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1975-03-08 第75回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月八日(土曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員異動  三月八日     辞任         補欠選任      長田 裕二君     青井 政美君      坂野 重信君     斎藤 十朗君      森下  泰君     福岡日出麿君      黒柳  明君     三木 忠雄君      桑名 義治君     相沢 武彦君      加藤  進君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 岩動 道行君                 中山 太郎君                 矢野  登君                 柳田桃太郎君                 藤田  進君                 宮之原貞光君                 矢追 秀彦君                 渡辺  武君                 向井 長年君     委 員                 安孫子藤吉君                 青井 政美君                 井上 吉夫君                 石破 二朗君                 亀井 久興君                 黒住 忠行君                 源田  実君                 斎藤 十朗君                 玉置 和郎君                 徳永 正利君                 中村 太郎君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 福岡日出麿君                 八木 一郎君                 吉田  実君                 上田  哲君                 工藤 良平君                 田中寿美子君                 辻  一彦君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 野口 忠夫君                 松永 忠二君                 和田 静夫君                 相沢 武彦君                 三木 忠雄君                 矢原 秀男君                 岩間 正男君                 上田耕一郎君                 内藤  功君                 木島 則夫君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  永井 道雄君        厚 生 大 臣  田中 正巳君        農 林 大 臣  安倍晋太郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  木村 睦男君        郵 政 大 臣  村上  勇君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣  仮谷 忠男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      福田  一君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       井出一太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       植木 光教君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       松澤 雄藏君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       佐々木義武君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  小沢 辰男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制次長   真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        警察庁警備局長  三井  脩君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        防衛庁参事官   菅沼 照夫君        防衛庁参事官   平井 啓一君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁長官官房        長        斎藤 一郎君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        防衛庁人事教育        局長       今泉 正隆君        防衛庁衛生局長  萩島 武夫君        防衛庁経理局長  亘理  彰君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        防衛施設庁長官  久保 卓也君        防衛施設庁施設        部長       銅崎 富司君        経済企画庁長官        官房長      長岡  實君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁国民        生活局長     岩田 幸基君        経済企画庁物価        局長       喜多村治雄君        経済企画庁総合        計画局長     小島 英敏君        科学技術庁原子        力局長      生田 豊朗君        国土庁水資源局        長        富崎  明君        法務省人権擁護        局長       萩原 直三君        法務省入国管理        局長       影井 梅夫君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省経済協力        局長       鹿取 泰衛君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        西沢 公慶君        大蔵省主計局長  竹内 道雄君        大蔵省主税局長  中橋敬次郎君        大蔵省理財局次        長        後藤 土男君        大蔵省銀行局長  高橋 英明君        国税庁次長    磯辺 律男君        国税庁税部長  横井 正美君        文部省学術国際        局長       木田  宏君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省社会局長  翁 久次郎君        厚生省児童家庭        局長       上村  一君        厚生省保険局長  北川 力夫君        厚生省年金局長  曾根田郁夫君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        農林大臣官房予        算課長      渡邉 文雄君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省畜産局長  澤邊  守君        林野庁長官    松形 祐堯君        水産庁長官    内村 良英君        通商産業省通商        政策局長     橋本 利一君        通商産業省貿易        局長       岸田 文武君        通商産業省機械        情報産業局長   森口 八郎君        工業技術院長   松本 敬信君        資源エネルギー        庁長官      増田  実君        運輸省航空局長  中村 大造君        運輸省航空局技        術部長      中曽  敬君        郵政大臣官房長  高仲  優君        労働省労働基準        局賃金福祉部長  水谷 剛蔵君        労働省職業訓練        局長       藤繩 正勝君        建設省住宅局参        事官       救仁郷 斉君        自治大臣官房審        議官       遠藤 文夫君        自治省税務局長  首藤  堯君         —————        会計検査院長   白石 正雄君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 正雄君    説明員        厚生大臣官房審        議官       山中  和君        日本専売公社副        総裁       泉 美之松君    参考人        住宅金融公庫総        裁        浅村  廉君        水資源開発公団        総裁       山本 三郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和五十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和五十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和五十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  この際、委員異動に伴う理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事渡辺武君を指名いたします。     —————————————
  4. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 昭和五十年度一般会計予算  昭和五十年度特別会計予算  昭和五十年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  5. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  三案審査のため、本日、住宅金融公庫総裁及び水資源開発公団総裁参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 前回に引き続き、質疑を行います。田英夫君。
  8. 田英夫

    田英夫君 最初に、三木内閣政治の哲学といいますか、基本的な姿勢に関してお伺いをいたしますが、三木さんは民主主義というのを一体どういうものだとお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  9. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 学問的に言えばいろいろめんどうですけれども、国民の意思が反映される一つ政治形態です。
  10. 田英夫

    田英夫君 これは言うまでもなく政治の基本でありますから、全閣僚にお伺いしたいところでありますが、そうもいきませんので、こちらから失礼ながら指名をして御意見を伺いたいと思いますが、稻葉法務大臣、いかがですか。
  11. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 法律学とか政治学とかいう学問上のことになりますと、いろいろなことを申しますが、普通一般常識的に申し上げますれば、総理お答えになったとおりでございますね。
  12. 田英夫

    田英夫君 文部大臣、どうでしょう。
  13. 永井道雄

    国務大臣永井道雄君) 民主主義の歴史はギリシャから始まると思いますが、ギリシャのアテネの民主主義の場合には、貴族社会奴隷社会の別があって、貴族社会における自由なる立場というものを非常に強調したと思いますが、奴隷という言葉がありますように、大衆の参加がなかったと思います。  近代民主主義におきまして、そうしたいわゆる身分的差別というものがなくなって、平等の原則が非常に強くなりました。したがいまして、民主主義考える場合に原則として重要であるのは、自由とそれから平等ということであると思いますが、さらに、十九世紀から二十世紀にかけて、平等の側面が非常に強くなってきたと考えます。  しかし、現在、世界の全般的な情勢を見ますると、その二つ原則のどちらかに非常にアクセントがかかっている国々があるわけでありまして、そのことをめぐって、民主主義の定義についてイデオロギー的な対立がある場合もあります。わが国におきましては、憲法の原則で、平等、そして自由の両方を尊重して、それを生かしていくという原則に立っていると思いますが、さらにつけ加えますならば、国内における民主主義という原則にとどまらず、世界的な民主主義という角度から、一つの国の生活というものを世界全体の人々の生活を先ほどから申し上げた原則に従って生かしていくという角度で、いまや国々民主主義を建設しようとしてきている点において、二十世紀後半の民主主義に変貌が見られると思います。
  14. 田英夫

    田英夫君 総理も、まあ国民が主人公であるという意味のことを言われたわけですが、郵政大臣電波法郵政大臣電波の割り当ての権限があるというのは、民主主義原理に従うとおかしいのじゃないですか。いかがですか。
  15. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 行政目的としてやむを得ないことと思います。
  16. 田英夫

    田英夫君 それは大変おかしいことで、電波というのは国民共有物でありますから、国民代表がその使用の方途をきめるべきだと思います。この点はひとつ改めて郵政大臣と御議論をしたいと思います。  いま問題になっている、大変話題になっているいわゆる同和問題について、民主主義原理に従って総理はどういうふうにお考えになりますか。
  17. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) こういう問題が一日も速やかに解決をされて、同和問題というものが大きな社会問題でなくなるような日を望んでおるわけでございます。そういう点で、政府同和対策特別法あるいはまた長期計画などに従って同和行政を推し進めている次第でございます。
  18. 田英夫

    田英夫君 同和の問題はまことに残念な問題で、われわれ日本人の心の中に実は共通に存在をしている民主主義に反する恥部だと思います。現実に総理はどういう差別が行われているか、御存じでしょうか。
  19. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国民意識の中には、非常に差別的な意識というものは非常に少なくなりつつある、全体の意識が。まだ、しかし、一部の間に残っておることは、いま申したように民主主義という一つ原則のもとにおいても不幸なことでありますが、私はこの問題は、やはり遠からず同和問題という問題は日本社会において、こういう不幸な事態というものはなくなるような社会になっていくに違いないという期待を持つものでございます。
  20. 田英夫

    田英夫君 総理もこの問題についてはもっと具体的に、どういう差別が行われているかをお調べいただきたい。特に西日本では、結婚の相手に対しては戸籍を調べるということは現に行われているわけであります。民主主義原理に従って、平等ということも文部大臣言われたけれども、一切の差別があってはならないのでありますから、その根源にさかのぼってこの問題は考えるべきだと思います。このこともまた別の機会に譲りたいと思います。  そうした民主主義原理に従って考えたときに、すぐお隣の国の、韓国朴政権現状というのは民主主義に合うかどうか、この点は総理、いかがでしょうか。
  21. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その国情によって政治形態というものに違いがある。日本の尺度でもってその国の政治形態を批判することはできない。主権者政治形態をきめる権利を持っておるからであります。したがって、韓国というものは、韓国という一つ社会の中で今日の政治があるわけでございますから、私自身がこの席上で韓国政治現状を批判することは適当ではないということでございます。
  22. 田英夫

    田英夫君 外務大臣に伺いますが、外務大臣民主主義朴政権下韓国現状をどうお考えになりますか。
  23. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま総理大臣お答えになりましたことが全く正しいお答えであると思います。
  24. 田英夫

    田英夫君 総理に伺いますが、総理のお立場から、いまの答弁をされたことはわからないではありません。しかし、外交というのは相手状態というものを見きわめていなければできないのであります。しかも隣の国で、非常にかかわり合いのある韓国の問題について、しかも、日本人が逮捕をされるという事態が起きていたわけであります。この早川君、太刀川君、幸いにして帰国いたしましたが、事件はでっち上げであると言っている。この点について総理はどういうふうにお考えになりますか。
  25. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この二人の学生は、韓国法律により、韓国裁判所によって判決を受けたわけでございます。それがいま釈放されて帰ってきたことを大変にわれわれも安心をしておるわけでございますが、日本人立場から言えばこれで安心はいたしましたけれども、この二人の処分について、これまた、韓国のやっぱり国内法によって処理されたわけでございますから、私自身がここでどう思うかという感想を述べる立場にはないと思います。
  26. 田英夫

    田英夫君 それは大変おかしいことであります。三木さんは日本総理大臣ですよ。早川君、太刀川君は日本人ですよ。日本人外国に行っていて、そこがたとえ外国であっても、いわれないでっち上げで一年間も投獄をされているということを、日本総理大臣はそのまま見過ごしていて  いいんですか。
  27. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 心情的に両君立場に同情したい、同情するという気持ちはお互いによく理解できることでございますけれども、先だってまで被告人であった両君としては、当然のことながら、自分たち立場を守らなければならない、自分たち真実と信ずることを言い続けてきたわけであります。同時に、しかし韓国検察側は、検察側真実と信ずることを主張したわけでござ  いましょうし、そうでありますから裁判が行われたわけであります。で、裁判が公正に行われなかったと考え理由がない限り、やはり一方だけの立場で、ただいまでっち上げという意味のことを仰せられましたけれども、すぐそれを取り上げるわけにはまいらない。心情的には、苦労をしたであろう二人の言っていることを取り上げたいという心情は私はよくわかりますけれども、裁判というものはもともと、二つ真実と称するものがあって、そのゆえに裁判が行われるわけでありますから、その裁判が不公正に行われたと考え理由がない限り、でっち上げだという主張にすぐに加担するわけにはいかないように思います。
  28. 田英夫

    田英夫君 私は、全くどこの国の大臣かという気がしてならないんです。いま、仮に二つ意見があって、それが裁判になるんだということを言われた。それを認めるにしても、日本人である二人が、これはでっち上げだと言っておるんじゃないですか。それだったら、日本大臣だったら少なくとも疑わしいものはお調べになるのがあたりまえじゃありませんか 総理、どうです。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこで、非常に心情的なお気持ちは私どもよくわかりますけれども、裁判そのものが不公正であったと考えるかどうかということになると思います、日本人だからとおっしゃいますと、日本人日本人の間で係争が起こることはしばしばあるわけでございますから、そしてその間で裁判が行われることもしばしばあるわけでございますから、そこで突然非常に心情的な立場——理解はできますけれども、やはり裁判というものはそういうものでは一般にないであろうと私は思います。
  30. 田英夫

    田英夫君 大変おかしいと思いますね。日本人外国を旅行していて、いわれもないことでつかまって、日本政府は黙っているという結果なんですよ。それで国民が納得いたしますか。政府がお調べにならないなら、国会調べようじゃありませんか。  委員長、どうですか、この予算委員会早川さん、太刀川さんを呼んできて、国会で、国民代表立場でその真実をきわめるというのが正しい方向ではないかと思いますが、私は委員長に伺います。この早川太刀川両君をこの委員会参考人として呼んでいただきたい。いかがでしょう。(「反対」「異議なし」と呼ぶ者あり)
  31. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) その件については、後刻、理事会において慎重に検討いたします。
  32. 田英夫

    田英夫君 不規則発言反対という声もあるけれども、私は日本人として考えていただきたいと思います。  次の問題に移ります。  総理は、いま韓国の問題を出したわけでありますが、言うまでもなく、お隣朝鮮半島、最も近い、しかも歴史的に非常に古いつき合いがあるこの地域が二つに分かれている現状をどうお考えになりますか。
  33. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 朝鮮半島統一ということは韓国の悲願だと私は思いますが、それが実現をしないで南北に分かれておる事態は非常に不幸な事態だと思います。
  34. 田英夫

    田英夫君 一九七二年の七月四日の南北統一についての共同声明総理はこの共同声明を支持されますか。
  35. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 平和的な話し合いによって南北統一をされることが最も好ましい形だと私も考えます。
  36. 田英夫

    田英夫君 にもかかわらず、現在非常に残念な状態が続いているわけですが、この南北対立状態、軍事的に対立もあると言われておりますが、防衛庁長官に伺いたいんですが、南北軍事力というのを防衛庁ではどういうふうに把握しておられますか。
  37. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 防衛局長からお答えを申し上げます。
  38. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) シュレジンジャー・アメリカ国防長官が七六会計年度年次報告の中で言っておりますように、その一部を引用いたしますと、「わが駐留部隊は、それ程大きなものではないにせよ北朝鮮冒険主義に対する抑止の役割をはたしている。在韓の第二師団韓国軍と共に堅固な正面を構成し、北朝鮮のみによるものであれば、いかなる奇襲攻撃をも撃退しうるだけの人力と火力を確保している。」ということで在韓米軍が置かれております。  韓国の実情でございますが、私ども知っております公然資料によりますと、韓国軍陸軍が約五十六万、海軍艦艇約七万六千トン、約百隻、それから海兵隊が二万、空軍作戦機が約二百十機。それからいま申し上げました在韓米軍でございますが、陸軍が約三万と、それから海軍支援部隊空軍戦闘機が約六十機でございます。これに対しまして、北朝鮮は、陸軍が四十一万、二十三個師団、それから三個旅団でございます。それから海軍艦艇が約一万九千トン、隻数にいたしまして百七十隻空軍作戦機が約六百機でございます。で、在韓米軍がおるということによりまして、現在南北の軍事的なバランスがとれているというふうに感じております。
  39. 田英夫

    田英夫君 いまシュレジンジャー氏の言葉を引用されましたけれども、アメリカはどう考えようと、日本考え方が重要なのでありますが、総理、この状態の中で、いまシュレジンジャー氏は北の冒険主義というようなことを言っておるようでありますが、総理はこれを肯定されますか。
  40. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先刻もお答えの中に申したとおり、その国にはその国としての、どういう政治形態を選ぶかということは主権者の自由に属することでございますから、これに対して、私がこの席上で、北の、北鮮の政治形態を批判することは適当ではないと思っています。
  41. 田英夫

    田英夫君 私はそういうことを伺っているのじゃなくて、北は南を侵略しようとしているのかどうか、そういう総理の御見解を伺っているのであります。北の脅威はありますか。
  42. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 脅威があるかないかということは、やはり当事者間の判断というものが中心になるわけでありまして、私がここで、北からの侵略はあるとかないとか言うべきものではないわけで、当事者のやっぱり判断というものが一番問題の中心であろうと考えるわけであります。
  43. 田英夫

    田英夫君 木村前外務大臣は、私の外務委員会での質問に対して、明快に、北からの脅威はないと言われたのであります。そうして、いま防衛庁お答えでも、まさに在韓米軍の存在を合わせると、これは軍事的に均衡を保っているというお答えであります。そういう中で、総理がいま言われたことを伺っていると、木村外務大臣お答えを否定されるわけですか。
  44. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 否定ということにはならないでしょう。もし、それで大きな軍事的な衝突が南北の間に起こる可能性は、現在国連軍も駐留しておりますし、そういう可能性は私は考えてはいないわけです。しかし、脅威ということになってくると、これはやはり当事者が一番判断の中心であるべきであって、そういう意味において、私が脅威があるとかないとかここで言うことは適当でない。しかし、大規模なやはり軍事的衝突が起こるとは私は考えていないということでございます。
  45. 田英夫

    田英夫君 三木さんはリベラリストであり、クリーン三木と言われ、外交の面でも国際協調を旨とされる、いわゆるハト派と見られているわけですけれども、にもかかわらず、いまのお答えは、残念ながら木村前外務大臣お答えよりもはるかに後退したと現実に言わざるを得ない。これは一体どういうわけなのか。金日成主席が高麗連邦を提唱したのは御存じだと思いますが、こういうことを北側は言っておるんですよ。それでも、つまり政治体制が違った状態のままでいいから一つの連邦になろうとまで提案をしている。これでも北からの脅威はあり得ると思いますか。
  46. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) どうでしょうかね、田さん。この脅威というものは、当事者というものが一番大事じゃないでしょうか、脅威があるとかないとか。これはやはり日本から見れば一番重要な問題は、大きな軍事的な衝突が起こる可能性があるかないかという判断はわれわれとしてもしなければならぬ、これは日本に対しても影響が多いわけだから。そういうふうなことは私は起こり得ないであろうという判断でございます。しかし、現実にこの南北の間に脅威というものがあるのかないのかということになってくると、やっぱり当事者自身の問題というものは非常に大きな要素を私は含んでくると思う。外からわれわれとして言えることは、大きな軍事的衝突の危険性はあるとは思っていないということであって、現実の脅威ということになってくると、これはやはり当事者というものが一番この問題については、あるかないかということの判断というものは、やっぱり当事者の一つの判断というものが中心になるのではないかというふうに私は考えるのであります。木村外務大臣と私の考え方が大きな開きがあるとは思わぬのですがね。木村大臣も、恐らく軍事的な衝突ということを考えて、そういう意味朝鮮半島に大きな戦争の起こるような脅威というものはないというふうに言われたものだと私は判断いたします。
  47. 田英夫

    田英夫君 総理のお考えには同意できませんけれども、仮に当事者が判断をするとすれば、北側は連邦制でもいいじゃないかとまで提案をしている。一方、南の朴大統領は、北からの脅威があると言って非常な民主主義を制限するようなことを実際にやっていて、脅威があるんだから民主主義が制限されても仕方がないんだと、こう南の国民に言っている。これはもう明らかな状態だと思うのです。  そこで、大変私は残念なことを聞くのですが、三木さん、どうして、木村さんと考え方は違わないとおっしゃいましたけれども、これは宮澤さんに失礼になるかもしれませんが、わずか六カ月の外務大臣を更迭をされたんですか。
  48. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、新内閣は必ずしも田中内閣のそのなり人事を受け継ぐという性格のものでもありませんので、私の判断で、できる限り新しい閣僚によって三木内閣は運営をしたいということで宮澤外務大臣を任命したわけでございます。
  49. 田英夫

    田英夫君 大変残念な情報を聞いているんですが、三木さんが総裁指名をされた十二月一日、その三日前の十一月二十八日、ソウルの大使館——日本大使館から電報で、次の首班は三木武夫氏であるという韓国青瓦台の情報を電報で伝えてきているという事実がありますが、これは御存じでしょうか。
  50. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そういう情報があることは存じませんし、三日前に三木首班内閣なんかを予想する、それはどういうことか知りませんが、そういうことも私はどうも信じられないことだと思いますが、そういうことば別に私は何も知りません。
  51. 田英夫

    田英夫君 私もあえて情報とだけ申し上げておきます。まことに残念なことでありますが、日本国民よりも韓国の大統領の方が日本の次期首班を知っていたという裏を国民がどう考えるかということをこの際申し上げておかざるを得ないのです。  次の問題に移ります。外務大臣、日韓大陸だな協定は今国会に提出をされますか。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) やがて提出をいたしまして、御審議を仰ぎたいと思っております。
  53. 田英夫

    田英夫君 この問題については、そもそも調印のいきさつからしてさまざまな問題があるわけでありますけれども、まず最初に、私はこの三月十七日からジュネーブで開かれます海洋法会議との関係で伺いたいと思いますが、外務大臣、二の点はどういうふうにお考えですか、海洋法会議と日韓大陸だなの協定との内容の問題。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 恐らく海洋法会議において、たとえば経済水域というようなものが問題になるであろう、それとの関連がどうなるかといったような関係のお尋ねであると考えておりますが、仮に海洋法会議で経済水域二百海里というものが、これは私は最終的に決定するのは今回のジュネーブではなかろうと、相当時間がかかると思いますけれども、仮にしかし、そういうものが決定をされたといたしましても、大陸だな協定で言っておりますところのいわゆる南の北域はもちろんわが国の経済水域に全部包含されますけれども、同時に、ほとんどかなりの部分が韓国の二百海里の経済水域にも包含されるということになりまして、依然としてそこに競合関係が起こってまいります。また、海洋法会議で経済水域というものが仮にいつかの時点で決定されたとしましても、大陸だなという別の概念がそれで消えるわけではない、恐らく大陸だなというものの考え方はそのまま残るであろうというふうに考えられます。そういたしますと、御承知のように、大陸だなというのは本来的に大陸から出ているたなという観念でございますために、わが国のような島国は、大陸だなという主張をいたしますと、もともと不利な立場にございます。ことに、わが国の周辺に海溝がございますために、法律的には必ずしも有利な立場でない。そうして、あの地域がまずいわゆる大陸だな、大陸からの大陸だなに包含されるという主張は、相当恐らく法律的に根強いものがあるということになります。すなわち、経済水域という観点から見てもかなりの部分は重複をいたしますし、大陸だなというものの考え方が海洋法会議の結果なくなるわけではない。その両方から考えてまいりますと、結局、両国の間のどこかで何かの妥協をしなければならない。韓国の場合、すでにあの地域は自分のほうの大陸だなに属する、したがって、米国資本などに権限を与えて開発をしようということを考え、また実行を具体的に考えておったわけでございますから、一応そういう大陸だなあるいは経済水域といったような論争はやめて、共同開発をして、その果実を二つに分けようではないかという、そういうあの条約の思想は、私はわが国の国益に、海洋法会議の帰趨いかんにかかわらず、かなうものである、さように考えておりますので、やがて御審議を仰ぎたいと思っておるわけであります。
  55. 田英夫

    田英夫君 大陸だな、韓国との間には、いま大臣が言われたように、韓国の延長線論と日本側の中間線論という対立があった。そういう中で、意見が一致しないから共同開発という形にしたんだと、南部の問題ですね。ところが、それはわかりますよ、そこまでの経過ならば。しかし、この十七日から開かれる海洋法会議で結論が出るかどうかはわからないと言われたけれども、少なくとも日本政府が、これ外務省の情文局で出している資料ですけれども、日本政府の提案というのは、二百海里というところまで大陸だなを広げるというか、範囲を確定する、限定すると、こういう提案をしようとされているわけですね。これは事実ですね。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、いわゆる経済水域と大陸だなとをどういうふうに調整するかというむずかしい問題がございますので、わが国としては一応そのような考え方をしておりますことば事実であります。
  57. 田英夫

    田英夫君 いや、これを十七日からの会議に提案されるんですか、されないんですか。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 以前からわが国として  はそういう議論をいたしておるわけであります。
  59. 田英夫

    田英夫君 大変おかしいじゃないですか。日本は大陸だなは二百海里までだと、つまり、下が延長線で続いていなくても、海溝があっても、とにかく二百海里までは大陸だなだと、そこに大陸だなが来ていれば。そうすると、今度の日韓間の協定の共同開発区域というのは、まさに日本の権利の及ぶところになるわけじゃありませんか、日本の主張だと。いかがですか。
  60. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 若干技術的な点がございますので、私から御説明申し上げます。  わが国が、大陸だなは二百海里のところでとどめるべきであるという立場をとっており、今度の海洋法会議においてその立場に立って主張をいたすというつもりでおりますことは先生御指摘のとおりでございます。これはただし、大陸だなというものが認められる場合には、その外側の限界は二百海里でとどめるべきであるという議論でございます。そこで、その大陸だなの制度そのものについて、今度の海洋法会議で、この大陸だなというものが、先ほど大臣が言われましたように、制度として消えてしまう、否定せられてしまうという状況は全くないわけでございます。日本立場は、日本朝鮮半島との間に大陸だなが横たわっているような場合には、中間の線でもって距離的基準のみをもって決めるべきであるという主張でございます。この主張は、現在の私どもが署名をいたしました日韓条約のもとにおいても、政府は依然としてその主張を続けているわけでございます。この海洋法会議においてもその主張はいたすつもりでおります。しかしながら、その日本の主張に対しまして、大陸だなは自然延長の線によって決まるのだという別の主張があるわけでございまして、この主張というものが今度の海洋法会議の結果消えてしまうということはあり得ないわけでございます。すなわち、韓国がとっております自然延長の立場と同じような立場をとっております国がほかにもたくさんあるわけでございまして、この中には中国も含まれるわけでございます。したがいまして、現実の客観情勢といたしまして、わが国の主張のみが通って、それによってすべてが確定するという状況は、客観的な事態としてはあり得ないわけでございます。
  61. 田英夫

    田英夫君 これはおかしいんですね。日本が二百海里までは大陸だなになる可能性があるという主張をして、その可能性は依然としてあるわけでしょう、大臣。にもかかわらず、それをどうして放棄するのですか。日本国民の権利を韓国と半分分けにすることになるんじゃないんですか。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 全くそうではないと思います。つまり、わが国は海洋法会議でそのような主張をいたしてまいりましたけれども、会議全体の趨勢というようなことも将来のあるべき姿としては考えておかなければなりません。この条約は、結局、ですから、わが国の主張は主張とし、韓国の主張は主張とし、その問題を一応おきまして、そういう論争にかかわりなく共同開発をしようと、こういうことに妥結をいたしたわけでありまして、わが国の主張を引っ込めたということにはなっておらないわけであります。
  63. 田英夫

    田英夫君 私の言っているのはそうじゃなくて、日本政府が二百海里までという主張をしておきながら、その主張が通れば、当然あの地域は、あの海域は日本の権利のものになる。にもかかわらず、どうして韓国を入れにゃいかぬのですか。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 問題は、その主張が通ればという、その前提に問題があるわけであります。わが国は、わが国の主張が間違っているとは思いませんけれども、その他の国にはその他の国の主張がございます。韓国には韓国の主張がございます。したがって、そういう論争を一応おいでおいで、両方で均等に果実を分け合おうではないかというのがこの条約でございます。
  65. 田英夫

    田英夫君 日本政府が延長線論をとっていて、その論でいくとあそこはもともと日本のものにはならないというんだったら、それは半分にするということは国益上からもいいかもしれませんよ。しかし、日本政府の主張が通れば当然日本のものになるというときに、どうしてそれをわざわざ放棄するのですか。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この条約はすでに交渉を終わっておりますから、それでございましたら、もう少し客観的に申し上げる必要があると思いますけれども、そもそも大陸だなという物の考え方は、大陸から出ているたなということであります。わが国が大陸でなくて、韓国が大陸につながっていることは、これは明らかではございませんでしょうか。
  67. 田英夫

    田英夫君 いや、日本政府の主張は、そんなことを言っているのじゃなくて、日本政府の主張は二百海里までと言っているのでしょう。それが通れば当然日本のものになるというものを、どうして放棄するのですか。韓国は自分の方からすれば延長線論の方が有利だからそれを主張するのはあたりまえなんですよ。日本政府は二百海里までが通ればそれが有利だからそれを主張しておるのでしょう。その中にあるものをどうして向こうへ渡す必要があるのですか。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そもそもこれには国際司法裁判所の判例もあると思いますけれども、大陸だなというものは、大陸からの自然の延長、かってはそれが二百メートルまでと考えられておった時代がございますけれども、二百メートルまで、あるいは開発可能な深度までということになっておりまして、開発可能というのは、いまでは二百メートルどころではなくて、はるかに深いところまでの開発が可能であります。したがって、大陸だなの主張に基づく限り、公平に見まして、大陸だなというのは大陸から出ているたなでございますから、わが国の立場は必ずしも有利でないということは明らかであると思います。
  69. 田英夫

    田英夫君 それだったら、二百海里なんという主張しなきゃいいじゃないですか。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国は、しかしながら、経済水域との関連もあり、大陸だなというものを無限に認めることは理屈に合わぬではないか、二百海里で限るべきではないかということを海洋法会議で主張をいたしておるわけです。
  71. 田英夫

    田英夫君 結果としては日本の領域になるんですよ、そこが。国民の大事な権益になるんですよ。それをどうして——しかもそこには非常に多くの石油があると言われている。それをどうして韓国と共同開発しなくちゃいかぬのですか。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 結果的にはわが国の海域になるのですとおっしゃっていらっしゃるところに問題がございます。つまり、わが国の主張と他国の主張とが一緒にならないわけでございますから、わが国は海洋法会議でわが国の主張は主張としていたしますけれども、両者の主張が異なったときにどうするかということは、結局話し合ってものを解決するしかないということになろうかと思います。
  73. 田英夫

    田英夫君 総理ね、いまのお聞きになっておわかりになっていると思いますが、少なくとも海洋法会議が終わるまでは、この日韓大陸だな協定というものは国会に出すべきじゃないですよ。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま海洋法会議の帰趨を客観的に考えますと、まあこれから海洋法会議の議論がございます。そしてこれが最終的に条約になるまでにはかなりの時間がかかると思われますが、そうなりましても、恐らくは、二国間の経済水域が重複したときにどうなるか、あるいは両者の大陸だなが競合したときにどうなるかということについて海洋法会議は有権的な結論を出すことができずに、それは両者間で何かの協定をする、仮に中間線でありますとか、いろいろな方法があると思いますけれども、そういうことに最終的には任せざるを得ないであろうというのが、客観的に見ますと私どもの見通しでございます。
  75. 田英夫

    田英夫君 中間線だったら、これまた日本のものになるんですよ。ここに図がありますけどね。一番大事な、向こうが勝手につくった第七鉱区のところは明らかに全部日本のものになるでしょう。その可能性もある。二百海里でも日本のものになる可能性が強い。そういう中で、どうして海洋法会議を待てないんですか。総理、どうですか。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国の主張は中間線ということで考えておるわけでありまして、海洋法会議がどの時点においてどのような妥結をいたしますか、いかなる妥結をいたしましても、結局、今回のような場合、あるいはこれはよその国にもたくさん例がございますけれども、最終的には二国間の話し合いということにゆだねざるを得ないであろう、そのような展望のもとに、そういう問題をたな上げいたしまして共同開発ということに踏み切った。それは、先ほど申しましたような理由から、わが国の国益にかなうものであろうという判断であります。
  77. 田英夫

    田英夫君 総理、どうですか。これ、わかっていますか、総理から聞きたいんです。
  78. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 外務大臣のような考え方で政府国会の承認を受けるべく準備をいたしておる次第でございます。
  79. 田英夫

    田英夫君 総理ね、これは日本国民の大事な権益、しかも、いま一番問題になっている石油を外国に売り渡すという話ですよ、権利を。もう少し慎重に考えてください。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私として、余りわが国の利益にならないことをあけすけに申し上げたい気持ちはございませんけれども、御承知のように、わが国自身が深い海溝を近くに持っているということは、これはもう御承知のとおりでございますから、そういう観点から申しますと、いわゆる大陸だな論争をいたします上で、大陸でない、島国であるわが国は、客観的には有利な情勢にないということは、これは御賢察をいただけるであろうと思います。
  81. 田英夫

    田英夫君 有利じゃないって、日本は二百海里説を、だからとっているんでしょう。それと中間論と延長論と、三つある。そのうちの二つの場合は日本のものになるんですよ、これが。どうして可能性を残しながら海洋法会議の結論が出ないうちに急ぐんですか。これはわかりませんよ、そんな、幾ら言われても。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国の大陸だな二百海里説というものは決して多数説ではないということも、これも御承知のとおりでございますし、海洋法会議が一体いつ最終的に妥結をするかということも定かでありませんし、妥結をいたしました後、このような経済水域あるいは大陸だなが競合した場合にいかにするかということについて、恐らく海洋法会議が明確な結論を出すことができずに、両国間の、関係国間の話し合いにゆだねるということも、恐らくは、残念でありますけれども避けられそうもない、そのような展望のもとにこの条約を考えたわけであります。
  83. 田英夫

