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1975-12-17 第76回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十七日(水曜日)     午後三時七分開議  出席委員    委員長 田代 文久君    理事 菅波  茂君 理事 三池  信君    理事 三原 朝雄君 理事 岡田 春夫君    理事 多賀谷真稔君 理事 多田 光雄君       三枝 三郎君    篠田 弘作君       楢橋  進君    野田  毅君       上坂  昇君    細谷 治嘉君       吉田 法晴君    渡辺 惣蔵君       鬼木 勝利君    松尾 信人君       小宮 武喜君  出席政府委員         行政管理庁行政         監察局長    鈴木  博君         通商産業政務次         官       渡部 恒三君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁次長     森山 信吾君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君         労働省職業安定         局失業対策部長 石井 甲二君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         通商産業大臣官         房参事官    蓼沼 美夫君         労働省職業安定         局失業対策部企         画課長     守屋 孝一君     ――――――――――――― 十二月十三日  石炭鉱害処理対策促進に関する請願諫山博  君紹介)(第四〇〇四号)  同(田代文久紹介)(第四〇〇五号)  同(三浦久紹介)(第四〇〇六号) 同月十五日  鉱害復旧促進に関する請願多賀谷真稔君紹  介)(第四一五九号) 同月十六日  炭鉱保安対策確立に関する請願多田光雄君紹  介)(第四五三一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月十七日  石炭鉱害処理対策促進に関する請願諫山博君  紹介)(第一九〇三号)  同(田代文久紹介)(第一九〇四号)  同(三浦久紹介)(第一九〇五号)  鉱害復旧促進に関する請願多賀谷真稔君紹  介)(第三三二〇号) は委員会の許可を得て取り下げられた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  石炭対策に関する件   三、石炭鉱害処理対策促進に関する    請願諫山博紹介)(第一九〇三    号)   四、同(田代文久紹介)(第一九〇    四号)   五、同(三浦久紹介)(第一九〇 の取り     五号)            下げの  一〇、鉱害復旧促進に関する請願(多 件     賀谷真稔紹介)(第三三二〇号) 請 願   一、福岡稲築町の山野鉱漆生鉱閉山に伴    う財政援助に関する請願多賀谷真稔君紹    介)(第九五号)   二、同(大橋敏雄紹介)(第六〇六号)   六、炭鉱保安対策確立に関する請願田代文    久君紹介)(第三二七五号)   七、同(多田光雄紹介)(第三二七六号)   八、北海道赤平地区を炭田再開発調査対象    地区指定等に関する請願多田光雄君紹    介)(第三二七七号)   九、福岡稲築町の山野鉱漆生鉱閉山に伴    う財政援助に関する請願田代文久君紹    介)(第三二七八号)  一一、石炭鉱害処理対策促進に関する請願(    諫山博紹介)(第四〇〇四号)  一二、同(田代文久紹介)(第四〇〇五号)  一三、同(三浦久紹介)(第四〇〇六号)  一四、鉱害復旧促進に関する請願多賀谷眞    稔君紹介)(第四一五九号)  一五、炭鉱保安対策確立に関する請願多田光    雄君紹介)(第四五三一号)      ――――◇―――――
  2. 田代文久

    田代委員長 これより会議を開きます。  まず、請願取り下げの件についてお諮りいたします。  本日の請願日程中、日程第三ないし日程第五の石炭鉱害処理対策促進に関する請願につきましては、去る十二月十日に、また、日程第一〇の鉱害復旧促進に関する請願につきましては、十二月十二日に、それぞれの紹介議員から取り下げ願が提出されております。これら四件の請願取り下げを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田代文久

    田代委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書附録掲載〕      ――――◇―――――
  4. 田代文久

    田代委員長 次に、請願審査に入ります。  本日の請願日程中、ただいま取り下げを許可いたしました日程第三ないし第五及び日程第一〇の請願を除く日程第一、日程第二、日程第六ないし日程第九及び日程第一一ないし日程第一五の計十一件の請願を一括して議題といたします。  まず、請願審査の方法についてお諮りいたします。  その趣旨につきましては、すでに文書表等によって御承知のことと存じますし、また、理事会においても御検討いただきましたので、この祭、各請願について紹介議員からの説明聴取等は省略し、直ちに採否の決定を行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田代文久

    田代委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  それでは、本日の請願日程中、福岡稲築町の山野鉱漆生鉱閉山に伴う財政援助に関する請願三件、石炭鉱害処理対策促進に関する請願三件、鉱害復旧促進に関する請願一件、以上の各請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田代文久

    田代委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 田代文久

    田代委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書附録掲載
  8. 田代文久

    田代委員長 また、本委員会に参考送付されました陳情書は、新石炭政策確立等に関する陳情書外三件でございます。念のため御報告申し上げます。      ――――◇―――――
  9. 田代文久

    田代委員長 次に、閉会審査申し出の件についてお諮りいたします。  石炭対策に関する件について、議長に対し、閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 田代文久

    田代委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  11. 田代文久

    田代委員長 次に、石炭対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。篠田弘作君。
  12. 篠田弘作

    篠田委員 先般災害を起こしました幌内炭鉱の再建の問題について、少しくお伺いいたします。  幌内炭鉱を四片まで注水した結果、十月まで出炭は不可能となり、これに要する資金は百五十億であるというふうに見込まれておりますが、これに対する当局の見通しはどうなっておるのか、お聞かせ願いたい。
  13. 高木俊介

    高木政府委員 実は一昨日、会社側の方から社長がお見えになりまして、百五十億の資金が必要であるというお話を聞いたわけでございますけれども、それに基づきます復旧工作といたしましては、現在、四片まで水を入れておられまして、これの期間が約四十日間、一月の十日ごろまでかかるだろうというようなことでございます。なお、それに対する揚水の準備に、ポンプ座をつくるとか、あるいは坑内の仕繰りをやるとかいうようなことで、約二月いっぱいということで、五十日間というようなことを会社の方では、いまのところ想定しておるようでございます。なお、水を揚げる期間といたしまして約三ヵ月間ということになりますと、三月、四月、五月という三ヵ月間を要するのではなかろうかと思います。その後、坑道の取り明け、あるいは揚水が済みました後の、いわゆる今度の罹災者の方の救出ということで、あれこれ全部、済みまして操業の状態に持っていけるということになるのは、九月の末ではなかろうかというのが会社説明でございました。それに要する金が百五十億ということをおっしゃっておるわけでございますけれども、現在、このとおりの工事予定でいけるのかどうか、いろいろ問題があるところではなかろうかと思います。そういう点で、もう少し具体的になりました場合、会社側の方から前提なり内容を十分お聞きしました上で、慎重に検討いたしまして、この山が閉山にならないように、役所としても、できるだけ努力をいたしたいというふうに考えております。
  14. 篠田弘作

    篠田委員 第二は、従業員生活保障の問題でございますが、幌内炭鉱が再開するまでの間、従業員下請労働者生活保障はどういうふうに考えておられますか。
  15. 高木俊介

    高木政府委員 その点につきましても、一昨日、社長からお聞きしたわけでございますけれども、さしあたって十二月、一月の資金手当てにつきましては、会社自身でおやりになっているようでございます。従業員下請のいわゆる労働者の方の生活保護ということにつきましては、今後、支障のないように万全の措置をとるということも、会社の方からもおっしゃっておりますし、また、うちの方も、そういう方向で会社の方といろいろ相談しながら指導してまいりたいというふうに考えております。
  16. 篠田弘作

    篠田委員 もうちょっと伺いたいのですが、従業員の問題につきましては、もちろん炭鉱側責任を持つわけでありますけれども下請の問題については、政府としまして、これに対して金を都合するということはなかなかむずかしい、そこで、これはやはり炭鉱側がやるべきものであるのか。炭鉱側に対して、いわゆる資金を融資して、その中においてやるべきものであるのか。どうせ炭鉱が再開されれば、それらの下請がまた使われるのだと思いますが、その点ちょっと。
  17. 高木俊介

    高木政府委員 下請方々の仕事の範囲にもよるわけでございますけれども、いわゆる復旧関係でございますけれども揚水していきますと、それに伴いまして坑内作業個所もどんどんふえてくるわけでございます。そういうことで、完全に遊ばしておくという労働者は、一昨日の話では半分以下でございまして、ほとんど揚水と同時に仕繰りなり、あるいはその他の作業をやっていただくという観点に、会社の方もお立ちになっておりまして、また、そういう計画に基づきまして百五十億というような話もおっしゃっていましたし、先ほど、お話ししますように、十二月、一月の資金手当てはやっておるということでございます。
  18. 篠田弘作

    篠田委員 次に、災害の回復が長期にわたる、そこで炭鉱周辺地における中小企業の商売も、もちろん上がったりでありましょうし、それに対する長期融資、これは北海道の道の意見としましては超党派的に、一口限度五百万円、返済期日を五年間として考えてもらいたいという陳情があるわけでございますが、それらに対して当局は、どういうふうに考えておられますか。
  19. 高木俊介

    高木政府委員 かねてから産炭地域を初めとします経営基盤の弱小化しております中小企業金融対策といたしましては、石炭部の方といたしましても中小企業庁の方と十分、連絡をとりながら、政府関係中小企業金融の三機関に対しまして、きめの細かい配慮を払うよう指導しておるところでございます。今回の北炭事故によりまして、相当中小企業者が被害を受けるものというふうに考えられます。これら中小企業者に対しましても、三機関が特段の配慮を払うように、中小企業庁の方から十分な指導をしていただくということで、私どもとしましては中小企業庁連絡をとりながら、対策を立てておるわけでございます。
  20. 篠田弘作

    篠田委員 これで終わりますが、しっかりやっていただくようにお願いします。
  21. 田代文久

  22. 吉田法晴

    吉田委員 炭鉱保安問題あるいは災害の問題に関連をいたします鉱山保安法だとか、あるいは労災法だとか、そういった法律事項関連をいたしますが、時間が十分じゃございませんから、一、二点に限って、お尋ねをいたしたいと思います。  まず、最初にお尋ねをいたしたいのは、これは、私がいただきました手紙をもとにしてお尋ねをするわけであります。先般、山野炭鉱爆発関連をいたしまして、第一審に刑事的にも有罪の判決がおりました。それを控訴をされました。私は三井三池の、あれだけの数百名の死傷者を出した災害については、これは刑事的な責任についても問わるべきだと信じている。人一人の命が地球よりも重いというならば、何百人という命を失わしめた企業責任あるいは最高責任者は、それを懲役にやれとは言いませんけれども、しかし刑事的な責任は、何らかの形において関わるべきことを私は信じております。ところが、これは三井という名前ではございません、山野炭鉱株式会社という第二会社ではございますが、これは一〇〇%三井鉱山が株を持っておる会社、その名において控訴をされました。それに対して私は自分の意見を述べた機会がございました。それに対して現場責任者で、恐らくは責任を問われた人だろうと思います、最高責任者じゃなくて中間あるいは末端責任者から、こういう手紙が参っておる。短いからひとつ御紹介いたします。  「炭坑災害が絶えないのは、その原因は国の法律行政企業の姿勢にあると思う。罰せられるのはいつもミドルか」これは中間責任者という意味でありますが、「現場責任者ばかりで最高責任者は何も制裁を受けず企業行政の指示の下に道義的責任すら感ぜずシャーシャーと活躍しているのは不思議と思う。たとえば三井三池三十八年の場合、当時本社の保安最高責任者湯浅常務はその後なんと藍綬褒章を貰ったし当時三池保安最高責任ゴヒ」これはゴヒと書いてあります。よくわかりません、問い合わせる間がございませんでしたから。かたかなで書いてあるとおりに読みます。「ゴヒチョウジは今有明炭坑の要職にある。又四十年の山野爆発(二三七人死んだ)の時の松山は裏の記事の通りである。」これは裏の記事で、新聞記事が書いてございます。明専あるいは九州工業大学の出身者のことが連載してある記事から引いたところでありますが、当時の責任者松山さんは、いま日本石炭協会九州支部技術部長をしておられる、こういう記事が書いてございます。その記事のとおりであります。「これは何も三井にかぎった事ではない、今の刑法では現場責任者しか罰せられないようだ。法律改正は今無理としてもせめて本当責任者に何らかの社会的制約を課する程度の事はしないと炭山の責任者が締らない。」責任が明らかにならぬ、こういう意味であります。「いくら保安規則改正してもだめだと思う、今の様な体制の元で働いている地下の労働者は全く救われまいと思いませんか。」という、これは名前が封筒には書いてございますけれども、恐らく名前を秘しての私への訴えだと思います。筆跡その他から考えまして、そうだと思われますが、これは実際でございます。  しばしば災害のために末端係員あるいは中間責任者が処罰されて、最高責任者は処罰をされない。それでは本当保安確保ということはできないではないか。先ほど決議について御相談いただきましたが、鉱山保安の問題は、私は前にも申し上げましたけれども、新政策に重大な関係があると思いますだけに、鉱山保安法改正あるいは関係法規の再検討関連することとして、具体的な事例を挙げてお尋ねをいたします。これは立地公害局長も来ておられますけれども、私は通産省責任者お尋ねすべきことだと思うので、通産政務次官に聞いておきたいと思います。
  23. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 ただいま御質問がありましたように、人間の命は地球よりも重いと言われるのでありますから、人命尊重、したがって炭鉱事業というような場合に、保安がすべてに優先するのである。ただ、その責任の場合、私は、法律的な責任あるいは社会的な責任それから道義的な責任、いろいろあろうかと思いますが、問題が起きた場合、これは仮に刑事上の責任がなくても、その企業最高責任者が社会的な責任、経済的な責任、道義的な責任が免れるはずはないのであって、これも一つの大きな責任でありますが、いま、おっしゃる御質問刑事上の罰則対象にならないというのは、これは刑法上の問題でありますから、いま私どもの立場で、これをどうこうという明確な回答は出てこないのであります。  しかし仮に、これは刑事上の責任が免れたからといって、社会的な、道義的な責任が免れるというようなことはないのでありますから、大きな責任を負うことと思うのでありますが、ただ具体的に、いまのお話の問題になりますと、たとえば交通会社等でも運転手さんが交通事故を起こす、その運転手さんは刑事罰に問われますけれども、それが、その会社社長あるいは、その上司というものの責任ということになりますと、いまの刑法上では、これは免れるような状態になって、これは今後の検討すべき問題であろうと思います。
  24. 吉田法晴

