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1975-11-19 第76回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十九日(水曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君   理事 塩川正十郎君  理事 田中 六助君    理事 前田治一郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 佐野  進君 理事 中村 重光君    理事 神崎 敏雄君       天野 公義君   稻村左近四郎君       浦野 幸男君    越智 伊平君       粕谷  茂君    唐沢俊二郎君       小山 省二君    塩崎  潤君       田中 榮一君    竹中 修一君       深谷 隆司君    宮崎 茂一君       森下 元晴君    綿貫 民輔君       板川 正吾君    加藤 清二君       竹村 幸雄君    渡辺 三郎君       米原  昶君    近江巳記夫君       松尾 信人君    玉置 一徳君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         通商産業政務次         官       渡部 恒三君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         中小企業庁計画         部長      織田 季明君         中小企業庁小規         模企業部長   栗原 昭平君  委員外出席者         大蔵省銀行局総         務課長     清水  汪君         大蔵省銀行局中         小金融課長   吉田 正輝君         労働省職業安定         局雇用政策課長 小粥 義朗君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十一月十九日  辞任         補欠選任   天野 公義君     綿貫 民輔君   小川 平二君     唐沢俊二郎君   橋口  隆君     宮崎 茂一君   八田 貞義君     越智 伊平君   山崎  拓君     竹中 修一君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     八田 貞義君   唐沢俊二郎君     小川 平二君   竹中 修一君     山崎  拓君   宮崎 茂一君     橋口  隆君   綿貫 民輔君     天野 公義君 十一月十八日  LPガス都市ガスとの流通秩序確立に関する  請願春日一幸君外一名紹介)(第二五七一  号)  同(栗原祐幸紹介)(第二五七二号)  同(竹本孫一紹介)(第二五七三号)  同(小林政子紹介)(第二六二八号)  同(山下元利紹介)(第二六二九号)  同(板川正吾紹介)(第二六八九号)  相模原市における株式会社ダイエー出店反対  等に関する請願増本一彦紹介)(第二六二  六号)  大規模小売店舗出店規制に関する請願増本  一彦紹介)(第二六二七号)  LPガス業者の営業及び生活安定に関する請願  (板川正吾紹介)(第二六八八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第二八号)  石油備蓄法案内閣提出第八号)      ————◇————— 山村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業信用保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神崎敏雄君。
  2. 神崎敏雄

    神崎委員 大臣がまだお着きじゃないので、大臣に対する質問は、次官責任を持ってひとつお答え願いたいと思います。  まず初めに、信用保険法の具体的な運用の点について質問いたします。  現在不況が長引く中で、中堅企業を含めて倒産は依然として高水準にあり、最近の十月には商工リサーチ調べ倒産件数千二百七十八件と、ついに史上最高件数を記録しているのであります。これに伴って、倒産関連企業指定も昨年来急激にふえております。関連下請企業は、親企業倒産によって、仕事はもちろんのこと資金繰りについても深刻な状況に直面されているわけですから、倒産関連特例に対して期待を抱いているわけであります。  そこで伺いますが、政府は、これまでの倒産関連特例の適用の状況に照らして、この制度の内容及び運用について、いまのままで十分だと考えておられるのか、それとも見直す必要があると考えておられるのか、まずこの点について答えていただきたい。
  3. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 不況が長引いておりますので、倒産件数も、先生指摘のように先月は千件を超えるような状況になりまして、こういった状況に対処いたしまして、いわゆる信用保険法上の不況業種指定制度というものにつきまして極力弾力的に計らってまいりたい、かように考えまして、先般来不況業種として逐次不況色の強い業種指定してまいったわけでございます。  現在の指定状況を申し上げますと、大分類で四十四業種細分類で申しますと二百四十三業種が現在指定になっておりまして、この指定業種に属します中小企業の数は約七十五万企業でございまして、製造業で見ますと、ほぼ製造業企業数の四一%に相当する企業数に当たる業種が現在不況業種として指定をされております。それに伴いまして、この信用保険によります倒産関連保証実績も逐月ふえてまいっておりまして、この不況業種関係倒産関連保証実績は四十九年度が千五百十八億円、今年度は九月までの実績でございますが、四月からの六ヵ月間で千三百三十一億円、合計いたしまして二千八百四十九億円に達しております。現在指定しております業種は、一応十二月までということでいたしておりますが、今後の不況の成り行きを見まして、必要によればまたさらに再延長いたしたいと考えておりますし、そのほか不況業種が新たに出てまいりますれば、逐次機動的に追加をいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。  この制度そのものの何か改正方を考えておるかという御質問でございますが、現行の制度は有効に働いておると私ども思っておりますので、さらにこの運用の面で機動的に行うということで現状に対処してまいりたいと考えております。
  4. 神崎敏雄

    神崎委員 私は、現在の倒産関連特例では、下請企業の置かれている実情に十分見合ったものだとは考えられません。一つの例を挙げてみますと、北九州植田製作所倒産の場合です。通産省は、現地の要請もあって倒産関連企業指定しております。下請企業者はこれで当面の金繰りは何とかなると期待を持っておりました。ところが、保証協会に行ってみると、担保保証人について非常に厳しい。仕事が半減している状況で、担保にはすでにきずがついている、保証人も親企業倒産しているのでやすやすとは見つからない。その上に、最低限必要な保証額を要求しているのに、削られるかもしれないとかおどかされる。やっと協会保証を得て取引銀行へ行くと、政府系公庫へ行けと断られる。また、借りることができても金利通常と変わらず、保証料と合わせて一〇%を超える利子になる。これでは倒産関連企業認定書をもらっただけで、何のメリットもない。  ある鉄工所事業主の場合を例にとりますと、わざわざ東京に出てきて、本省へも陳情して、そして通産局にも通う。しかも足しげく通ったのですが、結果は全部がだめである。結局、市の金融特別融資で九百万円をやっと借りることができた。これでは中小企業者が言っているように、倒産関連特例と言っても、認定書という一枚の紙切れをもらっただけにすぎないというのも私は当然であると思います。私はここにたくさん例を持っていますが、一々例を申し上げません。代表的なことだけいま指摘をいたしますが、ほかにもこういう例はたくあんあるわけですね、先ほど数を言われただけでもおわかりのように。  そこで、売れ行き不振や、仕事がない、あるいは親企業倒産したなどによって経営危機にある中小企業者実態に合った助成措置をとられるようにするため、倒産関連特例の場合、担保保証人については、いま長官が言われたのですが、この点に関する弾力的な運用を図られるように信用保証協会指導を徹底させるために、通達を出すなどの処置が必要であると思いますが、この点どうですか。
  5. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 倒産関連保証の場合には、先生指摘のように、関連しております中小企業は非常に苦しい状況にございますので、普通の場合の保証と違いまして、特に担保条件保証条件につきましては配慮をするように従来から指導をいたしておるところでございます。たとえばことしの一月二十九日にも、そういった趣旨通牒を全県知事を通じまして長官名全国保証協会通達をいたしております。  具体的には、まず担保につきまして、通常と違いまして極力弾力的に、たとえば評価につきましても、あるいは担保対象とする資産の範囲、あるいは担保の順位でございますとか、担保の掛け目の問題とか、こういう点につきまして極力借りる方の事情を配慮して有利に計らってあげるように、こういうふうな指導をいたしておるわけでございます。  それからもう一つ保証つきの場合の金融機関からの貸出金利につきましては、これは大蔵省指導を通じまして、保証つきの場合には通常の場合よりも必ず引き下げるように、こういう指導をいたしておりまして、これにつきましてもことしの三月十二、三日付ごろで各銀行ごとに、たとえば銀行協会あるいは相互銀行協会、そういった銀行種別ごとに、協会から傘下の各金融機関にそういった趣旨の通知を出していただいております。また、保証協会借入申込書には、保証がついております場合には貸出金利につきまして金融機関相談に応ずることになっておるから相談をしてほしい、こういうことを保証申込書に全部刷り込んでおります。  保証料率そのものにつきましては毎年引き下げ方を指導いたしておりまして、今年も、前任度全国平均保証料率が一・一八%でございましたが、ことしの四月に全国平均で見ますと一・一一%まで引き下げを図っております。そのために、融資基金の出資によります貸し付けでございますとか、あるいは国の保険公庫保険料引き下げ、こういった措置を講じまして保証料引き下げを進めた次第でございます。私ども趣旨があるいは徹底していないうらみがあったかと存じますので、さらに指導方につきまして配慮いたしたいと思います。
  6. 神崎敏雄

    神崎委員 その過去に出されたことについてはよく承知しております。それがいま長官のおっしゃるように、徹底してないということを長官みずから認められているのです。  これは次官に伺いたいのですが、この担保保証人について弾力的な処置をするように改めて通達を出されるかどうか。これは長官みずからもいま言われたように徹底してない。また徹底してない事例は後で出しますけれども、改めてそういうことを厳重にやられるような通達を出されるかどうか、ひとつ決意を示していただきたい。
  7. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 いま神崎先生から御指摘がありましたように、昨年の年末を前にしての不況の場合は、まだいろいろ中小企業者に過去の蓄積とか担保能力とかそういう面があって、金融の枠を拡大していくことによってできる限りの処置をとって不況を乗り切ったわけでありますが、ことしはおっしゃるように不況が長く続いておるために、担保能力とかあるいは蓄積とか、そういう面でいわば非常に衰弱しておる状態であります。したがって、昨年と同じようなただ枠の拡大ということだけでは、中小企業者信用能力というものが弱まっておりますから、そういう情勢を見きわめた上で、いま先生のおっしゃるような処置をとる必要が出てまいりましたら、これを徹底させるような処置をもう一遍とるように進めてまいりたいと思います。
  8. 神崎敏雄

    神崎委員 ぜひそれをひとつ実行していただくことを強く要請しておきます。  さらに、倒産関連特例の場合、保証料借り入れ金利との合計が中小企業者の重荷にならないように、現在の保証料引き下げるようにすべきではないか、こう思うのですが、長官、この点はどうですか。
  9. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 基本保証料引き下げにつきましては、従来から私ども努力をしておるところでございまして、毎年ここのところ引き下げを図っております。今年度につきましては、まず信用保険公庫保険料を四十九年度に対しまして約四%の引き下げを行いましたのと、それから信用保険公庫から保証協会貸し付けております融資基金を特に低利で貸しまして、保証協会がそれを普通の金利金融機関に預託をする、そういうことで金利のさやが保証協会に収入として入りまして、そういうことが経理面で改善されることによって保証料引き下げに資する、こういうふうな形になっておるわけでございますが、その信用保険公庫から保証協会に対します融資基金の、特に低利分貸し付けを今年度百億円追加していたしておりまして、こういった措置をとることによりまして、全国保証協会保証料を、平均で申し上げますと昨年は一・一八%でございましたものを、今年四月から一・一一%に引き下げを図ったところでございます。今後につきましても、こういった方向で努力をしてまいりたいと考えております。
  10. 神崎敏雄

    神崎委員 これについては、後でまた議論をいたします。  次に借入金利の問題ですが、信用保証つき貸出金利民間金融機関にとってはリスク負担もなく、担保保証人についての実務を省略できるという有利な貸出先であり、当然それに見合った軽減措置がとられると思いますが、この点、政府としてどのような指導を行っておられますか。
  11. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 この保証つき融資につきましては、一〇〇%保証協会保証いたしておりますので、仮にその分が貸し倒れということになりますと、保証協会全額代位弁済をすることになります。そういう意味合いでは、金融機関の方には貸し出しに伴うリスクも全くないわけでございますし、信用調査等の事務的な費用もかからない、そういう面もございまして、そういう意味で当然保証つきのものについては、貸出金利をそういった部分を反映させましてある程度引き下げを図るべきものである、こういうふうに私ども考えておりまして、大蔵省を通じまして従来から各金融機関にそういった指導をいたしておるところでございます。  その指導を受けまして、たとえば全国銀行協会は、ことしの三月十八日に全国銀行協会加盟の各社に対しまして、保証つき貸出金利については保証のついてない場合に比べまして優遇をするようにという通牒を出しております。また、全国相互銀行協会も三月十二日に同様の趣旨通牒を出しております。同時に、信用保証協会におきましても、先ほどちょっと申し上げましたように、保証申込書に、保証つきの場合には貸出利率につきまして金融機関相談に応ずることになっておる、こういう旨を印刷して刷り込んでおります。こういうことによりまして、保証つき貸出金利通常の場合よりも引き下げるということの指導を図っておるところでございます。
  12. 神崎敏雄

    神崎委員 先ほど長官が言われたように、その通達を出しておられることはこちらも承知しておるのです。しかし、実際にその通達がどのように生かされているのかというところが問題なんです。通達通牒を出しっ放しで、そして現状、先ほど指摘したようなことが巷間行われて困っておるのです。ですから、その通牒通達を改めて出すということを次官からもお答え願ったのですから、今後は幾らか改善されるとは思いますけれども、従来のもので保証つき金利実情について当局調査を行ったことがありますか。
  13. 吉田正輝

    吉田説明員 お答え申し上げます。  われわれの方で内々調査を行ったことはございます。それによりますと、保証のつかない貸出金利に比べまして、保証がついているものがどの程度金利が安くなっておりますかと申しますと、四十七年当時で大体〇・二五%程度、それから本年分につきましてはおおむね〇・四%から〇・五%程度下がるものと、こういうふうに見込んでおります。
  14. 神崎敏雄

    神崎委員 四十七年ごろの〇・三五%と本年の〇・四%から〇・五%というと、これはもう全然実情に沿ってないですね、四十七年当時と現況とは。  そこで、四十五年の六月、大蔵省は、保証協会保証つき貸し出し金利引き下げよう、こういう通達で指示しておられますね。また同趣旨のことを本年の春に全銀協、地銀協などが自主的に決定している。ところが、大阪商工団体連合会調査によりますと、信用保証つきで大和銀行十七店二十件の金利は八・三%から一〇・五%、三和銀行支店の十三件で八・七%から一一・〇%、住友銀行支店の十二件で八・七%から一一%、こういうことになっておるんですね。実に一一%の高利子を取っているのであります。したがって、先ほど通達を出すとおっしゃっているのですが、大蔵省当局銀行局ですか、これはいまおっしゃっている〇・四%というのとはきわめて大きな開きがあるのですが、これはどういうことになるのですか。再度通達を出してその点を徹底されるのかどうか、責任のある答弁をひとついただきたい。
  15. 吉田正輝

    吉田説明員 お答え申し上げます。  申すまでもなく、この信用保証制度と申しますのは民間ベースでの、コマーシャルベースでの貸し出しがございます。これはそれぞれの信用度あるいは期間、危険度、その他それぞれの貸し出し対象としての要素を見まして、通常貸し出しが決定されるのにつきまして信用保証がつくということで、中小企業、あるいは倒産に直面している中小企業に対してなるべく貸し出しが促進されるようについているいわば誘導的な政府補強政策というふうに承知いたしております。したがいまして、個々のケースにつきましては、それぞれのケースにつきまして信用保証がなければどのように貸したのかというそもそもの実態を見てみる必要があると思います。御指摘の点につきましてはばらばらのものがあるようでございますが、ケース・バイ・ケースでその貸し出し対象がどうなっているか、保証がなければどのような条件でつけられたものであるかというようなことを見てみないとすぐにはわからないと思いますが、われわれの方でも十分執行状況先生指摘の点に沿いまして注意して見てまいりたい、このように存じております。
  16. 神崎敏雄

    神崎委員 問題は、当局は注意するとか通達を出しっ放しだとかというのじゃなしに、いま北九州の例を挙げたように、あるいは大阪の三銀行の例を挙げたように、実際はこうなんですね。そして、あっち行けこっち行け言われた結果、結局はだめで、地方自治体からの金を借りている。地方自治体の方が言うたら貸すくらいのレベルの方だったら、いま政府不況対策その他でやかましく言っているときに、なぜそれがうまくいかないのか。これがいまの中小企業金融面では非常に困っている現状なんですね。  先ほど、内々調査をしているという。内々調査というのは、一体どういう範囲のもの、どういうカテゴリーの中に入るものか。具体的にいま銀行名まで挙げて、利子のパーセンテージまでも言ったのですがね。再度通達を出すという約束はいただいたが、通達や指示やいろいろやっていただいても、現状がそうでない場合は、それはやはりそういうものを監督したり、管理したり指導される当局側責任があるのか、それとも言うことを聞かぬ側に責任があるのか、そういうことが内々調べた結果大体出ているけれども、仕方がないというふうに見逃しておられるのか。  その点は、一体どこにこの問題の根源があるのか、ここらあたりはひとつ明確にしておかぬと、一片の通達をまた出してやる、それで事足れりでは、われわれは現状から見て引き下がるわけにいかぬわけですね。内々調査とは一体どんな調査をやって、当局の言っているとおりやってないところがあればどういう処置をとるのか、そこが問題だと思うのですね。
  17. 吉田正輝

    吉田説明員 内々調査と申し上げましたのはちょっと言葉足らずであったかと思いますが、一種のサンプル調査でございます。サンプル調査によりまして、同一人が同一金融機関から保証を受けて貸し出しを受けているケース保証を受けずに貸し出しを受けているケースとございます。それを比較いたしまして平均値を出すような調査を、われわれの方でも信用保証の動向、執行状況を注意していく必要があるということで自主的に行ったものでございます。  それから御指摘の点でございますが、このような保証がついているから、高い金利のものも多いように見受けられるが、執行をどのように十分に確保していくつもりかという御質問と思われます。その点につきましては、先ほど中小企業庁長官が申し上げましたような厳重な通達を地方に流しまして、保証がない場合の損失、あるいは貸し出しについて信用調査審査等保証がつきますために簡略化されて軽減が見込まれる費用、あるいは担保の徴求及び管理のために要する費用等、安くなる要素が、保証がつくことにより確保される部分については、できるだけ引き下げるようにという通達を出しております。この通達に基づきまして、われわれの方としましては、全国財務局長会議とか財務局理財部長会議等がございますときにはしばしば注意を喚起して、金融機関にその趣旨が徹底するように努力しておるところでございます。
  18. 神崎敏雄

    神崎委員 答弁としてはそういう答弁しかできないと思うのですが、政府調査がやりにくいという理由で、信用保証つき金利がどうなっているかの調査は実際はやってないのですよ、内々聞いておられるか知らないけれども。そうでなかったらそういう具体事例は出てこない。  そこで、私は、保証協会を通じて借りた保証先企業に対して、アンケート調査などをやる気になればこれはすぐできると思うのです。この通達趣旨がどのように生かされているか、ぜひ保証先企業に対してアンケート調査等を私はやるべきでないかと思うのです。そうすると具体的なことができるのですが、こういうことをやる気があるかどうか、重ねて伺いたい。
  19. 吉田正輝

    吉田説明員 先生の御指摘の点は、たとえば先ほど具体的に引用されました金融機関の絶対金利水準がどうも高いように思われるということからの御疑問ではないか、このように推察いたします。その点につきましては、たとえば一一%というような例をお聞きいたしますとかなり一般の印象としては高いように感じられるわけでございますが、私が申し上げましたのは、それは保証がついておりましたときに一一%ということでございますから、保証がつかない場合にはそれよりももうちょっと高かったのではないか、そういう市中の貸出ケースではないかというふうにも考えられるというふうに申し上げたわけでございます。そういうことで、絶対金利水準につきましてはそれぞれの民間ベースがあると思われます。ただ、保証がつくということで貸し出しをしやすい、危険もないということで中小企業金融というのが円滑化されている、同時に、その分だけ民間金融機関負担が軽くなるわけでございますから、その分だけ金利が安くなってしかるべきものというふうには考えますけれども、絶対金利水準となりますと、いろいろとケースによって違ってくるだろうというふうに考えます。その他、執行状況については、十分注意してまいりたいと思っております。
  20. 神崎敏雄

    神崎委員 アンケート調査はやりませんか。
  21. 吉田正輝

    吉田説明員 アンケート調査につきましては、信用保証協会を通じまして、たとえば絶対金利水準みたいなものを調べるようなことはやっておるようでございますが、そういうことが可能かどうか、中小企業庁とも一緒に検討してまいりたいと思っております。
  22. 神崎敏雄

    神崎委員 中小企業庁長官、どうですか。
  23. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 保証つきの場合とそうでない場合とで幾ら安くなっておるかということにつきましては、全く同じ条件でありました場合に、それが保証つき保証つきでない場合とで比較しないと、幾ら下がったということが実はなかなかわからないわけでございまして、いまの先生のお引きになりました例も、相手の信用度によりまして金利が高かったり低かったりいたしますので、保証つきとそうでない比較という意味ではなかなか比較が困難でございます。そういう意味におきまして、保証協会を通じるアンケートによりまして、うまくその辺が解明できますかどうか、一遍保証協会とよく相談をいたしまして、うまい方法でそういった調査が可能なようであればやるような方向で検討したい、かように考えます。
  24. 神崎敏雄

    神崎委員 いまの御答弁でも明らかなように、信用保険法運用についても非常に不十分な点が多いのですね。そもそも政府が今回本改正案を出してこられた目的というのはどういう点にあったのか、話はやはりそこへ戻るわけです。どうですか、この改正案を出してこられた目的は。
  25. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 最近ずっと不況が続いておりまして、中小企業者の資金調達についてもいろいろと難関が多いと思うわけでございます。そういう意味におきまして、信用保証補完制度中小企業者の資金調達の面で大変に役立っておると思っておるわけでございますけれども、その場合に、信用保険公庫におきます保険の引受限度によりまして保証協会保証が行われていくわけでございますので、そういう意味で保険公庫の引受限度をどうするかというのは、常時私どもその実情を注目いたして、必要に応じて実情に合わしたような改定方を考えていかなければならぬと従来から思っておるわけでございます。  特に特別小口保険につきましては、最近の保険の引受状況が、百四十万円から百五十万円の引受件数が非常にふえてまいっておりまして、金額で申しますと、この五月の総体の引受額の中で約四割に当たるものが百四十万から百五十万の層でございます。ということは、相当頭打ち傾向が出てまいっておるのじゃないか、かように考えまして、そういたしますと、これを必要とする中小企業者の要望に、頭打ちという形で、こたえることになっておらないという意味で、この頭打ち現象を解消して枠の拡大を図る必要があろう、こういうふうに考えまして、特別小口につきましては今回引受限度の拡大方の御審議をお願い申し上げたわけでございます。  ただ、ほかの保険種別の保険につきましては、実情の方が、現在の企業ごとの引受枠に対しましてまだ相当余裕を残しておりますので、しかも今度の枠は昨年の春の通常国会におきまして限度の拡大をいたしていただいたばかりでございまして、両方の意味で、要するに相当まだ枠に余裕がある、こういうふうに考えましたので、今回は枠の拡大方については見送った次第でございます。
  26. 神崎敏雄

