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1975-03-17 第75回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月十七日(月曜日)    午前十時四分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月十七日     辞任         補欠選任      石本  茂君     徳永 正利君      小笠 公韶君     有田 一寿君      八木 一郎君     坂野 重信君      藤川 一秋君     大島 友治君      田中寿美子君     小柳  勇君      星野  力君     渡辺  武君      岩間 正男君     須藤 五郎君      小巻 敏雄君     神谷信之助君      加藤  進君     河田 賢治君      中沢伊登子君     向井 長年君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 岩動 道行君                 矢野  登君                 柳田桃太郎君                 藤田  進君                 宮之原貞光君                 矢追 秀彦君                 渡辺  武君                 向井 長年君    委 員                 有田 一寿君                 安孫子藤吉君                 井上 吉夫君                 石破 二朗君                 大島 友治君                 亀井 久興君                 黒住 忠行君                 源田  実君                 斎藤栄三郎君                 坂野 重信君                 玉置 和郎君                 徳永 正利君                 中村 太郎君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 最上  進君                 吉田  実君                 上田  哲君                 工藤 良平君                 小柳  勇君                 辻  一彦君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 野口 忠夫君                 松永 忠二君                 和田 静夫君                 桑名 義治君                 三木 忠雄君                 河田 賢治君                 須藤 五郎君                 木島 則夫君                 市川 房枝君    国務大臣        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  永井 道雄君        厚 生 大 臣  田中 正巳君        農 林 大 臣  安倍晋太郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  木村 睦男君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣  仮谷 忠男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      福田  一君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       井出一太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       植木 光教君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        内閣法制局第三        部長       茂串  俊君        内閣総理大臣官        房同和対策室長  山縣 習作君        警察庁刑事局長  田村 宣明君        行政管理庁長官        官房審議官    川島 鉄男君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        防衛庁長官官房        長        斎藤 一郎君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        防衛庁人事教育        局長       今泉 正隆君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        防衛施設庁施設        部長       銅崎 富司君        科学技術庁研究        調整局長     伊原 義徳君        環境庁自然保護        局長       柳瀬 孝吉君        国土庁長官官房        審議官      横手  正君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省人権擁護        局長       萩原 直三君        法務省入国管理        局長       影井 梅夫君        大蔵省主計局長  竹内 道雄君        大蔵省主税局長  中橋敬次郎君        文部大臣官房長  清水 成之君        文部省初等中等        教育局長     安嶋  彌君        文部省大学局長  井内慶次郎君        文部省学術国際        局長       木田  宏君        文部省社会教育        局長       安養寺重夫君        文部省体育局長  諸沢 正道君        文部省管理局長  今村 武俊君        厚生大臣官房長  石野 清治君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  宮嶋  剛君        厚生省社会局長  翁 久次郎君        厚生省児童家庭        局長       上村  一君       農林大臣官房長  大河原太一郎君        農林大臣官房予        算課長      渡邉 文雄君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        通商産業省立地        公害局長     佐藤淳一郎君        中小企業庁長官  齋藤 太一君        運輸省自動車局        長        高橋 寿夫君        海上保安庁長官  寺井 久美君        気象庁長官    毛利圭太郎君        労働大臣官房長  青木勇之助君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        建設省都市局長  吉田 泰夫君        建設省河川局長  増岡 康治君        建設省住宅局長  山岡 一男君        自治大臣官房長  山本  悟君        自治大臣官房審        議官       山下  稔君        自治省行政局長  林  忠雄君        自治省財政局長  松浦  功君        消防庁長官   佐々木喜久治君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   千葉 和郎君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 正雄君    説明員        文部省初等中等        教育局審議官   奥田 真丈君        国土地理院長   井上 英二君    参考人        東京大学地震研        究所所長     坪川 家恒君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和五十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和五十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和五十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  この際、委員異動に伴う理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事渡辺武君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 昭和五十年度一般会計予算  昭和五十年度特別会計予算  昭和五十年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  三案審査のため、本日、東京大学地震研究所長坪川家恒君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  6. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) それでは、これより一般質疑を行います。和田静夫君。
  7. 和田静夫

    和田静夫君 まず、地方財政法第十条の四に関連をしてお尋ねをいたしますが、この十条の四の三号の「外国人登録に要する経費」、この経費は、手数料収入委託金とで賄われるわけでありますが、この経費として地方公共団体が多大な持ち出しをしているのは、いま一覧表でお渡しをしたとおりなんです。このことについて、法務省はどういう見解をお持ちですか。
  8. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 外国人登録事務について、地方自治法の諸規定によりまして国の機関委任事務とされておるわけです、外国人登録事務は。これに要する経費については、地方財政法十条の四により、地方公共団体はこれを負担する義務を負わないこととされております。この点について、法務省としては右事務を処理するために必要な人件費、旅費、庁費等いわば事務遂行上の直接的経費実費弁償ということになりますが、この直接的経費について国が負担義務を負うものと理解しております。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、このことにどういう見解をお持ちですか。
  10. 竹内道雄

    政府委員竹内道雄君) 十条の四は、地方公共団体はこのような経費につきましては、その経費負担する義務を負わないというふうに書いてございますので、国が負担をすべきものであると考えます。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 いま大蔵大臣法務大臣にお渡しをしましたように、私の調査に基づきますと、一つ地方中核都市、二つの大都市周辺市、一つ県庁所在地、ここを選んで外国人登録事務にかかわる経費負担状況という調査を私はやりました。結果は、まあ配ったとおりなんですけれども法務大臣のお言葉ではありますが、各市とも一人ないし二人の専従職員を置いているのに、国からの委託金というのは、四十八年度決算で見た場合、十七万、六十二万、二十六万、二十三万、こういう状態で一人の人件費にも及ばないという形で、自治体はいやがおうでも多大の持ち出しを強要される、こういう状態になっているのです。  大阪市の場合を考えてみますと、登録対象人口は約十一万六千人で、経常事務費としては約二百九十五万一千円なんです。人件費は、専任職員三十人だそうであります。それに窓口事務等の七百二十人中、登録事務に携わる三百九十二人を、外人登録二割、住民登録五割、印鑑三割と、こういう事務配分で算定すると、ほぼ八十九人となります。計百十九人。一人平均給与年額を二百五十万円としますと、二億九千七百五十万円。物件費をゼロとしても、この人件費と国の委託金との差だけでも二億三千万円となる。これは法務大臣のお言葉ではありますが、大変な問題なんですね。お言葉どおりにはいってないんです。どうされます。
  12. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 和田さんのおっしゃるような状態であることも聞いておりますが、そこで、外国人登録に要する経費負担の問題につきましては、法務省としても毎年その増額努力はしているわけでございます。  そこで細部の数字等につきまして、ちょっと政府委員から答弁を聞いていただきたいと思います。
  13. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) 外国人登録事務委託費でございますが、五十年度予算におきましては、対前年比一億四千四百万円強の増額、これはパーセンテージにいたしまして約三七%増でございますが、合計五億三千七百七十四万円を計上いたしております。このうち、府県の委託費二億七千八百万円につきましては、百五十人を専従職員といたしました上、超過負担の解消をはかるために、五十年度予算におきましては新たに従来支払っている本俸及び諸手当、これは扶養手当調整手当、期末・勤勉手当住居手当 通勤手当及び寒冷地手当を含んでおりますが、これのほかに、さらに公務災害補償費十四万八千円、それから退職手当四百四十八万六千円、児童手当四十七万三千円及び共済組合負担金二千五十一万四千円、計二千五百六十二万一千円を計上いたしております。それから市町村委託費二億五千九百七十三万円につきましては、これは専従職員は認められておりませんので、もっぱら委託事務の処理に要する時間に対しまして、超過勤務手当を支払うという方式によって処理いたしております。
  14. 和田静夫

    和田静夫君 いやいや、私の質問に答えてくださいよ。二億三千万円、たとえば大阪持ち出しているのをどうするかということです。
  15. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) 各都道府県ないし市町村から、必ずしも全部ではございませんけれども、いろいろの、このように足りないというお話はしばしば耳にいたしておりますので、私どもといたしましてはできるだけこの予算増額を図る、その努力を重ねてまいりたいと、このように考えております。
  16. 和田静夫

    和田静夫君 じゃあ二億三千万円の相当額増額するということですね。
  17. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) 各都道府県ないし市町村におきましての不足額をしばしば耳にしておりますので、これを伺いまして、予算のことでございますので全額直ちにというわけにはなかなかまいらないかと思いますけれども、私どもといたしましてはなるべく不足額を解消するように努力したいと、こういう趣旨でございます。
  18. 和田静夫

    和田静夫君 法律違反じゃないか、法務省大臣答弁してください。
  19. 竹内道雄

    政府委員竹内道雄君) 御承知のように、十条の四につきましても、地方公共団体負担する経費は国が当然負担すべきものでございますけれども、これはほかの経費と同様に、標準的にその事業を遂行するために必要な経費について当然国が負担すべきであるということでございまして、極端な例を申しますと、極端に俸給が高いというような状況にある者が仮にあるといたしました場合に、その額を直ちに国が負担すべきかどうかというようなことについては疑問があるところでございまして、各地方団体状況等もよく調べて、お話を伺って処してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  20. 和田静夫

    和田静夫君 地方財政法趣旨について何か勘違いをされているような気がするんです。地方財政法というのは、機関委任事務だろうが、団体委任事務だろうが、固有の事務だろうが、地方が扱う事務というのは全部地方税交付税とで賄うという法律ですよ。そして、その例外として十条から十条の三までの事務がある、こういうもりでしょう。そこのところで超過負担という問題が起こっている。そういうことなんです。したがって、私は、機関委任事務地方財源持ち出しがある、だから返上だと、こういうような言い方というのは必ずしも私は、一部でありますが、正しいとは思っていないんです。思っていないんですが、しかし十条の四というのは、この事務は別なんです。これは国の事務なんです。したがって、国が地方にお願いしてやっているという、そういう国の事務なんですね。そういう趣旨からしますと、国としてはこの委託金算定基準が合理的であるか合理的でないかなどという議論をする余地というのは、私はないと思うのです。超過負担問題以前の問題が実はここにある。ここに地方団体が多額の持ち出しをするというのは、本来あってはいかぬことだと私は思うのですが、大蔵大臣いかがですか。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 和田委員の御主張になられること、よく理解できるところでございます。今日までの経緯が、しかしながらどうであったかということ、それは自治省初め関係省とよく御相談いたしまして処置してまいらなければならぬと思っておりまして、御趣旨はよく私にも理解できるところでございます。
  22. 和田静夫

    和田静夫君 その言葉期待をしておきますが、たとえば、機関委任事務一般ではなくて、この外国人登録事務返上という運動が全国的に起こる、この場合は法廷でもどこでも、これは起こした方が勝つという感じがいたします、この法律解釈からいけば。私は前段でちゃんと分けて言っているのです、ここの部分については。少なくとも指定都市の長というのはこの事務返上しても、これは法律違反にはなりませんね、法務大臣
  23. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) それは法律違反にはならぬと思いますが、あなたのおっしゃるとおりだと思います。
  24. 和田静夫

    和田静夫君 そうだから法務大臣、ぜひ、こういう形で指定都市市長たちがこれを返上しても法違反にはならぬ、そういう不幸な運動が起こらない前に、法務大臣としてはもっと大蔵大臣と詰めてもらって、ここの予算を取ってもらいたいと思うのです。いかがですか。
  25. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そういうようにいたしたいと存じます。
  26. 和田静夫

    和田静夫君 自治省は、委託金積算基礎に入っていない公務災害補償費共済組合負担金災害手当及び退職手当についても委託費対象とするべきだという主張を行ってきて、五十年度予算において公務災害補償費等人件費について委託費対象内に入ったようでありますが、事態はそんな悠長な状態ではない。私がいま指摘したとおりです。中堅的な市においては年間十七万とか二十三万とか、多くても六十二万、一人の人件費に満たない額しか委託金が来ていない。したがって当然持ち出しが出てくる。自治省はこの点について、いま法務大臣からお答えがありましたから深追いはいたしませんが、十分に配慮をしながら同じ努力をしてもらいたいと思いますが、よろしいですか。
  27. 松浦功

    政府委員松浦功君) ただいま御指摘をいただきましたように、これまで入っておりませんでした諸手当も、各省及び大蔵の御協力を得て本年度、五十年度予算から積算に算入することにいたしました。なお、それ以外の経費の額の問題について、われわれとしては実態調査も行いつつ、実態に合うように努力をしてまいるということを考えております。
  28. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、よろしいですか。
  29. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま局長が申したとおり、今後努力をいたしたいと思います。
  30. 和田静夫

    和田静夫君 私は、こういう際にこそ自治省は、この地方公共団体をして、地方財政法二十条の二に基づく不合理是正要求を国に対して行うように指導すべきだと実は思っているんです。そして、それを聞かない場合には、それこそ二十六条に基づく地方交付税減額措置さえとっていいんじゃないですか。人件費について国以上の持ち出しがあった場合には特交削減をやると――やると言ったかどうか、におわすような自治省が、なぜ委託金の問題についてひ弱なのかということを非常に疑問に思うんですよ。これは意見ですから、いま答弁がありましたから、強く期待をいたしておきたいと思いますが、厳しい措置をおとりになる、こういうふうに理解しておいてよろしいですか。
  31. 松浦功

    政府委員松浦功君) そういう措置をとらないで済むように、早急に合理化を図りたいと思います。
  32. 和田静夫

    和田静夫君 これは自治大臣、早急ということになると、この予算なのか、あるいは次年度なのかということになるが、この予算ですか。
  33. 福田一

    国務大臣福田一君) いままでなかなか実現できなかったのを、自治省としては積極的に主張をしてこの予算に組み入れたわけでありますから、ひとつ今後の措置にまちたい。この予算というわけには、無理じゃないかと思っております。
  34. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、問題の重要性というのはよくお互いわかっているんだと思うのですよ。で、大蔵との力の関係だとか、全体の関係だとか、いろんなことがあるんでしょうけれども、これは少なくとも次年度にはちゃんと解決できるように努力をしてもらいたいと思いますがね。
  35. 福田一

    国務大臣福田一君) そのように必ず努力をいたします。
  36. 和田静夫

    和田静夫君 いまの自治大臣答弁で、大蔵大臣よろしいですか。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 自治省からよくお話を伺った上、善処したいと思います。
  38. 和田静夫

    和田静夫君 法務省外国人登録原票保管市町村長義務づけられていますが、この保管のための維持管理費についてはどういうふうにお考えになりますか。
  39. 影井梅夫

    政府委員影井梅夫君) 御指摘のとおりに外国人登録原票、これは市区町村保管されているわけでございますが、その維持管理費といたしまして、昭和五十年度予算案におきましては総額千二百五十九万三千円が計上されておるということでございます。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 自治大臣、この戸籍事務に要する経費負担、現状はどうなっていますか。
  41. 松浦功

    政府委員松浦功君) 戸籍事務に要する経費については、財政計画に算入の上、交付税基準財政需要額に計上いたしまして財源措置をいたしております。
  42. 和田静夫

    和田静夫君 額は。
  43. 松浦功

    政府委員松浦功君) 四十八年度におきまして使用料手数料を控除いたしました一般財源五百八十二億、四十九年度、これが八百十三億、この程度のものを計上いたしております。
  44. 和田静夫

    和田静夫君 そこで法務大臣、お尋ねしますが、昭和二十六年に住民登録法が制定された。従来、住民に関する基礎的な事務を行うのに必要な登録、いわゆる本籍地寄留地、そういう登録として戸籍が利用されていたのですが、そういうような行政上の役割りは、住民基本台帳によってなされることに、これによってなったわけでしょう。したがって戸籍事務というのは、民法の施行に伴って、その補助法として戸籍法が、あなたは専門家ですが、制定されたわけでしょう。そうすると、国民身分上の権利関係を形成、公証することのみを目的とする純粋に司法的な機能のみを果たすことになったと言ってよいと思うのですが、私の解釈、間違っていますか。
  45. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) その点はきわめて専門的なことでございますので、民事局長答弁させますからお聞きください。
  46. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 戸籍事務は、先生仰せのとおり、国民身分関係を形成登録して、そして必要に応じて公証を行うという関係の仕事でございますので、直接住民対象とするという性質のものではございません。しかしながら、その市町村本籍を有する者を対象として行っておる、そういう意味で市町村との関係が認められる、こういうことでございます。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 私の解釈でいいということですね、よろしい。  そうしますと、私の解釈でよいということになりますと、土地や家屋の登記と同じく、私人の身分に関する登録公証目的としている限り、戸籍事務はもっぱら国の利害にかかわる事務でしょう。当然、地方財政法十四条の四の事務に入れられるべきものだと私は考えるのですが、これは法務大臣、いかがです。
  48. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 財政関係の問題でございますので、私からお答え申し上げるのが適当かどうか多少疑問でございますけれども戸籍事務は、先生御承知のとおり、明治初年から百年以上市町村長が行ってきたわけでございまして、その間、国の市町村長に対する機関委任事務ということで処理されてまいったわけでございまして、そういう意味で現在でも従来の取り扱いがそのまま踏襲されておると、このように理解をいたしております。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 踏襲が間違いだと思うから聞いているので、自治大臣いかがですか。
  50. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 和田さんのおっしゃった、法律的な性質は国の事務であるから、現在のこの費用負担について定めておる地方財政法第九条本文に、本来国の事務であるから国が負担すべきものをこの法律地方財政法九条で当該市町村が全額これを負担するたてまえとなっているというのは、法律上の性質と現在の現行法とがかち合っていないじゃないか、だからこれを改めて、国の費用で負担するんだという十条の四みたいな、さっきのような方向にしたらどうか、外国人登録の問題と同じように平仄を合わせたらどうかという御説ですが、法律的には私はあなたの御主張が正しいと思うんですが、これは本来私の答弁でなくて、自治大臣の問題です。
  51. 松浦功

    政府委員松浦功君) 戸籍事務の本質というものは御指摘のとおりであると思いますが、そういった事務でございましても、この事務には非常に地方的な性格を合わせ持つ一面もございます。そういう面から、機関委任事務であるからといって直ちに純粋に国の事務だというふうに考えるのはいかがであろうかというふうに私どもとしては考えております。したがって、これまで地方財政法十条の四に入っておりません一般財源措置という形で措置をしてまいってきております。一つの問題として検討をするに値する問題かもしれませんが、われわれといたしましては、いま直ちに十条の四に入れるべきだという考え方にはなっておりません。
  52. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、どうです、これ。お二人違ったわけですよ、自治省と、いま。まあ片方は役人だとしても。
  53. 竹内道雄

    政府委員竹内道雄君) 地方自治法の上では地方団体事務として委任されていることは御承知のとおりでございますが、戸籍法の方は機関委任事務というような書き方をしてあって、多少そこに食い違いがあるようなことになっておるわけでございますけれども、私ども現在の段階では、一般法であります地方自治法におきまして地方団体の処理すべき事務だというふうにされておりますので、そこはそれでいいのじゃないかというふうに思いますが、法務大臣の御答弁もございますので、さらによく相談をいたしたいとは思います。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 これ、法制局長官いかがですか。
  55. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) ただいま御指摘の、地方財政法第十条の四で「もっぱら国の利害に関係のある事務」を処理するために必要な経費というものは全部国が負担すべきであって、地方団体負担すべきではない、そこで第一号から第九号までに経費が掲げてございます。御指摘は、戸籍に関する事務をこの第一号から第九号に掲げてある経費と同様に「もっぱら国の利害に関係のある事務」だというふうにお考えになっているようでございますが、これは解釈論と申しますよりも、立法論と申しますか、政策論の問題と考えるべきでございまして、現に地方自治法第二条第三項の第十六号に「住民、滞在者その他必要と認める者に関する戸籍身分証明及び登録等に関する事務」といたしまして、戸籍法に関するその施行の事務と、住民登録法の施行に関する事務があわせて掲げられているような状況でございまして、住民登録事務戸籍事務と比較してどうかということになりますれば、住民登録に関する事務は、これは非常に市町村のと申しますか、地方公共団体に利害の関係の深い事務と言うことができます。これに対して戸籍の方は、むしろ私法秩序の維持のために基本的な法律関係を明らかにするという意味の方がやや強いと思いますので、国の利害の関係の方に近い事務であるという差異は認められると思います。  ただ、それを「もっぱら国の利害に関係のある事務」と断定し切れるかどうか、それはもう、ただいま申し上げました地方自治法の第二条第三項第十六号にそれが両方掲げられてあるという現行法のたてまえからいたしますと、地方財政法第十条の四に掲げるに絶対適したものであるかどうかということは断定しにくい。結局、政策論、立法論の問題といたしましていずれが適当であるかという判断の上でこれは考えなければならない問題と思います。ただいま法務大臣は、その意味で「もっぱら国の利害に関係のある事務」の方伺において検討するという趣旨であろうと思いますので、大蔵省なり、自治省なり、あるいは法務省から、いろいろ検討の結果、法律改正等について私の方に御相談があれば、その線に沿って処理してまいりたいと思います。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 自治大臣、まとめて答弁もらいます。これで終わります、ここは。――実は言いたかったのは、いま法制局長官が述べられたことなんですよ。地方自治法二条三項十六号に戸籍事務が例示をされていること、いま言われましたね、例示をされていることは、私は間違いだと思っているのです。そこすら検討の余地がある、そういうことを含んでちょっと答弁していただけませんか。
  57. 福田一

    国務大臣福田一君) この問題は、あなたも御承知のように、ずいぶん長い間論議のあったことでありますが、ただいま法制局長官がお話しをいたしましたように、一応、われわれ関係省において妥当な解決を図るよう協議をしてまいりたい、かように考えます。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 ここは予算委員会ですから、この国会中ならこの国会中に一応のめどを立てられるというように理解しておいていいですか、いまの答弁。官房長官ですかね、この答弁は。
  59. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 私、おくれまして途中だものですから、経過の全体を拝聴しておりませんでしたが、よく関係閣僚と協議をいたしまして、できるだけ御期待に沿うような方向で処理をしたいと思います。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 昭和五十年三月九日の朝日新聞四面の「崩れる財政」の記事について、今日自治体の財政危機がずっと指摘をされておるわけですから、自治省はこの事例はどういうふうにごらんになりますか。
  61. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は大体新聞を読んでいるつもりですけれども、ちょっとそのことの内容がよくわかりませんから、もし何でしたら、ひとつ内容を示してもらいたいと思います。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 時間外なら……。
  63. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) じゃ時間外で、手短に願います。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 通告してあったんですがね。この新聞記事を持ってくるように通告してあったんですけれども……。   九州一デラックスと誇る全館冷暖房つき中央公民館で、いま、室ごとに石油ストーブをたいている。町自慢の温水プールも、開館するのは週末だけとなる。大分県湯布院町。清水喜徳郎町長はいう。「背に腹はかえられん。欠員補充もゼロでいく」。   中央公民館も、温水プールも岩男前町長時代につくられた。町有地百三十ヘクタールを土地開発会社に売り、財源にあてた。一流施設を看板に、別府温泉郷から車で一時間余のこの地を「奥別府」として売り出した前町長には〃やり手〃との評もある。岩男氏は、この実績を利して昨年七月の参院選へ。――ここのところはあまり関係ないですが、   その後任を争う町長選では、清水現町長が「放漫財政」を批判し「町有地を売らない」と公約して勝った。   新町長にツケが回ってきた。社会教育施設の維持・補修費約一千万円、温水プールの石油代約五百万円、臨時職員二人の給与三百万円……。一方、財源の方は、農地をほぼ売りつくし、不況のあおりで大分新産都市に出かけての、その日かせぎも減って、町税の伸びが期待できなくなった。開発会社による゛開発効果″が出てくるのも、しばらく先だろう。国の財政緊縮策も直撃してきた。   前町長時代の四十六年の町予算は、総額八億七千万円。四十九年度は五億三千万円。清水町長はパンク寸前だった、し尿処理施設の新設だけを何とか組みこんだ。五十年度で約一億円が必要。一日の処理能力三十トンだが、その一割は、開発会社が造成する別荘村のためのものだ。   「町政を担当して一年、やりたいことはいろいろあるが、当分は前の町長のシリぬぐいだけ。し尿処理施設もシリぬぐい? いや、ほんとに、しゃれどころじゃないよ」  という形で「崩れる財政」という題で出ているんです。これをどういうふうにお考えになりますか。
  65. 福田一

    国務大臣福田一君) その湯布院の問題につきましては、私もちょっと聞いておりました。これは、しかし、地方自治というたてまえで町が議会の議決を経てやっておれば、私は、自治という精神から言えば、これを否定するというわけにはいかないと思っております。ただ、何か裁判か何か出ておるようでありますが、裁判の問題になりますと、これは裁判にお任せするよりいたし方がない。この市町村行政といいますか、そういう問題から見れば、議会が議決してやっておれば、違法なことがなければ、これは自治を尊重するたてまえで対処してまいりたいと、かように考えております。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 環境庁、昭和四十六年九月二十七日の、これも朝日新聞ですが、「大分湯布院のレジャー施設に反対」、こういう記事の中で自然保護局の見解が出ています。それはどんなものであり、それは今日も生きてますか。
  67. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 地熱発電所の建設につきましては、それが非常に大きな発電施設でございまして、自然破壊という問題が非常に問題となるわけでございまして、したがいまして、現在、全国で六カ所だけ実験的、研究的に発電所を認めておりますが、それ以外のところでは、自然公園の集団施設地域あるいはそういうレジャー地域も当然でございますが、それ以外にも、自然公園地域については、すべて現段階においては六カ所以外につきましては認めない方針でございます。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと混乱がありますが、ともあれ、自然保護地域では取り消すこともあり得るとう談話が出ているんですがね。
  69. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 地熱発電所問題につきましては、いろいろと地熱発電所そのものが……
  70. 和田静夫

    和田静夫君 地熱発電じゃないですよ。これも通告してあるんだが、徹底してないな。
  71. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 国立公園地域につきましては、いろんな計画につきまして、それが自然破壊につながるおそれのあるような計画につきましては、まあ程度の問題がございますが、審査指針をつくっておりまして、その自然公園地域の自然景観のすぐれた程度に応じて、建築物あるいは道路あるいは土砂の採取等につきまして規制をしておるわけでございまして、こういう湯布院地域等につきましても、その国立公園の自然破壊につながるものであれば、計画の変更あるいは建設の中止等は当然その方針に従って規制をするつもりでおるわけでございます。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 法務省、これは昭和五十年一月一日の読売新聞ですが、「〃湯の町〃疑惑の前町長」という形で報ぜられた事柄の全貌をちょっと教えてください。
  73. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 具体的事案でございますので、刑事局長答弁させます。
  74. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いま御指摘の事件でございますが、これは昭和四十九年の五月二十八日に告発が大分地検にあった事件でございまして、告発事実の概要を申し上げますと、告発をされた方は、当時の湯布院の町長であり、参議院議員であられる岩男頴一氏でございまして、この岩男氏が大分県大分郡湯布院町長であった当時に、日野幸男外三十一名の共有にかかる同町大字川西字ユム田千二百番の十の原野六千三十八平方メートルの土地の所有権の移転のための委託を受けまして、この日野等から預かり保管中の印鑑証明書委任状等を利用いたしまして、昭和四十四年十二月十二日、大分地方法務局湯布院出張所におきまして、その係官に対しまして、本当は日野から前記土地を買い受けた事実はないのに、その内容虚偽の所有権移転登記申請をして、係官を信用させて、不動産登記簿の原本にその旨不実の記載をさせて、それを備えつけ行使するとともに、もってその所有権の移転を受けたようにして、日野幸男外三十一名に財産上の損害を与えたという、公正証書原本不実記載並びに背任という告訴事実でございますが、この点につきましては、その後岩男頴一氏本人その他関係人を取り調べをいたしまして、結論といたしましては、昭和五十年の二月十日、本年の二月十日、さような事実はないという不起訴裁定がなされております。
  75. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、これらとの関連なんですが、私に対して地元から、広大な町有地を湯布院町の前町長が東急土地開発株式会社や石原慎太郎代議士らに払い下げ、またあるときは、先ほど議決があればというお話自治大臣からありましたが、地方議決もなしに町有地の払い下げを行った、こういうことが、一連の記事の、黒い疑惑に結びつくと言ってきている。そういうことは法務省、ありませんか。
  76. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いま御指摘のことでございますが、本来この土地そのものは入会地であった原野を、昭和四十二年六月ごろに湯布院町からいまの日野幸男外三十一名の入会権者に無償で払い下げをされた土地に関する問題でございますが、それが二筆ございまして、捜査の結果によりますると、その一部を分筆いたしまして、分筆した土地の一筆を大分銀行に当時これらの所有者が譲渡をしたということ、それから残りの一筆は湯布院町へ町道として無償提供いたしました。そのほか、そういうことで大分銀行に売却のあっせんをした当時の町議会議長の後藤茂氏が、謝礼の意味で、もう一筆の原野、つまりいま問題になっております土地を二十万円で譲り受けをしたというようなことから、その譲り受けを受けた町議会議長の後藤氏が、当時の町長であった岩男氏に無断でその土地の名義を岩男氏の名義にしたということでございまして、捜査の結果によりますと、岩男氏はそのようなことを後藤町議会議長から聞いて、そういうものは町有の名義にすべきで、自分のものにすべきでないということで、その後、そういう経過をたどりまして、岩男氏の名義であった土地をさらに町有地ということで町の名義にした。ところが、後藤氏の真意は、やはり岩男氏に贈与するつもりであった。ところが、岩男氏がそういう贈与を受けるつもりがないなら自分の土地に名義を変更するということで、五十年の一月十一日に結局は後藤町議会議長の名義に戻っておるというようないきさつでございまして、岩男町長とされましては全然そういうことはタッチしておられない関係であるので、犯罪の嫌疑がない。  なお、なぜそういうように転々と名義が移転したかという点につきましては、後藤町議会議長が不幸なことに脳血栓等による高度の記憶喪失と言語障害の状況にあられまして、実態の真相を究明することもまた不可能になっておるという状況でございます。  以外の、いま御指摘のようなことは存知いたしておりません。
  77. 和田静夫

