運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-12-11 第76回国会 衆議院 決算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十一日(木曜日)    午前十時十七分開議  出席委員    委員長 井原 岸高君    理事 唐沢俊二郎君 理事 中尾  宏君    理事 森下 元晴君 理事 吉永 治市君    理事 綿貫 民輔君 理事 久保田鶴松君    理事 原   茂君 理事 庄司 幸助君       三池  信君    安井 吉典君       諫山  博君    浅井 美幸君       坂井 弘一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 稻葉  修君  出席政府委員         法務大臣官房長 藤島  昭君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 長島  敦君         法務省人権擁護         局長      村岡 二郎君         公安調査庁次長 渡邊 次郎君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   鎌倉  節君         警察庁警備局公         安第三課長   福井 与明君         法務大臣官房秘         書課長     谷川  輝君         法務大臣官房人         事課長     筧  榮一君         法務大臣官房会         計課長     近松 昌三君         法務大臣官房営         繕課長     水原 敏博君         会計検査院事務         総局第二局長  柴崎 敏郎君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十一日  辞任         補欠選任   田代 文久君     諫山  博君 同日  辞任         補欠選任   諫山  博君     田代 文久君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十八年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十八年度政府関係機関決算書  昭和四十八年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十八年度国有財産無償貸付状況計算書  (法務省所管)      ――――◇―――――
  2. 井原岸高

    井原委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、法務省所管について審査を行います。  まず、法務大臣から概要説明を求めます。稻葉法務大臣
  3. 稻葉修

    稻葉国務大臣 昭和四十八年度法務省所管一般会計歳入歳出決算の大要を御説明申し上げます。  法務省主管歳入につきましては、歳入予算額は五百十億二千五百一万円余であります。  これに対しまして、収納済歳入額は五百八十五億六千二百六十二万円余であり、予算額に比べ七十五億三千七百六十万円余の増加となっております。  この増加しました主なものは、罰金及び科料の六十三億三千五百六十五万円余、刑務所作業収入の十一億八千二百四十六万円余等であります。  次に、法務省所管歳出につきましては、当初予算額は千四百五十億九千二百三十八万円余であります。これに予算補正追加額八十五億二千五百六十七万円余、予算補正修正減少額六億二千三百八十八万円、前年度からの繰越額二億二千六百二十三万円余、予備費使用額四億八千四百七十七万円余、差し引き八十六億千二百八十万円が増加されましたので、歳出予算現額は千五百三十七億五百十八万円余となっております。  これに対しまして、支出済歳出額は千四百三十億七千三百十五万円余であり、その差額は百六億三千二百二万円余となっております。  この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は三十六億八千五十二万円余であり、不用額は六十九億五千百五十万円余であります。  支出済歳出額のうち、主なものは、外国人登録事務処理経費三億八千六百七十一万円余、登記事務等処理経費二十六億九千八百四十九万円余、検察事務処理経費十一億三千六十三万円余、矯正施設における被収容者収容作業等に要する経費八十九億三千九百四十二万円余、補導援護誌経費十八億千百六十七万円余、出入国審査及び被退去強制者収容送還等に要する経費二億七千八百六十四万円余、暴力主義的破壊活動団体等調査に要する経費十四億千百九十万円余、施設費三十七億八千三百四十四万円余となっております。  不用額となった主な経費は、人件費刑務所等収容者食糧費、被収容者作業賞与金都道府県警察実費弁償金及び保護関係更生保護委託費であります。  以上、昭和四十八年度法務省所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。  よろしく御審議を賜りまするようお願い申し上げます。
  4. 井原岸高

    井原委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。柴崎会計検査院第二局長
  5. 柴崎敏郎

    柴崎会計検査院説明員 昭和四十八年度法務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  簡単でございますが、御説明を終わります。
  6. 井原岸高

    井原委員長 これにて説明の聴取を終わります。
  7. 井原岸高

    井原委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。原茂君。
  8. 原茂

    ○原(茂)委員 きょう法務省の方へは、細かい問題を七、八件お伺いするということを通告してあります。順次お伺いしますが、その前に、時期が時期ですから、法務大臣として、三億円事件時効完成を通じて一応問題の解決ということになったわけですが、これに対する感想をちょっとお伺いしたいと思います。
  9. 稻葉修

    稻葉国務大臣 三億円事件犯人が検挙されないまま公訴時効が完成したと思われることについては、法秩序維持の任務にある者として、まことに残念に存じます。しかしながら、警察当局においても事件発生以来、犯人検挙のためできる限りの努力をしてきたものという感想を抱く次第であります。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 おっしゃるとおり大変な長い間の苦労をして、なお所期の目的が達成できなかったわけですから、私ども大変御苦労さまだと考えておりますが、結局時効完成ということがこの問題を一応解決さしたことになるわけですが、この時効というものについて、いまのままで手直しもしない、変えようとも思わない、三億円事件があったにもかかわらず、なおかつ時効に関する規定はこのままにすべきだ、こうお考えでしょうか。何かお考えがありますか。
  11. 安原美穂

    安原政府委員 立法上の問題でございますので、私からお答えをさしていただきます。  原委員指摘公訴時効制度につきまして、現在の期間が短過ぎるということの批判は一般にはないわけでございますので、言うならば、今回の三億円事件もその公訴時効の範囲内で捜査目的を達成しなかった特殊例外の問題であるというふうに考えられますので、現在のところ法務当局といたしましては、この時効期間を長くするというような考えは持っておりません。また刑法の改正問題の審議をされました法制審議会でも、そのような御議論はございません。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 いろんな事情はあるでしょうが、私はこの方面は素人ですから、その前提でお伺いしているのですが、時効を長くするというようなことは、私は素人でも反対なわけです。それには幾つかの理由があるのですが、時効というものを規定したその背後的なねらいというものは、何かあるんじゃないかと思うのですが、これはどうでしょうか。
  13. 安原美穂

    安原政府委員 一般時効というものについて言えることでございますが、事柄公訴時効ということに限って考えましても、三億円事件を例にとりますと、三億円事件がいまから七年前に起こったということによって、いわば一定の安定した法秩序がそこで侵害をされて、そこに破られたという、法秩序破壊侵害という異常な事態が発生した。しかしながら、その異常な事態というものも、いわばある一定期間を過ぎることによって社会のそれに対する波風の立った法秩序というものが、時の経過とともに鎮静をした。したがって、その鎮静をしたと認められる相当期間を過ぎた後においては、さらにそれに公訴提起をして処罰をするというふうに改めた行動を起こさなくとも、もうすでに鎮静した社会秩序というものをそのまま是認すべきではないかというような考え方。  つまり一たん破られた法秩序によって波風の立った一つ秩序が時の経過によって鎮静したというように認められるときには、改めて公訴提起して処罰を求めるというようなことをしない、それを宥恕すべきであるという考え方公訴時効制度の基本にあるものと私ども理解をしておるわけでございます。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 おっしゃるとおりだと思いますし、それからもう一面では、やはり捜査を迅速にやらせるということもあるでしょうし、それにつれて裁判迅速化というようなものもねらっているでしょうし、局長おっしゃったことが一番主の理由だろうと思うのですが、私はこの問題をずっと見ておりまして、たとえば国外逃亡ですとか、あるいは起訴後――あれは二百五十五条の規定か何か知りませんが、その場合にはいわゆる時効進行停止という規定があるわけです。これは無制限に停止できるんですね。  私は、この機会に二百五十五条の国外逃亡または起訴時効進行停止というこの条項にも一応メスを入れて、むしろここにもやはり何か時効の限界というようなものが設定されていいんじゃないかという感じがする。これは素人でわかりませんが、たとえば三年、四年目に裁判には入ったけれども裁判が二十年、まあけさお聞きして、なるほどそういうのがあったのかなということがわかったんですが、非常に長い。長くて、結局時効と同じように、とにかく効力を発生させたという判決があったそうですからなるほどなと思うのですが、何かやはりこの二百五十五条の規定にもかかわらず、それにもいわゆる限度を設けるべきではないかという感じがするのですが、これはいかでしょうか。
  15. 安原美穂

    安原政府委員 いま原委員指摘のいわゆる高田判決におきましては、そういういま御指摘のような制度がないものですから、十五年という公判審理停止ということを時効と同じように考えて、時効のときには行われる免訴という裁判がなされたわけであります。そういう意味で、昨日も法務委員会で御指摘があったのですが、そういう制度立法の問題として刑事訴訟法上にも相当期間経過を待って免訴にするというような規定を設けるべきではないかということが訴訟の促進という観点から御意見がございまして、それは十分に検討に値する問題だとお答えをしたわけでございます。  なお旧刑事訴訟法におきましては、差そういう公訴提起後におきましても時効進行しておりまして、そして公判手続においてこの時効進行停止するという制度があったのですが、新刑訴になりましてから、いま御指摘のように公訴提起すれば時効進行ということがないという制度になっておりますが、今後の問題としては、その点も検討に値する貴重な御意見だと私ども思っております。  それから、国外におる間の時効停止でございますが、これもどのような制度をとるか、これは立法政策上の問題でございまして、必ずしも現行の制度が絶対に正しいとは思いませんけれども公訴時効というのは、端的に言えば被告人利益被疑者犯罪人利益のためにある規定でございますが、しかし国外におるというようなことでは、いわば公訴権を持つ国側の手の届かないところに犯人がおるわけでございますので、やはりこの被告人利益であるとともに国側責めに帰すべき場合の時の経過というものについて被告人利益を与えるが、国側責めに帰すべからざる事態における時の経過というものについては、国の持つ公訴権行使利益というものも少し考えなければいかぬ。その辺の兼ね合いが現在のような制度になっておるのだと私は理解しておりますが、御指摘のこともやはり将来の立法の問題としては考慮に値する貴重な御意見だと拝聴した次第でございます。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 次に、ついでに刑事問題に関連してお伺いしてしまいますが、いま審議をされて、要綱もつくられて、近いうちに決定をされるのだというふうに報道されていますが、裁判無罪になりました者のその間にかかりました弁護人の日当だ、旅費だ、費用だ何だというようなものの補償をするための論議がされて、最近成案が得られて、無罪の者に対する補償というものが確立するようになったそうですか、これはいつごろからそういう形になりそうですか、時期に関してちょっと。
  17. 稻葉修

    稻葉国務大臣 法務大臣諮問機関である法制審議会は、去る十二月八日の会議において、無罪確定判決を受けた者に対し裁判確定までに要した費用補償する制度を採用することに決定し、即日法務大臣にその改正要綱答申してまいりました。法務省としては、現在この答申に基づき法案作成作業に着手しており、次期通常国会にはこれを刑事訴訟法の一部改正案として提出したいと考えております。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 これは一審、二審、三審に関係ないでしょうか。
  19. 安原美穂

    安原政府委員 あらゆる審級関係なく、無罪裁判を受けて、それが確定した者についての補償でございます。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 これが国会に出されるのはいつになりますか。
  21. 安原美穂

    安原政府委員 いま大臣が申されましたように、十二月八日に法制審議会のこのような制度を採用すべしという答申がなされましたので、早速刑事訴訟法の一部を改正する法律ということで法律案作成にいまかかっております。できますならば、と申しますか必ずと申してもいいかと思いますが、次期通常国会にはこれを提出いたしまして、できますならば来年の四月一日から施行という運びになることを私どもは期待をいたしております
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでもう一つ、これも論議をされている問題なんですが、無罪判決を受けた者に対する裁判その他の費用補償というのと同時に、勾留された者あるいはずっと裁判が終わるまで長い間、あるいは勾留はしないが、非拘束のままでいたにしても、被疑者として、被疑者という言葉が当たっているかどうか知りませんが、精神的にも非常な苦痛を受けている人々に対して、決定するまでに八年かかったといっても、公訴期間はわずかに一カ月だった。一カ月に対する補償はいまの刑事補償法でやる。一日が八百五十円から三千何百円とかいろいろ決まっています。きのう参議院も通過した法律で乙の金額の是正等が行われたのですが、私はけさもちょっとお伺いしたのですけれども、なおかつ非拘束期間に対しても何らかの補償をしてやらないと、その間に非常に勤めも自由になりませんし、精神的にもいろいろな苦痛を与えられて、悪いことをしたには違いないのですが、神経衰弱になるような状態で何年も過ごしている私の知人がいるのですけれども、こういう者に対してもやはり何か補償する、刑事補償法改正を思い切ってやる必要があるのではないかと思うのですが、きのうの段階で、これで終わりとしないで、もう一歩突っ込んでそこまで考える余地がないだろうか。  その問題に関しては、後で、国家賠償法というものがあるのだから、精神的な苦痛も含めて賠償請求したらいいではないかという考えもあるのですが、これはやはりそれ相当調査期間中における、あるいはその他当局の側にミスがあるということを立証して裁判によって決着をつけるという、また精神的、肉体的、金銭的な苦労相当長く続くと考えると、国家賠償法はあるのですけれども、それだけに頼らないで、やはり刑事補償法そのものをもう一歩突っ込んで検討する方がいいのではないか。本当の意味補償をするというなら、そうすべきではないだろうかと考えますが、その点に関してはいかがですか。
  23. 安原美穂

    安原政府委員 確かに拘束は受けなくとも、一たん被告人という地位に立たされた者につきましては、物質的にも精神的にもほかの行政処分に比していわゆる損害が大きいということが言えるわけでございますが、先ほど原委員指摘のとおり国が国民に対して補償するという場合は、原則憲法規定しておりますように、公務員、国の側に不法行為故意過失がある場合であることが憲法原則でございまして、続いて憲法の四十条に、拘禁を受けた後無罪となった者について補償するという規定がございます。  なぜ四十条の規定が設けられたかということは、つまり故意過失を問わず補償するというような制度憲法上の制度として憲法規定しておるということは、やはり拘禁ということが非常に重大な不利益をこうむらされることだから、故意過失を問わず無罪となった場合には結果的には国が間違っておったということになるのであるから、故意過失を問わず補償すべきではないかということで、要するに拘禁という事柄のきわめて異常、例外に重大な国民に対する利益侵害であるということで、この制度が設けられたものであるというふうにわれわれは理解しておりまして、そのゆえに刑事補償法は、拘禁の場合に無罪になった者について拘禁の日数に応じた補償をするということになっておるというふうに理解しておるわけであります。  しかしながら、結局は故意過失を問わずに補償するということは、その意味において現在の制度の中では特殊例外の場合であり、よほど重大な利益侵害であり、よほど例外理由が合理的になければならぬというふうに考えておるのですが、その意味において、拘束も受けないで、ただ裁判被告地位に立たされたという不利益というものは、国民が耐えがたい不利益かどうかということは、他の行政処分でもやはりいろいろ国民が間違った処分のために不利益をこうむることがありますので、そういう処分との比較において、特に例外的に補償しなければならぬほどの不利益かどうかということは、若干問題があるのではないか。  やはり結局は、故意過失を問わず補償する制度ですから、私、刑事補償法審議のときに申し上げたのですが、そういう不利益というものを国民に負担させておくことが著しく社会の正義あるいは公平を失することかどうかという問題でございまして、結局司法制度というものを運営していく上においては、国民はある程度不利益というものを受忍してもらわなければいかぬ。しかし、その不利益の受忍が限度を越す、公平を失するというときには、国はこれを補償すべきではないかということになりますと、何が均衡を失し、何が公平を失するかということは、きわめて相対的な観念でございまして、やはり国家の財政の問題あるいは社会の情勢あるいは国民価値判断というものによって動く概念でありまして、いまは非拘禁補償はやるべきではないとしても、あすはやるべきであるというふうに考えられるということもあり得るような、いわゆる相対的な公平の観念から来る制度でございますので、現在のところは、まだほかの行政処分との対比において、不拘束の場合の無罪になった者について、国は故意過失を問わず補償するべきであるというまでの必要性はないとわれわれは考えておるわけでございますが、ただ、たびたび申し上げますように、相対的な問題でございますので、何を公平とし、何を国民が負担すべき限度考えるかは動き得る概念でもございますので、今後とも検討は続けていきたい、かように考えておるのが現状でございます。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 これは大臣にも特にお聞きしておきたいのですが、断ったように素人でよくわかりませんけれども、たとえば八年なら八年ぬれぎぬを着たまま被告人としてずっといる。親戚はもちろん、友人もそれを知っている。日本は非常にばっとうわさの流れやすいところでして、そういう状況で精神的に苦痛を与えられたどころか、仕事をするという場もなかなか因難状況に追い込まれる人もある。しかし、そうなった八年後に裁判がありました、無罪になりました。拘禁中の者に対しては刑事補償法補償がもらえます。拘禁はわずか二十日間でした。七年と何カ月は非拘禁でございました。被告人という座にずっと座らされていました。こじつけて国家賠償法によって、何とかしてその間の精神的な苦痛職業選定の不自由な状況収入もなかったというものを賠償法によって請求しようとすると、捜査当局に確たるミスでもない限り、これはなかなか成立が困難だ。  ですから、いまの刑事補償法をそのまま拡大改正をしないでも、国家賠償法の中にその間の事情を取り入れて、精神的な苦痛だけではいけないかもしれませんが、それも含めて、あるいは就職もできない、何だかんだという非常に大きな被害を受けた、それも刑事補償法でその補償ができないなら、国家賠償法請求要件の中にそういうものも入るというなら、どこかで救われるのですが、何とかしてこれを救うということを考えないと、皆さんはそんな経験は、もちろん私もまだないのですが、私は身近にその経験者を知っているのですが、相当苦痛を与え、相当職業選択すらできないという生活上の苦痛も与えているのを、現にあるのにそれを放置しておいていいのかというなら、時効によって犯人の側に立った一つ擁護考えると同じように、もう一歩突っ込んで、どうせいま賠償法なり補償法があるのですから、そのどちらかにそういったものを、補償の対象になるようなものを取り入れるように検討していくということをしていただく方が合理的だし、実情に合っているのではないかと思うのですが、先ほど局長の言われたとおり、いまのところそれは考えていませんと言いっ放しで、現にあるものを、現に苦痛を与えているものを、現に損害を与えたものを、繰り返しませんが、それを放置していいかというなら、私はいけないという立場をとるのですが、大臣、この点に関しては、現在の法律に照らしてはできないということはもうわかりましたから、新たにそのことを検討をするという必要があると思いますが、やっていただけるかどうか、お伺いいたしたい。
  25. 稻葉修

