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1975-12-12 第76回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十二日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 萩原 幸雄君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 佐野  進君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君   稻村左近四郎君       浦野 幸男君    粕谷  茂君       橋口  隆君    八田 貞義君       深谷 隆司君    森下 元晴君       山崎  拓君    板川 正吾君       加藤 清政君    加藤 清二君       勝澤 芳雄君    竹村 幸雄君       横路 孝弘君    渡辺 三郎君       野間 友一君    米原  昶君       近江巳記夫君    松尾 信人君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       水口  昭君         公正取引委員会         事務局審査部長 野上 正人君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         中小企業庁小規         模企業部長   栗原 昭平君  委員外出席者         文部省社会教育         局社会教育課長 塩津 有彦君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十二日  辞任         補欠選任   上坂  昇君     横路 孝弘君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     上坂  昇君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤嘉文君。
  3. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 きょうは五十分ばかり時間をいただきましたので、いろいろと全く関係のない問題も出てきますけれども一つは、YXを含め今後の日本航空機産業というものについての大臣を初め通産省といたしましての考え方を承りたいことと、第二に、いま石油価格の問題がいろいろ取りざたされておりますが、それに絡んでのいろいろな問題、三番目に、時間があれば繊維の問題についてお話をいろいろ承りたいと思います。  第一点でございますが、日本のこれからの新しい経済においては、どうしても知識集約型の産業を育てていかなければいけない、これは一つの一貫した方向だろうと思います。そして、それの最たるものは電子関係のいわゆる電子機器工業であり、いま一つ航空機産業だろうと思います。その意味において、日本航空機産業をよりよい方向に育成していかなければならないということは当然でございますが、残念ながらYX開発計画YS11の後継機として計画をされましてから、今日までなかなか思うようにその飛行機が飛び立たないわけでございます。  たしか通産省の最初の計画は、YXは五十二年度ぐらいには試作機が完成するということになっておりましたけれども、いまのところ試作機の完成はおろか、正直どういう形で、いま行われておるボーイングとの提携においてどういうスケジュールで行われていくのか、それもはっきりしない。ということは、その前ののれん代その他の問題でボーイングとは必ずしもうまくいっていない、こういうことだろうと思います。  そこで、先月か先々月でございましたか、通産省からも一人たしか参加されたと思いますが、木村さんを団長としてBAC調査に行かれたグループがございます。いわゆる木村ミツションでございますけれども木村ミッション報告が、それぞれの方々からの報告と聞いておりますけれども通産省に出されたと承っております。私は、もちろん従来ボーイングといろいろと話を詰めてきたわけでございますから、それを直ちにここで打ち切れということを言ったり、あるいはそれはもうやめたらどうかというようなことを申し上げるつもりはございません。  しかしながら、要は今後の日本経済、資源問題その他で新しい日本経済方向の中でどうしても航空機産業を育てていかなければならないというときに、このボーイングとの問題だけに余りにもとらわれ過ぎておることがいいのかどうか。もう少し多面的に国際協力姿勢をとりながら、本当に日本の立ちおくれておる航空機産業を、より技術の進んだ、また将来の日本経済の担い手になるような産業に育てていく必要があるのではないか。その意味においては、幸いイギリスもBACとフォッカーの企業合同の話も進んでおるようでございますし、また、EC各国において、航空機産業というものはお互いに自国だけでやっておったのではいけない、ECがまとまっていくべきではないかという提言もなされておるやに承っております。  そういう意味で、決して当面の問題だけに私はとらわれて申し上げるわけではございませんが、今後の日本経済の中で最も重要な産業になっていかなければならないという位置づけが当然されておる航空機産業に対して、もう少し幅の広い形での国際協力、また思い切って国際協力によって日本もよりよい技術を習得し、そうしてりっぱな国際レベルに達した日本航空機産業をつくり上げていく、こういうことが非常に大切ではないか、こう思うのでございますが、そういうことに対する大臣としての御見解をまず承らしていただければ幸いと思うわけでございます。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在当面する産業政策の最大の課題は、いまお述べになりました産業構造転換という問題でございます。産業構造をどういう方向転換していくかということになりますと、これは一口で申しますと機械工業中心だと思います。機械工業の中でもやはりいまお述べになりました電子工業、特にコンピューター産業、それから航空機関係産業、この二つが当面大きな課題になっておるわけでございます。  航空機の問題、特に民間航空機の問題につきましては、やはりいまお述べになりましたように、アメリカボーイングとずっと交渉をいたしておりますが、場合によりましてはもっと幅広く検討していく、こういうことも考えなければならぬと思いますが、いまのところはまだ交渉が最終の段階でございまして、全力を挙げましてボーイングとの話をまとめたい、こういうことでいまそれに最後の努力を集中しておるというのが現状でございまして、この結果いかんによってまた新しく考えてみたい、こう思っております。
  5. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 いま交渉中だから、とりあえずそれを進めながらというお話でございますが、たとえば最近、大阪国際空港の騒音問題にいたしましても、私どもは大変シビア過ぎる判決だと思っておりますが、ああいうのが一つ出てまいりますと、やはり連鎖反応的にあちらこちらで、空港をより整備し、より拡張していくということにおいてむずかしい問題が出てくるのではなかろうか、そう思いますときに、たまたま全日空とか、あるいは東亜国内航空とか、いわゆる国内線を主としてやっておられる航空会社などの意見を聞いておりましても、どうもYX計画しておる二百五十人から三百人近い定員よりは、やはり百五十人以下の、百三十人から百五十人ぐらいの飛行機の方がより日本の実情には合うのではないか、こういうような話も承りますし、また、私どもヨーロッパを回りましても、あるいは中南米を回りましても、正直そういう飛行機がやはり市場としてはあるような感じがするわけでございます。  もちろんボーイング世界一の航空会社であり、そのシェアはずば抜けて大きなシェアを持っておるわけでございますから、ボーイングとタイアップをしていけることは望ましいと思うのでございますけれども、余りにもそれにとらわれているよりは、一方において日本国内においてもあるいは世界の各地においてもより需要のあるだろうと思われる飛行機開発、こういうものも将来においては考えるという姿勢にあった方が――もちろんボーイングによってよりよい技術を習得することも必要かもしれませんが、たとえばヨーロッパの国とタイアップすることによってそこのすばらしい技術日本が習得いたしまして、そしてそういう大型機YS11との間の中間機的なものも将来開発していくということも、私は一つ考え方としては真剣に考えていくべき問題ではなかろうか、また、そういうことを考えることがボーイングとの交渉においてもかえってプラスになることにもなるのではないか、こう考えるのでございますが、その辺についての展望としてはいかがなものでございましょうか。
  6. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 お答えいたします。  御指摘YS11の後継機として、たとえば御指摘の百三十人乗りあるいは百五十人乗り規模航空機を今後製作すべきかどうか、こういう問題は確かに重要な問題であると考えております。御指摘のように、YXは二百人から二百三十人の規模のものでございますが、世界の百五十人乗り程度旅客機需要は約千機と言われております。二百人から二百三十人の世界航空機需要は約二千機と言われておりまして、需要の幅からいいますと、二百人から二百三十人の層の旅客機需要が大変大きいわけでございます。民間航空機生産ということでございますので、いろいろなリスク等、また市場の広さを考えますと、やはり市場の広い二百人ないし二百三十人の規模のものをということで、従来YX事業化するために今日まで努力が続けられてまいっております。  ただ、先生指摘のように、YS11の後継機としての百三十人程度需要につきましては、国内におきましても需要があることは事実でございます。また、先般、御指摘の英国へ派遣いたしました、ミツションの訪英中におきまして、いわゆるBACの方からこういった中型機共同開発につきましての提案もなされておりまして、私どもこの提案につきましては、いま直ちにこの問題について参加をするとかそういうことはとうていできないと考えてはおりますけれども、今後の問題としましては、私ども引き続き念頭に置いて研究はすべきものであろうかとは考えておりますが、現段階におきましては、何よりもまずYXの方の事業早期実施ということに重点を注いでおる次第でございます。
  7. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 もちろんいまYXボーイングととにかく話を詰めようというところでございますから、現在すぐそういう方向方向転換しろと言ったって無理でございますし、私はそういう意味で申し上げているわけではなくて、そればかりに余りとらわれておるということだけではなく、姿勢としてはやはりそういう中間機というものの需要も相当あるわけでありますし、あわせてそういう方向にいくということが必要であろう、こういう意味で申し上げたわけであります。だから、その辺がそういう将来の展望として、そういう方向であるかどうかをもう少しはっきりおっしゃっていただくとありがたいと思いますし、またあわせて、世界各国航空機産業あり方を見ておりますと、いまの日本航空機メーカーであるたとえば三菱にしましても、川崎にしましても、富士重工にしましても、これは決して私は世界的に大きな規模だとは言えないと思います。業界の中にも必ずしもこれでいいと思っている考え方もないようでございまして、やはり将来そういうことで本当に航空機産業がより世界的な水準にまで達するようなものにしていくためには、企業の再編成というか、そういうような方向通産省として考えなければいけない、私はこう思うのでございますけれども、その辺に対してもあわせてひとつ考え方を聞かしていただければありがたいと思います。
  8. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 七〇年代に入りましての世界航空機生産は、ほとんどすべてが国際開発ということになってまいっております。私どもはこれからの世界航空機需要念頭に置きながら、各国アメリカはもとよりでございますが、ヨーロッパ諸国ともいろいろ情報交換を進め、今後の世界需要推移を見きわめ、必要ならば共同でいろいろな仕事をやっていく、こういう幅広い接触の中でこれからの航空機政策方向づけをいたしてまいりたいというふうに考えております。  現在ございます航空機生産メーカー体制の問題でございますが、私ども指摘のように現在のような日本国内におきます非常に狭い市場のもとで、現段階でこのままの形でいいのかという点はいろいろ問題もあろうかというふうに考えておりますが、当面YX事業化が進みます中で、たとえば主要な企業航空機部門につきましては、YX事業実施のための必要な範囲におきます集約化は当然進めなければならないというふうに考えております。一挙に体制の整理という問題はなかなかむずかしい問題もあろうかとは思いますが、御指摘の点は私どももその重要性十分認識いたしておりますので、今後の長期的な課題として考えてまいりたい、このように考えております。
  9. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 もう一つ、これに関連いたしまして、何か近日中に、来週あたりにでも国防会議で決められるやに聞いておりますが、PXLとP3Cの導入の問題でございます。私は日本航空機産業を、よりいま申し上げた国際的な水準にまで持っていくという意味においては、正直このPXLというものの開発も非常に大切ではないかと思うのでございますけれども、どうも国防会議の結論はP3Cの導入の方が強いというふうに承っております。しかし、PXLの将来の開発というものも国防会議においては決められるやに聞いておりますが、通産省といたしましては、あるいは防衛庁なり国防会議の方へ、その点について、航空機産業の将来のしっかりした産業としての確立という意味から、ぜひともPXL開発というものは残してもらいたいという方向努力はしていただいていると思っておりますが、その辺に対しての見込みをお聞かせいただきたいと思います。
  10. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 次期対潜哨戒機につきまして、四十七年にいわゆる国産方針白紙還元が行われまして、輸入機国産機かということで検討が今日まで続いておるわけでございます。年内に何らかの形での機種決定が行われることを期待いたしまして、私ども防衛庁当局と現在打ち合わせをいたしております。  私どもの考えとしましては、PXLにつきまして国産方針を出しまして、そういう方向でいま防衛庁当局と折衝をいたしておるわけでございますが、防衛庁当局の方におきましては、先般他の委員会において話をされているのを聞きますと、ポスト四次防におきます新しい防衛力あり方等いろいろ検討すべき問題も多いということもございまして、年内機種決定というようなことはきわめてむずかしい情勢になっておる。しかしながら、国産化の問題につきましては、かねて防衛庁におきましても装備の国産化方針はあるわけでございますので、今後の問題として、国産化問題につきましての重要性十分認識はしているというふうに私どもも理解いたしております。  いずれにいたしましても、機種決定は大変重要な問題でございますので、私どもいろいろなデータを検討いたしまして、防衛庁当局に、国産重要性可能性実現性につきまして協議を現在続けておるわけでございます。年内決定まで努力いたしたい、かように考えております。
  11. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 もう一つ、それに関連して伺いますが、PXL開発よりもP3Cの導入に踏み切る可能性が強くなったのは、一番大きな問題はソフトウエアの問題と私は聞いておるわけであります。ソフトウエア開発ということにおいては、先ほど申し上げましたように、航空機産業とともに電子計算機その他の電子工業関係というものは、将来の日本経済においては非常に中心的なものになっていかなければならない。先ほど大臣もその点はそのとおりおっしゃっていただいたわけでございますが、そうなると、ハードの方はわりあいに開発が進んでまいりましたけれどもソフトにおいては非常におくれておるというのが現状だろうと思います。この点について、通産省といたしまして、特に今度電子計算機を自由化すると決まっておるこのときに当たって、ハード開発とともに、やはりよりソフトウエア産業を思い切って育成していくという姿が私は絶対に必要だと思うのでございますけれども、その点に対して、通産省としての、もしできれば大臣としての御決意を承れれば幸いと思います。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたように、産業構造転換機械工業中心であるということを言いましたが、コンピューター本今回自由化されるわけでございますから、ハードソフトともこれを機会政府も全面的にバックアップいたしまして強化したい、世界第一級のレベルに常に置いておきたい、こういう考え方であらゆるバックアップをしていくつもりでございます。  なお、航空機の問題につきましても、非常に大事な産業でございますので、基本的に何とか日本でもこれを育成、強化したい、こういう考え方に立ちましていろいろな交渉をしておるということも申し添えておきたいと思います。
  13. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 時間がございませんので、次に進みたいと思います。  次は石油関係でございますが、時間の関係上、私の方でいろいろ申し上げて、お答えは一度にお願いできれば幸いと思います。  石油価格について、せっかく石油業法に基づく標準額が告示されましたけれども、必ずしもそれが末端においては実現を見ていないのが事実だと思います。それは、私は、物の価格というのは、幾ら標準額を決めましても、やはり需給関係によって決まっていくわけでありますから、ある程度需給バランスで、供給が過剰であれば価格というものは下がるのが当然だろうと思います。そういう面が一つ。  いま一つは、私どもも非常にそういう点においては疑問を持っておるわけでございますが、依然として今度の新しい価格体系においても油種別価格バランスがうまくいっていないわけでありまして、正直、ガソリンだけが極端に高い。そういうために、中には、ここの委員会でも御質問がどなたか出ましたが、いわゆる業転玉というようなことでナフサがガソリンに化けてみたり、あるいはガソリンがほかの油種と比べて非常に価格が高いものでございますから、少しぐらいガソリンを安く売ったって、ほかの物を売るよりはもうかるというようなことでやったり、いろいろやられておるようでございますけれども、私は、そういう意味からいったら、油種別価格あり方ももう少し検討しなければならないと思いますし、同時に、石油業法で決められておる供給計画、それぞれ毎年度五カ年にわたって供給計画を決められるわけでございますけれども、こういう供給計画を決めるときに、もう少し需給バランスを考えてできないのだろうか、それともそれは、対外的に約束をした油を入れなければならないから、そういう面からなかなか需給に合った供給計画を立てられないということなのか、私はよくわかりませんが、いわゆる国内の問題だけを考えれば、もう少し供給計画需給に合った形で決めていけばいいのじゃなかろうか、そうすれば今度は、石油業者がやはり業法に基づいて通産大臣届け出ます生産計画もあわせてそれに見合ったような形でやれるのじゃなかろうか、こう思うわけでございますか、その辺はいかがなものかということが一つ。  いま一つは、いずれにいたしましても、こういう形で乱売が行われますと、中には純性ガソリンでないものが、正直、消費者の手にも相当渡っておるようでございます。そういうようなことを考えると、ガソリンスタンドという中にあって、いまのように届け出制だけでいいのかどうか。ガソリンスタンドというものが、やみが行われたり、いまの中身が違ったようなものが平気で売られているというようなことをそのまま放置しておっていいものではない。もう少し管理体制を厳しくしていかなければならないのではなかろうか。そうなれば、たとえば登録制度みたいな形のものをつくり上げていくということも私は真剣に考えていかなければならない問題だと思うわけでございますが、その辺についての問題もある。  それから、けさあたりの新聞を見ておりますと、一応現在の標準額はまだ決まったばかりであって、いますぐ直す気持ちはないということでございますが、正直、一ドル、あれは三百二円でございましたかを基準にしてお決めになったと聞いておりますが、もう現在が三百五円と言いながら実際は三百七円になってみたり、あるいは将来はもっとドルが強くなって円が弱くなるのではないか、こういうことも言われておるわけでございます。そうすると、たとえば三百十円ぐらいにいつかの機会になったような場合を想定した場合には、ある程度この標準額というのは見直されるのかどうか、この点についてもお聞かせいただきたいと思います。
  14. 増田実

    増田政府委員 いまの三点についてお答え申し上げます。  まず第一の問題、価格決定需給によって決まる、これは先生のおっしゃられるとおりでございまして、やはり供給過剰であれば、標準価格を幾ら決めましても、それを達成することはきわめて困難だと思います。そういう意味で、供給計画についての見直しという問題がいろいろあるわけでございますが、現実に本年の四月に決めました供給計画を、この九月に需給の事情に合わせまして相当大幅な改定をいたしました。これによりまして、現在各社の生産計画届け出を受けまして、この供給計画に合うようにいたしております。需要推移につきましては、現在もこれを見守っておるわけでございますが、一応現在のところは、この九月の供給計画というものに基づきまして、需要供給のアンバランスの排除というものに努めておるわけでございます。  それから、第二番目におっしゃられましたガソリンに関する乱売の問題、これは、特にガソリンにつきましては非常な乱売、あるいは先生から御指摘のありました他の品種からの転換その他いろいろの問題が起こっております。これに関連いたしまして、ガソリンスタンドの規制をどうするか、ことに品質の保持の問題、流通秩序の問題、これはひいては消費者保護につながる問題でございますが、ガソリンスタンドあり方につきまして、現在までは各種の調整を行っておるわけでございますが、これをさらに登録制という制度をしく必要があるかどうかということにつきましては、現在私どもの方もいろいろ検討いたしております。  ただ、登録制につきましてはいろいろな問題点もございますので、そういう登録制に関する問題点その他も一つ一つの項目を挙げて検討いたしておるわけでございますが、先生のおっしゃられました登録制の問題も、現在私どもの方でその可否について慎重に検討いたしておる、こういう段階でございます。  第三番目の、標準価格と為替レートの関係でございますが、これは十二月一日に通産大臣の告示で発表されました標準価格の計算の基礎は、過去三カ月間の為替レートであります三百二円というものを計算いたしたわけでございますが、その後、三百七円と、その他の相場も出ております。これは一円為替レートが違いますと七十円強のコストの差額が出てくるわけでございます。そういうことで、もし五円為替が円安ということになりますと、三百五十円の差があるということで、これは相当大きな影響を受ける内容でございます。  ただ、為替レートの先行きにつきましてはなかなか予測困難でございますので、そういうことから、従来の為替レートの計算につきましては、電力料金の査定その他も過去三カ月間の平均為替レートでやるという一応のルールというものができておるわけでございます。そういう意味で、私どもは為替レートの動き方をもう少し見守っていきたいということを考えております。そういうことで、為替レートに合わせまして直ちに標準価格を変えるつもりは現在のところございませんが、この差が相当長く続くようでしたら、もう一回その問題については検討いたしたい、こういうふうに思っております。
  15. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 私は、正直言っていまの日本経済力あるいはアメリカの現在の経済力の回復の状況を見ておりますと、ドルというのはやはり今後強くなっていくのであって、いまお話しの、たとえば日本の円が強くなってドルが安くなるなんということは、余り考えられないと思うのです。そういう意味で、たとえば三百十円ぐらいのものが出てきた場合、そのまま放置されていくのかどうか。もちろんいますぐ標準額を変えるということはできない、これはよくわかるのでございますが、そういう場合にも変えないとなると、何のためにあれだけ細かい計算で標準額を決めたのかわからなくなると私は思うのでございますね。それとも、もっとアバウトなもので標準額を決めたというのなら話は別ですけれども通産省としてこういう計算基礎に基づいてこういうものを決めましたというふうに発表した以上は、全くその根拠が違ってくれば、それに基づいてやはり変えなければ、その権威がないと思うのです。そういう意味で、三百十円というようなところまで近くなった場合に、たとえば三百七円か三百十円ぐらいがずっと続く、そういうことになった場合にはどうされるのか、こういうことを聞いているわけですが、その点はいかがでしょうか。
  16. 増田実

    増田政府委員 為替レートにつきましては、先の相場というものはだれにもわからないと申しますか、非常に予測が困難なものでございます。そういう意味で、一壁二百十円になったら直ちに標準額を変えるということは適当でないと私は考えております。  ただ、標準額につきましては、いま先生からおっしゃられましたように、これは相当厳密な計算をいたしまして、それを基礎として三品目の標準額を発表いたしたわけでございますから、その計算の基礎である三百二円が実態に合わないということであれば、実態に合わない標準額というものを告示し続けるということについては、これは問題があると思います。そういう意味で、この点につきましては為替レートの動向その他も見まして慎重に取り扱っていきたいと思いますが、何月何日に三百十円になったということで直ちに変えるということは不適当ではないか、こういうふうに思っております。
  17. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 この辺、もうちょっと詰めてみたいのですが、私の申し上げているのは、三百二円も過去三カ月を標準にとっておやりになったので、いま三百十円になったらすぐそこでやれということじゃなくて、たとえば三百七円なり三百十円なり、大体その辺のところがたとえば三カ月も続いたということになれば、それは平均が三百七円なり三百八円になるわけですから、そうなればそのときは変えざるを得ないのじゃないか、こういうことなんです。
  18. 増田実

    増田政府委員 ただいま先生がおっしゃられましたように、相当長期的に三百二円と違うレートが続くということであれば、これは当然標準価格は変えるべきだと私は思っております。
  19. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 次に繊維の問題で、えらい大きな問題から今度は小さな問題になって恐縮ですけれども、二年前に、全国的にございました織機の無籍の問題について、議員の手によりまして無籍織機を解消しようという法律、いわゆる特例法々つくったわけであります。その特例法をつくりましたときにはいろいろ議論がございましたけれども、とにかく最終的には、登録を認めるかわりに、業界の体質を強化するという意味において、ある程度の織機の廃棄という計画もあわせて法律で決めたわけであります。その決めたときには、そういう廃棄をする一つの原資にも役立てるという意味もありまして、納付金を納めていただくということになったわけであります。それで納付金を納めることになったものですから、納付金を納めていただいた業者の織機について登録を与え る、こうなったわけであります。  確かに私どももすべて納付金は納まっておると聞いておるのです、か、ただ、私どもいろいろ世間から聞くのは、おれは納付金なんかは納めないけれども、ただで登録をもらった、こういう業者が数は少ないのですけれどもある程度あるというふうに聞いております。万が一そういうことが行われ、納付金を全く納めない、納める必要がない、にもかかわらずそれに登録が与えられたとすれば、これは法律に基づかない登録が与えられていることになりますが、その辺は通産省は何かお聞きでありますかどうか、承りたいと思います。
  20. 野口一郎

    ○野口政府委員 お答え申し上げます。  中小企業団体の組織に関する法律に基づく命令の規定による織機の登録の特例等に関する法律、非常に長ったらしい名前の法律でございますが、これを私ども簡単に特例法と申すことを許されるといたしますと、この特例法が先ほど先生が述べられたような趣旨でできて施行されているわけでございます。長年の問題でありました無籍の織機をどういうふうに処理をするか、原則として合法化、有籍化するかということにつきましてはずいぶんいろいろな議論があったのだろうと思うわけでございますが、その結果、議員立法によりましてこの法律ができて現在施行されているわけでございます。  それで、いま先生がお述べになりましたように、籍をもらうためにはある程度のルールのもとに納付金を納めるということが条件になっているわけでございます。何分、十数万台と言われていたこの無籍の織機を一定のルールに従って処理するわけでございますので、その間におきましていろいろな問題が現実的には各地で起きたのではないかと思われるわけでございまして、その中で、先生が御指摘のように納付金を納めずに登録を受けたというようなことを言われるケースもあるわけでございます。一番問題になっているというふうに私ども聞いておりますのは、岐阜県の毛織物工業協同組合に関するケースでございます。  この概要を簡単に申し上げますと、先ほどの特例法は四十八年十一月から施行されたわけでございますが、この施行のときに、四十八年十二月に岐阜県の中の一部の業者が先ほど申し上げました納付金を納付せずに登録申請を行ったわけでございます。これに対しまして、長い間の懸案であった無籍問題を処理する絶好の機会である、特に無籍を有籍化する法的な根拠を与えられた措置でございますので、この機会を失することになると大変だということで、上部の機関であります日本毛織物等工業組合連合会の幹部の方々がいろいろ配慮をいたしまして、以上のような観点からその毛工連の一部の幹部の人が納付金相当額を立てかえて納付をしたわけでございます。こういうことでございまして、その立てかえられた納付金というものを法に定める納付金であるというふうに私ども考えまして、いろいろ経緯はございますけれども、四十九年の十二月に登録票を取りつけることを認めたわけでございます。そういう例はございます。
  21. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 納付金は納まっておるから、だから登録票を出したということですが、私はそこに1特に法律の附則の三でございますけれども、もしその納付金に残余を生じた場合の処理として、これは議員立法ではございますが、その処理については通産大臣の認可を受けなければならぬことになっております。もし納付金に余りが出た場合には、「通商産業大臣の認可を受けて、これを当該商工組合等の行なう事業に必要な費用にあて」、こうなっておるわけであります。私はいまの経緯を聞いて思うことは、もし組合の幹部が、おれがいま立てかえておいてとにかくこのうるさい問題を適当に解決しておけば、それは組合がどうせ積み立てておるわけですから、後でその金が残ったときはまた自分の方へ返してもらえばいいのだ、こういうような安易な気持ちで立てかえたということが真相であるならば、これは非常に問題ではなかろうか。  そうじゃなくて、本当にいまお話しのように登録業者の立てかえである、あくまでもそこには貸借がある、こういうことで立てかえておいて、必ずいつかはその登録を受けた業者からもらうのだ、こういうことであるならば、私はいまの局長の御説明で納得はできますけれども、そうじゃなくて、登録を受けた業者は全く払うつもりが将来ともにない、全然金を出さない、それで登録だけもらう。そして今度は立てかえた方の組合の幹部は、こうやっておれの方が立てかえておけば、五年後にはこの法律は切れるのだし、これは五年間の廃棄計画があるわけですから、今度そこに残った金はここに書いてあるように商工組合等が行う事業に充てられる。だから幹部が、これは商工組合の事業に充てるのだよと言って、実際は自分の立てかえた金のところへその金を入れてしまう、こういうことならこれでうまくいくよというような考え方で行われておるならば、これは全く法律の考え方を無視したやり方だと思うのです。いわゆる巧妙な脱法行為だと思うのですけれども、そういうことはいかがなものでしょうか。
  22. 野口一郎