    神崎委員 余裕があるというのは、何に余裕があるのですか。保証額の総枠に余裕があるのか、それとも手続その他なかなか厳しくて、あっちへ行きこっちへ行きして断られて、結局はあきらめて銀行で借りざるを得ないとか、地方自治体で借りざるを得ないとか、保証枠が余っているのか、枠の総計が余っているのか、何が余っているのですか。
  27. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 私の御説明がちょっと舌足らずでございましたが、余裕があると申し上げましたのは、たとえば普通保険で申しますと、現在一企業者当たり五千万円まで保険で引き受ける、こういうことになっておるわけでございますが、それに対しまして、四十九年度の一件当たりの付保金額が五百八十八万円でございます。それから、ことしの五月の引受額が一件当たり六百五十万円でございまして、一人当たり五千万まで引き受けることができる限度に対しまして一人当たり六百五十万円ということは、まだ約四千数百万円残っておるという意味におきまして、この五千万という限度をさらに何千万とか一億とかいうように拡大する必要はまだないのじゃなかろうか、こういうふうに考えたわけでございます。  同じ意味で、無担保保険につきましても現在五百万円が一人当たりの引き受けの限度になっておりますけれども実績は、四十九年度が百九十二万円、五十年の五月が百九十五万円でございまして、約三百万円まだ余裕を残しておりますので、同じような意味で今回はこの五百万円の一人当たりの引受限度の拡大は見送った、こういう意味でございます。
  28. 神崎敏雄

    神崎委員 長官、それはやはり実際から見て机上論だと思うのですね。たとえば五百万円までの枠を許してやると言ったら借りる人は当然五百万円までいきたいのです、きょうびの貨幣価値の問題やら物価指数から見ても。それをなかなかそこまでいかないで、むしろ百万円ぐらいから、お願いしいろいろする中で、いまあなたが挙げた百九十五万円ぐらいのところまできたり、片一方は五千万のところを一割近い五百五十万、そのくらいのところまで抑えられて、それで数量的にそういうことになっているんですよ。もっとやはりいわゆる保証額といいますか、そういうものを実際上引き上げるということにしないと、断ったり削ったりしておったら何ぼでも数字は落ちてくるのです。  余談ですけれども、環境業界の保証額ですね、あれも、願書を出しても九十日ぐらいかかる。そこで、そこまでついていけないし、待っていられないから、あきらめてやめてしまうか、他のところに行く。だから、金はまだ余っておるのだ——余っておるのじゃなしに、手続や貸し出す期間に長い時間がかかるものだから、借りる人は本当に要るときに借りられないから、あきらめて地方自治体とかそこらあたりへ行くんですね。そして大蔵省自体は金は余っておるのだ。何か業界や企業者は金が余って借りにこないのだというような、帳面上はそういう形だというのですが、実際はそうじゃないのだ。それでまた、第三・四半期、第四・四半期で年間のものは終わっておりますからね。そこで、たとえば第二・四半期は割り当てを使ってしまったから、次の第三・四半期が来るまではストップだ、そのために九十日とか六十日待たされておるというようなやり方をしておるのですね。それと私はよく似たことだと思うんですよ、いま聞いておって。  そこで、聞きますけれども、私の方の党は七十五国会以来、特別小口保険の付保限度額を三百万円に引き上げることを提案してきていますが、この政府案は今度二百五十万円に抑えていますね。この理由は一体何か。三百万円にすればどういう不都合が起こるのか。二百五十万円と三百万円といったら、差は五十万円ですね。これをなぜ二百五十万円にされたのか。あともう五十万円を上げたらどうかと思うのですが、この二百五十万円に抑えられた根拠、三百万円にすれば何か不都合が起こる、こういうふうに見ておられるのですか。
  29. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 まず、私が先ほど申し上げました、この一件当たりの金額が低いということにつきまして、いろいろ運用の面でその担保とか保証人の問題とか保証協会がやかましいことを言って、そのために実績が低くなっておるのじゃないか、こういうふうなお話でございましたが、そういう点は十分改善するように従来も指導しておりますし、今後さらに、あるいは通達でも出しまして指導いたすようにいたしたいと存じます。これはそういった実際の保証運用の面におきます改善がまず必要であろうというふうに考えるわけでございます。  それから、保証につきましての期間でございますけれども、大体過去に取引のあります方ですと、二日ぐらいで保証は手続が終わっておりまして、新規に見えた場合でも大体七日か八日ぐらいで、担保等の設定の期間も入れましてそれぐらいで事務処理いたすように指導いたしておりまして、その点余り時間はかけていないというふうに私ども思っております。  それから、現在各府県とか市等でいろいろ地元の中小企業のための制度融資をやっていただいておりまして、私ども大変ありがたいと思っておりますが、この場合には大概通常の場合よりも安い金利でやっていただいております。ただ、大体この保証をつけることが条件になっておりまして、そういう意味で制度金融自体もこの保証の裏打ちによりまして実際は動いておる、こういうふうな状況だと私思うわけでございます。  今回の改正におきまして二百五十万円ということをお願いいたしておるわけでございますけれども、なぜ三百万にしないで二百五十万にとどめたかという御質問でございますが、一つは、先ほど申しましたように、この特別小口関係の実績が、平均で申しますとまだ百万円ちょっとでございます。そういう実情でございますので、二百五十万円というような拡大を行えば、大体現在の特別小口関係の要望を満たし得るのじゃないか、こういうふうに判断をいたしたわけでございます。  それからもう一つは、こういった一人当たりの枠を非常に大きく拡大した場合どういうマイナスがあるのかという御質問でございますが、特別小口は無担保保証人なしでございますし、無担保保険の場合は無担保保証協会保証するということでございまして、事故率が普通保険の場合よりも非常に高いわけでございます。もしこれを非常に大口化いたしますと、件数では少なくても、大口が多いとその保証額は非常にふくれてまいるわけでございますが、そこが特に大口のところでいろいろ事故が多うございますと、保証協会なり保険公庫経理面に非常に大きな影響が出てまいりまして、むしろ小口で利用しておられる方々に悪い影響を与えると申しますか、そういう面もございまして、やはり枠の拡大は、ただ大きければ大きいほどいいというわけにもまいらないのではないかと考えておるわけでございまして、その辺を総合的に判断いたしまして二百五十万円というように今回はお願いをいたした次第でございます。
  30. 神崎敏雄

    神崎委員 長官はそういう御答弁をされるというようにこちらも予想しておりまして、したがって、結論的に言われるといまの御答弁はやはり私は納得できないし、現状とは違うんだということですが、それは、私、昨日——ずっと前でなしにきのうです、島根県と鳥取県と富山県、この三つの県の信用保証協会に直接状況や意見を聞いたのです。その結果、第一に、現行百五十万円、今度二百五十万円ですが、これでは低い、これが共通した意見でした。これが第一ですね。第二に、鳥取と島根の両県ではすでに三百万円の小口保証制度を設けており、この利用率がきわめて高いということでした。それから第三に、富山県は、特別小口保険の限度額が引き上げられても県としては何ら不都合はない、こう言っており、さらに島根県は、特別小口の事故率は高くない、たとえ事故があっても引き上げるべきだ、こう言っているのですね。  このように、これは三県ですが、これだけではなしに、東京、京都、大阪などを初めとして全国地方自治体が、中小零細業者の要求に真剣にこたえようとしているんですね。もし政府もこの信用力、担保力の弱い中小零細企業の立場に立つというならば、わずかにもう五十万円引き上げて、せめて三百万円ぐらいにすべきではないか、こういうように思うのですが、これはひとつ次官と両方から伺いたい。この府県の実例もあります。これだけのことがなされ、そういう答えを得ているんですがね。
  31. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 確かに先生指摘のように、現在五十二ございます保証協会の中で、保証協会独自で信用保険公庫の引受限度以上に無担保、無保証人保証をやっている協会がございます。現在保険公庫の引き受けは、現行法では百五十万円でございますが、それに対しまして十六の協会がすでにそれを上回った無担保、無保証人保証をやっております。そのうち二百五十万円までやっておりますのが十協会ございますので、今度二百五十万円に拡大をいたしましても、まだあと六協会は三百万円までというふうなところが残るわけでございます。  ただ、現在保険で引き受けております特別小口保険制度は、従業員が製造業で五人、それから商業、サービス業の場合は二人といった零細企業に限って適用いたしておりますけれども、この保証協会が独自に三百万円までやっております場合の対象中小企業者は二十人、五人という拡大された層でございまして、ちょっとその対象の面が違うというような事情もあろうかと存じます。
  32. 神崎敏雄

    神崎委員 ちょっと次官から……。
  33. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 ただいま長官からも御答弁いたしましたが、先生のおっしゃられるように金額が多くなればよろしいわけでありますが、全体の枠の問題もありますし、またその対象範囲の問題もありますし、今回は百五十万を二百五十万に、いままでは五十万単位であったものをかなり大幅に引き上げたのでありますから、その点の努力もひとつ御理解いただきたいと思います。今後これでやっていただいて、また情勢を見きわめた後に、これが不適当なような情勢であるならば、また将来考慮するということで御了承いただきたいと思います。
  34. 神崎敏雄

    神崎委員 将来待つぐらいだったら、いまここまで言いませんがね。現状を、次官、もう少しやはり見なければいかぬと思うのです。特にいま長官も言われたように、二百五十万が十で、六つがこれをオーバーしておる。十六のうち、十だけは二百五十万で、六つはそれをオーバーして三百万を超えているということになれば、将来よりも、現状がこうであるから、この現状に基づいてやらなければ、いま大変なことだ。  そういう形で、先ほども時間の関係で事例は余り出さなかったですが、代表的なものを言うてもああいうものであり、しかもそれが無理でないということは、片一方では現在やっているのだ。なぜ政府はできないか。百五十万円を二百五十万円にしたことについては歓迎します、減らすよりはいいんだから。しかし、それならもう五十万円ぐらいふやしたら、ちょうどあとの六つのやっていることと並ぶわけですね。地方自治体とかそういうふうなところがやっているところに政府はいつも後追いしているわけですね。だから、本当にやるなら、せめてそういうふうにやっていただいた方がいいと思うので、再検討も含めてひとつ再考を要求したいと思うのです。  そこで、先ほども言いましたけれども、わが党はさきの通常国会において改正案を出しております。また今回も出す準備をしておりますけれども、わが党の案の改正点は、まず、特別小口の保険の限度額を現行の百五十万円から三百万円に、無担保保険の限度額を現行の五百万円から一千万円にそれぞれ引き上げなさいというのが第一です。第二には、都道府県知事は通産大臣に対して不況業種倒産関連企業への指定を行うように申し出ることができる、通産大臣はこの申し出を尊重しなければならない、こういうことにしているのです。政府の今回の改正案は、特別小口保険の限度額を二百五十万円に引き上げた点ではわが党の案に少し接近された、こういうことで歓迎をするということを言っているのですが、しかし、わが党案から見ても、今日の中小企業で当面している危機の深刻さから見たら、これでもまだ十分だとは言えないのですね。  三木首相は昨年の十二月十六日の本会議において、「特に中小企業などの弱い立場にあるものの動向についてわれわれは注目して、それに対する対策をきめ細かくやっていく」、こう述べられている。いつの場合でも、中小企業に対してはきめ細かくやるという。きめ細かくやるということは、実情に沿ったことをかゆいところに手が届くようにやることだと思うのです。ところが、そうじゃなしに、くつの上から足をかくようなやり方では、きめ細かいとは言えないわけですね。三木総理の公約がもし口先だけでないと言うならば、業者の要求にこたえるわが党の提案を当然すぐにでも実行に移してしかるべきだ、私はこういうふうに思います。  そこで最後に、いまの年末、年度末対策ですが、民間銀行においては、今度は大量の国債の発行が見込まれておりますから、こういう事情がありますので今後は例年以上に資金需要が逼迫するおそれがある、こういうふうに思うわけです。そこで、中小企業者にしわ寄せがかなりいくのじゃないか、この問題に対する適切な対策を機敏に、年末に向けてのこの時期に中小企業向け融資枠の追加を行うべきだ、またこれについては格段の措置を講ずべきであると思うのですが、これは次官長官に決意ある前向きの答弁をお尋ねして、質問を終わりたいと思うのですが、その答弁いかんによってはもう一回お尋ねするかもわかりません。
  35. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 まさしく神崎先生おっしゃるとおりでありまして、中小企業、一番弱いところに深刻な不況の影響が来るわけでありますから、総理がお話をされたというような趣旨で、いままで議論のありました最低の零細企業といいますか小口資金等も、今年度は昨年度より倍額の枠をとり、そういう意味で一番弱いところにできるだけ手厚い施策ということで、それが完全な理想に到達しておるかということには議論があると思いますが、そういう基本的な考え方に現実をより一歩でも近づけるように政府努力をしてきたと考えるのでありますが、先ほどから先生の御指摘のありましたように、今年の年末は昨年よりもはるかに深刻な問題が予想されますし、また御指摘のとおりに、今度は公債発行によって民間金融中小企業の皆様方にしわ寄せをされるというような心配等も重々ありますので、これらのことを十分念頭に置いて、中小企業の皆さん方に、できる限りの手厚い金融措置によってこの年末を突破できるように、今後関係当局を十分に指導してまいりたいと思います。
  36. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 特別小口保険と無担保保険の限度の引き上げの件につきましては、先ほど来御説明申し上げましたように、最近の利用の実情と法律で定めております引受枠の余裕等の現状等を総合的に勘案いたしまして、特別小口保険につきまして二百五十万円という引き上げ方を政府としましては案として決めまして御提案申し上げたわけでございまして、今回につきましてはぜひこの案で御審議をお願い申し上げたい、かように思っておるところでございます。  それから、不況業種指定に当たりまして、都道府県知事の申し立てのお話がございましたけれども不況業種は現在全国ベースで指定をいたしておりまして、地域地域の指定という制度をとっておりません。しかし、それぞれの地域からの実情に応じました知事の要望等は十分実際上お話を伺いまして、指定に当たりまして十分しんしゃくをいたしております。運用の面でそういった点は十分配慮されておると思いますので、特に法律にそれを規定する必要はないのじゃなかろうかというふうに私は考えております。  それから年末金融の問題でございますが、今年度、政府系三機関は二兆五千億円の融資枠で発足をいたしました。昨年は二兆円でございました。さらに先般四千八百億円の枠の追加を決定いたしましたので、大体年間で三兆円になるわけでございます。昨年より相当ふえた形になっておりますので、当面これで今後の推移を見守りまして、その後の情勢によりましてまた適宜この対策は考えてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  37. 神崎敏雄

    神崎委員 最後に一言要望しておきますが、いま次官長官から一応前向きに対処される御答弁をいただいた。この年末に中小企業が、そういう運用面の不手際というか、あるいは運用面のことで年が越せないで倒産するとか、あるいはよく新聞に出るように借金のために一家心中が起こるとか、ただでさえ最近そういうものがふえているときですから、年末にかけてこの状態でいったらそういう悲しい事件もたくさん起こるのじゃないか、私はこういうふうなことも案じますから、ぜひともここの委員会だけの答弁じゃなしに、本当にきめ細かく下まで関係筋に早速手を打っていただいて、そういうことのないように、弱い者、力のない者、そういう者から優先して必ず保護していただきたい、こう思うのですが、最後に、次官で結構です、そういうふうにやっていただけますか。
  38. 渡部恒三

    渡部(恒)政府委員 いま神崎先生から、不況の中、年末を前にして非常に苦労していらっしゃる中小企業あるいは零細企業者に対する温かいお言葉をちょうだいいたしまして、私ども先生のお気持ちと全く同じ気持ちで、今後許された範囲の中で最大の行政効果を上げることに努力をして、そういう犠牲者を出さないように全力を尽くしてまいりたいと思います。
  39. 山村新治郎

  40. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回のこの法案が出されましたその背景としまして、第四次不況対策の一環として、現行の百五十万から二百五十万に引き上げるということにしておられるわけであります。そこで、この特別小口保険の対策企業者であるそうした小企業者の資金需要の実態というものにつきまして、中小企業庁としてはどのように把握をし、受けとめておられるか、まず長官からお伺いしたいと思います。
  41. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 昨年度、高度成長から一転して総需要抑制、金融引き締めに転じまして、各企業は大幅な操短等によります縮小した生産等の形態に転換をしたわけでございます。そこで、昨年度はいわゆる減産融資と申しますか、滞貨融資と申しますか、そういうものの資金需要が非常に増大をいたしまして、たとえば政府系の三機関に対します資金の申し込み状況でも、四十八年度に比べまして四十九年度は四割、五割という増加の申し込みを見たわけでございます。その後、依然として不況は長引いておりますけれども、在庫調整等は漸次進捗を見ておりまして、在庫水準はだんだん減少の方向に向かっております。そういう状況でございまして、いわゆる後ろ向きの減産資金につきましても昨年ほどの圧力はなくなっておるという状況でございます。  それから一方、将来の、いわゆる前向きのと申しますか、生産能力あるいは販売能力等を拡大するための設備投資資金需要あるいは増加運転資金、こういうものにつきましては、こういった二割以上の操短をしておるという状況でございますので、そういった前向きの資金需要につきましては冷え込んでおる状況でございます。こういう状況を反映いたしまして、ことしの四月以後の資金需要は、前年度対比でほぼ横ばい程度に推移してまいっておりますが、この七、八、九月ごろで去年の申し込みに比べましてほぼ四、五%増という申し込み状況でございます。  そういう意味では、やや鎮静の傾向が見られるということが考えられますが、ただ、今後の情勢を考えますと、一つは国債なり地方債の大量の発行によりまして金融機関貸し出しが従来のようにずっと貸し出してもらえるものかどうか、その辺資金需給が窮迫する懸念はないかということと、もう一つは、中小企業の耐久力もだんだん限界が来つつあるように思われるわけでございまして、そういう意味での滞貨金融的な後ろ向きの資金需要が年末に向かいましてまた相当出てくるのではないか、こういうふうに考えられるわけでございまして、これから年末に向かいましては相当中小企業の資金需要は強くなって、資金関係は繁忙という方向に向かうのではないか、こういうふうに見ております。
  42. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま長官もおっしゃったように、今後資金需要はさらに増大してくる、しかも公債発行等のそうした条件もありまして、どうしてもこうした政府系あるいは保証協会、こうしたところに来るということが予想されるわけです。いままで相当この不況の中で耐えてきておりますし、耐久力がない、これは長官もおっしゃったわけでありますが、そういう厳しい情勢のもとにますますそういう需要はふえてくると思うのです。この九月の情勢を見ましても、前年同月比からいけば五%ぐらいの増であるということをおっしゃっているわけですが、先ほどもおっしゃったように四十八年から四十九年の間に四、五割の増大がある。いわゆるげたをはいておりますから、依然としてそうした資金需要の状態というものは増大をしてきておる、それに対する対処をしなければならないわけであります。  この限度額をなぜ二百五十万円にするかという理由ですが、国民金融公庫の無担保融資は三百万円なんですね。特別小口保険の限度額は、今回百万円上げたとしても二百五十万円、なぜ同じように三百万円にしないかという問題ですね。これは圧倒的に、せめて三百万円にしてもらいたいという声が強いわけです。なぜこれは三百万円に踏み切らなかったんですか。同じ改正するなら、みんなが喜ぶような——一歩前進という点では評価できますが、これだけ声が強いわけでありますから、なぜ三百万円にしないか、この点につきまして長官からお伺いしたいと思います。
  43. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 特別小口保険の一件当たりの平均利用状況でございますけれども、昭和四十九年度の平均が九十六万九千円でございます。それから五十年の四、五月で百二万円でございまして、百五十万円の枠に対しまして平均ではまだ百万円といったような、三分の二ぐらいの状況になっております。ただ、金額別にそれの利用状況を見てみますと、百四十万から百五十万円のところで全体の利用額の四四%が集中をいたしておりまして、そういう意味では、百五十万円で頭打ちの傾向がある。もっと高く利用したいけれども、百五十万円という限度のためにここで頭打ちを食っておる、こういう現象が見られましたので、今回二百五十万円まで百万円の拡大方をお願いいたした次第でございます。  なぜ三百万円まで引き上げないかという御質問でございますけれども、利用の平均は百万円でございまして、そういう実情から総合的に判断いたしまして、限度が二百五十万円であれば大体利用される方に不自由をかけないで済むのじゃないか、こういうふうに実は判断をいたした次第でございます。  国民金融公庫の無担保融資は御指摘のように三百万円までということでいたしておりますが、国民金融公庫の無担保融資をいたします中小企業者範囲は、資本金一千万以下あるいは従業員百人以下、こういう層を対象にいたしております。ところが、この保険の方の無担保特別小口、つまり無担保、無保証人によります保証をし、これを保険に引き受けるという対象範囲は、従業員が製造業で五人、商業、サービス業で二人以下、こういういわゆる小企業の層でございまして、国民金融公庫融資対象である中小企業範囲はそれよりずっと高い層でございます。そういう面もございますし、この面は一概に同じようには論じられないのではないか、かように考えた次第でございます。
  44. 近江巳記夫

