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1975-11-18 第76回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十八日(火曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 井原 岸高君    理事 唐沢俊二郎君 理事 綿貫 民輔君    理事 原   茂君 理事 庄司 幸助君       赤澤 正道君    石田 博英君       葉梨 信行君   橋本登美三郎君       増岡 博之君    三池  信君       高田 富之君    安井 吉典君       坂井 弘一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      堀川 春彦君         水産庁次長   佐々木輝夫君  委員外出席員         厚生省環境衛生         局食品化学課長 宮沢  香君         厚生省薬務局審         査課長     山田 幸孝君         林野庁指導部長 藍原 義邦君         通商産業大臣官         房参事官    蓼沼 美夫君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      太田 耕二君         建設省河川局河         川計画課長   栂野 康行君         自治省財政局調         整室長     中村 瑞夫君         会計検査院事務         総局第一局長  高橋 保司君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 委員の異動 十一月十八日  辞任         補欠選任   宇都宮徳馬君     葉梨 信行君   菅野和太郎君     増岡 博之君 同日  辞任         補欠選任   葉梨 信行君     宇都宮徳馬君   増岡 博之君     菅野和太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十八年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十八年度政府関係機関決算書  昭和四十八年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十八年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管環境庁)〕      ————◇—————
  2. 井原岸高

    井原委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管環境庁について審査を行います。  まず、環境庁長官から概要説明を求めます。小沢環境庁長官
  3. 小沢辰男

    小沢国務大臣 環境庁昭和四十八年度歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十八年度の当初歳出予算額は百十億四千九百三十一万円余でありましたが、これに予算補正追加額九千二百九万円余、予算補正修正減少額二億三百九十四万円余、予算移替増加額九千三百二十万円余、予算移替減少額二十二億六百八十七万円余、前年度からの繰越額三億四千六百五十五万円余、予備費使用額二億六千六十一万円余を増減いたしますと、昭和四十八年度歳出予算現額は、九十四億三千九十五万円余となります。この予算現額に対し、支出済歳出額七十八億三千五十八万円余、翌年度への繰越額十億三千六百二十六万円余、不用額五億六千四百十一万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主なる費途につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、公害防止等調査研究関係経費といたしまして、九億二千六百二万円余を支出いたしました。これは、水俣病に関する総合的研究地域開発生態系に及ぼす影響調査大気汚染物質の解明、排出規制方式確立のための調査光化学スモッグに関する調査、及び水質汚濁に関する調査等実施するため、また、国立公害研究所運営等経費として支出したものであります。  第二に、自然公園関係経費といたしまして、十七億五千九百四十八万円余を支出いたしました。これは、自然公園等利用促進するため、園路、歩道、野営場等建設及び管理、交付公債による民有地買い上げ、渡り鳥観測ステーション整備特定鳥類保護対策等促進を図るため支出したものであります。  第三に、公害防止を図るための施策推進に必要な調査費、都道府県及び政令市に対する各種補助金公害防止事業団に対する交付金環境行政に従事する職員資質向上のための研修所運営費及び環境庁一般行政事務経費など五十億五千二百九十一万円余を支出いたしました。  最後に、先ほど申し上げました、翌年度繰越額不用額について主なるものを御説明いたしますと、翌年度繰り越しは、自然公園等施設整備事業が、公共事業抑制等により工事年度内に完了しなかったものであり、不用額は、環境保全総合調査研究促進調整費のうち目未定のもの、並びに、交付公債による特定民有地の買い上げが少なかったこと等のためであります。  以上、簡単でありますが、昭和四十八年度決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほど、お願いいたします。
  4. 井原岸高

    井原委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。高橋会計検査院第一局長
  5. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 昭和四十八年度環境庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  6. 井原岸高

    井原委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  7. 井原岸高

    井原委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。原茂君。
  8. 原茂

    ○原(茂)委員 通告してあります順序で、これからお伺いしていきますが、その前に、ことしの八月に地熱発電視察に参りました。そのとき岩手県の松尾鉱山の休止になりました跡を視察をしてまいりました。この問題に関しても、後、同僚委員から御質問があるようですから、簡単に一、二だけお伺いしておきたいのです。  こういう問題を関係省庁相談をした結果、環境庁責任を持って跡を整備を行うということになるだろうと思うのですが、どうも現地を見た限りでは大変手おくれというか、おくれていて、これは大変な影響が各方面に出るなという感じがしましたが、一体今後の見通しはどうなのかをひとつお伺いしたい。  ついでに、これは大臣から。この種の問題はいろいろと予見しがたい公害というものが企業から出てくるわけですね。企業は、公害がどんな種類のものであろうと出るという前提に立ってやっているわけではない。何にもないと思っているものが、どんどんどんどん公害という形でいまになって出てきている。こういう予見しがたいものが時間の経過とともに出てくるようなときを考えますと、やはり政府の側から見て、少しでも危険が公害問題としてありそうだと考えるような企業に対しては、企業全体の共同責任一つの協会なりグループによる保険制度みたいなものをつくって、問題が起きたら、その保険をする団体というものがその企業救済に当たる、あるいは公害対策の費用の支出に当たる、中心的にその問題の処理に当たっていく、そういう保険機関のようなものが——これからも新しい企業ができます、いままである企業もあります、こういう企業に対して政府立場で指導的にやはり保険機関のようなものをつくらせるということで、問題の起きたときに——ただ、大きな問題あるいは小さい問題もあるでしょうが、企業プロパーで問題に対処しようとしても、なかなか困難だということが現にありますし、予見されるわけです。  私は、この松尾鉱山の跡を見まして、これは非常に無責任きわまるものだ、商売が成り立っているうちはやっていた、もうだめだ、採算がとれないからやめだと言って出ていく。出ていった跡が荒らしっ放しで、それを後、国の立場でしりぬぐいをしているというようなこと。この松尾鉱山に関しても、この問題の追及がどうなっているかは担当局長にお伺いしたいのですが、野放しで、もう出ていってしまって、つぶれたんだからやむを得ないんだということになっているのかどうか、これもあわせてお聞きしたいのですが、こういう問題も考えてみると、私は、企業というものが共同保険機構のようなものをつくる、その保険機構が、何か問題の起きたときにやはり助力あるいは中心的に問題に対処してやるというようなことがないと、今後企業というのは成り立たない場面がちょいちょい出てくるのじゃないかという感じがしますので、この点に関しては大臣がどうお考えか、できるならイニシアをとって、そういう機構づくりにひとつ先鞭をつけていくべきではないかという感じがします。全体では三つ、そのうち二つ局長から……。
  9. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生の御所見、私大変もっともな御所見だと思います。  まず整理をいたしますと、原因特定している場合は、これはやはりその企業負担をしていかなければいかぬと思うのです。なかなか特定できない、不特定多数あるいはまた休廃止鉱山その他から出る問題あるいは原因者がどうもつかめない、たとえば油濁等を見ますと、相当の油濁がありますが、一体油を流した者がだれかということが、どうもその現場でつかめないということになりますと、航行している船舶いずれからか出たんだろうと思いますけれども、どうも特定できないというような場合、そういう場合に、先生のようなお考えで、あらかじめそういうようなものを企業体なり、あるいは国なりも若干関与しまして一つ基金をつくって、そういう場合の対策実施なりあるいは補償なり、そういうものをやっていくということは大変必要じゃないかと私は思っておりますが、ただ、この財産被害につきましては、いま私の方でしかるべき相当の、それぞれの分野の学識経験者を集めまして、いろいろと検討願っておるわけでございます。  その検討を得まして、実は一つ方針を決めてまいりたいと思うのですが、先生のおっしゃることも私十分参考にいたしまして、大体年内にはその結論を出していただけるのじゃないかと思いますので、結論を得ましてから、先生のお考えも私は一つ参考にしながら、不特定多数あるいは原因者不明の財産被害なり、あるいは環境汚染対策事業費なり、そういうものをどういうふうにしていくかということを十分検討さしていただきたい。いまそういう学識経験者の熱心な検討を開いているときに、私はそういう方法だけでいくというふうにここで申し上げられませんこと、大変残念でございますが、一つの大変貴重な御意見、私も実はそういうような方向はないかということで模索したこともございますけれども、もう少し専門家整理をしていただきまして、その後でひとつはっきり方針を決めていきたい、かように考えておる段階でございます。
  10. 堀川春彦

    堀川政府委員 松尾鉱山の問題につきましては、これは北上川清流化対策ということで県政の大きな重要な柱にもなっており、かつ国も県とともにこれを何とか解決しなくてはならないという立場から、これまでいろいろの施策をとってきておるわけでございます。調査関係や現に実施しておる事業関係等につきまして、これまで二十三億弱のお金を五十年度までにつぎ込むというような、かなり大きな仕事として取り上げて進めておる次第でございますが、この進め方といたしまして、現地に、四十六年八月に東北地方建設局中心といたしました対策連絡協議会があり、それから中央では、四十六年の十一月から環境庁がお世話を申し上げまして、関係省庁から成ります北上川水質汚濁対策各省連絡会議を設置しまして、そうして調査進め方、それから対策の樹立、そういうことについてどうしたらいいかということを協議し、協議が調ったものについて逐次実施をしてまいっておるという状況でございます。  現在行っております対策事業といたしましては、坑内水流出量を減ずるための露天堀りの跡地を覆土する工事、これは岩手県が通産省から補助金交付を受けて実施中でございます。  それから、赤川の水路の保全工事、これは保全をいたしませんと、水が浸透いたしまして、そうして廃坑に浸入し、それが酸性の強い水となって出てくるということをとめるための工事でございますが、これは建設省岩手県から負担金を徴収いたしまして、直轄工事として実施をしておるわけでございます。  なお、従来松尾鉱業所が行っておりました中和処理につきまして、同鉱業所が四十七年五月以降閉山をいたしましたので、したがって、その分を引き継ぎまして建設省が暫定的な中和工事実施しておる。これは炭カル等を用いて酸性を弱めるという工事をしておるわけでございます。  一つには、こういう恒久的な対策に資する事業もございますが、一つには、さしあたりの暫定的な中和事業というようなものもございまして、この北上川がりっぱな水質を取り戻すというためには、さらに恒久対策をいろいろと考えていかなければならぬ面が残っておるわけでございます。  したがいまして、この恒久対策として考えるべきこととしては、現在坑内水量を減ずるための抜水トンネル等をつくりまして、そして捨水をするというようなこと、それからいま申し上げました暫定的な中和処理のやり方をより効率化し、その効果を永続させるためには何がいいかということで、これは現地においていろいろ関係省庁のそれぞれの担当と、県のそれぞれの担当と、それから学識経験者が集まりました北上川酸性水恒久対策専門委員会という、むしろ専門的事項協議をする委員会がつくられておるわけでございますが、そこで本年の五月二十八日に、鉄バクテリア利用によりますところの新しい中和方式を導入したらどうか、こういう中間的な答申が出ておりますので、これを受けまして、中央の先ほど申し上げました五省庁で持っております連絡会議でそれを検討し、現在この処理施設をどういうふうにつくったらいいか、その規模なり、あるいはそれに要する建設費あるいは工期等に関しまして、いろいろと具体的な調査を進めておるわけでございまして、この結論が出てまいれば、その調査結果に従って、この連絡協議会協議をし、そして方向をしかと確立をいたしまして、それぞれとるべき手を可能な限り早急にとっていく、かような段取りで進んでいくことになろうと思います。  現在のシチュエーションはそういう状況でございます。
  11. 原茂

    ○原(茂)委員 二つ目の点、どうですか。——松尾鉱山会社更生法の適用を受けていわゆる倒産をし、採鉱権も放棄したのはいいんですが、この種の企業が、もうけるときはもうけたんだけれども、もういよいよつぶれたといったときに、あとは全部しりぬぐいを国だの自治体がやっている、数十億の金をかけてやっているというのに対して、その企業に対しては倒産したということでもう追及はないのか。やむを得ないのか。これは非常に問題であると思うのです。その点を聞きたい。
  12. 堀川春彦

    堀川政府委員 確かにお尋ねのような問題があるわけでございます。これに対しまして、これは第一次的には通産省の方でいろいろお考えいただかなくてはならぬというふうに思っているわけでございまして、いろいろの積み立てを日ごろやっておきますとか、いろいろのことが考えられるわけでございましょうが、ちょっといま環境庁の方でこういう方向が好ましいというふうな結論を得ておるわけじゃございません。しかしこういった問題、ほうっておきますと、やはり問題が残るということになりますので、私ども通産省基本的方向が何であるかということも十分関心を持って御相談をしてまいりたいというふうに思っている次第でございます。
  13. 原茂

    ○原(茂)委員 その点はちょっとしまったのですが、途中で私、取り消した覚えがあるので、しまったなといま思うのですが、これは通産省に一度聞いたところでは、やはり追及の手段がない、こうなっているのですね。  先ほど言った保険機構の問題がまた出てくるのですが、やはり採算がとれないでつぶれちゃうものを、後を、首くくりの足を引っ張るようなことをしろと言ったって無理なんですから、したがって大臣最初答弁願ったような、ああいう保険機構のようなものができる、アフターケアの問題も含めて保険を、中心的な対策を行うという機構がどうしてもないと、この種のけつふきをいつでも、まあまあいろんな形は違っても現に行われているのですが、国が、自治体がやらされて泣き寝入りになっているという、このことはもう非常に大問題だと思うので、資本主義というものを維持しようというたてまえであるなら、そのことも十分配慮しないと、これからの鉱害という問題に完全に対処できたことにはならないんじゃないか、こう思うのですね。  この間パリへ総理も行って、きょう帰ってくるようですが、先進六カ国首脳会議なんというのが、頭に先進なんてくっついていますけれども、あれは何が基準で先進国なのか知りませんがね、六カ国が日本のいまの公害等考えたときの現状を見て、あるいはいま言った不当な、論理の通らない、ロジックの合わないこの種の問題が放置されて、地域住民北上川中心にして大変な迷惑を受けているというようなことが放置されたままで、まだ具体的な科学的な、こういうものに対する手当てなり処置もできていないような先進国なんというのは、現代的に言う、私は日本環境考えたときに、先進国なんというのはおかしいのじゃないかと思うくらい、あの先進というのは何かひっかかって、きざで本当かなという感じがしていたのですが、やはりそういう点からいっても、私は、ああいうものを後、追及する原則があり、追及しても負担能力がない状況になったときにも、何かの保険機構がないと、やはりこれは問題があるという意味で、大臣からさっき答弁をいただいたような提案をしたわけですから、ひとつ真剣にこの問題はおざなりでなくて、後で六月にこの委員会質問をした問題がどのくらい進展しているか、半年たっていますから、そのこともお聞きしながら、大臣には特にひとつ言いっ放しでない行政を、範をたれるつもりで真剣に御討議を願いたいというふうに思うのですが、もう一度大臣からその点だけお答えいただきたい。
  14. 小沢辰男

    小沢国務大臣 原因者特定できない、あるいはまたいなくなった。法律上、現在の法制上のたてまえではどうにも責任追及ができない。そういうものが、あるいはまた責任追及しょうにも、どこをとらまえていいかわからぬというような事態、あるいは責任追及しても全く能力がないというような場合、これらを、一方においてはその結果に基づく環境汚染というものがあった場合、あるいはまた財産被害を他に及ぼした場合、あるいは健康被害を及ぼした場合、健康被害については御承知と思いますが、一つ基金ができておりますので、この方は一応現在支障なく行われているわけでございますが、問題は、財産被害救済と、それから公害防止対策事業をやる場合の負担あり方の問題、この二つになろうかと思います。  先生がいま御指摘のものは、公害防止事業をやる場合の負担の問題、これを国と県だけでしょっていくのはおかしいじゃないか、やはりそういう場合だってあり得るのだから、全体的に一つ基金制度みたいなものをやはり資本主義社会を構成する企業責任として、みんなで共同担保していく必要があるのじゃないか、こういう御意見だろうと思うのです。  実は、補償問題の方、財産被害の方で、今年度漁業関係では油濁の関係財界基金を出しまして、たしか国が五千万、財界が三倍以上出しまして、一つ基金を持って発足をいたしております。財産被害についての、すなわち財産補償についてのいろいろな方式が決まるまでということで、とりあえず発足した例がございますが、この公害防止事業、いま言った川の汚染を防止する、あるいはきれいにしていくという事業につきましてまで、それを及ぼしていくかどうかということについては、これはいろいろな見方をしていかなければならないわけでございまして、結局は住民の健康を守り、あるいは生活環境保全するという立場から、一般的に国なり地方公共団体の持つ行政責任というものを果たす一環としてやっておるわけでございますから、先生がおっしゃるように、もとにさかのぼって、あるいはまた現在のものがいつどういう形でそういう問題を起こさぬとも隈らぬから、一つ基金的なものをという構想を、補償問題も含めまして考えていかなければいかぬだろうと思いますが、具体的にいろいろケースが違ってまいりますから、そういう先生構想のような基金ができましても、その基金から、あらゆる場合にそれが公害防止事業として出ていくかというと、それはやはり個々の事情によって考えていかなければいかぬ。  国がどの程度の割合で負担をしなければいかぬのか、公共団体がやらなければいかぬのか、あるいはそういう基金から相当企業一つ責任として負担をしていかなければいかぬのかということは、個々ケースによって大分違ってくると思いますが、基本的なあり方として先生のおっしゃるような方向をやはり考えておく必要があるのではないかということは、私も実は非常に当初から、環境庁長官になりましていろいろな問題にぶつかったときに同じような考えを持ちまして、そういうようなことはできないのかといって、研究職員に命じたこともあったわけでございます。  それと、今年度のいわゆる財産被害の問題が出てまいりました例のカドミ米問題等も、どういうようにやっていくか、休廃止鉱山から流れてくることによって起こる問題がたくさんございますので、そういう問題等も含めまして、それもきっかけになりまして、先ほど言った学者の研究を願っておりまして、これは必ず近く出てくるだろうと思いますので、それを踏まえまして私も何とか対策を講じていきたい。一つあり方を決めていきたい。  ただ、あり方を決めるのは環境庁でございますが、それぞれ実施官庁がございます。通産なりあるいは農林なりというのがございますので、そういう原因に対して責任を持つ官庁、またいろいろな財産なり、あるいは対策事業なりについての被害を直接受ける官庁、いろいろございますものですから、私どもとしてはいまのところ、一つあり方結論だけ出しまして、そのあり方に基づいて現実の対策をとるのはそれぞれの官庁にやらせたい、このような考えでいま進んでおるところでございます。何らかの結論を出して、それぞれの分担に応じてやっていかなければならない、かように考えております。
  15. 原茂

