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1975-12-05 第76回国会 衆議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月五日(金曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 萩原 幸雄君 理事 武藤 嘉文君    理事 佐野  進君 理事 中村 重光君    理事 神崎 敏雄君       内田 常雄君    浦野 幸男君       橋口  隆君    深谷 隆司君       板川 正吾君    加藤 清政君       勝澤 芳雄君    上坂  昇君       竹村 幸雄君    近江巳記夫君       松尾 信人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         中小企業庁計画         部長      織田 季明君         中小企業庁指導         部長      児玉 清隆君  委員外出席者         通商産業省基礎         産業局アルコー         ル事業部長   後藤 一正君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十七日  辞任         補欠選任   野間 友一君     荒木  宏君 同月二十八日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     玉置 一徳君 十二月二日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     野間 友一君   玉置 一徳君     受田 新吉君 同日  辞任         補欠選任   受田 新吉君     玉置 一徳君     ――――――――――――― 十一月十九日  LPガス都市ガスとの流通秩序確立に関する  請願原田憲紹介)(第二八〇一号)  韓国産大島つむぎの輸入規制強化に関する請願  (山中貞則紹介)(第二八九〇号)  家庭用燈油値上げ抑制に関する請願東中光  雄君紹介)(第二八九一号)  LPガス業者の営業及び生活安定に関する請願  外一件(小濱新次紹介)(第二九五七号)  同(坂口力紹介)(第二九五八号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二九五九号)  同(高橋繁紹介)(第二九六〇号)  同(林孝矩紹介)(第二九六一号)  同(伏木和雄紹介)(第二九六二号)  同(松尾信人紹介)(第二九六三号)  同(矢野絢也君紹介)(第二九六四号)  特許管理士法制定に関する請願深谷隆司君紹  介)(第三〇八五号) 同月二十日  農業機械不当価額払戻しに関する請願(中川  利三郎君紹介)(第三二六九号)  LPガス都市ガスとの流通秩序確立に関する  請願小泉純一郎紹介)(第三二七〇号)  同(藤井勝志紹介)(第三二七一号)  農業機械価格引上げ中止に関する請願(津川  武一君紹介)(第三三一六号)  中小企業の育成に関する請願宇野宗佑紹介)  (第三三一七号)  伝統的工芸品と競合する物品の輸入制限に関す  る請願瀬長亀次郎紹介)(第三三一八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十日  中小企業不況対策等に関する陳情書外二件  (第二五一号)  中小企業事業分野確保に関する陳情書  (第二五二号)  LPガス事業者経営安定に関する陳情書  (第二五三号)  燈油値上げ抑制等に関する陳情書  (第二五四号)  新エネルギー政策確立に関する陳情書  (第二  五五号)  製紙原料古紙処理加工業界救済対策に関する  陳情書(第二五六  号)  私的独占の禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正等に関する陳情書外一件  (第二五七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件並びに経済計画及び総合調整に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣考え方を伺いますが、石炭とか重油の値上げを理由にして、北海道電力であるとかあるいはその他の電力会社、さらにはガス西部瓦斯値上げをやりたいということをそれぞれ表明しているようですが、大臣としては、申請があったらこれを受理する方針なのかどうかという点について、考え方をひとつお聞かせいただきたい。   〔委員長退席武藤(嘉)委員長代理着席
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 今回石炭相当値上がりをいたしましたし、油の値上がりもございますし、各電力会社から、経営相当苦しくなりつつある、こういう話は聞いております。ただしかし、まだ正式に値上げ申請が出ておるところはありませんし、私といたしましても、電力業界は力のある業界でありますから、物価がある程度落ちついたとはいいながら、やはり電力値上げということは相当影響が出てまいりますので、できるだけしんぼうしてがんばってもらいたい、こういうふうに言っておるわけでございます。でありますから、年度内申請は出ないのではないか、年度がかわってからの課題である、こういうふうに私は考えております。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 小松次官が、いま大臣お答えになったように、年度内は認めないということを、新聞であったと思うのでありますけれども、意向を表面しておったようであります。いま大臣が、年度内申請はないのではないかということは、通産省としては、石炭とか油の値上がりのために経営も非常に苦しくなっているのだから、何とか考えてやらなければならないけれども、年度内値上げを認めないにしても、石炭、油の値上がりによって経営が苦しくなったという点から、やはり値上げは認めてやらなければならない、そういう考え方の上に立っておられるのかどうか。
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在の見通しを申し上げますと、九電力それぞれ経営事情相当違っております。石炭をたくさん使うところ、あるいは非常に少ないところ、あるいはまた油をたくさん使っておるところ、あるいはまた少ないところと、それぞれ事情は違うわけでございます。ただしかし、全体として言えることは、相当経営が苦しくなっておる、これはもう一律に言えると思うのです。そこで、通産省といたしましても、いろいろ調査をいたしております。  繰り返して恐縮でございますが、電力会社経営基盤も強力でありますし、値上げの及ぼす影響も非常に大きいので、できるだけしんぼうしてがんばってもらいたいというふうに言っておりますので、経営は苦しくても、しばらくの間は現状でがんばってくれるのではないかと私は思います。しかし、中にはそう長くはがんばれない、こういうところもあると思うのです。そういうところは、新年度早々あるいは値上げ申請が出るかと思います。それは具体的にその場合には十分検討いたしまして、経営が成り立つように配慮をしていかなければならぬ、こう思っております。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 中曽根通産大臣のときに、電力料金の一斉値上げガスもそれに追随した形の値上げが認められたわけですが、その際、ある一定の時期まで申請をさせないというような指導をされたことを記憶しているわけですが、いまの通産大臣考え方は、経営は苦しくなっているけれども、やはり年度内は認めないという方針の上に立って、申請そのもの年度内は抑えるというような指導をされる考え方を持っておられるのかどうか、その点いかがですか。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのとおりであります。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 鉄鋼価格の問題についてお尋ねをいたしますが、鉄鋼価格トン当たり六千八百円の値上げをしているわけですが、続いて第二次値上げの三千円の値上げをしようという考え方鉄鋼業界にあることはもう大臣御承知のとおりであります。   〔武藤(嘉)委員長代理退席田中(六)委員長代理着席〕 ところが、通産省がいろいろ減産指導といったようなことをおやりになっておられるようでございますが、これは第二次値上げ環境づくり通産省が積極的に推進をしているような印象があるわけですが、その点、大臣のお考え方はどういうことなんですか。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 鉄鋼業界の実情は、先般六千八百円前後の値上げをしたわけでありますが、これは値上げしたといいましても、長期契約分に対してそういう見直しをしたわけでございまして、長期契約以外のものに対しましては、市況がこういう状態でございますから、なかなか思うような値上げは実行できない。長期契約分だけでございます。  そこで、現在の状態はどうなっておるかといいますと、六千八百円値上げをいたしました新価格でも、大体、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、こういう重立った国々の鉄鋼価格に比べますと、なお二、三割は安いようであります。それから、鉄鋼会社の九月の中間決算を見ますと、ごく一部、特殊な製品をつくっておる企業を除きまして、非常に大幅な赤字になっております。これはやはり原料が非常に暴騰した。石油が四倍に値上げになりましたのを機会に、すべての原料が右へならえ、こういうことで非常に大幅に石炭鉄鉱石とも引き上げられた、これが最大の原因でございますが、そのほか賃金が去年とことしとを合わせまして合計ほぼ五割ぐらい上がっておる、こういうこと等もありますけれども、主として外国における原料値上げ、こういうことによりまして、新価格、六千八百円の引き上げはありましたけれども、依然として大幅な赤字が続いておる。しかも国際価格から比べますとなお二、三割安い、こういう状態でありますので、鉄鋼会社はほぼ三千円ぐらいの値上げをとりあえずやりたい、こういう意向のように承知いたしております。  果たして三千円の値上げをいたしまして黒字になるかどうかわかりませんが、前からの話の続きとしてその見当の値上げをしたい、こういうことで話し合いをしておるようでございます。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 話し合いはいろいろやっているでしょうけれども、小松次官がたしか百三十六万トンの減産勧告をやった。これは独禁法上やはり問題がある勧告操短ということにもなるのだろうと思うのでありますけれども、勧告操短までやらなければならないということは、これは政府が第二次値上げ環境づくりを積極的にやっているというような印象があるわけですが、担当局長が見えていませんから、この点は担当局長が見えてからお尋ねをすることにいたしますけれども、大臣見解としてはどうなんですか。通産省操短指導を積極的にやるということについては、これはどんなに弁解しても第二次値上げ三千円の環境づくりだというように受け取られることは私は言うまでもないと思うのでありますけれども、大臣考え方としてはその点を明らかにしておいていただきたい。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 鉄鋼は昨年は一億一千万トン台の生産、ほぼ一億二千万トン近い粗鋼生産でありましたが、現在は一億トンを割っております。それは主として輸出が激減をした、昨年に比べて一千万トン以上も減った、国内需要も伸びない、こういうことで、二千万トン近い昨年に比べての減産にいまなっておるわけでございますが、これは世界全体の景気動向を反映してそういうことになっておるのだと思います。通産省といたしましては、そういう世界全体の動向を踏まえまして鉄鋼需給見通しは発表いたしました。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 私の質問に対してお答えをいただきたいのですが、小松次官が百三十六万トンの減産指導をやったということは、第二次値上げ環境づくり通産省が積極的に推進をしているというように私は受け取っているわけですが、その点に対して、適当な指導であるというふうに大臣は思っていらっしゃるのかどうかということを聞きたいわけなんです。その点いかがですか。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、需給関係見通しを示したのだというふうに理解をしておりますが、いますぐ調べまして、改めて御返事をいたします。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 鉄鋼業界トン当たり九千八百円の値上げを決めて、第一次値上げとして六千八百円の値上げをやったということに対して、高橋公取委員長記者会見で、値上げの仕方が不自然でカルテルと言えるというように警告をしているわけですが、六千八百円の値上げにいたしましても、通産省がこれに積極的、消極的に介入をした、指導をしたということは、これは争うことのできない事実であろうと思うのでありますけれども、この公取委員長警告に対して通産大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  16. 河本敏夫

