運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-06-12 第75回国会 参議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月十二日(木曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員の異動  六月十一日     辞任         補欠選任      木島 則夫君     田渕 哲也君  六月十二日     辞任         補欠選任      三木 忠雄君     阿部 憲一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 岩動 道行君                 中山 太郎君                 矢野  登君                 柳田桃太郎君                 松永 忠二君                 宮之原貞光君                 矢追 秀彦君                 渡辺  武君                 向井 長年君     委 員                 安孫子藤吉君                 井上 吉夫君                 石破 二朗君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 黒住 忠行君                 源田  実君                 玉置 和郎君                 戸塚 進也君                 徳永 正利君                 中村 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 最上  進君                 森下  泰君                 八木 一郎君                 吉田  実君                 上田  哲君                 小野  明君                 工藤 良平君                 田中寿美子君                 辻  一彦君                 鶴園 哲夫君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 野口 忠夫君                 阿部 憲一君                 桑名 義治君                 矢原 秀男君                 岩間 正男君                 上田耕一郎君                 立木  洋君                 田渕 哲也君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  永井 道雄君        厚 生 大 臣  田中 正巳君        農 林 大 臣  安倍晋太郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  木村 睦男君        郵 政 大 臣  村上  勇君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣  仮谷 忠男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      福田  一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 井出一太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       植木 光教君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       松澤 雄藏君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       佐々木義武君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  小沢 辰男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        総理府統計局長  川村 皓章君        警察庁警備局長  三井  脩君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        防衛庁参事官   菅沼 照夫君        防衛庁長官官房        長        斎藤 一郎君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        防衛庁経理局長  亘理  彰君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁物価        局長       喜多村治雄君        経済企画庁総合        計画局長     小島 英敏君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省経済協力        局長       鹿取 泰衛君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君        大蔵大臣官房審        議官       岩瀬 義郎君        大蔵省主計局長  竹内 道雄君        大蔵省主税局長  中橋敬次郎君        大蔵省理財局長  吉瀬 維哉君        国税庁税部長  横井 正美君        国税庁徴収部長  熊谷 文雄君        文部省体育局長  諸沢 正道君        厚生省環境衛生        局長       石丸 隆治君        厚生省社会局長  翁 久次郎君        厚生省児童家庭        局長       上村  一君        厚生省保険局長  北川 力夫君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        農林大臣官房技        術審議官     川田 則雄君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省畜産局長  澤邊  守君        林野庁林政部長  堀川 春彦君        通商産業省貿易        局長       岸田 文武君        通商産業省産業        政策局長     和田 敏信君        中小企業庁長官  齋藤 太一君        労働省婦人少年        局長       森山 真弓君        建設大臣官房長  高橋 弘篤君        建設省計画局長  大塩洋一郎君        建設省河川局長  増岡 康治君        自治大臣官房審        議官       山下  稔君        自治大臣官房審        議官       山本 成美君        自治省行政局選        挙部長      土屋 佳照君        自治省財政局長  松浦  功君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 正雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○予算執行状況に関する調査     —————————————
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  予算執行状況に関する調査を議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行います。矢追秀彦君。
  3. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 最初に、総理政治姿勢でお伺いをしたいと思いますが、けさの新聞によりますと、独禁法改正につきまして修正という面が出てきておりますが、総理はどうしても今国会でこの独禁法を大幅な修正に応じても成立をさせたいと、こういう意向なのかどうか、その点をまずお伺いしておきます。
  4. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ぜひとも皆さんの御協力を得て、独禁法はこの国会成立をさせたいという強い期待を持っておるわけでございます。修正については、まあ応じられる点と応じられない点もありますが、応じられる点についてはできるだけ野党修正にも応じて、今国会成立を図りたいと考えております。
  5. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まあ細かい点まではお答えできないと思いますが、公明党を初めとした野党主張はかなり御存じだと思います。また、公取試案についても私たちはある程度賛成の意を表してきておりますが、いま、できることとできないことと言われましたが、大体どの辺の線までならば譲れると、こういうことを、もし具体的に総理の頭の中にお考えがありましたならばお答えをいただきたい。
  6. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 三木内閣独禁法改正案を出したのは、自由経済体制を守る、そのためにルールづくりが必要であるという考え方から改正案を出したわけです。自由経済体制を維持していくためにやはりルールが必要であるということでありますから、その根幹に触れる問題についてはこれは応じられない。しかし、そういう自由経済体制を守るという根幹に触れない点については、いろいろ話し合って修正は可能であると、こう考えております。
  7. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうしますと、われわれの出しておる案ですね、たとえば公明党の出しておる案であれば自由経済根幹に触れる問題があると、こうお考えですか。
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、いままだ公明党がどういう修正案をお出しになっておるか、よく承知してないんですよ。これはいま衆議院段階審議の過程でありますので、正式に各党がどういうふうな修正案を出しておるかということはよく承知をいたしませんので、いろいろ具体的な各党修正案についてここでお答えをいたしかねる状態でございます。
  9. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いや、私聞いているのは、修正案ではなくて、昨年提出をいたしました公明党としての独占禁止法改正案、それはまだ御勉強になってないなら、公取の出された試案ですね、これはどうですか。これには自由経済根幹に問題のあるような個所はあると考えておられるんですか。
  10. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政府があの案を出しましたのは、公取改正案も参考にはいたしましたけれども、各方面の意見も徴して、このいまの段階においてこういう改正が必要であるという案を出したわけで、すべて公取の案というものを金科玉条としてやったものではないわけです。ただ、われわれは自由経済体制を守るというわけでありますから、価格形成の内部に公取が深く介入するということに対しては賛成をしない立場をとったわけでございます。
  11. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまの総理のお話だと、少なくとも引き下げ命令権というようなものは、これはわれわれがたとえ修正に仮に応じろと主張しても、これは自由経済根幹にかかわるからだめだと、こう理解してよろしいですか。
  12. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 原則的な考え方は、余り価格形成に深く立ち入ることは統制経済への道を開くことになりますから、原則的にはそういう立場賛成をしないという立場でございますが、具体的なことは、いま衆議院審議もしておるし、各党間でいろいろな御意見話し合いもするわけでしょうから、いまここで独禁法改正案について一々論議をするということは、私も一々どういうふうな修正案が出ておるかということを承知もいたしませんので、適当ではないかと考えます。
  13. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ひとつ私たち主張、これから具体的にやってまいりますけれども、大幅な修正に応じる、しかもそれがただ単に課徴金等修正する程度ではなくて、もっとわれわれが年来主張してまいりましたそういった点もひとつ考慮した上でやっていただきたいと、こう思うんですが、その点もう一言。
  14. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 衆議院段階審議をしておるわけですから、その衆議院審議を通じて公明党意見というものを十分御開陳を願って、そしてよりよき独禁法改正案というものがこの国会成立をいたすように願うものでございます。
  15. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、公選法の問題でございますが、昨日も議論が出ておりましたが、参議院地方区定数是正であります。総理は今回は間に合わない、次の選挙までには間に合わせると、こうおっしゃっておりますが、いままでこの次の選挙までに必ずやるということを何回か政府は言われております。私が調べた点でも、昭和四十三年の十一月から五回、政府から必ず次の選挙までにはやりますと言いながら、その間四十六年、四十九年と二回参議院選挙がございましたが、残念ながら実現を見ておりません。そういった点で、昭和四十三年の十一月十四日では、「参議院地方区定数是正の問題は、まだ二年半先選挙でございまするので、間に合うように審議会の構成もし、また法案提出したい、かように考えております。」と、こういうようにはっきり言われているわけですね。ちょうどことしから言いますと二年先です。しかし、いままで過去五回の発言の中で遂にその実現を見なかった。やはり私は、総理が戦後最大の改正であると非常に胸を張って先日も本会議でこの問題については自信を持っておっしゃっておりますが、しかし、この機会を外すと参議院地方区是正はまたできなくなる。いままでの例から言ってそうなんです。やはり今回、いま参議院に舞台が移ってまいりましたが、ぜひこの地方区定数是正を中に入れてもらいたい。この点について総理の御意見をお伺いしたい。
  16. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 選挙法改正は、胸を張るわけではありませんけれども、戦後あんな大改正が行われたことはないわけで、これが相当な前進であると私は信じておる。あれをこの際、自分の改革の目標まで来てないからと言って葬り去ることは、現実政治として私は好ましいものだと思わない。そういう点で各党の御協力を願うものでありますが、私は、できれば参議院選挙制度改革もあの法案の中に盛り込んで国会提出をいたしたかったのでありますが、衆議院の場合は各党意見一致したわけですね、定数是正にしても。そういうことで、意見一致したものですからまあ衆議院はまとまったけれども、参議院の方では意見一致しないわけです。衆議院とはやっぱり事情が違っておったわけです。そこで、それならば参議院の方もまとまらないから、選挙法改正というものを、皆が参議院衆議院改正案がまとまるまでこれを提出を見合わす方がいいか、まとまらなくても、衆議院の、あるいはまた衆議院ばかりではなしに選挙法全体に改正も伴うわけでありますから、そういう必ずしも一括したものでなくても、この際できたものから国会提出をして、そして衆議院定数是正を含む公職選挙法改正をする方がこの際は一歩前進であるかという選択の面に立たされたわけであります。それで、私はやはりこの際は一歩前進方法をとったわけであります。  が、しかし、参議院の問題は、全国区の問題もこれは大問題になってきておることは御承知のとおり。余り金がかかり過ぎる、何とか全国区の選挙制度というものはもう少し合理的な方法はないだろうか、考えてみたらどうかという問題も提起されておりますから、参議院選挙制度というものはこのままで置くわけにはいかない。どうしてもこれは何とか衆知を集めて、この定数是正の問題、全国区の問題、これは一つの参議院というものの国会における重要な使命にかんがみて、そして結論を出すべきであるというのがいま国民の世論でもあるわけですから、これはいつもよりも改正というものに対する要請が非常に強まっていると思います。したがって、これは次の参議院選挙までにはこの問題に対する結論を出したいと、こう申しておるわけで、一時の言い逃れのために言っておるわけではないわけでございます。
  17. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま総理は、衆議院では定数是正について意見一致したからこれ入れたのだ、参議院一致しないから入れないのだと言われますが、そうすると、定数是正では一致したかもしれませんが、公職選挙法改正自体では決して与野党全部一致してないわけですよ。それでも政府としてはこの改正を出してこられたわけですよ。その話といまの参議院の問題と私は矛盾すると思うんです。参議院だって、全国区の問題がいろいろ議論あれば、少なくも地方区ぐらい、もう少し話し合いすれば一致点が出るかもわからないです。やはり衆議院があれだけの是正をされたんですから、やっぱり参議院だって、同じ国会であり、同じ議会であり、国民の投票の票というのはやはり次の選挙では少なくも衆議院とバランスをとっておかなきゃいかぬと思うんですが、その点いかがですか。
  18. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 公職選挙法については各党ばらばらであったわけですね。残念ながら政党機関紙の号外という点について公明党皆さん意見が違ったというんですが、私は実際から言えば、よく理解をしていただければ、そんなに表現の自由を制限したりするものではないと思いますけれども、御理解を願えなかったことは残念であります。しかし、定員の問題については、各党間で私は意見一致したと見ております、衆議院では。公職選挙法については、各党ばらばらでありましたけれども、定数の点については衆議院においては意見一致を見た、参議院ではそこまでいっていないということで、少し参議院衆議院とは事情が異なっておったと思います。(発言する者あり)共産党の諸君は一致してないのかもしれませんが、少なくともほかの各党においては定数是正については一致をしておると、こう承知をしております。
  19. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それは総理矛盾だと思うんですよね。一致したものならやるというなら定数是正だけやればいいのであって、やっぱりほかの改正を出してこられているということは、それだけ政府意見でこられたわけですから、だから私は聞いておるのは、衆議院選挙をやる場合の国民の一票の重さと、参議院選挙の一票の重さががらりと変わるわけですよこのままもしいったならば、次の選挙まで間に合わないとすれば。だから、この際総理が大改革をやると言われているんですから、この際、参議院選挙における国民の一票の重みも、衆参完全に一致しなくても、ほぼ近い線にするのが私は国民立場から考えて当然ではないかと。この点、ただ意見一致しないから云々じゃなくて、総理政治姿勢としてどうなんですか。その点いかがですか。
  20. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 選挙制度のごときものはできるだけ、各党意見が完全に一致とはいかなくても、各党意見というものが大体一致できるような方向であることが私は好ましいと思うんですね。そういう点で、定数の問題については衆議院参議院とでは、各党間の了解というものがよほどまだ参議院は煮詰まってはいなかったということで、そういう意味からして、この問題はもう少し時間をかける必要があると考えることは、これは無理からぬことではないかと、こう思います。
  21. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 何か参議院各党ばらばら一致しないように言われておりますが、違うんですよ。野党四党一会派は少なくも一致しておるんです。自民党さんがはっきりしないんですよ。要するに衆議院の票の重さと参議院の票の重さと考えた場合、アンバランスでいいという考え自民党さんには強いようなんです。総理がもっと、それ、総裁として指導すればいいじゃないですか。その点どうですか。
  22. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) やっぱり国会与党というものを無視するわけにはいかぬので、野党全部が一致しておるからそのとおりやればいいではないかと言っても、与野党意見一致を見ることが数の上から言っても国会の総意と言えるわけですから、野党皆さん意見一致したらそのことは尊重はいたさなけりゃなりませんけれども、常に野党一致した意見自民党が聞かなければならぬということになれば、これは少し国会というものの機能としては不自然なことになるわけでございます。いろいろそれは耳は傾けますよ。しかし、常に野党の言うとおりになれということでは、与党としての責任を果たすわけにはまいらぬということでございます。聞ける場合もあれば、聞けない場合もある。その選択は当然に与党として持たなければならない。
  23. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理議論をすりかえるのが非常にうまいですね。私聞いているのは、一票の重みアンバランスをこのままでいいですかと、いやそれは参議院意見一致しないからと言われるわけでしょう。やっぱり一票の重みは同じようにするのが方針でしょうと聞いているんですよ。だから、それに対して自民党がもし反発をされているとすれば、その問題についていろいろ与党の中で総理がそれこそ対話と協調で話し合いをされたらどうですかと、自民党内でですね。それを聞いているんですよ。そうすると、すぐこうすりかえられるわけですよね。その点いかがですか。
  24. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、矢追議員がこの国会になぜ出さなかったかという御質問でありますから、そういうところまで熟さなかったんだと言ったわけですが、次の参議院選挙までには選挙制度全般検討を加えて結論を出したいと、こう言っておるので、このまま、参議院選挙制度そのままがいいとは思っていないのです。いろいろと検討しなければならない面があるので、それを検討の上結論を出すというので、いつまでもほうっておこうということを申し上げておるのではない。この国会に出せなかったのはそういう点があるのだということを申し上げておるわけでございます。
  25. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、やはり今度の公選法改正総理が非常に理想とされておるのは、金のかからない選挙、あるいは選挙の公営、また政党本位による選挙と、こういうことだと思うのですが、その最後の政党による選挙という点と、先ほども少し触れられましたが、ビラ規制という問題との矛盾をどうお考えになりますか。
  26. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 選挙というものは短期間の間に、二十日間という期間でやるんですから、選挙法というものを見てみますと、やはり選挙というものはフェアな競争をやる、各候補者に対してイコールチャンスをできるだけ与えようと、こういうことで貫かれているんですね。そういう意味から、選挙文書というものに対しては厳しい制限をしてあるわけです。  政党の活動は、たとえば法定ビラというのがありましょう。あれは皆さん活用されておるが、枚数制限もしないんですからね、法定ビラは。三種類という種類は限ってあるけれども、枚数は幾らこれを配布してもいいんですからね、政党政策を浸透さすようなビラは。ただ個人の選挙用文書というものに対しては、選挙界の現状、候補者に対するイコールチャンス、フェアな競争という点から制限しておるわけですね。その現行の選挙法の規定が悪い、いいという根本問題に触れれば別ですけれども、いまの選挙はそれで行われておるわけです。だから、選挙文書というものは非常に厳しい制限をしておるわけですね。たとえばはがき何枚とか、ポスター何枚とか。あるいは金があるから何回でも新聞に出すというわけにいかぬでしょう。あれは三回か何か、新聞に個人のいろいろな経歴とかあるいはまた個人の主張とかいうものを出せるようになっているんでしょう。で、公営であるけれども選挙公報と、これだけしかないんですからね。  それを政党機関紙という、機関紙と言ったら非常に政党それ自体の活動のようですけれども、現実は矢追さんごらんになりましたか、政党の号外ビラというものを。あれは個人の選挙用の文書ですよ。いや、実物をたくさん私は見ましてね、皆やっぱり写真を掲げて、個人のビラですもの。もしそのことが自由に許されるとするならば、選挙法の上で個人の選挙運動の文書というものを規制してあるという根底が私は失われる。ビラが自由にまけて、はがきは限られる、ポスターは限られる、おかしいじゃないかということで、現在の選挙法体制というものは崩れる。だから、そういう政党の活動は自由ですから法定ビラなら幾らまいてもいいんですが、個人の選挙用の文書というものについては、これはやはり厳しい制限を受けておるという現行の立法の精神からして、それをもう無差別に戸ごとに、街頭にこれをまいていいということは立法の精神から適当ではない、こういうことで今回の禁止ということになったわけでございます。言論を圧迫するとか、そういう意図は全然ないわけです。  そういうことで、その真意を公明党においてもよく御理解を願いたい。われわれの願いは、皆各候補者が公正な競争をやる、同じようなチャンスの上で公明正大に戦う、こういう選挙にしたいという念願がああいう規定を今回の改正に盛り込んだわけでございますから、真意を十分に御理解を願いたいと思うのでございます。
  27. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 結局、議論の分かれるところは、号外を総理は個人の選挙活動と、こうとっておられるわけですね。われわれはこれは政党活動であり機関紙の活動であって、そこにたまたま個人の候補者の報道をしておると。そこの違いでしょう。そうすると、私が言いたいのは、もし現在のいわゆる号外にそういう個人のものをどんどん載せて、いま総理が言われたようなことになるとすれば、現行法だって、これは政党活動の域を脱して選挙活動に入っておりますという判断を、下す気になったら下せるわけじゃないですか。いまの法律だって取り締まる気になったら取り締まれるんじゃないですか。それをわざわざあえてここで改正をして規制をしようと言うから、私たちは言論の自由を奪い国民の知る権利を奪おうとしておると、こう言うわけです。  しかも、それが余り無差別にやったら国民が反発しますよ。だから、私たちはちゃんと節度をもってやってきたつもりです、いままで。その辺、いわゆる機関紙活動といわゆる選挙活動というものは、いまだって、それは政治活動と選挙活動はきちんと区別をしてやらなければいかぬわけですし、現在だって相当政治活動は制限があるわけですよ。これは承知のとおりです。いま全然自由じゃないですよ。政党の宣伝カーは何台出せますか。全部いっぱい出せますか。出せないですよ。これはちゃんと決められているわけです。やはり政治活動を制限されておる。これ以上制限されてくると言論の自由を奪い知る権利を奪っていくということに通ずると私は言うわけです。その点、現行法だって十分その気になれば、警察の取り締まりだって私は可能だと思うんですよ。警告だってしたらいいじゃないですか。いままでないんですよ、それは。ということは、やはり政党活動、機関紙活動という上の報道の記事として認められてきたわけです。それを今度ぎゃっと締めようというんですから、やっぱりこれはいかぬ。その点どうですか、重ねてお伺いします。
  28. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 厳格に言えば、いまでもできないんですからね。だから、できないことをやっぱりきちんと法律で決めることには、それは矢追さんでも御異存ないのじゃないでしょうか。できぬことをやっておるのを、これを法律でできませんよと決めることが新たなる言論の圧迫だとは私は思わない。しかし実際問題としては、できないにかかわらず全面的にやるから、警察としても取り締まりしにくいんでしょうね。だから、法律できちんと決めておいたら、もういま言われるようにできないことをやっているんですから、そうすればむしろ選挙の運動が公正にやれることになるんじゃないでしょうか。  いま実態は、実際ごらんになれば、たくさん私は取り寄せてみたんですよ。そうしたところが、候補者によろしく投票願いますというようなことで、政党の号外としてよりも個人の選挙用の文書であるという実態になっていますからね。いまでもあなたの言うようにできないことだから、それをきちんと法律で決めるということが新たなる言論の圧迫だとは思わない。これは国民が判断するんだから自由に任して、それならもうはがきでもポスターでも、よけい張り過ぎたら国民が批判するんだから自由にすればいいではないかと言えば選挙というのは、やっぱりルールをつくってルールの上で皆が公明正大に争うということが選挙のフェアということじゃないでしょうか。
  29. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理は大分認識違いを持っていますよね。いま言われた、号外で個人の候補者をよろしくお願いしますなんて書けないですよ、絶対。これは書いたら完全に選挙違反ですよ。そういう総理の認識だから、そういう規制というふうにくるわけですよ。だから、いままでの号外、総理本当に冷静に読んでくださいよ。どういうふうにやってきたかを見てくださいよ。よろしくお願いしますって絶対書いてないですよ。それを書いたら選挙違反ですから。自治大臣どうですか。そんなことは書いてないですよ。絶対書いてない。
  30. 福田一

    国務大臣福田一君) 矢追さん、いまの総理のお話ですが、それは写真を入れまして、そしてこういうことをしている、ああいうことをしているというようなことを書いて、そして、よろしくお願いしますとというところまでは書いてなくても、もうほとんどそれと同じような、それと類推できるような、そういうようなビラがはんらんしていることだけは事実です。また私はあるいは書いてあるものも一、二あるかもしれぬと思いますから、これは総理の言われていることは一遍よく調べた上でなければ、これは委員会などでまた皆さんとよく御相談できることですからそのときにしていただきますが、いずれにしても、現行選挙法ではそういうような、いま総理が言われたように個人の選挙運動にまがうようなことをしてはいけない、そういうことはしてはいけないということになっているのが、言うなれば、ざる法になってしまっているわけです。そんなざる法では——あなたもそれをおっしゃっているんだ。ざる法になっているから、それを今度はちゃんとそういうことを取り締まるようにしようという意味でありますからして、何も私たちは言論を新しく制限しよう、こういう意味で言っておるのではないので、現在の法律でもこれは取り締まりをしていなかったおまえらが悪いんじゃないかと言われれば、それはまあおわびをせにゃならぬことになるかもしれませんが、しかし、私は現在の法律でちゃんとそういうことをしてはいけないというのに、それに抵触するようなことがしばしば行われて、そうしてビラ公害というようなことが出て来ておりますので、今回はこれをはっきりするようにしようというのがわれわれの意味であって、決して言論を抑圧しようとか、あるいは物をしゃべれないようにしようとか、そういう意味ではないんです。  私は、総理がいま言っていられるように、それはわれわれとしては政治活動は自由にするというのは大原則です。しかし、大原則ではあるけれど、選挙期間中についてどういうことをするかということは、それは従来の公選法でも規正法でもみんなちゃんと決まっているんですからね。だからそういうことは、そのこと自体が、この法律をつくっていること、法律自体が、もう政治活動を抑えるということになっているんだと思うんです。そうでしょう。何でもやっていいということなら、あんな法律をつくる必要はないんです。常にそれはそういうものがあるわけなんです。それで、その中にちゃんといま言ったように、その類似のようなことをしてはいけないということに規定がなっているんだ。それを無視されておって公害という問題が起きたから、今度はそれをはっきりわかるようにして、そういう弊害をなくするようにしましょう、こう言っておるわけなんですから、そこのところはひとつもう一度お考え合わせを願って、われわれの真意のあるところを御理解をしていただきたい、かように考えます。
  31. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 非常に政府のやり方というのはずるいというか、要するに、取り締まることばっかり頭にあるわけでしょう。だから、こういう発想が出てくるんです。私たちはいままで、少なくも公職選挙法の中で堂々とやってきたつもりです。言い過ぎがあったら警告をされているはずです。そうたくさんの種類も出せるわけじゃありませんし、限られているわけですし、そんな公害公害言われますけれども、そんなめちゃくちゃなことにはなっていないです。仮になったら、それに政党自身がきちんと自主的に規制をしていきますと。いま何でも自主規制ということが言われているんじゃないですか、民主主義の世の中においては。とにかく日本の選挙法は、総理承知のように余りにも窮屈でしょう。「ねばならない」が多過ぎるんです。また、いまの法律と全然趣旨が変わらないのに何でまたわざわざつけるんですか。それはやっぱり取り締まりを強化したということなんだ。だから、言論の自由を圧迫すると、こういうことなんですよ。  現在の選挙法だって私たちははなはだ不満なんですよ。もっと政党活動やりたいんです。やれないですよ、だんだん締めてきているんですから。だんだん自由にする。いま自治大臣も本来自由ですとここでは言われますけれども、現場じゃ自由じゃないんじゃないですか。それをまた、いまの法律でも取り締まってもいいけれどもやっぱりないとぐあいが悪いから、やりたくてしようがないのが、残念ながらあいつらうまいこと抜け道つくってやってやがるから何とか締めてやろう、こういう考えとしかとれないんですよ。総理が本当に理想とされているような公選法改正には、私はこの部分は少なくも逆行してきていると、こう指摘をせざるを得ないのです。その辺、そういういままでの何か取り締まってやろうというような気をひとつやめていただいて、本当に政党本位選挙という立場から、やっぱりこのビラ規制の問題、ビラ規制といいますか、号外規制ですよ。号外規制についてはこれはひとつ再考願いたいと思うのですが、いかがですか。
  32. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) やはり選挙法というものはできるだけ自由にするというのは理想ですけれども、選挙界の現状からしてある程度の規制は必要である。どこの国でもやっぱり選挙は何でも自由ということじゃないんですね。皆規制をしておる。その規制の仕方はその国の選挙界事情に応じて各国がやっておるわけです。いまのビラの場合も、矢追さん自身がやっぱりいまでも選挙違反だと言われるのですからね。違反のことを、これをきちんと明文の上に出すということが……。
  33. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 違反とは言ってないですよ。違反なら取り締まれるだろうと言っているのですよ。
  34. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、それは個人の名前を書いたり写真を出してもいかぬでしょうね。それだけれども、写真は皆出していますよ、最近は。大抵の場合号外のビラというものには名前、写真なんかが出ておるわけで、それを出さないで、政党の宣伝ならば幾らでも出せる文書があるのですから、法定ビラが。号外というものには個人と結びつけるところに号外の効果が私はあるんだと思うのですね。政党自体であったら、ほかに合法的に幾らでもまける手段がある、法定ビラという制度があるのですから。そういうことで、できれば政党がやはり政策を通じて争う。個人の選挙の活動についてはある程度の一つのルールを設けておくということも、現状から見ればやむを得ない面が私はあると思いますね。  それは候補者イコールチャンスで戦うということが大事ですから、そういう意味で、ある人は、いまでも選挙法に抵触することはわかってもある者はこれをやるし、いやルールに反することはいかぬと、やる者、やらない者があるというとやっぱりチャンスイコールじゃありませんからね。だから、いまできないようなことはきちんと明文の上に出しておいた方がいいではないかということですから、新たなる言論の圧迫のためにこういう法律を出したという非難は私は当たらない。他の方法政党がもう少し合法的な手段で政策を通じて争うことが非常に好ましい。そして将来、選挙界というものが粛正をされて、政治活動というものがだんだんと自由になっていくことは私も賛成ですよ。しかし、現状においてある程度の規制はやむを得ないということで現行の選挙法も成り立っておるわけでございますから、そういう意味で、今度の政党機関紙の号外、いわゆるビラ、この問題の規制を法律の上で明文化したということでございます。
  35. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理、私はいままでわれわれの出してきた号外が違反であるとは一言も認めておりませんから、その点はひとつ誤解のないように。いま違反を認めたなんて言ったですが、そんなことはないですよ。  次の問題に移ります。総理訪米についてお伺いしますが、日程が決まっておりましたらここで発表していただきたいし、また、その目的は何ですか。
  36. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日程はまだきちんとは決まっておりませんが、八月上旬を予定しております。話をする問題は、やはり両国が関心を持つ問題、アジア情勢、世界の中における日米関係、これはいろんなエネルギーの問題などを含めて、こういう問題について率直な意見の交換をするということになると思います。
  37. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまアジア情勢を詰めると言われましたが、総理はこのアジア情勢について、先日来も衆参両院のこの委員会でも言われてきておられますが、アメリカに対してどのような方向でぶつけられますか。アメリカと食い違った点が出てきた場合、その場合はどういうふうにされますか。
  38. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはやってみないとわかりませんね。いまどういう点が食い違っておるのか、やっぱり話してみないとこの問題はわからないということでございます。
  39. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、恐らく日米安保条約も問題になると思いますけれども、総理に基本的な問題で確認をしておきたいのですが、日米安保条約が日米友好関係の根幹であるというふうに総理は言われておりますが、私たちはそうはとらないわけでありますけれども、安保条約は平和友好的条約なのか、あるいは軍事同盟的条約であるのか、その点は総理はどういう認識ですか。
  40. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、この日米の条約を少し軍事面を強調し過ぎると思うのです。軍事面も大事でありますけれども、余りにも強調し過ぎて、条約の名前からして日米相互協力と安全保障条約というんですから、もう少し広範なやはり日米間の協力を推進していこうというのですから、軍事面も大事でございますけれども、エネルギーの問題にしても食糧の問題にしても、軍事面に劣らず重要性を持っている。安全保障という問題を、ただ軍事面だけで考えることは今日の安全保障に適さない。もう少し安全保障というものは広範なものである。それを象徴化した条約が日米の相互協力と安全保障条約でありますから、もう少しこの日米間の条約を均衡のとれた形でわれわれが理解することが必要なのではないか。余りにも、日米の上にある日米協力、日米の相互協力という重要な、名前からして一番先にそれがいっているんですから、そのことを全然抜きにして、安保安保とこういうことだけにこの条約をとらえることは均衡のとれた解釈ではない。また事実、アメリカ、日本の安全保障を考えてみても、軍事面以外にも日米の協力というものは非常に必要とするわけですから。  だから、この条約は一体何か、軍事同盟か何かという御質問ですが、そういう狭い意味にとりたくないんですよ。日米の広範な相互協力を、これを規定した条約であるし、またそれを象徴した条約であって、もっと日米のこの条約というものは広くとらえることが必要である。それはやはりこの条約そのものの本来の性格でもある。本来の性格としての、日米のこの条約というものの本来の性格に照らして理解をすることが、日米協力の将来のために私は必要であると、こういう意見であります。
  41. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま総合的に見なきゃいかぬと言われますが、そうすると、一番問題となっている軍事面、私たちは、軍事同盟的条約であるから日米合意の上でこれを廃棄をして、そのかわり日米友好条約を結ぶべきだという主張をしておるわけです。やはり先日のマヤゲス号事件等を見ましても、いろいろこういう米軍の勝手な動きというのが出てきておりますし、またポストベトナムで、韓国の問題、朝鮮半島の問題がいま問題になってきた場合、やはり軍事面が相当強調されてくる。そういうことであってはならぬですけれども、そうなると、そういうまずい問題はやはりこの際なくして、新たな条約に結びかえるということも一つの考え方だと思うのですけれども、総理は軍事面は一部なんだ、相互協力ということをよく見てくれと言われますが、相互協力というこういう条約は、私は平和友好条約というふうな言葉にした方がいいと思うのですが、その点はいかがですか。
  42. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一国の安全を確保するということは非常に重要な課題ですが、軍事面から考えてみても、一国だけで自分の国を防衛できる国はない。集団安全保障の時代であります。ヨーロッパを見ても北大西洋条約あるいはワルシャワ条約等、やっぱり集団的安全保障の時代である。だから日本独自で、日本の防衛というものに対して独自では、今日の状態において完全な日本の安全を軍事面から図っていくということは困難であることは申すまでもない。だからわれわれは、日本は自分の国の安全保障、軍事面からくる安全保障についてもそれだけのみずからの努力をしなければならぬが、その上に加えて、集団安全保障によって日本の防衛の、日本の安全確保というものに軍事面から遺憾なきを期していきたい。そういうことで、軍事面における安保条約の持っておる意義というものも非常にこれは重要視するわけでござい出す。だから、いま矢追議員の言われるように、これだけは廃止して、友好条約にこれを変えたらどうかという考え方は持っていない。防衛に対する基本的な考え方というものが違っておるということでございます。
  43. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その防衛面が非常に日本が好まざる戦争に巻き込まれるということになるわけですが、この問題事前協議等についでもいろいろと議論をされておりますが、総理は事前協議は何のためにあると解しておられますか。
  44. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この条約は、日本の安全、日本の安全に関連をする極東の安全、これのために軍事面における安保条約というものがあるわけでありますから、これに照らしてアメリカの軍事行動がその目的を逸脱するものであるかないかという判断をするというところに事前協議の意義があると私は思っております。
  45. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 念を押しますけれども、米軍が安保条約の枠を超えた行動を規制するためにあると、こういうことですか。
  46. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 枠を超えたとか、超えぬとかというのではなくして、この条約の目的にかなった軍事行動であるかどうかということを、日本が自主的に判断する機会が事前協議の機会であるということでございます。
  47. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 日本が自主的に判断できますか。いままでの事前協議がいろいろ問題になりましたけれども、総理はそう言われますけれども、私はできないと思うのです。
  48. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そんなに自信のないことで、これ、どうするのでしょうか。これは大変な問題です。やはり自信を持たなければいかぬ、日本は。そういうときには日本が条約の精神に照らしてノーも言えイエスも言える、それだけの自主性を持たなければ国の政治というのは私はできません。これだけの国力を持った日本が、事前協議の条項があってもノーも言うことができぬなんて、みずからの力をそんなに自信を持たない態度には私は賛成できないということでございます。
  49. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理非常にはっきりおっしゃいますけれども、じゃ、いままで私たちはこれは事前協議にかかる問題であるというふうにいろいろ過去に提起をしてきた問題がございますね。それをいままで政府から言ったこと、ないじゃないですか。原潜の寄港にしても、あるいは沖繩の基地から発進した問題にせよ、いろいろあります。エンタープライズの問題とか、ずっといろいろ国会でも議論がありました。いままで日本の方からきちんと、いま総理の言われたような自主外交の線でこれは困ると堂々と言われたことがありますか。私は記憶にないのですがね。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御承知のように、事前協議に該当すべき事項につきましては、この十数年間、当時の藤山・マッカーサー了解以来、それを今年私が国会の御要望もありまして再確認をいたしたわけでございますが、内容がはっきり決まっております。そのような事項に該当する出来事としての事前協議を受けたことはございません。  ただ、御承知のように、日米間というのは常時緊密に連絡をいたしておりますので、ある日突然事前協議の事項が起こってくるというようなことは、これは恐らく両国の関係から言ってないのでございまして、法律上にはもとより、そのために両国が必要があれば協議をするという規定がございます。しかし、それを待つまでもなく、両国は常に情勢について協議もし、連絡もいたしておりますので、突如として事前協議が起こってくるというような事態というものは、これは恐らく両国の関係から言ってまずまずあり得ないことであって、その前にいろいろ情報の交換、意見の調整というものが行われると存じますが、ともかく事前協議の内容は、はっきり対衆となるべき事項は了解され、決まっておりますし、また、それに該当するものとして協議を受けたことは過去においてございません。
  51. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理、これは仮の問題ですけれども、現実にあったことを日本に例をとって言うのですが、タイ政府がマヤゲス号をめぐってタイの基地の使用は困ると正式に拒否をしておりながら、米軍がこれを無視して使った。こういったことが仮にたとえば沖繩基地において起こった場合、総理はどうされますか。これは事前協議にしますか。それともこれはもう完全に安保条約の第六条に係る違反事項であるということで、米軍基地の使用禁止まで言われますか。これは仮定の問題ですけれども、どうですか。
  52. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) タイの問題は日本と全然事情が違うのですよ。タイには協定というものもありませんし、事前協議の条項もありませんし、あれはラスク長官と、だれだったか、コーマン外務大臣との話し合いによって事実上の駐留になっているのですから、タイの場合は日本の条件とは全然違う。そういうタイの条件を当てはめて日本の場合を論ずるということは、これは事実全然条件の違うものですから、これは論じられないということでございます。
  53. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そう言われると思いましたけれども、実際現実に、いままではベトナムとか遠いところでの戦争が主に日本の基地との関係性にあってきたので、まだその事前協議にかからないと言っても国民もある程度は——ある程度はですよ、政府の言うこともやむを得ないと言ってきた向きもあるかと思いますけれども、これから問題となってくる朝鮮半島の問題が、かつての朝鮮戦争のときとは違いますからね、日本の現在置かれている立場は。仮に隣で問題が起こって、米軍がそれこそ動き出した場合どうする。総理は先日衆議院で、イエスもあり得るということを言われておりますね。日本の意思に反して米軍が行動した場合、規制できますか。何で規制をするか、事前協議では私はできないと思います。基地使用禁止までやらなければだめだと思うのですが、その点どうですか。
  54. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま宮澤外務大臣も言っておりますように、事前協議のほかに日米間には相互協議、やはりいつでもどの問題でも、どっちのあれででも申し込めるような緊密に話し合う機会があるのですから、したがって、米軍が日本の意思に反して、安保条約の目的に反して、そうしてこの日本の基地から発進するというようなことは、私はそんなことはあり得ないと思っております。そうしてまた日本は事前協議をやるのですから、事前協議がいつもイエスというのだったら事前協議じゃありませんよ。イエスの場合も、ノーの場合もある。ただ、核の持ち込みに対しては、そういう事前協議の場合においても日本は、これは日本の非核三原則の原則に照らしてノーと言う。それ以外の問題は、イエスの場合もあり、ノーの場合もあるということでございます。
  55. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理のお話を聞いていると、何か随時協議をしておけばそれでいいんだ、米軍は勝手なことをしないと。それなら事前協議は何の意味があるのですか。だからさっき最初に言った、事前協議はどういうことなんですかと聞いているわけです。
  56. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 事前協議は日本の基地から軍事行動を起こす場合に日本との間に協議をするというんですから、これは随時協議はこの日米の協力関係からしてお互いに随時話し合うことは必要ですが、あの安保条約に決められたような軍事行動あるいは装備の変更等いろんな場合においてはやはり事前協議条項がきちんと決められておるんですから、それに従って日本はノー、イエスを言うということでございます。
  57. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 かつて福田総理が外務大臣当時、事前協議を見直すということを言われましたですね。これはその後どうなっておりますか、宮澤外務大臣。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この問題はその後日米間で何回か協議をいたしておったわけでございますが、最終的には、今年、私と米国政府との間で昭和三十五年の藤山・マッカーサー口頭了解というものをもう一遍検討いたしまして再確認をいたしたということになっております。
  59. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ということは、いままでの三つの事項ですね、それのもう少し細かいのございますよね。装備の重要な変更、あるいは直接戦闘行動、あるいは配置の重要な変更、その中身が一タスクフォースとか。それを再確認しただけであるということですか。ということは、実際見直しはなかったわけですね。新たなものは出てこなかったということですか。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 従来の了解が包括的にできておりますので、その後兵器の進歩あるいは戦略の変化等がございましたけれども、基本的にこの了解で十分にお互いの目的を達し得ると考えましたので、藤山・マッカーサー了解の内容は変更する必要はないということで合意を見たわけでございます。
  61. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 副総理、これで御満足ですか。
  62. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は外務大臣一年で内閣を去りまして、そのとき、次の大平外務大臣にもこの問題は特にお引き継ぎをいたしておるわけです。それで、話によりますと、外務省におきましても十分この問題は御意向に沿って検討いたしておるという当時の話でありましたが、結果につきましてはただいま宮澤外務大臣から御報告があったとおりであると、かように御了承願います。
  63. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理、私いま意見としてお願いしたいんですが、今度の訪米の際に、やはりこの事前協議の問題、一応外務大臣のレベルではいままでのことで了解と言われますが、まだまだ歯どめにはなっていない、本来の目的を私はまだまだ達成していないと、こう思いますので、ひとつこの事前協議を含めましてもう少し米国政府に対してきちんとした姿勢をとるように、あるいはまた見直しを私は再度要求するわけですが、その点いかがですか。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私は、事前協議の内容そのものにつきましては、先ほども申し上げましたように、今年に入りましてから従来の見直しの集大成をいたしたわけでございますので、これにつきまして特に総理から米国首脳に御発言、御要望をいただこうとは考えておりません。  ただ、考えますことは、近年ときどき米軍の兵士、ことに沖繩においてさようでございますけれども、の不心得な行動によって好ましからざる事態を幾たびか引き起こしておりますので、このようなことは十分に米軍の軍紀を振粛をしてもらいたいということにつきましては、必要があれば何かの機会に先方の注意を喚起したいと考えてはおりますけれども、事前協議につきましては特段に考えておりません。
  65. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もう一つ、これは総理、先日来から朝鮮半島の問題で、総理は韓国並びに朝鮮半島と言われましたし、かつて木村外務大臣は朝鮮半島と言われております。その前の佐藤・ニクソン共同声明は、韓国の安全。要するに韓国なのか、朝鮮半島なのか、韓国を含む朝鮮半島、これはわが国の防衛の問題と非常に重要な問題が絡んでくると思うのです。この点ひとつ再度総理にはっきりとした見解をお伺いしたいのと、今度訪米したときに、いわゆるあの佐藤・ニクソン会談における、もし総理が全朝鮮半島というような意見をお持ちでしたら、この条項についてまたこれは話し合う予定があるのか、おつもりがあるのか。もし話し合うとされるならばどういうふうな話をされるのか。その点をお伺いしておきたいと思います。
  66. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 韓国とは日本は正常な外交関係を持っておるし、韓国というものが厳存しておることはこれは事実です。しかし、その韓国も朝鮮半島から独立して存在しておるわけでないんですから、韓国の安全を考えた場合に、朝鮮半島全体の安全を考えないで韓国の安全というものはないのですから、日本の場合は、日本が外交関係を持っておる韓国の安全、その韓国の安全というものは朝鮮半島における韓国の安全ですから、日本に重大な関心を持ち、かかわり合いを持つのは、韓国並びに朝鮮半島の平和と安定というものは重要な関心事であるし、関連を持つということはあたりまえのことだと思いますよ。これはもう何か佐藤・ニクソン会談で共同声明があるとかないとか、共同声明があってもなくても、韓国並びに朝鮮半島の動向というものが日本の安全に対して重要なかかわり合いを持つことは、共同声明のあるなしにかかわらずこれは重要な関連を私は持っている、最大の関心を払うものでございます。
  67. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その韓国並びに朝鮮半島ですね、韓国を除いた朝鮮半島は何ですか。
  68. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 北鮮ということでございます。
  69. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それが認められますと、日韓条約の唯一合法の政府というのはどうなるのですか。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 日韓条約におきましては、御承知のように、国連決議に定められたところの同地域におけると書いてございまして、その点は限定をいたしてございます。
  71. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理、それでいいですか、矛盾しませんか。またこれ議論を蒸し返すと時間がかかりますので、次の問題に入ります。  それでは次に財政問題に入ります。  大蔵大臣にお伺いをいたしますが、歳入欠陥についていろいろ議論をされておりますが、その数字等についてはいろんな仮定の問題になりますので問題もあろうかと思いますけれども、その補てんの対策について、まず節約をおっしゃっておりますが、その節約でどこまでできるとお考えですか。九千億、一応いまの七千六百八十六億欠陥がありましたですね、四十九年度で。それで、ことしの経済見通しのままいくと約九千億ということを大蔵委員会でも答弁をされておる。その線に沿った上での質問と考えてください。その節約によってはどの程度できるとお考えですか。
  72. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 五十年度の予算は執行に入りまして二カ月余りでございまして、まだ五十年度の予算についてどういう節約を各省庁にお願いするかを決めたわけではございません。ただ、私どもの心構えといたしましては、例年、行政的な事務費につきましては極力節減をお願いいたしておりますので、ことしもお願いをいたしたいものという心組みでおるわけでございまして、どういう費目について何%お願いするかということにつきましては、これから各省庁と相談いたしましてから結論を出さなければならぬわけでございます。今日ただいまの段階で言えますことは、例年やっておりまする行政的な事務費の節減はことしもやりたいということでございます。例年やっておりまする節減によりましてどの程度の財源が確保できておるかといいますと、数百億円のオーダーでの節約が期待できておりますことがいままでの例でございます。
  73. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 数百億と言われましたが、これはちょっと多いんじゃないかと思いますけれども、四十七年度が百七十三億円、四十八年度が二百十四億円、四十九年度は、当初予算八%で、最終的には五%に落ちましたので百二十二億になっておりますが、八%として数百億になるでしょうか、今度は。
  74. 竹内道雄

