問題との関連もありますけれども やはり借りかえという処置を講ぜざるを得ない。  しかし、それは国債整理基金特別会計法の中では借りかえしてよろしいということになっておりますから、決してそれをやってはいかぬと私は言いません。ちゃんと返すめどが立ってそれをやっていくというのだったら、それは運用上の問題ですから否定はしませんけれども、しかしいま申し上げているように、法律で決められたとおり新しい発行についてはやはりいまとっている手続をとっていくべきであって、何も日銀引き受けに、これは特別な理由なんだからということで毎年毎年借りかえ債というものはそれでよろしいんだというふうに解釈していくなら、やはりこれはまた拡大解釈じゃないか。ですから、ただし書きがただし書きじゃなくなって、本文をのけておいてというか、そういう言い方をするとおかしいかもしれませんけれども、それがもう本文のようなかっこうになってしまっているということでありましょう。そうすると、新しい発行には違いないけれども、いまお答えになったような、信用創造を起こしているわけじゃないんだ、こうおっしゃるかもしれませんが、しかしそれは次の発行をしやすい条件をつくっていることだけは事実なんですよ。いまは確かにそれを借りかえただけではここに全然国債はふえていない、ただそれが繰り越されただけですね、これはわかるのです。それが可能である、それを日銀が新しい国債をぽんと引き受けるから、次の年度には今度はまた財政との見合いでそれにプラスして出すことができる、こういうことになりますね。ですから、それは考えようによっては、白銀引き受けを間接的にやれるようにしてあることが、国債をどんどんどんどん発行しても、多く多く発行できていくという条件をつくっていることにほかならないことになりませんか。
  140. 高橋元

    高橋(元)政府委員 繰り返して申し上げますが、その五条のただし書きによりまして、予算総則でお許しを得て日銀引き受けの形で発行いたしております借りかえ債は、日銀保有の既発国債の借りかえ分でございます。したがって、日銀がすでにその国債を消化して持っておるという形がそのまま続くわけでございますから、新たな信用創造の原因とならない。したがって、ここで言う「特別の事由」、すなわち本則で信用インフレーションというものを、財政インフレというものの防止をねらいとしております本条の趣旨に反しない、その意味で御議決をいただく「特別の事由」に該当するという解釈をとっております。
  141. 広沢直樹

    ○広沢委員 その意味はわからぬでもないのですが、やはりこの財政法第五条の精神というのは日銀引き受けを禁止している。したがって、その日銀引き受けをしなければ借りかえできないという問題じゃないわけです。やり方によっては、新しい国債発行でありますから、市中消化をするとか、いまの市中消化の方法、それがいいか悪いかは別問題として、そういうふうにしていく、それで借りかえていきますということはやはり歯どめになるんじゃないでしょうか。日銀がいま保有しているものを、これをかえるだけだということですから、新しい信用創造を起こしているということにはならぬということはわかるのですよ、それだけの次元をとらえたら。しかし、それが簡単にできるということ、簡単に引き受けてもらえるということが次の発行を可能にしていく原因になっているわけですね。そしてその次の発行、次の発行というと、土台はだんだん大きくなっていくんですよ。自動調節がきかないわけですね。市中消化をしていくというこの原則というのは、そういうふうに簡単に拡大はできないようにという歯どめだろうと私は思うのです。  そうじゃなかったらいまのやり方自体も私は問題があると思いますよ。日銀直接引き受けか、あるいは金融機関が直接いまのような市中消化という形でほとんど大半を引き受けているわけですからね。これだって、実際にそのとおりの金融市場に余剰があって、それをがっちり持っているぐらいだったら同じことじゃありませんか。それがなくて、そのままいま現実やっているように、どんどん日銀に一年たったらほとんどが買いオペで吸い上げられるという形をとれば、これは同じことですよ。これは後の市中消化の問題になりますけれどもね。だから、それはやはりいまのように借りかえはいいんだという形ですりかえているんじゃないかというふうに私は考えざるを得ないわけですね。  ですから、私は借りかえをやってはいけないと言うわけではない。ですからそれは、新しく発行するんだったら、借りかえのためにその分はもっと市中消化すればいいじゃないですか。それはいま、そういうことをやっていくとすればできないという仕組みになるでしょう。なぜできないか。日銀が直接引き受けて、その分についてはやってもらわなければできないということは、いまの国債発行しにくいということを一つ意味しているんじゃないかと私は思う。もちろん、この条項、四条、五条はとにかくここに国債が安易にどんどん発行されて過去に起こってきたような悪性インフレを起こしちゃいけない、安易な発行はいけないというために設けられたいわゆる歯どめですよ。ですから、そういう意味から考えていくと、これはもう一考すべきではないかと思うのですよ、いかがですか。
  142. 松川道哉

    ○松川政府委員 法律論の最中にちょっと事実関係を御説明させていただいた方が御理解を得やすいんじゃないかと思いますので、補足させていただきます。  おっしゃるように、一回発行されました公債が期限が参りましたときにどうするかという問題、各国ともございます。その借りかえということもいろいろの国で行われております。そのやり方として、一つは中央銀行が引き受けるという場合もあろうかと思います。また、別の極端は、ただいま先生が御指摘のように借りかえ分もあわせて一般の公募に付するというやり方も一つあろうかと思います。ただ、その中間にもう一つございますのは、借りかえをいたします時点において、前からある公債を持っております人に、それをもう一度新しいのに借りかえてくださいというお願いをして、その持っておる方が新しい公債をまた買っていただくというやり方があるわけでございます。現在、わが国で行われておりますのは、ただいま申し上げました第三のケースでございます。  ただ、事実関係として、先生が御指摘のように、非常にさかのぼりました古い時点公債につきましては、あるいはオペレーションを通じたりして日銀に多く集まるとか、またその他日本式の現象も見られております。しかしながらそれは借りかえのときに日銀に引き受けさせるという趣旨ではございませんで、たまたま日銀が持っている分については日銀に新しいものを引き受けてもらう。そしてこれは新しい信用創造にはならないので、特別な事由があるだろうということで、特別会計の予算総則をもってその金額をお示しし、その借りかえについて御了承を得ておる次第でございます。
  143. 広沢直樹

    ○広沢委員 新しい信用創造が起こるか起こらないかということについては言っている意味はよくわかります。私、そのとおりだと思いますね。しかしいわゆるたてまえと実際というのが違うという法律の問題から考えてみますと、ですから、新規発行については、これは市中消化という原則を守っていかなければならない。しかし、あなた方がやっていらっしゃるのは、それじゃいま四条国債というのは一体いつ償還されるのですかと聞けば、これは六十年先ですよとは言わないでしょう。額面にちゃんと十年と書いてあるんですから、十年一括償還します、こうおっしゃるわけでしょう。じゃ一括償還していくということになれば、その財源はということになれば、確かに財源はいまあなたが一つの例を引かれたように、いままで買ってもらった人にいま返す期限が来ました。ですからそれを、もう一遍新しいのを出すからひとつこれとかえてください。同じことです。確かに信用創造は起こりません。そのとおりです。それを、はい、そうですかと引き受けてくれればこれはよろしいよ。ところが、引き受けてくれるかくれぬかという問題になりますと、これが実際にスムーズにといいますか、簡単にこれへいくならばそれは別に問題はないと思うのですが、そう簡単な引き受けができないようにというのが、日銀と財政当局の間にこの第五条という法律をつくってきたたてまえがあると私は思うのですよ。  それじゃ、背の法律のように直接日銀が国債を引き受ける、引き受けたらすなわちインフレになるかというと、そうなりゃしませんよ。そうでしょう。前の文献を見ますと、昭和七年に高橋大蔵大臣が、私が歯どめだなんてこうおっしゃったそうなんですが、運用のいかんによってなる場合もある、ならない場合もある、あるいはまたいまの形の市中消化の方法をとっても、やり方によってはこれはインフレにつながっていく結果になるし、きちっと節度を守っていけばならない場合もありますね。  ですからやはりこれは法律上のたてまえから考えていきますと、新規発行だとおっしゃるならば、当然いまの日銀引き受けという形でいくのではなくて、やはり新しい発行——新しい発行というのは、この財政法精神の上から考えていって、直接、日銀を一個人にたとえないで、これは市中消化を図っていくという形をとられるのが、いわゆるこの第五条に言う歯どめになっていく。わざわざこういう法律をここへつくる必要はないじゃありませんか、そういう運用よろしきを得ていくならばならないとおっしゃるならばですよ。
  144. 松川道哉

    ○松川政府委員 私どもが現実にやっておりますやり方を御説明いたしたのでございますが、十年参りました期間に必ずしも全額が日銀の手に入っておるのではございません。一部の金融機関等におきましては、まだ十年経過したものを自分で持っております。その借りかえに当たりましては、その満期が参りますたびにシンジケート団と話し合いをいたしまして、そしてシンジケート団の御了承を得て実施しておる次第でございます。  ただそのときに、ただいまの先生のお話、私の聞き違いかもしれませんが、そのときに全額日銀が引き受けるということはやっておりませんで、その時点において日銀が持っておりますものを日銀として借りかえてもらうことはある。しかし、それはあくまでもその時点における公債の所有者の一人としてやってもらうのでございまして、日銀の引き受けということになりますと、期限が来たものを全部日銀が引き受けるというふうに聞こえるのでございますが、そういうことは実施しておらないということを御了承いただきたいと思います。
  145. 広沢直樹

    ○広沢委員 それじゃもう一つ具体的に聞いておきましょう。というのは、一応借りかえが始まったのは四十八年からでございますね。四十八年に借りかえておりますけれども、この金額は幾らでございますか。
  146. 松川道哉

    ○松川政府委員 四十八年度に償還されました国債が、額面で六千七百五十億円ございますが、そのうち六千六十八億円が借りかえ発行されております。
  147. 広沢直樹

    ○広沢委員 この六千六十八億のうち、日銀による借りかえは幾らですか。
  148. 松川道哉

    ○松川政府委員 至急手元の資料を調べますので、御了承いただきたいと思います。——ただいまの六千六十八億円でございますが、これによって調達された資金は五千九百五十八億円、そのうち日本銀行保有分を借りかえた金額が五千三百七十四億円でございます。差額の五百八十四億円は、市中の金融機関が保有いたしておりまして借りかえられたものでございます。
  149. 広沢直樹

    ○広沢委員 いま御説明ありましたように、大半を日銀が保有している。それはそうでしょう。買いオペをしてなにしておるから、ほとんど保有をしておっただろうと思うのです。いずれにしましても、この財政法第五条の精神というものはやはり歯どめを厳しくやっていかなければいけないという精神のもとに設けられたものであろう、こういうふうに理解をしてやってきたわけでありますけれども、いま言う手続上というか、法律上の問題と運用上の問題で理屈をつければそういう理屈も成り立つのかもしれませんけれども、ここはやはり本則にのっとった厳しい運用をやっていくべきではないか、こういうふうに考えます。  そこで、その次に国債償還の問題についてお伺いしてまいりたいと思いますが、まず、財政法第四条二項及び特例法第三条、これで償還計画の国会提出の義務を定めているわけでありますけれども、これが先般来一番議論の焦点になっております。私も意見を交えながらひとつお伺いしてまいりたい。  そこでまず、この国会提出の義務を定めているわけですが、その目的について、大臣、これは償還計画という国会提出の義務をなぜわざわざ財政法にも、また特例法を出す場合にも課してあるのか、これについてひとつ所見を承りたい。
  150. 高橋元

    高橋(元)政府委員 財政法四条二項及び今回の御審議をお願いしております法律の第三条による償還計画提出の趣旨は、年度別の償還予定額、つまり満期時の償還予定額というものを示すものでございまして、年賦償還か満期償還か、償還の期限がいつになるかということを明らかにするという趣旨のものでございます。
  151. 広沢直樹

    ○広沢委員 やはり私は、この法で決められる償還計画というものは、これはまたいろいろ議論が分かれるのじゃないかと思うのですけれども、借金する以上はどういうふうにして返していくんだ、こういうことをある程度はっきりと国民に示す、いわゆる国会に示すということが法律上義務づけられていることではないかと思うのです。  ところが、いまのように、発行時においてこれは十年国債ですというような、それでこの分は十年目にこうやって返しますというようなその形だけ、いわゆる財政法二十八条ですか、あれに年次表と出ておりますけれども、そういうことだけを義務づけられているものではない。ところが、そういうふうに解釈していままでやってきたところに、やはり国債発行時におけるいろいろな議論というものがここに出てくるわけですね。  というのは、四十年に赤字国債を出し、四十一年から第四条国債に踏み切るときに、これは財政審においても論議をされておりますし、さらに国会等でも議論がなされた中におきましても、結果的には、御存じのようにちゃんとそれに対するやり方といいますか、償還のやり方、これをはっきりと打ち出してきているわけです。したがって、国債整理基金特別会計法を改正をしてやはりその制度というものを設けていますね。いずれにしても、予算書に仮に出てこないとしても、そういうふうな形で償還に対するあり方というのはこうだというふうに理解できるような形をとってきているのです。  ただ、国債発行するについて、それは十年国債ですよ、それを集計したものがこういうふうになりますという表につくって出してきただけでは、これは償還計画とは言えない、それは単なる一覧表としか言いようがない。これじゃどんどん、いま大量国債といいますか、そういうときがきて、どういうふうにして一体——先ほども大蔵大臣に私はお伺いしましたけれども一つの歯どめをこしらえ、健全な財政運用をしていく、そういう見地から考えていくならば、やはり返す方法についても一応納得のいく形を示すということが、償還計画を国会に提出する義務になってくると私は思うのですよ。その点がやはり当局とまだ少し私は意見が食い違ってしまうわけですね。  それは確かに大蔵大臣は説明しておられますね。建設国債赤字国債の償還計画の違いというのは、まず借りかえしないということ、それから十年以内に必ず返す、こうおっしゃっている。それを原則にして、それじゃどういうふうにして返すのだという議論の中で、あなたはこういうようにおっしゃっているのです。三つある。それは、国債整理基金特別会計に前年度首の国債総額の百分の一・六を繰り入れる、いわゆる定率繰り入れの分。それから今度は、剰余金の全額を入れます、それから必要に応じて予算繰り入れをします、それは財政法に書いてあるとおりを言っていらっしゃるわけですよ、あるいは国債整理基金特別会計法に規定されていることをそのとおりあなたはおっしゃっているだけなんですね。それはわかっているのですよ。  さらに、この問題について、過般の当委員会で、これでは納得できないということに対して補足説明をなさいました。それによりますと、歳入面では、社会保険料や、そういったいろいろな負担の問題の適正化を図らなければならぬとか、あるいは租税負担の見直し、あるいは新規財源の検討だとか、また歳出面では、経費の合理化、具体的には一般経費の前年度予算同額主義でいきたいとか、さらに新規政策原則として認めない方針でいくのだ、万一認めたとしてもスクラップ・アンド・ビルドでいくのだ、こういう形で運用をしていきたいのだと、これは補足説明をなさったのです。私もそれはよく聞きましたけれども、いろいろな説明があったけれども、結論は何を言わんとしたかというと、非常に不確定的要素が多いから中期経済計画あるいは財政計画の見通しが立たない、だから、これを十年間で返すといって数字を挙げて具体的にこうこうでということはちょっと無理だからという御答弁だったですね。  私も、それは確かに数字を挙げて具体的に、いつ、こうやって返すということを——まあ、やれる方法もあろうと思うのです。しかし、ともかくも、先ほど申し上げた財政法なり、あるいは基金特別会計法なりに規定された方法で返すと言っているだけであって、それが本当に具体的にどういうふうな形で返されるんだなあということがよくわからない。  そこで、四十年のとき、あるいは四十一年の先ほど申し上げた国債政策を取り入れられる中で議論になって、いま国債整理基金特別会計法第二条第二項においていわゆる百分の一・六を定率繰り入れでやっていくのだ、それを内容は何だといいますと、これは対象資産の償却考えていくと約六十年なんだ、ですから、それでいくと大体六十年ちょっと切れるかもしれませんけれども、それに剰余金だとか予算繰り入れを一部やっていけばこれで全部できます。あるいは剰余金、予算繰り入れじゃなくても運用益というものがあって、それでもできるのかもしれない。ですから、確かにこの十年の借りかえ、借りかえでやっていって、六十年目には大体返すめどというものは立っている。減債制度というものはここで確立できた。それが第四条国債をこれから財政の中に入れて運用していく一つの柱になってきたことはよくわかる。ですから、そのときにどれだけの金額が数字的に繰り入れられるのか、それはわかりません。そもそもそこに前年度首の国債の総額がどれだけになっているかということを見きわめなければ、数字が幾らだということはそれはわかりませんよ。しかし、そこに制度をつくったことによって、やはりこの償還というものは特別のことがない限りはそのとおりいくんだなと理解ができるのですね。建設国債のように、ちゃんと対象の資産の見合いがあって、その上に立って、減債制度をきちっとそのときの改正で入れて、これは財政審の答申なんかでもはっきりしているのですから、それで結局、いまの国債政策というものが財政の中で運用されているわけですね。  ところが、赤字国債については、先ほど申し上げたように剰余金の繰り入れだとか、それも赤字が出ているときは剰余金がないというのは、これもあたりまえだと、先ほどから一生懸命そういうやり方をおやりになろうとしてやっていらっしゃるのですから、剰余金なんか出てくるわけがない。さらに、必要に応じて予算を繰り入れると言ったって、将来のことですからそれはわからないわけでしょう。それこそわからないですよ。予算を繰り入れようとしたときが、もしも今日のような不況だったらどうします。やはりいまの議論から言うならば、それは不況で景気対策上考えるなら増税はできませんよ、いや予算規模は縮めるわけにはいきませんよ、やはり借金ですよということになり、それは状況によって変わるということでしょう。確かにこれは予測はむずかしい。じゃあ一体どうやって返すのかということになりましょう、これはどういうふうにお考えですか。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 この前松浦先生とのやりとりでお聞き取りいただいたと思いますけれども、私は広沢さんとちょっと所見を異にしますのでお聞き取りいただきたいのですが、国が借金をする、あるいは会社が借金をする、銀行が借金をする、金融債とか社債とか国債とかいう形であるわけでございますが、これはやはりその会社、その銀行、その国の信用で借りるわけでございます。借りる場合に銀行や会社は、それではその金融債なり社債なりを償還する場合に、毎年毎年こういう営業計画で、こういう営業収益の状況でこれだけ償還財源を積んでおきますから、どうぞ買ってくださいなんということはやっていないのです。   〔委員長退席、村山(達)委員長代理着席〕 つまり、その会社は、東京電力なら東京電力という会社の信用で市場は電力債を購入いたしておるわけでございます。ところが、銀行の場合もそうだと思いますが、国の場合はもっと強大な信用を持っておるわけなんでございまして、したがって日本の国が公債を出す場合におきまして、これが償還するまで毎年度の財政計画を全部出さなければ、おまえの公債は買ってやらぬなんて言う人はだれもいないのです。これは今日までそういうことを言ってきた人もいないし、私は今後もいないだろうと思うのです。  問題は、われわれと大蔵委員の先生方との間のやりとりは財政論議としてやっておると思うのです。つまり、公債はこんなによけい出すけれども、国の財政は大丈夫か、インフレを起こす心配がないかというような観点からで、公債の技術論ではないと思うのです。償還計画表がどうであるかというような問題ではなくて、財政計画としてこんなにたくさん公債を出した場合においても大丈夫かという、そういう財政論議がここではしなくも展開されておるわけでございまして、公債発行の技術論では私はないように思うのでございますが、どうも公債償還計画表というのが六十年度に一括して返すということしか書きようがないんです。それ以外に書きようがあるかどいうとないんです、分割発行しないんですから。十年債を発行して六十年のとき、六十年に返しますということが、きわめて明快な償還計画なんでございます。  そこで、しかし償還財源は財政としてどういうふうに考えるかということについての御質疑だと思いますが、償還財源は三つの方法考えられますということを言っているわけでございます。それが数字で年次別に償還財源の積み立てがちゃんと積まれなければ公債発行してはならない、それは欠格条件ができるんだというようにぼくは考えないわけなんでございまして、それから私は財政論に入ってしまっておるということをこの間松浦さんに申し上げたわけですが、きょうまたあなたと改めて財政論だったら大いにその点やらなければいかぬと思うのですけれども公債発行技術論として私はこれ以上大蔵省といたしましてもお答えのしようがないんじゃないか、そう思います。
  153. 広沢直樹

    ○広沢委員 そういうふうにすりかえてもらっちゃ困るのでして、これ財政審の四十一年十二月二十六日の答申の内容の一部なんです。それによりましても、この審議会はこの減債制度を出してきたということについては、いま国はあなたがおっしゃるように絶対の信用があるんだからというんじゃなくて、国民の信頼にこたえる、国債政策の将来に不安の念を抱いている国民にこたえる道である。ですから、これは確かにこれからやろうとする国債政策に合った減債制度というものをここに取り入れるんだということが、あのときに改正になったんですよ。あるんですよ。ですからそれ以後確かに国債はずっと発行されてきました。したけれども、結局いま言うように六十年、六十年の定率繰り入れ——一般財源、いろいろな財源から繰り入れてまいりますね、それを繰り入れてくることによって保っていく。それがいまの借りかえ、借りかえでやっていくと、六回借りかえすれば一応これがペイできるんだという制度があるわけです。  確かにこのときも、償還計画というものはどういうことなのかという議論も中にあっておるんですよ。そしてこの法律を出されたときにも大臣はそのことについてはっきりと、やはり国民の信頼にこたえるためにこういうふうにちゃんと制度も整備しました、こういう言い方をとっているわけですね。そして提案理由の説明の中にも、この国債整理基金特別会計法の第二条第二項の改正による定率繰り入れの根拠というものを明確にしているんです。ちゃんと提案理由で説明しております。  ですから、私はいま申し上げたように、確かに、国を信用しないというわけじゃないですよ、国を信用しなければどうしようもない。ですけれども財政には節度というものがありますから、そういう関係では、やはり借金していったものが財政論の中でどれだけの影響があるか、それは確かに一つあります。あるけれども、また先ほど申し上げたように、依存率もやはりガイドラインを設けていこう、発行については歯どめをかけて一応節度ある運用をやろう、それに対するもう一つ考え方というものは、やはりこういうふうにして制度があるから返せますよ、返していくんですよというふうな、納得のいくこういう体制があれば、ああそうですかと、だれも、それでいいでしょう、後の返し方はこの中から、借りかえの場合はいろんなやり方をなさるでしょうけれども、それはそちらの運用でおやりになるだろうということはわかります。それを一々剰余金はこれだけなきゃいかぬとか繰り入れば毎年こうしなきゃならぬとか、そんなことを言っているわけじゃないすからね。  だからそういうふうに赤字国債財政法にないことを特例法でおやりになろうとしている。ならば、当然その信頼にこたえようとしたら、片一方には公債政策の上には減債制度というものもちゃんとあり、それに対する具体的な対策というものも行われているわけですから、やはりこの特例国債の場合においては、入ってくる場合はこういうわけで特例法律をつくってどんどん入ってくるようにしましょう、赤字を埋め合わせるような国債発行ができるようにしましょう、こういうことを言っておって、今度返すことになったらいままでのようにこっちへ任せてください、それは信用が第一ですよ、どんんど返しますよというんじゃなくて、入るならば出るときもこういうふうな制度を新たに設けて、この場合にはこういうふうにやっていきますという制度というものをやはりつくっていくことが国民の信頼にこたえることじゃないのですか。私はそう思うのですが、大臣いかがですか。
  154. 大平正芳

    大平国務大臣 それは国は無限の信用を持っておるわけでございますから、そういうことがなくても最高の信用をいただけると私は思います。  しかしながら、国の姿勢といたしまして、異例な公債発行するにつきましても、それだけの心構えが財政運営上なければならぬということでございますので、まさにあなたがおっしゃるとおりの心構えで三つの原則を、償還につきましての心構えを明確にいたしたわけでございます。途中で借りかえを行わない、六十年には一括して全部払いますよということは、これは大変なお約束なんでございまして、これを狂わしたりすると日本政府の信用上重大なことになるわけでございますので、これは財政運営上それだけの覚悟を持ってこれから六十年までの財政運営をやってまいらなければいけないということを国会でお約束いたしておるわけなんでございますので、欲を言えば、いま年次別に整理基金特別会計に赤字公債から脱却した以後これこれの繰り入れを行いますということをお約束申し上げるのが非常に親切だと思いますけれども、それは余り不確定要素が多いので、そういうことはいま自信を持ってやり得ないと私は思います。しかし、六十年度に一括払うということと、その間借りかえをやらないのでございますということでございますので、予算繰り入れと書いてございますけれども、これは赤字公債脱却後六十年までの間にその条項が本当に生かされて償還財源が十分に充足されるというようにしないといけないことをもう約束しておるのでございますから、その点は御信頼を賜りたいと思います。
  155. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、国を信頼してくれというのは、それは当然でしょうけれども、その当時当時の担当者のやり方によって財政というものがある程度危機になったりあるいはゆとりが出てきたり、いろんなことがあるわけですから、それは国を信用しない者はないのですけれども、やはり当局者のやり方いかんを制度においてここにきちっとした節度をつくっておくことが大事なわけですよ。  ですから、この「減債制度の意義と効果」という中にちゃんとはっきり書いてある。「わが国において減債制度を確立する意義は、新らしい公債政策を導入するに当たって、一般財源による公債償還の考え方を明らかにしそのための一般財源繰入れの仕組みを確立することにより、公債政策の運用に遺漏なきを期し、もって公債政策に対する国民の理解と信頼をうるところにある。」それから、それだけではなくて、あといろいろなメリットという、なぜ設けるかという効果も説いてありますが、「公債発行下の財政運営ということからみると、償還財源を毎年繰り入れる仕組みを法定すれば一般財源から一定の額が先取りされることになり、それだけ他の支出にあてうる財源が制約されることとなるので、財政運営もいきおい慎重にならざるをえず、財政の膨張ひいては公債残高の累増に対する間接的な歯どめとして働く面があることも見逃しえない。」等々、まだずっとその効用を書いてあるのです、「意義と効果」というものをですね。  ですからこういうことによって、いまのいわゆる第四条国債の十年国債発行というものに合わせて百分の一・六ということを設けましたと当時の提案理由の説明にちゃんと書いてあるわけですよ、おっしゃっているわけです。ですから結局、それはいまの財政法で言われる四条国債のことについては、これだけの節度と運営に対する当局の考え方は全部整理して言われているわけですね。ですから赤字国債というのは、予期しないからこんなになったんだ、こうおっしゃるのでしょう。予期しないことだったならば、後は信用して、われわれがちゃんと返すのだから、借りかえしないのだからちゃんと返すのだ、財政法に決められたとおりやっていくから任しておけ、それだけではまずいのではないか。だからあなたがおっしゃるように、幾らの金額を何年にどう入れるなんということを私は言っているのじゃないのですよ。やはり返すという制度、ここに減債制度があるならば、この見合いというものがいまの公共事業の資産に対しての見合いで百分の一・六という制度を設けたのだったら、特例法の中にやはり、これだけの国債を今度発行します、赤字国債発行する、これを承認してください、それは今度はいまの国債整理基金特別会計法による減債制度とは別個にこういう減債制度をつくって、そして率を繰り上げてやっていきます。それはいま言うように、十年ですから百分の十だ、そういうことじゃないかもしらぬ、それはいろいろの関係もありましょうから、それから予算繰り入れあるいは剰余金ですか、まあ剰余金はないと思いますけれども、そういう補完的なものがあるわけですからね。よろしいですか。そしてこの四条国債のときにも、いまの剰余金だとか繰り入れば補完的な——それで「補完し、」となっている、この減債制度。ちゃんとここに柱を立てていらっしゃる。よろしいですか。それをいままでずっと皆さん方の説明を聞いてまいりますと、いやこれは減債制度の特別会計法の中に設けたんだから、この中で全部返せばいい、確かにそういうようなあなた方の御説明なんですけれども、私はそれはどうもいただけない。  ということは、第四条国債はいわゆる財政法の中では一応は認められておりますけれども、この特別会計法の背景に赤字国債が出たときもこれで返すということを含んでいるわけはないわけですよ。財政法にないのですから、赤字国債というのはそれこそ、あなたがおっしゃるように特例中の特例なんだから、それにおいては減債制度もそれに合わせてこの特例法の中に盛り込んできて、赤字国債についての減債はこうしますという制度を確立するのは、これは私は当然だと思うのですよ。先の見通しが立つとか立たぬとかの、そんな問題じゃないと思うのです。どうでしょうかね。
  156. 大平正芳