    吉田委員 法律家ではないし、それから鉱山保安関係についても実務に携わっておられぬから、常識的な答弁をされるのも仕方がないと思いますが、もう少し具体的に話をして、お考えいただきたいと思います。  さっき理事会決議についてお話ございましたが、鉱山保安法及び関係法規の再検討を行うというふうにございますが、このことは、いま鉱山保安責任者行政上は通産大臣ですから、立地公害局長だけでなしに、やはりあなたたち、あるいは大臣責任を持っておられる。大臣責任を持っておられるということは、政務次官責任を分担しておられるということだと思いますが、鉱山保安法にこうなっておるから、さっき読み上げましたあれから言いますと、現場責任者あるいは中間責任者責任しか問われない、こういうことになります。それで、人一人の命が地球よりも重いということはお認めになりました。これは民主主義の原則でありますから当然であります。ごく最近、戦争前までは、炭鉱以外のところでは人一人の命が相当尊重されましたが、法制上は、あるいは規則上、制度上は炭鉱でも、人一人の命はやはり地球よりも重いということになっております。ところが、細目に至りますと、そうなっておらぬ。そこに問題があるのだと思うのです。そこで、鉱山保安法あるいは関係法規の再検討を願いたいという事情は、私はどこにもあると思います。そしてもしも、いま頻発しております大規模な鉱山事故が絶えないと、私は新政策あるいは新石炭政策に見合う人員の確保はできなくなる、こう信じて疑いません。  そこで問題になるわけですが、一番、近い例を引きますと、これは裁判上ですけれども飛騨川事件というのがあります。従来、行政には過失はないと言われている。ところが、あの飛騨川事件は、御承知のようにバスが山津波に流されて、あの、はんらんした飛騨川の中にのめり込んで、百名近い人命が奪われました。そこで、この人命責任はだれが負うべきか。私は結果責任、さかのぼって検討されることだと思いますが、再び、ああいう事件を起こさせないために、国は責任がある、道路管理上、責任があった、こういう判定をいたしました。これは画期的な裁判だと私は思います。同様のことは、これは民事上の裁判等を通じてですが、鉄道線路に入った人は、鉄道なり軌道なり、それは専用軌道だから入ってきた者が悪いとされてきた。ところが、だんだん人命尊重から、向こうの方の土手に子供が上がってきた、あの子供線路の中に入ってくるかもしらぬ、そこで入ってきたらブレーキをかけられるように速度を落として、もし入ってきても、その子供をひかないようにする責任がある、こういう、いわば過失の推定あるいは交通関係運転手さんに責任を課してまいりました。そしてそれが業務上過失ということに裁判上でもなっておるわけです。ですから本当過失から、だんだん義務も考えられるようになる、あるいは過失も推定され、あるいは最近は擬制をされているとまで言っていいと思います。  そうなっておるのに炭鉱だけは、あの三池炭鉱爆発であれだけの人を殺しても、あるいは山野では有罪になりましたけれども、それも争い得るというのは、やはり炭鉱においては人命尊重というのが、あなたもいま認められたように、民主社会において新憲法のもとにおいて、人一人の命は地球よりも重いと考えられているようには考えられていない証拠だ、こう思います。違いましょうか。民事的な責任のことを言われましたけれども、民事的な責任刑事的な責任は、人の命を大事にする点からは同じです。それを制度上、あるいは政治上、行政上と言ってもいいですが、責任を負っておられるのは、私は通産省だと思う。  通産行政の中から生産行政保安行政とを分けろという話は、この前もありましたが、私は何らかの構想か必要だと思います。そこまではいかないにしても鉱山保安法上、この手紙指摘をしておりますようなことが現にある。それはどこにあるのか、こういうことをお尋ねをし、そして改革をしていただきたいと思うのですが、具体的な法律のたてまえになりますから、条文を引いて指摘を申し上げる前に、立地公害局長も来ておられますから、専門家意見も多少、聞きながら御意見を承っておきたいと思います。
  25. 蓼沼美夫

    蓼沼説明員 お答えいたします。  いま先生、御指摘の問題でございますが、鉱山保安法といいますのは御承知のように保安確保のために一番、責任のある鉱業権者それから保安関係責任体制でございます保安統括者保安技術管理者保安係員それから一般の働かれる人それぞれにつきまして、それぞれの方が保安について措置をされる内容が決まっているわけでございます。この内容違反しているような事実がある場合には、罰則規定が設けられるという内容になっております。災害原因鉱山保安法違反の事実が認められました場合には、その事実関係に即しまして、鉱業権者あるいは保安系統保安統括者保安技術管理者保安係員あるいは一般労働者のだれに違反事実があったかということを調べまして、違反事実が認められた者を罰しよう、御承知のようにこういう改正になっておるわけでございますが、これはいま申し上げましたように、一番上の鉱業権者から、実際に働かれる一般労働者方々まで、いろいろな範囲方々あるいは、  その人に対する違反事実に対して罰しようというものでございまして、やはり経営管理者はそれなりの責任がある、このように考えておるわけでございます。
  26. 吉田法晴

    吉田委員 蓼沼参事官から一応、御答弁をいただきましたが、いま鉱山保安法を手元に見ながら御質問申し上げているわけです。たとえば第四条には鉱業権者の必要な措置が書いてあります。一番多い落盤だとか、あるいはいま引き合いに出しました三池とか山野鉱の話になりますと、ガスだとか炭じんだとか、いろいろ鉱害の防止ということでございますが、たとえば第四条の違反については保安法上、責任をとるということは何もございません。それから後の方でも、たとえば二十二条について見ますと、これは手続規定で、保安に関する鉱業法六十三条の規定違反を処罰する、あるいは「保安に関する事項について、通商産業局長と協議し、理由を示して、その変更を命ずることができる。」とありまして、それに違反したら処罰されるということは書いてございますが、鉱業権者保安法上、処罰するということは非常に少ない。いわば道義的な責任は課しておるけれども保安法上の罰則の適用は少ないのではないかと思われるわけです。具体的な例になりますと、もっと引き合いに出さなければなりませんけれども、たとえば、いまの四条なら四条の違反についての保安法上の責任をとるということでも構いませんし、これは行政罰と考えられておりますけれども、情状のひどいものに対しては罰金、あるいは人命に関する問題については短期ですけれども懲役以上のものが命ぜられておる規定があることは、私はここで具体的に引くまでもないことだと思うのです。そういう点で保安法上あるいは関連法規の上で再検討されるべきものはあると私は考えますけれども、これはどうお考えになりますか。
  27. 蓼沼美夫

    蓼沼説明員 先生、御指摘のように鉱山保安法は、ただいま一部、申し上げましたように保安法違反の件に関しまして罰則を設けております。それで故意または過失によります違反行為を処罰するということになっております。それからいわゆる両罰規定というものを設けておりまして「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し」まして違反行為をした、こういうときには、その行為者というものを罰するほかに、法人あるいは人に対しても罰金刑を科するということになっておるわけでございます。  こういう内容でございますので、保安法といたしましては、その最高責任者鉱業権者から一切の労務者に至るまでの内容につきまして相当、綿密なチェックがしてあるとは思いますが、おっしゃるような点につきまして検討する必要があるかどうかについて、内部でいろいろ検討してみたい、こう思っております。
  28. 吉田法晴

    吉田委員 検討するということですから、検討にまちますが、それでは具体的に、たとえば両罰規定として、個人だけでなくて法人も処罰されるように規定がしてあると言われますが、炭鉱災害関連して、その法人なり会社責任者が処罰された例を教えていただきたい。
  29. 蓼沼美夫

    蓼沼説明員 現在、実例を手元に持っておりませんので、調査の結果を、また先生に御報告申し上げますけれども、私の知っておる一般的な知識といたしましては、幾つか例があると聞き及んでおります。
  30. 吉田法晴

    吉田委員 幾つか例があるという話ですけれども、具体的には、わからないのですが、私がこの問題を考えますときに、これは、ちょうど西日本新聞に書評が出たのです。ここに「三井地獄からはい上がれ――三池炭鉱爆発とCO患者のたたかい」という増子義久さんという人の本があります。これは私も完全に読んでおりませんが、中を読んでみますと、新聞記者で、三池にも参りましたし山野にも行ったし、たくさんの犠牲者に会っております。その人が、CO患者に対する、山なり、あるいは山の病院なり大牟田の労災病院なり、あるいは九大その他、政府からも参りました三井三池災害医療調査団等の所見等も報告をしながら、書いておられますけれども、その中にこういうのがあります。  これは三池災害のありました一年半後の昭和四十年、一九六五年に行われた「三池炭鉱災害の患者をめぐって」という座談会の中で、CO患者というのは、それは組合が取り上げて、そう言っているのだという話として、「政争の具に患者が供されておるといったような状態があるわけです。」「組合自身は、組合員のために尽しているといった考えがあるんだろうと思いますけれども、実際は逆効果で、医原性疾患という言葉があるとすれば、あれはもう組合原性疾患(笑声)、」と書いてあります。笑いながら組合原性疾患といったような考えがあるということを指摘をしております。  別なところに、ここを私は一番問題にするわけでありますが、炭鉱では災害があたりまえのように考えられておる、炭鉱災害はつきものだ、そういう考え方から、災害のことについて、あるいは災害の被害について、いつまでも権利を主張していると、それは炭鉱には望ましくない者だとして、いつの間にかはじき出されてしまう。ここが重大で、そこのところを尋ねようと思うのですが、三池炭鉱爆発の際だけでなくて、炭じん爆発のあれだけでなくて、山野でも日鉄鉱業の伊王島炭鉱でも、それからことしの幌内炭鉱の際、あったかどうかわかりませんが、炭鉱爆発に伴ってCO患者がずいぶんたくさん出ている。しかし、そのCO患者がCO患者として認定される前に、CO患者の存在が否定せられておる、こういう記事が幾多の例を引いて挙げられている、そこは一番、問題のところです。事故が起こったことは事実ですが、その爆発からCO患者は出たと認めない。炭鉱の病院も、あるいは調査団が行っても、公的な機関を含めても、あるいはそれが政府から派遣をされた調査団についても、そういう傾向があるとすれば大変な問題だ、こう考えますだけに、先ほど挙げましたけれども山野、日鉄鉱業については御否定にならぬと思いますが、ことしの幌内炭鉱についてはどうであるのか。それから挙げました山野、日鉄等についてCO患者の数あるいは、その後の経過あるいは現状あるいは対策等について、概数、御存じであるならば報告をいただきたいのです。
  31. 蓼沼美夫

    蓼沼説明員 まず幌内炭鉱の件について御説明申し上げます。  幌内炭鉱につきましては罹災された方が三十一名でございまして、現在、負傷された方が七名でございます。この七名の中に、外傷それから、その他の疑いのある者ということで、おられるわけでございますが、いま聞いております範囲ではCO患者はいない、こういう報告を受けております。  それから先生、御指摘のその他の山につきましては、申しわけございませんが現在、手元に資料がございませんので、資料を整備し、お送りしたいと思います。この件につきましては労働省も相当関係がございますので、労働省とも相談をいたしたいと思っております。
  32. 吉田法晴

    吉田委員 いままで申し述べましたことに関連をして、CO切り捨てが実際に行われておるようでありますが、その例を一、二挙げますけれども労災法との関係について、こういう災害なり、あるいは災害の結果、起こりましたCO症状に対しては、労災法は不備ではないかと考えられますから、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。労災法の不備の点については、あるいは、これは労働省の所管だということで逃げられるかもしれませんけれども、その辺は政務次官、来ておられますから最後に政務次官に伺いたいと思います。  これは山野の被害者そして患者さんの例を一つ引きますと、中岡一行さんという北九州市八幡区木屋瀬に住んでおる人の例であります。  「くずれかかったボタ山のふもとにバラックの一軒屋がポツンと建っており、それが中岡さんの家だった。ほほの肉がこけ、顔色も悪い。白いものが目立つ、油っ気のない髪の毛をかきむしりながら、中岡さんはボソッといった。「ありゃ上田組に入ってから、すぐじゃった。あの組からは五人が坑内に入っておったが、わし一人が助かった。組の親方はなんちいうたかの……よう思い出せんが……。なんせ、わしが先ヤマで後向きが四人で掘進しょった。坑内の、いちばん、奥のようだったな」 中岡さんは戦後、南方から復員するとすぐ、筑豊の小ヤマに働き口を見つけた。そのころの小ヤマは手掘り作業であった。落盤やガスから身を守るのは、長年のカンと地質を読み取る熟練度だけである。負けず嫌いな気性と屈強なからだの中岡さんは四、五年もすると、腕のいい掘進工になっていた。ところが、中岡さんが働いていた有田炭鉱閉山になってしまう。失業してブラブラしているところに、中岡さんの腕を知っていた上田組が声をかけた。」これは山野鉱業が第二会社になった、いわば組です。そして、その組夫としての中岡さんの例が挙げてある。上田組が声をかけたので「その誘いにのり、山野鉱へきて十数カ月後に事故にあったのである。中岡さんの場合も、救出されたのは爆発から約八時間後だった。「そら、ちょうど狂犬病のごとあったですよ」とかたわらで妻の美代子さんがいった。「目がつり上がり、キョロキョロして、いっときもじっとしとらん。私の顔を見てん、だれかわかりゃしぇん。事故の次の日、九大に入院したけど、こりゃ、助からんかもしれんち、思うたですよ」。九州大学に入院してからも中岡さんはひと言もしゃべらず、立たせたら立ったまま、坐らせたら坐ったまま、動こうともしなかった。むりに動かすと、猛然と暴れ出した。美代子さんの顔を見て妻であることがのみこめるようになるまで三、四ヵ月かかったという。」  ところが、その人がCO患者としては認められていないのであります。その認められなかったのは、医師が認めなかったわけでありますが、炭鉱の病院と、あるいは労災病院あるいは調査団等々の診察を経ても、なかなか患者と認められて取り上げられない。そこで「身体的な欠陥補充に重点を置き、精神神経的な障害を軽視するという現行労災法の不備を指摘するのは容易である。だが、それ以上に自覚症状治癒という三池の切り捨て政策の図式が、ここでもみごとに展開されていることに驚かされるのである。」こう書いてあります。  で、CO患者に対する法律ができたことは御承知のとおりであります。この法律通産省の所管であろうと思う。石炭関係法令集に書いてございますので、私はそうだと思うのですが、その法律の適用を受けるためには、一酸化炭素によって脳神経系統に異常があるとして、CO患者と認められなければならない。その病院のことは厚生省に関連をいたします。関連をいたしますが、せっかく法律をつくっても、それで救われることがないような実情になっているという点は、これは通産省として御存じなのかどうか。時間がございませんから、たくさん挙げることは省略をいたします。先ほど一例を読み上げました。その中にたくさん書いてございますが、それは、CO患者がCO患者として認められない。その後の三池の経験を、これは経営者は経営者として何かくみ取っておるようですが、その結果は、CO患者をできるだけ出さないように、一酸化炭素中心患者が出ても、中毒患者として認めないという態度が見られるようでございますだけに、そこのところは、私は一般、法上の問題よりも以前の問題があると思いますけれども、そういう点について、これはいま労災法の欠陥を指摘しているわけでありますが、その前の問題だ。その前の問題を私は先ほど御質問申し上げましたけれども、やはり人の命を大事にするという精神が立地公害局だけでなしに、通産省の中になければ、あるいは経営の中になければ、私はどんな法律をつくっても、あるいはどんなりっぱなことを言われても、それが実際に行われないという結果になるという意味で、こういう問題を提出しているわけであります。政務次官のひとつの御答弁を願います。
  33. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 いま吉田先生から御質問のあった人命問題、さきにも私、申し上げましたが、この前、幌内鉱で事故が起こりました際も、私、事故当日、現場に出張いたしまして、まず担当の者を集めまして、人命尊重をまず第一に、すべてに優先して考えるように、第二番目には、被害者の救済に全力を尽くすようにということを指示してまいりました。これが通産省の基本的な精神でありまして、いささかも人命尊重あるいは保安第一をおろそかにするというような姿勢は通産省にありません。ただ、いまの先生御指摘のような問題は、学問的に、あるいは技術的に、学者なり担当の者が純粋に判断すべきことでありますから、それはまた、そういうようなものについて勉強をしてみたいと思いますが、これは政治的に判断する性質のものではないと思います。
  34. 吉田法晴

    吉田委員 この本の中にも、いわば炭鉱における災害についての経営者の姿勢というものが取り上げられております。私も実は炭鉱に十数年おりました。災害に当たっての、要するに経営者の良心といいますか、これについては、やはりいまもまだ納得しがたいものがございます。こういう例がたくさん、ここに挙げられておりますけれども、これを待つまでもなく、自分で経験をいたしました。  そのことは、私はいまの河本通産大臣を例に引きますけれども、河本通産大臣は、景気対策あるいは生産政策を先にするのでなしに、人命尊重保安のことを先にされるべきだと思います。また、通産政務次官もそうでなければならないと思いますが、口ではそう言われるけれども、各山で実際に行われておるのは、そうではございません。やはり合理化政策あるいは人減らしや生産のために保安を無視する実際が行われている。そこで、三池炭鉱のあの大爆発の後に、同じ三井の中でやはり山野爆発が起こった。あるいは三菱の中でも、去年から、あるいはことし、幾つ起こりましたか。  それは一つは北海道深部採炭ということもございます。深部の採炭をどうして進めるか、さっきの質問関連いたしますけれども、千メートル以上の坑内であれするには、第一、通気から、あるいは排水から、金もかかるでしょう。そこに生産の問題をめぐっての金の問題も起こりましょう。あるいは経営形態の問題も起こります。しかし、どんな形態をとろうとも、人間の命が大事だということが本当に確立されなければならないという点は変わりがございません。それにやはり欠けるところがあるからこそ、こうして頻発をする。何遍、警告しても、問題が起こるごとに、事故が起こるごとに、再び繰り返さないようにいたしますと通産省も言われる、あるいは立地公害局も言われる。保安に力を入れると言われるけれども、それが実際に生産の現場まで確立をされていない、こういうことは否定し得ぬと思う。それだけに、それをどういうようにして確立するかが問題。法律にも欠陥はありはしませんかということを申し上げるのは、そのせいです。そうして法律だけでなしに、本当の一人一人の命は地球よりも重いという体制を確立することが何より急務だと思います。具体的な例を引いていたしますと長くなりますから、いたしませんけれども、それに関連をして、立地公害局も来ておられますし、それから石炭部長も来ておられますから、決意を承った後で、通産政務次官お尋ねしたいと思います。
  35. 蓼沼美夫