    政府委員(竹内道雄君) まだはっきり計算しておりませんが、恐らく二百億とか三百億とかいうぐらいの金額ではなかろうかと思います。
  75. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私も大体よくいって三百億ぐらいじゃないかと思うわけです。そうしますと、九千億に対して経費の節減ではそれぐらいしかできない。あと補助金がございますけれども、これは今年度当初でやっておりますから、実際これからはできないと思うんですけれども、その点はいかがですか。まだ補助金は削りますか、これから。
  76. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 一般的に補助金を節減の対象費目とする考えはございません。ただ、補助金の中に含まれておりまする行政的事務費に相当する部分につきましては、いままでも節減をお願いいたしておりますので、ことしもそういう方向で考えてみたいと思っています。
  77. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いや、私聞いているのは、これから先、補助金は削ることができるのかどうかということです。というのは、五十年度五百一億出ていますね。それはもうすでに削られたのであって、これから削るものではないと思うんですけれども、その点はいかがですか、主計局長
  78. 竹内道雄

    政府委員(竹内道雄君) 五十年度予算を編成いたしまするときに、ある程度補助金の整理をいたして補助金をつけておるわけでございますが、それは五十年度の予算として補助を認めておるものでございますから、それにつきまして年度中にその補助を廃止するというようなことは考えておりません。
  79. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうすると補てん対策の、次に、きのうもお答えになっておりますが、税の面が出てまいりますけれども、これもまだ計算はできてないと思いますが、およそ現在のいわゆる税制の、政令でいじれる程度でいじったとして、どれぐらいの増税になりますか。どれぐらいで歳入欠陥を補てんするための歳入に充てられますか。
  80. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま御答弁申し上げておりますのは、一般的な増税は考えられる段階ではないと。ただ、現行税制の中で増収を図る道がないかということについて、鋭意検討中であるということを申し上げたわけでございます。したがって、どういう範囲において考えるか、どの程度において考えるかは、これから考えてまいることによって決まってまいるわけでございますので、金額がどの程度になりますかは、いまの段階でまだ見当はつきかねるわけでございます。
  81. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 主税局長、いかがですか、大体考えられるものをしぼり上げてやったとして、最高限度、大まかに。それもまだ言えませんか。
  82. 中橋敬次郎

    政府委員中橋敬次郎君) 昨日もお答えしましたように、まだ事務当局で検討し始めたところでございます。したがいまして、今後の趨勢によりましてどの程度までやれますか。しかもそれが政令事項あるいは法律でお願いすることまで及ぶと思いますけれども、まだこの段階ではその金額は幾ばくとお答えするわけにはまいりません。
  83. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 経企庁長官にお伺いいたしますが、歳入欠陥が一応約九千億程度と言われておるのは、先ほども申しましたように、五十年度の経済見通しでいった場合、それぐらい出るという計算になるわけですが、副総理としては、今年度当初つくられました経済見通しの線で最後まで推し進められますか。いわゆる実質成長率四・三%を目指して、これからの第三次不況対策も含めて景気の回復をやっても、最後は四・三%を目指しておやりになるのか、それ以下になるのか、あるいはそれ以上にするのか。
  84. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四・三%実質成長、それから一五・九%名目成長と、これは大体経済の動きを誘導するための目標を示しておるもので、まあポイントなんていうところまでなかなかそう一致するものじゃございません。しかし、大体そういう数字を出しておる考え方、これは景気がなだらかに上昇する、それから、しかし同時に、名目成長率が一五・九%だということが示すように、物価は落ちつきの傾向を示す、こういう二つの要素、これはぜひ実現したいし、実現できると、こういうふうに考えております。
  85. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 先日、四十九年度がマイナス〇・六実質になったと、こういうふうに言われておるわけですけれども、それから四・三となると、最初副総理の言われておったなだらかな成長よりも高いものになると思いますが、その点はいかがですか。
  86. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) あれは、経済見通しはマイナス一・七と見ておったんです。それが結果はマイナス〇・六と、こういうふうになりましたので、その関係だけを見ますと、実質成長率は五十年度におきましては四・三よりはやや下がる傾向を持つであろうと、こういうふうに思います。
  87. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうなりますと、いまの副総理の御答弁だと四・三%よりは下回る、こういうふうに言えるわけです。そうしますと、大蔵大臣、いわゆるいま論じられている歳入欠陥が九千億を下回ることは出てこないと思う。その点いかがですか。いまの方向へ着陸したとしましてね、九千億以上になるわけですよ、そうなった場合。その点はいかがですか。
  88. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま申し上げましたのは実質成長の話です。で、予算に関係のあるのは名目成長でありますが、四十九年度の実績から見ますと、五十年度の名目成長は幾らか上がりぎみになると、こういうふうに見られるわけであります。
  89. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その名目の上がりぎみを大体どこら辺までお考えになりますか。副総理、物価は九・九でしょう、抑えるのが。その線と、いまのお答えから判断して大体の線が出てくると思うんですが、いかがですか。
  90. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、いまこの段階で一五・九がどういう数字になりますか、これはちょっと予測できませんが、四十九年度の実績、その関係だけから見ると、一六%をちょっと超える、そういうことになるわけです。これはしかし実際の経済の動きがどうなっていくか、これにもよりますが、四十九年度の実績、それからだけの推計から言いますと、やや成長率は伸びると、こういうふうに見ております。
  91. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 副総理、確認しておきますが、その歳入欠陥が、これから今後の推移でそれはわかりませんけれども、このままいきますと相当出る。たとえその歳入欠陥がどうあろうとも、いま言われたような目標に向かって、物価は九・九%以下に抑える、名目は大体一六%、実質成長率は四・三というふうな方向に進まれる方針ですか。あるいは歳入欠陥というものを埋めるために景気をもっとあおって、そして税を取る方向へもっていこうとされておるのか、その点はいかがですか。
  92. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体経済見通しでながめておるこの経済運営、それをやっておる、こういう考えでありまして、歳入欠陥があるから増収を図りたい、こういうような考え方で増収のための景気政策、そういうことを考えることは妥当でないと、そういう見解でございます。
  93. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ということは、あくまでも物価抑制ということを最大の眼目として進まれると、こう解していいわけですか。
  94. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 物価抑制となだらかな景気の回復と、この二つを眼目として経済は運営する、こういうことでございます。
  95. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうなりますと、大蔵大臣、いまの副総理のお話だと、どうしても大体九千億程度の欠陥は、その前後あると思いますよ、最後に残るのじゃないかと思うんですが、その点はいまのお話からどうお考えになりますか。
  96. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) きのうもたびたびお答え申し上げておりますように、これから今年度十カ月あるわけでございますし、その間、内外の経済がどのように推移してまいりますか、これはまだ定かな展望を見るわけにはまいらないわけでございます。政府はいまお話がございましたような一応の見通しを持っておるわけでございます。が、これがどのように推移してまいりまして、そこからどれだけの税金が確保できるかということにつきまして、いまの段階で予想を立てるわけにはなかなかまいりかねると思います。したがって、今日言えますことは、漫然自然増収を期待するようなことはできないと思いますが、自然減収を生ずる恐れなしとしない。したがって、財政の運営は極力緊張した運営をやらなければならぬということを申し上げられる以上、この際数字的に申し上げる自信はまだございません。
  97. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それは経済も生き物ですし、いま数字を申し上げる自信はないと大蔵大臣言われますけれども、もう大体この辺まできたらある程度の見通しを立ててやらないとまずいと思うわけです。  さっき私が言いましたように経費の削減と増税では、増税の数字は出ませんでしたけれども、そう補てんの有力な武器にはならない。そうなると、残るのは国債ということになるわけですが、これについては、歳入欠陥補てん対策としての国債の運営のあり方、これは基本的にどうお考えになりますか。
  98. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 基本的な考え方といたしまして、財政運営に当たって公債を出すこと自体が悪いことであると私は考えておりません。公債を出してしかるべきときに出し、出すべきでないときに出してはいけないわけでございます。けれども、御案内のように、日本の財政の体質が大変硬直化しておるわけでございます。いわば弾力性を欠いておるわけでございますので、景気の消長にかかわらず、財政需要というものは弾力的に増減をしないというような傾向を持っておりますので、漫然公債発行に依存してまいりますと財政インフレへの道を歩むことになりますので、これは努めて警戒をしなければならないと考えておるわけでございます。このことは五十年度の財政運営に当たりましても、五十一年度の予算の編成に当たりましても、当然われわれは考えておかなければならないことと思うのでございまして、なるべく公債発行ということに、公債の増発ということにならないように、まずあらゆる手だてを講ずべきが私どもの任務であろうと思っておるわけでございます。しかし、万一公債に依存せざるを得ない場面に逢着するにいたしましても、その金額はできるだけつましい金額に抑えなければなりませんし、建設公債の枠内におきまして、市中消化の原則が守られる程度に抑えなければならないのではないかといま考えております。
  99. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま言われたお話だと、結局建設公債の範囲内にとどめるということは、今年度の国債発行は幾らということになりますか。
  100. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 建設国債発行の余裕は一兆五百億程度あると思っております。
  101. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうしますと、仮にいま九千億でとまればその建設公債の枠内でおさまって一応うまくいくと、こういうふうにお考えなのかどうか。その点いかがですか。
  102. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま申しましたように、公債をことしの予算では二兆円お願いすることにいたしておるわけでございます。これ以上公債に依存しないように、極力あらゆる手だてを講じてみたいと考えておるわけでございまして、なるべく依存しないように努めてまいりますけれども、万が一依存しなければならぬという事態になりましても、極力金額はしぼっていきたいと思っておりますので、どの程度というようなことは全然頭にございません。
  103. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 これは事務当局で結構ですが、仮に公債発行対象経費いっぱいいっぱい使った場合、現在は九・四%の依存度ですが、補正の組み方によっても出てくるかと思いますけれども、大体何%になりますか。
  104. 竹内道雄

    政府委員(竹内道雄君) 約一四%弱ぐらいになるかと存じます。
  105. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 国債政策について言いますと、四十年から四十六年当初まではわりあいその減らす努力が払われてきたんですが、四十六年度以降、四十五年が補正予算後で四・六%となっているのが、四十六年の終わりから一二・六%になって、四十七年からもう一七%に上がってきたわけですね、当初予算で。いま言われたように一四%になると、非常にまたこれがせっかく今年度当初予算で九・四まで減らそうとされた努力が水のあわになってしまう、こういう結果になるわけですけれども、この辺についてはどういう御認識ですか。これはもうしようがないと、こういうことですか。
  106. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) しようがないと諦観しておるわけにまいりませんで、国債になるべく依存しないように努めてまいらなければならぬと考えております。最近四、五年の経過は、確かに仰せのように公債依存率が高くなってまいりましたのでございますが、これはやはりわが国経済体質が変わりまして、国際収支も非常に改善を見、初めて日本も資本輸出国になり、国際的な義務を果たさなければならぬ、国際的な均衡を図らなければならぬというようなわけで、対外的な姿勢を改めなければなりませんし、国内におきましては、生活本位、福祉本位に切りかえてまいらなければならぬというようなときになってまいりまして、思い切った財政政策の転換を政府は試みたわけでございますが、これが軌道に乗ろうとしたやさき石油危機に見舞われたわけでございまして、あなたがおっしゃるとおり、もう一度逆戻りせざるを得ないということになったわけでございます。われわれは、いまの段階におきましては、まずこの危機を乗り切って、経済を安定した軌道に着陸させることがいま当面の任務でございまして、そのことに精進すべきでございまして、その上からも財政政策の運営につきましては、できるだけつましい姿勢で当たらなければならぬと考えております。
  107. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いろんなお話をされておりますけれども、要するにいま非常に大変な時代であることも私も認めます。政府としてもいろいろ暗中模索というところが現状ではないかと思いますけれども、そうであればこそ、政府がそんなだったら国民はもっと大変なのですから、やはりここらで私はもう少しきちんとした方向というか、いま言われた公債発行は押されるのだ、それは押さえなきゃならぬでしょうけれども、今回はここで乗り切る、来年度でこういくのだと、そのかわり税については今年度は仮に増税というか、ギャンブル税とかいろんなことを言われましたよね、そういった点が芳しくなくても、来年度はもっと不公平な税制を改革をして取れるところがらもっと取るようにする、そういうきちんとした方針がもう出てこなきゃならぬと思うのです。  そういう意味でここでお伺いしたいのは、補正予算に対してどういうふうなお考えで臨もうとされておりますか。要するに、いまの歳入欠陥を完全に補うという姿勢でいくかどうか。やっぱり私は補正予算の組み方、特に公債の発行等が大きく絡んでまいると思いますので、その点はいかがですか。
  108. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 年度が始まったばかりでございますので、いま国民に対する政府の姿勢といたしましては、予算を忠実に執行するということでなければならぬと思うのです。とりわけ経済がこのように停滞いたしておるときでございまして、国民が不安を感じておるときであればあるだけ、政府の姿勢といたしましては、政府がいま立てておるもくろみ、予算は忠実に実行するということでなけりゃならぬと思うのでございまして、政府としては忠実な予算の執行を通じまして経済の立て直りに寄与しなけりゃならぬと考えておるわけでございます。それが基本的な姿勢でございます。  しかし、あなたは、そうは言うけれども、この予算自体には歳入欠陥を胚胎しておるかもしれぬじゃないか、そういう不安があるじゃないかという御指摘だろうと思うのでございまして、したがって、補正予算というようなことも予想されるのではないかということでございますが、これはこれから歳入がどのように期待できますか、また、いま予想いたしておりまする、計画いたしておりまする歳出以外に、年度の進行中に新しい財政需要がどのように出てまいりますかということも見なければならぬわけでございますので、補正予算の話は、いまの段階で見当をつけるわけにはいかぬと思うのでございまして、秋深くなってからの話になるのではないかと思います。そのころになりまして、政府といたしましてはあらゆるデータをそろえて、政府としての展望を持って国会に御相談申し上げる時期が来るのではないかと考えておるわけでございまして、いま補正予算について私が物を言うなんていう用意は全然ございません。
  109. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 しかし、けさの新聞では、もうすでに来年度予算の概算要求は二〇%増にしろという話が出てきておるのですけれども、これはどうですか。
  110. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 新聞の方は多彩な御報道をされるわけでございますけれども、それを一々政府の方で後追いで説明をいたす立場にございません。
  111. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 来年のことは別としまして、副総理、さっき私の言いました五十年度の経済見通しに沿って、現在の歳入欠陥の問題、今後の景気の動向等考えまして、補正予算というのは大体米価と公務員給与が絡んでおりますから経企庁とも関係が出てくると思うのですけれども、大体どういうふうな絵を描いておられますか。
  112. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど来私は、大体経済がなだらかに回復基調に向かうということを考えておる、こういうことを申し上げたのですが、個人消費の方は見通しとほぼおっつかっつのところ、あるいは多少下回るかもしらぬ、その辺で動いていくのじゃないか。それから設備投資は、四十九年度の実績なんかから見ましても、五十年度一四%という見通しは、多少これは引っ込むのではないかというような感じがします。そういう中で、貿易輸出はどうかというと、いま世界経済は下半期には回復過程に向かうというのが通説ですが、どうも実際で多少おくれておるような感じもしますが、とにかくこれも一四、五%輸出増加、その線に向かって努力していきたい、そういうふうに考えております。  そういうことを総体として考えると、設備投資が見通しよりは引っ込む。これを補完をする要素がないと見通しのとおり動かないのです。その補完をする要素は何だというと、私は財政だと、こういうふうに思うのです。いま繰り上げ支出、そういうようなことを盛んにやっております。そういうことになりますると、財政の方の見通しとすると、やや見通しよりはふくらむ。ふくらむというか、繰り上げ支出の結果、経済的側面から見ると需要要因としてはより多くなるのではあるまいか。そこで、大体経済見通しの大筋は実現できるんじゃないか、そういうふうに考えております。
  113. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 通産大臣にちょっとお伺いしますが、第三次不況対策が来週早々発表されると言われておりますけれども、いまの副総理の御答弁の線で、産業界、特に景気と大きな関係のある省を担当されております通産大臣としてどうですか。いまのような方向でよろしいですか。通産大臣はもっとあおる方向といつも新聞等では聞いておりますけれども、いかがですか。
  114. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほど来、たびたび御答弁がございましたように、設備投資、貿易、個人消費、ずいぶん落ち込んでおりますので、これを今後どういうふうに運営していくかということにつきましては、目下各省で調整中でございます。いずれ、近く結論が出ると思います。
  115. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 景気問題で副総理にひとつ伺いますが、いまいろいろおっしゃいましたけれども、個人消費支出を上げる手立てですね、これはどういうふうにお考えになりますか。衆議院では減税というものが出まして、大蔵大臣はそれを否定されておりますけれども、それも含めまして、いかがですか。
  116. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) こういう際に、個人消費を上げる、そういう手法としては減税というのがすぐ考えられるのです。しかし、いま私は減税をいたしまして、果たして今日のわが国の状態とすると、消費がふえる要素となるかというと、そうならぬと思うのです。いま消費が非常に静かな状態にある。それは物価がとにかく落ちつきの基調にはきたものの、とにかく高い。その高値に対する拒絶反応というのが、これが主軸になっておる、こういうふうに思うんです。でありまするから、貯蓄性向というのは非常に高い。まあ余裕のある家庭の方は消費よりも貯蓄に向かうということになる。減税をする、これは貯蓄に回ってくる、こういうふうに見られる。そういう傾向があるわけです。それのみならず、いま減税というのが財政上の事情から見まして果たしてできるかどうか、これも大問題だ。そういうことになりますと、私は減税という手法は考えられない。やっぱり消費は私はそう落ち込んでおるとは思わないんです。まあ静かな状態にある、そういうふうに思うんです。デパートの売り上げを見たって、一四、五%これは伸びている。これは物価の上昇も年間一四、五%名目成長もその辺にある。そういう際の消費性向とすると、そう落ち込んでおるというふうには思いませんけれども、不況時にとにかく消費を刺激するということはすぐ考えられる。考えられますが、今日、常に考えられるような減税的発想は、私はこれは考えられない。したがいまして、消費を刺激いたしまして景気浮揚の端緒とするという考え方は私はとりたくない、そういう結論でございます。
  117. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 消費を刺激して景気浮揚の端緒にはしたくないと。そうなりますと、結局景気回復の一番目玉は設備投資なんですか、きっき言われた。その点もう一回確認をとりたいんですが。
  118. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど申し上げましたように、設備投資もそう期待はできません。結局これは私は財政だ。財政は幅が広い内容を持つわけですが、固有の財政つまり税なんかの一般会計財政というか、そういうものではなかなかむずかしいんです。結局、先ほど申し上げましたように貯蓄性向は高い。特に郵便貯金なんかは相当集まる。それを財源としていわゆる財政投融資、これによる経済活動、そこに私は景気浮揚の対策の主軸を求むべきである、こういう見解でございます。
  119. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうすると、その財投は、大体昨年の実績等から考えまして、今年度はどの辺までをやればその副総理考えておられる線になりますか。できたら具体的に金額面でお願いします。
  120. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだどの程度の規模の財投を必要とするか、さしあたり繰り上げ支出というようなことになりましょうが、どの程度の繰り上げをいまこの時点で必要とするか、そういうようなところまで結論を出しておらないんです。考え方としては景気浮揚策の主軸は財投の活動、それに補完的に金融政策、こういうことぐらいかと、かようにいま見ております。
  121. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に物価問題に入りますけれども、副総理は九・九%におさめる自信がおありのようでございますが、四、五月分の上昇分の三・二%を引きますと、あとは六・七しか残らぬわけです。それを月別平均上昇率にいたしますと〇・六ないし〇・七、こういうことにしないと九・九にならないんです。その点、この九・九に抑えるためにこれからどういうふうにされようとしておりますか、具体的にお答えいただきたい。
  122. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が心配しておりますのは、ただ一つなんです。企業の方の値上げムード、これです。これに対しましては企業の自粛を求める、これは私は協力はかち取ることができると思います。まあ特殊ないろいろ産業がありますが、そういうものは格別ですが、一般的に企業界が協力をするという体制はできる。同時に、政府の方でもみずからなし得ることをしなければならぬ。その第一は、何といってもこれは総需要管理政策の堅持、こういうことでございます。企業の方で値を上げましても売れませんというような環境をつくっておく必要がある。それから同時に、総需要ばかりじゃない。個別の物資につきましても、これは需給だとか価格の動向、主要なものにつきましてはこれを厳重に注視いたしまして、そうしてその動向に誤まりがないように誘導をする。この努力をしなけりゃならぬ。  私は、そういう企業側の値上げの動きというものがそういう施策によりましてちゃんと封ぜられるということになれば、ほかの物価環境というのは悪くないんです。人件費がとにかく見違えるような変わり方になってきておる。海外からの影響、その要因も非常に軽微である。また公共料金につきましても、これはもう厳にこれを抑制する。若干の例外はありまするけれども、抑制方針をとっておる。そういうことを考えますと、私はこの一けた台の物価目標というものをめぐる環境というものはそう悪くない。そこで、企業というか、各品目の値上げのムード、これをせきとめる、これに全力を尽くしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  123. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 通産大臣、いま鉄鋼の値上げが問題になっておりますが、もしメーカーの主張するようなトン当たり一万ないし一万四千円の値上げになった場合は、消費者物価指数には〇・二ないし〇・三%の上昇になる。こういうことで、いま問題になっている郵便料金値上げを上回る影響が出てくるわけです。この鉄鋼値上げに対して、いま副総理は製品の自粛を言われておるわけですが、この線でいかれるのか、もっと下目に抑えられるのか、その点はいかがですか。
  124. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 鉄鋼が一割値上がりした場合、どの程度消費者物価に影響があるかということでございますが、直接影響が出てまいりますのは、大体一〇%の値上げといたしまして消費者物価に対して〇・〇五ぐらいだと思います。ただしかし、なおそれがすべての分野に波及効果を次から次へ引き起こしたと、こういうことを想定いたしましても大体〇・一二%でございますね。その程度でございまして、そう大きな影響は消費者物価にはないわけでございますけれども、ただしかし、鉄鋼というふうな基幹的な物資が大幅な値上がりをするという場合には心理的な影響が出てまいりますので、通産省といたしましてもこの動向を十分見守っておるわけでございます。ただ、原則的には物の値段というものは需給関係で決められるべきものである、こういう考え方でおりますので、何が何でも介入するという考えではございませんが、非常に不当な大幅な値上げが行われて、そのために経済秩序が混乱をする、そういうことは万ないと思いますけれども、仮にそういうことがありましたならば、そういうことの起こらぬようにそこは指導していきたい、こういうふうに考えております。
  125. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 副総理、いまの通産大臣の考え方でよろしいわけですか、物価への影響につきまして。
  126. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その考え方でよろしいわけでございます。
  127. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうすると、大体いま一割の値上げということになるのじゃないかと思うんですけれども、これぐらいで大丈夫と言われておりますが、そうとっていいですか。そういうにおいがしてならぬのですけれども、どうとっていいわけですか。
  128. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま通産大臣は一般論を申し上げたので、鉄鋼の値上げが一割でいいとか何とか、そういう具体的な問題についてお答えをいたしたというものとは考えておりませんです。
  129. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、物価指数がいつも問題になりますけれども、ことしは消費者物価指数の基準改定年度に当たるわけですけれども、これに対する総理府の改定への考え方、現在の作業状況、これをお答えいただきたいと思います。
  130. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 消費者物価指数の基準時は、従来から基準時の統一に関する統計審議会の答申の趣旨に沿いまして、他の経済指標とともに五年ごとに改定をされてきていることは御承知のとおりでございます。この例からいきますと、本年、昭和五十年が新基準時となる予定でございます。  現在の進捗状況でございますが、さきに申し上げました統計審議会の専門部会で、消費者物価指数についてウエートをどうするか、指標の算出方法、指数の対象範囲等の検討に入っておりますので、総理府といたしましては、この専門部会の連携をとりながら改定作業を進めていくことにいたしております。
  131. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 厚生大臣にちょっとお伺いしますけれども、最近の異常な物価高の中で、高所得者と低所得層の格差が拡大しておるわけです。したがって、たとえば昭和四十九年度の国民生活白書によりますと、第一分位は所得格差は平均一〇〇といたしますと五〇、第五分位が一七五、それに対して所得に資産評価額の増減を加えますと、経済格差は平均を一〇〇として第一分位が四三、第五分位が一八七とさらに拡大をしておるわけです。こういうふうに非常に所得階層によって実際の生活実態というのがこのように大きな開きが出ておるわけですね。こういう実情はお認めになるわけですか。
  132. 田中正巳

    国務大臣田中正巳君) ただいまの御指摘は昭和四十九年度の国民経済白書に載っているところでありまして、真実だと思っております。
  133. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 したがって厚生大臣は、現在の社会保障給付に対して行われている物価スライド制というのは、こういう状況を認識した上において対応をしておる、こう考えてよろしいですか。
  134. 田中正巳

