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1975-02-20 第75回国会 参議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十日(木曜日)    午前十時十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         佐藤  隆君     理 事                 小林 国司君                 高橋雄之助君                 川村 清一君                 神沢  浄君                 原田  立君     委 員                 青井 政美君                 大島 友治君                 鈴木 省吾君                 温水 三郎君                 初村滝一郎君                 平泉  渉君                 山内 一郎君                 志苫  裕君                 鶴園 哲夫君                 相沢 武彦君                 小笠原貞子君                 塚田 大願君                 向井 長年君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農 林 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        農林政務次官   柴立 芳文君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        農林大臣官房技        術審議官     川田 則雄君        農林大臣官房審        議官       今村 宣夫君        農林大臣官房予        算課長      渡邊 文雄君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省構造改善        局次長      杉田 栄司君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省畜産局長  澤邊  守君        農林省食品流通        局長       森  整治君        食糧庁長官    三善 信二君        林野庁長官    松形 祐堯君        水産庁長官    内村 良英君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員       農林省農林経済       局統計情報部長   吉岡  裕君       海上保安庁警備       救難部長      山本 了三君       消防庁予防課長   永瀬  章君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (昭和五十年度農林省関係施策及び予算に関  する件)     —————————————
  2. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  この際、安倍農林大臣から発言を求められております。これを許します。安倍農林大臣
  3. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 前回温水委員から御質問がございました預金目減り対策につきまして統一見解を出せという御質問でございましたが、これにつきましてはまだ政府としても決定をしていない状況にあるわけでございますが、預金目減り対策あり方については、農協等中小特殊金融機関の経営に及ぼす影響等を含めまして、大蔵省を初めとする関係機関とも慎重に検討をしてまいる考えでございます。
  4. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 昭和五十年度農林省関係施策及び予算に関する件を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 神沢浄

    神沢浄君 私は、主として安倍農政基本姿勢というような点でひとつ論議をしてみたいと、こう思うんですが、その前に、昨年は国連で三つの大きな資源関係会議があったんです。国際海洋法会議世界人口会議、それから世界食糧会議。これは日本農政考えるあるいは食糧の問題を考える上にきわめて重大なかかわり合いを持つ会議だと私は考えるんですが、したがって、農林省として、この三つ会議に対してどういうような把握をされておるのか、その点をひとつ先立ってお尋ねをしたいと思います。
  6. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 昨年は、いまお話がございましたように、ローマにおける世界食糧会議を初めといたしまして、カラカスの海洋法会議等、これからの世界のいわゆる食糧水産関係資源の問題につきまして各国が集まりまして討議が行われたわけでありまして、わが国としてもきわめて大きな影響があるわけでございますから、重大な関心を持ってこれに参加をいたしたわけでございます。私どもといたしましては、この食糧会議は、この数年来の世界における食糧事情変化、今後の食糧あり方等につきましてわが国にも直接的な影響があるわけでございまして、今後ともこの食糧世界的な会議につきましては積極的に参加をいたしまして——備蓄の問題、さらにまた開発途上国に対する食糧援助の問題、あるいはまた食糧増産の問題といったことにつきまして、今後とも進んで討議参加をして、ひとつ世界的な食糧不足の中にあって、わが国食糧が安定的に確保される立場に立ってひとつ協力すべきものは協力をしていきたいと思っております。  また、水産問題につきましても、わが国の今日までの世界におけるところの水産のウエートは非常に高いわけでありますし、これが経済水域二百海里ということがきまってしまいますと、わが国水産の将来——資源確保操業確保といった面につきましても重大な影響があるわけでございますから、今後とも、この海洋法会議の行方につきましては非常に重大な関心を持つとともに、わが国の今日までの操業権確保されることを目途といたしまして、今後とも強力に会議の中におきましてわが国立場を明らかにするとともに、世界各国の御協力を得るために努力を続けていきたいと思っております。
  7. 神沢浄

    神沢浄君 特に食糧会議においてのアメリカ提案といいますか、キッシンジャー構想といいますか、それは新聞などでも報道してありましたからその程度認識は私ども持っておるわけなんですが、あの中に、いわゆる備蓄構想という問題があると思うんです。日本としては、あのキッシンジャー備蓄構想に対してどういうふうな態度をもって臨まれるのか。たいへん重要な方向というものを持っておるように私どもとしては感ずるものですからお尋ねをしたいと思うんです。
  8. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) まだ、キッシンジャー構想と称せられますものは、かつての世界食糧会議で、キッシンジャーから概略提案があったという程度でございまして、まだ必ずしも中身がはっきりしているわけではございません。概要を申し上げますと、大体六千万トン程度食糧をこの際新たに備蓄をいたしまして、その積み上げ並びに運用管理等につきましては主要国間の交渉において中身決定をしようというのがあらましな提案でございます。これにつきましては、規模そのものも問題でございますし、また、それらの運用等につきましても何らまだ具体的な提案が、アメリカからないわけでございます。私どもとしては、今後、やはり、その中身が明らかになってから、その中身に応じまして私ども意見も言い、また協力すべきものは協力いたしたい。で、そのフォローアップの一つとしまして、二月の十日、十一日とロンドンで、アメリカの提唱のもとに十一カ国が集まりまして会議をやったわけでございますが、この会議におきましても、アメリカからは、さらに具体的な提案があったというわけではございませんで、今後さらに短期間のうちに、よく煮詰めようというような趣旨の提案があり、おおむね各国もそういうような方向で相談をするというような話し合いができたという、まあ、二日間の会議でございますので、その程度合意ができたわけでございます。  今後私どもとしましては、さらに中身を詰めるということにつきましてはやはり前向きで対処したいというふうに考えております。
  9. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま経済局長から答弁をいたしましたことが大体の内容でございますが、今度のロンドン会議、これはアメリカが要請をしてそれに基づいて行われたわけでございます。が、キッシンジャー構想というローマにおける打ち出された構想は、今回のアメリカ側説明等を聞いておりますと、アメリカ農商務省としては、そのまま受けとめてこれをそのまま提案しているという形ではなくて、そういうキッシンジャー構想の受けとめ方につきましても、多少私は、アメリカの国務省、農商務省等にも考え方の差異もあるように見えるわけでございます。私たちとしては、備蓄問題というのは今後の食糧不足という状態の中にあって、積極的な姿勢を示しながら協力できるものは協力するという立場に立っておるわけでございますが、いま申し上げましたような状況で、具体的な煮詰めということになりますと、まだまだ今後相当時間がかかってくるのではないか。あるいはまたさらに会議を開いて、その中にあって、種々協議をいたさなければ煮詰まっていかないのではないか、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。
  10. 神沢浄

    神沢浄君 私どもが読んだものによりますと、いまお話がありましたように、六千万トンをそれぞれ計画的に世界的に備蓄を実行していこう、こういうふうな考え方に対して、食糧会議の中でもってそれに対する反論といいますか、対立的な意見としては、備蓄は必要だけれども——やっぱりFAOのバーマ事務局長など中心になった一つ意見としては、それは各国の自主的な計画に待つべきだというようなことで、かなりの対立があったと、こう報ぜられているわけです。一つには、なぜバーマ意見などを初めとして世界の他の国が、キッシンジャー構想一つの抵抗を示すかという点につきましては、やっぱり石油の次は食糧だというようなことで、アメリカが、いわばそういう言葉が適当かどうかは別にしましても、食糧をもっての世界支配戦略というようなものを根底に置いておるのではないか、というようなことが報道されておりますですね。  そうなりますと、日本のような世界食糧輸入国の筆頭になっておるような立場からいたしますと、これはよほど確かに慎重に対応しなければならない問題であるということは間違いないと思うわけです。そういうような、私などが目にいたしました情勢ありとすれば、日本としてはどう対応するかというような点について、大臣のお考えなどがありましたら聞かしていただきたいと思います。
  11. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はやはり、こうした食糧事情の中でございますから、世界的といいますか、国際的な食糧会議が持たれて、そして今後とも国際的なそうした会議の中で備蓄問題等が取り上げられ、これが合意が得られるということは大変結構なことである、ということで、私、日本としても、これに対しては積極的に参加し、そして討議を行っていきたいというのが基本的な考え方でございます。いまお話がありましたように、アメリカ自体——今回のロンドン会議では、キッシンジャー構想といいますか、このローマにおいて提言をされた構想が、そのまま打ち出されておるということでもありませんし、アメリカの中においても、多少、備蓄という問題については、いろいろと考え方についても意見もあるようでございますので、これはいまおっしゃいましたように、どういう考えをしておるのかということを、もっともっと突き詰めていかなければならないと思います。また、その他のEC諸国あるいは開発途上国諸国あるいは生産諸国は、それぞれやはりその国の国益というものがあるわけでございますから、そういう立場に立って、いろいろと意見の間にも、もちろんまとまる状況にもないわけでございますので、これは、国際的なそういう会議に対しては、積極的な参加という姿勢ではございますが、生産国なり、あるいは開発途上国なりの考え方というものを十分見きわめながら、わが国としても対処していく、非常に慎重な立場でこれは対処していかなければ、わが国は最大の輸入国でございますから、これはならないということでございます。今後また食糧会議が持たれると思いますが、そういう会議に当たっても、そういうふうな基本的な立場で、各国対応を見詰めながら慎重にやっていきたいという考えでございます。
  12. 神沢浄

    神沢浄君 ちょっとくどいようですけれども、私がお伺いしたい点というのは、仮に伝えられておりますように——これからのいろいろ動向というものを見詰めながらというお話はわかるわけですけれども、仮に伝えられておりますようなキッシンジャー言うところの備蓄構想なるものが、各国にそれぞれ割り当て、責任を持たして、そして、おのおの要するに、責任を持つということになれば、日本で金を出してアメリカ備蓄をされるということになっていくのじゃないかと私は思うんですが、そうであれば、やっぱりこのバーマ事務局長が言っておるような、そこまで踏み込んでは大変何か危険が生ずる。こういう意見は私は非常に理解しやすいとこう思うのですが、したがって、仮にキッシンジャー構想なるものが、伝えられておるようなものであるならば、その際は日本ではどういうような対応をされるかということをお聞きをしたかったわけなんです。
  13. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、キッシンジャー構想そのものを、今度のロンドン会議においてはアメリカ側が主張しておらないといいますか、相当、たとえば六千万トンという話が、六千万トンから三千万トンというふうな非常に幅を持った話し方になってきておるわけでありまして、必ずしも私は、これはアメリカ自体としても煮詰まった提案ということにはなっていないと思いますし、これは今後ともアメリカの動きというものを見ていかなきゃならぬと思います。私は、備蓄というものは、今後やはりいずれ具体的なスケジュールとなってくると思いますし、そういう中にあって、日本もやはり消費国として国内において備蓄を持つということは、国際的な合意の中において煮詰まってくるかもしれないし、それに対してはやはり対応していくということは必要であろうと思うわけです。で、いまおっしゃいましたように、日本もこれから食糧を大量に輸入するわけでございますが、そういう面で、日本食糧アメリカ備蓄に仰ぐといいますか、日本食糧あるいは飼料というものをアメリカにおいて備蓄をする、こういうふうなことにつきましては、これは非常に問題があるんじゃないか。何といいましても国が違うわけでございますし、そして主権ももちろん違うわけでございますから、アメリカにおいて日本食糧飼料というものを備蓄した場合において、これはいざといった場合に、容易に日本が、日本備蓄だからといって日本に輸入できるかということになりますと、これはなかなか困難な問題もあり得るということ。これはもう十分われわれとしても考えて、こういう問題が起こったときは対処しなければならぬと思うし、私の考えは、アメリカにおいて日本食糧備蓄するということは非常に不安という面があるわけでございますから、よほど条約か協定かで煮詰めれば別ですけれども、そういうことをしないで、簡単にそういうふうな、日本食糧アメリカ備蓄するというふうな構想に乗るということは非常に危険であるというふうに私は考えておりまして、むしろそういう方法はとりたくないと、こういうふうに思っておるわけであります。
  14. 神沢浄

    神沢浄君 まあその問題はその辺でおきたいと思うんですが、ところで、冒頭申し上げたように、今度の所信表明を読ましていただきましたり、それから、きょうまでの衆議院、参議院両院論議などをお聞きしておりまして、大臣が、日本農政転換というか、新しい農政の推進にたいへん意欲を持って取り組まれておるという点は、これはもう十分に私も受けとめております。ただ、そこで、大臣のその意欲を持っての取り組みというものの基本考え方といいますか、ちょっとしゃれた言い方をしますと、まあ、これからの農政の思想とでも申しましょうか、そういうふうな点でもって、まだどうも割り切れないものが感じられるわけなんです。率直に申し上げますけれども、私は、やっぱり一つ考え方として、きょうまでのいわゆる農基法農政というものは一応失敗したんだ、これは破産をしたんだ。こういう考え方の上に立って、そして言うなればその全く新しい農政展開をしていくんだという姿勢であるのか。まあそういうふうに見受けられる点もあるんです。かなり幾たびかの機会でもって大臣は、きょうまでの農政反省を述べられている点などからいたしまして、そう受けとめたいと思う点もあります。しかし、そうではなくて、やっぱり農基法農政というものはそのまま認めた上でもって、いわばその延長線上でもって、その必要な軌道修正というか、手直しをしていく。たとえば経済自体成長経済から安定経済へ移ってきておる、あるいは国際的に見ても食糧事情というようなものが非常な変化を遂げてきておる。こういう変化の前に、従来の農基法農政をそのまま遂行することはもうすでに困難に立ち至っておるから、若干のやっぱりその手直しをしていかなきゃならないというふうな、いわばきょうまでの農業基本法というものの上に立っての延長政策であるのか、その辺の考え方というものを——まあそうとも思えるのは、大臣も幾度かその農基法理念を、これはたいへんりっぱなものだという認め方をされているからです。  ですから、いままでお聞きしておって、これから展開していく安倍農政というのは、どちらのほうの路線に立脚をしておるのか。いままでのものをそっくりもうこれは破産と認めて、全く三木総理が言うように新規巻き直しに出発をされるのか、それとも従来のやっぱり延長路線上にその手直しをしていくというのか、その辺がどうもまだちょっと私などにははっきりわからない点が残っているわけなんです。そんな点をきょうは少し大臣にしっかりと伺いたいと、こう思うんですが、まずそういうまあひとつ基本論議からお願いしたいと思います。
  15. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) たいへんむずかしい議論でございまして、まあこれイエスかノーかと攻められますと、私としても、明快な御答弁もなかなかできかねるわけでございますが、しかし、私はいま御指摘がございましたように、農業基本法ができた当時の農業を取り巻く情勢と、今日の農業を取り巻く情勢というものは大きく変化をいたしておるわけでございますし、その間には、御存じのような、まあ一〇%を超えるような日本経済高度成長というものがあったわけでございまして、私自体は、やはり今日の国際的な食糧事情あるいはまた高度成長というものの上の反省に立った安定成長という路線がここに新しく展開されようという時期でございますから、これやっぱり農政もそういう中にあって客観的には一つ転換をしていくという条件といいますか、時期というものは熟しつつあるんじゃないだろうかとこういうふうに思っております。また、国民の受け取り方を見ておりましても——たとえば高度成長時代経済界等におきましても、国際分業論であるとか、あるいは経済合理主義的な立場に立った農業の割り切り方とか、そういう意見というものが非常に強かったわけでございますが、その経済界においても、やはり今日の日本農業を取り巻く情勢から見て、農業自給力を高めるためには、多少はコストが高くなっても農業に重点を置くべきだと、こういうふうな議論も出ておるわけでありますし、また国民自体も、先ほどからお話がございましたような世界的なああいう食糧会議あるいは海洋法会議が開かれておるというような世界的な資源問題、食糧水産問題に対する一つ危機感というものが、国民の中にも一つ空気として出てまいりまして、やはり農業につきまして新しい角度からコンセンサスを求めながら、新しいひとつ農政展開をすべきであるという一つ空気が出ていることも私は事実じゃないだろうか。そういうふうな角度から見ますと、私は、やはりこれからの農政というものにおいても、やはり農業自体、それから農業を取り巻く客観情勢から見ましても、一つの大きな転換を行っていかなければならない、いく一つ情勢というものが来つつあると思うわけであります。そういうふうな認識から私は、やはり農政というものを取り組んでいきたいということが私の考え方であるわけでございます。  まあ、しかし農業基本法そのものが悪いかどうかという判断になりますと、私は、むしろ農業基本法精神であるとか、あるいはその根幹であるとかいうことよりも、その後行われた異常ともいうべき高度成長経済が、結局、農基法に基づく農業政策をまともに展開をしていく、そういう情勢に大きな何かブレーキといいますか、そういうふうなものになってしまって、結局、一面においては、それは生活水準が高くなるとか、あるいはまた農家所得がふえたとはいいましても、しかし、農業の中においては、高度成長経済の中にあって、大変なしわ寄せといいますか、そういうものが出て、農業自体が脆弱化してしまった、ということは否めないことであろうと思うわけです。ですから、そういうふうなことを考えますと、農業基本法自体根幹精神というものには間違いはなかったけれども、その後の客観情勢の大きな変化というもの、これは、われわれは十分認識して、その上に立ってこれからの農政を始めていかなければならない。そして、高度成長によるところのひずみということに対しては、農政自体の中においても、それは対処してまいったわけですが、高度成長のあの激しい成長状況の中においては十分対応し切れなかったということにつきましては、これはやはり私は反省をしなきゃならぬと、こういうふうに思うわけでございます。ですから認識としては、先生との間に、そう大きい差というものはないわけでございます。で、農基法が悪かったからこれをやめて、それで新しい法体系といいますか、をつくるというふうなことについては、私は、農基法そのもの根幹というものは、いまでも間違ってはいないというわけでありまして、これからしかしどういうふうに対処していくかということが問題であろうと思います。私は、やはりいろいろそうした変化に応じて、これからの新しい転換期の農政を行なう場合においては、具体的な政策につきまして一つずつ着実に勇気を持って、これを積み上げていくということが今日求められておるんじゃないだろうか。私はそういうふうな基本的な考え方に立って、今日まで努力をしているわけでございます。
  16. 神沢浄

