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1975-03-25 第75回国会 参議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月二十五日(火曜日)    午前十時二十分開会     —————————————    委員の異動  三月二十日     辞任         補欠選任      初村滝一郎君     藤田 正明君  三月二十四日     辞任         補欠選任      藤田 正明君     初村滝一郎君  三月二十五日     辞任         補欠選任      初村滝一郎君     安井  謙君     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         佐藤  隆君     理 事         小林 国司君                 高橋雄之助君                 川村 清一君                 神沢  浄君                 原田  立君     委 員                 青井 政美君                 大島 友治君                 梶木 又三君                 鈴木 省吾君                 温水 三郎君                 初村滝一郎君                 平泉  渉君                 工藤 良平君                 栗原 俊夫君                 志苫  裕君                 鶴園 哲夫君                 相沢 武彦君                 小笠原貞子君                 塚田 大願君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農 林 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        農林政務次官   柴立 芳文君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        農林大臣官房予        算課長      渡邉 文雄君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省畜産局長  澤邊  守君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        農林省農林経済        局統計情報部長  吉岡  裕君        通商産業省貿易        局輸入課長    山本 康二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  この際、畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日畜産振興事業団理事長岡田覺夫君参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は、前回、趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 神沢浄

    神沢浄君 何分しろうとですから、イロハからお伺いをしていかなければならぬわけなんですが、まず第一に、私は大臣にお聞きをいたしたいと思うんですけれども、この改正案提出目的というものは、いま現状でもって牛肉価格下落等、不安定な状態の現出したことに対して、単に、目前の問題解決として、いわばびほう的対症というようなことにのみなっておるのか、それとも、やっぱりこの改正案は、いま日本が当面をしておりますこの食糧問題、ひいてはこれはまあ農業再建の問題、こういう大きな路線の上に立っての一環として提案をされておるのか、いずれであるかという点をまず伺いたいと思うんです。
  6. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この新しい制度をつくるということにつきましては、やはり今日のわが国の食糧の自給力を高めていくという農政の基本的な課題の中にありまして、最近の肉用牛生産事情の変化、あるいは牛肉需要及び価格並びに国際市場等動向から見まして、長期的に肉用牛経営の安定と牛肉生産振興を図り、牛肉消費の安定を期するためには、やはり恒久的な制度を確立する必要がある。こういうふうな観点から、農政の今日の当面の課題、今後の課題にこたえてこの制度を確立するということでございます。
  7. 神沢浄

    神沢浄君 わかりました。そういういまの、大臣が御答弁になられましたような見地に立って、私も質問を進めさしていただきたいと思うのでありますが、そこで、第一に伺いたい問題は、昭和四十一年の五月二十六日、本院の農林水産委員会において附帯決議が行われております。私は、これを一読しまして、実に、内容的にもかなり先見の明のある内容を持っておると思うのでありまして、当時の先輩諸氏敬意を払うに私はやぶさかではないのでありますが、ところが、この附帯決議に照らして現状をながめてみますと、昭和四十一年といえば、もうすでに十年を経過するわけであります。十年一昔というから、一昔はもうたってしまっているわけでありますが、問題が牛ですから、牛歩ということは、大変遅々としておる状態を指すのだそうでありますけれども、牛の問題だけに、まことに遅々として、十年たちましても、一向に目ざましい進捗は見受けられないような感がしてなりません。牛のことですから、モウがまんがならぬなんて言っているのかもしれないと思うのであります。  そこでその附帯決議の第一ですが、こう書いてあります。「わが国における肉用牛飼養及び牛肉需要動向からみて、肉用牛生産維持増強喫緊用務である。」十年前に 「喫緊用務である。」こう言っておるのです。「したがって政府は、肉用牛の改良・増殖等生産対策積極的推進を図るとともに、国及び地方公共団体試験研究体制の整備・拡充に万全を期すべきである。」こうなっているのですけれども、この処理のてん末等をお聞きをいたしたいのでありますが、あまりそこで政府側の長々しい御説明などをいただいていると、私の質問時間が大変窮屈になりますから、それは、時間がありましたらいずれあとから伺うことにいたしまして、この十年間私は、政府もそれなりの努力はされてきただろうとは思います。思いますけれども、それならなぜ、十年たちました今日におきましても、たとえば、この頭数一つだけを取り上げてみましても、まさに横ばい、というよりか、むしろ十年前に比べて減少傾向を示しておるか、十年間いささかの進歩もなかったという、現実には、そういう結果を示していると思うわけであります。この点について、大臣でも結構でございますし、あるいは他の担当の方でも結構ですけれども、ひとつわかりやすいような御説明をいただきたいと思います。
  8. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) ただいま御指摘がございましたように、四十一年に御決議をいただいておるわけでございますが、その後の飼養頭数を見ますと、ほとんど横ばいということでふえておらないという数字になっておりますが、この主たる原因という点を申し上げますと、われわれといたしまして判断いたしておりますのは、やはり肉用牛飼養が伸び悩んだのは、結局、従来は日本におきます肉牛というのは、本来、肉生産目的飼養されるというよりは、むしろ役用ということで長い間来たわけでございます。昭和三十年度の半ば以降、急速にトラクターその他の機械化の進展に伴いまして、あるいはまた、それと合わせて兼業化が進んだということも関連をいたしまして、役肉兼用と、主として役終わってから肉用に出すというような、役肉兼用であった和牛の飼養頭数が急速に減少してきたということが一番大きな原因だと思います。それとともに、肥育目的肉牛経営というものも伸びてまいりましたけれども、いま申しましたような機械化に伴います役用の牛の飼育が急激に減ってきたというところをカバーするだけ肥育経営が伸びるというところまでは至らなかった。  それではなぜ、それが急速に伸びなかったかということになりますと、飼養規模零細性、あるいは粗飼料基盤であります草地、あるいは山林の利用が非常に困難であったというような点が主たる要因であったと思います。もちろん、それとともに、価格生産者にとって十分な水準まで実現しなかったということもあったわけでございます。反面ここ数年来、乳用の雄牛を肥育として使うというような傾向が急速に伸びてまいりまして、それが最近におきます肉用牛経営なりあるいは飼養頭数がふえ、横ばい程度で維持できたといいますのも、肉専用種というよりはむしろ乳用雄牛肥育として使うと。これはもちろん肥育目的で当初からやるわけでございますが、そういう生産体制が順次整ってきておるということによるわけでございますけれども、これは新しい技術でございますので、伸びたと言いながらまだいろいろ問題を抱えておるということ、それから価格が不安定であったというような点から、十分に全体としての飼養頭数を伸ばすところまでいっておらないというのが原因であったと思います。  一言で申し上げれば、役用を主とした牛の、まあ食いつぶしと言いますか、廃用ということで全体の飼養規模が減ってきたと。しかしまあ新しい傾向といたしまして肉専用種、あるいは乳用雄牛肥育を含めまして、肉目的飼養がだんだんふえてまいっておるということでございますので、今後それらを育成をしてまいりますれば、従来の横ばい傾向から上向きに転ずることは不可能ではないというふうに考えております。
  9. 神沢浄

    神沢浄君 まあ、いただいた資料などをながめてみますと、いまの御説明の中でも若干触れられてもいたわけですけれども、飼養経営の面などにおいては一応の合理化というのか、近代化というのか、そういうものの振興をしてさた面はうかがわれると思うわけなんです。これは、この農家当たり飼養頭数などはふえておるわけですが、全体的に肉牛生産というのは、何としてもふえない。これはもっとどこかに、ただいまお話にあったような面だけでなしに、大きなやっぱり理由、事情というものが存在をするのではないかと思われます。が、こういうような点について余りここで時間をかけてもおれませんから、これはいずれまた、調査等機会に私はやっぱり徹底的に論議をする問題点のように思っております。それはその機会に譲ります。  そこで、附帯決議の第二項を見ますと、「本法の運用に当っては、国内肉用牛生産増強及び牛肉消費の安定を図ることを本旨として、海外における牛肉需給事情及び価格動向を充分に把握して、牛肉輸入の適正を期するとともに、輸入牛肉売渡しは、肉用牛資源維持拡大を阻害することのないよう充分留意して、今後生産者価格の安定のため、現行価格安定制度対象品目とするよう鋭意検討すること。」と、こうまああります。まことにもう今日をまさに看破しておるような、大変敬意を表するような内容になっているんですが、十年たって、今回の改正案で、やっと安定制度の上へ牛肉を乗せるということになってまいったわけなんですが、とにかくなぜ、こんなにおくれたのかという、その点を私はお聞きをいたしたいんです。何で十年間もさっき御説明がありましたように、横はいあるいは減少傾向——いささかもこの部面につきましては努力が実っていないようなこの現状の中で、もっといろいろな事情原因等を探求をすべきであったし、そういう中においてやっぱり、これは牛肉、牛に限りませんけれども、きょうの畜産の最大の泣きどころであるところの価格問題等につきましては、もっと早い時期に当然取り組まれなければならなかった、こう思うんですけど、十年間も放置されたままでもって今日やっと取り上げられている。こういうような経緯というものが私にはどうも納得できないんで、なぜこのようにおくれてきたのかという、この点をひとつお聞きをしたいんでん。
  10. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 四十一年の附帯決議に、指定食肉に加えるように早急に検討するということも述べられておるわけでございますが、この点につきましては、わが国の場合、牛肉需要増大に対しまして、先ほど申しましたような飼養頭数推移でございますので、国内供給のみによっては十分に供給を確保することができないということのために、相当量輸入に依存してまいっておるわけでございます。特に、多い場合には、四十八年のように三十数%ぐらいが、全体の供給量の中で輸入量が占めるというようなことにもなったわけでございます。まあ四十八年は特別に多い年でございますけれども。そういうことでございますので、輸入量調整によりまして国内価格をかなり安定させることができるというふうに考えてきたわけでございまして、国内需給なり価格動向を見ながら、現在の輸入割当制度のもとにおいて適正な輸入量を決定し、その中で、まあ事業団が漸次シェアをふやしてまいりましたけれども、かなりの部分を輸入肉の取り扱いを行うというようなことによりまして、輸入量供給を通じて全体の供給量需要に合わせた調整をすることができるというような考え需給の安定を図ってまいりました。他方、牛肉需要は、御承知のように、所得の増大とともにかなり顕著に伸びてまいりましたので、全体といたしまして国内価格推移を見ますと、上昇傾向にはありますものの、極端な変動はなくして安定的に推移をしたというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、いま直ちに豚肉のような形での指定食肉制度に加えるということはせずしてまいったわけでございますけれども、四十七年の暮から四十八年にかけまして大幅に価格が上昇いたしまして、さらに四十八年の末から昨年にかけまして、まあオイルショックという予期せざる事態による面が多いとは申せ、急激な低落をしたということによりまして、畜産肉牛経営農家経営的に相当大きな影響を受けて困難を来しておるということから見まして、価格安定制度牛肉につきましても恒久制度として確立する必要があるというふうに考えたわけでございます。なお、国際的な需給の長期的な見通しにつきましても、大体起伏はありますものの、長期的に見まして、世界的に牛肉需給というのは他の食肉以上に逼迫をすると、そういうことになりますと、単に海外からの輸入に依存するということでは非常に国内供給の確保のためにも不安定でございますので、国内でできるだけ生産振興いたしまして、国内供給を確保していく。足らざるところは海外から安定的に輸入するというような考えで進む必要があるという点からいたしましても、肉牛経営生産の安定、振興ということのためには、まず価格面相当生産者が安心できるような恒久制度を確立する必要があるという考え方に立ちまして、今回法案提出をし、御審議をいただいておるわけでございます。
  11. 神沢浄

    神沢浄君 まあ、大臣もいまの御答弁をお聞きになっておられながら、きっと、感じられた点が私同様にあるだろうと思うんです。いまの御答弁の中でもってまことにいみじくも触れておるんですが、きょうまでの、この十年という間においての価格の問題というのは、これ通産省的発想ならそれで済みますけれども、農林省的の立場から考えると、おかしなことであって、輸入調整できるから、ついそういう機会というものがおくれてきたんだと、こう言うんですが、私どもが考えなきゃならぬのは、日本畜産振興で、日本農家の、これは生産者価格の問題で、何か、その辺でもって非常に私は取り違えているような面があると思うんですよ。だから、私は、冒頭に、この改正案はいずれを目標にしているのかということに特に触れたわけであります。  そこで、実はさっき理事会でお打ち合わせをした時間の関係もありますから、私は一点だけずばりお聞きするんですけれども、それは、さっきもお答えの中でもって言われておりましたように、四十八年の大量輸入というのは、その後の牛肉価格にもう決定的な影響を及ぼしておることは、これは否めない事実だと思うんですよ。政府に言わせると、何か不況傾向に入ったから、牛肉というものは、どうも多少ぜいたく品的な感覚でもって消費が落ちたというような御説明などもあるようですけれども、そういうことより何より、私は、四十八年の大量輸入というのが、これはもうかなり決定的な因子になっておる、こういうふうに思います。四十八年というと、もうすでに飼料の値上がりが始まって、畜産危機というのが、これはもう明らかに目に見えて忍び寄ってきておった時期であります。こういう時期にあのような大量輸入を行ってしまったという、これは私は、行政としても何としても、判断のつかないことでありまして、なぜ、あのような大量輸入が、もうすでに畜産危機的様相が明かになってきておった時期であるにもかかわらず、現出されていったか。こういう点が、私もこの法案に取り組んでみて、何かと資料などを拝見をいたしましたが、何としても感に触れない点なんですね。これは、農業の問題であるにもかかわらず、農林省としては、手のつかないような、もっと大きな、いわゆる外的な力といいますか、因子といいますか、こういうものがあってのことなのか、その辺をひとつ私は少し明らかにしたいと思うんですよ。
  12. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 四十八年に行いました輸入は十二万七千トンということでございまして、前年の五万七千トンと比べまして大幅に増加をしたわけでございます。そのようなことを行いました当時の事情といたしましては、先ほどもちょっと触れましたように、四十七年以降牛肉価格が急速に高騰いたしまして、四十八年の上期で申しますと、月によって若干違いますけれども、おおむね前年の水準卸売価格で見まして五〇%ぐらいずつ毎月上回ったわけでございます。四十三年から四十八年の五ヵ年間を見ますと、年平均需要の伸びが一五%ずつ伸びております。そういうこともございまして、また四十八年は国内屠殺頭数が非常に少なかったということもございまして、ただいま申しましたように、四十七年の後半から四十八年の前半、さらに秋にかけまして価格が急速に高騰いたしましたので、消費者サイドからかなり強い輸入増大の要望もございまして、割り当て量もかなりふやしたわけでございます。その結果といたしまして、ただいま申し上げましたような十二万七千トンという前年に比べて著しい輸入量増大を来したということでございます。  先ほど言いましたように、四十三年から四十八年まで年平均一五%ずつ需要がふえたということでございますが、四十七年から見ますと、これは参考資料として御配付申し上げております資料にも、四ページに掲げてございますけれども、四十七年は、輸入量国内生産量を含めまして三十五万トンの供給、まあ需給が結果的にはバランスするわけでございますが、三十五万トンの需給規模だと。四十八年は、ただいま申しましたように十二万七千トンという相当な輸入をいたしましたけれども、国内生産が減っておりますので総体といたしましてはやはり三十五万トン。それから四十九年は、四十八年に割り当てしたものがかなりずれ込んで入ってきておるということもございますけれども、輸入量は五万三千トンでございますが、国内生産がふえたこともございまして、全体の需給規模は三十四万五千トンぐらいでございますので、先ほど四十三年から四十八年にかけては毎年一五%ずつふえたと申しますけれども、四十七年以降はおおむね全体の需給規模といたしましては横ばいで来ているわけでございます。輸入がふえましたのは、国内生産が減った分を穴埋めをした、それから、もちろん直接的には国内価格が異常に高騰したというために、消費価格の安定ということもねらいとして輸入量をふやしたという経過でございます。  四十九年になりまして価格が非常に低落いたしましたのは、これは御承知のように、四十八年末のオイルショック以来消費が急速に減退したということが主要な原因だというふうにわれわれ思っておりますが、もちろんその他の要因といたしまして、輸入を決定いたしましたものが、四十九年に入ってかなり輸入が行われた、到着したということも、これは、オイルショック自体、予測は不可能であったという事情はございますけれども、そういうもう一つ要因として価格が下がったというふうにわれわれは考えております。
  13. 神沢浄

    神沢浄君 とにかくいただいた資料で見ますと、四十八年の輸入というのはこれは異常な数字ですね。四十六年に比べれば三倍、四十七年に比較をすると二・二倍くらい、とにかく二倍以上になっておるということ。  そこで一つには、さっきも申し上げるように、もう畜産危機様相というのは、かなり明らかになってきておったわけですから、行政立場からすれば、このような事態がどんな結果を招いていくかというような点については、これはわからぬはずはなかったと思うんですね。それが案の定、それは、その他の要因もあるのでしょうけれども、その後のいわゆる牛肉価格の問題には、これが大きな影響をもたらしたことは否めないわけでありまして、なぜ、しかしもっと適切な対応がなされなかったかという点が、何としてもこれは私には疑問として残るわけなんですよ。  そこで私は、関連してお聞きをしたいと思うんですが、いま要するに、割り当て方式をとっているというわけでしょう、牛肉については。これは割り当てはどこでするんですか。
  14. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 直接的には、通産省輸入割り当てを行いますけれども、農林省協議をされますので、われわれと両省の間で十分相談をして、数量を決めて、実施をしているわけでございます。
  15. 神沢浄

    神沢浄君 やっぱり割り当て権限というのは、とにかく通産省にあるわけですね。ただ、農林省はその協議相手になっておると、こういうことなんですね。私は、この辺にかなり問題がおるような気がしてしようがないですよ。これはとにかく農業の安定、振興考えていくための制度なんですから、これから後の当然論議の的なんですけれども、いまのような輸入の仕組みという制度というものを、そのままにしておいて、果たして、まあこれは四十八年の例に見るまでもなく——それは協議相手くらいにはしてもらえるかも、もらっておるのかもしれませんけれども、これはもう日本農業というものに責任を持つ農林省サイドとしては、この点だけはとにかく権限外ということに、これは理論上はなるわけですね、理論上は。で、根本的にそこら辺にかなり大きな落とし穴がまだ残っておるというようなことにならざるを得ないと思うんですけれども、どうですか、その辺の見解は。
  16. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 現在の各省間の権限配分におきましては、通産省が、外国為替及び貿易管理法に基づきまして割り当て権限を持っておるわけでございまして、農林省にも十分協議をしていただいておりますし、実情を申し上げますれば、需給計画をあるいは需給推算農林省の方でいたしまして、農林省から、この程度輸入をするのが適当ではないかというような下話もした上で、決定をいたしておりますので、特に両者の間で調整が困難だというようなことは、これまでのところはなくてきておるわけでございます。  なお、先ほど協議と申しましたけれども、訂正さしていただきますが、割り当て量を決めます場合には、農林大臣同意ということになっておりますので、両省が合意をしなければ決まらないというような運用になっております。法律上はそうでございますけれども、事実上は十分協議をして調整をとりながらやっておるわけでございます。
  17. 神沢浄

    神沢浄君 協議であろうと、同意であろうと、私は、大体主従の関係が根本的に間違っちゃっているんじゃないかとこう思うんですよ。もちろん、それは、その貿易の問題、あるいは消費者の問題いろいろありますからね。これは、農林省の方が一つの方針を持って、通産省協議を求めるというなら私は、それはわかると思うんです。ところが受け身ですわね、農林省の方が。権限通産省の方が持っておって、そして農林省の方が何か協議を求められて大臣同意をしなければ、というふうな、これはそのチェックの機能はあるでしょうけれども、それは理論的にも間違っておる。こんなものを残してこの制度を幾ら改善をしていこうたって、私は、そこにやっぱりどうしたって大きな穴があいちゃっていて、なかなかその問題は最後まで残っちゃうんじゃないかというような気がしてならないわけなんです。  これ大臣にちょっとお伺いしておきたいですけれども、もちろん貿易関係もあり、消費者価格の問題もあり、それはわかります、政治という全体の視野から言って。しかし、仮にも冒頭お尋ねをしたように、いま日本が直面しているこの食糧、農業の問題というような点から、ここで本気に日本農業の再建を図っていこうという、こういう見地に立てば、私は、この問題一つ取り上げてみましても、やっぱり主従の関係は、これはここでもって是正をしなければ、やっぱり農林省が主の立場に立って、必要な協議は、こちらから通産省に行うという、こういう姿勢に直さなければ、私は、理論的にこれは間違いだとこう考えるんですが、そういう考え方に対する大臣の御見解を承りたいと、こう思うんですが。
  18. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 牛肉輸入につきましては、これは、わが国畜産振興につきまして、直接的に大きな影響を与えておるわけであります。今日までもこれが与えてきたことは事実でございます。この割り当て制度につきましては、いま主従の関係というようなお話でございましたが、これは農林大臣同意を得ることになっておりますし、農林省通産省と対等な立場において十分協議をして、その結果、農林大臣同意をしなければ、この輸入割り当てを行うことはできないわけでありまして、今日、輸入牛肉について輸入をストップいたしておるのも、実は、農林省としての畜産振興という見地から、畜産農家経営の安定という見地から、私たちの考え割り当て、いまの輸入をストップしておるので、こういうことから見ても、御理解もいただけると思うわけでございます。割り当て制度は続いておりますが、しかし、輸入牛肉の大部分は、畜産振興事業団が取り扱っておるわけでございますから、そういう面につきましてはやはり農林省が、現実の面については通産省割り当てということになりますが、しかし、具体的にこれが国内においてこの牛肉を扱うについては、畜産振興事業団が大部分の牛肉について扱っておるわけでございますから、そういう点については、私は、この制度自体が先生の御指摘のように、通産省ペースで進んでいくというふうには判断をしないわけでございますし、また今後、特に必要がある場合には、事業団に一元的に取り扱わせる措置を講ずることもできるわけでありますし、またそういうふうにぜひしたいとも思っておるわけでございます。私は、そういう意味では、今後、畜産振興というのは、逐次国内の食糧の自給力を高めるという上から見ても、非常に大きな問題でございますので、私たちは、そういう観点に立って、これを適正に運用していけば、支障はないものと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  19. 神沢浄

