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1975-11-12 第76回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十二日(水曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 伊藤宗一郎君 理事 浜田 幸一君    理事 村山 達雄君 理事 山下 元利君    理事 山本 幸雄君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       越智 伊平君    奥田 敬和君       金外 一平君    瓦   力君       齋藤 邦吉君    中川 一郎君       野田  毅君    原田  憲君       坊  秀男君    宮崎 茂一君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山中 貞則君    広瀬 秀吉君       松浦 利尚君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       横路 孝弘君    坂口  力君       広沢 直樹君    内海  清君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         大蔵政務次官  森  美秀君         大蔵大臣官房長 長岡  實君         大蔵大臣官房審         議官      佐上 武弘君         大蔵省主計局次         長       田中  敬君         大蔵省主計局次         長       高橋  元君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 後藤 達太君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君  委員外出席者         文部省管理局教         育施設部助成課         長       西崎 清久君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 十一月十一日  辞任         補欠選任   松野 頼三君     塩谷 一夫君   山中 吾郎君     安井 吉典君 同日  辞任         補欠選任   安井 吉典君     山中 吾郎君     ————————————— 十一月十一日  昭和五十年度の公債発行特例に関する法律  案(内閣提出第一一号) 同月四日  酒税法の一部を改正する法律案等撤回に関する  請願外一件(山口鶴男紹介)(第一三八〇  号)  土地重課制度廃止に関する請願染谷誠君紹  介)(第一三八一号)  同(武藤嘉文紹介)(第一三八二号)  同(金子一平紹介)(第一四八九号)  同(野田卯一紹介)(第一四九〇号)  同(古屋亨紹介)(第一四九一号) 同月六日  土地重課制度廃止に関する請願大石千八君  紹介)(第一五五二号)  同(松野幸泰紹介)(第一五五三号)  同外一件(塩崎潤紹介)(第一五九六号)  同(福田篤泰紹介)(第一五九七号)  たばこ値上げ反対に関する請願中路雅弘君  紹介)(第一五九四号)  酒税引上げ反対に関する請願中路雅弘君紹  介)(第一五九五号)  酒、たばこ値上げ反対に関する請願平田藤  吉君紹介)(第一五九八号)  酒税法の一部を改正する法律案等撤回に関する  請願三浦久紹介)(第一五九九号)  同(多田光雄紹介)(第一六〇〇号)  同(三浦久紹介)(第一六〇一号)  同(三浦久紹介)(第一六九四号)  不況対策に関する請願山下元利紹介)(第  一六七六号)  酒、たばこ等値上げ阻止に関する請願梅田  勝君紹介)(第一六九二号)  同(寺前巖紹介)(第一六九三号) 同月十日  ハイヤー・タクシーに対する自動車関係諸税の  増税反対に関する請願(森下元晴君紹介)(第  一七四五号)  酒、たばこ等値上げ阻止に関する請願梅田  勝君紹介)(第一七四七号)  同(梅田勝紹介)(第一七八二号)  同(梅田勝紹介)(第一八七八号)  同(寺前巖紹介)(第一八七九号)  土地重課制度廃止に関する請願赤澤正道君  紹介)(第一七四八号)  同(大野明紹介)(第一七四九号)  同(三ツ林弥太郎紹介)(第一七五〇号)  同(広沢直樹紹介)(第一七七九号)  同(石田博英紹介)(第一八七六号)  同(櫻内義雄紹介)(第一八七七号)  社会保険診療報酬課税特例等に関する請願  (小川新一郎紹介)(第一七八〇号)  同(竹入義勝君紹介)(第一七八一号)  たばこ値上げ反対に関する請願小林政子君  紹介)(第一八七四号)  酒税引上げ反対に関する請願増本一彦君紹  介)(第一八七五号)  私設看護婦養成施設建設に係る寄付金の免税に  関する請願外一件(玉置一徳紹介)(第一九  一三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度の公債発行特例に関する法律  案(内閣提出第一一号)  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    ○上村委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。
  3. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きわめて時間がありませんので、簡単にお伺いをしていきたいと思います。  まず一つ、いま、理事会も一大変おくれたわけでありますけれども会期末を控え、しかも財政特例法という大変重要な審議を控えている中で、大平大蔵大臣先進国首脳会議に、私に言わせればあえて三木首相についていかれる、こういったことの目的あるいはその課題、あるいは大蔵大臣としての任務、これはどういうふうに考えていらっしゃるのか、まず大平大蔵大臣の方から冒頭お伺いをしたいと思うのです。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 フランスの大統領から総理大臣に対しまして招請状が届きまして、パリの郊外で六カ国首脳会議を開きたいのでおいでをいただければ光栄である。その際は外務大臣大蔵大臣を御回行いただければ幸せである。各国にもそのようにお願いをしてあるということでございます。  国際儀礼といたしまして、御招待がございますならば、日本政府としても応じたい、応ずべきであると考えることは、御理解いただけると思います。そして、各国がそうでございますならば、日本としても外務大蔵大臣とも出席ができれば、三木総理大臣としても御満足であるということも、御理解いただけると思います。  ただ、佐藤さんおっしゃるように、いまちょうど国会中でございます。とりわけ私は、非常にむずかしい法案の御審議をお願いしておる責任大臣でございますので、国会の御審議を第一に心得えなければならぬ責任を持っておるわけでございます。したがって、私自身国会にとどまって審議の戦列に加わるべきであるし、また一方、国際信義の上から申しますと、パリの会場に行くべき立場でもある。一方を立てれば一方が立たない、重盛の心境でございます。  そこで私は、内閣国会の御判断を仰いだわけでございまして、内閣国会の方でいろいろ御折衝があったと見えまして、ようやくきのりの朝になりまして閣議の決定を見るという手はずになったと承知いたしておるわけでございます。すべて国会内閣判断に私の去就をゆだねたというのが私の立場でございます。
  5. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間があればもう少しいろいろなことを言いたいんですが、私、余分なことは避けましてあえてこのことをお伺いをいたしますのは、先進国首脳会議でありますから、首相はこれはいろいろ高度な意味でわからぬわけではない。しかし首相とて会期末でありますからいろいろ問題があろうと思います。大蔵大臣の場合、このランブイエ城で行われます会議内容その他をずっと検討してみますと、総理が行くのに果たして大蔵大臣が必要なのだろうか、どうもその辺が大平さんの影が向こうへ行って薄いんじゃないだろうかという気がするわけです。  それともう一つは、果たして日本が確固たる問題意識を持ってあるいは主張を持って向こうに行くんだろうかということについて、私はきわめて疑問に思うわけです。三木首相は、こう言ったら本人は怒るでしょうが、経済音痴だと新聞その他は書いている。それに対して相手のフランスのジスカールデスタンなんというのは大蔵大臣を経験してきましてベテランですし、あるいは西ドイツのシュミットにしたって大変な財政経済通だ。こういうことでありますから、大平大蔵大臣役目というのは、この経済に弱いと言われる三木さんを補佐する役目になるんだろうと私は思うのですね。  そこで、言われておりますことは六つの大きなテーマがあるわけでありますけれども、私は大平大蔵大臣に関係する三つの問題について具体的にお伺いをしていきたいと思うのです。  まず第一点は、景気の問題です。世界不況からの脱出ということが今度のランブイエ城における会議の主要なテーマになってきているわけですね。田中内閣あるいは三木内閣は物価の問題といいますと、口を開けばこれは輸入されたインフレである、こういうことを言ってかなり逃げてきたわけでありますから、本来ならば今度のこの先進国首脳会議がこの海外要因というものをどうやったら国内のインフレから遮断ができるのかという意味討議をするというのは、私は非常に意義のあることだと思います。しかし、どうも私たちに伝わってくる新聞報道その他では、そんなことを言ったって各国各国のいろいろな事情があるし、なかなかそれはむずかしい。そこでどうも、これは新聞報道でありますからあえて大平大蔵大臣のお考えをお伺いしたいんですが、結論的には、お互いに他国の景気拡大策を強制せずに各国の実情に応じて回復策をとろう、こういうような結論だと報道されているわけであります。こんなことならば、あえて先進国首脳会議を開いて世界不況から脱出をするというテーマを果たして話し合う必要があるのか。各国の実情どおりやっていこうということならば何も先進国の六人が集まって話すことはないんじゃないかというのが私の率直な感想なわけなんです。  それで、この世界不況からの脱出という問題についてわが国としては一体どういうような主張をされるのか、具体的にどういうような世界不況からの脱出策というのをその討議の中で述べようとしておるのか、その点についてはいかがお考えでございますか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 世界景気でございますが、最近アメリカ景気は、とりわけ第三・四半期から相当の速度で回復軌道に乗ったというように見られます。けれどもヨーロッパは依然として低迷を続けておるという状況でございます。わが国は一応の景気対策財政面からも金融面からも一応の対策を取りそろえて実施に移すことができたわけでございます。それぞれの国はそれぞれの立場で鋭意対応策をやっておるわけでございます。問題は、世界景気が本格的に軌道に乗るというためには、世界経済秩序が安定してまいりまして活力ある経済活動が伸び伸び展開できるという状況が開かれなければ、回復の曙光が見えてこないわけでございます。  今度の首脳会議というのはそういう意味世界経済秩序というものがここ数年来弛緩いたしておるのでございますけれども、これを何とか再建しようじゃないか、そのためには何をなすべきであるか、何をすべきでないか、そういったことについて意見の交換もあるし、コンセンサスの得られるものを固めてまいるということに私は意義があると思うのでございまして、こういう会議が開かれること自体が、開かれない事態よりは、そういう意味では大きな前進であると思っておるわけでございます。  したがって、景気政策が取り上げられる場合におきまして、これは貿易にいたしましてもその他後進国援助にいたしましても通貨問題にいたしましても、すべてこれにつながる問題でございますので、そういった問題において何をなすべきであるか、何をなすべきでないか、経済秩序を再建する意味合いからわが国としては前向きの姿勢で発言すべきはしてまいらなければならぬと考えております。
  7. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ですから私は、確かに言葉としてはそれは世界経済秩序の再建ということになると思うのですが、その場合、大蔵大臣が言われる何をなすべきか、何をなさざるべきか、この何をなすべきかの内容が問題だと思うのですね。  一体田中内閣三木内閣インフレ問題を取り上げますと、これは海外要因が非常に大きいのだということをずっと言ってきて、独禁法の問題についてもその他の流通過程の問題についても、物価問題というのはあたかも世界経済の中で日本経済が置かれている位置からいって輸入されたインフレなんだという、こういう言い方を今日までずっとしてきたわけですね。ですから確かに世界不況の問題には世界的なインフレの問題を話すことは意義がありますが、それならば話し合うだけではなくて具体的な提案として、何かそこに世界不況を脱する、世界的なインフレがそれではどういう秩序をつくれば日本にとってみて輸入されたインフレということにならないのか、この具体的な提案がなければ、単に私は自国のいろいろな利害に関係することだけ述べ合っていたのではこれは何ら意義のあることにはならないのではないだろうか。具体的に大蔵大臣が言われる何をなすべきか、これは何をなすべきだと大蔵大臣はお考えなんですか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 何をなすべきか、何をなしてはいけないかということを考えてみると、聡明な佐藤さんでございますので、私が御説明申し上げるまでもないと思いますけれども、まず第一に貿易でございますが、各国輸入制限に狂奔するというようなことになりますと、さなきだに縮小均衡傾向を持っております世界貿易はますます萎縮し、縮小均衡化するおそれが濃厚でございますので、東京におけるガット総会において採択されました東京宣言の精神をあくまで各国が守り抜くということ、これはやらねばならぬことであると思います。  それから第三世界後進国に対する援助にいたしましても、こういう第一次産品輸出国に対しましてその産品輸出所得が安定するということのためにどうすべきであるか、これには幾つかの提案がなされておるわけでございますが、私は、そのいずれの提案も前向きの提案でございますけれども、実行可能な案といたしましてアメリカ提案いたしておりまする案、すなわち国際金融機関でいろいろ積み立てられているIMF等の金をこの際動員いたしまして、第一次産品所得の安定に使おうじゃないかというようなことは、この際そういう意味でやっていいことでないかと考えております。  金融におきましても、産油国に金が偏在いたしまして、消費国、とりわけMSAC諸国のように資源も技術もない国は一番困っておるわけでございますので、そして国際収支が大きな異変を来しておることでございますので、そういう国際収支の変調を救うために、IMFIMFでオイルファシリティーを強化いたしたわけでございます。OECDOECDで近く御審議を仰ぎまする金融支援協定をつくり上げたわけでございますけれども、そういったことを促進してまいるということはこの際なさねばならぬことであると思うのでございます。なしてならぬことは、申すまでもなく、ここで輸入制限でございますとか、輸入の禁止でございますとか、そういう保護主義的な傾向世界が走ることは慎まにゃならぬことは当然でございまするし、すでに変動制をとっておりまする通貨にいたしましても、これ以上さらに大きな動揺、変動を見るというようなことのないようにできるだけ安定化方向に持っていくように、通貨政策を各通貨当局はやってまいらにゃいかぬわけでございますが、そういった点についてはよほど慎重な通貨政策が望ましいと私ども考えておるわけでございまして、一つ一つのことがそれぞれ別に論議されるのではなくて、世界経済の新たな安定した秩序、活力のある秩序を模索するという意味におきまして、すべての問題がそういう目的に奉仕するというようにわれわれは期待をして、それに積極的に参加してまいるということでなければならぬと考えております。
  9. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 南北問題については、かなり三木首相が三点ぐらいにわたって具体的に述べられていることも私も承知をしているわけなんですが、貿易の問題については、ガット東京大会宣言、これはある意味ではこれ自体も再確認ですし、そういった意味では貿易問題というのも六カ国が集まってかなり精神的な腹合わせといいますか、世界不況脱出に向かっての意欲というものを貿易面でも示そうということ、これは内容的には実務的な部分というのは余りないんじゃないか、むしろそういった意味での気持ちを合わせるというところにあるんではないかなという気が私はするわけです。  これは後で新国際ラウンドとの関連で若干お伺いいたしますけれども、一番問題になりました、しかも今度の六カ国首脳会議の最初の発端はそもそも通貨問題であったわけですね。で、果たして通貨問題に対して、日本はいま大蔵大臣もとにかく余り変動がないようにということは言われたわけでありますが、通貨問題について非常に日本の発言が少ないのではないか、あるいは私自身日本における政治なり経済の分野におきます通貨問題という問題のウエートが若干軽過ぎないかなという気がするわけですね。フランス固定相場制主張し、アメリカ変動相場制主張しておりますが、若干アメリカドルが強くなってきましたから、この辺のニュアンスも必ずしもそういうふうに固定化して物を考えられないと私は思うのですが、じゃしからば、日本というのはこういう中にあって、アメリカフランスという通貨問題について違った考え方を持つ者が集まるわけでありますから、貿易立国としての日本は果たしてこの通貨問題というのをどういうふうにしていこうとするのか、どういうふうに考えておられるのか、その点はいかがでございますか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 四年前ドルが金から離脱を声明するまで金ドル体制世界通貨はそれをベースにいたしまして一つの安定した秩序があったと思うのでありまして、これは世界経済の復興と成長の基盤であったと思うのであります。けれども、不幸にいたしまして、そのことが崩壊いたしましてから、しばらくの間、一年余り間スミソニアン体制というようなものが暫定的にございましたけれども、それが支え切れないでとうとう世界全面フロート状態に転落してしまったわけでございます。  このいまわれわれが持っております変動相場でございますけれども、これは確かにこういう激変の時期に通貨体制が対応するだけのフレキシビリティーを持っておったという評価もございまするけれども、しかしフロートに入りましてから対ドルのレートを見てみますると、ヨーロッパの各通貨は二割五分も三割も、それ以上もの変動を来しておりまするし、日本はそれほどの変動ではございませんけれども、そういうことは決して経済秩序の安定をもたらすゆえんではないと思うのでございまして、いまの変動相場制が理想的な制度であるなんと考えるのは私は間違いであると思うのでございます。といって覆水を盆に返すということで固定相場に返すなんということはとてもできる相談ではないと思うのです。アメリカフランスが対立しておるに至って、両方ともあくまでもフロートだ、あくまでも固定相場だなんと言って議論するほど両方とも硬直した頭脳の持ち主ではないと思っております。  要するに、問題は現在のフロート状態の中で相対的により安定したやり方をどのようにしてつくり上げていくかという具体的な現実的な課題がわれわれが共通に持っておる課題だと思うのでございます。さればこそ何回も何回も大蔵大臣会議がございまして、ことしになりましてもすでに三回開いているのでございまして、これで四回目でございますけれども、何か工夫をしようじゃないかということで、来年の一月のジャマイカ会議を目標にいたしまして、各国でいま勉強いたしておるやさきに、今度のようなまた首脳会議大蔵大臣どもが会うことになったわけでございます。したがって、これはその問題はすでにもう各国政府は十分心得て努力をいたしておる、方向も決まっておりまするし、十分の意思の疎通もやりながら来ておることでございますので、今度の会議におきましては、そういう方向で一層の安定化への努力をやろうじゃないかということを首脳のおえら方でリコンファームする、そういうのが私は一つの今度の首脳会議の大きな任務じゃないかというふうに心得ております。
  11. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと国際金融局長にお伺いしますが、日本は現状の為替相場、このやり方というのは固定相場制ではないことは事実ですが、変動相場制というふうに説明しているのですか、日本言葉で言いますと。