    国務大臣田中正巳君) 先生のおっしゃる物価スライドというものを厳密にとりますると、私どもで物価スライドをとっているのは拠出制年金についての制度だけでございまして、他については厳密な物価スライドというものはとっておらないわけでありまして、それぞれの経済、物価等々を勘案をいたしまして施策の伸びを図っているというのが実情でございます。
  135. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 副総理、今回の改定どういうふうに出てきますか、まだあれでありますけれども、現在の物価指数ではやはり国民の生活実感がはっきりは出ていない。実際の実感まで数字で出すというのはむずかしいと思いますが、少なくも五分位階級別の指数ぐらいは現在とられているわけですから、これはもっと公表してきちんとやるべきだと思うんですが、その点、副総理のお考えと総務長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  136. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 物価指数は各家庭の平均的な動きを示すものでございます。したがって、一つ一つの家庭をとってみますと、その家庭の動きから見ての実感、これと物価指数と合わない場合もこれは出てくる。これはやむを得ないことかと思います。  そこで、どこの国でも物価指数というものは大体統一的な標準がありましてやっているわけでありまして、わが国だけが特別なことをやるというわけにはまいりません。しかしながら、生活白書に見るように、第一分位、第五分位なんというのを比べてみますと非常に差異があるわけでございまするから、そういう辺はよく見詰めましていろいろな施策の重要な参考にしなければならぬ、こういうふうに考えておりまするが、いろいろ研究はしていまするけれども、第一分位、第二分位、第三分位、第四分位、第五分位ごとの生計費指数あるいは消費者物価指数、そういうようなことはなかなかこれはむずかしいのじゃないかと思います。しかし、階層別に分けて物価がどういう影響を及ぼしているかというようなことは、つぶさに判断しなければならぬ問題ですから、これは別の角度から十分にそれらの資料は整えなければならぬ。しかし、国際的ないろいろな比較、そういうようなたてまえからして、いまの消費者物価指数を体系的に変えるということは、これはむずかしいのじゃないか、そういう所感でございます。
  137. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理、いま副総理はむずかしいとおっしゃっておりますが、やはり階層別といいますか、そういった非常に格差の出ている時代ですから、そういった意味で私は物価指数というものを見直す、考え直す、そしてその上から物価スライドを社会保障の場合実施をしていく、それがいいと思いますけれども、総理の所見をお伺いして次の問題に入りたいと思います。
  138. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その問題は総理府の方でもいろいろ検討いたすでしょうが、いまインフレの、だんだんこれを抑制していこうというのですから、こういうふうなインフレ時代における国民の階層別にいろいろ割った統計というものは、ノーマルな姿ではないですわぬ。そういう点でこの問題は十分に今後の検討の課題にいたします。
  139. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 最後に、私は、福祉の問題の一環として、先日も昭和五十年度予算審議の際に最後で触れました、児童のたん白尿の問題について触れたいと思いますが、具体的な問題として竜神村をこの前も取り上げましたけれども、その後このたん白尿問題はどうなったか、厚生省から御報告いただきたいと思います。
  140. 田中正巳

    国務大臣田中正巳君) 先生御指摘の竜神村たん白尿の問題につきましては、あの節、学校がお休みなものですから、後日に調査をいたすというふうに御答弁申し上げましたが、その後の調査が出たようでございますが、具体的専門的な事項でございますので政府委員をして答弁をさせていただきます。
  141. 上村一

    政府委員(上村一君) 和歌山県が二回の調査をいたしております。一つは四月の十六日から三日間、衛生部長を班長とするスタッフで、小学校、中学校の子供合わせまして千二十六名検査をいたしました。三日間を通じましてたん白を検出した者は六名でございます。  それから次の措置といたしまして、三日間のうち一日でもたん白が検出された者、そのうち疑陽性の者につきましては、月一回以上検査観察をする措置をとることにいたしております。それから一日でも陽性が出ました六十五名につきましては、和歌山医大、派遣の医師会、県の病院協会の協力で精密検査を実施することにいたしまして、五月十三日、十四日精密検診をいたしました。その結果、一名が要精密検査、七名が医療機関で経過観察を要する、五十七名につきましては異常がないということでございます。
  142. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この結果を厚生省はどう判断をされますか。
  143. 上村一

    政府委員(上村一君) この結果につきまして、県が三つの見解を出しておるわけでございます。一つは、尿たん白の検出率について特異的なものは認められなかった。それから、直ちに医療を必要とする子供は新たに発見されなかった。こういうところから、竜神村の子供について尿たん白の観点からは特別な健康管理対策の必要性はないけれども、これを機会にこの村の子供の健康管理をさらに強化するために経過観察を続けていく考えであるというふうに県の見解が述べられたわけでございますが、私としても県の見解どおり、今回は特別の問題はないというふうに考えております。
  144. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 要するに、厚生省は県の報告をうのみにしておる、こういうことでありますけれども、それでは、いままでのデータとかなりの食い違いが出ておるわけです。この点についてはどうお考えになりますか。
  145. 上村一

    政府委員(上村一君) 前に吉川さんが調べられましたときには、疑陽性を含めて一〇%ぐらいの検出率であった。それに比べますと相当開きがあるというふうに考えるわけでございます。ただ、この尿たん白の検出の問題というのは、私どもの方も専門家の話を聞いてみたわけでございますが、まあ同一の手技、つまり同じ時間帯に同じ検査法でやらなければなかなかその比較が困難であるというふうな話でございます。したがいまして、県の調べました数字と前に吉川さんが調べました数値との間に差があるわけでございますが、県は、先ほど申し上げましたように、一日でもたん白が検出されたものにつきましてさらに精密検査をして、その結果がこういう状況でございますので、問題はないというふうに考えております。
  146. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 吉川講師が出されたデータでいま問題がこのようになってきたわけでありますので、もし県が良心的にこの問題を取り上げるならば、吉川講師をメンバーに入れるなり、あるいはその結果について、厚生省が吉川講師も呼んでこの調査結果等のいろんな話し合いをすべきであると思いますが、その点はやりましたですか、やらなかったですか。
  147. 上村一

    政府委員(上村一君) 先ほども申し上げましたように、和歌山県が今回調査をいたしましたのは、相当県の総力を挙げたような調査でございますし、同時に、感度の高い化学検査なんかを使っておるわけでございます。したがいまして、県自身が地元の医科大学なり医師会なり、そういったものと協力をして引き続いて追跡調査をされるということでございますので、そういったことにつきましては特に考えはございません。ただ、私ども腎疾患の研究班というのを持っておりまして、吉川さんもこのメンバーの中の一人でございます。そういった研究班の中でこういった問題を詰めることについては、当然のことであるというふうに考えております。
  148. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうすると、これからどうされるんですか。県のデータはこれでもう間違いないと、厚生省は胸を張って言われるわけですね、これでいいと。〇・五八%ですよ、六名だと。吉川先生はこれは納得しているんですか、このデータでいいと言われていますか。
  149. 上村一

    政府委員(上村一君) 今回出されました県のデータは、それでまあ妥当であるというふうに考えるわけでございますが、県自身もさらに追跡調査をすると言っておるわけでございますので、そういったことにつきましては、さらに県と連絡をとりながら判断をしてまいりたいというふうに思います。
  150. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いや私が聞いているのは、厚生省が本当に中立、厳正、公平な立場で見るならば、県のこれだけ一生懸命、それこそ大がかりでありました。私も行ったんですから、県の調査で二回立ち会いました。私は吉川先生をあの中に入れるなりしてもらいたかったんです。その点を厚生省が指導をすれば、データのとり方が違うとか、そんな問題が出てこないわけでしょう。入れておけば、吉川さんがこの目で見て、このやり方でこれだったら結構ですと、こうなるわけですよ。いままでのデータと余りにも食い違いがひど過ぎるわけですよ。これから後、具体的にまだいっぱいありますから私詰めますけれども、まずその点どうですか、もう一回お伺いします。
  151. 上村一

    政府委員(上村一君) いま申し上げたのは、県が調査をしたことについて申し上げたわけでございまして、県が県の判断で吉川さんを入れなかったということでございます。まあこれについて厚生省でどうこうと言うべき筋合いのものではないというふうに思います。
  152. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 どうして厚生省でどうこう言う筋合いじゃないんですか。それはおかしいじゃないですか。私は国会で問題にしたんですよ。だから県があわてて行ったわけでしょうが。
  153. 上村一

    政府委員(上村一君) いや、県の衛生部が責任を持っておやりになったことでございますので、その県の検査方法について、この人を入れなさいとかということまではなかなか言えない性格のものじゃないかというふうに申し上げたわけでございます。
  154. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私が聞いているのは、入れろというのは、命令なんかしろという意味じゃなくて、いままでのデータと余りにも開きがあり過ぎるんですよ。それは認めますか、まず。吉川さんの調査以前にもあるわけですよ、データは。
  155. 上村一

    政府委員(上村一君) どう申し上げていいか、ちょっとわからないわけでございますが、その吉川さんが調べられましたものとの間に大きな開きがあることは、私もよく承知しておるわけでございます。さっきも申し上げましたように、私ども、吉川さんなんかもメンバーになっている腎疾患の研究班等もございますので、そういったところでそういった問題を詰めたい。ただ、先ほど申し上げましたように、学童のたん白尿の検出というのは非常に人によって違うような結果が出る。それから、ことにプラスマイナスの判断についていろんな御意見がありまして、専門家の話を聞きましても定説がないというのが現在の状況のようでございます。
  156. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まず私が言いたいのは、一番最初、昭和四十八年の八月に和歌山医大の学生がやったのが一つあります。これは一九・〇%です。その次に、これは未発表のデータです。これは県が明らかに隠しておったんです。厚生省もだまされていたんですよ。このデータが出てきたわけです。これは南部の保健所で県がやっているんです。これは一五・六%。それからいま言った吉川調査団が一〇・二四。今度は〇・五八です。余りに差があり過ぎるんですよ。だから県のデータがインチキなのかどうかは別として、これに対してやはり厚生省としては疑問を持たなくちゃいかぬでしょう。そこで、吉川講師が入っていないんですから、これはまずかったのじゃないか。といいますと、私は非常に、この県の姿勢というのが吉川調査団のデータに対して挑戦をするやり方をした疑いが十分あるんです、やり方について。  まず一つは、いま言ったこのデータを隠した点。私たちも現地へ行くまでわからなかったんです、このデータは。現地へ行って初めて、昭和四十八年にこの和歌山医大の学生のやったデータで驚いて県がやったデータが出てきたわけですよ。これは隠蔽されていたんですから。そうしたら吉川調査団と。  しかも、もう一つ言いたいのは、いま六人で〇・五八で心配ないと言われていますけれども、第一日目は、プラスが出たのが、プラスマイナスを含めまして、いわゆるヘマコンでやったのが一三・九%、第二日目が五・五%、第三日目が七・九%と、すでに初日には一三・九出ているんです。三日続いてプラスとプラスマイナスが確かに六でしょう。しかし、初日にもう一三・九出て、二日目にこれが途端に五・五に落ちている。それからまた七・九に上がっている。これは少なくも医学の面である程度の理解がある方であれば、こういうふうにがたんと二日目に減ること自身がおかしいと見なきゃならぬです。かなり作為的な面を感ずるわけです。しかも、県がマイナスという判定をした中で、すでにもう近畿大学の病院に入院されている方がいるんです。即時に入院を言われた方が二人もあるんです。一人は腎炎で、もう一人は腎炎の疑いとけいれん症状と、県の結果がマイナスであった中から二人の児童が入院を現在しておるんです、近畿大学の附属病院で。  それからもう一つは、検診の方法に非常に私は疑問を感じます。というのは、非常に厳しい規制のもとにおいて、厳密を期するという名のもとに非常に作為的な検査が行われておるんです。たとえばある人が、ある検査官が二月の検査ではもっと長時間、三十秒ぐらい試験紙を尿に浸していましたがと言ったら、おまえは黙っていろとどなられた。あるいは既往症や家族も調べずに尿検査をするのはおかしい、こういう声も出ておりますし、また、プラスと記入したところ、これはおかしい、マイナスだと言って消してマイナスにした事実もあるんです。そんな検査がありますか。だから私はこの県の調査はかなり作為的な面の疑いもあると、断定はしませんよ、疑いが非常にある。そういう現場の声もあるんです。  だから、私は、吉川先生を入れて、そうして前のデータと今度のデータときちんと比べた上で心配なかったら本当に心配ないんですよ。実際現地の村民はまだまだ不安はとれていないんですよ。県は心配ないと言っているけれども、実際出たじゃないか。心配ないという人が、また二人子供が入院した。あんな人口五千九百人の部落ですから、一人や二人が入院しても村は大騒ぎになるような地域です。それが現実にこうなっている。  だから私は、データの隠蔽のことと、検査のあり方と、マイナスになったところから二人も入院患者が出ておる。これは相当悪いわけですよ。そういった点から、県の今回のやり方ないしデータには相当問題がある。したがって厚生省としては、幸い吉川先生はその研究班の一員でありますから、もう一度この検査結果を踏まえた上できちんとした指導、吉川先生を含めてこの結果について検討して、村の人が安心して大丈夫なら大丈夫、危ないなら危ないできちんともう一度やり直す、こういうふうにしていただきたいのです。その点はいかがですか。厚生大臣も答弁願います。
  157. 田中正巳

    国務大臣田中正巳君) 本件についてはいろいろと社会的不安もあり、また社会問題にもなっておりますので、ただいま出ました調査につきまして分析、調査、解析等をいたすことはもちろんでございますが、今後さらにこの問題についての掘り下げについて努力をいたしたい、かように考えます。
  158. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 努力だけじゃだめです。はっきり言ってください。どうするのですか。そんなの、言えるじゃないですか。
  159. 上村一

    政府委員(上村一君) 今回の和歌山県の調査、それから前回の吉川さんの調査等、私どもの方の研究班の討議の材料にして検討してまいりたいというふうに思うわけでございます。  ただ、県がデータを隠されたというお話がございましたけれども、県自身も今回の調査のときに初めてそれがわかったというふうに私聞いておるわけでございます。
  160. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 隠したじゃないですか。二年間隠したじゃないですか。ここにありますよ。  大臣、もう一度はっきりしてください、今後の問題として。県のうのみじゃだめですよ。
  161. 田中正巳

    国務大臣田中正巳君) いろいろこの種の調査の手技について学者の間にも議論のある問題だというふうに、私素人でも聞いております。したがいまして、これをどのようにフォローいたしますか、さらに役所としては検討をいたし、なお和歌山県ともいろいろと協議をいたしたい、かように考えております。なお、ただいままでに出ました調査につきましては、これの解析等については専門家の間で、先生おっしゃるような方々を入れて、さらにひとつ深く解析等について掘り下げたことをやってみたいというふうに考えております。
  162. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 最後に、これは文部省と厚生省にお伺いをいたしますが、昭和四十九年度から尿検査が義務づけられました。全国調査が行われておりますが、かなりのばらつき等がございます。昭和四十九年度のを見ますと、一番高いのは佐賀県の一〇・四二%、これは最高でありまして、その県のデータも私全部取り寄せました。そのほか相当高いのがありまして、地域によっては四〇%というようなところもいっぱいあるわけです。なかなか県の方は、文部省に断らないと出せませんなんといって、しょっちゅうデータ出してこないのです。ある県だと、これはマル秘事項でございますからといって、最後の集計しか出さないのです。文部省はその統計をとるための調査の紙を県の方へ回してとっているだけで、実際これはもう文部省としては統計としてとって終わり。極端な言い方をしますと、あと何もしていない、こう考えざるを得ぬような状況なんです。  私、三%以上の県を全部データを取り寄せるべく県にお願いをしましたけれども、出さない県の方が多いんです。市町村別に出てきたところは何カ所かございましたけれども、その市町村別を見ても、いま言った四〇%というようなところもあるんですね。二次検診をやられたようなところもありますし、また熱心にやって入院まで持っていっておられるような県もゼロではございません。しかし全般的に、文部省が学童の保健の問題としてせっかくこの尿検査を義務づけながら、現実としては統計をとっただけでとまってしまっている。それに対しての対策がきちっとされていない、こういう点を私は痛感するわけですが、この点についての文部大臣の現状の認識と、これからどうするのか。また厚生省としても、生命を預かる立場から、この尿たん白の問題をどう特に学童についてお考えなのか、その点をお伺いして、最後に総理、総まとめとしてこういった問題をもっときちんと指導してもらいたいと思いますが、それで終わります。
  163. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 学童の健康の問題、非常に大事でございますし、また健康を保持いたしますために定期健康診断をやりまして、そのことによってまたかえって不安が生じてくるというようなことがありますと、今度は不安の方が問題になりますから、こういう点は非常に注意しなければならないと、先生がおっしゃいますように私たち考えております。  この尿の検査ですけれども、これはいま先生もおっしゃいましたように、各県でかなりばらつきがございます。おっしゃいましたように、佐賀県が多い、なかなかパーセンテージが高いということになっております。ただ、これが始まりましたのは昭和四十九年度からでございまして、少し数字を申し上げますと、全国平均で申し上げますと、たん白検出者の率は小学校で一・四二%、中学校が二・六五%、高等学校が二・七七%、幼稚園一・八二%が平均でございます。そのうち、腎臓に疾患があると認められる者が、小学校〇・一一%、中学校〇・二〇%、高等学校〇・二五%、幼稚園〇・〇四%でございます。ただし、申し上げましたように、府県別にばらつきがありますので、そこに二つの問題を生じます。  一つは、検査方法というのは、私どもは専門家でございませんからもうひとつよくわかりませんのですが、ただいま厚生省の方からも御説明がございましたように、なかなか微妙なものでありますようで、そういう点で、また取る時間などによって変化が出てくるというようなことも聞かされております。そうしますと、厚生省にも、いま大臣からお答えがありましたように今後いろいろ御検討になっていくそうでありますから大変ありがたいことで、私たちはぜひそういう方針を進めていただきますと、初めの目的どおり、やはりこのたん白を調べまして、そして腎臓疾患の早期発見ということができる方向に向かえるのではないだろうか。また、その間におきまして不安を持つ人が出てまいりますから、これは教育委員会に話しまして、そして教育長を通して学校でよく説明をして、こういう段階でありますからいろいろ問題も生じている点があるというふうにするようにいたしております。  お尋ねの竜神村のケースは、特になかなか変化がございまして、心配する向きもありますので、この点も、私は先生のように医術の専門家でないですから、医者とそれから患者の非常に微妙な関係というものを十分把握する能力がないんですけれども、しかし大事なことと思いますから、竜神村の場合にも村の教育長を通しまして御家庭の方々の御理解を得るように、いまそういう方法も併用して、そこで二つの方法、つまりやり方の改善、これは厚生省でお考え願う。またその間において、教育行政の方ではなるべく御家庭、学校で御理解を願う、こういう方向で進んでおりますし、また、こういう方向を一層強化しなきゃいけない、こう考えております。
  164. 田中正巳

    国務大臣田中正巳君) 学童のこの種の検診については、ただいま文部大臣が申されましたとおり、文部省系統でおやり願うんですが、学童以下の小児につきましては、三歳児検診においてこの種の調査をやっているわけであります。そして、それに出ましたものにつきましては、小児慢性疾患対策で腎疾患の治療研究をやっているわけでございまして、そうした方向でさらに施策の充実を図っていきたいというふうに思っております。
  165. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 検査のやり方はどうでしょうか。
  166. 田中正巳

    国務大臣田中正巳君) 検査のやり方については、今後とも専門家の知識を結集をいたしまして、さらに掘り下げていくようにいたしたいと、かように考えます。
  167. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理、何かありますか。
  168. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 学童の定期検診は健康管理の重要な施策でありますから、これが不安を与えるようなことはよくないですから、厚生省、文部省とも十分連絡をとって、できるだけ信頼の高いものにするように努力をいたします。
  169. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして矢追秀彦君の質疑は終了いたしました。  午後一時四十五分まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      —————・—————    午後一時五十一分開会
  170. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を行います。上田耕一郎君。
  171. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まず、公選法問題についてお伺いしたいと思います。  三木首相はこれまで、次の選挙までに結論を出したいと、参議院地方区定数是正について言われておりますが、われわれは、ぜひ今国会参議院地方区定数是正実現したいと、そう思いますが、全政党一致すれば地方区定数是正をおやりになりますか。
  172. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この問題は、私も、選挙制度改革は、衆議院参議院も一体のものとして提出をできれば、それが一番好ましいと思って努力をしたわけですが、参議院のは、定数是正の問題も全国区の問題も、各党間の意見一致を見ませんでした。衆議院の方は全国区という制度もありませんし、定数是正の問題については各党間の意見一致したのです。共産党の場合は私よく知らないんですが、ほかの党は一致をしたわけですね。共産党も定数是正については一致したのじゃないかと思うんですが、そういうことで、参議院の場合は各党間の意見一致を見なかったわけですから、どうしてもこれは大問題ですから、院の構成に関係する重要な、参議院選挙制度はどうあるべきかということは重要な問題ですから、あんまり拙速というものはよろしくないと、少しやはり時間をかけて検討する方がいいと思って、両方成案を得るまで選挙法改正は手をつけぬというのも一つの行き方かもしれぬが、一歩でも前進したらいいというのが私の行き方ですから、そういう意味からして、今回提出をいたしたわけですが、いろいろ意見一致してない問題ですから、各党一致すればむろんいいんですけれども、この国会中に、限られた国会中にこの問題で意見一致するという見通しを持つことは現実的でないと思いますので、少し時間をかけて、そのかわりに、これ、いつまでも放置するとは言わないわけであります。次の参議院選挙までには結論を出したいと、こういうことをお約束しておるわけですから、そのように御了承を願いたいと思うのでございます。
  173. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 一歩でも前進させたいと、参議院の場合にも一歩前進が必要だと。もし、じゃ全国区の場合について各党意見一致しなくても、地方区定数是正について各党意見一致すれば、これは一対五になっておるわけですから、これを直すのは一歩前進になると思いますけれども、その場合、全国区問題は差しおいても、地方区定数是正だけおやりになるというふうに考えてよろしいですか。
  174. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御承知のように、参議院というものは野党与党というものの関係において国会運営されていっておるわけです。自民党の場合は、選挙制度改正する場合には、できれば全国区と地方区定数問題も一遍に選挙制度改正として扱ったらどうかという意見が相当あるわけです。そういうことを考えてみますると、それは各党間の意見国会において一致するということならば、これはもう政府は、国会において与野党間の意見一致するということになれば、それはやっぱり修正というものは原則的に可能であることは当然ですけれども、いまの状態で自民党も含めて与野党意見一致するという可能性は、あれば、これは国会でそういう意思が決定になれば国会の意思として尊重をすることは当然ですが、そういうところまでいくという見通しが、限られた会期内で私は持つことは現実的ではないと言っておるのは、どうもちょっと現実的ではないということは、なかなかそれは困難ではないのですかという見通しを言っておるのでございまして、与野党間でいろいろお話しを願って、皆が一致するというようなことになれば、それはもう政府として何も言うことはございません。
  175. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも少しはっきりお伺いしたいのですが、全国区制度の改正も含めて、これができなければ地方区定数是正はやらないと、いわゆるワンセット論に政府も立っているのですか。
  176. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはいま言う、少し時間をかけて選挙制度全般検討するというときに、全国区の問題もやっぱり問題ですから、いろいろ各党として、いまのあり方は検討したらどうかというので、定数是正の問題もあり、全国区の問題もあると。これはだから、選挙制度全般として検討するときには、両方とも一つのやっぱり課題たり得るということで、これとが密接に関連はあると思いますよ。しかし、これはもう絶対に不可分のものだとも思いませんが。しかし選挙制度としては、全国区と地方区定数問題というものは無関連とは私は言えない。関連性もある。しかし、そのもの自体は、これはもう全然それは切り離して考えられないというものだとは思いません。
  177. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 関連があるようなないようなですけれども、やはりこれワンセット論に立っているというのは、やっぱり自民党の党利党略に非常に関係があると、そう断ぜざるを得ません。  次に、公選法問題に移ります。  福田自治大臣にお伺いします。福田さんは、九日の参議院会議の答弁で、私どもの内藤議員の質問に対して「選挙運動の機関紙の内容は、いろいろ幅広くもできるというようなことを衆議院で言ったじゃないかということを御質問でありますが、そのようなことを衆議院で申し上げたことはございません。」と、そう本会議で答えられております。しかし、衆議院公選法特別委員会、六月四日、山田議員の質問に対する答弁で、「選挙に関するという意味の内容でございますからして、非常に幅広く理解すればまた狭くなるし、ある程度幅を広くする場合もないとは言えません。広く解釈できないとここで断定するわけにいかない。」と、はっきり答えておられますけれども、この矛盾はどういうことですか。
  178. 福田一

    国務大臣福田一君) ちょっといまお読みになった趣旨が私によく理解できませんでしたから、もう一遍ちょっとお願いします。
  179. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 選挙に関する報道、評論にその号外が当たるかどうかという問題を山田さんが質問になった、この内容ですね。そうすると、ごもっともな質問だと。本当にこれが選挙に関する報道、評論であるかないかについて、いろいろわからぬおそれが出てくるがというのに対して、ごもっともな質問だと。「選挙に関するという意味の内容でございますからして、非常に幅広く理解すればまた狭くなるし、ある程度幅を広くする場合もないとは言えません、広く解釈できないとここで断定するわけにはいかない」という答弁。いろいろ解釈のしようがあると思う。
  180. 福田一

    国務大臣福田一君) わかりました。
  181. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それをあなたは、本会議ではそういうことを答えたことがないと否定しているわけですね。
  182. 福田一

    国務大臣福田一君) いや、その意味が、幅広く何でも解釈すべきだと、こう言ったという御質問でありますから、私が衆議院で言ったのは、そういう意味ではございませんと、幅広くという言葉を……
  183. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 広くも狭くも解釈できる、いいかげんじゃないですか。
  184. 福田一

    国務大臣福田一君) いやいや、それは広くとか狭くとかという意味は、ビラ問題はどういうことかと言えば、選挙運動というものは大いに広く何でもやれるようにすべきであると、こういう意見がありますね。ところが、選挙法自体では、ビラについては個人の名前を入れたりあるいは写真を入れたりして、そうして、それがもう個人の選挙運動と見られるようなビラ、こういうものは認めないということになっておるわけです、現行法でも。だから、私の申し上げたのは、選挙に関する運動ということから言えば広く見ることはできる、しかし、私がこの法律、現行法で見ればそういうようなものは規制をされておるということになる、こういう意味で私は申し上げたつもりであります。言葉が足りないでその意味がもし間違ってとれるようならば、これは私の発言が誤りでございまして、私が言いたいと思うことは、選挙運動というのは、それはもう当然、総理も言っておられるように、できるだけ広く解釈すべきものであるが、しかし、かといって無制限にするわけじゃないんだと。だから公選法という規定がちゃんと現在もあるわけです。しかし、その公選法の中で、ビラの問題に関することになりますと、これは——機関紙ビラですよ、私の申し上げておるのは。機関紙ビラということになれば、これは、機関紙の号外は幾らでも出せるんです。これは広く解釈して幾らでも出せるんですよと。しかし、その中に個人の選挙運動と同じようにとられる、たとえば、ぼくもずいぶんビラを見ていますけれども、ビラの真ん中に写真を大きく入れて——人の名前は言いませんけれども、かえって誤解があるから。そして何かこう、いろいろ書いて、われわれの党はこういうものをあれしているとかなんとか書いたようなビラが相当出ておりますよ、いままででも。これは法律の認めて——法律の趣旨というものは個人の選挙運動ができない、そういう意味で、ビラ、この機関紙の号外で選挙運動はできないんだという趣旨を逸脱して、そして、そういうビラが散布されておる、そういうものはいけないということになるんです。だから、広く解釈した場合には、それは何でも、号外なら何でも出せると、こういうふうにおとりになるかもしれないけれども、しかし、そういう意味ではありませんよと。そういう選挙、個人の運動に類似する、もうほとんど個人を推薦すると同じようなビラを出すということは認められないと、こういう意味であります、と言ってお答えしたつもりであります。で、けさの実は矢追さんのお話があったときも、総理もそういうお答えをなさいましたし、私もそういう答えをいたしておるのでありまして、その間においてそういうような、衆議院において私は広く解釈ができると言ったじゃないかという御質問があったようでございますから、私はその意味は、いま言ったように、法律の意味をそういうふうに広くとって言えば幾らでもこの広報という、ビラというものは出せますよと。しかし、選挙の運動に、もう個人を推薦すると同じような、推薦文のようなビラというものはこれは認めるわけにいかない、これはもうちゃんとはっきりしておるんですと、そういう意味のことを私は申し上げておる、こういうことを言ったわけであります。
  185. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今度禁止される選挙に関する報道、評論を掲載した号外と、自由だという政党政策その他の機関紙号外との区別、この内容を厳密にお答えください。
  186. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたしますが、それでありますから、政党機関紙ですから、政党政策をいろいろ、たとえば、どういう文字であらわされる、大きい活字であろうと小さい活字であろうと、あるいは非常に工夫をされてはっきりわかるようにするというような意味で号外をお出しになるということなら、私はこれはもう、機関紙号外ですからね、これはやむを得ないですね。しかし、その中に写真を載せたり、それから、だれそれが今度立候補しておると、であるがわが党は実はこういう政策をやっているというふうに言いますと、だれそれが立候補してるということとわが党の政策ということと見た場合に、だれそれが立候補してるというような名前が入って小さく出してあるんで、政策の方をうんと大きく出したんだからそれでもいいじゃないかということにすると、限界がわからなくなるでしょう。そこで、大小にかかわらず、そういう名前を入れたり、それから写真を入れたりするようなものは疑問が起きますから、そういういいという方にとられやすくなる。おれのとこは小さい活字でだれそれがということを書いただけじゃないかと、何もそんなに選挙運動と見ないでもいいじゃないか、ということになると、制限が、それならこれだけの字ならいいけれど、これだけ大きくしたらどうなるんだというような差別ができなくなるでしょう。だから、名前とか写真を入れるのだけは——入れたのはもう認めないということにいたしたいと、こういう意味でございます。
  187. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まあ政府も、それから修正案を出した社会党も、政策ビラは自由なんだと、共産党がそこを禁止されるかのように言うのはおかしいおかしいと言われていますけれども、そこが問題なんですよ。あなたは六月九日の参院本会議で次のように言っている。「選挙に関する報道、評論を掲載した号外であるかどうかは、その号外の記事全体を総合的に判断して決めるべきものでありますが、たとえば、立候補の状況、選挙に際しての各候補者政党の政見、公約あるいは」「選挙に関する報道、評論を掲載した号外と考えております。」——政党の政見、公約ですね、これが載ったのはいかぬ、禁止される号外だと、あなたはっきり本会議で言っているんですよ。これはどうですか。
  188. 福田一

    国務大臣福田一君) 私がもしそういうような発言をしておったといたしますれば……
  189. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 事実です。
  190. 福田一

    国務大臣福田一君) いやいや、だからそれは「すれば」ということで申し上げておる。それは私の誤りでございます。私の……
  191. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 本会議の答弁、取り消しますか。
  192. 福田一

    国務大臣福田一君) いや、本会議の答弁はそういう意味で私は申し上げたつもりではございません。しかし、いけないということであれば……
  193. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、「政党の政見、公約」と書いてある。
  194. 福田一

    国務大臣福田一君) それが非常に疑義を起こすようであれば、はっきり取り消さなければいけないと思います。
  195. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大問題ですよ。
  196. 福田一

    国務大臣福田一君) いや、それは大問題でたとえあってもなくても、私は間違っておるんですから、取り消さなければなりません。もしそういうことで……
  197. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 取り消しますね。
  198. 福田一

    国務大臣福田一君) ええ、取り消します、もしそういうことであれば。速記録を見て——私の方で見ます。そしてそこが間違っておれば、これは取り消さなければいけない。私がいま申し上げたことが本来の趣旨なんです。私が先ほど申し上げたことが本来の趣旨であって、号外というものは、機関紙号外というものは幾らでも出せますということなんです。しかし、名前を入れたり写真を入れたりするようなものは、これはもう今後は認めない、こういう趣旨と御理解をいただきたいと思います。
  199. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 じゃ、本会議でのこの答弁を、速記録を見てこういう言葉があったら、「政党の政見、公約」、これは取り消すということを確認したいと思いますが、心にもないことをチラと言うっていうんじゃないんですね、本会議での答弁なんですから。だから、ついこういう言葉が出てくるんですよ、政党政策選挙に関係するものは禁止しようという気持ちがある。  で、この答弁は最後には、その認定は「最終的にはやはり司法当局によらざるを得ないと思います。」と、そう言っている。だからわれわれは、今度の公選法というのは、機関紙号外について、選挙に関する報道、評論と言いながら、政策ビラは自由だ自由だと言いながら、結局司法当局がその具体的な、この号外は禁止すべきものかどうかを判定すると、こういう危険なものだと、これは政党活動、政治活動を司法当局の判定によって規制するものだと、こういう点を問題にしているのであります。自治大臣、どうですか。
  200. 福田一

    国務大臣福田一君) それは、そのビラのと言いますか、この広報の問題はなかなか昔から実は扱いがむずかしい問題なんです。それで、いま私が申し上げましたが、もうこの選挙についてこうである、こうであるというようなことを書かれますと、たとえば今度の、いま行われている選挙について、わが党はこういうことをして、こういうことをするんだとかなんとかという、書き方の内容でちょっと疑問が出てくる場合があるんです。これは事務的に、まあもしなんでしたら私から——いま事務が来ておりますから答弁させますが、そういう疑問があるわけなんです。だから、そういう号外はできるだけ私は自由にすべきだと思うんです。私はそれは自由にすべきものだと思うが、個人の名前を入れるとか、あるいは写真を入れるとか、あるいは一つの政策にしても、純粋の政策を述べておられる分には、これはわが党の政策はこうであると、こう言うんならいいが、この選挙についてのわが党の政策はこうであるということになると、いささかここに問題が起こり得るという解釈をわれわれはとっておるわけです。そのことについてはもしあれでしたら、いま事務が来ておりますから、事務から答弁をさせます。   〔上田耕一郎君「おかしいですよ、選挙に関す   る公約、政策と、これは政党政策はそうい   うもんですよ」と述ぶ〕
  201. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 不規則発言は御遠慮願います。
  202. 福田一