    河本国務大臣 公取委員会ではこの件につきまして何か調査をしておられるようであります。その調査の結果を待ちまして、その上で正式な通産省としての見解を申し上げたいと思いますが、ただ、公取の方で言われておるのは、値上げがほぼ六千八百円ということで右へならえ、こういうことになったということについていろいろ言っておられるというふうに理解をしておりますが、これは、御案内だと思いますが、日本製鉄会社設備の新設もほぼ時期を同じくしてスタートをさせておるわけですね。そしてその設備内容もほとんど変わらない。それから、外国からの原料買い入れ等につきましても共同購入をしておるというケースが非常に多い。したがって原料コストもほとんど変わらない。設備もほとんど同時にして、その設備内容もほぼ一緒である、こういうことでございますから、大体コストはほぼ同じである、こういうふうに私たちは理解をしております。したがいましてああいう価格になったのだと思いますが、公取の御意見に対しては、正式の調査結果についての意見の発表を待ってから通産省としてはそれに関連しての考え方を申し述べたいと思いますが、まだ正式の見解は聞いておりませんので、その上にしたいと思います。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 公取委員長出席を求めて、適当な機会質問をしてみたいと思っているのですが、公取委員長任意調査をやっているということはいま大臣お答えのとおり私も伺っているわけですが、しかし、公取委員長がそういう任意調査をしなければならなかったということは、値上げの仕方がこれは独禁法上問題である、いわゆるカルテルである。予算委員会では、姿なきカルテルということを公取委員長は答えているわけです。したがって、このカルテルということに対して大臣は、いや公取の見方が間違いなんだ、これはカルテルじゃないのだ、いまお答えになったように、原料も大体変わらない、労働賃金も余り変わらないのじゃないかという点から、たまたま引き上げ額が同じようになったのであって、これは決して同調的値上げというのか、いわゆるカルテルではないのだというように大臣は思っていらっしゃるのかどうか、通産省としては九千八百円の値上げ、第一次の六千八百円の値上げに対して介入した事実はないというように言い切るのかどうか、その点いかがですか。
  18. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、カルテルは存在していない、自由競争原理が支配している、こういうふうに理解をいたしておりますが、それは、先ほども申し上げましたように、日本製品世界の重立った国五カ国と比べてなお二、三割安い水準値上げの後といえどもあるということ、それから、六千八百円というのが長期契約だけを対象にした契約見直しであるということ、半分を占める長期契約以外のものに対しては、これは需給関係で動いておるわけですからなかなかそのとおりはいってないということ、それから、これだけの力を持っておる業界においてもなお大幅な赤字が続いておるということ、そういうことから考えまして、もし本当にカルテルを結成するのならば、赤字がないような、あるいはまた国際価格にもっと近づいたような価格形成もいまの状態から言えば可能である、しかしそこまではいってない、赤字を出して、国際価格よりもはるかに安い、こういう状態から考えまして、総合的に判断をいたしまして、私は、当初に申し上げましたような、カルテルは存在をしない、自由競争原理が支配しておる、こういうふうに理解をしております。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 自由競争原理ということを大臣は強調なさるのですけれども、通産省生産調整あるいは価格引き上げということに介入しておられることは、自由競争原理ということを通産省自体が阻害しているというように私は感じられるわけです。したがって、通産省がいまおやりになっていらっしゃることは自由競争原理に反するような方向の指導をしているというように私は受け取っているわけですが、その点はそうではないと大臣は言い切ることができますか。
  20. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど御質問のありました百三十六万トンの減産指導云々という問題につきまして先に政府委員から答弁をさせまして、それから私が答弁をいたします。
  21. 矢野俊比古

    矢野政府委員 今回、第三・四半期におきまして百三十六万トンのいわば需要見通し修正を行ったことは事実でございます。これについて、いわば値上げ環境づくりではないかという御指摘と伺ったわけでございますが、私どもの方としては、むしろいま非常に在庫がふえておりまして、特に特約店関係商社関係流通在庫が非常にふえておるということが、むしろ特約店その他中小企業への圧迫ということにもなっておりまして、これをとにかく何とか救済することが必要だ。それにはやはり大もとの生産の方を減らしてもらう以外にはない。現在のような非常に操業度の低いところでは非常にコストに響くわけでございますが、それに対しては、むしろそういった特約店商社流通在庫を、何とか現在の過剰を減らしていくという態勢で処理するためにはやむを得ないのじゃないかということで修正をしたわけでございます。
  22. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまも申し上げましたように、四半期ごと需給の見込みを発表しておるわけでございますが、そこで御質問の、通産省が何かと価格に介入して、そのことによって自由競争を阻害する、そういうことが起こっていないかというお話でございますが、そういうことは極力避けなければならぬ、やはり自由主義経済の一番の特色というものは、激しい自由競争をさせながら、その中から安くていい品物をどんどんつくり出していく、そして輸出を伸ばして国際競争力を強化していく、それがあくまでたてまえでなければならぬ、この精神が失われると、それはもう自由主義経済のいいところがなくなるのだというふうに私は理解をしておりますので、極力自由競争によって経済を伸ばしていきたいというのが基本的な考え方でございます。  ただ、石油だけは、御案内のように業界全体がああいう状態でございますので、これは特例中の特例といたしまして、ごく短期間を限りましてああいう措置をとっておるわけでございますが、これはあくまで特例としたい、こういうことはできるだけ避けなければならぬ、これが基本考えでございます。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 大臣基本理念は間違っていないのですよ。それは、自由主義経済の中ではそうあるべきなんです。しかし、おやりになっているのはそうじゃないですね。  現在、鉄鋼業界需要業界に対して第二次値上げの三千円の引き上げについて交渉している。ところが、需要業界もなかなか強い。だからして、なかなか三千円の値上げができないでおるというのが実態ですね。そういう際に、いま矢野局長お答えになったように、小松次官記者会見で述べられたのかどうか知りませんけれども、百三十六万トンの減産指導をやったということは、これは私は明らかに勧告操短であるというように受け取っておるわけです。これは、品物がだぶついているから品薄にして、そこで値上げ圧力というものを強めていこうとする考え方で、これは言うまでもなく通産省が第二次値上げ環境づくりをやっておるということを指摘されても、そうではないということは言えないのじゃないでしょうか。基本理念は正しいけれども、行為としては間違ったやり方をやっているということは、これは私は、少なくとも大臣のそうした基本方針に反するやり方であるということを指摘しなければならないのです。  それから、いま矢野局長は、特約店在庫を抱えて非常に苦しんでおる、これは中小企業救済対策であるというような考え方のようであります。これをいま通産省指導することについての大きな柱にしておられる。これとても、メーカー中小企業に対して、特約店に対して製品を押しつけるから、メーカー特約店というのは力関係が違うので、押しつけられるのはなかなかいやとは言えない。そこで不本意ながら品物を受け取る。ところが販売がうまくいかない。そこで在庫がふえていく。経営が非常に苦しい。ここまでくると、現象としては、中小企業はそういうことで困っておるのだけれども、そういう現象をつくり上げたことは強いメーカーの強引な製品押しつけというところにあるということを考えるならば、私は、通産省もそういう現象づくりに対して一枚買ったと言われても、何とも言えないのではなかろうかという感じがいたします。それらの点に対して大臣はどうお考えになりますか。
  24. 河本敏夫

    河本国務大臣 さっきも申し上げましたように、四半期ごと需給見通しはずっと発表しておるわけでございます。そのことによって自由競争原理を阻害する、そういう考えは毛頭ないわけでございまして、ずっと続けて四半期ごと需給見通しを発表しておる、こういうように御理解をしていただきたいと思います。  それから、重ねてこういうことを申し上げて恐縮でございますけれども、日本製鉄業界寡占状態で力も相当強い。そういう業界が、欧米五カ国に比べてなお二、三割安い価格水準にあるということ、それからなお、国内においても特殊製品をつくっておる一社を除いては全部大幅な赤字であるということ、こういうことから、姿なきカルテルとかいうような形で強引に市場を支配しておる、そういうことは私は絶対ないと思うのです。あれだけの寡占の姿で力を持った業界が、赤字をなくしよう、それから国際水準にもっと近づけよう、こういうことを本気で考えれば、もっともっといろいろなことをやるだろうと思うのです。私は、いま申し上げましたような事実でもって、非常に良識的な動きが続いておる、こういうふうに理解しておるわけでございます。  しかし、基本的な考え方は、あくまで自由競争のたてまえということを生かしまして、そのことによって安くてよい品物をどんどんつくり出す、そのことによって日本経済を伸ばしていかなければならぬというのが、あくまで通産省基本的な考え方でございますから、それに反するような動きにつきましては、今後十分留意をいたしまして、そういうことのないように配慮してまいりたいと思います。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 通産省がおやりになっておることは、大臣基本理念に反する行為が非常に多過ぎるのですよ。ましてや、石油については特例中の特例とおっしゃったのだけれども、鉄鋼業界とか石油業界に対する過保護は私は目に余るものがあると思う。四半期ごと生産見通しということで百三十六万トンの減産が適当であるということであって、別に値上げ環境づくりではないのだというようにおっしゃったのだけれども、偶然の一致にしては余りにもその時期が合い過ぎると私は思う。先ほど申し上げましたように、第一次値上げは何とか需要業界に対して納得させたけれども、需要業界が強いためになかなか第二次値上げができない。それで鉄鋼業界としては非常に困っておる。それに通産省減産指導をやって、そして環境づくりをやったのだということは、私の指摘だけではなくて、これは世論がそういう見方をしているということだけは間違いないと私は思う。少なくともいま大臣お答えになりましたような、方針として明らかにされたような基本理念に反するという行為だけは厳に慎まなければならないということを私は指摘したいと思う。  それから、現象として矢野局長が、特約店は困っているんだ、中小企業対策なんだとおっしゃったが、そういうようなことで減産指導であるとかあるいは価格引き上げとかというようなことについて行政指導をなさるならば、そういうメーカーが強い力でもって特約店を、中小企業を圧迫する、そういう行為そのものを、そういうことをやらないように指導していくということが大切であるというように私は思う。そういうことをやることは別に独禁法上は何も問題ではないわけなんだから、やらなければならないことはやらないでおいて、そしてそういう現象をつくり上げてきて、減産をやらせなければならぬ、価格引き上げさせなければならないというやり方は、これは大企業に対するところの過保護であるということを指摘されるのは私は当然であるというふうに考える。  それから、時間の関係もありますから、改めてこの問題については公取委員長出席をしていただいた中で質疑をいたしたいと思いますが、先ほど大臣は、カルテルは存在しない、こう言われたのですが、公取委員長は姿なきカルテルであるということを言っている。値上げやり方はこれはカルテルと言えるということで警告を発しているわけですから、そういう公取の見方は間違いである、そういう見解大臣はお持ちになっておられるわけですね。
  26. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、鉄鋼業界にはカルテルは存在していない、自由競争原理が支配しておる、こういうように理解をしております。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 次に、石油の問題についてお尋ねしたいのですが、原油値上げに伴うところの石油製品値上げが決まった。これは十二月一日から実施されているようですが、値上げ率が九・五四%、全油種の平均が一キロリットル当たりで三万一千円ということになっておるようであります。今度の値上げは、石油業法による標準額が適用されているわけですが、前回石油業界が大変苦しいというので、誘導価格か参考価格か、これはいずれだったかは別といたしまして、十月三十日にナフサとC重油が値上げをされたわけですが、この値上げとの関連はどういうことになるのでございましょうか。
  28. 増田実

