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1975-11-18 第76回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十八日(火曜日)     午後二時三十二分開議  出席委員    委員長 渡辺 惣蔵君    理事 田中  覚君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 島本 虎三君    理事 土井たか子君 理事 木下 元二君       八田 貞義君    渡辺 栄一君       阿部喜男君    岩垂寿喜男君       山田 芳治君    岡本 富夫君       坂口  力君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      堀川 春彦君         通商産業大臣官         房審議官    伊藤 和夫君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 杉浦 喬也君         労働省労働基準         局安全衛生部長 中西 正雄君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局水道環境部水         道整備課長   国川 建二君         厚生省医務局歯         科衛生課長   能美 光房君         水産庁研究開発         部長      恩田 幸雄君         通商産業省生活         産業局紙業課長 沢田  仁君         運輸省港湾局機         材課長     工藤 秀雄君         運輸省鉄道監督         局民営鉄道部土         木電気課長   横山 義一君         自治省財政局調         整室長     中村 瑞夫君         日本国有鉄道常         務理事     高橋 浩二君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十一月十八日  辞任         補欠選任   角屋堅次郎君     山田 芳治君 同日  辞任         補欠選任   山田 芳治君     角屋堅次郎君     ————————————— 十一月十七日  かもしかの被害対策に関する請願(林百郎君紹  介)(第二五三九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(水質汚濁  及び騒音対策等)      ————◇—————
  2. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部喜男君。
  3. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 長官、本日は佐伯興国人絹ヘドロの問題で質問したいと思います。  興国人絹昭和二十八年の五月に、わが大分佐伯市に華麗なる進出を行いまして二十数年を経過しましたけれども、この興人歴史というのは、わが大分県の佐伯においては、まさにこれは公害歴史でありまして、まず海水に廃液を流して、海上一里が赤くなるという状況をつくり出して、魚の大量の変死があり、この廃液処理をめぐって、今度は廃液処理に不法なことを行って、告発を受けるという事件が起こり、さらに、その廃液の途中の処理で、今度は排気ガスを出して大気汚染する、こういうずっと公害歴史の中で、佐伯湾内には膨大なヘドロを残して、八月の二十六日に倒産をしてしまいました。海底に残されておる膨大なヘドロを一体どうするのか。私は、これは単に興人にとどまらず、今日の日本経済情勢のもとでは、好むと好まざるとにかかわらず、これから起こり得る現象ではないかという気がいたします。環境庁長官は、公害対策の最高の責任者として、特にこのような倒産企業が残した公害について、どういう措置をおとりになる考えか、まず承りたいと思います。
  4. 小沢辰男

    小沢国務大臣 興人は、先生、一番御存じのように倒産はいたしましたが、目下、会社更生法適用申請によって、早川さんがこの再建の中心になりまして、再建をやろう、更生をいたしたいということでやっておられるわけでございますから、残した公害処理につきましては二つありまして、一つは、もう会社倒産してなくなってしまえば、これはその会社負担というような問題が出てこないわけでありますが、更生法適用によりまして、会社がまた更生をしてまいりますと、その状況実態に応じまして、いろいろ同じように事業者負担考え方適用していけるわけでございます。しかし、そう急にちゃんとした能力を持った会社になるとは考えられませんから、その間、放置もできませんので、いろいろこれらの問題について、たとえば更生見通し等を慎重にやはりつけていかなければならない。それがつけば融資の問題も考えられますし、たとえば公害防止事業団等の活用の問題等が出てくる場合があるわけでございます。  具体的に佐伯湾ヘドロにつきましては、県が興人契約を結んだわけでございますね。そして除去契約を結びまして、県の指示に従う、こういうことになっておったわけでございます。一月から大分県は、いろいろなヘドロの量、堆積範囲あるいはプランクトンや魚介類に及ぼす影響生育状況等調査を実施しておるわけでございますから、大分県は、これらの調査の実施の結果というものを踏まえまして、恐らく最終的な判断を下すことになろうかと思います。したがって、その大分県の考え方を聞きまして、環境庁としてこれに対処していく、こういうことになるわけでございます。
  5. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 二つに分けまして、まず長官が前段でおっしゃったように、興人の場合には会社更生法がしかれたが、一般論として、この種の企業倒産をして、会社更生法もなく、そのまま財力を失った場合において、残された公害に対しては一体どういう措置をとらるる国の方針か、それをまずお伺いしたい。
  6. 小沢辰男

    小沢国務大臣 会社がなくなっても、公害対策は進めていかなければいけませんから、当然、御承知のとおり休廃止鉱山問題等も同じようなケースになるわけでございます。したがって、それについての公害、たとえば松尾鉱山で北上川の対策をいまやっておりますが、あれ自身も、鉱業権も放棄して全部なくなっておりますけれども、国と県が一生懸命になって北上川の水をきれいにする対策をやっている、そういうことでございますから、この例を見てもおわかりになるだろうと思います。
  7. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は実はそれを結論にしたいと思っておったのですが、いま長官が例に挙げられましたようなものは、たとえば金属鉱業等鉱害対策特別措置法という法律によって、休廃止鉱山等措置が行われておるわけですね。それからまた廃棄物処理及び清掃に関する法律、この中で、地方自治体等産業廃棄物について処理をする場合、補助がある、こういうような措置がとられておるのですが、ヘドロについて、いま長官おっしゃられたような措置がとれますか。
  8. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ヘドロについてとおっしゃっても、どのヘドロの問題なのか、大分の問題でございますと、いま興人との問題に係ってくるわけでございますから、一般的にヘドロ処理をどうするかと言われましても、ちょっとお答えにくいのですが、もう少し……。
  9. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 答えにくければ、それは佐伯湾に限らず、いわゆるヘドロが海中に排出をされた、それがいま申し上げましたような状態で、一般論として会社倒産をして、公害対策能力を失った場合に、どの法律適用して、そのヘドロをのけることができるだろうか、その根拠法律を示してもらいたい。
  10. 堀川春彦

    堀川政府委員 ヘドロ底質扱いということに、一般的に言えばなるわけでございます。底質扱いにつきまして、私どもはまず有害物質の含まれた底質について、どういうふうに持っていくかということが一つございます。これは暫定基準でございますが、水銀等につきまして一定範囲以上の有害物質が含まれておるものは、速やかに除去を、その原因者負担においてやらせるということをやっておるわけでございます。  次に、その他のヘドロということになってまいりますと、それぞれの個所個所の、いろいろの原因者と、それからヘドロ状況というようなものによりまして、一概には言い得ないかと思うわけでございますが、一例を申し上げれば、公害防止事業ということで施行されますようなヘドロ除去事業ということを考えてまいりますと、通常は、その有機物の量の多寡ということが、やはり一つの指標になる。もう一つは、悪臭防止法の定めておりますところの硫化水素等悪臭が非常に出る、こういうようなことによって環境汚染され、それが人間の生活環境なり健康なり、あるいはまた産業なりに悪影響を与えることのないように、こういうような基準から、ある程度、いま申しましたような項目につきまして一定指針がございます。その指針に適合するものは、国の方が積極的に指導して除去をさせるということであろうかと思います。  ただ具体的な大分興人の問題ということになりますと、これは具体的なケースの問題になりまして、現地で結ばれております公害防止協定あるいは覚書等内容、それからこれに対する県、市あるいは今回のような不幸な事態に陥った興人再建計画との関係、こういうことをよく考えて対処すべきものだというふうに思っております。
  11. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いまおっしゃったのは、根拠法規が余り明確に聞こえなくて、特に有毒なものとか悪臭を発するものという限定をして、産業廃棄物処理なりをやりたいということのようですが、それでは具体的に佐伯興人の問題に限って、質問を進めてまいりたいと思います。  これは長官地域住民はみんな興人にだまされたと思っておるのですよ。なぜだまされたと思うかというと、まさか倒れるとは思っていなかったから、いずれは興人の手で、早い時期にヘドロ除去が行われると、県との協定もそうなっておるし、信頼しておったわけです。ことしの四月には、興人排水処理施設計画をつくりまして、二十億くらい予算がかかるのだそうですけれども、これを発表しまして、りっぱにこれから排水をきれいにすると言っていた。八月八日に大分県、佐伯市あるいはその周囲の関係の自治体との間に公害防止協定が調印をされております。公害防止を金をかけてやる、しかも協定を結ぶ、こういう状況から十八日の後に、これは倒産した。これはまさに青天へきれきでしょう。三木さんの青天へきれきのいきさつもあるけれども、私はこの方が地域住民にとっては青天へきれきだと思います。そうしてみると、防止協定を結んでわずか十八日の後に興人倒産するとは、地域住民が思っていなかっただけに、この倒産のときに、一体、残されたヘドロはどうなるのだろうかということについて、非常に大きいショックを受けたわけでございます。  そういう経緯から考えて、少し明確にしておきたいのですけれども通産省見えていますか。この興人倒産するに至った過程と、それから会社更生法適用された後の模様を説明してもらえませんか。
  12. 沢田仁

    沢田説明員 御案内のように興人は、古くから人絹、化繊、それに従いますパルプ溶解パルプと私ども称しておりますが、そういうものを製造するメーカーとして長くきたわけでございますが、近年の多角化が、不動産あるいはコーデラン、医薬品と過去を振り返りますと、やはり多角化のテンポが非常にハイピッチで行われ、しかも、それに要する諸般の設備投資がすべて膨大な借入金に依存した、こういうのが偽りない経緯であったかと存じます。そこへもってまいりまして昨年来、御案内のような未曾有の不況に襲われまして、急激な蹉跌状態を起こした。  私ども通産省におきましても、全国の四工場、それぞれ工場実態を視察して、様子を伺った次第でございます。いずれの工場にも共通しますところは、こういうふうに急に倒産事態が来るということが、工場サイドではわからなかったというのが、偽らない実情かと思いますし、そういう関連からおきまして、先ほど先生、御指摘のように、地域住民から見ましても、急にそういう事態が突如襲ってきたという感は否めなかったかと思います。  いずれにしましても、再建計画という非常に困難な局面に直面しておりますが、私ども通産省の基本的な考え方としまして、佐伯を含めます四工場、これらは前途厳しい面はいろいろございますけれども、それぞれ再建は可能である、そしてまた地域住民のことも考えまして、再建方向に持っていきたいというふうに考えております。  具体的には、御案内早川管財人のお決まりになった経緯もございまして、ごく最近におきましても、当省といたしまして管財人にいろいろアプローチをしております。佐伯につきましても再建方向で、この問題を処理していくように考えておりますし、その一環としまして当然、避けて通れないのは、先ほど御指摘ヘドロ処理の問題でございます。それからさらに、工場がDP、溶解パルプの生産を続けていきますのに必要な排水処理施設、これもまた必要でございます。いずれも事業者負担は当然でございますし、公害防止事業団あるいはそれに抱き合わせの民間金融機関債権者金融上の協力も非常に重要かと思います。それらの点につきましても、一言で申しますと、管財人に対しまして前向きにお取り組みいただくよう、通産省として強力にプッシュしようとしているのが現在でございます。
  13. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 通産省なかなか明快な答弁で、いまお話がありましたように再建をさせるという方向で、再建計画については通産省もアドバイスをしながらやっておる、こういうふうに理解をしたのですが、いま、ちょっと抽象的でしたが、しからばその再建計画の中に、積年のヘドロ除去するという計画が明確に含まれておるのかどうか、その辺はどうなっておりますか。
  14. 沢田仁

    沢田説明員 先ほど環境庁の御答弁にもございましたように、また現在佐伯湾に存在するヘドロ実態、四十五万立米とも伺っておりますが、正確な賦存状況はまだわかっておりません。それを少しでも早く調べまして、さらに地元の大分県御当局とも相談をいたしまして、それで、かなり膨大な費用のかかること、これは覚悟せざるを得ないと思います。それを再建計画にいかに組み込むか、率直に申しまして現段階ではまだ未定でございます。しかし、興人再建もただ手放しの再建はできませんので、ヘドロ処理それから先ほどの排水処理、この両者は、存続する以上、公害を必ずきちんとする形で持っていかなければ、再建にならないというのが、私どもの基本的な考え方でございます。
  15. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 通産省環境庁が入れかわってもらいたいくらい、きょうは明確な答弁をいただいておりますが、そこで、これからは環境庁の方の所管になりますが、佐伯湾内にたれ流されておるヘドロの量は、いま、ちょっとお話がありましたが、どのくらいと把握をしておられますか。そして、それを除去するための予算は、どのくらいかかるものだと推定をしておられますか。
  16. 堀川春彦

    堀川政府委員 これは県から私ども聞き取っておるところによりますと、いま通産省からも四十五万程度というお話がございましたが、それに近い、これは余り端数を申し上げても意味ないかと思いますが、四十六万程度というふうに聞いておるわけでございます。それから、これを除去する範囲を具体的にどう画定するかというようなのは今後の問題でございまして、それによりまして、この量も増減があろうかと思います。したがいまして、どの程度の額になるかということは、まだしかと申し上げかねるわけでございますが、いずれにしましても、かなり安い単価で上がりましたといたしましても、相当経費が要るであろうというふうに思っております。
  17. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 新聞報道によりますと、大体、六十億ぐらいの予算を必要とするのではないかと言われておりますが、この新聞報道の六十億というものは、それでは根拠のないものか、ある程度、推定できる数字なのか、これはどうですか。
  18. 堀川春彦

    堀川政府委員 それは、いま言った四十五、六万の量に単価を掛けた結果がそうなったということじゃないかと思います。単価につきましては、今後、量が動く、あるいは工法をどうとるかというようなことによって、大いに影響が出てまいりますので、とにかく、おっしゃるようなオーダーの相当大きな数字ということは間違いはなかろうかと思います。
  19. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それではヘドロ除去の問題ですけれども運輸省見えになっていますか。  運輸省の方にお伺いしますけれども佐伯湾ヘドロ除去の問題につきましては、かつてのあの田子の浦ヘドロの問題を教訓としまして、すでに昭和四十八年ごろから運輸省の方でも、その工法等についてかなり検討を加えられておるというふうに聞いておりますが、わかっておれば、ひとつ経過、見通し等お話し願いたいのです。
  20. 工藤秀雄

    工藤説明員 佐伯湾ヘドロ除去事業につきましては、ただいま環境庁の方からお答えがありましたように、現在いろいろ調査中でございますので、確定した工法がまだ定まっておりません。  ただ、一般的に申し上げますと、大分県の方から聞いた内容でございますけれども田子の浦等で行いましたように、堆積汚泥しゅんせつ船でしゅんせつして、これを湾内埋め立て処分する方法を検討中である、このように聞いてございます。この場合、しゅんせつする場所あるいは埋立地からの汚染拡散可能性ということが非常に心配されますので、このためには、濁り発生量といいますか、汚染発生量の非常に少ないしゅんせつ船を用いる、さらに汚泥埋め立てに当たっても、汚染拡散の少ない工法を採用する、このようなことを考えまして、二次汚染をできるだけ少なくする。それと同時に監視計画を策定いたしまして、これに基づく監視を十分行うことが必要であろう、一般的にそのように考えてございます。
  21. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 長官お聞きのように、運輸省でもかなり調査が進んでいるようでございます。  そこで、もう少し運輸省にお伺いしたいのですが、いま、ちょっとお話がありました第二次公害といいますか、第二次汚染といいますか、その問題で、佐伯湾ヘドロ田子の浦に比べてまだ非常にやわらかい状態で、除去作業がやりにくい、こういう工程になるのではないかと言われております。いまのお話では、船とかそういうものも、何か新しい二次公害を起こさないようなものをということのようですが、これは工法上といいますか、技術上かなり可能性があるわけでございますか。
  22. 工藤秀雄

    工藤説明員 佐伯湾ヘドロの性状につきましては、現在、調査中でございますので明確でございませんけれども、一般的に申し上げますと、田子の浦以来、こういうヘドロのしゅんせつ、あるいはそれの埋立地における処分等におきましては、その後、国、港湾管理者あるいは民間におきましても相当技術開発を進めております。しゅんせつ船におきましても、非常に濁りの少ないしゅんせつ船を現在、開発中でございまして、諸所で現在、使用しておりまして、非常な好結果を得ておるというふうに聞いてございます。それから、埋め立て等におきまして濁りを出さないようにするような工法につきましても、凝集剤と申しますが、いろいろな薬品関係研究あるいはそれを沈でんさせる工法等について現在、開発中でございまして、相当程度、効果が期待できるものと考えております。
  23. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで、いまのヘドロ埋め立て工法によるとすれば、大体その埋め立てする予定の土地はあるわけでございますか。
  24. 工藤秀雄

    工藤説明員 現在、県の方のお話を聞いておるわけでございますけれども、ある程度湾内におきまして予定はしておるようでございますけれども、まだ確定しておりません。
  25. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 水産庁にお伺いしたい。先ほどからお話がありましたように、このヘドロ除去の問題について、有害なものであればとか、悪臭を放てばとかいうふうな前提条件があって、その場合には、何か国の方でも考えねばならぬというようなお話もあったのですが、水産庁関係で、この佐伯湾ヘドロ漁業に与えておる影響は、どのように把握をしておられますか。
  26. 恩田幸雄

    恩田説明員 佐伯湾におきます漁業は、四漁協、約二千二百名の漁民が参加しておりまして、カタクチイワシあるいはアジ、サバ、そのほかクルマエビ、カニ等、漁獲いたしておりますし、そのほかに一部の地区ではハマチ真珠等養殖も行っておるわけでございます。それで、御存じのようなヘドロの問題によりまして、現在、湾奥部の地点におきましては、かつて行われておりましたハマチかつ真珠等養殖が姿を消しておるというような状況でございます。
  27. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 したがって、水産庁としては一日も早く、この魚族保護といいますか、漁場の確保という意味からも、このヘドロ処理してもらいたい、処理すべきものだというふうに考えておられるかどうかですね。
  28. 恩田幸雄