    神沢浄君 いまの大臣の御答弁では、かなり攻める農政にふさわしいような表現も認めまして、ことに一元化の問題なんかについては、ぼくはまあ率直に評価をしたいと、こう思うのですが、しかし、まだ歯切れもあんまりよくない点もあったわけでありますし、これはわかりますよ。これはやっぱり、政府全体の中での大臣の発言のむずかしさというふうなものもよくわかるんです。というのは、実は、これは通産省から私の手元へ送ってくだすった文書ですが、参議院の農水委員会で、この畜安法の審議をしておるということにかかわりまして、特に通産省の方から送り届けられた文書です。これは、恐らくほかの委員の皆さん方のお手元などにもいっておるんじゃないかと思いますけれども、ちょっと読みますと、「わが国牛肉価格安定法案について」こういう見出しで、「本件に関して、豪州連邦貿易省高官の言として、在豪州吉田大使より、三月十七日」、 つい先だってですね、「報告超したところ、下記のとおり。」「記」として、「伝えられるところによれば牛肉価格安定法案の審議の過程で、牛肉輸入について畜産振興事業団が一元的に取扱うよう修正の動きがあるように承知しているが、豪政府としてはこれに重大な関心をいだいている。仮にそのようなことになれば、これまで進められてきたFEEDLOT事業や、その他の豪の牛肉業界に大きな影響を及ぼすことになり、今後日豪牛肉貿易を円滑に進める上でも問題が生じてこよう。ついては本件に重大関心を有していることをお伝え願いたい。」と、こういう、これは外交上の公文書の写しなんでしょうが、私はこれを見て、これはちょっと勘弁できぬ内政干渉的な内容だというふうに実は受け取りもしたわけなんですよ。だれが、大体オーストラリアあたりまで通報しているのか。それだってもかなりおかしな話で、参議院のあれですからね、審議はきょうやっと始まったわけであって、つい先ごろ、先週趣旨説明を聞いたにすぎません。それがもうオーストラリアの政府へ行って、そしてすぐにこんな文書で返ってくるなんというのは、私はここら辺にもう何といいますか、日本農政の自主性というようなものが、大臣が本当に攻める農政立場に立っておやりになっても、これはもう農政にかかわる大臣の問題ではなくて、われわれが、当委員会の責任ならなおさらのこと、本当にそれこそわれわれこそ重大な決意をもって守らなければ、日本農政なんというものは、外圧でもって、これはもうそれこそ自由に左右されてしまう、じゅうりんをされてしまうのじゃないか、というような気がしてならなかったわけなんです。  そこで、通産省の方来ていただくように言っておきましたが、この文書の中のFEEDとかLOT事業とかというのは、どんなものだか、ちょっとうまく説明をしていただきたいと思います。
  20. 山本康二

    説明員(山本康二君) ここに書いてございますのはフイードロットと読むわけでございますが、御承知のように、豪州の牛肉は、当然に広い草原で草だけを食べまして育っているわけでございます。ところが、日本国内では、御承知のように、土地が狭いものでございますから、濃い濃縮飼料という、まあ穀物を食べさせまして飼育するわけでございますが、穀物を食べさせて育てました牛は、脂が十分乗っておりまして、草のにおいもしないということでございます。それで、日本が、豪州から牛肉を、年ごとにたくさん買うようになりますと、日本の市場で喜ばれるような牛をつくることは、豪州側も必要と考えまして、特に日本向け輸出のために、最後の半年ぐらいを畜舎に入れまして、穀物を食べさせて、脂が十分乗ったような牛をつくり始たわけでございます。それで、この牛は日本人に好まれるものですから、もっぱら日本に向けて売ることを予定してつくったわけでございまして、昨年、日本が突然輸入をとめてしまったものですから、太らした牛のやり場に困ると。それで私も、昨年の夏、豪州へ参りまして、話を聞きましたら、豪州人というのは、草臭い牛でないと、牛を食ったような気がしない。日本人が喜ぶような脂の乗った牛は、豪州の国内では全く食べられない、売れ先がないのであると。せっかく太らした牛を一体どうしてくれるのだ、というようなことを言っておりましたので、特に日本向けにつくった牛のことでございます。
  21. 神沢浄

    神沢浄君 それは、日本でつくってもらっているのですか、日本が頼んで。
  22. 山本康二

    説明員(山本康二君) 一部は、合弁関係で育てているものもございますが、それはごく少量でございまして、やはり豪州側が、牛の重要輸出市場たる日本消費動向に合わせた牛をつくり始めたと私どもは考えております。
  23. 神沢浄

    神沢浄君 その一部が合弁で、日本の方でも関係をしてやっておるといういまお話が出ましたが、その辺の説明をもうちょっと詳しくやってください。  私どもも聞いておるんですよ。日本の大手商社のプロジェクトが進んでいるというような、こういうようなことも私ども耳にいたしているところなんですけれども、その辺どんな状況になっておるのか。
  24. 山本康二

    説明員(山本康二君) 会社名はちょっと失礼さしていただきますが、私ども、必ずしも全貌をつかんでいるわけではございませんが、たとえばA商社でございますと、一九七二年四月に現地法人を共同で立てまして、日本側の出資比率四〇%ぐらいでございます。それで現在二千頭ほど飼育中でございまして、一日にワンコンテナを目標としております。ワンコンテナというのは約九十頭のようでございます。一日に九十頭程度の出荷を目標とした法人が一つ動き始めております。  それからBのケースの場合には、日本側の出資比率が二〇%程度でございまして、これは四十エーカー程度の規模で、二万頭収容可能ということでございますが、まだこれは完全に出荷の状態まで至っておりません。それで巷間、新聞にはかなりたくさんの開発輸入が行われているように出ていたケースもございますが、私どもが調べた限りでは、まだ実際に動き出しているものは非常に少数ございますし、今後の計画としても実はそれほどたくさんの合弁企業の具体的な話はないように考えられます。
  25. 神沢浄

    神沢浄君 大臣、せっかくわれわれがここでもって日本畜産をどうしようかと——私は今度の改正法案なども率直に言って、もうちょっと前向きにということでもって修正の話などもそれぞれ委員の間でもされておることも事実なんですけれども、懸命に今日の日本農業問題に取り組んでいるわけで、大臣だって御同様だろうと思うのです。ところが、われわれの目に見えないような、海を越えたところで、日本向けの牛、牛肉などの生産が計画をされて、しかも日本もそれに一枚かんで、そしてその結果としては、それが影響を受けるから、一元化については、重大な関心を持っておるなどという、これはまさに脅迫文書ですよね。恫喝といってもいいくらいの内容ですよ。これじゃ私は、日本農業なんというのはとても守れるものじゃない。しかも大臣が、他の通産省などを初め、御遠慮をされながら歯切れの悪いような答弁をしていなければならぬなどということでは、これはもうとても日本農政なんというのは成り立たぬじゃないかという感じがしてなりません。私は、山本課長にお聞きをしたいんですが——時間がないものだから、とうとう直接の御説明は聞く機会がありませんでしたが、これを課長の名刺をつけて、私のところへ送り届けていただいているわけですが、これはどういう御意図で私のところへお届けいただいたのですか。
  26. 山本康二

    説明員(山本康二君) これはやはり、一元化の問題ということは買い手を一人にしてしまうわけでございます。したがいまして、自由主義経済社会の中では、買い手が一人にしぼられるということは、売り手にとりまして取引上非常に不利な状態に置かれると考えるのが通例でございまして、かような観点から、これはおそらく衆議院におきますいろいろな御議論を豪州政府が、在日大使館を通じて情報として入手した上の判断だろうと思いますが、やはり買い手を一人にしぼられることは非常に売り手としても重大な関心を持っている。で、そういうことを言ってきた、と私どもは考えております。
  27. 神沢浄

    神沢浄君 それはまあ豪州政府が重大な関心を持っているというところまでは、これはやむを得ません。しかし、それを課長がわざわざ私のところへ届けてくれたというのは、これは率直に言って、この委員会の審議の上にいずれかの影響を期待をするから。そうでしょう。そうでなきゃそんなの必要のないことだ。その点を聞きたい。
  28. 山本康二

    説明員(山本康二君) 私ども、本来はお目にかかりまして、一元化について、国際的にもいろいろ問題がございます、ということを申し上げたかったんでございますが、事前の時間もございませんでしたので、諸外国がどのような関心を持っているかという、私どもが、諸外国が持つ恐れがありますと申し上げるよりは、現実にこういうことを言ってきたと。したがいまして、諸外国がかなりの関心を現実に示しておるということの例証のために御参考までに差し上げたものでございます。
  29. 川村清一

    ○川村清一君 関連してちょっと山本課長にお尋ねしますがね、私も神沢委員とともに社会党の本農水委員会の理事なんです。で、北海道へ行っておりまして、きのう実は昼に帰ってきたんです。本日、農水委員会がありますので、畜安法がどうなっているかというちょっと気がかりの点もあったので、こちらへ来ましてすぐ神沢委員に連絡しまして、昼過ぎ神沢委員の部屋へ参りましていろいろ、この前の委員会欠席したものですから事情等お聞きしたわけなんです。そのときに、神沢委員から、このあなたが神沢委員に渡された文書、しかもこれ名刺がついているね、「輸入課長、山本康二」、ちゃんと判まで押してある。「御目通りの上、説明申し上げたく存じます、」とちゃんと書いてあるね。これは全委員に来たんでなくて神沢委員にだけ来たということは、神沢委員がこの委員会の理事であるということを御承知の上で神沢委員にこの文書を下さったものと思うわけです。私、これ見せていただきまして心から憤激したんです。神沢さんは非常に温厚な方ですから——ぼくは見たとたんに頭にきちゃって、ばかにするなと、内政干渉もいいところでないか、これはどういうことなんだと。結局、神沢委員にあなたは何を言われようとしたのか。これは豪州政府は非常に問題にしているから、何とかこういう一元化といったようなものを盛り込んだ修正なんかはやめてくれと、恐らくあなたは、それを神沢委員に言いたくてお目通りの上説明申し上げたいと、こういうことでこの文書を渡されたものと、こう思うわけです。それで、そうすると、あなたは、わが委員会の審議を拘束すると言えば語弊があるかもしれぬけれども、何とか頼むと、——とんでもない話。行政府が立法府に対して何を干渉する必要がある。どう決めようと、これは国民の代表が、ここで法律を決めるわけであって、決めた法律をあなた方行政府はそれを執行すればいいわけだ。立法府の権威を何のために干渉する必要がある。とんでもない話ですよ。ぼくはもう頭にきちゃった。それで神沢さんに、ぜひあなた、あしたやれと。温厚の方ですからこの程度のことを言っている。ぼくがここでやったら、頭からどなりつけるところだ。(笑声)どういうことなんですか、あなた。ばかにするにもほどがあるじゃないですか。これは与党、野党じゃないですよ。与党の方だって、これ聞いて笑っているようじゃ始末が悪い。冗談じゃない。大体、立法府のやることについて何を干渉するんですか。冗談でないですよ。どういう目的でこういうものを出したのか。あなたは何を神沢理事に話をしようとしたのか。そういうような法案の修正なんかやめてくれ、ということをあなた言おうとしたんでしょう。どうですか。はっきりしてください。
  30. 山本康二

    説明員(山本康二君) 対外的に非常に関心が持たれているという事実をお伝えいたしまして、御審議の御参考にしたいと考えてお伺いしたわけでございます。
  31. 神沢浄

    神沢浄君 まあ課長ばかりいじめてもしようがないけれどもね。これは課長の発想ですか。それとも局長大臣あたりから指示の出たものですか。
  32. 山本康二

    説明員(山本康二君) 全く私の発想でございますし、私の責任でございます。
  33. 神沢浄

    神沢浄君 それは、答弁は、そう言わざるを得ぬでしょうが、大臣もお聞きになっておるように、とにかく私は、このまあ制度の問題についても、外圧というか、外部情勢というか、大体いままで日本農業の弱さというものの一つのあらわれなんでしょうけれどもね。   〔委員長退席、理事高橋雄之助君首席〕 そういうような現実の情勢というものがあるわけですから、それをとにかくはねのけていかなければ、私は、本当に日本農政の一本立ちなんていうことはできぬのじゃないかと思うのですよ。幾らごりっぱな法律をつくり、制度をつくってみたところで、現実の問題としては、ほとんどやっぱりその制度か生きないようなことになっていってしまったんじゃ、これはもうどうにもならない。こういうような感じを強く受けたわけでありまして、大体それは一元化してやったところでもって、別に輸入をしないというわけじゃないんだから一向に差し支えないじゃないですか、そんなことね。それを、こういうようなことを言ったりされるというようなところに、どうしても私は、何か割り切れない問題が残るような気がしてならないのですよ。日本じゃ輸入をしないと言っているんじゃないんだから。ただ、畜産を守るために、価格制度を生かすために、やはり輸入については、これはもう一元的にやるということでなきゃ、日本農業が守れないという見地からの考え方なんだから、輸入しないなんていうわからぬことを言っているわけじゃないわけですから、それをこうどんどんと圧力がかかってくるというところが、私にはわからない。わからないということよりか、むしろそういう情勢が、これは日本農業をゆがめていってしまうんじゃないかという点が、それこそ心配になってならない点なんです。ここをひとつ一緒なにってはねのけようじゃないですか。私は、大臣にその御見解をお聞きしたいと思います。
  34. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 外国の牛肉の輸出国が、現在行われている畜安法の審議につきまして非常に重大な関心を持っており、また注目をしておることは、これは事実であろうと思います。また私のところにも、外国の代表の方々から、こもごも牛肉の輸出の再会を急いでほしいという要請がしばしばあるわけであります。また、ガットの会議等におきましても、わが国に対する厳しい批判というものが行われておることも事実でございまして、そういうふうに、相当、牛肉輸入をめぐりまして外国側としては、輸出側としては、いろいろの角度からわが国の情勢をキャッチするために動いておられるわけであろうと思いますが、これは、外国は外国の、輸出国としてのあり方としてはわからぬことではないわけございますが、しかし、まあわれわれとしては、外国の牛肉よりはわが国牛肉が大事でございますし、現在私は、この価格安定制度をつくり、さらにまた畜産飼料基盤を強化することによって、今日まさに岐路に立っておるこの牛肉生産というものを、これからの食糧自給という大きな農政課題の中にあって、何としてもこの際ひとつ進めていきたいというふうな熱情を持って今日までも行政に取り組んでおるわけでございますし、そういうふうなたてまえからやはり牛肉価格安定制度というものが一日も早くこの国会でひとつ御審議の上、確立をしていただきたいと思うわけでございますし、また輸入に当たってのあり方としては、ここにおける国会の御審議というものも十分配慮するといいますか、十分御審議の上に立ってわれわれとしては行政を進めていかなきゃならぬ。そういう中にあって、先ほどからも申し上げましたように、やはり牛肉輸入については秩序のある輸入というのはどうしても必要でございますし、これがわが国畜産振興を妨げ、あるいは農家経営の安定を阻害するというふうなことになってはこれはまかりならぬわけでございますから、この輸入の秩序の確立のためには今後とも全力を注いでいかなければならない。そういうふうに考えておるわけでございまして、まあ先ほどからも申し上げましたように、輸入割り当て制度の中におきましても、やはり平常時においては大半の牛肉の取り扱いは畜産事業団が行うわけでありますし、特に必要がある場合には、今後は一元的にこれを取り扱わせるということも十分これは考えていかなければならない問題であるし、また、これも措置として講ずることは必要であると、私はそういうふうに判断をいたしておるわけでございます。いずれにいたしましても、この輸入の問題、輸入のあり方によって畜産振興が阻害されてはいけないと、こういう基本的な考え方に立って行政を進めてまいりたいという考えでございます。
  35. 神沢浄

    神沢浄君 ついでですからお尋ねをしておきたいと思うんですが、割り当てが行われますと、その有効期間というのは、何か十一ヵ月とかいうふうに聞いておるんですが、こうなりますと、一度割り当てが済んでしまえば、その後たとえば情勢の変化等が生じた場合に——畜産事業団の手元のものは、これはもう問題はありません、大臣の方針に従ってやれるんでしょう。が、割り当てとして出てしまったものについては、これはどうにもならないんでしょうか。それとも、何かそれを改めて統制をするというような方法というものがあるわけなんでしょうか。ちょっとその辺をお聞きしたい。
  36. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 事業団が大半、最近では九割以上持っておりますので、ただいまの御質問は恐らく一割弱の民貿部分についての何か手があるかという御質問かと思いますが、これについては、現在としてはとめる方法はございません。ただ、この安定制度ができますれば、供給過剰の場合は、輸入国内両方の中で、どちらかを隔離をする。改善によって隔離をするということになりますれば、輸入物につきまして隔離する場合、事業団が買い上げをするとか、あるいは国内物を買い上げすることによって隔離する。これは同じ効果だと思いますので、事業団が買い入れをするというこの制度によりまして。実際上は、輸入物につきましては、契約によって入ってくるものは買い上げしなくても、国内物を直接買い入れすることによって同じような効果が出るのではないかというふうに考えております。
  37. 神沢浄

    神沢浄君 いずれにしても、後は買い上げでもするよりほかにコントロールする方法はない、かなりその辺に盲点が存在しておると、こう思うんです。  そこで、時間の関係がありますから、もう一点だけお聞きして青井先生の方にバトンタッチいたしますが、いま畜産団体なんかが非常に危惧をしておりますのは、現状では輸入を停止をしているわけなんですけれども、どうも何か政府は、また輸入再開の考え方というようなものを持ち始めているんじゃないか、というような点を非常に苦にしておるようであります。私は、そういう、まだまだその時期も条件もないというような判断をするんですけれども、この機会にお聞きしておきたいんですよ。そんな考え方というものが果たして政府にあるのかどうなのか。
  38. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほど申し上げましたように、外国の牛肉の輸出国からは、しばしば私に対しましても、牛肉の輸出の再開を要請をしてきておるわけでございますが、私といたしましては、今日のわが国における畜産情勢から見まして、当分の間は、一般枠についてはこれを認める考えはないということをはっきり申し上げておるわけでございますし、私の考えは、今日に至っても変わらないわけでございます。
  39. 青井政美

    ○青井政美君 農林大臣にお尋ねをいたしたいのでございますが、先ほど神沢先生からいろいろ基本的な問題について御質疑もございました。一部ダブるというようなことにもなろうかと思うのでございますが、特に畜産政策の基本の問題と畜産物価格安定法の運用問題点、この二つを重要な問題点としてお尋ねをいたしたいと思うのでございます。  その前提で考えてみますときに、   〔理事高橋雄之助君退席、委員長着席〕 きょうの日本経済新聞にも、農林省の案といいますか、そういう状況で、この三十一日に決められようとする安定法の価格に対する想定の問題点等が掲載されておるのでございまして、この問題は、まだこれから議論をし検討をしなくちゃならない問題ですが、何か早く結論を見出しておるという状況になっている。大臣は、これについてどのような所見を持っておいでになるのか。あるいはまた、そういう問題が、畜産政策の基本に触れてくるということになるのじゃないかということでございますし、先ほど来お話がございましたように、安定法このものの運用の中に、今回牛を入れるという意味におきましては私も非常に、おくればせでございますけれども、やはり畜産農家のために喜ぶべき現象だと思うのでございます。  御承知のように、牛を飼い、豚を飼い、そうして鶏を飼っているという農家全体が、まだそれぞれ分業的な性格を持っていて、現状価格の中では、いろいろ問題点はあろうかと思いますが、将来ブロイラーというものを、安定法の中で考えるという余地があるのかないのか、あるいはまたそういう問題が基本政策とのからみ合いの中でどのようなことを考えておいでなのか、やはりこの問題を基本的に考えさしていただきたい。また、そういう意味における大臣の御答弁をいただきたいと思うのでございます。
  40. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま青井先生の御質問によりますと、新聞等にいろいろともうすでにその内容が出ておるというふうなお話でございますが、実はまだ、農林省といたしましては、畜産審議会に諮問をいたしまして、目下審議会の方で審議をいただいておる段階でございますので、恐らく新聞記事等は推測記事であろうと思うわけでございまして、まだ農林省としての考え方といいますか、方針を、具体的な措置をはっきり決めておる段階ではないわけでございます。価格政策につきましては、いまおっしゃいますように、これからの畜産農家経営の安定を図っていく上においても非常に大きな要素になるわけでございますから、今回、牛肉指定食肉にお願いをいたしておるのもそれのためでございます。全体的には、畜産振興するにあたりましては、生産対策を充実するとともに、この価格対策につきましてもこれを充実、強化していくということは、私どもも根本的にこれを進めていきたいと、こういうふうな考えに立っておるわけでございます。  それからブロイラーにつきましては、御意見はよくわかるわけでございますが、まだ市場取引に基づくところの価格形成が行われてないというふうな現状の姿から見まして、直ちにこれに価格制度を導入していくということは困難ではないかと、こういうふうに私は判断をいたしておるわけであります。
  41. 青井政美

