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1975-12-17 第76回国会 衆議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十七日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 萩原 幸雄君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 佐野  進君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君   稻村左近四郎君       越智 通雄君    粕谷  茂君       塩崎  潤君    橋口  隆君       山崎  拓君    井上  泉君       板川 正吾君    加藤 清政君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       上坂  昇君    竹村 幸雄君       山田 芳治君    浦井  洋君       近江巳記夫君    松尾 信人君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       水口  昭君         公正取引委員会         事務局取引部長 吉野 秀雄君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         公正取引委員会         事務局審査部長 野上 正人君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省立地         公害局長    宮本 四郎君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         中小企業庁計画         部長      織田 季明君  委員外出席者         農林大臣官房審         議官      森 宏太郎君         農林省農蚕園芸         局繭糸課長   池田  澄君         通商産業省機械         情報産業局次長 井川  博君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十七日  辞任         補欠選任   岡田 哲児君     井上  泉君   渡辺 三郎君     山田 芳治君   野間 友一君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   井上  泉君     岡田 哲児君   山田 芳治君     渡辺 三郎君   浦井  洋君     野間 友一君     ――――――――――――― 十二月十五日  民生用燈油安価供給に関する請願神崎敏雄  君紹介)(第四一四四号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正等に関する請願神崎敏雄紹介)(  第四一四五号)  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律の一部改正に関する請願竹村  幸雄紹介)(第四二七三号)  特許管理士法制定に関する請願石橋政嗣君紹  介)(第四二七四号) 同月十六日  マルチ商法規制法制化に関する請願近江巳  記夫君紹介)(第四五〇七号)  特許管理士法制定に関する請願外一件(粕谷茂  君紹介)(第四五〇八号)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正等に関する請願玉置一徳紹介)(  第四五〇九号)  同(近江巳記夫紹介)(第四五六三号)  LPガス都市ガスとの流通秩序確立に関する  請願佐藤守良紹介)(第四五一〇号)  同(塩崎潤紹介)(第四五八七号)  ガソリン価格の据置きに関する請願佐藤観樹  君紹介)(第四五八四号)  民生用燈油安価供給に関する請願玉置一徳  君紹介)(第四五八五号)  同(近江巳記夫紹介)(第四五八九号)  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律の一部改正に関する請願山田  芳治紹介)(第四五八六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月十五日  中小企業不況対策強化拡充等に関する陳情書  (第三三四号)  中小企業者事業分野に進出する大企業者の事  業活動調整に関する陳情書  (  第三三五号)  中小企業高度化資金県負担率軽減等に関する  陳情書  (第三三六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。勝澤芳雄君。
  3. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 まず最初に、通産大臣にお伺いいたしますが、前の通常国会におきまして独禁法提案をされまして、この委員会各党一致参議院に送り込んだわけでありますけれども、参議院審議未了になりました。この独禁法の取り扱いに対しましては、国会におきまして総理並びに副総理から、次期通常国会提案する、こういうお話がなされておりますけれども、この商工委員会で満場一致成立した独禁法について、いま社会党中心野党共同提案をされておるわけでありますが、審議がされていないわけであります。そこで、この独禁法に対する通産大臣としての御見解を承りたいと存じます。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 この独禁法の問題につきましては、総理及び副総理委員会を通じまして答弁をされておりますが、その一つは、今回の臨時国会景気対策財政対策臨時国会であるので、これに焦点をしぼりたい、独禁法は次の通常国会の問題にしたい、こういう趣旨のことを繰り返して言っておられるわけでございます。私もそういうふうに考えております。
  5. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 通産大臣も、次の通常国会には総理並びに副総理と同じように考えられておるという御答弁であります。そこで、いま社会党中心野党独禁法提案をいたしておるわけでありますが、この案につきましては、衆議院の商工委員会与野党一致で通ったわけでありますから、通産大臣としてはこの案については御異議がない、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 独禁法の問題につきましては、前の通常国会の終了後、自民党の中に独禁法を新しい角度から検討するための懇談会というのができまして、目下あらゆる角度から再検討を加えておるところでございます。政党政治のことでございますので、やはり党と内閣は一体でなければならぬと思うわけでございます。そういう意味におきまして、党としての新しい案を新しい角度からいまつくっておるわけでございますので、その結果を見ないと何とも言えないというのがいまの状態でございます。
  7. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうすると、自民党の中で再検討している、その案が明確にならない間は、前回ここで満場一致通った独禁法改正については通産大臣としては意見が明確にならない、こういうことでございますか。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのとおりでございます。
  9. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それでは、きょうはことしの締めくくりですから、一応問題点だけお聞きをしておいて、内閣改造もなし、大臣も留任されるようでありますから、引き続きの問題として来年また質問させていただくことにします。  そこで、次の問題としては中小企業事業分野確保についてでありますけれども、これはいま社会党が長い間検討した結果、中小企業団体の要求に従ってこの法案を提出いたしておるわけでありますが、これについてもまだ十分な審議が行われていないわけで、大変遺憾だと思うわけでありますが、この法案についての見解大臣から承りたいと思うわけです。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、大企業がみだりに中小企業分野仕事をすべきではない、おのずからそこには節度のある行動をしなければならぬ、こういうことを強く考えておるわけでございます。  ただ、これを法律でこの業種とこの業種、あるいはまたこの業種には一定の規模以上の企業は出てきてはいかぬ、こういうふうに制定をするということになると、いろいろ問題があるのではないか。一つは、立法技術業種を指定すること自身がむずかしいという問題もございますが、さらに、法律でそういうことをいたしますと、新しい世の中の技術革新に果たして即応できるような産業界としての態勢がとれるのかどうか、こういう問題もよく研究してみなければならぬと私は思いますし、それから、法律でそういうことを決めますと消費者利益を損なうことにならないか、こういうこと等も考えなければならぬと思うのです。  そういうことをいろいろ総合的に判断いたしまして、当初に申し上げましたように、大企業はみだりに中小企業分野に入るべきではないという意見においては全く同じ考えでございますけれども、総合的にそういう点を判断して、行政指導でこれをやるのが一番いいのではないか、こういうことをなお考えておるわけでございます。そのために、いま政府といたしましては、そういう関係調整機関を新たに設けるとか、あるいは全国各府県にそういうことを調整するための機関をつくるとか、あるいはまた、調査を徹底するために新しい調査強化方法を講ずるとか、そういうことをいろいろ積極的に考えまして、そして行政指導でもやれるのじゃないか、こういうふうにいま考えまして、行政指導中心分野調整ということを考えていきたい、こういう考え方でございます。
  11. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 中小企業庁長官にお尋ねいたしますが、中小企業団体がこの中小企業事業分野確保あるいは調整という問題について全国的に大分運動されておるようでありますが、その運動状態と、どういう業種がいま運動として問題にされておるのか、あるいはまた、中小企業庁としてはその業種についてどういうふうにお考えになっているのか、その点についての御説明を賜りたいと思います。
  12. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 分野調整法制定をめぐりましての中小企業団体の主な運動といたしましては、ことしの八月十五日に軽印刷業界、それから豆腐業界あるいはクリーニングといったような九つの団体中小企業事業分野確保法促進協議会というものを結成されまして、関係方面にこの法律制定方を働きかけておられるように承知をいたしております。この構成メンバーであります九団体は、クリーニング業界豆腐油揚げ業界、軽印刷、それから青写真工業会もやし紙器工業会、それから理化医ガラス、めがねの商工組合、それから貴金属・時計付属品卸商業組合、こういった組合でございまして、それぞれこれまでに大企業の進出に伴います紛争が生じた業界方々のように承知をいたしております。そのほかに中小企業団体中央会も、先般の全国大会でこの分野確保法制定促進を求める決議が行われております。
  13. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、いま大庭も、またあなたもいままでの答弁の中で、法律をつくるよりも行政指導でと、こう言われておるわけでありまして、いま具体的に分野確保なり調整するための法律をつくってくれと言う団体がある。その状態の中から考えたときに、では立法でなくて行政指導として、この業界の問題について具体的にどう行政指導されておるのですか。その具体的な例について御説明いただきたいと思います。
  14. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 最近起こりました事例といたしましては、一つもやし事例がございます。ユニチカの子会社ユニイーストという会社が栃木県の足利市でもやしをつくり始めたというケースでございますけれども、これにつきましては、今後設備をふやさない、それから組合に加入して協調はしていく、こういうふうなことで業界と話がついて和解がされております。  それから軽印刷につきましては、大日本印刷Qプリントという子会社をつくりまして、いわゆる都会地におきまして、お客が待っておられる間に印刷をしてあげる、こういうふうな新しい技術によりましての顧客の要望にこたえるような印刷方法の店を展開しようとしたわけでございますが、これにつきましても行政指導をいたしました結果、直営店パイロットショップとしての二店だけに限りまして、その他は中小企業の方をフランチャイジーとして募集をして、そういう方々にノーハウを提供いたしまして、そういう方々にこういった軽印刷仕事をやっていただくということで和解が成立をいたしております。  それからクリーニングにつきましては、エーデルワイスという会社、これは日商岩井の子会社でございますけれども、厚木市に工場を建てまして大規模にいわゆるクリーニング業を営もうとしましたが、クリーニング業界反対がございまして、結局行政指導によりまして、直営店は出さない、それから既存のクリーニング店販売店と申しますか、代理店として使うという場合のそのクリーニング店は東京の組合に加入しておる方々に限る、こういった線で了解がついております。  現在まだ話がつきませんで私どもがあっせん中のものといたしましては、理化医ガラスの問題がございます。これにつきましては中小企業業界と岩城硝子の方と両当事者を役所に呼びまして、話し合いをさせておる最中でございまして、なるべく早く結論を得たいというように考えております。  それからもう一つは、豆腐の問題がございます。AF2という防腐剤の使用が禁止されまして豆腐日もちがしなくなったわけでございますが、新しい技術によりまして日もちのする豆腐を製造するということで、ヤクルト森永乳業がその製造に乗り出したわけでございますが、豆腐業界からいろいろ反対がございまして、結局ヤクルトにつきましては、販売を撤退するということを表明いたしたわけでございます。森永乳業につきましては、農林省指導によりまして現在も豆腐中小企業業界話し合いの続行中でございます。  最近起こっております事例としては、大体そういったものかと存じます。
  15. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 大臣にこの問題で自民党はどういうふうに考えているかということを聞くことはちょっとおかしいかもしれませんけれども、先ほど独禁法の問題では、自民党の中で検討されているのでそれを待ってと、こういうお話がありましたので、この中小企業事業分野は、行政的には政府立法よりも行政指導でという考え方のようですけれども、自民党の中ではやはり行政指導限界があるから立法措置でという意見があるようでありますが、これについてのお考えはいかがでしょうか。
  16. 河本敏夫

    河本国務大臣 通産省といたしましては先ほど申し上げましたような考え方でございますが、党の方で仮にこれと違う結論が万一出てきた、こういう場合には、これは政党政治のことでございますから、その方針に従う予定でございます。
  17. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、これは大臣お話ししてもどうかと思うのですけれども、国会法律をつくるところで立法機関であるわけですけれども、行政から出てきた法律がいつも優先をして、議員から出された法律というものがいつもそのまま審議をされないでいるというのは、大変残念なことだと思うのです。これを通産大臣にけしからぬと言っても、通産大臣に直接の権限があるわけじゃございませんけれども、しかしこの法律そのもの考えてみますと、自民党でも前向きに、とにかく立法措置でやろうじゃないかという意見が出ているようであります。あるいはまた、いろいろの大会に行きますと、われわれ社会党よりもっとすごい、いや断固としてと、こう言っておるわけでありますけれども、国会の中へ戻ってくるとどうも後ろ向きになっておるようであります。これはやはりいま中小企業団体が、全国中央会もそうですし各県別中央会もそうですけれども、行政指導限界だ、立法措置でと、社会党のように事業分野確保という立場でやるのかあるいは事業分野調整という立場でやるのかは別として、とにかく中小企業業種というものと大企業というものはある程度やはり分けなければいけないのじゃないだろうか、こういう意見が出ているわけであります。  そこで、中小企業庁中小企業省につくれという意見も出ている。それは中小企業庁というのが、やはり大企業の中で調整といいますかあるいは整理といいますか、そういう立場ばかりで物を考えておって、中小企業そのもの経済中心になっていない、大企業の下にあるのだという考え方、どうもこういう点が払拭されないものですから、中小企業省をつくって、大企業と対立すると言えば問題があるかもしれませんけれども、もう少し堂々とそれが経営基盤として成り立つようなものにせよという立場で、中小企業省についてはこれもまた政党間においては意見が接近しておるわけであります。こういう点から考えて、中小企業事業分野の問題は、いま中小企業庁長官が言われましたように、問題が起きた都度問題を解決している、こういうことから一歩進んで、やはり業種を指定していく、そしてこういう業種は大企業が入ることについては遠慮してもらう、こういうところまで進めないだろうかと思うのです。これは大臣でも中小企業庁長官でも結構ですけれども、問題が起きたときにやるのでなくして、豆腐、軽印刷、こういうものについては、行政指導なら行政指導でも、大企業が入ることは好ましくないというような行政指導にもう少し踏み込めないでしょうか。そういう点についての御見解を伺いたい。
  18. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 経済は生き物でございまして、生々発展と申しますか、常に動いておるわけでございます。そういう意味でも、中小企業に限る分野ということを特定することはきわめてむずかしい問題がございますが、仮にそれが可能であったといたしましても、そういう形で特定をして、大企業が一切入れないようにするということは、場合によりましては過剰防衛的になりまして、技術革新の面でのおくれをとるおそれはないか、あるいはそういった保護のもとにおきまして合理化意欲が薄れまして、そのために消費者に対するいわゆる合理化によるコストの引き下げといったような意味での消費者利益を害するような懸念がないか、あるいは海外との競争は常にあるわけでございますが、そういった場合の中小企業者自身近代化意欲に水をかけるようなことにならないか、こういう点のデメリット懸念をされるわけでございまして、そういう意味では、現行法をバックにしながら行政指導によりましてケース・バイ・ケースでその弊害をなくしていくというやり方の方が、法律によって分野をはっきり分けてしまうということによるデメリット考えますと、より現実的ではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。  ただ、そのためにはより強力にかつ機敏に調整に乗り出す仕組みが必要だと存じますので、そういった意味での情報の収集なり、役所調整体制強化ということにつきましては、現在まだやや不十分かと存じますので、そういった面の充実を図りたいというふうに考えております。
  19. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 中小企業庁長官は、物の考え方というものが、普通のときには資本主義自由競争を言いながら、片方では競合を防ぎながら企業立場を守っていく、こういう物の考え方をされていると思うのですよ。私は、中小企業というのは一つ社会政策とかあるいは雇用政策とか、こういう立場から物を考えなければいかぬと思うのです。いまあなたが言われました技術革新の問題とか海外との競争とか、いろいろの問題があります。しかし、それは行政指導でできるのではないでしょうか。いままで行政指導でやっているのじゃないでしょうか。野放図にしておいて、大企業が入りやすい状態にしておくことよりも、やはり中小企業というのは中小企業なりの技術革新指導なり、海外との競争指導なりというものをしていく、私はある程度これは社会政策的なものを持っているのではないかという気がいたしますよ、いまの日本の場合は。  いま公共投資の問題で各県が大手建設業者をお断りして、県内業者による指名入札をされているということを考えてみれば、やはり大手よりも中小の、自分の地域のという物の考え方が多いわけであります。ですから、中小企業というものを大企業の系列から物を考えている限り、あなたのような発想になるわけです。やはり中小企業というのは社会政策的な意味から物を考えていくことによって、中小企業省という発想ができるわけです。そうしなければ、いつまでたっても中小企業庁というのは中小企業省にはなれないと思うのです。それは大きくやればその方がいいには決まっておりますけれども、そこに社会政策的なものを見ながら、そしてそれを指導なりあるいは法律なりによって、技術革新なり、おくれているものをどう調整していくかという物の考え方に変えてもらわないと、あなたがおるときはそれでいいけれども、やはりそうでなくて、中小企業そのもの、全体を見てもらいたいと思うのです。  私がよく零細企業の問題を言うのですけれども、これは企業サイドで物を見るよりも、やはり社会保障的なもの、社会政策で物を見なければ無理じゃないだろうかと思うのですよ。ですから、そういう点でもう少し、この事業分野の問題というものは問題が起きた都度やっていくということでなくて、やはりここは中小企業政策として、雇用政策として全体的に考えていく。メキシコは法人タクシーを廃止してみんな個人タクシーですよ。それは失業対策として全部個人タクシーになっている。これは一つの国家の方針だと思うのです。  そういう点から、中小企業分野というのは、あなたの答弁をずっと聞いておると、またいままでの議事録を見てみますと、やはり立法より行政指導がいい、行政指導がいいと言いながら、片一方では、ほかの業界については鉄鋼でも石油でも業界全体について行政指導が行われているのですけれども、中小企業場台は、豆腐が多ければ部分的な豆腐をやっている、部分的なガラスをやっている、部分的なクリーニングをやっている。こうでなくて、やはり全体的にクリーニング業界というものはこれが好ましい、そのおくれは行政指導でどうやっていくかというところぐらいは検討してもらわないと、自民党が決まって国会で決まる分には仕方がないのではないだろうかという中小企業庁指導のあり方というのは、そこに問題があるなという気がするのです。お考えが変わらないかもしれませんが、もう一回その問題について御答弁願います。
  20. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 私ども、中小企業近代化につきましては、従来から各種の施策を通じまして近代化は進めておるわけでございます。ただ、これはやはり競争によりまして非常に近代化の契機といいますか、意欲が生まれるということも多いわけでございまして、たとえばいまの理化医ガラスの問題なんかも、大企業が自動の製造機械を入れまして、従来の理化医ガラス中小企業業界は全部手吹きでやっておったわけでございますが、私どもはこれを、新しい炉あるいは新しい自動機械、こういうものを中小企業業界も採用する必要があるのじゃないかというふうに実は考えておるわけでございます。  もやしにつきましても、従来のやり方と機械によるもやしの製造とあるようでございますが、これをきっかけにもやし業界近代化の話が出てまいっております。あるいは軽印刷につきましても、大日本印刷が開発をいたしましたQプリント方式というのは時代の要請に沿った新しい印刷の行き方でございまして、これのノーハウを中小企業に開放いたしましてフランチャイジーとして使わせるということで、中小印刷業界近代化にもなりますし、また、これを刺激剤として、現在中小印刷業界自体の近代化のいろいろな研究が行われております。  こういうふうに、競争がやはり技術改善、革新、近代化の契機になるケースが非常に多いわけでございまして、その競争を全くなくしてしまうようなやり方というのは、技術の進歩という意味からは非常に問題が多いのではないか。とは申しましても、大企業の進出によりまして中小企業が壊滅をするということでは元も子もないわけでございますので、大企業の進出によるメリットは生かしながらそれの弊害を除いていくということは、一律の立法による形よりも行政指導による形の方が、ケース・バイ・ケースで実情に即した、つまりデメリットを排除してメリットを生かすようなやり方ができるのじゃないか、かように考えるわけでございまして、そういう意味行政指導方式の方が実情に合っておるのじゃないかと私は考えておる次第でございます。
  21. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 いままで答弁されたと同じことを言われておるわけですけれども、去年やおととしまでは余りこの分野確保というのは言われてなかったのです、業界からは。しかし、最近また業界から盛んに言われてきている。そこの見きわめといいますか、そこの解明といいますか、そういうものを指されていなくて、依然として同じところにおるわけですけれども、私は中小企業庁というのは問題だと思うのですよ。それは中小企業庁でなくて、もうちょっと下へ下げた方がいいのじゃないかという気がしますよ。  中小企業庁は何だ。大企業調整だけでも、調整ができないときはやはり対決というものがあるわけですから、いま経済的に物を見た場合、いまあなたが言われた技術革新だとか消費者の保護だとかというのは、それは法律をつくったからといってもできるわけですよ。あるいは行政指導でも、もっと幅広いやり方をすればもっとできるわけですよ。いまこの法律ができたからといって、いま九つの団体がすぐ指定にせよと言っているわけじゃない。だから、やはり前を向いてどう考えるかということをしてもらわなければいけないと思うのですよ。これはきょう私は議論を言い合うというよりも、現状についてお互いの認識をしておいて、次の機会にと思いますから、これで終わります。  次の問題で、大臣、この景気対策について、伝えられるところによると、大蔵省と通産省と少し意見が食い違っているようなことが言われておりますけれども、通産省としての景気対策をどうお考えになっておりますか。
  22. 河本敏夫

    河本国務大臣 、ずっと景気の動向を調査いたしておりますが、九月、十月が比較的順調に回復過程に入ったのではないかと、こういうふうに期待をしておったのですが、十月の後半から十一月にかけましてどうもいい数字が出てこない、停滞ぎみである、こういうことで私どもも大変心配をしておるわけでございますが、一つは四次対策の実施が非常におくれておるということも若干の理由にはなっておりますが、やはり根本的には落ち込みが非常にひどいということだと思うのです。先ほど中小企業についていろいろ御議論がございましたが、去年、ことしあたりにかけまして、中小企業からいろんな問題が出ておりますのも、中小企業の生産は昭和四十五年以前の姿に返っておる、数年間逆戻りした、それほど落ち込みがひどいというところに、私はすべての原因があるのではないかと思っておるわけでございますが、一般の産業にいたしましても、やはり三、四年は逆戻りしておる、こういう姿ではないかと思います。  そこで、こういう状態が続きますと、私どもが心配をいたしますのは、わが国は終身雇用制でございますので、余剰人員を相当抱えておりますね。二百万とも言われ、三百万とも言われておるわけでございますが、決して労働省が発表しておる完全失業者百万という数字ではないわけでございまして、余りこれが長く続きますと、たとえば操業率が七五%だという状態では、企業も赤字経営でございますから、そう長くしんぼうできない。そうすると、結局この雇用問題が表面化してくるのではないか。そういうことになっては大変でございますから、ぜひ早く景気を軌道に乗せなければならない、これが通産省の考え方でございます。
  23. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それで、来年度予算をめぐって、通産省の方は大幅減税を行えという要望がされているようでありますけれども、これについてはいかがですか。
  24. 河本敏夫

    河本国務大臣 通産省の基本的な来年度予算編成についての考え方を申し上げますと、第一に、昨年の予算編成と違いますことは、昨年のちょうどいまごろは卸売物価が三五%、それから消費者物価が二五%といういわゆる狂乱状態でございましたが、現在はこれが一応おさまりまして、卸売物価は前年度並み、それから消費者物価は一けたに達した、こういう状態でございますので、物価情勢が根本的に違っておるということだと思います。昨年はそういう物価の情勢でございますから、総需要の抑制、つまり財政の引き締め、金融の引き締めということが柱になって予算編成ができたわけでございますが、今度は前提条件、物価情勢が非常に違っておるということ、それからもう一つは、落ち込みが去年に比べましてさらに一層ひどくなっておるということですね。それから、先般のランブイエ会議におきまして、各国がお互いに協力してそれぞれ積極的に景気対策をやっていこうじゃないか、こういう国際的な申し合わせをしておるということ、こういう点が昨年の予算編成と違っておる点だと私は思います。  そういうことを考えまして、今度の予算編成は可能な限り積極的な予算にして、そして景気回復をだらだらとやらないで、できるだけ早く景気回復を図っていくということが必要である、こういうことを主張しておるわけでございます。  まだ具体的には、新聞ではいろいろ言われておりますけれども、昨日予算編成の方針を決めますための経済対策閣僚会議がございましたが、きのうはフリートーキングの時間が余りございませんで、今週中にもう一回、十分な資料も集めて、そうして予算編成のためのフリートーキングをやってみようじゃないか、そして二十日前後には内閣としての基本方針を決めようじゃないか、こういうことでいま進んでおるわけでございます。
  25. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、通産大臣としては、積極的な予算なりあるいは景気をできるだけ上向けるためにはどう考えられておるのかということを質問しているわけです。消費を刺激するためには、大幅減税なりあるいは福祉なりというような意見通産大臣として出ておるし、経済のわかるのはやはり何といっても通産大臣だけだというようなことも言われているわけでありますから、その辺について大臣見解をお尋ねいたします。
  26. 河本敏夫

    河本国務大臣 予算編成で一番問題になるのは、来年度の成長率をどう見るかということだと思うのです。実はそれがきのうの会議では決まらなかったのです。五%台になるとは思いますが、最終の数字が決まらないものですから、まずこれを決めるということが、予算規模がどの程度になるかという私は前提条件でないかと思います。  それからもう一つの焦点は、こういう財政状態でございますから、相当の公債を出さなければいかぬわけですね。一説には、公債は一般会計の三〇%以内にすべきである、こういう議論もありますが、これは別に学説的な根拠は何もないわけでございまして、感じとしてそういう意見が出ておるわけでございますが、この公債発行額は成長率を決めればおのずから決まるのじゃないか、こういうふうに考えております。  それから、来年の物価をどう見るか、こういう問題もあろうと思います。そういう三つ、四つの前提条件から、結局公共事業の幅をどうするか、それから貿易の見通しをどうするか、それから民間の設備投資をどういうふうに考えていくか、あるいはまた国民の消費の動向をどう考えるか、こういういろいろな問題が出てくると思うわけでございます。  通産省といたしましては、とにかく余り長くこういう不景気な状態が続くと、これは雇用問題等も爆発的に起こりますし、それから東南アジアの各国に対しても非常に迷惑をかけておるわけですね。日本の不景気のために、相手国が非常に日本に対する輸出が減りまして、逆に日本からの先方に対する輸出はふえる、向こうからの輸入は減る、こういうことになりまして、非常に大きな経済上の迷惑をかけておる。日本の不景気のために、結局その影響を受けて破産寸前になっておる東南アジアの国もある。こういう状態でございますので、そういう意味からもやはり積極的な景気対策をやっていかなければならぬ。  いま個々の問題についてはまだ具体的に公式の場で申し上げる段階ではないと私は思いますので、今週末およその前提条件が整った段階でいろいろ具体的に検討してみたい、こう思っております。
  27. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私は、通産大臣としてどう考えているかということを聞きたいわけでありまして、こういうふうに決定したというものについては別にいま聞こうとはしていないわけです。ですから、その点で通産大臣としては景気対策をこう考えている、それが最終的に一週間後になってそうならなかった場合は、通産省で考え景気対策というものと決定された景気対策というものとは一体どこに問題点があるのか、それはやはり結果的にどういうことになるのか、それが経済見通しを誤ったとか誤らないとかという議論になっているわけですから、そういう点でいまお聞きしたわけでありますけれども、大臣はその点についてはまだまだ申しにくいようでありますから、それではそれは別にまた改めてお聞きすることにいたします。  次に、最近行政指導による新価格体系ということがよく言われているわけでありますが、これは具体的にはどういうことなんでしょうか。局長の方からひとつ御説明いただきたいと思います。
  28. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま行政指導による新価格体系という言葉がよく言われるわけでありますが、これは御案内のように一昨年の秋に石油が四倍に一挙に上がって、そのために世界全体が大混乱に陥る、その大混乱のために不景気になっておるというのがいまの実情でございますが、中には、これまで政府行政指導によって価格を非常に安く抑えてきたということのために、新しい採算に合う価格体系に乗れない、そういうことでつぶれる寸前にあるというふうな業種もあるわけです。その代表的なものが石油業界でございます。四期分連続赤字が出まして、表面的に含み資産つまりこれまでの蓄積を全部使い果たしまして、表面の赤字は若干減じておりますけれども、とにかく年間数千億という実質上の赤字が続いておりまして、崩壊寸前にあるわけです。  そこで、これをほっておくわけにいきませんので、先般十月の末に、二品種に限定をいたしまして行政指導の新しい価格体系を示したわけでございます。これは石油業界が需要業界と交渉する場合になかなか難航いたしますものでございますから、参考価格として示した、こういう趣旨でございまして、私どもはこれを参考価格というふうに呼んでおるわけでございます。それから、引き続きまして十二月一日から、石油業法によります標準価格というものをつくったわけでございます。     〔委員長退席、萩原委員長代理着席〕 これも実際は参考価格でございまして、標準価格をつくったからといいまして、それがそのまま実行されるものじゃございません。やはり根本的には需給関係によって価格というものは決まるわけでございますから、そのとおりはなかなかいかないのです。いかないのですが、しかし壊滅寸前にあるものですから、十二月からは三品種に限りまして標準価格というものを設定したわけでございます。  しかし、石油以外のものにつきましては、政府は、いまおっしゃったような行政指導して新しい価格体系に持っていこう、そのために数字を示す、こういうことはいたしておりませんし、石油以外はやるつもりはございません。
  29. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、新聞によりますと、通産省は十六日、アルミ精錬五社についての行政指導といいますか、あるいはまた片方によればガイドラインを示した、こう言われておるわけでありますが、これについての御説明をひとつ承りたいと思います。
  30. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 現在私ども、アルミに限らず石油価格にも需要見通しを公表いたしまして、企業の自主的な適正な在庫、いわば需給の正常化ということを図るように指導しているわけでございます。  お尋ねはアルミでございますが、これは最近の在庫が四十三万トン、五・五カ月分ぐらいでございまして、大体適正在庫が一月ほぼ十万トンちょっとということが適正でございます。いま非常に需要が緩んでおりまして、その結果、しかも一つにはアルミ産業は非常に高温の炉を持っておりまして、通電するとなかなかやめ切れないという事情もあるわけでございますが、アルミ精錬産業は今回全部中間赤字でございます。そういうような事態をできるだけ回避して、適正な操業ができるようにしたい、こういうことで、六月末までに大体二十七万トンに在庫を減らすような生産と申しますか、需要見通しを立てまして、それに応ずる計画をつくってもらいたい、こういうことで発表したわけでございます。
  31. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 ただいまの説明は、独禁法との関係はどういうふうにお考えになっておられますか。
  32. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 私どもは、通産省設置法の三条の任務に基づいてのいわば法的拘束力のないわれわれの見通しでございまして、これに対して問題は、それではそういうものを見通したときに業界話し合いをして、そして一つ一つ各社の生産量というものを決めるということになれば、これはまさにカルテルで、独禁法の対象になると思いますが、私どもの方はそれは厳に戒めておりまして、そういった全体の計画を見て各社独自にそれぞれの計画をつくってもらう、そういうことで、早く言えばそういう操業度というものはおのずから出てまいります。今度五一%の操業率になると思いますが、こういうことをベースに各社で生産規模を決めてもらう、一切そういう話し合いをしないという形で進めておりますので、現在独禁法上問題はないと考えております。
  33. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この場合の生産計画というのは、通産省はどういうふうな審査というのですか、あるいは立場といいますか、どういうことになっているのですか。
  34. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 私どもは通常でも大体そういう見通しを内に持っておるわけでございますし、それから、いろいろと経済指標の上からそういう生産の結果というのは聞いておりますが、こういうのは、いわゆる公表したときには今度計画を出していただきます。その上で、いわば生産、出荷、在庫の状況をわれわれとしては実情を把握するというやり方をしております。したがって、結果的にこれは実はそのガイドラインよりふえる場合もございますし、それから減っている場合もございます。しかし、私どもとしてはそのふえたことに対して、これはこういうことにしなければならぬということまでは申しておりません。ただ、全体から見た上では多過ぎるのじゃないかというような勧告的なことは申し上げますけれども、具体的な数字を幾らにしろという指示はしないことにしております。
  35. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、いまアルミ地金の問題を見てみますと、実際には海外から安い価格で入ってきている輸入の問題もあるわけでありますが、輸入についてはどういう対策ですか、あるいは抑制策というか、こういうことはお考えになっているのですかどうですか。
  36. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 いまの御指摘の点は、実は私ども非常に頭の痛い問題でございます。業界の方では安い輸入地金が入るということによって混乱を起こすから、たとえば緊急関税をかけてくれとか、そういうような関税措置でいわば輸入制限的な処理をしてほしいという要望が非常に強うございますが、ランブイエのこともございますし、私どもとしては輸入制限はしたくない。したがって、この中には輸入は大体七万五千トンぐらいと考えておると思いますが、そういったものにつきましては商社を指導いたしまして、いわばできるだけスポット買いと申しますか、いろいろとそのときにおいてぱっとスポットが多いわけでございますが、こういうものについては自粛してほしい、あるいは契約あるいは船積みの時期を少しずらしてもらいたいというようなことで、そういう協力を求めるということでとりあえずはスタートをしていこう、こう考えております。
  37. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 概況についてはわかりましたから、また別の機会に質問をいたすことにいたしまして、次の質問に入ります。  大臣にお尋ねいたしますが、自民党の総務会と行財政改革特別委員会の特殊法人並びに補助金整理小委員会で、特殊法人と補助金の改革案の中間報告が出されているようでありますが、この関係で、通産省関係でも、たとえば日本航空機製造株式会社とか、そのほかいろいろの法人の統廃合というものが出されておりますが、大臣としての御見解を賜りたいと思います。
  38. 河本敏夫