    国務大臣福田一君) それじゃ選挙部長からその点は明快に答弁をさせます。
  203. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 御指名でございますのでお答えいたします。  選挙に関する報道、評論と申しますと、まさに選挙に関する事実の報道であり、また選挙に関する事実についての論評でございますから、少なくとも当該選挙に関したことであるということは言えるかと思うのでございます。そこで、先ほど大臣が申し上げましたように、一般的な意味の、かねがねからやっておられる通常の党の政策というものが載っておるものは、これはまあ一々選挙に関すと言えないであろう。しかし、当該選挙になって、わが党はこういう公約を掲げ、あるいはこういう政見と申しますか、考え方を持って選挙に臨んでやっておるんだということになりますと、それはやっぱり選挙に関する報道、評論であると言わざるを得ない。だから、それでそういった意味での制限ということであろうかと思います。
  204. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 重大な問題だと思うんですね。安保条約廃棄ということをわれわれずっと掲げているけれども、今度の選挙で安保条約を廃棄して中立にしなきゃならぬということを書かなきゃならぬ。物価値上げ反対ということを掲げているけれども、いまのようなこういう状況の中で、物価問題についてはこういうふうにわれわれは考えなきゃならぬ、歳入欠陥はこうしなきゃならぬということを選挙で訴えますよ。そうすると、これはいかぬということになれば、何を書けるんですか。
  205. 福田一

    国務大臣福田一君) いまお話があったようなことは、私は決して触れるとは思いません。たとえば、私はたとえばの例ですからここで申し上げますがね、たとえばある選挙区であなたの方で号外をお出しになる、どなたかが立っておいでになるということになりますね。そうすると、そこの地元において、一つの河川の問題だとか、あるいは橋をかけにゃいかぬとか、あるいは道路を直さにゃいかぬとかというような問題があるとしますね。いままでは、そういう問題には触れておらなかったけれども、選挙になったときに、わが党はこういうような、この種の橋のようなものはこれは当然かけるべきものであると考えると、こういう記事を入れますと、それは私は、一つのやっぱり何か一人の人にすぐ結びつくようなことになりますからね。選挙部長が言っているのはそういうことで、ふだんから皆さんがおっしゃっておられることをここで禁止するなんて、そんな非常識なことをわれわれは考えているわけじゃございません。しかし、政策である、これはわが党の政策であると言われれば、政策にはなるんですよ、その選挙の期間中といえども。政策を新しくつくられたり、あるいは変更されたりすることはないとは言えない。ところが、それが個人の利益に結びつくような問題が出てくると、これは非常に疑義が出てくる、こう思うわけなんです。だから私は、そういうようなものは、やはり選挙に関するものとして取り締まるべきではないかと。たった一人しか出ていない人が、そこの地元の橋の問題やなんかあったときに、たとえば県連なら県連で、わが党はこういうものはこうしなきゃならないと、こう考えるということをお書きになった——そんなことをされたとは言っていませんよ、私はいま。いままであなた方がそういうことをされたとは言わないが、そういう書き方をすると、これは私は非常に問題が起きる、選挙に関係のあるようになるわけであると、そういう解釈をとらざるを得なくなるんじゃないか、こう思うんです。どうお考えですか、そういうことについた場合。私はちょっとやっぱり利害誘導みたいな、何かやはり政策だと言って書けば何でも書けるということになると、これもまた一つの問題がある。しかし皆さんがそれは、安保条約に反対であるとか、あるいは共産党がいつもいままで主張されているようなその主義、政策をどんなに並べたって、お書きになろうと、そんなことは当然ですよ。そんなことできないような選挙法というものは、われわれはそういうものを規制しようとまでは、絶対に考えておりません。これだけははっきりさしておいてもらいます。
  206. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 聞けば聞くほど大問題です。第一に、これまでは個人に関する選挙ビラがいかぬと言われた。ところが、聞いてきますと、そうじゃなくて、いろんな政策問題も入ってくるという。いけない政策は、全国的な当然政策ならいいけれども、地域の政策がいかぬように言われる。地域の政策というのは、地方選挙のときは、それぞれ県やら市町村全部つくるわけですよ。三番目に、その選挙になって初めて出した政策、これがいかぬと言われる。しかし、選挙になって初めて出したのか、もとから出したのか、橋をつくれということをいつから言っていたのかなんて、これ、だれが判定するのかという問題が出てくる。四番目に、結局このビラが違反かどうかというのは司法司直が決めるということになる。こうなりますと、大変な問題。結局、政策ビラ自由だ自由だと言いながら、実際上、政策ビラ国民が一番関心を持っている問題について各党がどういう政策を持っているかということを具体的に答えるものができない。抽象的な物価値上げ反対、安保条約反対あるいは賛成とか、そういうものしかまけないというようなことになるじゃないですか。だからこそ、一般の大新聞も、今度の公選法改正問題で、ビラ規制問題は削除しろという圧倒的世論になっている。一番この肝心の選挙に関する報道、評論の内容が、自治大臣の答弁がこういうふうにぐるぐる変わるわけですから、これは非常に大問題です。三木首相、ひとつこの問題についての統一見解を明確に出していただきたい。
  207. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政党政策などについては法定ビラというのがあるんですね。これはもう自由で幾らでも配布できるんですよ、法定ビラ。これで規制しようというのは、個人の候補者と結びつくような形で、そうして個人の選挙用の文書というものは制限を受けているですわね、厳しく。それに、個人の候補者と結びつくような形でこの政党の号外が利用されるものを規制しようというのであって、政党政策を持って、共産党は共産党としての従来の主張があるわけですから、そんなものを掲載することはどうということはないんです。それが個人の選挙運動——いま私がこういう法案を出すについて全国的なビラというものを見てみたんですよ。皆個人の選挙運動と結びつかないと余り効果ないですからね。一方にあるんですから、法定ビラというのがあるんですから。それはもう政策なら何でも言えるわけですから、その方はもう自由に、選挙法に抵触しないで使えるビラがあるにかかわらず、無制限に配布できるんですからね。それをおやりにならないで、号外というものは頻繁に発行されて、まあ私が見た限りでは皆結びついているんですね、個人と。そういう形で、個人と結びついた選挙文書というものがそんなに無制限に配布できるならば、選挙文書というものを制限してある現行のこの選挙法というものが、もう根底から、何のためにはがきを何枚とかいってするのか意味をなさなくなりますから。これは皆候補者が同じような、イコールチャンスで戦えるようにしたらどうだということで規制するのであって、個人と結びつくということが一番大事だ。皆大抵私か見ましても——実物、上田議員ごらんになりましたか。もう皆やっぱり個人の写真が載って、投票依頼してあるのもありますよ、中には。また投票依頼までいかないまでも、この候補者はいろんな意味で、これは非常に熱心な人であって、非常にすぐれた候補者であるというふうに結びついたようなビラが、私が見たビラではもうほとんどと言っていいですね。個人と結びつかないで政策だけを宣伝するなら他に幾らでもあるんですから、その機会が。やはりあの号外、機関紙の号外というものの妙味は個人と結びついておるところに妙味がある。そこに問題が、選挙文書というものを規制してある現行の選挙法との間に非常にやっぱり——ここは、そのことが許されるならばいままでの選挙文書制限がおかしくなるではないかと。現行でも、現行の選挙法の規定でも私はいけないと思いますね、それは。それだから、いまでもそんな改正をしなくてもできるじゃないかと言いますが、これが相当に広範にそういう慣行が行われている。政党によったら、それを余りおやりにならぬところもありますから、ある政党はその法律を守り、ある政党は法律を守らないということはフェアでないではないか。そういう意味で、いままでもこういうことは厳格に言えばいけないんだから、こいつを法律の上で明文化して、選挙というものを公正な選挙をやれるようにしようというのでありまして、それは個人と結びつかないような問題という、そういうふうな問題というもの、そのことを頭に入れてこの改正案を出したんではない。皆実例が、個人と結びついておるものばかりがほとんどの実例であるので、そこは少しやはり選挙ルールをつくっておかないとどうもやっぱり選挙が皆公正にフェアに行われないのではないかという点からこういう改正案を出したということでございます。
  208. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは大問題ですよ。閣議を開いて意思統一してくれないと、総理大臣と自治大臣と選挙部長の言うこと全部違うんだから。総理大臣の言うことは、個人と結びつくのはいかぬ、結びつかないのは幾らでもまけると。聞いてみますと法定ビラじゃないですか。自治大臣は、先ほどの、政党の政見、公約、これはいかぬと本会議で述べたのは速記録を調べて削除すると、そういうことを言われた。ところが、選挙部長が出てきて、選挙に際して出した政見、公約、こういうものはいかぬと、そう言うんですね。明白に食い違っている。これだけ大問題になっている公選法の中心的な概念についてこんな不統一で審議できないですよ。ちゃんと統一見解を出してください。削除するのかしないのか。——選挙部長に聞かなければわからないんですか、あんたは。自治大臣、もう一度勉強し直すんですな。ここじゃ無理だよ、不統一なんだから。
  209. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 大臣は後からお答えをいたしますけれども……(「だめだよ、だめだよ」「大臣だ、大臣だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  210. 福田一

    国務大臣福田一君) まず選挙部長から答弁をいたさせます。
  211. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 先ほども申し上げましたとおり、選挙に関する報道、評論を記載したものということでございますから、その選挙に関したことということになりますと、いろんなものがございましょう。それは選挙に関する事実の報道もございますれば、いま選挙の中でこういうこういうふうになっているという論評もございましょう。まさにそれが事実の報道であり論評である、評論ということになろうと思います。したがいまして、これはいろいろと幅広いわけだと思います。したがいまして、わが党がこういう政策であるというだけのものだったら、かねがねの政策ならそれはいいわけですが、今回わが党はこういうことを掲げてこうやっていると言うと、やはり選挙に関した報道であるということにならざるを得ないわけでございます。だから、やっぱり選挙に関連するかしないかということで判定するんだと思うのでございます。  ただ、今回の趣旨は、これは先ほどからございましたように、そういう機関紙の号外というものが、総理が言われましたように、個人的なものに非常に使われ過ぎるというようなこと等もございまして、選挙期間中は御遠慮を願いたい、そういう趣旨である、こういうことが統一した考え方でございます。「食い違っている」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  212. 福田一

    国務大臣福田一君) これは御指摘のように、疑義を起こしておいては法律ができた場合にも大変施行上問題が起きますから、これはおっしゃるとおり政府のはっきりした統一見解を出すべき問題だと思います。そこで、ちょっと時間をおかりをいたしたい。この予算委員会が終わるまでに統一見解を出すことにさしていただきたいと思います。
  213. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 公選法改正の重大内容について、きわめて疑義のある解釈しか政府は持っていないということが明らかになりました。ぜひ明確な統一見解を出していただきたいと思います。  私は、次にベトナム問題に移りたいと思います。  ベトナム戦争は第二次大戦後最大の戦争でありました。それだけに、今度のベトナムの完全解放は文字どおり世界史的意義を持っていると思います。あるいはロシア革命、中国革命と肩を並べられるような国際的な影響を持つものであります。それだけに、このベトナム戦争に一体日本がどういうかかわり方をしてきたかという問題は、国会としても本気で検討しなきゃならぬ。そこから日本外交の進むべき道を定めなきゃならぬほどの大きな問題だと思います。  そこで、三木総理にお伺いしますが、ベトナム戦争と——今度終結しましたけれども、そのベトナム戦争の全経過と、それに対する日本のかかわり方から、どういう教訓を政府として引き出していらっしゃるか、お伺いします。
  214. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) フランスがかつて植民国としてインドシナ半島を制圧しておったわけでありますが、フランスが撤退をいたしました。このことは、歴史的に見ますと、ベトナム民族がいわゆる民族自決によって独立を目指したものというふうに考えるのが正しいと思います。  ただ、そこで民族自決によって恐らくは自分たちの民生の向上、社会的不公正の是正ということを念願として民族運動を開始したと考えられますが、そのような目的を達成する方法あるいは基本思想において、それを社会主義的方法において行おうという人々と、いわゆる民主主義的方法によって達成しようと、自由主義的と申しますか、そういう考え方の違いがございまして、それをめぐりまして同じ民族の間で対立が起こり、そうしてそれが紛争に発展をしたというふうに考えられます。そうしてそのようなイデオロギーの相違に対して、そのおのおののイデオロギーを持つ大国がいろいろな形でこの紛争の双方に支援を与えたのではないかというふうに考えられます。しかとしたことは申し上げられませんが、そうであったろうというふうに考えられる。したがいまして、やや南北の対立というものは、幾らかその背後にあるイデオロギーを同じくする大国自身の対峙になったような感がございましたが、なかんずく米国がいわゆる自由主義的方法を掲げます——簡単に申せば南でありますが、これに対して支援をしたことが、事柄の性質上非常に広く世の中に報道をされ、その内容もほぼ明らかでございましたがゆえに、あたかも内戦の片一方に干渉したというような結果になったわけであります。結論は、結局そのような自由主義的な方法による民族自決、民生の安定向上というものの考え方が人々の受け入れるところとならずに米国は先般撤退をいたしたわけであります。  わが国としては、この間にいわゆる自由主義的あるいは民主的な方法によって民族の自決を図り、民生の向上を図っていくという、そういう目的にはわが国の立場から共感をいたしたわけでありまして、その限りにおいて何がしかの援助等をいたしました。しかし、恐らく米国の立場から言えば、わが国のそのようなかかわり合い方は、はなはだ日和見的であって不十分であったというふうに見られておったと思います。  ともかくも結論は、イデオロギーに基づくそのような支援というものが、ことに米国側の場合実を結ばずに、あるいは現地にそれが根づかずに、結局米国が撤退することになり、そうして恐らくは、ベトナム民族は、これから彼らの言う民族自決、そうしてその方法は勢い社会主義的方法をとることになろうと思いますが、そのような形で戦後の民族自決をなし遂げていくであろう、そういうふうな見方をいたしております。
  215. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 サンフランシスコ平和条約の署名国にベトナム国というのがありますけれども、その政権の性格並びにフランスとの関係をお伺いします。
  216. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) サンフランシスコ平和条約に署名いたしました政府の代表は、その当時においてはベトナムを正統に代表していた政府として署名をし……
  217. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 全ベトナムを代表していたのですか。
  218. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) ベトナムを代表する政府として署名をしたわけでございます。
  219. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 フランスとの関係は。
  220. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) フランスが承認をしておりましたベトナム政府でございます。
  221. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 何にも知らないなあ。このベトナム国はバオダイ政権ですよ。で、フランスが香港に亡命していたバオダイを探しに行って、そこでフランス・バオダイ協定を結んで、サンフランシスコ平和条約を結び、一年前につくった国ですよ。フランス連合に編入していた国ですよ、そうじゃないですか。全ベトナムを代表していやしない。ベトナム民主共和国がちゃんとあったんだ。条約局長、そんなこと知らないのかなあ。いやになっちゃうな、これ。きのうぼくはそれを調べておいてくれと言ってあるじゃない。いきなりやっているんじゃないですよ。ちゃんとサンフランシスコ条約の署名国のベトナム国、調べておいてくれと外務省に言ってあるんだよ。それでそんなことしか出てこないのかなあ。いやになっちゃうな。抜き打ち質問しているわけじゃないですから。
  222. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) その当時ベトナム政府がフランス連合に加盟しておりましたことは事実でございます。しかし……
  223. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 バオダイ政権でしょう。
  224. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) さようでございます。しかし、政府が従来御説明してきておりますのは、その当時においてはそのベトナム政府は全ベトナムを代表する政府としてサンフランシスコ条約に署名をしたということでございます。
  225. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ベトナム民主共和国は一九四五年の八月革命でできまして、その翌年にちゃんとできているんですよ、全土に総選挙をやって。  じゃその次に、一九五九年のベトナム賠償協定、これの相手国のベトナム共和国というのはどういう政権ですか。それとアメリカとの関係を述べてください。それはベトナム国と違うんですよ、ベトナム共和国、(「議事進行」と呼ぶ者あり)それも調べなければ出てこないのかね。きのう言ってあるじゃないですか。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  226. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) いま質疑中、答弁があってから。
  227. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) ベトナムとの賠償協定を締結いたしましたときの相手国はベトナム共和国でございます。そのベトナム共和国は全ベトナムを代表する政府として賠償協定に調印したということでございます。
  228. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは宮澤外相の答弁とも全然違うんですね。宮澤外相は二つのベトナムがあったと、南と北と。方法論が違って、片方は社会主義、片方は自由主義だと。違うじゃないですか。全ベトナムを代表するって、また違うのね、条約局長と、どうですか。
  229. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 速記録をごらんくださいますとわかりますが、二つのベトナムが存在したとは私は申しておりませんで、一つの民族の中で二つの方法論を、相異なる方法論をとる者があって、その間に紛争が起こったと申し上げております。
  230. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは宮澤外相、ベトナム国と——ベトナム共和国、これは全ベトナムを代表する政府だと思いますか。
  231. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはなんでございましょう、私はディエンビエンフー後のことを申し上げておったわけでありますけれども、それが今日の事態に至りますまでの間に、南と北というよりは、やはりイデオロギーの問題で分けるべきだと思いますが、その二つのもともとが、それはトンキニーズとアンナミーズとコーチチャイニーズは違いますけれども、それを大きな意味で一つの民族と考えまして、その間に考え方の違いがあったというふうに私は申し上げております。
  232. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、いや、だから、ベトナム共和国は全ベトナムを代表していると思うんですか、五九年の賠償協定を結んだ相手ですよ。いまそう条約局長答弁した。
  233. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 五九年の賠償協定に関します限り、私どもは全ベトナムを代表するものとして協定を結びました。
  234. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 結んだ。これはとんでもないですよ。宮澤さんね、一九六五年八月十四日に私はあなたと一緒にティーチインに出た、徹夜の。覚えていますか、八月十四日です。そのとき宮澤さんどう言っているかと言いますと、「アメリカはよくそういう間違いをするんで、(笑)」「民主的でない政権を守っちゃうことになるわけですね。そうしてあとになって非常に困っているわけです。いまのサイゴンの政権がさっき合法政権か、非合法政権かっていう話があったけれども、ああいうものは、ぼくらが知っている意味での政府とか、政権というもんじゃ第一ないんだ。」と、こういうことをあなたは言っているんですよ。どうですか。
  235. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは何でございますか。
  236. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ティーチイン、出たじゃないですか。あなたの発言ですよ、ティーチインのときの。ああいうものは、ぼくらの知っている政府や政権というもんじゃないんだ、とこうあなた言われている。
  237. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはこういう関連でございます。つまり、ただいまの話は五九年の賠償協定は全ベトナムを代表する政権と結んだのかと、こういうお尋ねでございますから、さようでございますと申し上げておるので、したがって、いわゆるハノイ政権との間には、私ども公のたてまえから申しますと賠償の問題は残っていないというたてまえをとっております。  それから、いわゆるハノイ政権、北ベトナムというものを私どもが法律上一つの存在として、政権として認めるに至りましたのは、一昨々年でございますか、パリ協定からでございまして、したがって、パリ協定が済みました後、私どもは北ベトナム政権というものを承認し、これと外交関係を開こうとしている。それまで政府立場は、いわゆるベトナム共和国がベトナムを代表するものとして賠償協定も結んだわけでございます。
  238. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、この問題は詰めれば幾らでも詰められるけれども、政府がサンフランシスコ平和条約に署名した政権の性格やら、当時のベトナムの情勢やら、また、ディエンビエンフーというのは五四年でしょう。それから、五四年にジュネーブ協定が結ばれてゴ・ジン・ジエム政権がつくられて、アメリカが総選挙させないで十七度線以下を勝手に国境にしてつくっちゃった。これもアメリカの完全なかいらい政権だ。これはもう天下周知の事実です。そういうものをあなたは全ベトナムを代表する政府だとかなんとか言って、条約局長は答えられない。日本の政府がいかにいいかげんなことをやっていたかということを示していますけれども、私は次の問題に移りたい。  アメリカがベトナムに対する大規模な爆撃を開始する一番きっかけになったのは、一九六四年八月のトンキン湾事件であります。このトンキン湾事件の概要と、その翌日アメリカ上院、下院で採択されたトンキン湾決議について御説明願います。これも言ってありますよ。
  239. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) トンキン湾事件と称しますのは、一九六四年八月二日、ハノイの南東百五十キロを哨戒中の米国駆逐艦マドックス号が三隻の北越魚雷艇から魚雷及び機関砲により攻撃を受けまして、空母艦載機の護衛により魚雷艇一隻を大破、二隻に損害を与えたという事件でございまして、米国政府は、八月五日、同事件をジョンソン大統領の名前によりまして安保理事会に報告し、安保理事会の審議を求めるための同理事会の招集を要請いたしております。これを称して従来トンキン湾事件と称しておりますが、同八月十日、アメリカ議会は、この東南アジアの国際平和と安全保障の維持を促進するための合同決議ということで、大体以下のような決議を採択しておりますが、その決議の内容を御紹介しましょうか。
  240. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ええ。
  241. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 少し長くなりますけれども、決議の要旨は大体三点に集約されます。  まず第一点は、米国議会は、軍の最高司令官たる大統領がアメリカ合衆国に対するいかなる武力攻撃をも撃退し、これ以上の侵略が行われることを阻止するために必要なあらゆる措置をするという大統領の決意を認め、これを支持する、ということが第一項でございます。  第二項は、アメリカ合衆国は、東南アジアにおける国際の平和と安全の維持が合衆国の国家利益と世界平和にとって死活的に重要であると考える。それゆえに合衆国は、合衆国憲法と国際連合憲章に従って、また東南アジア集団防衛条約の義務に従って、自由を防衛するために援助を求める東南アジア集団防衛条約の締約国または同条約議定書の当事国に対して援助を与えるために、大統領の決定に基づいて武力の行使を含むあらゆる必要な措置をとる用意がある。これが第二項でございます。  第三項は、この決議は、議会が合同決議によって先に失効させる場合を除き、国際連合その他の行動によって生じた国際情勢によってこの地域の平和と安全が適正に保障されていると大統領が認定したときにその効力を失うという趣旨のものでございます。  以上でございます。
  242. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ちょっと違うところもありますけれども、まあいいです。トンキン湾事件というのは八月二日と四日、特に八月四日をトンキン湾事件と言う。これに基づくトンキン湾決議が、アメリカ大統領がすべての権限を得て、宣戦布告なしに五十四万の米軍を送り、あの第二次大戦後最大の侵略戦争をやる権限を得た決議であります。  その後、アメリカの上院では、このトンキン湾事件とトンキン湾決議についていろいろ検討してきました。その経過並びに結果について述べていただきたい。これもきのう言ってあります。
  243. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) ただいま申し上げましたトンキン湾決議につきましては、その後、ベトナム戦争の拡大に伴いまして、米国の議会、特に上院等におきましていろいろ批判がございまして、特にフルブライト外交委員長を初めとする上院の外交委員会のメンバーは、米国政府がトンキン湾決議をベトナム戦争のエスカレーションの根拠として発動してきたことに対する批判から、右決議は議会が政府に対してベトナム戦争遂行の権限を白紙委任したものではないという立場主張いたしまして、その後、上院、下院いろいろ政府との間に応酬があった過程はございますが、結局におきまして一九七〇年一月、たしか……
  244. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 七一年でしょう。
  245. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) あ、七一年一月だったと思いますが、一月十日に最終的にこの決議は廃棄されました。
  246. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 トンキン湾事件についての調査はどうですか。トンキン湾事件そのものについてのアメリカの上院の調査結果、どういう問題点が出てきていますか。
  247. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) それは存じておりません。
  248. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 きのう言ってありますよ。きのう言ってありますよ。
  249. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それでは、私の記憶から申し上げます。  このトンキン湾事件なるものが果たしてアメリカの艦船が最初に攻撃を受けたものであるか、あるいはそれは実はいろいろな意味での策謀によってそのごとくに見せかけたものであるかどうかということについて、長い間米国の議会で議論が続きました。そして、これはまあ他国の議論でございますから、私どもは有権的には申し上げられませんけれども、そういう疑いが濃いのではないかというような意見を持つ者が相当多うございまして、それが、最終的に一九七一年の一月でございますか、フルブライト外交委員長が先頭に立ちましてこの決議を撤回したという経緯がございました。  これは私の記憶から申し上げました。
  250. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 なかなか御記憶は正確であります。  これは、公聴会が何度も開かれまして、その結果こういう問題点が浮かび上がったんです。駆逐艦マドックスというのはプエブロのような電子スパイ艦だということも明らかになった。魚雷攻撃はなかったというんです。あの魚雷艇というのは——これはフルブライト議長がそう言っている、あれは魚雷を積んでいないんだと。ベトナムのこういう掃海艇は機関銃しか積んでいないんだということです。また、作戦指揮官の証言によりますと、魚雷の音だと思ったのは自分の船のスクリューの音を誤認した結果であったと、そういう疑いが強い。それで結局、八月四日には何らの事件もなかったということが明らかになりまして、フルブライト議長は、マクナマラ国防長官は公然たるごまかしをやった、私はだまされたと、あのトンキン湾決議のときに、私は、上院で反対票が二票しかなかったけれども、あのときに公聴会を開くべきだったと。アメリカがこういうふうに戦争に巻き込まれるこの悲劇を防ぐべきだったということを六八年に公聴会で述べているほどの事件なのであります。つまり、あのトンキン湾事件というのは全くの謀略事件だったんです。エルズバーグ氏は、七〇年に、全く架空の事件であったということを述べている。それで、トンキン湾事件というのは謀略事件で、その謀略に基づいてつくられたトンキン湾決議、これは、バンディ国務次官補の証言によりますと、数カ月前から準備されていて自分が書いたというんです。事件の起きる前から、決議そのものは数カ月前からちゃんとできていた。謀略的にトンキン湾事件を起こして、それでその決議をとってアメリカ大統領は翌年二月七日からあの大規模な北爆を開始したのであります。全くの謀略に基づく侵略がアメリカのベトナム侵略戦争だった。  ひとつ防衛庁にお伺いしますが、満州事変のときの柳条溝事件、この概要をお話しください。
  251. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これはやはり外務大臣からお答えになった方がいい課題だと思いますが……。
  252. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、戦史研究室というのがあるというので、きのうもう頼んであるんだ、防衛庁戦史研究室というのがあるというんで。
  253. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) まあそういうお尋ねでございますが、旧陸海軍当時のことでもございますし、今日防衛庁の直接所管に属する事項として御説明申し上げる立場にはございません。  ただ、いま御指摘になりましたように、防衛研修所戦史室というものにおきましては、太平洋戦史の編さん刊行を行っておりますし、この戦史の対象範囲は支那事変勃発から太平洋戦争の終了までとなっております。したがいまして、その戦史誌の文書には柳条溝事件は含まれておりませんので、そう御承知おきください。
  254. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この事件はもう非常に有名で、橋本欣五郎大佐演ずる謀略事件ですね。高校の教科書にも、柳条溝事件、日本の関東軍はみずから満鉄の線路を爆破しと書かれたぐらい有名な事件です。自分で鉄路を爆破して満州事変を起こしたんですね。全くの謀略です。日中戦争もそうです。蘆溝橋事件もそうだ。それと同じですよ、このベトナム侵略戦争というのは。トンキン湾事件という、ありもしない事件をつくり上げて、それで決議をとって大規模な侵略行為をやったんです。これをアメリカの議会は徹底的にその後調べ上げて、七一年の一月にニクソンが署名してトンキン湾決議はなくなったんです。しかし、その後二年間まだ大爆撃をやった。その後二年間、じゃいかなる国内法的根拠に基づいてアメリカはベトナム侵略をやったんですか、お伺いします。
  255. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これも他国の憲法のことでございますので、私の理解するということしか申し上げられませんけれども、米国憲法第二条でございますか、大統領は米国の最高司令官でございますから、大統領に与えられました固有の権限として戦争を遂行するということができるという解釈、すなわち、トンキン湾決議というものは、まあこれが錯誤であったかないかはとにかく別といたしまして、そのような大統領の戦争行為に対して議会が支援をするという意味合いを持ったものであって、これが廃止されたからといって憲法で与えられた大統領の固有の権限が失われるものではないという立場で戦争を継続したやに見られます。したがって、それにつきましては、後ほど、御承知のように、大統領の戦争権限についてこれを明確にし、ある意味制限をしなければならないという立法に発展いたしましたことは御存じのとおりでございます。
  256. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、ベトナム侵略戦争というのは、そういうきわめて汚い、きわめて不法な、きわめて凶暴な、間違った戦争だったと思います。ところが、宮澤外務大臣は四月の三十日に、アメリカのこのやり方は崇高な目的だったということを述べられている。私は世界のその日の反響を調べてみましたが、こういうことを言われたのはわが宮澤外相だけであります。キッシンジャーでさえ、ベトナムに軍隊を派遣すべきでなかったということを五日のテレビ放送で述べている。ところが、わが日本の外務大臣は、アメリカは善意をもって出兵したんだと、米国の崇高な目的もベトナムの土壌に受け入れられなかったと言って、こういう汚い謀略に基づく侵略戦争を美化したのであります。こういう発言、取り消しますか。
  257. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私がそう申し上げましたお答えは、このアメリカのベトナムにおける行為は要するに侵略行為であったのではないかといろお尋ねに対してなされたものであります。私が申しとうございましたのは、アメリカがベトナムに対して領土的な野心を持っておったとは思われない。したがって、そういう意味でこれを侵略だと呼ぶことについては私はにわかに同意できません。先ほど申し上げましたように、ベトナム民族が自決をし、そうしていわゆる民生の安定向上を図るためにどのような方法をとるべきかということについて、それが社会的手法であるのかあるいは自由主義的手法であるのかということについてベトナム民族自身の間に対立があって、そうして自由主義的手法をとりたいという人々がアメリカに支援を求めた。アメリカがこれに対して支援をしたわけであって、その間に領土的野心等々があったとは私は思わない。したがって、これを一概に普通の意味で侵略と呼ぶことは私は適当でないと、そういう意味のことは確かに申し上げました。その点については私もいまそれはそのとおりだと思っています。キッシンジャー氏がベトナムに兵隊を送るべきでない、もともとなかったと言っております意味は、それはその戦争目的そのものが間違っていたと申しますよりは、しょせん可能でない目的のためにアメリカが招かれて介入をした、そのことは結局、なすところなくいわばむだに終わったと、こういう意味合いで言ったのであろう。侵略であったからもともとすべきでなかったというようなことを言ったとは私は考えておりません。
  258. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まことにきれいごとにすぎません。政府はいつでもアメリカを信頼すると言っておりました。あのトンキン湾事件が起きたときにも、当時の椎名外務大臣は、アメリカの言うことを信頼する以外にないと、これは国連憲章五十一条に基づく自衛の行為だということを公然と国会で述べている。こういうことが問題になるたびに日本の政府は、歴代の総理大臣も外務大臣も、福田さんも大平さんも三木さんも、みんな外務大臣だった経験がありますけれども、アメリカを信頼する信頼すると言っていた。そのアメリカの政府は、フルブライト外交委員長が言うように、議会さえだましてやっていたんですよ。三木さん、アメリカを信頼するといまだに言えますか。
  259. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカは日本の友好国でありまして、われわれはアメリカを信頼して今後とも日米の友好関係を継続増進していきたいと考えております。
  260. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 こういう答えしか出てきませんけれども、あの国防総省秘密報告書全訳が日本に出ている。アメリカの政府がどういう策謀とどういうことをやっているかと、ここまでひとつ政府は調べていただきたい。こういうものも読まないで、あるいはフルブライト外交委員長の公聴会の記録も読まないで、何にも読まないで、ただ信頼する信頼すると言っていれば、こんな簡単な外交はありませんよ。そういう驚くべき外交をやってきたから、こういう汚いベトナム侵略戦争に日本があれだけ協力してきたんです。もし日本が協力しなかったら、あの戦争はこんなに長く続かなかったでしょう、ベトナムの人々もあんなに死ななかったでしょう。日本がなければベトナム侵略戦争は困難だっただろうとさえ言われているのであります。ところが、そういうことを反省しないで、わが外相は崇高な目的だといまだに言っておる。しかも、この宮澤外相、記者会見の中で、日本としては共産主義に隷属させられるのは不幸であろうという考え方をとってきており、その点では米国と似た気持ちだと。まあ確かに私もこれは認めますが、そういうことを言っている。しかし、ひとつ考えていただきたい。日本の周りにどれだけ社会主義国があるか。ソ連、中国、朝鮮、モンゴル、ベトナム——今度恐らく統一ベトナムができたら、さらに統一ベトナムも社会主義に向かって進むでしょう。ラオス、カンボジアも将来新しい歴史的発展の段階で社会主義に進む可能性もあると思う。そうなれば、七つの社会主義国と日本は隣接して、そう七つの社会主義国の人々と平和共存で進んでいかなければならぬ国なんだ。それを外務大臣は、共産主義に隷属させられると不幸だと、アメリカと同じ気持ちだと。これで一体七つの社会主義国と隣接する日本として平和共存、緊張緩和、その道を進んでいけますか。民族自決を尊重すると何度も首相は言っておられるけれども、これでいけますか。三木さん、いかがですか。
  261. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 各国がどういうふうな政治形態を持つかということはその国の自由であり、そのもとにおいて日本は友好関係を維持していくということは当然のことでございます。
  262. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま三木総理大臣が言われたとおりでありますが、私が申したかったのは、隷属という部分であります。民族が自分の選ぶ道をとるべきであるが、いかなる主義にもあれ、それに隷属をさせられるということは、私は不幸なことであると思います。
  263. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 三木さん、そういう言いわけは私は構いませんけれども、今後の問題として、こういう反共主義の方向ですね。アメリカもベトナム侵略をずっとやるのに、共産主義の侵略から自由を守るということをずっと言い続けてきた。あのアイゼンハワーの回顧録にもちゃんと書いてありますよ。そういうフィクションが今度崩壊したんです。共産主義の侵略から自由を守る守ると言って、自分がああいう驚くべき侵略をやってきた、そういう反共主義の方向を今後とらないと。で、社会主義国とも、反共主義的な方向でなしに、本当に体制の違いはあっても平和共存で進んでいくという決意をぜひお伺いしたいと思います。
  264. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) われわれは共産主義に反対である、この自民党立場は。しかし、各国がどういう政治形態をとるかということは各国の自由で、それが、民族の自決という中には政治形態の選択も入るわけで、それはそれとして、これからの友好関係を築かなければならぬ。日本がその国の政治形態まで干渉することはできません。
  265. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 共産主義反対の自民党の総裁の三木さんが、本当にそういう社会主義国と正しい意味での平和共存の方向を進められるかどうか、これ、今後の問題として見ていきたいと思いますけれども、私、もう一つ問題にしたい。  最近新聞で報道されましたが、西ドイツの週刊誌シュピーゲルは九日発行の同誌で、故佐藤榮作元首相とのインタビュー記事を掲載した。これは佐藤氏が病気で倒れる二、三日前に行われたものだ。対米関係についてこう述べている。米国のベトナム介入は初めから間違っていた、私はジョンソン元大統領にもそのように伝えたと、こうあるんです。これは一体どういうことでしょうか。三木さん、佐藤さんとお親しかったかどうか、いろいろあるでしょうけれども、恐らくジョンソン大統領にこう言ったというのは、六五年、六七年、二回行っているんですね。二回会談をやっている。佐藤首相がジョンソン大統領にこういうことを言った事実を御存じでしょうか。
  266. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 佐藤元総理は、不幸にして死去されたわけですから、いまおいでにならぬわけですから、ここで佐藤氏の発言をいろいろどういうことでそれを言われたのか、そのことは私としてはお答えをすることはどうも困難な問題でございます。
  267. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 六七年の第二回目の会談の結果出た共同コミュニケで、総理大臣は、紛争の正当かつ公正な解決を求めるという米国の立場に対する支持を表明された、ベトナム問題でアメリカの政策支持を表明したんですね。ところが、佐藤さんは、米国の介入は初めから間違っていたと思って、ジョンソンさんにそのように伝えたと、そう言っているんですね。自分は間違っていると思っていて、共同コミュニケでは政策を支持すると、そう述べている。大問題じゃないですか。一体日本の外交は自主的ですか、総理大臣自身はベトナム介入は間違っていると思っていながら、この日米共同コミュニケには、アメリカの政策を支持すると、ジョンソンはこれを非常に喜んだんです。どこの国からも支持されないのに佐藤さんは支持してくれたと。三木さん、この会談にはあなた外相としてついていってラスクさんとも会談をやっている。この点どうだったんですか。大問題。アメリカに隷属させられているじゃないですか。
  268. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま申しておるように、いま佐藤さんが生存されておるならば、そのいきさつというものを聞けばわかるわけですが、いまのインタビューの記事、一々私が佐藤さんの発言の心境を説明するということは、これはできないことでございます。
  269. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、佐藤榮作さんが御存命だったら、証人としてこの委員会に出席を求めたいのですけれども、残念ながらお亡くなりになられた。このときのジョンソン大統領と佐藤氏が一時間十分さしで話し合われたという報道ですけれども、そのときの記録をひとつこの委員会に提出していただきたい。こういうことを私求めるのは、何も興味があって言っているのではないのです。日本の外交にとって大問題だと、これだけの世界的大事件のベトナム戦争に日本はあれだけ協力してきた。ところが、あれだけ長期間首相の座にあった佐藤さん自身は間違っていたと思っていたと。それなのに、共同声明では何度も何度も敬意まで表して、ベトナム侵略戦争に協力してきたのです。自分は間違っておると思う——国民も反対しておるんです。首相が間違っておると思うのに、なぜアメリカに約束させられたのか。私は、これ重大な問題なので、日本の外交の根本問題として、そのときの議事録を、あるだろうと思いますので、ひとつ提出していただきたいと思います。
  270. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは、他国の首脳との話し合いの記録というものを出せと言っておられるのだと思いますので、わが国だけのことではございません。したがいまして、私一存でお出しするということは申し上げられません。
  271. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 佐藤さん御自身でこの問題について話していいと思って、シュピーゲル誌の記者に述べたんですから、私はこれはいいと思う。あなた御一存ではそれはできないでしょうから、ひとつアメリカ政府に、議会で問題になったというので、アメリカ政府にもこの問題の意見を聞いて、合意のもとで可能ならこの委員会に提出していただきたいと思います。
  272. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 検討はいたしますけれども、事柄の性質上、そういうものは、ことに公になった会談ではございませんので、御提出するということは例の少ないことではないかと思いますが、私自身検討はいたしてみます。
  273. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題、ひとつ出していただくように、委員長の方でも御処理願いたいと思います。理事会でひとつ検討していただきたいと思いますが。
  274. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいま外務大臣の御答弁はお聞きのとおりでございます。理事会において検討を要するかどうか、また後刻相談をいたします。
  275. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、ベトナム問題の最後に、ベトナムの戦後復興に対する日本の責任を考えて、ぜひ援助を強化していただきたいと思う。きょう私詳しく述べませんでしたが、日本のベトナムとのかかわりは、仏印進駐のときに、一九四五年に北ベトナム地域で二百万人の餓死者を出したという大きな戦争責任、ここから発しているのです。その戦争責任のあとフランス帝国主義、アメリカ帝国主義の侵略に対して協力してきたと、非常に大きな戦争責任を持っている。そこで、いまベトナム民主共和国との間で当面五十億円の問題、交渉しておるそうですが、南ベトナムのサイゴン政権に対して九十億の緊急援助を一度決めましたね。しかし、崩壊したのでそのままになっている。これはぜひひとつ、いまサイゴンでは食糧問題その他大変な問題ですので、南ベトナムの臨時革命政府に引き継いで、この九十億円をぜひ援助として引き継ぐ必要があると思いますが、その点いかがでしょうか。
  276. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 当面、先ほど総理も言われましたような外交の基本から、相手国によって、わが国のつき合いを変えるということは私どもいたさない基本の方針を持っておりますが、ことにインドシナ半島におきましては、当面難民の救済、次の段階として、それらの難民がいわゆる生業につくための定着と申しますか、そのための必要、二段階にわたって人道主義的な援助を必要といたすと思います。で、ただいまのところ、私どもは、それを国際赤十字等、あるいは機能いたしますれば、国連を使いましていたしてまいっておりますけれども、やがて当該国の内政が整うに従いまして、いわゆる相対で、バイラテラルでそういう援助をすることが可能になるかと思います。そのためには行政能力の回復というようなことが必要かと思いますけれども、そういう段階になりましたら、必要に応じましてそのような援助をいたしてまいりたいと考えております。
  277. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 次に、安全保障問題に移りたいと思います。六九年の佐藤・ニクソン共同声明で、総理大臣は、現在の情勢のもとにおいては米軍の極東における存在がこの地域の安定の大きな支えになっている、こう述べておりますが、いまのベトナム後も三木内閣は、米軍のアジアにおける存在が必要だと考えておりますか。  それから、フォード大統領との会談、あるいはその共同声明についても、こういう認識でお臨みになりますか、この点首相にお伺いしたい。
  278. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカの方針でも、ニクソンドクトリン以来、アメリカが普通の場合に介入をしない、やはりその国の意思に従って自助的な努力をしてもらいたいということが、ニクソンドクトリンのときにも述べられておるわけで、したがって、アメリカ自身としても、今後アジアに対してのアメリカの政策というものは、その後変化が起こっておるわけでございまして、したがって——それはしかし、アメリカは約束は守ると言うわけですから、アメリカの約束は守ると言うのですから、一概に全般としては言えないと思いますね。ある地域によって。そういう約束のあるところは、アメリカは約束はあくまでも守ると言うのですから、そういう約束は果たすでしょうけれども、軍事的に介入するというようなことは、これからはやっぱりアメリカはやめていこうという方針にあるわけであります。既成のいままでの約束以外に、アメリカがさらに東南アジア地域に軍事的に介入してくることは私はないと思います。
  279. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 宮澤外相、朝鮮における米軍の撤退については、どうござんになっておられますか。
  280. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 韓国あるいは朝鮮半島における平和安全というものがわが国の平和安全に緊要な関係を有しておるということは、私ども今日も認識として変わっておりません。したがいまして、朝鮮半島、韓国において米軍がいるということ自身は、そのような意味で、わが国に無関係なことではないと考えますけれども、しかし、本来これは米国と韓国との両国の問題でありまして、一義的にはその関係において決せられることであって、わが国が有権的に、あるいは一義的に意見を申すべきことではないと思います。
  281. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 朝鮮における国連軍——もし国連総会で、解体決議ですね、いわゆる。あの問題が通った後、朝鮮における米軍はどういうふうになりますか、もし通った場合。
  282. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、解体の根拠となります総会決議、あるいは安保理事会の決定等によって左右されるべき問題でございますけれども、本来的に申しまして、国連軍と米軍とは全く人格の異なるものでございますので、国連軍そのものが撤退するということが、米韓条約による取り決めに直接に影響があるとは考えません。
  283. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もうすでに昨年五月から、在韓米軍は、国連軍司令官、在韓米軍司令官、第八軍司令官、一つの司令官が三つの帽子をかぶっている、これ、大体統合しているのですよ。国連軍はなくなっても在韓米軍として残る手はずを整えておりますけれども、そうしますと、宮澤外相の言われる国連軍が解体した後つくられる新平和機構ですね、平和の枠組みも、結局韓国における米軍の存在を前提としたものなのですか。
  284. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 純粋に法律的にはそういうことは私は言えないと思います。すなわち、停戦協定、一九五二年でございましたか、休戦協定の当事者が、一方の当事者が国連軍司令官でございますから、その協定がなくなっては困る、そういう法律的な枠組みがなくなっては困るということを申し上げておるわけで、何かの法律的な枠組みがありませんと朝鮮半島における平和の基礎がなくなる、こういうことは私ども感じておりますが、そのことが即米韓条約の履行、米韓条約の結果というものと法律的には何らの関係がないと思います。
  285. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大体新平和機構というものも、法律的関係はなくても事実の問題として在韓米軍が居残り続けるということと併存し得るものであるとお考えになっていると思います。  そこで、次の大問題に結びついてくるのですけれども、三木首相は、核持ち込みにはもちろんノーと言うと、しかし、韓国との関係で戦闘作戦行動の出動の場合には、そのときの状況判断でイエスかノーを認めることがある、そう言われておりますけれども、韓国における有事の場合、日本からの作戦行動についてイエスと言うことはきわめて重大な事態になると思いますけれども、その点どういう見通しを持ってそういう発言を行われましたか。
  286. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、韓国に大きな軍事的な衝突があってもらっては困るし、そういうことは起こり得ないであろうという観測であります。それは、南北の朝鮮も戦うことを望んではいない、また韓国あるいは北鮮の友好国である、日本はもちろんのこと、アメリカにしても、あるいはまたソ連にしても中国にしても、戦いを望んではいない、だれも望んでいるものはない、朝鮮戦争を。南北においても戦うことは望んでいるとは私は思わない。したがって、非常に有事の際有事の際ということが議論になりますけれども、そういうことは起こり得ない、情勢判断というものに過ちを犯せばでありますけれども、私は朝鮮戦争というものは再び起こることはないという、こういう観測の上に立つわけでございます。しかし、ここでいろんな場合を仮定されまして御質問がございまして——日本は安保条約によって事前協議の条項があるわけですから、その日本の基地から発進をするような場合が起こったときに、これは事前協議に応ずるということは日本の義務であります。事前協議に応じたときには、それはノーもあればイエスもあるというのが事前協議本来の精神でございます。しかし、その場合においても、核の持ち込みについては、非核三原則を堅持する日本としては、これは応じない態度でその事前協議に臨むということを申しておるわけでございます。いま上田議員の言われるように、これは大問題でありますから、そういうことのなからしめるという、そういうことをあらしめてはならぬということに日本はあらゆる努力を傾けなければならぬということが、もう大前提であります。起こった場合というよりか、起こらないように、そういう事態が起こらないように、日本は日本の許される範囲内で最大限度の外交的努力を傾けなければならぬし、また、そういうことがもう大前提になっておる。仮定として、そういうようなことの場合における安保条約の条約上の解釈論として申したのであって、そういうことを予定して私は発言をしておるのではないということであります。
  287. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 情勢はやっぱりそういうのんきなものじゃないと思う。二月十一日にアメリカのシュレジンジャーが発表した国防報告の中では、主として沖繩の米戦力を支援戦力としてアメリカは韓国への駐留を続ける、もう沖繩の米軍と韓国は、これはもうぴったり一体になっているわけですね、そういうことを言っている。それからシュレジンジャー氏は、これはたびたび問題になりましたが、もし北朝鮮が韓国を攻撃すれば、敵の心臓部をたたく、これがベトナム戦争からの教訓だと明言しているわけであります。そして、何も起こらないだろうと言われますけれども、韓国は、御存じのように、大統領緊急措置令で、あらゆる言論の自由、結社の自由もない。今度は刑法改悪で国家冒涜罪までつくられた国であります。こういうファッショ的な国では、あらゆる陰謀、あらゆる謀略が可能なんです、政府の力で。しかも、私先ほど申しましたように、トンキン湾事件というのはアメリカの政府自身がやった謀略事件だ。そしてこれであのベトナム侵略戦争が起きたわけですね。そうすると、韓国の政府とアメリカが共謀して、もし三十八度線で何かの事件を起こしてごらんなさい、これは有事の場合ということになるわけでしょう。その際、日本は情勢を見てイエスと言うことがあり得るということをなぜ三木首相がこの時期に、この大事な時期に発言したんですか。
  288. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も言っているように、大前提は、そういういろいろな不安、日本としてもこれは重大な問題を提起するわけですから、大前提はそういう事態を引き起こさないように努力をしなければならぬ。これは大前提だと。しかし、国会において、安保条約の条約解釈としてそういう場合はどうだという御質問があったので、起こり得ないと思うけれども、条約に対する解釈論としてはいろいろ御質問がある以上答えなければならぬので申したわけでございます。この時期というのは、質問が皆さん方から絶えず繰り返されるから私は答えたわけでございます。それは安保条約の条約上の解釈として述べたわけでございます。
  289. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この時期というのは大変な時期ですよ。朝鮮民主主義人民共和国の側から見てごらんなさい。アメリカがどんどんああいう発言をする。日本の首相は韓国で有事の場合にはイエスと言うことがあり得るということを言う。これは緊張を激化させる発言になるじゃありませんか。万一、将来柳条溝事件やトンキン湾事件のような何か事件が起きたとき、アメリカからいろいろ通告がありますね。随時協議もあるかもしれぬ、事前協議もあるかもしれぬ。そのとき、三木さんはどうするんですか、アメリカの言い分をまた信頼しますか。
  290. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあいろいろ御質問を聞いておってわれわれとの違いは、日本が自主的に——朝鮮の問題というような問題は大問題ですからね、日本の国民にとっても。そういう場合に、何でもアメリカの言うことを聞いて、そして自主的な判断をしないというように、日本の立場をそんなにこう軽く見るということには私はどうしても納得できない。これはやはり国民からしてもそういうふうなことは大問題ですから、きわめて自主的に慎重な判断を政府に要求されることは当然でありますから、何でもアメリカの言うことを聞くのかというふうに日本の立場を軽く見てはいないということです。
  291. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 トンキン湾事件のときに、ベトナム民主共和国はトンキン湾事件白書というのを発表しました。この白書は、先ほど申しましたアメリカの上院の調査と後で比べてみてもほとんど一致しているんです。だから、トンキン湾事件のときにも、アメリカの言い分を信頼しないで、もしベトナム民主共和国側からも日本の政府がちゃんと情報をとり、聞いていたら、正確な判断ができた。今後もし朝鮮で何か事件が起きたとき、いま三木さんはアメリカの言うことをただ聞くのじゃないと言われた。そうすると、客観的に判断するためには、朝鮮民主主義人民共和国側の言い分、主張を当然聞かなければならぬと思う。そのためにも朝鮮民主主義人民共和国との国交回復を日本は急がなければならぬ。もし朝鮮情勢、アジア情勢について日本が本当に平和の方向に努力しようというんなら、いざというときにはイエスと言うこともあるなんということを国会に言って緊張を激化させるのじゃなしに、朝鮮民主主義人民共和国と国交回復する、その方向に進めば、どんなに朝鮮問題、アジア問題が平和の方向に進むか。日本は主体的にそれができる条件も持っている、意欲もある、国民もその力があると思うのです。足りないのは政府の決意だけです。この問題、いかがでしょうか。
  292. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 北鮮との関係は、しばしば申し上げておりますように、いままでやってきておる接触面——人間の往来、貿易、文化の交流、こういうふうな一つの接触を積み重ねていく、この問題は段階的に考えていきたいということでございます。
  293. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、この際、大局的な見地に立って朝鮮民主主義人民共和国との国交回復の方向に政府前進されることを強く期待します。  さて、もう一つの問題は、万一韓国で有事大事件が起きて日本がイエスを言った場合、これは三木さんも先ほどお認めになりましたように大変な事態です。安保条約の第五条の発動にもつながり得る大問題です。心臓部をたたくとアメリカは言っているわけですから、心臓部をたたく飛行機が沖繩から発進してごらんなさい。第五条を発動されて、日米共同作戦、自衛隊出動まで起きかねない。国民の運命と生命にかかわる大事件であります。ところが、このイエス、ノーを決めるのは、宮澤さんの衆議院予算委員会での民社党の佐々木さんの質問に対する答弁によりますと、内閣の閣議で決めると、そう言われました。私は、これは内閣の行政権でそういうことを決める権利はないと思う。少なくとも国会にこの問題についてはかける必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  294. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 行政協定第六条に基づきます交換公文によりまして、事前協議を必要とする事態になりましたら、これは行政権の範囲で政府が事前協議に応じ得るものと考えております。もとより、毎々申し上げますように、事前協議という事態がいきなり起こるわけではなく、日米間は緊急に常に協議をしておりますし、また、特に協議を求め得る根拠も安保条約上ございますので、その間の事情はよくよくわが国として事情を聞き、判断をし、その上で仮に事前協議という事態があればそれに応ずるということで、ある日突然というようなことではないであろうと思いますが、いずれにいたしましても、仮に事前協議を求められました場合、これに対する態度は、法律上は行政の範囲内において決定し得るものと考えております。
  295. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、政府の外交なるものは、先ほどインドシナ問題で私が追求しましたように、まことにいいかげんきわまる判断ですよ。そういういいかげんな判断で行政の範囲内だというのでイエス、ノーを言われては大変なことになる。ノーを言っている間はもちろんいいでしょう。しかし、あなた方のそういういままでの実績によって証明されている誤った一面的な対米一辺倒の判断で、アメリカから事前協議が来たと、朝鮮民主主義人民共和国とも国交回復はまだしてないと、それで、もしイエスと言われたら、これは憲法に言う内閣の外交関係の処理という範囲内で行政協定問題についてはこういう条項で行政権の範囲内でできると言われますというようなことで処理されて、もし日本国民が戦争に巻き込まれたら大変じゃありませんか。そんな法律論では解決できない問題だと思います。三木さんは先ほども非常に重大な問題だと言われましたし、昭和四十三年三月十二日の予算委員会の分料会でも、松本議員の質問に答えて、これは非常に重大な危機が来た場合だと、そういう点でこの問題は非常に重大な問題だということを何回も繰り返しておっしゃっておられますが、内閣の閣議でこういう問題を決めていいと思われますか。国権の最高機関であり、すべての問題について国政として責任を負っている国会に、イエスと言う場合にはこの問題をかけるという決意はありませんか。
  296. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、上田議員はいとも簡単に政府がこういったときに対しての判断を下すような前提の御質問ですが、そういうことはやはり下せるものではありません。日本の安全というものに対して重大な関心を持つわけでありますから、政府がそういうものに対して判断を下すときにはきわめていろいろな角度から検討をして慎重な態度で臨まなければならぬことは言うまでもないわけであります。その場合に、行政権の範囲内でいわゆる閣議においてこの問題に対しての判断はすることが適当であると私は考えております。
  297. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 法律問題じゃなくて、国会にかけちゃならぬという何か理由があるんですか。国会でこの問題を審議する——戦争になるかならぬかの瀬戸際ですよ。そういう問題を勝手に内閣の閣議で決めると。取り返しがつかない問題です。どうして国会にかけちゃならぬ、国会の承認を求める必要がないという論拠があるんですか。
  298. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そういう政府が事前協議に臨むときは、それはもういろいろな角度から検討をいたすわけでございますから、それだけのやはり権限は政府に持たされておる、安保条約における事前協議に対して日本の方針の決定は政府に任されておると信じます。しかし、いまはこれは話を極限に持っていっての御質問でありますが、一番の前提になるのは、繰り返し申しておるように、そういうことは客観的に考えてみても朝鮮に大きな戦争が再び起こるという可能性は考えられない、また、そういうこと自体あらしめては、ならないので、そういう国民に非常な不安を与えるようなことを防ぐためにあらゆる努力を傾けるし、客観情勢にもその可能性はない。これはもう極限したいろいろ御質問であって、そのことが国民に不安を与えるということは、これは実際問題として考えてみて好ましいことではないと、私はこういうふうに考えております。
  299. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 こういう重大問題で国会の発言権はあくまでないと、内閣が決めるというわけですか。大問題です。
  300. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 事前協議に対しての判断は政府がいたすという方針でございます。しかし、その判断の背後には、これはもうきわめて、いま言っておるように、あらゆる角度から政府検討を加えて、そして日本の安全という、こういう点から考えてみて慎重な判断を下すという責任は政府が持っておるわけでございます。
  301. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まあ政府がこれだけの大問題、安全保障は大問題大問題と言いながら、わが国民の運命がかかるかもしれない問題について、国権の最高機関たる国会に一言も相談しないであくまで政府が決めると、外交関係の処理で行政権の範囲内だという態度を貫くのは、事実上安保条約を憲法に優先させている対米従属の危険な姿勢のあらわれだと思います。この問題をもっと追及したいのですけれども、次の問題に移りたい。  日米軍事同盟の危険性が私はいまの政府の答弁によっても浮き彫りになったと思う。これには、新しく対ソ、日中の軍事同盟でもできたら、もう一つまた危険をしょい込むことになる。日中条約問題について東京新聞四月二十二日の報道によりますと、四月の十四日に日中双方で条約案文を交換したとあります。そして、中国側の案文の中には第七項の覇権条項を全面的に明文化し、しかも同じ条文で同条項の実施に関しての随時協議制度を盛り込んでいると、そういう報道がある。中国の覇権反対の主張は、実際上ソ連の覇権主義反対というものであることは、中国側の多くの表明によって明らかです。この覇権条項を盛り込んだ条項に随時協議制度を盛り込むと、これは事実上対ソ、日中の軍事同盟的性格を持つ条文になりかねない。この問題について政府はどういう対処をおやりになりますか。
  302. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この条約は、御承知のとおり、ただいま交渉中でございますので、内容を申し上げることは御遠慮いたすべきかと存じます。いわんや、相手国が提示いたしましたと伝えられます条文につきまして言及をいたしますことは、これは不適当なことであろうと存じます。
  303. 立木洋