    稻葉国務大臣 この問題は、消極論をする場合も、それから積極論を展開するにしても非常にむずかしい問題で、歯切れの悪いことになっております。刑事局長説明を聞いても、そう歯切れのいい答弁と私は聞きませんですが、将来の立法論としては十分検討に値する御所論であるということだけを申し上げさせていただきます。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 次に、同じ補償でも例の犯罪による被害者補償の問題ですね。これはもう要綱案が発表されていますから、内容はよくわかっています。発表された限りでは全部頭に入れましたのでわかりましたが、一、二この要綱についてお伺いしたいのですが、その一つは、ある種の犯罪が行われまして――爆破事件でもいいのですが、その人が重傷を負いました。しかし、その当時はまだ個人の負担で病気を治しました。しかし、その犯罪犯罪であるという決定をされるのに二年以上かかりました。二年一カ月たったときに犯罪であることがわかったといったときに、これは適用されますか。
  27. 安原美穂

    安原政府委員 最初にお断り申し上げておきますが、原委員指摘要綱案というのは、たびたびこの国会で申し上げておりますように、まだ法務省事務当局の案と申しますよりも、担当者の一種の試案のようなものでございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思いますが、それといたしまして、その試案に盛られております事柄からの御質問でございますが、いまも御指摘のようなことは、当然にわれわれ犯罪ということが裁判確定するとか公権ということがなくても、犯罪であることが認められた時点において請求権があるような考え方でいきたい、かように考えております。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、請求権は二年以内という要綱案があるのですが、本人の請求によるわけですね。二年以内という請求権の期限があるわけです。
  29. 安原美穂

    安原政府委員 これはまだ確定はいたしておりませんで、法行為請求期間と同じような考え方で、あるいは犯人を知ったときからというようなことでやるかどうか、まだこれから検討の課題でございます。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 それはぜひ十分検討していただきませんと、その事例がたくさん出てくると思いますよ。  それからもう一つは、これも要綱案ですからわかりませんが、死亡はしなかったのだけれども、けがをしたというときに、各党いろいろまちまちに、そのけがの程度が十五日間だ、あるいは一カ月だなんだという案を出していますが、これに関しても重傷、軽傷、微傷と余り差をつけるべきではないと私は思う。重傷だから、全治一カ月だから、全治十五日間だから、全治十日間だからというので対象にする。七日だから対象にしないというようなことになりそうな感じがするし、各党ともやはりどこかに限界を求めようというので、そういう案が出ていますが、私個人としては、この種のものにそういった限界を設けるのはおかしいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  31. 安原美穂

    安原政府委員 各国の立法を見ますと、重い傷害の場合というふうに限定している例が多うございますので、一応それを目安に考えておるわけですが、要はこういう犯罪被害者が気の毒な状況におられるならば、できるだけ救うというようなたてまえからいくならば、傷害の限度などというものにこだわってはならぬということになるのですが、要はこれは国家の財政の負担の問題でもございますし、社会保障制度全般との比較均衡の問題でもございますし、私考えますのに、結局これは国民相互が助け合う問題でございますので、一つ犯罪が行われたのに、被害者だけに忍ばしてはいけないということで、国民が税金というものの形において出し合って、お互いに助け合おうじゃないかということでございますから、どの程度で助け合うことが妥当かということは、立法政策であり、国の財政規模の問題であり、ほかの社会保障制度とのバランスの問題でございますので、今後とも成案を得るまでには慎重に検討しなければならないと考えております。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 この種の問題の審議会で、専門家がみんなおやりになると思うのですが、どういう検討をするか知りませんが、きのうも委員会でちょっと言ったのですが、たとえば一般国民に、皆の税金で負担してやるんだ、気の毒だ、お見舞いをしてやるんだ、限界を設けるべきなのか設けるべきではないかと言ったら、私は大半が設けるべきではないという答えが出ると思いますよ。専門家はいろいろむずかしいことを言って外国の例がどうのこうのと言いますけれども、ここにも外国の例もありますけれども一般国民に聞いたら、十五日だから見舞いをしてやれ、十四日だから除外をしろ、そんなことにはならぬと思いますね、この種のいわゆる被害補償の問題は。  ですから、もう少し小さな意見ども――小さいと言うと怒られてしまいますが、各界の代表ということで私みたいな素人意見も、大衆の意見もくみ取るようなことができないものですかね、もっと広くこの反応を見るということで。ですから、何か決まったものの中に、ちょっとしたところに温かみがなくなるという感じを大衆は受けるのです。これを見ていて、ほかのことはなるほど何とか前進だからいいと思いますよ、六百万円は少ないと思いますけれども。それでもないよりはいいのですから、これはやはりステップ・バイ・ステップでいくべきでしょう。一挙にはいかないと思います。それでも六十億かかるとかなんとか言っているのですから、これはやむを得ないと思います。一歩前進だからいいと思います。しかし細かいところに、二十日間のけがをしたから補償してやるのだ、十九日だからしないというようなことにならないような配慮がどうしても必要だという感じがしてならないのです。  この点はもっと広く国民の意思が反映できるような方法がこの種の問題でも考えられないものだろうかと思うのですが、方法はないものですか。
  33. 安原美穂

    安原政府委員 従来わが省の法案を作成する過程におきましては、重要な問題は必ず法制審議会に諮問申し上げております。刑法を例にとりましても、法制審議会答申があったから、そのまま法務省案にするということでなくて、いろいろ各界各層の御意見も聞きながら法務省の案をつくるという努力を連日続けておるわけでありますが、それと同じでございまして、特にこのような刑法と同じように別の意味国民全体に支えていただく必要のある制度でございますので、何らかの方法で各界各層の意見、つまり世論がわかりますような方法をぜひ講じて成案を得たい、かように考えております。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 これは、あすはわが身だとみんな思っていますからね。私だってわからないのだから。したがってこの種の問題は、各界各層といういままでと同じカテゴリーで考えていくだけではなくて、工夫がないかどうかをひとつ検討していただきたいと思う。  この問題の最後にもう一つお伺いしたいのは、これ実施はいつになるのでし、一うか。
  35. 安原美穂

    安原政府委員 いまのところ、委員会の外で担当官から原委員に申し上げたと思いますけれども被害者の実態調査などを進めておりますし、それから先ほども申しましたように、他の補償制度との均衡とか、何よりも試算しても六十億は少なくともかかるであろうというような財政負担の問題もございますので、大蔵省、財政当局とも相談をしなければならない問題でございまして、そういう基本的な問題を終わりました後に法制審議会等にかけるというようなことにいたしたいと考えておりまして、法務事務当局一つの期待するスケジュールといたしましては、法制審議会にかけるのは来年の四月から九月ごろの間になるのではないか。そして法制審議会にかかりましても、いま申されましたように、ただ法律の専門家、知識経験のある者だけで決める問題でもないということになりますと、いろいろの意見審議会でもお聞きするというようなこともあり得るわけでございますので、やはり審議に一年ぐらいはかかるのではなかろうかと法務省事務当局としては考えておる次第でございます。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 次に、これは新聞で九月に見て、ははあ、いい統計をとっているなと思いましたが、目的は何だろうと思って、私憶測をし過ぎちゃったのですが、ところが、そう大した目的はないんだということをまたお伺いしたのですが、非刑罰化の傾向について刑事局長が何か外国における会議の必要資料としてまとめたものを新聞発表されたというのが経緯のようです。   〔委員長退席、森下委員長代理着席〕  これを見た限りでは、ついでにちょっとお伺いしてみたいなと思いましたのは、非刑罰化の傾向が出てくるといいますか、大衆の中にポルノにしても、あるいはその他の軽犯罪というかわいせつ、賭博、いろいろな問題にしても、まあまあその程度のことは余り……というような寛大な気持ちが出てくると、それに合わせてだんだん非刑罰化の方向、軽くしてやる、寛大にしてやるという方向へいくのだというような締めくくりになっているように思うのです。  これは刑事局長の発表したものだそうですから、当時を思い起こしてお伺いするのですが、この種の、たとえばきちっとした法制上の刑罰があります。にもかかわらず、いろいろな犯罪が行われても、犯罪だという規定があるにかかわらず、それに対してはかくかくの処罰を行うということがあるにもかかわらず、国民大衆の方から、まあそんなことは余りやかましくしなくてもという寛大な空気がだんだん出てくると、それに合わせてその刑罰の計量を決めていく、あるいはもうその法律に照らして起訴をしない、あるいは捜査の対象にしないかどうか知りませんが、そういうところまで寛大になっていくのか。そういうふうな傾向が、すなわち法というものの立場なのかどうか。見せていただく限りにおいては、そういう傾向にだんだんなってくるのだ。  この最後に「「ギャンブル・セックスなど風俗犯罪に対する一般国民の開放的な感覚が、合法・非合法の境界を次第にあいまいにしている」として、実際の取り締まりもこれに応じた弾力的な考え方を基本にして実施する方針だが、」とありますね。その最後のくだりを見まして、ははあそういうものかなという感じを持ったのですが、教えていただきたい。
  37. 安原美穂

    安原政府委員 御指摘の点は非常にむずかしい問題でございまして、いわゆる犯罪捜査あるいは公訴権の行使のあり方の問題にも連なる問題であるとともに、刑罰法規の立法における基本的な考え方の問題でもございまして、原委員に明快に御説明するには非常にむずかしい問題でございますが、新聞に一応の発表をいたしました経緯は先ほど御指摘のようなことでございますとともに、ここにはいま御指摘のような検挙の状況というものを是であるとか非であるとかはっきり価値判断して発表したものではなく、いわば実情を解説したものでございまして、いまのお尋ねは、そのような実情が正しいことかどうかということについての所見を問われておるものと思います。  私考えますに、この種の犯罪一般にいわゆる直接の被害者がない犯罪だ、つまり犯罪とされるものが、みずからの欲望を満たしておる犯罪だから、ほっておいたっていいじゃないかというのが、こういうものを犯罪としないという非刑罰化の思想として各国にあるわけでございます。そういうことであれば、むしろ立法の面からその犯罪とするものを犯罪でなくしてしまうという法制上の措置をとればいいということになるわけですが、現在具体的な問題として、わが国では、なおポルノを自由化しろとか、あるいは賭博を全部認めろとか、売春は全部放任しろというようなことには、少なくとも国民の全体の意識がなってないことは世論調査で明確になっておるわけでありますから、なおわが国の国民の大多数は、やはりこういうものを犯罪として残しておくことには賛成であるということでございます。特に刑法というものは、御案内のとおり道徳の最低限を国民の合意のもとにおいて定めていく法律でございますので、国民がどう考えておるかということは、やはり第  一に尊重しなければならない問題でございます。  いまのところ、そういう世論の結果から見ましても、またこういう犯罪とされる行為の及ぼす影響が、直接には被害者がないように見えましても、ポルノの場合にはこれを見せたくない青少年に対する影響とか見たくない人に対する影響とか、あるいは賭博はこれを放任いたしますならば結局は家庭を乱し、その賭博の資金を得るために犯罪に走るということが往々にしてあるというような広い見地から見ますると、こういうものを放任するわけにいかないと、われわれも考えられるというようなこともありまして、世論はこれを維持することに賛成であるということを考えますと、立法上の問題としてこれを非刑罰化するというわけにはいかないであろう。  しかしながら、特にわいせつの問題につきましては、わいせつという概念自体が一つの相対的な観念でございまして、そこに社会の風潮というものが、いわゆるわいせつ感を抱かないような、いわば自由化される、解放されるという傾向にあるといたしますと、わいせつという解釈自体がもうすでに昔に比べて対象が狭くなってきておるという結果、検挙が少ないということもあり得るわけでございます。  また賭博につきましては、やはり刑法の規定の中に一時の娯楽に供するものである場合には賭博罪は成立しない――一時の娯楽に供するものというのは、その場で飲食を供する程度のもの、それからまた飲食を供するために購入する程度のお金であれば賭博罪は成立しないということが言われておるわけでございまして、現在賭博罪で検挙されておりますものは大体暴力団の資金かせぎのための賭博でございまして、そういう意味で一時の娯楽に供するものについては犯罪が成立しないという法律上の制約がありますとともに、やはりこれも社会のギャンブルというものに対する風潮というものが昔に比べて自由化というような方向に行っておる、そういうような社会の風潮がございます。  そういう意味法律適用上の問題とか解釈上の問題にむずかしさが出てきておりますとともに、やはりこういう風俗的犯罪につきましては、国民の価値観なり社会情勢というものを考えて検挙、処罰をしていくということが必要な種類の犯罪であるとも考えられますので、やはり社会の価値観とか社会情勢というものを考えながら、まさに緩厳よろしきを得た検挙、処罰をする種類の犯罪ではないかというように考えておるわけでございます。  しかしながら、その風潮というものについては、公訴権を預かる検察あるいは犯罪の取り締まりに当たる警察として、風潮に流されてはならないことも申すまでもないので、公序良俗を助長していくようないい風潮に反抗するような悪い風潮に便乗して検挙、処罰の手を緩めてはならないことも申すまでもないところでございます。しかし一面において、国民の価値観あるいは社会情勢というものを無視して検挙、処罰するわけにもいかぬという問題でございますので、いわばいま申しましたそれに流されてはならないが、それに逆らうということもならないというような種類の犯罪ではないかというように考えておりまして、現在のところ、そういう観点からむずかしい問題ではございますが、風潮に流されず逆らわずというような態度でもって、この種の犯罪に対処すべきではないかというように私ども考えておる次第でございます。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 大体よくわかりましたが、もうちょっと突っ込んで私がまだぴんとこない点を申し上げますと、たとえば同じ事犯があってもすれすれだ、したがって検挙には至らない、検挙はしないというような判断が行われる出先、警察なら警察でいいです。いまなれ合ってはいけないとおっしゃったのですが、そこに情状酌量か何かそういったことをやる余地、幅がある。こういった非刑罰化の傾向があって、われわれもだんだん実情に合わせてやっていくのだといったような法務省刑事局のこの種の新聞発表がある。それを受けた出先では、その情状酌量の幅が大分広くなってくるところにある種の癒着が、まあひものような形でいる暴力団の動かしているわいせつ行為であろうと何であろうと、そういうものに対する癒着が行われる余地がだんだん広くなりっ放しになっていくという危険を感じているので、この種の発表をされるのだったら、この発表はこういう目的で発表したが、かといっておまえさんたちが勝手にまあまあすれすれだという判断を幅を広げてしてはいけない。そうして事例を挙げるなり、あるいは細かいものは必要ないにしても、従来にも増してこの点は十分に配慮しなければいけないというようなことが出されていないと、私が一警察官という立場に立ってみると、ほかの新聞に出ない、これだけ出てきますと、何かだんだん緩みが出てきて、法律はあるんだけれども緩みが出てしまっていけないということが言いたいわけなんです。  ですから、この種のことは、確かに数字上私もけさいただいてよくわかりました。物によってはふえ、物によっては減っている。売春なんかは減っているということになっております。これは陰でどんなにふえているかわかりませんが取り上げたものでは減っていることになってみたり、マージャン屋がふえたり、マージャン賭博がふえたり、何だかんだというリストをいただいて、なるほどなと思います。思いますが、このことを、いまあげつらおうとは思いません。ただ非犯罪化の傾向を法務省が是認をしたという空気が流されたことを重視したいということを言っているわけです。それに対しては何かのびしっとした考え方がもう少し示されなければいけないのではないかなという感じでお伺いしているわけです。
  39. 安原美穂