    河本国務大臣 通産省関係のそういう法人も当然ございますが、それぞれ必要な理由で設立されたものでございまして、私どもは現在でもなお必要である、こういうふうに考えておりますけれども、しかし政府の基本方針であり、党の基本方針であるということであれば、指摘されました一つ一つの法人をよく検討いたしまして、どうするかということについていま相談をしておるところでございます。
  39. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それでは次に、エネルギー政策の上から、いろいろと電力の再編成の問題なり、あるいは供給体制、あるいは広域運営等々について議論されているようでありますが、これらの問題についてどうお考えになっておりますか。
  40. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま電力業界で最大の課題は、再編成という問題ではございません。そういうことではなくして、今後十年間に約四十八兆円という膨大な設備資金が必要になりますので、この設備資金の調達を一体どうするかということがいま最大の課題になっておりまして、いまの九電力並びに電源開発会社を再編成する、そういう考え方はございません。
  41. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、予想される設備資金の問題から考えてみまして、この九電力と電源開発会社を含めて、これからの供給体制なり広域運営という問題については具体的に計画がおありになるのですか。あるいはどういうふうにお考えになっておられるのですか。
  42. 大永勇作

    ○大永政府委員 先般電源開発株式会社及び九電力が社長会を開きまして、広域運営についての申し合わせをしたわけでございますが、具体的な内容といたしましては、一つは、立地面におきましてこれから共同立地を促進していく必要がある。特に原子力発電等につきましても今後は共同立地をしていくということ、それから電力融通につきましては、基幹送電線網を整備いたしまして電力融通を強化するということ、それから資源の面におきましても、たとえばウラン等につきましてはやはり必要に応じて相互融通を図るというふうな点でございます。それから発電機器等につきましても標準化を図っていこう、そういうふうなことでございます。  そういうことを行うことによりまして投資面での合理化を図りまして、先ほど大臣から御答弁のございました設備資金の所要量につきましても、できるだけ効率的に、かつ節約をしていこう、こういうことでございます。
  43. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、やはり電力というのは一つの独占的な事業になっておるわけでありますから、具体的に通産省として資金の面、あるいは人の面、あるいは立地、機械、あるいは経営資産、こういうものについてやはり積極的な対策が必要ではないだろうか。これは従来も言われてきておることですけれども、この際やはり、さっき大臣も言われました大変な投資をしていかなければならぬということから考えるならば、いままでのような各個の電力会社に任せておくというよりも、もっと総合的な強い力を持ったものでこれを推進していかなければならない、こういうように思うわけでありますから、そういう点については十分な御検討をいただきたいと思うわけでございます。  以上、これで私の質問を終わります。
  44. 萩原幸雄

    ○萩原委員長代理 加藤清二君。
  45. 加藤清二

    加藤(清二)委員 お許しを得まして、通産行政について二、三の質問を試みたいと思います。  私はそう再々やりませんから、今国会も今回限り、一回だけですから、大臣、そのつもりで実のある答弁をしてくださいよ。逃げ口上で終わろうなんて言っていると、三木内閣の人気はますます落ちるばかりですからね。花はあっても実がない、太田道灌のヤマブキじゃないけれども、近ごろ盛んにそういうことが言われておる。  そこで、三木派の一番の実力大臣通産大臣、あなたはもう少し三木さんを男にするという立場、応援をするという立場でしっかり行政をやっていただくと同時に、やっていらっしゃること、今後やろうとなさることもあわせて、堂々とここで発表していただきたい。しかし、やるべくして約束しながら行われていないということは、その原因を国民に明らかにする必要があると思う。国民にその原因を明らかにすることによって初めて理解を得られる、理解があれば人気もまたもとへ戻る、こういう勘定なんです。そのつもりでお答え願いたいのですが、私のこういう考え方は間違っているでしょうか。それは三木内閣にとっては迷惑千万な話でしょうか。これについてお答え願いたい。
  46. 河本敏夫

    河本国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、答弁等につきましても十分気をつけてお答えします。
  47. 加藤清二

    加藤(清二)委員 それじゃ、先ほど勝澤委員が質問いたしました満場一致の独禁法、総員起立の独禁法を今国会は出さない。出さない理由が私にはわからない。国民にもわからない。来国会は出す、こういう話です。それもわからない。わからぬことずくめなんです。来国会に出せるものなら、なぜ今国会に出せないのか。各野党反対の物価値上げ法案は、無理やりに強行採決までするでしょう。にもかかわらず、満場一致の法案だ、しかもこれはあなたが大臣になる前から商工関係の各委員が熱心に討議をしてつくり上げてきた法案なんです。今国会は出せないが、来国会は出す、その理由が承りたい。
  48. 河本敏夫

    河本国務大臣 この問題につきましては、総理も副総理も何回か国会答弁をいたしておるわけでございますが、今度の国会臨時国会で期間も短いし、それから、財政対策中心とする景気対策を緊急にやりたい、その一点にしぼって今国会をひとつ運営していただきたい、こういうことを繰り返し言っておるわけでございますが、独禁法の問題につきましては、先般の通常国会の後、自民党独禁法問題懇話会というのができまして、もう一回再検討する、こういうことでいま作業中でございます。  次の通常国会には、その作業がまとまり次第政府との間に意見調整して出したい、こういうことを言っておられるわけでございまして、今国会に出さなかった理由は、先ほど申し上げたとおりだと思います。
  49. 加藤清二

    加藤(清二)委員 あなた自身、それで相手に理由がわかると思っていらっしゃるのですか。  私はけさ山中君とも会ったのですよ。君、一人ぼっちの山中と出ておるけれども、一人ぼっちじゃないよ、事独禁法に関しては協力者がたくさんあるんだぞと言って、いまさっき来る前に話し合ってきたばかりなんです。自民党の中といえども、名前を挙げましょう、そこの田中君なんかはやる気十分なんです。あなたのいまの説明で、時間が短いの臨時国会だのと言ったら、それなら値上げ法案はどうなるんですか、こういうことになる。短いときは、賛成法案の方が早く通るのですよ。野党反対する法案の方が長くかかるんですよ。そんなことあなた、一年生でもあるまいし、あなたも私も二十何年も国会におれば、そのくらいのことはわかっておるはずだ。あなたの答弁じゃぼくはわかりませんよ。まあここではいわく言いがたいことがあるでしょう。そういう気持ちはわかるのですが、あなたの説明ではわからない。  来国会出すとおっしゃる。来国会は三木さんもそのまま総理でしょう、あなたもそのまま通産大臣でしょう。何度も来国会には出すとおっしゃってみえる。来国会のいつ出されますか。
  50. 河本敏夫

    河本国務大臣 それは私の管轄でございませんから、直接申し上げるのはどうかと思いますが、先ほど党の方で調整をしておるということを申し上げましたね。党の方の調整案ができますと、内閣の方と相談をしまして、そこで新しい原案をつくる、私はこういうことになるのだと思います。
  51. 加藤清二

    加藤(清二)委員 それは総理府から出されるのですか、通産省からですか。
  52. 河本敏夫

    河本国務大臣 それもまだ最終的には決まっておりませんが、私は、多分前国会どおり総理府から出る、こう思います。
  53. 加藤清二

    加藤(清二)委員 独禁法関係総理府から提案されるなんということは、これはもう独禁法始まって以来、長年にわたって審議されてきていることですが、さきの国会が初めてですよ。また出さぬための道草じゃないですか、あるいは通さぬための道草じゃないですか。素人の総務長官や、過去において独禁法のことは全然勉強したことのない役人が出てきて、つべこべつべこべと答弁する。時間かせぎじゃないですか。なぜ通産省がはっきりしないのですか。自動車にブレーキが必要なことは当然のことなんです。自由主義国家に自由経済のブレーキであるところの独禁法がある、これは自由主義国家だったらどこにでもある法律なんです。自由のブレーキなんです。このブレーキがないというのは、自動車で言ったら欠陥車なんですよ。なぜ自分みずからがブレーキをつけないのですか。  もう一度お尋ねする。来国会、どこからいつ出されるか。
  54. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は従来も総理府が扱っておったと思うのですが、時期は、さっき申し上げましたように党の方で調整をしておりまして、それにやはり若干の時間がかかると思いますが、それが党の方の調整ができ次第、さらに内閣の方とすり合わせをいたしまして、できるだけ早く総理府から出す、こういうことを総理並びに副総理がこういう公式の場所で繰り返し答弁をしておられるわけでございますから、時期は何月何日ということは言えませんけれども、来国会のできるだけ早い時期、こういうふうに私どもは理解をいたしております。
  55. 加藤清二

    加藤(清二)委員 来国会のなるべく早い時期とおっしゃいますと、十二月が早い時期ですね。十二月に召集されるわけだ。それから次が正月ですね。始まるのは正月の下旬でしょう。当然、全会一致の法律などというものは冒頭に出して、ネックのある難渋する法律だけを後回しにするというのが、これは国会対策の上策とされておるものなんです。したがって、来国会のなるべく早い時期とあなたがおっしゃったが、まさかこの十二月にとは私も言いませんけれども、少なくとも正月の下旬には出されるように準備が整いますか、整いませんか。
  56. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、党の方で調整が終わりまして、それからさらに内閣との再調整をいたしまして出すわけでございますから、いつという日を具体的には申し上げかねますけれども、総理も副総理も繰り返し熱心に、来国会には出したい、こういうことを言っておられますし、私は、当然それに対して全力を挙げるべきである、こう思っております。
  57. 加藤清二

    加藤(清二)委員 総理や副総理意見は別に聞いておるから、この席であなたに代弁してもらおうとは思っておりません。あなたの意見、当事者の意見を聞いておる。つまり言えば、通産省は自由経済の大所高所から指導、育成、強化を図る本省なんです。それのブレーキなんです、これは。ですから、本省の大臣がその気になれば、当然独禁法以外の法律でも出てくるわけなんです。他人のことじゃない。来国会の早期−早期は何月ごろですか。準備はいつまでにできますか。
  58. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは繰り返しまして大変恐縮で申しわけないのですけれども、党の方に懇話会という正式の機関ができまして、何人かの委員が正式に任命されましてずっとやることになっておるわけです。それで、党の案ができましても、やはり内閣とすり合わせができぬといけませんから、内閣との調整をやりまして、それが終わり次第出すということでございますので、私がいまこの段階で何月というふうに申し上げるのは適当でございませんし、また、そういうことを言える段階ではないと思います。
  59. 加藤清二

    加藤(清二)委員 私はあなたの意見を聞いておるのであって、あなたがいつ閣議にかける準備をなさるか、いつ党に原案を出されるか、そうしてその結果、この委員会にかけられるのはいつかと聞いておるのであって、あなたの意思を聞いておる。党の意見は別の人に聞きます。
  60. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは前回は総理府の方で原案をつくりまして、もちろん通産省に非常に大きな関係がございますので、総理府の原案を基礎にいたしまして通産省と何回か意見調整をいたしました。数回にわたって調整をしたと思うのですが、そこで政府の原案が決まったわけでございます。今回も多分そういうことになると思うのです。原案は総理府の方でおまとめになる、そして案ができれば通産省の方と最終調整をする、こういうことになろうかと思います。
  61. 加藤清二

    加藤(清二)委員 あなたは総理府、総理府とおっしゃるが、総理府の中に独禁法のエキスパートが何人おりますか。総理府の長官はこれについてどのくらい学識経験がありますか。過去の体験がどのくらいありますか。それから、その原案を実質的につくられた方、名前は言いませんが、この方はどこやらへ栄転してしまったでしょう。もういまいないでしょう。大蔵省へ帰っていってしまったでしょう。何で通産省の法案を大蔵省の人間につくってもらわなければならぬのか。それほど通産省は人不足ですか。それほど人がいないのですか。だから、私はブレーキだと言っているのです。ブレーキは自分の自動車につけるべきだ。けれども、それも目下のところやむを得ぬということであれば、せめて独禁法法案について河本通産大臣の誠意ある、もう二度とうそを言わない、オオカミ少年でないところの答弁をもう一度承りたい。
  62. 和田敏信

    ○和田政府委員 先生御指摘のように、独禁法は通産省の行政と深い関係を持っております。しかしながら、独占禁止法と申しますのはわが国経済の基本法でございまして、これは従来もさようでございますが、先回の場合におきましても総理府においてお取りまとめを願いまして、成案を得て御審議を願ったところでございます。  三木総理の言われる自由主義経済の公正なルール、あるいは通産省が主張しておりましたところの産業界におけるバイタリティーの維持、このような点を通産省といたしましても今後総理府がまとめられる場合には十分踏まえまして、総理府が成案を得るように努力をされる場合に協力をいたしたいと考えております。いままでも通産省が本法案に関しまして改正の形式的な主体となったことはございませんので、念のため申し添えさせていただきます。
  63. 加藤清二

    加藤(清二)委員 わかった。あなたの意見を聞いておるのじゃない。私は大臣に質問をしておる。なぜ私がこのように言わなければならないかというと、このつぶれた原因が財界の反対、それが基本になって自民党反対、それを三木さんがのまされた、これはもう衆知の事実なんです。これをつぶした張本人は財界なんです。公取は来ておりますか。現にこの間高橋公取委員長がおっしゃったでしょう、しっかりやろうとすれば財界からの圧力がありまして、そう思うようにはまいりません、ますます独禁法を骨抜きにされるおそれがございますと。それで私は申し上げておいた。だれだって取り締まられる方は法律がないにこしたことはない。どろぼうから見れば刑法は邪魔者なんです。選挙違反をやろうとする議員にとっては公職選挙法は邪魔者なんです。邪魔者は小さいほどいい、なきにしかずだ。それに押されて満場一致のこの法案が通らなかったということは、財界が国会を軽視して、国民の意思を踏みにじって自分らの強欲を通したということになるからだ。それを指導、育成、強化するのが通産大臣の任務であるから、したがって私は通産大臣の信念を承っておるわけなんです。  では、この問題は提案される正月を楽しみに待ちまして、もう一度河本通産大臣の所見を承りたいと存じます。河本通産大臣総理府のこの原案をつくった方のようによそへ行かずに、あなたは今度もぜひ大臣をやってください。この独禁法がりっぱに通り抜くまであなたはぜひ通産大臣をやっておってくださいよ、そうでないと約束が守れぬことになりますから。私からもそれは三木さんにも言います。  次に、通産省の指導理念を承りたい。高度成長から低成長に向かうに当たって、ブレーキだけではなくしていろいろ行政指導をしなければならぬ案件がたくさんあると存じます。構造改善もしなければならないでしょう。その場合における指導理念を簡潔に承りたい。
  64. 河本敏夫

    河本国務大臣 通産省の当面する課題はいろいろございますが、やはり当面の最大の課題は、物価を安定させながら一刻も早く景気回復を図っていくことであると心得ております。  それから次に、御案内のように一昨年石油ショックが起こりまして、世界全体の経済が大混乱を来して、いまなおこれが続いておるわけでございますが、こういうエネルギー情勢の激変に伴うその後の日本の産業のあるべき姿、これも当然考えていかなければならぬと思います。これをどういう方向に持っていくかということ、これらも第二の課題だと思います。  それから第三は、わが国はこういう国柄でございますから、どうしても貿易立国でございます。貿易対策には全力を挙げていかなければならぬ。それから日本の経済の特性といたしまして中小企業が非常に多いということでございます。数も非常に多うございますが、生産の半分は中小企業によって上げられておるということを考慮いたしますと、こういう混乱期には中小企業対策というものがよけい大切になる。これをやはり大きな柱と考えておるわけでございます。  それから最近は、こういう混乱期には当然消費者立場をあらゆる角度から考えていかなければならぬわけでございますが、この消費者行政も二つの柱だと思います。  そういうことを考えながら、それらの諸問題について成果が上がりますように行政指導を行っておるというのが現在の姿でございます。
  65. 加藤清二

    加藤(清二)委員 戦後、日本の経済は高度成長をしてきた。しかし、その高度成長の陰で犠牲者がずいぶん涙を流している。リセッションのあるたび、経済の変動のあるたびに常に犠牲者が出る。一体なぜだろうか。同じような経済の変動に遭いながら、イギリスはどうした、アメリカはどうした、いろいろ考えてみて、日本の特徴とされる点がある。それは、日本の経済は振幅が非常に大きいということなんです。不景気になるとぐっと不景気になって、今度は好況になるとぐっとそちらへいく。農業でいいますと、去年タマネギの景気がよかったからというので、ことしになるとどっと百姓がタマネギをつくる。それでタマネギが腐るほどできると、もうその次の年はつくらない。大根でもホウレンソウでも、野菜物はほとんどそういう過程をたどってきている。なぜかというと、これは指導者がしっかりしていないから、大衆がそれについていってしまうからなんです。振幅の大きさにブレーキをかけて、なるべく被害を少なくするために正常な道を歩かせるには、長期にわたる確固たる指導理念が必要なんです。内訳をいまあなたがおっしゃられましたが、その内訳については私は一つ一つ全部賛成でございます。したがって、ぜひそれをしっかり推進していただきたいと存じます。  それから、企業合同があちらでもこちらでも行われようとしている。そのバックには常に通産省が介在しているといいましょうか、糸を引くと申しましょうか、そういうことがある。第一に聞きたいことは、製鋼部門、特に小棒の関係は非常に不況であったから、公取においてもカルテル行為をお認めになったはずである。聞くところによると、新日鉄のいわば兄弟会社である大同を初め愛知製鋼に至るまで、合同が行われるのではないかということがささやかれております。このことは、いまあなたがおっしゃられましたように、やがて消費者からそこに働く労働者にまで影響があり、不安感がございます。なぜかならば、配置転換とか合理化という名前のもとに、首切りとか、もろに施策のしわを受けるのは、消費者か、労働者か、下請かということになる。そこで、製鋼部門の企業合同はどう指導していらっしゃるか、これを承りたい。
  66. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 ただいま先生から御指摘がございました大同製鋼云々のお話でございますが、愛知製鋼についてそういう問題は起こっておりません。これははっきり申し上げてよろしいと思います。一部新聞で報道されましたような大同製鋼あるいは日本特殊鋼、特殊製鋼というのは、現在のところはそれぞれの会社の体質改善の問題ということで詰めておりまして、ああいった実態まで進むような状況になっておりません。  しかし、先生が御質問になりました低成長下における製鋼の合併問題をどう見るかということでございますが、これは大臣からもお答えがございましたように、やはり国民経済の安定、国際競争力の強化というような要請から、体質改善の一環として、企業合同、合併という問題が出てまいりますれば、私どもとしては金融面その他の協力も十分するつもりでございます。しかし、お説のとおり、低成長下におきましては雇用問題というのは一番大きな問題だと思います。したがって、そういうところから労働者の生活権の確保という見通しを十分立てなければいかぬ。そして、いわばそういう結果におきましての再就職あるいは離退職の方々の問題というふうなことも、十分にそういう環境が生成されるような体制を十分見ていきたいと思いますし、そういう意味では労働組合というような方々の話も十分伺っていきたい、こういうふうに考えております。
  67. 加藤清二

    加藤(清二)委員 最後の言葉がよかったですね。労働者の意見も聞かなければならぬ、その声たるや全くよしです。これをお忘れなく。高度成長でどんどん企業がもうかるときに、労働者の月給はその企業の成長におくれて分配される。ただし、一たび不況になりますと、そのしわはいち早く月給を削るとか、ボーナスを削るとか、あるいは下請を切る、孫請、ひこ請を切る、トカゲのしっぽの役をさせられる。成長するときにはおくれて分配を受け、不況になるときにはいち早くもろに被害を受ける。同じ企業の中にあってそういうことがあるということは、やがて労使関係にひびを入れる問題になるからでございます。これが事故につながるおそれがあるからでございます。企業経営者の言うことのみを聞かずに、それを聞くことも大事なことですが、しかしそこに働かれる、犠牲を背負う方々意見もあわせ聴取するという広い心構えをぜひ持っていただきたい。やられますね。——はい、結構です。  石油精製はどうなりますか。特に国内の民族系の石油精製部門のこれまた合同、合併その他がもくろまれているようでございます。これについてはどうなっておりますか。
  68. 河本敏夫

    河本国務大臣 石油業界でいま最大の課題は、いまおっしゃった再編の問題だと思います。先般標準価格を設定いたしまして、崩壊寸前にある石油業界を何とか軌道に乗るように、こういうことでいろいろ工夫をしておるわけでございますが、私は、仮にこの標準価格がそのまま実施されたといたしましても、それだけでは石油業界強化にはならないと思うのですね。また何かあると政府がバックアップしてめんどうを見ていかなければならぬ、こういうことを心配いたしますし、それから、何しろいまの状態は乱立状態でございまして、非常に弱いものばかりがたくさんおる。いまの状態では、OPEC諸国ともなかなか対等の交渉もできませんし、ましてやメジャーとの交渉もできない、国内の需要家との交渉も対等にできない、こういう状態でございますので、標準価格制によりましてとりあえず経営が若干軌道に乗れば、直ちに、間髪を入れず石油業界の体質強化をやってもらいたい、私はそういうことを強く期待いたしておるわけでございます。  体質の強化ということでございますから、ときには再編、合併ということもありましょうが、私は必ずしもそれだけには限らないと思うのです。共同で事業をやるとか、あるいは株の持ち合いをやるとか、あるいは販売面だけで協力するとか、いろいろな協力の仕方があろうと思うのです。そういういろいろな協力の仕方をあわせまして、石油業界が強くなる、体質が強化をされる、こういうことを強く期待いたしまして、その方向はどうあるべきかということにつきまして、総合エネルギー調査会の石油部会にいま意見を求めておるところでございます。近日中にその意見が出ますので、その意見等も参考にいたしまして、政府の進むべき最終のコース、考え方を決めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  69. 加藤清二

    加藤(清二)委員 私というよりは社会党の政審では、石油業界と他の業界と比較してみて、特殊な状況がある。石油業界にのみ存在する特殊な機構がある。それは何かというと、民族系が少なくてメジャー系が非常に多い。しかも、そのメジャー系はバックが主としてアメリカで、非常な強力なバックによって運営が行われている。特に原料の仕入れ値段までが一ドル余違う。民族系が高く買わされて、メジャー系が安く仕入れる、そういう流通機構が公然と行われている。これはまさに差別待遇である。国際的な差別待遇が日本の中に依然として残っているというこの状況を世界の諸君はどう見てくれるんだ。  ちょうど去年のいまごろです。世界石油会議が行われ、私は日本代表で参りました。三木さんが第一回に行かれ、第二回に時の中曽根通産大臣が行かれ、三回目が私でございます。世界じゅうの人がこれをわかってくれました。そこで、価格まで操作して差別をつけるなどということは前近代的なあり方である、これは是正すべきであるというので、最後の宣言決議の中へこれが織り込まれて、ようやく日本の民族系もメジャー系と等しい値段で入手することができるようになった。このように、これ一つを取り上げてみましても、日本の民族系をずっと長年にわたって差別をしてきている。これでは石油危機はいつまでたっても不安感として残っていく。  オランダにもある。イギリスにもある。ドイツにもある。石油を諸外国から入手しようとする国は、みんな国家的なバックのメジャーを持っている。メジャーは流通機構だけでなくて、石油精製からペトケミに至るまで、一貫した機構と指導理念によって動いている。これが国家危急存亡の場合を救う大切な要諦だと思います。ぜひひとつ河本通産大臣も、日本の民族を守るという立場から、メジャー系に負けないようなりっぱな日本石油業界をつくり出す基礎をつくっていただきたい。御所見を承りたい。
  70. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本の石油業界は大体メジャー系が半分、それから民族系が半分、こういう比率になっておると思うのです。メジャー系の石油会社の果たしておる役割りも私は非常に大きいと思います。そしてまた、石油問題を考えますときにメジャーを抜きにして考えられない、こういうふうに思いますので、今後もメジャー系の石油会社には大きな役割りを私は期待したいと思っているのです。したがって、今回の体質強化の問題等につきましても、無理にメジャー系の力を弱めるとかそういうことはいたしませんで、メジャー系はメジャー系としてのこれまでの役割りを十分果たしてもらいたい。一方、民族系が余りにも弱い状態でございますので、さっき申し上げましたような体質の強化を図っていかなければならぬ。日本は三億トン近い油を使っておるわけでございますから、当然本当に力の強い、外国とも十分談判のできる石油会社が二つ三つあったっておかしくないわけでございますから、ぜひともそういう方向にいってもらいたいということを強く期待いたしておるわけでございます。
  71. 加藤清二

    加藤(清二)委員 次に、繊維の問題についてお尋ねいたします。  昨日、一昨日引き続きまして新聞各紙をにぎわしました東洋紡、鐘紡、ユニチカの提携でございます。これは日本の天然繊維、綿紡、毛紡のビッグスリーでございます。これが相互協力を強化する、提携する。大変な反響を呼んでおります。これについてお尋ねしますが、通産省はこのように指導されたのか、そこからまずお尋ねする。
  72. 野口一郎

    ○野口政府委員 お答え申し上げます。  日本の繊維産業が現在非常に厳しい条件に当面しているということは私がここで申し上げるまでもないわけでございますけれども、たまたま九月以降、稲葉氏を座長といたしますところの繊維問題懇話会が最近提言を通産省にいたしたわけでございますが、その中でも、内外の厳しい状況に耐えて日本の繊維産業の発展を確保するためには、何よりも生産性の向上あるいは経営の合理化近代化、こういうものをやって、国際競争力の低下を防止すべきであるということを提言しているわけであります。そういう大方針のもとに、その提言は、業界がまず政府にいろいろ頼むよりも、業界がみずからできるだけのことをやるべきであるということを述べて、そういう動きに対しては政府としても支援をすべきである、こういうことを言っているわけでございます。  そういう大方針のもとに私ども常々業界指導しているわけでございますが、本件三社のことにつきまして直接どうこうあるべしということまで立ち入った指導はいたしておりません。
  73. 加藤清二

    加藤(清二)委員 それでは、このことを新聞発表になる以前に通産省は恐らく相談を受けておられると存じます。いつごろから話が進んでおったのですか。
  74. 野口一郎

    ○野口政府委員 三社の間でいつごろからこういう話が具体的に持ち上がってきておるのか、私つまびらかにはいたしておりませんが、私どもの方に内々の話がここまで進んでおるということにつきましての報告は、発表の数日前に連絡がございました。
  75. 加藤清二

    加藤(清二)委員 数日前ですか。このことはもう三年も前からもくろまれておったのですよ。数日前ですか。ですから、あなたがいまおっしゃられたこの懇話会の提言の中に、そのメンバーがいるから、それらしいことがちゃんと書かれている。もう前からの予定なんです。少なくとも歴史の長いこのビッグスリーが一日や二日で、数日前にそんなことができることじゃございませんですよ。  それじゃ、その数日前に話があったという時点において、内容をどのように聴取してみえますか。
  76. 野口一郎

    ○野口政府委員 詳しいことは、つまり具体的に何をするかということについては、今後三社のしかるべき人たちで相談をしながら進めていくということで、内容に立ち入った詳しい話はございませんけれども、三社のトップ、首脳部が現在の紡績業の置かれている事態を踏んまえてこういう方向で進んでいくべきだという基本的な点について合意を見ました、こういうことでございます。
  77. 加藤清二

    加藤(清二)委員 基本的に合意を得た要綱をそこで述べていただきたい。
  78. 野口一郎

    ○野口政府委員 三社の首脳部が、現在置かれている繊維産業の深刻な不況から脱出するというためには、何よりも構造的な問題の解決に迫られている、それはすでに一社限りの努力ではもう十分ではない、そこで業界の最大大手と申しますか、リーダー、トップクラスにあるこの三社が、大乗的見地に立って企業努力をやりつつ、かつ提携によって業界全体の構造改善の先導的な役割りを果たすべきである、こういう考え方に立って、とりあえず紡績部門、特に三社が中心でありますところの綿、スフ、毛の分野において幾つかの事業について提携をしていく。  その主な方向といたしましては、工場の合理化近代化を進めるための情報交換であるとか、あるいは新規の商品の開発あるいは企画について協力をするというようなことであるとか、あるいは各地にある工場の物流あるいは購入における共同であるとか、あるいは糸の生産の合理化を図っていくというようなことでありますとか、あるいはさらには先の話かもしれませんが、海外における事業の相互協力を図る、こういうような方向で提携を深めていきたい、具体的なことは今後さらに三社の間で相談する、大体こういうような趣旨の話を私ども連絡を受けたわけでございます。
  79. 加藤清二