    ○立木洋君 外交問題で関連して三木総理に二つの点をお尋ねいたしたいと思います。  総理が八月に訪米されるという予定になっております。三木総理は、この間の衆議院予算委員会でも、日本の核持ち込みの事前協議に関してはいかなる場合でもノーと言うということを国会で答弁されました。それならば、いままでアメリカは日本に対して核持ち込みをしないということをアメリカ政府は日本に明言したことはありません。また、核の持ち込みに関しては、その核持ち込みがどういうものであるかということについても国会で繰り返し論議され、きわめて問題点は解明されていないわけであります。ですから、三木総理は、この際、アメリカに行かれるならば、アメリカに行きまして、日本としては核の持ち込みに関しては一時通過も含め寄港も含めて事前協議の場合にはすべてノーと言う、こういう立場をアメリカに明確に述べていただきたい。そういう意思がおありになるかないか。もしかそういうことを述べるつもりはないと言われるならば、どういう理由によって述べるつもりがないのか。その点が第一点であります。  もう一点は、非核三原則に関しましては三木総理は必ず守るということを繰り返してこられました。また、非核三原則に関しましても自民党は非核三原則堅持であり、三木内閣以降も変更はないという趣旨のことを衆議院予算委員会で述べられました。それならば、この非核三原則を立法化する意思がおありになるかどうか。もしないとするならば、どういう考えでする意思がないのか。この二つの点を明確にお述べいただきたいと思います。
  304. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 八月に私も訪米してフォード大統領との会談も当然予定するわけでありますが、どういうことを話してどういうことを約束するのかという、そういう場合のことをここで申し上げる考えはありません。しかし、私は率直にわれわれの考え方を述べるつもりであって、ここでいろいろ、こういうことを話すのだ、ああいうことを話すのだということを申し上げる考えは持っておりません。  それから非核三原則については、国権の最高機関である国会においてもこれを遵守すべしという決議を持っているわけで、いまさらこれを立法化する必要は私はないと思う。国会であれだけの決議を全会一致でしたのですから、これはもうそれ以上何か立法化する必要は私はないと思う。
  305. 立木洋

    ○立木洋君 委員長、一言。
  306. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡単に。
  307. 立木洋

    ○立木洋君 けさからの予算委員会審議においても事前協議の問題に関して繰り返し質問がなされました。その際、アメリカの言いなりにはならない、自主性を持たなければならない、こういうことを言いましたが、自信を持ってもらわぬと困るとさえ三木総理は強調された。それならば、事前協議の場合に、核に関しては核持ち込みは絶対にノーと言うというこの立場を、国会だけで答弁するのではなくて、事前協議を行う当の相手国はアメリカではないですか。そうしたら、アメリカにこのことを明確に述べるということは私は当然だと思う。非核三原則の問題に関しましても、核持ち込みに関しても、日本の国民は重大な関心を持っているわけですから、このことを三木総理が重大な問題としてアメリカに行って述べるということは私は当然のことだと思う。どうしてお述べになることができないのか、重ねて明らかにしていただきたい。
  308. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、この場合、まだ会談も行われておるわけでもないわけですから、いろいろこの国会において、私はこういうことを言いたい、ああいうことを言いたいと一々述べるようなことは私はこれは差し控えたいというわけでございますが、先ほどから申し述べますように、最高首脳部の会談というものは、率直な話し合いをして、相互の理解、相互の信頼というものを深めることが目的でありますから、率直にあらゆる問題を話すということであって、あらかじめこれを話すのだというようなことを、こう会談の行われる前にいろいろ申し上げるということは適当でないと考えておるからでございます。
  309. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 内政問題に移りたいと思います。  最初に、田中金脈の問題についてお伺いします。六日の参議院会議と決算委員会で警告文が採択されました。これは、国政調査権を一層尊重して政府は問題解明に協力する、信濃川河川敷問題をめぐってこういう疑いを持たれておるような行為についても遺漏のないように妥当な行政措置を講ずるということがうたわれております。全会一致で議決されたものですけれども、総理はこの警告をどのように尊重してどのような具体的措置をとるおつもりでしょうか。
  310. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これから、未処理の問題がございますので、そういう問題については国民の疑惑を受けないように慎重な処理をしたいと、そのことがまた国会における警告の趣旨でもあるわけですから、いたすわけでございます。また、決算委員会も必ずしも決着がついたというわけでもないわけですから、そういう決算委員会で引き続きいろいろ御審議をされるならば、できるだけの協力をしていきたいと、こういう考えでございます。
  311. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私ども共産党は、昨年十一月に田中金脈問題で百項目に及ぶ疑惑を持った公開質問状を田中総理提出しました。しかし、田中氏本人はもちろん、政府によっても何ら回答されておりません。金脈問題はどうも、うやむやで済まされそうになっておりまして、アメリカの議会のウォーターゲート事件のあの厳しい追及と比べても大問題で、世論からも多くの疑惑が、また遺憾が表明されております。もし先ほどの院の決議を尊重すると言われるならば、共産党の公開質問状で提起された問題についても、政府の行政として十分調査し、政府としても必要な回答を行うべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  312. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま上田議員は田中総理に対して質問を提出されたというのですから、必要があると考えるならば田中総理お答えになることだと思います。
  313. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そういう態度をとっているから、世論がいまだに重大問題であるとして疑惑を残しているのであります。こういう三木内閣の姿勢の中で、ただ一人松澤行管庁長官が正義の味方として、この問題について、特に信濃川河川敷の問題についてこれを調べられようという決意を決算委員会で表明されました。どのような調査と措置をおとりになるつもりでしょうか。
  314. 松澤雄藏

    国務大臣(松澤雄藏君) 信濃川河川敷の問題につきましては、私の指示に基づきまして、すでに事務当局は事前の研究、関係資料の収集などに着手しているところでございます。これらの検討結果をまって実施の時期やあるいは監察項目などを決定することとしておりますが、現在のところは第二・四半期においてかすみ堤の締め切りなどの河川管理行政上の問題を解決していきたいと、かように考えまして、真剣になって、いまやっているところでございます。
  315. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 五月二十三日の決算委員会で松澤大臣は、当時田中さんが幹事長をやっているときに私は副幹事長だったと、で、「ちょいちょい部屋の端に行って他の者と話をしておるということを耳にしたり、目にしたり、」、さらに、現に「実に、私自体としては当時はきわめて元気もありましたし、けしからぬことだというふうな気持ちで見ておった」というのですけれども、田中総理は部屋のすみでどういう話をしていたのですか。(笑声)
  316. 松澤雄藏

    国務大臣(松澤雄藏君) 私は、そういうふうな、皆さん方がお笑いなさるような意味での申し上げようじゃなかったのです。そういう気持ちで申し上げたのじゃなくて、私自体が副幹事長をしておったときに、まあ変な話でございますが、碁、将棋というようなものを仮にやっておったといたしまして、その間に、暫時休んでも田中さんがすみの方に行って話し合いに来た人に話をしておると、そういう状態を見て、私は時間的にも約四十分ぐらいやったような記憶がしておりますから、芳しくないものだというふうな意味でのお話をそのときにはしたような覚えがあります。それだけの話でございまして、田中さんに対して疑惑を持って見ておったというようなことじゃございません。
  317. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 碁や将棋をやって四十分離れたこと自体がけしからぬということはないと思うのですね。碁や将棋よりももっと大事な問題があるわけで、しかし中身がやっぱりひどいというのでけしからぬとあなたは思われたのだと思いますけれども、四十分間の話の内容で、特に信濃川河川敷問題についてなぜあなたはけしからぬと思われたのか、その点についてもう一度お伺いします。
  318. 松澤雄藏

    国務大臣(松澤雄藏君) あえて私は信濃川問題というものをその場で聞いたような覚えがないのです。ただ、先ほど申し上げたのは正直に申し上げただけでありまして、そのときには格別に信濃川の問題をどうこうしようということに対しまして私が疑問を抱くとか、あるいは疑問を抱いたのに対して回答が得られなかったとかというふうな意味でなく感じておったというようなことからそのようなことを申し上げたと、かように存じます。
  319. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 信濃川問題は私も決算委員会で質問いたしましたけれども、問題は、ただ地主に返せばいいというようなものではありません。かすみ堤の問題その他その他の問題と結合して、もし廃川敷になりますと地主の手に戻ると。そうすると九条地、国有地が室町産業の手にすぽっと自動的に契約書でいってしまうということが大問題なのであります。決算委員会では、建設省の増岡河川局長が元地主の手に戻すと言われておりますが、ただ地主の手に戻ったのでは室町産業の手に移ってしまうところに大問題がある。ですから、この点について行管庁としてもそういう方向にいかないように、実際に田中さんのふるさとの農民、だまされた農民の手に土地が戻るようにぜひしていただきたい。建設大臣と行管庁長官にもう一度この問題についてお伺いしたいと思います。
  320. 松澤雄藏

    国務大臣(松澤雄藏君) ただいま御質問になりましたような方向に向かっていけるものであるかどうかは調べてみなければ私はわかりません。したがって、現在調査中でございますので、それ以上のことは申し上げることは困難でございます。
  321. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 所管大臣として決算委員会やら所管の委員会ではしばしばお答えをいたしておるところであります。昭和四十五年に堤防工事が完成をしておりますから、河川区域として存置する必要がなくなれば、これは河川法に基づいて当然廃川処理をすべきものだと思っております。ただ、いろいろ御意見もありますように、現在廃川処分については必要な調査をいたしておりますし、さらにただいま御答弁のありました行政管理庁の方でも調査が行われておりますから、そういった処分については今後なお一層慎重に考えてまいりたいと、そういうように存じております。
  322. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 総理も決算委員会にお出になって信濃川河川敷問題について国民の納得のいく処置をとると約束されました。この点どういう処置を、疑問の残らないような解決方法に向かって努力される決意がおありになるか、お伺いいたします。
  323. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これだけ国会においても問題になった処置がうやむやのうちに処理することはできません。この問題に対しては私も重大な関心を持っておるわけでありますから、どういう方法をとるかということをいまここで具体的に私は考えておるわけではない、いろいろ行政管理庁においても建設省においても検討を加えておるのですから、そういう報告を聞いてそういう処置をしたいということでございます。
  324. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 厳正な納得のいく処置がとられることをぜひ要望いたします。  時間がなくなりまして、経済問題を聞くことができなくなっておりますが、最後に一つ、特殊法人の退職金問題についてお伺いしたい。  政府は、地方自治体の給与、人件費問題、退職金、これをいろいろ問題にしております。しかし、政府の責任のある特殊法人の退職金、これは何回も国会で問題になりましたが、依然として完全に解決されておりません。行管庁長官、公団、公社など特殊法人の数、役員数、その中の天下りの数、比率、これについて説明を求めます。
  325. 松澤雄藏

    国務大臣(松澤雄藏君) 特殊法人は現在の総数で百十二で、その内訳は、公社か三、公団か十五、事業団が二十、公庫が十、特殊銀行または金庫が四、営団が一、特殊会社が十二、その他四十七でございまして、特殊法人の常勤役員数は昭和五十年三月一日現在で八百九人となっております。
  326. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 比率はどうですか、天下りの。官房長官お願いします。
  327. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 直接国家公務員を退職後に役員に就任した、こういう者は比率にいたしまして約三二%、こういうことでございます。(「浪人から入るんだから天下りじゃないんだよ」と呼ぶ者あり)
  328. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまのはほんとに——いま不規則発言で言いましたけれども、政労協の調査によりますと、八〇%を超えているのですね。本省から行った分だけ、そう数えて三二%と言っているんだと思うのです。三十九年の臨時行政調査会でも比率を半数以下に抑えるということになっております。十年経た今日の段階でどういう努力を払われたか、もう一度官房長官にお伺いします。
  329. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) いま御指摘になりましたような臨時行政調査会の答申、これに基づきまして、従来鋭意努力をしてまいったと、その結論がいまの三二%と、こういうことでございます。
  330. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大蔵大臣にお伺いします。  役員の給与額及び退職金の算定方式、一般職員との方式の違いについて、国家公務員と比べて御説明をお願いします。
  331. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 政府機関の給与水準は民間の企業との間の均衡を図りながら査定が行われておると聞いております。退職金でございますけれども、従来在勤月数に対しまして俸給の百分の六十五を支給しておりましたけれども、いろいろこれに対して批判がございまして、いろいろ検討した結果、ただいま百分の四十五に引き下げております。現行の退職金の支給率は民間とのバランスにおきまして不適正であるとは考えておりません。
  332. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 国家公務員の場合には、月給掛ける勤続年数、これに加算率がかかってくる。公団の場合には退職時の月給に月数を掛けて、それに百分の四十五でしょう。月数と年数で比べますと、国家公務員と比べて四、五倍になっている。だから、たとえば公団総裁の場合は、勤続二十年で八千六百四十万円、約一億円近い退職金支給ということになっている。国家公務員の場合の四倍から五倍ということであります。しかも、住宅公団その他の場合には、これが家賃にかかるのであります。そういう点で、私はこの新しい状況の中で、地方公務員の退職金問題などを問題にしているとき、政府に責任のある特殊法人の退職金、この問題がたびたび国会で問題になっておりますので、ぜひこの点改善していただきたい。この決意を大蔵大臣に最後にお伺いいたします。
  333. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 特殊法人に有為な人材を確保しなければなりませんので、民間の法人の役員の給与との間のバランスを見ながらただいま決定いたしておるところでございまして、先ほどお答え申し上げましたように、必ずしも適正を欠いておるものとは思いません。しかしながら、特殊法人の給与につきましては、絶えず見直しを行って適正を期してまいることは当然私どもの任務でございますので、検討を加えていくことにやぶさかではございません。
  334. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 公選法の統一見解が出てまた発言したいので、一分残して私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  335. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 上田耕一郎君の残余の質疑は次に譲ります。     —————————————
  336. 大谷藤之助