    神沢浄君 わかるんですけれどもね。わかるんですけれども、根本のところがどうしてもわからずに残るわけなんです。農基法理念は、それは確かに大臣が言われるとおり、文章としてはりっぱですよ。まあ前文に掲げるもの、目的に掲げるもの、確かにりっぱな文章であることは私どもだってそれは認めるにやぶさかでないですけれども、しかし、政策として考えてみたときに、農基法が目指したものは、これは第一には、農業所得の増大と他産業との格差の是正、これは成功しておるとは絶対に言えないと思いますね。むしろこれは、逆行したと思うんです。それから農業生産構造改善選択的拡大、それは形の上ではそうなっていることは事実ですが、やあ畜産がふえたから、果樹がふえたからということでもって、それが拡大された、新たに選択をされた部門が成功をしたかというと、ことに狂乱的な物価情勢の中などにおいては、むしろ政府の奨励することに農民は忠実に従って、そしていまや畜産危機を迎え、果樹危機を迎えておるということ、これは否めない事実だと思うわけです。やっぱり決して成功はしていないと思うんです。  それから次には、自立農家の育成と言われましたけれども、これも今日においては大変むずかしい情勢になっておって、政府自体も、今度は中核とか中堅農家などというふうに言いかえられてきておるような時代になっており、それとあわせての離農促進。私は、農基法成功したのは、この離農促進というところだけだったのじゃないかというふうに判断をしているわけです。そうなりますと、今日までの農基法農政というものは、だれのためのものだったか、農民のための部分というものは一つとして成功をしていない。離農促進という点だけ、これは確かにいま農村から人がどんどん減っていってしまいました。結局、これは工業に吸収をされたのでありまして、したがって、重工業本位のこの高度経済成長のためには、この農基法農政は大変に役立ったという結果だと思うわけでありますが、農業のためには所得の増大格差の是正も、自主農家の育成も、構造改善選択的の拡大もこれはすべてみんな裏目に出てしまっておるという、この現実の問題から私は今日までの農基法農政というものは一応失敗をしたというか、破産をしたのだというこのやっぱり現状の認識というものを根底に置かなければ、次の農政の出発というものが私は不可能じゃないかとこう思うわけなんです。あわせて自分の意見をつけ加えたいと思うのですけれども、きょうまでの文章ではりっぱであったけれども、なぜ農基法農政が農民のために裏目に出てしまったかという一番根本の問題は、私はやっぱり少ししかつめらしい言い方をしますけれども、価値観の問題じゃないかと、こう思っておるわけです。やっぱり経済主義的な考え方というものが、安上がり農政を生み、国際分業論を生んでしまった。これが掲げたものはりっぱだったけれども、全く農基法農政なるものはそれにさいなまれてしまった。こういうことだったと私は思うのです。したがって、新しい農政というのは、きょうまでのその農基法農政の現実の失敗を認めた上でやっぱり価値観の切りかえをして、これはもう日本農業の再建というのは、経済主義ではこれはまあとうてい成り立たない。やっぱり従来のものは一てきをして、これはいまお見えにならぬけれども、何か本会議でもって与党の温水先生自体質問の中で述べられていたように思いますが、やっぱりこれは全く社会政策的な見地に立って農政というものの考え方の切りかえをしなければ、私は安倍農政というのは成り立っていかないのじゃないか。こうまあ思うのですが、その点についての大臣の御見解はどうでしょうか。
  17. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、基本農政といいますか、その後の農業基本的な政策が、必ずしも皆失敗であるというふうにはもちろん考えてないわけでありまして、農業の生産力自体から申しましてもやはり今日までの生産力は相当増大をしたことも事実でございますし、まあたとえば選択的拡大の中でいつも言われるわけでありますが、畜産だとかあるいは果樹、そういった部門におきましては異常な——異常といっては語弊があるかもしれませんが、二倍あるいは三倍というほどの畜産、果樹等の伸びはいたしておるわけでございますし、今日のわが国の食生活が非常に高度化し、多様化してきたわけでありますから、そういうものを支える農業生産といった面についてはある程度成功はいたしたのじゃないかと実は思っておるわけでございます。また、農家所得といった面につきましても、これが向上していることもこれはまあ事実でございますが、しかしそうした農業生産の増大あるいは農作物の生産の増加という部面はあるわけでございますが、半面におきまして、やはり鉱工業生産といいますか、高度成長の異常な発展によりまして、格差といった面につきましては、あまりにも農業の生産性が高まり、あるいは農業経済成長が高まったとはいいましても、他産業と比べますと、その成長度というものはやはり格差が年々ついてきて、そこに今日いろいろと御指摘、御批判を受けるような事態が起こったことも事実でありますし、また自立農家がやはり農業基本法に指向するような拡大、発展をするというよりは、むしろ縮小をしたというふうな面があることもわれわれとしても考えなきゃならぬわけであります。が、これは、やはり高度成長の中において一番大きな問題は、やっぱり土地というものが高度成長の中にあって非常に大きな農政の発展といいますか、規模拡大を妨げ、自立農家を育成する最大のブレーキになったのだと。結局農地というものがむしろ資産的な所有というふうな面が強まってきたために、農地が有効に利用され活用される規模拡大につながっていくということじゃなくて、むしろ農地が高度成長一つの一翼を担うまさに壊廃の方向へ行っておるということも事実であろうと思うわけでございまして、そうした高度成長のひずみというのが、農業生産自体は伸びてきても、そこの間にだんだんと、ウサギとカメではありませんけれども、開きが大きくなってきているということは率直に認めなければならぬと思うわけであります。すべて高度成長責任をなすりつけるわけではありませんけれども、そういうことが今日の農業におけるいろんな面を弱くしたということにもつながっていくし、農村の労働力が非常に弱くなったということも高度成長のもたらした一つのひずみであろうと思うわけでございますから、むしろそういうひずみといったような問題を率直にここで取り上げ、これをひとつむしろ切りかえていく。ちょうどわが国経済高度成長路線から安定路線へ切りかえていくわけでございますから、その辺はまさにチャンスじゃないだろうかと思うわけでございまして、根本的な出直しということよりは、むしろ軌道修正といいますか、そういうことで具体的に一歩ずつそういうひずみを一つずつ思い切って、これは勇気を持たなければできないわけですから、勇気を持って切りかえていくということにむしろ私は重点を置いた農政をやっていきたいと、そういうふうに考えておるわけでございます。
  18. 神沢浄

    神沢浄君 いま大臣がいみじくも言われたように、いままでの農政も失敗のみではない、生産の増強もあったし、それはいわゆる選択的拡大も推進をされたと、それは認めますよ。認めますけれども、あわせて言われておりますように、にもかかわらず、なぜいまの日本農業が全体的には衰退をしていかなきゃならないのか、私は、問題はそこだと思うわけなんです。したがって、そこの問題を切りかえていかなければ、私はどんなに御苦労をなさっても、やっぱりいままでの轍をただ繰り返していくにすぎなくなるではないかという点が私の実はお尋ねをしている中心点であるわけなんですが……。  そこで、余りその問題の論議だけやっておりますと時間がございませんから、次に所信表明を拝見をいたしまして、いろいろ新規なものなどにも取り組まれていることはわかるんです。しかし私、農業の再建というものを考えるときに、いま大臣もおっしゃられたのですが、それは土地の問題があり、金の問題があり、労働力の問題があり、それらの問題のもっと根底にあるものは、やっぱり私は農民の意欲という問題だと、こう思うのですが、幾ら道具立てをそろえてみたところで、やろうという気持ちが起こり得ないならば、これはもう全く画餅に帰さざるを得ない、こういうことだと思うのです。  そんなような点について少し論議をしてみたいと、こう思うわけですけれども、まず、ひとつ先に資料的なものをお伺いをしたいと思うのですが、最近十年間の農業就業人口の推移ですね、これは恐らくふえてなんかいっていない。それから現状における農業就業人口の内容、年齢別、それから男女別の構成とでも言いますかね、それをちょっとお尋ねいたしたいと思います。
  19. 吉岡裕

    説明員(吉岡裕君) 農林省で毎年農業調査というのをやっておりますが、これによりまして、いまお尋ね農業就業人口を見てみますと、昭和三十八年に千二百四十九万人ということになっております。四十八年に八百二万人ということでございますので、この十年間に三六%農業就業人口は減少をしておるということに統計上なっております。このうちで女性の占める割合を見てみますと、三十八年が五九%でございまして、四十八年にはそれが六三%ということで、構成比率としては約四%ほど女性のウエートが高まっておるという結果になっております。  それから、次のお尋ねの年齢構成でございますが、これを、基幹的な農業従事者の年齢構成が統計上出ておりますので、これで見てみますと、二十九歳以下のウエートが三十八年に一八%ということでございましたが、四十八年にはこれが八%というふうに低下をいたしておりまして、その上の年齢階層の三十歳以上五十九歳以下というくくりで見ますと六五%から六九%というふうに上がっており、また、六十歳以上の階層で見ますと一七%から二二%というふうに高まっておるわけでございます。  このことで若干つけ加えて申し上げておきますと、こういうふうに若年・壮年層の男子を主体に一農業就業人口の減少が続いておりまして、農業就業人口のいわゆる老齢化あるいは女子化というようなことが進行しておるのでございますが、最近のやや目につく傾向といたしまして、男子の基幹的農業従事者の減少率が最近この数年間やや鈍化をする傾向にございます。それからもう一つは、他産業から離職をいたしまして農業に還流をしてまいって農業に従事をする者というものの数が近年増加をする傾向にございまして、これが四十八年に十一万二千人というふうな数になっております。これが、最近の新規学卒者で農業に従事をいたします者の数がこれは最近減少傾向を続けておるわけでございますが、これを大幅に上回っておるというふうな、やや目につく傾向もあるわけでございます。
  20. 神沢浄