    ○野口政府委員 先生が引用されました特例法の附則第三項に納付金に剰余を生じた場合の処理の規定がございますが、この中にははっきりと、仮に剰余の金があった場合には、これは商工組合等の行う事業に必要な費用に充てる、あるいは構造改善の事業に充てるということがはっきりと書いてあるわけでございますので、この法の規定からはみ出た運用をすることはできない、私はこういうふうに考えるわけでございます。これは先生の述べた結論に対する私のお答えでございます。  先ほど申しましたように、私どもの方は納付金が織機の登録を受ける者のいわば一身専属的なものであって、必ず登録を受ける人が直接に自分の費用で納めたものでなければならないというふうには実は法律の解釈としてはとっておらぬわけでございまして、それは先ほど先生も述べられましたように、納付金というものはそういう意味もあろうかとは思いますけれども、やはり過剰設備を処理するための経済的な基礎を与えるという意味でお金を納めてもらう、こういう趣旨もあるわけでございますので、厳密に私はその間に対応関係が必ずなければいかぬというふうには考えていないわけでございます。したがいまして、いわば第三者による当の業者のための納付ということもあり得るかというふうに考えておりますので、この登録は法律上は有効であるというふうに私どもは考えているわけでございます。  しからば、第三者のために立てかえた人と立てかえられた者との関係につきましてどうだということを先生は先ほどおっしゃったのだろうと思います。いわば私法的な関係になるわけでございますので、私どもが立ち入ってどうのこうのと言うことは言いにくいわけでございますけれども、少なくも精神におきましては先生が述べられたとおりであろうと私どもも考えております。
  23. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 いまの局長の答弁の中で多少誤解を招きやすいと思いますのは、確かに事実行為として納付金を本人が納めている、納めない、これは別だと思います。しかし、たとえば省令を見ておりましても「納付金を納付しなければならない者については、納付金が納付されていること。と書いてあるわけですね。つまり、納付をしなければならないということは、全く本人が納付しなくていいということにはならないと思うのですね。いまの局長の御答弁は、納付をしなければみらないことは当然であるが、ただ現実の事実行為として納付がなくても、たとえば立てかえておるということであって納付金が納まっておればよろしい、こういう解釈ならば私は理解ができるですが、法律上納付金を納めなくてもいいということになると、これは私は問題だと思うのです。その辺、もう少しはっきりしていただきたい。
  24. 野口一郎

    ○野口政府委員 私の言葉が足らず申しわけございません。  まことに先生のおっしゃるとおりでございまして、納付金がなければ登録はできないものでございます。
  25. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 それでは、いまのは毛織組合ですが、日本毛織物等工業組合連合会が委任を受けてこの仕事をやっておるわけでございますね。これはあくまで法律に基づいて行われておる仕事なんでございますから、通産省も委任をしたら自分たちは全く責任がないということではないと思います。やはり法律は正しく運用されなければならない所管官庁としての責任はあると思うのです。そういう意味において、ひとつぜひいま申し上げたようなことを、局長もおっしゃっていただいたのですから、あくまで立てかえて納付金が納められておるという姿をはっきりしてもらわなければいけない。  だから、毛織組合に対して納付金を立てかえておる人は、これは先ほどお話しのように確かに民法上の問題ですから、あくまでも個人個人の貸借の問題です。しかしながら、法律によって納めかければならぬ人が立てかえてもらっておるわけでありますから、それがただでありますよ、納付しなければならない人が全く納付する必要はないのだという気持ちでその登録票をもらっておるとするならば、これは少なくとも法律の趣旨と違うのでありますから、その辺のところははっきりするように。  あくまでもいつかは払わなければいけないのだ、しかし立てかえていただいておるのだからという気持ちはそれで結構なんですけれども、やはり自分としては払わなければもらえないものなんだ、いつかはその納付金は自分が納めなければいけないものなんだ、ただ立てかえてもらっているだけであって、法律上これは必ず納めなければならないものである、こういうことをその登録票を受けた業者がはっきり自覚をするように、その辺の指導はやはり監督官庁としてしていただかないと、正しい事務の運営がなされていないということになるとやはり委任をした通産省にとっても責任があると思いますので、その辺はそういうことをしていただけますか。
  26. 野口一郎

    ○野口政府委員 本件は、毛工連といたしましても傘下の組合員のためによかれということでいわば立てかえ払いをしたものというふうに考えられているわけでございます。したがいまして、立てかえられたものですから、先生のおっしゃるとおりに返されるべきものであるということで、毛工連はそういう認識に立って現在そのような努力を払っているというふうに聞いておるわけでございます。  私どもも、もちろん先生指摘のように、法律によってむずかしい大きな仕事を毛工連に委任しておるわけでございます。私どももその法律を委任したという立場におきまして、そういう動きに対しましては厳格に指導をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  27. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 厳格に指導するというのは、そういうただでもらったというような気持ちを一日も早く撤回していただくようにひとつ指導していただきたい。これは余りまた突っ込んでいってもあれですが、ぜひひとつそういう気持ちをなくするように、それはあくまでも債務があるという気持ちを持っていかなければこの法律が正しく運用されないと思うのです。  正直それはわずかな人でございまして、先ほどおっしゃったように、これは全国で十何万という織機を登録したわけなんです。その人たちは、あるいは立てかえていただいた方があっても、それはあくまで立てかえていただいたということで承知をしてやっておる人ばかりであって、少なくともただで登録がもらえると思っておるような人は一人もいないわけなんです。そうするとこの法律が、そういう一部の人たちがあくまでもただであるなどということになれば、ほかの納付金を納めた人、あるいは納付金を立てかえて納めてもらって、あと月賦で払っておる人たちにとっては全く不公平になるわけです。一つの法律である以上は、それが公平に行われなければいけないと思いますけれども、そういう面で本当に厳重にひとつ御指導を願いたいと思います。これは特に要望しておきます。  時間がなくなりましたので、もう一つだけ繊維の問題で、最近ECの対日輸入規制の問題が決着がつくやに聞いておりますが、もう決着がついたのかどうか。もし決着がついておればお知らせいただいて、決着がついてなければついてないとおっしゃっていただいて結構でございます。
  28. 野口一郎

    ○野口政府委員 きょうだだいま現在は、まだ決着はついておりません。時差がございますので、多分向こうのきょうと申しますか、きょうあるいはあしたくらいになろうかと思います。ぎりぎりのところでございます。大分双方の主張が歩み寄ってまいりましたので、多分今回の交渉をもって合意に達することができるかと考えております。一応法律論的には来年の三月末までにつくればいいことにはなっておるわけでございますが、できるだけ早くできた方がわが国の産業のためになると思っておりまして、今週中には決着がつけるということで進んでおります。
  29. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 中身はどうですか。
  30. 野口一郎

    ○野口政府委員 常に流動しておりますので、最終の姿ははっきり申し上げられませんけれども、新しいガットの国際繊維取り決めに基づく取り決めに、EC及びEC各国日本と結んでおった輸入制限あるいは輸出自主規制が、今度一本にまとまるわけでございます。十数年、二十年にわたる長い規制期間におきまして数多くの規制品目があるわけでございますが、これは私どもから見ますと画期的に整理をされまして、数品目というところをめぐって現在議論をされておるわけでございます。ただ、ECグローバルと各国ごとの地域適用という二種類のカテゴリーに分かれるわけでございまして、いずれも五つにはならない、三品目ないし四品目程度をめぐって現在議論がされているわけであります。  それから、画期的なことは、ともかくある物を決めてその数量を抑えるというようなことじゃなくて、日本ECは相互平等の精神に立って、問題が起きればその都度適時協議をして問題を解決しよう、こういう方向で相互主義に立つところの協議条項を中心にやっていこうということで、取り決めとしては協議条項が中心でございます。先ほど申し上げた数品目を除き、完全に自由化するという方向で多分話がまとまるのではないか、こういうふうに見ております。
  31. 山村新治郎

    山村委員長 中村重光君。
  32. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣に御見解を伺いたいのですが、先般の総合エネルギー調査会の「昭和五〇年代エネルギー安定化政策-安定供給のための選択-」と題する答申で、エネルギー政策の新理念を安定供給の確保に置いて、具体的にはエネルギーの安全保障、エネルギーの長期安定確保を図るということになっているようでございます。問題は、この理念に基づくエネルギー政策の各分野における具体的施策が十分に展開されているかどうかという点にあると私は思うわけですが、まず、この総合エネルギー調査会の答申を今後どう生かしていく方針かということについて、総括的に大臣の所信をひとつ伺ってみたいと思います。
  33. 河本敏夫

    河本国務大臣 先般総合エネルギー調査会の中間答申をいただきまして、それを参考にいたしまして、政府の方でも総合エネルギー対策閣僚会議というものを別につくっておりますが、そこでずっとエネルギーの総合政策について検討を続けてまいりました。近く結論が出る予定でございますが、政府の総合エネルギー閣僚会議の有力なる参考の資料にしておるというのが、いまお話しの中間答申でございます。
  34. 中村重光

    ○中村(重)委員 エネルギーの安定供給確保の具体的展開として最も重要なものの一つは、エネルギーの多角化ですね。それから多様化を積極的に図るということであろうと私は思うのですが、石油については、先般も通産大臣は中国においでになったし、またサンシャイン計画も、軌道に乗ったとは言えませんけれども、一応緒についたということが私は言えるのではないかと思う。そうした点で不十分ながら政策の転換は行われていますけれども、多角化という意味での石炭については、答申の基調と現実の政策という点に整合性がないような感じがいたしますが、この点については大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  35. 河本敏夫

    河本国務大臣 総合エネルギー政策における石炭の占める地位と果たすべき役割りということにつきましては、一言で言いますと、石炭政策を今回の新しい政策では非常に重視しておるということでございます。  国内炭につきましてはほぼ二千万トンというものを目標にいたしまして、あらゆる努力をそれに集中するということでございますし、同時に外国からの輸入もふやしていこう、これまでは原料炭中心でございましたが、一般炭もこれを増加さしていこう、こういうことで、特に一般炭は新しい輸入対象になりますので、先般通産省から世界の四地域、アメリカ、豪州、インド、それからアフリカ、この四地域に調査団を派遣いたしまして、今後の安定輸入についていま調査をまとめておるところでございます。さらに引き続きまして原料炭の輸入増加にも努めていく、こういうことで、石炭というものを非常に重く見ておるというのが一つの特徴ではなかろうかと思います。
  36. 中村重光

    ○中村(重)委員 調査会の答申も、いま通産大臣がお答えになりましたように、国内炭の生産規模は二千万トンを維持するように、それから海外一般炭の積極的な輸入、そのための体制整備ということを言っているわけですね。同時に、石炭火力発電所の計画的建設の必要性ということを指摘しているわけです。その第一弾と言えると思うのですけれども、松島火力発電所の建設問題について、国としての態度が必ずしも明確でないような感じが私はいたしますが、その点については通産大臣はどのようなお考え方を持っておられるわけですか。
  37. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど石炭政策の中で一般炭の輸入ということを言いましたが、一般炭の輸入目標は十年後には大体千五百万トン確保したい、こういう考え方でございますが、その千五百万トンをなぜ確保するかといいますと、それは石炭火力発電所を数カ所日本につくりたい、こういう考え方に基づくものでございます。その第一号を松島火力発電所と、こういうふうに考えまして、ずっと調査を続けてまいりましたが、調査も終わりましたので、来年からいよいよ工事に着手したい、こういうことでいま予算の折衝もしておりますし、松島の火力発電所の建設ということにつきましては、政府の方といたしましても最大の課題と心得ましていま取り組んでおるわけでございます。
  38. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣のお答えのとおり、私は通産省が松島火力発電所をぜひ設置したいということで予算要求をやっているということは承知しているわけです。ところが、大蔵省が難色を示しているというように聞くわけですね。先ほど申し上げましたように、調査会の答申に基づいてエネルギーの安定供給を進めていくということになります以上は、大蔵省が難色を示すということは理解に苦しむ。また、従来電源開発株式会社に石炭火力発電所の建設を行わせてきた経緯があるわけですね。そうした点からしても、私は積極的に、通産省というだけではなくて、国全体の姿勢として強力に推進をしていくということでなければならないというように思うわけですが、通産大臣考え方は一応わかりましたが、大蔵省がそのような難色を示しているということになってまいりますと、予算折衝の段階で相当むずかしい場面もあるのではないかというような感じがいたします。  大臣御承知でございましょうけれども、この松島火力発電所の設置ということについては地元も積極的に賛成という意を表明しているんですね。それから、一時電力各社との間に問題があったようですけれども、この方の調整もついてきているという点等からいたしまして、最近工場立地に関して地元の理解がなかなか得られないというのに対しまして、このケースは私は非常に珍しいというようにすら考えるわけでございます。したがって、何も問題ないわけですから、ただいま大臣がお答えになりましたように、通産省の最重要施策としてぜひこの実現を期するということでなければならないと私は思います。もう一度ひとつ通産大臣の予算折衝に臨む態度としての決意を伺いたい。
  39. 河本敏夫

    河本国務大臣 これからエネルギー政策におきまして石炭には相当大きな役割りを果たさせようと思っております。その政策の一つの大きな柱として今回の松島の火力発電所、こういうことを進めておるわけでございますので、予算はなかなかこういうときでございますからスムーズにはまいりませんけれども、しかし何と申しましても国としての最大の課題でもあろうと思うのです。だから、通産省の予算とかそういうことではなくして、国としてやはりこういう方向にエネルギー政策を持っていくということが大事である、こういう認識の上に立ちまして、各方面の理解が得られるようになお今後努力をするつもりでございまして、御趣旨はよくわかっておりますので、その方向に私ども一生懸命取り組んでおるところでございます。
  40. 中村重光

    ○中村(重)委員 姿勢はわかりましたが、くどいようでございますけれども、スムーズにいかない場合、大臣折衝に持ち込んででも、ぜひこの実現々期するという大臣考え方なのかどうか、もう一度ひとつ。
  41. 河本敏夫

    河本国務大臣 これはもうすでに二年間調査いたしまして、ありとあらゆる準備をしてようやく着工という段階になりまして、石炭輸入につきましてもそれぞれ準備をしておる、こういうことでございますから、これはどういうことがあっても実現をしたいというように考えております。
  42. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間の関係がありますから副総理にお伺いをしたいのですが、十月の求人倍率が〇・三倍と、昭和三十四年以来の最低水準にとどまった。完全失業者の数が再び百万人の大台を超えたということであります。きわめて深刻な問題であるわけですが、失業率も二%に乗っておるということですが、経済成長と関連をいたしまして、この深刻な状態に対して副総理はどのような考え方をお持ちになっておられるのか、私は伺ってみたい。
  43. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 非常に大まかな見方でございますが、完全失業者は、冬どきでありますので季節的な影響があります。そういうようなことでいま百万ちょっと超えたところでございますが、なお若干はふえることになろう、こういうふうに考えておりますが、春ごろから景気の上昇、もちろんこれの影響を受けるわけでございますけれども、それもあり、また春という季節的要因もあり、かなりの改善を見ることになろう、そういうふうな見方をいたしております。
  44. 中村重光

    ○中村(重)委員 季節的な失業といったような点があることは事実ですけれども、この完全失業者の中にはパートタイマーであるとか出かせぎとかというのは入っていないのではないか、こう思うのですが、来年一-三月には副総理はいま比較的楽観的な考え方を持っていらっしゃるようでございますけれども、私はむしろ百二十万ぐらいになるのではないかという感じがいたしますけれども、その点いかがですか。
  45. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 景気がだんだん上向くという要素もありますけれども、また冬季であるという季節的な理由もありまして、まあ総合いたしまして若干ふえるのではないか、百二十万になるだろうというような見方もあるわけでございます。まだ私どもとしてこうなるだろうという決定的な見方はしておりませんけれども、有力な見方として百二十万説というものもあるのです。それをどういうふうに改善するかということになりますと、やはり経済活動を活発にするほかはない。一-三期におきましてはかなり経済活動は活発化すると思うのです。それを受けて、四月以降は陽気もよくなる、そういう時期に経済活動はさらに活発になる、それを背景として雇用情勢というものはかなり改善をされるだろう、こんなふうな見方をしておるわけです。
  46. 中村重光

    ○中村(重)委員 副総理が有力な見方と言う場合は、副総理自身もその可能性が十分あるというようなふうに思っていらっしゃるのではないか、こう思うのですが、御承知のとおり本年は新卒労働者の未消化分が相当あるわけですね。加えて、来年新たに労働市場に投入されるところの労働者があるわけですから、この吸収というのは大変問題であろうというように私は思うわけです。そのような雇用情勢でありますと、勢い失業ほど社会不安あるいは政治不安を大きくするものはないのだというように私は考えるわけですから、よほど積極的な対策を講じていくのでなければならない、こう思うのですが、経済成長率が何%になったならばこの雇用需給バランスがとれるというふうに副総理はお考えになっておられますか。
  47. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私は、今度の経済の落ち込みが大変深刻である、これは簡単には直らないので、よほど努力をして、そして昭和五十一年度に均衡のとれたようなかっこうを大方つくり上げたい、こういうふうに申し上げておるわけですが、雇用問題につきましても、大体五十一年度中におきましては、雇用問題は大体めどがついたなというふうな状態にはしたい、こういうふうに考えております。
  48. 中村重光

    ○中村(重)委員 日銀を除いては、五十年度は年間を通じての二・二%の達成はほぼ不可能視しているようでございますけれども、副総理はどのように見ていますか。
  49. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 補正予算御審議の際、経済見通しを申し上げたのです。その際、五十年度の経済成長は実質二・二%ということを申し上げたわけです。ところが、その後四月-九月、上半期の推計見通しができるような状態になってきた。それが当時見ておったよりちょっと高いのです。そういう修正をしなけりゃならぬという問題があるわけでありますが、そういうことを受けまして、五十年度の経済成長というものは申し上げました二・二%成長よりは若干高目のものに落ちつくのじゃないか、そういうふうに見ております。それは上半期が少しこの前申し上げたよりは高く、下半期がこの前申し上げたよりはやや低く、そういうことでございまするけれども、総合いたしまして二・二%よりは若干高いところに落ちつくのじゃあるまいか、今日におきましてはそういう見通しでございます。
  50. 中村重光

    ○中村(重)委員 計算上は副総理お答えのとおりに二・二%、それは上半期が予想よりも高かったということからそのような数字になるのでしょうけれども、要はこの下半期が問題なんですね。非常に深刻な不況に対して第四次不況対策も出したということであるわけですから、私は計算上二・二%以上になったから心配はないということにはならないので、計算上で議論するのではなくて、経済の実勢がどうなっていくのかというような、先ほど申し上げました雇用情勢等とも関連をいたしまして、これは重要な問題として対処していかなければならないのではないかというように思うのですが、この第四次不況対策はその見通しのとおりの効果というのが出ていないのではないか。  通産大臣も先日地方通産局長を招集されて、悲観的な報告に対して、これはひとつ積極的な対策を講じていくのでなければならないという見解をお持ちになっていらっしゃるようでございますから、副総理としてはこの第四次不況対策というものが効果を発揮しているというお見通しなのかどうか、それらの点についての考え方はいかがでしょう。
  51. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 率直に申し上げまして、第四次不況対策は多少効果発生という面から見るとずれてきておる、そういうふうに見ておるのです。あれは住宅が主になるのですが、その消化の状態、これも見通しより若干ずれてきておる。もちろん年度中にこれは完全消化というか、契約率一〇〇%に持っていきますけれども、少しその途中の経過においてずれがあります。それから、次いで大きなアイテムである地方の補助事業、これが都道府県などの議会の承認を要する案件が非常に多いわけであります。地方の補正予算、こういうようなことですね。その地方議会が十一月になり、まだ十二月県会だ、そういう地域も非常に多いわけです。  そういうのでずれておりまして、あの効果が生ずるのは一-三の期間に非常にウエート、かかかってきた、そういうように思うのです。でありますので、下半期全体の成長というと六%ということを申し上げましたが、これが多少下がらざるを得ない。しかし、一-三の期間におきましてはかなり実質的な効果を上げまして、これが五十一年度につながっていくという経済の動向につきましては、私どもが補正予算御審議の際申し上げた路線と変わりはない、こういうふうに見ております。
  52. 中村重光

    ○中村(重)委員 多少下がら、ざるを得ないということになってまいりますと、見方として五・一%といったような見方を財界なんかしているようですが、副総理はどのように見ていますか。
  53. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 五・一%というのは経団連の方ですか、あれは五十一年度の成長、だと思いますが、私が申し上げましたのは今年度のことなんです。今年度下半期が年率にして六%になるだろう。これは前期比では三・一%、つまり上半期に比べますと三・一%増加をする、こういうことを申し上げたわけなんですが、その下半期三・一%、年率にいたしまして六・二%、これが若干下がる。下がる理由は、下半期のうちの前の分、第三・四半期ですね、これがどうも第四次対策の実施のずれの影響をかなり受ける、こういうことなんですが、その取り返しは完全に第四・四半期、一-三の期間においてはできない、そういう事情で下半期全体とすると実質六%というのが若干下がらざるを得ない、こういうことでございます。
  54. 中村重光

    ○中村(重)委員 ずれがあるということ、全くそのとおりだろうと思うのですが、だからといって、五十一年度の中でつないでいけるという見方は非常に危険ではないか。この前も私は申し上げましたが、中小企業等の年末資金なんかも四千八百億、これとても現状はそれによって何か非常な深刻な状態が打開できるのかということになってまいりますと、なかなかそうなまやさしいものではない。当然私は追加融資というものが少なくとも五千億程度は考えられなければならないのではないかという見方を実はしているわけですが、財界、経団連なんかも、第五次不況対策というものは当然なされなければならないとか、公定歩合の一%引き下げをまた五次後やるべきだという、いろいろな意見があるわけですが、副総理としてはそれらの点に対してどのようなお考え方を持っていますか。
  55. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 経済は生き物でございますから、それに対して硬直的な姿勢で対処するという考え方は妥当でない、こういうふうに考えているのです。ですから、経済の変動に応じて機動的、弾力的な構えで対処するということでございまして、政策手段として第四次をやったからもうあとは何もやらぬというわけじゃないのです。そのときの情勢、情勢に応じて、財政上、金融上機動的な手を打っていくということでございます。  ただ、当面するところはそういう問題もありまするけれども、大きな施策としてはやはり五十一年度予算になると思うのです。五十一年度予算が、展望が示される。それによって経済がどうなるだろうということについて、国民全体が、いろいろ見方が出てくると思うのです。政府においてももちろん、この予算が組まれた場合にはこういう経済というものが展望されるということを示します。そういう展望政府も国民も持って、そしてこれからの経済活動に取り組むということにたる。  そういう意味において、これから十日間また二十日間の間に作業が進行し、それが概定されるこの五十一年度予算というものは、非常に大きな景気対策という意味を持つであろう、こういうふうに考えているのですが、その間、経済の変動に対応して随時機動的な手段はもちろん講じなければならぬ、こういうふうに考えております。
  56. 中村重光

    ○中村(重)委員 経済はおっしゃるとおりに生き物である、したがって、そうした固定的なものではなくて弾力的に対応していかなければならない、そのとおりだろうと思うのですね。しかし、先ほど申し上げましたように、たとえば年末融資なんかの問題にいたしましても、きょうはもう十二月十二日でございますね、したがって、できるだけ早く手当てをしていくのでなければならない。この前の第四次不況対策の中で、大型プロジェクトを中心に公共事業を推進していくという態度をお決めになったのですけれども、地方自治体は実は相当深刻な状態にあるわけです。だからして、その大型プロジェクトに対するところの公共事業というようなものが、全国的な形でこの不況克服につながってくるかということになってまいりますと、そうはいかないだろう。したがって、積極的な対応策を当然お考えにならなければいけないのではないかというように私は思うのです。  いま副総理は五十一年度の予算の問題についてお触れになったわけですが、五十一年度の予算の性格というものはどのようなものになるわけですか。
  57. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 性格というのはいろんな角度の見方がありますが、景気の側面から見た場合の五十一年度の予算の性格、これは財政主導型で景気の浮揚を行う、こういう性格のものになるだろう、こういうふうに思います。
  58. 中村重光

    ○中村(重)委員 景気の浮揚、そういったような性格ということになってくると、積極予算ということを考えておられるわけですか。
  59. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 一面積極、一面消極ということになりましょうね。つまり、一般の諸経費につきましては、これは消極的な考え方をとると思うのです。しかし、景気に作用する部面につきましては積極的な考え方をとる、こういうものになるであろう、こういうふうに見ます。
  60. 中村重光

    ○中村(重)委員 一面積極、一面消極ということになってまいりますが、先ほど雇用情勢ということで私は申し上げましたが、大体成長率をどの程度お考えになるのですか。
  61. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 成長率はいろいろまだ、どの点が妥当であろうかということで頭をひねっておるところなんです。つまり、こういう問題があるのです。  国民の消費は一体どの程度になろうかということは、大体私どもは見当がつくのです。あとむずかしい問題は、設備投資をどのくらいに見るか、また、輸出をどのくらい見るか。これも大体官民見方が違うという点はそうは出てこないと思う。ところが、あと財政を一体どうするかという問題があるのです。つまり、財政主導で景気を浮揚させる、こういうことになりますと、どのくらいの財政の力というものがこれに投入できるか。その投入の仕方によって来年の成長率が動いてくる、こういうことになるわけであります。いま企画庁、大蔵省、いろいろその辺の相談をしておりますが、これはなかなか大蔵省、企画庁だけでも決まらぬ。これは関係各省の意見も広く聞きまして、どの辺に成長点を置くか、その場合に財政はどのくらいの規模になるか、また財政はその成長にたえ得るか、こういうようなこともありまして、まだ決め切らずにおるのです。  これが決まればもう全部ずっと予算なんかも動いていくのですが、その辺いま、とにかく決めた以上間違いないようなものにしたいという意図を持ちまして、せっかく検討中でございます。
  62. 中村重光

    ○中村(重)委員 与党の方でも一つ方針を出したようですが、きちっとした数字がまだ試算をしなければ出ないことはわかりますけれども、申し上げたいわゆる完全雇用の達成といったような面から、これは重要な課題として考えていかなければならぬ、こう思うのです。したがって、望ましい成長率はどうあるべきか。一面積極、一面消極といっても、その点は経済の最高責任者としての副総理の考え方というものが大きなウエートを占めてくることは言うまでもないわけです。その点は副総理としても十分慎重に対処していくということでなければならぬと私は思う。  来年度の予算の目玉としてお考えになっているのはどういうことなんですか。
  63. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 これは何といっても混乱からの脱出第三年目といたしまして、経済を軌道に乗せる、これがやつっぱり目玉じゃないでしょうか。ですから、予算全体として目玉はそこにある、全体が目玉である、こう申し上げても支障がないのではないかと思います。
  64. 中村重光

    ○中村(重)委員 そういうことにはならないですね。景気の浮揚という形で考えていくということになってまいりますと、申し上げたように、設備投資であるとか、あるいは個人消費であるとか、あるいは貿易であるとかということにもなる。したがって、またその中に、公共事業というものを中心に進めていくのかどうかという目玉というものは私は当然なければならぬと思うのですよ。全体が目玉であるといったようなことは、少なくとも副総理のお答えとしてはいただきかねるわけです。副総理は、経済の最高責任者としての一つの見識ある考え方、減税の問題等もこれは重要な政策課題であるというように私は考えるのですね。目玉というものは当然幾つかなければならないわけですよ。それらの点についてどうお考えになるか。  それから、住宅の問題なんかにいたしましても、公共事業の中で、私は、大型プロジェクトよりも、公営住宅の建設であるとかあるいは住宅金融公庫に対する融資の拡充であるとかといったようなことを、これは当然副総理としてはお考えがあるであろうと思います。それらの点に対する考え方をひとつお聞かせいただきたい。
  65. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 そういう意味の目玉ということになりますると、やはり五十一年度というものは景気の浮揚というところに非常に重点があります。そういうことで、政府の資本的支出が非常に拡大をされる、こういうことになろうと思います。そういう機会をとらえまして、住宅、下水道だとか、道路でありますとか、あるいは農山村の施設でありますとか、そういう生活関連というか、あるいは地方開発といいますか、そういうための公共支出、公共事業が大きく浮かび上がっていく、こういうふうに考えております。
  66. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうした中でも、先日この委員会で私が副総理に対して見解を伺いましたとき、住宅建設というものは不況対策としては大きな期待の持てる問題であるということをお答えになったわけですが、五十一年度の予算の中では、いま申しましたように、生活関連の事業の中でも、特に公営住宅の建設あるいは住宅金融公庫に対するところの融資の拡充ということを大きな目玉としてお考えになる方針なのかどうか、その点いかがですか。
  67. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 まだ具体的な数字の割り振りの段階まで入っておらないのです。ですから、どういう費目がどの程度拡大する、こういうふうなことはお答えできませんけれども、とにかくこういう機会に生活関連施設の充実をする、またそういう中におきまして住宅投資が非常に重要な地位を占めるであろう、こういうことはもう間違いないです。そのようにする考えでございます。
  68. 中村重光