    安原政府委員 原委員の御指摘は、まさに貴重な御高見として拝聴した次第でございますが、私どももこれを発表するのは、実は国際会議においてわが国の風俗犯罪の検挙、取り締まりがどうなっているのかという、いわば意見じゃなくて実情をありのままに報告することが目的であったものでございますから、検挙、取り締まりがどうあるべきかを示唆したものではないということでございました関係で、実情報告ということでございましたが、いま御指摘のようにこういうものが新聞に発表されますと、いま御指摘のようなことがあるということがその後もいろいろな反響からわかりまして、実はああいう発表の仕方をしたことに一種の反省をいたしておる現状でございます。  御指摘のとおり犯罪である以上、それを助長するような結果を生むような発表の仕方については慎重であるべきだと、私はいまは考えておる次第でございまして、貴重な御忠告として承った次第でございます。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 次に問題を変えまして、これは最近の事例で数が多いのかどうか知りませんが、発表されてみるとたくさんあるのかという感じがするのですが、囚人が収監されている中において、同僚と、あるいは監督者の側と暴力行為を行ってみたり、あるいはまた殺人が行われてみたり、自殺をしてみたり、かと思うと、暴力団が自分はつかまったのだけれども、残った相手に対して自分の部下ですか子分か何かの時原というやつにあぶり出しか何かで指令を出して、あるいはもう一つ違った刑務所にいるやつからは出ていく囚人に対して手紙を託して、それを落としたのを拾ったとか、とにかくあいつを殺せなんという指令が出たりというような事例があるのですが、これに対しては、いまどうお考えになっておりますか。
  41. 長島敦

    ○長島政府委員 御指摘のような事例がときどき新聞にも報道されまして、まことに申しわけない気持ちでおるわけでございます。先生御承知のように矯正施設と申しますのは大変むずかしい施設でございまして、社会との適応に失敗した犯罪者とか非行少年が入ってきております。また最近は暴力団の関係者が非常にふえておりまして、全国平均では二〇%を超えておりまして、施設によりましては四〇%というような暴力団員が入っております。さような関係がございますので、これらの処遇につきましては非常にむずかしい問題が多数ございます。基本的にただいま御指摘のございました各種の刑務事故を防止いたします方策といたしましては、大きく分けまして二つあると私は考えております。  一つはいろいろな物理的と申しますか、外形的な監視と申しますか、そういうやり方であるかと思います。逃走に例をとって申しますと、逃走を防ぎますためのいろいろな物的設備がございますが、たとえば最近では次第に科学が進歩してまいりましたので、普通のへいだけでなく、へいに防犯線を回すとか、あるいは超短波を流しておりまして、そこを通ると感知できるとかいうようないろいろな新しい物が発見されてきておりまして、それを現に一部ではいま試しに使っておるわけでございます。  そういうような物理的なものがございますし、職員側としましても物理的と申すと適当かどうかわかりませんが、動静をよく視察するということが何と言っても一番大事なことでございまして、逃走につきましても自殺につきましても、あるいは先ほど御指摘のございました外部との不正連絡等につきましても、十分に視察の目を注いでおるということによって相当程度これは防げるものというふうに考えておるわけでございます。  こういった面の一方で、現在あらゆる工夫、努力を重ねております。特に御指摘のような間違いが起こりました場合には、その原因について徹底的に調査をいたしまして、それを一つの事例集といたしまして全国に流しております。こういうところに問題点があったということで流すわけでございます。これを受けまして各施設で職務研究会というのを開いておりまして、それを参考にして自分の施設のいまやっていること、あるいは落ち度がないかどうかというような研究をするというようなことでその面は強化してきております。  もう一つの面といたしまして非常に大事なことだと私思っておりますのは、収容者の中にいろいろな種類の収容者がございます。先ほども申し上げましたように、暴力団というような者は一番むずかしいわけでございますけれども、そのほかに精神的に非常に不安定な者もございますし、また非常に改善が容易である収容者もございます。こういう者につきましての分類制度ということで分けていくわけでございます。これもある程度緒についておりますけれども、特にむずかしい者あるいは事故を起こしそうな者をより分けまして、これについて特別の見方をして指導をしていくというような体制がまだ不十分な点がございます。この点は学問の進歩と申しますか、人間をあらかじめ見て、将来の行動をどういうふうに予測できるかというような問題と絡まっておりますけれども、そういう点につきましては今後一層留意をしてまいりたい。その一つの着手といたしまして、自殺事故につきましては自殺の予測の判定表というものを実はつくっております。これによりまして、本人が持っておりますいろいろな徴候をチェックリストでチェックしておりまして、それがある点数以上に達しますと、これは非常に自殺の危険性が高いということになってまいりますので、それについては特別の視察、特別の指導というようなことをして心情の安定を図るということにいま努めてきております。  こういうような方法は、ほかの問題につきましても、たとえば同囚間の暴行とか傷害事件につきましても十分に心情を把握していく、そういうようなことを起こしそうな者を一緒にしない、独居に持っていくとか隔離するとかいろいろなことが考えられるわけでございまして、そういう方向に向かってなお歩を進めてまいりたいということで努力をいたしてまいるつもりでございます。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 いまいただいた資料など見ながら一番気になったのは、自殺の多いことなんです。特に刑務所が多いのですが、四十八年よりは四十九年の方が多くなっている。いまおっしゃったようないろいろな科学的な方法でチェックをして十分に監視をするのだというのですが、まだそれが十分でないからこんなにふえるのでしょうか。全体の総数は減っている中で自殺の数だけふえているわけですから、自殺が大変高率になってきている。これはいまの説明、私このことをお伺いしようと思ったら先にお話があったのですが、まだ不十分だということになりますか。
  43. 長島敦

    ○長島政府委員 自殺の統計につきましては、御指摘のように四十八年に比べまして四十九年の方がふえております。件数から申しますと、ことしは今日現在まで一九件ということになりまして大分減ったわけでございます。それで、この自殺判定表を使いまして現に、たとえば東京拘置所等でそういう特別の注意をしておりましたために自殺を防止したという件数が数件実は出ておるわけでございまして、全国的に見ますと、この結果によって未遂にとめた例が相当数出てきております。そういう意味では効果が一部あらわれてきておるというふうに見ておりますが、何しろ先ほど申し上げましたように、この判定表自体が人間の将来の行動を予測するわけでございますので、とっさにそういう気持ちを起こすというので予測が困難であったという事例もまたございまして、まだ十分なものではございませんが、なお一層の努力をいたしたいと思います。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 ついでにこれはお伺いするのですが、この犯罪白書を見ますと、学歴の低いといいますか、小学校以下の犯罪はうんと少ないんですね。中学出が圧倒的に多いんですね。そうして高等学校、大学の順に多くて、ほとんど学校へ行けなかったような者の犯罪というのは数が少ないですね。これはどういう原因なんでしょうか。  ついでに先にお伺いしますが、こういう学歴別の犯罪件数というものを考えた上での対策、指導というものに注意を払うべきではないかなと、このリストを見て考えたのです。これは入ってきてからの者をそうするのではなくて、社会問題として何かが欠けているんだという反省をしながら、何か対策をしなければいけないんだなという感じに私はなったわけです。なった原因というのは、これを見ると、学歴の低い者はほとんどなく、中学が圧倒的に多くて、その上に行くほど少なくなるのですが、学歴と言われるもののある者の方が犯罪件数が多くなっているというのをどのように見たらいいのか。どういう理由でこうなるのかなという、それはまあ専門家の皆さんの方にお伺いしたい。目的は、いま言ったように、やはり社会人になろうとする者、なっている者の中のその種の程度の学歴者に対して特別に配慮をしなければいけない何かが政治の面であるのではないかなということを考えるから聞いているわけです。ほかに他意はないわけです。
  45. 長島敦

    ○長島政府委員 私、その道の専門家でございませんのであれでございますが、刑務所に入っております受刑者につきまして最近学歴が上がってきておるということの原因は、恐らく御承知のように、受刑者で入ってまいりますのはまあ年齢の比較的若いと申しますか、三十歳代、多くても四十歳代、二十、三十、四十というここら辺の社会的にも活動がよくなされている、そういった年齢層が、当然のことでございますけれども、また犯罪も多くなるということでございます。その年齢層を考えてまいりますと、戦後の教育制度改正がございまして、中学までやる義務教育になりました関係で、かなりそういう意味で中学卒というのが従来に比べるとふえてきておるという感じがするわけでございます。入っております年齢層と学歴との関連がそこで見られるのではないかという感じがするわけでございます  一方少年院の方でございますが、少年院につきましては、いま少年非行の低年齢層化というようなことが言われておりまして、特に中学あるいは高校の教育課程におきまして脱落をしたという、学校をやめなくても、学校教育自体に興味を失いましてほかの方に流れていくというような者がかなり出ておる。この学校教育からの脱落者という問題は非常に大きな問題であるというふうに非行少年問題については考えておるわけでございます。で、そういうものを受けまして私どもの方では、いま少年院あるいは少年刑務所等におきましてこういった義務教育を終わってない者はもちろんでございますけれども、さらに進んで高校教育をずっと受けたいというような者につきましては、学校と提携いたしまして、中で高校教育を始めておる施設が二、三できておりまして、免状が取れるということでそういうこともいま一つの重点として始めてきておるわけでございます。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 それからこれもついでにお伺いするのですが、交通刑務所というのは市原か何かに別にあるのですか。
  47. 長島敦

    ○長島政府委員 交通刑務所として、独立で一つの本所としてございますのは市原刑務所だけでございますが、そのほか各地に支所というような形ではかなりございますし、それから一般刑務所の中の一画を使って、そういう特別の交通犯罪者の収容をしているところもございます。
  48. 原茂

    ○原(茂)委員 これもおかしいなと思ったのですが、なぜ交通違反者だけを別に収監するのですか。
  49. 長島敦

    ○長島政府委員 これは実は大変むずかしい問題でございます。ただ交通違反者も全部たとえば市原刑務所へ入れておるわけではございませんで、交通違反者の中でも、たとえば窃盗の前歴があって服役したことがあるとかいうような者もございますし、それから交通違反者でもかなり犯罪性が進んでいる、非行性が進んでいるというような者もないわけではございません。また人間関係で処遇がむずかしいというような者もございますが、そういうような者は市原に入れておけませんので、市原に入っております交通犯罪者は、いわばほかの面では非常にまじめに一般社会生活をやっている、たまたまと申しますか、本人の過失でございますけれども、交通事故を起こして禁錮刑になって入ってきたというような者でございまして、普通の犯罪者とはかなり違った面を持っておる人がかなりおるわけでございまして、そういう者につきましてはそれにふさわしい処遇ということが考えられるわけでございます。  そういう意味で非常に開放的な雰囲気でやっておりまして、一般刑務所とはかなり違った雰囲気でやっております。そこでやっておりますのは、さらに今後も仕事の上その他で運転を続ける必要があるという者につきましては、交通安全教育ということで実技と精神的な交通法規の遵守と申しますか、そういうことを集中してやっております。それから一方仕事も運転ももうやめるという者につきましては、本人の希望も参酌して新しい仕事につけるようにという職業の方の指導をするというようなことでやっておるわけでございます。
  50. 原茂

    ○原(茂)委員 またさっきの問題にちょっと返って、自殺する仕方はどんな種類が多いのでしょうね。福岡なんか、かみそりを入手して死んだのでしょう。なぜかみそりが入ってきたのかおわかめになっておるのでしょうけれども、どんな種類が多いのでしょうね。
  51. 長島敦

    ○長島政府委員 自殺の方法として圧倒的に多いのは縊死でございます。ひもとかタオルとか、いろいろなものを使いまして縊死する例がほとんど、九割九分まででございます。
  52. 原茂

    ○原(茂)委員 縊死するのが多いのだったら、中はひもが絶対ひっかからないようにできていないのですか。やはりひっかかるのですか。
  53. 長島敦

    ○長島政府委員 先ほど申しましたように、自殺の判定表で危険だというふうに判定いたしました者は第二種独居房と私ども称しております。そこに入れますが、そこが全然物がかからないように、かかるものは全部取っ払ってございます。またそこに入った者には、ひも類は一切持たせておりませんので、縊死がそこではできないことになっております。
  54. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、この二十一名と十八名が縊死したというのは、先に予防的に移そうと思わない、大丈夫だろうと思っていたのが、ひっかけるところのある中でひっかけてしまったというわけですか。
  55. 長島敦

    ○長島政府委員 大部分がそうでございます。先ほど御指摘のございましたようなかみそりを使ったとかいうような、あるいは飛びおりたとかいうような例もございますが、そういうのは別でございますけれども、あとはそういう意味で判定が十分でなかったと申しますか、大丈夫だという状況だったのが思いがけず、とっさに自殺をしたというような事例でございます。
  56. 原茂

    ○原(茂)委員 この中で一番問題にしたいなと思ったのは、やっぱり自殺なんでして、絞首刑になるような人でもない人たちが自殺をして、みずから死んでいくわけですから、そういうことにならないように予防的に、次に移す前に、やはりその部屋にひっかかるもののないようにするぐらいの配慮をしておかないと、縊死が圧倒的に多いのなら、何か不便かもしれませんがないような配慮をして、一人でも生命を絶つ者のないようにしてやるような配慮をしませんと、自分で死んだのだからやむを得ないと言えばそれまでですけれども、これは重大問題ですよね、この縊死のあるということは。縊死がなくなるような方法をやはり、わかっていて違ったところへ移して、そこには何もひっかかるところはないのだというなら、大ぜいいるところもひっかかるもののないようにできないかなという感じがしますから、これは検討してもらいたいと思うのですね。  そういうことはもう不可能だというのならやむを得ない、その理由を聞かしてもらいたいのですが、そうでなければ検討していただく方がいいのじゃないかと思います。
  57. 長島敦

    ○長島政府委員 実はその問題につきましていろいろ検討したわけでございます。現在の希望といたしましては、収容者の大体一割程度、ことに未決施設で自殺が多発する傾向にございますので、未決施設の収容者の一割ぐらいは、いま申し上げましたような、ひっかかるものが何もないようなところへ持っていくということにしたいということで、鋭意その部屋をふやしておりますが、問題は、拘置所、刑務所は皆窓の外に鉄格子等が入っておりまして、そのために、そこが実はひっかける一つのものになるわけでございます。  それを紡ぎまするには、窓の開閉を片方とめまして、片方には鉄格子の内側に、格子にかからないように網を張るとか、いろいろなことをやらざるを得ないわけでございます。そうやりますと、どういたしましても通風の点が少し劣ってまいりまして、そこまで全般についてやりまするには、やはり居住環境が非常に劣ってまいりますので非常にむずかしい問題が実はございます。なるべくひも類その他は持たさないようにしておりまして留意はしておるわけでございますが、限界が少しございまして、大変むずかしい問題だと思います。
  58. 原茂

    ○原(茂)委員 私も一度、中へ入ってはいけないけれども、今度見学に行きますよ。ちっともぴんと来ないものだから、一度見せてもらいますわ。  その次に、同じ刑務所の、今度は移転についてちょっとお伺いしたいのですが、現在移転の要求が出ているところが四十何カ所かあるようですが、刑務所ばかりじゃありませんが、あるようですが、先にお伺いしたいのは、松本少年刑務所もぜひ移転をしてもらいたいという希望なんですが、見込みがありますかどうか。大体どの方面へ移るとすれば移るし、期限はいつごろになるというようなことまで、わかりましたらお答えをいただきたい。
  59. 長島敦

    ○長島政府委員 松本少年刑務所につきましては、地元の方から移転の要求がございましたことは承知しております。  実は昭和四十六年に予算がつきまして、現在地改築ということで予算がついたわけでございますけれども、現地の方でそういうような御意向もございましたので、適当な土地がもしあればということで、その予算を流しまして今日まで経過してきたわけでございます。  一般的にこういう移転問題になりますと、現地の移転を要請されます市の方から適当な土地を一応御提示いただきまして、その上でそれについて私どもの方といたしましては、たとえば、ことに松本の場合は少年刑務所でございまして、桐分校等とも密接な関係で学校教育もやっておりますし、地域社会と特に関係が深く運営しておりますので、余り離れましたところに参りまして、そういう便宜が得られなくなってもこれまた困るわけでございます。また職員の生活の問題もございますし、いろいろな点がございますが、そういうようなことを踏まえまして、現地の方から適当な土地について御提示があればお話し合いに応じていきたいという方針できておるわけでございますが、いまだに、まだその点については適当な場所が見つかってきていないという段階でございまして、私どもの方としては、この少年刑務所が非常に実は古くなってきておりますので、もし現地の方で御了解がつくものならば、御要望をいろいろくみながら、現在地で改築をさせていただければ大変ありがたいというふうに実は思っておるような次第でございます。
  60. 原茂

    ○原(茂)委員 この松本少年刑務所の場合には、移転をするという場合の市があっせんをするというのは、松本市内であるということが前提ですか。  それから、もう一つついでにお伺いしますが、松本市の郊外で、市街であるけれども、わりあいに近い、しかし非常にへんぴな山の中というか、そんなに奥じゃないのですが、というようなことになると困るとか、やはりこの場所ならといったときに、こういう条件を満たす場所でないと困るというような条件がおありになるのかどうか。ついでにそれも。
  61. 長島敦

    ○長島政府委員 先ほど申しましたように、松本少年刑務所が少年刑務所でございます点が特にございますので、若い人でぜひ改善更生させて社会へ帰してやりたいという気持ちでみんな一生懸命やっておりますが、そういう意味で、そういうことに支障がないような程度の範囲内でお考えいただければ大変ありがたいということでございます。余りにへんぴになりますと、そういうような協力が非常に得にくくなってまいります関係で、そういう意味では市の区画内とかなんとかいうことではございませんけれども、交通の便とかそういうようなことが非常に重要な要素になろうかというふうに考えるわけでございます。
  62. 原茂