    恩田説明員 私どもといたしましては、大分県の漁業者を含め、関係住民の強い要望がございますし、あくまでも漁場を有効に使うという意味からも、この漁場が早くよくなることを望んでおります。
  29. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大体、各省庁の意見は、何とかしてこの佐伯湾ヘドロについては除去して、きれいな海にしたいということでは一致しておるようでございます。  少し経費関係について伺いますが、自治省、お見えになっておりますか。この事前調査のために興人と県が公害防止協定を行って、その協定に基づいて大分県が事前調査調査費の立てかえをしておるというふうに聞いておりますが、そういう事実がございますか。
  30. 中村瑞夫

    中村説明員 私ども大分県の方から聞き及んでおります事情によりますと、四十九年度におきまして事前調査費四千四万円を支出いたしておりますが、この金額につきましては、興人から県にその金額と同額が歳入として納められております。  なお、五十年度につきましては四千五百二十万三千円を予算計上いたしまして、その事業を行う予定でございますけれども、これにつきましても興人から納入をするという約束をちょうだいいたしておるというような状況でございます。
  31. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで、四十九年度分については、お話のように四千四万円ですね。これは県の方の歳出の方で上がっておるようです。そして同じく歳入の方で興人から受け入れておる。もちろん使用先日本港湾コンサルタント事前調査のために支出しておる、こういう内容なんです。  ところで、これはことしの昭和五十年五月三十一日で一応、決済されておるようですが、その後いまお話のございました四千五百二十万円ですかの五十年度分の事前調査費が、同じく日本港湾コンサルタントに対して、すでに契約をされ、支出をされておるようでございます。十二月ごろまでに一応この調査を終わりたいということのようですが、これは少し問題がありましたので延びるようでございますけれども、そこで私が心配しますのは、今日、先ほど来お話がありましたように、これは中央、地方自治体を問わず、何とかして、このヘドロ除去を行ってきれいな海にして、漁場を確保したい、そういう観点から地方自治体でも非常な努力を払っておるということが目に見えるようにわかるわけでございますが、この倒産の時点で、興人が返してくれるとは言うのだけれども昭和五十年度の四千五百二十万円が本当に返ってくるのだろうかということで、県の関係で非常に心配をしておる向きもあるようでございますが、その点の見通しについて、現地模様がわかっておればお知らせ願いたいのです。
  32. 中村瑞夫

    中村説明員 お尋ねの五十年度の興人の納入金の点でございますが、これは現在まだ納入はされておりません。それで、興人会社更生手続開始という、県にとっても思いがけない事態が発生いたしましたので、県といたしましても、この四千五百余万円の納入金の確保につきましては、いろいろと努力をいたしておるようでございまして、私、聞いておりますところでも、つい近日、管財人とも県の方がお会いをして、これについて格別の善処方を要望したというふうなことでございます。  ただ、今後の更生手続がどうなるかということによりまして、なお不安な点もあろうかと存じますけれども、県におきましては、そういうことで、せっかく努力をいたしておる段階のようでございますし、会社の方といたしましても、県のそうした要望については配慮をしなければならないだろうといったようなお考えもあるやに聞いておりますので、その辺の状況をなお見守りながら、県の努力によりまして、また会社の善処方によりまして、こうした問題が地方団体の財政に結果的に負担を及ぼすことのないように、私どもといたしましても注目をいたしてまいりたいというふうに存じておるわけでございます。
  33. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 通産省、先ほどのヘドロの問題あるいは廃液問題等については、再建の過程では避けて通れない問題なので、そういう点については、いろいろなサゼスチョンをする場合あるいは国庫支出する場合に十分、配意していく、こういうふうな御答弁をいただいたところですが、いまの大分県がヘドロ処理事前調査のために立てかえておる昭和五十年度四千五百二十何万か、この金が再建計画の中で優先的に県に返還できるものかどうか。法的にもいろいろ優先順位があって、優先債権といいますか、優先債務といいますか、そういうものがあるように聞いているのですが、その辺の見解あるいは、おたくの指導はどういうことになりましょうか。
  34. 沢田仁

    沢田説明員 私どもは、四千万円強の興人負担分につきまして、地方局でございます福岡通産局からも途中の経過報告を受けております。大分県当局とされては、興人から四千万円を返してもらうということの確約を取りつけたというのが、ただいままでの報告でございます。他方、東京本省の段階におきまして、現在までのところ、まだこの四千万円の取り扱いについて、管財人の方に申し入れはしておりません。  そこで私ども考え方でございますけれども、先ほどお答え申し上げましたように、やはり公害の問題を避けては通れないし、それを前提にした再建を考える、これは基本哲学でございますので、優先の順位ということは、私ただいま、よくわかりませんけれども公害対策の一環として、その四千万円、当然、県に返すべきものは返す、こういう方向で、その支払いが可能になるように管財人の方にも要請をしてまいりたい、このように考えております。
  35. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 通産省のお考えはよくわかりました。  長官、あなたは自民党経理局長などという重責にあられまして、金銭の出納とか差し押さえとか、そういう問題については大変、詳しいのではないかと推測をするのですが、たしか公租公課というふうなものについては優先債権として処理をするとか、一般の債権はそれよりおくれるとか、特に私が聞いておる限りでは、たとえば社内預金等が一体どういう順位で確定をされるのか、労働者の賃金未払い分がどういう順位で確定されるのか、そういう関係から優先債権というようなものについて、私は非常に興味を持っているわけですけれども、いまの通産省としての行政指導としての姿勢は、私は理解ができますが、大分県との間に結んだ公害協定によって大分県が立てかえた事前調査費というものが、債権の優先的なものとして処理をされるという法的な根拠があるものかどうか。もし長官にあれがありましたら、お漏らしを願いたいのですが、どうですか。
  36. 沢田仁

    沢田説明員 率直に申しまして、私は専門家でないので間違っているかもしれませんけれども、私の法律知識で考えますところ、やはり法律的には県当局と興人という私企業との通常の契約に基づく債権債務関係だと思います。その意味で、先ほど先生の御指摘のあった公租公課とは違う性格を持つのではなかろうかと思います。したがいまして、法律上は通常の債権というふうに扱わざるを得ず、したがいまして、特段の優先関係は出てこないとは思います。しかし、私が申し上げましたのは実体論でございます。私どもの考えとしては公害処理していくのが前提だ。そのプロセスにおきまして、この問題は、四千万円は必ず県に返す方向で、まずそのステップを踏まないと、次の本当のヘドロ処理が進まないという意味で申し上げた次第でございます。
  37. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 通産省は本当に明確でいいと思うのです。確かに行政指導として、おっしゃるような措置をとっていただかなければならないと思うのですが、しかし、その場合やはり優先順位を持つ債権者の同意、承諾というものがなければ、なかなか困難ではないかという気がするわけです。ですから行政指導の姿勢としては、私は非常にりっぱだと思いますが、だから大分県が立てかえておる調査費が必ず優先的に県に返ってくるという保証はないのではないかという気が私はするわけです。この辺どうですか。長官、あなたは詳しいんじゃないですか、こういうことは。だめですか。
  38. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、賃金なんかと比べて、どっちが優先すべきかといいますと、賃金の方が優先すると思います。これは法律上の根拠興人負担をしているというよりも、県との協定によって負担をしているわけで、一般的な債権でございます。一般的な債権でございますから、その目的が公害のためといえども、そのために優先するというわけにいきませんので、債権のこういう場合の順序というものは、あくまでも決まったとおりになっていくべきもので、公害関係だからといって、これが特に優先するという法的根拠は、いまのところはないと思っております。
  39. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私もなまかじりですが、結局、法的に論ずれば通産省の方からも御答弁いただきましたし、長官からもいま、お話があったように、これは一般的な債権の域を出ないだろうというふうに理解をするわけです。  ところで長官、政府の責任者としてですが、もし仮に興人が払えないというような事態が起きた場合に、それは大分県と興人との間の契約でございますからということで、国がそっぽを向くわけにもいかないのじゃないでしょうか。先ほど来、有毒であるヘドロについては考えなければならないとか、あるいは異臭を発するような、悪臭防止法に抵触するようなものについては考えなければならないとか、そういうふうなものが考えられるとするならば、その前段である調査費、これについても、これは原則的には興人負担すべきものです。そのことはもうはっきりしているわけですが、もし負担能力なかりせば一体どうなるかということになりますと、悪臭であればどうとか、あるいは有毒であればどうというならば、有毒であるのかないのか、悪臭を漂わすかどうかという悪臭防止法関係等を踏んでいくならば、その前段の調査費というものについても当然、国が考えてしかるべきものじゃないか、こういう気がするのですが、どうでしょうかね。
  40. 小沢辰男

    小沢国務大臣 興人は、早くから管財人が、通産省の御指導あるいは政府のいろいろな援助によって、会社更生法適用を受けて更生しようとしているわけです。通産省は、いまお話がありましたように四工場とも、それぞれ地域的な意義もありますから、何とか再建をするという方向でやっているわけでありますから、したがって私は、いま一時その能力はなくとも、当然その能力が出てくる会社更生していかなければいかぬわけでございますから、何も、いますぐ県が取れなくても、これは債権として将来にわたって、その回収をしていけばいいことで、その間の県の財政上の問題はどうするかは、自治省がそれぞれ指導していけばいいのじゃないかと思います。国としても県の財政全般については、いろいろな意味で配慮をしていくわけでございますから、たとえば特交で一部をめんどうを見ていくとか、あるいはまた起債を許すとかいうようなことで、その借金は後からまた興人から回収する、立て直った後の負担をやっていくという方法もありましょうし、ですから問題は、興人がいかに早く更生するかということにありますので、そちらの方に全力を注いで通産から指導し、あるいは大蔵省からもいろいろなてこ入れをしてもらって、やはり早く更生することが大事だと思っております。
  41. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 さすがは大臣でして、これを答弁のすれ違いというのですが、私はそういうことを前提にして、当然、努力をし、再建をし、企業負担すべきものである、そのことにいささかの疑いもないけれども、もし、その負担能力なかりせば、なくなったときには一体どうするのだろうか。私があえてそういうことを長官に質問しますのは、いままで公害対策は、いつも言われているように後手後手です。公害が起こってから後で手を打ってきたというのが、今日までの日本公害対策実態です。これはいまさら私が繰り返して申し上げるまでもないことです。そこでもし、これ以上やっても興人再建ができなければ、全部、県がかぶらなければならぬぞとなったときに、県当局が果たしてこれ以上の調査費なり、興人との協定に基づいての立てかえができるかどうか想定してみますと、恐らく県は、そういう危ない橋は渡らないと思います。そのいよいよというときには、これはやはり国が考えなければならないのだという方針があれば、地方自治体は安んじてその対策に当たることができると私は思うのです。  そういう意味から、興人再建は私も心から期待しております。これは単にヘドロだけじゃありません。地域経済、特にそこに働いておる労働者との関係を考えれば、一日も早く再建をしてもらわなければなりませんが、しかし興人に限らず、今日の日本の経済のもとでは起こり得る状態として判断をするときに、そういう最悪の状態が起こったときには、先ほど申し上げた理論を発展させれば、国が負担してもしかるべき金ではなかろうか、そういう気がするわけなんです。それをお聞きしたいのです。
  42. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、必ずしも国が全部負担すべき筋合いのものじゃないと思うのです。たとえば興人がつぶれた場合を考えてみて、やはりヘドロ対策というものはやらなければならない。それが地域住民のためであれば、公共団体としても当然ある程度の責任を果たさなければいかぬわけでございますから、一般的に言って法律根拠でやる事業ではなくて、公共事業としてやるわけです。もし興人がつぶれてヘドロが残っておる、それをどうしても除去しなければいかぬということであれば、これは当然、公共事業としてやっていくということになります。そのために一体どういうような仕様でやるのかということの前段として調査は必要だということになれば、公共事業の一環としての調査費になるわけですから、これは先生も恐らくそのつもりでおっしゃっているのだろうと思いますが、全部、国がめんどうを見ていかなければいかぬ筋合いのものではない。やはりそれぞれ国と地方が協力し合ってやらなければいかぬ問題じゃないかと思います。
  43. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 長官はなかなかやはり大したものです。言葉じりをとるのもお上手のようです。もちろん、私が国がと言ったのは、国にもという言葉に置きかえて考えてもらいたいのですけれども、それは当然、地方自治体も責任を持たなければならぬでしょう。いまの金属鉱業の鉱害対策法にしても、やはり地方自治体が責任を持つ分野はあるわけでございますから、持たなければならぬでしょうが、それはあくまで県がした契約であり、県の責任ですよということになるのか、最悪の場合には国も一緒になって処理をしていこうという姿勢になるのか、そこのところをひとつ答えてください。
  44. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、国が知らぬ顔の半兵衛をするつもりはありませんから。
  45. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いとも簡単に答えていただきましたが、それでは確認をしておきますが、もしも、そういう事態が起こった場合には、これは仮に興人と県との契約であろうとも、その処理については国も十分配慮をするものである、こう理解していいですか。
  46. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるとおり配慮をいたします。
  47. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで先ほど来、議論になりましたように、金属鉱業等鉱害対策特別措置法という法律一つありまして、この法の適用を受けながら休廃止鉱山の鉱害対策等が行われておるわけでございます。それからまた廃棄物処理及び清掃に関する法律、これによって地方自治体等産業廃棄物の一部の処理に当たっておる。これはそれぞれ法の規定があるので、私の理解では、先ほど、ちょっと御答弁いただいたのですが、どうもヘドロの場合に、直ちにこういう産業廃棄物処理というような法の適用ができないのではないかということを懸念しておるのです。これは事務当局で結構ですが、具体的に、これこれの場合はこういう法律適用によってこうなるということを、ひとつ御説明願えませんか。
  48. 堀川春彦

    堀川政府委員 ヘドロ排水の中に含まれた物質が沈でんした結果できた堆積物ということになっておりまして、ヘドロ自体が産業廃棄物という扱いにはなっておりません。
  49. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 だから、ヘドロ自体はやはり産業廃棄物ではない、私もそういう理解をしておったわけです。したがって、その処理に当たって国が補助をするとか、あるいは公共事業として扱うという場合に、どの法律適用されることになるのだろうか、具体的にはどういう措置がとられることになるのだろうか。これはもちろん、興人がやる限りにおいては問題ないわけですが、先ほどの前提で興人がやれなくなった場合の措置です。
  50. 堀川春彦

    堀川政府委員 先ほど長官が申し上げたのは、私の理解するところによれば、港湾事業として実施をする。港湾事業は公共事業として実施をしておるわけでございますから、そういう形態になったときの負担問題等についてお話があったのだと思うのです。この興人ヘドロ除去が港湾の埋め立て造成に直ちに相なるということは、現段階ではまだ明瞭ではありません。一つケースを申し述べたのではないかと考えております。
  51. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ちょっと補足します。  私が先ほど申し上げた、法的根拠はない、公共事業でやることになるというのは、何も港湾事業で申し上げたわけじゃないのです。これは、たとえばヘドロ除去する目的が、漁場保全なり、あるいは漁場の水産対策でやる場合もありますし、それから一般的に公害防止をするための事業ということで、興人がつぶれてしまって全くだれもやる人がないわけですから、国と県がやるという面もありますし、いろいろな要素が含まれるのですが、放置できないということであれば、結果的には公共事業としてやらざるを得ないということになろうかと思います。
  52. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私も全く長官と同じ発想なんです。ところが、さっきもるる申し上げましたように、たとえば金属鉱業のときには、それなりの法の根拠があるわけです。産業廃棄物産業廃棄物なりの根拠がありますが、ヘドロについては、それ自体が直ちに産業廃棄物というふうに規定できないということになりますと、何らかの措置はやらなければならないが、たとえば公害対策事業としてそれをやるとするならば、一体その法的根拠はどこにあるのだろうか、そのことを私は懸念して、実は結論として申し上げたいのは、海水の汚濁の中でも特にヘドロのようなものの除去に対する法律一つつくらなければいけないのじゃなかろうか。いま長官のおっしゃるような考え方が実際問題として機能するためには、法律をつくる必要があるのではないか。そのことを懸念して、くどいようですが、ずっと質問してきたわけなんです。  この点、どうでしょうかね。適用される法律がなくとも、それでいいのだということにはならない。長官のおっしゃることを本当に生かして機能させるためには、やはり法律が要る、そういう気がするのですが、そんなものはなくても、これでやれるというのがあれば示していただきたい。それは新しい法律なり何らか法的な根拠をつくらなければならないという見解になるのか、見解で結構ですが、どうでしょう。
  53. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 ヘドロ除去につきまして、それが公害防止事業であるか、あるいは漁場の保護という目的であるか、いろいろな目的によってヘドロ除去しなければいかぬという場合に、一般的に公共事業としてやる場合には法的な根拠はないわけですが、県が実施主体となって、おおむねの場合、起債で行われるわけでございます。ただ一つ、それが公害防止事業公害防止計画の指定地域として指定されておるような場合には、公害防止のための事業の財政の特例法というのがございまして、国も補助をすることができるという場合もあるわけでございますが、佐伯湾の場合には、現在そういう公害防止計画による指定地域になっておらないわけでございまして、だから一般的には、そういう法律の規定による補助は行われないわけでございますが、ただ、いろいろ自治省が県などと協議した上で、どうしてもその負担をしてやる必要があるという場合に、自治省の方から協議がございますれば、そういう段階で、またよく検討して負担をすることもできるという規定もございます。
  54. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 わかったような余りよくわからないような気がしたのですが、大体いまのお話では、第一点は公害防止計画の指定地域というのですが、そういうものに入っておる場合には、これは国の補助の対象として考えられる。二点目は、そうでない場合には何も法的な根拠はないけれども、何か特例法で、必要であると認むれば補助ができるのだ、こういう御答弁のように聞いたんですけれども、どうも心もとないし、ましてや、いま申し上げておる佐伯湾公害防止の指定地域にも入っていないようでございますから、非常に懸念されるところでございます。けれども、これはなかよか一朝一夕に、ここで直ちに長官がよしこうするということにもならぬだろうと思いますが、まず第一点は、長官が先ほどおっしゃった、ほうっておくわけにはいかないのだ、そのときには地方自治体ももちろんだが、国もひとつ責任を持って解決をしなければならないという、この長官の御答弁を、私はそのとおり理解をしたいと思うのでございますが、よろしゅうございますか。
  55. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いま柳瀬局長、申し上げたのは、財政補助の上乗せをすることについて申し上げたのでございますから、その点はひとつ誤解ないようにしていただきたいと思います。私に対する御質問は、いまおっしゃったとおりであります。
  56. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは、きょうは、それぞれ通産から自治省それに水産、運輸、各御出席を願いまして大変、恐縮しましたが、いま議論をしてきたような経過でございまして、これからの佐伯湾ヘドロ除去というのは、何よりもまず興人再建をされて、その責任で処理されることを期待をしておりますし、また特に通産の方では、そういう御指導を願いたいと思いますが、運輸省にしろ水産庁にしろ、それぞれ一日も早くヘドロ除去を期待しているわけでございますから、長官、私は政府は一本だと考えております。したがって、それぞれの省の立場で自分の主張を貫くことなく、全体的な国の計画として環境庁を中心にしながら、この対策が十分、果たされていくように期待をし、要望しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  57. 渡辺惣蔵