  12. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 基本的にはフロートではございますが、その管理されたフロートという形で運営しておるわけでございます。
  13. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その管理されたという意味は、日本為替管理が非常に厳しいという意味管理なのか、それともいわゆるワイダーバンド考えての管理されたということをいま言われたのか、その点はどういうことでしょうか。
  14. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 このフロート管理するにつきましては、昨年の六月IMFフロートガイドラインというものをつくりまして、そこには何点かございますが、第一点は日々あるいは週単位で見た相場の乱高下や放出量介入しなくちゃいかぬということがございまして、日本がただいまやっておりますのはその第一点の目的でやっておるわけでございます。
  15. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私が非常に疑問に思いますのは、この八月から九月半ばくらいにかけましてドルがだんだん上がってきた。特に九月の十八日でしたか、十七日でしたか、ついに三百円台になったということで、私の仄聞したところ、八月からこの九月にかけて日銀が約二十億ドル近い額を買い支えをやっておるというふうに聞いているわけですね。この数字が、果たしてどのくらい八月から九月いっぱい、この二カ月で買い支えをやったのか、これはいかがですか。
  16. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 ことしの夏ごろからドルが一般的に強くなりまして、それを反映いたしましてヨーロッパ通貨はもとより、円にも影響があったわけでございますが、私どもは先ほど申し上げましたようなフロートガイドラインに沿って介入をしてまいりました。ただし、その介入の金額は正確には申し上げるわけにはまいりませんが、外貨準備が八月に五億四千五百万ドル、九月に八億二千百万ドル減少をいたしております。これは介入の結果だという要素が大きいわけでございます。
  17. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これは釈迦に説法になりますけれども介入すればそこで、きょうはそんなに深くは入りませんけれども、やはりリーズ・アンド・ラッグズが当然生じてくる。そこでその差益で、銀行等が若干なりの利益を得ているというようなことも入ってきているわけですね。  そういうことを考えますと、果たして変動相場制の中でガイドラインはあるけれどもそれだけの多額のドルを使って買い支えなければいかぬのかかどうなのか。本来変動相場制ですからね、余りにもドルが高くなればまた反動が出てくるわけですね。それがむしろ変動相場制の本来のいいところで、これをつぶしてしまって事実上のワイダーバンドになっているという実態、これについてはどういうふうに思っているわけですか。
  18. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 為替相場を安定させるためには、非常に大事な要素リーズ・アンド・ラッグズの発生ということでございます。確かに先生御指摘のように、全くのフロートにいたしますと、投機的な資金に対処できるという見方もございますが、逆に、当局の決意を見せるという形において投機的な要素を封ずるという方法もあるわけでございます。現に先ほど申し上げましたように、八月、九月相当外貨準備が減りましたが、十月に入りまして相場も安定してまいりまして、外貨準備は大きな減少を見ておりません。最近の為替レートも一ころの三百三円から反騰いたしまして、三百一円くらいまで戻って、けさほどは三百二円五十銭というところで安定的に推移しておるわけでございます。
  19. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 日本の為替の対策を見ておりますと、ヨーロッパのマルクだ、ポンドだ、フランに比べてみると、どうも円が割り高ではないか、そういうことで抑えて何とか輸出をしやすいようにしようではないか、円安にある程度抑えようではないかというきらいが見えるような気がするのですが、そういう政策はとっているのですか。
  20. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 確かに、ことしの夏ごろから秋の初めにかけましてドルが強くなりました反面、ヨーロッパ通貨たとえばマルクは対ドル一〇%下落する、フランスフランも対ドル一〇%以上下落するという現象が起きました。そのとき円は二%ぐらいしか下がっておりませんでしたので、その期間だけをとりますと円は相対的に強くなっているということでございます。しかしもう少し前の時点からとりますと、必ずしも円だけが強くなっているというわけではないのでございます。  私ども相場を運営しておりますのは、先ほど申し上げましたように基本的にはフロートであるが乱高下は防いでいるということでやっておるわけでございまして、ことさらに円を強くしようとか、ことさらに円を弱くしようという意図はないわけでございます。
  21. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうもこれは産業界等に聞いてみますと、輸出をしやすいということでなるべく円を割り安にしたいということがありますが、しかしいまの実態というのは、為替の操作をすれば輸出が伸びるというような状態ではないんじゃないかと私は思うんですよ。逆に言えば、円安になりますれば油の代金がかさんでくるということも非常に問題になってきますから、そういった意味では私は意識的に円安にすることについても非常に問題があるのではないかと思うのです。  それで、この問題についての最後に大蔵大臣にお伺いをしておきたいのは、今度の会議がそもそも通貨会議であるということから発して、アメリカがそれに反対をしたということで、六つの項目にわたる世界経済全体の問題になってきたわけでありますが、日本のそういった円安あるいは円高、非常に複雑な要素を踏まえながら、いま大蔵大臣から御説明がありましたように、ことし三回にわたって、IMFその他を通じて外貨問題、通貨問題を話し合われてきたわけでありますけれども、まあこれはどこまで本当かわかりませんが、アメリカフランスがこの通貨問題については何らかの妥協ができたというようなことも報道されているわけですね。妥協ができたというのは、いまフロート制といっても事実上これはワイダーバンドでやっているわけですから、そのガイドラインをどのくらいにするかということで、いろいろな性格が変わってくると思いますけれども、何といっても通貨問題というのは貿易立国としては非常に重要な問題なわけなので、その辺のアメリカフランスの動き、これは行ってみなければわからないということかもしれませんが、それなりのことは妥協が成った。ですからアメリカも開催に賛成をしたというようにも聞いているわけでありますけれども、この通貨問題についてその辺の配慮と申しますか備えと申しますか、下手をすればまたまた法外に割り高な、実勢よりも非常に割り高なものを押しつけられるのではないかという心配もあるわけですね。その辺は何らか備えていらっしゃるのですか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、首脳間におきましては為替相場安定化への努力をお互いにしようじゃないかということを確認するというようになるのではないかと私は見ておるわけでございます。すなわち、首脳間で為替問題というような技術的な問題を討議をされるにはなじまない問題であると思いまするし、十五日の晩から始まりまして十七日の午前中までの会議でございまして、そんな細かい論議ができる余裕もないと思います。私ども大蔵大臣が集まりますので、その会議でそういう集まりが持たれるかもしれませんが、これは従来たびたびやってきておる会議でございまして、どうすればひとつそういう方向のアクセスが開かれるかという、やや方法の問題について今日までも論議してきておりますし、今度の機会も引き続き論議ができるのではないかと考えておりますが、私の承知する限りにおきまして、そういった細部の問題について米仏の間で新たな合意がなされたというようなことはないと思っております。
  23. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから貿易拡大の問題ですけれども日本政府としては、新国際ラウンドを提唱するんだということが新聞その他には出ているわけですね。この新国際ラウンドというからには、何らかのやはり具体的な、たとえばケネディラウンドのように全体二分の一だというような、何らかのこういうことがなければ、これは私は推進ということにはならぬと思うのですね。その辺は、わが国としての具体的な関税率引き下げの考え方が固まっているのですか。
  24. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 新国際ラウンドにつきましては、新しいラウンドを提唱しようという考えを私ども持っているわけではございません。これは御案内のように、二年前の九月にガット東京総会におきまして、ケネディラウンドの後の新国際ラウンドを発足をするということが閣僚レベルで決められたわけでございます。ただ、先生御案内のように、その後、世界景気の問題でございますとか、あるいは米国の通商法の成立が大変おくれまして、本年一月には成立したわけでございますが、そういう事情がございまして、その二年前に提唱されました国際ラウンドがなかなか進捗いたしておりません。それを全般的にさらに推進していこうということが大事ではないかと私ども考えておる次第でございます。
  25. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、今度の先進国首脳会議というのも、結論的に聞いてみますと、いまお答えがあった貿易の問題あるいは通貨の問題あるいは世界不況脱出の問題、これ等についても、まあ過去の積み重ねをそのままもう一度顔を合わせて腹合わせをするというような会議のような私は気がするのですけれども、そういうふうにつかんじゃいかぬのですか、どうなんですか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 首脳会議の評価は、いろいろな立場でいろいろな評価があり得ようかと思いますけれども、六カ国の最高首脳が集まるということは大きなイベントだと私は思います。そして、そこでいま自由世界が当面しておりまする重要な問題について基本的なコンセンサスが得られるということは、これまた大きなアチーブメントに違いないと思うのでございます。  したがって、そういった会議に招請を受けたということでございますので、三木総理以下、私どもといたしましても、日本の名誉にかけて、ちゃんと今日の問題を踏まえてこれに参加してまいることは、今後の自由世界の安定のために大変大事なことだと私は思っております。
  27. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私の言いたいのは、具体的な、目新しい、そしてなおそれが実を結ぶような新しいものというのはどうもよくわからないような気がするんで、オリンピックじゃないけれども、参加することに意義があるような、そんな会議のような気がしてしようがないのであります。  時間がありませんから先へ進みますが、次には来年度の予算あるいは財政運営についてなんですが、三点ばかり簡単にお伺いしておきたいと思うのです。  一つは、来年度の予算の編成の時期の目安ですが、これはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 まだ政府、与党の間で編成の目安について相談をいたしておりません。大蔵当局といたしまして、概算要求を受けていま鋭意検討をいたしておるというのがいまの段階でございまして、まだ編成をいつするかというような点につきましての目安は立っておりません。
  29. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 目安が立っていないということは、年度内編成はとても間に合わぬというふうに理解をしてよろしいですか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 やはり大蔵当局としては、こういう景気がたるんだときでございますし、経済が落ち込んだときでございますので、来年度の経済の展望、そして財政計画すなわち予算というようなものができるだけ早く固まって、そして国民に示されることが非常に大事だと思うのでございまして、可能でございますならば年内編成ということは望ましいと考えておりまするし、財政当局としてはそれだけの用意はしておかなければならぬと思っております。
  31. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、われわれに伝えられるところ、来年度の予算については景気起動型だという表現がされているわけですね。もしそうじゃないというなら、後で御答弁の中で答えていただけばいいわけですが、特にその中で、公共事業費の伸びが一五%だ、予算の伸びは何とか一二%程度に抑えたいけれども、公共事業は一五%の伸びで三兆三千億を考えているというようなことがわれわれの耳に入ってくるわけでありますけれども、この公共事業費の中身、これがどうも今度の補正予算等の対応を見てみましても、またまた高度成長時代の遺物である大型プロジェクト、これをどんどん復活をさせるという考えではないかなというふうに見られるわけですけれども、その点はいかがですか。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 公共事業につきましては、仰せのように規模の問題と、それからその内容の問題と質の問題、二つあると思います。規模の問題といたしましては、去年、ことしと公共事業の予算というのはノミナリーに見ましても前年同額ぐらいに押さえまして、言いかえれば、物価の上昇がございますので事業の分量はその分だけ減るというように押さえてまいりました。これは総需要抑制策をやる場合におきまして、一番有力な政策手段として公共事業を抑制するというねらい撃ちの政策をとったからでございます。今度そういう状況から脱却いたしまして、景気をむしろ回復させなければならぬというようなことになってまいりましたので、今度一一・三%ばかり公共事業費をふやすことに今度の補正予算で認めていただいたわけでございます。来年度どうしますかにつきましては、まだ一割五分にするとかなんというようなことを決めたわけじゃございませんし、どこからそういう議論が出たのか私は存じません。来年度の予算につきましてどのようにするかはまだ決めておりません。  ただ、あなたが言われるように、第二の質の問題でございますけれども、ここ数年、公共事業費にいたしましても財政投融資にいたしましても大変中身が変わってまいりまして、生産重視偏重から生活福祉重視の方向にだんだんと変わってきておるわけでございまして、これは偏見を持たずに政府の資料を分析していただければ御理解いただけるかと思うのでございまして、その生活福祉の比重が財投も含めて年々歳々ますますふえてきております。この傾向は私は来年も続けて前進させていかなければならないことと思っております。そういう政策の方向は持っておりますけれども、来年どの程度の金額を予算的に確保してまいるかということについてはいま全く未知数でございます。
  33. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 後半に誇らしげに言われた生活関連投資なりその他の問題は、わが党がずっと主張してきたことで、その意味ではやっと目が覚めたかと私たちは言いたいわけです。  それでもう一点お伺いをしておきたいことは、歳入の面で租税特別措置を一体どうするか。個々の問題についてはまた改めてお伺いをする機会を持たしていただきますが、額だけでいきますと、五十年度で五千六百十億円租税特別措置によっての減収になっているという数字が出ているわけですね。それで、公共事業費を一五%にするか何%にするかまだ決めていらっしゃらないということでありますが、概算要求から追ってみれば大体の目安がつくわけですね。こういうことを考えてみますと、いわゆる当然増経費が来年度一兆八千億くらい予想されますから、そうなってきますと来年度予算というのは、建設国債、赤字国債を入れても当初から六兆円くらいの公債発行しないととても財政がやっていかれないのじゃないかというふうに計算がはじけるわけですね。公共事業費が三兆三千億という数字を考えてみますれば、赤字国債だけでそのうちの約半分、三兆円を考えなければいかぬ。  こうなってきますと、マクロな話でありますが、租税特別措置法が減税されている部分が五十年度で五千六百十億円だということになりますと、これは全部租税特別措置を廃止をしましてもとても赤字国債の総額を減らすわけにはいかぬ。減らすわけにいかぬというよりむしろ租税特別措置全部をなくしてもなおかつ問に合わぬという状態じゃないかと私は思うのです。そういうことを考えてみますと、租税特別措置法についてはかなり深刻に見直しをしなければいけないのではないか。全く政策的に必要なもの——これがあるかないか、また政策的というのは一体どういう意味かというのは非常に議論を呼ぶところかもしれませんが、そういうもの以外はほとんど廃止をするというくらいの姿勢でいかないと、まさにニューヨークの二の舞を日本が踏むのではないだろうか、こういうふうに思うのですけれどもいかがでございますか。
  34. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 租税特別措置につきまして従来から整理、合理化に努力してきておりますが、この機会にもう一遍全面的な洗い直しをお願いしたいということで現在税制調査会で御審議をお願いいたしております。総会ですでに三回御審議をいただいておりますが、ただいまの佐藤委員の御質問に即して申し上げますと、まず租税特別措置によります減収額はおっしゃいますとおりネットで五千六百億でございます。これは交際費課税の強化の分を差し引いておりますので、グロスの減税額は七千九百六十億円でございます。ただその中身を分析いたしますと四千九百億、約五千億近くは実は所得税と登録免許税などの減税でございまして、所得税については前回御議論をいただきましたが、その減収の大きな項目になっております生命保険料控除とか少額貯蓄の免税とかいうものにつきましては、いま以上ふやすということは差し控えるべきであろうという御意見がございましたけれども、これをこの際縮減すべきだという御意見は必ずしも出ておりません。  したがって残りの三千億の法人税関係の特別措置についてどの程度までの整理、合理化ができるかという問題になってくると思います。その場合に、たまたま昨日法人税関係の特別措置について御議論をいただきましたが、その中では佐藤委員の御指摘のようにこの際一遍全部ゼロにしてしまう、それからどうしても必要なものを逆に拾い上げるという作業をすべきだという御意見の委員も何人かいらっしゃいました。しかし同時に、従来から整理、合理化は進めてきておるのだし特別措置というのは理由なしにやっておるわけではない、やはり一つずつきめ細かくその理由、効果を洗い直してやるべきであって、特にこの機会だから何でもかんでもやめてしまうという乱暴な議論には承服いたしがたいということをおっしゃった委員もいらっしゃいます。  これらの点はなお今後時間をかけまして、関係各省とも協議いたしながら御納得いただけるような結論を得ていかなくてはならぬと思います。  しかし、いずれにしましても金額的なオーダーといたしましては約三千億円が法人税関係でございまして、しかもそのうち約四割はいわゆる中小企業関係でございますので、それを全部やめてしまうということはなかなか言うべくしてできないし、あるいは適当ではない。しかもいずれも平年度分でございますから、五十一年度にどの程度の増収があるかという角度から申し上げますと、これに非常な精力を集中いたしましていまやっておりますが、結果的に、この作業によって特例公債の幅が非常に大きく縮まってくれるということは残念ながら期待できないだろう、そのように考えております。
  35. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間がありませんので山田委員に譲りますけれども、三千億のうちの四割が中小企業と言いますけれども、これは来年度本格的に論議をしたいと思いますが、事実上中小企業に祖税特別措置法が効いているというのはほとんど皆無に等しいと私は思っているわけです。これは一度改めて論議をいたしますが、法律上はそうなっていますが、実態はほとんどやっていない。それから政治姿勢として、確かに三兆円の赤字国債を減らす額としてはとても足りるものじゃないけれども、少しずつでもやっていかないととても赤字国債は減らせるものじゃありませんので、そのことだけはつけ加えて終わります。
  36. 上村千一郎