    ○近江委員 利用の平均額が百万円だ、百四、五十万が相当多い、こういうお話でありますが、これはいわゆる決定をするときにそこまで抑え込むわけですよ。申し込みは百五十万いっぱい出しているわけですが、結局いろんなことで抑え込んでしまう。皆さん方が力ずくで抑え込んだ数値ですよ、一つは。  それからもう一つは、一件当たりということをおっしゃっておるわけですが、これは一企業当たりと一件当たりはイコールですか、その点どうなんですか。
  45. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 これは全体を件数で割りましたものでございますので、一企業当たりというわけではございません。
  46. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういうように一企業当たりイコール一件ということじゃないわけでありまして、筒いっぱい百五十万円皆使っているわけですよ、実際上。その百万円を上げたことを何も私は悪いとは言っていない。それは一歩前進でよろしいと言っている。だけれども、現在のこうした諸物価高騰の折から、人件費も上がってくる。いろんな点で、田中内閣発足以来、特に狂乱物価が起きまして国民生活が大変な厳しい状態に置かれておりますし、特に中小弱小業者は苦しんでいるわけです。ですから、そういう社会情勢の変化ということもあるわけですから、百万円ぐらいのスライドでは足らないということを言っているわけです。国民金融公庫の三百万ということを長官は、範囲が違うから三百万まで、やはりここには差があってしかるべきじゃないかという趣旨のお話をされたわけですが、それでは国民金融公庫だって上げればいいのですよ。政府の立場からすれば、それは上げるにこしたことはないということをおっしゃるかもしれませんが、しかし現状ということをよく認識されて、少なくとも最低三百万円に引き上げる、こういう努力をひとつしていただきたいと思うのです。  それから、無担保保険の限度額も五百万円でございますが、これを今回上げないのですね。上げない理由は何ですか。
  47. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 無担保保険の方は、現在の利用状況で見ますと、四十九年度が平均百九十二万円でございます。ことしの五月が百九十五万円でございまして、五百万円という現行の枠に対しまして相当まだ余裕があるというふうに考えられます。  それからもう一つ、特別小口のいわゆる無担保、無保証につきましては、政府保険公庫が引き受けます限度超の保証を行っておる協会が十六協会もあったわけでございますけれども、この無担保関係につきましては、五百万円の限度を超えた無担保をやっておるという保証協会は一件もない状況でございまして、無担保につきましては、いまの利用状況からしますと、この五百万円で十分まだ利用される余裕が残っておる、こういうふうに考えましたので、今回は拡大方を見送った次第でございます。
  48. 近江巳記夫

    ○近江委員 これも先ほどの二百五十万引き上げの特別小口と同じ理由をおっしゃっているわけですね。平均が百九十二万あるいは百九十五万である。これだって何も一件当たりイコール一企業じゃないわけですよ。やはり一つはそういう見方を政府としてはしておられる。ですから、一企業当たりでは五百万いっぱい借りておるところが何ぼでもあるわけですよ。ところが頭打ちになっている。これだって、特別小口保険をお上げになるわけですから、少なくとも五百万を八百万ぐらいに引き上げる、やはりこのぐらいの姿勢があって、なるほど政府中小企業に対しては配慮しているなと、そううなずくことができるわけです。全然さわりもしない。さわるのがこわいのですか。皆さん方が寄ってたかって、五百万円申し込んだって頭を押さえて、そして下げる。しかも、その数値では一件当たりということを出してくる。一企業当たりのデータが出ていないじゃないですか。この点におきましても八百万円程度に引き上げるべきだと強く私は主張したいわけであります。  したがいまして、特別小口保険を少なくとも三百万、そしてこの無担保保険については八百万に引き上げる、これにつきましてもう一度、長官としてはどういうお考えでおられるかお聞きしたいと思うのです。
  49. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 たとえば特別小口で見ますと、現在は百五十万という限度でございますので、無理やり百五十万に抑えつけているのじゃないか、その結果が平均が低いのじゃないかという御質問でございましたが、金額刻みで見ました利用状況で見ますと、百万円以下というのが利用件数で六三%を占めております。これはことしの五月の実績でございます。それから無担保保険の場合には、三百万円以下という利用が全体の件数の九〇%をことしの五月で占めておりまして、そういった状況からかんがみまして、特に無担保保険につきましては、五百万という限度はまだ相当余裕を持っておるのではないか、こういうふうに考えたわけでございます。  ただ、特別小口につきましては、先ほど申しましたように、百五十万のところに張りついておるものが件数でいたしますと三割ございまして、金額で四四%ございますので、これは枠がやはり頭打ちで相当抑えた形になっておる、こういうふうに考えまして、その拡大方を図ったわけでございますが、余り大きくいたしますと大口の利用がふえまして、それが事故等の場合にはやはり協会あるいは保険公庫の経理に影響する面もございますので、無制限にとは申しませんが、大きくすることだけがいいということにも言えない面もございまして、そこらを総合判断いたしまして今回の改正案になった次第でございまして、一応私どもとしては、この政府の御提出申し上げました案で御了解をいただきたい、かように考えておる次第でございます。
  50. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうした利用率のパーセンテージをおっしゃったわけですが、それだって必然的に、百五十万あるいは五百万という天井からそれ以下に抑え込む、そういう中からつくられた数値であって、そんなパーセンテージは何の意味も持たないものであります。それよりも、実際に第一線で苦しんでいる需要者の声を反映していく、これが血の通った行政なんですよ。すぐに皆さん方、頭がいいのかどうか知りませんが、パーセンテージがこうだ——それはつくられたものです。もっと需要者の声を聞いてもらいたい、それを申し上げておきます。  それからこの信用保証協会への基金補助について、五億円の増額を図るということを聞いておるわけでありますが、この程度の補助で十分であるのかどうか。積算の基礎等は一体どういうようになってこの五億円という数字が出てきたのですか。この点についてお伺いしたいと思います。
  51. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 私ども基本的には、信用保証協会政府機関ではございませんので、その出損者である地方庁あるいは金融機関というものがさらに出捐をふやしまして、それによりまして信用保証協会の基盤を強化していくということが必要であろうと考えておるわけでございますけれども、今回、いわゆる倒産関連保証と申しますか、不況業種指定制度を活用いたしまして、現在四十四、細かく申しますと数百の業種不況業種指定をいたしまして特別の保証を実行いたしておるわけでございます。こういった国の政策によりまして、危険な保証と申しますか、これを保証協会にやっていただくという面の意味合いもございまして、保証協会の経営基盤の強化のために補助金を出そう、こういうことにいたした次第でございます。  過去の例で申し上げますと、四十六年の第一次のドルショックのときには一億円補助金を出しました。四十八年の第二次のドルショックのときには二億円出したわけでございます。今年度は、こういう不況が長引いておる状態でもございますので、年度初めに四億円予算に計上いたしましたが、その後どんどん倒産関連保証が増大をいたしておりまするので、さらに五億円を追加いたしたということで、合計九億円になっておりまして、まだ保証協会に配分をいたしておりませんが、近く配分をいたしたい、こういうように考えております。積算と申しましても、そういった状況から出た数字でございますので、非常に細かい積算があるわけではございません。
  52. 近江巳記夫

    ○近江委員 この五億円を出したということにつきまして、これは非常に結構なことです。結構なことだけれども、同じ出すのだったらもっとお出しになったらどうか。いつも防衛費の問題等も出てくるわけですが、ファントム一機で何十億するか、それをお考えになれば、少なくともこれだけの膨大な中小零細企業を頼りにしている保証協会でしょう、それをわずが五億円。やったことは非常に結構なことですよ。だけれども、これはもっと積み上げの努力をやるべきじゃないですか。こういう追加をしてこれでいいということは何も言えないわけでありますし、もっと積み上げればもっといいわけですから、今後さらに情勢を見てそれを要請なさるかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  53. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 今年度は府県からの出捐が大体四十億を超えるのじゃないかと思っております。それに対しまして国の方は九億円を出すことになるわけでございまして、私どもとしては相当補助金としては踏ん張ったつもりでございますが、これで十分かとおっしゃいますれば、それは多い方がいいわけでございまして、そういう意味で来年も引き続きこれを交付するようにいたしたいと考えまして、五十一年度予算にさらに補助金を大蔵省に要求いたしておるところでございます。
  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは大蔵省という厚い壁もあるし、むずかしいことはわかりますが、少なくともわれわれもこれだけバックアップしておるわけでありますし、やはり長官が先頭を切って、強い要求をまず第一次的にやってもらわないといけませんよ。中小企業の総予算についてはほとんど横ばいにちょっと毛が生えたくらいですね。これを特に来年度と言わずに、また状況を見まして緊急要請もしていく、こういう気持ちで今後ひとつ努力をしていただきたい、これを強く要請いたしておきます。  それから、保険料率あるいは協会保証料引き下げ、これにつきましてはいつも本委員会でも出るわけでございますが、それについての努力はなさっておりますか、また、見通しはどうですか。
  55. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 中小企業の予算はほとんど横ばいではないかというお話でございましたが、昭和五十年度はたしか二七%アップの予算を計上いたしております。  それから保険料保証料引き下げ状況でございますけれども、四十八年度から年々保険料引き下げておりまして、五十年度は四十九年度に対しまして四%の保険料引き下げを行いました。これを受けまして保証協会の方も、府県の財政援助等々も総合的にいただきまして、ことしは、去年まで全国平均で一・一八%でございました保証料を一・一一%に、〇・〇七%引き下げを図っております。この二、三年毎年引き下げてまいっておりますが、さらに今後とも引き下げの方向に向かって努力をいたしてまいりたいと考えております。
  56. 近江巳記夫

    ○近江委員 この点につきましてはさらにまた努力をしていただきたいと思うわけであります。  それから、不況業種指定及び解除なさった状況につきまして簡潔にお答えいただきたいことと、また、この指定解除された業種、たとえば印刷インキ製造業、合成染料製造業等の最近の状態はどうであるかという問題、また、今後指定しようとされておる業種にはどういうものがあるか、最近されたように聞いておるわけでありますが、その後どういう業種をさらに追加なさろうとなさっておるか、この点につきましてお伺いしたいと思います。
  57. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 昨年から不況業種指定を行ってまいっておりますが、現在までに不況状況から脱したということで不況業種指定を解除いたしました業種は、大分類で申しますと七業種でございます。これらの業種はその後は順調に不況から脱出して推移をいたしておる、こういうふうに判断をいたしております。  現在指定中のものは四十四業種でございます。細目で計算いたしますと二百四十三業種ということになります。この二百四十三業種に属します中小企業の数が大体七十五万でございまして、特に製造業で見ますと三十二万でございまして、製造業の約四割が現在不況業種指定をされておる、こういう状況でございます。  具体的ないま御指摘のございました業種状況につきましては、課長から御説明申し上げます。——ちょっといま先生の御指摘のごさいました業種の具体的な資料を手元に持ってまいっておりませんので、後刻先生の方に御説明に上がりたいと存じます。  総体といたしましては、ただいま申し上げましたように順調に不況から脱出しつつある、こういうふうに判断をいたしております。
  58. 近江巳記夫

    ○近江委員 総体としては順調にいっておるように思うということでありますが、それは大ざっぱなつかみ方でありまして、なかなかそうはいっておらないのが状況じゃないかと思うのです。特にこういう指定を外した業種につきましてはひとつさらに綿密な調査をしていただいて、そうした苦境に陥っておる企業につきましてはさらに救済の手を差し伸べることができるように十分な努力をしていただきたい、このように思うわけであります。  それから、今後指定しようとなさっておる業種にどういうものがあるのですか。この答弁が抜けていますよ。
  59. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 現在の指定業種指定期限が十二月までとなっておりますので、十二月に洗いがえをしたい、かように考えまして、新たに追加すべきものがあるかどうか、現在各担当原局に照会中でございまして、まだ手元にまとまっておりません。十二月の指定がえのときに洗いがえをいたしたい、かように考えております。
  60. 近江巳記夫

    ○近江委員 特にきょう先ほどからも話が出ておりましたが、赤字公債発行ということで民間金融機関に対しましても非常に要請が来ておる。そういうことで、いまから各企業に対しても民間金融機関は防衛線を張りまして、非常に窮屈になりますよ、こういうことを言っておるものですから、心理的にも非常にみんな心配しておるわけですね。そこへ持ってきて各地方自治体も非常に苦しい。こういうことで、地方債等のそうした依頼も民間機関に対して要請がある。そういう中で年末を迎えようとしておるわけであります。政府はいわゆる第四次不況対策の中に四千八百億の追加もいたしておるわけですが、少なくともまず第一義的に言えることは、政府系金融機関に対して一番みんな頼ってくるのじゃないか、このように思うわけですが、昨年でも追加は四千五百億でしたか、なさっているわけですね。こういうような状況の悪い中で、四千八百億を加えたからそれでもう万全の手を打った、そういうお考えなんですか。
  61. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 今年度は、政府系三機関につきましては年度初めの融資枠を昨年度よりも五千億ふやしまして、二兆五千億で発足をいたしたわけでございます。さらに今回四千八百億の追加を決定いたしたわけでございまして、総体として約三兆円近い融資枠になるわけでございます。一方、資金需要の方は、これまでのところはいわゆる前向きの設備資金なり増加運転資金の需要は非常に鎮静化しておりまして、余り多くない。一方、後ろ向きの資金需要の方も、在庫調整の進展等によりまして、従来ほどには増加してくるという状況ではございません。そういう意味におきまして、資金需要はやや鎮静化しておるというのが実情でございます。  ただ、今後国債の発行あるいは地方債の発行ということによりまして金融市場がどういった需給状態になりますか、その辺が懸念されないでもないわけでございまして、一応三兆円の融資枠で何とか年末はしのげるのじゃないかというふうには考えておりますけれども、さらに資金需給の状況を注意深く見守りまして、その状況によりましてさらに対策が必要な状態があればその際検討する、こういうことで今後の推移を注意深く見守ってまいりたい、かように考えております。
  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは年末だけではなく、年度末融資も過去にもやっておるわけでありますし、これもやはりセットにして、今後の状況を見守って最大の手をひとつ打っていただきたい。なかなか不況もそんな簡単に脱出できるものじゃないと思うのですね。第四次不況政策だって、あれがどれだけ中小零細企業に潤いがくるか、その辺のことは中小企業庁として見通しておりますか。
  63. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 金融面と同時に、中小企業者の要望は仕事が欲しいということでございます。ところが、需要項目で申し上げますと、輸出も世界的な不況によりまして不振でございますし、個人消費もなかなか盛り上がりが見られない。設備投資も、操短率が二割、三割という状況でございますと余り投資意欲がないわけでございまして、結局財政需要と申しますか、そういった国の調達関係に非常に期待をする面が強いわけでございます。  そこで、今回第四次不況対策におきまして公共事業の追加、これが事業量にいたしまして約八千六百億円見込んでおります。今回の公共事業の場合に、内容を見ますと、その半分は地方によって実施されます事業に対する補助事業でございまして、地方分が約半分でございます。地方で行われますこういった公共事業は、中央で行いますものと違いまして小口の工事が多いわけでございます。そういう意味で、相当中小企業に回る比率は高いのじゃないかと思っております。  たとえば四十九年度につきまして、抜き取りでございますけれども、地方庁の発注分についての中小企業向けの実績調査いたしましたところ、六六%という数字が出ております。したがいまして、今回の公共事業の追加の場合、半分が地方分であるといたしますと、その相当部分中小企業に回ってくるのではないかと考えております。残りの中央で実施いたしますものにつきましても、ダムの補償費でございますとか、高速道路の土地の買収費といったものを除きましたいわゆる工事分につきましては、各省庁にお顧いをいたしまして、今年当初に決まりましたいわゆる三三%という中小企業向けの官公需比率を下がらないようにしていただきたい、こういうお顧いをいたしておるところでございまして、地方分と中央分を合わせまして相当に中小企業に回るものというように期待をいたしております。  それからもう一つは、住宅金融公庫融資に七万戸追加をいたしまして、これで事業量として約六千億円の事業と申しますか、需要を期待いたしておるわけでございます。特に、一戸建ての住宅の場合にはほとんどが中小の請負業者と申しますか、建設業者がその仕事を受けております。そういう状況から見ますと、今回の六千億円の住宅関係の新規需要は、これもほとんど中小企業に回るというように期待をいたしておりまして、そういう意味合いで、今回の第四次の不況対策におきます各種の追加されました事業は相当に中小企業に回るものというように期待をいたしておるところでございます。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 地方は確かに官公需につきましてもかなりの配分をやっておりますが、政府もやっと三三%にきた。私はもう予算委員会初め、実態をもってやかましく言いまして、やっと三三%にやってきたというようなことで、これにきたから何も努力してないとは言いませんけれども、さらに法律に基づいて長官のところでやっておられるわけですから、各省、各公社、公団にもっと強い要請をして、私たちが主張しておりますように、五〇%ぐらいの線に一日も早く引き上げるように努力していただきたいと思うのです。  地方にいたしましても、六六%ではまだまだ低過ぎますよ。これももっと要請をやっていただきたい。住宅公庫にしましても、中小企業とおっしゃっても、最近はプレハブとか、そういう大手がたくさん来ておるわけですよ。ほんの手間賃というような仕事もあるわけでございまして、一戸建てすべてが中小零細に回るかというとそうじゃないわけですよ。そういうことで、そういう認識のずれもあるわけでありますから、うんとひとついま私が申し上げたような点をさらに関係各省に長官の方から要請していただいて、中小零細企業仕事が回るよう十分な努力をしていただきたいと思うのです。  それから、もう一度年末金融の問題に入るわけですが、政府としては民間の方に対してもかなり要請をなさっておられるわけでありますが、きょうは大蔵省からも来ていただいておるわけでありますので、民間金融機関としてはどういう対処をなさる準備をなさっておられるか、それについてお伺いしたいと思います。
  65. 清水汪

    ○清水説明員 民間金融機関の年末対策といたしましては、全国銀行におきましては、特に今年度の目標といたしましては一兆七千五百億円という目標を立ててございます。相互銀行におきましては七千二百億円、信用金庫におきましては一兆五百億円という目標を立てまして、年末金融努力するようにということでいたしております。これを合計いたしますとちょうど三兆五千二百億円になりまして、昨年に比べまして約一一、二%の増加というような状況になっております。
  66. 近江巳記夫

    ○近江委員 ところが、これだけ用意なさっておるということでありますが、昨年のいわゆる実効率は何%ですか。
  67. 清水汪

    ○清水説明員 例年こういう努力目標を立てましてやってきておるわけでございますが、昨年の場合の実績がわかっておりますところでは、全国銀行といたしましては、目標額に対しまして約六〇%というような実績になっております。相互銀行、信用金庫におきましてはもう少しこれが高くなっておりまして、約八割ないし八割余というような達成率になっております。  ただ、この点につきまして、去年とことしとの全体の状況の違いということも今後考えられるところでございまして、御承知のように、昨年は窓口規制というような全体としての総需要抑制策の中の金融引き締め政策の過程にまだございました。しかしながら、本年の場合には、大銀行につきましては現在まだ窓口規制ということで金融政策の補完が多少残っておりますけれども、地方銀行以下におきましては事実上そういった考え方をとっておりません。むしろ量的にも金融の緩和を進めて、金利引き下げと並んで金融面からは景気の回復の促進に資そうというような政策態度をはっきり打ち出しておりますので、そうした全体の背景の違いということもことしにおきましては十分考えられるわけでございますので、単純に実績率というようなことで考えるよりは、やはり前向きにできるだけ目標を立てて努力をしていただくというところに私どもとしては重点を置いていきたい、かように考えております。
  68. 近江巳記夫

    ○近江委員 確かに昨年と大分状況も変わってきておるわけでございますが、しかし達成率という点からいけば、これは歴然として残っておる数値でもあるわけです。そういう点で、これだけの用意をなさっておられるわけでございますから、ひとつ十分に資金が回るように、通達なりいろいろな機会によく指導をしていただきたい。これは強く要望いたしておきます。  それで、先ほどもちょっと申し上げたのですが、いわゆる赤字公債を民間が抱かされるとか、地方債を抱かされるとかいろいろなそういうことがございまして、非常にことしは苦しいですよというようなことを企業は言われているわけですね。そういう点で非常に心理的な心配があるということを先ほど申し上げたわけですが、その辺の問題につきましては心配ありませんか。この用意なさったことについては全部達成されますか。
  69. 清水汪

    ○清水説明員 そういう御懸念の向きが一部にあるやに私どもも聞いてまいりました。したがいまして、そういうことがあってはいけないというふうに考えておりまして、これは日本銀行とも十分その点連絡をとっておるわけでございますが、そうしたことに対しまして、たとえば日本銀行といたしましても準備預金率の引き下げというような手も打っているわけでございます。あるいは各種の会議等の機会を通じまして、それぞれの民間金融機関に対して、マクロ的にはもちろん金融調節全体としてうまくやるわけですけれども、なお個々の事情に即しましても十分きめ細かい配意をする用意があるというような趣旨を徹底するようにいたしております。そうした裏づけの中で各金融機関としては最大限に努力をしていただきたい、そのように私どもとしては期待しているわけでございます。
  70. 近江巳記夫

    ○近江委員 昨年とは状況が変わったとは言いながら、選別で非常にはねのけられる、そういう苦しみがあるわけであります。選別という問題につきまして、どういう指導をなさっているか。それから、保証協会等で保証してもらって、民間で代理貸しということになるわけでありますが、そういう中でも歩積み両建てのこうした悪弊がいまでも要求される。貯金、積み立てをやれというようなことがあるわけですね。私は個々的にはいま出しませんけれども、そういうようなことが行われておるということにつきまして、どういうように今後指導なさるか。選別の問題と、そうした強制預金といいますか、積み立てといいますか、そういうことの問題につきまして、大蔵省としてはどういうように今後対策をとられるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  71. 清水汪