    和田静夫君 私は、前町長個人がどうだとかということを言っているわけじゃないんです。全体の地方財政の危機問題があるものですから、それとの対比で、たまたま幾つかの新聞に共通する問題としてこの問題を取り上げているんです。  で、私への訴えによりますと、との東急土地開発株式会社、この会社は、御存じのとおり、参議院、本院の決算委員会で、田中金脈問題で成田空港周辺の土地買い占め、転がしで問題となった会社であります、この東急土地開発というのは。この会社は西日本最大のレジャーセンターの建設を計画して、そうして四十六年から湯布院に町有地約二百二十万平方メートルを手に入れた。で、このうち五十八万平方メートルは別荘分譲地として三.三平方メートル当たり一千八百円前後で払い下げているんです。で、その払い下げられたものを約二十倍の四万円前後で転売しているんですね。約八十一万平方メートルはゴルフ場になっている。これは町から長期貸与をされた土地ですがね、賃貸料幾らだと思うんです、いま調べられているのなら。三・三平方メートル当たり年間三円三十銭ですよ。ただ同然で使用できることになっているんです、これは。ここのところは間違いないんです。一方、石原慎太郎代議士外四人は、四十五年暮れに町有地約二万五千平方メートルを取得しています。これはここに謄本があります。謄本がありますから、もう明確に間違いありません。で、そして四十七年一月に、石原氏と直接関係のない湯布院の町の町議三名が、この土地を抵当にして湯布院農協、この組合長は前町長なんですが、普通は抵当価格の六割程度の融資額なのに、代金相当の千五百万円を借りている。そして登記ということは、この登記簿上明らかですね。これは、前町長が石原代議士らに町有地を結果的には無償で贈与をして、あとで代金を農協資金から捻出、埋め合わせたのではないかという疑惑を生んで、そして地元での前町長への公開質問状の提出となっている。そういうものなんです。まあそれは参議院選挙に当たって、反田中さんの急先鋒であった石原青嵐会幹事長が、西村代議士らと一緒に、田中系と言われる前町長の応援を行ったことなども話題にはなっていますがね。そういうことが地元に言われていますが、これが町有地取得との関係であるとしたら、石原代議士の政治道義的責任は私は重いと、こう思うんですが、そのことと、これまで前段で指摘しましたように、東急へは不当な安値で売却したり、あるいは貸したりして、そして町財政が危機に陥っている、こういうことが言われるんですね。その辺から、町財政の危機的な状態というのは、一遍十分な調査がなされてしかるべきだと思うんですが、自治大臣調査をされて御報告をしていただけますか。
  78. 松浦功

    政府委員松浦功君) 御指摘いただきました湯布院町の財政は、四十七年、四十八年、いずれも黒字で経過をいたしております。私どもとしては、そういった詳しい事情は調査をいたしておりません。御指摘をいただきましたので、至急県を通じまして、実情がどうなっておるか調べてみたいと存じております。
  79. 和田静夫

    和田静夫君 この前総括質問に論議をしようと思って、各省から提出をしてもらいました天下り官僚数、これは結果的には、私のまとめで六百三十一名であります。こういうように多数の幹部職員が自治体に配置をされて、重要な管理職のポストを占有している。そういうことが自治体の人事管理に混乱を持ち込んで、行政上多くの弊害を生んでいます。自治大臣、御見解をまず承りたいと思います。
  80. 福田一

    国務大臣福田一君) 各省、特にまた自治省からも相当の部長とか課長が地方自治体に出ておることは事実でございますが、しかし、それはやはり自治体との連絡あるいは自治体自体からの要望等々によって出しておるのでございまして、それがいわゆる地方自治体に対する圧力になったり、あるいはまた、自治体の行動を規制するというような意図は毛頭われわれとしては持っておりません。
  81. 和田静夫

    和田静夫君 これらの職員の採用の手続についてですがね。昭和四十七年四月十三日の地方行政委員会で、渡海自治大臣が私に対して、それ以前の答弁、それまでずっとやってこられた自治省、政府見解というものを全部改められまして、そして統一見解をお出しになりました。現在の自治省見解もこれに基づくと踏んでおいてよろしいですか。
  82. 山本悟

    政府委員山本悟君) お答えいたします。  ただいまの和田委員の御質問のとおりでございまして、従来の見解を変え、その当時から国家公務員としての採用をいたしております。
  83. 和田静夫

    和田静夫君 それで、私は実は調査をしたとぎに驚いたんですが、その見解が生きているとすると、これは地方財務協会の発行する内政関係者名簿でありますが、それによりますと、昭和四十九年十月一日現在、昭和四十九年採用の十七名、これが全員地方自治体に行っているんですよ。自治大臣、これ全部地方自治体に行っているんですがね。これをどういうふうに……。
  84. 山本悟

    政府委員山本悟君) 従来いたしておりました取り扱いを改めまして、御指摘のとおり、四十八年度以降国家公務員といたしまして採用をいたしました。その採用をいたしました者を一定の時期に各府県の御要望によりまして、それぞれのところに配置を、異動をいたしておるわけでございまして、ただいま名簿のプリントで御質問がございましたが、この名簿のプリントの時期というのは年末でございますので、その時期にはすでに各県に配置がえ、異動が行われている、こういう事情でございます。
  85. 和田静夫

    和田静夫君 官房長官、いまお話がありましたように、一たん国家公務員に四月一日に採用された。そうすると、十二月三十一日になりますと――これは短期間であることは間違いありません、国家公務員を退職するのですよもう。これはその前、前段は、いろいろ地方公務員と国家公務員併任があって違法だということで、私の指摘に応じて国家公務員というふうに直したというのが前段のやり取りなんです。今度は、国家公務員にするという約束になったら、国家公務員にしたら、全くわずかのうちに退職をするのです。退職をしてしまう。そして、自治省が計画的に幹部職員を地方に配置をする、異動させている、こういう形なんです。これは、いま行政機構全体にメスを入れようとする三木内閣としては大変なことだと思うのですが、いかがですか。
  86. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 確かに混乱はあるように思います。地方からの御要請に基づいて有能な人を派遣しようという意図あるいは従来の沿革、こういうものもわからぬではございませんけれども、確かにこのほど来、地方事務官の問題その他御提起になっておりまして、こういうものをひっくるめて、いまおっしゃるような、地方制度といいますか、行財政の改革といいますか、ここにおけるやはり一つの柱としてこれを検討しなければならぬであろうかと、かように存じております。
  87. 和田静夫

    和田静夫君 こういう状態というのは、官房長官、好ましくないという前提にお立ちになってですか。
  88. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) これには歴史、沿革等もあるかと思いますが、そういうあたり十分検討しなければなるまいかと思いますけれども、私の感触としましては、やはりこういうものをきちんとしなければいけまい、こう考えております。
  89. 和田静夫

    和田静夫君 自治大臣、この四十九年組がいま退職したあとの欠員の補充はどういうことになっていますか。
  90. 山本悟

    政府委員山本悟君) 自治省といたしましては、ただいままで申し上げましたように、国家公務員として採用いたしまして約三カ月程度の期間国家公務員としてのいろいろな訓練をいたしました上、各都道府県その他の御要望に応じまして、それぞれ転出をいたさしているわけでございまして、この間の定員は暫定定員として認められているわけでございます。その欠員をさらに別途補充するという措置はとっておりません。
  91. 和田静夫

    和田静夫君 これは、おわかりのとおり、暫定定員などという形で、大蔵大臣、こういうものが認められているということは、もう前提的に地方にやるのだ、地方の要望だとかなんとか言っていますけれども地方としても、国家公務員に採用されてわずか三カ月ぐらい研修を受けただけの者を、だれが要望しますか。私は天下り全部を否定はしていませんよ。非常にその人が地元のことに熱心であって、自治そのものに徹するという人ならば、それはすぐれて地元との話し合いがつき、あるいは多くの地元職員組合との話がつくという形の中では、それは喜んで迎え入れますよ。しかしながら、きのうきょう採用された人がわずか三、四カ月でもって退職をして地方に行く、これが要望だとお思いになりますか。そんなことあり得ないでしょう。大蔵大臣、いかがですか。
  92. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 各省の定員管理は各省大臣がその御責任において管理していただいておるわけでございまして、各省それぞれ適正にやっていただいておると思いますけれども、御指摘の点につきましては、なお自治省から事情を聞いてみたいと思います。
  93. 和田静夫

    和田静夫君 これは行管庁長官も勤められました副総理、これはやっぱり全体の行政機構のうちの大きな部分としてひとつ考えることと、やっぱり自治という観点から、ここの部分というのは三木内閣としてお改められになる、こういう姿勢が必要だと思うんですが、いかがでしょう。
  94. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私、初めてその問題は聞きますが、地方自治体といたしましても、これは広く天下に人材を求める、こういうことは私はいいことじゃないかと、こういうふうに思うんです。ただ、それが自治省からの押しつけになっちゃ困る。運用は注意すべきであるが、趣旨は私はそう否定すべきことじゃないんじゃないか、こんな感じがしてお聞きしておったわけであります。
  95. 和田静夫

    和田静夫君 誤解があるといけませんが、私は、国家公務員に採用されてわずかな期間しか自治省で研修――それも研修を受けているだけです。実務はほとんどという形の人がどんな才能がおありになるかということは実は地方でわかるはずがないんですよ。そのわかるはずがない人を下さいなどというはずがないんです。私は、もっともっと実務を経験をされて、そして自治体のためにこういう役割を担われると思う人なら、わんさと来ますよ。ところが、これは採用されたばかりの人ですよ、いま問題にしているのは。これは副総理、やっぱりいま副総理が御答弁になった趣旨とも違うと思うんですがね。
  96. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、押しつけになったんじゃ困ると思いますが、自治体の方から日本中のいい人をひとつ探してください、また、研修をしてください、こういうことであれば、むしろ自治体の人事行政として裨益するところもあるんじゃないか。要は、押しつけになった、そういう形じゃいかぬだろう、こういうふうに思います。
  97. 和田静夫

    和田静夫君 これは、どう言われてみたところで、そんな、きのうきょう入った人を地方から要望するはずがありませんからね。ここの部分は、いま副総理が言われるように、押しつけにならないという保証というものが今後ともやっぱり確立するように、ちゃんと意思統一をしていただきたいと思うんです。  で、もう少しこの問題に触れてみますが、昭和四十四年組の異動状況というのをずっと見てみたんです。昭和四十四年組の異動状況を見ますと、転々と移っているんですね。たとえば大村達彌さんという人がいます。昭和四十四年、石川県地方課に赴任です。これは四十四年組ですから、入った年ですね。入った年にすぐ石川県に行くのです。そして四十六年には千葉県の文書学事課に行くんです。その翌年、四十七年には環境庁に帰るんです。四十九年は奈良県税務課長という形で目まぐるしく移り歩くわけです。この異動の理由をまずひとつ明らかにしてもらいたんです、自治大臣。かつて昭和四十四年に、私は、八艘跳びのような形は困るじゃないか、自治体の人事というものを乱してしまうじゃないか、野田自治大臣いかがですか、という問いに対して、結果的にそういう状態はなくしていくべきだと、亡くなられた野田自治大臣は明確に答えられています。昭和四十六年三月十九日の決算委員会では、岸政府委員、これは自治省官房長から、いま大阪府の副知事になっていらっしゃる方、転々として異動するとか、先ほど御指摘ありました点については私も改めると述べていらっしゃるわけですね。で、どういうふうに改善されましたか。
  98. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘の点、基本的には確かに一カ所を短かく転々とするというような異動のやり方というものは大変不適当であると、御指摘のとおりであろうと存じます。ただいま具体的なものにつきましての御指摘があったわけでございまして、この者については、私細部は存じませんが、おそらく御指摘のとおりの異動であったろうと存じます。個々の事情はいろいろな事情があろうと思いますけれども、そういうような点、非常に短い期間でかわることをなるべく避けたいということはおっしゃるとおりでございまして、今後ともその方向は努力をいたしたいと、かように存じます。
  99. 和田静夫

    和田静夫君 自治大臣、よろしいですか。一年ぐらいで飛びかわられたんじゃ、たまったものじゃないですよ、地方は。
  100. 福田一

    国務大臣福田一君) 実は私も事情をつまびらかにしておらないからいま承ったわけですが、一年というのはちょっといかにも短過ぎる。やはり勉強するなら、せめて二年はいないと、そこのところは勉強できない。(「二年だって少な過ぎる」と呼ぶ者あり)いやいや、私もいろいろの会社に勤めたこと、もありますから、少しはそういう事務のこともわからぬわけじゃないんですが、一年はどう考えてみても――大体はしかし三年というのが普通はあれですがね、一年はいささか短いように思います。
  101. 和田静夫

    和田静夫君 そうです。もっと落ちついて仕事をすべきでありますし、そうでなかったら、日本の地方自治というのは本当の意味では育たない。したがって、そういう意味で問題になると思うんです、この天下り問題というのは。  これは先ほどから、要請によって要請によってというお言葉がありますからね、一つだけ例を挙げておきますが、自治省の方針でこの天下りが行われていることの間違いないという例は、特別職ですよ、特別職は任期が定められているわけでしょう、四年なら四年という任期が。任期が定められているけれども、任期の途中で自治省の都合で帰ってくるわけですよ。たとえば自治省事務次官がどこかの知事選挙にお出ましになる、あるいは衆議院選挙にお出ましになる、急遽その後を埋めなきゃならぬ。びっくりして埋めていったら、そうしたら結果的には地方に行っていた副知事に、四年任期があるけれども一年でやめて帰ってこい、おまえ順番だから、こういう形になっているんですよ。これは自治大臣、否定できません。これはやっぱり自治省の都合でしょう。
  102. 山本悟

    政府委員山本悟君) 地方議会の議決を経るような特別職というようなものにつきましては、いろいろな事情がある場合もございます。ただ、ただいま御指摘のような点がないということも一概には申し上げられないわけでございまして、それぞれそのときの事情によって任命権者とのお話し合いの上、措置をとっていると、かように存じます。
  103. 和田静夫

    和田静夫君 いま現職の税務局長さんにしろ、財政局長さんにしろ、みんなそうなんです。そして、その理由は大体税務局長になるためなどというような理由でおやめになるんです。今度ある人がお帰りになりますね、この人の場合は先日議会で説明されたのですから明らかであります。岡山県の副知事さんが今度本省へ帰ってくる。この間副知事になったばかりです。ぼくは、本人は大変すぐれた人であることをよく知っていますよ。しかし、本人を問題にするのじゃありません。この議会説明は、本人の栄進のためですよ、本人の栄進のため。こういう形でもっておやめになって帰ってくる。したがって、犠牲に供せられているのはだれですか。長い間下積みでもって努力をしてきている、地方努力をしている、自治のために真剣に働いてきているところの地方公務員、地方公務員がこういう便法のための犠牲になっているんですよ。このことはもうとても許せることではない。このことだけは自治大臣、十分にお考えにならないと、それはもう自治体の人事などというものはもっていきませんよ。  自治省の天下りの人たちが人事の均衡を破壊をして、そして自治体職員の意欲をそいでいる。そして大きな不満を生み出している。こういう状態を、働いた経験をお持ちになっている福田さんですから、わが党にはあなたの後輩としてのすぐれた、田英夫さんもいますよ、少しは、後輩が穴の中に入りたいと思うような心境になる、そんなことにならぬような措置をこの後してもらいたいと思うんだな、ここのところは。これで人事にもう大変な不満を持っていることを――この前の答弁のときに、人のふところのことがすぐ気になるそういう勤め人というお話大臣はされましたが、その心境を味わっているのは地方公務員なんですよ。そこのところを、大臣の心境と一緒に十分にこの機会に味わってもらいたいと思うんです。  昭和四十四年組の名簿の四十九年度の職名を見たらわかるんです。これはもう四十九年十一月現在、全部課長ですよ、地方の課長ですよ。ところが、県の上級職試験に合格した者で課長になるのは、早くても――天下りで来るこれらの人たちは二十七、八歳です。ところが、地方の公務員の人は幾つかと言いますと、四十三、四歳なんですよ。こういう形でもってずうっと置かれているんですよ。そういう不満が国の自治行政にどういう形であらわれるかということを、いま本当に地方自治を見直さなければならない、地方自治を基本的に考えなきゃならぬ、討論しなきゃならぬというときには、やっぱり大きな一つの柱としてお考えになってもらいたいと、こう思いますがね。これは副総理並びに自治大臣、ぜひ答弁いただきたいと思います。
  104. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいまの問題でございますが、地方へ入った人が上へ伸びることがむずかしいというお話だと思うんですが、私の考えでは、地方へ最初から入った人でも、優秀な人があったら今度は自治省へ持ってきたらいい、むしろ。そういうふうに交流をする考え方を持つべきじゃないか。また事実、地方で入った人でもいま自治省で仕事をしておる人もありますから、私はそういう意味で、これはあなたのおっしゃった意味はよくわかりますけれども、今後はそういう面もあわせて、要するにこれは人材を確保するということでございますから……。  それから、私はちょっと考え方が違って、おしかりを受けるかもしれませんが、私は地方の自治体にいて働いている人が偉くなくて、中央で働いているのが偉いなんて、そういう考え方には本来反対なんです。みんなそこでまじめに仕事をしている人が一番偉いんだと、私はそう思っておるわけです。しかし、そのために俸給その他が非常に差がつくようなことは、これはしちゃいかぬ。どこにあっても、同じような仕事であれば同じような待遇を受けるということにしないと不満がつのると思うんです。そういう意味では、これからも大いに努力をいたしたいと考えておるわけであります。
  105. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 自治大臣の申し上げたことにつけ加えることは多くありませんが、私は和田さんのおっしゃることはよくわかります。まさに、そういう気持ちで自治省も人事行政をやっていかなけりゃならぬと、こういうふうに思います。とにかく地方、中央、これはもう車の両輪と私が常々申し上げているとおりであります。中央の人も地方の実情に通暁する、その通暁したうんちくを中央行政で大いに活用する、こういうことも必要だろう、中央の知識を地方で大いに地方を伸ばすために活用することも必要であろうと、こういうふうに思いますが、私は要するに、地方自治、これはもう自治の尊厳を害しちゃいかぬ、こういうふうに思うんですから、押しつけがましい地方自治ですね、そういう形があってはならぬと思うんですよ。ただ、中央、地方相談いたしまして、これが両者のためにいいということならば、これはそうとがめ立てをすることはないんで、むしろそれは中央、地方の両者のためにいいんだろうと、こういうふうに思いますが、お気持ちはよくわかりますから、自治省としては人事行政はそういうお気持ちでやるべきであると、こういうふうに思います。
  106. 和田静夫

    和田静夫君 四十七年の都道府県の総務部長のポストのうち、二十二が実は自治省からの天下り官僚で占有をされているわけです。地方自治法施行後二十八年、各府県においても人材がないわけではないのでありますから、いま両大臣からお話がありましたように、自治省の天下り官僚が人事における地方自治の確立を妨げることがない、そういう配慮というものを強く求めておきたいと思うんです。よろしいでしょうか。
  107. 福田一

    国務大臣福田一君) 承知をいたしました。
  108. 和田静夫

    和田静夫君 退職手当のことをちょっと聞きたいんですが、これはどうなってるんですか、この人たち。
  109. 山本悟

    政府委員山本悟君) これらの者につきましては、国から県に出る際、あるいは県から国に帰る際、それぞれ退職はいたしますが、退職手当につきましては通算制度がとられていると存じます。なお、副知事等特別職につきましては、府県によりまして、とられている府県、とられていない府県、ばらばらでございます。
  110. 和田静夫

    和田静夫君 その特別職の場合、どういうふうになっているわけですかね。
  111. 山本悟

    政府委員山本悟君) 府県の条例におきまして、そういう場合にも通算すると、受け取る方を通算するという場合には、国の方に帰りましても通算をすると、こういう相互協定になっておりまして、そういう条例が制定されていない府県におきましてはそのまま切れると、こういうことでございます。
  112. 和田静夫

    和田静夫君 特別職として退職金を受ける、さらに自治省幹部として復帰、通算して退職金を受ける。これは優遇され過ぎるというような感じを、まあ地方の退職金問題が大変問題になるものだから感じるんですがね。この副知事の報酬月額というのはいま調べてみると最高七十二万円、最低三十八万円、まあ平均しても四十五万円で、四年間で一千七百万受け取る。優に一千七百万を超えるんです。そうして自治省に帰って局長になられる、部長――そういうキャリアを持った場合に、前後の期間を通算すると、公務員の勤務期間というのは二十六年を超えます。で、給料も高い。そうすると、退職するときの退職金と特別職の期間に受けた退職金を合算しますと、非常な高額になりますよ。公社公団に天下った高級官僚の問題が非常に問題になっていますがね、こういう問題について、自治大臣どういうふうにお考えになっていますか。
  113. 山本悟

    政府委員山本悟君) 特別職の場合はただいま御説明いたしたところでございますが、別途加算金というようなものをその団体の条例その他の制度によってつくって、あるいは予算措置によってつくっている場合がございますので、それらは全く別計算と。ただし、本来の意味の退職金といたしましては、通算があります場合には、一番最後で退職するときにそのところの規定に従って受けると、かような制度でございます。
  114. 和田静夫

    和田静夫君 いやいや、それはわかってるんですよ。質問に答えてないんですよ、それでなくて。まあ、公社公団の天下りなんかのいわゆる退職金が問題になっていると同じような形で、いまずっと例示をしてきましたね。私はいま現職の局長が幾らもらってきたということはちゃんと調べてありますが、そんなこと言いません。言いませんけれども自治大臣、これとの関係においてどういうふうにお考えになりますか、このところは。
  115. 山本悟

    政府委員山本悟君) ただいま申し上げましたように、最終的な退職金はそれぞれの一番終わりに退職いたします、要するに切れるときにもらうわけでございまして、ぶつぶつ切れていけば結局はそれぞれのときの年数が短くて少なくなり、通算があった方が一番最後が多くなると、御指摘のとおりであると思います。その間に、途中の間に特別職を経験いたしまして、その場合に特別加算金等が出た場合にどうなるかというようなことであるといたしますれば、それはその個々の団体によりまして全く違う事情でございまして、一律的に特別職であればどの程度のものが出るというような基準があるわけでもございませんし、個々の場合で判断するよりほかにないんではなかろうかと、かように思うわけでございます。
  116. 和田静夫

    和田静夫君 私は自治大臣と違って、余り人のふところのことを言いたくないし、あれだから、これ以上ここは言いませんがね。この辺のことは十分に考えておかなければならないことである、そのことだけは明確でありまして、地方公務員が云々というような論理よりも先に、みずから正すべきものは正すというなら話は別だ、こういうことを述べておきたいと思うんです。  実際に幹部職員の退職後の動向を見てみますと、再就職をほとんどされていますね。されていない人はまれです。それも自治省かなんかの権限を持つ政府関係諸団体、そういうところに出ていかれるんです。これもまあ私は一種の俗語で言う天下りだと、こう思うのですが、そうすると、幹部職員の定年というのは、結果的にはその天下り先の、いわゆるそこでやめるときが定年ですよ。そういうふうに私は考えるべきだと思うんですね。地方公務員なんというのはそんな行き場所はないわけですよ、ない。そして高額な報酬と多額の退職金が、その歩いていくときどきにずっと出ていく、こういうシステムになっているのでありますが、この実態を明らかにされますか。
  117. 山本悟

    政府委員山本悟君) ただいまの御指摘の点でございますが、直ちに資料を持っておりませんので、御即答はいたしかねるわけでございますが、自治省の幹部の職員を退職いたした者で、そういった政府関係機関等に再就職をしている者のあることはございます。
  118. 和田静夫

    和田静夫君 じゃあ、その一覧表を出していただけますか。
  119. 山本悟

    政府委員山本悟君) 後刻提出いたします。
  120. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま御指摘がありました問題でありますけれども、私はそういう場合に、自治省の幹部が、たとえば地方へ天下りしていい場所についているというような場合でも、押しつけたような意味のことはほとんどない。例外は私ないとも言えないと思うけれども、ほとんどは、地方自治体の方でまあひとつ頼むというようなことでいまやっておると私は思っております。その場合において、自治省へ帰ってくる場合に、一種の退職金みたいなものをもらっているという例もあるでしょう。私はそれも否定できないと思います。しかしそれは、要は、そのときどきのそういう運に回り合わせた人が非常に都合がいいということであって、組織をつくってそういうふうにやっているというわけではございません。それぞれの自治体との関係において自治体がやっておるわけでございますから、それをわれわれがそんなことをしちゃいかぬと言うべき筋でも私はないと思う。その人を渡すときに、今度やめるときにはうんとこういうようにしてくださいよという条件つけて渡せば、これは問題ですけれども、それはやっぱり地方自治体にそれぞれの問題、それぞれの立場があってやっておるんだと思うのでありまして、あながち、これを絶対な悪とは言えないと思っております。しかし、疑義を起こすようなことはない方がいいかもしれませんけれども、私はそう思う。  それから、自治体のたとえば幹部になった人が、どこかへ勤めをしないか。なるほど中央なんかのところへは勤めなくても、やはり役所にいた人が会社へ入るとかどこへいくとかというようなことは、しばしば例のあることです。だから、それを一概にいかぬということになりますと、どこへ差をつけるかという問題もありますから、私は役所へ勤めた人が民間へ行っちゃいかぬというものではないと思うんで、それがやはり何か圧力によったり、あるいは能力以上のポストを与えたりするようなことは、これは圧力でやることはいかぬと思いますけれども、そういうことがあるからといって、それを一概に悪というわけにはいかないんで、やっぱり有能な人はできるだけ活用するように、活用されてしかるべきである。これは地方自治体の幹部であっても、自治省から行った人じゃなくても、私はそれは当然なことだと思うんです。むしろそういうような人を発掘することこそ、やっぱり中央におけるわれわれのある意味では仕事ではないかと考えておるのでございまして、その点はひとつ御理解をしていただきたいと思います。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 私は、民間にお入りになる方々のことは決して自治大臣、述べているわけじゃありません。そんなのはもう自由でありますし、民間が御採用になるなら、能力のある人は行かれるでしょう。自治大臣、前段のところでちょっと長い経過がありましてね、押しつけたのじゃないという、善意にお考えになっているし、まあすぐれた新聞記者であった自治大臣だから、官庁をどういう目で見ていらっしゃったかということはよくわかるのですが、「名簿」とただ書いた一冊の本があったのですよ、「名簿」。これは歴代の内務官僚がずうっと今日までつくって、それを自治省総務課でつくっていたんです。こんなことがあり得るかという。それによってずっと人事配置ができていた。最近はおやめになりましたよ、私の指摘で、そこでつくるのは。よそでつくっていますがね、自治省自身がつくるのはやめたけども。そんなような経過がありましてね、自治大臣、これは一遍ゆっくり別の機会に話し合いましょう。どんな計画がなされているかというのは一目瞭然われわれわかる。  たとえば三月一日で時政基資氏と言うんですか、に休職で、地方公務員災害補償基金の総務課長として辞令が出ていますね。これはどういうことです。
  122. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘のとおり、その辞令を渡して本人を総務課長にいたしたわけでございますが、これは休職の取り扱いをしているわけでございます。これは災害補償基金の職員につきましてそういうようなのが法律的な制度として認められていると、かようなことでございます。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、休職扱いで職員を配置している団体というのはどういうものがありますか。休職となっている職員というのは何人いますか。その氏名や配属先の団体、役職名の一覧表、これは出せますか。
  124. 山本悟

    政府委員山本悟君) 休職の扱いのできるものは、たしか法律的には人事院規則か何かですでに決められていたと存じますが、私どもの特に深い関係のありますところでは、ただいま御指摘のございました災害補償基金あるいは地方共済組合事務局、こういったところが主なものでございます。  ただいま御要求のございました資料は、後ほど提出させていただきたいと存じます。
  125. 和田静夫

    和田静夫君 私は、これらの職員は当然退職をして行くべきだと自治大臣考えていますので、ここのところは時間がありませんから意見だけ述べておきます。  大蔵大臣、佐藤元総理大臣田中前総理大臣福田現副総理も、地方交付税地方団体の固有の財源であると私との論議の中でお認めになっていますが、大平さんも変わりませんか。
  126. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さよう心得ております。
  127. 和田静夫

    和田静夫君 救急病院はA、B、Cの三つのランクに分かれていまして、昭和五十年度予算案によると、日赤、済生会などの公的病院は、Aが五百五十万、Bが二百四十万、Cが百七十万、ところが、自治体病院に対してはAが四百五十万円出ているだけで、B、Cゼロ、これは大蔵大臣、どんな意味です。
  128. 竹内道雄

    政府委員竹内道雄君) 御承知のように、交付税の割合が違っておりますので、それに伴って違っておるというような状況でございます。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 厚生大臣いまのところ。
  130. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 先生おっしゃるように、日赤、済生会にはA、B、Cまで出ておりまして、四十九年にこれを実現を図りたいと思いましたが、五十年になりまして、今回救急病院のAという機能のいい五十七施設だけ認められたわけでございまして、B、Cについてもそれぞれの機能に応じてわれわれとしては今後検討してまいりたいというふうに思っております。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、さきの予算委員会であなた並びに齋藤厚生大臣と私のやりとりの結果お約束になったことがこの自治体病院のAに実ったと、そういう意味ですか。B、Cは今後実らせると……。
  132. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) おっしゃるとおりでございまして、今後努力いたします。
  133. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ同じことが厚生大臣、看護婦養成所の運営費補助金についても論議があって、そして齋藤さんも認めているんですよ。ここの部分はやっぱり大変また差が出ていますからね、ここの部分も埋められると。いまの答弁、全部ひっくるめて厚生大臣よろしいですか。これは大臣大臣だよ、これは。最後の出番でしょう。
  134. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) まず政府委員から。
  135. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 看護婦養成につきましては、A、B、Cのような意味の差はございませんで、一応自治体立のものを今回対象に……
  136. 和田静夫

    和田静夫君 いや、公的なものと自治体との関係の差、公的なものと自治体との差があるでしょう、三年制、二年制、准看。
  137. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 金額の上の……。
  138. 和田静夫

    和田静夫君 そうです、そうです。
  139. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) この点につきましては、私たちも日赤、済生会等の、まあ親元のないと申しますか、財源的に弱い、差をもとにしてスタートいたしたものでございますから、自治体の今回の措置については、私は先生、交付税議論で私も認識いたしております。したがいまして、所要の財源がある程度してある地方自治体に対すると日赤との均衡等を考えまして、今回その調整が若干加えてあるというだけでございまして、基本的には私はA、B、Cのような性格のものは看護婦養成にはないと、こういうふうに理解いたしております。
  140. 和田静夫

    和田静夫君 しかし、加えられたようなものをもっと埋められるわけですね、今後。それはこれで終わりですか。
  141. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 看護婦養成につきましては、教員の経費とか、教材費とか、非常に基本的共通的なものだけをいま対象にいたしておりますが、われわれといたしましてはその内容の充実という点は、これは日赤も自治体も共通の問題として対応いたしたい。
  142. 和田静夫