    田英夫君 はっきり言ったらどうですか、日韓大陸だな協定は間違って結んじゃったのだと。国民の権利を売るようなことをやってしまったのだと。それは残念だけれども結んでしまったから国会に出すのはやめますと、はっきり言ったらどうですか。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 失礼ですが、全くそうではございません。この条約によってわが国はわが国の国益をかなり獲得したというふうに私は考えております。
  85. 田英夫

    田英夫君 どういうふうに獲得したのか、ちょっと説明してください。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 少なくとも大陸だなの主張で申します限り、わが国がこのような島国である性格から言って、韓国側の主張に相当な理由があると第三者的には考えざるを得ない。これは地図で見ますと、あの地域がわが国に非常に近いではないかということは多くの方が仰せられますけれども、平面図で見ますとそうでありますけれども、わが国のすぐ西側に大きな海溝があるということは断面図で見ますときわめて明白でありますから、第三者的には、大陸だなの論争をする限り、わが国は決して有利な立場にないということは、これは認めざるを得ません。そういたしますと、大陸だな論争に関する限り、こういうことはあまり申し上げたくないわけですけれども、第三者的には韓国に利があると恐らく考えざるを得ない。そういう場合に、したがって、その根拠に基づいて韓国があの地域を自分の国の大陸だなの一部であると考え、そうして開発利権を韓国側が持つと考えることは、第三者的には、残念でありますけれども、相当の理由があると考えざるを得ない。しかし、わが国にはわが国の主張が、先ほどの田議員がおっしゃいますように、ございますから、そこでそういう論争をたな上げにして共同開発をしようということにいたしたわけでありまして、私は正直を申しまして、この点は韓国側にも相当の譲歩を求めた結果であるというふうに考えておるわけであります。
  87. 田英夫

    田英夫君 全く違うのですね。国際法的に、海洋法的に考えて、大陸だなというものの定義は一応大陸だな条約にありますよ、第六条に。これが変わる可能性があるのかないのか、それじゃ伺いましよう。
  88. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 御指摘がございましたように、大陸だな条約があるわけでございます。その中に、大陸だなの定義ないしはその境界の確定についての基準が掲げられておるわけでございます。その大陸だな条約に掲げられております基準ないし考え方のもとにおいて、私どもは、日本韓国との間に横たわる大陸だなの場合においては中間線によるべきであるという主張をしておりますし、韓国側は、まさしくその制度のもとにおいて、韓国の主張する大陸だなは、外縁、すなわち沖繩海溝のところまで及ぶのだという自然延長の立場をとっているわけでございます。この二つの相異なる立場が、来たるべき海洋法会議の結果、どちらかに決定的な、具体的な基準が設けられるというふうに至る見通しは全くないわけでございまして、先ほど申し上げましたように、これは韓国がとっております唯一の立場ではございません。非常に多くの大陸だなを抱えております大きな国が皆とっている立場でございますし、先ほど外務大臣が申されましたように、国際司法裁判所の判決の中においても、大陸だなの境界を設定する場合においては、自然延長の立場、理論に基づく境界確定をきわめて明示的に支持している見解が表明されているわけでございます。ほかにも事例といたしまして、海溝のところまでで境界を確定しているという国際的な先例もございますし、先ほど外務大臣が言われましたごとく、私どもといたしましては、韓国に対してはあくまでも中間線によるべきであるという主張を今後も続けるつもりでおります。しかしながら、その主張のみによって物事を確定するということができないというのが実は現実の状態でございまして、したがって、現実の問題といたしまして、両国間で紛争を伴わずにあの地域を開発するためには、共同開発という構想によって処理をせざるを得ないという結論に達した次第でございます。私どもといたしましては、海洋法会議における討議、趨勢、それからその結論ということも十分に踏まえた上で、この協定の締結ということの処理をいたしているわけでございます。
  89. 田英夫

    田英夫君 いま現存する規定で言えば、国際法で言えば、大陸だな条約がそれに当たるわけで、その第六条は中間線理論をとっているわけですね。それによると、あの地域は日本のものになる。国際司法裁判所の判例には確かに延長線論を支持しているものもある。そして大陸だな条約の規定によると、そこで紛争があった場合には関係国が全部話し合えということになっていますよ。中国、北朝鮮はどうなりますか。
  90. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点につきましては十分中国の立場ば配慮したつもりでありまして、中国がいかなる法的な権利を主張されたといたしましても、このたび引きました線はそれよりかなりの余裕を見て引いてございますので、恐らく中国側がどのような主張をされても、それには答え得るものであると考えておりますけれども、中国には、念のためこの条約については説明をいたしてございますし、また、お話があれば、いつでもそのお話し合いに応ずるということを、わが国は再三実は中国にお伝えをしてございます。現在、中国との間に別の目的で具体的な話し合いをいたしておりますけれども、その席上でもこの問題が中国側の立場として提起されたことは、ただいままでのところございません。北鮮については、これはもともと朝鮮半島の南側の地域に関する問題海域に関する問題でございますから、別段関係はないと思っております。
  91. 田英夫

    田英夫君 そんなばかなことはないですよ。あの地域の大陸だなは中国からと朝鮮半島から出て来ているでしょう。関係国という主張がある。現に、中国も北朝鮮も抗議をしておるじゃないですか。話し合いしているのに、どうして中国が抗議するのですか。
  92. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 中国がその立場を声明において留保しておりますことは存じておりますので、したがいまして、いつでも日本としてはこの問題について話し合いをいたす用意がありますという意思表示を中国にいたしております。それから北鮮でございますけれども、先ほどお話にもございましたように、南北朝鮮というものは、両者ともいずれかの機会に統一をしたいという希望を持っておるわけでございますから、仮にどういう形でどういう統一が行われましても、韓国と結びました条約上の権利義務というものは、統一された場合にもそれが継承されると考えるのが、これが常識であると思います。
  93. 田英夫

    田英夫君 いま日中平和友好条約を結ぼうとしている。現に私は東京の中国大使館の人と話し合っている中で、この日韓大陸だな協定について厳重に強い態度をとるということを中国が主張をしている。外務省はそれを知らないのですか。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年のたしか二月でございましたか、中国がそういう声明をいたしたことはよく存じておりまして、したがいまして、本件に関する疑義は、いかなる場合でも日本側はお話し合いをする用意があるということを中国側に申してございます。
  95. 田英夫

    田英夫君 そうなると、協定は先に結んじゃった、関係国があと二つ残っているけれども、これはどうなるのですか。国際法違反ですよ。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申しましたとおり、中国との関連では、いつでも話し合いに応ずる用意があると申しておりますし、現実に引かれました線の引き方というものは、中国がどのような国際法上の権利を、あるいは国内法上の権利を主張されましても、十分に答え得るものであるという自信を私どもは持っておりますので、そのゆえに、いつでも話し合いに応じますと申しております。北鮮につきましては、ただいま、先ほど御答弁をいたしたとおりであります。
  97. 田英夫

    田英夫君 いま一、二示しただけで、この日韓大陸だな協定というのは国際法的に見てきわめて疑問点が多いんですよ、総理。これをあえて強行して、この国会で承認を求めるのですか。いまお聞きになっていて、おわかりになりませんか。こんなに不思議なことはないと思いますよ。
  98. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) すでに調印もしておる問題でございますし、したがって、政府国会の承認を受けるべく準備を進めておる次第でございます。
  99. 田英夫

    田英夫君 なってないですよ、それは。いまの疑問点について聞いているんですよ、疑問点との関係を。
  100. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 疑問点は、外務大臣が田さんのいろいろの疑問点にお答えをしたとおりに考えております。
  101. 田英夫

    田英夫君 総理は疑問点についての御理解がないようであります。疑問があるものを強行して、国民の前で押し切っていこうとするわけですね、それは。
  102. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 押し切るということではないでしょう。田さんのいろんな質問に対して外務大臣お答えをしておるわけです。ああいう政府考え方のもとに、これを国会の承認を受けるべく準備を進めている。疑問をそのままというんじゃないので、田さんの疑問には外務大臣がいろいろ、田さん自身が御納得いくかは別として、これは国会の審議にゆだねるよりほかにないですね。しかし、外務大臣としては御説明しておりますような態度でこの準備を進めている。これに対して、それは納得できないという問題についてはございましょう。それば国会の審議にゆだねるよりほかにはないと考えます。
  103. 田英夫

    田英夫君 大変はっきりしてきたんですよ。大変疑わしい点はあるけれども、押し切るんだということだと思います、その態度は。つまり、外務大臣がさっきからいろいろお答えになっているのは、これからどうなるかわからないんだと、海洋法会議の結果は。わからないんだけど、いまとにかくこれは結んじゃうんだということでしょう、簡単に言えば。
  104. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどからのお尋ねを伺っておりますと、これはもともと日本の領域ではないかという御主張が片方であり、他方で……
  105. 田英夫

    田英夫君 主張って、私が言っているんじゃないですよ。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 他方で、中国なり北鮮はまた何か言うのではないかという御主張が別にあり、その辺がどういうお立場でのお尋ねか必ずしも私によくわかりません。が、私としては、実際海洋法会議がどのように一ある将来の時点て妥結をいたしましても、このような海域については結局関係国間の話し合いによるしか解決のしょうがない。しかも、大陸だなの主張で言えば、わが国は決して有利な立場にない。これは仰せられますように、韓国に対しましても、あるいは中国もそういう考え方を持つかもしれないという中で、このような条約を結んだことは私は国益にかなっておるという判断であります。
  107. 田英夫

    田英夫君 国益の問題をそこで言われるから、黙っているわけにいかなくなるんですよ。将来、可能性として日本のものになる可能性があるものを、どうしてこんなに急いで韓国と共同開発にしなくちゃならないのか、この点は、どうしてもこれはお答えになってないですよ。  海洋法会議でもう一つ。二百海里の経済水域が決まる。これは政府は、農林大臣もこの間言っておられるように、日本もこれに同調されるつもりですね。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現在、経済水域二百海里というのが、いわば海洋法会議の大勢になっておりますけれども、その内容は実は千差万別であり、どのような条件のもとにこれを認めるかということも主張が対立をいたしておりますので、わが国としては、全体がまとまらなければいけないということはもとより考えておりますけれども、その中で、わが国の国益をできるだけ織り込んだ形で経済水域二百海里というものをまとめていきたいと、こういう交渉上の立場を持っております。
  109. 工藤良平

    ○工藤良平君 関連。  海洋法会議が十七日から開かれるようでありますから、それに関連をいたしまして、私、二つの問題についてお伺いをいたしたいと思います。  まず一つは、農林大臣は、さきの衆議院の農林水産委員会で、専管水域十二海里の問題について、これを認める方向でいくということが方針として出されているようでありますが、この問題について、昨日の日本向けのモスクワ放送によりますと、日本における醜悪な宣伝キャンペーンと題する解説を伝えておりまして、その内容の中で、ソ連漁船の日本沿岸における操業をめぐって日本で展開されている抗議に反論をして、公海における漁業は正当な権利であって、ソ連の極東沿岸に出漁している多くの日本漁船もこの権利を行使しているわけである、ソ連ではだれもこれに反対をしていない、ソ連の漁船も同じ権利を持っており、日本の領海は決して侵していないということを強調しているということが報道されているようでありますが、そういう立場から、日本の沿岸漁業を守る、そういうことも含めて、専管水域の十二海里を認めるという方向に決定をしたのかどうか。そのいきさつと、それに対する大要をまず一点としてお聞きをいたしたい。  それからもう一つは、この専管水域三海里を十二海里に拡大をするということは、これは日米安保条約に基づく海峡の自由航行の問題とも私は非常に大きく関連をするように考えるのでありますが、現在領海水域の中で、たとえば宗谷、あるいは津軽、対馬海峡、こういうものを初めといたしまして、八十ヵ所の国際海峡が日本の領海に含まれるというようなことになるというように私は理解をいたしているのでありますが、そういたしますと、たとえばアメリカの軍事用の艦艇が軍事的目的を持って行動をするというようなことになった場合に、これらの海峡については、安保条約の事前協議との関連の中でどのようなことになるのか。そのことが一つと、さらに防衛庁では、これまでにも核装備をしたアメリカの潜水艦が鹿児島沖のトカラ列島から琉球列島にかけて航行しておるということをキャッチしている。そういうことが理由で、この三海里を十二海里に専管水域を延ばすことを承認をするということについて問題を提起をしておるというような考え方も出ておるようでありますけれども、この問題については、特に核を搭載をしておるということになりますと、これは日本の非核三原則という関係から、当然それは、今後日本としては航行を拒否するということが私は当然であろうと、このように考えるのでありますが、そういう関係からいたしまして、政府の内部におきましても、二つの問題をめぐりまして、漁業的な立場からと、それから日本の安保条約、防衛という立場から問題が提起されておるように私は思いますが、これについての見解と、今後の対応策についてお聞きをいたしたいと思います。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 専管水域の問題は農林大臣からお答えをいただけると存じますが、そのソ連の放送と言われます醜悪云々でございますけれども、それは、公海上で漁をするということは一応自由でございますけれども、しかし、他人の漁具、漁船といったような財産を傷つけるという自由なんていうものは本来あるはずがないのであって、そんな権利はだれも持っていないはずでありますし、そもそも公海でありましても、先にそこで漁業をしておる者、いわゆる先着者というものの慣行的な権利は当然あるはずであって、そこへ後から入ってきて、並んで、ぶつかって漁をやってもいいというものではない。これは私は、わが国の立場は明らかであると思います。  それから、確かにただいま御指摘の国際海峡の問題というのは、領海が十二海里になりますと出てくる問題であろうと思います。わが国としては、本来わが国は海運国であり、たくさんの大きな船を世界に動かしておりますから、国際海峡の使用が妨げられるということはわが国の国益に沿わない、なるべく自由航行というものがわが国にとっては好ましいと考えておりますし、その場合、タンカーと、いま御指摘の軍艦といったようなものを分けて考えるということは国際的な大勢ではない。どちらかと言いますと、多くの国が大型タンカーの方がいろんな意味での障害を起こしやすいと考えておるような趨勢もございますので、その辺のことを見ながら、十二海里になりますその間の経緯等も考えまして、御指摘の問題はその時点で考えていきたいというふうに思っております。
  111. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 漁業の立場から申し上げますが、私は、領海十二海里を宣言をすることがわが国の漁業を守るゆえんである、そういう時期に来ておるので、もう十二海里を宣言をする時期に来ておるということを言ったわけでございます。ただ、領海十二海里を宣言するに当たりましては、今日まで、領海問題については国際的な合意のもとで決められなきやならないというふうなことをわが国も主張しておりますので、これは海洋法会議の中において国際的な合意を得たいと、こういう意味で申し上げたわけでございます。  なお、ソ連船がわが国の沿岸漁業に多大な被害を与えておる。現在ソ連船が操業しておる海域は三海里から外でございますから、確かに公海ではございます。しかし、公海といえども、わが国の沿岸漁民の漁具あるいは網等を引きちぎる等の、そうした多大な被害を与えるということは、まことに私は国際的には信義の上から言って不当な行為である、私はそういうふうに思って、ソ連当局に対しても厳重な抗議を今日までしてきておるわけでございます。
  112. 工藤良平

    ○工藤良平君 委員長
  113. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 手短に願います。
  114. 工藤良平

    ○工藤良平君 私が後段で申し上げました、安保条約とそれから非核三原則との関係については、三木総理としてはどのようにお考えでございますか。
  115. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど私がお答えいたしました立場は、総理大臣の御了承も得てお答えをしておるわけであります。すなわち、十二海里が決定いたします経緯、その態様を見まして決定をいたしたいというふうに考えておるわけです。
  116. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まだ十二海里というものは、海洋法会議でこれは国際水域として決められておるわけでもないわけでございますから、恐らくは、大勢はそこへ行くと思いますけれども、これはまだ海洋法会議を経てみる必要がございますので、そういう時点において政府考えるということでございます。
  117. 田英夫

    田英夫君 これは総理、いまのお答えで、きわめてあいまいなので、さっぱりわかりませんけれども、一体外務大臣お答え総理お答えと、何かこう結びつかないんですがね。もう一回。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの国際海峡の点でございますね。この点は十二海里というものが大勢になってまいると思いますし、わが国もそれに同調をいたしたいと考えておりますけれども、これにつきましても、その十二海里にどのような条件をつけるかということは、海洋法会議で各国いろいろな主張がございますので、その主張の帰趨を見ながら、決定した時点で国際海峡の航行をどのようにするかということをわが国として決めたい、そういうふうに申し上げておるわけでございます。
  119. 田英夫

    田英夫君 伺っているのは、非核三原則をその中で守るのか守らないのか、その主張をするかしないかということです。
  120. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それでございますから、いわゆる十二海里になりましたあとの国際海峡というものを、いわゆる自由航行にするか、あるいは無害航行にするかといったような主張は、各国いろいろな異なった主張がございますので、海洋法会議の決着の帰趨を見ながら、最終的にただいまの問題も決めてまいりたい、こういうふうに申し上げておるわけです。
  121. 田英夫

    田英夫君 なぜ、こういう問題になると帰趨を見てとおっしゃって、大陸だな協定のほうは帰趨が決まらないうちにさっさと結ぶんですか。
  122. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 正直を申し上げまして、わが国の国益というものを優先して考え立場からそうなります。すなわち、大陸だな条約は、ああいう条約を結ぶことがわが国の国益にかなうと考えましたから結んだわけでございますし、国際海峡の扱いも、どういうふうに考えたら一番わが国の国益に適するかということを考えますがゆえに、帰趨を見てと申し上げておるわけです。
  123. 田英夫

    田英夫君 これは三木総理に伺う以外にないんですが、非核三原則を守られるのかどうかです。
  124. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま外務大臣が言っておるように、これはその会議で、この十二海里の問題なども、自由航行の問題などもいろいろと論議をされるでありましょうから、そういうふうな会議の結果なども見て判断をしても、日本は判断として決して遅くない。その間に、しかし、判断をするについて日本政府考える判断の尺度というものは、日本の国益というものに対してどういう措置をすることが合致するかという角度でこれを検討をするということでございますから、したがって、いまここで十二海里という問題がどういう形で決着を見るかということも見ない前に、いろんなことを結論的に申し上げることは時期として早いのではないか。その時点においてこれは日本政府として判断をするということでございます。
  125. 田英夫

    田英夫君 時間がないので残念なんですけれども、しかし、どうしてもこれだけは確かめなければいけないのですが、津軽海峡を核を積んだアメリカの軍艦が通ることがあり得るんですね、それじゃ、これから。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 海洋法会議の全体の雰囲気から申しますと、先ほども申し上げたことを繰り返して恐縮でございますけれども、いわゆる軍艦、それから大型タンカー、いずれが沿岸国にとっていわば迷惑な存在であるかということになりますと、大勢から申しますと、大型のタンカーなどはどっちかと言えばその方が迷惑であるというような考え方が多いようでございます。しかし、その点については、わが国の実情から申しますと、そのようなものの航行を制限されてもらっては困るという国益がございます。他方で非核三原則の問題もあるのでございますから、それで、先ほどから申し上げておりますように、わが国はわが国の国益を主張しながら全体の帰趨の中で、その段階で御指摘の問題を決めてまいりたい、そのように申し上げておるわけでございます。
  127. 田英夫

    田英夫君 韓国との間の大陸だな協定は結論出なくとも結ぶ。こういう国民にとって非常に危険な感じのする核積載艦の通航については、趨勢を見る、その辺の政府の態度が明らかになったということで、きょうはこれ以上時間がありません。  さらに、韓国の問題ですが、金大中事件は一体どうなりましたか。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、いわゆる金東雲書記官がこの事件に介在したと考えられる問題につきましては、わが国の捜査当局の知り得た事実と、韓国の捜査当局が発見したと称せられる事実との間には必ずしも十分な一致点がございませんで、したがいまして、その点について韓国が昨年の八月に一応捜査を打ち切るとした立場に対して、わが国は満足をしていない、疑問が残っておるということを韓国に何度か申しておりまして、最近では、一月の末であったと思いますが、照会を続けておるのでございます。  それからもう一つの点、金大中氏自身が、韓国人並み、あわゆる韓国の一般市民並みの自由、これはわが国の自由とは当然異なると思いますけれども、それを回復することが大切であるというわが国の立場は、最近の報道等によって見ますと、金大中氏はかなり政治活動をしておられるように見受けております。三月一日に一日だけああいうことが起こりましたことは事実でございますけれども、一般論として、かなり韓国人としては一般市民並みの政治活動は許されておるように報道等では判断をいたしております。
  129. 田英夫

    田英夫君 国家公安委員長、この金東雲事件の捜査の現状韓国といま合わないと外務大臣言われましたが、これはどうですか。
  130. 三井脩

    政府委員(三井脩君) いままでも、しばしばいろいろな機会に申し上げておりますように、あの事件で金東雲一等書記官が重要な役割りを果たしたということを捜査の結果割し出しておるというのが現状でありまして、その後格別の発展はございません。
  131. 田英夫

    田英夫君 韓国日本の捜査当局の食い違いというのは、どこがどう違うんですか。
  132. 三井脩

    政府委員(三井脩君) ただいま中し上げましたように、金東雲一等事記官は、われわれの捜査によって、この犯行を犯した容疑はきわめて濃い、こういう結果でありますけれども、韓国側で言っておりますのは、金東雲書記官はそのような事実を認めておらない、また金大中氏自身も、ホテルから連れ出されるときにその連れ出した人物の中に金東雲の顔がなかったと、こういうような言い方をしておるというところが最も決定的な食い違いです。
  133. 田英夫

    田英夫君 これはどうですか、指紋。
  134. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 指紋につきましては、わが方で、犯罪現場の遺留指紋から金東雲を割り出したわけでありますけれども、韓国側からは、その指紋の点についての格別の通報はございません。指紋が現場にあったということは金東雲が現場におったということでありますけれども、その点も含めて韓国側は本人について取り調べたものとわれわれ考えておりますけれども、それについても金東雲本人は否認をしておる、こういう通報をいただいております。
  135. 田英夫

    田英夫君 三井さん、そこでもう一つ聞きたいんです。  指紋の確度、これは警察の常識として、これは科学捜査の常識で絶対なものだと思いますが、どうですか。
  136. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 警察のいろいろな資料の中で指紋ほど確実なものはないと思っております。
  137. 田英夫

    田英夫君 総理外務大臣、いまの警察当局のお答えを聞かれたと思いますよ。これでどうしてまだ何も言わないんですか。金東雲の引き渡し要求をさらにやっているのですか、これは。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのような警察当局の所見でございますので、わが国としては韓国側に対してこのことを申し述べ、韓国が昨年の八月をもって捜査を打ち切ったという態度はわが国としては満足ができない、わが国の所見はこれこれであるという照会を幾たびかいだしておりまして、最近では、一月の末日だったと思いますが、そのような照会を続けておるわけでありまして、わが国としては、この部分につきましては満足をしておらないということを外交的に先方に伝えてあるわけでございます。
  139. 田英夫

    田英夫君 早川太刀川両君は、でっち上げだと言っている。それは調べない。そして、指紋という、いま警察の方が言われるように、絶対の証拠を握りながらその引き渡しは求められない。国民の皆さん聞いたら、これはどうしたって納得できませんよ。金大中事件、起きて一年七ヵ月たつんですよ。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、外交ばかりではございませんけれども、いかなる場合にも、わが国が信じておることは信じておるとおり、それに従って行動するというのが両方の場合に一貫した原則であると思います。
  141. 田英夫

    田英夫君 あきれるばかりで、韓国問題については、なぜか歴代自民党政府は大変お弱い。毅然となさらない。総理、このことはよくお考えいただきたいと思いますよ。  日韓閣僚会議は五月という説がありますが、あるいは六月かもしれませんが、お開きになるんですか。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般、韓国の副総理が見えましたときにお話しをいたしたんでございますけれども、閣僚会議を再開するといたしますと、これは、近年のいろいろなわだかまりというようなものを、もうひとつ、お互いにとやかく申さずに、将来に向かって友好の道を開く、そういう契機といたしたい、そういう性格のものにしたいというふうに私が申し述べ、先方もそれには同意見であるということを言っておられました。したがいまして、ただいまの状況では、そのような環境が、いわばもう一つ欠けるところがあるというふうに私としては判断をいたしておりますので、ただいまどの時点で開くというようなことを決定いたしておりません。
  143. 田英夫

    田英夫君 外務大臣が、いま条件が整っていない部分があると言われたのは、それは何のことですか。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 将来の真の友好を再確認する契機とするよう、そのような雰囲気のもとにということを考えておるわけでございますから、その雰囲気というものは、どこがどうだということは、正直のところ、なかなかむずかしゅうございます。やはり全体的な環境が熟してきた、熟してこないという判断についてでございますから、どの点がどうということはちょっと申し上げにくうございます、事の性質上。しかし、ちょっとまだそういう雰囲気でないという考えを持っております。
  145. 田英夫

    田英夫君 日韓定期閣僚会議で、実は、前回の一昨年の十二月になりますが、対韓経済協力は閣僚会議を経ないということを、大平さんが外務大臣のころですが、お決めになった。これはどういうわけですか。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) やはり、韓国の経済もここまで整備されてまいりましたので、経済協力というようなことは、いわゆる高度の政治が細部まで立ち入るよりは、本当に、実際に事情に詳しい事務当局同士で事務的に積み上げて運びました方がその目的によりかなうという判断から、これはもう、かつてのように閣僚会議で徹夜をして云々というような問題ではないではないか、そういう判断に基づくものと考えております。
  147. 田英夫

    田英夫君 そういう言い方ではなくて、日韓閣僚会議で偉い人たちが決めようとすると、日本韓国政治家の間からさまざまな注文が出てきて、せっかく事務当局で詰めているものがめちゃくちゃに壊れてしまう、政治援助なんだ、だから事務当局でやった方がいいという声がありますよ。違いますか。
  148. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日韓閣僚会議が始まりました当初のことを考えてみますと、韓国の経済は今日とは同日に論じられないほど弱い経済であったわけでございますから、そういう意味で、経済協力をどのぐらいの規模にしようかというのはまさに閣僚会議の議題に適当なものであったと思いますけれども、これだけ韓国の経済もよくなり、強くなってまいりましたので、やはりこういうことは事務的にきちんと処理しました方が援助の目的によりかなうであろう。やはりそこは韓国経済の変化ということが関係をしておったと思います。
  149. 田英夫

    田英夫君 現在、韓国との間に事務当局のレベルで借款供与の交渉があると聞きますが、これは事実でしょうか。
  150. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 詳細がお入り用でございましたら政府委員から申し上げますけれども、いわゆる一九七四年に韓国考えておりました経済協力関係がまだ残っておりますので、そのうちで、韓国の民生の安定向上にどれが一番かなうであろうかと考えつつ適当なプロジェクトを選びたいと、両国の事務当局の間で相談をいたしておることは事実でございます。
  151. 鹿取泰衛

    政府委員(鹿取泰衛君) 七四年の末、昨年の末に韓国側から要求がございまして、この要請は、大体ドルで申しますと二億ドル余でございます。案件が四つございますので、それぞれにつきまして目下事務当局の間で検討中でございます。
  152. 田英夫

    田英夫君 案件四つ、言ってください。
  153. 鹿取泰衛

    政府委員(鹿取泰衛君) 一つは北坪港という港がございます。その港の建設でございます。それからもう一つは鉄道でございまして、忠北線という鉄道の近代化の問題でございます。それからもう一つは、駿州というところにダムをつくる、そして揚水の発電所をつくる。それが三つ目でございます。それから四つ目が、これは国際収支を救うということもありまして、主として農業開発も兼ねた案件、それが四つ目でございます。
  154. 田英夫

    田英夫君 これが合わせて二億一千五百万ドルという交渉だと思いますが、これと別に、ことしの一月十三日ソウルで開かれた日韓協力委員会、岸さんなどが出席されたものですが、そこで合計五億ドルに上る借款の申し出があったと聞きますが、これは事実でしょうか。
  155. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府間ではそのような申し入れを受けたことはございません。
  156. 田英夫

    田英夫君 ここにその日韓協力委員会韓国側から提出された「「農業開発基金」の創設要望の件」という資料があります。これは韓国側が日本委員に配ったものでありますが、ここに明快に「一九七五年度を以て終結する」と。その対日請求権の資金、例の日韓条約のときに結ばれた合計五億ドルの借款ですね、有償無償の。それがことしで終わるんで、新しく「「農業開発基金」の提供を要望する。」、こうはっきり書いてあります。これは御存じないですか。
  157. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういうお話がその会議でございましたことは承知をいたしておりますが、他方で、政府間では、まあ韓国経済もここまで来たことであるから、今後の経済協力関係はなるべく政府ベースでなく民間ベースの方へ移行していこうではないかという、根本につきましての話し合いもかつて実はございましたことでもあり、先ほど申し上げましたように、韓国政府からそのような申し入れを受けたことはございません。
  158. 田英夫

    田英夫君 これに韓国側ははっきり、対日請求権の後、これが終わるからその後「引き続き」と響いてあるんですが、これはおかしいんじゃないですか。日韓条約のときに一種の賠償的な意味を込めてこれはやったんでしょう。これ、延々とまた続くんですか。
  159. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 恐らくその会議においては、会議の関係者がそのような希望を表明されたのであろうと存じておりますけれども、韓国政府からそのような申し入れを受けたことはございません。
  160. 田英夫

    田英夫君 これは、さっき申し上げたように、韓国政府から来るんじゃないんですね、従来のやり方も。両方の政治家の偉いところでぽっぽっと話し合いして、話がつくと事務当局、つまり政府におりてくる。そこで混乱して困るから閣僚会議ではやめたんだと、こう事務当局がはっきりおっしゃっておりますよ。またこれ、おりてくるんじゃないですか、岸さんから宮澤さんのところへ。
  161. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいままでそのような話を私は聞いておりません。
  162. 田英夫

    田英夫君 おりてきたらどうするんですか。
  163. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、先ほどちょっと申し上げかけましたように、まあ韓国の経済もここまで来たのであるから今後の経済協力関係はなるべく民間ベースでやろうではないかということにつきましては、両国間でそうだなあという程度の合意は実はあるわけでございます。その後、いわゆる石油ショックというものがございまして、韓国もそれはなかなかわが国以上に大変であろうとは思っておりますけれども、一応そういう合意もございますこともありまして、韓国側からただいまのようなお話の意思表示はないわけでございます。それは恐らく、先ほど申し上げましたそのような両国間の一応の合意がかってございますので、そういう関係もありまして韓国政府から話がないのであろうというふうに判断をいたしております。
  164. 藤田進

    ○藤田進君 関連。  総理二つお伺いしたいんですが、韓国自身がやはり経済協力に対する非常にリアクションが強いですね、最近。評判がよくない。それから、いま四つ言われた港であろうが、交通であろうが、ダムであろうが、まあ日本人から見ると国内の交通、あるいはこれは陸海空を通じて交通も大変な状態にあるし、あるいはソウルの地下鉄、これも援助でやるということには、国内の交通状態あるいは農業基盤、ダムというわけだが、それからその他今度の予算を見ても、非常な収入について問題が出てきている。こういうときにあえて韓国に、すでにもう四千億以上の経済援助をしているんじゃないですか。これはもうこの際見直す、洗い直す。三木総理、そういう新しい内閣の観点から考えたらどうですか。  それからもう一点は、その後議題になり、どういう決着がついているのか聞きたいのは、竹島の帰属、これはわが日本の厳然たる領土であると、三木内閣総理大臣としてもこれに変わりがあるのかないのか。これがわが日本の領土であるということであろうと思うが、そうだとすれば、日韓条約以後、今日までどういう措置をとってきたのか。一時韓国保安隊が上陸して占拠していた。こういうことがほうっておかれて、今度三海里は十二海里ないし経済水域二百海里という状態も、派生した問題も出てくるわけでありますから、これば三木内閣でこの問題はもう解決しているなら問題ないですけれども、韓国も、当時日韓条約の批准に際しては、同時並行して国会が持たれた、両国。韓国は、明らかに佐藤さんから韓国の領土であると、こういう宣言を総理官邸で内外記者団の前で言われたと、こう韓国総理は議会で答弁しているんですよ。じゃ、これどうするんだ、いやこれは交換公文で、わが方は問題があると思わないが、もし向こうが問題があるんならば、交換公文でやれますと、それじゃ国際司法裁判所に行く合意はどうかと、そこに行く必要がないんだと日本は、わが領土だと、こういうような状態のまま並行線のまま実は来ているように思うんです。これはもう領土の問題です。外交の基本というのはやはり領土の保全、これを侵略されてはなりません。こういう意味からも、竹島についての三木内閣の姿勢、それから並行線であるように私は思いますが、いまだに、この解決の努力なり、めど、これをお伺いしたい。
  165. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 海外経済協力の問題ですが、藤田さんの言われるように、確かに国内でやらなければならぬ問題というものは山積しておると言ってもいいぐらいですね。そういう国内のいろんなやらなければならぬ問題というものを、全部それを優先しなければ海外の経済協力はできぬということになれば……
  166. 藤田進