    ○上村委員長 山田耻目君。
  37. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大臣、いろいろな問題を背中に背負って外国へ出張なさるので大変御苦労だと思います。マクロ的な経済金融問題の御論議のようですが、日本の国益がその中にどう守られ保障されてくるか、行かれることにいろいろ批判もあるのですから、十分ひとつ批判にこたえてりっぱな成果を上げてお帰りいただきたいと思います。  マクロ的な物の考え方等については佐藤委員の方から質問がありましたので、私は、時間もごく限られておりますので、今日の歳入欠陥の補てん策について国会でも補正予算を通してずいぶんと論議されてまいりましたし、私も問題を幾つか提起をしてまいりましたが、いまの日本税制なりあるいは通達のあり方等についていろいろと調査をしてまいりますと幾つかの矛盾にぶち当たってくるのですが、その中で特に、きょう大臣が出発なさいますまでに金融機関の貸倒引当金の制度についていま一度中身を詰めて、そうして大臣の見解というものを伺っておきたいと思います。非常にミクロの問題に入って恐縮ですが、国民も最近特に非常に関心を深めておりますだけに、ひとつ明確なこれからの取り扱いについての態度の表明をお願いしたいと思います。  せんだってお願いしておきましたが、大体欧米諸国では、同様の制度はございますが、しかし内容がかなり違っておることを指摘いたしておきました。欧米の制度では主体を実績主義に置いております。当該銀行が企業に金を融資して、回収不能になって結局焦げついてしまって貸し倒れの状態になる、その実績を集計をして翌年度の税制措置の中で相当領を見ていくといういわゆる実績主義。ところが日本の場合は、実績をあらかじめ想定をする率を策定をしてそうして貸倒引当金を積み立てていく、こういうやり方になっておりますが、積立金額と貸し倒れの実績との差が余りにも多い。  先般の質問のときには、千分の十という積立金の率に対して実績は千分の〇・二と御回答があったようでございます。そこで五十倍の積み立てをしておると指摘をしましたが、精査をしてまいりますと千分の〇・〇二でございます。かなり実績と引当金額の間には誤差が大きく広がってまいりました。  実際を調べてみますと、四十九年の上期で都市銀行の引当金総額が七千四百四十三億、滞貸金償却、いわゆる貸し倒れの償却金が三億であります。二千四百八十一倍の積み立てであります。こういうような銀行の過保護は世界にはないんじゃないですか。私は、この実績を見て、何となく今日の政治のあり方、企業保護、特にその中で金融機関の保護というものがここまで過大に格差を生じてまいりますと、国民の皆さんは承知をしない、こういう気持ちが調査を進めていく中で広がり、深く感じたところです。  この事実については、私の調査が誤っておれば別ですけれども、聞違いございませんでしょうか。
  38. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいま山田委員のおっしゃいました、前回、たしか八月の大蔵委員会で私からお答えいたしました数字は、主税局の調査によります四十九年度分の金融保険業の貸し倒れの実績率が千分の〇・二と申し上げました。これに対しまして、精査すればとおっしゃいました数字は、銀行局の調査の数字であろうかと思います。  これによりますと、ただいまおっしゃいました数字の根元の数字は若干違うようでございますが、率といたしましては、都市銀行が同じ千分の〇・〇二、地方銀行が千分の〇・〇五、相互銀行が千分の〇・三二、信用金庫が千分の〇・四七ということになっておるようでございます。  なお、諸外国の例でございますが、金融保険業以外の事業につきましては、実績率を採用している例が多いと思います。金融機関につきましては、むしろ概算率の例の方が多いように思います。なお、アメリカは、将来実績率に向かって引き下げるという改正をいたしましたが、これは実績率に至るまでに、ちょっといま正確な資料を持っておりませんが、今後十七、八年かかる、十七、八年かけて徐々に引き下げていくということを考えておるというふうに理解いたしております。  なお、銀行局長から補足をして申し上げるかもしれませんが、後段で申し上げました銀行局調べの率は、これは現実に貸し倒れとして償却処理をしたものが分子になっております。私どもの方の調査は、貸し倒れ損失発生の場合には、債務償却特別勘定を設定いたした額も貸し倒れとして実績値を計算いたします。その差はございます。
  39. 田辺博通