    ○増田政府委員 石油につきましては、御存じのようにOPECの値上げが十月一日から行われたわけでございますが、すでに石油業界相当大幅な赤字、逆ざや販売を行っておったわけでございます。これに対する価格の問題につきまして、標準価格制度をしきまして、いまの逆ざやあるいは OPECの値上げにつきまして価格修正を行うということで石油審議会に諮りまして、結論が十一月の終わりに出まして、いま先生御指摘のように十二月一日の告示で定めたわけでございますが、ただ、この標準価格を定めるまでの期間、そのまま放置するわけにいかないということから、参考価格というものを十月の終わりに発表いたしたわけでございます。  この参考価格につきましては、この商工委員会で前回私から御説明いたしましたように、これは石油会社が需要会社と価格交渉をするときの一つのメドになる参考価格ということで示したわけでございます。ただ、その後に行いました標準価格というものが正式の石油業法に基づく価格であるということでございます。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、十月に値上げをしましたのも、今度十二月から実施をする標準価格にしても、元売りの実勢価格によってこれはやっているのだろうと思うのでありますけれども、十月の値上げと今回の値上げの関連性というものがあるのかないのか。また上げてまた上げたということになってくると、ダブル値上げという形になるわけだから、そこらあたりの関係はどうなるのか。  そこで、あなたの答弁を誘導するようだけれども、十月の値上げはいつの元売りの実勢価格をもとにして値上げをした、十二月の場合は、これまた十一月なら十一月の実勢価格をもとにして値上げをしたということになっていくのでしょうから、その点を明確にしてほしいことと、前回の値上げと今回の値上げというのはダブル値上げということにならないのかどうか、そこをひとつ明確にしてもらいたい。
  30. 増田実

    ○増田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま中村先生から御質問のありました二点について、まず第一点でございますが、十月三十日に発表いたしました参考価格は、本年八月の価格を基準にいたしまして、ナフサとC重油につきまして私どもが適当と思う価格を発表いたしたわけでございます。それで先ほど申し上げましたように、これは一応参考価格ということで発表いたしたわけでございます。それから、今回の標準額というものを発表いたしたときの基準になりましたのは、十月の価格でございます。したがいまして、前回は八月の価格を基準にし、今回は十月の価格を基準にいたしたわけでございます。  それから、第二点のダブルになるかどうかということでございますが、C重油とナフサにつきましては参考価格を発表し、また、今回標準額を発表いたしたわけでございますが、一応考え方といたしましては、標準額が正式の価格のあり方というものを示したものでございます。したがいまして、前回の参考価格は標準額が発表されるまで、さしあたり石油会社が需要会社と交渉するに当たりましての参考価格にするということでございまして、これは逆ざや分の取り戻しというものを示したわけでございまして、今回の標準額は、逆ざや分と、それに加えまして十月一日から施行になりましたOPECの値上げを合計いたしましたものでございます。そういう経緯から申し上げますと、ダブりということではなくて、一応標準額をもって前回の参考価格が消えたということになるわけでございます。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 いわゆる十月の値上げは八月の実勢価格によって値上げをしたのだ、こういうことであったわけですが、あなたの方で参考価格ということをおっしゃっておられるのだけれども、当初誘導価格というように私どもは受け取っているわけだが、その際に、石油業界赤字が非常に大きくて経営が苦しい、崩壊状態にある、そのことが産業界に及ぼす影響というのは非常に大きいのだ、だからして放置できなくなったのだということを大臣もあなたも強調された。その際、OPECの一〇%ですか、その値上げ分については、これは今度は標準価格値上げをするのだということを言われたわけなんだ。だからして、前回ナフサとC重油については値上げをして、そこでまた今回の値上げというのはそれに上乗せするという形になってくると、ダブることになるわけだから、そうではないと言うならば、前回の値上げは八月の元売りの実勢価格である、今回の標準価格は法的裏づけによってやったのだが、それは十月の元売りの実勢価格ということによってやったのだからそれはダブりということにならないのだ、こういう受け取り方で間違いないことになりますか。
  32. 増田実

    ○増田政府委員 若干私の先ほどの説明に不十分な点がございましたのですが、前回の参考価格はは、一応八月の価格を見まして、OPEC値上げ前の逆ざやというものが特にナフサとC重油に多いということから、ナフサ、C重油につきましてできるだけ逆ざやを解消するための一つの参考価格を示したわけでございます。ところが、その後標準額の作業に入りまして、十月の価格を基準にいたしまして、そして今後の石油価格のあるべき姿というものを計算いたしたわけです。具体的に言いますと、今後のあるべき石油価格というものをことしの十二月から来年の十一月までの一年間の各種のコストをはじきまして、それと十月の価格を比較いたしたわけでございます。具体的に言いますと、十月の価格は全油種の平均が二万八千三百円ということでございまして、コストによりまして計算いたしましたあるべき姿というのが三万一千円、その差が二千七百円ございました。この二千七百円を油種別に割り振りまして、そのうちのガソリンとナフサ、C重油というものを標準額として発表いたした、こういうことでございます。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 いまの答弁からは、前回の値上げは今回の値上げまでのつなぎであったということで、十月の実勢価格でやったのだからこれはダブりにならないのだというように受け取られるのだけれども、前回の誘導価格値上げの際にあなたが答弁をされたことは、大変経営が苦しいから値上げをするのだ、今度OPECの値上げ分は標準価格で決めます、こうあなたは言ったのだ。そうなってくると、これはダブりということになるわけなんだ。そうじゃなくて、今回は、あなたの方で言えば参考価格として値上げをさせますが、次回、標準価格をもって見直しをいたしますと答弁をしているのだったらダブりにはならないだろう、その間のつなぎだろうと受け取るけれども、前回の答弁はそういうことではなかったわけなんだ。だからして、私が言うようにダブりになる、こういう受け取り方をするのは当然だろうと思うのです。前回の答弁と今回の答弁と首尾一貫をしていないから、ダブル値上げであるというように受け取られるわけです。それはそうでないならそうでないということを、もう一度前回の答弁との関連ではっきりさしてほしいと思う。
  34. 増田実

    ○増田政府委員 前回御答弁申し上げた点、あるいは若干不正確であったかと思います。ただいま先生がおっしゃられますように、前回の参考価格につきましては、できるだけ逆ざやを解消するために、特にナフサとC重油だけを取り上げまして、それの取り戻しをやるということでございますが、これによって全部の逆ざやが解消するわけではございませんし、また、現実に参考価格どおりに上がっておらないわけでございますので、十月の価格を基準にして、従来の逆ざや分、つまり十月現在の逆ざや分プラスOPECの値上げ分というものを入れまして標準額を定めたということでございます。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 前回値上げし、また今回値上げをしたということだけは間違いないところの事実なんだが、時間の関係がありますから、一応あなたの答弁のとおり受け取って、次の質問をいたします。  物価へのはね返りはどのように試算をしておりますか。
  36. 増田実

    ○増田政府委員 今回の標準額の算定基礎になりました金額、先ほど申し上げました全油種の平均額三万一千円というものに上がった場合の計算を申し上げたいと思います。  こういうようにいま前提をいたしましたのは、つまりナフサとC重油とガソリンの三品目について標準額を定めたわけでございますが、しかしそれ以外の計算基礎が出ておりますので、全部があの計算基礎どおり上がった場合にどういうふうに物価へはね返るかということで申し上げたいと思いますが、まず卸売物価につきましては、いわゆる直接効果ということでは〇・三%でございます。ただ、石油が上がりますとそれの間接効果、波及効果がございまして、その全部の効果を計算いたしますと、卸売物価について約一・一%前後という数字でございます。それから消費者物価につきましては、直接効果は〇・〇五%でございますが、間接波及分を含めますとその効果は〇・五%ということになります。  以上申し上げました数字は、これは理論上出てくるわけでございますが、先ほど申し上げました標準額を算定いたしました計算値にまで達するのには、これはなかなか直ちには達し得ないと思っております。ですから、それだけの時間的な差、おくれというものが出てくると思いますし、また、先ほど申しました間接波及分を全部含めまして先ほどの卸売物価について一・一%、あるいは消費者物価への間接波及分が〇・五%に達するのには、相当な期間がかかるわけでございます。当然タイムラグがあるわけでございます。直ちに物価にこういうようにはね返るわけではございません。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 それは値上げは時間のかかるにこしたことはないわけだ。それは余り早くそんなに値上げになったら、卸売価格あるいは消費者価格というものは値上げになるわけだからね。ところが問題は、いまは今度の標準価格による値上げ分のはね返りが卸売価格で幾らになり、消費者価格で幾らになる、こういうことだった。ところが、灯油の値上げもあるわけなんだから、それがまた消費者価格引き上げということに影響して、相当の波及効果という形になっていくのであろうという点が問題なんだ。  時間の関係がありますから続いて指摘をいたしますが、便乗値上げというものがある。いまあなたの場合は便乗値上げを計算しておられない。したがって、便乗値上げをいかに防止するかということが私は重要なポイントであるというように考えるが、その点に対してはどういう手段、方法をもって便乗値上げを防止していきますか。
  38. 増田実