    ○中村(重)委員 私もそのとおりだと思うのです。ところが、昨日の新聞報道によると、大蔵省は住宅予算を厳しく抑制するということなんですが、これに対して副総理はどのようなお考え方をお持ちですか。これはむしろ抑制していく、限度額を据え置くのだといったようなこと、具体的には家賃の補助制度等も見送るといったようなこと等が書いてあるのですが、これらのことに対する見解というものは当然なければならぬと思うのですが、いかがです。
  69. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 資本的支出は予算の大きな柱になるわけですが、その割り振り、具体的なカットダウン、私どもはまだそこまで作業を進めておるわけではないのです。ですから、どういう情報に基づいてのお尋ねか、ちょっと私もよくわかりませんけれども考え方としまして、その資本的支出というか、公共事業といいますか、その中で住宅はやはり重要な役割りを与えなければならぬ。こういう際にこそ生活関連投資を充実していかなければならぬだろう、こういうふうに考えております。
  70. 中村重光

    ○中村(重)委員 この個人消費が、不況克服のためにも、あるいは経済成長に占めるウエートが非常に大きいということは、これは常識であるわけです。ところが、個人消費の伸びに対して、副総理と通産大臣あるいは経済界等の見方が必ずしも同じではない、むしろ見方が違っているように私は感じるわけですが、この個人消費の伸びということについて副総理としてはどのように見ていますか。
  71. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 個人消費は伸び悩みというような状態にはありますが、そう言われているように沈滞した状態ではない、こういうふうな見解でございます。  つまり、ことしについて言いますると、輸出は去年に比べて大体横ばいみたいなかっこうに年度を通ずるとなっていくだろう、こういうふうに見ているのですが、設備投資が非常な落ち込みです。それにもかかわらず二%をかなり超える年間成長率が達成される。これを名目で言いますと九%ないし一〇%ぐらいの成長になるだろう、こういうふうに思うのです。その中で、いま申し上げましたように、名目で言うと、輸出もまた落ち込みだ、設備投資は非常な落ち込みだ、それにもかかわらずそういう九%成長、一〇%成長になるのはなぜかというと、これは個人消費が非常に貢献しているのです。これはそういう中で一五%ぐらいふえるのじゃないでしょうか。  それから、政府の投資はどうだというと、第一次、第二次、第三次、第四次、これが作用いたしまして、これも一五%ぐらいふえるわけです。それで、その落ち込みの設備投資、それから輸出、それを消して、そしてしかも名目一〇%、実質で二%をかなり上回るような成長をするということになりますので、まあ平均というか、それが九%、一〇%というときに、とにかく個人消費は一五%伸びますというのですから、これは決してそう沈滞した状態ではない。伸び悩みの状態であるということは考えられますけれども、沈滞した状態ではない、そういうふうに見ております。
  72. 中村重光

    ○中村(重)委員 伸び悩みではあるけれども沈滞した状態ではない――しかし、これは沈滞した状態ではないけれども伸び悩みではあるのだということ、それはやはり大きな問題点であると思います。  申し上げたように、経済成長にとって相当大きいウエートを占めるという点からいたしまして、これはやはり個人消費が生産活動を非常に活発にするといったような点からして、私は重要な政策目標でなければならないと考えるわけですから、やはり個人消費というものは伸ばすようにしなければならない。したがって、賃金であるとか年金であるとかいうものを抑制するということを重点目標にすることは間違いであるというように私は考えるわけです。それらの点に対しては副総理の見解はいかがですか。
  73. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私どもが一番頭を痛めておりますのは、ことし一般会計だけでも五兆五千億円の公債を出すのです。その上、地方でも地方債を出さなければならぬ。それから、政府の諸機関も借り入れをしなければならぬ。これを総合いたしますと、十一兆を超える借入超を中央、地方でする。一体その資金はどうやって調達をするのか、これは国民の貯蓄以外にはその道はないわけであります。そういうことを考えますと、貯蓄ということが、これからインフレのない成長、発展を実現する上においても、決定的な役割りをするわけです。  貯蓄というのは一体何だというと、こう消費消費しておったのでは貯蓄は進みますか。やはりこれは、消費と貯蓄というのはうらはらをなすものである。しかし、国民生活の安定的な発展を図るというために、消費をことさらに抑えるというようなことはいたしません。いたしませんけれども、逆に、ひとつ物を使ってください、そういう方向の政策をとったら、これは貯蓄に非常に大きな影響が出るのです。そうすればこんなに出る多額の公債なんて消化されるものではありません。日本経済は、日本経済どころではない、日本の社会は非常なひび割れになるわけであります。  そういうことを考えますときに、消費をここでひとつ刺激して、さあ使ってください、これが景気のためですよというような、そういう考え方はとれない、そういう考えです。
  74. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまの副総理の考え方というのは、従来政府がとってきた考え方なんですね。結局、貯蓄に相当なウエートを置かなければならないという考え方、それが今日の経済衰退を及ぼしたということも私は言えないことはないと考えるのですよ。結局大衆が物を買う力がない。そうすると経済というものは、生産活動が沈滞をするわけですから、これは圧縮するということになっていくでしょう。それが今日の状態になってきている。   〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 したがって、なるほど貯蓄がふえるということは、まずそのことが、大企業への融資を中心として、その面からくる経済活動、生産活動というものが活発になるということは言えるでしょうけれども、しかしそれはもう試験済みだということなんですよ。  スウェーデンなんかにおきましても、一九三〇年の最も深刻な不況の中において、賃金であるとかあるいはまた社会福祉であるとかということを重点政策目標にしたということにおいてスウェーデンの今日の繁栄をもたらしたということも、私は重要な参考資料にしなければならないというふうに考えるわけですよ。だからして、個人消費というものは重要な政策の目標であるということを考えるならば、従来進めてきた、いま副総理がお答えになったような政策というものの転換が当然なければならぬ。ところが、賃金を上げたり年金を上げたりするということになってくるとインフレを招くのではないかという副総理のお言葉が返ってくるのではないかと思うのですけれども、それは要は財政のバランスの問題だ、程度の問題だというように考えるわけです。  ですから、いまの政府がとっておる経済政策、預貯金をふやすというようなことを重点政策とするというやり方は、私は政策転換をやらなければならないというように考える。その点はいかがですか。
  75. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 どうも政策転換の必要がある、これは私も考えるのです。考えるけれども、その方向は少し私は中村さんの考えと違うのです。中村さんなんか私ども考え方に大体同調していただけるような立場にあるのじゃないかと思いますが、私は、消費はこれはふえなければいかぬ。しかしながら、その消費は個々の消費じゃない。社会的消費、つまり個人の消費はそう刺激はいたしません、いたしませんが、社会的消費というか、国家消費、こっちの方は大いに刺激して、そうして、おくれておる住宅だとか、あるいは下水道でありますとか、あるいは公害の対策だとか、それから農山村の整備であるとか、そういうものをやっていこう、そういう方向へいま頭を切りかえておるのです。さあそんな方はどうでもいい、国家投資の方はやらぬでもいい、個人の消費をどんどんせい、こういうことになったら一体どうなりますか。これは私は秩序正しい社会の建設というものはできないと思うのです。  それから同時に、先ほど申し上げましたように、それにもかかわらず国家投資はふやさなければいかぬでしょう。そういう際には、国におきまして財源が非常に要る。それには赤字公債も出さなければならぬ。それを消化しないで一体どうやって経済秩序が保てるかということを考えてみますと、これはそう個人消費をふやすわけにはいかぬ。個人消費から社会消費へ、そういう頭の切りかえということでこの局面に対処しなければならぬだろう、こういうふうに考えるのですが、これは御賛成願えぬでしょうかね。
  76. 中村重光

    ○中村(重)委員 副総理、問題はバランスの問題ですよ。むやみやたらに、政府がかつてやってきたように消費は美徳なりということで個人消費を謳歌していく、そういうことを私は言っておるのではないのです。現在政府が進めている経済政策は、個人消費を期待しているかのごとく抑制するかのごとき態度をとっている。そして、貯蓄をふやしていくのだ、貯蓄をふやしていくのだと言っている。そしてその結果は、世界における最高の貯蓄率の日本になっている。それならば、日本の国の経済というものが政府が考えているような方向に進んでいるのかといったら、今日の深刻な経済不況を招いたということなんですよ。   〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕 それは事実なんです。だからして、やはりいままで進めてきた経済政策というものに対しては発想の転換をしていくのでなければならぬ。その転換も、バランスのとれたやり方でなければならない。  税金の問題も同じようなことが言えるのですが、副総理は所得税の減税というものは否定的である。しかし、所得税の減税をするということは、これはもう直ちに即効的な効果というものを発揮してくるということには間違いはないわけですね。アメリカだって減税政策をとって、不況克服に対して大きく成功している。それは多少経済規模というものが違うという点もありますけれども方向としては私は間違っていないのだという考えです。  ただしかしながら、一方においては税制の問題にしても改めなければならない点が多々あるであろう。たとえば、申し上げたように租税特別措置法の問題が私はしかりと思う。交際費課税を強化していくとか、あるいは有価証券譲渡に対する益金不算入ということになっておるのを益金算入にしていくとか、あるいはまた、銀行の貸し倒れ準備金の問題にいたしましても、いま政府が千分の十ということにしておったのを、財界の圧力によってこれをまた下げていくというようなやり方といったようなこと等、政府が進めている政策というものが、大衆の福祉といったことにウエートを置くのではなくて、特定の大企業に焦点を当てた政策を進めているところに大きな矛盾があるし、今日の事態を招いたのだということは、私は否定することのできない事実であろうというふうに考える。  ですから、要は全体を見て社会的不公正を是正して、私が申し上げましたような個人消費の伸びを図るために、賃金であるとか年金を抑制する方向ではなくて、ある程度これを引き上げていくというような方向である。それから、貯蓄中心というものではなくて、ある程度の個人消費を伸ばすような政策をとっていくとかいうような転換というものは当然なければならないというように私は考える。そういうことが高度経済成長政策から安定成長政策の方向に進む道ではないか。いま政府がやっております政策は、高度経済成長政策を転換すると言うけれども、さればといって、それではどのような経済政策を進めていこうとしておるのかということについては必ずしも明らかではない。新五カ年計画の中においてそれは明示するのだと言いますけれども、それを待ってそれからということではなくて、一つのその方向というものはもう当然積極的に私は打ち出していくのでなければならないというように考えるのです。  それらの点に対しては、副総理の見解はいかがですか。
  77. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 五十一年度を初年度とする新中期計画を策定します。その概略案を年内に策定をする、こういう考えですが、その考え方は、これは成長の速度をかなり落とします。いままでは先進諸国の二倍半というような速さの成長だったのですが、先進諸国の成長、大体その高い点をねらって、それとのつり合いという程度のものに持っていく。それから、成長の高さはそうですか、政策の中身といたしましては、成長中心から転じて生活中心という方向に持っていこう、こういうふうに考えておるわけであります。  その間において、個人消費のことを言われますが、中村さん、個人消費は決してそう落ち込んでおるというわけじゃないのです。ことしの成長なんというのは非常に鈍い。そういう中で、とにかく名目にすると一五%程度の成長はするわけです。上半期は実績として大体そういうような傾向になってきておるわけであります。これを政策的に何か手を打ってさらに刺激するということは妥当でない。そうでなくて、経済全体がよくなって、その自然的な発展のその中で個人の生活がよくなっていく、個人の消費が伸びていく。これは、私どもはそう期待しておりますけれども、しかし政策手段まで講じて、使いましょう、使いましょうというようなタイプの政策的な考え方、これはまだ妥当でないのじゃないか、そういうふうな考え方でございます。
  78. 中村重光

    ○中村(重)委員 個人消費の問題にしても、当初の見通しは一八・四%であったわけですね。それを今度一五・二%に改定をされたわけです。だから、いま、一つの政策目標を立ててやるということではないのだとおっしゃったのだけれども、成り行きに任せるということでは、それは無為無策だということになると私は思うのですよ。それではやはりいけないのだ。公共事業であるとか、個人消費であるとか、設備投資であるとか、貿易であるとか、一つの政策目標、柱を立てるわけだから、その柱に向かってどのような政策を展開していくかということが当然なければならないというふうに私は考えるのです。  副総理が先ほどからお答えになりますように、余り個人消費を伸ばすということは貯蓄に回っていくのが少なくなる、貯蓄というものは非常に重要なんだからというようなお考え方を持っておられるということは、やはり個人消費を伸ばすということについてきわめて消極的だというように私は考えるわけですね。その考え方自体が一つの政策なんですよ。その政策はやはり適当ではないのだと私は言っているわけです。むやみやたらに買いましょう、買いましょう、そうしなさいと言っているのではないのです。要は財政上のバランスの問題なんだ、総合的な政策展開をやっていかなければならないんだということを言っているのです。いまの政府が進めている経済政策は、そういう面では適当ではない。  冒頭に申し上げましたように、雇用の問題でもそうでしょう。こんなに失業者がふえてくるということは大きな社会問題であり、政治問題を引き起こすということは避けられないではありませんか。完全雇用という形になってくると、当然経済成長率は七%なら七%を保証して、その七%は何を中心にしてそうした経済成長を進めていくのかということは、当然政策目標を立てて、それの展開をやっていくということでなければならないというように私は考えるのです。どうもその点が一致しないのか、かみ合わないのかということになりますが、きょうはほかの問題でぜひ質問しなければならないことがありますから、また適当な機会に副総理の見解を伺うことにいたしたいと思います。  次に、通産大臣にお尋ねいたしますが、鉄鋼値上げについて通産省はどのような態度をおとりになったわけですか。
  79. 河本敏夫

    河本国務大臣 鉄鋼業界は昨年は輸出も相当伸びましたし、国内の景気もさほど落ち込んでなかったという関係で、生産もほぼ一億二千万トンという水準を維持しておりましたが、ことしに入りましてから輸出関係が急激に悪くなりまして、現時点では数量で約三割減、それから価格で約四割ダウン、こういう非常に急変をした形になっておりますし、国内需要も去年から比べますとずいぶん落ち込んでまいりまして、一億トンを相当大きく割り込んでおる、九千万トン近くになっておるのではないか、こういうふうに去年と比べますと非常に大きく変わっておるわけであります。  そういう急激な変化の中にありまして、経営そのものが非常に苦しくなっておるわけであります。そういうことで先般値上げ交渉がございまして、若干の値上げがあったようでありますが、なおそれでは不十分でありますので、現在引き続いて第二次の値上げを交渉中である、こういうふうに承知をしております。
  80. 中村重光

    ○中村(重)委員 最近の値上げの動きの中で、通産省は個別企業を呼んで事情をお聞きになったようでございますが、どのような必要からそうした措置をおとりになったのかということをひとつ聞いてみたいと思います。
  81. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 今年の七月七日に、トン当たり九千八百円、当初三月間は三千円を引くという方式につきまして、それを需要者側に通告するその日の朝に、私の方にその値上げの必要性及びその内容を正式に申し出てまいりました。
  82. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産省自体が個別企業を呼んで事情をお聞きになった。それは九千八百円値上げをするということについて、その事情を聞くためであったわけですか。大臣が冒頭にお答えになりましたような、一つ生産目標とかなんとか、そういったような問題も含めて、個別企業から事情を聞き、それに基づいて通産省としての適当な指導をするというお考え方によっておやりになったのじゃなかったわけですか。
  83. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 前のときから通産大臣御説明のように、私どもは鉄鋼の価格につきましては需要者間での交渉に任せるということで、行政としては介入しないという立場を貫いておりました。したがって、そういう点の指導というふうなことはもちろんしておりません。ただ、そのとき四月ごろからいろいろ発言がありまして、出荷について云々という声が出るというようなこともありましたので、そういう点については、こういった基幹産業供給停止とか出荷停止といったようなことの誤解を受けるような発言というものは慎んでもらいたい、こういうことは申しておりますが、具体的な数字に対する指導その他はやっておりません。
  84. 中村重光

    ○中村(重)委員 ところが、私が先日の委員会でも申し上げた百三十六万トンの減産指導、これをおやりになったことは間違いないのだろうというふうに私は思うわけですが、その点はいかがですか。
  85. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 前回私どもの方で御答弁申し上げたように、各四半期ごとにいわゆる需要見通しをつくっておりますので、そういうものについてこれを発表したということは事実でございます。
  86. 中村重光

    ○中村(重)委員 その需要見通しについて事情を聞き、そしてそれに対して小松次官の談話を見ると百三十六万トン減産をさせるということなんですから、そういう指導をやっているわけでしょう。指導をやっていらっしゃるとすると、その法的根拠というのか、そういうものはどこに求めていらっしゃるのですか。
  87. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 行政指導という形でございまして、いわば通産省の所掌事務の中で生産あるいは流通、消費の改善とか調整という事項がございますので、それに基づく意味で行政指導をしております。
  88. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は先日も、通産省のそのような行政指導というものが第二次値上げの環境づくりをやっているのだ、それは適当なことではないということを申し上げたわけです。行政指導というものを安易におやりになるということは適当ではない。弱い中小企業なんかの場合におきましてはいろいろな施策が必要ですけれども産業界の中におきましても最も強いのは鉄鋼業界であるわけです。そのような鉄鋼業界に対して減産指導等をおやりになる、そのような行政指導をおやりになるということになってまいりますと、勢いやるべき不況カルテル等を避けて、そして通産省と癒着した形においてそういう方向を進めていくということになってまいりまして、品薄になって勢い価格引き上げの圧力をかけるという形になってくるわけでございますから、そうした行政指導といったものも当然法的根拠がなければならないと私は思うのです。その法的根拠は何ですか。
  89. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 通産省設置法にございます通産省の任務という第三条の先ほど申し上げました機能に基づいていると私どもは考えております。
  90. 中村重光

    ○中村(重)委員 なるほど通産省設置法の中の第三条にそれはあるわけです。しかし、同時に第四条にこれは法律に基づいて行わなければならないということになっているわけですから、当然通産省設置法の第三条だけでそのような行政指導をおやりになるということは問題があるのじゃないでしょうか。
  91. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 先生指摘のいわゆる権限の行使という点につきましては、四条で所掌事務が挙げられまして、これらの事務については、権限行使する場合には法律によるという形になっておると記憶しております。私どもの方のいまのあり方としましては、そういう法的な拘束力というのを持っているわけではございませんで、基礎物資でございますし、いわば取引の安定というものも必要でございますから、全体でいまの鉄鋼がどの程度であれば適当であろうか、需要見通しをそういうことで公表するということをやらしていただいているわけでございます。
  92. 中村重光

    ○中村(重)委員 そう簡単なものではありませんよ。これはその及ぼす影響というものが非常に大きいのだということだけはお考えにならなければいけないと思うのですね。  公取委員長は、そうした減産指導等を通産省設置法でやることについては、どのような見解をお持ちになっていらっしゃいますか。
  93. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私は、少なくとも私個人の意見としましては、設置法で書いてある通産省の任務を何でもやれる、減産指導であれ、価格の指導であれできるの、だ、こういうことになりますと、結局法律は要らないのじゃないか。法律なしで、いろいろなそういった任務を一つの権限という形にすりかえてやれることになる。そうすると、これはたとえば鉄鋼の場合明白なんですが、比較的中小といいますか、中小とは言いませんけれども、平電炉メーカーは明らかに、これは六〇%余りですけれども、とにかく不況カルテルを結成して、正式の手続を踏んで私の方に申し出て、これを認めておる。ところが、それと同じ効果を上げることを行政指導でやることができるのならば、では不況カルテルという項目は削らなければならぬということになりますが、私、話は逆だと思います。  そういう点では、明らかにこれは不況カルテルと同じような効果をもたらすようなことを、個別と称してやるのならばいいんだ、つまりカルテルでなければいいんだ、こういうことを言っても、みんなシェアがほとんど固定したような状態でおやりになって、あるパーセンテージを減らすということをやれば、それは非常にいまの――私どもの方はかねてから勧告操短はいけません、困りますということで納得していただいたわけですね、それがまたもや吹き返しているのじゃないかという感じがいたしますので、行政指導という形でそれをおやりになるというのはいかがか。見通しを立てるのなら、それは三年とか五年とか、あるいは短くても一年とかいうことの需要見通しを包括的に立てることについて私は必ずしも反対いたしませんが、四半期別に幾らにせいと言わんばかりの行政指導は、まことに困ったことであると思います。
  94. 中村重光

    ○中村(重)委員 私も同じような考え方で、前回もその点を指摘いたしましたし、いまも質問しているわけですが、通産大臣は、いまの公取委員長の見解に対してどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  95. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、昨年は世界全体の好影響といいますか、好影響というほどではありませんけれども世界全体の経済の影響を受けまして、一億二千万トンという生産をし、三千五百万トンを超える鉄鋼を輸出したわけですね。ことしは輸出そのものが三割も減っておる、価格は四割ダウンしておる、こういう非常な激変ですね。それからさらに、国内の消費なども非常に変わっておりまして、一億二千万トン近かったものが九千万トン近くまで落ち込んでしまう。しかも、この需給関係が刻々に変わっていく。四半期といいましても、いわばその間に大激変が続いておる。こういう状態のときには、一年とか二年とか見通しを発表いたしましても、それはこういう激変時代には全然当たらぬわけですね。でありますから、四半期ごとに需給関係の見通しを、これは基幹産業でございますから政府が発表しておるわけでございます。  それから、なお一つ申し上げておきたいのは、いま完全自由貿易の時代でございますから、必要とあらば幾らでも鉄は外国から買うことができる、こういうことでございます。それがなぜ外国から鉄が入ってこないかと言いますと、日本の鉄が、アメリカ、フランス、イタリア、ドイツ、イギリス等主要国に比べましてなお二割ないし三割安い、こういう低い水準にあるわけですね。そういう関係で外国から入ってこない、こういうことになっておるのです。しかし、基本的には完全な自由貿易商品である、このことを特に強調しておきたいと思います。
  96. 中村重光

    ○中村(重)委員 だからといって、法的根拠もなく価格に重大な影響を及ぼす、そのことはひいては国民経済に与える影響が大きいということは言うまでもないわけです。だから、やるべきでないことを、いわゆる行政指導というような形でおやりになるということは避けるべきであるということを私は申し上げておきたいと思います。もう一度その点に対してお答えをいただきます。  次に、稲山会長は、鉄鋼価格はコスト・プラス適正利潤という方式で決めらるべきだという主張をしているわけですが、この点に対する通産省の見解はいかがですか。
  97. 河本敏夫

    河本国務大臣 私はやはり商品というものは需給関係価格は決まるべきが原則である、それが自由主義経済のメカニズムである、こういうふうに理解をしております。
  98. 中村重光

    ○中村(重)委員 であるとするならば、コスト・プラス適正利潤という稲山さんの見解は、通産省のとらざるところだというように理解をしてよろしいですか。
  99. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのとおりであります。
  100. 中村重光

    ○中村(重)委員 次に、鉄鋼業界は、値上げ幅が一致したのは一物一価の法則で当然なことであるということを言っておるわけですが、この点は通産省の見解も同じですか。
  101. 河本敏夫

    河本国務大臣 その点につきましては、私は大体同意見でございます。といいますのは、日本の重立った鉄鋼メーカーはいまほぼ五社でございます。五社の設備というものは、その規模、能力、内容、ほとんど同じ施設になっておるわけですね。つくった時期もほぼ同じである。それから原料なども共同購入とかほぼ同じような条件で外国から入っておる。こういうことでございますので、同じ施設で、同じ原料で、同じ能率で品物をつくれば、多少は違うでしょうけれども、ほぼ同じ価格で品物はできる、こういうふうに考えております。
  102. 中村重光

    ○中村(重)委員 多くの売り手とあるいは買い手が市場で取引をし、結果として一つ価格に収束をするというのであるならば、これは一物一価というようなことをその結果としては言えるかもしれませんけれども、鉄鋼の場合はそうではないわけですね。鉄鋼の場合は、市場支配力を持っておるところの企業価格を決めて、そうしてそれを押しつけていこうとする、あるいはいっているところのやり方であるわけですから、これは一物一価ということとは似て非なるものだというように私は考えているわけですが、この点に対してもう一度通産大臣並びに公取委員長の見解をひとつ伺いたい。
  103. 河本敏夫

    河本国務大臣 私が申し上げたのは、ほぼコストが一緒になるであろう、こういうことを申し上げたわけでございます。仮に国際価格がトン三百ドルしておる、こういう場合に、仮に十万円だ、十万円ということは三百三十ドルほどになりますが、つまり国際価格より高いところで仮に国内価格推移いたしますと、私はどっと外国から鉄が入ってくると思います。ただ、さっき申し上げましたように、国際価格から比べまして二、三割安い数字にある。そういうことで、いま外国から鉄が入ってこないわけですね。  そういうことを考慮いたしますと、たとえば二百ドルなら二百ドルという水準で、あるところで値段が決まったといたします。そうすると、他のところも結局ほぼそれに近いところで値段を決めませんと仕事にはならない、こういうことになるのじゃないでしょうか。でありますから、先般の鉄鋼価格決定も、一社が一定の水準で決めた、そうすると、他のところは結局ほぼそれに近いところで決めざるを得ない、こういうことになったのではないか、こういうふうに私は理解をいたしております。
  104. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 一物一価の原則というのは、御承知と思いますが、経済学説上そういうものはあることは確かです。これはコストが云々とかいうのではないのです。完全な競争の状態、そういうのがあったといたします。これは完全競争となりますとやや理想に近い状態でございますから、現実とは必ずしも一致しませんが、しかし、現実の場合にも競争が十分に行われている状態のもとにおいては、競争した結果として、たとえばある会社が割り安である、全く同一の時期において、同一の、同質の物、そういう物について、同じような市場の中で、つまり輸出とかなんとかということを抜きまして、国内なら国内市場の中で完全な競争が行われる、こういう場合には、割り安なところには同じ物であれば需要が集中します。割り高なところは敬遠されます。そういうところから割り高なところは値を下げざるを得なくなり、割り安なところは需要が非常についてくればじり高になる。その結果として一物一価に近い状態になる。  私どもは一物一価が完全に行われるということは珍しいと思っておりますから、そういう状態は、完全競争ということはなかなかむずかしいですが、学説としてはそれはそういうことになる、そういうことでありまして、最初から一物一価というものが当然であるという前提で価格を決めるというのは、価格の競争を全く回避するための便法にすぎない。便宜的な、つまり理論を逆用したような形になるから、それでは競争は否定される、こういうふうに考えております。
  105. 中村重光