  58. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、去る六月五日のこの委員会で、多摩川の流域の環境保全問題について御質問を申し上げました。その後、環境庁長官のイニシアチブで、東京都知事や神奈川県知事や川崎市の市長や、そしてさらに建設省や厚生省などを含めた現地調査団の調査活動が六月の二十二日に行われました。その後、その調査に基づいて多摩川問題を取り組んでいくための仕組みとでも申しましょうか、そういうものをおつくりいただく御努力を、環境庁を中心にしてなさってこられました。あれから、かなりな歳月が流れておりますので、何回か環境庁にもいろいろ御苦心のほどなどについてもお伺いをしてまいったわけでありますが、もう環境庁として、その要綱がまとまる段階にあるということを承っておりましたので、お願いができますれば、この機会に、その要綱についてぜひお答えをいただきたいと思うのであります。そのお答えをいただいた上で、その仕組みや、あるいはその内容について、個々に御質問を申し上げてまいりたい、このように考えます。
  59. 小沢辰男

    小沢国務大臣 担当局長から答えさせますが、その前に先生も如才ないことだと思いますけれども、私が多摩川の汚染状況を見にいって、そして関係の府県、市、これも本腰を入れてもらいたいということで提唱して、視察に来ていただいたわけでありますが、これは私、一多摩川を問題にして言っているわけじゃありません。やはり一つの多摩川という一番身近な、しかも大事な河川、これを取り上げて、その結果、全国の重要な河川の環境汚染対策に資したい、こういうつもりで言っておりますので、その基本の考え方だけは、ぜひ御了承の上で議論を進めていただきたいと思います。なお、詳しい最近の経過につきまして、局長から答弁させます。
  60. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生お尋ねの点は、いま長官の御答弁申し上げましたような基本線に沿って、私ども事務当局といたしまして関係の中央の各官庁、それから関係の地方公共団体等と協議をいたしまして詰めてまいってきておりますが、まだ最終決定に至っておらないわけでございます。しかし、いずれにしても、長官の申されましたような趣旨に沿って、お互いに連絡、協議ができるような一種の会合といいますか、そういうものを設けるというようなことについては、お尋ねのとおりでございます。
  61. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この機会に、関係方面と大変、御努力をいただいた、まとまったというか、今日の時点で合意を見た会議の運営などについての、いわばレジュメがございますれば、私に教えていただきたいというふうに思います。
  62. 堀川春彦

    堀川政府委員 これはまだ最終的に決まっておりませんので、余り細部にわたりますことは御容赦を願いたいと思うわけでございますが、私の考えております考え方の、ごく概要だけ申し述べたいと思うわけですが、一つは、この多摩川の環境保全の問題について皆で相談していくという基本姿勢は、先ほど長官の申されたとおりでございます。そういう趣旨に沿って連絡、協議の場を持ちたいということで、相談する事項は、大体、水質保全関係の事項と、それから多摩川流域におきます自然環境保全に関します事項、大別しましてこの二つになろうかと存じます。したがいまして、そういう事項に関係のある中央の官庁といたしまして、環境庁のほか厚生省でありますとか農林省、通産省、建設省等の中央官庁あるいは東京都なり神奈川県、川崎市等の地方公共団体関係の者、こういった人たちに集まっていただくと同時に、役所の関係だけ、あるいは行政庁の関係だけというのでは、やや狭かろうかということで、これに若干の学識経験者が加わっていただく。官庁の関係は、これはかなり専門的な事柄も多うございますので、レベルといたしましては、中央官庁の場合には課長レベル、あるいは地方公共団体の関係では、それぞれの局部長というようなレベルで相談をし、詰めてまいる。それだけでは、大所高所からいろいろ御議論をするという必要もございましょうから、別途、環境庁長官も御出席いただき、さっきも申し上げましたが、それぞれ関係省庁の関係局長、あるいは地方公共団体で言えばそれぞれの首長というような方に集まっていただく懇談会というようなことをやって、これは何回も開くつもりはないわけでございますが、先ほど申しましたような協議の方向というものが、ある程度まとまってきた段階で御報告を申し上げて、大所高所から御議論いただくとか、そういうような関係で、これは機構として、そういうハイレベルのものを設置するというようなことを要綱等で書くつもりはないのでございますけれども、実情はそういう会合も開くことにいたしまして、ひとつ専門的な事項についての見解を踏まえた上で、この御相談の場といたしましては、余り細かなことに入り込んでも、いささかどうかと思われますので、先ほど申し上げましたような水質並びに自然環境保全というような角度の大筋の基本的な事柄の方向づけ、こういうようなことについて議論を集約していただければありがたいというふうに思っておるわけでございます。  そういった趣旨でございますから、それをやってまいる期間につきましても、余りだらだらと長いことやるというのもいかがかということで、長くても二年くらいには一応のめどをつけるというような気持ちでやってまいる、これが現在段階での私の気持ちでございますが、まだ、いろいろお尋ねになりたいことがあるかも存じませんけれども、概要といたしまして、現段階で申し上げられることは、その程度で御了承をお願いしたいというふうに思っておる次第でございます。
  63. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 多摩川の流域の環境保全対策連絡協議会をつくる、そしていまの構成は各省庁、地方自治体関係者を含めてやる、そして実務的な部分と政治的な部分を含めて、ランクということは別としても、そういう仕組みをつくっていく、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  64. 堀川春彦

    堀川政府委員 結構でございます。
  65. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そこで、お伺いをいたしますが、これは長官にぜひ質問をいたしたいのですけれども、この前、私が提案をいたしまして、そして環境庁長官がイニシアをとっていただいたわけでございますが、国と地方自治体と、いわば市民といいましょうか、流域の住民と申しましょうか、それが対等の立場で協力をし合う、そして共通の目的を目指していく、そういう性格のものとして、この連絡協議会の発足を期待をしておるわけであります。と申しますのは、環境行政と言われるものは、いままでの日本の各省庁のいわゆるなわ張り意識だとか、あるいはセクトだとか、あるいは縦割り行政という弊害を除いていかない限り、本当の意味環境行政の確立は不可能だということを、長官自身もよくお考えをいただいていることでございますし、同時に、そうしたいわばソフトな環境行政と言われるものこそ、明治以来の日本の官僚的なシステムに対して挑戦をしていく勇気だろうと私は思うのであります。そういう意味でこの連絡協議会の性格みたいなもの、仕組みの前提とでも言いましょうか、そういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  66. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そのとおりでございます。
  67. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 川というものは、日本人にとってはかけがえのない情緒空間であることは、もはや言うまでもありませんし、そこに住んでいる日本人にとっても、川は心のふるさとだというふうに言われてまいりました。しかし、これまでの河川に係る行政というのは、率直に言って治水と利水というところに重点があったことを反省しなければならないというやりとりをしたこともございます。あるいは都市の河川を自然の中に取り戻すという考え方、そういう川に対する思想の大幅な転換が重要であるということも御指摘を願っている経過がございます。一言で言えば、河川を単なる人間のアミニティーだけではなくてエコロジーの問題として考えていかなければならない。これはもう私が申すまでもないところでありまして、その意味で、この協議会が水質保全と自然環境保全と言われる問題の二つの分科会というか、そういうテーマに分けて議論をなさっていくということに環境庁が踏み切っていただいたことに、この際、敬意を表したいと思うのであります。  そういう意味で、私はこの際ちょっとお願いを申し上げたいことがあるのであります。冒頭に環境庁長官から御答弁いただいたように、私は単に多摩川のことだけを申し上げているわけではない。しかし、重要な都市河川の一つの焦点の河川として多摩川をとらえていく。そして多摩川を取り戻すことができれば、日本じゅうの川を取り戻すことができるし、多摩川を取り戻すことができなければ、私たちは東京湾を取り戻すことができないだろう。そういう非常に広い、一種の川に対する考え方の大きな転換と言われるものを、この協議会の中ではぜひとも討議を願いたいし、そういう議論の立て方を、ぜひこの連絡会議でとらえていただきたい。そういう崇高な思想としてとらえていただきたいというふうに考えますが、その点についての御答弁を煩わしたいと思います。
  68. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃる意味で多摩川を取り上げたということでございます。ただ私は、この協議会で、東京湾まで含めて東京湾の汚染対策まではやりません。これは、結果的にそういう問題が出たりするわけでございますから、あくまでも多摩川という大きな都市河川、重要な河川について、一つのモデルケースとして、そういう総合的な対策をやってみる。それが影響を及ぼして、たとえば各地方の重要河川についてもそういう機運ができて、それで知事が中心になり、あるいは環境庁からも指導をいたし、そうして地域の市町村の方々あるいは一般の住民を代表するような学識経験のある方々が参加して、そういうような体制ができ上がっていって、そして全国の河川がそれによって自然のあるべき姿を取り戻していくということを望んでやるわけでございますので、まあ、おっしゃることは大体、私の気持ちと一緒でございます。
  69. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私が、行政のサイドだけでなしに、いわゆる市民といいましょうか、住民のことをなぜ取り上げたかと申しますと、水や空気が無限だというような考え方を大きく転換をしなければならぬことは事実でありますし、それから、やはり歴史的に積み重なってきた、いわばGNPの信仰みたいなものが、率直に申し上げて、きれいな水を奪ってしまったように私は思うのです。だから日本じゅう、どこへ行ってもそういう状態が例外なくある。現実に飲料水の問題だけじゃなくて、たとえば企業にしたって、まさか油を運ぶようにタンカーで水を運ぶわけにはいきません。そういう意味では実は水を求めて、無論それだけではなくて、安い労働賃金や原料などを求めてという立場もあるのですが、水を求めて海外に進出をしていく、東南アジアのきれいな水を奪っていくということさえ危惧ではないと私は思うのであります。そういう意味では、流域に住んでいる国民の、あるいは市民、住民の、いわば一種のモラルみたいなものを含めて、川に対する考え方というものを転換していくことを促さなければならぬ。それにはやはり市民や住民のそうした運動の参加という課題をぜひともとらえていただきたい、このように思いますので、恐らく学識経験者というような形を含めて、市民の参加を求めていくことになると思うのですが、それらについての基本的な、政治的な姿勢を、もう一遍承っておきたいと思います。
  70. 小沢辰男

    小沢国務大臣 住民参加の方法でございますが、実は全国のモデルにしたいという考え方で、多摩川については非常に慎重に、少しかたくなに考えておりまして、そういう意味を含めて適当な、自治体からも推薦を願った、いわば学識経験者としての参加を願おう、これが一つの何といいますか、モデル的なあれになりますものですから、その面で、ただ一般の住民からどなたか参加する人はいますかというような形でなくて考えておりますので、その点だけは御了承いただきたいと思います。
  71. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この連絡会議の発足というのは、非常に重要な意味を持ってくるだろうと私は思います。それだけに発足についても、ぜひ慎重な配慮を願いたいと思いますし、その発足自身の中に、環境行政の単に水に係る問題だけではなくて、自然保護や、あるいは多摩川のレクリエーションゾーンとしての機能を含めた、そういう話し合いというか、協議を続けてほしいと思うのです。  実は環境庁長官が建設大臣であった時代を含めて、多摩川の河川敷のゴルフというのは五十二年度までに全廃をする、そして市民の手に戻すということになって、私と建設大臣とのやりとりの中でそういう結論が出たのですが、当然、自然環境保全という中の議論の一環で結構ですが、やはり川のレクリエーションゾーンとしての機能などについても、これは実は建設省で、また別の機会にお願いをしようとは思っていますが、河川管理財団の発足が見られたわけでございますので、それらのいわば役割りをも含めて、市民の広場としての、あるいは市民のための、水のある余裕空間としての川の機能というものを、ぜひ御考慮いただきたい、このことをつけ加えて申し上げたいと思いますので、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  72. 堀川春彦

    堀川政府委員 ただいまの問題は、この連絡協議の場でどのように扱うかということは、今度、構成ができましたら、その段階で、検討事項をどういうふうにしぼっていくか、どういう検討の仕方をしていくかということにかかわりますので、ここで私から決まったように申し上げるわけにはまいらぬわけですが、ただいまの先生の御発言を、この協議会のお世話役をする私といたしまして十分、念頭に置いて対処してまいりたいと思っております。
  73. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 かなりくどくなりますが、実は水質保全法が制定されてから、たしか十七年の歳月が流れています。この法律水質汚濁防止法というふうに改正されてから、すでに五年たっているわけであります。その間に実は多摩川は六倍、江戸川が二倍、淀川が一・五倍というように、これは過マンガン酸カリウム消費量の年平均ですから、それが一つのバロメーターというふうにとらえるわけですけれども汚染がやはり進んでいるわけであります。その中に、言うところの洗剤などの問題もあるわけでありまして、そういう意味では、ここで私は細かく内容に立ち入って質問をいたしませんけれども、そういう問題を含めた、つまり市民の一種のモラルみたいなものを含めた対策というものを求めたいということを、まず発言をしておきたいと思うのです。そうなりますと、当然のことながら、そこに住んでいる人たちの、ある意味の連帯といいましょうか、行政だけではない、人間の連帯に支えられた一種のコミュニティーみたいなものさえ、実は重要な課題になってくると私は思うのです。そういうことまで含めて、この委員会が、ようかんを包丁で切ったような形にはならないにしても、そういう人間の可能性というものを切り開いていくための話し合いを、ぜひ、お願いしたいという気持ちでいっぱいなのであります。  私が言うまでもないのですけれども、実は多摩川というのは三千年の歴史があると言われています。川崎というのは多摩川のいわば沖積層の上にでき上がっている町なのでありますが、その多摩川の歴史、三千年の歴史を振り返ってみて、私はあそこに住んでいて思うのですが、たった十五年です。たった十五年で川を殺してしまったわけです。殺してしまったというような言葉は過ぎますけれども、死の川に近いものにしてしまった。人間の歴史から見ると本当に一瞬の間に、実は取り返しのつかない川にしてしまいそうな、そういう危機的な条件がいまあると思うのです。多摩川でも、シラウオがつれたりアユがつれたりしました。そういう意味で、どうか人間のそうした長い歴史の中における私たちの責任みたいなものを、どうしても考えてみなければならぬ。この間ある有識者に聞きましたら、いま私たちが飲んでいる水、地下水というのは、何か百二十メートルとか百三十メートルのところへいくと、その水は七、八十年前の地下水なんだそうです。つまり、われわれは江戸時代の水を飲んでいるというふうに言ってもいいと思うのです。その意味では、いまわれわれが川を汚したりあるいは地下水を汚してしまうということは、七、八十年後の人間に対しても責任を持たなければならぬ、こういうことに相なっていくだろうというふうに私は思いますので、そういういわば水に対する哲学——かわという字は、さんずいに可能性の可という字を書いたんだという解釈もあるわけですけれども、それは余談としても、そういうものとしての川を取り戻す御努力を、さっき申し上げたようになわ張り意識や縦割り行政の弊害をなくし、同時に市民、住民の直接的な参加を求め、そして日本じゅうの川を取り戻していくための御努力を、ぜひ期待をしたい、このように思いますが、一体この委員会はいつごろ発足するおつもりであるか、具体的な日が決まっておりましたら教えていただきたいと思います。
  74. 堀川春彦

    堀川政府委員 これは関係する向きが相当多うございますので、私どもとしては、こういうものを設けて始めるということを決定し次第、できるだけ速やかにやりたいというふうに思っておるわけでございます。目下、最後の詰めをやっておるところでございますので、まあ近々のうちにというふうに申し上げておきたいと思います。
  75. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 さっき局長が二年ぐらいの期間を予定して、こういうことなんですが、結論が出る過程でも、可能な具体的な手だてというものをぜひお進めをいただきたい。これは言うまでもないわけでありますが、ぜひお願いをしたいと思うのです。  たとえば、私は実は問題になっているテムズ川のことをいろいろ物で読んでみると、また長い歴史があって、そして、もはやイギリスの人たちにとって、テムズ川がきれいになったということは世界に対する誇りだというふうに言っている言葉なども承ったわけでありますが、これはたとえば監視体制なんかについて、自動測定値というような問題もあるのですけれども、テムズの場合には、十数人の監視人がいて、そしてそれを見詰めている、こういうわけです。それはどこの川でも全部やるというわけにいきませんし、同時にまた多摩川で十数人というような議論をここでするつもりはありませんけれども、市民がやはり一種の監視、そういう仕組みの中に協力をしていくような、そういう配慮をぜひとも願いたいというふうなことも含めて、下水道の問題、自然保護の問題あるいはレクリエーションゾーンの課題などについて、二年の結論を得るまで、それを待つまでもなく、具体的に着手をしていただきたいと思いますが、この点についても御答弁をいただきたいと思うのです。
  76. 堀川春彦