    ○青井政美君 畜産政策全体の問題の中で、先ほど来お話がございましたように、日本畜産農家を育てていこうという見解でございますならば、やはり生産目標をまず示すべきじゃないか、畜種別にすべてのものに生産目標を示すべきじゃないか、また、それに関連してやはり価格の目標も大体考えていくべきじゃないか。過去における農産物価格安定法の運用の中では、私に言わしますならば、やはり後手後手におくれてきておるということで、経済の動向と安定法の運用によりまする価格のけじめというものは非常におくれてまいってきておるということが言えるのじゃないかと思うのでございまして、やはり畜産農家にも、再生産を保障するという環境と条件を行政的に育てていくために、この安定法というものに一つの目標を置いて努力してまいっておりますが、結果としては、やはり足りないという現実が、今日の豚の場合におきましても、卵の場合におきましても、あるいは乳価の場合におきましても、皆そういう現象があると思うのでございます。また、現状の物価高の中で、先般の新聞はそういう論調だということならば、私は、了承をするにやぶさかでございませんが、今日の物価高の中で、農業の、特に畜産物の再生産というものが非常に困難な状況でございまして、ほとんどの農家が、やめようか、という厳しい現実、状態で今後の農産物価格安定政策の中で、少なくともこれを救済のできるというのなら、国際価格による基本的な問題点等の中で、畜産政策そのものの、そのような目標が、年次別に示されなければ、今後、畜産を飼育し、国民経済に協力できるという、動物的なたん白質の供給という問題には、私は、非常に大きな障害があるのじゃないかということが第一点に考えられます。  いま一つの問題は、農林・産物の統計の問題でございます。この問題は、やはり、現在もそれぞれの立場で御努力をいただいておると思うのでございます。しかしながら、いつの場合も生産費を賄うという統計調査の指数というものは、常に農林省がかげんをせられておるのか、そのまま出ておるのかという問題点等におきまして、非常に大きな問題が出てまいるわけでございます。畜産農家といたしますならば、やはり生産から最終消費までの間には、かなり長い時間をかけて飼育をし、そうして、それに生活がかかっておるのでございます。背のように牛一頭か二頭か飼って、米をつくり、野菜をつくりする、という農業もございます。また、専業的な農業もございますし、畜産農家としての専業家もございます。こういった問題が、統計の上におきまする数字全体の中で考えられますときには、非常に大きな私は、問題が出てまいる。そうして生産費調査が、農林省の統計調査部の調査と、われわれ民間団体が調査されたものが、いつのときにも、いつの場合にも問題が残る。それが結果として、価格の決定に大きな作用をいたしておるということでございます。この問題は、やはり、それぞれの団体が、それぞれの立場から政府に要請を申し上げてまいっておるのでございますが、一向に改まらない。改まらない根拠の中に、やはり生産者団体が要請する生産費の調査と、農林省の統計調査部における調査部の間に費用の誤差が出てまいっておるのが一つの問題じゃないか、ということが考えられます。やはり、現実に近い生産費というものが基準として考えられますときには、さらに国際価格との関連において、もう一つ大きな問題が残ろうかと思うのでございますが、日本畜産を守り、日本畜産農家を守ろうという前提に立ちますならば、やはりそういう意味におきまする親心というものが、政治の場でも、また、運用の中でも考えなければならないのじゃないかと思うのでございまして、どうかそういった問題についての御意見を伺いたい。
  42. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 畜産物につきましては、その消費の面から見ますと、やはりこれからの生活水準の向上、あるいはまた人口の増大等から判断をいたしまして、これは今後増大をしていくというふうに判断をいたしておるわけであります。そうした消費に対応いたしまして、生産を拡大をしていかなければならぬわけでございまして、現在、農政審議会に諮問をいたしておる農作物の需要生産の長期目標につきましても、その中にあって、畜産物のそうした消費動向等も踏まえての生産目標を打ち出し、農林省としての方向を打ち出して、六十年を目標にいたしました生産の農作物種目別の、農畜産物の種目別の生産目標を提示をいたしまして、御批判をお願いをいたしておるわけでございますが、価格につきましては、これはやはり全体的に再生産が確保されるということが何よりも大事なわけでございまして、そうした再生産を確保していくという中にあって、そのときの生産、流通の情勢だとか、あるいは物価、賃金というものを十分配慮した上に立った価格が適正に決定をされなければならない、こういうことであろうと思うわけであります。  生産目標とともに価格についても長期目標をつくれと言われるわけでありますが、この点は、そのときどきによって生産の状況というのも変わってくるわけですし、あるいは賃金、物価の動向も変わってくるわけですから、これはなかなか私は、長期目標として打ち出すことは困難であろうと思いますが、しかし再生産を確保するという大前提のもとに——価格が、農家の再生産が確保されるような形で形成されるものは、当然強く打ち出す、こういうふうに思うわけでありまして、そういう意味において価格制度の充実等もさらに図っていきたいと思うわけであります。  それから、お話がでございました統計調査につきましては、農林省といたしましても、年々これが充実に努めて今日まで来ておるわけでございます。ただ、この新しい価格制度で発足いたします牛につきましては、生産費等につきまして、まだまだ不十分な点がありますので、この点は大いに今後整備をしていかなければならぬと思いますが、全体の農作物の統計調査等も充実はしておるわけでございますが、さらに今後とも、いろいろと御批判等もあるわけでございましょうから、そういう点は十分踏まえて今後ひとつさらに拡大、強化をしていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  43. 青井政美

    ○青井政美君 ただいま大臣から御答弁いただいたのでございますが、何と申しましても、やはり価格形成が農家生活の基本になろうと思います。したがいまして、それをはっきりと年次別に示すということの困難性の問題は十分私も承知いたします。しかしながら、少なくてもやはり再生産を保障するという前提を考えてみますならば、こういう価格が、希望目標価格として想定されるものは、特に畜種別にでき得るのじゃないかと私は思うのでございまして、確かに国際価格その他等々をプールするという姿なり、あるいはモデル農家をよく調査することによって私は、再生産の最小限度の目標というものはできるのじゃないか。過去における新農村計画なり農業基本法の運用の問題の中でも、生産目標を示したが、価格目標を示さなかったことによる農家の大きな苦しみというものを今日考えてみますときに、新しい状況の中で再生産確保という状況は——何と申しましても、価格に対する目標というものが示せる行政こそ、今日これ以上のものはないということが考えられるのじゃないかと思うのでございまして、御答弁は要りませんが、この問題については、今後のいわゆる畜産行政の中で、特に御配慮を賜りたいというふうに思うのでございます。  それから、先ほど調査部の統計資料云々ということを申し上げましたが、私は、特に畜産物に対するもろもろの問題点現状の姿の中では用を足りていないのじゃないか。先ほど来お話がございましたように、ブロイラーというものが市場形成をなされていないといいながらも、これは市場形成がなされて、流通は現実にございます。非常に値が高くなり、非常に安くなりしている現実の中に、やはり秩序ある状況を踏まえるためには、農林省のあるいは統計調査部の畜産物価格万般の問題に対する調査というものが緊急の私は、要務であるというふうに思うのでございまして、そういう意味で、特に畜産に対する統計調査というものに人的な拡充も要るでしょうし、経費の投入も要るでしょうが生産費というものを見る上におきましてこの問題が大きな今後の課題になる。将来いわゆる価格安定政策を推進をしてまいる上におきましても、農林省が自信を持って進められるという問題はこの資料に基づく議論が、団体とあるいは生産者等との議論の中に一番大きい問題であろうというふうに私は思うのでございまして、よろしくお願いをいたしたいと思うのでございます。
  44. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま御指摘がありました点は、それぞれごもっともなところでございまして、これからの価格政策を推進していく場合においても、算定方式の算定の基礎になるのはこれは生産費でございますし、その生産費につきましては、やっぱり客観的に科学的に調査がなされなければならないわけでありますので、おっしゃるように、統計調査部の充実ということについては力を尽くしていきたいと思うわけでございます。
  45. 青井政美

    ○青井政美君 牛肉輸入の問題でございますが、先ほど神沢先生とのお話の中で、通産省行政農林省とあるいは畜産事業団というふうなお話をせられておったのでございますが私は、経済的な効率を考えますときに、やはり小さい素牛を輸入して日本農家肥育する、そうしてそれが生産費として賄うということ。こういう問題を、もう一度このような状況の中で、農林省としては考えてみる用意があるのかないのか伺いたいと思います。
  46. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 子牛を導入いたしまして、わが国において肥育をすることによって、牛肉生産を拡大するというのは一つ考え方でございまして、農林省といたしましては、現在、関税割り当て制度で四十九年につきましては、一万五千頭以内は無税ということで、輸入しやすいような措置もとっておるわけでございますが、御承知のように昨年、牛肉価格が非常に低落いたしましたので、現在は、四十九年は一万五千頭の無税の割り当て枠を決めましたけれども、実際には輸入いたしておりません。今年度もさしあたりはまだ輸入すべき時期ではないと思っておりますが、将来の問題といたしましては、国内資源だけでは不十分な面がございますので、海外から安い子牛を導入いたしまして、それを肥育して付加価値を国内でつけて、牛肉の一種の国内生産にもなるわけでございますので、増大を図っていくということは、牛肉価格が安定してまいりますれば再開はしてしかるべきではないかというように考えております。  なお、現在、関税割り当て制度でやっていると申しましたけれども、国内の子牛生産者に対する影響という面ももちろんございますので、現在は全国的な生産者団体にのみ割り当てをしておるということによりまして、国内の子牛の生産者に対して悪影響のないように、不安を持たないような方法で実施をすることにいたしております。
  47. 青井政美

    ○青井政美君 前向きで御考慮をいただくことは大変結構だと思うのでございますが、いままでの試験輸入をしました経過の中を反省をいたしてみますときに、やはり防疫体制の受け入れの準備その他等がまだ政府当局においてなされておることが非常に少ない。ある意味において、無論団体とあるいは政府とによることで結構だと思いますが、もう少し諸外国の病気の問題、防疫の輸入体制の簡素化の問題、こういった問題をより積極的にお取り扱いを願わなければ、この問題の成功なり、消費者に対する安い牛を出そうという場合の考え方、あるいは生産者との調整の問題としては、私は問題が残ると思うのでございまして、どうか前向きの考え方でこの問題を考えていただきたいと思うのでございます。  次には、ひとつ畜安法の今後の価格の決定についてでございますが、先ほど来、新聞の問題につきましては別に云々という問題がございましたが、この問題もやはり生産費の所得補償が生まれるということを前提で考えますときに、それぞれ農業諸団体からも新しい本年度の価格形成上におきまする要請というものがなされておるわけでございまして、そのなされておる要項については、それぞれ大臣初め御関係の方々も皆さん御承知だと思うのでございます。が、少なくても、やはり生産費を補償するという前提に立ちますならば、非常に陳情の要旨のすべての価格が、たとえば原料乳の問題、豚の問題、あるいは牛が加わるという状況の中では、乳牛の雄の問題、去勢の和牛の問題というように、それぞれの問題がなされるわけでございまして、本日の時点での議論は、あるいは加工原料乳という問題とあるいは豚だけの問題になろうかとは思いますが、やはり生産費を補償するという名においてそれぞれ要請申し上げておりますが、これに対する見解を伺いたいと思います。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 現在、農作物で、農産物で大体七割程度価格制度の対象になっておるわけでございますが、この価格制度は農作物、畜産物ごとにそれぞれ異なっておるわけでございます。これは、農作物、畜産物のそれぞれの商品の特性であるとか、あるいは流通事情等も背景にいたしますので、これを一律に生産費補償方式というふうなやり方をするということは私はなじまないというふうに考えておるわけでございます。まあ、現在畜産審議会におきまして、乳価であるとかあるいは豚価につきましては、今日の価格制度のもとにおいて再生産が確保されるという基本的な姿勢の中で御論議をいただいておるわけでございますが、牛肉につきましては、これは何としても新しい制度でございまして、牛肉については、一度生産が縮小すると、これを拡大するというのはなかなか困難であるという情勢等も十分踏まえて慎重に価格制度を決めていかなければならぬわけでございまして、現在、学識経験者等のいろいろと御意見も聞いて、その算定方式につきましても検討を進めておるわけでございます。現在の生産状況あるいは価格等の需給事情を十分考慮いたしまして、再生産を確保するという立場に立って、畜産審議会の意見も聞きましてこれは決定をいたしたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  49. 青井政美

    ○青井政美君 先ほど来、神沢先生といろいろ御議論があったわけでございますが、国民全体から見ますときに、やはり牛肉消費というものと生産というものが見合わないということは、私どもも十分理解できると思うのでございますが、やはりいろいろな立場で物を入れるというところに一つの誤解もあり不信感もできてくるということでございまして、少なくとも、畜産事業団農林大臣の所管の中で、よりうまく運用ができるものなら、やはり一元化するという状況の中で今後の運営をしていくという意味において、通産省その他それぞれの関係の方面等については積極的に了解を得られるような状況で、問題を進めていこうというお考えがあるかないか、お伺いしたいと思うのでございます。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この一元化輸入の問題につきましては、衆議院の委員会におきましても御論議がございまして、委員会の大多数の方々からも非常に強い意見が示されたわけでございます。また、本委員会におきましても、この一元化につきましても、先ほどから神沢先生を初めとして、積極的な御意見が出されておるわけでございますが、私は、先ほどから申し上げましたように、これからの畜産農家経営が安定をし、畜産振興されるという基本的な考え方に立ってこの問題も処理していくべきである、というふうな考え方を持っておるわけでございます。で、私は、現実、今日の制度の中にあって、割り当て制度というものはありますけれど、しかし、畜産振興事業団が、大部分を一般時においても取り扱うことができるということにもなっておりますし、また、特に必要がある場合は、これ一元的に輸入をする、あるいは輸入を取り扱わせる、輸入肉について取り扱いをするということが、これは可能であるというふうに考えておりますので、この制度を適切に運用をすれば、私は、牛肉についての今後の畜産振興、あるいは農家の安定という面から支障はないものと、こういうふうには考えてはおるわけでございます。
  51. 青井政美

    ○青井政美君 次は、畜産需給の問題でございます。いわゆる国際価格というものなり、あるいはすべての指標の中で形成されます価格をいろいろ考えてみますときに、非常に安い条件と環境がございますならば、多く輸入するということも結構だと思います。国内価格影響のないような方法をとるためには、私は、政府生産者団体において、長期的なやはり調整保管という姿の中で、消費者にも安心をさせ、価格形成上においても不公正な問題が起こらないような措置を、私は、この段階においては考えていくべきじゃないかというふうに思うのでございまして、一部いままで部分的に皆さん方の御配慮で御努力せられた試験的な結果もあるわけでございますが、やはりそういう内容の中にも、実態に触れて問題を考えなければならないのじゃないかということを思うのでございますが、まず基本的に、調整保管をやる用意があるのかないのか、その点をお伺いしたいと思います。
  52. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) いま御審議をいただいております改正法案の中におきまます調整保管につきましては、生産者団体が農林大臣の認定を受けまして、販売計画または調整保管の計画をつくりまして、価格が下がるような場合には保管をする。そういうものにつきましては、事業団を買い入れする場合には優先的に、生産者が保管をしたものを買い入れるというような仕組みを豚肉と同様にとることにいたしております。これが一つ法律の中にある調整保管の制度でございますが、なお、この経費につきましては、買い入れの際に適正な価格を決めますので、生産者の負担にならないようにするということになるわけでございます。  それから、お尋ねの御趣旨は、事業団自身が調整保管をするのか、というようなお尋ねでございますが、われわれといたしましては、需給の将来の見通しと、短期の見通しというものをできるだけ的確にやりまして、輸入割り当て枠を決め、それから輸入の時期別あるは数量ごとの決定をしていく必要がある。その意味では、きめ細かい割り当て、それから輸入の実施ということによりまして、輸入したものが余りだぶついて価格が低落するとか、あるいは不足で価格が上がるということのないようにしたいと思いますけれども、これは理想でございまして、実際には輸入した場合に、価格が弱いというときには、放出するというのは事業団の場合に適切でないという判断をいたしますれば、事業団が保管をしておきまして、価格が回復したときに放出をするというような運用はできるだけしていきたいと思っております。  そういう調整保管というのは、コストがかかりますから、われわれとしてはできるだけそういうことは、やらなくて済むような、うまい適切な輸入量の決定、輸入時期の決定をやるべきだと思いますけれども、これはなかなか理想どおりにいませんので、そういう場合には調整保管をやるということは、当然あり得ることでございますので、国内市況に悪影響のある場合には、事業団が保管をするということにいたしたいと考えております。
  53. 青井政美

    ○青井政美君 いままでのテストケースとしての調整保管の関係におきましては、いろいろ事業団がやられ、生産者団体がやられる。そういった場合のお買い上げの対象の中に中間経費を圧縮して買い上げるという状況があったやに伺っております。そのことは、生産者団体も、より農民のために努力していこうということでございまますが、やはり保管なり倉敷料なり金利の問題なり、実際に御調査せられて、必要があったものは、やはりそういう経費としての買い上げの対象の中で措置ができるようなことを考えなければ、ただ単に入庫したときの単価、それと販売単価との差額だけで何とかまかなえということは、やればやるほどいずれかの生産者団体がめんどうを見なくちゃならないという状況になり、そういうことでございますと、国のせっかくの配慮というものが途中で挫折するという状況になると思うのでございまして、この問題はやはり運用の問題でございますので、将来の課題として、農林省の方で御配慮を願いたいということを希望しておきたいのでございます。  次に、液卵の問題についてお伺いします。これは、いままでいろいろな変遷をしまして今日まで出てまいりました。今日では非常に卵価も高いという状況でございますが、御承知のように、新しく法律的な諸手続の中で、今後運営してまいるという状況の中を考えて見ますと、いまの価格推移するならば何の心配もないかもわかりませんが、価格が高くなり安くなり、そうして買い上げの対象にならなければならないときには、金がない。運用益の金利の差というようなものでは、どうにもできないという状況が将来の問題として考えられるのじゃないかということを考えますときに、やはりこの場合の在庫が多くとも、そういう現象が起こるときには、やはり資金的な配慮をして買い入れをするという用意があるかないかということでございます。
  54. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 卵の価格の安定のためには、現在民間におきます卵価安定基金が二つございまして、五十年度からは現在御審議いただいておる予算におきまして、積立金といいますか積み立て補てんをするわけでございますが、積立金の一部に対しまして助成をする。直接的には補てん財源の一部を助成をするということでございますが、実質的には積立金の一部助成というのに近いわけでございますが、そういうようなやり方で、現在の卵価安定基金の機能を強化するということを考えております。  それからさらに、従来からございますが、液卵公社というものができておりまして、これが民間の補てん事業と関連させながら運用しておるわけでございますが、一定価格以下に下がる場合には買い入れをする、そうして調整保管をすることによりまして市場から隔離をする、それによって価格の回復を促進をするということを目的といたしまして、現在設立され運営をされておるわけであります。これに対しまして畜産振興事業団から出資をいしたております。民間の出資とあわせて畜産振興事業団がかなりの出資をいたしております。これの運用を通じまして卵価が下がります場合に補てんをすることとあわせて、卵価自体が下がらないような底支えをするという機能を持たせておるわけでございます。実際の運用といたしましては、昨年のように、えさの価格が非常に上がったにかかわらず、卵価はかなりコストをカバーするだけの価格を実現しなかったという点で低卵価と。水準そのものは前年に比べて低いわけじゃございませんけれども、コストから見ると非常に低かったということで、生産者は非常に困ったわけでございます。その際の価格安定基金の補てん機能、それから液卵公社の買い入れ機能は、ああいう乱調のときには十分発揮できなくて、いろいろ増資をしたり、融資に対します利子補給をするとかいうことでてこ入れはいたしましたけれども、必ずしも十分に機能しなかったという面はわれわれも率直に認めざるを得ないと思います。  したがいまして、先ほど申しましたように、五十年度からの卵価安定基金に対する国の助成を契機といたしまして、安定基金に加入する農家は、計画生産に協力をしていただくということを条件にいたしまして、需要に見合った計画的な生産といいますか、あるいは生産調整といいますか、そういうことを履行することを条件にして、国の助成に基づく補てんをしていただくというようなことによって、今後卵価の安定を図っていきたいというように考えておるわけでございます。  なお、調整保管につきましては、液卵公社とあわせまして生産者団体自体が行うものにつきましても畜産振興事業団を通じて助成をいたしておりますので、これら三つぐらいのいろんな対策を現在持っておるわけでございますが、これらの組み合わせをうまくやりまして、卵価の安定を図っていきたいというように考えております。
  55. 青井政美