    ○中村(重)委員 私はそのとおりだと思うのです。通産省が、行政指導というのか、業界との懇談というのか、絶えずやっているのですから、そうした市場原理に反するような物の考え方というようなことの間違いを指摘するといったような、そういう懇談というものは当然あるべきだと私は思うのですけれども、どうも業界のやることに対して追随する、それと一体となって推進をするというやり方は間違いであるということを指摘いたしておきたいと思うのです。  それから、今回の鉄鋼の値上げに対して公取委員長が記者会見で、人為的な価格形成、すなわちやみカルテルあるいは市場支配力の乱用であるということは明らかだ、こうおっしゃっておられるわけですが、だとするならば、公取はこれで打ち切るのではなくて、さらに調査を進めるということが当然ではないでしょうか。いかがですか、委員長
  106. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いま中村さんがおっしゃいました、そのような表現では私は言っていないのです。つまり、疑念が残る、疑いがある。つまり、全く知らなかった、お互いに共謀といいますか、通知し合うとかいうふうなことはなかったのだ、新日鉄が交渉してできたからそれにただ追随したまでなんだ、全部その間の連絡はない、こう言っておるが、いかにも不自然ではないかとか、それから、唯一的な地位にあるように思われるけれども、それを乱用したという決め手がないということでありまして、書いたものはそのような趣旨で発表しております。ですから、おっしゃったような、これはさらに調査をしてと言いましても、私はこれは証拠は把握できない。つまり、当初から実は証拠把握の端緒になればいいと思っていましたが、ユーザーの方から事情聴取をしたのですけれども、どうもその間において共謀の、つまりカルテルの実態を把握するに足る証拠が残されてはおらぬという印象を受けたわけですから、今回の場合にはこれでいたし方ない、そういうふうに考えております。
  107. 中村重光

    ○中村(重)委員 任意調査でおやりになったわけでしょう。任意調査でおやりになりますと、これは法的根拠に基づかないでおやりになっているわけですから、それでは必要な資料というものを求めることには私はならないだろうと思うのですね。だから、当然四十条の強制調査というものをやるべきではなかったのか。それを避けられて、そして任意で調査をやるということになって、そしてその調査をやって、どうも証拠がないのだというように公取委員長が即断されることは、私は問題だというように思いますよ。そうではなくて、もっと公取委員長は従来鉄鋼業界がやっているそのやり方というものから考えて、権威のあるやり方をおやりになるべきではなかったですか。  それは当委員会におきましても、あるいは予算委員会等におきましても、姿なきカルテルであるとかと、公取委員長は鉄鋼業界のやり方あるいは通産省がそれに同調したようなやり方に対してむしろ憤りを持って批判をするというか、反省を求めてこられた。警告をしてこられた。私は、今回の鉄鋼業界に対する調査に対して、国民は大きな関心を持っておられただろうと思うのです。それを任意調査でおざなりみたいなことをおやりになったということになってまいりますと、どうも公取に対する疑念すら起こってくるような感じがいたしますよ。四十条で当然強制調査をおやりになるべきじゃありませんか。
  108. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 任意でやるか、四十条でやるかということは、私どもがそのつど判断してやるわけですが、四十条でやらなければならぬという場合には、任意のときに出頭してこない、つまり出頭に応じないとか、あるいは必要な資料の提供を求めても出してこない、そういうふうなおそれがあった、あるいは実際がそうだったという場合には、四十条に私は切りかえますが、しかし、いずれにしても、四十条でやろうが任意でやろうが、その点、資料の把握ということがスムーズにできるなら、あるいは事情聴取ができるなら問題ない。もしカルテルの疑いをもってするならば、これは四十六条です。四十六条とすると、事件として――これは私の方の言葉でございますが、事件として、つまり立件手続をとってやるのですが、これについては何らかそれを裏づけるに足る多少の端緒がなければなりません。全くただ当てずっぽうといいますか、いいかげんな勘だけで立入調査をするということは、私は従来とっておりません。ですから、何らか民間から情報の提供がある、あるいはこちらがその端緒をつかんだ、その証拠ではありませんが、それらしき行為があったと思われる端緒をつかんだ場合にだけやっておりますから、この辺のところは私どもは、私だけではありません、多年の経験を持つ者の判断等によって、それをもとにして私どもは判断してこういうふうにやるということを決めておりますので、その点ひとつ、なかなかデリケートな問題でございますから御理解がむずかしいと思いますが、もしカルテルの疑いがあったら、四十条どころか四十六条を適用していると思います。
  109. 中村重光

    ○中村(重)委員 当然四十条でおやりになり、四十六条を適用していくということがなされなければならぬと私は思います。証拠がないなんて、委員長、考えられませんよ。九千八百円の価格にして、そうして二段階にして最初は六千八百円、次は三千円、もう明々白々たる事実じゃありませんか。それは国民の常識ですよ、委員長。独禁法は経済憲法です。あなたに対する期待も大きいですよ。その国民の期待にこたえていく、それが日本経済というものを健全な形で発展をさせていくことにつながるのじゃありませんか。断固たる態度をおとりになる必要があると私は思う。だから、第二次値上げに対しても目を光らせるとして目を光らせていらっしゃる。しかし、三千円上げましてもそれもどうも明らかではない、証拠不十分だということになりましては、これは公取はただかけ声だけだということになって、あなたに対する失望感というものは大きく出てまいります。少なくともあなたらの熱意というようなものは疑われるという形になってまいりますから、十分ひとつ対処してもらいたい。  そのことは、私は板ガラスの場合だって言えるのではないかと思うのです。板ガラスの場合に対して今回のようななまぬるいことをおやりになったのは、どういうことなんですか。
  110. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 板ガラスに対しましては、これは実は少し古くなって恐縮なんですが、事件そのものは昨年の事件でありますが、ことしの十一月二十日に勧告をしまして、十二月九日に審決をいたしております。ですから、これは完全に違反事件として審決を下しておるわけでございます。ところが、その審決どころか、勧告が行われるよりもすでに三日前に旭硝子は値上げを発表しております。これは値上げ発表で交渉相手というのはありませんから、それはそのまま適用されるということにたてまえはなります。それからセントラル硝子が間を置いてやりまして、十二月八日には板硝子が最後に値上げを発表した。これは主要な種類別に見ますと全く同一価格になっております。  その点、相変わらずこの業界は三社だけで独占という業界でございますから、そういうことがしばしば行われてきておる。それで前にも排除命令を受けたことがございます。今回の排除命令が初めてではありません。そういう点で、こういう同調的値上げの非常に典型的な業界だと思いますが、今度の値上げに対してまだ何も私どもはどうするこうするということは申しておりません。こういう公開の席でどういうことをやるんだということを予告するというふうなことはどうも賢明でない。公取としては、やはりこういうものはいろいろな準備期間もございますが、ただ何も用意しないで飛び込んで調べればいいというものではございません。そういう点は十分御賢察いただきたいと思います。
  111. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたがおっしゃることもわからないじゃないのですよ。公開の席上であるから、これからやることについて明確な答えができないということだってわからないじゃないです。しかし、いつもいまのようなお答えがあなたから返ってくるのです。鉄鋼業界の場合しかり、明々白々たる事実とあえて申し上げてもよろしいと私は思うのですよ。それをおざなりの調査に終わらせた。言葉は非常に厳しいのですけれども、おやりになっていることはなまぬるいというようなことですから、もうわれわれとしてもどうも公取に対して厳しい態度をとることを要求していかなければならぬということになるから言うわけです。  それから、五十年十一月のカルテル事件の問題にいたしましても、公取お考えになればおわかりでございましょう。値上げ発表というのは異なった価格の発表をやるけれども、後で調整をしてしまって、そして同一価格にするというやり方をやっているわけですね。ですから、これらの事件にいたしましても、単なる破棄勧告ということではなくて、告発を当然すべきであった。それをなげに告発をすることをちゅうちょされたのかということも私は解せないわけです。その点はどうですか。
  112. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 わが国の場合、告発という問題は大変むずかしい問題である。アメリカの場合にはさほど異例な事件ではありませんが、西独の場合は刑事罰がないのです。刑事罰がありませんが、カルテルに対しては課徴金という制度がございますから、それで十分目的を達している、こういうことなんです。私どもが今回の法律改正に当たりましてぜひとも課徴金制度を設けていただきたいということを願ったのも、告発がしかく容易でない。  容易でないという意味についていまここで時間がありませんので詳しく述べることはできませたが、非常なはっきりした刑事事件として十分法秤で争うに足るところの証拠、供述等がなければならぬし、ことにいままでたった一件しかカルテル事件等で告発はないのですから、そうしますと余り軽微な事件については問題にするわけにいきませんし、何かそういう事件の重さと悪質の程度ということを十分考慮に入れた上で判断しなければなりません。  また、検察庁とも実際にはある程度その下打ち合わせもしなければなりません。これは一たん告発しますと検察庁は相当な人員を動員してすみずみまで洗うことができます。私どもの方はその点いまは調査の範囲も実際には限られておりますから、それほど強権を持ってやることはできません。そういう点の違いはございまして、私どもが告発に踏み切るのには相当の決意と十分な証拠が必要である。つまり、行政処分としてこれは十分な証拠であるという場合であっても、刑事事件として果たして法廷を維持することができるかどうかということになりますと、大変専門的でございますが、ちょっとした差があるのです。そういう点もやはり考慮しなければなりません。  また、告発を乱用しますと、これはまたかなり問題になる。問題になると申しますのは、独禁法を理解しようとする前に独禁法をまずきらう。独禁法というのはこわいのだということも言われておりますから、私どもはやたらめったらに告発権を乱用する、使うということだけはなるべく避けていきたいというのが本音なんです。独禁法に対して、独禁法はじゃまものだというふうな意見さえある、こういうところでは、私どもは独禁法に対して十分理解を持って協力してもらうように努力していかなければならぬという考えなんで、そういう点で刑事処分に付するという点は相当慎重にやっていかなければならぬ。  しかし、おっしゃるとおり、では今後ともしたいのかと言われれば、そうではありません。しないということは申しません。しかしながら慎重に検討しなければならぬ、こういうことだけ私は申し上げておきます。  なお、ほかの点でございますが、余分なことのようですけれども、たとえば今度の鉄鋼の場合、外形標準から見れば、だれが見てもこれはカルテルではなかろうか、こう推定される条件はそろっております。しかし、行政処分といえども証拠がなければこれはだめです。そういう点、外形標準だけで判断できないところに問題のむずかしさがあるということも、これは私、決して弱気で申しているのではありません。むしろ私は何か余り評判がよくないのです。財界等においては非常に厳しいという、だけの評判しかとっておりませんので、決して私自身なまぬるい考えではおりませんが、証拠がつかめなければできないということだけはひとつ御理解願いたい。
  113. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま証拠をつかまえるということになってまいりますと、先ほど私が申し上げましたように、やはり四十条の適用という形の強制調査で公取がびしびしやれるようなことをやらぬと、証拠はなかなかつかめませんよ。この前の独禁法改正の際に、四十条の二というので同調的値上げというのが出ておったわけですけれども、結局その四十条の二を入れることによって四十条であるとかその他の条文というものが骨抜きになる。だから、四十条の二というものは四十条でやれるんだという私どもの判断からこの修正をしたという経緯もあることは、公取委員長よく御承知になっていらっしゃるわけでございます。  それから、板ガラスの場合におきましても、私は、初めてであるならばそれを言わないです。いつも繰り返してやっている。しかも悪質でしょう。三社で一〇〇%のシェアを持っているガラス製造業界なんですよ。繰り返しますが、初めは異なったような価格を出して、後ですぐ三人話し合って調整をする、こういうようなことはほかの業界に見ることのできない悪質なやり方です。だから、いままでずっと繰り返してきたこの悪質なやり方に対して、私は厳然たる態度をもって公取委員長は臨まれる必要があるのだということです。今度の十一月二十一日からの一連の値上げにいたしましても、同じようなことを業界はやるということは十分考えられるわけでございます。この点に対しましても、私は四十条の強制調査ということが当然なければならないというように思うのです。  ですから、公取もこの点に対しては重視はしておるようでございますが、ここではっきりこうするというようなことになってくると、相手に証拠隠滅の機会を与えるということになって、公開の席上でなかなか言えないということでもあるわけでございましょうが、ともかくもう一度、公取としてここで答弁できる範囲で結構でございますから、少なくとも経済の健全な発展のために、国民の期待にこたえるために、また、独占価格ということによって経済を混乱させ、物価を引き上げさせるということを防止していくために、公取として臨む態度を、決意と申しましょうか、その考え方をひとつお聞かせいただきたいと思う。
  114. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 こういった寡占業界における値上げのあり方、私どもはその値上げの理由は別でございます。理由があるとかないとか言っているのじゃない。値上げのあり方に対して国民の疑念をできるだけ払拭するという方向に向かって努力をしたい。それは常々やってきておりますが、これからもその点については、国民から見ておかしいではないかというふうな問題については常に関心を持って、それらの疑念をできるだけ払拭するように努力をしたいということを申し上げます。
  115. 中村重光

    ○中村(重)委員 ともかく今度の値上げに対しましても強制調査をおやりにならなければ、五十年十一月のカルテル破棄勧告の際の主文に破棄後の価格生産動向あるいはコストなどの報告の義務を入れなかったということは公取の手落ちだという指摘を受けることは避けられないと私は思います。今後の公取の態度いかんによりましては、この問題を再度取り上げて公取の責任を追及することもあり得るということを申し上げておきたいと思います。  それから、通産省は板ガラスのこのきわめて悪質なカルテル行為に対していままでどのような行政指導をおやりになり――いつもなるようでございますが、これは矢野局長は担当でございませんね。ですから、大臣からひとつお答えをいただきます。
  116. 河本敏夫

    河本国務大臣 いかなる場合でも、やみカルテルとか独禁法違反、こういうことは絶対避けねばならぬことでございまして、十分その点につきましては今後とも厳重に指導してまいりたいと思います。
  117. 中村重光

    ○中村(重)委員 そろそろ時間が参りましたから、これで終わります。
  118. 山村新治郎

    山村委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。      午後一時五分休憩      ――――◇―――――      午後二時三十七分開議
  119. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横路孝弘君。
  120. 横路孝弘

    横路委員 先ほども質疑がございましたけれども、鉄鋼問題についてもう少し詳しく、十日に調査結果というのが公表されたのですけれどもさっぱりわけのわからぬものでありまして、その辺の内容を少し詰めてお尋ねしたいと思います。  皆さんの方が記者会見で発表されました「高炉メーカーの鋼材値上げについて」、その中の「問題点」のところで、不自然さが残るとか、疑点が残るとか、問題が存するとか、そしてこの中には人為的に出荷価格を設定したことを端的に示すものであるという指摘まで行いながら、結局やみカルテルとしての認定ができなかったわけですね。  当初からのいろいろな経過を見ておりまして、そもそも何を目的として、どういう動機でこの問題について皆さんの方で調査をされたのか、そこから明らかにしていただきたいと思います。
  121. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これは申すまでもなく、当初の発表の段階、七月でありますが、その発表の段階から短期間の間に引き続いて、ほぼ相似たような引き上げ幅での値上げの希望額といいますか、それを発表しました。それからなお、その後の折衝の経過、妥結額を見ますと、妥結額においてはごく一部、ほとんど問題にするに足らないものを除きまして、全部がきわめて同調的であるといいますか、でき上がった価格、妥結額、値上げ幅も六千八百円、これは平均でございます。六社とも同じである。そういうふうなことから、少なくともこれはいわゆる同調的値上げの典型的なものではないか、こういう観点から、黙ってこれを見ておるのでなくて、その内情をやはり相当程度調べてみたい、こういうことでございます。
  122. 横路孝弘

    横路委員 前から四十条を使わない任意調査というものもおやりになっているわけですね。それはたとえば価格のメカニズムがどうなっているかとか、あるいは寡占構造そのものについて、それが経済に与える影響も大であるから、いろいろとコストも調べてみるとかというような調査をされているわけですよ。いまのお話ですと、同調的値上げであるということで調査をされたということですけれども、一体何を明らかにするつもりで調査されたのですか。何かこれは怪しいぞ、やみカルテルの疑いがあるぞということで調査をされたのか。そういう疑いがあれば、四十条ではなくて、先ほども御答弁があったように、四十六条で最初からずばっとやるべきなんですね。その辺のところがどうも最初の動機が非常にあいまいじゃないか。記者会見では大分元気のいいことをずっと言ってこられたわけですけれども、どうも最後を見ると、何を明らかにする目的でやったのか、さっぱりわけのわからぬ調査になっているわけですよ。その辺はいかがですか。
  123. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これは、たとえカルテルの証拠がつかめないといたしましても、このような寡占業界において典型的な平行行為が行われる、そういうことが実際に具体的な現象となって出た以上、それらを調査してその実態をなるべく明らかにしたい。それを公表することによって、少なくとも公表ということも、それはなるほどカルテルとしての証拠はなくても、それを公表することによって世の中の批判を仰ぐということにやはり意味があるのではないか、最小限度その程度のことはしてもいいのではなかろうかという考えで始めたものでございます。
  124. 横路孝弘

    横路委員 しかし、皆さんの方で十日に公表された資料、有価証券報告書だとか、こんなものはいままで新聞記事に出ているものであって、特にそういう意味での価格構造を明らかにしたなんという具体的なものは何にもないわけですよ。そこで、どうも独禁法が流れて、公取としての存在を示すためには鉄鋼あたりをやればそれはいいでしょうが、しかし余り深追いし過ぎると憎まれてしまって、独禁法の問題もあるし、そんなところで非常に中途半端になったのではないかというような印象を受け取らざるを得ないわけです。  そこで、そういうことで意識的平行行為あるいは同調的値上げというようなことを明らかにしていこうということで調査が行われたということなんですけれども、先ほどの河本通産大臣の発言や、あるいは従来から小松通産事務次官、あるいは稲山新日鉄会長、それから十日の皆さん方の発表後の平井社長の発言で一致している点はどこかといいますと、いわゆる一物一価になる理由として、原料の共同購入という点が第一点ですね。それからもう一つは設備品質、つまり同じ機械を買っているのだ、工程も同じである、したがってコストは同じだということですね。それから労賃も同じだ。この三つについてコストに違いがないから、たとえば新日鉄が上げなければならないというような状況のときにはほかも上げなきゃならないのだ、こんな理屈でずっと通してきているわけです。  そこでお尋ねしたいのですけれども、たとえば機械の問題、それは確かに工程、その規模そのほかが同じだとしても、たとえば鉄鋼の統計要覧をとってみて、大型高炉の場合どうか、たとえば二千立方メートル以上の設備の新旧比率なんというのを見てみても、日本鋼管とか神戸製鋼所というのはわりあいと設備が新しい。新日鉄なんというのは設備がかなり古い。たとえば七一年の一月以降、七三年の一月以降というような数字をとって比べてみても、はっきり出てきているわけですね。そうすると、この辺のところでコストが同じなんということは言えないのではないか。かなり償却が違うはずであります。その辺のところは皆さん方も調べられたのかどうか、これはいかがですか。
  125. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そういう問題についてはこれから十分時間をかけて、そういう設備の問題なんかは簡単には調べられないのです。ですから、今回のこういうものを調査して、同調的値上げであるということをはっきりさせる。しかも、コストの上では実際は完全にそろっておらぬということですね。設備の点まで触れますとこれはなかなか大変でございますが、これは減価償却という点から見ればその点は出てくるわけです。その出銑能力というふうなものと比べ合わせれば、減価償却がそれぞれ全部の、古い、新しいものをまとめて出しておるわけでありますから、そういう点でもって差があるということは明らかでございますが、そこまでの資料はつけておりません、これはわかることでありますから。  ただ、文言の方は別にしまして、表2というのがございますが、「主要原材料購入価格推移」というものを出しておりまして、四十九年の三月から九月、五十年の三月期に比べまして、鉄鉱石と原料炭につきましては、これが主要原材料でございますから、これをごらんになっていただくとわかりますように、現在でも鉄鉱石について、たとえ一部に共同購入の事実があるといたしましても、全く同じ原料価格ではございません。それは高いものは鉄鉱石で五千九百五十円、安いものは四千七百六十円、ですからかようにトン当たりで原料を見れば違っております。石炭におきましても、これはそれほどの差はないといいましても、やはり日本鋼管は二万円である、新日鉄は一万七千二百二十円であるというふうな、この輸入について、当然それは輸入分が原料炭でも多いわけですが、こういうふうに差異がございます。  ですから、原料が同じである、設備が同じようなものである、そのほかの経費も似たようなものであるから、コストとしてはほとんど同じものになってくるのだというのは、事実に相違しているということを実はこれであらわしているつもりなのです。  しかし、そもそも原価を出して原価に適正利潤を加えたものが価格になるという考え方、これは需給関係とは全くかかわりのない価格を設定しようとするものでありますから、そういう点ではいまの業界の言い分、一物一価というものは当然なんだというのは、コストの面から言ってもそれは違っておるということを申しても差し支えないと思います。
  126. 横路孝弘

    横路委員 赤字だから値上げという考え方自身は、コスト・プラス適正利潤という考え方なわけですよ。したがって、さっきの通産大臣の発言というのは非常に矛盾しておるわけですけれども、いまどうも質問しないことを答えられたのですが、原料の問題は後で質問しますから。  つまり、機械の問題については、先ほどの通産大臣の発言、それから従来から通産省やあるいは鉄鋼業界から言っている点は原料の点と設備の機械の点、それから労賃などで、要するにコストが同じだからと、こういう考え方なわけですね。その考え方自身が競争原理というものを否定するものであるといういまのお考えもそれでいいのですけれども、ただしかし、最初のように、同調的値上げの構造みたいなものを明らかにするのだということで調査を始められたのならば、その辺のところをきちんとやはり調べるというのが当然でしょう、機械の点についても。しかも業界の方はそういうことを言っているわけですから、皆さんの方でそこを調べて、おかしいじゃないか、つまりコスト・プラス適正利潤という考え方になっているじゃないかということをやはり詰めていかなければいけないわけでしょう。違いますか。
  127. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 それはコスト・プラス適正利潤という考え方が、この同調的値上げの言い分というか、申しわけといいますか、そういうものになっているということは確かでございますか、私どもは、たとえコストが同じであれ、違ってであれ、そのコストによって需給関係関係なしに値上げが行われるということはおかしいのだ、しかもその値上げが全く同じだったということの現象に、つまり価格形成のあり方について重大な関心を持っておるのでありまして、ですから、確かにおっしゃるように、それをもっと時間をかけてやるのでしたら、一つ一つの工場、施設を具体的に洗ってみるということも必要であろうと思います。しかし、それをやっているのにはちょっと時間が足りません。相当おくれてしまいます。  相当おくれてしまいますことは、さらに三千円の積み残しが残っているとか、それでもなお赤字である、業界の主張によると、低い方でも赤字幅が一万二千円ぐらいだ、これはもっと、一万六千円だというようなところもございまして、これは決して一様ではないのです。一トン当たりの現在の価格による赤字幅というものは決して同じではないのです。だから、そういう点からいっても一物一価というのはおかしいのだということは明らかなんですが、設備の状態を事細かに調べるということはかなりむずかしいと思います。それは、新しく建設された設備について言えば、大まかに言えば、たとえば一千万トン前後のような大きなものを最終目標とする設備について、これは大体似たようなものになったでしょう。しかし、全体を通じて見れば、先ほどのお話のように、古い設備をよけいに抱えているところがあるし、更新されたものが非常に割合が高いというところもありますから、これはその設備のあり方、能力、そのコストというものについて差が出てくることは当然に予想されます。その内容をどこまで具体的に詰めなければならぬかという問題は、やはりこれは調査一つの手段として、私どもが持っておりますスタッフの関係からも、余りに微に入り細にわたりやらなくても、もう少し大まかでいいのではないかと思っておりまして、いまお話がありましたから、私どももそういう点をもう少し明らかにするということは、これからもできるだけ努力はしてみたいと思います。  しかし、今回の発表に間に合わせるのには、それは余りにも実は負担過重である。ヒヤリングも、何も鉄鋼メーカーからだけではないのですから、初めはユーザーの方から入っていって、それからメーカーを呼び、さらにいわゆる問屋とか商社というものも一わたりやったわけでございますので、そういうヒヤリングをしたようなもので必要なデータをその中で求めていくというやり方でやっと間に合わせた、間に合ったということでありまして、余り遅く、これが六カ月もかかってしまったら余り意味がない。昔の管理価格調査ですとずいぶん時間をかけております。実際申しまして。それだけに非常に微に入り細にわたってやっておりますが、今回の場合にはそういう目的でもなかった、こういうことを御理解願いたいです。
  128. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、最初の始めた目的が、一体何を目的にしてやったのかというのはますますわからなくなるわけですね。力を持っている業界ですから、コスト・プラス適正利潤というような形で赤字を価格に転嫁できる業界といえば、やはりその最たるものは鉄鋼でしょう。だから、いまそんな意味で値上げをしたい、この不況下でなおかつ値上げをしたいと待ち構えている業界がたくさんあるわけですから、この辺で少し先制攻撃をして、その辺を抑えようというお考えもわからぬじゃないですけれども、何か間に合わせたとか間に合わぬとかいうようなことの程度だということだと、せっかくのこういう機会なんですから、私はまだまだ明らかにしていかなければいけないことがたくさんあったのじゃないかというように思うのです。  そこで、次に原料の共同購入の問題なんですけれども、先ほど通産大臣も堂々と、その共同購入をやっている、こう言っているわけですね。あのときよっぽどちょっと関連して聞いてみようかと思ったのですけれども、いろいろ調べてみますと、たとえばブラジルにしてもそうですし、それからオーストラリアあたりでも、新日鉄外高炉五社参加して、たとえば「東洋経済」の「海外進出企業総覧」なんか見ても、ハマスレー・ホールディソグズ・リミテッドというようなところで、鉄鋼石の輸入について価格協定並びに数量についての協定を結んでやっているわけですね。  先ほど表の二ページの方で価格が違うということを言っていましたが、これは船賃だって違うでしょうし、鉄鉱石のこちらに着けて渡すときの状況も違うから、これくらいの値段の差なんていうのは当然出てくるわけでありまして、購入はともかく通産大臣が先ほど答弁したように共同購入の形になっているわけですね。つまり、輸入カルテルを結んでやっているわけですよ。しかもそのことを鉄鋼メーカーが公言してはばからないわけですね。一体この辺のところを公取としてはどのようにお考えになっているわけですか。
  129. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私は、この点については、率直に申しましてこれを知るに至った時期が少し遅きに失したと思います。  共同購入は、何の手続もとらずにやっておれば、これは明らかに違反であります。その点は御指摘のとおりでありまして、ただいまおっしゃいましたうちで、特に大口と見られるものは、オーストラリアからは日本は鉄鉱石の四八%、これは共同購入であります。原料炭はオーストラリアの場合は四〇%、これもやはり共同購入で、そのプロジニクトごとに違いますが、五社ないし三社が参加いたしまして、それで価格や数量も調整しておるというのが実態でございます。  これを、どういうことなのかということを今回の調査に当たって係官が調べたところによりますと、三十六年ごろからやっているというのですな。昭和三十六年ごろからそういうことをやってきたのだが、最初は非常にスケールの小さなものだったのでしょう。これはまだ十分にその経緯を追っておりません。至急に調査するよう厳重に命じております。三十八年から四十年ごろにかけましてこれが本格化された。いま申し上げました購入のパーセンテージの中に占めるシェアは、これは最近の数字でございます。しかし、これはだんだんに、たとえばオーストラリアの鉄鉱石並びに原料炭の開発が進むにつれてふえてきたものと当然見られますので、その経緯を、数字を直ちにもっと詳しく追ってみるようにということでありますが、措置としまして当然これは輸入カルテルを正式に申請して認可を受けて行うべきなんです。  その間の事情につきまして、なぜオーストラリアの場合に特に多いのかというふうなことを、概略のところを聞いたところでは、相手国がなかなかいろんな面で交渉の困難な相手であるというふうなことらしいのでございまして、その辺もこの共同購入を正式に手続をとってやらなければ、これは違反として処理さすというほかないと思いますが、確かに、その手続をとらないままで堂々と、共同購入であるから値段が余り変わらないのだということを言うのは、とんでもないことだと私は思います。
  130. 横路孝弘