    ○増田政府委員 便乗値上げが特に問題になるというのは灯油の問題であると思いますが、灯油につきましては現在も十分な指導、監視というものを行っておるわけでございますが、灯油と非常に似ておりますいわゆる中間留分品種というものの値上げの状況を見まして、それと離れて灯油が値上げにならないように現在指導を行っておるわけでございます。  それから、さらに理論的に言いますと、灯油につきましても二千五百円の値上げは必要なわけでございますが、私どもといたしましては、これが国民生活に直結する物資であるという立場から、その二千五百円というものを実現させない、むしろある点でこれを抑えるということで現在検討しておるわけでございます。いずれにいたしましても、灯油につきましては十分な政策的配慮をするということでこれを行っていきたいというふうに考えております。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 私が言ったのは、便乗値上げというものが必ず起こってくるから、便乗値上げを防止するためにどうするのかという点が一点なんですよ。   〔田中(六)委員長代理退席、萩原委員長代理着席〕  もう一点は、いまあなたがお答えになったことに関連をしてくるのだけれども、鉄鋼であるとか、あるいは先ほど私は電気やガスの料金値上げ動きがあるということについて申し上げたわけですが、電気、ガスであるとか、あるいは石油化学であるとか、セメントであるとか、そうした需要業界というものも価格に転嫁をする構えを見せているわけだから、値上げというものはある程度のコスト増になることは間違いないのだけれども、そのコスト分だけの値上げではなくて、便乗値上げということで価格をぐっと引き上げていくことになる。そうすると、卸売価格が上がる、ひいては消費者価格にこれがはね返ってくるということは間違いないわけだ。灯油の場合は直接消費者価格だけれども、いま挙げましたような価格は、卸売価格ひいては消費者価格にはね返ってくるということになるわけですから、そうした石油値上げ分だけの引き上げではなくて、便乗値上げ、オーバーした値上げをすることを当然防止をしていかなければならない、そのことに対しては、対策についてどのようにお考えになっておられるのかということです。
  40. 増田実

    ○増田政府委員 今回の石油値上げにつきましては、石油自身がどうなるかということと、それから、いま先生の御指摘になりましたように、石油を買ういわゆる産業あるいは消費者というものがどうなるかという二つの点があるわけでございますが、まず石油につきましては、今回の標準額を算定いたしました基礎になります三万一千円に達するということは相当困難があると思います。そういう意味で、むしろ石油自身については便乗値上げというよりもなかなかこの価格に達することが困難であって、やはり石油業界の非常な危機的状況が続くのではないかということをむしろおそれているわけでございます。  それから第二点の、これを買います需要業界につきましては、私どもといたしましては、OPECが現実に大幅値上げをいたして、そのために従来は石油業界が逆ざやで売っていたというものを、一応正常な産業活動ができるように、需要業界がこれを受け入れていただきたいというふうに考えておるわけでございます。これに基づいて当然それだけのコストアップ、つまりOPECの値上げを原因とします油の値段のコストアップというものは出てくるわけでございます。そういう意味では、油の上がった分はコストの中に入ってくるわけでございますから、需要業界がこれを自己努力でできるだけ吸収をし、また、それで吸収し切れないものは私は値上げせざるを得ないというふうに考えております。  ただ、先生のおっしゃられます、それに基づいていろいろの便乗値上げが行われるのではないかということにつきましては、私の方の所管でもございませんし、私どもといたしましては、油の値上がりしたもの、つまり外的な要因、OPECの値上がりによって値上げせざるを得なかった分は需要業界も負担していただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 あなたの方は値上げをする関係であって、便乗値上げなんかをすることは所管外なんだというようなことであってはならぬと思う。少なくとも物価をいかに抑えていくかということが重要な政治課題であるというふうに私は考える。したがって、コストの問題についても、油が上がっただけコスト高になる、それはできるだけ企業の努力によって吸収していくということでなければならないのであって、これを直ちに価格に転嫁をしていくということは適当でないわけなんだ。ましてや、そのコスト分だけではなくて、便乗値上げという形でこれを引き上げていくということについて、あなたの方はこれは所管外であるというようなことで対岸の火災視しておられるのであるならば、私はきわめて問題であると考えるわけなんだ。  だからして、この便乗値上げというものをいかに防止していくのか、便乗値上げだけではなくて、企業努力によってこれを吸収していくというような基本方針の上に立って今回のいわゆる需要業界指導に臨もうとお考えになっておるのかどうかという点は、重要な問題点でありますから、大臣からこの点はお答えいただきます。
  42. 河本敏夫

    河本国務大臣 便乗値上げという問題については二つあると思うのですが、一つは、今回の標準価格の設定を契機といたしまして、末端等で不法な値上げをしないように十分監視をするということだと思います。たとえばある地区で灯油が非常に高くなった、こういうことを聞きますとすぐ調査をいたしまして、事実でない場合もあるのですが、事実であった場合には直ちに元売会社に対して注意をする、こういうことをこれまで以上に当然やらなければいかぬと思います。A重油なんかについてもそういう問題が起こると思いますし、その他のいろんな品種についても当分の間十分監視を続けなければならぬと思います。  それから、もう一つの便乗値上げというのは、石油の値段が標準価格の設定によって上がったのだからわれわれの方も上げてもらわなければいかぬ、こういう動きが当然出てくるわけでございます。こういう動きに対しましては、当初に御質問がございましたように、たとえば電力業界などは力があるわけでございますからできるだけしんぼうさせる、ぎりぎりのところまでしんぼうさせる、そういう行政指導を当然しなければいかぬと思っておりまして、先ほどのような御答弁を申し上げたわけでございますが、その他の業界におきましても、やはり妥当な値上げであれば、また経営がどうしてもやっていけないという場合の値上げであれば、これは万やむを得ないわけでありますけれども、油の値上がり機会に不当な値上げをする、こういう動きがないようにこれは十分監視しなければならぬ、私はこう思います。  以上二点につきまして、当分の間相当注意を続ける必要があろう、こういうことを痛感いたしております。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 この標準価格の設定について見解を伺ってみるのですが、この標準価格の設定というのは、前回の石油ショックの悪用ということになりますか、そういうことで狂乱物価が引き起こってきた、そういったような際に、いわゆる値上げ防止という形で標準価格制度を考えていくということならばわかるのだけれども、今回はそうではなくて、業界政府が、通産省が力をかす、価格引き上げのために標準価格を設定するということは、私どもの常識では考えられなかったことなんです。こうしたいわゆる価格引き上げ通産省が手をかすということで標準価格を設定したということについては、私はこれを問題視しているわけなんです。法的には差し支えないでしょうけれども、少なくとも好ましい姿ではないのじゃないかというふうに考えるわけですが、その点は通産大臣はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  44. 河本敏夫

    河本国務大臣 私もこういう形で標準価格を設定するということは、これは好ましいことであるとは思いません。こういうことはできるだけ避けなければいけない、こう考えております。したがいまして、先ほども今回は特例中の特例ということを言いましたが、それは業界自身の力が非常に弱体であるということ、それから、不況が大変深刻化しておりまして、弱体な業界の力をもってしてはこのコスト以下の価格を当然強いられる、そういう状態がもうすでに過去二年続いておるわけでございますので、これ以上続きますと、石油業界はいまでも崩壊寸前にあるわけでございますが、崩壊必至である、これではエネルギーの安定供給ということもできない、大ごとである、こういう観点から、万やむを得ず今回は非常措置といたしましてこういう体制をとりましたけれども、今後は業界が自分自身で体質の強化ということを十分考えてもらいまして、自分で処理できるという体制に持っていくということが必要でございまして、こういうことをたびたびやるということは避けなければならぬ、こういうことを考えております。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 あなたは特例中の特例だとおっしゃったのだけれども、これは鉄鋼の場合でも否定をなさったのだが、通産省値上げのための環境づくりをやっていることだけは間違いないと私は見ている。鉄鋼業界だって石油業界だって強いわけですよ。決して、いまあなたがおっしゃったように弱くはない。だからして、前回のようなああいう狂乱物価を引き起こすところの原動力に石油業界がなった。そして、当時の山下通産次官をして、石油業界は諸悪の根源であると言わざるを得ないということさえ言わせたのだ。決して弱くはないのです。だから、市場メカニズムに任せたらいいんですよ。余りにも過保護になり過ぎる。いまのような、値上げについて標準価格を設定する、そういうことで政府が介入していくということになってくると、責任の分野が業界にあるのか通産省にあるのかはっきりしないでしょう。私はこれは非常に問題であるというふうに考える。  あなたは、好ましいことではない、こうおっしゃった。再びそういうことをやるべきではないというような考え方ですから、その考え方は私は適当であると思うのですけれども、いま、やったことはしようがないじゃないかということになってしまうと、これでは私は話にならぬと思う。少なくとも間違ったやり方であったというように私は考えるのです。  そこで、物には順序というものがあるわけですが、標準価格を設定して価格引き上げに手をかす前に、やらなければならないことがあるのじゃありませんか。いわゆる需給のアンバランスがある。それがこの価格をどうしても、まあ力の強いものは切り合いもあるわけだから、引き上げることにつながらない。需要業界もさらに強いというようなことで、思うに任せないということになってくるのでしょう。先ほど、鉄鋼については四半期ごと生産見通しを立てるのだということで、そこで百三十六万トンの減産指導をやったということなんですが、石油の場合だって同じようなことを考えたらよかったのでしょう。標準価格でもって価格引き上げをする前に、まず、需給のアンバランスを直すためにいわゆる生産調整をやるということで、不況カルテル申請をおやりになることが当然先でなければならなかったと思うのです。  高橋公取委員長も、その点は否定していないのです。申請があったならばこれを受理することにやぶさかでないということを言っているわけだから、それならばなぜ通産省は、標準価格設定の前に、いわゆる需給のアンバランスを直す、そのために不況カルテル申請させるという指導をなさらなかったのですか。なぜ直ちに価格引き上げということに突っ走ってしまったのですか、その点どうなんですか。
  46. 増田実