    大平国務大臣 いまあなたがおっしゃるとおりやっているわけですよ。つまり、したがって四条公債について減債制度ができているわけでございますけれども、今度の特例債につきましてはそれをさらに強化いたしまして三つの原則を立てたわけでございまして、具体的な年次別の繰り入れ計画というようなものは、たびたびお断り申し上げておるように財政計画の裏づけがなくてできるはずはないわけでございますので、それはいたしかねますけれども、借りかえを行わない、剰余金全額を繰り入れるのだということ、そういうことは特例債であるがゆえに特に強化いたしまして、それを財政運営の基本にしてやりますというお約束をいたしておるわけでございまして、いまそれ以上のことを求められても、政府としては大変至難なことになろうと思います。
  157. 広沢直樹

    ○広沢委員 借りかえをしない、私はそれは当然だと思うのですよ。なぜかといいますと、四条国債の場合は、一応、対象資産というものを約六十年償却と見て、そして後代負担を認めていこうという形で借りかえをしていきますということの理由が立っている。この特例国債の場合はそんなものは何もないわけですよ。ですから、結局 それは減債制度を別に設けて、入ることの規定を特例で設けるならば、一応いまの建設国債の場合もちゃんと見合いがあるのですから、当然、今度は返す方もそれの見合いをきちっと制度としておつくりになる、金額の問題は別問題として、制度としておつくりになる。やはりそれだけの節度を持ってこの赤字国債特例というものに取り組もうというあなた方の考え方がないということ。このいまの考え方から見ても、国を信用しないとか信用するとかの問題ではなくて、財政当局の運用の仕方に私は疑義を持たざるを得ないのですよ。これはおわかりになりますね、うなずいていらっしゃいますから。ですから、ことしだけなんだということであるならば、当然いま出しておられる法律改正、修正してその中に入れるべきだし、それはいますぐにと言われてもできないということだったら、次の法律改正で新しくそれを加えてくるという形をおとりにならないと、これははっきりしないと思うのです。検討したらいかがですか。
  158. 大平正芳

    大平国務大臣 国債管理は政府の責任でやらせていただいているわけでございますし、政府が借りかえをやらないということを国会にお約束をいたしておるわけでございますので、御信頼をいただきたいと思います。   〔村山(達)委員長代理退席、委員長着席〕
  159. 広沢直樹

    ○広沢委員 どうも、信頼しろ信頼しろと言うばかりで、私は信頼していると申し上げているのです。信頼した上で、こういうものは制度として設けておくのが常道ではないか。そうしたら、なぜ四十年のときに、第四条国債を出されるときに、この制度改正してそれに対応する行政の処置をおとりになったのか。だったら、突発的に起こったこの特例公債についてもそれに対応する制度をお考えになるのは当然じゃありませんか。私はそう思うのです。全然考えない、ただ信用しろと言うのじゃなくて、当然これは考えておくべきだと思うのですよ。
  160. 大平正芳

    大平国務大臣 お言葉を返すようでございますけれども、四十年におきましても、お約束したとおり、借りかえを行わずに所定の期間内に完全に償還いたしたのでございます。政府はお約束したとおりいたしておるわけなのでございますので、せっかく御信頼をいただいておるわけでございますから、なおこの上とも御信頼をいただきたいと思います。
  161. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、そこまでおっしゃいますので、私はもう一つ申し上げておきたいのですよ。  というのは、赤字国債については当然何も裏づけがないわけですね。ところが、あなた方が信頼してくれ、返すからと言う根拠をいろいろ考えてみました。あなたはそれ以上お答えにならないですから、いろいろ考えてみたのです。  一つは、いま私が盛んに申し上げているように、減債制度というものを設けること。これも返す方法一つの手段なんですよ。もう一つは、いわゆる特定財源。何か特に目当てになる財源。いわゆる第四条国債だったら、公共事業という資産があります。何か特定の財源をここに考え出す。これも一つ方法でしょう。それからもう一つは、やはり税制を再検討して、現在の財政規模の年度の伸びを上回る税収を確保していく。歳出の増加を上回る税収がないと、それから落ち込む税収であれば、財源は出てこないわけですから、当然返せない。上回る税収で出てきた場合においては、それを予算から繰り入れて返すということ。いわゆる剰余金が出たら返せるということでしょう。そういうことになっている。  もう一つあります。それは、いまのように百分の一・六を毎年毎年繰り入れていきますね。ところが、いまだんだんその残高が大きくなってきています。この推移は、いろいろやかましく時間のことを言っておりますので、一つ一つ数字を申し上げるよりも理論で申し上げます。実は、それがどんどん大きくなってまいりますと、たとえば財政審に中期的な財政一つの試算として出されたものをもとにして考えていきましても、五十五年に六十兆の残高があると仮定すると、百分の一・六掛けると、単年度で、そこへ定率繰り入れで入ってくるのは約九千六百億、そのくらいの金額が入ってくることになる。  これは、先ほどあなたは減らされると言うから、私はそのために減らす方法を一生懸命に聞いているのですけれども、信用してくれと言うだけで、なかなかその減らすということについての具体的なことを申されない。だからいままでの過程から見ると、だんだん経済規模も大きくなれば財政需要も大きくなってきている。したがって、国債もそれを補完しているものですから、結局その残高がうんと大きくなってきているということで、恐らくそういう試算でいったらこうなるのじゃないか——私は、あの試算をずっと検討してみまして、よほど何か税制改革なりあるいは思い切ったことをおやりにならなければ、あの試算は当たらずとも遠からず、いまの経済状況からそうならざるを得ない。先ほど大倉主税局長からお話があったようにやがて来年三月ごろに中期経済見通しが出てくれば、恐らくあの見通しの立て方は同じ形になってくるだろう。それもいまの予測した、財政審で一つの問題になったあの線に近いものが出てくる以外に、こういう経済状況から見ますとないじゃないか。そうすると、このいまの試算というものは当たらずとも遠からずというかっこうになる。そういうことから考えていきますと約一兆円ぐらい、残高が大きくなると単年度で百分の一・六の繰り入れでもこんな大きな金額になってくるわけですよ。  ところが、皆さんの方でいま十年で借りかえ借りかえ六回やって、一応それが償還になるのだという説明を、建設国債、第四条国債についてなさってきた。ところが、それは、いまの法律の規定からいったら、そうおっしゃっておるだけであって、そのときの財政事情によってまた借りかえすることだって六十年先にできないことはない。だから、単年度で大きくなった分から言うと、極端な話、一方にそのときの建設国債の分をまた借りかえをして、これに充ててぽんと返せば返せないことはない、そういうことも成り立つのですね。そういうふうな運用の仕方というものをあなた方に一切任して、任しておけば何とかこれでやっていけるんだという形ではなくて、これはやはり明確にしていく必要があるんじゃないか。どの方法でどういうふうにおやりになるのかという、そういう考えによってもこういうやり方だってできないことはないだろうと私は想像はつくのですよ。  大蔵大臣、あなたは、返すから信用して任しておけと言うんだけれども、いま私が検討しても四つの方法しかないのです。ほかの方法がありますか。
  162. 大平正芳

    大平国務大臣 特例債の償還につきまして非常に御心配をいただいておりますことは、私も大変ありがたく存じております。それは、だからといって特例債につきまして、あなたが言われるように特別な減債制度を設けるということは、私はとらない方がいいんじゃないかと思っております。何となれば、特例債というは異例中の異例の措置でございますので、こういうことを繰り返したらいけないわけでございますので、毎々申し上げておりますように、五十年度はこういう目的でこれだけはお願いしたいということだけをとりあえずお願いいたしておるわけでございます。つまり、これを年度をまたがったものとして、今度、そういう財政体質を持つようにならぬようにするために、単年度限りの措置として問題を片づけようといたしておるわけでございます。したがって、それで発行いたしましたものは十年債でございますので、十年たちましたら借りかえなく全部現金償還いたしますということをいたしておるわけでございます。  そういうようにさしていただいた方が特例債にはふさわしいのじゃなかろうか、特例債というものについて別途それを発行する場合にはこういう償還計画、償還制度があるぞというような助け舟はあらかじめつくっておかない方がかえって特例債に対する対応策としては正しい態度じゃないかというふうに私は感じますけれども、その点あなたとちょっと意見が違うかもしれませんけれども。ただ償還は財政運営の基本といたしまして非常に厳しくやらなければならぬし、いささかも怠るところがあってはならないぞというあなたの御注意、その点は重々よく私も理解しておるところでございます。
  163. 広沢直樹

    ○広沢委員 大蔵大臣、もう一つこの問題について申し上げておきますけれども、それじゃ、任せてくれと言うのだけれども、いまの予算書を見ましても、確かに定率繰り入れだ、あるいは予算繰り入れだということは、予算書に何の会計から何に入ってきたということは載っていますよ。ところが、今度は返す償還のことはただ一行載っているだけです、出ていく方は。ですから、こういうふうに赤字国債をあなたが責任を持って返していくとおっしゃるならば、やはり予算書の中に勘定科目をはっきりして、これまでの国債特例国債勘定というものを設けて、これにちゃんとこれだけ入れてこれだけ返したということをはっきり予算、決算書に出てくるように、こういう仕組みにしたらいかがですか。そうすれば、あなたが任してくれと言っているのは、着実にこういっているなということはわかりますよ。ただ何か一方にほうり込んじゃって、ことしはこれだけ返しましたということだけではこれは説明になりませんね、こうなったら。返したあり方もわからない。借金はしたけれども返すのは任しておけ——どういう返し方をしましたかということは決算書なり、あるいは来年度予算ではこれだけ返そうと思うと、予算編成されるときに、当然その予算書の中にこの勘定科目を分けて、はっきりとこういう繰り入れをしてこういうふうに返しましたというこの結果報告ぐらいはできるでしょう。
  164. 大平正芳

    大平国務大臣 国債管理は政府の行政権にお任せいただきたいということを申し上げておりますし、その責任であるということも申し上げておるわけでございますけれども、しかしわれわれはそれを勝手にやろうとは一つ考えていないわけでございまして、この国会に提出いたしました予算案におきましても、償還表というものを出してありまして、六十年には全部現金償還することにいたしてありますが、そこの説明書きには借りかえをするなんて一つも書いてないわけでございます。これは書いてないことが重大なことなんでございますから、それをよくお読み取りをいただきたいと思うのです。つまり、国会に出しました予算書には、政府としてはそういう背水の陣をしいた予算書を出して御審議をいただいておるわけでございます。それから何年に幾ら返すというのでなく、六十年に全部返すということになっているのです、分割発行じゃないのですから。十年債を一括して発行するわけでございますから、六十年に全部償還する以外に道はないわけでございますので、そのとおりやる。しかも借りかえをせずにやるのでございますということを予算書にちゃんと書いて国会の御審議を求めておるわけなんでございます。
  165. 広沢直樹

    ○広沢委員 どうも言っている趣旨がよくおわかりにならないのか知りませんけれども、こういうことで繰り返しをやっているんじゃ、いつまでたったってけりがつかないのですよ。(「つかなくていいよ」と呼ぶ者あり)よろしいですか。問題は、いま言うように、あなたは借金はする、その借金に対して、これは国がやることだから、一般と違って信用なさい。それだったら、百歩譲ってそれを信用して、返すのは信用してくれということですから、それじゃ今度、どういうように返しましたかぐらいのことは国民に報告すべきではないかということに対しても、それもはっきりできませんか。
  166. 高橋元

    高橋(元)政府委員 今回の補正予算に、財政法二十八条書類とそれに普通国債の償還年次表というのを添付してお出ししております。その中には根拠法規に従いまして、五十年発行の四条公債と五十年発行特例公債と分けまして掲載をしておるわけでございます。したがいまして、今後の毎年お出しいたします二十八条書類の中の普通内国債の現在高、それの区分としては、六十年償還のものとして今回の特例公債が載るということでございます。  それから、償還を六十年になってやった場合どうするかということでございますけれども、これは国債整理基金特別会計の決算書に記載されるということになると思います。
  167. 広沢直樹

    ○広沢委員 だから、その財政法二十八条に基づく償還表というのはわかるんですよ。それはいま大臣が何回もお答えになっていらっしゃるように、五十年になにしたらちゃんと六十年のところに二兆二千九百億と載ってくるでしょうよ。これは借りかえがないから、そのままぽんと載ってくると思うのです。それはわかるんですよ。しかし、そのときまであの表をそのまま信用したとしたら、返さないということですか。実際のなには、大臣がおっしゃっているように、予算の余裕が出てくれば全額入れて、できるだけ早く返すんだ、脱却するんだ。だから、それは勘定科目をきちっと設けて、その勘定科目でどれだけ入って、どれだけ今度は返したと決算書に出てくる。あるいは予算書にことしはこれだけの赤字国債は減りましたというようなことは報告すべきじゃありませんか。
  168. 高橋元

    高橋(元)政府委員 内国債の現在高を毎年度二十八条調書をもって国会にお出しするわけでございますが、その中に、いま申し上げましたように、公債法に基づく五十年発行特例債の現在高というのを記載をいたします。それは、当然前年からの異動によって、もし満期前に償還される場合ならば減額されて掲載をされる。したがって、五十年度の公債発行特例に関する法律に基づいて発行された公債の現在高が毎年どのようになっていくかということは、二十八条の添付書類をもってごらんになれる、御報告をいたすということになります。
  169. 広沢直樹

    ○広沢委員 次に、市中消化の問題について二、三伺っておきたいと思います。  これは要約しますけれども、現在行われている市中消化の方法について、今後もこういう形で考えていくつもりなのか。私は、いまの形でいくならば、やはりこういうふうに年間五兆もあるいは六兆もという大量国債発行するということになりますと、ここにいろんな問題が出てくる。いわんや、究極はインフレの再燃になるというふうなことを考えざるを得ないわけです。したがって、こういう形をどういうふうに今後考えていこうとなさっていらっしゃるのか、簡単に説明してください。
  170. 松川道哉

    ○松川政府委員 原則的には、私どもただいまやっておりますような市中消化の方法をとってまいりたいと考えております。と申しますのは、市中消化ということは中央銀行の引き受けによらないで消化するということでございます。  しかしながら、各国の例を見ましても、そしてまたわが国を見ましても、それぞれの国の資本市場はそれぞれの特質がございます。先刻、当委員会でも御説明いたしましたが、日本の場合にはとりわけ二つの特色があろうかと思います。  一つは、市中消化の場合最も望ましい姿は、個人であるとかあるいは機関投資家であるとか、そういったところが引き受け消化するのが最も好ましいのでございます。しかしながら、わが国におきましては個人の金融資産の所有形態がまだ直接有価証券に向くという比率が少のうございまして、どちらかと言えば預貯金の形をとっております。その意味で、外国でございますれば、これは先進諸国の意味でございますが、外国の例で有価証券の形で金融資産を保有するということになじみのできております国でございますれば、もっと多くの部分を個人ないしはそういった機関投資家に消化することを期待することができるだろうと思います。しかし、その点で一つ差がございますので、個人の預貯金なり機関投資家のそういったものを預かっております金融機関を通じて消化するということが外国の場合よりも多いということは、一つ日本の場合やむを得ないのではないかと思います。  もう一つの特色は、これもその一つの形態ではございますが、国家の信用をバックとして個人の金融資産を預かっておりますものに日本の場合には御案内のとおり郵便貯金の制度がございます。これは、たとえばアメリカの例をとりますと、かつては郵便貯金という制度をやっておりましたが、その後これはいろいろな事情から廃止いたしております。したがいまして、アメリカの国民から見れば、国家の信用をバックにした金融資産というのは国債を買うしかない。そこで、アメリカの場合に貯蓄国債とかその他のものがわりあいさばけておるのでございますが、この総額を見ましても、わが国の国民が持っております郵便貯金の総額に及ばない状況でございます。わが国の場合には、したがいまして郵便貯金で預貯金形態のものを預かりながらさらに国債を買っていただくということになりますので、どうしてもその辺、外国の例と比較いたしますと個人に直接売れる分は少ないと思います。  ただ、これも先日当委員会で御説明いたしましたが、私ども最近特に十一月の個人消化の割合を見ますと、率が低くなってきております。これは、ただいま申し上げましたようなわが国の資本市場の実情があるといたしましても、われわれとしては少し下がり過ぎではなかろうかという懸念を持っております。その意味でいまの市中消化のやり方に何か検討することがありはしないかということで、現在内々検討を開始いたしております。それがどうなるか、いまのところ結論をにわかに予断することはできませんが、その意味で若干の修正は加えられることがあるかもしれませんが、市中消化のやり方の大筋は、現在のようなやり方をとっていくのが日本の場合最も穏やかなやり方であり、最も適当なやり方ではなかろうかと思っております。
  171. 広沢直樹

    ○広沢委員 確かにこれも一つ方法には違いありません。違いありませんけれども、やはり一番問題になっているのは、こういう間接的に日銀が引き受けているような、結果的にそうなっているわけでありますが、そして、その実際の市中消化の中で個人の消化というものが全体のわずか一割弱、こういうような段階に抑えられている。さらにこれは管理された価格になっているのではないか。ということは、御存じのように、銀行はそれを引き受けてもこれを窓口で売れない。それから証券会社の方においてもやはり買い支えをやるというような現状であるわけですね。したがって、そういうような状況であって、個人消化を図る証券会社においても、あるいはすべての金融機関においても、支払い準備資金としての形をとっている関係上それが一年たったら日銀に買いオペで吸い上げられることを期待していくような、結果的にそういうやり方になっている。これじゃいつまでたってもいわゆる割り当て式なやり方だと言われても仕方がない。シ団と協議してやっているとは言うものの、一応短期間にこれだけの国債がぽっと引き受けられるということは、やはりこれは協議の形はとっても割り当て的である。それも、いわゆる魅力ある国債であるかというと決してそうではない。非常に魅力がない。魅力があるものであれば金融機関も収益資産として持つであろうし、あるいはその他の機関投資家も持つであろうし、その他個人もそれは貯蓄にかえて持つであろうと思うのですが、それが具体的になされていない。  ですから私は、こういういまの言うなれば、言い過ぎかもしれませんが、当局にやりやすい形を温存するのじゃなくて、やはり市場の自主性に任せていくということによって、これはやはり財政法にいう節度ある公債の運営ができる歯どめになっていくのではないか、こういうことをこれは銘記した上で、いままで論議が重ねられてきたわけですが、公社債市場の育成と言いながら、十年一日のごとく同じようなことを御答弁になりながら、今日に至ってもやはり十年前と同じパターンの引き受け状況というか、国債の流れということになっていますね。ですから、これをどういうふうに具体的に今後おやりになろうとするのか。ここに具体的な案を出して積極的にやっていかなければ、これはできないのじゃありませんか。どうでしょう。
  172. 松川道哉

    ○松川政府委員 初めに、私が間接的という言葉を先ほどの御説明の中で使いましたが、この意味は、個人が直接買うのではなくて金融機関が買うという意味でございまして、中央銀行が間接的にという意味ではございませんので、その点ひとつ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  それからまた、銀行が持っております国債が一年たつとオペレーションの適格性は付与されるわけでございます。しかしながら、このことは必ずその全額が中央銀行すなわち日銀のオペとして買い上げられるということを意味するものではございません。ただ現在までのところ、オペの適格債として、たとえば政治保証債もその適格債になっておりますし、国債もなっておりますが、量的に国債が比較的少なかったこと、そしてまたオペをやる方の日銀の立場といたしましては一番信用度の高い国債の方を選択するということから、相当部分が日銀のオペの対象として結果的には日銀が保有する形になっていることは、私どももそのとおりだと思います。  その次に国債の売買についてでございますが、これは証券会社がある程度売買に関与いたしまして、特に国債の買い方に回ることが多うございます。その結果、あるいは証券会社が国債の値段の買い支えをやっているのではないかということをお感じの向きがあるやに聞いておりますが、それは私どもの承知いたしております限り、そのような事実はないと理解いたしております。すなわち、証券会社といたしましては、自分たちが国債を引き受けてこれを顧客に売っておるわけでございます。そこで、売りました商品である国債の値段が乱高下をするようなことがあれば、これは顧客に不測な損害を与えることがあるかもしれない。そういう意味で自分たちがした国債の引き受け行為のアフターケアをやっておるということでございまして、決して私どもがそういうことを指示いたしましたり、また証券会社がそのようなことを意識的にやっておるというようなことではございません。  それからまた銀行につきましても、この国債を売ってはいけないという指示をした事実は、私の承知しておる限りではございません。ただ、先ほども申し上げましたように、国債の保有量が少ない間は、いつの日かオペの適格性を与えられ、日銀に買ってもらえるのではないか、そういう意味で保有しておって、なかなか一般市場には出さない。と申しますのは、一般の債券市場はまだ狭うございまして、売りが出れば値段が下がる危険がございます。その意味で、銀行としてはそういった国債市場に出すよりは、持っておってオペの対象として日銀に買い上げてもらった方が得ではなかろうかという心理が働きまして持っておる例が多いのではないかと推察いたします。現実問題として銀行が若干売っておる例もございます。ただこれも、国債がたくさんになってまいりますと、どうしても銀行としても日銀のオペに期待できない額は、あるいは自分の資金繰りの関係から市場に出さなければいけないという事態がこれから起こってこようかと思います。その意味でも広沢先生の御指摘になりました国債に魅力を与える、また市場がだんだん大きくなっていくということは、私どもとしても心がけておるところでございます。  具体的にどうしたかという御質問になりますと、これは一つ発行条件につきましても、たびたびの改正を通じまして、なるべく実勢に近いものに現在持ってきております。その場合に比較されますのは、たとえば電力債などの社債でございますとか政府保証債でありますとか、そういったものとの乖離幅が問題になるわけでございます。半角前、一年前にはその乖離幅が非常に大きかったのでございますが、ことしの八月そして十一月の改定を通じまして、その乖離幅をできるだけ狭めてまいってきております。ただこれが流通市場そのものの実勢とどうかということになりますと、これは国債だけの問題ではございませんで、いろいろほかの債券にも同じような問題がございます。その意味では公社債市場をどうしてももっと育成していかなければいけないということを私どもも痛感いたしております。  最後にその具体策でございますが、たとえば国債の取り扱いの手法を変えたということが一つございます。これは、従来でございますと国債の売買につきまして取引所を通じてやらなければいけないという集中性義務が百万円から四百万円の間でございましたが、これを一千万円まで広げるということもいたしました。そしてまた、公社債を手放す人が急にたくさんあってはいけないということで、公社債の流通金融につきましても徐々にその枠をふやしてまいりたい、こういうことで、昨今せっかくその方向で一歩一歩着手いたしておるところでございます。
  173. 広沢直樹

    ○広沢委員 いまいろいろ御説明いただいたわけでありますけれども、やはり、国債管理政策というのは、それはとっていかなければいけませんが、その価格についても相当管理された価格であるということを私は申し上げました。  それは一つの例を言いますと、証券会社の場合においても、本来は市中消化、先ほど私が申し上げたようにそういうことが、個人消化あるいは機関投資家だとか、そういった者に魅力あるものにしていこうということが、これが国債だから機関がそれを引き受ければいいという形ではなくて、一般の市場の中で魅力ある国債として定着していかなければならぬ、これが本当のいまの歯どめにもなりましょうし、公債の運営のやはり基本だろうと思うのですね。  そこで、証券会社の場合においてそれをまずやっていかなければならない。証券会社の引受額は一〇%ぐらいしかない。それも協調買い的なものはあるけれども買い支えたことはないんじゃないかというお話なんですが、私は現実の問題としてそれが日銀買いオペの対象になっているということ自体が、対象になりそしてそれによって買いオペされているということ自体が、やはりそれはもう市中消化できない、個人消化ができない、あるいはそれが余り魅力がないために滞留しておる。それを市場の実勢に任したとしたならば、恐らくこれは大きく動くのではないか。ですから、ほかの事業債なんかの利率の動きとこの国債の動きとを比べてみて余り大きな動きがない、それはAA格の事業債についても信用度が高ければ高いほど余り上げ下げがないということはわかるのですよ。それにしても、ほかと比べてみてもそういうものがほぼ固定化されたような感じに置かれているということ自体がこれを裏書きしているものであろう、私はそう思うわけですよ。その点ひとつ具体的な資料をいただきたいわけですよ。  いま言うように、当局はそれはもう発行してしまったから、あとはそっちの側だということであれば、これは問題だと思うのです。実際に発行してそれが具体的にどういうようになっていったかということを的確につかんでおかなければならぬ。想像で物を言われたら困るわけです、具体的に審議しているわけでありますから。いかがですか。
  174. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 国債の値段というものは、いま取引所で大体、発行後六カ月以後の各銘柄を一斉に取引いたしておりまして、実際の値段というのは、その値段しかないわけでございます。したがいまして、それは御承知のように、まあある程度長い時間を見てみますと移動はございますけれども、短期間では余り動いておりません。これは、一つは個人消化が中心でございますから、どうしても取引が少ないわけでございます。したがいまして、投資家が売りに出ました場合に買いがつかないというようなときがございますと、途端に値段が下がってしまうというような状況がございますので、どうしても先ほど先生がおっしゃったような協調買い的なもので買っておるというのが現状でございます。したがいまして、その値動きが非常に少ないということでございますが、では実際の価格というのはどのくらいなんだということになりますと、これは、取引所で出ております価格に従って大体取引をいたしておりますので、実際のいわゆる実勢値というものは、私どもとしてはそれが取引所の価格がその実勢値だと考えておりますし、現にこの十月から大分その値動きがございます。これは市中のいろんな債券の状況等が変わってまいりましたために、債券市場全体に流通価格が上がってきている、国債の大量発行下に備えているいろいろな変化が見られている、そういう関係がございますけれども国債の値動きが少ないではないかということにつきましては、過去の点は私がいま申し上げたようなことでございます。  一つだけ申し上げておきますのは、魅力ある国債の金利とか条件というものはどういうものだということにつきましては、これは必ずしも利回りだけの問題ではございません。ある程度税法上の特典がございましたり、また金融担保に国債担保は有利に使えるというようなことがございますので、必ずしもその条件だけで比べてみるというわけにはまいりませんけれども、従来、国債に対しましてややもすればわりにそういう状況で過ごしてこれたということで、これから大量発行下においてはやはりそれではいかぬだろう、国債に対してももっと魅力あるものをつくっていかなければいかぬし、あるいは売買仕法あるいは取引のやり方についても研究をしていかなければいかぬということは考えております。そこで先ほど理財局長申し上げましたような売買仕法も変えたわけでございますが、それだけではなくて、やはり流通金融の面、いまは大体売り一方のいわゆるワンウエイになっておりますので、そういう点も将来考えていかなければいかぬと思いますが、これは大量発行下における私どもの宿題だと考えております。
  175. 広沢直樹

