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1975-03-31 第75回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月三十一日(月曜日)    午前十時六分開会     —————————————    分科担当委員異動  三月三十一日     辞任         補欠選任      寺田 熊雄君     片山 甚市君      片山 甚市君     秦   豊君      阿具根 登君     田  英夫君      内田 善利君     桑名 義治君      須藤 五郎君     立木  洋君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         源田  実君     分科担当委員                 亀井 久興君                 徳永 正利君                 中村 太郎君                 鳩山威一郎君                 矢野  登君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 秦   豊君                 桑名 義治君                 須藤 五郎君                 立木  洋君     分科担当委員外委員                 玉置 和郎君                 矢追 秀彦君    国務大臣        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        国 務 大 臣       (防衛庁長官)   坂田 道太君    政府委員        防衛政務次官   棚辺 四郎君        防衛庁参事官   菅沼 照夫君        同        平井 啓一君        同        岡太  直君        防衛庁長官官房        長        斎藤 一郎君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        防衛庁人事教育        局長       今泉 正隆君        防衛庁衛生局長  萩島 武夫君        防衛庁経理局長  亘理  彰君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        防衛施設庁長官  久保 卓也君        防衛施設庁総務        部長       安斉 正邦君        防衛施設庁施設        部長       銅崎 富司君        防衛施設庁労務        部長       松崎鎮一郎君        経済企画庁長官        官房長      長岡  實君        経済企画庁長官        官房会計課長   白井 和徳君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁国民        生活局長     岩田 幸基君        経済企画庁物価        局長       喜多村治雄君        経済企画庁総合        計画局長     小島 英敏君        経済企画庁調査        局長       宮崎  勇君        国土庁計画・調        整局長      下河辺 淳君        外務大臣官房会        計課長      梁井 新一君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省中近東ア        フリカ局長    中村 輝彦君        外務省経済協力        局長       鹿取 泰衛君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君        水産庁次長    松下 友成君    説明員        環境庁企画調整        局企画調整課長  青木 英世君        外務大臣官房審        議官       伊達 邦美君        農林省大臣官房        企画室長     森実 孝郎君        食糧庁総務部長  杉山 克己君        郵政省郵務局次        長        守住 有信君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和五十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和五十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 源田実

    主査源田実君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  分科担当委員異動について御報告いたします。  去る二十九日、秦豊君及び渡辺武君が委員を辞任され、その補欠として宮之原貞光君及び須藤五郎君が選任されました。     —————————————
  3. 源田実

    主査源田実君) 昭和五十年度総予算中、経済企画庁所管を議題といたします。  政府からの説明はこれを省略し、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 源田実

    主査源田実君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは大きな問題ですから大臣にお尋ねしたいと思いますが、経済企画庁昭和四十四年五月三十日に策定をいたしまして、四十七年十月三十一日に一部改定とあります新全国総合開発計画、これは現在もなおわが国の総合的な開発計画基礎として維持せられておるわけでございますね。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ形式的に言うとそんなことになっておるわけですが、御承知のとおり時勢が全く変わってまいりましたので、実質的に申し上げますと、ちょっとこれは休眠している、そういう形になっております。
  7. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 休眠しているということですと、質問の接ぎ穂がちょっとつかないんですけれども、ただ、私ども自治体の業務を担当しておりましたときに、池田首相が提唱されました所得倍増十カ年計画、あの当時の計画と比べますと多分に自然の保護などをうたっておりますし、それから望ましい環境の創造というような理想をある程度踏まえているという点で、若干の前進があることは確かに認められると思うんです。ただ、その中にちょっと私ども理解しにくい点がありますのは、「大規模港湾、広大な用地等立地条件を備えた比較的少数の地点に巨大なコンビナートを形成する」必要があるというような点があるわけですね。この点は現在でもやっぱり維持しておられますか。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 経済社会基本計画は、いまこういう時勢変化がありますので、実際上は休眠状態という状態でございますが、その盛られた考え方の中には今後といえども尊重しなければならない諸問題があるわけであります。福祉問題の考え方、ただいま御指摘環境問題に対する考え方、そういうものにつきましては、今後といえどもこれを尊重しなければならない。  ただ、これからの日本経済を考えますと、これまでのような高度成長というわけにはまいりません。静かで控え目な成長ということになる。そうしますと、成長の高さにおきましても非常な変化が起きてくると思うんです。一昨年までの過去十三年間におきましては平均十二%成長だと、こういうことであります。先進諸国の二倍半近い高さでございます。しかし、これからのわが国成長を考えますと、その半分、これもなかなかむずかしいのじゃないか。世界の水準がこれからどうなりますか、多少これも変化がありましょうが、それを十分見ながら、わが国もバランスをとらなければならぬ、こういうことになる。そうしますと、いま御指摘コンビナート問題等におきましても、これは見直しを必要とする、こういうことになってくるだろうと思うんです。見直しの結果、計画のテンポをスローダウンしてやりましょう、こういうような結論になるか、あるいは規模を修正いたしますとか、いろいろ変化は出てきましょうが、ともかく全般的に控え目な成長、事態ということに即した見直しを行わなければならぬと、こういうふうに考えております。
  9. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その見直し関連をいたしまして、具体的な問題を一つお尋ねするわけですが、この計画に、いまの巨大なコンビナートというものに関連をいたしまして「西瀬戸内等地域において、調査検討を進めつつ、遠隔地に二−三の超大型工業基地建設する。」というくだりがあります。それから「中四国地方開発基本構想」というくだりに、「西瀬戸内広域経済圏開発を進め、とくに、周防灘周辺地域基礎資源型工業中核とする大規模工業基地建設を図る。」という一節があるわけですが、瀬戸内海というものは、御承知のように非常に島嶼が多い。巨大なタンカーなどの航行というものが非常に危険でもある。それから瀬戸内海環境保全臨時措置法の中にうたわれておりますような瀬戸内海環境保全、特にこれを「世界においても比類のない美しさを誇る景勝地」であるとか、「国民にとって貴重な漁業資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであることにかんがみ」というような文言が瀬戸内海環境保全臨時措置法の中に盛られておるのですが、こういうものと、いま瀬戸内海にかなりの石油化学コンビナートが立地されておるんですが、それだけでもうすでに相当の被害が、いま申し上げたような瀬戸内海環境保全に悪影響を及ぼしておるという現状に照らしますと、ここに書いてありますような周防灘周辺地域に大規模工業基地建設を図るというその構想は、何かそうしたわれわれ国民の願望に背馳するような印象を受けるわけです。どうでしょか、大臣、いまの新全国総合開発計画の六十九ページにあります「周防灘周辺地域基礎資源型工業中核とする大規模工業基地建設を図る。」この構想というものは維持せられますか、それともこれもやっぱり基本的に見直しなさいますか。
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いわゆる新全総におきましても、その六十八ページにあります「主要開発事業計画のほか、今後の技術革新経済力増大等に対応して、慎重な調査検討のうえ、逐次」ただいま御指摘のような事業の実現を図る、こういうふうに言っておるようなわけでありまして、この新全総自体が相当大きな前提づきなんです。その前提に非常に大きな変化が出てくる、こういうことになってきたわけでございますので、とにかく改めて検討し見直す、こういうふうに御理解願ってよかろう、かように思います。
  11. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただいまの経済企画庁長官のお言葉ですと、基本的に見直すということでありますので、それ以上に私ももう御質問申し上げることができなくなってしまったわけですが、ただ、特に御考慮願いたいことは、水島という世界で有数な工業基地でさえも、実はもう大臣もいろいろ国会の論議で御承知でしょうが、最大十万トンのタンカーしか入港ができないのに、喫水が二十メートルを超える二十万トンタンカーがあの辺に入ってまいりまして、現実に入港しておる。旋回する場合なんというのは、あの辺の航路が狭いですから非常に危険なわけなんです。御承知のように、あの辺には小さな漁船が絶えずうろうろしておりますから、そういうことを考えますと、これ以上にあそこに工業基地建設して、これ以上に海上交通を頻繁にするということが、いろいろな面から非常に私どもは不得策であるという感じを持っております。ですから大臣、よくその点は、いまの大臣のお言葉で結構なんですが、いろいろ生産力の拡大を欲する点でまだいろいろ資本の要求というのはございましょうけれども、十分これをコントロールしていただきたいと思います。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御趣旨のように十分注意してまいりたいと、かように存じます。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから私自身が、実は長野岡山県知事にも、知事に御当選になったときに御要望申し上げた。それは瀬戸内海、ことに岡山県知事所管の海面を埋め立てするというのは、もう知事さん、あなた許可しなさんなと。と申しますのは、最近衆議院でも非常に論議せられておりました民衆の入り浜権といいますか、これはまだ実定法上是認された権利というところまでは高まっていないようですけれども、たとえば白砂青松というようなものが次第に失われてくるわけですね。三保の松原とか田子の浦とか、そういうわれわれが牧歌的なあこがれを持っているところがだんだんと失われていく。そういう白砂青松であるとか海岸とかいうようなものに、われわれがそこに入っていろいろな自然を享受する喜びというようなものが失われてしまうわけです。そういう海岸線は全部の国民のものであるのに、企業埋め立てて、企業が独占的に排他的に取得してしまう。で、民衆を追っ払ってしまう。そういうようなことは果たしてどうだろうかということで、長野岡山県知事にも私要望をいたしておるわけです。これは瀬戸内海環境保全臨時措置法にもございます。埋め立てについての特別な配慮というのが十三条に規定があります。この十三条で「関係県知事は、瀬戸内海における公有水面埋立法第二条第一項の免許又は同法第四十二条第一項の承認については、第三条の瀬戸内海特殊性につき十分配慮しなければならない。」という、ここから当然生まれるものだとは思うんですけれども、この点をぜひとも大臣初め御列席の大宮人の皆さまがひとつ十分御勘考願いたいと思うんです。  それからもう一つは、予算委員会で私質問申し上げたところではあるんですが、これから造成されるコンビナート、これにはやはり一般の民家と遮断をする緑地遮断帯ですね、これは幅員を五十メートルにするとか、百メートルにするとか、あるいは二百メートルにするとかさまざまな構想があると思うんですけれども、これを後で建設しようといたしますと、川崎なんかの場合、もうそれだけで九千億円の財源を要するということで、これはもうとても国も自治体も手がつかないわけですね。ところが、埋め立ての当初のときにはこれの地価が、岡山県のたとえば三菱石油に対する払い下げ価格なんかは、昭和三十三年時点坪当たり千五百円であったわけです。そういう時点ならば思い切って遮断帯をとる、緑地をとるということが可能なわけです。ところが、その当時においてそれをしなくて、三菱石油の四十六万坪の構内なんというものはタンクでもう充満しておるわけですね。後でつくろうとしても遅いわけなんです。ですから、いま大臣見直していらっしゃるので、これから果たしてこういうコンビナートができるかどうか、まあ全くできないということはないと思うんですが、これを建設なさる場合にはそういう初歩的な建設段階緑地による遮断帯を設ける。それから、たとえばアメリカ工業地帯などに行きますと、工場の中に相当な芝生、ローンなんというものを自分でやっておりますね。ああいうものをもしも初めから企業に義務づけておれば、どのぐらい環境保全、それから民衆抵抗などというものをやわらげるのに役立つかわからないと思うんですね。ですから大臣、やはりコンビナート建設初歩的段階でそういうものを企業設置するということを法的に義務づけたらどうでしょうか、その点、御構想いかがでありましょうか。
  14. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) 現在御承知のように、水島経験からコンビナートに関します法制的な制度を充実すべきであるということで、関係省庁と討議を重ねておる最中でございまして、第一番目には、やはりコンビナート安全性ということに着目して法制度を充実させるべく勉強しておりますが、いま御指摘のように、コンビナートをつくります際に遮断緑地を当然義務づける必要があるのではないかという点についても、私どもとしては検討させていただこうと考えておりまして、現実には東苫小牧であるとか、むつ小川原については具体的に、そういうことは計画上可能であるということについて関係道あるいは県とも相談を始めておるような状況でございますので、もうしばらく時間をかしていただきたいと思います。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 たとえば水島工業基地の場合は、現在はどうか知りませんが、その第一次の計画のときは埋立地が千二百万坪だったのですね。千二百万坪の埋立地があります場合には——そしてまた私ども案外知られていないんですが、たとえば三菱石油に譲渡いたしましたときなどは当初は四十万坪と言われておったのですね、いまはどういうわけか四十六万坪ということになっております。そこうちの二十八万坪は県の造成した価格坪当たり二千五百円であったのですが、それを千五百円で譲渡している。それほど企業の誘致に一生懸命になり、優遇した。これは当時の自治体哲学といいますか、それが地域開発一点張り哲学だったためにそういう結果になったんです。そういうふうに非常に有利な条件企業が立地していますので、その段階でやはり企業に義務づける、で、国がある程度の援助を与えるということでないと、後でそれをやろうとしても、それはとても財政的に無理ですよ。ですから局長、その点よく前向きに検討してください。いかがですか。
  16. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) 前向きに検討させていただきます。ただ、私ども水島の場合で、いま先生おっしゃられたとおりでありますけれども、実はその最初の計画のときにはかなり緑地に対応する地域を県としてもとっておられたのではないかというふうに思うわけですが、やはり成長が非常に早くて高かったために、狭い土地企業として有効に使おうということで、おいおいと緑地たるべき土地タンクその他の用地に変わっていったという不幸な経験をしておるわけでございまして、そういう点よく踏まえて検討させていただきます。
  17. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大変前向きの御答弁をいただいて私も満足でございますが、ただ、やはりそれを法制的に義務づけないと、どうしても自治体というのは財政が苦しいものですから、背に腹はかえられず、その緑地をつぶすというようなことになりますので、その点をよくお考えいただきたいと思います。  それからもう一つ私が水島経験で痛切に感じましたのは、企業高次下水処理施設設置を義務づけることはできないか、それから予想される廃棄物ですね、この廃棄物処理をしませんと、結局いいかげんに請負業者に任せる。請負業者が苦し紛れに、それを手当たり次第に無責任に投棄すべからざる場所に投棄するという現象がございます。ですから私は、いま緑地による遮断帯などの設置だけじゃございませんで、廃棄物処理施設、それから高次の第三次処理までいかないと結局だめですから、高次下水処理施設設置を法的に義務づけることが必要だという考え方なんですが、その点はいかがでしょう。
  18. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) 廃棄物につきましては、厚生省あるいは通産省あるいは運輸省あるいは建設省というふうにまたがって行政を施行しておりますが、港湾計画の五カ年計画をいま私ども運輸省との間でいろいろと検討を重ねておりますけれども、その中の主要な柱の一つに、港湾事業というものが単に貨物の出入りということだけではなくて、廃棄物について港湾計画の中でどのように処理するかということがきわめて重要な柱であるということになっておりまして、その中でいま御指摘になりましたような点を一度運輸省とよく検討させていただきたいと思っております。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その次に、この総合開発計画の、多分見直しがあるようですが、ただ、この中の自然の保護とか、観光資源の確保並びにその有効な利用という二点は、これは影響ないんでしょうね、局長いかがですか。
  20. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) この計画を策定しました当時よりも、さらに週休二日制が徹底するなどの動きがございますし、国民生活動きも余暇に対して相当大きな意味を見つけておるわけでございまして、現在ではむしろそういったレジャー的な観光的な動きが自然を破壊するという側面も持ったりしておりますので、新全総のときよりももっと強化した形で自然保護について何らかの計画検討させていただきたいと思っております。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 局長の御答弁は、自然の保護と、それから観光資源保護活用もこれは入っていると見ていいですね。私はその問題で、このすばらしい自然の中に浸ったときにいつも感ずるのですが、これは一つ自動車による観光客エンジョイメントといいますか、それが非常にどうかと思われる点があるわけですね。たとえば富士山の五合目までの自動車高速道路、あれなどは比類なき杉の木立というようなものを非常に枯らしてしまうんですね。御承知のように、スイスのユングフラウなどへ行ってみますと、あそこは自動車を上げないんです。電車観光客頂上まで案内する。それはやはり、そういう自然の保護自動車排気ガスというものの脅威を十分認識しているからだと思うんですよ。だから私は、至るところで自動車道路が自然と衝突して、住民の抵抗を招いておるんですね、そこで、有料自動車道建設ということを根本的に再検討して、電車などによる観光客エンジョイメントというものを考えたらどうかと思いますが、その点どうでしょうか、局長
  22. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) 自動車が過度に自然の中に入ります際にやはり問題があることは先生御指摘のとおりでございますけれども、一方で、観光とかレジャーを中心とする地域につきましては、需要が季節間で激増したり激減したりするものですから、鉄道というふうな企業にかなりなじまない側面を持っておりますので、季節的変動の多いレジャー地域交通体系についてどうしたらよいかということは、私どもとしても非常に苦悩のあるところでございます。一方で、自動車というものは、家族連れ相当荷物を持って旅行をなさろうとする方については非常に任意性があって快適なものでございますので、国民のニーズの方はますます高いという現状にございますから、自動車交通に対して何ら対策を打たないというわけにはいかないと思うんですけれども、ただ、その交通それ自身がせっかく見ようとする自然を失ってしまうのでは元も子もないわけでございますから、その辺の調和というものをどの辺に求めるかということを検討させていただきたいと思っております。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それからもう一つ、私が自然公園、各地の国立公園国定公園などに行って痛感をしますのは、やはり観光客マナーの問題ですね。これを欧米の名勝地に行ったときと比較しますと痛切に感ずるわけです。まあ、花よりだんごといいますか、桜をめでると同時にお酒を飲んで乱舞するというような慣習がまだございますから一概に責められないかもしれませんけれども、一例を挙げますと、貴重な渓流ががけの下に流れている、そのがけや川にいろいろなごみかん詰めの空きかんなどを投げ込むようなことが非常に多いわけですね。余り政府として国民社会道徳を説くということは得意じゃないかもしれないけれども、しかし、これはやはり全然放棄してはいけないことなんで、観光客マナーと、それからもう一つは、国がやるか自治体がやるか、どちらかだと思うんですよ、ごみ処理するということね。名勝地ほど汚れている。俗に言う富士山頂上ごみだらけという外国の観光客指摘があるわけですね。この点をもっと積極的に推進してもらいたいと思いますが、局長いかがですか。
  24. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) 観光地におきますごみについては、現在では関係の都道府県で対策を講ずるということでやっておられて、非常に積極的な県も多々見受けられますし、特に、ごみ廃棄について指導的な掲示をするというようなことは相当進んできておりますし、地域によっては看板一つ立てさせないということを決めた県もございまして、進んできているとは思いますが、私どもの方といたしましては、一つ観光地で空かんがどのように捨てられるかという実態調査をしているということもちょっとございまして、それから得られています成果の一つとして、無造作に捨てられているようでいても、わりにその捨て方に客観的なルールがあるのではないかというふうな学者の調査の結果も出たりしておりまして、ごみの回収の仕方について一工夫することによっていままでよりは改善するのではないかというようなことも考えておるわけでございまして、観光地を抱えた各県とも相談をして、何らかごみの問題をしたいと思いますが、しかし、ごみの回収につきましては、都道府県としては財政上の問題その他に少し問題を残しておりまして、どうも地元住民なり県民のごみであればもっと積極的にという側面が出てくるかもしれないんですけれども、東京の方々が行って山へ捨てたごみをどうしてわが公共団体で回収しなければならぬかというような意見も実はあることも事実でございまして、そのあたり一工夫要ると思っております。
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その点は、これはコンビナートの場合も同様なんですけれども、結局あらゆる施設が自治体に財政上の負担をかけるんですよ、現実にね。ですから、ごみ処理するという問題でも、結局やるのはその府県か当該の市町村かということになるものですから、それには一定の人員というものも配置しなければいけない。人件費がまたこれ、自治大臣から自治体の人件費などが高いというような非難が出る。だけれども、実際やむを得ないんでね、そういう末端の行政というものは自治体がやりますからね。だから私は、どうでしょうね、局長、いわば観光客に対して何らかそういうごみ処理を賄えるような自然保護税というようなものを考える必要はないだろうかと思うんですがね。つまりそれは、その観光地をエンジョイする人々がみんなで、大切な自然を保護するんだ、そのためには何分の犠牲を払うというような意味での自然保護税というようなものは考えたことはないかどうか。どうでしょう。
  26. 青木英世

    説明員青木英世君) いま先生御指摘ございましたような、特に自然景観がすぐれた地域におきますごみ処理の問題、あるいはかえって自然景観がすぐれているがゆえに開発が抑えられている、こういったことに伴います当該地元の不利益をどうするか、こういった問題につきましては、実は環境庁の自然環境保全審議会の中に専門的な委員会を設けまして、現在そういう問題をどうするかといったことを検討しておる段階でございます。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に瀬戸大橋のことについてお尋ねしたいんですが、これはいままで三本のルートというものが一応是認されておるわけですね、四十五年に本州四国架橋公団ができた。これは最近見直しという環境庁長官のお話がありますが、この四十四年五月三十日に新全総ができたときにはやはり三本の架橋を前提にしてできておるようです。これはいまこの現実の事態に処して、三本の点も見直さんとしているのか、あるいはその一本さえもなおかつ見直そうとしておるのか、その点お尋ねしたいと思いますが。
  28. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) 四国の本四架橋につきましては、御指摘のように、新全総におきましては三本を前提にしております。この前提にしております根拠となりましたのは、瀬戸内海の船舶の航行が大型船から小型船まで、あるいは東西から南北の交差まで非常に錯綜するということに伴いまして、かなり危険が増大するのではないかということから、できるものを陸上交通に切りかえたいという配慮が一つあったということでございます。もう一つは、四国の経済開発にとって、本土との陸上交通でつながることが相当大きな意味があるということを考えたというのが一つございます。  それからさらには、先ほどから御議論ございましたが、大都市からのレジャーが非常に激増するために、特に淡路へ渡るレジャー客の数は年々増加しておりまして、カーフェリーなども相当長時間待たなければ乗れないという実情にございますので、そういったことにも対応したいということを通じまして、三本の橋をかけることがやはり重要であるという認識に立っておったということでこの計画はできておりますけれども、今日の時点になりますと、副総理から申し上げましたように、静かな成長下において果たして四国の橋にどういう評価をしたらよいかということにつきましては、やはりこの段階見直し作業をしたいということを考えております。
  29. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど新全総また経済社会基本計画、これは総見直しをやると、こういうふうに申し上げましたが、その新全総の中で見直しを要する象徴的なものがこの三本の橋の問題だろうと、こういうふうに思うわけであります。これは新全総の見直しにつきましては、その概略をこの一年かけましてやりたいと、こういうふうに思っておりますが、特に三本の橋の問題につきましては根本的に再検討する、まだ結論は出ておりませんが。
  30. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 根本的に見直しをされるというので、私も大いにわが意を得ているわけなんですが、環境庁の方にこれはお尋ねするわけですが、この橋については環境のアセスメントは満足すべきものができておるんでしょうか。
  31. 青木英世

    説明員青木英世君) 私、実は担当の課ではございませんので詳しくは存じておりませんが、いまお語のございました本四架橋につきましては、まだ必ずしも十分なアセスメントについて環境庁と相談があっておるというような状況ではないということです。
  32. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) 本四架橋の環境アセスメントにつきましては、建設大臣、運輸大臣所管でございまして、環境庁の方に対して、もし着工する場合には環境庁としての環境アセスメントをお願いしたいということでお語しを非公式にしておりまして、中公審その他でその問題を御審議いただこうという段取りをした段階で、実は総需要抑制として工事の中止命令を出したという事情にございますので、再検討の結果また再開するとすれば、当然環境アセスメントをするということを前提にしているというふうに考えていただきたいと思います。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは、これだけの大工事で瀬戸内海環境、それから四国の何よりも自然の環境を損なうという点で非常に私ども懸念しておりますので、少なくともルートの決定、それから着工、これは必ず環境アセスメントができた後にお願いしたいと思うんですが、長官、ぜひその点を。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはそのようにいたします。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 長官がそういうふうにおっしゃってくださったので、私もこれ以上聞くことがなくなっちゃったんですがね、実はこれがもしできた場合は、恐らく本土資本が四国へ一斉に流入していくんじゃないか、それから土地の買い占めが一斉に起きるんじゃないだろうか、それから阪神へ需要が移動して土着資本、土着商店が衰微するんじゃないだろうか、それから農業が同じように衰微しはしないか、漁業も衰微しはしないか、水の消費が非常に増加しますけれども水の消費についての自信があるのか、さっき申し上げたじんかい処理とか汚水処理業務が増加しますから自治体への財政的な直撃的な影響があるんじゃなかろうか、観光人口も増加しますし生活環境変化していく、そうすると自治体の負担が著しく増加しやしないだろうか、それからあの狭い道路に自動車がはんらんする場合に大気の汚れはどうだろうかというようなことを考えてみますと、これはよほど御調査にならなければいけないというふうに考えたわけなんです。これは自然環境への影響だけじゃなくして、いわゆる土着の第二次産業、第三次産業、それから第一次産業への影響、自治体の財政負担の問題、そういうような問題について本当に満足すべき科学的な調査というものは、私も図書館をひっくり返してみたんですが、まだないんですね。この点、局長、そういう満足すべき調査というものは、あなた持っていらっしゃいますか。
  36. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) 満足すべきというものは私どもちょっとありませんで、絶えずもっと知りたいと思ったりしておりますから、その意味では満足とは申せないんですけれども、一応いままでは、昭和六十五年におきまして四国の経済にどういう影響があるかということは、関係省庁の間でいろいろと勉強をしておりますが、いま御指摘になられたような四国への諸影響につきましては地元の方々も相当心配しておられまして、その心配が実はできるだけ早く、四国の橋三本やるのかやらないのか、やるとすれば何年度に供用開始できるのかということの目標を与えてほしいという地元の意見が非常に強く出ておりまして、それによりましてやはり四国への影響がきわめて違ってまいりますので、私どもとしてはそういった四国への影響を勉強すると同時に、三本のルートについて国としての態度をできるだけ早く決めて差し上げることがその対策の第一歩ではないかと思ったりしております。
  37. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから次にお尋ねしたいのは、この新全総の中で比較的弱い部分といいますか、これは何か私農業のように思うわけです。というのは、私が昭和三十六、七年、池田内閣時代の所得倍増十カ年計画、あの時代にしばしば経済企画庁に足を運んで、その当時の新産業都市の計画などに携わっておられた若い新進の官僚の方にお目にかかったときに、農業のことなんか考えちゃいないよというような、簡単に言うとそういう表現に接したことがあるんです。この新全総の中にも大畜産基地の設定というようなものがあります。北海道、東北あるいは阿蘇。まあ農業に対する新全総の中において占める地位といいますか、そういうものについて、これは局長と農林省の担当の方にちょっと御抱負を承りたいと思います。
  38. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) 実は新全総の中で農業問題は非常に大きな地位を占めて策定したように私どもとしては考えております。特に米作あるいは畜産などにつきましては、相当積極的なプランを示しているように考えているわけでございますが、御指摘になられた点は、それでは現実はどうかというときに計画との乖離上の問題点が非常に多いのではないかということが一つと、それから工業化する、あるいは都市化する際に農業問題との調整がどうなるかというふうな具体的なお話ではないかというふうに考えますが、現在総点検をしています中では、農業の規模その他について新全総より大きくということはなかなか望めない実情になっておりまして、規模についてということよりは、むしろ農業を担当する農民の方々が現在はどんどん減少している実態にございまして、ある程度の農業に従事する農民の方々を確保するという観点を強化いたしませんと、どうも農業政策が新全総の計画の水準にさえも達しない可能性を持っているということで、現在果たして長期に見て農業人口がどの程度ほうっておけば減ってしまうのか、あるいはどういう政策を講ずれば農業人口というものが安心して生活できる状態を確保できるのかという点にしぼって、ただいま総点検の作業をしているところでございます。
  39. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) 新全総の中における農業の役割りでございますが、食糧供給基地としての農業生産基地の配置と編成の問題、あるいは先生御指摘の大規模畜産問題、基盤整備の問題あるいは生鮮食料品の流通問題供給問題、そういった問題は、それなりに私どもは評価され位置づけられていると理解しております。  ただ、ただいまの御答弁にもございましたように、やはり高度成長の中で日本の農業、農村にそれなりの福音もありながら、他方においてはやはり農業の体質というものが、たとえば御指摘のような労働力の脆弱化の問題とか、あるいはまた地価の高騰とか、そういった面でなかなかむずかしい問題を抱えていることは事実だろうと思います。私どもといたしましては、やはり農業の体質強化という視点で農業の問題をもう一回見直しをしなければならないだろう、かような意味で現在農政審議会でも、六十年の長期見通しの問題、あるいはこれを受けて食糧政策という視点から農政をどういうふうに今後展開していくかという問題に取り組んでいただいておるところでございまして、その成果等も新しい計画のあり方には十分織り込んでまいりたいと、かように思っております。
  40. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま国土庁の担当局長のお話では、農業人口の衰退をいかに食いとめるか、農業後継者をいかに確保するかという問題とも共通しますが、そこに非常な悩みを感じておられるようですね。私もここ数日の間に起きました乳価の問題これで痛切に感じたんですが、また、酪農農民の訴えを聞きますと、乳価の決定に当たって問題となるのは農業労働の評価の問題ですね。結局、価格といっても飼料とか何とか外来的なものじゃなくて、中心になる農業労働者の一時間当たりの単価をいかに見るかということが非常に大事な問題であります。それが農民を励ますものになるか、あるいは失望落胆して農業労働の意欲を損なうものであるかという問題なんですね。いま現にあなた、農林省は乳価の決定に当たって、酪農に従事する農民の一時間当たりの労働の単価をどのくらいに見ていますか。
  41. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) お答え申し上げます。  ただいまちょっと労働時間当たりの労働報酬の評価額の資料は持っておりませんが、考え方を申し上げます。御案内のように、牛乳の場合は割り高な市乳と加工原料乳とがプールされまして農家の受け取りが現定されているわけでございます。この割り安にどうしてもなりがちな加工原料乳の部分につきまして、不足払いの制度をやっておるわけでございます。この不足払いの制度を決めます際の保証価格の労賃評価の問題でございますが、これにつきましては、主要生産県一道三県でございますか、これの他産業との均衡労賃ということで評価をしているわけでございます。全国平均ではございませんが、主要生産県の均衡労賃という考え方で評価をしております。
  42. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 他産業との均衡をとるということであればこれは非常に結構なんですが、他産業との間に均衡が全くとれていないんですよ、現実は。そこに問題がある。たとえば工業労働者の場合は一時間当たり幾らと見て、これは私も数字を知っておりますけれども、私から言うのは何だから、あなたの方からお答えをいただきたいのだけれども、一時間当たり幾らと見ているのか、それから農業労働者の場合は一時間当たり幾らと見ているのか、その間の均衡がとれていないんじゃないかと思うんだけれども、あなたは均衡がとれた決定をしているというふうに答弁する自信がおありですか。
  43. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) お答え申し上げます。  御案内のように、農産物ごとにやはり商品特性、生産流通事情が違いますので、労働報酬の問題を一概に行政価格の決定だけに関連づけて評価することはできないかと思います。御指摘のようなことは、実は牛乳の加工原料乳の保証価格の労賃の評価につきましては、主要生産県でございます北海道、それから東北の二、三の県、この地域における他産業労賃というものを評価の基準としております。したがって、全国ベースで見ました他産業均衡労賃との関係ではやはり格差があることは事実だろうと思います。
  44. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 問題は、いまあなたが仰せになったように、他産業との間にやっぱり格差がかなりあるわけですよね。これは一時間当たり五百円ぐらい格差があるんじゃないだろうか、これが結局乳価の決定というものを非常に低い水準に落としてしまう。そこで、せっかく新全総で大牧畜基地というものを建設して酪農を振興しようという結構な計画があるんだけれども、そこに、局長のおっしゃるように現実との乖離というものが生じてくる。肥育牛などは、これは飼料が上がったこともあるけれども、一頭当たり十万円ぐらいの欠損だというんですね、農民に直接聞いてみると。だから、これは結局この酪農を振興しようと思うとやっぱり思い切った価格政策をとらなきゃいかぬ。たとえば私ども、さっき申しましたスイスのユングフラウへ行ってみると、山の非常に広い斜面に牛が一頭、二頭という非常に恵まれた状態で酪農が行われているわけですね。そこで、思い切った価格政策をとって酪農事業というものを安定さしてやらないと、どうしてもこれは維持できない。その決意があるかどうか。  それからもう一つは、この新全総の中にありますいろいろの牧畜基地ですね、北海道あるいは東北、あるいは九州の阿蘇とか、そういうところには国有地もかなりあるんじゃないかと思うんだけれども、国有地を利用する意思はないか。この二点をお尋ねしたい。
  45. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) お答申し上げます。  酪農の、一つは御指摘ございました肥育牛の問題でございますが、需要の後退と配合飼料価格の高騰等から非常に収益力が下がったことは否定できません。昨年の秋以来、ようやく若干価格は回復してまいりましたし、また配合飼料価格も落ちつきを取り戻し、四月からは引き下げられるという状態になっております。しかし、こういった点から、牛肉の価格安定も重要な課題だと思いまして、先日国会で御通過願ったわけでございますが、畜産物価格安定法を改正いたしまして、牛肉を指定食肉として価格安定制度の対象にするという制度改正をしたわけでございます。  酪農の問題を考えます場合、確かに先生御指摘のように、土地の問題と乳価の問題が非常に大きな問題だろうということは事実だろうと思います。御案内のように、現在日本の酪農構造は、構造的にいま変化を遂げつつある時期にございます。地帯的にある程度土地基盤を持った地域に集約してくる、それから経営規模もいままでの零細経営がかなり整理されて、大規模多頭飼育というものに集中していくという形がある、それなりに段階がそれぞれあるわけでございますが、ある段階に到達しつつあるということは事実でございます。しかし、酪農についてやはり非常に重要な問題は、自給飼料の生産基盤、あるいはそれと結びついた育成過程をどうするかという問題だろうと思います。そのような意味で、私どもといたしましても、やはり自給飼料の生産と、それからこれに必要な土地の確保という問題には重点を置いてまいりたいと思っております。その意味で、一つは既耕地の中で非常に利用度が落ちております水田の裏作でございますね、これを積極的に飼料生産に充当していくということで、今年から特別の助成というものも考えまして、その生産を奨励しているわけでございます。草地造成につきましては、なかなか土地の取得その他むずかしい問題もありますが、農用地の造成制度のあり方というものも含めまして、ひとつ前向きに検討してみたいと思っております。  国有林の活用につきましては、御案内のように、わが国の場合は、いわゆる傾斜地が林業的利用と農業的利用で競合する関係という特殊な資源制約があるわけでございますが、現在の国有林野の貸し付け方式というものを積極的に活用すること、あるいはただいま申し上げました農用地の造成方式の検討という過程を通じて、さらに新しい手法等についても検討いたしてまいりたい、かように思っております。
  46. 下河辺淳

    政府委員下河辺淳君) 先ほどは農業労働力を確保するためにということを作業していることを申し上げましたが、そのことの一つは、やはりいま御指摘いただいたように価格のインセンティブがやはり議論になるとは考えておりますが、もう一つ議論になると思っておりますのは、先ほど農林省からお答えしましたが、農業用地の、特に酪農用の用地をどう確保できるかということでございますが、御指摘のように国有地のこともございますけれども、もっと根本的には、わが国の場合、里山と申しますか、かつてエネルギーとして薪炭林地として持っておりました山が、エネルギーとして無用化しておりまして、その広大な薪炭林地であった地域が、現在ではむしろレジャー用の別荘地とかゴルフ場にねらわれておりまして、村の実態としては過疎化が進むという実態がございますので、そういった里山あるいは旧薪炭林地というものに着目して、どのような農業を発展させることができるかということを検討することが、この農業用地に対する問題の一つの大きな点ではないかと考えております。
  47. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 時間ですのでこれで終わりますが、ちょっと自治省を呼んでいましたが、自治省の方にお聞きする時間がなくなってしまったので申しわけないですが、それだけです。
  48. 源田実

    主査源田実君) 分科担当委員外委員の発言についてお諮りいたします。  矢追秀彦君から発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 源田実