    ○原(茂)委員 監獄法という法律によって、職員はその構内に居住しなければいけないという規定があるのですか。職員はどこへ住んでもいいのですか。構内でなくてもいいのか、いまは現に構内でなくて住んでいるのか。職員は構内に居住するという何か法律、監獄法ですか、何かあってやるのか。その点どうなんですか。
  63. 長島敦

    ○長島政府委員 これは法律には根拠がございません。問題は、こういう施設でございますから、もし万一中で騒動が起こるとかいうようなことがございましたときに、職員が比較的早くそこへ、現場へ駆けつけられるようにということで一定数の職員はやはり近隣に住むというのがたてまえになっております。全職員ではございません。
  64. 原茂

    ○原(茂)委員 それでは松本市が適当な場所を幾つか提示して、皆さんとディスカッスやった結果、そう大した条件なしに、さっきおっしゃったような環境的な条件だけ満たせば大体いいということになるわけですね。
  65. 長島敦

    ○長島政府委員 あと施設の問題といたしましては、大ぜいの収容者が生活いたしますので、水の問題でございますとか電気の問題とか、いろいろな生活の要件がございます。そういうような営繕的な角度から見ましたいろいろな要件がまた充足されなければならないと思いますが、そのほかはいまやっておりますような矯正処遇に劣らないような、同程度の処遇ができるような環境でございますれば、御提示を受けました上で御相談を詰めてまいりたいというふうに思います。  私の希望としましては、いまの場所が大変御協力をいままでもいただいておりますし、地元とも定着しておると申しますか、そういう事情もございまするので、できますれば現在地改築ということでお許しいただければ、大変私たちとしてはありがたいと思っております。
  66. 原茂

    ○原(茂)委員 よくわかりました。その趣旨もわかりましたし、本心はあそこで改築をしたいんだというのもよくわかりました。わかった上で、万が一移るという場合に、これはこの問題の最後にもう一つだけお伺いしておきますが、地元負担というものはしない前提で、たとえば移る場所が非常に高いといったときには、その土地の単価に幾らか地元が負担をするしないというようなことは全然起きないで、一切費用の問題は当局の方で負担をしていく、こう考えてよろしゅうございますか。
  67. 水原敏博

    ○水原説明員 施設の移転ということになりますと、大変な予算がかかります。大体概算で収容者一人の施設をつくるのに五百万円と見ていただきたいと思うわけでございます。仮に五百名の収容施設を新しくつくるとなりますと、二十五億の予算が必要になって、くるわけでございます。まことに残念ながら、私ども法務省の諸施設、大変古うございますが、それの整備に伴う予算というものが非常に少のうございますために、一施設を国の予算の責任において、全部を国の負担において移転するということは現実の問題として不可能でございます。したがって、従前各地元からの御要望で施設を移転いたす場合には、現在持っております法務省の施設を有償でお買い上げいただいて、これは公共団体にでございますが、そのお買い上げいただいた範囲内で移転、整備をさしていただくというのを原則といたしております。  これは特定国有財産整備特別会計でございますので、大蔵省と建設省の御所管の案件ではございますが、そういう関係で移転要請のございました各地元に対しましては、まず最初にその問題をお話し申し上げて、これを前提で事を進まさしていただきたいということを言っております。
  68. 原茂

    ○原(茂)委員 そういうことがいろいろ条件が満たされて、現在五十数カ所要求のあるところで近く移転が可能だ、二、三年のうちには可能だというようなところはどこかありますか。
  69. 水原敏博

    ○水原説明員 横須賀に外人刑務所がございますが、横須賀の刑務所を久里浜に移す予定でございます。それから現に帯広刑務所が帯広の多少郊外に移るべくすでにもう御予算をお認めいただきまして、工事に着工いたしております。それから栃木に女子刑務所がございますが、これも同じ要領で移転の調査費が認められて工事を行う段取りになっております。それから長岡に拘置支所というのがございます。これも同じ問題でございます。それから神戸の拘置所、これも神戸市を相手にいたしました特特会計で整備を計画すべく、五十一年度の予算に要求を載せております。
  70. 原茂

    ○原(茂)委員 わかりました。  この問題を終わりまして、次に検察官の採用の状況についてお伺いをしたいのですが、検察官と判事、有為転変といいますか、時によって大変検察官が人気があったりなかったりというようなことがあるらしいと報道されておりますが、現在採用状況はどうなっていますか、お伺いします。
  71. 筧榮一

    ○筧説明員 検察官について申し上げたいと思いますが、御承知のように検察官にはいわゆる検事と副検事とございまして、副検事の方は現在ほぼ定員を充足いたしておりますので、お話の検事の点に限って申し上げたいと思います。  検事につきましては、従来年度末、三月末におきまして百名を超える欠員を続けておりますが、本年は、ただいま十二月現在で八十八名の欠員となっております。  なお採用状況でございますが、本年四月に採用いたしました二十七期の修習生、これは検事三十八名でございます。昨年の二十六期、これが四十七名、その前の二十五期、これが五十名というのが状況でございます。
  72. 原茂

    ○原(茂)委員 なるほどやはりおっしゃるとおり、報道されているとおり、欠員が非常にある。これなしで支障はないのですか。ないまま何とかやっていけるのですか。欠員のあるままで。
  73. 筧榮一

    ○筧説明員 御承知のように、事件も最近相当またふえてきておりまして、現場の状況から申し上げまして、私どもといたしましては、できるだけ多くの優秀な検事を獲得いたしたいというふうに考えております。
  74. 原茂

    ○原(茂)委員 それで前から言われているような、できるだけやると言ってもなかなかに集まらないということになったら、充職検事というのですか、現在事務の方をやっておられる局長課長か知りませんが、そういう検事さんたちが、やはりそちらの方に回って、この種の事案の処理が迅速にいくようにするということも古くから言われているんですが、実施されているんですか。全然もうそれはやる余地がないというので全然やらないでいるのですか。どうですか。
  75. 筧榮一

    ○筧説明員 いわゆる充職検事につきましては、先生御案内のとおり各種、民事局とか訟務部等におきまして、民事あるいは行政関係法律の実務に堪能な法曹資格者を必要とする部門が法務省におきましては非常に多うございますので、そういうことから充職検事の制度が認められておると存じます。その点につきましては、充職検事の方を減らすということは現在行っておりません。何とか現場の方でさらに検事を多く獲得して充実してまいりたい、かように考えております。
  76. 原茂

    ○原(茂)委員 その気持ちはわかるのですけれども、それだけで実際に事案の処理に支障がないのすか。欠員があるままでも何とかやっていけるということになるのですかね。たとえば普通ですと、こんなに欠員があったら、なかなか大変なことなんですよ。とにかく欲しいという人間以上に八十八名欠員だということなんでしょう。総体の数がこの程度の数でいながら欠員が八十八もあって、なおかつ仕事ができていくというのは、これは素人の立場で、だれかが大変迷惑をしているんじゃないかという感じがするのです。検事がいなくて判事だけでもってやっていくというわけにいかないでしょうから。  ですから、これはどうなんですかね。この仕事の渋滞、すなわち非常に大事な問題の処理が延びているということになりはしないかと思うので、これは何か考えなければならないんじゃないかと思うのです。これは大臣から、これはどうする方針なのか。一生懸命に鋭意充足します、人を集めますと、こう言っていたってなかなかできない。欠員はある。それをそのまま放任していいわけはないので、いま言った充職検事の問題を含めて何か考えるとかあるいは何か、とにかく急速に手当てをしないことにはどこかが迷惑をしている、渋滞をしているということになると思うので、大臣の答弁をいただいて終わります。
  77. 稻葉修

    稻葉国務大臣 欠員が八十八名もあることは、検察事務の遂行について非常に支障を来しておりますので、私も非常に憂慮をし、昨年は相当の補充をいたしました。今年も司法研修所等から検事志望者が昨年よりは相当ふえておるという報告を受けておりますので、欠員の補充に非常に明るい希望を持って、たくさん採用して欠員のないように、年次計画的にいたします。そういう方針であります。
  78. 原茂

    ○原(茂)委員 これで終わります。
  79. 森下元晴

    ○森下委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十四分開議
  80. 森下元晴

    ○森下委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。諫山博君。
  81. 諫山博

    諫山委員 私は、あらゆる暴力に反対するという立場から、トロツキスト暴力集団に対する捜査状況を質問します。  十一月の十九日、法務委員会で、ことし発生した十五件、死亡者十九名の内ゲバ事件について捜査状況を質問しました。そのときの説明によれば、十九名も死亡者が出ているのに、完全に解決した事件一つもない。一番捜査が進んでいるのが岡山大学の事件だ、こういうふうな説明がありました。岡山大学については、二十一名検挙して十一名手配中だ、こういう説明だったのですが、それから二十日以上たった現在、新たにどのくらい捜査が進んでいるのか、警察の方から説明してください。
  82. 福井与明

    ○福井説明員 お答えいたします。  その後鋭意捜査を進めまして、五月二十五日発生の岡山大学における内ゲバ事件に関連いたしまして二名検挙をしております。  それから六月十九日に警視庁の大井署管内で発生しました事件につきましても、鋭意捜査を進めておりまして、一名の検挙者を出しております。  以上でございます。
  83. 諫山博

    諫山委員 そうすると、岡山大学では、指名手配中の犯人が九名残っているという結果になりますか。
  84. 福井与明

    ○福井説明員 さようでございます。
  85. 諫山博

    諫山委員 もう一つ捜査がわりあいに進んでいる事件として指摘されたのが、六月四日の碓井、藤井、米田三名を殺害した事件です。これは四名検挙され、被疑者の数が数十名という説明がありましたが、だれか新たに検挙されましたか。
  86. 福井与明

    ○福井説明員 本件につきましては、鋭意捜査中でございます。  実は内ゲバ殺人事件につきましては、十数名の者につきまして逮捕状を用意しまして、それぞれ捜査を進めているわけでございますが、何しろ捜査中の事件でございますので、捜査の内容につきましては御容赦をお願いしたい、こういうことでございます。
  87. 諫山博

    諫山委員 前回の説明では、残りの被疑者が数十名ということでしたが、現在逮捕状が出ているのは十数名にすぎないのですか。この差はどうなりますか。
  88. 福井与明

    ○福井説明員 内ゲバ殺人事件全体につきまして、本年発生した分について逮捕状を用意しておるのが、残念ながら十数名ということでございます。それ以外のものにつきましては、鋭意捜査中という段階でございます。
  89. 諫山博

    諫山委員 そうすると、六月四日の事件で十数名の指名手配をしているという意味ではないのですか。
  90. 福井与明

    ○福井説明員 本年発生いたしました事件全体についてでございます。
  91. 諫山博

    諫山委員 十数名の氏名は説明できますか。
  92. 福井与明

    ○福井説明員 実は、委員御案内のように、捜査をされておる相手の方は当方の動きを丹念に見ておるわけでございまして、捜査がどの方に向いておるかということは彼らの最大の関心事でございます。したがいまして、氏名を明らかにすることはひとつ御容赦をいただきたいということでございます。
  93. 諫山博

    諫山委員 私は、法務委員会での質問を結ぶに当たって、近くこの問題でもう一遍質問するから、それまでにはもっとたくさんの犯人をつかまえておくようにいうと要求をしたわけですが、結局逮捕したのは三名にすぎなかったということになりますか。
  94. 福井与明

    ○福井説明員 逮捕した者は三名でございます。
  95. 諫山博

    諫山委員 新たに指名手配をし、あるいは逮捕状をとった人は、この前の質問から現在まで何名ありますか。
  96. 福井与明

    ○福井説明員 内ゲバ殺人につきましては、新たに逮捕状を用意したものはございません。ただ極左暴力集団の事案につきましては、被疑者がいろいろな事件に関連をしておるということで追及をしておる事案があるわけでございますが、これらは何さま捜査中のものでございますので、どういうふうに将来進展いたしますか、それについてはお答えいたしかねる、さような状況でございます。
  97. 諫山博

    諫山委員 警察の方では、時間をかしていただければ、もっと捜査が進展するということをずいぶん繰り返されましたが、この状態では大半の事件が迷宮入りになるのではないか。一番捜査が進んでいる岡山大学の事件でも、いまなお九名の犯人がつかまっていないという状態で、私はきわめて遺憾です。  そこで、今度は少し観点を変えまして、殺人ではない傷害事件、凶器準備集合罪、こういう問題について幾つかの点を質問します。  殺人以外はほとんど一般のマスコミでも報道されていませんから、特殊な人にしか知られていないわけです。それでも「前進」だとか「解放」というような彼らの機関紙を読みますと、何名やっつけた、どういう重傷を負わせたというようなことがしばしば載っております。  そこで、その一つのタイプとして、やはりある組織の者が他の組織の者を襲撃する。そうすると、襲撃された側が今度は加害者に復讐する。今度は逆の復讐をするというようなことが繰り返されているわけですが、その一つのかなめになるのに、昨年九月十日に起こった高橋範行殺害事件というのがあります。高橋範行は東京中央郵便局に勤めていて、東京中央郵便局の中核派の活動家であります。そして、去年の九月十日未明に襲われて、その月の十六日に死亡しています。襲撃の状況を襲撃側の四十九年九月三十日付「解放」という機関紙で、次のように報道しています。  「わが戦士たちは難なくアジトに突入、高橋の身体に階級的怒りに燃えた鉄槌をたたきこんだ。恐怖に震えて声も出せないこの突撃隊員は右肩、右手首、右足にしたたかな鉄槌をくらって「撃沈」されたのである。」「この高橋なる男は、」「東大生四宮・富山両君を虐殺した下手人であり、七月二五日の戦闘的自治体労働者への襲撃をはじめとして、たたかう労働者学生への反階級的な武装襲撃の数々を直接担ってきた男であり、その罪業は許ずべからざるものである。」こういう記事が出ていますが、この高橋範行殺しでは被疑者が何名いるのか、逮捕者が何名いるのか、そして何名が起訴されたのか、警察の方から説明してください。
  98. 福井与明

    ○福井説明員 昨年の九月十日に警視庁の尾久署の管内で起こりました事件でございますが、御説明いたします。
  99. 諫山博

    諫山委員 ちょっと待ってください。委員長、私、限られた時間でたくさんのことを聞きますから、事件の内容は説明要りませんから、被疑者が何名か、逮捕者が何名か、起訴者が何名か、これに限って説明させてください。
  100. 森下元晴

    ○森下委員長代理 簡明にお答え願います。
  101. 福井与明

    ○福井説明員 被疑者は数人ということでございます。地取り捜査、現場鑑識活動等を通じまして、鋭意捜査を進めておりますが、現在のところ検挙者を出すに至っておりません。
  102. 諫山博

    諫山委員 被疑者数名の氏名、所属は判明していますか。
  103. 福井与明

    ○福井説明員 実は、先生御案内のように、革マルの場合は、四十三年の同派の黒田議長が出した「日本の反スターリン主義運動」の中でも、当面マル生労働は組織化しないという方針を決定したと言っています。したがいまして、労働者部分の、ことに全逓と限った形で見てまいりますと、大変把握しがたい実態でございまして、本件につきましても、被疑者の氏名等は残念ながらわかっておりません。
  104. 諫山博

    諫山委員 この事件で、中核派の上部団体である革共同政治局員の北小路敏が東京で記者会見をしております。そして、高橋範行殺害について報復の宣言をしているはずです。新聞の報道では「十日未明、中核派の労働者が革マル派に襲われ重傷を負う事件があった。これまでの暗黙の境界線を向こうが先に破った以上、彼らの血であがなってもらう」こう言って「“全面戦争突入”を予告した。」新聞の報道によれば「両派の抗争が今後一層深刻化しそうだ。」こうなっております。  北小路敏が記者会見をして報復宣言をしたことがあるのかどうか、警察、どうですか。
  105. 福井与明

    ○福井説明員 当時、そのような記事が報道されたことについては承知しておりますが、実際に彼らがやった場面を、こちらが入っていって直接に現認するわけにはまいりませんので、あくまでも報道等により間接的に把握している、かような状況でございます。
  106. 諫山博

    諫山委員 北小路敏が報復宣言をする、しかも記者会見まで行って報復宣言をする、これはその後の一連の事件にとってきわめて重大な出来事のはずですが、そういう記者会見があったのかなかったのか。あったとすれば、どのような報復宣言が行われたのか。警察は調べましたか、調べていませんか。
  107. 福井与明

    ○福井説明員 記者会見の場には、警察官が直接入ってまいることは残念ながらできない状況でございます。したがいまして、記者会見の場に臨んだ方から協力を得て内容を把握するわけでございますが、これもニュースソースの秘匿ということがございまして、ことに報道関係者の場合、いわゆるニュースソースを明らかにする形での御協力は得られないという限界があるわけでございますので、私たちの承知しておるのは、そういう範囲での御協力を得て把握しておる内容である、こういうことでございます。
  108. 諫山博