    ○広沢委員 最近の日銀調査月報によりましても、いまのあり方、市中消化のあり方というものをやはり問題にしております。最近のわが国資金循環の変化と、こういうのも出ておりますけれども、これによりましても今後国債発行がふえるあるいは残高が大きくなってくるということについては、やはり金融の実勢、市場の実勢にこれをゆだねていく方法をとっていかなければ、それが勢い、冒頭に申し上げましたように、通貨供給量をうんとふやしていくことになり、インフレに結びついていかざるを得ない。たとえば今日のように不況で需給ギャップが大きいというふうに見られておる段階においては、当座すぐにはそれはインフレに結びつかないかもわからない。それも確かに議論としては成り立つわけでありますけれども、そのときはそれでいいかもしれませんが、そういう形を温存していくということは、インフレ要因の火種をつくっておくということでありますから、やはりいまのような歯どめ処置が十分効くような体制というものをつくっていかなければならないんじゃないか。  それに対して、先ほどから公社債市場を育成していく、あるいは魅力ある国債をつくっていくということについて若干の説明があったわけでありますけれども、私はやはり皆さんが説明しているだけでは——具体的にいままで十年間そう言いつつ実際はできなかった。それで、やはり同じパターンが繰り返されている。  ですから、日銀のいまの月報の中においても、いままでの過去を振り返っての金融の流れから見ると、やはりこれは反省していかなければならない、もう少しいまの制度を変えなければいかぬということを指摘しているわけでして、これは財政当局にしては、いまの方式が非常に発行しやすい条件かもしれない。しかし、それの受けざらであるいまの金融あるいは個人、いわゆる市中消化の対象になっている形によっていびつな偏在した形が行われていくことになりはしないか。ですから、その点に対して今後具体的にこのようにしていきますという大蔵大臣の所見をひとつお伺いしておきたい。
  176. 大平正芳

    大平国務大臣 もともとわが国におきましては、国債市場が十分整備されていない状況でございました。これはそれなりの理由があったわけでございます。けれども、今回のように多額の国債を市場消化でお願いしなければならぬというようなことになりますと、こういうひ弱な国債市場の状態で放置しておくわけにはまいりませんので、この市場の整備、拡大、機能の充実という点につきましては、御指摘もございましたけれども、私ども財政政策金融政策一つの緩衝地点にある国債政策一つの柱といたしまして鋭意施策していかなければいかぬことだと考えております。  それから国債自体につきましての財政当局考え方、それから国債の持つ発行条件というようなものにつきましても、それ自体が一つの魅力のある商品として国民に愛好されるようになりますことを念頭に置きまして、漸次改善を加えていかなければならぬことと存じておるのでございまして、御指摘のような点は十分私ども体して今後の施策の推進に当たりたいと思います。
  177. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間も相当経過しましたので、結論を申し上げたいと思うわけでありますが、要するに、きょうは赤字国債特例法を提出された、具体的にそのあり方についての対策をただしたわけでありますけれども、いままでの議論の枠の中から一歩もお出にならない。赤字国債というのは、財政法に禁止されたのを特例でやろうとするわけでありますから、いまの財政事情からすると、大臣がしばしば答弁されておるように、恐らく来年もむずかしいのではないだろうか、そういうふうなことでお考えになっていらっしゃるようですけれども、しかしそうなった原因について、もう繰り返しませんけれども、私は、特例法で大量の赤字国債発行するならば、それに応じて市中消化の方法においても、いままでの第四条国債のあり方とはやはり区別していくべきだという考え方を持っておりますし、さらに償還計画についてはなおさらのこと、特に赤字国債の償還計画は、赤字だから信用してくれ、後は財政運用よろしきを得て私が返すのだというふうにあなた方は一生懸命おっしゃいましたけれども、やはりその制度の確立ができていない、こういうことであれば認めるわけにはいかないわけです。  そういうふうにして考えていきますと、百歩譲って考えたとしても、やはり今度はどういうふうにして返したかということを、予算、決算書の中に具体的に勘定科目を設けて、そしてどういうふうに財源が入っていき、あるいはどういうふうに返されたかということは、少なくとも特例公債について分けてきちっとすべきだということについても、旧来の減債制度があるのですから、その中でどんぶり勘定でやっていこうというみたいな——確かに先ほど指摘申し上げましたようにやり方によっては返せるかもわからない。しかしそういうふうな一切を信用してくれという形じゃなくて、やはり財政制度の節度をきちっとつくっていくための制度というものは特例法の中にも設けるべきであるということを私は強く申し上げておきたいと思うのです。  その他、あと問題が大変残っておりますけれども、わが党の同僚委員からの質問もありますので、そちらの方に譲って、一応質問は終わりにいたします。
  178. 上村千一郎

  179. 竹本孫一

    竹本委員 私は、質問の初めに国会の解散の問題について、政治家としての大平さん、大蔵大臣としての大平さんの御意見を簡単に承りたいのです。  と申しますのは、ストの最中に国会解散論が出て、まあともかくもストが終わりましてその空気は遠ざかった、こういうような記事が新聞には出ておる。しかし私は、あの混乱の最中に、やっつけるような意味で解散をぶち食らわすというような発想はいささか感情的であるというふうに思います。しかしストが一応収拾したいまだから、改めてこの問題を考えたい。  私は理由が三つもしくは四つあるのです。第一は、ストの問題についての本当の意味の決着を国民的規模においてつけるべきである。それから第二は、赤字公債を出した、あるいは出さざるを得なかったという経済政策の失敗について国民の批判を受けるべきである。第三は、福祉国家建設。高度成長は改めろ、あるいは改めようということでありますけれども、いわゆる政策転換の基本路線について国民と相談をする、国民と協議するというチャンスはないままである。第四は、特に大蔵大臣として、春になれば解散だという声もありますけれども、通常予算を通した後は解散だというような雰囲気の中で、果たしてまじめに真剣に通常予算が審議できるかどうかという点を心配するからであります。  一つずつ簡単に私の考え方を申し上げて結論だけ大臣に聞きたいのであります。  第一は、ストの問題であります。私の方の民社党は本日夕方の四時ごろに声明書を発表いたしまして、従来言っておるところをさらにその延長線で「スト権問題に関する公労法の改正および関係法規の整備などについては、これを国会の場に移し、それを審議する特別の委員会等を設け、早急に結論を出すべきである。」というのが結論でありますが、もちろんこの特別委員会には政府の提案を含め、各党も対案を出し合い、国会において処理するようにしなければならないということで、国対委員長は本日各党に、ひとつどこでどういうふうに論議すればよろしいのか、特に国会がこの問題についていままでのように黙っておるということはおかしい、そういう立場でひとつ審議をいかにすべきであるか、その場をどこに決めるべきであるかということを中心に国対委員長会談もやりたいという申し入れをいたしました。  今回のストは御承知のように国民の声あるいは国民の御迷惑ということをひとつ考えて最終的には終結をしたようでありますけれども、ストの中止も国民の立場を考えながら中止をする。これからスト権をどういうふうにするかという問題につきましても、今度のストについての評価もそれぞれ違うようでございますけれども、ある意味で言えば、みんな勝ったと思っておるし、みんな自今の意見が最高に正しいと思っておる。考え方としては、スト権は全然与えるべからず、危ないという考え方もあるでしょう。あるいは労働者である以上無条件にスト権は与えるべきである、闘い取るべきであるという考え方もあるでしょう。あるいは第三に、私ども民社党のように、スト権は与えるべきものであると思うけれども、やはり公共の福祉という立場に立って、一定の制約なり歯どめなり条件が必要であるという考え方もあるでしょう。しかし、それは政党それぞれみんな自分が正しいと思っておって、ゆうべNHKのテレビ等も聞いてみましても、国民の視聴者の声もそれぞれさまざまであります。そういう意味で、スト権は一部に言われるように、これは本当に重大な問題でありますし、国民の全体に関する大きな問題でございますので、おれの党が一番正しいんだなんて独喜的な結論を出さないで、国民とともにこのスト権の問題は考えるべきである。そして国民とともに結論を出すべきである。そういう立場に立ってスト権のあり方はどうあるべきか、国対委員長の提案では、各党がそれぞれ案を持ち寄りましょうと言うのだけれども、それも必要でありますけれども、さらに一歩広げて、あるいは深めて国民的規模においてこの問題は論議して悔いを残さないような形で結論を出さなければいかぬ。もう一遍やり直しだとか、あるいは権力でこうしようとか、また第二次的にもいろいろの考えがありますけれども、これはやはり決着はつけなければならぬし、そして決着は急がなければならぬ、がその決着の方向を誤ってはならない、こういうまじめな気持ちで私は国民とともにスト権のあり方というものをひとつ結論を出すきべである。こういう意味で、私が解散を要求する第一の理由はそれであります。  第二の問題は赤字公債、大変なものでございますけれども、ことしはあれこれ八兆七千億円の、地方債も含めて公債を出さなければならぬというような状態に陥っております。これは後でも少し論議をいたしたいと思っておりますけれども、それを、一応細かいことを省きまして結論だけですが、今度の国会においては、実は三木総理が誠実な方として国会の劈頭において、最近における経済政策は大いに一生懸命やったところもありますし、それも認めておりますが、それにもかかわらず成功ではなかった、国民にこれだけの不況をもたらしてまことに申しわけなかったという、私の言うデプロアが出るかと思っていたのだけれども、途中から政府考え方も変わったようでございまして、その言葉は余り聞かない。先ほど大蔵大臣は、申しわけないというような言葉をちょっと言われたように承りましたけれども、ちょっとよく聞かれなかったのですけれども、いずれにしたしましても私は、申しわけない、あるいは国民に対して全く申しわけなかったということを率直に非は非として認めるべきであって、全部オイルショックの責任にするような行き方は、まじめな責任政治のあり方とは思えません。  そういう意味から言いましても、一体、従来の経済政策あるいはスランプフレーションというものは必然的なもので、政府に何ら責任ないと国民は考えておるのか、あるいは政府には当然謝罪すべき責任があるというふうに国民が意見を持っておるのか、これも聞いてみなければ、みんな自分の党の立場が正しいということだけでは決着はつきません。そういう意味で、赤字公債発行の今日の段階において、三木内閣発足以来一年間の経済政策に対する評価の総決算をすべきであるというのが第二であります。  それから第三番目は、もっと深刻な問題でございますけれども高度成長が行き詰まったということはよく言います。そして福祉国家の建設が大切だということもよく言われる。しかしどういうふうに、どういう方向で、どういうテンポでこれを進めていくのであるかということについては、だれも具体的な構想はほとんど示していない。しかし、日本がこれから本当の意味で生き残るためには、もうこの辺で従来の政策の矛盾や欠陥を総反省し、総検討をして、新たなる、いわゆる政府で言う安定的な路線というものを確立しなければならぬ。しかしそれの内容も、言葉があるだけで内容は何もない。今度中期経済計画が出れば、ある程度おぼろげながらアウトラインが示されるかと思いますけれども、それについても各党それぞれいろいろな注文があるはずです。それを国民的な規模においてやはり論議して、いままでの間接金融と低金利によってどんどん進めてきた高度成長経済がいわゆる減速経済になる場合には、どの点とどの点を注意しながら経済の大きなカーブを切りかえるかということについてもう少しまとまった意見がないと、みんな勝手に新しい福祉国家——福祉なんという言葉ほどあいまいもこたるものはない。みんな自分の言いたいことを福祉として言っている。そういうことではなく、国民的な視模においてやはり一つのコンセンサスをまとめ上げるということになる一番プラスのケースは総選挙ではないか。こういう意味でいわゆる政策転換の基本路線を国民とともに決めるべきであるというのが第三の理由。  第四は、先ほども申しましたが、通常予算を通してその後解放だというのが解散が延びた場合における一つの常識になると思うのでございますけれども、しかしそういう前提、そういう雰囲気の中で国会審議がどういうふうに行われるであろうかということを私はむしろ心配をするのであります。あるいは必要以上の混乱が起こるかもしれない。あるいは選挙のためのゼスチュアばかり流行するかもしれない。あるいは議事引き延ばしが起こるかもしれぬし、あるいは定足数がそろわないで開会ができない場合もあるでしょう。  そういうことを考えると、私は、経済に一番大きな影響のある本予算だけはちゃんとして論議を進めて早くまとめるということに重点を置かなければならぬのではないか。そういう意味から言えば、特に大蔵大臣の立場から言えば、確かに一月なら一月解散ということになれば、予算の問題から言うと非常に残念な問題も出てきますけれども、しかし四月にやるということで二月、三月が国会ががらあきになったり宣伝戦になったりする場合に比べればまだ歩どまりがいい、まじめな議論ができるのではないか、こういうふうに思うわけであります。  そういう意味で、国会解散論が一部に出たり引っ込んだりしているわけでございますけれども、政治家として、あるいは大蔵大臣としてこの問題についてどんなようなお考えを持っておられるか、簡単で結構ですが、明確にお考えを承りたい。
  180. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう問題について政府を代表してお答えする立場でございませんのでお許しをいただきたいと思いますが、私は、ただいま竹本さんが挙げられました四つの問題点につきまして、それぞれ理由を挙げて御主張を交えての御提言でございまして、竹本先輩の言われること、よく理解できます。ただ、いまそういうものをひっ提げての解散が急がれておるじゃないか、それについての所見はどうだというお尋ねでございますが、私といたしましては、目下国会に重要な法案も出しておりまするし、明年度の予算も編成を間近に控えておる重要な時期でございますので、解散というような問題につきましていま思いをめぐらすまでの余裕を持っておりません。
  181. 竹本孫一

    竹本委員 政府を代表してという意味ではなくて、政治家としての大平さんのお考えを私は承りたいということが一つと、それからいまという言葉はなかなか範囲が広いのでよくわかりませんが、私は、この法案の問題もありますし、その他いろいろな案件もありますから、年内にという意味で言っているのではない。正月、一月でもいいのですが、少なくとも通常予算の本格的な審議に入る前に片をつけておいた方がいいんではないかという意味で申し上げておるのです。そういう意味でその点だけもう少し明確にひとつお答えいただきたい。
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 一つの見識のある御提言として承っておきたいと思います。
  183. 竹本孫一

    竹本委員 それでは次に参りましょう。  第二番目は、赤字公債特例法案に対する私ども基本的な考え方を一口申し上げて、それから個々の問題に入っていきたいと思います。  と申しますのは、赤字公債を出さなければならなくなったということは、これは先ほども申しましたように、政府経済政策のかじ取りがうまくいってなかった、いわゆる経済政策の失敗であるという考え方を私は持っております。政府はそれに対しまして、世界不況だとかあるいは石油ショックだとかいうことでいろいろと弁解をしておられるわけでありますが、私はその点についてちょっと違った意見を持っておる。  確かに、油ショックの影響あるいはさかのぼってドルショックの影響、いろいろなショックがありましたし、その影響も深刻であります。そして政府が言われるように、今日は世界的に財政は赤字財政になっておる。アメリカは二十七兆円ぐらいの赤字だとかドイツは四百九億マルクの赤字だとか、私も承知いたしております。  しかし、そこで問題がありますのは、同じようにたとえば横から波を受ける、それをまず波が大きく来そうだということを政治的に判断をして、波の多いときには船を出さないという考え方もあるでしょう。あるいはこういうふうに波が来るからということで、こういうふうに船のかじ取りを変えるというかじ取りの仕方もあるでしょう。そういう意味で、波をかぶれば船が必ず沈没しなければならないような説明は、これは私はいただけない。波が来たことも事実でございますし、そのために船が揺れることも事実でございますけれども、必ずしも転覆するか大赤字を出すかというふうにならなくてもよろしい。それは政治の大きな手の打ち方によってずいぶん変わってくるのではないか。  それから、日本あるいはドイツあるいはアメリカ——ドイツやアメリカのような代表チャンピオンも、いま申しましたように、二十七兆円の赤字とか四百九億マルクの赤字だとかいうことも事実でありますけれども、やはりそれぞれの国の特殊事情というものがあると思うのですね。たとえばドイツにおいては日本とは貿易依存率がまるきり違っておる、そして周りのヨーロッパは全部大赤字、あるいはスランプフレーションでみんなまいっておるのですから、日本よりも倍もしくはそれ以上になりますか、貿易依存度の強いドイツの財政がその衝撃をまともにかぶるということは、私はむしろ同情しなければならぬと考えておる。アメリカはベトナム以来またいろいろな財政経済上の矛盾を抱えておりますから、これまたインフレになる、あるいは赤字が出るということも一応考えられる。  しかし、日本は必ずしもそれらとは事情が違うのではないかということを私考えます場合に、財政経済の運営について果たして完全であったか、あるいはその責任は全部世界不況の油ショック等にかぶせておけば政府としましては、三木さんではないが、謝ることもやらぬでよろしいと逆に開き直ってみる、こういうようなあり方は正しいかどうか。これも政治家としての大平さんの御意見を率直に伺いたいのでございますが、従来の財政経済政策に遺憾な点はなかったのか、あるいは確かに大きなエラーがあった、やむを得ない点もあるけれども、ミステークもあったというので国民に謝るというか謝罪するというか、デプロアの気持ちがおありなのかどうか、その点をひとつ明確に承っておきたいのです。
  184. 大平正芳

    大平国務大臣 今回のような深刻な不況を招き、それがしかも異常な長期にわたって続くということでございまして、これはひとり経済界ばかりではなく、中央、地方を通じての財政にも深刻な打撃を与えておるわけでございまして、政策当局といたしまして、この事態に対する責任を回避するわけにはいかぬと思います。  これはどういう誤りであったかということでございますが、けさほどからの御議論にもございましたように、わが国の場合、諸外国と比較いたしまして衝撃度合いが大変激しかったということは御理解いただけると思います。そしてしたがって、それだけに対応策もまた機敏で大胆でなければならなかったわけでございますけれども、これほど大きな衝撃に対しましてわれわれが講じました対応策は、そのスケールから申しましても、その時期から申しましても、手段の組み合わせから申しましても、決して十分でなかったというように私は反省をいたしておるわけでございます。したがって、海外世界経済の激変ということにも大きな原因はございますけれども、同時に、これに対して適時適切な対応策を講じまして国民経済を守らなければならない立場にありました私どもの力量が不足しておったということにつきましては、どのようなおしかりを受けても甘受しなければならぬと考えておるわけでございます。  第二の問題は、それではその責任でございますが、どのようにして果たすかということでございますが、私は政治家といたしまして責任はやはり天に問うてみずからが決断すべきことと思うのでございまして、大変竹本さんを尊敬いたしておりますけれども、あなたのおっしゃることに盲従するというわけにはまいりませんで、私は私の判断で責任にこたえていかなければいかぬ、政治家としてそう考えております。
  185. 竹本孫一

    竹本委員 責任を回避することはできないのだ、その他いろいろのお言葉がありましたので、政府としてもあるいは大蔵大臣大平さんとしても、相当深刻に責任を感じて事態を深刻に受けとめておられる、かように了解してよろしゅうございますね。  実は、私は、赤字公債法が出るときに、その立場、その声を国民に対してもっと大きく述べられるべきではなかったかと思っているのです。と申しますのは、興人という会社が破産、倒産ということになりましていろいろショックを受けましたけれども、要するに民間の会社でも、たとえば税の見積もり等にいたしましても、これだけ大きく予想を狂わしてしまえば社長、専務は当然辞職ものである。政府の政治家であれば、遺憾であると一口言えばそれで済むというような問題ではない。そういう意味で、私は赤字特例法を出すときに政府としては声明を出すか、あるいは今度の国会の冒頭において、いま言ったように、これだけの赤字を出して、こういう赤字公債で二六・三%までは公債に依存しなければならなくなったということはまことは申しわけないということを三木総理もはっきり言うべきであった。本人も当然言おうと思っただろうと思いますけれども、だれかが悪知恵をつけて言わなくなったけれども、いずれにしてもこれは政治家の道義、責任政治の原則から見て私は非常に不愉快である。そういう意味で民社党がこの問題に取り組むのに非常な困難といいますか、苦しさというか、悩みを感じたわけであります。  しかしながら、それにもかかわらず現実に赤字が出てしまったのでありますから、これをほったらかしておけば、あるいは特例法を通さないということになれば、後で詳しく承りますけれども、国民生活にもあるいは景気浮揚にも重大なる影響があるということで、私ども民社党は涙をのんで、やむを得ないということに今日は了承をしておるということであります。しかしながら、こんなに残念な、こんなに不愉快な法案はないのだ。けれども、国民に対する深刻な打撃、影響というものをおもんばかる立場に立って、国益に立ってやむを得ずこの法案の審議にも積極的に取り組もうという立場でありますので、これは御了承をいただいておきたいと思います。  念のために主税局長にも一口伺っておきますけれども、たとえば主税局長として、先ほども話が出ましたけれども、法人税は去年五兆八千億の収入であったものを、ことしは不景気になるだろうというので四兆円に見積もりをぐっと減らした。三割ぐらい減らした。さらにそれがまた予想以上に減っておる。そして十月の実績は去年が二千七百五億円のものがことしは千五百十二億円で、言われるように五五・九%で四四・一%の減収である。こういうことですね。しかし、そういう場合に、主税局というのは、先ほど経済企画庁おいでになっておったが、経済企画庁のやった見積もりに沿ってわれわれはただ計算をしたのだ、それが経済企画庁の方の経済見通しが違ったのだろう、うまく収入が入りませんでした、こういうことで事務的にそろばんというかコンピューターのはじき方を間違いましたというふうに責任を軽く感じておられるか、あるいは主税局長というか大蔵省の主税局ということになれば、数字の上においては日本で一番強い、そしてまた一番確実なところだとわれわれは期待をしておる。その大蔵省主税局のはじいた税収入が全く当てにならぬものである。先ほど来、大蔵大臣は償還計画についても信じてもらいたい、こういう御答弁があるし、世俗の間には信じる者は救われるという言葉もありますけれども、信ずるだけではどうにもならぬ。具体的な科学的な根拠を出してもらわなければならぬ。われわれは大蔵省主税局は少なくともいままでは税収その他数字のはじき方においては最も正確なところだと評価もし、期待もし、信じてもおったが、今度は全くめちゃくちゃである。  そういう事実に対して大蔵省主税局は、これは政治責任じゃありませんよ、一事務官としてでも一体責任を感ずるのであるか。それは経済企画庁の見通しが誤ったのだ、あるいは上の政府が——経済というものはいろいろな波があってかじの取り方がありますから、それに、先ほどの大臣の言葉じゃないが、適時適切なる対応を講じなかったからこんなことになったのだという意味で、責任はそちらの政府にあるのだと考えておられるか。主税局としてはどんなふうな感じでいまおられるかということだけ、法人税の落ち込みはいま言ったように四四・一%、最も深刻でございますから、一言承っておきたい。
  186. 大倉眞隆

    大倉政府委員 今回の補正予算で法人税収を減額補正いたしました。その基本的な原因につきましては、先ほど広沢委員の御質問に対してお答えいたしましたような生産、物価、所得率のところの変動に起因しているわけでございます。税収の積算におきまして、これは竹本委員よく御承知なのでごく簡単に申し上げますが、過去の実績がもちろん一番参考になる。実績がわかった上に予測を積み上げるということになりますが、当初予算を組みます段階では、年内編成であれば通常十二月に見通しをつくらざるを得ない。その場合は、正確にわかっておりますのは十月まで、十一月はある程度の粗見当ということで、その段階で将来十五カ月先までを予測するわけでございます。したがいまして、四カ月先から始まる十二カ月というものについてどういう経済活動を見込んだらいいかということにつきましては、何としましてもやはり政府全体が統一的につくり、大体このような推移になるであろうということを統一的に国会に対して申し上げる数値によらざるを得ないのではないか。その数値をつくります過程で企画庁との間で事務的に、それは強過ぎるのではないかとか、いままでの傾向値からいってそこまでやれるのかとかいうことはこれは十分議論いたさなくてはならないと思いますし、従来からも私ども歳入担当の職務におります者は毎年そういう議論を重ねてきております。したがって、今後どういうやり方でこんな大きな狂いが出ずに済むかということは、私どもも真剣に考えてみなくてはいかぬ。ただ、いまの仕組み、いまのやり方では、恐らく企画庁と私どもの間でよくよく予測についての議論を重ねてみるという以外に、なかなかいい知恵が出てこない。残念ながら主税局が独自の判断で、企画庁は雇用者所得は一八伸びると言っているけれども一二しか伸びないでしょうという積算をいたしまして国会に予算を持ってまいるということは、言うべくしてできないし、またやるべきでもないということではなかろうかという気がいたします。  補正予算段階におきましては、例年のようにかなり遅い段階で補正を組む場合には、かなり確度の高い見積もりができると思います。それは実績がわかっておって、予測によらざるを得ない期間というのは非常に短くなりますから、当然にそうでなくてはならぬし、補正後の見込みがなおかつ狂うということについては、一般論として私どもとしては非常に深刻に責任を感じなければならぬであろう。ただことしのように非常に早い時期で予算を組みますと、やはり予測部分が非常にウエートが高くなってまいりますので、これについては予測の精度を高める方式につきまして企画庁とも今後とも勉強をし、私どもの知識の深度を深めていくということしかないのではなかろうか。  御質問の中にございました、税収が予測と狂ってきそうだということを早く読み取ってそれに対する対応を早く講ずべきであるという点は御指摘のとおりだと思います。ただ、対応策の中で法律を要するもの、行政府限りでできるものということでおのずから限界がございますけれども、やはり私どもなりに予測の狂いを感じたときには、できるだけ早くそれについて関係者間の意見を調整し、とるべき施策を講ずるように私どもの立場からも進言するということを今後とも努力しなくてはならぬだろう、そのように考えております。
  187. 竹本孫一