    和田静夫君 厚生大臣、いまの二つ、まとめて……。
  143. 田中正巳

    国務大臣田中正巳君) お答えいたします。  救急とただいまの問題とは、若干性格が違うようでございます。救急につきましては、とりあえずことしAランクのものだけを採択をしていただきましたのは、齋藤前大臣とあなたとのやりとりも私速記で見ました。その方向に進んでいるというふうに思います。
  144. 和田静夫

    和田静夫君 今後さらに進められるのですか。
  145. 田中正巳

    国務大臣田中正巳君) ただし、ただいまの問題につきましては、やややはり親元のあるものとないものとの差ということで若干の差異がついておりますが、これについては、私は本質的には同じであっていいものとは実は思っておりませんが、積算の内容については、今後さらに検討する必要があろうかと思っております。
  146. 和田静夫

    和田静夫君 前段のB、Cは、さっきの医務局長答弁でよろしいですね。
  147. 田中正巳

    国務大臣田中正巳君) よろしゅうございます。
  148. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして和田静夫君の質疑は終了いたしました。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時三十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時五分開会
  149. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を行ないます。有田一寿君。
  150. 有田一寿

    有田一寿君 私は、文教政策が現在抱えている問題はたくさんあると思いますが、その中の主な七点だけについて文部大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  まず、入試問題から入りますが、その前提となります高等教育についてお伺いをいたします。  これは世界的傾向でもありますが、大学生並びに大学の量的拡大と、それに伴う質的低下という問題これについて国民の中にも二通りの極端な意見が現在あります。一つは、大学の大衆化案と申しますか、能力のあるものだけを入れるのではなくて、希望するものを全員収容する、将来は大学を義務教育にしてもいいではないか、バスの運転手も板前さんも観光バスガイドもすべて大学生である、大学卒業生であるということでも、日本の今後の教育水準の向上という観点から望ましいことであるという一つ意見。いま一つは、そうではなくて、選抜して適格者だけを入れるんだという、いわゆる過去の大学に対する一つの考え方でございます。要するに悪平等主義はとるべきではないと。こういう極端な二つの考えがございますが、これについてどういうふうにお考えになっておられるかお伺いしたいと思います。
  151. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 私は、世界の全般的な大勢といたしまして、上級学校進学の教育の機会均等が大衆に開放されるというのは、大変結構なことだと思います。そこで、わが国の場合、六三制というものができ、さらに幼稚園、高校というようなものについてもどんどん進学率が高まり、さらに高等教育というところにつきましても非常に進学率が高まってきたわけです。ところが、これについて悪平等という批判が起こってまいりますのは、やはり非常に注目すべき現象だと思います。  といいますのは、たとえば、わが国のノーベル科学賞の受賞者を見ますと、これは湯川、朝永、江崎の三先生に終わるわけでありますが、この三先生ともに、実を言うと第二次大戦が終わるまでの、日本の昔の教育制度で育っている方であります。戦後日本の教育がこれだけ拡張いたしましたけれども、そういう意味合いにおいて、本当にわが国に創造的な人材を必要とするのでありますが、戦後の教育を受けた人から実は一人もノーベル賞受賞者を生み出していないということは、非常に大きな問題だと思っています。そこで、大学の門戸を開放するというだけでは問題は解決しないわけで、どういうふうにして才能のある人を伸ばしていくか、これは科学者だけではなくて、文学者もそうでありましょうし、私は政治家もそうだろうと思いますが、それをどういうふうに育てていくかということが非常に大きな問題だと思います。  わが国の場合、門戸を開放いたしましたけれども、やはり非常に画一主義の勢いが強い。この画一主義について一般に言われますのは、文部省が中央集権的に固めていくから画一主義になるのじゃないかという疑問が相当強くあります。私は、場合によってそういう側面もあるということを否定しません。しかし、それ以上にわが国の場合重要なのは、やはり東大集中主義というものがありまして、この東大というのは明治十九年に整備された学校でありますけれども、その時分の日本の人口がおおよそ三千二百万人でありますし、その三千二百万人のうちの半分ぐらいが農民である、そしてその大部分が小作人で、実は大学に行くチャンスがない。そうすると、都市人口のうちの、ここも貧困なところが多かったのでありますから、相当少数な母集団が東大をねらったと考えるほかはないのでありますが、それを仮に推定して五百万人程度としますと、現在は一億一千万人がみんな東大をねらえる社会になったわけです。そうするというと、単純に計算をいたしますと、東大が二十ぐらいないとぐあいが悪い。つまり、東大を富士山型といたしますと、現在八ケ岳型あるいは八ケ岳よりもっと峰の多いそういう教育制度が必要であって、ですから門戸を開放すると同時に、一つの方向に型をはめていくのでなくて、やはりいろいろな個性を生かしていくという方向に来なければならなかったんだと思いますが、そこまでの教育制度を今日まで生み得なかったというところに問題がありますので、これからはもちろん教育の機会均等というものは確保していくべきですが、同時に、非常にすぐれた才能を持っている人、これをどうやって生かしていくかということを制度の上でも方法の上でも工夫していくべきだ、かように私は考えております。
  152. 有田一寿

    有田一寿君 いまの英才教育の問題は後にお尋ねいたしますが、引き続きまして、具体的なことになりますけれども、第一次共通学力テストについて、国大協の方に頼んで、ある程度予算を出して、ほぼ固まりかかったように聞いておりますが、その状況についてお答えを願いたいと思います。
  153. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) これも戦後の長い課題でございまして、能研テストをやるとか、あるいは進適テストをやるというような形で、いまのような姿の大学試験制度の悪化を防ぐということをねらったわけですが、いずれも成功しなかった。そこで、それぞれの大学に任せて問題をつくったわけでありますが、だんだんだんだん問題が客観テストで落とし穴の多い問題になって、しかもそれを覚えなければいけないということが、私はやっぱり小・中・高の教育に非常に大きな影響を与えていると思います。  この共通テストという考え方は、やはり専門家が集まって相当時間をかけて、落とし穴というようなものではなくて、本当に学力をテストできるものをつくり上げていこうとするわけのものであります。これはいま国大協と、それから文部省の大学入試改善会議といろいろ話し合っておりますが、その進行状況をお尋ねでございますが、これはいわゆるプリテストもある程度やりまして、去年は国立大学協会で十一月に、高等学校の生徒三千人を対象として実地研究を行いました。そこで調査の段階にあるわけです。五十年度になりますと、この調査研究をもとにしまして、協会の計画に基づいて関係の国立大学が協力分担して、さらに一層具体的にそういう共通テストの問題としてどういうものをやっていくか、それからやり方をどうするかということを工夫していくわけでございます。  共通テストというのは、ベースをつくりまして相当人数が選ばれるわけでありますが、しかし、共通テストだけにするとまた共通テストからくる画一性というものが出てきますから、やはり二次テストというものを、第二番目のテストをやりまして、それぞれの学校で小論文もやるし、できれば将来は面接テストというふうなものもやれることが望ましいということをわれわれは考えておりますが、これは大学入試改善会議とそれから国大協で考えていただいている。そういたしまして、国大協と大学入試改善会議との話し合いが十分に熟し、そしてまた、いままでやってまいりました調査というものが順調に進みますならば、昭和五十二、三年度には実施に入るというところをいま、めどにしているわけでございます。
  154. 有田一寿

    有田一寿君 問題は、その第二次テストにあると私は思っておりますが、過去の能研テストあるいは進適がやられながら活用されなかった。今度は第三回戦の共通テストについての研究でございますが、要は最終テスト、二次テストがどういうものになるか。このために大学側もあらゆる協力を払うということでなければ、すべてぶちこわしになるであろう。その見通しがあるかどうか、あるいは文部大臣として御指導なさる意図がおありか、そこははっきりと伺っておきたいと思います。
  155. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 確かに、いままでのテストが失敗いたしましたのにいろいろ理由があると思いますが、一つは、やはり共通テストなんていうものをつくると画一的になるんじゃないか、大学というのはそれぞれの大学に特色があって自治があるから、自分のところで問題をつくりたいという要求が非常に強いわけです。そこで、能研をやりました時期におきましても、大学側に能研に対する相当の抵抗がございました。私は実は当時大学におりましたから、この問題について議論をしまして、私は当時から共通テストというものの重要性主張した一人でございますが、そこで、やり方としてどうするかという場合、先ほど大学入試改善会議と国立大学協会との協力が必要であるというふうに申し上げましたのはいまの意味合いで、つまり大学の方に、共通テストは画一性を生むのじゃないか、そして大学の自由に反するのじゃないかという懸念がありますから、その懸念というものがやはり払拭されないといえないと思います。そこで、どうしても入試改善会議と国立大学協会が非常に密接に連絡を保っていくということが大事だと思います。しかし、いままでの二回の失敗を生かしまして、幸いに今日までのところは国立大学協会の方でも予備テストをやるというところまで協力が進んできておりますから、いままでに比べますと、そこまではいい状況だと思います。  問題はこれからの進め方で、先ほど申し上げましたように、第二番目の二次テストというものが必要だと言いましたのはそれなんですが、やはり共通テストというのは何といっても大きなふるいだと思うのです。その後でそれぞれの学校が特色を出さなければいけませんし、また、出したい希望も多いだろうと思います。そこで、すでに東大でも大学紛争以後、小論文というものをやるようになりましたが、その小論文というふうな方法ももっと広がっていくことが恐らく国立大学のほうの希望としても萌芽的にはありますのでしょうから、そういうものについてもわれわれとしてより御協力を願うようにしたい。あるいは内申書の問題がございますが、内申書も現在の受験体制の過熱化の中で進めますというと、何か毎日学校の先生に監視をされていて、その結果が報告されるから、内申書重視になると弊害があるという説もありますが、しかし、仮に将来だんだんに高校、中学、小学校の教育課程というものがいまほど過熱の競争という状況を除き得ることができますならば、そういう段階では内申書というものももっと活用することを考えていただくというようなわけで、これはやはり実情を踏まえながら、大学とそれからわれわれ文部省とが十分にコミュニケーションを密にいたしまして、今度は誤解のないように進めていきたいというふうに私は考えております。
  156. 有田一寿

    有田一寿君 大学の設置を厳しくして、私大の認可等も、これも従前よりも厳格にして、早く言えば量的拡大に歯どめをかける、質的に充実していくべきだということは、今後の一つの大きな文教政策であろうと私は思いますが、それにつきまして、大学の配置の地域性と申しますか、そういうことも多少は加味されなければならないと思いますが、いまアカデミーマップというようなものを文部省でたしか研究されているように聞きましたが、そういうことを含めて今後の大学の配置等についてどうあるべきだというようなことを、これは文相の個人のお考えでも結構ですが、お願いをいたします。
  157. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) なかなか文相個人の考えというのは言いにくいと思いますが、やはり文部大臣として申し上げるほかないと思いますが、アカデミーマップの問題は高等教育懇談会の方で御検討になっておられます。これは坂田文部大臣の時分に、坂田文部大臣が非常にこの問題に関心を持たれまして、日本の医学の将来分布図という報告書も出しておられます。当時は相当思い切って新学園都市をつくるというような考えもあったわけでございます。国土庁の方でも用地の確保について大学のために考えるという、そういうお考えもあるようでございますが、私は、これからの考え方として二通りあると思うんです。一つは新学園都市というような形で、筑波はその一例でございますが、新しいものをつくっていくということだと思います。しかし、わが国の現在の経済を考えますというと、それは必ずしも容易ではないというふうに思います。経済だけでなく、もう一つ大学というのは、無から有を生じるように何もなかったところに突然大学ができて、それがすばらしい大学になるということはなかなかないのが大学の歴史上普通でございます。  私自身いま考えておりまして、なかなかこれはお約束という段階にはいきませんが、考えておりますことは、日本に地方大学が相当あるわけです。もっとこの地方大学というものを強化することができないだろうか。これは新学園都市というのと違う方向でございますけれども、もう少し現存している地方の大学というものを強化いたしますならば、規模の上でもそういうものを大きくすれば、そこに大学人口も集まってきますし、また質的にも東京、大阪、京都集中というような方向というものに変化を加えることも可能ではなかろうか。ただ、これは検討段階としていまのようなことを考えて計画をしている次第でございます。
  158. 有田一寿

    有田一寿君 これは一つの考えでありますが、大学の卒業及び資格の認定について統一的な基準によって、早く言えば資格認定機関のようなものを今後考えるということはいかがでしょうか。いわゆる学歴偏重といつも文部大臣も言われますが、それは学歴と能力が伴っていないからであって、それを多少伴わせるということも一歩前進ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  159. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 御指摘のように、大学も千差万別でいろいろありますから、卒業した人にもう一回共通テストをするという方法ももちろん可能だと思います。そして資格を考える。ただ、高校から大学に入っていく段階の共通テストと、それから大学卒業のときの資格テストというのと、ちょっと性格が異なると思うんです。といいますのは、大学を出るときには相当いろいろな専門をやりまして、その専門家として立っていけるかどうかということを調べなければならないわけです。  そこで私は、この問題については簡単に資格テストというものに踏み切りにくいと思いますのは、この問題についての御通知も受けましたので、早速いろいろな資格というものの一覧表を調べてみたのですが、私前から考えていたことですけれども、実はいろいろな職業、たとえば、お医者さん、歯医者さん、あるいは地方公務員上級、あるいは税理士、国家公務員、あるいは公認会計士、司法試験、弁理士、こういうふうなものはすでに現在資格試験がありまして、別に大学を出たからといって、すぐそういうふうな職業につけるわけではない。そうすると、こういうふうな資格試験というものが相当厳正に行われるということが、もちろん、大学卒業生というものの実力を試すという上で重要でありますから、こういうものをいままで以上にきちんと進めていただくということは非常に大事だと思います。  他方、こういう資格試験によらない、何といいますか、一般の事務サラリーマン、ホワイトカラー、そこらあたりに相当いわゆる学歴主義というものが出てくるのではないかというふうに私は考えますので、こういう問題に関しては、むしろ資格試験というよりも、現在の企業の中での雇用の形態、採用、昇進、そういうところにどういう問題を生じているかということを現在すでに実態調査を始めているわけなんですが、そういう形で学歴主義というものをだんだん打破していく。ですから、大学卒業のところの資格試験を急にやるということになりますと、先ほど申し上げました現存の資格試験のほかにも、実にいろいろな資格試験がすでにあるのでございますが、非常にそういうものの整理統合ということになって複雑な事態を生じることになると思います。それよりも、いま申し上げた方向でさしあたりは進めていくべきではないかというのが私の考えでございます。
  160. 有田一寿

    有田一寿君 いまお話の出た学歴偏重の問題に  ついてでございますが、これはもう一般の国民が皆よく知っているように、一番学歴偏重と申しますか、学歴主義なのはまず官庁、それから教育界、それから産業界の順序だと言ってもいいと思いますが、この前、経済同友会の方と文相はお話をなさったようですけれども、どういうふうに経済界の方ではこれに対して反応を示しておりましたでしょうか。
  161. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 経済同友会には三月六日に参りました。経済同友会に教育問題委員会というものがございます。その教育問題委員会の二十人の方々と懇談をいたしました。学歴偏重の話だけではなくて、ほかにも青田買いの問題がございますから、こういうふうなものもやはり是正していただきたいということをお願いしたわけです。  学歴偏重の是正につきましては、実はもう質問書もつくってここにできているのですけれども、どういうことをお話ししたかと申しますと、私は、学歴というものを尊重するのは、先ほど申しましたように弁護士であるとか、あるいはお医者様であるとか、そういう場合必要なんですけれども、しかし、偏重という現象が起こってぐることが非常に困ると思うのです。そこで、その実態調査をお願いしたことは、それぞれの企業体の中で、第一、高学歴化の実態を調べていただく、第二、いわゆる特定大学出身者の占める割合と変化の状況を調べていただく、第三番目に、特定大学出身者の優先的採用状況を調べていただく、第四番目に、学歴と職階給与などの待遇の関係を中心に実態を業種別、規模別に明らかにしていただきたいというふうにお願いいたしました。  これにつきましては、経済同友会から、その席でもそうなんですが、後で手紙をいただきました。きょうの夜もまたお目にかかりますけれども、協力して調査をしようと。やはり自分たちも日本の社会の教育の問題に影響を与えているということは非常によくわかるから、そういう意味で協力したいという御意思の表明がありまして、現在の段階で、私どもと経済同友会の事務局とで質問書をつくりまして、そうしてこれを実施する方向に進んでおります。なお、ほかの経済団体にもお願いするつもりであります。さらに、官庁につきましてもできるだけこれを明らかにしたいというふうに考えております。
  162. 有田一寿

    有田一寿君 教育界について同一学歴、同一賃金という原則、これは教員組合は特に強く要求してまいっておりますが、これについていかがでしょうか。
  163. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) いまの御質問の点をもう少し詳しく。
  164. 有田一寿

    有田一寿君 給与表というものがございますが、この場合に同一学歴、そして勤務年数が一緒なら同一賃金というような考え方が強くありますけれども、はっきり言えば私はこれでは将来はいけないのじゃないか、そういう気持ちでお尋ねを申し上げるわけです。
  165. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 私は、いまの先生方というものを考えていく場合に、どの先生方がすぐれているかということが非常に簡単にわかって、そして単純に年功序列にならないということが起これば、非常にいいんだと思います。だから、先生方の仕事の場合に非常にむずかしい問題がありますのは、たとえばエンジニアあるいは新聞記者、そういうふうな職業などの場合には、相当職業的な業績というものが明確にあらわれてくるわけです。それに基づいての評価というものを行うことはできます。教育なんですが、教育の場合に非常にむずかしい問題を生じてくると思いますのは、それぞれの先生方が教室の中で子供を教える、これは欠席したりサボったり、それはすぐにわかるわけですけれども、しかし、ともかくみんな教えておられるという場合に、どの先生がほんとうに教育的に一番効果のある教育をしているかということの評価が非常にむずかしい問題があります。  そこで、これは小・中・高に限らず、大学などでもやっぱり非常にむずかしい問題の一つは、いまの日本の大学の講座制の中で、結局、年功序列的に助手、助教授が上がっていきますが、もう少しあれが業績あるいは仕事の結果との関連において自由な評価が行えるようになるといいと思うのでありますが、大学の場合には、講座制というようなものを少し変えていくことによって変化は生まれ得るのじゃないかと思いますが、小・中・高の場合には、実は講座制というものもすでに初めからないんです。そこで、私は中・小・高の場合に、ほかの職業と同じように、年月とは別の評価基準というものを簡単に設けて優劣をつけるということはしにくいように思っております。この問題は、要するに教育への職場における管理の問題というものにも関連をしてくると思いますが、単純に結果を出しにくいということを十分に考えた上で慎重に進めていきませんというと、目立たない先生で余りはでな効果が出ていないようだけれども、実は実質的に非常にいいことをしていらっしゃるというような方が見落されてしまうおそれもあるのではないか。この点については私も前から考えてきておりますが、決め手になる名案というようなものを持っていないというのが正直な私の気持ちであります。
  166. 有田一寿

    有田一寿君 経済界も大体同様でありまして、決め手になる評価というのが、これは人間評価になるものですから、できない。したがって、学歴でとりあえずやっていく。しかし、十年か十五年かたったときには、おのずからそこで、何も東大出たからここに持っていくということはしておりません。そうしなければ企業はつぶれますから。そういうことですから、学歴尊重でよろしい、学歴偏重は困るということで、どういう返事が経済界から出てきますか今度の調査結果を待ちますが、なかなか教育界も同様にむずかしいとは思いますが、ただ、これを逃げ続けていても結局よくないのではないかという気がする次第であります。  それからなお官庁、特に文部省のような指導官庁のようなところは、学歴というとおかしいですが、法科出の職員が多いというのは私は困る。ではどれだけでいいかということはわかりませんけれども、いま私は調べてみましたら、約半分は、ほとんど幹部は全部法科出身者だということですが、もう少し教育学だ、物理だ、自然科学だ、そこを出た者がやはりそういう指導官庁には入っていいんだと、法律はワンセクションでよろしい、もしくは法制局もあることですから。ちょっと法科出が多過ぎないか。  それから経済企画庁などのようなところでも、ここに長官がいませんから私が勝手に言うのはどうかと思いますが、これも経済見通しはいつも違っておるんですよ。違った原因はいろいろあると思いますが、昭和四十六年から四十八年までの分も大変な違い方で、実質成長率は見通しは一〇・一%のところが、七・三%が実績であった。これは二・八%狂っている。それからずっと、ひどいのは四十八年一〇・七%の見通しに対して六・一%、これは四・六%ですから、もうほとんど狂いっぱなしに狂っている。なぜかということ、これは数字ばかり当たるからであって、社会心理学者のような者とかいろいろな者がそこに入っておれば、多少でも近づくのではなかろうか。要は明治以来の官庁構成というものがここで少し反省されなければならないのじゃないかと思いますが、それについてはどういうふうにお考えですか。特に文部省については。
  167. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) いまの問題なんですが、私は、明治時代以来の日本の大学の法学部というのは、やはり一つの歴史的役割を果たしたと思います。それはもう後発国家であって、そういう後発国家における法的な制度というものを整備いたしまして、そして、そういう制度のもとで国民の生活というものを充実していく。ところが、だんだん社会が高度に専門化してまいりますというと、そういうやり方だけでは問題が解決しないのは、いま経済計画を一つの例として挙げられましたが、たとえば環境の問題を考えるにいたしましても、当然科学者の協力が必要になる。あるいは地方自治体と中央官庁との問題を考える場合にも、いろいろいままでのような訓練では足りないものが出てくるのだと思います。  そこで、教育行政についてどう考えるかというお言葉でございますが、そういう趨勢で考えますと、私は文部省に参りましてまだ四カ月になりませんけれども、確かにわが国の教育の法制的な整備というものは、他国と比較してもなかなかすぐれているものだと思います。ただ問題は、教育行政というので、行政の上に「教育」がついているわけなんですが、この教育というものは何かということになりますというと、これも現在のような社会になりますとなかなか複雑でありまして、それこそ社会心理学がわかっているとか、あるいは文学を知っているとか、いろいろそういうことが理解されていなければならないので、その点では私はこれからの教育行政というものはだんだん変わっていかなければならないと思います。  ただ、そこでもう一つ申し上げておきたいのは、それじゃ大学に教育行政というので、いま教育行政に出てくる人に役立つような形の授業というものはどのくらいあるかということなんでありますが、実はこれはアメリカが日本の教育制度を変えたときに、大学に教育行政の講座を設けた方がよろしいということで、ずいぶん講座はあるんです。ありますけれども、非常に現実的、具体的に教育の行政を考えていくのにはどうしたらいいかという形の教育行政の研究や教育というものがどのくらい進んでいるかというと、相当疑問があると思います。むしろ諸外国の制度を翻訳紹介するという式のものはあるのですが、わが国の教育行政実態に即してどこをどういうふうに改革していったらいいかというような形の研究というのは、まだ教育行政学が発足いたしましてから年月が浅いということもありまして、必ずしも強いとは言えない。でございますから、やはり一つ行政の中での人々の体質が変わっていくということは、そういう人たちの訓練といいますか、学習の体系が変わっていくということと相互関係があると思うのです。  こういう点、私自身も教育を多少勉強してきた人間ですので非常に考えますけれども、いまのことを何人かの学者の方とお話をして、どういうふうにしていったらいいかという程度のお話し合いはしておりましたけれども、現段階においては具体的なところまで来ておりません。ただ、文部省におりまして、いまのような非常な転換期に、どうしても教育行政という以上は、たとえば科学技術がどこにいくのか、あるいはエコロジーの問題がどうなるか、あるいはいま学校教育のことにみんな非常に夢中になっているのですけれども、実を言うと、テレビの影響力が非常に強いじゃないか、こういうふうな問題を文部省で考えないというのはおかしいと思うのです。  でございますから、文明問題懇談会というのを先週発足いたしましたのですが、そういうところで基本的に教育というものを、何をどんなふうに変えていくことが起こるであろうかということの議論は始めていただいているわけで、これをいま一年間予定いたしておりますが、一年議論をしていく過程で、ある程度そういう問題についての考え方の方向というものは変わってくる。もちろんその場合に、文部省の中に引き続き法学部出身の人がいるわけですけれども、しかし、いましても、やはりいまの社会はそれこそ生涯教育でありますから、いろんな形の刺激を受けながらお互いに学習していくという道が開け得るのではないかという希望を持っていまのことも考えている次第でございます。
  168. 有田一寿

    有田一寿君 次に、いまお話が出ましたが、テレビの問題でございまして、これは、いま家庭教育はないと、家庭においてはテレビ教育があるんだということを言われているようなことでございます、小・中における視聴覚教育、あるいはいまの放送大学以外に、今後このテレビに対して教育的配慮を加えるということ、これについて私はお尋ねしたいと思います。  もっと言えば、たとえば、こういうことはいかがでしょうか。キーステーションから三十分ないし一時間、この時間を割愛してもらって、これはただでなくてもいいんですけれども、そのときに、良薬をオブラートに包んで飲むようにして、ある程度楽しい番組にして、しかしその中に倫理だとか幼児教育だとか歴史だとか、そういうものを入れていって主婦にこれを見てもらう、お母さん、主婦に。ただし、なかなか見ませんわ、もっとおもしろい番組がありますから。そこで、ライセンスをA、B、C、Dぐらいにやって、幾らカンニングしてもいいから、子供さんに加勢してもらってもいいから、それを半年に一回ぐらい一つこれを出す。そうすれば、これはCがBになるというようなこと、そうすると隣のお母さんはAだと、うちのお母さんCではおかしいから、だから、ぜひこのレポートを出そうよ、そしてAをもらおうじゃないかというような、何かの先に何かをぶら下げたようなことでどうかとは思いますけれども、何かそういうことを考えて、楽しい中でテレビの与える影響をいい方向に持っていく、それによって二十年後の教育を期待する、そのお母さん方の子供に対する。それにとどまりませんが、何か新しい方向を考えないと、テレビをこのままほうっておいていいとは私は思いませんが、それについてお考えを伺いたい。
  169. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) いまの御指摘は、私非常に重要だと思いますのは、アメリカのハーレム・タリーブランドという人がアスペン研究所の人間の未来についての研究についての責任者であり、報告を出していますが、やはりテレビというものが悪用されるか善用されるかによって社会の将来が決まってくる。アメリカのような自由国の場合、テレビの悪影響というものが起こると、そういうことから将来非常に自分の国の運命が決まってくるんじゃないかということを書いております。私は、そういう意味において、いまでも日本は非常に学校教育にみんな夢中になっていますけれども、実際はテレビの影響というものは非常に大きいと思います。いま日本人が大体一日三時間テレビを見ております。でありますから、生涯に大体七、八年テレビを見ている勘定になります。戦後、命が延びた分が大体テレビを見ている分になります。そこで、ですからテレビを見て悪いということないんですけれども、その見ているものの相当部分が娯楽になっている。娯楽もいろんな種類がありますけれども、余りぱっとしない娯楽も多い。あるいは家庭で夕食のときの親子の団らんというようなものがありますけれども、それもテレビが入ってきてやっていますから、なかなか親子の話し合いもないということですので、このテレビというものをどうしたらいいかというのは大問題であります。文明問題懇談会の来月の第二回のテーマは、その問題を論じていただくことに  しております。  そこで、しかしそういうのは一種の抽象論で、どうしたらいいかということなんですが、いま先生がおっしゃいましたA、B、Cというふうな等級を与えるという式にがっちりテレビを使っていくという方法は、いま放送大学の方向ではそれを考えているわけです。これはお母さん向けじゃありませんですが、本当に大学に値するようなものを将来はつくり上げていくということだと思います。文部省も、実はこの問題について、家庭教育テレビ番組「親の目・子の目」とか、あるいは家庭教育(幼児期)相談事業というようなのでいろいろ番組――テレビを使いました、エレクトロニクス・メディアを使ったものに対して補助金を出したり、あるいは計画を進めておりますけれども、これはやはり何といいましても、NHKがいまやっていますものが一番大きいです。これもきょうのお話のテーマの御指摘がございましたので、私きょう「NHK社会教育番組ハンドブック」持ってきたんですけれども、ずいぶん多方面にわたってNHKもいろいろ工夫をこらしている。ただ、この場合にも、NHKのやり方は別に級を与えたりなんかするという方向ではなくて、いろいろ研修会というふうなものをやって議論をするというところまでは進んできているわけです。  それで文部省もこういう――文部省が何もかも国の教育をやるということは全くあり得ないことであって、文部省の仕事は、むしろ国の活動がよくなっていくことにお役に立つということでなければならないと私は思いますが、このNHKの放送番組に関しまして制作委員会や諮問委員会がありますが、そこに文部省の課長やあるいは視学官というふうな者も出て協力をいたしておりますが、私はやっぱり今後はこういうものを強化していくことが非常に大事なのではないだろうか。ところがまた、NHKだけでやっていますというと非常に画一的になるのではないかというような懸念も生じてくるわけです。そこで、民教協というのがございます。民間放送教育協会、これがNETに事務所を持っていて仕事をしておりますが、やはりこれとの協力が大事で、そして方々の民間放送の中で教育番組というものを強化していく。これもある程度進んできておりますし、地方の局もこれに参加してくれてきておりますが、こういう工夫というものを進めることによってバラエティーをつくっていく。  さらに文部省の中では、毎年、非常にいい映画がありますというと、年間十本に奨励金を出したりしておりますが、これは映画でございますが、そういうことをやったり、あるいは演劇とか、オペラとか、そういうものについてはいろいろ賞を出したり、そういうことをしておりますが、私は、やっぱりこういうのがこれからの教育の疑いない一つの方向だと思いますが、いま申し上げたところまでいろいろな形で補助金を出したり、あるいは協力をしたりというところまで来ておりますが、将来の問題としましては、もう少し包括的に電波と教育の関係というものを考えて、しかも、これによって自由が阻害されるというのではなくて、むしろ、多様にいい教育を受けていくことができるようにするという方向で検討しなければならないと、こう考えております。
  170. 有田一寿