    ○増田政府委員 価格の問題につきましては、まず需給基本にあって、需給によって価格が決まる、これは先生のおっしゃられるとおりだと思います。それから、いま御指摘のように、まず需給に手をつけて、そして価格の問題に進むべきだということにつきましては、私どももそう思っております。そのために、先生御存じのように、石油業法による供給計画、毎年これを定めることになっておりまして、ことしの四月に供給計画を定めまして、これに基づきまして各社の生産計画を提出させておったわけでございますが、供給が相当過剰であるということから、この九月二十六日にさらに供給計画の改定を行いまして、相当大幅な生産数量の減少を行いまして、それに基づきまして各社の生産計画を全部出し直させております。また、一月一月の生産計画をチェックいたしておるわけでございまして、すでに生産につきましては相当な調整と申しますか、つまり需要に見合う供給の数量というものを社別に行っておるわけでございます。  現実に申しますと、十月におきます社別の生産計画の合計は、前年同期比五%マイナスになっております。特に、その結果、たとえばC重油その他につきましては、在庫が昨年同期に比べまして七三・九%と、約三割減になっておりまして、むしろこれは品種別にいろいろばらつきが出てきております。私どもの方は灯油の増産をさせる、あるいは業界の方は相当ガソリンの増産をするということでいろいろのばらつきが出ておりますが、現在では、C重油だけにつきましてはむしろ若干不足ぎみだということで、これは十二月の生産指示におきましては若干これを直しているというところまで来ております。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 時間が参りましたからやめますが、そういうことは答弁にならないのです。ともかくC重油が不足ならばそれは生産したらいいんですよ、何も不足をしているものをさらに生産を縮小する必要はないわけだから。ともかく全体的には物が余っているから、だからその余っているものを需給のバランスをとるために生産調整をして、いわゆる不況カルテルを正式に申請する、それを先にやるべきであった。それをやらせないで、直ちに価格引き上げに突っ走った。要するに、政府が手をかして標準価格を設定したということは間違いなんだと私は言っているわけなんです。ともかく値上げのために標準価格を設定する、好ましくないことをやったという点は、通産省として、あえて私は罪悪と言いますが、その行政的な罪悪を一つ犯した。もう一つは、生産調整をやらないで、公取がそれを受け入れると言うにもかかわらず、その道を選ばないで直ちに価格に突っ走ったということは、順序を踏み違えている。この点がその罪悪の二つなんです。私は、全くけしからぬことだ、無責任もはなはだしいということを申し上げざるを得ません。  それから灯油でありますが、灯油は今回はその標準価格から外している。それは、標準価格を決めると値上げになるからこれは外したんだというようなことをあなたはおっしゃるかもしらぬけれども、石油製品値上げの平均はキロリットル当たり三万一千円ですね。それが灯油は三万二千二百円でしょう。ただこの冬だけは何とか抑えていこうとするだけなんです。標準価格から外して、民生安定のためにきわめて必要な灯油の価格を平均価格よりも引き上げていくというやり方は、私は許されないことだと思う。ともかくC重油であるとかあるいはナフサであるとか、そういうものを安くして、いわゆる産業用を低く抑えて、そして国民生活にきわめて関係のある民生用にしわ寄せしてガソリンと灯油を引き上げるというやり方をやったということは、これはきわめて許せないやり方であるというように私は考える。だからして、その点に対しての考え方お答えいただきたい。   〔萩原委員長代理退席委員長着席〕
  48. 増田実

    ○増田政府委員 先生から、需給の調整をしないで直ちに価格に出たということでおっしゃられておりますが、先ほど御説明いたしましたように、月別に各社別の生産数量というのは通産省に全部届け出さして、これは石油業法に基づいてやっているわけでございます。ですから、生産調整不況カルテルをやらなくても、すでに石油業法の供給計画、それから各社の生産計画というものでできるわけでございますので、これを実際にやっておるわけでございます。  それから、灯油につきましてお話がございましたが、灯油の価格につきまして私どももできるだけこれを抑える、それから政策的配慮を行うということで、常時監視、指導をいたしておりますが、ただ、灯油価格につきましては、これは先生よく御存じのように、従来は原油の価格に比較いたしまして二・六倍、石油危機以前は原油が一〇〇であればこれが二六〇という価格であったわけです。それが現在は原油の価格よりほんのわずか高くなっているということは、従来からの行政指導、特に灯油についてその値上げ幅を抑えたという結果であると私どもは思っております。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 それは私が指摘したように、あなたの方では生産についての指導もやっていましょうが、やはりまず最初に不況カルテル申請をすべきだったのですよ。それから次には価格と、こうこなければだめなんです。これはやるべき順序を、常識的に当然考えられる、国民が容認するような順序を踏まないで価格引き上げたということは、国民が納得できないところなんだ。  それから、いまの灯油の問題にいたしましても、指摘をいたしましたように、石油製品のキロリットル当たりの引き上げというものは、平均三万一千円に対して灯油は三万二千二百円にした。ただこの冬だけを抑えるというやり方であったということ、そういう民生用に転嫁したということは私は問題であるということを指摘いたしておきます。  それから、好ましくない標準価格、いつどういう時点でこの標準価格を外そうとお考えになっていらっしゃるのか、その点を明確にしておいていただきたいと思います。
  50. 増田実

    ○増田政府委員 標準価格につきましては、先ほど大臣からも申し上げましたようにやむを得ずして緊急の措置として行ったわけでございまして、この標準額に達しましたら直ちにやめるつもりでございます。
  51. 山村新治郎

    山村委員長 神崎敏雄君。
  52. 神崎敏雄

    ○神崎委員 私はアルコール専売事業に関連してお伺いしますが、憲法第二十八条は、労働者の団結する権利及び団体交渉の権利その他の団体行動をする権利を保障しています。また、憲法第十三条は、国民の権利は「公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定めております。そこで、スト権を含めて労働者の基本的な権利は国の政治で最大の尊重をしなければならないとしたこの憲法の立場に立って政治を行うと明言できるかどうか、まず大臣にお伺いをいたしたい。
  53. 河本敏夫

    河本国務大臣 総理大臣も明確にいたしておりますように、憲法で認められておる労働者の基本的な権利というものは当然認めていかなければならぬということを言われましたが、私も同感でございます。
  54. 神崎敏雄

    ○神崎委員 憲法で定められたとおりにやるというように大臣から答弁がありましたので、次に伺いますが、すでに周知の事実ですが、戦後も、憲法二十八条とそれに基づく旧労働法によって、官公労働者も民間労働者も区別なしに、ストライキ権は労働基本権として保障されていたのです。ところが、昭和二十三年アメリカ占領軍がマッカーサー書簡を送り、官公労働者のスト権剥奪を命じたのであります。当時の芦田内閣は政令二百一号を公布、官公労働者のスト権剥奪を促進したのであります。  労働省の初代労政局長の賀来才二郎氏は、スト権禁止を法制化する国家公務員法を改悪し、公共企業体等労働関係法を制定するなどしたときの状況を、ことしの八月二十二日付毎日新聞紙上で次のように証言しております。「労働省と内閣法制局も(違憲の)疑問は持っていた。ただオヤジ(米国)がこわいから言えない。言ったにしても、それを通そうという気はなかった。政党だって、共産党が労働委員会で反対しただけだった。」「将来、占領軍が撤退した場合、公労法だけが残って違憲問題でやられるぞ、ということは少なくともわれわれ労働省はわかっていたが……。」つまり、官公労働者のスト権剥奪は、アメリカ占領軍と芦田内閣とによって憲法を真っ向から踏みにじって強行されたということであります。  こうした経緯はスト権問題の最大のポイントであると考えるのですが、このたびの政府見解で関係法規の必要な改正という場合、憲法違反のスト権剥奪の条項を撤廃するという意味が含まれているのかどうか、大臣の明確な答弁を求めたいと思います。
  55. 河本敏夫

    河本国務大臣 この問題につきましては、総理大臣及び労働大臣から別の場におきまして見解を明らかにせられるようでありますから、これは私から申し上げることは差し控えた方がいいのではないか、こう思います。
  56. 神崎敏雄

    ○神崎委員 通産大臣答弁は、最終的に私から答弁するのはどうかという問題については、後でもう一回ただすことにして、次に移ります。  官公労働者のスト権保障は国際的な常識となっています。各国にそれぞれ固有の社会的条件もありますが、第二次大戦後、特に一九六〇年代後半から労働者の基本的人権としてその承認を求める声は世界の民主勢力の圧倒的な世論となり、これを権利として認めることを各国とも避けることができなくなって、いまや国際的常識となっていろのであります。たとえばフランスでは一九四六年、ノルウェーは一九五八年、スウェーデンは一九六五年にそれぞれ官公労働者のスト権が承認されています。ベルギー、オーストリアでは六〇年代に、イギリスでは従来から承認されている。カナダでは一九六七年に、イタリアは一九六九年に憲法裁判所の判決で確認をしている。アメリカでもバーモント州、アラスカ、ミネソタなど次々に州公務員のスト権が承認されています。そこで、官公労働者のスト権否認は国際的にはもう時代おくれもはなはだしいと言わなくてはなりません。  また、スト権を奪われたとき、それは全国民の民主的諸権利が一挙に奪われて、ファシズムと戦争の時代に突き進むときであります。日本はその悲劇を体験してきたのであります。共産党は、民主主義擁護の立場からも、スト権回復の要求を原則的に当然の要求であると考えているものです。  さらに、ILOの七〇年報告でも次のように述べています。公務員のストはストライキが禁止されている国でしばしば起きており、ストライキ権がはっきりと与えられている国においては比較的まれである。実際わが国でも、政府が二十七年間も公務員のスト権を剥奪し続けていることによって、スト、処分、ストの悪循環が繰り返されてきたのです。以上の点からも、スト権付与こそ国民的要求に沿うものです。  ところが、政府が十二月一日の閣議で決定した三公社五現業等の労働基本権問題等に関する政府基本方針なるものは、全く国民の要求に挑戦し、かつ、憲法各条にも違反するきわめて反動的なものであり、私はこの責任を厳しく究明いたしたいと思います。閣僚の一人である大臣の責任ある答弁を求めたいと思うのであります。
  57. 河本敏夫