    ○原(茂)委員 いつも大臣答弁がみんな縦割り行政の弊害をみずから認めた答弁をされておる。それがちっとも直らないのが日本行政なんですよ。ですから住民サイドから言うと、もう歯がゆいといいますか、どこを頼っていいんだかわからない。いいことは言ってくれるけれども、さあ、実施官庁はここでございます。行ってみると、まだそれは検討してないというような調子で、ずっと漠然とするだけで何ら焦点が定まらずに期限を切った仕事が、わが国の行政の中ではなかなか進んでいかない。という意味で、政治不信の大きな原因一つはそこにもあるというふうにすら考えるわけですから、大臣が閣議ででもよく、こういう点、身をもってお感じになっているはずですから、ひとつ、まあまあ推進できるような実施機関としての環境庁に早くなり上がっていただくように御努力を願う以外にないかと思いますが、その点は特に私からお願いをしておきます。  それから沖繩西表の問題にこれから入るのですが、大臣から最初にいろいろお答えをいただきたい。  西表開発に関しては自然保護開発を両立させる、日本で初めてのケースをここでプランニングするというお考えのようで、私どもいままで開発が即、自然を破壊している、あるいは間接、直接に自然保護という問題との絡み合いで開発というものは非常に悪、とまではいかないまでも、そういう感じを現実の問題として各所で体験をしてきた人間として、この長官の発想というのはできたら確かにいいと思いますが、なかなかに困難な問題がやはりこれも出てくるのではないだろうかという感じがしているわけであります。  環境庁長官として、自然保護というものと開発というものの関係をどうお考えになっているのだろう。まず原則として開発というものと自然保護というものがぴしっと一つの定義づけが行われていないところに、今回、南アスーパーの問題にしても、あるいはビーナスラインの扉峠の行きどまりの問題にしても、その先が一体どうなるのか、四十何億かけて、一体ペイするのかペイしないのか、一日二千人くらいと思っていたのが、一けた台、二けた台で大体終わりそうだというようなことで、とにかくこの返済計画もままならぬというような状況が起きてみたり、あるいは西表における現実の問題として、現在でも、すでにいわゆる開発というものに自然保護立場からストップをかけなければいけない現象も起きているというようなことがいろいろあるわけですから、それらを全部通観して、私は、環境庁立場開発自然保護というものの原則をどう考えているかを、大ざっぱでいいですから二つ三つに分けて、ひとつ長官のいわゆる定義づけをした決意というようなものをここで先にお伺いしたいと思うのですが、いかがですか。
  16. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、自然というものは貴重な国民の財産だと思っております。したがって、この貴重な財産というものは、やはりわれわれが基本的にはできるだけ守って後代に伝えていかなければいかぬものだと思います。しかし、この貴重な自然を守る者は一体だれかということを考えてみなければいけないと思うのです。私どもが規制をやりまして、幾ら制度上、法制上あるいは行政上の措置でそういうことをやりましても、現実に自然を守ってくださるのは、その自然とともに生活をしている人が、一番守っていただく場合に大事な点じゃないかと私は思います。しかも、私どもが一番貴重だと考える自然というものが、どちらかといいますと全く未開発で、そして過疎に悩んで、そして所得の確保に悩みながら、他と比較して非常におくれた生活あるいは経済に甘んじなければいけない地域が多いわけでございます。  したがって、私は、とにかく一切合財そういう地域における開発は認めないというようなことで——開発の目的が非常に大事だと思いますが、そういうことでいきますと、実際に自然保護考え方と、その地域の国民生活というものとの矛盾が非常に強く出てきまして、その矛盾を一体だれか解決をしてやるのだということを考えてきますと、一概にただ行政上、法制上取り締まればいいんだという考え方だけではなかなか——ことにその地域の人が守ってくださらなければならない自然でございますので、私は、そういう考え方だけで一概に推していくわけにはいかないのじゃないだろうかと思います。  しかし、私の基本的な態度は、自然環境保全するという場合の基本的な態度として、とにかく慎重にも慎重にやりたい。というのは、十年、二十年、三十年、五十年先に後悔をするようなことだけはやりたくない、一たんつくりましたものを、もとの姿に返すということはなかなか大変でございますから、そういう意味でやはり慎重の上にも慎重に考えまして、そしてこれならば将来われわれは、こういうやり方ならば、あるいはこういう目的ならば、自然保護の観点から見て後悔するようなことはないだろうという自信がついたところで初めて私は、その地域の要望に応ずる一定の目的を持った開発といいますか、自然の保護との調和を図りながら開発を認めていくというような、大変まどろっこしいかもしれませんが、やはり基本的な考え方でいかなければいかぬじゃないだろうか、かように思っているわけでございます。  いろいろ、本来なら開発自然保護との一つのルールといいますか、考え方の整理をして、基本原則を決めておきまして、その原則に照らして、すべてが公平に行われるという方がいいと思いますけれども、やはり開発の目的というものが地域地域によって非常に生活と結びついた違いがございますので、そう一概に、物差しをぱっと決めておきまして、全部に適用するということは、なかなか困難だと思いますが、考え方として、以上申し上げたような考え方で進んでおるわけでございます。
  17. 原茂

    ○原(茂)委員 私は、前段に、自然保護というたてまえに立つと開発は何か悪といった感じですら大衆からいま受け取られている中で、短期的な見方、長期的な見方を前提にした、開発というものが堂々とこういう場合には行われなければいけないというような、開発に対する定義というものはあっていいのじゃないかという意味大臣のお考えをお聞きしたのですが、間接的にはわかりますが、たとえば具体的に言うなら私は、このままほうっておくと、かえって大きな自然が破壊されるおそれがある。二つ目には、このままほうっておくと、地域大衆に人命を含めた非常に大きな被害を及ぼすおそれがある。三つ目には、やはりこの地域全体の経済を考えたときには、この経済を上向きにさせるためにはという場合がある、こういうような場合には開発は行うべきであるし、行われなければいけない。ほうっておけば洪水になる、浸水が起きる、あるいはその他鳥獣による食害なりその他生活権の侵害が起きるというようなときには、私は、開発というものは、いま言った三つなり四つなりの前提条件の場合には原則として開発をすべきであるというような、開発に対する原則が、まずあっていいのじゃないかという気がいたします。  そうでないと、何か開発が非常に悪ででもあるように大衆の中に植えつけられたままで、開発に非常に憶病になり、開発に対して因循こそくになりというようなことが、かえって地域社会全体あるいは経済、地域に住む人々に対するいろんな形での被害を与えるというような結果になるおそれが現にあると思うので、私は、そういう意味では、開発というものには大胆な定義はやはり設けて、論議をして、そして必要な開発は行うのだというたてまえがまず先にぴちっと確立される必要があるのではないか。  たとえば、その反面、先ほどもちょっと触れたのですが、西表のように、非常に原生林のある、林業中心に村民の所得を向上せしめなければいけない。しかし、そうでありながら、あの国有林のうちの約四〇%はすでに本土のパルプ資本に譲渡してしまった、そのために本土のパルプを必要とする度合いに応じて、じゃんじゃん、ある意味では乱伐を行って、いま現に西表の原生林、特に国有林の中の乱伐による大変心配な事態というものが現実に起きているし、将来も予想されるというようなことがありますから、これに対しては後でお伺いしますが、適切な手当てをしなければいけないのですが、しかし、だからといって開発というものに対して何でもかんでも憶病に姑息なということではいけない。  開発に対しては、こういう場合には開発も必要だというものの定義がある。そのかわり、いま言った乱開発と言われるようなパルプ資本の乱伐等が、あの国有林の譲渡された四〇%の地域で大変大胆に行われている、これに対する造林なり何なりということを考えなければいけない。先に十分の手配をした上で、やはり開発をすべきではないか。原則としては、あの西表の国有林の四〇%に近いものをパルプ資本に譲渡したことに対しては、時間がありませんし、きょうはこの問題だけでお伺いしようと思いませんが、そのときの経過等もいま調べ始めようという気になったのですが、大変先を見越していない、悪い譲渡をやったなと私は考えていますけれども、少なくともいま言った開発に関する定義が行われる、同時に、そういう自然保護という立場からも厳しく先を見、先を考えて、あの種の払い下げ、譲渡の行われたことに対しては強い反省を行って、今後はしないというようなことが現実の問題として検討をされて、結論を出しておくという配慮の上に、やはり開発に対する定義というものはあっていいんじゃないかというふうに考えるわけです。  生物がとにかく生きていこうとするためには、環境利用しない限り生きていけないわけです、どんな場合でもですね。人間だって生物の一つなんです。こいつが生きていこうとする限り、環境利用するわけです。環境利用とは、端的にストレートに言うなら、ある種の環境破壊に通ずるわけです。そうしなければ生物は生きていけないわけです。  後でニホンカモシカの問題を特にきょうは重点を置いてお伺いしますが、これだって、生息エリアというものがどれくらいか知りませんが、環境庁であるいは林野庁で調べているかどうか知りませんが、聞くところによると、あのカモシカが生まれてから本当に成獣となり命を捨てるまで、平均一年間には一トンの食糧が必要だというようなことを聞いているんです。カモシカが現在わが国全体では何千頭になるか知りませんが、少なくとも長野県の場合大変大きな数が、しかも個人の入会権を持った山などにたくさんいる。だけれども、文部省の方では、これは指定をして絶対とっちゃいけない、食い物は勝手に食ってこいとカモシカに言う。カモシカは自由自在にどこかへ行って食ってくる。食われたやつは民間であったり国有林であったり、あるいは組合林であったりしている。その被害が与えられたって、そんなことは知らないというような状況でカモシカが野放しになっている。  大事だから確かに保護しなければいけないことはわかるのだけれども、一体このカモシカを、何々記念物か何か知りませんが、保護獣という指定をする以上は、これの生息状況と生息に必要な条件を与えるということを考えた上で、これに対する指定を行うならともかく、全然それをやらずに、いま言ったように一頭年間一トンぐらいのものを食べるというこの一トンを、ヒノキだの杉だのの若芽をばりばり五年生ぐらいのものまでどんどん食っていかれるということが放置されているというような、こういう状況考えると、やはりそういったことまでぴしっと考えた上で開発に対する定義を行い、その定義をつくった以上は、この場合の開発にはこういう手当てが必要だ、こういうことを調査して、これに対する十分な配慮をした上でなければいけないというようなことが、いまの鳥獣の問題をとらえても、あるいは現に行われでいる西表のパルプ資本による乱伐を考えても、先のことをぴしっと手当てをした上で、やはり開発というものに対して、こういうときには開発をするのだ、しなければいけないのだというものがあっていいのじゃないかというふうに思うのです。  いま後から申し上げたことは後でお伺いしますが、開発に対する原則というもの、その開発には自然を守るという、あるいは、人間も含めて、鳥獣の生息を保障するということも前提に十分な配慮をした上で開発に対する定義を、三つでも四つでもぴしっとつくっておくというようなことが必要だと思いますが、大臣いかがですか。
  18. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生考え方、基本的には私も決して反対ではありませんし、当然人口が、今後七十年あるいは七十五年先を考えても日本の人口は静止人口になりません。増加の一途をたどるわけでございますし、経済の一定の成長というものをどうしても考えていかなければいけないということになれば、当然先生がおっしゃったように何らかの意味での自然の利用あるいは破壊というものは起こっていくわけでございますから、これはもうそういう現実があるのに、これを全く無視して開発を一切認めないというような考え方は私はとり得ないと思うのでございまして、その場合に、しからば自然保護との調和を図る意味開発一つの原則をつくっておけという御意見についても、しかもその条件がお挙げになりましたような条件であれば、これは確かに私は一つ考え方だと思います。  それを私も同感であると申し上げるわけでありますが、一番大事なことは、やはり開発の目的ということが大事だと思うのでございまして、それが自然保護と調和をしない場合、一体調和を図る手段、方法を、その開発の目的を達成するために、まだ他のいろいろな方法があるんじゃないかということの検討なり、あるいはそれについての国のいろいろな配慮なりというものが足りなかったんじゃなかろうかと、西表へ行きまして非常に痛感をいたしたのもその点でございまして、したがって私は、開発あるいは島民の生活向上というものと西表自然保護というものを両立する方途というものはあるんじゃなかろうかというような観点からあのような印象を申し上げたわけでございますが、簡単に言いますと、先生のお考えのような場合に開発を許すというようなことは、私も、おおよそその考え方には賛成をいたしたいと思っております。
  19. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで二、三具体的な問題でちょっと先にお伺いしますが、先ほど言った西表の国有林の払い下げをされた後、視察をされているから当局者はおわかりだろうと思うのですが、これがまた、ある時期が来ると残った国有林の払い下げが、追加で譲渡されるようなことがあるんじゃないかという心配がありますが、そういうことはもう絶対ないと考えていいのかどうか、これが一つ。  それからもう一つは、あの種の四〇%の譲渡をやるというときに、いまのように非常にやかましい自然保護あるいは環境保全という問題があるときには、厳しい条件がつけられていて、その条件が守られなかったら、ただで没収するくらいな厳しい罰則がつけられるようにしないと、私は、今後国有林が一切払い下げ、譲渡がない、してはいけないなどとばかなことは言わないわけです。状況によっては、そのことの必要も起きるかもしれませんが、少なくともそれが乱開発であり乱伐だということからする諸般の環境破壊あるいは生活破壊に通ずるような影響の出ない条件をつけて、でなければ譲渡などはしてはいけない、その違反があったときには非常に厳しい罰則を適用するというようなことにしないと、とにかく沖繩のあの遠くの方で買ってくれば、船賃もかかるだけあって、うんと安くてもうかるんだというだけで、従来はそうでなかったかもしれませんが、そんな考えで経済成長過程において資本が動いてきましたが、これからはもう許されないのです。  したがって、一体あれの譲渡をされた、三十九年でしたか、譲渡をされたあの時代における、いま私が言ったような条件が何かついているのか、今後もしそういうことをやるときには厳しい条件をつける必要があると思うが、いま私の言ったような厳しい条件をつけるお考えがあるかどうか。さかのぼって、第一にお伺いした、四〇%以上の残余の国有林を、やがての時期にまた譲渡をすることがあってはいけないと思いますが、そんなことがあり得るかどうか。三つに分けて……。
  20. 藍原義邦

    ○藍原説明員 先生ただいま御指摘の西表の国有林について、簡単に初め概要を申し上げます。  西表は、総面積で約二万九千ヘクタールございます。そのうちの八五%くらいの二万五千ヘクタールが国有林になっております。その中で、いま先生は国有林の払い下げとおっしゃいましたけれども、伐採いたしました後、個人に造林義務を与えまして、その後で、いずれその造林木が大きくなりましたときに、伐採するときの割合を一応決めた部分林制度というのがございます。西表につきましては、部分林という形で九千七百ヘクタール、約四割でございますけれども設定いたしております。これは、琉球政府から引き継ぎましたときにございました一万三千ヘクタールを、国有林の中に国立公園を設定するというような関係から、九千七百ヘクタールに修正いたしまして、部分林の契約をそのまま続行しておる次第でございます。したがいまして、今後この契約がふえるということは、現時点では考えられておりません。  それから、国有林の経営でございますけれども、引き継ぎましてからは、当地方におきましては、三年間で約二ヘクタール程度の伐採が行われた程度でございまして、ほとんどの伐採が行われておりません。さらに五十一年度に、この地方につきまして、国有林の地域施業計画というものを立案する予定になっておりますので、その時点におきまして、地域の要望を十分勘案しながら施業計画を立ててまいりたいというふうに考えております。  この施業計画を立てますときに、地域の要望その他を十分勘案しまして立てますので、その旋業計画の立案の中に、森林の経営のあり方あるいは伐採の仕方、植林の仕方というものを逐一設定いたしますので、こういうことによりまして、今後の国有林の経営というものは十分対応できるのではなかろうかというふうに考えております。
  21. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、いま西表で契約をして伐採をしているために起きている、いろいろな種類の心配すべき事態というのは、ぴちっとそのことを見越して契約をしているんだから、もしあるとするなら林野庁の責任なんだ、こういうことになるわけですか。
  22. 藍原義邦

    ○藍原説明員 国有林の場合、伐採いたしますときには、毎年伐採量、面積を確定いたしまして、たとえ部分林であろうと、その範囲内で実行いたしますので、私どもの立案いたします計画に基づいて実行してまいりますれば、先ほど申し上げましたように、地元の要望等を十分入れた施業計画を五十一年度から組み直すことになっておりますので、それに違反して実行をするようなことはなかろうというふうに考えております。
  23. 原茂