    ○田辺政府委員 いま主税局長から御答弁したとおりでございますが、ちょっと補足いたしますと、いま先生が御指摘になりました四十九年上期の都市銀行の貸倒引当金残高は七千四百三十三億であって、それに対する償却額は三億である、だからその率はものすごい倍率になってしまう、こうおっしゃったのでございますが、恐縮ですが、これは半期でございますので、残高をいきなり半期の分で割りますとちょっと誤解を生ずるので、一年間の償却額と残高とを比較していただけば、そうしますと、先ほど先生がおっしゃいましたような千分の〇・〇二、つまり下期にやはり六億の償却が行われておりますので、その両方を足して計算をしていかなければいけないと思います。
  40. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 四十九年下期、六億ございますね。下期の引当金は七千五百五十三億ということになっておりますから、上期のやつは益金に回していくわけですか、上期、下期合算をしてこの金額を指しておるわけですか。
  41. 田辺博通

    ○田辺政府委員 下期の貸倒引当金の残高は七千五百三十三億でございます。それで一年間の貸出金の償却額は三億プラス六億の九億でございます。したがいまして、一年間のその比率といたしましては足したもので割らなければいけない、こう申し上げたわけでございます。
  42. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 わかりました。それにいたしましても、千分の〇・〇二といいますと、約五、六百倍近い金額です。都市銀行だけを見てまいりますと、私が言いましたように、大体上期で二千四百八十一倍、下期で千二百五十九倍、こういう倍率になってくるのですね。これだけの引当金積み立てをさせなくてはならない理由、これは一体どういうものでございましょうか。実績と引当金総額と、そうして倍率が出てくるのですから、あなたの方でもわかりますからね。どういう理由に立たれてこれだけの倍率を積み立てなければならないのか。  いま主税局長お話しがございましたが、この考え方の中に欧米諸国の話もされました。確かに各国とも、実績主義に立ち返ったところもありますが、努力をなさっておる。アメリカあたりは十五年から十八年かかるかもしれないとおっしゃいましたが、私なんか見てまいりますと、大体いまの貸倒金額の十倍から三十倍という中にそれでも入っているわけですよ。日本のように数百倍、数千倍という積み立てをする国というのは、私は調べてみてもわかりません。だから、日本がこういうことをしておる限りにおいては、そこにそれ相当の理由があるだろうと思っておりますので、その理由を御承知であるはずですから、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  43. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 実績との乖離が余りにはなはだしいという御指摘は、私としてはごもっともだと思います。その意味で、四十七年以来逐次引き下げをいたしてまいったわけでございます。  それから、将来どのような率が適当かということにつきましては、アメリカは十八年かけて実績に下げるようにいたしましたが、ドイツもフランスも結局は概算率を用いるという制度になっておりますし、やはり概算率の方が評価性引当金としては適当ではないか、税制としてはそう考えているということは、たしか前回もお答えいたしたような気がいたします。  その場合に、どのような概算率を用いるか、これは平均的に見まして、ある特定の金融機関の実績率が低い場合でも、概算値としてはやはりその中の限界的な企業でかなり高いものにつきましても念頭に置いて設定するということにならざるを得ないのではないか。平均だけを見ましても、やはり年ごとにある程度波は打っておりまして、都市銀行について申し上げますれば、山田委員お手持ちかと思いますが、四十五年度は四十九年度の約五倍の貸倒率になっておりますし、やはりそのような実績をいろいろ見ながらやっていくのではなかろうか。  いまのところ私どもとしては、とりあえず千分の八に切り下げて、これはすでに実施に移っておりますが、その後さらに時間をかけると思いますけれども千分の五に到達するように検討いたしたいということで、これはすでに政令の中に書き込んであるわけでございます。  ただ、なぜいま千分の五まで決め切らなかったのかという問題につきましては、たまたまことしの九月決算に間に合うように八月に関係局と、ここに銀行局長おりますが、いろいろ論議いたしたわけでございますが、今後の情勢として、決っして好ましいことではないけれども、かなりの大型の貸し倒れが発生する危険がいま非常にある、したがって、いまの段階で千分の五までいつというふうに決めてしまうのは適当でないと思うから、それは千分の八になった段階でもう一度議論しようではないかということでございましたし、私どもといたしましても、それなりの議論は納得できると思いましたので、今回のような改正にいたしたわけでございます。現に政令改正をいたしました、決めました後で、もう公表されておりますから、名前を言ってもいいかと思いますが、興人とか照国とかいうかなり大型の倒産も出てまいりました。それが一体、本当に銀行としての貸し倒れにどの程度響くものであるかというのは今後の問題でございますけれども、なお状況をよく見ながらやってまいりたい。  もう一つ、くどくて恐縮でございますが、個別の企業ごとの実績率の採用をすべきかどうかという点につきましては、私は必ずしも適当と思わないと申し上げておりますのは、何と申しますか、アメリカのように非常にドライに取引先を切ってしまう国であればあるいはそれでいいのかもしれません。日本のように最後の最後まで倒さないで、本当の不良会社になりながら貸倒償却をしないという国につきましては、必ずしも実績実績と言わない方が、思わないディスラプションを起こさないという意味で、かえって妥当ではないかという考え方を私としては持っております。
  44. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 あなたのおっしゃる一つの論理的な背景は私も多少わかるのですよ。実績率だけでは、経済変動もあるし、多少の安全率を見なくちゃいかぬ。しかしそれが諸外国と比べてみて、千倍とか二千倍の安全率を見ておるのはなぜなのか、これに対してはどなたにも御返事がないわけですよ。私はそれが、いまのような歳入欠陥が激増してきたときに、歳入増を図るというときに、こういうふうな状態を残していていいのですかと聞いているのですよ。だから、あなた方がこういう制度をつくられたときに、制度目的があったはずだ。それはいま大倉さんがおっしゃったような気持ち、私はある程度わかるのですよ。その安全率を見ていかなくちゃならないけれども、なぜ千倍から二千倍の安全率を見ていくのか。一般企業にそれだけの安全率を皆見てやるのですか。銀行だけが特殊な過保護になっていく理由は何なのか、これをひとつ銀行局長お答えいただきたいと思います。
  45. 田辺博通

    ○田辺政府委員 どうもくどいようでございますが、ひとつ、千倍二千倍とおっしゃいますのは、先ほどの半期の償却額で計算されておりますから、それはほかと比較する場合に、先ほどの三億と六億を足してもらわないといけないということを御了解願いたいと思います。  それから外国の事例でございますが、私いま手元に持っております貸倒引当金の繰入率、税法上の限度で申しますと、アメリカは現在千分の十八でございます。それを一九八八年までに十八年かけて実績率に持っていこう、こういうことになっておるようでございますが、この段階といたしましては一九七六年、来年になりますか、これが千分の十二、一九八二年、さらにまた六年かけますが、千分の六、それから一九八八年には実績率に持っていこう、こういうようなことになっておるようでございます。  それから西ドイツの貸倒引当金は、原則としては千分の十・五ということになっておるようでごいます。なお、これはまあいろいろあるようでございますが、保証債務につきましても千分の五・二五を積むということになっております。わが国制度で申しますと、保証債務につきましては引き当てを認めておりません。貸出金に対してやっております。  そういうようなことを考えますと、これは、私どもの現行行政上の考え方を申し上げるわけでごいますが、やはり銀行というものは絶対に安全でなければならないという鉄則がありまして、私どもの指導といたしましては、できるだけ自己資本、内部留保というものを厚くすることが一つの目標になっております。現在の自己資本比率というものは、預金に対する、つまり全体の債務に対する自己資本の備えというものは、外国の銀行と比べましてやや遜色がある状態でございます。  問題は貸倒引当金としてどうなんだということがもう一つあると思いますけれども、やはりこれはそのときどきの実績と申しますか、あるいは過去数年間の平均というようなことでなしに、相当の貸し倒れが発生することは経済の情勢によりまして起ってくる、たちまち起こってくる場合があるわけでございまして、また一つ、個別銀行、個別金融機関ごとに、私どもいつも調べておりますけれども、これはたとえば地銀の例で申しますと、千分の三十になんなんとする、二十九・一というような償却をせざるを得なかったものもございます。また信用金庫の場合には、四十六というようなものを償却せざるを得なかったという事例が、これは四十九年度に発生しておるわけでございますが、そういうようなことを考えますと、もちろんその一つ考え方があるべきだと思いますけれども、現在のような経済情勢、金融状態考えますと、そう一気にこの貸倒引当金を低めるということは、銀行経営の基本の心構えとして余り好ましくない、こう考えておるわけでございます。
  46. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 いま西ドイツのお話がありましたが、それは実績率中心主義でありますが、安全率を見て千分の十八というふうな状態になっておる。向こう日本と違いまして実績率が高いわけですね。だから、実績率中心主義でいくけれども、安全度を見積もってそうなる。日本の場合も私はやはりそういうシステムを採用していかれるのが常識じゃないかと思う。  実績率を、いまあなたは都銀、地銀、相銀、信金とお分けになりましたが、確かに相銀、信金は実績率は高くなってきますね。額もふえてくる。しかし、一番安全度の高い都銀、地銀は、貸倒金額は低いくせにその積立金額は非常に高いのが極端に目立ってき始めている。そういうことを私は指摘をしておるので、ただ諸外国と率だけを関連させて見るということではなくて、実績率を中心に考えていく、そういう引当金の積み立て、そこには安全度を見てやっていくという原則がとられておるけれども日本の場合は余りにも極端に離れ過ぎているではないか。ここについては、こういう時代にはもう少し手を加えていって措置をしなければいかぬ。だから一応実績主義の原則に立ち返っていただいて、そこから安全率を見て操作をしていただくというやり方に早く立ち返ってもらわないと、一般の不満というものはだんだん蓄積されてくる、こういうことを特に指摘をいたしたわけであります。  それからもう一つ申し上げておきたいのは、こういう政令で出された千分の十二、十、今回の千分の九・五、こういう一つの出され方以外にこの経理基準通達というのが出されておると思うのです。これをお出しになって、いまの千分の十の比率の上になお経理基準比率を積み重ねて引当金をつくっていく、これはどういう根拠からおつくりになったものですか。
  47. 田辺博通