    加藤(清二)委員 これを受け取られたのは数日前ですか。
  80. 野口一郎

    ○野口政府委員 受け取ったと申しましても、書いたものとかなんとかではございません。口頭で非常に非公式な連絡でございました。
  81. 加藤清二

    加藤(清二)委員 通産大臣にお尋ねしますが、大臣はこの三社の提携について目下のところどう考えていらっしゃいますか。
  82. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は大変結構だと思っております。
  83. 加藤清二

    加藤(清二)委員 公取にお尋ねします。公取は相談を受けられましたか、受けられませんか。同時に、受けておられたとするならば、内容はどのように聴取してみえますか。
  84. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 お答えいたします。  この問題につきましては、先週十一日に関係社の一社の代表の方が当事務局に見えられまして、三社の間で今後基本的な合理化問題に取り組むことになった、その旨を近く新聞発表をするという程度の報告がございました。なお、月曜日の新聞発表の後、昨日でございますが、三社の取締役級の代表の方がお見えになりまして、今後具体的な問題について早急に検討の段階に入りたい、また、問題について三社の間に合意ができ次第その内容を公取初め関係官庁に説明申し上げ、しかるべき指導を受けた上で実行に入りたい、こういった報告が昨日ございました。
  85. 加藤清二

    加藤(清二)委員 それは文言ですか、書類ですか、どっちですか。
  86. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 口頭でございます。
  87. 加藤清二

    加藤(清二)委員 その場合に、あなたは列席していらっしゃったか、いらっしゃらないですか。
  88. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 私と調整課長の二名、一緒に説明を聞きました。
  89. 加藤清二

    加藤(清二)委員 そのときにあなたは、本件は株主総会にかけられたかどうかはお聞きになりましたか、なりませんか。
  90. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 聞いておりません。
  91. 加藤清二

    加藤(清二)委員 それは今後の調査にまつことですね。
  92. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 まだ昨日の説明の段階では、具体的な問題についてはこれから検討に入るということでございますので、公取としてはこの問題についていい悪いの判断ができませんので、ただ説明を聞きおくという程度でございます。
  93. 加藤清二

    加藤(清二)委員 私は、このことについて賛成とか反対とかいう先入観でお尋ねしておるわけではございません。すでにこういうことは、イギリスのランカシャーが疲弊をいたしましたときに、とっくの昔にイギリスはこのことをやっておるのでございます。そうして息を吹き返してきた。アメリカはまたバーリントンから南部において、このようなことをもう十年も前にすでに行っておるわけでございます。そうして息を吹き返してきた。むしろ国際競争力の立場からいきますと、いまや日本の繊維業界はだんだん低下の一途をたどっている、こういうところでございます。したがって、それを救う道が企業合同であったり提携であったりということならば、それも理解はできます。  が、さしあたって日本のような繊維業界、特に天然繊維は、いま局長が説明になりましたが、コットン、ウール、それにスフと申しますと、これはともに世界第一なんです。生産数量においても、糸の質においても、技術においても、これは全部世界第一です。ウールの太番手においてややイギリスにひけをとるという面もなきにしもあらずでございますけれども、その世界第一の日本の企業が合同していくということになりますと、及ぼす影響は国内だけじゃございません。  承れば、原料の共同購入という問題があるようです。これはもうその原料供給国であるコットンであるとかウールの産出国にとっては大変な問題になります。国内においては三品市場の格づけがございますから、これはまた大変なことになってくる。すなわち、御案内のとおり糸はどの糸も全部三品市場へ売りつないでいる。三品市場で相場をつけるときに、格差がちゃんとできている。たとえばここでいけば、東洋紡の百五十番が最高のランクにあるわけなんです。しかし、それじゃ鐘紡、ユニチカの銘柄はどうかというと、そうでもない。原料を共同購入して紡績の技術を公開し合うということになれば、これは平準化されていくわけなんです。全部AGとか千五百番まで持っていくなんということは、材料の面からできっこない。となりますと、これは国内においてまず第一番に三品市場に及ぼす影響を考えなければならぬ。私どもは、国際競争力をつけることは必要である、大切なことである、イギリスにもアメリカにもまさる物をつくっていただきたいと常日ごろ念願しておる。しかし、及ぼす影響を思考し得る範囲内において考えても、これは大変なことになるぞという気がいたします。  そこで、及ぼす影響を考える前に、提携の内容を聞いたわけですが、局長にお尋ねする。混綿の部はどうなっておるか。
  94. 野口一郎

    ○野口政府委員 恐れ入りますが、質問がよく聞きとれなかったものですから、もう一度……。
  95. 加藤清二

    加藤(清二)委員 原料の共同ときますと、原料はどの糸をつくる場合にでも単色でやるのじゃないのです。ちょうどコーヒーと一緒で、あれこれブレンドしたりミックスしたりして味を出してくるのです。そして風合いを出していくのです。これはどこの会社でも企業機密なんです。まぜ合わせることを混綿と申しまして、まぜ合わせる場合の量と、かませる水と、それから温度と、寝かしておく時間というのは、酒の醸造にもまさるほど物理現象が加味されるわけなんです。称してそこの部を混綿と申します。紡績技術の公開と原料の共同ということが二つ並べば、当然混綿とくるに決まっているのです、表に出てないけれども。二、二がと言ったら四とくるに決まっているのです。それで、混綿の部はどうなっているかとお尋ねしているわけです。
  96. 野口一郎

    ○野口政府委員 私どもが報告を受けておりますのは、先ほど申し上げましたようにかなり大綱のところでございまして、あるいは方向と申しますか、生産技術についてももちろん差し支えない限りにおいては相互交流があるのではないかと思いますけれども、ともかく具体的にはこれからそういう担当のところでどういうことをどういうふうにやるのだということを相談するということでございますので、先生の御質問の点、私、現在はつまびらかにいたしておりません。
  97. 加藤清二

    加藤(清二)委員 一番大事なところだと思います。一つの重大なポイントだと思いますから、公取さんの方も今後折衝なさる場合にここのところをよく聞いておいてくださいね。  私がいままで伝え聞くところによると、それも公開して、共同で——そうしないと今度原料を共同購入するというところに結びつかないのです。原料を共同購入するといえば、原料は、コットンに例をとってもそうですか、一種類じゃないですからね。産出国によって毛足の長さがまちまちですし、それから、大体太さが違うのですからね。これをいろいろミックスして、たとえば近藤紡の四十番手のマツといったら、これは世界一の糸ですね。日清紡の三ツ桃といったら世界的に有名な生地ですね。これのコツは材料と混綿のところにあるのですよ。それを公開してあれするとなると、材料を共同購入しても可能になってくる、いや、材料を共同購入した方がなおよろしいということにつながっていくわけなんです。ですから、ここのところをよく調べてください。  材料を共同購入するとなりますとどういう結果が生ずるかというと、今度は商社に影響がいくわけなんです。これはオファー取引じゃございませんから、インデント取引なんですから、紡績の注文に応じて商社がその注文品を買い付けに行くのですから。あるいはまた、このビッグスリーのごときは、わが社に材料購入の技術屋を養成しておるのです。それは三年や五年じゃ養成できる技術じゃございません。羊毛のごときは八百種類もございますから、それを見分けて、わが社の千五百番をつくるにはこの材料とこの材料とこの材料といって、それを俵の外から一目見ただけで、においだけで当ててこなければならぬですから、それによってまた歩どまりが変わってくる、こういうことになるのですから。  なぜそういうことが言えるかというと、これは六カ月先まで規格の物を売っておるのです。そうでしょう。国鉄の従業員の服といったらもう決まっているでしょう、それに合わせてもらわなければならぬ。したがって、材料を仕入れてきてから製品になるまでには一年余かかるものがあるのです。だから、急に合同だの何だのかんだのとおっしゃったって、違った材料同士ではどうにもならぬ。だから、時間はかかると思いますが、東洋紡さんの材料は私のところとか、鐘紡さんの材料は私のところも引き受けておりますという商社があるわけだ。それは伊藤忠であったり丸紅であったりいろいろするわけなんだ。ここへも影響がいくということなんだ、共同購入というところに持っていかれれば。それで、その内容のいかんによって及ぼす影響が大きいですよということを申し上げておる。  その結果、もう一つ及ぼすところは三品市場です。いままでどおりの規格の、いままでどおりの銘柄が出てくるとすれば、それは三品市場の格づけはいままでどおりでいいわけだ。三品市場の格づけと申しますと、わかりやすく言えば相撲の番付と一緒です。ちゃんと序列があるのです。それで、同じ規格で中身が違うのです。たとえば二十番と言い、三十番と言い、四十番と言い、ウールであれば三六と言い、五二と言い、六〇と言いますけれども、それは太さの規格であって、中身は違うのですよ。ウイスキーに種類がたくさんあるのとこれは同じなんです。お酒にもたくさん種類があるのと同じなんです。それにランクがついておる。ところが、三社が合同して技術提携をやって同じように出してきたら、そのランクは、番付は変えなければならぬ、こういうことになってきますね。しかも、このビッグスリーの三社の糸が三品市場における格づけの基本になって、コットンですとこれに近藤紡の糸が入りますけれども、それが先導になって相場を形成しておるんですからね。ここらあたり、独禁の関係をよく調べてください。  さて、それで承りたいが、この案件は三品市場を監督する側へは連絡があったか、なかったか。
  98. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 直接の連絡はございません。
  99. 加藤清二

    加藤(清二)委員 全然つんぼさじきですか。
  100. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 生活産業局を通じて間接に聞いておるだけでございます。
  101. 加藤清二

    加藤(清二)委員 それでは、三品市場の方からは何にも連絡はありませんか。
  102. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 ございません。
  103. 加藤清二

    加藤(清二)委員 それはうかつなことですね。まあ三品市場の方では、大だんなのおやりあそばされることだから、さわらぬ神にたたりなしと思ってみえるかもしれません。銀行筋も、大変いいお客さんだからといって黙ってみえるかもしれませんけれども、国会ではこれを黙って無視するわけにはまいりません。これは、原料を仕入れる相手国から、製品を売り出す相手国、すなわち貿易の問題から、競争力の問題から、今度は国内の三品市場から先の機屋であるとか、あるいは染色整理の場であるとか、いろいろ及ぼす影響が大きゅうございます。また、縫製加工も大きくなりますと、わが社の製品をつくるために、私のところは鐘紡さんに、私のところは東洋紡さんにといって糸から注文をして、生地をつくって縫製加工をしているという生産段階がある。そこに及ぼす影響も大きいわけなんです。  ただ、デパートの方だけは、あれは完成品の仕入ればかりやっているのですから、売り子も商品学も何も知りゃしませんから、韓国物を日本物だ日本物だと言って電気の光だけでごまかして売っておっても、なお消費者は黙ってボーナスと交換していきなさるから、そこはいいでしょうけれども、もとをつくる方は注文に応じなければなりませんからそうはいきません。  これについてもう一度お尋ねする。技術面の公開、原料の共同化、製品の物流、海外事業の相互協力、工場の合理化、集約化、その上になお、私が漏れ聞くところによると、やがて販売の面、それから化合繊の面、これにも推し及ぼして、ついには企業合同の先導役をする、こういうところに目標があるようでございます。しかくさようとするならば、これは第二の新日鉄でございます。もって公取いかんとなすということです。第二の公取事件だ。  もちろん、このビッグスリーが一つになれば、他の方はそれにつられて企業合同その他をしなければならぬことになります。ですから、もう言うなれば日本の繊維業界にある一時期大地震をもたらす、こういうことになるわけです。だから、大臣、きのうおとといの新聞が出ますると、もうその関係の孫から下からずうっと、私のところへまで質問殺到ですよ。何のことはない、私は通産省の繊維課長の代理を務めておるようなものですよ。もう本当に困ってしまう。生活産業局長としてはどこまで影響を読んでみえますか。
  104. 野口一郎

    ○野口政府委員 この三者の提携の話が今後どういう分野でどういうふうに進んでいくか、実はいま現状におきましてなかなか判断することがむずかしいかと思います。と申しますのは、過去におきまして、四十一年その他の年におきまして、これに類似するような提携の話があり、提携をしてやっていくというようなことで発表された先例もございます。その線に沿って進んでいるものもありますし、発表だけに終わってしまって、実質的なその後の進展はなかったというようなこともございます。そういう先例に見るように、なかなかその意図に実際が伴うかどうかということも問題だと思います。したがいまして、いまここでどうこうと言うのはなかなかむずかしいわけでございますが、先生御指摘のような方向において具体化をしていく、現実的な事業になっていくということでありますると、それはいい意味におきましてもあるいは悪い意味におきましても、非常にいろいろな問題が出てくることは御指摘のとおりだと思うわけでございます。  私どもは、日本の繊維産業が置かれている現在の厳しい環境下において、日本の繊維産業を守り、かつ発展させていくという見地から、こういう動きのいい芽はどんどん伸ばす、逆に悪い芽、たとえば競争制限になるとか、あるいは中小企業に悪い影響を与えるとかいうようなところはないように、そういう観点に立って業界指導もし、またウオッチもしてまいりたいと考えておる次第でございます。ともかく、進行、具体化いかんによっては非常に大きな問題になり、大きな影響を持つということは、私どももよく認識しておるわけでございます。
  105. 加藤清二

    加藤(清二)委員 それでは、時間が迫っておりますから、この件についての要望を申し上げます。  三社提携の内容、いま生活産業局長がここで御発表になった五つ六つの項目と、それから特に混綿の技術提携があるかないか、それから材料の共同購入があるかないか、それから共同販売があるかないか、ここらをよく念を押して御調査の上、文字にしてこの商工委員に御提出願いたい。ということは、これはもうわんわん問題が出てきますから、次の国会ではずっとこれを審議しなければならぬことになると思います。それから、繊維は地場産業でございまして、お米と一緒で日本じゅうどこにでも加工場があるわけなんです。紡績は少のうございますけれども、加工場がある。機屋以下はもう全部各県にある。各県の議員がこれに関係を持っておりますから、慎重に審議をしなければならぬと存じます。したがって、その審議の資料を至急御提出願いたい。これはできますか。
  106. 野口一郎

    ○野口政府委員 先生のおっしゃられたような点がどこまで話されているのか、私思うに、どうもそういう問題はこれから担当を決めて議論、検討に入る、こんなふうな段階ではないかと考えているわけでございますので、そちらの方がどうなるかによるかと思います。それが一つ。  それからもう一つは、企業の提携と申しましても、いろいろ企業の秘密といいますか、企業自身の問題もございましょう、その辺との関連があろうかと思いますが、先生のおっしゃられたような線に沿って検討をさせていただきたいと思っております。
  107. 加藤清二

    加藤(清二)委員 それから、もう一つ念を押しておきます。  先ほど大臣が、石油の構造改善というか、提携というか、強化するために株の持ち合いなどもさせますと、こういう話がございました。そこで、この場合、株主総会の決議を経てこのことが行われているかどうかという問題、これは局長業界に質問してくださいよ、株の持ち合いを通産大臣がおっしゃったようになさるか、なさらないかと。これは金融の主流銀行が別々ですけれども、提携するというようなことになれば、銀行の方も提携するでしょう。提携すれば株の持ち合いは必然的に行われると思います。  株の持ち合いをつけ加えて、公取の方もひとつよろしいですか。お調べいただいて、公取は公取なりの書類をこの委員会に御提出願いたい。われわれ議員は議員なりにそれぞれ調査をして、その調査の結果を突きまぜて、したがって将来こういうことが思考できる、それについてはこういう対策をして事前に危険を防止するという策をすることが大切なことだと思います。  基本的には、私は、日本の繊維産業は日本経済の生みの親であり、育ての親であったけれども、いまや転落の一途をたどって、輸出国が輸入国に転落をしてしまった。これではいけない。衣食住ぐらいは自給自足をしなければ独立国家とは言えない。その衣を将来ともりっぱに確保するためには、荒療治もまたやむを得ぬことであるかもしれないと思っておるのです。しかし、その荒療治のおかげで犠牲が労働者に寄ってはいけない。弱いところへのみしわが寄ってはいけない。そのことは、さっき局長石油のところと鉄の小俸の関係で答えられておりますから、これも同断ですね。生活産業局長、いいですね。(野口政府委員「ええ」と呼ぶ)弱い労働者や下請、孫請に犠牲がいかないように事前に処置して前進する。しかばねを越えていくということは、私どものとらざるところでございます。  次にお尋ねしたい。  三品市場の問題ですけれども、答申が出て、法律修正が行われて、そしてあれからもう大分たちますが、何か手を打たれたですか。
  108. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 答申が出ましてから以後、法律改正を待たずして行政指導でできますことにつきましては、五月に産業政策局長名の通牒を出しまして、これに基づいて行政指導を進めておるところでございます。  それから、法律改正されましたので、それに基づきます政省令を目下準備しておるところでございます。
  109. 加藤清二

    加藤(清二)委員 時間の関係上、解説は抜きにして要望を申し上げます。  豊橋乾繭、前橋乾繭を初めとして、絹糸の上場をされているところ、法律改正以後におけるその業績をまとめて書類にして御提出願いたい。  ということは、これまた絹の産業、午後に山田君初め質問をされることになっておりますが、絹の関係は、内外のアンバランスのおかげで大変難渋しているということがある。それに三品市場がプラスアルファをつける、上乗せをするというかっこうになっているのです。農林省から来ておられますか。私の資料要求に応じていただきたい。
  110. 森宏太郎

    ○森説明員 ただいま先生が御提案になりました資料につきましては、早急にまとめまして、農林省の方からも通産省と御連絡の上御提出申し上げます。
  111. 加藤清二

    加藤(清二)委員 あなたについでに、集約してお尋ねします。  けさ、と言っちゃ失礼でしょう、前場は。きのうの後場の絹糸の相場は幾ら立っていましたか。
  112. 森宏太郎

    ○森説明員 お答え申し上げます。  本日の横浜生糸の資料でございますが、前日の十二月限の終値でございますが一万一千六百四十円でございます。
  113. 加藤清二

    加藤(清二)委員 一万一千五、六百円から七百円、高値は一万二千円ぐらいしておるですね。安値でもなお一万一千円を超えている。  中国は、一体フランスやイタリーに幾らに売っていますか。
  114. 森宏太郎

    ○森説明員 ただいまの御質問の資料はちょっと手元にございませんので、はなはだ恐縮でございますが、後刻また……。
  115. 加藤清二

    加藤(清二)委員 ここは予算委員会じゃない。予算委員会でずいぶん大臣政府委員をいじめ尽くしましたから、もうああいうことはやりません。  そこで、じゃ、こっちが答えます。大体三十元前後。六千円を割っています。五千何百円というところです。これを日本は幾らで買っていますか。後で、私の暗記している数字が違っておったら、違うということだけ言ってください。中国から日本へ輸入されるのは、これは国家が相場を決めるのですから、必ずしも一定しておりません。上下があります。ありますけれども、まあ八千円前後で買っておるですね。そしてこれが民間織り屋に渡されるときに一万四、五千円を超えていく、こういうことになる。  そこで、農林省も通産省もそうですか、絹糸だけは数量制限をしていらっしゃる。しかし、ここ数年来の輸入実績を見ますと、加工糸やら織物がじゃかすかと入ってきておる。それはそのはずですよ。なぜそうなるかと言えば、いまのここがポイントなんです。中国も韓国も、韓国は中国の値について回りで、それにぷらっとプラス・アルファをするのですから、日本の相場にさや寄せして輸出してくる。それで八千円台の糸のところだけはきちっと数量割り当てしているから、それはふえてこない。しかし加工糸、より糸だとか染め糸だとか、薄物の織ったものがなぜそんなに入るかといえば、日本の糸値より安いからなんです。原料よりもなお安くつくれるからなんです、もとは四千円台から五千円台のものなんだから。  このことはやがて、フランス絹にしてもイギリス絹にしてもイタリア絹にしてもそうですか、材料を五千円台で買って加工して持ってくれば、特殊な織物は別として、刺しゅうだとか特別染め加工すれば別として、平生地であれば、日本へ持ち込むときに日本の糸値よりも安く入れられるわけだ。ここへ目をつけなんだら、商社はばかだと言われなければならない。だから、商社マンはもうかればいいという考え方で、制限のある絹糸よりは、なおそれよりも安く輸入できる絹製品の方に大変な努力をするということになる。その結果は、日本の養蚕家や製糸業までが仕事を操短してもなおやり切れない、こういうことになってくる。  お尋ねするが、ブラジルで農林省指導して養蚕をやっておられますね。乾繭はどのくらいで入りますか。——はい、結構です。これはやはり糸値にして中国の輸出値よりはやや安く、それはこっちが行って指導してつくっているんですからね。ここを農林省もお考えをいただかないといけない。いたずらに日本の養蚕家と製糸業者のことにのみウエートを置いて政策を立てられる。行政指導をなさる。しかし、そのおかげで犠牲をしょうのは、より加工から、精練から、織りがら、そこから先のところへ大変なしわが寄っている。しわだけではない。何ぼとめてみたって、一方の蛇口だけ締めて、片一方の大きい方を広げておるから、とめてとまらぬ道になっておる。この基本をわから、ずして、絹関係施策をすると言ったって、それは砂上楼閣なんです。  そういうことを何度も繰り返し繰り返し構造改善という名前のもとに行っていらっしゃるから、構造改善は何ぼやっても実らない。内地の設備をどれだけ減らしてみたって、外国から次から次へと入ってくることを野放しにして、それで国内が生産過剰だなんてばかなことを言っておって、どうして構造改善ができるか。どうして繊維産業が守れますか。大きなビッグスリーは逆に糸を相手国へ売ることもできるから、それはいいでしょう。各地に散在しているところの産地はどうしてくれると言いたい。もう時間が参ったようでございます。  それでは、あと、ガット三十五条第二項の援用を行っているところのフランスその他、いまだに繊維制限をしているアメリカ、この間、ちょっとだけ合繊の糸だけは解除したのですけれども、ここらの問題と、韓国、台湾その他発展途上国から日本へ輸入される問題、ガット繊維協定の三条、四条、十二条の適用の問題、まさにこれは政府の怠慢であるという一言でやめておきますが、もし今国会でもう一回行われるのでしたら、私はこの問題について時間をいただいて話したい。  なぜかならば、この年の瀬が越せずに——大臣、これが結論です。この間うち自殺者がたくさん出ていることを御存じですか。新潟に三宅という大先輩の議員がいらっしゃるのですね。この間、三宅先生が私のところへ来て、おい加藤君、おれの選挙区に栃尾というところがあるが、この間、おれの息子の同級生が自殺したよ、機屋がやっていけぬから。そうしたら、またついきのう一人自殺したよ、と言うんだ。これは栃尾だけではありません。年の瀬が越せない、借金が返せない、銀行から責められる、そのおかげで倒れていく機屋が次から次へと出ている。栃尾とは何ぞ、農林省、あなたよう覚えておいてくださいよ、絹ですよ。  わが子を殺してまでも外国と仲ようしなければならぬなんという、そういう論理はどこにもないのです。なぜわが子を殺してまでも貿易のアンバランスと称して買い入れなければならないのか。業者が倒れるだけでなくて、死んでいくということは、インジュリーの最たるものである。それほどインジュリーがあるとするならば、なぜ提訴をしないのか。せめてガットへ提訴するくらいのことはあってしかるべきである。この懇話会の方針にもいろいろ具体策、政府のやるべきことも述べているけれども、せめて提訴すべきである。インジュリーがかくのごとくあるという具体的事実をガットの会議に表現するぐらいのことはやらなければ、自殺をした人が浮かばれないと思う。大臣、お答え願いたい。
  116. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまいろいろお述べになりました点がやはり最大の問題点でございまして、いま通産省と農林省の間で、生糸の一元輸入の問題と、それから絹撚糸、絹織物、こういうものの輸入関係を一体どうするか、こういうことを総合的に調整しておるところでございまして、近くその案ができ上がる予定でございます。
  117. 加藤清二

    加藤(清二)委員 提訴するかしないか、質問に答えてください。
  118. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 わが国もガットに参加しておるわけでございますから、その情勢のいかんによっては、当然十九条による提訴に踏み切るべき問題であると思います。ただ、その踏み切る段階におきましても、これは先生御指摘の稲葉提言にもございますように、日本のおかれておるいわゆる貿易立国の立場、あるいは関係諸国との友好関係、あるいは消費者ニーズに対する対応といったような諸点も考え合わせまして、協定技術的には提訴は可能であっても、そういった政策的判断というものも加えて結論を出すべき問題かと思います。
  119. 加藤清二

    加藤(清二)委員 私はやめようと思ったのですけれども、あなたがそういうふうにおっしゃるならば言うのです。自由立国であるから、他のバランスの問題があるから、犠牲者が出ていてもその犠牲者は見過ごしていく、そんなばかげた論理がどこにあるのです。もしもこれがあなたの親戚だったらどうしますか。自殺者が次から次へと出て、隣が繁盛するのに、それで黙って泣き寝入りしますか。  それでは申し上げる。アメリカは日本に対していまでも制限しておるじゃございませんか。その物まねで、カナダは日本に制限しておるじゃございませんか。EC諸国はもう二十年来、ガット三十五条第二項の援用で日本の繊維を制限しておるではございませんか。彼らは称して自由貿易国だ。それのみか、アメリカは、発展途上国の台湾やら韓国に対しても制限しておるではございませんか。なぜ日本ができない。私は、一挙に二国間協定にいけとか、多国間協定にいけと言っているのではないのだ。せめてその次善の策として、国内の被害、インジュリーの実態を世界に知っていただくぐらいのことをしないと、産油国が日本から繊維を買いたいと言っておっても、これも売れない結果が出てきますよ。これは別の問題になるから、私はここでは言いませんけれども。  なぜ実態を提起することができないのだ。実態を提起することができぬようなガットなら、脱退すべきだ。自由なればこそ実態を提起することができるではありませんか。もう一度お尋ねする。自分らの怠慢や小心をそんな自由なんということでカムフラージュしたら、後へ引き下がれぬ。
  120. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま申し上げましたように、この生糸の一元輸入と、それに関連をいたします絹撚糸あるいは絹織物、こういうものの輸入を総合的にどうするかということを、いま政府部内で総合的に調整をしておるところでございます。それと並行いたしまして、いまおっしゃった問題については結論を出す予定でございます。
  121. 加藤清二

    加藤(清二)委員 時間が参ったようでございますから、本日はこの程度で、次回に譲ります。
  122. 萩原幸雄

    ○萩原委員長代理 井上泉君。
  123. 井上泉

    井上(泉)委員 きょうは、商工委員会で皆様方の御協力を得て若干の質問のお許しをいただいたことを感謝申し上げます。  いま私は加藤先生の話を聞く中で、貿易に対する考え方が非常に単純というか、実態に対する認識というものが、通産省だけではなしに各省を通じて非常に不十分ではないかと感じました。たとえばそのもととしては、いま私がこちらへ来て初めて中小企業金融公庫の月報を見たわけです。その月報の中に、これは政府の役人が書いたのではないのですが、「アジアの経済発展とわが国中小企業」ということで神戸大学の先生が書いているわけです。そこで、輸入とか輸出とかいろいろなことが書いてあるけれども、この中には、アジア諸国の中における中国の今日の経済状態とか、あるいは中国の工業製品の輸出だとか、あるいは中国への輸入だとかいうものが一項も触れられていないわけです。そういうふうな認識、つまり日本の中小企業経済考える場合、あるいは日本の貿易を考える場合に、中国の現状というものを余りにも通産省としては軽視をしておるのではないかという印象を受けざるを得ないわけであります。  さきに河本通産大臣は中国へも行かれたのでありますが、これからの日本経済の中でアジアの経済情勢に注目しなければならぬ、その中で特に中国との関係におきましては、この中国の実態の認識の上に立って政策あるいは行政というものが行われねばならないと思うわけですが、まず、その点について通産大臣見解を承りたいと思います。
  124. 河本敏夫

    河本国務大臣 中国との間は、政治的に非常に深い関係にございますが、そういう政治問題を抜きにいたしまして貿易問題だけを取り上げましても、昨年は往復で三十三億ドル、ことしはほぼ四十億ドル前後の貿易になるのではないかと思います。非常に大きな金額になっておりますし、さらにまた今後飛躍的に伸びる可能性があります。そういうことでございますから、私どもは中国との経済関係につきましては非常に重視をいたしておるわけでございます。
  125. 井上泉

    井上(泉)委員 特にそういう重視をした中で日本の中小企業をどうやって守り育てていくのか、そして日本の対外貿易をどういうふうに発展させていくのか、そういう点についての努力を期待して、私のきょう予定しておる質問を行いたいと思います。  一つは、ことしももう間もなく終わるわけでありますが、ことしの当初の予算委員会あるいは予算委員会の分科会におきまして、自動車産業についての質疑が数々なされたわけであります。今回ツーサイクルのHCの規制緩和の措置がなされたわけでありますが、これは公害対策の一つの後退ではないかということが言われておる中で行われたわけでありますし、そのことについては関係省庁で関係大臣が協議の上決定したということも聞くわけでありますが、通産大臣としてはこの協議に参加し、そしてまた、この規制緩和の措置をすることが適切な措置であると考えてやられたのかどうか、その御意見を承りたいと思います。
  126. 河本敏夫

    河本国務大臣 先般の措置でございますが、私どもはああいう措置なしに実際はやりたかったのでございます。しかし、現実を考えますと、企業の経営の行き詰まり、それから失業問題等も発生する危険性がほぼ確実になりましたので、万やむを得ずああいう措置をとったわけでございますが、あの措置を延期する考えはございません。
  127. 井上泉

    井上(泉)委員 つまり、そのときに決めた、五十二年九月三十日まで適用を猶予するという省令、これをさらに延ばす考えはないというわけですか。
  128. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのとおりでございます。
  129. 井上泉