    神沢浄君 要するに就業人口の減少というのは、それは内容的にはいろいろな理由というものがあるだろうと思うのです。別に農政の失敗のみではないでしょう。しかし、就業人口の内容ですね。これは、女性化、老齢化というのはいまの数字の上にはっきりとあらわれてきていると思うんですが、最近の鈍化現象というのは、これは私は農政の関係というよりか、むしろ最近の公害の関係の方が主たるものじゃないかと思うのです。だんだん都会も住みにくくなったから、これはもういたたまれずにUターンの現象というものが起こってきたと、こういうようなことの方がむしろよけいに考えられると思うのです。  そこで、所信表明の中で農業の中核的担い手の確保云々ということが言われております。文章としてはよくわかるのです。しかし、いま統計上の数字で示されたような現状を打開していくには、これは文章だけでとても解決はできないだろうと思いますし、麦、大豆、なたねに奨励金を出してみても、水田裏作の奨励のために金を出してみても、私は、その程度のことでもって意欲の喚起ができるかどうか、はなはだ疑問だと、こう思うのです。  そこで、まず第一に、大臣に伺いたいのですけれども所信表明で言うどころの中核的担い手をどう確保するか、という点についてどんなお考えをされておるのか、私はそこら辺が勝負どころだと見ているのです、安倍農政の成否は。これはいろいろやられてみても、ほんとうに農民がやる気が起こらないんじゃどうにもならない。何も安倍農政の成否にかかわらず、日本農業の将来がかかってきている問題じゃないかと私は思うんですが、その辺をちょっと論議をしてみたいと思います。
  21. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まさにいまお話がございましたように、これからの農政あるいはわが国農業が安定的に成長していくかどうかの決め手は、農業を担当するところの農民の皆さんの意欲そのものにかかっておる。いわば人が、結局これからの農政農業においてまさに中心になってくると思うわけでございまして、確かに今日までの農業におけるところの労働力というものは、いま統計部長からお話がありましたように、年々非常に脆弱化しておることは事実でございまして、したがって、これからの農政基本としては、自給力を高めていく中において、農民の皆さんに生産意欲を持っていただくということであろうと思うし、その中におきまして、私たちが強く主張いたしておりますのは、まさに基幹的な農業の従事者ともいうべき中核農家の皆さんにやはり中心になってこれから農業を支えていただかなきゃならぬ。これに対して、傾斜的に一つ政策を施行して、そして意欲を持っていただこうということが私ども考えで、私の所信表明の中にもそういう趣旨を盛ったわけでございます。中核的農家がこれから生産意欲を持ってやっていただくにいたしましても、まずやはり基盤となるのは水あるいは土地という生産基盤でございまして、この生産基盤につきまして、これを確保して、そしてさらにこれを有効に利用していくという政策を今後は思い切って進めていかなきゃならぬわけでございます。そういうふうな立場に立ちまして今後、土地改良の計画等につきましても、ずいぶんおくれておりますから、これをひとつ思い切って進めるために最大の努力もしていかなきゃならぬわけでありますし、あるいはまた、高度な利用という面からいきまして、裏作の振興等につきましても、あるいは未利用地等の再利用といったようなことにつきましても、復元等につきましても、その施策を裏づけていかなきゃならぬわけでございますし、そういうふうなことから、今回は農振法の改正といった問題につきましても皆さんの御審議をお願いをいたしておるわけでございます。  こうした土地、水等の基盤の整備を行うとともに、やはり中核的農家の皆さん方が安心をして農業をやっていけるというためには、やはり農産物について再生産が確保される価格を維持していくということが大事なことでありますから、やっぱり価格対策ということが、これは同時に生産対策とともに、大いにこれは今後とも改善をし、強化していかなきゃならぬ。畜産等につきましても、いろいろと問題があったわけでございますが、今回も畜安法の改正をお願いをしているということも、こうした価格対策の強化の一環としてお願いをいたしておるわけでございますし、その他の価格政策につきましても今後ともひとつ意を注いで、農家の再生産が確保される価格が保障されろというための努力を傾注したいと思うわけでございます。さらに、税の面あるいは金融の面といったことにつきましても、農家の生産意欲に直接つながっていくわけでございまして、相続税の減税措置であるとか、あるいはまた金融等につきましても、今回近代化資金の枠を一挙に五割ふやしたことも、資本装備を強化することによって中核的農家の方々に生産意欲を持っていただきたいという私たちの考えの一端を打ち出したわけでございます。  さらに、生産基盤、生産対策、価格政策とともに、やはり農業を取り巻く環境というものをよくしていくことが大事でございますので、そうした環境整備という問題につきましても現在予算措置等も講じておりますが、こうした点についてもさらにひとつ力を尽くしていきたい。そうして中核的農家の皆さんが、自信を持って、そうして農業生産にいそしんでいただけると、こういうふうな魅力ある農村づくりというものをやっていきたいと思うわけでございます。そういうことを、もろもろの政策を今日もできるだけ努力を尽くしてやっておるわけでございますが、やはりそうしたもろもろの政策を進める場合においても、やっぱりいままでは何となしに何かこう農政が変っていくんじゃないかと、不安だという声があるわけでございますから、そういう声を率直にとらえてわれわれとしては反省をし、これからの農政というものに一つの指標というものを与える必要があるんじゃないか。そういうことから、農政審議会に、現在中間報告も出されておりますが、お願いをいたしまして、答申を求めて——今後十年間というものを一つの目標にいたしまして、農業におけるところの需要とそうして生産の目標について答申をいただいて、その上に立って総合的な食糧政策を何としても打ち出していきまして、農家の皆さんに一つの指標といいますか、一つの目標を与えていくということが、もろもろの施策を打ち出す場合におきましても大事なことであろう。こういうことで、私ども実は、農政審議会の御答申をお待ちしておるわけでございます。大体四月の初めごろには御答申をいただけると思いますので、その御答申を十分踏まえて総合政策というものを打ち出していこうと、こういうふうに考えております。
  22. 神沢浄

    神沢浄君 大臣意欲は、重ね重ね言うように、よくわかるんですが、ですけれど、それにしては、ことしの予算もあまり十分とは言えないと思うんですがね。ちょっと私調べてみたところでは、総予算は対前年比が二四・五%ぐらい増になってますが、農業関係のほうは一九%ぐらいしかならないようですね。  それから、大体、大臣が新たな意欲を持って取り組まれてまあ出発をされる農政だと思いたいんですけれども、総予算に対する農業予算の比率というのは、農基法農政が出発をした三十五、六年当時さえも一一・四、一一・五%ぐらいを占めているんですけれども、ところがことしは一〇・三%ぐらいにしかなっていないようなんですね。そういう点はどうなんですか。
  23. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 五十年度予算につきましていろいろと御批判があることも事実でございます。私といたしましても、今回の予算編成に当たりましては、先ほどから申し上げましたような農政一つ転換期を踏まえて、何かやはり先ほどから申し上げましたような考え方のもとに、ひとつ芽を出さなければいけないということで全力を尽くして予算編成に当たったわけでございます。もちろん、必らずしも十分な編成ができたとは思ってないわけでございます。いま御指摘のように、総予算との比率の問題、あるいはまた伸び率等にいたしますれば必ずしも十分でなかったということは率直に考えておるわけでございます。が、まあ農業、農林関係への予算は食管とか公共事業そういうものが非常に大きなウエートを持っておりまして、食管赤字が増大をすれば予算がふえるというふうな面もあるわけでございますが、今回は御存じのように、公共事業費が全体的に横並びということになって、そうした抑制基調がこの農業の基盤整備にもそのまま来ておるわけでございますけれども、しかし、まあ農業の公共事業につきましてはそうした横並びの中にありましても、多少三・四%程度ではありますけれども、他の公共事業に比較をしてふえたということはこれはわずかではありましても、われわれの農業の基盤整備というものに対する熱意が評価されたのではないかと思うわけでございます。基盤整備関係のいわゆる公共事業費以外の一般事業費につきましては大体二四%程度これは予算がふえておるわけでございますから、したがって、全体的には、いまの比率の問題がありますけれども、私は、その予算編成の中におきましては、先ほどもお話し申し上げましたような基盤整備——公共事業を除きまして、たとえば裏作の奨励関係の予算であるとかあるいはまた飼料の増産対策であるとか、あるいはまた食糧増産といいますか、これは構造改善事業につながっていくわけでございますが、そうした食糧増産関係対策費であるとか、あるいはまた、水産におきましては漁場造成等の予算という重点的な予算につきましては、ある程度確保いたしまして、これからの農政を進める場合におきましてもそうした重点面においては何とかやっていけるんじゃないかと、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
  24. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 関連。いまの神沢さんの予算の問題について。まあいまお話のありましたように、農林省予算というのは、国の予算の伸び率に対しましてそんなに差のないような形で伸びてきているわけですよね。ただし、昭和四十八年のあの列島改造予算のときに、私の記憶では六%ほど格差がついた。去年、四十九年度は〇・二%ほどの格差があった。その前は大体ほぼ同じぐらい、まあ少し低いという程度。ことしは、いま神沢さんのお話のように、五・五%という格差がついたんですね。この格差、四十八年度のやつを除いて、戦後の最も格差がついたんじゃないかというふうに思うんです。  それからもう一つは、大体国の予算に占めている農林省予算というのは、まあ一一・四、五%というところで横ばいになっていまして、それがだんだん後退をしてきたわけですよ。そして、今度は一〇・二ですよ。たしか一〇・二だと思うんです。いま私資料を持っていませんが、私の記憶では一〇・二という、これは地盤沈下ですよね。国の予算の中に占めている割合、それから農林省予算の伸びの割合からいって、地盤沈下だと思うんですよ。ですから、なぜこういう地盤沈下になったのかという点を、私は率直なところお聞かせをいただきたいと思っているんですよ。何といっても横ばいから後退をしてきたやつが地盤沈下した。なぜ地盤沈下したのかという点を、率直にひとつお聞かせをいただきたい。  私は、今度大臣所信表明につきまして、いろいろ時間をかけてお伺いしたい点もあるんですけれども、今度はどうも割り振りの中に入っていませんので、改めて食糧政策の展望の問題、それから六十年を目標にした農産物の需給と生産の見通し、そういう点について、四月にはきまるそうでありますから、その前に、この二つについては徹底的に論議をしたいと思っています。ですが、いま関連しての質問は、私は地盤沈下だと、農林省予算は。なぜその地盤沈下になったのかというところを率直にお伺いしたい。
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあこれは、全体的な予算編成の基調が、総需要抑制基調という中で組まれたわけでございまして、そうした予算編成の中におきまして、社会福祉関係の予算が、非常に今日の国民的課題の中にあって伸びたということが、全体の予算の比率の中にもこれは影響していることは事実であろうと思うわけでございます。私は確かに数字の上においてはいろいろ御指摘があるような問題もなきにしもあらずだと思いますが、まあ過去をずっと見ますと、やっぱり食管比率によって農業予算の比率がずいぶん変わっておることも事実であろうと思うわけでございます。まあ、今回の予算につきましては、私としては相当意欲的に予算の編成をやって、まあまあいろいろと御批判はありますけれど、なかなかよくやったじゃないかというおほめの言葉も各方面からもいただいてもおるわけでございます。その中において、一般の公共事業は三・四%ですか、伸びたということも、建設省関係の道路であるしとか、その他の港湾であるとか、そういう公共事業費が〇%であるということから比較すれば、まあこの公共事業の三・四%の伸びというのは少し少ないですけれど、評価もいただいておるわけです。漁港関係につきましては九%伸びたわけでございますし、また、一般事業費のほうが、私の資料では二四%伸びておりますから、したがって、重要な施策を推進する上においては、まあまあの予算を獲得をすることができたと、私はこういうふうに思っておりまして、いろいろと御批判はありますけれども、とにかく基盤整備事業、公共事業等が、いままでの、どちらかというと下降状態がきておったのが、歯どめがかかって、むしろ上昇傾向にきたというふうなことも、また予算の数字の中で示されておるわけで、いろいろと御批判はありますけれど、評価もいただいておるわけでございまして、私どもは、もちろん今回の予算だけでもってもちろん満足するわけでもございませんし、今後五十一年度からの予算編成にかけて総合政策というものを打ち出して、思い切りやってみたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  26. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、要するに地盤沈下したという、なぜ地盤沈下したのかということはだれしも疑問に思うわけですよ。それは安倍農林大臣にいたしましても、守りの農政から攻めの農政へというお話でありましたし、それから三木総理お話農業については非常に意欲的なお話でありました。にかかわらず、私の言うように——これは私が言うだけではなくて、地盤沈下だとだれも評価しているわけです。そう数字が示しておるわけですから、地盤沈下だと。なぜそういうことになったのかという点を私はお尋ねをしたいわけなんです。  私の感じでは、ちょうど予算編成のときには、御承知のように、食糧政策の展望と、それから、これからの十年後を目標にした食糧政策の展望と、それから農産物の需給の見通しというものは固まっておったわけですよね。あれを見る限りは、これは予算なんかつきっこないと私は思うんですよ。あんなものをつくっておったんじゃ、これは大蔵省に切り込まれるし、それから財界に切り込まれるし、予算がつきっこないと私は思うんですね、ああいうものでは。そこへ最も大きな原因があるんじゃないかと私は思っているわけなんですよ。一言で言えば、今日の農業の実情というものをほぼ前提にして、それを固定化したような感じを非常に強く受けるわけですよ。  中身は、それは小麦なり大麦なり裸麦、あるいは大豆、なたね、まあ二十一年ぶりにと言ってもいいでしょう。増産をするという、農産物を増産する、畜産は別にして、農産物を増産するという言葉が出てきましたけれども、これは金が百八十六億ぐらいですから、大したものじゃないですよ、出てきている問題は。大した問題じゃないと思いますけれども、ただ、何でしょう、全体としていままでは何となくヨーロッパ型の食生活というのがイメージとしてあった。それを日本型の食生活という形にお変えになった。ここらあたりでカロリーの問題についても、あるいはたん白の取り入れについても、さらに油脂類の取り入れについても、ほぼまあまあここらあたりじゃないかと。そういうようなお話をなさるならば、これは予算がつくわけはないじゃないか。カロリーはもうこの程度でいいという話でしょう。いま二千五百七十カロリーぐらいでしょう、一日。ちょびっとふえているぐらいのことで、もう伸び率もがたっと落ちる。それで日本型の食生活をお考えになるなら、それは私は畜産を一生懸命やっていこうとか、あるいは何を一生懸命やっていこうという形にならぬのじゃないですか。私はあれを見まして、それは大蔵省にたたかれて踏みつけにされるのは、あるいはその他の方から踏みつけにされるのは、これは当然じゃないか。だから、農林省予算というのは地盤沈下したと、こういうふうに考えているわけです。いずれ詳しくそれはまた改めてやりますけれども、そこら辺、農林省どう考えておられるのですか。農林大臣でもいいんですが、なくてもいいですよ。農林省はどう考えているか、何か、ばちっとしたものがないですよ、これ。  七二年からはっきり世界食糧危機というのが言われているわけですから、その中で農政をどう建て直していくかというような考え方をもっとはっきり出すべきではなかったかと思うのですがね。自給力を高めるというような言葉を聞いたって、どう自給力を高めるだとか、潜在的自給力だとか、中には純自給力だとか、いろいろな話が出ちゃって、実は農業基本法は時代おくれだ、やめろという話も出るし、いや、農業基本法でやるんだというお話も出るし、農政考え方が私は根本的に混乱していると思うのですよ。そういうことで何が大蔵省に切り込めるか、財界に切り込めるかと私は思うのですね。そこのところを率直にお聞きしたい。
  27. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまの御意見、率直に胸に受けとめまして、これからひとつ大いに、農業転換期でございますから、意欲を持ってこれからの農政に当たりたいと思うわけでございますが、五十年度予算につきましては、そういう御批判もありますけれども、先ほどから私もこもごも申し上げましたように、基盤整備につきましても、あるいは一般の事業費等につきましても、まあ私としては最大の努力を払ったわけでありますし、私が考えておりました新しい政策の芽もその中に盛り込むことができたわけでございますし、もちろん十分とは言えませんけれども、そういう点では各方面からも評価もいただいておるわけでございます。まあしかし、全体的にはやはりまだまだひとつしっかりがんばらないと、農村、農民の御期待にもこたえ得ないわけでございますから、今後総合的な政策を打ち出し、そういう中にあって、今後の問題にひとつ意欲を持って取り組んでいきたいと思うわけでございますが、大体基本的にはそういう考えでございます。
  28. 神沢浄