    主査源田実君) 御異議ないと認めます。  矢追秀彦君。
  50. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) 副総理に数点確認をしたいのですが、まず初めに、総理や副総理はしばしば、質素な生活への転換とか、消費者の会理的生活パターンへの転換と、こういうことを所信表明でも述べておられますが、こういったことは生活を切り詰めろということになると思うのですが、実際はその生活の切り詰めは、エンゲル係数等を見てもわかりますように、低所得者層にしわ寄せがきておるわけです。そういうことで転換がなされてきたのでは、やはり国民の不満というのはそう簡単に解決をしないと思いますが、この辺はどうお考えになりますか。
  51. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 経済変動がありますと、どうしてもその変動のしわ寄せが低所得者階層にいく、ことにインフレの場合においてそういう傾向があるわけであります。まあ、平常のインフレのない安定した社会におきましても、どうしても強い立場の人はほうっておけばさらに伸びるという傾向がある、ことにインフレ社会におきましてはそういう状態が非常に顕著に出てくる、こういうことを考えますと、まず第一には、インフレのない社会を実現するということにどうしても全力を傾けなければなりませんが、同時に、インフレがおさまりましても、そういう強い立場の人が進み過ぎる、弱い立場の人がおくれるということに対しましては、政治は中に介入いたしまして均衡に努力するという姿勢をとらなければならぬだろう。とにかくいまはちょうど混乱期、変動期でございまして、その最大の課題はインフレをとめる、そういうことにある、こういうように考えております。
  52. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) 副総理は、今年三月末に消費者物価指数を前年同月比一五%以内に抑えると、これをしばしば言ってこられて、大体達成されそうであるということでございますけれども、これはあくまでも前年同月比であって、その前年が余りにも、御承知のように狂乱物価で猛烈に上がった後ですから、これは一五%ということ自身一つの疑問に前から思っていたわけなんですけれども、これでおさまったから政府の政策は正しかったのだということには私は余りならないのじゃないか。げたの問題もございますよね。こういうことで、去年が余りにも上がり過ぎでおるので、ことしはもうこれからまた上がったら困りますけれども、実際一五%以内に抑えられることはもう最初から可能であった。それができたのだから、これはもう政府の政策が正しかったのだということで相当宣伝がまたされると思うのですけれども、この点について、やはり去年の物価上昇のカーブを見てみますと異常なわけですね。異常なものを基礎にして、またその上の一五%ということですね、この辺がいかがなものなんですか、その点どうお考えになりますか。
  53. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一五%目標は、実際の結果は一四%あるいはちょっとそれを超えるかもしらぬという程度におさまるのじゃないか、そういうふうに見ております。一四%というと、決してこれは低い上昇じゃございません。しかし、それを全体としてながめてみると、去年の秋ごろまでやはり狂乱の後を受けまして消費物価もかなりの上昇過程をたどったわけでありますが、十二月からの情勢を点検してみますと、十二月が〇・四%、それから一月が〇・五%、二月が〇・三%、こういうことでございまして、これを年率にしてもとにかく五%強の上昇だと、こういうことであります。これは国際社会でも、日本の物価の推移に対しましては非常に高い評価をしております。OCD政策委員会におきましても、またこの間は経済視察団がアメリカに参りましたが、アメリカ等でも、むしろ驚きを持って見ておる、こういうような情勢でございます。〇・四、〇・五、〇・三、三月の東京区部は一%というふうになりましたが、これも十二月、一月、二月、三月平均してみると〇・五五%というのでかなり落ちつきを示しておる。これで行けばもう混乱以前の状態になるということになるわけです。問題は今後にあるというふうに考えております。
  54. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) いま言われましたけれども、実際は、ことしだけの上昇を見ますとそれは確かにそういうことは言えると思いますが、昨年、一昨年というのは本当に異常状態、その上に出たものでありますし、特に御承知のように、いま非常に個人消費が停滞していますよね。これは国民生活防衛を、非常に一昨年からこりまして、非常にがまんして一生懸命貯蓄をしているわけです。目減りの問題もございますけれども、それ以上に物価が非常に高いということで、この春ごろになって少しは伸びるかというのが余り伸びていない、そういう状況です。だから、とまったことがいいのか、あるいは国民が非常にがまんして、上がるよりはいいですけれども、だから日本が非常に経済政策がうまくいっている、いまこういう不況のときに非常に抑えられた——私はいま自身もこれはまだ正常じゃないと見ているわけです。だからこの後、春闘がどうなるのか。特に副総理はこの間の参議院の物特の委員会でも言われておりますけれども、春闘が思い及ばざる結果になれば再び厳粛な態度で政策運営に臨まなければならないが、なだらかな形で解決するならば機動的な対策が打てると、こう言われていますが、この機動的な対策、なだらかな形、これはどういうふうなことを想定されていますか。
  55. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま物価は鎮静してきておる、しかし、その摩擦現象が起きているということ、これが不況現象です。やっぱり私はそういう中で物価の安定というもの、これを最優先に考えなけりゃならぬ、こういうふうに思いますが、同時に、不況が高じまして経済活動が冷え切るという状態も、これを阻止しなけりゃならぬ、こういうふうに考えておりますが、今後を展望しますと、これは物価問題を脅かす二つの要素、いろいろありますけれども二つ特にあると思います。一つは賃金問題これが従来のようなああいう勢いの決定を見る、こういうことになる、こういう問題です。それからもう一つは、いま企業が不況のために採算割れをしておる、その採算是正のために商品の価格改定、引き上げを行いたい、こういう気持ちを持っております。それを爆発させてはならぬ。  この二つの問題ですが、その中で特に賃金の問題、これは、私も賃金問題は今度は非常に大事だというので、労使双方に向かって御理解を得るための努力をいたしており、かなり理解をされておる、こういうふうに思いますが、それが私どもの期待するようななだらかな解決ということになるということになりますれば、これからの経済運営というものは、いままでのような景気状態にも特に配意しながらこれを運営していくということが可能になるわけでありますが、もし賃金も非常に上がってまいりました、また企業の方でも値動き動きが活発になってまいりましたということになれば、これは今日のような景気を重視するというような政策を続けていくわけにはいくまい、また厳粛な抑制政策をとることにしなければならぬかなと、こういうふうに考えております。
  56. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) 副総理は盛んに春闘の賃上げということを強調されておりますが、私自身も賃上げ自身が物価に影響がゼロとは決して申し上げませんけれども、どうもそちらの方の宣伝が非常に先に出ているように思うわけです。  それで、いま言われたように、いま非常に引き締め政策でぎゅうっと締まっている、そのために今度は逆に不況現象が出まして多くの倒産等も出ております。最近公定歩合の引き下げの件もちらほら出てきまして、四月二十日ごろというふうなことも新聞では言われておるわけです。これが〇・五%仮に下げられる、それから予算の執行に当たって公共事業については五十年度は最初に消化をしていく、あるいは一月−三月の分も契約を完了してどんどん進める、こうなりますと、春闘の賃上げは別にしましても、これを一応別に考えても、これには相当私は過剰流動性というものが出てくるのではないか。この問題、また私締めくくり総括でもう少し詳しく詰めたいと思いますけれども、概算しましても四十六年ごろの過剰流動性といわれたぐらいの金額までいくんじゃないか、こういう気がしておるんですが、その点はどういう見通しですか。
  57. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 過剰流動性については、はっきり申し上げますが、過剰流動性が発生するということはこれは絶対にいたしませんから、これは金融政策の操作によってできる問題なんですから、そのような御心配はこれは毛頭ないように御承知願いたい、かように存じます。
  58. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) いま毛頭ないとおっしゃいましたが、その予算の執行と、それから最近円がちょっと高くなってきていますね、そういったこと、それから要するにドル、オイルダラー、それから証券買いも出ておりますし、輸出がこれから少しまた伸びてくるんじゃないか、輸入が減ってきている、こんな状況ですから、不況になればどうしても輸出に力を入れるということになるわけですから、そういうことで、私はそういう外貨のことも含めまして、かつてのようなめちゃくちゃなことはもう反省がありますからされないと思いますけれども、どうもさっきも申しましたように、きょう具体的な数字を持ってきておりませんけれども、これは改めて総括質問でやりますけれども、どうも出てくる可能性はほうっておいたらあるんじゃないか。いま絶対にしないとおっしゃいましたが、しないとするならば、具体的にいま言った予算の執行をどうされるのか、それから外貨の問題をどうされるのか、その辺ちょっと具体的にお答えいただきたい。
  59. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 外貨といいましても、多少の流入はあります。それは主として証券、社債、これを買う、こういうようなことでドルが入ってくる現象が多少はあるんです。多少はありますけれども、よって生ずる流動性はそのまま日本銀行がこれを吸収しちゃう、こういう政策をとっておりますので、流動性が加重される、こういう現象は起こる余地はございません。これはもう本当に御安心願いたい。  それから財政の方は、執行を昨年に比べますと一二、三%ぐらい繰り上げ契約をいたします。しかしながら、それとても、それによって資金供給量が増加するということになりますれば、これは日本銀行の金融操作によって放出された財政資金を吸収するため、この政策も堅持してまいるということでありますので、本当に過剰の流動性が発生するという余地はもう全然ない。そういう厳粛な金融政策をとってまいる、かような考えでございます。
  60. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) 次に、先ほど少し触れました個人消費支出ですが、経済見通しでは一八・四%の伸びとされておりますが、現状から考えて果たしてそういうふうなことが望めるのかどうか。私は無理ではないかと思いますが、しかし、やはり消費支出というものがこれからどうしても景気というものに大きな影響を持つと思います。いままではどちらかというと設備投資主導型でまいりましたけれども、やはり設備投資主導型というのは、私はもう終わりにきたのではないかと思います。その点の考え方一つ伺って、それから個人消費支出ですか、二つになります。
  61. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これからの経済を動かす要因は、何といっても一番大きな要因は、これは個人消費支出、次いで設備投資、それから財政支出、それから海外への輸出、こういうことが重要な要目になりますが、そのうち個人支出につきましては、これは非常にいま停滞をいたしております。なぜ停滞しているかというのを分析しておるんです。私はこれはいろいろ事情もありましょうけれども、二つあると思うんです。一つは、高値安定というか、物価は安定してきた、しかしながら安定したにもかかわらず、いかにも現実は高いのだということに対する拒絶反応、これがあると思う。テレビを買いに行く、見たところが値がえらい高い、こういうことで買い控えるというような高値に対する拒絶反応、これが非常に多いと思うんです。それからもう一つは省資源、省エネルギーというか、世の中が非常に厳しくなってきた、それに対する順応、これがあると思うんです。  私はその中で、第一の高値に対する拒絶反応というものは、この高値状態が続きます。続きますので、だんだんとそれになれてくる、なれてくるに伴いまして拒絶感というものが解消されていくと、こういうふうに見ておるわけでございますが、第二の生活様式を時勢変化に順応させる、こういう動き、これは私は、これが緩むということがないことを期待しているんです。この状態をむしろ進める、あるいは維持していく、堅持してもらう、こういうふうに期待をしておりますが、第一に指摘いたしました高値に対する拒絶反応というものは、これはその高値の状態にいずれはなれてくる。なれてしまうに従いまして、だんだんと解消されていく、こういうふうに見ておるわけであります。同時に、私どもは、景気全体を夏ごろから上向き過程に転じさせようというような考え方を持っておりますので、それに順応して個人消費もまた、第一の理由として述べました問題と相並行しながら消費回復の要因となってくる、こういうふうに見ております。
  62. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) 消費が回復するかどうか、これはやっぱり一つは減税ですね、それから賃金の問題、いわゆる一五%というのはちょっと私も低いのじゃないかと思うのですが、やはり年平均上昇率の物価程度の賃上げというのは、これはある程度やむを得ないと思うのですがね。いま、そういう国民の状況が副総理は現在は好ましい、こういう状態が続いた方がいいと言われますけれども、実際それでがまんできる階層とできない階層とあることはもう御承知と思います。そういった意味で、個人消費支出というものが大幅に伸びないとなれば、それに対してやはり企業の方も、そう思い切った設備投資等はなかなかしないのじゃないかと思うのですね。  いま非常に悪循環になっている。やはり元来の需要と供給の関係というものが、いまの状態ではなかなか成り立たなくなってくるのじゃないか。こう思うわけです。いままでは需要があったら供給をふやして下げる、ある程度大量生産をやってコストが下がってきたということを私も否定はいたしません。たとえばカメラとか自動車とか、そういうかなり大きなものは、やはりそういう大量生産によっていままでよりはいい品物が安くというか、テレビもそうですがね、少しは影響してきた。ところが最近は、需要があっても今度は供給側がたくさんそれに見合った供給をして値が安定するなり下がるというのでなくて、供給側が締めちゃうわけですね、やみカルテルで一番あらわれたわけですけれども、そしてつり上げてしまう。今度は需要が少なくなれば、企業の方は生産を減らして値段をつり上げる。こういう本来のルートというものから全然外れた形で現在のどうも経済は動いている。そこにやはり大きな混乱があって、政府が幾らいろんな調整をしても、そのとおりなかなかうまくいかない原因があるんじゃないかと思うのですが、そういう本質的な問題をどうお考えになっていますか。
  63. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はこれから長い先を考えますと、個人消費が余り伸びるということは妥当でないと思うのです。むしろこれは世の中は社会化の傾向ですから、社会開発投資、それに国の経済力というものが投入される、こういうことこそが好ましいのじゃないか、そういうように思います。あなた方だって福祉政策を進めなければならぬとおっしゃいます。あるいは生活環境を整備しなければならぬと、こういうようにおっしゃる。その力は一体どこから出てくるのかというと、経済の成長、成果、そういうものもありますが、同時に他方において、個人の消費を余り伸ばしちゃったらそんな力は出てまいらないわけであります。長い目から見ると、健全な消費態度、これは私は本当に好ましいことであり、これを推進しなければならぬ、こういうふうに思います。  まあ、いま非常に景気政策が動きにくいような状態だというふうにおっしゃいますが、これもそうでもないのです。いま総需要抑制政策をとっておる、そうして需給が非常に緩和しておる。そういう状態なものですから、採算を割っても商品を売る、こういうような状態になり、いま卸売物価、とにかく十二月、一月、二月、三月、これを平均しまして年率にしますと、マイナス五・五%、そういう状態です。世界じゅう例を見ない状態になっている状況です。これは総需要抑制政策というものが端的に需給を緩和させ、そうして高い値段では売れませんと、こういう状態を誘致した成果である、こういうふうに考えておる。経済政策はそう軽視はできないです。かなりこれは有効な働きをしておるんだというふうに考えております。
  64. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) 私聞いているのは、ちょっと副総理誤解されているかもわかりませんけれども、要するに元来の、いままでずっととられてきたような形がいまの経済の状態ではなかなかとりにくいのじゃないか、要するに需要供給というものがスムーズに行かなくなっているんじゃないか、こういうことを聞いているんです。その点はどうですか。
  65. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 非常な大混乱のあとからの脱出でありますから、いろいろ過去において見られなかったような現象も出てきておるわけです。物価を鎮静させるというために総需要の抑制政策を非常に厳しくとった、その結果物価は安定してまいりましたけれども、安定基調に向かいつつありまするけれども、不況現象というものがかなり強く出てきておる、それも雇用情勢にも珍しく非常に厳しい情勢が出てきているという、そういう状態はありますけれども、過去の景気循環に見られるような現象、これとちょっと違う側面があるんです。つまり、いままでの景気現象で言いますと、景気が底をつくということになれば、そこから大体V字型でまた景気上昇過程に行くということでありますが、今度はそうじゃない。また、そうあってはならないんです。われわれはその経済の混乱を収拾する、混乱から脱出するという課題もあるんです。あるけれども、同時にもう一つ課題がある。そこが違うんです。  そのもう一つ違う課題というのは、いままでならば、景気調整をして景気を常道に乗せてまた高度成長の時期に入るわけですが、そうじゃない。今度は高度成長という軌道に乗せてはならない。これは資源の状態を考えても、物価のことを考えても、あるいは国際収支のことを考えても、環境のことを考えても、これはどうしても、静かな控え目な成長路線というものにこれからつなげていかなきゃならぬというので、私どもがとる政策も、いままでと違って景気政策一本だけじゃないんです。物価を安定させると同時に、次の経済軌道を、これを安定した静かな成長軌道に乗っけるということをにらんでいるから、そうむやみな景気政策もとれない。そこに、皆さんがいままでの考え方で言うと違った状態があるなというふうに感じられる原因があるんじゃないかと思いますが、われわれが当面している課題というのは、いままでかつてない問題に当面しているということを御認識願いますると、この状態はもっともだという御理解を得られるんじゃないかと、かように考えます。
  66. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) 時間ですから最後に、いま言われましたその静かな控え目な成長、特に先日来も言われておりますが、新しい見直しですね、五十年度が調整期で五十一年度から新しい経済計画のもとにスタートをするということを言われたこともありますし、五十一年度が調整期で五十二年度から本格的なと言われて、二つ私は聞いているんです。私は昨年の補正予算の質問のときには、副総理は五十一年度から新しい見直した経済計画でスタートする、五十年度予算が調整期であると、こういうふうに言われたんですけれども、現在経企庁で進められております新しい経済計画、これは五十二年度がスタートになるんですか、五十一年度がスタートになるのか、その辺をはっきりしてください。
  67. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 完全な調整期としては二年間を考えております。五十一年度まで、こういうふうに考えておりますが、五十一年にいたしましても、これは無目標で行くわけにいかぬ、こういうので大体の長期計画をことしじゅうにつくっちゃおう、そして、五十一年というものはまだ調整期ではありまするけれども、とにかく長期計画のスタートの年次にいたしたい、こういうふうに考えておると、こういうことです。
  68. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) ことしじゅうということは、今年度という意味ですか、それとも五十年ということですか。
  69. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ことしじゅうにつくるということです、つまり暦年中に。
  70. 矢追秀彦

    分科担当委員外委員(矢追秀彦君) それはこれからいろいろお詰めになると思いますけれども、いま言われた二年間の調整期というのが、これはある程度必要かとも思います。しかし、現実にいまのこのような非常な不況下において、こういったことが果たして二年間も国民にしわ寄せをしていいのかどうか。いま非常に国民は不安と、倒産で困っている人が大変な苦しみを受けておる。反面、企業の方は、いっどうなるんだというようなことで一生懸命ねらっている。私もいろいろ人に会うと、何かもうかる話ありますかなんてよく聞かれるんですよね。私は、もうかるというのはこれからいかぬのじゃないかと言っておるんですけどね、企業の方は虎視たんたんねらっているわけです。いかにして早くこの不況で困った分を取り戻そうか、できたらうんと値上げしてやらなきゃいかぬと。国民の方はそういう非常に不安感があるんです。これが二年も続くことは非常に私は疑問に思うんです。  計画を発表されることも結構ですけど、いままでの計画というのはなかなか当たったためしがなくて、大抵二年ぐらいでもう改定というのが過去の例ですから、この辺でやっぱりこういう非常な異常事態が、ことし、来年だったら二年ですけれども、狂乱物価から数えますともう三年、四年になるわけですね、全部で。大体四十八年末、仮にあの石油ショックからとします。私は石油ショックの前からと考えているんですが、大体田中内閣が出てきてから上がっているんですから、本格的にだあっと。そうすると四十八年としても八、九、五十、五十一、四年続くわけですよね。片方は狂乱物価、片方は今度は不況と、こういう非常に長い期間の——私がこう言うのは、不況になっても、いわゆる高度成長、狂乱物価になっても、絶えず損しているのはいわゆる庶民であり低所得者層なんです、不況にしょうが、高物価にしょうが。これは四年間も一般国民大衆、庶民にいろんな面で不安や苦しみを与えることは妥当ではない。やはりできる限り早く、先ほど機動的な手が打てるんだ、今度の春闘さえうまくおさまったらすぐぱっとできるんだと、こういうように副総理は言われているんですから、長い経済運営をやってこられた副総理ですから、私は二年間というのは非常に長いような気がするんですが、その点の所見をお伺いして終わりたいと思います。
  71. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 確かに二年というとこれは長いなあという感じだと思いますが、私どもは二年というのは、安定ということを言っておりますのは、一つは物価のことがあるんです。それからもう一つは国際収支、この二つは経済の何といってもかなめでございます。物価は五十年度中には、これは私どもは正確に申し上げまして安定とは申し上げません。とにかく一けたにはするが、九・九%だと、こういう意味でしょうね。それから五十一年、来年中にはこれはもう預金の金利以下にする、こういうことで、そこで物価の側面から初めて安定ですよ。それから国際収支はどうかというと、五十年中に大体四十億ドル内外の赤字になりそうだ。昨年度の百三十億ドルに比べれば大改善ですよ。しかしなお四十億ドルの赤字を予定する。こういう状態で、これも五十年度で安定だというふうにはまいりません。  その物価、国際収支がまず安定だという時期は五十一年度だ。でありますので、それを安定させるための総需要管理政策をとっていくのはなお二年間を要すると、こういうことを申し上げておるわけですが、しかし、国民が関心を持っているのは、果たして物価の先々が安定するんだろうかという点、それからもう一つは景気はどうなるんだろうかという点ですが、私は先ほど申し上げましたように、労働界あるいは財界、これの協力を得まして、そして物価はとにかく今年中には一けたに持っていくということを必ず実現しますが、同時に、労使双方の御協力を仰ぎますれば、景気政策もこれは弾力的にやっていきますので夏ごろからは景気を上向きに持っていくということも、これはもう公言をしておるわけでございまするから、その辺の方がむしろ国民は関心があるんじゃないですか。二年というのは非常に私どもは良心的に、正直に申し上げておるわけです。物価、国際収支、これはもう非常に高い確度から国がこれで固まったんだと、こう言う自信があるのは二年間が必要だ、それまでの間は、これは片側におきましてはいろいろ変化もありますけれども、総需要抑制というか総需要管理体制、これはとり続けていくつもりだということを申し上げておるわけであります。さように御理解をお願い申し上げます。
  72. 須藤五郎

    須藤五郎君 福田さんにお尋ねしたいんですが、政府は今回、今国会におきまして郵便法の一部を改正する法律案を提出しておると思います。これはあなたに直接関係がない問題でもありますけれども、やはり物価担当の大臣としてお伺いします。  それによりますと、第一種の定形が二十円から五十円、第二種が十円から二十円、こういうふうな引き上げがされることになっております。また、省令事項となっておるその他の郵便料金につきましても、郵政審議会の答申は第三種新聞、雑誌等の定期刊行物は六円から三十円と五倍の値上げになるのです。書留が最低料金で百円から三百円、速達が七十円から百五十円、小包が百円から二百五十円の値上げ幅になっております。本来、郵便は国が国民に対して保障しなければならない基本的な通信手段であり、同時に言論、表現の自由、文化の享受など国民の諸権利を保障する手段でもあると私たちは考えております。したがって、国は郵便法第一条「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによって、公共の福祉を増進する」という規定を守って郵便サービスを国民に提供する義務があると考えております。今回の大幅な料金改定は、この郵便法第一条の精神を踏みにじり、事業経営の側面を優先させるものであると考えますが、副総理はどういうふうにお考えになりますか。
  73. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 郵便料金につきましては、私は郵便制度を利用するいわゆる受益者、この方々が負担をするという制度に徹することが大事なことであるというふうに考えておるわけでありますが、諸物価の高騰、特に賃金の上昇等によりまして、郵便会計が非常に困難になり、今年度も多大の赤字を出し、来年度はそれがさらに増高される、こういう情勢になってまいりまして、私の方は物価情勢が非常に厳しい折でありますので、できたらこの一年ぐらいこれを待つこともできないかということも考えてみたのです。しかし、余りにも大きな赤字が出そうだ。そうなりますと、これを累積させておいて後で解決をするということもまた非常に困難になり、企業経営というような面から見てこれはゆゆしい問題だということで、ずいぶんこれは相談をしたんですが、公共料金は原則として据え置きという中で、たばこと、この郵便料金だけはこれはやむを得ない、ひとつこの際お願いしよう。いずれはこれは上げなきゃならぬ問題なんです。しかし、この二つだけは生計費全体とするとそう大きな問題でもないようなんで、利用者に郵便料金は適正に御負担願うということを今回ひとつ行うほかはないというので、御審議を願うことに踏ん切りをつけたわけでございます。ひとつ御協力のほどをお願い申し上げます。
  74. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちはたばこの値上げも反対しております。ああいう人間の嗜好品をそう簡単に値上げするということは、私は好ましいことではないと思っております。政府は常にこの値上げについては受益者負担という言葉をよく使われるわけですが、しかし、すべてを受益者負担という言葉で物の値上げを国民の肩に、責任に押しつけるということは、私はこれは政治家としてはちょっと足りない面があるんじゃないかと思うんですね。受益者負担ですべて解決するなら、物価の値上げも何もかも、お前は飯を食うから米の値上げしたらいいんじゃないかという、そういうふうにもなってくるきらいがありますので、受益者負担という言葉はもう一度考え直す必要があるように思います。  私は、たばこと郵便とはまた別の面があると思うのです。特に郵便などは、これは私は独立採算制というような形でなく、国民のすべての人が利益を受ける問題ですから、だから安い料金で郵便をすべての門戸に配るということ、これは私、政府の責任でもある、こういうふうに考えております。それを受益者負担だということで、勝手に五倍も三倍も急に値を上げるということは、私は郵便の法の精神にも反することだ、こういうふうに私は思っております。私のところに最近文書が届きました。それは副総理の福田さんの地元、群馬県の「言論・表現・通信・出版の自由を守る詩人、文学者の会」から「「郵便料金値上げに反対する」アピール」が届いたわけなんです。特に私はこの点、福田さんに聞いていただきたいと思って持ってまいりました。少し長いですが、私は読んでみます。   一昨年来の相次ぐインフレ政策は多くの人々  の生活を暗くしており、私たち文化、文学活動  にたずさわる者にとっても創造、出版活動に重  大な困難性を強いております。   紙代、印刷代の急騰に加えこの十月には平均  二・五倍から五倍におよぶ郵便料金の値上げが  実施されようとしており、これが強行されると  各種誌紙の発行、郵送、交流の継続が不可能の  状況に追いこまれます。   群馬はきびしい風土のなかから日本の先駆的  詩人、文学者を輩出し「詩のふるさと」とも言  われ、その伝統を受けつぎ新しい創造の芽は、  ささやかな詩誌、文学誌の中に秘められていま  す。それら誌紙の刊行にたちはだかる自民党三  木政府動きは、文化、芸術活動、言論、表現、  通信、出版の自由に対する新たな挑戦でもあり  ます。三木政府は、この三月十三日頃から各公  共料金の値上げとともに郵便料金の一部改正法  を国会に提出し原案の二・五倍から五倍の案を  強行しようとしています。歴代政府がかつてそ  の例を見ない値上げを私たちは黙視するわけに  はいきません。こういう趣旨で値上げに反対をするというアピールが私のところに来ておるわけです。これは単に私は群馬県の文化人のみではないと思うのです。日本国じゅうの文化人の共通した要求でもあると考えますが、福田さんはこの要望にいかにお答えなさるか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  75. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私の郷里、群馬県からの人の声だという話でありますが、私も郵便料金、強いて値上げをしたいのだということでもありませんけれども、しかし郵便会計の現状を考えてみますると、この辺で始末をつけておきませんと将来ゆゆしいことになるんです。郵便事業は国家の責任である、こういうふうなお話でございますが、その責任も尽くし得るかどうかということになるわけです。もし値上げをしなければ一体どうなるかというと、膨大な赤字が出る。赤字はこれを税によって、せんじ詰めて言いますれば増税によってこれを賄う、こういうことになるわけでございます。  そういうことを考えますと、どっちがいいんだ、たばこを吸う人の利益のために国家、全国民が負担をする、こういう考え方がいいのか、郵便料金を安く受益者だけが使う、こういうために一般国民が税金をよけい納めるということにするのがいいのか、その辺を考えますと、これは公共料金問題というのはそう簡単な問題じゃない、こういうふうに思うんですが、それにしても物価が非常にいま激動しておる、そういう際でありますので、なるべく公共料金の引き上げは抑止したいという考え方から、大方の公共料金につきましては抑制措置をとったんですが、郵便につきましては、郵便会計、ひいては郵便事業の運営というものが非常にむずかしいことになるんです。そこでこの際踏ん切りをつける。これはつけなければ来年はどうしたってやらなきゃならぬ。来年になればまた大幅になっちゃうんです。そういうことを考えますと、まことにやむを得ざる措置としてこういう措置をとったんですが、私の郷里の人にもよく、私がやむを得ざる措置としてそうやったんだという趣旨をひとつ御理解賜るように御協力をお願いします。
  76. 須藤五郎

    須藤五郎君 郷里のことではあるがやむを得ない、やむを得ずやるんだということではやはり郷里の人は納得しない。私は、あなたの郷里だからせめてこれはどうせい、こういうことを言っているわけじゃない。日本国じゅうの文化人の立場に立って、日本の文化が非常に阻害される、そういう点に立って私はいま質問しているんです。たばこの問題と同じではないと思うんです、これはね。たばこを上げることも私たちは反対ですよ、嗜好品を上げるということは。しかし、たばこと第三種郵便、こういう問題等を同じように考えることは、文化性が高いと言っておる群馬県出身の福田さんとしては少しお答えが私は粗末なような感じがするんですよ。そこで私は特に前置きをしてあなたに御質問を申し上げたわけなんですね。  この東京出版センターから出されております浅尾倫行氏の著書「解説郵便法」という本でございますが、この中に「第三種郵便物という低料郵送の制度を設けたのは、新聞、雑誌のような定期刊行物は、社会文化の啓発、向上に貢献するところが少なくないので、これが郵送受を容易ならしめて、もって、わが国の社会、文化の発達を助成しようとするためである。」と、こういうふうに書かれております。第三種郵便物について郵政省はどのように考えていらっしゃるかどうかという点ですね。私は、ほかの郵便物が二倍から二・五倍、高いところで三倍、ところが第三種郵便、最も一般的に問題になる第三種郵便だけがなぜ五倍にならなきゃならぬかという点です。そういう点は私はどうも納得できないんですよ。そういう点でひとつお答えを願いたい。何で第三種だけ五倍にしなきゃならぬのか、第三種はもっと下げるべきものだと私はむしろ考えております。
  77. 守住有信

    説明員守住有信君) お答えを申し上げます。  第三種の中で、週三回以上発行のものでございますが、それぞれ五十グラムまでの刻み方になっておりまして、一番目方の軽いものがおっしゃいますように審議会の案では五倍になっておりますが、三種全体として見た場合は三・二六倍になっております。もともと第三種というのは、先生おっしゃいますように、明治の初め以来そのような意味合いで特別の低料金制度の中でやってきたわけでございますが、その後情報文化の伝達の手段のいろんな発展だとか、あるいはまた販売店その他の流通機構の整備等々も行われてどんどん発展してまいったわけでございますが、特に第三種は、結局第一種等の国民の最も基本的なサービスの料金で第三種の低料金をカバーしておるという点から、余り過度になり過ぎる料金は是正すべきではないか、せめて直接費だけは賄えるようにということでこのような審議会の案が出たと聞いております。
  78. 須藤五郎

    須藤五郎君 福田さん、この点もう少しお話し合いをしたいとは思いますけれども、時間がきょうは三十分しか与えられておりませんので、また改めてあなたとこういう話にいってもいいと思っております。  次には米の問題で少し質問をいたしたいと思います。  副総理は、新聞報道によりますと、政府は三月末の消費者物価について、対前年同月比一五%程度の上昇をめどに対策を進めてきたが、これを大幅に下回る——この大幅というところが私は声を大にして言いたいところですが、大幅に下回る結果が出たことに満足しておる、春闘への物価面の環境づくりは期待した以上にできたと思うと、こういうふうに言っていらっしゃいますが、国民はあなたの言葉どおりには受け取っていないわけなんですね。この間もテレビを見ておりましたら、主婦たちの会合で、政府は何であんなひとり勝手なことを言っているんだろう、ひとりよがりだ、われわれは決してそういうふうに考えていない、あれは雲上の物語りではないかというふうに主婦は言っておるんですね。現実に、東京区部の四十九年度平均の消費者物価上昇率は、総合で前年比二〇・七%となっております、東京の区部は。これは統計を開始した昭和三十年度以来最高でございます。また、国民生活センターが去る三月十一日にまとめました第五回国民生活動向調査によりましても、主婦の約八〇%が物価高に不満や不安を持っております。そのことが明らかになっておるわけでございますが、副総理の見解を伺っておきたいと思います。
  79. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 年間の上昇率一五%という目標でしたが、それがまあ一四%ちょこちょこになりそうだ、こういうことでございますが、これはとにかく一五%がむずかしいだろうというふうに言われておったのが一四%ちょっとというところになったんですから、これは私は大変満足すべき結果になったというふうに考えておりますが、一般の主婦から考えますと、一四%だと、こう言うと、これは一四%も上がったんだ、これではちっとも安定と言えぬじゃないかという御感触はあると思うんです。しかし問題はこの激動する一年間をとって考えるということ自体に私は無理があると思うんです。今日この時点を考えてもらいたいんです。十二月から一体どうだと、こう言いますれば、十二月の上昇率は〇・四なんです。それから一月が〇・五でしょう。二月が〇・三でしょう。そういうふうに非常な落ちつきです。私も、いま各地区の地方選挙がある、そうして人が私の話、演説をしますと集まってくれる。その中へ割って入りまして、それで物価どうですかと言うと、大変落ちついたと言うて喜んでくれておるんですよ。ですから、問題は年度間という変動激しいこの一年をとって見るということでなくて、この数カ月は一体どうなったか、最近は一体どうなったかということを見てもらいますと、これは大変な落ちつきだ。これはもう西ドイツが世界じゅうの優等生と言われますが、わが日本がいまドイツを抜いて優等生と、こういうことになっておるんですから、まあ須藤さんのせっかくのお話でございますが、御理解のほどをお願い申し上げます。
  80. 須藤五郎

    須藤五郎君 副総理の福田さんの太平楽を聞いても始まらないのでございますが、福田さん、それは主婦が非常な困難をしているからです。背景に主婦の困難があるということなんです。国民生活センターの調査では、物価上昇による生活への圧迫に対しまして、むだ買いをしないとか、遠くても安いところへ買いに行く、質を落とす、主婦は自衛手段を講じて生活を切り詰めておる結果そういうことになってきておると思うんですよ。そういうことを主婦に押しつけて苦労させて、それで政府は物価が下がった下がったと言って、いまのように福田さんが太平楽を並べておっていいものかどうかですね。これはもっと責任ある政治家として私は考えてもらわなきゃならぬことだと思うんです。  そこで私は、具体的に米の問題を例としてお尋ねしますが、昨年の十月に消費者米価を三二%という大幅な引き上げを行って以来、米の売れ行きが落ちておると私は聞いておりますが、食糧庁はどのように実態をつかんでいるか、特に自主流通米の落ち込みが大きいと聞きますが、その点はどうか、食糧庁は具体的にお答えを願いたい。
  81. 杉山克己

    説明員(杉山克己君) 昨年の十月に消費者米価を改定いたしました際に、上がるということを予想いたしました消費者から事前に相当の大量の買い付けが行われたという事実がございます。その際、私どもといたしましては、この消費を抑えるわけにはまいらない、やはり上がることを予感して消費者が事前にそれなりの家計を守る措置をとるならば、その時点価格で必要量を売るべきであるという判断のもとに、かなり余裕を持った売り方をいたしたのでございます。その結果、ほぼ一月分にも相当するような数量の米が昨年十月直前には売られておったという事実がございます。そのことがその後の時期に反映いたしまして、十一、十二、一月ごろまで、これは自主流通米のみならず、標準価格米、政府の売る米も含めまして売れ行きが落ちております。現在やや平常化してまいりましたが、まだ前年同期に比べまして若干落ちた水準で売却が行われております。
  82. 須藤五郎

    須藤五郎君 これはもうあなたのいまの説明は、私はこれまでも新聞や方々でよく聞いておりますよ、そのことは。食堂の米の盛りが悪くなったとか、いろいろなことも言われております。しかし、この物価上昇と米の価格引き上げによります節約だけではなく、これまでより質を落としておるということですね、ここに上質米の売れ行きが悪くなったという、自主流通米の落ち込みが起こっている原因があるようにも考えるんですね、安い米を買うという状況が生まれてきておるわけですね、自由流通米をやめて。主婦連が去る十三日発表しました米の消費動向調査結果によりますと、消費者米価値上げ以前は六九%の人が自主流通米を食べておったわけなんです。値上げ後は六九%が四五%に落ち込んだわけです。反対に標準価格米は二四%から三八%に増加している。ところが問題なのは、生活防衛のために安い標準米を買おうと思っても、品不足で買えないという状況が生まれている。ここが問題だと思うんですね。新聞報道によりますと、東京三多摩の一部では、米屋さんが問屋に注文しても入荷しないところも出ておると聞いておりますが、その点食糧庁はどのように考えておるか。
  83. 杉山克己

    説明員(杉山克己君) お話しのように、標準価格米の売れ行きがこのところ伸びているのではないか、その裏返しとして自主流通米の売れ行きは減少しているのではないかという話のあることは承知しております。それからまた、それを実数的に見ますというと、これは主婦連の調査とは違いますが、食糧庁の消費動態調査によりますと、自主流通米が始まったころ、さらには標準価格制度が設けられたころ、たとえば四十八年の十一月ごろは標準価格米の売れ行きが四五%ございました。それがだんだん落ちてまいりまして、四十九年の八月、九月のころになりますというと三四%くらいに落ちております。これが十月には三八%に上がったということが見られます。それから、その後は若干また落ちてまいりまして、四十九年の十二月には三六%に落ち込んでおります。最近またこの傾向はもう少しもとに復しているのではないかと思いますが、一時的におっしゃられるように標準価格米の売れ行きが伸びたということはございます。これはやはり生活防衛といいますか、そういう観点から大量の米をあらかじめ買うというような行為に出たときに、私は標準価格米に対する需要が一時的にふえたのだということは事実であると思います。ただ、この傾向が今後とも標準価格米の増加ということで続くかということになりますというと、四十八年当時からの推移を考えますというと、必ずしもそうは言い切れないというふうに思うのでございます。  それから、そういった標準価格米の提供について、必ずしも十分に手当てしてないのではないかというお話がございました。私どもはそういうことのないように、個々の米屋に対しましても巡回指導に食糧事務所の職員が回っておりまして、必ず置いているかどうかということについての常置状況の調査をいたしております。これによりますというと、大体九八%以上のものが置いておりまして、店によっては、たまたまその時期になかったというようなことで置いてない店も皆無ではございませんが、一%そこそこというような状況でございます。私ども、三多摩でもってそういう標準価格米が欲しかったけれども入手できなかったというような事情については承知しておりませんが、そういうようなことがあれば、直ちに情報があり次第措置をいたすつもりでございます。今後とも標準価格米の提供については支障を来さないように万全の措置をとってまいりたいと思っております。
  84. 須藤五郎