    竹本委員 主税局の特別な御苦労、御苦心もよくわかりますし、いまの巨大なる国家機構の中で主税局あるいは主税局長が何をなし得るか、その限界も私も大体わかります。その点は御説明は要らないのですが、ただ結論として、先ほど申しましたように、われわれ国民から言えば、大蔵省主税局ぐらい数字に強い、しかも数字の正確なところはないと思ったのに、法人税その他税収入が全く思いがけない大減収になるということについて、そろばんのはじき方が間違ったとは思いませんが、やはり情勢判断等についても、主税局は主税局なりの判断があったわけですから、いままでの評価が高かっただけに、主税局としては誇りを傷つけられるというような面があったかなかったか、その点はどういうふうに思っておられるかということをぼくは率直に聞きたい。  しかしながら、時間もありませんから、そういう意味で私が意見を述べておるということだけ受けとめてもらえれば結構です。  次に大臣に、先ほど来いろいろ議論が出ましたし、また景気の問題と関連して、いま政府が第四次不況対策等を通じていろいろ御努力になっておる。これは、私せんだっての本会議でも議論いたしましたように、いささかツーレートであるということを特に中心にいろいろ申し上げましたが、不況が予想外に長引いておるということ、それからもう一つは、マクロでは先ほど生産とかあるいは出荷とかいうような数字でお話がございましたが、それは事実でございますから私も認めておりますが、それにもかかわらず、いわゆるミクロの立場で企業の人たちは非常に深刻な不況に悩み果てておる。そこで大臣に、予想外に不況が長引いておる原因は何か、それからマクロとミクロが非常に違った感じになっておるのは何か、それについてどういうふうにお考えであるかということを承りたい。  その前提として私の考え方もあわせて申し上げてみたいと思います。  マクロとミクロが違う、不況が予想外に深刻であるということの第一の問題点は、政府がこんなに不況にする意思はなかった——事実、この間二・二なんかに改められましたけれども経済成長率も四・三%ということに初めは期待しておられたし、またそう見通しておられた。雇用者の所得というものは全体として一八・一%ふえるという計算であった。それが一三%前後に終わった。いま減税ができるかできないかということについては、私もなかなか疑問を持っておるし考えておりますが、一部にいわゆる二兆円減税論が出たときに私は計算してみましたが、雇用者所得は大体一三%前後にとどまったものが、もし政府が最初に約束したように、経済成長は実質四・三%の成長である、雇用者所得については俸給も退職金も合わせて一八・一%あるということであったとすれば、今日の情勢とどういうふうに違うかと思いますと、あれこれ計算してやはりざっと二兆円ぐらい大衆のふところ勘定が違うのです。それを今度二兆円減税で補って、最初に言うように経済成長も実質四・三%、雇用者所得も一八・一%にすれば、こんなに不況にならなかったのではないか、こういうような計算で言われておるのだろう、これは私が思うのですけれども、少なくとも数字的根拠があるということを私は申し上げるのですが、裏から言えば、経済成長四・三%、それから雇用者所得は一八・一%の伸びがある、その中で苦しいけれども、むずかしいけれども、物価は一けたに抑えていこう、こういうワンパッケージの約束であったと思うのですね。それが物価さえ抑えればよろしいとか、第一段階は物価段階だというような取り組みであったために、物価は八・八%までか下がったけれども、ほかの二つは全く犠牲にした、これが今日不況を深刻にしておる問題ではないかと思うが、まずこの点について大蔵大臣はどういうふうに見ておられるか。  それは四・三を二・二に改めたなんて言ってみても事務的な説明であって、経済はことしは四・三まで伸ばします、その中で物価を一けたにするのだというのが政府の約束であった。そして同時に雇用者の所得も一八・一%までは持っていくんだ、こういう期待が大体あった。その二つを犠牲にして、そして物価だけは成功というか、ある程度の成果をおさめた。しかし二つも犠牲にしたということは、経済政策財政政策としてはやはり誤りである。この誤りのために不況が長続きしておるしあるいはミクロが苦しんでおると思いますが、その点について大蔵大臣はどういうふうに見ておられるかということがまず第一の伺いです。
  188. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたの言われることもよく理解できますけれども、私はやや考えが違うわけです。私は不況が長引いておる最大の原因は、世界的に見ましていまの時代、いわばイノベーションと申しますか技術革新が行われない。したがって設備投資を軸にして成長を記録しておりましたわが国におきまして設備投資が予想されたようなぐあいにまいりませんで、漸次衰えてきているということが、それがわが国にだけでなくて世界的に起こっているわけでございますので、世界貿易もまた全体として縮小均衡の方向にいっておるわけでございます。それが今日の不況を長期化させておる一番大きな原因ではなかろうか、そういう感じがいたします。  それからミクロ、マクロの問題でございますけれども、幸いにいたしましてフローの経済は大変繁栄をいたしましたわが国でございましたけれども、あるいは面においてストックが乏しい経済でございました。しかしようやく企業の内部の留保も相当程度できておりましたために、少なくとも今日まではこの不況企業はよく耐えてきて、すでに限界を越えておるのじゃなかろうかと言われつつもなお持ちこたえてこられたのではないかと思いますけれども、そういう状態は決して無限に続くわけではございませんので、政府としてはそこは甘く見ちゃいかぬ、そう考えております。  しかしわれわれが第一次から第四次までの不況対策、景気対策をやったということで、これは時期が遅かったという御批判はございますけれども、景気対策として効果が十分でなかったという御批判もございますけれども、しかしこれは去年の補正予算、ことしの本予算、それから四次にわたる景気対策もあわせまして、全体として景気の下支えとして有効に作用しておるのでございまして、もしこれがなければ大変であったと思うのでございます。したがって水面上に非常に顕著な成果は出ておりませんけれども、景気の下支えといたしましては十分有効に機能しておるというように私は見ております。
  189. 竹本孫一

    竹本委員 予算委員会でもありませんし、私の意見を述べることを中心に申し上げますが、第二番目に、日本だけがプラスになっておると福田副総理は非常に自慢しておられるのだけれども、これもぼくは間違いだと思うのです。  それはどういうことかといいますと、これが一つの平均の線としますと、日本は御承知のようにいわゆる設備投資だ、高度成長で、下手をすれば一三%も成長した。外国は成長率というのはもともと五%前後でしょう。だから一〇%下がれば、非常に乱暴な数字で言うならは、一二%のものが一〇下がって三残る。今度は二・二%プラスになる。しかし外国は、同じように下がるとすれば五%のものはマイナス五になるわけでしょう。だから外国があなた方が言われる世界不況の中でみんなマイナス成長になったということは、もともとが五%前後の、ほかの言葉で言えば堅実な歩みをしておった。しかるに日本はあわて過ぎて、走り過ぎて、一三%前後で走った、あるいは十年間平均しても一〇・八%ぐらい走った、そういうことでございますから、少々下がってもなおプラスがあるんだ、こういうふうに見ることもできる。  それからもう一つの重大な問題は、ポイントとして考えてもらいたいと思うのは、日本経済は、御承知のように自己資本というものは問題にならぬ。財務構成が問題にならない。したがって、幾ら不景気で売れなくても、とにかく生産はふやしていかなければならぬというようなことで、現に走って在庫がふえて困っておるものも出てきているのですね。そういう意味で、ただ、私は実際二・二%成長をするとは思っていませんよ、一・二%ぐらいだろうと思っているけれども、仮に政府の言われるように二%成長で、世界じゅうでただ一つ日本がプラス成長だということであったとしても、よく考えてみれは、従来が走り過ぎておるのであるし、また借金経済で、ある程度走らなければ身が持たぬという必然性において二・二%あるいは一・二%の数字が出ておるんであって、これは誇るべきことか、反省すべき問題点かということは、これは重大な問題である。日本だけがプラスと言って、田舎の百姓さんをごまかすにはいいかもしれぬけれども、少しまじめに考えてみると、これはむしろ日本経済政策のあり方に、真剣に反省すべき点があるのではないか。  一つはいままでが走り過ぎておるという意味において、一つ日本経済企業が財務構成がめちゃくちゃで、借金経済だから、損をしてでも走っておるということの結果ではないか、そういう点について大蔵大臣はどういうふうに見られますか。
  190. 大平正芳

    大平国務大臣 世界経済の中で、わが国は、インフレを輸出してもいけませんけれども、デフレを輸出してもいけない、私はそういう責任で指導的な大国としてあると思うのであります。福田副・総理の言われる意味は、わが国とアメリカは、少なくともこの石油危機を契機として増幅いたしました世界経済危機に際会して、景気対策を講ずるまでになってきた。言いかえれば、ほかの国に対しまして貧乏を輸出するような国でなくて、ほかの国の輸出所得を保証することができるよな経済政策に転換できるような立場になった。ヨーロッパ各国はまだそこまでいってないじゃないか。そういう意味では誇っていいじゃないかという意味の、私は、ちょうど最近そういう世界的な世論があったものでございますから、それに対して日本の立場はそうじゃないかという意味で答えられたものと思うのでございまして。日本がやってまいりましたことが何もかも誇るに足るものであるということを頭から肯定されての御発言とは私は受け取っていないわけでございます。
  191. 竹本孫一

    竹本委員 私がいま申し上げておることは、すべて不景気がなぜ予想以上に長引いておるか、それからマクロとミクロと余りにも違うような実感をみんなに持たれておる理由は何かということを中心に申し上げておるということを前提として御理解をいただきながらもう一つお伺いをいたしたい。  それは、来年三月になれば第四次不況対策の効果もあらわれて操業率指数は九〇%になると言って福田さんが非常に力点を置いておられる。御努力、御苦心は敬意を払いますけれども、これは直接ミクロの不況感というものが深刻であるとかあるいは不景気そのものが必要以上に長引いて法人税の収入も上がらないということの根本は何かという点について私の考えはこうなんです。  この操業率指数というのは指数のもてあそびである。設備能力と稼働した住産量との比率を出す。しかしそれが直接ならまだぴんとくるのですけれども、それだっていろいろ数字のとり方によって経済的に言えば問題があると思いますが、この操業率指数というのは分子は分子で指数を出して、分母は分母で指数を出して、それをまた分子と分母で比率を出した、とこういうものでしょう。ですから、まず第一に出発点において、数字の遊戯と言っては言い過ぎになりますけれども、何も経済の実態にぴたっとくっついた、密着した結論ではないということが一つ。  それから第二の問題点は、九〇%というと百点満点の九十点といったように聞こえて、ああそれなら九十点と大変いいように聞こえるのだけれども昭和四十六年不況の谷底は六月だったと思うますが、そのときの操業率指数は九二%なんです。なるほど七三%の操業率指数が八〇%になり、いま八三%になりそして来年三月九〇%になるということになれば、水面下ではあるけれどもだんだん浮上していることは事実なんです。それはぼくは否定しないんだ。しかしまだ水面下ではないか。そして九二%になっても四十六年不況の谷底だということになると、なるほど七三%の指数から言えば上に上がってきたのだけれども、百点満点の九十点どころか、四十六年六月の不況の谷底よりもまだ来年三月に二%低い水準なんだ。こういうふうに理解すれば、いまの不況の度がやや科学的に理解できるのではないか。だから、これは誇大広告をやる意味でおっしゃっているとも思えませんけれども、来年三月は九〇%、そして再来年の三月には九五%にする、こういうふうに言うと、九十点、九十五点というふうに響いて、大変みんなに楽観ムードを呼び起こすように聞こえるのだけれども、私は冷静に考えれば、四十六年不況に及ぶのにもまだまだ距離があるというふうに見なければ少し間違いではないか。  時間がありませんからもう一つ言うと、今日の不況感のもう一つ大きなファクターは、企業というものはみんな設備をし、人も雇っていますが、大体去年は、御承知のように、消費者物価で言うと、二四・五%か上がりました。それがことしは八・八%とか一〇・三%とかいうことになって、大体半分以下の物価上昇率になっておる。そこで日本経済体質というものは、去年は少し異常であったと思いますけれども、とにかくインフレ体質にねじ曲げられ過ぎておる。したがって、物価がある程度上がってくれないと商売にならない。たとえば八百万円のコップならコップを生産する企業がある。同じく八百万円のものをつくったとしても、去年の計算から言えば、二五%ばかり物価が上がれば、これが一千万円に売れるはずなんです。ところがことしは物価が落ちついたおかげで一割しか上がらない。いま八・八%なら一割以下。そうなりますと八百八十万円にしか売れない。設備投資も賃上げも、すべての企業の構えというのは、物価が、去年は二割五分ですが、少なくとも二割近く上がるんだ、それでもうけも出るんだ、こういう構えでずっと走っている。それが急に一けたということになりますと、一千万円入る計算で動いてきた企業が八百八十万円しか入らないと、生産はふえたかもしらぬが、実入りは百二十万円減ということになる。これが今日のまた非常な不況感ではないかというふうにぼくは思うのです。  そういう意味で、二つ一結に申し上げましたけれども、九〇%というのは誇大広告になり過ぎる。われわれはいかにして景気を挽回して、四十六年の水準あるいは四十八年の水準に何年計画で持っていくかということをもう少し正直に訴えたらどうか。そうすれば企業不況感、ミクロの不況感、不況の長引くことに対して国民がやや理解できる。九十点みたいなことを言って、来年は九十五点だというと、ああそうかと思って過大な期待だけを持たせるということは、私はまじめな政治としてどうだろうと思う。  それからもう一つは、いま申しましたように、日本経済が、減収になればみんなが不況感を持つ。先ほどの法人税ではないが、経常収入は五二・三%収益が減ったというんでしょう。その半分なら半分は物価値上がりで予算が狂っちゃった。そうすると、もう一つ私が指摘したいことは、それほど日本の産業構造はインフレ体質になり切っておる、あるいはそれほど日本経済高度成長仕組みになり切っておるということ。だから、私が最初に解散論で申しましたように、日本経済が減速経済になるとか福祉経済にするんだとか、安定的成長に持っていくんだということになれば、物価が二〇%上がらなければ大損をしたりひっくり返ったりするということのないように、経済の全体の構造企業のあり方、それを税制金融すべての政策手段を総動員してカーブを切りかえなければいかぬ。それが、私先ほど申しましたように、日本経済は、言葉では発想の転換だとか政策転換だとか福祉経済とか安定成長とか言うけれども企業のあり方、経済構造は全然そうなっていないではないか。そしていま、経団連ではないが、第五次不況対策を講じろということを言われておる方々の根本には何があるのかといえば、昔のままに量的に経済成長ができる、そういうものへ戻してくれ、そのギャップを埋めてくれということでしょう。経済構造を切りかえるからそのために政府がひとつ手を打ってくれと言っているんじゃないのです。デフレギャップを埋めろということだけなんです。それは量的に昔の高度成長に復元しようということなんだ。どういう意味で、経済政策転換は、言葉ではいろいろ言われているし路線の転換が言われておるけれども経済構造はまだまだ全然その緒についてもいない、それがまた今日の不況を長引かせたりあるいは不況感を長引かせている原因であると私は思うが、いかがでございますか、こういうことですね。
  192. 大平正芳

    大平国務大臣 いま竹本さんが言われたことも、福田副総理がおっしゃっていることも、別段変わりはないと私は思うのです。操業率指数というのは四十五年を一〇〇とするものでございまして、それが現在八三であり、それを九〇まで何とか引き上げたいものだということは福田さんも正直におっしゃっておるわけでございまして、前提抜きで九〇だ九五だという数字をもてあそんでおるわけでは決してないわけです。だから、あなたの言われることと福田さんのおっしゃることとは全然別なことだとは私は思いません。  それから第二の点でございますけれども、価格が本来もっと高くならなければならぬものが上がらずにおる、非常に不況感が深刻であるということはあなたの御指摘のとおりだと思います。われわれの経済の目標では、卸売物価はたしか七・七%であったと思うのでございますけれども、十月の卸売物価は前月に対しましてマイナスに至ってきたわけでございますし、前年同月で〇・六%でございますか〇・八%でございますか、ともかく一%を割っておるわけでございますので、この機会にそういう価格構造の是正が合理的に行われても、いまの物価政策の根底が狂うわけではない。幸いにいたしまして、そういうことが若干行われても、経済の基礎が崩れるというようなことがないようになったことは、私は大変幸せな状態になってきたのではなかろうかと思うのでありまして、いま仰せになりました操業度をもっと高めてまいること、そして価格形成にわたって、物価政策のゆえをもちまして余りいびつにこれを抑えていくというようなことはとるべきでない。そしてそういうことをしなくても、消費者物価にせよ卸売物価にせよ、われわれの目標といたしておりまするものは十分達せられるのではないかというように考えておりますし、そういうことができるようになったことは、やはりわが国経済政策として一歩前進として評価していただいてもいいのではないかというように思います。
  193. 竹本孫一

    竹本委員 この点は議論をすれば切りがありませんから、問題を私の立場で指摘をして、それにとどめておきます。  次は、先ほど来御議論がありました第四条公債の問題でございますが、今度の法律によりますと、昭和五十年度一年限り赤字公債認めてもらいたい、こういうことになっておる。それを善意にというか、一つの解釈で解釈をすれば、赤字公債というものは四条の例外をなすもので断じて出すべきものではないのだが、周囲の情勢上やむを得ない。したがって、これを相当長い期間出せるような法律にするということは不謹慎であるという意味から言えば、一年限りでこの問題の解決に取り組むのだという決意のあらわれとして、非常にまじめな努力が約束されているように見える、これが一つの立場。  それからもう一つ、今度は若干悪意で解釈をするということになれば、先ほどの償還計画ではないが、来年幾ら出てくるか、何年この赤字公債を出せばよろしいのか、そしてまたその償還計画等についてもきちんとしたことが言えない。特に発行の方から申しますと、何年出せばいいかわからない。したがって、仮にたとえば三年間の時限立法ということにすると四年目にまいってしまう、そういう心配があるので、自信がないので、あるいは見通しがつかないので、一年限りで出して、そして三遍やれば三年、四通、五遍とやれるように、少しめんどうだけれども、期限を切るよりは大蔵省の立場としてはむしろ楽だ、こういうような解釈も一方でできる。一年限りのものが一年であるなら、話は常識的で結構なんですけれども、来年出ることは決まり切っておるというのに、一年間の時限立法にするというのは一体なぜか。あるいはこれは私がいま後に申しましたように、後者の場合として、何年出るか見通しがつかない、当分続くだろう、そういう意味で、期限を切ることは、慎重な大平さんとしては、かえってうそを言うことにもなるから、めんどうくさいけれども毎回特例法を出すという考え方に立つのか、一体どちらなのかということについてひとつ大臣考えを伺いたい。一年限りで出すというならば一年限りで終わるわけなんだが、それが必ず来年出る。だからいまの第四条を、特例法を一年限りというような形で出された真意は何かということが一つ。  それからあわせて伺いますが、私の計算によれば、昭和五十一年度は恐らく公債は六兆五千億前後出るのではないかと思います。その半分近くは赤字国債ではないかと思うのだが、政府は来年度の公債、特に赤字国債はどのぐらい出さなければならぬという見通しなりお考えを持っておられらか、二つあわせて伺いたい。
  194. 大平正芳

    大平国務大臣 一年限りの立法としてお願いいたしました理由でございますが、あなたが申されました前者の理由でございます。どんなにめんどうでございましても、これはまことにその名のごとく特例でございますので、複数年度にわたって立法で権限をもらっておいて特例債を発行しようというようなことはやるべきでない、毎年国会の御審議を経て、両院の御審議を経て通すということは、これはわれわれにとりましても大変むずかしいことなんでございますけれども、しかし、これはどんなにむずかしくてもそういう手順を踏んでいくべきだと私は考えたわけでございます。来年以降の状態がわからないから、とりあえず一年だけをお願いするんだというようなぞんざいな気持ちではございません。そういう議論は全然部内にもございません。  それから、第二の御質問……(竹本委員「来年の国債発行規模」と呼ぶ)来年の国債ですけれども、これはいませっかく検討いたしておる最中でございまして、どだい公債の規模を、どれだけの予算のスケールにするか、それ自体がまだ固まっていないわけでございますので、公債について——ただ申し上げられらことは、依然として特例債をお願いしなければならぬ状況であるということでございます。そういうことは感じがいたしますけれども、どれだけということにつきましては数字的に申し上げられる自信がまだございません。
  195. 竹本孫一

    竹本委員 ちょっと御答弁十分満足できないのですが、局長にひとつ伺いたいのですが、政治家としてはまあ政治答弁もあるでしょう。それからいま大臣がおっしゃったように、来年の予算あるいは来年の内外の情勢、総合判断をしなければならぬという立場がありますから、いま明確な話は  できないというお立場も若干わかる。  そこで、ぼくは理財局のお立場において事務的にひとつ伺いたい。というのは、大臣ではないが、来年度どのくらいの予算を組むかそれも決まらないし来年の経済情勢も見通しがつかないんだからこれもわからない。それは大臣の立場から言えば、そういうこともまじめな意味でぼくはあり得ると思うんです。しかし、事務当局として公債発行を進言するという立場に立てば、この国債はことしこれだけ出す、来年はどのくらい出るだろう、そうすると日本公債依存度がどのくらいでどうなるかということに事務的な見通しは、私も役人の経験があるから、ぼくは持っていたと思う、あるいは持つべきだと思うんですね。そういう意味で、来年度の国債は、たとえば事務当局から言えば予算を一三%膨張させる場合もあるでしょう。あるいは一五%ふくらまさなければ福祉が織り込めないとか景気対策が織り込めないとかいう場合もあるでしょう。一三%か一五%か一七%か、その辺でしょうが、そうすればA、B、Cという三つのケースを大体予測して、これは何も政治責任のある問題としてはでなくて、事務的な計算として、来年度の国債はA案でいけば五兆円とか、B案でいけば六兆円とか、C案でいけば七兆円になるだろうというくらいの見通しは、ぼくは事務当局は持つべきだと思うのですね。そうでなければ、それこそ大臣の答弁のように何もかもみんなわかりません、こういうような財政当局というものはぼくは想像ができない。そういう点についてはいかがですか。
  196. 松川道哉

    ○松川政府委員 御指名でございますので、私の立場からお答えをさせていただきたいと思います。  私の立場は非常にむずかしゅうございまして、と申しますのは、主計局が大体歳出規模を非常に小まめに洗って査定をいたす。それからまた、主税局は税務当局の立場に立ちまして、来年度の税収がどうなるかということを計算いたすわけでございます。私、大蔵省の中の局長の一人といたしまして、その予算の査定に当たっては、もちろん削れるものがあればむだな経費は削ってもらいたい。それからまた税務当局には税収の見積もりに当たってはまた年度途中でおびただしく間違うというようなことがないようにやっていただきたいけれども、さりとて税収が非常に小さくなったのでは私の万にまたはね返ってくるということで、そこは主計、主税両局に全体のことを考えながら作業を進めていただくようにお願いをしておるところでございます。ただいまのところはいずれの局からも大体この見当になるという話がまだ来ておりませんので、私の方もある意味では困惑しておって、まあもう少し作業が早く進まぬかいなという感じを持っております。  そこで、先生の御指摘のように、それでは理財局の立場に立って、すなわち国債を出す立場に立って、一体どこまでが可能なことかということが一つの問題として出てまいります。そうなりますと、そのときの国債の規模と、そしてまた国債をその規模に抑えるために何かやらなければいけなかったこと、たとえば税収でさらにそれを増徴するとかあるいは歳出面においていろいろ削減をするとかそういったもの、すなわち国債の規模を抑えるためにその選択の対象となった事柄、このどちらが大事かということの判断になってまいろうかと思います。私ども国債を消化する立場からいけば、これは当然のことではございますが、できるだけ金額が少ない方が仕事がやりようございますし、それからまた国民経済の中における落ちつきとしましても、国債が異常に大きくなるということであればこれは後々に問題を起こすと思います。その意味で全体のバランスがとれた形でおさまるのが望ましいと思っております。しかし、それを一体いまの段階で何兆何千億と考えておるかという御質問になりますと、ちょっといまの段階ではお答えいたしかねるというのが実情でございます。
  197. 竹本孫一

    竹本委員 あなたの立場もわかりますからそうむずかしいことを言おうとは思いませんけれども、しかし、事務当局は事務的に、このままこういうふうに国債発行していけばこのくらいなものになるだろう、それもA案の場合、B案の場合、C案の場合、ちゃんと用意して、そして大臣を補佐するのでないと、言われたら無条件降伏で言われたとおりに職工として公債発行の事務をやるというのでは、どうもあり方が問題だろうと思う。だから私は、いま数字を言えと言えばむずかしい立場になりましょうから、ただその準備として事務当局はそういうものはちゃんとあり、そしてまた大臣もA案、B案、C案というものについてこういう財政政策、こういう公債政策を続けていけばどういうふうになるということについての一つの見通しというものを持っていなければ、大変なことだと思うのですね。そして結論だけは私を信じて下さい、これではとても話にならぬ。それ以上言っても仕方がありませんからこの辺にとどめますけれども、私は国債の問題はこれほど大きな問題になっておるのだから、日本のそれこそ国債依存度というものがどれくらいまではいけるのかいけないのかということも、それから国債増発がどのぐらいになって、最後に、いま十兆円、ことし五兆五千億、まあ大体十六兆円前後、それが何年たてば四十兆円になるのか、五十兆円になるのか、そのころの国債依存度がどのくらいになって危険であるのか危険でないかということについて、本当は事務当局も政府当局もちゃんとした見通しを持たないと、われわれとしちゃ全く危なくてついていけない。そういう点をもう少しこれは次の機会に改めて今度は具体的に聞きますから、政府当局として一つ考え方をまとめておいてもらいたい。いかがですか。
  198. 松川道哉

    ○松川政府委員 私どもの仕事、すなわち理財局の仕事は、端的に申しますと、財政金融の接点に当たるところで仕事をいたしております。その意味で財政の方のニーズもわかりますし、またこれが金融市場を通じて国民経済にどのような影響を与えるかということも常々頭に置きながら仕事を進めていかなければいけない立場に立っておる次第でございます。  そこで、ただいま御指摘の問題について、それではわれわれはどういうアプローチをするかということになってまいりますが、国債がどの程度に出ればどうなるか、これはいろいろの物差しがあろうかと思います。たとえば年々の歳出の中で何%以下でなければならないとか、あるいはGNPの中に国債の累積の残高が幾らでなければいけないとか、いろいろな物差しはあろうかと思います。  そこで、それならばどういう物差しを理財局として考えるのかということになりますと、これは生きておる経済財政に求めておるもの、こういったものが変転してまいりますので、一律の数字ではなかなかお答えがいたしかねる。そうなりますと、それでは何も物差しがないのかということになってまいりますと、私ども冒頭申し上げましたように、財政金融の接点に立っておる者といたしましては、日本経済全体の中における資金需給がどうなるのか、そしてその資金需給の中でどの程度の国債であれば民間部門に大きな影響を与えない、またはそのほかの部門にも好ましくない影響を与えずに済むのかということを考えながらやっていかなければいけないと思っております。その意味で、経済企画庁も同種の仕事をいたしておりますので、ここともよく相談をいたし、国債のみならず、これに関連いたしまして公共債と呼ばれております他の種類の債券、すなわち、政府保証債であるとか地方債であるとかそういうのも入ってまいります。これらの消化が、国民経済全体の中において支障なく行われる程度に抑えることが必要であるという、そういう認識を持って仕事を進めております。
  199. 竹本孫一