    有田一寿君 日教組と自民党との方の公開討論会ということが昨年から計画されまして、まだ実施には至っておりませんが、この教育の問題に関しては、十人が十人、私は意見を持っておると思いますが、しかも、それはいずれも間違っていない。しかしながら、二歩、三歩入っていくと、間違ったとは言わないが、適切でないという意見はずいぶん横行している、うっかりしていると、教育をもてあそぶという風潮も私は出てくると思う。現に出てきておりまして、これは全く危険なことだと思いますが、むしろ逆に、テレビを利用して、国民教育討論会というようなものを五年なり十年なり、あらゆる人の組み合わせ、共産党もよし、各政党おられる。あるいは宗教人もよし、日教組もよし、みんな三、四人で常にその三十分なり一時間の場で討論をしていく。それを皆見る。視聴率が悪くったって、続けてやっておれば、どの時点かで見ますし、そうすれば、日本人は義務教育もちゃんと発達しておりますから、どの人の言い回しはへただが、しかし、真実はこちらにあるというようなことは、私は日本人は見抜くと思うのです。そうして、国民の目の前で教育のわかりやすい論争を続けていくということが必要じゃないかという気がするんですが、これもまあテレビの一つの活用ではないか、そこら辺どうお考えでしょうか。
  171. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 私は、教育の中立性ということが常に議論されておりますが、中立性との関連で大事なのは、どの人が何を主張しても、自分の言うことは絶対的真理であると、したがって、ほかの人の言うことは問題にならないという立場を捨てて、自分の言うことに何ほどかの理はあるけれども、あるいは耳を傾けると、その一部分は他の人の意見を聞いて修正しなきゃならないんじゃないかという、そういう立場というものが相互にかみ合ってくれば、一番実りあるものになるんだと思います。そういう意味で、教育というものは、人間は生きていればみんな自分自身を教育しているわけでありますから、教育について考えていない人間はない。そういう意味ではだれでもが発言の権利を持つわけでありまして、そしてまた、それぞれの生活のキャリアというものがありますから、そこで意見はおのずから多様になってくる。そこで対話をしていくのが一番いいんだというたてまえで、私はいままでこの仕事についてからそういう心構えで来ております。  具体的な方法としてどういう方法がいいかということは、文部省としてやらなければならないことも多々あると思います。それは、たとえば教育課程審議会のようなところに、いままでは日教組の教育課程検討委員会の先生方もおいで願わなかったんですが、おいで願っていろいろ御意見も伺う、それも必要だと思います。あるいは国会の場で最近大学入試制度が議論されるということも承っておりますが、そういうことがあれば非常に実りがあるのじゃないかと思います。テレビというところで、いろんな人が出てきていろいろ議論するというのは、私いま考えますと非常にいいと思います。ただ、これは文部省が常にスポンサーになるのがいいのかどうかですね。それよりもむしろほかから、非常にもっと民間の立場のスポンサーがあった方がいいかもしれないし、そういうことはいまここではっきりしたことを申し上げることができませんし、むしろ民間の方が望ましいかという感じもしますが、いずれの場合にせよ、おっしゃいますように、私は、もっと人々がオープンに人々の前で教育の問題を論じていくという方向が出ていく。その原則は、そのうちのだれもが自分の言うことは絶対に正しいということをとらないということであれば、そこから非常に実りある結果が出てくるはずのものであって、いま一つの重要な転機であると思いますが、あらゆる場所でそういうものを生かしていくようにしなければならないし、また、私は、そのことにお役に立ちたいというふうに考えております。
  172. 有田一寿

    有田一寿君 ありがとうございました。私も同じ意見でございますし、スポンサーは当然民間で十分これはできると思います。テーマはいろいろございますが、もうこれは基礎テーマをとれば、たとえば「日の丸」と「君が代」の問題だとか、道徳教育の問題だとか、入学試験の問題だとか、いろいろあると思います。そういうことで、今後期待をいたしたいと思います。  それから産学協同の問題についてお伺いいたしますが、これは大学紛争のときを境にしてと言ってもいいかと思いますが、お互いの不信感が大学側、教育界側と産業界の間に出てきたと思います。これは今後非常に研究も巨大化し、また、双方協力しなければできないという問題環境の整備だとかエネルギーの開発利用の問題公害の問題、決して産業界がただ利益を上げるために大学が協力するとか、そういう低次元のことではなくて、そういう意味で国の将来を考えたときに、私は産学協同の問題は虚心坦懐にもう一回これは取り組むべき問題ではないかということを考えておるわけでございますが、これは大学間の相互研究、これもアメリカなどはハーバードとマサチューセッツが都市問題で共同研究をやるとか、非常にやっております。また、宇宙衛星を飛ばすについては、これは官、学、産の三者協同があってできたことでございますし、また西ドイツ、イギリス、それぞれそういう委員会をつくって双方から代表を出して話しております。日本の場合は、産学合同委員会のようなものをやはりひとつ設ける必要があるのではないか、それに文部大臣もひとつ最初のあっせん仲介の労ぐらいをとられたらいかがであろうかということでございまして、これについてお伺いしたいと思います。
  173. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) まあ私にいろいろなことをやってみたらどうかということで非常に励まされますけれども、さしあたって大学と産業界につきましては、先ほど申しました学歴の問題というものを中心に、私はパイプ役になっていきたいと思っています。  この産学協同の問題なんですが、これは過去の歴史を見ますというと、非常に密着したように見える場合と、それから大変反発してしまう場合と、そのどちらかがあるわけです。ところが、事実問題として考えますと、産といってみても、どこまでを産というか、つまり民間の企業は産であって、たとえば官庁の相当大きな研究所、こういうものは産でないかというと、これも広い意味における産業だと思いますが、そういうものと大学の協力が切れている場合もあります。しかし現在のように、社会というか、科学技術が非常に進んでまいりますと、たとえば、エレクトロニクスの基礎理論とかあるいは実験というようなものを行う場合には、産業界で相当進んだものをやっているのと大学でやっているのと、どちらもが実は非常に基礎的なものをやっているという点で、それほど反発し合わなくて済むような場合があります。  東京の丸善に行って外国の本を、基礎的な本をどこが買っているかということを調べますというと、大学よりも会社の研究部門が買っているという場合もあります。それは会社の場合、必ずしもすぐに利益と結びつくものでないものを研究部門で買っている場合もあります。ところが、大学の立場から見ると、やはり会社、企業というのは、やはりその企業としての成績を上げることが主にありますから、また、そうでなければ企業はおかしいわけですから、大学がそういうことのために利用されては困るじゃないかという考えを持つわけで、これもまた、大学の自主性としてしかるべきものだと思うのです。そうすると私は、この両方の関係というものをどういうふうにしていったらいいかという場合に、もう初めから全然話をしないということはおかしいわけで、まず、やはりそこで話し合いをする、そしてどういう種類の研究については一層協力が可能であるか、そしてまた、企業の種類によって、研究の種類によってはこれは企業でやらなければいけないものもあり、それから種類によっては大学でやらなければならないものもありますが、そのことは具体的に双方が話し合わなければ明らかにならないわけでありますから、いままでのように初めからコミュニケーションが切れるというようなことは、やはり望ましい姿じゃないと思います。  そこで、この問題を私が道を開いたらどうかということでありますが、それは私にその気持ちは十分ございますが、まず物事を着実に確実にと私は初めから言っておりますから、最初にはいま考えている受験体制の問題というのに何としてもぶつかっていきたい考えであります。そして、将来の課題としていまのことは考えて、一気にすべてのことを簡単には実現できないと思いますし、そう申し上げると何でもすぐにやる人間のように見えて、かえって期待に反することになると思いますから、順序としてはいまのように考えているということをあわせて申し上げておくことにいたします。
  174. 有田一寿

    有田一寿君 それでけっこうでございます。  次に、英才教育というか、天才教育。弱者に手を差し伸べることは大変これはもう当然のことでございますけれども、同時に弱者ばかりがふえては、だれがその弱者を引っ張るか、結局強者が引っ張らなければならないということも考えられるわけでございまして、私はやはり平均児を教育すること、平均児まで教育することが現在の教育の一つのねらいのようになっておるように受け取っておりますけれども、やはり別にまた特別に才能に恵まれた者をその才能いっぱいに伸ばすということを考えることは本人のためでもあるし、社会のためでもあろう。その面は欠けてはいないか。これは中教審の答申にもちょっと触れております。「知的、芸術的その他の面で高度の素質を有する者に対しては、特別教育を効果的に行なう必要があるしそのためには、教育制度の弾力的な運用とその特別な教育方法について検討する必要がある。」と、英才教育をにおわしておるわけでございますが、未来社会では教育の個別化ということがやはり行われてくると思いますので、そこら辺について、これはむずかしいかもわかりませんが、私は必要だと思いますので、ひとつお考えをお漏らしいただきたい。
  175. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 先ほど申し上げましたように、戦後学校が拡張をしたのですけれども、それこそノーベル賞受賞者のような人が出てこないというのはやはり問題だと思います。そこで具体的には、今度から大学院の制度を変えまして、博士課程修業年限五年というのを弾力化しまして、非常に才能のある人は三年間でもできるという制度を設けようとして、これを御審議願うことになっております。これは大学院レベルでありますが、しかし、英才とか天才とか、そういう人は私は大学院に行ってからすぐに出てくるものではなくて、やはり子供のときからも成長のしかたが妙味があるというか、そういう側面がなければだめなんだと思います。  去年の十一月三日に江崎玲於奈博士が文化勲章を取りに日本に帰られて、そのあとで京都で江崎、朝永、湯川、三先生の小学校時代の回顧という討論会があったのですが、それは非常におもしろいものでありまして、朝永先生によると、小学校時分はしょっちゅう裏の山に遊びに行って、いろいろな石を探して勉強した。そうすると、どろぼうと間違えられて追い回されて困ったと言うのです。湯川先生は、宿題が全然なかったものだから、家に帰るとずいぶん勝手なことをして、それが自分のためになった。それから江崎先生は、学校に行くと実験が楽しみだったということでございます。これは三先生の小学校時代の回顧でございますが、私は非常に含蓄が深いと思いました。といいますのは、いまなかなか裏の山に行って遊んでいるという子供もいないし、宿題がなくて帰ってくるという子供がいないし、学校の実験を楽しめるという、部分的にはございますが、それでないのは、これは御承知のとおり。  そこで、私は、受験体制というのはある程度競争は必要であっても、いまのように過熱化したのじゃしょうがないと思うのです。もう少しやはり子供に時間的余裕ができて、そして自分の内面を深く掘り下げて強めていくことができるというような教育でなければならないと思います。そして先生も、そういう子供を見つけて伸ばしていくことに喜びを感じる。といいますのは、湯川先生や朝永先生などの時代は、両先生とも相当な学者の家の御子弟でありますが、少数の人がああいう大学に行ってノーベル賞など取ったのですが、いまは一億一千万が全部学校に行っているわけですから、生かし方が上手だったら、もっとエリートというか、天才的な人が日本に出てくるはずだと私は思うのです。  でありますから、大衆参加の教育というのと、ほんとうに英才が伸びてくるというのは、やりようによっては必ず両立するはずであって、ただ、これがすごい受験体制の中で息もつかせぬありさまになっているから、せっかく才能のある人も、それを先生の方が見つけて伸ばしてあげるということは、なかなかできにくいのじゃないか。その意味におきましても、何とか早く学校の受験体制の過熱化を防いで、時間的余裕をつくって人間の内面を深めることができるような、そういう学校が全国津々浦々に生まれて、先生も教える喜びがあるというふうにいたしますれば、それこそ大学院などに来たときに、ほんとうに社会に役立つような新しい研究あるいは活動、そういうものができる人が出てくるはずでありまして、これは戦後息せき切ってわが国が経済復興と成長を図りましたために、なかなか余裕もなかったように思いますけれども、これからの課題として、相当根気よく年月をかけてやってまいりますれば、わが国の国民の力あるいは歴史的潜在力というものは十分に将来それだけのものを生み得るはずでありまして、でありますから、戦前の制度でさえあれだけの人を生んだのでありますから、戦後は、今後十年、二十年、三十年を臨んで、私は協力してそういう方向に進んでいくべきときである。そうすれば必ずわが国民の伝統的素養というものが生きてくるものだというふうに信じているのでございますが、そのために、いろいろな角度から学校の制度的な面というものを変えていかなければいけない、こう思っております。
  176. 有田一寿

    有田一寿君 私も多少別の考えもありますけれども、いまのお話もわかりますので、これで打ち切ります。  次に、労働者の概念についてということで、これは昨年文教委員会で私の質問に対しまして、労働者の側面もあるということを言われました。また、働く人の意味であって、社会主義社会における労働者の意味ではないということも、大臣は別なところで発言をされております。ところが、私はここで、組合の方は教育労働者として階級的立場を明らかにして闘うということを書いてあるわけでございますので、教員組合が言う労働者という概念は、文部大臣が言われる広い意味の労働者という概念とちょっとずれているのじゃないか。いまのところはこれでもいいようなものの、だんだんこれは言葉遣いを一致させていかないと、いろんな混乱、誤解を生むもとになりはしないかという感じがちょっとするわけでございます。別に労働法の意味とかそういう意味でなく、もっと素直にとってみますと、明らかに違っていると思うのです。これについてひとつはっきり、自分はこう思うのだ、言いかえれば、教員組合で言う労働者という言葉を便っておりますが、これは労働者的側面があると言えば、それは私も同感でございますが、そうじやなくて、もっと真正面からこの言葉を、今後誤解を生まないように、ひとつ大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  177. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) いまのことについてお答えを申し上げますと、去年ぐらいまではもう一つ議論があったのは、教員は労働者か聖職者かという議論があったわけです。聖職者だという立場をとる人は、労働者でないということをよく言う人もありました。今度は労働者だと言う方の人は、そっちが大事で、余り聖職者的な側面は、これは何か伝統によって教員の自由を拘束するものだという反発がありました。で、私がまず最初にしっかりとはっきりさせていかなければならないと思っていたのは、これかあれかという議論は、それによって一層対立を激しくさせることには役立ちましても、共通の地盤を得るゆえんではないと考えましたので、私は、聖職者か労働者かという議論をすることはこの辺でやめにして、両面があるのではないかということを申したわけです。  さて今度は、その後で、聖職者とは何か、それから労働者とは何かということを議論をいたしますと、これまたいろんな議論が生じてくるのだと思います。私が言います労働者というのは、憲法の二十八条にあります勤労者である。そうして、わが国のそういう勤労者というものは、働いて、そして賃金を得て、そのそれぞれの与えられた職場において働く、そういう意味における労働者なんでありますが、しかし、それは決して革命的労働者というようなことを意味しているのではないのであります。革命的労働者というような議論が組合の中でも相当強く出た。全部の人ではないと思いますが、そういうお考えの方もあったと思いますが、しかし、わが国の憲法は革命の立場をとっていないのでありますから、私が言っているのがそれを意味しないことは申すまでもないわけでございます。  こういうことは、まず最初に、労働者でもあり、そしてまた専門家といいますか、聖職者でもありということで議論の第一段階、その第二段階として、いや労働者というものは実は何かということになると、またそこでいろいろ意見が違うということで、違う意見になっていくと思いますが、私はその場合どういう立場をとるかというと、現行憲法の中における勤労者という意味で労働者と言っているのであって、現行憲法はわが国に革命をもたらそうとするものじゃありませんから、そういう意味における労働者を意味しているのではないということを明らかにしておきたいと思います。
  178. 有田一寿

    有田一寿君 教職員の優遇について、一つは、人確法ができまして、これは非常に物質的には恵まれるということになった。また見方によっては、これでも不十分という見方もありましょうけれども、もう一方の見方から、私は、叙勲制度についてでございますが、これも私は調べてみましたが、小中学校の校長先生は、何十年か勤続して、結局、瑞五が大体普通、一部旭五という方もおりますけれども、これは私はちょっと、もう一つぐらい上げて報いるということを今後考える必要があるのじゃないかと思いますけれども、文部大臣にお伺いするのもこれはどうかと思いますが、しかし、もとは文部大臣だと思いますので、御意見を伺いたいと思います。
  179. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) いまの問題、調べますと、確かに勲等の最終的な責任の場は総理府でございますが、文部大臣としてもこの問題は考えなければならないことでございます。現在は、小中学校の校長を御退職になった方が満七十歳以上になりますと、原則として勲五等の勲章を拝受しておられる。そういう状況でありますが、中等学校校長会長というような場合は四等であるということであります。しかし、こういうことも総理府にお願いをいたしまして、できるだけ私はいまよりも優遇されるということが教育者のために望ましいのだと考えております。  なお、これにつけ加えて申し上げますと、教育界の方々で、校長先生というものになられる方も重要な功労者でありますが、他方、僻地とかあるいは離島の学校で長年勤務なさった方、あるいは盲聾学校に長年御勤務になった方、その他教育上功労のあった方の場合に、必ずしも校長におなりになりませんでも、やはり叙勲の対象というか、その功績をたたえるということがあってしかるべきものでありまして、こういう例も過去にはあるのでございますが、私といたしましては、こういう方々というものを尊重して、できるだけ総理府でもそういうふうにお考え願うように今後お願いしていきたいというふうに考えております。
  180. 有田一寿

    有田一寿君 ぜひ、私どもも一緒になってやりたいと思うわけでございます。  私は、最後にこれだけ読んで時間を終わりたいと思いますが、実は福岡県の稲築高等学校で昨年の三月の卒業式のときに、卒業生代表の答辞というのがございまして、これは私の郷里でもございますので――読んだですか。  そうしたら、このことについて、教育の偏向ということは非常に現場では行われておるんだということでございまして、くどくはもう申す必要もないほど一般周知のことだと私は思いますので、対話と協調ということ、これは結構でございますが、これははるかなる到達点がその姿だ、プロセスまでそれで常にいいとは私は言えない。対話は結構だけれども、協調だ協調だと言いましても、これは非常に現場が荒れて、イデオロギー的に偏向している場合は、私は誤解を招くおそれがありはしないかという気さえするわけでございます。したがって、右翼偏向と闘い、左翼偏向と闘う、その中で子供を中立的に守っていくんだというのが教師の任務だと思います。ところが、その教師自身が偏向しておった場合は私はどうにもならない。だから、これはやはり一般の人々も国民も全部私は認識を持って立ち上がって、教育を中立的な立場に置くんだということ、みんながこれは立ち上がらなければならないと思うんですけれども、その場合に気になるのは、やはり対話と協調という、これだけでいけるのかなという不安を持ちますが、文部大臣はそれに対してはそれなりの一つのお考えはあると思いますけれども、そこら辺を最後にお漏らしをいただきたい。
  181. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) わが国の人は、私は、世界のほかの国に比べますというと、どちらかと言うと非常に自分の仲間の中で和を重んじまして、そうして和を重んじて意見一つになることを希望するようなところが強いと思います。帰一の思想というのが、一に帰するといいますか、そういう考えが強いと思います。それだけに、ちょっと意見が分かれますと、対立というのではなく、対立でなく対決ぐらい激しくなってしまうと思います。そこで私は、和して同せずというのがいいんだと思うのです。つまり、人と仲よくはなりますけれども、自分の意見は持して譲らない。そこで私が対話と協調ということを言っていますと、一つの取り方としては、もうみんな何も同じようなふうに考えるんじゃないかということを御期待になった。それは全くそういうことでないし、引き続き違う意見の人があることが望ましいんだと思います。そうでなかったら、自民党とか野党というものもなくなってしまうわけでありまして、それは政治でございますが、教育の世界においてだってやはり違う考えというのはある程度はある。ただ、そこでなるべく自分の意見を絶対的なものとして主張しないで、教育の場合には、相手の立場にも耳を傾けながら静かに話し合えるということができれば望ましい。  ただ、私は、世界で非常な冷戦時代というものが二十数年続きまして、それがわが国に反映いたしまして、そのこともあっていろいろな対立もあったんだと思いますし、そこにまたわが国では、仲間同士集まって賛成する傾向と、違う仲間に反対する傾向が非常に強いですから、その結果相当激しい対立が起こりましたから、今後しばらくの間にすべてが氷解するなどとは思っていないんです。対立があって、そうして暴力などに及びましたときには、私は断固としてこれに反対をいたします。この場合は断固反対いたします。そんなものがあったのでは、自由な話はできないんです。あるいは法律が破られるような場合には、私は断固反対いたします。そうでなければ自由であることができないんですから。ですから、いろいろ激しい対立というものが本当に自由な議論というものに移っていく過程におきましては、私自身も努力をいたしますが、どうか皆様も根気を持って、そして忍耐強く、必ず日本というものはそういう社会と文化を建設し得るものだという、そういう国民的自信というものを持って臨んでいかなければならないのではなかろうか。私も時にこれはなかなか大変だという感を深くすることもありますけれども、しかし、何事も一つの民族がりっぱな仕事をなすのには年月を要するわけでありますから、私は相当困ったなと思うときも、わが国民の根本的素養というものに信頼を置きまして仕事をいたしていきたいと思います。  対話と協調、特に教育界におけるそれは重要なんでありますが、それを私は教育界の方々あるいは御父兄の方々も直ちにバラ色の夢とお考えにならずに、むしろ是が非でも達成しなければならない、むずかしいけれども、わが国の発展のために克服しなければならない、障害を越えて到達しなければならないものとして私自身も考えますので、それに対する御理解と御協力を得たいというふうに常日ごろ考えている次第でございます。
  182. 有田一寿

    有田一寿君 よき文部大臣を得たものだと私どもは思っております。――私どもと言ってもいいと思いますが。どうかひとつ勇気を失われずに、前に向いて前進をしていただきたい。私どもも協力をさせていただきたいと思うわけでございます。いろいろありがとうございました。  これをもって質問を終わらせていただきます。まことにありがとうございました。(拍手)
  183. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして有田一寿君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  184. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) この際、委員異動に伴う理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事向井長年君を指名いたします。     ―――――――――――――
  186. 大谷藤之助

  187. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 最近、同和問題を暴力問題にすりかえた宣伝や論議が行われていますが、私はそういう本末転倒の議論ではなく、本質的な同和問題のあり方について、これから政府の所信をただしてまいりたいと思います。  そこで、第一にお聞きいたしたいことは、昨年から同和対策長期計画の後期に入っておるわけでございますが、後期の五年計画の展望についてまずお聞かせ願いたいと思います。
  188. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) お答えをいたします。  お説のとおり後期に入っておりまして、五十年度はちょうど七年目に当たるわけでございますが、同和問題は、言うまでもなく憲法に保障されました基本的人権にかかわる重大問題でございます。したがいまして、特別措置法及び長期計画に基づきまして、その趣旨を生かすべく国が地方公共団体と一体となりまして国民的な課題に取り組んでいるのでございまして、御承知の同和対策協議会におきまして適時適切な御助言をいただきますとともに、長期にわたりましてもいろいろ展望しつつ計画を推進しているところでございます。四十九年度には精密検査をいたしまして、今日までの実績について精査いたしますとともに、将来についていろいろな資料を整えておりますし、五十年度にはまた、四十六年に行いました実態調査と同様の広範囲の同和地区実態調査を行います。これに基づきまして、さらに後期を充実いたしたものにしてまいりたいと考えているところでございます。
  189. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いまないということですか。もうこれで二年目なんですからね。まだできておらないということですか。
  190. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) これは先ほど申し上げましたように、当初立てられました特別措置法と長期計画の趣旨はそのまま生きているわけでございますから、それを同一の精神と趣旨をもって事業を推進しているというところであります。
  191. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まだできておらないようですがね。  それなら、さらにお聞きいたしますけれども、このおたくの方から出されましたところの報告書に基づくところの、四十七年六月現在で四十七年から五十三年までの見通しをして、総事業を四千七百三十三億という試算をしておるわけでありますが、現在の単価にこれを入れて四十九年から五カ年を展望したところの総事業予算というものは、大体どれくらい見積もっておるのですか。それをお聞かせ願いたい。
  192. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 先ほどの御質問と関係するわけでございますけれども、この同和対策事業は流動的な社会経済情勢に機動的に対処してまいらなければなりませんので、固定的な計画を立てるということは非常にむずかしい問題でございます。したがいまして、この物的施設の問題と人権擁護活動、就職促進活動、同和教育あるいは同和地区産業対策、そういう数量的に計算できないものもございますものですから、したがって、先ほど申し上げましたような趣旨で取り組んでいると申し上げたわけでございますが、いまお説のように、四千七百三十三億円を四十七年から五十三年度までの事業計画としてやってまいったわけでございます。これは現在までは二千百三十億円、四十七年から五十年度にかげまして、この物的施設だけではございませんで、他のいろいろな予算も入っているわけでございますが、これだけをもちまして七年間の事業推進をやってきた、そしてまた五十年度にはこの中で取り組んでいく、こういう計画を立てているのでございます。  まあ物価上昇がございますので、したがって、一体そういう当初の四十七年度につくった計画で十分であるかという考え方が出てまいります。しかし、現在までずっと続けてまいりました同和関係事業をずっと精査いたしてみますと、かなりの効果は上げているのでございまして、したがって、かなりの事業はこなしてきている。今後はその当初立てました計画及び五十年度に行います実態調査等を考えまして、さらに新しく計画を練り直すなり、あるいはまた予算の点につきましてもいろいろ洗い直しも必要かと存じますので、時宜に即した事業を進めでまいりたいと考えているところでございます。
  193. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私が聞いているのは、四十七年六月現在で七年間のやつをやったでしょう。そうすると、そこで四千七百三十三億という数字が出た。あれはあの当時の単価やいろんな計算でございましょう。だから、その五十年以降を五十年の単価で試算をしますと、あのペースでいくとあと幾ら必要ということになりますかと、その数字をお聞きしておるんですよ。
  194. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) ちょっと、それじゃ政府委員から答弁させていただきます。
  195. 山縣習作

    政府委員(山縣習作君) お答え申し上げます。  四十六年の調査によりまして四千七百三十三億、こういう物的面の事業量を換算したわけでございますが、御案内のとおり建築物あるいは道路、街路、公園あるいは農業基盤整備等区々の問題にわたる点が多うございまして、それぞれの時点におきますニード等を考えますと試算がきわめて困難であるということで、その後の社会経済の変動に応じまして、改めて五十年度調査を予定しておるところでございます。
  196. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私の聞いているのは、あのペースでやりますと幾らですかということですからね。その後の政治的判断、何も要らんですよ。単純計算で幾らになりますかということをお聞きしているのですよ。
  197. 山縣習作

    政府委員(山縣習作君) 申し上げましたように、それぞれの単価におきましても、建築の単価でございますとか、あるいは土木事業等はそのときどきの積み上げでございまして……
  198. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だってあなた方、四十六年に七年計画を出しておるんでしょうが。だから、この当時の単価を現在の五十年予算の単価ではじくと幾らになりますかということを聞いておるんです。
  199. 山縣習作

    政府委員(山縣習作君) お言葉でございますか、いま申し上げましたように、簡単に――それぞれの単価等も違っておりまして、その積み上げは非常に困難であるということで、申し上げましたように……
  200. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 困難よりも、できないということなんで、できてないということなんでしょう。
  201. 山縣習作

    政府委員(山縣習作君) そういう積み上げが非常にむずかしいということでございます。
  202. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それならお聞きしますが、四十二年二月の同対協の同和対策長期計画の策定に関する意見書というものがございますが、それをどのように理解されておるのですか。そこをちょっと読んでみてくださいよ。三百一ページにございましょう。
  203. 山縣習作

    政府委員(山縣習作君) 恐れ入りますが、現在四十二年の意見書をこちらに、手持ちに持ってまいっておりません。
  204. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 委員長、そういうことでは審議できませんよ。四十八年のものを出しておいて、四十二年のものを持っていませんという、そういうことではふまじめきわまるじゃないですか。
  205. 山縣習作

    政府委員(山縣習作君) いま先生のお示しいただきましたのは、昭和四十四年七月八日の長期計画でございますか。
  206. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 長期計画はおたくの三十八ページに出ておるでしょうか。――これですよ。おたく総理府じゃないですか。
  207. 山縣習作

    政府委員(山縣習作君) さようでございます。
  208. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 三十八ページにありましょう、この積算のおおよその基礎というのは。だから、私は先ほど聞いておるように、当時はできたけれども、いまはできない、こういう話だから、それは一応おいておきましょう。けれども、そこの三百一ぺ-ジのこれの長期計画に対する意見書をずっと載せてございましょうが。
  209. 山縣習作

    政府委員(山縣習作君) 承知しております。
  210. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ここの「この計画に関する基本的事項は次のとおり」というのを明確にちょっと読んでみてくださいと、こう言っているんです。
  211. 山縣習作