    ○藤田進君 韓国です。
  167. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 韓国もやっぱり全体の問題に関連すると思います。しかし、海外経済協力というものは、単に韓国ばかりでなしに、やはりそういうことになるわけにはいかない。日本のやはり国際社会の一員としての責任を果たす意味において、まあやりたいことはいっぱいあるけれども、その一部を割いて海外経済協力をするということが、今日国際社会の一員たる日本の責務である。ことに経済的にもいろいろ困難な問題がありますけれども、経済的に発展しておるという事実は見逃すことはできないわけでありますから、そういうことでないと、全部こちらの問題を片づけてからというわけにはいかないわけで、ことに韓国は一番の隣国でありますから、韓国の民生安定というものに対して強い関心を日本が持つことは国際的な大きな責務であるという中で、非常に優先順位は私は高いと思うのでございます。そのやはり援助の仕方というものに対しては、これはいろいろと、もう少し本当の韓国の民生安定、経済の自立に役立つような親身になった援助をするように、常に援助の内容というものは検討しなければ私はならぬと思いますね。そういう意味で、そういう点ばございますけれども、全体としての経済協力あるいは技術協力も含まれるでしょうが、これをいろいろ国内の問題があるからといって、こいつをやるべきでないという論には、われわれは賛成できないわけでございます。  竹島の問題は、いままでの交渉経過もあるでしょうから、外務当局から御答弁をいたします。
  168. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 竹島につきましては、まことに遺憾なことでありますけれども、現在韓国が多少の構築物をつくり、そうして韓国人が、少数ではありますが、上陸しておるという現状でございます。で、御指摘のように、これについては両国間の話し合いで解決をする、もしそれができないときには第三者の調停というようなことが取り決められておるわけでございますけれども、ただいままでのところ話し合いがついておりません。で、わが国は昨年も、これはわが国の領土であるとの考えによりまして、そのような状態韓国に申し入れをし、抗議をいたしておるわけでございますけれども、まことに遺憾なことでありますが、ただいままで解決を見るに至っておりません。
  169. 藤田進

    ○藤田進君 総理にお伺いしますけれども、第一点の経済関係、これはやっぱり見直すべきだと思うけれども、全く従来と同じ方針のようにも聞こえます。こればインフレ対策もあるけれども、新幹線にしろ、東北新幹線あるいは九州、あなたのところの地元に関係の深い四国へのかけ橋四つ、これら、その他相当抑えていくことになっているんですよ。その他たくさんありますよ。今度社会保障だ何だと言えば切りがない。にもかかわらず、従来どおり、それは民間ぺースにしたって中身の問題ですし、これはやっぱり国内の経済事情とも対応した措置が必要だと私は思います。再度お伺いします。  それから竹島については総理外務大臣にゆだねたわけですけれども、これは日本の領土と三木内閣総理大臣は見ているのかどうか、これははっきりとしていただきたい。  それから抗議を申し入れたというのに、領土が現実に侵犯されているんじゃありませんか、現在。これは領海も含めて問題ですよ。領土の保全、領土の侵害、これは何よりも優先されなきゃならぬでしょう。今日、中ソの対立もいろんな問題があるけれど、やはり領土問題も御承知のとおりです。これをほっておいて、そうして経済協力は云々というようなことは、順位がこれはもう違います。かたい決意を表明していただきたい。
  170. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この海外経済協力というものは、絶えずやっぱり検討して、それが本当に生きた援助、また相手国に喜ばれるような援助にするということに対しては、絶えず内容については見直すということが適当かどうかわかりませんが、常に深甚の注意を払う必要はあることは私もそのとおりに思います。ただしかし、国内でいまいろいろな四国の橋などを例に挙げて言われましたけれども、しかし、どこの国でも皆抱えておると思いますよ。工業先進国は国内に問題を抱えておるけれども、国内で問題を抱えながら、その一部を割いて海外経済協力、技術協力をするということが、今日のやっぱり工業先進国の大きな国際的責任の一つになっている。それを日本は、これは問題が違うというわけには——国際的な大きなやっぱり一つの責務であるということになっているわけです。
  171. 藤田進

    ○藤田進君 領土がとられている……。
  172. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) だから、韓国の場合は、いま先ほど申したように、一番の隣国であって、韓国の民生が安定し、また、経済的にも自立の基盤を強国にしていくことは、これは好ましいことでありますから、そういうことで韓国も当然にやっぱり相当な優先順位をつけて協力をすることは当然だと思います。その内容については、いろいろとこの点に対して改革を加えることは、これは当然なさなければならぬことだと思います。  竹島は日本の領土であると考えておるわけでございます。
  173. 藤田進

    ○藤田進君 いや、今後の姿勢を聞いているわけです。答えていない。日本の領土だと言ったって、向こうは軍隊で占領しておる。
  174. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは忍耐強くこの問題の解決のために努力をしなければならぬ。
  175. 田英夫

    田英夫君 私は、もちろん一番近い国ですから、また古いつき合いのある朝鮮半島、朝鮮民族とのつき合いですから、韓国との友好というものを本当に確立をしなければならないと思って、その立場から申し上げているわけでありますけれども、先ほどからのさまざまな例でおわかりのように、なぜかこっちの腰が座っていないという、これはもう否定できないと思います。  経済協力の問題をさらに続けますが、これはもう世論の評判はまことに悪いわけであります。これは事務当局でもいいんですが、日本から韓国へいろいろ借款を供与する、その場合の商品の価格の算定基準というのはどこの価格になるんですか。
  176. 鹿取泰衛

    政府委員(鹿取泰衛君) 韓国ばかりでございませんで、日本が発展途上国に協力いたしますときには、やはり先方の自主的な判断あるいは自助努力を助けるという基本方針がございます。   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕  したがいまして、先方に細かい細目まで援助国の方で指示するということは本来好ましいことではございませんし、国際的に見ましても、DAC、パリにございますOECDの中の開発委員会におきましても、なるべく援助を受ける国の自主的な判断を尊重するようにということがございますし、われわれとしてはそういうことでございますので、先方がいろいろ買い付けます一々の商品の価格につきまして当方から一々注文をつけるということは適当でないと考えております。
  177. 田英夫

    田英夫君 ここに「韓国における不実企業の実態」という外務省のアジア局北東アジア課でおつくりになった資料があります。これは在韓国日本大使館が韓国経済事情研究員に委託をして調査をしたという、これだけ膨大な資料でありますけれども、これを、中を読んでみると、まことに詳しい調査でありますが、たとえば一つの例としてプラスチック、大韓プラスチックという会社の例で、これは不実企業ですが、結局、韓国における価格というのは日本の三倍になるということが言われています。その辺のところに、対韓経済援助の価格の問題などに非常な疑惑があるわけですが、大体この資料を外務省はどういう意味でおつくりになったんですか。
  178. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 韓国とは経済協力関係が深うございますので、韓国の経済の実態が、その時点、昭和四十六、七年であったと思いますけれども、どのようなものであるかということを事務当局が判断の材料にしたいと考えまして、韓国の調査機関に委託をしてつくったものでございます。
  179. 田英夫

    田英夫君 表題にあるとおり、これ不実企業なんですよね。韓国の企業の実態というのはまことに不安定であると、つまり政府も、日本政府もこの点に非常に不安を持ってお調べになったというふうに考えていいですか。
  180. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 当時韓国経済が不況になりまして、不実企業というのは、御承知のとおり、経営困難になってきた企業を言う由でございますけれども、そういう実情がどのようなものであるかということにつきまして調べてもらったわけでございます。これは事務の参考にいたしたいと考えていたしたように聞いております。
  181. 田英夫

    田英夫君 私、最初これ入手いたしましたときには、大分削ってありました。削ってあればそこを見たくなるのが人情ですから、その削ってある部分を全部埋めてみましたが、約二十ページぐらい切れているところもあるわけですが、これはどういう意味でお削りになったんですか。
  182. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 衆議院予算委員会におきまして、その調査を資料として提出するようにという一議員の御要請がありまして、私どもとしましては、まず、この資料そのものは韓国の民間調査機関に委託をしてつくったものでございますので、そこに書いてあることが政府意見だというふうにお考えいただいては困るということ、それから、実はかなり、御承知のように、あけすけにいろいろ書いてございますので、よその国のことでもございます、いかに政府の所見でないとは言え、よその国のことでもあり、よその国の人、よその国の企業についていろいろかなりあけすけに書いてございます上に、現在の韓国国内情勢から判断をいたしますと、そのような調査をした機関、その関係者がいろいろな迷惑をこうむるであろうという危険が実は相当高いと、こう判断もいたしまして、そういう危険を避けるために、やむを得ず、ある部分だけ抹消をいたしました形で衆議院予算委員会の質問者に資料としてお手渡しをいたしたわけでございます。
  183. 田英夫

    田英夫君 私もその意味はわからないではありませんから、ここに書いてある、特にこのまとめてお削りになった部分の内容——触れたいところがあるんです、実は、これに日本の企業がまつわっているという意味では。しかし、あえてそれに触れることをこの場では避けた方がいいと思いますが、しかし、それにしても、政府がこういうものをおつくりにならざるを得ないという韓国の企業の実態、そういうところに膨大な借款あるいは援助、あらゆる援助、そして日本の企業進出というものがある、この現状を、総理、どういうふうにお考えになりますか。
  184. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 恐らく、そういう調査を委嘱したときには、不況な状態で、なかなか経営不振の企業も相当に多いときだったと思うんです。   〔理事柳田桃太郎君退席、委員長着席〕  そういうことで、現在では、そういう世間でいわゆる不実企業と言われるようなものは現在では解消になってきておると承知しておりますが、その当時は大変な経営の困難な企業が相当にあった時代であったわけですから、その実態を調べ、そういう原因などにも政府自身が、援助しておる国の政府としては理解を持っておきたいということで、そういうことを委嘱したものだと思います。
  185. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  186. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  187. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、総予算三案に対する田英夫君の質疑を続行いたします。
  188. 田英夫

    田英夫君 午前の最後に韓国に対する経済協力問題を伺いましたが、韓国を含めまして経済協力という問題は、日本の経済外交のもちろん大きな柱であります。総理は、資源小国と言われる日本の場合に、一つは資源を世界から集めなければならないという立場で、もう一つはいわゆる経済的に進んでいる日本の経済力を開発のおくれている国の国民の皆さんに寄与するために使うという、この両面から、日本の経済外交をどういうふうにお考えになりますか。
  189. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) やはり、日本だけの一つの経済力を持っておる国が発展途上国に対して協力を行うということは、これは当然の責務だと考えなければならないと思います。そして、その援助をする場合に、その金が生きた金として使われ、また相手国からも喜ばれる援助でないと、せっかく国民の税金を使ってそれは意味がないわけでありますから、その内容がその国の立場に立ってものを考えるということは必要でしょうね、その国の立場に立って。しかも、経済自立、民生安定という両面からして、しかも相手の国に喜ばれるという形で今後の経済協力、経済技術協力などを進めていくことが必要である。貿易を伸ばすための援助であるというような、まあ従来そういうふうな批判もあるわけですが、貿易も無視できないにしても、やっぱり第一義的には相手の国の経済自立、民生の安定、そのために資するということでないと、経済外交と言われておるものの目的は達成できないと考えておる次第でございます。そういう点で、日本の今後の経済協力というものは、しかも財政的にも窮屈な中でやるのですから、いままでより以上に経済協力の内容というものに対しては常に慎重な検討が必要であると、こう思います。
  190. 田英夫

    田英夫君 いま言われたとおり、私も同感なんです。そういう原則に従って対外経済協力を行う場合に、政府として計画をお進めになるわけですが、実はそれに使われる資金というものは、お金は言うまでもなく国民の税金であります。日本国民の税金を日本国民に還元するのでなくて、非常にいいことなんですが、外国の人のために使うという場合には、当然日本国民の承認を得るべきだ。冒頭伺った民主主義原理であります。となれば、これは国会の承認を受けるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  191. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ先に予算というものを組んで、そうして国会の事前の承認ということは、やはり経済協力というものに対しては弾力性も要りますから、非常にいろいろな変化も起こってくるわけですから、先に予算で国会の承認を受けてということになってくると、援助というものが非常に硬直化されていく弊害もありますから、やはり事前の承認ということには私は適さないと思いますが、これはその事後において国会に報告をすることは当然のことだと思います。
  192. 田英夫

    田英夫君 私はその論には承服できないのでありまして、やはり国民の税金を外国のために使うのですから国会の承認を求めるのが筋だと思いますが、そこで伺いたいのですが、五十年度予算の中で、対外経済協力に使われる金額は一体どのくらいあって、内容はどうなのかということがわれわれにはさっぱりわかりません。各省ごとにお示しいただきたいと思います。
  193. 鹿取泰衛

    政府委員(鹿取泰衛君) 来年度の予算について申し上げますと、経済協力費は田先生御指摘のように各省に分かれておるわけでございますけれども、外務省所管について申し上げたいと思います。  総額は六百九十六億八千六百六十八万五千円でございます。主な内容は、国際協力事業団の交付金、それから国際協力事業団に対する出資金、それから経済開発等援助費それから国際分担金拠出金等でございます。
  194. 田英夫

    田英夫君 各省全部出していただけませんか、金額まで。わからないから、これ。こういう機会に言ってもらわないとわからないのです。
  195. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 通産省関係の経済協力関係予算につきまして五十年度の原案に計上されておりますのは、トータルで六十四億七千八百万。大きく分類で申し上げますと、発展途上国における開発計画策定への協力といたしまして二十二億六千一百万、民間ベースでの研修生受け入れ、専門家派遣事業等に要する経費といたしまして十三億八千八百万、発展途上国における投資協力事業費といたしまして十六億六千一百万、その他を含めまして六十四億七千八百万でございます。
  196. 田英夫

    田英夫君 関係のある各省、いまの点を簡単でいいですから……。
  197. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 農林省の昭和五十年度におきます海外経済協力関係のものでございますが、経済協力費として計上されておりますのは、財団法人海外漁業協力財団に対します助成を内容といたしました国際漁業振興協力事業に必要な経費といたしまして四十一億四千五百万円が計上されております。
  198. 田英夫

    田英夫君 それだけですか、農林は。それでトータルですか。
  199. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) これが直接経済協力費として計上されておる予算でございますが、関係する予算といたしましてはその他約十一億円がございます。
  200. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 運輸省関係は、鉄道、港湾、空港等のインフラストラクチュアの整備、あるいはマラッカ、シンガポール海峡の水路測量等でございまして、予算面におきましては違った項目の中にいろいろ含まれておるようでございますが、拾い上げてみますと、おおむね約一億一千六百万円程度になろうかと思います。  その内訳は、開発途上国に対する運輸基盤施設調査の一環として中近東の三カ国に対する調査等でございまして、これが約三千万円ぐらいになると思います。それから運輸関係の技術協力を推進するためのコンサルタントの実務研修、あるいは発展途上国のプロジェクト開発のための情報収集、これが大体二千万ぐらい、それから東南アジア貿易投資観光促進センターによる観光宣伝調査等の協力費として約五千万円、東南アジア諸国の造船業振興のための専門家の派遣等が約三百万円、世界気象監視計画の実施の困難な国に対しての世界気象機関を通じての援助の実施約九百万円、大体そういうところでございます。
  201. 竹内道雄

    政府委員(竹内道雄君) 大蔵省の所管分がございまして、合計九百二十三億五千二百七十二万二千円でございます。  内訳といたしましては、海外経済協力基金への出資金六百五十億円、賠償等特殊債務処理特別会計への繰り入れ九十二億四千万円、ビルマ経済技術協力費三十六億円、韓国経済協力費五十五億七千九百万円、対外食糧等特別援助費、KRでございます、四十七億一千三百万円、アジア開発銀行技術援助拠出金六億一千六百万円、日本輸出入銀行への貸付金三十六億円、以上合計先ほど申し上げました九百二十三億五千二百万円でございます。  ただいま申し上げました数字、念のために申し上げますけれども、国会の始まりましたときに御提出いたしました「昭和五十年度予算及び財政投融資計画の説明」と申すものがございますが、それの四十三ページのところに「経済協力費」という項目がございまして、四十四ページから四十五ページにかけまして、外務省所管、大蔵省所管、文部省所管、厚生省所管、農林省所管、通産省所管、以上合計一千七百六十七億円という数字が書いてございます。
  202. 永井道雄

    国務大臣永井道雄君) 文部省に関するものは、狭義の経済協力というよりは、技術協力とか教育協力を含んだものが多いわけです。  三つに分類されますが、まずユネスコに関連いたしますものが四億一千六百万円、OECD外多国間、これが二十九億九千六百万円、それから二国間の協力でございますが、これは百一億四千六百万円でございます。
  203. 山中和

    説明員(山中和君) 厚生省所管でございますが、厚生省は、経済協力費としましては、後進国援助を主としておりますWHO——世界保健機関に対して二十四億八千万の拠出を行っております。さらに、そのほかに、後進国の天然痘根絶事業に対して七百万円の任意拠出を行っております。それからそのほか、広い意味での経済協力費としまして約三千百万を計上いたしまして、発展途上国の医師それから看護婦の研修等の受け入れを行っております。さらにそのほか、国際がん研究機関というのがリオにございまして、ここへ分担金一億円を拠出してございます。  以上でございます。
  204. 田英夫

    田英夫君 労働省はありませんか。
  205. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 労働省関係におきましては、国際協力事業団が行います技術協力のうちで職業訓練関係のものを担当しております。予算は国際協力事業団の予算でございます。そのほかに、技能開発費として五十年度一億一千四百万ばかり組んでおります。それ以外に、アジア地域の労働組合関係者の交流として七百万ばかりの予算があります。
  206. 田英夫

    田英夫君 いまあえて各省詳細に伺ったのは、主計局長言われたとおり、大まかな数字は各省ごとに出ていることは私も知っておりますが、いまのようなことをこういう席で伺わないとわからないんです、われわれは。国民の皆さんはもちろんわからない。この中にはいわゆる発展途上国のために寄与する有益なものがたくさんあると思います。そういうことなどは特に国民がもっと知ってほしいし、また、援助してはならないという国民気持ちになるようなものもあると思います。こういう問題三木さん改めて、先ほどお答えありましたけれども、いまの各省のこういう数字を出していただいた中でどうお考えですか。
  207. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私が最初に田さんにお答えしたのは、全体としての予算の御承認は受けるわけですが、最初の御質問も個々の経済協力や技術協力の内容を国会に提出をして承認を受けろという御意思であったと思ってお答えをしたわけですが、まあ全体としての承認を受けることは当然ですが、個々のケースを具体的に一々国会の承認を受けて、その国会の承認という範囲内で海外協力をやるということは、事の性質上、機動性もなくなってくるですね。変化に適応する弾力性もなくなってくるし、そういう田さんの言われる意味はよくわかりますけれども、こういう問題の性質上、事前に、援助をする前に国会の決議で縛り上げていくということは援助というような場合にはどうも適さないのではないか。もう少し事後でいろんな御報告をして、いろんな御批判を受けるというような形の方が実際的ではないのか、援助というものからして。そういう点で、それは実際としてはどうもそういう縛り方は私は援助というものになってくれば非常にやりにくいという感じがいたしまして、いまのような形で、報告というものをもっと詳細にするという形で問題を処理することが適当だと私は思います。
  208. 田英夫

    田英夫君 実は世界最大の対外援助をやっているアメリカでも、これは議会の承認を得ているわけですよ。アメリカの対外援助法の二十一条には、政治犯を処刑したり投獄したりするような、そうした国に経済軍事援助をしてはならないという、これは議会の意向でこれをしてはならないということになって、現にこれは発動して、韓国に対する軍事援助を削減しているという事実がある。もう一回そういうことを含めてお答えをいただきたいと思います。
  209. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 援助をする場合に、日本としても、その援助の内容というものに対して日本としての立場というものはいろいろあるわけで、軍事的な援助はやらないとか、そういう国々立場に立って制約はあると思いますが、私の言うのは、援助の前に国会で、この国に対してはこういう援助をしてやるのだということを国会の承認を受けるということになれば、そのことによってまたよその援助を受けない国からもいろいろな問題が起こってくるでしょうし、どうも個々のケースをあらかじめ国会の承認を受けて縛るということには適さないのではないかという感じがいたすわけでございますので、いま事前に個々のケースごとに国会の承認を受けるというような考え方はないわけでございます。
  210. 田英夫

    田英夫君 国会のことは国会で決めなければならないわけでありますが、すでに参議院には対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案というのが議員立法で提出をされているわけであります。その中には、いま総理が言われたような意味を込めて、緊急の場合の経済協力にはこの承認を求めなくてもよろしい、こういう除外規定もあるわけでありますし、また、六カ月に一回、国会にその結果を報告するという規定も含めているわけであります。大きな計画を国民の前に示す。国会に示すということは国民に示すことですから、これは当然のことじゃないでしょうか。これは民主主義原理じゃないでしょうか。
  211. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そういうことで、全体としてのこれは御承認は受けるわけですからね、全体の枠。そうして、それに対して御質問があれば答えるわけでもございますし、しかし、予算というもので一たん決めますと非常なやはり拘束力を持ちますから、そうなればなかなか機動的に弾力的に援助というものを使いにくい面もあって、そういう点でなかなか個々のケースの承認というものは、少しそういう資金の性質上適当ではないんだと思うわけでございますが、国会でいろんな法律案も出されておるということでございますが、それは国会の御意思に従うよりほかにはないわけですが、政府考え方としては、どうもそういう縛り方をするのには適さないという考え方でございます。
  212. 田英夫

    田英夫君 それは、私は三木さんの最初の民主主義に対する御見解と非常に違ってくると思われます。私も、そう言っては失礼ですが、行政府が、お任せしておいても国民の意思に沿うような経済協力を過去も現在もやっていらっしゃるというなら、あえてこういうことを申し上げる必要はないかもしらぬ。しかし、現実に韓国に対するこの不実企業の問題こういうところにも日本のお金が行っているのですよ。また、さっき申し上げたように、いわゆる大物政治家の間で話をつけて、それがおりてくるというような形で国民の税金が借款という形で韓国政府の金がいくのですよ。その現実があるから、事前に国民の目を通さなければならないということを申し上げているのです。あえてもう一回お答えを願います。
  213. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) どうも私はやはり、その言われる趣旨はよくわかりますよ。しかし、援助というものはいろんな変化もありますしね、そういう変化に適応してやらなければならぬ援助の場合もあるでしょうし、一年間の予算で縛り上げておくということにはどうも適さないのではないか。だから国会との関係というものは、もう少し何といいますか、援助の結果というものに対して報告というものはする方法を考えたらいいと思う。そして、その援助というものに対して国民代表である国会のいろんな疑問、批判に答えるという形でこの問題を処理することが適当なのではないか。予算で事前にということに対しては、どうも実際問題として非常に不都合が起こってくるのではないかというふうに考えるわけでございます。結果に対してのいろんな疑問、批判に答える責任は政府は当然にあると思います。
  214. 田英夫

    田英夫君 たとえば賠償、これは国会の承認を求めて、その結果で行われている。あるいはミクロネシア協定というのがありますが、これも金額は十八億円ですが、残念ながら、私ども反対したけれども国会で多数で認められた。ところが、こうした過去の賠償やミクロネシア協定といった、これも一種の賠償ですが、そうしたものの内容を見てみると、結果的には日本の企業を太らせる結果になっているのですね。そういうこともあるから、われわれは黙っているわけにいかないのですよ。  ミクロネシア協定、私は外務委員会でしばしば取り上げました。これは十八億円というお金ですけれども、なぜアメリカはキャッシュで払って、日本は役務と物資で払うのですか。その役務と物資というものは結局日本の企業じゃないですか。日本の企業を太らせるようなことを、ちゃんとそういうところへ盛り込んであるのですね。これが歴代自民党政府のおやりになってきた経済協力であり、賠償であり、そうした援助なんですよ。そういうところに国民の金を使うということを黙って見ているわけにいかない。したがって、そういう国会の承認を求めて、表に出てきた部分が大体そういう精神で行われているのだから、陰では一体何が行われているかわからぬ。それを出しなさい。国民の目の前に、国会の中にはっきりお示しなさい、こう申し上げているのですよ。疑惑を持っているから申し上げるので、三木さんはクリーン三木と言われるけれども、きれいじゃないのですよ、過去が。だから申し上げているのです。いかがでしょうか。
  215. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 具体的なお話になってまいりましたので申し上げますが、確かに、いわゆる経済援助とDACが言いますものの範囲がかなり広うございまして、わが国もかつてはかなり、いま仰せられましたいわゆるタイドの援助が多うございました。わが国からの物資、役務の供給という意味でございますが、これは企業を太らせるというふうに御表現になりましたけれども、別の言い方をいたしますと、やはりわが国の経済、わが国から物資なり役務を供給するということが、わが国の経済にとっても必要である。また、過去にはことにそうであったわけでございますから、それをもって特定の企業を太らせるというふうにのみごらんになるとすれば、それはどうであろうかという感じがいたすわけでございます。しかし、このタイドというのは、やはりそれなりにいろいろ問題もございます。わが国の経済もここまでまいりましたから、御承知のようになるべくアンタイドに、つまり金の使途は先方の自由であるというようなふうにその量をふやしていくということは、これは私、大事なことであると思うのでございますけれども、しかし、場合によりましてはまた日本から特定の役務なり資材を受けたいというために、その目的でその援助の話が始まるということもございますので、それは一概になかなか申しにくいと思います。  それから、先ほどの国会との関係では、なかなか援助というものは私どもでも各省にまたがってわかりにくうございますしいたしますから、総理の言われますように、全体として国会にもう少し御報告をするというふうなことは、私、大事なことだと思いますけれども、今度は交渉をするほうの立場がまたございまして、無論受けるほうとしては、多ければ多いほどいいということになるのでございましょうけれども、わが国としてもやはりそれには限度があるのでございますから、どうしてもこれは交渉事にならざるを得わせんで、その場合に、こちらの手のうちが先にわかってしまったのではなかなか交渉というものはできないということ。それからもう一つは、自分の国にはこうだけれども、あの国にはこれだけやる予定ではないか、国会にちゃんとそういう報告をしているではないかというようなことを言われますと、またこれ大変に厄介なことになってきたりする場合があるだろうと思いまして、そういう点もひとつ御考慮にお置きいただきたい。これは実務をやります立場から申し上げることでございます。
  216. 田英夫

    田英夫君 それは、たとえば国際協力事業団に対して金を出しているという形で、その後のこまかいところは事業団の中でやるのですから、そう外国にすべてが漏れるということにはならないので、いまの外務大臣のおことばは私は納得できないんです。この国際経済協力の問題については法案も出ていることでありますし、これは与党の皆さんも含めまして立法府という立場で行政府との間の関係を一緒に話し合っていきたい、こういう性質のものじゃないかと思います。  次の問題に移りますが、政府は核防条約をこの国会に批准を求められるのかどうか、いかがでしょうか。
  217. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 準備が整いましたら御提出をして、御審議を仰ぎたいと思っております。この国会においてそういたしたいという目途で作業をいたしております。
  218. 田英夫

    田英夫君 核防条約は言うまでもなく非常に重要な問題をはらんでいるわけですが、そもそもこの条約が結ばれた発端は、残念ながら、核超大国がその自分たちの核の保有を固定化して、いわば核独占体制を固めようという気持ちがあったと思わざるを得ないわけでありますが、この点について政府はどういうふうにお考えになりますか。
  219. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる核保有国が核の問題を進めていきますうちに、それなりのそれに伴う危険というようなことも気づくようになってきて、この拡散は人類に非常に危ない、危険をもたらすと考えたことも私はあろうと思いますけれども、もとより田委員の言われますように、そのような動機が何がしかあったであろうということは、これは私は否定ができないであろうと思います。
  220. 田英夫

    田英夫君 本来われわれは、これはもう三木さんも同じだと思いますが、この世の中から核兵器というものをなくすという、これは日本人共通の非願だ。となれば、米ソが発議していくのではなくて、つまり核大国が言い出すのではなくて、世界で唯一の被爆国である日本世界に向かって、特に非核保有国の話し合いの中で、核保有国に対して核兵器をなくそうという方向の話し合いを進めていく、これが正しい方向ではないかと思いますが、三木総理の御見解を伺いたいと思います。
  221. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) われわれの理想も田さんの理想も違ってないと思います。しかし、核兵器をいきなり廃棄するということは、これは実際問題として容易なことではない。これは息の長い一つの大きな課題であることは明らかでございますが、そういう場合に、現実的な方法としては核軍縮という過程があると思います。そういう場合に、日本が唯一の被爆国民としてそういうことを提唱したらどうかという、提唱をしてしかるべきだと思いますが、それは実際問題として目的を達成できるかということについてはおのずから限界があると思いますが、これは日本としては今後の外交の面において核軍縮とか、究極的には核の廃棄とか、そういうことに向かって努力をするのは、日本の大きな外交の使命の一つだと考えます。
  222. 田英夫

    田英夫君 先ほども申し上げたように、日本が唯一の被爆国だという、そして日本国民みんなの一致した気持ちということから考えたら、自民党政府がもっと早く、いち早く世界に向かって核軍縮を唱え、また、米ソの核軍縮交渉についてももっと強力な発言をすべきじゃないか。現在行われている米ソの核軍縮交渉というのは、核ミサイルの保有の上限を定めるというような形で、むしろいわゆる高値安定じゃありませんけれども、そういうことじゃないんですか。そういう意味で、三木さんの従来からのおっしゃっていたことからすれば、三木内閣こそそれにふさわしい内閣だと思いますが、いかがですか。
  223. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 核の問題というのは、世界政治の大きな、これは国際的な平和の問題に関連をする大きな問題を含んでいるわけですから、だからそういうことを日本が唱えて、そして大いにやることも、それは大いにやっていいと思いますけれども、実際的な効果というものに対しては、やはり日本だけの力ではこれは容易なものでもない。国際世論というものの一つの成熟を図っていくということがなければ、なかなか言うことは言うにしても目的を達成することはできない。だから今後、非核保有国が核保有国に向かって核軍縮というようなものに対して、核保有国がもっと熱意を持たなければならぬという国際的な世論というものを日本がつくり上げていくということに努力をすることが実際的で、日本だけで申したことによってその実際的な目的が達成できるほど簡単なものではない。今後非核保有国の共通の課題としてこの問題は日本として熱心な立場をとることは必要だと私は思います。
  224. 田英夫

    田英夫君 なかなか現実の問題としてむずかしいと言われましたけれども、総理はトラテロルコ条約というのを御存じだと思います。ラテンアメリカ非核武装条約。これはいわゆるラテンアメリカ地域を非核武装地帯にするという約束でありますが、こういうことを日本が提唱してアジアでやるということをお考えになりませんか。
  225. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ一つ考え方でありましょうが、アジアというものは一体どういう地域を言うか、アジアの定義というものもなかなか漠然としておるし、アジアの国々もいろいろな国の事情によって違いますからね。だから、いますぐラテンアメリカにあったような非核武装地帯をアジアにつくるということには、なかなか一遍にそういうところに持っていくということは、これは現実的なことにはならぬと思いますが、私は隗より始めよということで、日本が核の拡散ということに対して歯どめの役割りを果たす、これを足場にして核軍縮あるいはまた核兵器の問題に対しての国際的発言力を日本は強くしていくということが実際的ではないだろうか。いきなりアジア全体の非核武装地帯といっても、各国ともやっぱり事情が違いますからね。自分自身が核防条約の批准も調印しておいてやらないで、アジアの非核武装地帯をつくろうではないかという提唱には、発言力に重みがあるとは私は思わないわけです。そういう点で、核防条約の取り扱い、日本がどうするのかというこの問題は、一つの、将来の日本のこういう問題に対する発言力という問題に関連をする問題である、これから解決していくことが現実的ではないかと、こう思うのでございます。
  226. 田英夫