    竹本委員 事務当局の御苦心は御苦心として、公債依存度というのが、財政制度審議会で、依存は五%ぐらいだというような答申をしたことがありますか。
  200. 高橋元

    高橋(元)政府委員 四十二年の十二月二十五日に財政制度審議会から御報告をいただいたわけでございますが、それの中に「公債政策を弾力的に行なうためには、現在の公債依存度を極力引き下げていかなければならないが、このことは、健全にして弾力性に富む財政にとって不可欠の前提である。  依って公債依存度は、ここ数年の間に五%以下に引き下げることを目標とすべきであるが、さし当たり相当な自然増収が見込まれる四三年度においては、公債依存度の引き下げを予算編成上の最重点とし、これを一〇%程度とするよう発行額を大幅に減額する必要がある。」というように記載されております。
  201. 竹本孫一

    竹本委員 その答申をあなたとしてはどういうふうに評価しておられるか。一つの夢物語であるかあるいは一つ政策努力目標であるか、現在の情勢の中でそれにどう取り組むべきであるかという問題について、これはあなたの感じで結構だ、どういうふうに評価しておられるかということ。
  202. 高橋元

    高橋(元)政府委員 四十一年度に建設公債発行して、いわゆる公債を抱いた経済ということになったわけでございますが、その後四十二年に、前年度に比べて公債発行額がふえたわけでございますが、その際、財政制度審議会から先ほど読み上げましたような御報告をいただきました。その御報告の目標に従って、その後景気の回復が進んでまいって、税収の伸びも相当あったわけでございますので、極力歳出を抑え、歳入を確保して、四十三年から四十六年まで予算上、四・五%まで当初予算公債依存度を下げてきた。しかしながら、四十六年に再び不況が参りまして、補正予算を組みました結果、実績の公債依存度は、当初四・五に対して一二・六という形になりました。四十七年度も景気の立ち直りということで、二八・三に上がり、その後、当初予算では公債依存度が下がるというはずでございましたところ、五十年度において二六・三までまた戻ったわけでございます。  公債依存度について、財政制度審議会が五%を目途という御答申をいただいておりまして、公債依存度についての考え方は、先ほど他の委員の御質問に対して大蔵大臣からお述べになった五%というのは、やはりそういうことを念頭に置いて今後の公債政策を運用したい、こうおっしゃったわけでございますが、毎年の公債依存度について、何%が一番いいかという固定的な数字というのは、恐らくあるわけではないのではないかと思っております。  と申しますのは、財政役割りとして景気を調整してまいる、いわゆる景気調整機能というものがかなり大きく評価されておるわけでございます。その場合に、経済が落ち込んでいく場合に財政が大きくなるということ。その逆の場合には財政が縮んで、景気の過熱を紡ぐということが、財政政策としてとるべきであるという考え方があります。そうなりますと、毎年毎年の財政の規模、歳出の規模と歳入とのギャップが公債というふうに考えますれば、公債の規模というものもやはり弾力的に動いていく必要がある。財政制度審議会の四十二年の御答申、これは先ほどからたびたび申し上げておるわけでございますが、それは、そのように弾力的な財政執行が可能であるように、税収の伸びが期待され、歳出の伸びが安定的なそういう財政をつくり出して、好況不況いずれに向かっても動いていく財政をつくり出せという意味で、各欧米先進国においての例も頭に置いて、五%という目途をお示しになったものというふうに考えております。
  203. 竹本孫一

    竹本委員 私は、経済というものは、特に資本主義経済においては、一つの厳しい運動法則があると思うのですね。だから、日本は別だとか、だからいまはちょっと特殊事情で別だとかというようなことで例外をつくっておると、破産、倒産、行き詰まりというもとになる。経済にはちゃんと厳しい原則がある。それを踏みはずしてはいけないということがまず前提だと思うのですね。そういう意味からいって、私が考えたのとちょうど偶然に一致したわけですけれども、ぼくは、国債依存度というものは五%前後でなければならぬ。したがって、後で大臣が見えてから伺いますが、何年計画で日本はそういう状態に持っていくのか。それが、五%でなくて、政府考えはことしの初めみたように一〇%、それがいいというならそれでもいい。五%か一〇%かがまず第一の問題だが、次には、それにこれから何年計画で持っていこうということを考えておられるかということが一つ大事な問題なんです。これは先ほど来償還計画とか発行計画とかいろいろ議論が出ましたから、そういう重複は全部やめて、私の聞きたいのは、国債依存度は何%を一つの目標としておられるか、何年計画でいくつもりでおられるかということを私は一つ伺いたいんだが、これは大臣に伺う。  そこで、事務当局にお伺いしたいんだが、日本が二六・三%の依存率である。それに対してドイツは、先ほど申しましたように、周りの貿易の相手国がみんな不景気になったものだからがたんと財政も赤字になって、二百何ぼと思っておったら四百九億マルクの赤字が出た。そして公債発行をやる。その点は日本と同じ。日本が二六・三%であるのに対してドイツは二五・三%と聞いておる。しかもドイツは、中期経済計画あるいは財政計画というのがありまして、この計画によって、財政構造改善案というものを含めてとにかくこの二五・三%、いま公債依存度は日本とすれすれですね、それを大体七九年ごろまでには五・数%にまで持っていこうという計画を最近発表したらしい。これは私も正確に聞いていないので、ひとつ大蔵省に聞きたいんだけれども、ドイツは現在の国債依存度が二五・三%であるかどうか。それを四無計画で七九年ごろまでに五%前後に持っていくということをすでに態度を決定をして発表しておるという話だけれども、そうであるか、情報としてどういうふうに受けとめておられるかを伺いたい。
  204. 高橋元

    高橋(元)政府委員 お示しのように、七五年度ドイツでは、八月の補正後でございますが、公債依存度は二五・三%でございます。  それで、これはまだ私は確実に承知しておるわけではございませんが、七九年度までに七四年度にあった水準、すなわち七・七%、それよりも低いところに公債依存度を持っていきたいということであるように承知しております。
  205. 竹本孫一

    竹本委員 大蔵大臣日本国債依存度がこの間までは一〇%を切ったんだけれども、いままたふえて二六・三%になりました。あたりが不景気になってまいったドイツも四百億マルクからの赤字を出して国債依存度はいま二五・三%になっておる。いまも高橋さんが答弁をされたとおり私もそう見ておる。ところがドイツは中期財政計画その他計画的にこの問題の処理に取り組んで、七九年には大体二千億マルクぐらいの予算を組んで百億マルク前後の公債にする、したがって五%前後のものにする、こういうことにしておる。たまたま財政制度審議会は、四十二年であったけれども公債に依存をする度合いはやはり五%くらいが一つの目標であるということを発表しておる。  先ほど申しましたけれども、資本主義経済には経済の動かしがたい法則と原則がある。したがっていまの日本は特殊事情だとか、今日この場合は特殊だとかいう、そういう脱線は許されない。それを脱線すれば悪性インフレになるんだ。そこでインフレにならないように大臣もいろいろとこの間の償還計画の中に書いておられましたけれども、その努力目標、私がまず第一に伺いたいことは、大臣として日本国債依存度というものは五%が正しいと財政審議会が答申したように思っておられるか、あるいはそれを一〇%に改めて一〇%が正しいと思っておられるかをひとつ伺いたい。  それから第二には、いまの二六・三%を——ドイツは二五・三%を四カ年で七九年にはいま申しました二千億マルクぐらいで百億マルクぐらいの公債、五%前後に持っていくという計画あるいは努力目標を発表しました。日本政府は来年国債が幾ら出るかまだはっきりわからぬわからぬでいままで来ているわけだけれども、いずれにしても、来年六兆以上の公債が出る、それこそ予算の枠によって違いますけれども、六兆五千億かなと思っておるのです。それで再来年になる。私は私なりに計算してみるとどうもますます赤字がふえる。そうすると、日本の赤字が何兆円というのも一つの問題ですが、一体依存度がどのくらいになるか。したがって、むしろ悪い方向に行くような気がして心配をしているわけですけれども大臣としては五%あるいは一〇%に目標設定をしておられるならば——目標設定をしておられるか、その中身は何か、あるいは目標設定はしておられないかということが一つ。目標を定めておられるならばそれに何年計画で、ドイツは四年でいくという、日本は何年計画でそこまで努力をしてこぎつけようとされておるのであるか。その二つを——もちろんこれは政治的情勢が変わりますから、ドイツもたびたび計画を改めておりますように、すべてある意味においては大ざっぱなものです。   〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 そしてまたローリングシステムで年々計画を変えなければ、いかだを組んだようなことでいけるわけじゃない。そのことは私も十分承知しておりますが、政治家として、わが国がこれだけ国債を出さなければならない今日の危機的な状況の中において、努力目標は何か、何年計画でそこへ持っていかれるつもりであるか、お考えがあるかないか、その点を伺いたい。
  206. 大平正芳

    大平国務大臣 国債依存の問題でございますが、先ほど広沢委員にもお答え申し上げましたように、財政法原則に顧みまして、公債を出す場合は建設公債に限りたい、そして建設公債公債でございますので、これにむやみにオーバーに依存することもいかがかと思うわけでございまして、できれば五%以内というようなところが常識的な追求の目標じゃないかと考えております。  それから第二の問題でございますが、ドイツは中期計画を立てられて公債発行につきまして粗ごなしの見当はつけられて発表いたしておるようでございます。大変うらやましく思います。何となれば、ドイツの場合におきましては、御案内のように三百億ドル以上の外貨を持っておるわけでございまして、景気政策を行う場合におきましても大胆に行うだけの用意があるわけでございます。   〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 わが国といたしましては、景気政策を打ち出すにいたしましても、どうしても国際収支の土俵を割るようなことはできないわけでございますので、したがってドイツのように大胆に物事の処理ができない立場にあることは御理解をいただきたいと思うのでございまして、といって、あなたの御心配になられておりますように特例公債発行が毎年続いてまいるというようなことはどうしても避けなければならぬことでございます。経済回復期にございますることしから来年にかけまして、どうしても特例債に依存せざるを得ない状況でありますことは覚悟しておるわけでございますけれども、五十二年以降何としても極力特例債を減額することができるように持っていかなければいかぬのじゃないか、そしてできるだけ早く特例債から脱却するように努めなければならぬというのが、いま私の脳裏を去来いたしておる考えでございまして、いついつから幾らになるという見当は残念ながらまだ立ちません。
  207. 竹本孫一

    竹本委員 できるだけ早く国債依存を脱却したい、これは大臣の非常にまじめな積極的な熱意というものを随所に感ずるように文書その他承っておりますが、ただ、それにもかかわらず、私がいま申しましたように、努力目標なり、それに何年計画で到達しようと一応決意しておるのか、そういう点についてもう少し積極的な御説明がないと——われわれは一つも揚げ足取りも何もやろうとも思っておりませんし、真剣に日本経済財政を心配しながら質問しているわけですが、どうも・府の腹の底にもどこにもはっきりした具体的な計画というか目標というものがないような、非常に危ない感じを深めるような気持ちであります。これはきょうはもう時間がありませんからこれ以上申しませんが、次の機会にはぜひ……。もう少し日本財政は——だって、ドイツは現に日本以上に、貿易依存度は日本の倍以上でしょう。国際収支とよく言われるけれども、国際収支そのものも、あるいは税制の改革によりあるいは金融措置によりあるいはその他の産業政策によって輸入を抑えることも輸出をふやすこともできるわけだ。だから政策努力の余地というのはたくさんあるのですよ。だから国際収支が大変な問題で、それによってすべて影響されますというような、まあそういう意味でおっしゃっているかどうかわかりませんけれども、そういうことが国際収支に左右される、国際情勢に左右されるということも全然ないということは間違いであります。ありますが、しかし、全部それにあなた任せということではなくて、自主的な努力政策努力によって国際収支も変わる。そういう意味も含めて、ドイツが日本以上に国際収支、国際貿易に依存しておるのに、なおかつ四年計画を立てて二五・三%、日本は二六・三%、ほとんど同じようにいまは国債に頼っておるのに、四年後には五%に持っていくと一応の決意を表明している。少なくとも大平大蔵大臣たるもの、これに負けないくらいの決意と構想を示してもらいたい。これは要望しておきます。  そこで、ドイツの場合は御承知のようにその五%へ持っていくということのために思い切った増税と思い切った経費の節約をやっている。それをやらなければなりませんよ。これは私がこの前の本会議でもちょっと申しましたように、われわれの立場から見れば何となくイージーゴーイングで、余り抵抗の強いところは一切避けて通る、こんなことでは増税もできなければ経費の節約もできない。それではまた国債依存度を減らすということはなおできない。そういう意味で、先ほど申しました点にも関連するんだが、日本人の考え方、日本の政治のあり方、経済構造と、それこそ文字どおりわれわれは意識革命をやり、あるいは道義革命をやり、考え方を変えなければならぬと思うのですね。それを、問題をぶつけるのは大蔵大臣が一番適切なポジションにおられるから、私は、ドイツのとおりというのはいまの日本の政治状況ではなかなかむずかしいが、せめてドイツが取り組んでいる半分でも熱意のある姿勢を日本で示してもらいたい。いまの状況では増税もできません。いまの状況では節約もできません。今度の節約は五百三十九億だ、こんなことでは国債依存から脱却するとか、五カ年計画もしくは四カ年計画で五%に持っていくとか、全然できないと思うのですよ。だから私は、大蔵大臣たる者、勇断をふるってこの際は国債依存度の目標を設定して、それに五カ年か四カ年計画で到達する、そのためにはこれこれの増税は必要である、これこれの経費節減は必要であるということを堂々と発表さるべきである、少なくともその決意を固めるべきであると思いますが、いかがですか。
  208. 大平正芳

    大平国務大臣 御激励をちょうだいして、感謝する次第でございます。わが国財政も、竹本さんおっしゃるように、硬直化の体質から脱却いたしまして弾力性を身につけなければいかぬと思いますし、それには財政当局が不退転の勇気を持ちまして問題に取り組まなければならぬと思うのでありまして、削減すべきは削減しなければいかぬし、増税を求むべきときは求めなければならぬと思いまして、私どももそういう決意で当たらなければならぬと思っております。ただ五十一年度はこういう微妙な経済回復期でございまするので、歳入歳出両面にわたりまして大きな細工はできないのでございますので、五十二年以降の施策に備えてのいろんな準備をやる無にいたしたいと考えておるわけでございまして、その五十二年以降の歳入歳出両面にわたりましての新たな施策を打ち出すに当たりましては、どうぞ十分の御審議を通じて御理解ある御協力をお願いしたいと思います。
  209. 竹本孫一

    竹本委員 この点につきましては、いま申しましたように速やかに努力目標を決め、具体的、計画的な努力を始めていただきたい。そのためには思い切った増税も思い切った節約も必要である。ドイツの例を一々申し上げると時間がありませんから申し上げませんが、専務当局は持っておるはずだから、そういうドイツのやることが日本でできないはずはありませんので、ひとつ思い切って取り組んでいただきたい、要望いたしておきます。  次に大蔵省証券の問題でございますが、十一月末の大蔵省証券が、先ほども話が出ましたが六千八百九十億円ということであったと思いますが、数字はそれでよろしい。問題は、それをどう読むかということであります。その点について大臣にお伺いしたいのだが、租税収入がある、建設国債発行する、それでもなおどうにもならないから大蔵省証券をとりあえず出した。すなわち六千八百九十億円というのは、もう十一月末現在において日本財政はその辺の中小企業と同じようにやりくり算段がつかないで、泣き込んで、飛び込んで、やっと日銀から大部分だという五千何百億借りてきて、それで十一月の月を越した、こういう状況と判断してよろしいか。日本財政は堂々たる財政ではなくて、十一月の月を越すのにも中小企業のおやじさんと同じに日銀に飛び込んでいって短期証券で借りなければ年が越せなかった。そのときには税収もまだなかった、公債発行も大体やるだけやっておる、それで支払いになお足りないのでついに短期借り入れを六千八百億円やった。こういうふうに深刻に見るべきかどうかということについてのお考えをひとつ……。  それから、時間がありませんから倹約するのだが、あわせて、日本予算というものがことし二十一兆円とすると、月に大体二兆円なら二兆円近くの金を払わなければいかぬ。そうしますと、二兆円の切り盛りをする立場を考えると——家計でも同じだけれども、これは国庫の立場だが、国庫の立場を考えると、三千億ぐらいか四千億か見方によって違うが、三千億か四千億はランニングストックというか運転資金というか、要するに手元の流動性がないと、どこかで数字が合うのだなんて言ってみても、その日その日の支払いには困るわけです。これは企業経営の場合と同じだ。国庫だって同じだと思うのですね。だから国庫というものは常に二、三千億の流動的な余裕がないと、支払いに困る場合があるのだ。したがって私は、三千億か四千億の金は要ると思うのに、それがあるのかないのか。流動的な手元の資金というものが三、四千億円のものがないと、国庫としては非常に苦しい立場に立つのではないか。  それと、十一月末の六千八百九十億円というのは、租税収入、公債収入総ざらいして、なお支払いに困ったから六千八百九十億円を借りてきたのだ、こういうふうに見るべきかどうか、判断を聞きたい。
  210. 松川道哉

    ○松川政府委員 第一の点でございますが、大蔵省証券は、御案内のとおり年度の間におきまして支払いと収入との間にタイムラグがございますので、それを埋めるために発行されるものでございます。したがいまして、年度末には全部償還されるという条件がついております。その意味で、ある年度に仮に歳入歳出とが全部ぴしゃっと合ったという事態を頭に置きましても、その年の中でタイムラグがあり得るわけでございます。それが歳出の方が進んで歳入がそれに追いつかない姿というのが、毎年暦年末、十一月、十二月ごろに一番大きく出てまいります。その意味では、十一月、十二月が大蔵省証券を発行する月に、しばしばなっておるわけでございます。  ただ、ことしを例にとりますと、ただいま竹本先生御指摘のように、それでは本年度内の収入をもって返すのだというその収入の中に、四条国債並びに特例国債、この両方の金が当て込まれておるわけでございます。その意味で、全体の姿が少し低目になっておりまして、年度のおしまいに近くなってだんだん公債が無事に消化されてくれば、その段階で大蔵省証券の発行額がだんだん減って年度末にはこれがゼロになる、こういうプロセスをたどることになろうと思います。  もう一つ企業ないし家計にたとえての御質問でございまして、ランニングストックと申しますか、手元にどれぐらいの金がなければいけないかということでございます。この点につきましては、確かに扱っておる金は非常に大きゅうございます。その間事務の能率アップを順次進めてまいりまして、現在の段階で何億なければいけないということはいささか申し上げかねるのでございますが、と申しますのは資金需要が比較的緩い月であれば、そのランニングストックも少なくて済む、資金需給が繁忙なときであればこのストックも少しよけいなければならないということを頭に置きますと、これは非常に粗っぽい推察でございますが、無事に回るためには約三、四百億円の金が手元になければいけないのではなかろうか。ただいま先生御指摘の数字はちょっと一けた私どもの感じよりは多いのではなかろうかという印象を持ちました。
  211. 竹本孫一

    竹本委員 大臣、松川局長の意見は局長としての立場における説明であって、私が聞いているのはそんなことじゃないのです。大蔵省証券がタイムラグを埋めるための短期の債券だ、そんなことはもうわかり切っている。私がいま聞いているのはきわめて簡単なんです。それはわれわれが、先ほど最初に、民社党として非常に不満であり非常に反対な気持ちもあるけれども、何としてもこの特例法は通さないと国がまいってしまいはしないか、国民生活が大変になりはしないかと思っている危機的な気持ちがあるわけですね。その危機的な気持ちは要らないのか要るのかということを聞いているのですよ。たとえば会社で言えば十一月の支払いに困って、国債も祖税もどうにもならなくなったので日銀を中心に六千八百九十億円借りたというならば、財布は空になって、あるいは金庫が空になって、十一月の時点においては金庫が空になったからそれを借りてきて埋めたいということですかと聞いているんだ。国民にその真相を知らせたらいいじゃないか。ごまかしちゃいかぬですよ。十一月の段階において金庫は空になったのかならなかったのかということがまず第一なんです。なったから私は大蔵省証券で借りに行ったのだと思うのですよ。そうじゃないのかどうか、それを聞きたい。大臣からはっきり聞きたい。  それから第二番目は、二十一兆円の予算を消化するということになればランニングストックというものは普通にいって三千億なら三千億が要るだろう。そして一月なら一月で金融事情が緩むから、それが三千億と思っても五千億になっても結構ですよ。しかし少ないときでも二、三千億の金がなければやりくり算段に困るのではないかということを聞いているんだ。十一月現在においてはランニングストックというか手元流動資金というものがあったのですかなかったのですか、その二つを聞きたい。  十一月には祖税収入、公債収入で賄い切れないで、最後に日銀に飛び込んでいって借りてきたのが六千八百九十億円と理解すべきなのか、そんなに心配せぬでいいのか。それから十一月現在においてはランニングストックというか、いま言った手元流動性が三千億なら三千億は別にあったけれどもなお借りたのか、その辺を聞いているのです。
  212. 松川道哉

    ○松川政府委員 端的にお答えいたしますれば、ただいま竹本委員指摘のとおり十一月の末は国の金庫が空になりまして金繰りがつかなくなってこれだけの大蔵省証券を出したということでございます。
  213. 竹本孫一

    竹本委員 だから私は大蔵大臣に聞きたいのです。財政特例法を通せとかいって大蔵省の事務当局が来て説明したのは、何と言って説明した。月々六千億か七千億のものを消化していかないとことしの赤字国債、この特例法で認められた国債が消化できなくなる、おくれると集中するから困ります、それだけ説明したでしょう。それ以外だれも説明しない。それは公債の消化が少し困難になるとかならぬとかいうことはよくわかりますよ。しかしそれは聞かなくてもわかる、そんなことは。われわれが心配して、反対であっても、赤字国債特例法は何とかしてこれは通していかなければ大変だと思うのは、財政的なピンチに立っているかどうかということを知りたいからなんです。大蔵大臣大蔵大臣の責任と立場においてはっきり言ってもらいたい。日本財政は十一月においては支払い不能になったんだ、それだから特別措置としての六千八百九十億円でやっとそこを切り抜けてきたんだ、事はそれほど深刻なんだということを国民にも国会のわれわれにも言うことによって、私の言う精神革命もやらなければならぬし、特例法の通過にも協力しなければならぬのだ。何にも言わないでただ困りますからなんというようなことで物をごまかしていくなんということは最も許されないことだ。  だからもう一遍大蔵大臣から、日本財政はそこまで危機に来ているかどうか、危機に来たか来ないかの責任の問題は先ほど論じましたが、しかし危機の真相というものをもう少し国民に教えなければいかぬ、その立場ではっきり聞きたい。
  214. 大平正芳

    大平国務大臣 大蔵省証券の発行は、手元に支払い元がない場合に日銀から融通を求めるわけでございます。金があるのに日本銀行に対しまして蔵券を持ってもらうというようなことはすべきでないわけでございまして、六千数百億というのは、まさにそれだけの必要があって、金がないから蔵券の発行をいたしたわけでございます。しかし、そのことは直ちに財政危機を物語るものではないので、例年資金の需給から言ってそういうことはあり得るわけでございまして、危機はそのことではなくて、この特例法が皆さんの御同意を得られないで、この月内にこれが成立しないということになった場合、補正予算でお認めいただきまして蔵券の発行限度を二兆二千億まで拡張していただいておりますけれども、それでも足りません。したがって国庫といたしましては金繰りがつかなくなるわけでございます。したがいましてぜひお願いしたいということで御審議を願っているところでございます。
  215. 竹本孫一

    竹本委員 ちょっといま聞き漏らしたかもしれませんが、こういうピンチに立つことは財政のやりくりの過程の中ではときどきあるか、私は今度のように金庫が空になったのはこの十一月をもって初めとするのではないかと思うが、前にもそういうことはちょいちょいあるのか、その辺一つ聞きたい。  それからもう一つ、これからだんだん本論に入るようなことになるんだが、先ほど理財局長の説明では、ある時点ではそういうこともあると、こう言った。ところがある時点ではないんだ。これから私は詳しく数字を言いますが、十二月はもっと悪い。いま大臣が半分言われたけれども、もし特例法が通らない場合は十二月はもっと悪い状況になる。だからある時点なんというようなことでちょいちょいあってもいいようなことを言ってみたり、過去にもそういう例があったから安心しろというようなことでもうまくいかない。その辺どうですか。過去に金庫が空になった例ありや否や。
  216. 松川道哉

    ○松川政府委員 御指摘の金庫が空になったということの定義と申しますか、それでございますが、金庫が空になったということは、大蔵省証券を出したから金庫が空になったのではないか、そういう意味で、大蔵省証券を出した例があるかということでございますれば、たとえば十二月をとりますと、古くは昭和三十四年、その後は三十九年から四十六年まで毎年大蔵省証券を発行いたしております。十一月についてもほぼ同様でございます。ただ十二月の状況、ことしの状況は、過日十一月十九日に当委員会でも御説明いたしましたが、十二月の国庫の資金繰りの見込みを申し上げますと、一般会計の支出が二兆八千億円あり、収入は一兆六千億円と見込まれておる。したがって差し引き一兆二千億円不足いたします。さらに特別会計において七千億円の支出の超過がある。そのうち、すでに補正予算で御承認をいただきましたので、いわゆる四条国債発行の手続を進めておりまして、この分で賄い得るものが二千六百億円でございます。そういたしますと、十二月中だけの資金の不足額をとりますと、一兆六千四百億円と見込まれます。これに先ほど申し上げました十一月末の大蔵省証券の発行高六千八百九十億円を加えますと二兆三千二百九十億円ということで、補正予算をもって御承認いただきました大蔵省証券の発行限度額二兆二千億円を超すわけでございます。そこで私どもは、先ほど竹本委員の御質問の中にもございましたが、国債の消化をなるべく平準化するという作用もございますが、あわせてこの不足を補いますためにぜひこの特例法を御承認いただきまして、十二月中にこの特例法による国債二千四百億円を出すことによって御承認いただいた大蔵省証券の限度額の範囲内でこの金繰りをつけたいというのがただいまの状況でございます。
  217. 竹本孫一