  337. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、外交、防衛問題について、総理並びに関係大臣に質問をしたいと思います。  まず初めに、現在の国際情勢の分析と外交の基本方針についてでありますけれども、最近のインドシナ情勢の急変によりまして、アジアの情勢に大きな変化が訪れようとしております。このような変化に対応して、政府は現在の情勢をどのように分析しておるか。まず第一は、強大な軍事力を持つに至ったこのベトナムの今後の行方をどのように見ておるか。第二点は、朝鮮半島の動きであります。第三点は、アメリカのアジア政策の変化。特にこの三つの点を中心にした政府の情勢分析並びにその対応策について、総理大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  338. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ベトナム情勢というもので、非常にわれわれが今後の外交政策の中でこれを受けとめなければならぬ点は、一つは、最後に民族の意思というものを尊重しなければ安定というものは持ち来らされるものではない。民族自決の原則、この重さというものがベトナムの情勢を考える場合に非常な重さを強く感ぜざるを得ない。もう一つは、やはりその国の国民の生活の安定向上というものが、これが確保されない。平和と安定というものはなかなか確立するものではないと。だから、民族の意思の尊重あるいは国民生活の安定向上というものがいかに大事であるかということをベトナム情勢というものは教えておる。そうなってくるならば、日本もそういう面からして、そういう見地に立って、今後の外交政策というものは進めていかなきゃならぬ。ことに、生活の安定向上という点については、その国民のみずからの努力も大事でありますけれども、先進工業国、やはり国際協力というものも必要になってくるということでございます。  朝鮮半島については、これも繰り返し述べておりますように、結局朝鮮民族の悲願は南北の平和的統一である。しかし、それはなかなか困難な問題でもあるし、紆余曲折はあるにしても、最後のやはり民族の悲願は平和的統一である。また、世界の国々も、南北の朝鮮の人たちばかりでなしに、世界の人たちもそういう日の到来を望んでいると。したがって、朝鮮半島にいま戦争が起こるとは考えられない。南北も戦争を望んでいないし、またそういう南北の友好諸国である日本にしても、アメリカにしても、ソ連にしても、中国にしても、朝鮮半島に再び大きな戦争を起こることは望んでいない。したがって、平和統一が民族の悲願であるとするならば、それが困難な道であっても、南北朝鮮が接触、対話、相互理解を通じて、その目的に向かって一歩一歩前進してもらいたいと。こういうことがベトナム、朝鮮問題についてわれわれの考え考え方であるし、そういう見地に立って、朝鮮問題については、そういう方向で日本も国際環境というものをつくることにやはり日本のできる役割りを果たさなければならぬと。そういう民族の悲願を邪魔するのではなくして、そういう国際的環境をつくることに日本の外交は協力をすべきであると、こういうふうに考えております。
  339. 田渕哲也

    田渕哲也君 まず、このベトナムの情勢についての考え方をお伺いしたいと思いますが、宮澤外務大臣が四月に訪米されたときに、キッシンジャー国務長官、あるいはインガソル国務副長官との会談の中で、インドシナに対する日米双方に見解の相違が見られた、このように報道されております。同様の質問は衆議院予算委員会でもされておりますけれども、もう少し具体的に、どのような相違があったのか、お伺いをしたいと思います。
  340. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 四月に訪米いたしまして、キッシンジャー国務長官と会いました時点は、米国の大統領が、ベトナムを応援するか、撤収するかという演説をした段階でございまして、アメリカとしても、したがって、かなりいら立った段階であったわけでございます。そのようなときでございますので、話もおのずからそういうことになっていったわけでございますが、一つは、アメリカの長い間におけるベトナムへの介入というものが、しょせん、この不毛な、実現することはむずかしい目的を負ったのではないかというようなこと。これは私は前から考えておることでございますけれども、そういうことを一つ申します。しかし、これについては私ももう長々とは申しませんでした。そういうことを言っておる時期でもありませんでした。  もう一点は、パリ協定後の南北ベトナムのパリ協定違反、いずれに違反があったかということにつきまして議論のそごがありましたわけで、確かに軍事的に、武器の供与等で見ますと、北側に違反があったというのがアメリカ側の一応の主張でございますが、しかし、政治的な面でパリ協定に定められておったことを着実に実行したかどうかということについては、南側は必ずしも協定に忠実であったとは言えないのではないかというようなことにつきまして意見の相違があったわけでございます。
  341. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、今後このベトナムがどういう方向に動くかというのは、特に東南アジアのこれからの動向に非常に大きな影響を持つと思います。また、ベトナムがどういう行動をとるかという判断をするに当たりまして、今回のこのベトナムの情勢をどのようにとらえるか。これ、民族解放、民族自決という見方にウエートを置くのか、あるいは共産主義勢力の拡大である、こういう見方にウエートを置くのか、これによって判断が分かれると思うのです。あくまで民族自決、民族解放を主体とした立場をとるならば、恐らくこのベトナムが今後とも東南アジアについてその軍事力で脅威となるようなことは比較的少ないのではなかろうか。そしてASEAN諸国との間に平和共存ということも可能性が生まれるのではないか、こういう見方ができると思います。それからもう一つの、あくまでも国際共産主義勢力の拡大である、こういう点にウエートを置いて考えますと、いわゆるドミノ理論——その他の東南アジア諸国のゲリラとか、そういうものに対する支援をベトナムが行って、いわゆるドミノ理論によって共産主義勢力、革命の輸出ということが行われる危険性がある。日本の政府はこのどちら側の考え方に立つのか、この点をお伺いしたいと思います。   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕
  342. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘になりますように、これは非常に判断のむずかしいところでございますが、まず、インドシナ半島におきましてハノイが相当の発言権を持つであろうということは間違いのないところと存じます。しかし、そのようなベトナムとカンボジア、ラオス等々がどのような関係に立つかということが必ずしもはっきりいたしませんし、ASEANとの関係も、ただいまのところは明確に帰趨が出ておりません。これはそのゆえに御質問であろうと存じますが、ただ、一応考えられますことは、確かにハノイは軍事的にも相当強くなっておると考えるべきでございましょうが、恐らく南北ベトナムを通じまして、この戦争の後始末、難民の処理でありますとか、あるいはさらに経済再建にいたしましても、これは相当時間のかかる大きな仕事でございまして、そういうことを考えますと、直ちに外部に向かって再び動きを始めるというふうには考えにくうございます。また同時に、ハノイに対しての影響力、ただいまのところは恐らくソ連の影響力の方が幾らか強いのではないかと思われますけれども、中ソは御承知のような関係でございますので、恐らく影響力を受ける側から申しますと、なるべく大国の一方的な支配を排除するような形、いわばバランスをとれたような形で自分の民族の自主性を立てようとするのではないであろうか。非常に長い期間の予想を申し上げることはできませんが、当面はそうではなかろうかと存じます。また、ASEANの国々は、もともと一九六〇年代の終わりから七〇年の初めにかけまして、やや中立主義的な動きをしようという意図は持っておったわけでございますので、昨今アメリカ離れと申しますけれども、それは何も今回のことで始まったわけではございません。もともと、しかし、これらの国々も特定の一国の支配を受けるということは恐らく好まないところでございますので、そういう意味ではやはり米中ソといったようなものの影響力のバランスをとろうと考えるのではないであろうか、大まかにはそのような判断をいたしております。
  343. 田渕哲也

    田渕哲也君 大体の情勢は外務大臣のおっしゃるとおりだと思いますけれども、私は、日本政府立場というか、見解というものをお伺いしたいわけです。やはり民族自決、民族解放ということを非常に重く見るのか、あるいはあくまでも共産主義勢力の拡大を阻止する、そういう点にウエートを置くのか、これの選択がやはり迫られると思うのです。それで私はアメリカと日本の基本的な違いもその辺に対するウエートの差にあるような気がするわけです。たとえば韓国の問題があるわけですけれども、韓国条項に対する宮澤外務大臣の発言があります。韓国の安全は日本の安全にとって緊要である、これは明らかに木村前外務大臣の、朝鮮半島全体の平和と安定がわが国の安全にとって緊要である——私はこの言葉とはニュアンスが違うと思うんですね。政府は、衆議院予算委員会その他の答弁では、同じだというような意味合いの答弁をされておりますけれども、私はそうは思えない。これは明らかにニュアンスの違いがあると思いますが、いかがですか。
  344. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これはしばしば御質問を受けるところでございますけれども、木村前外務大臣があのように言われましたことには、いろいろそこに至ります御発言の経緯がございまして、それをずっと読んでまいりますと、特段に私と違うことを言っておられたのではないように私は感じておるわけでございます。ただ、言ってみれば、幾らかニュアンスの違いと申しますか、重点の置きどころ、その程度のことはあったろうとこれは思いますけれども、もともと韓国が不安定になるということは朝鮮半島が不安定になるということでございますので、そんなに離れたことを言っておられたのではない。たとえば、韓国の安全は日本の安全にとって緊要でないというような意味合いのことを言われたことはないわけでございますので、私はそんなに異なった認識であったとは感じておりません。
  345. 田渕哲也

    田渕哲也君 私はそうは思わないわけです。といいますのは、やはり民族の自決、朝鮮半島が平和的に統一されて、民族自決によって新しい道を選ぶということに重点を置いて考えるならば、私は木村前外務大臣の発言がふさわしいと思うんです。それから、あくまでも共産主義勢力の進出を韓国のラインで食いとめなくてはならない、こういう点にウエートを置くと、この韓国条項というものがこれはぴったりするわけですね。私はこの考え方の差というものがあると思うんです。この点どう思われますか。
  346. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは結局、自族自決によって国民の生活の安定向上あるいは社会的な不均衡の是正を図ろうというのがどの民族もが持っておるところの願いであって、わが国はその願いを助けてまいりたい、こういうのが考え方の基本でございますが、そのような目的を達しますのに、その基本的な理念として社会主義的な理念を掲げていくか、あるいはいわゆる自由主義的な理念を掲げていくかによりまして、イデオロギーと申しましょうか、理念と申しましょうか、そういう違いが一民族の間に出ましたときに、いわゆる分裂国家が起こる場合が間々ございます。韓国にもそのような現象がただいまあらわれておるわけでございますし、かつてはインドシナ半島においてもそうであったと思うわけでございます。この点は、それでございますから、そういう理念の違いを超えて、しょせん目指すところが一つであれば、平和裏に一緒になっていってほしい。現に南北とも朝鮮半島におきましてはそのような合意を一九七二年にいたしたわけでございますから、そういう方法を追っていってもらいたいという点で、木村前外相と私と別段考え方に変わりはないというふうに私は思っております。
  347. 田渕哲也

    田渕哲也君 もう少し議論を進めていきたいと思いますが、東郷外務次官が六月六日の近代化協会主催の昼食会でこういうことを言っておられます。朝鮮半島では当分南と北の併存という形以外にはない、南北の力関係が急に変化することは日本の安定保障、アジア情勢全体にとって好ましいことではない、したがって、わが国としては朝鮮半島で急激な変化が起きないよう考えていかなければならない——この発言は、外務大臣も同じ考え方ですか。
  348. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 発言の趣旨は必ずしも私つまびらかにいたしませんが、その発言の基本にありますものは、いわゆる七二年に南北が合意いたしましたような平和的な話し合い、それによる終局的には統合ということが最も望ましいと、これは言わずもがなのことでございますので、その発言にあらわれていなかったのではないであろうか。せんだって以来御議論がありますように、南北の国連に同時加盟であるとか、いろいろなことがそこに至ります経過としては第三者的には考え得るわけですが、特に二者のうち北側が、そのようなことは分割を恒久化するというような立場から今日までのところ賛成でないようでございます。そうだといたしますと、われわれはやはり事態が平和的に処理されることを基本的に望んでおりますので、もしそのような方法に両者が合意できないのであれば、さりとてこれを平和以外の方法で処理することにはわれわれとしては反対でもあり、また重大な関心を有するということになるわけでございまして、東郷次官がそのようなことを申したといたしますれば、そのような基本の認識のもとに前提になるべき部分を省略して申したのであろう、こういうふうに考えます。
  349. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、この次官の考え方というものは、やはり日本の安全のためには、将来は別にして、長期的な将来は別にして、やはり現状固定化が望ましい、こういう発言だと思うんです。ところが、三木内閣はしばしば朝鮮の平和統一促進ということを言っておられますけれども、政府は一体このどちらの立場に立つのか、お伺いをしたいと思います。
  350. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その点を先ほど私が申し上げましたので、七二年に行われましたような南北の平和的な話し合い統一ということが最も望ましい、これが政府立場でございますし、外務次官は、恐らくそれは当然のこととして、その講演において触れることをあるいは省略したのではないだろうか。そのゆえに、多少政府立場と違うものとして田渕委員がお受け取りになったかもしれませんか、これは当然に——当然にそのことが最も望ましいことは前提にあるわけでございます。
  351. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、この平和統一というのはだれでも口にすることだと思うのです。しかし、口先だけの平和統一論というのは、私は現状固定化論だと思うのですね。なかなかこれは実際にできないことを言っているにすぎないわけです。だから、平和統一促進と言うからには、具体的にどういう行動をとるか、そういう裏づけがなければならないと思うのです。政府は平和統一促進ということを言われるならば、具体的にどういう努力をするのか、どういう働きかけをするのか。この点についてお伺いをしたいと思います。
  352. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この平和統一の当事者は南北朝鮮ですからね。やはり第三者のやれることというものは限界がある。南北朝鮮が平和統一の当事者であるわけですから、そういうことでやっぱり南北朝鮮が努力をしてもらわなければならぬわけであります。したがって、われわれとしては、そういう国際的な環境をつくるために——きのうの委員会でも、何か現状を固定化するのではなくして、統一への第一歩として国連に同時加盟のようなことはできないだろうかというのも、まあ国際的環境というものをつくることはできないかという一つのわれわれの考え方、そういうことはどうであろうかということのわれわれの考え方を一つ述べたわけで、いろいろな場合をわれわれとして考えて、それはしかし国際的な環境をつくるという範囲内でしかできない。やはりこの統一の問題は両当事者が、幸いに七二年に対話が始まったんですから、これをさらに、いま中断のような形になっておりますが、困難な道であることはわかり切っておるのですが、この困難を乗り越えて、両当事者でそういう一つの条件をつくり上げていってもらいたいと心からこいねがっておるものであって、永久の固定化など、これはできるものでもありませんし、そのことは両民族の願いにも反するものだと私は思います。
  353. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、確かにこの平和統一といいましても、これは基本的には両当事者の問題だと思います。しかし、私はこの周りの国の対応の仕方というものも非常に大きな影響を持つと思うのです。特に日本はこの朝鮮半島とは非常に深い関係があるわけです。現在、平和統一促進といいながら、日本は韓国とだけ国交を持っておる。北朝鮮、すなわち朝鮮民主主義人民共和国はまだ承認もしておりません。そうして一方の国とだけ関係を持って、そしてそれに肩入れをしながら、平和統一促進と言うのは若干矛盾があるのではないか、こういう気がするわけです。国連への両国の同時加盟といいましても、これは簡単に実現できません。なぜなら、一方の当事者が反対しておるわけですから。私は、こういう不可能なことを言っても、それは具体的な方法論にはならないと思うんです。日本としてできることは、北朝鮮を承認して、国交を持って、そしてこの両者の間にできるだけいい関係ができるように努力することではなかろうか、こう思いますが、この点についての政府考え方を聞きたいと思います。
  354. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) わが国の場合には、朝鮮半島とこれだけ近接しておりますので、朝鮮半島の事態がわが国に与える影響も大きゅうございますけれども、わが国が先方に与える影響も実は非常に大きいわけでございます。したがいまして、休戦協定以来、非常に微妙なバランスでともかく戦争が起こらないで来た今日の状態というものを、これを動かしますということは、よほど注意深くやりませんと、不測のことを起こしやすい。と申しますことは、しかし、北鮮とわれわれが何らの交渉も持たないという意味ではございませんで、できるだけ人的に経済的に、あるいは文化的に交流をしてまいって、それも年とともに大きくなっておる。この問題、非常にむずかしい問題でございますけれども、したがって、わが国が直ちに北鮮を承認するということが、朝鮮半島の平和を促進する——いまのバランスをにわかに壊しますと、不測のことになることを起こしかねないというような考慮がそこに一つ入っております。  もとより、しかし、たとえばこのような状態において、わが国、米国、中国、ソ連等々、いわゆる関係の近い国々が南北両方を承認してはどうであろうかというような考えも一部には言われるわけでございます。あるいはこれも一つの考えかもしれない。しかし、これはまたこれで、北朝鮮は必ずしもそのことを快しとしないというようなことになっておりまして、御指摘のように、問題はなかなか安易に解決の道が見つからないという中で、わが国は、この微妙なバランスを不用意なことで壊してはならないというようなことから、ただいまの問題も現在のような態度をとっておるわけでございます。
  355. 田渕哲也

    田渕哲也君 朝鮮半島とわが国の防衛、安全保障の関係はきわめて重大だと思います。だから、韓国条項あるいは木村前外相の発言があると思うのでありますけれども、そうすれば、わが国の防衛政策ないしは防衛計画というものは、朝鮮半島の状態とどういう関係にあるのか。現在立てておる防衛政策、防衛計画というものは、朝鮮半島の現状維持を前提として立てておるのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  356. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) わが国の防衛は、米国との安全保障体制を堅持しつつ、わが国みずからも自衛のため必要な限度において効率的な防衛力を漸進的に整備して、侵略を未然に防止することを基本とし、核の脅威につきましては、米国の核抑止力に依存するものでございます。現在の防衛力整備は、この方針のもとに、朝鮮半島が平和裏に推移し、わが国に対して差し迫った具体的な軍事脅威が顕在化する可能性は少ないものという判断に立って、作成されておるものでございます。
  357. 田渕哲也

    田渕哲也君 もう少し具体的にお尋ねしますと、いまは韓国における情勢の大きな変化がないという前提で防衛計画を立てられておるという御答弁だと思います。  そうすると、韓国の情勢が変わった場合、たとえば、北から南に対する武力侵略があった場合、あるいはその他の情勢の変化があった場合には、日本の防衛計画は練り直す必要があるのかどうか。たとえば、四次防その他の計画は変える必要があるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  358. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 朝鮮半島におきましては、韓国と北朝鮮が強力な軍隊を対峙させておる中で、現実にまた越境事件が続発もいたしております。しかし、米国は韓国防衛の意思を明確にしておりますし、また、米中ソともこの地域におきます急激な現状変更を望まないというふうに私は判断をいたしますので、韓国及び北朝鮮による全面的な武力衝突の事態への発展は抑制されておるというふうに見るわけでございます。韓国の情勢に大きな変化があるとは考えておりませんので、四次防などを練り直すという必要はないものと考えておるわけでございます。
  359. 田渕哲也

    田渕哲也君 だれでもいますぐ韓国に大きな変化があるとは考えていないと思います。しかし、可能性が全然ないと考えている人もないんじゃないかと思います。これは仮定の問題かもわかりませんけれども、防衛とか安全計画というもの、安全保障というものは、常に仮定を想像して立てるものじゃないですか。だから、いまそういう情勢がないと思うから考えていないというのでは、安全保障を論議することにならないと思います。だから、日本の四次防とかその他が、韓国の現状の固定化を前提として立てておるものならば、もしこの現状が大きく変わる場合には、これは考え直さなければならないものかどうか、これをお伺いしておるわけです。
  360. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) ただいまも申し上げましたとおり、わが国は憲法上の制約がございまして、専守防衛の立場にあるわけでございます。また非核三原則をとっておるわけでございまして、核の攻撃ということに対しては力を持っておりません。したがいまして、安保条約というものが不可欠であるという認識でございます。したがいまして、わが国といたしまして、わが日本の国の安全と独立を守るというのには、大規模な通常戦争というような、そういうことはなかなか対処できない立場にあるかと思います。やさり小規模の紛争ということに対して対処できると、その足らざるところは、やはり日米安保条約に期待せざるを得ないという立場にあると思うのでございます。  したがいまして、私は、日本の防衛というものを考える場合に、三つのことを考えているわけでございまして、一つは、何と申しましても、国民の一人一人が国を守るという、そういう気概を持たなければならないということが一つでございます。もう一つは、やはり自衛のために必要最小限度の防衛力は保持しなければならないということであります。いま一つは、日米安保条約を堅持しなければならないと、この三つは一つも欠くことのできないものであって、三つが一つである。そのことによって日本の独立と安全が保たれる、言うならば、日本国民の一人一人の生存と、そしてまたその自由、あるいは言葉をかえて申しますならば、国民一人一人の生命、財産が守られる、こういうふうに私は考えるのです。しかも、その防衛力というものは、しばしば総理大臣が申されますように、単に力だけではなくて、あらゆる外交努力あるいは経済あるいは福祉、わが国の民生安定、福祉、そういう中において、グローバルな中において日本の防衛力というものを考えていくべきであるというふうに思います。
  361. 田渕哲也

    田渕哲也君 防衛庁長官は私の質問に答えていないわけです。いまおっしゃったことは全部わかり切っていることでありまして、そんなことはいまさら聞かなくてもいいわけです。私は、韓国条項というものは政府が認められておるわけでしょう。韓国の安全は日本の安全にとって緊要である、韓国条項というものがあるからには、韓国の現状と日本の防衛計画の間には関連があるだろうと言うんです。それをお伺いしておるわけです。  それで、ベトナム情勢によって、次のアジアの緊張の焦点は韓国だということはだれしも認めておるわけですよ。だから、日本の安全保障、防衛の問題が大きな関心事になってこの国会でも論議されておるわけでしょう。だから、韓国の緊張が高まり、もし、現状に大きな変化があるならば、それは日本の防衛計画に対してどのような変更を迫るものか、この点についてお伺いをしたいわけです。
  362. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先ほど申し上げますように、私は、朝鮮半島に武力的な状況がいますぐさま起こるというふうには思っておりませんが、しかしながら、そういう情勢が起こりました場合におきましても、わが国の憲法上の制約のもとにおきまして、私どもが韓国に出かけていったり、あるいはこれを援助したりすることはできないことは皆様御承知のとおりだと思うのでございます。そのことを申し上げておるわけでございまして、私どもといたしましては、ただいま私が申し上げましたように、自衛のために必要なる防衛力というものを着実に高めていくという努力が必要であると。それからまた、同時に、日米安保条約と申しましても、日本のアメリカに対するクレジビリティーというものを高めていく努力をみずからやることなくしては、日米安保条約というものは有効に機能しないという私は信念を持っておるわけでございます。
  363. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、安保条約との関係で、日本に基地がある、米軍がおる、韓国でもし事が起こった場合には日本が戦争に巻き込まれる可能性もある、こういう重要な状況があるわけですよ。その中で、韓国条項というものがあって、日本は韓国の安全にコミットしておるわけですね。だから、韓国というものの情勢が日本の防衛計画にどれだけの影響を持つものかということをお伺いしておるわけです。憲法とか、そんなものはあたりまえの話ですよ。
  364. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、いまの質問応答を聞いておりまして、こういう感じがするんですよ。  日本の安全、日本の防衛計画というものは日本の安全のためにあるわけですね、日本の安全のために。そういうことですから、日本の安全にとって——田渕議員は、韓国条項とかいろいろ言われますけれども、日本の安全にとって、それは朝鮮半島の動向というものはだれが見ても日本の安全に関係があるわけですから、朝鮮半島がどういう状態であるかということは、日本の防衛を考える場合に判断の材料になることは明らかでございますね、これは。したがって、いろいろその動向いかんによっては、日本のやっぱり防衛計画というものに対していろいろな判断をして、そして材料として防衛計画を立てることはあり得ると思いますが、しかし、あくまでも、それは日本の防衛のための防衛計画であるということですからね。韓国を固定化するというようなことじゃなくて、現在に韓国が現存して、その間、日本との友好関係もあるわけですから、その現存しておるという事実は無視するわけにはいかぬ。しかし、日本は、韓国ばかりではなしに、朝鮮半島全体の動向というものは安全に非常な関係を持つと。したがって、それは常に判断の材料にしなけりゃならぬが、防衛計画は日本の安全のための防衛計画である。韓国のための防衛計画ではないということでございます。
  365. 田渕哲也

    田渕哲也君 総理が言われることもあたりまえの話で、私が聞いておることと違うわけです。韓国条項というものがあるわけでしょう。韓国条項というのは、日本の安全のためには韓国の安全が重要だと。これまた安保条約と関係があるわけですよ。日本の国内に基地を置いて、米軍を置いておることも関係があるわけです。だから、韓国の情勢の変化が日本の防衛計画と具体的にどういう関係があるのか、そんなあいまいなもので、余り関係がないものなら韓国条項は要らぬと思うんですよ。韓国条項は破棄すればいいわけです。韓国条項というものをあえて政府がアメリカとの間に認め合うならば、じゃ、韓国の状態が変わったら日本の防衛にどれほどの影響があるんだと、いまやっておる防衛計画を根底から考え直さなければならないほどのものなのか、その点をお伺いしておるわけです。
  366. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 韓国条項があるなしにかかわらず、やはり、韓国並びに朝鮮半島の情勢というものは日本の安全に——そういう韓国条項があるから安全に関係あるんじゃなくして、あってもなくても、そういうものがあったってなくたって日本の安全に重要なかかわり合いを持ち、国民の最大関心事であることは明らかですから、そういう条項があるからどうだということじゃなくて、現実に重要なかかわり合いを持っている。したがって、そういう朝鮮半島の動向というものは日本の防衛計画の判断の材料にしなければならぬことは当然であると、こういうふうに考える。しかし、日本の行動は日本の安全のためですから、韓国に行って、そしてどういうことではないわけです。日本の安全というものがやっぱり中心にあるわけでございます。
  367. 田渕哲也

    田渕哲也君 私も、いま日本の安全ということを前提に置いて論議しておるわけです。  もう少し具体的に言いますと、ベトナムが終わって、次はアジアで緊張の焦点になるのは韓国だという情勢である。しかも、韓国は日本とは非常に距離的にも近いし関係も深い。だから、韓国がどうなれば日本の安全に影響があるのかということをお伺いしておるわけです。韓国の情勢が変わるとすれば、私は二つの場合が想定されますね。一つは平和統一です。北と南が話し合って平和的に統一する場合。もう一つは武力。これは北からか、あるいは南からかわかりませんけれども、どちらかからの武力攻撃によって武力で統一される場合。この変化が想定されるわけです。このいずれかの場合も日本の防衛計画に大きな関連がないとするならば、韓国のことは無関心でいいわけです。だが無関心ではおれないわけでしょう。それなら、どの場合がどれほど日本に脅威を与えるのかということをお伺いしたいわけです。
  368. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、平和的な統一は、これ、皆が望んでおることですから、これは一番好ましいし、日本としてもそれを望んでいるわけですからね。しかし、武力というもの、武力的な衝突というものはだれも望んでないんですから、南北朝鮮はもとより、周辺の諸国もだれも望んでないんですから、そういうことは起こり得ないというのが朝鮮半島に対する私どもの判断であるわけです。それは一々、その場合起こり得ないけれども、もし起こったらどうするといろいろ仮定を挙げて、それをいろいろ割り切って議論をするということは困難だと思いますよ。そのときの情勢によって……。要は、日本の安全という観点に立って、日本の安全を確保するという観点に立って、そのときどきにおける朝鮮半島の動向をやはり判断をして考えるよりほかにはないんで、いろいろな場合を一々仮定して、そして、その場合にはどう防衛計画が変わるんだということのお答えはしにくいのではないか、実際問題として。そういうふうに考えるわけでございます。
  369. 田渕哲也

    田渕哲也君 韓国に戦争とか、そういうことが起こらないことを望むというのは、これはだれも同じことですよ。ただ、だれも望まないことが起こる可能性があるから、日米会談においても共同声明の中で韓国条項ということに触れざるを得ない。また、韓国の安全が日本の安全にとって緊要だということも言わざるを得ない。これは、韓国の情勢の変化が何らかの形で起こる危険性があるからこういうことが言われておるわけでしょう。もし、そういう危険性が起こった場合、日本にどういう影響を持つのか。よくわからぬというなら、何もこんなことで韓国条項なんて騒がなくてもいいわけです。韓国が武力で統一されようが、平和統一されようが、現状固定化であろうが、日本の防衛にとって関係がないというなら、これは問題にならないわけです。関係があるからいろいろ問題になっておるわけでしょう。だから、たとえば、北から南に武力攻撃がされて、武力統一された場合に、日本の防衛にどれだけの脅威を与えると考えておるのか。それが、なかなかこれは答えにくいかもわかりませんけれども、少なくとも、現在進めておる日本の防衛計画というものと韓国の情勢変化というものと関係があるのかないのか、この点をお伺いしたいと思います。
  370. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私どもといたしましては、先ほどお答えいたしましたことに尽きるわけでございまして、何と申しましても、わが国の防衛というものを主眼に考えております。しかしながら、ただいまたとえば四次防計画を進めておりますけれども、その計画というものはかなりおくれておるわけでございまして、そういうようなことをやはり積み重ねていくということが大事なことである。そして、この朝鮮半島にいろいろのことが起こらないと私たちは確信をいたしておりますけれども、しかし、そういうような起こった場合において私たちは関心を持たざるを得ないわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、まず私たちの国を守るという立場において、民生を著しく圧迫しない程度において漸次防衛力を高めていくという努力は絶えずやっていかなければならないと、かように考えておる次第でございます。
  371. 田渕哲也

    田渕哲也君 ぼくはそんなのは答弁にならないと思うんですね。国会で安全保障論議をやるのは何のためにやるのか。やっぱりベトナムの次は韓国の情勢が緊迫してきたと、あるいは今度はアジアの中で戦争が起こるとすれば韓国だということをみんな言われておる。だから、それが日本の安全保障に大きな影響があるからと思うからこそ国会で論議しておるわけでしょう。それが、起こったって起こらなくたって余り関係ないものなら、韓国条項も私は要らぬと思うんです。あるいは日米安保条約さえ要らないかもわからない。その点いかがですか。
  372. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そうじゃないのじゃないでしょうか。韓国条項があってもなくても、朝鮮半島の動向というものは日本の安全について非常な関心があることは、国民だれでも、朝鮮半島にいろんな情勢が緊迫してくれば日本の安全について思わない国民は一人もないでしょう。それだけ重大な関心事でもあり、かかわり合いもあるわけです。しかしその場合の、それならそれを考えて日本の自衛隊を増強するのかと。そういう一つの、日本の自衛隊の増強といっても、韓国へ出向いて行って日本がアメリカと共同作戦をするということはできるわけではないんですからね。したがって、そういう場合に起こるのは、アメリカとの間に事前協議という条項が起こってくる、安保条約の規定において。それは何かと言ったら、朝鮮というものの動向が日本の安全に影響を持つから、極東条項というものがそこで問題として提起されるわけですから、そういう場合には、事前協議の制度によって米軍の行動に対して日本が事前協議をして、これをノーと言い、イエスと言い、そういう場合が起こってくるので、直接に日本が出向いて共同作戦というものではないわけです。  したがって、いろいろ日本の防衛計画の中には、朝鮮に限らず、周辺の動向というものが防衛計画の判断の材料にはなるけれども、すぐにそういう場合を考えて、朝鮮が、まあわれわれはないと思っているんですよ、しかし、絶対というようなことはだれも言えないですから、そういう場合が起こったらどうするんだという、そういう極限の場合の仮定を立てて問われるならば、やはりそういう場合においてはそういうことも考えて防衛計画は立てるけれども、朝鮮の安全を直接に確保するということになればわれわれの手の届かないところで、それはやはり日米安保条約の事前協議条項によって、われわれがノーと言いイエスと言うというかかわり合いを持つことになるということでございます。
  373. 田渕哲也

    田渕哲也君 じゃ、次に事前協議の問題に移りますが、事前協議制度が日米安保条約で設けられた理由は何ですか。
  374. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 日米安保条約上、両国とも目的を同じくいたしておりますけれども、しかし、アメリカはその結果としてわが国の施設・区域を貸与され、使っておるわけでございます。したがって、わが国としては、わが国及び極東の平和を、安全を確保するに足るどれだけの軍隊の配置あるいは装備、あるいはまた極限の場合にいわゆる直接戦闘行動に基地を使うといったようなことの判断というものは、これはおのずから両国で分かれ得るわけでありますし、また基地を貸与するわが国としてはわが国の立場もございます。また、装備のいかんによりましては、わが国の伝統的な国民感情等々もございます。たとえば核兵器というようなものは、米国においてはこれはまあ日常茶飯事に近いものとして軍当局は考えておるわけでございましょうけれども、わが国にとりましては、御承知のような国民感情、たてまえを持っているわけでございますから、日米の考え方をやはり調整をする必要がございます。いわば米軍の配置、装備を施設・区域を貸与して受け入れるわが国、ホスト側の、主人国側のわが国の立場主張というものは当然にそれ自身としてあるわけでございますから、それを調整する仕組みといたしまして事前協議というものが設けられておると考えております。
  375. 田渕哲也

    田渕哲也君 装備並びに配置の変更については当然だと思いますけれども、この戦闘行動について、戦闘作戦行動について事前協議が設けられる理由をお伺いしたいと思います。
  376. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この場合におきましても、企図されますところの直接戦闘行動に向かっての発進というものが、極東のわが国の平和安全、わが国の平和安全に関係ある範囲での極東の平和安全というものとどの程度の関係を持つか、これがどの程度に不可欠であるかという判断は、これは場合によって日米両国、分かれ得るわけでございますから、わが国の主体的な判断というものをそこに残そう、こういう考えであろうと存じます。
  377. 田渕哲也

    田渕哲也君 この戦闘作戦行動に対する事前協議は、この第六条に関連しておるわけですけれども、日本以外のところに出撃する、それがこの日本の安全とどれだけ関係があるか、いまの御答弁のとおりだと思います。ということは、日本の安全と余り関係がないところで米軍が出撃をして、それで日本が戦争に巻き込まれるようなことに歯どめをかける、私はそういう意義を持っておると思いますけれども、違うでしょうか。
  378. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 逆に申しますと、第五条におきまして、わが国の施政下にある領域で武力攻撃が発生した場合には、これは事前協議の対象にはならないわけでございますが、これはわが国自身の安全に関係あることがもう一見明白であるからでございます。したがいまして、ただいま御設問のような場合には、極東のすべての地域におけるすべての出来事が直ちにわが国の安全平和に関係あるとは必ずしも申せませんので、そこで日米両国の判断に差異が生ずる場合があり得る。そのゆえに事前協議の制度が設けられておると考えております。
  379. 田渕哲也