    河本国務大臣 先般の政府見解で、「現行の公共企業体等労働関係法を初め関係法規を全般的に検討し、必要な改正を行う。同時に、この結論はできるだけ早くまとめて、行政上の改革及び法案の国会提出を行う。」こういうことを総理から政府見解として言われたわけでありますが、この内容、方向等につきまして、近日総理及び労働大臣から他の場で明らかにされる予定でございますから、私はそれまで見解を差し控えたいと思います。
  58. 神崎敏雄

    ○神崎委員 さきの答弁通産大臣は、労働大臣それから総理も言われる、だから差し控えたいとおっしゃるが、あなたの所管であるアルコール専売との関連があって、私は当初これに関連して質問するということから始まっているわけなんです。同時に、閣議決定ということになれば、閣議の重要ポストである通産大臣はやはりそれに関与されていることは当然である。しかもあなたの所管にそういうものがあるとするならば、それは労働大臣だけに責任を持たすのではなく、あなたはそこに参加され、閣議決定なんですから、その点についてあなたは何ら発言をされなかったのか、あるいはいまここで私が指摘することを次の閣僚会議にそういう意見を出されるか、そうでなかったら、アルコール専売関係の労働者の問題からも関連してこれはきわめて重要であり、また大臣がそういう言葉を繰り返されるならばきわめて無責任である。閣僚会議におられて閣議決定をされたのですから、そういう立場から私はあなたの立場を伺っているわけで、これはあなたが当初第一問でお答えになったように、憲法に基づいてやっていくということを言われたのですから、私は憲法の問題と絡み合わせて聞いているのですが、その点、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  59. 河本敏夫

    河本国務大臣 この問題につきましては、「三公社五現業等について、経営のあり方及び料金法定制度等の改正を含む当事者能力の強化の方途を検討する。」こういう一項目が政府見解の中にございまして、つまり経営のあり方そのものを再検討していこう、こういうことになっておるわけですね。それと並行して、現行の公共企業体等労働関係法その他の関係法規を全般的に再検討しよう、こういうことになっておるわけでございまして、その方向等については、政府を代表して総理が近く別の場でお述べになりますので、私はそれまで見解を差し控えた方がよろしい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  60. 神崎敏雄

    ○神崎委員 総理が別の場で申されることはもうわかっています。しかし、私は先ほどから言っているように、あなたの所管の中にこれに関連するものがあるから、しかもその閣議決定の際にはあなたもそこに同席され、しかも憲法の問題と各国の状態もいま私は実例を挙げて申しているわけで、あなたがなぜそれを控えられるのか、私は非常に遺憾に思うのですが、そうしたら、あなたの所管のことはいつも総理がおっしゃる以外に言えないというようにこれにはなっているのですか。総理以外は、このことについては答弁してはいけないというように閣議では決定しているのですか。
  61. 河本敏夫

    河本国務大臣 そういうことではございませんで、アルコールの問題等についても、今回三公社五現業のそれぞれの経営のあり方についてひとつ根本的に、いまのままでいいのかどうか、あるいはまた、経営形態を抜本的に変えるべきであるかどうか、こういうことを検討することになっておるわけです。それで、現状のままであればどうするのか、あるいは経営形態を変えるとすればどうするのか、こういうことが三公社五現業についてそれぞれ言えると思うのですね。でありますから、こういう作業の進み方等を見た上で申し上げたい、こういう趣旨でございます。  総理が言われる云々と言いましたことは、これは基本的な方向のことを言っておるわけでございます。
  62. 神崎敏雄

    ○神崎委員 だから、私は初めに、憲法二十八条に基づいて、いわゆる官公労働者も民間労働者も区別なしに、労働基本権というものは憲法で保障されている、ところが、先ほどから挙げたような経過で来たのですが、大臣は憲法を守っていかれるという立場から見たらこの問題についてはどういうふうに考えられるかと言えば、憲法を守っていくのだと言われるから、それなら先般の閣議決定に対して、あなたも責任あるポストにおられて、そういうことが決定されている場合は、やはりいまのあり方というものは憲法から見ても余り適切でない、いわゆるスト権の問題は全面的にこれは認めるべきであるというようにお考えにならぬですか。
  63. 河本敏夫

    河本国務大臣 憲法の問題につきましてはいろいろな条項があるわけですから、やはりその総合的なバランスというものを考えなければいかぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。  それからアルコールの専売につきましては、四十年の伝統がございまして、現在は所期の成果を十分上げておる、私はこういうふうに理解をしております。現状の経営形態を存続させるということが望ましいとは一応考えておるわけでありますが、今後の経営の形態につきましては、権威者を集めまして十分検討してまいりたいと、こういうふうに考えております。  それからスト権の問題につきましては、現在はアルコールの労使関係は非常に円満にあるということは御承知のとおりでございます。そういう状態でありまして、スト権付与をするという積極的な理由は弱いわけでありますが、基本的には、他の公共企業体との関係においてアルコールだけが独走するということじゃなくして、やはり全体の中において処理していこう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  64. 神崎敏雄

    ○神崎委員 アルコールの問題については後で聞きますが、全体のバランスを見てからと言われるのは、いまの時点で大臣の立場から見たらそう答えざるを得ないと思うのですが、私は、河本大臣が、今回の回答あるいは政府見解というふうな問題から見ても、しかも閣議決定という中におられるあなたとして、こういうあり方をあなた個人としてどう考えられるのか。しかもあなたの方はその所管の中にそうした関連労働組合もあることですから、ただみんな周りの状態を見てというのは、きわめて主体性のない答弁であると思う。私は先ほどILO初めヨーロッパ、アメリカ各国の状態紹介したわけですが、まさに国際的常識の問題になり、いまや時代おくれだと言われるのにかかわらずやっておるといういまの自民党内閣のこれに対する姿勢、これについての所見をひとつ聞かしていただきたいと思うのであります。
  65. 河本敏夫

    河本国務大臣 十二月一日に総理から、三公社五現業等の労働基本権問題に関する政府基本方針について、こういうことでその方針が発表されたわけでございますが、その内容は御案内のように数項目から成っておりまして、私はこの内容には全く賛成でございます。
  66. 神崎敏雄

    ○神崎委員 その内容は、明らかに憲法をじゅうりんした、国際的にも常識であるものを踏みにじった、きわめて非民主的であり反動的なものであるというように私は先ほど私の主張あるいは見解を述べたわけです。しかし、あなたが、それは閣議に入っておられるのだからそういう答弁をされるということになりますが、これはあくまでも憲法というものの本旨から見て、あなた自身が、あなたの所管の中にそういうものが包有されているのですから、無条件にいわゆるその見解なるものに同調するのではなく、一応検討されたらどうか、そういう考えはございませんか。
  67. 河本敏夫

    河本国務大臣 この五項目の内容、これはきわめて抽象的な内容でございまして、どうとでもとれるような非常に具体性のない内容になっておるわけです。方向等につきましても、やはり解釈いかんではある程度の幅がある、こういうことでございますから、十分検討するつもりでございます。
  68. 神崎敏雄

    ○神崎委員 十分検討されるというなら、それで結構です。検討してください。  そこで、先ほどから言われているアルコール専売事業の件についてお聞きいたしますが、このたびの政府見解で、三公社五現業の経営のあり方を検討する、こういう点もありますが、これはアルコール専売の民間経営への移行も含まれると解釈できるものです。そこで、アルコール専売について民間への移行は適切かどうか、部長見解をまず伺いたいと思います。
  69. 後藤一正

    ○後藤説明員 お答え申し上げます。  白紙の状態の上に、アルコール供給をどういう体制に持っていくかというふうに考えますれば、民営でやる方法もありましょうし、あるいは国営でやる方法もあろうかと思います。現に、世界を見渡しますと、アメリカとイギリスが民営でやっておりまして、ドイツ、フランスあるいは北欧三国は国営専売形態をとっております。  そういうことに加えまして、先ほど大臣が申し上げましたように、われわれのアルコール専売事業というのは、昭和十二年に発足いたしまして四十年近い歴史を持っております。その間、非常な合理化も進めておりまして、国営によるアルコールのコストというものは、ほかの民間酒造会社がつくっておりますアルコールのコストに比べまして、三割近く安いという状況でございます。  加うるに、国営アルコール工場というのは、発足のいきさつから言いまして、いわゆる山村僻地に多く立地されておりまして、しかも地元の従業員の方は相当高齢化した方が多いわけでございますので、民間移管あるいはそれに伴うドラスチックな集中統合ということは必ずしも適切ではない。現在の国営形態を維持しながら、できるだけ能率化の努力をさらに加えまして、最も能率的に、低廉に良質のアルコールを供給する体制に持っていくのが妥当ではないかというふうに考えております。
  70. 神崎敏雄

    ○神崎委員 最後に大臣に伺いますが、当局側も労働組合側も、アルコール専売については現状のままがよいということで一致しているようであります。したがって、今後、民間移行を含む経営形態の変更を労働組合の合意なしにはやらないという約束をしていただけますか。最後にこの点をただしておきたいと思うのであります。
  71. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど申し上げましたように、私どもは現在の経営形態がいいと考えておりますし、労使間も非常にうまくいっておる。組合も非常に良識ある行動をずっととっておるわけでございまして、現状がよろしいというふうに理解をしておりますが、ただしかし、私どもや組合だけの理解では不十分でございますので、やはり第三者等権威のある方々の御意見を聞いて最終の結論を出したいと思います。仮にどういう結論が出ましょうとも、その場合は当然組合と十分な話し合いをして、その理解の上に立って進めていかなければならぬと思います。
  72. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いまのはきわめて重要なことなんですが、最後におっしゃったのは、どのようなことになっても、第三者等からどのような意見があるにしても、当然労働組合側の意見をよく聞く、そして労働組合側の意見を尊重してやっていきたい、こういう意味に大臣は御答弁されたというように確認してよろしゅうございますね。
  73. 河本敏夫