    ○青井政美君 いろいろお尋ねしたいこともあるんですが、時間の関係もあるようでございますから、最後に、流通の問題について、やはり畜産全体を通じる問題点としてこの際、御提議を申し上げておきたいと思うのでございます。  何と申しましても、やはり生産者消費者とを、より効率的に結ぶためには、流通機構の整備という問題が、やはり金利の問題、倉敷料の問題、あるいは場所別におきまする問題点等もございますので、そういう問題が今後の配慮の中で、特にお考えをいただきたいというふうに思うのでございます。  それから、先ほど申し上げましたように、やはり仕事を進めてまいります上におきまする事業団と、そうして一般の運用上の問題点等がやはりそれぞれの問題の中で、私はたくさん問題が残されておると思うのでございます。いわゆる畜産事業団の運営の中に、消費者のためなのか、生産者のためなのか、あるいは国民全体のための合議なのかという問題にも、一件ごとに私は使命感が違うと思うんです。そういう問題についてやはりPRしながら、理解しながら問題を進めなくちゃならないと思うのでございます。先ほど来お話がございましたように、液卵のトラブルの問題にいたしましても、やはりよりPRすることと、政府は、あるいは自主調整をしておるときにより輸入を入れるという姿で、価格形成上に非常に不利なものが起こされてきておる、という現実の問題を理解せられて、やはり生産がうまくまいるように御配慮を願いたいと思うのでございます。  それから、当初から若干お話しを申し上げようと思いながら失念いたしましたが、私は、第一次産業は、第二次産業とは違って金融対策というものを講じてしかるべきじゃないか。先進工業国の関係の中では、やはり国民の食糧を需給するのだから、特に第一次産業の生産コストに大きく影響をするということを考えるときに、一般金融べースよりは半分以下だというふうな状況で、オランダなりドイツなりが政策的なものを展開をしておるわけでございまして、これだけの狭い、非常に条件の悪い日本農業が発展をするためには、やはり農業に対する金利というものが第二次産業の金利と、政策的な問題はたくさんございますが、まだまだこの問題では、現状日本農業を救う金利対策というものから見ますならば、非常にほど遠いものがあると思うのでございます。そういう意味におきまする今後の問題につきましては、特にやはり価格安定法の中で生産者の要求する価格に足りないという状況の中では、やはり生産のコストダウンという問題の中に、金利というものが非常に大きなウエートを持ってまいるということでございまして、このことは先ほど来申し上げましたように、生産費調査というものを綿密に行うことによって、その利子の負担がやはり生産物の価格の中にどのような影響があるかということもはっきりと私は、出てまいるというふうに思うのでございまして、どうかそういった問題を十分御検討いただきまして、今回の特に畜産物安定法の動向価格決定に、日本農業新聞に出ておるように、圧縮するんだ、低価格政策のために圧縮するんだというふうないわゆる価格が新聞に出ることのないような状況というものを特に考えていただきたい。  ある人は、私どもにこのようなことを言っていました。まあ事務的には一応こういう姿で出るが、あとはまた、政治加算というものがあるんでしょうと、こういうふうな物の考え方をいたしておりました。これは農業の構造政策なり価格政策とやはり相ともに関連をする私は、問題になると思うのでございまして、少なくとも、やはり法に基づいて出るという価格が最大限のものでなければならないということが、今日の価格動向の中で、おそらく統計指標の中でも私は、出てこなければならないということを考えておるのでございまして、そういう意味におきまして、特に中間流通対策というものの考え方という問題と、先ほど来申し上げました調整保管の考え方をより積極的に進めることによって、価格政策なり農家が安心して物をつくるという上において私は、問題が前進し発展するんじゃないかというふうに思うのでございまして、この二つの問題を特に御配慮をいただいて、今後の農業振興のために御苦労をいただきたいと思うのでございます。
  56. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 食肉の流通機構の整備につきましては、ごもっともなことでございまして、これに対しましては、昭和三十五年から第一次五カ年計画、四十年から第二次四カ年計画で実施してきましたし、さらに四十七年度から第三次五カ年計画を立てて、対象とする約三百六十カ所の家畜市場を四十カ所程度に再編整備をして合理的な取引の実施ができるように現在助成を行っておるところでございます。また、食肉につきましての需給の規模の拡大に対処して、従来から食肉センター、食肉中央卸売市場の整備に努めておるわけでございますが、四十七年度からはカット肉まで加工し得る大規模の基幹食肉センターの設置を助成をするとともに、食肉処理の集約化によって流通経費の削減を図るため、主要な消費地で包装食肉を集中的に製造する施設の設置等に対しても助成をいたしておるわけでございまして、さらに今後食肉の流通体系を総合的に再編整備するために、五十年度予算に総合食肉流通体系整備促進事業及び消費地大規模冷蔵施設設置事業につきまして助成を行うべく計上もいたしておるわけでございます。  また、金融面についての配慮につきましては、確かに農家の資本装備、あるいはまた経営近代化を図るための必要な資金につきましては、農林漁業金融公庫の資金あるいは農業近代化資金等の制度を設けまして、これまでも融資枠を拡大するとともに貸付限度額の引き上げ、貸付対象の拡大、金利条件の改善等いろいろと条件改善を図ってきたところでありますが、さらに、その改善、整備には努力をしてまいりたいと思いまして、全体的にやはり価格につきまして、おっしゃるように再生産が確保されるという大前提のもとに、農林省としても今回の畜産物価格の決定に当たりましては、十分慎重に配慮し、また畜産審議会の意見等も尊重して、そしてこれを決定をしていきたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  57. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後零時九分休憩      —————・—————    午後三時四十二分開会
  58. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  委員の移動について御報告いたします。  本日、初村滝一郎君が委員辞任され、その補欠として安井謙君が選任されました。     —————————————
  59. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  60. 神沢浄

    神沢浄君 それでは第二部の質問をこれから始めるわけでありますが、私は、質問の順序としては、例の附帯決議を項目別に追っていきましたから、ここで第三項、第四項についての処理てんまつなどをお尋ねをしたいところですけれども、時間の関係もこれあり、同時に午前の論議の中でもって、この四項目などの問題については相当深められていると思いますので、むしろこの際、私は、法案内容に入ってまいりたいと、こう思うんです。  そこで第一に、この法案内容を見ますと、牛肉のうち、一定の規格に該当するものを指定食肉とすると、こうなっておりまして、指定食肉にどれをするのかということはまだ明らかにされていないわけであります。  そこで一つ指定食肉には何をするのか、牛肉のうちの。この点について少し細かな説明をいただきたいと思います。
  61. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 牛肉のうち、指定食肉の対象として何を指定するかは、この制度運用する場合に非常に重要な問題でございますので、最終的には畜産審議会の食肉振興審議会の食肉部会の御意見も十分お聞きした上で決めたいという考えでございます。現在の私どもの事務的な検討の過程での考え方について申し上げますと、牛肉全体の価格の安定を図る上でどの部分を指定食肉にしたらいいかというような考えで決めていっていいというように考えますけれども、具体的に申し上げますと、牛肉の種類別、規格別の構成割合から見まして、やはりそのシェアが相当割合を占めるというような種類規格のものを選びたいと。まあシェアの問題が一つ。  それからもう一つは、日常の取引なり価格形成におきまして、他の全体の牛肉の指標的な役割りを果たしておる種類、規格のものを選んでいいのではないかということ。  それから第三点といたしましては、特別な高級肉とかあるいは特別のくず肉といいますか、低級肉とか、そういうものははずしまして、大衆的な、標準的な種類、規格のものを選んでいっていいのではないかという、三点ばかりを考慮しながら決定していっていいのではないかというふうに考えておりますが、以上のような見地から、現在検討中の案といたしましては、和牛の去勢の中規格のもの、それから乳牛の雄の去勢の中規格のものというものを対象にしてはいかがかというふうに現段階では考えておりますが、先ほど申しましたように、最終的には審議会の意見を十分お伺いして決定をしたいと思っております。
  62. 神沢浄

    神沢浄君 和牛去勢の中規格、それから乳牛雄の中規格、こういうお答えでありましたが、   〔委員長退席、理事高橋雄之助君着席〕 私、いただいた資料で見ますと、乳牛雄の場合は「中」よりか並の方が比率は大きくなっておりますね、四十九年度。この辺はどんなふうな決め方をされたのでしょうかね。
  63. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 御意見のとおり、四十九年度で見ます限り、乳牛の雄の去勢の牛肉につきましては、規格別に見ますと「中」よりも並の方が割合が多いということは事実でございますが、私どもの判断では四十九年は御承知のように、価格が非常に下がった、それからまた半面、飼料価格が非常に高くなったということもございまして、生産者に良質の牛肉生産するという意欲がかなり低下した異常な年だというふうに判断しておりますので、「並」の方がふえてきた、えさの与え方等も若干節約をしたとかいうような点が、結果としてあらわれているのではないかというふうに見ておるわけでございます。が、ややさかのぼってみますと、「中」の——当初はやっぱり並の方が「中」より多いのでございますが、だんだん「中」の割合がふえてまいりまして、ここ二、三年は「中」の方が「並」よりも割合が高いというような傾向が見られますので、四十九年は先ほど申しましたような意味で特殊な年であり、価格が異常に下がったための異常現象であるというふうに見ますれば、この安定制度ができまして、異常な低落というものが防止できますれば元に返りまして、「中」が一番割合が多いということで推移するのではないかというふうに考えておりますので、先ほど申しましたような三つの観点からいたしましても、「中」をとっていいのではないかと、現段階では考えておるわけであります。
  64. 神沢浄

    神沢浄君 見通しはそうでしょうけれども、その見通しは大丈夫、外れるようなことはありませんでしょうかね。私は、これは消費者の方の側に立っての一つの感覚と意識の問題だと思いますけれども、牛肉というのは、いわば食生活の中では、ぜいたく品に考えてきた時期というものが終りかけてきておって、やっぱり外国並みに、牛肉もいわゆる主食的な感覚というものが生じてきておる。   〔理事高橋雄之助君退席、理事小林国司君着席〕  そういうような中で、これから今後へ向けて案外四十九年にあらわれたような「中」よりも「並」の消費のほうが拡大していくようなそういう傾向というものが進んできはしないかというような感じもちょっと持つのですが、そんなような点から、「中」を指定をされてこれから先、外れるようなことはなかろうか、外れていくような場合にはどうされるかというようなことまであわせてお尋ねしておきたいと思います。
  65. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 初めてのことでございますので、当初は何らか対象をきめますけれども、やりながら必要な場合には修正を加えていくということは、この制度全般の運用に当たりまして留意すべきことだと私どもは考えております。ただいまの点につきましては、先ほども申し上げましたような最近の一定期間をとりました傾向としては、「中」がふえる傾向があるということでいいのではないかと思っておりますが、乳雄の場合と別に、和牛の去勢の場合も「中」を対象にしていきたいというふうに現段階では考えておりますが、これも「上」、「中」、「並」とそれぞれ規格が——その上の「極上」もありますけれども、漸次「並」から「中」、「中」から「上」というふうにだんだん 質の改良が進んでおります。乳雄につきましては、これが肥育に利用されるというふうになりますからまだ数年ございますので、素牛の選定なりあるいは肥育技術等でまだ十分技術が確立しておらないという面もございますので、「並」が比較的多いということはございますけれども、和牛の場合と同じように肥育技術がだんだん進んでまいりますれば「中」から「上」、「極上」というようにだんだん上級のものの割合がふえてくるということは、われわれの指導としてもそういうふうに持っていきたいと思っておりますので、「中」でいって差し支えないのではないかと思っておりますけれども、基本的には先ほど申し上げましたように制度運用しながら、見直しながら適切に必要な場合には修正を加えていくことは当然だと思います。
  66. 神沢浄

    神沢浄君 そこで、いただいた資料だけではちょっとわかりかねた点なんですが、牛肉の全体にわたっての中で、いただいた資料の中でもって、たとえば去勢和牛のうち、「中」が何%を占めるとか、あるいは乳雄の中で「中」が何%を占めるとかいう資料は手元にいただいてありますが、消費される牛肉の全体の中で、今度指定をしようと考えておられる和牛の「中」、乳雄の「中」、これがあわせてどのくらいの比率になっておるのかという点をちょっと知りたいのですよ。
  67. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 全体の中で占めます和牛の「中」の割合は四十九年度で見まして八・五%でございます。それから乳雄の「中」は一二・四%、四十九年でざいますが。年によって若干変動がございますので、二〇%から二〇数%の間でここ数年来推移をいたしております。
  68. 神沢浄

    神沢浄君 全体に占める割合というのは約二割、こういうことになるわけですかね。この程度のものを指定してのいわゆる牽引作用で、果たして価格の安定のための制度として生きるでしょうかね。その辺が素人ですからまことにわかりかねるのですけれども、むしろ何か疑問に思うのです。その辺の説明をひとつ欲しいと思うのです。
  69. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 価格安定制度を設けますのは、再生産を確保して今後のわが国におきます肉用牛経営振興を図る、生産をふやすというのが最終的なねらいであるわけでございますが、そういう点から見ますと、いま和牛の「中」と乳雄の「中」についてのみ申し上げましたけれども、牛肉全体の中では、まずかなりの割合を占めておりますのが雌でございます。これは、和牛の雌と乳牛の雌があるわけでございますが、和牛の雌につきましては、われわれといたしましては、今後肉用牛を大いにふやしていくためには、資源的に限界がございますので、なるべく資源をフルに使っていくということのためには、雌牛には、ますできるだけ繁殖をさせて、繁殖能力がなくなったものについては、それはもちろん肉にいたしますけれども、できる間はできるだけ子取りをたくさんするということが生産をふやす基本になりますので——、そういう意味からいたしまして、一部で高級肉向け等に、いわゆる雌牛の子取りを全然行わなくて肥育に回して、ごく上級の牛肉を出すというような肥育形態も現在あるわけでございますが、そういうような形での雌牛の肥育というものは、国の肉牛資源の培養といいますか拡充という点からいたしますと、必ずしも好ましくない。ただ、これは法的に規制するというような性格のものではございませんので、強制はできませんけれども、そういう指導をしてまいりたいと思います。したがって、この牛肉価格安定制度の場合も、そういう特殊な雌牛の肥育牛肉については価格の支持の対象から外していくことが、資源を培養し、拡充するためには、むしろ望ましいのではないか、こういう考えで、その部分は対象外にする。  それからもう一つ問題になりますのは、乳用牛の雌の肥育といいますか、肥育せずに、そのまま肉で出る場合もございます。俗にいう乳廃牛というものでございますが、これにつきましても、酪農の生産が続く限り、必ず何年か搾乳をしたあとに廃牛という形で、残存搾乳牛という形で更新の際に肉として利用されるわけでございます。したがいまして、いわば副産物的な性格を持っておりますので、酪農の再生産が維持できますれば、結果として肉に回ってくるということでございますので、酪農の再生産をいたしますためには、牛乳の価格の支持といいますか、現在やっております不足払い制度によります保証価格を適正にきめてまいりますれば、毎年一定の数の乳牛の雌牛の肉用の利用というものは結果として出てくるというように考えます。そうすると、特に牛肉としての価格安定の対象にすることは必要がないのではないか、われわれは現段階ではそういうように考えております。  それからもう一つは、そうしますと、その部分が価格安定対象の対象から除去されるというようなことをいたしますと、全体の中では二〇%余りでございますけれども、いまのような一種の消去法のようなことでやりますと、残ったものの中ではかなりのウエートになりますし、それからまた、一部でございますけれども、和牛の「中」なり乳雄の「中」というものを買い入れの対象として価格安定をやってまいりますれば、間接的な効果で他の食肉も同じように価格が支持されるということも期待できると思いますので、とりあえずそのような考えでスタートしてみてはどうか。もちろんこれはやってまいりまして、事、志と違いまして間接効果がそれほど期待できないということでありますれば、先ほど申し上げました乳廃牛等については、その段階で改めて検討し、必要ならば追加するというような措置も考えていかなければならないというふうには思いますけれども、制度の出発の当初においては、ただいまのような考えでいっていいのではないかというふうに考えておるわけでございます。この点も非常に初めてのことでございますので、近く開かれます畜産振興審議会の食肉部会で専門の方々の御意見も十分聞いた上で、最終的に今年度の対象牛肉をきめていきたいというふうに考えております。
  70. 神沢浄

    神沢浄君 乳廃牛の問題については改めてお尋ねしようと思ったら、答弁の方が先になっちゃったけれども、一点は、乳廃牛に限らず、私は、全体の中でもって二〇%くらいの比率しか持たない部分を指定をして、全体を動かそうとしても、むしろ非常に懸念されるのは逆の現象の方がこわいのであって、この制度が生きていかぬのではないか。八〇%、二〇%じゃ、それは八〇%の方が牽引力は強いに決まっているでしょうから、だから、いまのお話で、とにかくテストをやってみるんだと。テストをやってみるんだという考え方も、これはどうかと思うけれども、しかし、残りの部分の中でも、いま乳廃牛の問題を局長の方から出されましたが、大体乳廃牛という言葉が気に入らぬですね。乳牛としてはなるほど一役終わったかもしれないけれども、廃牛じゃないわけだ。今度は、肉資源としては新しい出発をしているわけだかり、搾乳の問題——搾乳牛の問題を論議する場面においては、卒業したのはそれは廃牛かもしれぬけれども、今度は肉資源という段階に移せば別に変わりはないですよね。これはもうく「全廃」などという言葉をつける何の理由もないわけです。そこで、これが相当のシェアを持つということになりますと、やはりそれは、いまのお話になったような考え方で、一応牛乳取って勘定は済んでいるんだから、これはもう乳廃牛という言葉が無意識に使われておると同じように、   〔理事小林国司君退席、委員長着席〕 何か、その肉については、もう生産者立場からすれば、もうけ得というような、こういうような考え方自体が、私は、牛肉価格というものの安定を図るこの制度を生かしていくという上においてこれはかなり障害になりはせぬか、というふうな感じがしてならないわけなんです。いまのお話では、とにかくこの法案に盛ってあるような形で出発をした上で、そしてその状況を見て、もし、これは乳廃牛といえどもやっぱり指定に加えてやらなければ制度が功を奏さない、こういう際にはは、ためらわずに指定に加えると、こういうお考え方をされておるわけなんですね。
  71. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 私どもは、間接的な効果といたしまして、価格が安定するものと期待をいたしておりますけれども、実際にやってみまして、値が下がった場合に、乳牛の雄の価格は「中」を中心にいたしまして支持されたと、しかしながら、乳廃牛はそれと無関係にどんどん下がるというようなことがございますれば、その段階では、追加について検討をして、実施に移すということは当然検討しなければならないと思います。
  72. 神沢浄

    神沢浄君 そこで、これにばかり時間をとっておれませんから、大臣にお答えをいただいてこの問題は終わろうと思いますけれども、乳廃牛はもとより、規格外のものにつきましても、それが非常に価格の低落を示して、そうして牛肉価格安定のために明らかに支障を生ずるというふうな事態においては、これは私は、ためらわずに買い上げの対象にすべきだと、こう考えているところでありますが、その辺の考え方をひとつお尋ねをしておきたいと思うんです。
  73. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 指定牛肉の対象として、乳雄の「中」、和牛の「中」ということで農林省は臨んでおるわけでございますが、この点につきましては、畜産審議会の御意見等、もちろん十分聞かなければならぬと思うわけでございまして、特に乳廃牛の問題につきましては、先ほど畜産局長答弁をいたしましたが、いわば酪農経営の副産物的な意味におきまして、乳価の再生産が確保されるような価格に決定せられるということであれば、乳廃牛についても、自然的にその再生産ができると言いますか、そういうことになってくるわけでございますので本制度の指定の対象にはしてないということでありますが、私も、この乳廃牛——乳廃牛という言葉がいろいろと御批判がありましたけれども、この乳廃牛の占める、やはり肉資源に占めるウエートというのは大きいわけでございますし、本制度を維持していく上におきまして、乳廃牛の価格安定が図れないというふうな事態があるときは、むしろ私は積極的にこれは指定食肉の中に入れてもいいんじゃないかという私は、もっと前向きな考え方を持っておるわけでございます。が、現在の段階におきましては、先ほど申し上げました乳雄の「中」と和牛の「中」ということにしておるわけでございますが、乳廃牛につきましては前向きに、積極的にこれを指定食肉に入れるように、これは努力をしたいと思うわけでございます。その他をすべて一律に入れるということは、本制度の仕組みから見まして問題もあると思うわけでございますし、まあ私は、畜産局長がお答えをしたようなそうした段階で、大体間接的にその他の食肉等につきましては価格は維持されるものと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  74. 神沢浄

    神沢浄君 まあこの問題については、いずれまた後から他の委員の皆さん方もお触れになるでしょうから、私は、以上の程度にとどめておきますが、ことに、いまの大臣の積極的な考え方をもって臨むという、こういう点について、ひとつ信頼、かつ期待をしておくわけでございます。  続いてこの価格の決定と、その算定の方式についてお尋ねをいたしたいと思うのです。どうもよくわからない点がありまして、まずひとつ、この法案で定めようとしておる、その方式についての説明をお願いいたしたいと思います。
  75. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 法律上は、豚肉の場合と同じ規定が適用されるわけでございますので、生産条件、需給事情、その他経済事情を考慮して、再生産確保を旨として定めるということになるわけでございますが、私どもも現在、その算定方式につきまして、学識経験者の方の御意見も個別に伺いながら研究を進めておるわけでございます。もちろんこの問題は、畜産振興審議会の食肉部会で御論議いただく場合、一番議論のあるところだと思いますので、その場での御意見は十分お聞かせいただいて、最終的に決めていっていいのではないかというふうに考えておりますが、私どもが、どのような算定方式をつくります場合にも考えなければいけない事項として、いま念頭に置いておりますことを若干申し上げてみますと、どのような方式をとりましても、生産費というものが一つのファクターになるということは当然だと思いますので、生産費の調査が十分にデータとして耐え得るものが出そろうことがまず必要なわけでございますが、現段階では、残念ながら肥育牛につきましては、和牛については、まだ比較的生産費も、サンプル等も多くとっておりますけれども、それでもなお階層別、地域別に見ますと非常に不備がございます。  それから、御承知のように、肥育といいますのは、いろいろな肥育形態がございます。肥育期間、種類それから肥育の技術といろいろ千差万別でございますので、サンプル数をたくさん取りませんと、全体の代表性がなかなか得られないわけでございますが、そういう意味では、価格を算定する場合の生産費調査といたしましては、和牛についてもなお非常に不備が目立つわけでございます。いわんや、最近出てまいりました乳雄の、肥育牛の肥育生産費調査につきましては、まだ正式的なものは一回も出されたことがないわけでございますので、テスト段階から近く第一回のやつが出るという程度でございますので、そういうデータ面の制約がございますので、データの整備を五十年度から統計情報部でかなり拡充をしてやっていただくことにしておりますので、それらがだんだん整備されること、それからまた、データ見ます場合、何と申しても連続性を持って見なければいけませんので、一カ年だけのデータだけでも判断しかねる面も出てくると思いますので、若干そういうのが毎年続きましてデータが累積するということになりませんと、なかなか適確な活用ができないという面がございます。したがいまして、今年度価格の算定方式を決めます場合も、これで行くんだということを固定的に、今後将来ともこれで行くんだということを決めるというのはなかなかむずかしいんじゃないか、率直に申し上げまして。したがいまして、データが整備されるのを見ながら、初めてのことでございますので順次いい算定方式を固めていくというような考えで臨んではいかがかということを考えておるわけです。  ただ、その場合もこの制度——と言いますのは、畜産振興事業団が買い入れ、売り渡しの需給操作によって価格安定をはかる、別の言葉で申し上げますと、自由な流通と申しますか、自由な価格形成、自由な市場機構というものを前提にいたしまして、特別に下がったときに買い入れをし、それによってそれ以上下がらないようにする。それから価格が回復して極端に上がる場合には、それを放出することによって価格がそれ以上がらないようにするというような仕組みをとっております。これは他の農産物の場合とすべて同じであるわけではございませんので、食管の場合のように、全量、国が買って二重価格制度をやるというのと大分仕組みが違うわけでございます。豚と同じであるわけでございますが、そういう仕組みを前提といたしますと、やはり市場の実勢から余り極端に乖離した水準を決めるということは、この制度が成り立たなくなるおそれがあるというような、制度の限界というものもひとつ考えて算定しなければいけないだろうということと、それからもう一つは、やはりこの制度が再生産の確保という生産者のための制度という点が強いわけでございますが、反面、消費の安定ということも車の両輪として考えなければいけないわけでございますので、そういう点からいたしますと、消費者価格の安定という点も価格を算定する場合に、当然念頭に置いて考えていかなければならないということも、これまた当然でございます。  また、肉用牛経営は、午前にもお答えいたしましたように、わが国の場合、和牛につきましても、いわんや乳雄につきましては、ごく最近長いもので十数年来本格的に肥育経営というのは行われて、その前は役肉兼用であったというようなことでございますので、規模におきましても、技術につきましても、経営のやり方につきましても、いろいろ改善すべき点が多々あると思います。これは他の畜産、豚肉だとかあるいは鶏肉だとか鶏卵等と比べましてもそういう余地が非常に大きいと思いますので、何といいますか、改善の余地を目をつぶるといいますか、表現はいかがかと思いますけれども、そういうような将来の改良の余地を展望しながら価格を決めていくということになりますと、その辺も一つの算定方式を考えます場合のファクターとして念頭に置かなければいけないというような、原則的な抽象的なことを申し上げて恐縮ですが、そんなことも考えながら、データの整備を待ちながら順次長期の方式を固めていくというようなことが現実的なやり方ではないかというふうに考えておるわけであります。
  76. 神沢浄