    ○原(茂)委員 おっしゃることはわかるんです。  しかし、現に憂うべき事態が起きているんです。本年三月、沖繩県が部厚な報告書を出しているのですが、その中に、現に林業専門家が行っても、これは困る、こういうことはいけない、こういうことは大変なことだ、あるいは洪水や地崩れの原因になるような伐採だということが心配される事態がもう現に起きておる。事態が起きておるということは、私は実はこう考えた。  まあ古いし、沖繩から受け継いだのだし、それで、十分なそういうことの配慮がされて契約がいままではされていなかった、これからは、これらの経験をもとにしながら、もっと厳しい、先を見た、この種の問題のないような契約をいたします……。そうでないと、いままでやったことも、部分株といえども自分たちが十分に立ち会って見て、こうしろという年度年度の計画を立ててやるのだから問題がない、言ったとおりにしていれば問題がないはずだ、こういうことだけで終わると、どうもそこらにまだまだ問題が残っていくと私は思うので、従来よりは一段と厳しく今後はやっていく、計画、契約、あるいは何かするときにも、この種の憂うべき問題の起きないようにしていくつもりだ、しかし、現に起きておるとするなら、これに対しては、契約条項に合わせてパルプ資本なりあるいは何なりと話をしながら、そのことに対する手当てはしますというように区別しないと、これは全部林野庁の責任だというのと同じ答弁になりやしないかというので、しつこく聞いているのですが、もう一度答えてください。
  24. 藍原義邦

    ○藍原説明員 琉球政府から引き継ぎます以前に、約千五百ヘクタールほどの伐採が行われております。この伐採跡地につきましては、人工で種をまきます造林、あるいは萌芽造林、萌芽といいまして、そのまま芽を出させまして成林させるやり方、こういう形で、人工下種につきましては千三百ヘクタールほどやっております。  この結果が、果たして先生御指摘のように、いい山になっておるかどうか、この辺は先ほど申し上げました五十一年度に編成いたします施業計画のときに、その辺の検討を十分組み入れながら、もし過去に失敗がございましたら、そういう点は十分反省しながら、五十一年度から始まります施業計画につきまして組み入れて検討し、いままでございました点で適切でないものがもしあるとすれば、そういうものは十分組み入れながら施業計画の編成をしてまいりたいというふうに考えております。
  25. 原茂

    ○原(茂)委員 西表の問題の最後に、もう一度大臣にお伺いしておきたいのです。  今後、開発も両立させようというお考えの中に、たとえば一番大事なのは、西表の場合には北部一周道路、それから中央の山岳部を横断する道路が必要だということになっているわけですね。海の公園十カ所というようなことを中心にした開発と、それから自然保護というものを両立させるのだというたてまえがもっと具体化してこないと、いろいろ大臣にお伺いして、こういう点はいままでの経験からどうかと思うというようなことが言えないから抽象論になりますので、それは、きょうはよします。具体的な計画がいつごろできそうなのかをお答えいただいて、それによってまたそのときにお伺いします。  もう一つ最後にお伺いしたいのは、いま言った、たとえば道路ですが、開発、自然という相関で考えたときには、せめてあの山岳道路だけはやめて、一周道路だけにするくらいなことは配慮しないといけないのじゃないか。これは素人考えでわかりませんが、現地へ行って見てないですから、皆さんは行ってこられたのだからもっとわかるのでしょうが、せめて山岳道路だけはやめる、一周道路だけはやるというくらいにしないと、開発即自然破壊という点での問題が非常に起きるのじゃないかという感じがしますが、この点はどうかなというのを二つ目に、これはずばり端的にお答え願  いたい。
  26. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私も同感でございまして、中部の国有林をずっと縦貫いたします道路、これはぜひやめてもらって、海岸道路を早急に、できるだけ早くひとつ私ども建設にお願いをしてやってもらおうと思っております。林野庁の方でも、また地元の方々も、従来できておるものでとめて、あとは——しかも従来つくりましたものでも相当何といいますか、ひどいつくり方がございますので、これなんかも見まして中止をいたしましたり、また植生の回復に努力をしたり、私、参りましたときは所管大臣でないのに、わざわざ林野庁のあそこの職員まで来てくれまして、うちの保護局長とも十分打ち合わせをして、林野庁も非常な協力体制をとっていただきました。  そういう意味で、おっしゃるように私は真ん中だけは認めたくない、また地元の方も納得していただくようなことをひとつぜひやっていきたい。海岸道路は一日も早く整備をして、そして西の方にも何か私どもの観光にも資する、また国立公園の管理上も必要な、利用できるような施設も将来ひとつ私どもでつくってあげて、できるだけ海中公園等についても全体的に私、いま一つ構想は持っておりますが、それができるかできないか、まだいろいろ各省との連絡もありますので、申し上げるのははばかりますけれども、おっしゃるような考え方で進んでまいりたい、かように考えます。
  27. 原茂

    ○原(茂)委員 この問題の具体的な問題が少し出てきてからでないと抽象論になりますので、後に譲るのですが、私は、保護と開発と両方をという長官のアイデア、確かにできればいいことだと思いますが、大変多くの問題が出てくるんじゃないだろうかという疑念を持っておりますから、いまここでは同調しないでペンディングにしておくわけですけれども、後でまた計画を十分見せていただくようにいたします。  ついでに、やはり島の問題を先にお伺いしておくのですが、三宅島が、報道されているようにネズミがふえ過ぎて大変だというので、大体いま三宅島に住んでいる人一人に八匹ぐらいのネズミがいるというので、作物も三分の一ぐらいはどんどん食われちゃうし、野ネズミ中心のクマネズミなどいろいろなネズミがいて、とにかく手に負えなくなったというので、いま、かつてほかでやって失敗と成功の例があるのですが、イタチを導入して、ひとつネズミ退治をやろうじゃないか。これもイタチ導入ということが環境庁で許可がなければできないわけなんですが、イタチは御存じのように湿地がないと生息できない。三宅島は川がない。池が二つしかない。こんなところで一体イタチが本当に住みつき生息できるのかどうかという心配はあるのでも、やってみなければわからないというので環境庁に許可申請が出ていると思うのですが、許可をする方針かどうか、ひとつ。
  28. 信澤清

    信澤政府委員 ただいまお話のございました三宅島の野ネズミ退治のためにイタチを放したい、ついては八丈島でイタチを補獲をいたしたい、こういう許可申請が東京都を通じまして本年八月三十日に出ております。  これにつきましては、いろいろ問題がございます。問題があると思いますが、都の調査等から考えますと、ネズミ駆除のために的確な方法がない、こういう事情もあるようでございますので、いわば試験的に二十匹、八丈島での捕獲を認める、こういう決定を十月の十六日にいたしております。この旨東京都を通じて通知済みでございます。  ただし、あそこでイタチが繁殖することが将来にわたって問題が出てくるおそれがございますので、当面は雄のイタチを二十匹放つ、こういうことでございます。
  29. 原茂

    ○原(茂)委員 環境庁では調べているのですか、たとえば三宅島にいるアカコッコだ、それ何だという珍しい鳥が生息しているところにイタチが行く、ああいう下に住んでいるやつなんか、もろにイタチに食われちゃって、そういう意味から言うと保護という前提に立ったとき大変大問題だ、こう言われているのですが、このイタチの生息状態から言って、その危険がやはりあるというふうになっているのでしょうかどうか。これが二十匹だけ許可されたそうですが、将来次をもっと捕獲を許可するという時期は何年も先になるのですか。  二十匹を入れてみた、その結果まだもう少し補獲をして持ってきたいと言ったときに、その二十匹の結果を見ない限り、あるいはその結果というのは一年、二年かかって見るのかどうか、その時期の問題をどう考えているのか。現にネズミ算式にふえるわけですから、こういうのをそのままほっておいていいのかどうかという問題があるし、三宅島にとっては大問題なわけでしょう。だからその次の時期、どうなるんでしょうね。
  30. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど申し上げましたように、試験的にということで二十匹の捕獲を認めたわけでございます。お話しのように、アカコッコその他鳥類に対する影響というものは、これはやはりあるというのが学者の御意見でございます。  ただし、八丈島からイタチをとるわけでございますが、八丈島自身も昔はイタチがおらなかった。しかしネズミ駆除のためにイタチを導入して、それなりの生態系を保っている、こういう現実もあるようでございますので、それらの事情を反面さらに調査を進める。同時に、今回放します二十匹の生息状況あるいはそれが生態系にどういう影響を与えるか、これは追跡調査を都にお願いいたしておりますので、その結果を見ながら、次の機会にいま先生おっしゃったような事情を考えながら判断をさせていただく、こういうことにいたしております。(原(茂)委員「一年とか二年とか」と呼ぶ)いや、そう長期的なものじゃございません。雄だけでございますので、恐らくそう長くもつわけがないと思いますから、せいぜい長くても一年ということじゃないかと思います。  ただ反面、学者の方の御意見によりますと、たとえば三宅島には八丈島と違って水がない。したがってイタチの生息環境からいってむずかしいのじゃないか。しかし島民の非常な御希望でございますから、今回試験的にそのような措置をとった、こういうことでございます。
  31. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもいまの話で、早くて一年くらいいろいろな調査をしなければいけないようですね。  そこで、ネズミの問題を今度大臣にお伺いするのですが、ネズミというのは日本環境破壊どころか大敵なんですよ、これ。大臣のところはネズミに悩まされないかしらぬが、私の選挙区のうちなんか、がたがた寝られないくらい悩まされまして、赤い米みたいなものをまいたりいろいろやっていても、ちっとも減らないのですね。聞いてみると、学校などが大変なんですね。給食やっていますが、ネズミの持っておりますいろいろな菌やその他が給食を通じて児童に影響があったら大変だというので、特に学校なんか相当神経を使っているようです。もちろんこういったビルディングにもいっぱいいるわけなんですが、こいつを何とかして適切にせん滅しないことには、これは日本環境破壊の最たるものですよね。  そこで、今回ネズミを聞こうと思って聞いてみたら、食糧に及ぼす被害などがあったとかありそうだというので、農林省が一部考えている。それから保健衛生の立場から厚生省もちょっぴり、ネズミの係はいないんだけれども考えている。それから住宅や何かに及ぼす被害については建設省考えている。それじゃネズミというこの大敵に対して、どこか中心的に何かやるところないのかと言ったら、環境庁の御答弁で、調べてもらったら、それはとうとうございませんというお答えだったので、実は唖然としたのですが、私はほっておいていい問題じゃないので、いま農家だって、恐らく野ネズミを中心にどのくらい食糧被害を受けているかわからないわけでしょう。したがって、ネズミというものをどこが中心にやるか考えて、至急にネズミに対する対策責任官庁を決めてやるべきだと思いますが、これは余談のようで恐縮ですけれども、これは大変だなと思ってお聞きするのです。大臣、ひとつ何とかすべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  32. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ネズミはまず厚生省と農林省こういうことになっておるわけですね。野ネズミについては農林省、それから家屋一切の中のネズミについての駆除は厚生省ということになっておるのですが、おっしゃるように本当にだれか責任を持って、この害のあるネズミの一斉駆除、大敵に向かうということの責任官庁がない。本当にそのとおりでございまして、御指摘をいただきますと、これは十分考えていかなければいかぬ問題でございますので、いま突然でございましたが、主としてはやはりいま申し上げた農林、厚生の問題なんですけれども、厚生省がやはり一番中心になっていくべきじゃないかと思いますが、関係大臣とよく相談してみまして、何らか対策ができるものか研究し、検討申し上げましてから次の機会にお答えをさしていただきたいと思います。
  33. 原茂

    ○原(茂)委員 とにかく大臣日本の鼠族退治のためにこういう機構をぴしっとつくったというようなことになるように、ひとつぜひ考えてください。本当につまらないようなことですが、ネズミというのはばかにならないのですね。大変な問題だと思いますから、ひとつお願いしておきたい。  ニホンカモシカの問題に今度は入るのですが、私は前に、六月二十五日にこの委員会で文部大臣、文化庁長官等においでいただいてカモシカの捕獲を許可すべきだという点からいろいろと御質問をしたわけです。当時、長官おいでにならなかったのですが、おっしゃるとおりだから大至急に検討をして結論を出しますと文部大臣も言っていれば、それから文化庁長官も言っていれば、また、林野庁の野辺さんもおっしゃる、あるいは環境庁の相馬さんもお答えをした。みんなとにかく前向きに検討して大至急に結論を出すという答えがあるのです。六月二十五日。これは一々くどくお聞きしてもしようがないから聞きませんが、きょうは信澤局長も来られていますから、相馬さんのお答えになった問題が、その後庁内でどういうふうに検討をされ、どういう進展が見られるようになったか。半年たっていますから、前の締めくくりの意味で、まず先にお伺いしておきたい。
  34. 信澤清

    信澤政府委員 六月二十五日に先生から御質問のあったことは十分承知いたしております。  その後具体的に長野県、岐阜県、青森県合わせて三つの地区から法律に基づく捕獲の許可申請が実際に出ております。そこで、その際に文部省からお答えがございましたように、いわゆる私どもの鳥獣保護法の対象であると同時に、特別天然記念物でもあるということで、文化庁もニホンカモシカの保護増殖に努力をされてきておるわけでございまして、そういう観点から当時の文部省のお答えは至急に調査をする、しかもそれは学問的な調査をする、こういうふうにお答えをしたはずだと思います。私ども伺った範囲でも、それぞれの地域の大学の専門の先生に御調査をいただいている。ただし、まだ結論が出ていない、こういうことでございますので、私どもは至急にその結論を出していただきまして、当面の責任者はこの問題については文化庁と私どもでございますから、その結論を踏まえて結論を出したい、こういうことでございます。
  35. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほども途中でちょっと触れたのですが、もう冬が来ますので、またやられるわけですよ。現在でも金額にして何億という被害を長野県で受けているわけでしょう。一冬過ぎれば、また膨大もない被害を受けるわけです。検討をされて、研究をされて、結構ですが、いつごろ結論を出すという——仕事をするのに、いつも言うのだけれども、いつまでにというおよその見当をつけないでもって、検討します、検討させる、勉強させるなんという、ばかな仕事の仕方はないんで、いつまでにやってもらいたいと学者にだって言っていいと私は思うのです。皆さんが局で仕事をするときだって、これをいつまでにやろうじゃないかという目標なしにやっているなんというばかなことは、民間の企業だったらつぶれてしまいますよ、そんなことをやっていたら。だから私は局長にいま聞きたいんだが、いつまでに結論を出すつもりでやっているのですか。
  36. 信澤清

    信澤政府委員 文化庁の方から専門の学者にお願いをしていることでございますが、私どもといたしましては、いま先生御指摘のように冬が参りますれば、また被害が出るわけでありますから、その前にしかるべき措置をとりたい。実はそういう結論が出たわけではありません。出たわけではありませんが、一部にございますように銃殺しろというのはいかがかと思いますが、捕獲を認めて、それを現地で飼育するというふうなことについては、場合によっては考えられることもあるべし、その場合の条件等については、ただいま申し上げました五ヵ所から出ております申請の方々に対しては、仮に捕獲をし、それを現地で飼育する場合にはどういう方法でやるのか、そういう点までも片方で詰めながら文化庁の方の御調査結論を待っている、こういうことでございます。
  37. 原茂

    ○原(茂)委員 冬が来る。被害は現に起きている。また被害が起きそうだ。結論を急ぐ。だけれども、いつということははっきりしない。その間できるだけのことはしなければと考えておられる。そのできるだけのことは何でしょうか。何をしてくれるのですか。
  38. 信澤清

    信澤政府委員 被害を防ぐためには捕獲の方法というのも一つあるかと思います。それから反面カモシカがたとえば植林地に立ち入らないように、さくをめぐらすという方法も、これはニホンカモシカについてやった実例はないようでございますが、シカについては丹沢あたりでかなりの効果を上げているということでございます。したがって私どもとしては、捕獲だけを中心考えるわけではなくて、防護壁の問題をどうするか、そういうことで丹沢でございますとか、あるいは一番問題になっております長野県につきましても担当課長を派遣いたしまして、仮にさくをめぐらすとしたらどういう方法があり得るか、こういう点の検討もいたしておるわけでございます。  したがって問題は、カモシカの被害があるということは先生御指摘のとおりあるわけでございますから、関係省庁もそれを認めておるわけでございますから、いかにそれを防ぐかということで、防ぐ方法として捕獲が適当か、他の方法によるべきか、他の方法はいまでも検討なり準備は進められるわけでございますから、そちらの方をまず私どもとしては考えているわけでございます。それでもだめだ、頭数が多過ぎて、ある程度捕獲して隔離しなければ被害の減少は見込まれないという事態になりますれば、また調査の結果もそれを認めるという方向が出ますれば、それはそれなりの処理をいたしたい、こういう考え方でございます。
  39. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣いまお聞きのとおり局長のおっしゃっているのは、実は重要なことは言っているのですが、現に被害をこうむっている者に対する補償の問題が出てこないのですね。これは文化庁と共同責任だからどうもしょうがないという——さっきちょっと言ったように、特別天然記念物に指定をいたしました、とってはいけません、殺すのはもってのほか、食い物は勝手に食ってこいといって食われたやつは損の泣き寝入りだ、こんなことが現代政治の中で行われていいはずがないわけですよ。特別天然記念物に指定をした以上——国がしたのですから、した以上、これはとにかく食糧がなければ生きていけないのですから、とにかく大事に育てろというのでしょう。そうっと遠くで見ていなさい。そしててめえの大事な五年生、六年生、三年生というヒノキだとか杉をじゃんじゃん芽のところを食べていく。手を出してはいけませんよ。そういうときには、それじゃ食われたやつには補償してやる、これでなければ政治じゃないですよ。  これは大臣、むずかしい規則がどうのこうの、いろいろ法律がどうのというのはみんなもらって一生懸命に見ましたけれども結論的に言うと、こんなもの法律でどうのこうのと言っても仕方がないので、そうじゃなくて、平たく話を考えてみれば、常識的にこういうことは出てきていいのじゃないかと思うのですよ。そういう点を矛盾だと感じませんか。どうでしょう。先に大臣、それだけ答えてください。
  40. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私も実は大変な、そういう点では国民が納得しない問題があるんじゃないかと思うのでございます。  大体カモシカの問題が起こりましたときに、私、先生の御質問課長から聞きまして、カモシカを保護するということ、あるいは捕獲なり射殺なり禁止をしているということは二つ考えられるんじゃないか。一つは、天然記念物として保護する。天然記念物として保護するならば、数はそんなにどんどんふえていくことまでも、そう考えないでもいいわけでありますね。天然記念物としてこれは絶滅するおそれがあるからやめるということはわかりますけれども、いまいる、あるいはまた一定の数があれば天然記念物としての目的は達成する。とすると、これは捕獲なり、あるいは射殺を禁止したということは、動物愛護の問題かな。そういうことであるとすると、一方被害というものについて、これを防止するだけの対策は講じなければいかぬのじゃないだろうか。  やはり鳥獣というものを保護していく場合には、それだけの金もかけ、あるいは対策もとって、そして被害が出ないようにするのが本当ではないだろうか。青森県なり長野県なり岐阜県と相談をして、そういう対策を早急にやはりとるべきじゃないだろうか。そうして付近の被害がないようにしていかなければならぬ。じゃ被害がある人に補償する制度があるのかと研究をさせてみましたら、全くないわけでございまして、これは現在の行政上の措置としても、どうもこれだけを被害の補償をするという、政治家が考えれば、先生のように、それは補償するのはあたりまえじゃないかと思いましても、国の法制上あるいは行政上の制度として、これだけを取り上げて何億か何千万か補償していくというような行政上のいままでのやり方というものはないわけでございますから、どうしても被害が出ないようにしていかなければならぬのじゃないだろうか。そうすれば、生息地を一定して、そしてそれ以外に出ていかないように、また生息地の中で、この天然記念物が生きていけるような措置を考えていかなければならぬのではないだろうかということで、いませっかくできるだけ早くこの対策を決定していきたいと思って検討いたしておるところでございます。
  41. 原茂