    井上(泉)委員 そういうことを確認したわけでありますが、ややもすれば通産省の自動車産業に対する行政というか、その政策のあり方が企業中心である、つまり、企業中心の自動車産業に対する施策であるということが言われるわけでありますし、また事実、いろいろな問題を検討しても、そのことが裏づけられるようなものが数々見受けられるわけであります。  そこで、自動車産業の社会的な役割りを発揮さすような、貢献度というか、そういうものから見ましても、今日、交通事故の問題がもう長年の間の懸案であるし、ことしの予算委員会の通産の分科会におきまして私が質問をした中においても、通産大臣みずからも、今日の交通の安全対策の面において、自動車の輸送体制というか、交通体系を総合的に検討しなければならぬ、こういうようなことを言われておるわけですが、この自動車産業の中の社会悪の最たるものは、これによって事故者が激増したことである、つまり、自動車による交通事故者が激増したことであると思うが、それについての通産大臣見解を承りたいと思います。
  130. 河本敏夫

    河本国務大臣 私もそのとおりだと思うのです。ことしも、残念ながら先般死者が一万人を超えましたし、この調子でいきますと一万何千人かになるのではないかと思われますし、さらにけがをした人は五十数万という数に毎年なるわけでございますので、これはもう大ごとでないか、こういうふうに思っております。やはりこういう車社会になりました一つの大きな社会的な問題である、こう理解をいたしております。
  131. 井上泉

    井上(泉)委員 いわばそういう多くの交通事故者を出しておる、つまり、自動車という加害者、凶器というものを生産しておる自動車メーカーの、これと逆行するようなそういう数々の事例を私は承知をするわけでありますけれども、それをここで一々論議をしておりましたら私に与えられた時間がなくなりますので、私はそれはまた後日の機会にいたしたいと思うわけですが、そういう加害者、たくさんの交通事故を起こす、いわゆる一面においては交通事故に対しては凶器とも言うべき自動車産業が、交通安全というものに対してどれだけの配慮をなされておるのかどうか、私はその点について非常に疑問を持つものでありますが、このメーカーに対する交通安全の指導というようなものは通産省としてはとっておるのか、とってないのか。とっておれば、どういうことをとっておるのか、お答え願いたいと思います。
  132. 井川博

    ○井川説明員 自動車の製造面からの安全対策を進めるのは当然でございますけれども、さらに、ユーザーの安全運転の呼びかけなどをラジオスポットでやるとか、あるいはその他広告を通じて交通安全対策に大いに協力するよう、いままでもやってまいりましたが、今後一層努力を傾けていく所存であります。
  133. 井上泉

    井上(泉)委員 言葉としてはそういうことですけれども、具体的には、たとえばいまあなたが言われた広告の面でありますが、これはテレビ、ラジオでずいぶん、トヨタも日産も、そしてまた三菱も全部宣伝をしておるわけです。前には、トヨタの宣伝の中には「安全はトヨタの願い」とか、安全の標語が入っておったのですけれども、最近のコマーシャルにはそういうものはほとんど入ってないですし、そしてまた、新聞広告を見ましても、交通安全ということに重点を置いた広告のやり方というようなものは、私の承知する限りではほとんどないと思うわけでありますが、いま局長の言われるようにたとえば広告の面でやっておるとするならば、民放を通じて自動車の宣伝をしておる自動車会社がどういう広告宣伝をやっておるのか、お教えを願いたいと思います。
  134. 井川博

    ○井川説明員 四十五年から、工業会の中に広報委員会というのがございますが、その広報委員会は、今後そうした交通安全対策も取り上げていこうということで、その後各種の努力をいたしてございます。現段階では、御指摘のように、ラジオスポット等きわめて一部でございますけれども、そういう考え方自体はやはり現在も維持しておるし、われわれとしては今後ますますこれを伸ばしていかなくちゃならぬというふうに考えておる次第でございます。
  135. 井上泉

    井上(泉)委員 そういうことを取り決めはしたということも聞くわけです、それからそれをやりましょうということは。現実にそれでは、昭和五十年度のいま、ラジオ、テレビでそういう広告をやっておるのですか、いないですか。やっておるとするなら、どのコマーシャルでやっておるのか、お教え願いたい。
  136. 井川博

    ○井川説明員 ラジオスポットでやっておりますが、どこのラジオでどうというのは、いま詳しくは承知しておりません。テレビには残念ながら現段階ではございません。
  137. 井上泉

    井上(泉)委員 ラジオスポットにいたしましても、これは本当にお茶を濁すということにも値しないわけです。テレビはもちろんやってないです。それは申し合わせの事項と反しておるし、通産省としてそういうことに関心を持っておるとするならば、私はそういう指導なんか、一こまの中でたった何字かを、たとえば総理府のことしの交通安全の標語を自動車の宣伝のときに一緒に入れるとかというようなことをやっても、別に金がかかるわけでも何でもないと思うのです。そういう細かい配慮というものも私は国民のために必要だと思うのですが、どうですか、通産大臣
  138. 河本敏夫

    河本国務大臣 私も、おっしゃるとおりだと思います。なお、交通安全のために、総理府等とも打ち合わせをいたしまして、考えられるあらゆる方法考えまして、十分配慮して手を打っていきたいと思います。
  139. 井上泉

    井上(泉)委員 メーカーといたしましても、社会に対するせめてもの罪滅ぼしで、自動車を売るだけの宣伝ではなしに、そういう良心があってしかるべきだと私は思うし、良心を話し合いで決めた、こう言っても、それが実際に出てこなければその良心というものを疑わざるを得ないわけでありますので、いま通産大臣の言われた言を信頼いたしまして、私はこれからのラジオあるいはテレビの自動車の広告というものを注意深く見ていきたいと思いますので、よろしくひとつ指導をお願いしたいと思います。  そこで、せっかくの機会でありますので、もう一点。これは自動車関係ではないのですが、水島の石油事故というものは、通産当局にも農林当局にも痛いほど思い知らされたコンビナートの事故だったと私は思います。そういう事故を再び繰り返さないように、まあこの世の中に絶対ということはあり得ないかもしれぬけれども、絶対このような事故を起こさないような、そういう対策というものは進められておると思うわけであります。進められておると思うわけでありますが、その進める中において、また新たなコンビナートをつくるとか、あるいは原油基地をつくるとかいうような構想を通産省ではお持ちだと思うわけです。  その中で、高知県の宿毛湾の原油基地という問題、これはもう数年来この問題が取りざたされ、そうして宿毛湾の原油基地に対する反対というものは、関係地域の人たちだけではなしに、太平洋沿岸のすべての漁民がこのことに強く反対をし、そうしてその結果は、溝渕知事——いまはやめられたのですけれども、溝渕知事も、そういう住民の反対、さらには今日の水産業界の現状、そういうものから考えて、原油基地というものは取りやめる、つまり、これを推進をするとかこの誘致を進めるとかいうことはしない、こういうことを言われたのでありますけれども、溝渕知事が退陣をされた。退陣をされたその後におきましても、やはりこの宿毛湾の原油基地構想というものは通産段階でも今日考えられるべきものではないのじゃないか、こういうことを考えるわけですが、これについての通産大臣見解を承りたいと思います。
  140. 河本敏夫

    河本国務大臣 先般の三菱石油の事故でございますが、あの大きな事故によりまして三菱石油の受けた損害というものは、いろいろな補償、それから休業による損失等を入れますと、五百億近いというふうに言われておるわけでございます。一つ企業にとってはまさに致命的な数字であろうと私は思います。そういうこともあり、石油タンクの問題は非常に大きな問題であるということから、今回の国会におきましてもコンビナート防災法が制定されたわけでございまして、あの事故を契機にいたしまして、何とか事故を防止しなければならぬという考え方は非常に強く認識されたのではないかと私は思います。  一方、一昨年の石油危機から、わが国といたしましても、どうしても九十日備蓄をやりたい、また、やる必要があるということから、本日、石油備蓄法案参議院で成立さしていただいたわけでございますが、これは国民の皆さんの理解を得ながら進めていきたい、こういうふうに考えております。  いま全国各地にそういう計画がたくさんあるわけでございますが、やはりこれを円満に進めていく、またスムーズに進行させていくためには、どうしても地元の住民の皆さんとの話し合いというものがないと進まぬわけでございます。話し合いがないのに、反対を無視してこれを実行するということはできないことでございます。でありますから、当然話し合いを十分しなければならぬと思いますし、その理解を得なければならぬと思いますが、私どもの考え方といたしましては、そういう話し合いを通じて全国各地にこういうCTSの基地ができるということを強く期待いたしておるわけでございます。  高知県におきましても、いろいろ問題があるようでございますが、将来地元との話し合いがつきましてこれが具体化するということを私どもは強く期待しておるということを申し上げておきたいと思います。
  141. 井上泉

    井上(泉)委員 日本の経済がいわゆる低成長の時代に入って、それで現在以上に石油消費というものがそう増大をするということもまあ考えられないし、現在の石油業界状態から考えても、私は、新たな原油基地を全国に何カ所も設けるとかいうような必要はないじゃないか、そういうふうに思うわけですが、なかんずく今日の日本の食糧事情というものから考えて、沿岸漁業というものがどんなに大切な役割りを果たしておるのか、これは大臣がたまたま通産省の所管ですけれども、たとえばお隣の農林大臣をやっておったら、とてもそんな魚の宝庫のところへ目がけてこれに石油基地をつくるなんということはとんでもないことだ、こういうお考えにならざるを得ないと思うわけです。私は、そういう点から考えても、この宿毛湾といういわば日本の三大漁業地と言われるような地域に対して、これに原油基地を持ってくるという考え方を今日なお通産省がお持ちということは、これは余りにも時代錯誤的な考え方ではないかと思うのです。そういう意見具申を通産大臣にすること自体も私は間違いだと思うのですが、これの担当は資源エネルギー庁ですか、立地公害局ですか、その宿毛湾のことについてはどう考えておるのか、お願いしたいと思います。
  142. 増田実

    ○増田政府委員 宿毛湾におきます石油基地計画は、数年前から民間の計画がありまして、現在までのところではまだ地元のコンセンサスを得るに至っていないということを聞いております。  ただ、政府といたしましては、石油基地の建設ということにつきましては、ただいま大臣からもお答え申し上げましたように、地元の方々の理解、協力を得まして、その上で建設する、つまり、どうしても地元民の方々の理解を得られないときに強行するというつもりはございません。石油備蓄の重要性、また、タンクの安全対策の確立その他を行いまして、地元住民の方々と十分お話し合いしまして、その上でこの九十日備蓄を達成いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  143. 井上泉

    井上(泉)委員 その九十日の備蓄を仮にやろうとするならば、現在の石油の備蓄の容量から考えて、どれだけまだ必要とするのか、そのことを問うておりますと時間がありませんので、問題は、この宿毛湾における原油基地構想というものは、国家経済の面から見ても重要な漁業の基地が汚染をされる。あそこは、大臣は行かれたことはないかもしれませんが、養殖にいたしましても、あるいは釣りにいたしましても、大変な漁船の数があるわけです。それに原油基地を設けて、大型のタンカーが入ってくるようなことになると、これは避航義務というものは小さな船にあるわけですから、あそこではもう漁業が壊滅するわけです。漁業が壊滅するということは、あそこの地域の漁民が困るというだけではなしに、日本の食糧経済の中に占めておるあの地域の漁業、さらにはまた、これから増大をしていかねばならない水産物というものに対する大きな障害になるし、それがためにも住民としては反対をしている。私はあえて全員が反対とは言いませんけれども、一部の人たちは、何とかしてここに原油基地を設けてくれれば市の経済が潤うぐらいな考え方をしておるかもしれぬ。あるいはこの間の知事選挙で出たいまの知事は、この宿毛湾の原油基地構想を政府がやるというなら進めると言っておるのですが、政府はやるという姿勢を持つのですか。政府は、住民の意思がまとまればやるけれども、政府みずからがたとえば県の行政機関を通じて、あの辺に原油基地を持っていこうじゃないか、やろうじゃないかというふうな働きかけをするつもりか、するつもりでないか、これをひとつ大臣に承りたいと思います。
  144. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、九十日備蓄を達成するためには、なお新しいCTS基地が全国に相当要るわけでございます。私どもは、そういう基地が地元との話し合いによりまして建設されることを強く期待いたしておるわけでございますが、しかし、地元との話し合いがつかないのにこれを進めるということは不可能でありますし、そういうことをするつもりは毛頭ありません。ただ、地元との話し合いが十分ついた、それじゃよかろうということになったときに初めてやるということでございます。
  145. 井上泉

    井上(泉)委員 まあ大臣はそう言うが、どうですか、資源エネルギー庁の方も、高知の県庁へあそこら地元が石油基地をつくるように意思統一をしてくれというような働きかけをするつもりですか、しないですか。
  146. 増田実

    ○増田政府委員 私どもの方は、九十日の備蓄計画を達成いたしますために、やはり備蓄の必要性、タンクの安全性その他の問題につきまして、十分地元あるいは関係の県の方々には説明するつもりでございます。ただ、具体的にどこをやれということでは私どもは話しておりません。
  147. 井上泉

    井上(泉)委員 いまの言葉を私は信頼して、事態の推移を見、そして原油基地をあそこへ設置するということを——私は備蓄が必要ないと考えるのか、必要があると考えるのか、そのことは勉強不足でありますのでよう言わぬわけですけれども、少なくともこれからの日本の食糧事情等を考え、沿岸の漁業の実態を考えて、宿毛湾に原油基地を持ってくるという構想は国家的にも大変誤ったことになるわけなので、そのことについては、私は地域の住民と一緒になってこれをつくるということにはきわめて抵抗し、そしてまた反対をするわけでありますから、その反対をすること自体が、いま大臣の言われる、住民が納得のいかないという形の中において通産省がそれはやろうともやれないだろうし、またやる意思もないという考え方を了承いたしまして、私の質問を終わりたいと思いますが、その了承に間違いないのかどうか、いま一言大臣の御見解を承って、終わりたいと思います。
  148. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのとおりでございます。
  149. 井上泉

    井上(泉)委員 どうもありがとうございました。
  150. 萩原幸雄

    ○萩原委員長代理 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十九分休憩      ————◇—————     午後二時三十八分開議
  151. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。浦井洋君。
  152. 浦井洋

    浦井委員 私は、きょうは大規模小売店舗、特に大型小売店舗の進出の問題について質問をしたいと思うわけです。  大規模小売店舗法が一昨年に成立をしたとき、反対したのはわが党だけだったわけなんです。そのときには、私ども共産党は、この法律が大規模店舗、特に大スーパーなどの大型小売店舗の進出に何の歯どめにもならずに、むしろ中小業者の経営を困難に追い込む、こういうことは目に見えておるということで反対をしたわけです。今日になってみますと、私たちが予見をしたように、この法律制定をされ、実施をされていく中で、私どもの警告した事態が全国各地に頻発をしておる、こういう状態であるわけです。だから、私どもはこの国会に、大規模小売店舗の進出について知事の許可制を入れるという内容の改正案をつくって、それを提案しておるわけなんです。この改正案こそ、私は中小業者あるいは消費者利益を守るものであるというふうに確信をいたしております。  そこで、どういうような混乱、どういうような事態が起こっておるかということを、二、三、例を引いてひとつ大臣にとっくりと聞いていただきたいと思うわけです。  一つは、神戸の問題です。神戸のダイエー湊川店でこういう事態が起こっておるわけです。毎週、金、土、日あるいは祭日にカラー刷りの大宣伝ビラを周辺の全世帯に配る、そして目玉商品を売り出しておるわけです。当然地元業者は大恐慌を来しておる。数字を挙げてみますと、卵一パック、これは十個入りでありますけれども、これが八十九円。普通小売店で二百二十円ぐらいで売っているわけであります。小売店が卸売市場から仕入れる価格というのが大体二百円ということでありますから、非常に廉売されておる。カップヌードルが同じく六十九円で売られておる。これは通常小売価格は百円、そして仕入れ価格が八十円ぐらい。ハウスバーモントカレーが九十八円で売られておる。これが通常小売価格が百九十円、仕入れ価格が百四十円。マヨネーズに至っては百八十九円で売られておる。これが小売価格が二百八十五円、仕入れ価格が通常百六十五円。こういうような事態があるために、一たん客が小売店から買った品物を、ダイエーの値段を知って後から小売店に突き返しに来るというような状態が起こっておるわけであります。  それからもう一つ例を挙げてみますと、福島県の郡山に進出をいたしました郡山ダイエー、十一月二十五日開店、これが既存のうすい百貨店というのと乱売合戦を演じておる。これは現地の新聞報道によるわけでありますけれども、二十五日に開店をして、二十六日にはダイエーが砂糖一キログラムを百八円で売ったところが、うすい百貨店は九十円で売る。二十七日になると、この砂糖一キログラムをダイエーが五十五円で売る。そうするとうすいは四十五円で売る。通常小売商で売っておる値段が二百円から高くても二百四十円。それからティッシュペーパーに至っては、通常百円から百五十円のものでありますけれども、これを二十六日にはダイエーが四十八円で売ったところが、うすい百貨店が四十円で売る。明くる日、二十七日にはこれをダイエーが二十円。そうするとうすい百貨店はとうとう十円で売り出すというような、非常に醜い乱売合戦を繰り広げておるわけです。そこで、たまりかねて十一月二十七日の午後四時ごろに、公取の仙台の支部から電話で注意をするというような事態が起こったわけです。現地の新聞報道によりますと、地元の小売商は、一言で言えば余りにもひど過ぎるということで唖然としておる。あるいは消費者に至っては、ティッシュペーパーが十円から二十円で買えるということは、これはもう一体小売価格は信用がおけるのかなというような不信感を持つ声が出てきておるわけなのです。  こういう状態、二例挙げたわけですけれども、さらに言うならば、神戸の湊川店で、私が十一月二十四日、祭日の日にこの商店街に行って、小売店の方々に聞き取り調査をやった結果を申し上げてみますと、大体ダイエーが開店した十四日以後、地元百業者のうち十九店は売り上げが二割減、三十八店が三割減、十五店が四割減、十店は売り上げが五割減というようなことで、いずれもダイエーの廉売商品と競合しておる業種、すなわち乾物、卵、お菓子あるいはうどん玉、こういうところで非常に大きな被害が生まれておるわけです。  これをそのまま続けておったために、こういう非常に悲惨な事故さえ起こっておるわけです。そのダイエー湊川店が入っておる湊川プラザという建物の中に、在来からの小売商が三十二店、店を出しておられるわけですけれども、その中のかばん屋さんが売り上げ不振のために蒸発をしてしまった。そこで残った奥さんははかなんで、シンナーをかぶって焼身自殺をした。これは地元の神戸新聞に大きく取り上げられたわけであります。年老いた両親と子供さんだけが残った。御主人はその後数日して近くの海岸から遺体となって発見をされるという非常に悲惨な事故が起こっておるわけです。それだけではない。この湊川プラザに開店したダイエーの前にかまぼこ屋さんがある。このかまぼこ屋さんの御主人も、売り上げ不振が間接的に心労を引き起こして、その後ショック状態で死亡されるということが起こっておるわけです。  私、一連の事実をここで挙げたわけでございますけれども、まず最初に大臣にお聞きしたいのですが、こういう事態を一体大臣はどう考えておられるか、一言所見をお伺いしておきたいと思います。
  153. 河本敏夫

    河本国務大臣 非常な安売りだと思いますが、これをどう取り扱うかということにつきましては、独禁法の十九条などでこういう問題を処理するということになっておりまして、よく実情を調査してみたいと思います。
  154. 浦井洋

    浦井委員 独禁法十九条の問題は後で少しお尋ねしたいと思いますが、ダイエー商法について、これは大臣はよく御承知だろうと思うのですけれども、必ずしも消費者のプラスになっておらないということを私、一言言っておきたいと思う。  これはこの前の委員会でわが党の野間議員も指摘したと思いますし、多くの消費者団体あるいは学識経験者の方も指摘しておられるわけですが、ダイエー全体としては他の商店に比べて決して安くない。ただ目玉商品やおとり商品が誇大に宣伝をされて、まるでダイエーの品物全体が安いような印象を与えて人を吸引しておる、こういう状況がすでに世の識者からははっきりと指摘されておるわけです。  私たちが調べたところによりますと、そのダイエー湊川店で、二、三数字を挙げてみますと、全温度チアーという二千六百五十グラム入りの洗剤を七百二十円で売っておるのに、周囲の小売店では五百八十円で売っておる。ネスカフェのコーヒー百グラムが、ダイエーで六百十八円、周囲の中小小売店では六百十円、プレスハム百グラムが、ダイエーで百円、周囲のお店では九十円、大森印のノリが、ダイエーで百九十二円で売られておるのに、周囲の中小小売店では百八十円、ダイエーの方が高いわけなんです。そういうものを取りまぜて、先ほど申し上げたように、これが目玉ですよということで、私ここに持ってきておりますけれども、こういうかっこうで新聞にだあっと大きなチラシを折り込んで、いかにもダイエーは全体として安いのだというような印象を与えて顧客を吸引しておる。これがダイエー商法の基本だろうと私は思う。  事実、聞くところによりますと、一、六、三商法であるとかいって、御承知のように、一は非常に安く売る、これは目玉商品、六は普通ぐらい、三はむしろ高く売る、その店全体としてはダイエーは十分もうかっておるというような、きわめて巧妙なやり方。さらに言うならば、全国チェーンでありますから神戸、大阪地区では一時損をする、しかし東北、仙台であるとか郡山というようなところでは非常にもうけるというようなことも、資本が大きいため、全国チェーンであるために可能であるわけです。こういうような事態が起こって、結果としては消費者にも、そして周囲の中小小売業者にも自殺を起こすような非常にひどい、人権問題にかかわるような波紋を生んでおるわけなんです。  そこで、大臣はいま調査をしてみるということであったわけなんですけれども、私はこういうような事態一つ取り上げてみても、ダイエーのやり方というのは大規模小売店舗法の第一条にうたわれておるところの「その周辺の中小小売業事業活動の機会を適正に確保し、小売業の正常な発達を図り」というこの精神にもとっておるというふうに思わざるを得ないわけでありますけれども、これも大臣の御意見をお伺いしたいと思う。
  155. 河本敏夫

    河本国務大臣 いずれにいたしましても、大混乱が起こりまして、そうして自殺者がたくさん出る、こういうことはもう大変なことでございますから、いまおっしゃったようなことは全国各地で聞きますので、一回全国的な規模でよく調査をしてみたいと思います。
  156. 浦井洋

    浦井委員 全国的な規模調査をするということでありますけれども、その調査というのは、大店法の十六条による報告であるとか立入検査なんかも含むわけですか。
  157. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 一般的な調査でございますので第十六条を使う必要はないかと存じますが、ただし、違法とかそういう問題があると考える場合には十六条を発動することもあり得るかと存じます。
  158. 浦井洋

    浦井委員 いま十六条を私、挙げたわけなんですけれども、そちらでよく御承知のように、「政令で定めるところにより」というその政令の中には、「その店舗における営業の方法に関する事項」ということがあって、小売業者に対し報告させ、立入検査させることができる、こういうような事態のときには、少なくともこの十六条は適用すべきではないか、私はこのように考えるわけなんです。  いま審議官から御意見を伺ったのですが、もう一遍大臣の方の御意見をお伺いしておきたいと思う。
  159. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 大店法に基づきまして、たとえば面積の問題であるとか、閉店時間の問題、休業日数、こういうものにつきまして違法の疑いがあるとか、あるいは届け出と反しておるというような疑いがございます場合には、場合によっては立入検査をするということもあり得るかと存じますけれども、価格の問題につきましては、大規模店舗法はこれを正面から調整する立場をとっておりませんので、価格の問題に関する限りにおきましては、それによりまして立入検査をするというようなことは考えておりません。
  160. 浦井洋

    浦井委員 価格の問題は大店法の所管外だという御意見なんですが、それだったらお聞きしたいのですけれども、第十条に「改善勧告」の項があるわけなんですけれども、この中に「顧客の送迎その他の営業に関する行為」というように書いてある。それで、いま私がいろいろ申し上げた事態、いまダイエーの行っておるところのおとり商品であるとか、あるいは過大な宣伝であるとか、あるいはこのチラシの問題であるとか、そういうような行為は明らかに「その他の営業に関する行為」にひっかかると思うわけなんですが、これについてはどうですか。
  161. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 大店法の中心になる調整行為に関しましては、第五条から第九条までに書いてあるわけでございますが、その中身は、先ほど申し上げましたように店舗の面積、休業日数、閉店時間等が中心となっておりまして、価格に関する調整はやることになっておらないわけでございます。それで、「顧客の送迎その他」と言っておりますのは、その「顧客の送迎」という例示によっても示されておりますように、その営業に関連する周辺的な行為を意味しておるというふうにわれわれは解しておりまして、その中に価格に対する介入というようなことは含まれていない、こういうふうに考えております。
  162. 浦井洋

    浦井委員 その他の一項というのは、営業に関する周辺的な事項ですか。そうすると、たとえば先ほど私が見せたようなチラシ広告のたぐい、これなんかはやはりその他の営業行為に入るわけですか。
  163. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 大店法の規制の体系、調整の体系が大規模小売店舗審議会の意見を聞いて変更命令等を出すという体系になっており、さらに大規模小売店舗審議会は、その意見を決める場合には小売商、消費者等々の意見を聞く、こういうたてまえになっておるわけでございますが、小売商、消費者、学識経験者等々を集めました会合におきまして、価格の問題であるとか、宣伝方法の問題であるとか、こういうことを議論するということは、技術的に申しましてもきわめて困難なことではなかろうかというふうに考えます。それで、もし広告の方法等で不当表示等の問題があります場合には、独禁法等によって取り締まるということが妥当ではなかろうかというふうに考えます。
  164. 浦井洋

    浦井委員 技術的に困難だから広告もこの第十条にはひっかからないということですが、そうすると、逆に言えば、技術的に可能であればやれるということですか。
  165. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 技術的に可能であっても、それを取り締まるかどうかということは立法政策の問題であろうと存じます。
  166. 浦井洋

    浦井委員 立法政策というかっこうで審議官は逃げたわけなんですけれども、次に、公取に聞きたいと思うのです。  いまも大臣の方から、独禁法第十九条、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」ということで、その不公正な取引方法の中に、すなわち、公取の告示第十一号の第五項ですか、これに「不当に低い対価をもつて、物質、資金その他の経済上の利益を供給」すること、こういうふうにあるわけですね。先ほどから聞いておられたと思うのですが、こういうダイエーの行っておるようなこと、これはもうだれが見ても、国民的常識からいって不当だと思う。こういう不当な廉売行為が、神戸の湊川店の場合、十一月十四日に開店をしていまだに続いておるわけなんですけれども、こういうような行為は、これは明らかにこの告示第十一号の第五項に該当すると私は思うのですが、どうですか。
  167. 野上正人

    ○野上政府委員 お答えいたします。  現在、ダイエーの湊川店、それから郡山店、この二件につきましては調査をしておりますので、法律の適用、それから事実につきましては、答弁を控えさせていただきたいと思います。
  168. 浦井洋

    浦井委員 答弁にならないわけですね。いつその調査がわかるわけですか。
  169. 野上正人

    ○野上政府委員 早急に結論を出したいと思っております。
  170. 浦井洋

    浦井委員 早急に結論を出したいということなんですが、どの場合にもそういうかっこうで、結局うやむやになっておる。いままでの公取の態度では非常に弱腰ではないかというふうに私は思うわけです。これはもう明らかに不当廉売だというふうに考えられるわけなんで、早急に十九条を適用して規制をするということをひとつ確認をしておきたいと思うわけです。  それから、公取は十一月二十日にチェーンストア協会に申し入れをしたということなんですけれども、その中には不当廉売のことは入っているわけですか。
  171. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 チェーンストア協会、セルフ・サービス協会、月賦百貨店協会に対しまして、最近警告と申しますよりも、それらの団体に加盟している大型小売店舗も、独禁法で百貨店業の不公正取引方法についての特殊指定がございますが、この指定に現在それぞれの大型店舗も皆対象になるのであるということを改めてはっきりと通告いたしまして、その特殊指定を遵守しなければいけない、自分たちは百貨店と名乗っていないからこの特殊指定にかからないのだということではないのですということを通告いたしたわけでございます。  なお、価格の問題につきまして、余りにもむちゃくちゃな、競争と申しましても、周辺小売業者、さらにはまた消費者までも不安に陥れるような価格競争をするということは、やはり独禁法で言う不公正な取引方法に該当するので、そういうようなことについては自粛するようにということは、私どもの方で、審査部とは別な立場でもってかねてから警告をいたしております。具体的には、牛乳の廉売等がある時期非常に多かったわけでございますけれども、こういう事態についても、そういうことは自粛するようにということをかねてから法律の趣旨に照らして警告はいたしておりました。
  172. 浦井洋

    浦井委員 もう一遍聞きますけれども、その特殊指定の中に廉売行為というのはきちんと特定はされておらぬわけですね。
  173. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 百貨店業の特殊指定の中には、一つは納入業者が百貨店に対して非常に力が弱い、大規模小売店に対しては力が弱い。そこでいろいろな不利益な条件を納入業者に押しつける場合がございます。不当に値引き要求をしたり、不当な返品要求をしたり、あるいはまた手伝い店員を強制したりするというようなことがございますので、そういうようなことは不公正な取引方法だということで、やってはいけないのだということを決めております。  それからもう一つ、景品つき販売というものを野放しにいたしますと、周りの小売屋さんなんかがそのために非常に影響を受けて困るというので、こういうものへの規制も百貨店の特殊指定の中に入ってございます。  いずれも、そういうことを抑えることによりまして、むちゃくちゃな廉売競争の原因になるようなことがなくなるだろうということで、特殊指定の内容では、そういうふうな廉売そのものではございませんけれども、廉売の原因になるような不当な、問屋さんに対する買いたたきとかをしないようにということを決めてございます。     〔委員長退席、前田(治)委員長代理着席〕
  174. 浦井洋