    ○清水説明員 前段の御質問でございますが、個々の融資におきまして、いろいろの信用度とかあるいは企業の経営状態というようなものによりまして融資の判断が行われるということは、これはある意味では当然のことかと思います。しかしながら、私どもといたしましては、やはり中小企業問題というものは非常に重要であるという前提に立ちまして、個々の金融機関におきましても、中小企業に対して不当にしわ寄せするようなそういう融資態度はよくない、中小企業に対しましては、ことにこういう不況の際でありますので、なるべく一緒になってその経営相談に応ずるぐらいの心構えで中小企業金融に努めていただきたい、そういうふうにしてこの不況を克服するように努力していただきたいというように要請しておるわけでございます。  それから、そうしたことと相通ずるわけでございますが、御指摘の歩積み両建て問題につきまして、遺憾ながら御指摘を受ける状態にあるわけでございますが、なお改善のための努力を要請しております。これは従来からも申し上げておりますけれども、定期的に報告を徴するとか、あるいは検査の際に特に重点を置いてチェックするとかいうようなこと、あるいは顧客に対しまして通知でその関係をはっきりさせるように努力しなさいというようなことを含めまして、過当な歩積み両建ての自粛の徹底につきまして従来も指導いたしておりますが、今後とも強力に指導していきたいと思っております。
  72. 近江巳記夫

    ○近江委員 既往債務の償還猶予措置につきまして、長官は、政府系金融機関につきましてもできるだけそのことを徹底しておる、後は申し出てもらいたいということをおっしゃっておられるわけですが、実際申し出ると文句ばかり言われるというようなこと、これは当然責任の立場上、いろいろ聞いたりむずかしいことを言うことも気持ちはわかるわけでございますけれども長官がそのようにお約束になっていらっしゃるわけでありますから、これは徹底してもらいたい。  それから民間につきましてもこれは同じことが言えるわけです。民間につきましては、政府としてはどういう要請をなさっていらっしゃるか。また、その要請に対して民間はどういう態度をとっていらっしゃるか。両者からお伺いしたいと思うのです。
  73. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 政府系の三機関につきましては、特に返済について、資金繰りが困難で返済が困難である、こういう中小企業の方につきましては、個々に事情を伺いまして、極力弾力的に配慮をするように、こういう指導を繰り返し指示いたしております。先般の第四次の不況対策におきましても、これがさらに閣議決定を見ましたので、それを受けまして、政府系三機関並びに振興事業団の理事長を通じて、都道府県に高度化資金の返済猶予につきましても同じく通牒いたしたわけでございます。  実績は、相当に返済猶予が増加いたしておりまして、たとえば昨年度が年間三万件、約一千六百億円の返済猶予をいたしておりますが、今年度は上半期だけで件数で二万件、金額で千三百億円の返済猶予を行っております。さらに今後とも弾力的に取り計らうように三機関を指導してまいりたいと思います。  なお、市中金融の関係につきましては、大蔵省の方から御答弁いただくようにいたしたいと思います。
  74. 清水汪

    ○清水説明員 民間の問題についてでございますが、まず基本的には、先ほど来申し上げましたように中小企業金融について誠意を持って、あるいは親身に努力するという態度が基本になるべきであろうと思っております。また、具体論といたしまして、民間金融機関におきましては、たとえばあるケースが延滞になりそうだというような場合に、むしろそれは一たん返すかわりに、その見返りのものを貸すというような現象というものがかなりあるようにも承知いたしております。  私どもといたしましては、やはり個々の事情にはなるべく注意を払うようにいたしておりまして、その点につきましては通産省を初め関係省庁とも連絡をとっているわけでございますが、そうした個々のケースの破綻の起きないように、やり方といたしましては、期限を延長するという方法もございますでしょうが、やはり最近におきましてはかなりの後ろ向き資金の貸し出しということも行われておるように思います。そうした形で、全体といたしまして中小企業金融に最善を尽くすというように指導をしていきたいと考えております。
  75. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府系の場合は、中小企業専門金融機関でありますから、かなりいろいろな不平が多いわけですが、まあやっていく面がいい面もあるわけですね。ところが民間におきましては、中小企業専門金融機関である相互銀行以下のそういうところはまあまあ比較的やっておると思うのですが、都市銀行に至りましては、いま課長さんもおっしゃたわけでありますが、全体としては中小零細企業に対しては非常に冷たいわけですね、そうおっしゃっておられても。だから、大企業オンリーで取引しておって、片手間に中小企業をやっておるという感じがどうしてもぬぐえない。特に都市銀行につきましては、中小企業についてはもっと愛情を注げと、いま課長がおっしゃったようにこれはひとつ徹底して指導していただきたいと思うのです。この点どうですか、お願いできますか。
  76. 清水汪

    ○清水説明員 先生の御趣旨は十分わかりますので、私どもとしてもさらにその御趣旨を踏まえまして適切に指導をいたしていきたいと思います。
  77. 近江巳記夫

    ○近江委員 民間の相互銀行以下の中小金融機関も、いま都市銀行で言いましたけれども、何もいいことないわけですよ。ですから、吉田課長さんの管轄のところもうんとひとつ、歩積み両建てを初め基本的な心構えから、こういう情勢の厳しいときでありますから指導していただいて、血の通ったそういう態度で対処していただきたい、同じですから。何もいいなんて言ってないのですから。まだ都市銀行に比べれば少しはましだと、少しということを言っておるわけですから、その点誤解のないようにしていただきたいと思うのです。  それから、きょうは労働省の方も来ていただいておりますが、来年卒業の新規学卒あるいは高卒、特に女子学生等は就職先がないということで、連日いろいろとミーティングもしておる、心配しておるというようなことでございますが、この就職について心配ないのか、いまどういう対策をとっておられるか。  それからさらに、中小企業庁としては、いままでは大手に引っ張られておったわけでありますから、この機会にこそ優秀なそういう新規の人を採用していく、やはりそういう指導をしていく必要があろうかと思うのです。この点につきまして労働省と中小企業庁長官からお伺いしたいと思います。大蔵省は帰って結構です。
  78. 小粥義朗

    ○小粥説明員 お答えいたします。  来年三月卒業予定の新規学校卒業予定者の就職の見込みでございますが、中学、高校、大学別に、それぞれ状況は違いますけれども、現在までにつかんでおります状況で申し上げますと、中学卒業生の就職の見込みとしては、この十月一日現在で求人、求職の状況をつかんだところでは、大体求人倍率として五倍ぐらいの倍率がございます。したがって、中卒については、全体として雇用情勢は厳しい中でございますけれども、特に問題はない。  高卒については、同じ十月一日現在で来年三月の求人見込み等を含めまして求人倍率を見ますと、約二倍ちょっとでございます。前年度が三倍強の倍率でございましたから、それから比べますと倍率も落ちているわけでございますけれども、現時点で二倍以上の求人があるということは、若干選択の幅は狭まりますけれども、就職は一応全員について可能であろうと見ております。  大卒につきましては、実は学校と企業とが直接求人、求職の受け付け等をやっておりますので、全体的な状況はなかなかつかみにくいわけでございますが、現在までにつかんでおります大卒の求人、求職の見込みとしましては、全体的な数字はございませんが、部分的な把握の数字で申し上げますと、大体二倍ぐらいの求人はございます。ただ、従来が非常に高い倍率を示していたと見込まれますので、それからしますと非常に厳しい就職戦線にはなってきているというふうに考えております。特にその中でも、男子の場合は比較的まだいいのでございますが、先生指摘のように、女子の卒業見込み予定者につきましては相当厳しい情勢が出てくるんではないかというように見ております。  大卒の就職選考時期は十一月一日から一斉に行われておりますので、現在その状況を取りまとめるように努めておりますが、今月末現在で全体の状況はつかめるものと見込んでおります。その辺の状況を見てさらに対処してまいりたいと思いますが、考えられます方策としては、特に大都市の大学卒業者が郷里へ帰って就職するという傾向が出てまいっております。そうなりますと、地方大学卒業者の就職戦線というものは相当厳しいものになるのではないかというように考えられますが、そういうように地域をかわりますと個々の大学の就職だけではなかなか処理し切れない問題も出てまいろうかと思っております。したがって、そうした面は従来職業安定機関として大卒の取り扱いはほとんどいたしておりませんでしたけれども、こういう厳しい情勢にかんがみまして、各大学と職業安定機関との連携体制というのを密にしまして、そうした面での求人情報の提供なり、そうしたものを積極的に進めてまいりたいというように考えております。
  79. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 今後高度成長から安定成長に変わってまいるといたしますと、中小企業にとりましては環境が激変してまいるわけでございまして、いろいろな経営努力が必要かと思うわけでございます。中小企業がそういった環境の変化を克服しまして一層の飛躍を図りますには、何と申しましても優秀な人材の確保ということが一番大切なことであろうと思います。その点、従来は学卒の需給が逼迫と申しますか、求人の方が多いような状況のときには、中小企業では新規学卒者の採用がなかなか容易でなかったわけでございますけれども、今回の新規学卒者の需給の緩和というのは、中小企業にとりましては優秀な人材を確保するまたとない好機であろうというふうに考える次第でございます。  そういう意味におきまして、私ども商工会議所にお顧いをいたしまして、商工会議所が、全国の商工会議所の主なところに、新規の、特に大学卒の学生のための就職促進のための専門のセクションを一定期間設けることにしていただいたわけでございます。ここで学生あるいは大学の側からのいろいろな企業情報に関します照会にお答えをいたしましたり、その他採用を希望する中小企業の側と、就職を希望される学生、大学の方との結びつきをいろいろといたすようにいたしたい。そういうことで、商工会議所がそういう専門のセクションを設けるようにいたしましたので、そこの活躍に実は期待をいたしておるところでございます。同時に、中小企業が、大学卒の方が見えましても魅力のある働き場所となりますように、一層中小企業の近代化、高度化に努力をしなければならない、こういうふうに考えております。
  80. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう大分お昼も過ぎておりますから終わりたいと思いますが、最後に、いわゆる小規模対策としまして経営改善指導員の待遇問題、これは非常に悪いわけですが、今後どのようになさるか、その問題につきましてお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  81. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 経営指導員は現在約七千名おりまして、全国の商工会議所あるいは商工会に籍を置きまして、小規模事業者の相談相手となりましていろいろな経営相談等に応じて指導いたしておるわけでございます。私どもは、この待遇につきましては、特に給与面におきましては国家公務員に準じてまいりたい、かように考えまして、従来から改善方を図ってきたわけでございます。  特にベースアップにつきまして、従来は公務員が前年にたとえば一〇%のベースアップがございますと、その翌年に一〇%のベースアップを行う、こういうことで一年おくれで給与の改定を行っておりましたけれども、昨年非常に物価が上昇をいたしましたし、公務員関係も三〇%近いベースアップがございましたので、これを一年おくれでやりますと非常に経営指導員の方の生活面でも影響が大きい、こういうふうに考えまして、昨年は補正予算にその関係の予算を計上いたしまして、昨年十月から約三割のベースアップを実施いたしたわけでございます。今年度につきましては公務員関係は一〇%強のベースアップが行われたわけでございますが、四月にさかのぼりまして公務員についてはベースアップが行われますが、昨年よりも二カ月さかのぼりまして、八月以降一一%弱のベースアップを行うということにいたしまして、先般成立を見ました補正予算の中にその関係の待遇改善費を計上いたしてございます。  明年度以降につきましてはさらに前進を図りまして、文字どおり公務員に準ずるような形に持っていきたいものというふうに考えておるところでございます。
  82. 近江巳記夫

    ○近江委員 ひとつ公務員以上の待遇をしてあげて、優秀な人材をまた育成していただきたい、これを要望しておきます。  では、もう時間ですから、これで終わります。
  83. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員長代理 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十三分休憩      ————◇—————     午後三時四十八分開議
  84. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。宮田早苗君。
  85. 宮田早苗

    ○宮田委員 中小企業信用保険法の一部改正案について若干の質問をいたします。  今日、中小企業を取り巻く経営環境が非常に厳しいことは、これまでの質疑でも再三再四指摘されてきたとおりでございます。製造業では手持ちが底をつき、引き合いがあっても赤字受注になるケースが多いわけであります。一カ月先の見通しも立てられないというのが実態でございまして、流通業界にしても、個人消費の停滞から手痛い打撃を受け続けておるのであります。年末を目前にして、中小企業経営者の多くは経営の立て直しと資金繰りに追いまくられておるのが実情であります。  政府は第四次不況対策、さらには年末金融対策を打ち出しているわけでございますが、金融機関はこれから膨大な国債の引き受けに入るわけでございます。これによって、意図している年末金融が円滑にいかなくなるのではないかと危惧する向きも多いのでございますが、中小企業庁長官の、景気見通しも含めて御答弁をまずお願いいたします。
  86. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 中小企業の景気の状況でございますけれども、生産、出荷は大体ことしの二月を底といたしまして、以後漸次上向きに転じております。ただ、その上向きの足取りはきわめて緩やかでございまして、最近一進一退を続けておる、こういう状況でございます。その結果、生産水準は最近に至りまして、昭和四十五年を一〇〇としてようやくそれをやや上回ったという程度の水準でございまして、前年の同月に比べましても、この九月ごろでなお生産水準は昨年の九月に比べて六、七%低い、こういった状況にございます。  特にその業種別の内容で見ますと、大分好転をしてまいりました業種と、逆にさらに悪化を見つつあるような業種もございます。好転をしつつありますのは自動車関連部門、それから家庭電気製品、特にカラーテレビを中心といたしました下請等の部門、それから繊維品の一部の、たとえばメリヤスとかニットでございますとかいったような繊維の最終製品の部門が最近少し好調のように変わってきておるように思われます。ところが一方、特に設備投資に関連をいたしました工作機械でございますとか重電機部門、あるいは工事等に関連をいたしまして鉄鋼関係、機械、金属、あるいはセメントでございますとか合板でございますとか、そういった工事なり建築関係の部門は依然として不振でございます。  そういう状況から倒産も九、十とだんだんふえてまいりまして、特に十月は千件を超えまして、戦後最高の水準に達したわけでございます。中小企業の耐久力も、こう長期に不況が続きますとだんだん限界に来るわけでございまして、私どもも今後さらに倒産がふえなければいいがということで懸念をいたしておるわけでございまして、そういう意味におきまして、先般決定を見ました第四次不況対策が速やかに実施に移されることを期待いたしておるわけでございます。  この中におきまして、年末金融対策といたしましては、中小企業政府系金融機関に四千八百億円の枠の追加を決定いたしました。今年度は年度当初に、昨年度よりも五千億多い二兆五千億円で計画を組んでおりまして、さらにこれに四千八百億円を追加いたしましたので、ほぼ三兆円という融資枠になっております。  それから民間金融機関につきましては、年末金融対策として中小企業向けに三兆五千二百億円の融資目標を決定いたしまして、大蔵省銀行局の方でその確保方につきまして金融機関指導していただいておるところでございます。今後国債の大量発行あるいは地方債の発行ということによりまして、金融市場が需給が窮屈になるということも考えられるわけでございまして、そういう意味におきまして、一応今回決めました年末金融対策で何とかしのげるのではないかと思っておりますけれども、さらにこの点は今後の情勢の推移を注意深く見守ってまいりたい、かように考えております。  なお、この中小企業金融対策の一環といたしまして、信用補完面の強化を考えまして、現在御審議をいただいております特別小口保険の一人当たりの保険引受限度を従来の百五十万円から二百五十万円に拡大するということを政府としては決定いたしまして、法律の改正方をお顧いいだしておるわけでございます。  また、信用保証協会倒産関連保証を——最近大変ふえてまいっておりますので、それによります信用保証協会の経営への影響等も考えまして、その経営基盤の強化を図りますために今度の補正予算におきまして五億円の政府保証協会に対する補助金を計上いたしまして、年度当初に計上しておりました四億円の補助金と合わせまして九億円の補助金を近く全国保証協会に配分をいたしまして、さらに保証の強化を図ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  87. 宮田早苗

    ○宮田委員 ただいまの御答弁についてもう少しお伺いをさしていただきますが、大体自動車、家庭電器、繊維に若干の上向きということをおっしゃっておりますが、これは政府がとりました一次から四次までの不況対策ということで上向くということではないような気がするわけなんです。多分に自動車によりますと例の規制の問題もありましょう。電器の関係も、ある程度買いかえの時期とかあるいはまた年来の時期的なものもあるのじゃないかと思いますが、これはこのままにしておきますと、せっかくの不況対策が——不況対策によってこういうふうになるという、それが好ましい現象と思いますが、そういう点について長官のお考えをひとつ聞かしていただきたい。  もう一つは、鉄、機械、セメント、特に建設関係はなかなか不況の底を脱し得ないということなんでございますけれども、この点につきましては、いま説明のいろいろな対策によってある程度これの打開というものができてくるのじゃないかというふうに思っておりますが、大体この時期がどの程度、いつごろの時期に上向くような傾向になるものか、その点も、これは見通しでございますのでなかなかむずかしいと思いますけれども長官のお考えがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  88. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 最近好調になってまいりましたのは、いま申しましたように自動車、あるいはカラーテレビ、あるいは繊維の最終製品関係、あるいは食品といったようなものでございまして、どちらかといいますと消費財の関係が多いように思うわけでございます。そうかと申しましても、消費自体が非常に活発化しておるかと申しますと、昨年の物価騰貴以来、消費者のいわゆる消費態度はきわめて慎重になっておりまして、消費自体の伸び率は名目で一〇%ぐらいでございまして、実質で見ますと、そう消費が伸びておるというわけではございません。また設備投資関係は、いま企業の操業度が大体七〇%ぐらいから七五%ぐらいでございますので、まだまだそう大幅に設備投資をして能力をふやそうという意欲は、大企業中小企業を通じまして余りないわけでございます。それから輸出関係は、年度当初の計画よりも一割ぐらい落ち込むぐらいに輸出が減っていると申しますか、計画に対して落ち込んでおります。これは世界的な石油ショック後の不況で世界的に各国とも輸出が伸び悩んでおるという状況でございます。  そういうふうに見てまいりますと、需要を押し上げる最終需要項目といたしましてどれも余り需要を引っ張り上げる力のあるものがないわけでございます。結局、政府調達関係と申しますか、そういった財政面からの需要の喚起ということに主として期待せざるを得ない、こういう状況でございましたので、御案内のように、先般の第四次不況対策におきましては、公共事業の追加として、事業量として約八千六百億円、それから住宅金融公庫融資枠の追加七万戸分で事業量といたしまして約六千億円、そのほかに公害投資関係の追加でございますとか、あるいはプラント関係の輸出を喚起するということで財政投融資を輸出入銀行なり開発銀行なりにつけるというふうなことで、需要の喚起を考えたわけでございます。  第四次の不況対策によりまして喚起されます需要量を大体三兆円と見ておりまして、そのうち、年度内にもたらされる新規需要が一兆六千億円ぐらいというように見ております。そういたしますと、下期の経済成長率は実質で約六%強というように見込んでおりまして、年間にならしますと実質で二・二%の成長になろうかと見ております・が、下半期だけでとりますと年率に直しまして六%、下半期の上半期に対します伸び率では三・二%、こういうような成長率を見込んでおります。  年率六%の実質成長率と申しますと、やや正常化した経済の伸び率でございまして、この第四次の不況対策で考えました計画どおりに進みますれば、だんだん下半期の期末に向かうに従いまして景気は上向いてくる、こういうことに相なろうかと存じますが、そのためには、今度の第四次の不況対策がなるべく早く末端まで実行されるということが必要かと存じます。
  89. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、今回の信用保険法改正案で特別小口保険を二百五十万円まで引き上げることは、現下の金融情勢から妥当なこととは思いますが、しかし、問題は借り入れる中小企業者の償還能力、これが問題だと思います。私、二、三の県の信用保証協会の窓口に当たってみましたが、最近の傾向として、返済の目途がない保証が増加している、同一業者の申し込みが重なる、いわば自転車操業的なのが増加しておるということを聞いておるわけでございますが、償還猶予と代位弁済の実態がおわかりならばお示し願いたいと思います。
  90. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 過去に政府系三機関から資金をお借りになりまして、返済期が参りまして、こういった不況状況でございますので、なかなか経営が思わしくないとか、資金繰りが困難であるということで返済が困難である、こういう方が非常にふえております。こういう方々につきましては、個別に金融機関の窓口でその実情をお伺いいたしまして、返済が困難であるということがもつともだと思われます方々につきましては、極力弾力的に返済猶予を行うように、政府系三機関には繰り返し指示をいたしておるところでございまして、その結果、返済猶予額が実績面でも非常にふえてまいっております。  昭和四十九年度の返済猶予の実績件数は年間約三万件ぐらいで、千六百四十億円の返済猶予を行っております。今年度に入りまして上半期が約二万件でございますが、金額は千三百十五億円というような額になっておりまして、ことし半年で去年の一年間に近づくような返済猶予額になっておるようなわけでございます。さらにこの点はよく三機関を指導いたしまして、弾力的に扱うようにしてまいりたいと考えております。  それから、保証協会の代位弁済の状況でございますけれども、金額は非常にふえてまいっております。四十八年度の代位弁済額が二百八十五億円でございましたが、四十九年度は四百十億円になっておりますし、今年度の上半期の代位弁済額は二百八十億円でございまして、四十九年度の代位弁済の前年度に対する増加率は四四%でございます。それから、ことしの上半期の前年同期に対します増加率は五九%でございまして、最近急激に代位弁済がふえておるということでございます。  なお、これは御承知のように、保証をいたしましてから返済の時期が来たときにこの返済ができないというようなことがはっきりして、代位弁済という事態が出てまいりますので、実際の保証の時期よりも代位弁済の時期は一年ないし二年ずれて出てくるわけでございます。そういう意味からいたしますと、現在代位弁済いたしておりますのは去年ないしそれ以前の保証でございまして、本当に代位弁済がふえるのはむしろこれからではないかというように私どもも見ております。
  91. 宮田早苗