    竹本委員 十一月、いま金庫が空にならなかった。それは、短期証券を借りてきてやったから空にならなかったというのは説明としては説明になるでしょうけれども、問題の本質的なものじゃない。どうにもならぬから借りてきているんだから、借りてきた金があったら、金庫が空でなかったなんというのは、これは詭弁というやつでしょう。そういう点は、私が言うのはそれを揚げ足を取ろうというのではないが、それほど財政危機に来ているということをなぜもう少しはっきりみんなに言わないのかということを言っているんですよ。詭弁をどうのこうの言うのではない。  さらに十二月は、いまも理財局長が一通り説明しましたように三兆五千億支払いが来ている。——二つほど質問しましょう。三兆五千億支払いが来ている。税収入は一兆六千億しかない。そうすると一兆九千億足らない。そこで五千億円は公債で出して、二千六百億円の建設と赤字二千四百億を出して、そしてあとの一兆四千億円は大蔵省証券で賄っていこう、こういうんでしょう。そうですね。  ところが大蔵省証券は六千八百九十億円すでに使っておるから、この間の補正予算で広げてみたけれども、残りは幾らあるかというと二兆二千億円からその六千八百九十億円を引けば一兆五千億しかないのでしょう。そうでしょう。その一兆五千億の中から一兆四千億出すんですよ。そうすると、もう十二月にあと千億円しか残らない。そしてもし特例法が通らない場合を考えると、千三百億円足らなくなる。二千四百億円の国債を出して千百億円上がるんだから、二千四百億円の国債が通らないか、あるいは通っても非常におくれた場合には十二月の支払いにはそれこそ千何百億円、約千三百億円ばかり勘定が合わないで支払いに困るという状態になる。それをならないと言われるのか、なると思われるか、その辺が一つ伺いたいし、第二には、そういう場合に特に通過がおくれた場合でも、その場合には支払いの繰り延べをやらなければならぬが、ボーナスの繰り延べをやるのか、あるいはその他の公共事業の支払いを繰り延べるのか。もし通らない場合は——ないように努力しますというのじゃなくて、実際問題なんだから大臣考え方を承りたいのだが、通るのがおくれた場合、通らなかった場合には千三百億円近くの支払い不能になるではないかという点が一つ。したがって、それは支払いをおくらして引き延ばす以外に手がないと思うが、ほかに妙手がありますかということです。
  218. 松川道哉

    ○松川政府委員 大筋はただいま御指摘のとおりでございます。  そこで、先ほども御説明申し上げましたが、一般会計、特別会計を含めまして、三兆五千億、特に一般会計で二兆八千億の歳出があるわけでございますが、どうしても金繰りがつかなくなれば御承認いただいた範囲を超えて大蔵省証券を出すわけにもまいりませんので、この大きな歳出の中で何か金繰り的に支払いをおくらしてもいいものがあるかどうか、そういう検討を始めなければいけない、このように思っております。
  219. 竹本孫一

    竹本委員 大臣、この問題は、もちろん局長さんは局長さんの立場で御答弁いただいているわけですけれども、最小限度の常識的な、しかも大事な数字をぼくは挙げて、支払い不能になるのかならぬのかということを聞いているわけですね。ぼくは大臣から聞きたいのです。それは恐らく下手をすると、そういうことを言っては失礼かもしらぬが、閣僚だって財政特例法は非常に必要だということは言うかもしらぬけれども、どのくらいいまピンチに来ているかということを知らないままで大事だ大事だと言っている人がおるかもしれない、いるとは言いませんがね。少なくとも、大蔵大臣がこの委員会において局長から一々数字を聞かなければわからないのか、めんどうくさいから局長に答弁さしておるのかそれは知りませんけれども、私はこの委員会の重要性と問題の重要性を考えれば、十二月には十一月はこういうふうである——ぼくは関係ないことを言っているのではないのですよ。特例法に直接関係のある問題を言っているのだ。この重大な問題について大蔵大臣としての責任ある立場で、もしこれが通らない場合、おくれた場合にはこういうふうに数字の上で困難が出てくるんだというぐらいは大臣が答弁されてしかるべきだと思います。
  220. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり、計算上千三百億は支払い不能に陥りますので、歳出からそれだけを繰り延べる措置を別途講じなければならなくなりますけれども、それは十二月だけのことでございまして、一月一日から新たにまた支払いが回ってくるわけでございます。特例法がいつ国会の御承認を得られるかこれはわかりませんわけでございますから、二兆二千九百億円というものが、この御承認を得られない限り支払い不能に陥るわけでございまするので、財政の執行が十二月以降全く不能になるというのが実情でございます。
  221. 竹本孫一

    竹本委員 十二月だけの話というのは、数字から言えばそうなりますね。しかしたとえば会社が倒産する場合にも、この手形が落ちないそのときだけの話ですよと、こう言ってみても、会社の場合は倒産してしまうのですからね。それと同じに、ニューヨーク市みたいな場合もあるけれども、国家だから大分情勢が違いますけれども、十二月だけの問題であとはいいんだ、こういうようなそれこそ楽観的な話をされても困るんだ。十二月に年が越せないというのは越せないんですよ。本当はその段階において日本財政は一遍破産しているんだ。それほど重大な危機にあるということをぼくは思いますから、それは十二月だけで、一月は金融が確かにゆるみますから、金はまた入りますよね。しかしそれは会社だって、十二月に破産する会社は一月にはうんと入るかもしれないが、十二月の手形が落ちなければ、そのとき会社は破産するんだから、国家といえどもその瞬間においては破産状態にあるんだということをやはりはっきり言わなければ、来月金が入りますなんて言ってみても、会社はつぶれるんですよ。まあこのぐらいにしておきますがね。  それから最後にもう一つ、これはいまの問題と関連してちょっと法律論になりますが、簡単で結構ですが、政府のお考えを伺いたい。  それはいまもお話しのように、支払い不能に陥るといったような深刻さの問題は別にして、もしこれが通らなかった場合には支払い不能になると言っただけじゃ政治にならない。会社でも支払い不能になっても、何とかしてあっちからも無理して金をつくるとか、特別な方法をしなければならぬ。  そこで時間がないから私の方から積極的に申し上げますが、たとえば旧憲法の七十条を見れば、内外の状況によってどうにもならないというときには、政府が特別の手を打つことができるようになっておる。勅令によって財政上の必要な処分をするという乙とになっておる。ところが今日は財政民主主義の時代である。これはアメリカ司令部が特別に注意をして国民の、あるいは今日時点では国会の了承を得ない金はびた一文といえども使ってはならぬということになっておるでしょう。そうですね。その原則を貫くために、もし赤字公債特例法が通らない場合には、いまおっしゃったように支払い不能になると言いっ放しではこれまた全く政治になりませんので、政府はどういう苦心をされるのか。  そこで私が伺いたいことは、政治的にはどういう工夫、努力をされて支払い不能を解決していかれるつもりであるかという点が第一点。  それから第二点は、いまの憲法は欠陥憲法だという議論がこの前出たのだけれども、いまの憲法の法的な構えというものは、そういう場合には旧憲法七十条はいまありません、財政民主主義からそれは許さないということになっておる。その場合に、いまの法律構造の中ではいかなる対応法律的に考えられておるか。法律的にですよ。政治的に努力をします、あるいは政治的にそういうことがない法案を早く通します、あるいはいま政治的に何とか別に考える、その考えがあればその考えを承りますが、それらを含めて、支払い不足になりますというだけではどうにもなりませんから、支払い不能にならぬようにするための憲法的、法律措置は、いかなる対策が法律考えられておるか、これは重大な問題ですから、最後にはっきり伺いたい。
  222. 高橋元

    高橋(元)政府委員 大臣からお答えになります前に、法律問題でございますから、お答えを申し上げます。  旧憲法の七十条にあります財政上の緊急処分というような措置は、新しい憲法では一切封ぜられておりまして、御承知のとおり憲法の八十五条で、「國費を支出し、又は國が債務を負擔するには、國會の議決に基くことを必要とする。」という規定がございます。したがいまして、先ほどから御指摘のあります国が特例法を出す、特例債を発行することによりまして新しい歳入を得るという場合には、特例債の発行額につきましても国会の御議決をいただき、それから発行権限につきましても財政法四条を排除する、特例をつくるという法律の根拠をいただく必要がございます。したがいまして、先ほど来お話の件につきましては、いま御審議をお願いしております特例公債法を一刻も早く御可決いただくという以外には道がないわけであります。
  223. 竹本孫一

    竹本委員 国会の議決があれば国費の支出やあるいは債務負担行為ができる、これはおっしゃるように八十五条に書いてある。しかし、この八十五条の適用が可能である、すなわち、国会の議決が得られるくらいならば、当然特例法は通りますよ。そうするとそれは答弁にならない。私が聞いているのは、国会の状況によって特例法が通らないような場合に、いまの憲法のたてまえから言って、昔の財政上の緊急処分はできないということになれば、いかなる手段でこれをカバーするお考えですか、法律的に何が可能であるか、その点についてもっと明確な答弁を聞きたい、こういうことを言っているんです。
  224. 大平正芳

    大平国務大臣 政府として一切憲法上許された規定はないわけでございまして、特例法の国会の議決があるまで支払い不能に陥ったものの支払いの道はないわけでございますので、これを差しとめておくよりほかに道はありません。
  225. 竹本孫一

    竹本委員 道がないということではどうにもなりませんから、それは私が調べたところによると、新憲法ができるときに、法制局であるか、あるいは大蔵当局であるか、細かいことは知りませんが、いざという場合に、たとえば国会が開けない——それは地震のための場合があるか、何の場合があるかわかりませんけれども、物理的に国会が開けない場合がある。そういうような場合に、この八十五条ももちろん役に立ちません。それから、いま政治的に与野党の激突、不信感が激しくて、何としても特例法も通らないというような場合には、この道がだめな場合にはこの道でいくという法的措置が、対応考えられていなければ万全でないと思うのですね。それが今日一体あるのかないのか。当時の事務当局は、どうしてもこれがないと、いざという場合に政府は立ち往生することを心配したということまで私は聞いておるが、しかし、その後の政府は、自然増収があるから当分安心だというような形でずっとのんべんだらりとやってきておる。それに対する対応は、だから政府自身も忘れておったか、考えていなかったのか、あるいは、考えてこういう結論が出ておるというならそれを承りたいのですが、私の見るところでは、特例法が通らないような場合、あるいは国会がそういう法案の議決をやらないような場合、あるいはやろうと思っても地震かなにかでやれないような場合に、政府は緊急処分が全然できない、民主主義のたてまえから言えば、国民の代表である国会が了承しない金はびた一文といえども使わないのが民主主義なんだ、それはよくわかりますよ。それはよくわかるけれども、しかし、その民主主義を一応原則としながらも、その線に沿いながらの新しい穴埋めの対応がなければどうにもならぬじゃないか、その点についていま大蔵大臣はどういうふうに考えておられるかということを聞きたいのです。  法律論はまた改めてゆっくりやりますが、ただ、私がいま聞きたいことは、八十五条では、国会を開いても通らない場合、あるいは物理的に開けない場合、そういうような場合には、いまの憲法は、私の理解する限りにおいては法的な対応措置が欠落しておる。その欠落を認めておられるかどうかということを聞いているんだ。これは大事なことですよ。
  226. 大平正芳

    大平国務大臣 政府にそういう場合になすべき手段はないわけでございまして、憲法は国会の良識を期待した憲法であると思います。
  227. 竹本孫一

    竹本委員 大蔵大臣としては、いま答弁の限界はその辺だとぼくは思いますよ。答弁の限界はその辺にあると思うけれども、政治的フリクションがひどくて国会で通らない場合——通るということを前提にしておる、こう言うのだけれども、通らない場合、それから、いま言ったように政治的ではなくて物理的に国会が開けない場合に、しかも一方に民主主義という大原則がある。国会の了承しないものはびた一文といえども使えないというその大原則を踏まえながら、物理的に国会が開けない場合、政治的に政府の案が通らない場合には、政府としてはこうやるのですということがないと、十一月、十二月、もうどんどん支払い不能の場合が重なってきているときに、支払い不能ですという答弁だけになってしまう。この問題に対して今後どういうお取り組みをやるお考えであるかを承って終わりにしたいのですがね。
  228. 大平正芳

    大平国務大臣 幾ら竹本さんと私との間でやりとりをやりましても、新たな権能が政府に与えられるわけじゃございません。憲法は、国会の議決が得られない限り、びた一文もわれわれは歳出の権限が与えられてないわけでございます。それで、今日、最後の手段といたしまして、財政特例公債発行の権限をお願いいたしておるわけでございます。もし、それが認められないということでございますならば、政府としてはその限度において支払い不能に陥るわけでございまして、私としてはなすべき手はございません。ただ、先ほど申しましたように、国会は国権の最高機関でもございますし、良識の府でもありまするし、万々そういうことはないものと私は期待いたしております。
  229. 竹本孫一

    竹本委員 最初に言いましたように、信ずる者は救われるということで、とにかく国会の良識を信じてそういうことはないであろうと念ずる以外には対応方法はない。しかしながら、それは国会の良識の方だ。地震 雷、これはどうにもならぬ。その場合に対しては、いまの憲法は対応がないというふうに思うんだけれども、改めてこれは宿題としてお願いしておきたい。政府は、この憲法はその意味において欠陥はないと考えられるか。それから第二には、憲法の精神を生かしながら何とか穴を埋めていかなければいかぬのだから、対応をするための、民主主義の大原則を踏まえながら今後どういう努力を具体的にやられようとするのであるか、その辺をひとつまじめに前向きに、かつ具体的に検討しておいていただきたい、このことを要望して質問を終わります。
  230. 上村千一郎

    上村委員長 松浦利尚君。
  231. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 きょう、先般の質問で要求をしておった資料の説明があるはずであります。その説明があった後、補充質問をさせていただきます。
  232. 高橋元

    高橋(元)政府委員 計数の問題でございますので、私から御報告させていただきます。  財政制度審議会の中間報告の中で、財政収支の試算というのをやっておりますが、そこで仮定されておりますもろもろの計算方法、計算前提というものをそのままとりまして GNPの伸び率を一二を一五に置きかえるということで、財政制度審議会の財政収支の試算を置きかえてみますと、五十五年度における収支の状況というものは次のようになります。  普通歳入不足額を全額公債発行により調達すると仮定した場合には、五十五年度における公債依存度は、五十年度の歳入不足一兆円、二兆円、三兆円、それぞれのケースに対応いたしまして、それぞれ一四・三%、二〇・七%、二六・九%と相なります。これは財政制度審議会のもとの数字で申しますと、一六・四、二二・七、二八・八に対応するものでございます。それから五十五年時点での公債残高は、減収一兆円、二兆円、三兆円のケースに対応しまして、四十兆円、五十二兆円及び六十三兆円と相なります。財政制度審議会の中間報告での計算では、四十兆円、五十一兆円、六十一兆円でございました。
  233. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 この資料は、先般の委員会で資料要求し理事会の議を経ておると思うのでありますが、各委員にお配りをいただきたいと思うのです。そして、これは非常に大切な資料でございますから、五十五年度の一般会計収支試算というものも財政審が出した中間報告のデータも、ぜひひとつ大臣はお持ちをいただきたいと思います。なお資料については、全委員にお配りをいただきたいと思います。数字でありますから質問がわからないと思いますので、その資料を配っていただきたいというふうに思います。
  234. 上村千一郎

    上村委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  235. 上村千一郎

    上村委員長 速記を始めて。
  236. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま資料が各委員の手元に参りましたが、御案内のとおりに財政制度審議会の中間報告は一つのモデルケースを使って、これは非常に粗い数字だということは財政審も断った上で、一つの案をここに提示をしておるわけであります。その中心になっておりますものは、一つはこの財政審の内容というのは名目経済成長率を一二%に見ておるわけであります。そして租税弾性値は一・二ということで試算をした数字がここに出されておるわけであります。これはいま皆さんのお手元に配った資料とは違う資料でありますが、そういうケースであります。  ところが、この財政審の答申の中で、実は名目成長率一二%というのは少し低いのではないかという意見があるわけであります。したがって、この名目成長率を一五%に置きかえて、租税弾性値は一・二、その他の計数はすべて財政審にならった数字が実はここに出された数字であります。御承知のように名目成長率一五%というのは、現状の物価から判断をいたしますと、五十五年度段階では非常に高い名目成長率だということが恐らく想定されるわけでありますが、いずれにいたしましても、その一五%を置きかえてみて出した数字でまいりますと——これは初めて大蔵省からいただいた数字であります。大蔵省自身もこの財政審の中間報告で出した数字でありますから、大蔵省としての意見その他はないとは思うのでありますが、しかし数字は大蔵省が提出した数字だという理解を私はするわけであります。これをそのまま財政審の計数に当てはめてまいりますと、実は五十五年度に普通国債残高が六十三兆という膨大な数字になるという計数が出ておるわけであります。公債への依存度は二六・九%という数字になります。  そこで大臣、今度は財政審の中間報告の指数の方を見ていただきたいと思うのでありますが、この財政審が報告をした名目成長一二%段階における社会保障・恩給関係費の三兆円減収の場合の平均伸び率を一五%、歳出の伸び率を一五%、こう見ておりますね。その他の経費の伸び率を一二%、こう見ておるわけであります。その他の経費一二%というのは名目成長率そのままどんずばりであります。ところが、御承知のように名目成長率一二%ということは、人件費とかあるいは当然増経費等を見込んでいきますと新規経費というのは全く見込まれない数字なんですね。大臣、その点は間違いありませんでしょう。一二%増ということは当然増経費以外はもう新規事業はできないという数字でしょう。一二%の伸びでは新規事業は何にもできませんでしょう。その点どうですか、まず承っておきたいと思います。
  237. 高橋元

    高橋(元)政府委員 一般会計の歳出から社会保障・恩給費とそれから国債費を除いたその他の経費というもので過去の伸びを見てみますと、四十年から四十五年、これがGNPに対して〇・九三であったわけでございますが、四十五年から四十九年、これには一・一七でございます。四十年代の十年間を通じまして一・〇四ということでございます。したがいまして、GNPの伸びが一二%の場合に、一般会計のその他の経費の伸びをGNPと同じ伸びと見るのはかなり低い想定であると思います。
  238. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ですからいま言われたように、これは大変低い数字なんです。  そこで、お配りいたしましたこの数字を見ていただきたいと思うのでありますが、昭和五十五年度でこれは名目経済成長一五%と見込んだ場合、昭和五十五年度に公債に依存をしないということを前提にいたしますと、この小計のところが税収、税外収入——剰余金はもうゼロでありますが、これを足した分が公債に依存をしない増加分ということになりますね。そうすると、公債に依存しないということを前提にしますと三十四兆三千百億ということになるわけですね。四条公債にも依存しない、何にも依存しないということになると三十四兆三千百億。大臣、いいですか。  そうすると、その三十四兆三千百億を歳出に見合うということにいたしますと、歳出に見合うのは、歳出を三十四兆三千百億で抑えればいいわけですが、それを昭和五十年度の当初予算二十一兆二千八百八十八億円に置きかえますと、昭和五十五年度に公債に依存をしないということになれば、昭和五十年度当初予算に対して一・六二倍しか歳出は増加できないということになるわけですよ。そこで歳出を五年間抑えなければならぬ。そうすると、この五年間で歳出の増加を一・六二倍に抑えるということは、もう全く新規その他はやらないということになるのですね。わずかに一・六二倍でありますから。ということになってくると、どうしても公債依存というものは、現状のままいっても、しかも先ほど言いましたように、わずかに一二%ということは次長が言われたように新規事業は何にもしないということに非常に厳しく抑えた数字です、これは。その数字を基礎にして持っていったら、実質的には昭和五十五年度はもう何にもできない、結局、公債に依存する以外に方法がないという結果になってくるわけですよ、この数字からいきますと。  そこで、これは大臣にお尋ねしたいのですが、この前あなたは五十二年度までには公債への依存率を少なくしていきますと、こう言われたけれども、実質的に、いま出されたこの五十五年度の一五%という非常に高い名目成長率をもってしても、公債に依存をしないということは数字的に不可能だ。ということになれば、昭和五十五年度までに歳出をカットするか大幅に増税する以外に道がない。ところが、歳出をカットする、というのは、先ほど次長が言われたように非常に低く抑えておる数字を見ても、もう何にもしないぐらいに抑えてみてもどうにもならない。そうしなければどうにもならぬという数字。そうでしょう。ということになりますと、今度のこの特例法というのは、償還計画の問題を私は厳しく追及をいたしましたが、その償還計画に対して、予算委員会で阿部委員質問に文書で回答なさった表現、そして私の質問に対してそれを補足された答弁、これは全く抽象的なものであって、十年現金一括償還という歯どめがかかっておりますと言われるけれども、実質的には返されないじゃないか。十年たっても返せないじゃないか。また、公債の借りかえはやらないと言うけれども、実質的には借りかえをやらなければならぬような状態になるじゃないか。こういう点を考えますと、この法案が仮に通った、後世代の国民にツケを回す、後世代の国民にツケを回すものは非常にあいまいなこういう数字だ、こういう言葉だけだ。この法案を通した政治家としての責任というものは大変な問題になってくるのじゃないか。  ですから、大臣にこの際はっきりしてもらいたいのは、あなたは十年一括現金償還と言われるけれども、それは不可能ではないですか。この数字からいってできない。借りかえしないと言われるが、借りかえしないとやっていけない。もうやりくりができない。そうでしょう。その点はどうですか。
  239. 大平正芳

    大平国務大臣 その試算は松浦さんの御理解のとおりでございまして、大変厳しい内容のものになることは予想されるわけでございます。したがって、歳出でよほど思い切った削減が考えられ、同時に、歳入におきまして相当の増税が可能であるというようなことが満たされない限りは、私どもが申し上げておりますように、五十二年度以降にわたりまして特例債を減らしてまいるということもなかなか容易ではないと思うのでございます。そういう展望になるがゆえに、国民の選択の問題といたしまして、特例債がふくれ上がってまいり、財政インフレを招来するという道を選ぶか、歳入歳出両面にわたりまして厳しい試練の道を選ぶかという大きな選択がこれからの問題になってこようと思うのでありまして、私は、日本民族は賢明でございまするので決して間違った選択をされることはないと思いまするし、われわれ財政当局といたしましても、誤った選択が行われないようにできるだけ十分な資料を整えまして、賢明な判断を引き出していかなければならぬのではないかと考えております。
  240. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大臣大臣の言われることは、この前の抽象的なものをさらに補足して抽象的に言われるだけですが、ここに資料があるわけです。いまの資料は名目成長一五%という非常に高い数字です。これは常識的に考えて非常に高い数字ですよ。その一五%を入れて、しかも租税弾性値を一・二で見ておるわけですね。ですから、その租税弾性値を一・三にしたときはどうだ、こういうふうに言ったら、いや、それはもう先生、同じです、いま年度内予算編成やっておる最中ですからもう同じだというふうに理解してください、そんな資料はちょっと勘弁してくださいと言われるのでつくらなかったのですから、仮に租税弾性値を一・三にしてみても内容的には変わらぬということは大蔵省も認めておられる。いいですか。ですから歳入の増加は、税収は一八%ずつ増加していくわけですよ。現状のままでいったら一八%ずつ歳入増加がある、減税も何もしないということになれば。これは実際は高い数字なんですよ。そしてこの財政審が言っておると同じような計数でいくと、社会保障・恩給関係費は一八・三%伸び率がある。その他の経費については新規事業を見込まなくても、ぎりぎりのところでも一五%の名目成長率に抑えるということをして、これでは公債金に依存する、公債金収入は十二兆六千百億必要だというのだ。五十五年度の国債残高は六十三兆に達するというわけですよ。どんなに考えてみてもこれは十年で償還できないし、毎年毎年特例債に依存せざるを得ないのじゃないですか。  それを大蔵大臣、いま歳出をカットすると言われましたが、大幅に歳出をカットすると言っても、どこをカットしますか。もう限度でしょう。昭和五十五年度までの名目成長一五%に抑えた収入合計が三十四兆三千百億ですよ。それに見合った歳出ということになれば、それはもう何もできぬですよ、率直に言って。公債発行せざるを得ない。四条公債発行してもなおかつ赤字公債発行せざるを得ないでしょう、これでいったら。これでぎりぎりの数字ですよ、全くぎりぎりの数字。だから、歳出をカットされる、歳出をカットされると言うけれども、そんなに大幅に四兆も五兆も歳出カットできる部分というのはないでしょう。そうすると、逆に今度は大幅に増税せぬといかぬ。  ここに経済企画庁の経済審議会の分科会で討議した資料があります。ここでその租税負担率を幾らにするかということで、ずっと第一のケース、第二のケース、第三のケース、第四のケース、第五のケースとして出しておる。租税負担率をGNPに対して二一・七、二七・六、二六・二、二四・八、二六・〇、あらゆる外生変数、内生変数等を入れて試算をしておる。この試算を見ても、やはり税収のアンバランスが出るというふうに経済企画庁も出しておるのですね。ということになりますと——この経済企画庁の数字は大蔵省にも行っておると思うのです。しかも、これは大蔵省で出された数字。こういったもので計算をしてまいりますと、一体そういう抽象的なことでいいのかどうか。  実際に私は大蔵大臣の気持ちもわかります。一寸先はやみだからわからぬということもわかりますよ。しかし、少なくともこういう非常に粗っぽいモデルケースだけれども、一応ここに試算が出た。これに対応して一体どうなるのかということをこの際、資料としてわれわれに出していただいて、いや、あなたの言っておることは杞憂ですよ、大丈夫です、この部分についてはこのように大幅増税いたしますよ、租税弾性値はこれだけ引き上げます、租税負担率はこれだけになりますよという数字を示していただければ、概算的なものを私たちはつかめるのです。そういう資料は出るのじゃありませんか。正確なものでなくていいのです。この数字に合わせて一体どうなるのか。しかも、非常にこれは厳しい歳出ですからね。非常に厳しく一般の経費についてはしぼっておる数字ですから、その数字くらいは出していただいた方がいいのじゃないでしょうか。仮にこの法案が通ったとしても説明がつかない。出せるのじゃありませんか。先ほどもいろいろな委員の方が質問しましたけれども、私は大蔵省というのは生きたコンピューターだと思うんです。いつも計数をいじっておられるのだから、こんなものはすぐ出ると思うんです。資料を出してみてくださいよ。  私はなぜ心配するかというと、十年たってみたけれども返せなかった。返せないからこれはもう財政法四条を改正してしまえ。返せない……(「返せる」と呼ぶ者あり)返せると言っても、いま言ったように返せないのです、数字でいったら。大臣、この数字で返せると言うなら、どんなふうにして返すのですか。どうしても私は抽象的であり過ぎると思うのです。返せると言われても返せないのです、この数字からいったら。返せる数字というのは、粗っぽくていいですから、これを参考にして出してください。どうですか。
  241. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ただいまの松浦先生のお話でございますが、私どもこの財政制度審議会の中間報告に従って、その計算前提をとりまして、御指示によってGNPを一五、租税弾性値を仮に一・二と置いた計算をしたわけでございます。したがいまして、歳出の欄が社会保障・恩給費で一八・三の伸び、それからその他経費で一五の伸び、したがいまして歳出の合計で一七・一の伸び、これは約束事でございますから、そういう前提で伸びておるわけでございます。  ちなみに、四十年代にどうなっておったかということでございますが、四十年代の十年間を通じますGNPの伸び率は一七・一でございました。これに対して社会保障・恩給費の伸びが一九・七、それからその他経費が一七・七でございますから、先ほど私が申し上げましたように、その他経費のGNPに対する弾性値は一・〇四でございます。しかしながら、四十年代の前半ではその他経費の伸びというのは各年GNPよりもかなり低くなっておりまして、たとえば四十一年では〇・九九、四十二年では〇・七二、四十三年では〇・九五、四十四年では〇・九二というふうにかなり低くはなっておるわけでございます。したがいまして、GNPの伸び率が今後一五%という想定を置きました場合に、歳出合理化についてさらに努力をして、これで見られておりますように、GNPとその他経費の伸び率とは等しくなるという想定をさらに圧縮することは十分可能ではないか、またそういう努力をせねばならぬというふうに考えております。
  242. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それはわかるんですよ、押さえることは。だから、それを押さえたらどうですかというのは、歳入の方は名目成長率一五%で見て、歳出の方はこの財政審の名目成長を一二%の歳出を見たらいいわけですよ、これは圧縮しておるのだから。五十五年度に歳出見込みはこれでいくわけです。こっちの一二%の伸びのものを使うわけです。歳入の方は一五%の方を使うわけです。それでやったってバランスしないでしょう。全然バランスしないじゃないですか。圧縮する圧縮すると言ったってバランスしないのですよ。五十五年度に圧縮しようがない。これは数字だから、言葉じゃないのです、数字だから見ればわかるのでしょう。そういう言葉を言えば言うほど矛盾を感ずるから、大臣どうですか。これはもう一遍資料を出してくれませんか。すぐ計算できる。資料を出してください。返せるかどうかぴしっとしてください、数字があるんだから。
  243. 大平正芳