    政府委員(山縣習作君) 「基本方針」でございますが、「長期計画は、同和対策協議会の「同和対策長期計画の策定方針に関する意見」に則り、同和地区住民の社会的経済的地位の向上を不当にはばむ諸要因を解消することを目標とし、このため、同和地区における他の地域との格差の是正をはかるとともに、国民に対する積極的な啓発活動を行なうものである。この計画に関する基本的事項は次のとおりである。長期計画は、昭和四十四年度を初年度とし十年間を目途として実施する。長期計画を前期と後期に分け、前期を五年間、後期を五年間とする。前期計画においては、施策全般について社会的経済的諸事情を考慮し、必要な調整をはかりつつ、遅れた部門の施策の促進に務める。後期計画においては、前期計画の実施状況に検討を加え、総合的効果的な同和対策の推進をはかる。長期計画の実施にあたっては、国の他の諸計画との関連について考慮を払う。」  以上でございます。
  212. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それで長官、お聞きしますがね、先ほどから申し上げておるように、すでに後期計画の二年目にいま入っておるんですね。それを、昨年は精密調査、ことしは全体調査ということになりますれば、後期計画を立てられぬじゃないですか、それなら。いうならばことし総合調査をやるとすれば、五十一年度しか実施できない。そうすると、あと三年しかない。三年間の計画でやろうという考えなんですか。どうですか。
  213. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 先ほど来申し上げておりますように、社会経済情勢の変化というものがございますので、したがって、四十九年度におきましては精密調査を行い、五十年度実態調査を行う、こういうことでございます。したがいまして、これをもちまして協議会とも十分に協議をいたしまして、五十一年度、五十二年度、五十三年度と、それにかけまして十カ年計画を完成させたいと、このように考えているのでございます。
  214. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それなら、ここに示されておりますところの後期計画というのは、三年間で五年分をこなす意味なんだと、こういうおつもりなんですか。
  215. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) お答えいたします。  四十九年度には、御承知のように、二百四十八億円という予算を組みまして、これは一般会計の伸び率二〇%に比べますと五五%の伸びでございます。また、その他一般公共事業として公営住宅建設や街路事業、農業基盤の整備事業等もございますので、したがって、四十九年度におきましても同和対策事業の推進に努めてきたところでありますし、五十年度におきましても、三百七十九億円を計上いたしておりますし、また、同和対策の補助対象事業も、御承知のように、四十九年度におきましても五十年度におきましても拡充をしてまいります。したがって、五十年度におきましては、いま申し上げました三百七十九億円に加うるに、先ほど申し上げております、一般公共事業であります住宅や街路や農業基盤の整備等を加えますと八百二十三億円となりまして、他の予算に比べましたならば格段の配慮を行っているところであります。したがいまして、この四十九年度、五十年度、そしてさらにあとの三年度によりまして十カ年計画の後期を完成させてまいりたいと、このように考えているのであります。
  216. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは四十四年七月の閣議了解事項なんですがね。それによりますと、後期は五年間とすると書いてある。しかも、その後期計画においては、前期の計画に再検討を加え云々と、こういうことになりますからね、長官聞いてくださいよ、そうなりますと、当然前期の後段においていろんな実態調査をし、後期の始まるところの段階からこの五年計画というものがしっかり組まれていかなければできないはずなんですよ。それを後期に入って調査をするということになれば、これはこの閣議了解事項からも逸脱しているところだと、こう言われても仕方ないじゃないですか。どうなんですか、そこは。
  217. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 私も宮之原委員と全く同じように考えます。なぜ後期五カ年計画策定に当たって新しく後期計画を立てなかったのかということでありますが、これは実態調査がおくれまして、もう御承知かと思いますけれども実態調査を国でも行いますとともに、また対象地区につきましての実態の把握を地方自治団体を通じまして行いますのに対しまして、なかなかその調査が十分に行われませんで、行政指導によりまして後から補完されるというようなこともあったわけでございます。したがいまして、後期計画が十分にその時点で、当然おっしゃいますような時点において策定されなかったと、そのような事情があったようであります。
  218. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だから、これは政府としては怠慢だと言われても仕方ないじゃないですか。
  219. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) これはその時期において策定すべきであったというふうに私も考えるところでございますが、いま申し上げたような事情によりましたことを御理解をいただきたいと存じます。
  220. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは理由にならぬと思うんですよ。地方がおくれたから私どももおくれましたと、本当に同和行政に対するところの熱意があるとするならば、せっかくきまっておるところの法律なんだから、法律のとおりに私は担当庁としてやってもらわなきゃ困ると思う。したがって、それならば先ほどから申し上げますように、全面的な調査の終わった後の五十一年度からの三カ年計画の中では、その計画に基づいて五年間の分を一気に取り戻すような形でやってくれるという約束ができますか、どうですか。
  221. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 努力をいたします。
  222. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 もうそこに、私はやはり政府の同和行政に対するところの熱意の入れ方というところに一つ問題があると思います。  それは一応おいて次に進みますが、しかし、そういう調査がおくれたといっても、各省はそれぞれ実態調査をやっていると思うんです。それがなけりゃ予算要求はできないわけですから。したがいまして、その点で若干お聞きいたしたいと思いますが、これは厚生省でしょうか、総理府ですかね、同和地区の被保護世帯と非課税世帯の合計が、四十六年の六月調査では全国平均の八・一に対して二一・四%と、きわめて高い。大阪の当時の統計も実に三二・一%というのが出ている。こういうような被保護世帯、非課税世帯というものの、生活面で見ればこれは生活が非常に悪いということなんですから、その後どのような形でこれがパーセンテージで言えば前進しているのか、まずお聞かせ願いたい。
  223. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) お答え申し上げます。  ただいま御質問のございました生活被保護世帯のその後における状況でございますが、ただいま手元に具体的な資料は持ち合わせございませんけれども、御指摘がございましたように、北九州市、福岡県、それから大阪、この地区における同和地区における被保護世帯の傾向は、依然として高いということは申し上げられると思います。
  224. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 数字はわからない――。
  225. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) いま手元にございませんので……。
  226. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 手元にないというのは、省に戻ったらあるんですか、それとも調査ができておらぬということですか、どっちなんですか。
  227. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 調べて早速御返事いたします。
  228. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは建設大臣に聞きますが、不良住宅の問題もその当時すでに統計が出ておったと思いますし、衆議院予算委員会の中でも具体的な事例が挙げられて出ておるんですが、この不良住宅の改善問題はどういう進捗状態ですか。
  229. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 改良住宅につきましては、毎年度予算要求の段階で地方公共団体に十分聞きまして、一般施策の中で最優先でやるということをやっております。いままでに一万六千戸ぐらいのものが建っておるわけでございます。
  230. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いやいや、私が聞いておるのを聞いてくださいよ。このパーセンテージというものはどれくらい改善をされておりますかと聞いておる。幾ら建ちましたかというのは、これは予算を見ればすぐわかることなんだよ。そのことをお答え願いたい。
  231. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 現在までに事業計画として確定したものもございますが、現在まだこれからつけ加えるものもございます。いままできまったものの中では、約四割を達成したと思っております。
  232. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これはもう全然答えになって、おりませんけれども、おそらく数字やいろんなものをお持ちじゃないですからね、これ以上は私は追及しませんけれども。  次に、労働大臣にお聞きいたしますが、この部落の職業問題、就職問題というのはきわめて私は同和行政の一番のポイントだと、こう思うんですが、四十六年当時は、臨時または日雇いというのが、全国の七・四%に比して三五・一%ときわめて高かった。今日の不況の中では、私は一番しわ寄せを受けておるのはまたこの同和地区の皆さんじゃないだろうかということを心配しておるんですがね。現在の状況を説明願いたい。
  233. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 政府委員から詳しいことを申し上げます。
  234. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいま御指摘のとおり、四十七年当時の調査では同和地区の出身者の方々が日雇い、臨時の比率が高くなってきております。その後、出かせぎ関係も含めまして、日雇い、臨時の比率が比較的緩やかになってまいりました。
  235. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 数字で言ってください。私は数字で質問しておるんだから、感じで比較的と言われちゃ困りますよ。
  236. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 四十七年の調査でございますが、雇用者の中で日雇い、いま先生の御指摘になりましたとおりの数字が四十七年の実態でございます。最近では、私どもの方で昨年来の情勢の中で同和の関係の方々と一般の実態調査まだ結果が出ておりませんので、いま数字でここでお答え申すわけにはまいりませんで、御了解いただきたいと思います。
  237. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これじゃ本当に審議できないですね、委員長
  238. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 数字については、ただいま局長が申したように、なかなかすぐ御提示できないのは残念でございますが、労働省といたしますと、同和地域の方々の就職の機会均等ということを重点に置きまして、昭和五十年度予算におきましては、昭和四十九年度の対前年比一七九%アップということにして、さらに職業専門指導官なども設置いたしまして、そういう方々の就職には努めているところであります。
  239. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私が心配しておるのは、今日の不況の中で一番しわ寄せを受けておるのはやっぱりこの層なんですよ。それを具体的にどういう指導をやっておるかということをお聞かせ願いたいのですがね。
  240. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 一般的な情勢を申し上げますと、就職差別の問題につきましては、いわゆる中高卒、新卒の問題と、いま先生御指摘になりましたいわゆる日雇い、臨時が比較的多いと、こういう二つの問題がございますが、新規学校卒業者の問題につきましては、もう先生御承知のとおり、この数年来徹底的な行政指導をいたしまして、この労働力不足の中で、そういうことが幸いいたしまして、就職差別の問題はほとんどと言っていいくらいなくなっておるような状況になっております。  そこで、問題は昨年の秋以来の不況に際しまして、いわゆる出かせぎ、日雇い、臨時の分野につきまして、求人状況が非常に悪くなってきております。一般につきましては大体四〇%ぐらいの求人減になっておりますが、日雇い、出かせぎにつきましても、同じ程度の大体四〇%弱ぐらいの求人減になっております。そこで、私どもはこういった一番不況のしわ寄せを受けやすい労働形態の人々に対しまして、こういった求人が減ることによってその職場が確保できなくならないように十分私ども留意いたしながら、行政指導を進めてまいっておるわけでございまして、特にこういった点につきまして、西日本関係の同和地区関係につきまして求人減の状況調査いたしておりますが、幸いなことに九州あるいは関西等におきましても、特段、全国的な数字と比較いたしまして、その地区に限って求人が減っておるというような状況になっておりませんので、今後ともこういつた点、特に重点を置いて行政指導を進めてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  241. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 就職差別が全然ないという話ですけれども、これは先月の二十八日の衆議院予算委員会の分科会でこの問題、問題になっておるでしょう。それで長谷川大臣も、そういう事態の起こらないように一生懸命やりますと、こう言われておるる。いまの答弁は、就職差別は全然ありません、本当はどっちが本当かと言いたいぐらいなんですよ。今日、不況の中で差別されておらぬはずはないんです、これは。現に問題になっているんですから、そういういいかげんな答弁はされないようにしてもらいたい。時間があればその問題、徹底的にやりたいと思うんですけれども、時間がありませんから次へ進みますけれども法務大臣にお聞きいたしますが、人権擁護の問題としての特設人権相談所におけるところの取り扱いの問題あるいは処理事項、あるいはそれらの問題をめぐっての大臣の所見があれば承りたいと思います。
  242. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 法務省におきましては、同和対策の重要性にかんがみ、同和対策事業特別措置法及び閣議了解による同和対策長期計画にこっとりまして、人権擁護委員等の同和問題に対する理解と認識を一層深めるため、研修、講習等を実施するとともに、同和問題に関する人権侵犯事件の調査活動の充実及び人権相談の活発化を図り、さらに一般国民に対する啓発活動を推進し、差別が許しがたい社会悪であり、憲法十四条の国民平等の原則にも衝突する重大問題でありますので、それらを周知徹底させるため努力を重ねており、今後とも同和問題の解決のためには積極的に取り組んでいるような次第であります。
  243. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私の聞いているのは、特設人権相談所の、ここに提起されたところの取り扱い件数とか、処理件数というのは一体どうなっているのか、それを踏まえて、大臣としてはどういうお考えですかということを聞いているのです。
  244. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 人権相談所の相談件数と数字に関する事項は、政府委員をして答弁させます。
  245. 萩原直三

    政府委員(萩原直三君) ただいまお話がございましたように、私どもといたしましては、特設相談所を同和地区住民対象として開設をしてまいっております。その数字は、先ほど来お話のございます「同和対策の現況」の二百六ぺ-ジにございますが、昭和四十五年度の開設回数は二千九十一回、取り扱い件数は一万七千七百五十七件、四十六年度は開設回数が二千六百四十二回、取り扱い件数が二万五百十九件、四十七年度が開設回数が四千七百七十一回、取り扱い件数が三万一千六百八件でございます。四十八年度は五千六百六十九回の開設回数になっておりまして、取り扱い件数は三万五千三百四件でございます。四十九年度は、会計年度でやっておりますので、まだその数字が判明いたしておりません。  この特設相談所におきましては、所轄の法務局の人権擁護担当職員並びに人権擁護委員が当たりまして、その地区住民が持ち込んでこられますいろいろの問題の相談に応じております。  以上でございます。
  246. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 もう一回法務大臣にお聞きいたしますけれども、いま発表されたところの数からでも、受理件数というのは逐次増大をしているのですよ、残念ながら。しかしながら、今度はその処理事項というのは、件数というのはきわめて少ない。これは依然として同和地区におけるところの差別の事象に対する人権面の問題が非常に多いということを私は物語ると思うのですがね、その点を踏まえて、法務大臣としては今後どうしようというお考えなのか、お聞かせ願いたい。
  247. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 大いに改善しなければならぬと思っております。
  248. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは総理がおらないので、私、官房長官にかわって聞きますが、いままでの質疑応答を聞いておってどうですか、これ。きわめてこれは質問者から見れば不満ですよ。あれはりっぱな答弁だと皆さんお考えになったことありますか、これ。だれだってそう考えられない。事ほどさように口では、文章面は、同和行政というものは大事だと書きながら、政府が本格的にやはりこの問題について取り組んでおらないという姿勢を私は端的に出していると思うのです。一体これを今後どうするつもりですか。ちょっと、やはり政府全体としての物のお考えを、きょうは副総理もおりませんから、長官からひとつ聞きたい。
  249. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 御質問に対しまして、総括的には総理府の総務長官から冒頭に答えられましたのが基本的態度であろうと思うのでございます。言うまでもなく、憲法上の基本的人権というものにかかわる大変重要な問題でございますから、その重要性はよくわきまえておるつもりでありますものの、各省庁実際の扱いといたしましては、多岐にわたっておるところは御承知のとおりでございます。したがいまして、総理府が取りまとめ役ではございますけれども関係、多岐にわたりますので、これは私も十分に意を用いまして、特別措置法あるいは長期計画、これにのっとりまして、あるいはその予算面でおくれておるというおしかりもあったようでありますが、こういう点を踏まえて内閣において総合調整をしてまいると、このことを申し上げる次第でございます。
  250. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 もう五十三年で一応法律は終わりなわけですが、あと三年しかないんですから、いまのような私はやはり政府の姿勢では、これはとてもこの問題完遂できないと思いますから、ひとつ、いま長官答弁があったようにきちっとしたやはり決意を示してもらいたいと、これはまた総括質問のときに改めて総理に聞きますけれども、総理に言うとってください。  この同和事業に対しますところの国と地方の同和事業予算の仕組み、関係というのはどうなっていますか。これは自治大臣ですかね、だれですか。
  251. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 国として講じております対策は、三分の二の高率の補助率をもちまして諸事業を進めているところでございまして、したがって、これに対しまして地方公共団体が国と一体となりまして事業の推進に当たっているわけでございますが、地方自治団体が必要といたします財源につきましても地方債で賄うことができることとしておりますし、また自治大臣が指定いたしましたものにつきましては、地方交付税基準財政需要額に算入する等の措置を講じているところでございます。また、このほかに地方自治団体において単費をもって事業を行っているところがあるということは御承知のとおりでございます。
  252. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは同和地区の多い大阪市の四十八年度の決算書でございますが、これを見ると同和関係の事業費の三百二十四億八千八十万円に対して、国はわずか七%の二十三億百十五万円で、あとは府と市の持ち出し分になっている。しかし、この中で地方債の百四十六億六千九百七十七万円のうちどの程度がこの十条適用になっておるかは正確ではございませんけれども、つまびらかでないですけれども、自治体の持ち出し分がきわめて多いということだけはこれははっきりしている。このことについて長官はどう思いますか。いまの法の規定から大分違っている……。
  253. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) いま御指摘がございましたように、地方自治団体の持ち出し分が非常に多いというところがございます。これにつきましては、それぞれの地区の実情にかんがみまして、地方自治団体が自治のたてまえでいろいろな施策を講じられている。したがいまして、国としての事業の補助率は、申し上げたように高い率をもって行っているわけでございますが、これに対しまして地方自治団体としては、国が考えておりますよりも大きな、高い、広い規模で事業を行われているところもございますし、また地方自治団体独自で単費をもってこれに当たっておられるところもあるというような実情でございますので、いまのような数字が出てきているわけでございます。国といたしましては、年々補助対象事業の拡充及び物価の騰勢に当たりましては四十九年度におきましても補正をいたしましたし、五十年度もさらにその増高分につきましては配慮をしているところでございまして、今後ともそういう努力は続けていかなければならないと考えているのであります。
  254. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、このように地方が非常な過重な負担をしておるというこの事実の中で、やはり単価の問題ですね、事業の。それと特別措置法の七条の補助対象事業がまだまだ少ない。もう一つは十条適用がまだ少ない。幅が狭まっておる。ここらあたりにネックがあると思っておるんですよ。この問題について今後改善を具体的にどうしようというお考えですかね。そこが自治大臣あたりもお考えがあったらお聞かせ願いたい。
  255. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 御指摘のとおりでございまして、補助対象事業は四十九年度で三十九事業になったところでございますが、五十年度におきましてはさらに九事業を追加をするということにいたしております。また補助単価でございますけれども、先ほど申し上げましたように、四十九年度ではそれぞれの施設につきまして十数%のかさ上げをいたしましたし、五十年度にはさらにそれぞれの事業につきまして補助率を引き上げていると、それによって単価増に対応しているというところでございます。
  256. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 単価だけですか、あとはないんですか。十条適用の問題どうなりますか。
  257. 山下稔

    政府委員(山下稔君) 補助事業にできるだけしていただきまして、補助事業になりました対象事業の中で公営住宅のように収入金をもって元利償還を賄えるというものを除きましたものを十条で指定をいたしまして、その分につきまして元利償還金の八割を地方交付税措置するという仕組みになっておりますので、まず前提といたしまして補助の対象事業にするということにできるだけやっていただきたいというふうに考えております。
  258. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いや、お聞きしておるのは現実じゃなくて、十条適用という問題を今後積極的に拡大しようとするところの意欲があるのかどうか。これはあんたじゃだめなんですよ、大臣でなければ。自治大臣どう思いますかね、それ。これは官僚の人に聞いたって、今後政治的な方向なんだからね。しっかり答えなさいよ。
  259. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま政府委員から答弁をいたしましたとおり、補助事業に取り上げてもらうことが第一でございまして、それで補助事業に取り上げられたものについては、十条指定を行ってできるだけ補助額をふやしていくといいますか、めんどうを見ていくと、こういうことでやるよりいたし方がない。したがって補助対象をどう取り上げるかということは、これは各役所でやらなければ、自治省だけがそういうことを幾ら言っても、いろいろな仕事があるわけでありますから、また同対審その他の関係からも申し出て、そしてお互いに相談をしてふやしていくというよりほかに方法がないと思っております。
  260. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 なお、この地方自治体の負担の問題と関連をして、衆議院予算委員会の議事録を拝見をいたしますと、同和予算地方自治体の予算を圧迫して逆差別を生じているところがある、これは解放同盟の暴力、洞=によるものだ、けしからぬ云々と、こういう発想の意見があるんです。私は、これぐらい本末転倒の見解はないと思うんです。まさにこれは、坊主憎けりゃけさまでの論法だと指摘せざるを得ないんです。いま一番大事なのは、地方自治体がこれほどまでしてでも同和予算を組まざるを得ないほど、同和地区住民が今日なお劣悪な生活状態、条件、環境状態にあるということを、お互いはやはり理解をして、それをどのようにして克服するかというところに政府の行政努力の方法もなければならないと私は思うんでありますが、その点について長官はどうお考えになりますか。
  261. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 御指摘のように、同和対策事業を実施いたしますために地方公共団体の財政負担というものが非常に大きくなっているということは事実でございますが、そうして、それに対応いたしますために国も年々予算の拡充を図ってきたのでございます。今後ともこれらの措置の充実を図るとともに、円滑な実施に積極的に努めてまいりたいと存じます。いずれにいたしましても、政府といたしまして予算の充実のために努力をいたしますとともに、地域の住民もまた、この同和対策事業に対しまして十分な理解と協力が必要であると思うのでございまして、国と地方団体とが一体となって推進すべき問題であると考えるのでございます。
  262. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私が聞いておるのは、地方自治体が非常にこの負担が重くなっておるのは、解放同盟やいろんな団体の個=があるからなんだと、これでは困るという意見が出ておるんですよ。私は、それよりもむしろ地方の自治体が、今日なお赤字を出してでも組まなきゃならないというこの同和地区の実情を直視しなければならないという姿勢こそ正しいと思いますが、どう思いますかと聞いているんですよ。はっきり答えてくださいよ。
  263. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 地方自治団体がこの事業を推進せられるに当たりまして、地区住民のためにいろいろ努力をしておられ、そしてまた、この事業を推進していくためには財政負担が大きいわけでございますから、その他の地域住民の方々の理解と協力も得なければならないという点については宮之原委員と私ども考えは同じであると思います。したがいまして、われわれといたしましては、先ほど申し上げましたように、国としての施策を充実をしていくとともに、地方においてもまた、地区住民の、また地区外住民の理解と協力も得ながら努力をしていただきたいと考えておるのでございます。  なおこの機会に、いま部落解放同盟のお話が出ましたが、私どもといたしましては、部落解放同盟は部落差別解消のために長年にわたってその運動を続けてこられた団体であるという認識をいたしております。
  264. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 続いて同対審問題についてお聞きをいたしたいと思いますが、ある政党のごときは、この答申の本質は米日二つの敵が解放運動を反共主義、融和主義の枠内に引き入れることにある、政府はこの範囲内で一定の経済的な利益を部落大衆に与えながら、これを軍国主義、帝国主義復活の政策を推し進める道具にしようとしておるという、きわめて否定的な評価をしておるところの政党もありますけれども、私どもはこの答申並びにこの特別措置法のできたところの経緯から見て、問題点はあるにしても、やはりこの同対審の答申というものを尊重しておるのです。大変評価しておるのです。そういう立場から私いろいろお尋ねしたいと思うんですが、その同和問題の本質というのをどう理解をされておるか、まずお聞かせ願いたい。
  265. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) いまお話がございましたように、同和対策事業の推進に当たりましては、同対審の答申に基づきましてつくられました特別措置法と長期計画に基づきまして、その趣旨を生かすということでこの施策に当たっているのでございまして、その趣旨とは何かと仰せられれば、先ほど申し上げましたように、憲法に保障する国民の基本的な人権にかかわる重要な課題であり、国民的な課題でありますから、一日も早くこの部落差別を解消しなければならない、そのためには、物的施設を充実させますとともに、同時に教育の問題でありますとか、就職の問題だとか、人権の問題というものを解決をしなければならないという姿勢でこれに臨んでいるのでございます。
  266. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この答申は、近代社会におけるところの部落差別の核心というものをきちっと書いておるんですが、それはどのように理解されていますか。同意をされますか、どうですか。
  267. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 私どもは同対審の答申の趣旨に沿って施策を展開しているわけでございますから、そのとおりでございます。
  268. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その今日的な解決をしなければならない中心課題は、何であると理解されていますか。
  269. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 先ほど来申し上げておりますように、市民的権利の完全な保障であるというふうに考えます。
  270. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 政府の側の同和行政の姿勢というのも、明治から大正、戦前、戦後とずっと変遷をしてきておるようでありますが、その戦前と戦後の一番際立って違っているところの点はどういうところですか。
  271. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 戦前は、先ほど来出ております部落解放同盟の前身でございます水平社を初めとする民間の団体運動というものが大きな力を示されてまいったわけでございますが、戦後におきましては、特に最近は、憲法に保障いたします権利擁護のために法律をもって事業の推進に当たっているのでございます。したがいまして、現在の国の施策というものは、憲法及び法令に基づきましてこれに当たっているという点において大きな差異があろうと思うのでございます。
  272. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 法律にある、ないという違いだけでしょうか、どうでしょうか。
  273. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) それは法律にある、ないというだけの違いではございませんで、憲法が新しく制定せられ、そこにおきまして、国民の基本的な人権の保障というものが大きな柱になったわけでございますから、したがって法令のあるなしにかかわらず、大きく問題のとらえ方というものが異なったということが言えると思うのでございます。
  274. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私が言ってあなたからお答えしてもらうのは、私自体の時間がもったいないものですから、もう少し具体的におっしゃっていただきたいんですけれどもね。少なくとも戦前は、これは一つの治安対策という面と、あるいは融和政策という形で使われてきておったでしょうが、しかし戦後は、少なくともあなたがおっしゃったように憲法の精神に基づいて国の責任で積極的にやる、しかも戦前は応急的な縦割りの政策であったけれども、政府として今後は総合的にやるんだと、こういうことが一番今日の同和行政の基本になっておるわけなんですね。したがって、そのためには地区住民の自覚を促し、自立意識を高めるという手だても、行政の中ではきわめて大事な要素であるということを、おたくのいろんな方針書にも書かれているんですがね、具体的に言えばそういうことですか、どうですか。
  275. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) そのとおりでございまして、同対審の答申にも「地区住民の自発的意志に基づく自主的な運動と緊密な調和」を保って施策を進めるべきであるということが明記せられているのでございます。
  276. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そういう方針を是認されるならば、その行政の基本的な方向はどうあるべきかという点で、同対審の答申の第二部の末尾に書かれておるわけでありますが、事務当局からちょっと読んでもらいたいんですがね。
  277. 山縣習作

    政府委員(山縣習作君) 第二部の末尾でございますが、「以上の評価に立つと、同和問題の根本的解決を目標とする行政の方向としては、地区住民の自発的意志に基づく自主的運動と緊密な調和を保ち、地区の特殊性に即応した総合的な計画性をもった諸施策を積極的に実施しなければならない。」、以上でございます。
  278. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この方針は政府はお認めになりますか。
  279. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) その趣旨に沿って、それぞれの地区の実情に応じて、地方自治団体とともに事業の推進に当たっているところでございます。
  280. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 こういうことは「自発的意志に基づく自主的運動」と、こう申しますから、たとえば現在ある解放同盟とか、あるいは同和会なんというのもありますね、そういう組織等を無視したところの行政を行うのではなくて、そういう組織の意向も聞きながら、いわゆる同和行政というのは行政が一方的にやるんじゃなくて、そういう要求に即してやるところの行政が一番物の考え方としては基本的な考え方なんだと、このように理解してよろしゅうございましょうか。
  281. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 御承知のように、同和対策協議会がございまして、学識経験者とともに政府関係諸官庁の代表者が一体となりまして、その中でこの事業の推進に当たるべき企画立案に参画をしていただいているわけでございます。
  282. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 「自発的意志に基づく自主的運動」という形がありますと、これは同和対策審議会ではございませんよね、それぞれの地区の一つの団体、同和地区の皆さんのそれとのやはり連携というものを無視するわけにまいらないという意味なんじゃないんですか、どうなんですか。
  283. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) ただいま申し上げましたのは、国の段階における審議会のことを申し上げたわけでございますが、各地方自治団体におきましても、それぞれ同和対策協議会が設けられまして、地区住民の方々の御意志も十分その中に反映される施策がとられてきていることは、御承知のとおりでございます。
  284. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そういう団体とは、全然協議会というのは無縁のものなんですか、どうなんですか。これは大事な問題ですから、大臣答えてくださいよ。官僚の入れ知恵だけでは困りますよ、これは。長官も一番知っておるんだから。
  285. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) その自主的団体がどの団体であり、どの団体は自主的団体でないかということを、地方自治の組織の中で総理府が判断をしてまいりますということは、これは総理府としての立場としてはいかがかと思うのでございまして、それぞれの地方におきまして、地方の実情に応じて同和対策事業を実施する地方自治体が自主的に判断をしておられると、このように私どもは承知いたしております。
  286. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 答弁をはぐらかさないでくださいよ。私が聞察ておるのは、こういう団体は自治団体ですかどうですか、お認めになりますかというのを聞いておるんじゃないんですよ。同和行政の窓口としては、少なくとも先ほど読んでいただいたものを確認される以上、いわゆる同和対策審議会というものはそれぞれつくられましょう、しかし、それはそれぞれの地域のその種の団体と提携をしないではできないんでしょうが。したがって、そこの団体との提携融和、調整融和ということが一番大事なんだということがここで出ているんですからね。それをあなたは認めますか認めませんかと聞いておるんですからね。
  287. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 地方自治団体において、そういう団体と十分な意志の疎通を図られることがこの同和対策事業を円滑に推進していくものであるというふうに私も認識をいたしております。
  288. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そういたしますと、それぞれの地方行政当局が、同対審答申の、いま私が論じましたところの自発的意志に基づく自主的な運動との調和というこの原則を貫き、同和事業の意義と目的を受益者に説明して徹底を期するという、そういういろんな、たとえば説明会と言おうと研修会と言おうと、そういう仕組みをして、この同和事業についてはこういうものだと説明をし、それを通じてやる、いろんな施策をやりていくということは、私は当然だと思うんですがね。その点はどうなんでしょう。
  289. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 国におきましても、研修会でありますとか、研究会でありますとか、講演会というようなものを行っております。各地方自治団体におきましても、この同和対策事業を推進していくに当たり、また、さらに部落差別解消による人種の確保のためにいろいろ催し物をせられる、あるいはまた、それぞれの地区の実情に応じた事業を行われるということは必要であると思います。
  290. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは当然の措置でしょう、この精神から言えば、やらにゃならぬということは。
  291. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 私が先ほど来申し上げておりますように、それぞれの地区の実情に応じてそれぞれやらるべきことであると思います。
  292. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 やっぱり同和行政のあり方というのが、そのことがきわめて重要だということになりますれば、世の中にこういう意見もあるんですね、同和行政は一般の福祉行政などと同じだと。たとえば老人医療を受けるときに研修とか説明会などに行かぬでも入れるように、そういうものはこれは全く平等にしなきゃおかしいという議論があるんですがね。私は、こういう同和行政で、先ほど来ずっとお尋ねしてきたところから考えれば、そう一般行政のあり方とごっちゃにして考えるところのしろものではないと思うんですがね。その点長官、どうお考えになります。
  293. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 国におきましても、先ほど来申し上げておりますように、この対策の充実のために努力を払っているところでございまして、地方自治体におきましても、基本的人権にかかわる問題でありますから、あらゆる角度から必要な措置を講ぜられるべきは当然であると考えます。
  294. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 質問にまともに答えてくださいよ。これ、一般の福祉行政と同じですかと聞いておるんですから。同列にこの問題考えるしろものですかと、こう聞いておるんです、政府の考え方というのは。
  295. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) この同和問題を解決するに当たりまして、必要なことを国及び地方団体がやるのは当然のことでございまして、したがって、地方自治団体としても、その地区の実情に応じて、先ほど来御質問があり、答弁を行っておりますように、あらゆる角度からあらゆる施策をやっていく。また、研修会や研究会や講演会等も行う。これはまた啓発運動にもなりますし、同時にまた、それぞれの地区住民の自主的、自発的意志を高めるのに大変益するところがあると考えているところでございます。
  296. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 益するところがあると思いますということだけでは、どうもこれは中途半端な答弁ですよ。そういう益するところがあるぐらいに、これは一般の福祉行政で、老人医療を受けると言ったから、はい君は入れる、君は入れぬというふうにね、行政が八方にこうやるという筋合いと違うでしょう。その差異だけはあなた認めなければ、同和行政の特色というものはないじゃありませんか。それをあなたは理解されておりますか、どうですかと聞いておるんだよ。
  297. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 地区住民をひとしく対象として、公正にこの事業が推進せられるべきであるということの関係省庁の次官通達を出しておりますことは御承知のとおりでございまして、したがって、他の施策とは異なって、この同和対策事業の推進に当たっては、対象地区住民というものがそれぞれの地方自治体におきましては明らかなのでございますから、したがって、それらの方々に対して行政がひとしく行われますとともに、地区住民の自発的意志というものが、意識というものが高められるということは、他のものとは違って大変重要なことであると思うのでございます。
  298. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いま長官から御答弁がありましたように、一番やはり同和行政の中で重要なことは、ただ恩恵でくれるわけじゃないんですから、それを受けて同和地区の皆さんが自発的に、自主的にいろんなものを高めておいてもらわなければならぬわけですから、そのために研究会と説明会と、名前はいろいろ違いましょうけれども、そういうあれが非常に重要だということは先ほどお認めになった同対審の答申の基本なんですね。したがって、いま長官から御答弁いただきましたように、他の一般行政のものと同じだという論は、これは当たらないということは明白でございます。そういう点から申しますと、何か世の中にはその特性を無視して、特質というものを無視して、説明会とか研修とかというところを経なければいろんなものについてやれないということは、これは、憲法違反だとか地方自治法違反だということで、しきりに言う説があるんですがね、私はそれはどうしても理解できないんですが、これは長官はやっぱりそう思いますか、どうですか。
  299. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 国といわず地方自治体といわず、憲法及び法令に基づいて行政を行うということは当然でございます。したがいまして、それぞれの自治体が地区の実情に応じて、憲法及び法令に基づいて行政を進めていくということは当然のことであると考えるのでございます。
  300. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まあこの問題は、いわゆる窓口という言葉で言われておるところの問題ですが、しかし、この窓口という用語は、これは便宜上の言葉ですよね。正確に言うならば、いま長官がお答えになったところの同和行政のやはり一番原則のポイントを言っておるだけの話なんですね。したがって、その問題は行政当局とそれぞれのまあ関係団体の間にいろんな名称の窓口のものがありましょう、それにはまあ解同の言う一本化というのもありましょうし、あるいはまた愛媛県のように同和会がイニシアをとっておるところもあるでしょう、あるいは幾つかの団体があるところもあるでしょう、しかし、それはやはりそれぞれの歴史的な経緯から出てきておるものであって、そういうものに特定の団体だけ入っておるからこれは違法だとか、あるいは二つ以上あるから違法でないと、私はそうは言えないと思う、それぞれの歴史的な経緯があるから。それだけに、問題は一体公正であるかどうかという議論は残るにしても、そういう窓口をつくって一つにしたからどうだからということが憲法違反だとか自治法違反だと、そういう論旨は私は当たらないと思うのですがいかがでしょう。
  301. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 各地方におきまして、地方自治団体が自主的に判断をして行われるべきものであると思います。
  302. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 政府の方針はよくわかりました。これは、この間本委員会で指摘をされたところの大阪府の企画部長への四十七年二月二日の回答文にしても確かに書いてあるのですよ。「「窓口一本化」が行なわれているといないとにかかわらず」と、窓口が一本化が行われておろうとおるまいと公正を期しなさいというのが趣旨なんですね、この回答書は。したがって、問題は公正であるかどうかという問題であって、窓口一本化がどうだこうだということが違法だどうだという論にならないということは、長官もいまの答弁でお認めになったように私は理解したいと思いますが、よろしゅうございますね。
  303. 植木光教