    神沢浄君 いま豚については、何か関係のものを読んでみますと、需給実勢方式、どこで名をつけたのか知りませんけれども、こういう言い方をされておるわけですね。需給実勢方式というのは、まさにその文字の意味が示すようにいわば市場価格の安定ということであって、したがって、私は、豚の場合の算定方式を見てみましたけれども、頭の悪さもあり不勉強もあったり、うまくわからないですね。次のワンだかゼロだか何か、いろんなものがちょうど化学方程式みたように並べてあるけれども、頭が痛くなるだけのことでもって、あれ読んでもうまくわからぬ。ただ、何か総括的に判断できることは、要するに、生産費を基礎にしての補償の算定にはなっていない。いわば過去何カ年かの、四年ですか、五年ですか、市場における平均の市場価格というようなものが、その算定の中でもって大きな比重を占めておるというような感じがしてならないですけれども、そうなりますと、なるほど市場価格の安定ということについては、この制度も一定の効果というものを持つかもしれないが、それが果たして、政府がうたっておるように、再生産の確保を旨とし、ということにつながるのかどうなのかという点が実際のこと言ってわからないですよ。  たとえば、この改正案が通って、一応運用が始まったといたしますね。またいずれかの、それはあるいは国際的な飼料価格の変動などというようなものが起こらぬとも限らないのであって、そのことが、わが国畜産に大影響を及ぼして、現状においても、やっぱり何と言ったって、これは飼料高の問題が、今日の畜産を追い込めているんでしょうけれども、今後も、やはり異常な飼料の値上がりというような事態が起こってきた場面においては、この制度でもって果たして本当に再生産の確保を旨としてできるかどうかというんですね。そういうときには、どう対応するのかというような、こういうふうな点が本当のこと言って、素人だからかどうかは知りませんけれども、ちょっとわかりかねるんです。その辺はどのように考えておるんでしょうか。
  77. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 豚肉の場合は、御指摘ございましたような需給実勢方式と俗に言っておりますけれども、過去五カ年間を基準年次としてとりまして、五カ年間に実現しました平均価格というものを基礎にとりまして、それからその五カ年間の生産費の平均、それと、ごく最近の諸物価が、生産費の項目がそれぞれえさ代であれ、あるいは素畜代であれ、いろいろ値上がりしておりますので、そういう新しい農村物価、賃金調査によりまして物価修正をしまして——端的に申し上げれば、五カ年間の基準年次の生産費とごく最近の想定される生産費との値上がり分を五カ年間の平均価格に掛けるというようなことによりまして、生産費の高騰というものを価格の上で反映させるというやり方をいたしておるわけでございます。その他、需給の見通しによりまして、生産が非常に過剰なとき、あるいは逆に不足のときという場合には、需給調整係数というものを使いまして若干加工いたしますけれども、そんなようなことを基礎にいたしまして、それを枝肉の価格に直して中心価格というものを求めまして、それをさらに上下に一定の幅に開く。上下一〇%ずつ現在やっておるわけでございます。その幅の中におさまるようにということで、下の基準価格と上の上位価格を決めるというやり方をしているわけでございますが、牛肉の場合も、それも一つの参考になろうかと思いますが、豚肉の場合におきましても、いま言いましたような生産費の値上がりというものは生産指数という形で見ておりますので、えさの価格が非常に上がります場合には、その生産指数、もとの平均価格に掛ける指数がふえるわけでございます、えさだけで言いますれば。ほかのものが下がれば相殺される場合もありますけれども、そういうようなことによりまして生産費というものを、生産費方式ではございませんけれども、算定の一つの要素として使っておるわけでございます。  もちろん、この牛肉価格安定制度は、この安定制度のみで再生産を確保するということを考えておるわけではございませんので、他の生産対策あるいは飼料対策というものとあわせてこの価格安定制度を含めて再生産を確保し、むしろ拡大再生産を確保していくということが必要になろうかと思います。その意味におきましては飼料の昨今におけるような高騰に際しましては、先般発足いたしました配合飼料価格の親基金制度、特別基金制度というようなものによりまして、異常高の場合には一部補てん財源に対して国が援助するというような仕組みもつくっておるところでございます。  また牛肉の場合につきましては、肉牛経営の場合におきましては、そういう濃厚飼料だけではなしに、粗飼料の増産ということによりますコストダウンということも必要でございますので、草地の開発とか山林の利用だとか、下草の利用とか、それらを含めまして生産対策、技術対策もあると思いますが、それらを総合して再生産を確保するということになるわけでございますが、この価格安定制度も有力なその一つの手段にはなりますけれども、すべてではないというようなことに考えていいのではないかというふうに思っております。
  78. 神沢浄

    神沢浄君 こちらに知識がないから、だめということなんでしょうけれども、大変懇切に御説明をいただいていても、なおまだわからない。結局、豚の方式でもない。それじゃどうかという点がちっともわからないわけです。それで、もっと簡単に言えば、今度の牛肉の場合に用いる算式は、これは審議会等のまだ議を経なきゃならぬというようなことでしょうけれども、いわゆる生産費というものが明らかに反映するような方法がとられなければ「再生産の確保を旨とし」ということにならないわけなんですが、たとえば指定乳製品なんかの場合には、これは不足払いでもって、あれも決して完全のものとは思えませんけれども、しかし頭の悪い者でもわかるような仕組みには一応できておりますね。たとえば十分じゃないが、五人限界ぐらいの他の産業の賃金に匹敵するようなものは算入される。そのくらいの労賃収入は得られるんだというふうに、ぼくらが見てもわかるんですけれども、これは、牛の場合もやっぱりそんなように、かなりわかりやすいものになりますかね。またあのPやQやというやつでもって、何か化学方程式みたいなものでもって結局わからずじまいみたいなことになるんでしょうか、どうなんでしょうね。
  79. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 牛乳の場合には、加工原料乳の場合には、生産費方式を基礎にしておるわけでございまして、一部飼育管理労働の労賃につきましては、都市労賃に評価がえをするというやり方をしております。飼料作物労働につきましては、都市労賃と農業労賃の平均をとるというのを昨年はやったわけでございます。その意味では、いわゆる生産費所得補償方式に一歩豚肉の場合よりは近づいておるということは言えるわけでございまして、その意味では、わかりやすいという点は、私もそのように思うわけでございます。米の場合が、御承知のような生産費所得補償方式そのものをとっております。それにやや近い形でございます。ただ、不足払いの場合には、これは市場価格の自由流通ということを前提にしておりますけれども、メーカーが買います原料乳の価格では、生産がコストをカバーし、生産の維持ができないというギャップが出ますために、その部分を国の財政で補てんをするというような仕組みになっておるわけでございますけれども、畜産振興事業団の買い入れ、売り渡しによります需給操作によって価格の極端な変動を防止をするという畜安法によります価格安定制度は、その仕組みとはやり方が違うわけでございまして、先ほど来申し上げたことの繰り返しになって恐縮ですけれども、自由に取引が行われ、自由に価格が形成されるというものを原則といたしまして、ただ極端に価格が低落する場合には、事業団が買い入れることによりまして、市場から隔離してしまうということによって供給量を減らして価格をそれ以上下がらないようにするというようなやり方をしておるわけでございますが、豚肉の場合は、実は生産費方式でやりましたよりは、いまの需給実勢方式の方が、価格水準は高くなるような関係になっております。もちろん生産費所得補償方式ということになりますと、これはいまの価格水準よりは高くなると思いますけれども、単純な生産費方式だけで見ますと、これは過去の試算によりますと、需給実勢方式の方がむしろ高くなるというようなことでございますが、だからと言って需給実勢方式等をとっているということじゃございません。いま言いましたような事業団による買い入れ、売り渡しという価格安定の仕組みからそのようなのが一番いいだろうということでやっておるわけでございます。需給実勢方式といいますのは、過去において実現した価格生産費の値上がり分を若干修正をするというところが平均的に実現すれば再生産が維持できるだろう、ただし極端に下がったり、平均的な価格より下がったり、上がったりする変動だけを縮めるということによって経営も安定して再生産が維持できるだろうということで、それで、これまで豚肉の場合におきましては、生産が順調に、まあ波はございますけれども、ある程度順調に伸びてきたという実績もございますので、そのような仕組みをとっておるわけでございます。
  80. 神沢浄

    神沢浄君 時間がどんどんたってしまうもので、どうもわからぬじまいの点を残して進行しなければならぬようで大変残念ですが、これはひとつあとの委員の皆さんの御質問にゆだねることにいたしたいと思いますが、ちょっと角度を変えた聞き方をいたしますと、この場合ですね、「再生産の確保を旨とし」ということをうたう以上は、生産費とその所得方式といい、ますかね、その方法が何でとれないのか、今後とるつもりはないのかということにしぼってひとつお答えをいただきたいと思うのですが。
  81. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 生産費所得補償方式をとるべきだという御議論があることは十分承知しておるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、この事業団による買い入れ、売り渡しによる需給操作によって価格の極端な変動を防止するというこの価格安定の仕組みにおきましては、自由な市場取引を前提としておりますので、需給の実勢を反映した需給均衡価格といいますか、そういうものから著しく遊離するというのは非常にこの制度を円滑に運営する場合に問題があるというように考えますので、その意味からいたしますと、市場価格とは直接関係のない生産費所得、補償方式という算定によって、安定価格をはじき出すということはこの制度になじみにくい点があるのではないかというように考えておりますが、しかし、いずれかにいたしましても、牛肉生産を今後拡大する必要もございますし、牛肉というのは豚肉以上に一たん減りましたならばもとへ返すのに時間がかかります。そういう点から考えますと、やはり再生産を確保するということは——算定方式の技術的なやり方はいろいろありましょうけれども、再生産を確保するということはこれは実績として出るわけでございますので、それが確保できる価格水準を決めていくということは、われわれといたしましては、一番大事なことではないかというふうに考えております。
  82. 神沢浄

    神沢浄君 そこで、もう一点だけ気にかかるものですから、これをお聞きしておきたいと思うのですが、先ほどの御答弁の中でもって、まだ生産費のデータが整っていない。こういうことでしたが、まことにこれはあやふやな話であって、それじゃ生産費を、どういう方式をとってこの価格を決定するのかは、後の問題にしましても、データも揃っていないなんということじゃ、その生産費を反映させよう方法は、これはなくなってしまうことにもなりかねない。これは急いでもらわなきゃ困ると思うんですがね。何か早く審議をして早く通せなんというようなことだけは盛んに言われるけれども、大体そういう準備の方がまだ不完全のままでいっておるような状態だとこれは大変遺憾でございます。そこで、とは言っても、まだいま整備されていないということについては、やむを得ないわけですから、どのくらいの間にその整備が行われるのか、半年くらいの間にはでき上がるのか、三月ぐらいの間にはでき上がるのか、こういう点だけはちょっとはっきり聞いておきたいと思うんですよ。
  83. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 肉牛につきましての生産費調査は三十四年度から行われておるわけでございます。統計情報部の方でやっているわけでございますが、最初は百五十戸ぐらいからスタートしたわけでございますが、先ほど申し上げましたように和牛の場合、いろいろ肥育の形態が違いますので、肥育期間ももちろん違います。御承知のように理想肥育とか若類肥育とか、壮類肥育とかいろんな肥育の仕方があるわけでございます。それが全部で百五十戸ということで、途中から三百戸になり、現在は四十九年度は六百八十五戸というのが調査の対象になっております。これを五十年度から千百五十戸にふやすということにして予算も現在お願いをしておるところでございます。乳用の雄肥育牛につきましては、これは四十八年から初めてやっているわけでございまして、これが百戸、四十九年も百戸、五十年度からこれを七百戸にふやすということでございます。四十八年の百戸の結果もまだ発表されておりません。したがいまして、発表したものとしてはまだ全然ないということでございまして、この点和牛につきましても、これまではサンプル数が少ないために、はなはだ不備であるということを申し上げましたが、それ以上に乳雄の場合は全くないということになるわけでございます。その意味では、統計情報部の方で、ことしから価格安定制度の対象に加えるということを予定せずしてやっておりますので、こういうような事情になっておるわけでございますが、われわれといたしましては、生産費の生産費調査は不備でございますけれども、少しでもそれは要素としては使いたいと思っております。そうしますと、肉牛の場合には、不備ながらある程度使えるということになりますが、乳雄の場合には、使えないということになります。その場合に、どうやって価格を算定するのかということになるわけでございますが、現在のところ、われわれ考えておりますのは、まず和牛の「中」の価格というものを、和牛の去勢の「中」の価格というものを生産費調査の一つの要素に織り込みながら算定をいたしまして、これまでの過去の市場におきます和牛の去勢の「中」の価格と、乳牛の雄の「中」の価格との価格差というものを見まして、まず和牛の去勢の「中」を決めてその一定の価格差で乳牛の雄の「中」を決めていくというようなやり方をせざるを得ない。はなはだ不本意でございますけれども、資料上の制約がございまして、そのようなやり方も考えざるを得ないのではないかというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、五十年度からはかなり拡充されますので、順次りっぱな資料が使えるようになるというふうに考えております。
  84. 神沢浄

    神沢浄君 率直に言って、大変頼りない話で困るんですけれども、そこで、余り丁寧にお答えをいただかぬでもいいですが、大体、データの整とんできるというものは、これはひとつ鋭意——よく政府が好んで使う鋭意努力していただいて、そしてどのくらいで整備がつきますか、ことしくらいの間ぐらいには仕上がりますか。これはしかし急いでいただかぬと、この制度が生きぬじゃないですか。
  85. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 生産費調査は五十年からかなり拡充をいたしますが、五十年からといいますのは、五十年のたしか七月から五十一年の六月まで一年間の調査をするわけでございますので、それを利用するといたしましても、五十二年度の価格算定の際に使えるということになります。もちろん一回だけのデータでは十分ではないということもございますけれども、まあしかし、あればそれは極力使うということでやりたいと思っております。
  86. 神沢浄

    神沢浄君 この点も後の委員の皆さん方にひとつもう少し詰めていただきたいと思います。私は、時間がないのでやむを得ませんから進行をするんですけれども。もう一点何としても私わかりかねる点は、売り渡しのところですよね、簡単に考えれば要するに、上限価格があって、下限の価格があって、上限より上がるようなときには、放出をする。下限より下がるようなときには、買い入れる。それでもって、いわゆるその操作でもって、安定帯を維持していくというこれがこの制度の大体眼目ですね。ところが、ここにもう一つ、「農林大臣が指示する方針に従って」売り渡す。ところが、上限価格と「農林大臣が指示する方針針」とはどういう関連になるんですか。
  87. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 豚肉の場合と違いまして、売り渡しのやり方について、牛肉の場合は特別な規定を設けております。まず、豚と同じようなやり方といたしましては、上限価格を超えるような場合には、義務売り渡しといいますか、事業団は売り渡さなければならぬというような規定が、四十一条の一項で規定をすることにいたしております。二項が豚にはない規定でございまして、これは、上限価格を突破するところまでいかなくても、生産条件なり需給事情その他経済事情を考慮し、家畜の生産それから牛肉消費の安定を図ることを旨として、農林大臣が指示する方針に従って売り渡すことができるという、そういう規定を設けておるわけでございます。これは価格安定帯というのを決めますと、理想といたしましては中心価格といいますか、真ん中の価格に収斂するというのが一番望ましい理想の姿だと思いますが、それはなかなかむずかしくて実際には変動いたしますが、まあ一年間平均をいたしまして大体中心価格前後に落ちつく、平均いたしますと。というような需給操作といいますか、輸入を含めまして、輸入量が相当なシェアを占めますので、輸入の調節によって国内価格がかなり調整できるという面があるわけでざごいますから、輸入のやり方をきめ細かくやりまして、年間を通じては少なくとも平均価格が実現できるようなところに価格が動くというような買い入れ、売り渡し、輸入、放出というようなことをやるべきだというふうに考えておるわけでございます。が、豚肉の場合と違いまして、牛肉で、この第二項を設けておりますのは、上位価格を超えなければ売っちゃいけないということになりますと、牛肉の場合は、国内供給量のうちで多いときでは四割、少ないときで最近では二割五分から三割というように、かなり輸入肉のシェアが大きいわけでございます。したがって、それを上の価格までいかなければ売れないということになりますと、国内価格というのはもう上位価格にへばりついてしまうということになりますと、先ほど言いましたように、年間平均してなるべく中心価格に収斂をするというような観点からいたしますと、非常に高いところへいってしまう。したがって、中心価格に収斂をするようなことを目指して売り渡しをすることができるようにするためには、上位価格までいかなくても売れる、この点は豚肉の場合と違いまして、牛肉の場合は、かなり輸入肉のシェアが通常の場合大きいということを前提といたしますと、そのような売り渡しの道も開く必要があるということで、こういう規定を設けておるわけでございます。  もうちょっと具体点に申し上げますと、市場の価格が上位価格に非常に近いところまでいったときにはよけい売り渡す。それから中心価格よりも下の方へ下がってきて基準価格に近づくようなときには、売りどめをするとか、あるいは売る量をぐっと減らすということによって価格が中心価格になるべく近づくように、上へいき過ぎたときはなるべく中心価格に近づくようにというような売り方をしたい。そういうことのためには、上の価格を突破しなければ売っちゃいけないということだと、それができなくなるということでこのような規定を設けているわけであります。
  88. 神沢浄

    神沢浄君 まあ、わかったようなわからぬような御説明ですけれども、ぼくらが単純に考えると、輸入肉であろうと、国産肉であろうと、肉に変わりはないわけで、したがって、この制度のねらいとするものは、上限価格を超えて騰貴するようなときには、これは放出をする、下限を超えて低落してしまうようなときには、これはもう当然買い上げてそして安定をしていこうと、こういうところにあるわけですからね、まあ豚肉などの場合はそうでしょう。だから、輸入肉であろうと国産肉であろうと事業団が持っておるものについては、豚の場合と同じような操作をしてそれで済むんじゃないですかね。輸入だから売らにゃならぬということもちょっとおかしな話で、やっぱり、あれですか、事業団も、輸入業者的な立場というものを少し残しておかなければ困るというようなことがこの理由なんですかね。ぼくは、この法案を見て、もっともぼくだけじゃなかろうと思いますね。制度というのは、そのための上限と下限というものを決めて、これはここまではいいというわけですね。ところが、そのほかに、農林大臣の指示する方針に従って売り渡すことができる、というのは、考えようによっては、何かそこでもってしり抜けになっちゃっているような感じで、これはいま御説明のように、中心価格を基準に置いて、そして操作をされていくというんですから、実際問題としては、別にしり抜けにもしないでしょうけれども、しかし、なぜこんな手の込んだような、わからないような決め方をしなきゃならないかということろがわからないわけですわ。これは上限、下限とこう簡単に決めておいていいじゃないですかね、それで。これはできないんですか。
  89. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 上限と下限の間に価格がおさまるようにという点につきましては、豚肉の場合も、牛肉の場合も同じでございますけれども、豚肉の場合は、自由化はしておりますものの、これは輸入がほんのわずかでございまして、国産で大体自給ができるというような需給関係になっておるわけでございます。ところが、牛肉の場合は、先ほど言いましたように、少ないときで二割何がし、多いときには四割近いものが、輸入肉が入ってこないと、価格が非常に上がると。しかも、事業団はその大半を輸入肉を取り扱うということになりますと、事業団が通常の場合は四割のうちの九割としますと、四、九——三十六、三六%はあれですから、国内の全体の輸入肉を含めての供給量のうち三十数パーセントは事業団が操作するわけでございますから、それを上の価格までいかなければ売れないということになりますと、国内価格は全部上にへばりついてしまうと。それから売るといってもちょっぴりしか売れないということになりますと、この安定制度のねらいからしますと、先ほど言いましたように、中心価格に収斂するのがやっぱり理想だということだと思いますので一そうしますと、上までいかなければ売れないということになりますと、いつも上の上位価格にへばりついてしまうと。そこは、豚肉の場合は、大部分が国内自給でございますから、そういうことはないわけですが、牛肉の場合は、輸入の割合が非常に大きいということでございますので、しかも、それが事業団が扱う部面がまた圧倒的に大きいということでございますので、事業団が上までいかなければ売れないということになりますと、上の価格にへばりついてしまうということで、この制度運用の趣旨からして、価格が高過ぎて消費者価格の安定という面からいたしましても問題があるということで、途中でも売れるという道を開いておるわけであります。
  90. 神沢浄