    横路委員 いまの発言ですと、今回の調査でそのことがわかったということですか。私、それはちょっとおかしいと思うのですね。輸出入取引法によって、これは七条の二、輸入に関する協定、そしてそれが適用除外になって、そのかわり公正取引委員会との関係というのが三十四条にあって、この三十四条は、いわゆる輸入協定を結ぶ場合に、通産大臣が認可しようとする場合には、公正取引委員会と協議しなければならぬという、協議事項ですよ。あなたの方で今回の調査でわかったなんということになると、要するに通産省の方から全然協議がなかったということなんですね。
  131. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 協議がなかったのです。なかったから、正式には知らなかったというのが正しいのです。それもおかしなことなんです。それは申しわけないのです。だから、当然通産大臣が認可をしておりません。認可するのに当たっては、協議事項になっておりますから、公取の方にその話が持ち込まれていなければならぬわけです。それが全くなかったということは、恐らく通産大臣もこれは認可はしてないはずでございます。
  132. 横路孝弘

    横路委員 つまり通産大臣の認可はしていないということになりますと、これは完全に独禁法違反ということになりますね。違いますか。
  133. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そのとおりであります。
  134. 横路孝弘

    横路委員 どうも何かよくわからないのですがね。いまのお話ですと、三十六年からやってきておって、一度も協議がなくて、そのこと自身は独禁法違反ですわね。ただ、資源の輸入ということになりますと、いろいろとそれは日本の国の経済にかかわり合いのあることですから、この輸出入取引法で独禁法の適用除外規定まで設けて、そのかわりその適用除外に当たろうとする場合には届け出をして、通産省は認可をする、しかしその場合には公取と協議をしなければならぬという条項になっているわけですね。まさにそうすると、この間の通常国会で独禁法の審議のときに、協議のいろいろな問題等について議論が行われたわけですけれども、協議の実態というのは大体そんなものですね。  これは通産省もあれだけれども、独禁法の方の六条二項の国際的契約、つまり輸入カルテルの場合は国内の業者同士の協定ですね。しかし、いずれにしても購入相手がいるのだから、その購入相手の方はこの六条二項の届け出になるのじゃないですか。この国際的協定については届け出しなければならぬから、公取が知らぬというのはおかしいと思うのですが……。
  135. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 共同購入については出ておりません。ただし、三社ないし五社が共同開発するという、共同開発届け出は出ておるのです。しかし、完全にいわば輸入カルテルを結んでいるということについては届け出もありませんし、それから輸取法による輸入カルテルの協議はいままでなかったわけです。ですから、そういう意味ではすこぶるおかしなことだと思います。私どもの手抜かりでもあったと思います。共同開発そのものは出ているのです。しかし、輸入カルテルによるカルテルの方はないということになっておりますから、今回の事情聴取の過程におきまして、こちらの担当官からこれはどうなっているのだということを聞きましたところ、実はそのことは昭和四十五年に行われた新日鉄合併の際にすでに公取側には言ってある、説明してあるということは言ったそうです。  しかし、私は何のことかわかりませんが、説明してあるだけじゃだめなんですね。やはり正式の手続をとらなければならないのですが、今回はそのようなことを釈明しておるわけでして、公取が知らないと言うわけはないのじゃないかというふうなことなんですけれども、その当時の担当官は現在かわっておりますから、これは調査課長が中心になってやったわけですが、その担当官にみんな聞いてみたら、そういう話は聞いた覚えがない、こう言うのですが、鉄鋼業界の方では、すでに公取には話してあって了解しておられるはずだ、こう言うのです。新日鉄の合併の騒ぎですから、そういうことをいつ、だれに話をしたのかわかりませんが、いずれにしても話をしただけでは済まないのでして、手続をとらなければならない問題だと思います。
  136. 横路孝弘

    横路委員 大分ずさんなお役所ですな、それじゃ。六条の二項では、契約の写しを添付して届け出をしなければならぬということになっていますし、それから三十四条の方では、ともかく公正取引委員会との協議事項になっているわけです。  先ほど、この件について調査するよう命じてあるというお話だったのですが、そうすると、十日に一応発表されたけれども、それで調査が終わったわけじゃなくて、継続して調査をおやりになっているということですね。
  137. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 だから、不十分と思われる点はこれからも調査をしなければならぬし、ただいまのお話のような件は、これは早急に、それこそ違反事件をそのままほうっておくということはできませんから、一体どうなっておるのかということを通産並びに業界にだめ押しをしてみなければならぬ。それから、先ほど御指摘の設備の状態なんかについても、わが方はもっと調査を固めていかなければ、今後における調査の際にも不十分であると思いますので、そういう必要な補充調査は十分これからもやっていくつもりでございます。
  138. 横路孝弘

    横路委員 そこで、今回の具体的な内容について少しお尋ねをしたいと思うのですけれども、コストが同じだから値上げ幅が同じだ、こういうことですね。皆さんの方から「鋼材値上げ関係資料」というのが出ております。記者会見のときに資料として配付したようでありますが、これを見ると、たとえば「値上げ前の価格」というところがありますね。注がありまして、「値上げ前の価格は、バーインコイルを除き、各社とも同一である。なお、前回の値上げは、四十九年六月に行われている。」ということになっているわけです。ところが、四十九年六月のときに通産省の指導のもとに行われたのはたしか七品目だったはずですね。ところが、ここに挙げられている全部で十五の品目について、バーインコイルを除いて全部値段が一緒だということは何かといえば、つまり七品目以外について当時カルテル形成行為があったということを言わざるを得ないのじゃないですか。
  139. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ですから、私どもは、あの当時法律によらずして行政指導で価格を抑え、そして例外的に値上げするときには事実上の承認制というふうなものをしくということについて大変不安と懸念を示したのです。つまり、カルテルにつながるおそれがあるということを言ったのですが、個別指導でやるのだからこれはいいのだというふうになっております。ですから、いまお話しの点カルテルの疑いはありますけれども、しかしながらそれは今日としてはいかんともしがたい。余りに低く鋼材の価格が改定されてしまいましたから、したがって昨年の六月当時にほかの品目についても全部一緒になっちゃっているという事実は確かにおかしいと思います。しかし、あの当時直ちに手をつけるには至らなかった。  公取の立場もそういう点はなはだ微妙でございます。みんな頭を抑えて認可をした、こう言っているのです。その頭を抑えられているもの以外のものもみんな整合性がある、同一価格になっているという点について、当然これはカルテルではないかと言って乗り出せばいいのですが、とてもとてもあの当時私どもまだ手を抜けない状態でございましたので、そういうところまで立ち入って強制調査をするという段階までいかなかったということが事実でございます。
  140. 横路孝弘

    横路委員 つまり、七品目については指導してやったわけですよね。ところが、この資料を見ますと、ほかの物も全部そうなっているのですね、バーインコイルというのだけ除いて。今回の調査のときに、そのときのことを当然調べなければならぬわけじゃないですか。つまり、単品ごとのコストを明らかにしていかなければならぬと思うのですね。価格協定があったかないかということを調べるためにも、ともかくまずずっと前からの経過というものが一番ポイントになるだろうと思いますから、そんな意味では、ほかの物も全部そこでもって価格が一緒だということを、今回当然それは調査すべき内容だったのじゃないですか。
  141. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これは、だから事実としてこうなってしまっているということはもうどうしようもないことなんですが、今回の値上げにおいてもまた同じ結果になっているという点を問題の中心にしたわけです。しかしながら、そのために単品ごとの原価構成ということになりますと、はっきり申し上げて単品原価は若干違いますが、品物が値段が違うようにこれは違っておるわけです。それぞれの物の単品原価を出すということは、実際問題としては不可能に近い。それだけの経理に関するエキスパートがそろっておりません、全くないとは申しませんが。  ですから、今回の調査の場合には、先ほど申しましたように、原料炭にしても鉱石にしても値上がり幅が違っているではないかということで私は十分ではないか。そういうふうに違っているということを指摘するということでいいのであって、その原価を一つ一つばらしてみて、これはこういうふうに各社別にみんな原価が違うのだということで、各社別の原価を六社について全品目について出すということは、まず短い期間ではとうてい不可能です。これははっきり申し上げます。できないものはできないということなんでございまして、そういう点、今回のように比較的短い、これでも二月ぐらいかかっておりますが、そのくらいの期間ではとても原価計算の細部にわたって決め手となるようなものを出すわけにいかぬ。  つまり、原価が違っているということを公表すればいいのでございますけれども、単品ごとの原価ということになりますとまた企業秘密とかいう問題に触れますので、そういうものを公表することについて前に問題になっちゃったわけですよ。単品ごとの原価というものを会社別に出すということはできない。会社別に違っているということを出すためには、会社別に出さなければいかぬですね。これが問題だということで、その点はアウトになっておるわけです、早く言えば。そういうことから、単品ごとの原価を出してみても、労多くして、実はそれを公表しなければ意味をなさない。しかしながら、有価一証券報告書に載っているような、原料なら原料がこれだけの値上がりをしたということを示すということは、これは何らはばかるところはありませんから、一種のマクロ的なものであっても、原料代も違うじゃないかということを示したかったわけでございます。
  142. 横路孝弘

    横路委員 そのアウトになっているというのは、何がアウトになっているのですか。つまり、公表することと別にして、調査することは皆さん方の仕事でしょう。そのアウトになっているというのは、どことどこの関係において何がアウトになっているのですか。
  143. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 つまり、単品ごとの原価の公表は企業秘密をそのまま出すことであるからそれは好ましくない、というよりは、そういうことはやるべきでないということで法律ができ上がっているわけですね。法律の段階においてはそうなっている。そうしますと、われわれの研究材料としてはそういうことはあってもいいけれども、公表ができない。公表ができないものに半年かけて細かい計算をするというふうなことが、われわれの持っている事務能力からいいまして、余りにその方に偏しておりますとほかのことができなくなりますから、結局は必要な範囲で調査をする。公表できる範囲に中心をしぼった。  しかし、その基礎データとしてもっと深いものを持っていなければならぬという御指摘は十分承っておきますから、その点考えますけれども、しかし、鉄鋼の単品ごとの原価といえども、時々刻刻これは動いているわけですから、そのトレースというものは容易ではございません。これは種目もそう少なくないのです。そういうことから、原価計算をやるということまではできなかったというのが実態でございます。
  144. 横路孝弘

    横路委員 別に研究材料として調べろということを言っているわけじゃないのですよ。研究材料として、論文を書くために必要だなんという話じゃないのでありまして、こういう今回のような問題が起きてきたときにすぐ公取が対応できるためには、そういう調査が常日ごろから行われていなければならぬ、これがこの間の四十条と四十六条のときの議論の、私たちが、つまり容疑があったときには四十六条、独禁法の違反の疑いがなくても四十条でやれるじゃないかということで、委員長の解釈もそういう解釈だったわけでしょう。  つまり、こういうときにすぐ公取が対応できるようなことを常日ごろやっておかなければならぬ。そのための根拠として四十条があるじゃないか。四十六条は、独禁法違反の容疑があるときにはこれは四十六条でやれるわけですから、四十条なんかやらなくたっていいわけですね。そうじゃなくて、常日ごろの調査のために、まさにこういうときに対応できるように、四十条というのを常に発動しながら、皆さんの方でそういうさまざまな、業種はたくさんございますけれども、それぞれの、特に寡占業界の価格の構造なりそういうもののコストなりということを押さえておかなければならぬ、そのための四十条じゃないかという議論だったと思うのですが、違いますか。
  145. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 おっしゃる趣旨は私はよくわかるのです。しかし、実際問題としていまの公取の能力から言えば、かつて十年以上前からいわゆる管理価格調査に取りかかりまして、それででき上がっているものというのは途中までで、年に一品目か、せいぜい二品目なんですよ。その程度のことしか十分な調査ができなかったということからも、しかも、それにのみ調査課が集中しておりながらなおかつその程度であったということからいいまして、こういうただいまのような、これは事件にはなりませんでしたけれども、同調的値上げを天下に知らしめる、こういうことが行われているのだということの目的を達するという意味からいえば、非常に気長に根気よくやっているということはとてもできなかった。  それから今後も、私は申しますが、原価計算というものはいかに困難であるかということを私は感じました。それで、これは共通費の配分等が一定のルールがないのです。ルールがないから、鉄鋼については、私は、昭和二十七、八年ごろにそういう原価計算要綱というものをつくるにあたって、鉄鋼の研究を一部したこともございます。しかし、鉄鋼というものはそれほど複雑なものではないのですが、なおかつ費用配分ということになって、直接原価というよりは共通原価みたいなものが配分のいかんによってはいかようにでも違ってくるというふうなことで、大変むずかしいということを痛感しておりますが、しかしながら、それでもなおかつ、いわゆる工場原価のようなものは比較的それに比べればやすくできるわけだが、完全なメーカーの総合原価ということになると、それを品目別に出すということにはかなりの困難がある。これは恐らく公認会計士であってもその点については自信を持ってやれる人は少ないのじゃないかと思いますけれども、しかし、われわれとしてはなるべくそういうものに注意を向けていかなければならぬ。もっと陣容を整備すればできないことではありません。
  146. 横路孝弘

    横路委員 いまの問題と関連するのですが、この値上げの発表額を見ますと、八千八百円というのと、九千八百円というのと、一万一千円と、新日鉄の場合三つのグループに分かれていますね。ほかは値上げ発表額で若干の違いはありますけれども、落ちついたところは大体この新日鉄の分け方に従って値上げの額が決められていっていますね。これも単品原価との関係と、それからもう一つは、新日鉄なら新日鉄がたとえばH型鋼ならH型鋼がどのくらいのウエートを占めているのかという、そのウエートの占め方によってもこれは違ってきますね、それは原価との関連になるわけですけれども。  そうすると、そういうようなこと、つまりこんなグループに分けて、しかもその価格が新日鉄に対応した形でもって決められているというのも、皆さんの報告の中にもおかしいという指摘がありますけれども、それはだれでもこれを見ればおかしいということになるわけですよ。そこで、価格協定があったのじゃないかという疑いにこれは当然なるわけなんで、その辺のところにいくためには、つまり公取の方でその辺のところを調べて、メーカーを呼んだときにやはり質問をしながら明らかにしていくわけでしょう。こっちに材料がなかったら明らかにできませんね。それからもう一つは、あとはいろいろな調査をして、立入調査を行って必要な書類を皆さんの方で押さえるというようなことをやらなかったら、それはわかるはずないですよ。だから、その辺のところはどうなんですか、やっぱりおやりになってないわけですね。
  147. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 立入調査をするということは、つまり四十六条によってカルテルの疑いをもってその証拠の収集に当たるということでありますが、今回の場合においては、ちょうど七月の初旬ですか、前の国会が終わりまして、それを待っていたかのように値上げの発表がされているんですね。それで私は、それは余りにもタイミングがよ過ぎるという印象を持ちました。しかし、十分その前に準備期間がありまして、上げたいのを国会が終わるのを待つ、悪く解釈すれば、国会中にやるとあれだからなるべくそれが済んだところでやろうじゃないかというぐらいの、そういう含みはあったと思いますよ。しかし、要するに一言にして言えば、これは証拠の問題については相当用意周到にそれを消しながらやっていると、はっきり言えばそう見られる、こういう心証なんです。  実は他のカルテル問題についても、やはり何もなくては、手がかりがなくては出られないのです。何らか内部から、あるいはユーザーの方から、こういう動きがあるぞとか、何か一つぐらいきっかけがあるのが普通なんです。ほとんど全部がそうだと言ってもいいでしょう。そうでないと私の方は動こうにも動けない。ということは、事前調査をしないで立ち入りをします、それで結果は空振りに終わる公算がきわめて大であるというような場合に、それ見たことかというようなことになりかねないのですね。だから、これは私どもそういうふうに鉄鋼業界に対して、まあ日本最大の業界でしょう、その業界に対してあえてそういう強権発動をやった、しかし何も出てこないじゃないかといって笑われたのでは話にならぬ。これは私は正直なところを申し上げているのです。  だから、どこどこで会合をしたらしいとか、何か証拠らしいものがあれば、それで事件として取り上げるわけです。その辺のところは実はもう私一人ではなくて、事務局を含めたその審査関係の者の勘といいますか、これは四十六条でいけるとか、とてもだめだとかいうふうなことで、実はそういうことから決めているわけでございます。偽らざるところを申し上げまして、今回は四十六条ではとても無理ではなかろうか、しかし、今後こういうことをやっていれば一こういうことを言うとますます用心深くなるでしょうけれども、どんな場合でも証拠が隠し得るものとは私は思いません。本当に共同行為を行っておれば、どこかでぼろが出る可能性があるわけでございますから、そういうことについて十分監視していく。しかし今回のは、まず手始めに、いかに露骨に同調的行為を行ったかということを公表することに重点を置いたということでございます。
  148. 横路孝弘

    横路委員 それはいままでは余り企業の方も犯罪だという認識がなかったから、皆さんに呼ばれたら正直にいろいろきっと全部白状したのでしょう。しかし、これだけ独禁法の問題が大きくなりますと、それはどこで会いましたなんというようなことで話をするはずもありませんし、大体そんなぐあいにやらぬで、たとえば電話で話をするとかいうような程度でやっちゃうと思うのですね。しかし、それはカルテルじゃないかといえば、やはりカルテルですよ。最後の方法は何かというと、結局本人がしゃべる、その人間が自白しなければだめなわけですから、そうするとあとは資料をいかにして整えるかということでしょう。  本人が自白しなくたって、外形的な形でこれは間違いないというような事実を皆さん方がどれだけ資料として集めることができるかどうかということになるわけです。そこにやはり四十条なんというのもあるわけでしょう。ちゃんと法律の規定があるわけですね。だから、こういうのを使わないでメーカーを呼んで話を聞いたって、メーカーの対応だって最近は何か独禁法専門の弁護士なんというのも大分たくさん出てきて、知恵をつけているのもいるでしょうから、それはもう十分打ち合わせをして、多分いままでの皆さん方の取り調べのときのメーカー側の対応と今度は違ったはずですよ。それはもう当然考えられることですよ。いままでと同じように漠然として呼ばれてのこのこ行って、全部やりました、こうしましたなんということをしゃべるような状況ではないですよ。だから、これからそんなようなやり方でやっていたのではカルテルなんか摘発できないですよ。それをちょっと申し上げておきたいと思うのであります。  もう一つ、この資料の中で、「値上げ前の価格は、バーインコイルを除き」ということなんですが、このバーインコイルというのが非常におもしろいですね。値上げ前の価格が違っていたのですが、妥結額が一緒になっちゃっていますね、新日鉄と住金と。値上げの発表は新日鉄が九千八百円、住友金属が九千円です。ところが妥結額、新日鉄六千八百円、住金五千八百円ということで、これは価格に合わせているわけですよ。値上げ幅ではなくて、価格に合わせているわけですね。何でこんなことになるのか。つまり価格協定の存在以外に何も示していないじゃないですか。その辺のところはどういうぐあいにお考えですか。
  149. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この二社のバーインコイルは結果を合わしたという点はおっしゃるとおりです。つまり、値上げ幅は千円違えています。ところが前の、現行価格が千円逆に違っていたから、値上げ後が等しくなるようにした。神戸だけが、どういうわけか、この場合値上げ後は千円高いのです。そうなっていますね。これもよくわかりません。二社は申し合わせたように値上げ後は等しくなるようにし、神戸は七千円アップで六万七千円になった、こういうことでございますので、その辺、三社が完全にそろっているわけじゃない、二社は歩調をそろえたというふうに思われます。
  150. 横路孝弘

    横路委員 神戸の場合はどういうことかわかりませんが、たとえばシェアが高いとかウエートが高いということになれば、こういう強気になって出られるわけですね。ともかく住金と新日鉄とがここで価格を合わせたということで、皆さん方は発表するときにわざわざ注をつけて発表しているわけですから、やはりおかしいと思ったのでしょう。違いますか。
  151. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 おかしいといえば確かにおかしいのですが、バーインコイルだけをとらえますと、書いてありますように全体で製品のうちの一%にすぎない。それを三社でやっておるということでございますから、その辺の点について余り深く突っ込んでいくことができなかったというか、しなかったというのが正直なところでございます。
  152. 横路孝弘

    横路委員 先ほど、やみカルテルが行われたということを示す、たとえば会合やなんかがわかればというお話だったですけれども、たとえば六月四日に名古屋のホテル・ナゴヤキャッスルで鋼材倶楽部の理事会、鉄鋼輸出組合理事会が行われていますね。そして、この後の稲山さんの会見で一万円以下という額が出てきているわけですよ。つまり、その前までは一万二千円から一万四千円ぐらいじゃないかということがずっと新聞なんかにも報道されていて、このときから一万円以下ということになってきているわけですね。こういうような鉄鋼業界については、皆さん方調べたのですか。
  153. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その事実は、私は調査官の方から、そういう一万円以下とするような発言を稲山さんがされた、そういうことを調べたというふうなことは聞いておりません。もしそれが事実であるとしますと相当問題であると思いますけれども、私の方の調査官からは、そのような話は残念でございますが聞いておりません。
  154. 横路孝弘

    横路委員 大体業界紙だとか日刊紙を見て整理してみれば、これはわかりますよ。新聞に全部報道されていますよ。こういう業界の関係というのは、たとえば値上げ発表をした後の出荷停止というか、拒否というか、これだってたしか七月十五日でしたか、やはり社長会の後からそういう発言がばあっと出てきているわけですよ。皆さん方の方で、業界の新聞だとかなんとかというのは、全部一応調査に入る前にそれぐらいは整理されてやるのでしょう。違いますか。  どうもいままでのお話を聞いているとさっぱり――最初の質問に戻るわけですけれども、何を動機として、何を目的としてやったのか。それは先ほどから能力がないということを繰り返されておりますけれども、そう言われてしまったら、私も黙ってああそうですかと言って引き下がるしかないのですけれども、本当にやる気になってやれば、私はカルテルだって幾らでも証拠をつかめると思うのですよ。こういう業界については調べていないわけですか。
  155. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 専門の業界紙ですか、新聞報道の中で、何か先ほどおっしゃったような一万円云々というのは、いま聞いてみましたらやはりそういう報道は見られるそうです。ですから、その点から言いますと突っ込み方として不十分ではないかという御指摘は、われわれはやはり反省しなければならぬと思っておりますが、ただ、そういう会合を持ったということ、それからさらに、その中身はどのように打ち合わせをしたかという点は、おそらくどんなにあれしても供述はしないでしょう。したがって、何らかの物的な申し合わせの証拠を、つまり本人の供述はそれだけでは証拠にならぬ、したがって、実を言いますとメモを――実際上そのとき申し合わせした中のことのメモなどが出てくるというのが普通なんです。そうしなければ、実際立件して排除命令を出すというところまではいき得ない。  社長会をやっている場合に、社長会において何を話したかということを聞くのには、社長自身から聞かなければわかりません。そういうところになりますと、それは表現の問題ですが、そういう申し合わせをしたというふうなことはおくびにも出さないというのが通例でございます。そこで、一体いかにしてこれを今後規制していくかということは、わが方でも十分知恵を出して考えていかなければならぬと思います。社長会で、いやこれは大したことは話していないのだというふうなことが多いのでございまして、やはり社長会だけで全部決まるわけではなくて、実際事務を取り運ぶのはその下の重役さんなり部長なりということになりますから、その辺に対して何らかのお達しがあるはずでございます。全部社長会だけで決めて、あとは一切自分は知らぬという状態は普通はないのでございます。  だから、そういう点について、何らかの物的証拠を把握することができなければ、事件としてなかなか成立しないというのが実態でございます。その点を御理解願いたい。
  156. 横路孝弘

    横路委員 これからカルテル協定なんて文書にして残すようなことをやる企業なんかないですよ。そんなことを言っているなら、これから大きいところのカルテルの摘発なんかはよっぽどむずかしくなりますね、小さなところは別にして。皆さん方は、協同組合の小さいところがどうこうした、どうしてこうやったとか、そういうところはわりあいとやっていますけれども、今回鉄鋼をこういう形でやっただけに、みんなが期待していたわけです。ところが、出てきたものは何かといえば、先ほどもお話ししましたけれども、皆さん方が発表したものだって、これはほとんど公表されたものでしょう。有価証券報告書だとか新聞の記事から集めて、そして記者会見だけは大分大きな声を出されておったけれども、結局、最後は何かわけのわからぬことで終わりになってしまった。いまいろいろとお尋ねしてみれば、本来調査をやるべきところをほとんどやられていないということのようで、非常に残念なことだと思うのです。  最後に、能力能力というお話がありましたが、来年度、たとえば人員、予算などは大体どのくらい要求しているのですか。
  157. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 要求の人員は、来年度は、大蔵省としては非常に渋いでしょうけれども、当方としては五十二名ふやしていただきたいということを要求しております。
  158. 横路孝弘

    横路委員 五十二名程度の要求ですと、ことしの行管あたり方針から見て、それは三分の一以下、十名か二十名ぐらいですね。二十名でも半分くらいになりますから。  機構の改革の方はどうなっていますか。独禁法の改正問題はありますよ、あるけれども、それと別に、皆さんの方で大いに仕事をやるためにこういう機構が必要だということを出して、そして人もつける、予算も少しとるということでやっていかないと、能力がなくてできませんと言うだけじゃ、ちょっとどうしようもないですね。機構整備といいますか、ともかくそういうものをやって、人をふやしていくというようなことについては、何かお考えがあるのですか。独禁法の改正を待ってからやるということよりは、皆さんの方で独自にそういうものを出して、少なくとも来年度の通常国会くらいに――まあこれは多分予算の要求はしていないのでしょうから、ちょっと無理かもしれませんが、いずれにしてもそういうものを整備する。公取の方でやることをやらないで、能力がないと言うだけでは、これはちょっとどうしようもないですね。いかがですか。
  159. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ですから、これは非常に困難かと思いますけれども、いまの調査関係は一課だけでやっておりますが、今回のような問題、従来の寡占企業調査も続けなければならぬという点からいって別に課が欲しい。それから、審査部をもう少し充実しなければならぬ。これは名前は申しませんが、別に特別の任務を負った課を一課設置したいということで、強力にお願いしておるわけでございます。
  160. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、その機構の改革というのは具体的な形でもう準備されているわけですか。
  161. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 何しろ予算で内示を受けて、蒸し返しをやりまして、入るようにともかく認めてもらう、人間も多少つけてもらう、こういうことになりませんと、内部での体制もできません。それから、体制充実というのは予算が通過した後でしか動けないようになっております。この点は御承知だと思いますが、ですから来年度の問題になります。
  162. 横路孝弘

    横路委員 結局、鉄鋼関係でもまだまだ調べるところがたくさんありますね。先ほどの御答弁でも、輸入の関係、それからカルテル行為があったのかどうかという点でも不十分だということをおっしゃられましたけれども、これは調べようと思えば、四十九年六月当初からずっと調べられるわけですね。先ほど、これで鉄鋼の調査が全部終わったわけではないというお話だったのですけれども、その辺のところを、さらにいま指摘した幾つかの問題点について継続して調査をされるというお考えがあるかないか、これが第一点。  それからもう一つは、積み残し三千円、先ほどの通産大臣の話だとまた動いているようですね。これ三千円と出てくるのか、幾らと出てくるのかわかりませんけれども、いずれにしても、こう出てきたときに直ちに対応するという姿勢を――大分それに対する牽制としておやりになったようでありますから、明確にされたらよろしいのじゃないかというように思いますけれども、その二点を伺っておきたい。
  163. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 われわれの調査がある限られた期間を目標にして行いましたために、手をつけられなかった点で今後補充すべき必要のある点は補充調査をいたしますし、それから今後、いますでにもう開始されておりますが、三千円をめぐる問題についてはまた恐らく似たような結果が出てくるのじゃないかと予想されますので、それに対してはそれ相当の調査ないし審査をすることがあるということを申し上げておきます。
  164. 横路孝弘