    ○原(茂)委員 いま大臣も答えたように、行政上、法制上の補償の道がない。どう調べてもないのですね。で、私はそれをすぐ大臣にどうこうしてくれと言っても無理なことも知っていますよ。だから政治として、これは矛盾だとお考えにならないか、その点答えてください。
  42. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私が先ほど言いましたように、そういうことで被害を受けた農民なり、あるいは森林業者の不満があるということについては、もっともだと思いますので、行政上、政治上の矛盾ということになりますと、これは他にもそういうような例がたくさんあると思いますので、したがって政治的に考え、あるいは行政的に考えてみて矛盾と、はっきり何かそれが対策につながる意味で、補償につながる意味で、どうも公の場で私ははっきり認めるという——誤解を与えてもいけませんので言葉を変えて申し上げているわけでございますが、確かにそういう被害を受けた方々がどうもおかしいじゃないかと思われるのはごもっともだ。それだけにひとつ御理解をいただきたいわけでございます。
  43. 原茂

    ○原(茂)委員 政治ばかりでなくて社会全体が矛盾のかたまりですからね。他に例もあったって、そんな矛盾が幾つもあるのは当然なんで、その矛盾をどう解決するかが政治社会なんですから、したがって、そんなに大臣用心深くおっかながって、間接的には認めるけれども直接矛盾という言葉は使えないなどと言うのは、中国の覇権問題じゃありませんから、そんなに神経を使わなくてもいい。間接的には矛盾だということをお認めになったので結構ですが、私はこの矛盾を放置しておいてはいけないと思う。で、行政的、法制的に政府は補償する手段を持っていない、だけれども、何かやる方法がないだろうか考え、そしてなるべく早い機会にこの種の矛盾、この種の補償が現に支払いのできるような法制的な手続をつくらなければいけないというふうに考えますが、いかがですか。
  44. 信澤清

    信澤政府委員 ただいま先生カモシカの問題に関連してお話を御提起されたわけでございますが、先ほど来のお話にございましたように、いわゆる保護と開発という問題を考えます場合に、自然はやはり守らなければならぬ、反面先生のお話のような、その目的にもよりますが、ある程度の開発は必要だ、その開発を抑制するとするならば、それによって被害を受けるという方々が当然あるわけでございまして、そういった自然保護と費用負担の問題というのをだれがするか、またそういうマイナスの費用負担を強いられた場合に、それをどのように始末をするか、これは大変むずかしい問題だと思います。  そういう意味で、当面ニホンカモシカの問題で先生お尋ねがございましたが、私どもはやはり自然保護とそういった費用負担あり方ということを基本的に解決しませんと、ただ口頭禅で自然を守れ、自然を守れと言いましても、なかなかこれはうまくいかない、こういうことを実感いたしております。そういう意味で現在、やや迂遠ではございますが、審議会でそこらあたりを理論的に整理をしていただき、若干の御提言もいただいております。その中には、いま大臣から御答弁申し上げましたように、現在制度的にあるものもございますが、できないものもたくさんあるわけでございますので、そういう問題の一環として、先生の問題は基本的に解決するという方向で努力したい。しかし、そのことだけで、いま当面のニホンカモシカの問題を放置しておく、こういうことではございませんので、それについては別途急いでどういう方法があり得るか、私ども事務当局は事務当局なりに検討いたしてみたい、このように考えております。
  45. 原茂

    ○原(茂)委員 そんなのらりくらりした答弁じゃ問題の核、心をただ先に延ばすだけで、私は、環境庁が非常な決意を持って、この種の問題の解決にはこうしなければだめなんだということを各省に示さない限り、問題の解決にならぬと思いますよ。いまのように、だから、今後被害を防護さくによって、紙袋によって、忌避剤によって、あるいは捕獲によって防いでいくんだということはあたりまえのことだ。現に何億という被害が起きているのですよ。これに対してどうするかということを考えてやらないと、現にもう失業者は出てくる、山林業務はできなくなってくる、業者は廃業しなければいけなくなるという社会問題が起きているのですよ。  そのことがもう現に目に見えてわかっているのに、これに対する何かの補償をしなければいけないという考えすら持たない、そういう答弁すらない。何とかしなければいけないので、そういった補償の道を講ずるように環境庁としては責任を持って考えるというようなことがない限り、こんな問題どこがやると思いますか。環境庁がやるべきじゃないですか。そのために環境庁はある。その種の矛盾なり問題があったときに、それに対しては、こうあるべきだという指針が環境庁から出てきて初めて環境庁の存在があるのであって、全然そのことを避けていつも通っていったら、気の毒な失業状態にある人、山林労務者を、山林を持っていながら、それで食おうとしたが食えなくなって放棄する人々、この社会問題をだれが一体解決するのですか。  もっと温かい気持ちでこの問題に取り組むという姿勢があれば、おのずからその問題が出てきて当然じゃないですか。いますぐできない。わかります。だが、そういう方向検討しなければいけないと思っています。ほかに問題があるのはあたりまえですよ。いっぱいありますよ。野ウサギだってありますよ、鳥だってありますよ、ムクドリでも。これも大問題ですよ。そういう問題があるからといって、カモシカだけを言ったら、そっちも影響を及ぼしてくると大変だろうという配慮があるかもしれませんか、私は、その問題全部一緒にひっくるめて、やはり基本的な方針としては環境庁が指針を出していくことが必要だと思うから、しつこく聞いているわけです。もう一度答えていただきたい。
  46. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いや、もう先生のおっしゃるとおりだと思うのです。カモシカのみならず普通のシカでも、栃木県で相当被害を及ぼしております。御承知の鳥のために、実は私の選挙区で何十町歩というブドウ園を世話をして構造改善でやらしたのですが、これはことし行ってみましたら、大変な鳥の被害でございます。いろいろな対策をとっても、とてもやれない、かすみ網で一網打尽にといっても、これは許さないということで非常な矛盾があるわけでございます。  カモシカの場合は天然記念物との関係もございますので、特に私は何らかの取っかかりができないか。普通の鳥と違いますから、またいわゆる普通のシカと違うのだし、そういう意味で、これは十分検討しなければいかぬと思います。思いますが、現在ここで、その被害の補償について政府として責任を持った答弁ができないのははなはだ残念なんです。先生おっしゃるように、環境庁中心になって、この問題で、ある程度国民が納得するような措置ができないかということは十分検討いたします。また交渉もいたします。しかしこれが、そう申し上げて非常な期待を与えて、もしできない場合ということを考えますと、これは非常に御迷惑もかけますので、先生と同じ気持ちで私は努力はいたしますが、その辺できょうは御勘弁願いたいと思います。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 わかりました。その熱意をひとつ実行に移してもらいたいので、最後に二点具体的にお伺いする。  森林国営保険法というのがありますね。その事業対象として、災害対象としてこれを取り上げるようにすることが緊急に何らかの手当てをする一助になる、それが一つ。それをぜひ実施してもらいたいが、いかがか。  それからもう一つは、いまの被害地の現に受けている被害に対して何らかの形で、金利の問題であろうと何であろうといいが、助成対象にする、その額なり対象の量は問題じゃないのですが、とにかくその道をつけないことにはということが一つ。できるかどうか、これはぜひやるべきだ、こう考えます。  それから、具体的な先ほどのお話がありました捕獲の問題ですが、この間は相馬さんが来られたその前後、飯田あるいは清内路で二十七頭の捕獲がいま対象に検討されているようですが、私は二十七頭なんという捕獲ではだめだと思うが、捕獲に対しては、この間も言ったように、麻酔銃でも使うことを文化庁長官は言っていましたけれども、とにかく法政正が必要なら法改正を大至急にやるように、提案の準備をしているかどうか文化庁にやがて聞きます。しかし、どうもいましていないらしいので、法政正をして麻酔銃が使えるようにして捕獲をして、そしてある特定の地域にこれを移して保護をする。  で、大臣の言われたようにそんなに数は要らないのじゃないかと考えますが、雄の捕獲をしたら、いわゆる雄の去勢といいますか、ある程度思い切ってやるというようなことを含めて一定の地域に入れたらどうか。松川入山林組合の場合には、飯田にちょうど国有林がわずかありますよ。これは林野庁御存じですが、これでは狭いに違いないけれども、いまのところは、国有林の防護さくを施して、ここに特別移すというようなことが、まず当面やられていいのじゃないか。防護さくの費用も大事ですからやってもらいますが、そういった点、四つに分けて最後にお答えをいただいて終わります。
  48. 藍原義邦

    ○藍原説明員 初めに国営保険の問題でちょっとお答えいたします。  現在森林国営保険をやっておりますけれども、これは気象災あるいは火災、一応これを対象にしてやっております。ただいま先生からもお話しございましたように、野ネズミあるいはウサギ、この被害が、現在森林におきましてはカモシカよりももっと大きな被害になっておりますし、こういう動物からの特殊な地域に限られた災害に対して、これらの保険が適用できるか非常に疑問点がございますので、私ども考え方としては、このカモシカの被害というのは、ちょっと保険にはなじまないのではなかろうかというふうに考えております。したがいまして、先ほど来環境庁の方からお話がございましたように、これに対する防除として、捕獲その他をできるだけ早急に考えていただきたいということで、来年度予算にも捕獲についての予算はいま要求中ではございます。  それからカモシカを飼育するための特定の地域を国有林あたりに設けたらどうかというお話しでございますが、これも現在文化庁等を中心検討していただいておりますカモシカの生態なり生息、そういうものを十分調査いただいた上で、その方向が決まりますれば、将来に禍根を残さないような形で私どもとしても対応はしてみたいというふうに考えております。
  49. 信澤清

    信澤政府委員 三番目に仰せになりました麻酔銃の問題でございますが、これは文化庁でございませんで、私どもの所管のいわゆる鳥獣保護法、この問題でございます。先生から御指摘ございました際、相馬課長から法律改正の問題として検討いたしますというお答えをしたはずだと思いますが、現在あの法律全体について法律改正をするということで、ここ二年くらいすでに検討いたしておるわけでございます。先般もこの問題を議題に供しておりますが、委員の中では必ずしも賛成を得られないという状態でございます。しかし、仮に将来捕獲あるいは単なる捕獲ではございませんで、いま先生おっしゃった隔離というような状態で保護を図るというような事態になりますれば、一番無傷に捕獲をする一つの方法であろうというふうに私ども考えますので、その法律改正の中で、先生のお話しのような点を具体化するように努力をしたい、このように考えております。
  50. 原茂

    ○原(茂)委員 ぼくが言った、災害に対する助成を、せめて少しでもやるようなことを検討すべきだということに対して答えてもらいます。  大臣、その問題が一つと、それからいまの森林国営保険法の災害対象にいまのところはむずかしいのじゃないかという林野庁の答えがありましたけれども、これは大臣、前向きで検討するということにしなかったら、いま何の補償の道もありませんからね。何もないのですから。したがって、これは大臣責任で今後の検討を大至急にやってもらわないといけないと思いますが、いかがですか。
  51. 小沢辰男

    小沢国務大臣 林野庁の指導部長から、いまなじまないという答弁がございました。私、実はずばり国が金を出して被害を補償するということは、なかなかめんどうだと思いますが、たとえば被害を受けた森林業者なり、あるいは農民なり、そういうところへ何か——もちろん天災融資法と同じようにはできないと思いますけれども、何らかそういう道を検討する方法はないだろうか、国が金を与えるのではなくて、希望によっては、いろいろ対策をとるための何か融資の道等がないか、あるいはいま保険の問題を出されましたが、カモシカのみならず、まだたくさんございますので、そういうような点を何らかの形でそういう保険制度に乗っかるような道ができないか、少しくらい無理でも検討できないかということを、至急ひとつ農林大臣ともよく相談をさせていただきます。  ここで、できるできないを私申し上げているわけじゃありませんが、先生の本日の御質問、まさに一般の国民から見れば、本当にどうしようもない、何らか行政なり政治の面で対策をとらなければおかしいじゃないかという気持ちは十分理解できますので、そういう意味で文部大臣あるいは農林大臣等とよく相談をしまして、検討方向を具体的につけ得るかどうか、できるだけ誠意をもって検討させていただきます。
  52. 原茂

    ○原(茂)委員 終わります。
  53. 井原岸高

    井原委員長 庄司幸助君。
  54. 庄司幸助

    ○庄司委員 いまの質問のやりとりを聞いておりまして、私も関連して大臣に一言だけ野鳥の問題で伺っておきたいのです。  いま、もっぱらカモシカの問題が中心だったようですが、最近、鳥獣保護区あるいは禁猟区、こういうものが設定されることによって、最近カモが非常にふえてきた、こういう事例もあるのですね。カモは新潟だってどこだっておりますから、大臣も御存じだろうと思いますが、あの大きなくちばしで稲をしごくのですね。大体一房ぐらいあっさり食っちゃうんです。これの被害相当出ているのですね。  私は鳥獣保護、これは全面的に賛成ですから、これは大いにやってもらいたいと思うのですが、やはり保護するからには、それに対する費用負担といいますか、これは当然必要だろうと思うのです。その点でやはり鳥獣を保護する、あるいは環境保全するというたてまえからいくならば、当然そういった経費は、指定した側において持つべきだろうと思うのです。これを農民だけに、ひとつおまえさんのたんぼでえさやってくれというのは虫がよ過ぎる。これは農民の間からも非常に反発が出ていることは間違いないのです。その点で、野鳥保護の問題にも関連して、いま大臣が御答弁あったようですが、これもひとつその範疇に入れてもらいたい。これは簡単で結構ですから、一言御答弁願いたいと思います。
  55. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私、先ほど申し上げましたのは、国が特に保護し保存をしなければならないと決めた天然記念物のカモシカという点に着目をいたしまして、何らかの方法を検討すべきじゃないかというふうに申し上げたんで、一般的に鳥の被害、これ全部を財産補償という面から検討していくということは、私は非常に困難だと思うのです。あちこちでそういう被害が出ていることは確かで、きのうも私あるところへ若干視察に行きましたところが、いま先生おっしゃったカモの稲作に与える被害というもの、非常に大きな被害だということも承ってまいりましたのですが、これらについては、被害を防ぐ方法を鳥獣保護との調和を図りながら、どうやっていくかということにやはり重点を置かなければいかぬではないだろうか。  そういう意味検討をさしていただくことにいたしまして、一般的な鳥のいろんな面に与える被害を天然記念物のものと同じように全部検討を始めるということになりますと大変な問題でございますので、この点は私、いまここで天然記念物のカモシカの問題と同じ範疇で全部入れまして検討をするということは、ちょっと自信がございませんので、むしろそういう被害を起こさないような、どういう措置をとるかということに真剣に取り組ましていただきたいと思います。
  56. 庄司幸助