    須藤五郎君 一々質問していると時間がなくなりますので、かためて質問しようと思いますが、私がここで質問しようと思っているのは、主婦たちはおいしい標準価格米を食べようとするわけです。ところが、米屋へ買いに行くというとそれがないということなんですね。それで、あなたが自主流通米がだんだん消費がふえてきていると言うのは、標準価格米であるべきものを一部自主流通米の方へまぜて、そして売るという結果が起こっているわけですね。だから、自主流通米があなたのさっき言ったようにふえていっているという現象もあらわれている。しかし、主婦たちは安くておいしければ標準価格米を食べたいんですよ、経済の面からね。ところがそれがないということですね。それが一つの問題ですよ。  それで、それでは米屋さんに標準価格米がなぜ品切れになったり少なくなるかという点が一つあるんです。それは、米屋さんが標準価格米ばかり売っておったら生活が成り立たないんですよ。非常にマージンが少ない。一日に五俵標準価格米を売っても、マージンはわずか四千五百円にしかならないんですよね。これはあなたの方でも数字ははじいているだろうが、それじゃ米屋さんは食えないわけですね、米屋さんが第一食えなくなってくるわけです。だから、そこで米屋さんはまたいろいろと考えるわけです。そうすると、おいしい標準価格米を内地米にして、そして、それよりは高い値段で売る、こういう結果が、何というか悪循環と申しますか、そういう形があらわれておる点を私はいま問題にしているわけなんです。だから、主婦も喜べるような安い値段でおいしい標準価格米を売らなきゃいかぬと思うんです。標準価格米は米屋さんが絶やしちゃならないことになっているんです。要求があればいつでも売れるように法律で決められているんですね。ところが、それがないというところで標準価格米を買いに行った主婦たちは不満を持つわけですね。米屋さんに言わすと、先ほど申しましたように標準価格米だけ売っておったんでは、一日に五俵売ったって四千五百円のマージンしかない、これでは私たちの生活は成り立たぬと、こう言うわけですね。こういうような、矛盾は両方にあるわけです、消費者、米屋さんと。これをちゃんと軌道に乗せていくのが私は政治の力だと、こういうふうに思うんですよ。福田さん、これどうしたら両方に満足してもらえるようにいけますか。
  85. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 須藤さんのおっしゃるとおり、標準価格米はこれを常に整備しておかなきゃならぬと、こういうことになっておるんですが、どうも標準価格米は行ってもないと、こういうような話もありまして、食糧庁で調査したところ、やっぱり一部そういうものがあったというので、その後食糧庁では厳重にそういうことのないようにということを注意し、監視しておりまして、最近はどうもそういう現象はないんじゃないかというふうに承っておりますが、もし具体的にそういう御指摘がありますれば、食糧庁の方で調査してもらいたいと思います。
  86. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう一点だけ。今度は米屋さんの立場に立って私は意見を述べたいんですが、最近新しくできたスーパー、それから百貨店で——昔は百貨店で米などは売ってませんでした、戦前はね。ところが、最近は百貨店でも米を売るわけですよ。そしてまた米屋さんがたくさん商売しているところへ新しいスーパーができて、そこでも米を売るというような現象があらわれてきておるわけですね。そうなるとたちまち、これまで米一本で立ってきた、親の代から米屋でやってきた米屋さんがたちまち食われてしまうわけですね、逆にスーパーや百貨店に。これをどうしてくれるかというのが米屋の願いなんです。だから米屋のある地域では、スーパーや百貨店では米は売らさぬという行政措置ができないか、こういうことが米屋さんから言われておるんです。標準米を売っておっては食えぬ、そこへ持っていって、方々へスーパーや百貨店ができて米を売るということになると、自分たちの扱う米の量も減っちまう、これではわれわれはますます苦しくなるではないか、これを何とかならないかというのが私どものところへ来ている相談なんです。どうですか、副総理。これは政治問題ですから、副総理答えておいていただきたい。どういうふうにこれを指導していくかですね。
  87. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 食糧庁からひとつ先に……。
  88. 杉山克己

    説明員(杉山克己君) 一つは標準価格米のマージンでございますが、これにつきましては、米屋さんの方も最近のコストアップから十分に償えないではないか、手当てをしてほしいという話のあることは承知いたしております。昨年、そういったことを考慮いたしまして、四月と十月の二度にわたって改定措置を実施いたしております。これによる引き上げ率は約四〇%になります。かなり改善したと思っておりますが、なおほかの業種に比べれば低いではないかというような話も伺っております。しかし、これは一面、政策的にそういう安い米を供給するという立場からつくられている標準価格米でございますので、米屋さんにもできるだけ経費を切り詰めた低廉なコストでもってさばいてもらいたいということで御努力を願っておる面もございます。今後の問題につきましては、これは消費者価格との関連もありますことなので、物価、賃金の動向等も考えながら、一面米屋さんも確かに商売でございますので、そういった採算の成り立つようなことも考え、慎重に検討してまいりたいというふうに思っております。  それから新規登録の問題でございますが、これはデパート、スーパーだけでなく、生協でありますとか、農協でありますとか、このほか一般の雑貨屋さん、そのほか酒屋さん等からもそういう要請が出て、一部新規登録を認めてまいった実績がございます。これは一面では消費者サービスの確保という観点から、米屋という企業を既存の業者だけに独占させておいていいのかという考え方もございます。そういう点からはむしろ競争をどしどしやらせるべきである、新規参入を認めるべきであるという考え方もあるわけでございます。一面、米屋さんはこれはまた中小企業でございます。それで生計を立てているということならば、その安定を考えてやらなきゃならないということも事実でございますし、それから政府としましても、これは大事な食糧の国民に対する安定供給を担当している、国の政策を分担している機関であるという認識を持っておりますので、そういった点からも秩序を混乱させるようなことはあってはならないというふうに考えております。  新規参入につきましては、物価統制令の適用を廃止いたしました四十七年の四月に、価格統制が外れるんだからいままでの米屋さんだけにやらしておいてはどんなことになるかわからないというような一部の懸念もございまして、当時新規参入についての要件を緩和し、特に大都市を中心にある程度の新規参入を認めてまいったわけでございます。ただ、仰せのようにこれが過度になるということで既存の米屋さんの経営を根本的に脅かすとか、配給秩序を混乱させるというようなことがあれば問題でございます。そこで、四十七年にはそういうようなことでかなりな新規参入、また大都市では二割まではまいりませんが、一七、八%程度の新しい店ができましたが、四十八年は、これは各都道府県とも私ども相談いたしまして、また各都道府県ともそれぞれの御判断があって、新規参入は行われておりません。ただ四十九年になりまして、大都市の中で東京都におきまして、これは一部熱心な消費者の要請もあり、流通適正化協議会というところの御意見も聞いて、東京都では三十八件の新規参入を認めたという事実がございます。今後の運営につきましては、私ども消費者の要請の立場も、それから米屋さんの営業の立場も考えながら、秩序ある参入についての取り扱いを進めてまいるようにいたしたいというふうに思っております。
  89. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちも新しい店を絶対認めるなとは言ってないんですよ。団地などで米屋のないところがありますよね。そういうところはやはりスーパーができればそれで扱ったっていいと思うんです。しかし、これまで米屋がずっとあって何ら不便をしてないような町中で、そこへスーパーをつくったり百貨店で米を売らすことはやめたらどうだ、そうすればそこらの米屋さんが困るから、そういうことを行政措置でやったらどうだ、こういうことを私は意見を述べているんですが、副総理、どうですか。
  90. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ須藤さんのおっしゃるとおりだと思うのです。新規にスーパー、デパートが米の取り扱いをするということを、これは絶対阻止する、こういうことはまた消費者の希望に反するというようなこともある。しかし、それによってまた中小企業といいますか、一般の米の取り扱い店を窮地に追い込む、こういうことになってもならぬ。その辺の調整はひとつ食糧庁でほどよくやってもらいたい、かように考えております。
  91. 徳永正利

    ○徳永正利君 私は二点だけひとつ簡単に、もう前置きとかそういうものは除いてお尋ねいたします。  公定歩合の引き下げ、それから預金金利について、これらが新聞でちらほら出ておりますが、日銀の責任でおやりになることですから、いまここで正確なお答えというようなものはどうかと思いますけれども、私は経済の神様の御宣託をちょっとお聞きするというわけでございます。いつごろが適当であるか、あるいはどのぐらいが適当であるか、またいま盛んに銀行が——私どもより金利の上げ下げについてはおかみさん、主婦の連中が非常に敏感で、またよう知っているんです。公定歩合が下がるとすぐにそれに連動して預金金利が下がる、いまのうちに貯金しておけば一年間は貯金したときの時点で高い金利がつくんだ、一年たつとまたそれが下げられる、だからいまのうちといって盛んに勧誘をやっているわけです。それで、そういうような預金金利が連動するようなことになるのかどうなのか、それは銀行の責任において金利を負担するとか、いろんな問題はあると思いますが、それは別にいたしまして、一応その御宣託をいただきたいと思います。
  92. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公定歩合問題というのは、これは日本銀行の専決事項と、こういうことになっておりまして、政府はこれに介入しないというたてまえをとっておりますので、具体的な問題に立ち入ることは、これはなかなかむずかしい問題です。  ただ、せっかくのお話でありますので、原則論といいますか、私なりの考え方を申し上げますと、この金利問題は、一方においては海外の金利情勢、これをにらんでやらなければならぬ。それから第二には、国内の経済情勢を見てやらなければならぬ。こういう二つの点がありますが、その両者から見まして結論を申し上げますと、公定歩合を引き下げなければならないという差し迫った理由はございません。ただ、少し抽象的に申し上げますと、公定歩合の引き下げを行うことは好ましい状況になってきておる、こういうふうに思います。いついかなる段階で、いかなる幅でこれをやるかということは日本銀行が決める問題ですが、好ましいと申しますのは、とにかくわが軍の経済と非常に関係のあるアメリカで大変な引き下げをした。わが国と常に並び論ぜられるドイツにおきましてもそういった作業をしておる。こういうような国際環境になってきておることでございます。  それから国内的に見ますと、金利問題の性格というものが非常にいまこの時点で従来と違っておりますのは、公定歩合問題が景気政策の中で非常に重視されましたのは、公定歩合を引き下げるということは大体において金融の量的緩和、窓口規制の緩和を伴う、こういうことが常例であったわけでありますが、今日は総需要抑制政策はこれを堅持するという考え方をとっておるわけでありまして、公定歩合を引き下げいたしましても、金融の量的緩和、これを従来のような考え方でやる、そういう環境にはないわけでございます。ただ、それにいたしましても、いまわが国の物価情勢は需給インフレの段階は完全に終わりまして、そしてコストインフレ、賃金でありますとか原材料でありますとか、そういうものが物価に影響する。その賃金、物価に続いてコスト要因として考えなければならぬ問題は金利の問題なんです。公定歩合を下げるということになれば、それに連動して銀行の貸出金利も下がる。そこでわが国のコストインフレ下の物価情勢にはこれはいい影響を持つということでございます。そういうことを考えると、これはタイミングは別といたしまして、公定歩合の引き下げは好ましい環境になってきておるということは私は言えると思います。  ただ、その際に、いまお話がありましたが、いま物価は鎮静化しつつあるとは言いながら、これから先なおいろいろ不安要因もある。賃金の問題であるとか、あるいは企業における企業欠損を是正する、こういうような動きでありますとか、そういうことを考えまして、五十年度中の消費者物価上昇率を九・九%と、こういうふうに言っておるわけですが、とにかく九・九%の物価情勢の中で大幅な公定歩合の引き下げが行われまして、それがまたひいては預金金利の引き下げにつながっていくということになった場合に、また目減り問題というもの、この問題が激化してくる、こういう問題がありまして、したがって引き下げをいたすにいたしましても、その幅をどうするかということはかなり慎重な配慮を要するのじゃあるまいか、そういうふうに考えます。しかし、いずれにいたしましても日銀のことでありますから、余りこれに介入いたしますと、またいろいろ好ましからざる影響がありますので、その程度でお許しを願います。
  93. 徳永正利

    ○徳永正利君 そうしますと、預金金利はいままでどおりやはり連動するのだというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  94. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 小幅な公定歩合の引き下げで、金融機関の自主努力で預金金利に影響させずに公定歩合引き下げの影響を吸収し得るという程度の幅でありますれば、これは公定歩合の引き下げがありましても、連動して預金金利の引き下げ問題というのは起こらないと思います。しかし、これが大幅でありますれば、これはどうしても預金金利のところまで影響する、こういうことになりますので、その辺をどういうふうに考えますか、今日の物価情勢と絡めて、これも公定歩合、金利引き下げの幅を決定する場合の重要な要因になるだろう、こういうふうに思います。
  95. 徳永正利

    ○徳永正利君 よくわかりました。  そこで今度は話は違いますが、いま新幹線の騒音問題がいろいろ公害対策審議会で議論されておるわけでございます。そこで、前にも、四十八年の五月八日に環境庁は二酸化窒素の基準を決めましたね。こういうものが果たしてできるかどうか。これはもう別にどうこうといういろいろな経済的な問題を伴うものじゃないですから、アルプスの山の上でなければできぬようなことをちゃんと決めておられるけれども、それはそれでいいとして、今度新幹線の騒音公害というのは、これはもう直接いろいろなところに大きな問題を及ぼすと思います。これはまだ結論が出て答申もない先に、私は転ばぬ先のつえをつくようなかっこうでございますけれども、やがて答申され、環境庁は検討に入ると思います。その段階で、やはり国としてこれを実行すると、環境庁か告示しますと——これは規制値じゃないのだから、目標値であるということです。それは法律的にはよくわかるのです。しかし国民は、標準値であろうと、一遍告示したら、もうそれに向かって規制されたものというふうに受け取ると思います。で、まあそういうような問題、いろいろなことは私が言わぬでもよくおわかりだろうと思いますが、これを告示する場合には、十分経済的にこういうものが成り立つかどうか。いま専門部会でやられておる、あれだけ、仮にこれが決定されたととってみますと、東京から博多までに十数万戸の手当てをしなきゃならぬ。いまの金額にして三兆数千億円になるだろう、こういうようなつかみ金の計算が出ているわけです。いま国鉄の赤字は来年の暮れでまた三兆一千億にもなる、こういう時代でございますから、これはやれる数値というものをよほどよく詰めて、経済的な裏づけを持った覚悟を決めなければならぬというふうに思うわけでございます。これについて、ちょっと副総理の御意見をお伺いをいたしたいと思います。
  96. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 新幹線公害騒音対策、これにつきましては、いま徳永さんのおっしゃるとおりだと考えます。これはいやしくも告示した以上は、それを実行しなければならない、そういう性格のものでありまするから、その告示をするに当たりましては、これは経済上の負担問題、これも含めまして、これは本当に慎重に検討した上、告示をしなければならない、こういうふうに考えます。御所見のとおりにいたしますので、さように御了承願います。
  97. 源田実

    主査源田実君) 以上をもちまして、経済企画庁所管に対する質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  98. 源田実

    主査源田実君) ただいまから予算委員会第二分科会を再開いたします。  分科担当委員異動について御報告いたします。  ただいま、阿具根登君、須藤五郎君及び寺田熊雄君が委員を辞任され、その補欠として田英夫君、立木洋君及び片山甚市君が選任されました。     —————————————
  99. 源田実

    主査源田実君) 昭和五十年度総予算中、防衛庁及び外務省所管を一括議題といたします。  政府からの説明は、これを省略し、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 源田実

    主査源田実君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  101. 田英夫

    ○田英夫君 私は、主として外務省所管の問題についてお伺いをいたします。  最初に、宮澤外務大臣、弔問のためサウジアラビアにおいでになりまして、大変きつい日程の中で行かれたようであります。大変御苦労さまでした。  そういう中で、最初に、非常に緊迫をしているベトナムの問題について伺いたいんですが、戦況あるいは政情がどうなるかという問題は後にいたしまして、日本との関係で、まず伺いたいのは、南ベトナム政府、つまりグエン・バン・チュー政権に対して九十億円の援助を、実は二十九日、おととい調印をされて決定をなさったということでありますが、これは事実でしょうか。
  102. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) これは有償援助でございまして、三月二十八日、長い間の交渉の結果まとまったものにサイゴンで署名いたしました。
  103. 田英夫

    ○田英夫君 この交渉が続いていたことは私ども承知をしておりましたけれども、大変技術的なことを伺いますが、これは年度予算でいくと、いつの、しかもどういう政府予算から支出されることになりますか。
  104. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) これはいわゆる無償援助じゃなくて有償援助でございますので、政府予算とは直接関係はございません。その援助をする直接の当事者は、日本側では基金でございます。
  105. 田英夫

    ○田英夫君 この問題は予算委員会の総括質問でも申し上げましたけれども、同時に、外務委員会には社会党から議員立法の提案をしているわけでありまして、国民の税金から日本国民に還元するのではなくて外国のためにお金を使うということ、それがたとえ有償であってもあるいは借款であっても、つまり貸すんであってもあるいは返済を求めるのであっても、外国のために使うということになった場合に、果たして行政府が全く国民に知らされない中で行っていいかどうかということに非常な疑問をかねて感じていたわけでありまして、そういう意味で、いまこの南ベトナム援助九十億円というものが国民の目の前に出てまいりましたときに、果たして国民の皆さんがどういうふうにお感じになるかということを政府はお考えいただきたい。  特に、あえて私から申し上げるまでもなく、南ベトナムの現状というのは非常な混乱状態に陥り、グエン・バン・チュー政権というものは、いまやはっきり申し上げて余命幾ばくもないというときに、なぜこういう援助を、かねて交渉中とはいえ、急におまとめになったのか、この辺の事情を外務大臣から伺いたいと思います。
  106. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) これは、先生いま御指摘のとおり、前々から交渉していたものでございまして、この最近の事態にかんがみて急にまとめたというものでは毛頭ございませんで、交渉がまとまった段階において三月二十八日に署名したということでございます。それ以外に特別の背景はございません。
  107. 田英夫

    ○田英夫君 まあそう政府としてはお答えになる以外にないんだろうと、こう私は実は政府のお立場を、理解じゃなくて、そう言う以外にないと。いまこの期に及んで九十億円というお金を援助する、これは私はもうこれ以上申し上げる必要はないと思うんです。国会の審議というものは、そういう意味ではまことにむなしいことになってしまいます。政府が結局は行政の権限の中でおやりになることに対して、法律的に私どもがこれをチェックすることができない。これはぜひ与党の皆さんも慎重に、そして前向きにお考えいただきたいと思うんです。つまり、立法府の立場、ひいては国民の意見をどう政治に反映するかという立場から考えたときに、こういうことがあり得ていいだろうか。  これはもう繰り返して申し上げませんが、いまの南ベトナムの現実の状況というのは、この前の外務委員会でも実は御質問をしておりますけれども政府としてはどのように理解をしておられるのか。グエン・バン・チュー政権にいまこの期に及んで九十億円という援助をなさるところを見ると、引き続きこれにてこ入れをしていこう、こういうお考えのようでありますけれども、そう考えてよろしいかどうか。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今回のいわゆる経済協力につきましては、借款の供与をいたしますのは海外経済協力基金でございます。先ほどアジア局長が申し上げたとおりでございますが、内容は、一般的に肥料、軽工業品、機械器具、いわゆる民生関係のものを対象にいたしますところの商品援助でございます。従来から私ども、ベトナム政府に対しましていたします経済協力の関係は、プロジェクトは別といたしますと、民生というようなものを頭に置きまして常にやってまいりました。特定の政権の維持強化を図るという意味合いでなく、一般にベトナム人の民生の安定と向上ということを主眼にしてやってきておるわけであります。したがいまして、交渉の相手方は、これは当然のこのながら当該政権になるわけでございまして、今回の場合にも、この一月にベトナム共和国の副首相が来られまして、そのときにお話し合いをしたものでございます。ベトナム人の民生の安定と向上ということを主眼にしておりますので、特定の政権にいわゆるてこ入れをする、肩入れをするといったような考え方に出たものではございません。
  109. 田英夫

    ○田英夫君 宮澤外務大臣のベトナムについての御認識をちょっと伺いたいんですが、しばしば、南ベトナムの状態はヒョウの斑点のようだと、こういうふうにアメリカあるいは日本のジャーナリズムが伝えておりました。外務大臣は、現在、ああいうふうになってきますと、いささかお考えをお変えになるかもしれませんが、このヒョウの斑点のようだという表現を御存じか、そしてそれを肯定されるかどうか、伺いたいんです。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) かつてそういう表現がございましたことはもとより存じておりますし、また、南ベトナムの中で、チュー政権以外の相手方の勢力が、国内のあちこちの地点でその支配を強めつつあるという意味で、ヒョウの斑点というふうに言われておったと理解をしております。
  111. 田英夫

    ○田英夫君 現状はどうだとお思いになりますか。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 現状につきまして、わが国の大使館等の報告あるいは一般的な報道等から判断をいたす程度の知識しか持ち合わせておりませんけれども、ヒョウの斑点の整理が行われつつある。つまり、サイゴン政権において、恐らくはサイゴン周辺、メコンデルタ等々あるいは海岸地帯、人口の密集しておる地域等々に防衛上のあるいは軍事上の重点を集結するために、その他の地域について、仮に北側と申し上げさしていただきますか——その北側という意味は、便宜北側というふうに申し上げさしていただきます——の勢力が拡大をしつつある。したがいまして、いわば斑点とその他の部分との仕分けと申しますか、そのようなことが行われつつあるように承知をしております。
  113. 田英夫

    ○田英夫君 もはや以前から、ヒョウの斑点という表現を使う——主としてアメリカ及びそれを引用して日本のマスコミが使いました時点で、すでにベトナムはヒョウのような動物ではなかった、こうはっきり私は認識をし、外務委員会でも数年前に申し述べたことがあります。つまり、現在ではもう国土のつまり南の部分の、十七度線以南の部分の半分以上を、斑点とか点ではなくて、完全に地域として支配をしているのが南ベトナム共和臨時革命政府という政権であることは疑いの余地がない。これはお認めになりますか。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 逐次そのような姿に変わりつつあったことは承知をいたしております。
  115. 田英夫

    ○田英夫君 そうなりますと、経済協力の問題に立ち返りますが、かつて大平外務大臣は私は、ベトナム援助はすべてのベトナムに対して、ベトナム全土に対して行う、こう明言をされました。昨年の予算委員会だったかと思います。あるいは外務委員会であったかもしれません。現在もその政府の方針は生きておりますか。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたように、いろいろな形での経済協力は主として民生の安定と向上ということを図る目的をもっていたしておりまして、特定の政権の軍事的な強化ということを考えておりませんでした。したがいまして、私どもがいたしました経済協力の効果というものは、支配いたします地域が両方の政権の間でどのように変化いたしましても、そのような効果というものはその地域の住民に対して残る、そういうふうに考えておりますし、今後もそのように考えるべきであろうと思います。
  117. 田英夫

    ○田英夫君 そうしますと、今度の九十億円の援助、民生安定のためということでありますが、これはグエン・バン・チュー政権の支配地域に及ぶのか、あるいは南の部分全部に及ぶとお考えなのか、その点はいかがでしょうか。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはまさしく、田委員が先刻も仰せられましたように、支配地域であると思っておった地域がきわめて短時間の間にそうならなくなるわけでございますから、私どもとしては、そういう政治的なあるいは軍事的な変動にかかわりなく、とにかく肥料をお渡しすればそれによって食糧の増産が行われるであろう、あるいは農機具を差し上げれば農業の整備が行われるであろう。その地域現実に一晩のうちに違う勢力の地域変化いたそうといたすまいと、その効果はベトナムに住む住民に及ぼすことができるであろう、こう考えればよろしいのではないかと思っております。
  119. 田英夫

    ○田英夫君 大変おかしなお答えをいただいたんですが、そういうふうに激変をしている、支配地域が。そういう中で、たとえば肥料その他民生安定のための物資が日本から援助として向こうに行くと、グエン・バン・チュー政権に引に渡すということになると思いますが、それが結局はもうきわめて狭められたグエン・バン・チュー政権支配地域にしか行かない。ダナン、ユエ、特に戦禍を受けているその地域に対して、新しくつまり臨時革命政府側が支配をしたそういう地域に対しては行かないことになると思いますが、これはいかがでしょう。
  120. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは恐らくただいまの時点で考える限り、田委員の言われますことはそのとおりであろうと思いますけれども、われわれが過去にいたしましたそのような民生安定の援助は、当時グエン・バン・チュー支配下であったところのダナンにもユエにも及んでおったかもしれません。そういう意味で、われわれのしたことは決してむだになっておったとは存じませんし、また今日、この援助は確かにグエン・バン・チュー政権との交渉で成り立ったものでございますけれども、そのような民生物資が住民に渡りましたときに、その地域がいつの日にかまた支配者の手を変えるかもしれないということは、これはもうあるいはあり得ることでございましょうけれども、われわれとしては、それがそうであろうと、あるいはそうでなかろうと、直接住民の民生の安定につながればそれでよろしいのではないだろうか。もともと軍事的な意味合いを持ったものではございませんので、そう考えていいのではないかと思います。
  121. 田英夫

    ○田英夫君 要するに、私がお聞きしているのは、南ベトナムの国民——いわゆる北ベトナムそして南ベトナムの二つの政権が支配する地域、つまり大きく分けて南ベトナムは実は三つの地域に分かれているわけですね。そううちでグエン・バン・チュー政権支配地域に対しては、それが日々刻々小さくなっていく中で、その小さくなる速度が急激に進んでいる現時点において、なぜ急に政府はそこへの援助を御決定になった。そしてますます支配地域が拡大していく政権に対しては、臨時革命政府に対しては、援助をすると言いながら全く交渉さえなさる気配はない。北ベトナムは国交を樹立され、ようやく大使館を設置するという状況になって、援助がすでに計画をされている、こういう図式だと思います。そこでそれをお認めになるかどうか、そしてそれが事実なら、臨時革命政府への援助、支配地域への援助、これがますます拡大をしているわけですが、これは一体いつ、どういう方法で接触をし、実現をなさるおつもりなのか。つまり、大平外務大臣がベトナム全地域に援助をいたしますとおっしゃったそのことが生きているということになる以上は、これは非常にぜひこの時点で伺っておかなければならないと思います。
  122. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) インドシナ全域に対する援助ということで前に大平大臣がおっしゃったことは確かにあります。私ども、たとえば南越における臨時革命政府側への援助という点につきましては、日本政府が直接援助する手だてもありませんので、従来インドシナ全域に対して国際赤十字が中心になってやっておりますIOGという組織がごいまして、そこを通じまして、いままで四十七年度以来全部で十六億円の拠出を行っております。そういうことで、この使途につきましては、もっぱら人道上の医薬品だとか病院のベッドだとか、そういったようなものに使われておりますけれども、その実施はすべてこのIOGがやっておりますので、私どもといたしましては、実際にその金を、金額をIOGに提供する際に、インドシナ地域全体ということを特に指定し、あるいはPRG及びGRUNKの支配地域ということを指定し、そういうことによってやっておりまして、たとえば昨年四十九年度について言いますと、PRG及びGRUNK支配地域につきまして三億円というイヤマークを特に指定しまして、カンボジア共和国三億円と合わせて六億円の拠出を行っております。
  123. 田英夫

    ○田英夫君 私も実はその内容を調べて驚いたんです。いまお答えがありましたとおりのことをやっておられるようでありますが、そこへ九十億円の援助ということが入ってきたので、その差に驚くわけです。言うまでもなく、ベトナム戦争によって非常な困窮、災難を受けている人たちへのまず救済ということが、ベトナム援助の焦点だろうと思うわけですね。となれば、ベトナムにおける三つの地域の中で、だれよりも一番悲惨な目に遭っているのは、実はアメリカ軍を含めた攻撃によって焦土化されたいわゆる解放地区、南の解放地区、この人たちだということは、私自身の体験からも、現地を調査したさまざまの人たちの報告からも明らかであります。同じアジア人として、日本政府は、ここに対する援助は三億円の中の一部ということで、しかもその内容が実際にどう使われたかというところまではフォローしないという形のままで、南のグエン・バン・チュー政権支配地域には金額は数十倍という額を、かなりいろいろな品目についてなさる。これはやはり原理から言って大変おかしいんじゃないだろうか、こう思います。ベトナムの問題についても、あるいはカンボジアの問題についても、まだ伺いたいことがありますが、時間の関係もありますので、カンボジアの問題に次に触れたいと思います。  ロン・ノル大統領が、国外旅行という形で実は亡命といいますか、あるいは逃避といいますか、を行うことになったようでありますが、その途中日本に立ち寄るということが言われておりますが、これは事実でしょうか。
  124. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) そういう事実はございません。
  125. 田英夫

    ○田英夫君 このロン・ノル大統領の国外旅行につきましては、日本の国の大使もその計画について相談を受けたということでありますが、その中で、日本にも立ち寄る計画があったのを、日本側はこれをえんきょくにお断りをしたということではないかと思いますが、それは、そういうことはありませんか。
  126. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) プノンペンにおける、わが方大使を含めてのアジア諸国大使とプノンペン政府とのいろいろな現状の打開策についての経緯は、詳細申し上げるわけにはまいりませんが、その一環といたしまして、現在言われておりますようなロン・ノル大統領の国外旅行ということも、一つのお話になったことは事実でございますけれども、日本に対して具体的にそういうような申し出があったということは私ども承知いたしておりません。
  127. 田英夫

    ○田英夫君 結局、外務大臣はカンボジアはどうなると思いますか。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 大変に微妙な現在の情勢でございますし、また、ASEANの大使等と一緒に、わが国の大使も、いかにして流血の惨を避けるかということにつきましては意見をしばしば求められまして、所見を申し述べておるというようなこともございますので、私からただいまそれを申し上げますことは、恐らくカンボジア住民の本当のこれからの福祉のために役に立たない影響を与えることになれば、これは避けるべきことであると考えます。情勢が微妙でございますので、申し上げることをお許しを願いたいと思います。
  129. 田英夫

    ○田英夫君 政府として、カンボジアのロン・ノル政権との接触は、大使館が間もなく閉鎖になるということで、事実上できなくなると思います。しかし、接触の方法はもちろん残されると思いますが、それとは別に、新しい事態に即応していくために、私の考えを申し上げれば、カンボジアはきわめて短時日のうちにロン・ノル政権が崩壊をして、カンプチア王国民族連合政府という形の政権に移行をしていくであろう。あるいは現在のロン・ノル政権がやや残存する形も含まれるかもしれません。連合的なものになるかもしれませんが、いずれにしても、そうした大きな変化があって、そのときの主役はカンプチア王国民族連合政府の側にあると思われます。この側との接触を北京などで図られる御意思はないかどうか、この点はいかがでしょうか。
  130. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 起こるべき変化に対応してどのようなことを考えなければならないかという点につきましては、私どもいろいろと検討いたしております。具体的にどういうことをする、しないということをここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、私ども変化に対応する措置は常に考えなければならないし、また考えておるということだけを申し上げさせていただきます。
  131. 田英夫

    ○田英夫君 アジアの中で重要な変化が起ころうとしているわけですから、いまアジア局長がお答えになりました言い方で私は十分理解できるつもりでおりますが、同時にもう一つは、ベトナムに戻りまして、南ベトナム臨時革命政府の代表は北京にもおりますし、今度、日本が大使館を設置するハノイには、もちろん強力な代表部がグエン・バン・チェン氏を代表にして設置をされている。この側との接触ということも同様に考えてよろしいかどうか。
  132. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 近くハノイに大使館を設置するという考え方は、そのとおりでございまして、ただ、できた場合にどのような外交活動をするかという点につきましては、先ほど申しましたことで御勘弁願いたいと思います。
  133. 田英夫

    ○田英夫君 大臣も言われましたように、いま非常に微妙な情勢にあることですから、私どももいまの局長の発言以上のことを期待することはむしろ控えた方がいいと思います。その点は理解をいたします。  次に、韓国の金東祚作外相が来日をされ、あすから外務大臣との会談が始まるようでありますけれども、この会談の内容はどういうことにわたるのか、この点をまず伺いたいと思います。
  134. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 金東祚外相はわが国を目指して訪日をされるということではなく、旅行の途次、短期間寄られるということのように私は聞いておりまして、したがいまして、私自身も実は国会の御審議の最中でございますので、長い時間を割くということが、年度末、年度初めでもありまして、事実上不可能でございます。そういうわけでございますから、せっかく日本を通っていかれる、寄っていかれる、会いたいなということでございますから、私も、それはぜひお会いをいたしましょう。ただ、それは正式の会談というようなことに、ただいま申し上げましたようなことからなりませんで、時間のことから申しましても、夜、食事でもしながらお話をしようかということでございますので、基本的には一般的な情報の交換ということになるであろうと思います。もとより両国間にいろいろな問題がございますので、それについて先方からもお話がございましょうし、また私からも、それに応じてお話もいたしたいと思っておりますけれども、基本的にはそのような情報の交換というような性質のものになろうかと存じております。
  135. 田英夫

    ○田英夫君 金東祚外相には、どの程度の随員が来ておられるのか、来られるのか。その随員の規模によっては、この機会に日韓の実務者会議というようなことが開かれる可能性があるのかどうか、この点はいかがですか。
  136. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) ただいま大臣がおっしゃったとおり、金東祚外務大臣は、アメリカに行った帰りに日本にお寄りになるということでございまして、随行の人は、北米課長と秘書官と二人だけでございます。
  137. 田英夫

    ○田英夫君 私がそういうことを御質問したのは、当然もう大臣局長もおわかりのように、かねて延期と言いますか、まあ延期という表現がいいと思いますが、とうとう昨年は日韓閣僚会議が開かれないままでありました。で、韓国側はこの日韓定期閣僚会議を早急に開くようにという要求をしておられるそうでありますけれども、その見通し、つまり今国会終了後には、六月ごろにはぜひ開きたいということのようでありますが、これをそういう形でお開きになる予定があるのかどうか、今度の金東祚外相との話し合いでその辺をお詰めになることになるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これはしばしばお答え申し上げておりますように、閣僚会議を開くということであれば、将来に向かって本当に友好の第一歩になる——従来も決して非友好ではないわけでございますけれども、いろいろ不幸な出来事が何度かございましたので、そういう意味のものにしたいと思っておりまして、私がまだそういう環境がもう一つ十分でないと申し上げておることも田委員承知のとおりであろうと思います。したがって、この問題について先方からもしお話でもございますれば、私としては、もう少し環境一般的な改善というものを図るためにお互いに努力をしなきゃならぬのでしょうかということを申し上げてみたいと思っておるわけでございます。
  139. 田英夫

    ○田英夫君 そうなりますと、実務者会談というものを開催なさる、三月中にも開催されるという話もありましたけれども、これはまあ以前に外務委員会で、しかとした予定はないというお話でしたが、現在何らかの形のそういう予定があるのかどうか、この点はいかがですか。
  140. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 従来、経済協力の問題につきまして日韓間で実務レベルの会合を数回重ねておりまして、まだ完結いたしておりませんので、今後さらにそういう種類の会合は予定されております。
  141. 田英夫

    ○田英夫君 経済協力局長もお見えですが、いまアジア局長が言われたのは、恐らく二億一千五百万ドルですか、その経済協力の問題、借款問題だと思いますが、これはどの程度、どういう内容なのか。鉄道とか、あるいはセマウル運動というふうに言われておりますが、大きなプロジェクトですね、内容、それから現状の見通しですね。いまアジア局長が言われたように、あと実務者会談を一回やればそれで実現をするのか。それから三点目は、閣僚会議との関係はあるのかないのか、もう実務者会談がまとまればそれで決まるのかどうか。それから四番目に、これが二億一千五百万ドルの借款という形で出るとなると、これはどこから支出されるのか、この四つの点。
  142. 鹿取泰衛

    政府委員(鹿取泰衛君) いま田先生の言われました韓国側の要請の案件は四つございまして、一つは北坪港という港の建設の問題、もう一つは忠北線という鉄道の案件、近代化でございます。もう一つは駿州というところにダムをつくる案件でございます。それから第四番目は農業開発関係のことでございます。で、現在の状況は、先ほどアジア局長から説明がありましたように、実務者会談、一次的な実務者会談はもう二回行いましたけれども、それ以外にも、会談というような正式な形ではなく、常時事務的に話し合いを進めておりまして、いろいろな点で詰まってまいりました。私どもとしては、昨年の案件でもございますことでもあり、できるもの、プロジェクトしてフィージブルであり、韓国の経済の安定、民生の向上に資するような案件につきましてはできるだけ実務者で話を決めたいと思っております。現に私ども鋭意技術的、専門的な検討を重ねております結果、相当なところまで詰まっておりますので、先生の先ほど言われましたような閣僚会議というようなことを待たずに実務的に話ができるのではないかというふうに考えております。  なお、これに要します予算の裏づけにつきましては、技術協力の場合には外務省の所管の技術協力の予算を使用いたしますし、借款の場合にはそれぞれ基金あるいは輸銀の融資枠の範囲内、予算の範囲内でしたいと考えております。
  143. 田英夫