    田渕哲也君 日本の安全に関係のある場合に出撃する場合は、これは当然だと思いますけれども、関係がないと思われるときに出撃することを日本が歯どめをかけ得るというのは、関係がないことで戦争に巻き込まれる、報復を受ける、こういうことをやっぱり防止する意義があると思いますが、いかがですか。
  380. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういうふうに仰せられることも間違いではないと思います。もう少し申しますれば、米国には米国として、アジア各地におきまして各国といわゆる安全保障関係を持っております。また、米国にはアジアにおける米国なりの戦略というものもあろうかと存じますが、それは個々の場合において——大筋においてはわが国が同じ利益を持っておると思いますけれども、個々の場合における判断は必ずしも同一ではないわけでございますから、したがいまして、米国のアジア戦略上仮に必要であり有利であると考えられる場合でも、それが直接にわが国の安全平和に関係がないという場合はあり得るわけでございまして、その間の立場の調整ということが必要になってくると考えるわけでございます。
  381. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は現在、この事前協議の対象となっております戦闘作戦行動についての解釈は、きわめて限定され過ぎていると思うんです。しかも、その限定された解釈というものは、これは政府の統一見解ですね。昭和四十七年六月七日の政府の統一見解でそれは出ております。そのほかの配置とか装備に対する変更の場合は、これは藤山・マッカーサー口頭了解でなされておる。ところが、この戦闘作戦行動については日米の合意というものがありません。政府の統一見解だけですね。これいかがですか。
  382. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 仰せのとおり、戦闘作戦行動につきましては昭和四十七年六月七日に統一見解を出しております。これは従来、政府国会でいろいろな質疑に対しまして答えましたものをまとめたものでございます。そして、この問題についてはアメリカ側も十分承知しておると存じます。
  383. 田渕哲也

    田渕哲也君 承知しておるというのはどういう意味ですか。アメリカと合意したものではないでしよう。
  384. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 特別にこの問題について一字一句についてアメリカと合意したというものではございませんが、この点は先ほどから申し上げておりますように、安保条約が締結されましてからこの十五年の間のいろいろな政府の答弁をまとめたものでありまして、アメリカとしてもそれは十分承知しております。さらに、いわゆる事前協議の制度の洗い直しという問題がございまして、その問題に関しては、第十四回安保協議委員会においてもそういう洗い直しを行って、この事前協議の制度の基本的枠組みを変える必要はないということになったわけでございまして、その段階においてアメリカ側も日本がこういう考えを持っておるということは十分承知しておるわけでございます。
  385. 田渕哲也

    田渕哲也君 この承知しておるという意味は、国会で論議して政府が答弁しておるということを知っておるという意味でしょう。アメリカがその保証をしておるというわけではないと思いますが、いかがですか。
  386. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) これは別にアメリカの保証を得るとかそういう問題ではないと存じます。政府が戦闘作戦行動というものをこういうふうに考えておるということでございまして、これはアメリカ側も十分知っておるということで私たちとしては十分であると考えております。
  387. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうすると、アメリカがこういう場合は事前協議をやりますということを保証していないわけです。私はこういうあやふやなかっこうで事前協議制度というものを運用するというのは非常に問題だと思いますが、いかがですか。
  388. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) アメリカは、安保条約第六条の目的に従って日本の基地の使用を許されておるわけでございます。ただ、それについて、その実施に関しまして事前協議制度に関して交換公文が設けられておるわけでございます。その意味で一つの枠があるということでございまして、それについて日本側がこういうことを考えておるということをたびたびの機会に申し、そしてアメリカが承知しておるということであります。この点につきましては、アメリカ側から何らのわれわれとしては文句を受けたことはないわけでございます。
  389. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、これは非常に重要な問題だと思うんです。いま政府の統一見解で戦闘作戦行動というものについて出ておりますけれども、この経緯を考えてみますと、アメリカがベトナムとかその他のところにどんどん出て行くという事実があった。そのたびに事前協議というものの申し入れはなかったわけです。なかったから、政府がどんどん解釈をして、事前協議がこういう場合にはあるんだあるんだということを言ってきてその範囲を狭めてきた。アメリカはどんどん出ておる事実が事前協議がないものだから、これは該当しない該当しないということを言ってきたにすぎないわけです。私は、こういうかっこうで戦闘作戦行動に対する事前協議が運用されるというのは、きわめて危検だと思うんです。  現に、今度は朝鮮の問題が想定されるとしますならば、シュレジンジャーの原則といいますか、欧州での戦術核戦略体制という報告が出されております。それからさらには、この朝鮮のことについては、初期に相手の軍事的心臓部に徹底的な攻撃を加えると、こういうことも言われておるわけです。こういう考え方を総合しますと、私は韓国の場合、もし北からの侵略があった場合には、御承知のようにソウルと停戦ラインの間はきわめて距離が短いわけです。三日間が攻防の勝負だと言われております。だからこれに対してアメリカ軍がどういう反応を起こすかというと、北からの侵略があれば間髪を入れず反撃を行う、しかもその反撃は戦術核が使われるおそれがある。もちろん日本に核はないということを前提にしましても、日本からの発進ということも考えられます。こういう場合に事前協議を実際にやられる暇があるだろうか。しかも、この事前協議の戦闘作戦行動については政府とアメリカとの間に何らの合意もされていない。私はこういう状態はきわめて危険だと思いますが、外務大臣、いかがですか。
  390. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 安保条約第六条の実施に関する交換公文の中で、確かに御指摘のように、重要な配置の変更、重要な装備の変更というようなことは、重要なとは何であるかという意味でこれは定義を要するところであったわけでございますけれども、日本から行われる戦闘作戦行動というものはまず一見して明らかであろうということで、特に定義をいたしておりません。しかし、その後に十何年の経緯を経まして、かくかくの場合かくかくの場合ということがいわばケースとして積み上がってきた、そういう累積でありますことは仰せられるとおりであると思います。しかし、ただいま御設問のような場合に、たとえばわが国から直接朝鮮半島に向かって爆撃が行われる、これはもう明らかに直接の戦闘作戦行動であるということは、政府の見解でも示されておりますし、日米安保協議会でも示されております。あるいはまた、わが国から発進して落下傘部隊の降下がある、これも直接の戦闘行動であるというようなこともはっきりしておりますので、積み上がりましたケースの累積として、いま何が事前協議の対象となり、何がならないかということは、私はかなり明白になっておるのではないかと考えております。
  391. 田渕哲也

    田渕哲也君 明白になっておると言われますけれども、それはわれわれが勝手に考えておるだけじゃありませんか。アメリカも認めておりますか。
  392. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 何をもって直接の戦闘作戦行動と言うかにつきましては、先ほど政府委員から申し上げましたとおり、日米安保協議会においていわゆる洗い直しの際に議論をいたしておりますので、先方としては熟知をいたしております。
  393. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから朝鮮半島への出撃の場合、イエスもあり、ノーもあり得るという答弁を総理はされております。もしイエスと言った場合、私は先ほど申し上げました想定が可能性があるとするならば、当然日本に対する報復攻撃がされます。総理はイエスと言う場合には、その報復攻撃を受けるという覚悟をした上で言われるわけですか。
  394. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ、絶えず私はそういう御質問に答える場合に、そういうことをなからしめるということのあらゆる努力をしないと、いきなりそういうことになれば国民は非常に不安に思いますから、そういう情勢もちょっと考えられないし、そういうことに至らしめないために日本はあらゆる努力をするというのが大前提である。しかもそういう場合に、いよいよもしそれでも絶対と言えぬ場合に、そういうことがあった場合にどうするのかという、その判断というものはきわめて重要であることは御指摘のとおりであります。したがって、あらゆる場合を考えて、しかもそれは日本の安全ということが頭にあるわけですからね、一番の大きなやっぱり事前協議の中心は。そういうことを頭に入れて、あらゆるそのことによって起こるべきこともいろいろ勘案をして、そしてイエスということでございます。
  395. 田渕哲也

    田渕哲也君 当然、イエスと言う場合には報復攻撃を覚悟した上でのことだと思うのです。ただ問題は、日本の現在の防衛力に報復攻撃に対応する体制というものはあるのかないのか、これは防衛庁長官にお伺いします。
  396. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 防衛長官が答える前に、実際それはいま田渕議員も言われるように、これは非常にやっぱり大問題でありますから、そういうことを思うにつけても、そういうことを防ぐためにあらゆる努力を日本がしなきゃならぬ。そういうことに努力もしないでそんなことになるということは、これは大変なことでありますから、そういうことにあらゆる努力を集中するということが大前提である。そうでないと、そういう前提を抜きにしてそういうことになれば、国民皆さんも非常に不安に思いますから、それはもうあらゆる努力をしてそれを防ぐということが大前提である。その上に立って防衛庁からお答えをいたします。
  397. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 防衛庁といたしましては、あらゆる攻撃に対しまして、これを自主防衛という立場から、これに対処できるように十分な防衛力を高めていく努力をしなければならないというふうに思っております。
  398. 田渕哲也

    田渕哲也君 それは当然なことで、問題は、イエスと言った場合に報復攻撃がある、それに対応する体制が現在の日本の防衛力にあるのかということをお伺いしておるわけです。
  399. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先ほどお答えを申し上げましたように、核の攻撃というようなことについてはございません。それから大規模な攻撃ということについては、なかなか十分ではないと思います。しかし、小規模の攻撃に対しては十分の備えがあるというふうに思っております。
  400. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうすると、総理にお尋ねしますが、日本が対応できる防衛力がないぐらい大規模な攻撃、報復が行われる想定の場合には、イエスとは言わない、これは当然のことだと思いますが、いかがですか。
  401. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまいろんな仮定の問題を、これは田渕議員がいろいろ仮定されるようにちょうど仮定のようなことが現実に実現するかどうかということは、これは非常に予言をだれもできないんですから、あらゆる場合を考えて日本の安全のために国民に対して責任を負わなければなりませんからね、それは重大な決意ですから、重要な判断でありますから、これは国民に対して責任を負う者として、あらゆる場合を頭に入れて判断をしなければならぬ。   〔理事柳田桃太郎君退席、委員長着席〕 そういうことを思うにつけても、何とかしてそういう事態を防ぐためにあらゆる——そういう場合を考えてみればいろんな疑問、不安が起こってくるでしょう、そういうことを考えれば考えるほど、一層の努力をそういう事態を起こさせないためにわれわれは傾けなければならぬということが、それはもうわれわれとしての責任だと思っております。
  402. 田渕哲也

    田渕哲也君 時間が余りなくなりましたので、最後にまとめてひとつ質問をしたいと思います。  そういうことが起こらないようにあらゆる努力をするというのはこれは当然の話でありまして、そんなことは質問の答えではありません。ただ、あらゆる努力をしても万が一という場合に備えて論議をするのが安全保障の問題だと思います。だから、そういう仮定の問題でありますけれども、仮定の問題の論議が私は安全保障、防衛の論議だと思うんです。そういう点でお答えをいただきたいと思います。  最後に、私は事前協議の重要性というものについて力説する理由は、この安全保障条約というものは、政府間の取り決めだけによって運用がうまくいくものじゃないと思うんですね。これは衆議院予算委員会でわが党の佐々木委員からも質問いたしましたけれども、安全保障条約の第五条には「自国の憲法上の規定及び手続に従って」という制約が設けられておるわけです。だから、アメリカの国民世論、議会、そういうものの支持がなくしてアメリカは安全保障の義務を果たすわけにはいきません。また、日本においても日本の国民世論並びに議会の支持というものがなくて、うまくこの安全保障条約が運用されるとは思わない。私はその場合に、この事前協議というものはきわめて重要な意義を持っておると思うんです。  現在、この日米安保条約は、私は日本、アメリカ両国民から必ずしも十分な満足感を持って受け入れられていないと思うんです。日本の国民の安保条約に対する不満と不安は、やはり戦争に巻き込まれるおそれがあるのではないか、それから外国の軍隊の基地があることに対するこれは基本的なやはり嫌悪感というものがありますし、具体的には基地やアメリカ軍の行動によってトラブルが起きておる、こういうことから、日本の国民から見た場合、安保条約はかなり不安と不満があります。アメリカはどうかというと、日本はただ乗りではないかと、いわゆるフリーライダー論。そういう日本になぜ片務的な安保条約を結ばなければならないかという不満があります。もう一つの不満は、事前協議その他で作戦遂行上制約が多過ぎる、こういう不満があるわけです。  私は、この日米両国民の不満と不安の接点といいますか、一つの重要な接点がこの事前協議だと思うんですね。したがって、この事前協議に対する日米両国民考え方は私は正反対の面があると思うんです。日本は、できるだけこれをきちんとして、戦争に巻き込まれないような歯どめにしたい。アメリカ側からするならば、ただ乗りをしておいて何をむずかしいことを言うんだと、もっと弾力性を持たしてほしい。私は、こういう状態で事前協議というものを放置しておくことは、日米安保条約の有効な機能を果たすという上から見たら問題がある。だから、私はこの問題は真剣に考えるべきだと思うんです。  アメリカ上院の軍事委員会は、国防長官に対してこういう勧告をしております。沖繩の海兵隊師団はマヤゲス号奪回作戦に大きな役割りを果たしたけれども、アメリカは今後、こういう事態の発生に備えて、事前協議に制約されないように海兵隊の一部をグアム島に移転すべきだ、こういう勧告をしておることは御承知だと思います。私はこれも含めて、一体政府はどういう判断をされるのか。日本は事前協議があってうるさいからアメリカ軍はほかの基地へ引き揚げよう、その方がいい、こういう動きがアメリカに出ておる。ところが、一方では、この事前協議制度のあいまいな運用に対する日本国民の不安がある。だから私は、この事前協議という問題は、ぜひ来るべき日米首脳会談においてやはり詰めてもらいたい、はっきりしてもらいたい。なかなかこの日米両国民の希望の一致点というものを見出すのは困難かもわかりませんけれども、しかし、何らかの形ではっきりしないと安保条約の運営に支障を来すのではないか、こういう観点から私は総理にお願いをしたいと思います。最後にこの点についての御答弁をお伺いしたいと思います。
  403. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日米間の安保条約、あるいはその上にその大きな前提になっておる日米の相互協力、これを支えるものは両国民であるということは御指摘のとおりだと思います。したがって、絶えず、単に政府間折衝というのでなくして、まあ議会人との間にもこういう問題に対して相互の理解を深めておく必要は御指摘のとおりだと思う。  ただ、私が残念に思うのは、こういう国の防衛問題のような重要な問題が、この国会において政党間に意見一致を見てないという事実であります。だから、これは先方と議会同士のいろいろな意見の交換をするにしても、各政党の方々が行かれればこういう重要な問題について皆百八十度考え方が違うというところに、アメリカから見れば、こういう重要問題について政党考えのコンセンサスが得られてないということはアメリカに非常な不安を与える材料だと思うんですね。  だから私は、安保反対なら反対でいいですよ、しかし、日本の安全を確保するということに責任を感じない政党があるべきではないと思うんですね。安保反対と日本の安全を確保するということについては共通の関心事であるわけですからね、各政党とも。だから、田渕議員の所属する民社党などの提唱されておる、国会内で安全保障の特別委員会を置いて、そうして各政党がもう少し歩み寄りができないものかと。歩み寄りができなくても、いま言った安全保障の問題というものは共通の一つの議論の土俵にはなるんですからね、安全を確保するということは大事な問題だと。そういうことで、まずやはりこの国会内でもう少し安全保障の問題というものがいろいろな広い角度から取り上げられて、一応の国会というものに一つの——コンセンサスをつくるといっても、いま場はないでしょう。いろいろな予算委員会などにおいてそのときの一項目として取り上げられるけれども、もう少しやっぱりその問題を掘り下げて各党が話し合って、そしてもう少しコンセンサスをつくる努力というものは当然にすべきである。  防衛問題についてこれだけ百八十度政党考え方が違っておるというのは、私は余り知りませんね。これはやはりいろんな政党の違いはあっても、この問題についてはお互いにいろいろ方法論に多少の食い違いはあっても、共通の基盤を持っておる。これは非常に日本の不幸なことである、この点で。そうでないと、いま田渕議員が御指摘になった、議会人同士とか国民同士といっても、政党の代表が行ったら皆言うことが違うということでは、日米協力の基礎になるものは相互の信頼関係ですからね、ところが主要政党の言うことが皆百八十度違うということが相互の信頼を促進する道では私はないと思う。こういう点を、自民党とか民社党とか社会党とかいう立場を離れて、国会としてお考え願いたい私は問題点である。そうでなければ相互の理解といっても非常にむずかしい、議会人の交流といっても。そうでしょう。国会各党代表が行ったら百八十度違う意見を言って、それで日米の信頼が促進されるとは思わない。こういう点に私は問題がある。  こういう点を自民党も真剣に考えています、これは。やっぱり今後の防衛問題を考えるときに、国民的コンセンサスを得なければ防衛問題というものは、これは基地の問題一つとらえてもいろんな問題が起こるというのは、その背景をなしておるものは国民的なやはりコンセンサスのないところに問題が起こるわけですね。そういう点で、問題の根本はそういうところにあるということにもわれわれは思いをいたして、これは自民党でも検討いたしますし、各政党においてもこの問題は真剣に御検討を願いたい重要な課題である。この私の意見を述べまして、あなたに対するお答えにも私はなると思う。  事前協議の問題でもそうですよ。皆政府の言うことは信用できぬと。それはやはり日本の防衛問題に対する基本的な考え方の違いがあるわけですからね。もう少しお互いに共通の土俵で話し合うことならば、事前協議の問題についても、もう少しお互いの理解は深まるのじゃないか。
  404. 田渕哲也

    田渕哲也君 われわれは安保が信用できないと言っているのじゃないんですから。安保条約をもっと有効に機能させるために、事前協議をもっときちんと詰めろということを言っているのですよ。
  405. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 事前協議というものでも、やはり政党によって安保条約そのものに反対というのですからね、事前協議の条項についてもなかなか各党が、いろいろ事前協議といっても実際はアメリカの言うなりであろう、やらないのじゃないか、事前協議ももうルーズで余り厳格にやらぬのではないかと言って、お互いにコンセンサスがないだけに非常な疑心暗鬼を呼ぶのですね、この問題は。やっぱり根底には共通の課題として話し合うという土俵ができないと、なかなか事前協議の問題でも……
  406. 田渕哲也

    田渕哲也君 事前協議の問題をあいまいにしておくからそういうことになるのですよ。
  407. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) だから、われわれとしても考えますよ。
  408. 田渕哲也

    田渕哲也君 だから日米会談で取り上げるのか取り上げないのか、こっちから出すのか出さないのか、それだけ……。
  409. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 自民党としても、この防衛問題というものは国民理解と支持を得なければならぬわけでありますから、自民党だけでひとり合点というわけにはいきませんが、しかし、われわれも考えますけれども、野党皆さん方にもお考えを願いたいと思うのです。  私が首脳会談に臨んで事前協議のことを言うか言わぬかということは、いままだ私は国会審議、重要法案をできるだけ国会成立を図りたいと一生懸命ですから、いまどういうことを話すかということを一々まだ検討しておる段階ではないのですが、どういうことをワシントンで話すかということをいまここで申し上げることは適当でない。しかし、率直な話し合いにしたいと思うんですよ。おざなりな首脳会談に終わらさないで、率直な話し合いをしてみたいと思っておりますから、そういうことで御理解を願います。
  410. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして田渕哲也君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  411. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 市川房枝君。
  412. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は、三木総理に対して、まず、ただいま本院で審議中の公職選挙法、政治資金規正法の改正案についてお尋ねをしたいと思います。私どもは小会派なので、九日の政府提案の説明に対しての質問を実は許されなかったからでございます。  第一に伺いたいのは、今度の改正案は、議会制民主主義の基本である議員定数アンバランスを、衆議院では二・九の倍率まで訂正したことはいいのですけれども、五・八の倍率になっている参議院地方区の方がそのままに残されているということ、これはどうもどういう理由かはっきり納得できないのであります。それからまた、次の参議院選挙までに全国区と絡めて是正をするとおっしゃっておりますけれども、その保証はございません。私は、裁判までして有権者がそのアンバランス是正を要求してきたその国民の要求にこたえるために、また参議院の名誉のためにも、この本院で是正して地方区アンバランスを直していただきたい、そう思いますが、総理はいかがですか。
  413. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは戦後最大の選挙法改正ですから、この機会に参議院選挙制度も一緒に結論を得まするならば、これは提案をしたかったのです。しかし、いま御指摘の定数是正の問題については、衆議院で前々から小委員会ができて各党意見一致を見たんですよ。参議院定数是正については各党間の意見一致を見ないし、また、同じように選挙制度改正するならば、いろんな論議を呼んでおる全国区の問題も検討する必要がありますから、こういうものもひっくるめてひとつもう少し——何も結論も得ないのにこういう選挙法の問題を拙速主義というのも、これは好ましいことではございませんので、参議院の次の選挙までの間という期限を、無期限ということではこれまた責任逃れみたいな感じもいたしますので、期限を切って結論を出したいということで、できれば一緒に出したいと思ったのですが、衆議院のようなわけにはいかなかったという事情が背後にあるわけでございます。
  414. 市川房枝

    ○市川房枝君 いまの総理お答えに対していろいろ意見がありますけれども、時間がありませんので別の機会に譲って、先へ進みます。  次に、今度の改正案を見ますと、総理の金のかからない選挙にしたいという御主張とは逆に、いままで以上に金のかかる選挙となっているように思います。金のない有権者は立候補もできないということになるのではないか。候補者個人としても供託金の三倍の値上げ、法定選挙費用の約三割のアップ、そのほか国としては公営の拡大、それも社会党の修正で多くなったのでありますが、候補者一人当たりの費用がいままでの倍額ぐらいになるように思います。しかし、それならばいままでの候補者余り金を使わないかと言えば、やっぱり私は裏金が相当に動く、前よりも多くなるのじゃないか。と言えば、結局は金のかかる選挙にいままでよりも以上になるのではないか。総理はそれでいいとお思いになりますかどうか。  これは自治大臣から、一体どのくらい国費が今度の改正で多くなるのかの数字を加えて、御意見をお二人から伺いたいと思います。まず、総理にお願いします。
  415. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 市川議員が、金がかかるようになるのではないかと。私はそうは思わないんです。  これは相当に公害も拡大しましたし、そして選挙の連座制の規定もいままでよりは強化ですし、それから法定の選挙費用というものも上げたじゃないかと言うが、立法機関が法定費用が決められておってもそれを守り得ないということは、私は良心にとがめるんですよ。実情に沿うような法定費用にして、そのかわりにその法定費用はこれは守るようにしたい。いまの法定費用はいろいろな計算してみますと実情に沿わない点があるんですよ。その実情に沿わぬものをそのまま置いておいて立法機関そのものが法律を守れないということでは、国民に対して法律を守ってもらいたいということに何かこう道義的な迫力を欠きますから、そういう点でこれを実情に沿わしたわけでございます。  また、立候補をする人は、一定の得票数を取らない人にはいろんな国が出した費用に対して返してもらうというような制度も今度拡大しました。そしてまた、この立候補に対して供託金もふやしたというのは、選挙というものは、これはだれでも自由には出られますけれども、ある程度の責任を持ってもらわないと、政府がいろいろな公共的な施設を提供するわけですからね、テレビにしても新聞にしても、あるいは公営が拡大されるわけですから、やはり責任を持って立候補してもらわないと、いままでの実情から見ると必ずしも全部そうとは言い切れない方々も、まあないとは言えませんからね。そういう点でやはり立候補するについては、国会議員になろうというんですから、ある程度の責任を持ってもらいたいということで、いまの貨幣価値の現状からして引き上げたものであって、これはできるだけ選挙に金がかからぬようにしようという精神を貫いて今度の公職選挙法改正を行ったものでございます。
  416. 福田一

    国務大臣福田一君) 数字でございますから、ちょっと読み上げますが、衆議院の場合はポスターが九十万円くらい、自動車が百万円、ビラが平均で二十五万円くらい、はがきが十万円で二百二十五万円くらい公営で今度はふえるということになります。  それから参議院の場合は、同じような数字でございますが、高くなって、全国区で五百三十五万円、それから地方区で二百八十五万円公営で負担をする、こういうことに相なろうかと存じます。
  417. 市川房枝

    ○市川房枝君 いまの自治大臣の計算は私がしているのよりも大分安くて、それに、問題がありますけれども、一応伺っておきましょう。  次に、今度の改正政府政党だけで政党候補者に都合のいいように立案され審議されてきたようで、肝心の主権者不在であったと、こう思います。現に衆議院では公聴会も開かれず、参考人にも一般国民は加えられておりませんでした。この案の内容についても、有権者が要求してきた地方自治体の選挙における公報等の義務制は無視されておりますし、新たに政治資金規正法の附則で、消費者団体あるいは婦人団体、市民団体等の選挙中の政治活動が今度は禁止されております。こういうのは国民立場としては納得ができないんですけれども、総理、そういうことでいいんですか、国民不在の選挙法で。
  418. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国民不在という御非難は当たらないのじゃないでしょうか。できるだけテレビなども何とかして、技術的に困難はありますけれども、回数をふやすことはできぬかとか、あるいはまた政党の新聞に対して政策などを国費において宣伝する機会をつくるとか、全国民という視野に立ってはできるだけ国民の意向が公正に選挙に反映できるようにという配慮はいたしたのであります。いろいろな規制をしたのは、個人の選挙活動というものに対していろいろ現行法でも選挙用の文書というものは規制を受けておるので、それに対する規制はいたしましたけれども、国民全体というものを対象にしては、できるだけ選挙に対する国民の意向を反映させたいという努力は、できるだけの努力はいたしたつもりでございます。
  419. 市川房枝

    ○市川房枝君 次は、今度の改正選挙管理について全く触れていないという点に私は不満を持っております。選挙政府政党の利害から離れて公正な明るい国民選挙とするためには、私は選挙の管理あるいは選挙関係の法案の作成等を、自治省やあるいは地方行政に任せずに、公正取引委員会のような独立した官庁に担当させなければだめだと前から主張してまいりました。総理の主唱でできましたきれいな選挙推進国民運動本部というのが、自治省の中に置き、自治大臣が本部長では国民運動にはなりません。十一億の予算も税金のむだ遣いに終わるのではないかと心配しておりますが、総理はこの選挙管理制度の問題について検討をしていただく御意思がございましょうか。
  420. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 法案を作成するについて、何か第三者の機関でというのは一つの考え方だと思いますよ。しかし、まだそういう機関がございませんから、ああいう参議院選挙国民の強い批判にこたえて改正案を出そうと私は内閣の出発に際して決意をしたわけでございますから、ほかに何も法案を作成するような適当な機関がないわけでございますから、現在のような段階では、選挙法改正は自治省が中心になってやることが現実的なわけでございます。  それからまた、選挙管理委員会というものはいろいろ仕事もふえてまいりますから、この管理委員会の強化というものは検討いたします。
  421. 市川房枝

    ○市川房枝君 次に、今度の政治資金規正法の改正案はむしろ政治資金奨励法だと、こういうふうに私には映ります。この改正によってむしろ私は政界と財界との癒着をますます強くするものだと思われて、はなはだ残念に存じます。私は、企業からの政治献金は諸悪の根源だとの確信を持ち、企業、団体、労働組合からの献金を禁止し、個人の寄付だけに限るべきだと主張を続けてきております。三木総理も、昨年の選挙の後、私どもと「朝日ジャーナル」で対話をいたしましたときには、私のそういう考え方に御賛成を大体していただいたのじゃないかと思うのですが、三木内閣の提案された今度の法案は、そのときと大分違ってきておる。まあ自民党の現状から、総理のお考えがあの政治資金規正法に盛れなかったということは私も了解がある程度できますけれども、せめて、五年を経過した場合にもう一遍検討するというのでなくて、五年を期限として個人献金に移るということまでなぜ総理はがんばってもらえなかったかということを私は非常に残念に思います。総理はいかがお考えでしょうか。
  422. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、政党の資金はできれば党員の党費と個人の寄付によって賄うことが理想だという考えを捨てたわけではないわけです。しかし、それにいくまでの経過規定というものが要るわけで、すぐに切りかえれば混乱が起こるわけですから、そういうことで、自民党も五年後には党の経常費は企業献金を辞退するという決議を行ったわけです。これは当然に党の決議でございますから守っていかなければならぬ責任があるわけで、だから五年後に法律がどうなろうとも、これは自民党自体の判断としてそういう決定を行ったわけでございます。そういうところにも私の考え方というものはある程度党がこれを聞き入れられたと思っております。  それからまた、これは奨励法でない。奨励法というものではありません。それは何かと言えば、第一に限度を設けた。限度が大きいと、こう言われるかもしれぬが、これは税金みたいなものでないんですからね。その範囲内でなければならぬということと、市川議員がいつも問題にします透明度という問題ですね。今度はもう会費は認めないんですから、全部寄付ですからね。これはもう透明度から言えば大変なことになりますよ、透明度は。このことがやっぱり、政治資金というものはむしろ国民の目にさらすというところに私は非常に意義があると思いますよ。それを、いままでは会費という中に隠れておったのを今度は全部寄付になるのですからね。これは私は市川議員がお考えになっても、高い評価をこの政治資金規正法にはお与えくださってもしかるべきではないか。これはあなたがいつも主張されるのは透明度ですよ。政党の透明度は一〇〇%になるんですからね、これは。そういう点で非常な進歩であるという評価を得たいものだと願うものでございます。
  423. 市川房枝

    ○市川房枝君 いまの総理お答えにもいろいろ異議がありますけれども、次に移ります。  次は、国際婦人年について総理にお伺いしたいと思います。  総理は、一月二十四日の本院での施政方針の演説の中で、また各新聞等の広告に発表されました声明なんかで、婦人の地位の向上に努力しますとおっしゃってくださいました。それから約半年たちました。どんな努力をしてくださいましたか、具体的に伺いたい。また、これから何をしてくださるおつもりか、それも伺いたい。
  424. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) あれから数カ月の間にどういうことをしたのか述べてみよということで、なかなかそれは地位の向上というものはそんな思いつきでできるものでもないわけですから、したがって、いま植木総務長官のもとで、ことしは婦人年だということで何かそのときの一時の行事に終わらすことなく、婦人の向上というものを、ことしの婦人年に当たった行事というのじゃなくして、将来にわたって婦人の地位の向上ということについて具体的なプログラムを何かつくれないだろうかということで、植木総務長官のところで、婦人問題懇談会などもあそこにあるものですから、そういういろんな意見も徴しつつ、今度は具体的な課題としてこの問題と取り組んでいきたいという姿勢でございます。
  425. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま総理のおっしゃった婦人問題懇談会というのは、お茶の先生だの、お花の先生なんかが委員になっておって、お茶飲み会ですよ。あんなところでできるはずはない。  次に、この六月十九日からメキシコで開かれる国連主催の世界婦人会議への政府代表を六日の閣議でお決めになりましたね。各国からは婦人の総理大臣あるいは婦人大臣、大統領夫人等々が出席するようですが、日本からは前の労働省の婦人少年局長、現在の婦人少年局長とニューヨークの公使とが代表というのですけれども、非常に弱いとお思いになりませんか。日本は経済大国ではあるけれども、婦人の地位は発展途上国よりも私は低いということを象徴しているのじゃないのかと思うんですけれども、総理はいかがですか。
  426. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本に婦人の閣僚がおったら私派遣したいんですよ、いま三木内閣に婦人の閣僚がおれば。残念ながら、将来はできたらつくりたいと思っておりますが、いまはないわけですから、閣僚を派遣できませんでしたけれども、藤田たきさんは閣僚級である、閣僚級の人物であって、見劣りはしない。現実に閣僚でないけれども、そのクラスである、こう私は考えるわけでございます。また、その他の政府の派遣する人たちも適当な人選であって、そんなに、日本は婦人の閣僚などは派遣は不幸にしてできませんでしたが、ないからできなかったわけですが、これを余り軽視した人選ではないと考えるわけでございます。
  427. 市川房枝

    ○市川房枝君 メキシコ大会では、向こう十年間の婦人の地位の向上のための行動計画というのが議題になっております。勧告として私は採択されるだろうと思います。そうすれば、日本もこれを実施する責任ができるわけでありまして、総理はその場合にちゃんと実施をする御決意を持っていただいているかどうか。  それと、それからこの行動計画の案の中に、政府のトップレベルで協議し、政府内に国内委員会、婦人局、これは婦人少年局の婦人局とはちょっと違うのですが、婦人局の機構を設置しとして、委員の人選なんかまで挙げております。総理はこうした権威のある、さっきの懇談会じゃだめなんです、権威のある総理直属の機関をおつくりになって、そして日本としての行動計画を作成し、その実施を図るような決意を総理が持っててくださるかどうか。総理がいまそれをはっきりここで今後日本としてはこうするとおっしゃってくださると、本当はさっき言いました代表がメキシコへ持っていくおみやげになるのではないかと私は思いますので、ここでひとつそれをはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  428. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) あの行動計画は二百六項目ぐらいになっております。そういう膨大なものでありますから、日本の実情にも照らして実行のできるものは実行をしたい。それに対して何か実行するための機関をつくるかどうかというようなことは今後の検討にいたしますが、その勧告の中で日本の実情からして適当なものというものに対しては、これを実施するようにいたしたいと考えております。
  429. 市川房枝

    ○市川房枝君 いや、それを勧告の中で日本として取り上げるべきことといいますか、それを検討する、それから決まったらそれを実施するというのは、各省ではできないのですよ、だから、それにははっきりした権威ある機関を、委員会をつくらなきゃ私はそれはだめだと思いますが、それまではまだお考えにならないのですか。
  430. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまでも植木総務長官に私は検討することを指示してあるわけですから、各省がばらばらにやるというのではなくして、植木総務長官を窓口にしてこの問題を十分検討いたします。
  431. 市川房枝

    ○市川房枝君 時間が来ましたけれども、一言だけ言わしていただきましょうか。総理のいまのお答えはやっぱりはっきりしない。これからやるんだ、ことに総務長官とおっしゃるんですが、私は総務長官にこの前の三月の予算委員会の一般委員会でこのことを申し上げたんですけれども、その後、一向何ともお話はないし、それからいまの懇談会懇談会とおっしゃる、それじゃだめなんですよ。だから、もう一遍それを私はこの際、いまはっきりとおっしゃれなければそれもやむを得ません。けれど、できるだけ早い機会にその決心をひとつ決めていただかなければ、それこそ代表の弱いということをいま申し上げましたけれども、一体日本は大会へ行って何を言うんだ、何を持って行くんだ。何もないじゃないですか。私は非常に恥ずかしいと思うんです。だから、それを総理に特にお願いをしておいて私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  432. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして市川房枝君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  433. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) この際、上田耕一郎君の質疑に対し福田自治大臣から発言を求められておりますので、これを許します。福田自治大臣。
  434. 福田一