    田英夫君 総理、このラテンアメリカ非核武装地帯の条約をもう少し御研究いただいたほうがいいと思いますよ。この二十八条に、効力を発生するという規定のところに、すべての核兵器保有国によってこの条約の附属議定書に署名され批准されないと、これは発効しないんですね。中国はこれにちゃんと署名をしておるんです。つまり自分たちもそういう非核武装地帯に対して核攻撃をしたり、核を使用したりしないという約束を核保有国がその地域に対してする。中国はアジアにあるんですよ。あとは全部非核保有国でしょう、アジアは。非常に結びやすい状態じゃないですか。残念ながらその他の核保有国が、このラテンアメリカの非核武装地帯条約に、議定書に批准をしないという形では発効しない。中国はいち早くしている。こういうことになってくると、アジアこそ、総理のお言葉とは逆に、最も非核武装地帯を設定するのにふさわしい国であり、その中の日本というのは唯一の被爆国だと。この声は世界に向かって非常に説得力があるはずですね。むしろアジアこそ世界の中で一番最初にそれをやるべきではないか。三木さんこそそれを提唱されるに最もふさわしい人でないかと私は申し上げているんですが、いかがですか。
  227. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 総理大臣お答えになります前に、そのラテンアメリカの二十八条の規定でございますが、この規定によりまして、御指摘のように議定書がございまして、核保有国が議定書によって保障しなければならないわけでありますけれども、保障しない国があるように聞いております。それはソ連であったと思うのでございますが、したがいまして、御設問のような場合に、そのような問題をどうするかということもあるのではないかと思います。
  228. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 考え方として私は田さんの言われることばよくわかりますが、そのために、日本が五年前ですからね、核防条約に調印したのは。そうしてその批准というものを日本がちゅうちょしておいて、今度はアジア全体に非核武装地帯をつくろうではないかという点にやはり国際的発言力というものが、そこで非常にそういう日本の言うことに重みを加えるのであろうかと  いうことに私は疑問を持つわけなんです。まず、みずからがやはりこの問題に対してみずからの決意を示して、それからいろいろ日本の決意が、世界的なそういう決意が広がっていくというようなことに対して努力をすることは当然でありますが、どうも自分のことに対しての態度がきまらないでアジアの非核武装地帯ということには、どんなものでしょうかね。私自身は、どうも日本の発言力が、まあ一つのアイデアとしてはわかっても、発言力の重みがないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  229. 田英夫

    田英夫君 いま何か、核防条約が批准されないのはわれわれのほうに原因があるようなことを言われましたが、これは自民党の中で意見が一致しないから、批准がこんなに五年たってもできないのですよ。核フリーハンド論といういわゆる自民党の中の一部の皆さんが持っている御意見は、一体どういうことなんですか。これに対しては総理はどうお考えなんですか。
  230. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いままでおくれておったのは、田さん御承知のように、あの核防条約を調印したときに三つの条件があったわけですね。その中で、核軍縮、非核保有国に対する安全保障、それとやはり平和利用に対する保障措置の平等性というもの。日本が一番その中で問題にしたのは、やはり原子力の平和利用に対して日本が不平等な扱いを受けるというような場合を懸念して、これを一番重点に置いたわけです。そういうことでその交渉がおくれておったわけで、最近になって国際原子力機構との間にこの保障措置の協定が結ばれた。また、そのことによって日本が平和利用の上において不平等な査察を受けるのではないかというような懸念は一応解消されたということで、これは現実の国会の承認問題というものが次の日程に上ってくるわけで、いままではそういうふうな、一番の国民が懸念したいわゆる不平等な扱い一を受けるのではないか、このことが原子力の平和利用に対して支障を来たすのではないかという、この懸念というものが解消しなか一つたわけでありますから、そういう意味でおくれたわけでございまして、フリーハンド論とかいうのがあっておくれたということではないわけでございます。
  231. 田英夫

    田英夫君 フリーハンド論に対してはどうお考えですか。
  232. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) フリーハンドというものは、それはフリーハンドで核兵器を開発したいというならばフリーハンド論は論理が一貫しておると思いますね。核兵器を開発すべきであるということならばフリーハンド論というのは論理一貫だ。「核兵器はつくらないのだ」のフリーハンドということには、どうも私は論理の一貫性がないという感じがいたすものでございます。
  233. 田英夫

    田英夫君 そうすると、自民党総裁である三木さんは、党内のフリーハンド論は抑えて批准を求めるということですね。
  234. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、もう日本は開発しようとしたら技術的能力があるが、核兵器を持たないという決意をすべきだ。そのことが、日本の国益に合致すると私自身考えておるわけでございます。
  235. 田英夫

    田英夫君 しかし、おかしいんですね、三木さんはこの首都東京の知事候補に核保有論者である石原慎太郎君をお立てになっておる。彼はすでに出馬を表明しておる。こういう過去の新聞、たくさんありますよ。彼が核保有論を明らかにしている。これは一体どういうことですか。
  236. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、田さんの言うように石原君を核兵器保有論者であるとは考えていないわけです。
  237. 田英夫

    田英夫君 たくさんあります。幾らでもあります。
  238. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 現在、石原君はそういう考え方は持っていない。やはり日本はいわゆる平和的な国家として、核兵器を持たない、持たないで、平和国家としての理想を貫いていこうということでございまして、日本は核開発をすべきである、核兵器を開発すべきであるという意見を石原君は持っておるとは私は考えておらないわけであります。
  239. 田英夫

    田英夫君 彼は国会の中でもそういうことを言いましたが、ここにあるのは朝日新聞、昭和四十六年七月十九日、大江健三郎氏と石原慎太郎君が並んだ記事の中で双方の意見が出ているわけですが、石原慎太郎君ははっきりと外交核を持つべきであると、こういうことを言っていますよ。もっと詳しく全部読んでもいいですけれども。速記録をお見せしてもけっこうです。いかがですか。
  240. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 現在の石原君は、核兵器を保有すべしという意見では絶対にないということでございます。
  241. 田英夫

    田英夫君 これは総理大臣のお言葉ですから、そして自民党総裁のお言葉ですから、御本人とこれは突き合わせないと、われわれ国民としてはそういうのを黙っているわけにいかない。総理総裁は核兵器を持たないとおっしゃっている。過去にこういうことをはっきり言っていて、しかも石原慎太郎君は公の席で核を持つべきでないと、こう言っていないんですね、いまだに。
  242. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 幾ら田さん、石原君を核兵器保有論者であるというふうに言われましても、本人がいまそういうことは考えていないんですから。私は、いろいろお示しになりましたけれども、現在の石原君は核兵器保有論、核兵器を開発すべきという、そういう立場には立っていないということを私は信じております。
  243. 田英夫

    田英夫君 これは時間がなくなりましたけれども、選挙用にそういうことを言っておられるとすれば、私は人間として非常に信じがたいと思います。  最後に一つ技術的なことで伺いますが、核防条約に関連をして先ほど平和利用のことを、これは不平等がなくなったとおっしゃった。しかし、それは国民気持ちはむしろ逆じゃないですか。プルトニウムをためて、いま高校生でも原爆ができるとアメリカでは言っている。むしろ査察は厳しいほどいいというのが日本国民のほんとうの気持ちじゃないでしょうか。
  244. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、日本国民といっても、だれもやはり核兵器を開発しようという考えはないんですから、プルトニウムというものを、ないしょで使って核兵器を開発しようというようなそういう一つのグループがあるとは考えられないわけですから、そういうことは、何もプルトニウムの処理に対して厳重な査察をしてくれと国民が望んでいるとは私は思わない。だれも国民は核兵器を開発しようという意図を持っているというふうには疑ってはいないわけですから、そういう意味で、何も特にそんな、あまり日本が平等な査察を受けないで日本だけ厳しく査察を受けてもらいたいと、それは田さん、何も国民はそんなに思っているんじゃないのじゃないでしょうか。疑っていませんよ。そんな、ないしょで核兵器は開発できるものじゃない。これだけの国民の総意の上に立って、そうしてないしょで核兵器を開発したりするわけはないわけですから、西欧諸国よりも日本の査察がもっと厳しくあってほしいと国民は願っているとは私は思わないんです。だから、できるだけ日本が欧州と比べて非常な差別的な査察を受けないようにあってほしいということは国民の願いだと私は思っております。
  245. 辻一彦

    ○辻一彦君 関連。
  246. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 関連はできるだけ手短に簡明にお願いします。
  247. 辻一彦

    ○辻一彦君 私はいまの、ないしょで核兵器を開発するという問題を国際的にひとつ考えてみたいと思います。それは、大国が片方で核拡散防止を言いながら、片方では小型の実験に使い得るような発電用原子炉をどんどんと輸出している。これを一体日本はどう考えるか。この件で二点伺いたい。  いま田委員が申されたように、アメリカのこの間のテレビで工科大学の学生が、十日間でプルトニウムが五キロあれば核兵器をつくることができる、こういう設計図をつくったということが発表されて全米に非常なショックを与えておるわけですが、その中で、二月四日の報道によると、イランはアメリカから八基の原子炉を輸入するということを約束をしております。これは将来のプルトニウムの分離と、それからゲリラとの存在を考えると、私は核兵器の小型を実験でつくっていく可能性というものはあり得ると思いますが、こういう大国が片方にいながら、片方でむやみに韓国に、そしてアラブ諸国に原子炉を出している。こういう点に対して一体どう考えておられるか、この点をひとつ外務大臣に伺いたい。  もう一点は、この間カナダから重水用の原子炉、いわゆるプルトニウムの大変生産性の高い原子炉を韓国が買うために、丸紅、日立がかんでおったという事実がありますが、これは非難をされていま手を引いたというが、その事実は、実際として手を本当に引いたのか。それから今後原子力機器の輸出に日本の大手やあるいは商社が関係をしてくる、こういうことをチェックする考えがあるかどうか、この二点についてお伺いをいたしたい。
  248. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) アメリカは核拡散防止条約に加盟をいたしておりますので、当然にただいまのような場合、条約上の義務をアメリカが負うわけでございます。すなわち、その場合に二国間の協定によりまして条約に定められているIAEAの査察を相手が受けなければならない。その内容は条約に定めてある内容の査察を受けなければならないということが必ずございまして、それはわが国の場合の二国間条約と同じでございますが、その上になお、相手によりましては再処理はその国の中では行わせないというような条件までつけておるようでございます。したがって、現在幾つかの国がアメリカとの間でそのような交渉をいたしておるわけでございますけれども、非常に条件がきついために、まだたとえばイスラエルでございますとかエジプトとかがそうでございますが、条約そのものができないという状態でありまして、したがって原子炉等の供給は行われていない。イランの場合にもそういう報道を承知しておりますけれども、当然にアメリカは同じことをやはりイランとの間で協定をいたすに違いありませんし、これは実はいたさなければならない。核防条約上のアメリカが課されました義務でございます。そういうふうに理解をいたしております。  それから日立の委員からお答えいたします。
  249. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 御質問の第二点は、日立、丸紅とも手を引いておるそうでございます。
  250. 田英夫

    田英夫君 いまの辻委員の関連質問でもありましたように、査察を厳しくしないと、プルトニウムがたまれば、これは三木さんはそんなことはあり得ないとおっしゃったけれども、石原慎太郎君のような核武装論者が国会の中にも出てきていた。そういう日本ですよ。これはそう三木さんがおっしゃるように甘いものじゃないと思う。そして三木さんがおっしゃった国民気持ちというのは、私に言わせれば、それは原子力発電をやるような企業の人たちの気持ちであって、企業で原子力発電をやるような人たちは査察があまり厳しくてはぐあいが悪い、こう思うので、一般の国民の皆さんは、そうした危険人物が自民党の中にもおられるという、こういう状態の中をよく知っていますよ。そこでむしろ、安心して日本で絶対に核兵器がつくられるようなことはあり得ない、こういう状態を望んでいるんですよ。  時間がなくなりましたが、三木さん、冒頭に民主主義のことからお聞きをいたしました。そして主として外交問題、それも韓国の問題にしぼってお聞きをしたわけでありますけれども、残念ながら冒頭にお答えになった三木さんの民主主義の論理は、いまの三木外交の中では貫かれていないということをはっきり申し上げざるを得ないのです。そのことを申し上げて私の質問を終わります。(拍手)
  251. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして田英夫君の質疑は終了いたしました。  源田君、質疑の用意を願います。     —————————————
  252. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 源田実君。
  253. 源田実

    ○源田実君 私は、先ほど問題になりました核兵器の不拡散に関する条約を中心として、若干の質疑を行いたいと考えます。  まず、最初にお願いしたいことは、一九七〇年の二月三日に、NPT調印の際に発表された政府声明、その骨子は三項目になると思いますが、こめ政府の方針は、現在の三木内閣においてもそれを踏襲されておると考えてよろしゅうございますか。
  254. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 調印の際に政府が申し上げたものでございますから、今日も引き続いて生きているということでございます。
  255. 源田実

    ○源田実君 そうすると、この核拡散防止条約の目的は、核戦争の防止、これが最大の目的であり、次に核技術の平和的応用の、平和的利用と申しますか、これの促進、この二点にあると考えます。それにわが国としては、一つの国として、国の安全保障問題がこれに入ってくる、こういうぐあいに考えてよろしゅうございますか。
  256. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 仰せのとおり考えております。
  257. 源田実

    ○源田実君 そこで、政府声明には、NPTは「核軍縮の第一歩になるものと確信し、」そうしてまた、その前に「核兵器の拡散が核戦争の危険を増大させると信じており、核兵器の拡散を防止することは世界平和維持に関する日本政府の政策と一致するものであるので、」と、ここで述べてありますが、この条約が核軍縮の第一歩になるものと確信しておられると。そうすると、果たしてその政府の確信どおりに核軍縮は進行しておると考えられますか。
  258. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国がこの条約に署名いたしましてから、核保有国、ことに米ソの間では幾つかの条約、協定、たしか、六つであったと思いますが、核軍縮に関して結ばれておりまして、また先ほど田委員のお話のございました、いわゆるウラジオストック等の話もございまして、そのテンポは私どもが期待したように早いものではございませんけれども、問題の性質上、長期的にやはり考えなければならない問題で、傾向としてはその方に進んでいるという判断をいたしております。
  259. 源田実

    ○源田実君 この問題については、防衛庁長官の御意見をひとつお願いしたいと思います。これは「核軍縮の第一歩になるものと確信し、」とあるが、核軍縮は進行しておるかどうか。
  260. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私は、全体的に長い目で見るならば、やはり軍縮の方向に向かっておるというふうに思っております。
  261. 源田実

    ○源田実君 現実は、時間が長くかかるので余り詳しく申し上げるわけにいきませんけれども、簡単に申し上げますと、いわゆるランチャーの数が、日本が調印したとき、アメリカが二千二百六十、ソビエトが千七百三十、それが昨年の中期において、アメリカは若干減って、内容は別ですよ、数だけ。二千百四十七、ソビエトははるかに増しまして二千四百三十五、こういうぐあいになっておるのです。そうして、ウラジオ協定は両方とも二千四百という膨大なアッパーリミットを決めておる。これが核軍縮の方向に果たして進んでいるのかどうか、これはどうお考えになりますか。
  262. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ウラジオにおきまして、協定された天井が確かに高い、現在よりも低くなければならぬのではないかということは、そうあるべきであるという感じは私どももいたしますものの、しかし、その天井がなければ今度は青天井になるという、そういうこととの関連で考えますと、高いけれども天井を設けたということは、まあ傾向としては評価すべきではなかろうかというふうに考えております。
  263. 源田実

    ○源田実君 そこのところが私にはどうしてもわからないのです。米ソともに、世界であの二国はおのおの一国で全世界を壊滅させるだけの兵力を持っておるのです。しかも、それはお互いに米ソだけが相手でやるならば、アメリカで言えば現在の五分の一の兵力、これでソビエトを完全に壊滅できる。ソビエトも同様であります。そうすると、ほかに近い国があるならともかく、近い国がないのにこの二つがアッパーリミットというのを上に上げると、こういうのは果たして核軍縮の誠意があるのかどうか疑いなきを得ないのですが、ここで誠意を信じろというわけですか、どうですか。
  264. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 世界現状が米ソの力の均衡を一つの柱として成り立っておることば、現実の問題として否定ができないわけでございますので、その米ソが無制限に核競争をするといった状態よりは、決して、大変に結構なことだと私は申すわけではございませんけれども、ともかく天井を設けようではないかという約束に至りましたことは、決して満足だと申すわけではございませんが、やはり一つの進歩であろうというふうに私どもとしては考えております。
  265. 源田実

    ○源田実君 これは、政府のお考えでは進歩というぐあいにお考えになるかもしれませんけれども、アッパーリミットを上げて核軍縮の方向に向かっておるということは、常識でどうしても受け取れないと思うのです。アッパーリミットを下げて、それでだんだん下げていくというなら話が合うけれども、いままで持っているよりはるかに上げて、もう一つちょっと申し上げますと、MIRVというやつが、これが実はウラジオストックの会談でいままでにないほど高いレベルに協定された。各国千三百二十発持つんですよ。ここまで持ってよろしい。その中に、これがたくさんの弾頭を持つとなりますと、さっき申し上げた数が、ウラジオストックの会談をそのまま持っていきますと、アメリカが最小限一万発、ソビエトもまず、これは量は非常に多いのですが一万発、こういうものを持ち得ることになるんです、弾頭を。現在アメリカが、大体多く考えても、いまのところ七千発ぐらいですね。ソビエトは、弾頭は大きいけれども二千四百三十五発。それがウラジオ会談によると両方とも一万発以上になる。こういうことはどう考えても核軍縮につながっておるとは思えないのですが、それをどうも無理やりに核軍縮であるというぐあいにお考えになるのかどうか、この点お伺いしたいですね。
  266. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) MIRVは、たしかアメリカの方の開発が先に進んでおりまして、ソ連がそれを追っていったわけでございますので、どのようにしてただいまのような協定に達しましたか私どもよくはわかりませんけれども、ある程度ソ連につくることを認めて、そうして、全体でその水準で均衡をとろうと、こういうふうになったのではないかと存じます。あの会議に出ておりましたキッシンジャー国務長官アメリカの国務長官が、これは非公式な話のようでございますけれども、アメリカの軍部、ソ連の軍部同士の考え方はやはり非常にむしろ近くって、文官である自分たちが話をおさめるのにかなり苦労をしたというようなことを言っておるわけでございますが、その辺から考えましても、やはり両国の首脳による決断というものは、おのおのかなり内部では苦しんだ末にいたしたもののように察せられますので、結果は決して満足だと私ども申すわけではありませんけれども、やはりそれだけのリミットで抑えたという点は評価をしてもいいのではないかと存じます。
  267. 源田実

    ○源田実君 「核軍縮の第一歩になるものと確信し、」とありますが、現実問題としてはこの垂直拡散、要するに核の質と量を一国内で上げる、この面においては、現実にいままでのところこれは進歩してない。問題はどこまでいっておるかというと、ここ十年間の間だけ一応この無制限な拡充を抑えると、こういうことにいまのところおさめておる、こういうぐあいに考えていいですか。
  268. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 米ソの関係でございますね。
  269. 源田実

    ○源田実君 はい。
  270. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのように私どもも聞かされております。
  271. 源田実

    ○源田実君 次にもう一つ。実は、これは米ソだけの問題なんです。ところが核兵器を現在持っておる国がほかに三国ある。その三国のうち、日本が調印したときの数をそのまま現在まで減らしばしないけれども、それ以上ふやさない国はイギリスが一国だけです。あとはフランスと中華人民共和国、ともに相当量ふやしておる。フランスは七一年に六十一発であったものが、昨年の中期に百二十ランチャー、ランチャーの数。中華人民共和国、これは一九七一年に五十台であったものが現在は百八十台、こういうぐあいにふえておる。そうして、この二国はともに核軍縮に進もうという気持ちは毛頭いまのところちょっとないですね。  実はどういうぐあいな表明があるかというと、国連加盟の早々に喬冠華代表団長が、「超大国は毎日軍縮を口にしていながら、実は毎日軍備拡張を行なっている。彼らのやっている核軍縮なるものは全く核兵器を独占して核威嚇と核恐喝を行うためのものである。中国が核兵器を開発するのは全く防御のためであり、核独占を打ち破るためである」。その次に、同じく次の十二月に、「核兵器の完全禁止破棄を抜きにして核実験の禁止を求めるのは米ソの核独占に奉仕する結果となる。中国はすべての核兵器の禁止破棄を目ざしているが、それが実現しないうちは自衛上核兵器の開発をやめるわけにいかない」と声明しておるのです。フランスのいまの大統領も、これは略しますけれども似たようなことを言っておる。こういう意味から言うと、水平方向の拡散はやっぱり進んでおると、こう認識しなければならないと思いますが、いかがですか。これは外務大臣、お願いします。
  272. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 新たにインドが核実験をしたというようなこともございまして、この五年間において確かにそういう傾向は見られたように存じます。ただ、先ほども申し上げたことでございますけれども、米国の核防条約上の義務あるいは原子力法等々の規定が、最近、ことに運用が厳しくなってきておりますので、今後そのような、さらに拡大をするというような危険は、できるだけ現在の核保有国が、いわゆる平和利用の名のもとにそうなりますことを防いでいく、そういう努力をすることには間違いなかろうと考えております。
  273. 源田実

    ○源田実君 政府の御説明にはっきり納得するわけにはいかないのですが、私はこういうぐあいに考えます。実は、各国とも核戦争を防止しようという考え方はあるけども、おのおの各国の、それぞれの自分の国のヘゲモニーと申しますか、そういうものを維持するためには、ほかの国より劣った立場におることはできない、やむを得ず核兵器の開発、軍拡、これをやらざるを得ない立場に追い込まれておって、この核拡散防止条約の最大目的である核戦争防止の方向には現実は動いてない、ちょうど反対方向に進んでおると、こういうぐあいに考えていいと思いますが、いかがでしょうか。
  274. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) やはりおのおのの国に国としての考え方、哲学のようなものがあるのであろうと存じます。覇権、いわゆる自分の国の立場を守るために開発をすべきだと考えておる国もむしろあるいは少なくなくあるかもしれませんけれども、しかし、わが国は、先ほど総理が言われましたように、そのような哲学、そのような考え方はとっていないということでございます。
  275. 源田実

    ○源田実君 そういたしますと、政府のこの声明にあります「核軍縮の第一歩になるもの」ということの確信、これは、はなはだ残念であるけどもこのとおりいっていない、したがって、核戦争の防止に対してはほとんどそれ以後五年間に一歩も進んでない、こういうぐあいに考えざるを得ないのですが、政府の御見解はいかがでしょうか。これは総理大臣お願いします。
  276. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その源田さんの言われること、よくわかります。しかし、核防条約ができまして、一九七〇年代に六つばかり協定が米ソ間で結ばれていますね、核戦争の防止協定とか、ミサイルの制限協定とか。これは源田さんの言われる軍縮とは言えぬかもしれぬけれども、核兵器の無制限に拡大することを抑制しようという協定であることは間違いない。核戦争を防止し、またこの核兵器の拡大を抑制していこうという協定であることは間違いない。それから、ウラジオストックにおける米ソ首脳会談の決定などもそういうことであります。   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕  だから、源田さんの言われる、どこがどう減らしたのかというと、軍縮というもの——実際これは軍縮には関連はありますよ、しかし、軍縮そのものだとは言えないかもしれませんね、このことは、いまの協定にしても。しかし、そのことは軍縮と無関係ではないですよね、これはやっぱり制限しようということですから。そういうことで、この軍縮の問題というものは、専門家の源田さん御存じのように、これはもう長期的な課題ですよ、これはね。いま源田さんの言われた、これを保有するのには、国際的な不安定もありましょうけれども、大国主義というものも私はあると思う。そういうことだけに、また世界の平和というものも何か米ソの核兵器の均衡というものと無関係ではないわけですね、核戦争防止に対しての。そういうことでありますから、やはりこれは非常に長期的な展望のもとに核軍縮というものは進めていく課題ですよね。一遍に核軍縮というものが目に見えて効果を上げていくということはなかなかむずかしい。  そこで問題点は、やはり傾向として、軍縮の傾向に大きな傾向としてあると私は思うんですよ。それは軍縮じゃないじゃないかと言っても、いま言ったように、制限していこうということはあるわけだし、核戦争は防止していこうということは、これは米ソが核戦争を防止しなければならぬという危険を一番知っておる国ですからね、米ソが。そういうことはあると思うが、どうも思うように軍縮は進んでいるとは思わない。しかし、軍縮を進めていくということが日本のこれからの大きなわれわれの努力をしなけりゃならぬことだとしたならば、核防条約の扱いにしても、実際に目に見えて軍縮ができるまでは、そんなものは、核防条約なんかの批准はだめだと言って、これはそれまで待ったらいいじゃないかという御意見、あり得ると思いますよ、そういう意見もあり得る。しかし、日本が本当に核軍縮をやることが世界の平和のためにこれは好ましいことだと考えるならば、やはり核防条約の中に日本が入っていって、そして核軍縮を推進していくということが、日本が望んでおる核軍縮を推進していく上において説得力があるんじゃないか、重みがあるんじゃないかというような点に私は分かれてくると思いますね。  軍縮をどこまでやっているんだと言われれば、軍縮というようなことで非常に目に見えた実績はない。しかし、その傾向にあることは事実ですね。いままでの協力は、皆そういうことに無関係ではない。その場合に日本の選択として、それが皆できて、目に見えるまで核防なんかはもうわれわれは全然考えないのだと、核防条約は。それから、なかなか軍縮は思うように進まないけれども、ひとつ日本がその中に入って、そうして発言力を強くして、核軍縮を推進してやろうといった方が、目的の達成にはやはりその方が有力なんではないかという選択の問題だと思うのです。これを、いまの状態を源田さんが納得するように、これは軍縮はこういうふうに進んでいますという説明は、なかなか専門家に向かってはむずかしいと思います。しかし、傾向としてはそう見ざるを得ないということでございます。
  277. 源田実

    ○源田実君 これは、実はフランスと中華人民共和国がこの条約に加盟する気配さえも見せてない。それで実験はどんどんやっておる。この問題をこのままほうっておいて、核軍縮ができることは今後絶対にないと考えます。中華人民共和国は、これがどこまでねらうか、これはわかりません、聞いてみないと。聞いても言わないでしょう。言わないけれども、少なくともアメリカ、ソビエトと対等の兵力を持つまではやめない。それから交渉に入って、なくするならなくしようと、こういうことになると思うのです。そうすると、今後二十年ぐらいは、このものが成果を上げることはちょっと考えられないと思いますが、政府の御見解ひとつ聞かしてください。
  278. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 中国がどのような意図を持っておるか、推測をいたすにそれ以上出ないのでございますけれども、あるいは米ソとやや近づくところまで核装備をしていく、そういう可能性というのは私もそう簡単には否定ができないであろうと思います。ただ、中国自身は、先ほどお話のございましたラテンアメリカの非核地帯にも賛成をしておりますように、自分から先に核を使うことばしないという意図をしばしば表明をしておりますので、それを疑ってかかりますと、また問題が複雑でございますけれども、そのこと自身がわが国の脅威になるというふうには考えなくてもいいのではないかと存じております。
  279. 源田実

    ○源田実君 この問題は政府の、これはまあ三木内閣ではなくて佐藤内閣のときであります。しかし、その政府声明の第一段のこの核軍縮というものは、まず、いまのところほとんど期待できない、こういうぐあいに受けとめざるを得ないと思うんです。  その次に大事な問題は、やっぱりこういう問題について、日本の国の安全保障というものを、これは絶対無視できない。安全保障に関してこれからお伺いするのでありますが、その中で、一九六八年六月十九日採択の国連決議、これは、核兵器を持っておる常任理事国が、核兵器国が侵略したときには、この常任理事国は直ちに行動に移るということの必要性を認めるという決議である。実際これが行動に移る場合には、核兵器国が全部同意してその決議が成立しなければこれはできないわけです。ところが、その侵略行動をやるものは、世界に五つしか核兵器国ないんですから、この中の一つが侵略をやる。そのときに、こういう決議、国連のこのもっともらしい決議というものは有効かどうか。自分が侵略しておいて自分を制裁することをやるかどうか。この点、外務省どういうぐあいにお考えになりますか。
  280. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この決議そのものについては、確かに幾つかの御指摘のような問題がございますけれども、ただ御存じのように、この決議の三号におきまして、安保理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、国連憲章五十一条において認められた個別的、集団的自衛の固有の権利を再確認するとございまして、この条項が発動されました場合、たとえばわが国とアメリカとの関係などはこの三号で読めるのではないか、こういうふうにも考えられます。
  281. 源田実

    ○源田実君 そのとおりであります。国連決議というともっともらしいけれども、その中で役に立つのは第三号だけである。あとはこれは実際は文章だけの問題である。第三号が一番の核心になると思うのです、私が本日のこの質疑を行う中で。その日本の場合には、日米相互協力安全保障条約に依存する、それと自衛隊と二つあるわけです、防衛のための柱が。ところが、その中で政府は、従来、非核三原則の場合にもアメリカの核のかさに期待していると、こう言っておりますが、この核侵略に対してこの考え方はいまでも変わりありませんか。総理大臣お願いします。
  282. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 変わりありません。日米安保条約というものは、核抑止力、こういう点で大きなやっぱり一つの評価を私はいたしておるわけでございます。
  283. 源田実

    ○源田実君 そこで、しょっちゅう話の出るように、日本は非核三原則というものを持っておる。これは衆議院で議決までされております。私は初めのうちの二つ、つくらない、持たない。これはちょっと常識で考えて、戦略的に考えてもいま日本でそんなばかなことをやると、これは危険というよりも大変なことになるし効果がない。しかしながら、三番目の持ち込みを許さない——許さないのもいいでしょう、効果があるのなら。しかし、実効果が上がるかどうか。核のかさで守ってもらうと言っておいて、かさは持ち込んではならない、この論理がどうも私にはわからないのですがね、どういうぐあいにやるのですか。
  284. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 源田さんは、軍事情勢非常にやっぱり専門的な知識をお持ちになっているのですが、どうなんでしょうか、いま核兵器を持ち込まなければ核の脅威から防げないという時代でしょうか、いまの時代が。自分のところに持ち込まなければ核の脅威から守れないのだという、いろんないまの軍事的な面からいってそういう時代でしょうか。私はそうは思わない。核兵器を持ち込まなければ、これはもう日本は核の脅威から守れないという時代であろうかということは、むしろ源田さんにお聞きしたいぐらいです。こう言うことは、私はなかなかやっぱりそういう時代ではないのではないかという感じがいたすのでございます。
  285. 源田実

    ○源田実君 これは私がきょう質問する立場で、私が答弁するのはちょっとおかしいのですが、この問題は私の考えを申し上げますと、日本のような国に膨大な戦略核を撃ち込むようなばかなことをする国はちょっといまないと思うのです。安保条約があれが直ちにアメリカの反撃が出る。日本に対して核兵器を使う場合は戦術核である、そういうことになるのです。そのときに大変なことが起きる。日本アメリカの核のかさに期待すると言っておる。その核を持ち込んではならない。そうすると、日本のラインに来るアメリカの兵隊さんは、核兵器なしで日本を守らなきゃならぬ。核兵器なしで日本を守る者は、核兵器を持っておる者の前には全く屠殺の状態になるのです。これをアメリカがやるでしょうか、果たして。大変なことがここに起きる。そうして、事によるとアメリカはそういうときには、いまはやめておるけれども徴兵をやるかもしれない。日本は、自衛隊は徴兵じゃないのです、志願です、自衛隊員は。日本は志願でやって、状況によっちゃ鉄砲やいろいろなものを捨てて逃げれば一あれはたしか職業選択の自由で逃げることができる。アメリカは徴兵で来る。それが核兵器の前で持ち込みは許さないでやられて、果たして日本の防衛をやってくれるかどうか、ここらに矛盾はないでしょうか、政府はどうなんですか。
  286. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 非常にむずかしい問題でございますが、しかし私は、日本の防衛というのは、やはり結論的に申し上げますと、まず国民の防衛意思、あるいは抵抗意思と申し上げた方がいいかと思いますが、それがまずみなぎっていなければならない。それからいま一つは、核。これはもう何と申しましてもアメリカに依存しなければならない。それからいま一つは、国民が、わが国土と、わが国民を守るという、そういう抵抗意思に基づいた自衛のために必要最小限度の防衛力を具体的に物理的に備えておらなければいけない。つまり、無防備論議は賛成しないわけでございます。じかも私は、先ほど源田先生おっしゃいましたけれども、日本の防衛はこの三つ。国民の抵抗意思と、核と、そして自衛のために必要な防衛力。この三つの、一つを欠いても日本の安全保障というものは達成できない、こういうふうに考えておるわけでございまして、私は、日本の置かれておりまする、いわゆる現憲法のもとにおきまして非核政策をとる以上、いまのようなことで日本の国を守らなければならないと、かように考えております。
  287. 源田実