    ○田英夫君 いまの点も、大臣おわかりのように、一方では日韓間の経済協力はついに実務者段階で決めていくというところまで、何といいますか、国民の目から見ればますます表に見えないところへ行ってしまったという問題が一方であるわけですよ。従来は日韓閣僚会議という一応の表の舞台に出ていた。ところが今度は、実務者の両方の外務あるいは経済当局の官僚の方の話し合いで二億ドルを超すようなお金が使われていくという、こういうことがあっていいかどうか。これはもうぜひ与党の皆さんも御一緒にお考えいただきたいと先ほどから申し上げているもう一つの最もいい例ではないかと思います。いい例というか、悪い例といいますかね。国民の税金をそういう形で使っていいかどうか。じゃ日韓閣僚会議で決めればいいかというと、私はそれでも不十分なんで、やはり国会の場に出していただかなきゃいかぬ、これでなくちゃ国民の了解を取りつけたということにはなりませんのでね。  ですから、私が申し上げたような観点からすれば、ますます国民の目に見えないところに引きずり込まれてしまっているわけです。しかし、これも予算委員会で申し上げましたけれども、実はそうなった原因は、日韓の問題については全然別の要因があって、大変与党のきわめて有力な方と韓国の政界の有力な人たちとの間に全然別の次元で話し合いが起こって、約束が行われて、それが事務当局へ忽然としておろされてくるんで、せっかくの事務当局、実務者の話し合いがすべてまた根っこからやり直しになってしまうという過去の経験の中で、事務当局はむしろ実務者の会談によって経済協力を決めるという方式にされたと、こう聞いてもいるし、私もそれは事実だと思う。また、その両政界のきわめて有力な実力者という方々の話し合いの内容も、われわれは漏れ聞いているわけですよ。こういうことでいいかどうかということを、私はこれは御質問はいたしません。もう言いっ放しにいたします。国民の皆さんの前に出したもきに、与党として、政府としてどういう批判を受けることになるかをお考えいただきたい。そういう言い方にとどめたいと思います。  もう一つ具体的な例で伺いたいんですが、在日韓国人、日本にいる韓国の皆さんは、長い間われわれと一緒に住んでいる。しかも、そもそも日本に移り住んだ理由は、大半の人は、かつての日本の不当支配のころに強制労働という目的のために連れてこられた人たち自身あるいはその子孫であります。そういうことからして、在日朝鮮人、在日韓国人の皆さんの身の上については特に配慮をしなければならないということを私は繰り返し繰り返し国会の中で御質問の形で取り上げてまいりましたが、ごく最近の一つの例として、東京に住んでいた崔哲教という人物が、自分の祖国に仕事のため帰っているさなかに昨年の春不当逮捕をされて、一審、二審とも死刑の判決を受けた。その事実すら実はごく最近まで家族にしか——家族に、しかも非常におかしな形で伝えられただけで、在日韓国人の人たちすらも知らなかった、こういう状態があったわけですね。この在日朝鮮人、在日韓国人の地位というものについて、大臣はどういうふうにお考えになっているのか。他の一般の外国人と同様だと、こういうふうにお考えになっているのかどうか。まず、その点を伺いたいと思います。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる在日韓国人の中には、永住権を持っておられる人もありますし、また、そうでなくても、面国国民の長い間の歴史的な関係からいたしまして、わが国で営業をし、あるいは勤労をし、いわば単なる旅行者というのではない人々が相当おるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、それらは、外国人ではありますけれども一般にいわばツーリストのような形で入ってきておる外国人とは違いまして、わが国にそれだけの、いわゆるふりの旅行者というのではない人々でありますから、国としてできるだけの保護を行うということが必要なことであると、かように考えております。
  145. 田英夫

    ○田英夫君 そうなりますと、たとえば今度の崔哲教氏の例のように、日本に永住していて、しかも日本人と一緒に暮らしながら——パチンコ屋さんだそうですけれども、そうした仕事をやっていた、全く平和な一市民であります。その人が、奥さんなどの証言によっても、全くいわれのない無実の罪だということでありますが、これはほかの例から照らしても、現在の朴大統領政権のやっていることはそうしたやり方を常にとっているようでありますが、全くでっち上げで北のスパイという形にして死刑の宣告をする、しかも驚くべきことに、いまだにその奥さんにも起訴状の内容さえ届いていない。弁護士さんから一度電話の連絡があったということだけなんであります。その弁護士さんというのは、実は日本で言う官選弁護人に当たる人でありまして、全く家族に対する配慮、本人を救おうという意図などはかけらも見当たらない。ようやく、最近日本の国内でも私どもを含めましてこの事態を知って、韓国にいる良心的な弁護士をつけることができ、連絡がとり始められたのでありますけれども、にもかかわらず、われわれもいまだに起訴状というものさえ入手することができない。この点は衆議院の外務委員会で土井たか子委員からお願いをしたはずでありますけれども、外務省は、その後、この問題について調査をしておられるかどうか。しておられるとすれば、どの程度のことがおわかりになったか、お答えいただきたいと思います。
  146. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 衆議院の外務委員会におきます、土井先生と政府側とのいろいろな質疑応答の経過におきまして、特に大臣の方から、単なる旅行中の外国人とは違うので、私どもに何ができるかを検討いたしたいと、しかし、第一義的には親族の方から本国政府に直接意見を言うのが筋である、政府は、その上で、何かできるかを検討してみようという趣旨の御答弁をいたしております。そういう関連で、三月二十日、親族の方が、家族の方が直接外務省に政務次官を訪れまして、嘆願書を持ってまいりました。これは韓国大法院長あての嘆願書でございまして、その伝達をしていただきたいということでございましたので、私の方では早速在韓国大使館を通じまして、この弁護士を務めておりますところの太倫基という人に伝達するように措置いたしました。それが現状でございます。
  147. 田英夫

    ○田英夫君 ソウルの日本大使館には、警察庁出身の方もおられるわけで、そうした方の専門的な知識を通じて、韓国側の資料、情報をお取りいただけることはできると思うんですが、起訴状は入手の見通しがありますか。
  148. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 現在のところ、その見通しがございません。
  149. 田英夫

    ○田英夫君 大変この問題は、さっき申し上げたように、大臣のお答え、私はそのとおり受け取りますが、日本に住んでいる朝鮮の人、韓国の人というのは、他の外国人とは違った特に配慮を必要とするということからすれば、これは一刻も放置できない問題であり、しかも、本人は一審、二審とも死刑です。従来の例によると、日本の最高裁に当たる最高の司法機関の判決というのは、おおむね、一審、二審死刑とくれば、ひっくり返ることはないというのが前例であります。こういうことを考えたときに、家族が起訴状を、つまり夫が、お父さんが何の罪で死刑の宣告を受けているのかさえも全く知らされていないということは、人道上も許されるべきことではないし、それを、特に配慮を必要とする日本政府としては、そのまま放置することはおかしいと思います。これは早急に起訴状を入手され、また、われわれに対しても、国会の場を通して御報告いただきたいと、これをお約束いただけるかどうか、この点はいかがでしょうか。
  150. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) なるほど、日本に在留する韓国人は通常の外国人と違う点は、田先生のおっしゃるとおりでございますけれども、日本人の場合と違いまして、日本政府が韓国政府に対して、このような外国人の事件にかかる起訴状を日本政府として特に要求するということは、実際上、また法律上もできない問題でございます。この点につきましては、先ほど田先生もおっしゃったとおり、弁護士がおりまして、その弁護士が現在この事件を取り扱っているわけでございますので、弁護士を通じて、そのような起訴状を入手するということは当然可能かと思います。そういう方法が一番適当な方法ではないかというふうに政府としては考えます。
  151. 田英夫

    ○田英夫君 三月二十八日付の読売新聞が書いておりますが、私も以前から実は聞いていたことなんでありますけれども、日韓司法共助協定という協定を、日韓両国政府の間で結ばれるということが報道をされております。これは事実でしょうか。
  152. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) これは大分もう古い話でございまして、もうすでに十年くらい前から、韓国政府の方で、そのような、通常日本が外国と結んでいるような司法共助協定を結びたいという申し出がございます。したがって、最近特に出てきた問題ではございませんで、ただ、このような協定がないと不都合な事件が生ずる可能性もありますので、われわれとしては、もしこのような協定ができるならばそういう必要に応ずることができるということで、いろいろ検討いたしておりますけれども、現在の段階で韓国との間に司法共助協定が締結されるという見通しは、まだ持ち得ないところでございます。
  153. 田英夫

    ○田英夫君 これはむしろ韓国側がこういうものを結びたいと、かねてから申し入れがあったそうですけれども、韓国側が日本側に申し入れて、日本にいる在日韓国人を、つまり取り締まる、それをしやすくするということを考えているんだとすれば、また、事実そういう方向だったと私は思っていますが、きわめてこれは危険なもので、これが結ばれないでいるということはせめてもの幸いだと思うんですね。そうではなくて、そうした協定——名前は全然別になるかもしれませんか、そういうものがもし必要とすれば、そういう意味ではなくて、韓国の治安当局の人間が日本に入ってきて主権を侵害をして在日韓国人を取り調べたり、それに関係をする日本人を取り調べたりするということを防ぐ——これは本来そういうことは協定など結ばなくても国際法上あり得ないことでありますけれども、韓国の場合はそれを結ばないと抑えられない、そういう意味でこれを結ぶ必要があるかもしれない、こう私は思うんですね。韓国の治安当局が日本に来て取り締まりをしやすくするようにという内容、そういう解釈ができるような内容であるとすれば、これはきわめて不当であるし、そんなことはあり得ない。向こうがそういうことをできないようにということを約束させる協定ならば必要だ、こう思いますが、これは大臣の御見解をいただきたい。
  154. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 外国の大使館あるいは領事館の館員が、駐在国におきまして外交官、領事館員に当然認められる行動以外の行動をするということは、いかなる場合においても許されないというたてまえは維持、堅持すべきものであります。  このことと、先ほども私申しました司法共助協定とは全く性質の違うものでございます。私ども司法共助という場合には、民事、刑事のいろいろな法律文書を本人に送達したり何かする場合の仲介として政府がその間に介入する必要があるというたてまえから、若干の国との間に結んでいる協定でございまして、韓国の場合につきましては、刑事についていろいろ考えなければならない問題がありますので、現在のところ、そういう協定を結ぶ状況にはなっておりません。しかし、先ほど田先生が申されましたような件については、私ども、協定ということではなくて、当然国際法上しなければならないことを韓国との間に十分守っていくという問題であろうかと考えております。
  155. 田英夫

    ○田英夫君 そこで出てくるのが、やはりどうしても金大中事件なんですね。もう世界に明々白々たる事実であります、これは。日本人が日本から連れてったんじゃないんですから、韓国の、しかも明らかに治安当局の人間が金大中氏を東京から連れていったということは、これは紛れもない事実であります。こういうことが起こって、それ以外に実は一昨年の五月に、金大中事件が起きる前に、私は参議院の外務委員会で、沢本三次という日本名を持った在日韓国人が突然逮捕をされ、その後留守家族などに日本にある韓国大使館の書記官が直接訪れて取り調べをしているという事実も指摘をしてまいりました。これは一つの例であります。そしてそれがきわまったのが金大中事件であります。その後その点について何らの改善も行われていないということになれば、これは日本に住む六十万の朝鮮あるいは韓国の人たちの不安というのはつのる一方であります。この点はまた改めて機会を見てさらに政府のお考えをただしたいと思います。  最後に、外務大臣アメリカに行かれる計画を立てておられて、むしろ主としてアメリカ側のキッシンジャー国務長官の日程の都合でなかなかそれが決定できないでいるということが言われておりましたが、その点については調整ができて訪米されるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  156. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) かねて総理大臣から、できるだけ早くそのような機会を持つようにという指示を受けておるわけでございますが、国会がずっと御審議を続けておられるわけでございますから、簡単にそういうわけにはまいらないということでございます。しかるところ、五十年度の予算が成立いたしました後にしばらく国会が事実上の審議をお休みになる時間がわずかばかりありそうであるというふうにも考えられますので、その期間で、しかもちょうどわが国に国賓をよその国から迎える時期にも当たりますので、それを除きました期間、ごく短い幅でございますけれども、もし両方の日程が合えば訪米をしてもいいということで、先方の都合を問い合わせておるわけでございます。先方でも多少日程のやりくりを考えておられるようでございまして、あるいはごく短時間、両者の日程が調整がつくことが可能であるかもしれないという段階にはなっております。もしそれがもう少しはっきりいたしましたら、これは国会のお許しも得なければならないことでございますが、御審議に差し支えないような御様子でありましたら、四月の国賓の来日を済ませまして、ごく短時間の間訪米をできればしたいものであるということはただいま考えておりますが、それ以上まだ詰まったところにまいっておりません。
  157. 田英夫

    ○田英夫君 十日過ぎというふうに言われていますが、そう考えてよろしゅうございますか。
  158. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これはわが国に来訪されますルーマニアのチャウシェスク大統領がほぼその時間までは滞日をされますので、それまでは私の手がふさがっておるというような状況でございます。
  159. 田英夫

    ○田英夫君 私は、国会が事実上休みになるということの中で大臣アメリカへ行かれることはまことに結構だと思います。大いにキッシンジャー外交と議論を闘わしていただきたいと、こう思います。特に現在のインドシナ情勢、これはアメリカがどう考えようと、日本側の一つの自主的な情勢判断というものがあるべきだと思いますし、そうした意見を闘わせることも大変結構だと思います。  そこで、行かれるとなれば、どういう内容、どういう項目について話されるのか、大きな、大まかなところで結構ですが、聞かしていただきたい。
  160. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) やはりこれも二国間の問題と、それから世界一般情勢をどう考えるかという問題と、いわゆる多数国間、マルチと申しますか、多数国間の問題について日米がどのような協力をすべきか、できるかといったような、そのような問題に分けて、まあ与えられた時間でできるだけ効率的に話したいと考えております。
  161. 田英夫

    ○田英夫君 そのキッシンジャー国務長官との話し合いの中で私懸念いたしますのは、話し合われることは、繰り返して申し上げますが前向きの形で結構だと思いますけれども、懸念は、自民党の一部に核拡散防止条約の承認、批准という問題と関連をして、日米安保体制を強化すべきだという御意見があるやに伺っておりますが、そういう問題、具体的にその話に触れられるのかどうか。これは大変微妙な問題でしょうけれども、腹のうちを伺いたいと思います。
  162. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 核拡散防止条約をいかにすべきかということは、これは日本が決めることでありまして、それについて別にアメリカに意見を徴するつもりはございません。それから、日米安保体制強化ということでございますけれども、もしそれが現在の条約を何かの形で改めるといったような趣旨の意味であるといたしますれば、そのような気持ちもございません。
  163. 田英夫

    ○田英夫君 時間が来たようでありますが、私が最後に申し上げたいのは、ぜひ、特にきょう私が取り上げましたカンボジア、ベトナムの問題で、アメリカが、軍事的に再介入するというようなアメリカ軍部の動きに押されて、議会筋の慎重論を無視するようなことがないように、そして日本側の、まあわれわれの考え方を含めて、日本国民の多くの気持ちを率直にお伝えいただきたい、このことをお願いをして、終わりたいと思います。ありがとうございました。     —————————————
  164. 源田実

    主査源田実君) 分科担当委員異動について御報告いたします。  ただいま片山甚市君委員を辞任され、その補欠として秦豊君が選任されました。     —————————————
  165. 源田実

    主査源田実君) 分科担当委員外委員の発言についてお諮りいたします。  玉置和郎君から発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 源田実

    主査源田実君) 御異議ないと認めます。玉置和郎君。
  167. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) 大臣、大変御苦労さまでございました。サウジアラビアまで行かれまして、そして弔意を表されて、急送また帰ってこられてアメリカへ行かれる、大変な御日程であります。  そこで、短時日でございましたが、サウジアラビア、またそれを取り巻いておるアラブ諸国の日本に対する態度というか、そういうものについて何か変化がありそうですか、どうですか。
  168. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) きわめて短時間でございまして、それも弔問をするという目的でございましたために、特段に玉置委員のお尋ねについて、今回の旅から何を感じてきたかというほどのことはございませんけれども、新国王並びに新皇太子から大変に丁寧に接遇をされ、遠路弔問に行きましたことについては礼の言葉を述べられたわけでございました。  で、何分にも前国王が不慮の死に遭われたことでもございまして、やはり王位の承継は平和裏に行われましたし、全体に平穏でございますけれども、しかし、新しい政権がどのようにこれからスタートすべきかということについては、おのずから引き締まった空気が王室の内にあったように存じました。ファイサル前国王はわが国を来訪されたこともあり、特に日本に対して、いわば同じアジアの国としての敬意と愛情を持っておられた、特にそれを強く持っておられたようでありましたので、亡くなられましたことは特に損失であったわけでありますけれども、新政権においてもこれを承継されるように感得をしてまいりました。  なお、アラブ全体、あるいは中東紛争との関連で申しますと、やはりファイサル国王が米国との間に特に深い信頼関係を持ち、他方でエジプト、サダト政権に対しても相当な説得力を持っておられたということから、これはサウジの国の力と申す点もございましょうけれども、ファイサル氏の個人的な声望にも相当負うことが多かったわけでございますので、そういう意味では、やはりその点でも損失であったというふうに感じられたわけでございます。
  169. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) ぼくは外務大臣に次の諸点に特に御注意を願いたいと思うのですが、私の知る範囲におきましては——というのは、私は中東問題、月に二回ぐらい現地から情報を取っておるわけです。アメリカのキッシンジャー国務大臣とこのファイサル国王との間に、八月三十一日説というのがあるんです。これは御存じですか、八月のタイムリミットというのは。——それならこれは私から言いましょう。これは間違っておったらかえって教えていただきたいと思いますが、これは非常に日本に大変な影響を与えるわけでありまして、ファイサル国王がアメリカに対して、アメリカのいわゆる石油値段の引き下げ、これに応ずるようなことで十三カ国の間でいろいろと努力されたこと、これは大臣認めますね。その背景になるものはイスラム教という一つの宗教です。このイスラム教の指導者として聖地エルサレムを奪還をしたいというこの願い、これは宗教をやる者でないとわからないです。ぼくらはよくわかる。そうしてこのアラブ解放機構の独立というか、これはやっぱりアメリカに頼ったわけですね。そうしてサダト大統領がイスラエルと接近をしていくという、こういう背景がやっぱりファイサル国王の持つ権威、それからいろんな資金、こういうものが裏にあると思います。それだけに、このキッシンジャーとの約束が私らが聞いておるのは八月の三十一日だと、それまでに解決してほしいということであります。これは私の情報が間違っておったら、これはまた御訂正を願いたいと思いますが、それを前にしてこういう計報に接したわけです。それで、もしこの八月三十一日までにそういう前提条件がそろわなかった場合には、再び石油というものを政治戦略に使うかもわからないというのが、またその背景にあるわけです。私はそれだけに、これから日本の外務省もそういった情報の取り方についても、もっとやはりしっかりしたものをやってもらいたい。私が取っておるのは、はっきり言っておきますが、インドネシアのいわゆるスハルトの周りにおりますズハキリ・ルビスさんから取っておるわけです。ルビスさんというのは、スカルノにいわゆる土牢に押し込められて、それから出てきた方であります。非常に熱心なイスラム教徒でありまして、イスラム教の中で大変な尊敬を集めている人です。私の友人です。それだけに、ファイサル国王が亡くなったということ、このことも私は四、五年前から心配しておったのです、王室内の葛藤という問題は。だから、この問題については日本の経済というものを安定させていくためには大変な問題である。この辺のことをよく考えた上でこの中近東の問題に対処していただかないと、前の外務大臣のような、ああいうやり方をしておると、とんでもないことになる。あらゆる国と仲よくするなんてことはできっこないです、これは。これはかっこうのいいことだけであって、第一義に仲よくしなければならぬ国と、やはり第二義的に考えなければならぬ国と、おのずから外交の中にはあるいはずです。あらゆる国と仲よくするなんてのは、これは幻想なんです。できっこないことをあえてやろうとしておるところに、私は日本外交の大きな誤りがあったと思うのです。だから、この前も予算委員会で言いましたが、中曽根さんがイラクに飛んで、そうしてあわてて十億ドルを貸してやる、石油は一番高い値段で買うという、こういうばかげたことをやってのけたんです、前内閣は。だから、今度の内閣はそういったものをしっかり踏んまえて、やはり慎重な態度でもって、アメリカとよく御相談をなさって、世界の進運というものは一体どういう方向にあるか、これを考えていってもらいたい。間もなくアメリカに行かれますので、そのことを特にお願いをいたしておきます。答弁求めません。とにかく頼んでおきますよ。とにかく間違っておるのですよ、前の外交は。  次に聞きますが、これは防衛庁長官でも外務大臣でもどっちでもいいですけれども、エネルギーというものは一体何であるかということ、これはどう考えますか。エネルギー。これはわからぬでしょう。私の言わんとするのは、エネルギーというのは、中近東にある油はあれは中近東の油なんです、インドネシアにある油はインドネシアの油なんです。エネルギーというのは、自分の手元に来て、たいて初めてエネルギーなんです。だからこそ、私はこの前の予算委員会の総括で有事の際ということを言ったんですよ。そうしたら、三木総理が一体何と言ったか。平和に徹する、平和主義に徹する。あれ、お二人ともお聞きになったですか、どうですか。どっちでもいいですから答えてください。あの内容を聞いておったかどうか、答弁だけしてもらったらいいですよ。聞いたか聞かないかだけでいいです。
  170. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 聞きました。
  171. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) そういう意味で、やはり食糧も外国からずいぶん求めなければならぬ。食糧というのはやはり自分の手元にあって初めてこれはわが国の食糧です。国民の食糧です、その有事の際一体どう考えるかと言ったら、ちっとも考えていない。そうして何と言ったかといったら、平和主義に徹するのだとか何じゃかんじゃとか言って、紛争を起こさぬようにするんだとか。こんなことわかり切ったことなんだ。あんなこと言っておったら総理大臣の資格がないのです。有事の際を考えないような政治家は政治家じゃない。  そこで、一つの提案を申し上げてお答えをいただきたいと思いますが、私の友人にコンピューターを設計するのがおるのです。コンピューターの設計者が第一に何を考えるかといいますと、有事の際に作動するということを考えるのだそうです。そして第二回路をどうするか。第二回路がつぶれたときには第三回路をどうするか。第四回路ぐらいまで考えるのだそうです。その間に警報器が鳴り、人間の手が加わってそしてコンピューターが作動していくというのが、これが設計者の当然とるべき道だというのです。ましてや、人間の生命、国民の生命、財産を預かるところの政治家が有事の際を考えないようなことでは内閣総理大臣の資格がないと思うのです。資格があるかないかということは聞きませんが、あなた方は二人とも国務大臣です。国務大臣ですから、有事の際はやはり考えるべきか考えないでおくべきか、それを簡単に、考えるべきであるというから考える、考えぬでもいいというのなら考えぬでもいい、どっちか。どっちからでもいいですから、お答えいただきたいと思います。
  172. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは、せんだっての予算委員会における玉置委員と総理大臣との質疑応答を私伺っておりまして、まさに有事の際というのは絶対に考えておるべきであるというふうに思います。
  173. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) 防衛庁長官、どうですか。
  174. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) そのために防衛庁長官があると心得ております。
  175. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) そのとおりです。これでやっと安心しました。やっぱり外務大臣である前に国務大臣であり、防衛庁長官である前に国務大臣です。閣議でやはりこの話を出してください。そうでないと、ああいう答弁で終わっていると、一億国民が本当に安心して寝れないですよ。だから、ここで申し上げたいことを言いますが、まず有事の際に国民生活の最低限を確保するということは、これは必要です。その対策があるかと聞いたら、結局は、いまないんです。何にもないのです。総理が答弁したとおりです、何にもないのです。  そこで、閣議で検討していただくことを私がいまから言いますから、私は与党ですから、伝票みたいなものをつかまえて振り上げたり、そんなばかなことはしない。これはばかかどうかしらぬですけれども、勘弁してください、それは取り消してもいいですよ。やはり与党は本質論をやるべきだと思うのです。野党はやはりそれなりの立場があるからそういうことをやられるのだと思いますが、ぼくは少なくとも次のことを考えてもらいたい。一、確保すべき必要物資の種類とは。二番目、その量、その質、三番目、優先順位。次に考えていくのは、予想される各事態に対応する計画。これは外交、国際経済の交流の基本策定に最も重要です。それから次には、物資輸送の船舶、乗員、施設をどういうふうにしていくか。そのためには、船団の組み方、コンバインの組み方、海上輸送の統制の計画、こういうものをやってもらいたい。それからもう一つは、回避航路の設定をせなければいかぬです。現在の航路だけではだめで、途中でどこか問題があった場合に回避航路の設定というものをやらなければならぬです。これはすでにアメリカなんなみんなやっておるのです。イギリスもやっておるのです。やってないのは日本だけですよ、ぼくの調べたところによりますと。外務省、あなた方、高島さん、条約局長、どっちでもいい。やっておるかやっていないか言ってみなさい。あなたをいじめるわけじゃないが、やっておるかやってないか。座ったままでいいや。それはやっていないだろう。やってないのだよ。やってないならやってないでいいんだよ。そんなむずかしいこと言わなくてもいいんだよ。やってないね。
  176. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 日本にとりましてマラッカ海峡は特に重要な航路でございますので、従来からマラッカ海峡のいろいろな整備につきまして、日本政府としてできる限りの援助をやってきております。このことは、日本がそういう海外の航路に対していかに重要性を置いておるかということの証拠になろうかと思います。
  177. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) そこまで言うたのなら高島さん、あなたに聞くけれども、マラッカ海峡だけではだめだよ。マラッカ海峡、いわゆるインドネシアが十五年前になった群島内領海宣言という、これは知っておるでしょう。これは南北一千海里、東西三千海里、この中は自分の領海だと言った。それに対して日本が最初は抗議をした。しかし、その後は国際的にも定着をしてしまった。ぼくはあなたと昔やりとりしたことがあるから、この際もう一回確認しますけれども、いわゆる台湾、中華民国と国交を切るというその前に、ぼくはスハルトのところに飛んでいった。そしてインドネシアは一体どう考えるのかと言ったときに、アリ・ムルトポも、それからウィットラムも、こういう連中が一体何と言ったか。そういうことをあなたに聞いたはずだ。あなたに聞いておるでしょう、そのとき。そのときに、もし日本がそういう変なことをやって、中華民国が本当に怒って立ち上がってくるならば、四十日封鎖するならばおれのところは六十日手伝う、こう言った。これは録音テープもちゃんととってきておる。だから拙劣外交というもの——外務大臣、ぼくらに言わせたら大変な問題ですよ。いまのままで突っ込んでいったら、インドネシアと日本の関係はちっともよくならない。非常に悪くなっているのですよ、いま。一・一五のあの事件を私がもともと予言したにもかかわらずああいうことになってしまった。そしていま一番親日的な論陣を張っておった、これもやっぱりモクタル・リビスさんというのですが、どっちかというと民社党系のような人です。これがいま軟禁されておる。こういう状態の中で青年学生がいつ噴き出してくるかわからない。こういうときに、マラッカだけがうまくいったからといって、そんなものうまくいくはずはないのですよ。やはりロンボクの問題も考えなければいかないし、インドネシア全体の問題を考えていかなければだめなんです。だからマラッカ海峡の問題にしても、ぼくらに言わせたら、ソ連と日本が力を合わしていろんな問題を言っていくという、そのときに一つの間違いを起こしたのですよ。現在の群島内領海宣言というのは、高島さん、そこまであなた言うのだったら、群島内領海宣言の背景はどうなっているの、何であれができたか、背景。背景を言ってみろ。そんなことで済むはずないのですよ。領海内群島宣言はどういう背景でできたのか。
  178. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 従来の経緯を申し上げますと、一九五七年でございますか、インドネシア政府が閣議決定におきまして、インドネシア共和国に属する諸島嶼については、その間の距離のいかんを問わずその外縁を結ぶ線の内側水域を内水と同じ領域とみなすという決定をしたということでございます。
  179. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) 条約局長、そんなのわかっておるのだよ。その背景に、なぜそういうことを言わなかったらいかぬかという、それを読まなかったら外交じゃないじゃないか。外交というのは、外務大臣、あなたにこういうことを申し上げるのは本当に失礼ですが、私はいままでの日本の外務省のやり方というのは間違っておると思うのです。外交というのはやっぱり誠意をもって、しかも交渉相手の腹のうちを読むということです。だから、背景を聞いておっても背景は何も出てこないのです。  あの背景は何かと言ったら、ソビエトを恐れたのです、あのときインドネシアが。ソ連の出方に非常に気を使ったのです。それでソ連の核というものに対して大変な恐れを抱いてああいうことになっていくのです。これは条約局長、高島さん、そのレポートを上げるから一回読みなさい。ちょとも読んでいない。結局、ソ連の軍事力というか、海軍力というものを恐れたんです。それで、いつやられるかわからぬというので、自分のところの領海内宣言になっちゃったんです。そのときに日本がソ連と組んで、そうしてマラッカのああいう問題もやったんです。そこでかなり反発をしてきたんです。だから——こういうことはいま聞こうと思わなかったんだよ。もっと肝心なところへ入ろうと思った。あなたがそういうことを言うから余分な時間とられる。ぼくはぼくなりのレポートを上げるから読んでみなさい。  それから次に聞きます。これは外務大臣にお聞きしますが、一月に大変御苦労さんでございましたが、モスクワへ行かれましたね。そうしたら、ソ連のほうは、日中平和友好条約をいわゆる尖閣列島というふうなものを抜きにして、いわゆる領土問題というものを、抜きにしてやるんだったら、おれのところとも善隣協力条約みたいなものをやらぬかと、こういう話があったと聞いておりますが、事実ですか。
  180. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その前段をちょっと後に回さしていただきますが、善隣友好条約のようなものをやらないかと言ったことは事実でございます。それに対して私は、日中間にはいわゆる領土問題というものはないのであって、日ソ間には御承知のように現実にあるわけでございますから、その処理が済まないうちに友好善隣条約というようなものは考えることができないということを申したのでございます。
  181. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) 外務大臣、こういうことだと思います。ぼくはいまのままで突っ込んでいきますと、結論的に申しますと、中ソの紛争にどうもやっぱり巻き込まれていくんじゃないかという感じがするんですよ。それはあなたともいろいろ話をしてきましたが、問題はやっぱりこの中ソ間に結ばれた友好、同盟及び相互援助条約というもの、これ一九五〇年に結ばれた。この第二条に、「相互の合意の下に、第二次世界大戦の間同盟していた他の国とともに日本国との平和条約をできる限り短期間内に締結するために、努力することを約束する」、ここからいわゆる共同声明というものが出てくるんです。共同声明は、あの当時ぼくら党内でわんわんやって、あのときの小坂さん、江崎さん、鯨岡さん、だれが言ったとは言いませんが、この見解はどうなんだと聞いたときに、最後に言ったのは、玉虫色であると彼ら言ったんです。ぼくらも結局は、これを読めば読むほど、この共同声明を読めば読むほど玉虫色なんです。日本が領土の問題はこれはもうすでに中華民国との間でできた日華平和条約で解決策を見たわけでしょう。ところが、北京のほうはそうでないんです。継承国家論をとらないんです。当然平和条約はわれわれとの間で結びべきだという見解なんですよ。そこにこの苦心があったと思いますが、ぼくはやっぱりそうした延長の上でこの日中平和友好条約というものを考えていいのかどうかということ、これをお聞きするんです。ぼくは与党ですから、それは大臣ややこしかったら言わなくていいですよ。しかし、私の見解だけ言っておきます。いいです、大臣、特に。  これは結局こういうことになるんです。大臣、このまま突っ込んでいきましたら——その前に、これを知ってますか。大平さんが七三年の一月の中旬に四チャンネル、日本テレビで、この日中平和友好条約というものを急いだ場合に日ソ間において大変な問題になるという質問に対して、こう答えておるんです。たとえばこの聞いた方は、余り急いで日中平和友好条約交渉に入った場合のソ連の反応というのに対して、大平さんがこう答えた。日中平和友好条約の交渉を始めることを約束しただけで、締結まで約束したわけではないと。いずれにしても、日中間の実務協定から手がけて、その上で平和友好条約を考えることになっているという答弁をしておるんですね。テレビでこれはやったんです。ぼくの友達がこれを録音しておるんです。これは、その日にタス通信で即刻モスクワに打電をされておるんです。この見解は私は正しいと思うんです。大平さんのこの時点における見解は正しいと思うんです。しかし、そこまで先にやっちゃったんですよ。日中共同声明というのを、これをやっちゃった。これはもう見方によったら玉虫色どころではない。日本のこれから大変な手足を縛るこの共同声明ですよ。どこに自主独立の日本の立場があるのかと思われるほどの、読めば読むほど摩訶不思議なのが日中共同声明なんです。これがこれからの日本の外交の手足を縛っていくんです。  それだけに、ぼくはここで大臣一つ聞きますが、とにかくいままでの日本の外交というのは、タイムリミットをこしらえ、しゃにむにそこへ結論を持っていこうとする。どうですか、これは。そのことだけでいいです。そのことについてはどうですか。
  182. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま日中間で平和友好条約の話し合いをいたしておることは御承知のとおりでございますが、しかし、これは両国間の関係を将来長きにわたって形づけていこうという条約でございますから、いわゆる一定の時間の中で、どうしてもそれまでにいやでもおうでもつくってしまわなければならぬという性格のものではないのでありまして、両国が、わが国の場合はわが国が、これでわが国の中国との関係が十分にそれをベースにしてやっていけるというふうに考えません限り、一定の時間の中でとにかくまとめ上げなければならないという性格のものではないというふうに私は考えております。
  183. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) ぼくはね、宮澤さん、あなたの衆議院と参議院のこの国会の答弁、ずっと今度見てみました。非常に慎重だし、これは外交らしい外交ですよ。本当にさまになっておる外交です。いままでの外務大臣一体何やってきたんだ。いまの総理もそれでいかぬです、ぼくから言わしたら。ぼくはなぜこんな生意気なことを言うかといったら、国会議員というのはこれは間違っておるんです。あなた方に質問するなんていうのは間違っておるので、国権の最高機関のメンバーが、わかっておって聞くなんていうのはいかぬことで、これはわからぬ者がわかった人に聞くのを質問と、こう言うんです。それをいまのような形でもって国会に張りつけて、それでもう二百日も二百五十日もこんなにやるということは、行政の中立性という法則性も守られない。こんなやり方は間違ってます。なるべく早く参議院ではそれをやめたいと思う。  これは余分なことを言いましたが、そこで、ソ連の日中平和友好条約に対する見解というもの、これはこういうことだと思いますがね。ソ連の某高官は、覇権条項が入るかどうかはわれわれにとって大した問題ではないと、こう言ってます。重要なことは、日中平和友好条約が妥結されるということ、この事実であるということを言っています。これはなぜそういうことを言うのかというと、これは日中平和友好条約ができるというこの背景は、やっぱりこの第二条にあるんです。いわゆるこの中ソの間でできたこの条約の第二条によるんです。第三条からいけば、「両締約国は、他の締約国に反対するいかなる同盟をも締結せず、また、他の締約国に反対するいかなる連合及びいかなる行動若しくは措題にも参加しない」と、こうなっておるんです。だから、ソ連が反対しておったら本当はできないんですよ、こんなものは。そうでしょう。それは、条約局長、あんた専門家としてどう考える。簡単でいいや。
  184. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) ただいまの御引用になりました第三条の規定は、いま問題となっております日中平和友好条約の締結の問題とは関連がないというふうに考えております。
  185. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) 冗談言いなさんな、おまえ。読んでみろよ、前から。初めは、日本国が敵国になっておるんだよ、これ。そうでしょう、日本国が敵国になっておって。そんならこの条約はもう死文化してしまったの、どうなの。空洞化したの、これは。
  186. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) これはわが国の結んでおります条約ではございませんから、私どもがどうこうと言うべきではないと思いますけれども、いまの第三条の規定は、いまお読み上げになりましたように、「両締約国は、他の締約国に向けられた同盟を締約せず、また、他の締約国に向けられた連合に又は行動若しくは措置に参加しない。」とあるわけでございます。で、日中平和友好条約がこれに該当するということは私どもとしては考えられないと思います。
  187. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) そうしたら、この第一条にある、日本国を敵性国家と見ておるんですよ、これ。そうでしょう、それはどうなの。
  188. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 第一条は、「日本国又は直接に若しくは間接に日本国と侵略行為について連合する他の国の侵略の繰り返し及び平和の侵害を防止するため、両国のなしうるすべての必要な措置を共同して執る」ということでございます。
  189. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) 一体日本国はどうなのよ、それ、だったら敵性国家じゃないの。
  190. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) まあ、これをこのまま受けて考えますれば、日本国が、仮の問題といたしまして、侵略を再び行うという事態があれば、ソ連と中国は共同して行動するということを規定したものだと思います。
  191. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) 防衛庁長官、こういうのを防衛論議の中では仮想敵国と言うんです、これは。それはどうですか。本当にそうなんですよ。そんな常識外のことを言ってもだめなんですよ。だれが見たってわかるんだ、こんなものは。日本の国は——これはわけは違うんです。いい、もう答弁せんで。わしもう言いますわ。それは微妙なんだな。こういうことを言えないところに日本国政府のいろいろな悩みがあるんですよ。これはどこから出てくるかといったら、現在の憲法から出てくるんです。憲法からこういう間違いが出てくるんですけどね。きょうはまあ憲法論議はやめます。やっぱり中国と、いわゆる中華人民共和国とソ連はちゃんと仮想敵国というのを持っておるんです。仮想敵国を持たないような軍備なんてありゃせぬ。やっぱり外務大臣、この前も言いましたように、いま日本の一番の政治家の欠陥は、日本周辺を取り巻く軍事情勢がわからないということなんです。軍事に疎いということなんです。軍事に疎い者が安全保障戦略なんか立てられるはずがないんです。安全保障戦略が立てられない者が外交戦略を立てられるはずがないんです。そこに大きな間違いがあるんです。この条文は中ソ間で結んだ条文なんだよ。だから、中国もソ連も仮想敵国として認めておるということは間違いないんだよ。これは条約局長、そうだろう。どうなんですか。
  192. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは条約局長から申し上げますと、かえって答えが厳密になってしまいまして、いろいろ差しさわりがあると思いますので……
  193. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) 大臣、もういいよ。
  194. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私から申し上げた方がいいかと思います。  この同盟条約が結ばれましたときの環境というものは、確かにいまの環境と全く違います。これは一九八〇年までの条約でございますが、この背景になったものは全く変わってしまっておるということは御指摘のとおりであろうと思います。
  195. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) 結局ね、外務大臣、そうした答弁をあんたからしてもらうと、ぼくは言わざるを得なくなる。変わってしまったと——この前三木さんとぼくはやりとりをしたんだ、総理官邸で総務懇談会のときに。いわゆる日中平和友好条約を結ぶということについては、総理はアジアの安定につながるんだと、こう言ったんだ。ぼくはアジアの安定につながらないと言ったんだ。その一つの見解は——二つ見解があるんです、そこに。いわゆる中国大陸からの軍事的脅威というものとソ連の持つ軍事的脅威というもの、これを一つ考えるわけです。それから日中平和友好条約を、いわゆる尖閣列島という問題を何かたな上げしたような形で、明確化しないでやっていくことによって起こる中華民国、台湾との関係、これを考えたときに、そう容易なものじゃないんです、これは。結局、拙劣外交、大平外交の誤りが今日こういうことをまた論議せにゃならぬのです。ぼくらは非常に残念です。与党の一員として残念ですが、仕方がない。やっぱり国の平和と安全を考えた場合に、言うべきことは言わなきゃいかぬ。それだけにいま言っておるんですが、これはね、三木さんあのとき何て言ったかといったら、空洞化したと、こう言ったんです。もうすでにこれは空洞化しておるんだと、こう言った。ほんなら、中ソ同盟条約が空洞化しとるんだったら、大平さんが日華平和条約はもう機能を失いましたと言って宣言したんです。それと同じように北京が宣言すりゃいいじゃないかということ、これは三木さんに申し上げた。それと、もう一つ大事なことは、主権国家と主権国家、情勢がどう変わろうとも、変わったら変わったで、ちゃんとこれは改めなきゃならない、お互いが話し合って。自分たちが、中ソの間でちゃんと主権国家として結んだ条約が、平気で空洞化したと言ってそのままほったらかして条約を尊重しない国と、何で日本が条約を結ばにゃならぬかということなんだ、これ。この理論、間違ってますか。間違っとったら教えてください。間違ってなかったら黙っとってください。間違ってないと思います、私は。  この理論に対して、結局、もう少し日本の国が、やっぱり日本の外交というのは国連中心主義、アメリカと協調、アジアとの協調、それから平和主義に徹すると、こういうことであるならば、第一義に考えなければならないのは国連中心ということですが、その国連と一緒になってやっていく相手というのはやっぱりアメリカなんです。私はアメリカという国は決して好きな国じゃない。しかし、日本のいまの力というのは、私から見るならば、アメリカと比べてそんなに大きな力じゃない。私なんか特に大きく言いたい方だけど、その私でさえ、日本のいまの国力というものを考えていくと、アメリカ抜きにして世界の進運に寄与するというわけにはいかない。この厳粛なる事実というものをはっきり認められるか認められぬか、これを防衛庁長官とあなたに両方ともお聞きをしたい。ただその最後の一点だけでいい。アメリカを抜きにして考えるのか、第一義にアメリカを考えるべきである、第二義的に何を考えるべきであるというふうな、このちゃんとしたとり方を、これから日本の外交でも日本の防衛戦略でもやっていくという基本の姿勢がこの国会で確認されることが必要である。ぼくはもちろん共産主義諸国家とも仲よくしていくことは必要であると思います。しかし、現実にベトナムにおいて、このベトナムの停戦協定がもう一方的に破られて、そしていま北ベトナムの応援を得た解放戦線というものがどんどん入っていっている。なぜああした難民がダナンから逃げなきゃならぬか。彼らが本当に平和主義に徹して、彼らの生活を守ってくれるということがわかっておったら、難民は逃げませんよ。こういう状態を日本の政治家として、もう少しくマスコミに迎合することなく——あえて私はマスコミに迎合することなく、と言います。私もベトナムに四回行ってきたんです。だから、この辺のところをしっかり踏んまえて日本の外交というものをやってもらいたいし、日本の平和と安全を守っていくこの防衛戦略というか、安全保障戦略というものをやってもらいたい。これはもう答弁を求めません。  で、次に行きます。——私の方は楽でいいですよ、これ。答弁要らぬからね。しかし、これは大事なことなんです。与党というのは私はやっぱりこういう見解を述べるべきだと思うんです。そうして国会において政府を、ときには叱咤し、ときには激励をして、小さなことでなく、大戦略を持たなきゃだめなんですよ。いまの日本の外務省というのは、宮澤さんになって大分よくなりましたが、国家戦略なんてちっとも考えていない、ぼくに言わしたら。もう一部分一部分ですよ。アジア局ならアジア局、中近東はあれはどこの課になるんだ。欧亜局か。アフリカ局ならアフリカ局。ばらばらですよ、これ。やっぱり宮澤さんのもとで、ときには総理大臣も入って、関係大臣も入って、日本の国がどういうふうにしていくかという大戦略を持つべきなんです。ちっともそんなことはない、目先のことばかり考えて。そして国会論議といったら、もうすでに終わった、すでに済んでしまったことについて、ああでない、こうでない、こうである、ああである——こういう政治を、おわい屋の、くみ取り屋の政治と、こう言うんです。すでに出てきた排せつ物だけをどうして処理するかと、分けてこうしてやる。これは政治じゃない、こんなものは。政治というのは、やっぱり日本国の国家意思の最高の創造です、これは。どういうふうに向かうべきかということでやるべきなんだ。  私は、ちょうど去年の十月の末に、不覚にも病を得て、危篤状態から脱してみて、病院に四十日ほどおって、そうして日本の歴史というものをもう一回見直してみるということで、いわゆるカイロ宣言、テヘラン、ヤルタ、ポツダム、ずっと日本に関係のあるものを拾い上げてみた。そうしたら、もう興味しんしんです、これは。最後に残るのは何かというと、人間対人間の関係だけなんです。最後に残るのは人間対人間。ソ連であろうがアメリカであろうが、結局列強の首脳者というものは、残ったのは最後は人間対人間のぶつかり合いでこれは話し合っていくんです。それだけに、いまのような日本の政治をやっておったんでは、これはとてもじゃないが、平和と安全は守れないという心配から、私はあえてここに立ったわけです。どうかそういう気持ちで、宮澤さんはもう非常に頭もいいし、坂田さんも非常に頭のいい人ですが、国務大臣の間で三木さんは、この前、私は読みましたと言ってちっとも読んでないな。読んでおったら、もっとちゃんとした答弁ができるはずなんだ。ルーズベルトとそしてスターリンのやりとり、すでにスターリンがルーズベルトと最初やりとりしたときに、もうルーズベルトが病気であったということをソ連がスパイを入れて見抜いておったんだ。そして、じらしていくんです。そのやりとり。トルーマンが結局ルーズベルトの跡を継承して、そして最後ヤルタでもって交渉をしていく。そのときに、ルーズベルトが約束をしたそのことをとらまえられてぎゅうぎゅうやられるんです、スターリンに。アメリカはソ連が参戦してくることを阻止したかった。チャーチルが日本を占領するのに手伝おう、戦争して手伝おうと言ったのを、チャーチルの要求、英国の要求だけはトルーマンは退けたけれども、スターリンがあのかつてルーズベルトとやった約束を盾にとってやられて、とうとう参戦を認めざるを得なくなっていくんです。  そういう大きな列強の首脳者というものが今日どういうふうな考え方をしておるのか。そしてカイロからポツダムに至って、ポツダムからさらに朝鮮動乱に至る、これまでの間の列強の首脳者のいろんな言行録が残っております。これを重ねてみるんです、重ねて。重ねてみて、そしていまだに日本に対して、日本民族に対して一つの恐怖を持っておるというその中から日本の外交を出発せにゃいかぬのです。日本の政治はそこから出発せにゃいかぬのです。甘えた政治じゃいけません。とにかく日本の政治というのは甘ちゃん政治ですよ。経済大国になった、ちっとも経済大国でない。伸び切った輸送路を持っておる。鉄と油、食糧、ちょっと紛争が起きたら皆とまっちゃうんです。どこが経済大国ですか。これほど危うい国家はないんです。砂上の楼閣どころじゃない。うたかたのあわのごとく消えていくような経済的存在です。それだけに外交がしっかりせにゃいかぬのです。  それから、防衛庁長官、最後に聞きますけれども、有事の際の局地的シーパワーという問題、これはあなたはやっぱり必要だと思いますか、どうですか。
  196. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) その点はやはり必要だと思っております。
  197. 玉置和郎