    ○田辺政府委員 昭和四十二年に統一経理基準をつくったわけでございます。その当時の、貸倒引当金について申しますと、税法上の繰り入れ限度はたしか千分の十五でございます。それに対して、統一経理基準、つまり銀行行政上の要引当額は千分の十八となったわけでございます。その後税法の限度が引き上げられてまいりましたのですが、やはり千分の三上乗せというようなところで基準を決めてまいったわけでございます。これは先ほど申し上げましたように、わが国の銀行の自己資本の比率というものが遜色があるということで、税法上はたとえ千分の十五あるいは十二というような限度までしか損金に算入されなくても、税を納めても、銀行としては安全性を尊重する経理の問題から、それ以上の引き当てをなすべきである、こういう指導をしてきたわけであります。これがいろいろ誤解もあったようでございますが、現在は千分の十に結局引き下げております。  その経緯は、税法上の限度が千分の十になったときに、税法上の限度と同様にしようということにしたわけでございます。現在恥同じ限度でもってやっていく。ただことしの九月期から税法上の限度は引き下げられるわけでございまして、従来の税法上の取り扱いでございますと、いままで積んでおった残高を取り崩さなくてもよろしいといいますか、新たに取り崩して税金を納めるということまでは要求していなかったんでございますけれども、今回は既往の繰入荷に切り込んで、税法上はそれも損金に認めない、こういうかっこうになってまいりました。  ただ私どもの方といたしましては、統一経理基準の考え方としては、いままで積んでおる引当金の残高を取り崩すということはやめなさい、その水準は維持をする、つまり最低のものとして維持をする。といいますのは、これから貸出残高も少しずつふえてまいるわけでございますから、繰り入れ限度が引き下げられましても、いつかいままでの積んでおる残高でもって、ちょうど分母がふえてまいりますから、それを追い抜くかっこうになっていく、それまではそれを取り崩さない、ただし税金は払う、こういう仕方にしておるわけでございます。
  48. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 税法で定められた千分の十、これはいわゆる損金算入で税金は払わない。しかし経理基準通達によるやつは、千分の三プラスはいわゆる税の対象になったものをその中からの益金から積み立てていく、こういうことなんですが、実際、銀行経理としては株主総会へかけるときにはそれは損金として立てるはずなんですね。そういたしますと、株主配当その他を考えたら、そこには一つの減税の姿があらわれてくる。当然最終的には税の収人は減ってきますね。——それは減ってくるんじゃないですか。もちろん分離課税制度をとっていますけれども、その千分の三という金額は益金で配当の対象になりませんからね。当然そういうかっこうが、結果としては最終的にどれだけ出るかは別としても、理論的には起こり得るだろう。しかし、そうした千分の三の経理基準というものを損金で落として、今度は積み立てていった部分に上乗せをしていく。上乗せをしていって、千分の十のときには十三にする、千分の十二の時代には十五にしていく、これは銀行の諸表の中には出てきますね。そういうふうなことまで行っていかなくちゃならないという一つやり方にも、私は余りにも銀行の安全度ということを考えて、屋上屋の感じがあるような気がしてなりませんよ。だからことしの七月七日の通達では、一応そのものは外されておるようですが、上期の実績を下回らないようにという配慮がされております。だから制度上、通達上は外されておるけれども、実績は保証されている、こういうような通達の内容でありますね。  だからそういうふうな措置をすることが今日この時代の、くどいようですけれども、歳入欠陥でこれだけ国民が将来に危惧をしておる、あるいはその可能性もある国債をずっと発行していく、この次も発行していく、こういうふうに歳入状態が思わしくないときに手をつけなくてはならないのは歳入増の具体的な施策でなくちゃならない。そういうときにこういうところに深く目をつけていくというのが財務当局である大蔵省の大事な仕事ではないのか。もちろん歳出を節減していくということも大事な方法でしょう。しかし、それと歳入増を図っていくというやり方、これとが一体的になって初めて税の不公正を直していくということも起こってきて、国民は理解の度を深めていくんですよ。そういうことが十二分に措置なされない段階でいろいろな措置をなさるところに、国民のコンセンサスが得られない理由があるような気がしてなりません。  その面から見ましたら、時間もなくて恐縮なんですが、大蔵大臣、特別、銀行に関してはいわゆる利益隠しと言われていたこの貸倒引当金の制度、しかも多額の金額に上るのですから、実行率と見たら、いま議論しておるのをお聞きになっように、余りにも差がひどい。私のとり方の差と銀行局長のとり方の差には開きがございます。しかし何といっても実績高に対して千分の九・五、実績は千分の〇・〇二、こういう開きがあるんですよ。その開きは五百倍近い開きがございます。こういうふうな状態が残されたまま歳入補てん策が別の方法で立てられていくというのでは国民は承知すまい。だから、こういう一つの利益隠しと思われるところに手を入れて措置をしていくということが、いまあなたの責任として大きなウエートを占めてきたのじゃないかと思いますが、ひとつこの問題についてまたこれからもあらゆる角度から深めていきたいと思いますけれども、きょうは時間がないので、あなたは、二十分から議長室へいらっしゃるようですから、これで終わりますけれども、一言その点についてこれから向かうべき方向を明示していただきたい。あなたの考え方を述べていただきたいと思います。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 かつてない財政危機に逢着しておるわけでございまして、歳出面、歳入面にわたりまして精細に、しかも彫り深く見直しを遂げまして、できれば問題を残さないように十分精査遂げた上で、公債の問題とかあるいは増税の問題とかいう問題について御相談をしなければならぬと考えております。  そういう意味で、いま取り上げられた金融機関の貸倒引当金の問題でございますが、仰せのとおりの対処方針といいますかを持って私ども臨んだわけでございます。銀行局と主税局との間にも非常に激しい議論を展開いたしましてやってまいったわけでございまして、千分の十五から今日こういうように逓減してまいるところまできておるわけでございます。しかし、これは実績主義からいくとなお大幅な距離がある、いまの危機意識から申しますと、とうていまだ国民一般の認容するところではないじゃないかという御指摘でございまして、その御指摘も十分理解できるところでございます。  しかし、行政といたしまして二つの立場がございまして、一つは、いままでやってまいりましたにはそれだけの理由があってやってきたことでございすので、その政策的な理由というものをにわかに放てきするということについて銀行政策の立場から抵抗を感じるということは、山田先生も十分御理解いただけると思うのでございます。同時に、私ども歳入行政の立場から申しましても、全体として金融秩序が保たれ、経済界が秩序ある姿において発展してまいることを保障することによって初めて歳入が確保されるわけでございますので、その当年度の歳入の多きを望むことももとより必要でございますけれども、長きにわたりまして税源を涵養してまいる、培養してまいるということもまた努めていかなければならぬわけでございまして、経済あっての財政でございますので、そういう意味から財政のはやる気持ちを押さえながら経済を守っていかなければならぬ場合もあるということも御理解いただきたいと思うのでございます。  しかしながら、いずれにいたしましても、この問題についきましてはこれを漸次詰める方向に行くべきであるという方針は、私どももそういう方針を打ち出してまいったわけでございまして、国会においてもそういう意見が支配的であるようでございます。したがって、いま千分の八までとりあえずやらせていただきまして、千分の八の段階におきまして、次にどのように切り込んでまいりますか、それについても鋭意われわれとしては、その千分の八でとどまるつもりは毛頭ないわけでございまして、さらに踏み込んでまいりたいということで、金融界に対しましても、千分の八で打ちどめになるというように心得られても困るということは十分申し上げてあるわけでございます。したがって、一層この点につきましては精力的に詰めてまいるということで、政府も精力的に努力をするということで御了解を願いたいと思いますが、これ以外のいろんな税源の見直しにつきましても、もとより厳しく対処して御期待にこたえなければならぬと考えております。
  50. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大臣の決意というものが述べられたわけですが、一つ一つの事柄には、できた経緯がありますし、それなりの理由があったことは私もわかります。しかし、この時代になりますと、国民がその理由を納得するかどうか、そのことがきわめて大切なんです。だから私は特にきょうはこの問題を取り上げてお願いをしたのですけれども、どんどん文句を言わなければ動かないというのでは、行政指導なり行政努力というものを怠っていたということになるのですよね。だから、この時代でこそ、国民に幾つか無理をおっしゃるのですから、国民に無理を言う前にうんと思い切った努力なり行政指導を強めていただく、それを私はお願いをしたいのです。  大平さんは、前回もそうでございました、一生懸命やるとおっしゃって、私もあなたの人柄は信じておりますからそれで承知をしましたが、三木さんでもそうですけれども、おっしゃるほどには実行が伴わないのです。これを非常に私も残念に思いますし、国民もしまいにはいや気が差してくるのです。どうかひとつおっしゃっている言葉を忠実に履行し、実行していただきますように私は本当にお願いします。  以上で質問を終わります。
  51. 上村千一郎

    ○上村委員長 午後一時二十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後一時二十二分開議
  52. 上村千一郎

    ○上村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。増本一彦君。
  53. 増本一彦

    増本委員 時間も限られておりますので、質疑をさせていただきます。  ランブイエの会談に大臣もいらっしゃることに発表になっておりますけれども、今度のランブイエの会談の一般的な課題は、報道などによりますと、国際経済秩序の再検討というように言われています。  大臣も御承知のように、戦後の自由主義経済世界秩序は、国際緊張の激化が全般的に進められてきた一九六〇年代の末ぐらいまでは、いろいろ評価がありますけれども、それなりに機能をしてきたのではないか。しかしこの七〇年代に入って、IMF体制の崩壊だとかあるいはエネルギー危機、食糧危機というような国際的にも非常に重大な経済的な問題が起こって、それがきっかけになって貿易収支の問題でも大変深刻になっている。しかもそういう過程の中で、発展途上国の要求も資源問題を初め国際的な経済問題について全般的に非常に強まってきているといういまの情勢だと思うのです。  こういうように国際経済全体の中で多面的に起こっている問題のどこからどのように手をつけていくのかということを抜きにしては、経済秩序の再建ということは考えられない。これまでにも大臣を初め、あるいは総理その他関係の閣僚の皆さんからはいろいろな御意見も伺ってきているわけですけれども、いまのこの時点で日本としてはどこに焦点をしぼってこの会談に臨むのか。そしてまた多面的に起こっている問題というのは相互に連関性を持っていますけれども、しかしその中で、どの間をつかんでアプローチしていくのかということをもう一つ具体的に政府の方で明確にしていただくということが、ランブイエの会談に政府が臨まれるという上では非常に必要なこでとはないかというように考えるわけです。  まずその点で大臣が、あるいは三木内閣として、どのようなお考えをお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように戦後二十数年間は金ドル中心の世界経済秩序というものが一応活力のある展開を示しまして、戦後の経済の復興と成長を保障してまいったと思うのであります。けれどもそれが不幸にいたしまして崩壊をいたしましてから、環境は大変悪くなってまいりまして、通貨変動的になり、国際収支は偏在し、発展途上国のナショナリズムは高まりを見せ、世界的なインフレは進んでまいるというような一連の事態が出てまいったわけでございます。  しかしながらそういう過程の背後に、第一次大戦後と違った点で、世界各国が協力しないといけないという協力の精神がとだえていないということが一つの救いであったと思うのであります。金ドル体制をもとにしたIMFにおきましても、お互いに協力しようという精神は残っておりまして、いろいろな対応策世界的な協力の中で行われておるわけでございますし、ガットを中心にいたしまして自由貿易、自由拡大貿易を貫こうじゃないかということが誓われておりますし、発展途上国に対する協力援助にいたしましても、各国が相当精力的に努力をいたしておるわけでございますし、それがなかりせば世界経済はまさに崩壊してしまっておったと思うのであります。  そういうやさきにこういう珍しい首脳会議が開かれるわけでございますが、これはそういう戦後の各国の協力体制というものの一つの象徴だと思うのでありまして、この会議を通じまして、これまでともかく続けてまいりました世界各国間の国際的な協力というようなものを、あるいは国際的ないろいろな機構を通じての協力というようなものを、さらに一層活力のあるものにしようじゃないかということで、六大国の首脳がこれに裏書きをするあるいはこれを補強をするということが、私は今度の首脳会議の持つ意味であろうと思うのであります。仰せのように、どのテーマが大事である、どのテーマが比較的大事でないというようなものではないと思うのでありまして、全体のテーマに対する国際的な協力を根っこから支えていこうという国際協力の象徴がここに出てきたと思うのでありまして、この会議はそういう意味で成功させなければならぬ、そのように私は考えております。
  55. 増本一彦