    ○宮田委員 保証協会の話をさらに続けますが、申し込み件数の増加、あるいは償還猶予手続の増加、また記帳管理業務の多様化等で、事務量が非常にふえてきているということでございます。都道府県の協会の機構をどうするかはさておきまして、国として来年度予算で、商工会議所や協会等、末端の中小企業窓口の拡充強化を進める必要があると思っておりますが、その点、長官はどういうふうなお考えを持っておいでになるか、お聞きします。
  92. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 この商工会議所並びに商工会には経営指導員を配置いたしまして、特に小規模な中小企業の方々の経営なり金融、税務、記帳、こういった面の御相談に応じて指導をいたしておりますが、現在、今年度末までに七千名になる予定でございます。明年度につきましてはさらに千名の増員を大蔵省の方にお願いいたしておるところでございます。
  93. 宮田早苗

    ○宮田委員 さきの答弁の中にもございましたように、個別に実情を聞いて、やはり小まめに対処しなければならぬのじゃないか、そういうことが非常に必要になってきておるのじゃないかと思います。  また、中小企業庁がすでに公表しておりました中小企業調停専門官、この構想を、具体的になっておりましたら説明をしていただきたいと思います。
  94. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 従来から大企業中小企業の分野に出てまいるというケースはいろいろあったわけでございますが、特に、今後安定成長に入るといたしますと従来のように成長が望めない、そういう中で大企業が、中小企業が主として生産あるいはサービス等を担当しております分野に無理やりに割り込んでくるということになりますと、いろいろ摩擦が生じてきて、中小企業の近代化に差し支えるような場合も出てこようかと存じます。こういったケースにつきましては、私ども従来から、現行法の中小企業団体法をバックにいたしまして、まず当事者で十分話し合いをしていただきまして、話し合いがつかない場合には政府があっせん、調停の労をとる、こういうふうなことで対処してまいったわけでございますが、さらに今後こういうケースがふえるといたしますと、そういったあっせん、調停の仕組みをさらに強化いたしまして機動的に対処してまいりたい、こういうふうに考えまして、明年度の予算要求におきまして、調停専門官というものを中小企業庁の本庁に二名と各通産局に一名ずつ置きたいというふうに考えまして、その関係の予算の要求をいたしております。  それからもう一つは、全国の商工会議所に各一名、個別の紛争が起こりましたときにはその情報を迅速に収集していただきまして関係行政機関に連絡をしていただく、こういう仕事をお願いするための分野調整指導調査員というものを全国の四百七十四の商工会議所に配置と申しますか委嘱をいたしたい、こういうふうに考えております。
  95. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、信用保険法に関連をした質問を行いたいと思います。  まず、中小企業の経営難の最たる業種といたしまして平電炉の中小鉄鋼メーカーがございます。小型棒鋼メーカーは、去る九月から十一月末までの間カルテル認可のもとで減産強化をやってまいりましたが、市況はむしろ悪化をしておりまして、回復のめどが立たないことから、公正取引委員会にさらに二カ月間のカルテル延長をお願いしているところでございます。棒鋼の市況推移を見ますと、十月中旬から月末までの間にトン当たり一万円も下がっておるわけでございますが、本来なら基礎産業局にお尋ねすべきところかもしれませんが、きょうは私の方で連絡しておりませんので、長官の方にお問いするわけであります。この大幅な下落原因はまずどこにあると思っておいでになるか、その点をお伺いいたします。
  96. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 私どもの方では中小企業の関係の生産状況調査いたしておりますが、中小企業でございます鉄鋼業の生産状況は、ことしの三月が底でございまして、四十五年を一〇〇といたしまして、ことしの三月が九四・七という生産指数でございます。その後少しずつ上昇をいたしまして、七月には九八まで上がりましたが、逆に八月、九月とまた九六台に落ち込んでおりまして、そういう意味では生産の回復は一進一退という状態を続けておるように見受けられます。  その原因でございますが、何と申しましても総需要抑制策がことしの春近くまでずっと続いておりましたので、公共事業等につきましても、これだけ物価が上がっておるにもかかわらず、たとえば四十九年度の公共事業は四十八年度と金額にしては横ばい、そういった予算を組んでおりましたので、鉄鋼の需要が余りはかばかしくなかったというのが最大の原因ではないかと思うわけでございます。棒鋼等は建築の不振を反映いたしまして価格も下落をしておる。一時、ことしの四、五月でございましたか、今後景気が上向くのではないかというようなことで、仮需と申しますか、業界が少し増産を図った時期がございまして、ところが実際には業界が期待されたほどには需要が出なかったということで、その反動落ちでさらに六月、七月ごろはむしろ悪くなった、こういうふうな事情もあったようでございます。  いずれにしましても、こういった資本財の関係は、現在、鉄鋼も非鉄金属も、金属製品、機械等が非常に不況からの脱出がおくれて苦しんでおられるというような実情のように見受けております。
  97. 宮田早苗

    ○宮田委員 最近になって若干持ち直しているような感じもございますが、問題は、年末はもちろんですが、その資金対策が一番重要だと思うわけでございます。減産資金手当等についてどのような指導をしておられるのか、これもお聞かせ願いたいと思います。
  98. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 政府系の三金融機関中小企業向け金融機関につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、年末金融として四千八百億円を追加することを決めまして、現在これを各支店の需要を調査いたしまして配分いたしておるところでございます。また、民間金融機関中小企業向け融資につきましては、年末融資目標といたしまして三兆五千二百億円の目標を設定いたしまして、これを現実に融資が行われるように大蔵省から指導をいたしておるところでございます。  棒鋼でございますとか、小棒とか、鉄鋼業関係はわりに規模が大きゅうございまして、不況カルテルも、中小企業不況カルテルでございませんで、独禁法に基づきます不況カルテルを実施いたしております。したがいまして、金融の面におきましても、いわゆる政府系中小企業三機関の対象からはみ出る中堅どころの企業が多いのではないかと思いますが、こういった向きにつきましては、担当の基礎産業局の方で産業政策局の方と相談をいたしまして、それぞれの需要を集めて民間金融機関の方にいろいろ融資方をお顧いする、こういうふうな措置をとっておるように私、聞いております。
  99. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう少しお聞きいたしますが、年明け後の需要動向をどう見ておられるか、その点もお聞かせ願いたいと思います。
  100. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 第四次の不況対策の効果が徐々にあらわれてくると思いますので、年明け後は漸次建設関係、住宅関係あるいは工事関係、そういった面に伴います関連部門への需要は上向いてくるのではないかというように期待を持っております。
  101. 宮田早苗

    ○宮田委員 これで終わりにいたしますが、不況対策ということでいまいろいろな政策が用いられておるようでございますが、何しろ政府がしょっちゅう言っております一つの柱であります個人消費、これについてはまだ総体的なものはわかりませんけれども、冬の一時金一つとりましても、民間というのは御存じのように半額はできるだけ貯金をして来年回しにしてほしい、現金は半額だというようなことでございますので、これに対する不安感というのが非常に強いようでございまして、なかなか先行き不安というものによって消費が活発になりそうにないということでございます。これが一番最初に質問いたしましたように、自動車あるいは家庭電器、繊維の関係、一時的には上向いたような傾向も出ておるようでございますけれども、またぞろ下向くというような傾向になり得る可能性も出ておるのじゃないかというふうに私は思っておるところでございます。  その点につきましては、ひとつ小まめに長官の方で対策をしていただかないと、せっかくの対策が全然効果をあらわさないということになりますので、その点要望しておきます。  もう一つの公共投資というのが大きな柱になっておりまして、これには若干の期待が持てるのじゃないかというように私も思っておるところでございますが、これはしょせん公共投資でございまして、民間がこれによって投資活動を活発にするというふうには、余裕がございませんからできかねると思いますが、そういう面は長官の方での指導というのが非常に大きな役目を果たすのではないかと思っておるところでございますので、こういう点についても積極的な指導をしていただかなければならぬ。何しろ今日の中小企業者、商工業者を含めてでございますけれども、案外皆さんの方でお考えになっておるようななまやさしい不況じゃないというふうに、私ども現地で接触してまいりますと率直にそういう気がするわけでございますので、これをまずなべ底に上げて、それからはい上がらせるというような、こういう傾向にあろうかと思っておるところでございますので、こういう点についても十分にひとつ御留意をして御指導をお願いしたい。要望でございますからあれと思いますが、その点についての決意をひとつ長官の方でしていただきたいと思います。
  102. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 今度の第四次の不況対策の柱をなしております公共事業等につきましても、極力中小企業にその仕事を回してもらいますように、私どもこの間各省集まっていただきまして、関係各省にもさらにお願いをいたした次第でございます。幸い、今度の公共事業の半分は大体地方で行われます事業の補助事業でございまして、地方事業は従来からわりに小口の仕事が多うございますので、中小企業に回る比率が六割強になっております。また、中央で行います仕事も、今年度初めに政府が決めました官公需の三三%という目標をさらに上回るように関係各省には御努力願うようにお願いをいたしております。  物価も幸い鎮静の傾向にございますので、当面政府の最大の課題は、景気を早く振興させることにあろうかと存じます。できるだけの努力をいたしてまいりたいと考えます。
  103. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  104. 山村新治郎

    山村委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時二十三分休憩      ————◇—————     午後六時八分開議
  105. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中村重光君。
  106. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣に考え方をお聞きいたしますが、先般の委員会でも私は申し上げたのでございますが、第四次不況対策の中で中小企業に対する財投が四千八百億ということに決定をしたわけですけれども、しかしこれは年末融資ということになっているようですね。四十九年度の年末融資も四千五百億であったわけです。わずかに三百億積み上げておるにすぎない。これは不況対策といっても、いまのような深刻な不況の中における対策ということではなくて、そういう状況の中でなかったにいたしましても、三百億や五百億は貨幣価値が低下をしておるという実態の中で当然積み上げをしなければならないと考えるのです。ましてや、いまのような深刻な不況の中においては、この四千八百億ではなくて、当然一兆円程度は積み上げていくということでなければならないと考えるのでございますけれども、この点に対してどのように通産大臣はお考えになっていらっしゃるのか。第五次不況対策であるとかいったようなことも通産大臣の口からも漏れておるようでございますけれども、これを追加する御意思があるのかどうか、その点についてのお考え方をひとつ聞かしていただきたいと思う。
  107. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず最初に申し上げたいことは、中小企業対策は政府の産業政策の中でも最も重要な対策だと心得ております。そういう観点に立ちまして中小企業の年末融資対策を決めたわけでございますが、これを決めるにつきましては、中小企業金融機関の年度間における原資、それから最近における申し込み状況、こういうことを十分調査いたしまして決定したわけでございます。御案内のように、三機関の年度間の原資は二兆五千億になっておるわけでございます。今回の四千八百億を加えましてざっと三兆円になったわけでございますが、最近の申し込み状況から見まして、四千八百億が妥当であろう、こういうことで決めたわけでございます。  ただしかし、当初に申し上げましたように、中小企業対策は政府の産業政策の中でも最重要の対策であると考えておりますので、もし今後に資金が不足するというふうな事態が発生いたしましたならば、それに対しては必要な資金を十分確保していく考えております。
  108. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、保証協会の基金補助なんですが、当初予算に四億計上してあるわけですね。今度五億追加をされたわけですが、五億ということになってまいりますと、保証協会がいまたしか五十二でございますか、一保証協会に対して一千万足らずということなんで、これでは信用保証協会保証能力を強化する、不況対策なんというようなことにはもう問題にならない額であると私どもは考えるわけなんです。これも少なくとも三十億程度は追加をすべきではなかったか。三十億仮に追加をするといたしましても、一保証協会当たり六千万足らずの金額になるということなんです。  それともう一つは、保険公庫融資基金、これは当初予算に二百三十億を計上しているわけですが、今度の第四次の不況対策の中におきましてもこれを増額していないわけなんです。臨時国会で——次の通常国会までの間にもう一度臨時国会というものは開かれないのではないかと思うのですが、したがって、この二百三十億を私どもが申し入れをいたしましたように二百七十億程度追加をして五百億にするといったようなことが当然理想としてなければならない、理想ということよりも当然その程度はしなければならないと思うのでありますけれども、これは予算の補正になるわけでございますから、臨時国会を開かない限りこれは不可能であろうというように思うわけなんです。  そうしてみると、何らかの形において保証協会保証能力を強化するというような手だてをする必要があるのではないか、そのように考えるわけでございます。したがいまして、申し上げた基金補助の五億、それから融資基金の二百三十億というものを増額しなかった、これは当然不足であると私は考えるわけでございますけれども、これに対して別の手当てというものは何かお考えはないのかどうかということについて、考え方を聞かしていただきたいと思うのです。
  109. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御指摘ごもっともでございます。今後ともさらに機会を見まして積極的に考えていきたいと思いますが、もし必要とあらば、具体的な数字につきましては長官から答弁をさせます。
  110. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 保証協会に対しましての基金についての政府からの補助金は、御指摘のように今度の補正予算におきまして五億円計上してございます。年度当初に四億組んでおりましたので、合計で九億円でございます。本来保証協会は出損者の出捐の増額によって基盤の増加を図るべきものかと存じますけれども、特に最近、倒産関連保証という、政府中小企業対策という意味でそういった制度を充実いたしております関係で、そういったいわばリスクの多い保証保証協会にやっていただく、こういう面での保証協会への経理のはね返りをなるべく補てんしていきたい、こういうねらいで年度初めの四億並びに今回の追加の五億円を計上いたしたわけでございます。過去のドルショックのときには一億ないし二億という補助金でございましたので、それに比べますと大幅に増額をしたつもりでございまして、決してこれで十分とは考えておりませんけれども、まずこれでやってまいりたい。さらに明年度も引き続きこういった補助金をとりまして出すようにいたしてまいりたい、かように考えております。  それから、融資基金と準備基金の増額につきましては、今年度二百三十億円政府から保険公庫に出資をいたしまして、そのうち百八十億の融資基金につきましては、保証協会経理面の基盤の強化という意味で、低利融資をいたしておるわけでございます。  年度内に追加を考えないかというお話でございますが、一応今年度はこれでまいりたいというふうに考えておりますが、明年度につきましては大幅な増額を図りたいというふうに考えておりまして、予算要求面でもそういう大幅に増額をいたした要求をいたしておるところでございます。
  111. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣答弁長官が打ち消すといったようなことであってはならないと私は思う。あなたのいまのような答弁は、私の昨日の質問に対してもお答えになっていらっしゃる。私は、それで不十分なんだから、特に大臣に、この点に対しては積極的な取り組みの必要があるのではないか、これは予算関係になるわけでございますから、今度の国会で再度補正ということはできないであろう、したがって、何らかの形で、低利融資であるとかいろんな形で保証協会保証能力をつけさせるようなことをお考えになる必要があるじゃないかという考え方の質問に対して、大臣は非常に積極的な答弁をされたわけだから、少なくともあなたは中小企業庁長官だから、やはりいろんな創意工夫をこらして保証協会保証能力を高めていくということについて、可能な限りの取り組みをされるということが当然でなければならないと私は考えます。その点に対してはむしろ反省をあなたに促しておきたいと思います。  次に、保証協会の基本財産に対する保証倍率の問題でございますが、大臣平均がかつては四十二・八倍であったわけですね。それがいま四十七・三倍というようになっているようであります。ところが、最低は三十倍、それから最高が六十倍ということが昨日の私の質問に対して長官から明らかにざれたわけです。いまから申し上げることがすべてではないのでありますけれども、代弁が多いところにはこの保証倍率というものが低い。むしろ代弁が多いところに懲罰的な扱いをされているということについては、私はこの信用補完制度の精神からいって間違いであるというように思うのです。どうしても代弁は零細企業に多いでしょうから、代弁が多いから保証倍率を抑えていくのだというようなことがないように、十分ひとつ大蔵省に反省を促していくというようなことでなければ、私は中小零細企業を守ることにならないのではないかというように考えます。その点に対しての大臣の見解をひとつ伺ってみたいと思います。
  112. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 保証協会保証倍率の引き上げにつきましては、出捐の増加等による基本財産の増加と並行しながら、必要な保証に差しつかえないよう、時宜に応じて認めていくように今後したいと思います。
  113. 中村重光

    ○中村(重)委員 基本財産、その出指金をふやしていくというようなこともわかるのでありますけれども地方自治体実態等からいって、その点に対してもなかなか思うようにいかないという面もあるであろうし、方法はいろいろあるだろうと私は思うのです。ですから、この倍率をともかく低く抑えていくというようなやり方ということになりますと、先ほど申し上げましたように、保証してもらわなければならない弱い零細企業というものが締め出されるというようなことであってはならないと私は考えますから、この点についてはなお十分研究をされて、適切に対処していただきたいということを要望しておきたいと思います。  それから、保証つき融資金利引き下げでございますが、これは特別決議の中にも私どもは入れたと記憶しておるわけでありますし、また、その前の附帯決議等におきましても、この点に対する決議をしておるというように記憶をしておるわけですが、保証つき融資金利引き下げ、それから保証料率引き下げ、これにひとつ積極的に取り組んでもらいたいと思います。この点に対しての大臣の見解を伺っておきます。
  114. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 その点につきましては、今後十分前向きに検討いたします。
  115. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまの大臣答弁を信頼いたします。答弁はしたが、実行が伴わないというようなことがえてして多うございますからそういうことがないように。あなたの性格からしても、大体答弁したことには責任を持つというような性格のように伺ってもいるわけですから、いまの答弁を実効あらしめるということについて、十分対処していただきたいということを要請いたしまして、私の質問を終わります。
  116. 山村新治郎

    山村委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  117. 山村新治郎

    山村委員長 次に、内閣提出石油備蓄法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。板川正吾君。
  118. 板川正吾

    板川委員 石油備蓄法案に対して若干の質疑をいたしたいと思います。  本論に入ります前に、まず通産大臣、あなたはこの数日間中間を訪れて、石油関係者といろいろ話し合いをしてこられたということが報道にもありましたし、伺いました。御苦労さまです。中国との石油の長期取引について話し合ったという報道もございます。その話し合いの内容、構想、こういう点を、簡単で結構ですが御報告をされたいと思います。  それは、昭和六十年に日本のエネルギーは石油換算して七億五千万トンぐらいだ、その一割は原子力で補う、昭和五十年代エネルギー安定化政策、こういう政府の構想もございます。いま石油審議会にかけておるようですが、原子力の問題は、いまの軽水炉発電というのは否定的であって、その一割の七千五百万トン程度は中国の原油を輸入することによって補えるのじゃないだろうか、だから、いまの原子力発電というものはいわば実用炉でなくて、試験段階に使うべきだという考え方を私どもは持っておるわけです。  それはそれとしまして、中国原油の長期取引ということをこの委員会でもいままでしばしば私は発言をしてきましたし、重大な関心を持っておるものですから、その点について御報告願いたいと思います。
  119. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今回中国を訪問いたしまして、石油問題、それから貿易問題、それから経済協力全般の問題につきましていろいろ話し合ったわけでございますが、石油問題につきましては李強対外貿易部部長、それから康世恩石油化学工業部部長及び李先念副総理、この三人と話し合ったわけでございます。  総合的に結論を申し上げますと、中国としては、石油の埋蔵量も非常に多い、また、何カ所か今後大幅に増産できる個所等がある、石油の将来というものは非常に明るい、こういう基本的な現状を踏まえまして、日本とは長期契約をしようではないか、それから数量等についてはこだわらない、日本の事情によって多くても少なくてもよろしい、それから価格の問題については双方十分話し合えば解決できると思う、双方が利益になる形で話し合いの上で解決しようじゃないか、こういうことが基本的に合意に達したわけでございまして、石油問題につきましては、この点で相当な前進があった、こういうふうに理解をいたしております。
  120. 板川正吾

    板川委員 今回は大臣レベルで接触をして、具体的な構想は今後お互いに話し合いで進めよう、こういうことであろうと思います。これこそはぜひ前向きに大いに推進していただきたいということを、要望だけいたしておきます。  それでは、法案の質疑に入りたいと思いますが、これはエネルギー庁長官で結構です。大臣に聞いていていただきたいと思います。  まず、備蓄をする目的についてお伺いいたします。
  121. 増田実

    ○増田政府委員 備蓄の目的でございますが、石油の備蓄を行うことによりまして、わが国への石油の供給が不足する事態、これは削減あるいは禁輸その他があるわけでございますが、いろいろな事態が予想されるわけで、わが国への石油の供給が不足する事態が生じた場合におきまして、石油の供給を確保し、石油の不足によります国民生活に対する影響というものを防ごう、こういうことでございます。
  122. 板川正吾