    分科担当委員外委員(玉置和郎君) これは外務大臣に。  いま防衛庁長官が答えられましたように、初めて国会できょう答えた言葉なんです。これは日米安保だけでは、とてもじゃないが日本は守れないです。専守防衛では、とてもじゃないが守れないですよ。いまの憲法の制約下では、私は専守防衛がこれはもうぎりぎりいっぱいの線だと思います。しかし、アメリカかすでに——ソ連の海軍力の充実、特に原潜を含む潜水艦というのは四百隻以上になってまいりました。潜水艦においては、これは原潜が七十五隻です。私は毎日これやっておるんです、二人で。予算委員会の後ろへ来ては、もう軍事研究をやっております。それで、潜水艦が四百隻でしょう。だから、いまや潜水艦では、アメリカよりソ連の方が上なんです。そのソ連がずっとインド洋に出てきた。そうして太平洋艦隊、極東艦隊というものを充実さしてきた。その中でアメリカはもう七つの海の管制の能力は失いました。これは宣言しちゃった。  それだけに、私たちは、いわゆる世界的シーパワーを持っておったアメリカだけに頼ってきた日本の行き方というものは、ここである部分においては日本が担当せざるを得なくなってきたんです。その範囲というものを一体どこまで広げるのかということを私の見解として言っておきますが、少なくともインドネシアから日本に至るこの間は、やっぱり日本がしっかりやっていくべきです。それには、私たちのこのいまの憲法の制約下の中で許されることは、アジア・太平洋州共同体構想なんです。対外援助を見直すんです、ここで。いままでのようにエコノミックアニマルで、もうけさえすればいいという、こういうような対外援助というものは、これは間違っております。  それで、私はこの前予算委員会で言ったように、世界版ワンダーフォーゲル、青年学生を、あちこちに基地をつくって、それでそこへ行ったらもう世界の青年学生が一堂に会って交流できるという。日本の海上輸送路の間にある国はほとんど発展途上国の国が多いんです。どっかで一つ噴き上げた場合に、噴き上げるのは青年学生ですよ。その青年学生の気持ちをつかめるのはわれわれじゃないんです。やっぱり日本の青年学生です。そういう日本の平和と安全、安全保障戦略を考えた上の青年学生対策というものを考えていくというふうな高次元の、いままでにない次元の対策が日本の政治家の中で論議されなきゃならぬのです。ぼくは、単に国際経済政策というものの見直しをせいという、それだけでなしに、やっぱり青年学生対策においても日本の平和と安全というためにどうあるべきか、国際交流はどうすべきかということを考えていきたい、こう考えておるんです。  あと、もう時間がないですから、最後に結論だけ言います。  ここで大体話してお聞きしましたからわかりましたが、外務大臣、これ考えてもらいたいですね。このまま日中平和友好条約をもしやっていった場合に、ソ連との間で合意が得られるのかどうかということは、北方領土の要求が半永久的にたな上げされるんじゃないかという心配を私一つします、日ソの間で。次には、外交交渉——北方領土、平和条約の交渉をいまずっと継続していますが、これが事実上中断されるんじゃないかという、この心配をしております。三番目は、竹島が韓国によって現実に占領されております。それと同じように、中華民国、台湾の方でも尖閣列島に対しては非常に神経を使っておりまして、これは日本の領土でないということをはっきり言っています、台湾の方では。この尖閣列島というものが日本の領土であるということ、主権が存在するということを北京が天下に向かって宣言をしてほしい。それを宣言しない間は日中平和友好条約を進めるわけにはいかない。私は国会議員として、あなたにはっきり言っておきます。四番目。北方漁業交渉、北方漁民の安全操業、東北地区、北海道地域、いわゆる海域にソ連の漁船隊が軍艦に護衛されながら出てきております。いやがらせであります。これは、私に言わせるならば、一つの報復行為というふうに私たち見ております。次、五番目は、ソ連太平洋艦隊の演習と称する威嚇行為が恐らく私は起こると思っております。その場合は、いまの日本の自衛隊でもって、とてもじゃないがやれるような問題ではない。六つ目は、シベリア開発というものに対して大変な協力約束をさせられるというおそれがある、いわゆる資本、技術を通じての協力約束。  こういうことを考えていきますと、私は、日中平和友好条約というものの持つ性格というもの——まああなたに答弁は求めませんが、こういう観点からも、よくやっぱり洗い直してほしい。それで共同声明そのものを、これは高島さん、条約局長、一回よく読んでみろよ、あんたたちは。こんなものを読んでまともな頭しとったら、狂っておるんだよ、それは。玉虫色に見えるということは小坂さんも鯨岡さんも皆言ったんだから、江崎さんも言ったんだから。玉虫色もいいところですよ。向こうからはこれは講和条約ですよ、北京の方では。日本はもうそれは済んだと、こう言うんだ。だからこんなややこしいものができてしまったんです。このややこしいものができたおかげで、日本の外交はこれからいろいろと足を引っ張られるんです。だから、あんた方の補佐というものもいかに大事かということを、この際この場所でまた言っておく。それで、またこれが変なことをする場合があったら、私は今度は外務委員会に出て、また資料に基づいてやります。だから、タイムリミットをこしらえて、三木さんみたいな、ああいうばかげたことを言わないで……。今国会に批准します——外交というのはそんなものじゃないです。じっくり、民主政治の外交というものは国民のコンセンサスを得るという非常に困難な仕事がこれは伴うんです。手がたい外交というものをイギリスに学ぶべきだと私は思います。  アメリカのあの最後ニクソンが飛びましたね、ニクソンが上海に来た。周恩来が追っかけてきた。そして張春橋と周恩来のあの姿を私はテレビで見ておって、どういうふうなひっつき方をするかというんで見ておったんです。張春橋と周恩来はまことに離れて冷淡な関係だった。周恩来があわてたのは、次に日本なんです。何とかして日本をとらまえようと思った。そして田中さんが行って、それで共同声明を出した後の周恩来と張春橋は、張春橋がぴたっとはたについて、そしてにこにこして、二人はもう和気あいあいとして話しているんです。しまったなあと私は思ったんだ。そういうテレビの見方も外務省したことあるのか、あなたたちは。そこまでやらなければだめですよ、外務大臣。ぼくはあのとき、これで周恩来体制もったなと思ったんです。劉少奇が失敗したのは九・三〇事件ですよ。インドネシア問題で失敗して彼がやっぱり追い落とされていったんですよ。周恩来さんが残ったがいいか悪いかはこれは別の問題として、それほど厳しいんです、世界各国は。まあ結局、田中・大平拙劣外交のおかげで周恩来体制がもったということです。そのことのいい悪いは別とします。別としますが、間違っております、これは。はっきり言っておきます。外交はタイムリミットをこしらえてやるもんじゃない。もっと大きな立場から世界の情勢を見て、歴史をよく踏んまえて、日本民族というものはこの三十八億の人類の中でどういうふうなところに位置すべきかということ、これをよく考えながらやっていくという、これがやっぱりステーツマンの私は真の姿であると思います。  きょうは本当に生意気なことを申しましたが、どうかひとつ、国会議員の一員として並んでおるという立場で申し上げたので、お許しをいただきたいと思います。終わります。
  198. 秦豊

    秦豊君 これは、いまから申し上げますことは、大変に取り上げるテーマとして小さいようではあるけれども、お答えいただくのは防衛施設庁です。直接担当は防衛施設局だと思います。しかし、必ずしもこの問題を、当委員会でふさわしくないテーマであるとか、そういうことは一切言えない。つまり、これはもうすでに三年間来、地域住民と防衛庁側、特に施設庁側とやりとりのいろいろあった問題です。杉並区の和田町一丁目の問題です、地域を限定すれば。いま、御存じのように、公有地を確保しようという運動が一つの新たな住民運動サイドから持ち上がっていて、それがまだまだ力の足りないいろんな自治体側面から助けるような働きをして、そうして全国的な広がりを現実に見せているわけですね。  それで、私がいまからお尋ねする杉並区和田町一丁目は、防衛庁の土地、それから住民が緑の公園を欲しいという要求のぶつかっている土地です。で、先般三木総理大臣は、二十一日にたしか行われた、防衛大学の卒業式で訓辞をされましてね、そして最後の方を見ると、なかなかいいことをおっしゃっているんですね。私もこの部分については同感をしたんだけれども、こういうことなんです。自衛隊といい自衛力というも、国民から遊離しては意味をなさない、自衛隊は国民から感謝され祝福される存在でなければその真価は発揮できないだろうと、こういう一種の常識論をぶっていらっしゃるんですよ。訓辞の中にね。それで、私が言いたいこの杉並区和田町一丁目の土地というのは、なるほど間然するところなく法的にも完全にそれは合法的な防衛庁の土地ですよ。そこに今度あなた方が宿舎建設を考えられて、それでそれに対して住民たちが、何分にも環状六号、七号にはさまれている土地であって、緑が欲しい、子供の遊び場所が欲しい、安全に遊べる、それでしばしば陳情を展開し、ほとんど地域住民の大半の署名を集めて防衛施設局に陳情をしたところが、なかなかうまくいかない。そこで、われわれとしては、つまり住民運動サイドとしては、防衛庁のこの行政財産というか、これを一応大蔵省に返却をして普通財産に変えて、それに対して普通財産に区が借用料を払って使用できないかどうかという方法、これがまず一つ。それから、防衛庁がその前記の方法を踏襲して、杉並区という区に対して譲渡ができないかどうかという方法が一つ。もう一つ、さらに三つ目としては、区が責任をもって代替地を見つけるから何とか配慮の余地がないだろうかという三つの方法を含めていろいろとやったんですよ。やったんだけれども、らちが明かないんですよ、つまり、一〇〇%合法だから、宿舎が必要なんだからということで。そうしてついに、つい先日、住民運動の方々のところへ、こんな、何だかやたらに大きな物を持ち込まれましてね。もうこの段階まで来ている、もうこうなれば工事をしなければなりませんのでお話し合いもこれまでだという、こんな、何かこうプレゼントのような、だめ押しの一本みたいなものが署名をされた方々のうちに配られたというわけなんですよ。しかし、ぼくがきょう防衛施設庁長官局長に聞きたいのは、いかにも手回しよくこんな物を周辺に持ち込む暇があったら、あれほど不安を持って熱望している住民となぜもっと話し合いの余地がないのかどうかという問題、これをまず伺いたいんです。  第一、防衛施設庁の方は、いま私の申し上げた東京都杉並区和田町一丁目——正確な地番で言うと表現が違ってくると思いますが、このいきさつについては、久保さん、これ報告を受けていらっしゃいましょうな。
  199. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 詳細聞いております。
  200. 秦豊

    秦豊君 どういうふうに聞いていらっしゃるんですか。
  201. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これは本来、昭和二十六年に木造宿舎をつくったのでありますが、老朽化いたしたために一部を取り壊しまして、四十六年に鉄筋コンクリートを一応つくっております。で、今回の問題は、残りの十八戸を撤去してあとコンクリート建て五棟をつくろうということであります。でこの間、地元とのお話し合いは進めておるわけでありまして、自治会を通じまして東京都住宅供給公社の住宅居住者から同意を得、さらにまた近隣の関係者、居住者から——約三十名ほどだそうでありますが、その居住者から同意を得て、その合意書を添えて区役所に届けをしておるということであります。  そこで、いまお話がありましたように、地元から、子供の遊園地をつくってほしい、一部割譲してほしいというお話がありました。私ども住民からの陳情に大変弱い役所といたしましては、本来東京都知事が世話すべきところをわれわれがしなければいけないのかと大変残念には思うわけでありますが、それにいたしましても、一応土地の一部を約二百八十平方メートルばかり提供いたしましょう、この分を、これは官舎居住者及び地域の方々が共同で御使用になってはいかがですかと、こう申し上げたところが、納得されなかった。そこで先ほど、いろいろやりましたが、合法的な措置があるために一〇〇%の譲歩はなかったというお話でありましたが、この二百八十平米をさらにふやしまして、現在のところ子供の遊び場として六百平方メートルに広げて、この点で杉並区長の方にお話をし、少なくとも区長の御了解は得ておる。したがって、一〇〇かゼロかということではなくて、やはり両者がある程度納得のいく線でお話し合いが進めば幸いである、さように考えております。
  202. 秦豊

    秦豊君 いま久保さんが答弁の真ん中でおっしゃった、住民の陳情に弱いとおっしゃったのは、恐らくは表現の間違いじゃなくて、あなたのユーモアだと思います。なかなかどうしてガードは固いですよ。防衛は完璧ですよ。それであなたの部下の桑原さんという局長いらっしゃいますか。この方から文書が出ていまして、杉並区長に対して、あなたのおっしゃるどころじゃなくて、なかなか守りは固くて、いろんな丁寧な日本語が書いてあります。しかし、とにかく当庁所管の行政財産であり、この土地に所定の手続を終えてやっているんだからと。私がさっき申し上げたのは、あなた方が一〇〇%妥協しなかったというんじゃなくて、一〇〇%合法の手続をとって、なおかつ作業を進めようとしているという意味で聞いたんだけれども、あなたが取り違えているんですよ。要するに、あなたの部下の桑原局長は杉並区長に対して、結論から言うと、あなたの言われたように、二百八十平方メートル遊園地、これを六百に広げるからどうだと。しかし、これはあくまでも自衛隊のいわゆる行政財産の一隅に自衛隊職員の子供もいらっしゃい、それから地域の子供もいらっしゃい、仲よく遊びなさい、こういうことでしょう。そういうことですね。
  203. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 自衛隊の職員も地域住民の人たちに愛されるために、やはり同じ場所を両者で使うことは大変よろしかろうと思います。
  204. 秦豊

    秦豊君 そのことは私も本質的には否定しない。自衛隊の子供もわれわれの子供も、ひとしく人権を持った子供、子供は子供です。だけど、その前に考えてほしいことがあるんですよ。いまなぜ全国的に、たとえば東京のあのたしか小金井をトップにして、あの有名な日本電建の駅前所有地を目指してやったら、依然ニュースバリューが多くなったんだけれども、あの小金井の土地を公有地にと、ゴルフ練習場よりはもっと民生に直結したというふうな運動を、自治体がなかなか言えなかったのを住民運動が取り上げて、ぱっとそれが広がったのは、やはりいかなる土地といえども地域全体の土地に関する権利というのは、公有地であろうが国有地であろうが、まさにあなたが言われたように、全体の権利を調整、制限しなければならない。何人たりとも勝手な土地の使用、利用はできないというところに、いままさに問題がぶち当たっている。だから、ああいう住民運動が広がってきたと思うんですよ。住民運動論をあなたとやるつもりはありませんがね。あなたはあくまでそうおっしゃりたいだろうけれども現実にわれわれがさっき三つ方法を並べましたね、代替地含めて。六年前にはあなた方の所有する行政財産の一部を——杉並区とか東京都ではありませんよ、全く個人的な明愛幼稚園というのがあるんですよ。明愛幼稚園という、これは学校法人じゃありません、個人ですよ。そこに譲渡をした、売却をしたという事実関係があるのは御存じですか。
  205. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) ここに出席いたしておりまする私と施設部長は存じておりません。
  206. 秦豊

    秦豊君 いや、だからね。あなた方今度つくるのは、それだけの事情があるという、そういう論理で装われていると思うが、もう現実に六年前にこういう事実があったんですよ。あって調べてみると、しかもそれはちゃんと登記も終わっている、全くの個人に対してそれが売却されているんですね。だからいわんや今度の場合なんかも、せっかく杉並区は代替地を探そうと言っているくらいなんだから、少なくとも二百八十平方メートルを六百平方メートル、文句あるまいと、もうこれであなた方は矛をおさめなさいよじゃなくて、なぜ今度は杉並区に対して一部を——かつて全く私人に対して譲渡をしたのであれば、杉並区というふうな自治体に対して、あなた方の行政財産の一部を譲渡できないという筋はないでしょう。そういう路線は全面的に否定されますか。
  207. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 自衛隊関係土地も必ずしもそう多く、少なくとも住宅用地として持っておるわけじゃありません。そして勤務の都合上、なるべく近間に住所があることが適当であります。そういたしますると、できるだけ既有の土地、現在すでに持っておりまする土地については、なるべくそれを活用して宿舎をつくりたいという願望は非常に強いわけであります。土地があいているからといって、地元の要求があればすぐにそれを払い下げるという方法は必ずしもできませんが、かと言って、私どもが、先ほど文書をお読み上げになりましたように、やや役所的な固い文書の態度で臨むのも適当ではあるまいということで、やはり地域住民の方の御要望にもある程度沿いながら、なおかつわれわれの需要も満たしていくということがしかるべきではなかろうかというふうに考えます。
  208. 秦豊

    秦豊君 久保長官、こういうことはできないんですか。私、さっき現物をお見せしましたけれども、あれはなかなか日本的慣習で、騒音で悩ませます、トラックも出入りしてうるさいでしょう、危ないでしょうと言って頭をなでるという方法は、工事業者がよくやるんですよ。ところが、私があなたにこれはむしろ追及、質問という態度ではなくて、あなたの真意をただしておきたいんですけれども、もうここまで来たんですと、打つべき手は全部打ったんです、もう余地が一つもありません、だから後は住民が譲る番ですと、われわれはもうすべてやることはやって合法的なんです、署名もいただいています——その署名たるや、署名の有効性、実効性、真実性、こういうものを見ると、あなた方はやっぱり、あなたの督励がいいかどうか知らないけれども、部下が率常に熱心で、もう物すごくセールスマン顔負けで、断られた瞬間からセールスが始まるというような調子で、どんどん攻めてくるんですよ。気の毒がって署名した人が大半なんですよ。だから、そういう意味では、いや判こもあります、サインもしてあります——一応有効でしょう。そういうふうな心情からなされた署名であるという、地域住民の心のひだのようなもの、陰影のようなものは、あなた方もやっぱりくみ取ってもらわなきゃいけない。  そこで、久保さん、本筋のこれ防衛論議じゃないですけれども、大事なことなんですよ。自衛隊に対する反感が高まるのか高まらないのか、地域住民の物差しというのは非常に即物的であって、それでいいと思うんですよ。自衛隊けしからぬと、今度もしあなた方がこの上とも固い姿勢をお続けになれば、そうなると思うんですよ。  後は私の要望兼質問ですけれども、いまもう何が何でも工事着工、実施、材料搬入、前へ前へ進めじゃなくて、あなた方の大好きな号令じゃなくて、前へ進めじゃなくて、ちょっと立ちどまって、もう一回地域住民の皆さんとあなた方の真意も伝える、地域住民の皆さんの真意も吸い上げると。第一、わが党の衆議院議員が一生懸命皆さんと住民の間に立ってあっせんをし、ルートを開いてきたわけです。それも、こうされているわけです。もう一度、二度、たとえば二百八十が六百になることについても、必ずしもまだ徹底していませんよ。そうなんですよ現場は。もう一回立ちどまってお話しになる余地とお気持ちがあるかないか、その点お答え伺いましょう。
  209. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) この問題は、何日か前に、工事着工直前であるという報告を受けておりましたが、いま先生のお話もあることで、少なくとも行政官庁がしゃにむに事を進めるという姿勢は、防衛施設庁としては、すべての問題についてとっておりません。予算関係がどうなっておりますか、ちょっとチェックしてみたいと思いまするけれども、少なくとも私としましては、地元の御了解を再度得る努力はいたしてみたい、かように考えます。
  210. 秦豊

    秦豊君 大変結構な誠意のあるお答えだと思います。この前の予算委員会一般質問より、はるかにすれ違わないから、私納得はできます。  じゃ、確認します。防衛施設庁として、久保長官の責任において、工事はいきなりは実行しない、しゃにむにしない。それで話し合いのクッションとしての場を設ける機会を持つ、それがいつかは別としてなるべく早急に。われわれも申し入れますよ、住民サイドからわが党も、いいですね、それはやっていただけますね、確認の意味で。
  211. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) ちょっと私が確認いたさねばならないのは、予算関係が四十九年度になっておって、そのところはどうかという懸念が若干あります。ありますが、予算の話は別としまして、地元の方ともう一度お話をするということは、私が部下の方に指示をすることにいたします。
  212. 秦豊

    秦豊君 それでは、その答弁を中間的に納得することにします。ただし、今後いきさつの中で不当なことがあれば、関連委員会その他でさらに追及をさせていただくと。これはあくまであなたと私の立場の違いなんだから、きょうのところは話し合いをするということの確認をとって、この条項は終わります。  坂田長官、ちょっと伺わしてください。先ほどから無聊をかこっていらっしゃるようですから、いかがですか、ちょっとお話をしましょう。  坂田長官は、確かに某雑誌に書いていらっしゃるように、対談をしていゃっしゃるように、白紙で防衛庁に来られた数少ない防衛庁長官だと私は思います。ぼくはそれはそれで、一つの妙な色がついているより、むしろ立場として尊重できると思います。そこで坂田長官は、広い国民的視野で外部の知恵も吸収して、今後の防衛プランをどうするかを考えたいというふうなことを基本的に考えていらっしゃるんですか。
  213. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) いろいろこの防衛の問題、それから防衛力を整備していく問題、あるいはシビリアンコントロールの問題、いろいろございますが、やはり総理も申しておられますように、私自身もそう考えておるわけですが、自衛隊が国民から愛される、あるいは信頼されるということ、あるいは支持、協力、そういうことなくしては、いかに物的な防衛力の整備だけをいたしましても、それが有効に働かないのではないだろうかという気持ちを私は基本的に持っておるわけでございまして、できるだけやはりコンセンサスを得ながら政策決定をしていく、そういうプロセスというものができないものであろうか、非常にむずかしい問題である、従来はまたそういうふうにしてやってきたんだけども、そこにいろいろこう摩擦があるというような危惧を、実は私もう十年ばかり前から考えておるわけなんです。単にこれは防衛問題だけじゃない。たとえば、文教のときにおきましても、大学紛争を処理しましたときについてもそう思うわけなんで、やはり、こちらの考えもはっきり言う。しかし、反対意見も十分聞く、そういう中においてどうやって進めていくかというやり方はないものかということの前提に立って国民的視野で物を考える、うちの防衛庁だけ——まあそれは正しいかもしれないけれども、一遍やはり国民的視野でいろいろ御意見を伺う、こういうつもりであるわけでございます。
  214. 秦豊

    秦豊君 そうすると、たしか四月七日でしたか、第一回の、あれは坂田長官の個人的な諮問機関ですか、「防衛を考える会」ですね、あれは第一回をたしかなさるというふうなことを伺っていますが、しかし、失礼かもしれませんが、あえて言わせていただくと、たとえばこれがあなたのいわゆる広い国民的視野で外部の知恵を聞くというにふさわしいメンバーかどうか。あなた方は一二〇%そうだとおっしゃるだろうが、まあジャーナリストの大先輩の荒垣さん、この方のクールな、なかなか透徹した御意見はわかるとしても、あとは、非公式にですか、駐米大使に擬せられたこともある平沢和重さんですね、それから野村総研の佐伯喜一さん、お立場はおのずから明らかでしょう。それから元参議院事務局の河野さん、中小企業金融公庫副総裁の荒井さん、日本経済研究センターの金森さん、あとは評論家の方がおられて、電電の緒方氏がおられて、京都大学の高坂正堯氏がおられる。これを一べつした場合に、やはりおのずからあなた方の大好きないわゆる良識のかたまり、やっぱりひらがなで「いわゆる」をつけなければいけません。いわゆる良識の代表のような感じがして、必ずしも坂田長官がせっかく考えていらっしゃる、より広い国民的立場に立つとはとても思えないんだけど、どうでしょうね。
  215. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私は、まず第一段階としては、こういう顔ぶれというのは、非常に私はよく引き受けてもいただいたけれども、よくやったなという感じで実はおるわけでございます。もちろん、庁内においても、あるいはまた外部からの御意見としましても、むしろ防衛問題について反対、自衛隊反対と、そういう人も入れたらどうかというような議論もございました。あるいは労働組合の人たちも入れたらどうかというお話もございました。でございますけれども、たとえば、その方をお願いいたしましても断られるんじゃなかろうかという気持ちもございまして、第一段階として、やはりこのような顔ぶれでひとつ始めたいというふうに思っておるわけでございます。
  216. 秦豊

    秦豊君 中曽根さんが防衛庁長官のときは、あの方は主観的には大変防衛問題のベテランであると自負をされていましてね、やはり作家とかなんとか、いろんな方を集めて、長官と同じような、ちょっと名前は違っていましたが、ありましたね。ところが、しょせん、あれから生み出されたものは何かといいますと、トイレットペーパーの改定ぐらいで、一体何がどう行われたのかわからないぐらいの結果でしがなかったんです。今度の場合がそっくりそうなるだろうというきめつけはまだこの段階でしません。できませんけれども、この「防衛を考える会」の四月七日を第一回にしたこの会議は、大づかみ、方向として、またアイテムとして、どんなことをどういうふうに諮っていらして、いつごろまでに何か答申のようなものをおまとめになるのか、それはまた、ポスト四次防のあなたの主宰をする防衛政策にどの程度参考にされるのか、その辺どうでしょうね。
  217. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 大体四月七日から会議を開いていただきまして三カ月程度ですね、六月の中旬くらいまでに何らかのひとつ御報告を求めたいというふうに考えておるわけでございます。  それから主といたしまして、やはり防衛の理念と申しますか、なぜ私がそういうことを申し上げるかというと、日本の憲法というのは世界にない憲法であることは皆さん方御承知のとおりでございます。それから被爆国としての非核政策ということも、政府としてこういうふうなことをとっておるというところは余りないんじゃないかというふうに思われる点もあります。したがいまして、防衛と申しましても専守防衛いちずに進むということ、そういうような状況における防衛とは一体どういうものなのか、今日防衛、防衛とは言うけれども、やはり安全保障という大きい立場の中において防衛を考えていく、あるいは国防全体ということを考えながら防衛力そのものを考えていく。つまり外交、経済、あるいは他国に脅威を与えない、いろいろそういうようなものの中においての防衛力整備はどうなのかということを、私たちだけが考えるんじゃなくて、やはり国民的視野においてこれを考えていただくということは、私たち防衛を進める、防衛力整備をするにいたしましても、あるいは次のポスト四次防を考えるにししましても、あるいは防衛理念をつくるにいたしましても、非常に参考になる御意見が返ってくるのではなかろうかという私は期待を持っておるわけでございます。
  218. 秦豊

    秦豊君 丸山局長に伺いたいんですが、あなたも恐らく大枠は変わらないと思うんですよ。ポスト四次防は量より質という基本的な転換——転換というより路線は。で、ユニホームの人は、たとえば涙滴型がいま就役していますけどね、じゃこの次にはどういう潜水艦とか、あるいはFX問題は別な機会にやるけれども、とにかくたとえば、こういう形のこういう性能の諸元の戦闘機よりは、たとえば日本の対空防衛というのは性能のいいミサイルをもっと多用することによってコンバインを保つとか、いろんなユニホームはユニホームなりの見解と認識があると思うんですよ。それを恐らく丸山局長は十全に吸い上げていらっしゃるとは思いますよ。しかし、明らかに現場に入ってみると、やはりこの前も議論がちょっとあったけども、ユニホームの人の持っている感覚、情報、量と、あなた方が持っていらっしゃるものとが必ずしもぴったりはしないと思います。それは折に触れて詰めていきますけども、丸山防衛局長とされては、ポスト四次防の量から質への転換という大きな方向を、大体どういうふうに踏まえていらっしゃいますか。
  219. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 近く長官の方から御指示をいただきまして、各幕で作業に入ることになりますし、あわせて私どもも並行してポスト四次防の作業に入りたいというふうに考えているわけでございます。  いまの御質問でございますが、制服がどういうふうに感じておるかという問題は、これは実は私どもの立場で十分にくみ取らなきゃいかぬというふうに考えております。まあそれぞれ立場が違いますので、完全に一致していないではないかという御指摘を受ければ、あるいはそうかもしれませんけれども、できるだけ制服の考えておることを十分くみ取って、その上で私ども直接大臣を補佐する立場として、それを生かしていきたいというふうに考えておるわけでございますが、ポスト四次防の点につきましては、先ごろから大臣がおっしゃっておりますように、次期防は、やはり抽象的に申しますれば、量より質への転換と——実はすでに四次防においてもそうであったわけでございますけれども、今後やはりその辺については重点を置かざるを得ないんだろうと思います。それから後は民生協力の重視、それから量より質へということで、当然、人的な要素についても量より質へということを考えざるを得ないと思いますが、そのためには事務運営の合理化、それから機械の導入、近代化、あわせて隊員の質を向上するための処遇の改善と、こういったものがやはり中身になってくるように思われるわけでございます。何分にもこれから始めます作業でございますので、ただいま申し上げましたことが、できるだけくみ取れるような形に持ってまいりたいと思いますけれども、実際の作業に当たりまして、特に軍事技術の日進月歩ということを想定に置かなきゃなりませんし、新しい事態に対応し得る能力というものを十分に持たなければならない、こういった点から考えてまいりますと、これからの作業の進捗のぐあいを見て、十分検討をしてまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  220. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、ちょっと伺いたいんですけれども、これからの質問の大枠、大括弧としまして、人民大会堂の例の日中共同声明ですね。あれの第二項と三項を踏まえられて……。二項は言うまでもなく、中華人民共和国が例の「唯一の合法政府」ですね、これは二項でしょう。それから第三項は、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」と、これは中華人民共和国が表明した。で、「日本国政府は、この中華人民共和国の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」と、この基本的な精神というか、わきまえ方は、いささかの変更も、もちろんありませんね。
  221. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ございません。
  222. 秦豊

    秦豊君 では、これを踏まえられた上で、久しぶりに伺うものだから、極東の範囲というのをあらためてお教え願えませんか。
  223. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) もし、極東の範囲ということが、日米安全保障条約との連関でのお尋ねであるといたしますと……
  224. 秦豊

    秦豊君 いや、共同声明を踏まえて。いま申し上げたでしょう、日中共同声明、これを踏まえた上での極東の範囲を伺いたいんです。
  225. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) はい、それで、その極東の範囲ということば自身が、どのような関係において言われましたのかということを、日米安保条約に使われておる極東、その範囲という意味であろうと理解の上お答えいたしますけれども、極東の範囲というのは、地理的に別段はっきり定義づけられるものとは考えておりません。漠然と地理的に言えということは不可能ではありませんが、厳密に地理的な概念ではありませんで、わが国の平和、わが国の安全というものと相関関係にあるところの、このアジアのこの地域というようなとらえ方をいたしております。
  226. 秦豊