    蓼沼説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘の深部問題でございますが、これからの炭鉱の生命を左右するような重大な問題でございまして、深部対策というのは、やはりいろいろ検討し、これを充実していかなければならないということでございます。現在、立地公害局におきましては、特に技術開発それから深部対策につきましての骨格構造の整備その他、重点的に深部対策というものを、いま考えておりまして、各先生方あるいは労働組合その他の御意見を伺いながら、これを強化充実していくという方向で検討をし、また強力に実施したいという考えでございます。
  36. 高木俊介

    高木政府委員 新政策におきます石炭政策と申しますか、例の二千万トン以上という表示をしているわけではございますけれども、これは現在の三十六炭鉱内容を順次、分析いたしまして、無理のないような生産体制ということを第一に考えたわけでございまして、私ども保安第一ということは常に頭に置いているわけでございます。当然そういう趣旨に沿いまして、私どもといたしましては、保安対策はもとより、生産の方も無理のない生産ということで、現在でも確かに炭を掘りますと、掘った炭は売れるというような状態にはございますけれども資源エネルギー庁といたしましては、一回も生産の増強ということで会社に指示したこともございませんし、保安を第一にやってもらいたいということを第一の姿勢といたしまして、今後の新政策のあり方ということを現在、検討しておる段階でございます。
  37. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 ただいま担当者から答えましたとおり、生命尊重保安優先、これは全く議論の余地のない、先生おっしゃるとおりの考え方でございます。ただ石炭事業も、これは企業でありますから、採算、生産というものを全く無視して今後、長期にわたって将来に存立するということも不可能なのでありまして、保安、生命尊重、優先の中で、できるだけ生産を増強し、あるいは採算がとれるように経営的な努力をするということで進んでいくのですが、先生のいまの生命尊重の中での大変とうとい御意見等も今後、行政に、あるいは立法に反映するように努力をしてまいりたいと思います。
  38. 吉田法晴

    吉田委員 一時間の時間を与えられましたが、そろそろ時間が来るのですけれども、その間に、ちょっと引いてあれしますが、この本にも、私どもも考えますように、炭鉱では災害がつきものだと言う考えがあったり、あるいは最近の、政府もそういう方針でしたが、合理化政策の中で人命尊重されなくなってきた、そういうことを端的にあらわしていますから、いま、ちょっと読んでみます。  「炭鉱はどこでも「山の神さん」を祭っている。けがや事故があると、労働者たちは、たいていは「精進が悪い」といってあきらめ、会社側は山の神の祭を盛大に催して厄払いするのがつねである。古老の話では、事故があるたびに次のような歌をうたわされたという。  できることなら山の神様よ  ケガや災難吹きとばすような風を  吹かせたまえとわしゃたのむ  よいころしょのよいこらしょ  三池三池とその名も高い  山にゃ石炭、町には工場  港々に船がつく」 この「山にゃ石炭、町には工場」というのは、これはよく歌われており、私どもも覚えています。  「事故や病気は個人の「不注意」によるものとされたのである。だが、病いに倒れる労働者の断続的休養と災害による集団的な労働力の喪失は、炭鉱経営者にとっては脅威である。休業者がふえれば、それだけ出炭が減る。そこで、経営者は「人間」を「人間としてみる」ことをやめる。炭鉱労働者を単なる「人的資源」と考え、できるだけ多くの労働者坑内に送り込んで、出炭をあげようとする。」それが「出勤督励」ということになる、こういうわけです。「一九六三年二月一六日、三井鉱山はスクラップ・アンド・ビルド政策を背景に、美唄、田川、山野の非能率鉱三山を閉山して三池の再建をはかるという名目で、賃金その他の労働条件の引下げ、職場規律の確立、労働者管理の厳格化などを盛り込んだ「第三次合理化案」を組合に提示した。」そして、これはいわゆる就業規則改正に踏み切ったことが書いてあります。  その一九六三年の就業規則改正は、ここに引き合いに出して長々とは言いません。しかし、この就業規則のいわば炭鉱に持っておる意味を考えると、これをしも、あるいは合理化案と関係ないと言われると思います、これは石炭部長の所管になりますけれども。そういうのがまだ直らないままに三池炭鉱に残っておるわけです。そういう合理化政策というものを残しながら深部採炭をやろうとしたって二千万トンの数字もむずかしい、私はこういうことを申し上げているわけです。  ですから、最後になりますけれども、こういう具体的な事例に対して、あるいは、たとえば就業規則やその他について言うと、これは戦争中は三池炭鉱の法規と言われましたね。これは炭鉱の中で言うと、引き続くものかもしれません。そうしたいでしょう。そうしたいでしょうけれども、しかし、これは法的な拘束力は持ちません。言われるような強制力は持たぬわけです。ところが、そういう労務管理の精神――私は三井三池か昔からそうであったとは言いません。私どもは大先輩に井上陽之助というりっぱな人がおりました。従業員をかわいがらずに定着を図ることができない。かわいがることをされた、りっぱな先輩も知っております。知っておりますが、最近で言いますと、これは三池だけでなしに山野にも、あるいは三井系統の北海道の山にもいっておると思いますだけに、あるいは災害を繰り返す北海道でも、やはり問題になっているところだと思います。それが決議になろうかどうかということになると思うのですけれども、就業規則や、あるいは現場における合理化に対して、石炭部長としてはどう考えられるか、これをお尋ねしたい。
  39. 高木俊介

    高木政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、合理化と申しますか近代化、いわゆる機械化というようなことは、今後も技術開発とともに実施していかなくちゃならぬ問題だろうと思います。しかし、先ほど先生、御指摘の労働強化と申しますか、あるいは雇用問題で遺漏のないような形での今後の石炭政策を確立していくというたてまえに立ちまして、新石炭政策というものが答申に出ておるわけでございます。その線に沿いまして、私どもは今後、国内の資源をできるだけ活用するということと、長く続いてもらうような職場をつくるということに努力をしたいというふうに考えております。
  40. 吉田法晴

    吉田委員 それに関連して、時間がだんだんなくなってきましたが一言、申し上げたいのです。  石炭が国際的に問題のときに、列国議会同盟の会議に出してもらったことがございます。これは参議院のときに。亡くなりました阿部議員と一緒に、アメリカそれからソ連、ベルギー。ルール炭田には日本から行っておりましたから、人に会うことが中心であったので坑内には入りませんでした。それで炭鉱というものは災害はつきものだと考えられておりますけれども、しかし、災害がほとんどなくなってしまうような設備をとろうと思えばとれる。私は例をソ連の炭鉱でも見ました。あるいは炭質の違いがあるかもしれませんけれども、アメリカでも、あれならガス爆発もないでしょう、それから落盤というものもない、それを見ました。西独の炭鉱には入っていないけれども、それに近い炭層じゃないかと思いますが、それは炭層は悪い。しかし、一にも二にも自然、自然条件ということで、人間のすることを放置することは許されぬと思います。あるいは深部のガス抜きにしても、前にありました災害のときにも新聞紙上で見たことですけれども、ガスを抜いてしまって、それを確かめて掘進をすればいいのだけれども、なるほどガス抜きはやっているけれども、ガスが抜かれてしまったということを確認しないで掘進しているものだから、ガスの突出が起こったということを読んだことを覚えております。ですから、これは指導の仕方によっては、早く言えば金を構わないで使うならば、人間の命を大事にすることは、いまの日本でもできないことはないと思う。問題は、経済主義だとか、あるいは経営形態も問題になりますけれども、そういう意味では日本の炭鉱災害はつきものなんだ、そして災害が起こるかどうかは個人の注意とか何とかいうことではなしに、科学的にやはり考えられるべき問題だと思うのです。その考えが本当に基礎に確立されて、その上で新政策が考えられるならば、あるいは、その経営の実態を考えられるならば、私は方法はあると思うのですけれども、それが確立されてないところが問題だというように感じます。  先ほど飛騨川事件の例をとりましたけれども一般の世の中では、そういうぐあいに注意義務を過失の推定でも、あれをしたり、あるいは国にも責任があるというような人命尊重の画期的な裁判もあり、それから判例で見ましても、私はだんだん改善されていっていると思うのですけれども、何か炭鉱は取り残されている、率直に申しましてそういう感じがしてなりません。また、この増子君も、その指摘をしております。具体的な例は一々、指摘をする間もございませんから、後で読んでもらいたいと思うのですけれども、そして、ぜひひとつ新政策をとられるというならば、本当人命を大事にされるのを基礎にして、政務次官も言われるように、人一人の命が地球よりも重いという実体を確立されるように希望をして、時間が参りましたから、質問を終わりたいと思います。
  41. 田代文久

    田代委員長 多賀屋真念君。
  42. 多賀谷真稔

    ○多賀屋委員 先ほどから災害の絶滅についてのいろいろな質問があっておりますけれども、実は十二月の十二日の朝日新聞の投書欄、「声」の欄に、かつて釧路の雄別炭鉱で二十二年間、坑内の技術者として入っておった人、この人が投書をしているわけです。その人は、いま裾野市のどうもトヨタ自動車に入っておるようですね。これによりますと、結局今日の幌内の炭鉱ガス燃発も、原因はどうであれ、やはり初歩的なミスだ、自分は自動車会社に行って低公害、低燃費の技術の開発をやっているけれども、その点から見ても、どうも炭鉱災害というものは、二十代、三十代の技術者がいないからじゃないか、こういうことを指摘しているわけです。この二十代、三十代のきわめて柔軟性のある、発想力がある技術者がいないというところに、深部開発のような困難な保安に対処できないのじゃないかという点を指摘しているのです。  私は実はこれを読みまして、石炭政策の傷跡の深さというものに、いまさら驚いているわけです。いま炭鉱の技術者というのは、技術者は、わりあいに多いのですけれども、四十代、五十代ですよ、率直に言いますと。やっぱり二、三十代の技術者が決定的に不足をしておる。ほとんど皆無であると言っても言い過ぎではないぐらいの状態である、こういうふうに思うわけです。ですから、若い、創造力のある技術者をどうして養成するか。この人の提言は、むしろ学卒者で二年ぐらい坑内に入った者を逆に保安監督官として出向させよということも一つ提言をしておるし、北大、北見工大、室蘭工大の鉱山、地質、物理、化学の学者グループで深部開発対策を立案するということも必要だ、こう言っているのですが、私は鉱山、採鉱科で大学の先生の教室を見ても、大先生はいらっしゃるわけですけれども、その下に助教授とか助手とか、あるいは大学院の学生というのは、同じ工学部でも普通の科と違って非常にすそ野がないのじゃないか。ですから、教授が何でも自分で発案するのでなくて、ああいう教室は、御存じのように大体は若い諸君がいろいろな発想を言ったことを、先生が学問的にまとめていくのです。ですから、そういう点が基本的に欠けておるのじゃないか、こういうように考えるわけです。まさに保安問題において一番、重大な点を、この鈴木博さんという人が指摘したのではないか。  この方はいまもやはり公害防止管理者をトヨタでやっているわけです。ですから、そういう観点から、自分で過去二十二年も炭鉱にいて、そして戦後雄別炭鉱は一回も爆発事故は起こっていないのです。そういう点を考えてみると、やはりこういう点が問題ではなかったかということを指摘をしておるのですが、この保安の人材を養成するということについて、どういうように具体的に案を考えられておるかどうか。また、どういうように考えるべきであるか。こういうようにも思うのですけれども、何年間、大学にやるとか、かつては炭鉱もそういうことをやったのですよ。もう、いまは経済的に非常に企業経理が逼迫しておるものですから、やらないし、また、技術開発を、そういう意味で、やろうという意欲が残念ながら、ない。また、その余裕もない。人間もいない。一体こういう中で、ことに保安について、どういうふうに、いまから考えられるか。これをひとつ立地公害局からお聞かせ願いたいと思うわけです。
  43. 蓼沼美夫

    蓼沼説明員 先生御指摘の点は大変、重大な問題でございまして、非常に多くの示唆をいただいたものと思っております。全般的な趨勢として、おっしゃるように炭鉱における若年労働者あるいは技術者というのが減っていることは事実でございまして、今後いかにして、そういうところを強化していくかという問題でございますが、まず保安確保ということは、現に魅力ある職場をつくるということが、一つのポイントではないかと思っております。それからもう一つは、やはり職場として長続きする、こういうところがあろうかと思います。そういう実際の魅力のある職場というのを、どういう形でつくっていくか、それと実際に技術者が喜んで、そこに入っていけるような内容を持った職場をつくるか、こういうことで、非常に重大な問題でございまして、これは御指摘もございます。十分、検討したい、こう思っておるわけでございます。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ただ若年労働者を集めるということばかり考えておるけれども、要するに技術者、かなり高度の技術者の養成というものは、ほとんど考えられていない。そういう点もやはり抜けておるのじゃないか、こういうように考えるわけであります。これをひとつ具体的に答案を書いていただきたい、こういうように思います。制度としてどういうようにするか。部長、答弁を求めます。
  45. 高木俊介