    河本国務大臣 いかなる結論が出ましょうとも、その場合には組合と十分話し合いをいたしますけれども、しかし組合の言うことを全部聞いてやるということではございませんで、十分なる話し合いをしなければならぬ、こういう趣旨のことを申し上げたわけでございます。
  74. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いまのは全部聞いてやるという意味ではないということで、さきの答弁から少し後退したように思うのですが、組合側の意見を尊重するということはいいんでしょう。尊重してやるということですね。
  75. 河本敏夫

    河本国務大臣 組合側の意見は十分聞きますし、かつまた、その意見は尊重しながら円満なる運営をしていかなければならぬと思いますが、ということは全部聞くということではございませんで、組合側の了承を得なければ何もやれない、そういう意味では決してないということだけを申し上げておきたいと思います。
  76. 山村新治郎

  77. 近江巳記夫

    ○近江委員 高度成長から低成長に入ってまいりまして、経済計画というものも当然見直しをしなければならないわけであります。今年末までに新経済計画を出すということをおっしゃっておられたわけですが、長官は間違いなくお出しになるかどうか、またさらに、その基本的な考え方につきまして簡潔にお話しをいただきたいと思うわけです。
  78. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 新長期計画につきましては、五十一年度を初年度といたしました五カ年計画というものを策定したい。その策定の時期につきましては、年内に概略案、素案と申しますか、そのようなものを策定いたします。そして、それをさらに詳細にしたものにつきましては、来年の春ごろまでにこれを完成いたしたい、こういうふうに考えております。  考え方基本といたしましては、これからの不安定な世界経済環境の中でわが国はどういうふうに対処していくか。また、その不安定な国際環境がいままでの世界の流れと非常に質的に変わってきているのです。その根本的な問題は、資源エネルギー有限時代ということでございますが、そういう中においてわが国がどういう経済運営の対処をするかということでございます。  そこで、過去の高度成長期におけるような高い成長率はこれを追求しない。国際社会の経済動きの展望、それとのつり合い、そういうものを考えまして、かなり低目の成長の高さということになろうかと思います。  それから、内容といたしましては、そういう中においてやはり社会的公正というか、そういうようなことも特に注意しなければなりません。そういうようなことで、基本的な考え方としては、成長から生活中心へ、こういうような内容のものにいたしたい、かように考えております。
  79. 近江巳記夫

    ○近江委員 五十一年度からいわゆる長期計画に従って経済運営を進めていかれるわけでございます。来年度予算は年内編成をするということもおっしゃうておるわけですが、これも間違いなく副総理として年内に編成されるかどうか。そうなってまいりますと、当然大蔵省を中心に各省も予算編成というものはもう大車輪がかかっておるわけでありまして、五十一年からこれがスタートということでありますと、来年度の成長率はどうするか、あるいは長期においてはどうするかという問題は示されて当然であろうかと思いますし、その点はどのようにお考えでございますか。
  80. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 国会の会期がこの二十日で終了するわけです。その後、時を移さず大蔵原案が固まる、こういう段階になるであろうし、そうしたい、そして年内には予算の概算の決定をいたしたい、こういう考えでございます。ですから、大蔵省を中心にいたしまして予算の作業は始まっておるわけですが、その作業を総合いたしましてどういうふうに締めくくりをするかというところまではまだ来ておらないのです。これからぽつぽつそういう作業に移ろうか、こういう段階でございます。
  81. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで来年度の成長率はどのぐらいを見ておられるわけですか。
  82. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 そこが問題なんです。まず私どもといたしましては、先ほど申し上げました五十一年度を起点とする中期計画、これを考えるわけでありますが、その初年度たる五十一年度は、これは中期計画の初年度ではありまするけれども、まだ私どもといたしましては、この五十一年度において経済石油ショックから本当に抜け出し、安定した状態とは考えていないのであります。いわゆる調整期間三年目であるという性格のものでありますので、その初年度の成長の高さを一体どうするか、こういうことは、これは国家財政の運営ともにらみ合わせなければならぬ、かなり慎重に検討を要する問題だ、こういうふうに考えておりますので、まだここで何%であるということを申し上げられない、そういう状況でございます。
  83. 近江巳記夫

    ○近江委員 国会の会期が二十日で終わるわけですね。直ちに大蔵省としては出したい。きょうは五日ですね。そうすると、来年度はどれだけの成長率を見込むか、こういうことはもう基本の中の基本になってくるわけですね。当然政府としてある程度のめどは固めておかなければおかしいわけですよ。そういうことを言われるということは非常にまずいわけですか。私は別にまずくないと思いますがね。
  84. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いまあれやこれやと相談をいたしておる最中であります。その最中もまだ初期の最中でございまして、まだここで何%ということに固まっておるということは申し上げにくい、そういう段階でございます。
  85. 近江巳記夫

    ○近江委員 固まってないとしましても、長官は経済閣僚のキャップでありますし、副総理でありますし、長官自体はどの程度が望ましいとお考えですか。
  86. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 まだ私自身もあれやこれやと考えておる、そういう段階でございまして、まことに申しわけないのですが、もうしばらく時間の余裕をかしていただきたい、かように考えます。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 政局も濃霧でありますし、来年の経済のそうした見通しも濃霧である、こういうことでは非常に不安が高まるわけであります。そういう点、今日の不況下の中におきましてやはり皆本当に関心を持っておるわけでありますし、ぴしっとしたそういう政府の中期計画なりまた本年度に対する基本方針なりを早くお示しになることが大事だ、このように思います。これは平行線になろうかと思いますのでおきまして、次にいきたいと思います。  この前に本委員会におきまして長官は——われわれが今国会中に独禁法を通せ、自民党さんとしてはお出しになるという意向がないということで、われわれ四党で出したわけであります。それで自民党さんが賛成すればこれはもちろん通過するわけでございます。どうしてもわれわれとしては今国会でやりたい、こう言ったわけですが、長官は、不況が中心なんだから、来国会には必ず出すということをおっしゃったわけです。ところが、与党自民党の中で、一体そんなことをだれが言ったのだとか、とぼける人もいるわけですね。そういう雰囲気の中で長官がそのようにお約束されたことは、必ず来国会にはお出しになるのですか、確認しておきたいと思うのです。
  88. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 今国会は臨時国会であり、その臨時国会の性格が不況打開という性格を持っておる、そこでこの国会は独占禁止法の改正というような基本的な御論議を願うのになじまない、こういうことを申し上げたのです。それから同時に、自民党の中にも、この際いい機会だから見直したい、こういう意見もありますので、その見直しの作業も進んでおる、こういうので、その見直しも早く終了していただきまして、来国会、これは通常国会ですから、この国会にはぜひ出したい、私どもも努力をいたしたい、かように考えております。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 副総理として最もそうした強い立場におられる長官が、重ねて独禁法は通常国会に出すということをおっしゃったわけであります。今国会でこれができなかったということはまことに残念で——できないということは、まだ会期があるわけですから、われわれとしては自民党の諸君にも質問をしてもらって、何としてもわれわれ四党で出しているこれを賛成してもらって通過させたい、こう思っておるわけですが、もしも最悪それがだめな場合は、通常国会には必ず出すと重ねて長官がおっしゃったわけでありますし、三木総理も非常に執念を持っておられて、途中で消えたようになったわけですが、副総理福田さんは、与党の中ではいろんなそういう動きもありますが、この場で御発言になったことは必ず守っていただきたい、これをひとつ重ねて申し上げておきます。  それから、きょうの物価対策閣僚協議会で私鉄の値上げのことは問題になりましたか。どういうようになりましたか。
  90. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 本日の物価対策閣僚協議会におきまして、八月に申請のありました私鉄の運賃の問題、これは運輸省を中心にいたしましてしさいに検討いたしまして、運輸省案というものができ上がったわけであります。この協議会に運輸大臣から運輸省案の提示がありまして、それを閣僚協議会としては了承するということになり、したがって、十二月十三日に私鉄の値上げが実施される、こういう段取りに相なった次第でございます。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、最近の政府の姿勢というものにつきまして非常に疑問を持っておるわけです。スト権の問題につきましても、政府声明を見ましても非常に配慮というものがないように私は思うのです。三木内閣としては、非常にひ弱な内閣であるということは国民皆知っておりますが、やはり党内を固めていくという点においてどうしてもタカ派の意見に迎合していく、それがああした政府声明になってくる。この間の大阪空港の訴訟問題につきましても、判決のあった翌日抗議団が上京して、運輸省としては三日に回答すると約束したわけです。それも抜き打ち的に上告を決定して、上告をする。いわゆる公害の被害者が本当に泣いておるわけです。そういう人たちの気持ちも踏みにじって、上告を強行してしまう。  今度の私鉄だってそうですよ。長官も御承知のように、今年の春闘は一三・一ですよ。そうして物価がじりじり上がってくる。公共料金は、米を初めとしまして、各公害企業、地下鉄を初めどんどん上がっておりますし、また、この間国鉄の料金があのように大幅に引き上げられたわけです。私鉄も平均二四・六%の引き上げである。私鉄などはなぜこんなに上げなければいけないのですか。大手十四社の経理内容等はばらばらですよ、出しておるのは。しかも、これは足並みをそろえて値上げ申請して、運輸審議会もそれを、わずか三月足らずですよ、前回は審査が二年以上かかっている、それを三月足らずで出してきて、それを運輸省がすぐ受けてきょう決めてしまう。これほど国民をばかにしたやり方はないと私は思うのですよ。しかも私鉄十四社は、営業収益を見ましても、他の産業界では三社に一社と言われるほど非常に減益会社が続出しておるわけですが、九月期決算で見る限りは大幅な増益になっているのです。運賃値上げの緊急性というものはあるのですか。  さらに、運輸省は、私鉄運賃の値上げを認めやすいように、各社に対して、政策減配をして経営が苦しいように見せかけのための行政指導をしたというようなことも巷間伝えられておるわけです。あるいは不動産やデパートなどの営業部門の不振を値上げの理由に挙げておる。そんなことは全くおかしいわけです。そうして兼業部門の赤字を運賃値上げでカバーしようというような安易な姿勢というものは、そのまま認めていっていいかという問題なんです。  いまざっと私申し上げたわけでありますが、そういうように本当に苦しんでおる国民の立場に立つならば、こんな安易な認め方をしていいのですか。長官は少なくとも閣僚協議会のキャップなんですよ。責任はきわめて重大ですよ。ですから、十三日からという決定をされたそうでありますが、これはもう一度戻して、物価対策閣僚協議会で決めたことは非常に問題があった、閣議で再検討してもらいたいということを長官からひとつ閣議に出してもらって、一度これは御破算にしてもらいたいと思うのです。これほど、あとメジロ押しに公共料金の引き上げラッシュが続いておる、来年賃金だってどうなるかわからない、そういう不安の中で平気でこんなものを引き上げていくという政府の姿勢というものは、私は大問題だと思うのです。どういう反省をされ、その反省されたことを今後どう実践に移されますか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  92. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 近江さんからそういう御意見でございますが、これは昨年の一月から原油の値が四倍にはね上がったわけです。しかも、昨年の春闘では賃金が三二%もはね上がるという事態です。ですから、そういうことを踏まえて、価格水準というものは、これはもうわが国の製品あらゆる物にわたって、さらにはサービス料金、そういうものにわたって重大なる変化が来ておるわけなんです。  そういうことで、まあ自由価格商品は大方そういう状況の変化を踏まえてそれに対応する価格水準というものができたのですが、それに乗りおくれたもの、また乗り足りなかったものがあるわけなんです。乗りおくれたものは、いま問題になっておる酒、たばこ、郵便料金、そういうものもあるわけであります。また乗り足りなかったものは、まさにいま御指摘の私鉄運賃。昨年確かに私鉄運賃につきましては引き上げが行われたのですが、この引き上げはあの石油ショック以前の申請に基づいて行われたものでありまして、新しいサービス料金水準価格水準という性格のものじゃないのです。一部それはもちろん織り込まれることにはなりまするけれども、新しい物価水準、サービス料金水準というものに対しますとこれは調整ができておらぬという基本的な事情があるわけなんです。  八月に新しい料金につきましての申請がありまして、その後今日までずっと運輸省で精細に調査をしてきておるわけでありまして、運輸審議会の議も経るという問題もあり、また、それに先立ち公聴会が行われるというような手続もとられておるし、あらゆる検討をいたしまして適正な水準というものを査定いたしまして、この査定は申請に比べますとかなり削減はしておるわけでありますが、まあ妥当なところであるという判断数字を算出いたしまして、本日閣僚協議会にこれを付議するということになりましたので、改めてこれをやり直すという必要は政府としては認めておりませんです。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 必要な手続を踏んだ。手続は確かに大事なんですよね。だけれども、その中身が大事であるし、その中身をどう受け取るかということが問題だと思うのです。大体審議会なんというものは皆隠れみのだということは、国民は皆知っておるわけですよ。結局政府の言うがままに、その原案にオーケー、賛成というような審議会が多いわけです。そうでない審議会もないとは私言いませんが、運輸審議会など見ておりますと、大体もう運輸省の言うとおりですよ。公聴会では大変な非難が集中しておるのです。手続だけを踏んだということで、それを安易に閣僚協議会でオーケーだ、これではまるで財界の言うがままに政府は動かされておる。国民の立場に立ってもっとこれは考えるべきですよ。  こんな大幅な値上げを、しかも八月二十九日に申請が出されて三カ月足らずの、こんなスピードでやる。前回、二年間かけているんですよ。こういうような国民無視の政府の姿勢ということに対して、こんな値上げを許可して反省はないんですか、長官は。ひとつ率直な国民に対する反省の言葉を私は聞きたいと思うのです。
  94. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 石油の問題、それから賃金の問題等考えますと、現行の料金におきましては、これはとうてい会社の経営を健全に続け、与えられた旅客輸送サービスというその目的にも到達できないというような状態になり、そういう結果、あるいは不測の事故が起こるとかなんとかいうことになれば、これはまた大変なことです。やはり私鉄が与えられた旅客輸送の使命というものを達成させるためには、適正な運賃、料金というものでなければならぬ、こういうふうに考えましたわけでありまして、これはただうのみにしているわけではないのです。これは運輸省においてもずいぶん査定をする。その間において企画庁も相談にあずかる。そこで、ぎりぎりの線はここだという、そのぎりぎりの線が二四%アップである、こういうことになるわけでありまして、その会社経営が行き詰まってしまったというようなことになったら、これはまた国民経済に与える影響甚大なものがある。  総じて公共料金というもの、これは政府がこれを管理しておりますものですから、あの狂乱物価という当時におきましてはこれはどうしたって抑える、当然そういう考え方になるわけでありますが、しかし、今日物価も鎮静基調に向かっておる、こういう際になりますと、運輸サービスという重大なる使命を持ちましたこの私鉄企業というものが適正に運行されるという基礎としての料金、これはやってやらなければいかぬ、こういう認識で、慎重審議の結果本日の結論と相なった、かように御理解願います。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 通産大臣が沖繩博ですか、あちらの方へ行かれるということでありますので、一問だけ聞きますが、いわゆる石油製品値上げの問題であります。  これは、石油業法第十五条におきます、石油製品価格が不当に高騰しまたは下落するおそれがある場合は標準額を設定することができるというこの規定をてこになさったと思うのです。この法の運用ということについて拡大解釈の疑いがないかどうかということが一点であります。  それから、いわゆるナフサであるとか重油であるとか、この引き上げを少なくして、ガソリンであるとか灯油であるとか、国民生活直結のところを大幅に引き上げている。これは一体どういう姿勢であるか、どういう考えに基づくか。この二点について大臣からお伺いしたいと思います。
  96. 河本敏夫

