○岩間正男君 私は、
日本共産党を代表して、ただいま
議題となっている五十年度
予算三案に対し、
反対の
討論を行います。
わが党は、五十年度
予算を
国民生活の防衛と
福祉の
向上、つり合いのとれた
経済の発展、平和・中立の
経済外交政策への転換の第一歩とすることを強く
要求してきました。しかし、両院の
審議を通じて明らかになったことは、
三木内閣が従来の
自民党政治に何ら
根本的な反省をしないばかりか、しばしばこれまで以上に対米追従、大企業本位の
姿勢を露骨に示していることであります。
田中金脈問題について、
三木首相は、かつての「国会で決着をつけなければならない」という公約をほごにし、また、株転がし、船転がしなど悪徳商法で巨大なもうけを上げ、疑惑に包まれている河本前三光汽船社長を依然として通産
大臣として抱えています。さらに、財界からの
政治献金を最高一億円までは認めるという
政治資金規正法
改正案や、
選挙に関する報道評論を掲載した政党機関紙の無料配布を禁じるという、あの
田中内閣さえやらなかった
公職選挙法改正案の実現をたくらむなど、金権腐敗の
政治の容認に加えて、かつてない反動的な
姿勢をあらわしてきているのであります。
三木内閣はまた、不公正の典型である大企業への特権的減免税には手を触れようともせず、一方、最悪の大衆課税であり、当然
物価値上げをもたらす
付加価値税の導入を積極的に目下準備しています。さらに自動車メーカーの言い分をうのみにした五十一年
排ガス規制を
実施し、さらに公取試案をさえほとんど骨抜きにする
独禁法改正を強行しようとしています。未曽有の
危機にさらされている
地方財政に対しては、欺瞞的で無責任な
人件費キャンペーンを繰り返すだけで、過去五年間でも一兆円に上ると見られる
超過負担の抜本的
解消の措置を放棄するなど、
地方自治体の緊急切実な
要求を無視し続けています。自治体が国に先駆けて行おうとする
福祉行政に対しては、
福祉の
先取りなどという言いがかりをつけて、
財政調整交付金の削減などあくどい攻撃をさえ行っているのであります。このように
三木内閣の大企業擁護、
国民生活軽視の
姿勢はいまやきわめて明白だと言わなければなりません。
さらに安保、核問題に対する
政府の反動的
姿勢は明らかであります。今日、アメリカはベトナムヘの公然たる軍事再介入を強行する危険があり、そのために
沖繩を中心に日本がその大がかりな根拠地に仕立て上げられようとしています。
三木内閣が日米安保条約を日米協力の基本憲章とうたい上げたことは、アメリカの侵略的
行動に積極的加担の
態度を示したものとして、とりわけ重大であります。しかも、非核三
原則を厳守すると言いながら、
沖繩の核攻撃部隊とその核投下訓練を容認し、また国際海洋法
会議での領海十二海里説が大勢となっていることを利用して核積載艦船の通航を事前協議の対象から外し、非核三
原則を放棄する策動を強めています。これらのことは、
三木内閣が安保、核問題など、国の基本路線で
歴代自民党内閣よりさらに
後退した
姿勢を示すものにほかなりません。
三木内閣のこのような対米追従と大企業本位、
国民軽視の
政治姿勢は五十年度本
予算案に貫かれており、
日本共産党はこの
予算案を断じて容認することはできません。
第一に、本
予算案は、たばこ、郵便など、
公共料金の大幅値上げを初め、酒税
引き上げによる酒の値上げも織り込み、二兆円にも上る巨額の赤字公債の発行を予定していることであります。また、産業基盤中心の三兆円もの
公共事業費、前年度比二一・四%増の一兆三千億円を超える四次防推進費の計上など、
物価安定、
インフレ抑制とはおよそほど遠い
予算だと言わざるを得ないのであります。一方、未曽有の
財政危機に陥っている
地方自治体に対し、総
需要抑制の名によって、かえって締めつけを
強化しているではありませんか。
第二に、
三木内閣の社会的不公正の
是正は口先だけのものとなり、老齢
福祉年金は月額一万二千円に抑え、生活保護費も
実質で一四・四%の
引き上げにとどめるなど、激しい
インフレでますます低下の一路をたどっている
福祉の
水準をようやく維持するにも足りない
施策しか盛り込まれていないのであります。しかも、被爆後三十年が経過しようとしているにもかかわらず、広範な被爆者の一貫した願いを踏みにじり、国家保障の
立場に立つ被爆者援護法の制定をいまもって行っていないのであります。
また、百九十万人の児童の父母が切実に望んでいる学童保育の制度化について、
政府は「五十年度には実現するよう
最大限に努力する」という昨年の約束をさえ投げ捨てて、
予算措置を何ら講じてはいないのではありませんか。
第三に、本
予算案は従来どおりの
高度成長型の
財政、税制、金融の仕組みを基本的に温存するものとなっていることであります。大企業、大資産家に対する特権的な減免税は温存され、
