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国務大臣(
福田一君) 地方財政が硬直化したのは、国の行政のやり方あるいは
経済の運営の仕方が間違っておったからであるという御質問だと思うのでありますが、私はそういうふうには考えておりません。
地方財政の硬直化ということについていろいろの原因が挙げられておりますが、まず第一に、あなたの立論からいけば、高度成長をやったのがいけないんだ、高度成長をやったのが今度低成長に移るからいけないんだ、したがって、それがこの地方公共団体の財政を圧迫しているんだというふうにおっしゃるんだと思うのですけれども、しかし、今日まで高度成長をやってきたことによってどれだけ地方団体が多くの福祉事業を行ったり、あるいは
民間のいわゆる公共施設その他いろんな問題を、住民が要望しておる問題を解決してきたかということをお考え願わなければならないと思うんです。しかし、そういうような高成長時代でありましたから、一部において人件費とかそういう問題についてもわりあいに楽な気持ちでこの問題を処理してきたということは、私は認めないわけにいかないと思うんです。しかし、これからは低成長時代に入るのですから、やはりいろんな問題をここで見直さなければならない時代になったということであります。
そうして、その見直すということになったときに、よく超過
負担の問題を第一に挙げて、五年間の超過
負担は一兆円もあるんだから、こんなものを解決せいというようなお話をよく承るのですが、しかし地方の財政を圧迫したのは何も超過
負担だけが一つの原因になったのじゃないんですよ。いままでにわれわれは言うているのは、国家公務員との俸給の差が、もしずっと全部なかったとして考えていったら、私は一年にやはり、六年、七年、八年、九年というようなときでも、おそらくは最小限、三、四千万円、あるいはもっとになるかもしれません。それだけの支出をしてきたということが積もり積もって地方財政の窮迫というか、今日のような硬直化を来たしておるんです。
だから私が申し上げておることば、超過
負担の問題を見ないというわけではないが、人件費の問題もすべて見直してもらいたい。超過
負担の問題も、われわれはあれがある限りにおいては、今後の問題としてこれは見直さなきゃいかぬ。人件費をいまから払い戻せなんという、そんなばかなこともありませんし、超過
負担をもう一遍やり直せと言っても、それは行政の運営の姿を乱しますから、これはできないということを言っておるのでありますが、これからの問題としては、超過
負担がやはり起きるようなことであればこれは直さなきゃいかぬ。だから四十九年にはすでに施設費の超過
負担は、学校であるとか保育所というようなもの、あるいは
住宅関係等においては、これはちゃんと処理をしてきましたけれども、しかし、それでもなお足りないというので、五十年度にはちゃんとそういうような施設についても、さらに八%から九%の予算を加えて計上をいたしまして地方財政計画というものもでき上がっておるわけであります。こういうように、この超過
負担の解消の問題については、しかしそれじゃもう全然出ないかと。私はやはり
経済の運営あるいは
経済の動向によっては今後も出ないとは限らないと思いますよ。そういう場合には解決するのはこれは当然なことである。しかし、そういう問題と完全に絡み合わして人件費の問題を無視していくということは私はおかしいと思うのです。
先ほど福祉の先取りの問題等もございましたけれども、ちょっと申し上げましたけれども、福祉福祉と言っても、何が福祉かということも一つの大きな問題になると思うのです。それから、一つのところではやれることがほかのところではやれない場合もあるわけです。やはり公正を期するとか公平を期するということになれば、大体なるべくはまあまあ
平均した形において福祉が実現されることが
国民にとっては必要ではないかと思うので、
田中さんの質問にもちょっとお答えしたんですけれども、私は、同じ福祉だと言っても、生まれるとすぐに一万円上げるとか、亡くなると、もう困っていようが困っていまいが、一万円出すなどというようなことが、果たして福祉の先取りになるかどうか。当然やらなければならないことは
政府はやらなければいけません。たとえば難病
対策なんかを出されましたから、私はそれば認めなければいかぬというお答えをしたのでありますけれども、生まれるとすぐ一万円上げて、死ぬと一万円上げるというようなことが福祉の名において行われるということも、これはちょっとおかしな話です。そういう例もあります。何も全国的にあると言うんじゃない。そういう例があります。
だから、福祉の内容を十分に
検討するということが必要であるということを申し上げておるのでありますが、いずれにしても、とにかく国家公務員と地方公務員の差が非常にあるということは、どう考えてみてもやはりおかしい。私は、国家公務員を一〇〇とした場合に、その差がまあ三つくらいとか四つくらいというなら、まだまあまあ仕方がない。これはそうきちんとやれるものじゃありませんからなかなかむずかしいと思いますけれども、しかし三〇%も四〇%も高いなどという、そういうところは直してもらいたい、こういうことを言っておるのでありまして、一律に何でもかんでも、どこのもみんなそういうふうに下げてしまえとか、そういうことを言っていない。それからまた、そういう人件費の問題等を是正するにしても、一遍にやれということになると非常にまたいろんな問題が起きる可能性もあるから、私は場合によっては両三年でもいいが、計画的にこういうふうにしますということを言ってもらえれば、これはわれわれは一つの大きな前進だとして考えていいと思っておる。
ところが、人件費などというのは問題じゃないんだ、超過
負担が問題なんだとか、あるいはその他の
理由を挙げられますけれども、そういうことを挙げたからと言って、私は人件費の問題は解決したとは思っておらない。だから、お互いにやはり常識的に考えてなるほどと思うことは、やっぱりお互いに正し合っていくというのが私は政治の姿であると、こういうふうに考えておるということでありまして、いまあなたから、この際、そういうような高度成長の姿をやってきて、高度成長
経済をやってきて、そしていまになったのを、これは
政府の責任だからとおっしゃるけれども、しかしまた、高度成長によって
利益を得た面もこれまた否定するわけにはいかない。やはりそのときそのときに応じて、入るを図って出ずるを制するというのは余り古い言葉で、こんなところで適当とは思いませんけれども、それぞれよく考えてみる。そしてまた冗費を省いて福祉政策もやる、こういうことが必要であるというのが、私たちが考えておる地方行政に対する財政の運営のあり方ということに御了解を願いたいと思うのであります。