    ○源田実君 ところがいまのように、日本国民はそういうような日本を当然守るべき義務というものは何も法律的にはないのです。しかし、そういうような、国民日本の国を守らなきゃならないというような教育はほとんど行われていない。ここに大変な問題がある。また憲法上もそういうものは一つもないのですよ。いまの憲法の中に、日本国民は納税の義務はある。しかしながら、国を守らなければならぬ義務はないでしょう。ところがね、これが共産主義国のは非常にはっきりしておる。ソビエトのは、皆さん御存じでしょう。「一般兵役の義務は、法である。ソ連邦軍における軍事勤務は、ソ連邦市民の名誉ある義務である。」こうなっておる。その次にはどうなっておるか、「祖国の防衛は、ソ連邦各市民の神聖な義務である。」こういうようなことを書いてある。それから、先般発表されました中華人民共和国の新しい憲法、この中には、その二十六条に「祖国を守り、侵略に抵抗することはすべての公民の崇高な責務である。法律に従って兵役に服することは公民の光栄ある義務である。」この方が正しいと思うのです。私は共産主義者じゃない。共産主義というのはちっとも好きません。しかしながら、国の防衛に関してはこういう態度でやるべきである。しかるに長沼判決のごときああいうものがどんどん出てくる。これはいかがでしょうか、この問題。政府のお考え、何かこれに対して手を講ずるような具体策があるならば、ひとつそれを伺いたい。
  288. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 憲法の中には、そういうソ連や中国のような規定は無論御指摘のようにございませんけれども、私は、源田さん、日本国民というものが国を守る意識というものを持っていないとは思わないんですよ。島国であって、そして皆日本の国をいざというときには守ろうという意識国民の中にないとは思わないんです。やはり、そういう場合に対して抵抗する精神、あるいはまた行動も起こすでしょうし、そういうものは私はあると思います。常に国を守る、国を守るということは言いませんけれども、やっぱり日本人としては、これは日本人というのはよそへ、よその大陸の国家のように簡単に移住もできないですからね。一億の人間がこの小さな島の中で自分の運命をかけていくのですからね、国土を守ろうという意識のない国民が私はあるとは思わない、憲法にはないけれども。そういう点で、もう国はどうなってもいいんだ、この国土が侵されても、もう侵されっ放しで守る意識はないんだとは私は思わないんです、国民は。皆、これはどこへ行くんですか。かけがえのない国土ですよ。これを侵されたときには、皆やっぱりいろんな立場で抵抗して、日本の国を守ろうという意識国民の潜在意識の中にはあると、こう私は見ているんですよ、これはね。そういう意味で、憲法の規定にないからそういう精神というものが、国民の精神の中には少しもそういう気持ちはないんだというふうには私は思わないんですね。もう少しやっぱり、国民というものが国土に持っておる愛着というものは私は信じたいのでございます。
  289. 源田実

    ○源田実君 総理のネコなで声でやられますと、非常にやりにくくなるのであります。もう少し敵対意識を持ってやっていただきたい。そうしないと、こっちがどうもぐあいが悪いんです。  ところが、この問題について、それは日本国民の大部分、ほとんど全部の人があるいはやるかもしれない。しかし、現実問題として、長沼判決なんかによって自衛隊員がどんなに困っておるか。至るところで自衛隊員の入学拒否が行われる。沖繩においては、自衛隊員の子弟が自分のうちの前からはバスに乗れないというんですよ。こういう状態が現実に起きておる。自衛隊員はほとんどユニホームを着て出て歩かないでしょう。自衛隊員は特別どこかで差別待遇を受けておるような感じを受ける。この状況に対して、政府としては今後——この国会のここで幾ら答弁されてもだめなんですよ。私はいまその具体案は持ってはおるけれども、ここでは発表しません。しないけれども、このままほうっておいたら自衛隊員の防衛意識はなくなる。これはひとつ特別考えていただきたい。   〔理事柳田桃太郎君退席、委員長着席〕  非核三原則、これも、体裁はいいんです。あれは二原則というとちょっと調子が悪いから三になったんじゃないかと思う。ところが、あの三原則の三番目は意味をなさない。全く意味をなさない。こういうものを勇気をもって訂正するとか、そうして自衛隊員の士気を上げるとか、国民に対して本当にわれわれも共産主義国のようにやろうじゃないかと、これだったら反対する人に大分賛成する人が出るんじゃないかと思うんですよ。したがって、こういう問題はひとつもっと真剣に考えていただきたい。防衛問題を避けて通るようなことははなはだもってひきょう千万である。しかも、われわれの子孫に対して、こういう状態のままでわれわれの子孫にこの日本を渡すわけにはいかない。大変な問題が残されております。ひとつ決意のほどを総理大臣から伺いたい。
  290. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 源田さん、何かこう私の答弁が、質問ができにくいようですが、御遠慮なしにどうぞいろいろおっしゃっていただきたい。  私は施政方針演説の中でも、特に自衛隊の問題を取り上げて、ある時間を割いたわけであります。ごらんになっても、施政方針演説で自衛隊の問題にたくさん触れた施政方針演説は、そう余り私は聞かないんです。私はやはり相当な時間を割いたわけです。そうして国民に訴えたことは、自衛隊の持つ役割りというものを正当に国民が理解されることを望むということを言ったわけですよ。あらゆる機会に私はそれを国民に訴えたいと。国民の中に自衛隊は生きなければ防衛の目的は達成できませんよ。国民と遊離した防衛というものはあり得ないわけですから、そういう点で、自衛隊自身の言動も慎んでもらうと同時に、国民に対しても、自衛隊の役割りというものの正当な評価を求めたいと私は思って、そうして施政方針演説の中にも相当な時間を割いたわけでございます。だから、こういうことは機会があれば私は国民に訴えたいと、そうして国民と自衛隊というものがもう少しこう理解し合った結びつきを深めていきたいと思うのでございます。ことに、単に安全というものは一朝有事の際ばかりでないですからね。異常な事態に対して自衛隊の果たしておる役割りというものは国民から感謝されていますよ、いろんな場合においてですね。そういうことですから、やはり自衛隊というものに肩身の狭い思いをさすことはよくない。これはいま果たしておる役割り、こういうものに対しての正当な評価を私は国民がすることを強く望みたいのであります。そういうことで施政方針演説にも触れたわけでございますから、政府としましても、いま言ったような気持ちであらゆる国民の、必要な場合においては私はそれを国民に訴えたいと思っております。
  291. 源田実

    ○源田実君 次に、安保条約の中でやはり私ちょっとわかりにくい一わかりにくいというより、わからないようにできておるんですよ、本当に。というのは、この十条で、国連が地域的な安全保障をやり得るような状況になったならば、この安全保障条約は日米双方が同意してから効力を失う、こういうことになっておる。その後、日本が侵略された場合に、日本がその安全保障をだれに依存するかというと、国連軍になると思うんです。この点どうでしょうか、外務大臣
  292. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 安全保障条約第十条におきまして予見されております状態と申しますのは、国際連合憲章に従いまして、国際連合の軍隊によって安全保障が確保される措置が講ぜられたときということでございます。御承知のごとく、現在はそういう措置というものがとられておりません。取り決めができておらないわけでございまして、そういう状態が出てまいりますという現実的な見通しは、私どもといたしましては予見し得る将来の問題としては考えられないというふうに考えているわけであります。
  293. 源田実

    ○源田実君 いま考えられないと言われましたが、そういう事態が来たときにだれがやるか、こういうことになると、どういうぐあいに政府はお考えですか。
  294. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまいろいろ御心配になっておるようですけれども、国連軍が総括的に世界の安全保障を受け持つというような世界は、そういう世界というものは、世界国家だと私は言いませんけれども、いま源田さんが考えておる世界とはすっかり違うということですよ。国連というものが世界全体の安全保障を引き受けていいような事態というものは、世界の姿が全然変わった世界ではないか。そういうことで、源田さんがいま憂えておることと、そういうことが実現された世界とは、世界の姿が全然違うのではないか。専門家の源田さんはどういうふうにお考えになるか知らぬが、やはりそういうふうに私は考えて、いま御心配になるような事態世界ではないのではないか、そういうことができた場合は。そういうふうに考えまして、私は非常にこれはもう大変なことになるというふうには思わない。世界が全然違ってきておるというふうに考えるわけでございます。
  295. 源田実

    ○源田実君 これは余り見込みがないそうですから、この問題はまたほかの、もう少し時間でもあるときにお願いして、いまちょっとやはり安保条約にも関連しまして、実は安保条約は日本だけじゃなくて、韓国もあるいは台湾もフィリピンも、アメリカと結んでおるわけです。ところが、韓国や台湾、フィリピンの分は少なくとも西太平洋、そのほかは太平洋全域にわたって、いずれか一方に対する武力行為は両国、この加盟国両方に対する挑戦と見て対処することになっておる。しかし日本の場合は、日本政府の施政権下にあるものに対する攻撃を共同の脅威とみなして対処する。その日本はアジアにおける最大の先進国である。それが一番小さい任務を負担し、ほかのまだ発展途上国は広い任務を担当しておる。ここに大きな矛盾を感ずる。  しかも、それは憲法上どういうことがこの憲法にあるかといいますと、私はちょっとわからぬところがあるんですよ。この憲法の中段の、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し」、これが長沼判決では引用された。しかし、この後段に「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」——いまの日本の防衛に関する立場は特権階級、日本だけは守られる、人を守り返すことはやらない、こういう立場です。自分の家にどろぼうが入ったときは隣近所来て助けてくれ、おまえさんのところに入ったって、わしの方は行かないんだと、こういうのが通用するでしょうか。この点については、総理大臣、ひとつ篤と伺いたいんです、日本立場を。
  296. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これには歴史的な背景がある。戦争の終わった直後に、皆もう自信を喪失したわけですね、自信を。それが、日本は平和国家として、再びもう戦争をしない国家としてひとつ日本はやっていこうと、マッカーサーはスイスになれとか言っていったですが、そういうこともやっぱりその当時の国民には一つの魅力を持った言葉でしたよ。そういうことで、日本人がもう自信をすべて失ったときに、日本に希望を与えたものはやっぱり平和国家としてもう一遍再出発しようということですよね、これは。そういうことが平和憲法を生んだ私は原因だと思うんですね。  戦争はすまい、ただしかし、日本の国土は守らにやならぬですから、もし侵略を受けたときにはこれは戦わなければならぬけれども、しかし、いつでも戦争というものは、防御のために攻撃をやったりするのは侵略戦争だとどこも言いませんからね、皆は。そういうことで、戦争は捨てようと。ただ、消極的に日本国民の生命、財産は守っていこうということであったわけですから、まあ世界から言えば、源田さんの言われるとおり、自分は助けてもらっても人は助けないというのは非常に理屈に合わぬようですけれども、とにかく国民の決意として今日の日本を築いたんですよ。あれがなければ今日の日本はできてないですよ。  そういうことですから、いかにも理屈に合わぬようではありますけれども、アメリカもその日本立場というものを理解して、そうして安保条約に、アメリカは防衛の義務を持っておるけれども、日本は防衛の義務を負わないでも安保条約というものを結んでやっておるのは、日本のその国民の決意というものが国際的にも理解された結果であって、必ずしも世界各国が、日本人は得手勝手だという批判というものは私は余り聞かないんですよ。これはやっぱり日本があれだけの戦争の悲劇を受け、原爆の非常な災害も受けたわけでありますから、その日本人の心情というものは国際的な理解をされておる。  だから、そういう形でなしに、発展途上国に対する経済とか技術とか、とにかく社会あるいは経済開発に対して日本が協力すれば、やはりその日本の国際的責任というものはそういうことによってやはり日本が果たす、そういう形で果たしていくことについて国際的な理解は得られて、余り得手勝手な国民だというふうには私は世界考えないのではないか。そのかわり、一方において軍事的な面にかわる発展途上国に対しての協力というものはやらないと、日本世界の平和に何も関心のないような国、そういう世界の評価を受けることは適当でない。したがって私は、いま言われたように余り得手勝手で世界に通用しない理屈であるというふうには思ってないわけでございます。
  297. 源田実

    ○源田実君 総理はそういうぐあいにお考えになっておりますが、実は先般アメリカのフォード大統領が日本を訪問をした場合に、たしか、警察関係で聞くと、機動隊員十六万人が動員されたと、首都一帯で。これは、日本の自衛隊の、陸上自衛隊の第一線部隊だけではなくて、後方まで含めて全員を動員した数より多いんです。それの正規の師団ならば十六個師団、それだけの人を動員しなければ友好国の元首を迎えられないような日本のこの治安状況は一体どうなんだ、これが平和国家なのかどうか。また、はるばる欧州くんだりまで出かけていって、外国の大使館を占領したり、何の罪も何にもない老人や女、子供を人質にして自分らの目的を達成しようというようなことが、そういうことを一流国と称せられる国で、国民でやっておるのは日本だけでしょう。日本国民の大部分はそれはひんしゅくしておるだろう。しかし、日本国民であることに間違いない。こういう状態、果たしてこれが平和国家のあるべき姿であるか。こういうことで、きのう玉置君の質問に対して総理が言われましたように、世界の平和を維持するために、武力の前にやることがたくさんあるんだが、その中の重要な世界の信用を確保するために、こういうことに対してもっともっと強い手を打つべきじゃないかと、こういうぐあいに考えるんです。こんなことがまだ続くようだったら、日本が幾ら平和国家だの何のかんの言ったって、これは通用しないと思いますが、いかがでしょうか。
  298. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 言われるとおりだと思います。この問題は治安ばかりでもない、教育の問題にも関連する問題がある。そういうことで、これは平和国家という点から考えてみても、ただ学生が理由もなしに外国の大使館を占領したり、人に対して非常に被害を与えたりするようなことが平和国家の名にふさわしいことではないことは言うまでもありません。しかし、この事態はやっぱり深刻にわれわれも受けとめなきゃならぬと、これは治安の問題もありましょうけれども、いろんな面において、われわれも政権を担当しておる者として深い反省のもとに、こういうふうなことが繰り返されないように、今後これは長期的な面も必要でございましょうが、われわれとしても十分にこれは施策を、いろんなこういうものに対する施策を充実していく責任があるということを痛感いたします。
  299. 岩動道行

    岩動道行君 関連。  私は、源田委員の核防条約を中心としての質疑に対して、関連をして若干政府の御意見を伺っておきたいと思います。  私は、核防条約自体は賛成でも反対でもございません。長期的な展望に立っての徹底的な慎重な検討が必要であり、納得を国民がしなければならないと、こういう立場で関連を申し上げたいと思いますが、まず第一に、事実関係を外務省の当局に伺っておきますが、西独は批准を完了したのかどうか、つまり西独は批准の手順は済んだけれども寄託をしているかどうか、それが完了しているかどうかという点。第二は、エジプトは査察を受ける立場にあるのかないのか、この点をまず事実としてお答えをいただきたいと思います。
  300. 鈴木文彦

    政府委員(鈴木文彦君) お答えいたします。  第一の点、西ドイツでございますが、西ドイツはこの条約を批准する国内手続を完了いたしております。ただ、ドイツはいわゆるヨーロッパ共同体の一員でございますので、その批准書の寄託はまだいたしておりません。  それから第二のエジプトでございますが、これは岩動先生の御質問は、エジプトに対してたとえばアメリカが原子炉あるいは核燃料を供給する場合に査察を受ける筋合いであろうかどうかということだと思いますが、アメリカの原子力法に基づきまして、対外的にそういった原子力関係の機材を供給する場合には、当該国との間に保障措置協定を結ばねばならないという義務がございます。保障措置協定は当然のことながら国際原子力機関の一つの共通の基準がございまして、それに従いました保障措置協定を相手国が受諾しない限り、そういょたものの供与はできないということになろうと思います。
  301. 岩動道行

    岩動道行君 そういうことで、ドイツは国内批准をしましたけれども、寄託をしてない、こういう意味において正式の加盟国にはなっていないという実情、この辺も日本もやはり横にらみで考えなければならない点があろかと思うのであります。また、エジプトについても、米ソ仏等が核燃料を供給を申し出ているということが伝えられております。こういう点においても、日本立場というものも十分に考えなければいけないと、こういうことを申し上げたいと思うのであります。  そこで、保障措置協定については、先般政府はウィーンにおいて仮調印をなさいましたですね。この保障措置協定は、日本側から言うならば、少なくとも政府筋においてはユーラトム並みになった、平等性を確保した、最恵国待遇を受けたと、こういうようなことを強く表面に出しておられまするが、これは当然のことでございまして、日本が原子力の平和利用をやっていく場合にユーラトム並みのことは当然のことである。それを最恵国待遇という、よその国よりも悪くはならないということは当然ではないでしょうか。それを最恵国待遇を得たと言って、まるで手柄を立てたようなことをおっしゃっている。これは私は国民に対するいささか誤った印象を与えるのではないだろうか。もしも最恵国待遇を与えられないような、ユーラトム並みみたいなことが与えられぬようなことであるとするならば、これは日本の査察技術なり、そういうものの開発なりが非常におくれておって、とても日本には任せられないんだと、そういうことであって、したがって調印以来五年間、日本側は一体そのことについては十分な対策を講じて、当然のことを要求し得る立場にまで日本の内部体制ができ上がっていたかどうか、こういう点が私は政府立場として努力が十分であったかどうかという疑問を持たざるを得ないのであります。そういうヨーロッパ並みでない立場においてヨーロッパ並みのことを要求するから、平等性を獲得したとか最恵国待遇を得られた、こう言ってその手柄のようなことを言う。これはもうおかしい話なんです。そういう意味において、私は国民に対する印象を誤らないようにしていただきたいし、政府自体が平和利用に対するもっともっと自主的な技術の開発、そして努力をしなければならない。  先般、NHKの解説において平沢和重氏が、この査察協定は相手側から見たならば清水の舞台から飛びおりるような気持ち日本側に平等性を与えたんだと、こういう解説をしております。平沢さんは三木総理の外交のブレーンとしておられるということを私はひそかに聞いておりますが、それは別といたしましても、NHKという公共的な放送機関がそのような解説をして、まるで日本が土下座外交しているような印象を与える解説をしたということに対しては、私は大きな抵抗を感じたのであります。そのようなことば、すべてやはり日本の平和利用、原子力に対するいろいろな体制が不十分であったということを物語るものではないか。どうか政府の努力を一層お願いをいたしたい。  また、ユーラトム並みと申しましても、西独は、いろいろな場面で問題になっているのは、イギリスにオランダと三国共同の濃縮ウラン工場をつくっている、それによってドイツの大部分の核燃料というものは査察から逃れ得る立場にある。イギリスは査察を受けない立場にあります。
  302. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡明に願います。
  303. 岩動道行

    岩動道行君 そこで、私は、果たして本当に実質的な平等性が得られたかどうかと、この点についての疑問がある。ことにその工場がイギリスのケープンハーストという水爆、つまり核兵器をつくる工場内に置かれる。イギリスは自発的に査察を受けるというようなことを申しているようにも聞いておりまするけれども、しかし、いざとなればこれは断ったら断れる、拒否ができる、そういうところにドイツの濃縮ウラン工場が入り込んでしまったと、逃げ込んでしまった、こういうところにも日本の平等性が果たしてあり得るのかどうか、実質的に。この問題を私は検討をしていただきたいと思います。  時間もありませんし、関連でありまするから簡単に申し上げます。  いま一つ、核燃料の供給がこれができないというような心配があるようでありまするが、IAEAの査察の総監が、現在のIAEAの査察業務が守られる限りは差別待遇はしない、核燃料の供給については差別待遇はあり得ないと、こういうことを言明をしていると聞いております。また、米国も同じような趣旨のことを述べております。かような意味から核燃料の確保ということについて、入るか入らないかによってそれほど大きな差が出てくるのかどうか、この点についてもこの機会に伺っておきたいと思います。大変重要な観点でありますので、関連でございまするが、まことに時間を費やして恐縮でございました。
  304. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 後ほど科学技術庁長官もお答えになると思いますが、条約の関連で申しますと、確かにこのたびの保障措置協定、政府としては満足なものと思っておりますが、まあ特に手柄顔というような気持ちは持っておりません。で、ユーラトム並みはあたりまえではないかと言われますことは、考えようによってはさようでございますが、御承知のようにユーラトムの場合には査察をいたしますのは他国人、よその国の人である場合が非常に多くなると思います。しかし、わが国の場合には日本人による日本の査察ということになりますので、その点は、先方から申しますと、恐らく一抹のいろいろ不安を持っておったのであろうと思いますので、その点はやはり意味が私はあるように考えております。  それからもう一つ最恵国待遇のことでございますけれども、これはユーラトム並みと申しましても、現実にその査察はまだ実行されていないわけでございますから、私ども条約なり議定書なりで、できるだけ同じものをつくったつもりでございますけれども、いざ向こうの査察が行われましたときに、われわれが思ったよりも何と申しますか有利な方法で行われた場合には、まだそれ、これから起こるものでございますから予測ができませんので、その場合には日本もそれに均てんするという意味で最恵国待遇の規定を設けた、こういうことでございます。
  305. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) お答えいたします。  日本の自己査察の体制が整備しなければヨーロッパ並みと言っても困るじゃないかというお話でございまして、それはそのとおりでございます。いままで長年、国連機関の査察を受けておるのでございますが、これはこの条約に基づいての査察でないものでございますから、むしろ国連機関の人たちが来まして、その人たちが自由に査察をし、それにただこちらはそばで見ているという程度のことでございまして何ら権限もございません。ところが、今度なりますと、わが国が主体になって査察をいたしまして、それに逆に国連の査察官が立ち会うという逆の関係になってまいりますので、どうしてもわが国の自己査察体制というものを整備しなきゃならぬことはお説のとおりでございます。  それはどうなのかと申しますと、実は岩動さんも御存じのように、五年前にわが国で調印して以来、国連の機関にわが局あるいは民間のこの方のエキスパートを再三送りまして、いわばこの国連の機関内で発言もしまた技術もみがいた、これは一番確かなことでございますから。それに相応いたしまして、国内でも自己査察できるような体制がそれぞれ民間にもあるいは政府にもできつつございます。ただ、十分かと申しますと、決して十分だとは申せません。幸いなことに、このたび政府の決断によりまして新しく原子力安全局ができましたので、その機関を中心にいたしまして、あるいは民間の機関等の拡充も図りまして、自己査察体制を整備いたしたいと考えております。  それからユーラトムは濃縮ウランの工場を英国につくって査察を逃れているじゃないかというお説でございますけれども、私ども承知しておりますのは、米英とも査察を受けますというかねがね意思を表明しておりますし、また英国はユーラトムの一員でありますから、ユーラトム自体の査察を受けることば明白でございますので、その点はそういう意図のもとに英国に工場を置いたというふうには理解しておりません。  それから三番目の核燃料の供給問題で、この条約には入らなくともいままでの相互条約、米、英、仏、独、豪州、カナダ、こういうところと結んでおる相互条約で十分燃料は確保できるじゃないかというお話でございますけれども、これは若干情勢が変わっておりまして、私ども十何年前に原子力局長をやった当時つくりました、たとえば大宗であります米国との相互条約では、なるほど米国では日本に核燃料を供給する義務を条約の中にうたっておりました。しかし、一昨年その条約を改定する際、なぜかと申しますと、非常にたくさんの濃縮ウランを必要といたしますので、向こうとしては新しい条約を結ぶべきだということでございますから、新しい議定書をつくる際にどうなったかと申しますと、日本の六十年、六千万キロワットに相応する、それを限度とする核燃料、濃縮ウランは契約によって提供しましょうと、義務ではありませんよということになっておりまして、その後、御承知のように、油の問題等が緊迫いたしまして、主として必要とするのは電力会社でございますから、電力会社と濃縮ウランを持っておるAEC、米国の原子力委員会との契約の経過を見ますと、必ずしもそれが希望しているようにスムーズにいくかと言いますと、決してそうなっておりません。したがいまして、長い将来を考えますと、二国間条約だけでこれが安全かと申しますと、私は必ずしもそう考えられません。したがって、この条約で規定されますように、この条約では、むしろこの条約に加盟しない国には核燃料は提供してはいかぬという厳しい条約までございますので、むしろこの条約に入りまして、そして二国間条約のみならず、この条約で保護を受けまして核燃料を確保するのが、わが国の将来としては大変結構なことじゃなかろうかというふうに考えてございます。
  306. 岩動道行

    岩動道行君 一言だけ……。
  307. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡明に願います。
  308. 岩動道行

    岩動道行君 総理に伺います。  この問題は、冒頭に申し上げましたように、非常に長期にわたっての、次の世代に、この義務が、われわれ国民に守られていかなければならない重要な条約でございます。かような意味において、国民が本当に納得のできる姿においてお進めをいただきたいと、かような意味において、私は実は外務省のあたりからのいろんな資料等も拝見いたしておりまするが、たとえば世論として新聞あたりの意見が引用されておりますが、それによりますと、朝日、読売は賛成で、その新聞だけが引用されております。しかし、慎重論としてはサンケイ新聞あるいは日経等もそうかと思いまするが、これらの考え方は全然紹介されておりません。こういうような一方的なことで国民の納得を得させようとすることは非常に私は疑問がございます。かような点において、総理からどうか国民に本当に納得のいくように、あらゆる分野からの意見を十分に聴取して、そして国民にこれを理解させてまいるという努力を心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。総理の御所見を伺いたいと思います。
  309. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 岩動さんの言われるとおり、これは非常にやはり国の進路に重大な影響を及ぼす問題でございますので、やはり政府としてもできるだけこれは、ただこれを国会の承認を受けるということを目的にするだけでなくして、冷静な判断を国民が求められるような、理解に訴えるような方法をとることが必要であることは言われるとおりだと思います。そういうことでやってまいりたいと考えています。
  310. 源田実

    ○源田実君 時間がもうありませんので、最後にエネルギー問題に関しまして私のお願いをひとつ述べさしていただきたい。というのは、エネルギー問題は、第二次世界戦争以後最大の危機に当面しておる、全世界、ことに先進諸国は。しかし、日本の場合は、これに安全保障問題というのがちょうど相反するような意味において、ここに非常なジレンマがあります。この問題は慎重にひとつ御検討願いたい。  それから、エネルギー問題でございますが、本当に説得力のあることが行われてない。たとえば、代替エネルギーということはしょっちゅう言われるけれども、代替エネルギーを使う場合の、公害とか、そのほかの不利な面がどういう点に出るのか。たとえば地熱を使うというが、温泉のあの熱を使ったら、全国の温泉旅館とか、あるいは日本人ぐらいふろへ入るのを好きな民族はちょっといないんですがね、これは一体どこに行くことになる。発電所ばっかりになってしまう。潮流だってそうですよ。内海付近の鳴戸海峡に発電所をつくったら、あのあたりの魚の賦存状態はすっかり変わってくるだろう、漁民の生活はどうやるんだと、そういう問題を一つ一つ細かく検討して、それから代替エネルギーの問題を論じなきゃならない。  それからもう一つば石油危機、あと三十年ぐらいでなくなるそうですがね、多分なくなるでしょう。そのなくなる前にどういうぐあいに減っていって、なくなったときには日本国民生活はどうなるんだ、一億一千万をどうやって支えるんだ、支えられないですよ。そういうことを考えると、いまのうちからいかに節約するなり何なり、われわれの孫子の時代に大変な惨劇を子孫にもたらさないように、いまからやっておかなきゃならないんですよ。それに対して私は一つここにお願いしたいのは、総合的ないまの状況予想、大変な危機が訪れるぞと、その場合に備えてわれわれはこれだけの苦しみをやっていかなきゃいけない、福祉、福祉というばかりでなくて、われわれの子孫の幸福を願っていまわれわれは何を苦しまなければいけないか、そのくらいの説得力がなきゃ引っ張っていくことはできないと思うんです。大変な時代が来る。アメリカなんかあれほどエネルギーがたくさんありながら、なおかつやっておるんです。この点について、総合的な研究と、それからこれを国民にPRする、十分に納得させるような形で研究と開発と報告と、これをひとつお願いしたい。  これで私の質問を終わります。(拍手)
  311. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして源田実君の質疑は終了いたしました。  上田哲君、御準備を願います。     —————————————
  312. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 上田哲君。
  313. 上田哲

    上田哲君 まず、防衛構想の基本方針につきまして政府の見解をただしていきたいと思います。  そこで、総理、あなたは、軍事力増強の方針をこれまでのベース、一次防、二次防、三次防、四次防まで、倍、倍で来ましたね。こういうペースで今後ともお考えになりますか。
  314. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 四次防の次には五次防、六次防と、必ずしもそういう考えでいかなければならぬとは考えていないわけです。計画的に、しかし考えなきゃならぬけれども、当然のことでして、四次防の次は五次防、六次防、そういうふうには必ずしも考えていないわけでありまして、そのときの国情に応じた自衛力を持つということであって、次々に何次防、何次防ということを必ずしも必要としないのではないかというふうに考えております。
  315. 上田哲

    上田哲君 そんなことを聞いているのじゃないんです。四次防の次に五次防が来るかどうかの質問ではなくて、一次防から四次防までは倍、倍、倍で来ているんです。こういう増強ペースを今後もおとりになるのかどうかということです。
  316. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そのときの国力とか国情に応じて、必ずしも倍、倍にいかねばならぬものというものではありません。また、四次防まで相当な数的な面においては、まあ海上の方に問題はあるようでありますけれども、大体数的な、量的と言った方がいい、量的にはもう一つのある限界に来ていると思います。質的な面においての充実という点はありますから、だから、倍、倍になっていくというような速度では日本の防衛力の増強を考えてはおりません。
  317. 上田哲

    上田哲君 増強の方向ではあるけれども、これまで一次防から四次防までの一定のあのぺースよりは落ちていくというふうに受け取っていいわけですね。
  318. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 装備などの質的な面においてはいろいろな日進月歩がありますから、充実していかねばならぬ面はあるけれども、量的な拡大というものは、これはそうむやみな拡大は考えてはいないということでございます。したがって、予算の上においても、倍、倍というような速度で自衛隊の費用が拡大していくというふうには考えておりません。
  319. 上田哲

    上田哲君 重要なことですから、もう一ぺん確認します。たとえば、三次防から四次防までは二兆三千四百億円が四兆六千億、倍、倍と、こうなっているわけです。その倍、倍よりはぺースは落ちるということでよろしいですね。
  320. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ある程度の量的な充足は終わったわけでございますから、倍、倍というような予算の伸び方は今後はいたさないと思っています。
  321. 上田哲

    上田哲君 もう一つ総理予算委員会でもしばしば見解を明らかにされておられる安保条約との関係でありますが、デタントとはいいながら、やはりこの協力関係の中で相互増強方向というのは変わらないわけですね。安保の中で日本の自衛隊の増強というのもあるということですね。
  322. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま言いよったような、いわゆる漸増というような形はあっても、激増というような形の防衛力の増大はない。
  323. 上田哲

    上田哲君 わかりました。これまでの増強のぺースは激増であったと私も思うんです。その激増が激増ではなくなる、しかし増強ではある、こういうふうなお考えだったということはわかります。  ただ問題は、総理、いま十五年間の高度成長が低成長に変わるというとき、これはそういう形でいけない財政状態自身が背中にあるのではないか。これはデタントの問題はしばらく置きます。ニードの問題は別にします。財政上の問題として、これまでどおりにはならぬのではないかということが一つ指摘されなければならぬだろう。私は計算をしてみますと、かなり低いパーセンテージにならなきやならない財政実情というものが背中にあらざるを得ないところへ来ていると思うんです。御認識、いかがですか。
  324. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま申したように、財政的な実情も勘案をしなければなりません。また、そのときの諸般の情勢も頭に入れなきゃなりませんが、いま申したように、そうむやみに増大をする傾向にはないと考えております。
  325. 上田哲

    上田哲君 その場合、これまで国会に宣明されてきた方針は、例の「国防の基本方針」であります。なかんずく第三項の国力、国情論であります。国力、国情論によっていきますと、このパーセンテージというのは非常に、一定の線が出てくるわけですね。これまでどおり国力、国情論で処理されるわけですか。
  326. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 防衛力も、国力あるいは国情の一つの制約を受けることは当然だと思っています。
  327. 上田哲

    上田哲君 事務当局でいいですが、この数年間の防衛費の伸びのパーセンテージ、それからGNPとの対比を出してください。
  328. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 四次防の期間中のGNP対比、それから一般予算対比でございますが、四十五年度が、GNP対比が〇・七九%、一般会計に対します比率が七・二八、四十六年度が……
  329. 上田哲

    上田哲君 伸び率。
  330. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) この期間中の伸び率……。
  331. 上田哲

    上田哲君 年度ごとの伸び率。
  332. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 年度ごとでございますか、いま四次防だけを持っておりますので、ちょっと……。
  333. 上田哲