    高木政府委員 ただいま先生の御指摘の点でございますけれども、現在でも各大学とも、名前は昔の鉱山科、採鉱科というようなものが変わりまして資源工学科とか、いろいろな名前に変わってはおりますけれども炭鉱あるいはメタル山を中心とする技術者は年々、各大学で二、三十名ずつは卒業しておるわけでございます。  いま、そういう卒業者が、大体どこへ行っておるかというのが一つの大きな問題ではなかろうかと思いますけれども、いわば炭鉱関係に就職しませんで、むしろ商社関係へ行くとか、いろいろ範囲も広くなりまして土木関係、ほかの方に行っておるというのも事実でございます。そういう点で、ではなぜ、そういうことになったかということは、いわゆる石炭産業の将来性の問題というようなことで、現在までは採用もなかなかできなかったというのが実態だろうと思います。  幸いに去年、ことし等の話を聞いてみますと、大学卒業生も直接、企業の方に採用の申し込みもしておるようでございまして、なお三井、三菱等、数名ずつは採用するという話も聞いております。それで私どもといたしましては、いわゆる技術者が炭鉱に将来、来ていただくというような道をつくるために、一つは、これは私も、この理事をやっておるのでございますけれども、いわゆる学会がございまして、日本鉱業会でございますけれども、鉱業会の中で奨学金制度を設けておりまして、そういう奨学金制度も設けつつ、いわゆる鉱山関係に将来、来ていただくというようなことで、ひもつきと言ったら変でございますけれども、山の方に来ていただくような制度もとっていく。  あと、いろいろ保安との問題ということになりますと、これは確かに教育では一応の保安というものは受けるわけではございますけれども現場の実態が身についた保安技術者じゃございませんので、その点は採用された後、十分、将来の保安管理者になるような教育を、また各山なりで教育せぬければならぬだろうというふうに考えております。現在、先ほども申し上げますように全然、大学でそういう教育をしていないのではございませんで、卒業者は年々おる、その卒業者を採用してもらうような企業になってもらいたいし、また卒業者が来てくれるような魅力ある石炭鉱業にしたいというのが、私どもの念願でございます。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはメタルの場合でも同じですけれども、やはり銅を国内十万トンという線が崩れれば、海外開発も不可能です。石炭を二千万トンという線がもし崩れたら、海外の開発で一般炭を輸入するなんということは、それは本当に商社任せという、あなた任せになる。いまの石油と同じ状態あるいは、それ以上になるかもしれない。ですから国内に一定の人材の養成をするだけの鉱量というものを確保しない以上、どういう情勢になっても、それは海外から買うという状態にしても、どうにもならない状態になる、こういうように思うのです。これはもう一つ、もう少し具体的に私は制度を設けてもらいたいと思うわけです。  戦争中、御存じのように鉱山関係は五十円ですね。戦争中五十円というと、大体、東京で下宿で住まうぐらいありましたね。ですから五十円ずつ、あれは奨学資金が出ておったのです。ですから、私は戦争中のことを言うわけじゃないのですが、そういう技術者がどうしても必要であるとするならば、何らかの形に制度的に養成をする以外にはないのじゃないか、こういうように思います。  次に、幌内炭鉱の問題ですけれども、私は具体的に、いまの幌内炭鉱について、いま篠田さんからも話がありましたが、いまの、きわめて不確定要因の多いとき、余り正確な答弁を求めないのですけれども、一体こういう限界炭鉱ですね、コストから言うと。当分の間非常にコストが高い、その山を維持するかどうかという判断をするような場合、限界炭鉱というものを普通のベースにしておれば、採算とれぬということになるわけです。ですから、その限界炭鉱を維持するためには、どれだけの制度としての安定対策をお持ちであるのかどうか、これをお聞かせ願いたい。  今度の答申で初めて格差の是正ということで、われわれが長いこと言ってきたわけでありますけれども、なかなか自民党政府では聞き入れられなかった点が、今度、初めて頭を出したわけですね。要するに、経営者や労使の努力だけでは解決をし得ない自然条件がある。その自然条件の格差というものは、何らか制度的に見てやらないと、これだけの鉱量を維持するということはなかなか困難であるということを、いままで主張しておったのですが、今度、初めて差別価格の導入というものが入ってきたわけです。あるいは傾斜配分ということも入ってきたわけです。これは、たとえば幌内で考えると、一体どういう政策の、どれだけぐらいの幅をもってやられるつもりであるか、ひとつお聞かせ願いたい。
  47. 高木俊介

    高木政府委員 限界炭鉱の救済と申しますか、今後どういうような形で、そういう山を維持していくのが方向かという御質問かと思いますけれども、第一は、何といいましても企業努力ということが入るのが当然でございますけれども、それ以外に、いわゆる炭鉱の自然条件というような点から、たとえば傾斜しているかフラットであるか、あるいは厚い層であるか薄い層であるか、あるいはガスの多い少ないというような、いろいろ自然条件に左右されるコスト面への影響があるということは、これは事実でございます。なおまた立地問題から、内陸部にあるか、あるいは海岸線にあるかというようなことで、いわゆるコストではございませんけれども、売り値のプライスとしては、いわゆる輸送費の負担ということも、これはひいてはプライスが一定でございますれば、山元の手取りという関係では、それだけ負担が多くなるというのが事実でございます。いろいろ、うちの方で各山の純コストというものを試算しておるのでございますけれども、その点では、そう大きな差はございません。せいぜい千円から千五百円ぐらいのような記憶が、いまいたしておりますけれども、実態は、いままでの経営のいろいろな問題、金利負担だとか、いろいろなことが加算されまして、二千円から三千円近い格差が出ているのが事実でございます。  しかし私どもといたしましては、今後、少なくとも自然条件の悪化と申しますか、違いに対する問題、あるいは内陸部、海岸線の輸送の違いによる山の格差の問題、こういう点につきまして、安定補給金の格差配分、あるいはこれは現在、一手販売、一手購入というような機能を電力用炭の法律のもとでやっておりますけれども、この辺の運用によりまして、ある程度の格差是正はできるのではないかというふうに考えております。そういうことを使いつつ、現在の山の長期安定供給ということを考えているような次第でございます。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、今度の新法律で、制度的にそういうのを設けるわけですか。
  49. 高木俊介

    高木政府委員 現在の制度を運用することによっても十分、運用面において実施が可能であろうというふうに考えております。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、それは電力用炭株式会社で行うわけですか。さっきの安定補給金のものは合理化事業団を通じて交付されるでしょうけれども、その一手買い取り、一手販売という現在の電力用炭の一般炭の取り扱いの運用において、電力用炭株式会社を利用して行う、こういう意味ですか。
  51. 高木俊介

    高木政府委員 電力用炭株式会社を通じてということを、いまここで申し上げておるのではございませんで、電力用炭株式会社法に基づきます調整機能はございますので、その点は、ぜひ利用したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 電力用炭株式会社法に基づくのと、電力用炭株式会社によってというのは違うのですか。
  53. 高木俊介

    高木政府委員 実は昨日、新聞にも出ましたけれども、現在、電力用炭株式会社をどうするかという問題も、ちょっとあるものですから、ただいま、そのようなお答えをしたわけでございます。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 電力用炭法という法律なら、それは株式会社を通じなくても何らか方法があるのだけれども、あの法律はたしか電力用炭販売株式会社という法律でしょう。ですから電力用炭株式会社という機関を通じて、そういう運用をするのか、こういうようにぼくは聞いたわけです。  そこで、行政管理庁にお尋ねしたいのですけれども、実は名前が電力用炭株式会社というのを残すかどうかは問題として、今後の石炭政策の大きな柱は、一つは、われわれから言うならば、さっき言いますように出炭量を維持するためには、コスト的な限界炭鉱を何とか保存しなければならぬ、ついては国の補助金だけではなかなかむずかしい。そこで、ある程度の価格差調整、プール的なものをやる機構が必要である。それからもう一つ、これは今後、質問したいと思いますが、海外用炭の場合、これも海外用炭と国内用炭との調整機能というものが、私は非常に必要ではないかと思うのです。そうしなければ幾ら文章で、この答申が「国内炭と輸入炭の関係」ということで「政策実施上、国内炭の使用を優先することを原則とすべきである。ただし、輸入炭によって品質面等で国内炭をより有効に活用し得る点があることを十分認識して必要な措置をとるべきである。」こういうふうに書いてはありましても、政策として何らか調整的なものをやらなければ、私は、いまメタル、非鉄金属が困っておると同じ状態になると思うのですよ。私は出発点で、考えられる十分な処置をしておかないと、途中でやろうたってなかなか困難ではないか、こういうふうに思うわけです。それは、メタルの方は御存じのように、いま、一つは貯鉱制度という備蓄制度、一つは関税という問題になっておるわけです。これも両方ともなかなかむずかしいですよね。関税制度はあっても、その額を上げるのはむずかしい。ですから、輸入炭を入れて国内炭を圧迫しないというならば、最初から制度が必要ではないか、こういうように私は思うわけです。  そこで行政管理庁としては、いままでの電力用炭株式会社をどういうように判断をされておるのか、これをお聞かせ願いたい、こういうように思います。
  55. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 私ども、電力用炭株式会社を現在、特殊法人ということで第二・四半期以降、ほかの特殊法人と同じように調査を続行中でございまして、この段階で、当該会社につきましてどうするかということは、この席で申し述べられないような現在の状態でございます。したがいまして、価格調整機能をどうするかというようなことにつきましては、調査の結果を見た上で判断するということになろうかと思っております。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず、その現状はどう認識をされるのか。それから新政策との関連はどういうように見られるのか、この二点をお聞かせ願いたいと思います。ただ調査する調査するといっても、どういう観点から見るのか。まあ観点は、なるべく少なくするという観点かもしれぬけれども、あなたの方は一体どういう現状に電力用炭販売株式会社というものを見ておられるのか、これをお聞かせ願いたい。
  57. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 電力用炭株式会社が、その設立当初の状態と現在の状態というものを比較いたしまして、今日的な意味がどういうようなことになっているかということでは、調査の見方として一つございます。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 かつて、できた当時から、もっとも、できた当時は名前もちょっと違うのですけれども、電力用炭代金精算株式会社という名前です。それから、いまの販売株式会社という名前に変わるわけですよね。その当時から現時点と、いまから、われわれが新政策をやる場合と、これはちょっと違うのです。われわれは調整機能を一歩、強くしたい。それは海外炭の関係が一つある。私どもの考え方ですよ。私どもの考え方は今後、調整機能的な問題として考えたいので、これは電力用炭株式会社そのものにやらすかどうかということは別として、その機能かどうしても必要です。そういう点について、どういうように考えておるのか。
  59. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 いま先生、御指摘がございましたとおり、国内、海外用炭の価格を中心にする調整機能というものは、やはりこれは大事なものであろうという認識を持っておるわけでございます。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 電力用炭株式会社は、まあ、いまはどうでしょうか、恐らくいまも、やっておると思うのですが、配船までやったわけですね。船の荷を積んだり輸送したりというところまでやったわけです。ですから今後、電力用炭株式会社でやるか、どこでやるか、海外炭の問題でもかなり、そういうものが必要じゃないのだろうか。それは需要業界がやりますよ、電発がやりますよ、電力会社がやりますよというのでは、ただ計算事務をやるだけで、これは余り意味がない、やはりそこまでやるべき問題じゃないのだろうか、こういうように考えるわけです。これは過去だけでなくて、ひとつ将来展望に立って検討願いたいと思う。  いまから、われわれ新政策をつくろうとしておる。それは、かつての国内炭が外国の石油に押されたと同じように、また今度、外国の石炭に押される可能性があるわけです。これは、石油をもってするに石炭をもってしたって同じことになるのですね。これじゃ何にもならぬですよ、国内エネルギーから言えば。あるいはエネルギーの安定から言えば。どうも産油国の政情の方が不安で、産炭国の方が安定だなんということは余り理由にならぬのです。やはり国内の石炭をどうして維持するか、それが安定につながるのだという考え方ですから、ひとつ、そういう点で考えていただきたいと思います。  そこでもう一つ、これはどうも素人くさいなと思ったのですけれども、石炭合理化事業団と石炭鉱害事業団とを統合するという話です。これは言うならば実務を知らぬ人が考えたのじゃないか。業務が全然違うのですよ。鉱害事業団は九州、宇部が中心でしょう。一方、合理化事業団の方は全国的な規模です。それから鉱害事業団というのは、鉱害の被害者が、もう毎日のように交渉に来ておるわけですよ。ですから合理化事業団のような普通の事務をやるところに同居するのは、きわめて適当でないという問題があるのですね。仕事が非常に違うわけです。鉱害事業団の方はいわば現場を持っているわけです。九州で言いますと佐賀地域とか、あるいは田川とか飯塚とか、あるいは北九州とか、おのおの現場を持っておる。そして、これはまだ、だんだんふえるのです。まあ役所が千数百億なんて言うから、そのとおりで、だんだん減っておるだろうと思うけれども、これは減らないのです。率直に言いますと、こんなことを言ってはなんですけれども、幾ら復旧をしても金額から言うと、だんだんふえる一方なんですよ。それは永遠じゃありませんよ、しかし、いまの状態から言えば、この十年くらいは復旧を必要とする金額がどんどんふえていくと思うのですよ。ですから仕事だって二十年くらいでは、なかなか解決しないのではないか。事務から言いましても、その作業環境から言っても全然、違うのですよ。この点はどういうように合理化事業団と復旧事業団を考えられておるのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  61. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 昨日でございましたか、新聞に行財政改革特別委員会の特殊法人と補助金をやっております小委員会の案が載っておりまして、きょう、また毎日新聞に載っておりますが、その考えと、私どもの現在やっております作業とは、当然のことではございますが、必ずしも同じものではないわけでございます。政府といたしまして私どもが現在やっております作業は、実はまだ結論を得ているものではございません。現在まだ調査続行中でございまして、予算編成時までには何らかの結論を得たいということで、せっかく作業中でございます。したがいまして御指摘の石炭合理化事業団それから鉱害事業団の動向につきましては、この段階で私ども意見を申し上げられないところでございます。  ただ政府といたしましては、本年四月に行政監理委員会の委員の提言がございまして、さらに五月に、政府のいわゆる行政改革本部で、財政硬直化の緊急事態に対処しまして、特殊法人の合理化それから補助金の整理等を至急に調査しろという決定がございまして、それに基づいて現在まで作業を進めておるという段階でございます。御指摘の特殊法人につきまして合理化できるかどうか、現在せっかく検討中でございますので、本日のところ、所見等につきましては御容赦いただきたいと存じます。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 行政改革も必要ですけれども鉱害事業団と合理化事業団とは性格が非常に違う。また、われわれとしては合理化事業団を今後の国内の開発あるいは海外の開発にも、一つの大きな足場としていきたい、こういうように考えておるわけで、そういう中で、どっちかと言えば後始末、復旧の、しかも現場を持っているものと一本にするというのは、現実問題としては非常に困難なことだし、事務が混乱することになるのじゃないかということで、その点を十分、考慮を願いたい、こういうように思いますが、いかがですか。
  63. 鈴木博

    ○鈴木(博)政府委員 ただいま先生の方からいただきました御意見は、今後の私ども作業に、御意見として十分、承っておきたいと存じます。
  64. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで石炭部長にお聞きしたいのですが、輸入炭と国内炭の調整問題ですけれども、今度の新政策には制度としてのせておくわけでしょう。のせておかないと、あなた方は困りますよ。われわれも非常に困る。その点は制度として調整ができるような仕組みにのせておかないと、非常に困難な問題が起こる。それは目に見えておる。国内の石炭を圧迫しないようにすると言ったって、そんなことは需要業界が私企業状態で、できるわけがない。ですから、ぜひ今度の法案の中に輸入炭と国内炭の調整の問題について法律的な制度をつくってもらいたい。その発動をいつするかは別です。それはそのときの経済情勢で、輸入炭の方がむしろ高い時期もあるでしょう。それはそのときの経済情勢でしょうが、いつでも、そういう機能が達成できるような仕組みにつくっておいてもらいたい、こういうように思うのですが、どうでしょうか。
  65. 高木俊介

    高木政府委員 いま電力用炭法で価格調整ができるということは申し上げたとおりでございまして、これを輸入炭まで合わせるか、あるいは輸入炭の将来の見通しが根底になるわけでございますが、私どもといたしましては、第一は輸入割り当てということ、これは通産省資源エネルギー庁でやっておるわけでございますので、国内炭に圧迫を及ぼさぬような輸入割り当てということで、一つはできるのじゃなかろうかという考え方を持っております。  なお別途、例のコールセンターという思想も出しておるわけでございますけれども、これは当然、輸入炭及び国内炭の貯炭的な思想になるわけでございます。高カロリーの輸入炭と国内の低カロリーの炭を混合いたしまして、それによって電力向けにできるとしますれば、むしろ国内資源の開発という点からも、大いに寄与するのではなかろうかという考えから、コールセンターの思想も出しておるわけでございまして、来年度はコールセンターの調査費ということでお願いをいたしておりますけれども、ぜひコールセンターの機能あるいは先ほどの価格調整の機能、あるいは別途また、これを法定しなくてはならなぬかどうかということも、あわせまして検討したいと思いますけれども、少なくとも国内炭に悪影響を及ぼさぬような形で、需要の不足する分は輸入炭で賄うのだという思想に立った上で、いろいろ検討さしていただきたいと考えております。
  66. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは制度をつくる当初にやっておかないと、後からやるということになると、需要業界として、安いのが入るのに、なぜ拒むか、結局こういうことになるのです。また、みずからがそういうことを言い出す鉱山も出てくるのです。メタルを見てごらんなさい。制度ができていないために、そして不景気のときには、その制度を何とかいかそうとするし、景気のいいときは黙っているし、どちらも困っているのです。ですから、率直に言いますと電力と炭鉱というのは戦後、長い、いがみ合いの歴史なんです。石炭がいいときは高炭価で売りつけている。粗悪炭を売っている。今度は石炭が悪くなって油が安くなると、買いたたかれて、どんどん、とめどなく値段が下がった。こういうように両方に不信感があるのです。ですから、そういうものを清算する意味においては、やはり制度として、ぴちっといまのうちに、最初のうちに、しておく必要があるのじゃないか、こういうふうに思って、これはひとつ、また機会がありましたら質問をいたしますが、法律をつくるときには、ぜひ、この制度ははっきり確立しておいていただきたいと思います。そのとき、そのときに絵をかこうとすると、利害関係が必ず出るのです。そのとき、やろうとすると、どっちかが損になるという勘定をするのです。ですから、その事態が起こって、ある側から必要である場合にはある側は必ず反対の利害関係になるのですよ。ですから、それは当初にぴちっと制度をつくっておかない以上、輸入炭は必ず国内炭を圧迫する結果になる。これははっきり言うことができますから、この点は十分、考慮しておいていただきたい、私はかように思います。もう一回、答弁を願いたい。
  67. 高木俊介