    ○庄司委員 いや、これは被害を起こさないようにといったって、相手は鳥のことですから、とにかくたんぼがあって稲が実っていれば、これは食うのはあたりまえなんです。鳥には、これは人間がつくった金になる作物だから食べないとか、あるいはこれなら食ってもいいとか、そんな識別はつくわけはないのですね。その点で、被害を防止するといったって、これは追い払う以外にないわけでしょう。追い払うとなれば、ちょっと音を立てたぐらいでは容易に飛んでいきませんから、どうしたって鉄砲で撃つしかない。ところがそれは、まあ禁猟区である、あるいは鳥獣保護区であるということで差しとめを食っているわけです。だからその辺は、これは天然記念物の指定があろうとなかろうと、やはり鳥獣保護、しかもこれは日本の国民にとっては大事な存在ですから、そういうものを農家だけが負担するというのは、これは非常に矛盾だと思うのです。この点はひとつぜひ前向きに検討していただきたいと思うわけです。私の本題はこれでありませんから、次に移らせていただきます。  過日、八月二十六日に、われわれ決算委員会の一行があの松尾鉱山跡地を拝見してまいったわけです。その前から、岩手の県民あるいは下流の宮城の県民にとって、松尾鉱山跡地対策というのは非常に重大な関心を持たれているわけです。それは一つには、岩手の県民にとってみれば、これは石川啄木の生まれた渋民村ですね。あれは啄木の歌にもあります。「やはらかに柳あをめる北上の……」こういった歌があるのですが、この北上川があの松尾鉱山対策によって見るも無残な茶褐色に変貌しているわけですね。これは環境保全の上からいっても実に重大な問題だろうと思うのです。川といえば青々と流れる、これが常識ですから。それがあんなに真っ黄色になっているという問題もあるわけです。  それから、その下流に四十四田ダムがございますが、これは盛岡との境目あたりですが、この四十四田ダムに松尾鉱山から流れ出たいわゆる有害物質の砒素の堆積が非常に多い。もしこの四十四田ダムに堆積した砒素が何らかのことで下流に流れるようなことがあれば、これは流域農民にとっては大変な問題になるわけです。これは岩手県のあの東北本線沿いの水田地帯です、これはほとんど全部その影響を受けるわけですね。それからまた、下流の宮城県のいわゆるササニシキの米どころの農村一帯も莫大な被害を受ける。こういう点で非常に心配しているわけです。  さらにはまた、松尾鉱山の跡にいわゆる三メーター坑という旧坑道がありますが、これをコンクリートでふさいで、非常に濃厚ないわゆる硫酸水、これが約三百万トンたまっているわけです。これは通産省の方から言わせますと、相当厚いコンクリートの壁をつくったから絶対漏れるようなことはないと言われておりますが、もしこれが地震か何かの関係で破れたような場合は、この三百万トンの——これは濃硫酸です。PHが一ぐらいですからね。この濃硫酸が三百万トンもあの赤川、松川を通って北上川に流れ出したということになれば、これは岩手、宮城県全体を汚染してしまう。大変な問題になるわけです。ですから、この北上川清流対策といいますか、松尾鉱山対策というのは非常に重要な位置づけを持つと私は思います。  その辺で、少し具体的に対策について御質問したいわけですが、一つは、あの松尾鉱山のいわゆる旧坑内に入っていく流入水。この流入水を減少する対策、これをとられているようであります。三メーター坑の三百万トンの問題は別にいたしましても、現在毎分二十トン程度、これもPH一・〇五の硫酸です。硫酸に近い水が流れているわけですが、現在の対策を見ますと、赤川源流の伏没防止対策事業、いわゆる三面張りの問題ですね。川の底と両側をコンクリートで巻く、これを建設省でおやりになっているわけですが、計画は二千六十六メーターです。ところが、この実積を見ますと、五十年度末で約六百メーターしか巻けない。これで二億二千四百八十万円、国と県でかけたわけですが、三年で六百メーターですから、年平均二百メーターです。  そうすると、計画の二千六十六メーター、これを巻くためには昭和五十七年までかかる。いまの進行速度でまいりますと、そういうことになるわけです。最低でも、この約二千メーター、いつまでにコンクリート巻きを、三面張りを完成させる計画なのか。これは早める必要があると私は思うのです。こんなスピードでは、やはり間に合わない。その辺いつまでの計画なのか。これは建設省でもいいですから、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  57. 栂野康行

    ○栂野説明員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいましたように、いわゆる保全水路というのは赤川の伏没水を減らすというために非常に効果があるわけでございます。現在までに約三〇%、完成しておりまして、私たちといたしましては、昭和五十五年度を目途に本工事を完成させたいというふうに考えております。
  58. 庄司幸助

    ○庄司委員 それからもう一つ、その問題でお伺いしますが、二千六十六メーター、赤川の三面張りをやっただけで赤川水系からの伏没水、これは完全に防止できるのかどうかという問題です。これには仏沢その他の支流からの伏没水もあると見られているわけです。現に岩手県の「北上川水質改善対策調査報告書」というのがあります。これは昭和四十七年度ですが。これを見ますと、「赤川源流伏没防止対策事業計画(案)」の図面がありますが、水路工の始点から水路工の終点まで九千三十九・五メーター、約九キロですね。これが示されておりまして、先ほど申し上げた二千六十六メーターというのは、これは当面計画になっていますね。そのほか水路工のほかに表面排水工とか、あるいは山腹工等々、こういうものが必要だ、こうされているわけです。その点で、ひとつこれらの全体はどうなさっていくのか、その点お答え願いたいと思います。
  59. 栂野康行

    ○栂野説明員 保全水路につきましてお答えいたします。  現在、坑内水は一分間に約二十立方メートルの水が出ておりますけれども、この保全水路二千メートルを実施しますと、毎分約二立方メートル程度削減が可態であるというふうに考えております。
  60. 庄司幸助

    ○庄司委員 毎分二立方メーター、マイナス、こうなるのですか。それとも毎分二十から二立方メーターに減ってしまうという意味ですか。
  61. 栂野康行

    ○栂野説明員 お答えいたします。  毎分二十立方メートル、現在坑内水が出ておりますけれども、この坑内水はいろいろな方面から入っておるわけでございます。そして保全水路としましては二立方メートルを少なくする。二立方メートル程度を削減するということでございます。
  62. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうしますと、この岩手県の対策事業計画案ですが、この九千メーター、これについてはおやりになる計画なのか。これは要らないとおっしゃるのか。その点ひとつ。
  63. 栂野康行

    ○栂野説明員 お答えいたします。  九千メートルにつきましては、二千メートルというのが特に緊急を要する個所でございまして、まず二千メートルをやってみまして、そして様子を見ながら、あとの残りの七千メートルでございますか、そういうものに着工するかどうか決めていきたい、こういうふうに考えております。
  64. 庄司幸助

    ○庄司委員 それからこの露天掘りの跡地、ここはもう非常に硫黄が露出していて、それで雨が降れば、それを溶かして硫酸水になっていく、あるいは鉱滓の堆積場とかいわゆる酸化する原因になる場所です。この露天掘りの埋め戻しについて計画では百六十三万立米、これだけ必要だ、こういわれておりますが、現在の実績は六十万立米ですね。ですから進捗率、これも五十年度末で三七%です。そのほかに、堆積場のA、Bと二つありますね。あるいは焼き取りかす跡あるいはパイライトシンダー、こういったA堆積場、B堆積場、その他申し上げた焼き取りかす跡、パイライトシンダー、この辺の工事の進捗状況、これは現在どれくらいになっていますか。何%くらい。
  65. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  露天掘り跡の埋め戻しの工事とか、あるいは堆積場の覆土植栽工事事業量でございますが、露天掘り跡の埋め戻し工事といたしましては、埋め戻し量が先生御指摘のように百六十三万立米ということで、堆積場覆土植栽工事としましては覆土量が千三百三十八万立米ということになっておりますが、昭和四十七年度から休廃止鉱山の補助事業ということで始めておりまして、五十年度末までに露天掘り跡の埋め戻し工事としましては、約七十万立米を行いました。それから堆積場の覆土植栽工事の設計も行う予定でございます。両工事の残りにつきましては、五十五年度までに完了する予定で進めたい、こう考えております。
  66. 庄司幸助

    ○庄司委員 五十五年度までにおやりになるという御答弁ですから、一応納得しますけれども、いまのこのペースで参りますと、どうしてもあと六、七年かかるのではないか、こう思われるのですね。  それから、この堆積場の問題について言うと、設計をいまからやる予定だという御答弁ですが、これでは、この堆積場なんか、いつのことになるかわからないと思うのですね。これは本当に五十五年度までに堆積場も含めてやり切れるのかどうか、その辺ひとつお伺いします。
  67. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  埋め戻し工事を先にやっておりまして、堆積場の方は、その埋め戻しの方の進捗状況をにらみながら計画設計をやっておるわけでございます。で、ただいま申し上げましたように、現在の予定といたしましては、五十五年度までに完了を目途として進めたい、こう考えております。
  68. 庄司幸助

    ○庄司委員 ちょっと私聞き漏らしましたが、あれですか、埋め戻しは五十五年度まで、堆積場跡も五十五年度までに完成するとおっしゃったのですか、もう一遍。
  69. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  埋め戻し及び堆積場覆土植栽というものを含めて、最終的に五十五年度までには終了いたしたい、このようでございます。
  70. 庄司幸助

    ○庄司委員 これは長官にお伺いしますが、五十五年度と、大体こうなっておるようですが、これは予算関係もあるわけですね。その点で、いわゆる五省庁連絡会議を主宰していらっしゃるのが私は環境庁長官だと伺っておりますが、この辺で、そういった予算措置も含めて五十五年度までに絶対完成させるという御決意でございますかどうか、この点ひとつお伺いします。
  71. 堀川春彦

    堀川政府委員 先ほども先生の御質問にもお答えいたしましたが、各省においてそれぞれ必要な応急対策並びに将来の恒久対策につながるような各種事業をやっておるわけでございます。  なお、今後に問題が、たとえば中和処理恒久対策をどうするかというような問題でございますとか、遮水トンネルをなおつけて、そして恒久的な解決に資するとか、いろいろな問題があるわけでございます。  これらについて専門家のいろいろな御見解もあり、関係の五省庁協議をしておるわけでございますが、いずれにしても、こういう問題を将来の恒久対策として最終的に完結するまでには、なお各種の水質、水量、地下水の挙動、地質、こういうことを事業をやりながら、一方においては調査をし、次の事業に資するということでやっておるようなわけでございまして、私どもといたしましては、予算のこともございますし、一応そういった科学的な基礎データの収集の上に立った的確な施策ができるように、しかも、それもできるだけ早期に問題解決が図られるように持っていくという考え方で、環境庁といたしましては、関係省庁会議をお世話を申し上げて、そういう方向に進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  72. 庄司幸助

    ○庄司委員 これは五十年八月三十日の岩手日報の記事ですが、表題が「のんき過ぎる北上川清流化対策」「県水質審で批判が続出」した、こういう報道がされております。  その中身を見ますと「北上川水質汚濁対策連絡協議会の専門委員会委員長・岩崎敏夫東北大教授)が松尾鉱毒水の抜本対策一つとして新中和処理施設の早期建設を国に対して答申したにもかかわらず、この答申を受け、建設主体などを決める五省庁連絡会議の話し合いがさっぱり進んでいないため、各委員から、強い批判が出た。」中でも「メンバーでもある下飯坂潤三東北大教授や後藤達夫岩手大教授らは「調査研究をいっている段階ではなく、もう国が実施しなければならない時期にきている」と強調したのをはじめ「四十四田ダムにたまっているヒ素ヘドロを考えると、のんきなことは言っていられない」など、こういった国のスローモー行政に批判が出た、こういう報道がなされております。  これは私どもが参りまして、現地でも若干そういう声を耳にしたわけです。その点で私は主宰する環境庁長官に、こういう批判もある、それから私が冒頭に申し上げた下流農民の非常に大きな心配もある。いまこの批判の対象になった問題は、例の中和対策一つはあるようでございますけれども、まあ中和対策は後からお伺いしますけれども、いろいろ埋め戻しや覆土あるいはまた三面張りの工事、こういった問題について、私はやはり予算がなければこれはやれない問題ですから、だからいまお伺いしたわけです。予算についてもひとつ責任を持って、各主管大臣協議をなすって、必要な予算は絶対つけてもらいたい、この御決意を伺ったわけです。それをひとつ御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  73. 小沢辰男

    小沢国務大臣 五省庁連絡会議で決定したことは、私、責任を持って大蔵大臣とも交渉いたします。
  74. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで、この五省庁連絡会議で決定するまで、これはやはりだれかがリードしなければ、なかなか進まないという実態があるのじゃないかと思うのです。その辺やはり、私はひとつ長官にぜひがんばっていただいてリードしていただきたい、五十五年度までに一切の対策を終わるというふうにしていただきたいと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  75. 小沢辰男

    小沢国務大臣 岩手の知事さんから、環境庁が非常に推進役を担って五省庁連絡会議を強力にやっていただいた結果、非常に進んでまいりましたという感謝もいただいているわけでございまして、私ども連絡会議を主宰しつつ、特に通産、建設その他を督励をいたしまして推進をしている立場でございますから、この北上川対策につきましては、もう先生同様に、それ以上に、環境責任を持つ者として決意を一層新たにし、強めて対策をとってまいります。できるだけのことはいたします。
  76. 庄司幸助

    ○庄司委員 それから、岩手県で出したこの「北上川水質改善対策調査報告書」これを見ますと、第二斜坑の問題が挙げられております。この斜坑の問題では「第二斜坑と言えどもコンクリートの強酸性水に対する防蝕の信頼度が薄いことから、万が一第二斜坑に陥没が発生した事態に備え、水位を現在以上に上昇させない方法を確立しておくことが必要である」こういうふうに述べられておりますが、この第二斜坑対策はどうなっておりますか。
  77. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  第二斜坑につきましては、御指摘のとおり、その内容が、坑内水流出に伴いましていろいろ変わってくることも考えられるわけでございますけれども、現時点におきましては、その対策といたしまして、コンクリート巻きということで一応その工事をやっているわけでございます。  今後の問題につきましては、現在関係の監督局部が、場合によって、必要に応じて巡回しておりますし、それから県あるいはその山元に関係のあるところがそういう内容を見て、あるいは問題があるとすれば、これの対策を講じるということで、現在全体の北上川対策の中で検討中の一つになっております。
  78. 庄司幸助

    ○庄司委員 それから、私、例の恒久対策の問題に触れたいと思いますが、これは昭和五十年の五月二十八日に出されました専門委員会の第三号答申というのがあるわけです。それを見ますと、いわゆる中和処理の問題について触れられているわけですが、「昭和四十八年、四十九年度実施された鉄バクテリア利用による中和処理方式に関する調査研究の成果から、これの実用性に確信が得られた。」こう述べられております。渋民の北上をあのように真っ黄色にしている原因が現在の炭カル投入による中和方式であるということは、決算委員会調査に参りましてよくわかりました。その点で、この鉄バクテリア方式というのが、一つは着色に対する対策にもなるし、あわせて砒素対策に非常に有効だということが述べられているわけですが、「実用性に確信が得られた。」ということなのですが、これに対する計画はいつできるのか、その点お答え願いたいと思います。
  79. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  松尾鉱山の坑水でございますが、PHが一・六あるいは鉄分が七、八百ということで、この鉄分の中和処理——非常に処理が困難な二価の鉄でございまして、これを低いPH値で処理するために三価に酸化する必要がございます。その酸化をバクテリアで行おうというのが御指摘の鉄バクテリア方式ということでございまして、現在同和鉱業の棚原という鉱山におきまして実用化されておりますが、こういう実用化された内容を踏まえまして、前処理の一方法ということで進めたい、このように考えておるわけでございます。
  80. 庄司幸助

    ○庄司委員 ですから、その計画がことしじゅうにできるのか、あるいは年度内にできるのか、その辺どうなのですか。
  81. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 この内容につきましては、関係省庁会議で、全体の計画の中で検討を進めていく、こういう段階でございます。
  82. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうすると、それいつになります。
  83. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答え申し上げましたように、現在検討中の内容を見て時期を決める、こういうことになろうかと思います。
  84. 庄司幸助

    ○庄司委員 さっき鉄を落とすためとお答えなのですが、実は砒素の問題、重要なのですね。毎年毎年四十四田ダムには砒素が相当量堆積が進んでいるわけです。ですから、この計画というもの、いつを目途にしているのかさっぱりわからないのでは困るわけです。その点で、何年度着工、何年度に完成する、この目安をはっきり示してもらいたいと思うのです。それを明示できませんか。
  85. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 現在の北上川水質汚濁対策各省連絡会議検討されておりまして、その結論を待って検討したい、こういうことでございます。
  86. 庄司幸助

    ○庄司委員 私は、どこの省庁だったかわかりませんが、第一期が五十二年度に着工して五十五年度までに完成させるという話を伺ったのです。現地でもそういう御説明があったやに記憶しておりますが、その点全然見当がついてないのですか。これは非常に怠慢じゃないかと私は思うのですが、どうなんですか、その辺。
  87. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 この鉄バクテリア方式につきましては、内容につきましてはいろいろ検討は現に行われているわけでございますけれども、その実施時期あるいは具体的な最終的の詰めた内容につきましては、ただいま検討中でございます。
  88. 庄司幸助

    ○庄司委員 先ほど私は新聞を読み上げたわけです。「のんき過ぎる北上川清流化対策」、批判が続出したわけですね。しかもこの批判は、新しい中和処理施設の早期建設の問題で批判が集中している。これが八月の段階です。それから九、十、十一月と、こういうほぼ三月ぐらいになってまだ検討中、検討中。「四十四田ダムにたまっているヒ素ヘドロを考えると、のんきなことは言っていられない」、こういう意見も出ているのです。これはどうも通産省の方から伺うと、さっぱり見当がつきませんが、長官、いまの私の質問や御答弁を聞いていて、これは急がなくてはならない問題だろうと思うのですが、どうでしょうか、この点。
  89. 小沢辰男

    小沢国務大臣 各省連絡会議では、この問題が非常に大事だということで、しかも非常に効果があるというので、新しい中和処理方式現地導入を早急に図ると決定してございますから、これに基づいて具体的に通産当局として予算措置その他の交渉を続ける、こういうことでございまして、われわれの主宰した連絡会議では、早急にこの現地導入を図ることを決定をいたしておりますから、できるだけ早く努力をするようにいたしたいと思います。
  90. 庄司幸助