    国務大臣(植木光教君) 先ほど来お答えいたしておりますように、地区対象住民に対しましてひとしく行政が行われるべきものであるということがたてまえでありますことはもう御承知のとおりでございまして、それぞれの地方におきましては、自治団体がそれぞれの実情に応じて施策をせられるべきものであると思うのでございます。
  304. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それでよくわかりました。言われておるところのいわゆる窓口一本化そのもの自体だけが違法であるとか憲法違反呼ばわりというのは、これは当たらないということは大体政府の態度としてわかりました。実は、この窓口一本化という問題は、行政サイドの面から見てもこれはやりやすいんです、率直に申し上げて。たとえば、それぞれの地区の人が、同和地区の皆さんが、いろいろな要求を出されてきたときに、これは一体どっちをやるかということでかえって行政サイドとしては迷わなけりゃならないということにもなるのです。したがって、可能な限り一本化して意思を統一するということは、私はこれは当然のことだと思うのです。しかもまた、過去のいろいろな、地方自治体の中では、その点が不明確なままで生業資金を貸したために、その資金が返済をされておらないで、どこにその人が蒸発したかわからないという事例もあるくらいに、この問題はやはりそういう要素を含んでおるということとやはり皆さんは理解をしておいていただきたいと思うのです。  さらにまた申し上げますならば、この窓口一本化という問題は、行政だけじゃなくて、この同和行政要求するところの部落民の立場から見ても、これは絶対必要なんですよ。これはどうことかというと、これはあなたの選挙区の福知山市でも起きたことですけれどもね。福知山の市長さんが、まだまとまらないからみんな行政サイドに一本に任してくれというようなことで、いろいろなその地区の皆さんが参加をしないところの協議会をつくって非常に混乱をしたという一時期があったこと、御存じでしょう。だから、その当時は実は日本共産党も、だからして困るから窓口は一本でなけりゃならないと、つい五、六年前までは言われておったんですよ。これはまた、現在この正常化連盟に入っておるところの幹部の皆さんでも言われておったことなんです。それが、問題がこういう逆な形でやられておるというところに私はむしろ不自然を感ずるとさえ思うわけでございますが、その論議は別におきましょう。いずれにいたしましても、形式論議、一般論議でこの同和行政というものを考えないでいただきたいと、この点だけは強く私は長官に申し上げておきたい。したがって、やはり姿勢としては、先ほど私が率直に申し上げましたけれども、まだまだ政府のこの同和行政に対するところの取り組みは不熱心でございますから、熱意を込めて、ひとつそういう問題についても、一般論じゃなくして具体的に、やはりそれぞれの人々に恩恵が施されるようにやっていただきたいということを強く要請をしておきたいと思います。  次に移りたいと思いますが、同和教育のあり方について次はお尋ねをいたしたいと思います。  文部大臣は、この同対審にありますところの教育問題に関します対策の基本方針というものをどういうふうに理解されていますか。
  305. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 基本方針というのは、これは法のもとにおける平等そして差別をなくすために教育の中立性を守っていくことが同和教育であると考えておりますが、特に文部省としてこの問題に取り組んでいく場合、三つの観点が必要であると考えております。  第一は、差別の問題をめぐって非常に心理的な要因があると思います。その心理的な要因というのは、同和地区にいない人たちの間にもそういう要素はありますので、そういうものも除去していかなければいけない。  第二番目には、いわば実体的な側面があって、特に同和地区におられる方たちの文化、教育の享受の権利というものが著しく阻害されているという側面がありますから、これについて考えなければいけない。  第三番目には、そうした心理的ないしは実体的な阻害要因というものを除いていくための条件整備というものが文部省として非常に責任上必要であると考えますから、そういうものに取り組んでいかなければいけない。  原則と仰せられましたので、以上のような考え方に基づいて施策に取り組んでいくというふうに、まずその点を最初に申し上げておく次第です。
  306. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 大臣は同対審の答申に、同和教育に対するところの国としての基本的指導方針が不明確だと指摘されている点は御承知でしょうか。
  307. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 国としての方針の問題については、私の記憶に誤りがなければ、昭和四十七年でございましたか、教育方針というものがつくられるべきであると、で、まだその方針が十分につくられていないからそれを練り上げるようにということが問題になっていることを承知しております。その以前の長期計画に基づきまして文部省の考え方ということも練ってきておりますけれども、しかし同対審の趣旨としては、方針というものを明確につくっていかなければならないということでありましたけれども、今日に至るまでその方針というものの作成が満足すべき状況になっていないということを承知しております。
  308. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 大臣、同対審の答申の中に、国としての教育行政の基本的な方針の明確さが欠けておるという批判のあることは御存じでしょうかとお聞きしておりますから、ノー、イエスをおっしゃっていただければいいんです。
  309. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 存じております。
  310. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 あれから十年ですね、もう。それで、しかも、いま大臣からお話がありましたように、文部省としてはなかなかむずかしい問題だからまだつくっておらないということですが、これまた同和教育のあり方としていかがかと思うんですよ、これは。どこに一体問題点があってまとまらぬのですか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  311. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) ただいまのお言葉でありますが、文部省が全然つくっていないというのでもないと思います。昭和四十四年二月に学校における同和教育第一次草案、昭和四十五年七月に同和問題と教育第二次草案というものを一応作成したわけでありますが、しかしながら、この草案につきまして関係方面の間に批判などもあり公表に至らなかったというのが実態であります。  その後、総理府に設置された同和対策協議会第三部会で、文部省に対して参考案を作成して示すことになって、そして文部大臣あてに、同和教育に関する当面の指導指針及び同和教育行政に対する要望事項というものが送付されております。現在、それ以来どうなっているかということを私が担当の人たちに聞きました。これは早くきちんとつくり上げなければいけないわけでありますが、私の理解するところでは、作成はいま言ったように二つの草案というものもできて進めてきているわけでありますけれども、十分に意見の調整というものを、関係各方面の御意見を聴取しながら練り上げていくということができない状況である、そのためにおくれているというふうに理解しております。
  312. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そのできない問題点というのはどうですかとお聞きしておる。
  313. 奥田真丈

    説明員(奥田真丈君) 先ほど、四十四年の二月に出しました学校における同和教育というテーマでの第一次草案並びに四十五年の七月に出しました同和問題と教育という第二次草案につきまして関係方面の意向を聞きましたが、その後また総理府の同和対策協議会の第三部会から文部大臣に出されました要望事項、これにつきまして文部省におきましては、関係の各地方の教育委員会並びに関係の諸団体に対しまして意見を求めて、その意見を参考にして検討を進めておるというのが現状でございます。この意見につきましては、ある事項については賛成もございます。あるいはまた意見なしということもございますが、中には反対であると、こういうことが明記されておる府県もございまして、その調整に現在慎重に対処しておるわけでございます。  その問題の一、二につきまして申し上げますと、当面の指導方針、これにつきましては同和教育基本方針というものについての面では全般的には賛意でございます。それからさらに内容の、文面につきましては、用語の問題等も一、二ございますが、全般的な問題の一つで、融和的、対策的な同和教育、これは志向しないように表現を改めるようにと、こういう問題も出ております。それから部落差別というものにつきましても、その解釈におきまして、封建的な身分的差別であるということについては、過去の身分的差別のみによって現在の部落差別の実態がつくられたものではないので、このように断定するのは少し無理があるのではなかろうか、こういうような問題も指摘されております。  そのほか細かく挙げますとございますですが、あと、学校教育並びに社会教育に共通した指針ということでは、教育と政治、社会運動を明確に区別することの重要性を明示することとか、中立性というものを本質的に理解して、同和教育推進のあり方の方向を明確に示せ、こういうような問題も出ております。さらに、差別の実態のとらえ方等におきましても、学校教育においては、差別の実態というものと生徒の生活実態を踏まえた同和教育の視点が必要である、こういうような意見も出ておるわけでございます。それからまた、学校教育の全教育活動を通じて同和教育の位置づけをすべきである、こういう意見等も出ておるわけでございます。そういう意見がたくさん出ておりますので、現在それらについての調整を図っておる段階でございます。
  314. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これはもう時間がありませんから多くは申しませんけれども大臣ね、法律ができてもう七年もやがて終わるんですよね。そこに至るもさまざまな意見がありますから、文部省の指導方針がきちっとできないということは、これは一体同和教育の責任者であるところの文部省としてはどうかと疑われますよね。さまざまな意見があるということは私も承知しております。しかしながら、もうまとめてこういう方向でいくべきなんですということをやらなければ、これぐらい同和問題が、同和教育のあり方さえも問題になっている時期ですから、その根本を決めないで放置するということは、やっぱり文部省としは怠慢のそしりは免れないと思うんですがね。この点について、私は永井さんは野におったころにもこの問題については大分理解をされておった方ですから、積極的にこの問題について急いでもらいたいと思うんですが、どうでしょう。
  315. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) ただいま御指摘がありましたように、いつまでもゆっくりいくというべき問題でないと思います。そこで、どういうふうに一番速やかに、しかも方針というものを明らかにすることができるかというので、目下作成中でありますのは、同和教育参考資料というものを文部省で準備しようとしてやっております。で、その内容はただいま奥田審議官が申したこととほぼ重なる面がありますので省きますけれども、しかし一、二具体的なことを申しますと、たとえば地域や学校の実態、それから児童発達の段階に応じてどういうふうに実施していくべきか、こういうふうなことも具体的に考えるように、単に法の精神あるいは一般原則にとどまらない参考資料にしなければならないと思っております。で、この参考資料というものを私たちの方でつくり、そして同和対策協議会とか都道府県意見を聞きまして、なるべく早くこの参考資料というものを示して文部省の立場を明らかにするということが必要であると考えております。
  316. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 同和教育の問題を論じますと、非常に広範囲にわたると思います。教科書の問題あるいはまた副読本の問題等いろいろありますが、きょうは時間の制約もありますから、私はこれから残された時間、八鹿高校事件の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  いま八鹿高校事件というと即暴力事件一色に宣伝をされておりますが、確かに暴力の伴うというそのこと自体は、これは厳しく批判をされなきゃ、糾弾されなきやならぬと思います。問題は、単にこの問題を暴力事件として私は片づけるわけにまいらないと思うんです。教育的な見地から、同和教育という立場から見て一体どう見るか、このことはきわめて私は重要な問題だと、こう思います。そういう立場から、これから若干文部大臣の所見をただしてみたいと思います。  文相は、全国同和教育研究協議会がこの事件について出されたところの見解というのを御存じでしょうか。いま私、手元に持ってきておりますから、だれかにまず読ましていただいて御見解を承りたいと思う。
  317. 奥田真丈

    説明員(奥田真丈君) 「八鹿高校問題について、全同協見解 一九七五年二月八日(全国同和教育研究協議会)」  「八鹿高校問題をわれわれは重大かつ深刻な問題と受けとめた。こうした事態を、父母と教師の間で二度と繰り返したくない。  一、全同協は、過去二十数年間にわたって、解放運動との強い連帯の中で、主体的に部落解放を教育分野から追求し、教育上、その問題の解決にあたってきた。これが同和教育運動である。  二、部落問題の教育上の問題は、学力、進路保証など、児童生徒が、部落差別の歴史的、社会的圧迫によってその保障が制約されていること。また、部落問題が正しく教育されていないために、児童生徒及び一般市民が、一定の差別観念を日常生活において身につけている社会的条件のもとで、部落問題を教育として位置づけることなどとして存在する。  三、同和教育は、これらの問題を部落差別の本質に従って、教育の分野においてそれぞれ正しく解決にあたることである。四、今回の八鹿高校問題において提起された問題は、同校教職員が一定の取り組みをしてきたにもかかわらず、調査の結果、以下の問題が指摘できる。  1 部落の生徒に焦点を置いた教育の機会均等の保証を意図する教育実践が行われていたか。  2 さらに、同和教育上もっとも初歩的、かつ基礎的な営みである部落の生徒への働きかけに教育的配慮を欠いていたのではないか。  3 部落の父母と教師集団の緊密な関係がうちたてられていなかったのではないか。  五、八鹿高校問題の要因は、行政上の施策を欠いていたことによって、部落の人々がきわめて劣悪な生活を余儀なくされているにもかかわらず、部落差別の本質である就職の機会均等を不十分にしか保証せず、部落差別を観念の問題としてきたところにある。  六、今回の問題によって、部落出身の生徒は、すでに八鹿高校を去っていかざるを得なかったし、他の出身生徒も毎日の通学が困難になってきている事実がある。また、部落にたいする差別的事象が一層顕在化してきている。したがって、差別的事象を一層増幅させるような一切の行動を慎み、関係者は事態の正しい解決にあたろうではないか。  七、全同協は、この事態発生に重大な責任を担っており、問題の解決に全力を傾倒するものである。なお、全同協はこの見解を明らかにするにあたり、資料を別途公開する用意がある。」  以上です。
  318. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いまお聞き及びのとおりですが、全国同和教育研究会というのは、もう大臣一番御存じだと思いますがね、いわゆる昭和二十八年にできましたところの民間の教育団体ですね。学校の先生もおれば、社会教育指導主事も、いろんな層の、しかし最大のあれです。この団体がこういう八鹿高校問題に対しますところの見解を出しておるんですがね。大臣はそれをお聞きになって、どういうふうにお感じになりますか。
  319. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 私は、いまいただいたこの文書は初めて読んだのですが、八鹿高校の事件については私自身いろいろ考えました。宮之原委員も先ほど御指摘になりましたけれども、暴力事件というものが発生したことは、これは否定できない事実だと思います。私は、暴力事件というものが起こってはならない、学校教育というものは教育の中立でなきゃいかぬということを非常に強く主張いたしましたし、いまもそう考えております。  ところで、問題は、このいま文書を伺っていても感じたのでありますが、本当にわが国の差別というものは歴史的にも根深い、深刻なものがあると思います。そこで、いろいろこれに努力をする人があり、そしてこの解決に努力をする人があり、その立場というものがさまざまになる。そのさまざまな立場というものが存在してしかるべきものだと思いますのですが、問題はさまざまな立場があるという場合に、それが激しい衝突になってしまって、そして差別解消を実は主要なるテーマとしながら、そこに深刻な対決が起こるというのでは私は困る、そう思うんです。それで結局、本当にこの差別の問題というものがなかなか解消されていかなかったというところに、この八鹿高校事件の一つの側面があるというふうに思います。  そこで、目標は何と申しましても差別を解消するというところにあるのでありますから、私はそれに努力する異なった団体というものが、異なった立場をとりつつも、いかにして終局の目的を達成するために協力することができるかという方向に向けまして、暴力的事件とかあるいは政治的紛争というものにならずに問題が解決の方向に向かっていくということができるということがあれば、それこそが八鹿高校事件の教訓ではなかろうか。  また、われわれいま政府におります者といたしましてはどう考えるべきかというと、そういう形における対立がありながらも、しかしながら協調ができるというのを促進するように努力すべきであると思いますし、また、そのほかに事実部落におけるところの、同和地区におけるところの教育などにおくれた面があるのでございますから、その条件整備というものにはわれわれは全力を上げていかなきゃいけない。しかし、八鹿高校事件の一つの教訓というのは、暴力的対立とかそういうものにならないで、何とかしてみんなが考えている目的を達成する道を探り得ないか、そのことを考えることが最も重要であるというふうに思います。この文書はいま承っただけで、一つ一つの文を検討する時間がございませんけれども、伺っておりましても、私自身あの事件以来考えておりましたことはその点にあるということを申し上げることができるように思っております。
  320. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 一般論としてはまことに優等生の答弁ですがね。しかし、やっぱり問題は現実の問題として起きておるところの問題ですからね、私はいろいろお尋ねしたいと思うんです。  この事件の発端は、御承知のように、教師集団が被差別部落の生徒たちの教育要求に対するところの話し合いを、職員会議の決定だということでかたくなにまで拒んだ。最終態度を決めましたところの職員会議が十一月十六日ですけれども、全職員の九十九名中四十六名が出席をし、話を受けるか受けぬかで採決をして、話し合い反対二十六、賛成十六、保留四と、こういう職員の中でも全部の教師の意思統一というかっこうで拒否をされておらないんですよ。そういう状態の中でこの拒否をしたということから、御承知のように発端をするわけでございますが、ただ問題の焦点は、そのときにクラブ活動として正式に認可をされておったところの部落問題研究会と、ぜひつくってもらいたいと言われておったところの部落解放研究会、これは部落研、解放研とそれぞれ現地では呼んでおりますがね。そういうものの構成とかそういうものについては、大臣としてはどのように理解されていますが。
  321. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 私も若干勉強をしまして、部落研、解放研という二つのグループがあるけれども、一方のグループの方がそれまではそれほど存在しなかったのに、他のグループの方があったというところが一つの問題点になったということを理解しております。問題は、いま宮之原委員がある文書をお読みになって、そのときになかなか会わないと言った、これはおかしいじゃないか――私はその個所をとればそれはおかしいと思うんです。ところが、今度はそういうふうなことがきっかけになって暴力的事件になった。そこのところをとれば今度は暴力的事件をと、これはまたおかしいんです。問題は、そういうふうに対立が事実起こったんですが、私が先ほど申し上げたことは優等生的な答弁であるとおっしゃいましたけれども、それは私は、現実はなかなかそうはいかないんだとおっしゃいましたけれども、しかし、何と言っても目標は差別をなくすということにあるんですから、私は宮之原委員のように有力な方がですよ、こういうふうな対立が起こるということをなるべく緩和いたしまして、そしてでき得る限り最終の目標というものを達成するために御活動になるというようなことを、私たち文部省にいる者はまた御協力申し上げなければいけない。しかし、それは宮之原委員に限らず、また宮之原委員と違うお立場の方もございますでしょう。その方とも御協力しなければいけない。  そういうふうな努力によって、私が申し上げたことは非常に高望みみたいでありますけれども、しかし、本当に差別解消ということを願いながら一つ一つの事例を挙げると、あれは悪かったじゃないか、これが悪かったじゃないかということになると、どうでしょうか、私は終局の目標というものをなかなか達成し得ないのではないだろうか。そこで、どうしてもその相互に対立が起こりそうなときには、自己抑制というものを相当持ちながら、そして根本的なところでは目標を達成するということを目指さなきゃいけないんじゃないかというふうに、実は先ほどの引用されましたこの事実についてのお話を承っても、なおそう感じる次第でございます。
  322. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 答弁に的確にお答え、ただいておらないのですけれども、まあいいでしょう、前に進みます。  十二月五日付の朝日新聞は、先ほど私が紹介しましたところの二つの研究会を、このように報告されておるんです。正式のクラブ活動として設置をされていた部落研は生徒八人、教師五人で、部落出身の生徒は一人もいない。設置していただきたいとして要求があり、校長が認め、部屋を与え、教頭が指導しておったところのいわゆる未公認の解放研は生徒十九名で、うち部落出身が十六名というこの朝日新聞の記事があるんですよ。私はここに同和教育のあり方の問題点があると見ておるんですよ。部落出身者の入っておらないこの部落研が存在をしておるという、そこにも問題がある。これは少なくとも同和教育の初歩的な基礎的な営みでありますところの、部落の生徒への働きかけ、営み、配慮というものが全然正式に認めたものにはなされておらない。言うならば、先ほど私がお尋ねいたしましたところの教育方針の心理的な差別というものをすでにここでなされているんです。そういうところに私は、一体八鹿高校にこの同対審で言うところの真の同和教育という問題が存在しておったのかどうかということさえも疑わしくなるんですよ、部落出身の者を一人も入れないんですから。そこに一体、この同和教育のあり方という立場から考えて、大臣はどうお考えになりますか。
  323. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 私は、この解放の問題というものに取り組んでいくのはもちろん部落、同和地区の方々、非常に大事だと思います。しかし他方、これは日本国民全体の問題でありますから、そうでない人たちも努力していかなければいけない。それで、できれば一番望ましい姿は、どちらの人たちも本当に協力するというふうにいくのがいいと思います。でありますから、いま述べられた朝日新聞の記事、この場合には分かれちゃっていますから、それは決して望ましい姿とは思いません。こういう場合どうしたらいいかということなんですが、やはりこういうときに一つの問題は、私たちはどういうふうに考えていくかというと、これはそれぞれの教育委員会がお考えになるんでしょうが、何よりもやはりそれぞれの学校の中でそういう違う解決の問題が起こっていくときにどうしたらいいか、そこの自主性というものを重んじていくことが原則だと思うんです。そして、いまのような形の二つの分かれ方があるという場合に、何とかしてそうでない方向というものを生み出していくということができたならば望ましかったのではなかろうか。その過程において本当に激しい対決というものにならないでいければよかった。そして、今後はそうでないような方向に進んでいくことが望ましい。しかし、その場合にもそれぞれの学校でそういうふうにお考えになっていただくことができるならば望ましいというふうに考えております。
  324. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは同和教育の本質的な問題じゃありませんからね。それはその学校の自主性に任かせたというふうに逃げるわけにいかないと思うんですよ。同和教育という問題をやるんですからね、クラブ活動があるんですからね。部落の生徒が入れないと、それなら私どものためにもつくってくださいと。言うならば、それは片一方をつぶせとは言いませんよ。二つ認めて、その中で一体部落というのはどういうものかという中から統一を求めていくという方向ならわかりますよ。しかし、片一方は職員会議の決定だと言って認めないという形の中で、果たしてこれで同和教育と言えますかどうか。そこをお聞きしておるんですよ。これはもう一般論でもいいですから、この八鹿から離れてもいいですから、一般論として今度はお聞かせください。
  325. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 一般論ということになりますと、これはたとえば私自身実は関東出身で、相当期間を関西に暮らした人間でありますが、関東地区では同和教育というのは一般に弱いです。その場合にはこの同和地区出身の方が少ないですから、そういうところでもこの同和教育というのはやっぱりやらなきゃいけないと思います。しかし、関西の方に参りますというと、同和地区の方々が多い。そういうところでは、当然同和地区の方々が参加しているそういうクラブ活動のようなものが多いんですが、一般論ということで言いますならば、私は関東のようなところは同和地区のないところもあるわけですから、そうでないグループもあっていいと思いますが、しかし、望ましい形態ということをお聞きになるんならば、一般論としては相互に阻害しないで、そして何とかして統一の方向に向かっていくということが最も望ましいんだと思います。
  326. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まあ一般論というと少しは口がほぐれてきますけれどもね。しかし、私は本当はこの問題一般論じゃ済まされない同和教育のあり方の基本的な問題が介在しているだけに、執拗にお聞きしているんですよ。だから、先ほども申し上げたような教師集団の多くの配慮ですから、これは部落以外の生徒の中にやっぱり影響していくんです。だから、見ておってござんなさい。職員室に座り込んだところの部落の生徒たちに、おまえらそれくらいのことしかできぬのか。えたのやることはそんなもんかという、こういうもう心臓部にも突き刺さるような言葉が平気でやっぱり一般の生徒からこう出ておる。それを教師は見て黙っておるという、こういう中からは、先ほど来私が相当時間かかって論じてまいりましたこの同和という問題に対するところの、これは本当の理解に立ったところの教育が行われておるとは言えないんですよ、これは。これはまた文部省が何も言えませんという形では私は困ると思うんです。暴力使ったのは悪いければ、それは悪いと、しかしこれはこうなんだという、物のやはり明確な、この指導指針の中から照らしてどうなんだという、ここのところを私はやはり文部省としてもこれは自主性に任せますと逃げるわけにはまいらないと思う。よく自民党の皆さんは、事、日教組の問題となると、目くじら立ててわんわんわめく、こういう大事な教育のこの問題について、私は見逃すわけにはまいらないと思う。だから、私はここにまた問題ある。  もう一つ、私はここで指摘をしたいというのは、教師のあり方の姿勢という問題もやはりこれはひとつ私どもに問題提起されておる。一体先生というものはどういうものなのか。教員というのは、よしたとえ、自分と子供たちの、生徒との意見が違うにしても、教師という立場からその意見を十分聞き、話し合いをして、説得するものは説得し、いろんな指導を与えるというのが教師ではございませんでしょうか。こういう姿が、これはすでに放置をされておる。現にこれは、部落出身の子供たちでないところの八鹿高校の生徒会の執行部からも、十一月二十一日には先生方に、生徒はそれぞれ意見を持っていますが、先生、どうしても話し合ってほしいと、絶対に話し合ってほしいという申し入れさえやっておるわけなんです、これは。これは問題の重要性に生徒自身もやはり敏感に感じておるからだと思う。それをけるという、この姿勢というものが教育上教師のあり方としてどうなのか。そこの所見を承りたい。
  327. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 私は原則として先生はこの児童あるいは生徒の方からこういう問題について話し合ってほしいというときには、そうですかと言ってその話し合いに応ずることが最も望ましいと考えております。
  328. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 あの場合はどうなんですか。それはわからぬというわけですか。自主性ですか、やっぱり。あの場合。
  329. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 私は自主性ということもちろん大事だと思います。非常に大事だ。しかし、文部省はこれについて方針がないかと言うと、一つは暴力はいけないということを申しましたけど、それだけではないと思うんです。差別をなくす、そして平等を達成する、基本的人権を重んずる、これはそうなんですが、そのときにそれを達成しようとするいろいろな教育の団体あるいは教育の考え方があると思うんですね。文部省の立場というのは何であるかというと、その教育の立場というものがお互いにぶつかり合うときに非常に激しい政治的な対立のようなふうなものになってほしくないということです。いまの一つ一つの事柄を取り上げられて、これはどうですか、あれはどうですかということを言われますと、これはいまの解放研、部落研、いろいろ申し分があること、そういう歴史的経過をたどって、そしてまあ私はあすこの但馬地方のいままでの去年の歴史について聞きますと、相当緊張状態ができている。ですから、その緊張状態の中でいまのようなことが起こる。だから、先生方は子供の言うことを聞かなくていいということにはなりません。なりませんが、問題はその緊張状態を何とかして解きほぐすようなふうに考えていくというのが、これは未来の問題です。そういう教訓として八鹿高校の事件を受け取るべきではないかと私は申し上げている。宮之原委員が私にお聞きになっているのは、一つ一つの事実をつかまえて、これについてあのときどうだったというふうにおっしゃいますが、私はその事実についての基本的考え方を申し上げて、これからどういうふうにしていこうかという場合に、いま言ったようなふうに対立がなるべく起こらないように、そして原則として先生は学生、生徒の方から疑問があったら、それは自分が本当に賛成でないようなことでも胸襟を開いて話すという立場をつくっていくように、そういうふうにしなきゃならないということは全く当然であると考えております。
  330. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 問題はそれだけじゃないんです。もう一つはやっぱり学校とこの地域という観点からとらえてみても、これはまた教育上一つの問題点を提起する。特にやはり同和地区という区域を持っているところの校区の先生であるならば、これはできるだけやっぱり日常の接触ということが大事なんですよ。そういう観点から見ますと、これまた決定的に欠けているところの要素がある。全然断絶をされておる。ここにも一つの私は問題提起がなされていると思うんですがね。いわゆる今後の戒めという、まああなたは現状については語りたがらぬから、私はもうそれ以上申しませんけれども、そういう立場から見れば、この問題は将来の教訓としてどういうふうにお考えになりますか、それなら。
  331. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 将来の教訓としていま学校と地域のことをおっしゃいましたが、これはもう同和地区があるところの学校というような場合には、当然同和地区の人たちの考え方というものを十分に聞きながら学校教育を推進すべきであると思います。これは同和地区に実は限らないで、学校と地域という関係の場合にすべてそうであるべきでありますが、とりわけ同和地区の場合にはそうでなければならないと考えております。
  332. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は学校の教師の姿勢の問題について若干申しましたけれども、と言ってこの問題は教師の側だけ責任あるんじゃない。県の教育委員会のこの指導のあり方というのも、現に二十二日にそこに来ておるんですから、常駐しておるんですから、そこにも非常に私は問題があると思うんですがね。一体文部省としては教育委員会のいろんな事情も聴取されたと思いますが、どういうふうに指導されましたか。
  333. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 文部省もこれは山崎政務次官が現地に行くというようなこともいたし――現地というのは兵庫県の教育委員会でございますが、行くということもいたしましたし、それ以後兵庫県の教育委員会の方々の御意見というものも伺い、またわれわれの意見も申し述べておりますが、それは繰り返すと長くなりますから要点だけ申しますと、要点は先ほどから申し上げたことに尽きております。つまり、いろいろな立場があるんだけれども、同和教育達成の目標のために本当に教育の中立性というものを守って教育が発展していくようにこれから指導をしてほしいといろことを、兵庫県の教育委員会に繰り返しお願いしている次第です。
  334. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 もうこれでやめますが、私が教師のあり方の問題を言ったのは、それはかつて自分も教組の責任者でおって、非常に悲しい気持ちを込めながら申し上げておるんですよ。教育という立場から見るならば、相当やはりこの問題は同和、特に同和教育のあり方の問題として非常に多くの問題があるだけに申し上げておるわけでございますから、その点を理解していただいて、積極的なやはり同和教育のあり方というものをやっていただきたいと、これだけ申し上げて、私質問を終わります。
  335. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  336. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  以上をもちまして宮之原貞光君の質疑は終了いたしました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  337. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。     ―――――――――――――
  338. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 秦野章君。
  339. 秦野章