    神沢浄君 これでやめますが、農林大臣が指示するわけですから、大臣の責任はこれは大変重大だと思います。いずれにしても、この制度を生かしてこそ、これは、畜産の安定というものは期せられるわけですから、その目的に立って、このような規定であろうとも、運用についてはやはり上位価格を超えた場合でなければ放出をしないというようなことを、ひとつ運用上の一個の内基準として、規定は規定であっても、私は、やっぱりやっていかなければ、何か輸入肉だからということでもって、中心価格をちょっと上ずれしてきたら、すぐ出してしまうというようなことになると、これは運用上、制度が実際生きるかどうかわからぬような感じも持ちます。その辺は大臣が決める方針だから、これは大臣に信頼をするよりほかにはやむを得ないわけでありまして、ひとつ、運用に当たっては、本当に慎重を期するという、こういう態度、姿勢というものがどうしてもこの制度を生かす上には私は必要だと思います。大臣の御見解を聞いて、時間がもう来ちゃったようですから終わりたいと思います。
  91. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この制度は全く新しく発足するわけでございますし、この発足に当たりまして私も非常に慎重に考えておるわけであります。せっかく制度ができたけれども、これが役に立たなかったということでは意味がないわけでございまして、この制度の発足によりまして、われわれとしては、牛肉の再生産が確保される、畜産経営の安定に資していく、同時にまた、消費者価格も安定をするというふいなこの制度の趣旨が貫かれていくことが一番緊要なことであろうと思います。そういう面で、先ほどからいういろと御指摘がありました、たとえば、指定食肉の規格の問題等につきましても、私は、乳廃牛等につきましても前向きに考えたい。というのは、せっかく始める初めての制度でございますから、これでやりしくじらぬように、後でそれをどんどん、どんどん変えていくということじゃなく、初めての制度なら、やはり初めからしっかりした形のもとに出発さしたいと思いますから、そうした指定食肉内容についても十分検討を加えていきたいと思いますし、また、価格の決定に当たりましても、生産費等の調査は十分でない面もあるわけですが、しかし、この法案を通していただければ、四月の初めごろには決定をしなきゃならぬわけで、生産調整も不十分なままで発足をし、価格の決定もしていかなきゃならぬわけですが、その際にも、やっぱり、この牛肉というものは、一度生産が縮小したらなかなかもとに返らぬという点も十分配慮して、そして価格の決定についても再生産を確保する。もちろん、その生産対策とかその他のいろいろのものを強化することは当然でございますが、価格制度というのはやっぱり大きな再生産確保の眼目になるわけですから、この価格決定に当たりましても、後でいろいろと問題が起こってこないように、牛肉生産というものの特性というものを十分考えて、資料は不十分でもひとつ決めていきたいというふうに考えておるわけでございます。  また、いまの農林大臣の指示する方針という点についてのいろいろの御質問があったわけですが、これらの問題についてもその運用には十分留意をいたしまして、そして、中心価格を下回るというふうな状況にいかないように、運営上の配慮は十分加えていきたいと、そのための、いろいろの省令その他の運用規定等は十分整備しておきたいと、こういうように考えておるわけであります。
  92. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、大臣にまずお尋ねをしたいわけなんですが、どうも、大臣の所信表明につきまして私お伺いをする機会を失しまして、この間、神沢さんが少し質問されたときのに関連いたしましてもうちょっと伺いたいと思います。  それは、日本農業は衰退の一途をたどっている、これはもう間違いないと思うんですよ。衰退の一途をたどっている。そのことは、端的に言いまして、自給率がべらぼうに下がると。三十五年で総合自給率で九〇%あったものが四十七年に七三になり、四十八年に七一になる。来年はもっと下がると思うんです。六〇%もいいところじゃないでしょうか。総合自給率というのは科学でありますから。前は、外国からの農産物は大変安かったですから、ですから、そう強く出なかったですけれども、昨年、一昨年あたりから価格は上がっておりますから、したがって、来年になりますと、この七一%というやつは六〇%もいいところに落ちるんだろうというふうに思うんですけれども。さらに最も重要な穀類の自給率になりますというと、御存じのように、八五、六%あったものが、四十七年で四三%、そして四十八年度で四一%——これは大豆を入れてないわけです。大豆を入れますと三五、六%になるんでしょうけれども、そういうふうに自給率が急速に低下してきたということは、これはやはり日本農業が衰退の一途をたどっているということを示していると思っております。  さらにもう一つ農林省の予算が——この間も伺ったんですけれども、低下してきている。で、大臣は、これから安定成長に行くんだし、それから食糧も不足だという、こういう二つの条件を踏まえた場合に、攻めの農政になるんだという話で、私それにこだわっておるわけなんですけれども、しかし高度経済成長が終わったといわれますのは四十七年であります。三木さんか総理になられてから高度経済成長を否定されたものですから、そのとき終わったような感じがありますけれども、実際は四十七年に高度経済成長終わっている。さらに食糧が不足だというふうに、世界的に言われるようになりますのも四十七年であります。そのときに農林省は、四十七年の十月に長期見通しを一生懸命になって検討したわけですね。で、試案として四十七年の十月出ております。ところが、そういう時期になって、四十七年から農林省の予算ががたがた減ってくる。これはどうも攻めの農政どころじゃなくて、だんだん減ってきているんじゃないかという点を私は強く指摘したいわけなんですよ。いままでは、農林省の予算が国の予算全体に占めている割合というのは一一・四%から五%ということだったんですけれども、高度経済成長が終わった四十七年はがたりと減っている。さらにまた続いて、ことしは一〇・二%という減り方なんですよ。さらに国の予算全体の伸び率と農林省の予算の伸び率はいまや大変な拡大しちゃって、五・五%という拡大なんです。ですから私は、農業が衰退の一途をたどっていると。そして三木総理は、慣例、惰性にとらわれない農政をと、農林大臣は攻めの農政へと、こうおっしゃる中で、こういう時代になったということは、私は、依然として国際分業論に、農政は振り回されておる、依然として。また農政当局自身も、農林省自身もまだ四十七年以来迷いに迷っているという状態じゃないのか。こういうふうに思っておるんですけれどもね。だから、こんなことになるんじゃないだろうか。迷いに迷っていると、私に言わせますれば。そこでこういうことになったんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣はどういうふうにお考えになっているのか、こんな時代になったことをどうお考えになっていらっしゃるのか、それをまずお尋ねします。
  93. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあ私は、基本的に今日の農政の問題といいますか、食糧問題が中心でございますが、食糧問題に対するやっぱり認識というものをことにはっきり打ち立てて、その上に立ったやはり基本的な政策、さらに具体的な施策というものを裏づけしていかなければならない段階に今日は来ておると思うわけでございまして、これはやはり二、三年前までの世界で食糧が豊富であって低廉であったという時代から、食糧、農作物というものが不足という基調になっていくし、また高位不安定という時代になっていくということを背景にしても、これはもう基本的にその認識というものを新たにしていかなきゃならぬと思います。その認識が、いまの国際情勢、さらにまた国内におけるいままでの高度成長経済というものの中にあって、まあ非常に生活水準もその間に高まったわけでありますし、それとともに農業生産も拡大し、あるいはまた生活水準農家の所得等も向上したことは私は事実だろうと思いますし、さらに、この生産等の増強等も行なわれたわけでございますが、しかし、高度成長の中にあって兼業化が進んでいく、あるいはまた過疎もある、あるいはさらに労働力が弱体化していくというふうな事態等が、次々と起こったことも現実の問題でございますから、そうしたやはり高度成長の反省の土に立った、農政については反省の上に立ったやはりこれからの低成長に臨む農政というものを確立していかなきゃならぬ。一つの、そういう意味では、国際的に見ても国内的に見ても、わが国農政というのは転換期に来ているということははっきり言えると私は思うわけでございます。私は、そういうふうな認識のもとに、今回の五十年度予算の編成にも取り組んだわけでございますが、まあことしの予算につきましては、御指摘のありましたように、必ずしも十分のものでなかったことはこれはもう事実でございまして、やはり五十年度は依然としてまあ総需要抑制という基調の中で組まれたわけでありますし、特に福祉あるいは教育というところに非常に重点が注がれたという面もあるわけでありますが、そうした大きな枠組みの中にあって、まあ私自身としては、全力を尽くしてそうした農政に対する認識のもとに編成をしたわけでありまして、そういう中では、公共事業等につきましても、他の公共事業、まあ下水、住宅というのは別でございますが、他の道路だとか、港湾という公共事業と比較すれば、わずか三・四%であるとはいえ伸びたということも、まあ努力した一つの結果が出てきておるとも考えるわけでありますし、その他の非公共関係の一般事業につきましては、二四%伸びを示しておりまして、その中にあって、大体私たちが求めておりました新しい政策の芽をここに打ち出すことができた。たとえばこの食糧増産対策費であるとか、あるいは粗飼料の増産の緊急対策費であるとか、そういうふうなものを予算としては大規模なものではなかったわけですが、芽だけは出すことができたと私は思っておるわけでございますが、しかしもちろんこれで新しい転換に対応した農政を行っていくということには不十分でございます。  そこで、いま農政審議会に諮問をいたしております六十年度を目標とした長期的なひとつ農政の基本的な方向を打ち出していこうということで諮問をいたしまして、この答申を四月の初めごろには受けることになっておりますので、この答申を受けた段階におきまして、農林省としても全力をひとつ挙げてこの答申を尊重しながら、これからの長期的な見通しの上に立った総合的な食糧政策というものを打ち出していきたい。これはただ単に農作物ということだけじゃなくて、漁業の面も含めた、まあ漁業も大変な厳しい事態になっております。そういう面で漁業というものも含めた総合的な食糧政策を打ち出して、そしてこれは政府部内における一つ同意を得るとともに、国民的な一つの御協力を得て、この長期的な視点に立った政策を今後はひとつ着実に実行をしていって、そして自給力を高めていくということに対してひとつ全力を注いでいきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。いろいろと御批判はあると思うわけでございますし、また今日までの農政のあり方等につきましても、私自身もやはり率直に反省するところは反省して、その上に立ってやらなきゃならないというふうな気持ちも、実は率直に言いますれば持っているわけでございます。新しいひとつ決意でもってやりたいと、こういうことでございますので、新しい総合政策を打ち出す段階におきまして、さらにまたひとつ御批判等も賜りたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  94. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、やはり先ほど申しましたように四十七年に、はっきり高度経済成長というのが行き詰まって立ち往生してしまった、そして、世界的に食糧の問題が大きく浮かび上がってくるという段階に、すでにやはり農林省としては考えなきゃならなかっただろうと思うんです。そこで鋭意四十七年の十月に、ああいう十年後の長期目標の試案もつくって、一応発表もされたもんだと思うんです。ですが、その後三年の間、何か農政がもたもたして、進むべき道というのがはっきりしなかったという点が、一番やっぱり今度の予算の場合に大きな障害になっておるんじゃないかと。高度経済成長の中で一番下敷きになったのは、これは社会保障もそうですし、教育関係の予算もそうですし、それから生活環境の問題もそうですが、やはり農業と漁業ですよ。ですから、農業と漁業についてもっと考えるべきだったと思うんですけれども、遺憾ながらそこに至らなかった。それはいま申し上げましたように、農政についてはっきりとした考え方を持っていないという点にあるんじゃないかと思うんです。で、よく言われますように、農林省農政というのは、踊り場農政だと。まあ自給率で言えば、やや中段のところから八段ぐらいにあったところから、だんだん、だんだんおりてきて、四階のところまでおりたと。その踊り場にあって、下がるのか、上がるのか、うろちょろしているというのが、いまの農政の実情じゃないかと私は思っていますですね。ですから、俗称踊り場農政と。上がるのか、下がるのかわからない、言うならばうろちょろしている状態でないかと、そう思っているんですけれどもね。その問題については、畜産の問題についてのところで、さらに具体的に論議をしてまいりたいと思います。いま大臣がおっしゃるように、いま農政審議会にかかっている長期目標、長期見通し、あるいは食糧問題の食糧政策の展望というやつですね、その自給率が、あの四十七年の十月に出したときには、自給率は七三%か七五%と、こう見ておったのですね。ところが、今度は七五%にするというのかな——七五ですな。ですから、七七ぐらいのことを考えておったのが、それよりも低いものをやっちゃったんですね。こういうところにも、どうも理解がつかないところがあるんです。  さて、それはちょっとここでおきまして、畜産振興審議会というのですか、これについて伺いたいんです。  畜産振興会審議会というのは、まあ、ぼくらの間では、これは酪農振興審議会だというふうに考えているんですけれども、畜産局も酪農局だとぼくらは考えているんです。肉牛については全然手おくれです、これ。さっき局長も言ったですよ。肉の値段をきめなければならぬときに、統計の資料がないのですよ。いまあります資料は、あれは資料とは言えないですよ。あれは、全国事例調査ですよ、われわれの常識で言いますと。事例調査。統計の数字じゃないですよ。ましてや、乳雄の資料なんというのは、ありゃしないのですから、四十九年に始まったわけですから。これなんか百戸ぐらいです。こんなようなものはまるで課がやってる事例調査ですよ、そのことはまあ一例ですけれども。肉牛に対する政策がどんなにおくれているかということですよ。むちゃくちゃにおくれている、体をなしていない。まあ統計というのが行政の基礎ですよ。  まあ、横道にそれましても何ですから、そこで酪農振興審議会、つまり畜産振興審議会について伺いたいんです。これはたしか四十一年に法律改正されましたときに、前は畜産物価格審議会という形だったのですが、それが変わりまして、いまのように畜産振興審議会と、こうなっておるわけです。それで、この取り扱う内容というのは、非常に重要なんですね。米に畜産が取ってかわろうというわけですから、農業の中における地位を。まさに取ってかわりつつあるわけです。ですから、私は、この畜産振興審議会というのは、米価審議会よりもっと役割りは大きいと思ってるのです。その場合に、審議会の委員の任命ですね、これはどういう配慮を払われているのか。私は大臣に、まあ大臣、これ、おなりになったばかりですから、前の大臣が任命なさったんでしょうが、どうも私は、十年前と変わらぬような感覚で審議会の委員というのを任命しておられるのじゃないかというふうに思うわけなんですよ。ですから、大臣かなられたわけですし、これから肉牛——めちゃくちゃにおくれている肉牛の問題につきましても、これから入れて、さらに行政を一生懸命充実していこうというところなんですから、私は、この審議会について、委員の任命について根本的に考えられる必要があるというふうに思っております。ですから、どういうような考えでお考えになって配慮を払われておるのか。私は、一番不足しているのは、こういうことだと思っているのです。日本畜産の一番大きな特色と、その裏返してまた最大の欠陥というのは、畜産と農耕というのが分離して動いていったということですね。これは農民が選択したのじゃなくて、農林省がやったわけですよね。畜産というものとそれから農耕というものが分離している、並行して発展していったわけです。これはまあ世界じゅうに例がないといってもいいんじゃないでしょうか。そして、むしろ畜産の発展することによって耕種農業というのは矛盾をますます深めているわけです、相対峙しているわけですよ。地力が減退してくるという問題も、畜産だけにかぶせるわけにいかぬのですけれども、やっぱり畜産のこういう事態になったということが地力をおくらかせるという一つ原因でしょう。根なしカズラの畜産と言われるのもそこにあるんですよ。これは非常に矛盾をはらんでいますね、耕種農業とそれから畜産というものが。これからそういう耕種農業というものと畜産というものがこれは並行ではなくて、結び合って発展をさせていくという転機にきていると思うのです。そういう意味で、私は、ぜひともこの審議会の委員というものをもう少し広い視野から、農業も含めて一体になってやっていくのだという、そういう配慮を払われる必要があるというふうに思っているのですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。
  95. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに御指摘がございましたように、今後の畜産振興というのは、わが国のこれからの農政推進における重要な柱の一つであることは間違いはないと思うわけでございまして、特に、畜産と耕種というものを密接な連携を保った中に畜産振興を図っていくというのはまさにそのとおりであろうと私も思うわけでございまして、そういう意味において、畜産振興審議会の役割りといいますか、意義というものは非常に大きいわけで、これはもう米価審議会にも匹敵をする委員会でもあろうかと思うわけでございます。  この畜産振興審議会の委員の決定に当たりましては、学識経験者を中心といたしまして、これからの畜産振興をするにふさわしい委員の選定をいたしてきておるわけでありまして、私、大臣になりまして、畜産振興審議会委員の構成等も聞いておるわけでございますし、また私も審議会にも臨んだわけでございますが、私の見るところでは、現在、生産者あるいは消費者、加工・流通業者、中立というふうな大体の構成に分かれておるわけでございますが、その中にあって、たとえば生産者代表の委員が十七名、消費者代表が三人、加工・流通業者が九人、中立が十六名と、こういうふうな構成になっておるわけでございます。これは米価審議会においては生産者の代表が四名でございますし、消費者が四名、そして中立関係が十六名と、こういうふうな比率になっておるわけでございまして、そういうところから見ましても、畜産審議会としての、これからの畜産振興を図っていくというふうな大きな役割りを果たす委員会の構成としては、必ずしもいま御指摘がございますように不適格といいますか、実情に合わないとは思わないわけでございまして、こういう構成で、振興審議会の中にあって十分この審議を尽くしていただけば、正しい価格についても、あるいはまた、振興対策についても適切な私は御助言を得ることができる、こういうふうに私は判断をいたしておるわけでございます。
  96. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣のいまの答弁は、私はやっぱりまだ十年前の畜産物価格審議会のような感じが抜けていなような気がしますですね。ですから、先ほど私が申し上げましたように、耕種農業畜産が補完するものに何もなっていない。また、耕種農業畜産を補完するような、支持するような体制にもなっていない。両方が相矛盾して発展してきているわけですよね。小麦はどんどん減っていくということ、大豆がどんどん減っていくということ、大麦が日本列島からなくなってしまうというような問題、まあどれ一つをとってみても——公害の問題もそうですけれども、畜産公害の問題についても大変ですよ、これ。ですから、そういう点は結局、畜産というものが、耕種農業とは別に離れて発展していった。そのことは、今後はそれではいけないのだ、耕種農業というものと畜産農業というものと一体となって発展していくという体制をとらなければいけないと思うのです。ですから、そういう意味で、私は、もう少し広い視野でこの審議会の委員というものを考慮する必要があるんではないか。いますぐとは申し上げませんですけれども、二年の任期があるわけですしするから、そのうちにいろいろお考えいただきたいと思いますが、私は、いまこの審議会のメンバーを見ておる限りにおいては、どうも十年前の畜産物価格審議会と変わらぬと思います。もっと端的に申し上げてもいいんですよ。二年ごとのやつを全部出してもいいんですよ。ですけれどもも、そこまでは申し上げませんですけれども、これはぜひ考えていただきたい。もっと広い視野でやってもらいたい。  それから消費者の代表も入っておりますが、やはり労働団体もこれは入れるべきだと私は思います。消費者としての労働団体も入れるべきだ。米価審議会は入っています。入れるべきだと思うんです。ですから、そういう意味で、ぜひ近い将来において、この審議会のメンバーについて広い視野で配意をいただきたいということを申し上げておきます。強いて答弁はいただかなくてもいいですが、余りにもこの審議会がでかいものですから、気になってしようがないわけなんですけれどもね。だから、畜産ばっかりの親族結婚じゃ、いい子供は生まれませんですよ。いままではそれでよかったんですけれども、これからはそうはいかぬと思うんです。もう一遍、大臣、近い将来これ考えてもらいたいですね。
  97. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまの御意見は十分、心にとめておきたいと思うわけでございますが、私も審議会に列席をいたしたわけでありますけれど、農業関係の代表者等も委員として出ておられるわけでございますし、私、今回出席をいたしまして、たとえば消費者代表の方々でもいままでとは私は違ってきているんじゃないか、農業に対する認識といいますか、食糧問題も含めて相当やはり深い認識を農業振興畜産振興というものに持ってこられたというふうに、私は判断をいたしておるわけでございますけれど、委員の構成等も、現在の構成から見れば適正であろうと思いますが、御意見についてもわからないわけでもございませんし、これはひとつ今後の研究の課題ということにしておきたいと思います。
  98. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、農業の中の畜産の問題について若干お尋ねをしたいわけです。  畜産は大変に、飼養戸数——飼養農家数というものが、ばたばたに倒れていっちゃったんですね。それが一つの特徴ですわね。畜産で、肉牛でいえば二百五十万戸ぐらいあったものがいまや五十何万戸に減っちまっている。この三年の間でも半分近く減っているという非常な、言うなら倒産みたいな形ですよね。これは豚でもそうです。それから採卵用の鶏についてもそうです。乳用牛についてもそうです。酪農についてもそうですね。大変に減少しているわけですよね。激減しているわけですね。そして、そのことが規模拡大という形になってあらわれて、それで規模拡大することがいいと、その方向へ指導してこられたわけですね。その点について実はお尋ねをしたいわけなんです。  まず、豚とそれからブロイラーの問題なんですが、今日、この豚それからブロイラー、これはいまや農民の手の届かないような形の畜産になっておるんじゃないでしょうか。これは農民的なという畜産じゃなくなっちゃっていると言ってもいいんじゃないでしょうか。農民的な畜産といえば肉牛と酪農のところでしょうね。そしてブロイラーにしますと六千四百——六千羽ですからね。しかし、これは平均でしてね。豚にいたしましても非常に大きなものが、百頭以上飼養しているものが頭数の半分を握っているわけですよ。ですから、私は、昨年の四月にもこの豚とブロイラーの問題について、一体これは農民的畜産なのかと。その傾向というものはどんどん薄れてきているんじゃないか。いまや、企業的というんじゃないんですね、これ商社的というのかな、そういう畜産になっちゃっている。ますますそういう方向に行っているというふうに思いますですね。一体そういう方向にこれからも一生懸命持っていかれるのかどうか、その点をまず一つお尋ねをしたいわけです。
  99. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) いまのブロイラーの事例でお尋ねがございましたが、四十年の二万戸から現在一万三千八百戸というふうに戸数はかなり減ってきております。反面、一戸当たりの飼養規模か非常にふえておりまして、四十年の一戸当たり八百九十二羽というのが、先ほど御指摘ございましたように六千四百二十八羽——四十九年でございますが。というふうに著しく規模が拡大をしてまいったわけでございます。採卵鶏につきましても、これほどじゃございませんけれども、かなり規模も拡大し戸数の減の比率はさらに大きいということでございます。養豚につきましても大体同様な傾向が見られるわけでございます。大家畜につきましては、肉牛についてこそ三頭余りの平均規模になっておますが、酪農はかなり規模拡大が進んでいるということでございます。われわれ農林省といたしましては、規模の拡大いたしますことがコストの引き下げ、経営合理化につながる面がございますので、そのような指導もこれまでしてきたわけでございますが、特に農業全般の中を見ましても、畜産の場合は、中小家畜の場合は土地が要らない、工場生産に近いような形で経営が行えるということのために、規模が非常に拡大をしてまいりました。それなりに生産合理化といいますか、コストの引き下げにももちろん役立ってきておるわけでございますが、反面、規模が非常に拡大をいたしますことは企業的な経営に近づくことになりますので、ある意味では非常に差があり、価格が低落するという場合の抵抗力といいますか、経営の弾力性という面では、逆になくなる面があるわけでございます。一例として申し上げれば、雇用労働をかなり使うということになりますと、賃金はやっぱり世間並みに払っていかなければならない。農家的な、農民的な経営の場合には、一時的には労働報酬がある程度減っても、がまんして耐えるということが可能でございますけれども、他人の労働力を使うという場合は、そうはまいらない。あるいは資本投下も規模拡大に伴いまして大きくなってくるということになりますと、これが生産の能率が上がる面がありますけれども、経営の負担になる面も出てくるというような面がございます。反面、深刻な問題となっておりますのは、環境汚染問題でございます。水質であれ、水質の保全の問題であれ、あるいは臭気の問題であれ、いろいろふん尿の処理問題についてトラブルが非常に出てきておるというような点からいたしますと、規模の拡大ということにつきましても、やっぱり一定の限界があっていいのではないかという御議論が多いわけでございます。  われわれといたしましては、それらを総合的に勘案をいたしまして、農民的な経営の範囲内において規模の拡大をしていくということが長い目で見て適当ではないか。一部には、文字どおり企業的な経営というものも成り立つわけでございますけれども、長い目で見て、食糧という一番重要な生活物資の生産を担うのが、単に企業ベースでの採算だけで担われるということにつきましては、先ほど言いました経営的な問題は仮に別にいたしましても、食糧の確保という点からいたしますれば、いろいろ不安定要因を残すというような面も指摘できるわけでございますので、われわれといたしましては、農民的な経営という範囲内においてなお規模拡大すべき経営は多々あるわけでございますが、ただ、無限にこれが大きくなればいいということではなくして、一定の限界内にとどめていくということが経営の採算上も有利であり、先ほど言いましたような環境問題を未然に防止するという意味でも適切ではないかというように考えております。まあ極端に大きなものについてはそういうことが言えますけれども、中小家畜等につきましても、経営規模の平均以下の層につきましては、まだ拡大の余地はあろうかと思います。その場合、環境問題との競合を回避していく工夫はいろいろしていかなければいけないと思います。  なお、ブロイラーの場合に、特に顕著でございますインテグレーションの問題につきましては、私どもといたしましては、これが取引あるいは価格の安定という面でプラスの面もございますけれども、しかし反面、どうしても資本の力と個々の農民の力の間には格差がありますので、その間に公正な契約関係が維持できるかどうかという点についてはいろいろ問題がございますので、これについては農民的な経営の安定という観点から十分指導を加えてまいりたいと思います。反面、文字どおり企業が大規模直営農場を営む、経営するという事例がございます。契約生産と並んでこれらも最近はやや鈍化をしております。新しく始めるものは鈍化しているという傾向が見られます——一部で見られるわけでございますが、これがものによりましては、畜種によりましては、非常に過剰生産を刺激すると、大きな農場が一遍にでき上がりまして、それがその地域の流通、需給関係を乱す、あるいは全国的に見ましても過剰生産を促進するという面がございますので、これにつきましては適正な計画生産のルールの中に参加をするように進めていきたいというように考えます。いずれにいたしましても、生産者みずからの共同の力によってこれらの企業に対応していくということが基本でございますので、生産者団体を通じてそのような指導をしてまいりたいと思っております。
  100. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは豚にいたしましても、それからブロイラーにしましてもですが、豚で言いますと、私の県に七万頭、ジャパンファームをやっています。この間行ってみました。大変問題がありますですね。さらに私の方には二十万羽ぐらいの養鶏もやっています。ジャパンファームをやっていますが、そういう、土地が要らないということと、それからえさを基盤にした問題であるために、大変企業的な運営に向いているというところから、そういうものの比重が急速に高まってきている。ですから、農民から言いますと、もう手の届かないものになりつつあるわけですね、豚にいたしましても。採卵もそうなりつつありますね。ブロイラーなんかまさにそのとおりです。これは畜産局の所管に属するのかなあと思うぐらいですね。そしてそのことは、いまおっしゃったように、非常に公害の問題があります。もう一つ価格の問題について硬直化しつつありますですね。ですから、いま局長がおっしゃったように、そういう中小家畜の問題について、インテグレーションなり商社なり、そういう資本がどんどん入ってきて比重が高まってくるという状況の中で、いろいろこれは、農林省はどういうふうにそれを考えていくのかという点については、慎重にぼくは検討してもらわぬと困りますね。農民の手に及ばなくなっちゃっているんですよ。手の届かないようなものですよ、これは。ですから私は、これは通産省に言った方がいいんじゃないかと思うぐらいですね。その方が早いんじゃないですかね。ですから、そういう意味で私は、この問題については、農林省として、局長がおっしゃったように、今後きちっとやっていただきたいと思いますですね。  それから、大分長い時間を要望したんですけれども、短い時間にしてくれという話がありまして、ですから半分ぐらいにはしょらなければならぬわけですが……。そこで次に、大家畜についてですが、まあ中小家畜もいまや頭を打ったと思っておりますけれども、大家畜が減少をしつつあるということは、これは一体どういうことなのか。もちろん消費の減退とかいろいろ問題はあります。しかし、もっと根本的に問題があるんじゃないかというのを私は考えているんですけれども、大家畜について、これも乳用牛で言いますと、四十六年に二十八万戸あったものが、十八万戸に減るわけですよね、わずか三年の間に。がたがたです、これ。二十八万戸あったものが十八万戸に減るわけですから大変ですよ、これ。酪農家にしてみれば戦争状態のような状態じゃないでしょうか。十万戸減るんですから、大変ですよ。十万戦死したようなもんです、二十八万おったものが。  それから肉牛で言いますと四十六年に七十九万戸あった。それが五十二万戸に減るわけですね。これまた二十七万戸減るわけですよ。これはえらいことだと思うんですね。そして頭数が停滞をして減退をしつつある、減少しつつあるという状況ですね。ここに私は、畜産の衰退というものを考えなきゃならぬのじゃないかと。もちろん消費の問題、えさの問題もありますが、しかし大家畜の場合は、特に畜産としてこの頭数が減りつつあるということは、根本的に考える必要があるんじゃないだろうかというふうに思います。その点について局長はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  101. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 中小家畜につきましては、戸数は減っておりますけれども、規模なり頭数全体としてはかなりふえてまいったわけでございますが、大家畜につきましては、戸数はかなり急速に減り、最近は一〇%以上、年率で減っているということでございます。全体の頭数につきましても伸び悩んでおるという御指摘がございますが、その原因いかん、ということはいろいろな要因がございますが、乳用牛と肉用牛は必らずしも同じではない面もございます、同じ面もございますが。まず肉用牛につきましては、これはわが国畜産が役畜兼用で主として役を中心にしてこれまで飼育されてきた、それが耕運機その他トラクターの導入によりまして大体役牛としての廃用——やめるというのか進んできた。その意味では、一種の食いつぶしというようなかっこうで後、後継が育たないということで減ってまいったわけでございますが、その反面、肉を取るのを目的とした肥育経営というものは徐々に伸びてきておりますけれども、これが役牛が減るほど、それをカバーして余りあるだけの伸びを示しておらない。これは規模が非常に小さいとか、土地取得がむずかしいとかいう面がネックにあるわけでございますが、とにかく結果として頭数が最近では横ばい傾向以上には出ないということになっておるわけでございます。まあ肉用牛については一部で乳雄の肥育が最近非常に利用率が上がりまして、四十八年あたりは九十数%になっているんじゃないかと推定されております。昨年は価格が悪くて、逆に利用率が低下した、今後価格が回復しますればまた上がってくるということでまた伸びてくる可能性は持っておると思いますが、そのようないろいろな要因が重なって、いま申し上げましたようなことで横ばい現象になっておると思います。  乳用牛につきましては、規模はかなりふえておりまして、全国で九・八と、北海道あたりは十九・何頭ということで、まずややおおむね二十頭に近いいわゆるヨーロッパ水準に非常に近づいておるわけでございます。しかし全体として伸び悩んでおる。これは需要面で、御指摘がございましたように、牛乳の消費がやや鈍化の傾向にあるということもございますが、もう一つはやっぱり大家畜でございますから、飼料基盤が整備されて自給飼料の給与率をかなり高めるということが、家畜の健康衛生上あるいは生産性を上げるために非常に必要なことでございますけれども、都市周辺を中心といたしまして酪農は発達したわけでございますけれども、その都市周辺を中心といたしまして用地取得が非常に困難になってきたということで、立地も非常に僻遠の遠隔地に移りつつあります。まあ原料の乳価は、飲用乳の方が加工原料乳よりはるかに有利ではございますけれども、にもかかわらずそういう土地取得の面、これは地代負担となって経営の圧迫要因にもなるわけでございます。そういう面が一つ大きな面。それからもう一つは、先ほど申しました畜産公害の問題が養豚、養鶏と並んで酪農にはかなりあらわれておるということがございます。これはまた都市周辺等において一番問題があるということ。それから酪農の場合、肉用牛よりもさらに問題になりますのは、例の労働力の問題でございます。これは、都市周辺ではもちろん兼業機会等が非常に多いために、一般的な農業事情と同じように労働力を確保するのがむずかしいのでございますが、その上に要するに、周年拘束労働であり、一日拘束労働であるということで、日曜がないという点が一つの悩みになっておりまして、これはわが国ばかりでなしに、ヨーロッパ諸国でも同じような悩みがあるようでございます。その意味では、肉用牛経営よりも酪農の方がやや斜陽的な傾向が世界的に見てもあるわけでございますが、その一つ原因が、いま申しました労力の問題、若い者が休みがない労働をきらって、後継者になりたがらないという問題がございます。これにつきましては、ヘルパーの制度だとか、あるいは隣近所で労働力の交換をするとかというような、いろんな方法を考えていかなければならないと思いますが、それらの要因も、最近におきましては相当大きな要因になっておるのではないかと思うわけでございます。  まあ、そういうようなところから、また、申しおくれましたけれども、やゃぱり価格が十分でないという面も、これは率直に言いまして、いま言いましたようないろいろな不利益を埋め合わせて余りあるだけの価格が実現しておらないという農家の率直な意識があろうかと思います。そういう点が重なりまして、このような現象を来たしておるわけでございます。われわれといたしましては、このようなむつかしい問題を解決を図りまして、牛乳と牛肉は今後一番伸ばさなければならない分野の一つでございますので、着実に問題解決をしていきたいというふうに考えております。
  102. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほど私が申し上げましたように、乳用——乳牛で言いますと四十六年に二十八万戸あったものが三年後には十八万戸という減少ですよ。これは大変ですね、これ。しかも頭数は全然ふえていない。むしろ十万頭ほど減っておるわけですよね。戸数はがたがたに倒れっちまう。三年間に十万戸ぶっ倒れたら、えらいです、これ。そして頭数は、過去に百八十五万頭あったものが百七十五万頭という、三年間に十万頭減る。それから肉用牛で言いますと、七十九万戸あったものが五十二万戸、二十七万という戸数がつぶれるわけですよ、三年間に。そして、その頭数はこの三年間にほとんどふえない。若干ふえておる程度と言っていいですね。そこに問題があるんじゃないかと私は思うんです。いままでは戸数が減ると、がたぴし減ってくると、しかし頭数はふえてくるということだったんですけれども、今度はそうじゃなくて、戸数が減って、そしてその頭数は、酪農では減る。肉牛で売れば、去年は特殊、四十八年は特殊な状況でしたですから、若干牛乳雄を飼養したという点もあるでしょう。それでも変わらぬと言ってもいい程度だというとこうに問題があるんじゃないか。これは一体どういうことなんだという問題があるわけなんです。  そこで、きょうは肉牛の問題でありますが、肉牛の問題について、この肉牛生産というのは、これからますます大きな規模に持っていかれようとして考えておられるのかどうか。私は限界にきているというふうに見ているんですけれども。私の手元にこういうのがあるんですが、「混迷を深める大規模経営」というのがあるんです。これは農林省が出している。私の説じゃなくて農林省が出している。「混迷を深める大規模経営」という農林省が出している、これを見ますとわかるんですが、肉牛を十頭以上というのを大規模と、こうしてあるわけですね、これによりますと。そして、可変資本というのが九五%だと言うんですね。それで不変資本というのは五%だと言うんです。で、問題は、工場の場合は、可変資本の九五%というところに非常に大きな有利な点があるんですけれども、子牛を十二、三頭そろったものを飼うということになりますと二、三頭飼うよりもむしろ高くつくという、詳しく計算してあるんです。そこで肉牛については、どうも大規模経営というのは混迷を深めつつあるという課題なんですよ。あらわれてはつぶれると言うんです。あらわれてはつぶれると言うんです、というふうに書いてあるんですが、一体この肉牛についてはどういうふうにお考えなのか。で、いま肉牛は百八十万頭ぐらいで、その中の二十三万頭というのは鹿児島にいる、宮崎に十七万頭おるんです。で、四十万頭というのが鹿児島と宮崎におるわけです。ですから、日本肉牛の二割以上というのは、鹿児島と宮崎の二県におるわけです。しかも、もしこれを和牛で限定しますと、おそらく四割近いものが鹿児島と宮崎におるということになるわけです。私は、実際鹿児島、宮崎——私は鹿児島ですから鹿児島の農家の人たちといろいろ話をしてみるというと、どうもこの説を取らざるを得ないのですね。やはり二、三頭飼いというのがいいようですす。十頭以上の大規模経営というのはここにありますようにどうにもならないというわけです。で、畜産局としてこれから大規模というものをどんどんやられる予定なのか。  もう一つ伺いたいのは、六十年を目標にいたしまして長期目標、長期見通しというのが出ております。これによりますというと、肉牛は大変にふやすことになっているわけです、八六%ふやす、三百三十万頭にするわけです。それから乳用牛を二百五十六万頭にするわけです、四一%ふやすわけです。ですから、私はいまこの肉用牛について言って、肉用牛を三百三十万頭、八六%ふやすというのはどのようにしたらふえるというふうにお考えなのか。私は飼養農家をふやす方がいいと思っているんです。飼養農家をふやす以外にこの三百三十万頭というような数字なんというのは、手も足も出ないというように思っておるんですけれども、畜産局としてはどのように考えていらっしゃるのか。頭数ふやすにはどう考えていらっしゃるのかということと、大規模経営についての限界をどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。
  103. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 肉用牛の場合は現在が三・六頭の平均規模でございます。四十年には一・三頭であったということで倍率は三倍近いわけでございますが、絶対規模といたしましては、はなはだ零細規模であるわけでございます。これは御承知のように、肉用牛の場合は、繁殖経営肥育経営が大体分化をいたしております。最近は一貫経営ということもかなり奨励をいたしておりますので、一貫経営の事例もございますけれども、一般的には繁殖経営肥育経営が分化しておりまして、この三・六頭の内訳はございませんけれども、繁殖経営はこの平均よりは飼養規模が小さいと。肥育経営は最近は乳雄の肥育を初め、かなり大規模なものが出てまいっておりまして、それが反面公害問題を引き起こしているという事例も見られるわけでございます。  そこで、繁殖と肥育とを分けて考えなければいけないとわれわれは思っておりますが、繁殖経営につきましてはやはり相当な粗飼料を必要といたしますので、土地——特に山林の下草利用あるいは草地の利用というものがなければなかなか規模拡大するということは困難でございます。そういう意味から言いますと、現実的には専業経営で五十頭とか百頭とかいうような規模で繁殖経営をやるということは事例的にあり得るといたしましても、一般的には現実問題としてなかなか困難かと思います。  そういう意味では、従来よりは規模拡大する必要があるといたしましても、規模は事業として大規模経営というのは一般的にはなかなかむずかしいのじゃないか。したがいまして、今後、国有林初め山林の畜産的利用とか、草地の造成とかいうことに努力するといたしましても、やはり複合経営主体でいくべきではないか。その場合、平均十頭前後あるいは十五頭ぐらいというところぐらいまでいけば、かなり能率のいい複合経営が成り立つのではないかというように思っております。それにいたしましても、現在とてもそこまでいっておりません。しかし反面土地条件、その他制約が非常に大きいところにつきましては、いきなり十頭、十五頭というところまでいくのは非常に困難かと思いますので、それと同時に、国全体として繁殖頭数をふやしていくということのためには、そういう条件の非常に厳しいところにおきましても繁殖をやっていただくということも必要でございますので、五十年度予算でもちょっと頭を出したわけでございますが、技術を持った高齢者で、すでにやめた人に福祉対策的な意味も含めまして一、二頭なり、二、三頭の零細といいますか、小規模の繁殖経営もやるというのも、二つの道がああっていいのではないかというように考えております。  それから、繁殖はそのように二つの、規模を比較的拡大するものと、零細規模でいくものということでございますが、肥育につきましてはこれはかなり濃厚飼料に依存して経営ができます。現段階におきましては、実情といたしましては濃厚飼料に偏り過ぎているという面はございますけれども、繁殖と比べますれば濃厚飼料の利用がやりやすいわけでございますので、これは規模がかなり拡大できる。最近農協等で五百頭とか一千頭とかいうようなことも事例的にはなくはないわけでございますが、一般の農家におきましてはやはりそこまでは無理でございますので、三十頭なり、四十頭というようなところを目指すのが現実的な目標ではないかというように考えております。もちろん先ほど申しましたような公害問題というのが深刻に出ますので、余り規模拡大を急ぎ過ぎるという点は慎重に考えていかなければならないと思っております。したがいまして、中小家畜の場合とは違いまして、複合経営を主として、その範囲内において規模はある程度拡大をする必要は現段階においてあろうと思いますが、これを軒並み全部何百頭とかいうような規模に持っていくということはわが国のいろいろな制約条件から見まして現実的ではないというところで、その程度の目標を現在念頭において検討しているところでございます。
  104. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 もう一つ私が申したのは、三百三十六万頭というふうに頭数をふやすということなんです。それは規模拡大によっておやりになるのか、それとも飼養農家をふやすことによっておやりになるのか、これは重要な問題ですよ。繁殖の経営肥育経営で、私がここで言っているのは肥育経営ですよ、十頭以上の。農家経営です。農業経営です。実に詳細に分析してあるんですね。畜産局、そういうのを持ってないのじゃないかな。肉牛おくれているからな、畜産というのは。子供だましみたいなことをやっておる。恐らく分析しておらぬのじゃないかと思うんだな、酪農局だから。だから、いずれにしましても、私は、これはもう肉牛というのは、そう規模拡大のできるものじゃない。実際三十五年から四十九年、十五年たってみて三・六頭ですから、これはもちろん繁殖も入ってます。それにしても三・六頭という数字です。ですから、十頭以上の経営というものについては、ここに書いてあるようにぴしっとしているんですよ。不変資本と可変資本とびしっと工業と比較してある。なかなかこれむずかしいなあという感じですね。——ですから、飼育農家をふやすということを考える。局長は複合経営、複合経営とおっしゃるが、これは畜産と耕種農業との複合経営の話ですか、それとも肥育と繁殖の複合経営の話なのか。僕は、ちょっと不思議に思ったんですけれども、どういうふうにしておふやしになるのか、畜産農家をふやすということでやられるのか、どうするのか。いまの勢いでやったらどんどん減りますよ、農業は。がたがた減ってしまいます。いままで減ってきたのですから。どうなんですか。
  105. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 先ほど答弁を漏らしましたけれども、六十年に三百三十万頭を一応目標においております。四十七年は百七十七万六千頭でございます。四・九%の年率でふやすというのが目標でございます。これは非常に困難な、容易には達成されない目標だと思いますが、われわれとしてはぜひあらゆる施策を集中してやりたいという決意を持っておるわけでございます。その内訳を申し上げますと、専用種と肉用種、乳用種に分けまして、専用種は百四十五万頭であったのを二百十万頭ぐらいにふやしたい。それから肉用種が四十七年はまだ低かったという、基準年次より低かったということもございますけれども、乳用種につきましては、二十九万、まあ三十万頭です。三十万頭を百二十万頭ぐらいに、これは年率一一・四%ということでフルに利用率を高めたいということで考えておるわけでございます。それから乳用種は、先ほども御指摘もございましたように、乳用自体を酪農の立場でふやしてまいりますので、その結果といたしまして、乳雄の出生頭数もふえますので、それと利用率を高める。両方で約三十万頭を百二十万頭——四倍てございますがが、ぐらいにふやす。したがいまして、専用種と乳用種の比が大体二対一というぐらいを考えておるわけでございます。現在は百四十万頭と三十万頭といいうぐらの比率になっておるわけでございます。そういうことで、乳用種にかなり重点を置いてやることによりまして、この三百三十万頭という目標を達成をしたいというふうに思います。  その場合、専用種につきまして、百四十五万頭から二百十万、これもなかなか現状においては非常にむずかしい容易ならぬ目標だとわれわれも思っておりますが、これは農家飼養農家戸数は、最近著減しておるのに、これをふやすのかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、三・六頭、繁殖経営はもっとそれより少なくて二頭ちょっとぐらいのところじゃないかと思いますが、それでいいとは私どもは思いませんので、もう少しふやしていく。複合経営といいますのは、私ども、一般的には肥育との複合ということではなくして、一般耕種との複合と、山林とか山間地帯が、従来から耕種生産地帯が比較的多いものですから、そういう山の収入ということも、場合によってはあると思いますけれども、まあ農業その他との複合経営ということを考えるにいたしましても、規模は先ほど申しましたように、二頭とか三頭ということではだめで、もう少しふやしていくということが一つの路線だと思いますが、同時に反面、全体の数を維持し、あるいはふやしていくためには、零細なといいますか、小規模の飼養頭数で一、二頭、二、三頭ぐらいであっても非常に手のかからないものでございますので、そういう農家もあっていいと、二つあっていいのではないかということで、それについては戸数を減らないように、あるいは逆にふやすということも考えていくべきであると、そういう意味では、他の畜種あるいは肉用種のこれまでの傾向のように、戸数がどんどん減っていいということではなくして、一定の戸数を維持しながら小規模の経営と、中規模といいますか、複合経営で中規模ぐらいまでいった経営と、二つが大きな担い手として育っていく必要があるのではないかというふうに考えております。
  106. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 その複合経営でいかれるという、これは大変賛成なんですけどね、ぜひそういう方向に持っていって、そして飼育農家というものがふえていくという形をとらなければ、とても三百三十万頭という数字なんかになりっこないですよ。ですから、私は、もう大規模な肥育でも、大きな規模のものは限界があると思っております。特に、日本においてですね、限界があると思っております。ですから、やはり頭数を積極的にふやしていくという積極どころの騒ぎじゃないですよ。これ逆立ちしてふやしていかなきゃならぬわけですから、その場合に、やはり飼育農家をふやすという立場は、これはっきり持ってやっていただく。しかも、それは複合経営と、結構な話だと思っています。それは、だんだんいい方向に畜産局も歩みを進めるようで結構な話だと思っておりますが、ぜひそういう方向でやっていただきたい。やっぱり農家立場に立って考えてもらわないと、牛の頭数考えただけでは困りますわ。大きな経営をやればいいとか、頭数がどうだとかいう話だけじゃなくて、農家立場から考えた場合に、一体飼育頭数というのは今後ふやしていくんだろうかどうだろうかという点は非常に大きな問題なんです、これ。何せ飼っておった者かなくなっちゃったんですから、全部廃業しちゃったんですから。しかも、先ほど申し上げましたように、この三年の間に二十七万あったものが十万戸に減るんですからね。まるであんた、むちゃくちゃに減っちゃっているんですから。そういう農業者、農家立場に立った畜産というものをやっぱり考えてもらうというふうにしていただきたいと思っております。  次に、この価格の問題ですけどね。この価格の問題について、先ほど神沢さんの方から質問があったんですけれども、これはやはり価格生産費を基礎にせざるを得ない、何といっても。これが本命。ところが、いまあります資料は、先ほど局長も御答弁になりましたように、これはとても、全国事例だけにすぎない。三百何十戸でしょう。そんなものは昔、局がやった、局の調査でややったような事例調査であって、全国事例調査にもならない。ましてや、乳雄については、これは昨年からちょびっと、百戸ぐらいですか、始まったんでしょう。ですから、こんなもの、まるで事例調査ですよ、統計の数字にならぬのです、これ。私はそう思っている。ですから、遺憾ながら生産費について、生産費を基礎にしたものが今度間に合わないということが、私は先ほどから言っているように、畜産局というのは酪農局であって、肉牛をはなはだ冷遇視してきたということだと思うんですよ、一言で言って。肉牛というのを全く冷遇してきた。まあ言うならば、三百六十万頭、三百七十万頭おった牛が、和牛が二百万頭を割ったということで畜産局が、うろたえたのは三十九年ですよ。私は、そのとき農林水産委員だったですから覚えていますがね、大衝撃だ。それからだっだっだっと減ったですね、何らの政策やらぬのですから。じゃ何の政策やったかというのです、それについて。一方、乳牛は四十万頭からだっだっだっと、こう上がっていくわけです。肉牛は逆にぐわっと減っていくわけですよ。何の政策を肉牛についてやったのか。やってないはずです。だから、畜産生産費すらわからない、肉牛生産費すらわからないという状態じゃないでしょうか。法律は出て、価格を決めなきゃならぬというときになって、さて生産費がわからない。これは澤邊さんの責任じゃないけどな、去年なったんだから、しようがないです、これ。ですけれども、歴代の畜産行政というのが、肉牛なんというのは、まるで片すみに追いやっちゃって、いいかげんなことをしてきたんですよ、これ。私は調査してもらいまして、四十五年から肉牛に対する予算の項目をみんな挙げてもらったです、どういうことをやったのかと。やっと四十七年ごろから肉牛がちょっと出てきますよ。めちゃくちゃですよ、これ。ここで畜産局長の首が何本飛んでもこれはどうにもならぬぐらいですけどね。まあしかし、澤邊さんこの間なったばかりですからね、どうってわけにいかない、これは澤邊さんが責任とるわけにはいかない。ですけれども、余りにも貧弱ですね、これ。四十六年なんてろくなことやってないですよ。全く話にならないですよ。四十七年になってやっとこれはちょっと肉牛に対する政策やられたわけですよ。酪農については御承知のとおりですよ。給食のために百七十億から百八十億の金を使っているでしょう。それが不足払いのためにこれがまた二百三十億ぐらい金使っているでしょう。生産についても非常な苦労やっていますよ。ところが、肉牛というのは何にもやってないですよ。やっとこのところちょこっと出てきたわけ。全くいまから、いまさらのごとく、これからの畜産の柱は肉牛であるというような話になってきたんですけれどもね。われわれも、そういう意味では少しうかつであったんですけれども、まあ衝に当たっておられる畜産局というのは何をやってきたのかということで、うんと文句を言いたいんですけれどもね。来年、五十年の予算で肥育牛については、乳雄については七百戸ぐらいの調査をやられる、それから和牛についてはこれは七百戸ぐらいでしょう。七百戸じゃね、これは頭数の中に入らないんですよ、これ、統計の中に入らないんですよ。養蚕はそれは二千七百戸ぐらいでしょう、全国的の調査が。来年、七百戸・七百戸おやりになるというけれども、一体それで統計の数字として出るんでしょうか。もうちょっとやらなきゃ、少なくとも千戸は超さなければ、われわれ統計的な数字と言えませんですね。どういうことでことし六月ごろからおやりになる、この生産費調査というのを。これでは私は、統計的な数字というふうにはとれないと思うんですね——統計情報部長見えていますな。統計情報部長、こんなものであなた全国統計と言えますかね、七百戸ぐらいの調査で。初めてだからやってみるということか。来年はもっとふやそうということならまだまだですけれどもね。
  107. 吉岡裕