    河本国務大臣 今回の石油に標準価格を設定いたしましたのは、すでに御案内のように、石油業界の実情が崩壊寸前にある、こういう状態ではエネルギーの安定供給がむずかしくなる、何としてもこの事態を避けなければならぬ、こういうことから石油業法に定めております標準価格を設定したわけでございます。法を拡大解釈したとかそういうことではございませんで、法律に基づいて設定をした、こういうことでございます。  ただしかし、いまお話がございましたように、灯油など国民生活に密接な関係のある品種につきましては、やはりできるだけ低く抑えていかなければならぬ、こういう考え方には変わりございません。ただ、これを不当に低く抑えますと、これも御案内のことでございますけれども、やはり軽油あるいはA重油等の代用に流れまして数量が確保しにくくなる、こういう問題が起こるわけでございますが、そういう問題が起こらない限度においてできるだけ低く抑える、そういう方向に今後とも努力してまいりたいと思います。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、大臣は予定がありますから余り引きとめてはいけませんから、帰ってください、結構です。  長官、いま大臣がそうした答弁をなさったわけでありますが、大体政府のそうした指導ということは、一つは市場メカニズムに対する非常に強い介入になる。それからさらに、官民一体となった総カルテル化への道を進めるものである。学者等が非常に強くそのことを指摘しておられるわけであります。それからまた、独禁法考え方といわゆる真正面から対立になっておりますし、このことが結局国民の利益を損なうおそれがきわめて強いわけであります。さらに、今回のようなこういう状態値上げ実現ということをやってまいりますと、非常に不況下という背景もありまして、当然需要側に対する行政指導も必要になってくる。そうなってくると介入がまたさらに介入を呼ぶことになってくる。こういう現在通産省がとっております姿勢に対して、長官はどういう御見解をお持ちですか。
  98. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私は、石油企業の今日の状態というものを実は非常に心配しているのです。さあほっといたら一体この石油企業はどうなっちゃうのだ。石油はいまやわが国経済を動かす大動脈である。その石油企業が、よくお調べも願いたいと思うのですが、大変な事態になっているのです。これは企業の実態に触れる問題ですから、まあこの席で私は申し上げることははばかりますが、きわめて深刻な状態になっておる。そういう状態を放置して、一体わが国経済全体として果たしていいのかというと、これはどうしても何らかの措置を講じなければならぬ、そういう事態にいま追い込まれておるわけなんです。  そういう際でありますので、長い間通産省におきましてはどういうふうにしたらいいだろうかということを考えてきたわけですが、結局これは標準額制を採用するということで行政努力をするほかはないじゃないか、それが一番いいじゃないかという結論に到達いたしまして、そういう指導に乗り出したわけでありますが、これは大変な事態なんです。まあこれは、ほっといていいのだ、石油企業はどうでもいいのだということになれば、これはもう格別でございますが、ほかに一体有効な手段がありますか。こういうことを考えてみると、ほかにないです。そういうことで、まあ行政指導価格介入、そういうことは異例なことでありまするが、そういう異常な事態に対する異常の措置ということでそういう踏ん切りをとった、やむを得ざる措置である、そういう認識でございます。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間のかげんであとしぼって若干質問して終わりたいと思いますが、御承知のように十月は中小企業の倒産が戦後最高の記録を示したわけです。いろいろ政府としては第四次不況対策でも四千八百億の追加等もやっておるわけですが、実情はきわめて厳しいわけであります。長官は、不況が春になればいいだろう、秋になればちょっとは回復するだろうと言っておられるわけですが、ずるずるずるずる来ているわけです。そういうことで、年末を控えて中小企業も非常に心配されるわけであります。中小企業庁長官にも聞くわけですが、まあ推移を見て何とかまた手を打ちますというようなことの答弁ばかりなんですね。  福田長官としては、こういう不況下における中小企業に対して現在とっておられる年末対策なり、非常に不安があるように私は思うのですが、それをさらに大幅に上積みをされる決意はありますか。
  100. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いまの中小企業は非常に苦しい立場だと思います。ことにこの間のストの与える影響なんかも、中小であるだけにかなり深刻なものがあったように思います。そういうことで、年の瀬をどうするかということは重大問題だろうと思いますが、いま通産省でこの中小企業状態はどうだろうかということを注視しておりますから、中小企業対策につきましては、その状態いかんによりまして臨機、弾力的な対処をいたす、そういう考えでございます。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 それではもう時間がありませんから、あと一問で終わります。  これは重ねて恐縮ですが、いわゆる独禁法の問題につきましては、党内でいろいろな反対もあり、いろいろな声もあろうかと思いますが、党内にどういうあれがあっても、長官の決意としては必ず通常国会にお出しになりますね、もう一度確かめます。
  102. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 そのように努力いたしたいと存じております。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、終わります。
  104. 山村新治郎

    山村委員長 次回は、来る九日火曜、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十一分散会