    堀川政府委員 御指摘の趣旨はしかと承りました。
  77. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 まあ委員会のメンバーなどを議論されている経過を承ると、専門家でなければできない部分があるわけでありますから、連絡会議それ自身の機能と、いわば長官やあるいは首長、知事や市長なんかのかかわりの委員会というか懇談会を、別の機能にすることは理解をいたしますが、それはやはり出た結論を、中間報告などを含めて、行政に具体的に反映していく役割りを、私はぜひトップの責任といいましょうか、対応でやっていただきたいという気持ちを持っておりますので、長官、大変恐縮ですが、その辺についてのリーダーシップをおとりになった決意を、ぜひこの機会に承っておきたいと思います。
  78. 小沢辰男

    小沢国務大臣 協議会の方は、やはり相当専門家に集まってもらって、そこで出た結論については責任者が集まってよく聞きまして、それを実施に移すようにしていくという考え方で、局長のところで準備をいたしておるようでございます。先生がおっしゃるように、とにかく中間でも、まずやれるものからどんどんやっていかなければいかぬわけでございますから、おっしゃるような御趣旨で、検討しては行動に移し、行動に移してはさらに検討していくということは、当然やっていかなければいかぬ、かように考えます。
  79. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは六月二十二日の雨の日に、長官みずから多摩川にお出向きをいただいて、いろいろ調査をしていただきました。もう御存じのとおりに、合成洗剤のあわが風に吹き流されている姿などについても、ごらんをいただいたわけでありまして、予想以上の汚染だという言葉が、あの機会にも思わず漏らされたわけでありますが、やはりそういう意味で、日本じゅうの川を総点検していく一つの重要な機会として、この委員会をぜひとも生かしていただきたいと思いますし、そういう決意を、ぜひ承っておきたいと思うのであります。私はこれ以上、中に入って、どういう形で議論をしていくかということを議論していくやさきに、細かい質問に立ち入るつもりはございません。ただ、技術的に始末をしてしまうということではなくて、願わくは国民がいま日本じゅうの川に持っている気持ち、だれだってふるさとがあります。だれだってふるさとにある川といろいろな形でかかわって生きてきたわけであります、育ってきたわけであります。自分たちのふるさとを取り戻すという意味でも、たとえば自分たちが都会にあっても田舎の川のことを思い起こす。そしてその中で、言ってしまえば日本の自然というものを取り戻していく、そういうことが非常に重要だと思いますので、技術的に始末をしてしまうということだけでなしに、どうかひとつ、そういう日本じゅうの川の問題、そういう視点を多摩川の中に見詰めながら、ぜひできるだけ早い発足、そして同時に御検討を煩わしたいと思いますし、環境庁のさらに一層のイニシアチブを、この際、私は期待をしたいと思うのでありますが、それについての長官の御見解を承りたいと存じます。
  80. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生の川に対する基本的な考え方、まさに私も同感でございます。そういう意味で、この問題を取り上げたわけでございますので、いわば役所が中心になった協議会なり、あるいはトップレベルの懇談会というもの以外に、何らかの方法で、やはり関係する住民といいますか、またその指導に当たられる方々の関心をうんと高めてもらう必要もありますので、それらは別途ひとつ、協議会等の中にはもちろん入ってないわけですけれども、連携をとりながら進めていく必要があるのじゃないかという感じもいたしまして、この協議会の議論をいろいろやって、専門的ないろいろな対策が出てくるに応じて、そういう点も、これは行政官庁がやれる仕事ではないのですけれども、何かほかの面でひとつ活用をしていくような考え方を入れたらどうかというような気もいたしますし、いずれにいたしましても、できるだけ早く発足をいたしたいと思っておりますので、その後も逐次いろいろな御意見を承りながら、所期の目的が達成できるように最善の努力をしてまいります。
  81. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もうちょっと時間がございますので、恐縮ですが、簡単な質問ですけれども、お願いをいたしたいと思うのです。  続いて、私の質問したいのは鳥獣保護の問題なんです。実は、これは自然保護運動に非常に熱心なある友人から聞いたのですけれども、一茶の句に「きょうよりは日本の雁ぞ楽に寝よ」という句があるそうであります。これは私は大変何か教えられる気持ちを持ったわけであります。ちょうど冬鳥の季節でありますし、十五日から狩猟が解禁になったわけでありまして、その渡り鳥のことを考えてみて、実は日本は楽に寝られる国土ではなくなってしまっている。全国で埋め立てによって干がたがなくなったり、あるいは山林の乱伐や観光道路の問題もいろいろあります。スーパー林道の問題もございましょう。しかし、それと同時に、例のかすみ網のことを問題にしたいと思うのです。  実はこの間、野鳥の会の諸君が調査をしましたところ、違法なかすみ網というのがまだ公然と使われている。そういう実態調査が上がっています。十一月の初めに岐阜県の土岐と栃木県の奥鬼怒で密猟の実態調査を行ったわけであります。その結果、岐阜県の土岐で、これはNHKのヘリコプターなんかの御協力もいただいたそうですけれども、四カ所の鳥屋場がある。そして一つの規模は二十反ほどの網が発見されたというわけであります。栃木県の奥鬼怒でも、準備中を含めて六カ所の鳥屋場が発見され、現にかかっているコノハズクやルリビタキと、おとり用のツグミが、実は写真を撮ってきたのですけれども、いっぱい放置されていまして、こういう状態がまだ残っているのであります。調査に出向いた諸君は、朝四時半に起きて、山を歩いて一生懸命で調べてきたのですが、この問題について環境庁は、その後どんなお考え、どんな認識を持っておられるか、ぜひこの際、聞かせていただきたいと思います。
  82. 信澤清

    信澤政府委員 御指摘がございましたように、かすみ網による鳥類の捕獲というのは、その猟法は禁止されているわけでございます。しかしながら、残念なことに、件数は減ってきておりますが、いま御指摘ございました岐阜県を含む、あと富山、福井、こういった方面の山間地、あるいは栃木県の鬼怒川の上流の山間地、こういった地帯では例年、密猟件数がかなりございます。そういう意味で私ども一つは、これは啓蒙の問題だということで、例年十月ごろ、関係府県では、警察当局なり、あるいは林野庁なり、あるいは関係のいまお話しのような自然保護団体、こういった方々にお集まり願って、いろいろPRのための運動をしていただいております。それから同時に警察を中心にいたしまして、いわゆる取り締まりをやるという体制もとっていただいているわけでございます。私どもも、たとえば岐阜とか栃木につきまして、その状況等を聞きましたが、栃木の場合には、情報が事前に漏れて、実際そういったかすみ網を仕掛けた跡はあったようでございますが、検挙に至らなかった、岐阜県の場合は、すでに五件、七人を検挙している、こういうような状況に聞いているわけでございまして、どうも一片の法律をもってしては、なかなか取り締まることが困難である、根絶することはむずかしい、こういった感じを持っているわけでございます。
  83. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま局長から御答弁いただいたように、かすみ網の密猟というのは二種類あるのです。一つはプロによる大量のもの、中部六県や栃木などで行われているものと、それからアマチュア、子供たちによるところの規模の小さい密猟もあるわけであります。大量の方は、山の中ですから、なかなかつかまえにくい上に、警察でつかまえても罰金一万円というふうなことで、ばかばかしくて警察も動かぬという状態があるわけであります。率直に言って、あるのです。その上に密猟者というのは常習犯で、一羽数百円で何百羽とるわけですから、罰金納めたって、もうかる商売だというわけで何回でもやっているという経過もあるわけです。また一方で、子供をつかまえて親に連絡をしますと、かすみ網が禁止されているということも知らない。もし禁止されているならば、なぜ店で売っているのかという反論をされる始末なのであります。つまり、密猟というのは依然として残っている。それを地元の警察や鳥獣保護員や愛鳥家によって取り締まりをやっているけれども限界がある。この際、かすみ網の所持、販売を原則的に禁止するというふうなことを考えるべきときが来ていると思うのですが、その点についてはどのようにお考えになりますか。
  84. 信澤清

    信澤政府委員 お話のような実情にあるわけでございますので、所持なり販売の禁止ということができれば、この問題の解決はさらに進むだろう、こういうふうに考えるわけでございます。ただ、私もよくわかりませんが、かすみ網というのは、かすみ猟に使うだけのものではございませんで、漁網その他の別の用途があるようでございます。したがって、他の目的に使われるものを取り締まるわけにいかぬし、それはそれなりに生活上の必要があって使われているわけでございます。そこで、かすみ網そのものをどういう形で規制するか。いまは猟法としての禁止をしているだけでございますが、これについて所持なり販売なりの禁止をしたらどうか、こういう御提案のように了解いたすわけでございますが、確かに一つの方法だろうと思います。したがって、そういう意味検討さしていただきたいと思いますが、ただ、立法技術で申しますと、いま申し上げたように、他の目的にも使えるようなものでございますので、一体そういう規定を設けても取り締まりの実効が上がるかどうか、こういう点がなお問題として残るのじゃないかという気がいたします。そういう細部の問題はごいますが、ともかく前向きに研究さしていただきたい、このように思います。  なお、子供さん初め一般の方、アマチュアという言葉を先生お使いになりましたけれども、そういう方がかすみ猟をしているにつきましては、御指摘のように禁止されていることを知らないという実態がかなりあるようでございます。この点についての啓蒙、宣伝というのは、私どもやはり行政として当然やる必要がある、こういうふうに考えております。
  85. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これはかつての話ですが、環境庁のある係官が、かすみ網というのは禁止されているのだから、売れるはずはないというふうにおっしゃったことがあるのです。ところが調査しますと、どんどん売れているのです。名古屋のある工場調査をしたところが、注文殺到で忙しくて休めないというのが実態なんですね。それは国内だけではなくて東南アジア、イタリアなどに輸出されているケースが多いのであります。実はこれらの国々ではジャパン・ミスト・ネットということで評判でございまして、私も、きょう持ってきたのですが、こういった非常に細い優秀なものと言われ、これは日本しかできないというふうに言われています。ヨーロッパでは、ヨーロッパからイタリアを経由してアフリカへ渡り鳥が行くのですね。それをイタリアでじゃんじゃんとっておるというわけですよ。それでイギリスやオランダやスウェーデンなんかで、イタリアをまじめにさせるキャンペーンみたいなことが行われていまして、自然保護団体がポスターをつくったりワッペンをつくったり、あるいは資金カンパをしてイタリアの自然保護団体に送ったりするというふうな運動があるわけであります。ここでもジャパン・ミスト・ネットが問題になっておりまして、例の国際鳥獣保護会議などでも問題にされているそうであります。これは本当はかすみ網の製造、輸出を禁止することがむしろ必要だと私は思っているのです。国際的なそういう反撃があるわけですし、イギリスやアメリカなんかでは、かすみ網というのは学術研究用として、いわば許可制度が採用されているそうであります。そういうことを含めて、ぜひ一遍、検討願いたい、このことを私はお願いをしたいと思うのです。その点について。
  86. 信澤清

    信澤政府委員 決して問題をはぐらかすわけではございませんが、先ほど申し上げたような立法技術上、若干の問題があると思います。しかし、お話のように製造、販売まで禁止しないと、この悪習はなくならないのじゃないか、こういう方も一方にあることは十分承知しているわけでございますので、そういう点を含めまして、いずれにいたしましても近く鳥獣保護に関する法律については全面改正を考え、それの準備を進めているわけでございますから、その中の重要な一つの項目として研究させていただくということで、今日のところは御了解いただきたいと思います。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 局長、一遍かすみ網というものの全国一斉の調査をやる意思ないですか。ヘリコプターで見ますとすぐわかるのだそうです。網を張るために幅一メートル長さ数十メートルにわたって立木を切るそうで、それをやって鳥屋ができるわけですから、上から見るとすぐわかるそうですか、その点についてもぜひ御配慮を願いたい。
  88. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど先生から岐阜県でヘリコプターを飛ばしたというお話を聞きましたが、私も、栃木県で十月の中旬でございますか、自衛隊にお願いをしてヘリコプターで空から密猟の予想地点の実態調査をしたという報告を聞いております。お話のように上空から見ますと、その準備をしているとか網を張っているというのは、地上で探すより非常によくわかるというようなことでございますので、機会がございますれば、そういった実態を調べたいと思いますし、私自身も見たいと思いますし、そういう方法がほかの府県でも採用できますならば、そういうことで、かすみ猟の実態を正確につかんでいきたい、このように考えます。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最後ですが、鳥獣保護の基本というのは、言うまでもないのですけれども、禁猟区の拡大にあるということはきわめて明白なんです。かつて環境庁は全国禁猟区の構想を発表したことがございます。この構想は一部団体の反対で日の目を見ることができないという状態でした。日本全土を禁猟区にして、もし、たとえばスポーツハンターなどのために例外としての猟区を設置するなどということは、いろいろ考えればいいわけですが、どうしても全国禁猟区制度というものを発足させるべきではないだろうか。こうすれば自然保護あるいは野鳥の保護だけでなしに、全国で毎年三百件ぐらいありましょうか、例の鉄砲の誤射による人間の殺傷事件と言われるものもなくなるわけで、文字どおり一石二鳥、三鳥かもしれませんが、全国禁猟区の設定などを含む法改正などについて、環境庁にお考えがございますれば、この際お聞かせをいただきたいと思います。
  90. 信澤清

    信澤政府委員 全国禁猟区制というのは、大石長官のときにおっしゃったことがあるわけでございまして、それについて一部の団体から反対があった、これも事実でございます。ただ、誤解がございましたのは、全く狩猟ができない、こういう前提での議論であったようでございます。しかし、それを提唱される自然保護関係の団体の御意見をよく伺いますと、いま先生お話しのように、現在でも猟区制度というのがあるわけでございますが、むしろこれを拡大して、狩猟の場をある定められた猟区に限定していこう、こういうお考えのようでございます。そこらの誤解を解きながら、先ほど申し上げましたように現在、自然保護に関する制度の全面改正という問題について、審議会で過去二年ぐらい、小委員会の開催回数にして十数回、検討をしてきているわけでございますが、最後に残っているのが実はその問題なのであります。しかし、これも先般、十一月の初めに議論をしていただきましたときには、かなり両者の歩み寄りの気配がございます。つまり現行の制度を一応残しながら、逐次そちらの方に誘導していく、こういう漸進的な行き方、そういうものであれば狩猟関係の方々も得心をされるだろう、こういう見通し一つの感触として私、得たわけでございます。したがって、この問題が解決できますれば、法律改正の具体的な作業に着手できる、こういう感じでございますので、いまお話しのような方向で物事は進んでいる、こう御理解願ってよろしいかと思います。
  91. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 狩猟団体の御意見を聞いていたのでは、どうにもならぬのです。十五日から狩猟が解禁になりまして、ことしは獲物が豊富だ、豊猟だというようなことが新聞に出ているわけですけれども、こういう形で野鳥が殺されていく。恐らく百万羽以上、あるいは千万羽ぐらいになるのかもしれませんが、そのくらいだと言われているのです。そういう仕組みがあるわけですから、環境庁として、局長ひとつ張り切って、それは猟友会の気持ちをそんたくしていただけでは自然保護はできないわけですから、この際は、やはり環境庁としての、いま申されたようなきちんとした方針を示されて、文字どおり「きょうよりは日本の雁ぞ楽に寝よ」という日本をつくることができるように期待をして、時間でございますから質問を終わります。どうもありがとうございました。
  92. 渡辺惣蔵

  93. 山田芳治

    山田(芳)委員 私は私鉄、いわゆる一般鉄道の騒音並びに振動に対する対策について質問をいたしたいと思います。  実は、お手元に資料をお配りをしてありますし、また事務当局には二週間ぐらい前から資料を配って、いろいろとお願いをいたしておったわけでありますが、その資料をごらんいただきますと、お手元にありますように京都府下の宇治市長から近畿日本鉄道の社長の今里英三殿という文書があります。内容的に言うと、そこにありますように、鉄道騒音並びに振動に対しては、最近は非常に沿線住民公害の意識が高まっておる。そういう中で、そこにもありますように、最近、大都市周辺においてはダイヤが非常に過密化をし、高速化しております。一方では、新幹線の騒音の環境基準の達成目標というものの答申が中央公害対策審議会から出されておるわけでありますが、私鉄の関係においては何らなされていない、こういう状態であります。そういう点について、私たちとしては、新幹線に適用されるものと同じようなものが、やはり一般私鉄になされるべきであるというふうに考えるわけであります。  私の手元に沿線の住民からの要望が来ておりますので、簡単に重要な点だけを申してみたいと思うのでありますが、沿線の居住地には大体、十年ぐらい前から住みついている。これは高度経済成長時代との関連もあるわけでありますが、それとともに最近、特に昭和四十六年ぐらいからは、いままでは普通電車であったものが特急電車が走る。またそれが非常なスピードアップをするとともに、普通電車が急行に、あるいは特急にというふうに電車もどんどん走る。最初は二両で編成されたものが三両となり、ついには四車両が連結される。最近では、十両ぐらいにしなければいかぬ、あるいは二階建ての電車にでもしなければいかぬというような話すらある、こういうことであります。ところが、居住者はもう十年も前からローンを借りてやっておる。最初来るときは、当然その程度の振動なり、あるいは騒音があるということを承知をして来ているわけでありますけれども、先ほど申しましたように非常に人口が過密化するに従って、当初、住みついたときよりもはるかに多くの車両が走る。また過密化するダイヤ。それから普通電車ではなく急行、急行ではなしに特急というものが走るということになっております。ここに言われておりますところの近鉄京都線に至っては非常な過密でございまして、二ページ目の上段の方に書いてありますように「1日当たりの通過車両本数も上下合わせて400本を越え、1日に被る騒音被害は断続的ではあるが、相当長時間にわたっています。」こういうことであります。  そこで、まず第一問といたしまして環境庁長官にお尋ねをいたしたいのは、新幹線の騒音の環境基準と達成目標期間に関して答申をなされておるわけでありますが、私鉄についても同様の基準なり考え方をとられる意思があるかないか。最近、事務当局に伺っておりますと、東京や大阪の私鉄の沿線の調査をしておるということを伺っておるわけでありますが、それはいつごろ、その調査が終わり、いつごろを目標に、そういった環境基準というようなものを設定し、目標期間というものを考えておるのかというような点について、お答えをいただきたいと思います。
  94. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 事務的な問題を私どもから答えさせていただきます。  新幹線につきましては御承知のごとく、ことしの七月に環境基準が設定されたわけでございますが、御指摘の一般の鉄道騒音につきましては、本年度から来年度にかけまして二年計画で、騒音の調査と、それに対する反応と申しますか、住民の反応の社会調査、その両方を含めて調査をいたすことにしております。これは実態調査の中で、騒音と振動の両方が絡んでおるわけでございますが、実は新幹線の環境基準におきましては、これは騒音だけが現在、決められておるという段階でございまして、私ども、いまの段階では騒音の調査ということを中心といたしておりますが、この調査が終われば、その結果をもとにして、中央公害対策審議会の中の騒音振動部会というところがございまして、その中に鉄道関係の騒音の専門委員会というものを、また設けまして検討するというようなことといたしております。
  95. 山田芳治