    板川委員 日本のような全く石油のない国、一〇〇%近いものを海外から依存している国であり、しかもアメリカに次ぐ大消費国でありますから、石油の安定的な確保を図るということは、政治の面から言っても経済の面から言っても重要な課題であろうと思うのです。この備蓄法の目的は、現在六十日程度あるものを、三十日分備蓄を増加することによって、不測の事態が生じた場合にできるだけ混乱を少なくしようということであって、この備蓄によって安定供給が全く万全であるということではない、こう思います。  石油の安定供給の第一は、こういう不測の事態を起こさないような外交経済政策をとるということだろうと思います。第二は、みずからの石油の供給源を確保すること、要するに、自主石油を持つことが第二だろう。第三としては、供給源の多元化といいますか、供給する国を、いま中東に七七%、八〇%近く依存しておるものをなるべく多元化して、不測の事態が生じても影響を少なくする、こういう三つの要因が考えられると私は思うのでありますが、そういう見解に対してエネルギー庁長官はどうお考えですか。
  123. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま先生から御指摘のありましたように、石油の供給の安定的な確保ということにつきましては、石油の供給源の分散化あるいは自主開発、それから産油国との間の緊密な連絡による契約という各種の方法によりましてこれを達成しなければならない、こういうふうに思っております。  具体的に申しますと、現在の石油開発は自主開発ということでやっておりますが、ただ、これのやり方につきましては、従来の石油開発とは相当変わっておりまして、下請、コントラクトシステムということでやっておりますが、そういうことで、日本の資金と技術で開発をし、それを一つの安定供給源にする。それから、先ほど先生から言われましたように供給源を分散するということで、御指摘のありましたように現在中東から入れておりますのは大体七七%になっておりますが、これにつきましてはいろいろな面において問題がございます。これをできるだけ分散化して、広く世界から求める。特に、できれば近隣の諸国から求めるということが必要だと思います。しかしながら、それにいたしましてもやはり中東が非常に埋蔵量の多いところでございますので、これらの産油国と緊密な連絡のとれるようないろいろな意味での親善関係を進めまして、そしてそれを確保するということが必要だと思っております。
  124. 板川正吾

    板川委員 では、次に伺いますが、備蓄を九十日に持っていくという年次計画、何年度にどの程度までふやしたいのか。昭和五十五年の三月までに九十日分を備蓄しようという計画でありますから、ではその間、五十四年、五十三年、五十二年、五十一年、どういうふうに備蓄をふやしていこうという計画なのか、その点を簡単に伺いたい。  それからもう一つは、御承知のようにタンク内にある原油というのは全部使えるわけじゃないのですね。タンクから取り出すパイプは、地下何十センチか一メートル近くのところにありますから、そのパイプの下にある石油は実質的には数量に入っておっても使えない。これは備蓄の数量の中に入るのかどうか、この点もひとつ伺います。
  125. 増田実

    ○増田政府委員 まず備蓄の年次計画でございますが、これにつきましては昭和五十年度を初年度といたしまして九十日の備蓄増強計画を立てておるわけでございます。それで内容につきましては、昭和五十年度未に七十日にいたしまして、それから毎年五日ずつふやす。具体的に申しますと、五十一年度の末には七十五日、それから五十二年度末には八十日、それから五十三年度末には八十五日、五十四年度末を最終年度といたしまして九十日に達成する、こういう計画でございます。  それからもう一点お尋ねでございました備蓄につきましては、タンクの底に残る使えない数量というのがございます。これは大体一〇%弱ということを言われておりますが、この数字は入れております。
  126. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、九十日と言っても、実際あるのは確かに九十日だが、使えるのは九十日とは限らないわけですね。それより約一割少ないもの、こう思っていいわけですね。わかりました。  では、次に伺いますが、この備蓄に要する財源というのはどういうように予定されておりますか、その点についての説明を願いたいと思います。
  127. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま御説明いたしました昭和五十四年度末を目標といたします九十日備蓄計画の総資金量でございますが、これは全部で一兆二千八百億円ということで計算いたしております。ただ、これにつきましては原油が大体半分でございまして、六千六百億円は原油の手当て代金になっております。これに関しましては、その原油手当て代金の九割を石油開発公団から低利融資するということになっております。この低利と申しますのは、六十日を超える分につきましては四%の利子補給をつけるということで、これによりまして石油会社が備蓄用の原油を購入いたしますときには九割の資金を低利で取得できる、こういうことになっております。  それから、それ以外は施設費、つまりタンクの設置費用でこれが三千七百五十億円、それから用地の取得費が二千四百五十億円ございますが、これらの施設に関連いたしましては日本開発銀行等からの融資を行うということで考えております。  これらの促進策を行うことによりまして、石油企業がタンクを建設し備蓄用の原油を貯蔵するのに必要な資金は、全部ではございませんが相当大きな部分政府がめんどうを見るということで財源対策をいたしておるわけでございます。
  128. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、五十四年度まで五年間で九十日の備蓄をするために総計一兆三千億近い膨大な資金を要するのだ、そのうち備蓄する三十日分の原油代が六千六百億、タンクの施設費三千七百五十億、用地費二千四百五十億という膨大な費用になるわけでありますが、九十日にするために備蓄の基地というものは一体どういうところに計画をされておるのでしょうか。これは石油コンビナート安全法の関連もありまして、都市の真ん中につくるはずはないと私は思っているのですが、どういうところをいま予定されておりますか。
  129. 増田実

    ○増田政府委員 九十日を達成いたしますために今後必要な土地でございますが、これは千六百万平米、坪数に換算いたしますと四百九十万坪要るということになりますが、ただ、現在石油会社がタンク用の土地といたしまして、現在の工場の周辺あるいはすでに使っております備蓄基地の周辺の土地でいまだ使用をしておらない土地が五百六十万平米、坪数に換算いたしますと百七十万坪ございます。ですから、四百九十万坪から百七十万坪を引きました三百二十万坪を新たに取得する、あるいはすでに取得しておりまして未使用の百七十万坪が全部使えるかどうか、これは若干問題がありますから、いま申し上げました三百二十万坪よりは若干多いものを取得しなければならない、こういう計算になるわけでございます。  そして、これらの土地につきましては、現在各地でいろいろ計画がございますが、これにつきまして、まだ地元の了解を得て備蓄基地を建設することに確定しているところはございません。ただ、現在、地元の方々に対しましていろいろ説明をし、また、漁業関係につきましてその折衝をしているというのが現段階でございまして、今後新しい備蓄基地ということで決定しているものは現在ございません。
  130. 板川正吾

    板川委員 三百二十万坪プラスアルファになるようですが、一体どういう地域が想定されているのですか。
  131. 増田実

    ○増田政府委員 現在の備蓄基地といたしましては、大体海辺と申しますか、海側、これは埋立地あるいは埋立地でなければ海岸周辺地ということで、しかもすぐそばに大都市がない、やはり辺陬の海浜地域、こういうことを予定しております。
  132. 板川正吾

    板川委員 五年後に九十日分を必要とする、その場合に四百九十万坪ぐらい面積として必要だ、百七十万坪ほどは現在保有地があるからそれを使う、あとは主として海辺僻地といいますか、そういうところが選ばれるであろう、こういう考え方ですね、わかりました。  次に伺いますが、備蓄を九十日にふやすことによって石油製品にどのくらいコストアップをするだろうか、こういう点を計算があったら知らせてください。
  133. 増田実

    ○増田政府委員 ただいまお尋ねの備蓄コストがどれくらい石油製品にはね返るかということでございますが、私どもの方で試算いたしましたもの、これは内容といたしましては金利負担あるいは減価償却費、人件費、固定資産税の支払い、それから修繕費、タンクの保険料その他、こういう各種のコストが備蓄を行いますためにかかるわけでございますが、これを昭和五十年度から五十四年度までの先ほど申し上げました三十日積み増しをいたします計画の総合計を申し上げますと、これが四千七百十六億円ということになります。これをその間に販売いたします石油量に割り掛けて計算いたしますと、一キロリットル当たり三百五十三円、こういう計算になります。ただ、先ほど申し上げましたように、金利の補助とかその他の制度がございますので、政府の助成を引きますとキロリットル当たり二百八十円、こういう計算になるわけでございます。
  134. 板川正吾

    板川委員 キロリットル当たり一応三百円見当の負担が製品にかかるだろう。キロリットル当たり三百円を五年後の消費量に掛けるとどのくらいの年間金額になりますか。
  135. 増田実

    ○増田政府委員 昭和五十四年度で計算いたしますと、備蓄コストで助成分を引きました分を計算いたしますと千四百三十四億円が計算されます。
  136. 板川正吾

    板川委員 十年後、昭和六十年ということになりますと、年間どのくらいのコストアップになりますか。
  137. 増田実

    ○増田政府委員 五十四年度末九十日を達成いたしまして、それからそれ以後九十日で横ばいにする、ただ、日本におきます石油消費量が年々ふえていきますから、これを計算いたしますと、大体昭和五十五年度から、六十年度末までに要する資金量は九千三百億円、こういうことでございます。
  138. 板川正吾

    板川委員 こういうことになるのですか。九十日分を昭和五十四年度末にすると、五十四年度の一年間で約千五百億円くらいコストアップするだろう、そうしてさらにその後五年間、昭和六十年までを見ますと、この五年間で約一兆円ぐらい、九千三百億円かかるというから一兆円近くかかる。ですから、平均すれば年間二千億程度になるだろう、こういうふうに概算考えてよろしいですか。
  139. 増田実

    ○増田政府委員 先ほど申し上げました九千三百億円は、昭和五十四年度までに要ります総投資金額一兆二千八百億円に積み増しの九千三百億円、こういうことでございます。  それから、先ほど御答弁申し上げました毎年要るコストでございますが、これは先ほど大体千五百億円ぐらい年間に要るということでございますが、この九十日を横ばいにしまして、そして毎年度要るいわゆるコストというものはそれほど大きく上がらないと思います。
  140. 板川正吾

    板川委員 六十年の一年間は幾らか。
  141. 増田実

    ○増田政府委員 大体二千五百億円ぐらいということで、先ほど申しました五十四年の千五百億円に上積みが約一千億円、こういうことでございます。
  142. 板川正吾

    板川委員 備蓄を九十日にすると、五年後には一年間で石油の製品コストのアップ分が大体千五百億円見当であろう、それから十年後は年間二千五百億円見当であろう、こういう説明がありました。大体その見当と思いますが、私は、石油の備蓄の目的は安定供給の一部分である、不測の事態に対する用心のために、そのときの混乱をできるだけ少なくしようということであって、安定供給自体をこれによって解決するものじゃない。石油の安定供給を図るということは——私はもちろん備蓄に反対じゃない。当面備蓄をこの程度する必要があると思います、世界的に見ても。ですから、それはわかるのですが、石油政策としては、先ほど言いましたように、自主的な開発によって自主原油を持つのでなければ、私は石油政策というのは進まないと思うのです。  いま日本で、ことし石油開発のために年間どのくらいの投資が行われておりますか。
  143. 増田実

    ○増田政府委員 昭和五十年度におきます石油開発事業のための投資は、事業規模で一千億円が政府の予算として組まれておるわけでございます。
  144. 板川正吾

    板川委員 私がいままでの質疑を通じて聞きたいと思うことは、五年後に一年間千五百億円もかかります。これは石油製品のコストアップですから、国民が結局製品を買うことによって負担することになるのですね。そうして十年後には年間二千五百億円もかかる。これも国民が負担することになる。そのほか政府がその一割五分ぐらいいろいろ安い金利を出したり補助したりというので、さらに税金でそれを補ってやるわけでしょう。そういう膨大な資金を年々使っても、なおかつそれは石油の安定供給という目的から言えば枝葉の問題必要だけれども技葉の問題で、根本には触れない。だから根本は、その石油開発というものにもっと積極的に金をかけて取り組むべきなのです。ところが、いま言ったように石油開発の今年度については約一千億円程度しか使わない。ということは、結局石油の安定供給という根本に対する対策が足らぬではないのか、こういうことが言いたいわけなんですよ。  この不測の事態に対するわずか三十日分をよけい負担するというだけで年々数千億かかるのに、根本の問題を解決しようという自主開発というものに対して余り金を使わないというのは、石油政策としては本末転倒な感じがする。本末転倒だからこの備蓄をやめろと言うのではないですよ。この備蓄よりももっと開発に国の資金なりを投じなければならないのではないですか、こういう考え方について、エネルギー庁長官としてどうお考えなんですかと聞きたい。
  145. 増田実

    ○増田政府委員 確かに先生のおっしゃられますとおり、石油の安定供給確保のために開発を日本みずからの手でやるということが最も大事な石油政策だと私も思っております。このための石油開発公団の事業規模といたしまして五十年度一千億、これは御指摘のように、確かに備蓄に要する費用に比べて非常に少ない金額ではございますが、これは数年前に比べましては飛躍的にふやして、昭和五十年度で一千億を超えるということになったわけでございます。  それで、この一千億は大体石油開発事業に対しまして五割の資金供給になっておりますから、この一千億をもとにいたしまして、大体その倍の石油開発事業が毎年行われる、こういうことでございます。これにつきまして、昭和五十一年度にもこれをさらにふやすということで、予算の獲得に努力いたしているのでございます。
  146. 板川正吾

    板川委員 結局備蓄をしてコストアップをする分は国民の負担になるわけですね。ですから、国民の税金の中から国が開発に対する十分な取り組みをすることも結論として私は同じだろうと思うのですね。税金で取ろうが価格から取ろうが同じだろうと思うので、いずれにしてもこの石油の安定供給という根本問題が重要だ、こういうことを私は言いたいわけです。  そこで、ひとつ伺いますが、アメリカでロックフェラー副大統領がエネルギーの独立構想を発表した、これはフォード大統領も了承した、こういうことで、議会に提出をするという報道がなされております。その内容を見ますと、七年間で一千億ドルというのですね。これは一千億円じゃないのです、七年間で一千億ドル。しかもアメリカは日本と違って自国の原油というのを持っておりながら、エネルギーの完全な自給体制をとらなければならぬ、要するにエネルギーの独立権といいますか、自主権を持たなければならないということで、膨大な金をかけてエネルギーの自給を図ろう、こういう構想があるのです。  今度三木総理も行ってまいりました例のフランスのランブイエの宣言などを見ましても、代替エネルギーの開発を進めよう、そのためのいろいろな対策を講じようと言っておりますね。開発に資金と技術を協力した国に対しては、それに応じたエネルギーの確保を保障しようとか、いろいろやっております。その点、日本のサンシャイン計画というのはどういう構想になっておりますか。特にその資金量というものを説明してもらいたい。
  147. 増田実

    ○増田政府委員 日本のサンシャイン計画も、石油にかわる新しいエネルギーを技術をもって開発しよう、こういう計画でございまして、先生も御存じのように、その内容といたしましては太陽熱、石炭の液化ガス化、水素、地熱、これらの新しいエネルギーを技術をもって開発しようという計画でございます。昭和五十年度、本年度の予算はたしか三十八億円だったと記憶しております。  先ほど御指摘のありましたロックフェラー構想の一千億ドルの新技術開発に比べましては非常に小さいということでございますが、ただ、このサンシャイン計画につきましては、今後これを実施する実施機関というものを設けまして、昭和五十一年度以降相当大幅に事業を拡大いたしたいということで、通産省としても新しいエネルギー技術開発につきまして非常に力を入れているというのが現状でございます。
  148. 板川正吾

    板川委員 アメリカのように、石炭もある、オイルサンドなどもある、とにかく相当エネルギーの資源がある国ですら、必死になって新しいエネルギー源というのを開発しよう、金を使おうと言っておるのですね。それから見ると、日本のエネルギー政策というのは全く外国におんぷをしておって他力本願だ。それでは幾ら備蓄をしたって、備蓄によって混乱を収拾するなどというのはごくわずかなものであって、実際それによって供給の安定を図るなどということは不可能なんですね。そこで、サンシャイン計画などはもっともっと積極的に——十年間か、十五年間でしたか、サンシャイン計画で一兆五千億という数字があります。これは年間にしたら微々たるものですね。だから、これは大臣がいればもっと内閣として取り組んでもらいたいと私は注文したいのですが、大臣が来てないようですが、実際サンシャイン計画などというのはもっと積極的に取り組むべきだと私は思うのです。  その場合に、やはり財源が問題になります。従来、石油関税のある部分が石炭対策その他に若干使われておりますが、それは一割ちょっとぐらいでしょう。石油諸税はほとんど道路財源として使われておる。この石油関税や石油消費税というものは、道路財源ばかりでなくて石油の安定供給のために使われてしかるべきだ、私はこう思うのです。この点はどう考えられますか。しかし、これは結構だと言うだけじゃ意味はないのですよ。通産側は望むところでしょうけれども、国の政策としてこれを考え直す必要があるのじゃないかと思う。大臣はどうしました、二十分という約束だったが……。
  149. 山村新治郎

    山村委員長 ちょっと速記をとめてください。
  150. 山村新治郎

    山村委員長 速記を始めてください。
  151. 増田実

    ○増田政府委員 現在、石油関係でいろいろな税金がございます。これが、ただいま先生から御指摘がありましたように大部分が道路に使われておりまして、エネルギー対策に向けられるものが非常に少ない、御指摘のとおりでございますが、昭和四十九年度で申しますと、これは概算でございますが、石油諸税、具体的に言いますとガソリン税、それから軽油引取税、石油ガス税、それから航空機燃料税というのがございます。それにさらに原重油関税、これら五つの税を合計いたしますと、収入が一兆二千五百九十四億円ということになっております。その中で原重油関税が大体千五百億円ございますので、これは石炭対策と、それから石油開発事業というものに向けられておるわけでございますが、それ以外の残りの分、約一兆一千億円、これが道路財源ということになっておるわけでございます。  そういう意味で、石油関係から相当大幅な税金が徴収されておるわけでございますが、それがいわゆるエネルギー対策費として還元しておるものが非常に少ないというのが現状でございます。こういうことで、私どももエネルギー関係の対策費として、先ほど先生からも御指摘がありました、たとえば海外の石油開発事業というものの規模をふやすために、こういう税金をすでに石油関係で払っているので、その分を還元して予算の拡充強化を図ってもらいたいということで従来から話はしておるわけでございますが、先生も御存じのように、このガソリン税以下につきましては道路に使うということで、そういう法律上の規定にもなっておりますし、これによりまして日本の道路というものが相当大幅に改善されておるわけでございます。  現在の道路費をエネルギーの振興費に向けるということにつきましては、いろいろ問題がございます。ただ、私どもの方の立場といたしましては、もっとエネルギー対策費にこれらの諸税を振り向けてもらいたいということは言い続けておるような次第でございます。
  152. 板川正吾

    板川委員 石油関係の諸税を道路に使う、確かに日本の道路はいままで非常に悪かったのですから、道路に使ってきたことも全部悪いとは申しません。しかし、このところ道路の整備というものは相当な域に達している。道路を整備して自家用車をどんどん走らせるというようなエネルギーの消費の仕方にも、日本としては問題も生じてくる。ですから、どんなりっぱな道路ができても、石油がなければ自動車は走れないわけなんで、やはり石油の自主開発というものに石油の関係の税金を相当使うというのは当然の常識じゃないかと思うのですよ。この点は、私、大臣が来ましたならば一応だめを押しておきたいと思います。
  153. 山村新治郎

    山村委員長 速記をとめて。
  154. 山村新治郎

    山村委員長 速記を始めてください。
  155. 板川正吾

    板川委員 大臣、途中の話をあなたは聞いていないので困るのだけれども、これは私の最後の質問です。時間もありませんから大臣に要望しておきたいのですけれども、こういう備蓄をどんなにやったって、それはわずか三十日分を、六十日あったものを九十日にするというだけで、エネルギーの安定的な供給に役立つものはごくわずかだというんですよ。三十日分のことしかない。だから、本当にエネルギーの安定的な供給を図ろうというならば、もっと自主開発原油を持つとか、あるいは他の国の多元的な供給源を、中東ばかりではなくほかに求めるとか、あるいは国際紛争を起こさないためのあるいはそれに巻き込まれないための外交政策、経済政策をとるとか、そういう政策をとらなければならないでしょう。特に自主開発原油を持つことが大切じゃないか。  いまそちらの説明によると、昭和五十五年には石油のコストアップ分だけでも年間千五百億かかるし、十年後には二千五百億もかかる。これは国民、消費者に転嫁をして、価格で吸収するわけです。価格で吸収してもいいし、税金で取ってもしようがないでしょう。いずれにしましても、国がもっと積極的に自主開発というものに力を入れなくちゃいけないのじゃないか。  その場合に問題になるのは資金だ。いま石油関税とか、あるいは石油関係の諸税というのは膨大な金額になる。四十九年ですら一兆二千五百九十四億円ある。その大半が道路財源に使われている。いまの石油の状況から言うと、どんどん道路をつくって、自動車をどんどんふやして、自家用車をどんどん走らせていくという従来の高度成長型の石油消費のあり方というのはこの辺でやはり考える必要があるのじゃないだろうか。だから、私は、道路の改善というのをテンポを若干緩めても、その金の相当部分を石油の自主開発の方面に使うとか、新しいエネルギー開発、フランスのランブイエでも議論になりましたように、新しいエネルギー開発、日本で言えばサンシャイン計画、こういったものにもっと徹底的に金を使ってエネルギーの安定供給というのを図るべきじゃないか、こう思うのですね。これに対して、事務局からもいま答弁がありましたけれども大臣の所見を伺って、私は時間が来ましたから終わりたいと思います。
  156. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 エネルギー政策というものは総合的に進めていかなければならぬ、特に石油政策についてもしかり、そのうちでも自主原油の開発と、それから石油税制のあり方、これは問題点である、こういう御指摘がございましたが、私も全く同感でございますので、いまお話しになったような方向で今後エネルギー政策というものを十分検討しながら進めてまいりたいと思います。
  157. 板川正吾

    板川委員 どうもちょっと私のポイントが、あるいは説明不足か聞きづらかったかわかりませんが、エネルギーの自主開発をするために石油関係の諸税の相当部分を投入するという意気込みがなければ、結局新しいエネルギーの開発というのはできないのじゃないですか。この辺で、従来の高度成長で道路をよくして自家用車をぶんぶん走らせるというエネルギー消費のあり方というものを修正する必要があるのじゃないか、そして、それよりも大事なエネルギーの安定供給のために、エネルギーの開発の費用に回すべきじゃないか、これは大臣が閣議でそういう政策をとるようにひとつ努力してもらいたいというのが私の趣旨なんです。いかがですか。
  158. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私も、自主開発原油は膨大な資金が要ることでございますから、今後御指摘のような方向で努力をいたします。
  159. 板川正吾