    ○秦野章君 私は、最初に災害対策の問題でお尋ねをしたいと思うのでございますが、きょうは東大の地震研究所長の坪川先生に御足労をいただいておりますが、最初に、川崎を中心の京浜工業地帯の地震の予知の問題について、先生の率直な御意見を伺いたいと思うんです。
  340. 坪川家恒

    参考人坪川家恒君) 川崎地震を予告するに至りました経緯について、まず御説明したいと思います。  御承知のように、京浜地区は、地下水のくみ上げが近年非常に盛んになりまして、そのために地盤沈下が起きております。それを監視するために、調査するために、非常に頻繁に水準測量が行われていたわけでございますが、その結果を概略申し上げますと、関東震災後かなり頻繁に行われている測量から推定いたしますと、昭和四十五年までの間に、いま問題になっております川崎駅周辺では一メーター二、三十センチに達しておりました。ところが、最近の工業用水のくみ上げの規制によりまして沈下が最近減りまして、大体昭和四十五年ごろに一応沈下がとまりました。ところが、その後、年約一センチぐらいの割合で上昇をいたしまして、ことしの二月の測量では、最も大きいところでは四センチ余り上昇しております。   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕 いままでの常識でございますと、水くみ上げによって地盤沈下が起こりますが、くみ上げを規制しても、地盤沈下がとまるということだけで、隆起ということは余り考えられないと。で、こういうふうに隆起するのは、地盤そのものではなくて、もっと地下深部の原因によるものではないかというふうに考えたわけでございます。現在隆起しておりますのは川崎駅付近が中心でございまして、その周辺約径十キロぐらいの区域でございまして、この区域が、その後の調査によりますと、地下水の規制によりまして地下水位が非常に上昇しております。約十数メーターのところに達しておるところもございますけれども、その地下水位の上昇している区域とそれからいま地盤が上昇している区域というのが大体一致しております。  そこで、現在考えられますのは、地下水の規制によって地盤の上昇が起こったんではないかというふうに常識的に考える方向にある程度傾いているのでございますが、と同時に、いま申し上げましたように、直径十キロぐらいのところでございますと、発生する地震としては大体六・〇ぐらいというふうな、まあある程度個人的な見解でもございますが、そんなように考えられると。そういたしますと、この程度の地震でございますと二年間ぐらい、せいぜい二年間ぐらいで勝負がついてしまうんじゃないかと。ところが、先ほど申し上げましたように、四十五年から現在すでに五年たっておりますので、どうも勝負がついてしかるべきじゃないかというふうな考え方も出ております。しかしながら、いま考えに入れておりますのは、その上昇区域、せいぜいが五センチぐらいの上昇区域をもとにしているわけでございますから、そのほかにもっと広域な現象があるかもしれないわけでございまして、必ずしもこれによって地震は全然ないということを申し上げることはできないかと思いますが、もう少し広域の調査をするということで、たしか国土地理院は水平方向の測量、水平にひずみがどうたまっているかということ、それから地下水に地下深部から供給されるものがないかというふうな調査を続行中でございまして、もう少し継続する必要があるんじゃないかというのがわれわれの見解でございます。
  341. 秦野章

    ○秦野章君 そうしますと、いま調査を続行する結果でもってある程度かなりの結論が出ると、いまの段階では必ずしも地震に結びつくとは言えないと、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。  この地震の予知の問題について、最近二つの国際的なニュースがあるわけであります。一つは、ことしの一月号のアメリカのサイエンスニュースという雑誌に載っているものでございますが、カリフォルニアのホリスターという市の近くで六週間前に地震を予知した。これは米国の地質調査室でございますが、その予知の方法はいろいろ書いてありまして、地磁気の劇的な変化とか地下水の問題とか、その他いろいろあるわけでございますが、とにかく六週間前に完全に予知をした。  それからいま一つは、最近新聞にも出ましたけれども、中国で、これは十二日の新華社、それから北京放送は二月の四日でございますが、中国の東北部でもってとにかくマグニチュード七・三の地震を予知した、被害を最小限にとどめた、しかもこれは八カ月前に警告をして被害を小さくしたという、そういうニュースがあるわけです。地震の予知の問題について、日本は地震国でもありますし、特に狭い、言うならば三十七万平方キロですか、この狭い国土の上に世界第二のGNPを支えていると、一億一千万の人間がおるということになると、非常な過密の地帯でございますから、したがって、地震の被害というものは、中国とかソ連とか米国に比べて比較にならない大きな被害をもたらす、こう言わなきゃならない。そういう点から考えますと、地震の予知の問題について、  一体日本ではどの程度の努力があるのかということをお聞きしたいのであります。南関東は地震の歴史もありますし、これは来てから騒ぐのじゃなくて来る前の対策というものを考えたときには、人命にかかわる科学でもございますので、いま一体どの程度の努力があるのか、まず予算の上で、ことしの予算、過去五カ年の予算、地震研究、地震のつまり予知研究と言いますかね、ちょっとこの点をお聞きしたいと思うんです。これは関係行政庁から。
  342. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 科学技術庁でございますが、私どものところで各省庁の研究費を一応まとめております関係上、私からまず御答弁させていただきます。  先生御指摘予算につきましては、地震予知関係予算といたしまして、これはいろいろ分類の仕方によって多少変わるかと思いますが、見当といたしましては、昭和五十年度予算案におきましては、関係五省庁で約二十億円と、こういう予算になっております。なお、過去五年間どうかということでございますが、これは実は測地学審議会におきまして第一次、第二次、第三次と、こういう計画がございまして、第一次、昭和四十年から四十三年までが約十三億、第二次の四十四年から四十八年が約四十億となっております。なおちなみに、四十九年度におきましては約十五億、四十八年度は約八億でございますか、四十七年度、四十六年度はそれぞれ約八億、九億、この程度でございます。  以上、簡単でございますが。
  343. 秦野章

    ○秦野章君 試みにロケット、つまり宇宙開発で使っている予算の額、本年度と過去五年ぐらいの。
  344. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 宇宙予算につきましては、昭和四十五年度から昭和四十九年度までの合計が、関係省庁全部合わせまして約千四百八十億となっております。
  345. 秦野章

    ○秦野章君 ことしは。
  346. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 昭和五十年度予算案は七百七十億でございます。
  347. 秦野章

    ○秦野章君 地震の研究、これも恐らく学際的な研究で、言うなれば、ビッグサイエンスという立場で大変な研究が要るんだろうと思うんです。で、宇宙開発もそれぞれ大事な研究開発だと思うんです。これはすそ野の科学が発達する意味においては貴重だと思うんですけれども、やっぱり人命にかかわる、特に日本は地震国でありますから、言うなれば、科学としても目玉の科学ではないのか、国際的にもやはりそういう意味を持っていると思うのでございますが、いま説明によると地震は二十億、ことしの予算でも宇宙開発の方は七百七十億と、私は、これは国家の投資としていささかアンバランスではないかという感じがするのでございますが、この点、ひとつ科学技術庁とそれから大蔵大臣に。
  348. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 先生御指摘のように、この研究開発費をどういうふうな、バランスで支出するかということは非常に大きな問題であると思います。地震予知対策、これは申すまでもなく、国民生活に密着した非常に重要な問題でございますので、累年、ここ数年間は非常に財政当局としてもこの重要性をお認めいただきまして、総需要抑制型の予算の中でも非常に重点を置いて御査定をいただいておるわけであります。それから宇宙開発につきまして、これは将来の問題であるということはあるかもしれませんが、これも気象観測あるいは通信、放送、そういった観点からいたしまして非常に国民生活に多大な貢献をもたらすものでありますし、さらに技術の最先端を行くものとして、こういう新しい技術というものについて、わが国としても当然その能力に応じた活動をするべきであろうということかと思われます。  ただ、この予算の規模がいかにも違うという御指摘でございますが、実はこれは宇宙開発というものの性格から申しまして、諸外国の金の使い方を見ましても、なかなか多額の経費がどうしても要るという性格があるわけでございます。ただ、最近の情勢もございますので、宇宙開発につきましても、相当これは合理化と申しますか、必要最低限にとどめるということで、総需要抑制型予算の中において、必要にして最低限のものを支出していただく、こういう考え方でおります。したがいまして、私どもといたしましては、そういう背景のもとに十分合理的な、決して予算のむだ遣いというふうな御非難のないように心いたして実施をいたしてまいりたいと、こう思っております。
  349. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 財政は、御案内のように資源を適正に配分する、しなければならぬ立場にあるわけでございますが、地震予知関係で二十億、宇宙開発関係で七百七十億という配分はアンバランスではないかという御指摘でございます。財政当局といたしまして、一方を重しとし一方を軽しとする考えは毛頭ございません。いま科学技術庁から説明がありましたように、宇宙開発は気象観測その他、国民生活に多大の関係がございまする重要なプロジェクトでございまして、その性格上大変金がかかるものと聞いております。したがって、それ自体、金額の多寡をもって比較すべき性質のものではないと思うんでございます。両者とも対前年度に比べまして三〇%程度の増加計上を図っており、財政当局として十分その重要性は認めておると御理解をいただきたいと思います。
  350. 秦野章

    ○秦野章君 宇宙開発が大事でないと私は言ってるんじゃなくて、やっぱり地震というのは生命に関するし、また地震の科学というか、地震の学際的な研究というものはやっぱり科学をいろんな面でもって発達させるという意味があることはもう当然なんですね。だから、これは科学技術庁がさっきの答弁なんかじゃ、大体予算要求する方があの程度では予算がふえるわけないわけですよ。私はもう、大蔵大臣そうおっしゃいますけれども、生命にかかわる科学というものであるならば、しかも地震は日本のやっぱり科学の目玉ですよ。そういう意味において、いまの御説明ではいささか私は満足しないんでございますが、これは大局的にお考えになって――確かに金額で判断すべきではないと思います。ないと思いますけれども、たとえば川崎のいまの地震の予知にしましても、やっぱり金をかけなきゃ研究が十分でないわけですよ。そういう意味において、やっぱりバランスはとれてないと私は思うんですが、いま一遍ひとつ。
  351. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり、人命にかかわる重大な問題でございます。したがいまして、関係各省庁とよく御相談いたしまして、できるだけ財政上の配慮はいたすつもりでございます。
  352. 秦野章

    ○秦野章君 さっき科学技術庁が、宇宙開発はよその国でもたくさん金使っているという話だったんだが、では地震ではよその国でどの程度使っているか、その資料があったら説明してください。
  353. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 実は日本以外の国におきまして、先ほど御指摘の中国あるいは米国等におきましてどの程度地震予知というもので金を使っておるかということにつきまして、十分な資料がございません。私どもといたしましては、できる限り将来そういう資料を集めて参考にいたしたいと思っておりますが、特に中国、ソ連あたりはなかなか資料が手に入らない。それから、米国の場合もいろいろ関係機関が多いわけでございます。この辺は何とか将来もう少し資料を集めたいと思っておる次第でございます。
  354. 秦野章

    ○秦野章君 坪川教授にちょっとお尋ねしたいんでございますが、日本列島の全体の地震予知といったような問題についてどういうふうに考えたらいいのか、また現状ですね、これをちょっと御説明願いたいと思います。
  355. 坪川家恒

    参考人坪川家恒君) お答えいたします。  実は地震の予知の研究というのは非常に大きいジレンマを抱えております。地震の予知についていろいろな観測資料を集めまして、それから予知の研究を実現するということになるわけでありますが、そのためにはどうしても地震の起こるところで観測をしなくてはいけない。ところが、その起こるところを探すのが一つの問題でございまして、もしこの区域にこれくらいの大きさの地震が起こりそうであるということがわかりますと、これは地震予知の研究の大半がまあ完成するということになるわけでありますが、実はその場所を探すことそれ自体がまた地震予知の研究でございます。ところが、非常に大きい災害をもたらす地震といいますと、大体陸地の開発部に接したところでマグニチュード七・〇以上というふうな地震であろうかと考えられます。そういたしますと、こういうふうな地震は日本全国、日本の地震区域全域にわたりましても大体一年に一回ぐらいの割合でございます。そのうちかなりの部分が海に起こりまして、これは実際上の災害は何も起こさないわけであります。したがいまして、そういうふうな場所を探すといたしましても、災害を起こすであろうという地震というのは何年間に一回の機会で探すということになります。しかしながら、どこに起こるかわからないわけでありますから、日本じゅうにパトロールをしなきゃいけないと。地震は、御承知のように地殻にひずみが集積いたしましてそれがある限度に達しますと破壊して地震波になるというふうに考えられておりますが、そういたしますと、ひずみが集積すれば当然に地殻が変形をする、そういたしますと、その変形を繰り返しの測量によって、精密な測量によって見つけるというようなのが当面常識的に考えられる最も直接的な方法でございます。ところが、日本は小さいといいましても三十七万平方キロございます。これを非常に頻繁な測量で行うということにはかなりの費用がかかります。そこでいま七・〇が被害を起こす地震である、それから陸地開発部に近いというところにひずみがたまりますとこれは陸地の測量で当然わかるはずである、というふうに考えまして、七・〇というのはどのくらいの準備期間を経て地震に成長するのかというふうなこと、これは必ずしもまだはっきりいたしておりませんが、いままでやられた、わずかではございますが、データから推測いたしますと、どうも十年余りかかるのではないか。またたとえば八・〇というふうな地震になりますと、これは八十年ぐらいかかる。そういたしますと、現実的にそういう繰り返しを考えるということになりますと、ざっと五年に一回ぐらいずつで精密な土地の、国土の測量を繰り返すということになりますと、かなりいい予知のデータが得られるのではないかというふうに考えられるわけでございます。そういうわけでこれを出発させるのがわれわれの一つの念願でございますが、これはかなりの費用がかかる。しかしながら、測量の繰り返しということは、日本の国土の利用、国土の開発あるいは環境保全というところに非常に貢献するところが多い基礎資料も提供するわけでございますから、こういつた方面が実現いたしますと、地震予知には非常に有効な手段となるかと思います。  それから先ほど秦野先生からお話がございましたが、アメリカあるいは中国等で地震予知をしたということでございますが、実はいま申し上げましたのは七・〇以上、いわゆる破壊地震でございますが、小地震、四とか三とか五とかといったような種類の小さな地震でございますと、これは地震の準備期間として考えられますのは数時間から、マグニチュード五にいたしましてもせいぜい数カ月といったようなことで準備が行われて地震発生に結びつくのではなかろうかというふうに、私の個人見解的な意見もかなりございますが、そんなように考えられます。したがいまして、小地震、これは数が非常に多いわけでございます。多いけれども、非常に散発しておりますからどこに起こるかわからない。ところが、松代地震のように群発地震がございまして、頻繁にある程度の期間にわたって地震が発生するというふうな区域でございますと、そこに密度の高い観測網を張りますと、地震予知と思われるような仕事をすることができる可能性があります。  アメリカのホリスターの場合は、あそこはサンアンドレアス断層の付近でございまして、地震が多発すると。そこで、たまたまちょうどよいところに観測機械を置いたということでひっかかったというふうに考えているのだと私は了解いたします。  それから中国につきましては、遼東半島の地震であろうかと思いますが、これは九州西部にも有感でございましたが、恐らく七・三といいますと大体二十年近くの準備がかかったように私は考えますが、それが一年前くらいといいますと、地震の直前現象的なものがあるいは観測されたのではないかと思うのでありますが、何分にも詳しいデータというものはございませんので、ただ動物がいろいろ騒いだというふうなことがあったそうでありまして、われわれの方にも問い合わせがございましたが、直接の資料を持っておりませんので何とも申し上げかねますが、そういったように、もし地震の発生するところにたまたま観測網がありますと、地震の予知をすることができるであろうと思います。日本の場合はそのようでございますから、もしそういったような観測網が実現いたしまして観測を繰り返すと、それで地震の発生の可能性のあるところへ観測を集中するということになりますと、地震予知が大きく進展するものであろうかと思います。  先ほど秦野先生からも御指摘がありましたように、日本はGNPが非常に高いと、それの割りに国土は小さいと、恐らく一平方キロメートル当たりのGNPは世界で格段に高いということになろうかと思います。それだけに、国土の精密な調査というものは特に必要であろうかと思いますし、と同時に、地震が非常に多発するという文明国はやはり日本でございまして、科学、技術ともに発達しているわけでありますから、地震予知が実用的になるというのは、日本が最初の国であろうというふうに私は考えておるのでありますが、また、われわれの義務でもあろうかというふうに思っております。  以上でございます。
  356. 秦野章

    ○秦野章君 いまのお話を聞いても、やはり長期の努力をすると。地震の予知などとは夢のごときものであったと思うんですけれども、決して夢ではないということだと思うのでございます。そういう意味において、政府の努力を大いに期待をしたいと思うのでございますが、しかし、現状のようなことでは、川崎程度の地震でもどうも余りはっきりしないということだと思うんです。聞いてみると、この間のいわゆる川崎中心のあの地震についても、予知連の会合では、二十八人の研究者、学者が集まって、二十人は大体地震がないだろうと、八人の人がまた来るかもしれぬといったような程度のことだったと思うんですが、これは科学技術庁、そうですか。
  357. 井上英二

    説明員井上英二君) お答えいたします。  確かにいま先生おっしゃられたように、意見が二つに分かれたことは事実でございます。しかし、その二十対八という数字については、私そこまではっきり覚えておりませんけれども、やはり地盤沈下の地域でございますので、その反動として隆起が起こったんじゃないかという意見の方が強かったことは事実でございます。しかし、あの地域が非常に大事な地域であり、やはりそういう現象がある程度新潟の場合と似ているというような意見もございまして、この際もっと詳しく調べなきゃならないんじゃないか、そういうもっといろんな調査をしようという点では全員意見一致いたしまして、いろいろな調査をしようと。たとえば地理院で申しますと水平の変動を調べようと、それから地質調査所でもう少し地質をよく調べよう、それから地下水を調べよう、いろんな省が集まりまして、いろんな機関が集まりまして、そのような研究をしようということについては全員意見が一致いたしまして、地元の協力を得まして、そのような仕事を科学技術庁の推進会議と協力しながら進めてまいりましたのが現状でございます。
  358. 秦野章

    ○秦野章君 二十八人の中で、圧倒的に、地震とは多分関係がないであろうということであったことは事実ですね。
  359. 井上英二

    説明員井上英二君) 反対派――反対する人の方が多かったことは事実でございます。
  360. 秦野章

    ○秦野章君 地震の予知連絡会というのですか、これは一体行政機関ですか、どういうものですか。
  361. 井上英二

    説明員井上英二君) 地震予知連絡会と申しますのは、これは正式の行政的な機関じゃございません。もともと事が起こりましたのは、松代地震、えびの地震のときに、いろんな発表自体が非常に混乱いたしまして、この際どこかでやはり一つでまとまった学者の意見を集中しなきゃいかぬじゃないか、討論しなきゃいかぬじゃないか、そういう機運のもとに、建設省の事務次官が中心になりまして、各省の協力を得まして、学者ベースあるいは研究者ベースのひとつ横の連絡会をやろう、学術的討論の横の連絡会をやろうということで設けましたのが、この地震予知連絡会でございます。
  362. 秦野章

    ○秦野章君 よくわからないんだけど、地震予知連絡会の会長は萩原先生ですね。
  363. 井上英二

    説明員井上英二君) さようでございます。
  364. 秦野章

    ○秦野章君 地震予知連絡会が、学者、研究者の意見をまとめて、そうして地震の予知ということを発表されたと、それはそれで一つの考え方ですけれども、この地震というものが予知をする場合にどのような影響を与えるか、ある程度の警戒を持たさにゃいかぬ、しかし不安になっちゃいかぬ、あるいはデマが飛んじゃいかぬ、いろいろな行政的判断が必要だと思うんですけれども、こういう学者の集まりの会合だけで発表しておったのでは、いささか行政の責任が免れているという感じなんだけれども、これどうですか。あんたじゃわからないだろう、これ。
  365. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) その問題につきましては、連絡会から私のところにも報告がありまして、これを発表すべきであるか発表すべきでないかという判断があったわけであります。いろいろ私も考えてみまして、川崎周辺の土地隆起という問題、またそれをひた隠しに隠しておくことが果たしていいのか、むしろこの地震という問題に対して、ことにその地域あるいは南関東地域の大都市、こういうものの人たちが地震というものに対して再認識をしてもらう上においても、この際発表すべきじゃないかという私は判断をいたしたわけでございます。
  366. 秦野章

    ○秦野章君 それは、発表されたことは大変いいんだけれども、これは行政責任というか、行政庁が発表したのじゃなくて、学者のまあいわばクラブみたいな集まりが発表したということになっているんだが、これでいいわけですか。
  367. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 予知連絡会からそういう相談があって、それは報告すべきだということで報告を連絡会からいたした、あるいはそれがあべこべであったかという御質問のようでございますが、あるいはあべこべであったと認めざるを得ないと思います。
  368. 秦野章

    ○秦野章君 学者、研究者の方々、これはもう自分の学問研究の結果を発表されることは、個人的に自由であることは当然であります。しかし、予告警戒をするという段階になると、私は行政責任だと思いますので、いまそういうお話でありましたが、さっきもまあ答弁をする人がだれかわからないようなかっこうが出てまいりましたけれども、災害対策というものが大変あちこちにまたがるんですね。各省庁、九つか十ぐらいにまたがっているんだろうと思うんです。この問題について、たしか国土庁長官か建設大臣が窓口一本化ということをおっしゃった。これは衆議院かどこかでおっしゃったんだけれども、この窓口一本化とは一体どういうことでございましょうか。
  369. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 国土庁が発足いたしまして、中央防災会議のいわゆる事務官庁になったわけでございますが、いま先生は九つか十というようなお話があったんですが、実際は十八ばかりあるわけであります。そういうことで、ことに窓口がたくさんということでございますから、国土庁が中心になりまして、大都市地震対策会議というものをつくりまして、各省庁の関係者を集めてこの会議をいたし、また、行管からも勧告がありまして、その勧告の詳細につきましては政府委員から御報告を申し上げても結構だと思うんですが、その中で、なおそれだけのことだけでなしに、また改めなければならぬのは改めていくべきだということで、各省庁のこの十八の窓口から今度は地方公共団体にもそれぞれの指示をして、地方公共団体と緊密な連絡をいたしておるわけでございます。  まあ私はただいま国土庁の責任にあるわけでございますが、政治家の一人として、先生がおっしゃられるように、地震対策というものがこれでいいのか、私は、もちろん地震というものはいかに対策を講じてもこれでいいという限界というものはないと思うんだけれども、この、地震が起きるかもしらぬという、国民、そうしてまた川崎周辺、その辺に住んでいる人たちが非常に心配をいたしておるということ、この不安というものもだんだん増大してくる、この不安がどういうような形に出てくるかということも政治の立場からは考えなくちゃならぬ。この不安を除去するためには、ある程度目に見え、形にあらわすような防災対策というものがなくちゃならぬじゃないか、実はそういう意味で、予算委員会でも済みましたら、私も現地をこの目で見て、今後の対策を講じ、また国土庁がこれを主管するようになりましても、中央防災会議は開いてない、そういう意味で、一日も早くいろいろの対策要綱等を決めて、この防災会議に私は提案して、できることから一つ一つ解決してまいりたいと、このように考えておるわけであります。
  370. 秦野章

    ○秦野章君 窓口一本化というのは、たとえば市役所の人とか県庁の人がそこへ行けば何でもかんでもわかると、そういう意味に理解していいですか。もしそうであったならば、いま大臣がおっしゃるように、十八の役所それぞれが膨大な予算を抱えています。一体その一カ所へ行って、そういうものが私はわかるわけはないと思うんですよ、もし国土庁が本当の一本化をやるならば、災害関係予算を全部そこで集約する。配分もそこがやる。しかし、多分これは主計局の仕事になっちゃう。私は、そういう意味においては、窓口一本化というのは、市役所なんかに陳情に行くときによく使う言葉だけれども、中央官庁で実際の仕事を進めていく上において、果たして一本化というものができるであろうか、はなはだ疑問を持っているんですよ。
  371. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 先ほど御質問に答えたわけでございますが、中央防災会議というもので基本方針を決める、その基本方針に従って各省はやる、なお各地方公共団体からのいろいろの問題については国土庁の性格上その調整役をやりながら推進していく、こういうことでございます。
  372. 秦野章

    ○秦野章君 国土庁が推進をし、総括をされるということはわかるのですけれども、実際私もこの問題を調べただけでも痛感するのですけれども、中央災害会議をやっても、いろいろな連絡会合をやっても、それはいわゆる連絡の会合であって、要するに実態というものとちょっと別なんだという感じですね、しかも、役所というものは全く対等なんですよ、これ。国土庁も建設省も。いま建設大臣国土庁長官は仲がよいからうまいこといくかもしれぬけれども大臣はまたかわることもあるのだし、そういう人間関係というよりも、役所の制度として、役人というのはそれぞれの役所でもって自分の責任のところをがんばるわけです。セクショナリズムと言われようが何しようが、がんばる。必ずしも悪気はないわけですよ。人の責任のことはやらないのです。  だから一ここまで分かれておる役所の仕事というものを一本化と言っても、私はできないだろうと思うんですよ。できる道はただ一つある、ただ一つあるのです。それは、各役所をにらんで実践的な推進力になろうというような、これは総理大臣しかないわけだけれども、しかし組織としては、これは内閣補佐官制度というか、内閣参与制度というものが継続審議になっていますけれども、これは官房長官、総理のお立場になって――災害対策だけじゃありませんよ。各省に十も十五もまたがるようなものを一本化とかなんとか、俗耳に入りやすい言葉はあるけれども、実際問題としてその政策を、調整じゃなくて実践的に推進をしていくというファクター、そういうポイントというものはいまはないわけですよ。だから、内閣参与制度というか、補佐官制度というものをどうしてもつくって、こういう問題を重点志向として進めていくという考え方は、これは今国会で継続審議に多分なっているのだろうと思うのですけれども、一体見通しはどうでしょうか。そういう考え方でいくべきだ、それ以外に手はないだろうと、私はこう思うのですが。
  373. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) おっしゃいますように、この補佐官制度は内閣法の一部改正として七十一国会以来これが提案されておりまして、継続審議に相なっておりますことは秦野さん御承知のとおりでございます。  そこで、私も官房長官という役柄についてみまして、確かに私も微力でございますので、なかなか手が回らないのですが、実際どうも人手が少ないということを痛感しておるのであります。日本の場合、この制度が果たして日本の従来の行政のあり方になじむかどうかというあたりは、これは問題もあろうと思います。しかし、やはり縦割り行政というものの弊害も痛感しておるわけでございますから、何かそういう調整機能というものが必要だということは、私も身をもって経験をしておるわけでございます。したがいまして、この継続審議中の内閣法の改正がこの国会に成立をいたしまするように私どもも希望し、せっかく努力をしておる最中でございます。   〔理事柳田桃太郎君退席、委員長着席〕
  374. 秦野章

    ○秦野章君 海外経済協力も各省にずいぶんまたがっていますね。予算の編成では大蔵省が集約されていますけれども、その後の実践的な推進というもの、調整というよりも、むしろ政策実践にどういうふうにフォローしていく一かという、そういう観点から、私はぜひ必要だというふうに思うわけです。  なお、災害の問題について、去年の七月か八月に行管が毒物劇物の行政が非常にだらしがないという監察をしたことがあります。この顕著な点をちょっと説明していただきたい。
  375. 宮嶋剛

    政府委員(宮嶋剛君) お答え申し上げます。  昨年七月行政管理庁の方から毒物劇物の行政につきまして勧告されたことがございました。要点といたしますところは約三点でございまして、一つは、特に毒劇物の貯蔵とか、あるいは運搬、あるいは廃棄、こういうものにつきまして、現在の毒物劇物取締法に基づく諸基準が一部ございますけれども、どうも基準が一般的に過ぎて具体的でない、あるいはまた、その基準がごく一部の品目に限られておって全体的でないというふうな御指摘が第一。第二には、都道府県の中央に対する事故報告の体制というものが十分できてない、またそのフィードバックが十分できてないというのが第二点。第三点は、第一線、特に都道府県レベルでございますけれども、警察機関あるいは消防機関とわれわれ衛生行政でやっているわけでございますけれども、衛生部門との連携が悪いと、その三点について御指摘を受けたわけでございます。
  376. 秦野章

    ○秦野章君 行管にお尋ねしますけれども、監察をした後三カ月以内に報告を取ることになっていますが、その三カ月の報告はどうなっていますか。
  377. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 初めに震災対策の点について申します……。
  378. 秦野章

    ○秦野章君 いやいや、聞いたところだけでいい。
  379. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 毒物劇物につきましては回答をいただいております。勧告の趣旨に沿いましておおむね実施するということでございます。
  380. 秦野章

    ○秦野章君 おおむね実施という、ちょっと頼りない話なんだけれども、非常に毒物劇物、言うならば有毒ガスといったようなものが工業地帯にはずいぶんあるわけで、これが非常に危険なものなんですけれども、これに対しては特別立法をいまやっているという話ですが、これはどこがやっていますか。
  381. 佐藤淳一郎