    説明員(吉岡裕君) 先生御承知のように、農畜産物生産費調査の目的にはいろいろあるわけでございますが、その一つには、行政価格の算定資料にするというようなこと、それから経営改善の資料にするということ、あるいは生産対策をつくりますための基礎資料にするというようないろんな目的があるわけでございますが、まあ肉用牛についての生産費調査を、統計情報部がやり始めましたのは昭和三十四年度ごろからでございますが、目的としましたところは、やはり経営改善、生産対策の基礎資料にするというふうなことを主要な目的にしておりまして、したがいまして、先生御指摘のように、産地としても主な主産地を選び、また限定された標本の数で調査をいたしておるというふうなことでございました。これは、これをそのまま行政価格算定の資料として使うためには不十分であるというふうに私どもも思っておるわけでございます。  そこで、今回、お話がございましたように、畜安法の改正が行われ、牛肉指定食肉になるということでございますので、昭和五十年度から始めます肉牛生産費調査につきましては、標本の数を大幅にふやしまして、予算戸数といたしましては、いま御指摘のような数でございますが、これを適確に実施をいたすことによりまして行政価格算定の基礎資料にしたい。御承知のように、肉牛生産の形態というものが他の畜産と違いまして非常に分散をしており、零細な経営も多いというふうなことでございますので、私どもとしては、適切な母集団を見出し、これから適切な標本をとるということで、この実行を適確にやることによりまして、行政価格算定の基礎資料としては十分使用し得るものになるというふうに考えておるわけでございます。
  108. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まあ、和牛の場合ですね、和牛の生産費については三百十戸、そのうち子牛について二百戸という数字でいままでやっておられたわけでしょう。そういうものではもう問題にならないですよ、これ、その生産費の問題とししては。牛ほど進歩の形態が違っているところはないわけですしね。そういう場合に、三百戸、三百十戸。和牛の場合の、いまやっておられるのは三百十戸、そのうちの二百戸というのは子牛になるわけですよ。ですから、それはむちゃくちゃに出ちゃって、大臣にもひとつ御記憶をいただきたいと思いますよ。和牛というのは踏んだりけったりになっているんですよ、これ。いままでほったらかしてあったわけですよ。  そこで、これは先ほど出ましたのでこの程度にしまして、次にお伺いしたいのは価格の問題なんですけれども。私は、畜産局長ね、三百三十万頭というものにふやすというが、今度まあ六十年の見通しでは、これが一番伸びることになっておるわけですよね。そしてしかもその資源の関係等もあって、特に国内の草資源というものを使う。あるいは大麦を増産してどうするというようなことの中でこの畜産を、畜産の中では肉牛というものを重要視していく、これがこれからの畜産の大黒柱にもなるんでしょう。その場合の価格政策というのは、私は、いままでみたいな価格政策じゃだめだというふうに思うのですけれどもね。まあ生産費所得、補償方式というのがありますが、米の場合。米の場合は少なくとも国内で自給するという、国内でこれだけは取りたいという、国内がカバーしたいという考え方があるわけですね。そのためには、その限界米作農家もつかまえなきゃいかぬわけですよ。で、畜産も、これから畜産の大黒柱として肉牛を何としても三百三十万頭やるのだというふうにお考おならば、限界農家、限界畜産農家というものを把握しなければ、そういう価格政策をとらなければ、全然これは空論に終わっちまうと私は思っているのですよ。裏返せば生産費所得補償方式というのになるのかもしれません。私は、もっとそれよりもきついことを考えておるわけです。ですから、いままでのまあ畜産の問題について価格がいろいろとられておりますけれども、そういう価格が、そういう考え方がないわけですよ。減るなら減るでいい。麦であろうと、なたねであろうと、大豆であろうと減るなら減るでいいと。とにかくこういう平均生産費出す、平均生産費出されたら、それ以下のものはつぶれるのはあたりまえの話ですよ。ですから、どうしてもこの畜産というものは、肉牛というものをこの程度確保したいというなら、歯どめをかけなさい、歯どめを。その歯どめには国内でカバーするのだと。そうすると、限界生産農家までつかまえるという価格政策をとらなければ、私は、これはもう画餅に終わる。机上の空論だというふうに思っているのですが、そこまでやるお考えがあるかどうか。それがなければお話にならぬというふうに思っております。
  109. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 肉牛を今後ふやしていく、特に六十年の、現在検討中でありますような三百三十万頭に持っていくというのは、相当困難な目標だということはわれわれも十分承知しております。したがいまして、あらゆる政策を重点的に実施しなければならないと思っておりますが、価格安定対策は、その一つの柱として重要な政策だとはもちろん考えておりますが、先ほどもちょっとお答えしましたような生産面あるいは技術面あるいは経営面等の対策もあわせて総合的にやりながら、生産振興を図っていくということが現段階としては必要だと思いますので、価格政策だけですべてというわけには私は、まいらないと思いますけれども、価格政策が重要であることはこれはもうわれわれも重々認識をいたしております。したがいまして、再生産が確保できる、単なる再生産でなくて、拡大再生産が確保できるような価格を決めていかなければならないというように考えております。まあ、非常にむずかしい面がございますけれども、乳牛の雄の肥育というものは非常に肉牛資源として今後有力なものとして考えていっていいと思います。酪農対策によります搾乳牛の増加ということとうらはらの関係になるわけでございますので、それらの政策ともあわせて牛肉価格政策によりまして、頭数をふやしていくということを目指さなければならないと思っておるわけでございます。  そこで、いま御指摘がございました限界畜産農家をカバーするという点につきましては、まあわれわれとしてはお気持ちは十分わかるわけでございますが、この制度畜産振興事業団の売買操作によって価格安定を図るというこの仕組みですね、まあこれの仕組みを前提といたします限り、やはり生産費所得補償方式と言いますか、あるいはその場合、さらにもっと強いものとおっしゃいましたから、平均農家ではなくして、限界農家の  生産費所得補償、あるいはそういう御趣旨かとも推測するわけでありますが、そういう算定方式を直ちになじみにくい面もあるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。したがいまして、まあ慎重に算定方式も今後決めていかなければいけないと思いますが、生産費所得補償方式という方式は、食管のようなああいう制度だとか、不足払いというああいう制度では、財政負担の問題はもちろん残るといたしましても、これは制度上矛盾なく両立する面が私はあるのじゃないかと思うわけでありますが、事業団による売買操作という仕組みの中においては、ややなじみにくい点があるのではないかという感じは持っております。ただ、非常にむずかしい増殖目標を達成するというものであり、しかもけさほど来大臣もお答えしておりますように、一たん減ったならばこれは返らないというのが大家畜の特色でございますので、もとに返るのに非常に時間を要するということ、その辺は十分考えて、適正な拡大再生産が可能なような価格というものを決めていかなければならないということはわれわれも十分念頭において検討していきたいと思っております。
  110. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 生産費の確保をする、再生産を確保する。生産費を確保するというその生産費というのは、平均生産費のことを恐らくお考えだろうと思うんですよね。平均生産費をとったらそれ以下のものはつぶれるのはあたりまえの話。ですから、私が言うのは、これから米と同じように肉牛をやるんだと。三百三十万頭なんて、うその皮だというなら別ですよ、そんなものは、へったくれなんだと。ただ、数字を挙げてあるだけだ、というなら別ですが、少なくとも三百三十万頭というものを、いま百七十万か百八十万頭しかいないものをこれから三百三十万頭にふやしていこうと。後、六十年というと、すぐそこですよ、もう。その場合、生産対策というのは、先ほど私が申し上げたように、肉牛の場合はべらぼうにおくれているんです、これ。三年前に始まった、二年前に始まったようなものですよ。もちろんそれもやってもらわにゃいかぬです。  しかし、一番当面しているのは価格だと思うんですよ。これは、もう価格というものは一番はっきりすると思う。その意味で私は限界生産というのをどこへとらえるのか。これはぎりぎりの限界までは私は言ってるんじゃないんです。米だってぎりぎりのところまでとってないんですからね。八九%か七%のところの限界農家をとっている。だから、畜産の場合もその八七%か八八%のところの、そこの農家までは、その生産ができるんだという価格にされるのか。それとも、平均生産費でおやりになるのか。いまの法律の出し方、それから、いまの統計の資料の不備の状態等からいって、適当なところで決まるのじゃないかと思うんですけれども、もう少しこれは考えてもらわないと、これは三百三十万頭というのは、うその皮だということになるんです。いままで、うその皮がずうっと続いてきてますけれども、また再びここでうその皮になっちゃうわけだ、三度目の。三度目のうその皮になっちゃうわけだ、これ。今度は本気のようです、これ。草資源の点からいっても、一生懸命国内資源の点からいって、一生懸命肉牛やるんだというお話なんですから、それには価格というものをまず基本に据えなさいと。酪農に対しては四百億くらい出しておるでしょうが。不足払いにしろ、小学校の給食費にしても四百億くらいでしょう。できぬわけがないですよ。それをやらなければだめだと思うんです、こんなものは。後ほどまた細かくやりますけれども、あまり大したことないです、これ。わあわあ言うものだから、いままでよりか少しばかりちょっと前進したというだけにすぎないじゃないですか。だからその点について一つ伺います。  もう一つ、今度の価格安定で、私の見るところによりますと、大体国内産の生産牛肉の二〇%足らずを対象にしておられるだろうと思うんですよ、二〇%足らず。その二〇%足らずのもので一体価格の安定というのは可能なのかですね。そういう点も考えにゃいけないと思うし、しかも豚と違う点は輸入肉が非常に多いということですね。豚は、輸入肉というのは、一五、六%——八%くらいの輸入ですよ。ところが、牛の場合は五〇%という場合もあるわけだ。二、三〇%というところが大体牛の輸入になっているわけでしょう、輸入肉になっているわけでしょう。その輸入肉がある、しかも、その輸入肉価格というのは、先ほど大臣答弁のように、大臣の指示する価格で出るわけでしょう。そうなりますと、その二〇%ぐらいのものを握っておって、一体牛肉価格の安定というものができるものだろうか。できるとすれば、これはとんでもない安い価格になっちまうというような感じを持つのですけれどもね。ちょっと時間がだんだん少なくなっているものですから、口早に言っちゃって端折らなければならぬもんですから、論旨不十分な点もありますけれども、局長答弁をいただきたいと思います。
  111. 澤邊守