    大平国務大臣 歳入の方につきましては、たびたび本委員会でも御説明申し上げておりますように、五十一年度は現行税制を洗い直してみる年にいたしたいということでございまして、一般的な増税ないし減税を考える年ではないというように私は考えておるわけでございまして、いま税制調査会におきましても、その洗い面しの問題と租税負担率の問題を二つ御諮問申し上げて御検討いただいておるわけでございます。したがって、いまちょうどそういう作業にかかったわけでございまして、松浦さんの御要求は、それからさらに税制の中身に入りまして、今後どういう税目にわたってどういう増税考えるかというようなことにまで及ばなければならぬことになりますので、いまの段階におきましては、せっかくの御要求でございますけれども、具体的に歳入につきまして年度別にこういう見当になるというようなことを御提示申し上げる用意はないわけでございます。いまこういう段取りで作業を始めておるというように申し上げておるわけでございます。  歳出につきましては、いま主計局の方からもお話がございましたように、あくまでひとつ試算として出てまいりました数字をごらんになりまして、いかにも窮屈であるということはあなたの御指摘のとおりに思っておるわけでございまして、したがって、私どもこれから切り込んでまいりますには、よほどの苦労が要ると思うわけでございますけれどもわが国健全財政、健全な国民経済というようなことを考えてまいりますと、いかに苦しくてもこの責任を回避するわけにいかぬと思うわけでございまして、五十一年度の予算編成に当たりましても、そういう決意でいませっかく作業にかかっておるところでございます。  具体的な数字をいま示せ、この場で示せという御要求でございますけれども、そういう数字の提示は時間をかしていただかなければならぬわけでございますので、いまそれを提示せよということにつきましては、ひとつ御勘弁を賜りたいと思います。
  244. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は無理を言っておるつもりじゃないんですよ。大蔵省から出されたのは、数字としてはこれだけなんですよ。ですから、この数字を基本にしていま計数的な御質問を申し上げておるわけですよ。さっき主計局次長は、その他の一般経費の一二%増というのは非常に窮屈な数字だと言っておられるのですよ。だから、歳出をカットすると言ったって、一二%増でいったら五十五年度にはカットできないですよ。だから、残されている道は歳入増でしょう。歳入増しかないんですよ。歳出カット、カットと言うけれども歳出カットというのは、五十五年度までたっていきますと、いろんなものをカットしていくけれども、実質的になべてみると五十年度に対して一二%の増加にしかなっておらない数字がここに出てきておるのです、窮屈なものが。そうでしょう。そうすると、あとは歳入をふやす以外にない。そうすると、歳入をふやすということになれば四兆近くの歳入をふやさなければいかぬわけですから、建設公債、四条公債以外の赤字特例公債発行しなければいかぬだろう。ということは、それに見合う増税といったら、もう物すごく大幅増税ですね。大幅増税ですよ、極端な言い方をすると、そんな大幅増税が仮にできないとすると、増税幅を少なくしなければいかぬ。歳出を抑えながらもなお増税幅を少しずつでもふやしていくとしても、五十五年度までは特例債に依存せざるを得ないという数字は、私はこの数字で読み取れると思うのです。そういう具体的なことでも出せないのですか。ただ、大丈夫です、だめです、それだけでございますか。
  245. 大平正芳

    大平国務大臣 いや出さないとか申し上げているわけではなくて、歳入の方のことにつきましては、五十一年度は一般的な増税ないし減税は考えていない。いま現行税制の見直しと負担率の問題を税制調査会に御審議をいただいております。その審議を経た後で、財政状況から増税の問題について御検討をいただくようになるかもしれません。それがどういう税目についてどういう幅のものになりますか、それはいまそこで出せというのは多少私の方としては時期が早いわけでございますので、そういう時期まで待っていただかなければならぬわけでございまして、いまの手順といたしましては、税制調査会で現行税制の見直しと負担率の検討を願っておるのがいまの段階でございます。そういう新たな増税問題というような問題が出てまいりました場合に、それを十分こなすだけの用意を五十一年度じゅうにしておかなければならぬと考えまして、その用意をいたしておるのが、いまの段階の私どもの仕事でございますと申し上げておるわけです。
  246. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私たちは、いま特例法の審議をやっているわけですよね。来年も特例債、再来年五十二年も特例債に依存せざるを得ない。そうすると、この資料でいくと、五十五年度までまた特例債に依存しなければいかぬという状況です。税制調査会の方には資料が出て審議していただいておるけれども、国会議員のわれわれの方にはそういう資料が出ずに、あちらの方で御審議いただいておりますから待ってくださいということで、われわれの方にはこの法律を審議する段階でそういう資料はお示しいただけない。どうも私はその点は理解できないのですが、なぜですか。  それじゃ、もう一つ。この前佐藤委員質問しましたね。それでは法律の中に借りかえはしない、そういう条文でもぴしっと入れるということになれば、また一つの歯どめになりますね。結果的に借りかえもせざるを得なくなるわけですよ。だから私たちがそういう不安を持っておるなら、法律的にそれでは借りかえはいたしませんという条項を入れるかどうかしてもらわないと、われわれは非常に不安です。
  247. 大平正芳

    大平国務大臣 試算に基づきまして五十五年度の展望を描いてみると、あなたが御心配になるように公債残高は六十三兆にもなり、公債依存度も二六・九という依然として高い依存率を記録することになる、したがって、特例債から早く脱却すると政府は言っておるけれども、とてもこの試算を見る限りにおきましては、そういう明るい展望はどこにも出てこないじゃないかということなんでございます。  確かに御指摘のように、歳出面におきまして一二%として抑えてまいりますことは容易ならぬことだと私も思います。また、税の面で何兆億もの増税考えるということも容易ならぬことであると思います。しかし、容易ならぬ仕事であるだけに周到な用意をしなければいかぬわけでございまして、したがっていまの段階は、現行税制で不公正な部分がありやなしやという点について得心がいく検討をまずやっておきたいということでございます。それからさらに租税の負担率はどの程度であるべきかという点についても十分な御論議をいただいて、その上で具体的な増減税の問題について検討をいただくのが順序だろうと思いまして、まだ具体的な検討を税制調査会政府はお願いしておるわけでは決してないのでありまして、そういう用意をぼつぼつ始めておるというのがいまの状態なんでございます。  したがって、いまの政府に対しまして、五十五年度までの年次別の展望を示し、その中で公債が減ってまいる筋道を明らかにせよといま仰せられましても、それはいま、難きを強いることに相なるわけでございますので、しばらくそれは、そういう手順をもって進められておりますので、一連の検討が終わって国会で御審議をいただくまで、答案が用意ができました段階でお聞き取りをいただきたいと思うのでございまして、ただいまのところはそういう用意がないということを御了承いただきたいと思うのでございます。  しかしながら、そういう状態にあるにかかわりませず、今日の財政は非常な歳入欠陥でございまして、特例債の発行をお認めいただかなければならないような事態であることも、松浦さん重々御承知のとおりであるわけでございます。そこでわれわれといたしましては、この特例債をこの際お願いするにいたしまして今日お約束ができるぎりぎりの限界は、どういうところまでいまお約束ができるかという点を、あなたの御質問、佐藤さんの御質問等にこたえまして、それから予算委員会におきましては阿部委員の御質問にこたえまして、政府として精いっぱいのところをお示しをいたしたわけでございます。これに対しまして必ずしも十分な評価をしていただけないわけでございますけれども、それ以上の具体的な御回答を申し上げる用意がないことは大変残念でございますけれども事態がこのようにむずかしい局面であるだけに、むずかしいということについても御理解をいただきまして、いまできるだけのところはそういうところでございますので、われわれの誠意のあるところはおくみ取りいただいて御理解を賜りたいと思うのでございます。  それから国債の借りかえの問題でございますけれども、これは先ほどの御答弁にも申し上げたわけでございますけれども国債管理の問題は政府の責任で行政権の問題としてやらしていただきたい、政府を御信頼していただきたいということを私ども申し上げたわけででございます。したがって、借りかえはいたさないで、十年満期の公債でございますので、十年たちまして昭和六十年に現金償還いたしますということを国会にお約束いたします、予算の説明書にもそのようにうたってあるわけでございますので、御了承を賜れますまいかということをお願いいたしておるわけでございます。  それを立法化するつもりはないかということでございますが、立法する、しないの問題は国会の管轄の問題で、私からとやかく申し上げられませんけれども、私といたしましては、政府国債管理という問題につきまして、これは行政府に信頼をもってお任せいただきたいということをこの際お願いをする次第でございます。
  248. 上村千一郎

    上村委員長 堀昌雄君より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  249. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣にお伺いをいたしますけれども、この財政制度審議会の中間報告というのは、これは一体何を目的としてこういう中間報告が出されておるのでしょうか。——大臣、答弁してください。政治的な答弁でいいから。
  250. 大平正芳

    大平国務大臣 今日のような、高度成長経済が低成長に変質してまいりまして、高度成長下における財政運営からいわゆる低成長財政に移ったわけでございます。しかも財政体質は大変硬直化いたしておるわけでございますが、そうなってまいりますと、この硬直化した財政体質を根本的に改めなければならぬわけでございますので、これに対しましてあらゆる角度から工夫してまいらなければいけませんので、私といたしましては本年三月、その方途につきまして財政審議会に御検討を煩わした次第でございまして、それに対しまして中間の御報告をいただいたわけでございます。
  251. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ここで一二%という前提が置かれておるということは、いま大蔵大臣がおっしゃったように、低成長の場合には大体名目成長は一二%程度だということが前提になっておると思いますね。それでよろしいんでしょうか。
  252. 大平正芳

    大平国務大臣 まあ一つの試算でございまして、一二%で置いてみるとどういうテンポになるだろうか、ひとつ試算してみろという要請に基づいてやってみたわけでございまして、低成長下の財政でございまするので、仰せのように一二%とか、一二、三%というようなところが常識的には一つ成長率の見当であるということだろうと私は思います。
  253. 堀昌雄

    ○堀委員 この前の償還の問題について、これからは自然増収は全部国債整理基金に振り込むと、こういうことが言われておるわけですね。この試算ではどちらを見ても、自然増収は五十五年までは出ないということになっていますね。そうすると皆さんは、自然増収が出るという前提で、その自然増収を国債整理基金に入れるから、だんだんそれが入っていけば、十年先ではそれを利用していけば借りかえができると、こういう考え方のようですけれども、少なくとも今度の三兆円減収の場合というのは、一二%であれ一五%であれ、要するにこれは三兆円より多いですね、今度の減収は。だから、これよりもっと差は大きくなると思うのですね。それでなおかつ剰余金ゼロですね。剰余金はゼロで、なおかつここでは、一二%の場合には国債依存度が二八・八で、そうしてそのときにおける公債金の収入は十一兆九千四百億円と、こうなりますね。  ちょっとこれは試算の問題で伺っておきたいと思うのですけれども、この十一兆九千四百億なり、あるいは一五%の場合の十二兆六千百億という場合は、いま建設国債の第四条国債の枠を仮に四兆と丸めて考えても、一五%ですと五年間でちょうど倍になるのですよ。一五%の利率でいけば倍になる。八兆ですね。一二%ですと一・七倍ぐらいになります。いずれにしても、それを差し引いてもなおかつここには、十二兆六千億、一五%の場合でも四兆六千億の赤字国債を出さなければならぬと、この試算はそうなっているわけですよ。よろしいですね。そうすると、四兆六千億の赤字国債を五十五年にはなおかつ出さなければならぬということは、それまで毎年赤字国債が続いておる、それをやめるとするならば、いま松浦委員が言ったように増税をしなければここのところは——増税をしてなおかつゼロですよ。その四兆六千億を五十五年度に増税をしたと仮定しても、なおかつ実は自然増収はゼロですね。よろしゅうございますか。だから自然増収がゼロであるということは償還に充てる財源はないということですよ。よろしゅうございますか。そうすると償還に充てるようなものを考えようとするならば、それにもさらにまさる六兆とか七兆とかというような税収を考えなければならぬということにこの試算上なるのじゃないですか。  だから、松浦委員が言っておるのは、どういう税でどういうことをやるかということを聞いているのじゃないですよ。要するに、いまの皆さんが出しておるこの試算の中では、そういう増税をしてなおかつ償還財源はゼロだというようなことで、あなた方が約束しておるところの十年で返しますということができるはずがないではないかと、こういう点を伺っているわけです。どうなるのですか。
  254. 大平正芳

    大平国務大臣 それは松浦さんも堀さんも結論が早過ぎるのです。これは一定の前提に基づきました試算として試みた計算なんです。試算でございまして……(堀委員「試算はわかっている、試算のベースで話している」と呼ぶ)でございますので、こういう仮定が現実となり、そこで何ら歳入歳出につきまして再考を加えずにいきますとこういう姿になるという、今後の財政政策の立案運営に当たって心していかなければならないじゃないかという、これは一つの警鐘なんです。したがって、歳出面におきまして、さらにかたきところどのように切り込んでまいりますか、それから歳入面につきましてどのような工夫を加えてまいりますか、そういうことが、これをかがみにいたしまして政府としていろいろ考えてまいらなければならぬことなんでございまして、そういう努力の結果どのくらいの余裕をそこで生み出すことができますか、したがって、公債はどこまで減らすことができるかということがその結果として出てまいるわけでございまして、したがって、それはそのようになるに違いないということではなくて、一つの試算として試みた計算にすぎないわけでございまして、そこからどういう教訓をくみ取るべきかということが課題なんでございまして、これからは何も償還財源ないし公債を減らす余地は出てこないじゃないかと、そういう結果になるからこそ、これから歳入歳出につきまして政府は不退転の決意でどういう工夫をやるか、これから思索することがなければならないじゃないかという一つの警告なんでございますから、それを踏まえて私どもいま思索をいたしておる最中なんでございます。
  255. 堀昌雄

    ○堀委員 これはあなたは警鐘だと、こう言いますね。しかし少なくとも試算でこういう一つのものが、まあサンプルIとして出ているわけですから、それではあなた方が言うように自然増収ができて、そうして、まあ十年先のものまで要りません、五十五年のときの財政の姿がどうなるかという試算が必要になるじゃないですか。その試算の中で、なるほどこれはこういうようなやり方がされるならば償還が可能になると私ども国民が判断できて、初めてあなたの言っておることが信頼できるのであって、それなくして一体何を信頼するのですか。信頼しろ信頼しろと言って、この計数が試算に出されている以上は、その試算も当然必要じゃないですか。あなた方がこういう試算が一つ出せるのなら、同時に国民が安心して政府を信頼できる試算をここに出したらいいじゃないですか。それが一つの目標だから、そのとおりになるかならないかは、もちろんその時点情勢によるけれども、しかし少なくともいま経済審議会でもこれから五カ年の経済計画を出そうと言っているじゃないですか。五カ年の経済計画を出すときに財政のベースが全然わからないで、これからの財政主導型経済の五カ年の経済計画出せますか。出せるはずないじゃないですか。出せるとするならば、そのベースになる経済計画というものが、それを土台にしながら歳入歳出にわたってどういう前提によって処理をするかということは明らかにされてしかるべきではないですか。その試算がここへ出されて、われわれがなるほどと、そういうやり方を政府がやるというのなら——細かいやり方を私は聞いておるのじゃないですよ。要するに歳出はどれだけカットします、歳入はどれだけ新しい財源でやります——その新しい財源の中身を何にしろというのを聞くわけじゃないですから。五カ年の経済計画を政府は出すのでしょう、出すのでしょう。出す以上、財政の部分が白紙で五カ年の経済計画出せますか、ちょっとお答えください。
  256. 大平正芳

    大平国務大臣 堀さんのおっしゃるとおり、これは一つの試算である、そうしてこれは一つの警鐘であるとすれば、これにこたえて五十一年度から五十五年にわたっての財政のもくろみというものが示されないと、政府を信頼するわけにいかぬじゃないかと、仰せのとおりだと思うのです。そういうことをやるために大蔵省はあるわけでございまするし、そういうことをやるために私ども毎年毎年綿密な予算を組んで実行に当たっておるわけでございます。  私がいまるる松浦さんに申し上げておりますのは、いまの段階で年次別の財政計画を出せというのが、せんだって来のこの委員会のお話であったわけでございますけれども、それがどうもまだいかにも不確定要素が多い段階で無責任な数字を出すわけにはまいりません、それは時間をかしてくださいと。私ども、こういう重い財政の課題に取り組むためには、いま申し上げましたように税制調査会との御相談でいまこういう仕事に取りかかっておりますということを申し上げておるわけでございまして、五十一年度は大きな増減税の計画は私ども持っていないわけでございますが、五十二年度以降につきましてはどういうことをお願いするにいたしましても、十分の地ならしをしないと大きな仕事に取りかかれませんので、五十一年度はそういう準備の年にさしていただきたいということで、負担率の問題等現行税制の見面しをいまやっておりますということをお答えいたしておるわけでございます。したがって、五十二年度以降の歳入のあり方というような問題について具体的にお答え申し上げるのは、そういう用意はない、まだありません、しかし権威のある、責任の持てるお答えができるように鋭意周到な準備をいまいたしておるところでございますということをいまお答え申し上げておるところでございます。  それから、五十一年度からの長期計画と財政の問題につきましては、目下政府部内でいろいろ打ち合わせが進んでおるわけでございますけれども、まだ委員会で申し上げるまで固まっておりませんことは残念でございますけれども、お許しをいただきたいと思います。堀さんの仰せのとおり、財政計画のない経済計画というようなものは考えられないことは仰せのとおりでございまして、私どもそれは十分心得ておるわけでございますので、今度の長期計画と財政というものにつきましては十分御解明ができるように用意しなければならぬと心得ております。
  257. 堀昌雄

    ○堀委員 五十一年度からの経済計画ですから、五十一年度というのは予算が当然入ってきますからね。そうすると、その経済計画の基本になる部分は、少なくとも皆さんが予算編成をする前にはできていなければおかしいのじゃないでしょうか。大体いまの経済審議会が出しておりますものは、実はいつ成文化して閣議で決定される見通しになっておるのでしょうか。
  258. 大平正芳

    大平国務大臣 いつ決定していつ閣議にかけるというのは、まだ段取りを決めておるわけではございませんが、いま私からあなたに答えられることは、五十一年度の予算に計上いたしまする金額は、五十一年度以降の長期計画の第一年度の金額になるということは言えると思います。
  259. 堀昌雄

    ○堀委員 少なくとも私は、いま経済審議会が、さっき松浦委員指摘をしましたように、いろいろなモデルを考えていると思いますね。だから、そういういろいろなモデルの問題については、あなた方としての一定の考え方があるはずだから、私どもは、要するに試算でいいから一遍それを出しなさい、こう言っているわけでして、経済審議会で問題が出せるものが、国会のこのわれわれの要求に対して出せないはずはないじゃないですか。それが出せて初めていまの償還計画について私どもが、五カ年の経済計画の中における財政のあり方がどういうふうになり、その財政のあり方に基づいて償還が可能になるか可能にならないかということが判断されるわけですから、少なくともそれらに基づくところの、いま試算が幾つか出ているようですが、その試算のもとになる財政の方の一つのプログラム、年度別に出せなんて言っているわけじゃありませんから、要するに五十五年度というところを目標とした一つのこういう試算を出すことが、いまの私どもの要求しておる償還計画というものの、あなたの言う信頼、信用の裏づけになるものじゃないですか。何にもなしで信用しろなんと言うのは、法律審議に対して、国会に対して私は適切でないと思うのです。
  260. 大平正芳

    大平国務大臣 長期計画と財政との関係につきましては、重大な問題でございますし、堀さんのおっしゃるとおりでございますので、それはいずれ本委員会には御提出しなければならぬと思いますが、それをいつどういう姿で出せるかにつきましては、まだ政府部内で相談しないといけませんので、ただいまお約束するわけにはまいりません。しかし、いずれにせよ、そういう重大な資料につきましては本委員会に出さなければならぬことは当然と思っております。  それから、私はむやみに信頼しろ、何でも信頼しろなんということをお願いしておるわけでは決してないわけでございまして、今度の特例債を出すにつきましては、四条債の償還につきまして一つの償還制度というものがありまして確立されておるわけでございますけれども、これに対しまして特例債にはこういう態度で臨みますということを、この間阿部さんの御質疑に対しまして答え、松浦さん、佐藤さんの御質疑に対しまして詳細に答えておるわけでございます。これはまた抽象的に答えておりますので、大変御評価いただけないわけでございますけれども、ただいまたびたび申し上げておりますように、ただいまの段階政府が申し上げられ得る限界ぎりぎりを申し上げておるつもりでございますので、そのあたりは政府の意のあるところを御理解賜りたいと思います。
  261. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大臣、この前も償還計画について約三時間いろいろ質問をして、そしてきょう私が資料要求した名目成長率を非常に高い一五%に置いた資料をいただいたわけですね。これはさっきから言うように非常に粗い試算ですよ。だから五十五年度で名目成長一五%で、租税弾性値も一・二に置いて、そして歳入は名目成長一五%の場合、歳出の場合は名目成長率一二%の場合で突合してもなおかつ公債依存率が高いじゃないか、そういう数字はこれで出てくるわけですよ。これは大蔵省の、この前も私が指摘した「ファイナンス」というおたくの機関誌です。  これはどういうことを書いてあるかと言いますと、これは大蔵省の人が書いたのですよ。「四十年度から四十九年度までの普通国債残高の累積は、およそ九兆八、〇〇〇億円にとどまっている。これが今後の五年間で四倍、五倍、六倍という残高になるという姿である。なお、この間のGNPは、およそ一・八倍となる計算になっている。このような公債発行経済にどのような影響を及ぼすかについて詳細な分析を行っているわけではないが、」と断っておきながら「市中消化にも自ずから限度はあるわけで、我が国経済に大きなインフレ要因を持ち込むことになるものと考えられる。」という指摘を大蔵内部の人がしているのですよ。しかも諸外国における公債の依存度については、アメリカ一一・一、イギリス八・九、西ドイツ一六・六、フランス公債依存なし、黒字、こういう資料を大蔵省の内部が出して警告しておるわけですよ。  私は、委員長、そういう資料があるから、この前も三時間にわたって資料くれ資料くれ、出せ出せ、粗くていいから出せという主張をしました。そしてまた、政審会長も資料を出せと要求なさいました。しかし出されません。  そこで私はもう一度委員長に資料要求をいたします。具体的なものがあります。それは先ほど私が指摘いたしましたように、経済企画庁の経済審議会分科会におきまして、昭和五十五年度に対する試算、「外生変数」「内生変数」「諸指標」という中で、いろいろな数字をモデルケースを入れて出しておられます。これはわれわれがこの特例法を審議するには非常に参考になりますね。この資料と大蔵省から一五%の名目成長でいただいた数字とは内容的に合ってくるのです。この資料を出してください。大蔵省が出さないのですから、委員会でこの資料を求めたいと思うのです。そうすればよくわかります。皆さんもよくわかります。これを出すように要求いたします。理事会を開いてください。
  262. 上村千一郎

    上村委員長 山田耻目君より議事進行の……(発言する者あり)  松浦利尚君に申し上げます。質疑を続行してください。
  263. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私が指摘した数字はあるわけですよ。あるはずなんです。出そうと思えば出せるのです。それから堀委員の方も指摘をしておりますね。出してもらいたいということを言っておられる。ですから出そうと思えば出せるわけですよ。あるのですから、現物は。——委員長、資料は出せるのか出せないのかはっきりしてください。
  264. 上村千一郎

    上村委員長 松浦君に申し上げます。審議の過程においてもっと明らかにしてください。御質問を。(発言する者あり)  答弁を。大平大蔵大臣
  265. 大平正芳

    大平国務大臣 松浦委員の御要求の資料でございますが、公式な資料としてそういうものがあるのかどうか私は存じませんけれども、この問題と財政との関連を見ますと、なお究明しなければならぬ問題がたくさんございまして、本委員会のような権威のある委員会に卒然として自信のない資料を出すことを請け負うというわけにはまいりません。
  266. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 委員長、私はあの資料を、現存する資料を要求しておるわけです。大臣は、出せない、こう言われるのです。こういう場合には理事会を開いてどうするか決めてくれるんじゃないですか。
  267. 上村千一郎

    上村委員長 山田耻目君。
  268. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 ただいま松浦委員が求めております意見は資料の提出でございます。この資料は、十一月の五日に経済企画庁が経済審議会の懇談会に政府の資料として提出をしたものです。経企庁にはこの資料は今日現存いたしております。その資料を出してくれ、その資料を検討しなければこれからの特例法の審議に大変な支障を来す、これが松浦委員の資料要求です。私は、これに応ぜられないということはないと思います。速やかにこの資料の提出を求めます。
  269. 上村千一郎

    上村委員長 ただいまの山田耻目君提出の動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。(発言する者あり)  ただいまの発言は訂正いたします。  この点につきまして政府側の答弁を求めます。
  270. 高橋元

    高橋(元)政府委員 先ほど大臣からお答えしましたとおり、経済企画庁の作成書類でありまして、提出をいたすことはできません。(発言する者多し)
  271. 上村千一郎

    上村委員長 松浦利尚君、質問を続行してください。)「続行しろと言ったって、その資料を出さなければ続行できないじゃないか」と呼び、その他発言する者、離席する者多し)——高橋主計局次長。
  272. 高橋元

    高橋(元)政府委員 松浦委員から御要求のありました資料でございますが、経済企画庁とも相談をいたしておったわけでございますが、御提出しないのが適当であるというふうに考えます。(「何で、それはおかしいよ」呼び、その他発言する者、離席する者多し)
  273. 上村千一郎