    増本委員 議題は六つあって、それがそれぞれ相互の連関性を持っている。しかし、それぞれの議題を各論別にながめてみますと、ドル危機以降、特にそれぞれの問題別あるいは分野別に各国、特に主要国の代表が参加をしていろいろな会議がやられてまいりました。しかし、それにもかかわらず、たとえば一番基本的なIMF体制の再建の取っかかりを一体どうするのかという問題、たとえば大臣も何回か国際会議にお出になっていらっしゃるし、あるいは四十八年には東京ラウンドの国際会議が開かれる。それ以降ジュネーブで個別の各国会議が行われている。そういういろいろな会議が行われてはいるけれども、しかしそこでは具体的にまだ方向の煮詰めもない。  たとえば当面のこの東京ラウンドの問題にしても、それが具体的なコンセンサスがまだ得られる段階になっていない。それには当然今日の国際経済の情勢が各国に非常にシビアに反映をして、そこからコンセンサスが得られないという問題も確かにあります。  しかしそこで、一つは国際協力をしていこうという志向が特に主要国の指導者の中に一面ではあるという点は確かにおっしゃるとおりかもしれません。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 しかし抱えている問題が、それぞれ個別の問題が相互に連関をし合っているから、そういう点では一つには、一国で解決できないからやはり国際的にこの会議を開いて解決をしていかなければならない、そういう必然性も問題の性質上持っているところから、今日まで何ら具体的な解決がない国際会議が繰り返しやられてきた。そういう各論別のいろいろな国際会議が今日までやられていて、それぞれネックにぶつかっている。  一つは、やはり政府が振り返ってこれまでの到達点なり総括をして問題点を明確にして、そこのところでの克服策というものを具体的に、たとえばこういう会議ででも提言をしていくということがいま非常に必要だというように思うわけです。  きょうの読売新聞に、先進国会議三木総理が演説をされる草稿の全文というのが掲載をされているのですが、これを拝見しても、そういう点での具体的な提言というものがまだ明確に打ち出されていない。確かに問題を見ますと主として四つぐらいのところが重点になっているというような感じはいたします。たとえばオイルマネーの活用が一つの問題だし、それから国際経済協力会議を重視する必要があるとか、あるいは農業、食糧部門の発展途上国に対する援助を重点に考えるとか、あるいは主要石油消費国を網羅して対話ができるようにしていきたいとかいうような一定の抱負というものが出されていますけれども、何かこれまでの積み重ねの上から必然的に出てくるという問題ではなくて、この提言というのも非常に抽象的で、国際協力というのは総論としてこういうものなのだという一つの御意見が出されているだけにすぎないのではないかという印象を私は持つのですが、大臣として、特に国際金融あるいは国際的なかかわりでの財政とか、いろいろな今日の国際的にも不況が深刻化している、この状態の中でおやりにならなければならない責任のある大臣の所管分野で、具体的にどういうところに焦点をしぼって、たとえばこの会議で積極的などういう内容の発言をしていくのかということがもう一つ明確にしていただければと思いますが、いかがですか。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 首脳会議で具体的な解決を待たなければ世界経済はあすにでも崩壊する、そういうような危機にいまあると私は思いません。ですから問題は、今度の会議でそういう差し迫っていかようであれ首脳の手によって解決をしてもらわなければならぬような問題を抱えていないということは、私は世界の幸せであると思うのであります。  そこで問題は、今度第二の幸福は、パリの郊外にともかく六大国の首脳が集まるということで合意したということです。これも普通容易ならぬことでございまして、そういうことで集まってお互いに一種の意見の交換をしようじゃないかということが何らかの抵抗なく合意ができたということは、私は世界のために祝福すべきことであると思うのであります。そして、これをやる以上は成功させなければならぬということでございます。だとすれば、いま増本さんが挙げられました世界経済がいま抱えているもろもろの問題、暫定的な解決を積み重ねながら山坂道を上っていっているいろいろな問題がありますけれども、そういった問題は、この首脳会議でスクリーンにかけて首脳の全体のまとまった祝福と協力を受けるということになるわけでございますから、これまでの国際協力が一層活力のあるものになるということで、そういう意味でこれは成功が約束されておるのじゃないか、またそのようにしなければならないのじゃないかと私は思っております。  さて、それじゃおまえの、つまり私の管轄の中での問題でどういう点を力点に主張しようとしているかということでございますが、けさほど佐藤さんにもお答え申し上げましたように、事通貨の問題というのはすでに大蔵大臣レベルで精力的にやってまいっておることでございまして、今後も続けてやることになっておるし、今度も大蔵大臣が全部出席するわけでございますので、そういう通貨問題にまつわる技術的な問題は、これは大蔵大臣にお任せおき願ってよろしいんじゃないかと思うのでありまして、いまの変動制で飽き足らないところ、変動制が抱えておるデメリットというものを漸次克服していかなければならぬためには、できるだけ為替を安定したものにしていこうじゃないかという努力各国がやらなければならぬということでわれわれいたしておるわけでございますから、その各国努力は一段と精力的に馬力をかけてやろうじゃないかということが今度の首脳会議において強調される必要があるし、またそれを三木総理からも強調していただきたいと考えております。  しかし、各国はいま例外なく、わが国ばかりじゃございませんで先進国各国例外なく非常な財政危機でございます。しかし、その中で内に対しても大変お金がかかることが多いわけでございますが、そういう中で、しかもオイルダラーの手当てをどうしていくかというような問題、OECDの活動をどのようにして財政的に保障していくかというような問題、農業開発に対してどのように財政的に支援していくかというような問題、エネルギー問題の解決に各国が協力するについてどういう財政的支援をするかというようないろいろな問題については、各国の財政力は非常に制約を受けてきておると思うのであります。  そこで、すでに各国がつくってそこに財政的拠出をして現に動いておるOECDでございますとか、IMFでございますとか、世界銀行でございますとか、アジア銀行でございますとか、その他もろもろの開発基金制度もあるわけでございまするから、そういったものを極力フルに動員していまの時代の要請にこたえようじゃないかということは、私は日本として大いに強調しなければならぬことであるし、各国の協力も非常に得やすい部面でなかろうかと考えておるわけでございます。と言って、新しい財源が要らなくて済むかというと、そうではございませんで、われわれはそれの捻出についてやっぱりいろいろ配慮してまいらなければいかぬと思いますけれども、そういう点も努力いたしますけれども、既存の基金、機構、そういったものの力というものをこの際もう一度首脳の手によって掘り起こして活力あるものにしようじゃないかということもまた、わが国が力点を置いて主張してよろしいことではないかと私は考えております。
  57. 増本一彦

    増本委員 たとえば国際通貨の問題でいきますと、これまでにも何回も十カ国蔵相会議その他が開かれてなかなかまとまらない問題である。これは一番の基礎をなす問題ですから、そういうのがここで、この六カ国の首脳会議の中で、各国蔵相がお集まりになったところで、果たして技術的な問題も含めて前進があるのかというところは、これはこれまでの経過から見てもここにやっぱり何か新しみというものを私は率直に言って感じないわけであります。  それとも関連もしますけれども、国際金融の問題でいきますと、たとえばオイルマネーの活用によって貿易の拡大を図るという提言を総理の方でおやりになるように報道がされているわけですけれども、あるいはこの石油問題でいまの産油国消費国との間にやはり鋭い矛盾と対立がある、そういう中で、たとえば首脳国で、オイルマネーの活用によって貿易の拡大を図り国際経済全体の景気のてこ入れを図っていくというようなことを、これは一存で決められるわけでもないし、かえってこれまでの経過から見ても、アメリカがたとえば提言をして石油の消費大国の会議を開く、日本のそこでの態度がやはり問題にもなりましたけれども、たとえばそういうのが特に産油国や発展途上国を刺激するという点もある。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 これは現実のやはり国際政治の中で、こういう主要大国というものが産油国のたとえば資源に対する民族主権であるとかあるいは産油国がいま抱えている国内の経済的ないろいろな問題について、どのように相手の立場を尊重し、対等、平等、互恵の貿易関係あるいは経済協力関係というものを実現していくかという点で、まだまだやはり非常に大国主義的なものがあるというようなところでの危惧というものも、国際の政治の現実の中では非常に根深いものがある。  そういう中で、たとえば石油を大幅に特にアラブ諸国などに依存をしているわが国が、そこに累積をしているオイルマネーの活用ということを単純一律に提言をすることによって、果たしてそれが国際経済の上で積極的な協力になるのかというような点では、単純にアイデアだけを買うというぐあいには現実の国際政治の厳しさからいったらなかなか言えないという問題もあると思うわけですね。だからそういう点で、もっとここいらのところでの日本の態度というものが、日本の国民が真剣にそういう資源問題あるいは食糧問題あるいは日本経済の問題について具体的に考えている方向というものをくんで、もっと具体的な日本立場での提言というものが明らかにされて、それを持ってこういう国際会議にお臨みになるのだったら臨まれるということがもう一つ必要なのではないか。ただランブイエのお城で、いわばかん詰め状態みたいになって、そこでお互いに交歓をなさるということが単純に国際協調あるいは経済秩序の再建につながっていくというような、そんな単純なものではないというように思うわけですね。  そういう点から見ても、もう一つ大臣なりあるいは三木内閣としての具体的な、ここのところがひとつ力点だというところがもっと明らかにされてしかるべきではないかというように思うのですが、あるいはお持ちになっていてもそれは明らかになさらないのかもしれませんので、大変くどいようで申しわけないのですが、そこのところをもう一度大臣に、時間もありませんのでひとつ簡潔にお答えいただきたいというように思います。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 増本さんの御指摘を待つまでもなく、簡単に、単純にやれるような国際政治じゃないと思います。いまの国際経済問題の中でのいま挙げられましたオイルマネー一つをとりましても、あなたがおっしゃるように、産油国、OPECの政策意図を度外視してわわれわれは考えられないと思うのであります。したがってOPECを既存の国際機構の中で、どういう資格でどういうシェアで迎え入れるかという努力は絶えずやってきているわけでございまして、今度のIMFの増資におきましてもごらんのように配慮をいたしておるわけでございますが、全く新たな国際機構をそれじゃOPECだけでつくりまして、果たしてよく機能できるかというと、そうではないので、それは彼らもよく知っておりまして、やはり既存の国際機構を通じてやらなければならぬが、自分たちのボイスが十分生かされるような制度でないと困るという主張を彼らもいたしておりますが、同時に先進国側の協力も十分取りつけられるだけのものでないと実効が上がらぬということも、彼らもよく承知しているわけでございます。したがって、そういうことはわが国として十分心得た上で提言をいたしてきましたし、今後もいたしてまいるつもりでございまして、今日までOECD金融支援協定にいたしましても、IMFのオイルファシリティーにいたしましても、日本はそれなりの役割りを果たしてきたつもりでおるわけでございます。今後その活用におきましても、十分われわれといたしましては配慮してまいりたいと思っておりますが、今度の首脳会議、十五日の夜から十七日の午前にかけての会議でございまして、いま仰せになりましたようなデテールにわたって政策を論議するというような場ではないと思うのでございまして、もっと次元の高い、格調の高いお話し合いが行われるものと思うのでございまして、いま問題になっておるようないろんな問題につきまして、こういう方向で国際協力を実のあるものにしようというようなことで各国首脳のコンセンサスが得られるということは、私は偉大なる成功をもたらすに間違いないと考えております。
  59. 増本一彦

    増本委員 時間ですので——西崎さん、時間なくなっちゃったんで申しわけありません。  実は大臣、これは要望で、じゃ最後の発言にいたします。  来年度で義務教育施設の用地費の特例補助が期限が切れるので、これは来年度の予算編成の中でひとつ十分に、いまの人口急増地域の小中学校の用地確保が非常に困難だという事態のもとで、これは全国の特に急増地域の自治体の理事者たちの切なる要望なんで、ひとつこの点は十分配慮をしていただきたい。これは全く別個の問題ですけれども、要望をしておきます。  時間がありませんので、この点について議論できませんので、終わります。
  60. 上村千一郎

    ○上村委員長 広沢直樹君。
  61. 広沢直樹

    広沢委員 最初に、時間が制約を受けておりますので、簡単にお伺いします。お答えもひとつ簡単にお願いしたいと思います。  私、まず最初に、午前中また先ほどから議題になっております六カ国首脳会議に、いよいよ蔵相も明日出発されるということでありますので、その点に関して一、二点伺っておきたいと思います。  と申しますのは、いろいろ議論はあるでしょうけれども、まず参加することに、そしてまた語り合うことに意義があるとか、あるいはわずか三日間の会議であるから具体的な詰めた答えは出てこないだろうとか、いろいろ議論されているわけです。  私は確かにいまの世界的な不況を打開するという意味から考えていって、この首脳会議というものがやはりいま世界の焦点になっておりますし、ただ語り合うとかあるいはそこに参加することが意義があるというようなものではなくて、いまの危機を打開していく方向づけというものがなされなければ、これはかえってやぶへびになるんではないだろうか、こう思うわけであります。  特に、今日わが国におきましても、御存じのようにいま国会が開かれて重要な法案の審議に入ろうとしているやさきでありますから、その主務大臣である大蔵大臣があえてこの会議出席されるということは、やはりそれなりの成果というものを考えてこなければならないと思います。それに対して、参加される大蔵大臣の確たる確信をひとつ最初に伺っておきたいと思います。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 国際経済のあらゆる分野で今日まで国際協力が進められてまいりまして、それは民間レベルであれ政府レベルであれ、事務レベルであれ閣僚レベルであれ、いろいろなレベルにおいて国際協力が保障されてきたわけでございます。今度は最高の頂上会談の形でこれが行われようとしておるわけでございまして、国際協力、すべての分野で展開されておりました国際的協力をここでもう一度見直して、それに新たな活力と新たな展望を与えるというこよない機会であると思うのでありまして、そういう意味で、わが国に対していち早く招請を寄せられましたフランスの大統領に敬意を表しますとともに、私どもは、この会議を通じまして国際協力が最高レベルの祝福を受けて一層強固なものになるというところが最大の眼目だと考えております。
  63. 広沢直樹