    諫山委員 法務大臣、北小路が報復宣言をした、この報復宣言に基づいて次々に犯罪が行われているわけです。いまの話では、まともな捜査をしていないでしょう。  もう一つ聞きます。  九月二十四日に日比谷公園で、解同朝田派と中核派を中心としたトロツキストが、狭山裁判理由として集会を開いております。ここで、中核派全学連委員長と名乗る松尾真という男が同じような発言をしております。「私たちは昨日、反革命集団の頭領、前川を撃沈した。」これは全逓中郵の戦闘的労働者、同志高橋範行の虐殺に対する報復である、こういうあいさつを公然と集会の中でしていることが報道されていますが、警察は調査しましたか。
  109. 福井与明

    ○福井説明員 さような彼らの自認声明があったということを報道された内容は承知しておりますが、ただ残念なことには、いわゆる中核派がやったということを言っておるわけでございまして、何のたれべえがやったということは、言っておらないわけでございます。  従来もかような自認声明を捜査の材料にしまして、たとえば三月十四日の本多前進派書記長の殺害事件に関しましては、当日革マルの方で自認声明をいたしましたので、これらを材料にいたしまして、革マルの拠点であります解放社の捜索をしております。また六月二十四日の静岡県の宇佐美「緑の村」で起こりました、革マルが反帝学評を襲ったと思われる事件につきましても、七月七日に「解放」紙上で革マルが自認声明をいたしましたので、これらを材料にいたしまして、七月十四日に解放社、創造社の捜索をしておりますが、残念ながら、この自認声明はあくまでもセクトとしてやったということでございますので、鋭意捜査に努めておりますが、それだけで、いきなり犯人検挙といった形での捜査活動は、残念ながらとられないという実態でございます。
  110. 諫山博

    諫山委員 これだけの犯罪宣言が行われているのに、実態をつかめませんというのは、私は納得できません。  そこで、高橋範行が殺された、それに対して北小路たちが報復宣言をした、この報復宣言に基づいて起こったのが十月三日の山崎洋一殺害事件です。  朝日新聞の報道によれば、四人組が襲撃した。ヘルメットが二個犯罪の現場に落ちていた。そして、このときも北小路が記者会見をして、高橋報復のためにやったのだということを公言した。この事件で、一人は起訴されていると聞いていますが、捜査状況はどうなっていましょうか。法務省、どうですか。
  111. 安原美穂

    安原政府委員 御指摘事件につきましては、一人の犯人の検挙、送致を受けまして、殺人、兇器準備集合で起訴、公判請求済みでございます。
  112. 諫山博

    諫山委員 この事件について、襲撃側の「革共同通信」という機関紙には、次のようなことが書かれております。  「虐殺主謀者・全逓カクマル幹部山崎洋一を完全せん滅」説明として「高橋同志虐殺への激しい怒りをこめて鉄パイプを炸裂させた。たちまち血まみれとなり卑劣にも助けてくれ! と懇願するこの反革命分子に渾身の力をふりしぼって一撃また一撃、憎しみの鉄槌を肉体奥深く叩きこみ反革命のドス黒い血の海に沈めたのである。」中略「目には目、歯には歯を! の復讐の原則は厳粛に貫徹されるのだ。」これだけのことが書かれ、朝日新聞などでも、四人組が襲撃した、ヘルメットが二個現場に落ちていた、こういうことが書かれているのですが、検挙は何名でしょう。
  113. 福井与明

    ○福井説明員 お答えいたします。  本件につきましては、一月の十三日に一名と、それから五月の十五日に一名の、二名検挙いたしております。
  114. 諫山博

    諫山委員 法務省では、送検を受けたのは一人で、起訴したのは一人という説明をしていますが、もう一人はどうなったのですか。
  115. 安原美穂

    安原政府委員 私の手元の資料では一名の受理というようになっておりますが、警察の御説明を受けますと、たしか送致を二名受けているということになっておりますので、恐らくそれが正しいと思います。と同時に、警察当局からいま内々聞きますと、処分保留で釈放だということでございいますので、それも恐らく私は正しいことだと思います。
  116. 諫山博

    諫山委員 私は事前にこの事件の処理がどうなっているかを調査していただくようにお願いしていたのですが、事件は殺人ですから、起訴猶予ということはなかろうと思います。そうすると、人違いの送検ということだったのかどうか。この点は、私が質問している間でいいからちょっと調べてください。――わからなければ、私の質問が終わるまででいいですから調べてください。
  117. 安原美穂

    安原政府委員 担当の者の説明によりますと、起訴猶予ではもちろんなくて、むしろ殺人、凶器準備集合として起訴するに足る嫌疑がまだ十分でないというので、拘束期間満了のために釈放して処分が保留であり、現に捜査中であるという段階であります。
  118. 諫山博

    諫山委員 これもようやく一人処理されたというだけのようですが、ところで、この事件で北小路敏についてはどのような捜査をし、どのような結論になったのか、警察が説明してください。
  119. 福井与明

    ○福井説明員 委員御案内のように、機関紙で声明をしておるということになりますと、われわれのセクトがやったということで犯人が特定してないことに加えまして、もう一つ、その内容をだれかが機関紙に執筆したということで、証拠的には間接的になるわけでございます。したがいまして、そういうものを材料にしまして鋭意追及はしてまいっておりますが、残念ながら、そのことを材料にして検挙する、そういうことはできておらない、こういう段階でございます。
  120. 諫山博

    諫山委員 私は法務委員会でも、たくさんの機関紙の記事を挙げて、これだけの犯罪予告が行われ、これだけ犯罪を誇示しているのに、どうしてこれが検挙できないかということを質問したわけですが、だれが執筆したのか、だれが印刷したのか、だれが取材したのか、こういうことは警察は調べていますか。調べていないのですか。それとも、調べてもわからないのですか。
  121. 福井与明

    ○福井説明員 もちろん捜査一つの材料でございますから、それをもとにしまして、そういう点についても捜査をいたしております。さっき申し上げましたように、そういうものを材料にして幾つかの件について捜索等を行っているわけでございますが、それをもとに、いきなりある人物を検挙、そういう形で捜査結果が結びつくようなことには残念ながら至っておらない、かようでございます。
  122. 諫山博

    諫山委員 私は納得できませんが、山崎洋一が殺された、それに対して今度は革マル側から再び報復宣言が行われて、次々に中核派が襲撃されるということが繰り返されるわけですが、私たちの機関紙による調査によると、十月二十七日、渡辺正隆というのが襲撃されています。そういう事件があったのかなかったのか。あったとすれば、犯人は検挙されたかどうか、それだけを説明してください。
  123. 福井与明

    ○福井説明員 これは昨年の十月二十七日に発生した事件でございますが、都内の杉並区のアパートに就寝中に襲撃をされて、被害者がそれを察知して窓の外に逃げ出したために被害を免れた、かような事案でございます。
  124. 諫山博

    諫山委員 これは犯罪になりますか、なりませんか。
  125. 福井与明

    ○福井説明員 もちろん犯罪になるわけでございまして、現場に遺留されておりました鉄パイプ等をたどりながら、現在捜査をしておる段階でございます。
  126. 諫山博

    諫山委員 捜査をしている段階というのは、いまなお検挙いたしておりませんということのようですが、その次に、十一月十六日、大沢猛というのが襲われております。こういう事件があったかどうか、そして犯人の検挙はどうなっているか、説明してください。
  127. 福井与明

    ○福井説明員 これは警視庁の蒲田署の管内で起こった事件でございますが、被害者が全逓空港支部臨時大会に参加しようとして犯行地付近を通りかかった際に不審者を認めて、その不審者を呼びとめようとした際に、逆に手拳で殴打されたという事案でございます。  これにつきましては被害者側は、事情聴取はもちろん、被害届の提出等一切の警察に対する協力を拒んでおりますけれども、警察としては捜査をしておる段階でございます。
  128. 諫山博

    諫山委員 彼らの機関紙によれば、事件が起こったのは午後一時ごろです。そして被害者には二人の人が同行していたとなっております。犯罪の模様を彼らの機関紙「解放」は次のように書いています。  「この一瞬をとらえ、待機していたわが戦士たちは一挙に大沢目がけて突進した。泡をくった大沢は、うろたえながら助けを求める。だが十全の体制をとって待ち構えていたわが部隊の存在にすら気づかない防衛隊に何ができよう。大沢がタックルされ、叩き伏せられるのを眼のあたりにして「カクマルだあー、一一〇番だ、一一〇番だ、すぐ電話しろ!」と叫び、悲鳴をあげながらつんのめりうろたえる防衛隊を、わが戦士たちは大沢もろとも粉砕しさったのである。」公然と道路上でこれだけのことが行われ、しかも事件犯罪を誇示しているのに、犯人のめどさえつかないのですか。どうですか。
  129. 福井与明

    ○福井説明員 被害者はもちろんでございますが、関係者も、これは労働者同士の口論であるということで、警察に対する事情聴取を一切拒否している段階でございます。したがいまして認知も、たまたま通りかかった人の通報によって警察が知ったわけでございます。そういうことで被害者側の協力が全く得られないということで捜査には苦慮しておりますが、悪条件の中で鋭意捜査しておる、かような段階でございます。
  130. 諫山博

    諫山委員 通行人が見ているのですよ。午後一時ごろ人通りの多い道路上で行われた犯行で、鋭意捜査中ということでは、私は了解いたしません。  その次の日、十一月十七日、唐沢伸一という人が襲撃されているはずです。そういう事件があったのかどうか。そして、この処理はどうなっているか説明してください。
  131. 福井与明

    ○福井説明員 これは十一月十七日に警視庁の亀有署の管内で起こった事件でございますが、被害者本人は、この事件につきましても、現在に至るも事情聴取は頑強に拒んでおります。もちろん被害申告も拒否しております。それと、これも被害者なり被害者関係者からの通報はございませんで、アパート居住者からの一一〇番通報だったわけでございます。そういうことで事件発生から約三十分後に警察が認知をしたという、いろいろな悪条件が重なっておりますけれども、これも現場に遺留されておりました鉄パイプ、懐中電灯等をたどりながら現在捜査を進めておる、かような段階でございます。
  132. 諫山博

    諫山委員 通行人が一一〇番する、現場には懐中電灯などが遺留されている、これで犯人がわかりませんというような捜査がありますか。以上が、山崎洋一が殺されて、その報復という、革マルが全逓関係の中核を襲ったという事件です。  次に十二月二十日、今度は逆の復讐が行われるわけです。中核派が全逓の革マルを襲撃する。その襲撃を受けたのが金綱新二郎。彼らの機関紙「前進」によれば、「全逓高輪金綱に鉄槌」こういう見出しのもとに「わが革命派は捕捉した獲物をむざむざ逃がすほど甘くはない。よたつきながら逃げようとする金綱のえり首をつかみ、骨も砕けよとばかり鉄槌をふりおろしたのである。」「この憎むべき反革命分子の両手、両足、そして全身に、怒りをこめた鉄パイプの乱打をあびせかけ、血の海に沈めたのである。」こういうふうに犯罪の誇示がされていますが、これは犯人を検挙しましたか。
  133. 福井与明

    ○福井説明員 本件は、昨年の十二月二十日に警視庁の三田署の管内で発生した事件でございますが、本件を目撃した通行人からの通報で認知したわけでございますけれども、通報が発生後約四分ということで比較的早かった。それから本件については、被害者も一応調書作成に応じております。目撃者と参考人調書を約二十人分作成しておりますが、そういうことで鋭意犯人をしぼり込むと申しますか捜査を進めておる、かような段階でございます。
  134. 諫山博

    諫山委員 これは警察にしてみれば、わりあい捜査のしやすい事件でございますということのようですが、それでも結果的には鋭意捜査中ということになっている。  この事件でもう一つ別なことを質問します。  昭和四十九年十二月二日付の「前進」の中にマルクス主義青年労働者同盟・全逓委員会の声明らしい文書が載っております。この中で「カクマル産別組織にたいして情容赦のない鉄槌の雨をふらせるであろう。」「反革命白色テロにたいして正義の報復を完遂することを宣言する。」「荏原カクマルに一人同調して発言した高輪局の兼綱の如きは戦々恐々として逃げまわり、職場、組合運動も放棄し、底なしの腐敗を深めているのだ。」ここで高輪局の金綱という男を名指しで襲撃するぞと予告をしているわけです。それから十数日の間に実際に金綱が襲撃されたという経過があったはずですが、警察は承知していますか。
  135. 福井与明

    ○福井説明員 いわゆる彼らが名指しで予告をすると申しますか、かような事案があるわけでございますが、このようなものにつきましては、もちろん内容によっては脅迫罪等が成立するものが当然考えられるわけでございますけれども、残念ながら、この予告を受けた相手が協力をしない。そういうことで、なかなか捜査が実らないわけでございます。
  136. 諫山博

    諫山委員 法務大臣に質問します。  いま私が指摘した事件というのは新聞にも書かれないし、テレビにも乗らないし、ほとんどの人が知らない事件です。彼らの機関紙では、堂々と犯罪を予告し、戦果を誇示している。特に金綱の場合は金綱をやるぞということを機関紙に書いて、それから十数日のうちに本当に金綱がやられたのです。そして聞いてみると全く検挙はされていない。日本の治安に責任を負う法務大臣として、どう思いますか。
  137. 稻葉修

    稻葉国務大臣 切歯扼腕にたえません。しかも私は、あなたの挙げられた事例の中で某々を襲撃するぞという宣言は、現行刑法でも脅迫罪にならないのかなというふうに思いますし、相手の名前を挙げないで報復宣言を堂々と機関紙などに載せていることについて、現行刑法の罪名にはないけれども、いずれにいたしましても、将来の立法上、治安維持上、犯罪の中に入れる、そういう新しい立法ども必要ではないかなというような感じを抱きます。現在そういうような暴力事件が頻繁に行われて、被害者の協力を得られないとはいいながら、なかなか検挙されていないこの現状に対しては、非常に責任を感じます。
  138. 諫山博

    諫山委員 いまの法務大臣の発言はきわめて重大です。いま私が挙げたような事件は、いまの法律改正しなければ検挙できないものではありません。警察がまじめにやろうとすれば、私がこの前指摘したような泳がせ政策をやらなければ、当然検挙できるはずの問題であります。何かもっと治安立法をしなければ取り締まりができないかのような考え法務大臣が持っているとすれば、問題の本質をつかんでいない、こう言わざるを得ません。  刑事局長、いま私が指摘したような事件は、現行法で逮捕できないのですか。現行法で起訴できないのですか。
  139. 安原美穂

    安原政府委員 次の機会には報復するぞというような宣言をしている者、その者が特定できますならば、当該報復事件が殺人等でございましたら、殺人の共犯ないしは教唆の疑いが出るという意味において、そういう犯人が特定できます限りにおいては、それは殺人の教唆、共謀の疑いのある事件であるということにはなろうと思いますので、現行法でできないことはございません。  しかし、いま大臣の申されましたのは、そういう教唆、共謀に至らない報復行為、リンチ行為を称揚する、ほめそやすというような行為自体が共犯、教唆にならなくとも処罰をするという立法考えられないではないのではないかということを申されたのでございまして、現在の検挙が共犯、教唆として非常に検挙しにくい状況にかんがみて、取り締まりの徹底を期するためには、それも一つの方策であるということを申されたものと理解しております。
  140. 諫山博

    諫山委員 もし法務大臣が、こうして大半の内ゲバ事件が処理されていないということを口実にして治安立法というようなことを考えておるとすれば、これはとんでもない考え違いですから、よく検討していただきたいと思います。
  141. 稻葉修

    稻葉国務大臣 そんなことを申したのではありません。私の言うことを勝手に解釈して、法務大臣は治安立法考えておるような発言をされることは迷惑至極であります。
  142. 諫山博

    諫山委員 私は最後の言葉を信用したいと思います。そうでなくて、いまの法律でこれは処理しようとすればできるのだという観点を貫かなければ、いつまでたっても、こういう事件の検挙はできません。  彼らのやり口がいかに卑劣であるか、もう一つだけ私は事例を紹介しますが、ことしの六月十九日に藤盛広之というのが殺されております。ところが、六月十六日付の襲撃者側の機関紙「前進」には「白色襲撃の手引き者、高輪の金綱と残り少ないとりまき山本、藤盛は覚悟しておくがいい。」こう書いておるのですよ。六月十六日付の新聞に「藤盛は覚悟しておくがいい。」ということが書かれ、十九日には藤盛が実際に殺された。こういうことがこの日本で行われておるのだということを法務大臣ぜひ頭に入れておいてください。  そこで公安調査庁に質問します。  私がいま挙げた事件は、すべて革マルあるいは中核の全逓委員会の内ゲバ事件なんです。そこで革マル、中核の全逓委員会というのは、どのような組織になっておるのか、どのくらいの組織人員がいるのか、公安調査庁から説明してください。
  143. 渡邊次郎