    浦井委員 不当廉売を来す直接的な原因を抑えるためということなんですが、現実におさまっていないわけなんです。どんどん起こっているわけなんです。だから、私はひとつ要望もし、意見を聞いておきたいと思うのですけれども、そもそもこの告示第七号というのは、百貨店業というかっこうになっているわけでしょう。これを徹底させる意味で、要望書は出されたかもわからぬけれども、やはりチェーンストアとか大型小売店とかいうかっこうでまず直さなければいかぬと思うのです。  それともう一つは、不当廉売が現実にそういうところでだあっと起こっているわけですから、それをぴしっと直接的に織り込んだようなかっこうでこの告示を改正すべきだと私は思うのです。それはどうですか。
  175. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 現在、百貨店業における特殊指定、これは大規模小売店を全部含めたものということで運用されておるわけでございますけれども、その内容につきましては、私どもの方としても、これは二十九年につくられた特殊指定でございますので、現状におけるいろいろな問題点というものを考え合わせなければならないということで、現在スーパーあるいは百貨店に対しても、そもそも非常に安く仕入れるところからそういう安売りのもとになる物もあるのでございますので、そういうような納入条件等についての現状を調査いたしております。それによって、あるいはその内容を直さなければならないのかという点も現在考えております。  それからなお、小売屋さんに対する影響というような点でもって、先ほど先生御指摘になりましたような誇大広告だとか不当表示だとかいう問題、これも当然先ほどの広告に関係して起きてくる問題でございますので、これらにつきましてはむしろ景表法でもって規制できるような方法というので、その一つといたしまして、景表法の十条でもって、業界が自主的に——これは競争で皆やるのです、競争それ自体はよろしいのですけれども、むちゃくちゃな競争によってそういう事態が起こるので、そういう競争をおのずから自粛するという意味で、公正競争規約という制度がございますので、その公正競争規約を大型小売店の間でもつくるように、不当表示をしないように、さらにはむちゃくちゃな景品つき販売をして周りの小売屋さんを困らせることのないように、そういう趣旨での公正競争規約をつくれということで現在指導をいたしております。
  176. 浦井洋

    浦井委員 時間がだんだん迫ってくるので先を急ぎますけれども、いま公取に質問をしているわけなんですが、通産省がこの問題に関係なしということで済ましておれない問題であろうというふうに思うわけです。  そこで、通産大臣にひとつ提案をしたいわけなんですが、大店法で開店するまでのいろいろな規制は不十分ながらあるというふうに言われておるわけなんです。ところが、開店してしまってから現実にはいろいろなトラブルが起こっておる。だから、そういうときに地元の業者とそれから進出した大型小売店舗とが協議をするような制度、これを通産省の指導で積極的につくっていくべきではないかというふうに思うわけなんですが、大臣並びに通産省の御意見を聞いておきたいと思うのです。
  177. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 法律上のたてまえといたしましては、商調協のできることと申しますと、先ほど申し上げました三つの事項、すなわち店舗面積、閉店時間、それから休業日数等の調整をするということが中心になっておるわけでございますけれども、しかし関係者の同意さえ得られれば、別にそれ以外のことをしてはならないということにはなっておらないわけでございます。したがいまして、そのお座敷と申しますか、協議をする場所といたしましては、小売商、消費者、それから学識経験者というバランスのとれた構成になっておるわけでございまして、お座敷としてかっこうがいいわけでありますから、そこで関係者の同意を得られれば、開店後、大規模店舗とそれから周辺の小売商との間でいろいろ問題が起きているような場合、その座敷を使いまして円満な関係に導くというようなことをするということは望ましいことであるというふうに考えております。
  178. 浦井洋

    浦井委員 商調協の話に移ったわけなんですが、そうすると、現実には各地の商調協というのは開店までは、それは大臣から審査するための意見を求められて意見書を出すということで、商調協を構成しておる人たちは、商調協の役目というのはそれまでだ、あとは知りませんという態度をとっているわけなんです。ところが、審議官はいまそういうふうに言われた。そうならば、せっかく商調協の設置規則の標準例もつくっておられることだし、私もそう思う。  特にいまも言われたように、標準例第三条第二項で「大型小売業者と一般小売業者間の商業活動における問題の一般的調整を図ること。」であれば、開店後もアクションし得るわけなんですよね。であるならば、そのことを商調協のメンバーであるとかあるいは商工会議所なりに、もっとはっきりと通産省の態度を知らせるべきではないか。たとえば通達でやるとか、通達の少し補完をやるとか、そういうことをやりますか。
  179. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 いまおっしゃられました標準規則は、日商が作成したものでございまして、したがいまして、日商のメンバーである各地の商工会議所等は、中身は十分知っておるはずであるというふうに考えております。しかし、なお周知につきまして努力をいたしたいというふうに思います。  なお、念のため申し上げておきますけれども、開店前の店舗面積等の調整、これは法律に基づいて行う行為でございまして、最終的には大規模小売店舗審議会を経て通産大臣のいろんな行政行為とつながる、こういう仕掛けになっておるものでございますが、その開店後のいろいろな一般的な不満の調整ということになりますと、これは法律上の行為ではなくて、お互いの申し合わせに基づく事実上の行為ということになりますが、しかし、そういう場としては結構であるというふうに考えますので、なるべくそういう方向でその場を利用するということが望ましいものと考えております。
  180. 浦井洋

    浦井委員 指導しますか。
  181. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 われわれとしては、この商調協につきまして、直接これに命令するような権限は持っておりませんのですが、そういう方向で勧奨をいたしたいと存じます。
  182. 浦井洋

    浦井委員 ちょっとはっきりせぬのですが、商調協がそういうようなかっこうになれば、開店後も作動し得るというような解釈で、そしてそこでその場を利用して、地元業者と進出した大型小売店舗とが協議するというようなことはあり得る、こう理解していいのですね。
  183. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先ほど申し上げましたように、商調協のメンバーがそういう方向で商調協の場所を利用するということに合意いたしますならば、そうすることが望ましいことであるということでございます。
  184. 浦井洋

    浦井委員 それで、商調協の話になったわけなんですが、神戸の商工会議所に設けられておる商調協の態度を言っておきたいと思うわけなんです。これは開店前の話ですけれども、神戸の湊川ダイエーに関する場合には、第三条の届け出が三月に行われ、第五条が六月に行われ、そして六月二十五日に商工会議所や商調協の意見が出ておるはずです。  これは一つだけ疑問を聞いておきますけれども、商工会議所の意見も商調協の意見も一緒に一括して出されたというふうに理解していいですか。この場合はそういうことですか。
  185. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 商調協の意見を商工会議所が受けまして、そのまま中央の審議会に取り次ぐというシステムになっておるわけでございます。
  186. 浦井洋

    浦井委員 だから、神戸の商工会議所の商調協は、言えば地元に反対がないからこれは影響なしというようなかっこうで、すらすらと意見書が審議会に出されたというふうに理解していいですね。     〔前田(治)委員長代理退席、委員長着席〕
  187. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  188. 浦井洋

    浦井委員 それで、時間があと五分ということなので急ぎますけれども、ところが実態はそうではないわけなんです。たとえば二、三例証を挙げてみますと、この湊川の商店の組織の一つである東山商店街というところがアンケート調査をやったところ、組合員百七十八名中ダイエー進出に賛成がたったの十一名にしか過ぎない、こういうことがあるわけなんです。事実、開店直前でありますけれども、十月二日には湊川商店街ダイエー進出反対連絡会というのがつくられて、神戸の市議会に進出反対請願を出しておる。さらに、さかのぼって八月二十七日には、湊川の商店街をつくっておる五つの商店街のうち四つの商店街が、この商調協に対してダイエー進出反対陳情書を出しておる。同様の陳情書は、九月二十五日に大阪の通産局にも出ておるわけなんです。  だから、これは商調協が出してきた意見、すなわち反対がないので影響なしというようなこととは全く違う。ひいては、この商調協に関する通達の中に書かれておるような「中小小売業者をはじめとする関係者の意見が正しく反映されるように留意すること。」こういう趣旨と全く異なっておるというふうに思わざるを得ぬわけなんです。  そこで、私、この商調協のあり方について、これも一つ提案をしておきたいと思うわけなんですが、事実、この商調協の神戸の方に参加されておる関西大学の名誉教授である山崎という方が、新聞にこういうことを書いておられる。現在の大規模小売店舗法の中には、地元に情報を徹底させるというようなこととか、あるいは被害が出るような場合、あらかじめ被害について判断し得るような基準が盛り込まれておらないなど、法としては不備である、だから、こういう点は直さなければならぬのではないかというような御意見を述べておられるわけなんです、商調協のメンバーの一人が。  だから、やはりこういう場合には、消費者ももちろんですけれども、特に影響をもろに受けるところの関係小売業界には周知徹底させる、ビラを配るとか、あるいはきちんとした公示制度をとるとか、こういうようなことを今後制度化すべきではないかというふうに私は思うし、それを提案したいと思うのですが、通産省の御意見をお聞きしたいと思う。
  189. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 当該地域の小売商にどういうような影響が及ぶか、あるいは当該地域の消費者利益というのは何であるか、こういうことを抽象的に言うのはやさしいわけでございますが、しかし、それをもう少し具体化して、何か確固たる基準のようなものがつくれるかと申しますと、私たちは、それをつくることが望ましいということはよく痛感をいたしておりますけれども、現実にこれを作成する、特に全国一律にそういうものを作成することは非常にむずかしいので、どうしていいかいまのところ検討しておるということでございます。  それから、当該地区の住民、すなわち消費者と小売店両方につきまして、問題点の周知徹底に努めるべきであるという御趣旨はごもっともと存じます。ただ、これも通産省が直接やるわけではございませんので、そういう方向に地域の民主主義として努力するようにということにつきましては、そういう方向で指導をいたしたいと存じます。
  190. 浦井洋

    浦井委員 それだったら通産省は要らないじゃないですか。法律は一人歩きしておる、その法律はざる法だということで、通産省は全く責任がないということにならざるを得ぬと私は思うわけです。基準についても、ここでもう読み上げませんけれども、すでに船内幸雄という経営コンサルタントの方が一定の案を出されておるというふうに聞いておりますし、通産省の役人が商工会議所の質問に対して答えておるというようなある程度オーソライズされたものもあるわけですから、こういうようなものを参考にして早急につくるべきだ、そしてそれでもってとにもかくにも早く中小小売店に対する被害を防ぐ、このことがひいては消費者利益を本当に守っていく道だというふうに私は思うわけです。  私ども共産党は、いまの大店法の範囲内でも、私がいままでるる述べたような大スーパーの非常に不当な廉売行為、そのほかの営業行為を規制する措置はとり得ると思うわけです、とり得ないというのがあなた方の御意見なんだけれども。そういう意味で、通産省も公取もともにそういうような立場でひとつ厳格な措置をとるように要求したいと思うわけですし、やはり抜本的には届け出制を許可制に改めるというような改正が必要だという意味で、わが党の改正案を早期に成立をさせることを私は要求したいと思う。  そこで、最後に、こういう問題についての通産大臣の決意のほどをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  191. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、各地で大分問題が起こっておるようでございますから、よく調べまして、できるだけの対策は立てるようにいたします。
  192. 山村新治郎

  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは非常に限られた時間で質問するわけですが、まず初めに、福田長官にお伺いしたいと思うわけです。  GNPの発表があったわけですが、二期連続プラス、七−九におきましては前月比一%増、こういう発表があったわけでございます。中身を見てみますと、非常に在庫増というものが反映をしておる。在庫が増加することによって、その拡大によってGNPを押し上げておる。こういう点からいきますと、経済の実勢の冷え込みという事実から見て、どうも理解がしがたいわけです。今回のこの数値を見ましても、これによりましてざっと〇・七在庫増によって押し上げておるということになっておるわけですが、そういう点におきましてGNPの構成項目というものは減速経済のもとにおきましては実態を反映しておらない、こういう点で根本的に考え直す必要があるのじゃないか、このように思うのですが、この点についてはいかがお考えですか。
  194. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 経済活動全局を見た場合に、最終需要の側面から見ますときに、国民の消費、設備投資、それから民間の住宅、また政府財貨サービス、また輸出、さらにいま御指摘の在庫投資、こういう問題がありますので、在庫投資といえどもこれは最終需要の一つであるということにおきましては違いがないわけであります。ただ、お話しのように、在庫の問題が大きく揺れ動いたという際におきましては、これはそれなりに別の要素がどういうふうに動いていくかということを見て経済活動の診断をしなければならぬだろう、こういうふうに思います。  五十年度について言いますると、確かに上半期におきましては在庫投資が非常に多うございます。多うございますが、多いだけに下半期におきましては在庫調整が行われる、こういうふうに見ておるのでありまして、したがって、年度全体といたしましては、在庫は四十九年度に比べましてそう大きく経済活動を狂わせるほどの状態にはなるまい、こういうふうに見ておるわけであります。年度全体としてそういうふうな見方をするときには、補正予算段階で五十年度は二・二%成長、こういうふうに申し上げましたが、若干それを上回るということになるだろう、こういうふうな観測をいたしております。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 在庫が揺れ動いた、こうした点においては別の要素で見ていくという補足的なことをおっしゃったわけですが、そうすると項目としては変える必要はない、ただしよく説明をする必要がある、こういうことでございますね。それは政府としては今後ひとつよくわかるように説明をしていただきたい、このように思います。  それから、経済見通しはいろいろ言われておるわけですが、成長率は五・四ということで政府は一致したようなことを聞いておるわけですが、そのとおりですか。
  196. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 五十一年度の経済見通し、特に成長率につきましては、これは財政の規模をどういうふうに見るかによりまして若干変動が出てくるわけであります。まだ予算編成の作業の途中でありまして、したがって、何%というような成長率の高さを最終的に見通すわけにはまいりませんけれども、財政の方では、いま動いておる調子を見ますと、大体五%台ということは言えると思うのですが、それが五・四というところまでまだ固まっておらぬ、そういう段階でございます。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、経済対策閣僚会議におきまして、来年度につきましては公共料金を上げていく、こういう基本方針が決まったということを聞いておるわけですが、その中でも国鉄あるいは電話を最優先する、あと、塩であるとか、麦であるとか、国立大学の授業料等の引き上げをやるのだ、こういうような申し合わせをなさったように聞いておるわけですが、こういうことで、今年度は消費者物価指数は一けた、来年はさらに下げるという方針をとっておられるようでございますが、実際にそういうことでいけるかどうかという問題ですね。  何回も申し上げておりますが、今年のベースアップも低かったし、景気も悪い、こういうような中で公共料金をこのように引き上げていく、しかも大幅な引き上げになっているわけですね。一応そういうような話し合いが行われたということでありますけれども、長官としては国民生活を考えてやはり歯どめをかけていく、こういう方向に立ってもらわないと、一番国民が期待しておるのは経企庁であり長官であるわけです。また、その長官がこの経済対策閣僚会議のキャップもなさっておる。そういう方が公共料金を引き上げていくと言うことは、非常に問題だと思うのです。この点、ひとつ歯どめをかけていくという姿勢に立っておられるのか。また、こうした項目が挙がっておりますが、その中でも特にこれは抑えたいというものがあれば、具体的にひとつお話ししていただきたいと思うのです。
  198. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ただいま五十一年度の予算の編成中でありまして、各省から所管の料金につきまして改定の要求があるわけであります。中でも国鉄の料金につきましては、実収におきまして八〇%アップ、また電電公社におきましては度数料を、いま七円でございますが、それを十円にする、それから基本料金につきましてこれを一〇〇%引き上げを行う、そういうような状況でございますが、私といたしましては、国鉄なり電電公社当局の経理の現在の状況につきましてはよくわかるのです。わかるのですから、これは改定しなければならぬ、こういうふうには考えまするけれども、一挙にこれを八〇%引き上げます、一〇〇%引き上げます、そういうことになりますると、これはまた一面、国民生活あるいは経済活動の面への影響ということを考えないで結論を出すわけにはまいりません。物価につきましてもまたしかりでございます。そういうことを総合的に考えまする場合に、各省から要求が出てまいりましたからそのとおりと、こういうことはいたしません。やはり国民生活に対する影響がなだらかに出るように、また、物価政策との整合性がとれるように、そういうことを踏まえまして公共料金の上げ幅、そのタイミング、そういうことを決めなければならぬだろう、こういうふうに考えておりますが、来年公共料金全体といたしましていろいろの要求がある、その中で取り上げるものにつきまして、これを五十一年度としてどういう幅、タイミングにするかということにつきましては、これから各省の間でよく相談をいたしまして、ただいま申し上げましたような方針のもとに決めていきたい、こういうふうに考えております。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 基本方針はわかったのですが、国鉄等につきましては、八〇%というようなことは余りにもむちゃだ、国民生活を考えてもっと低く抑えるという方向をおっしゃったわけですが、電話、電報等を見ましても、電話につきましては基本料金を二倍にする、度数料を七円から十円にする、電報は普通電報を二倍にするというような非常に大幅な引き上げを考えておるのですが、今日電話というものはなくてはならない、われわれの生活に食い込んでおるわけですが、これがこういう大幅な値上げということは国民生活にきわめて深刻な影響を与えますし、これは非常に大幅過ぎると思うのですが、長官のお考えはいかがですか。
  200. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 公共料金全体といたしまして物価に与える影響が何%ぐらいな影響度になりますか、二%台というか、二%をちょっと上回るというか、その辺の影響度にとどまるくらいでありますればまあまあかなと、いろいろ考えておりますが、そういう中で現実の問題としての国鉄、電電、あるいは塩の問題があります。あるいは米価の問題があります。授業料の問題があります。そういう問題を決めなければなりませんけれども、とにかく一年でそういう問題に決着をつけるのは無理だ、せいぜい二年ぐらいはかけてこういう問題の処置はしなければならぬかなといま考えておるのです。まだ具体的に関係各省と相談をしておらないのでありますが、そういう考えのもとに私としては対処するということだけはこの際申し上げて差し支えない、かように考えます。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 公共料金の引き上げはきわめて波及が大きいわけです。麦の値上げというようなことがありまして、もうすでに飲食店等におきましては便乗値上げというようなことも行われようとしておりますし、どうかこういう厳しい不況の中でございますので、公共料金引き上げについてはひとつ十分慎重な配慮をする必要があろう、このように思うわけでございます。  それで、いよいよこの年末を控えまして、正月商品の値段というものについては国民はきわめて関心を持っておるわけでございますが、牛肉なり豚肉を初めとしまして非常な高騰を示しておるわけですが、この点については対策はどのようにお考えになっておられるのですか。
  202. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 年末の対策につきましては、特に年末生活物資の対策対処方針というものを立てまして、これは農林省初めその他の所管官庁とともに相協力して、とにかく安定した年越しができるようにということを念願いたしておるわけでありますが、ただ、生鮮食料なんかにつきますると、これはもう天候というような要素があるものですから、努力をいたしましてもなかなか及ばぬという面があり得ることでありまするけれども、とにかく人事を尽くすというか、政府としてできる限りの努力をいたしておる、こういう最中でございます。
  203. 近江巳記夫

    ○近江委員 それだけの意気込みでおられるわけですが、それじゃ具体的に、牛肉とか豚肉等についてはどうなさるわけですか。
  204. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 牛肉、豚肉についてでございますが、牛肉につきましては輸入肉の割り当て放出を十月の末からずっと行っておりますが、これも年末にかけまして放出をしていくというような考え方一つ持っております。それから豚肉につきましても、非常にトン数は少のうございますけれども、これにつきましても安売りを農林省の方でやっていただくということを考えております。  そのほか、これは豚肉ばかりじゃございませんが、生鮮食料品全般につきまして、できるだけ大都市を中心とします供給量が十分にありますような対策を講じていくということで、運輸省、農林省関係各省ともどもに対策を講じていく予定でございます。
  205. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、福田さん、お帰りになって結構です。  公取委員長通産大臣にお伺いしたいと思うのですが、最近産業界におきまして、合併であるとか提携であるとか、いろいろな問題が出てきておるわけでございますが、一例としまして東洋紡、鐘紡、ユニチカの三大総合繊維メーカーが提携をするということが一部伝えられておるわけです。この提携という問題は、結局この不況の乗り切りのためであるととらざるを得ないわけですが、最初に公取委員長に、この提携についての基本的な所見をお伺いしたいと思うわけです。
  206. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 業務提携が、その態様によりまして非常に軽いもの、それから合併にほとんど等しいじゃないかというふうなもの、違いがございます。ですから、具体的なケースについて見なければこれはいい悪いという判断はつきかねますが、基本的なことだけを申し上げれば、それが不当な取引制限によって競争を実質的に制限することになる場合、また、もっと激しい場合には私的独占になる場合もございます。いずれにしても、全然差し支えない、弊害なしと認められる場合もあれば、あるいは第三条違反になるおそれのあるものがございますので、そういう後の場合につきましては規制しなければならないことになります。
  207. 近江巳記夫

    ○近江委員 この業務提携はいろいろな形で進行すると思うのですが、合併と同じ効果を持つようになるのではないか、このように思うのですが、かつての新日鉄の合併が、現在問題になっております価格の同調的値上げをもたらす結果になっておると思うのです。これは若干観点が違うわけでございますが、やはりこういう提携ということは、いま公取委員長がおっしゃいましたようなそういう法違反に進むような可能性が大いにあるのじゃないかと思うのですが、一般的な傾向としては、公取委員長としてはどういうような見方をなさっておられますか。
  208. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私どもは、先ほど仰せられた繊維の大手の三社の提携なんかにつきまして、その内容を努めて早く知るように事務当局を督励しておりますけれども、実ははっきり申し上げまして、わからないのです。これは通産当局にも事務当局から聞いておるけれども、きわめてあいまいといいますか、内容についてはよくわからない。それから、その会社の代表といいますか、常務クラスの人が公取へ来たそうですか、しかし、これはあいさつ程度であって、その提携の内容については一切触れていないということでありますので、具体的な問題としてはお答えできません。ほかの点についてもまた同様でございます。  しかし、いまおっしゃられた、やり方によってはその業界における競争を実質的に制限する、不当に制限するようなことになる、そういうおそれが出てくる場合がございます。それは、そこまで私が個人的な意見を述べてしまうのがいいか悪いか問題はございますが、先ほど新日鉄の例を引かれましたのであえて申しますが、それらを合わしたところのシェアが、業界全体を通じて見た場合に対して、必ずしもたとえば合併の基準である二五%というふうなものに達しない場合でも、合併についても同様にこれから検討しなければならぬと思いますが、完全なリーダーシップを握ってしまう、プライスならばプライスリーダーになる、そういうことが歴然としておるような場合は、これは大変に注意を要する。  どんな場合にそうかということは、それぞれの内容を見ないと言えませんけれども、いわゆるガリバー型といいますか、それらの三社なら三社なりが業務提携をした。そして、かなり密度の濃いものであるという場合に、それに次ぐものとの間に余りにも格差が大きい。あとはそれに比べれば非常に小規模である、規模の格差が大き過ぎるというふうな場合には、国際競争強化の問題はありましても、やはりそういうことを頭に置きながら、いわゆるプライスリーダーシップをとって、事実的にはそれらの態度いかんによって業界がすべて支配される、業界の動向が制限される、こういうふうなおそれのあるものについては、これは独占禁止法上そのまま見逃すことができない場合があるというふうに思います。  しかし、これはこの段階におきましてはいわば私の私見でありますので、また、そういうことをここで申し上げることが適当ではないという見方もありましょうが、委員会としてもそういう方向で検討をして対処しなければならない、かように思っている次第でございます。
  209. 近江巳記夫

    ○近江委員 この場合、業界におきましてはナンバーワンからスリーまでの巨大企業ということを聞いておるわけでございますが、この三社の主な生産品の品種別のシェアとしては大体どのぐらいになるのですか。これは公取でも通産省でも結構ですが、簡潔にお答えください。
  210. 水口昭

    ○水口政府委員 お答え申し上げます。  これは公取が調査いたしました生産集中度調査でございます。ちょっと年度が古うございますが、昭和四十七年の数字というふうに御承知いただきたいと思います。  それで、東洋紡、鐘紡及びユニチカ、これが仮に三社を一緒にした場合でございますね、主なものについて申し上げますと、まず純綿糸が一六・四%でございます。それから流毛糸が二四・五%でございます。それから合成繊維、これはナイロンもテトロンも全部一緒にいたしまして一八・四%、それから綿織物が五・五%、それから梳毛織物が五・八%、以上のようなことになります。さらに、そうなった場合の業界における順位を見てみますと、合成繊維が第二位でございまして、それ以外はすべてトップになる、こういうことになっております。
  211. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、いろいろなケースがあろうかと思うのですが、いまの御報告を聞きますと、梳毛なんというのは二四・五%になっておるわけですね。これに達しない場合でも、第二位との格差が大きければ、いわゆるプライスリーダーとしてのそういう状態をつくり出す、きわめて影響が大きいということをおっしゃっておるわけですが、いま報告していただいたこの数値から見まして、委員長としては、こうした提携が行われた場合、やはり心配が相当出ますか、どのように診察なさっていますか。
  212. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これはその三社を合わしたシェアを単純に足したものでございますが、それでありますから、合併ということになりますると非常に際どいケースになる。総合的に判断すると、これはかなり厳格に扱わなければならぬのじゃないかと思いますが、業務提携ということで発表——発表したわけじゃないのでしょうけれども、とにかく新聞に報道されたわけでございまして、その業務提携の内容というのが全然わかっておらぬ。  そういうことでございますから、いまのところそれに対していい悪いということは簡単に言えないのですけれども、とにかく第一位となった場合に、確かに第二位との格差が余りに大きいと、実際は競争相手にならないわけですね。そこに競争を実質的に制限するというか、業界を支配してしまうような結果になるような種類のものであれば、これは問題となるでしょう、こういうことを申し上げておるわけでして、いま公正取引委員会委員会として決定すべき事項につきまして、私はここで余りに内容を知らないままに行き過ぎた見解を申し上げることはどうも差し控えておかなければならぬのじゃないかと思いますので、この点は御理解を願いたいと思いますが、確かに業界によりましては会社の数が——いま会社の数は申しませんでしたけれども、いろいろございます。百社に近い、九十社程度のものもありますれば、梳毛糸の織物なんかになりますと一万を優に超えている。しかし、これは梳毛糸の織物ということになりますと、他にも日本毛織とかそういう有力なものが並ぶことになりますから、必ずしも独占、ガリバー型寡占とも言いかねるのですけれども、その辺のところを総合的に、一体提携の内容がいかようなものであるかということを十分吟味した上で考え方を決めていきたいということであります。  基本的には、あくまで業界をほとんど実力で制覇してしまうような、支配してしまうようなものは、一応の二五%云々という基準は、合併の基準として私どもがかつての基準よりも若干厳しくしたわけでございますが、こういうものに対して外国の事例などもやはり十分研究しておかなければなりません。アメリカ、西独の例、私は確かとは申しませんが、聞くところによると、二社程度の提携でありましても、それが業界に対して多大の影響を及ぼすと認めるときには、合併は無論のこと、業務提携でも密度の濃いものは認められないというふうなこともございます。  合併そのものについて、正確な基準というものはいかにあるべきかということは、必ずしも国際的に一定の標準で決まっているものではありません。要するに抽象的に書いてあるわけでして、いま申しましたような、その業界において明らかに競争を実質的に制限することになるようなことはいけないのだということでございますから、いま私が述べ得ることといたしましては、先ほど申し上げましたけれども、いま私がある程度具体的にその方向を述べるというだけでございまして、その点、それ以上の突っ込んだことについては、私としては委員長といえども具体的な事情もわからぬうちに余りにも突っ込んだお話を申し上げることはやはり自粛しなければならぬという立場でございますから、御了承をいただきたい。
  213. 近江巳記夫

    ○近江委員 公取委員会としましては、業務提携というものについてどういうようにチェックをなさっておるかという問題ですが、株式保有であるとか役員兼任等につきましては、これは独禁法の規定があるわけでございますが、技術あるいは原料の共同購入、販売等の提携につきましては、どういうように現在チェックをなさっておりますか。
  214. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 仮に販売の提携というようなことになりまして、それが有力会社間で行われる場合には、時としてそれは三条後段違反、つまりカルテルに相当する場合があります。原料の共同購入についてもやはりそういうことがございますが、先般私どもが公表いたしました鉄鋼の原料の共同購入という問題については、われわれがある程度うかつであったということは否定できませんので、一体その後どうなっているんだ——鉄鉱石だけについて言えば、オーストラリアが非常に大きいのですが、カナダの分についても共同購入のようでありまして、これを合わせますと五一%になる。四八と三で五一になる。つまり過半のものが共同購入である。それをもって、業界は同じような値段で買っているのだからコストが同じだとは言っていますけれども、そういうことを言うこと自体が本当はおかしいのでして、全部が全部もちろん共同購入ではありませんから、原料価格に差がございます。  差があることは認めますが、その原料の共同購入自体について所定の手続を踏んでいないということは、どうも争いがたい事実のようでございますので、われわれとしてはその点を、どうしてそうなったのか、もちろんオーストラリアの鉄鉱石の分が急激にそこまでふえたのではないので、一番最初のもとはもちろん共同開発から始まったのですが、〇・何%程度だった。そのときにはこれは問題にするに足らないということであったのでしょうが、非常に大きな割合を共同で行うというならば、それは輸入カルテルとして認め得るものかどうか、どうも認め得るものだというはっきりした返事を私は通産当局からも聞いていないのです。  その点について一層、それはどうしてそうなのか、だとするとこれは明らかに独禁法違反になりますよということで、そういう観点から規制をしようと思っていますが、一般的に、いまおっしゃられたような原料を共同購入するとか販売を共同で行うということは、それが業界の中でかなりの割合を占めるということであれば、これは無届けであり、かつ、許可といいますか、特別に輸取法等で認められてない限りは、独禁法違反であるとして規制するほかないと思っておりますし、従来も、ほかの業界でもそういう事例が全くないとは言えませんけれども、私どもとしては、真にやむを得ない理由のあるもので、しかもそれが本当の影響力を実質的に持っていないというものならばともかく、そうでない場合には規制をしますということでありますから、決して手を省いておるわけでもありませんので、今後ともそういうものに十分注意をしていくということにしたい、まあわれわれが鉄鋼の場合に、鉄鉱石、原料でうかつであったために、その点反省しておりまして、そういう事例を発見次第十分規制したい、こういうふうに考えております。
  215. 近江巳記夫