    神沢浄君 時間がなくなってまいりましたから、私もはしょって質問を続けたいと思うのですが、さっき大臣のお答えの中で、全く私も同感をいたしました点がございます。それは何かと言うと、奨励金を出そうが、基盤整備に努力をしようが、やはり農民の生産への意欲の喚起ということが、これは土台の問題であって、それには大臣もお答えの中で言われておりますように、やはり農産物の価格の安定を確保して、安心して食える農業というものを示さなければ、農業の再建は始まっていかないという点、これについては全く同感であります。ですから、私も時間があれば——いまの農産物価格の安定支持制度というものが、とにかく日本農政の場合、複雑多岐にわたっているようでありまして、私ども多少農業にかかわり合いを持っておっても、米くらいはわかるけれども、あとの畜産物であろうと、あるいは果樹関係であろうと、むずかし過ぎて何が何やらわけがわからないし、農民の側からすると、あれでもって決して安定されるなどという期待は少しも感じられないような現状になっておるわけでありますから、私は時間が許されたならば、この際、農産物の価格安定制度の内容というものをお伺いをして、少し論議をしたいと、こう思ったわけですが、もう時間的に無理ですから、それはまたいずれの機会にいたしたいと、こう思うんです。  そこで私、結論的にお尋ねをするわけでありますけれども所信表明の中に、需要に見合った供給の確保対策、それから、その上に立って適正な価格形成をはかっていくという点があります。私は、これを文字どおり受け取れば、非常にけっこうなことだと思うんです。これは私は、需要に見合った供給の確保対策というのは、やっぱり、生産計画的なものを示しておるんではないかと、こう思うんです。したがって、その上に立って、適正な価格形成というのは、米に見られるような、農家が安心して農業に従事ができる、言うなれば、その再生産の確保も可能であり、生活もそれによって保障がされるという、所得の補償が約束をされるような価格形成というものが、これがやっぱり実現をいたしませんと、口先の上では、適正な価格形成と言い、あるいは農産物価格の安定を図ると言っても、これは農民の方ではあまり信頼ができないんじゃないか、いままでの幾たびかの経験の上に立って。いまの価格制度をそのまま進めて、今度は畜安法の改正をして、そうして生肉の一部をこれに繰り入れるというようなことも承ってはおりますけれども、その程度のことでもって果たしてそれじゃ、畜産に意欲が持てるかどうか、私は疑わしいと思うんです。  そこで、大臣がお考えになっている、この所信表明の中で言われておる需要に見合った供給の確保対策、それから適正な価格形成というのは、どの程度まで考え所信表明の中でもって言われておるのかというこの点と、私は、自分の意見として申し上げて、お尋ねをしたいんですけれども、やっぱり、農民が信頼できるような価格安定の制度というのは、生産計画の方針とあわせて生産費、所得というものがはっきり補償できるような価格制度というものを実現をしていかなければ、これは農民の側からすると、決して、どんな美辞麗句を並べて訴えられても、とてもそれは信頼されるものではないではないか、こういうふうに私は考えているわけでありまして、その点をひとつお尋ねをしたいと思います。
  29. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私の考え方は、この近年におけるところの世界的な食糧事情考え、将来のその推移を思うときに、やはり世界的には食糧不足するという基調でもって進んでいくと。こういう中にあって、わが国自給力を可能な限り高めていかなきゃならぬというのが、私の今後の農政に対する基本的な考え方でございます。それには、やはり国内における生産体制あるいは価格制度といったものをより充実強化をして、自給力を高めて、国内における自給できる農産物は極力自給をしていくということで、今回の予算措置にもそういうことを考えて行ったわけでございます。今後ともそういう考え方で取り組んでいくわけでございますが、全体的に見ますと、やはり、国内において自給できる農産物は別にして、自給が非常にむずかしい農産物については外国から今後とも安定輸入を図っていかなきゃならぬわけでございますので、こうした基本政策をこれから進めていく場合においては、やはり一つの長期的な見通しと、それから生産の目標がなければなりませんし、それの基礎となるのは国内における需要がどういうふうに移っていくかということも十分把握しなきゃならぬわけでございますから、これを現在の農政審議会に答申を求めておりまして、間もなく御答申をいただく段階になっておるわけでございますので、この需要に見合った供給の確保といったことについては、この農政審議会の御答申を得て、そして今後十カ年を一応の目標といたしまして、総合政策を打ち出して、その中から具体的な政策で裏づけていこうと、こういうことが私の考えでございます。  そうした中にあって、やはり価格問題というものは非常に大事でございますので、この点については、価格制度というのは、いまお話がございましたように、農産物につきましては、まことに多種多様でございます。価格の算定方式一つをとってみましても、生産費所得補償方式であるとか、あるいはパリティ計算方式であるとか、そういういろいろの算定方式もあるわけでございますが、現在はこの価格制度というものを、一本にまとめた補償制度をつくれと、こういう御議論があることは私も十分承知いたしております。が、これからの価格制度を推進していく場合におきましても、これはやっぱり農産物には農産物それぞれの生産あるいは流通の事情が違うわけでありますし、商品の特性というものもございますから、一本の形にしたいわゆる価格保証制度をつくるということは私は必ずしも妥当ではない。ですから、今日非常に複雑ではございますが、この価格制度の内容につきましては、十分今後とも時勢に合ったあるいは賃金、物価といったものの動向ということも考えなければなりませんし、十分そういうことを配慮しながら、再生産が確保されるということをたてまえとして、それぞれの価格制度の中にあってこれを改善をしていくということが価格制度に対する私の考えでございます。今回もそういう意味で畜安法の改正をお願いし、あるいはまた、野菜、あるいはまた、果樹等につきましても、価格制度につきましての強化を図ったわけでございます。価格制度につきましては、これはやはり農民の生産意欲を高めていく上において大事な一つの大きな柱となるわけでございますから、今後ともひとつ十分意を注いでひとつ取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。
  30. 神沢浄

    神沢浄君 政府は、自分の都合のために計画生産をいままでやってきてますね。米だっても、これ以上多くては困るとなれば生産調整をやる。最近は鶏卵の場合だっても、やっぱり生産調整的な行政指導をやっている。ミカンだっても同様であります。政府の言うとおりに選択的拡大だというふうなことでもって農民の側では、忠実にその方針に沿ってその努力をすれば、生産過剰、豊作貧乏だと、こうなってしまう。これでは、私は、農民に幾ら意欲を持て持てと言ったっても、それは無理な話であると思うのですよ。ですから、やっぱりそういう事態というものを回避していくためには、そしてそのことは、やはり日本農業の置かれておるところの条件と情勢という上からいって、したがって、私は最初の基本的な考え方お尋ねを申し上げました際にも触れましたように、やっぱり経済主義的な物の考え方では、日本農業の再建というものはとても不可能だ。もっと言うなれば、社会政策的な見地に立って、その価値観を一てきをして、新たな取り組みでもってやっていかなければ、日本農業の再建の構図というものは成り立たないんじゃないか。ですから、価格政策の問題にしましても、これはもういまのようなああいう複雑多岐にわたって、外国の原料が上がれば、たちまちその制度なんというものはもう全く無力になってしまう。狂乱物価だというようなことでもって、農業の方はむしろ被害者であって、無関係の方から一つ情勢が起これば、もう全く無意味な制度になってしまう、などというようなことを、このまま続けておって、それで農民に意欲を持てと言ったって私は、無理だとこう思うわけであります。  ですから、生産については計画性を持たせる。やっぱり計画生産という事態に入らなければ日本の本当に農業再建というのは不可能じゃないでしょうかね。その上に立って、これはもう一本化でなくて、事情によっては、二本化でもこれはやむを得ませんけれども考え方としては、再生産の確保できる、生活の保障される、所得確保できる。もっとはっきりした農産物価格の安定支持制度というものをもう実現をしなければ、どんなに美辞麗句を並べて、きれいな文章をつくって、あるいはごもっともな表現をされましても本当に農民が信頼をするということは期待できないじゃないかというふうに私は思います。そういう点でもって、実は大臣の御意見を承ってまいったわけなんですけれども、時間がもう終わってしまいましたから、またいずれかの機会にこの論議はいたしたいとこう思うのでありますが、その点についてのひとつ大臣からの考えを最後に承りたい。  あわせて、まあこれはたいへんいままでの論議の内容に比べれば、問題は小さいような問題になりますが、実は例の米の転作の奨励金に対しては、税制の特別措置がこの間決まりましたですね。これは農民の側からいたしますと、米に限らず、それは麦であろうと、なたねであろうと、その他のものであろうとも、やっぱりそれぞれの違った形態でもって、所得補償的な措置というものがいまありますね。これは農民側からすれば、やっぱりいま言った生活のための所得の補償のためにとられておる措置ですから、それは生活費に税金をかけるなどということは、大体、税理論の上から言ったっても、これは許されるべき筋合いのものではないと思うんです。ですから、何か政府側では、いや米の場合は違うんだ、というようなこじつけの説明などもされておるように聞きますが、私は、そういうことではなくて、全くこれは全然意味は違わないものである。生活費に税金をかけるなんというような、ばかなことはこれはあっちやならぬことですから、そういう点で、まあ問題は、これはもう税制のことですから、この委員会ないしは農林省の直接の所管じゃないでしょうけれども、農林大臣としての御意見をあわせてお聞かせを願っておきたいとこう思います。
  31. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまの最後の御質問から御答弁申し上げますが、奨励金につきましては麦とかあるいは飼料作物、なたね等でこれを実施しておるわけでございますが、まあ米の奨励金について特別措置を講じながらなぜ麦その他の奨励金を出しておる作物についての特別措置を講じないのかという御意見でございますけれど、まあ私たちは、米の場合の奨励金とその他麦以外の奨励金とにつきましては、奨励金を出す基本的な立場といいますか、考え方が違っておるわけでありまして、米につきましては、何としても、生産調整という大目的を貫いていくために、やはり農民の皆さん方に米を減反をしてもらうという、まあいわば補償的な意味の奨励金と、こういうふうな立場に立った考え方で出されたものでございます。ですから、まあ、農民にお願いをして減反をしてもらう、そういうことで、まあ特別措置として、これは議員立法でできておるわけでございます。特別措置をとっておるのに対しまして、まあこの麦その他の作物につきましては、これはいわば生産の奨励を目的として、この麦とかあるいはなたね等については生産の増産と農家経営の安定というふうな立場から、これを出しておるわけでございまして、まあその辺におのずから意味は違うわけでございます。そういうふうなことから、奨励金について、米以外の奨励金について課税対象から外すということはなかなか困難な面があるわけでございます。  しかし、私といたしましても、この前大蔵委員会で米の奨励金に対する特別措置の議員立法が可決されるに当たりまして、その他の奨励金についても考慮をすべきであると、こういうふうな委員会全体の決議といいますか、そういうものがなされたということを聞いておるわけでございます。まあ性格的に見れば課税対象にはなかなかなり得ないとは思いますが、やっぱり国会の御意向等も十分配慮してこれは今後とも考えていかなきゃならぬと、こういうふうに考えておるわけでございます。  また、初めの価格制度の問題につきましては、これはなかなかこれから農政を推進する上におきまして非常に大事な柱でございますので、この価格、それぞれこれを強化充実をしていくためには私としても全力を上げて取り組んでまいりたいと、こういうふうに考えております。   〔委員長退席、理事高橋雄之助君着席〕
  32. 大島友治

    ○大島友治君 五十年度の予算について、さきに大臣所信表明がありましたが、これについてお伺いをいたしたいと思いますが、まず五十年度の予算については非常に財政上厳しい中において大臣初め各位の努力によってまあ先ほど来お話しになったような、まあまあの予算というところになっていることについての努力については私は敬意を表するものでございます。大臣が一番ここで農政一つの目標としているのは、やはり日本国民の生活の安定、その基礎となるべき食糧確保ということが一番大事じゃなかろうかと。これを考えまして現在の国際的な食糧事情の中におきまして、日本食糧確保をいかに進めるかということが一番骨子にあらわれているんじゃなかろうかと、こう考えるわけでございます。  そこで、一番最初に、いわゆるわが国の農産物の自給の問題を食糧政策の点から確立していきたいと、こういう考えのようでございますが、それにつきましては、従来日本農政に対して農民の受けとめておる気持ちからすれば、少なくとも安心した農業が営める、そのためには、国のいわゆる食糧の生産というものに対する確固たる計画的な長期的なものがなければならないということは、もうひとしく農民の望んでいるところでございます。幸い今回「農産物の需要と生産の長期見通し」ということについて、農政審議会の中間報告ということで出されておるようでございますが、この問題につきまして若干お伺いいたしたいと思うんです。  この「農産物の需要と生産の長期見通し」については、先ほども答弁もありましたように、まあ今月中、あるいは来三月早々には答申も一得られるであろう、その内容を十分踏まえて確固たる長期的計画を確立するんだということでございますが、私はやはり、六十年を目途に十カ年間の目標を早急に確立されるということを希望するものでございます。ただ、この計画につきましては、従来の日本経済成長というものとにらみ合わせまして、現在はいわゆる安定経済という、ことにインフレ、物価の問題を抑制しながら、それに伴う総需要の抑制というふうな条件のもとに現在スタートしておるという中で、果たしてこの審議会が中間報告として出しておる六十年目標の計画というものがどこまで期待し得るものであるかどうかということ、農業の生産の伸び率を平均二%というところに目標を置いておると言うが、その平均値を得られるようなコンスタントな伸びを見込んだこの計画であるかどうかということを私どもはいろいろ疑問に思っておるわけでございますので、具体的にはいずれ答申を得てからのことだということにはなりますけれども、しかし今後、積極的な農政を確立させる一番基礎、目標、指針ともなるべきこの計画について大臣はいかようにひとっこれを取り扱って具体化していくかということについて具体的にお伺いしたい。特に積極的な農政を、昨年の内閣改造によりましてお引き受けいただいて、短期間にこれだけの予算をまあまあというところまでは持ち上げましたが、しかし攻める農政として今後進める上においては、少なくとも五十一年度には具体的なものが、私はもっと積極的なものが出されなければならない。その前提に立った場合に、この長期的見通しに対する取り扱いをどう考えていかれるかということについてちょっとお伺いいたしたいと思います。
  33. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も現在の世界的な食糧情勢の中にありまして、国内の自給力というものを可能な限り高めていかなければならない。そういう見地に立ってこれからの農政を推進する場合におきまして、一つのやはり需要と生産の長期目標を打ち出して、その長期目標に従った政策、総合政策というものが確立されなければならない。そういう基本的な考え方から、農政審議会に諮問が出されて、大体四月の上旬ごろには審議会の御答申も得ることになっておるわけでございます。が、まあこの十カ年間の総合政策を打ち出す場合におきましても、この長期見通しというのが基盤になるわけでありますが、その基本であるところの長期見通しの具体的なデータといいますか、試算につきましては、農林省が需給部会に提出して、それがもととなって中間報告という形になったわけでありますけれど、やはりこれの根本的な考え方——今後の日本経済成長が、高度成長から安定成長に移行していくであろう。そういう中にあって、わが国の食生活というものが、今日まで高度成長の中で非常に多様化し、高水準になってきておるわけでございまして、先ほどもお話がございましたように、ヨーロッパの食生活に近いところまで来ておるわけでございます。この安定成長の中にあってこれからの食生活、それに伴うところの国民の需要というものを試算をいたしまして、そういう試算に基づきまして生産目標をこれから立てようと。そういう中で、国内においては作目ごとにどれだけの農産物が自給できるのか、あるいはまた、国内において自給できない農産物につきましては、外国からどれだけの食糧飼料というものが安定的に確保されるのか。こういうことを試算をいたしまして、その試算の数字に基づきまして、これからの基本政策というものを打ち出していくわけであります。  今回の数字はたとえば食糧、農産物の総合自給率にいたしましても、四十七年には七三%、これが四十八年には実は七一%ぐらいに落ちているわけでありますが、これを七五%まで持っていくということに試算としてはじき出しているわけですが、こうした自給率は十年間でわずか三%ということは、自給力を高めるという中にあって、非常に低い数字じゃないかと、あるいは飼料穀物についてはむしろ四三%から三七%に落ちる。飼料穀物について自給率が落ちるということもこれはおかしいじゃないかという御意見もあるわけでありますが、こういう数字につきましては、私は、やはりこれからの安定成長の中にあって人口の伸び、あるいは消費水準の上昇等からはじき出したわけでありますが、非常に手がたくこの数字は打ち出しておるわけでございます。農政審議会の全体のこれから会議が行われるわけでありますから、その会議の結果をまた私たちは尊重いたしまして、これに基づいてやっていきたいと思うわけでございまして、現在のところは、中間報告という段階でございまして、いまこれに対して私たちが、いろいろと御批判をするということはいかがかと思うわけでありまして、審議会の正式な御答申を得て、その上に立って政策を打ち出して、取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。
  34. 大島友治