    ○庄司委員 その他の対策は大体五十五年度ですね、これを目途に進められているようですが、この中和対策については、どうも時期のめどがないんですね。これもやはり五十五年度完成を目途にやっていただきたい。私は強く要望するわけですが、その辺の御答弁をひとつ明確にお願いしたいと思います。
  91. 堀川春彦

    堀川政府委員 この問題は、技術的な可能性については確かにあるのじゃないかという話と、それが有効に働くであろうということについての認識は、先ほど長官の申しましたとおり、五省庁連絡会議で、おおよそそういう了解になっているわけでございます。  そこで、この問題をどういうふうに今後推進するかということでございますが、これにつきましては、どの程度の規模で、どの地点を選んで、どういう費用をかけてやるかということになってまいるわけでございまして、その前に、たとえば実験的な小規模のものをやってみるとか、いろいろのことが問題になるわけでございます。それらについては、まだ詳細現地に当たっての調査もまとまっておりませんし、いろいろ細かに議論をすべき問題は残っております。こういった問題については、できるだけ私ども環境庁もお世話しまして、五省庁連絡会議で早く方向が出るように努力をしてまいりたいと思っております。
  92. 庄司幸助

    ○庄司委員 次に、お伺いしたいのは、これらの恒久対策の必要事業費、これは露天掘りの跡地あるいは鉱滓堆積場の覆土の問題、赤川源流の伏没対策あるいは坑内水対策、地下水対策それから中和処理対策、これを含めて大体どれぐらいの事業費が必要なのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  93. 堀川春彦

    堀川政府委員 これは、国費県費合わせまして、いままでの対策事業に、五十年度までで約二十二億余りのお金を投入をするということになってきておるわけですが、今後の仕事進め方につきましては、まだこれから具体的にその規模なりやり方なり考えていかなければならぬ点がございますので、全体としてどのくらいかかるかという見通しについては、現時点で定かには立っておらないのが現状でございます。
  94. 庄司幸助

    ○庄司委員 それから現地で、これは岩手県当局から大変な自治体負担がかかっているという陳情があったわけです。これはわれわれ全部聞いてきております。いままでの二十二億何ぼの分で、大体自治体負担が半分ぐらいかかっているんじゃないかと思うのです。これがどれぐらいだったのか。それから、あの現在の炭カル投入、中和槽、これのランニングコストも相当自治体負担でかかっている、こう聞いているのですが、この辺で、いままでどれぐらいかかったのか、それから、これからの事業遂行上自治体負担がどれぐらいかかるのか、この見通しをひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  95. 堀川春彦

    堀川政府委員 これは各種事業がございまして、それを総合して進めておるわけでございますので、それぞれ補助率あるいは負担率の関係が違いますから、どういう事業をどういう規模で最終的に組むかということによっても違ってまいるわけでございます。  御参考までに、現在までと申しますか、五十年度までの予定を含めてでございますが、総計で二十二億八千二百四十万円、うち国費が十二億九千九百三十万円、県費が九十八万三千百円、従来のこれまでのことから見ますと、さようなことになっているわけでございます。  また、炭カルの問題……(庄司委員「九十八万ですか、九億じゃないの」と呼ぶ一九億八千三百十万円でございます。ちょっと言い間違えました。失礼しました。  なお、炭カルの関係につきましては、これは四十七年度から五十年度まで四カ年の事業費でございますけれども、総体といたしまして十三億四千三百万円、国と県が折半ということに相なっております。
  96. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで私は、いま地方自治体が非常な  国も歳入欠陥が大分大きいですが、これは原因はまた別ですが、地方自治体の財政危機が非常に深刻なんですね。これまでのランニングコストだけ、炭カル投入だけでもすでに三年間近くで十三億四千万、その半分が地方自治体負担になっているわけです。こういった負担を地方自治体でいつまでも続けられるかどうか。今後見込まれる事業費も相当あるわけですね。事業は大体始まったばかり、こう見てもいいのですが、こういった莫大な事業が進んでいって、自治体負担がこのとおり約半分近くさせられるとなれば、これは自治体はたまったものじゃないだろうと思うのです。  こういった問題について、自治省いらっしゃっていると思いますが、現に松尾鉱山の問題だけに限ってもいいですが、この自治体負担の軽減策、これをどのようにとられるつもりなのか、これを御答弁願います。
  97. 中村瑞夫

    ○中村説明員 今後における自治体負担に対する財源対策の問題でございますが、御指摘ございましたように、すでに五十年度までにおきましても、地方負担が九億円を超える状況になっておるわけでございます。当然地方団体といたしましては非常に大きな負担でございますので、これらに対します対策が必要であるというふうには考えておるわけでございますが、私どもといたしましては、この松尾鉱山坑内水処理に関連をいたします北上川酸性対策つきましては、基本的に事業の性格から申しまして、国において高率の負担をもって事業処理していただきたいというふうに考えておるわけでございまして、すでに関係省に対しましても、そのような要請をいたしておるところでございます。  したがいまして、今後なお事業継続をするに当たりましては、国の負担につきましての改善をお願いしたいというのが基本でございますけれども、今後の事業計画あるいはその中におきますところの事業の性格等に応じまして、どうしても地方負担が出てまいるという面もあろうかと思いますけれども、それらにつきましては、今後事業計画の内容なりあるいは事業の性格、また岩手県等におきます財政事情等を勘案をいたしまして、交付税あるいは地方債等によりまして、できるだけの処理をいたしてまいりたいというふうに存じているわけでございます。
  98. 庄司幸助

    ○庄司委員 それから四十四田ダムの問題に移りますが、四十四田ダムの埋没率といいますか、いわゆる砒素を含んだ沈でん物を含めて、どれぐらいになっているのかという点ですが、計画堆砂量、これは建設省の資料を見ますと千百六十万立方メーターですね。これが計画堆砂量ですが、大体百年間ぐらいでこれぐらいになるだろうという設計だったらしいですね。ところが、現在の堆砂量、これはお答えいただいていると時間がありませんから私から申し上げますが、四百八十万立方メーター。もう四一%のいわゆる堆砂量になっている。千百六十万、百年かかってこれだけ堆砂するのが、たった五、六年でこれぐらいになってしまった。莫大な堆砂量だと思うのです。このあれで計算しますと、年間八十万立方メーター堆積するわけですね。このまま行きますと、約八年半でもう計画堆砂量になってしまう。ダムが埋まってしまう。つまり、昭和五十八年の春ごろには計画量の満杯になっちゃうわけですね。その間に、いままでのきわめて高い含有率の砒素が堆積されてきている。堆砂量の成分を見ますと、砒素の含有量が八ないし一四〇ppmだ。きわめて高濃度なんです。こういうのが現在でも四百八十万立米堆砂して、五十八年春になると、もう満杯になってしまうというんです。  そうすると、この四十四田ダムというのは、一体今後どうなすっていくのか。ダムをもう一つつくるのか、あるいはダムの土砂のしゅんせつでもおやりになって安全な場所に埋められるのか、こういう対策ももう当然考えられてしかるべきだろうと思うのです。この堆砂率の問題ですね、これは建設省から、ひとつどうお考えになるのか伺いたいし、それからもう一つは、これは洪水調節ダムのようですから、このダムの上流に相当の大雨が降った、洪水がやってくる、そうなれば当然放水をやるわけですね。放水をやりますと、放水口は溢流堤よりずっと低いですから、放水時に砒素を含んだあの堆積物を一緒に流してしまう危険性もあると思うのです。現に私は只見川のダムなんか調査してまいりましたが、洪水時の放水で若干堆積物を減らすことができるんだ、こう言っているんですね。こういう砒素含有量の高い堆積物を洪水時に流されたのではかなわないだろうと思うのです。こういった点、どういう対策をとっておられるのか。  それから長官にもお伺いしたいのですが、ですから、この四十四田ダムに最終的にたまる砒素を山元で早く落とさないと大変な問題になる。だから、あの新しい中和対策ですね、のんきなことを言っておられないで、もうできるだけ急いで完成させる、これが必要になってくると思うのです。一応三点、それぞれお答え願いたいと思うのです。
  99. 栂野康行

    ○栂野説明員 お答えいたします。  まず、堆砂関係でございます。いま先生おっしゃいましたように、現在まで四百八十万立方メートルの堆砂を生じております。そのうち砒素関係、ヘドロでございますけれども、この中にまざっておるわけでございますが、その堆積物は九〇ないし九五%の水分を含んでおるわけでございます。すなわち、非常に堆砂量が大きいというふうに見かけはなっておるわけでございます。しかしながら、洪水時に上流から土砂というものが堆積されてきますと、そういうふわふわな堆積物というものが、いわゆる重い土砂の下に圧縮されるということで、見かけほどたまっておるというふうには言えないわけでございます。それで、その辺の挙動がどうなるか、現在鋭意調査中でございます。  それから、洪水時にそういう推積物といいますか、がどういうふうになっておるかということでございますが、現在四十四田ダムとその下流部におきまして水質の監視を行っております。その結果、河川の中の砒素の濃度というものは水質環境基準値以下の状況でございます。それで、現在の状況におきましては、四十四田ダムは応急中和処理による中和生成物を沈でんさしておりまして、下流へ流下するのを防いでおるわけでございます。しかし、このまま処理を続けていった場合には、その沈でん物が下流へ流下する危険が生じてくるということも考えられます。したがいまして、やはり恒久的な中和処理というものが期待されるわけでございます。  以上でございます。
  100. 堀川春彦

    堀川政府委員 ただいま建設省からお答えいただきましたとおりで、四十四田ダムの砒素を含む堆積物が、いまのところは計画に対しまして、まだ半分にまでいってないということでございますけれども、この状況をずっと長く続けておりますと、いずれ計画量まで堆積がくる、あるいはオーバーするという事態になります。そのようなときに、いろいろ洪水等の問題のあったときに相当量の砒素を含む堆積物が下流に流れまして、それが土壌を汚染する等の問題が出てくるということになりますと、現時点ではダム下流におきましては砒素の汚染というものは環境基準以下でございますからあれでございますが、将来の問題としては、その辺が環境庁としても心配でございます。  したがいまして、この砒素をどの段階でどういうふうに取るのが一番適切であるかという問題が大きな問題になるわけであります。私どもも、これは関係省庁の連絡協議の、いま当面すぐ目の先という話ではないかもしれませんが、将来における重要検討課題として取り上げて、できるだけ方向づけが早くできるように努力をしてまいりたいと思っております。
  101. 庄司幸助

    ○庄司委員 ですから、これはちょうだいした資料を見ますと、確かに自然状態中ふわふわした段階では、八ないし一四〇ppmの砒素の含有量の水がどんどん松尾鉱山から流れている現状だ。これは乾燥してはかりますと、一七〇から一三九〇ppmという数字もちょうだいしております。そういう点でこの間の岩手県の審議会で、まだろっこしいという議論が出たんだろうと思うのです。ですから、その点で新中和対策ですね、鉄バクテリア、これの完成というのは非常に私は急がなくちゃならない問題だろうと思うのです。  それから、さっきお答えはなかったわけですが、四十四田ダムが意外に計画よりも早く埋まってきているという問題、これはもう建設省としては、この対策は当然に考えておられなくちゃならない問題だろうと思うのです。その辺も含めて、私は、もうきょうは時間もありませんから、これでやめますけれども、ぜひ、この松尾鉱山対策というのは、ひとり岩手県だけの問題じゃなくて、下流の宮城県、もうあのいわゆる東北の穀倉地帯の中心部を走っている川ですから、影響するところは非常に大きいのですから、この対策に本当に真剣に取り組んでいただきたい、こう思うわけです。  その点で最後に長官から、大変くどいようですが、もう一遍決意も含めて、いまのような議論も踏まえてひとつ御発言願いたいと思うのです。
  102. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるとおり、この問題は大変重大な問題でございますから、したがって、できるだけ急いでやらなければいけないわけでございまして、先ほど来通産当局から申し上げましたように、五十五年までには処理施設は完成をする、処理施設の運営ということがございますので、これはでき上がったものから運営をしていくわけでございますので、その点は五十三年から始めていく、こういうことで各省連絡会議では決まっておるわけでございますが、いま言ったダムの蓄積汚染問題等も考慮に入れまして、私としては最善の努力をいたしてまいります。
  103. 庄司幸助

    ○庄司委員 終わります。
  104. 井原岸高

    井原委員長 坂井弘一君。
  105. 坂井弘一

    ○坂井委員 限られた時間でございますので、御答弁は簡明にお願いいたしたいと思います。  合成洗剤の安全性について議論されましてより、ずいぶん久しくなるわけでございますが、これを大別いたしますと、まず一つは人体に及ぼす毒性の問題、いま一つ環境汚染の有害性の問題、この二つになろうかと思います。  そこで本日は、環境庁中心にしまして厚生省、通産省並びに水産庁においでをいただいておりますので、この二つの観点から、総合的なこの安全性についての論議の中から私は、幾つかの問題点を指摘し、これを解明しながら、具体的な改善の方向に向かうように質問をいたしたいと思います。  申し上げるまでもなく、合成洗剤につきましては四つの種類がございます。ABSそれからLAS、AOS、AES、大体この四つになろうかと思います。ここで問題は使用量でございますが、わが国の合成洗剤の使用量を諸外国に比べてみますと、平地面積一平方キロメートルの消費量をたとえばスウェーデンに比べますと十二倍、アメリカの十一・五倍、イギリス、イタリアの三倍、それから西ドイツの一・五倍、こういうぐあいに環境排出総量は世界最大である。そこで四十二年の二月の通産省の答申によりましてABS、これはハード型のものでありますが、これが分解が非常に悪いというので、LASというソフト化の方向に転換をされた。これも実は問題があるわけでございまして、後ほど指摘いたしたいと思いますが、ここで最大の問題は、やはり下水道だろうと思う。  この下水道の普及率を見ますと、これがまたいま申しました各国に比べますと最低でありまして、わずか二二・八%、つまりわが国の地理的特性、条件、河川が非常に多くて、それから水の流れが早いですね。それですぐに海に注ぎ込むという特性、条件、こういうことから見まして、しかも下水の普及率が非常に悪い、つまり海に流れ込むということになるわけであります。  そこで一点最初にお伺いいたしますが、たとえば赤潮の大きな原因一つとして問題になっておりますところのトリポリ燐酸ソーダが合成洗剤に含まれております。五十年一月からは一五%以下というように決められたわけでございますが、これがまた一向に今日まで解決をされていない。これは後で具体的に例を申し上げましょう。ただ一五%以下と決めたのですが、さらにこのパーセントを下げていこう、こういう動きがあるようでございますが、いつごろからどれぐらいのパーセントに下げられるのか、まずその辺からお伺いしてまいりたいと思います。簡明にお答えをいただきたい。
  106. 太田耕二

    ○太田説明員 実は四十九年、昨年の初めでございますが、環境庁の方から通産省に対しまして環境汚染、すなわち富栄養化の面で燐につきましては害があるので、下げるように業界を指導してほしいというふうな申し入れを受けたわけでございます。そこで私どもといたしましては、工業会を通しまして、その早急な削減方の実施を要望いたしました。それを受けまして工業会の方では、一応五十年から一五%、これはP2O5で一五%でございます。その前まではマキシマムが二〇%というふうになっておりました。これはJIS規格で決まっておるわけでございますが、一応五十年は一五%、さらにできるだけ下げる必要があるということで、来年の一月から一二%に下げるということになっておるわけでございます。  ただ問題は、このトリポリ燐酸ソーダというのは、洗剤のビルダーとしまして非常に優秀な性質を持っておるわけでございまして、ほかの洗浄力、すなわち品質の面からいきますと、洗剤の性能がよくなるわけでございますが、ただ技術開発が伴わない段階で下げますと、非常に品質が悪くなる。したがって、消費者の利益は必ずしも守られないといううらみがある。したがって、その辺の技術開発を極力推進するように、その結果下げるように、こういうふうな形になっておるわけでございます。
  107. 坂井弘一

    ○坂井委員 一二%に下げることによってJIS規格も改正されますか。
  108. 太田耕二

    ○太田説明員 現在のJIS規格は先生御承知かと思いますが八ないし二〇%ということになっておりまして、これを現在改定するべく鋭意検討中でございます。
  109. 坂井弘一

    ○坂井委員 では環境庁長官に基本的なことでお尋ねいたしたいと思います。  現在、すでに四十二の都道府県の自治体あるいは消費者団体が合成洗剤の追放運動を行ってきております。去る十三日から二日間、合成洗剤追放全国集会が主婦、消費者団体、全水道、自治労、全漁連等々の団体によって行われまして、環境庁に対しまして合成洗剤の製造、販売禁止の要望がなされたと思いますが、環境庁長官、このような合成洗剤追放、製造の禁止、販売の禁止の要請に対して、率直にどう受けとめられたか、まず御所見をこれまた簡単にお伺いしておきたいと思います。
  110. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は環境庁長官立場で合成洗剤は使ってもらいたくない方でございますから、まことに御要望は私ども立場と一緒だと思っております。  ただ問題は、その結果どういう事態が起こるかということの方にむしろ私の関心がありまして、それがもし代替物として、全く何も使ってもらわなければ、これに越したことはありませんけれども、石けん等に走るということになると、また他の環境問題というものが、より大きく起こってまいりますものですから、したがって単純にこの合成洗剤を禁止したりするというわけになかなかいかないわけでございまして、できるだけこの燐の含有量を少なくして効果の上がるような新しい洗剤の開発に努力をしてもらわなければいかぬと考えておるわけでございます。
  111. 坂井弘一