    板川委員 まあまた折を見て議論したいと思います。  以上で終わります。
  160. 山村新治郎

    山村委員長 米原昶君。
  161. 米原昶

    ○米原委員 先日のフランスのランブイエで行われた首脳会議、ここでもエネルギー問題がかなり話があったようですが、詳細は私も知りません。しかし、ランブイエ宣言を見ますと、産油国と消費国との国際的協力という言葉が出ております。この言葉を政府としてはどのような内容を持つものと理解されるか、まず最初にそれを伺っておきます。
  162. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私も先ほど中国から帰ったばかりでございまして、詳細はまだ承知しておりませんが、この会議に通産省から参加をいたしました通商政策局長に先ほど若干のその間の動きを聞いたわけでございますが、エネルギー問題につきましてはフランスとアメリカとの間に初め若干の食い違いがあったようでありますが、三木総理が中に立たれまして、消費国同士の協調はもちろん必要である、しかし同時に、産油国との対話も必要である、だから協調と対話、これを二本立てにしてエネルギー政策というものは進めていくべきである、こういう発言をされまして、大体そういう方向でアメリカもフランスもよかろう、こういうことで落ちついたというふうに聞いております。
  163. 米原昶

    ○米原委員 私も大体そういうことだろうと推測します。だが、そうなりますと、ちょっと聞かなくちゃならぬことが出るのです。この九十日備蓄というのは、いわば産油国との関係が悪化した場合に備えるという性質を持っているのじゃないか。産油国との関係悪化の結果生じる石油供給の削減など、そういうことが起こる場合に備えるものと理解されるわけなんです。そういうような措置は、いまおっしゃった産油国との対話と協調、それからいま述べたランブイエ宣言の産油国と消費国との国際的協力、こういった方向に逆行するのではないかという印象を私は受けるのですが、この点どう考えられますか。
  164. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は二つの意味があると思うのです。その一つは、日本のように全然石油の出ない国は国民経済上からいってもこの程度の備蓄というものは必要である、こういう考え方が一つ。それからもう一つは、将来何らかの形で油の問題で困ったときには消費国同士がお互いに助け合おうじゃないか、こういう考え方もあるとは思いますが、一番大事なのは、国民経済上この程度の油が必要である、こういう考え方が一番大きな問題であろう、こう思います。
  165. 米原昶

    ○米原委員 この問題は先国会でこの法案がかかったときに私が質問した点なんですが、そのときに通産大臣は私の質問に対して、備蓄の必要性は価格交渉上でも必要である、こういう意味のことを答えておられます。資源エネルギー庁の担当官の方の話を聞いても、備蓄をすることは産油国との関係で立場を有利にする、交渉上有利という見方をしておられます。こうした発想は備蓄を産油国に譲歩させるための手段とみなすものであって、対決の姿勢ではないか、こういうふうに考えるわけであります。さっきお話しになりました先進国首脳会議の内容について私が恐らくそうであったろうと想像したのは、三木さんの演説の草稿というものが読売新聞に出ておりましたが、これを見ても、産油国と対決とならないようにするという発言を予定されておったようであります。そういう点でも、前から三木さんの言っておられる点からしてそれは当然だろうと思うのですが、そういう発言等からすれば、交渉上有利だからということが力点に置かれたのでは考え方が違うのじゃないか、こういうふうに考えるのです。  しかも、交渉上有利だという考え方は、何も特別にそういうことじゃなくて、IEAの基本的な立場がそうであります。その点、例の問題のキッシンジャー演説というものともぴったり一致する考え方であります。そういうことがあるからこそ、IEAに対して産油国が敵対的な組織である、こういうことを表明しているわけであります。当然だと思うのです。九十日備蓄をすることが交渉を有利にするから備蓄するんだという考え方は、まさにIEAやキッシンジャーが述べた構想と積極的に一致しているのじゃないか。これでは産油国との真の友好関係を築くことにならないのじゃないか、これが大きな障害になるのじゃないかという感じが私はするのであります。  その点についても、三木首相の演説の草稿を見ますと、「産油国との対話を行うに当たっては、産油国に対決的とならない限度で先進消費国間の共同歩調をとるべきであり、」こう言っておりますが、一方ではその同じ草稿の中で「IEAにおいて行ってきた諸活動の成果については高く評価している」ということも言っておられるので、この点でも矛盾しているのじゃないか、私はこう考えるのでありますが、いかがでありましょうか。
  166. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 日本の基本的な立場は、総理が言われておりますように、消費国同士の間での協調ということが必要だと思いますし、同時に、協調ということは産油国と対決するものではない、産油国との対話も必要である、こういう日本の置かれております非常に特殊な立場、つまり油が全然出ないという立場から考えまして、私は総理のとっておられるこの戦略というものは正しいと思います。  それから備蓄でございますけれども、先ほど申し上げましたように、国民経済上この程度のことはどうしても必要であるということで、ヨーロッパ各国も特にこの程度のことを目標にして進めておりますし、その価格交渉等においても、全然蓄えがないまる裸で交渉する場合と九十日の備蓄を持って交渉する場合とでは、それは結果的には若干条件が違うかもわかりませんが、それは結果論でございまして、あくまで目的は、国民経済上この程度のことは持ちたいというのが基本的な考えであるということを申し上げだいと思います。
  167. 米原昶

    ○米原委員 その点について前国会でわが党の野間議員が質問した場合にも、一九七五年二月三日のナショナルプレスクラブでのキッシンジャー演説を引用して、こういう点に賛成なのかということを具体的に聞きましたら、増田長官が、このキッシンジャー演説の内容には賛成しがたいとその当時でも言っておられるのです。そう言いながら同時に、実際は備蓄を産油国に対する交渉上有利な手段とみなすように位置づけた発言も一方では行われる。この点では問題を非常にぼかしておられるのではないか。産油国に対する交渉上有利だから備蓄するという考え方がまさにキッシンジャー構想そのものであります。また、IEAの基本的な方向でもあります。この点では、明らかに二つの全く違ったものをぼかして言っておられるのではないか。この点が明確にならないと、私はどうもこれには賛成しがたいのです。
  168. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 九十日の備蓄が即産油国との対決である、こういうふうに断定されるのは私は反対であります。御案内のように、産油国と消費国との間には若干意思の疎通を欠いたところがございまして、たとえばことしの春の産油国、消費国会議、まあ予備会談を開いたわけでございますけれども、そこで意見の食い違いがありまして本会議を開くことができなかったわけです。しかし、その後何回か意見の調整をいたしまして、九月の産油国、消費国の予備会談では、とにかく十分話し合うことが必要である、こういうことで双方が合意をいたしまして、十二月十六日から産油国、消費国会議で、名前が変わりまして世界経済協力会議というふうになりましたですけれども、とにかく、石油問題はもちろんだけれども、その他の問題も含めて十分話し合いをしていこうじゃないかということで合意ができたわけであります。  でありますから、ことしの春ごろまで双方に若干の誤解があったということは認めますけれども、その後誤解がだんだん解けまして、そうして協調的な精神で話し合いをしよう、こういう段階になっておるということはもうすでに御案内のとおりでございます。
  169. 米原昶

    ○米原委員 アラブ諸国と協調的な立場で話し合うということには私も全面的に賛成しますが、そのためにはやはりアラブ産油国の資源主権を尊重するという態度を非常に明確に出す必要がある。そうやってこそ平等互恵の協調もあり得るのだ。それに差し支えになるような方向はいま打ち出すべきときではないというふうに私は考えるから、質問しているのです。アラブなどの産油国がいわば石油を武器として一定の行動をとるのは、アメリカなどに支持されたイスラエルの侵略に対抗するというだけではないと私は思っているのです。長い間天然資源を帝国主義列強に支配されてきた中で、民族の主権、資源主権を確立して、また、先進国が引き起こすインフレーションなどに対抗するためのものと考えなくちゃならぬのじゃないか。IEA参加によって義務づけられる九十日備蓄というのは、明らかにそのような発展途上国の運動に対抗する一つの手段となっているのではないか。  御存じのように、日本は国連での天然資源の恒久主権の決議にも棄権しているじゃありませんか。このような姿勢からは、資源産出国をあくまで抑えて支配しようとする方向しか生まれない。私たちも主張するような平等互恵の関係は生まれないと思う。一定の話し合いは行われても、結局力で押していこうというようにしか受け取られていかない。彼らもそれをただ一定の妥協だとしてやるわけで、本当の解決にならない。資源の乏しいわが国にとっては、このような態度は長期的に見て歴史の流れに逆行するものであって、安定供給も長い目で見ればそういうやり方では危ないものになる。根本的にこの点を変える必要があるのじゃないか、こう考えるわけでありますが、いかがでしょう。
  170. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 産油国の主権は、これはもう当然尊重しなければならぬと思います。しかし、九十日備蓄をするからといって、それが産油国の主権を侵害する方向にいっておる、それはいささか言い過ぎではなかろうか、私はこういう感じがいたします。九十日の備蓄をするということは、産油国の主権を侵害する、こういう趣旨では決してございませんで、とにかく日本のように油の出ないところは国民経済上どうしてもこの程度の油を持つということが必要だ、こういう観点からスタートしておるわけでございます。
  171. 米原昶

    ○米原委員 資源エネルギー庁で出しておられる「九十日石油備蓄の増強について」というパンフレットの中で、石油備蓄は石油企業の利益の追求のためではない、こういうことをある程度断定的に言っておられます。なぜそうなのかという点に私、若干疑問を抱くのです。確かにいま石油業界の一部には、必ずしもこれに賛成しないという意見もあるようでありまして、報道されております。しかし、果たして九十日備蓄は石油企業の利益と関係ないだろうか。ヨーロッパの諸国で、国の援助なしに、石油企業が自分の企業負担で九十日前後の備蓄をしているのは、どういうわけでしょうか。  日本の主要な石油企業は、メジャーの資本系列下にあります。メジャーやIEA、アメリカの基本的な方向は、あくまでも産油国などの天然資源を支配して、産油国と対決していくというものであります。その中に彼らの資源支配の利益を見出しております。日本の石油業界もその体制に組み込まれております。そのために、九十日備蓄が産油国との対抗上の有力な手段になっております。これで何で、石油備蓄が石油企業の利益にならない、こんなことが言えるのか。  まして、備蓄の費用を、資源エネルギー庁のパンフレットで言うように、国民全体で負担すべきものである、ここまで言っておられます。まるで国民全体が石油備蓄の費用負担しなくちゃならない、こういう考え方であります。こういうのはとんでもない話じゃないか。メジャーや石油独占体のために国民の税金が使われるというのはどうしたことか、こういうように考えるわけです。いかがですか。
  172. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまの日本の石油産業は、御案内のように大体半分はメジャーの系統であります。半分は民族資本でございます。それからアメリカは、御案内のように石油のおよそ七割が国産であります。大体三割を輸入しておる。こういうことでございますから、アメリカの立場と日本の立場は違うのです。それからヨーロッパの立場とアメリカの立場も違いますし、ヨーロッパの立場と日本の立場も違う。こういうことから、当初に申し上げましたように、今回のパリの会談でもアメリカとフランスとの間に若干の意見の食い違いがあって、それを日本が調整する、そういう方向でおさめたということを申し上げましたが、アメリカに日本が一〇〇%追随しておる、そういうことでは決してありませんで、日本は日本として独自の行き方をしておる、こういうふうに御理解をしていただきたいと思います。  それから九十日備蓄というものは、繰り返し申し上げて恐縮でございますけれども、私は、日本のように油が全然出ない国、しかもこの油を使って産業が動き、社会が動いておる、こういう国では、どうしても国民経済上九十日程度は必要である、むしろそれ以上必要であるかもわかりませんが、少なくとも九十日は必要である、こういう観点に立って備蓄をするわけでありますから、やはり備蓄の費用等につきましては国民経済全体が負担をする、そういうことが妥当である、こういうふうに考えておるということを御理解していただきたいと思います。
  173. 米原昶

    ○米原委員 それではさらに聞きますが、九十日備蓄のためには五年間で一兆二千億円という莫大な金額がかかると言われますが、九十日備蓄のための政府の助成、投資とか融資とか、そういうものは五年間でどのくらいになりますか。
  174. 増田実

    ○増田政府委員 お答えいたします。  昭和五十年度を初年度といたしまして、五十四年度までの九十日備蓄達成のための政府のいわゆる助成コストの金額は、合計いたしまして九百七十五億四千百万円という計算でございます。具体的な内容につきましては、大部分利子補給あるいは低利の特別融資という形、それからそれ以外の調査費の補助、そういうものの合計でございます。
  175. 米原昶

    ○米原委員 備蓄がたとえば一カ月積み増しされたからといって、この前のような石油危機が起こった際に石油の安定確保がそれによって必ずしも保証されるものではないと私は思うのです。この前の石油危機の際のヨーロッパの経験でもそれは明らかであります。先ほども社会党の委員からも指摘がありましたが、必要なことは、自国の天然資源にもっと注目する必要がある。そうして石炭の復興など、正しく見直すことが必要であります。九十日備蓄にかかる資金は、そういうことの方に回すのが国民には利益になるのではないか。自国のエネルギー資源を正しく見直して、メジャー依存を改めて、産油国との平等互恵の関係を充実することこそ必要ではないかと私は思うのです。パンフレットで言われているように、国民経済上の安全保障の観点からと言いながら、実際は産油国との対決の方向に進むような方向、エネルギー政策の根本的な転換が必要じゃないかと私たちは考えるわけであります。  九十日備蓄するということは、一見それ自体何ら反対すべき理由がないように見えます。ところが、IEA、メジャー、その他国際政治経済の仕組みの中ではきわめて政治的な手段となり得るものだ、そういうふうに私は見ます。現在のような不況下で、財源難の中で、立地公害上の住民の反対を押し切って、国際石油独占体やIEAの方向に沿って九十日備蓄を急がなければならない理由がどこにあるのか私はわからない。  小説「油断」というのは、石油危機の真の原因を覆い隠して、備蓄に反対するわれわれの責任を云々しておりますが、必要なことは、すでに述べたように自主的なエネルギー政策をとることであり、中東戦争のような事態を再び繰り返させないような努力を国際政治の場でもっと進めることであります。それは、イスラエルに対する非軍事的な制裁などの方法もありますし、そして日本自体を石油供給削減の対象となるような立場に置かないようにする外交政策をとることが第一ではないか、こういうことを強調しまして、私の質問を終わります。
  176. 山村新治郎

  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣、中国からお帰りになって早々御苦労さんでございます。中国へ行かれまして、きょうは備蓄の問題でございますし、特に石油問題にしぼりましてどういうお話があったか、簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  178. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在中国との間には、貿易、経済上いろいろな懸案があります。たとえば貿易のアンバランスの問題、それから伝統的な商品の貿易をどうするか、こういう問題、それからプラント輸出等の問題いろいろありますけれども、やはり当面する一番大きな問題は石油問題だと思います。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕 石油問題が一番大きな両国の問題である、こういうふうな観点に立ちまして、先方の担当者及び最高責任者に会いまして突っ込んだ話し合いをしたわけでございます。  先方の言われるのには、中国としては非常に豊富な埋蔵量を持っておる、いろいろ具体的な御説明がありましたけれども、非常に埋蔵量というものは膨大なものである、それから、これから石油産業というものは将来さらに大きく発展していくであろう、こういう現状及び見通しについての詳細な説明がございました。  そういうことを背景といたしまして確認し合ったことは、できるだけ早く長期契約に持っていこうじゃないか。それから、長期契約をする場合にいろいろ問題点があるわけでありますが、数量については向こうはこだわらない。多くてもいいし、あるいは少なくてもよろしい。日本が希望する数量でよろしい。それから第三は、価格について問題はあるけれども、これは十分議論をしてひとつ解決しようじゃないか。双方が利益になるような形で解決すればいいじゃないか。こういうふうな基本的な話し合いがありまして、まず私は大事な点では合意に達したと思います。  いまそういう段階でございますが、今後はそれを受けまして、実務著聞でこれをどう具体化するかという具体的な話し合いにひとつ入りましょう、こういうことで別れたわけでございます。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後いろいろ事務的なそうした詰めが行われていく、このように思いますが、取引方法としては大体どういうような形が予想されるのでしょうか。
  180. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ことしは八百万トン先方から輸入しておりますが、窓口が二つございまして、一つの民間団体は六百万トン、一つの民間団体は二百万トン、こういうことで二つに分かれてことしは輸入をいたしましたが、今後長期契約をするということになりますとどういう方法がよいのか、これは政府と関係者との間で至急に詰めたいと思います。そして最善の取引方法を考えてみたい、こういうふうにいま考えておるところでございます。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 わかりました。いずれにしても、わが国の近くでそうした豊富な石油があるということは、供給の多角化という点におきましても、また今後の日中の関係、友好、また貿易面等から考えましても、こうした関係をさらに深めていただくように十分ひとつ努力をしていただきたいと思うわけであります。  それから次に、石油備蓄基地の問題でございますが、この法律が通ったとしまして、わが国には立地の困難さというものが諸外国に比べまして非常に心配されるわけでありますが、現時点におきましてどういった地点を政府としては予想されておりますか。
  182. 増田実

    ○増田政府委員 九十日の備蓄のために必要な今後の土地の取得につきまして、先ほど板川先生にも御答弁申し上げましたのですが、大体坪数にしまして四百九十万坪、千六百万平米の土地が必要でございますが、そのうち約百七十万坪につきましては、すでに石油会社がその近辺に取得しております土地で、これは将来のタンク建設用地として未使用のまま持っております。そういうことで、これを引きますと、三百二十万坪というものが新たにただいま先生がおっしゃられました基地として取得すべき対象になるわけでございます。  これらにつきまして、現在石油会社が各所で将来の備蓄基地として使用することにつきまして現地と交渉をいたしております。中には相当反対運動が起こってその交渉が中断しておるというのもございますし、中には相当現在では進んでおりまして、あと漁民の方々との間の補償の問題その他を詰めれば相当なところまでいくという段階に達しておるのもございますが、ただ、現在ですでにすべての交渉が終わっているところはまだございません。そういうことで、基地建設予定地は現在交渉中でございまして、具体的には交渉が終わったところとして先生にお答え申し上げる土地はまだございません。
  183. 近江巳記夫

    ○近江委員 石油備蓄基地の防災対策の問題は非常に大事な問題でございます。水島事故等の例を見ましてもそのことにつきましては明らかなことでありますし、今後の備蓄計画の進捗にも大きな影響を与えるのじゃないか、このように思うわけであります。水島事故の苦い経験から石油コンビナート等災害防止法の制定が求められまして、現在参議院で審議中ということを聞いておるわけですが、しかし、この法制定ですべてが万全であると言えないことは言うまでもないわけでありますが、これをいかに有効に活用していくかどうかが非常に大切な問題であるわけであります。そこで、備蓄の実施官庁である通産省として、またエネルギー庁としまして、この防災に取り組む決意について伺っておきたいと思います。
  184. 増田実

    ○増田政府委員 今後の備蓄政策を進めていくに当たりましては、この備蓄基地の防災問題、また環境上の問題、すべての問題につきまして十分な配慮をし、問題の起こらないようにしなければ、九十日備蓄は達成できないと私ども思っております。  また、この備蓄基地を建設いたしますのは、通産省が所管いたしております石油業でございますので、通産省といたしましても責任を持ちまして、防災の問題については石油業者に対しまして十分監督をしていくつもりでございます。また、具体的には防災の問題は消防庁の所管の問題その他もございますが、十分連絡をとり合って、決してその責任の不明確ということではなくて、先ほど申し上げましたように、所管業種として、担当官庁としての責任を十分果たすつもりでおります。それなくしてはこの備蓄計画が達成できないということで私ども考えております。
  185. 近江巳記夫

    ○近江委員 コンビナート防災法の制定に伴いまして、既存のコンビナートも規制の対象になってくるわけであります。しかしながら、そのうち、施設の配置と面積、いわゆる工場のレイアウトに関しましては、新法の基準に該当しないものでも既存のものは変更命令ができないということになっておるわけであります。そういたしますと、危険施設をそのまま放置することになりかねないわけでありますが、どのように対処なさるか、指導方針についてお聞きしたいということが一点であります。  そこで、一例を申し上げたいと思うのですが、たとえば既存の密集地域でのコンビナートで、新法のレイアウト基準に該当させるために、備蓄タンクの間引きなどを行政指導なさるお考えはないかどうか。この二点につきましてお伺いしたいと思います。
  186. 増田実

    ○増田政府委員 石油コンビナート等災害防止法案におきまして、石油と高圧ガスの両方が混在いたしますものにつきまして配置規制がかかっておりまして、ただいま先生指摘のように、石油のみを取り扱います石油備蓄基地についてはこの配置規制が行われていないわけでございますが、石油のみを取り扱います石油備蓄基地につきましては施設の配置が比較的単純でございまして、御存じのように、タンクの間隔をどうするとか、防油堤をどうするとか、それからどれくらいの敷地に幾つのタンクを置くとか、こういうことでございますので、これらにつきまして消防法に基づくいろいろの規制、現在それの改正という案が私どもの方との間でいろいろ検討されておるわけでございますが、これによりまして十分防災の確保を図り得る、こういうふうに考えております。  また、御指摘ありましたタンクと付近との間の距離その他の問題につきましても、たとえば散水施設を設けるその他を義務づけることによりまして、いまの防災上の問題についての解決を図りたい、こういうふうに考えております。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 石油備蓄基地の防災体制の場合、たとえば日石の喜入基地のごとく人口密集の都市部から比較的離れた地域に立地する場合が多いのじゃないかと思うわけでありますが、この場合、市町村の消防組織よりもむしろ基地内の防災組織が重要な役割りを担っていくように私は思うわけでありますが、その場合、防災設備の完備はもちろんのこと、人に対する教育訓練、実地訓練が非常に大切じゃないかと思うわけであります。これに対しまして通産省としてはどのように関与していくことになるのか、具体的な指導方針等があればお聞きしたいと思うわけであります。
  188. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま御指摘のありました石油基地における消防消火設備、あるいは防災に対する体制、それから防災に当たるべき人間の教育の問題、それら会社自身が行わなければならない点が非常に多いと思うわけでございまして、この点につきましては私どもの方からも非常に強く各石油企業に対しまして行政指導の形で万全を期するように指導いたしております。先般三菱石油の事故が起こりまして後、各種の通牒その他、あるいはこれに関する検討会、協議会その他を設けまして各種の指導をいたしておるところでございます。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 備蓄計画の進捗に伴いまして、今後さらに専用基地が増加していくことになるわけでありますが、コンビナートの場合は特別防災区域協議会の設置などを通じまして、企業間の防災に関する共同研究の場が設けられておるわけでございますが、石油の備蓄基地だけの場合もこの種の共同研究が必要じゃないかと思うわけでありますが、現状と、また今後の方針についてお伺いしたいと思います。
  190. 増田実