    ○大島友治君 非常に手がたくできておるということでございますが、私としましては、やはりその十カ年間ということになりますと、経済情勢がどう変わるかということ、これは大きな問題であって、これをとらえることは非常にむずかしいということでありますし、同時にまた、国民の食生活というものからいわゆる需要というものの積算というものも非常にむずかしいということがございます。それに見合った生産というものを長期的に立てるということもきわめてむずかしい問題であろうと思いますけれども、それにいたしましても、専門家もそれぞれの角度からやっております。これは農林省の、積算の基礎となった四十七年度の長期計画にもこれはよっておるのではなかろうかということで、積算的な計数的なものはまことに微に入り細に入り検討されております。それで、農業者が、なるほどこういう計画ならばわれわれも一生懸命になってやろうというようなものを出していただくためには、やはり中間的ないわゆる年次計画というものをよほど克明にしていただかなければならぬじゃないか。特に中間の、じゃ五十五年度はどこへ持っていくかというようなもの、そこへ行くためには、ここ二、三年というものが、日本経済のいわゆる安定経済の中において、六十年を目標に達成できるような、いわゆる土地の造成の問題でも、果たしてできるのかどうかというようなものがございますから、もっと小刻みな年次計画的な、特に中間的なものを、信頼し得るようなものを割り出していただくというように特に希望するわけでございますが、その点についてもひとつ十分心得てお願いをいたしたいと思います。  それから、これと関連いたしまして、それをつくる場合に、日本農業の条件になりますいわゆる地帯別というか、地域性のある農業の指針、生産の指針というか、こういうものについての計画を立てる上においてのいわゆるお考えがあるかどうかということについて、ちょっとお伺いしたいと思います。
  35. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今度、これから行われる長期見通しにつきましては、これは年次別に積み上げた積算によって出しておるというよりは、過去の趨勢値からこれを打ち出しておるということでございまして、でありますから、土地改良計画のような五年、五年といったようなことにするということにつきましては、今回はそういう方向はとってないわけで、お考えはよくわかるわけでございます。  それと、十カ年間の長期見通しといいましても、いまさっきお話がございましたように、経済はこれから安定成長に移っていくわけでありますけれど、しかし、国際的な経済社会がどういうふうに変動するか、まあたとえば戦争でも起こればこれはもう大きく見通し等も狂ってくるわけでありますし、食糧につきましても、非常な世界的な規模でまた不況、不作等が起こってくるということになりますれば、こうした見通しにつきましても、大きな変化も起こるわけですし、水産一つをとってみましても、経済水域二百海里という問題が今日の水産においては国際的な課題になっておるわけですが、これがどういうふうな形で決まるかということによりましても、水産物の需給の見通しということにつきましてもこれからも変化がある可能性があるわけです。ですから、私たちは、現在では、過去の趨勢値をとらえて、そういう大きな変化ということを抜きにした一応の見通しというふうなことになっておるわけでございます。そういうことから見通しを立てておるわけでございます。  それからもう一つ、地域の特性をとらえた農政をこれから進めるべきであるというお考えでございますが、私も全く賛成でございまして、やっぱり農業につきましては、地域の特性というものがありますし、また適性というものがあるわけでございますから、そういうものを十分とらえた形で農政全体でこれを配慮して、これを具体的な政策で裏づけをしていくということが、今後の農政を進めていく上におきましても非常に大事なことであろうと思うわけでありまして、こういう点は十分配慮しながらこれからも進んでいきたいと思います。
  36. 大島友治

    ○大島友治君 いまの、地帯別とか地域別の目標というか指針でございますが、これについては、わが国の場合はおそらく、たとえば野菜をとりましても、これは非常に地帯性というか、それはもう少ないと思うんでございます。ということは、やはり農業は、少なくとも地理的条件というよりもまあ自然的条件というか——地理的条件、特に交通関係ですね。今日のような、交通条件がきわめて発達してまいりますというと、いわゆる一番大事な輸送、市場との関係の輸送ということについては、きわめて条件がもう均一化されておる。そういう中においては、なかなかこれは地帯別といっても非常にむずかしさはあると思うんでございます。が、特に長期目標を立てる上におきましても、農民が安心して生産できるというものについてはやはりその地域の特性を生かしたもの、そういうことになりますと、私はたとえば畜産とか果樹というのには、やっぱり地理的条件とか自然的条件、これを十分生かすことができるんじゃないか。そうなりますと、現在の日本農業の中では、畜産につきましても、地帯別ということになりますと、これは特定地域になるんじゃないか。特にそれは未利用地の開発というようなことが十分にこれは絡んでくる。こういうことを考えると、地域別、地帯別の、特にこの畜産、果樹、これについては重点的積極的に一つの方法を打ち出していただきたいと、こういう考えを持っておるわけでございます。  これは後で続いてお伺いいたします国内の生産体制の問題との絡み合いも出てくるわけでございますが、要するに、農業の一番基本となるべき土地の問題、いわゆる農家の規模拡大につながるというこの土地条件の整備の問題。それはあくまでも、基盤整備というところで具体的な施策を講じておるわけでございますが、私はその前に、ただいまの日本農業の生産物の地域別、地帯別の指針にも一番大きく関連してくる生産条件を高める第一の条件の土地の問題、この土地の問題については、土地は拡大することと、それから現在の土地の高度利用——利用度を高めること、まあこの二面から大きくは考えられるんじゃないか。そうなりますと、まず第一に未利用地、先ほど大臣も、今後の具体的な方法として基盤整備の問題等も絡み合わして御答弁ありましたようですけれども、いわゆる日本の未利用地を、これからどこまで活用していくというお考えがあるかどうかということについて、基本的に私の方から聞きたい。まあ仮に日本の国土が三千七百万ヘクタールということであって、そのうち山林林野というものは大体二千五百万ヘクタール程度あるんじゃないか。こういうものの活用を本当に積極的にやっていくかどうかというようなことについてのお考えをひとつお伺いいたしたい。
  37. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどから、これは大島さんの御議論でもあると思いますが、御主張でもあると思いますが、地帯別、地域別の農業を推進しろと。これについては私も全く御異議がないわけでございまして、今後とも、農作物ごとにやっぱり地域の特性がありますから、こういうものは十分配慮してこれからやっていきたいと思うわけであります。やはり農政をこれから行う場合において、土地の問題が大きな課題でありまして、これから十カ年計画をつくるにいたしましても、われわれが総合的な政策を打ち出すにいたしましても、土地をどういうふうに確保してどういうふうに高度利用していくかということが生産と直接に結びついていくわけですから、土地の確保とこれの高度利用ということは、これからわれわれが対処していかなきゃならぬわけであります。確かにいま御指摘がございましたように、まだまだわが国の土地の確保あるいは高度利用という面につきましては、これから取り組んでいかなければならない問題というものが多くあると私は思うわけでございまして、われわれの計算では、大体土地につきましても百五十万ヘクタールぐらいの——制約された国土の資源の中においてでございますが、百五十万ヘクタールぐらいの土地、農地の開発ということが可能である、そういうふうに考えておるわけでございます。長期の土地利用、土地改良計画におきましても、十カ年七十万ヘクタールという線で計画を進めておりますが、進捗皮は非常におくれておるわけでございますが、今後十カ年計画の中にあって、大体四十七年から六十年度ぐらいの間には八十六万ヘクタールぐらいは、百五十万のうちの八十六万ヘクタールぐらいは開発をしなければならないし、また開発可能であるというふうに考えておるわけでございます。  また、森林の活用、里山等の活用につきましても、これは今後とも私たちも大いに林間放牧であるとか、あるいは里山の開発といったことについては力を注いでいかなきゃならぬと思うわけでありますし、未利用地につきましても、山間の谷地田であるとか、あるいは休耕田——これはことし調査をすることになっておりますが、そのまま放置されておるというふうな事態もあるわけでありますし、あるいは都市近郊の農地につきましてはいわば転用待ちというふうな農地でそのまま未利用地になっておるというふうな土地もあるわけでございますから、こういうふうな未利用地等も今後積極的にこれは調査をして、そして復元ができるように持っていきたいと思っておるわけであります。  さらに高度利用につきましては、これは今度の予算でもつきましたし、今後とも裏作を高度に活用していくということで、十カ年計画では現在二十四、五万ヘクタールの裏作実施でございますが、これを七十万ヘクタールぐらいは十分裏作可能であろうし、それだけの政策的な裏づけをすれば七十万ヘクタールぐらいの裏作の利用はできる、こういうふうにも考えておるわけでございます。さらにまた、高度利用につきましては、今回農振法の改正をお願いをいたしまして、利用権の設定等ができれば、ここにさらに高度な利用に大きな活路を開くことができる。こういうふうに思っておるわけでございまして、非常に国土資源としては制約を受けているわけでございますが、可能な限りの農地の開発、そして農地の高度利用ということはもう図っていかなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  38. 大島友治

    ○大島友治君 いま高度利用の前に、規模拡大の問題、土地造成の問題で大臣は、百五十万ヘクタールという目標をと。これはどういう根拠になるかわかりませんが、ということは、百五十万ヘクタールというのは、これから山林、林野を、日本で、現在のいわゆる造成技術をもってすればあるいは見込めるということなのか。要するに、六十年度を見越した場合に、あの中には壊廃等合わせてプラス・マイナス十六万ヘクタールですか、結果においてはふえるんだということで、六百万ヘクタールを見ておるわけですが、私は、やっぱり土地の拡大の問題につきましては、いわゆる畜産を今後ともずいぶんまだ振興する計画もありますし、それに伴うところの飼料確保、草の確保というようなことからすると、やはりこれはいまの休耕田なりをあるいは利用するかということにもこれはつながりますが、これはきわめて非効率的じゃないか。まあそこで、やはり先ほどの地帯別にもつながる畜産を振興するということになれば、やはり山林、林野の積極的な土地の造成と農用地としての造成を図るべきじゃなかろうかと、こういうふうに考える。  たまたま従来非常に高度経済成長の中で、大臣がお認めになっておりますように、農業が縮小された、萎縮状態に入ってきた、そういうような過程におきまして、本当に農業は、世界の分業論の中においては、日本農業はもう少なくとも必要ないんじゃないかというような時期さえも、うたわれたことはあったわけですが、そういう中で、土地はどんどん農業の用地として可能な土地までが他産業に向けられた。いまこそ——先ほど大臣は、やはり客観的にも日本農業のいかに重要であるかということが国民の中にも浸透しつつある。いまこそ農業はやはり国民の生活安定のために食糧確保の上に立って重大なるものである。したがって、前向きの攻めの農政をここでするべきだ。その一番やはり私は柱になる具体的な裏づけというものは、やっぱり土地の拡大をいかに行うかというところにあると思う。そういう面から、土地の所有形態がいわゆる国有林の問題なりあるいは入会権の問題なりあるいは個人所有の問題といろいろとむずかしさはございますけれども、かつて他産業に山林原野が相当向けられたというようなことを考えれば、ここで取り戻すわけじゃございませんが、農業の分野において、いわゆる未利用地の開発、特に山林の開発ということについてこれは考えるべきだと私は思うのでございますが、と同時に、第三次全国総合計画の問題もいま打ち出されている時期でございますので、そのときにおける国土利用の面におけるやっぱり農業のウエートのかけ方において耕地の確保を前提とした開発ということを十分ひとつ踏まえてもらいたいと思うのでございますが、その辺についてひとつお考えをもう少しお聞かせいただきたいと思います。
  39. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにこれから農地をいかに確保するかということは非常に農政上の重要な課題でありますし、今後とも私たちとしては、農用地の確保につきましては全力を尽くしていきたいと思います。  一つは、農用地の造成ということでありますが、これにつきましては、いまもお話がありましたような山林、林野等も含めた可能な限りの未利用地の開発ということにつきましては、計画性をもってこれに取り組んでいかなきゃならぬわけでございます。  同時に、やはり先ほどちょっと御指摘がございましたように、やはり安定成長には入りましたけれど、やはり農地の壊廃というものが経済安定成長の中においても行われるということ、これは今日の社会経済情勢の中においてもある程度考えなきゃならぬと思いますが、しかし、そういう中にあって農用地が壊廃されることをできるだけやっぱり防いでいくということは非常に大事なことであろうと思うわけで、そのために、農地法の転用につきましての規制というものは、これを厳しく行うことは当然でもありますし、今度、農振法の改正案が御審議いただき、御成立いただくならば、農用地についての開発規制ということもこの中で行われるようになるわけでございますから、一面におきましては、農用地の造成を積極的に取り組んでいく、一面におきましては、農地の壊廃をやはり今後とも極力防いでいくということがやっぱり基本的な柱にならなきゃならぬ。そういうふうに思って、まあそういうふうな見地から、これからの政策を進めていきたいと、こういうふうに思うわけです。
  40. 大島友治