    ○坂井委員 それでは合成洗剤に対しまして行政がどう対応してきたかという経緯につきまして、私あらまし、はしょって申し上げたいと思います。  まず、合成洗剤の研究昭和三十七年六月五日から開始されました。その研究の結果、四十二年二月に通産省の合成洗剤部会から答申がございまして、先ほど申しましたようにABSからLASに切りかえる、つまりハード型からソフト型、こうなったわけであります。  さらにその後、東京都が独自に調査を進めてまいりまして、四十八年五月二十八日に、学校給食での合成洗剤の使用中止の通達を出されました。  それが再びここで合成洗剤の催奇形性の問題等がクローズアップされまして、非常に社会的問題という形で提起されまして、四十八年九月に、合成洗剤の再特別研究が開始されました。  そういう形で推移してきたわけでございますが、四十八年九月より研究されておりますこの再特別研究の結果につきまして発表される時期はいつでしょうか。なおこの際、簡単にこの研究項目と研究担当機関をあわせて御答弁いただきたいと思います。
  112. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  実は先ほど来先生御指摘のように、手荒れの問題等があって、さらに四十四年ごろから、先生申されました催奇形性の問題も提起されまして、私ども四十八年からもう一度全般的に、あらゆる面から検討を再開したわけでございます。  行っております試験は、慢性毒性試験、催奇形性の実験、代謝それから発がん性の力を強めるかどうかということについての新しい発表もございますので、そういう発がんを補助するような性質があるかどうかという発がん補助の試験、それから皮膚に対する刺激試験、あるいはアレルギー作用があるかどうかというアレルギー試験も並行して行っております。さらに、洗浄効果あるいはどの程度残るかというようなことについて、三十七年に行いましたのに若干つけ加えて、もう一度総合的にやっております。  なお、その発表の時期でございますが、実は年次的に私どもの周辺にある主な洗剤について見直しをするということで、慢性毒性試験なんか二年間ほどかかりますので、全部終わるのは恐らく五十三年になると思いますが、途中で終了したものについては、それぞれの研究者から報告書を整理してもらうように現在お願いしておる段階でございます。
  113. 坂井弘一

    ○坂井委員 催奇形性につきましては、いつ発表になるでしょうか。
  114. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  催奇形性につきましては、実は四十八年に三品目について、それぞれ別々の先生にお願いしておったのですが、そのうち市場に使われておりますLASというのがございまして、これを実験担当されました先生のところで奇形性について疑問が出たというようなことでございましたので、実はさらに一人の先生の参加を願って、現在、四大学でことしの六月から実験を開始しております。動物に塗布をして奇形が出るかどうか見ておるわけでありますが、動物の実験が完全に終わりますのが、ことしいっぱいと聞いておりまして、最終的な報告は明年の三月、四大学の先生がそれぞれ集まって、最終的な報告書を作成して、提出してくださるというように聞いております。
  115. 坂井弘一

    ○坂井委員 その際、提出されました研究結果につきましては公表されますかどうですか。イエスかノーかについて一言お伺いしておきたいことと、この研究の検体の名前をおっしゃってください。同時に、どこから提供されたものかについても、この際、明らかにしてください。
  116. 宮沢香

    ○宮沢説明員 最初に、公表されるかどうかという点でございます。  これは恐らく関係学会にその実験者が発表されることを意味すると思います。実験者の中で、それぞれの先生方が学会等に報告されるということであれば、私どもはそれは大変結構だと思いますし、また私どもに出された報告書につきましては、当然その旨について印刷にして、これは全部でき上がった五十三年の段階で、一つの報告書にしようと思っておりますが、そのものはそのものとして、私どもは、聞きたいとか見たいとかいう人があったら、実験者の了解をいただいて見せることにしております。  それから検体でございます。これは、LASにつきましては、花王石鹸でつくりましたものについて国立衛生試験所の方で、どういう純度のものであるか、試験規格をがっちりとチェックして、そして実験者に御送付申し上げておるわけでございます。
  117. 坂井弘一

    ○坂井委員 ライオン油脂の方からの検体の提供はございませんか。  なお、いま花王石鹸からということでございましたが、花王石鹸あるいはライオン油脂、つまり製造業者、メーカーから提供の液、これを検体として検査が行われた。ここで私申し上げたいことは、市販されている合成洗剤を使っての試験ではないということであります。  つまり、問題は何かといいますと、三重大学の三上教授が指摘していることに大いに関係するわけでございますが、なぜ業者から提供をさせたところの検体をもって検査に付したのか。これでは、正確な合成洗剤によるところの、いわゆる人体に及ぼす影響あるいは環境汚染の有毒性の問題、この二つ公害問題の信憑性というものがない。少なくとも、業者から提供さしたところの原液をやるとすれば、同時に、市販されておるところの合成洗剤でもって検査を行うというのが最も妥当な検査の方法じゃないでしょうか。いかがでしょう。
  118. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  合成洗剤の安全性が問題になっておりまして、したがって、私どもといたしましては、合成洗剤の純品、ほかに何も入っていないそのものについて、果たしてそういう有害性があるかどうかということを見るためでございまして、これは、そういったものをつくっておりますところから原料の提供を受けまして、衛生試験所の方でいろいろ細かな点まで全部チェックして、こういう純度のものであるというようなところまで分析をしまして、そして実験をやってもらっておるわけでございます。  それで、ただいま先生、市販のものについて、これを一般の家庭で使っておるから、むしろこれの安全性が問題じゃないか、こういうような御指摘じゃなかろうかと思うわけですが、一般に市販されておりますものには、たとえば着色料のようなものであるとかそういうような別の成分も入っております。これは、個別には非常に代謝も早い、分解性の早いようなものでございますので、私どもとしては、そのものとしては問題はないというふうに考えておりますが、いま一番焦点になっておりますのは、こういう高分子の合成洗剤あるいは界面活性剤でありますので、このものについて果たしてシロかクロか、そういうことを突き詰めることが一番大切な点じゃないか、こういうふうに理解して実験を行っておるわけでございます。
  119. 坂井弘一

    ○坂井委員 ここで催奇形性の問題が問題として提起されたのは、まさに四大学の中で三重大学の三上教授がクロ説をとったということですね。  三上教授がなぜそういうことを言っておるかというと、私がいま言ったような、これは素人にも通用するようなまことに常識的な物の考えから言っておるわけであります。つまり、合成洗剤というものは市販されておるものが家庭で使われるのだ、あるいは学校給食の際に使われるのだ、これが下水から海に流れる、実際に使われるものを使って検査をしなければ、この安全性がシロであるかクロであるかについては信憑性がないではないかというのが、三上教授のまことに常識的な反論であります。  少なくとも、市販されたものを使ってやりますと、クロという結果が出た、催奇形性についてはクロである。したがって、三上教授が言っておることは、もし合成洗剤そのものの液、つまり業者から提供された原液をもって検査した場合、催奇形性が認められなかった、催奇形性が出なかった、シロという結果が出たとしても、必ずしも合成洗剤自体がシロとは言えない、こうまで言われておる。つまり、信頼の普遍性ということからいたしましても、市販されておりますところの合成洗剤をもって実験に充てるのが妥当であると思うのですが、そういう考え方は一切おとりになりませんか。
  120. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  実は私どもの実験は四十八年からやったわけでございますが、四十八年に三上教授にお願いしましたのはLASの原液でございまして、内容は国立衛生試験所でチェックしたものを差し上げたわけでございます。  この結果につきまして、昨年の十二月に中間報告会を持って、それぞれの実験担当者から報告をいただきましたときに、三上教授からLASについて催奇形性の結果が得られたというような報告がございましたので、実はLASにつきまして、ことしは三上先生の実験手技というものを中心にいたしまして、全く同じ条件を設定いたしまして、そして四大学でそのものをクロスチェックしながらやっていく、こういうことでスタートを切ったわけでございまして、LASそのものについても疑問を提起されておったわけでございます。
  121. 坂井弘一

    ○坂井委員 わかりました。これ以上議論しても意味がないかと思います。結果を待ちたいと思いますが、ほかの角度からこの問題に対して触れてみたいと思います。  水産庁においでいただいております。昭和五十年三月から六月にかけまして鳥羽市の水産研究所、ここで合成洗剤が海生物に与える影響調査が行われました。この場合、この調査ではウニを使いました。ウニの卵を使って実験を行っているわけでございますが、この実験については承知されておるでしょうか。
  122. 佐々木輝夫

    ○佐々木(輝)政府委員 水産庁では従来から、東海区の水産研究所の水質部が中心になりまして、こういった化学物質の水産生物への影響の試験をやってまいっておりますが、従来このLASにつきましては、実はヒメダカを使って許容限界濃度を一応測定しておった次第でございますが、最近になって、より軽微の影響を判定する手段としてウニの卵の発生状況でチェックするというような手法が開発されてまいりましたので、まだ水産研究所でも最終的な結論は得ておりませんけれども、いま御指摘のございましたような報告も聞きまして、その追試の意味で東海区の水産研究所でもウニの卵の発生状況をチェックをしながら、いまの影響限界濃度の検討をやっております。  ただいままで中間的に得られております結果で、大体異常が認められない下限として〇・五PPMというような値が出ておりますので、ただいま先生の方で御指摘になりました報告と余り大きな差はないというふうに承知しております。
  123. 坂井弘一

    ○坂井委員 この中で、実は私は手元にございますが、詳しくは申し上げる時間がないようでありますが、ずいぶん念の入った研究をされているようであります。  要約いたしますと、この現在の洗剤市場では、先ほど申しましたABSからLAS、これに転換されております。さらに高級アルコール系洗剤、この需要が非常に高まってきておりますが、海の生物に対しての毒性という点からこれを見ますと、ABSよりもLAS、それからLASよりも高級アルコール系の方がはるかに毒性が強い、こういう結果が鳥羽の水産研究所の試験結果であります。必ずしもソフト化された、さらに高級アルコール系に移行したから安全性については高まったとは言い切れない。少なくとも海の生物に与える影響から見ますと、それがさらに高まってきた。つまり受胎率が非常に落ちてきておる、こういう結果であります。したがって、こういう点についてはずいぶん慎重にこの辺のところを考慮していかなければならぬのではないか、こう思うわけでありますが、水産庁は各都道府県でこのような実験をしておる内容については、まとめをしていらっしゃいますか。
  124. 佐々木輝夫

    ○佐々木(輝)政府委員 大体原則といたしまして年に一回、そういう公害関係の方の研究担当しております者が集まりまして、いろいろな情報交換をいたしますのと同時に、特定の課題につきましては、都道府県への試験研究の助成のような形で連絡会議を設けてやっております。ただ、この合成洗剤の問題に関しましては、ただいまのところ特別の試験研究の課題の設定はいたしておりませんで、それぞれの研究機関で経常研究の中でやります成果を持ち寄っていろいろ検討をするというようなことで進めておる状況でございます。
  125. 坂井弘一

    ○坂井委員 では厚生省に伺いますが、現在の合成洗剤研究班の研究対象の中に高級アルコール系のものが含まれていないように思いますけれども、それは厚生省は、高級アルコール系については、すでに安全だから、これは検査する必要はないということでしょうか、いかなる理由によるのでしょうか。
  126. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  四十八年に、LASとAOSとAESの三品目を取り上げて先ほどの試験をやっておるわけでございますが、このAOSとAESというものは、化学構造上高級アルコール系に属するものと思います。
  127. 坂井弘一

    ○坂井委員 水産庁お知りだろうかと思いますが、私あらかじめ、はしょって申し上げておきたいと思います。  つまり水産庁の南西海区水産研究所の藤谷氏の研究報告、これはABSでございますが、一〇ないし〇・五PPmの濃度でナマズを飼育いたしまして研究を行いましたところ、一〇PPmでは三ないし六時間でナマズの味覚がなくなってしまう。一PPmでは七日から十日間で同じく味覚がなくなる。つまり味覚器の機能が損なわれてしまうということになりますと、これは実はたとえば他の汚染物質とか有害物質を探知する機能が損なわれるわけでありまして、そういう汚染区域から魚が逃避しょうという能力がなくなってしまうということでもって、その魚が死滅するとか非常に大きな被害を受けるという甚大な影響をもたらすわけでありますけれども、いまの南西海区水産研究所の試験は、そうした味覚に対して相当突っ込んだ、ある意味ではきわめてユニークな研究がされておる。  あるいは最近、御案内かと思いますが、千葉県の千倉漁連で魚の毒性の実験を漁連が中心になってやっておる。実は先般国会にも参りまして、会議室を借りまして目の前で実験を行ってもらいました。私はそれを目の当りにいたしまして、実は非常に大きなショックを受けたわけであります。  一口で申しますと、市販されておりますところの合成洗剤を持ってまいりました。それから通常の粉石けん、それから高級アルコール系、こういう三つに塩水を入れまして、そこにメジナという魚、これは魚の中でも雑魚でありまして、実に公害に強い魚だと言われておりますが、それをそれぞれ入れるわけであります。実は市販されておる合成先剤につきましては、使用量ということで使用基準が書いてあります。その使用基準のさらに十五倍に薄めました中にメジナを入れますと、八分間で全部死んでしまう。一方石けん水は、もう御存じのように白くあわ立ちます。水が真っ白になります。しかし、八分たっても十分たっても二十分たっても三十分たちましても、悠々とすいすいと泳いでおる。何ら異常はない。実はこういう実験を行いまして、そして合成洗剤追放ということについて非常に意欲を持ちまして、いま漁連そのものがそうした運動を展開しておるということであります。  もちろんこの実験につきましては、限られた一つの器の中のことでございますので、一つの事象として、事実の問題としてつかまえることはできるといたしましても、これが海に流れていった合成洗剤の廃液というものに、そのままイコールという形になるかというと、決してそうではなかろうと私は思っております。少なくとも真実の問題ということになりますと、他の汚染物質との複合の関係等々、生態系の中では非常に微妙なお互いに連動的な関係、複合的な関係からもたらされることでございますので、このことをもってきわめて毒性が高い、これはクロである、こういう断定を私は直ちにするものではありません。ありませんけれども、少なくともそういう実験を見まして、実は大変驚いたわけであります。手元に写真を持ってくればよかったのですが、もし御参考になれば、また後ほどお見せいたしたいと思います。  つまり、いまのようなことからいたしまして、いま行われておりますところの合成洗剤の特別研究で海生物に対する毒性の問題、この研究がなされておりませんけれども研究なさったらいかがでしょうか、どうでしょうか。
  128. 佐々木輝夫

    ○佐々木(輝)政府委員 水産庁では、従来から合成洗剤についての漁業への影響の問題として二つの問題がある。一つは、いまおっしゃいましたLASその他の化学物質そのものの影響の問題、それからもう一つは、補助剤のトリポリ燐酸の海への富栄養化の問題この二つの問題について解明をしていく必要があるという意識で、前者につきましては先ほど申し上げましたように、東海区の水産研究所が中心になりて各県の試験場等と連絡をとりながら、各般の物質についていろいろな条件でいろいろな魚種についての生物試験をやっております。それで影響があるということはもう明らかでございますけれども、その限界濃度を把握するということに努めてまいっております。  ただこれまでのところ、現実の海等におきまして、明らかに合成洗剤との直接的な因果関係影響が認められたというような事例には、いままでのところは接しておりませんけれども、今後やはり注意深くこういった検討を続ける必要があるということで調査を続けてまいる予定でございます。  それから二番目のトリポリ燐酸等の影響につきましては、赤潮の発生原因の基盤と言われております、いわゆる富栄養化の一つのかなり大きな要因ということで、これは現場で、特に瀬戸内海等を中心にして、そういう燐の海中あるいは海底のどろを通じての挙動の問題等につきまして、どういう条件でまた海中に湧出をしてくるかとか、どういう部分からの負荷が一番大きいか、こういった角度から研究を続けておるところでございます。
  129. 坂井弘一

    ○坂井委員 なるほど御答弁のとおり、この因果関係につきましての立証はきわめて困難であろう、私もそう思います。  しからば因果関係のはっきりした事例について、いま一つ申し上げたい。医療器具におけるところの合成洗剤の問題であります。  注射針、注射器等、これを合成洗剤で洗浄する。そういたしますと、この医療器具に合成洗剤が残留をいたします。これがどういう結果をもたらすかということを、実は川崎市の高津保健所の小林先生などが研究をいたしました。研究の結果、緑膿菌が異常に繁殖をするという実験結果を得ました。このときのレポートであります。緑膿菌が異常繁殖するということになりますと、これがいわゆる敗血症の大きな要因である、こう言われております。したがって、実はここで重大な警告がなされたわけでございまして、特にこの緑膿菌につきましては、人体に入る、つまり患者さんの体に入るということになりますと異常に繁殖をして、それが敗血症となる、こういう指摘であります。こういうことについて現在、国公立の病院の医療器具についての洗浄方法、これはどういう方法でなされておりますか御存じかどうか。  なお、いま私申しましたようなことからABSあるいはLASあるいは高級アルコール系などのこういう合成洗剤を医療器具に使用することを禁止されてはいかがでしょうか。
  130. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  合成洗剤の、いま先生御指摘になった公衆衛生学会に発表されたこのことを指しておられると思うわけですが、これにつきまして、当日学会に出席しておりました方からいろいろ質問等もあったようでございまして、それによりますと、この実験は、ただいま先生御指摘のように実験室でもって、ある条件を設定して緑膿菌の培養をやってみたところが、一〇ppm以下だとよく繁殖した。さらにその一〇ppmを超えると逆に殺菌作用が出て抑えられてしまうとか、こういうようなことでございまして、また実際に病院等で医療器具に緑膿菌等が付着しているのかどうか、その辺の実態についても、さらに質問をされたそうですが、それに対して実験者は、病院の実態はそういうようなことはない、ただこれは実験室の内部で実験をした一つのモデルの実験の例である、こういうふうに申しておるそうでございます。  なお、病院で実際にどういうような洗浄をやっておるかどうかについては、詳細は存じておりません。
  131. 坂井弘一