    山田(芳)委員 それでは、その地点について、関西は特に私鉄が多いわけです。近鉄あり、京阪あり、阪急あり。京都、大阪の間、奈良、京都の間、非常に私鉄が多いわけでありますが、調査地点については、事務当局に伺ったところでは、東京なり大阪の周辺である。ぜひひとつ、本日、問題にしております京都、奈良間のこの宇治の地点あたりを追加をして、騒音なり、あるいは振動の調査の地点に加えられる意思はないか。  というのは、阪急、京阪はわりによくやっておりますから、そういう点で沿線の住民の苦情その他は比較的少ない。近鉄の奈良線は、これは実は環境庁長官御存じないと思いますが、事務当局、特に運輸省関係者は御存じだと思うのですけれども、非常に古い電車で、しかも近鉄に合併をされたというような経緯があるという点で、従来からの鉄道のいわゆるレールにしても、あるいはその鉄道敷の整備というものは不十分である。それなるがゆえに、それだけの苦情がよけいある、こういうかっこうでありますから、そういうところをぜひ調査の地点に加えていただかないと そういった正確な資料が出ないのではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  96. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 調査地点の問題につきましては、五十年度はもうすでに決定をいたして、埼玉、愛知、大阪でいたす予定にして、いま進めております。そういうことで、五十一年度の問題として先生の御指摘の問題点を検討させていただきます。
  97. 山田芳治

    山田(芳)委員 ぜひひとつ、それは加えていただきたいと思います。  それで、次にお尋ねをしたいのは、新幹線においては、いま話がございましたように騒音についてのみであって、振動に対しては基準を示していない、そのとおりであります。しかし一般鉄道については、これはやはり高架ではありませんから、振動の問題というのはきわめて重要な問題になるわけでありますから、それもひとつ目標として掲げてもらいたいと考えるわけでありますが、ことし、来年、調査をされ、それから公害対策審議会の中で討議をして決めていくということになれば、相当の時間がかかるわけであります。したがって、その間、二年なら二年ぐらいの時間があるわけでありますけれども、そこの資料にありますように、沿線の住民は、一日も早くそういうものに対する行政指導なりあるいは一定考え方を示して、具体的な措置をとってもらいたい、こういうふうに言っているわけであります。そこで、沿線の住民としては、当該地方自治体である宇治の市長に訴え、市長もまた、知事なりあるいは当局である近鉄にいろいろと要請をしているわけであります。     〔委員長退席、土井委員長代理着席〕 しかし、御承知のように騒音を落とすためには、やはりスピードを落としてほしいというのが沿線住民の要望であって、金もかからないで、一分間ぐらいスピードダウン、徐行をしてもらったら、その騒音はなくなるのだというので、ぜひお願いしたいということを要望してあったわけでありますが、そこの資料にもありますけれども、近鉄当局としては、現段階においてはスピードダウンということはできない。資料の三枚目をめくっていただきますと、宇治の市長に対し近鉄の方から「列車のスピードダウンは輸送力の大幅な減退をもたらしますので、実施することは出来ません。」こういうふうに言っているわけであります。これはこれで一つの沿線の輸送力を確保するという立場からして、住民側から言えばスピードダウンしかない、そのとおりだと思いますけれども、しかし輸送力の関係から、それはできないのだ、こういうことで、若干の措置はいたしております。  そこで、その資料にありますように、この若干の措置すなわちロングレールに直してほしいというものに対して、ロングレールは金がかかるからやれない、だから、せめていまあるレールを溶接をいたします。それから騒音を防ぐためにタイパッドというような吸振材を入れました、こういうことで処置をしました。こういうことになっておるのでありますが、もう一つの資料を見ますと、それでは、それによってどのくらい騒音が落ちたかというと、せいぜい二ないし三ホンしか落ちてない。そこにも書いてございますように、屋外では八十デシベルから百デシベルという非常に高い値を示しておるので、本当にもう生活に耐えられない、こういうふうに住民は言っているわけであります。  しかもスピードを落とすことはできないというのならば、せめてロングレールに早急に取りかえてやるなり、あるいはロングスカートをはかせて騒音対策をするなり、あるいは防音壁をやってやるというような具体的な措置をすべきではないか。スピードを落とすわけにはいかない、しかも環境基準はある程度、時間がかかる、そういうことならば、せめて行政措置として、いま私が言ったロングレールにかえる、防音壁を設ける、あるいは吸振材を装置する等の措置を、行政指導としてやってやるべきであるというふうに考えるのですが、この点は、具体的には運輸省の方でしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  98. 横山義一

    ○横山説明員 お答えいたします。  私鉄の騒音対策につきましては、いま環境庁の方からお答えがございましたように、現在、実態調査の段階でございます。  私鉄の騒音対策と申しますものは、技術上あるいは経費上、非常にむずかしい問題でございますけれども、われわれといたしましては、住民の方の要望のあったところにつきましては、ケース・バイ・ケース処理するようにというふうに、私鉄の方を行政指導をしておるわけであります。  それで、ただいま先生の御指摘の問題でございますけれども、ロングレールあるいは防音壁の設置あるいは吸振材の設置というような問題につきましては、私どもといたしまして、計画的に、できる範囲でやるように指導いたしたいと考えております。
  99. 山田芳治

    山田(芳)委員 できる範囲ということはどういうことか、よくわからぬのですけれども、われわれとしては、宇治市の公害対策課というところが何回かこの騒音を具体的に測定をしている資料を、お手元に配っておるわけでありますし、しかも若干の措置はいたしましたという私鉄側の答えがあったので、それを含めて再び本年の十一月十一日に、同じ場所で同じメンバーで、同じ器具を使って測定をしているわけでありますが、それの状況が、お手元に配ってあるとおり、いわゆる七十ホン以上という、これは人間として耐えがたいという状態が、いまだに続いているというふうに私どもは考えるわけですが、この資料をごらんになって、一体、環境庁並びに運輸省の担当の方はどう考えられるか、ひとつお答えいただきたい。
  100. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 先生の御指摘のございました資料でございますが、住居が込んでおる中を走っておる鉄道の騒音の問題の解決のむずかしさというのを非常に感じました。まことに申しわけございませんが、すぐさま、ずばり直す方法というのはなかなかございませんで、そういう点で見たときに、ほんの数ホンでございますが、ブロックべいを個人でも置かれてやられた方があり、鉄道の方でも苦労して、ここまでしかいかないかという感じを持ったということだけ申し上げます。
  101. 横山義一

    ○横山説明員 私どもといたしましては、いまさっきお答えいたしましたように、騒音対策と申しますものはいろいろございます。ロングレールの設置とか、あるいは一般の道床の保守とか、あるいは防音壁の設置あるいは吸振材の設置というような、いろいろございますけれども、そういうものにつきまして、たとえばロングレールの交換と申しましても、これは道床材料から、まくら木材料全部交換しなければならないというようなこともございますので、なかなか早急には実施できませんけれども、そこら辺はひとつ計画的にやるように業者を指導いたしたいと考えております。
  102. 山田芳治

    山田(芳)委員 ここは鉄道と住居との間がわずか一メートル五十しか離れてないという、きわめて住宅地に密接をしている地域であります。したがって、計画的というよりも、特に騒音なり振動の強い地域を重点的に直すように御指導をさるべきである。特にこの地域については、先ほども申しましたように、自治体当局としても騒音なり振動なりの測定もやり、またそれについては関係方面にも要望を出しておる、こういう地域であります。先ほども申しましたように、京阪なり、あるいは阪急なり近鉄でも、大阪から鳥羽へ行く部分はロングレール化しているというふうに、やはりそれぞれの地域によって重点的に、その対策を講じているはずであるわけでありますが、この地域、特に先ほども指摘をいたしましたように、現在の近鉄の奈良線は、旧奈良電と言われる古い会社を吸収合併したという関係で、不十分な点が多いわけでありますから、せめてこういう要求の最も強いというところを重点的に指導されて、早くロングレール化あるいは防音壁をこの地域に設置されるように指導をされるお考えがあるかないかをお伺いしたい。
  103. 横山義一

    ○横山説明員 ただいま先生のおっしゃいましたように、ひとつ重点的に指導いたしたいと考えております。
  104. 山田芳治

    山田(芳)委員 それでは、時間がありますけれども、最後に一言だけ申し上げて終わりたいと思います。  関係当局におかれては、それぞれ自治体においては、こういう資料を十分調査をし、しかも具体的な要望を出しているわけでありますから、ぜひひとつ、この地域は重点的に当局を行政的に指導をしてもらいたいということとともに、何といいましても関西地域は私鉄が非常に多い。そういうためには、私鉄に対しても、いわゆる一般鉄道に対しても、一日も早く環境基準とその達成目標というものを、ぜひひとつ早くつくっていただく。それから、先ほど私が申し上げましたように、こういう地域調査範囲に加えてやっていただくということについて、もう一度ひとつお答えをいただいて、私の質問を終わります。
  105. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御要望のございました騒音の問題につきましては、先ほどお話しいたしましたように今年度は無理でございますが、来年度の問題として、一つケースとして検討させていただきたいと思います。また調査の結果が出ましたならば、できるだけ早く中央公害対策審議会で検討していただくということでいたしたいと思います。  また、振動の問題がございまして、振動につきまして現在、中央公害対策審議会の専門委員会で、振動の規制の問題の最終的な検討に入っておりますが、測定法と基準のとり方が、エネルギーでやるのと速度でやるのとございまして、非常にその両者の調整がむずかしい問題がございまして、御指摘のような鉄道の騒音の問題のほかに、工場、建設業等の道路との関係をどう整理するかということで、いま、その検討をいたしておりますので、その検討ができましたならば、やはり振動の規制というものに対する方向を中央公害対策審議会で検討していただきまして、実現に努力いたしたいと思います。
  106. 山田芳治

    山田(芳)委員 それでは、以上をもって終わります。
  107. 土井たか子

    ○土井委員長代理 次に、木下元二君。
  108. 木下元二

    ○木下委員 まず、瀬戸内海問題について、具体的な点を二つ伺いたいと思います。  まず西宮市甲子園の干がたの問題でありますが、これは、ことしの八月の末に当委員会でも視察を行ったのであります。この点は、第七十五国会で前の自然保護局長より、この地域が鳥獣保護区として設定されるよう前向きで取り組むという趣旨の答弁をいただいております。その後、事態はどういうふうに進んでおるでしょうか。
  109. 信澤清

    信澤政府委員 お話のように、八月に委員会が御視察をされました際に、私もお供をして現地を見たわけでございます。しかもその後、秋になりまして渡り鳥のシーズンになりますと、過去の報告にございますように、ことしもたくさんのシギその他の鳥が飛んできた、こういう実情も承知いたしております。したがって、あの地域を何とかして残さなければならないという私どもの基本的な考え方には変わりがございません。ただ先生、御承知のように、あそこにつきましては尼崎、西宮、芦屋港計画というものがあるわけでございまして、いわば、あの計画の一部を変更してもらう、こういうことになるわけでございます。したがって、その変更のための、いわば合意を得るために、県及び地元の西宮市等との間で交渉していただいておる、県も少なくとも私どもと同じような気持ちで、現地の地方公共団体と御折衝いただいておる、このように承知をいたしております。
  110. 木下元二

    ○木下委員 その干がたを残すということでありますが、率直に言いまして、県自身がそのような意思があるのかどうか、私は疑問に思っておるわけなんです。それで、あえて質問をしておるわけでありますが、これはひとつ県の方を強力に指導を願いたいと思うのです。それは、この前も干がたを視察いたしましたのに、対岸に案内をするというようなことがありまして、そうした点からも私は懸念をしておるわけであります。これは、この鳥獣保護区としての設定を仮に県がどうしてもやらないという場合には、法律のたてまえとしては環境庁長官が設定できるということにもなっておりますので、ひとつ、そういう形で進めていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
  111. 信澤清

    信澤政府委員 調査に参りましたときの県の態度は、私も先生と全く同じような感じを持ったわけでございまして、その意味で私、帰りまして早々、県に数回この問題で話をした経緯がございます。必ずしも他意があったわけではないようでございまして、先ほど申し上げたように、港湾計画の中身を変えるという、実は具体案を幾つか持って見えたこともございますので、お話の点、誤りのないよう指導してまいりたい、このように考えております。  単独で決めたらいいじゃないかというお話でございますが、いずれにしましても鳥獣保護区を設定する際には、地元で公聴会等は開くことになっておりますから、まあ私といたしましては、地元の地方公共団体を含めて皆さんが御賛成をいただく、こういう方向処理をするのがベターだ、こういうふうに考えております。
  112. 木下元二

    ○木下委員 長官にも、ひとつこの点ぜひお願いをしておきたいのでありますが、どうか、このかわいい渡り鳥の楽園が保てるようにしていただきたいと思うのです。これは特にこの前も指摘をいたしましたけれども、渡り鳥保護に関する条約というのが、これは通称でございますが、ございまして、この条約から申しましても、たとえば三条三項というのがありまして、この趣旨からいいまして、保護区の設定がされるべきだと私は思うのです。そういうふうな立場で、ひとつできるだけこれが実現されますように、長官にもお願いをいたしておきます。よろしいですか。
  113. 小沢辰男

    小沢国務大臣 局長が申し上げておりますように、私どもとしてはやはり県を指導し、県が皆さんの合意を得て、そういう方針を決めてもらいたいと思っているわけでございます。港湾計画との関係等がございますから、そう、いまここで先生に、簡単によろしゅうございますと言うわけにいかないのでございまして、やはり第一線の責任者の意向を十分尊重していかなければいけませんから、指導は十分いたしますが、まあそういう方向で、いろいろいま検討しているようですから、いまここで私はっきり申し上げられません。
  114. 木下元二

    ○木下委員 もう一つの問題でありますが、鳴門観潮に係る問題であります。  これは鳴門架橋が問題になっておるわけでありますが、この点については、改めてまた質問をすることにいたしまして、私がここでお尋ねしたいのは、鳴門海峡に昭和四十九年四月十四日に中国貨物船建設号、四千八百七十二総トンが乗り上げをいたしまして、そのまま放置をされておるという問題であります。これも八月の末の当委員会の視察におきまして、対岸からではありますが、つぶさに状況を見てきたわけであります。あのような状態のまま放置をしておくのはよろしくないと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  115. 信澤清

    信澤政府委員 まあ景観上、支障があることは御指摘のとおりでございます。
  116. 木下元二

    ○木下委員 あの地域はこの瀬戸内海国立公園の真ん中にあるわけであります。しかもこれは、鳴門観潮を目的に全国から観光客が集まってきます。ここはこの瀬戸内海の中でも最も景観のすぐれたところであります。その鳴門の渦潮の真っただ中に、大きな貨物船が無残な姿で乗り上げておるというのは、これは全く絵にならないと思うのです。景観を害することおびただしいと思うのでありますが、これは何とかなりませんか。
  117. 信澤清

    信澤政府委員 いまお話しのように、昨年の四月十四日に座礁したわけでございます。当時、油の流出の問題等もございましたので、四十九年の五月に、小松島の海上保安部が中心になりまして、徳島、兵庫両県の参加も得て対策会議を開いた、こういう経緯がございます。同時に中国側のいわば責任者でございますが、中国遠洋運輸総公司というのがあるそうでございますが、その代表の方が神戸で、漁業補償については努力する、こういう御発言をされたという経緯があったようでございます。その後、三回ほど会議をやりまして、七月の段階で中国側は、漁業補償はいたします、ただし、船体については所有権を放棄する、こういうような意向を示されたようでございます。  そこで、私どもといたしましては、先ほど申し上げたように景観上、支障があるわけでございますから、何とかこれを引き揚げてもらいたい。そこで、当面このような交通安全の問題でもありますので、海上保安庁の御所管ではなかろうかということで、海上保安庁に四十九年の八月に、何とか撤去していただきたいと、こういうお願いをいたしたわけでございます。いろいろ御検討いただきましたが、サルベージ技術その他で引き揚げは可能だ。ただし、金額は私は明らかにいたしませんが、金の出どころをどうするかということで、実は中国側の方は、先ほど申し上げたように船体は所有権を放棄したわけでございますので、私は、このような海上関係の国際法規なり条約はどうなっているか、事情はつまびらかにいたしません。しかし、どうにも手の打ちようがないというのが、海上保安庁の御連絡でございます。  そういうことで、私ども自身も、現行の法律体系の中で、このようなものについて格段の措置をとるような規定が実はございません。しかし、支障があるという事実はおっしゃるとおりでございますので、何とかしなければならぬということで、せっかく何か名案はないかと考えている段階でございます。
  118. 木下元二