    横路委員 終わります。
  165. 山村新治郎

    山村委員長 野間友一君。
  166. 野間友一

    ○野間委員 文部省が見えておりますので、まず先に信用保証協会の問題についてお尋ねしておきたいと思います。  信用保証協会による保証対象業種、これについては信用保険法の施行令に対象業種が列記されておるわけであります。この信用保証協会が信用保証するときに、信用保険法に基づく保険対象業種でなくとも保証はできるわけですが、実際には協会のリスクでこれを保証しなければならぬということになりますから、この対象業種に限られております。  そこで、私たちのところによく出されてくる要求は、いわゆるレッスンビジネス、たとえばそろばん塾とか、あるいは裁縫とか料理教室、こういうところが対象から外されておるわけであります。若干調べてみますと、たとえば各種学校として、洋裁あるいはタイピスト、それから写真、理美容、外国語、デザイン、それから調理、コンピューター、簿記、栄養、テレビ技術、ホテル、自動車整備、ビジネス、速記、秘書、測量、電波、生け花、溶接、電気技術、それから美術、これは皆学校がつくわけですが、いま挙げたこれらの学校については、いわゆる学校法人、各種学校としての法人のものと、法人でないものとがあるわけであります。それから、この学校という形とはまた別に、個人教授所、たとえば長唄の指南所とか、あるいは茶道の教授所、それからピアノの教授所、そろばん塾、体育教室、舞踊個人教授所、生け花教授所、英語個人教授所、音楽、編み物、習字、絵画等々、いわゆるいま問題になっておりますレッスンビジネスがかなりふえておるわけですね。  囲碁、将棋については、これは物品貸出業というところで保証の対象になっておりますけれども、いま私が指摘したこれらについては施行令の中に入っていないわけですね。これは、ぜひ入れてくれという強い要望がそれぞれのところから出てきておるわけでありますが、これらについて、通産省あるいは中小企業庁がどのように考えておるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  167. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 中小企業信用保険法を適用いたしまして、保証協会が保証いたしましたものを信用保険公庫が再保険する業種につきましては、中小企業信用保険法の施行令で定めておるわけでございます。その中に自動車教習所業というようなものもございます。それから、物品貸付業の一部といたしまして、ビリヤードあるいは囲碁、将棋、マージャンクラブといったようなものもこの貨付業の中で見ておるわけでございます。  ただいま先生の御指摘のございました各種学校の中には、お茶の学校とか、生け花の学校でございますとか、いろんな目的を持ったものがございますので、その実情を調査いたしまして、関係の部局とも相談の上で、対象業種として指定可能かどうか検討いたしたいと存じます。その場合に、一応この保険の対象になりますものは中小企業者でございますが、中小企業者の定義としまして、保険法の第二条で「会社及び個人」ということになっておりますので、営利を目的としない学校法人というものはこの対象には困難かと存じますが、そうでない、いわゆる各種学校的なものにつきましては、十分検討してみたい、かように考えております。
  168. 野間友一

    ○野間委員 いま挙げたそれぞれの各種学校あるいは個人教授所、これらについての管轄は文部省だろうと思いますけれども中小企業庁では、いま長官の方から話がありましたけれども、検討したいということですが、これについて文部省ではどのように考えておるのか、ひとつお聞かせください。
  169. 塩津有彦

    ○塩津説明員 国民の教育要望は非常に多様でございまして、生涯教育の観点から、いつでもどこでも必要な教育を施すという体制が整うことが必要だと思います。そのためには、学校教育だけでは賄い切れませんので、いまおっしゃいましたような施設も非常に有意義な役割りを果たすものだ、こういうふうに考えます。  ただいまの御質問の件に直接関して申しますれば、先生がおっしゃったもののうち、各種学校については学校教育法で制度化されておる。そのほかに、社会教育法で社会通信教育というのも制度化されておる。こういった制度化されている教育事業といいますか、施設といいますか、そういったものにつきましては、文部省といたしまして責任を持ちまして、先生の申されたような方向で経営が楽に、円滑に行われるような方向にいくことは大変ありがたいことだ、こういうふうに思いますが、まだ各種学校あるいは社会通信教育のように制度化されていないものにつきましては、実態もきわめて多様でございまして、十分つかんでもおりませんので、いま直ちに責任を持ちましてこれをすぐ全面的にお願いをしたいと言うことはあれでございますので、十分中小企業庁とも検討をいたしてまいりたい、かように思う次第でございます。
  170. 野間友一

    ○野間委員 長官、文部省の方では、いま私が指摘したようなところ、学校法人、法人格を持つ場合は別にして、そうでないものを私は個別具体的に指摘したわけですけれども、これについては積極的に検討する、こういうことのようですが、冒頭に申し上げた、個別具体的に指摘したこれらの問題について文部省と十分協議をして、できるだけ早くというふうに私は要求したいのですけれども、遅くとも年度がわり、次の年度の初めにはこの施行をされて、そうして対象になるようにひとつ積極的に検討してほしい、こう思いますけれども、いかがですか。
  171. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 関係省庁と十分協議いたしまして、実態の内容が的確に担当の部局の方からお示しいただければ、それに即しまして処理をいたしたいと存じます。
  172. 野間友一

    ○野間委員 それじゃもう一点、文部省、実態をあなたの方で検討して協議をされるということになると思いますけれども、先ほども申し上げたように、遅くとも五十一年度の年度がわりにはこの要望にこたえてほしい、こういうふうに思うわけで、その点でぜひ実態を早期に調査をして、そして中小企業庁と協議をして間に合うようにやるというような約束をひとつお願いしたいと思います。
  173. 塩津有彦

    ○塩津説明員 各種学校及び社会通信教育を行っている事業主体等につきましては、資料もある面についてはあるものでございますので、できるだけ早く取りまとめて協議をいたしたい、かように思います。
  174. 野間友一

    ○野間委員 それでは、文部省はもう結構です。  それでは、大規模小売店舗法の関係について少し質問を申し上げたいと思います。  この法律が施行されて、まだ二年にはなりませんが、二年近くになります。この法律が当委員会で審議されてから数えますと二年半を超えるわけですが、当時政府が、百貨店法を廃止して、大規模小売店舗法、これは大店法というふうに略しますが、これを定める目的として幾つか挙げたわけです。その一つ消費者利益の保護ということであったと思います。これは法の目的の中にも入っております。それから、周辺の中小小売業の事業活動の確保、こういうことであったと思います。  私たち共産党は、この法律ではそのいずれも達成できない、こういうことをこの委員会においても指摘をしてきたわけであります。つまり、そういう目的に合うようなものでなくて、逆に、中小スーパーの系列化なども含めまして、大企業市場支配に大きく道を開くものであるという点から指摘をしてきたわけであります。その後二年半たった今日、私もここで指摘をしたわけですが、私たちの指摘政府の見解のいずれが正しかったか、これは事実によってすでに証明されておると思います。  私たちは、そういう意味から、前の国会においても、あるいは今国会の場合でも、これは参議院の中で議員立法として、最小限度届け出制を許可制にと、こういう内容の改正案を出しておりますが、いまなおこれが審議はされておりません。そこできょうは、小売商業の実態、特に大企業中小企業関係がどうなっているかという点について少し質問をして、この法律の改正の必要性ということでただしたいと思います。  まずお聞きしたいのは、統計上の数字をひとつ明らかにしてほしいと思います。法施行後、大規模小売店の新設の届け出件数、これは百貨店あるいはスーパーも含まれるものでありますが、それぞれどのようになっておるかということ。それから二点目は、その増加率を過去五年ぐらいさかのぼって考えた場合、どのように推移してきたかということ。それから、販売額の面で見ればこの推移はどうであるかということを、まずお伺いしたいと思います。
  175. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 まず大規模小売店舗の届け出状況でございますけれども、法律のうちの最も基本的な第三条の大規模小売店舗の新設の届け出状況、これは昭和四十九年度第一・四半期が九十二件、それから第二・四半期五十三件、第三・四半期五十八件、第四・四半期四十七件、それから五十年度の第一・四半期が五十六件、計三百六件というような推移を示しております。  次が、大型店舗の小売の売り上げに占めるシェアでございますけれども、五年ほど前とおっしゃったわけですが、手元には四十七年の統計がございますので、四十七年の商業統計確報と四十九年の商業統計速報とを用いまして比較した数字を申し上げたいというふうに思います。まず、セルフサービスについて申し上げますと、昭和四十七年のシェアは八・七%でございましたが、四十九年になりますとこれが一〇・六%に、約二%上昇をしております。次がデパートでございますが、これは昭和四十七年、八・四%でございましたものが、四十九年には八・九%と微増をいたしております。なお、四十九年のは速報値でございますので、場合によっては訂正ということもあり得るかと存じます。  以上でございます。
  176. 野間友一

    ○野間委員 販売額、これは四十九年度で一〇・六%と、四十五年が七・四、四十七年がいま言われた八・七、四十五年を七・四としてもう一〇%超えておるわけですね。一一%近い。これは増加率を見てみますと、四十五年対比で四十七年が五一・九%、四十七年対比で四十九年が七三・七%ですね。非常に大きな伸びを示しておる。  しかも、商業統計速報の中でもコメントがありますが、「百貨店の販売額を約七千億円も上回り小売業全体に対する販売額の構成比でみても百貨店の八・九%に対し、セルフサービス店は一〇・六%と小売業販売額の一割を越え百貨店のシェアを一・七ポイント上回った。」こういう指摘もされておるわけであります。このセルフサービス店の中には、大きなスーパーも、あるいは中小スーパーも、さらに小型便宜店、コンビニエンスストアも含まれておりますが、この店の数の伸び率、数の推移等々から考えまして、大スーパーが販売額において急速な伸びを示しておるというのは明らかであります。  これらの数字にあらわれた実情を基礎にして質問を続けるわけですが、まず消費者利益の保護、これは法の目的にも「消費者の利益の保護に配慮しつつ」と、そういう規定がありますが、流通の近代化、つまり流通経路の短絡化、これによってスーパーで販売する価格が安くなる。これは当委員会の論議の中でもずいぶん出てきたわけでありますが、果たしてスーパーの販売価格が一般の小売商に比べて安いかどうか、これはどのようにお考えなのか、聞かせてください。
  177. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 各地に多数のスーパーがございますので、これは一般的に概括して言うことはかなり困難であり、あるいは実証的に申し上げることもむずかしいかと存じます。  ただ、定性的に申し上げますならば、スーパーの方が大量仕入れをいたしますので仕入れ値段が安い、あるいは流通経路を短絡しておるという面におきまして流通コストが安いという面がございますが、他面ではスーパーの従業員の賃金水準がかなり高いという面、それからスーパーが獲得しておる土地の値段が周辺の小売商の地価と比べましてはるかに高いという面、それから建設コストも、スーパーが最近の建設でございますので建設コストが高いというような面は、今度はその周辺の小売商よりもコストが高くなる。プラスマイナスしてどうかということかと存じますが、商品の種類によりまして、特にスーパーが大量に扱っておる生鮮食料品であるとか雑貨類等につきましては、一般的に言えばスーパーの価格消費者にとって利益を与えていると言うことが可能であろうかと存じます。
  178. 野間友一

    ○野間委員 実際に調べたことはあるのですか、ないのでしょうか。
  179. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 モニターを使いまして、幾つかのスーパーとそれから小売店等についての調査をしておることはございますが、これを全国的な調査をやって統計化したというようなことはございません。
  180. 野間友一

    ○野間委員 ですから、一般的にいまの共同の仕入れとかの点で安くなるはずである、流通が短絡化される、こういうような一般的ないまの答弁はありましたけれども、しかしそれはいまのあなたの答弁にもあったように、具体的に調査をした結果のものではない、これは明らかになったと思います。  前の委員会のときにも、この点について私もかなり論議をしたわけですね。しかしながら、これが消費者の利益の保護につながるということで強引に押し切ったわけですが、これはぜひ具体的に全体の調査をして、そうして消費者の利益の観点から具体的にどういう機能を果たしておるかということは当然やるべきものであるというふうに思いますが、この点どうでしょうか。
  181. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 調査をする場合に、いろいろ技術的にむずかしい点があろうかと存じます。ただ、非常に定形化しております商品につきましては、おっしゃったような調査をすることも可能であるかと存じますので、今後できるだけそういう調査をいたしたいと思います。  ただ、一般的に申し上げますれば、スーパーが消費者の利益になっているかいないかということは、買い物客すなわち消費者の判断することでございまして、もしスーパーが消費者の利益になっておらないと消費者が判断しますならば、そういうスーパーで買い物客が少なくなりまして、結果的に要するに市場法則が働きまして、スーパーの消費者に対する貢献度があらわれてくるものであろう。われわれも統計等の努力もいたしますが、判定をするのは消費者の買い物態度そのものであるというふうに考えております。
  182. 野間友一

    ○野間委員 それはあなたがそう言わなくたって、最終的には消費者が判断するものだけれども、具体的にどのように機能しておるか。法の目的にも書いてあるわけですから、そういうスーパーサイドに立った講釈は不必要だと私は思います。ぜひ一遍実態調査をしてほしいと思います。  私の手元に、大阪市の生活関連物資等緊急対策室がことしの四月二十五日に行った調査があります。まず、この調査を御存じかどうか。いかがですか。
  183. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 存じておりません。
  184. 野間友一

    ○野間委員 知らぬということでしょう。これを見てみますと、時間の関係で詳しい調査の中身、方法等については省略しますけれども調査の対象は一般小売、それから公設市場、私設市場、スーパー、百貨店、こういう形で、モニターを大動員して具体的に調査をしたわけですが、その結果明らかになったのに、こういうコメントもあります。「店舗形態別では、量販店であるスーパーが一般的に安いと思われがちであるが、これを明確にかなえているのは、しょう油、砂糖、小麦粉、バターの四品目のみである。逆に粉ミルク、玉子、トイレットペーパー、合成洗剤では一般小売または市場店の方が安く、その他の品目でも量販のメリットが生かされているとはいい難い。」こういうふうに調査の結果コメントしておるわけです。  具体的に平均値あるいは指数が数字で出ておりますが、確かにこれで見る限り、スーパーは物が安いというふうな印象を目玉でつって与えてはおりますけれども、実際の商法というものは決してそうじゃない。これは天谷さん、こういう点からも私はやはり調べて、本当に消費者の利益にかたうということから、それぞれの店舗のメリット、デメリットというものを考えなければだめだと思うのですね。先ほど申し上げたように、もうすでに二年近くたつわけですが、これが生かされていない。むしろ逆にあくどいことをやって、目玉でつっては高い物を買わされているというのが随所にあるわけですから、この点について指摘をしておきたいと思います。  また、ことしの三月二日の読売新聞の「サンデー・レポート」という記事の中で、スーパーの実情を取り上げております。その記事を見ましても、これはスーパーの経営者が言っておる言葉でありますが、たとえば西友ストアーの堤さんは「チェーンストアーはこれまで、いかにも全商品が安いかのようなイメージを演出してきた。」そういうことをちゃんと堤さん自身が言っておるわけですね。「「安いと思って買った商品と同じものが、近所の小売店ではもっと安く売っていた」といったぐあいの〃苦情〃が、各地の消費者協会や、消費者センターに相次いで寄せられているという。」ダイエーの中内さんも「たしかに安さを売り物にしにくくなった。いや、いま以上に価格を下げられない事情が出てきた」こういうように言っておるわけです。中身については、天谷さんが言ったようなことも書いてあります。  大阪市の調査の結果でも、量販店の先ほど挙げた四品目だけは一般の小売市場に比べて安い、あとはそんなに安くない、量販店のメリットはないのだということも明らかになっておる。大体ダイエーとか西友というのは、これは大手のランクで一、二ですが、ここの経営者自身がこういうふうに言っておるわけですね。ですから、いまあなたが一般的な答弁として言われましたけれども、決して実際にはそうではない、こういうことが明らかになったと思います。  ですから、百貨店法を改正する場合にかなり論議し、その論議した中で政府が言っておった言い分が、実際に実態を調べた上では、逆の結果と申しますか、これが過言であるとすれば、量販店としてのメリット、これはワン・ストップ・ショッピングとか、いろいろほかの機能はありますけれども、事価格の点について言えばこれは生かされていないし、むしろ高い。しかし、消費者はそこで高いものを買わされるという結果が現に出ておるわけですね。これは私もこの間からずっと議事録等を読み返しておりますけれども、私もこれはかなり論議したわけです。  こういう点から考えて、政府は当然反省すべきである、こう思うのですけれども消費者の立場に立ったいまのモニターの調査の結果、あるいは企業経営者自身がこういうことを言っておるという点からして、事価格の点からいって、実際これは政府が考えておったのと逆になっておるというふうに言わざるを得ないと思うわけですが、この点いかがでしょうか。
  185. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 狂乱物価等の影響がございまして、あるいはまた地価の上昇等がございまして、スーパーの流通コストが期待されたほど、あるいは経営者が期待しておったほど下がっていないという事情は、先生指摘のとおりかと思います。今後ともスーパー経営者等がそういう面の合理化に努力すべきである、こういうふうに考えております。  ただ、スーパーが消費者の利益に全然役立っていないかどうかという判定につきましては、私が先ほども申し上げたことの繰り返しになりますけれども消費者選択の自由の問題でございまして、もしスーパーの品物が高いと考えれば、消費者はスーパーで買うことをやめるということによって、消費者の選択あるいはスーパーに対する拒否の態度を明らかにすればよろしいことでございまして、基本的には、この消費者選択の自由を尊重するということが消費者利益の保護につながるというふうに考えております。
  186. 野間友一

    ○野間委員 スーパーのいまの販売額について言いましても、四十五年に比べて急速に伸びておる。これは百貨店はいわば微増ですね。スーパーは伸びておる。スーパーの商法、商品販売の形態等についてはいろいろと言われておりますし、御承知のとおりです。私もよく知っておりますが、後でまた若干例を出しますけれども、これは価格の点についてだけ限定して私はいま質問したのですが、こういうような経営者みずからも、あるいは消費者サイドから考えた調査の結果も、こういうふうにメリットがないということが明らかになっておるわけですね。これがすべてだというふうに私は言いませんし、また、あなたが言われるようにもしそれでスーパーで物を買うことにメリットがなければほかに流れる。一般的な理屈はそうなんですね。  ところが、アンケート等の調査の結果でも明らかですけれども、スーパーは物が安い、こういう認識なり印象が非常に強い。しかも目玉で不当廉売して、そして客をつる。あたかも安いようなイメージを与えておる。これまた事実なんでしょう。そうなんですね。だから、消費者利益の保護という点で、価格の点から言いますと、これは政府がいままで言ってきたこと、百貨店法の改正のときの改正の趣旨、これに合うような形になっていない。これを私は指摘し、この点についての政府の反省を求めておるわけです。  さらに、中小小売商に具体的にどのような影響を与えておるかということについても、先ほども申し上げたようにシェアが急速に伸びておる、このことから明らかだと思うのです。この量販店のシェアが伸びるということ自体が、逆に一般の小売商のシェアが狭くなるということになるわけですから、この点は認めると思いますけれども、いかがですか。
  187. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 基本的に市場経済をとっておりますので、このシェアというのは常時変動しておる。何か特別のカルテルでも結ばない限り、シェアが固定するということはあり得ない現象であろうと存じます。いまのところ、ここ数年の傾向を見ますと、日本のスーパーはまだ年が若いわけでございますから、そういう意味では成長率が高くなっておるということが言えるだろうと思いますし、もしその原因が不当廉売等にある、そういう不当廉売によって消費者がだまされておるのだといたしますならば、それは好ましからざるシェアの上昇でありますし、仮にそれが不公正競争に該当するものであれば取り締まられるべきものであるというふうに考えます。  他方、通常の商売をやっておりまして、消費者の選択の結果それがふえたということであれば、それは市場経済一つの結果であるというふうに考えております。
  188. 野間友一

    ○野間委員 そっけない答弁ですが、これは販売額の推移を見て、いま若いから伸びておるというふうに言いましたけれども、特にこの百貨店法を大店舗法に変えたということから、許可制から届け出制ということになった関係で、さらに急速にこれは伸びてきたというふうに思うわけですね。四十五年が一五・五%、これはスーパーと百貨店の両方ですけれども、四十七年が一七・一%、四十九年が一九・五%。つまり四十五年対比の四十七年が一六ですね。四十七年対比の四十九年が二・四、かなり急速にこのシェアを拡大しておるというのがその数字の上からも明らかになっておるわけです。ですから、先ほど申し上げたように、それだけ中小小売商のシェアが縮小されておる。しかもこれが地域によってはものすごい馬力で伸びておって、中小小売商がはかり知れない打撃を受けておるというケースもずいぶんありますけれども、こういう実態については全部御存じでしょうか。
  189. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 全国に数巨万ある小売商でございますので、それの全部についてわれわれは承知しておるわけではございませんが、大規模小売店舗法に基づきまして小売商の苦情等が申し立てられているというようなケースにつきましては、われわれは承知をいたしております。要するに、スーパー等の進出に伴いまして、小売商とのかなりの摩擦があるということは認識をいたしております。
  190. 野間友一

    ○野間委員 認識があったって、届け出制で器をつくって、そしてさらにそこで店を開くという大規模小売店舗法、届け出だけでこれが野放しされる。だから、そこで店を開くこと自体をとめる手だてはないわけでしょう。許可制の場合には行政訴訟もできたわけです。それができない。ただ、店の開店時間とか、あるいは休業とか、あるいは若干の店舗面積を減縮するとか、理屈の上では幾つかの手だてはできることになっておりますけれども、店そのものがそこに開業するということをチェックする手だてはない。しかも、これが三千平米ないしは千五百平米という売り場面積、店舗面積、それ以上の場合だけが規制の対象になるということで、なおさらなんですね。  そこで、私も具体的によく聞くわけですが、この中小小売商の厳しさというのは、先ほど申し上げたように、特定の地域に限って言いましてもものすごく深刻なんですね。たとえば横浜市の西区の例なんですが、これは横浜の駅を含むわけですが、ここでは現在大規模小売店舗が十七店あるのです。小売全体の年間の販売額は四十八年度で何と五八・五%、これは異常なんですよ。いまの全国平均一〇・六%。ところが、横浜の西区では五八・五%、これは異常なんです。これらの大店舗が駅周辺に集中しておる。そのために、この周辺に平沼商店街というのがありますが、売り上げがずっと減少しておる。最近では、国民金融公庫の貸し出しの点について言いましても、いろいろなことを言われておりますが、一級、二級、三級、四級と四つのランクに分けている。一級の場合には発展地域、二級は安定地域、三級は横ばい地域、四級は衰退地域というふうにいろいろ国金の方でやっているそうですか、この平沼商店街は最低の地区にランクされておるそうですね。これはどえらいことなんです。五八・五%も、これはスーパー、百貨店も含めてですが、十七店も出てきてかき回されますと、これは想像を絶するものがあると思うのです。  また、この間小田原市へ行ってまいりましたが、ここでは大規模小売店舗の販売額が小売総額の四〇%を占めております。さらにまた、ここに新しい店が出店しようとしておる。これはとりたててここだけが異常だということじゃないのです。ほかにも幾つか例がありますけれども、これはもう異常でしょう。五〇%以上超えたり、あるいは小田原の場合には四〇%、そこへしゃにむに割って出る。さらにここへ進出する。小田原の商工会議所あるいは商店会連盟のパンフレットなどにもありますけれども、大変深刻で、皆頭を抱えている問題です。こういう実態を踏まえて、一体この量販店と中小小売商の実態を果たしていいと思うのかどうか、好ましいと思うのかどうか、その点いかがですか。
  191. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 大阪店と中小小売商との利害の調整、これにつきましては、大店法の趣旨に従いまして、各地方の商調協におきまして、その地域の小売商、それから消費者、また学識経験者等々の各方面の意見から、それを正常と判断するかどうかという点について判断をいたしまして、通産省といたしましてはその判断を尊重していきたいというふうに考えております。
  192. 野間友一

    ○野間委員 私はいま具体的に言いましたように、横浜西区は五〇%を超すという異常な事態ですね。十七店舗も進出した。五八・五%でしょう。そして商店街の皆さんが国金で金を借りたくても最下位にランクされているというような深刻な事態、小田原でもいま申し上げた四〇%のシェア、そこへさらにまた進出しつつある。こういうような具体的な事態、いま私が申し上げたのは二つの例ですけれども、これでいいと思うのかどうか、これはどうなんでしょう。
  193. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 横浜市西区及び小田原の事例につきましては、われわれは全日本で起こっておることをすべて承知しておるわけではございませんので、ただいま先生の御指摘もございましたことであり、よく実情を調査いたしまして、なお地域の商調協の意見等も聞きまして、どういう状況であるか判断をいたしたいというふうに存じます。
  194. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ、判断されまして、もしこれがよくないというふうに判断した場合にはどのような措置がとれますか。
  195. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 商調協において審議すべきスーパーの進出があった場合に、そのスーパーの営業をどう取り扱うかということによって判断が示されることになろうかと存じます。
  196. 野間友一

    ○野間委員 商調協あるいは審議会というものが、新たにいま申し上げた地域に店を出すということについて、これをとめるような規制があるかないか、これはどうでしょう。
  197. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 商調協の手続に従いまして、大規模小売店舗審議会が商調協に諮問する、それに対しまして商調協は意見を述べる、その意見を大規模小売店舗審議会は原則として尊重する、こういうことになっております。
  198. 野間友一

    ○野間委員 いや、聞いておるのは、それじゃ具体的に聞きますが、新たな量販店は来てもらっては困るという意見を仮に商調協なり審議会が出した、それでも進出をする。届け出だけでできるわけでしょう。これをとめることができるかどうかですよ、私が聞いておるのは。店舗面積を多少圧縮したり、あるいは休日とか、あるいは開店、閉店時間、これらについての若干の手直しは法律上はできると思うのですね。しかし、店を新たに出してくるものについてこれをとめることができるかどうか、この点なんです。
  199. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 その地域の商調協におきまして十分な審議がされた結果、満場一致でそういう大阪店の進出は困るというふうに決定されました場合には、中央の審議会、それから通産省におきましてもその意見を尊重せざるを得ないというふうに考えております。
  200. 野間友一

    ○野間委員 いや、尊重して、店を出すということをとめることができるかどうかです。
  201. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 法律の規定に従いまして勧告をするということが可能でございます。勧告に従わない場合には命令を出すことが可能でございます。
  202. 野間友一

    ○野間委員 それは法律の何条でしょうか。
  203. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 変更勧告は七条でございます。
  204. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ、この七条によって店を出すことならぬという勧告をして、それに従わない場合には、それを規制してストップさせるということはできるのですか。
  205. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 法律によりまして、千五百平米、三千平米以下につきましては法の規制は及んでおりませんので、全面的にストップということはできませんが、面積等をその規模まで縮小させるということは可能でございます。
  206. 野間友一