    ○坂井委員 少なくともそういう実験が、一定の条件下であろうとも行われたのです。合成洗剤で洗浄しました、残留したものが緑膿菌を異常に発生させる、これが敗血症の原因になる。これは限られた範囲内における一定条件下における実験結果ではあれ、こういう結果が得られたということ、発表されたということになりますと、直ちに病院内において、果たして医療器具の洗浄はいかなる方法によって行われているかということを、あなた方がやはりよくお調べになって掌握されるという必要が当然あるでしょう。それがなされないということは、これはいささか遺憾だと言わざるを得ませんよ。早速にもどういう方法でなされておるかということをお調べになってください。  そこで、私はあえてこのことについてヒステリックに申し上げるつもりはさらさらございませんし、もし誤解があったらいけませんので、あえてこの際一言触れておきますが、合成洗剤の安全性、有毒性というようなことについては、いろいろな学者のいろいろな観点からの議論がずいぶんあるところでございまして、そういうところから総合的に判断いたしまして、少なくとも今日全国的な追放運動か高まる中で 少なくとも皮膚障害があらわれた。それに対して大阪府なんかは三十三名の障害者に対して公務認定をした。この因果関係をはっきりしないままかもしれませんが、そういうことが起こっておる。あるいは合成洗剤を間違って口にして死んでしまったとか、あるいは合成洗剤の廃液がたんぼに流れ込んで稲が枯死をしてしまった、そこで働いた人が死んでしまったとかいろいろなことが具体的な問題としてすでに起こりつつある。  そういう中で、何とかして国民が健康を保持し、オーバーな言い方かもしれませんけれども、生命を守ろうという考え方、意識というものがほうはいとして起こりつつあるという、こういう現状に対して、これを忠実に踏まえながら、そしていかにして安全性を確保するかという、そういう方向で合成洗剤というものを見詰め直さなければ、つまり言いたいことは、ただ、いまある、これが使われておる、この合成洗剤が非常に手軽で、安くて便利さもある。これを中止してしまったならば、それに変わるべき洗剤は一体どうなんだ、直ちにないじゃないかという考え方が先行して、合成洗剤の安全性を確認しない、あいまいな形のままで推移するということは、これはきわめて憂慮すべき事態を将来起こしかねないということを、やはり前段に踏まえて実は申し上げているわけでありまして、そういう観点からなお二、三の問題についてお伺いしてまいりたいと思います。  先ほど指摘いたしましたとおり、この燐酸塩が赤潮という海洋汚染の大きな原因である。これは議論の分かれるところでございますけれども、そうであるという説もございます。そういう中から五十年の一月一日から、先ほど御答弁のありました一五%以下にするという行政指導がなされました。来年からはこれを一二%にさらに下げるという御答弁であります。少なくとも五十年一月一日から一五%以下だという行政指導に基づきまして、合成洗剤業界の申し合わせもそれを確認をいたしました。  ところが、花王石鹸がことしの夏から販売いたしておりますところの新ザブ、テレビのコマーシャルで再三出てまいります新ザブ、小型になりました、半分で済みますというわけです。この新ザブには燐酸塩が三〇%以上も含まれておる、三〇%ないし三三%。こういう事実を一体行政当局はどう見るのか。一五%以下にしますという行政指導が行われた。それが全く守られていない。今度はこれに対抗しようというわけで、ライオンがダッシュ、これはきょうから新製品の発売でございます。これも小型化されている。しかし、この燐酸塩は一二%に抑えた、こういうことだそうであります。  こういう両者を見まして、合成洗剤業界におきましては、ずいぶん混乱が起こってきている。つまり燐酸塩というものは非常に洗浄能力がよろしいわけでありまして、この量をたくさん使うか少なく使うかによって効果がきわめて大きく分かれてくるというわけで、燐酸塩をできるだけ使いたい。しかも製品は安くなる。これは余りたくさん使いますと赤潮の原因になるし、この有毒性、有害性というものが一方でありますものですから、できるだけそれを低くしょう。御答弁のとおり来年から一二%、しかるにこれが守られていない。かさが半分になったのだから、一五%が倍の三〇%になってもいいじゃないかというわけで売り出されたのが新ザブであります。  何たる抜け駆けぞというわけで、業界は大変な混乱に陥った。きょうから、それに対抗すべくライオンが新しいダッシュを発売して、これに対抗しようとしておる。こういう状態を率直にどう見ておられるのか、これに対する的確なる行政指導はなさったあかなさらなかったのか、あるいはするのかしないのか、そしていま設けられました行政指導の一五%ということに対して、いまのような状態にあることに対して、今後どうしていこうとするのか、簡明にお伺いしておきたいと思います。
  132. 太田耕二

    ○太田説明員 ただいまの御質問にお答えする前に、ちょっと念のために申し上げておきたいのでございますが、花王の新ザブ、燐酸塩三〇%というお話がございました。これは正確に申し上げますと、トリポリ燐酸ソーダで三〇%ということでございまして、いわゆる燐酸塩、無水燐酸の形にいたしますと一八%以下でございます。その辺、念のために申し上げた上でお答え申し上げたいと思います。  業界が通産省の要望によりまして、五十年に一五%、来年一二%というふうな自主基準を決めたわけでございますが、これにつきましては、実は新ザブができる前に、そういった製品が一応想定されない段階でもって、そういった自主規制を決めたいきさつがございます。新ザブの製品につきましては、いわゆる省資源という立場からも、できるだけ原材料を全体としては少なくすべきである、それからハンドリングにも便利であるがゆえに流通経費等も下がるというふうなことで、花王が新しい戦略物質として上市したわけでございます。  そこで、会社のうたい文句でございますボリュームが半分になる、重量が三分の二になるというふうなことでございます。そういうふうなことになりますと、重量が三分の二弱でございますが、正確に申し上げますと六二・五%でございます。六二・五%になりますと、燐酸塩が一八%入ったといたしましても一一ぐらいになるわけでございますから、燐を減らすという当初の目的は一応達せられることになるわけでございます。そこで、果たして、問題は、この例の重量といたしまして、三分の二が守られるかどうかということが一つの焦点になるかと思いますが、これは花王に命じまして、厳重にその辺はPRするようにということで、たしか販売する場合において紙のコップをつけまして、正しく使われるように宣伝しているはずでございます。  そんなことで、一応当初の目的は達せられておりますけれども、私どもといたしましては、ライバル会社が今度燐酸塩として一二%のものを、多分きょうから上市いたす予定でございます。そういたしますと、技術開発の差があろうかと思いますが、花王はトップメーカーでもございますし、できるだけ技術開発促進いたしまして、できるだけ燐分を下げるように努力すべきであるというふうに実は申し入れているわけでございます。鋭意開発中というふうに聞いておりますし、今後ともそういったことを監視してまいりたい、かように考えているわけでございます。
  133. 坂井弘一

    ○坂井委員 二つ大きな欠陥があると思うのですよ。これを消費者の使用基準にゆだねるという形はまずい。企業側の基準を明確にさせるという方向を根本に踏まえないで、こういう使用方法によれば安全ですよということを業者から消費者に対して徹底させなさい、そういう条件を付してあるから大丈夫だ、こういう物の考え方というのは、ぼくはとんでもないと思う。逆立ちですよ。これを製造し得る企業側に明確に基準の枠をきちんとはめる。使う消費者は時によったら誤って倍に使うかもしれない。その場合に起こり得る危険性ということについて、消費者の立場に立った行政指導というものがなされて私は当然だと思う。しかるべきだ。このことについてあえて申しません。これ以上の時間がございません。その考え方だけを申し上げておきましょう。  なおライオン油脂がことしの六月二十二日に販売いたしました洗たく用の漂白剤ブライト、白い物をより白くという宣伝文句でございます。これは〇・六リットル入りの一般家庭用品で容器の内部に酸素ガスが入っておる。容器内に相当のガス圧がかかる。実はこれは欠陥商品でございまして、回収をしたのです。ところが小売店からの回収だけで、一般消費者に売られた分については何ら公表しておりませんものですから、回収されておりません。通産省、この事実を御存じでしょうか。
  134. 太田耕二

    ○太田説明員 承知いたしております。
  135. 坂井弘一

    ○坂井委員 どういう処置をとられましたか。
  136. 太田耕二

    ○太田説明員 実は私ども最初は東京新聞で承知いたしました。八月だと記憶しておりますが、早速メーカーを呼びまして、結局消費者の利益を尊重する立場から、そういった危険物に対して万全を期すようにということを申し入れまして、その結果ライオン油脂の方では、各小売店、それから問屋を巡回いたしまして、欠陥商品の回収等を図ったわけでございます。  なおかつ、ここで問題がございましたのは、このブライトという製品は、従来のライオンブリーチとほとんど中身は同じでございますけれども、そういった物の改良品ということでマーケットに出てきたわけでございますから、ほかのメーカーからも同様な品物がたくさん出ております。これは結局非常に高温等にさらされますと酸素が出まして、先生おっしゃるとおり内圧がかかってまいります。その結果、幸いに事故が起こる直前でプラスチックのボトルの底がふくらんだ事件でございまして、そういったことがございましたので、ただいま申し上げましたような、いろいろな対策を会社の方ではとったということでございます。  なぜそうなったかというふうないろいろな問題がございまして、栓の締めつけが一定になっておらない、非常にかたく空気抜け——簡単に申しますと、内容物は抜けないけれども、空気だけ抜けるような一定のかたさに締めつけておくという手が一つあるわけでございます。その辺の管理をやらせる。それから内容物にある種の鉄分等の來雑物が入りますと、どうしても遊離気泡が出てまいりまして、必要以上に内圧が上がるものでございますから、原料製造工程、製品の検査項目としてそういったガス発生量の項目を設けて市場に出す前に十分注意をいたす、こういうこと。それからただいままでは、これは品質表示法の対象品目になっておりませんので、私どもといたしましては、その中に加えるべく現在検討中でございましたけれども、とりあえず段ボールケースに直射日光を避けて取り扱うように注意書きを会社がした。それから事故が起こった製造番号をはっきりしるしておきますと、製造段階までさかのぼれるわけでございますから、ロット番号を印写いたしまして製品の追跡を容易にした。  なお、先ほど申し上げました流通段階につきまして十分注意書きの配布の徹底を図った。私どもといたしましては、その辺のことを十分させるとともに、今後は品質表示法に基づきまして、そういったただし書きの徹底が十分に行われるようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  137. 坂井弘一

    ○坂井委員 いま一つショッキングな事例を申しましょう。  合成洗剤につきましては食品衛生法第七条におきまして使用基準が、たとえば界面活性剤の非脂肪酸系は〇・一%以下、脂肪酸系については〇・五%以下、こう基準が明確なんですが、つまりこれは食器だとか野菜だとか果物、これを洗う場合です。ところが口の中に入る練り歯みがき、これにも脂肪酸系があるのです。しかもどれぐらい量があるかと言いますと、いま食品衛生法で決められました十五倍から二十倍含まれておる。これはデータが全部ございますが、食品衛生法の基準には何ら関係しない。これは野放しなんです。そういう二十倍にも近い大量の脂肪酸系が入っておる。これはいかがされますか。
  138. 山田幸孝

    ○山田説明員 歯みがきにつきましては、薬事法に基づきまして医薬部外品あるいは化粧品の範疇に入る歯みがきがございますが、個別に品目を審査いたしました上で承認許可を与えておるわけでございまして、現在の歯みがきの中にはAESが製品中に大体一%程度配合されておりまして、こういう濃度で歯みがきが使われておるのは日本に限らず、世界各国でも大体こういう歯みがきが使われておるわけでございます。  歯みがきは、先生御承知のとおり、使った後に一応水で洗い流すというようなことから、人体にはほとんど吸収されないのではないかということで、余り問題はないというふうには考えておりますが、AESそのものの安全性というものをさらに確認する意味で、先ほど環境衛生局の食品化学課長からお話し申し上げましたように、厚生省の方で現在動物実験による安全性の試験を継続しておる段階でございます。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 AES、高級アルコール系ですよね、これは後でゆすぐから大丈夫だと言うのだけれども、毒性があることははっきりしているわけです。これも何ら基準がないというのですから、きちんとした基準を設けるようにされたらどうでしょうかね。これは提案として申し上げておきます。なお研究されましまして、この安全性についてはより確保されるように、これに対する責任のある具体的な対策というものを立てていかなければならぬという点については強く要請をしておきたいと思います。  時間がなくなりましたが、なお実は大きな問題がございまして、輸出をしておる。このABS、ハードな、これはもうあかぬ、悪いんだと決まったものをどんどん輸出しておる。たとえば花王石鹸、これは台湾を初め六カ国、ライオン油脂は香港を初め三カ国に輸出されておるわけですが、一体この輸出の総量はどれぐらいになるのでしょうか。それから輸出先の国名を明らかにしてください。同時にどういう方向に使われておるかについても、この際簡単にお答えください。
  140. 太田耕二

    ○太田説明員 ABS関係につきましては、約四万トン輸出されております。輸出先でございますが、先生ただいまお話しのとおり、主なるところといたしましては、一番多いのが中国でございます。中国、台湾、フィリピン、シンガポール、大体において主力は東南アジアでございまして、また変わったところでは、遠いところでは南アフリカ連邦にも輸出してございます。
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 長官、実はこれは驚いたことなんですよ。これは本当にこのことについては真剣にひとつ御検討ください。果たしてこういうことでよろしいのかどうか。決してよろしくはない。三木さんが、総理が公害問題というのは、これだけ日本で悩んでおるわけでございますから、海外経済協力の場合において日本公害輸出をすべきではない。あるいはまた、その他公害輸出については厳重にそういうことはあり得ない、やってはいけないということを再三おっしゃっている。これは公害輸出ですよ。これがどういうふうに使われているかもわからない。これは大変なことだと思うのです。時間が参りましたので、この実態についてさらに詳しく触れたいと思いましたが、別の機会に譲りたいと思います。  そこで、以上申しましたような幾つかの問題点を指摘してまいりました。これらを総括いたしまして、最後に環境庁長官から、特にいま洗剤公害ということが盛んにこれだけ不安がられ、論議を呼んでおる。あるいは訴訟問題というようなところまで発展しつつある。こういう現状から見まして、確かにわが国の一つの特性であろうと私は思いますが、こういう地理的条件の特性からくる物の考え方の中に、たとえば、非常に汚い言葉で申し上げて恐縮でございますが、「水に流せ」という言葉があります。海に流れたら、すべてきれいになるのだ。次に来るものは何かと言いますと「くそ食らえ」、そうすると「腹の虫がおさまらぬ」。これは私は世界に恥ずべき日本公害発生の三つの特徴的な言葉であろう、こう実は思うわけであります。海に流れたものが、その毒物が、やがてプランクトン、小魚、魚、それが人間の口に入ってくる。そうすると「くそ食らえ」であります。やがてその毒性が発揮されますと、「腹の虫がおさまらぬ」公害病であります。  こういうことを考えますと、この公害に対する国民的な意識の中に、やはりみんなが公害は絶対追放するのだという強い信念と、この公害を追放する行動というものが具体的に行われなければならぬと思いますが、同時にそういうことを行政がその先頭に立って指導的役割りを果たすというこの必要性ということは、より重要であろうと私は思うわけであります。なかんずく環境庁はそういう意味においては非常に重要な立場にあるわけでございますので、環境庁長官から最後に一言御決意のほどを承って質問を終わりたいと思います。
  142. 小沢辰男

    小沢国務大臣 合成洗剤の環境に及ぼす影響につきましては、私も非常に心配をいたしております。先ほど先生が言われたように、やはりメーカー側の方の規制というものを中心に物を考えなければいかぬと思います。半分に使用が減るから、ずっといままで一五%となっておる以下になるというようなことは、私は余り賛成しません。もちろんそういっても来年から一二%にしましても、倍使えば二四%になるわけでございますが、しかし、そういうことをもって使用者側へのPRが十分いけば、この方がもっと効果が上がるのだというような考え方だけでは環境問題は解決しない。やはりメーカーの規制というものをきちっとやる姿勢の方が本筋だと私は思っております。  それから、この問題を根本的に解決するには、やはり製品の基準というものをつくっていかなければだめなんじゃないかと思うのです。通産省にできるだけ減らすように行政指導をお願いしますというお願いをいたしまして徐々に減らしてまいりましたが、製品の基準までいかなければ、これはやはり解決しないのではないかと思うのです。いまそういうような道は環境庁の法律ではないのでございますが、そのためにはやはり思い切って、もしやるとすれば製品基準までいかなければいかぬだろう、製品の基準を法的に汚染防止のための最小限度にするだけの規制をやっていかなければいかぬだろうと思うのです。  しかし、そのためにはやはり厚生省の協力を得て、あるいはこれは水産庁の協力も必要——先ほど先生がおっしゃいました魚に対するいろいろな影響等の実験などもございますので、それらの化学的なデータをしっかり踏まえて、そういう方向に進んでいかなければいかぬだろうと思うのでございまして、厚生省の研究、安全性の検討、それからまた水産庁その他のいろいろな研究を総合しまして、その上で判断をしていくべき問題だと思いますが、やはりそこまでいかないと、これは効果がないと思うのでございまして、それまでの間は、できるだけひとつ一二%なり一〇%なり、あるいは新製品の開発等に力をいたして、洗剤の環境汚染に対する影響をうんと少なくしていくような努力をできるだけやっていくべきものと考えておるわけでございます。
  143. 坂井弘一

    ○坂井委員 終わります。
  144. 井原岸高

    井原委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時一分散会