    ○木下委員 船主側が所有権を放棄をしておる、そして技術的にも引き揚げ除去が可能であるということになりますと、私は問題はそうむずかしくはないと思うのです。これは、こういう景観上も非常に好ましくないわけでありまして、特にこれは付近の人に聞きますと、渦潮に対しましても悪い影響を与えておる。その辺の渦が幾らか消えていくと言う人もいるわけであります。これはぜひ本腰を入れて、この景観を守っていただきたいと思うのであります。この日本一の鳴門の渦、その景観を守るために、ひとつ最大の努力を払って、この船を取り除いてもらいたいと思います。結局これは問題になるのは、その処理の費用負担の問題だけでありまして、これは船主の方が負担するかどうか、いずれになるにせよ、ほうっておいてもよくないわけでありますから、何とかこれが除去できますように、ひとつ最大の努力を払って進めていただきたい、こういうふうに要請をいたしておきますが、いかがですか。
  119. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど来、申し上げておりますように、残っておる問題は、費用をどういう形で負担するかということが一番大きな事柄になっている、そういう状況にあるわけであります。先生は、金の問題は簡単とおっしゃいますが、実は私どもとしては、これは大変な問題なのでありまして、おっしゃるようにしかく簡単にできるとは思いません。しかし、先ほどから何回も申し上げておりますように、景観上、支障があるということは、これは事実でありますし、住民感情からいたしましても、あそこを訪れる方々の気持ちからいたしましても、いわば異物があるわけでございますから、何かの方法でこれを排除しなければならぬ、そういう気持ちは先生と私ども全く同じだと思います。
  120. 木下元二

    ○木下委員 これはどうですか、最悪の場合には、国の方が費用を払ってでも撤去をして景観を守る、そういう腹はないわけですか。
  121. 信澤清

    信澤政府委員 実は、まだそこまで詰めて考えておりません。と同時に、先ほど渦潮に影響があるというお話がございましたが、私どもが県から聞いておりますのは、確かに渦潮に全く影響がないと言い切れるかどうか問題があるかと思いますが、過去二年間の経験からいたしますと、渦潮そのものに対する影響は軽微である。ただ景観上、これは私どもも見てまいりましたから、よくわかっておりますが、きわめて異物があそこに鎮座しておるという、こういう違和感は否めないわけでありますので、何とか処理をする方向で努力をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  122. 木下元二

    ○木下委員 これはもう一年半以上になるわけなんで、こういう状態でほうっておくということは、とにかくよくないことは、これは共通の認識に達し得ると思いますので、ひとつ最善の努力を払って、やっていただくということをお約束いただきたいと思います。よろしいですね。
  123. 信澤清

    信澤政府委員 まあ率直に申し上げて力かありませんから、御期待に沿えるかどうかわかりませんが、できるだけの努力をいたしたいと思います。
  124. 木下元二

    ○木下委員 それでは、次の問題に移りますが、斑状歯の問題であります。  飲料水に含まれている弗素が原因であるとされておるわけでありますが、厚生省いますね。この症状というのは、歯の表面のエナメル質に白色の模様ができて透明でなくなってくる。ひどくなると、歯の表面に穴があいたり、あるいは欠けてくることもあるということであります。しかも、これは前歯だけでなく全部の歯にもあらわれて、褐色あるいは茶褐色等の着色もあらわれるということです。  この斑状歯は、兵庫県宝塚市で古くから起こっていたようでありまして、宝塚ゴルフ場の東南付近に「ハクサリ」という地名があります。これは白砂里と書くわけでありますが、当て字でありまして、歯が腐ったから、このような地名がついたと言われております。昔は牛の歯がぼろぼろに腐ったと言われております。いまは牛は見かけなくなったわけでありますが、犬の歯が腐っておるということです。厚生省は、宝塚にいつごろから、この斑状歯があると認識をされておりますか。
  125. 国川建二

    ○国川説明員 お答えいたします。  いわゆる弗素といいますものは、火成岩とか水成岩などに広く含まれております。したがいまして、地質的にそういう地層を通りました地下水には、かなり弗素が含まれているわけでございまして、宝塚市における水道は、もちろん戦後でございますけれども、あの地域でいわゆる歯腐れといいますか、斑状歯症状が出ておりますことは、かなり以前から歯科医学の関係でわかっております。
  126. 木下元二

    ○木下委員 いつごろからですか。
  127. 国川建二

    ○国川説明員 ちょっと私、正確には覚えておりません。
  128. 木下元二

    ○木下委員 どうも時期がはっきりしないようですが、まあ最近のことを見ましても、戦後、宝塚にも米軍が進駐をしてきて住宅を持っていたようでありますが、この斑状歯という一種の風土病があるということを知って、早々に住宅を引き払ったと言われております。宝塚第一小学校では、昭和二十三年ないし二十四年ごろにMPがやってきまして、医務室で生徒の歯を調べたそうです。当時、生徒であった人の話によりますと、MPが生徒をまるでモルモット扱いをして調べていったということです。また、戦後間もなくのときでありますが、市民が宝塚市から弗素除去装置を購入して、家庭で水道のじゃ口に取りつけて使っていたということが報告されております。  こうした事実から見ましても、昔から斑状歯が問題にされておったのでしょうが、戦争直後から何がしかの対策もとられたことがあるようです。ところが、いつの間にか、この問題を取り上げることが、だんだんタブー視されてきたようです。その中でも、まじめな歯科医の先生が斑状歯問題を取り上げ、世に訴えました。あるいは良心的な学校の先生も立ち上がりました。これに対しまして、教育委員会などがさまざまな圧力を加える、配置転換をやる。それで、これに関連して人権侵害事件として問題になったこともございます。こうした経過を経まして、PTAのお母さん方が立ち上がって運動を進めてきた、こういう経過があるわけであります。こうしてついに宝塚市も問題の重大性を放置できず、四十七年一月十四日に宝塚市斑状歯専門調査会に、この問題の調査を委託いたしました。この調査会は、岡山大学医学部大平昌彦氏を会長といたしまして、副会長は神戸大学医学部の喜田村正次氏、委員には、岡山大学医学部の青山英康氏、東京歯科大学上田喜一氏、茨城大学教育学部小倉学氏、大阪歯科大学小西浩二氏、岡山大学農業生物研究所小林純氏、大阪市立大学理学部鶴巻道二氏、国立小児病院日比逸郎氏、大阪大学歯学部松村敏治氏、京都大学医学部美濃口玄氏、兵庫県衛生研究渡辺弘氏、そのほか死亡された方などもいられますが、こうしたそうそうたるメンバーの権威ある専門家が集まりました集団であります。そして四十九年七月六日に最終報告書を提出いたしております。  これによりますと「調査活動を通して得られた科学的資料の上に立ち、宝塚市の斑状歯をめぐる健康問題の実態を明らかにし、その原因の除去と治療の対策樹立について、今日の時点における一応の結論に到達した」としております。そして答申のまとめの中で「厚生省の定めた水質基準〇・八ppmをもはるかに超えた上水が昭和四十六年五月以前には給水」されており、「これによってもたらされた被害に対して、宝塚市の上水道管理上の行政責任は自明」だとしております。そして「宝塚市における給水中の暫定管理基準フッ素濃度は、〇・四〜〇・五ppmを上限とする。」よう「万全の処置をとられたい。」としておるのであります。この最終報告書は厚生省でも検討されたでしょうか。
  129. 能美光房

    ○能美説明員 十分、検討いたしました。
  130. 木下元二

    ○木下委員 この暫定管理基準としまして〇・四ないし〇・五ppmを上限とするようにという答申に基づいて、宝塚市は、これに従った水道管理基準を定めております。これは、厚生省の水質基準〇・八ppm以下の地域からも被害が生じているという調査の結果に基づいて、この答申となり、また市がそれに従ったものであります。厚生省としては、この点をどのようにお考えでありましょうか。
  131. 能美光房

    ○能美説明員 私ども先ほどの報告書を十分検討いたしたのでございますが、飲料水の中に弗素がほとんど含まれていない、これは〇・二ppm以下のことを大体われわれ常識的に言っておりますが、そういったような地域でずっと育ちました子供にも、斑状歯様の歯の変化というものは出ております。過去の例におきまして。  先生、重々御承知のこととわれわれ思うのでございますけれども、斑状歯と言ってみたり、あるいは斑状歯様の歯牙というものはどんなものかというと、歯科の面では一様にエナメル質の発育不全あるいはエナメルの減形成といったようなことでとらえるわけで、その原因は全身的、局所的、いろいろな原因がございます。たまたま、われわれは学界なり、あるいは専門家の間で、弗素が全身的にいろいろ作用して起こった斑状歯様の変化、すなわち何といいますか、風土病的あるいは、ある地域を限って、弗素が原因として起こったエナメル質の発育不全、これを斑状歯と言っておるわけでございます。したがいまして、先ほどの報告で〇・四ないし〇・五を上限とするということは、その辺までは認めてもよろしかろうという御意見だと私は思うのでございます。ただ〇・八ppm以下で果たして弗素に原因するそういったようなエナメルの減形成が起きたかどうかということは、現在までの内外の知見では、はっきりいたしておりません。その後、宝塚市のデータにつきまして、さらにいろいろと検討を加えたいということで、現地にデータを要求しておるのでございますけれども、まだ到着しておりませんので、その後の検討はいたしておりません。
  132. 木下元二

    ○木下委員 弗素の含まれていない地域からも斑状歯状のものが出ておると言われましたが、それは、その地域的に集団的に発生しておるということではないのでしょう。
  133. 能美光房

    ○能美説明員 そうでございます。
  134. 木下元二

    ○木下委員 それから、国際的にも国内的にも〇・八以下で、そのような斑状歯が起こるとは考えにくいという趣旨のお話がありましたが、国際的にはどういうことになっておりますか。簡単で結構です。
  135. 国川建二

    ○国川説明員 お答えいたします。  国際的な斑状歯の発生状況ということではなくて、水道の水質基準について申し上げたいと思いますが、はっきりわかっておりますのは、WHOとアメリカの基準がございます。  まずWHOの国際基準で申しますと、これはその土地の気候状態によって変わっておりますが、飲料水の中の弗素の推奨すべきコントロールの範囲というものの考え方で示されておりますが、北ヨーロッパでは〇・九ppm以上一・七ppm以下、中部ヨーロッパでは〇・八ppm以上一・五ppm以下、南部ヨーロッパでは〇・七ppm以上一・二ppm以下、この範囲が好ましいという一応の判断基準がございます。また、アメリカにおきます水質基準は、上限値といたしまして、地域によって異なりますが、一・四ないし二・四ppmというものが、飲料水の弗素の基準の尺度として用いられております。
  136. 木下元二

    ○木下委員 いま言われたのは弗素の基準でありますが、斑状歯はアメリカなどではどうなんですか、問題になったところがあるのでしょうか。問題になっていないように私は聞いているのですが。
  137. 能美光房

    ○能美説明員 海外におきましても、いわゆる斑状歯様の変化というのは出ております。ただし、集団的に発生している例というのは余り見られないと思います。
  138. 木下元二

    ○木下委員 つまり、弗素を原因とする集団的な斑状歯患者というものは出ていないということですね。これは気温の差によっても、幾らか基準も違っておったようでありますが、これはやはり気候的、風土的な諸条件のもとで考えるべきだと思うのです。それからまた食物の関係も軽視ができないと思うのです。この斑状歯というのは大体エナメル質が弗素によって取られるということですけれども、それはカルシウムの摂取と関係があるというふうに言われておるわけで、大体、欧米人はカルシウムをたくさんとるわけでありますから、このような斑状歯にかかりにくい条件があるわけであります。だからアメリカあるいはヨーロッパを対象にして、WHOでどうした基準を出しておるかということによって、日本を律するのは非常に問題がある。日本日本のそうした条件のもとに、あるいは食物の関係のもとに見ていかなければならないと思うのですね。  そこで、国内的なことを聞きますが、全国で、この斑状歯問題が起こっておるのは、私が聞いておるのでは百カ所以上起こっておると聞いております。特にこれは井戸水を含めて民間簡易水道に多いというように聞いておりますが、これは一体どういう状況になっておるのでしょう。
  139. 国川建二

    ○国川説明員 お答えいたします。  先生いま百カ所程度というお話でございますけれども、先ほど申しましたように、一般に地下水の弗素の問題との関連がございます。したがいまして、井戸等を使っておりまして、その地下水の弗素の問題がある地域は、国内でもかなり以前から報告等もたくさんございまして、各地にあると思います。その個所については私もつまびらかではございませんけれども、かなりの地域に見られるところだと思います。  それからまた簡易水道等、一部組合でつくっておりますような簡易水道でも、場合によりましては井戸の地下水そのものが水質基準に非常に近いとか、あるいは季節によりまして基準を超える恐れがあるというような場合も、たまに報告を受けますので、私どもといたしましては、それらにつきましては直ちに必要な善後措置等をとるように指導いたしておるところでございます。
  140. 木下元二

    ○木下委員 百カ所程度あるいはそれ以上あると言われておる地域について、弗素の濃度、患者の有無、症状の程度などについて調査をされたことがおありでしょうか。
  141. 能美光房

    ○能美説明員 国が直接調査はいたしておりませんけれども、過去の文献によりまして、多くの学者が非常にたくさんの研究成果を出しておられます。     〔土井委員長代理退席、委員長着席〕 北は北海道から関東、中部、近畿、中国、四国、九州、あるいは海外にわたってまで進出してやっておられる例もございますが、非常にたくさんやっておられます。その中でいわゆる斑状歯と言えるのかどうか、斑状歯及び斑状歯様の歯牙変化を含めまして、たとえば一・五ppmとか二・〇ppmといったような高濃度の弗素含量のところでは、若干そういうケースが見られておるということでございます。
  142. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、〇・八以下のところで被害が出ておるかどうか、この点については調査をされたことがありますか、あるいはそういうデータ等があるかどうか、含めて言ってください。
  143. 能美光房

    ○能美説明員 お答えいたします。  そういったようないろいろなデータを拝見いたしますと、〇・八以下では、いわゆる斑状歯というものは出ていないとわれわれは観察しております。
  144. 木下元二

    ○木下委員 いや、それは本当にあなたの方で、百カ所ほどある、そういう現地をつぶさに調査をして、〇・八以下のところではない、そういう結果を本当に調査して言えるのですか。そうであろうという推測なり感じで言っておられるのじゃないですか。
  145. 能美光房

    ○能美説明員 先ほど申し上げましたように、過去のいろいろな学者の調査されました結果というものを集積いたしまして、われわれそういうことを申し上げたわけでございます。ですから、われわれ自身、国として調査をしたわけではございません。
  146. 木下元二

    ○木下委員 では宝塚のことを伺いますが、現に宝塚で〇・八以下の濃度の地域で患者が出ておるのです。それはこの答申書の調査によって明らかであります。これはいかがですか。これは見られたでしょう。この答申書の二ページそれから七ページの調査の結果、ここに数字がはっきり出ておるわけでありますが、これによると〇・八以下でも出ておる。明らかではございませんか。
  147. 能美光房

    ○能美説明員 私どもも、この調査結果をいろいろ検討して拝見しておるわけでございますけれども、たとえばここに〇・四ないし〇・五といったようなものがございますが、四十五ページ以下に「答申のまとめ」というのがございまして、その四十五ページの中ほどに(1)として、「宝塚市における給水中の暫定管理基準フッ素濃度は、〇・四〜〇・五ppmを上限とする。」とあります。ですから一応〇・四ないし〇・五あたりでとどめてくれという御意見だと思います。その結果、私どもこれを拝見いたしますと、この〇・四ないし〇・五あたりのデータを見ましても、たとえばページで言いますと十二ページ以降、この長い表がございます。それから十五ページはこれは全身的な方でございます。それからさらに四十六ページ、これは要するに歯牙形成の時期に、それが果たして働いたかどうかというようなことのいわゆる因果関係を調べるだけのデータというものが、この資料にはございませんので、恐らくその辺はわれわれにとっては何とも言えないということでございます。
  148. 木下元二

    ○木下委員 あなたは一体これを本当に検討されているのですか。どうもそういう言われ方では納得できませんね。大体この答申が出て、そしてこれを裏づけるいろいろなデータは、市が皆、持っているわけですよ。厚生省の方は一体、市の方にどういうデータがあるのか聞いたのですか。これはデータというのは、つまり調査会が調査をしたときの詳しいデータがあるわけですよ。それはみんな市の方に出しているわけですよ。ですから、あなた方の方でその点について疑問があるというならば、調べることはいつでもできるわけですよ。それはお調べになったわけですか。
  149. 能美光房

    ○能美説明員 私どもの方では再三、現地にデータを要求しておりますけれども、まだいただいておりません。
  150. 木下元二

    ○木下委員 それで結局これだけ詳細な、権威のある答申書が出て、〇・八以下でも患者が出ておるのだ、そういう結果が出ておるわけですよ。このどれが信用できないとか、どれが説得力がないとか、その点をひとつ御指摘いただきたいと思うのです。何が問題なんですか。
  151. 能美光房

    ○能美説明員 要するに、本当に飲んだ水が歯の発育期に働いたのかどうか、これはやはり分析しませんと、果たしてこの水が原因なのかということがわかりません。したがいまして、四十六ページの表にございますように、大体斑状歯があらわれますのは前歯が多い、それとあと第一大臼歯あたりが多いわけですから、その辺の歯の形成時期、特にエナメルの形成時期に、果たしてそれだけのある程度の濃度の水を飲んで、その中に弗素が入っているかどうか、その辺を突きとめたいということで資料を求めておるわけですが、その辺の資料はいただけないということでございます。
  152. 木下元二

    ○木下委員 ちょっと言われる趣旨がよくわかりませんが、歯牙の形成期といいますか斑状歯にかかりやすい時期、それは一体いつごろかということについては、この答申書の四十六ページに詳しく出ているわけですね。つまり歯牙の石灰化の時期、これが斑状歯にかかりやすい時期なんですね。この間に、この水道の水を一体、飲んだのかどうか、そのときの水の弗素の濃度はどうであったのかということを調査しておるわけでしょう。非常に詳細な科学的な調査をしておるわけでしょう。これのどこに一体あなた文句があります。こんなに詳細な調査はないじゃないですか。
  153. 能美光房