    上田哲君 四次防でいいです。
  334. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 四次防は、当初の四十五年が〇・七九でございまして、四十九年度が対GNP〇・八三でございます。それから一般会計が七・一六でございまして、いま四十五年でございますが、四十九年が六・三九……
  335. 上田哲

    上田哲君 違うと言うんですよ。年度ごとの伸び率を聞いているんです。一般会計の中の比率を聞いているんじゃない。
  336. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) はい、わかりました。失礼いたしました。  四十六年の対GNPは〇・八でございまして、四十五年に対する伸び率、これは前年が〇・七九でございますから、一六・四%でございます。それから四十七年の四十六年に対する対比、これは四十七年が〇・八八でございまして、伸び率は七・四%でございます。それから四十八年度の四十七年度に対する比率、これは〇・八五でございます。〇・八五%でございまして、対GNP比は二一・三でございます。それから四十九年度の四十八年度に対します比率は、四十九年度が〇・八三%でございまして、一九・八でございます。
  337. 上田哲

    上田哲君 幾ら言っても違うことをお答えになっているので。総理、こういうことなんですよ。いままでのGNP比で言いますと、〇・八のところをちょっと上がったところをずっときているのです。それから防衛費の前年伸び率ですね、これはずっと、たとえば一七・〇、一五・九、一八・〇という、その程度できているわけです。ことしは二一・五なんです。これはずば抜けて高いのです。ところが、もし総理が先ほど認められた国防の基本方針による国力、国情論で、これからの経済成長を背中に背負ってGNPで計算いたしますと、たとえば一五・九の伸びで〇・八四を掛けますと、実に二八・三%の伸びという計算になるんです。私どもは一%も要らないという立場に立ちますけれども、まあ土俵を同じにしなければなりませんから、その数字の上で議論しますよ。いままで十数%で来たものが、ことしはインフレのおかげで二一・五%に上がっているんです。それならずっと二〇%台でいかなければならないのだが、高度成長が終わったので、このままの三十三年以来の国防の基本方針の第三項の国力、国情論でいきますと、一六・三%に落ちなきゃならぬということになる。総理が先ほど言われた、その方針を変えないということになると、この次の年度はがくんと落ちるということになるんですが、それでいいんですか。
  338. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ことしの防衛費は、御案内のように人件費のベアの響きが大変影響大きいわけでございまして、人件費のウェートが非常に重い防衛費にとりまして、ことし、いま御指摘のような伸び率になっております。しかし、これはそういうカーブで例年推移するということには私はならないと思います。
  339. 上田哲

    上田哲君 ならないとですね。総理、もう一遍同じことを確認しなければいけないのです。おわかりになりましょうか。ぐっときたパーセンテージが、インフレのおかげでぐっと上がっているんです。それが高度成長が終わったので、その率に従って素直に政府のいままでの数字を掛けていきますと、国防の基本方針にのっとる限り、かたんと数パーセント落ちることになるのです。その方針でいくのですか。
  340. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 予算編成時点における国力、国情とにらみ合わせて、均衡のとれた予算を編成したいと思っております。
  341. 上田哲

    上田哲君 全然答弁になりませんので、ひとつすっきり答えていただきたい。そのパーセンテージでいいのですかと、あなたのおっしゃる国防の基本方針をそのとおりとらえれば、数字はそうなるのです。数%落ちるのです。その方針でいいのですかと言っているんですから、いいか悪いか言ってくださらなければ答えにならぬです。
  342. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、いまの予算は、五十年度の予算を御審議を願っておるわけです。五十一年度の予算については、その予算編成する時点において十分検討をいたすということ以上に現在の段階でお答えはできません。
  343. 上田哲

    上田哲君 総理、四次防はもう一年残っておりまして、四兆六千億というのがあるのですよ、あなたのほうに。それを達成しないということをここでお認めになることになってしまうのです。それでいいのですか。にもかかわらず、国防会議議長である総理が全然いま方針をお持ちにならぬ、そのときになったら考えるということでいいのですか。
  344. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そういう経過も頭に入れて、そして、これは来年度の予算を通じて十分検討いたすということでございます。
  345. 上田哲

    上田哲君 方針のない人に聞いても一しょうがないから次の問題にいきますが、総理、基本的にはそれは無理だと思うんです。国防の基本方針にのっとるならば、国防の基本方針は、中曽根長官以来防衛論議の中でもう定説となっている常識は、すなわちGNPの一%以内ということになってきたんです、いままで。その線をとらえていけばこの数字になるんです。一方、政府は四兆六千億円の四次防お持ちなんです。それじゃつじつまが合わないんです。つまり高度成長の終えんは、政府の防衛計画をとられる限りこれまでの国力、国情論では済まなくなった、GNP一%論を転換しなければならないところに立っているんだという問題意識について正確にお答えいただかなければならぬのです。
  346. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 過般の予算委員会等におきましてお答えをいたしましたとおり、四次防自体がまだ達成が非常に困難な状況にあるわけでございまして、当面私どもはこの第四次防計画をあくまでも遂行する最大の努力をいたしておる次第でございます。したがいまして、ポスト四次防につきましては……。
  347. 上田哲

    上田哲君 ポスト四次防じゃないんです。
  348. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) ポスト四次防につきましては、いままでのような経済成長じゃなくて、これから安定経済に向かうわけでございますから、このあたりで一遍今後をどうするかということについて慎重に検討を要するということで、われわれはいま検討を進める段階にございます。
  349. 上田哲

    上田哲君 長官に伺う。五十一年度は四次防ですか、ポスト四次防ですか。
  350. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 昭和五十一年度はポスト四次防ではございません。
  351. 上田哲

    上田哲君 四次防の中の話を聞いているんですよ。ポスト四次防のことを考えるのはこの次の話。すでに四次防の四兆六千億という総額が決まっていなきゃならぬのに、GNPの成長率、日本の経済成長率を背中に負ってGNPの一%論をとっていれば四次防内で挫折することになるので、いいのですかと聞いているのです。算術はそうなるじゃありませんか。
  352. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) それでございますから、最大限に四次防をどうやって達成するか、まだ昭和五十一年度の予算編成は、作業が八月からあるわけでございますから。
  353. 上田哲

    上田哲君 大蔵大臣政府の基本的な予算編成原則は、ことしから変わって、次年度と次々年度を見通して編成するようになっているはずでありますが、いかがでありますか。
  354. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 次年度と次々年度を見通して編成するというような明確な方針を確立した覚えはございませんけれども、昭和五十年度の予算でございますならば、五十年度の経済動向の展望を見通しまして編成するということでございまして、五十一年度どうなるかということにつきまして精細な、精密な推定を加えて、それをべースにするというところまではまだ進んでおりません。
  355. 上田哲

    上田哲君 それでは行政官庁はみんな困りますよ。はっきり方針を出したじゃありませんか。次年度と次々年度の見通しをしっかりやりなさい、長期計画の切れ目にもなるんだからと。みんなそれでやっていますよ、予算編成は。そんなことを言ってもらっちゃ、大変私は不見識だと思います。少なくとも、その原則が出ていようと出ていなかろうと、五年間の年次計画を持っていて、国防会議を通していて、議長は総理で、その年次計画の最終年度の全然達成ができない見通しがそこまで来ているときに、そこまで行ってみなければわかりませんということで国会審議になると思いますか。これは私は無責任きわまりないと思う。防衛力整備計画の達成を一生懸命——私の方は賛成しているわけじゃありませんが、それじゃ審議にならぬということを言っているんです。これ以上言ったって全然話になりませんから……。一体、基本方針ですね、国力、国情論に基づいて、もっとわかりやすく申し上げるならば、今日までの常識となっている、定説となっているGNP一%以内論というのを、今後もおとりになるのかならないのかだけはしっかり言っていただくか、どうしても言わなければ、いつでもいいですからそのことを後で出してください。どっちかにしてください。
  356. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま五十一年度の防衛費の問題が提起されておるわけでございまして、五十一年度は仰せのように、いわゆる四次防の枠内の問題でございます。御案内のように、一昨年から政府がとりました引き締めの政策は防衛予算も例外ではないのでございまして、したがって五十年度の防衛費も、陸海空、とりわけ海等に相当大きな影響を及ぼして、四次防の達成率が大変むずかしい局面を迎えておりますことは、本委員会で明らかにされておるようでございます。  それで、来年度どうするかという問題は、いま防衛庁長官が仰せになりましたように、ことしの八月の概算要求をベースに、改めて御相談をせなければならないわけでございますけれども、総じて防衛予算といえども財政計画の一環でございまするし、大きくは経済政策全体の基調の中で査定を進めなければならぬわけでございます。したがって、われわれといたしましてはできるだけ防衛庁の御要求を満足させるように努力はいたしたいと思いますけれども、われわれの財政の許す範囲内でがまんをしていただかなければならないと存じておるのがいまの心境でございます。
  357. 松永忠二

    松永忠二君 関連。  いま上田委員から質問が出ておりますが、予算編成の際に、本年度の予算だけではなくて、五十一年度、五十二年度を見通しての計画を出す、こういうことを大蔵では決めて、重要な事項についてはそういう措置をした。これは当関発表もされていることですけれども、一体どういうものについて出ておるんですか、現実的に。それで、それは具体的にどういうふうに処理されているんですか。ひとつ大蔵大臣の方からお聞きをしたいわけであります。私たちは、いま上田委員が言いましたように重要な項目については、ことしの予算の際に五十一年度、五十二年度を見通して要求をする、そういう中で本年度の予算が編成をされているというふうに確認をしているわけですけれども、一体どういう項目が出て、それはどういうふうに具体的に処理をされたのか、大臣の方からお答えを願いたいと思うわけであります。
  358. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 新規要求経費につきまして、たとえば五十年度でございますならば、五十年から五十二年にかけて後年度の負担が、新たに要求されました経費を認められるとすれば、五十二年度までに年次別にどういう負担になるかという資料は要求いたしております。つまり、新しく要求される費目につきまして後年度負担がどうなるかという資料はつけてもらいたいと、そういう要求をいたしております。
  359. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 五十年、五十一年を見通しまして主要項目については仰せのとおりだと、いま事務当局から聞いたわけでございます。また詳しいことばひとつ防衛局長からお答えを申し上げたいと思います。
  360. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) ただいまの御質問のとおり、五十年度の予算編成に当たりまして、五十、五十一両年度を見渡して五十年度の要求額を定める、こういうことで、ただいま大臣から申し上げましたように、主要項目につきまして五十、五十一の両年度にわたっての事業量の配分をいたしまして、その結果、ただいま御審議をいただいております五十年度の主要項目が提出されておる、こういうことでございます。
  361. 松永忠二

    松永忠二君 それは、今年度そういうふうなものが出されるということはわかるわけですけれども、五十一年度、五十二年度に金額的にどういうふうなものを総額的に出しているのか、それを聞いているわけです。
  362. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 五十一年度のベースの伸び率その他の算定がきわめて見通し困難でございますので、大体金額的に見通しをつけてやるということをやっておりませんで、ただいま申し上げましたように数量的に五十、五十一を分けておる。大体大まかに申し上げますと、数量的に申しますと、陸と空につきましては五十、五十一が大体平均したバランスになっておりますが、海上自衛隊につきましては五十一の積み残し分が相当多量に出る。これは不可避であると、こういうことでございます。
  363. 松永忠二

    松永忠二君 具体的に数字を。
  364. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) それでは個別的に例を挙げて申し上げてみたいと思います。  まず陸上自衛隊で、戦車でございますが、五十年度に四十八両要求をしておりますが、五十一年度に残が七十九両でございます。それから装甲車が十七両五十年度で要求しておりますが、この残が六十七両。それから自走火砲は十門ございますが、残が八十門でございます。それから作戦用航空機が二十九機、残が四十一機というところでございます。いま申し上げましたように、個別的にいろいろ特殊な事情はございますけれども、大体ただいま申し上げました残の大部分が五十一年度にできるのではないかということでございます。  それから航空機につきましては、F4Jが五十年度に十二機、これの残が十機。それから支援戦闘機FST2改、これは本来四十九年度であったものが一年繰り越されまして、五十年度で初めて要求されておるわけでございますが、これが十八機。それで残が五十一年度の分五十機でございます。その他の分につきましては、主要項目についてはいままでに目標に到達をしておるわけでございます。ただ高等練習機のT2でございますが、これは四十九年度に要求して、五十年度には要求してございません。この残が十七機残っておるというところでございます。大体航空自衛隊につきましても陸上自衛隊と大まかに申しまして同じような状態にあると申し上げられるかと思います。  海上自衛隊につきましては、五十年度の要求が六隻の、トン数にいたしまして一万四十トンでございます。これの残が二十隻の三万三千五百トンというところでございます。したがいまして、この点につきましては、かねてから申し上げておりますように、未達成が出ることは必至であると申し上げざるを得ないのではないかと思います。それから、海上自衛隊のその他の支援船、それから作戦用の航空機でございますが、これらにつきましては大きな問題はないように考えております。
  365. 松永忠二

    松永忠二君 もう一点だけ。いまの御説明のあった防衛費について言えば、五十一年度、五十二年度、こういう見通しの上に立って五十年度の予算が要求されているというお話でありました。そういう五十一年度、五十二年度の背景の上に立って五十年度の予算が計上されているということになると、いま上田委員がお話しになりましたGNP一%という大きな枠、そしてまた第四次防という大きな枠の関連の上に立って、一定の考え方をもって本年度の予算が計上されているのでなければそういうものを計画的に出してみたところがどうにもならぬので、いずれかはっきりした考え方をもって予算が計上されているものと私たち思うのでありますが、大蔵大臣防衛庁に聞きたいのは、やはり次年度またはその翌年度の上に立って本年度の予算が要求をされているという、そういうことをお認めになるのかどうか。それと、いまの話のいわゆる枠との関係は、五十年度予算編成の際に一体どういう考え方でそれをまとめたものなのか、これを最後にお聞きをしたいと思うわけであります。両大臣からひとつお答えを願います。
  366. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) ごもっともな御質問だと思いますが、たとえば海について申し上げますと、大体四次防計画そのものが六万九千六百トンでございます。そういたしますと、どういたしましても毎年一万トン程度はこれを維持していかなければならないという仕組みになっておるかと思うわけでございます。ところが、経済情勢その他いろいろの諸情勢のために、四十九年度におきまして御案内のとおりに九千トン足らずに落ち込みまして、さらに実行予算、つまり補正予算におきまして五千二百トンに切らざるを得なかったというような状況でございます。しかし、私どもといたしましては、やはり毎年一万トンの船というものは維持していきたいというような方針のもとに、今回一万四十トンの五十年度の予算を組んで、ただいま御審議をわずらわしておる、こういうわけでございます。ただ、こうなりますと、六万九千六百トンの残が三万三千五百トンでございますから、海について申し上げると非常に困難な状況にあるということかと思います。  それからまた、これはあるいは大蔵大臣お答えになることかもしれませんが、われわれといたしましては、やはり防衛力の整備と申しましても、他国に脅威を与えないような程度でなければならないという制約が一面あるかと思いますし、また同時に、国民生活をひどく圧迫するような予算であってはならないというようなことも一つに指標として、われわれは指針として考えていかなければならないのじゃないかというふうに思っておりますので、五十一年度の予算要求につきましても、以上の点を考えましてひとつ大蔵省に御要求を申し上げたい、概算要求を申し上げたいと、かように考えておる次第でございます。
  367. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 防衛予算に対する大蔵省の立場は、防衛庁ないし国防会議を通じまして策定されまする防衛計画というものに対しまして、財政上許す限り調達を考えてまいる立場にあると思うのであります。言われるように、GNPの一%以内でなければならぬとかいう一つの目安を持って臨んでおるわけではございません。しかし、その年度の予算編成方針にのっとりまして、財政で許す限りの範囲内におきまして防衛庁の要求を可能な限り満足させてまいるということで臨んでいきたいと考えておるわけでございます。
  368. 上田哲

    上田哲君 角度を変えまして、私は福田総理にひとつ経済のかじ取りという立場から伺いたいのですが、これまでとこれから先の経済の基調ということを何遍もお話しになっておられる立場で、GNP一%論ということで進むというわけにはいかなくなった状況、分母の問題としてですね、それが出てきていると思うんです。いかがお考えですか。
  369. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これからは低成長時代、これを覚悟しなきゃならぬと思うんです。したがって、GNPはこれは伸び率が低くなる。それから予算の規模も伸び率が小さくなる、こういうふうに思います。したがって、その中における防衛費これも伸び率はかなり制約をされる、こういうふうに思います。  具体的にどのくらいの率になりますか、それはそのときの状況でございまするが、三者、つまり成長率、予算の規模、それから防衛費、これはまあ肩を並べてとまで言えるかどうか、しかし連動して動く、こういうふうに思います。
  370. 上田哲

    上田哲君 大蔵大臣も、総理、ほぼお認めになったと思うんですよ。GNP一%ということだけにこだわりはいたしませんというお話がありましたから、それはそれで、賛成とか反対じゃないんですよ、私たちは。考え方としては、そうなったならなったで、転換だと思うのです。これは今日まで、三十三年の国防の基本方針策定以来、防衛費のウエートのあり方というものは長いこと国会の議論を経て、GNP一%論というのは国民の合意のラインであるというのを言われたのは政府なんです。いまここへきて分母が小さくなったら、そんなことは言った覚えはないという議論では、これはもう議事録をひっぺ返さなきゃならぬことになるだけのことなんで、私は、いま福田総理も言われたように客観的な事実の上に立って、GNP一%論でもって防衛問題というもののコンセンサスを求められるという政府方針ではない状態に、やっぱり客観的に立っているんだろうということをお認めになるべきだと思うのです。したがって、総理、これは大蔵大臣・でもいいですよ、まさに国防の基本方針のいうところの国力、国情論というのをいままでの解釈では進められなくなったんだということは、すっきりお認めになったらいかがですか。
  371. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 経済がまるきりさま変わりになったわけでございますから、したがってまた財政のあり方も、いまお話もございましたように、すっかり変わってまいるわけでございます。したがって、いわゆる言うところの国力、国情のとらえ方というものは当然変わってまいるはずだと思います。
  372. 上田哲

    上田哲君 総理、つまりGNP一%論ではだめなんですよ。だから、それはもうお認めになった。そうすると、政府は今後いかなる合意ロジック、いかなる合意の線でその防衛費というものについての説明をなされるのか。いまお考えがないというなら、なければいいです。しかし、やっぱりいままでの考え方では説明がつかないのだ、新しい考え方を立てるんだというふうにならなければならぬ。これは国防の基本方針の改定をするなら別ですけれども、それでもいいんです。その基本方針はどうなんでしょうか。
  373. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私もずっと内閣におったわけでないですけれども、一%というものは政府の方針として打ち出したかどうかつまびらかでないですが、そういうことは一応目安として申し述べたのでしょう。  しかし、これは大きな変化ですからね、いまの経済情勢が高度成長から相当緩やかな成長になってくるわけです。いろいろ財政の規模というものは、これはやっぱり防衛庁といえども財政の規模というものの制約を受けることは当然でありましょうから、いまそういう目安は一体何だということでございますが、それは必要最小限度ということで、何か何%という目安というものをいまここで申し上げることはなかなかむつかしいと思いますが、やはりそういう国情、国力からして国民の納得のいくような防衛力の整備計画ということにせざるを得ないことは当然でありますが、それをどういう目標かということを数字的にいま申し上げることは困難と思います。
  374. 上田哲

    上田哲君 そこで、総理は一月二十三日に、ポスト四次防、それを防衛庁長官を含めて、来年の八月に決めようじゃないかと、こういうふうにお考えになったわけですね。
  375. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) ポスト四次防の問題につきましては、まだ総理には申し上げておりません。
  376. 上田哲

    上田哲君 だから、いつ決めるんですか。
  377. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) それは、私どもといたしましては来年の八月ごろまでには固めたいということで、この四月ごろその指示をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  378. 上田哲

    上田哲君 じゃ、いまの防衛庁長官言葉で、四月ごろ指示したい、来年の八月ごろ成案を得たい、いいですか、それで。
  379. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それでいいと思います。
  380. 上田哲

    上田哲君 そうしますと、また問題が起きるんですよ。さっき……
  381. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) いや、ただいま間違えましたから……。三月末にポスト四次防の指示をいたしたい。つまり、さっき四月になってから指示をすると申し上げましたが、それじゃなくて、三月の末に指示をいたしたい、こういうことです。
  382. 上田哲

    上田哲君 三月の末に指示をして、来年の八月に成案にする。
  383. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) そうでございます。
  384. 上田哲

    上田哲君 もう変わらないですな。
  385. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) もう変わりません。
  386. 上田哲

    上田哲君 総理はそれでいいでしな。——しっかりしてくださいよ。  そうしますと、また問題が起きるんですよ。いいですか。さっきあなたは五十一年度までのお話をされたから、五十一年度まではいい。一それは四次防のこっちにある。しかし、五十二年度はポスト四次防ですよ。来年は五十一年度ですよ。来年五十一年の八月にこれから先の見通しを立てるということになると、五十二年度も見通さなきゃならないというさっきのとおりの論理になるんです。五十二年度を見通す五十一年度の予算というのはどうやってつくるのか、これは大変な問題になってきますね。
  387. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) ポスト四次防におきまして、五十二年度から始まりますポスト四次防のことを考えるわけでございますが、同時に、一面におきまして、五十年、五十一年を踏まえて、主要装備について、先ほど申しましたような形で本年度の予算を組んでおるわけでございまして、その中におきまして、五十一年度を考えていこうということでございます。
  388. 上田哲

    上田哲君 私は説明の言葉を失いますけれども、念のために申し上げれば、四次防は三年前につくったんですよ、国会にも出ているんですよ、一年前には間に合わないんですよ。これは私が説明しなくたってもそちらが皆さん御存じなんです。これは常識の問題だからひとつはっきりしましようよ。  そうすると、四次防という五ヵ年計画になるか、単年度になるか、それはどっちでもいいんです。少なくとも次期防ですね、次期防が五十二年度から向こうへいくものが一年前に方針が決まる。決まらないものを二年の見通しを立てて、五十一年の夏に五十一年度、五十二年度の予算はできないんですよ。だから、五十一年度予算を放棄するか、五十二年度以降を放棄するか、どっちかなんです。そこはもうはっきりしてもらわないと、財政論としてもイロハのイの字だからだめだ。それを明確に責任持って返答してくれた上で審議をします。
  389. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 御案内のように、目下の進行しております四次防の最終年度が五十一年であるということで、五十年、つまり本年度の要求、五十年度を要求する段階において五十一年度を見渡して、そこで五十年度の要求をするというお約束ができたわけでございます。そこで五十二年から以降はポスト四次防という問題になるわけでございまして、その問題については先ほど大臣から申し上げましたように、五十二年の予算を要求するまでにポスト四次防の構想を固めたいと、こういうことでございます。
  390. 上田哲

    上田哲君 言葉を操らんでくださいよ。国民の大血税ですよ。五十一年ですよ、来年の八月というのは。五十一年の夏に概算要求をするものが、五十二年度の予算をするんでしょう、それは。その五十二年度から始まる長期計画が全然策定されてなくて、できるということがあり得ぬではありませんか。あなた、予算編成ができますか。まじめに答えてください、国民に。日本の財政史上始まって以来のことじゃないですか。
  391. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) それでございますから、五十二年度の概算要求をいたします段階までにポスト四次防の構想を固めまして、その中の一環として五十二年度の概算要求が出てまいると、こういうことを申し上げてあるわけでございます。
  392. 上田哲

    上田哲君 めちゃくちゃになりますね。いままで積算というのは全くないわけですな。いままでのような積算を全部やらないわけですね。
  393. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 積算をいたします根拠の経済指標その他の問題が定まっておりません現在において、非常に困難な作業になるということになると思います。これはやむを得ないことだと思います。
  394. 上田哲

    上田哲君 大蔵大臣、どうですか、こんなめちゃくちゃな予算編成作業ありますか。
  395. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 五十二年度、つまりいま進行中の四次防が終わった後の五十二年度の防衛費の概算要求ば、五十一年の八月末までに提出していただくことになります。したがって、防衛庁といたしましてはそれまでに、概算要求をするまでに、ことしの三月から来年の八月までに御勉強になって概算要求の基礎固めをおやりになるという御計画のように、いまここで私も伺ったわけでございます。それが単年度の計画になるのか、複数年度になるのか、どういうことになるのか、それはわかりませんけれども、スケジュールといたしましてはそういうことを考える以外に道はないのではないかと思います。
  396. 上田哲

    上田哲君 これはもうめちゃくちゃな話でありまして、まじめにお考えになるなら、こんなことはやるべきことじゃないということはもう言うまでもないと思います。  私どもからすれば、したがって、ここでもう五次防、ポスト四次防は全部おやめなさいと、そうでなければ、財政編成上の良識にって五十一年度防衛予算を計上することをやめなさいと、こういうことしか議論はないんです。ないのですが、これは水かけ論になりますから、私は平行線をたどる議論をきょうしたくないと思って一生懸命来たので、政府の答弁というのは非常に私は不誠意だと思ってさっきから腹が立つんだが、一歩、百歩譲ります。譲ってですね、総理、具体的にひとつ同じ土俵の上に登る議論に戻しますから。  そうなりますと、さっきから議論が出ておりました後年度負担分が出てくるんです。どんなめちゃくちゃな予算編成をなすったって、来年の夏になって長期計画ができてないところでつくる予算ですね、そこに膨大な後年度負担をつくり出すということになれば、これは予算の先取りになるということは、これだけは明白な事実ですね。こういうことはやっぱり避けなければならぬのではないか。いかがですか、総理、ひとつ原則ですから。
  397. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま上田先生がおっしゃる意味はどういうことなんでございましょうか、つまり私の理解するところでは、来年の夏に出される概算要求は五十二年度予算の概算要求だと思うのでございます。それはつまり単年度計画をお立てになろうと複数年度の計画をお立てになろうと、ともかく五十二年度の予算というのはつくらなきゃいかぬわけでございますね。そういたしますと、その五十二年度の予算というのは、当然五十三年度、五十四年度、後年度との関係が出てくる予算になることば、単年度の予算でありましても、これはやむを得ない道筋であろうと思うのであります。したがって、この概算要求なるものがどういうべースメントで出てこられるかというところが吟味さるるべき問題でございまして、八月末に五十二年度の概算要求をするのであるということ自体は、責められるべきことでは私はないと思います。
  398. 上田哲

    上田哲君 あのね、こういうことなんですよ。五十一年度予算はこの夏やりますね。これはポスト四次防じゃなくて、四次防のこっちですよ。それはおつくりになることは結構ですよ。しかし、その五十一年度予算の中に五十二年度以降の後年度負担分が入りますね。これは当然ですね。ところが、五十二年度以降は計画がないんですね。計画も方針も示されてない、国防会議にもかかってないのに、後年度負担分を先取りするということは財政論上許されますか。それば明らかに間違いではないかと言うんです。  ちなみに申し上げれば、たとえば五十年度の中の後年度負担分は三千二百九十六億ですよ。四十九年度は二千五百八十億ですよ。大体この数年、二千五百億から三千五百億ぐらいの後年度負担分があるんですよ。これはいやしくも財政論上は、国防会議を経た長期計画が後ろにあるなら理屈は通りますよ。しかし、来年の夏でなきゃできないと言っているんでしょう。五十二年度以降ないんでしょう。ないものを、たとえ四次防の中であっても、後年度負担分を策定するということは税金の先取りじゃありませんか。こういう先取りをとめることでなければ、財政上の最小限の正当性は保たれないではないか。
  399. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) お答え申し上げます。  先ほど来、お話が出ております防衛力整備計画の正面装備につきましては、調達ベースで計画ができておるわけでございます。したがいまして、毎年の国庫債務負担行為、継続費の問題になるわけでございます。先生のいまのお話のように、五十一年度の予算ができました段階で後年度負担が残ることはそのとおりでございますが、これは整備計画上は四次防の整備計画の中の一環として出るわけでございます。その経費が五十二年度以降に残ることばそのとおりでございますが、これは国庫債務負担行為あるいは継続費として国会の御承認を得る、そういうことでございます。
  400. 上田哲

    上田哲君 後年度負担が国庫債務負担行為と継続費であることぐらいは当然ですよ、あたりまえじゃないですか。じゃあ四兆六千億の項目を全部出しますか。当然、五十一年度の中に五十二年度以降の後年度負担分の装備費があるじゃないですか。そんなこと言っていたらだめですよ。第一ね、ちょっと待った、そんな細かいことを聞いているんじゃないんです、ぼくは財政原則を聞いているんですよ。長期計画が出てないものを、その分を先取りすることが許されますか、予算編成上。これはやっぱりそんな事務局じゃなくて、財政責任者としてしっかり答えていただきたい。防衛論の話とは違うんですよ。
  401. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま進行中の四次防計画の後、この計画を持つのか、単年度計画になるのか、長期計画になるのかまだ決まっていないわけでございます。しかしながら、それがよし単年度でございましても、これは国防会議にかけて決めなければならぬ性質のものでございます。で、私がいま伺っておる限りにおきましては、五十二年度の概算要求をするまでには、防衛庁といたしましては、政府部内で手順をちゃんと踏みまして、国防会議の議を経て考えてまいる計画じゃないかと私は思いますけれども、いま申し上げておきたいことば、ポスト四次防を単年度計画にするのか、複数年度の計画にするのかというようなことば一切まだ政府としては決めていないということでございまして、これからわれわれ十分練って考えなけりゃならぬことであるということだけを申し上げておきたいと思います。
  402. 上田哲

    上田哲君 この議論をしていますとね、時間を全くむだにするんです。これは常識論が全然抜かれていては困るのでありまして、事務当局のそんな細かい説明では、全然違うんです。私がさっきから申し上げているのは、防衛についての賛成か反対かというところで水かけやったのじゃ議論が煮詰まらないから、財政論上の一般原則として、長期計画が策定されてないときにそっちに向かっての後年度負担、こういうものはやっぱりおかしいじゃないか、そうであれば、具体的に三千億ないし二千億というものがあるわけですから、こういうものは少なくとも長期計画ができるまではストップするような姿勢をお持ちになるのが正しいのじゃないかと、国会に対して。こういうことを申し上げているのでありまして、あなたの方はいいですよ。総理からその御見解を承ればいい。私は時間がこれで費やされるのは非常に困ります。総理からひとつ伺いたい。
  403. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 上田さんの言う心配なこと、わからぬわけではありません。後年度負担のこともよく頭に置きまして、来年の八月まで、四次防の後をどうするかという問題も決めなきゃなりませんから、そういうことを頭に置いてよく検討いたすことにいたします。
  404. 上田哲

    上田哲君 総理はわかったと言われたじゃないですか、そこで。筋道はわかっていただかなきゃ困る。それは、政府の予算編成権はそちらにあるのだから、いろいろなことおやりになるでしょう。八月に国防会議を開かれようと何だろうと、それはそっちの御都合だから。こっちへ持ってこいなんて、みだりに言っておりませんよ、私どもは立場反対なんだから。しかし、いまの筋道は法制局長官がそこで認めたじゃないですか、これはそのとおりだと。長期計画がないものを先取りするということは財政編成上まずいんだから、それはいけないのだ、そういうことがないように処置をするというのは、それはわかりますよ。だから、それができないのだったら、その間は後年度負担分というのはやっぱりたな上げしておくべきだ。これは認めていただかなきゃ、国民の税金をどうでもできるようになってしまいますよ。
  405. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記をとめて。   〔午後四時二十八分速記中止〕   〔午後四時四十四分速記開始〕
  406. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。
  407. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 上田議員も御承知のように、防衛庁の装備については継続費及び国庫債務負担行為になるものが本来多いのでありますが、五十一年度予算が五十二年度以降の後年度負担をもらたす点について問題があることば、御指摘のとおりであります。その点については今後検討をいたします。
  408. 上田哲

    上田哲君 問題のポイントは認められましたので、私は一応この問題を後の各論に譲りますが、長い時間になると思います。  総理にもう一言つけ加えておきたいのは、こういう点があれば、やはりひとつ、たとえば今回は三千億これをたな上げするんですから、あるいは検討することになるのであれば、これもたとえば言うところの弱者対策、いい言葉じゃありませんが、そういう方に向けるというような配慮にはならぬものか。いかがでしょうか。
  409. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今年度の予算について、予算を修正する考え方は持っておりません。
  410. 上田哲

    上田哲君 私は防衛の賛成、反対という基本的な立場とともに、具体的にこうした問題をこのインフレ下の福祉対策、そうした問題に財源的に充当すべきであるという観点から御提案したいのでありますが、受け入れられないのは残念です。  次に移りますが、F86Fが二十数機油づけになっているというのは、これは事実ですか。
  411. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) お答えいたします。  昭和四十年にF86Fを二十九機モスボールいたしまして、現在岐阜に置いてあります。
  412. 上田哲