    政府委員澤邊守君) 二〇%足らずと言われましたけれども、二〇%やや超えているわけでございますが、価格安定制度を行いますれば価格が、所期の目的を達しますれば、価格の低落というのは妨げるようになりますれば、品質もおのずから上向するという刺激にもなりますので、われわれといたしましては、「中」から「上」へ、「並」から「中」へという規格格づけの成績が上がるような方向で技術、経営の指導もしていかなければいけないというように考えております。そこで二〇%割るにしろ、超えるにしろ、大差ないわけでございます。その程度で全体の価格が支えられるかどうかという御質問でございますけれども、雌牛につきましては肉牛——専用種につきましてもあるいは乳用種につきましても、これは再生産といいますか、子取りに重点で、あるいは搾乳に重点でやっていただくということになりますれば、この価格安定対策の直接の対象にするのは問題があるのではないかというように考えておりますので、それらを除きますと、五〇%のうちの二〇%ちょっとということにもなるわけでございますので、私どもといたしましては、間接的な支持効果というものも含めまして、これで牛肉価格全体の安定が達成できるのではないかという期待をいたしておるわけでございますが、新しい制度でもございますので、実施をしながら、もし何らかの点で、われわれの期待と違って、十分他の牛肉について価格支持効果が及ばないというようなことでございますれば、その際追加をして範囲を広げるということも検討しなければならないというふうに思っております。技術的にいろいろな問題もございますので、こんなところから出発はさしたいというように現段階では考えておるわけでございます。  それから、価格の問題でございますが、先ほど来、先生の御指摘になっておりますように、畜産局の仕事の重点自体が、酪農に非常に偏っておるという点は、私も率直に、歴史的に見ましても現状を見ましても認めざるを得ない点だと思います。そういう点におきまして五十年度あるいはここ二、三年来かなりピッチを上げて、肉牛対策もやるように努力をしておりますが、現状においては、まだかなりの格差があると思います。われわれも今後とも生産対策については、従来以上に力を入れてまいりたいと思います。えさ対策であれ、あるいは改良対策であれ、規模拡大のための導入対策であれ、すべてにつきまして、従来以上にこの法律改正を契機といたしまして、一層力を入れていかなければならないと思いますので、それらとあわせまして、再生産を確保するということに努力していく必要があるというふうに思いますので、価格の算定の方法につきましてはいろいろ申しましたけれども、審議会の御意見等も十分参酌さしていただいて最終的に決めていきたい。しかも今後、資料の整備を待って恒久的なものとしては、順次固めていきたいというように考えておりますので、いずれにいたしましても、再生帝の確保という点については、十分念頭に置いた価格を算定したいと思います。
  112. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 豚の場合、対象になっているのは五〇%程度だろうと思うんですが、さらに輸入はうんと少ないわけですし、一〇%ぐらいのものでしょう。一〇%足らずの場合もあるわけですね。ですから、肉牛の場合——牛肉の場合は、何せ対象になっている、つかまえようという肉の割合がが、国内産の二〇%だ、そして外国からまた、需要量の国内生産に対して三割近い、場合によれば五割も入ってくると。しかも、その価格は、大臣の指定する形で払い下げていくということを踏まえて考えると、なかなか大変だというふうに思います。しかし、局長のおっしゃるように、いろいろな不備の中で発足するわけですから、ですから、当面この二〇%という形のものを押えて、そしてこれから逐次急速に整備していくというお考えには賛成であります。こういうまた価格制度ができますれば、それに付随して統計の関係も急速に整備してまいりますし、それから流通関係にいたしましても、急速にこれは整備してきますし、与える影響は大変大きいと思うんです。ですから、私自身も、この二〇%で発足されるということについて決して反対しているわけじゃないんです。こういうことで発足さしてもらって、そして速やかにこれがよくなるように急速に努力をしてもらわなければいけないと、こういうような立場から伺っているわけですから御了承いただきたいと思います。  そろそろここらあたりで終わった方がいいようにも思うんですが、私は、ここでひとつ大きな問題を提示して、それを次の木曜日の日に論議をしたいと思うんです。  それは、和牛振興法をつくったらどうだと。まあ、畜産局は振興法というのがお好きですし、酪農振興法、鶏の振興法があるし、何やかやいっぱいありますけれども、しかし、これからこの肉の問題は大変な大きな問題ですし、最もおくれておるわけですから、その中でやはり、この価格安定制度をつくると同時に、速やかに和牛振興法というようなものをつくって、和牛のこれは立て直しを図らなければ、酪農局というふうに言われますよ、というふうに言いたいわけです。それをひとつ次に論議をしたいと思っております。大臣のいい答弁を願いたいと思っていますよ、これは。そういうふうに検討したいということでですね。また、私はそういう方向で詰めていきたいと思うんです。  それから、もう一点は飼料対策です。飼料対策は、これは、これから四年計画で八百億の飼料安定基金、親基金と言っているやつができるわけですね。それと、あと食管特別会計の中に操作用のものが入っておるわけですね。この二つの関係について聞きたいんです。それで、親基金というのは暫定的だということかもしれませんが、少なくとも、八百億の金を使ってやるというんなら、これはやっぱり法律にすべきだと。で、子牛の価格安定もありますが、これもやっぱり法律に持っていくべきだと、法律ですべきだと。  そういう点について、この二つについて木曜日の日にお伺いをしたいと思います。  以上で終わります。
  113. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  これにて散会いたします。    午後六時二十二分散会