    ○近江委員 提携問題であるとか、こういうことは今後安定成長の経済状態に入ってまいりますと、いろいろとまたそういうケースも多々出てくると思うのです。根本的には、私たちは独禁法強化改正しなければならぬ、このように思うわけでございますが、実際その法改正ができない限りは、やはりこの現行法の運用強化ということが非常に重要となるわけでございます。先ほど公取委員長から、基本的なそうした考え方についてはお述べいただいたわけでございますが、こうした三社の業務提携ということもかなり具体的になってきておりますし、さらに、今後こういう問題は、また国民生活に及ぼす影響というものはきわめて大でございますので、十分な注意をひとつ払っていただくと同時に、大体いまお述べになっていただいたわけでございますが、さらに総括して補足の点がございましたらお述べいただきたいと思います。
  216. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 一般的に、安定成長ということ、安定成長自体は、決してそんな皆が恐れるような状態じゃないのです。現に今年度の場合には、少なくとも上半期はマイナス成長であったのじゃないかということもありますが、しかし一方で、いや統計的にはプラス成長なんだという企画庁の方の説明もございます。しかし、かなり深刻な赤字をしょった経済になっちゃったということは確かでございます。国も赤字をしょい、その反動で地方団体もだ。そういうことは決して安定成長じゃございません。ですから、安定成長というのはもう少しいい意味での、英語できざですが、コンフォータブルな状態での成長であるというふうに考えていいのじゃないか。  しかしながら、日本のいまの企業家の皆さんは、非常な高度成長の夢を捨て切れないので、そのために、そのときに出した大きな黒字というふうなものですか、高度成長下においてはこれだけ非常に設備も増加し、また利益も十分出せた。それが今日、安定成長に切りかわるとうまくいかないのじゃないか。安定成長というのはふらつきの少ない成長と考えればいいのでして、その高さというものは、それは五であるか六であるかというふうなことでしょうが、とにかく実質的に見たらそんな低い成長ではないのでして、それらが安定的に持続することが望ましい、そういうふうに政策的には考えられている。ところが、企業家の皆さんから言いますと、そうではなくて、もっと短兵急に、いま失った利益を、つまり相当な損失を抱えておる、この損失をまず埋め合わせることを早くやらなければいかぬ、さらに利益を出して企業として非常に楽な経営をやりたいというふうなことになる。その結果が結局短兵急に、カルテルでも何でも巧妙にやればいいじゃないかというふうなこと、あるいは業務提携という形でそういうものを逃れながら、実質的には同じような目的を早く達したいというふうなこと、こういうふうなことにならぬとは言えないのです。  来年度必ず景気が上昇過程に入ると、どこかでもって少なくともリフレーション政策の効果は出てくるということは私は確信しておりますが、その場合に、先取りするという意味から価格のカルテルなどが巧妙に行われるというようなことは十分予想されますので、こういう点は私ども十分監視しなければならぬし、そのためにこそ独禁法改正は、先般お願いした、今回野党共同提案で出ております案、あの程度のことは、少なくとも私はぜひ独禁法に入れていただきたい。  そうして、私どもの気持ちの上からいっても、そうなれば一層——何も産業界の希望を打ち砕くという意味じゃないのでして、それが安定成長につながる際において副産物として出てくるかもしれないような競争制限的行為に対しては、常に厳重に監視して、違反があればこれを規制していくという、その考え方は一貫していまも変わりませんが、さらに独禁法改正によってよりしっかりした効果のあるものにしたいという考えでございますので、よろしくお願いいたします。
  217. 近江巳記夫

    ○近江委員 この提携という問題はいろいろなパターンをとっていくと思うのですが、伝えられるところによりますと、この社長の側近筋は、工場の相互公開あるいは物流共同化、海外投資の調整など、やれるところからスタートして、徐々に幅を広げていくというようなことが載っているわけですが、いま私が申し上げた工場の相互公開、物流共同化、海外投資の調整、こういうようなところは、公取委員会としてはどのようにごらんになっておりますか。
  218. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 近江さんには申しわけないのですけれども、それらの点が新聞には報道されているといたしましても、私どもの方には何の事実の報告もありませんので、いまその仮定の問題について私があれこれと申し上げることはぜひ控えさせていただきたいと思います。どうも新聞報道すなわち真実とは常には限りませんで、非常に軽いものだということを言っている向きもありますし、わかりません。したがって、そういった仮定の問題についてお答えはちょっと控えたいと思いますので、よろしくお願いします。
  219. 近江巳記夫

    ○近江委員 私の時間が来ましたので、しぼりたいと思いますが、通産省がたとえばアルミ五社にも減産指導というようなことで、これはセメント初め基礎物資にほとんど波及してきているわけですが、私は、こういうことは実質的な不況カルテルではないかと思うのですけれども、この点については公取委員長はどういう御見解をお持ちでございますか。
  220. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 需要の見通しという形でありましても、非常に短い期間で、たとえば本年度第四・四半期はこのくらいである、したがって稼働率五〇%が適当と思うというふうなことで——私は、はっきり言って実はその事実を確認しておりません。通産省がそういうことで行政指導ということを相当きつくおやりになるのかどうか、非常に軽い程度のものかわかりませんが、いずれにしても、アルミの場合、行政指導という感じはぬぐえないのじゃないかという感じがします。  私は、どうもこれは勧告操短と実体的には余り変わらないことになるのではないかと思いますので、もしそうであるなら、いままでもアルミ精錬はそう急に悪くなったわけではないのです。相当いままでよりも生産をしぼっておるが、ずっと前から在庫がふえておる状態は続いておるわけですから、それだったら、これは急に突発的に起こった事情じゃないのでして、それほど状態が悪いということであれば不況カルテルという方法によるのが筋であろうと思いますが、ただ私は、私の立場から、不況カルテルと認めておるから持っていらっしゃいと言うことはできません。ですから、行政指導による一種の勧告操短的なことをおやりになることはやはり避けていただきたいと申し上げるだけでございまして、それ以上のことを言うのは公取としてはいかがであろうかと考える次第でございます。     〔委員長退席、萩原委員長代理着席〕
  221. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間が来ましたので終わりたいと思いますが、最後に、灯油がじりじり上がってきておりますが、これはやみカルテルの疑いがあるのではないかと思うのですが、これに対する公取委員長見解、それから、先ほどの減産指導の問題につきまして、これはひとつ公取委員会の方から通産省に対していろいろ事情を聞くなり、調査をしていただく必要があるのではないかと思いますが、この二点につきましてお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  222. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 灯油の問題は、標準価格によらないで元売りを行政指導云々ということになったようでございますが、それにつれて末端価格もやはり上がりつつあるということは事実のようでございますけれども、それがカルテルかどうかという点については、私はこの場で申し上げることは控えさせてもらいたいと思います。カルテルがあるとかないとかいう、またその疑いで調査するとか言っても、これははなはだまずいことでございまして、公取としてはわざわざ自分の捜査を困難にするようなことでございますから、これはこの場では何も私は申し上げないということでございます。  それから、先ほどのアルミに対する行政指導による操短というふうなことが果たしてどの程度のものであるのか、これはぜひ通産当局から事情を聞かしていただきたいと思っております。
  223. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、終わります。
  224. 萩原幸雄

    ○萩原委員長代理 山田芳治君。
  225. 山田芳治

    山田(芳)委員 私は、輸入絹織物の規制の問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。  御承知のように、わが国は十年前、一九六五年から生糸の輸入国に変わったわけであります。高度経済成長政策によって国内の絹織物の消費が伸びているときは問題はなかったわけでありますけれども、一九七三年の十月以降においては商品価格の構造変化が起きて、インフレ下の不況現象が世界経済と日本経済と同時に進行してきて、日本の蚕糸業は構造的な危機の様相をあらわしてきております。  御承知のように、日本は世界の生糸の生産量の七十五万四千百俵中の三十二万一千九百俵、すなわち四割強を生産する、そうして消費は世界の生糸量の約六割を消費する、したがいまして二割を輸入する、こういう形になっております。そうして、その輸入先は韓国あるいは中国、ソ連というようなことになっておりますが、とりわけ中国、韓国が多いわけであります。したがって、日本は生糸については輸入国でありまして、二割弱のものを輸入していかなければならない、そういう形になっているわけであります。  そういう中で、国内の生糸の値段と輸入の生糸の値段の格差がある。これは先刻加藤委員からもお話があったと思いますが、輸入の生糸の価格が国内生産のものよりも安いわけであります。そこで、農林省においてはいわゆる生糸の一元化輸入をやることによってその価格の調整を行っているということになっておるわけであります。したがって、その点については非常に効果を上げているというふうに思いますけれども、最近は、御承知のように生糸が一元化輸入によって価格が平均化されてくるということになりますと、今度は撚糸並びに絹織物の輸入というものが非常に大きくなってまいっております。通関統計によりますと、すでに一昨年に比べて昨年、本年は大体三倍に達しているという状況になっているわけであります。  こういうわけでありますから、そういう中における国内の絹織物の生産地帯、すなわち京都の丹後、西陣、新潟の十日町、石川の小松、滋賀県の長浜、あるいは福井の鯖江等の産地は、現在破滅的な状況が現出をしております。とりわけ丹後の機業は御承知のように国内の生糸消費量の三割を消費する全国最大の絹織物産地であります。したがって、丹後においては、安定した良質の生糸の供給と適品適量生産に徹する必要があるということで、四十七年、四十八年の二年にわたって一千万反に達しておったちりめん生産を、四十九年は七百四十五万反に自主的に減反をしているわけであります。また、本年も同程度で現在推移をしておるわけであります。こういう中でちりめんの国内的なシェアが丹後においては七〇%から五八%に落ち込んでいる、こういう形であります。  そういうふうな自主規制をやっている中においても、現在韓国から、先ほど申し上げたように絹織物の輸入が、ことしの一−七月、すなわち上半期の輸入量というものが昨年比の三倍にも達している、こういうことであります。自主的に減反をしながら価格の調整を自分の力でやろうとしている丹後機業が、それに逆比例して韓国から絹織物が三倍も入ってきているという状況であります。しかもそれは御承知のように非常に安い価格で入ってきている。反当たり約二千円の差があるというふうに丹後では言っておりますけれども、こういう状況の中で、丹後というわが国における最大のちりめん、絹織物の生産地が、もう壊滅的な打撃を受けつつあるというふうに考えてよいと思います。そういう点について、まず通産大臣はこういう事実を御承知であるかどうかをお伺いいたしたいと思います。
  226. 河本敏夫

    河本国務大臣 生糸の一元輸入を行っておりますので、それに関連をいたしましていろいろな問題が起こっております。つきましては、これを総合的に調整する必要がありますので、農林省と打ち合わせをいたしまして、いま総合的な対策を立てつつあるところでございます。
  227. 山田芳治

    山田(芳)委員 私は、何といいましても、いま絹織物の生産地が韓国の絹織物の輸入の中で壊滅的な打撃を与えられつつあるという認識に立って、産地では非常に政府に対して迅速かつ的確な措置を求めているわけであります。とりわけ、まず第一には輸入規制をとれないかどうかということを言っておるわけであります。そのことはすなわち、裏地であるところの羽二重について通産省が十一月六日でしたかにとったような措置を、表地についても、貿易管理令によるいわゆる事前輸入承認措置をとれないかどうかということが第一点でありますが、いまお話しのように総合的というお話でありますけれども、総合的な措置というのは将来の問題を含めてどう考えていくかということについて後から触れてまいりますが、当面輸入の規制をする意思はないかどうか、この点をまずお伺いをいたしたいと思います。
  228. 野口一郎

    ○野口政府委員 現在絹織物が当面している問題の現状認識につきましては、大体先生のお述べになったとおりと私どもも考えております。  裏地につきましては、強力な行政指導をこの秋からやってきているわけでございます。何よりも輸入量が非常に大きいということと、輸入の伸びが大きいということがございまして、とりあえず裏絹、羽二重について行政指導をしておるわけでございますし、その行政指導の効果を確認する、こういう意味におきまして、事前承認制を十一月の初めから実施してきたわけでございます。  丹後で生産されておる主製品は、裏地ではなくて、むしろ表に使われるものでございます。いわゆる紋織物を中心として生産されていると聞いておるわけでございます。この紋織物につきましても、先生御指摘のように、最近特に韓国を中心としてふえてきております。対前年三倍近い数量になっておるわけでございますが、ただ、輸入の絶対量と申しますか、輸入量が、これは裏絹、羽二重と違いまして、内需または生産に占める割合は比較的まだ低い状況でございまして、私どもの方で計算いたしましたところ、一月−十月の合計で韓国からの紋織物の輸入量は生産に比べまして約四・八%ぐらいということで、比較的低い水準にある。  別に低い水準だからどうというわけではございませんけれども、そういうようなことを踏んまえまして、今後輸入がどうなるだろうか、これをいま厳重にウォッチして、状況の推移を見守っておるわけでございます。そういう推移を見守りながら、適時に適切な措置もとろうということで、どういうことがとり得るかということにつきまして今後検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  229. 山田芳治

    山田(芳)委員 いまのお話で四・八%であるというわけでありますけれども、先ほども申し上げましたように、一千万反からあったところの生産量を自主的に七百四十五万反に減産をさして、そしてとにかくよい物をつくっていこうという形で努力をしている。減反をすると逆に輸入がふえてくるという、そういう相関関係にあるという形になっているわけです。したがって、四・八%というものが、それでは通産省においては裏地の羽二重類に対する緊急暫定措置と同じようなものをどの程度になったらおとりになられるのか、その点をひとつお答えをいただきたい。
  230. 野口一郎

    ○野口政府委員 私、先ほど申しましたように、四・八だから、低いから別に何もしない、こういうわけではございません。ただ、御参考までに申しますと、裏地羽二重の場合ですと、これは競合品目をどういうふうにとるかということにもよりますけれども、かなり広目にとりましても三割近いシェアでございまして、かなり競合品目ということを広げますと五割を超えるような状況がこの秋でございました。私ども、別に四割だ五割だということには毛頭こだわっているわけではございません。ですから、総合的に考えて、輸入品によって非常な影響を受けている、あるいは大きな被害を受けている、あるいは受けそうだという状況については総合的に考えて措置をとる、こういうことでございます。
  231. 山田芳治

    山田(芳)委員 いまの話にあったように、本当に困ってしまったのでは産地が壊滅をして、国内産業が破局的な状況に陥るわけでありますから、予防的な立場でこの緊急暫定措置をとるという、そういう体制を常にとってもらいたいというふうに思うのであります。ただ、統計というものは、これは過般、同じく十一月六日になされた繊維問題懇話会からの提言にもありますように、統計が非常に遅いので、これをもっと早くとるべきであるということを、輸入成約統計の利用方法の改善ということについて一定の提言をしているわけでありますから、そういう統計を見ながらやっているということでは非常に遅いのではないかとさえわれわれは考える。そういう意味において、やはりいつでも発動できるのだという準備体制にあるかどうかということをひとつこの際お答えをいただきたい。
  232. 野口一郎

    ○野口政府委員 まさに先生のおっしゃるとおり、私どもは数字だけ、死んだ数字をながめているわけではございません。実情がいまどうだ、あるいはどうなるだろうか、こういうことに対しまして、数字も一つの参考書でございますが、ともかく総合的に判断する、こういうことでやってきております。  それから、とる措置で、いま先生、臨時緊急措置とおっしゃられました。先ほどの先生が述べられました稲葉提言によりましても、いろいろとる措置というのはございます。それは非常に強い法的な、直接的に輸入を抑えるというような措置もございますけれども、先ほど先生もおっしゃったような、統計を事前に把握して、それを商社とかあるいはメーカーとか、そういう指標を、早く先行きの数字を知って、だからどうするということについて話し合いをするとか、あるいは役所も一緒になって商社を指導するとか、手ぬるいという感じがあろうかと思いますけれども、そういうような手段もある。いろいろな手段をそのときそのとき具体的な状況に応じて有効に使う、こういうことだろうと思っております。
  233. 山田芳治

    山田(芳)委員 農林省にお尋ねをしたいのですが、あるいは通産省かもしれませんが、現在、生糸については窓口一本化ということで、いわゆる蚕糸事業団で一元化輸入をしているわけであります。しかも、生糸の価格は中国においては八千円台、ブラジルに至っては四千円台、わが国の現段階においては一万二千百円台であるというふうに言われております。したがって、国内の生糸相場というものが割高であり、輸入の生糸が割安である、こういう形になっておりますから、生糸で輸入をしないで、撚糸、最近では本当にちょっとねじったという程度の撚糸を輸入する、あるいは絹織物を輸入する。生糸で輸入をする形になりますと窓口一本化の制約があるということで、生糸では輸入をしないで、生糸と大して違わない撚糸あるいは絹織物を輸入するという形で、撚糸なり絹織物の輸入が先ほど言ったように三倍もふえてきておる、こういう形であります。  ですから、こういうものの調整をするためには、撚糸もあるいは絹織物も、窓口一元化というか、蚕糸事業団——これは後でも触れますけれども、来年の五月に再検討される段階でありますが、一元化輸入という措置がこういった面にも及ぼせないのかどうか、その点についてお伺いをいたしたい。
  234. 池田澄

    ○池田説明員 お答えいたします。  最近の生糸需給は、御存じのように著しい供給過剰の状況にございます。一方、わが国の生糸需要は世界最大の需要量を持っておりますけれども、景気後退を反映いたしまして伸び悩みの状況で推移しております。このような状況に対しまして、国内糸価の安定を図るため、政府は日本蚕糸事業団による生糸の一元輸入措置を明年五月三十一日まで延長いたしまして、いま実施しているところでございます。  しかしながら、最近の世界的な絹過剰を背景とした一元輸入措置のもとで、いま御指摘のとおり、生糸にかわりまして撚糸あるいはそのほかの絹製品の輸入が急増いたしておりまして、一元輸入措置の効果を減殺するばかりでなく、適正な運用に支障を与えて、蚕糸絹業全体に悪影響を与える事態となっております。  このような状況に対しまして、当面、絹撚糸あるいは一部絹織物の輸入につきまして、その秩序化のための指導等を行ってまいっておるところでございますけれども、今後わが国蚕糸絹業の安定的な維持発展を図るためには、生糸、絹製品全体を通じました実効ある輸入の秩序化対策が必要不可欠であるというふうに考えておりまして、現在その具体化を鋭意通産省と協議中でございます。その中で幾つかの案がございますけれども、最も効果がある、最も適切なものを採用してまいりたい、こう思って現在その具体化を検討している段階でございまして、いま先生の御指摘の内容につきましても、その過程の中で検討してまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  235. 山田芳治

    山田(芳)委員 そうすると、いまのお話によると、たとえば五枚しゅすと言われるようなものの値段が、韓国産と丹後の五枚しゅすと比べると反当二千円も割安である、こういう形になっておるわけでありますから、絹織物を含めて輸入の一元化措置というものをとることを含めて検討しているというふうに考えてよろしいか、もう一遍お答えを願いたい。
  236. 池田澄

    ○池田説明員 いまお答え申し上げましたことであるいは誤解を与えるといけませんと思いますので申し上げておきますけれども、織物の日本蚕糸事業団による扱いという問題につきましては、非常に技術的な問題その他ございます。そういった点がございまして、本件につきましてはなお通産省と十分相談して進めるべきことと思いますが、現在生糸だけ扱っておりまして、そのほかの扱いについては実際問題として非常に困難があるのじゃないかというふうに私どもは考えております。
  237. 野口一郎

    ○野口政府委員 私からも一言補足説明を許していただきたいと思っております。  一元輸入制度の問題でございますが、一元輸入制度というのは、言葉をかえて言えば国家貿易、国家管理貿易と申しますか、こういう形でございますが、これにつきましては考え方の問題あるいは実務上の問題いろいろございます。ですが、ともかく一元輸入制度あるいは国家貿易の形をとっておりますものは、いずれも国内におきまして厳しい需給調整を行っている。しかもその責任、それをやっておるのは政府、国家である、あるいは価格についてもそうである。そういう場合に、輸入を、あるいは貿易面をほうっておきますと、そういう国が責任を持って需給の調整を図るという仕組みが崩れてしまうわけであります。したがいまして、そういう国内の需給調整あるいは価格維持というようなものを貿易面で補完する、こういうことで現在の一元輸入制度は大体できているわけでございます。  ということから見ますと、いま先生御指摘の撚糸あるいは絹織物等について、それと同じような意味における厳しい需給調整の措置が政府によってとられているかどうかということになると、これは非常に問題があるわけでございます。そういうような考え方の問題、それからただいま説明がありましたように、技術的なあるいは事務的な問題、やりやすいか、やりにくいかとか、そういうような問題がございます。ですから、一元輸入がねらっているような強度の規制措置が仮に必要であるといたしましても、一元輸入制度というそういう仕組みを採用するかどうかということになりますと、またおのずから問題は別になるわけでございます。  ただいまのところ、特に絹織物については一元輸入制度になじまない。それから撚糸についても非常に問題があるということでございまして、いろんな案を検討中でございますが、一元輸入制度というのはやはり非常に基礎的なもの、つまり生糸にはできるけれども、それ以降の段階はなかなかむずかしいかな、こういうようなのが率直のところ現在の検討過程における状況でございます。
  238. 山田芳治

    山田(芳)委員 農林省に伺いますが、いまのようなお話ですと、絹織物がどんどん安い価格で入ってくると、幾ら生糸の部分で一元化輸入をしておっても、いずれは国内の絹織物の生産地が壊滅的な打撃を受ければ、国内の生糸の需要というものが落ち込んでくる。そうすれば、現在国内の二十八万何戸かの農家における三十二万俵の生糸生産量が、需要が減ってくれば当然これは生糸の生産も減ってくる。そうでなくても現在国内における生糸生産というものが減っているのに、絹織物という形で安いものがどんどん入ることによって絹織物の生産地が壊滅的な打撃を受け、それによって生糸の需要というものが落ち込んでくれば、結局農家が生糸を生産することができなくなってくるということになるのであって、生糸の一元化輸入だけの措置を講じていたら当面いいんだというようなことで将来のことを考えていると、とんでもないことになるというふうに思うのですが、農林省は一体それはどう考えますか。もう一遍それを答えてください。
  239. 池田澄

    ○池田説明員 お答えいたします。  蚕糸の維持発展のためには絹業がやはり同じように発展しなければならないということは当然でございまして、蚕糸絹業というものを考えた場合、非常に多くの関連の部門を持つわけでございます。養蚕農家にとってみますると、その売り先といいますか、需要は、わが国の絹業しかございません。そういった意味で、絹業が非常に危機になれば蚕糸もまた立たなくなるわけでございまして、そういう点から、私どもは現在蚕糸絹業の共存共栄という観点から対策を検討しておりまして、ただ単に蚕糸だけよければいいというような考えでないということだけ強く申し上げておきたいと思います。
  240. 山田芳治

    山田(芳)委員 抽象的ですね。いま私が、絹織物の安い輸入をやっておれば、結局は生糸なりあるいは撚糸の工場、これはまあ承認制で会社が限定されているわけでありますけれども、そういうところに影響を及ぼすということを、みずから認められておるわけですね。したがって、いま言ったような抽象論じゃなしに、撚糸も絹織物もやはり一元化輸入によって守っていかなければ、いずれ生糸の部門に影響が及んで、二十七、八万と言われるところの養蚕農家というものも壊滅の危機に瀕するのではないかということで、具体的に私は、撚糸もあるいは絹織物も、先ほど野口局長が言われたように非常な国家統制云々という話はあっても、そうしなければ絹織物の生産地も、やがて時間が経過すれば養蚕農家も全部壊滅をしてしまうのではないかということで、具体的な提案をしているわけですけれども、もう少し具体的に答えていただきたい。
  241. 野口一郎

    ○野口政府委員 私どもも、事態の重大さにつきましては諸先生と同じ見解を持つものでございます。生糸一元輸入制度をそのままにしておいて時間が経過をしてまいりますると、これは非常に重大な影響が出てくるということは必至だろうというふうに考えているわけでございます。それで、最初に大臣がお答えをいたしましたように、農林省と一緒になってその対策をいま検討中でございます。いろいろな案が考えられるわけでございますけれども、対外的な影響等もございまして、ここでこういう案をやっているということをまだ申し上げるわけにはまいらぬわけでございますが、具体的な状況に応じて措置をとっていくつもりでございます。
  242. 山田芳治

    山田(芳)委員 いま言えないと言うのなら、いつになったら言えるのか、それをはっきりひとつ答えていただきたい。
  243. 野口一郎

    ○野口政府委員 基本的な方策といたしましては、現在の一元輸入制度は来年の五月まで継続することになっております。したがいまして、基本的な措置、どういう方策をとるかということは、来年の六月以降の問題ということになろうかと思います。特に法律等を必要とするような措置でありますると、当然そのころになろうかというふうに考えておるわけでございます。一元輸入制度をどうするかというのが非常に大きな問題であるというふうに私ども考えておるわけでございますが、いろいろむずかしい問題がございまして、現在のところ、まだ確たる成案は得ておりませんけれども、できるだけ早く案を得たいというふうに考えております。いまの状況でございますと、来年、まあ来月ぐらいには何とか基本的な方向を打ち出せるようにいたしたいと努力中でございます。
  244. 山田芳治

    山田(芳)委員 確かに来年の五月まで——六月以降一元化輸入問題についての新しい提案をしなければならぬということについてはわれわれも理解をするわけですが、私は緊急の問題をまず質問しておりますから、将来の問題のことはこの後で触れますが、当面、将来の問題を含めて、いまとにかく輸入の規制をしてほしいということが丹後の地元から強く言われておる。しかし、いまの答弁を見てみますと、まだ輸入の総量が必ずしも多くないから、その段階ではないというわけであります。したがって、私たちは、いや、そうであっても、予防的な立場でいつでもそれが発動できる体制をつくってもらいたいということをいま質問をし、要求をしているわけであります。  したがって、通関統計その他も時間がかかるわけでありますから、その点については十分配慮しながらお考えになるというお答えでありますから、それは一応信用をいたすとして、本当に絹織物の産地が、特に表地の産地が危殆に瀕しそうであるということが予知されたならば、やはり秩序ある輸入規制措置を講じてほしいということを、まず強く要求をしておくわけであります。  それから、それに関連して、次の二点のことについてどう考えるかということであります。  先ほど話もありましたいわゆる稲葉懇話会の提案にもあるように、関税の二〇%の引き下げが現在暫定的に行われているわけですが、これを停止すべきであるということを言っているわけですね。これについて一体どういうふうに考えられるか。安い物が入ってくるなら、一定の関税においてこれを措置することが当然である。しかるに、現在は二〇%引き下げているのであります。われわれは、二〇%の引き下げを停止した上になお上へ積んで、国内の価格とバランスがとれるようにすべきであるというふうに考えているわけでありますが、この提言でさえ二〇%の引き下げの措置を停止せいと言っているのですが、これについてどう考えるか、これが一点。  それから、これは農林省にお尋ねをしたいのでありますが、蚕糸事業団は生糸を買って保有をしておるわけであります。そして、先般一万八千俵の放出をいたしましたけれども、そのうち一万五千俵は裏地の地域に九千円台の安い値段で放出をされております。まだ三千俵が留保されているというふうに聞いておりますが、いま丹後では非常に困っているわけでありますから、緊急の対策としてこの三千俵を丹後に安い値段で放出される考えはないかどうか。この二点についてお伺いをしたい。
  245. 野口一郎

    ○野口政府委員 ただいま先生がお述べになりました、関税の二割カットの復元の問題でございます。御存じのように、昭和四十七年暮れ、十一月にこの措置がとられたわけでございますが、その後、復元されたものはいまだございません。そこで、この制度を動かすためには、まず動かすような仕組みを定める必要があるわけでございます。現在、もちろん関税のことでございますので、大蔵省の関税局の方が主務でございます。私どもの方は、絹のようにともかく輸入が急増しているものが現にあるわけでございます。必要なときにはこの二割を元へ戻すということは当然あってもいいのではないかということが、私どもの基本的な態度でございます。  どういう場合にこれを戻し得るかということは、法律でもって要件が定めてございます。したがいまして、その要件に該当したものでなければいかぬわけでございますが、ともかくこれを戻すにはどういう方法、仕組みでやるかということにつきまして、現在大蔵省の方でその仕組みを検討中というふうに聞いているわけでございます。私どもの方は、この制度を動かす、元へ戻すということをやる場合には、少なくも絹関係のこういうふうに輸入がふえている物は適用第一号にすべきでないだろうか、こういうような意向を持っており、こういうような考え方はすでに大蔵省にも伝えてございます。
  246. 池田澄

    ○池田説明員 お答えいたします。  今回の一元輸入にかかわります生糸の特別売り渡しにつきましては、最近羽二重、裏絹を中心といたします一部の絹織物の輸入が急増いたしまして、これら絹織物業者が大きな悪影響を受けているということにかんがみまして、通産省とも十分協議の上、製造原価に占める原糸代の割合が著しく高く、かつ輸入割合の特に高い絹加工品であって輸入品との競合により大きな影響を受けている中小企業者に対しまして、これらの方々の経営の安定に資するため、一定数量の輸入生糸に限りまして講じてきた措置であります。このような趣旨によりまして、丹後産地につきましても、条件に適合するものについては売り渡しを行ってきているところでございます。今後このような措置をさらに拡大して講ずべきか否かにつきましては、繭糸価格安定制度の適正な運用と現在の市価水準、需給状況等との関連を考慮いたしまして、慎重に検討すべきものと考えています。
  247. 山田芳治

    山田(芳)委員 きわめて抽象的なんですが、どの程度になったらそういう措置をされるのか、する意思があるのかどうか、もう一遍ひとつ具体的にお答えいただきたい。
  248. 池田澄

    ○池田説明員 今回行っております特別売り渡しにつきましては、絹業対策との関連におきまして行っているものでございまして、今後どのような措置を講ずるか、どう対処していくかということにつきましては、通産省ともよく協議の上決定してまいりたい、こう思っております。
  249. 山田芳治

    山田(芳)委員 通産省からお答えいただきたい。
  250. 野口一郎

    ○野口政府委員 いまの件は、今後の推移を見て検討してまいりたいと思っております。
  251. 山田芳治

    山田(芳)委員 推移というのは、具体的にどういう段階なら払い下げてやるというふうにお考えになるかを、実はきょうは産地の代表の人も来ています、地元の新聞社の方も来ているわけですから、少し具体的に、ひとつこうならこうだということをもう少し親切に答えてやってほしいと思います。もう一度通産省からお答えを願いたいと思います。
  252. 野口一郎

    ○野口政府委員 先ほど農林省の方から答えがありましたように、重大な被害を受ける中小企業者のためにこの制度はあるわけでございます。そういう重大な被害かどうかというようなことにつきましていろいろ総合的な観点に立って検討してまいりたい、そのためにはもう少し時間をかりたい、事態の推移を見たい、こういうことでございます。
  253. 山田芳治