    高木政府委員 法案作成の段階におきまして、ただいま先生、御指摘の点を十分、考慮いたしまして、将来、禍根を残さぬような体系をつくりたいというふうに考えております。
  68. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働省にちょっとお尋ねします。  この前、労働大臣質問をしておったのですけれども、要するに炭鉱離職者手帳が切れるわけですね。就職が全然ないのです。いま大牟田で求人倍率が大体〇・二ぐらいだというのですね。筑豊は〇二どころでなくて、まだ〇・一へいかないのですね。いま全国で〇・五三ということでしょう。ましてや中高年齢者が多いのですね。現在、飯塚職業安定所管内で就職促進手当が支給されておる者が六百三十二名。ところが八六%が中高年という状態である。そして、そのうち三月までに約五百人の手帳が切れるのです。そして現実には、飯塚の職安で一ヵ月に一人か二人しか就職できない、こういう問題をどうするかですね。これはこの前、大臣に宿題に考えておきましょうということになっておるのですが、その後どういうように検討されたか、これをお聞かせ願いたい。  時間がありませんから引き続いて質問したいと思います。  各産炭地の市町村は財政が非常に窮迫しているのです。例の特別開就事業は本来、県ぐらいの広域的に扱うべきだと思うのだけれども、県は一つもやらないで全部、市町村にやらせておる。同じく財政は窮迫しておるけれども、市町村財政の窮迫と県の窮迫とは窮迫度が違うのです。それなのに特別開就事業を全部、市町村にやらせる。大体、言いますと、この七、八年ぐらい前は県が七ぐらいに市町村が三ぐらいでしたけれども、いまは逆になっておる。市町村の方が多い。そして県が少ない。県は、だんだん枠が少なくなれば少なくなるほど、自分の分だけ枠を減らして、市町村の分は、そのままにしておるのですよ。そうすると、市町村財政というものは、産炭地の場合は物すごく窮迫しておる。こういうことで特開返上などというのが出ているのですよ。ですから、これは困りますから、これはぜひ、ひとつ県単位にやってもらいたい。この二点をお聞かせ願いたい。
  69. 石井甲二

    ○石井政府委員 第一の点でございますが、確かに筑豊田川地区の問題につきましては、非常にむずかしい問題があることは、私どもも十分、知っております。それに対する対処の仕方といたしましては、この前、労働大臣が先生の御質問に答えたわけでございますが、一つは、やはり就職促進措置を安定所が全力を挙げるということを、まず第一の主眼としてやっております。したがいまして、いままでの経過を見ましても、そういう面での手帳が切れる方々を、手帳の切れる前に相当、就職をさせた実績がございます。そういう意味で、私どもは全力を挙げてこれをやってまいりたい。また実際問題としましても、炭鉱離職者の就職促進につきましては通達も出しましたし、それから、この前の全国の課長会議でも、この点を十分、周知徹底をした次第でございます。  それから第二の、特開事業を県でやるべきじゃないかという問題でございますが、実は、その特開事業が設定をされた、そもそものいきさつを考えてみますと、一つは四十六年の中高年法改正のときからのいきさつがあると私どもは考えております。それは、いわゆる失業対策事業という問題を中心に、これか展開されたわけでありますが、国としては今後の失業対策のあり方は、中高年手帳を含む就職促進措置を中心に、これをやっていこうという大きな姿勢の転化があったことは、先生、御承知のとおりだと思います。ただ、その場合に国会においても、いまの特開事業というものが、そのいきさつの中で発生したこともまた事実でございまして、ただ、その場合には、やはり全体の失業対策の大きな姿勢の転化の中における特開事業の位置づけというものは、また否定できないと思います。  したがいまして現在、私どもの考えております特開事業というのは、一つは臨時的、例外的にこれを行うという一つの位置づけをせざるを得ない。したがって、その要件につきましても、非常に限定された、あるいは臨時的な、そういうものであるべきでありまして、それがまた全体の、この前の中高年法の審議の際の結果からくる一つの性格だろうと思います。したがって、現実には失業者が非常に多い地域あるいは、その事業につきましても、開発可能性のある地域、しかも、それが結果において雇用量をそこで、もたらすような地域、そういうものを一つの対象にいたしておりまして、したがって最終の行政単位としては、きわめて地域的な限定されたものであるべきであろうと考えております。そういうことから、現在の私どもの考え方は、その地域の限定性からしましても、やはり行政単位としては市町村であるべきでありまして、その性格上、県が広範にやるというものとは、いささか性格が違うのではなかろうかという考え方を持っております。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 何とかして就職をさせることが第一だ、それはそうなんですよ。しかし、できないでしょう。そして全国の都道府県の労働部長等に言われたって意味ないのですよ。というのは、動けない人なんです、移動できない人。いままでは三年間もあるのですから、移動できる人は移動しています。要するに移動のできない人、そして中高年である、こういう条件で、いまごろ阪神なんかに行けるぐらいなら、とっくに行っていますよ。そこで就職の最もない地域をどうするか。しかもこの地域は、私もこの間、驚いたのですが、あなたの方の広域雇用保険の給付の指定地域は、直方であるとか田川であるとか水巻であるとか、もうすでに失業保険が終わっておるかと思ったら、また最近、広域の失業給付の多い地域に指定されている。いろいろ調べてみると、来た企業がまた、つぶれているわけですね。産炭地へ誘致した企業がまた、つぶれておる。ですから最近また新しい失業者が出ているでしょう。こういう地域ですから、全国でも二十とない今度の広域指定地域の中に入っている。こんなところで就職できっこないでしょう。ですから端的に言うならば、もう特開でも拡大をしてやる以外にないのですよ、この人たちには。それが一つ。ここで押し問答しておってもなんですから、端的にお答え願いたい。  それから県がやるというのは財政的な問題ですよ。ですから地域は、その地域の仕事でいいんです、そこの地域の労働者なんですから。県が主体でおやりください。そういう貧弱な市町村に土地を買収せいとかなんとか言われたって、財政、全然ないんです。皆、再建団体に入る一歩前なんですから、そこはひとつ御考慮願いたい。そうしなければ皆、返上などということになる。しかし失業者の方はそのまま残っておるわけです。自治体は返上しても失業者は残っておるわけなんですから、大変なことになりますよ。ですから、これは御考慮願いたい、この二点、もう一回、御答弁願いたい。
  71. 石井甲二

    ○石井政府委員 まず特開事業が、その地域の財政問題と非常に関連があるということは、事実問題として私ども十分、承知しております。その場合に、県に特開事業をやらせるかどうかという問題は、私がいま申し上げましたような特開事業そのものの性格からいって好ましくない。たとえば現在、緊就とか、そういう関連で事業をやっておりますが、これは県と市町村が両方やっております。ですから全体の財政問題という見地からするならば、そういった諸事業を含めたものとして、県がどう考えるかという問題を含めて、問題を考えるべきでございまして、ただ特開事業を直ちに県に移せという点につきましては、先ほど私が申し上げましたような、そもそものいきさつを含めた性格論からして、なかなか、そこまでいく性格のものではなかろうというふうに私どもは考えております。
  72. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は大体、特開というのは逆だと思うのだね。むしろ各市町村にその該当者は、わりあいに少ないが、少し広域的に見ると多いんですよ。ですから、こういうものこそ私は県がやるべきだと思うのですよ、これは落ちこぼれを拾うわけですから。それを自治体にやらしておるというのは大体、法の趣旨に反しておる。臨時的、例外的というなら、わかるのですよ。しかし、それを広域的に見るのはおかしいという理論は成り立たぬですよ。それは県が、その地域に重点的に施行すればいいわけです。ですから、あの財政の悪いところに、特開は全部、県がやらないで市町村にやれなんて、きわあて行政的には酷な行政ですよ。そして、ある町政は特開をやっておるが、隣の町村はやりたくても、それだけの余地がない、これなんかは幾らでもあるんです。ですから、それは県がやるのが本当ですよ、第一、特開というのは落ちこぼれを拾うのですから。それを市町村にやらしたのが、そもそもの間違い。ですから、これは逆なんです。まさに私の方から言えば、立法の経緯から言うと逆です。市町村に押しつけた。ですから、それはぜひ御検討願いたいと思うのです。きょうは、もう時間がないものですから、別の機会に別の場所で質問するかもしれません、これは何も石炭特会じゃありませんから。こんなおかしな行政はないですよ、行政のそもそもの発端からいって。守屋さん、何かしゃべりたいような顔をしておるけれども、時間がありませんから、この程度で終わりにしておきます。  それからもう一つ、鉱害の問題ですが、やはり財政を窮迫さしておるのは鉱害の自治体負担なんですよね。今度の碓井町のような場合は、閉山水道として二、三年前に完全に水道を布設した。ところが今度は道路を鉱害で上げなければならぬというので、道路を上げるわけです。そうすると地表から、たしか五メートル、何メートル以下は水道管が重圧に耐えないから認めないということで、せっかく二、三年前に布設したばかりなのに、道路を上げることによって、また水道管も上げなければならぬわけですよ。これは、いまの自治体の財政としては少し無理じゃないか。上水道は二、三年前に完成したわけですよ。ところが道路を上げる。その上げた分だけ今度また逆に管を上げなければならぬ。こういうものは、ひとつ何らか特別に考慮できないかどうか、これをひとつ御答弁を願って質問を終わりたいと思います。
  73. 高木俊介

    高木政府委員 地方公共団体の財政難が激しいという折で、いま先生の御指摘鉱害復旧費の負担というものに、大分いろいろ難儀しておられるということは十分、承知しておるところでございますけれども、現在の臨時石炭鉱害復旧法の関係法令では、その負担を免除するということは困難と考えられるわけでございます。いま先生、特定地域を挙げてお話しになったわけでございますけれども、もう少し現場の実態を検討さしていただきまして、できるだけ問題のないような方向で片づけたいというふうには考えておりますけれども、いま直ちに、その負担が軽減できるかどうかということは、ちょっと私、いまここでお答えできるような状態ではございません。なお今後、公共事業いわゆるたんぼの復旧あるいは家のかさ上げという点につきまして、十分、時期の調整というものも考えながら、やっていかなくちゃならぬのではなかろうかということを、いま感じたわけでございます。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ひとつ実情に沿うように、やってもらいたいと思うのですね。市町村としては、かなり財政的に無理をして上水道を引いたわけですからね。ですから、いわば次の道路という工事の付帯工事のような考え方を、ひとつ示していただきたい、かように思います。これで終わります。
  75. 田代文久

  76. 多田光雄

    多田委員 次官にちょっと伺いたいのですが、ことしの七月の石炭鉱業審議会の答申に基づいて、政府は新石炭政策の閣議決定を近くなさるというふうに伺っているわけです。この答申に対しては私ども共産党も強く反対しまして、同時に石炭産業というのはかくあるべきだ、石炭産業というのは国内石炭の問題ですから、そこをひとつ御了承願いたいのですが、かくあるべきだということを何度かにわたって政府にも提示してきたわけです。ところが、答申以来、半年そこそこですが、御存じのように重大事故が相次ぐということで、五十年度における二千万トン維持ということすらも困難になってきたというふうに御発表なさっておるわけですが、これも私ども、答申が出たときに、果たして、この体制で二千万トンが確保できるのかということを、何度も申し上げたのです。もちろん、私どもは二千万トン以上という、これには反対しております。もっと掘らなければならないという観点なんですが、それすらも、できるかと危ぶんでいたのですが、まあ不幸にして、そういう状況になってきたわけですね。  こうした現実に突き当たって、この間の十二月十日の当委員会で河本通産大臣が、保安の問題に関連してですが、二千万トンは目安であって、こだわらない、こういう意味のことを御答弁なさったわけですが、これはむしろ政府として、二千万トン以上という、このいわば新石炭政策の大黒柱の一つなんですが、これが破綻したということを別の角度から認めたことではないのかなと私は考えておるのです。しかも重大なことは、政府は、前から二千万トンというのは下限である、そして従来の縮小路線を転換するのだ、ここにいわば新石炭政策の変化があるのだということを言ってきたわけですが、仮に保安確保を口実にしたとしても、二千万トンにこだわらないという御発言、これはやはり政府石炭政策、ある意味ではエネルギー政策と言ってもいいと思うのですが、これの変更を意味するのではないのかと私は考えているわけです。  同時に、私どもが重大視することは、こういう姿勢が、どういう表現、言葉をお使いになろうとも、いままで輸入石油に依存してきて、日本のエネルギー供給構造は非常に破行的になっている、そして一方、貴重な国内資源をいわば放棄していった、そういう対外依存のエネルギー政策、そういう供給構造というものが変化してない。変化してないどころか、後で申し上げますが、原子力の問題を見ても、輸入天然ガスの問題を見ても、今度は一般炭の輸入の窓口も大きく開いていくという点から言えば、そういう方向へ、むしろさらに一歩深入りしていくのではないかというふうに不安を感ずるわけです。これは非常にエネルギー政策の根幹にかかわる問題だと私は思うのです。  そこで、二千万トンにこだわらずという大臣の御答弁は、国内炭生産の下限を引き下げる、あるいは引き下げてもよろしいというふうにお考えになっているのか、そういうことを意味しているのか。それともやはり二千万トン以上掘っていくのだという意味なのか。そこのところをひとつ御答弁願いたいと思うのです。
  77. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 御承知のように昨年のオイルショック以来、国内に生産される石炭の見直しというものがいろいろ議論され、新石炭政策の基本になって、それがたびたび、この委員会でも二千万トン生産ということになったのですけれども大臣答弁は、基本的な通産省の新石炭政策を変更するとかいう意味では全くありませんで、先ほども議論になったのですけれども、人間の生命は自然よりもとうとい、保安優先か生産優先かという議論が行われた場合、今日の社会常識では当然に人間優先、保安優先ということで、人命を損なわない、労働者の基本的な職場を守ってやりながら、なおかつ、これは生産とか合理化とか考えていくわけですから、大臣答弁した意味は、二千万トンを何が何でも実現するために、すべてに優先してやるというようなことになれば、戦前に増産、増産のために余り勤労者の命も考えなかったというようなことに逆行するので、そういうことではなくて、保安優先、生命優先で、二千万トンにこだわって、そういうことをおろそかにするようなことはないという意味答弁であります。
  78. 多田光雄