    ○増田政府委員 先般、水島の事故がありました後、石油連盟の中に防災のための協議会というものを設けまして、ここで各会社の防災担当の専門家が共同して防災体制をいかに確立するかということを検討いたしております。これらにつきましては、私どもの方からも担当官を出して協議をさせているということでございます。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした備蓄基地をつくっていくということになってまいりますと、災害の発生あるいは環境破壊を防止するための基本的な要件でありますいわゆる環境影響の事前評価すなわちアセスメントにつきまして、その審査手続あるいはルール等につきまして政府としてはまだ模索の段階じゃないかと思うわけでありますが、私も当初からこのことを検討してもらいたいということを強力に言っておるわけでございますが、現在どうなっておるかということであります。この点はどうですか。
  192. 増田実

    ○増田政府委員 この基地を建設いたします前に各種の環境に関する調査が必要なわけでございまして、現在これは各種の進出企業が事前に行っているところでございますか、それのみではなくて、昭和五十年度予算はわずかな金額ではございますが、五億円を計上いたしまして、各府県で安全のための調査を事前に行うということで補助金の形で交付するという制度を開いております。これにつきましては、来年度も引き続き備蓄基地建設予定の府県におきまして、事前の環境調査を行うための補助金を国から交付するという制度をしいております。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、この基地ができるということになってまいりますと、縦横にパイプが走るわけでございますが、スイスのパイプラインの安全基準が世界的にも最低条件ということが言われておるわけで、わが国の安全基準はその二分の一にも達しておらない、そういう心配がされておるわけですが、そういう点については研究なさっておりますか。
  194. 増田実

    ○増田政府委員 パイプライン法というものがたしか二年前に国会で成立いたしたと思いますが、これに基づきまして各種の技術基準をその当時つくっておりまして、政令、省令の形で出しております。ただ、これにつきましては、その後の情勢というものに合わせてさらに検討するということで、現在、七月からパイプラインの技術基準を含めまして、今後のパイプライン事業をいかに持っていくかということにつきまして協議会を開いております。  ただ、先ほど先生がおっしゃられましたように、日本の技術基準が世界において非常に低いというふうには私どもは考えておりませんで、相当な安全度その他を踏まえた技術基準を先般つくったつもりでございますが、しかし、いろいろの情勢が変わりますので、これらにつきまして、先ほど申しましたような協議会で、さらに専門の技術の教授の方々を動員いたしまして見直しているというのが現状でございます。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういうことは、もう一たび事故が起きますと取り返しがつかない、またいろいろな点で波及もしていくわけでありますので、これは政府にとってそれほど大仕事でもないはずですから、諸外国の例をよく参考にされて、世界でも最も厳しい、そうした心配のない基準というものをひとつ慎重につくっていただきたい、これを特に要望いたしておきます。  それから、この備蓄法案が先国会流れまして、衆議院でまたこのようにかかっておるわけでありますが、五十年度に計上されております予算は大部分未使用であると私も思うわけですが、個別企業対策などで使用済みのものがありましたならば、その内容につきまして説明していただきたいと思うわけですが、いかがですか。
  196. 増田実

    ○増田政府委員 お答えいたします。  五十年度の予算に計上されました中で、一つは原油の融資資金というものがございますが、これにつきましては、すでにこれを実行いたしましたのが七百四十九億円、これは石油開発公団を通しまして原油購入資金の九割を供給するというものでございます。さらに、現在これに二百四十二億円を追加することで手続中でございます。  それから、個別企業に対しまして、備蓄施設を建設いたしますための融資制度といたしまして、日本開発銀行等の融資制度がございます。これは二百億円を組んでおりますが、現在までのところ、非常に少ない金額しか出しておりません、一つには、水島の事故以降、タンク設置に関します基準の改定作業が行われておりますために、消防署の方でタンクの新設につきまして一応しばらく待つようにということがありますために、これがおくれておるというのが実態でございます。  それから、石油特別会計からの支出といたしましては、利子補給金のうちの二十二億円は支出済みでございますが、なお残りの分につきましては、現在手続中あるいは年度末までに出すということで計画いたしております。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 財投の本年度の計画を見てまいりますと、共同備蓄会社の備蓄施設に対する融資につきまして、石油開発公団からの融資条件のうち、まだ金利がはっきり決まっておらないというようなことも聞いておるわけですが、その点についてはどうなんですか。
  198. 増田実

    ○増田政府委員 五十年度からの予算の中に、新しい制度といたしまして、共同備蓄会社に対します石油開発公団の出資及び施設建設に関する融資がございます。これにつきましては、先生が御指摘になりましたように、現在未使用でございます。共同備蓄会社の計画につきましては現在幾つかありますが、まだこれが具体化の段階に至っておりませんので、そのために、この出資勘定三十億円用意しておりますが、まだ未使用でございます。  それから、もう一つ指摘がありました共同備蓄会社に対する融資制度、これは五十億円計上しております。必要資金の八割を融資するということになっておりますが、この利子率につきましては現在まだ大蔵省と折衝中でございまして、私どもの方はできるだけ低いものに持っていきたいということでやっておりますが、現在まだこの利子率は決まっておらないということは御指摘のとおりでございます。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 昭和五十四年度までの石油備蓄五カ年計画の全体の資金計画が、一兆二千八百億という非常に膨大な数字が示されておるわけですが、今回OPECが原油を一〇%値上げをいたしまして、その点これは見直しをなさるのかどうか。その場合、原油代金あるいはタンク設備、用地費などの内訳はどのようになっておるかという問題であります。  それから、もう時間がありませんからまとめてお聞きしますが、いずれにしても、こうした石油備蓄に伴って莫大な費用がかかるわけでありますが、こういうことは、いわゆる石油製品価格であるとか、そういう費用という点において非常に負担を強いるのではないか。これだけインフレ、不況という中で、いろいろな厳しい条件で非常にみんな苦しんでおるわけですが、この膨大なコストをさらに上乗せをしていく、それがまた高騰に拍車をかける、こういう点について政府としてはどういうようにお考えになっておるか。  以上二点をお伺いして、私の質問を終わります。
  200. 増田実

    ○増田政府委員 今後五年間の所要資金といたしまして一兆二千八百億円という計算をいたしておりますが、ただいま先生からおっしゃられましたように、原油代が上がれば、それだけこの中に組んでおります原油代金の算定が低いということになるわけでございます。現在組んでおりますのは、キロリットル当たり二万二千円で、必要な原油約三千万キロリットル、六千六百億円という計算になっておりますので、今回のOPECの値上げが約一割ありますから、その分がまだ算定されておらないわけでございます。今後これにつきまして、石油価格の上昇あるいは下落いかんによりまして、この算定が訂正されなければならないわけでございます。  ただ、それ以外につきましては、十万キロリットルのタンクの建設費といたしまして十億円で計算いたしておりまして、これはそう動かないと思っています。大体最近の価格で計算いたしております。また、土地代その他につきましても、むしろ少し高目になっておるのではないかと思いますが、公害対策その他が従来よりは余分な土地の取得が必要であるということで、若干余裕を持って組んでおります。そういうことで、原油の代金が値上がりすれば、その分は訂正せざるを得ないというふうに考えています。  それから第二の点の、備蓄を行いますためのコストということでございますが、これはコストから国の助成いたします費用を除きまして、大体一キロリットル当たり、先ほど申し上げましたように二百七十円前後というものが負担になるわけでございます。これにつきましては、本来石油企業が合理化を行って負担すれば、このコスト分につきましては販売価格にははね返らないわけでございますが、ただ御存じのように、現在石油企業はほとんど赤字でございまして、この費用につきましては、キロリットル当たり二百七十円、これは五年間の平均でございまして、初年度、次年度はそれほどになりませんが、この分につきましては製品価格に転嫁せざるを得ないというふうに考えております。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 これで終わりたいと思いますが、いずれにしても、費用のコストの転嫁ということは非常に価格上昇、また国民生活の圧迫ということになるわけでありますので、十分その点は合理化で吸収できるようにひとつよく指導していただきたいと思うのです。  きょうは大臣も非常にお疲れでありましたので、長官に集中して質問したわけでありますが、私たちが一番心配するのは、何と言いましてもやはりこうした防災の問題、あるいは環境破壊、汚染等の問題であります。十分な配慮をしていただかなければならないと思います。最後に大臣の決意をお聞きして、私の質問を終わります。
  202. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま最後に御指摘になりました問題は、いずれも重大な問題ばかりでございます。今後とも石油政策を進めていく上におきまして十分配慮いたします。
  203. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは終わります。
  204. 田中六助

    田中(六)委員長代理 宮田早苗君。
  205. 宮田早苗

    ○宮田委員 最初に、備蓄の主体者についてお伺いいたします。  備蓄目標達成につきましては国民的な合意が必須の条件である、これは当然なことでございますが、膨大なタンクの建設用地、また莫大な資金が必要であるにもかかわらず、政府責任体制が必ずしも明確になっていないのじゃないか、こう思います。それどころか、この法案は一方的に民間企業に備蓄を義務づける規制法のような考えもするわけであります。いわゆる罰則条項をもって備蓄を規制しようとしておられるわけですが、この政府の基本姿勢に対しましては問題があるのじゃないかと思います。国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を図ろうとするならば、民間企業努力もさることでございますが、政府みずからが明確な責任と権限を持って国家的な施策として実施すべきであると思いますが、その点についてまず大臣のお考えを聞かせていただきます。
  206. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ごもっともな御質問でございまして、国民経済上今回の備蓄政策はどうしてもやらなければならぬ問題でございますので、いろいろ問題点はありますけれども、ぜひとも万難を排してやっていきたいというように考えております。
  207. 宮田早苗

    ○宮田委員 では次に、タンクの建設用地の確保の問題についてお聞きいたします。  この備蓄計画は、昭和五十四年度末までに九十日分を保有するということに目標がなっておるわけですが、石油計画をベースに試算いたしますならば、貯油量八〇%としてその所要建設タンク容量は約三千五百万キロリットルでございます。これに要する用地といたしましては二千三百万平方メートルということになるのじゃないかと思う。建設用地の確保には、昨今の石油に関連した事故等で、石油アレルギーからきわめて困難な情勢になっておると考えます。政府は昭和五十一年度予算に石油備蓄立地交付金を計上して、地域社会の建設また整備費を交付する方針を出しておりますが、広く地域住民の理解を得るためには、ただ資金の交付のみにとどまることなしに、安全保守、防災、環境対策の万全を図る体制を政府主導のもとに実施すべきであると思っておるわけでございます。さらに、用地確保は政府が一切責任を持って実行をしてほしい、こう思っておるわけですが、そういう問題についてどうお考えか、お聞かせ願います。
  208. 増田実

    ○増田政府委員 ただいまのような考え方で、私ども五十一年度予算につきましては、たとえば石油の備蓄施設につきまして立地促進の交付金というものを八十一億円要求いたしております。これは石油基地を建設いたします町村あるいはその近隣の市町村に対しまして、各種の社会資本の充実その他を行うための交付金でございます。それからもう一つは、これは本年度の予算からありますが、施設の安全対策調査費の補助金というものを府県に交付するということで、安全調査をいたすという形で要求をいたしております。  それから、いま先生から御指摘のありました、備蓄基地の用地を国みずから取得して備蓄を促進すべきではないかという点でございますが、これにつきまして私どももいろいろ検討いたしたわけでございますが、やはりこの備蓄の主体は民間企業で、これに対して政府が応援するという形で今回の制度を打ち立てておりますので、土地の取得につきましては、まず民間がこれを行う。ただ、この備蓄の必要性その他につきましては政府が十分PRに努めるとか、あるいは地域住民のコンセンサスを得るように努力するということでこれを応援する立場にはあるわけでございますが、直接の取得をいたしますのは民間企業がやるという形になっております。  それからもう一つ制度といたしましては、共同備蓄会社ということで、各企業が個別企業だけではなかなか備蓄基地の建設がむずかしい場合に、半分国が出資をする、これは具体的に申しますと、石油開発公団の出資金ということによりまして共同備蓄会社をつくりまして、これが備蓄基地の建設に当たるということを考えております。共同備蓄会社がいわゆる第三セクター的な役割りを果たすということで、国が直接土地の取得を行うわけではございませんが、しかし、国の資金が半分入っております会社が土地の取得その他を行う、こういう形で今後の備蓄制度の推進を行いたいというふうに考えております。
  209. 宮田早苗

    ○宮田委員 さっきの質問と関連いたしますが、原油代を除いても一兆数千億円必要になるのじゃないか、こう思われるわけでございますが、この資金を石油関連諸税の有効活用等で確保するような考え方はないのかどうか。これは再度の質問になると思いますが、お聞かせ願いたいと思います。
  210. 増田実

    ○増田政府委員 現在石油関係の諸税といたしましてその収入が一兆二千億を超えておるわけでございまして、そのうち石油関係に向けられておりますのは非常にわずかでございます。現実には、関税収入約千五百億円のうちの二割ないし二割五分程度が石油開発及び石油備蓄用の費用として充当されておるというのが現状でございます。そういう意味で、石油を税源といたしました収入が、現在はほとんどその大部分が道路に向けられておるわけでございます。私どもも道路の重要性についてこれを否定するわけではございませんが、しかしながら、石油関係の諸税が石油に戻ってくるのが非常にわずかであるという点については、これをできるだけ大きくしたい、これを拡大いたしたいということを希望はいたしておるわけでございます。
  211. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、備蓄に伴うコストアップ分の負担についてお聞きいたします。  備蓄分のコストアップは、現行価格で試算いたしましても一キロリットル四千七百円以上ということになると思います。仮に政府が、共同備蓄会社への出資、それから民間企業への融資、また融資金利に対する特利とか利子補給などの助成策をとられたといたしましても、四千円以上になるものと思われます。     〔田中(六)委員長代理退席、委員長着席〕 これらのコストの負担は欧米諸国では製品価格に転嫁することが認められておりますけれども、わが国におきましてはその保障が全くないのでございまして、この点について国民生活の安定と物価対策等の観点からも政府の対処の仕方を御説明願いたいと思います。
  212. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま宮田先生がおっしゃられました、備蓄コストの製品価格へのはね返りが四千七百円という計算は、これは備蓄をいたします数量に割り掛けますとただいまおっしゃられましたような四千円あるいは四千円以上という計算になるわけでございますが、しかしながら、いまの備蓄コストはその石油総販売量に対してかかるべきものと私ども考えておるわけでございます。そういう意味で、年間の売り上げに対しましてどれくらい備蓄コストが増分として出てくるかということでございますが、五十年度から五十四年度の総費用というものをその間の総販売量に割り掛けて計算いたしますと、助成分を抜かしましてキロリットル当たりのコストの増分は大体二百七十円ないし二百八十円、こういう計算になります。  ですから、繰り返しになりますが、備蓄する油だけにいまの費用全部割り掛けますと非常に大きな金額になりますが、これは当然そのときの販売量に対しまして割り掛ける方が、計算としては実質的な負担というものが出てくるのではないか、こういうふうに思っております。
  213. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後でございますが、大臣に御質問いたします。当面の緊急措置についてであります。  石油産業は、御存じのように現実の問題として備蓄どころではないのが実情と思います。二千億円を超える累積赤字とも言われておりますし、その改善策も見通しすら立たぬような現状で、備蓄どころではないという、こういう考え方もあるわけでございまして、そういうことになりますと、供給すらできないような危険性までもはらんでおるのじゃないかと思っておりますが、まずこれを成功させるためには、企業の健全な経営、それが結果として長い将来にわたります安定供給のもとになるのじゃないか、こう思っておりますので、その点、大臣の見解を聞かせていただきたい。
  214. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 石油産業はいま非常に危機的な状態にございます。お話のとおりでございます。そこで、現在のこの危機をどう乗り切るか、政府の方でもいろいろ考えておるところでございまして、何らかの対策が必要である。特に価格面での対策がある程度必要じゃなかろうか、こういうふうに考えておりますが、同時に、あわせまして、数兆円の借入金等がございまして、年末金融等も非常に苦しいようでございますから、実情を調べまして、その点はとりあえず十分配慮するつもりでおります。  ただしかし、やはり何と申しましても、抜本的には石油業界の体質を強化するという方向に持っていきませんと、なかなかすべての問題が解決できないわけでございますので、同時に並行いたしまして石油業界全体の体質強化という問題とも真剣に取り組みまして、石油政策全体がスムーズに進むようにいま配慮しておるところでございます。
  215. 増田実

    ○増田政府委員 ちょっといまの宮田先生の御質問に対しまして、私から大臣答弁について若干補足をさせていただきたいと思いますが、御存じのように石油企業は、中東戦争の後の大幅な原油価格の値上げによりまして、非常な苦況にあるわけでございます。昭和四十八年度下期の決算から大部分の会社が赤字でございまして、この累積赤字が非常に多くなっております。また、これがいわゆる決算として発表されております数字に対しまして、実質的にはさらに大幅な赤字になっておるというのが現状でございます。  そういうような状況にあるにもかかわらず、今回備蓄につきまして企業に対してこれの実施主体というものを要請しておるわけでございます。これは石油産業というものを担当する以上、やはり九十日の備蓄というものを持つのが、私は石油産業を営むものとしての社会的責任として必要だと思いますが、しかしながら、冒頭に申し上げましたように、経理状況その他からいいますと非常に苦しいという状況にあります。そのために政府としてもできるだけの支援を行わなければならない。これは金銭的な支援のみならず、また備蓄の問題につきまして国民のコンセンサスを得てこれが推進できるようにしなければならないということで、私ども国としてもその責任は重大だと思っております。  今回の備蓄法は、石油の備蓄を計画的に行うということと、石油の備蓄数量を保有させる義務づけを内容といたしておりますが、この点、この法律だけでなくて、やはり国の支援というものが必要だと思いますし、また、他面において国民のこれに対する協力というものが必要だと考えております。
  216. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  217. 山村新治郎

    山村委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。  ちょっと速記をとめてください。
  218. 山村新治郎

    山村委員長 速記を始めてください。      ————◇—————
  219. 山村新治郎

    山村委員長 内閣提出中小企業信用保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は先ほど終了いたしております。  本案に対し、田中六助君外四名より、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党五党共同提案に係る修正案が提出されております。  この際、修正案について提出者より趣旨の説明を求めます。田中六助君。     —————————————  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案に  対する修正案     —————————————
  220. 田中六助

    田中(六)委員 ただいま提案いたしました修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしております。  この修正案は、中小企業信用補完制度を拡充して中小企業者の資金調達を円滑ならしめるため、無担保保険の付保限度額を現行の五百万円から八百万円に引き上げようとするものであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお顧い申し上げます。
  221. 山村新治郎

    山村委員長 以上で修正案の趣旨説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。河本通商産業大臣
  222. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中小企業信用保険法の一部を改正する議員修正案につきましては、政府といたしましては、現状において時期尚早と考えておりますが、院議として決定されます以上、やむを得ないと存じます。     —————————————
  223. 山村新治郎

    山村委員長 これより討論に入るのでありますが、本案並びに修正案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、田中六助君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  224. 山村新治郎

    山村委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま議決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  修正部分を除く原案に賛成の諸君の起立を求めます。
  225. 山村新治郎

    山村委員長 起立総員。よって、本案は田中六助君外四名提出の修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  226. 山村新治郎

    山村委員長 本案に対し、田中六助君外四名より、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党五党共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。中村重光君。
  227. 中村重光

    ○中村(重)委員 ただいま提案いたしました附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。   中小企業信用保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、現下の経済不況に対処し、中小企業に対する年末融資の増額をはじめ、中小企業関係不況対策の拡充を図るとともに、本法施行にあたり、特に次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。  一 特別小口保険等の付保限度額及びてん補率の引上げについて引続き検討すること。  二 信用保証協会の基本財産に対する保証倍率の引上げについて積極的に配慮するとともに、小規模企業に対する保証を重点業務とするよう指導すること。  三 信用保証協会保証機能を強化するため、中小企業信用保険公庫融資基金及び信用保証協会に対する基金補助の増額を図るとともに、地方公共団体等からの出えん増について強力に指導すること。  四 信用保証協会保証つき融資金利引下げにつき厳重に指導するとともに、中小企業信用保険公庫保険料率の引下げ等によって保証料率の引下げを図ること。 以上であります。  附帯決議案の各項目の内容につきましては、案文及び審査の過程により御理解をいただけると存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。  委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  228. 山村新治郎

    山村委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
  229. 山村新治郎

    山村委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、附帯決議について政府から発言を求められておりますので、これを許します。河本通商産業大臣
  230. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨を体しまして、行政に万遺漏なきを期していきたいと存じます。      ————◇—————
  231. 山村新治郎

    山村委員長 次に、内閣提出石油備蓄法案を議題といたします。  本案に対する質疑は先ほど終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  石油備蓄法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  232. 山村新治郎

    山村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  233. 山村新治郎

    山村委員長 お諮りいたします。  両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  234. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  235. 山村新治郎

    山村委員長 次回は、来る二十一日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時四十八分散会      ————◇—————