    広沢委員 それはわかるのでありますが、議題であります景気の問題あるいは通貨問題、貿易、エネルギーあるいは南北問題、東西問題等々、当面している重要な議題、どれ一つをとっても、短期間あるいは短時日で結論の出る問題ではない。それがゆえに、先ほどから大蔵大臣もおっしゃっておられるように、それぞれのレベルで話し合いはずっと続けられているわけであります。しかしながら、ここにそういうさなかで主要六カ国が集まって、世界のいわゆる不況打開、もちろんインフレの問題もございましょうが、そういった問題に取り組むということについては、何らかの方法というものが、方向づけというものが出てこなければ、各国主張をそこで述べ合った、強調してきたというだけでは、これはやはり意味がないと思うのですね。ですから、そこにやはり相当な成果をおさめるという確たる自信を持ってお臨みになるのかどうかという大臣の所見が伺いたいわけなんです。  それと同時に、たとえば一つ景気問題をとらえてみても、やはり世界の関心というものは、世界景気はいつごろどういう形で回復するのかというところにあるわけです。それぞれ各国において景気対策をいま強力に打ちつつあるわけです。わが国においても御承知のように第四次の景気対策をいま実施しているところですね。  そこで、これも一つ具体的に伺っておきたいのは、景気刺激はこれ以上必要なのかどうなのか。どういうお考えでいらっしゃるのか。たとえば、日本はGNPも年率にしてやっとプラスになるだろうというような目測が大体出ておるんですが、OECDのいろいろな資料を見てみますと、世界的にはやはりマイナスになるんではないかということが言われております。そういうことが続くということは、やはりある程度、これ以上に景気刺激が必要なんじゃないかという議論もあると思うのですよ。大蔵大臣としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。そしてまた、そういうことになるとインフレの懸念というものも当然出てくるが、そういったものに対してはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。そういう現状の上に立ってやはり議論がなされるわけでありますから、そこに出てくる期待というものも現状を踏まえた上で論議がされるわけですから、その点を十分踏まえて、参加される大蔵大臣として、経済担当の大臣として、そこにはっきりと方向づけというものがなされるという確たる確信があってお臨みになるのかどうかということをひとつはっきりお答えいただきたいと思うのです。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 この会議フランス大統領の提唱にかかるものでございますけれども、関係国がちゅうちょすることなくこれに快諾をいたしたわけでございます。最高首脳がこれに快諾をするということにつきましては、これは大変な決意だと思うのです。これは失敗させたら大変なことですから、成功させなければならぬという気持ちが期せずして一致しておると思うわけでございまして、したがって、パリで意見の交換がいろいろ行われますが、それは結局一つの成功に導くということにおいて一致するという確信がなければ、みんなこれを応諾しないわけでございます。私は、その点はみじんも不安を感じていないわけでございます。  それから、第二の景気政策でございますが、日本としては一応、財政面からも金融面からもやるべき景気政策はやりおおせたわけでございまして、これからその成果が経済の実体にどのように出てまいりますか、これを待たなければならぬ状況でございます。これは世界各国が知っていると思うのでありまして、日本を除く他の五カ国から、日本景気政策を怠けておる、日本景気政策について十分でないというような指摘を受けるおそれは、私はないと考えております。  ただ、今後さらに刺激策をとるか、とらぬかという問題でございますが、これは今後の経済状況を見ないといけないわけでございまして、今後の状況に応じまして、あなたが言うように、インフレを起こさせないような、国際収支を破綻に導かないような、そういう枠組みの中でわれわれは景気政策をやるべきときにはやらなければいかぬし、やってならぬときにはやってはいけない、それは今後の経済の推移を待たなければならぬと考えておるわけでございますが、しかし、いま世界景気回復の一番大きな活路はどこにあるのかというと、やはり輸出の増大であろうと思うのでございます。それは、世界各国がそれぞれ自分の門戸を閉めるということではなくて、むしろ門戸を開いて、輸出もふやすが輸入もふやす、そして輸出も輸入もできるだけ自由化の方向に持っていくということをみんなそろってやっていくことは、いまの景気対策から申しまして非常にプラスになってくるのではないかと思うのでございまして、今度の首脳会議は、そういう意味におきまして、景気対策の上からも注目すべき会議であると心得ております。
  65. 広沢直樹

    広沢委員 まだまだ伺いたいことはたくさんありますけれども、今度会議を終えてから、また一つ一つの問題について伺ってみたいと思います。  そこで、国内問題でありますけれども、一応御承知のように、長期の不況によりまして企業倒産あるいは失業、雇用不安、さらには物価は鎮静しつつあるとはいいながらまだ二けたでありますし、秋口から来年にかけて公共料金を初め大幅な値上げが予想されております。さらに、財政的にも地方を通じて大きな赤字を抱えておる。こういう非常な不安にさらされているわけであります。したがって、時間がありませんので端的にお伺いしますので、所見を伺いたいと思います。  まず景気見通しでありますけれども、五十年度の当初の見通しでありますGNPの実質の伸びを改定されて、いま年度を通じて二・二%になろう、こういうふうに改められたのですが、最近の景気状態を見ますとまだ落ち込むのではなかろうかという心配があるわけでありますが、その点についてどう考えられるか。  その原因の一つとしては、景気対策の柱が公共事業と住宅投資、これが景気浮揚の目標であったわけでありますが、最近の建設省の発表によりますと、新設住宅の着工件数が非常に落ち込んでいる、住宅金融公庫による住宅投資の増大もあるけれどもその落ち込みを補うのがやっとではないか。ですから、今年度を通じて見た場合は昨年より落ち込む懸念があるということで、景気回復がおくれるのではないかという見方がありますので、その点についてどう考えるか。  さらに、金融問題については、やはり十二月は非常に金融的に逼迫してくる、そういうところへ持ってきて、今度大量の国債を発行される、それを引き受けをしなければならぬ民間金融機関においては、やはり住宅ローンの融資をしぼる傾向にあるのではないかという観測が流れておりますが、その点についてどう考えるかということ。  さらに、景気をいま引っ張っているというものは、よく言われておりますように、設備投資あるいは輸出あるいは消費支出の動向、こういった大体大別して三つ挙げられるわけでありますけれども、輸出や設備投資の関係は、国内需要もともかくながら、やはりあなたがおっしゃるように世界経済の動きにも大きな影響を受けております。それから消費支出の伸びについては、これはやはり対策の打ち方によって上がってくるのではないか。ですから、住宅だとか公共投資の対策も結構でありますけれども、それでなおかつ景気回復がおくれるということになれば、われわれが主張してまいりましたように低所得者層に対する減税、それからあるいは社会福祉の観点からの給付金を増額する等の処置を講じて、一方、その片方の景気対策と同時に、こういう下から消費を拡大していくという形をとっていくことが景気対策になるのではないか。むしろ、浪費を奨励するということではなくて、現実に買いたい物も抑えているというその体制の中で、いま全般的に検討してみるならば、当然その面についても考えてみるべきではないか。各国景気対策考えてみましてもその両面をとっております。もちろん所得減税も政策の中に入ってやっております。こういう観点から見て当然考えられるべきではないか。  それから、もう時間もありませんので、もう一間だけつけ加えて申し上げますが、年末の中小企業金融対策でありますが、御承知のように十月は千二百七十九件、これは戦後最高を記録しております。このままいけば年末は、決算資金だとかボーナス資金だとか、こういった観点からさらに倒産がふえるのではないかという予想がなされ、不安が拡大されております。これに対して十分な手当てをやっているかどうか。たとえば今回の補正予算においても、政府系三金融機関に対して四千八百億の増額をいたしておりますが、例年大体四千五百億程度の年末の金融繁忙期に対しては増額をしているわけであります。わずか三百億ぐらい積み足したくらいでこれに十分こたえられるかどうか。  そういったことについてひとつ簡単にお答えいただきたいと思います。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 まず景気の見通しでございますけれども、補正予算を編成するに当たりまして、政府でいろいろ検討いたしまして、ことしの経済の成長率は二・二ということでいこうという見通しを発表いたしたわけでございます。  いまこれに対して広沢さんおっしゃるように、果たしていけるかなという首をかしげる向きがないとは言えません。言えませんけれども、いま政府として一応こういう見通しの上で財政政策も経済政策も打ち立ててやっておりますし、いまこれを改定しようというつもりはないわけでございますので、これを実現すべくあらゆる努力をこれからやってまいらなければならぬと考えております。  それから第二の点でございますが、金融はこれから年末を控えて繁忙期を迎えて、そこへ国債が出ていって、よほど産業金融、民間金融を圧迫するようなことになりはしないかということを御懸念のようでございますが、私はまずそういう心配はことしはなかろうと考えております。上半期が八千四百億ばかり財政の散布超過になっております。下半期に三兆円余り国債を出さなければなりませんけれども、それを出したことを勘定に入れましても、八千億内外の散布超過になる見通しをわれわれは持っておるわけでございますので、金融市場は資金的に相当余裕があると思っております。したがって、大量の公債が出ましても、そのために民間金融を圧迫するというようなことはあり得ないと考えておりまするけれども、しかし金融機関によりましては、また時期的にはヒッチが起こらないということも保証できませんので、そのあたりは政府も日銀もそういうことのないように気をつけていきたいと考えております。  住宅ローンは、幸いにいたしまして実績は逐次絶対額も伸び率もふえてきておるのでございまして、この芽を摘まないようにわれわれとしては努力をしてまいりたいと思っております。  それから年末の中小企業金融でございますけれども、三機関に対して四千八百億の手当てをしたのは、去年に比べて三百億しかふえてないじゃないかということでございますが、根っこをひとつ見ていただきたいのでございます。ことしは中小企業三機関に対しまして、私どもは去年に比べまして六百五十億ばかりすでに当初の計画でよけい融資の枠を用意いたしてあるわけでございまして、その上にさらに三百億今度新たに第四次の景気対策の中でふやしたわけでございます。それにことしはいわば前向きの設備投資といいますか、そういう資金需要が比較的少ない年でございまして、ただいまの判断では年末の中小企業金融は平穏に越年できるのじゃないかという見通しを持っておりますが、なお、金融機関におきましても、これに対しては万々対策考えていただいておりますので、要すれば銀行局長から報告をさせます。
  67. 広沢直樹

    広沢委員 まだ一つ答弁が抜かっているのですが、いわゆる減税の問題です。これは、赤字財政が解消されるまではこういった景気対策は減税等の問題は用いないのか。予算委員会等ではそういうことはいま考えてないというお話でございましたけれども、だんだんやはり景気の浮揚がおくれていくということは、両面的にそれを用いるべきではないかと私は思うものですからそのことを聞いたのですが、簡単にお答えください。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 結論から申しますと、いま減税を考えて、減税によって個人の最終消費を刺激する資にしよう、そういう考えは持っていないのです。それは、そういうことをいまいたしますと、恐らくその大半はそのまま金融機関に返ってくるのではないだろうか。いまの個人消費は、金がないからというよりはむしろ経済の展望を明らかにできない、そういうところから来ておるわけでございまして、私どもとしては減税をしたから大いに個人消費が活発になってくるというような予想はいま持っていないわけでございます。  しかし、有力な学者の中にも、広沢さん言われるように、減税によって刺激すべきじゃないかというお説もございますし、社会党にもそういう御主張があるように聞いております。しかし、私は財政をお預かり申し上げておる立場で申しますと、あえて申しますならば、必要なときに減税をする、必要なときに増税するということの財政の弾力性が保証されるのでございますならば、これは私はいろいろやることはやれるのじゃないかと思うのですけれども、減税というのは皆賛成するのですよ。増税となると皆反対するのですからね。酒とかたばこのちょっとした調整をしようというのもこう反対されるのでは、とても財政当局としては、こちらで何かやろうといたしましても、それはちょうだいしておきましょう、しかし増税はいやですよ、こうこられたのでは全くやりようがない。ですから、それは、つまり財政の体質を日本としてどういう体質を持たすかということで、公明党さんもお考えいただいて、それはおまえの言うとおりだ、よくわかったということでございますならば、また考え直す余地が私はあるんじゃないかと思います。
  69. 広沢直樹