    多田委員 そういうこともわからぬわけではないのです。ただ、そこが非常に私、大事なところだと思うのですね。大臣は、あのときの御答弁では、そういういま次官が御発言をなさったようなことを言いながら、同時に、石炭資源というものは世界的に見ると油の何層倍もあるのだ。石炭は、そういう国際的な視野でも見ていかなくちゃならないということで、一般炭の輸入、外炭の輸入も是認するという発言との絡み合いも一つはあるのです。  しかし、同時に大事なことは、これは四十八年の四月六日ですが、当時の中曾根通産大臣が、やはりこの委員会石炭政策について、こう言っているのですね。「現実にいままでやってきた政策が破綻していることは事実でありまして、」破綻という言葉を使っておるのですよ。「これはもうわれわれもかぶとを脱がざるを得ぬ現実であります。」そうしてその後に、これは予算委員会質問でしたね。これはわが党の中島議員の質問に対して答えているのですが、「国内産の石炭に依存する部分をできるだけ多くしたいというのが、通産当局の念願でもあるわけであります。」こういうふうに御答弁なさって、これに類した発言は、やはりそのときの田中総理も御発言なさっているわけですね。大臣がかわっても、政策継承の原則があるわけですから、そういう意味で国内石炭というものをもっと重視していくというふうに、だれでも考えたと思うのです。もちろん、これは繰り返し私ここでも言っているのですが、今日のエネルギー状況が、一体、国内石炭だけで半分も賄うとか七割も賄えるなどということは、だれも考えているわけじゃありません。しかし、石油パニックの教えた重大な教訓というものは安定供給なんだ。この中身は大分、違うのですが、やはり自国産のエネルギーにできるだけ立脚していくということが、だれでも、為政者にこだわらず、常識で考えられる問題だと思うのです。  しかし、残念ながら二千万トン以上ということなんですが、私は、もしこの精神を貫くとするならば、二千万トン以上どうしても掘るのだ、そのために保安をきちんとするのだという姿勢と、保安が優先だから二千万トン崩れてもやむを得ないという、言葉の違いは別として、これは私、根本的に違うと思う。違うと思います。だから、その結果どうなるかというと、前は経済性で石炭を投げた、つまり、これは中曽恨通産大臣も、余り経済性を優先し過ぎて失敗したと言っているんですから。ところが今度は、経済性は投げたわけじゃないけれども保安が大事だ、保安優先には二千万トン以下もあり得る。そうじゃなくて、本当に国内資源を大事にしていくのであれば、保安を大事にするのであるならば、二千万トン以上という国策上のこの問題をやるためにも、徹底して保安をやるのだ、これこそが私はエネルギーに対する正しい態度だと思う。  ところが案に相違して、この六月に私に御約束になった五十年度中に保安法の抜本改正についても、中央鉱山保安協議会の検討によって法の改正を考えるというふうに非常に後退してきている。このことは、保安の問題でも本気になってやる気があるのか。二千万トン以上ということについても、真剣になって一体やる気があるのかどうなのか。なぜなら、保安と生産とは全く車の両輪です。両方とも後退しているんです。ここに私ども政策の変更ではないかという疑念を持つのは、これはだれでもそうだろうと思う。そういう意味本当に、もし二千万トン以上お掘りになるのであれば、深部の開発を含めた研究体制、それから、いま金の卵と言われている炭鉱労働者の命を守っていく保安体制をしっかりしていく、それに政府が一定の力を込めていくということは、これは当然、常識の論理として出てくる問題だと思うのですが、これはどうでしょうか。
  79. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 いまの多田先生のお話のとおりでありまして、これは生産も大事ですし、保安も大事でありますが、ただ、どちらが優先するかという場合、今日の社会通念といいますか、今日の社会常識の中では、生命、保安優先というものが今日の常識になっております。  そこで私は、長期的な展望に立って考える場合と、いま当面のことでお話しする場合で若干ニュアンスが違って、その点が多少、誤解されるような受け取り方になったと思うのですが、長期的な展望に立った場合、これはわが国のエネルギー資源の中の貴重な石炭でありますから、できるだけエネルギー資源の自給率を国内で、たとえ一%でも二%でも高めるという意味、オイルショックの教訓ということの中で、この石炭の生産を向上させる重要性は言うまでもなく、そこに新石炭政策もできておるのでありますが、その第一歩として、来年度二千万トンという目標を定めたのであります。  ところが、この後、頻発する石炭事故、私も、この前の北海道事故現場へ行って、私など素人ですが、地下千メーターというところで石炭を掘っていることの非常な困難さを、目の当たりに見てまいりましたが、そういう点になりますと、保安の問題にしても、これは学問的に、あるいは技術的に今後、研究しなければならない。保安を確実にして、しかも生産を高めていくというためには今後、研究すべきことがいっぱいありますから、学問的に、あるいは技術的に必要な問題を、六ヵ月以内にやれとか一年以内にやれというタイムリミットということにも問題がありますので、ただ来年、二千万トンに目標を定めたから、何が何でもこれは実現させなければならないのだということになると、どうしても生産優先ということに傾きやすいので、そういう意味では、長期的には、いま多田先生のおっしゃるとおり、保安と生産は車の両輪のごとく進んでいくべきもので、保安を強化して生産を増大するということが、われわれの石炭政策の根幹であろうと思いますが、ただ来年というふうにタイムリミットで考えた場合は、やはり余りにも二千万トンにこだわり過ぎて、保安上いろいろなロスが起こってはいけないという意味大臣答弁だろうと私は解釈いたしております。
  80. 多田光雄

    多田委員 くどいようですけれども、そうしますと二千万トン以上という方針は変わってないということ。それからもう一つは保安。きょうは私は保安の問題は重点ではございませんが、では保安も重視するということでございますね。
  81. 高木俊介

    高木政府委員 はい。
  82. 多田光雄

    多田委員 それでは次に伺います。  これも通産省ですが、昭和六十年を目標とする長期エネルギー計画の中で、国内炭、輸入炭の数量、これは五十五年と六十年度の数字を出していましたが、数量とエネルギー総需要量に占める構成比、そして最後に輸入一般炭の数量は幾らか、これをもう一度ひとつ述べてください。
  83. 高木俊介

    高木政府委員 総合エネルギー調査会の答申になります将来のエネルギーの見込みでございますけれども、ただいま先生、御指摘の五十五年度、六十年度を申し上げますと、石炭では国内炭を二千万トンというふうに見ております。これは五十五年度、六十年度ともに二千万トンでございまして、そのときの総エネルギーは、一次エネルギーで石油換算でございますが、五十五年度が五億六千万キロ、六十年度が七億六千万キロというふうな数字になっておりまして、国内炭の二千万トンは構成比としましては、五十五年度、二・五%でございます。それから六十年度が一・九%というような比率になっております。  それからなお、輸入炭でございますけれども、五十五年度は九千二百万トンを一応、想定いたしておりまして、そのうち一般炭といたしましては四百七十万トンということで、構成比は一三・四%になっております。六十年度は一億二百四十万トンでございまして、うち一般炭は千四百六十万トンというような数字でございまして、一一・二%というのが総合エネルギー調査会で最終的に決まりましたエネルギーの構成比でございます。
  84. 多田光雄

    多田委員 次に伺いますが、民間ベースによる海外炭開発の資本投資の実態を、政府はつかんでいるのではないかと思うのですが、それを述べていただきたいと思うのです。これは現地合弁も含めて海外炭開発の資本投資の現状、その額は幾らなのか、それから国別でどうなのか、これをひとつお願いします。
  85. 高木俊介

    高木政府委員 海外炭の輸入には、投融資による輸入と単純買鉱と両方あるわけでございますけれども、一九七三年の例をとって申し上げますと、投融資による輸入量は千五百四万トンというような数字になっておりまして、単純買鉱による輸入量が四千百八十三万トンというような数字になっております。比率で申し上げますと、投融資による方が二六・五%、単純買鉱による方が七三・五%というような数字になっております。これはちょっと資料が古くて申しわけございませんけれども、七三年のデータでございます。  それに要しました、いわゆる投融資関係の金でございますけれども、現在までこれは七四年度までの海外炭開発輸入に対します政府金融機関の、これは全部、輸出入銀行でございますけれども、融資額は約五百億でございます。なお、開銀融資比率が七〇%程度でございますので、残り三〇%の二百十億というものについては、自己資金あるいは民間金融機関による調達というふうになっております。  なお国別にというあれでございますけれども、一、二の例を申し上げますと、資本参加いたしました例といたしまして、たとえば豪州のモーラ炭鉱でございますけれども、これは三井物産が参加いたしておりまして、これに日本側の出資といたしましては三億二千万円の金を出しているような状態でございます。なお、同じく豪州でございますけれども、三菱商事の方で五億四千万を出してグーニエラピークタウンズという炭鉱を開発いたしております。  それから融資買鉱でございますけれども、これにはトーメン、日商、東京貿易、安宅、新日鉄その他が数カ所、海外で実施いたしておりまして、こういう数量が、先ほど申し上げました約六千万トンの輸入ということになっておるわけでございます。
  86. 多田光雄

    多田委員 これは聞くと、いま言った海外炭開発に対する政府関係金融機関の融資は、四十七年以前は少額ですけれども、四十八年にぐっとふえて、四十九年、いま部長は言わなかったけれども、千百億、これは私の聞いたところです。
  87. 高木俊介

    高木政府委員 先生の御指摘の数字は、ちょっといま持ち合わせておりません。
  88. 多田光雄

    多田委員 五十年はちょっとわからぬけれども、四十八年から急激に、これがふえてきているんです。  なお聞きますが、一般炭の海外開発について六十年度に千五百万トン。正確には千四百六十万トンの輸入の計画を立てているけれども、この炭鉱開発資金の必要額を幾らぐらいに、政府の方は試算しておりますか。
  89. 高木俊介

    高木政府委員 開発関係の資料、ここに、ちょっと持ってきておりませんので、いま申し上げられませんけれども、私どもが千五百万トンぐらいの輸入ができるということで、あれいたしましたのは、いま海外で商社関係がいろいろ手をつけているところ、あるいは、うちで独自にいろいろ調べましたところ等の炭量あるいは将来性というものから、もう少し数量は多いのでございますけれども、一応、需要血から見まして、将来、石炭火力発電所をつくっていただくという点からいけば、それに見合う千五百万トン近い炭は輸入できるであろうという数字が、答申の中にも入っておるのでございまして、また、いま千五百万トンの数量は確実に入ってくるという手を打っているわけでもございませんし、今後、政策との見合いで海外開発の持っていき方ということも、研究しなくちゃならない問題だというふうに考えております。
  90. 多田光雄

    多田委員 これは資源エネルギー庁が四十九年六月十日に出した内部の試算、石炭について出したのを見ると、開発に約二千億、その他、石炭専用船十三隻のうち半分を自国船として、建造費約五百億というふうな試算をしておられるのですよ。これは政務次官にも聞いていただきたいのですが、一般炭輸入のために、これはまだ試算ですが、しかし、これだけの案を立てておられる。なぜ日本の国内の一般炭を掘ろうとなさらないのか。問題はここなんですよ。これは、この委員会でも、ずいぶんやったことがあるのです。もちろん、これによってすぐ何千万トンというのは無理でしょう。しかし、本当に日本の国内資源を大事にしていくというのであれば、それこそ経済性を無視せよとは私は言わないけれども、やはり国内石炭をできるだけ掘っていくという姿勢が私、非常に大事だと思うのです。このことがやはり抜けているのですよ。  そこで私、さらに伺いますけれども、この国内炭の位置づけがこういう位置づけなんです。これは、ことしの七月十二日の総合エネルギー調査会の需給部会の専門委員会で出した「長期エネルギー需給計画について」という中にこう書いてあるので玉国内炭については、保安・公鉱害問題、限界コストの上昇等の制約条件下で、可能な限り生産を維持することとするが、これにより、海外炭開発を円滑に進めるための生産・技術の維持向上にも寄与し、また、将来のガス化、液化等の利用技術の開発の進展に対処することができ、」こう書いているのですが、本当に日本の資源を重視するという立場が、私は欠除していると思うのです。何か対外的な一つの安全弁と見る。これはずっとそうなんです、エネ調などの報告を見てみても。本格的に日本の石炭を見直していくという姿勢が欠けているのじゃないか。政務次官、首をかしげておられるけれども、それがやはり国内炭を見捨てていくというか、放棄するというか、そういう問題があると思います。それはもう少し私、聞きます。  これは通産省に聞きますがね、政府のエネルギー政策を見る上で、やはり五十一年度の石炭石油特別会計の概算要求、これは、いま概算要求の段階ですから、もちろんコンクリートなものではありませんけれども、私は、ここに非常に鮮明に出ていると思うのですよ。これによりますと特別会計の要求額は、本年度千五百七十八億円に対して六一・九%増の二千五百四十六億、非常に大幅に伸びた要求をされているわけですね。その伸びた部分は何かと言えば、自然増程度の石炭勘定じゃないのです。これは御存じのとおり石油勘定なんですね。その伸び率は本年度の四百七十九億円から千三百二十億円と、二七五%という、予算の伸び率から見ても異常な伸び方をしているわけですね。この原資というのは御存じのとおり原重油の関税収入ということになるわけですね。そこで、これは通産省に伺いますが、本年の関税収入は幾らを見積もっているのですか。
  91. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 本年度、関税収入の見込みといたしましては、千四百十三億円の見込みでございます。
  92. 多田光雄

    多田委員 そうしますと、それに余剰金その他を入れまして、来年度の石炭石油特別会計は幾らになりますか。来年度の石油関税の収入見込みです。
  93. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げました数字は本年度の数字でございますが、五十一年度の原重油関税収入は、千三百五十五億円でございまして、余剰金の見込みが四十九億円であります。したがいまして、トータルいたしますと千四百四億、こういう数字が見込まれております。
  94. 多田光雄

    多田委員 そうしますと、石炭特別会計のこの二千五百四十六億に比して、これは千百四十二億不足ということになるわけですね。この不足分は概算要求の中での予算総額のまさに四五%、大変、大きな不足額になって、これは政府の赤字公債二五%をはるかに上回る大きなものになるのだけれども、この歳入不足を何によって補う予定でいますか。
  95. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先生、御指摘のございました概算要求と歳入の差額、私どもの計算では約千百九十三億になります。若干、違っておりますが、おおむね千二百億弱の歳入ギャップといいますか、歳出規模と歳入規模のギャップがございまして、概算要求の当時、当初は私ども資金運用部資金からの借り入れということで要望したわけでございますけれども、最近、全部、資金運用部資金からの借り入れというわけにもまいらぬという事態に立ち至りまして、現在、原重油関税の引き上げを含めまして、総合的に財政当局と折衝中でございます。
  96. 多田光雄

    多田委員 これは大蔵に伺いますけれども、来年度の予算の伸び率は一三%程度というようなことも伺っているわけですが、この通産省の要求に対して、どういう方針で対処しているのか、これ、ひとつ伺いたいと思います。関税率審議会でどういう結論が出るか、これにもよるだろうと思いますけれども、ちょっと伺っておきたいと思います。
  97. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 ただいま御指摘の点でございますが、御案内のとおり現在、五十一年度予算の編成作業の過程、真っ最中でございまして、この件に限りませず来年度の具体的な予算措置の問題について、本日の段階で、きちんとした御説明を申し上げられないということを、あらかじめ御了承を賜りたいわけでございますが、そこで来年度の石炭石油対策特会の財政の規模あるいは財源の方針を一体どう考えるかという問題でございますけれども、ただいまの御指摘にございましたように、この特別会計の固有の財源と申しますのは、原重油関税の収入でございまして、この収入をどう見積もるかによって、事柄の様相は大幅に変わってまいるわけでございますね。したがいまして、その来年度の関税収入、これは定率の改定も含めまして、その動向いかんによって、さまが変わってまいりますので、きょうの時点で、具体的にどういう編成方針で臨むかということを、まだ御説明できる段階ではないということを御了承を賜りたいと思います。
  98. 多田光雄

    多田委員 そうすると、それはいつ結論が出ますか。
  99. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 関税局で所管しております関税率審議会の御審議、御答申の状況を待ちませんと、いつの時点で、それがはっきりするのかということは、これまた、きょうの時点で申し上げられる段階ではないということでございます。
  100. 多田光雄