中小企業よりも資本金百億円以上の巨大企業の方の税率がはるかに低いという逆累進制を依然としてまかり通らしているのであります。こうして資本金十億円以上の大企業や大資産家には約三兆円にも上る税金を免除しているのであります。また、第二の
予算と言われる
財政投融資計画なども含め、公共投資については産業基盤二に対して生活基盤一というやり方は基本的には従来と何ら変わってはいないのであります。
第四に、産油国への軍事侵略をたくらむ危険なキッシンジャー構想に追従し、その枠組みの中で
石油備蓄体制づくりのため千百五十六億円の
政府資金を
石油大企業へつぎ込むことにしています。これが第五次石炭
対策に基づく石炭産業取りつぶしの
政策と並んで、わが国のエネルギー問題の解決を一層困難にすることは明白であります。
第五に、横田、嘉手納など米軍基地集中
強化を進めるためのアロケーション費三百四十三億円、すなわち事実上の防衛分担金の計上を初め、四次防推進の自衛隊増強費、さらには韓国、インドシナ援助などを中心とする新植民地主義的対外進出を目指す
経済協力費は千七百六十七億円に上っております。これらのことは、
三木内閣がアメリカのアジア侵略
政策への積極的な加担とともに、対米従属的な軍国主義の復活を推進しようとしていることを示すものにほかなりません。
以上のように、この
予算案は、これまで
自民党政府が推し進めてきた大企業本位、
高度成長促進型の仕組みを温存し、
国民の災厄を広げるものであることは明らかであります。わが党は、
国民の緊急、切実な
要求と
政策を掲げて、
審議を通じてその実現を求めてきました。
三木内閣は口に対話と協調を唱えながら
国民の
要求には耳をかさず、このような
予算案をあくまで押し通そうとする
ところにこそ、
自民党三木内閣の反動的な本質がはっきりあらわれていることを
指摘せざるを得ません。
また、社会党などの
提出した
予算修正案に
反対したのは、その
内容がきわめて部分的なものであって、社会党自身が先ほどここで糾弾された本
予算の反
国民的性格を変えるものでも、
国民の切実な
要求にこたえるものでもなかったからにほかなりません。
わが党は、今日の
インフレ、
不況のもとで切実緊急に求められている
国民本位の
予算にすることを強く主張するものであります。
第一に、
高度成長型の仕組みをできるだけ徹底的に取り除くことであります。大企業、大資産家優遇の特権的な減免税制度を
根本的に再
検討すること、公共投資の大企業本位の
あり方に改め、産業基盤整備と生活基盤整備の割合を一対二に逆転させることであります。また、
国民の零細な
預貯金を原資とする
財政投融資を大企業中心に回すやり方を改め、
中小企業金融や生活基盤整備を最優先にし、
国民のために使うことであります。
第二に、
物価安定、
福祉重視の
予算にすることであります。たばこ、郵便など
公共料金、酒税の
引き上げをやめ、さらに、
地方選挙と
春闘の後に一斉に持ち出されようとしている電報、電話、電力、国鉄の特急、寝台料金、大手私鉄運賃、麦、塩などの
公共料金の
引き上げ計画を取りやめることであります。
大企業やメジャーの不当な価格つり上げや、価格操作を
規制するとともに、大企業製品の原価などを調査する特別な
委員会を国会に設け、
独禁法に価格
引き下げ権や原価公開を盛り込むことの必要性はますます今日大きくなってきているのであります。
また、
福祉年金を直ちに月額二万円に、
福祉施設の整備拡充と施設の措置費の大幅
増額、生活保護費の五割
引き上げなどは目下緊急の課題であります。
第三に、四次防を中止し、一兆三千億円に上る莫大な軍事費を初め各種の大企業向けの
補助金、不要不急の
経費を大幅に削減することであり、米軍に対する特権的減免税を廃止することであります。
最後に、特に強調したいことは、
地方財政危機の打開を緊急に図ることであります。
超過負担の完全な
解消、
地方交付税率の四〇%の
引き上げなどは、今日、
自民党首長下の自治体を含め、すべての
地方自治体の切実な
要求となっています。この願いに即時にこたえるべきであります。また、部落解放同盟朝田派に対する同和
財政の不公正と乱脈な支出を
是正する措置をとるべきであります。わが党は、
革新自治体の
人件費の膨張が
地方財政危機の
最大の
原因だという欺瞞に満ちた不当な
政治的攻撃を許さず、同時に、
住民本位の
行政を効率的な機構で行う積極的な
立場に立ち、
自民党の
地方政治の遺産を一掃することによって、
地方政治の真の
革新の波を大きく広げることを目指して奮闘するものであります。
以上の
立場から、
日本共産党は、
政府提出に係る
昭和五十年度
予算案に
反対の
態度を明らかにして、私の
討論を終わります。(
拍手)
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