    ○渡邊政府委員 最初に中核派の方から御説明いたします。  マルクス主義青年労働者同盟、マル青労同と申しておりますが、これは革共同中核派、正確に言いますと、革命的共産主義者同盟全国委員会ということになっておりますが、その指導を受けまして、これと一体となって活動する青年労働者の組織でございまして、全国的な政治団体であります。その内部に幾つかの産別委員会の組織がございまして、マル青労同全逓委員会というのは、そういう産別委員会の一つでございます。  それから革マル派の方は、この正式な名称は日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派と申しますが、その中央部局の中に中央労働者組織委員会がございまして、その委員会のもとに幾つかの産業別の委員会があって、問題になっております全逓委員会はそうした産別委員会の一つでございます。  両者の組織人員でございますが、この点は鋭意調査に努めているところではありますけれども、いずれの組織も組織内に組織人員を発表されたということがなくて、組織内のごく少数の者しか知らないということを言われておりますし、いずれも上部団体あるいは学生団体と一緒に集会、デモをすることがございますけれども、独自に集会デモをするというようなことも最近はやっておりませんので、いまのところ、遺憾ながら組織人員ははっきりいたしません。
  144. 諫山博

    諫山委員 それは数十名という数ですか、それとも三けたにわたる数になりますか。その程度のことはわかるでしょう。
  145. 渡邊次郎

    ○渡邊政府委員 そのあたりのこともまだ判明しておりません。
  146. 諫山博

    諫山委員 警察庁に聞きます。  私が指摘した内ゲバというのは、この組織間の争いで、犯人はこの組織に所属しておるというふうに思われますが、警察はどう見ていますか。
  147. 福井与明

    ○福井説明員 中核派の場合は、同派の規約の第一条、同盟員の条件の中に、マルクス主義青年同盟、マルクス主義学生同盟の先頭に立って闘うというような部分がございます。それから、ことしの一月六日の「前進」に、マルクス主義青年労働者同盟全逓委員会名の記事が載っております。  かようなものからしまして、マルクス主義青年労働者同盟というものが中核派の下部組織としてと申しますか、青年組織としてあるであろうということは推測がつくわけでございますけれども、革マル派の場合は、さきにお答えいたしましたように、同派の最高指導者が、著者の中でマル青労同を組織化するということは当面しないという方針を決定したと言っておるわけでございますから、実体的にも大変不確かである。恐らく非常に意識の高い部分は政治団体そのものの構成員でありましょうが、そうでなくてシンパ層にとどまっておる者があるわけでございましょうから、その実体は大変につかみにくいということで、先ほどの委員指摘の両派の事件につきましても、自認声明等がありますところから、襲った者が中核である、あるいは革マルであるということは言えると思いますけれども、襲われた者が果たして対立セクトの者であるかどうか、あるいは誤認されて襲われたかどうか、かようなことは実体が大変つかみにくい、かような実態でございます。
  148. 諫山博

    諫山委員 中核派の全逓委員会、革マル派の全逓委員会、それぞれこれから報復をするぞということを宣言するし、事件が起これば、これだけの戦果が上がったということを誇示する。お互いに文書合戦も続けているわけですが、どういう組織に属している連中が事件を起こしているのかということさえ、いまなお警察は正確につかまえていないという状況ですか。
  149. 福井与明

    ○福井説明員 ただいま申し上げましたように、中核派の場合はマル青労働という同派の青年組織的なものがあるわけでございますが、恐らくこれに相当する部分は革マルの場合は政治団体の構成員とシンパ層に分かれると思いますので、その実態はつかみがたい、これが現状でございます。
  150. 諫山博

    諫山委員 法務大臣に質問します。  以上、私が挙げた事件は現行法で十分処理できる。問題は、その熱意と意思がないというふうに私は見ております。法務大臣としては、これだけの事件が起こっているのに、上の方からせん滅するというようなことは考えられないのか。たとえば暴力団がいろいろ抗争事件を起こすわけですが、こういうときには頂上作戦というような言葉で、暴力団そのものを壊滅するというような方針を警察も法務省もとっていると思います。しかし職業的な殺人者集団と言ってもいいようなこういう団体、こういう連中に対して、どういう方針で臨もうとしているのか、ぜひ決意のほどを聞かしてもらいたいと思います。
  151. 安原美穂

    安原政府委員 この種のいわゆる内ゲバ事件が単なる政治的な犯罪というよりも、まさに普通の殺人と同じような非道な犯罪であるということは申すまでもないわけでございまして、検察といたしましても、徹底した検挙を図るべきであるということに変わりはないわけでございます。そういう意味におきまして、こういう御指摘のような一応組織的と思われる犯罪でございますので、力の限りを尽くしていわゆる頂上、事犯の根源といいますか、核心をつく捜査をやるべきであるということは、何ら暴力団の犯罪事件に対する捜査と変わりはないわけでありますが、遺憾ながら御期待に沿えないで中核まで至らない、検挙が十分に成績を上げていないということがあるにすぎないのでありまして、方針には何ら差異はないというふうに御理解をいただきたいと思います。  それからもう一つ、この事件が検挙のむずかしいことは、前に法務委員会で申し上げましたとおり、この内ゲバ事件における検挙を困難にする一番の問題は、被害者の非協力であるということを重ねて申し上げたいと思います。
  152. 諫山博

    諫山委員 私は法務大臣の決意を聞きたかったのです。一生懸命やっておりますと言いますけれども、実際は一つもやられていないわけですね。この状態が続いたのでは、ますます同じような事件ははびこるでしょうし、治安の責任者としても黙っておくわけにはいかないと思うのですが、私は二回にわたって、恐らく法務大臣も御存じなかったような具体的な事実を提起しました。そして暴力団にとられているような措置さえとられていないということが、もうすでに明白です。法務大臣としてはどうしますか。
  153. 稻葉修

    稻葉国務大臣 ただいまの刑事局長の答弁は答弁として、また警察当局捜査が手ぬるい、泳がせておくのじゃないかというようなことが、あなたの質問の中にありましたが、そういうことは私は信じません。それから、一生懸命にやっていないとは思っておりません。けれども、いろいろな事情で検挙されていないということは事実ですから、法秩序維持担当責任者として、まことに遺憾千万であり、隔靴掻痒の感がある。何とかしなければならぬ。  根本的には、そういう暴力集団は普通の暴力団と同じように解散でもさしてしまおうかというように思うわけでありますが、公安調査庁が公安審査委員会に対して団体規制処分請求するということが考えられるわけです。これは法務大臣の権限ではなくて、公安調査庁長官がこの請求権を持っておるわけでありますから、御指摘のような暴力集団のたび重なる殺人犯罪事件に根本的なメスを入れるとすれば、暴力集団そのものの団体規制を行うということになりましょうが、それらのことについても、その検討、処理につきましては、公安調査庁長官を信頼して事態の処理を待つ以外にない、こういうふうに思う次第でございます。
  154. 諫山博

    諫山委員 刑事局長に質問します。  私たちは、こういう暴力集団は、やはり首脳部を問題にする必要があると思うのです。たとえば北小路という名前がしばしば新聞に出るのですが、われわれは復讐するぞということを宣言する、そして事件が起これば、われわれがやったんだということを誇示する。そのほか新聞にもいろいろ彼らの戦果誇示が出てくるわけですが、革マルとか中核とかこういう幹部、組織をどうするのかというような問題については、刑事法的にどのような検討をしているのですか。
  155. 安原美穂

    安原政府委員 一番簡単な方法は、ある団体がその団体内において犯罪行為をやった場合においては、その長たる者を処罰するというような立法があれば一番簡単でございますが、そういう立法はないわけでございますので、またそういう立法が必ずしも妥当だとは思いませんから、結局ある刑法に当たる犯罪行為がありました場合には、そういう直接の下手人でない者を処罰する方法は、それが共同正犯であるか教唆犯であるか幇助犯であるかということでございます。  したがいまして、いま御指摘のような問題につきましては、検察当局は常にそういうリーダー格の者に共犯の疑いがあるかどうかということは検討しておるわけでございますが、遺憾ながら共犯、教唆犯という場合には直接の下手人ではないわけでありますから、直接の下手人を検挙するということを前提にして、その下手人とリーダーとの間がどういう関係であったかということを捜査していくというのが捜査の常道でありますので、そういう方法で、まず何よりも下手人を挙げるということに全力を挙げ、そしてでき得べくんばリーダーが共犯者であれば、それについて捜査の手を進めるというのが検察のやり方でございます。
  156. 諫山博

    諫山委員 公安調査庁に質問します。  ここは決算委員会の場ですから、少し金のことを聞きたいのですが、こういう極左暴力集団あるいは過激派集団に対して、さまざまな調査を公安調査庁として行っているそうですか、どのくらいの金を使って調査しているのですか。これは幾ら私たちが聞いても、なかなか教えてくれないのですが、この機会に説明してください。
  157. 渡邊次郎

    ○渡邊政府委員 予算の使い方について御質問でございますのでお答えいたしますが、公安調査庁が調査する場合に一番使っている手段は、協力者から情報を得るということでございます。協力者と申しますのは、相手の組織内にある場合もあるし……(諫山委員「簡単に説明して、時間がないから」と呼ぶ)そうですか。それでははしょりまして、現在使っている協力者は、一つの団体を調査するというだけでなくて、二つ以上の団体の調査にそれぞれ併用すると申しますか、一人の人から重複した情報を受けている場合が多いのでございまして、各団体別にあるいは過激派とその他の団体というぐあいに分けて幾らになるかということは、現在のところ明らかにすることができない実情でございます。
  158. 諫山博

    諫山委員 それは政治的な考慮からここで説明できないという意味ですか、それともいま計算していないから、この場で説明できないけれども、後でなら説明するという意味ですか、どっちですか。
  159. 渡邊次郎

    ○渡邊政府委員 政治的な考慮とかいうことではございませんで、実際に計算ができないという趣旨でございます。
  160. 諫山博

    諫山委員 私は、その説明はごまかしだと思います。いまから調べればできるはずでしょう。ただ、説明できるかできないかの政治的な考慮は、いつもあなたたち言っていますから。これは委員会外でもっと私聞きたいと思いますが、最後に警察に聞きます。  私がいま挙げた幾つかの事件、これは大半去年の事件ですが、何人ぐらいでいま捜査させていますか。あるいは三億円事件では捜査費用を幾ら使った、延べ人員何名だということがいろいろ報道されておりますが、そういう計算はしていますか。
  161. 福井与明

    ○福井説明員 実は昭和三十二年にできました国家公安委規則の二号の犯罪捜査規範というのがございますが、これの二十二条にいわゆる捜査本部の設置についての規定がございます。いわゆる「重要犯罪その他事件の発生に際し、特に、捜査を統一的かつ強力に推進する必要があると認められるときは、捜査本部を開設するものとする。」という規定がございますが、内ゲバ殺人事件につきましては、前回法務委員会で御答弁いたしましたように、ほとんど例外なくこの規定にのっとった捜査本部を設けて捜査をしておるわけでございます。事件の態様なり規模によって異なりますけれども、数十人から百人を超える体制で、それぞれ取り組んでおるという実態でございます。
  162. 諫山博

    諫山委員 結論を申し上げます。  前回私は、相当厳しく泳がせ政策というのを非難しました。そして次に質問するまでには、もっと検挙しておけということを要望したわけですが、どうもこの二十日間余りの間、ほとんど捜査は進んでいないというふうに言わざるを得ないと思います。私は日本の治安ということを考えた場合、どのような暴力もなくさなければならないという立場で質問したわけですが、とりわけこのトロツキスト暴力分子の暴力というのは言語道断な状態になっておりますから、法務省も、さらに警察の方ももっと本気で調べていただきたい。そしていずれ私は別な機会に質問しますから、そのときはこれだけ捜査が進展しましたという答弁を聞かしてもらいたいということを要望して、質問を終わります。
  163. 福井与明

    ○福井説明員 実は警察の捜査が大変手ぬるいという御指摘でございますが、一件一件の事件に携わっている捜査員としましては、被害者側の協力が得にくい等の状況がありますだけに、なおさら実はつらい捜査をやっているわけでございます。  それで被害者なり関係者の協力がいかに事件解決に重要かという例を申し上げますと、実は法政大学でことし六月の十四日と十月の十四日に非常に似た事件が起こっております。いずれも学内で一名ないし二人で歩いておるときに数名の者に取り囲まれて暴行を受けて傷害を受けた。犯行時間は二十秒から三十秒という非常に似たケースでございます。ところが十月の十四日の方は被害者が大変にしっかりしておりまして、犯人の一人は同じクラスのある人物であることは、入学以来一年半一緒のクラスにおるわけだから、ちょっとした動作、めがね、目等を見れば、すぐわかるわけですということで、それを指摘したわけです。それが非常に重要なきっかけになりまして、この事件では検挙者を出し、実はけさも一人検挙をしているわけでございます。ところが非常に似たケースの六月十四日の方は、被害者指摘が、黒いヘルメットをかぶり、布で覆面をしてジーンズ、黒いコートを着用した四、五人の学生風の男たちと、言葉で言うと大変長くなりますが、この中に犯人を特定できるようなものは一つもございません。そういう供述で終始する中で捜査するわけでございますけれども、いまだに非常に苦しい捜査を続けております。  かようなことで、警察として責任を回避する気はさらさらございませんが、鋭意捜査を続けてまいりますけれども、かような非常に苦しい捜査条件があるということで、しかも関係者の協力が事件解決に決定的な影響を持つということをひとつ御認識いただきまして、国民の関心が高まることを期待したい、かようなことでございます。
  164. 諫山博

    諫山委員 私、質問を終わるつもりでしたが、ああいう発言があると、もう一言言います。  三億円事件捜査につぎ込んだエネルギーの百分の一でもつぎ込めば、大半の事件は解決するというのが私の結論です。私は三億円事件捜査を非難している意味ではなくて、世間がいろいろ騒ぐから、あれだけの力を注ぐのだ、こういう内ゲバ事件で死亡者も出ないようなのは新聞も書かない、こういう点を反省してもらいたいと言っているのです。  それから、私たちが泳がせていると言うのは、末端の一人一人の警察官がどうだと言っているのではないのです。政治的に泳がしている、政治的に手かげんしている、このことが一番重要だと言っているのです。捜査の困難性ばかりここで説明するという構えでは、これから徹底的に摘発するぞというふうに聞えないわけです。いろいろ困難はあるけれども、草の根を分けても犯人をつかまえるというような決意表明が欲しかったのですが、法務大臣いかがですか。
  165. 稻葉修

    稻葉国務大臣 それはあなたのおっしゃるとおりだと思うのです。草の根を分けても、とっつかまえてやりたいという点は、あなたのおっしゃるとおりですよ。三億円事件も重大ですけれども、これは人が殺されているのですからね。それはなお重大だというふうに考えるべきが当然じゃありませんか。しっかりやりますから、ちょっと見ておってください。
  166. 諫山博

    諫山委員 終わります。
  167. 森下元晴

    ○森下委員長代理 坂井弘一君。
  168. 坂井弘一

    ○坂井委員 最初に、稻葉法務大臣からお答えをいただきたいと思います。  三億円事件が長い捜査の努力も空しく、時効成立をもちまして一応の結末を見たわけでございますが、法治国家として、これはまじめにきわめて遺憾であり、かつ悲しむべき残念なことであったと思います。そこで法務大臣から率直に今回のこの事件で得た成果とはまた別に、その反省なり教訓につきまして、率直な御感想としてまず承っておきたいと思います。
  169. 稻葉修

    稻葉国務大臣 率直な感想としては、あれだけの陣容をつぎ込み、相当経費をかけて七年もやったにもかかわらず、ついに時効になってしまう、そういうことについてはまことに残念至極、しかも法秩序維持当局に期待する国民の期待を裏切り、まことに申しわけない次第であるというふうに率直に思います。
  170. 坂井弘一

    ○坂井委員 もしこの犯人国外に逃亡しておったとした場合には刑事訴訟法第二百五十五条、つまり時効停止の条項がございます。   〔森下委員長代理退席、綿貫委員長代理着席〕  ただ、もしこのことを考えます場合に、一方におきましては逮捕状の送達後でなければ時効中断ということにはならないのではないか。つまり容疑者のこうした海外逃亡によるところの時効中断が成り立つ要件というのは一体何だろうかという点であります。今回の場合、いままでの捜査の経緯からいたしまして、刑事訴訟法第二百五十五条を適用することは可能でしょうか。いかがですか。
  171. 稻葉修

    稻葉国務大臣 刑事訴訟法手続上の専門事項でございますので、刑事局長に答弁をいたさせます。
  172. 安原美穂

    安原政府委員 今回の事件につきましても、犯人国外にいるということが、犯人の特定をいたしまして、その犯人が特定いたしました場合において、仮に客観的に時効が完成した、七年が経過しておりましても、犯人が特定し、その犯人国外におったということがわかり、かつ、それが何ヵ月おったかということがわかりますれば、あるいは万に一つかもしれませんけれども、いまだ時効が完成していないということも言える場合があり得るというふうに考えますが、いずれにいたしましても、犯人が特定いたしませんと、いわゆる理論的には最も間違いなく時効が完成したとは言えないということに相なるわけでございまして、いずれにしても一応は時効が完成した、七年は経過した、したがって原則としては時効は完成したということにはなりますけれども、仮に犯人が特定して、それが国外におったとすれば、その期間によりましては、まだ時効が完成していないということもあり得るということになると思います。
  173. 坂井弘一