    国務大臣福田一君) 先ほどの政府の統一見解を出せということでございますので、これから私が申し上げることにいたします。  今回の改正で、選挙期間中確認団体の発行する機関紙の号外等で、選挙に関する報道及び評論を掲載したものは頒布することができないこととされたが、これは先ほども三木総理から申し上げたとおり、最近の選挙の実態を見ますと、選挙運動に紛らわしい機門紙号外等が無償で無差別に、かつ大量に頒布され、選挙の公正を害する傾向にあるので、選挙の公正を確保する見地から必要最小限の規制を設けたものであります。  「選挙に関する報道、評論」の意義でありますが、これは従来から公職選挙法に規定されている用語でありまして、「報道」とは、選挙に関する客観的事実の報告であり、「評論」とは、選挙に関し、政党その他の団体、候補者その他の者の政策意見主張選挙運動その他選挙に関する言動を対象として論議、批判することを指すものと解されます。すなわち、ある政党、政治及び経済等に関する団体、労働組合、選挙候補者、同運動者その他の者が、選挙に関し、いかなる政策を発表したか、いかなる意見主張を述べたか、あるいはいかなる候補者が立候補したか、ある候補者をだれが支持し、推薦し、だれが反対したかというような事実を報告として掲載するのがいわゆる「報道」であり、ただいま述べた諸団体または候補者等の政策その他の意見主張や、選挙運動その他選挙に関する言動を論議し、批判し、賛否の意見を述べたり、あるいは批判の対象とした特定の政党、政治団体または特定の候補者を支持、推薦もしくは反対する等の意見主張の記事は「評論」に該当するものと解されておりますことは、判例がこれを示しております。したがって、このような選挙に関する報道、評論を掲載した機関紙号外であるかどうかによって頒布できるかどうかが判定されるわけで、その判定は、具体的な事例の内容に照らして客観的になされるべきものであると考えます。  以上でございます。
  435. 大谷藤之助

  436. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 考えられる限り最悪の解釈が統一見解として出されたと思います。こうなりますと、ある政党の、選挙に関していかなる政策を発表したか、いかなる意見主張を述べたか、これも選挙に関する報道に入るわけで、また、その政党政策その他の意見主張を論議し、批判し、これも全部評論に入る。政策発表も政策論争もすべて選挙に関する報道、評論の中に入って、今度の公選法改正案では全部禁止されるということになります。  三木総理にお伺いします。  三木総理は五月三十日、衆院公選特別委員会で民社小沢議員の質問、選挙期間中に機関紙の号外で禁止されるのは、選挙の報道、評論ですから、政策機関紙の号外、そういうことはこの期間中やってよろしいというわけですから、総理のいままでの間違った答弁をこの機会に取り消していただきたいという質問に対し、号外それ自体を禁止するわけではない、選挙の報道、評論に関してこれを制限しようというもので、あなたの明確な解釈のとおりでございますと、そう総理自身が答弁されております。  この明白な矛盾、どうお考えになりますか。五月三十日の衆議院公選特別委員会、政策号外はいいんだという。もう全然統一見解になっていないですよ、これは。いままでの大臣の答弁と全部違うじゃないですか。論議やり直しですよ、こういうのじゃ。全部御破算に願いましてはみたいなものです。御破算にする気ですか。
  437. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 選挙に関してでありますから、それが従来の政策であるならば、それは何もこれが規制をしようという中には入らぬので、選挙に対して、選挙に関し、選挙に関連をした政策の発表というものは、他にいろいろ今回は御承知のように機会があるわけですからね。新聞にもあるし、新聞もまた新たに政策発表の機会を与えることになっていますし、したがって、選挙に関しての政策発表だけであって、普通の政策の発表というものは規制する対象ではないということを申し上げたわけでございます。
  438. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ものすごい欺瞞があるんですよ。選挙に関する政策選挙に無関係の政策と、こんなものあるは味ないじゃないですか。選挙というのは各党とも外交、経済、福祉の問題、あらゆる問題について政策発表しているわけでしょう。そうすると、どんな問題でもこれは選挙に関するということになりますよ。もちろん選挙運動と政治活動とは相対的な区別がありますけれども、選挙というのは政治の一つの中心的な舞台なんですから、それぞれの責任ある政党国民に自分のすべての政策を訴えて争うのが政党じゃないですか。政党政策を、これは選挙に関係があるかないかとだれが判定するんですか。その結果、先ほども明らかなように、政府が判定する、司直が判定するということになっているので、これは大問題だということになった。選挙に関する政策論争もすべてこれ禁止されるということになれば、首相の言う政策号外は自由だと、また福田自治大臣が先ほども言いましたね、全部うそということになるじゃありませんか。もう一度、こういう統一見解じゃなくて、もっと明確な統一見解をもう一度要求します。
  439. 福田一

    国務大臣福田一君) 統一見解を出したわけでございますから、それでは不明である、明らかでないから統一見解を出せとおっしゃるから政府として統一見解をまとめてここにお出ししたのでございますから、この統一見解をもとにして論議を進めていただけませんというと、それは統一見解を出した意味がなくなってしまう。あなたが統一見解を出せとおっしゃる、ごもっともでございますから政府として統一見解を出したわけでございます。そこでこれを基礎にして、統一見解を基礎にして論議を進めていただくようにしていただきたいと思うわけであります。  そこで、いまあなたのおっしゃったことで、まあこれはいろいろこれから委員会その他等でも話が出ると思いますけれども、それはもう選挙については政党機関紙というものはちゃんと出せることになっておりますし、それから新聞に四回も政党政策というものは今度は掲載できる。これは共産党も自民党も同じ回数でございます。そういうものができる。こういうことにいたしましたし、それからまたビラは、ビラというか、政党が出しますところの選挙ビラというものは三回はちゃんと、何枚でもいいから出せるということになっておるのであって、政策の内容を知らせるという意味では、十分に私は選挙民に知らすことができると思うんです。ところが、選挙に関するこの報道ということをはっきりしておきませんと、これ私、まあ皆さん疑問があるから、ビラ公害の、ここへ持ってきましたけれどもね。これはあなたの写真も出ていますがね。いや、これはあなただけじゃないですよ。自民党にもあるんです。共産党だけではありません。それから美濃部さんの写真を出したのもあれば、これはお気の毒ながら社会党もあれば、民社党もあるんです。しかし、いずれにしてもそういう公害というものが……
  440. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 問題をすりかえないでください。
  441. 福田一

    国務大臣福田一君) いやいや、そうじゃない。どういうのがいかぬかとあなたがおっしゃるから、そういう例として見ていただきたいということを言うておるのでありまして、それはまあ、ちょっとこういうのを出しちゃね。(「問題をすりかえては困る」と呼ぶ者あり)私の言うのはすりかえるのじゃない。だからね……
  442. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 統一見解で議論している。
  443. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 席に帰って答弁を願います。
  444. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は何もあなたのところだけと言っているわけじゃないですよ。みんなありますよ。これではビラ公害になるから、こういうのはやめるようにしましょうということを中心にしてやっているんです。(発言する者多し)
  445. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 時間が参りましたから簡潔に願います。静粛に願います。
  446. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題ですね、いまの統一見解の内容は、明らかに先ほどの各大臣の答弁や、それぞれ完全に矛盾した答弁や、衆議院での三木総理の答弁、福田自治大臣の当時の答弁と全く食い違っている。こういうものがということになりますと、政策ビラは自由だということは全く御破算になってしまう。しかも、こういう一番公選法の中心問題の概念を、いまさらこういうとんでもない最も反動的な統一見解として出さざるを得ないというようなずさんな法案を、わずか二十時間という審議を決めて強行審議をやる。これは非常に重大な問題であります。  私はもう時間がありませんけれども、今後われわれはこれを徹底的に追及しますが、最後に一問、福田自治大臣、先ほどの参議院の本会議、国権の最高機関である国会のまた一番大事な審議の機会である本会議でお述べになった「政党の政見、公約、」これを取り消すと言われましたけれども、具体的にどういう方向で、しかるべき方法でこの取り消しを行われますか。その点最後にお伺いいたします。
  447. 福田一

    国務大臣福田一君) その問題につきましては、これはもちろんここで問題が出たわけでありますが、これはやはり調べた上で、それからまたお調べになって、本会議の問題としてお取り上げを願った方がいいのではないかと思うのでございます。
  448. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これで終わります。
  449. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして上田耕一郎君の質疑は終了いたしました。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  450. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  十分間休憩いたします。    午後五時五十九分休憩      —————・—————    午後六時十一分開会
  451. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  昨日、田君から御指摘がありました四月二日の本院予算委員会における坂田防衛庁長官の答弁の中に、会議録上、「海域分担」の字句が記載されている件につきまして、理事会にて協議の結果を御報告いたします。  昨日の理事会におきまして本院記録部長から四月二日の会議録作成の経緯をただしました結果、担当速記者は問題の「海域」という部分は長官の発言になかったので、発言どおり作成して校閲に回したが(注、担当速記者の速記原本にない)校閲の段階で、記録部において防衛庁から借用した答弁書をコピーにとった際、コピーに「海域」の文字があり、その部分にしるしがあったにもかかわらず、答弁の前後の関係から長官が読み落としたものと誤認して「海域」の文字をそのまま記載したものであるということでありまして、「海域」の文字は全くの事務的なミスで記載されたことが判明いたしました。  以上のような経緯でございますので、委員長といたしましては、「海域分担」の字句は「分担」の誤りでありますので、正誤として処理いたします。  なお、本件は事務的なミスとはいえ、重大なことでありますので、事務当局に対し厳重に注意いたしました。  以上御報告いたします。     —————————————
  452. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 田君。
  453. 田英夫

    ○田英夫君 いまの委員長が言われたことは理事会で御検討の上でありますが、私がいま伺っていたことを率直に申し上げると、いまの委員長の読み上げられました中にもはっきりありますように、前後の関係を見て、「海域」とあるのを防衛庁長官が読まなかった、こういうふうに誤認をしたと言われるが、私もこの速記録の前後を全部見ました。四月一日の前後の関係も全部見ました。明らかに話は海域の問題なんです。ですから、むしろ誤認というよりも、記録部が非常に忠実に事実を記録しようとした努力がこういう結果を招いたというふうに考えざるを得ない。それを記録部の過ちのようにしてしまうというところに私は非常に不満があります。こういうことで参議院の、そうして国会の権威というものを守り切れるかどうかというところに私は非常な疑問を感ずる。しかし、委員長以下の御努力というものは私も多といたします。むしろ、立法府の立場で共通に、自民党皆さんもわれわれも、そして委員長も、行政府に対してはっきりと物を言うべきじゃないんでしょうか。われわれの内部の速記部の、記録部の責任にするというようなことは絶対にあってはならないし、いわんや、この結果によって記録部の人の中に何らかの傷がつくというようなことがあっては絶対にならぬ。これは、私は、これ以上時間がありませんから、むしろこの席で委員長にお願いし、理事会にこのことをはっきりと申し上げておきたいと思います。絶対に傷をつけてはならぬ、このことをお願いをしておきます。  そこで、むしろこのことによって非常にはっきりしてきたことは、防衛庁がかねてから海域という問題を、海域分担という問題を以前からアメリカとの間で話し合っていたということなんですよ。この本質の問題をここで忘れてはならないと思うんです。そして、このことが実ははっきりと事実によって示される、そういう材料を私どもは持っていますよ。この点について、ひとつ防衛庁長官から、海域という問題を話し合ったことはないと前に言われたけれども、その点を改めて重ねて伺います。
  454. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私は、四月の二日におきましては、海域分担という言葉は使っておりません。そのことは田さんにも申し上げておきたいと思います。その処置は私が言うべきことではございません。本委員会において御処置を願いたい問題でございます。これは、私、良心に誓いまして申し上げたいと思います。  それから、海域の問題につきまして、制服間におきましてそのような研究はいろいろやったと思います。しかしながら、そういう取り決めが行われたという事実はございません。
  455. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 上田哲君。簡単に願います。
  456. 上田哲

    上田哲君 関連ですから問題をしぼって言いますので、ひとつ、きちっとお答えをいただきたいと思います。私は内容についてのみ申し上げます。  第一。そこで防衛庁長官にまず……。海域分担については取り決めをなるべく近い将来にやりたいと御答弁になったのを、海域分担については取り決めをしないとおっしゃるわけですね。したがって、今後シュレジンジャー長官と日本でお会いになるか、向こうでお会いになるかも含めて、海域分担取り決め協定は行わないということを、きちっとここで御確認になるわけですね。これが一点。  法制局長官。三十五年の安保国会以来これだけははっきりしていることは、集団自衛権の発動は違憲である、これはひとつ、はっきり御確認をいただかなきゃならない。この解釈が確定をしている限り、海域分担ということは憲法に触れるものだという解釈にわれわれは立たざるを得ない。海域分担の内容の定義の問題はあると思いますけれども、私は、ここでしっかり三十五年国会以来の集団自衛権の発動の問題について、法制局長官からきちっとこれが憲法に触れる点について御解明をいただきたい。  第三点。総理防衛庁長官から海域分担についての取り決めを将来にわたって行わないということになるわけだし、そして総理は、きのうの御答弁もありますから、近く訪米されるわけですが、その訪米で、日米会談の中で海域分担取り決めを含め軍事分担協定などについてはこれを議題としないということは、ひとつ御明確に御答弁いただけると思います。  もう一つ。シビリアンコントロール——ユニホームに対するシビリアンコントロールは、今後とも厳重にこれを統制をしていくということについて、この二点をしっかりと御答弁をいただく。  以上四点。
  457. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私は、四月二日、あなたに答えました趣旨にのっとりまして、今後有事に際して、自衛隊と米軍が整合のとれた作戦行動を実施し、効果的な対処行動がとれるよう、日米の防衛の責任者同士が率直な対話を絶やさないようにする必要があり、将来、要すれば何らかの合意を得ておきたいと考えております。
  458. 上田哲

    上田哲君 違うじゃないか。何言っているんだ。それじゃ答えにならない、委員長
  459. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 海域分担はもうあたりまえのことで、やらないということは私申し上げておるわけでございます。
  460. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 憲法上認められておりますわが国の自衛権の行使は、国際法上いわゆる個別的自衛権の行使に限定されることは、前から政府から御答弁申し上げているとおりでございます。したがいまして、日米安保条約第五条の規定によりまして日米両国が共通の危険に対処して行動する場合のわが国の自衛権の行使も、右の憲法上許容される個別的自衛権の行使に限定されることは申すまでもございません。
  461. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日米相互協力及び日米安保条約は、これは日米の協力というものが基本になっておるわけですから、協力というものが。両方とも、相互協力というものは文字のとおり。安全保障条約も日米協力というものが前提になっておるわけですから、当事者間に絶えずいろいろ協力というものに対して話し合うことは必要である、私は防衛長官にもこのことを指示しておるわけでございます。まだしかし、そのことが、私のワシントンにおける最高首脳部のレベルまで上がってきておる問題では——何らかこう話し合いをしておかなければならぬところまで、まだそういう段階に至っておるとは思いませんので、このことが、何らかのその話し合いをして合意に達するというような問題が、ワシントンの首脳部の会談において取り上げられると私は思っていない、そういう段階だとは思ってないわけです。
  462. 上田哲

    上田哲君 シビリアンコントロール。
  463. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、やはりこのシビリアンコントロールと、一切の協力関係、日米の協力は憲法の範囲内であると、シビリアンコントロールというものを貫かなければならぬということは、これはもう当然のこととして、日米協力を貫く精神であると受け取っております。
  464. 上田哲

    上田哲君 基本のことは伺いましたから、細かいことは内閣委員会等でやります。ただ、ここまで来ましたから、細かいことをもうちょっとだけ確認をさしていただきたいと思うのです。  その第一点は、海域分担取り決めはやらないんだということははっきりいたしました。しかし、名前を変えて機能分担なんということで同じことが行われるんでは困るんであります。きのう御質問いたしまして御答弁がないわけでありまして、シーレーンというのは、制服同士の間では話し合いが行われている、南方路線と南東路線と二つあって、そしてインドシナ急変以後は、マラッカの方、これはもうある程度捨てようと そしてアメリカへ向いているグアム路線の方を何とかして守らざるを得ぬではないかということが制服間の話し合いになっておるわけです。こういうことをやっぱりやられたんでは、海域協定は、分担協定はいたしませんとここで言われても同じことになるわけでありまして、こういうことを防衛庁長官、シーレーンのそういう話し合いの確定もしないということをひとつきちっとしていただきたい。  二点目、それから総理です。そういうことが制服同士で行われるということは、いまお約束になったシビリアンコントロールに大変反するわけですから、そういうことは絶対にさせないということをお約束いただきたい。  ちなみに申し上げたいが、半月ほど前に総理大臣官邸に、防衛庁長官、次官、そして防衛局長及び統幕議長が総理の前に出たわけでありまして、こういう形の会議は、これまで歴代総理の中でないのであります。私は三木総理をシビリアンコントロールを失う方だとは思いたくないが、歴代総理が、形においてもこういうことをやはり避けてこられたことがここで行われるということについては、慎んでいただきたいと思います。そういう意味で、それを含めて、それをシビリアンコントロールとして、いま申し上げるようなシーレーンなどの話し合いは進めないということはきちっとお約束をいただきたい。  三点目。きのうのお話で、FX、次期戦闘機ですね、それからP3Cもまだ決定をしておらぬということが明らかになりました。そのことはそれで結構です。しかし問題は、このような、FXあるいは特にP3Cは、このままで補給あるいは対潜作戦ということが機能分担という名前で行われますと、いま岩国基地にあるアメリカのP3Cに日本のP3Cがかわって——P2VとP2Jにかわりまして、これが韓国に向かっての肩がわりということは事実上出てまいります。これは先ほど来の議論の中でも、ゆゆしい事態でありますから、こういう肩がわりをとめることは当然のことでありまして、私はその意味で、P3Cをアメリカから、ロッキード社からの大量輸入ということを総理が御決定になることはないということをきのう確認しているつもりです。  申し上げたいのは、しかしわれわれが聞いているうわさでは、総理周辺ではすでに、ロッキード社、いま第十二位から三十六位まで落ちて、もう倒産寸前にあるロッキード社から、実に六千億に上ると目される百機のP3Cが輸入されるということの決定が、八月の概算要求の前までには決定されるというふうに聞いております。もしそうであるならば、いまここで総理が、そのことを向こうで議題にもしない、そんなことは白紙に戻したとおっしゃっても、一週間もしたらがばっと新聞に出るなんということになったのでは、国会審議はどこにあるかということになります。したがって、総理、この点については、P3C、FXについては白紙に戻すのだと、一番もとから検討し直すのであるということを、その意味できちっと御答弁をいただきたいのであります。
  465. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) シーレーンにつきましては、海域分担はやりません。ただ、機能分担につきましては、いろいろ考え方もあるようでございますから、いま検討させております。  防衛局長からPXの問題についてお答えいたします。
  466. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 技術的な問題もございますので、私から御説明さしていただきたいと思います。  順序が逆になるかと思いますが、まずP3C、いわゆるPXLでございますが、それとFXの問題は、昨日も申し上げましたように、現在の段階でまだ資料収集、調査団というものを出している状況でございまして、はっきりと、どれを導入するかということは、まずFXについてはどれを導入するかということはまだ決まっておりません。  それからPXLについては、国産開発でいくのか外国機導入でいくのかという方針を来年度の予算要求までに決めたいという方針でございまして、これも現在の段階では決まっておらないということでございます。  ただ、先ほど先生がおっしゃいましたように、P3Cに対するいろいろ評価の問題があると思いますが、私どもといたしましては、現在のP2Jが用途廃止になる時期が目に見えておりますので、でき得べくんばこの時期までに、国内開発か、あるいは外国機導入かを国防会議で御決定をいただきたいというふうに考えております。  それからシーレーンの問題でございますが、これはもう先生がよく御存じのとおり、私ども在来、周辺の海域については約数百海里、それから航路帯を設定いたします場合には、南東それから南西の二本を考えておりまして、それぞれ約千海里ということでございまして、これはいずれも太平洋ベルト地帯を中心にして考えておりますので、大変遠くへ行くというようなものではございません。大体南東に参りまるものは、延ばしましてもグアムに到達をしない。それから南西の場合には大体台湾の東側ぐらいというところでございます。で、これはあくまでもわが方が必要がある場合、いわゆるわが国を防衛する憲法上の必要性から、公海、公空に及び得る場合の目安というぐらいのところで、内部の能力を整備をいたします目安として考えておるわけでございまして、これによって、これをアメリカとの間に、わが方はこちらを絶対責任を持つからアメリカは承知してくれというような形で、日米の間ではっきり合意が成り立っているというものではございません。日本サイドの、まあいわば一人芝居といいますか、そういう性格のものでございます。(発言する者あり)
  467. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 不規則発言はお慎み願います。
  468. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 上田議員の御質問にお答えをいたしますが、これは、いまこういう兵器の購入について不明朗な風評が飛ぶことは絶対に避けなければいかぬ。そういうことは日本の防衛力の維持ということに非常にやっぱり悪い影響を与えるわけですから、したがって、いろんな機種の決定とか、国産機か輸入かという問題についても、十分に国防会議を通じて、そして慎重な検討を加えた上決定をいたします。
  469. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 上田哲君。簡明に願います。
  470. 上田哲

    上田哲君 一つだけ御答弁をいただきまして、これはほかの機会にやります。  もう一遍だけ確認をしておきますが、FX、PXLについては総理がはっきり御確認をいただいたので白紙に戻して、いかにも、そうした不明朗な動きに左右されるような形にはしないということをおっしゃった。そして、海域分担取り決めは協定もしないし、シーレーンについても詰めをしない。そしてユニフォームの独走は許さぬということになりました。そこで、このことを基盤にして次の審議をいたしますので、資料要求をひとつお願いをしたいんです。  いまのお話とは全然食い違うのは、実はアメリカ側からの要請というのは二年前から来ているわけだし、防衛庁にはそういう資料があるんです。一九七三年五月、もっと具体的に申し上げると五月二十九日と三十日の第八回の日米安保事務レベル会議に防衛庁から提出した文書がここにあります。この文書は「日本の防衛政策について(案)」となっているわけでありますけれども、この中には明らに「公海上における海上交通の保護については、日本の周辺海域(数百浬−一、〇〇〇浬程度)」云々と、そういう数字も出ておりますし、「この海域における海上交通の保護を図るべきものと考えている。」、あるいは、ある範囲内において周辺諸国の軍事能力に対応するために云々と、そして、有事における日米間の軍事協力等の問題についても十分に協議を進めておく必要があるということも、全部——そのときの一九七三年五月というのは、田中総理の訪米の直前であります。その直前には日米安保事務レベル会議が開かれるのでありまして、そこには防衛庁からこういう文書が出ている。  で、このことは、いま御答弁になった趣旨からするならば、すべて廃棄されるということにならなければならない。そうでなければ全く、国会ではこういう話をするが、裏側では特に制服独走を許しながら三矢計画が進んでいるということになる。そのことはハウスにとって重要な問題であると思いますので、そのことを明らかにするために、別の機会に譲りますけれども、ただいまの総理及び関係閣僚の答弁を踏まえて、この関係資料をきちっとお出しをいただきたいと思います。  なお、資料については、このほかに三種類の資料を請求したいと思いますので、私はまあ関連質問でありますから、田議員の方に後をゆだねますが、委員長においてしかるべく、ただいまの御答弁を踏まえた正式にこの資料の提出を御命じいただきたいと思います。
  471. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) ただいまの資料はもう破棄されておるそうでございます。
  472. 田英夫

    ○田英夫君 それではお尋ねいたしますが、この資料を破棄したということは、アメリカが二年前に、当時の田中内閣に対して、明らかに海域分担の問題について話し合いをしたい、そしてそれを一つの約束事にしたいという態度で時の政府に対して迫ってきた。これに対して、だからこそ日米の事務レベルでそのことをまず話し合わなければならなかった、こういうことですね。そして、その後もずうっと、いまも、さっきも実は丸山防衛局長が言われたことは、そうしたシーレーンの話については検討を進めてきたということは認めているわけです。となると、これを結びつければ、資料だけ破棄しても、いまでもその話は続いているというふうに考えざるを得ない。言葉を海域とか機能とか変えてみても、同じシーレーンの問題、つまり海域の問題について日米の話し合いをしていると、今度もすると、こういうふうに考えざるを得ないんですが、いかがですか。
  473. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私が防衛庁長官になりました以上は、そういうことはいたしません。
  474. 田英夫

    ○田英夫君 大変開き直られたんですけれども、ここに三種類の当時の文書がありますよ。一番最初のがマル秘ですよ。これがマル秘ですよ。そうしてそれが第二案になり、そのマル秘の中の重要な部分がなぜか落ちている。外部に漏れたら困るようなところはちゃんと落ちている。そして、さらにそれが整備されて第三案になって、それが二十九、三十日の事務レベル会議に出されて次官から話がされている。この大もとのものを破棄されたのか、どの部分を破棄されたのか、破棄されたと言うならば。私はこれは破棄されていないと思います。これを破棄してしまったら、アメリカ側に対して申し開きができないはずであります。どうですか。
  475. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) その関係について実は私もよく存じませんのですが、衆議院の内閣委員会、四十八年の六月二十一日に、当時のアメリカ局長から、これは大出委員に対する答弁でございますが、   一昨日の本委員会におきます御要求に基づきまして、きのう付の、つまり六月二十日付の文書をもちまして、本日、米側に対しまして申し入れを行ないました。申し入れの内容は次のとおりでございます。   「去る五月二十九、三十日に行なわれた日米安保事務レベル協議の際、米側参加者に対する説明に用いられた防衛庁の説明資料中、海上自衛隊関係の主たる行動範囲について、日本の周辺海域(数百カイリないし千カイリ程度)と述べられているが、これは周辺海域については数百カイリの範囲内であり、また特定の航路帯を設定する場合には千カイリ程度の範囲で検討していきたいとの意味であるので、念のため申し述べる」、こういうふうに米側に申し入れまして、米側はよくわかっております、こういうことでございます。  こういう答弁がございます。この関連の防衛庁関係の書類は破棄をいたしております。
  476. 田英夫

    ○田英夫君 破棄したかどうかですよ。防衛庁長官からはっきり破棄したのかどうか。それでアメリカとの間、困らないのですか。
  477. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 防衛局長が答弁いたしましたとおりと信じております。
  478. 田英夫

    ○田英夫君 どっちですか、いまはっきりしないんですよ。防衛局長はアメリカとの関係を言ってないんですよ、私の質問に対して。アメリカとの関係は困るんじゃないですか。アメリカとの関係はそれでもいいんですかと聞いてるんですよ。
  479. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) アメリカとの関係でございますが、基本的に日米のこの体制につきましては、第五条にもうたってございますように、相互に憲法並びに国内法上の手続というものを十分了承の上に共同対処するということになっておりますので、わが国の場合、憲法上の制約というのはこれは絶対的条件でございますので、十分その点はアメリカが前提として日米協力の関係を考えているというふうに私ども推察をいたします。
  480. 田英夫

    ○田英夫君 これは、実はこの資料を要求したのはきょうが初めてじゃないんです、国会で。四十八年の六月の衆議院の内閣委員会で楢崎委員が同じ資料を実は要求をした。これに対して久保当時の防衛局長が言を左右にして提出を拒んだ。今回は、それを破棄したという言い方で提出を拒もうとしておられる。よほど国民の目の前に出てくると困る文書じゃないんですか、これは。しかもこれは、その二十九、三十の日米事務レベル会議に出されているんですよ、説明資料として。アメリカの軍人には、アメリカの関係者には見せるけれども国民に見せられないということは一体どういうことですか。われわれに資料として出すということは、一、二、三とだんだん、さっき言ったように、大事なところは実は削って、そこは恐らく事務次官が口頭で言ったんでしょう。
  481. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡単に願います、時間の超過。
  482. 田英夫

    ○田英夫君 いずれにしても、第三案ははっきりとアメリカ側に提示されている。それでも出さないんですか。
  483. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 御案内のように、事務レベル会議というのは、そういう議事録や何かをつくって残すという性格のものではございません。これは私も防衛局長になりましてから出席をしておりますけれども、口頭でやりとりをするわけでございまして、したがいまして、そういうものは現在破棄されておる以上、残されてないということを申し上げざるを得ないと思います。
  484. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 時間が参りました。——一問だけ。
  485. 田英夫

    ○田英夫君 実は第三番目の、いま言いました事務レベル会議に出した資料興衆議院のその内閣委員会では理事に見せてるんですよ。社会党の理事に見せてるんですよ。すぐに回収をされたそうです。——こういうものです。これはどういうことですか。
  486. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 当時のその関係の書類は全部廃棄されたということでございます。
  487. 田英夫

    ○田英夫君 時間が来てしまいましたので、最後に総理に。  いま聞いておられて総理もおわかりになったと思う。総理は今度八月にアメリカに行かれるんですよ。いまのこういう事態の中で、平和憲法を持っているわれわれが、国民がどんな心配をしているかは三木さん十分おわかりいただけたと思う。もう絶対に、先ほどから上田委員も言っていることを含めまして、そうした約束をアメリカとはしない、それが総理が取り消された協定という問題だけじゃなくて、話し合い自体を含めて、しないということをはっきりとここで確言をしていただきたい。このことをまずお答えいただきたいと思う。
  488. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日米の条件というものは、相互のやはり理解というものが必要であって、そのものがないとこれは基盤を失うわけですから、私はいろいろな点で話し合ったらいいと思うんですよ。話し合いというものを遠慮する必要はないと思う。相互協力ですからね。日本ができることとできないこと、ありますよ。それを、できないことをできるような幻想を先方に抱かすことは、非常なやっぱり不満が起こって、相互の協力をそぎますからね。いままで話し合いをしなさ過ぎた。もっとしていい。しかし、貫かなければならないのは、シビリアンコントロールと、それと憲法の範囲内であるということを貫いて、もっと話し合っていいんですよ。話し合わなければ、協力と言ったって、話し合いもしないで——日本に対していまでもトラの威とかいろいろなことの議論が出てくるでしょう。そういうことではないはずですよ。いろいろなバランスをとっているわけですからね。そういうことですから、やはり余り話し合いをすることにいろいろ当局者が憶病になることはよくない、話し合いは大いにすべきである、しなさ過ぎたと。しかし、それはいま言ったような原則というものを踏みにじることは許されないということだと私は思いますから、実際何も話し合いをするなということは、少し、田議員のお話でございますけれども、これ、やっぱり日米の協力というものが、両方の協力というものがなければ成り立たないですよ。協力のためには、相互理解、相互信頼というものが要るんでしょうから、話し合いはしてよろしい。しかし、いま言ったようなちゃんとした原則を踏みにじることはいけないということだと思いますから、何も話するなと、こう言われる田議員のことについては承服はいたしかねますけれども、原則だけはこれは破ってはいけないということは全くお説のとおりだと思います。
  489. 福田一

    国務大臣福田一君) 昨日、田議員から御質問がありましたベトナム大使館にベトナムの学生が乱入した事件といいますか、逮捕した事件につきまして、警察庁の方から報告をいたさせたいと思います。  ただ、私がこういうことにいたしますのは、やっぱり日本の治安を維持しておるのは私は警察だと思うんです、実際の話。その警察がやはりちゃんとしたことをしておるんだということだけは皆さんに御理解をしていただきたいと思いますので、あえてお願いをいたしておるわけでありますから、お聞き取りを願いたい。
  490. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 昨日の田委員の御質問に対して、補足してお答えをいたします。  第一は事件の概要でございますが、四月三十日の午後十時ごろ、南ベトナム大使館正門前に集まりました約五十人のベトナム人留学生らが、夜間のため閉鎖されておりました大使館正面から突入しようとしましたので、大使館の警戒、警備に当たっておりました十二名の警察官がこれを制止しましたが、留学生らのうち約十人がこれを振り切って正門及びその横の土手を乗り越えて大使館の中に侵入をしたわけであります。このうちの一人が大使館職員から門のかぎを取り上げて、正門鉄扉の施錠を外して開放をしましたので、これに乗じて外側にいた約二十人が警察官の制止を振り切って大使館の庭内に侵入して、全員が座り込んで気勢を上げたのであります。急報を受けて現場に到着いたしました所轄警察署長に対しまして、大使館員から侵入者の排除要請があり、警察は大使館員とともに繰り返し退去警告を行いましたが、これに応じないので、午後十時二十分ごろ二十九人を建造物侵入罪の現行犯として逮捕したものでございます。  第二は、御指摘のあった諸点についてでありますが、まず、本件逮捕の妥当性の点でありますけれども、申すまでもなく、わが国が法治国家であって、目的のいかんにかかわらず違法行為に訴えることは許されないところでございます。今回の事案は、ただいま申しましたように、警察官の制止を振り切り大使館に侵入し、かつ、退去警告にも従わなかったものでありますから、このような違法行為を取り締まるのは警察として当然の職務執行であると考えておるわけでございます。  次に、逮捕被疑者の取り調べなどに際しまして警察官が暴行等を加えたという御指摘の点についてでありますが、被疑者を逮捕した場合は、刑事訴訟法二百十八条二項及び犯罪捜査規範百三十一条の規定によりまして、指紋の採取及び被疑者写真の撮影を行うこととされております。警視庁杉並警察署に留置した被疑者は、この指紋採取を拒否して暴れましたので、警察官がこれを制止して指紋を採取したものであります。その状況を申し上げますと、五名の警察官がこの採取に当たり、一人は指揮官、二人は右手、左手を押さえ、三人目の警察官は、机に本人が頭をぶつけようといたしますので、この頭を支え、五人目の警察官が指紋を指紋原紙を用いて採取をしたと、こういうことでございます。この際、被疑者が自分で頭を机にぶつけようとするので、警察官が手で頭を支えるとともに、タオルを机の上に敷いて負傷防止に当たったのでありますが、このタオルを口に押し込むなどしたことはございません。また、大使館構内での逮捕の際抵抗が激しかったので、警察官がこの抵抗排除のため必要な実力を行使したことはありますが、暴行を加えたことはありません。  なお、押収物件についてでありますが、刑事訴訟法百二十三条及び同二百二十二条の規定に基づきまして、捜査の進展に応じて留置の必要がなくなったものから順次還付及び仮還付いたしております。現在までに九十一点中六十二点を返しておりますが、お尋ねの方につきましては、返還のため身柄引受人及び被疑者本人に昨朝以来連絡をとっておりますけれども、現在に至るまでまだ受け取りに来ておらないという現状でございます。  以上でございます。
  491. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 冒頭の田君の発言の中で、委員長が聞いておりますと不適当と思われる部分があったように考えられますので、後刻速記録を調査の上、理事会に諮って処置いたしたいと存じます。  以上をもちまして田英夫君の質疑は終了いたしました。  これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十三分散会