    ○大島友治君 積極的な農政一つの具体的な裏づけとして、やっぱり農地の拡大ということになれば、いまの問題については、具体的に今後積極的に取り組んでもらいたいという考えを持っているわけでございます。  それと、いわゆる高度利用の面からいきまして、やはりまず基盤整備の問題。この基盤整備につきましては、土地改良をしたり——公共事業費として、今回三・四%で、他の公共事業に比べれば優位に立っておるということでございますが、実質的に考えるならば、やはり今回の五十年度予算から見ましても、いわゆる昭和四十六年度ないし七年度程度の事業量という実数面から言えば、少ないのではなかろうか、というようなことになりますと、今日相当意欲的に土地改良も進んでいるときに、ややもするというと停滞をするきらいが出てくるんではないかというふうに考えられますので、いままでの実績から見ましても、相当これは問題点が特にあるわけです。  これはまあ私どもの具体的な例にいたしましても、仮に大型の圃場整備を、大体五カ年を目途として発足いたしましても、ここへいきますと、大体十年かかるか、二十年かかるかわからぬというような現実の問題が出てきておる。そういうようなことでは、従来でもたとえば三年かかって一二・三%しか進捗度がないのに、そこへもってきて、今度総需要抑制の面から、非常に予算的な措置が少ないということになりますと、いわゆる受益者である農業者自身も、負担金につきましても、五年なり七年なりを目途に、一応プールで負担しておって、初めに着工されたところはもうすでに造成されて、その経済効果も出てきておるのに、自分のところは、五年のが十年たっても来ないということになる、非常に年々負担金を盛っているというのに。今日、確かに農林省の公共事業費としては、基盤整備は、他に比べれば一丁四%の上乗せはされておりますけれども、現実の問題としては、やはり工事が非常に延びるんじゃないかということになりますと、もう十カ年の今回の目標計画を立てる前に農民の意欲は崩れてしまうんではないかというようなおそれもございますので、先ほどは積極的な農地の造成ということで申し上げましたが、高度利用という面から、よほどこれは公共事業費というものを積極的にひとつ考える方法をとらないと、私は計画も計画倒れになってしまう裏づけじゃなかろうか、こんなふうに考えるんで、その辺をひとつお伺いしたいと思います。
  41. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 五十年度予算につきましては、基盤整備費として三千五百九十五億円、いま御指摘のように三・四%伸びたわけであります。土地改良長期計画においては、四十七年から三年たっているわけですが、現在までの総額が一兆九千九百十五億円、総事業量十三兆の中におきまして、進捗率が一五・三%となっておるわけでございます。これは、まあ私は、進度としては非常におくれておるということは、実際、私たちは農地確保という面から、非常に残念に思っておるわけで、今後この十カ年計画で農地の五百八十五万ヘクタールを確保するということからいきますと、今後の長期計画を推進しておくれを取り戻していく上においては、年率一八・六%ぐらいの伸び率でいかないと十カ年計画を達成できないということになるわけでございまして、これは非常に困難な面があるわけでございますが、私はやはり必ずしも実現不可能ではないと、私はこういうふうに思っております。これは今後の長期的な政策を打ち出して、それに基づいて来年度予算からスタートしていけば、このぐらいのおくれは取り戻し得るし、また取り戻さなければ、先ほどからお話がございましたように、いろいろな圃場整備事業にいたしましても、灌排水事業にいたしましても、農民の皆さんが、何か計画はどんどんおくれてくるばかりじゃないかということで生産意欲を失うことにもなりかねないわけでありますから、この面につきましては私たちは、ひとつやっぱり土地の確保、またそれを高度利用化していくという面からも、今後、長期計画を何とか軌道に乗せて完成をさせるということにつきまして全力を尽くしていかなければならぬと思うわけであります。これは二、三年来のいわゆる総需要抑制ということによりましてこういうおくれが出ておるわけですが、これはひとつ何としても取り戻すようにわれわれとしても努力していきたい、そして土地を確保し、そうして土地改良計画の実施によって高度利用が図れると、こういう基盤をつくり上げたいと、こういうふうに思うわけであります。
  42. 大島友治

    ○大島友治君 なお、大臣質疑に裏作の問題も取り上げてやられておるようでありますが、裏作の問題につきましては、第一に考えられる問題は、高度利用のいわゆる機械化一貫体系ということで、表米の裏の麦というようなのが一つ基本線だろうと思うのでございますが、それにつきましても、裏作の促進を図るについて米と麦の裏表の関係が技術的に現在非常に問題があるのじゃないか。こういう点につきましては、要するに早期栽培という問題と麦の作付とのかみ合いが非常に問題があるので、この点については十分ひとつ研究をされておることだろうと思いますが、西日本一帯を対象としての今後の裏作を七十四万ヘクタールなりに伸ばすといっても、こういう点については地帯的に、どの地帯からこういう問題は差し支えないというような見通しをつけてやっているのか、その点についてちょっとお伺いいたしたいと思います。  それと麦の奨励金の取り扱いの問題。この麦の奨励金の取り扱いにつきましては四十九年度で執行の結果を見ますというと、大体十二月末あたりに農家の手に渡ったのではないか、それも早い方じゃないか。七月ごろ出荷した者に対して、その奨励金は、いわゆる出来高払いの奨励金のような形になるわけでございますが、本当に裏作をできるだけ促進をし、作付を増反をさせ、増産をさせるということであるならば、農家にとっては、少なくとも作付前に、その計画というものが、施策というものが十分周知されなければいけないと思います。そういう点につきまして私は、もっと積極的な増反奨励金的な性格を持った施策の方法がとられないものかどうかということでございます。五十年度も一応四十年並みの方法がとられておるようでございますが、少なくともそれ以後についてもっと増反の段階における、作付の段階における農業者の意思が反映できるようなこの奨励の方法をとれないものかどうかというふうに考えております。この二点についてとりあえずお伺いいたします。
  43. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ちょっと私からお答えをいたしまして、あとで事務当局から補足をさせます。  裏作を大いに活用していくということが、これからの私たちの考えている大きな政策でありますが、そのためには、麦あるいは飼料作物を裏作としてつくっていただかなければならぬわけでありますが、この米麦一貫栽培といいますか、そういうことを推進する場合におきましても、いまお話がございましたように、作期の問題であるとか、技術的にいろいろとまだ問題が残っておることは事実でございまして、この問題を解決していかなければ、先ほどから申し上げますような七十四万ヘクタールというふうな裏作の拡大ということもむずかしいわけでございますから、これについてはいまいろいろと研究をし、これの施策等もひとついま考えておるところであります。  また、この奨励金につきましては、私も四十九年度の奨励金の配賦が非常におくれたということにつきましても、いろいろと調べたわけでございますが、これは四十九年度に初めてこの奨励金をつけたわけでございますので、また、いろいろとやはり奨励金によりましても、反別で二千円あるいは千八百円というふうな、団地等によりまして差があるわけでありまして、これやはり事務手続上ずいぶんおくれたというふうなことでありますが、ことしからは、その点については、なれてきているといいますか、相当早くこれは支給できるのではないかというふうなことを聞いておるわけであります。この作付前に奨励金を出すということにつきましては、なかなかこれはまだ問題があるわけでございまして、そういう点についてはまだ検討はしておらないわけでございます。
  44. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) ただいま大臣から基本的なことにつきまして御答弁申し上げたわけでございますが、若干補足いたしますと、まず前段の米麦の機械化一貫体系を推進する、その場合に、特に作期の調整とか、あるいは土地のまとめ方につきまして、そういった技術的な問題がある。それにどう今後対応していくかという御質問でございましたが、御指摘のとおり、裏作麦を伸ばすということは、表、裏を通ずる米麦一貫機械化体系、これは非常に大事でございまして、うまくいけば表の米にも、裏の麦にも非常に生産性を高めるという有効な手段でございますし、これはぜひ推進しなきゃならぬという問題であるわけでございまして、その場合、問題は、御指摘のとおり二つあるわけでございます。一つは、水稲の作期が早まった、特に機械化移植になりまして従来よりもさらに早まった。したがいまして、麦の収穫と競合いたしますから、これが米麦機械化一貫体系を導入する場合に大きな阻害になっている。特に地域的にも非常に問題がございまして、西日本は比較的楽でございますが、たとえば関東等は非常に競合がいわば深刻な問題になっているということでございます。これが第一の問題。第二は、機械化を推進する場合には、やはり集団的に規模をまとめなきゃいけない。一個一個のばらばらの面積ではだめでございますから、どのようにまとめるか、そういう問題があるわけでございます。  そこで前段、作期調整につきましては二つございまして、一つは、麦の面につきましては、収穫期の早い早生品種を導入するということ。もう一つは、稲作の面におきましては、なるべく晩植性の品種につきまして中苗の移植を普及するという問題、両面からアプローチがあるわけでございます。前者の収穫期の早い麦の早生品種につきましては、まあこれまで一番作付シェアの大きかった農林六十一号でございましたが、これよりも約一週間早い良質品種のサキガケ小麦というのが育成されまして、いま普及に移されつつございます。さらに四十九年には、早生品種の五月小麦というのを農林省の登録品種にしたところでございまして、これらをさらに普及を進めてまいりたいと思っておるわけでございますし、さらに早生麦の品種化につきましては、九州農業試験場等を中心といたしまして、国公立の試験研究所におきまして小麦の極早生化を最重要の育成目標として取り上げておりまして、早急に極早生品種の育成を進めてまいりたい。もちろんこれは育種でございますから、時間はかかるわけでございますが、それでも重点事項に取り上げまして、こういった品種の改良面をさらに進めてまいりたいと思っておりますし、すでにできたものは普及を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから稲作の面におきましては、すでに稚苗の移植機を改良いたしました中成苗の移植機が実用化されつつあるわけでございまして、これをさらに育苗法でございますとか、栽培方法改善につきまして試験研究を現在やっておりますから、それらをあわせましてさらにその普及を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから第二の問題でございまする、いわば規模を拡大する、そのために集団化を図るということでございますが、そのためには、一つには高能率の稲麦作団地育成事業というような事業もあるわけでございまして、これらを活用いたしまして稲麦団地につきまして機械化を導入する、同時にいわば組織づくりと申しますか、麦作集団を育成しまして、その集団の中で、あるいは期間借地でございますとか、あるいは作業住宅ということを行う。そういう麦作集団を育成するということが大事でございますから、このため四十九年度からの施策の中に麦作集団に対する助成もいたしたわけでございますが、五十年度はそれを特に水田裏に重点を置いてこれを大幅に拡充するという施策も講じておりまして、これらを通じまして、いわば期間借地とか作業住宅等を通ずる麦作集団の育成、それによって規模拡大を図ってまいりたいということでやってまいりたいと思うわけでございます。以上のように技術的にはもちろんまだまだむずかしい問題ございますが、極力これらの問題を克服しまして、米麦機械化一貫体系が推進されるように今後とも一層進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  それからもう一つの問題、大臣から御答弁があったわけでございますが、奨励金の早期交付の問題でございますが、これにつきましては、やはりこれはもちろん増産いただくためではございますけれども、やはり結果を確認しなければならぬわけでございます。したがいまして、作付前ということはなかなかむずかしいわけでございますし、特に麦の特性上なかなか面積を押さえることは非常にむずかしいわけでございます。したがって、現在奨励金も振興地域内で生産されて販売される麦に対しまして六十キロ当たり幾らということをきめているわけでございますが、やはり結果を確認しなければならぬ。そういたしますと、どうしてもやはり事務手続がかかるわけでございまして、農家の方からの申告がございまして集荷業者がチェックする、それを市町村でさらに確認するという事務的手続を要するわけでございまして、特に初年度でございましてかなりおくれた問題もございました。さらに例の、普通の場合は二千円でございますが、地区によっては差もございますから、その地区の取り扱いの問題もございます。これをあまりやると手間取るものでございますから、まず概算払いいたしまして、それから後でもって追加で払うという仕組みに変えたわけでございますが、やはり初年度でお互いにふなれがございましたが、極力、二年目以降はこれはお互いになれてまいりましたから、事務手続を急がせまして、なるべく早く支払うように私たちも集荷団体と一緒になりまして努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  45. 大島友治

    ○大島友治君 いまの問題につきましては、麦の奨励金については、とにかく生産調整だって何カ年、五カ年なら五カ年というのを計画でやったのだろう。だから、五カ年なり三カ年は、必ずこれは裏作解消の問題から、増産ということでやっていただく。そういう方法をとれば、事前にまきつけ前にこれは農民はわかるわけですよ。いまの十二月あるいは翌年になってから奨励金のくるような、これはどっちかというとむだなお金の使い方ですよ。もっと気のきいた効率的な運用投資をしていただきたい、こういうふうに考えます。  まだいろいろございましたのに時間がありませんですが、どうも私は、特にことしの予算は、従来の農業施策の若干上塗りをしたという程度で、とりあえず済まざるを得ないのではないかと思いますが、やはりもっと積極的に、攻勢の農政ということであるならば、もっと前向きの、先ほど申し上げました農地拡大の造成の問題も、もっと積極的に取り組む、それから公共事業に結びつく土地改良事業につきましても、もっと積極的な措置がとられなければ、単なる計画に終わってしまう。また農民から不信を抱かれるおそれもあるんじゃないかということも考えられますので、その点十分ひとつ希望いたしまして質問を終わりたいと思います。
  46. 高橋雄之助

    ○理事(高橋雄之助君) これにて休憩いたします。  午後は十三時四十分から再開いたします。    午後零時三十八分休憩      —————・—————    午後一時四十七分開会
  47. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  48. 川村清一

    ○川村清一君 まず、大臣所信表明につきまして、若干質問をしたいと思うわけであります。  安倍農政基本的な姿勢というものは、この所信表明の中に書いてあります、「将来にわたって食糧の安定的供給を確保する体制を整備する」「わが国農業自給力を高めること」、これを基本姿勢といたしまして、施策は「長期的視点に立った需給見通しと生産目標を設定し、これに沿って施策展開を図る」。これが安倍農政の総論的な目標であると理解いたしまして、その総論には私どもは賛成でございます。しかし、各論がどうなるかということについて、いろいろな疑義を持っておりますから質問するのでございますが、私は、この際、特にこの水産物の需給というものに観点を置いて質問を申し上げたいわけでございますが、農林省からいただきました「農産物の需要と生産の長期見通し」という、こういう資料がございます。これによって水産物の長期需給見通しあるいは生産見通しというものを見てみますというと、水産物の国内総生産量は四十七年度におきましては千三十七万六千トン、かようになっております。これが六十年度になりますというと、千百九十五万三千トンにふえるわけでございまして、その時点における自給度というものは九五%と、非常に高い自給度を推定されておるわけでございます。私はこうなりますことを非常に望んではおりますが、果たしてこうなるのかどうかということについてたいへん心配しているものであります。この立場お尋ねするわけでございますが、一体六十年度におきまして、国内生産量を千百九十五万三千トンと推定されましたその根拠をまずお聞きいたしたいと存じます。
  49. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 生産の見通しにつきましては、今後、海洋法会議その他によりまして、わが国の漁場の条件がどうなるかという点について必ずしも確たる見通しが立ち得ない段階にあるわけでございます。したがいまして、今度の作業におきましては、生産の傾向を、従来の趨勢値によって延ばしまして、それに今後の沿岸漁場の整備あるいは新漁場の開発によって期待されるものを加えまして、大体千百九十五万トンの見通しを立てたわけでございます。
  50. 川村清一

    ○川村清一君 漁業白書によりますというと、四十七年度の千二十一万トンというこの生産量は、沿岸漁業におきましては二百五十四万九千トン、中小漁業におきましては四百十万二千トン、大規模漁業におきましては三百三十九万七千トン、大体構成比は二五%、四〇%、三二・三%、こういうようなことになっております。そこで、ただいまの長官の御答弁では、いろいろな問題があるけれども、従来の生産量と現在の生産量というものから割り出して推定して、こういう数字を出したと、こうおっしゃっております。したがいまして、この六十年度の千百九十五万トンというこの数字を、白書における沿岸漁業、中小漁業、大規模漁業、こう分類するというと、それぞれどのくらいの生産量になるのか、これを御説明願いたい。
  51. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 四十七年の実績は、沿岸漁業は二百五十五万トンでございます。それが六十年の見通しでは、単純にその生産量の伸びを従来の趨勢値で引き延ばしたものに、沿岸漁場の漁場整備によってわれわれが期待しております七十五万トンを加えまして、沿岸漁業につきましては三百五十五万トンという数字を予定しております。それから沖合いと遠洋につきましては、これは非常に仕分けがむずかしゅうございますので、四十七年の実績七百五十万トンを、従来の大体傾向を各漁業種類別に見まして、それに新漁場の開発によって見込まれるものを加えて八百十万トン程度というふうに見ておるわけでございます。
  52. 川村清一