    上田哲君 それはなぜですか。
  413. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 航空機の場合に、御承知のとおり、スコードロンを編成します必要数がございます。それと同時に、いわゆる事故減粍というものが、これは大体の大数的に比率はありますが、現実の問題としまして何機出るかという予想は事実上つきません。計算値でありますから、これは一つ考え方としまして、いわゆる事故減粍用、つまりアトリション用に置くということ、それからまた減耗用というのがございますが、自然減粍でございますが、この自然減粍が進んでいく過程において、次のいわゆる機種と言いますか、一体F86Fを何年間にどのくらいつくっていくかという計画は、いわゆる国会審議によりまして毎年度予算でつくられるわけでございまして、その予定が将来つかない場合に、その自然減粍に対しましても、アトリション用と同じようにある程度のものを保有しておくというような考え方から現在二十九機持っておりますが、F86Fの減粍が大分進みまして、こく近い将来にこの二十九機はいずれ部隊に戻しまして、訓練用に使うという予定でございます。
  414. 上田哲

    上田哲君 びんびんしている86Fが二十九機も余っちゃった。つまり、計画的にはこれでもうオシャカになるはずだと思ったのが、ぴんぴんしておる。それにもかかわらず新しい飛行機を買う。これは大変おかしいですね。
  415. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) ただいま御説明いたしましたとおり、減粍が相当進んでおりまして、また事故もありますので、これに対しまして今後、104と同じように部隊に復帰させまして、これを極力使っていくという予定でございますので、むだにしておるということはないと考えております。
  416. 上田哲

    上田哲君 モスボールは完全に油づけなんですからね。しかし86Fはしようがないとして、F104が同じような状況にありませんか。
  417. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) F104は現在四機、モスボールをしております。
  418. 上田哲

    上田哲君 104の平均飛行時間は、いまどれだけですか。
  419. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 耐用命数は三千時間でございます。
  420. 上田哲

    上田哲君 いや、平均飛行時間ですよ。寿命じゃないです。
  421. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 飛行時間でございますか。
  422. 上田哲

    上田哲君 ええ。
  423. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) ちょっと正確な数字を覚えておりませんが、大体月に二十時間というふうに記憶しております。あとでまた訂正させていただきます。
  424. 上田哲

    上田哲君 少なくなっていますね。
  425. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) なっております。
  426. 上田哲

    上田哲君 そればなぜですか。
  427. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 失礼いたしました。最初少なかったのでございますが、逐次ふえまして二十時間に到達したと、こういうことでございます。
  428. 上田哲

    上田哲君 だから、それはなぜかと聞いているんですよ。下がってきたんでしょう。逐次ふえたけれども、全体より低いわけですね。なぜかというのです。
  429. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) これは、昨年につきましては特に石油事情その他の特殊事情がありましたことと、それから訓練空域が制約されているという諸事情がございます。
  430. 上田哲

    上田哲君 主力機について防衛局長がこの程度しかわからぬということじゃ困りますよ。油事情が起きたり、訓練空域の問題があったりして——104ば本当ならいつごろ切りかえですか。その後延びておるでしょう。
  431. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 質問、わかりましたか。
  432. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) ちょっと御質問の趣旨が……。
  433. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 時間をとりませんから、わかるようにひとつ。
  434. 上田哲

    上田哲君 104がいま中心ですね。三千時間ですね、念のために申し上げるが。三千時間の機械寿命がありますね。それからすると、一定の切りかえ時が来ますね。後継機がいま問題になっているわけでしょう。私の質問はFXなんですよ。そのことを含めて答弁してくれても結構です。FXに切りかえなきゃならぬということになっているが、実際には86Fも油づけになってぴんぴんしているんだし、104も本来なくなるところがなくならないで、ずっと押せ押せになっているでしょう。そういう状況になっているでしょう。だから、切りかえ時期というのはずっと後になって、これも油づけにしなきゃならぬだろうということを言いたいから言っているんで、まとめて答えてくれていいですよ。
  435. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 104のアトリションその他の状況でいま予定されておりますのは、いまのモスボールを使うということも計算に入れまして、ただいま六個スコードロンございますけれども、これが五十四年までが六個スコードロンで、五十五年以降一個スコードロンずつ落ちていくと、こういう状況になっております。
  436. 上田哲

    上田哲君 だから、それは計画としてはずっとおくれでおりますね。
  437. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) おくれております。
  438. 上田哲

    上田哲君 そうすると、FXは必要なくなってきませんか。
  439. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) そこで、五十五年以降に減勢が出てまいりますので、その五十五年からの新しい、これにかわります航空機の手当てが必要である、五十五年以降に就役する航空機の手当てが必要であると、こういうことでございます。
  440. 上田哲

    上田哲君 どうもおわかりになっておらないようだから……。つまり104というのは五十四年から五十五年のはずなんですよ。それが終わってその後継機としてFXということが問題になるんです。ところが、実際には押せ押せになっている。少しだって節約をすべきじゃないか、何でこんなに急がなきゃならぬのかという問題なんだ。いま一体FXについての購入計画はどうなっているか、しっかり説明してください。
  441. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 五十年度の予算で、まず海外資料の収集のための海外旅費、これは八百七十万程度でございますが、約十三名の調査員を海外に派遣する費用を御要求申し上げております。これでアメリカとヨーロッパの主要国を回りまして、現在第一線機として使用されておる要撃戦闘機、それから先ほど申し上げました五十五年の時点において取得できる可能性のあるもの、こういったものにつきまして広く資料収集をいたしてまいります。そしてこの収集をいたしました資料を中心にいたしまして分析作業、ORと申しておりますが、これを行いまして、来年度要求性能につきまして、再びこの候補機の中から数機にしぼりまして、最終の候補機をしぼるためのさらに精密な調査を実施するという予定になっております。それで、私どもの現在五十五年取得を一応予定いたしますと、五十二年度に第一次の契約にこぎつけたいというふうにいま考えておるわけでございます。
  442. 上田哲

    上田哲君 そんなに急がなきゃならない理由は私はないと思うんですよ。これは何でこんなに急ぐのか、もうちょっと納得のいく説明をいただきたい。飛行機は余っている。油づけになっている。飛行時間も少なくなっているんですよ。
  443. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) これは先ほど申し上げましたように104の部隊が現在六個スコードロンございますが、現在の情勢でまいりますと、昭和五十四年がピークで、五十五年以降一スコードロンずつ落ちていくという態勢にあるわけでございます。  一方、ファントムの部隊につきましては、五十三年に五個スコードロンできるということで、それだけがインターセプターとしての全部隊ということになるわけでございまして、現勢を維持するためにはどうしても五十五年にこの104の後継機について手当てをいたしませんと、インターセプターの勢力全体としては下降線をたどらざるを得ないという深刻な事態がございますので、ただいま申し上げましたようなスケジュールでFXの選定の作業に入らしていただきたいと、こう思うわけでございます。
  444. 上田哲

    上田哲君 私はこの問題にきょうはしぼりません。しかし、急ぐ理由はこんなにないんです。なぜ急ぐかというと、売り込み競争です。ロッキード、グラマン問題というのは私たちが非常にまだ深く脳裏に刻まれている問題がある。これは深刻に考える必要がある。  装備局長に聞きたい。装備局長、これは非常に私はそういう売り込み競争の結果だと思うんだが、ロッキード、グラマンの故事にならって、全くこれは清潔にそうした圧力を全部排除して、少なくとも国会の場に議論をぴちっと出すというところを約束ができるかどうか。
  445. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) ただいま上田委員から御指摘ございましたように、かってロッキード、グラマンその他のいろいろと激しい商社合戦、メーカー合戦等があったと聞いておりますし、私どもも今回新機種をもし入れますと、非常に現在単価も高いし巨額な金になります。当然、たとえば商社などが介在しますと、私どもは手数料も相当払わなくちゃなりませんし、これはきわめて低いとはいえ総額が大きいですから、非常に問題になるであろうという不安がございます。したがいまして、私どもは、この際あらゆる角度からそのような今後問題が起こらないように、昨年の国会審議におきまして山中前長官が御説明しましたと思いますが、たとえば防衛庁が直接商社を介入しないで契約し得るような方法も考えられるであろうかどうか、これにはいろいろと問題がございますけれども、そのような方法まで全部含めまして、現在のところできるだけ明確にオープンにフェアなやり方をとらせようというふうに考えいます。
  446. 上田哲

    上田哲君 総理、ロッキード、グラマンのこと御記憶だと思うんですけれども、同じ事態が起こっているのではないかと私は危惧を持っております。この商社の裏にいろいろな動きがあるとすれば、これは非常によく言われますけれども、選挙の前には飛行機争奪があるというようなことをよく言われます。言われてはならぬことであります。少なくともひとつこれはそういうことのないように、こんな飛行機を清潔に買いなさいと言っているのではありませんが、その裏側にそういうことがないように、総理のお言葉をしっかり伺っておきたいと思います。
  447. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 自衛隊のいろんな装備を背景にして、そういう疑惑に包まれるようなことがあっては断じてならない。ほかのことでもそうでありますが、ことにこの自衛隊というような、こういう国民の信頼の上に立たなければ防衛力にならぬわけですから、これは今後とも十分に注意をいたします。絶対にあってはならぬことだと、私も強く考えております。
  448. 上田哲

    上田哲君 さて、そのいろいろありました苦しい中の防衛構想ですが、簡単に言って四次防というのは更新近代化ということです。陸の十八万体制あるいは空の七百七十機体制というのは、大体更新近代化という言い方になっているようです。総理も一番初めにおっしゃったように、海がとおっしゃったですね。この海がよくわからぬのです。海というのがどういう戦略構想に基いているのか。これは総理はどういうふうに海の防衛をお考えですか。細かい技術論は要らないですから、簡単に言ってくださいよ。
  449. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 周辺海域におきます防衛と、それから海上交通の保護というのが主任務でございます。
  450. 上田哲

    上田哲君 じゃ、二十一万、二十五万、二十八万、三十二万、みんな意味があるんです、そっちの出た数字で。どれが本当ですか。
  451. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) これはもう先生十分御案内のとおりでございますから、詳しく申し上げるのはどうかと思いますけれども、御承知のように、周辺の海域の防衛と海上交通の保護ということで、主軸になりますのが四個護衛隊群でございます。
  452. 上田哲

    上田哲君 トン数を言っているんですよ。一言でいいですよ。
  453. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) その四個護衛隊群を現在のベースでやって……
  454. 上田哲

    上田哲君 だから二十一万か、二十五万か、二十八万か、三十五万かと言っているんだから、それに答えてくださいよ。時間がむだですよ。皆さんにそんな細かいこと要らないですよ。
  455. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 四個護衛隊群をやりますと二十五万トンになります。四次防の目標は二十  一万四千トンでございました。その中途でございます。それから、五個護衛隊群にいたしますと二十八万トンということでございます。
  456. 上田哲

    上田哲君 二十五万トンで周辺海域が守れるんですか。
  457. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 当面その体制で守れるというふうに考えております。
  458. 上田哲

    上田哲君 守れっこないんですよ。だから総理も言われているように、一国の軍隊、軍事力でということはできないとおっしゃっているわけです。三十何万トンあったってマラッカ海峡論なんていうのはお笑いですね。ですから、そういうトン数によって守れるのではないのだと、こういうことなんでしょう、総理。それだけは聞かしてください。
  459. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 最低限度の防衛力は持たなきゃならぬ。それば、そういうことは私は考えないのですけれども、しかし、究極においてはやっぱり有事の際を考えなきゃならぬ。そういう場合に最小限度の抵抗力として、それぐらいのものはある程度のものは持たなきゃならぬけれども、しかし、もう一国だけでこの日本のような長い海上輸送路を防衛できるということは、これはもうできません。そういうことをしようとするならばアメリカに匹敵するような海軍力を持つようなことにならなきゃならぬので、そういうことはできないけれども、しかし、本当にそういうことはあり得べからざることであるけれども、しかし、有事の際を考えて最少限度の抵抗力は持たなけりゃならぬし、また日常の日本の沿岸の防衛というものもありますから、その程度の防衛力は持つことが私は適当であろうと思います。それでも全部守り切れるものではないことは言われるとおりでございます。
  460. 上田哲

    上田哲君 そうだと思うんですよ。前の山中長官が、海はついに不可解という名文句を残されて去られたそうです。陸や空は大体更新近代化だと、しかし海は増強なんですね、いまでも。その海が増強だということの意味がわからぬのです。総理に細かい技術論は聞きません。しかし感覚的に国防会議議長とするお立場でも、アメリカに匹敵するという言葉が出ましたけれども、そういう何かの相互協力がなければこの広い海岸線を守れないという言葉のとおりだと思うんです。二十五万トンが三十万トンでも五十万トンでも説明がつかぬのです。ところが説明がつくことがある。説明がつくことがあるんです。つまり、この問題を解くかぎは日米軍事秘密協定ですよ。シーレーンです。総理、シーレーンというのを御存じですか。総理御存じですか。
  461. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はそういう秘密協定があることは知りません。
  462. 上田哲

    上田哲君 アメリカの第七艦隊を基軸とする海域軍事秘密協定です。
  463. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) ただいま御指摘のようなアメリカとの間の秘密協定というものは、私ども承知しておりません。
  464. 上田哲

    上田哲君 ハワイ、グアム、フィリピン、横須賀、この海域を第七艦隊と分担をして、有事の際には一般船舶の航行規制も行って日本側が分担をするものです。こういうものが具体的につくられております。海面もあります。私は見ております。出してください。
  465. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 繰り返して申し上げますが、そういうものはございません。
  466. 上田哲

    上田哲君 防衛庁長官、あなたはその引き継ぎを受けていませんか。
  467. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私も承知いたしておりません。
  468. 上田哲

    上田哲君 明らかにシーレーンがあるんですよ。これは制服の中では常識ですよ。もちろんトップクラスですけれども。それがあるから、二十万トン単位の日本の海域防衛というものが足し算でつくんですよ。これはニクソンドクトリン以降の具体的な制服同士の協定です。具体的には一番危険なことは、私は総理が御存じかどうかについては聞きたかったから聞いてみたのですが、防衛庁長官がもし御存じないとするならば、それも本当かもしれない。あるいは防衛局長も知らないということになると、その辺私は疑わしいけれども、シビリアンコントロールの根底を揺るがすところがここにあるんですよ。これは制服同士の秘密協定ですよ。知らないはずはない。
  469. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) 前任の久保局長のときから御説明申し上げておりますように、わが国の海上自衛隊の守備範囲といいますかにつきましては、大体数百ノーチカルマイルの周辺の海域、それから航路帯を設定いたします場合、先ほど御指摘のシーレーンに相当するものと思いますが、これは大体千ノーチカルマイルの範囲内でということで、いまのところ南々東と、それから南々西の方向、二本の航路帯ということをわが自衛隊では考えておるわけでございます。しかしながら、アメリカとの間の秘密協定という形でそういうものが設定されているということは聞いておりません。
  470. 上田哲

    上田哲君 これはシビリアンコントロールの根底にも触れるわけでありますけれども、いわば第二の三矢計画と言えるようなものだと思います。日米混合部隊計画ということにもなるはずのものであります。これはぜひシビリアンコントロールの立場からいっても調べていただかなければならぬ。御存じで言わないのだったらこれは問題なんですけれども、はっきりしていただく方法はどうしたらいいですか。
  471. 丸山昂

    政府委員丸山昂君) よく調査をいたしまして御回答申し上げたいと存じます。
  472. 上田哲

    上田哲君 防衛庁長官から承りたい。
  473. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) ないと思いますけれども、一応調査をいたしたいと思います。
  474. 上田哲

    上田哲君 報告をしてくれますか。
  475. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) もちろん報告をいたさなければならないと思っております。
  476. 上田哲

    上田哲君 いつまでに。
  477. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 早い機会にひとついたしたいと思っております。
  478. 上田哲

    上田哲君 予算総括中、どうですか。
  479. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) まあ大体その程度で御報告できると思います。
  480. 上田哲

    上田哲君 総括質問中にいただくのなら、後に譲りますか——。
  481. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 総括質問中に大臣、間に合いますか。
  482. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 承知いたしました。
  483. 上田哲

    上田哲君 ちょっと待ってください。
  484. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 続けてやってください、またやりますから。
  485. 上田哲

    上田哲君 ひとつ問題を変えまして、総理、静かに社会的不公正問題についてお話をしたいと思うんです。  私は総理政治の課題は、不公正の是正と言ってひずみのできた部分をいたわるのではなくて、そうしたひずみをつくらないようにすることだと思うんですが、いかがですか。
  486. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そのことが一番大事なことだと思います。
  487. 上田哲

    上田哲君 そういう不公正がどこから出てくるかということを、幾つか問題を挙げてお伺いをしたいのですが、まず税制を考えてみたい。  税制で不公正を出さないということは、政治の姿勢というべきものは、簡単に言えばお金のたくさんある方から取って、お金の少ない方からはたくさん取らない、こういう簡単なことだと思うんですが、いかがですか。
  488. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 理屈としてはそのとおりだと思いますが、税制全般として考えなきゃなりませんから単純な算術計算ではいかぬけれども、理屈としては、担税能力があるわけですからそのとおりだと思います。
  489. 上田哲

    上田哲君 けっこうです。そうしますと、総理大臣の諮問機関であります国民生活審議会の総合部会の答申ですね、中間報告、これで税制の対応として資産課税の強化、これはいかがですか。
  490. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういう答申がなされておることは承知いたしておりますが、政府としては、資産課税は所得課税の補完税として一部やっておりますけれども、ただいまこれを大胆に取り入れるという考えは持っておりません。
  491. 上田哲

    上田哲君 総理にこれは伺いたいのですが、たくさんある方から取って、なるべくない方からは取らないようにしろというのが、単純ではないけれども方向としては正しいとお認めになった。それに対して、いまの中間報告は明らかに資産税の強化ということを指向しているわけです。その方向は正しいわけでしょう。
  492. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 方向としては、その方向は誤っておるとは思いません。
  493. 上田哲

    上田哲君 そうしますと、わが国の唯一の資産税とも言える相続税ですね、この相続税の方向というのが減税の方向をたどっている。減税ということ自体が悪いということを言うのではないんですが、全体のバランスの中で言うと、私はここに大変問題があると思うんです。どうでしょうか。
  494. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおり、最近の経済の状況、推移にかんがみて問題がございましたので、今度見直しまして、相当大胆な改正をお願いいたしておるところでございます。
  495. 上田哲

    上田哲君 事務局でいいんですが、仮に一億円の資産を相続して妻と子供四人いたという場合に、今度の減税額が税制改正でどうなったかというところ、数字が出ているはずですから説明してください。
  496. 中橋敬次郎

    政府委員中橋敬次郎君) 今回の改正案によりまして、配偶者と子供四人が相続人になる場合について申し上げます。遺産額が一億円の場合に、それも、配偶者がいわば三分の一相続をするという例で申し上げますと、現行では、配偶者はそれに対しまして八十五万八千円の税額でございます。子供四人の税負担は千七百十六万円でございまして、合計千八百一万八千円でございます。今回御提案申し上げております改正案によりまして申しますと、配偶者について相続税はゼロになります。子供四人の負担は七百五十万円になりますので、合計七百五十万円になります。
  497. 上田哲

    上田哲君 そうしますと、一千万減るわけですね。大変な減税だと思う。年間の死亡者のうち、この該当者というのはどのぐらいいるんですか。それで、いま総額が落ちていましたから、総額も言ってください。
  498. 中橋敬次郎

    政府委員中橋敬次郎君) 相続税ですか。
  499. 上田哲

    上田哲君 そうです。
  500. 中橋敬次郎

    政府委員中橋敬次郎君) 相続税、贈与税というのはまあ同じような種類でございますので、その合計で申しますと、改正前におきまして昭和五十年度五千七十億円の予定でございまするが、今回御提案申し上げております改正によりまして、五十年度は四千四百五十億円になる予定でございます。  それで、相続税の課税を受けております者、これは現在のわが国の相続税体系で申しますと取得者課税でございますけれども、理解を共通にしていただくために申しますと、やはり遺産を持っておった人、いわば被相続人がどの程度課税になっておったかというのが一番便利だと思いますが、これが、昭和四十一年当時におきましては、亡くなった方の中で百人中一・四人が課税になっておったわけでございます。それが今回改正をいたしませんで昭和五十年には大体四・九人ぐらいになる予定でございまして、それが改正法の実現後におきましては約二・八人ぐらいになる予定でございます。
  501. 上田哲

    上田哲君 結局、平年度で七十万人亡くなる方があって三万人ですね、二万九千人ぐらい、三万人。それで減税額が平年度二千四百七十億、こういうことでいいですか。
  502. 中橋敬次郎

    政府委員中橋敬次郎君) 相続税という税目だけについて申しますと、平年度、今回の改正後二千七百七十億円が減収になります。ただ、相続税につきましては延納というものを非常に利用されまするので、先ほど申しましたような五十年度の税収になるわけでございまするが、それは減税額で申しますと、初年度相続税という税目では五百億円でございます。
  503. 上田哲

    上田哲君 平年度。
  504. 中橋敬次郎

    政府委員中橋敬次郎君) 平年度は、先ほど申しましたとおりの二千七百七十億円でございます。  それから、大体毎年ほぼ死亡する人というのが、先ほど申しました七十万人ぐらいの中で、課税を受けておりますのは、今日の現行法のもとにおきましては三万何千人になります。
  505. 上田哲

    上田哲君 今回の改正で減っているわけですしね、総理、七十万人亡くなる中で相続税の課税対象というのは三万人なんですよ。で、二千四百億円ですね、平年度。これは、それ自体が悪いとは言いませんよ。言いませんが、大変数少ない人への金持ち優遇だということになるだろうと思うんですよ。で、所得税の納税人員は何人ですか。ついでに総額も。
  506. 中橋敬次郎

    政府委員中橋敬次郎君) 今回の所得税法もやはり改正案をお願いいたしておりまして、五十年度予算におきましては三千三百万人でございます。
  507. 上田哲

    上田哲君 総理、これ、非常におもしろい一致があるんですね。金持ち減税である相続税の減税額も平年度二千四百億円、それから三千三百万人で払う所得税の減税額も二千四百億円、大体同じなん、ですよ。これは大変奇妙な一致だと思うんですがね。仮に私は計算をしてみた。納税者一人で割ってみますと、大変大ざっぱな計算ですよ、単純性の算術ですが、所得税の方の減税が七千七百四十二円、相続税は八百二十三万三千円、何と一千倍の優遇がある。これは社会的不公正じゃありませんか。
  508. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 当該年度だけを取り出して御比較になりますと仰せのようなことになりますけれども、御承知のように、所得税は去年からことしにかけまして大きな減税を御承認いただいたわけでございまして、したがって、この年度どういう税目を中心に減税をやらしていただくかということについて、われわれはいろいろ税制調査会等と御相談の上検討させていただきまして、ことしは長い間懸案でございました相続税に手を染めることにいたしたわけでございますので、長い沿革との関連において社会的公正という問題も吟味をしていただきたいと思います。
  509. 上田哲

    上田哲君 最高責任者としての総理に私は伺いたいんですよ。減税額は同じ二千四百億円なんだ。一方は三万人、一方は三千三百万人なんですよ。こっちのほうでやってみますと、一人七千円なんですよ。一方は八百万円なんですよ。これだけ大変な税金のまけ方というのは、やっぱり社会的不公正だとお感じになりませんか。
  510. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはやはり同じようなバランスを、税の性質が違う場合にとらにゃならぬというふうには考えません。そうでなければ公正を欠いたとは思わない。相続税は相続税としての役割りを持っておりますし、所得税は所得税としての役割りを持っておるわけですから、それが同じようなものでなければ公正ではないというふうには考えない。
  511. 上田哲

    上田哲君 同じといって、一千倍違うのですよ。
  512. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろいろ相続税は相続税として、やはりいままでの沿革もあるでしょうからね、相続税というものは。どこの国を見てもいろんな沿革があるわけです。その国の国情というものもあるわけですから、税の性質が所得税と相続税とは違う面がありますから、全然そういうものは無視して、出てきた総額で公平ではないというふうに考えることば私は適当でない。
  513. 上田哲

    上田哲君 私は、総理言葉としては非常に問題だと思いますよ。私は乱暴な計算だと言っているんです。三千三百万人のまじめに働いて所得税を取られている人の数でポンと減税額を割るのと、三万人の財産を遺産相続で税金を取られる人の分をポンと割るのとは、乱暴な計算だと初めから言っている。一千倍違うのがいささかも不公平でないとお考えになったのでは、不公正是正を唱える総理としては私は納得できないのだけれども、それでいいんですか。
  514. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 相続税を高く一代限りで税で取ってしまえという思想もあるでしょうけれども、日本の長い沿革、国情から見て、それは今度の場合は対象人員がこれで、これだけの違いがあって減税額がどうだという、一概に所得税と相続税とを比較して、これで不公正だということには私は無理がある。それはやはり相続税というものは、皆その国のいろんな国情とか沿革がありますよ。相続税をなるべく重くして一代限りにしろという思想も、これはあり得るでしょうね。そういう考えもあり得るでしょうが、日本はそういう考え方をとらない沿革を持ってきたわけですから、したがって、いろいろ上田さんとはお考えの違う点からそういう不公平感が出るのでしょうけれども、税には税としてのいろいろな背景があるという点から見て、これが非常に不公正の典型であるというふうには私は考えないわけでございます。
  515. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 上田さんの比較は、相続税族と所得税族が何か別なグループがあって、それを比較されるとあなたの言う立論が成り立つと思いますけれども、これは全然同じ人が相続税族であるし、同時に所得税族でもあるわけでございまして、したがって、所得税を納めておる者がきょう死ぬかもしれぬわけでございまして、冒頭に私申し上げましたように、資産税というのは所得課税の補完税としての税の体系上占めておるわけでございまして、本来、所得税が十分機能いたしまして、それで十分の税収が確保されて社会的公正が確保され、富の再配分がそれで実現されるということでございますならば、ほかの税目なんか考える必要はないわけでございます。けれども、沿革的に相続税というものも補完税の一つとして取り上げられておるわけでございまして、これは対立する税ではなくて、所得税の補完税であるという性格でございますので、この二つをそのままフラットに御比較いただかないようにお願いしたいと思います。
  516. 上田哲

    上田哲君 私は属人的な問題を議論しているのじゃありませんけれども、税制というものを社会的公正さにおいて問題を議論をしているんです。数から言ったって三千三百万と三万人と、三千三百万人が三万人の中に入ってしまう度合いなんというのは全く議論になりませんので、これは政治論としてそういうお考えは私は問題だと思うんです。計算の仕方は乱暴にしておると言うのです。千倍も開いていることば縮めた方がいいだろうということは認めなければ、社会的不公正を正すという政治姿勢は出てこぬではありませんか。
  517. 中橋敬次郎

    政府委員中橋敬次郎君) たまたま本年度の減税額が両方似ておるということで、相続税と所得税とを御批判になっておりますが、それは私はやはり方法論としては大臣が言っておられるとおりと思います。仮に所得税も今日三千三百万人の人が納めておりますが、それは一人当たり二十万円でございますし、相続税は一人当たり千八百万円という計算になります。しかも、所得税の中でも三千三百万人というのには、高額所得者もございますれば、非常に低い所得者もございます。それが平均で二十万円でございますし、ちょっと二年ぐらい前の数字でございまするけれども、所得税もやはり累進構造をとっておりますから、上の方の一%の人が所得税額のうちの約二六、七%を納めておるということでございますので、大体相続税を納めておる人と高額の所得税を納めておる人というのはダブっていくわけでございます。したがいまして、単純に御比較になるということは、やはり私は税の性格上問題があると思っております。
  518. 上田哲

    上田哲君 だれが単純に比較していることを押しつけていますか。そういうところから政治視点を持たなければいかぬだろうということを言っているので、二千四百億が一緒になったから問題が同じところに立っているなんて、だれが言っておりますか。そういう考え方で言いくるめちゃいかぬだろうということを言っているのですよ。  たとえば、年収三百万の標準家庭は年間三万六千五百円、月に三千円ですよ。たばこの分で吹っ飛ぶじゃないですか。そういう状況の中で、一方ではやっぱり金持ち減税というのがあるのは社会的不公正をつくり出す枠組みではないかということを言っているので、両方とも得している人がいるはずだなんという議論は政治議論じゃ全然ないですよ、これは。  そこで、大蔵大臣からも総理からも、長い沿革という言葉がありました。長い沿革は認めます、私は半分。シャウプ勧告以来、やっぱり高度成長の上で取れるものを取ってきたということがありますからね。そこで租税特別措置というのが乗っかってきました、たくさん。そこで、いまの議論はいいです。しかし、何とかして社会的不公正を税制の上に残しておかないということを考えるならば、高度成長の行きどまりのところに立った今日、やっぱり長期展望を持たなければならぬというところはお考えになっていいだろう。そういう御見解はいかがですか、総理
  519. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そればやはりこういう日本の経済基調というものが変わるわけでありますから、いままですべての税制というものがいままでの基調の上に立っておったし、そのときの政策目標というものも頭に入れた税制ですから、見直さなければならぬということは全般論としては言われるとおりだと思います。
  520. 上田哲

    上田哲君 わかりました。私はそこのところは評価します。  じゃ、大蔵大臣、具体的に伺うけれども、税調にこの際、総理意見を受けて、長期答申を求める考えはありませんか。
  521. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま、とっさの御質問でございまして、直ちに御諮問申し上げるという用意もございませんけれども、確かに財政をめぐる条件が大きな変革を見ておるわけでございますので、税制につきましても、おっしゃるとおり、長期の展望に立って御審議をいただく必要は私も認めますので、これをどのように税調で取り上げていただくかにつきましては、なお検討させていただきます。
  522. 上田哲

    上田哲君 そこはけっこうです。その前向きな姿勢でぜひ長期展望を、長期答申を求められるようにお願いをいたしたい。そのように受け取っておきます。その受け取りでよろしいですね。
  523. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) けっこうでございます。
  524. 上田哲

    上田哲君 わかりました。そこはひとつ認めます。  そうしますと、ちょっともう一つ数字の上だけで引っかけます。またこだわってもらっては困りますよ。二千四百億というのを探していきますと、ちょうどたばこの減税にぶつかるんですよ。全くたばこがぴったりくる。煙のごとく消えたんだな、この減税は。二千四百億をずうっと探してみますと、今度の税制改正というのは実におかしな一致があっちこっちに見つかったので、私も驚いたのです。どう思いますか。
  525. 中橋敬次郎

    政府委員中橋敬次郎君) 所得税につきまして二千四百億円余りの減税でございますけれども、毎々申し上げておりますように、昨年の大改正の平年度化でございまして、ことしはその二千四百億円余りの減税のほかに、四千五百億円というのが減税になるわけでございます。したがいまして、いまの二千四百億円というものだけで今回の所得税の数字をおとりいただかないようにお願いしとうございます。
  526. 上田哲

    上田哲君 官僚としゃべるのはやめましょう。知識も少し足りないと思うけれどもね、たばこの話、たとえば財政寄与率が昭和二十五年には二〇・一%なんですね。いま二・四%なんです。専売益金が、たばこが国税の中に占めるのは二.四%。それなら、わざわざここでたとえば益金率を六〇%にするなんという理屈をつけながら、本当にたばこを吸うだけを楽しみにしている勤労者にこういう大幅な値上げをせぬでもいいじゃないですか、総理あるいは大蔵大臣
  527. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま仰せのように、全体の税収の中のシェアも、間接税の中のウエートも非常に低くなってきておるわけでございます。上田さんは、だから、そういうところまでせっかく下がってきたんだから、これはさわらぬ方がいいじゃないかという御意見ですが、私はこのようにウエートが下がってきたのだから、ほかとのバランスにおいて、ことしはほかとのバランスを考えさせていただいて差し支えないのじゃないかという逆な方向に考えさせていただいたことを御理解いただきたいと思います。
  528. 上田哲

    上田哲君 理解できませんよ。絶対額では六十八億円もふえている。四十三年に比べて四十九年では二千三百六十八億、もう一・五倍もふえているんです。しかも単価は上げている。こういうやり方で、ぼくはどうもやっぱり納得できない。そこは少しおきます。時間がもったいない。しかも、政策的に売り上げ額をふやしている。「Oh!チエリー これが世界の味だ」「それ行けワン・ツー・オー」というのは何ですか、説明してください。
  529. 泉美之松