    山田(芳)委員 あとはまた個別的に話をいたしますから、時間もございませんから、この程度でこの問題はやめますけれども、ひとつもう少し親切に処理をしてもらいたいということを要望しておきます。次に、先ほども話がありましたけれども、将来に向かって、日本の絹織物の産地の振興、あるいは生糸を生産する農家の振興、あるいはその間における撚糸の工場その他の産業の振興のために、一体来年六月以降どうしていくかということはきわめて重要な問題であります。私どもとしては、一方では秩序ある輸入規制措置を講じながら、産地の地域経済の振興に寄与するために、いろいろの問題点があるということを知りながらも、やはり産業全体の問題、金融や税制、そういった政策というものを一体的に促進をしていかなければいかぬというふうに考えるわけであります。  そういう中で、現在われわれとしては、農林省が窓口一元化による輸入規制をやっている中で、通産省としては課徴金制度による絹織物業の振興の法律制定等も考えているというふうに聞いているわけであります。一元化輸入規制の策は、国内消費者の負担で繭の生産費の一部を補償するという政策を貫く方法で、長期的には織物業との一致はむずかしいというふうにも考えられる。それは先ほども言ったとおりでありますけれども、しかし当面はこれでいかなければいかぬだろうというふうに思うわけであります。課徴金制度にしましても一応中へ入ってしまいますから、これも永久にこれでとっていけるかどうかということになると、当面はみんなの利益が一致をするという限りにおいては合意をされることがあるけれども、やはり問題があるということで、農林省側も必ずしもこれに全面的な賛意を表していないということも聞いているわけであります。  われわれとしては、やはり水際で先ほど言った関税の問題あるいは輸入規制を二国間協定でやっていくべきであるというふうに考えているわけでありますが、その前に、通産省の考えておられる課徴金構想の具体的な発想なり、これに対する農林省考え方について、この際ひとつ明確にお答えをいただきたいというふうに考えます。
  254. 野口一郎

    ○野口政府委員 御指摘のいわゆる課徴金案の中身ということでございますが、これにつきましてもいろいろな考え方があるわけでございます。ただいまのところ、実は成案を得ていないわけでございます。それから、課徴金というようなことになりますと、対外的な影響等も案を決定するまでには相当考慮に入れなければならない要素でございます。そんなこともございますので、現在案の内容はまだかたまっていないわけでございます。したがって、ここで詳しい内容をちょっと申し上げることができないことを御了承いただきたいと思います。
  255. 山田芳治

    山田(芳)委員 農林省としては、将来に向かってこういった点、先ほど私が言ったように生糸の蚕糸事業団による一元的な輸入買い上げをやっておるけれども、絹織物の輸入がこういう状況では、いずれは生糸も養蚕農家も破滅的な状況になるということを含めて、どういう構想を持っておられるか。通産省と同じようにまだ構想がございません、こういうことであるのかどうか。一元化輸入は続けていくのだとか、その中における条件をこう変えるとか、いろいろ意見があるだろうと思うのですが、ひとつこの際お示しをいただきたい。
  256. 池田澄

    ○池田説明員 いま野口局長が申し上げましたように、通産と私ども農林省といま具体的な案について鋭意検討中でございまして、その基本的な考え方といたしますれば、蚕糸絹業がともに発展するという観点から検討中でございます。そういう状態でございますので、具体的な内容に触れることについてはちょっとお許しをいただきたいと思います。
  257. 山田芳治

    山田(芳)委員 どうも抽象的で、将来に対してきわめて不安が残る。一体それではいつになったら——来年の六月からだから、法制措置があれば次の通常国会提案する、だから、その当時で考えるなら来年の二月、三月にでも成案を得るというのか。それならばせめて、いつごろまでに成案を得て関係者が討議ができる段階になるか、その点についてひとつお答えをいただきたい。
  258. 野口一郎

    ○野口政府委員 まだ案の内容が確定するまでに至っておりません。現在検討中でございますので、いつごろになれば関係者がそれについていろいろ意見を述べることができるようになるのか、こういう御質問だろうと思いますが、以上のようなことでございますので、ただいまのところ、いつごろとまでは申し上げかねる状況でございますけれども、基本的な考え方につきましては、あるいは原則というようなことにつきましては、来月になればできるだけ早い機会にその方向を決めたい、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  259. 山田芳治

    山田(芳)委員 来月になれば大体の案が固まってくるとおっしゃったわけでありますから、一遍それが固まった段階でまたひとつ質問をさしていただきたいと思いますが、私たちとしては、関税の問題については大蔵省が決められるというわけでありますけれども、いま言ったように稲葉懇話会が提言をしているのですから、私は、ひとつ積極的に大蔵省に対して、関税について二〇%の引き下げ措置を停止すべきだということを申し入れしているのかいないのか、その点さっきの答弁ははっきりしなかったのでありますが、その点についてはっきりもう一度、積極的にひとつ、絹織物の輸入が急増しているのだから、二〇%の関税引き下げ措置の廃止という点について大蔵省に申し入れるということをしているかしていないか、また強く申し入れるかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  260. 野口一郎

    ○野口政府委員 御趣旨の線に沿って努力をいたします。
  261. 山田芳治

    山田(芳)委員 次に、二国間協定の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  先ほどからずっと触れておりますように、生糸が一元化輸入でとまることによって、撚糸並びに絹織物という形で輸入が急増してきた。そういう中で、日本という国は先ほども触れましたように世界の生糸の六割を消費する、国内で四割を生産するけれども、二割は輸入するという形になるわけであります。したがって、絶対に輸入を禁止するというわけにはまいらないので、秩序ある輸入をしなければならない。しかし、それは生糸でするのか、撚糸でするのか、絹織物でするのか、いろいろあるわけでありましょうが、それを一貫して一元的に調整をしていかなければこれは絶対に成り立たない、生糸だけよかったらあとはいいのだということになると、いずれは生糸に影響が出てくるということは、さっきるる述べたとおりであります。したがって、生糸についても、撚糸についても、あるいは絹織物についても、いま主としての輸入は韓国からなのです。韓国からでありますから、ガット三十五条の援用等を含めて、二国間で秩序ある輸入というものを協定していくことが、将来に対する両国間の、いろいろな貿易上のアンバランスがあるにしても、韓国に対しては経済的な援助もしているわけでありますから、話し合いはできるというふうに思うのでありますが、二国間で、この絹織物の輸入の量を含めて、両国間における輸入量の協定というものをやっていく意思があるかないか、また、意思があるなら、どういう形でおやりになるかをひとつお答えいただきたいと思います。
  262. 野口一郎

    ○野口政府委員 ただいまのお話、なかなか示唆に富む御意見というふうに拝聴をいたしました。  この絹の問題は、生糸、絹糸、絹織物、まさに終局的には一つの問題としてつかまえなければ根本的な解決にはならない、こういう点は私も同感でございます。ただ、最終的にはそういうことであるにしても、そういう方向に対しどのようにアプローチをしていくかということになりますと、これは内外のいろいろな条件を勘案する必要があるわけでございます。  ただいままでのところは、絹の撚糸につきまして、韓国との間では、一応韓国側の輸出自主規制という線で進んできておるわけでございます。その他織物等、特に大島つむぎの問題につきましても、同様に、韓国側の一応自粛という形で今日まで来ているわけでございます。そういうことで、いろいろな方法があろうかと思うわけでございますが、量を中心とした二国間の話し合いということにつきましては、私がいま申し上げたように幾つかの例はあるわけでございますので、ガットあるいはMFNに基づく取り決めとかなんとかいう問題を離れましても、現実的な処理の仕方として、実際話し合いをする、そこで秩序ある輸入を実現するという方法は可能だというふうに考えております。
  263. 山田芳治

    山田(芳)委員 考え方として前向きの答えをいただいたわけでありますから、ぜひひとつこれはやっていただきたいということを強く要求をするわけであります。  最後に、これは何遍も当委員会でも出ておると思うのでありますが、この際でありますから明確にお答えをいただきたいのは、輸入の絹織物についての産地の表示というものをどうして行政的に指導してやらせないのか、まあ法律がなければできないという意見もあるかと思いますけれども、われわれとしては法律的な措置も提案をしておるわけでありますが、それは行政的な措置でもできるわけであります。どうして積極的に産地表示を業者に義務づけをするような行政指導をされないのか、その点をひとつ明確にお答えいただきたい。
  264. 野口一郎

    ○野口政府委員 先生御指摘の物が輸入品だけの物なのか、それとも広く国内の物なのかにもよりますが、国内の物につきましては、不正競争防止法でございますとか、あるいは公正取引委員会規則とかいうものがございまして、そういうことによって表示を規制することは可能でございますし、物によってはたしかやっているかと思っておりますが、これは私、詳しく存じませんので、間違っていましたら後で訂正をさせていただきたいと思っております。  それから、たとえば伝統的工芸品産業振興法による場合の統一マークの規定等につきましては、これは自主的に組合でもってつけることができるというようなこともございます。まあ、いろいろな手段、方法等がございますが、要は、自分たちの産地を守るということが一番大事でございまして、そういう方向で私どもも業界と協力をして進めてまいりたいというふうに考えております。  先ほどの不正競争防止法と申しましたのは私の誤りでございまして、法律は、公正取引委員会の方でやっておりますところの不当景品類及び不当表示防止法でございます。訂正させていただきます。
  265. 山田芳治

    山田(芳)委員 どうもいまの答弁は頼りないので、私の言っているのは輸入物について言っているわけです。不当景品取り締まりの関係は、表示を義務づけてなくて、うそを書いたらいかぬということになっているけれども、何も書かないのには別に罰則はない、こういう形になっておりますから、われわれは、やはり行政指導として、外国から入るものについては、外国産の絹織物なら絹織物であるということの表示をすべきである、こういうことを要望しているわけでありますが、もう一遍ひとつお答えをいただきたいと思います。(「産国表示。メイド・イン・コーリアとはっきり書かせろということです」と呼ぶ者あり)
  266. 野口一郎

    ○野口政府委員 輸入品に原産地表示を法律で強制する……(山田(芳)委員「いや、行政指導をしませんかと聞いているのです」と呼ぶ)ですから、国内に入りましたものについて紛らわしいような表示をすることはいかぬということにつきましては、先ほど私が申し上げましたように、公正取引委員会の不当景品類及び不当表示防止法の体系で現在もやっているわけでございます。
  267. 山田芳治

    山田(芳)委員 紛らわしいのではなくて、たとえば先ほど加藤委員からも発言があったように、韓国でできているのならメード・イン・コーリアというふうに、それはうそでもなければ何でもない、紛らわしくなく正確に書くように行政指導される意思があるかないかということをお伺いしているわけです。
  268. 野口一郎

    ○野口政府委員 対外的な問題は、たとえば大島つむぎにつきましては、これは話し合いによりまして、ぜひつけてくれ、つけますということになっておるわけでございます。  国内の方で、同じように大島つむぎの例で申しますと、無表示のままで、しかもたとえば国産の大島つむぎとまぜると申しますか、売り場を同じくして、いかにもこれは本物であるというふうに誤認させるような売り方でございますね、こういうことをしてはならないということにつきましては、先ほどの法律の体系で公正取引委員会の方でやっております。
  269. 山田芳治

    山田(芳)委員 的確に答えていただきたい。それはわかっているのです。何も書いてないという物に対してどうということはないから、それでは困るので、やはり輸入物は輸入した先を明確に書くように、法的規制はありませんから、行政指導ならできるのだから、ひとつそれをさっき言ったように、大島つむぎでも話し合いでできているというのですから、絹織物の輸入をされた物については、どこでつくられた物であるという表示をするような行政指導をする意思があるかないかということをお伺いしているので、もう一遍お願いします。
  270. 野口一郎

    ○野口政府委員 私、いまちょっと手元に詳しい資料その他を持っておりませんので、後刻公正取引委員会と相談の上、先生の方へお答えを申し上げたいと思います。
  271. 山田芳治

    山田(芳)委員 最後にもう一度、当初に申し上げたことを繰り返して、確認の意味でお答えをいただきたいのでありますが、日本全体、日本全体でありますから世界全体で最大の絹織物の産地である丹後は、日本の絹織物の三〇%のシェアを持っているわけであります。そこが、いま申し上げましたように、韓国のちりめんが非常に安い価格で入ることによって、生糸を一元化輸入するという影響の中でそういう現象が急増し、三倍にもなっているという状態の中で、産地としては非常に危機感を持っておって、壊滅的な影響を受けるということで、大会を開いたり、デモを行ったり、陳情を行ったり、必死の思いでこの問題について政府に要求をしているわけであります。いままでの答弁を見ていると、まだそれほど危機的な段階でないということに終始をされておる。ただし、危機的な様相になれば考える、こういうことでありますけれども、私たちとしては、もう危機的な段階であるという認識に立って、輸入の規制、秩序ある輸入というものを図ってもらいたい、そのためには、貿易管理令というものの発動あるいは関税の引き上げ等の措置でやってもらいたいということを当面の措置として考えている。     〔萩原委員長代理退席、委員長着席〕  将来に向かっては、来年の一月になれば構想がされる課徴金の問題その他を含めた考え方によって、将来に向かってどうするかということを絹織物を含めた一元的な措置によってお考えになるということでありますから、それはその段階で考えるとして、当面緊急の措置として、さっきの四・八%とかなんとかいうことは一つの統計であろうと思いますが、それについても、単に統計だけでなく、実態を見た上で輸入の禁止なり規制の措置をとられるということをはっきり言われたわけでありますし、また、当面三千俵の生糸についても場合によっては払い下げることを検討するとおっしゃったわけでありますが、その点について、もう一度確認の意味でこの二点についての御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  272. 野口一郎

    ○野口政府委員 先生が、実態の認識が違うのではないかということをちょっとおっしゃいました。私どもも、現在どうなって、それがどうなるであろうかということの実情を正確に把握すること、これが一番大事じゃないかと思いますし、その点について産地の皆様方あるいは先生と認識の統一を得られるということが一番大事だと思います。その点につきまして、実は率直に申しますと違いがあるということを私は痛感するわけでございます。私ども今後大いに実態の勉強あるいは実情を迅速に把握したいというふうに考えておるわけでございます。そういう実際の状況がわかれば、それに適応した措置をとることができるわけでございます。どういう措置をいまとるのだ、言えと言われましても、私、そういう意味で具体的なお答えがいま直ちにはできないわけでございますが、やはり産地のこの窮状を何とか打開していくというその気持ちにつきましては、先生と全く一緒であるというふうに御了解いただきたいと思っております。  具体的な問題として、先生が三千俵の件をおっしゃられましたけれども、なお本件につきましては、私、率直なお答えはどうもむずかしいのではないか、これは制度ができたときからのいきさつ等々から考えまして、一応むずかしいという感じが、私の率直な現在のところの感じでございます。  それから、貿管令云々のお話、あるいはこれは事前承認制ですね、中国の羽二重についてとっている措置、これをとれぬものか、こういうお話ではないかと思いますが、非常に有力な御示唆だとは思うわけでございますけれども、対外的な問題等もございますので、それをやる、やらないということを直ちには私、はっきり申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思っております。
  273. 山田芳治

    山田(芳)委員 どうも必ずしも十分な答弁でなかったので、また具体的にひとつ局長を窓口にして一遍話をしたいと思います。  通産大臣、それでよろしいですね。最後に、ひとつこの問題についての総括的な答弁をお願いします。
  274. 河本敏夫

    河本国務大臣 生糸の一元輸入という問題から非常に深刻な事態が発生しておるということは、いまるるお述べになったとおりだと私は思います。そこで、当初に申し上げましたように、農林省とよく相談をいたしまして、総合的にこの対策を立てなければならぬ、こう思っておりまして、急いでいま調整中でございますので、できるだけ早く結論を出すつもりでございます。
  275. 山田芳治

    山田(芳)委員 丹後の機業の問題について、野口局長とも具体的にひとつこれから話をしていきたい、大臣もその点について十分話し合うように御指示をいただきたい、それだけひとつ……。
  276. 河本敏夫

    河本国務大臣 承知いたしました。
  277. 山村新治郎

  278. 神崎敏雄

    神崎委員 政府の五十一年度予算原案の決定を目前に控え、きょうはこの予算編成方針について質問をいたしたいと思うのであります。  来年度予算は、例年にも増して格別の重要性を持っています。国民がいま一番願っているのは、何よりもまず現在の深刻な不況を克服し、国民生活の危機を打開することであります。この国民の期待にこたえて、五十一年度予算では国民本意の不況克服を一つの重点にすべきだと思いますが、この点について大臣見解を伺いたいと思います。
  279. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 五十一年度という年柄は、これはいわゆる石油ショックの混乱からの脱出の調整期間の最終年度、第三年目、こういう意味合いがあると同時に、新しく中期計画をいま策定中でありますが、その初年度、こういう性格を持つわけなんです。この中期計画におきましては、いままでは成長中心の高度成長政策、それを転換いたしまして、そして生活中心という方向へ持っていきたい、こう考えておるわけでございますが、調整期間の第三年目におきましては、どうしても、いま神崎さんが御指摘のように不況からの脱出ということが最大の問題になるわけでございます。  そこで、政府の一般の諸経費についてはこれは抑制方針をとるわけですが、しかし景気に直結する政府資本投資、これにつきましてはかなり積極的な姿勢をとる、こういうことになるわけですが、先ほど申し上げました中期計画、つまり成長中心から生活中心へというその初年度でもありますので、公共事業などの政府資本支出、それを考えるに当たりましても、生活中心への第一年目であるというこの考え方を取り入れていく、こういう基本的な考え方でございます。
  280. 神崎敏雄

    神崎委員 不況の克服という点では、国内市場を拡大する公共事業投資が重要な政策手段となるわけです。そういう政策手段となるわけですが、問題はその中身であります。歴代自民党政府はこれまで一貫して、大企業本位の高度成長を推し進めるために、公共投資の圧倒的部分を産業基盤整備につぎ込んできました。その結果、いま長官も指摘されたが、生活基盤整備の大きな立ちおくれや環境の著しい破壊など、世界にも例も見ない深刻な環境問題あるいは土地問題を引き起こしたのであります。このような日本経済の構造的なゆがみが明らかになるとともに、国際通貨危機やあるいはエネルギー危機など、日本経済を取り巻く環境もこれまでとは根本的に違った様相を呈しております。もはやかつてのような高度成長の追求は不可能となっていることは明らかであります。  そこで、いまこそ国内市場拡大の方向を高度成長方式から国民生活の改善、つり合いのとれた発展に向けての投資を中心に推し進めるようにすべきであると思うのであります。三木総理は、昨年の十二月十七日の衆議院本会議で、「公共投資について、産業基盤よりも生活基盤を充実せよという見解については、われわれもさように考えて、したがって、住宅とか下水とか、あるいは公園とか、その他の福祉施設というものに今後は重点を置いてまいりたいと考えております。」こう述べられました。ところが、五十年度予算においても、公共投資の配分は産業基盤が二、生活基盤が一というように、従来と何ら変わっておらないのであります。  福田長官は、来年度予算を景気浮揚、財政主導型、こういうことを言い続けている、そのように私は聞いておりますが、五十一年度予算でこそ三木総理答弁立場を貫き、生活福祉関連を重点にした公共投資のやり方でやっていかなければならない、こういうふうに思うわけです。ところが、いま福田長官は少しこれにニュアンスのある御答弁をされたのですが、いま私が申し上げました見解について御意見を聞きたいと思います。
  281. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いまおっしゃるような考え方のもとに予算を編成する、こういう考え方です。ただ、具体的にどういう割合になるかとか、これはこれから大みそかまでの間に詰めていかなければならぬ、そういうことになりますが、考え方といたしましては、今度は景気浮揚のために公共投資は大いにやる、やりますが、その際に生活関連の投資を重要視していく、こういう考え方で一貫して参りたい、こういうふうに考えております。  ただ、だからといって大規模プロジェクト、つまり新幹線だとか高速道路だとか、これをいまやっておるものをストップする、そういうようなことをすることはできません。国全体の経済効率という上から言いましても、あるいは雇用の当面の対策ということを考えましても、これはそういういろいろな総合的な見地からやらなければならぬわけですが、これもしかし、新幹線をつくりました、高速道路をつくりました、だからこれは大企業のためだなんという、そんな考え方を持っているわけじゃないのです。いろいろ産業関連の施設をやりまするけれども、回り回ってこれは国民大衆に広く波及するわけですから、そう狭い考え方を持つ必要はないと思いまするけれども、とにかく生活関連投資に重点を置いて推進するという考え方はこれを貫き通してまいりたい、こういうふうに考えます。
  282. 神崎敏雄

    神崎委員 長官は後で聞こうと思うことを一歩一歩先に答弁されるのですが、そういうふうにしていただいたら一番いいので、それを主張しようと思っているのですが、通産大臣も同じ御意見ですか。
  283. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのとおりであります。
  284. 神崎敏雄

    神崎委員 経済審議会は近く来年度を初年度とした経済五カ年計画の中間答申を発表するようですが、これからの五カ年と従来の五カ年とを対比した場合、どのような点が特徴点になるか、これを福田さんから聞きたいと思います。
  285. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 まず、成長率は非常に変わってくるのです。高度成長期におきましては一〇%を若干上回る成長ということでやってまいりましたが、これからの新しい経済はそういう高い成長はできない。そこで、いま経済審議会で最後の詰めをやっておりますが、六%強ぐらいなところの説が有力でございます。とにかく成長の率を落とす、こういうことが一つ。  それから、中身といたしましては、先ほどから申し上げておりますとおり、高度成長、つまり経済が成長発展する、その成果の多くの部分を次の成長のためにつぎ込む、工場をつくるとか、その関連の諸施設に投入するとか、そういうふうに使いましたが、今度は成長の成果の重点をわれわれの生活環境を整備するという方向へ投入する、そういう考え方、つまり成長中心から生活中心へという方向の中身のものになっていくだろう、こういうふうに思います。その結果、日本社会はいままでのような華々しい経済の反映というわけにはまいりませんけれども、とにかくわれわれの周辺が非常に清潔で住みよく、また、つり合いのとれた、そういう姿になってくるであろうし、また、経済活動は、高度成長期のように一、二年の不況に二、三年の好況、また一、二年の不況、二、三年の好況というように景気の山と谷が非常に開く、そういうようなことなしに推移していき得ると思います。さらに、そういう経済政策の結果、国際収支につきましては、行き詰まって、そして抑制政策をとらなければならぬという事態がない、国際収支の均衡、安定という姿を持ち続け得るであろうし、また、物価につきましてもまたインフレを醸し出すという結果にならないようなそういう状態になっていくであろうし、そういうふうにするための政策運営をやってまいりたい、そういうふうにいま考えておるわけなんです。
  286. 神崎敏雄

    神崎委員 私も聞いたのですが、今後の五カ年計画では生活、福祉関連を重点とする経済計画にするのが特徴だ、こう言っているのですが、もしこのような内容の中間答申が発表されたならば、これは五十一年度予算に厳格に反映されるものなのか、どうですか。
  287. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 五十一年度は、先ほど申し上げましたように非常に複雑な年なんです。つまり、いわゆる混乱の収拾のための調整ですね、その調整過程の最後の年に当たる、同時に新五カ年計画の初年度に当たる、こういうことであります。したがって、五カ年計画のねらいとするところを完全に五十一年度予算において実現するというわけにはまいらぬというふうに思いますけれども、しかし新五カ年計画においてねらいとするところの成長中心から生活中心へという方向の芽は吹き出させる、こういう年柄にいたしたい、さように考えております。
  288. 神崎敏雄

    神崎委員 大蔵省は、景気刺激効果が大きいとして、先ほどおっしゃった新幹線、高速道路、本四架橋など大型プロジェクトに重点的に資金配分を行い、他方、住宅、上下水道などの生活、福祉関連への投資については財源難を理由にして抑制する方針だ、こう言われているのです。もしそうだとするならば、今後は生活、福祉関連に重点を置くという三木内閣の公約は全く国民を欺く空約束と言わなければなりませんが、先ほどから福田副総理が非常に強調されているポイントが、産業中心あるいは成長中心じゃなしに、国民生活、環境をよくしていく。従来は、産業基盤が二なら生活、環境が一である。それを私たちは逆にしてほしい、こういうようなことを要求しているわけなんですが、そういう観点から見たら、先ほどからの御答弁は、五十一年度には相当そういうことが実施されると、こういうふうに大きな期待を持っていいかどうか。  いま非常にニュアンスが複雑的に、あるいは巧妙かもしれませんけれども、五十一年度は非常に複雑なんだと言われた。この複雑という言葉の中身が、非常にわれわれも複雑にとるわけですね。その点ひとつ簡明に、国民が安心を得られるような五十一年度予算の計画をしていくというように言うていただけますか。
  289. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 五十一年度は複雑な年だと申し上げますのは、ちょうど石油ショックの混乱収拾の調整期間三年を要するという、その第三年度目に当たるのです。ですから、調整期間の最後の年になるわけですが、同時にそれは新五カ年計画の初年度にも当たる、こういう両面の性格を持っている、そういう年柄だという意味なんです。五十一年度予算は景気浮揚、それは財政がそのための重要な任務を負う、こういうことを中心にして編成いたしますが、しかし、五十一年度という年は同時に成長中心から生活中心へという新五カ年計画の初年度にもなりますので、その方向に向かって一歩を踏み出す年でもあるという性格を明らかにしたい、こういうことを申し上げておるわけです。きわめて明瞭に申し上げているわけであります。
  290. 神崎敏雄

    神崎委員 従来もそういうことをよく聞くのですが、従来は政府は、投資と言えば大企業本位の投資しか頭にないかのように産業基盤優先の公共投資を行ってきたのであります。だから今度はそういうふうに、というふうな意見も出てくるのですが、不況克服のためには、生活、福祉関連への投資より産業基盤への投資の方が景気回復の効果が大きいなどというのは、これはそもそも根拠のないことなのか、あることなのか、こういうことなんですが、これは私は経企庁、通産省、大蔵省に問い合わせてみました。しかし、これを根拠づける試算はどこにもないのですね。どこもやっておらない。特に通産省の場合は、感じで申しわけないが、大規模プロジェクトの方が小さい事業をたくさんやるより効率がいいのではないかという気がすると、こういう答えが返ってくるのですね。  そこで、重ねて通産大臣と福田副総理にお伺いしたいのですが、いま私が挙げましたように、各省に問い合わせても、感じで申しわけないけれども景気浮揚というたら大型、いわゆる大規模プロジェクトの方が小さい事業をたくさんやるよりも効率がいいのではないかと、こういうふうな意見が出てくるのですが、大臣方もこういうふうにお考えになっておられるかどうか、この点を伺いたいのです。
  291. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 景気浮揚の効果から言いまして、産業関連投資の方が多くて生活関連の方は少ないのだというふうなことは、私ども申し上げたこともありませんし、そうも思っておりません。たとえば、一番言われておりますのは住宅ですね、これが非常に各産業部面に関連を持ちながらその政策効果も早く波及するというようなことが言われますが、大規模のものだから景気浮揚効果が多いのだと必ずしも言えないのではないでしょうか。それは物によってその効果についてはいろいろ差異が出てきましょうが、産業関連だからその効果が多いのだというふうな受け取りは私どもはしておりません。特に住宅なんかは、景気対策上は非常に大きな効果があるものであるというふうなとらえ方をしております。
  292. 河本敏夫

    河本国務大臣 私どもはバランスのとれた公共事業、一方に偏らないでバランスのとれた新しい仕事、こういうことを期待いたしております。
  293. 神崎敏雄

    神崎委員 さらに伺いますが、中小企業仕事と市場を拡大するためには、産業基盤への公共投資と生活基盤への公共投資とはどちらが効果が大きいとお考えになっておられますか。
  294. 織田季明

    ○織田政府委員 御質問のありました公共投資の波及効果を中小企業につきまして業種別、規模別に分けて厳密に算定するのは大変むずかしいことでございますが、製材、木製品製造業あるいは金属製品製造業など中小企業が大きなシェアを占めている製造業、あるいは窯業、土石製品など中小企業と大企業が併存している製造業につきまして、生活基盤型投資が及ぼす影響について調べたわけでございますが、こういうものにつきましては非常に投資効果が産業基盤型投資に比べて大きくなっております。特にお話の出ました住宅建設投資につきましては、産業基盤型投資に比べて製造業の中で中小企業性の高い業種への波及効果がきわめて大きくなっております。  以上でございます。
  295. 神崎敏雄

    神崎委員 中小企業白書は「生活基盤型投資の中小企業性及び共存業種に及ぼす生産波及効果が大きく、とりわけ民間住宅投資の大宗を占める木造住宅建築の、中小企業業種に与える影響が大きい。」このように明確に述べております。もし大資本本位でなくて国民本位の立場に立つならば、社会福祉施設、それから文教施設、生活環境整備、農業、漁業など、高度成長が残したさまざまのゆがみを是正するために、今日重点的に投資を急ぐべき分野は実にたくさんあります。また、それによって、国民生活の改善と、深刻な経営危機に見舞われている中小企業に新たな仕事と市場を確保することができます。さらに、他のすべての産業にも波及効果をもたらすことも明らかであります。このことを重ねて強調しておいて、次の問題に移ります。  さて、その不況克服に次いで国民の関心の高いのは物価問題であります。すでに政府は酒、たばこの値上げを強行しました。さらに来年度も、国鉄運賃、電報電話、電気、ガス、米、国立大学の授業料、こういう公共料金の値上げが軒並みに予想されておるのであります。国民の中には物価に対する不安も高まっておりますが、三木内閣は、最近物価は鎮静したと盛んに宣伝されているのですが、では来年度はどの程度に抑えようとお考えになっているのか、これとの関連で伺いたいと思います。
  296. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 神崎さんがいまお話しなのは、各省の要求のお話をされているのじゃないかと思うのです。各省は五十一年度予算編成に当たりましてさまざまな要求をしているのです。たとえば国鉄が八割の運賃値上げを要求する、あるいは電電公社が基本料金について倍の値上げの要求をするとか、それが主でありますが、その他にも若干のものがあるわけです。それを一々全部取り上げておったら、物価政策はとても目鼻がつきません。  これからの物価政策ということを考えますときに、いろいろのむずかしい問題があるのです。一つは、賃金がいずれはまた春闘というようなことで上がっていくでしょう。これも非常な影響力を持ちます。それから、海外の物価がどうなるか、こういう問題もある。それから、公共料金もほうっておいたらこれはまた企業の経営に支障がある、これを改定、調整を行わなければならぬ、こういう問題もあり、なかなか容易じゃないのです。ないのだけれども、しかしそういう中におきましても物価の安定、これは大事な問題です。ですから、ことしは九・九、つまり一けたということを目標にぜひそれを実現したい、こういうふうに思っております。おりますが、来年は、そういういろいろな困難な問題がありますけれども、その困難を乗り越えて、さらにことしの目標より二%程度は下げたいものだ、こういうふうに思っておるのです。  そういう物価政策との絡み合いで許容し得る公共料金の改定でなければならぬ、こういうふうに考えておりますので、要求は要求としていろいろありますけれども、これを昭和五十一年度予算として最後的に政府の意思として決定する際には、そういう物価政策立場からの調整をいたしまして、これはそれぞれ妥当なところに決めていかなければならぬ、そういうふうに考えておるのです。物価政策と矛盾するような公共料金の決め方はいたしません。
  297. 神崎敏雄