    ○野間委員 だから、それを言っているわけですよ。この前の論議のときでも私が指摘したのはその点なんです。許可制度であれば、許可するかあるいは不許可にするか、これは通産大臣が決める。無視した場合には、これは行政訴訟、許可処分取り消しでもできるんですね。いまあなたが言ったように、いま詰めるとやはりそういうことを言った、つまり減縮なり何なり、それはできるかもわからないと。しかし、そこで店を張ること自体を法律がとめることはできないのでしょう。それがこの法律の持つ一番大きな問題なんですね、届け出だけですから。それは四十五年対四十七年に比べて、四十九年がさらにシェアを伸ばしている。そうしていまの平沼商店街とか小田原のように、五八・五%とかあるいは四〇%というような異常なシェアを拡大していく。商調協や審議会でこれをとめる権限はないですね。通産大臣もそうでしょうが。こういうのをどうしますか。
  207. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 小売商業の保護という問題と、それから消費者の利益及び営業自由の原則というこの三つの原則をどう調和さすべきかということが基本的な問題であるというふうに存じます。現行法によりますと、千五百平米及び政令都市におきましては三千平米未満の規模であります場合には、これは店の規模が小規模でございますから、周辺の小売商に甚大な影響を与えるというふうには考えておらないために、これを法の対象からはずしたものであるというふうに考えております。   〔委員長退席、萩原委員長代理着席〕 したがいまして、そういう小規模な店舗の出店につきましては、むしろ営業自由の原則という原則の方を尊重しておるというふうに考えられるわけで、それを徹底的に許可制その他で規制するということは、現行法の体系におきまして必ずしも適切ではないのではないかというふうに考えます。
  208. 野間友一

    ○野間委員 私が聞いておるのは、ですからその点なんですね。中小小売商を異常な勢いで圧迫して手を挙げさす、これは随所に出ておりますね。いま申し上げたように、西区の場合にはもう最下位のランクしか与えないということなんですよ。これははやった商店街なんですがね。ところが、この千五百平米ないし横浜の場合には三千平米以上ということですが、この法律でも、いまあなたは七条の変更勧告あるいは八条の命令を言いましたけれども、これだって五条の一項または前条一項もしくは二項でしょう。これは届け出とか、あるいは開店日の繰り上げ等の届け出、こういうところでしょう。そうでしょう。だから、店を張ること自体をとめることは、勧告も命令もできないわけですね。だからこそいまのような事例が出てくるわけです。  これに対して、いまの法律制度のもとでは何の歯どめの手だてもできないわけですよ。何ぼ商調協や審議会があれこれ、ここでもう新しい店は困るとか、あるいは店舗を増加しても困る――増築する場合には、これは六条の二項で若干の規制はできるかもわかりませんけれども、ただ、これだって減縮だけなんですね。だから、やはり異常に伸びてくると、中小小売商を圧迫するというのはこういうところから出てくるわけですよ。もう全外国でこのスーパーに反対する運動が進んでおるでしょう。だから、この法律の持つ一番大きなネックというのはここだ、欠陥はここだ、それを許可制から届け出にした、これはけしからぬというのがわれわれの当委員会における論議でもあったわけですが、この点については全く無力なんですね。あなたがどんなに精神訓話をしようとも、来るものをとめることはできない。これは法のたてまえからそうなるわけですよ。  いま、営業の自由とかいろいろ言われました。私、決してそれを全面的に否定するわけではないのです。しかし、大きな資本がどんどん進出してきて、中小小売商を倒してまで自分のシェアを伸ばすということ、これが許されないのはあたりまえなんです。いまの法律制度の目的にもそう書いてありますね。「消費者の利益の保護に配慮しつつ、大規模小売店舗における小売業の事業活動を調整することにより、その周辺の中小小売業の事業活動の機会を適正に確保し」云々。しかし、目的はそうあったって、中身はそうではないわけですよ。だから、全く無力ということでしょう。何ぼやっても、反対運動を起こしても、法律にそれをとめる規制がありませんから、現に次から次へと出てきているわけです。だから、これはやはり届け出制というところに問題があると思うのです。  私はこの前のときも、売り場面積、店舗面積は実情に即して、三千平米や千五百平米というふうに一律に規制するのはけしからぬ、こう言いました。当時の中曽根通産大臣は、前からの決まったものでこれはこれでいくけれども、実情に合わなければそれについては検討したいと、答弁でそう言われた。  店舗面積と、もう一つはいまの許可制を届け出制にしたということですね。いまでは、届け出制ではやはりぐあいが悪いから許可制度に変えなければならぬというのが、とりわけ中小小売商の皆さんの大きな世論になっているわけです。  これは、昨年、全国中小企業団体中央会の総会が和歌山でありまして、私も出席しましたが、その大会の決議にもちゃんとあります。「いわゆる大規模小売店舗法の運用の実効を期すためには、現在最早、百貨店、大型スーパーの新増設を厳しい条件によって許可制にする以外にない」。また、去年に続いてことしの十一月の大会でも、同じように、「大規模小売店舗法の実効を確保するため、百貨店、大型スーパーの新増設を許可制にし、地域中小企業者を圧迫することにならないようにすること。また商調協の運営については、中小小売商業者の意見を充分反映できるように配慮すること」こういう決議までされております。これと同じような要求が、たとえば全国商工団体連合会、それから日専連、全国商店街振興組合連合会、全日本商店街連合会、こういうところからも出されております。これはもう御承知の通りなんです。  これらの団体の中には、この大店法が制定された際に、この法律の改正について賛成したところも実際にあるわけです。ところが、法が施行されてから一年足らずの間に、スーパー等に対して実際に果たした役割り、これではやはりだめだということで、いまではこの中央会の中でも一つの大きなうねり、連動になっているわけです。  この大店法につくり変えたとき、これが銀行とかあるいは商社系列等々――系列の点について私はここで指摘したわけですけれども、大企業とか大スーパーに非常に都合がいい、中小小売商に厳しいものになるということを何度も私は言ったわけです。そのとおりになっておる。各地方自治体でも、東京都とかあるいは神奈川県、それから名古屋市、こういうところでは意見書を出しまして、やはり許可制にしなければならぬ、戻さなければならぬ、こうまで言っておるわけですね。ですから、消費者利益の保護、これは価格面について私は指摘したわけですが、あるいは周辺の中小小売商の営業圧迫、こういう点から考えて、やはり許可制に戻すべきである、こう思うのです。許可制にしたからといって、スーパーの進出が、営業の自由なり職業選択の自由に反して不当に狭められるということはないはずだと思うのです。これは周辺の小売商あるいは消費者の利益を考えながら許可にするか不許可にするかすればいいわけで、いまのような野放しの届け出制ではどうにもならぬ。これはあたりまえなことだと思うのです。  これは通産省内部で恐らく検討もされておると思うし、このような大きな中央会あるいはそこに加盟されておる関係の小売業者の組合からも強い要望が出されておるという事態を踏まえて通産大臣にお聞きしたいと思いますけれども、許可制に戻すべきであると強く要求したいわけですが、これについてどのようにお考えになっておるのか、お聞かせください。
  209. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお話しの問題は、いろいろな角度から検討する必要があろうかと思うのです。中小店舗にどういうふうな影響を及ぼしておるかということ、あるいはまた、消費者にどういう影響を及ぼし、消費者が何を考えておるか、さらにまた、流通の近代化という大きな問題がございますが、そういう面にどういう影響が出ておるか、さらにまた、基本的には職業の自由、営業の自由、こういう問題もあると思いますが、そういういろいろな問題を総合的に検討してやはり判断を下すべき問題だと思います。しかし、いまるるお話しのようにいろいろと問題があるようでございますから、通産省におきましても現状をもう少し組織的に調査をしてみたいと思います。
  210. 野間友一

    ○野間委員 いろいろと問題があるというふうにお答えになりましたけれども、しかも、問題は、このスーパー商法、目玉を置いて客を誘引するという戦術ですね、これは非常にあくどいのもあるわけです。  一つケースを挙げますと、山梨県甲府市貢川という地域、世帯数は四千世帯、ここは甲府市内では新しく開けつつあるところですが、ここで十一月七日に、いちやまマートというスーパーが、甲府市内で第五番目の店をオープンしたわけです。これは大体千四百平米ですから届け出の必要すらない店舗なんです。そのいちやまマートが開店に際して何をやったかといいますと、貢川地域四千世帯に二百円の商品券を七千枚から一万枚ばらまいたわけです。同時に、ふきんも配って歩いた。安売りの実施は十一月七日から三十日まで十六円間。ここに現物を持ってきましたけれども、こういう二百円の商品券を七千枚から一万枚ばらまいた。ふきんもあるわけです。  これは地元の商店街からかなり強い要請がありまして、私もこれを公取に、不公正取引に該当するという点から調査あるいは措置を要求したわけですが、これについて公取ではいまのところ調査の実態はどうなっておるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  211. 野上正人

    ○野上政府委員 本件につきましては、十一月二十九日でございますか、調査要求がございまして、現在調べております。それで、その事実と法律の適用をいまこの段階で私から申し上げるのも非常になにかと思いますので、調べた結果、委員会なり委員長報告しまして、それでお話ししたい、こう思っております。
  212. 野間友一

    ○野間委員 調べの内容は、いま申し上げた不公正取引に該当するかどうかの調査ということですか。
  213. 野上正人

    ○野上政府委員 十九条違反ということの調査でございます。
  214. 野間友一

    ○野間委員 これはぜひ調査をして、こういうことがないようにしかるべく措置をお願いするわけです。  これは千四百平米、直接大店法とのかかわりはないかもわかりませんが、この点について、この前の法律の制定のときに附帯決議で、面積以下の場合でもこれは行政指導を法に即してやるんだという附帯決議まで出ておるわけです、これはまあ公取は別にして。  そこでお聞きするのは、附帯決議を具体的にどう生かしておるのか。つまり、甲府の場合は千四百平米ですが、三千、千五百を切れた場合、附帯決議の趣旨をそんたくして大体どの程度のものであれば法に即して行政指導しておるのか、その点についてお聞かせ願います。
  215. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 いま御指摘のいちやまにつきましては、地元から東京通産局あるいは通産省に対しましては苦情の申し出がございません。  一般的に申しますと、千五百以下でございましても地元の小売商等から具体的に苦情が申し出されてきた場合には、そのケースに即しまして利害の調整を図りたいというふうに考えております。
  216. 野間友一

    ○野間委員 苦情がないと言いましたけれども、言うたらあれですけれども通産省では余りあてにならぬと思ったので公取の方に言って、これは独禁法の関係で私は調べてもらったわけです。  そこで、私、具体的にお伺いしておるのは、千五百平米以下の場合でも、どの程度のものなら法に準じて行政指導しておるかという基準についてお伺いしておるわけです。
  217. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 基準はございません。ケース・バイ・ケースでやっております。
  218. 野間友一

    ○野間委員 それでは、たとえばいまはやりのコンビニエンスストア、小型便宜店、これは大体百坪前後いろいろありますが、こういうものも準じて行政指導の対象にしておるのかどうか。
  219. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 コンビニエンスストアはアメリカで非常な勢いで伸びておる小売販売の一方式でございますが、日本におきましてはまだ実験段階でございまして、一番大きなイトーヨーカ堂でさえもまだ数十店舗ぐらいの実験店を出しておるという段階でございます。  このコンビニエンスストアにつきましてなお将来の傾向を見守る必要があるかと存じますが、一般的に言えば、消費者にとってなかなか利便の多い販売形式であると思われます。他方、中小小売店をフランチャイズ化することによりまして、中小小売店といたしましても売り上げを増加させ、あるいは利益を増加させることができるという便宜もあるわけでございまして、その辺の便宜と、それからコンビニエンスストアに参加する小売商と参加しない小売商との間の摩擦をどう調整するかというような問題、いろいろあろうかと存じます。この辺はまだ新しい小売形態でございまして、従来のスーパーとは異質なものでございますので、コンビニエンスストアをどういうふうに育てていくかということにつきましては、なお検討を続けたいというふうに考えております。
  220. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので、あと続けて要求しておきたいと思いますけれども、いま答弁にありましたイトーヨーカ堂がサウスランドと提携しているセブン・イレブンという店、それからダイエーがやはりアメリカのコンソリデーテッド・フーズとダイエー・ローソンを豊中の桜塚でやっていますが、これがまたいま非常に大きな問題になっておりますね。つまり、大型スーパーを一つの点として、そしてコンビニエンスストアで面作戦という戦略を立てて、いまもうあちこちで問題になり始めております。しかも、ダイエーなどの計画によりますと、豊中で実験店を一店舗出したが、ここでの計画は五キロ平方の地域内に半径五百メートルの範囲に一店舗つくる。これが実行に移されたら実際中小小売商はたまったものじゃない、これはもう明らかなんです。しかも、これらか法律の規制の対象には全くならない。こういうことですから、これについて本当に中小小売商の経営を守るという点から何らかの法的な規制が必要になってくると思うのです。  しかもいま、これはアメリカからの輸入ですか、フランチャイズと直営店がどういう割合で、どういう増加の傾向にあるかということも若干調べてみますと、これはいまでは当初とはまた変わりまして、最近フランチャイズ店が直営店に切りかわる傾向を見せておる。これはアメリカの一般の傾向のようです。しかも共同仕入れとか、これは大きな資本が要りますから、特にアメリカでもそうですけれども、小売の独占、これらが大スーパーを一つの点にして、それからローラー作戦、面作戦で全部市場を支配してしまうという可能性、危険性がこの中でずいぶん出てきているわけです。これらについて持つ意味とか役割り、あるいはアメリカでいまどういう傾向にあるのか――いま直営店にこれは変わりつつあるのです。こういう点もずいぶん実態を調査した上でしかるべく検討するべきである、こう思いますけれども、この点について最後に天谷さんと、それから通産大臣に答弁を求めて、質問を終わりたいと思います。
  221. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 コンビニエンスストアはまだ新しい商業形態でございますので、先生指摘のようにいろいろな問題点があるかと存じます。よく米国の状況、それから日本のイトーヨーカ堂その他の各ポリシー等も検討いたしまして、問題点があればしかるべく対処いたしていきたいと存じます。
  222. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま政府委員が答弁したとおりでございまして、いろんな動きを十分注視してまいりたいと思います。
  223. 野間友一

    ○野間委員 では、もうこれで終わりますけれども、実際深刻な問題で、これまた各地で反対運動が起こっているわけです。私はやはりこれについては何らかの法的な規制をしなければ、いまに大型スーパーによって、横浜の西区とか小田原のようなケース、もっと深刻な事態が各地域地域に出てくるということから、法的規制を早急に検討してこれを行うべきであるということだけを要求して、質問を終わります。
  224. 萩原幸雄

    ○萩原委員長代理 近江巳記夫君。
  225. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず稲田長官にお伺いしたいと思います。  この間の委員会におきまして、いわゆる私鉄料金の値上げ問題につきまして、何とかもう一度閣議にかけて十三日からの値上げを食いとめることはできないかということを申し上げたわけですが、長官としては一応予定どおりさせてもらう、こういうことで、いよいよあすから値上げになるわけであります。平均二四・六%と、こういう不況、またインフレという中で、これは特に勤労者にとりまして大きな打撃になっておるわけでございます。そういうことで、あすからいよいよ上がることになったわけですが、私たちとしましては、国民生活に及ぼす影響を考えて非常に強い反対をし、長官にも再考をお願いしたわけでありますが、できなかったわけであります。  そこで、こういう状況の中で、政府・自民党はいま百億の借金がある。五十億を財界にお願いする。値上げをした私鉄に対しまして一億五千万のいわゆる献金をせよと、こう言っているわけですが、これは実際勤労者にとれば、これだけ値上げをされて、その中からまた巨額の献金を自民党にしなければならない、こういう姿を見て、一体どうなっているのだと、私は皆大変腹に据えかねておると思うのです。したがいまして、そうした勤労大衆のことを考えますと、当然こういう献金は辞退なさるべきだ、こう思うのですが、副総理としてどういう御見解をお持ちでございますか。
  226. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いまのお話を発展させますと、結局企業献金というものはどうもぐあいが悪いのじゃないか、こういう議論に発展するのじゃないかと思うのです。私鉄でなくても、普通の私企業におきましても、寄付金だとか交際費をよけい使いますれば、それが原価にはね返ってくるという問題がありますので、非常に奥深い議論のように思います。  いまわが国の社会におきましては、自然人のほかに企業もまた活動体である。活動体として企業を営み、社会の構成単位になっておる。それがいろいろな社会的、政治的活動をする、こういう状態を余りゆがんだ形であるというようなとらえ方をするのはどうであろうか、こんな感じがいたしておるわけであります。  いずれにいたしましても、この私鉄の場合におきましては、さような政治献金というようなことを鉄道運賃の決定する基礎になる原価計算には採用いたしておらぬということでありますので、御理解願いたい、かように考えます。
  227. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、こういう中で値上げがされ、要請した献金は辞退される意思がない、予定どおり献金を受けると、こういうことですか。
  228. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私は、自由民主党の財政のことは余りよく聞いておりませんです。でありますので、ただ抽象的、一般的の議論として申し上げたわけなんでありますが、自由民主党がその種の献金を辞退されるか受けられるか、このことにつきましては、私は承知いたしておりませんです。
  229. 近江巳記夫

    ○近江委員 副総理としてまたそれだけのお立場におられるわけでありますし、この私鉄の値上げにつきましては、サラリーマンを中心としまして非常に大きな打撃であることは、先ほど申し上げたわけであります。そういう中でこういう献金が行われるということについては、これはもういまの時点では福田さんとしては明確な答弁ができないわけでありますけれども、ひとつこれは党に持ち帰って、そういう点を辞退するかどうか、再度御協議なさればいいのじゃないか、このように思います。これはひとつ提案いたしておきます。  それから、景気の問題をいろいろ考えてまいりますと、この間も全国の通産局長会議で、政府が当初見ておりましたそうした景気回復の線はいかない、非常に苦しい、依然として低迷状態があるということが報告されまして、通産省全体の見解としてもそういう打ち出しをされておるように思うわけであります。  その打開策というのはいろいろあろうかと思いますが、結局個人消費、あるいは設備投資、あるいは輸出、財政支出 こうした面があろうかと思うのですけれども、五割以上を占める個人消費という点につきまして、個人消費という点になってくるとすぐに浪費という言葉が出てくるわけですが、これは決して浪費でも何でもないわけです。特に低所得者の人たちにとっては、食べる物も切り詰めていかなければできないというような実態があるわけです。そういう点におきまして、来年度はぜひとも減税をすべきだ、このように思うわけです。これにつきましては通産大臣もこのことを非常に強く主張されておるようでありますけれども、通産大垣はどう思いますか。それから、あと同じ問題で、長官からお伺いしたいと思います。
  230. 河本敏夫

    河本国務大臣 十一月二十日現在で全国の景気の状況を詳細に調査いたしました。大体のことを申し上げますと、大体私はことしの二、三月ごろがやはり一番落ち込みがひどかったのではないかと思います。その後、一次対策、二次対策、三次対策、そしてまた今回の四次対策と、こういう対策をいろいろ臨機応変に立てました結果、三月ごろからだんだん生産は上昇しております。稼働率指数などもほぼ一カ月に一%と、こういう程度に上昇しておりまして、七六、七%であったこの春の稼働率指数がいま八四%というところまで回復しておるわけでございますが、ごく最近になりましてから、四次対策のおくれ等の影響もございまして、若干足踏み状態である。倒産もまたふえてまいりましたし、それから貿易の伸びもちょっととまってまいりました。それから在庫も幾らかふえておる。生産も横並びと、こういうことで、十一月は若干足踏みである。失業者もふえておる。こういう状態で、これはやはり四次対策が実施が非常におくれておる、これが一つの大きな原因でなかろうかと思います。  こういう状態がこのまま続きますと、来春には雇用問題が大変心配な状態になりますので、やはりこの際積極的な景気対策が必要でなかろうか、こういうふうに考えておるのです。幸いなことには、昨年の年末からことしの初めにかけましていわゆる狂乱状態であった物価もまず完全におさまっておりますので、ことしの上半期には思い切った対策も立てられなかったのでありますけれども、現在の物価状態でありますと、相当思い切ったことをやっても物価には影響ない、こういう判断もできますので、総合的にいろいろな角度から積極的な景気対策が望ましい。来年の予算編成におきましても、そういう観点に立って、景気回復ということを第一に考えて積極的な施策を考えていくべきである、こういうふうに考えております。
  231. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 大体通産大臣がただいま申し上げたと同じような見解でございますが、結局、上半期はわりあいにいい調子で動いてきたと思うのです。ところが下半期に、第四次対策を施行するということになりましたが、その谷間というような時期が出てきたように思うのです。十月から下半期が始まるわけですが、十月、十一月ちょっと景気停滞、こういう動きでございますが、それだけに今度は第四次対策がこれからいよいよ効力を出してくる、こういう段階に入りますので、来年の一-三月期、これなんかかなり活発な経済活動が展開される、そういうふうに見ております。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府としましては来春には景気が回復するだろう、ところが通産大臣の見方としては、本格的な浮揚は来年秋であるということを通産局長会議の席上明らかにしたということが報道されているわけです。通産大臣はこのようにおっしゃっており、政府は従来、来春には回復する、このように公式におっしゃっているわけですが、長官としては、この回復はやはり秋ぐらいになる、こういう見通しですか。
  233. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 回復というのはどういう現象をとらえて言うかという問題なんですが、経済活動が前の期に比べてプラスの状態である、そういうことをとらえて景気回復過程に入ったと言うならば、もうすでにことしの三月ごろからそういう状態には入っておるのです。しかし、本年度全体として見ますると、実質から見て二%を若干上回る、そういう成長にとどまりますか、そうじゃなくて、もう少し高い五%とか六%とか、そういう状態にいつなるのか、そういう成長を実現するような経済状態にいつなるかというと、私はこれは来年度はそういう状態になる、こういうふうに思っておるのです。また、そうしたい、そういうための施策をとりたい、こういうふうに思っておるわけでありまして、本年度の第四・四半期、来年の一-三月ですが、その後を受けまして景気はずっと活況を呈していく、こういうふうに見ております。  ただ、近江さんが景気がよくなると言うのはそういうことじゃなくて、企業の収益状態が著しく改善される、いままで赤字企業が多い、そういう状態がなくなるのだというようなことであるといたしますると、そういう状態が実現されるのには来年度一年度ぐらいはまだ必要であろう、私はこういうふうに思うのです。つまり、経済活動は徐徐にずっと上昇しておるのですが、企業の採算という面から見ますると、まだ望ましい水準まで企業活動全体がきておらないのです。望ましい企業活動の水準、その水準実現するための経済活動、そういうようなことになりますると、まだ来年度一年ぐらいはかかるのじゃないか、そういうふうに私は見ておるわけであります。
  234. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、私はこの際、所得減税を来年度においては思い切ってやるべきじゃないかということを先ほど提案しまして、そのことについてどのように思われるかということをお聞きしたわけですが、大蔵当局等は、これだけ赤字公債を発行しておるような状態の中で減税はできないというような意向を言っているようでありますが、先ほど申し上げた勤労者のそうした実態、あるいはこれはまた個人消費にもつながるわけでありますし、この際所得減税をやるべきじゃないかと思うのですが、それについてはどのようにお考えですか。
  235. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 そういう説をなす人があり、そういう御意見は聞いておりますが、私は、所得減税はいまこの段階において妥当ではない、こういうふうに考えております。つまり、いまインフレを起こさない、この多量な国債を発行しながらいかにしてインフレの再燃を阻止するかということは、これはもう大変に困難にして重大な問題だ、こういうふうに思うわけです。五兆五千億円も一般会計が公債を発行する。また、ほぼ同額の地方債が出る。その他政府機関が借入金をする。その政府、地方公共団体の借り入れの総額は十二兆にもなんなんとするというような巨額なものです。それが消化されなかったら一体どうなるのだ、こういうことになるわけですが、これは経済の問題じゃありません。日本社会の基盤を揺すぶるというような大きな問題になってくるわけです。  そこで、公債の完全消化ということを考えなければなりませんけれども、それを実現するためには、これはどうしても貯蓄が進まぬとそれができないのです。貯蓄とはどうかというと、それは消費奨励、刺激とは逆の性向の問題ですから、いま非常に大事なときにどうしても貯蓄してもらわなければならぬ。そういう際に、さあ減税いたしますから物を使ってください、景気刺激のためですよ、こういうような姿勢は断じてとれない、こういうふうに考えておるわけであります。それに、減税するといえばそれだけの財源が要るのです。一兆円の減税をします、その一兆円を使って景気対策、経済対策として効果を発生せしめるということを考えてみますれば、減税するより住宅をつくります、下水道をつくります、農山村の整備をいたします、そっちの方がよほど経済的な効果が直接的であり、また的確であり、かつ幅の広い影響を打ち出していくわけでありまして、減税では雇用政策なんかには何の影響もないでしょう。間接に回り回ってそういう影響があるかもしれませんけれども、直接に何の影響もない。  いま大事な問題は雇用政策である。減税に必要とする財源を用いて仕事を興す、そういうことになれば、これはすぐ雇用の問題の改善にも響いてくる、こういうことでありまして、減税をするだけの余裕がありますれば、私といたしましては政府経済界に仕事を注入するために使う、こういう考え方になるのであります。
  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官の考えはいまお述べになったとおりでありますが、この八月の政府の統計で、いわゆる所得の五分位の階層別の家計調査を見ますと、第一分位は消費性向は七〇・四、第五分位層は一〇八・二なんですね。そうしますと、低所得者に対する減税ということは絶対大切である。これは長官のお考えとは非常にわれわれは違うわけでありますか、この点をひとつ申し上げておきたいと思うのです。  それから、自民党内には、低所得者に対していわゆる負の所得税を実施すべきだというような声もあるようでありますけれども、この点につきましてはどのようにお考えですか。
  237. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 学説として負の所得税論というのがありますが、私はそういう制度がいまどこかで行われているということは聞きませんけれども、わが国の現状においてそういう制度導入すべきか、こう言いますと、先ほど申し上げたような趣旨もありますが、しかし、わが国におきましては、もう低所得階層に対しましては所得税法上大変な配意をしておるのです。標準家庭で百八十万円以下の人は納税対象にならぬ、こういうところまでいっているのです。でありますので、私は税法としてはかなり行き届いた配慮をしておる、こういうふうに思いますると同時に、今度は所得がないという方々に対しましては、これは社会保障、つまり所得保障、生活保護その他所得保障をかなりこれも充実してやっておるわけでありまして、いま特に負の所得税というような考え方をとることはどういう考え方だろうか、また、私も提唱者の考え方を聞いておりませんけれども、ちょっと困難な問題じゃないか、そんなような感じがいたします。
  238. 近江巳記夫

    ○近江委員 福田さんはこの五十二年度から付加価値税の導入を示唆されたように聞いておるわけですが、われわれはこれについては絶対反対しておるわけであります。それよりも、いわゆる不公正税制の是正、租税特別措置法には大企業に対するそうしたいろいろな措置があるわけでありますけれども、これを見直しするとか、そういうところに先に手をおつけになるべきじゃないだろうか、このように思うのですが、本当にそういうような付加価値税を五十二年度ぐらいからやるというお考えなんですか、また、そういう不公正税制の是正についてはどのようにお考えですか。
  239. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 新聞がどういうふうに伝えておるのか私も読んでおりませんので承知しませんが、私が申し上げておるのは、五十一年度におきましては、減税であるとか増税であるとか、そういうふうに銘打った増減税というものは、これはいたすことは妥当でない。ただ、微調整、手直しという程度のことは、これはやる。その中にいま近江さんお話しの特別措置の問題なんかもあるわけでありますから、それは考えてよかろうが、まあ何千億、何兆円の減税だとか、あるいは逆に増税だとか、そういう減税、増税と銘打たれるような施策は妥当でない。つまり、五十一年度という年は、まだあの石油ショック後の影響、後遺症というものがかなり残っておりまして、経済が大変流動的な状態にあるわけなんです。そういう状態下におきまして増税なり減税なりということを行うことが果たして妥当であるか、そういうようなことを考えておるわけです。  そこで、さてしからば五十年度以降は一体どうなんだ。多額の公債が出ておる、その償還、利払いというようなことも考えなければならぬだろう。それから、だんだんと公債発行額を漸減していくということもまた考えなければならぬだろう。そういう際にどうするのだ、こういうお尋ねがありまして、五十二年度以降においてはいろいろ税収の確保対策を考えなければならぬだろう、こういうふうに思う。その税収の確保の対策としてどういう具体案があるか、こういうお尋ねに対しまして、これはいま決めておりません、しかし、付加価値税というようなことが数年前から論議されておる、こういうことを申し上げたわけでありますが、いま五十二年度から付加価値税を導入するということは決めておるわけじゃないので、これからどういうふうに財政を健全にしていくかという中において検討項目にはなるに違いない、こういうふうに思いますが、まだ付加価値税五十二年度実施なんというようなことを展望として持っておるわけじゃございません。
  240. 近江巳記夫