    多田委員 新聞報道なんかを見ますと、こういう原重油関税、これは諸外国に例がないという理由を挙げられたり、あるいは物価対策上の問題だとか、あるいはガソリン税の来年度の引き上げの上に、さらにこの関税引き上げは、大きな影響を与えるというような幾つかの理由などが、大蔵筋の声として出ているわけですが、いずれにしても、これだけの関税を上げるということも、これは大変なことだろうということは、いま、おっしゃっているとおりだ、こういうように思うのです。あるいはまた、資金運用部からも、これはえらいことだろうというふうに思うのですね。それで、こういう関税の面から見ても、資金運用部から見ても、非常に大変な状況だということは、通産は十分お考えになって出されたものというように思いますが、この見通しについてどうですか。
  101. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 ただいま先生、御指摘のとおり、こういう経済情勢の中で関税を上げるという問題、これは大変な問題だということは私ども承知をいたしております。それから、現在わが国の置かれております財政事情、これもよくわかっておるわけでございますが、先ほど来、御議論のございました総合エネルギー対策という立場を踏まえまして、長期的な観点に立ちまして、このエネルギー政策を推進していくということになりますと、どうしても、ここでエネルギー対策を少しでも後退するというわけにはまいらぬということがございまして、冒頭、申し上げましたように私どもといたしましては、やや長期的にこの資金を運用するという観点から、三年計画ぐらいで資金運用部の借り入れを期待したわけでございますが、ただ、この石炭石油特別会計は、御承知のとおり原重油関税だけで賄われておるという状況でございますので、この借り入れをいたしましても、返済のめどがないものに対しては、なかなか金を貸すというメカニズムも確立されておりませんので、まことに私どもとしては、やむを得ないと思います関税引き上げに踏み切ったわけでございまして、先ほど申し上げましたように、現在の石油産業の未曾有の不況と、それから、これはひいては物価等へも反映することがございますけれども、エネルギー対策を推進していくという立場から、この面につきましては踏み切りをしたという次第でございます。
  102. 多田光雄

    多田委員 余り、しっかりとした財源対策の見通しがないままに、あえて石炭石油勘定の中に押し込んだわけですけれども、そうして入れた石油勘定の大幅増の内容を見てみますと、これも概算要求ですが、石油開発の探鉱投融資、これを中心とした石油資源対策費が一番、大きい。それから石油備蓄対策費、それから石油産業構造改善費、例の業界再編成というのが大宗を占めているようですが、その中でも探鉱投融資、これが石油資源対策費の千百九十二億円の中の八百億ですか、これは大半、八〇%以上占めているわけですが、この探鉱投融資というのは一体どういう投融資ですか。
  103. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 探鉱投融資の資金は、主として石油開発公団に対する出資でございまして、日本の石油開発企業が海外及び日本周辺の大陸だなにおきまして石油開発をする際に、油を探す探鉱段階における融資でございます。それから一部は、現地ですでに開発されました外国の石油会社と合弁で探鉱を継続するというようなケースもございますが、それが出資でございまして、先ほど申し上げましたのは、日本企業が単独で、また部分的には合弁でやる場合もございますけれども、主として探鉱事業をやるものに対しまする融資、出資、この二つの機能でございます。
  104. 多田光雄

    多田委員 そこでさらに伺いますが、この石油開発公団が探鉱、開発の投融資の対象にした件数は何件あって、公団投融資の総計は幾らになりますか。
  105. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 現在、数字を持ち合わせておりませんので、若干、記憶で申し上げまして、後ほど詳細の数字をお出しいたしたいと思いますが、これまで約四十一件の投資があったと私は記憶いたしております。  それから公団投資につきましては、これは話が持ち込まれた件数と実際に融資をする件数というのは非常にギャップがございまして、つまり公団関係の話は、なかなか実際に調べてみますと、本当に融資あるいは投資をする価値があるのかどうか、その辺がわかりにくいという問題もございまして、慎重に検討をした結果、申し込みのあった数字と実際に投融資を行った数字には相当ギャップがあるということでございまして、その数字は、いま、ちょっと手元にございませんので、後ほど資料として提出いたしたいと思います。
  106. 多田光雄

    多田委員 これは私の聞いたのでは、公団の業務概要を見ますと四十件ということで、これは五十年度九月まで探鉱投融資四千億の中で千九百五十億という数字が出ているのですね。そのほかに開発資金も入れますと、恐らく二千億を超える金額になるだろう、こう思うのです。  そこで、この投融資の対象になった四十件の中で、外国石油会社との合弁なり提携の関係のあるものは何件ありますか。
  107. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 資料を持ち合わせておりませんので、正確にはお答えできませんが、大部分は日本の企業だというふうに思っております。
  108. 多田光雄

    多田委員 私の聞いたのでは三十件ですよ。四十件の中で三十件が外資との提携だというふうに聞いているのです。
  109. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 この数字は二通りございまして、外国系の企業と操業する場合に、オペレーターといいまして、日本企業が直接、探鉱に従事するケースと、それから資金だけを投入いたしまして、オペレーションを外国系の企業にお任せするというケースと二つございますので、いま先生の御指摘の数字は、その後者の方を御指摘になったのではないかというふうに思います。
  110. 多田光雄

    多田委員 これは出光から出た資料を私は見せてもらったのだけれども、大低の提携の企業というのは、巨大な国際石油資本のメジャーもしくは、その急のかかった企業というのが全部です。ここに数字から何から出ているわけなんだけれども、これは私、時間を長々とやりましたのは、日本の石油資本もそうですか、すべてとは言いませんけれども、その大きなところ、これはメジャーにかなり押さえられて、この国会でもずいぶん問題になったところですよ。そしてまた、いま石油を求めて海外投資もやっていく。そこも、ずっとしさいに資料を見ますと、かなり要所、要所というか、あるいは重要なところはメジャーとの提携とか、あるいはそういった系列の企業との提携、これがもう圧倒的なんですよ。ですから、その限りにおいて石油を仮に海外開発して入れてみても、日本の政府なり民間の投資をしてみても、やはりそういう国際石油資本の自心がかかってきておる。基本的にこの枠から出られない。そういう中身になっておると私は思う。だから、そこに日本のエネルギーの一つの危機の問題がやっぱりあるだろう、こう私は思うのです。そこへ持ってきて、いままで一般炭は入れてなかったけれども、今度は一般炭もやるのだ。そのためには、先ほど言った通産省の試算だけれども二千億を投下するんだ。船も半分ぐらいつくれば五百億も投下する、これはもっとかかるでしょう。そういうふうになっていくわけですね。つまり国内エネルギー資源を本格的に大事にしていくという姿勢ではなくして、安直に外に向かっていく、こういうエネルギーに対する根本姿勢というものが変わってないから、石炭にもそういう傾向が出てくるのじゃないか。この方向はいささかも変わってないのですよ。まあ備蓄の問題だとか業界再編成の問題が言われておりますけれども、備蓄だって、いまさらキッシンジャー構想に乗ったように見られておるし、業界再編成の問題だって、本当に和製メジャーをつくるのだったら、国際石油資本に対して、もっと厳しい規制をしなければ、私は本当に和製メジャーができるものかどうなのか、これは疑問なんです。そういう点から、このエネルギーの根本問題を見る必要があるだろうということで、先ほど来、石炭の問題に関連して私は伺っているわけなんです。  そこで、もう少し聞きますが、石炭特別会計に石油を押し込んできた。この石炭特別会計というのは四十二年にできて、当初、石炭だったわけですよ。それに石油が入り込んできた。当初は関税の十二分の十が石炭だ。これは四十七年、四十八年そうです。ところが、それが変わって今度は千分の六百八十七ですか、というふうに石油の方に比重かかかっていく。さらに今度の五十一年度の概算要求を見ますと、これは逆転してしまっておるわけですね。つまり予算の中には本当に日本の国内資源を大事にしていくという姿勢があるのだろうかという疑問を持つのは、これは私だけじゃないと思うのです。  そこで私、これはひとつ通産政務次官にお願いをしたいのですが、こういう無理をなさらないで、本当に石炭を見直していくというならば、重油の関税の来年の分の十二分の十を、もし石炭がもらうならば、五十一年の概算要求の中で、石炭の二百何億の借入金は要らないのですよ、やっていけるわけですね。私は、石油勘定を別にするとか、あるいは、そうでなければ重油関税の十二分の十という姿勢を復活していくかどうか。ここが、予算の上でも本当政府が日本の国内資源、民族資源を大事にしていくという姿勢なのかどうなのか、これか問われている問題だと思うのですが、こういう点で、ひとつ御検討なさるようなことはできませんか。
  111. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 いまお話がありましたが、石炭の国内資源としての重要性は言うまでもありませんが、同時に石油も、これは御承知のように一昨年のあのオイルショックで、一億の国民の生活が、まるで、るつぼの中で煮られるような騒ぎをしたわけですから、しかも日本は石油を世界で一番、必要とする国で、しかも、ほとんど国内で石油を生産できないという、これは一つの日本の悲劇的な宿命とも言うべきもので、海外よりの石油の安定確保というのも、これまた、きわめて重要な問題でありますから、その中でどっちが多くなったからという議論はむずかしいだろうと思います。石油の備蓄あるいは海外よりの石油確保のための探鉱事業、開発事業、これもきわめて重要であり、また国内資源としての石炭の見直し政策というものも、きわめて重要なのであって、それが、いずれにどうというようなお答えはいま困難でありますが、多田先生のおっしゃられる意味は、国内資源の石炭について、もっと予算を拡大するように努力しよう、あるいは、もっと力を入れようというような意味だろうと思うので、そういう御趣旨は十分に尊重していきたいと思います。
  112. 多田光雄

    多田委員 しかし現実に、この幌内炭鉱事故をめぐる問題だとか、その前の万字炭砿の問題だとか、保安に絡む出炭減、それに対する政府の取り組みの姿勢を見ていて、私はもう手のひらを見るようにわかるような気がするのですよ。政務次官も、まだまだ、これから政治活動をされていくわけですけれども、あの石油パニックの教訓の最大の問題はそこだったというように私は思うのです。ですから過去の高度経済成長期につくられた日本のエネルギー資源の供給構造の、さっき私は跛行的と言いましたけれども、跛行的であると同時に脆弱性ですよ、これは。こういうものをもっと見ていく必要がある。  その脆弱性の理由として私はちょっと申し上げたいのですが、一つは、やはり最大の要因は、国産エネルギー資源の切り捨て、ここにあると思うのです。現実にほかの国では、まだ石炭が電力の半分も占めているというところがざらにあるわけなんですよ。こう言いますと、日本の国の自然条件が悪いなんてよく言うのですよ。まさに、その自然条件を克服していく科学的な努力こそが、民族的な科学をつくっていくことにもなるのですよ。そういう要因が一つある。それから要因の二番目としては余りにも輸入石油に依存し過ぎてしまった、そこに跛行的なもの、脆弱性ができてきているわけですね。確かに、これから七年間に一〇%ぐらい石油を減らすというふうな計画もあります。計画どおりにいったとしても一体どうなのか。たとえば天然ガス、これはカナダその他から入れるわけでございましょう。原子力も原料から機械まで、これは輸入でございましょう。どこに一体、民族的なエネルギーの自立という方向があるのか。しかも原子力発電所だって、これはなかなか立地条件でむずかしい問題を持っている。あるいはカナダの天然ガスだって、現地では環境問題で大騒ぎしている。こういう問題があるのですよ。それからもう一つ、脆弱性の要因として私が挙げますのは、六七年のエネ調の答申によって、安定確保の最大の手段としての自主開発原油、これが出てきたのですが、これもうまくいっていないのです。それから、もう一つ挙げますが、天然ガス、原子力の、総合エネ調で出したあの計画でいけば、石炭二千万トンでしょう。さっき言ったように総体として自給率は減っていく。かえって準国産という原子力を含めますと、海外依存ははるかに大きくなっていくのですよ。こういう意味で、私は本当のエネルギーの基本姿勢というものは、これは変わっていないというように思うのです。  ですから、私ども本当に五十年、六十年という日本の国の展望を考えてみれば、国内石炭、いま、これは一つの最大のものでしょう、これをできるだけ掘っていくということが大事だと思うのです。これをこの間、私、伺いましたら、ヨーロッパでも非常に自国資源を大事にする。たとえば東欧なんかに行くというと、日本ではもう使いものにならないような泥炭までを、いろんな工夫をこらして使っていっているという努力の話も聞きましたけれども、資源が乏しいというふうに言うのであれば、まさにそういう努力こそが、一つ大事なことではないのかというふうに思って、これを主張しています。ですから、私の言う先ほどの十二分の十という数字というのは、予算の上で、そういう姿勢を政府が示されるかどうかの一つの見どころだというように私は思って、そのことをやっているわけなんですけれども、ところが通産の概算要求を見ますと、逆に一層それがひどくなっていくという方向なんですよ。これはひとつ、この辺でとめておきたいと思います。  そこで、さらに通産省に伺いますが、来年の概算要求で、保安対策にどれだけのお金を出す予定ですか。
  113. 蓼沼美夫

    蓼沼説明員 保安対策といたしまして、鉱山保安技術対策委託費というのがございますが、五十年度におきましては五千二百七十五万という数字になっております。
  114. 多田光雄

    多田委員 その他の項目の中に鉱山保安技術対策調査費というのが入っていますね。これは四十年に開始されたのだけれども、十年間に総計、幾ら出ていますか。
  115. 蓼沼美夫

    蓼沼説明員 四十年度から五十年度までの数字でございますが、ただいま集計の数字を手持ちにしておりませんが、四十年度が三百四万七千円、五十年度が五千二百七十五万八千円、こういう数字になっております。
  116. 多田光雄

    多田委員 いやいや、十年間に幾ら出ているのかと聞いているのです。
  117. 蓼沼美夫

    蓼沼説明員 ただいま集計してお答え申し上げます。
  118. 多田光雄

    多田委員 保安の最大の問題は深部の問題だというふうに言われているわけですけれども政務次官、わずか、この程度なんですよ。私、調べてみたら、十年間に出ているのが二億五千万です。そして深部について言えば、事故が起きると、むずかしい、むずかしいとなるのです。そこで、こういう項目こそ、ふやす必要があるのじゃないか。しかも、これは石炭技研で、きのう聞いてみたら、保安研究室には二名しかおらぬのですね。その二名でもって、あっちに研究を委託したり何かやっているわけですよ。だから保安を重視しますと言っても、こういう姿では本当保安を重視するということを、私ども頭から信ずるわけにいかぬのです。だから、保安対策の問題で、たとえば研究機関をつくれとか、いろいろなことを主張しておりますけれども、さっぱり政府の方から、それに対して確とした御返事もない、こういう状況なんですね。  そこで政府に伺いますが、一次、二次、三次の債務肩がわりは総計、幾らになって、残高、幾らありますか。
  119. 高木俊介

    高木政府委員 肩がわりは一次、二次、三次とございまして、一次は元利補給金という形で債務肩がわりをやっておるわけでございまして、これは当初契約が、元本が一千億、利子が四百一億五千七百万円という契約をやったわけでございます。  それから、第二次の債務肩がわりでございますけれども、これは再建交付金という形で契約いたしておりまして、元本で八百五十億円で、利子が百九十八億七千万、合計一千四十八億七千万というのが契約でございます。  第三次の肩がわりは、これは同じく再建交付金という形で実施いたしておりますけれども、契約は元本が六百四十四億七千五百万、利子が四十億四千百万円、計六百八十五億一千六百万円で、合計いたしますと、一次、二次、三次の肩がわりの当初契約が元本で二千四百九十四億七千五百万、利子分が六百四十億六千八百万、合計三千百三十五億四千三百万というふうになっておりまして、五十年度末までの既交付額といたしまして、これは一次、二次、三次の合計でございますけれども、元本が千十億七千七百万円でございまして、利子分が四百五十二億六千四百万、合計千四百六十三億四千百万円というふうになっております。
  120. 多田光雄