    ○川村清一君 この、千百九十五万トンというこの生産量には——現在の客観的な国際情勢、つまり三月十七日から開かれますジュネーブにおける国連海洋法会議、これでいろいろ取りざたされておりますが、漁業水域というか経済水域というか、二百海里というこの問題が出ておる。去年のカラカス会議のあとを受けて、それはほとんど決定するのではないかというふうにいわれておるのですが、こういう情勢が、この推定量の中には全然含まれていないのかどうか、これをお尋ねします。
  53. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 二百海里の経済水域の問題につきましては、まだ沿岸国の管轄権がどうなるかもはっきりわかりませんし、今後経済水域が設定されたとした場合の、わが国漁業に対する影響を推定する基礎的なものもまだはっきりしておりませんので、今回の見通しの中には、その要素は入れておりません。
  54. 川村清一

    ○川村清一君 基礎的な数字も推定できないなんということは無責任なことじゃないですか。この漁業白書には、みな基礎的な数字が出ていますよ。というのは、先ほど申し上げましたように、四十七年の生産量は、沿岸が二百五十四万トンと中小が四百十万トン、大規模が三百三十九万トン。それからいまの御答弁では、いま長官は沿岸は三百五十五万トンと推定している、中小と大規模、つまり沖合いと遠洋を含めて八百十万トンと推測していると、こうおっしゃっておる。しからば、もしも、これは仮定のことでございますけれども、しかし大勢は経済水域二百海里というものはもう設定されるだろう、こう言われておる。その場合におきましては、当然この八百十万トンというものに大きな影響があるでしょう。大規模漁業なんというのはこれは全部だめになるでしょう、中小企業であったってこれはもう七〇%ぐらいだめになるでしょう。こういう現実を前にして、そうして推定の基礎がないとはどういうことですか。
  55. 内村良英

    政府委員(内村良英君) いや、推定の基礎がないという意味ではなくて、二百海里の経済水域が設定された場合におきまして、沿岸国の管轄権がどうなるかによってわが国の遠洋漁業に対する影響は非常に違うわけでございます。先生御案内のように、沿岸国の管轄権につきましては、さまざまの意見が現在出ておるわけでございます。一番強いのは、中南米あるいは一部のアフリカの国が言っているように、二百海里の中の沿岸国の管轄権は領海と同じである、排他的な管轄権を持つのだ、ということになりますと、わが国の漁業は一応入漁料を払うとかいろいろな問題がございますけれども、それによって非常に大きな規制を受ける。これに対しまして先進国側は、完全利用していない場合は、未利用分を非沿岸国に利用させるべきではないか、あるいはその場合において実績を尊重すべきではないかと、いろいろ沿岸国の管轄権につきまして議論が非常に分かれておるわけでございます。したがいまして、沿岸国の管轄権がどうなるかということによりまして、わが国漁業に対する影響は非常に違ってくるわけでございます。したがいまして、そういう意味から、どういう影響が遠洋漁業について出てくるかということが、非常に言いにくい段階にあるということで、そういった点については勘案していない、こういうことでございます。
  56. 川村清一

    ○川村清一君 そうしますと長官、私どもに配られましたこの「長期見通し」というこの資料は架空のものとは言わないけれども、非常に不安定な基礎の危うい資料である、数字である。こう判断をせざるを得ないのですが、それでけっこうですか。
  57. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 現時点におきましては、わが国水産業をめぐるそういった客観情勢が、非常に過渡的な、流動的な時期にございますので、そういった点を考えますと、今般の推定について、これはそういった要素を入れてない。だから、甘いのではないか、というようなことが、あるいはそういった御意見が出てくるかと思いますけれども、残念ながら、現状が非常に流動的な時期でございますので、確定的な推定が非常にしにくいという段階にあるわけでございます。
  58. 川村清一

    ○川村清一君 流動的なことは承知しております。そこで、架空のものかもしれませんけれども、仮に二百海里というものが設定されて、沿岸国がその管理権を全部掌握して、そうして排他的な漁業をそこに実施した場合において、いまの時点において大体、昭和四十七年度の漁獲量からどのくらい減少いたしますか。
  59. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 昭和四十七年の数字におきますと、わが国の漁業が外国の距岸二百海里の中で取っている数量は約四百五十万トンでございます。
  60. 川村清一

    ○川村清一君 その四百五十万トンを、北方と南方に分けるとどのような数字になりますか。
  61. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 数字を申し上げます。北方水域におきましては、ベーリング海北部太平洋が約二百二十九万トン、オホーツク海が百六万トン、日本海が二十七万トン、東海黄海が三十万トン、大西洋の北部及び中部で二十六万トンになるわけでございます。そこで、北方水域の合計四百十一万トン。  それから南方水域におきましては、大西洋南部が十万トン、太平洋が約二十三万トン、インド洋が二万八千トン。合計三十六万四千トンということになっております。
  62. 川村清一

    ○川村清一君 大体四百五十万トンでございますね。その四百五十万トンのうち、北方において四百十万トン、南方において三十六万トンから七万トン、こういうような状態です。そこで、南方の四十万トン程度の漁獲は、南方の沿岸国というのは、これは言うまでもなく開発途上国が多いですから、東南アジアあるいはインドとかアフリカ、あるいはオーストラリア、ニュージーランド、あるいはラテンアメリカの国は。そこは、特に開発途上国等は資金面におきましても、あるいは技術面におきましても、こういっちゃ悪いけれども低いですから、したがって、自分の国が管轄するところの資源というものを完全に利用する力がない。したがいまして、先ほどお話がありましたように、今後の外交交渉によっては、入漁料を払うとか、あるいは両国が資金を出し合って合弁会社をつくるとかいったようなことで、この生産を確保することができるのではないかと私も考えます。しかし、北方の方は、これはソ連、アメリカ、カナダあるいは中国というような沿岸国が管轄する水域でございますので、なかなかこれは容易でない。この点は政府当局も十分御存じだと思  いますが、そうなった場合にどうなるかという、私どもは大きな心配があるわけですよ。  そこでお尋ねしたいんですが、今度の三月十七日から始まる国連海洋法会議に臨む政府姿勢というか、態度というか、どういうような基本的な考え方を持って臨まれようとしているのか。これは国連海洋法会議、国連の会議でございますから、主管が外務省ではないかと思うんですが、その辺はどうなっておりますか。もし外務省であったならば外務省から御説明いただきたいと思います。
  63. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  三月十七日から、御指摘のように国連の第三次海洋法会議の第三会期が始まるわけでございますが、二百海里の経済水域に関しましては、先生御案内のように、すでにカラカスの第二回会議におきまして、かなりの大多数の賛同がそこに表明されまして、二百海里の経済水域というのは、相当程度の大勢としてこれを阻止するのはなかなかむずかしいのではないかと、私どもも案じている次第でございます。しかしながら、わが国といたしましては、遠洋漁業国として非常な利害関係を持っている問題でございますので、わが国としましては、わが国の漁業利益が損害されないように、最大限の努力を傾けてこの問題に対処していきたいと、そのように考えております。
  64. 川村清一

    ○川村清一君 昨年のカラカス会議におきましては、もう日本政府は、最後まで絶対反対という態度を堅持してやってきた。しかし、他の国は、特に過去においては反対を唱えておったアメリカも、カナダも、ソ連も絶対反対ではなくて、条件つきの賛成に回っておる。これは事実でございますね。百四十七カ国が集まって、もちろんそこには沿岸国でない国もあるかもしれません。絶対反対で、最後までがんばったのは日本ただ一つ。こういうように聞いておるわけでありますが、この態度でまたこの会議に臨むのかどうか、その辺をお伺いいたします。
  65. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  カラカス会議での大勢は、先ほど申し上げたとおりでございまして、わが国といたしましては、その大勢を十分認識しつつ、かつまた、今度のジュネーブ会議における各国の動静をも見きわめつつ、その問題に対処していきたいと考えておる次第でございまして、ただいま直ちに絶対反対の立場をおりるかということについては、明瞭なるお答えはいたしかねると思います。
  66. 川村清一

    ○川村清一君 それは、その会議の模様によっては合意することもあり得るということを意味しておりますか。
  67. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 現在のところ、やはり反対の立場に立ちつつ、遠洋漁業国としてのわが国の利益を確保していきたいということが基本方針でございまして、それが会議情勢によりまして、どういうふうに変わるかということは、もっぱら会議情勢判断の問題になると思います。
  68. 川村清一

    ○川村清一君 昨年のカラカス会議におきましては、政府間の各関係省庁の意見が統一されておらなかったということが言われておるわけであります。あの当時の外務大臣の大平さんは、二百海里をのまざるを得ないではないかという発言をされて、それは新聞に出ておりました。絶対反対の立場をとっておったのは農林省水産庁でございます。つまり外務省と農林省意見が統一されないままにカラカス会議に出ておったと、こういうふうに私は理解しておるわけであります。  それから、海洋法会議は、何も経済水域の問題だけを議論しておるのではなくして、海洋汚染の問題、あるいは海峡の通航の問題、こういうことも議題になって議論しておるんですが、これらの問題をめぐって、たとえば海峡通航の問題については、運輸省と防衛庁の意見が一致しておらなかったとか、海洋汚染の問題については、外務省あるいは環境庁が意見が一致しておらなかったとかいうことが言われ、あるいは新聞等にも報ぜられておるわけであります。ことしは一体そういうようなことがなく、各省庁の意見を統一し、日本政府の統一された意見として、それを持ってこの会議に臨むのかどうか、これは農林大臣の、農林省の御意見をお聞きしたい。
  69. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 三月に行われる海洋法会議は、わが国水産業を将来において決めるともいうべき非常に重要な私は会議であろうと思います。この会議に臨むに当たりましては、やはりわが国として統一した方針、統一した判断で対処していかなければならないことは当然でございまして、農林省、外務省、十分な緊密な連絡のもとに、わが国の国益を損なわないという立場に立って、これにはひとつ対処していかなきゃならない。十分な連絡調整を図ってやっていきたいと思うわけでございます。いずれにいたしましても、私はカラカス会議以後は、世界の大勢としては、経済水域二百海里ということは、もう大勢として出てきておると。この大勢をわが国ひとりがもちろん覆すというふうな情勢には至っていないと思うわけでございます。そういう中にあって、今度の会議は、各沿岸国がそれぞれ二百海里における漁業の管轄権の問題であるとか、あるいは漁業資源の問題であるとか、そういう点についての論議が行われるわけでありましょうが、先ほども水産庁長官答弁をいたしましたように、各国の利害がまだいろいろと異なっておるわけでございまして、その会議中身というものは、相当多くの議論が出てくるんじゃないか。こういうふうに判断をいたしますので、わが国としてはもちろん統一した方針のもとにこれに臨んでいきますが、会議情勢は非常に複雑であろうと思いますから、そういう中にあってわが国一本として、一本の立場に立って対処を誤まらないようにやっていかなきゃならぬと、こういうふうに考えております。
  70. 川村清一

    ○川村清一君 農林大臣の御意見は大分弾力性を持ってこられたと私は判断いたしております。また後ほど問題にいたしますが、たとえば領海十二海里の問題にいたしましても、外務省はこれを決定し、宣言しようという姿勢に、かつても幾度もなっておるはずなんです。これを常に反対して、外務省を引っ張っておったのはこれは農林省水産庁である、私はそう思っておるんです。で、水産庁にそういう姿勢をとらせておるのは何かというと、やはりバックにある業界である、かように判断しております。まあしかし、いまさらそんなことを言ってもしようがないですが、農林大臣のただいまの御意見は、昨年までの絶対反対の態度から、国際的な情勢の中においてどうしても日本合意しなければならないという段階になった場合においては、もちろん、そこには条件がありますけれども合意をすることもあり得ると、こういう御意見だと判断しますが、それに間違いございませんか。
  71. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 会議情勢、模様というものを十分見きわめながら対処していかなきゃならぬと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、わが国としてやはり世界の大勢に反して、わが国のみの主張を貫くというふうなことは今日の段階においてはむずかしい情勢にきておると、こういうふうに考えております。
  72. 川村清一

    ○川村清一君 それについて特に私は申し上げたいんですが、昨年のカラカス会議におきましては、国連参加の国、特に開発途上国等においては、代表に出られた委員は、ほとんど閣僚級である、かように聞いておるわけであります。それに比べて、日本政府から出た代表は、国連の大使である。国連の大使がまずいというのではなくして、他の国々が閣僚クラスの代表を送っていろいろ議論しておるときに、日本政府の代表が、大臣が行くんでなくて、国連の大使級の方が行って発言したって、その発言力は、他の国々を説得するだけの力がないんではないか、あるいはなかったんではないか、かように言われておるんです。そんなことはないとおっしゃるのが当然でしょうが、そう言われておる、客観的に。世界会議には、たとえば食糧会議には倉石農林大臣が出られておる。あるいは金融とか、そういう通貨とかの会議には、もちろん大蔵大臣が出られておる。この国民食糧に重大な問題を持つところの海洋法会議に、ことしもまた、その辺でお茶を濁す気なのかどうか。少なくとも私は、国民の動物性たん白質の五一%を提供しておるこの日本水産の本当の危機に立って考えてみたときに、農林大臣が出て大事な会議においては発言すべきだと思いますが、この点いかがですか。
  73. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回の会議は、わが国にとってもきわめて大事な会議であろうと思うわけでございますので、この会議参加をする代表団の人選につきましては、これは外務省とも十分相談をいたしまして慎重に配慮いたしていかなきゃならぬと思うわけでございます。参加国がどういうふうな代表団を編成して集まってくるのか、そういう点等もにらみ合わして、それに対して、わが国を代表してわが国の国益を守るために活動できる十分なる代表団の編成だけはどうしてもしなきゃならぬと思います。
  74. 川村清一

    ○川村清一君 重ねてお尋ねしますが、農林大臣は御出席する気持ちはございませんか。
  75. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これもやはり各国の代表団の編成がどういうふうな形になるのか、あるいは議題の中身がどういうものになっていくのか、これからおいおい明らかになってくると思いますので、そういう点も十分配慮して考えていきたいと思うわけであります。
  76. 川村清一