    説明員(泉美之松君) お答え申し上げます。  私ども、たばこを販売いたしておる際におきまして、世界のたばこの状況を御判断いただきますと、御存じのように第二次世界大戦前までは、いわゆるイギリス巻きと申しまして、たばこの葉っぱの味でのませるたばこが多かったわけであります。それが第二次世界大戦中及び戦後、御存じのようにアメリカの兵隊が世界各地に駐留いたしましてアメリカのたばこを吸う。したがって、それが各地に普及いたしまして、第二次世界大戦後はアメリカのたばこ、いわゆるアメリカンブレンドと申されますたばこの消費がふえてまいったわけでございまして、私どももそういった消費の大きな傾向に対処いたしまして、「チェリー」であるとか、「らん」であるとか、「ハイライト・エキスポート」であるとか、「みね」であるとか、そういったいわゆるアメリカンブレンドのたばこを消費者に供給するように努めてまいっております。その際におきまして、宣伝用語といたしまして「Oh!チエリー これが世界の味だ」という宣伝を用いたのであります。  なお、「ワン・ツー・オー」と申しますのは、これは対外的なものではございませんで、私ども部内で販売を担当する営業部員が、百二十円銘柄のたばこ、先ほど申し上げましたような「らん」であるとか、「ハイライト・エキスポート」でありますとか、「ミスタースリム」でございますが、そういったものを売っていくかけ声として「ワン・ツー・オー」、百二十円でありますからワン・ツー・オーという合言葉にいたして、かけ声にいたしておるわけでございます。
  530. 上田哲

    上田哲君 あのね、ほんとうはこれは笑い話じゃないんです。昔は「たばこは動くアクセサリー」というのがあれだったんですよ。そこには銘柄はなかったんですよ。いまは実に巧妙な政策が後ろにありまして、単価を言っていると時間がないからもうやめますけれども、どんどん単価を上げて、皆さんが吸っているたばこをごらんになりゃいい。実は品不足もつくり出しながら、ワン・ツー・オーというのは十本入りのたばこなんかほとんどない。百二十円のたばこの需要をふやすように、こういう形へどんどん持っていって、国民の嗜好を変えておるんですよ。こういう形で絶対額をふやしているという政策が、悲しきかな、一日の疲れでたばこを吸いながら、実は専売の販売政策、税制の不備でもってたばこを吸わされているということになる。私はやっぱりこういうことは非常にまずいと思うんですよ。
  531. 泉美之松

    説明員(泉美之松君) 先ほど申し上げましたように、私ども専売公社といたしましては、やはり世界のたばこの状況を見ながら、なお日本の消費者の方にできるだけ安くていいたばこ、しかも安全なたばこを吸っていただくようにいろいろ努力いたしております。もちろん、お話のように百二十円銘柄のたばこも売っておりますけれども、このシェアはごくわずかでございまして、現在たばこの中心をなしておりますものはハイライトの八十円、もっともこれは今度定価改定いたしますと、五割アップいたしまして百二十円にお願いいたしておりますけれども、そのハイライトが中心でございまして……
  532. 上田哲

    上田哲君 まだ決まってないんだよ。
  533. 泉美之松

    説明員(泉美之松君) そういうことでございますので、百二十円だけを売っているわけではございません。ただ、単価アップも、御存じのように以前は毎年平均三%ぐらい単価アップがございましたが、最近はなかなかそういった高級銘柄がそう売れませんし、したがって単価アップも二%、四十八年におきましては一・九%といったような状況になっていまして、そのような単価アップをしておるとおっしゃいますけれども、国民消費資金全体の中で占めるたばこの消費額というものは、昭和四十三年当直から比べましてだんだん減ってまいっております。
  534. 上田哲

    上田哲君 一・五倍じゃないですか。四十三年と四十九年を比べると一・五倍じゃないですか。
  535. 泉美之松

    説明員(泉美之松君) さようでございます。ただ御存じのように、消費資金全体がそれ以上にふえておりますので、国民消費資金の中で占めるたばこの消費の割合は一・九一%にしかならないわけでございます。
  536. 上田哲

    上田哲君 それは文明国になったからだ。
  537. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日本ではたばこをつくり得る権限、資格を持っているのは専売公社だけでございますので、これのいい悪いの比較は、外国とこれは比較するはり手はないわけでございますが、諸外国、先進諸国のたばこと比較いたしまして、税負担の面から申しましても価格の面から申しましても、決して私は高くないと思います。それからまた公社経営にいたしておりまするけれども、人員は減っておりますけれども仕事を多くこなして生産性も上げた実績が顕著に見えておりますので、そういった点につきましては御理解をいただきたいと思います。
  538. 上田哲

    上田哲君 嗜好を変えるような操作をしたり、在庫、出荷の調整をするということだけはしないということを約束してください。  それから品不足対策、買い占め対策もついでに言ってください。
  539. 泉美之松

    説明員(泉美之松君) 私どもは決して嗜好を変えるということを考えておるわけではございません。やはり消費者の方に好かれるたばこをつくっていきたい、こう思っております。  それから現在、公社の売り出しておりますたばこの銘柄の中に品不足になるものがございまして、それにはそれぞれの理由がございますが、煩わしゅうございますのでそれは申し上げませんけれども、そういった品不足につきましては今後十分戒心いたしまして、そういうことのないように努力いたしてまいりたい、このように思っております。
  540. 上田哲

    上田哲君 買い占め対策……。
  541. 泉美之松

    説明員(泉美之松君) 買い占めにつきましては、先日も申し上げましたが、二月からパチンコその他の大口消費者に対しましては販売規制を行うことにいたしました。ただ、一般消費者にはできるだけ供給に努めまして、御迷惑をかけないようにいたしていきたいと、このように考えております。
  542. 上田哲

    上田哲君 これについていろいろ言いたいのですが、総理に伺っても時間のむだですから、最後に非常に重要な問題について触れていきたい。不公正の是正の問題として、庶民の願いである家の問題を議論をしたいんです。これは特に公庫融資のあり方、これについて伺いたい。  住宅金融公庫の一般個人向け住宅の四十九年度分の追加融資が最近実施されました。これは通告してありますので、その状況について報告してください。
  543. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) 住宅金融公庫でございます。  ことし一月に、年度中異例なことでございますけれども、五万戸の追加融資のワクをちょうだいいたしました。私どもその受け付けに慎重を期したわけでございますが、決定いたしましたのがたしか一月の十一日でございまして、その後いろいろ受け付けの準備等進めてまいりまして、一月の二十日から、一応のめどといたしまして二月の十九日まで受け付けるということで業務を開始したわけでございます。しかし、こういう御時勢でございますので、非常に申し込みが殺到する懸念がございます。したがいまして、その期間の途中でも枠が満杯になれば打ち切りますということを、最初からお断りをして開始をいたしました。一般住宅につきましては、予想どおり非常な出足でございまして、約十三日間、日付で申しますれば二月の一日に締め切らざるを得ない状態になったわけでございます。ただいまそういうことで事務を進めております。
  544. 上田哲

    上田哲君 締め切りが二十日も早くなって、二月一日に受け付けを締め切られて、希望がかなえられなかった人が非常に多かったんです。ところが、今回の融資をめぐって、申し込み受け付けの一週間前の一月十四日に、建設省と住宅金融公庫が大手のプレハブメーカー七社の社長、常務クラスをホテル・オークラに呼んで、各社別に八千八百戸、追加融資の二〇%に当たる融資枠を割り当てている。この割り当て数量を出してください。
  545. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) 確かにそのようなことをいたしましたが、それはなぜそういうことをしたかという理由をひとつ御説明……
  546. 上田哲

    上田哲君 数量を出してください。割り当て数字を出してください。質問はそれを言っているんです。
  547. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) 数量でございますか。これは……
  548. 上田哲

    上田哲君 説明聞いてもいい。
  549. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) 実はプレハブ業界に少し行き過ぎた営業活動が見受けられまして、大変貴重な枠をちょうだいしてやることでございますので、私どもは、このまま手をつかねてただ受け付けを開始するということもいかがかと考えたわけでございます。そこでプレハブ業界に対して自粛を呼びかけましたし、いま先生お話しのとおり、特に大手の業者に対しては、その辺が一番震源地でございますから、そういうところに対して特に自粛をより強く呼びかけたことでございます。その場合、プレハブ住宅の自粛と申しましても、何らのめどをも示さないではどうにもなりませんので、従来の実績というものを私どもは一つつかまえまして、過去二年で大体二〇%ぐらい、私どもの融資をいたしました個人住宅の中の約二割がプレハブであるということを一つのめどにいたしまして、そうして各大手の業者の大体の実績を勘案いたしまして、自粛の一つのめどをお示ししたわけでございます。
  550. 上田哲

    上田哲君 なぜ出せないんですか。質問はそこなんです。出して下さい。
  551. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) これは私ども実績に基づきまして、大体大手の実績というのが、プレハブ二割と申しましたけれども、二割の中の八八%に相当いたします。そこで、その八八%という数字をもとにいたしまして、その中で大体の実績によりまして業者がどういう数字になるかということを示したわけでございますが、これは別に、ただいまお話ございました枠を与えたというようなことではなく、むしろ逆にあまり暴れてもらっては困る、大事な枠をちょうだいして、特にこれを非常に待望していらっしゃる方が多いわけでございます。そういう場合に、あまり行き過ぎた営業活動で需要をかき立てるというようなことは困るという趣旨からやったわけでございまして、ただいま申しましたようなことをいたしました。一番小さいところで五%ぐらい、一番大きいところで二五%ぐらいということで数字を出したわけでございますが、まあ各社別の数字と申しますと、ひとつ御容赦をいただきたいと思います。
  552. 上田哲

    上田哲君 数字を出せないという理由には全然ならぬですよ。出して下さい。いままでさんざん要求しているんだ。ここで初めてじゃなくて、さんざん要求しているんですから数字を出して下さい。
  553. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) 別に他意あるわけではございませんが、こういう業界に特にこういった数字を示しましたので、こういったことを、私どもの慣行として特に企業名を挙げて数字を出すということを従来お許しをいただいておりますものですから、そういうふうにいたしたわけでございます。いま申しましたように、最高は二五%から、あるいは一七%、一三%、一〇%、八%、五%といったような数字でそれぞれに割り当てております。
  554. 上田哲

    上田哲君 いや、戸数ですよ。あなたは戸数を示したのじゃないですか、七社に対して。その数字があるじゃないですか。それがなぜ出せないんです。
  555. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) いや、もちろんこれはパーセンテージでございますから、掛ければ戸数は出てまいります。
  556. 上田哲

    上田哲君 何を言っていますか。あなたは戸数で示したんじゃないですか。一月の十四日にホテル・オークラで、あなたと言っちゃ失礼だけれどもね、戸数を示したんですよ。その示したとおり、そこはパーセンテージじゃないんですから、出してください、数字を。そんな、ごまかしちゃだめだ。
  557. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) 別にごまかしはいたしておりませんが……
  558. 上田哲

    上田哲君 説明したとおりに説明してくださいと言っているんですよ。数字を変える必要はない。
  559. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) ですから、全体で二割と申しました。そこで、五万戸でございますから、二割と申せば一万戸になるわけでございます。そこで、この中で二五%という数字を与えられたものは二千五百戸と当然なるわけで、一〇%の割り当てを受けたものは千戸と、こういうことになります。これは割り当てというよりは、つまりその範囲で自粛をしてくれと。私どもも従来こういうことをやったことがございませんので、何とかひとつ自粛をしてもらうという手段でこのようなことをいたしたわけでございます。
  560. 上田哲

    上田哲君 数字を全部出してくださいよ、数字を。同じことばっかりやっても時間がたつじゃないですか。七社あるじゃないですか。
  561. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) ただいま計算をいたしまして、まあ数字は……
  562. 上田哲

    上田哲君 そんなごまかしはだめですよ。やってください。さんざんいままであなたに要求しているんだ、初めてじゃないんです。今回の理事会の申し合わせの中で、さきに要求をしたら出るということになっているから出してください。要求してある。ここへ来てパーセンテージなんていうのは、とんでもない。
  563. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) しばらく御猶予を願いたいと思います。
  564. 上田哲

    上田哲君 約束なんだから、だめですよ。手元に持っているのを読めばいいんですよ。ひきょうですよ、それは。
  565. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) ただいま数字を算出いたしております。ちょっとお待ち願います。
  566. 上田哲

    上田哲君 さんざん要求しておる。初めに持ってきているんだ。一月十四日に業者に知らせておる。
  567. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) 数字を申し上げます。  永大産業が八百、ミサワホームが二千五百、大和ハウスが一千、積水ハウスが千七百、ナショナル住宅建材千三百、積水化学工業千、大成建設五百、合計八千八百。これが全体二割ですから、一万戸になります。そのうちのこの大手のものが八八%、数字にすれば八千八百と。これは過去の実績を参考にして一応出したものでございます。
  568. 上田哲

    上田哲君 計算するなんて、うそじゃありませんか。そこにあるじゃないですか。そういうでたらめなことが、あなた、国会に対して許せますか。委員長、これは厳しくお願いします。与党の理事さんにも、資料提出を求めれば出るという約束だから、再三にわたって要求しておる。何が計算ですか。まじめに家を欲しい人々は、一生懸命用紙を取りに行ったって用紙もくれない。そして、あなた方ば一週間前に業者を集めてやっているじゃないですか。何がパーセンテージですか。この大手プレハブメーカー七社、出席者の名前だって全部ここにある。そんなことを一々言わなくたっていいから……。こんなでたらめなことが国会で許せますか、家が欲しい人たちのために。何ですか、これは一体。  建設大臣、明らかに公取委にこれば通告すべき問題でもあり、公取自身調べました。しかし、行政指導でやっとるからということで、これはあの石油のときと同じになっちゃう。そういう隠れみのでこんな問題が許されていいはずはないじゃないですか。一週間前ですよ、一週間前。業者を集めて不正なことがあったから云々とおっしゃる。それなら個別にやるべきじゃありませんか。全部を集めて、ホテル・オークラで社長と常務を集めてこの具体的な数字を示せば、これがやみカルテルでなくて何ですか。それを公庫がやるなんていうことが一体社会常識として許せますか。そんなことば法律の抜け道を幾らつくったって、あなたがいまここで計算をしますなんということをぬけぬけと予算委員会で言う精神、それが国民の住宅に対する気持ちを裏切っておるんですよ。建設大臣、どうですか、これは。
  569. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 上田先生、少し誤解があるのじゃないかという感じがしますが。
  570. 上田哲

    上田哲君 どこに誤解があるんだ。あれはごまかしじゃないですか。
  571. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) これは提出するというのをしなかったのは、私はそれを聞いていませんでしたから、謝っておきます。大体、公庫から金を借りますと、個人が家を建てるのは、どんな家を建てるかは個人の選択に任せられておりまして、しかも、そうすると、その個人がどういう家を建てるかわからぬのに、それへ特別な枠をきめるといったこと、これは実際不自然なことだと思っております。その点は、認めます。ただ今度の五万戸は、御承知のように七月に七万戸追加し、また五万戸追加したのは、国民の非常に持ち家住宅に対する要望が強いのでやったわけなんです。それと、もう一つの目的は、総需要抑制で中小建材店やら工務店等が非常にお困りになっておりますから、そういう面もある程度救済する意味も含めて、これは実は五万戸をぜひ年度内に融資しようということでやったわけなんです。ところが、そうしてわれわれがやっておることを、今度は大手のプレハブ関係がそれを聞いて、故意、まあ必要以上にと申しますかね、非常に宣伝をして、その枠を獲得しようという動きがあったものですから、それは困ると。だから、そういう人を呼んでもっと自粛を厳重に促しなさいということからいまの問題は発生したわけでありまして、決して悪意から出たものではございませんし、しかも従来のシェアが二〇%以内ということでありますから、それが一七%程度で終わるなら、一応むしろ中小業者にいくもの、これからそのシェアを多く分捕ろうとしているのをわれわれは逆に抑えて、最初の目的を達したという形にも実は結果的にはなっておるわけでありますから、どうぞひとつ、いろいろ手続で悪いところは謝ります。今後厳重に注意をして、公庫住宅の問題、金融の問題は十分に厳重に気をつけてやっていきますけれども、そういう善意から出発したものであるということをぜひひとつ御理解をいただきたいと思います。
  572. 上田哲

    上田哲君 建設大臣は大変私はさっくりした人だと聞いていたんでね、もっとさっくりしてくださいよ。おかしいですよ、これは。業者を受け付けを前の一週間前に大手だけ集めて、しっかりやれと懇談するなんていうなら、それで終わりじゃないですか。割り当ての数字を示すなんということは一体何ですか。もとの数字はこれなんですよ、実は。ちゃんとやっているんですよ。こんなものはその説明では通らない。もっとすっきりしてください。それじゃだめだ。
  573. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 趣旨がどうであろうとも、目的がどうであろうとも、やったこと自体は確かに私は行き過ぎであったと思います。先ほど申し上げましたように、借りた個人がどんな家を建てるか、どういう形のものをつくるかは個人の選択でありまして、それを前もって特別の業者に枠をきめて渡すなんということは、これはなすべきことじゃありません。率直に認めます。ただ、善意にやったことでありますから、御理解をいただきたいと申し上げておるわけであります。
  574. 上田哲

    上田哲君 そればわかりました。いまのようなお話を聞けば、やったことがいいことじゃありませんけれど、これからしっかりやってくださいよ。ただ、こういうものは、たとえば業界とその割り当て側である公庫の癒着に基づいていたらどういうことになるんですか。
  575. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 私は全くそういうことばないと思っておりますし、そういうことがあってはならないし、今後も厳重に気をつけていかなきゃならぬと、かように存じております。
  576. 上田哲

    上田哲君 あったらどうしますか。
  577. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) こういうようなものは私は全くないと思っておりますから、あったらどうするかという仮定のことに御返答できませんが、これは厳重にひとつそういうことを、うわさがあるとすれば調査をいたしていきます。
  578. 上田哲

    上田哲君 わかりました。じゃあ疑惑を出します。これはいまの話は、ホテル・オークラが一月十四日、その一週間前の一月七日付の毎日新聞、ミサワホームを覚えてください。さっき御報告のあったミサワホームは二千五百戸こんなに大きい広告が出ている、こんなに大きい広告。ミサワホーム。割り当てになる一週間前に、二千五百戸がここに書いてある。見てください、これ。(資料を示す)どうですか。確かにちゃんと出ています。毎日新聞、一月七日です。これ、どうお考えですか。
  579. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) 実はそういうことを私もちょっと聞きましたので、これはどういうことか調査をいたしました。この新聞の、その会社の広告に二千五百という、たまたま私のほうが示しました数字と同じ数字が出ております。これはどういうことかということを調べましたところが、この会社は、この広告では会社のある種の型、住宅の型を示しておりまして、そうして、その型の第二次の受け付けを二千五百戸とするんだと、こういう広告をしておるわけでございます。その会社がここに広告をしております型は、これはホームコアとかいうことでございますが、その型はこの会社の扱っておる商品の約二割でございまして、主力は別にF型というものがございまして、そういうものを主力に販売をしておるわけでございます。会社といたしましても、この商品だけを何も売ろうというわけでもなかったと思いますし、たまたま数字がそんなことで非常に疑いを招いておりますけれども、私どもといたしましても別に事前に何ら工作をするとか、そんなことは絶対いたしておりません。それからなお、この広告の日付が一月七日でございます。この五万戸の枠が決まりましたのが、先ほど申し上げました一月の十一日でございまして、実はこのお話も前々からいろいろございまして、八万戸か七万戸か五万戸かと、いろいろ政府で御苦労願っておりまして、私どもといたしましては、果たして幾らに決まるものか、その時点まで全然予想もつかなかった戸数でございます。その五万戸がこの広告が出る後の一月十一日に決まりまして、そうして私どもはただいま申し上げましたようなことはいたしましたが、それは二十日に受け付ける直前にそのようなことをしたというおしかりがございますけれども、実は私ども言いわけするわけじゃございませんけれど、受け付けの間際に非常にそういううわさが高くなりましたので、これはほうっておけないということで、実はあわてまして、そのような措置を講じまして、ただいまおしかりを受けました、各業者に数字まで示すことはないじゃないかということになったわけでございますが、別に枠を与えるとか、そういう他意あるわけではございません。自粛の目標を何か示しませんと、ただ自粛しろ自粛しろと言っても効果がございませんものですから、まあ私どもとしては、余りいい知恵ではなかったかと思いますが、さようなことをいたしたわけでございます。これは今回の五万戸に限って私どもはその枠の追加の趣旨も十分考えまして、このようなことをいたしたわけでございまして、今後こういうことを続けるなどとは毛頭思っておりません。また、この方法について、非常に未熟な点がありましたことは謹んでおわびを申し上げます。
  580. 上田哲

    上田哲君 偶然の一致などというばかなことで説明が通りますか。ホテル・オークラで七社に渡した数字、それより一週間前、そんなものが偶然の一致であろうはずはありません。建設大臣はそんなことは許さぬのだと言った。その立場からすれば、これは許せぬことですよ。しかも、あなたの方でつくったこの数字があるじゃないか、ここに。こういうものが出てきているのでなければ——そんなものかすばっとあなた、偶然の一致になり得ますか。これじゃ社会的な不公正というのはもうどうしようもないです。社会的公正を議論するわけにはいきません。これは、こんな偶然の一致、今後はいたしませんなんという答弁は、私は納得できない。しっかりした御答弁がなければ、私は質問できません。
  581. 浅村廉

    参考人(浅村廉君) そういうわけでやったわけでございまして、おしかりはもう十分ちょうだいいたします。決して私どもは他意あるわけではなく、絶対にそのような不正などはございません。はっきり申し上げます。
  582. 上田哲

    上田哲君 これじゃ先へ進めませんよ。
  583. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) またおしかりを受けるかもしれませんけれども、私ども本当に全く知らないです。実は五万戸、一—三月で特別融資を考えようという決定をして、大蔵省からその通知を受けたのが十一日なんです、一月の十一日なんでして、一月七日の広告でありますから、全く私どもは知らないわけでして、前々から私どもは要望はしておったんです、大蔵省の方へ。むしろ私どもは七万尺八万戸という要求をしておったわけです。だから、そういうことが事前に漏れるとか、知って漏らしたとかいうことば常識ではあり得ないと私どもは実は思っておるわけで、総裁が言ったように偶然の一致だと思うんです。これは調べてみよと言えば、私どももうはっきり会社に調査をしてみることも考えてもいいです。そんなこと、別に逃げも隠れもいたしません。けれども、そういうことですから、ぜひひとつ御了解をいただきたいと存じます。
  584. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  585. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。
  586. 仮谷忠男

    国務大臣(仮谷忠男君) 大変どうも時間をとりまして申しわけありません。よく調査をいたしまして、後刻御報告申し上げます。
  587. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 上田君の残余の質疑は、後日行うことといたします。(拍手)  工藤君、準備を願います。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  588. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  工藤君、できるだけ早く準備を願います。     —————————————
  589. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 工藤君。
  590. 工藤良平

    ○工藤良平君 私は、農業問題、さらに水の問題につきましてこれから御質問をいたしたいと思いますが、委員長にお伺いいたしますが、私はこれからの審議の全体的な問題もありますので、どの程度私きょうやれるのか、その点の御見解を伺いたいと思います。
  591. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいま理事ともいろいろ御相談を申し上げました。大変遅くなって、皆さん方にも御協力をいただいて恐縮でございますが、大体切りのいいところ、四十五分めどぐらいで大体その質疑の切りもつけば、その辺をめどに置いてもらって、どんなに遅くても七時以前にはきょうの一こまは終わってもらうと、こういうつもりでおりますから、その辺を含んでお願いいたします。
  592. 工藤良平

    ○工藤良平君 私の一こまは大体一時間半見ているわけです。問題を途中で切られますと大変困るわけなんですが……。
  593. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) その辺は、始めていただいて、それでは理事とまた御相談をいたしますから。一時間半必要とするならば、あるいはまた時間を延ばしていただいても結構ですから、一応そういうことでお願いします。
  594. 工藤良平

    ○工藤良平君 それじゃ、一時間半やりますか。ちょっと相談してください。
  595. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 相談しているうちに時間はたちますから、おやりになっておる間にまた理事との御相談をいたします。
  596. 工藤良平

    ○工藤良平君 じゃ、六時半までになったらやめます。
  597. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 六時四十五分めどでお願いします。
  598. 工藤良平

    ○工藤良平君 それじゃ、まず国際的な食糧農産物の最近の生産状況と需給についてお伺いいたしたいと思います。その点について……。
  599. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 一九七二年、ころまでは国際的には農産物は過剰の状態にあったわけでございますが、七十二年に穀倉地帯における不作の状況になりまして、その後、七十三年、四年ごろには回復すると、こういうふうな感じがあったわけでございますが、さらに一九七四年に干ばつであるとか、あるいは不作等も穀倉地帯に起こりまして、さらにまた、ソ連等の大量なやはり食糧の、あるいは飼料等の買い付け等が起こりまして、世界的に急速に在庫が減少をいたしたわけでございます。その後、今日に至るまで在庫は減少をたどっておるわけでございまして、全体的には世界の食糧は不足状況にあるわけでございますが、今後の情勢といたしましては、やはり世界の人口の増加、あるいは消費生活の向上等によりまする畜産物の消費の増大等も考えられるわけでございますから、今後私は世界の食糧事情というものは逼迫を基調として続いていくというふうに判断をしなければならないと思うわけでございまして、そういう観点から、昨年の十一月には、ローマで世界食糧会議が開かれ、そうして世界における食糧の増産であるとか、あるいはまた食糧の援助であるとか、あるいは備蓄の問題が討議された状態でございまして、今後とも世界の食糧事情というものは、私はいままでの買い手市場から売り手市場へ移っていくと、そういうふうな今後は情勢にあるという認識を持っておるわけでございます。
  600. 工藤良平

    ○工藤良平君 その点について総理、御見解を伺いたいと思います。
  601. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 全体的に見て、世界の食糧というものは、まあ不足傾向にあると、人口の、いろいろ家族計画ですか、そういうものもあるけれども、やはり世界人口増加の傾向というものはなかなか急にこれは傾向が変わらないと、そういうことを考えてみると、やはり食糧の増産というものが追いつけない面もありますから、全体として食糧というものは、不足時代に世界的に入るという前提に立って食糧問題というものは用心深く考える必要があると私は考えております。
  602. 工藤良平

    ○工藤良平君 いま農林大臣は大変総括的にお話がありましたけれども、私は、これから深刻な食糧問題を検討するために、ある程度主要な農産物につきましては、その具体的な数字を検討する必要があると実は思っているわけで、先ほどの私の質問に対して、もう少し具体的に、国際的な最も新しい資料に基づいた主要農産物の生産状況について御説明いただきたいと思います。
  603. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 政府委員から答弁させます。
  604. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) それでは、最近の世界の食糧事情につきまして簡単に申し上げますと、先ほど大臣からお話し申し上げましたとおり、一九七二年当時までは相当食糧は余裕があったわけでございます。当時の小麦と主要穀物合計の生産量を申し上げますと、大体九億一千百万トンぐらいの生産を上げておったわけでございます。その前まではもっと生産量は少なかったわけでございますが、在庫は大体在庫率にいたしまして二〇%を超えていたというような状況でございます。ところが、七二年の生産はふえ、さらに七三—七四につきましてもさらにふえましたけれども、在庫の方はぐっと減ってまいりまして、七一—七二年の期末の在庫率を申し上げますと、これは一四・六、それから七三—七四につきましては一一・二と、それから七四—七五は見通しでございますけれども、一一・七というふうに在庫率が非常に減ってきておる状況でございます。これは大体全世界の小麦と主要穀物の合計について申し上げたわけでございます。
  605. 工藤良平

    ○工藤良平君 その中で特に飼料穀物はどうなっておりますか。
  606. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 飼料穀物について申し上げますと、七二—七三の生産量は五億五千三百七十万トン、それが七三—七四は約六億トン、それから七四—七五の見通しでは減りまして五億五千万トンというふうになっております。在庫を申し上げますと、七二—七三期末の在庫量は五千七百二十万トン、それから七三—七四は五千百六十万トン、七四—七五は非常に減りまして三千七百三十万トンという見通しということになっております。
  607. 工藤良平

    ○工藤良平君 その中で輸出の可能量と、それから輸入を必要とする需要の見通しについて御説明いただきたいと思います。
  608. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 実際の数字で申し上げますと、生産量のうち輸出貿易に回った量を申し上げますと、七二—七三で六千二百八十万トン、七三—七四で七千七百二十万トン、七四—七五で六千三百十万トンと、大体この程度が毎年の飼料穀物の貿易量と言ってよろしいかと思います。
  609. 工藤良平

    ○工藤良平君 いまの数字は一体、どこの数字をおとりになっているのか。
  610. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) アメリカ農務省の推計数字だというふうに考えております。
  611. 工藤良平

    ○工藤良平君 国連統計から見てどのような状況でございますが。
  612. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) いまちょっと手元にFAO——FAOでもいろいろ数字を出しておりますけれども、手元にございません。
  613. 工藤良平

    ○工藤良平君 私はなぜこのことを申し上げるかと言いますと、昨年ですね、予測の中でアメリカの数字が出るか出ないかということが非常に国際的に大変大きな問題になったわけです。これは需給と同時に価格の問題にも関連してまいりますし、そういう意味から、私はいかにその数字を的確につかむかということがきわめて重要な要素であるわけでありまして、その意味から、ぜひ国連の数字をお示しいただきたいと思います。
  614. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) まあ国連でも数字を出しておりますけれども、非常におくれるものでございますので、私どもは大体アメリカ農務省の数字、これも相当確度が高いというふうに考えておりますので、それらを使っておりますが、できるだけ取り寄せまして、いずれ御報告を申し上げたいと思っております。
  615. 工藤良平

    ○工藤良平君 これは、それがちょっと示されないと議論が非常に困るわけなんです。
  616. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  617. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  質疑を続けていただきます。工藤君。
  618. 工藤良平

    ○工藤良平君 それは、質問通告しておるから、やっぱり的確に答えてもらわなきゃいかぬのです。それはあらかじめぼくはちゃんと、きのうレクチュアまでしてやっておるわけです。こんなのだめですよ。
  619. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 計数については、先ほど来申しますように、理事会においても確認をされて、また計数がなくては質問もできぬこともあるだろう、その場で出ては計数が間に合わぬこともあるだろう、違うこともあるだろうということで、理事さんからの御発議で、事前に質疑者から関係の当局に計数にわたるものは前もって要求をしておいてもらいたいと、そのときには、ここにはその一覧表を持ってきて、説明を政府からしてもいいくらいだと、さようなひとつ事前の通告は、計数にわたるものについては配慮をしてほしいということが申してあったわけですから、その辺に行き違いがあるようでございますから、続けてやってもらいます。
  620. 藤田進

    ○藤田進君 そんなに細かい資料まで一々要求するようじゃ質問の用意はできない。これは主に大体むずかしい要求のものは事前に要求をしておる。だけど、食糧の需給について質疑をするってレクチュアもしてあるのに、国連統計の一つぐらい持ってこぬようでどうするんです、これは。審議に協力することにならぬじゃないか。それなら一括必要なものは一切持ってこいという程度でそれでしまいなんだ。そういうことでしょう。
  621. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 各理事お集まり願います。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  622. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  質疑者に申します。ただいまの資料がないと、これから先の質問は続けられませんか。——農林省政府委員、いまの資料、取り寄せた。間に合った。
  623. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) ただいまないと申し上げましたのは、先生が今後の見通し、たとえば七四—七五というような資料ということだったので、私ども大体アメリカ農務省の資料を使っておるものですからそのようにお答え申し上げたわけでございますが、過去の統計等はございます。  一九七三年までの分でございますが、これはFAOの統計でございます。飼料穀物の生産を申し上げますと、一九七二年が世界計で六億三千三百万トン、一九七三年が六億七千四百万トン、それに対しまして、貿易の方で輸出——要するに貿易に回った数字を申し上げますと、七二—七三が六千二百万トン、七三—七四が七千万トン、恐らくこれは推定だと思います。したがって最近の数字は、これはどうもFAOは非常に遅れますので、私どもは普通はこれは使っていないということを申し上げたわけでございます。
  624. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 工藤君。(「工藤君と言ったって、これでもう散会ですよ。さっき理事会でそういうことになったんです。」と呼ぶ者あり)資料が間に合ったわけです。まだ五分あります。
  625. 工藤良平

    ○工藤良平君 あと五分までやるんですか、四十五分まで。
  626. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 四十五分。
  627. 工藤良平

    ○工藤良平君 理事会で決めたのなら、ちゃんとしてくださいよ、委員長。もう打ち切っていいじゃないですか。どういうことになっているんですか。
  628. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  629. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  大分遅くなりまして、質疑者の質問の都合もあるようでして、中途半端になっても、かえってあすの質問にまた差しさわりもありましょうから、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十二分散会