    多田委員 これは政務次官、一次、二次、三次の肩がわりですけれども、銀行に真っすぐいっちゃうのです。いま国民経済のこういう不況の中で、本当にそういう立場からいっても、銀行に対する元利の補給の問題、全部なくすると言わなくても、つまり一定部分、それをともかく押さえておいても、こういう保安の問題の方に金を回していくということが、予算の上でも非常に大事なことじゃないか。それは計画どおりきちんと払っていきます。ところが、保安は大事でございますと言っても、深部開発には余り金はいっていない、後でまた申し上げますけれども。だから、そういう意味で、そういう銀行筋にいく元利肩がわりについては、仮に半分なら半分、ことし削っても、こっちの方へ持っていくというような思い切った処置を、今度の予算編成でとってもらえないのかどうなのか。それこそが本当に石炭を見直していき、次官も言っておられる地球より重い命を守っていくという意味で大事だと思うのですが、どうでしょうか。
  121. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 おっしゃる意味は理解するのでありますけれども、予算は全体のバランスの中でつくっていきますから、それぞれの立場で予算が全部どこでも十分だというなら結構なんですけれども、私ども、たびたび予算編成に遭遇しておりますと、どの部分も、もう少しほしい、全部もう少し足りないわけで、全体のバランスを考えますと、私、昨年、通産省に入ってお仕事をさせていただきましたとき、石特会計で一千百億程度であったと思いますが、これは一般会計とは性質は違いますけれども通産省の予算の中で、従業員三千万人を超し、企業数で九九%とさえ言われている中小企業の予算が、今年度予算でやっと一千億円に到達したところで、これを石特会計が上回っているということ等を考えますと、もちろん、いま先生、御指摘のように、いろいろな意味で、まだ足りない面、それから補充しなければならない面、力を入れなければならない面がありますが、全体とのバランスを考えた場合、比較した場合は、私どもは、かなり石炭に力を入れておるということも御理解いただきたいと思います。
  122. 高木俊介

    高木政府委員 ただいまの一次、二次、三次の肩がわりでございますけれども、これは石炭鉱業再建整備臨時措置法という法律に基づきまして、いわゆる交付の契約をいたしておるものでございますので、この法律の趣旨からいっても、いま先生のありがたい御指示ではございますけれども、肩がわりの金を延ばすというわけにはいかぬのではなかろうかというふうに考えられます。
  123. 多田光雄

    多田委員 法律は、だから、あなた方よく法律を出すのだもの、真剣にそういう立場であれば、来年、改正案でも出せばいいことであって、だから銀行は大事にするけれども労働者は、口では大事だ、大事だと言っているけれども、実際はこういうていたらくなんだ。調査費の内容、私ちょっと体の調子がよくないから、立ち入って聞きませんけれども、山はねだのガス突出なんて本当に微々たるものですよ、深部対策と言いながら。こういう状況なんです。  ですから私ども、これを見ていて一番、問題になるのは、予算面で見ても、いまの通産御当局、それから資源エネルギー庁の考え方というのは、みずから高成長でつくり上げてしまった跛行的なエネルギー対策、それを本当に勇断をもってやるというのでなくて、むしろ、その路線を歩んでいるのですもの。むしろ、それより拡大していると言ってもいいでしょう、一般炭まで輸入するのだから。やがて何年か後に政務次官また泣きますよ、これは。しかも実際に石油は海外開発なんて言っても、いいところはみんなメジャーに押さえられてしまっているわけでしょう。こういう根本姿勢について、私はやっているのです。来年度の予算は、また来年の通常国会でやらなければなりませんけれども、依然として、それを引き継ぐままで、今度の石炭鉱業審議会の答申も、この間、通産大臣は大体あのままいきたい、総合エネ調の答申も、そのままのんでいきたいということなんですよ。ですから、それを私は指摘して、できればそれにやはりどこかで歯どめをかけなくちゃいかぬ。その歯どめというのは、さしあたり石炭を本当に重視する、十二分の十ぐらい回復したらどうだ、あるいは石炭勘定の中で思い切って、そういう銀行その他については、場合によっては法の一部を改正しても、保安の方に思い切って金を回していく、あるいは研究機関をつくっていく、それが皆さんのおっしゃる石炭見直しの姿だと思うし、中曾根通産大臣や田中総理なんて、もっと勢いのいいことを言っていたのだから。そういうことじゃないか、こう思っているのです。  そこで、これは労働省にちょっとお伺いしたいのですけれども、こうやって、まるで無理やり石炭石油特別会計に膨大な石油会計をぶち込んでくると、石炭は押されますよ、いま言ったような状況ですから。そうすると今度は、先ほど雇用問題も出ていたけれども、産炭地問題をどうするか。政府のエネルギー政策によって出た膨大な失業者の問題、緊就、開就、それから鉱害の問題、これは本当に自然増程度であって、物価の値上がりにスライドすれば、実際はそれほどでもないのですよ。これを将来どうするつもりですか。あくまでも石炭特別会計に置くつもりですか。それとも何らか、中高年層対策とかいって労働省の方にでも移管するつもりなんですか。これを聞くのは、先ほども出た福岡の碓井という町では、町当局は超過負担でもって緊就、開就やれませんというので、いまでも住民が来て座り込んでいる。だから、エネルギーの問題というのは、単にエネルギーの安定確保なんて、かっこういいことだけじゃないのです。どんなに、生きた住民に大きな負担をかけていっているかの問題です。そういう意味で、どういう考えを持っておりますか。
  124. 石井甲二

    ○石井政府委員 石炭関連の諸事業につきましては、現状におきましては、これを継続するという考え方は従来と変わっておらないわけであります。したがいまして、来年度におきましても、石炭石油特別会計から支出するということで、継続的に行いたいと思っております。
  125. 多田光雄

    多田委員 実際には石鉱審の中に八つの部会があって、雇用部会というのがあった。その雇用部会というのが削られて経営部会に入ってしまった、そういう姿もあるわけだ。だから、いつの日か石炭特別会計から姿を消してしまって、労働省あたりに持っていかれるのではないか、こういう不安も、現地の地方自治体の長や住民は持っているわけだ。そうすると、あなたのいまの御意見を聞くと、緊就なり開就なりは、あくまでも石炭特別会計の中で今後もやっていく、そういうお考えですね。
  126. 石井甲二

    ○石井政府委員 ただいまの石炭関連の諸事業につきましては、労働省としては、現状におきましては、来年度もそれを継続するということを先ほど申し上げたとおりでありますが、一応、閣議決定におきましても、五十一年度まで、それを継続するという形をとっております。したがいまして、今後の情勢をどう見るかという問題は、今後の推移の中で見なければいかぬと思いますが、現在のところは石炭石油特別会計ということで実施してまいりたいと考えております。
  127. 多田光雄

    多田委員 これは押し問答をしてもあれでしょうからね。  次官、今度の五十一年度の概算要求の姿にも見られるエネルギー政策というものには、やはり私どもは反対いたしますし、前回も大臣に、ああいう答申に基づいての閣議決定を、もし、やるとすれば、日本の将来に重大な禍根を残しますよ、今度は、あるいは、もっとひどいパンチを受けるかもしれませんよということで、反対しておきましたけれども、近く閣議決定があるそうですか、私どもとしては、こういうエネルギー政策に反対しておきたい、しなくちゃならないというように考えておりますから、また再検討も要求したい、こういうことで申し上げたわけです。  最後に、ちょっとお伺いしたいのですが、これは一般暖房炭の問題なんです。家庭の暖房燃料ですね。石炭から石油に取ってかわられたといっても、それでも、なお百万トンぐらいの石炭が、家庭用だとか学校用に、特に東北とか北海道の寒いところで使われているわけですよ。そこで、この一般炭生産の大手というのは、いま残っているのは北海道では事故が起きた幌内炭鉱と釧路の太平洋炭砿なんですね。これが一般市民用の暖房用炭の大半を占めているわけですよ。  そこで伺いたいのは、石炭を燃料としている消費者にとっては、価格の動向と各銘柄炭の品質が、実際に店頭の価格表どおりに保証されているかどうか、これが非常に大事な問題になるわけですね。この市中販売の暖房用炭のカロリー、灰分など品質保証のための管理体制あるいは事前のチェック機能は、制度的にどうなっているのか、これを伺っておきます。
  128. 高木俊介

    高木政府委員 実は大分、前でございますけれども、先生からそういう御指摘がございましたので、いろいろ調べたのでございますけれども、現在までは、いわゆる暖房用炭の価格あるいは品位、性状というものにつきましては何ら規制してなくて、商社任せと申しますか、炭鉱から取引業者、小売店というような方へ流れていって、一般の手に渡っておるというのが実態でございます。  そこで、価格は当然、明示されるわけでございますけれども、品質の点につきまして、カロリー、灰分でございますけれども、そういう点につきましては、これは当然ごまかしのないような販売をやるべきであるという姿勢に立ちまして、実は通産局に指示いたしまして、これは大手販売業者でございますけれども、通産局が販売業者に対しまして、品質の表示に従って石炭を販売するようにということで、指導しているような次第でございます。
  129. 多田光雄

    多田委員 通産局に指定統計として各山から出されているわけですけれども、これが、そのまま店頭表示されるわけじゃないのですよ。店頭表示の品質と、実際に消費者に売られている石炭の品質は、同じ銘柄でも大きな開きがある。これはもう常識みたいになってしまっているのです。  一例を挙げますと、太平洋炭砿で生産され、販売されている銘柄で、上質のものからいいますと、一番が精選特中塊、二番目が粗中塊、それから三番目が中塊、こういう段階になっているわけですが、特約店の四十七年の店頭品質表示には、精選特中塊はカロリーは七千カロリー、灰分九%となっているのです。ここに太平洋の資料が、これはこの間とってきてもらって出ているのですね。七千カロリー、灰分も出ているのです。実際のカロリーを調べてみると、六千六百カロリーより少ないのです。そして灰分一〇%以上のが多いのです。こういうものが売られているわけです。しかも、政府の指定統計に太平洋炭砿から報告されている四十七年の精選特中塊のカロリーも、六千六百カロリーよりないのです。いいですか、七千カロリしなどという石炭は実際に生産されていないわけです。ところが、五十年十月の指定統計報告でも、太平洋の精選特中塊は六千五百カロリー、灰分一〇%より出されていないのに、こういうものが店頭表示で出ている。どうして、いままで、こういうものを調査されなかったのか。これは調査、チェックの機関がないのです。だから、これはまさに不当な表示であり、不当な販売なんです。これはどういうようにお考えになりますか。これは莫大なんですよ、金額にしても量にしても。
  130. 高木俊介

    高木政府委員 指定統計で各社が何カロリーの石炭、幾らといいますのは、代表カロリーをべースにいたしまして、それに合わせた生産量ということで、たとえば太平洋炭砿が二百万トン、五千六百カロリーなら五千六百カロリーというようなことで、いま簡単に二百万トンの山だといっておりますけれども、この中には六千カロリーのものもあり、四千八百カロリーのもありということで、これを集計いたしまして、総計で五千何百カロリー、二百万トンというような報告をしているわけでございまして、これが自家用のいわゆる暖房用炭として販売されます場合は、恐らく家庭用の暖房炭でございますので、高品位の、灰分の少ないものということで、しかも塊炭であるということが暖房用炭に適するわけでございまして、企業から見れば一番、手取りのいい炭ということになろうと思います。  それで、先ほど先生、御指摘の品質の表示、明示あるいは価格という点につきましては、現在まで、そういうあれをやっておりませんでしたので、御指摘のあった点を早速、通産局の方に指示いたしまして、大手販売業者を全部、集めまして、今後、品質の表示に従って販売するようにということを指導したわけでございます。
  131. 多田光雄

    多田委員 こういう石炭企業と販売特約店の不当なやり方で、消費者から返品がたくさん来ているのです。これはこの間、新聞にも出ていましたけれども、廃業を余儀なくされている小売店もある。その小売店の一人が大平洋炭砿と、その販売店の太平石炭株式会社というところに対して訴訟を起こしているわけです。この人は昭和二十八年以来ことしまで大平洋炭砿の石炭を専門に販売していた人なんです。訴人は、ここにもありますが、札幌の飯田燃料店というところなんです。この訴人の要求した一つに、品質の不当表示であり、直ちに店頭表示を指定統計どおりに改めさせてほしい、品質を。それから二番目は、大平洋炭砿だけでなく、各暖房用炭の銘柄の品質検査をして公表して、消費者の利益を守ってもらいたいというのが第二なんです。第三番目は、大平石炭株式会社については、各銘柄の品質、これはカロリー、灰分を含めてですが、直ちに調査し、報告してもらいたい、こういうような点です。いま言ったのは私の要求ですが、こういう訴訟まで起こしている。ですから、これはひとつ、ぜひこの大平石炭のいま言った品質をすぐ調査して、私に報告してもらいたい。それから政府の指定統計に報告されている品質、数値を、昭和四十一年から五十年までの分を銘柄別に私に報告してもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  132. 高木俊介

    高木政府委員 指定統計の数字を、そのままお知らせするというのは、いろいろ問題があるのじゃなかろうかと思いますけれども、恐らく太平石炭と申しますのは太平洋炭砿の販売業者じゃなかろうかと思いますので、そちらの方を通じまして、その点調べまして、先生の方にお知らせしたいというふうに考えております。
  133. 多田光雄

    多田委員 これは、どうして政府の指定統計に報告されているものを見せていただけないのですか。
  134. 高木俊介

    高木政府委員 何の統計か、私もちょっと存じておりませんので、その辺、調べさせていただきまして、法律上、指定統計の数字を出すのがまずいのであったならば、別途、販売業者の方から調べまして、お知らせいたしますということを申し上げておるわけであります。
  135. 多田光雄

    多田委員 販売業者から調べたら、まずいんです。企業の方から通産局に出すでしょう。うちで出している銘柄のものは、こうこう、こういうものだ、それですよ。それを出してくれというのです。それは大したことはないでしょう。
  136. 高木俊介

    高木政府委員 太平洋炭砿の分についてでございますか。
  137. 多田光雄

    多田委員 そうです。
  138. 高木俊介

    高木政府委員 太平という販売会社でございますね。ここが大平洋炭砿だけの炭を取り扱っているのかどうか。
  139. 多田光雄

    多田委員 失礼、太平と太平洋炭砿。
  140. 高木俊介

    高木政府委員 太平が太平洋だけの石炭を取り扱っておるのか、あるいは、ほかの炭まで取り扱っておるのか、その辺も私、存じておりませんので、そういう点も調べまして、法律に触れない範囲の数字を先生の方にはお知らせしたいと思います。
  141. 多田光雄

    多田委員 特に四十一年から五十年までの十年間の資料を、できたら、ひとつとってください。  最後に、この問題について、これは次官にも、ちょっとお願いしておきますけれども、これはチェックする機関はないんですよ。野積みになって炭質も悪くなってくる。このごろは暖房用炭が少ないというので買わざるを得ない、こういう状況になっておりますから、これは価格や品質の問題、ひとつ厳重に指導していただけませんでしょうか。
  142. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 いま多田先生、御指摘の問題、私も初めてこれをお聞きしますので、きょう明確な回答を申し上げられないのは大変、残念でありますが、御趣旨は全く私どもも、先生の御心配するとおり、消費者の立場あるいは途中の店舗の立場、そういったこともありますので、これから関係当局に十分、調べさして、御納得のいくように計らってまいりたいと思います。
  143. 多田光雄

    多田委員 最後に次官にお願いしたいのですが、近く新石炭政策が答申される。そういう意味で私、先ほど、るる述べましたけれども、ぜひ日本のエネルギーをやはり自主的にしていくということ。それから、この保安の問題ですね、こういう点には、ひとつ最大限の努力を払っていただきたいことを重ねて要請しまして、質問を終わりたいと思います。
  144. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先ほど先生から御指摘のございました石油開発公団の投融資の現況でございますが、昭和四十九年度末現在におきまして、投融資、債務保証、合わせまして四十一社に対して事業を行っておるわけでございまして、その祭、先生から御指摘のございました外国、特にメジャー系との合弁の件数は幾らかということでございましたが、メジャー系といたしまして十一社、こういう数字が出ております。
  145. 田代文久

    田代委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十二分散会