    ○近江委員 来年度予算案につきまして、政府方針が固まりつつあるようでありますが、政府は大型プロジェクト中心の公共投資を考えておられるようでありますが、住宅であるとか下水道等のそういう生活関連の公共投資をうんと拡大すべきじゃないか。もちろんそれはいつもそういう予算の配分をなさるわけで、いわゆる比重の問題を言っておるわけでありますが、そういう方向にすべきじゃないかと思いますが、長官はどのようにお考えですか。
  241. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 もちろんこういう不況の際で、公共投資を活発にしてその不況を打開する、こういう必要のある時期でございまして、その際にこそ、わが国のおくれた社会資本、特に生活関連の社会資本のおくれの取り戻しに努力すべきだと思います。ですから、今度の予算では総体の伸びの中で特に公共投資の伸びを重要視するわけでございますが、その中で、生活関連ということにつきましてはそれを中心課題として配慮してまいりたい、かように考えます。
  242. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまこうした予算編成の大詰めに来ておるわけでありますが、来年度実質成長率の問題につきまして、通産大臣は七%の線は割れない、絶対それが必要であるということをおっしゃっておるように聞くわけですが、ここで後で答えてもらったらいいのですけれども、大蔵省の考えであるとか、経企庁の考えであるとか、いろいろな案が出ておるわけです。長官としては、この時点においていつまでも、考えていますとか、そういうふうなことでは、予算の編成等につきましてもこれは大きな支障が出ると思いますし、政府部内としては固まっておるのじゃないかと思うのですが、どの程度お考えなんですか。
  243. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 来年の経済成長率をどういうふうに見るかということは、来年、またさらにはそれ以降に大きな影響を持つ重大問題なんです。いま財政が非常に困難な状態でございますので、財政が景気の支えにどれくらいの役割りを演じ得るか、これを見なければならぬわけです。かたがた、国民の消費動向はどうだろう、あるいは設備投資はどうなんだろう、あるいは輸出はどんなことになるだろう、いろんな方面の検討をしなければならぬ要目がありまして、まだ来年の成長率をどの辺にするかということにつきましては、最終的な結論に入っておりませんです。来週くらいになったらぼつぼつそれをどうするかという意見調整に入りたい、かように考えております。
  244. 近江巳記夫

    ○近江委員 五十年度におきます春闘におけるべースアップは、一三・一という数字が出たわけですね。そういうことで、昨年に比べると賃金の上昇率が非常に低かった。その中で物価はじりじり上がる、政府は軒並みに公共料金をまた引き上げようとしている、こういう中で非常に皆苦しんでおるわけです。したがって、そういう中で個人消費も伸びない、そういう不安感も非常にあるわけであります。  この間日経連が、来春闘のベアは一けたであるということを言っておるわけですが、春闘におきましては、総評など春闘共闘委員会が二〇%、同盟、国際金属労連が一三%のベアを要求しているわけですが、ここで経営者側として一けたというようなことを言っておるわけです。五十年度のときには、いわゆる経営者側と政府は一体となって非常に抑え込んだというような経過もあるのですが、来年のこの問題につきましてはどういうような見解をお持ちなんですか。
  245. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ことしの春闘は私は非常に大事な問題だったと思います。春闘が、昨年の春闘のように三三%も上がるというようなあの惰性で決まったら、私はもう日本経済というものは手のつけようがなかったと思うのです。処方せんというものは立ち得ざるような状態になったと思う。それが労使の間でとにかく一三%というところで落ちついた。私は、本当にこれで日本経済も多少時間をかければ何とか再建できるかな、こういう自信を深めたわけでございますが、やはり来年におきましても春闘がどうなるかということは非常に大事だと思うのです。  これがまた非常に高い水準で決められるということになれば、それはやはり物価には直撃的にはね返ってくるわけです。それからまた、いま企業の取り扱い高はとにかくふえておるという状態であるにかかわらず、会社の経理の状態が大変に悪化している、そういうさなかにまた大変な賃金アップだというようなことになったら、会社の経営はどうなるのだ。不況だ、不況だと言うけれども、それが一体どういうふうに解決されていくのだ、こういう問題にもなってくるわけでありまして、私は物価政策についてはこの上とも大変な努力をします、しますが、経営者並びに働く方々におかれましても、とにかく日本経済を正常にする、そのためには賃金問題というものが非常に大事な立場にあるということを認識されまして、御理解ある行動をとられることを切に期待しておるわけであります。
  246. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど申し上げましたように、そうした実質賃金というものが非常に低いわけでありますし、そういう中で、物価高ということで働く人は皆非常に苦しんでおるわけです。そうしますと、長官はやはり日経連が示したこういう線に沿っていくべきである、こういうようなお考えですか。
  247. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 政府は、具体的な数字といたしまして賃金問題には介入いたさない、そういう態度をとります。賃金問題はあくまでも労使間の理解ある話し合いのもとに決めてもらいたいというふうに思いますが、その理解というものは、やはり国の経済が一体どうなっているのだ、その中で当該企業の状態はどうなんだというふうなことをよく検討されまして適正なところに決めていただきたい、こういうことでございます。
  248. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官、ちょっと何かまた用事があるそうですので、結構です。  公取委員長通産大臣も長く待っていただきまして、いまから質問しますから……。  鉄鋼値上げの問題でございますが、調査結果の概要につきましては一応資料もいただいたわけであります。通産省としては、公取委員会調査結果についてはどのようにお考えですか。
  249. 河本敏夫

    河本国務大臣 公取委の見解について私がとやかく言うべき立場ではございませんので何も申し上げませんが、ただ一つ申し上げておきたいのは、現在の日本の鉄鋼の価格は、アメリカヨーロッパの主要国に比べまして大体二割ないし三割低い水準にある、値上げの後といえどもそういう水準にあるということ。それからもう一つは、先般の値上げがありましたけれども、現在の主要な鉄鋼会社の経営は、ごく一部の特殊な製品をつくっております企業を除きまして、全部非常に大幅な赤字経営になっておるということ。それからさらに、昨年と違いましておよそ三割近い減産になっておりまして、ことしになってから鉄鋼業界の事情が刻々に激変をしておる、こういうことでございます。そういう鉄鋼業界の実情を私は今後も正確に関係方面が認識されることを期待するものでございます。
  250. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回の公取の調査につきまして業界が不満を表明した、あるいは通産省もほぼ同じ見解であるということも聞いておるわけですが、こういう考えというものにつきまして公取委員長としては、業界なり通産省の見解がこのように巷間伝えられておるわけですけれども、どういうように思われますか。
  251. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私は、鉄鋼業界が一部の会社を除きまして赤字の状態にあることを何ら否定するわけじゃありませんし、赤字の会社がなるべくならば値上げによってそれを克服したいと考えることも当然であろうと思います。そのことを否定するものじゃないのです。それから、割り当ててあるということもあるでしょう。しかしながら、これは日本のある特定の、鉄鋼のような業界のみが負っている状態でないのです。ほかの業界におきましても、やはり三社に一社は赤字であるというのが事実でございまして、この九月期の中間決算等において相当な業績を上げたものは、ごく限られた業界でございます。  そういうことでありますから、鉄鋼業界が赤字であるから、このメーカーはひもつきを中心として値上げをする、それでその値上げによって赤字をあれするのはあたりまえだと言うのですけれども、そのやり方が問題である。やり方について、つまり完全な同調値上げでございますから、こういうことが許されるということは、結局は力の強い業界だけができることであって、どの業界もできるわけじゃない。ユーザーの方が強いとか、あるいは寡占でなくて非常に競争業界であるということなら、ば、そういうことはできないわけですね。  ですから、赤字だから当然値上げしていいのだというのは――しかも一方で、需給関係等からあらわれるところのたとえば店売りの価格なんかを見ますと、需給関係でできている価格はこれとかけ離れておる、そういうときに、需給関係関係ないのだ、価格を上げるのが一番手っ取り早いのだというふうな感覚でおられるところに問題が一つあるし、それから、全く同調的であるのもこれは当然なんだ、そんなことを発言しておられる点、いわゆる競争原理で動く、それによって経済の全体の効率を高めていこうという基本的な問題に対して、いわばそれに全く逆らったような基本的な考え方を持っている、ここが問題であると私は申し上げたい。
  252. 近江巳記夫

    ○近江委員 公取委員長は姿なきカルテルというようなこともおっしゃっているわけですが、この四十条の調査権をなぜ行使されなかったか、その理由につきましてお伺いしたいと思います。
  253. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私は、必要であれば四十条はいつでも発動し得るものと思っておりますが、今回の場合に、実は直接最初からメーカーに当たらないで、それをユーザーの側から調査に入ったのです。ユーザーの側から入っていったということは、その辺が比較的表に出ませんで、実際問題としてはメーカーの半分が済んだぐらいのところでこれは表面化したわけです。ユーザーの側から入ったということは、つまり、調査の方法として、何かユーザーの方は任意でやっている間にこちらの資料になるのがあるのじゃないかという期待も持っていたわけですね。しかし、これはその段階では何ら余りにも――いろいろ取引上の関係がございましょう、そういうこともあって、われわれの言う強権を発動するような端緒となるものが得られなかったというのが事実でございます。  つまり、任意でやるということは、一つの方策として、少なくともこれは同調的値上げであることは間違いないのだし、その実態を明らかにするということはあるけれども、それ以外に端緒をつかむことができるならば四十六条ということも考えられる、そういうこともありますので、まず最初からメーカーに当たるということはやらないで、ひそかにユーザーの方に来ていただいて調査をしておった、こういうことでございますから、調査のやり方としては、私どもとしてはやはりそういう方法を選んだ方がこの際いいのじゃないか、こう考えたわけでございまして、四十条が必要とあればいつでもこれは発動できるということにおいては変わりありませんし、今後の場合においても、任意でやるか、四十条を発動するかということは、そのときの状態によって決めてまいりたいと思います。
  254. 近江巳記夫

    ○近江委員 われわれとしましても、大いに鉄鋼の値上げには問題があるということで本委員会でも申し上げてきたわけですが、公正取引委員会としてここまで問題になさる以上、当然カルテルの疑惑があるということじゃないかと思うのですが、そうであるならば、この四十条の調査権を使って、いわゆる独禁法の破棄勧告まで持っていくべきじゃないか、このように思うのです。その辺が、もう少し強くなっていただいて四十条をやってほしかった、このように思うわけですが、どうですか。
  255. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 四十条は、すでに御存じと思いますけれども、事情を聴取するための出頭を命じたり、それから必要な資料の提出を命ずることができるということであります。ですから、出頭に応じての供述という問題は、これはもう任意であろうが強制であろうが、その結果において変わりありません。つまり、しゃべらないと思えばしゃべらないでおることができるのです。自分に不利なことはしゃべらないでおれるわけですから。それから、資料の提出も、これはよほどわれわれがその資料を手に入れることが困難だというふうな判断で、しかもどうしても必要であるという場合にはいいのです。  ですから、事件として扱うのならば、先ほども私が申したのですが、やはり物的な証拠がなければなりません。これは日本ではどうしても、こういう行政事件の処理としても物的証拠なしにはできない。というのは、結果においてはこれは不服、不満があれば審判を経て裁判につながっていくわけでございますから、物的証拠なきものはもう敗訴することは目に見えております。でありますので、物的証拠を得るということ、やはり事件として処理するのにそこに不安があるならば、これは四十条ではだめなんです。四十六条を適用しなければだめだと思います。  その点において、四十六条に踏み切るべきであったか、なかったかについて、先ほど横路委員からもいろいろ問答がございましたが、私どもは、ちょっと四十六条の発動の手がかりが得られなかった、今回はそういうふうに判断しておるというわけでございます。これはつまり、共同行為を行ったという物的証拠がないとどうしても排除命令が出せないということでございますので、この点は当方の判断としてそこまで至らなかったということでございます。
  256. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま公取委員長の見解をお聞きしたわけですが、われわれの場合は、この四十条の調査権をフルに使うべきだ、このように思うわけです。この同調的値上げにつきまして、どういうような法改正を公取委員長としては期待されているわけですか。
  257. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これは先般この衆議院を修正で通過しました改正案、また、それと全く同じものが野党の四党共同提案でこの国会にも提出されておりますが、あの中にある方法によっては処理できない問題です。そこにこの問題の非常な困難性がある。ですから、今回のように、証拠はつかめないが外から見ればだれでもがカルテルじゃないかと思うような行為、そういうことについて、価格が形成されるについて業者側が言うように、決してコストが全く同じだというふうなところからやられるものじゃないのだ、コストは違っていますよというふうなこと、しかもなおこういうふうな結果を招いたのには相当疑念が残るということだけははっきりさせておきたい。つまり、疑いなしとはしないけれども、しかし証拠がないのですから。  いわゆるこれを同調的値上げと言っておりますが、これを含めましてすべて広い意味で意識的平行行為という用語がございますが、要するに、証拠はないが、これは明らかに他から見ていると意識的に行動を等しくしている、だから実態は共同行為があるのではないか、しかしその証拠の把握がほとんど不可能であるという問題に対して、改正の方向としては、これは一朝一夕にはいきませんが、こういう問題は諸外国、特に先進国の間にも起こり得る問題であって、現にあるかもしれません。あるだろうと思います。そもそもが、いまいわゆる管理価格という言葉も、これはかつてアメリカで五〇%操業度の段階において、つまりそれだけいわば需要がない状態において、くしくも鉄鋼業界が値上げをはかった、このときにつけられたのがアドミニスタードプライスということでありまして、これは管理価格と言っておりますが、結局これが発端になっておる。その後、やはり意識的平行行為というようなことも外国で生まれた言葉でございます。  そういうことでありますので、私どもは、外国、特に独禁法に対する考え方、運用が進んでおるアメリカや西独と連絡を緊密にとりながら、こういう問題にどう対処したらいいのか、言ってみると、これは外形標準だけでカルテルと思われる行為を何回も繰り返した場合にはカルテルとみなすというふうな、あるいはカルテルと全く同じだというふうに扱うことは困難であるにいたしましても、何らかの独禁法違反行為であるというふうなことに結論が結びつけられるような方向で処理できないものであろうか。つまり、一回だけでそれを認定するのは困難としましても、何回も何回も同じ業界が同じような歩調をとった場合には、これは独禁法上の問題とすることができるというふうな方向で結論が出せないものだろうかと思うのですが、これはいずれのあれから言いましても、証拠のはっきりしないままでも、そういう状況証拠だけの積み重ねによって処理し得るのだということは大変に問題となるところであります。  歴史的には、アメリカにも状況証拠だけで共同行為と認定されたものがありますが、余りにも目立った反復行為があったということで、そういう一種の情況証拠だけで、物的証拠は別としまして共同の意思があったとみなされた事件があることは知っておりますけれども、これは非常に古い事件でございまして、今日の段階においては、改めてこういう意識的平行行為に対して独禁法上の対処方針を決めないと、寡占状態が進み、かつ安定成長というようなことになりますと、とかくこういうことで共同した値上げ、整合性の強過ぎる値上げが行われる危険に対処し得ないと考えております。相当時間のかかる問題だと思いますけれども、それは努力していかなければならないと思います。
  258. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に困難はあろうと思うけれども、そういう方向または法改正に進むべきだという示唆をされたわけであります。  今回のこの調査は第一次値上げに関するものであるわけですが、第二次の値上げをまた鉄鋼業界は言っておるわけでありますが、第二次値上げに対してはどのように対処されますか。
  259. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 少なくとも今回行ったのと同じような調査をするということだけは申し上げてもよろしいかと思います。これは別に予告したからといっていまの交渉がさたやみになるわけではないでしょう。また、同じような値段で値上げが行われる可能性も十分あるのではないかと思いますが、それ以上のことはこの場では申し上げない方がいいと思います。
  260. 近江巳記夫

    ○近江委員 鉄鋼に限らず、一般的に、こういうような安定成長の時代に入ってまいりますと、先ほど委員長もおっしゃったように、同調的価格の引き上げという傾向が一段と強まってこようかと思うのです。将来の方向あるいは法改正等はそういう方向にいければ望ましいというお話もあったわけですが、それはなかなか実際に、今回のああした修正をした案でも自民党は反対して、今国会でも出さない、来国会には出すとは言っていますが、また形を変えて出すかもわからないわけですね。  そこで、当分はこうした現行法でいかなければならぬということに現実の問題はなろうと思うのです。そういう中で、こうした同調的価格の引き上げに対処する公正取引委員会方針をここでひとつお伺いしたいと思うわけです。
  261. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 特にこういうふうな同調的値上げが行われるのは、私は一般に寡占業界でなければできないことだと思うのです。いわゆる寡占の状態、これははっきり定義しなくてもいいのですが、目くばせだけでもできるような、あるいは電話一つで話し合いがつくような業界がとにかく同調的値上げをやります。そういう点では、先ほどもありましたが、板ガラスの業界が勧告をもらう前からもう次の値上げを発表し、これに追随しておるというようなこともありますから、こういうことについては、私は少なくともどういう内容なのかということを調査することはやらなければならないし、また、かつて、これはあえて申し上げるとかえってまずいことになるかもしれませんが、ある業界と言っておきましょう、いわゆる管理価格調査をしておるその途中において、カルテルがばれたということもございます。相当深掘りしていくと、やはり共同行為があったのだということもございますから、そういうケースには努めてこちらが相当厳重に調査を行う。  私ども共同行為的行為を見逃していくわけにいかないのです。そういうことはいいのだ、また、プライスリーダーシップでやるならいいのだということになっては、世間の人が納得しませんし、寡占業界あるいは強力な業界のみがやり得る行為でございますので、経済的にも非常にアンバランスだと思います。そういうアンバランスを是正するのが独禁法の目的の一つでございますから、当然その方向に向かって今後努力していかなければならぬと私は考えております。
  262. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま野党共同の独禁法の改正案が提出されているわけですが、実際上たな上げにされているわけですけれども、この点については公取委員長はどのようにお考えですか。
  263. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 野党四党が出された案は、先ほど申しましたように、前回衆議院はとにかく与野党一致で通ったものである、そういうものであるのが、何カ月という間に、参議院で円滑に審議が行われなかったという事情もありますけれども、とにかく与党の方でいまのところ再検討というふうなことになっておりますが、本当にその気があるならば、たとえ臨時国会であったってやろうと思えばそう大した問題はないのですね。やはり与党の中に、中には独禁法自体が憲法違反だとおっしゃる方もおるのですから――私どもは全くそんなことは考えておりませんけれども、もし憲法違反だったら、衆議院でこの法律を強化する法律案が通るわけはないのですからね。そういうことで個人的ないろいろな御意見の人があって、また独禁法の強化などはもってのほかだというのが産業界一般的に流れる――例外はございますよ、例外はございますが、そういう空気であるとしますと、それを政治の上に反映するということになりますと大変困る。  なるべくならば、やはり本来の自由主義経済、自由にしてかつ公正な競争を維持し、それをむしろ促すことによって日本経済の健全な発展を図っていこう、国民の生活に対して迷惑のかからないような経済政策をとっていこうというならば、できるだけ自由にして競争させながら、その間で必要最小限度の介入をする。必要最小限の介入というのは、たとえば本当に困って、他からのあおりで倒産するような場合、自分の責任でないような場合には金融の援助を差し伸べるということも十分できるわけでありまして、余りに必要以上に自由主義経済を何か管理経済の方に持っていこうとするようなことをなさらない、そういう政策のもとで、ぜひ必要な改正は、少なくともあの程度のものはそのままやっていただきたい、切に私どもはそういうことを望んでおるのですが、何か若干モディファイされるということでありますと、大変私ども困る場合があるということでございますし、また、円滑に国会が通るのかというような懸念もありますので、あのままの形で出していただいて、当面それで一応ピリオドを打つ。  私どもは次々と追っかけて強化法を出すという考えはありませんから、とりあえずあの程度のことはやっていただいたらいいのではないか。私どもはあの権限をめちゃくちゃに乱用するというふうなことはございません。それは世間の人から見ると、何かまた刃物を預けるのかということで、どうも私は非常に悪者にされますか、実際の運用に当たってはそういうものは十分慎重にやるつもりでございますので、そういう点について理解を持っていただいて、与党の方にも安心してと言ってはなにですけれども、あの法律案そのものに御賛成をいただきたいという気持ちでいっぱいでございます。
  264. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、石油製品の値上げについて一言聞いておきたいと思うのです。  今回の値上げで、通産省はナフサ、ガソリン、C重油、この三油種について石油業法第十五条の標準額を決めたわけですが、これについて公取委員長はどのように思われるか。それから、他の油種について通産省は指導価格を設定したわけですが、以上、二つの問題について委員長の見解を伺いたいと思います。
  265. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 C重油、ナフサ等について標準額を設定されたこと、このこと自体は石油業法に明示されておりますから、それはむしろ同じ価格に介入されるのなら、その必要があるというのならば、標準額の設定でおやりくださいというふうに私はとったくらいですから、そのことは私は結構だと思います。  ただ、その行政指導云々は、行政指導で価格を決められたとは私は思っておりませんが、それはちょっと問題が残るわけでございまして、それならばいっそのこと標準額を示される、ただし、これはあくまで標準額というめどでございますから、それを業者に強行して実現させるということを余り強くハッパをかけられたりするということは、これは法律の趣旨を少し間違えて運用されるような感じになりますので、その点だけは控えていただきたいという考えでございます。つまり、自主交渉で決められるのなら、これはそれでいいという考えでございます。
  266. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、公取委員長は結構です。どうも御苦労さまでした。  それから、最近の通産省調査によりましても、灯油は非常に上がってきておるわけです。いよいよそうした需要期に突入しておるわけでありますし、その点につきまして、灯油を抑えるということについてのエネルギー庁の対策についてお伺いしたいと思うのです。どういう考えを持っていますか。
  267. 増田実

    増田政府委員 お答えいたします。  灯油は国民生活に直結する品種でございますので、これにつきましては、私どもの方は、やはりそういう観点からできるだけ値上がりを抑制する立場をとる、こういうことで考えております。  具体的に申しますと、灯油とほぼ品種を同じくいたしておりますいわゆる中間留分、これらの価格の中で灯油が外れて高くなるということにつきましては十分に監視、指導する。また、今後これらの中間留分が相当高く上がっていく場合には、やはりある一定のところで、灯油につきましては石油業界を指導することによりましてその値上げ幅をできる、だけ縮めるように、つまり抑制的な、政策的な配慮を行う、こういうことで灯油の問題について対処していきたいというふうに思っております。
  268. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間が余りありませんので、あと一問だけお伺いして終わりたいと思います。  中小企業庁長官も来ていただいておりまして、非常に待っていただいて申しわけないと思いますが、一つは、中小企業の倒産が非常にふえております。そういう中で、年末あるいはまた年度末という点におきまして非常に厳しい状態に入るのじゃないか、このように思うわけです。そこで、さらに上積みの線を考えていないかどうか、これが一点。  それからもう一つは、昨日の内閣委員会におきまして、わが党の鬼木議員が武器輸出の問題で質問したわけですが、そのときに、水陸両用救難飛行艇US1の輸出申請があれば、通産省としてはこれを許可するということを課長が答えているのですが、この点について私が大臣に聞きたいのは、このUS1の輸出は武器輸出とならないかどうか。また、このUS1の輸出は、相手国の目的が軍事用となっていても政府は認める考えなのかどうか。  本来このUS1は自衛隊のいわゆる専用目的として発注されたものでありまして、兵器として取り扱われてきておるわけです。直接戦闘用に軍隊が使用に供しないものは何でも輸出できるのかどうか。また、そういったものは三原則の範疇の適用外となるのかどうか。この直接戦闘用に供されるか否かはだれが有権的に決定することに決まっているのか。自衛隊が現在発注し、国産化されている武器あるいは装備品で、輸出できるものとできないものを明らかにしてもらいたい。また、武器の定義というものは大体どういうものであるか。このUS1飛行艇の輸出は認めるつもりかどうか。  通産省、また政府の見解として、武器輸出の三原則、すなわち共産圏諸国、それから紛争当事国またはそのおそれのある国、あるいは国連が禁止している国への武器の輸出は認めないということを言っておられるわけですが、そうしますと、この三原則に該当しない限り、戦闘機であっても戦車であっても輸出できるということになるのかどうか。たとえば日本からアメリカへ輸出して、そしてアメリカから韓国へ送るとか、これは一つの例であります。あるいは、防衛産業界では兵器の輸出ができるようにという非常な希望を持っておるようでございますが、われわれとしては、兵器の輸出国になってはならない、こういう考え方を持っております。今日の三原則だけで、この武器輸出を禁止するということが実際できるのかどうか。そうなってくれば当然立法をする必要があるのではないか、このようにも思うわけです。  いろいろいま申し上げたわけですが、その点をまとめて簡潔に大臣からお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  269. 河本敏夫

    河本国務大臣 武器輸出につきましては、いまお述べになりました三原則があるわけでございます。  そこで、武器の定義でありますけれども、これは軍隊が使うものである、しかも軍隊が直接戦闘に使うものである、これが定義になっております。そして、具体的にそれではどういうものが該当するかということは、輸出貿易管理令にリストがございまして、それに明示をしてございます。それ以外のものは武器とは認めていないわけでございまして、いまお話しの飛行艇はそれには該当いたしませんので、武器とは考えておりません。  なお、三原則に該当しないものに武器を輸出する場合はどうかということでございますが、そういう例が出ました場合には、個々に慎重に検討いたしまして結論を出すつもりでございます。  なお、武器輸出について新しい法律をつくるかどうかという問題でございますが、現在は武器輸出というのはほとんど行われておりませんし、その必要は全然ない、こういうふうに理解をいたしております。
  270. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 中小企業の年末金融は大丈夫かという御質問でございますが、御承知のように、政府系の三機関につきましては年末追加分として四千八百億の追加を決めておりまして、その結果、第三・四半期の融資枠は一兆三百億ぐらいになる見込みでございます。また、民間の金融機関につきましても、この第三・四半期の中小企業向けの貸出増分といたしまして三兆五千二百億の目標を設定いたしまして、大蔵省の方から民間の金融機関の方に十分指導していただいております。ただいまの情勢では何とか間に合っていくのではないかというふうに考えておりますが、なお今後の情勢を注意深く見守りまして、非常に逼迫するような事情が出てまいりますれば、それに適応した措置をとっていきたいと考えております。  なお、先般の公労協のストによりまして、中小企業に売り上げの減少その他資金繰りの困難な向きが出ておるようでございますので、こういう方方につきましては、政府系の金融機関に十分配慮して融資面で要望に応ずるように指示をいたしておりますが、その関係でこの第三・四半期に用意いたしました資金枠が不足するような事態の場合には、四・四の分を繰り上げて使うように三機関には指示をいたしたところでございます。
  271. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、終わります。
  272. 萩原幸雄

    ○萩原委員長代理 次回は、来る十六日火曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会