    ○坂井委員 大変微妙なといいますか、受け取り方によっては非常にあいまいな感じがします。つまり、もし海外、国外犯人がおった、そのときの諸般の情勢、実情等々勘案いたしまして、場合によっては、いわゆる時効停止という二百五十五条が適用されることもある、こういうことになるわけでございますか。――そういたしますと、今回のこの捜査に際しましては海外、国外での捜査活動はいかようにされましたでしょうか。
  174. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 三億円事件につきまして国外からも多数の情報が寄せられておりますが、具体的な容疑として結びつくようなものはございませんし、その点は明らかでございません。
  175. 坂井弘一

    ○坂井委員 重ねてお尋ねいたしますが、今後の見通しとして、特に国外については具体的な活動の方針を持っていらっしゃいますか。いかがでしょうか。
  176. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 捜査を行うような情報その他はただいまのところございませんので、一応時効が完成したという前提で考えております。
  177. 坂井弘一

    ○坂井委員 そういたしますと、この三億円事件につきましては、もう実質的にはほとんど時効は成立した、今後においてさらに犯人の追及、犯人があらわれるということは、捜査活動上まずあり得ないというようなことになりますか。
  178. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 ただいままでの七年間の捜査を通じまして、海外に犯人がいる、あるいは現在海外にある情報について、さらに捜査を続けなければならないというふうな実のあるものがございませんので、一応公訴時効と決められておる七年間が過ぎましたので、公訴時効制度というものの趣旨を尊重しまして、捜査本部を解散して一応の捜査を終わった、このように御理解いただきたいと思います。
  179. 坂井弘一

    ○坂井委員 もし有力な情報等が得られますならば、そのときには活動に入られますか。
  180. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 もちろん法律的には先ほど刑事局長がおっしゃいましたように、海外に犯人がおりました場合には、その期間につきましては時効が中断いたしますので、当然捜査の対象になりますし、捜査を続けるつもりでございます。
  181. 坂井弘一

    ○坂井委員 ことしの五月に企業爆破事件がございました。その際には検察庁が刑事訴訟法第百九十三条の二項、つまり一般指揮権を発動されたわけであります。ところで今回の三億円事件につきましては、そうした指揮権ということにつきましては発動はなかったわけでございます。これはいかなる理由でしょうか。
  182. 安原美穂

    安原政府委員 御指摘のとおり刑事訴訟法の第百九十三条の二項、三項に「検察官の司法警察職員に対する指示権・指揮権」という規定がございますが、事実問題といたしまして、企業爆破事件につきましても、われわれ検察と警察はいわゆる捜査の協力関係において事柄を処理したわけでございまして、決して百九十三条に規定する指揮権は発動いたしておりません。
  183. 坂井弘一

    ○坂井委員 百九十三条二項を発動する場合のきわめて大きな要件といたしまして、まず第一の要件と申し上げた方が適当でしょうか。事件がかなり広範囲にまたがる、警察署が幾つかの警察にまたがるというような場合に、この百九十三条の二項が発動される、このように私は理解しているわけでございますが、その点についてはいかがでしょう。
  184. 安原美穂

    安原政府委員 百九十三条の二項は、いわゆる捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮ということになっておりますので、いわゆる具体的な特定の事件についての指揮というよりも、たとえば暴力団事件というものが東京の管内であちこちで起こっておるというときに、そういう暴力団についての検挙を適正にするために、司法警察職員の関係の者一般に指揮するというようなこと、したがっていま御指摘のように広範囲にわたって同種事件があるようなときに行うのが、その一般的指揮でございますので、お説のとおりでございます。
  185. 坂井弘一

    ○坂井委員 そこで、これは私の率直な意見なり反省として実は申し上げているわけでございます。つまり今回の三億円事件につきましても非常に広範囲にわたった、当初予期した、つまり初動捜査の時点では、これはあるいは単純に、範囲的にもきわめて狭いという想定があったのではないかというようなことが反省の一つに数えられているようであります。つまりこの百九十三条二項を発動する一つの大きな要件といたしまして、警察が数カ所にまたがる、そういう場合有力な発動の条件となる。そういたしますと、まさに企業爆破もそうであったと思います。三億円事件につきましても、すでにその範囲が三鷹、府中、八王子等々三多摩のきわめて広範囲にわたった。でもって、なぜ百九十三条が発動されなかったのであろうか。  もう一つは、この警察の指揮の統一という点、これもずいぶん大がかりな捜査になったわけでございますが、その間誤認で逮捕したり、別件逮捕したり、別件逮捕がどうもとんでもない方向にいってみたり、あるいはまた遺留品の捜査と容疑者の捜査、これが並行して行われないでちぐはぐになったとか、いろいろなことが言われるわけであります。つまり今回の教訓の一つとして、そうした捜査上の混乱といいますか、そういうものが百九十三条二項の発動によって検察庁が第一線に立つという構えでおったならば、むしろもっと今回の捜査については、犯人の逮捕に向かってうまいぐあいに進んだのではないかということが言われるわけでございますけれども、その点につきましては、いやそうではない、こういうお考えなのか。そういうことであれば、そういうことについても今後この種の事件に対する捜査一つの教訓として当然考えの中に入れなければならぬ、こういう見解に立たれるのか、その辺についてお伺いをしておきたいと思います。
  186. 安原美穂

    安原政府委員 先ほど百九十三条二項の解釈についてのお尋ねについて、私のお答えがあいまいであったのであるかと思いますが、ちょっと誤解をさせてしまったというきらいがございますので、もう一度重ねて申し上げます。  百九十三条二項というのは一般的指揮でございますので、いわゆる具体的な事件についての指揮ではない。今度の三億円事件というのは、まさに具体的特定な事件でございますので、仮に指揮をするとすれば百九十三条三項の捜査をする場合においての指揮という指揮になるわけでございます。百九十三条二項は、広範囲にわたって同種事件があるというようなときに同種事件について一般的な捜査上の要請を警察にする場合の指揮でございまして、いわば一般的、その意味においては抽象的と言うべき指揮が百九十三条であります。したがいまして、三億円事件捜査の対象が地理的、地域的に広きにわたるから、一般的指揮であるということではございませんで、あくまでも指揮をするとすれば、三億円事件という具体的な事件の指揮は百九十三条三項によってなされるべきものであったということに法律上は相なるわけでございます。なお、いずれにいたしましても、検察庁があの事件について一種の指揮をしておれば、捜査が適正になり検挙ができたのではないかという御期待をいただく御質問でございますが、少なくともこの事件につきましては、捜査の第一次機関は警察でございますので、警察が全力を挙げて捜査に従事しておられる関係で、検察としてはそれを御信頼して成果に――常々連絡は受けておりましたが、具体的に指揮をするというようなことはなさなかったのが事実でございますし、結果論でございまして何とも申し上げられませんが、仮に指揮権を発しておれば、検挙ができたというようには必ずしも私は考えておりません。
  187. 坂井弘一

    ○坂井委員 百九十三条の三項ですね。わかりました。結果論でございますので、そのことをとやかくここで申し上げるつもりは、実はさらさらないのであります。ただ、そういうことにかなりの混乱があったということが非常にあちこちから言われるわけでございますので、そうした点につきましてもさらに検討される、将来のこととして研究されるということが妥当ではないか、こう思われましたものですから、お伺いしたわけであります。  なおもう一点、これは非常に大事なことだと思いますが、実は今回の事件で十一万五千人、大変大ぜいの人たちが容疑者として調べられた。これはずっとしぼってまいりますと大体三多摩地区でございますので、世帯が七十五万、人口にいたしまして二百五十万人、これをまた十八歳から大体四十歳ぐらいの男子ということにしぼってまいりますと、ざっと四十万人ですね。そういたしますと、十一万五千人が容疑者でございますので、四人に一人が容疑者であったのですね。これは三億円犯人をつかまえようということで捜査官がずいぶん御苦労をされたということであろうと思いますが、その反面、四人に一人が被疑者である、なおこのほかに通告によるのが二万七千人という数字が出ております。  これは私は考えるのですが、非常に冷ややかだなという気がしてならぬわけであります。どうも隣の人が三億円犯人らしいというような密告、通告、余り人を売る行為というのは好ましくないように思えてならぬわけであります。これは別といたしましても、十一万五千人に及ぶ人たちが容疑者として調べられた。この人たちの疑いというのは実は晴らされていないわけであります。現地に参りますと、実はずいぶんいろいろなことを聞くわけでございまして、隣近所におりながら人間関係が非常に冷ややかな状態になったというような例も幾つかあるようであります。  したがって、一方大きな立場から見た場合に、今回の事件一つの教訓として、これまた個々の人権は尊重し守らなければならぬ。これは法の大精神であります。この精神に照らしまして、ここに一つの何らかの反省がなされてしかるべきである。一体これをどうとらまえるか、どう考えるかということにつきまして、これまたひとつ率直に法務大臣から御見解を承れれば承っておきたいと思います。
  188. 稻葉修

    稻葉国務大臣 多数の容疑者が取り調べを受けた。中には逮捕されて取り調べを受けた者もございますが、しかし犯罪捜査機関は、その職責上犯罪の嫌疑がある場合に取り調べをなすことは当然でありますが、仰せのように一方、人権の擁護を基本精神の一つとしております刑事訴訟法を逸脱するような捜査方法をとるべきでないことも当然であります。具体的に今回の三億円事件について多数の容疑者の取り調べを行いましたが、具体的に人権擁護上問題となっている事案は、幸いにしてまだないようでありますことは、私もそういう点につきましてはまあまあ人権侵害がなくてよかったというふうに思うのであります。
  189. 坂井弘一

    ○坂井委員 法務大臣、確かに表面的には幸いにないようなんですよ。私、先ほど数字も挙げましたが、四人に一人、みんな犯人みたいなものなんですな。そういう状態に、これは極論かもわかりませんよ、わかりませんが、しかし少なくともいわゆる舞台になります三多摩地区、あの方面においては、範囲内においては相当聞き込みを当然しなければいけません。あるいは疑わしいと思いますと、やはり容疑者として尋問もする、あるいはまたそれなりに調査をするというようなことが非常に広範囲にかつ細かく行われた。だから言うなれば、お互いの地域の中の人たちは、それぞれが調べられた調べられたという人が多いものですから、これはお互いさまだというような感じの中でありますので、さほどに表面立って人権侵害されたというわけでもって名のり出るという人もなかったのかもしれない。  むしろ私が心配するのは、そういう中で人間関係がだんだんだんだんとさめていく、冷ややかになるというようなことが今回の事件の結果、残されたものの一つであるとするならば、これは一つのやはり反省として踏まえなければいけないのではないか。少なくとも表面には言えない、個人的な、その人自身が非常に大きな悩みとして抱いておるというようなもの、そういうものが残されたとするならば、そういう人たちの人権回復ということは、これはやはり何らかの、まあ行政関係省庁の思いやりの中から考えていかなければならぬことではないかということを、実は申し上げているわけであります。決してこれに対して、どうしろこうしろということをここで申し上げるつもりはありません。  さて、次の問題に移りたいと思いますが、公益法人のあり方についてであります。  従来、国会におきましても、しばしば公益法人の実態を挙げながら、そのあり方がきわめて好ましくないということでもって論議されてまいりました。いわく休眠法人、幽霊法人、これを一体どうするか、枚挙にいとまがございません。  そこで、そういう長い経緯を踏まえて、行政管理庁が公益法人の休眠法人について具体的な調査も何回か行われまして、その結果、関係省庁に対しまして行政勧告が四十七年に出されました。きょう法務省所管でございます。残念ながら法務省に対しましても、そうした指摘があったようであります。その際、法務省関係いたします九つの公益法人につきまして行政監察がされました。これは解散しなさい、こういう行政指導であります。四十六年九月の時点でございますので今日まで相当、四年余り経過いたしておりますが、現状ではどうなっておりますか、お答えいただきたい。
  190. 谷川輝

    ○谷川説明員 お答えいたします。  四十七年四月一日付の回答をいたしました休眠法人は九つございますが、そのうちすでに五法人は解散を終わりました。一法人につきましては事業を再開できるという見込みでございますので、その方向でいま指導しております。残り三法人につきましては、これはもう続ける余地もないということで、解散の方向で現在厳しく指導を継続中でございます。
  191. 坂井弘一

    ○坂井委員 なお三法人については、現在においても解散できていない、しかし解散しなければいけないということで法務省は指導していらっしゃるということであります。それは現状は現状として、そのまま率直にお聞きしておきたいと思います。  四十七年度の行政勧告で、事業活動を全く実施していないいわゆる休眠法人、しかもその法人の住所あるいは理事の所在が不明な法人、これは整理をしなければならぬ、その特別措置を法務省検討する必要がある、これまた別途にこういう勧告がされているわけであります。これに対しまして法務省では、法制審議会の民法部会財産小委員会で検討することになりまして、四十七年度の勧告以来検討されてきているはずでございますが、いかような結論をお出しになったのか、あるいはまだなのか、お答えいただきたいと思います。
  192. 香川保一

    ○香川政府委員 御指摘のとおり、法制審議会におきまして現在民法法人についての見直しをやっておるわけでありますが、その一つの大きな問題として休眠法人の整理の問題があることは御承知のとおりでございます。いろいろ議論されておるのでありますけれども、まだ結論として決まったわけではございませんが、大方の御意見は、正当な理由がなくて二年間何も活動していないといういわゆる休眠法人に対しては、主務官庁が設立許可の取り消しを行う。この設立許可の取り消しの制度は現行民法七十一条にあるのでございますけれども、休眠法人については、ちょっと同条を活用するというのは解釈上疑義がございますので、そういった設立許可の取り消しの中に、正当な理由なくして二年間活動しない、そういう場合には許可の取り消しができるというふうに立法すべきではないかという意見で大体固まりつつあるというふうに御承知願いたいと思います。
  193. 坂井弘一

    ○坂井委員 民法上の問題でございまして、関係法令等の問題もございますので、確かに法律的な  一つの成案を得るということになりますと、それは相当慎重を期さなければいけないと思う。したがって時日を要するということを理解するに私やぶさかではございません。ございませんが、かなり長い期間にわたっておる。  その間どういう実態にあるかということを稻葉さん、ちょっとお聞きいただきたいと思いますが、幾つかの省庁を例に申しますと、休眠法人の措置として、行管に対する回答でありますが、防衛庁は二法人の理事所在不明、今後法制上の措置が講じられるのを待って整理いたします。つまり法務省さんの法制上の措置を待っているのです。これが回答であります。環境庁、同じく、今後法制上の措置が講じられるのを待って整理、こうです。文部省、同じく、立法措置を待って整理を進める。農林省、同じく、立法処置に待つ。自治省、同じく、法的処置の講じられるのを待って整理。いずれも法務省がこの法制措置、立法されるのを待ちます、それまでは解散させたいけれどもできません、こういう回答であります。しかも、この休眠法人に対しては解散させなければいけないというのが行政管理庁の行政監察、指導であります。  それに基づきまして、前段申しましたように、そのためには何よりも法務省のいわゆる法制審議会においてこの立法措置、これを早くやる、それを法務省は責任を持って早くおやりなさいということを、これまた行管から行政監察、指導が法務省に対してなされておる。そういう一連の経緯の中で、実情の中で、何としても急がなければならぬのはこの立法化だ、こういうことに相なるわけであります。  そこで、実は具体的な問題といたしまして、この立法措置がなされないために、現在、世間的に、社会的に見まして、これが果たして公益法人かと大変批判をされる、非難を受ける、そういう公益法人が幾つかございますが、その中の一つとして、私はこの決算委員会におきましても、従来何回か実は取り上げてまいりました財団法人日本文化住宅協会、これを一つの例として申し上げたい。その上で、法務大臣がそういう実情であるならばということをより深くひとつ御認識いただいて、何としてもこの立法あるいはこれに関係する立法措置ということを、決断をひとつ促したい、まあそういう意味で申し上げたいと思います。  そこで建設省においでいただいておりますので、お伺いしたいと思います。  この財団法人日本文化住宅協会、長い経緯はさておきまして、現状、いま一体どうなっておるのかということにつきまして、粗々御説明をいただきたいと思います――建設省お見えでございませんか。では、私の方から現状だけちょっと申し上げたい。  武蔵野市に実は所在いたします。ここに二万七千坪と広大な土地を擁しております。建物もございます。これはずいぶん長い間裁判で争ってまいりました。最高裁まで参りまして、そして国が負けました。これはもとは国有財産であります。これが日本文化住宅協会の財産に帰属いたしまして、ずっと推移いたしてまいりまして、その後ここに、これがグリーンパークとして米軍宿舎に提供したというようなこともございまして、その間の賃借料等の請求裁判等もありまして、百数十億の請求に対しまして、最終二十二億で和解が成立、国は二十二億を払いまして、この土地、建物ももちろん日本文化住宅協会の所有に帰属した、二十二億円をさらに追い銭を打った、こういう経緯がございました。  いまこの土地を東京都に売却する、金額は六十九億、こう聞いております。これをめぐりまして、ずいぶん実は問題がございまして、東京都議会の方におきましても、従来の日本文化住宅協会のその内容、実態等からしまして、これはそう簡単に六十九億という大金、税金でございます。でもって買い受けるわけにはいかぬというようなことで、いま関係省庁に対しましても、いろいろな問い合わせがあるようであります。  そういう経緯の中から、現状でございますが、最近この日本文化住宅協会、東京都に売却するに際して、この財団法人を解散させなければいけないということでもって、寄付行為の変更を主務官庁に申請されてきております。これは建設省であります。建設省は、この寄付行為の変更届を認可されたようであります。したがって、あとは東京都との間において売買契約が成立いたしますならば、六十九億でこれを東京都に売ってしまうということになるわけでありますが、その前に売り渡し承諾書なるものも、この協会から東京都に入れているようであります。  さてそこで、ここで問題として申し上げなければならぬことは、実はこの解散に伴うこの公益法人の財産処分、これをどうするか。いずれにしましても、東京都との間に売買契約が成立して六十九億という大金がこの協会に入ってまいりますと、六十九億をどのような形で清算するか、この財産を処分するか、ここが一つの実は焦点であります。  実は私の手元に、この日本文化住宅協会の理事会の議事録がございます。この議事録の一節を御披露したいと思います。その上で御判断をいただきたいと思います。実はこの財産――その前に申しますが、この財産を山分けしようという相談が一口に申しましてなされているということです。  「役職員に対する退職金、功労金、弔慰金は充分に確保したい考えである。」これは議長さんがそうお述べになっている。続いて「協会の財産を只熨斗つけて、差し上けるだけでは、余りにもあっけないので、頑張りたいと思っています。現在、退職金、功労金、弔慰金を支給する根拠は、協会の規程にもとづいておりますが、これを更に寄附行為に、退職金等の支給に関する規定を設けて置く必要があると思います。しかし、建設省ではそれは入れないで貰いたいと言っている。協会は、財団法人でもあるし、仕事もしていないし、高い月給を払っている。それが、何でそういうものを出すのか、というのが建設省の意見です。それじゃ、丸で継子苛めみたようなものだ。そんなにひどい建設省なら、協会としては東京都が公園に指定しても、それに従うことはできない。なんとかして、理事会で堂々と議決できるように、寄附行為の改正(退職金、功労金、弔慰金支給に関する規定を設けること。)を認めて貰うよう折衝を続けている。しかし、今のところ、まだこれを拒んでいるようだ。今後の折衝で、これらの支給が決まったならば、その支給内容については、理事長代行に一任願いたいと思います。」ずっと続きまして、「理事会で決めるよりは、素人が決めてしまって、後で法的に疑義を残さないように公団等の例を調べて、これは専門家でないとよくわからないから、専門家に調べて貰いましよう。また新聞種になって、賑やかになっては困る。これは注文だから、頼みます。」云々。「建設省と政治折衝をすることですね。この位、認めて貰いたいと。」「それでは、そういうことで。」これで終わるわけであります。  つまり功労金、弔慰金あるいは見舞い金、そういうものをふんだんにひとつこの六十九億の中から奮発したい。ところが、建設省はそれに対して反対だ。しかし何とかがんばって、それを認めてもらうようにする、まあこういうことを言っているわけであります。  法務省の見解として、この種の功労金あるいは弔慰金、公益法人の解散に伴う財産処分であります、功労金、弔慰金、これは認められますか。
  194. 香川保一