    秦豊君 これは一種の古典的な論議なんですよ。だから、たとえばこれは一種の条約の解釈に関連するもんで、安保条約の、そういうものに大体においてなんという日本語が入るのは、非常に日本的なんですよ。だから、あくまで地理的概念じゃなくて、政治の概念だということは、もうすでに確立されていると、あなた方によって。ぼくが聞いたのはそうじゃなくて、日中共同声明の二項、三項を踏まえるということは、台湾海峡は関連してきますね、台湾海峡は極東の範囲に入るんですか。
  227. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは入ると考えております。
  228. 秦豊

    秦豊君 それでは、それに関連して沖繩の問題を伺いたいんですがね、これは防衛庁長官と宮澤外務大臣、双方、お二人にかかわると思いますが、たしか沖繩返還に当たっては、周辺海域の、たとえば対潜哨戒等は日本側が肩がわりしたはずだと思っていますが、いかがですか。
  229. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 局地の防衛責務の引き受けということで、その中身は陸上の防衛、それから防空、それから海上の哨戒、それと遭難の場合の捜索、救難、これを引き受ける、こういうことになると思います。
  230. 秦豊

    秦豊君 そうすると、丸山局長だと思います、この答弁は。われわれの——というより、日本国のP2Jですね、これは何機いて、何やっているんですか、沖繩で。
  231. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) P2J対潜哨戒機は、九機おりまして、これは対潜哨戒任務に当たっております。
  232. 秦豊

    秦豊君 そうしますと、日本はアメリカから対潜哨戒の海面を引き受けましたね。引き受けた海面というのは、協定取り決めがシビアにあるんですか、どんな海面か、具体的に示してもらいたい。
  233. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 海面の引き受けにつきましては、特別の取り決めはやっておりません。
  234. 秦豊

    秦豊君 そうすると、あれですか、アバウトにやるんですか、こんな大事な任務を、おおよそ何でもいいんですか、ある基準がなくて。そんなことはないでしょう。
  235. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 御案内のように、P2Jにつきましては、わが国が独自に防衛すべき海域がございまして、その範囲を担当しておるということでございまして、ただいまの先生の御質問では、それまでP3がやっておった海域を日本が引き受けたのかという御質問だろうと思いますが、それはございません、そういう取り決めはございません。わが国は、御案内のように、憲法によりまして防衛の範囲というのはおのずから限定をされておりますので、その範囲についてP2Jが哨戒任務に当たる、こういうことでございます。
  236. 秦豊

    秦豊君 そうしますと、P3オライオンというのは何機ぐらいいまして、何をやっているんですか。
  237. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ただいま那覇、今度は嘉手納に移駐をいたしますが、それと岩国にそれぞれ一個スコードロンずつ、これは大体九機ぐらいだと思います、これが対潜哨戒任務に当たっておるというふうに聞いております。
  238. 秦豊

    秦豊君 そうしますと、非常に具体的な、これ質問のポイントですけれども、P2JとP3オライオンというのは、索敵の担当海面が違うんですか、任務そのものが違うんですか。
  239. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 任務そのものが基本的に違います。P3はむしろ戦略的な広い範囲におきまして、対象も戦略的な対象を相手にしておるというふうに考えております。
  240. 秦豊

    秦豊君 ぼくらは素人だから、そういう答弁じゃわからないんですよ。あなた方は、戦略といえば、ははあ、あの海面が入る、あの国際海峡が入る——あなた方の頭にあっても、こっちにないんですよ。わからぬから聞いてるんですよ。もう少し親切に答えてもらいたいんだけれども。  それじゃ、あれですか。P2Jは、たとえば宮古島とか沖永良部とか、要するに直接のいわゆる領空に属する海面、あるいはそれに密着した海面というふうなものをやって、P3は何ですか、戦略的とおっしゃったんだけれども、台湾海峡なんというのはあれですか、先島の向こうは戦略海面に入るんですか。そういうふうな分け方をなさっているんですか。
  241. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 先ほども説明を申し上げましたように、わが国の防衛海面、大体その周辺海域の数百ノーチカルマイルということを考えておるわけでございまして、その地域におきます対潜哨戒等の任務に当たるというのがP2Jの任務でございます。P3の方は、先ほどもお話に出ましたように、極東の地域全般にわたっての対潜哨戒というのがP3の任務であるというふうに考えております。
  242. 秦豊

    秦豊君 少しおかしくありませんか、そうなると。つまり、沖繩返還だ、対潜海面は引き受けた、P2Jが移っていった、P2Jの配備している力が足りないから、P3の助けを借りているのじゃなくて、P3とP2Jはおのずから担当海面が違うのだ、片や戦術と、言葉は悪いが、限定すれば、戦略を担当するのがオライオンだというふうなバランスをとっているとすれば、たとえば沖繩を基地にしてP3が毎日一回か二回か知らないけれども、台湾海峡の捜索に行くということは、たとえそれがソ連の太平洋艦隊がターゲットであっても、沖繩からそういう行為をさせるということ自体が問題になりますよ、それは。
  243. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 在日米軍につきましては、御案内のように、極東の範囲におきます国際の安全と平和を維持するという任務がございますので、その点は、本来ただいまの行動はそれに違反するものでないというふうに考えます。  それから、自衛隊の方の問題につきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおりに、当方の防衛海域について対潜哨戒の任務につく、こういうことでございます。
  244. 秦豊

    秦豊君 そうすると、あれですか、日本のP2Jを九機ではなくて、プラスアルファをすればP3も必要でなくなる、つまり、あなた方は戦略を担当されないわけでしょう、そうですね。しかも、好ましくありませんね、アメリカのP3がどういうフライトプランか知らぬが、しょっちゅう台湾海峡とかなんとか、しかも台湾海峡に限定されませんよ、あの足の長さからすれば。いわゆる戦略展開をして偵察行動をする、いつも沖繩ベースを発進基地にするということは、心ずこれは他日問題を起こしますよ。一つの問題点として、P2Jを日本国内に展開しているものを差し繰って、もっとたくさん沖繩に配備すれば、P3におんぶしている面というのは全くなくなるというふうな考え方なんですか。
  245. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 先ほどから御説明申し上げておりますように、基本任務が違いますので、仮にP2Jを多く配置いたしましても、わが防衛海域面におけるわが対潜能力が増強されるということであって、P3が現在やっております極東の平和の維持という任務には直接関係はございません。
  246. 秦豊

    秦豊君 こういう沖繩からの戦闘作戦とか横須賀ベースとか機動部隊の事前協議、これは宮澤さんや坂田さんが大好きな、というよりも大得意の永遠のこんにゃく問答だから、たとえインドシナ情勢に連動したところで、関連をしても、あなた方の答弁はわかっているのですよ。わかっているのだけれども、われわれはわれわれのポイントでやらなければいけないのだけれども、丸山さん、あれですか、いまP3は、今度は撤去じゃなくて移駐ですね、あれは正確には。そうですね。ああいうものが完全に撤去する条件というのは、日本がP3をたとえば堀越答申にある次期対潜哨戒機及び早期警戒機専門家会議のいわゆるリポート、これはまだ方向はあなた方どういうふうな裁決を下すかわからぬ。わかりませんけれども、これは別の機会にやりますけれども、いわゆる堀越答申によって次期の対潜哨戒機の新規開発までのつなぎとしてP3をアメリカから買うというふうな構想はあるのですか。
  247. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 堀越答申というのは、国防会議で開催をいたしました専門家会議の結論であると思いますけれども、その審議の過程におきましてP3Cが対象になったというふうに私ども承知しております。
  248. 秦豊

    秦豊君 じゃ、つなぎで買うことは多分にあるのですね。
  249. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 可能性としてはございます。
  250. 秦豊

    秦豊君 日本が主体的に購入すれば、アメリカのP3は移駐ではなくて完全に撤去されるわけですね。
  251. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) それが、先ほどから私御説明しておりますように、アメリカのP3、ただいまBでございますが、P3Bのおります部隊と、私どものP2Jの部隊とは基本的に任務が違うわけでございます。もし仮に、P3Cを導入をいたしまして、これをわれわれの方に配備をするということになりました場合には、それはただいまのP2JにかわってそのP3Cが任務につくということでございまして、あくまでも日本の担当しております防衛海域面における対潜哨戒ということを継続してやるということでございまして、アメリカのその面における対潜哨戒を引き継ぎを受けるということではございません。
  252. 秦豊

    秦豊君 あなた方の答弁の枠組みから言うと、今度も簡単に、いや戦略です戦術ですという答えが用意されていると思うが、同じような質の問題なんですけれども、航空自衛隊のF104ですね。これはいま何機沖繩に配備されていますか。
  253. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 南西航空混成団、104は二十五機、それから練習機としてF104DJというのがございますが、これが三機でございます。
  254. 秦豊

    秦豊君 あなた方がそういう機数を決定する場合には、沖繩の担当海面で、戦術でいいですよ、どういう想定に基づき、どういうORに基づいて、たとえば二十五機F104は配備必要、南西航空団、というふうな結論になったのでしょう。参考のために伺っておきたい。
  255. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) この配備をきめました当時の担当者である久保現施設庁長官のお話によりますと、当時二スコードロンを配備ということで、御案内のように、一スコードロン十八機でございます。二スコードロンになりますと三十六機ということになるわけでございますが、一・五スコードロンということで、所要から考えまして一・五スコードロンということで、結論的に二十五機という結論になったそうでございます。
  256. 秦豊

    秦豊君 それは答弁になっていないのですよ、実はね。やはり耳打ちをされたからそういうようなずさんな答弁になるのです、失礼だが。  内閣委員会で岩国基地を見に行ったことがある。米軍基地は例の方式ですよ。敬して遠ざける、ノンストップ、ぼくはどうしてもハリアの駐機を見せろと言ったら、ようやく二分間、それだけ。あとは司令官のいわゆるグリーティングですね。その程度だが、PS1、自衛隊の方を見に行ったときは、これは国会に関連がある。そのときのある責任者が、名前は申しませんけれども、PS1を、あなた方の担当海面はどれだと言ったら示してくれた。じゃどういう作戦想定に基づき、どういう訓練想定に基づいつこのPS1の機数がはじき出されたのかと聞いたら、答えがなかった。多々ますます弁ずだとあうふうな意味の答弁であった。あなたはいま沖繩のF104が一・五スコードロンだと言ったって、どういう必要を満たすために、どういうケースに備えるために機数をこうしぼったのかということについては答弁になってない。自衛隊の戦略会議というのは大体そういうことがつきまとうのですよ。二飛行隊では多いと思うから一・五、とんでもない話であって、あなた方は部隊を配備する場合に、大体ぼくは沖繩の陸上兵力から、あの沖繩への兵力展開も過剰だと思っているのですよ。ただし、あなた方によれば、主観的には米軍基地を守るという任務があるものだからああいう部厚い配備になっているのだけれども、もう一遍答えてください。どういう必要で二十五機もF104が必要なのか。万事につきまとった問題なのですけれども、それはその都度やるとしまして、沖繩についてだけ、ちょっと突っ込んで答えてください。
  257. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) これは沖繩の防空の責務を引き受けるという当時の基本的な前提の中で、新たに西部方面航空隊の担当しております在来のものよりも、この沖繩の方に引き受けます防空空域の広さというものを勘案をいたしまして、当時の一・五という数がはじき出されておるわけでございます。ただいまのお言葉を返すようでございますが、この配備をいたします航空機の数、これは一つは内部的な運用面、一スコードロンというものの適正規模というものから割り出されてくるものもあります。したがって、必ずしも一つ一つ中途の数というものはなかなか取りにくいということもあるわけでございますし、それから全般的な可能性を多分に含んでおって、それに対応できるということなんで、ある程度の幅を当然持つわけでございまして、そのはじき出し方が多過ぎるとか、あるいは雑駁であるとかいう御指摘は、ちょっと当たらないのではないかと感ずるわけでございます。
  258. 秦豊

    秦豊君 F104も、それから嘉手納のF4ファントムも、常時スクランブル態勢にあるわけですね。沖繩空域でスクランブル態勢というのは常時スタンバイ、用兵の常だという答えが返ってくるかもしれないし、一方は戦略配備、一方は戦術配備という答えはあらかじめ用意されているとは思うが、なぜ沖繩空域でスクランブル態勢が必要なんですか。
  259. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 嘉手納のほうにつきまして、F4が態勢にあるかどうかという点については、はっきりわかりません。私どものほうが、ただいまの南西航空混成団がスクランブル態勢にありますのは、これは御案内のとおり、領空侵犯に対処するということで当然のことであると思っております。
  260. 秦豊

    秦豊君 待機の時間帯をここで見れば、F104が五分待機でしょう。F4ファントムが十五分でしょう。五分はわかりますよ。要注意のいわゆる要撃態勢、十五分待機というのは攻撃態勢ですよ。これはアメリカ空軍の基準ですよ。だからF4ファントムはスクランブル態勢、攻撃態勢にあるということが言われるんですよ。単なるスクランブルをもっとアクティブにした態勢、これがF4ファントム、嘉手納の態勢ですよ。それは御承知なんでしょうね。
  261. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 先ほど申しましたように、嘉手納におきますF4の態勢については、私ども詳しく承知しておりません。私が申し上げましたのは、わが自衛隊、航空自衛隊の南西航空混成団の模様につきまして申し上げたわけでございます。
  262. 秦豊

    秦豊君 これが問題なのは、十五分待機というのは防空用をはみ出した攻撃用であるというところに意味があるんです。意味があるし、問題があるんです。しかも、これは沖繩の防空管制とも絡んでくるわけです。久保さん、いま所管が変わられたから、さっきみたいに耳打ちになるのかどうかしらないけれども、久保さんとカーチス氏の久保・カーチス協定によりますと、これはあなたの取り決めの中に、たしか、間違いでなければ、七三年の七月一日までに日本が沖繩空域の航空警戒管制組織の運用を引き受けるというふうになっていたはずですが、事実そうですが、いまそうなっていますか。   〔主査退席、中村太郎君着席〕
  263. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 現状でございますから私からお答え申し上げます。  ただいま航空管制の引き受けは完了いたしまして、わが方がやっております。
  264. 秦豊

    秦豊君 そうすると、やはりおかしいんですよ。じゃ、沖繩の防空管制の主導権が日米のいずれにあるかというと、日本にあるとおっしゃいましたね。そうでしょう、いまの答弁は。日本側にあるとすれば、では現在嘉手納の例のF4ファントムの、絶えず防空態勢ではなくて攻撃態勢にある十五分待機のF4ファントムのスコードロンが、あなた方の統制下にあるんですか。
  265. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ただいま申し上げた防空管制でございませんで、航空警戒管制組織、御案内のようにレーダー基地からいわゆるADIZといいます識別圏に入ってまいります国籍不明機の識別をし、その情報を提供するということでございまして、この機能は日本がやっておる、こういうことでございます。そしてこれに対して、わが領空侵犯に対します措置は、南西航空混成団の104がこの任務を持っておる、こういうことでございます。
  266. 秦豊

    秦豊君 この間の一般質問が余りにも短かったですから、確認をさしてもらいたいんです。これは久保長官と丸山防衛局長に確認をしてもらって、次の内閣委員会の材料、ステップにしたいと思いますが、これは速記録がまだできていませんので、お互い誤解があれば訂正しますが、   〔主査代理中村太郎君退席、主査着席〕 丸山局長答弁の中に、日米のユニフォーム同士の中には、私の質問のときには、防衛庁長官も総理も知らないことがあると、それはたとえば双方の統幕議長であると、私は少なくともそう思っているし、毎年毎年装備も変わってくるし、作戦想定も違うし、相手の力も違ってくるんだから、毎年ほとんど定期的に少なくとも一回は日米双方のユニフォームが、どこに集まるかは別として、日米双方がそれぞれ分担すべき作戦、担務、それに要する兵力量、装備等々について打ち合わせをしているのじゃないかという意味のことをあなたに聞いたら、あなたはそれを否定されなかったのですね。確かに否定されなかったと思うんだが、まずそれを確認しておきましょう。
  267. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) この御質問は、年次防に関連してあった御質問であると記憶しておりますが、そのときに先生の御質問は、日米で制服レベルの中で毎年一回こういう共同作戦についての打ち合わせをするという協定があるのではないかという御質問でございましたように記憶しておりますが、そこで私が御答弁申し上げましたのは、これもすでに前々から国会でも御答弁をしておることでございますが、幕僚研究会同というのがございます。これは制服同士の作戦の技術的な打ち合わせをする、一番最初は日米合同委員会の関係で施設の共同使用ということに関連をいたしまして、社会的な側面とあわせて軍事運用的な作戦面からの技術的な打ち合わせということでこれをやっておるということを申し上げておりますが、そういう意味での制服同士の技術的な研究ということはずっと行われておりますということを申し上げたわけでございます。その両者の間の取り決めといいますか、協定といいますか、そういうものの存在はございませんということを御答弁申し上げたわけでございます。
  268. 秦豊

    秦豊君 丸山さん、それは技術的とおっしゃったんだけれども、技術的なというのはデテールでしょう、部分でしょう。じゃ、その基礎になるものがあるわけでしょう。私の知るところでは、それはペンタゴンもあるいはアメリカの空軍省も、いわゆる海軍も、たとえばあなたに相当するランクの人は署名はしていない。しかし、そういう討議したものは、日本の習慣と違うから必ず文書にするのですよ。かなり膨大な文書が毎年毎年イヤーブックのように積み重なっているというふうに聞いているわけだし、ぼくは大体あって不思議じゃないと思うのですよ。それがなくて、ある基礎がなくて、たとえばアメリカ四軍の極東に対する防衛思想とか核戦略思想というのが基本的にあって、それがどう変わってきたと、それが反映されて具体的な打ち合わせになるわけですからね、基礎がないというほうが詭弁になるのですよ。しかし、それはむしろこれから日本の防衛を考えると、坂田さんも考えると言い、われわれ野党も追及しなければならない、角度は違いますが、その場合には、国会で論議しているなんかよりももっと恐ろしいような、もっとリアルな、もっとクールないろいろなものがその中にあるはずなんですよ。それは防衛庁は、あるでしょうと言えば、いやございませんと言うに決まっているけれども、この幕僚研究会同が現実にあり得ていることばあなたも認めている。そこでも何らかのメモランダムが残っていなければおかしい。第一、あなた方の大学で幹部養成に教える場合にも困るだろうし、いわんや、その基礎になる日米の作戦取り決めというか想定というか、基本的なそういうものはあるんでしょう。
  269. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) いま先生の御指摘になりましたように、日米安保条約が締結されておる以上、ただいまのような日米相互間における基本的なすり合わせといいますか、こういうものは当然必要なわけでございます。論理的には必要なわけでございますが、しかし、いままで御答弁申し上げておりますように、現実にはございません。現実にはない。理論的には必要だと思いますけれども現実にはないというのが実態でございます。
  270. 秦豊

    秦豊君 やはり知能指数が違うんですな、われわれとは。あなた方は現実には文書がなくて、そんな複雑膨大、体系的なものをよくも一語一語覚えていらっしゃるんだな、相当な分量になりますよ。アメリカの官辺筋はそれを否定していないんですよ、そういう存在というのを。そんな一国の予算書みたいに膨大なものを覚えていて、しかもあなた方がそれで間然するところなく、誤りなく、打ち合わせはしますよ、しかしそんなものは一字もありませんよ——おかしい。よほど知能指数が違うのでしょうかね。どうでしょうかね。
  271. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 現実の問題は、相互にいろいろな場合を想定して研究をするということ、これは御案内のように、事態の想起というものが一定の枠内で発生をするということではない。いろいろな場合を想定されるということでございまして、現実の問題に即していろいろ研究はなされております。しかしながら、それが何といいますか、政府間の合意というような形のものになって残ってないということでございまして、当然論理的にはそういうものが私はあるべきだと思いますけれども現実にはないということが実態でございますので、御了承願いたいと思います。
  272. 秦豊

    秦豊君 ぼくらは国政調査権というのをたしか持っていると思います。まだ剥脱されていないと思いますが、あなたのいまの答弁、非常に大事ですよ。合意という形はとっていない。しかし、打ち合わせは否定しない。正式機関もある。しかも継続的にやっている。そうすると、合意という文書はなくてもパラレルにはあるでしょう。防衛庁長官がサインしてなくても、統幕とか各幕には教育用に必ずあるはずだ。もちろん、きょうはあなた否定するでしょうけれども、ぼくはその心証を強めている。あるはずですよ。あれば国会に出してもらわなければ困るのですよ、そういうものは。
  273. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ともかく現実にございませんので、ないと申し上げるよりほかないわけでございますが、ただいまのお話は、論理的にはそういうものがなければおかしいではないかというあれで御質問があると思うのでございますが、私もその点については全く同感でございます。論理的になければならぬと思うのでございますが、現実にない。そこにおかしいとおっしゃればおかしいということが言えるかと思います。
  274. 秦豊

    秦豊君 時間がないから、いらいらするのだけれども、あと最後にしますけれども、あなたは問題をすりかえてはいけませんよ。論理的とぼくは言っているのではない。パラレルにお互いに話し合ったものはお互いに——一方的に藤山・マッカーサー口頭了解みたいなものなんだ、アメリカの国務省にあるのですよ。ところが日本にはない。いつもこの種の議論しかあなたはしない。あるという心証を深める。やがて出てくるかもしれませんよ、そういうものは。  最後に確認をしておきたいのだが、久保施設庁長官に、この間委員会でせっかく見せていただいた岩国基地のビルナンバーの入った地図を資料として要求した場合には、やはりすげなく断わられるでしょうかね、それとも、いただけるのでしょうか。
  275. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 沖繩特別委員会において経験がありますが、米側に照会をして、米側がよろしいと言えば出せますし、そうでなければ略図ということになります。
  276. 秦豊

    秦豊君 沖繩のときには要求はなかったのですか。
  277. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 要求がありまして米側に照会してみるということでありましたが、そのときは略図で了承され、かつ現物をお見せはいたしましたけれども、お渡しはしなかったというのが沖繩特別委員会の私の経験であります。私が見ました経験であります。
  278. 秦豊

    秦豊君 ならば、あなた方はわれわれのNBCコマンドセンターの追及に対してさんざん逃げたわけですね、いや平和なものです、防御用です、しまいには倉庫ですと、物置ですと。こうまで言ってくれたのだが、何でもないものがああいうふうに名札が変わること自体おかしいけれども、いま時間がないからやめる。しかし、あなた方の言うように何でもないものであり、単にトレーラーの一つにすぎないものであり、岩国にある建物の配置や展開というのは全部防御用だとおっしゃるなら、ビルナンバーのついた地図をわれわれ後学と今後の討議資料の一つにしたいので、私は衆議院委員会の略図では納得しないから、あなたが持っておられたあれ、非常にいいですよ。全部書いてある。あれをぜひ資料として請求したい。
  279. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 米側に了承を得て、了承が出れば差し上げることにいたします。
  280. 秦豊

    秦豊君 宮澤外務大臣に伺いたかったことがあるけれども、これは分科会がきょうの最後のチャンスだから話にならぬが、最後に要望ですが、ちょっとだけがまんしてください。  東郷さんが非公式に言っているように、日中条約については批准と調印の間にタイムラグを設けるというような悪だくみをしないで、とにかく素直に共同声明の線に立ち返ってもらいたいという、まさにさっきの玉置さんとは百八十度違う立場からの要望を申し上げておかねばならないし、それから最近宮澤さんがせっかく苦労してアラブに飛ばれても、どうも二呼吸、三呼吸おくれる何かあのもどかしさは、やはり今後の中東外交全般についても共通するかもしれないおそれですから、ああいうふうなところは、国会重視は大変けっこうだけれども、やはりほかの国と比べてそういう感じもする。これについては留意をしていただきたいことが一つ。  それからやがてワシントンを訪問されるそうですが、私どもの印象では、最近の日米関係は必ずしもしっくりしていない。特に三回目と四回目の公定歩合の引き下げが日本に何ら事前通告がなかったというふうなこと、あるいは日本の企業アメリカの市中銀行十行に対して八十件五十億ドルというふうな、いわゆるインパクトローンというものの申し込みをしていることがアメリカの経済界を刺激していて、何とはなしにいま日米関係に微妙な不協和音があるというふうなこともあるわけであるが、それはそれぞれの資料をわれわれの同僚議員に提出をして、今後の外務委員会の場でそういうものはやっていきたい。きょうは時間を逸脱したところを源田主査の計らいでここまでしゃべれたわけだから、質問という形でなく、単に言いっ放しということで終わりますが、今後はそういう点は同僚議員に引き継ぎます。  それからこの間からやっている海軍規則等まだ手に届いていない資料については、早急に裏づけしていただきたいという注文をして、一応質問を終わりたいと思います。
  281. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) この前、予算委員会一般質問のときに、秦先生から御質問がございましたので、一つ残っておりましたSIOP——岩国の掲示板に載っておりました略号でございますが、これはシングル・インテグレイテッド・オペレーショナル・プラン、空地共同作戦立案を担当するオフィサー、担当官という意味だそうでございます。
  282. 秦豊

    秦豊君 どうもありがとうございました。
  283. 中村太郎

    中村太郎君 私は、秦さんとは別の立場で、防衛庁と外務大臣に二、三お伺いをいたしたいと思うわけでございます。  私どもは、いままで国会の外におりまして感じておりますことは、何かしらん防衛問題に対しましては政府は逃げ腰ではなかろうか、非常に弱い、こういう感じがぬぐい去れぬわけでございます。避けて通る、特にけさからの論議を見ましても、たとえば秦先生あたりから何か言われるのではないかというような、そういうおっかなびっくりの態度が見えてならないわけでございます。大変残念でございますけれども、しかし、こういう態度でありますると、最も政府が心配しておりまする国民の国防意識、私はこの欠如にやっぱりつながっていくと思うわけでございます。あるいはまた、政府の自信のない態度というものは、一方におきましては、たとえば非武装中立、安保反対というような意見、これも国防論の一種ではございましょうけれども、そういうものと兼ね合いの中で国民が選択を誤る危険性も私は出てくると思うのです。したがって、いやしくもいろいろな反対論がありましょうけれども、私は、絶対に自衛隊が必要である、自衛力が必要である、同時に安保体制に乗っからなければいけないという態度であるならば、常にそういう所信、自信というものを国民の前に示していただかなければならないと思うのですけれども、この点について防衛庁長官、いかがでございますか。
  284. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) いま先生がおっしゃるとおりでございまして、やはり日本の防衛という問題は避けて通ることのできない問題であるというふうに思います。したがいまして、できますれば、たとえば意見の相違はございましても、国会の場において十分やっぱり討議をされる、また、われわれも意のあるところをお答えを申し上げるということがやはり国民から自衛隊に対する信頼あるいは協力というものを得られるゆえんではなかろうかというふうに考えております。
  285. 中村太郎

    中村太郎君 そういう意味では、坂田長官になりましてから、国防を国民とともに考える、あるいはまた、国会の中に国防委員会というものを設置してほしいというような前向きの態度というものは、私はやっぱり評価していいと思うわけでございます。したがって、私もそういう立場に立って、防衛なんていう問題は、私ども素人でございますから、いろいろな面で素人なりに不明の点がございますので、その点について御説明をしていただきたいと思うわけでございます。  まず、これは原則的な問題でございますけれども、よく安全保障あるいは国防という言葉が使われておるわけでございますけれども、一体安全保障とは何であるか、国防とは一体どういう関係にあるのか、その点の御解明をしていただきたいと思います。
  286. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 安全保障、それから国防、防衛という言葉が使われておるわけでございますが、これについて明確な定義が行われているわけでございませんで、どちらかと言いますと、比較的政治的なニュアンスの強い意味合いがあると思います。通常、防衛と申します場合には、私ども防衛庁のやっております、自衛隊のやっておりますものが防衛でございますが、そういうある意味での純軍事的な意味をより広い意味合いで使われるときに国防という言葉が使われます。例の国防会議というのは、その狭義の軍事問題だけでなくて、広く外交、経済といったような問題を含めて言われるようでございます。安全保障になりますと、なおこれよりも広い観念のようでございまして、多国間による集団安全保障というような場合におきましても、軍事問題だけでなくて、広い意味合いのものに使われておるようでございますが、国連の安全保障理事会というようなものにおきましても、後者のような、わりあいに広い意味で取り上げられる場合が多いようでございます。
  287. 中村太郎

    中村太郎君 安全保障というのは、広い意味では外交、経済、軍事、こういう三つの力を総合して日本の国の独立を守る、あるいは維持していく、その中の一環としての防衛庁は軍事面を担当するということに私はなろうと思うんです。そうなりますと、果たしていまの国の防衛体制、防衛機構で私はいいかどうかということが、まず疑問になるわけでございます。先ほども玉置委員も触れておりましたけれども、まあアメリカ、西欧、ここでは大統領なりあるいは総理大臣の直轄下に安全保障会議が設けられております。ここですべて国の総合的な防衛計画が樹立される。平和時の防衛力あるいは有事の際の防衛計画、こういうものが国の総力を挙げて立案される形になっております。一朝事ある場合には、直ちに内閣総理大臣、大統領の権能下において発動される。要するに即応体制がとられるということでございますけれども、日本の体制は、いまどうなっておりますか。国防会議なんというのは、およそ安全保障会議とは別のような感じがしてならないわけでございますけれども、この点一体どう考えていられるか、お伺いします。
  288. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 国防会議ができましてから、やはり安全保障という立場から防衛力というものを考えて、たとえば三次防、四次防というふうに進んできたわけでございますが、最近、ともいたしますと、御指摘のように国防会議そのものが財政的な面からのみとらえられているというようなことも指摘されるわけでございまして、当初できましたころは、かなり広い視野から、つまり安全保障という立場から国防会議が運営されておったように思うわけでございます。また、そうなければならないと私は思うんでございまして、特に軍事的な面について統幕長あたりの意見も聞くというようなことも行われておった時期がございます。しかし、この五年間、特に大体十年間は余りそういうふうなことも見られないようでございます。これは記録を読みましてそういうふうに感じたわけでございますが、やはり国防会議は先生御指摘のような形においていろいろ論議が尽くされなければならないと思いますので、私は、国防会議が本当に有効に働くように、これから運営につきましても努力をいたしたいと、かように考えておる次第でございます。この点につきましても、「防衛を考える会」においても、ひとつ現在の国防会議のあり方等についても考えていただきたいということを申し述べております。
  289. 中村太郎

    中村太郎君 まあ、安全保障というのは、要するに国家の原則、基本であって、国の独立なくして何の福祉ぞや、あるいは福祉の基盤そのものが国の安全ではなかろうかと思うんです。ただ、そういうことになりますると、内政はもとより外交、特に外交政策ですね、これはやっぱり日本の安全保障上の観点から選択をされなければならぬと思うんです。  私は、そういう意味で、まず第一にお伺いしたいのは、いま話題になっておりまする日中平和友好条約の締結が日本の防衛上あるいは安全保障上及ぼすメリット、これは一体何かということでございます。まあ先ほど玉置先生は大変わかったようでございますが、私ども新米にはわかりませんから、外務大臣からお答えをいただきたいと思うわけでございます。
  290. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 日中平和友好条約がわが国の安全保障上どのような役割りを持つかということでございますが、この平和友好条約におきましては、私どもは今後両国間の長い間のおつき合いの基本になるべき物の考え方、相互不可侵でありますとか、あるいは内政不干渉でありますとか、そういったようなことにつきまして条約を結びたいと考えておるわけでございます。で、私どものこのような考え方が最終的に条約となりました場合には、いわゆる道義の問題としてだけでなく、国際的な条約上の義務として両国間の国交がそのように今後なるということについて両国が義務を負うわけでございますので、これによりまして、長い間幾たびかの戦争の関係を持ちました両国の間が平和になるということ、少なくとも条約上の義務として両者がそのような義務を負うということになろうと考えるわけでございます。わが国の側からは、正直を申して、世界の平和を撹乱するようなそれだけの軍事力のないことは、これはもう明らかでございますけれども、中国自身は、能力の点から言えばすでに核兵器も持っており、あるいは将来はそれを増大するという可能性もあるわけでございますから、そういう意味で、やはり両国がただいま申しましたような平和関係を条約で約束することの意義は大きいものと考えられます。
  291. 中村太郎

    中村太郎君 まあ、先ほどの外務大臣が玉置さんの質問に対しましてこう答えたわけですね。日中の友好条約は一定の期限内にどうしてもやらなければならないという問題ではないと、両国が理解と納得のいく中で十分時間をかけて両国の平和と繁栄を話し合って決めるべきものである。このことは理解できるんですが、しかし問題は、条約の締結というようなものがその両国間だけの納得だけでいいかどうかという問題だと思うんです。その条約がよその国に与える影響、これは十分やっぱり私は考えていかなければいけないと思います。むしろ、その条約の締結のよその国に与える影響、このプラス、マイナスを十分考えていかなければならぬというふうに私は思うんです。  そこで、御承知のように、いまのアジアの安定というものは、第一には米ソの緊張緩和、あるいは第二には中ソの対立、第三には日米の協力関係、これが土台となっておることは申すまでもないと思うんです。したがって、このうちのどの条件がぐらついても不安定になるということに私はつながると思うんですね。したがって、日本がどっちにつくか、特に対立の厳しい中ソのうち日本がいずれにつくかによって中ソのバランスは崩れていく。非常な影響力があると思うんですけれども、その点どうですか。
  292. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 確かに、わが国は軍事力こそございませんけれども、これだけの大きな軍事的な意味以外での力を持っておる国でございます。そういうわけで、たとえば中国から見て日本がソ連の陣営に一方的に近づきつつある、あるいはソ連から見て中国と一方的に親近感を深めておるといったようなことは、そのように受け取られることは十分われわれが注意をして避けなければならないことであると考えております。私どもが考えております限りの日中平和友好条約はそのようなものでない、あってはならない。ソ連との間に、もし領土問題が解決をいたしますならば、同じような条約を結ぶことに私どもはその後においてであればやぶさかでないのでございますから、そういった性格を持ったものでないことであるべきであるとわれわれは考えておりまして、いやしくも第三国からそのようなものと解釈せられるような、そういう内容は避けていくべきものであるというふうに考えておるわけでございます。
  293. 中村太郎

    中村太郎君 外務大臣、そういう御感触のようでございますけれども現実にソ連は日中平和友好条約の締結に対しましてどう反応していますか、歓迎していますか、それとも何らかの抵抗を示しておるでしょうか。その点どうですか。
  294. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私どもに関する限り、私はたとえば一月にソ連の外務大臣と話をいたしておるわけでございますけれども、この条約自身にそのような懸念を表明されたことはございませんで、むしろ、ソ連との間にも同様な条約を結びたいという意思表示は、これはあったわけでございます。しかし、領土問題が片づいておりませんときに、それをいわば一応わきへのけまして、たな上げしたような形でこういう条約にソ連との間で入ることは、これはわが国の立場としてできない問題でございますし、また私はソ連にそのように説明をいたしたわけでございます。
  295. 中村太郎

    中村太郎君 新聞にも出ておりましたように、ソ連はこれに対してはかなり牽制をしておると。たとえば外務大臣が言われましたような領土抜きの日ソ友好条約の締結はどうかというような申し込みもやっぱりその一つのあらわれであろうし、あるいはまた、自民党の副総裁に日中友好平和条約の締結は好ましくないという申し出もやったというようなことも私どもは聞き及んでおるわけでございます。申すまでもございませんけれども、ソ連があの地域におきまして集団安保体制構想というのを持っている、これにくさびを打ち込む、反対をするという立場から立っての中国は日中平和友好条約の進展を図るということではないかとさえ言われておるわけでございます。したがって、これにはいろいろな見方があろうと思うわけでございますけれども、私は一番恐れているのは、そういう中で、ここで急いでこの条約を締結した場合に、果たしてソ連の反応はどうであろうかということが心配になるわけでございます。この点は先ほど玉置委員も触れておりました漁業権の問題、あるいはまた領土権の問題、いろいろあるわけでございます。特に最近の例の伊豆沖の大漁船団の進出というようなことも、この一つ抵抗へのあらわれではなかろうかというふうにさえ言われておるわけでございます。したがって私は、これはいろいろお考えがあろうと思いますけれども、御承知のように、海洋法会議の結果、経済水域が二百海里になることはほぼ間違いないと思います。その中で一体日本の国というものが、漁業がその二百海里から締め出しを受ける、なおかつ、またソ連からも重大な圧迫を受けるということになりますると、一体どうなるかという問題もあろうかと思うんです。したがって、ここで短兵急に急がずに、もっと海洋法会議の結果等をながめながら、推移をながめながらこの条約を締結することも一つの方法ではないだろうか。これは私は、私の提言をしておきたいと思うわけでございます。  それからもう一つは、いわゆる台湾関係でございますけれども、台湾関係の反応を、外務大臣はこれに対してどう考えていらっしゃいますか。どう見ていますか。——台湾がどう出ようかということです。
  296. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 日中国交正常化以来、台湾がわが国に対してかなりの不信感を持っておるというふうに想像されるわけでございます。で、この条約交渉の結果がさらにその不信感を増大するのではないかということを、恐らく台湾側としては憂慮をし、心配をしておるのではないであろうか。わが国としては国交がございませんために、これを正確にこうだと申し上げるわけにはまいらないのはやむを得ないことでございますけれども、どう想像するかといえば、私はそのような想像をいたしております。
  297. 中村太郎