    神崎委員 副総理、いま九・九%、それをもう二%ぐらい下げたい、こういうお考えなんですね。そうすると約八%ですか、八%というのはもともと異常な物価上昇のパーセンテージなんですね。本来狂乱物価を経験するまでは、たとえば四十二年から四十七年の間を見ましたら四%台から六%台でありました。最も高いと言われた四十五年でも七%台です。それにいま九・九から二%と言われると大体八%ですが、これで物価鎮静というような形にいけるのだろうかと思うのです。いまよりは下げる希望はお持ちでしょうが、いわゆる八%というパーセンテージは決して物価鎮静とか国民が希望しているパーセンテージではない、過去の動向から見ましても。  まだいま予算を請求しておるところだ、これも先ほどの質問者にもお答えになっておったのを私はここで聞いておりましたからよくわかっております。次々言うてくるけれども、いまはまだ言うておるのを全部引き受けるわけじゃないのだと言われる。しかしながら、予算計上、成立までにはほとんどこういうものが吸収されていった場合に、起きてくる結果としては、いま副総理がお考えになっておるような状態にならないのじゃないか。たとえばいま考えておられる八%というパーセンテージも、これはこういう状態なんだということを私は申しているわけで、何もかも全部値上げをとめてしまうというようなお考えもないでしょうし、全部が全部引き受けるということもいまおっしゃるとは思っておりません。しかしながら、いまの状態からやってみてもこういうことであるということはよく御認識をしていただいて、予算編成に当たっていただかぬと、国民のいまの要望、期待はまた裏切られる、こういう結果になるということであります。これは申しておきます。  次に移ります。十二月十二日に日銀が発表したところでは、卸売物価は七月から十一月まで五カ月間続騰となっており、また、消費物価の対前月比上昇率は、九月、十月と二カ月続いて主要国の中で日本がトップになっているのですが、このことから見ても、物価問題は依然として重要な問題であることは明らかです。それにもかかわらず、狂乱物価以降の異常な物価上昇と比べて、物価問題は一応解決したとして、財源を公共料金の引き上げに安易に求めるということは、先ほどからも重ねて言っておりますように、国民が要求するものとはほど遠い。したがって、そういうような基本姿勢で予算編成に臨まれるのかどうか、もう一回これを重ねて伺っておきたいと思うのです。
  298. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いま物価政策は非常に苦しい環境にあるわけです。その最大の障害は公共料金なんです。民間の物資につきましては、原油の輸入価格が四倍になったというのに対しまして、大方順応して価格改定が行われたわけです。ところが、公共料金につきましては、ああいう物価のむずかしい際でありますので、上昇を抑えてきたものが多いわけなんです。これを抑え切りにしておくわけにはいかぬ。そこで、物価政策と矛盾をしない、余り激突をしない範囲内において改定を行わなければならぬという時期にちょうど来ておるわけなんです。  そういう公共料金問題がなければ、五十一年三月、九・九%なんということは言わぬで済むのです。あるいは五十一年度につきましても、つまり五十二年の三月時点の年間上昇率につきましても、これを八%程度なんというふうに言わぬで、もっと低いところを申し上げ得るのです。ところが、その公共料金問題というのがありまするものですから、努力をいたしましても、どうしてもその程度にしか持っていけないだろうというふうに思います。それにしても、公共料金の扱いいかんによっては、八%程度の目標もまた困難になるわけであります。  そこで、私は、いろいろな要求が各省から出ておりまするけれども、そう一挙に何十%だ、あるいは一〇〇%だという引き上げ、これは差し控えてもらいたい、こういう気持ちでこれから話し合いを始めようというふうに思っておるところでございますが、そういう公共料金というような問題は、一年間で一挙に解決するというようなことでなくて、多少時間をかけて解決するのだということも考えられます。そういうようなことによりまして、とにかく来年度の時点におきましては、年間の上昇率、五十年度の一けた、九・九というのに比べて二%ぐらいはぜひ下げてみたい、こういうふうに考えておるわけでございますが、物価問題というのは、景気のこともありますけれども、とにかく非常に重要な問題でありますので、忘れないように努力してまいりたい、かように考えます。
  299. 神崎敏雄

    神崎委員 経団連初め財界十団体は、十二月十二日に政府に対して「経済政策運営に関する緊急意見書」なるものを提出しております。その中で財界は、現在の非常時には積極予算の編成、減税のため、思い切った国債の増発もやむなしと、国債の大量発行を要求しておるのです。また、通産大臣も、大蔵省が予定している七兆円国債に対して十兆円国債という構想を持っておられるというふうに伺っておるのですが、これは事実ですか。
  300. 河本敏夫

    河本国務大臣 来年度の予算編成はまだ作業中でございまして、先ほど来いろいろお話がございましたように、まず経済成長率を決める、それが決まりますと大体公債が幾らぐらいになるかということがおよそ決まると思うのです。私が言いましたことは、金額ということよりも、いまむしろ景気浮揚に全力を挙げるべきである、そういう趣旨のことを強調したわけでございます。
  301. 神崎敏雄

    神崎委員 日銀の伊藤調査局長は、現在の国債消化方法のもとで、本年度のみならず来年度以降も年々巨額の国債発行が続けられていけば、必要以上に拡張的な金融効果をもたらすおそれがあることに十分留意しなければならないと、インフレを引き起こす危険を指摘しておるのであります。しかも財界の中に、物価問題が一応の解決を見た今日、この問題にとらわれずに、金融政策を弾力的に運用すべきだという強い要求があるもとで、もし国家財政を七兆円あるいは十兆円もの国債に依存させるようになれば、再び狂乱物価を引き起こすということは必至であると思うのですが、そういう配慮もされた上のいまの通産大臣の御答弁なんですか。
  302. 河本敏夫

    河本国務大臣 物価問題の解決ということがいまの内閣の最大の課題でございます。そして、さらにそれと並行して景気をよくする、こういうことで、昨年の十二月から一貫した経済運営が行われておるわけでございます。でありますから、インフレを再び起こす、狂乱物価を再び起こす、そういうことは絶対避けなければならぬ。景気の回復と言いましても、そういうことになりますと何もなりませんから、その点は十分注意をしなければならぬと思います。
  303. 神崎敏雄

    神崎委員 日本の深刻な経済危機は、単に石油危機や国際通貨危機、世界的不況などの外的要因のみによるものではありません。歴代自民党政府がエネルギー、食糧など、重要な資源をアメリカを中心とした海外に深く依存させ、大企業中心の高度成長を追求してきた結果によるものであることは、今日だれもが認めることであり、明白なことであります。まさに日本経済の構造的な危機となっている点に今日の深刻さがあるのであります。そればかりか、公共料金の相次ぐ引き上げに明らかなように、一方では国民に犠牲を強いながら、他方では大量の国債を発行して、産業基盤優先の公共投資を行ってきたのです。このような経済政策の結果、国家財政をも破滅に追いやるという重大な事態を招いておるのが今日の現状であります。  そこで、財政制度審議会の中間報告によると、五十年度の歳入欠陥を四兆円とした場合、五十五年度には国債発行額が十四兆円、普通国債残高が七十兆円と、国家財政が莫大な借金に依存し、その利子だけでも六兆円に及び、国民に大変な負担をかけるようになると警告を発しておるのであります。このような事態を未然に防止するためにも、高度成長型の経済政策の仕組みを残したままで、単に不況対策として大資本の救済の景気刺激策をするのではなくて、五十一年度予算こそ、これまでの経済政策を根本的に転換をして、国民生活の改善と高度成長のさまざまなゆがみを取り除く投資を軸としながら、国内市場の拡大と日本経済の立て直しを進めるその第一歩にすべきであるということを、私は重ねて強く要求しておきたいと思う。  先ほど福田副総理は、これからの五カ年計画の第一年度である、こういうふうにおっしゃったのですが、最後に伺いたいのは、いままでの高度成長政策の線上だとか、あるいはそれを基本的に残したままで今日の物価対策や不況政策考えていかれるならば、いま私が指摘したような形になると思うのですが、この第一年度からは過去のそういうようなコースと違った形に基本的な財政計画をお立てになる、こういうふうに先ほどからの御発言を理解していいのか、あるいはいままでどおりのことの上に、一応今日の経済状況から見て、不況対策あるいは物価対策から見て少し手直しをするということになれば、それはやはり現象的なびほう策であって、根本的な、あるいは抜本的な経済の立て直しであるということは私は言えないと思うのです。その点について、副総理にひとつ最後に、国民に向かっての決意を込めた、期待にこたえる答弁をしていただきたい。
  304. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 これからの経済政策は、いままでの高度成長路線から安定成長路線へ明確に転換いたします。五十一年度はその第一歩を踏み出さなければならぬ、そういう年柄になるわけであります。成長の速度は落とすことになりまするけれども、その成長政策の内容といたしましては、先ほどから申し上げておりまするとおり産業中心から生活中心へ、そういう方向へ移行する、これが政府の基本的な考え方です。  その基本的な考え方の中で国家財政をどうするか、それが当然そういう線で決まってこなければならぬ、こういうふうに思うのですが、同時に、これは国家財政だけの問題じゃないのです。地方もそうでなければならぬ。また、企業の方でもそうでなければならぬ。家庭の方でもそれに即応した切りかえがなければならぬ。つまり、いままでは、とにかく金さえ持っていけば物が買えた、こういう時代でありますが、しかし世の中はいわゆる資源有限時代に入ってきておる。そういう中においてわが国の経営をどういうようにするかというと、もう夢よ再びというわけにはまいらない。安定成長路線にいかなければならぬ。そういう状況はひとり国ばかりではなくて、企業もそうだ、家庭もそうだ、国全体が総切りかえのときに際会しておる。その中で政府は率先して姿勢の切りかえを行わなければならぬ、かように考えております。
  305. 神崎敏雄

    神崎委員 福田副総理からいま答弁を伺って、今日の段階では大いに期待が持てると思うのです。したがいまして、ひとつ予算の発表のときにきょうの御答弁が立証されるかどうか、楽しみにしております。
  306. 山村新治郎

    山村委員長 松尾信人君。
  307. 松尾信人

    ○松尾委員 それでは、まず大島つむぎのことからお聞きいたします。  ここでもたびたび取り上げられた問題でございますが、繊維問題懇話会で先ごろ「当面の繊維対策について」という提言がまとめられて、大臣に提出されておるわけであります。それで、その提言は輸入対策に力点を置いている。特にその中で、政府は繊維の輸入動向を絶えず監視して、輸入急増で国内業界に相当の被害が生ずる場合には、輸入を抑制するよう強力に指導する、また行政指導でも、輸入が急増するときは関税引き上げやセーフガード等の発動を検討するというようなことも指摘しているわけでございます。  それで、問題の大島つむぎのことでございますけれども、いままで政府間交渉をやってこられた、その大体の大まかな点と、その後かかわりのある重大な問題がございますれば、そのような政府間交渉の現状というものをまず御説明願いたいと思います。
  308. 野口一郎

    ○野口政府委員 韓国産大島つむぎの問題につきましては、私もたびたび報告をいたしましたように、ことしの二月、四月、九月、それから十二月と、この四回にわたりまして韓国側と交渉をいたしたわけでございます。現在どうなっているかということでございますけれども、基本的な線は二月と四月の二回にわたって話し合われたことでございます。  その話し合われた結果どうなっているかと申しますと、一つは、表示の問題でございます。韓国産大島つむぎ、あるいは本場大島つむぎ類似品につきましては、端末にメイド・イン・コーリアとかあるいは韓国産ということを織り込む、あるいは転写マーク方式で刷り込むということを中心に、ともかく表示をはっきりさせるということが第一点であります。  それから第二点は、輸出量をオーダリーなものにするということ。これは四月の第二回のときに、ことしは大体四万反を超えない量ということで、量についても話し合いがついているわけでございます。  それから三番目は、これは韓国の繊維政策にかかわる問題でございますけれども、本場大島つむぎ類似品をセマウル運動ということで農村工業化運動の目玉にはしない。つまり、積極的な奨励策はとらない。あわせて、つむぎの生産設備の増強、増加も行わないという、以上の三つが中心でございました。  それで、ちょうど九月の初めのときには半年たったわけでございますので、その三点の申し合わせについてどうなっているかということの見直しといいますか、協議を行ったわけでございますけれども、第一の表示の問題でございますが、これは韓国側と日本側と若干見方が違いましたわけですけれども、ともかく誠心誠意韓国側はやっている。ただ、現実の問題になりますと、じゃ一〇〇%完全に表示されているかということになりますと必ずしもそうでない。まだ十分ではないということは双方で確認されたわけですが、ともかく今後とも積極的にこの表示はやるように努めますということが韓国側の話でございました。  それから輸出量の問題は、これは一月−六月の半年分をお互いに振り返ってみたわけでございますけれども、大体一万九千反弱ということで、ともかく年間四万反の範囲内にはこのままでいけばおさまるであろうということが確認をされたわけでございます。  それから、三番目の積極的奨励策はとらないというのは、とっておりません。それから、設備の増強の問題につきましても、繊維設備というのは許可制なんで、政府としては許可をしておりませんということで、ふえておりません。こういうことでございました。  したがいまして、二月、四月の話し合いの線は、完全とは言えませんけれども、ほぼ合意された線で守られて事態は進んでいるということを双方ともに確認し合ったわけでございます。
  309. 松尾信人

    ○松尾委員 その中で、まず第一点の表示の問題でございますが、なるほど表示はされておるようであります。しかし、これは日本国内に入ってまいりますると、韓国産というところがすぐ外せるようになっているわけです。そして、販売する段階にはもう国内のつむぎと区別ができないというような巧妙なやり方になっておるようであります。そういう点、表示が第一点だ、それでそれが相当できておるという答弁でありますけれども、現実にはその表示がすぐ外される、そして区別がつかない、そして販売されておる、こういう問題があるわけですよね。問題点を指摘しておきます。  それから、年間四万反の問題でございますけれども、これがそれだけで終わればいいですが、非常に困っておりますのは、観光客と申しますか、韓国に行く客が年間やはり四万人ぐらいおるわけですね。ぼくも飛行便なんかで全部詳しく調べておりますけれども、キャセイ航空、大韓航空、ノースウエスト、JAL、それがそれぞれたくさんの便がございまして、合計八十三便、年間五十二週と見て四千三百十六便がある。そうして日本人の韓国への出国数でありますけれども、四十七年が延べで約一万八千をちょっと超しています。四十八年が四万一千を超しております。四十九年は三万二千八百幾らになっておりますけれども、こういうことで、大体四万見当が出国しておる。そうして大体それが帰ってくる。帰ってくるときに、韓国の方では、日本の免税点が十万円まであるものですから、安い韓国産のつむぎを買えばうんともうかりますよ、このような宣伝も非常に大々的になされまして、そして大体一反三万五千円かその辺のところでございまするので、二反、三反買ってくる。こういうことで、これはどこで押さえるかわかりませんが、相当現実には日本に入ってきているわけであります。  ですから、政府間協定の中で四万反、これでいくならば大した問題は起こらないのでありますけれども、他方、年間約四万近くの旅客が行って帰ってくる。そうしてそれぞれが向こうのつむぎを買ってくるということになりますると、これは莫大な反数になるわけでありますので、こういう点はどういうふうにしていったらいいかとお考えになったことがありますか、いかがですか。
  310. 野口一郎

    ○野口政府委員 先生がおっしゃいますように、私どもが韓国政府と話し合った四万反という数字の中には、これは観光客が自分で携帯して持ってくる物は入らぬわけでございます。これを統計上押さえろと申しましても、非常に無理ないろんな問題がある。率直に言ってできない、いまのところはできないと申し上げざるを得ないかと思うわけでございます。  先ほど免税点のお話がございましたけれども、いま絹織物は八%でございます。暫定カットがございますので、八%でございますが、先ほど言いましたような価格差の問題から考えますと、仮に八%の税金を払っても持ってきた方が得だという場合もあるわけでございまして、必ずしも免税点の問題だけではないというふうに見ておるわけでございます。  これはどういう取り締まりの方法があるのかと申しましても、これは大蔵省なり税関の問題でございます。私どもにいいアイデアがあるわけでございませんけれども、本質的にはやはり表示をはっきりさせまして、日本の本場の物と韓国製の物とは違うということを消費者によく認識してもらう等、要するに国内の大島つむぎ産地の力をつけ、品質を高めていくという、そういう基本的な方向しか根本的な解決策としてはないのではないだろうか、こんな感じがいたしておるわけでございます。
  311. 松尾信人

    ○松尾委員 いまのお答えのことで時がたちまして、現状に至ったわけであります。ですから、要するに大島つむぎの生産の方々は、何ら解決がなくて、現状では非常に困っておる、こういうことでありますので、関税を上げてくれだとか、いろいろの要望が次から次になされるわけでありますが、何らかそこの打開策を図りませんと——特に私は、問題なのはやはり旅客による持ち込みという点だろうと思うのです。免税点もある、また関税率がありましても、価格差の点で買って帰った方が有利だというようなこともありますれば、買ってくる人は免税点を利用してそれ以上の物も持ってこれるということになりますと、四万反の取り決めということは大きなしり抜けになっているわけでありまして、結局業界の保護というものには役立っていない。  そして、政府交渉というものがそこでデッドロックに乗り上げていて少しも進展しない。問題はいつまでも残っている、そうして苦しんでおる、こういうことでありますから、これは何か基本的にお考えなさいまして、大蔵省とも協議し、そして特にこのつむぎという問題につきましては、旅客携帯品等の問題を中心にきちっと詰めて、最小限度のものを示すか何かしていきませんと、これは解決できないと思うのです。何かそういう方向で今後検討をして、政府間交渉の中にのせてみるという構想も全然ありませんか。いかがですか。
  312. 野口一郎

    ○野口政府委員 仮にそういう方向でやるということになるといたしましても、これは何よりも関税とか税関の問題であろうかと思いますので、そういうことが可能かどうか、大蔵省の意見も聞いてみたいと思っております。
  313. 松尾信人

    ○松尾委員 大蔵省の意見を聞くということは、非常にいいようで、態度が弱いわけですよ。ですから、困っておるのだというあなたたちの原局の認識がまずありまして、そうしてその中でも一番問題点は、政府間交渉で四万反と決めておるけれども、しり抜けでどんどん入ってくるんだ、それは旅客携帯品なんだ、その点については私ども厳格にやろうと思うから、ひとつよろしく頼む、そしてこれは一反なら一反、それ以上の物は関税をかける、その関税も思い切った関税をかけるというぐらいのあなたたちの原案がなくては、大蔵省としては、国際航空の忙しい現場でございますので、うまいぐあいに向こうが案を出して解決するような方向はいつまでたってもできないと思うのです。いいですか。やはり通産省が原案をつくって大蔵省と折衝する、大臣いかがですか、そういうふうな考え方を持ちませんと、この問題は延々と続きますよ。
  314. 野口一郎

    ○野口政府委員 問題は、実は旅客が日本に帰ってきたときにどれだけ持って帰ってきているのかということがわからない点がまず問題でございます。もちろん大した重さでもない物ですから、一反とか二反とか持って帰っているであろうという推測はできるわけでございますが、現実にどれだけ入っているのか、それが産地の景況に影響を与えるほどの量に達しているのかどうか、それからまた、どういう品質、価格の物を持ち込んでいるのかということも実はわからないわけでございますので、先生の御示唆されるような方向へ仮に進むといたしましても、まず実態をつかむことが先決ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  315. 松尾信人

    ○松尾委員 そうですね。実態がわからぬでは解決する方法も出ないわけであります。ですから、原則は携帯品の申告をやることになっていますから、そこに必ず特掲品目としてそういうものを掲げるとか、大蔵省の知恵も拝借しながらあなたたちの基本的な態度を固めておいて交渉される、特に具体的にいまから大蔵省との交渉を始めてもらいたいのです。ですから、始めるかどうかということでひとつ最後のお答えだけをいただけば、私はこの問題はもうこれで打ち切りたいです。
  316. 野口一郎

    ○野口政府委員 したがいまして、韓国産つむぎが日本にそういう形でどの程度持ち込まれているのかということの調査を大蔵省の方でやっていただけるのかどうかということについて相談をしてみたいと思っております。
  317. 松尾信人

    ○松尾委員 では、それはしっかり推進してもらいたいと思います。  次に、廃棄物の処理の問題でございますが、これは大臣も御熱心でございましょう。また、通産省内でも資源再生利用研究会というものでいろいろのプロジェクトチームで検討されておるわけでございます。過日、産業廃棄物排出量原単位調査が行われているわけですけれども、その概略、そして調査の結果どのような実感を持たれたか、これはいかがですか。
  318. 宮本四郎

    ○宮本政府委員 産業廃棄物の排出量原単位調査と申しますのは、四十八年度の各企業の持っておるデータに基づきまして、どの程度の廃棄物が排出されておるか、そのうちどの程度が資源化されておるかということを見るために調査をしたものでございまして、最近ようやく集計がまとまったところでございます。したがいまして、現在データは持っておりませんけれども、後刻提出させていただきたいと思います。
  319. 松尾信人

    ○松尾委員 数字などはいまはよろしい。総括的に聞きたいのは、一概に廃棄物と申しますけれども、その中で、要するに再処理または再資源化と申しますか、その可能性はどのくらいあるのだということです。あなたの方の原単位調査では、どのくらい廃棄物を焼却されたとか、再資源化した物がどのくらいだ、結局無処理になったのがどのくらいだ、これは出ておるわけですよ。あなたの方のデータにある。埋め立て処分にしたというのが廃棄物の中の約五〇%に達しておる、そういうことが現状でございますけれども、結局やろうと思えば再資源化の可能性はどの程度廃棄物の中であるのか、こういう見当は立っておりませんか。
  320. 宮本四郎

    ○宮本政府委員 先ほどの原単位調査によりますと、産業の中から排出されました廃棄物の中で再資源化されておりますのが約一六%という数字が出ておりますけれども、そのほかにいろいろな形の廃棄物が出るわけでございます。産業の中から出る物以外に、製品としてマーケットの中に消費されて、それがやがて廃棄物になるという物もございます。したがいまして、私どもの方におきましては、予算を得ましたので、今回主要な業種について廃棄物の再生処理計画をつくるつもりでおるわけでございます。そういう過程におきまして、どの程度の再生処理が可能かという数字を具体的に把握してまいるつもりでございます。
  321. 松尾信人

    ○松尾委員 繰り返しますけれども、結局廃棄物の中で焼却したもの四%強、いまお答えのとおり再資源化したものが約一六%、無処理その他というのが残りの八〇%、そのようになっておるわけでございます。それで結局は廃棄物の中の五割が現在は埋め立て処分ということに使われておって、資源の再資源化ということはなされていないわけであります。そういうものを一つのとうとい資料とされまして、あなたの方ではいまからこの資源の再生処理ということに真剣に取り組んでいくわけでございましょうけれども、そういう前提を踏まえて、あなたの方では今後どのようにこれを有効に再資源化のために方向づけをしようとしておるのか、いかがですか。
  322. 宮本四郎

    ○宮本政府委員 通産省におきましては、廃棄物の処理が一方におきましては資源の乏しいわが国といたしましてきわめて必要な施策であり、他方におきましては環境保全のためにきわめて必要な方針でなければならないということで、再資源化の政策を重点的に取り上げておる次第でございます。現に従来から鉄くずあるいは故紙、こういった個別の廃棄物につきまして物資別の行政の一環といたしまして再資源化を進めてまいっておったわけでございますし、同時に、廃棄物の処理及び再資源化の技術の開発、これは非常に大事な問題でございまして、工業技術院傘下の研究所を通じまして鋭意その技術の開発をやってまいりました。同時に、業界がこの産業の廃棄物の処理及び有効利用のために各種の事業を行うに当たりまして金融上、税制上の助成を行ってきておったわけでございます。  ところが、先ほどのような背景からして、これをもう一歩進める必要が出てまいっております。したがいまして、今年度からは特にこれに力を注ぎまして、先般、十一月十三日でございますが、新しく廃棄物処理の推進の中核的団体といたしましてクリーン・ジャパン・センターというものが設立されたわけでございます。このクリーン・ジャパンセンターにおきましては、たとえば粗大家電廃棄物でございますが、これを収集してまいりまして、非常に低温の液体窒素によるところの脆性破壊という方法でこれを小さな粒に破壊をいたしまして、これをいろいろな方法で分類をいたしまして、鉄くずなら鉄くずを、銅くずなら銅くずを回収する、こういったモデルプラントをつくりたいと、いま鋭意検討を進めておる次第でございます。
  323. 松尾信人

    ○松尾委員 いま家電関係のクリーン・ジャパン・センターのお話が出ましたが、やはり空きかんの問題、スチールかんで四十八年に十七万六千トンの生産がある。これは全部廃棄物になります。アルミかんが四十八年に一万四千五百トン、六億二千万本のかんがつくられて、そして非常に問題が起こっておるわけでありますが、特にオールアルミニウム缶回収協会が一生懸命になってがんばっているわけです。それで、飲料の生産量の中にだんだんかんがふえてきておる。四十五年四・九%から、四十八年は一五・一%というように、かんがだんだん普及してきて使われておる。それが一回限りで捨てられるというので、非常に重大な問題ですね。このアルミかんの方の回収協会の活動状況、もう一つはプラスチック処理促進協会の活動状況について、時間がありませんから要領よくお答えください。
  324. 宮本四郎

    ○宮本政府委員 オールアルミニウム缶回収協会というのがございまして、これは回収センターを通じまして回収の実施、それから再利用技術の開発、消費者に対する啓蒙等の事業を営んでおる次第でございます。さらに社団法人プラスチック処理促進協会におきましては、廃プラスチックを集めまして、これの処理及び有効利用に関する技術の開発、さらにはその成果に基づきましてテスト的にこれをモデルプラントに移しまして、その普及発展、発達に対して推進措置を講じておる次第でございます。
  325. 松尾信人

    ○松尾委員 いいようなお話でありますけれども、プラスチック処理促進協会の方は行き詰まっておるわけであります。千葉県の船橋と埼玉県の越谷でつくったわけです。そして、無公害再生処理実験がともに技術的には十分実用化のめどがついたのでありますけれども、経済性が伴わないのですね。それで再生処理に非常に金がかかる。そして再生品の売り上げが非常に少ない。収支のアンバランスで大きな赤字を抱えておって、結局これは埋め立てで処理する以外にないのだ。埋め立てで処理する三倍以上の経費がかかるということで、今後はそのようなプラスチック処理促進協会の仕事をやめて、そして結局埋め立て処理するということで、資源の再生処理はほとんど問題が消えてしまったようなことでございます。  このような一例からもわかるように、廃棄物の再資源化というものは一般に非常にコストが高くなる。再生した品物は品質もやはりもとの物よりも落ちてまいりますし、販売網がきちっとなっておりませんので、販売上も困難があるということで、技術的には幾ら成功いたしましても、現実の経理面で全部だめになっていくのですね。空きかんの方はいろいろメーカーとも話がついたり、団地の方とも話し合いがついたりして、これはある程度成功しておりますから、これをしっかり回収していって、いま何%ぐらい回収しておるからこれを何%ぐらいまで上げていきたいという年次計画ぐらいお立てなさいよ。それから、このプラスチックの方は技術的には無公害でできるのだけれども、採算が絶対に合わないので、結局は埋め立て処理という方法に戻りますということで、二年も三年も苦労してがんばってきたまじめな協会が行き詰まってしまっている。  そういうことで、政府が大きな声で言い、大臣も自分の施政方針の中で資源の再生利用ということを言われておった。結局は民間が一生懸命がんばって技術的にはある程度いったけれども、収支の面で採算が合わないで、二年も三年も苦労してやりながら、問題を残しながらやめた、こういうことでは、かけ声と内容がうんと隔たりがあるわけであります。ですから、これはそういう点を率直にあなたが認められるかどうか、いや、このプラスチックの方は事業をやめたのじゃないのだ、いまからうんと国も助成してやりたいのだというお考えがあるのかどうか。  そうして一番最後に、私が一つのこのような行き詰まった事例を申し上げたわけでありますが、この収集する機関はまだたくさんございます。故紙、鉄くず、廃油、廃車、びん、先ほどのお話は家電製品ですね。私がいま言っているのはプラスチックの問題、それからアルミかんの問題、このようにいろいろの再生処理の機関があるわけでありますけれども、これはやはり軌道に乗せて、そして全部これを再生処理して、もう一回資源の活用を図りませんといけないということを繰り返し繰り返しここで申し上げているわけであります。ですから、局長がひとつがんばるというのが一つと、政府の助成について大臣から、本当にめんどうを見ていく、そういうように途中で経理問題等で大事な資源の再生利用についてせっかくのものがだめになったということが起こらないようにしたいというようなお答えを聞いて、終わりたいと思うのです。
  326. 河本敏夫

    河本国務大臣 産業廃棄物の問題は、環境という立場と、それから資源の活用という面から考えまして非常に大きな課題であろうと思います。そういうことでございますので、政府の方でも最重点課題の一つと心得ましてこれを取り上げておるわけでございます。しかし、おっしゃるようにまだ不十分な点がたくさんございますので、さらに一層研究、努力を重ねまして、重点施策としての成果を上げたい、かように考えております。
  327. 松尾信人

    ○松尾委員 非常にお答えは結構でありますけれども、最後に、これは処理機関としましていろいろな機関ができておるわけですよ。それが一生懸命がんばっているけれども行き詰まったということは、この政府の助成が非常に足らないというか、政府とのつながりが十分でないものもあるのじゃないか。ですから、せっかくの資源の再生利用でございますから、予算的にも考える、そういう助成措置を来年度予算でも考えていく、こういうところまでお答え願いたいのです。
  328. 河本敏夫

    河本国務大臣 実情をよく調査いたしまして、予算措置もできるだけのことをやります。
  329. 山村新治郎

    山村委員長 次回は、来る十九日金曜日、午前十時理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十一分散会