    ○香川政府委員 一般論として申し上げますが、民法法人が解散いたしまして残余財産があるというときには、これは民法の規定に従いまして、寄付行為の定めるところによるわけでございますが、寄付行為において、だれだれに帰属するというふうなことが規定されていません場合には、主務官庁の許可を受けて、当該法人と類似の目的を持っておる人に処分する、かような仕組みになっておるわけであります。したがっていまお説の解散をいたしまして、残余財産を理事理事会で決議いたしまして適当に分けると申しますか、あるいは退職金という名目で理事にやるというふうなことは、これは残余財産である限りは法律的には許されないことだ、かように考えます。
  195. 坂井弘一

    ○坂井委員 つまり功労金あるいは弔慰金という名目では、これは認めることはできない。そういうものに残余財産を処分してはならぬ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  196. 香川保一

    ○香川政府委員 解散いたしました場合の残余財産である限りは、お説のとおりでございます。
  197. 坂井弘一

    ○坂井委員 恐らく建設省も、社会通念上きわめて妥当な清算の内容であるならば、これは認めましょうということだろうと思うし、当然この議事録の中にもありますように、建設省は功労金、弔慰金、これは絶対認めるわけにはいかぬ、こう言っているということでございますから、このとおりだろうと思う。ただ、もし社会通念上妥当な形の内容でもって申請が出された、つまり功労金とか弔慰金という項目はない、通常の公益法人が解散する場合のそういう形式に従っての内容であるということになりますと、これは認めざるを得ない。さて、その上で解散をした、六十九億の金が入ってきた。この六十九億の金の財産の処分、実際の処分は、最初申請をした時点での内容と異なった場合、これに対して何らかの法的な裏づけをもって対抗できるかどうかについては、いかがでしょうか。
  198. 香川保一

    ○香川政府委員 法人が解散いたしますと、清算に入るわけでございますが、その場合には、清算に対する監督は主務官庁から裁判所に移るわけでございまして、裁判所の監督に服する。したがって、もしも寄付行為あるいは法律に違反するような残余財産の処分がされるということに相なりますと、当然裁判所の監督権の発動といたしまして、職権ででもその清算人を解任して、さようなことのないように処置する、かような仕組みになっておるわけでございます。  したがって、お説のように、たとえば退職金ということを仮に寄付行為の変更によって主務官庁がそれを許可したというときに、退職金の名目で実質は退職金でないような金の分配をしたということになりますと、これは当然寄付行為違反でございますから、裁判所としては、その清算人を解任するというふうなことになろうかと思うのであります。
  199. 坂井弘一

    ○坂井委員 第一義的には主務官庁ですね。この場合は建設省だ。したがって、建設省は、その財産処分が余りにも申請時点の内容と異なる、つまり、たとえば山分けというような形で、弔慰金であるとか功労金であるとかというようなことで渡してしまうというような行為が行われるとした場合には、強力な行政指導には乗り出すでしょう。乗り出すでしょうが、それも振り切って、いや山分けするのだといって分配してしまった、その場合の対抗手段についてお尋ねしているわけであります。もしそうした場合に法務省は、そういう行為に対して何らかの適切な措置が講じられるのかどうなのか。また、それができるとするならば、それはどういう手続によってなされるのかということについて、あわせてお伺いしておきたいと思います。
  200. 香川保一

    ○香川政府委員 解散前におきましては、主務官庁の監督に服するわけでございますが、いまお尋ねの点は、解散後残余財産を山分けするというふうなことでございますれば、これは先ほど申しましたように、清算人の解任という裁判所の監督権の行使が考えられるほかに、その山分けしてしまったということになった場合の法的な手段と申しますと、これは本来は、法律的に申しますれば、その分配は無効でございますから、当然清算過程にある法人としては、個々の理事に対してその返還を請求するというふうなことが法的手段として考えられるわけでございますけれども、しかし実際問題といたしまして、法人を代表しているのは理事でございますから、つまり解散後でありますれば清算人でございますから、自分が自分に対してというふうなことは恐らく行われない。その辺のところは非常に問題だと思うのでありますけれども、たとえば当該法人に対して債権者がおるというふうな場合でありますと、これは判例も認めておるようでございますが、自分の債権の回収ができないというふうなときに、そういった清算人に対しまして、それの損害賠償を請求するというふうなことは考えられると思うのでありますけれども法務省とか、あるいは主務官庁がそれに対しての対抗手段と申しますか、善後措置を法的にとるということは、現行の民法では、ちょっと無理かと存じます。
  201. 坂井弘一

    ○坂井委員 お答えのあったとおりだと実は私も思うわけであります。つまり主務官庁が、もし、いま私が申しましたような行為に対して何らかの対抗手段、少なくともこれは法的根拠を持っての対抗手段ということになりますと、全くない。つまり極論いたしますと、解散した、その後で清算する、その清算の内容が、たとえ山分けでどういうふうにその財産を処分しようとも、法的には何らそれに対する対抗手段がない、こういうことだと思うのです。これは社会常識上、通念上許されない。そういうむちゃくちゃなことをやるならば、必ず何らかの形で制裁を加えられるであろうというようなことは、それは別にあるかもしれません。あるいは行政指導に乗り出すかもしれません。あるいはそれは裁判所ということになりますと、それはまた別途のそういう中で、あるいは事件として取り上げられるということもあり得るかもしれない。しかし要件が満たされないと、裁判所もそのような形で乗り出すわけにはいかぬだろう。では一体だれがそういう手続をとるのか、とる人がなければ、これはうやむやに終わってしまう。  少なくともこの種の法人が解散をした、それで清算を行う、つまり財産処分を行う、その財産処分を行うまで、やはり主務官庁が責任を持って厳正に、公平に行わなければならない、こう思うわけであります。その主務官庁にそれだけの権限、法的な根拠が持たされていない。ここに一つの大きな落とし穴がある、こう実は私は思うわけであります。  したがって、少なくともこうした公益法人等の解散に伴う財産処分に際しては、そこにいまのようなことが行われないような法的な根拠を持たせる。つまり法改正法律上の措置を講ずる、こういう必要があろうと思うのですけれども法務省の見解としていかがでしょうか。
  202. 香川保一

    ○香川政府委員 先ほど法制審議会の民法部会において、民法法人の全般的な見直しをやっていると申し上げましたのは、まさにさような問題があるからでございまして、先ほど御指摘の休眠法人の整理というふうなことは、比較的簡単にと申しますか、先ほど申しましたような方向で大体の意見が出そろっておるのでございますけれども、寝てしまっておって、財産も何もない、形だけ残っておるというふうな法人の後始末をつける、整理するという意味での解散は、これはさほど問題ないのでありますが、現在の公益法人の実態から申しまして、さような整理だけではやはり不十分でございますので、いまお説のように公益法人が活動しているさなかにおいてのいろいろの問題点もございますし、また御指摘の、解散してから残余財産をごまかしてしまうというふうな、そういった点の防止策をどうするかというふうなこと、それらを含めて検討いたしておるものでございますから、はなはだ時期的にはおくれておるのでございますけれども、さような点の実効性のある法的措置を検討すると相なりますと、なかなか結論がまだ容易に出ないというふうなことでございまして、ただ結論は得ておりませんけれども、そういったきわめて非常識な、適当でないことを防止する、しかも有効にそれが防止できるいろいろの手だてを現在考えておる、かようなことでございます。
  203. 坂井弘一

    ○坂井委員 これは本当にはっきり言いまして、実はもうどうしようもないという感じですね、こうされた場合には。なりふり構わずやろうというような悪いのに、仮にそういうことでやられてしまうと、もうどうしようもないということになってしまうと思うのですね。ずいぶん私も勉強さしてもらいました。実は全くお手上げだという感じであります。ですから、これもやはり法務省において、この辺の立法化、法整備ということについては、どうかひとつ真剣にかつ速やかに行っていただきたい。つまり、恐らくこれは大きな問題になると私は思いますよ。これはもと国有財産です。都が買う、結構です。ですが、六十九億の金が、どういう形でこれが処分されるか。まさにこの議事録に見られるように、山分けしましょうという相談をされておる。こんなことされたら、これは一般都民、住民、国民の目に果してどう映るか、実はこれが私には非常に大きな心配であります。  なお、この件とは別に、先ほどお答えいただきました、つまり法人の解散、設立許可のいわゆる取り消しの条項につきましては、民法七十一条でございますね。ただこの七十一条は、法人がその目的以外の事業をなした場合、または設立の許可を得たる条件に違反した場合、あるいは公益を害した場合、設立許可を取り消す、こうなっておるわけです。私がいま具体的に申し上げております文化住宅協会につきましては、これはもう事業活動は一切しないで今日までずっと来たわけです。ただし理事もおります。事務所もあります。したがって、これを直ちに休眠法人、幽霊法人とは言えない、ある種の休眠法人ですね。事業活動を一切やらない、こういう法人については、乙の条項を適用するということには相ならぬと思うのです。できないと思うのですね。しかし少なくとも事業活動を一切していない、あるいは主務官庁が見て、この法人の設立は適切ではない、こういう判断がなされた場合には、この七十一条の中に一項を、あるいは別に立てるかいたしまして、設立許可を取り消す、こういうことも法体系上これは必要ではないか。  あわせて、もう時間も参っておりますのでお尋ねしておきますが、実はなぜそのことを申し上げるかといいますと、その法人のみずからの意思によりまして解散をしようとする場合、これは所定の手続を踏みますと解散できます。その場合の財産の処分につきましては第七十二条、解散した法人の財産の帰属、ここに明確にございます。ただしかし一方、七十一条によりますところの設立許可の取り消し、つまり解散を命じた。好ましくない法人だからといって解散を命じた。その法人の財産の帰属につきましても第七十二条が適用される。同じだ。自分の意思で解散した法人も、けしからぬ法人だからというわけで主務官庁が解散しなさいといって解散をやらしたそういう法人も、財産の帰属につきましては、処分につきましては、扱いは一緒だ。これはどう考えてもおかしい。  少なくともそういう好ましからざる公益法人、だからこそ主務官庁がもう取り消します、解散しなさい。解散権をそこに発動した。そういう法人の場合は、その財産は少なくとも国庫へ帰属させるというようなことを柱にした財産の帰属というような形に、やはり法律的には持っていくべきではないか。これは非常に素人考えかもわかりませんけれども、私はそう思えてならない。その辺の考え方について、ひとつ御見解を承っておきたいと思います。
  204. 香川保一

    ○香川政府委員 設立許可の取り消しの事由としまして御指摘のようなことも加えるということは、先ほど申しましたように、法制審議会の方でほぼ意見が固まっておるわけでございます。  問題は結局、その設立許可を取り消しましても、解散に入ったときの財産の処分関係が一番問題になるわけでございますが、これはお言葉を返すようでございますけれども、仮に主務官庁が設立許可を取り消して解散になる場合、あるいはみずから解散する場合におきましても、財団の場合には寄付行為で決められておるとおりに財産が帰属するというのが、やはり一番穏当だろうと思うのであります。寄付行為で決まっていないときに、七十二条では、類似の目的を持って活動しているものに帰属させるというふうなことを規定しておるわけでございまして、これもできるだけさような残余財産を公益の目的に使うというような趣旨でございますので、これも決して当を得ないものではなかろうと思うのであります。  さようなことを規定して、その上で処分されない財産は国庫に帰属するというふうに現在なっておるわけでございまして、それを主務官庁がその二年間なら二年間あるいは事業をやらないということで設立許可を取り消した場合には、いきなり国庫に帰属させるというふうにするのは、いささか問題ではなかろうか。やはり残余財産自身を同じような公益の目的に使うというふうな方向で考え、それでも処分できないような場合には国庫に帰属させるというふうな現行の七十二条自体は、さほど改正の要はないんじゃないかというふうに考えるのでございます。  ただ問題は、条文がさようになっておりましても、そのとおりなされない場合の防止措置なり、あるいは善後措置ということが若干問題ございますので、その辺もあわせて法制審議会検討されておるわけでございます。
  205. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間が参るようでございますので、最後に法務大臣に一言お尋ねして終わりたいと思います。  公益法人につきましては、本来的な公益の目的に沿って、その目的に従って、まことに堅実に、かつきわめて公益性も高く行われておるところもたくさんございます。その反面、いま申し上げておりますような休眠法人あるいは幽霊法人あるいはその法人の事業内容等においてきわめて好ましからざるような、そういう法人もまた一方にはある。したがって、そういう法人を各省庁が抱えまして、何とかしてこのような法人は、もう早く解散させたいということでもって大変苦慮しておる。行政監察の方も、もう常に行政監察の中でこれを指摘しながら、何とか早くこれには適切な措置を講じなさい、解散もさせなさいということを各省庁に勧告をしておる。それがずっと積もり積もって今日まできている。  そういう中で、法律的に抜け穴だらけなんだから、とにかくうまいこと法網をくぐって、悪くずる賢くいけるものは、それは得だというようなことがまかり通っておる。これはやはりきわめて遺憾なことでございますし、こういうことがいつまでも放置されていいということは決してない。そのためには何が必要かといいますと、最初に申しましたように、やはり法改正、これがいわゆる法制審議会において検討されておるのですけれども、なかなか結論が得られない、だんだん延びてきておるということでございますので、まず早くこの結論をお出しになるように、法務大臣もひとつ督励をしていただきたいということがまず根本であります。  同時に、民法第七十一条の法人の解散に際しまして、やはり主務官庁が好ましくない、これは実体的に見ましてもきわめてよろしくない、事業活動は一切していない、そういう主務官庁の判断を尊重しまして、そういう場合には解散でき得るというような方向にこの法を整備すべきではないか、私はそう思うわけでございますけれども、その二点につきまして、法務大臣の見解を承りまして質問を終わりたいと思います。
  206. 稻葉修

    稻葉国務大臣 伺っておりまして、それから民事局長お答えども聞いておりまして、これは非常に法に不備、欠陥が多いな、これは改正を急がなければならないなあという感じを持ちますので、私も責任がありますから――本当は裁判所なり主務官庁なりが、もっとしっかりきちんとやってくれればいいのですけれども、現行法上やろうとしてもできない、不備な点もございますから、その不備な点につきましては、民事局長法制審議会のメンバーなんですから、督励して作業を急がせ、結論を急がせるように努力をいたします。
  207. 坂井弘一

    ○坂井委員 終わります。
  208. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十四分散会