    中村太郎君 大変むずかしい問題であろうことは想像できるわけでございます。ただ、二月二十三日の中国新報がこういうことを報じてるんですよ。日台関係は日本が日華友好条約を破棄したときからすでに交戦状態に入っているんだと、で、今回再び日中友好条約を締結していこうとすると、これはとんでもないことだと、これに対しては台湾としては厳重な抗議をすると同時に、あらゆる手段をとって台湾自体の繁栄を守っていく、安全を守るんだというような報道がされておるわけでございます。まあ私は、これは台湾の人たちの率直な気持ちであると思うわけでございます。御承知のように、台湾の航空路線の再開の問題あるいはその他の実務関係、いろいろな問題があるわけでございます。恐らく私どもの想像では、この日中友好条約の締結は、抱えておる台湾の問題に大きなブレーキになるということを容易に予測できるわけでございます。したがって、まあこれも意見でございますけれども、こういう台湾との調整をもっと円滑にやった後に日中友好条約の締結は考えてもよいのではないかということを、まあ私は意見として申し上げておきたいと思うわけでございます。  それからもう一つ、同じような問題でございますけれども、いまの核防条約の批准、これが日本の安全保障上一体どういうようなメリットがあるのか、これは防衛庁長官、防衛の立場で御説明をしていただきたいと思います。
  298. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 核兵器の拡散を防止することによりまして、核戦争勃発の危険を防止し、かつ、核兵器保有国による核軍縮を促進するとともに、原子力の平和利用を推進する条約の趣旨が、わが国の安全保障に大きな支障を与えるとは考えておりません。すなわち、わが国がこの条約の締約国になりましても、従来どおりわが国の安保保障を確保するためには、今後とも米国との安全保障体制を堅持しつつ、わが国みずからも有効な防衛力を保持して侵略を未然に防止することを基本とする方針に変化はございませんし、抑止力、報復力としての核兵器につきましても引き続き米国に依存することとなるからでございます。このような防衛構想に基づきまして米国の協力を期待する以上、批准を促進して日米安保体制を維持強化することがより現実的であるというふうに考えるのでございます。  また、非核三原則の政策は今後とも維持されますので、わが国の防衛力として核兵器を保持することは考えておりません。  以上の点を考慮いたしますと、核防条約の批准が米国の核の保証を得る上で有利であると考えるのでございます。  なお、わが国がこの条約の締約国になりますると、この条約の体制の強化に一層効果的に貢献できるし、このことが国際関係の安定化に寄与することにより、ひいては安全保障の強化につながることになると考えておるわけでございます。
  299. 中村太郎

    中村太郎君 何だかよくわからないんですがね。まあ私は簡単に言いますから、もしそれが間違っておったら訂正してください。  この核防条約に日本が署名してから五年たったわけでございます。この五年間の経緯を見ると、核保有国の間に核軍縮に対して見るべき成果があった、特に米ソ間においては上限値を決めた意義は大きい、次に、非核兵器国の安全保障については米英ソの三国が保障する決議をした、国連安保理事会においても同じような決議をした、核保有国は真剣に非核保有国の安全について取り組んでいる、しかしこれだけでは安全でないので、国連だけでは心もとないので、この裏づけとして日米安保体制を今後とも日本は継続していくのである、そこでわが国が核防条約を批准して核問題に対する姿勢を明確にして核兵器国に対する軍縮の発言権を得たい、非核国に対しましては核軍縮に参加するような説得力を持ちたい、それが国際関係の安定に寄与するし、日本の安全につながる、こういうことでございますか。それ以外に何かありますか。
  300. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) そのとおりだと考えております。
  301. 中村太郎

    中村太郎君 そうなりますと、よく言われておることでございますけれども、これは考え方の相違なので、明確な結論というのは出ないと思うんですけれども、要するに、ウラジオ会談で第二次兵器の制限交渉の中で上限値を決めた。この上限値を決めたそのことについてもいろんな意見はあるんですけれども、しかし、この上限値はそれ以上広がらないか。外務省の意見では、青天井だけれどもそれを一応規制するようになったんだから、それだけでも効果があるではないかということなんですけれども、果たしてそれだけで、この上限値だけでとどまるかどうか、私はこういう懸念があると思うんですよ。特に、こういうことについては、御承知のとおり、アメリカのシュレジンジャー国防長官はこの報告の中で厳しく認識をしております。ソ連はかつてない核拡大を図っておる。したがって、アメリカもこれに対決を覚悟しなきゃいかぬという意味のことを言っているんです。非常に厳しい。  もう一つは、これもよく言われているんですけれども、いわゆる中国、これは御承知のように、この軍縮の会議の中に入っておりませんし、特に核の拡大を公言しております。少なくともあと十年ないし十五年たてば米ソまで肩を並べる、あるいは追い越すかもしれない、こういうことを言われておるわけでございます。その時点で果たして日本が、アメリカの核に依存する日本が、アメリカに向かって核をすぼめなさいと言える立場であるかどうか。むしろ、中国が追い越していけば、それと同じだけ核を広げてくださいと言わなきゃならぬ立場ではなかろうか。この辺の判断はどうですか、防衛庁長官
  302. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) この問題は、あるいは外務大臣からお答えになったほうがいいことかと思いますけれども、しかし、やはりしばしば外務大臣からお答えがございましたように、幾つかの取り決めによりまして漸次拡散の方向へ努力をしておるということ、これはやはり認めなけりゃならないんじゃないかというふうに私どもは思います。  それからもう一つは、わが国が憲法の一つの制約があって、そうして自衛のために必要な防衛力の維持ということは許されておる。攻撃的な戦力というものを持つことはできないという立場にもございますし、また同時に現在非核政策をとっておる、こういうことを考えますると、どうしても私は核拡散ということに対して日本の発言権を持つということの方が今日の段階としてベターではないかというように考えるわけでございます。
  303. 中村太郎

    中村太郎君 それは一つには考え方の相違があると思うんですね。それからもう一つは、日本がこれを批准してみずからあかしを立てて、非核兵器国に対して核軍縮に対する協力を求める、説得をするということなんですけれども、果たしてそれが可能かどうかということ、日本はアメリカの核にぬくぬくと浸っていながら、非核兵器国に向かってあなた核軍縮に協力しなさいと言える立場かどうか。私はやっぱりこれは疑念があると思うんです。しかし、それは考え方の相違ですから追及しませんけれども、しからば、一番重大な問題でありまする、この批准の裏打ちになっておりまする安保体制、安保条約の継続化という問題これについて一体どのような保障があるかということでございます。二十年間拘束される、したがって、この間は日米安保条約に依存するということなんですけれども、その二十年間の保障というものは一体どういう形になっておるか、この点をお伺いしたいと思います。
  304. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先ほどの答弁におきまして、「拡散」という言葉を使いましたが、「拡散防止」の間違いでございます。訂正いたします。  私どもの防衛ということを考える場合に、やはり私は三つのことがあろうかと思うんです。その一つは、やはり国民全体が日本の国は日本人で守るという、そういう気概と申しますか、あるいは抵抗意志と申しますか、そういうものがやはり充実をしてくるということが一つであります。いま一つは、憲法に定められた制約ではございましても、自衛のために必要であるところの防衛力整備は、日本の経済に応じて努力をして、そうしてその力を持つということ。それからもう一つはやはり核の問題、核攻撃等につきましては、これはもう日米安保条約を堅持して、これに頼らざるを得ない。こういうことであって、この三つの柱の一つを欠いても日本の安全保障というものは成り立たないというふうに私は考えておるわけでございまして、したがいまして、日米安保条約ということが揺らいでくるならば日本の安全保障というものはあり得ないというふうに思うんです。したがいまして、日本国民全体が、政治家を初めといたしまして、この日米安保条約を堅持していくという非常な努力をすべきものであるというふうに考えておるわけでございまして、その点について、恐らくアメリカ側といえども、われわれの拡散防止条約に対する意欲的な外交上の提案というものに対しては評価をしておるんじゃないかというふうに私は考えておるわけでございます。
  305. 中村太郎

    中村太郎君 その三つの点はわかるんですけれども、最後の安保体制、これは批准すれば日本の国は二十年間この条約に拘束をされる。その裏打ちとしての安保体制を堅持するんだということですから、二十年間保障されるというそのことに取り組まなきゃいかぬわけですね。それが現状でどういうような形で保障されておりますか、そのことを聞いているわけです。
  306. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私は、この条約において、一応この条約が続く限りにおいては保障されると思いますけれども、しかし同時に、日本自身が日本国を守るんだという、そういうしっかりしたものを持たない限りは、これはどうなるかわからないような気がいたすのでございますから、防衛庁長官といたしましては、まずもって日本の国は日本で守るんだということをしっかりやはり客観的に認められるような形にするということが一番大事であるということを防衛庁長官としては考えておるということでございます。  御承知のように、ニクソンドクトリンにいたしましても、天はみずから助ける者を助けるという基本方針にのっとることは御承知のとおりでございまして、私は、アメリカ側から見るならばそうあるのが当然だと思うし、われわれ日本の立場といたしましても、すべて安保条約、安保条約というような形じゃなくて、日本人自身が日本は守るんだというこの強い決意と、そして自衛のために必要な最小限度の防衛力というものをわれわれが努力をするということがあって初めて安保条約というものが有効に働いてくるというふうに確信を持っておる次第でございます。
  307. 中村太郎

    中村太郎君 防衛庁長官の言うこと、私はそのとおりだと思うんですよ。ただ私は、アメリカは当然戦略上からでも日本を守っていくのはあたりまえだというような安易な考え方があるんです。その点は日本国民自身がもっと考えなければならぬということについては意見が一致するわけでございます。  この間、ニューズウイーク誌の極東特派員ブリンクリィロジャーズという人が「諸君」という本の四月号にこういうことを書いているんですね。とにかくアメリカの核のかさにただ乗りしながら一方で非核三原則を唱える理想主義にしがみつく日本のエゴイズム、というんですね。核のかさも核アレルギーも捨てたくないという経済大国日本の理想主義、しかしそれが頭のない巨人のただ乗り主義という国際的無責任主義につながるものだということならば、日本は結局孤立して、その二つとも失ってしまうだろうということを言っているんですね。これはおそらく、アメリカ人の共通的な一つ考え方であろうというふうに私は思っております。一方、日本の国内におきましても、御承知のとおり、安保反対という勢力、かなり強い勢力があるわけなんでございます。アメリカのいま申し上げたのが大方の意見を代表すると思うんですけれども、とにかくアメリカ自体も最近考えが変わっておりますことは御承知のとおりでございます。アメリカのナショナリズムと言いましょうか、あるいは新孤立主義、御承知のように、カンボジアあるいはまたベトナムへの追加援助を議会が拒んでいるということなんかもその一つのあらわれだと思うわけでございます。そういうアメリカが、果たして日本がいまのような状態の中で、このまま黙っていっても安保を継続するなんということは、私は甘過ぎると思います。とにかく向こうの考えというものは、アメリカの核に依存しながら核アレルギーなんて言って、いい気なもんだということだと思うんですよ。アメリカ軍におんぶしながら基地反対とは一体何であるかと、そういう率直な声がアメリカに多いわけなんでございます。余りにも勝手過ぎやせぬかということでございます。特に、安保問題に対する野党の質問なんか聞けば、恐らくアメリカは逃げ出したくなる。私はそういうふうに判断をいたすわけでございます。それだけに、まず、いまの国内体制、安保問題に対する国民のコンセンサス、これは長官が言われたように、第一にそのことを先駆けてやらなきゃならぬと思うわけでございます。  第二は、その上に立って、やっぱりただ一片の口頭了解でなしに、安保体制の堅持というものを何らか条約か何かの形でうたい上げておかなければ非常な危惧があるというふうに私は思うんですけれども、その辺いかがでございましょうか。
  308. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府としては、安保条約は事実上無期限の条約であるというふうに考えております。にもかかわらず、もし何かの事情でアメリカ側がこの条約を廃棄をするということがあったと仮にいたしますと、それは恐らく、ただ条約が廃棄されるという事実のみならず、そのような背景の変化があったというふうに考えなければなりません。そうなりますと、日米関係というものは基本的に違ったものになると思わざるを得ないかと存じますが、片方で、核拡散防止条約は先ほど中村委員の御指摘のように安保条約というものと不可分のものになっておりますので、もしただいま言われましたような安保条約が破棄されるというような事態になりますと、私どもとしては、それは核拡散防止条約に言いますところの国の最高の利益に関係のある出来事である、そういうふうに解釈せざるを得ないようになるかと思いますし、また、核拡散防止条約そのものを批准すべきであるという現在の政府の態度は、安保条約がそのような形で消滅することなく存続をしていくという前提に立っておるわけでありますから、そのような事態がもしございますと、前提が崩れるということに考えております。
  309. 中村太郎

    中村太郎君 要するに、安保問題に対する国民の認識を新たにするということが第一点。もう一つは、アメリカと緊密な連絡の中で不断の努力を払っていくということが第二点。このことをやっていかなければ安易に安保条約は継続しないと思うんです。要望しておきます。  そこで、もう一つお伺いしたいんですけれども、いまよく米ソの核の均衡によって抑止力が働き、それがデタントになっているんだ、だから戦争は起きぬのだという考え方ですね。この場合の一体核の均衡とはどういうことですか。お伺いしたいと思う。
  310. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 米ソの核の均衡という言葉がよく使われるわけでございますけれども、主として米ソという場合に引かれますのは戦略核が主体になっておるようでございまして、これは米ソのそれぞれ現在保有しております戦略核兵器の数量、それからその弾頭の爆発威力、あるいは命中精度、あるいは一たん攻撃を受けました場合にどれほど残り得るか、いわゆる残存性といいますか、こういうものを総合的に判断をいたしまして米ソの間に均衡がとれているというふうに言われるようでございます。  で、このほか戦域核につきましてはNATOに約七千個の戦術核が配備されていると。これはアメリカ側でございますが、アメリカが配備しておるということで、通常兵力におきますワルシャワ条約機構の軍隊と、それからNATO加盟国の軍隊とのアンバランス、これはワルシャワ条約機構の方が優勢でございます。その優勢を七千個の戦術核によって均衡を保っておるというふうに言われておるわけでございまして、結局核の均衡というのは、全体の数量、それからもろもろの性能、それからそれがいかに配備されておるかというようなことを中身にしておる、こういうふうに思います。
  311. 中村太郎

    中村太郎君 要するに、核の量、質、配備、この問題になると思うんですね、均衡ということは。となると、例の核の持ち込みの問題はどうしてもこの際考えておかなきゃならぬということになるんですよ。私、いまここで日本に核が持ち込まれておると思っておりません。これは政府見解のように現状では核は事前協議の対象である、その事前協議がないから核は持ち込んでいない、これはそのとおりと思うんですよ。しかし、果たしてそのままでいいか、それでいいのかと。それはやっぱり問題が残ると思うんですね。いまの核の配備の均衡だってそうではありませんか。第一、日本の領海付近をアメリカの艦艇以外の艦艇は核を積んでどんどん通る。日本を守るアメリカの艦艇だけは核を積んではいけない、これは明らかに核配備の均衡を欠きますよ。そうお思いになりませんか。また、一時通過も、ほかの外国船はいい、アメリカの船だけはいけない、これで果たして日本が守れるかという。やっぱり抑止力が働かない、緊張も激化する、そういうことにどうしてもつながっていかざるを得ない。この点の認識はどうですか。それとも、戦術核というのは将来の局地戦によって絶対使えない、使われない、こういう保証がありますか。
  312. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 戦域核は、実は戦略核が使えない兵器になりつつあるということで、核の抑止力の信頼性を高めるという意味で戦域核というものができ上がってきているということで、その使えない兵器は抑止力がございません。やはり使えるという条件下に置かれることが抑止力を高めるゆえんであるというふうに考えております。
  313. 中村太郎

    中村太郎君 そうしますと、戦術核というものは、この間三木さんが本会議かどっかで戦術核なんていうのは絶対将来とも使われないであろうという答弁をしてますね。それから衆議院予算委員会か何かで、一朝有事の際も平和時も核の持ち込みは断るんだということを発言されたそうなんですけれども、一体どうなるんですか。日本の局地において戦術核が使われる、日本は使えない、アメリカも持って入ってはいけない、それで日本の局地防衛が成り立ちますか。やられっ放しでしょう。そんなばかなことを言っていて、果たして有事の際いいんですか。私はこれは大きな問題だと思うんですね。これは答えにくいと思います。ですが、私はここで十分お考えをいただきたいということでいいと思うんですけれども、少なくとも核防条約を批准する以前においてこの問題は決着をつけておく、はっきりしておかないと、安保条約に依存しながらと言いながらも、安保条約の核のかさは機能しないということになってしまうんです。十分ひとつお考えをいただきたいと思うわけでございます。  時間がございませんので、あとまとめて聞きますけれども、四次防の基本方針、四次防の達成率、これから完成するとすればどのくらいの予算がかかるのか、それからもう一つあわせて、通常兵器の装備、いわゆる四次防でもやるんですけれども、通常兵器の意義、効力、中には、これだけ核兵器が進んでくれば通常兵器なんて持ったって意味がない、おもちゃなんだという意見もありますけれども、あえて通常兵器を装備する理由というのは一体何であるか、その点を時間がございませんから端的にお答えをいただきたいと思います。
  314. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ただいまの御質問のうち、予算関連いたします問題は経理局長から御答弁を申し上げます。  まず、四次防はどういう方針でやったのかということでございますが、これはもう御案内のとおり、三次防の延長線上ということで、いわゆる局地戦以下の侵略事態に対して最も有効に対応し得る効率的な防衛力を漸進的に整備するというのが目的でございます。そして、その一環といたしまして、海につきましては周辺海域の防衛能力、海上交通の安全確保能力、これを重視をいたしますし、それから空につきましてはわが国重要地域の防空能力を強化する、それから陸につきましては各種の機動力の増強を重視しつつ装備品の更新、近代化を図るというのが四次防の目的でございます。  それから達成率でございますが、大体陸上自衛隊と航空自衛隊、海上自衛隊の航空機、これにつきましては大体一〇〇%に近い状況——これはもちろん五十一年度の予算ございますので、いまこういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、五十一年度の予算を含めまして推計をいたしますと、九〇%台の達成というところまで何とか行けるんではなかろうか。ただ問題は、海上自衛隊の艦艇でございますが、四次防の目標が五十四隻の六万九千トンでございますが、これがまだ二十隻、三万三千五百トンが残されておりますので、これは大変問題があるわけでございます。  それから通常兵器を整備する意味はどうか、こういうことでございますが、御案内のように、国防の基本方針により、防衛構想といたしまして、核の抑止力につきましてはアメリカに依存をするということで、わが国は通常兵器をもってわが国の防衛に対処していくという方針で整備をしておるわけでございますが、幾ら核兵器が発達をいたしましても、依然として通常兵器の機構というものは必要であるわけでございまして、この辺は、先ほどのシュレジンジャーの国防報告の中にも、通常兵力を高めることが核への敷居を高めるのである、核が使えないという状態にするためには通常兵力の中身を高めていかなければならないということを言っておりますので、当然、第一義的に通常兵器の整備というものは今後とも長く続くというふうに考えておるわけでございます。
  315. 中村太郎

    中村太郎君 四次防計画を策定した時点と今日とを比較して、たとえば中東、インドシナあるいは朝鮮半島等々、要するに日本を取り巻く諸情勢の中で特に緊張緩和が進んでおりますか、それとも緊張緩和でなくて緊張激化していると判断をしておりますか。一点だけ、簡単に言ってください。
  316. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 四次防策定時におきましては、当時朝鮮半島の問題あの南北朝鮮の赤十字の話し合いというものが出てまいりましたり、いろいろあったわけでございますが、御案内のように、最近その点におきまして、中東戦争あるいはインドシナ半島の情勢の変化というようなものが出てきております。しかしながら、国際情勢全般で見ました場合には、いわゆる緊張緩和と言われて規定されますような基調といいますか、これは大きな変化はないんではないかというふうに考えております。
  317. 中村太郎

    中村太郎君 そうなりますると、やっぱり国防というものの基調に考えなきゃならない緊張緩和、これは大して変化がない、四次防策定時と同じようであるという判断が一つ。それから、四次防はいま局地戦における最小必要限の兵力である、そのために四次防は計画したんだ、四次防計画を放棄すれば、これは直ちに最小必要限の防衛力の放棄になる、あるいは低下になると思うのですね。したがって、私はこの際四次防というものは日本の独立を守るためには、どんなことがあっても、どんな犠牲を払っても達成しなければいけないのだ。それで、国力、国情ということよりも、日本のいまの財政力から言えば、やっぱり独立を守るためにはどんな犠牲を払ってでも達成しなければいかぬというような決意があるのかどうか、防衛庁長官、お伺いします。
  318. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) おっしゃるとおりに私どもは考えております。
  319. 中村太郎

    中村太郎君 時間がありませんから、終わります。
  320. 桑名義治

    桑名義治君 最初に外務大臣にお尋ねをしたいのですが、昨今、サウジアラビアの国王の死去に対しまして、その葬儀の特使の派遣が非常におくれたということで、いろいろな論評がなされておったわけでございますが、そのおくれた理由と、今回外務大臣がサウジアラビアに弔問に行かれましたけれども、このサウジアラビアのいわゆる反応がどのようであったのか、それをつまびらかにしていただきたいと思います。
  321. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) このたびサウジアラビアを弔問いたしたわけでございますが、国王並びに皇太子から、遠くからわざわざ外務大臣に弔問においでを願って、まことに恐縮であったというお話がございました。  で、どういう雰囲気であったかと申しますと、前国王があのような不慮の死を遂げられたということもございまして、宮廷の中はかなり緊張をしておるように感じました。無理もないことでありまして、本来あの国の制度では、皇太子が自動的に王位を承継されるという規則にはなっておりませんし、長子相続であるということにもなっておりませんわけでございますから、ともかく王位承継が平和に行われたということは、おそらく関係のたくさんの方の非常な努力の結果であったと思います。同時に、しかし、新しい内閣も組織しなければならないということで、いわゆる新政権がこれから無事にスタートをするという、そのまさに瞬間でございますから、厳しい雰囲気であったということは理解のできるところであります。そういう中で、各国からともかく飛んでいけばいいということで、たくさん弔問使が見える。それにも礼を欠いてはならないということは、かなり新国王にとりましては負担になっておられるように私見てまいりました。  そういう立場から翻って考えますと、ともかくこういうときには早く飛んでいくのがいいという考え方と、やはり国柄も違い、ことに伝統の長い宗教を持っておる国でありますので、やはり秩序を立てて、弔問についての都合を聞きながら弔問に出かけることがよかったかと、わが国の場合は後者の方法をとったわけでございますから、これは判断の分かれるところであろうと思います。私としては、参りました結果について申しますならば、やはり正式の宮廷の儀典長等々の判断を聞きながら、先方の望まれるときに弔問に行ったということが儀礼としては正しかったのではないであろうかと考えておりますし、何か一部に非常に遅くて不満があったというようなことも報道されましたけれども、だれがそう言われましたのか述べられておりませんので反駁のしようもございませんが、宮廷内部における印象、私が得ました印象から申しますと、先ほど申し上げましたように感じて帰ってまいりました。
  322. 桑名義治

    桑名義治君 いずれにしましても、サウジアラビアはわが国におきましても石油の供給国として最大のシェアを持っているわけでございますし、こういった国の大異変の起こったときには、まず第一にやはり弔問をするというこの態度こそが私は最も誠意のある姿ではなかろうか、こういうふうに判断をするわけでございます。いずれにしましても、今回の弔問において大臣の感じられた事柄がサウジアラビアに悪い影響を与えなかったということであるとするならば、私はこの問題はこれでおさめてもいいんじゃないか、こういうふうに考えている次第でございます。  次の問題も、ちょっと触れておきたいんですが、これはカンボジアあるいは南ベトナム、こういった両国がいま非常な緊急事態に陥っているという事柄でございます。したがいまして、ロン・ノル大統領ももう近々亡命をする、こういうふうに言われておりますし、あるいはチュー政権もほとんど崩壊をするんではないかといういわゆる観測の方が非常に強いわけでございます。こういう緊急事態を迎えた以上、日本もこれからの対応策として、いわゆる政策の転換を図っていかなければならない時期が来ているんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、この問題に対してどのようにお考えになっていらっしゃるか、お尋ねをしておきたいと思います。
  323. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ロン・ノル大統領は、かねてインドネシアのスハルト大統領からの招待というようなこともありまして、それを受けて国を出られるということになったのではないかと承知をいたしております。他方、ベトナムにおきましては、御指摘のような状況の大きな変化がございますが、やはり私どもとしては、バリ協定に述べられました、とにかく話し合いによってベトナム人同士による解決、それを第三国はじゃまをしないのみならず、積極的に助けていくというような物の考え方が基本でなければならないであろう。当面の問題といたしまして、わが国が、難民等非常にたくさん出てまいっておりますので、それがどの地域にあるということに余りかかわりなく、そのような人道的な見地からわが国として何をなすべきかということを考えなければならない現状であろうと存じております。
  324. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、現段階に対するいわゆる対応策としては、いま大臣の言われた事柄で一応納得ができるわけでございますけれども、しかし、この問題は私はもうほぼ長期的に物を見ていかなければならないんじゃないかというふうに考えるわけです。と申しますのは、これは新聞報道でございますが、南ベトナムに三千万ドルの緊急援助を出したということで臨時革命政府が批判をしている、こういう記事も新聞に報道されておりました。そういったいろいろな立場から考えまして、カンボジアあるいは南ベトナム、いわゆる今後インドシナ半島全体の将来をどういうふうにとらえていくかという、こういう大きないわゆる外交的な分岐点に来ているんではないか、こういうふうに私は判断をせざるを得ないと思うんです。そういった立場で、カンボジア、南ベトナムは当然ながら、今後インドシナ半島全体に対する姿勢をどのように持っていくか、これをひとつ、大臣として現在のところ判断をなさっているその判断の範囲内でよろしゅうございますので、お聞かせ願いたいと思うんです。
  325. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 南ベトナム共和国に対しまして九十億円の経済協力を決定いたしましたが、これはこういう段階でにわかに決定したというわけではございませんで、すでにかなり長いこと両国の間で交渉がございまして、年度末が近づいたというような関係もございまして、先般署名をいたしたわけでありますが、その内容は、従来からわれわれそういう留意はいたしておりませんが、民生の安定向上に役立つような物資それを供給するということでございます。  で、後段のお尋ねでございますけれども、やはり私ども国際的な緊張緩和が進みます中で、ことに従来いわゆる民主主義の陣営にあったと思われます国の中において、かなり民族自決主義的な運動がはっきりしてまいり、いろいろなあちこちの大国の介入を排して自分たちで自分たちの自決をしょう、そういう動き世界あちこちにあらわれつつあるというふうに考えます。ただ、東側陣営、共産主義陣営におきましては、何としても、どう申しますか、制約がかなり強うございますから、そういうような運動はなかなか簡単にはあらわれていないようでございますけれども、西側陣営でそういうことがかなり目につくようになった、全体としては私はそういうふうに理解をして事態を考えていかなければならないのじゃないかと思っております。
  326. 桑名義治

    桑名義治君 一部では、外交、いわゆる外務省筋で、この問題に対しましてはまだ非常に流動的である、したがいまして、もう少し事態が固まった上で判断をするということが一つと、それからアメリカもしくは東南アジア諸国連合、これらの意向を聞きながらいわゆる政府の態度をきめていかなければならないんじゃないか、これが一つ。それからもう一つは、経済援助は、すなわち、いまから先はいわゆる難民の救済を中心の経済援助という方に移行せざるを得ないのじゃなかろうか、こういう大きく分けまして三つの柱の中で、今後インドシナ半島全体の将来を把握していく必要があるんじゃないか、こういうふうに述べているというふうに言われているわけでございますが、この点どうですか。
  327. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私が先ほど申しましたのは、大きな世界史的な流れとしてどう考えるかということを申し上げたわけでありまして、確かに現状はきわめて流動的であります。その第一の認識について賛成であります。第二に、アメリカあるいは東南アジア諸国の意向をよく考えつつというのも、これもまことにもっともなことで、なかんずく、東南アジア諸国とわれわれはやはりできるだけ意見調整をしながら一緒に歩いていくということが必要であろうと思います。これも賛成であります。第三の、これからの援助というものは、勢い少なくとも当面難民に対する人道上の援助に重点を置くことになるであろう、これも私はそのとおりであろうと思います。
  328. 桑名義治

    桑名義治君 いずれにしましても、こういったインドシナ半島全体の将来を考えたときに、いまこそアジア一帯からエコノミックアニマルとか、いろいろな悪評を買っている現在の日本のこういった悪評を解消する上におきましても非常に重要な時期であろう、こういうふうに考えるわけでございます。この問題は一国の問題かもしれませんが、私は日本にとりましては非常に大きな一つの試金石になるような気がするわけでございます。鋭意この問題には前向きの姿勢でひとつ取り組んでいただくことを要望しておきたいと思います。  そこで、こういった幾多の問題を抱えながら、いわゆる現在の日本の外交は多難な時期を迎えているわけでございますが、まあ報道によりますと、四月の十日にキッシンジャーとの会談ということが報道されているわけでございます。この中身につきましては、大体どういう事柄を中心にお話をする予定でございますか。
  329. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) はっきりした日取り等々、実はまだもう一つ明確になっていない点がございますけれども、国会の御都合等も伺いつつ、もしよろしいというのであれば、短時間でもそのような会合をいたしたいと考えております。その場合、一つはやはり日米両国の二国間の関係でございます。もう一つは国際情勢一般、その中にはただいまのような問題が中東問題とともに当然大きな比重を占めることになろうと思います。第三には、いろいろな国際会議、たとえばエネルギー等々、あるいは金融もございますが、多数国の場における日米の担うべき役割り、そういったようなことが話題になろうかと思っております。
  330. 桑名義治

    桑名義治君 では、時間もございませんので、この問題はこれで打ち切りたいと思いますが、次に日中漁業協定について伺っておきたいと思います。  三月の一日から日本におきまして日中漁業協定の交渉が現在行われているわけでございますが、この問題は、実際は新聞紙上等いろいろな報道機関にはほとんどまだその内容については報道がされてないようでございますし、しかし、西日本漁業界におきましては、この協定が結ばれるか結ばれないかということは非常に大きな関心事でもあるし、生活上の問題にも波及をしてくるわけでございますし、さらに、日中友好平和条約が結ばれる一つの前提としてとらえても私はいいのじゃないかというふうに思うわけでございます。いろいろな個々にわたる条約は結ばれたわけでございますけれども、依然としてこの日中漁業協定は、非常に重要な問題でありながら、ほとんどいままでたな上げの状態になっていたという事実があるわけでございます。そういった意味で現在までの交渉の経過、これをお話し願いたいと思います。
  331. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 漁業交渉につきましては、昨年六月、北京で第一回の交渉を行いまして、その結果を踏まえまして、今年三月一日から引き続き第二回の交渉をいま東京で行っております。交渉の内容につきましていろいろ申し上げたいことがございますけれども、いま現に日中両方で交渉中でございますし、具体的にこうこうこういう経過になっておるということを細かく申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。ただ要は、要するに中国近海における漁業資源の保存に留意しつつ、日本がいかにしてあの水域において操業をするかということについての取り決めでございますので、一応これの立場も十分深く理解した上で交渉しなければならない、そういう立場でいま現に交渉を行っておりまして、民間取り決めが失効する前に何としてでも妥結に持っていくように努力したいというふうに考えております。
  332. 桑名義治

    桑名義治君 交渉の段階で、その細部についてはお話しできないというお話でございますが、では、一九六五年からいわゆる民間における日中漁業協定が結ばれておるわけでございますが、このような状態がまだ永続的に続いてもいいというふうに御判断になっていらっしゃいますか。
  333. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) これは先生御承知の日中共同声明第九項に明記してございますとおり、できるだけ速やかに日中間で漁業協定を締結するように交渉すると約束をしております。われわれは民間取り決めは一日も早く政府間取り決めにかわるべきものであるということで、いままで貿易取り決めもやってまいりましたし、現に漁業協定をやっておるわけでございまして、いつまでも民間取り決めが続いていいという立場では毛頭ございません。
  334. 桑名義治

    桑名義治君 そうしますと、民間協定のぎりぎりの線が六月の二十三日ということになるわけでございますけれども、これ以前に日中漁業協定が結ばれなかった場合さらに民間との漁業協定を進めようと思えば、これは政府間の今回の交渉が非常に大きな障害になるのじゃないかというふうに私は考えるわけでございますが、その点はどういうふうに判断されていますか。
  335. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほどお答えしましたとおり、私といたしましては、民間取り決めの失効する前に何としてでも日中間で妥結に持っていきたいということでやっておりまして、現在の段階でもしそれが不可能な場合にどうするかということは、まだ想像したくない次第でございます。
  336. 桑名義治

    桑名義治君 今回の日中漁業協定の大きな障害、いわゆるその争点になるのは、私は大きく分けて二つあると思うのです。と申しますのは、いわゆる軍事警戒線をどうするかという問題が一つと、それから中国からの提案、昨年度でございますが、政府間協定の話し合いを北京でやったときにもいろいろ問題になったのは馬力制限の問題でございます。この二つが私は一番大きな問題点だと思いますが、その軍事警戒区域をどのようにいわゆる政府としては考えておられますか。
  337. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) いま先生の御指摘の問題は、なるほどいろんな交渉の中で非常に重要な問題の一部でございます。いわゆる軍事警戒ラインというものにつきましては、私ども一般論といたしましては、公海の一部に沿岸国が自由にそういう性質のラインを引いて、そこに外国が入ることを許さないというようなことは国際法上許されない、できないという立場でございまして、これは一般論でございますけれども、そういう立場に基づいて現在日中間でいろいろと折衝をしておるというのが現状でございます。
  338. 桑名義治

    桑名義治君 私は、この軍事警戒ラインというものは歴史的ないわゆる遺産でございます。朝鮮戦争のときにさかのほらなければならない大きな問題を含んでいるわけでございます。したがいまして、今回の日中漁業協定を結ぶ場合の一つの障害として軍事警戒ラインがあるとするならば、今回はこれをたな上げにして、いわゆる純粋な漁業協定という立場で結ぶべきではないかというふうに考えるわけでございますが、その点どうですか、見通しは。
  339. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) その解決法につきましては、ここでいろいろ申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけども、この問題も何とか漁業協定という枠内で解決するという方向で努力しております。
  340. 桑名義治

    桑名義治君 なぜ私がこういうふうに申しますかというと、この日中漁業協会に参加していらっしゃるいろいろな人とお会いしました。そうしますと、現在のように一年ごとに民間協定を切りかえていくという立場をとっておるけれども、非常に漁民にとっては不安定だというわけです。だから、たとえこの軍事警戒ラインをたな上げにしても、私たちとしては協定が結ばれた方がいいという、そういうニュアンスが非常に強うございます。そういった意味で私はこの問題を提起したわけでございます。どうでしょうか。
  341. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 私どももそういう立場で現に交渉をいたしております。
  342. 桑名義治

    桑名義治君 次に馬力制限の問題でございますが、大まかな論議をしますと、ABC、この三地区のC地域、このC地域は経済水域二百海里にちょうど当たるという、そういう意味を含みながらのいわゆるC地区の設定ではなかっただろうかと、こう私は判断をしているわけでございますが、この馬力制限が中国の言っているようにこのままの状態でのまれたとするならば、西日本漁業界というものはほとんど壊滅状態にならざるを得ません。実際に水揚げの方向から見ましても、あるいは船の数から見ましても、約八%しか操業ができないというような状況に入るわけです。すなわち、本当に魚がとれるのはA地区であって、C地区はほとんど魚がとれない、いわゆる深部でございますので、そういった意味で非常に業界としても心配をしておりますし、この馬力制限についての見通しがどういうふうな見通しを立てられているか、これは漁民にとっては大きな関心事だと思いますし、西日本に住んでいる人々にとってはこれは重要なたん白源の一つでございますので、そういった意味ではこれは重要な問題だと思うのです。その見通しについてお話を願いたいと思います。
  343. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 桑名先生の御心配の点は私ども十分よく理解しておりまして、そういう点を頭に置きながら、この馬力制限の問題を含む漁業資源保存の措置について交渉いたしております。その見通しにつきましては現在の段階では申し上げることはできませんけれども、何とかしてこの問題を引き続き日本の漁業が操業できるように解決していきたいというふうに考えております。
  344. 桑名義治

    桑名義治君 そうすると、この馬力制限の問題については現在もうすでに討議に入っていらっしゃいますか。
  345. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 余り詳しい内容は申し上げられませんけれども、この内容につきましては交渉のかなり早い段階から討議いたしております。
  346. 桑名義治

    桑名義治君 この問題については可能性があるというふうに踏んでいらっしゃいますか、解消については。
  347. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 馬力による操業の制限につきまして、それがどうなるかという点についていまはっきり申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  348. 桑名義治

    桑名義治君 いずれにしましても、先ほど一番最初に提起しましたいわゆる経済水域二百海里という、これがいま大きな世界的な議題になっておりますけれども、これとの兼ね合いをどういうふうにお考えですか。
  349. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) ジュネーブにおきます海洋法会議一般的な趨勢という点につきましては、中国側は十分よく認識しておると思います。したがいまして、いま先生の御指摘のような将来設置さるべき経済水域については、そういうことをよく考えていると思います。しかし、そのことを現実に交渉の過程で中国側が問題提起いたしておるわけではございません。ただ、当然中国側はそういうことを考慮に置いて、基本に置いて交渉に臨んでおるというふうに私たち理解しております。
  350. 桑名義治

    桑名義治君 そうなってきますと、わが国が経済水域二百海里を認めるという立場に立った場合、このCラインを強硬にはねのけるわけにはいかない、そういう兼ね合いがあるわけでございますが、そこら辺の兼ね合いは中国との話し合いで、いわゆる信義を重んじる国であるという立場から、これは可能性がある、こういうふうに踏まれておるわけでございますか。
  351. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 私が申しました将来の経済水域の問題が関係があるというのは間違いございませんけれども、しかし、それにもかかわらず、従来の日本漁業の実績、これに基づく交渉でございますので、なるほど兼ね合いはございますけれども、しかし実績を尊重してどのように日本の操業を規制するかという問題でございますので、その点は必ずしも経済水域によって全面的に日本漁業が排除されるということではないというふうに理解をしていただいてけっこうだと思います。
  352. 桑名義治