    広沢委員 議論はありますけれども、約束の時間が過ぎておりますので終わります。
  70. 上村千一郎

    ○上村委員長 竹本孫一君。
  71. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間が余りありませんから、ひとつ簡単に、明瞭に願います。  年末金融のことにつきましては、特に中小企業の立場から格段の御配慮があることと思いますし、先ほど御議論も出ましたので、遺憾なきよう要望を申し上げておきます。  第一の質問は、景気回復の見通しの問題でございますが、これも結論だけお伺いしたいのですけれども、第四次の効果というものが出るのもこれからであろうと思いますし、われわれもある程度これに期待をするわけですけれども、すでに一部では、通産省の中にも第五次対策が必要であるというような意見も出ておるようでございますが、結論として、大蔵大臣は第五次不況対策を絶対に必要でないと見ておられるのか、第四次の成果、経過を見てその上で考えようというのであるか、どちらでありますか、その点を伺いたい。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 第四次の政策の浸透ぐあいを見て、そして物価や国際収支状況等を見た上で、こういう重要なことでございますので、その時点で慎重に考えるべきものだと私は思っています。
  73. 竹本孫一

    ○竹本委員 と申しますと、われわれの受け取り方として、経過を見た上で、場合によっては必要な場合もあるだろう、場合によっては必要でもないだろう、必要な場合もあるだろうということになる、こういうことでございますか。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 必要な場合は全然ないと言い切ることは、いまの段階で絶対にそういうことは考えられないのだというようなことまで言い切る自信は私はありません。
  75. 竹本孫一

    ○竹本委員 これも要望にとどめますが、やはり政治というものは大きな心理学ですから、言い切るだけの態勢と決意の中で第四次なら第四次対策を打ち出さないと、何だか場合によってはまた考えますとかいうような、それは慎重な答弁でありますけれども、国民に与える影響というものは、第四次で必ず景気は上に向けてみせるというくらいの気魄と信念と情熱と準備がなければいけないのではないかと思いますが、これは要望にとどめておきます。  それから次に、もう一つ首脳会談の問題でございますが、先ほど来いろいろ御議論もありましたから、簡単に二つ三つ申し上げたいのですが、一つは、日本が国際会議において日本立場で独自の積極的提案をなすということが余りない。いままでは、米国に右へならえしておるということが、日本の国内の一部からではなくて、世界的にそういうふうに言われておる。アメリカの後をついていくんだと。私がいつか引用したこともありますが、アメリカ人のブレジンスキーが書いた書物にも、ビハインド・ジ・ユナイテッドステーツと書いてあるんだから、アメリカ人も日本はわれわれの後ろをついてくると思っているのだが、そういうような行き方です。しかしながら、これも独自の立場で今日の情勢において打ち出していかなければならぬということになれば、国際会議においても日本がアジアの中の日本として独自の立場で物を言うべき時期が来た、かように思いますが、国際会議において日本はこれから独自の積極的発言をなすべきだと私は思いますけれども、この点について大臣はどう思われるか、大臣として伺いたい。  もう一つ、今度の首脳会談に臨まれるに当たって、日本としてはそういう意味で独自の具体的、積極的提案考えられておるかどうかあわせて伺いたいと思う。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 日本政府もなかなかやりにくいのです。いろいろやってきましてもアメリカに追随したのじゃないかと言われるし、それから、やろうとしたら、変な約束をしたらいかぬぞと言うし、全く日本の国民というのは政府に何をやらそうとしているのだか私どもなかなかその判断に苦しむわけなんです。  きょうも野党の方へ三木さんにお供をしてごあいさつに伺ったわけなんでありますけれども、二、三の政党の幹部から、下手な約束は三木さんだめですよ、こういうことでございまして、それも真剣な御提言でございますから私どもも受けとめて帰ってまいったわけでございます。  私は、竹本さんのおっしゃるように積極的に提言をすべきであるなどということよりは、日本が提言したことは実行するということが大事だと思うのです。実行できないようなことは提言せぬ方がいいのです。ですから問題は、日本が提言する場合は、ちゃんと実行の用意があるという場合に提言すべきであるということでございますならば、私はそのとおりに思います。  それから第二でございますが、今度の場合どうするんだということでございますが、今度の場合はどのような議事日程になりますか、どういうテーマが取り上げられるか、まだ決まってないわけでございます。十五日の晩に集まりまして食事から始まるわけでございますが、どういうことがどういう手順で行われるのか全くいま私どもには明らかではございません。問題は恐らく各首脳がそれぞれ忌憚のない意見を述べられることになるんじゃなかろうかと思います。したがって三木総理からも、日本の見解といたしましては、明快に日本考えていることは述べていただかなければならぬと考えておりまして、何ら遠慮する必要は全然ないと私は考えておりますが、そのことは日本が究極において責任を持てることを述べていただくようにいたしたいと考えております。
  77. 竹本孫一

    ○竹本委員 実行できることでなければもちろん提言すべきではありませんが、そういう立場に立って提言すべきことがあるかないかということをお尋ねしたわけであります。  たとえば西ドイツのブラントさんが一つ考え方を出しておる。これは若干哲学的というか理想を語ったような面があると思いますけれども大平さんはそういう意味においてわれわれは財政経済よりも哲学的面において高く評価していますから、もう少しそういう面で積極的なことを考えられたらどうかという意味であります。  もう一つ伺いしたいのですが、時間の関係でまとめて申し上げます。  一つは、日本貿易会の今回の会議に対する提言の中に、産業構造の国際的調和を図ってもらいたいということがありますが、これは非常に大事なポイントをついた提言だと私は思うのです。日本のたとえばいまの政府で考えておられる新しい中期計画等を漏れ承ってみても、国際的な産業構造の調和というか改革というか、再配置というようなものについては、全然そういう視点がない。日本の産業をどうするか、日本の国土開発をどうするかというようなことばかり書いてあるわけです。これからアジアの中の日本ということから考えるならば、ある程度産業は配置を考え直して、日本の一部では転換を図る、そして一部のものは東南アジアの方へ任せるとか、そういったようなアジア全体を通じての再配置まで考え経済計画でなければ、ぼくはいまの時点で物は役に立たぬと思うのです。  そういう意味で、もともと日本の国内においても産業再配置に対する考え方が余りない。構造改革とかなんとか言葉だけはやっておるけれども実体はほとんどない。国内にもないのだからアジアにはなおない、アジアにもないから国際的にはなおないということになるのでしょうが、まあ貿易会の中身はどういうことを考えておられるか私は知りませんけれども、しかし少なくともこれからの資源あるいは通貨経済、東西貿易、南北問題、いろいろ考える場合に、三木さんもよく言われるように、世界が孤立して勝手なことを考えることができなくなればなるほど、国際経済社会における産業構造の再配置というものを考えなければならぬ。一体そういう視点が日本にはあるのか、あるいは今度の会議のときにもそういう立場で物を考えて御発言を願うべきではないかという点が一つ。それに対してどういうようにお考えになるか。  もう一つあります。農業開発国際基金に対して六千万か七千万、SDRですかで金を出す。しかしその使途については日本の、特に大蔵省では先進国側に拒否権を留保しておかなければいけないじゃないかというような御意見があるやに伝えられておるが、そういうお考えがあるか。確かに小さな国が勝手なことを言ったり勝手に走ったりすることは困りますので、それに節度を考えなければならぬこともよくわかりますが、日本がある意味においてこれから積極的にそういう国際社会、殊に南北問題について協力しようといっているときに、その実績もまだ上げないうちにまず拒否権をリザーブだ、こういうふうに言うことは政治的にむしろマイナスが多いという意味で、そういう拒否権要求の考えがあるのかどうかということを伺いたい。  最後に、三つになりますが、もう一つはいまの産業構造の世界的な規模における改革なり調和なりという問題とあわせて人口問題についてもこれからの国際会議においては取り上げなければこれまた大問題だと思うのです。そういう点についてはどういうお考えであるか。  以上三点を承って終わりにいたします。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 国際的な産業構造の将来の展望を踏まえた上ですべての政策の立案、運営を考えるばかりでなく、国際的な会議、交渉等におきましてもそういった問題意識を常に持っておらなければならぬじゃないかという御指摘は仰せのとおりだと私も思います。われわれが投資政策を考える場合、あるいは技術政策を考える場合、エネルギー政策を考える場合、いま竹本さんの言われた産業構造的な問題点を踏まえないとちょっと進めることもできない状況にありますことは私もよく理解しているところでございます。  今度の首脳会議におきまして産業構造というような問題が取り上げられるかどうか私よく存じませんけれども、どういう問題が論議されるに当たりましてもこういう問題意識は常に踏まえて当たらなければならぬということにつきましては御指摘のとおり心得ております。  第二の農業開発基金に対する日本の参加問題でございます。わが政府といたしましてはこの農業開発基金に積極的に参加いたしまして、開発途上国の農業問題の解決の一助にしなければならぬのではないかということにつきましては、原則的に一致したコンセンサスがあるわけでございます。問題は参加の条件と金額でございます。参加の場合、ほかのOPECが大量の拠金を拠出するそうでございます。あるいはECとかアメリカが相当巨額の拠出をすることになっておりまして、そういう方面がしないけれども日本はやるということではなくて、そういう国と相まって日本も参加して応分の拠出はしていく、そういうことをしてひとつやりたいものだと考えております。  それから拒否権問題でございますが、私ども別にそうかたく考えているわけじゃないのです。これは開発途上国にせよ先進国にせよお互いに協力をしていかなければならぬわけで、一方の指導力で押しまくって成功するというものじゃないと思うのです。したがって、その間に調和がとれてそして運営が円滑にいく、建設的な成果を生むというようなことになりますならばそれで結構だと思うのでございまして、拒否権という言葉は少し法律的に過ぎますし少し窮屈に過ぎる、そんなにかたく考える必要はないと私ども考えております。  それから人口問題につきましても、最初の産業構造政策について申し述べたとほぼ同様な問題意識を私は持っております。
  79. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。
  80. 上村千一郎

    ○上村委員長 この際、直ちに理事会を開会することとし、暫時休憩いたします。     午後二時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時四十分開議
  81. 上村千一郎

    ○上村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和五十年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  まず、政府より提案理由の説明を求めます。大平大蔵大臣。     —————————————  昭和五十年度の公債発行特例に関する法律案     —————————————
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました昭和五十年度の公債発行特例に関する法律案につきまして、その提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  昭和五十年度におきましては、景気の停滞等により、租税及び印紙収入並びに専売納付金が、当初予算に比べ大幅に減少すると見込まれる状況にあります。  現下の経済情勢に顧み、租税収入等の減少を補い、五十年度予算の円滑な執行を図るためには、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほかに、特例公債発行できることとする等の措置を講ずる必要があります。  このため、昭和五十年度の特例措置として、昭和五十年度の公債発行特例に関する法律案を提出する次第であります。  以下、この法律案の内容について御説明申し上げます。  まず、昭和五十年度の補正予算において見込まれる租税及び印紙収入並びに専売納付金の減少を補うため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、特例公債発行することができることといたしております。  次に、租税収入等の減少を補うという特例公債の性格にかんがみ、租税収入の実績等により発行額の調整を図るため、この法律に基づく公債発行は、昭和五十年度の出納整理期限である昭和五十一年五月三十一日までの間、行うことができることとし、あわせて、この期間に発行する特例公債に係る収入は、昭和五十年度所属の歳入とすることといたしております。  また、この法律の規定に基づき特例公債発行限度額について国会の議決を経ようとするときは、その償還の計画を国会に提出しなければならないこととしております。  なお、この法律に基づいて発行される公債も、少額国債の利子の非課税制度の適用を受けることができるよう措置することとしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び内容であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  83. 上村千一郎

    ○上村委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十四分散会