    ○能美説明員 私ども、このデータを拝見いたしまして、何といいますか、疫学的にはある程度そういうことが言えるのかどうかは疑問を持っておりますが、それと同時に、個人、個人の特に歯の石灰化の時期、いわゆる歯冠の石灰化の時期ですね、果たして、その子供が石灰化の時期に、どの程度の濃度の弗素を含んだ水を飲んでおったか、その辺の因果関係を立証するデータは、これには盛られていないということでございます。
  154. 木下元二

    ○木下委員 いや、水を子供がどのくらい飲むのかということは、そんなのは大体、一定しているわけですね。子供によって飲む水が多かったり少なかったりしないわけでしょう。大体これはこのくらい飲むということがわかっているわけですね。そして問題は、では飲んだ水の中に、どの程度の濃度の弗素が含まれておったかということですね。そうでしょう。それについて管網計算による弗素濃度の計算をやっているわけですね。詳しい管網計算をやっていますね。そうしてグループを四つの地域に分けて、二・〇七ppmの地域、これがグループI、それから一・〇五ppmの地域、これがグループII、〇・六八ないし〇・九の濃度の地域、これがグループIII、それから〇・四ないし〇・五ppm、その地域がグループIV、こういうふうに四つに分けて、そして管網計算をやって、この地域は濃度が幾ら幾らということを詳細に調べて、そしてその対象者について歯牙の状況を調べているんですから、これは私は文句のつけようがないと思うのですがね。
  155. 能美光房

    ○能美説明員 先ほどの先生の御指摘の管網計算の問題でございます。これは二十八ページにございますが、この「管網計算報告書には、47年3月までに入手し得たすべての資料」この辺がどうもはっきりしないということで、いま要求しておるのでございますけれども、この辺をちょっと分析してみないと……。
  156. 木下元二

    ○木下委員 二十八ページというのは、同じページ数があるものですから、どこですか。
  157. 能美光房

    ○能美説明員 前の方でございますね。二十七ページ、このあたりに表−11、表−12がございます。その次のページの二十八ページの「原水のフッ素濃度」といったようなところですが、われわれがこの辺でどうしても欲しいなというのは、この「管網計算報告書には、47年3月までに入手し得たすべての資料によって、」というふうなことで、この辺を提供していただきますと、わかるのじゃなかろうかということで、いまお願いをしておるのですが、いまのところ、まだ入手しておらないということでございます。
  158. 木下元二

    ○木下委員 四十七年一月より四十九年五月までの資料ですか。ちょっとわかりにくいのですが、どこのつくった資料ですか。
  159. 能美光房

    ○能美説明員 ここにございます「47年3月までに入手し得たすべての資料」という中に、ちょうど、その子供たちが歯牙の発育形成期にどの程度の弗素濃度の水を飲んでいたかということが明らかな資料があれば、分析できるということでございます。
  160. 木下元二

    ○木下委員 それはこの末尾に「宝塚市上水道における管網計算とそれによる給水のフッ素量の分布の推定」ということで出しているわけですね。非常に細かい計算をして出していますね。  問題は結局、子供が歯牙形成期に幾ら幾らの水を飲んでおったかということを、その年次ごとあるいは月ごとに細かく出すというようなことは、これは余り必要ないと思うのですね。問題は水源に、弗素濃度の高い低いに変化があったかどうかですね。この調査というのは、弗素濃度の高い水源の廃止の前と廃止の後と、二回にわたって、二つの時点で調査をやっているわけですね。そしてその上で、いまの四つに分けたグループのppm濃度を出しているわけでありますから、これは言われるように私は何ら問題ないと思うのですよ。たとえば、特に問題になるのは〇・八以下の地域でありますから、これはグループIVの〇・四ないし〇・五ppm、この地域です。この地域というのはどこかというと、仁川地区と、それから小浜地区を加えたというふうに二ページには書かれておりますね。そしてこれは「フッ素の経年分布」というのが出ておるわけでありますが、これは四十ページ、四十一ページを見てもらえばわかります。この「フッ素の経年分布」によりますと、前の水源のときですね、弗素濃度の高い水源のとき、ちょっとよく聞いてくださいよ、弗素濃度の高い水源の廃止になる前の昭和三十九年の調査なんです。それからその水源が廃止になった後の状態、それを昭和四十一年のものとして四十一ページに出しております。この二つを比べてみますと、つまり弗素濃度の濃い、高い水源が廃止になる前と、廃止になった後の両方を比較しているわけです。そうしますと、この仁川地区というのは変わりないのですよ。同じように〇・五ppmなんですね。そうでしょう。だから、たとえば三十九年のときは高い一・〇が出た、四十一年に低くなって〇・五になった、そうしますと、斑状歯の症状は一体、一・〇の水を飲んだためか、それとも〇・五の水を飲んだためか、これが問題になるわけですよ。ところが、ここではそういう問題はないわけなんですね。水源の廃止の以前も以後も同じ濃度なんですから。だから、そういう点から言いましても、これは結局この仁川地区の子供たちの歯牙形成期を通じて、〇・八の厚生省基準以下の水を飲んで、そして被害が起きておるということが、この調査によって明らかに出ているわけなんですよ。だから、たとえばあなた方の方で、いや、そんな患者がおるのかどうかわからぬと言われるのなら、一体これはこの調査委員会がたくさん集めたデータ、これは市が持っております。そういうものを一体、本当に調査をされたのかどうか、これは非常に疑わしいと思うのですよ。  きょうはもう時間がなくなりましたが、あなた方の方で問題があると言うなら、一体、何が問題か、それを明らかにして、そしてその問題をあくまで解明するべきですよ。結局、〇・八という国の基準以下の地域で斑状歯の患者がおる、こういうことは調査会の報告によって明らかなんですから、これに対してあなた方の方で問題があるというなら、一体、何が問題なのか、それをあくまで解明する。そして、それが事実とすれば、その〇・八以下の地域の患者に対して、治療などの救済の措置を講じるということでなければならないと思うのです。ひとつそういう方向で進めていただけますか。それはあなた方が調査をされて、それは間違っておったとか、事実に反するとかいうことが起これば、これは別ですよ。そうでなくて、私がいま言いましたように、あなた方の方で問題があるというなら、あくまでその問題を徹底的に解明するという努力をされて、調査を進めていかれる、このことをはっきりしていただきたいと思うのです。
  161. 能美光房

    ○能美説明員 先生の御指摘のとおり、さらにいろいろ報告書を検討してみたのでございますけれども、たとえば仁川地区、これは確かに以前と、そう濃度は変わらないわけでございますね。ところが、いわゆる斑状歯と言えるようなものが、地域的にそれほど出ておるかどうかということでございますね。それと、ある程度の弗素量がありますと、虫歯の予防効果を持ってくる。諸外国におきましては一・〇ppmを水道の中にわざわざ入れるわけでございます。それから、もうすでに御承知だと思いますけれども、過去において京都の山科地区では、〇・六ppmの弗素を投入して虫歯予防の効果を上げております。  したがいまして、あのデータを拝見した場合に、どの程度の齲蝕予防効果が出ているかということも、これはいわゆる適刺激が虫歯に効くのか、過刺激が斑状歯になったのか、その辺のバランスはちょっとわかりませんけれども、果たして齲蝕予防効果というものがその地区で見られておるのかどうか。それから、集団的にかなりの子供が少なくともM2以上の斑状歯といったような変化を出しているかどうか。その辺になりますと、まだちょっとわれわれ、あのデータだけでは釈然としないところがございまして、もう少し検討してみたいと、いままで申し上げたわけでございます。
  162. 木下元二

    ○木下委員 それでは、まず一点、仁川地区に斑状歯が出ているかどうか、この点については疑問があるようですから、これはひとつ十分、調査を進めていただきたいと思うのであります。  それと虫歯の点。これは虫歯予防になるという点があるかと私も思います。しかし、虫歯予防になるから、だから斑状歯も構わぬのだということにはならないのですね。虫歯予防の点があっても、斑状歯が出るということになれば、これはそう使用してもらっては困るわけです。いま京都の例も言われましたけれども、京都では十三年間、実験をして、結局ばったりやめていますね。それからまた、三重県でも、京都の山科の実験を採用しましたけれども、これもやめておると私は聞いております。だから、こういう点からも、ひとつ十分に弗素の問題、斑状歯の問題について検討を具体的に進めていただきたいと思うのです。この宝塚の問題を中心にですね。そして、いま私が最後に申しましたように、〇・八以下で実際に患者が出ているということなら、これは国の基準以下でこういう患者が出ておるということになれば、国の方としても、これはほっておけないと思いますが、治療などの救済の措置を講じていただきたい。これはよろしゅうございますか。
  163. 国川建二

    ○国川説明員 調査の上でなければ判断できない問題かと思っております。私どもといたしましては、先生も御承知のように、いまの水質基準で問題になるような斑状歯は出ていない、出ないという知見のもとに基準を定めておるわけでございますので、十分、内容調査した上で、私どもなりに考えたいと思います。
  164. 木下元二

    ○木下委員 それでは、時間が来ましたので、この問題はまた別途にやるといたしまして、一応、終わりたいと思います。
  165. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 岡本富夫君。
  166. 岡本富夫

    ○岡本委員 当委員会で六価クロム問題がずいぶん審議されましたが、委員長在任中に結論をつけておかなければいかぬということも一つございます。  そこで、その後十一月十四日の新聞報道によりますと、あるいはまたテレビでもございましたが、労働科学研究所の佐野辰雄博士が、鉱滓投棄地に住んでいた一人の住民が亡くなった後、高度の肺がん物質を肺から検出しておる、こういう報道があるわけですね。  これについて労働衛生研究所から資料をとりました。そうしますと、これは江戸川住民の方ですが、この人以外に、そういった被害が発見されるようないろいろな資料が、細かく言っておりませんけれども、出ておる。そこで、私は特に工場周辺あるいはまた鉱滓投棄地付近の住民の健康調査、これについて環境庁としては、どういうように考えて対処しておるのか、これをひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  167. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま御指摘のございました新聞記事の問題につきましては、私どもの方も、できるだけ資料を手に入れて考えていきたいと思っておりますが、やはりこういうふうな問題が起こるということは、鉱滓の投棄あるいは工場から出てまいります粉じん等によりましての汚染というものが、一つ大きな問題ではないかと考えておるわけでございます。ただ、実際に汚染程度というふうなものがどの程度であるかということが、非常に大事なことでございますので、その汚染程度調査を実施いたしますと同時に、現在、非常に大量の鉱滓が投棄されております地域住民の方々に対しまして、健康調査を各都道府県で実施をしているというふうな状態にあるわけでございます。
  168. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういった調査を行いまして、そして実際にこの方一人がいま出ておりますけれども、ほかにこういう住民に被害が出ておるという場合は、どこから救済の費用負担が出るのか、どこから出すのか、これについて長官はどういうようにお考えなのか、ひとつお聞きしておきたいと思います。
  169. 小沢辰男

    小沢国務大臣 当該健康被害を受けた本人の原因が当該工場から出た、あるいはまた、その工場産業廃棄物たる六価クロムに直接起因するという判断が出た場合には、当然その事業場の負担、こういうことになるわけでございます。
  170. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで、はっきり一つはお答えいただきました。  そこで、六価クロムにつきまして、実は私どもは全国の総点検を行いました。その中で出てまいりましたのが徳島県の県立阿南工業高等学校。ここの資料を見ますと、診察者二百五十四名中鼻炎あるいはまた咽頭炎、こういう病気の障害がある者が百二十一名、実に五一%に達する。全校生徒、これはその地域全部から来ておりますから、全校生徒八百四名中百二十一名ですから一五%、こういうように非常に高い率をあらわしておるわけですね。そうしますと、この阿南高等学校の生徒たちに対する治療といいますか、こういう費用は、先ほど長官から話がありましたように、ここは日本電工——この前、私たち当委員会で、委員長を中心にして行きましたが、そこの費用負担、こういうことになるわけですか。この点について。
  171. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいまの阿南高等学校におきますデータにつきましては、私どもの方にはまだ手に入っておらないわけでございますけれども、ただいま御指摘ございましたような高率での鼻炎あるいは鼻咽頭炎という問題があるということでございますが、ただ鼻炎あるいは鼻咽頭炎というふうなものにつきましては、平均的な有症率というものがあるわけでございます。またその高等学校の生徒がどの地域に住んでいるかということも問題があるかと思いますし、ただいま御指摘ございましたように、当委員会でも御視察になりました日本電工の工場との位置的な関係というものも考えなければいけないと思いますし、また、それが直ちに日本電工の徳島工場から排出されたクロムによります大気汚染の結果というふうにも、因果関係というものを明らかにするのは、現在の段階では非常に困難ではないかというふうに考えておりまして、ただいま長官が御答弁になりましたように因果関係というものが明らかになるということが、汚染者の負担ということの一つの条件であるというふうに理解をいたしているわけでございます。
  172. 岡本富夫

    ○岡本委員 それはちょっとおかしいですね。  そこで、この日本電工のすぐ近所にありますところの橘小学校の児童健診で、これも鼻やのどの病気それから鼻炎、こういうものが、私ここに資料がありますけれども一つ一つ言いませんけれども、他校から比べるとやはり非常に多い。それで、あなたがいまお答えになりましたように阿南工業高校あるいは橘小学校、こういう日本電工付近にある高校あるいは小学校、ここの生徒がこういうように非常に高い率をあらわしておる。それが因果関係がはっきりしますればとか、あるいはまた因果関係がはっきりしませんからというのは、だれがこれの裁定を下すわけですか。この学校の生徒たち一人一人が裁判を出すとか、あるいはどうするとかしないと、これは因果関係がはっきりしないという、そんなあやふやなことで、はっきりしますればだけでは話にならない。はっきりさせてあげるかどうかがまず大事だと思うのですね。この点についてどうですか。
  173. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま因果関係と申したのでございますが、これは、そういう児童あるいは生徒の中に、ある特定の疾患が多いという段階だけで、ただいまお話をお伺いしたわけでございまして、必要なことは、その地域における大気汚染程度がどうであるか、その中においてクロム関係のものがどの程度含まれているかということも、因果関係を決めるために必要なことであるわけでございまして、その問題につきましては当然、大気関係調査も現在、実施いたしておるわけでございますし、それぞれの患者さん方が訴訟ということではなくて、科学的に因果関係というものが証明されることが大事なことであるというふうに考えているわけでございます。
  174. 小沢辰男

    小沢国務大臣 六価クロム問題が起きまして、私は視察に行きまして、帰りまして、これは東京だけの問題ではないからというので、その六価クロムの工場の所在する環境関係の担当官を至急、集めたわけです。まず、その集める前に電話連絡その他いたしまして、現状を把握しなさい、産業廃棄物として何トン、どういう処置がされたかということを全部、持ってきなさい、そこでいろいろその状況把握をいたしまして、そして今度は、それぞれ帰って、そこの環境調査をまずやりなさい、そして調査をやった結果、健康診断までする必要があるかどうかを判断をして、やはり健康診断をする必要があるというものは全部やりなさい、そしてその結果を報告をしなさい、こういう手順でずっとやってきたわけです。  徳島のいまの問題については、先生方が行って御調査をされたそうですか、私どもの方に、その県がやっている調査の結果の報告が、まだ野津部長のところへ来てないということを申し上げているわけでございます。ですから、その調査の結果をよく見て、そして大気汚染調査と両方で判断をしていきませんと、その工場が直接原因であるかどうかという点、あるいはまた産業廃棄物としてどこかへやりまして、それが大気汚染につながってきたのか、そういう点もはっきりいたしませんと、申し上げかねるわけでございますから、そのデータがまだ来てないそうでございますので、十分よく調査をいたしまして御返事をいたしたい、かように思います。
  175. 岡本富夫

    ○岡本委員 阿南高等学校といいますのは、御存じかどうか知りませんが、この日本電工から十分ぐらいの距離のところにある。しかも、私どもが徳島県へ行きましてやりました全国総点検の中から出てきたのは、五十年八月二十一日の調査なんです。もう十一月、会期末でしょう。こういうものがまだ環境庁の方の手に入ってないというようなことでは、私は問題だと思いますね。向こうも環境庁長官をばかにしておるのじゃないだろうけどね。これは私、一つの例を取り上げましたのですが、この六価クロムでこんなに問題になったわけでありますから、私は積極的に調査もし、あるいはまた因果関係もはっきりしていくことが大事だと思うのです。十一月十四日、労働科学研究所の佐野辰雄さんのこういう新聞記事が出ておりまして、周辺の各住民の皆さんがずいぶん心配しておるのです。それでありながら、これは八月二十一日の徳島県阿南工業高等学校の、県の文教厚生委員会の視察説明の資料なんです。こういうものがまだ手に入ってない。私は、環境行政について非常に手ぬるいのじゃないかと思うのです。  それから、あなたの方は各地方自治体に対して、健康調査について予算大分、出しましたですか、どうですか。
  176. 野津聖

    ○野津政府委員 初めの御質問でございますけれども、この健康調査というのは、いわゆる環境調査をもとにいたしまして、一次健診、二次健診、三次健診という形で、一連の形で進んでいくことによりまして、健康調査がまとまるわけでございまして、私どもの方では現在、徳島県におきます各種の調査につきましては、最終的な精密健診が終わっていないという形で、報告はもらっておるわけでございますが、ただいま御指摘ございましたように、すでに八月に提出されました資料につきまして、私どもの方の手に入ってないということにつきましては、徳島県としましては、恐らくまとめた上で報告ということを考えておったのではないかと思いますが、御指摘ございましたように、私の方もできるだけ早く、中間段階におきましても、そのような資料を入手できるように指導してまいりたいというふうに考えております。  それから、健康調査に要します費用の問題でございます。非常に大事な問題としましては、工場内のいわゆる産業衛生という立場での六価クロムによります健康被害という問題と、環境汚染によりますクロムの健康被害というものにつきましては、非常に態様が違ってきているわけでございます。特に空気中におきます濃度というものが非常に差があるという、非常にむずかしい問題を私ども抱えているわけでございます。そのようなときに、過去におきますいわゆる職場環境におきます健康被害というものを踏まえながらも、それだけでは出てこないようないろいろな問題があるわけでございます。できるだけ早期の段階で健康被害というものを把握するために、いかにすればいいかという非常に大事な問題を持っているわけでございまして、健康調査も簡単にできるという問題でもないという点もあるわけでございます。したがいまして、私どもも、できるだけこれらの健康調査を進めていくというために、各地方自治体が実施しております健康調査に対しましても助成を行うというふうな方向で、いま検討を続けているところでございます。
  177. 岡本富夫