    桑名義治君 軍事警戒ラインあるいは馬力制限の問題は非常に重大な問題ではございますが、先ほどから交渉の段階でなかなか明快なお答えができないということではっきりしないわけでございますが、いずれにしましてもこの二つは非常に大きな問題だと思いますし、しかし、馬力制限を全面的に日本がのんだとするならば、西日本漁業界は壊滅的状態に陥る。このことをあくまでも念頭に置きながら交渉を続けていただきたい、このように思う次第でございます。  そこで、水産庁の松下次長さんがお見えになっていらっしゃるようでございますが、日中漁業協定のもう一つの柱として、いわゆる資源保護という立場からも中国との間に大きな食い違いがあるのじゃないかと思うのですが、この問題は今回の協定交渉の段階で何の障害にもなっておりませんか、どうでしょうか。
  353. 松下友成

    政府委員(松下友成君) 資源保護措置につきましては、現在なお中国側といろいろ話し合いを進めておる段階でございまして、交渉の途中でございますので、詳細を申し上げるのはちょっと控えさせていただきたいと思います。
  354. 桑名義治

    桑名義治君 交渉の段階ではっきり申せないということもわかるわけでございますが、いずれにしましても、通常の立場、いまの交渉ということを除いて、民間協定が結ばれている段階での皆さん方の自然保護という立場と現在の日本の漁業界、西日本漁業界がそこで操業しているという立場、これをかまして考えた場合にはどのように御判断になっていらっしゃいますか。現在までの状態で漁業をすることは不当ではないとお考えですか、どうですか。
  355. 松下友成

    政府委員(松下友成君) 現実の漁業の操業の問題は、ただ単に資源の保護の問題ではございませんで、やはり漁業の経営の問題なり、それから基本的には中国とのお互いがその漁場を利用し合うという点でございますので、資源保護の観点だけから現状がどうこうというのは申し上げかねる点がございます。ただ率直に申しますと、私どもといたしましてはいそれほど中国側が言っておりますように漁業資源について日本側の漁業だけが大きな圧力を加えておるというふうには理解しておりません。
  356. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、もう一点だけぜひお尋ねをしておきたいと思うのですが、昨年の十一月二十九日、中国側から軍事警戒ラインの侵害に対する警告が行われております。私は民間協定とはいいながら、これは二国間で結ばれた協定である以上は信義をもって守っていかなければならないというふうに考えるわけでございますが、しかも私はこの問題で最も遺憾に思うのは、この協会の会長をしていらっしゃる徳島水産の船が侵したという問題でございます。これは信義の上から許されないと私は思うわけでございますが、こういった問題が現在の日中漁業協定の交渉の段階で障害にはなっておりませんか、どうですか。
  357. 松下友成

    政府委員(松下友成君) 先生ただいま御指摘の件につきましては、これはもともと民間ベースの話でございますので、私どもといたしましても、民間に対しましては今後そういったことが起こらないように十分指導はしておるつもりでございます。  それから御指摘の点につきましては、私の個人の見解でございますけれども、大きな障害になっているというふうには考えておりません。
  358. 桑名義治

    桑名義治君 いずれにしましてもこの日中漁業協定は、冒頭に申し上げましたように西日本漁業界にとっては死活問題でございます。そういった意味で鋭意この問題と取り組んでいただきたいと思いますし、最終的には、大臣にこの問題についての御判断なり御決意なりを伺っておきたいと思います。
  359. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの点、民間取り決めの失効の期限がございますので、いろいろ先ほどからお尋ねのように、むずかしい問題が幾つかあるわけでございますが、もう一遍昔のような民間取り決めにそのまますらり戻れるというような情勢でもないように思います。何とか妥結をしてまいりたいと考えております。
  360. 桑名義治

    桑名義治君 交渉の段階でなかなか歯切れの悪い御答弁ばかりでございますが、一応そういった交渉の段階ということで、この問題はこれで終わりにしておきたいと思います。  次に、先日来、呉の基地からいろいろの油が流出をしているという報道がなされておりましたが、それと同様に、米海軍の佐世保基地の庵崎貯油所の地下タンクから大量のジェット燃料が流出をした事故が起こっております。この原因は何にあるというふうにお考えでございますか。
  361. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 事実関係は、本年の三月八日、庵崎の貯油所の岸壁のすき間二カ所から少量の油が地下水にまじって流れ出た。そしてその貯油所沿いの海面に薄い膜を張ってある状況でありますが、その後回収に努めております。御質問があればお答えいたしますが、油を全部抜き取った上で調査をするということになっておりますが、現在までポンプの吸い上げ、あるいは一部排路をつける等をやっておりますが、最終的に全部この油を取り去るのが、タンカーが四月二日に佐世保に入港して五日に積み込みをやるということで、それ以降に具体的な調査をやる。したがって、その結果を待たないと実際の原因がわからないであろうというふうに思います。
  362. 桑名義治

    桑名義治君 地元の方からいろいろお話を伺いますと、昭和四十三年ごろから油はたびたび流出をしていた。ところが、そのたびごとに調査を依頼しましたけれども、立入禁止ということでなかなか許可できなかった。ところが今回は、先ほど局長が少量の油というふうに言われておりますが、地元では、一日ドラムかんで約三十本から六十本の油が流れ出た、これにもし火がついたならばどんな惨事が起こるであろうかと心配をされておりますし、このように大量の油であるとするならば、これは当然あの佐世保の湾内から外に流れ出た場合には大きくまた漁民に被害を与えていくおそれが十二分にあるわけでございますが、この点はどうですか。
  363. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いまのところ、被害につきましても私どもで現地について調査をいたしておりますが、そしてまた漁業組合の方からも情報を得ておるわけでございますが、具体的にどういうふうな被害があったか、したがってそれに応ずる補償関係がどうであるかというところまで、いまだ私どもの方では情報を得ておりません。したがいまして、もう少しこれは調査を進めたいというふうに思います。
  364. 桑名義治

    桑名義治君 水産庁にはこの話は来ておりませんか。
  365. 松下友成

    政府委員(松下友成君) まだ私、詳細報告を受けておりません。
  366. 桑名義治

    桑名義治君 この問自につきまして重要なところは、基地のタンク調査については、先月末に佐世保消防局や長崎県が外務省や防衛施設事務所を通じて立ち入り調査を要請しましたが、米軍は独自に総点検を行うと拒否をした。ここら辺に大きな問題があるわけでございますが、今後、呉やあるいは佐世保、こういう施設の中の油が流出をするような事故が起こったならばこれは重大な問題でございます。政府としては、水島以降こういったタンクについては総点検を行っているわけでございますが、米軍のいわゆる海浜ですね、これのタンクの総点検をやっていただくように、あるいは政府からの調査団が入って調査ができるように、こう要請をしたいと思うのですが、その点どうですか。
  367. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 水島地区の問題がありまして以降、十二月に防衛庁長官から私に指示がありまして、米軍の石油貯蔵施設についても総点検をやるようにという御指示がありました。そこで、口頭ではありましたが、まず一月の初めから一月いっぱいにかけて三回、いろんな機会がありましたが、米側に申し入れをいたしました。二月の初めに文書をもちまして、それ以前に消防庁、通産省その他技術的な関係でどういうところに注意すべきであるかということを勉強いたしまして、そういった点を踏まえて、文書の中にあらわして米側に申し入れをいたしました。これに対して米側から、二月の十八日でありますが、私あてに手紙が参りまして、要旨、米軍の運営する全石油貯蔵施設の状況及びその運営並びに維持の手続その他について総点検をするよう全司令官に要請したということと、それから米側も米軍施設を修復する計画を実施中であり、もし貯蔵施設の状態に疑わしいところがある場合には貯蔵タンクは使用を中止して検査することになっているということと、それから在日米軍はいかなる事故の発生も減らそうとする貴国政府の御努力に対し今後とも完全に協力することを誓うという趣旨のことが出ておりまして、そしてこれを背景にしまして、私どもとしては、米側が総点検をした結果は私どもに知らせてもらって、まあこれは私どもの方の仕事でもなさそうでありますので、消防庁の方に移管しまして、消防庁と私どもも入って、米軍も入って、そこで総点検をし、かつ消防庁からもし必要な指示があれば、私どもなり外務省なりを通じて米側に伝えるということにいたしたいと考えております。  なお、先ほどの現地立ち入りの件でありますが、最初たしかそういうふうに現地軍が拒否をして、次の段階では中に入っているはずだと思いますが、現地で御要望があれば、私どもがあっせんをするということについてやぶさかではございません。
  368. 桑名義治

    桑名義治君 最後に、先ほど申し上げましたように、昭和四十三年ごろから油がときどき流出をして漁民に被害を与えておるということは事実でございます。現実に四十三年ごろから汚染をして漁民に補償金を支払ったという事実もあるわけです。そういったことを考えますと、今回の場合にはその当時よりも大量の油が流れているわけでございますので、漁民に対する被害というものは必ず起こってくると私は判断しております。そういったときに、この補償をすることに対して防衛庁あたりも大いに力をかしていただきたい、このように思うわけでございますが、その点どうですか。
  369. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 地元の方では、若干現在の状況では模様を見ておられるようでありますが、もちろん地元の方で具体的に被害状況が発生し、また私ども調査して、そういう実態がつかめますれば当然補償するということになります。
  370. 桑名義治

    桑名義治君 終わります。
  371. 立木洋

    立木洋君 私は、まず最初に防衛庁の方にお伺いいたしたいわけですが、時間がございませんので一つの問題に限ってお伺いしたいと思います。それは、自衛隊員の選挙に際して自由に選択する権利が保障されておるかどうかという問題、自衛隊施設内での公的選挙活動の問題に関連してであります。  自衛隊員にももちろん一般国民と同じように、選挙に当たりましてすべての候補者並びにその候補者の政見、これを十分に知る権利、また見る権利、聞く権利が保障されておるというふうに考えておりますが、長官いかがでしょう。
  372. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) そのとおりだと思います。ただ、自衛隊というのは公共の公務を行っておる公務所でございますから、多少の制限はあろうかと思います。一般的には御指摘のとおりだと考えております。
  373. 立木洋

    立木洋君 一般的には保障されておるというお話でございますけれども、実際にいろいろ調べてみますと、なかなか制限が多いように見受けられるわけであります。たとえばポスターの公営掲示板でございますが、これも調べるところによりますと全然置かせていないところがある。あるいは、もちろんポスターを掲示するからにはやはり自衛隊の隊員の方々によく見ていただくということでありますけれども、十分に見ていただくところに掲示されないで、そうでないところに掲示されるというふうな場合もあるようであります。また、公報の問題にいたしましても、北海道の千歳のことはもう十分御承知のことと思いますけれども、あの場合でも、市の選管の話では有権者、自衛隊員の方々に一人一部あて配っておるけれども現実には五人ないし六人に一部の割合だというような配布のされ方しておりますけれども、こういう点についてはやはり今後当然、先ほど長官がおっしゃったように、十分に見る権利、知る権利、そして聞く権利、十分に自由にみずからの権利が行使できるように保障していただくように改善していただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  374. 今泉正隆

    政府委員(今泉正隆君) お答えいたします。  最初のポスターの掲示場でございますが、これは現在三十七の基地で五十三の掲示場を、それぞれの市町村の選挙管理委員会の申し入れに基づいて設置しております。  それから選挙公報でございますが、先般予算委員会で御質問もありまして調査いたしました結果によりますと、大体営舎内に居住しております自衛隊員のうち有権者が約九万四千人おります。これに対しまして選挙公報をそれぞれの市町村の選挙管理委員会から部隊がいただきました数は、全国で約四万七千部であります。そうしますと、平均的に見ますと二人に一部の割合で受領をしておりますが、個々に見ますと各部隊によりまして非常に極端に少ない部隊もありますので、この点につきましては今後受領部数をできるだけ多くしてもらうように、関係の市町村選挙管理委員会に要望したいと思っております。  それからなお、特に千歳基地についてのお尋ねでございますが、これは先般予算委員会で小巻委員から御質問がありました際に、私誤ってお答えをいたしまして、当時自衛隊で、とりあえず全国的な選挙公報をいただいている傾向を調査いたしますためにサンプル調査をやりました。その配布状況は、当時私がお答えしました五人ないし六人に一部の選挙公報をいただいていたわけであります。ところが、それを私が千歳基地に関するものと間違って答弁をいたしました。千歳基地について申しますと、確かに千歳には陸上自衛隊が東千歳駐とん地、北千歳駐とん地、それから航空自衛隊が千歳航空基地、合計三つの基地を有しておりますが、この基地におけるそれぞれの営内の有権者は、昨年七月について言いますと東千歳が二千二百二十六人、これに対して公報は二千五百部ちょうだいしております。北千歳は七百九人の有権者に対しまして八百部いただいております。それから航空基地につきましては、九百三十九人の有権者に対しまして九百八十九いただいております。千歳に関します限りは有権者の全部以上、中にその地に参りまして三カ月たたないために二十歳以上でありましても選挙権を有してないという者もございますが、一〇〇%ちょうだいをいたしておることがわかりました。なお、これらの基地では各人に一部ずつ配布し、そのほか掲示板等に掲示をしておるということでございます。
  375. 立木洋

    立木洋君 もちろん、ポスターの掲示板にいたしましても全然ないというわけではございませんけれども、北熊本駐とん所、ここでは千六百六十人、隊員の方がおられますけれども一つも掲示板がないというふうに市の選管の方からの話で聞いております。また公報についても、いま言われましたように、配られているところと配られておらないところとあると思うんです。やはりいま選挙の中でも公報をどのようにして各人に十分に配り、その趣旨を徹底させるかということでいろいろやられておるわけですし、自衛隊員の方々も当然この掲示板の設置あるいは公報の配布というのは、これは秘密上云々という問題は全然ございませんし、十分に知る上で、またそれぞれの候補者の政見を考える上でも非常に大切な点でありますから、この点については今後十分にやっていただきたいということを重ねて長官にお伺いしたいんですが。
  376. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) その点は私ごもっともだと思うのでございまして、ひとつ自治省と相談を申し上げまして、一般的に言えば一世帯一部というのが選挙公報のたてまえかと思いますけれども、自衛隊職員の場合は中において居住しておりますから、できますならばやはり一人に一枚いけるような程度をお願いをしたい、前向きにですね、そういうふうに私も考えておるわけでございます。それからまたポスター等につきましても、これは別に非常にがたがたするようなことでもございませんので、所定の場所にちゃんと張られるということが望ましいというふうに思います。  そこで、先生のところの赤旗の五十年の三月三十日ですけれども、選挙公報の配布も五、六人に一部と、こう非常に詳しくお述べになっております。これはうちで誤って全般的な話をいたしたわけで、千歳においては一〇〇%いっておるわけでございますから、これも事実がわかりましたから、どうかひとつ赤旗でもお取り上げいただいて、これは防衛庁の答弁の間違いで、今度聞いたところが事実はこうだったというふうに、これくらいのところでやっていただけば非常に幸いだと思います。
  377. 立木洋

    立木洋君 前向きに努力していただけるというお話をお伺いいたしましたので、赤旗に掲載するかどうかは私は当事者でございませんのでわかりませんけれども、そういうお話があったということは伝えておこうと思います。  もう一つは立会演説会や個人演説会の問題でございますが、これは先般も予算委員会で問題になりまして、やはり隊員の方々が内部でいろいろ仕事をされておる、外に出る機会も少ない、またいろいろ外部に出て立会演説会に参加するということもなかなかむずかしい、因難があるというふうな状態でありますので、少なくとも公営の立会演説会、これについては自衛隊の隊員の方だけが聞くというふうなことをやっても当然私はそういう候補者の政見を聞く機会も自衛隊の隊員の方々にも与えていただくべきだというふうに考えるわけですが、これを禁止されたような通達も出されておりますけれども、こういうことを十分に踏まえて、この前回の通達を取り下げて前向きの姿勢で努力していただきたいと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  378. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) この点は、この間もお答えいたしましたように、ちょっといま撤回をするという考えはございません。その理由につきまして、ちょっと局長から説明いたします。
  379. 今泉正隆

    政府委員(今泉正隆君) 公営の立会演説会が現在開かれますのは、学校とか公民館とか公会堂とか、不特定多数の方々がお集まりになる場所が多いように伺っております。自衛隊の駐とん地は、これに対しまして、一面では、多くの場合昼間でありますけれども、隊員の勤務の場所でありまして公務所でございます。またそういう公務以外の場合には、主として夜間でありますけれども、営舎内居住の義務を負っておる隊員がおりまして、これらの隊員にとってはいわば私宅的な施設であります。そういった両面からいたしまして、今日駐とん地内で演説会を開催いたしますのは、施設管理、警備、隊内の秩序維持、そういった観点から好ましいこととも思いませんし、また自衛隊本来の業務に支障を来す場合も考えられます。そういったことで三自衛隊があのような通達を出しておるような次第であります。
  380. 立木洋

    立木洋君 いろいろ理由を申し述べられましたけれども、端的に言いますと、結局、自衛隊の中に行きましていろいろお話する、それは自衛隊の隊員の方に限って仕事に差し支えのない、十分にいろいろ勘案される時期に、また時間も設定して行うということは私は可能だと思うのです。また、候補者についても付き添いの人間を制限し、そしてきちっと警備上もやっていくことも私は可能だと思う。ところが、やはり問題は、私は何か別のところにあるんではないかというふうな感じがするわけですよ。  これは新聞に報道されたわけですけれども、陸上自衛隊第七師団の小田嶋広報班長さんですか、全面的に選挙活動を認めることになると自衛隊反対の意見を隊員に聞かせるという事態も起こり、また基地の警備の問題もあって現実的にはむずかしいのではないかと、つまり、私たち共産党の候補者が隊内に行っていろいろ話をする、共産党の話をどうも隊員に聞かせるのはまずいというふうな考えがおありになるんじゃないかというふうに思わざるを得ないのですが、警備上十分に万全を整えれば、国民の権利として当然どなたにでも聞いてもらっていいのではないかと思うんですが、この点について改善していくようなお考えをもう一度改めてお聞きしたいと思うんです。
  381. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) あとで局長からまたお答えいたしますけれども、私も昭和二十一年から十二回選挙をやっています。二十九年になります。いろいろあります。おとなしい時もありますけれども、立会演説となりますと、つい興奮していろいろなことを言うようなことになるわけなんで、そういうような場所として自衛隊の中をはたして許していいかどうかというと、いま御指摘になりました理由ではなくて別な意味から、やはり公務所としての職務をやっておる面もございますので、私は適当ではないというふうに判断をしておるわけでございます。
  382. 今泉正隆

    政府委員(今泉正隆君) ただいまの大臣答弁に補足してお答えしますと、私たちは営舎内の隊員が候補者と接触をすることを何も禁じておるわけではありませんで、先ほど大臣答弁にありましたとおり、隊内で立会演説会あるいは個人演説会を開催することをお断りしておるわけであります。営舎内居住の隊員が今日十一万七千おりますけれども、それらの者には毎日、普通の日であれば日課のあと半分の外出を認めております。土曜、日曜には三分の二の外出を認めております。また隊内でもラジオ、テレビ、あるいは先ほどの選挙公報で候補者の政見を聞くという機会は十分あるわけでございます。  それから、ただいま具体的に御指摘のありました第七師団の小田嶋広報班長が不穏当な発言をしたのではないかという点について、私も先般御質問がありましたので実情を調査いたしました。調査いたしましたところ、具体的に申しますと、三月十九日の夕方五時ごろ、ある新聞の記者から第七師団の広報班長の小田嶋三等陸佐に対しまして電話取材がありまして、ちょうど自衛隊基地内の選挙運動禁止通達撤回に関する千歳市議会の要望意見書が決議されることに関連いたしまして、種々質問があったそうでございます。  その際、記者から、隊内で全面的に選挙運動が認められると仮定した場合、どのような問題があると思うかという質問を受けたのに対して、小田嶋三等陸佐は仮定の問題であるのでお答えできないと回答したところ、その記者から、ではあなたの個人的見解を聞きたいという質問があったので、これに対しまして、隊内で全面的に選挙運動が認められると、当然隊内の道路を昼夜にわたり各候補者の宣伝カーが走り、自衛隊賛成であるとか反対であるとかのいろいろの意見をお持ちになっている候補者やその応援の人たちのマイク合戦を隊員が聞かされることになり、隊員の教育訓練、居住生活、警備などいろいろの問題が起こる可能性がある、また全面的な選挙運動を国の施設の中でやるということは現実には選挙法で規制されておることである、そう答えた。それがあのような記事になったものであって、自衛隊反対の意見を隊員に隊内で聞かせるという事態を防ぐのが通達の趣旨だというふうには答えなかったということを申しております。
  383. 立木洋

    立木洋君 どうもこの点の壁は厚いようでございますが、重ねて、先ほど長官が言われたように、いろいろあってごたごたやじが飛んだりなんかする。だけれど前回、昨年四十九年の三月に当時の防衛庁長官が教育の整理基準というものを出されて、結局、自衛隊内においても特定の政党を支持するだとか、特定の政党を排除するだとか、こういうふうな参考資料は整理するし、そういう教育はやらないということになっておるわけですから、共産党の候補者が行って演説したら、やじが飛んで大変な騒ぎになったというようなことにはならないだろうと、もう少し自衛隊の方々も信じたらいいし、もしそうなると教育方針がどうかという問題にもなってくるわけですから、このことについては改めて今後、いろいろな機会にさらにお尋ねしていきたいと思います。  若干話題を変えまして、朝雲新聞というのがございますが、この新聞がどういう性格の新聞で、これは防衛庁あるいは自衛隊とはどういう関係があるのか、お答えいただきたいと思います。
  384. 今泉正隆

    政府委員(今泉正隆君) 突然の御質問で、詳細は承知しておりませんが、朝雲新聞社という防衛庁とは直接関係のない会社が経営し、毎週一回出しておる新聞でありまして、これに対しては自衛隊から、あるいは取材に応じ、あるいはPR的な意味で情報を提供しておるという新聞であります。
  385. 立木洋

    立木洋君 これは特に防衛庁あるいは防衛関係を中心にして記事がつくられていると思うんですが、いまお話しされたのでは認識が大分違うのではないかというふうに私たちは思うんです。これは源田先生がおられて失礼かもしれませんけれども、先般の選挙期間中にこの朝雲新聞が、源田先生を初め防衛庁関係のある自民党の候補者の方の写真がたくさん載りまして、これが自衛隊内部で無料で配布されたという状態にあるわけです。  問題はどういうことかといいますと、これはいろいろ私たち調べてみますと、この朝雲新聞というのが、防衛庁の広報課で買い上げている部数が毎回四千部であります。さらに、防衛庁共済組合の買い上げ部数は五万五千部になっております。合わせまして五万九千部という部数が買い上げられているわけです。防衛庁の共済組合といえば他の国家公務員のいろいろな組合と同じわけですけれども、しかし、この組合長というのは、代表者は御承知のように防衛庁の長官であります。長官が組合長でありますし、それから本部長が防衛事務次官、副本部長防衛庁人事教育局長、そうして陸海空の三幕僚長というふうになっているわけです。人事局長が副本部長になっているのですから、これを買い上げておるという事実を知らないということは私はないと思うのです。  なお、この朝雲新聞の編集委員会がどこにあるかということを調べてみますと、東京都港区芝栄町九、光輪会館内、こういうふうになって、これが郵便番号になっておりますが、朝雲編集室は東京都港区赤坂九−七−四五、防衛庁一号館広報課分室内というふうになっております。現在の新聞では、この編集委員会の場所が削除されました。いまの新聞には載っておりません。ところが、私が確認したところでは、この編集委員会がどこにあるかといって教えていただいた電話番号が防衛庁四〇八−五二一一、内線の二二〇六であります。朝雲新聞の編集委員会でございますか、はい、さようでございますといって出てくる。これは全然新聞紙上では編集委員会の場所は削除されておりますけれども、同じように防衛庁の中で編集が現に行われておる。  このような新聞が特定の候補者、これを毎号新聞に写真を載せて、こういうものが防衛庁の関係で大量に買い上げられて隊員に配布されておる。平均しますと隊員四・五人に一部の割合でこれが配布されておる。こういうことは国家の機関である防衛庁として、こういうやり方はきわめて私は適当ではない。適当ではないどころか、これは誤りであるというふうに言わざるを得ないわけですが、こういう問題に対して長官、いかがお考えでしょうか。
  386. 今泉正隆

    政府委員(今泉正隆君) 私先ほどお答えしましたのは配布のことでなくて、朝雲新聞社の性格と思い違えましたのでお答えいたしましたが、確かにわれわれの共済組合で五万五千部購読いたしております。これは御承知のように、共済組合は、われわれ防衛庁の職員が短期給付、長期給付としてそれぞれ毎月掛金を掛けておるものから成り立っておる共済組合で、この点は他の官公庁の共済組合と変わりないわけでありまして、その中の予算の使い方として、先ほど私がお答えいたしました防衛庁からもいろいろの情報を提供しますし、いわゆる公文書以外の面で全国各地の共済組合員、すなわち職員に多くの情報を知らせるという意味で買っておるわけでありまして、共済組合に関しては、別に国費というわけでなくて、われわれの掛金をこういう面で使っておるというわけでございます。
  387. 立木洋

    立木洋君 私は、それが防衛関係の記事が多く掲載されているからその新聞を買い上げる、そうして隊員に見てもらう、それ自体私は決して問題にしているわけではないんです。つまり、選挙の期間中特定の候補者が掲載されたこの新聞がこういう形のお金によって買い上げられ、隊員に配布されるというやり方が私は問題だと思うのです。この点については十分に検討していただいて、今後何らかの措置をとり、改めていくということは当然私は行うべきだと思うのですが、長官、その点いかがでしょうか。
  388. 今泉正隆

    政府委員(今泉正隆君) その点は、私たちは毎回五万五千部を買い上げておるわけでありまして、もし仮に特定の選挙期間中に多くのものを買うというようなことであれば、あるいはそこで御批判を受けることもあろうかと思いますが、毎回五万五千部を買っておる。それからまた、もしその朝雲に掲載しております選挙に関する記事とおっしゃいましたが、それが仮に公職選挙法に違反するような記事が載っておる場合にはわれわれとしてもそれの購読ということは考えるわけでありまして、この点は年中を通じて五万五千部を購読しておるというのが実情でございます。
  389. 立木洋

    立木洋君 この問題については、私はこれは非常に重大な問題だと思うんです。結局国家の関係機関としてこういう形で特定政党の候補者をいわゆる推薦、これを行うのは問題だし、特に、広報課の場合に買い上げておる四千部というのは、これは防衛庁の予算で買い上げられているわけです。これは共済組合が買い上げるのと若干私は性質が違うだろうと思うんですが、特定の候補者のやはり一定期間、選挙期間中の宣伝に供する形になっておるものが防衛庁の予算で買い上げられておる。これが配られておる先が、このうち二千部が各方面隊及び師団、残りの約二千部が各地方連絡部というふうになっておるわけですが、この点に関しては、これは防衛庁の予算として買い上げるということは私は適当ではない、改めるべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  390. 今泉正隆

    政府委員(今泉正隆君) 確かに広報課で買い上げておる部分は国費であります。この点につきましても、選挙のときだけ買っているというのでなくて、年中四千部を買っておるわけであります。その趣旨は、防衛庁あるいは自衛隊に関する記事が載せられておる、それを一つの情報交流的な意味で隊員に読ましておるということでありまして、先ほどから申しておりますとおり、中には選挙に関する記事もあるかもしれませんが、それが公職選挙法に触れるようなものであれば、これは広報課であろうと共済組合であろうと購読は差し控えなければならないと思っております。
  391. 立木洋

    立木洋君 これは特定の候補者の推薦の内容になっておるわけですし、特に防衛庁の予算でこういうものが買い上げられておるというのは重大でありますし、ただいまの答弁では私は大変不満であります。しかし、時間の関係で次の問題に進めさせていただいて、この問題は改めて次の機会にさらに追及的にお尋ねしたいと思います。  外務省の方にお尋ねしたいのですが、その前に、先ほど中村委員が日中関係の問題でお尋ねになった際に、外務大臣は大分長考されまして、そして発言されたときに、台湾の考え方については、台湾と国交がないので正確なことはわからないというふうに述べられたわけです。国交がないという表現は、いまの日中関係から見て台湾との関係を国交というふうに述べられるのは私はやはり適切ではないと思うのです。宮澤大臣にも似合わない発言だと思いますけれども、その点は御訂正いただきたいと思いますが、いかがですか。
  392. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 何がないと言えばよろしゅうございましょうか。
  393. 立木洋

    立木洋君 日本の政府としては台湾と関係がないという意味だと思いますが、国としての関係という意味では私はないと思うんです。台湾を国と考えて国交というふうに述べると、これは適切ではないと思うんですが、大臣に似合わない私は御答弁だと思って聞いておったので、御訂正願いたいと思うのです。
  394. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まさにそのような意味でございます。
  395. 立木洋

    立木洋君 それでは、チリの問題について若干お尋ねしたいのですが、昨年の十月、東京でIPUの会議が開かれました。その席上で「チリにおける国会議員及びその他の政治的拘禁者の釈放のための代議制諸制度、憲法上の諸権利及び自由の回復の決議」というものが採択されました。この決議の内容は大臣も十分御理解いただいておると思いますが、この決議に対してのお考え、この決議を尊重されるのかどうか、このことをまずお尋ねしたいと思います。
  396. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) お答えいたします。  その会議そのもので決議が行われまして、その範囲内におきましては、その決議はそれなりに尊重されるものだと了解いたしております。
  397. 立木洋

    立木洋君 では、尊重されるというふうに受け取って質問を進めたいと思いますが、チリのわが国に対する債務ですか、債権ですね、繰り延べ要求がいま出されておりまして、七四年、七五年に関してされておりまして、三月の二十五日ですか、パリで債権者会議が開かれるという予定になっておりましたけれども、これが開かれなくなった。その内容を見てみますと、イタリア、イギリス、オランダなどが国際人権規約に合致しないという判断に立って、交渉には出向かないということがなされたように新聞で私たちは見ておるわけですが、さらにそのほか、ベルギー、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなども参加しないという態度をとっております。日本の政府としては、こういう債権の繰り延べという問題に関してどういう態度をおとりになっておるのか、お尋ねしたいと思う。
  398. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) 債権の繰り延べにつきましては、純粋にわが国の債権の保全という見地に立ちまして、純粋に経済的な要因に即しましてその都度の債権国会議に従来も応じてまいりましたし、今後もその態度で臨んでいこうと考えております。
  399. 立木洋

    立木洋君 もう一つお尋ねしたいのですが、IMFの理事会が開催されまして、アメリカ政府の方からチリの現在の軍事政権に関し借款を新たに行うというような趣旨の提案がなされました。これに対しては日本の政府はどういうような立場で臨まれるおつもりなのか、このこともあわせてお尋ねしておきたいと思います。
  400. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) IMFからの公的な日本政府に対する呼びかけということは、私ども承知しておりません。
  401. 立木洋

    立木洋君 これはすでにIMFの理事会で提案されまして、イギリスの政府がそれに対する態度の反応を示しておるわけですが、そういう状況が出された場合には、日本政府としてはその借款に応じるという考えですか。
  402. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) それは先ほども申し上げましたように問題が若干違いまして、このチリの債務救済という、ことに関しましては、あくまでも先ほど申し述べましたような態度で日本政府は終始臨んでこれからもまいるつもりでおりますが、いわゆるチリに対する経済のてこ入れとかその他の問題につきましては、またこれ異質のオファーでございますので、それは別のものだというふうに考えております。
  403. 立木洋

    立木洋君 私の考えでは、こうした新たな借款の供与あるいは債権の繰り延べ、これは行うべきではない、私はこのように主張したいわけです。これは御承知のように一九七三年九月に、憲法によって選ばれた政権が軍事的なクーデターによって転覆された。この問題はもうキッシンジャー・アメリカ国務長官も認めておりますように、アメリカのCIAの介入によってやられておる、いわゆる他国の介入によってそれが行われておるということがキッシンジャー米長官によっても認められておる。こういう状態にあるわけですし、ましてやチリの国内では、いま民主主義、自由というものがほとんどない状態で、大量の人々が逮捕され虐殺されておるという事態もあるわけです。こういうところに対して、いま世界の多くの国々、発達した資本主義の国におきましても、このような債権の繰り延べはやるべきではないという態度を表明されておる中で、特に日本だけがこういうような国に対して債権の繰り延べを行って、いわゆる経済的なてこ佐れを行うようなやり方は私は少くともとるべきではない。先ほど述べられましたIPUの決議を尊重されるということであるならば、少くともそういう立場はとるべきではないというふうに考えますが、いかがでしょう。
  404. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) 一言だけ敷衍させていただきますと、先ほどおっしゃいましたように、債務救済ということを純実務的に解決していくということにつきましては矛盾撞着しないというふうに考えます。と申しますのは、いままでのアジェンデ政権あるいは現政権を通じまして、この方法によります債務救済ということが内外からもそれなりに評価されてきております。ただ、先ほどおっしゃいましたように、日本だけがこれをやろうと言っておりますのではございません。その事実だけいま御説明申し上げますと、私どもが参加を議長国たるフランス政府に通報しておりますのも、終始債権国の大多数がこの会議に臨むならばこれに参加する。と申しますのは、昨年いたしました会議で、七五年に弁済期の参りますものにつきましては、もう一度ここで集まって話をしようじゃないかという合意ができておりますので、それだけを履行しようというのが現在の立場でございます。したがいまして、もし会議が開かれまして、わが国がそれに対してどういう方針でもってやっていくかということは、おのずから別の問題でございまして、現在はなお議長国のあっせん等が行われるものと存じますので、私どもとしても慎重に静観をしているという事態と御了解願いたいと存じます。
  405. 立木洋

    立木洋君 そうしますと、大勢としてこういう債権の繰り延べについては行うべきではないというふうな状態になれば、日本としてもそういう大勢に順応してそういうことはしない、あるいはチリからさらに二国間でこの問題を解決しようというふうな場合でも、大勢がそういう状態であるならば、日本の政府としてはそのような考えで二国間で新たな取り決めをやるというふうなことはしない、そういうように解決していいわけですか。
  406. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) それは、そういうようないろいろ事態がまた熟してまいりました段階で対処していくことかと存じます。
  407. 立木洋

    立木洋君 私はここで申し述べておきたいわけですが、一九七四年、チリが債権国に対して七億三千五百万ドル負債支払いの義務を負っていたわけですが、この支払いが延期されて当年の支払いが大幅に減少しました。さらに、軍事政権下で銅資源への外国資本進出第一号として日本政府の承認を受けた鉱業会社が、いわゆるチリ銅開発基本協定ですか、これの協定を結んでそれが進められ、銅の開発並びにその値上げによってチリの軍事政権下においては、一九七二年の総輸入十二億二千万ドルが七四年には二十四億ドルというように、倍近く増加しております。こうした中で、やはりチリの軍事政権の国防並びに弾圧機関の強化のためにそれが大量に使われる。率で見ますと、前回、通常行われておったよりも、三・五倍もその率がふえておるという事態であります。こういうふうに考えてみますと、このような債権の繰り延べという問題にしても、新たな借款の供与という問題にしても、どういう事態がチリの国民に及ぼすかということは私は明らかだと思うのです。  このIPUの決議の中でも、第四項に、同盟の各国議員団に対し、軍事政権に対する軍事援助及び物質的もしくは道義的援助がなされないことを確保されるように努力してほしいという趣旨のことが述べられておるわけです。また、昨年十月二十二日、国連の第三委員会でチリの人権問題の決議が採択されました。御承知のとおりだと思いますが、その中には、チリで基本的人権と自由の侵害が続いている、これに対して、チリ当局に対して人権の自由の回復、保障のためにあらゆる必要な手段をとることなどを内容にした決議が採択されました。これに対しては日本の政府も賛成をされておるわけです。先ほど言われましたIPUの決議に関しても尊重されると述べられ、国連の第三委員会の決議に関しましてもそのように日本政府も賛成されておる。そうすると、借款の繰り延べや新たな借款の供与というのがどういう事態をもたらすかということを十分にお考えいただいて、世界の流れに反したような行動を私はとっていただきたくない、そのことを最後にお尋ねしておきたいと思います。
  408. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは非常にむずかしい問題だと思います。それで、人権の問題があるようにいろいろなところで私自身承知しておるわけでありますけれども、こういう問題は相対で話をいたしますと、どうしても相手の政治に干渉をするようなふうになりやすいわけでありますから、わが国としてはそういう知り得た事実等々があれば、やはり多数国の場、国連でありますとかいろいろ場がございますけれども、そういう場で、各国が第三者的に見て事実がそうであれば、多数国の場のコンセンサスを得て、そういうところから問題を指摘するなり解決を呼びかけるなりいたしました方が、相対で何か内政干渉したという印象はできるだけ避けるべきであろうと思います。他方で、しかしそういう多数国の場で確かにそういう事実があるということをわれわれが確認しておるとすれば、そういう発言は決して故意に遠慮をするとか差し控えるとかいうことであるべきではなくて、やはり考えることは、そういう場であれば言うべきだと思うのでございます。  他方で、経済問題でありますが、いまのような立場に立ちますと、結局先ほど事務当局が申し上げましたように、多数国の間でそういうコンセンサスができてまいりまして、したがって経済的援助もその一環として——援助でございますか、債権債務の取り扱い、一環として考えるべきではないかという、そういう方式で処置をしていく方がよろしいのではないだろうか。したがって、先ほど立木委員から、債権国がみんなたくさん出ないと申し合わせて会議を開かぬということになればわが国も同調するかというお尋ねに対して、事務当局からこのように考えますと申し上げましたが、やはり考え方はそういうふうにしていくことの方が結局問題を解決するのに早道でもあり、また穏当な方法ではないかと考えます。
  409. 立木洋

    立木洋君 残念ながら時間がありませんので……。
  410. 源田実

    主査源田実君) 以上をもちまして、防衛庁及び外務省所管に対する質疑は終了いたしました。  これをもちまして、本分科会の担当事項であります昭和五十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、防衛庁、経済企画庁、外務省、大蔵省及び通商産業省所管に対する質疑は終了いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  411. 源田実

    主査源田実君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十分散会