    政府委員佐藤淳一郎君) あるいは先生の御質問に当てはまらないかと思いますけれども、化学工場におきましては塩素等の毒性ガスを扱っておりまして、これに対しましては高圧ガス取締法の中で技術基準を設けておりまして、たとえば、これが何らか異常時におきまして大気に放出する場合の害を除く除害装置につきまして、技術基準を決めております。特に最近、先ほどから問題になっております川崎地区等におきましても相当ございますので、その辺はコンビナート全体の保安対策といたしまして、いま自治省の方と一緒になりまして、まあ毒性ガスそのものということよりも、コンビナートの保安対策ということで、この間の水島の事故とも関連いたしまして、コンビナート法の制定につきまして、いま検討いたしておる段階でございます。
  382. 秦野章

    ○秦野章君 石油コンビナート地帯防災法の柱になるようなことは一体どういうことと、どういうことですか。
  383. 佐々木喜久治

    政府委員佐々木喜久治君) ただいま石油コンビナート地帯の防災関係につきまして、自治省が中心になりまして各省とそれぞれ検討を行っておるのでございます。考え方といたしましては、個々のコンビナート施設の規制につきましては、消防法あるいは高圧ガス取締法等の現行規定の強化を図っていくということにいたしまして、いわゆるコンビナート防災法におきましては、コンビナート地帯の全体をとらえて総合的、立体的な防災体制を整備をするということをたてまえにいたしまして、その主たる内容につきましては現在いろいろ各省との調整を行っておるわけでありますけれども、防災施設の整備、それから企業自体の自主的な保安防災体制、並びに共同保安防災体制を強化をしていく、施設の全体的な、総合的な点検、あるいは訓練の実施、災害時における通報連絡体制の整備、こういうものが現在その主な内容として検討を進めておるものでございます。
  384. 秦野章

    ○秦野章君 大変抽象的なんですけれども、たとえば、この防災というものは中央だけでできる問題じゃないし、むしろ地方の方が任務としては大事だ。市町村長などに新しい権限を付与するようなこと、内容にありますか。
  385. 佐々木喜久治

    政府委員佐々木喜久治君) 防災体制につきましては、御指摘のとおり、国とともに地方公共団体にその大きな役割り行政側としては担ってもらわなければ……
  386. 秦野章

    ○秦野章君 どういう権限を付与するのですか。
  387. 佐々木喜久治

    政府委員佐々木喜久治君) これにつきまして、その防災の最終責任者を市町村長にするか、あるいは都道府県知事にするか、これが一つの問題点でございますけれども、私どもとしましては、現在の災害対策基本法等の関連もございまして、大体府県知事に総合的な防災体制の責任を持ってもらう。
  388. 秦野章

    ○秦野章君 市町村長は。
  389. 佐々木喜久治

    政府委員佐々木喜久治君) 市町村長につきましては、現場の責任者としての立場において府県知事に協力をし、そしてまた、消防機関における、消防機関のいわば責任者としての防災の責任を負わせる、こういう形でございます。
  390. 秦野章

    ○秦野章君 それじゃいまと同じじゃないか。具体的に言ってください。
  391. 佐々木喜久治

    政府委員佐々木喜久治君) 具体的な内容につきましては、いまそれぞれの各省間で詰めておりますので、まだ政府案としてまとまってお話をする段階には至っておりません。
  392. 秦野章

    ○秦野章君 震災というものが、大きなものがいますぐ来るとか来ぬとかという問題は、さしあたってはないように思いますけれども、やはり将来に備えるということは絶対に必要だと思うのです。結局、しかしそのことは、過密都市の大火災というものが、たとえば関東震災型の巨大地震が来たらちょっと手に負えぬのじゃないか。何人かは死ぬんだけれども、やっぱり十万死ぬところを五万にする、五万死ぬところを三万にするという、言うならば生命を救う政治の使命感というもので、どうしてもある程度の対策を立てなきゃならぬという感じがするんでございますが、しかし地震では、倒壊で死ぬのは一%かそこらなんで、大体火事で死ぬんですから、この大火災対策について、消防庁長官、どういう用意があるのか、ちょっと説明してください。
  393. 佐々木喜久治

    政府委員佐々木喜久治君) ただいま御指摘のとおり、大地震発生の際のその住民の安全というものは、火災からいかにその安全を確保していくかというのが最も重要な問題でございます。また同時に、地震の場合には、どうしても同時にたくさんの火災が発生するということになりますし、さらにまた、道路におきましてもいろいろな障害がありますわけで、現在持っております消防力というものがそのまま一〇〇%活動可能の状態になるということはなかなか期待し得ない、こういうことでございますので、まず第一に、この地震発生時における初期消火というものにつきましては、住民の自主的な活動ということに非常に多くのものを期待せざるを得ないというのが現状であろうと思います。そういう意味におきまして、この初期消火に当たりましては、その地域においてそれぞれの住民がその自主的な消火体制をとっていただくということがまず第一点でございます。  それから、さらに延焼防止対策というのが次の問題でございますけれども、やはり消防力というものの自由な活動というものが妨げられるという観点から、現在とみに、大都市地域におきましては、その必要な地域において貯水槽並びに簡易ポンプを設置いたしまして、その地域の住民がまとまってその地域の延焼防止対策をとれるような耐震性貯水槽の配置をいま計画的に進めておるわけであります。  さらに、その次の段階といたしまして避難体制の問題が出てくるわけでありますけれども、現在避難体制につきましては、避難地の指定、避難道路の指定、さらに安全な避難地でありますためには、その周辺の防火性というものを強化していくということのための都市計画的な手法によるところの、その周辺の整備ということにいま心がけてもらっておるというのが現状でございます。
  394. 秦野章

    ○秦野章君 いまのような対策では大したことはできないと思うんですよ。それで、建設大臣衆議院の方かなんかでおっしゃっておられますけれども、避難道路といっても、これ、余り使えないんですよ、いざとなると。それから、いま貯水槽をつくっていると言うけれども、あれ、百トンでしょう、あんなの、小さなポンプで一時間やったらなくなっちまうんですよ。やっぱり百トンじゃだめなんですよ、百トンばかりじゃ。これも、ないよりはいいですけれどもね。品川、大田、川崎、鶴見という、この工業地帯が特に過密なんですね。大きな広場というのは羽田空港と多摩川のへりと、あとは埋め立てしかない。この地帯が非常に過密なんで、どうしてもここに避難広場というか、多目的でいいんですよ、多目的で。避難だけじゃなくて、そこがふだんは子供の運動場になる。子供も、もやしっ子とか肥満児しか育たぬような環境ですから、そういうものになるし、また、貯水だったら、何千トンという、まあ二千トンぐらいの水がたまる、これはプールに使ってもいい、あるいはまた樹木を植える。  それから、消火でヘリコプターを使わなきゃ、昼間だったら消防ポンプなんか、とてもじゃないけれども動かないんですよ。私は防衛庁にやっぱりそれだけの用意をすべきだと思うんです。ヘリコプターのおり場もないですよ。ぜひひとつ、建設大臣、結局建設省がこの多目的の広場を三つか五つか、一遍にはお金が要ることだからできないでしょうけれども、ひとつこの点について決意のほどを……。これは結局大蔵大臣の方にいっちゃうんだけれども、問題は。これはやっぱり一遍にはできないにしても、そういうような備えというものをする必要がある。多目的にやるということは決して災害対策だけじゃないんだと。同時に教育対策であり、都市対策であり、局部開発ですから、ぜひそのことに着手する。中央防災会議が三十何年かに発足して、災害対策が書いてあるけれども、こういうものは一つもできない。一つもできないんですよ。どうも災害対策というのは役人も興味がないんです、これは。ほかの橋をつくったりなんかする方がおもしろいんですよ、やっぱり家をつくったり。しかし、人命の尊重と、それから同時に、それを多目的にやるということは非常に投資効果としてはいいことなんです。ひとつその点、ぜひお願いしたいと思います。
  395. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 秦野先生は警視総監もやっておって、東京の事情を一番よくわかっていますから、そういう面では、私よりもむしろあなたの方が十分御存じだと思うんです。  ただ私は、地震対策の問題がいまいろいろ議論されておって、さっきから予報措置の問題もいろいろありました。これは一生懸命、われわれも国土地理院の中でやらしております。おりますけれども、いままだ、そういう予報というものを完全に自信を持ってやるところまでいっておりません。これには、先ほどいろいろ費用の問題でも議論がありましたけれども、私は地理院にも言っているんですよ、金が要るなら幾らでも出してやると。だから、思い切って研究をしてみなさい、人が要れば人も補充しようからやってみなさいということを私、地理院に言ってあります。  ただ、そういうふうにしても、直ちに役に立つものは避難場所です。避難広場をつくることですね。これは避難広場としなくても、避難公園にしても結構だし、多目的の広場をつくることが当面の重大問題であるということは私ども十分承知しておりまして、そのためには用地を見つけなければなりません。工場跡地、あるいは公共用地、そういうようなものがあれば、これは積極的に広場をつくるということを、まず地震対策の第一の条件にして、積極的に取り組まなきゃならぬ問題だと思っております。
  396. 秦野章

    ○秦野章君 五十一年度からできますか。
  397. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) いまこれは率直に申しますと、避難広場をつくるということになりますと、建設省だけじゃいけません。これはいろいろ関係の問題ができてくるわけです。そこで、やはり中央防災会議で基本方針を決めてもらって、仕事は建設省がする、こういう形で私はいきたいと思っておりますし、できれば早速そういう計画を立てていきたい、現在そういう準備をいろいろして研究をいたしております。  もう一つの問題は避難道路の問題です。避難道路は広くして、そしてそこら辺を耐火建築にするといったようなことを言っておりますけれども、そんな気長いことを言って、耐火建築の全部ができようはずはありません。しかし、避難広場ができたら、その広場に通ずる避難道路というものは、かっちりともう前もって決めなければなりません。そして、それに対しては、いろいろ建築制限も考えるし、障害物の除去も考えるし、それと同時に、平素からその道路はいざという場合には車は一切遮断するというぐらいの方針を決めて、指導徹底をしておく必要がある、そういうふうに考えております。そういう意味で、当面の広場をつくること、貯水池をつくること、これは地震対策の私どもは一番急を要する問題だと、かように存じております。
  398. 秦野章

    ○秦野章君 ヘリコプター、防衛庁。
  399. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ヘリコプターを災害出動のときに使用いたします在来の使い方は、偵察、情報連絡、それから指揮連絡、あるいは負傷者の輸送、物資の輸送、こういうことに在来使っておりますし、昨年の八月に陸上、海上、航空、三隊協同大震災対処演習というのを実施をいたしまして、そのときもそういう発想でいろいろ使ってみたわけでございます。で、これに加えまして、昨年度からヘリコプターで直接消火をする方法、これを実は林野庁、それから消防庁との御協力によりまして私どもの方で実施をしております。これはヘリコプターで運びます場合にはHUlBあるいはHUlHで運びますのは大体七百リットルが限度でございます。それから二つローターがありますバートル107でやります場合には約千八百リットルでございます。これはそれぞれこの面について御関心がある各府県がその水嚢を御準備されております。で、五十年度予算からこれに対する補助等を自治省、消防庁でお考えのようでございまして、訓練の方は、私どもことし四十九年度末で一応陸上自衛隊の主要なところはこれに応じられる体制にあるわけでございまして、これをやってまいりたいと考えております。  それからもう一つ、これはヘリではございませんで、飛行機から直接水をまく水上艇でございますが、水上艇が腹の中に水を入れて、それから問題のところへ飛んでいって水をまく、こういうのがございまして、これは私どもの持っております対潜用の哨戒機PS1という飛行艇がございますが、これを消防庁の方で五十、五十一年度、両年度にわたりまして改造費を計上されております。これによって、飛行艇ですぐ水をすくい上げて、それをその火災の地点にまく。現実にはカナダでそれがございまして、山林火災その他で実績を上げておるわけでございますが、これが都市消防にどの程度役立つかという点は今後の試験運用にまたなければならない点があると思うわけでございます。
  400. 秦野章

    ○秦野章君 ヘリコプターの拠点は一体どこかね。
  401. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 大体、陸上自衛隊で、東京でございますと立川、これは陸上方面飛行隊の拠点になっておりますが、それぞれ関東周辺で約百三十機のヘリコプター、これは陸海空全部でございますが、動員できるような体制にございます。
  402. 秦野章

    ○秦野章君 立川なんかじゃなくて、京浜工業地帯ということになると、もっと近いところというか、オリンピックの代々木の運動場とか、市ヶ谷の自衛隊なんかじゃ二、三機しかおりられない。やっぱりもっとリアルな、現実的な計画というものをふだんとっておくと、十機や十五機はもうすぐいざとなればこっちへ来ておられるというぐらいのことをひとつ防衛庁は考えてもらいたいと思うんです。これはまあ答弁要りませんが、化学消防、水もいいけれども、やはり化学消防ということで使える余地があるのじゃないかというふうに思うんです。これは提言で結構です。  それから今度は教育問題について永井文部大臣に、最初に基本的な問題についてちょっと御所見を承りたいんでございますけれども、学問の自由というものはもう定着したのだというふうに私は判断していいと思うんです。確かに戦前の、学問の自由というものに対する侵害というのか、そういうものについての後遺症みたいなものはこれはまだ何かあるような気がする。しかし後遺症は後遺症であって、現に学問の自由が侵されているのではないから、後遺症があるという事実は排除しなければなりませんけれども、学問の自由そのものは守られてちゃんとして定着したんだと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  403. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 繰り返し問題はしばしば生じることはありますが、戦前との比較において言いますならば、わが国はもう格段の進歩を遂げて学問の自由が定着する、そういう制度的、社会的状況に到達していると思います。
  404. 秦野章

    ○秦野章君 それにもかかわらず、何かこう政治と大学というものに鉄のカーテンではないけれども、プラスチックのカーテンみたいなものがあるんじゃないかというような感じがせぬでもない。だんだんよくなってきた。このよくなってきたというのは、私は二つ原因があって、一つは学園の中の暴力だったと思う。この暴力を学問の自由ということで――これは学問の自由で暴力が排除できるわけないのに、学問の自由で何だか暴力がなくなるような姿勢を最初とっていたということは、これはまあしかし実物教育で私はわかってきたと思うんですね。このごろは、まだ非常に凶悪な暴力が学園の中にあるということは大変残念ですけれども、これは大学の管理の問題か何かやはり問題があるのだろうという気がしますが、いずれにしても暴力の問題については大学当局も暴力が起これば一一〇番にかけるといったような、警察と大学が親戚みたいになってきたということはあまり悪いこっちゃない、こう私は思うのです。しかし、同時に私学の助成といいますかね、学校でもってやはり非常に金が足らないということで政府が一千億を超えるような金を助成するということになったこと自体が、やはりこれ大学と政治との接近をもたらしたと、こう思うのでございます。  しかしそれにもかかわらず、私はまだこの大学というものが、果たして大学紛争の問題を本当に受けとめて政治と大学人がそこから本当の教訓を学びとったかというと、ちょっとまだ忘れちゃったんじゃないかという気がするのです。歴史の流れで見るならば、若者も下手をするとあるいは被害者犠牲者であったかもしれないというようなことで、どうしても大学紛争から政治と大学人が教訓を学んで、東大も紛争の後はすぐ大学改革をやると言っていましたけれども、いつの間にやらすっぽ抜けちゃった。これはやはり大学をよくするということが日本の課題だと、こう思うのですが、文部大臣のひとつ――私は永井さんが文部大臣になられて大変こういい時を得たと思うのでございますが、何かプラスチックカーテンを取り除いて大学をよくするということを両方が反省をして、両方が接近をし、交流をして、ぜひひとつ文部大臣永井さんのときに、場合によっては永井さんに五年も十年もやってもらっていいんじゃないかと、この問題を打解しないことには――教育全体は大学から出発すべきだと、やはり上がよくならないと、上の教育のムードが変わってくるということが教育の改革に一番大事なことだと、こう思うのでございますが、いかがでございましょう。
  405. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 大学紛争を経て大学がどうなったかという御質問の御趣旨と思いますが、大学紛争を経て大学に若干の変化が起こったそのうちの一番大きなものは、私はいまの警察との関係はまたこれはもう一つありますが、大学だけをいま取り上げますと、私学の助成というのが昭和四十五年から始まりました。それまでは全く政府の方も国庫助成というものをいたしませんでしたから、実は昭和四十年代というのは授業料の値上げが相当急カーブで上がった時期でございまして、そして四十三、四年に大学紛争というものが起こった。大学紛争というのは、もちろん由来は非常に複雑であって、当時の国際情勢を考えますと、ベトナム戦争が進行していたり、あるいは日中、米中の関係もまだ正常化されていない、それから、沖繩の復帰というものも完成していないという緊張状況があったり、そういう大学外のこともあったと思いますが、しかし、事大学だけについて考えますと、とにかくあの時期を境目に私学助成というものが行われて、そして大学というものを国が責任を持ってやっていかなきゃいけない。それをもちろん私学のほうも喜んで受け入れるというふうになったのが一つの変化だと思います。  しかし、わりに変化が起こらなかった方を申しますと、当時どこの大学でも改革案というのをつくったのです。その改革案を国会図書館の調査課で全部集めておりますが、高さがこのぐらいになるのです。それを読みますと、実にいろんなことが書いているんですけれども、その書かれていることの相当部分が実現していない、そういうのが現実である。もいろん若干の変化というものは起こりましたけれども、そういう意味で大学改革というのは、当時大学の先生が書いて望んだものも実は実現しないで今日に至っているという状況であると考えます。
  406. 秦野章

    ○秦野章君 そのことは、果たしてそれでいいのかというのが私の考えでございますけれども、学問の自由というものを一%も侵すことなく大学の改革というものはないと。先ほど文部大臣は明治以後の教育の発展の歴史の中で、東大がやっぱり二十ぐらいなきゃ勘定が合わないんだというお話でございましたが、二十ぐらいなきゃ勘定が合わないんだというお話だけれども、しかし日本には、戦後ヨーロッパ全部の大学の数ほど大学ができたわけですよ。それが必ずしも質がいいものじゃなくて、質よりも量といったような発想で大学ができた、これはできたんですよ。これから何といったって量から質へのやっぱり本舞台に来たと思うのでございますが、そういうときに大学と、対話と協調というのが三木内閣の何といってもメーンのテーマでございますから、協調と対話というものをどう進めていかれるか、私は対話と協調というものは実行と決断に対置する概念じゃなくて、対話と協調も実行しなければだめなんだということであるならば、私はまあできたら――これは永井さんならできるんですから、文部大臣がたとえば東大へ行って、わが文教政策を講演されるとか、早稲田へ行って講演されるとか、そういうような空気が出てくると、この教育をよくしようというムードがぐっと変わってくるのですよ。三木さんがそれをおやりになればなおいい。ヨーロッパ、アメリカにいけば、やっぱり大統領とか文部大臣が大学へ行って政治講演までやるわけですね。そこまで一歩踏み込んでもらって――学問の自由は全く関係ない。まさに教育をよくするか、大学をよくするか、若者に対して政府の要人が政治を語れないなんというのはおかしいんですよ。そういうような心意気についてひとつ御決意のほどを承りたい。
  407. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) いまのお話でございますが、若干の変化があったという方から初めに申しますと、これは文部省も当然やらなければいけないことがあって、文部省が制度的に変えませんと大学の方も困ると、そういう点では、たとえば一般教養というのは、いまかなり弾力的にできるようになっているんです。あるいはいままでの学部と違う教育、研究の単位というものもつくれるようになっています。あるいは副学長というようなものも置くことができるようになっております。しかし、何といいましても大学自身の中に改革の意欲というものが起こらなければならないのです。これはヨーロッパでもアメリカでも言うのですが、大学はえてして大学以外のあらゆる改革に関心を持つと言われるのです。事大学に関しては保守的になりやすい。  私が大学に行ったらどうかというお話ですが、私はそういうことも非常にいいことだと思います。大学に行って、文教行政というものについて話をする。これは政治を持ち込むということではないのですから。そして大学の人たちと一緒に考えて、どこを変えていけるかということを議論することは非常にいいことであるし、そういうふうに心がけたいと思っております。
  408. 秦野章

    ○秦野章君 政治を持ち込むということはいけないというお話、それはある意味でわかるのですけれども、大学改革も大学人だけが相談をして案をつくったら大学改革ができるかというたら、結局は大学改革も政治ということが解決する。日本の教育制度も明治の政治家がつくったのだと思うのですね。それから戦後の教育は占領軍と日本の政治家がつくったのです、いいか悪いかは別として、最後は政治がつくるのですよ。政治を拒否して大学だけで――今度はまあ東大が大学院大学の構想を発表されました。大臣どこまで関与しておられるか私は知りませんけれども、ああやって大学院大学をつくる。東大だけでできますか。お金が要る。私は最後は政治が決めるのだという基本的な概念、基本的な決定的な問題というものに今後も――過去もそうであったけれども、今後も変わらないのだ。だから意見は違ってもいいけれども、大学人が政府批判をしたっていいですよ。いいけれども、やはり交流と信頼を回復するということが教育改革の基本的な姿勢だと、こう思うのですが、いかがですか。
  409. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 具体的な問題が出ましたので具体的に申し上げますが、東大が総合大学院の構想を出しました。これは生命の科学とか人間の科学というふうな、いままでの学部にこだわらない大学院構想でありまして、いままでの学問の領域にこだわらないという点では新しいので、そこは大いに傾聴に値すると思いますが、相変わらず東大の大学院なのであります。総合大学院なのであります。私は現在も日本の大学、あるいは研究をよくしていくという上では、やはり東大の総合大学院というのではなく、東大はおろか、国立大学、さらに公立大学、私立大学、そういうものが寄って協力をいたしまして総合大学院をつくることを考える段階にきていると思います。そういう段階に、それぞれのいまの国公私の大学の方がおられるわけですから、御協力を願えるように、私の方から働きかけていく考えでございます。
  410. 秦野章

    ○秦野章君 ぜひひとつ大学院大学の問題を、東大では突破口にしようかといったような意見もあると新聞に出ておりましたけれども、やはり東大の枠の中だけで物を考えちゃいけないというふうに思うのですよ。しかしこれもまあ東大にそういう意見があることはいいと思うのだけれども、ひとつ対話と協調、三木内閣のお得意芸なのだから、そういうことで、しかも大学院大学をつくる場合にはやはり地方を重視するということ、物質文明、大都市文明はどうやら終えんに傾いている感じがせぬでもない。地方重視ということをひとつ教育の畑で先取りをしていく。そういう発想で、地方にもりっぱな研究者がおるわけですよ、地方の大学にも。そういうものを連合して一つの独立の大学院大学をつくるというようなことが私は非常に大事だと思う。そういう意味において大学院大学というものが、今度教育基本法で通りますね。それを一つの発端にして、そういう方向に誘導なさるというお気持ちはございませんか。
  411. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 大学院大学の問題は、これは御審議をいただくわけでありまして、法改正によってこれを設置したいと思っているのですが、これはまあ現在学問が高度に発達しておりますし、相当しっかりしたものをつくるということになると、そう一遍にあっちこっちにつくれるというもんではないように思います。しかし、少なくも国公私の別というものをなくしたようなものをつくり上げなければいけないと思います。  他面、地方の大学を強化したらどうかというのがもう一つの問題でありまして、それは地方に大学院をつくるのもいいんでありますが、しかし四年制の学部の場合もそうだと思うんです。で、地方の現在ある大学を強化していくということは一つの方向であります。  そのほかに研究所のようなものも、これも共同利用研究所という形で方々の大学の人が来れる、それから私立の人も来れる。今度豊橋に分子科学研究所をつくりましたですが、こういうものも一つの方向でありまして、ああいう共同利用研究所のようなものは私はどんどん地方で強化していく方向がよろしいんではないか。それを年次的に計画していくことは妥当だというふうに考えております。
  412. 秦野章

    ○秦野章君 人口急増地帯の今度は高校の建設についてちょっとお尋ねしたいんですが、全国で人口急増地帯で五十五年ごろまでに一体どのくらいの高校をつくらなければならぬことになっていますか。文部省、局長さんかなんかで結構です。
  413. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 今後五カ年間に、昭和四十九年から五十三年までの五カ年間につくらなければいけない高校でございますが、これは人口急増地域が多いんでございます。人口急増地域について計算をいたしますと、八都府県にありまして、その学校の合計数が四十九年から五十三年まで二百三十一校でございます。しかし、そのほかの地域にも高校新増設の希望がございますので、その数を寄せますと三百三十六校となっております。
  414. 秦野章

    ○秦野章君 いままでにこれだけの期間でこれだけのたくさんの高校をつくったという歴史はないと思うんですが、いかがですか。
  415. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) これまでも比較的類似のケースがございます。それは昭和三十六年から四十年までに、ベビーブームのピークが高校を通過した時期でございまして、その五カ年間の公私立高校数の増は二百五十一校でございます。
  416. 秦野章

    ○秦野章君 神奈川県なんかは、大変日本で一番高校をつくらなければならぬ県になっておりますけれども、これは高校は要するに設置者は府県でございますが、しかし進学率が九五%を超えるといったような事態になったときに、これだけの高校を自治体がつくらなければならぬということは財政上たいへんな問題なんです。しかし、つくらなければ中学浪人ができる。中学浪人をつくるのか、学校をやっぱり目的どおりつくるのか。これは中央の財政援助というものがなければできないと思うんですが、文教の方針としていかがでしょう。
  417. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 中学浪人の数は現在――要するに中学浪人というのは、高等学校を希望するけれども高等学校に収容し切れないという人ですが、それはおおよそ二%であります。つまり九八%は収容できるのであります。  そこで、大体そういう意味から申しますと、わりに全体のキャパシティというのは大きいのです。つまり案外高校はあるんです。ところが二%ぐらいが入れない。だから、この二%の人も入れるということをやはり考えて計画を立てなければいけないわけだと思いますが、このために現在ことしの年度、文部省が措置いたしましたのは、起債という形で三百億円、これで何とかこの要望にこたえたいという、そういう計画でございます。
  418. 秦野章

    ○秦野章君 中学浪人はなるべく出さないと、そういう考え方ですね。
  419. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) なるべく出さないという考えです。
  420. 秦野章

    ○秦野章君 そういうことだと自治大臣大蔵省の問題になってきますが、ひとつできるだけ財政的な配慮を――やっぱり日本で一番高校をつくらなければいかぬというのが神奈川、それからまた大府県がその次に続いているけれども、それはまあ自治体の義務だから、それは関係ないみたいなことだと、これはできないのですよ。
  421. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま文部大臣からもお答えをいたしたのでございますが、五十年度には三百億の起債をもって措置するということでいまやっておりますが、神奈川のようなところは、これはまあ重点的にやらなければうまく建設できないのじゃないかというようなこともいま考慮しながら、この三百億の起債を実施しますが、しかし実際言うと、地方公共団体の立場から言うと、高校の建設についてはある程度の補助もないと非常にやりにくいという要望も強くなっております。私はこういう問題は今後の――今度の予算ではもうすでにそういう措置をいたしましたが、今後の予算措置としては十分考えなければならない問題じゃないかと、私は思っております。
  422. 秦野章

    ○秦野章君 文部大臣ね、これだけたくさんの高校を、三年間で二百とか幾つとかということになってくると、できたものを直すよりは新しくつくるところに新しい発想を織り込む方がしやすくもあるし、賢明でもあるし、経済効率もいいということもありますので、これからたくさん高校をつくる中で、ひとつ実験的に新しい教育、高校教育のあり方といいますか、私もきょう時間がないから、もう少し提案をしたいのだけれども、できませんけれども、まあ海外を見たりして――いままでの高校をそのままつくるのは情けないという気がするのです。それから大都市の場合にはある意味で集中的なこともやっぱり考えなければならない、二校、三校。そういうことをひとつお考え願いたいと思います。  それから最後に、これは大蔵省で検討いただきたいと思うのだけれども、寄付の問題でございますが、まあ寄付の免税の問題で、例の所得の二五%最大控除ということで、まあ特定寄付は三種類ございますね。それでまあこれ、ありますけれども、要するに、教育に寄付を受ける場合にもそれだけの恩典は減免を受けているわけでございますが、私は教育と福祉という問題については寄付がしやすいように、いまちょっと色をつけてほしい、教育と福祉。そうしてやっぱりお金のある人は教育――、まあ政治献金というのはあるけれども、教育献金だな、これ。私はやっぱりこれね、金持ちが行儀がよくなると思うのです、教育献金したら。どうも自由経済もいささか行儀が悪くなったから独禁法とか、まあいろいろ問題が出てきた。私、金持ちの行儀をよくするには教育献金、金がある者はやっぱり教育に出すというような方向に誘導するという意味において、教育の問題については寄付の税もちょっと色をつける、それからやっぱりあとは福祉だと思うのですよ。福祉を何でもかんでも税金でやるというても、なかなかこうむずかしくなってくるから。しかしまあこれ、福祉というのは限りのない問題ですけれども、やっぱりお金のある人はなるべくそっちの方に引っ張っていくというような、これは税制の問題ではあるけれども、実はこれは日本の現状に照らして――まあ東大の安田講堂は安田善次郎という金持ちが寄付したし、慶応大学の工学部は藤原銀次郎というお金持ちが出したわけですね。これはやっぱりいいことですよ。そういういいことの気風を育てるには、ちょっと税制だけの問題では私はないと思うのですよ。ないと思うのだけれども、そういうようなことをちょっと考えてみたらどうだろうかというのが提案なんでございますけれども、いかがでございましょう。
  423. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 寄付免税のことにつきましては、もうすでに先生御案内のような制度ができているわけでございまして、教育あるいは福祉につきましてはさらに特別な配慮をしたらどうかという御提案でございます。御提案の趣旨はよくわかりまするし、私どもも精いっぱい勉強してみたいと思います。ただ、けさほどからも伺っておりますと、もうお金のかかることばかりでございます。したがいまして、これはよほど勉強はいたしますけれども、国庫の収入を確保するという点につきましてもまた御理解と御同情を賜りたいと思います。
  424. 秦野章

    ○秦野章君 これは日本の現状、モラルも衰弱して、未来が一応心配だという御意見も十分あり得ると思うのでございますけれども、新しい文明を築くなんていう、これは文明懇談会を文部大臣おやりになりますれども、やっぱり新しい方向に引っ張っていくにはあらゆる角度から配慮していくという、そういうことが必要なんで、いろいろ財政上要ることばかりで確かに大変だと思いますけれども、ちょぼっとでもいいから、教育に対して金を出すことと福祉に対して金を出すことは、ちょぼっとでもいいから差をつけるということに格段の配慮をひとつお願いをします。  これで終わります。(拍手)
  425. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして秦野章君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会