    上村委員長 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  274. 上村千一郎

    上村委員長 速記を始めて。  山田耻目君。
  275. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 非常に紛糾しておりますが、政府側の発言の仕方、物の言い方がきわめて不適切でございます。特に高橋次長の述べられた、本資料を大蔵委員会に出すことは不適当である——一体これは何ですか。そういう言葉がこの大蔵委員会を非常に侮辱しておる言葉になるのです。速やかにひとつ訂正をしていただきたい。おわびをしていただきたい。
  276. 高橋元

    高橋(元)政府委員 先ほどの私の御答弁の中で、不適当であるという表現を使いましたことは、まことに申しわけないと思います。取り消させていただきます。
  277. 大平正芳

    大平国務大臣 松浦委員が御指摘になっておりまする資料は、経済計画策定作業の途中、企画庁内部で非公式に各種の試算を行ったものではないかと思われます。したがって、公式に政府がその是非を判断するまでには至っていないものでございます。したがいまして、先ほど私が御答弁申し上げたところで御了解をいただきたいと思います。
  278. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そんなことで、先ほどは次長は取り消されましたけれども、適当でないとか、経済審議会の懇談会に出された資料ですよ。だから民間団体ですよ。われわれはいま特例法案の審議をしておるのですよ。後世代にツケを回そうとしているわけですよ。そういう審議をしておるさなかに、できるだけ多くのものをわれわれに出して、国民の皆さん方に了解を与えた上で法案の審議をしていくというのが、これが委員長、たてまえじゃありませんか。私はいま委員長に対して、本委員会に資料の提出を求めておるのです。政府の方はこれを出せないと、こう言っておられるのです。委員が主張し、政府が出せないという資料についての扱いは、理事会でしょう。この平場で議論できないなら、理事会を開いてどうするかというのを審議するのが運営じゃありませんか。なぜ理事会を開こうとしないのですか。少なくとも理事会の開催というのは、委員長が主宰すればできるはずですよ。いまこれほど紛糾しておるのは、単純なんです、こっちは要求しておる、向こうは出さないと言う、どうするんだ、審議に影響があるから出してくれとこう言っておる。委員長が裁量してください。私は、常にこういう場合には理事会を開いて、与野党間で十分議論をした上で、結論を私に御報告なさるのが筋だと思います。(「委員長理事会」と呼び、その他発言する者、離席する者多し)   〔委員長退席、伊藤委員長代理着席〕     …………………………………   〔伊藤委員長代理退席、委員長着席〕
  279. 上村千一郎

    上村委員長 理事各位と協議の結果、経済企画庁藤井参事官に答弁させます。
  280. 藤井直樹

    ○藤井説明員 お答えします。  経済計画につきましは、七月の終わりに、経済審議会に対しまして新しい経済計画の作成について諮問が行われたわけでございます。審議会は、総合部会を設置いたしまして、総合部会にその計画の取りまとめを任務として与えたわけでございまして、事務当局といたしましては、八月の初めごろから、経済審議会の総合部会に五つの分科会、三つの小委員会をつくりまして、広く御意見をいただくということで作業してきたわけでございます。  それで、経済フレームにつきましては、特に計画の根幹をなすものでございますから、十分に御審議をいただくということでやってまいりまして、その最初の段階で、十一月の六日に総合部会、しかもそれは非公式な懇談会という形で御審議をいただいた——ただいま資料につきまして私どもよく見せていただいておりませんので、どれかということはわかりませんけれども、そういう懇談会等の席で資料をお配りして御審議をいただいたことはございます。  それで、ただ、そのフレームにつきましては、それは国際収支やら物価やら、それから、もちろん財政収支等も非常に重要なファクターでございますので、いろいろな点から問題点を指摘していただいて、そして十分なものに仕上げていきたいということでお出ししたわけでございまして、それから一カ月近くたちました段階で、現在まだいろいろな点について検討しているところでございます。私どもとしては、十二月の下旬には経済計画のいわゆる概案、総論に当たる部分ですけれども、概案をつくって、それを一度決めておく、来年に入りましてから各論をつけた正式な計画というものをつくってまいりたいと思っておるわけでございます。  そういうことで、現在鋭意作業している段階でございまして、十一月の初めの段階の作業等につきましても随時修正を加えておりますので、とても御議論をしていただくような内容のものではない、非常に不十分なものである、私どもはそういうふうに思っておりますので、私どもは、経済審議会で正式に御答申いただく十二月の下旬になりまして、各省の意見も十分その段階でお聞きをいたしまして、そうしてまとまったものになれば、またその段階で十分に御審議をいただけるものだ、このように思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。(発言する者あり)
  281. 上村千一郎

    上村委員長 御静粛に願います。
  282. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いまのは説明ですよね。なぜ出せないかという説明をしておるだけなんです。私は固まったものを出せと言っておるんじゃないんですよ。一つの目安であるから、その目安の参考にしたいので出してくれ、こう言っているんです。だからそれが動くことも了解しておるのです。しかし、いま事実としてわれわれは特例法案を審議しておるわけでしょう。だからその特例法案に関連させて参考にしたいから出してくれと言っているんですよ。それを何も決定的にこれが政府の見解でございますと言うつもりはないんですよ。この前から私は議論しておるように、財政制度審議会の中間報告だってこれは中間報告でしょう。これはちゃんと出しておるわけですよ。しかもこれに関連させて、名目成長率を一五%に置きかえた数字をあなた方は出したじゃありませんか。これが決定的なものだとは私はさっきから一つも言っておらない。これを一つの参考資料として政府にいろいろ見解を求めておるにすぎない。だとするなら、経済企画庁だって、途中のものであっても一遍出しておることは事実なんだから、それを私たちに参考として、特例法案の議論の参考にしたいから出してくれ。変わるということを前提にして出しますと言われればいいじゃないですか。固まっておるものではありません、ただ単なる参考資料として出します、言葉は幾らでもありますよ。われわれはそのことは十分理解をした上で議論をしましょう、こう言っておる。私の言っておることは間違っておらないでしょう、まじめに議論をしようと思っておるから出してくれ、こう言っておるんだよ。(発言する者あり)泣き声とは何だ。それじゃ大きな声を出そうか。泣き声を出すなとは何だ。(発言する者多く、笑声)
  283. 上村千一郎

    上村委員長 松浦利尚君——松浦利尚君、質問を続行願います。
  284. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 出してください。出してくださいよ。私は出すべきだと思うんです。私の発言でいまわっと笑ったけれども、この問題は笑い事じゃないんだよ、この前から言うように。十年先に、ぼくたちは後世代にツケを回すわけだよ。われわれがツケを返すならいいんだよ。この特例法案というものは十年後の後輩におれたちはツケを回すんだよ。だからまじめに議論しようと言っておるんじゃないですか。出すべきじゃないですか。参考資料として出してください。
  285. 藤井直樹

    ○藤井説明員 先ほど申し上げましたように、経済計画の策定につきましては経済審議会に諮問をいたしたわけでございます。したがいまして、現在 経済審議会の段階でその作成を行っておるわけでございますので、その審議の過程で経過的な資料をお出しして御説明するということはなかなか困難でございます。私どもといたしましては、審議会で十分御議論をいただいて、まとまったものについて政府内部で打ち合わせをして、そして決まったものについてしかるべき手続をとってこれを発表する、そういうようなことにいたしていきたいと思っておるわけでございますので、あくまでもそういう意味で審議会の途中の段階での資料ということでございますと、お出しすることが非常に困難でございます。決定した段階で整合性のあるものについてまた御説明を申し上げて御審議をいただきたい、そういうふうに考えておりますので、御了承いただきたいと思います。(発言する者多し)
  286. 上村千一郎

    上村委員長 御静粛に願います。
  287. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 この前の審議以来、この償還計画の問題について非常に抽象的な議論しかなされなかったので、資料の要求をして、現実に大蔵省は作業をしてここに出してくれたのです。名目成長率一五%を入れた数字をここに出してくれた。そのことによって私たちは、ある程度の議論をいま進めることができたのですね。  いま私が要求しておる数字というのは、完全雇用という問題を条件にして、有効求人倍率を一以上にするということを前提にしておったり、あるいは租税負担率をどうするかということを具体的に挙げておったり、あらゆるケースを五つにバランスさせて資料が出されておるのです。その中では、五十五年度に向かって大蔵省が出されたと同じような赤字公債に依存せざるを得ないというデータまで議論していったら出てくるのだ。そういうのを出してくれと言ったけれども、とうとう、これだけ時間がかかりましたけれども出してもらえません。  いまわが党の理事から、そこで議論をされた集約として、この問題は十二月二十日ごろ資料を経済企画庁としては出す、こういうことだから保留をしてくれ、こういうことです。保留するにやぶさかでありません。しかし、審議をしておるのはいま審議をしておるのです。十二月二十日に出されたって、法案はもう通ってしまっておる。国会はこの法案について、もっとまじめに議論をしていかなければならぬという重要な職責を負っておるわけだ。委員長が十二月二十日まで本法案については採決をしないということを条件にしてくれるなら、それでもいいでしょう。しかし、場合によっては通ってしまっておるかもしれぬのだね。それは仮定の問題だけれども、そのときにはわれわれはこの問題については審議できなかったということになる。だから、どちらにしてもこれは非常に重要な問題なんだ。私はもう非常に不満です。それで、私の質問は保留をさせてもらいます。しかし、資料を出してもらってからまた議論しますからね。委員長、その点は約束してくれますか。
  288. 上村千一郎

    上村委員長 松浦君の御要望につきましては、理事各位と先ほど協議した結果を申し上げておりますので、ぜひその点御了承を願います。
  289. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いまあなたは理事会を開いたと言ったですね。さっきのは正式な理事会ですか。
  290. 上村千一郎

    上村委員長 理事各位と協議した……。
  291. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 何ですか、あれは。(発言する者あり)
  292. 上村千一郎

    上村委員長 松浦利尚君に申し上げます。  ただいまの御要望につきましては、委員長としまして努力をいたしたいと思います。  佐藤観樹君。
  293. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いま松浦委員からあれだけ質問があり、しかも堀政審会長からさらにありましたように、五十五年度になってもなお、いろいろな試算でありますけれども、最低でも普通国債の残高が四十兆円になる。これはいま松浦委員から御指摘のあった財政審の中間報告、一番最低の場合でも普通国債の残高が四十兆円になる。こういった中で、果たして本当にここで発行しております二兆二千九百億の赤字国債が返せるのかどうなのか。これは私は非常に疑問があるわけですね。  それで、これはこの前の十一月十九日の質問でも、やはり赤字国債に歯どめをかけるためには、どうしても昭和六十年度にはこの二兆二千九百億の赤字国債について必ず全額償還をするということを、これは単に予算の償還表の説明書なんというものではなくて、法律にはっきり明記をすべきである、こういうことを私は主張したわけであります。その場では、政府も答えられないということでございましたので、留保していたわけでありますけれども、まず政治論として私がお伺いをしたいのは、五十年度の赤字国債特例国債については借りかえをしない、これは予算の説明書に書いてあります。しかし私は、予算の説明書ではこれは足りないと思うのでありますが、それでは先のことをお伺いしますけれども、もうすでに国会が終わったら年内編成に入る、その中で五十一年度の特例債が発行されることは、これはもう大臣の議論の中でも明らかになっておるわけであります。大臣は、五十二年度に赤字国債発行の額をなるべく減らしていきたい、こういうことでありますが、減らしていきたいと言ったって、これは五十二年度も恐らくいまの情勢でいったら赤字国債発行になるだろう。そういったときに赤字国債というものは、本年度と同じように十年償還、借りかえをしないという方針をとるのかどうなのか、その点はまずどうですか。
  294. 大平正芳

    大平国務大臣 五十二年度に特例公債をどれだけお願いするかにつきまして、目下検討をいたしておるところでございますけれども、特別公債をお願いすることになれば、今回の特別公債と同様全額満期までに償還し、借りかえは行わないことにしたいと考えております。また、借りかえを行わない旨は、公債の償還計画表の説明欄において明らかにする方針でございます。
  295. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 三木内閣がいつまで続くかわからない。大平大蔵大臣がいつまで続くかわからない。確かに政府というものは存在をいたしますけれども、やはりこの問題は非常に重要な問題であり、しかも松浦委員から克明に数字を挙げて指摘をしまして、果たして本当にこの特例債が返済できるのかどうなのかということについては、財政事情からいってきわめて疑問があるということを、再三にわたって指摘したわけであります。  そして、いま大蔵大臣の方から、五十一年度に特例債が発行される場合については、これも同じように十年償還をする、確実に借りかえをしないということが言われたわけでありますけれども、前提として、五十五年度まで恐らく特例国債発行されることになるだろう。そういったときに、政治状況が変わったから、あるいは財政状況が変わったからといって、この国会で答弁をされたこと、あるいは予算の説明書に書かれたことが覆されるようなことでは、私はこれはまさに将来は赤字国債日本がパンクをしてしまう可能性が十分あると思うのです。  そこで、私は、この前の関連質問の中で、これは非常に大事なことでありますから、予算の償還表の説明書などというものではなく、今度の法律の三条の中にもう一項目、財政法の第四条第一項のただし書きによるところの借りかえ償還というのは、特例債に限っては使用できない、このことを法律に明記をすべきだと質問したわけでありますが、その点についてはいかがでございますか。
  296. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、国債の借りかえは一般的には国債管理の運営上の問題でございまして、政府に授権されておりまして、そのことは国債整理基金特別会計法の第五条に明記されておるところでございます。法律論からかた苦しいことを申し上げるわけのものではございませんけれども、今日まで授権された政府としてその責任にこたえてまいったわけでございまするし、今後もその重い責任には十分こたえてまいる覚悟でございます。御指摘のように、国会でお約束を申し上げたことをたがうような政府でございますならば、その政府の信用というものは通用しないわけでございますので、私ども、佐藤さんの御指摘を待つまでもなく、その点の約束は非常に重大に考えておるわけでございまするので、こいねがわくは、政府の管理責任の問題として御信頼を願いたいと思います。
  297. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これは単に国債の管理事項という問題だけでは済まぬと思うのです。それは、前提として、昭和四十年のときに二千億の国債発行した、このくらいの額のことならまだ話は若干別であります。しかし、すでにことしだけで建設国債と言われるものを含めて合計五兆四千八百億。また、来年は、建設国債特例国債を含めて恐らく六兆円になるのではないか。あるいは、五十二年度も、四兆とか五兆とか、こういう額になってくるのではないか。こういう情勢考え、なおかつ松浦委員から執拗に御指摘のありましたように、将来の財政計画を考えてみますと、単にいままでやってきた国債の管理政策、あるいはこれは政府に全く委任されたものだというような観点で扱ってもらっては困ると私は思うのです。  大体財政法で償還表を出せというのはおかしいのです。おかしいというのは、償還表というのは、皆さん方のところは今度の国債でも、昭和五十年度には二兆二千九百億借りました、六十年度には二兆二千九百億返します、これだけしか償還表というのは書いてないわけですね。われわれが国会審議の中に必要なのは、償還の財源計画が必要なわけですね。そこでいま決められているものは、要するに国債整理基金特会の前年度首国債総額の百分の一・六を積み立てなければいけないというのだけが決まっておるのであって、あとは全く、法律はあるけれども、剰余金といったって剰余金が出てこなければこれは全然執行しないわけでありますし、予算からの繰り入れについても実際に予算にそれだけの財源がなければ入ってこない、こうなってきますと、これだけ膨大になりました国債というものが、いま大臣から答弁がありましたように、単に国債の償還についての管理は政府に任されているんだからという従来のやり方だけでは、私はとても納得ができない。これは昭和五十五年の経済情勢の場合のことを考えてみましても、とても納得できるものじゃない。恐らく五年後には自民党単独内閣はできてないのじゃないか、こういう想定で考えてみますと、われわれが財政運営をするときに、自民党政府がさんざん借りておいて、われわれが政権とろうと思ったらもう財政はパンク寸前だということでは困る。これは明らかに自民党内閣に責任を持って返してもらわなければ私は困ると思う。  そういった意味で、いまの答弁というのは、単に国債の管理政策として政府が責任を持つというだけでは足りない。明らかに法律の中に、特例国債については絶対に借りかえをしないという一項目を入れるべきである、こう私は考えるのでありますが、再度御答弁をお願いしたいと思います。
  298. 大平正芳

    大平国務大臣 政府は、国会に対してまず責任を持っておるわけでございまして、予算案、法律案を御提案申し上げて御審議を得て、そのラインに従って行政権を預かっておるわけでございます。その審議の過程におきまして立法府との間にはいろいろな約束があるわけでございまして、国会に対して責任を持っておる政府といたしまして、一つ一つの約束につきましては十分責任を持って果たしてまいらなければならぬことでございます。したがって、それはどうも怪しいから法律で前もって縛っておかなければならないとおっしゃられることにつきまして、私は若干の抵抗を感ずるわけでございます。こいねがわくは、せっかくそのように決意しておるなれば政府の責任においてやってみろと激励を賜りたいと思うのでございます。しかし、特例公債法にその適用の排除を規定する、そうしないと国会としては安心ができない、その国会の御意思がどうしても動かしがたいというのでございますならば、それは立法政策の問題として政府考えてみなければならぬ問題だと思いますが、こいねがわくは、政府のかたい決意を評価していただきたいので、先ほどからもるるお願いをいたしているところでございますが、御理解をいただけないものでございましょうか。
  299. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 御理解をいただけないから質問を続けるわけでございまして、私がなぜこのことを執拗に言うかといいますと、一つは、たしかことしの二月だったと思いましたけれども、当大蔵委員会で審議をした中で、四十八年度の剰余金、これが非常に多かったので国債に繰り入れるものを、本来なら二分の一だというのを、他の必要があるから、歳出があるからといって五分の一に変えたわけですね。五分の一に変えたわけです。これは法律を出してきたわけですから、そういった意味では手続上は問題はないけれども、他の歳出が必要になってくるからというんで、剰余金は本来最低二分の一を国債整理基金に入れなければいかぬというのを五分の一に変えるという法律を出してくる、あるいはその他政府の言うことのいろいろな食い違いについては、予算委員会においてもそのためにわざわざ政府が言っていることが本当かどうかを追及をする小委員会ができるまでにいまなっているわけですね。  このことは一つ一つ私は申し上げませんけれども、そういった意味から言いますならば、この問題というのは、松浦委員が数字を挙げて指摘をしましたように、今後大変な重要な問題でありますから、やはりこのことは法律事項に挙げて、そしてさらに政府を縛って、そのことが国債の今後の発行に歯どめになりますし、執行面においても十分注意をし、そしてそれは不適当な歳出を、きょうの午前中のどなたかの審議にもありましたように、防衛費を削るなり、その他不要の歳出を削るという、私はそれだけの大きなたがを締めていかないと、全くこれは後顧に憂えを残すことになると思うのであります。  そういった意味で、まだ時間はあるわけでありりますから、ひとつ政府においてぜひ本特例債につきましては、財政法第四条第一項のただし書きによるところの借りかえ債を行わないという一項を法案に追加をして、修正をしてぜひ出していただきたい、こう思います。どうですか。
  300. 大平正芳

    大平国務大臣 これは財政制度の問題といたしまして重大な御提言でございます。私といたしましては、当委員会の御理解を再三求めてまいったわけでございますけれども、そのようにどうしてもすべきであるという御意見でございますならば、政府の手順といたしましては、財政制度審議会に諮りまして所要の手続を進めなければなりませんので、いまの御提言がございます点につきまして、政府として検討を加えて、五十一年度の予算関連法案の立法時までにそういう手続を経まして、検討を経まして、御審議をいただくような手はずにいたしたいと思います。
  301. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私は、これくらいのことは財政制度審議会にわざわざお伺いを立てなければいかぬほどのことではないと思うのです。やはり政治的には借りかえをしないということであっても、この国債、しかも膨大な国債発行する、それに際しましての政治姿勢の問題だと私は思うのですね。ですから、これくらいはやはり大蔵大臣が決断できなければなかなか政権を取ることは私はできないんじゃないかと思うのです。  それは余分なことでありますが、最後にもう一点だけ、これに関連をしてお伺いをしておきたい。  非常に重要なことでありますが、いま私たちの頭の中には、この前、十九日に審議をしましたときのように、これも松浦委員質問をしましたけれども、一体いつになったら赤字国債発行しなくて済むのか。大臣の御答弁ですと、五十二年度くらいまでに、五十二年度にはなるべく減らしたいという御答弁があったわけです。減らしたいということでありますが、なお建設国債の上積みとして赤字国債が五十二年にも大蔵大臣の頭の中には十分あるということだと思うのですね、その発言は。  そうなってきますと、恐らく、どう見ても二兆二千九百億の赤字国債を、ことしは財源がありませんから、十年後には、昭和六十年度には全部償還するわけでありますから、もし来年度から平均で積み立てたとしましても、二千五百四十四億毎年必要なわけですね。二千五百四十四億必要です。これが五十三年から返したとしますと、残り七年間。そうしますと、毎年その調子でいきますと三千二百億積み立てていかなければいかぬことになるわけです。いままでの実績を見ますと、四十八年に七年ものを返しておりますけれども、このときが七百九十二億、それから四十九年度の現金償還が八百四十二億、この三倍も四倍もこの二兆二千九百億の赤字国債には返していかなければならぬ、積み立てていかなければ十年償還というのは完全にできないわけですね。しかも、来年にはまた恐らく三兆円近い赤字国債発行があると言われている。そうしますと、赤字国債発行しているときには剰余金もないだろうし、あるいは百分の一・六の積み立てしかないわけでありますから、十年償還をするということになりますと、かなり膨大な額を積み立てていかなければならぬ。これは、来年の発行額幾らかわかりませんけれども、いま言ったように五十五年度から返したとしますと、残り五年間で、ことし発行するものだけで平均して四千五百八十億の積み立てをしていかないと、とてもじゃないが六十年には二兆二千九百億という膨大な赤字国債を返せないわけですね。  もうこの国会が終わったら来年度の予算に入る、こういう状況でありますから、来年度はこの二兆二千九百億のうちの一体どのくらいを返すつもりなのか、全然返すつもりはないのか、具体的にどうですか。もう数日たてば予算編成に入るわけでありますから、しかも、赤字国債を来年も発行することはもう十二分に予想されるわけでありますから、ことしのやつのこの二兆二千九百億だけに限って言えば、一体来年度はどういう償還をこの二兆二千九百億にするつもりなんですか。どのくらいの頭があるのですか。
  302. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ただいまの御質問でございますが、明年度の国債償還をどのように仕組むかということは、定率繰り入れ、それから予算繰り入れ、それらを通じまして、今後予算編成の過程で十分検討してまいりたいと思います。
  303. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 予算編成のときに考えるのは、それはわかるのですよ。わかるのですが、私たちが常識として考えることは、来年度には剰余金はない。当初の百分の一・六の繰り入れしかないでしょう。ところが、それではとても二兆二千九百億に間に合わないわけですから、二兆二千九百億の赤字国債の返済だけのことを考えれば、来年度から平均で積み立てたとしても、国債整理基金に入れる額が平均として二千五百四十四億、しかし、こんな額は来年度に私は常識的に入らぬと思うのです。私もそう素人じゃないつもりですから、入らぬと思う。そうしますと、大臣が言われた五十三年には、たとえば赤字国債ゼロといたします。そうすると、あと七年しかないわけですね、五十二年といたしますと。七年としますと、その後毎年三千二百七十一億積み立てておかないと十年償還はできないんですよね。しかも、五十三年と申しますと、来年度今度発行するもののまた積み立てが必要になる、再来年度発行するであろうものがまた積み立てになる、こういうふうに現実を細かに追ってみますと、とてもじゃないけれども、私は、本当に国民の皆さんに大蔵委員として国債を勧められない。ですから、松浦委員指摘しますように、五年ができないなら三年ぐらいに、本当にどのくらいの額ずつを積み立てて償還をしていくのか、そのことをはっきり出してもらわなければ、これだけの膨大なものを発行しておいて、これはパンクしちゃうわけですね。恐らく高橋次長は来年は局長になるかどうかわかりません。理財局長ももう来年は、恐らく大蔵省にいらっしゃるかもしれないけれども、どうなるかわからない。恐らく十年後、昭和六十年のときも私はこの場にいるのじゃないかと思うのです。そういうことを考えますと、皆さん方は発行していったらそれで済むかもしれないけれども、私はそのときに何をやっているかわかりませんけれども、与党になっておるか野党になっておるかわからぬけれども、やはりこれは審議に参加した者として私は非常に心配するわけです。大臣、自信ありますか。最後の質問です。
  304. 大平正芳

    大平国務大臣 国債の償還につきましていろいろ御心配をいただいて大変恐縮に存じます。  政府といたしましては、たびたび申し上げておりますように、この公債につきましては借りかえを途中で行わずに、満期のときに現金償還を一括して行うという方針で、そういう決意で当たっておるわけでございます。ところが、この特例債を出しておる間におきましてその償還財源を積んでまいるということは、あなたが御指摘のとおり事実上不可能だと思います。したがって、この十年間の後半にロードがかかるということは、御指摘のとおりに心得ておるわけでございますけれども政府がお約束いたした以上は、六十年度借りかえなく全額現金償還を行うということを財政運営の基本といたしましてやってまいる決意でございますので、その点は十分御信頼をいただきたいと思います。
  305. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 大臣、私もこれはやめようと思ったけれども、私はそのためにわざわざ計算をして、たとえば、あと五年で返さなければいかぬと、二兆二千九百億でも五年間、年間とすると四千五百八十億ずつ毎年積み立てていかなければいかぬ、これは大変だと、数字を挙げて言っているわけですよね。大臣のはいつも精神訓話なんですよ。精神訓話で大臣が務まれば私も恐らくいまでも務まると思うのです。それじゃだめなんですよ。松浦委員、堀委員に対する答弁も全部精神訓話なんですよ。精神訓話ではこれは返せない。返すためには、やはりせめて五年後ぐらいにはこれどうなっているだろうぐらいの数字を出してもらわないと、国民は大変不安なんですね。そのことを最後につけ加えて、これ以上私は出ないと思いますので、つけ加えて、これは私の関連質問でありますから、本質問はまたやらしていただきますが、関連質問でございますので、私の質問は終わらしていただきたいと思います。
  306. 野田毅

    ○野田(毅)委員 本案に対する……(発言する者多く、聴取不能)
  307. 上村千一郎

    上村委員長 野田君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔発言する者、離席する者多し〕
  308. 上村千一郎

    上村委員長 起立多数。よって、質疑は終局いたしました。(発言する者多し)     —————————————
  309. 上村千一郎

    上村委員長 本案に……(発言する者多く、聴取不能)採決いたします。   〔発言する者多く、聴取不能〕   〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕
  310. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 ……(発言する者多く、聴取不能)本案に賛成の方の起立を求めます。   〔発言する者多く、聴取不能〕
  311. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 本日は、これをもって散会いたします。    午後十一時三分散会