    ○岡本委員 委員長、これは当委員会で健康調査についても、ずいぶんやかましく言ったわけです。ところが、このように非常に手ぬるいわけでしょう。委員長からもひとつ注意してもらわなければいけませんね。
  178. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 厳に注意しておきます。
  179. 岡本富夫

    ○岡本委員 ひとつよろしく。  そこで次に、こういうものを未然に防ぐため、特に化学物質の安全性確保に対するところの政策ですか、これはすでにゼンセン同盟あるいはまた合化労連、こういうようなところからも長官の方にも要求があったと思うのですけれども、私がいろいろ資料をとりました中に、米国の国立ガン研究所から発表されたものが、中央公論の「自然」に出ておりました。これは七五年十一月号ですが、期間は一九五〇年から一九六九年の二十年間にわたりまして、調査対象は化学産業の労働者二十五万、米国全土の約四分の一強という大規模なものだそうです。そして調査の結果、化学産業地域の方が、がんでの死亡率が非常に高い。あと細かいことは言いませんけれども、胃がんの方は化学産業地域の方が低いが、たとえば鼻洞がんという鼻の中のがん、あるいはまた喉頭がん、皮膚がん、骨がん、こういう種類のものは化学産業地域の方が非常に高い、こういう結果が出ております。これは後でまた長官読んでもらってもよろしいけれども、私はこの一つの例を見まして、化学産業物質の工場周辺地域というものと、それから農村地帯といいますか、全体を比べてどうなっておるのかというと、恐らく日本はここまでいっていないと思うのです。アメリカでも全国にわたって、こうして二十年もかけてやっておるわけですから、すぐにはできないと思います。しかし、これは大切な資料であろうと私は思うのです。  そこでこの前、化学物質の問題がPCB問題から発展しまして、商工委員会でいろいろ法案の審議をしてつくったことがありますけれども、この法案に基づいて、通産省が化学物質の安全性点検をやっておるわけです。ところが、化学品の安全性についての検査はどうしておるかという、この報道を見ますと、通産省が化学品検査協会化学品安全センター、こういうようなところでやっているわけです。そして四十物質のうち、「分解性が良好でなく濃縮性が大きい物質」ということで、三種類のものだけが、その法律にひっかかってくるということです。これでは私は非常に不十分であろうと思うのです。しかも、発がん性ということから考えますと、非常に不十分な調査だと私は思うのです。特に人の命あるいはまた環境保全をする官庁であるところの環境庁が音頭をとって、こんなくらいの化学物質に対する安全試験では、話にならないと私は思いますので、今後どういうような方向づけで、新しいもの、あるいはまた現在使用されている化学物質の安全性について考えておるのか、これについてひとつ伺っておきたいと思うのです。
  180. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま御指摘ございました化学物質の問題につきまして、昨年から新しい法律に基づきまして規制がされているわけでございまして、現在の段階では、新しく製造、輸入します化学物質につきましては、環境庁長官もその審査の役割りを担っているわけでございまして、新たな、いま御指摘ございましたようなPCBのような蓄積性あるいは難分解性さらには毒性というふうなものがあるものにつきましては、厳重に規制をしておりますと同時に、御指摘ございましたように、過去におきまして約二万と称せられます化学物質がすでに使われていたわけでございますが、その中で約四、五百のものにつきまして問題があるというふうに私ども認識いたしまして、これにつきまして既存の化学物質の見直しということを実施いたしておるわけでございます。  ただ、この場合に、ただいま申し上げましたように分解性と蓄積性というものにつきましては、御指摘ございましたように通産省がその仕事をするということになっております。また、慢性毒性につきましては、厚生省がこれを実施するということになっておりまして、環境庁の具体的な役割りといたしましては、これの環境におきます調査ということが、私どもの主な仕事になっているわけでございます。しかし、いま御指摘ございましたように、非常に多くの問題を含んでいることでもあろうかと思いますので、関係します各省につきまして、これらの判断の促進につきまして十分、申し述べるような形で、進んでいきたいと考えておるわけでございます。
  181. 岡本富夫

    ○岡本委員 蓄積性、分解性以外に遺伝性あるいは発がん性、催奇性、こういうものをやはりきちんとする必要が私はあると思うのですよ。ところが、やっているところを見ますと検査協会ですか、協会というのは任意みたいなものでして、試験をやっているところが非常に小さいと申しますか、余り信頼性が置けない。そこで化学物質安全研究所、こういう構想をつくって、そして製造事業者の申請により確認証明を行うとか、あるいはまた現在、使われているところの化学物質についての一つ一つの点検を行って、確実なものをやらなければならぬと私は思うのです。おざなりなことでは、結局いつまでたっても、先ほど申しましたように六価クロムの問題にしましてもPCBの問題にしましても、いつも問題が起こってから製造禁止してみたり、そのときはもう人の被害が起こった後ですね。恐らくこの化学産業労働組合連絡協議会の要求書はあなたの方にも来ていると思うのです。これは何人か一緒においでになっていると思うのですが、これをもう一遍、再検討して、そしてやはり国で、かっちりした安全性あるいはまた環境に及ぼすところの影響、こういうものをきちっとしたものを、今後使う。また、そうでないものはだめだというように、はっきりしないと、将来、大変なことが起こるのじゃないか、こう思うのですが、その点についていかがでございますか、長官の見解は。
  182. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生指摘の、いま通産省の協会でやっておりますのは、たとえば発がん性だとか、そういう人体に対する化学物質の毒性の審査なり調査、こういうものはやってないのです。これは厚生省で、いままで伝統を持って相当の組織があり学者もいます衛生試験所あるいはその他の機関できちんとやる、こういうことになっておりますから、実は分担が三つに分かれております。これはいいか悪いか、あり方として御批判もあろうと思いますし、われわれも今後、検討しなければいかぬと思いますが、先ほど言いましたように、通産省ではこの化学物質の分解性と蓄積性の審査、調査をやる、そして今度は毒性の方は厚生省でやる、私の方は環境調査をやる、こういうことに分担を決めております。  そこで、その二万の中で約四百くらいが先ほどは有害のようなあれがありましたが、有害の恐れがあることが予想されるというので、まあ有害と決まったわけじゃないが、その四百くらいのものがありますので、それをまず分解性と蓄積性の方を通産省で鋭意やって、それで済んだものから、今度は厚生省が、あるいは並行して毒性の問題をやるということで、いまやっておるわけでございます。したがって、新しく化学物質の有害研究所みたいなものをつくってやる必要はないのじゃないかと私は思うのです。できるだけ全能力を挙げて、早くこの四百の実体を解明して、これが環境影響を及ぼさないような調査データをしっかりつかむということは、私どももできるだけ努力をいたします。  もう一つは、先ほど申されたのは中央公論に出ておった、アメリカで二十年も、地域的ないろんな健康調査による違いをデータとして分析して、そしていろいろ国民の健康を守る上においての参考にしているということについては、遺憾ながら日本で、いままでない。坂口先生からも質問がございまして、この点は確かに傾聴に値する御議論だと申し上げたわけでございますが、いままでの予算で、そういう大がかりな健康調査をする予算というものは、全然どこでもやっていないわけであります。これは環境庁というよりも、やはり厚生省の仕事じゃないかと思うのですが、場合によって相協力してやらなければいかぬと思いますけれども、当面いますぐは間に合わないので、なるほど必要な点だなということを、私はあのときに感じまして、帰って幹部の間で相談をして、そういうような方法を一体どうやってとっていったらいいかということについても、いま検討を命じておったところでございます。
  183. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 岡本君、あと十五分しか時間がありませんから、ひとつ質疑、答弁とも簡潔に能率的にやってください。
  184. 岡本富夫

    ○岡本委員 委員長にそう言われると、ちょっと困ったが、あと発がん性、遺伝性、催奇性、こういう問題も、あなたも閣僚の一人として、この要請を読んで、政府で、かちっとやってください。  時間ないそうですから、あれですが、そこで労働省の安全衛生部長は来ていますね。あなたはこの前、六価クロムの認定基準について、お尋ねしたとき、労働安全衛生法の施行令で現在、六種類、あと検討中が四種類だということであったのですが、その中で私がエーテルの話をしましたら、あなたはすでに指定物質、指定業種の中に入っておりますということであったのですけれども、私が帰って調べてみますと、ビスクロロメチルエーテルは入っておりますけれども、クロロメチルメチルエーテルは入っていない。きょうは時間がありませんので、これはもう一度、社会労働委員会でやりますから、検討をしておいてください。  それで労災の認定基準につきまして、がんになったり、あるいはまた鼻中隔せん孔になったり、六価クロムの問題ですよ、その以前に気管支炎あるいは肺気腫、こういうことが起こっているわけですから、そのときに早くこの労災認定をして、治療をして、病気の進行を早くとめなければならぬと私は思うのですよ。そうでなかったら幾らでもたくさんのお金もかかりますし、こういう労災認定の基準の中に、この二つを入れるかどうか、これだけひとつ簡単に承っておきたいと思うのです。
  185. 中西正雄

    ○中西政府委員 先生のおっしゃられるとおり、早期発見、早期治療ということが最も大事なことでございますから、それが業務と因果関係のある疾病であれば、これは当然、業務上疾病として認定し、必要な補償をすることになるわけでございます。  ただ、それが業務に因果関係のある疾病かどうかということと、もう一つは、どこから疾病と見るかという問題が医学的にあるようでございまして、その辺の問題も関連いたしますが、先生のおっしゃられるとおり、早期発見、早期治療という趣旨で、認定基準等も常に検討をしていかなければならないと考えております。
  186. 岡本富夫

    ○岡本委員 考えておるだけじゃなくして、六価クロムの工場に働いておる人たちですからね、もう一度、再検討して、そしていまおっしゃったように早く救済していくということが大事だから、これはまた社労委員会で詰めます。  そこで、次は運輸省来ていますね。新幹線問題について。これは十一月十三日、新幹線の総点検をやられて、なお補修が必要と、こういうことの記事を読みましたけれども、新幹線の防音壁というのがあるのですね、御存じのように。この山陽新幹線の防音壁がまだ開通後三年しかたっていないのに、この防音壁から破片がぽとぽと付近の路上に落ちてくるのですね。これは恐らく振動あるいは騒音、こういった原因だ、こういうように思うのですけれども、これは下を歩いている者は危なくて仕方がないのですけれども、これについて兵庫県の加古郡の播磨町から、わが党の方に言うてきまして、早速調査したわけですけれども、これは話があったからわかったわけですが、これに対してあなたの方では、どういうように国鉄に対して指導をしておるのか、ちょっとお聞きしておきたいと思います。
  187. 高橋浩二

    ○高橋説明員 私、国鉄の高橋でございますけれども、ただいま御指摘のございましたのは、山陽新幹線の新大阪から岡山、三年前に完成いたしましたその区間における高欄のコンクリートに一部ひび割れがございまして、住民の方々から、ひびがある、しかも一部、その一部分が落ちたという連絡を受けまして、私の方、調査いたしました。先生のおっしゃいますとおり、三年前につくりましたものが、ただいま、ひび割れをしているということについては、大変申しわけないというふうに考えておりますけれども、このひび割れの原因を調査いたしました結果、これは三年前につくりましたので、つまびらかにはわかりませんけれども、ひび割れの状況から判断いたしますと、高欄のうち、三メートル間隔に支柱が建っておりますけれども、その支柱が厚さ八センチという非常に薄いコンクリートの設計になっておりました。その非常に薄いところに、ほかのコンクリートを差し込むという設計になっておるもので、非常に薄かったために恐らく施工したときに養生が不十分で、薄いために、日光を受けたり、あるいは寒さに当たったりしまして、そしてひび割れが出たのじゃないかというふうに、ただいま推定をいたしております。したがいまして、これについては、とりあえずひびの割れたところについては、つぶさに調査いたしまして、そのひび割れ部分を全部いま除去いたしまして、二、三日後から、これについて補修をしようという段階でございます。
  188. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなた、ほんの一部だと言うけれども、わずか一キロの間で十四カ所もそういうところがあるのですよ。それで、騒音会議の報告という報道があるわけですが、これは国際騒音制御工学会議、この中に、新幹線の防音壁は現在、設計十六センチだけれども、厚さ二十六センチは必要だ、十六センチでは効果がないのだ、こういうように発表されているわけです。ですから私は、いまあなたはこのところは非常に薄かったのだとおっしゃるけれども、新幹線の防音壁に根本的な問題があると思うのです。  もう一つ。私もこれ調査に行きましたのですが、これは山陽本線でしたけれども、三ノ宮とそれから六甲、あの付近のやはり防音壁があるわけですけれども、これも何かブロックを積んだだけですね。それがどんどんひび割れて落ちてくるのですよ。これは新幹線の防音壁は非常に必要だけれども、設計の根本的な見直しが私は必要であろうと思うのです。ただ、そこのところを補修して、すっと塗ってある、これだけじゃ話にならないと思うのです。どうも現地の国鉄の皆さんに聞いてみると、そこは補修しておくのだということですが、たとえばこの下なんかは児童がたくさん通っているのですよ。そういうことでもう一度、根本的な見直しが必要だと私は思うのです。この点についていかがですか。
  189. 高橋浩二

    ○高橋説明員 新幹線のあの高欄につきましては、一つにはそのわきを歩く人のための転落防止という意味と、もう一つには騒音を防ぐという二つの意味から、最近は設計をいたしておりまして、以前には高さの非常に低いものでございましたので、コンクリートのブロック積みにしたり、あるいはプレキャスト板を使ったりという設計をいたしておりました。したがって、御指摘いただいたひび割れが出たというのは、新大阪から岡山の間だけ設計をいたしました部分でございまして、岡山から先の博多までの新幹線につきましては、高さも高くいたしました関係もございまして、ほとんど全部、現場で約十六センチ厚の実際の鉄筋コンクリートで高欄をつくるということにいたしております。  ただ、いま先生の御指摘のように、音を防ぐにはコンクリートの厚さでもう少し厚さの厚いものをという御意見かと思いますけれども、遮音するという意味においては、コンクリート程度の密度のものでございましたら、それほど厚いものを必要としない。むしろ強度の上から、厚いもの、しかも振動その他がありましてもひび割れが出ないものということで、私の方は、今後、進めるものにつきましては、そういう配慮をいたした設計にいたしたいというふうに考えております。
  190. 岡本富夫

    ○岡本委員 この騒音会議の報告、私もこれはもっと専門家に聞かなければならぬと思いますけれども、これを見ますとやはり遮音効果、特に新幹線は振動が大きい、こういうことを見ますと、そのときだけはしばらくよかった。しかし後でこうしてぽろぽろ落ちてくるということになりますと、騒音だけ防いで、あとはいいのだというわけにはいかない。安全性ということも必要なんです。私はこの点をもう一度、見直してもらいたいということを、きょうは要求しておきたいと思うのです、時間がありませんからね。  次に、これは何遍も当委員会でも取り上げ、また、あなたの前任の内田常務理事にも話をしましたが、これは西宮の松籟荘というところです。ここに共聴アンテナを、何とか北と同じように南も立ててもらいたいということで陳情もしておるわけですが、この点についての、あなたの方の御判断あるいはこれからの前向きの検討ですね。これは、わざわざこの住民の代表の会長さんがお見えになって、これは大学の教授でありますけれども、国鉄までおいでになって、そして約束をして帰られたわけですからね。これについての進捗状況あるいはまた検討状況、これをひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  191. 高橋浩二

    ○高橋説明員 いま先生、御指摘の区域は西宮市内の松籟荘付近のことを直接おっしゃっておると思いますが、私ども新大阪−岡山間の新幹線が開通いたしました直後、テレビ障害について、電波の陰になります北側については共同アンテナで受信をする、それから直接、陰にならない南側については、個々のアンテナを補強することによる障害防止ということを実施して、この地区については四十七年に実は完了したということになっておるところでございます。いま先生がおっしゃるのは、完了したにもかかわらず、実際にはまだ若干の障害が出ておるところ、特に個人アンテナで補強したところにつきましては障害が出ているという御指摘かと思います。この点につきましては、その後、非常に年数もたっておりますし、また郵政省を中心といたしましてテレビ難視聴対策調査会というのが、こういうものに対する調査、今後の進め方等について議論をなされておりますので、そういうものとよく相談をいたしまして、私の方はこの個人アンテナにつきましては再調査をして、できるだけ必要な処置をとるようにしてまいりたいというふうに考えております。
  192. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはいつだったですか、お願いに来たのがちょうど夏少し前だったと思うのです。それで私はその後、国鉄に、十月ごろでしたか、どうなんですかと聞きますと、松籟荘というのはアパートですかと聞かれたのです。私はそれを聞いて、何も検討していないじゃないかということをつくづく感じた。聞きっぱなしだ。アパートのことを言っているのじゃないんですからね。松籟荘という町なんですからね。真剣に当委員会で話をしたり、われわれが言ったことに対しての対処方針、対処しているところの態度というものに、私は憤慨を感じたわけです。  だから、いまあなたがお答えになったのを、もう少しお待ちいたしますから、ひとつ、がっちりとやっていただきたい、こういうふうに考えます。  時間ですから、きょうはやめまして、あとはまた次の委員会で。どうもきょうはありがとうございました。
  193. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 次回は、来る二十日木曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時十六分散会