    ○川村清一君 農林大臣のそういう消極的な姿勢はまことに不満でございます。各国状況各国状況と、自主性がないではございませんか。そこで当初申し上げましたように、わが国食糧の自給体制を確立する、これが農政基本姿勢であるとあなたはおっしゃっておるが、いま仮に、漁業水域二百海里が設定されて、完全に日本の漁船が二百海里の中に入ることを締め出された場合においては、先ほどのお話にありましたように、一千万トンの水産生産量から約半分の四百五十万トンに減ってしまうんです。大変な問題でしょう。経済問題として考えてみるというと、私は北海道出身でございますが、一千万トンのうちのその四分の一の二百五十万トンというものは北海道が生産しておる。この北海道の生産している二百五十万トンの七〇%は北洋の海からとってきて水揚げされておる。これがなくなった場合においては、漁業経営者だけではない、乗組員から、それからその水揚げた魚を加工して生活する加工業者、その他関連業全部に大きな影響を与えて、北海道の経済の大きな柱である水産が、だめになることによって北海道の経済は大変なことになる。  それから一つの例として地方自治体、釧路市を考えて見た場合に、釧路市の水揚げは過去六年間日本一です。四十八年度においては八十九万トンの水揚げがなされておる。この水揚げの水産物に頼って生活している人がたくさんいるわけです。これが、もしだめになったらどういうことになる。七〇%の水揚げが減るのであります。それによると、約四万七千人の釧路の人口にこれが全部なくなってしまうという心配がある。  そのほかに、日本全体で考えてみるというと、たとえば北洋の母船式のサケ・マス漁業に従事しておる労働者あるいは母船式のスケソウ漁業に従事しておる労働者、あるいは北方の底びき漁業に従事しておる労働者、これらが大きく言うと大体七万人から八万人ぐらい職場を失う、こうさえ言われておる。こういう問題に対処して、こういう問題がもう憂慮される問題として存在しておるんです。これをきめる、日本水産の全く危機存亡のときに立って、農林大臣のそういう消極的な姿勢はがまんならない。あなたは、私が行くということを、はっきりここで言うべきですよ、国民に向かって。
  77. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私の、今度の会議に対する認識につきましては、川村さんの認識とちっとも変わってないと思います。私は、やはり今度の会議は、わが国水産の将来をもきめるべき非常に重大な会議であろうと思うわけでございますが、今度の会議が三月十七日から五月十日ぐらいまであるということでありまして、私はその議題といったものが現在のところ明らかになってないという状態にあるわけでございますので、先ほどのような御発言もいたしたわけでございます。けれども、三月十七日から五月十日までの間あるということであり、その中にあって、これは水産だけの問題じゃなくて、各方面の議題も出るわけでございますが、水産において非常な重要な決定をしなければならない、方向を打ち出さなきゃならないというふうな事態が起これば、もちろんこれは外務省、外務大臣とも相談をいたしまして、外務大臣がおいでになるか、あるいは私がもし行けということならば、もちろん喜んで参りまして、そうした重要な段階においては対処してまいることはこれは当然のことであろうと思います。そうしたことになれば、もちろん参りたいとも思うわけでございます。また同時に、その間にあって、先ほどからお話がありましたような四百五十万トンのうちの四百十万トンという漁獲が北方において行われるわけでありますし、日ソ交渉がその間にも行われるわけでございますから、この日ソの交渉については、私はもう責任を持ってこれには対処していかなければなりませんので、そういうふうな、同時に行われる会議の中にあって十分情勢判断をいたしまして対処していきたい。場合によっては、もちろん飛んで行くことはいとうものではございません。
  78. 川村清一

    ○川村清一君 仮に、最悪の場合を予想すると大変なことになる。しかし、日本といたしましては、この会議経済水域二百海里が設定されたといたしましても、現存する二国間協定である日ソ漁業条約あるいは三国間協定である日米加三国の漁業条約、これが消滅するわけでございませんので、この条約の中において現在までの実績というものを何としても確保していかなければならないと思うわけでございまして、特に、この日ソ漁業条約に基づく漁業については、ただいま大臣責任を持ってやるという非常に力強い御答弁をいただいたので、私もぜひそうやっていただきたいと、かように考えるわけであります。  そこで、もうすぐ日ソ漁業条約に基づく日ソ漁業委員会が始まるわけでございますが、ことしの一体見通しはどうなのか、水産庁長官ひとつ見通しをお話しいただきたいと思います。
  79. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 日ソ漁業委員会は、三月三日から本年は東京において行われるわけでございます。全般的に御案内のように、サケ・マスについては豊漁年、不漁年ございまして、五十年は豊漁年に当たっております。したがいまして、クォータ——漁獲割り当てにつきましては、豊漁年でございますから豊漁年並みの考慮はされるということになりますけれども資源状態がどうなってくるかによって非常に影響が出てくるわけでございます。資源の評価につきましては、委員会が始まりましたら、そこで生物学委員会が開かれまして、資源評価を、相互の科学者が資料を提出いたしましてやるということになっておりますので、そのクォータの問題がどうなるかということが一つの問題でございます。  もう一つは、従来から問題になっておりましたいわゆる取り締まりの問題。具体的にはB区域へのソ連の監視船を入れるか入れないかという問題が今般の交渉の一つの大きな項目になるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  80. 川村清一

    ○川村清一君 そのことはよくわかっておるんですけれども、ことしのこういう国際情勢の中において果たして——それでなくても日ソ漁業委員会は毎年毎年これはそう簡単に決まったことのない非常にむずかしい局面を経て、あるいは農林大臣が訪ソしたりして、そうして政治的な解決を図りながら今日までやってきておる。こういう情勢の中で、特にことしあたりは厳しくなるというような心配があるわけだけれども、先ほどの大臣の御答弁のように、絶対に実績を守る、守らせる、こういう態度で交渉に臨む、こういうことなのか、その御意思を明らかにしていただきたいわけであります。
  81. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、ことしの日ソ交渉は、いまお話がございましたように、世界的な経済水域二百海里という問題が大きくクローズアップされておる段階でもございますし、また、最近日本の沿岸漁民に多大な被害を与えておる南下船団があるわけでございまして、こういうふうな問題等もいろいろとどういう形で結びついていくのかは、これから判断をしていかなければならぬわけでございますが、そうした、起こっておる具体的な事実をつなぎ合わせて見ましても、ことしの日ソ交渉というものは、非常にいままでになく厳しいものになるのではないだろうか、そういうふうに私は判断をいたしております。それだけに、われわれといたしましては、十分対処をするに当たっては、慎重に対処すると同時に、決意を新たにしてこれに対応していかなければならぬ、そういうふうに思うわけであります。
  82. 川村清一

    ○川村清一君 大日本水産会あたりは、ことしは、もう海洋法会議において二百海里というものは認めざるを得ないだろう、こういう判断をとり、それに関連して業界の再編成をしなければならないだろう。こういうような考え方になって、藤田会長が何かおっしゃったことが新聞等に出ておりましたが、これらについて水産庁としてはどういうふうに考えておられるかどうか。これはもう客観的な事実として、たとえば、この捕鯨の漁業一つ考えてみても、いわゆる鯨をとることを禁止するといったようなこういう国際的な世論から、かつては、捕鯨船が五船団あったのが三船団になり、この三船団も大洋、日水、それから極洋、この三社を一つにまあ合併して、合併というのかどうか、一つにして、一船団に減らして捕鯨の漁業をやる。こういったようなことで、水産庁が大体方針をきめたところが、公取委員会のほうは、それは独占体制である、独占体制をつくることはまかりならぬ、といったようなことで、公取と水産庁がいろいろ話し合っているといったようなことも新聞に出ておるわけでございますが、こういうようなことがすでに業界において出ておる。このことに対して水産庁としてはどういうような御見解を持っておりますか。また、水産庁も、そんなことをやっぱりやらなければならないというふうに考えておられるかどうか、これを明らかにしていただきたい。
  83. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 先生御案内のように、戦後の日本漁業は、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へと伸びてまいりまして、今日一千万トンの漁獲を確保しているわけでございますが、そのうち遠洋のウエートが非常に高いということは、先ほど先生からも御指摘のあったとおりでございます。  そこで、二百海里の経済水域ができるということになりますと、いままでのように、遠洋漁業が伸びていくということは非常にむずかしくなってくると同時に、逆に追い出されるといいますか、その漁場を撤回——去らなければならぬというような事態も予想されるわけでございます。そこで水産庁といたしましては、そうなってまいりますと、従来の構造とは変わった問題が出てくる。具体的に申しますと、日本の漁業というものは、戦後海洋自由の原則と、それから非常に安い油というものを基礎にいたしまして、今日まで飛躍的な発展を遂げてきたわけでございます。この二つの点が根本的に変わってくるわけでございますから、漁業法を初めわが国の漁業制度自体も再検討しなければならぬというような事態が起こってくることが予想されるわけでございます。したがいまして、水産庁といたしましては、そういったことも考えながら、今後五年ぐらいの一まあ行政の計画というのは、なかなかむずかしいわけでございますけれども、何かそういったようなものを考えて、将来の漁業制度というものを考えなければならないんじゃないかということで、五十年度からそういう点について早速いろいろな検討をしたいと、こういうふうに考えているわけでございます。  それから、御質問のございました捕鯨の点でございますが、先生御指摘のとおり、だんだんクォータが減ってまいりますと、三社が独立できない。一方、わが国国民生活というものは、相当鯨肉に依存している面があるわけでございますから、日本がやめてしまいますと、採算を無視してやっているソ連だけが捕鯨をやると。さらに現在の捕鯨委員会の行き方からいきますと、将来資源が回復することになるわけでございますから、資源が回復した場合に——すでに英国、ノルウェー、オランダというものは、もう捕鯨の技術を失っているわけでございますから、そこでわが国もやめてしまえば、資源が回復したときに、捕鯨はもうソ連の独占になってしまうということがございまして、これは国民生活の上からも何とか維持したいということで、業界の方も、この際、捕鯨部門を切り離して、一つの会社にしてやりたいということを言っておりますので、私どももそれはいい方法であるということで、実は昨年の秋から公取と話し合いをしてきたわけでございます。公取も、大体そういった国民生活における鯨肉供給者としての捕鯨業の位置というものにつきましては、ほぼ正確な理解を得てまいりまして、近く結論が出るということになっております。
  84. 川村清一

    ○川村清一君 ただいまの長官の御答弁は、いみじくも私が聞きたいと思ったことをおっしゃったわけでございまして、戦後の日本の漁業というものは、いわゆる沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へと発展させていく。こういう政策に基づいて、水産庁は、野放図に漁業許可を与え、そうして、船をつくるとか、そういうものには、どんどん金を貸すという金融制度をつくって、自分の沿岸を投げ捨てて、沿岸は、公害をたれ流して、全く汚染をして、沿岸においてはもう漁業ができないような状態にしておいて、そうして遠洋漁業と称して他国の沿岸にどんどん行った。そうして資源を乱獲しておる、あるいは他国の海洋を汚染しておる。こういったことが、いわゆる開発途上国国民のひんしゅくを買っている。こういったような問題が積もり積もって、今日の経済水域二百海里といったようなものを、海洋法の中に決めてしまうというような機運になってきておると私は判断しているわけであります。したがいまして、漁業の仕組みを変えていかなければならない。そんな公海漁業の自由であるとかといったようなことを唱えて、どんどん、どんどん他国の沿岸に行くということは許されない時代になってきておる。そこで、やはり日本の漁業制度、漁業金融をも含めて、制度そのものを再検討すべきである、漁業法の洗い直しをしなければならない段階にきておると私は判断しておるわけです。  長官は、そのようなことを私にいま答えられたと思うわけでありますが、とにかくもうその作業に入っていいんではないかと思いますし、それから漁業の振興のために、まず沿岸漁業の振興に最大の力を入れていかなければならないのではないか。と申しますのは、二百海里経済水域というのは、何も他国にだけあるんでなくて、わが日本の、日本列島の周り二百海里が今度は日本の海になるわけですから、これは、排他的な漁業を日本が行うところの日本の水域になるわけでありますから、この日本の水域を今度は守り、そして振興して、漁民が生活でき、そこからあがるものを、われわれ国民の食用にしなければならない、かように考えるわけですが、それは大臣所信表明を読むというと、そんなことも含まれているのではないかという感じがしますので、私はあえて申し上げませんでしたが、とにかく沿岸漁業振興のためにもう国の財政投資、惜しみなく金を使うという、いまのような汚くなった海をみんなきれいなもとに返して、今後は絶対に公害は流さない。こういう姿勢の中から沿岸漁業振興、そうして今度は二国間、三国間の話し合いによって、いままでの実績は、まあできるだけそれを行わせてもらうように、と同時に資源の保護というものにもう徹底的に努める、こういう構えでなければならないと思いますが、これに対するお考えをひとつ聞かしてください。
  85. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに遠洋漁業は高度成長を遂げて今日に至ったわけでございますが、しかし、最近の国際情勢から見ますと、非常に厳しい段階にきておるわけでございます。私たちはこうした情勢を十分認識して、その上に立って沿岸漁業の振興発展というものに対しては特段の力を入れていかなければならないことは、これはもう当然のことであろうと思うわけでございます。そのための漁港の整備あるいはまた漁場の造成、さらにまた栽培漁業の振興といったようなことにつきましても、五十年度予算におきましても、予算措置等も講じておるわけでございますが、さらにこれの飛躍発展をさしていくために、これからの漁業政策根幹として沿岸漁業の振興を取り上げて、それに集中をしていくことは、これはもう当然のことであろうと思うわけでありまして、全力をあげてひとつ沿岸漁業の振興には尽くしていきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  86. 川村清一

    ○川村清一君 海洋法の問題につきましては、また今後、機会を得ていろいろ議論を深めていきたいと思います。  時間があまりなくなったので、いままでこの委員会で他の委員からもいろいろ御質問があった、ソ連漁船団が北海道の太平洋沿岸あるいは三陸沖、千葉県沖といったようなところで操業して、漁民に被害を与えて大きな問題になっておる、この問題について質問するわけですが、これは何もいま始まった問題ではなくして、昭和の四十年、四十一年ごろからこれが始まりまして、私は参議院に出て十年目ですが、何回これで質問したかわかりません。最初は昭和四十四年の予算委員会で質問し、その当時の農林大臣は長谷川さんでした。それから赤城農林大臣時代、倉石農林大臣時代に、私自身が岩手県へ行って三陸の沿岸を調査して帰ってきて質問をしてまいりました。それから漁業白書について本会議質問を二回やりましたが、そのときも、この問題をとり入れたこともございますし、それから最近では昨年の十二月のたしか二十日か二十一日だと思いますが、私自身が、私は北海道の日高の沿岸でとれているものですから、その沿岸の漁業協同組合長からの陳情電報を持って、水産庁へ行って長官にお会いして、いろいろその電報を示してお話をし、さらに外務省へ参りまして、大和田欧亜局長にもお会いして、電報をお見せしていろいろお話をしてきた。そうして欧亜局長にはその電報みんなやりまして、あなたにこの電報差し上げるからよく読んでくれ、いまもう十二月二十日だ、正月だ。この正月が来るというときに、もういまはカレイ刺し網の盛漁期である。それをソ連漁船が来て網を切る、網を切られるからもう休漁して漁に出ないと。こんなような状態ではもう漁民は正月を迎えられないんではないか。悲壮な叫びのこれは電報なんですぞと、これをよく読んでいただいて強硬な外交折衝をしていただきたいということをお願いしてきた。ところがことしになってこの状態です。しかも、この十年来の経過の中でだんだんだんだん減少してきたんならいいんですよ。それが、だんだんだんだんこれがソ連の漁船が多くなり、ソ連の漁船がもう長期にわたって北海道沖から三陸沖を荒らすという、こういう状態になってきておるわけです。いままでは秋のサンマやあるいはサバの季節には来たんです。冬になって沿岸がカレイ刺し網だとか、あるいはいまのようなスケトウの刺し網の時期にはもういなかったんですよ。それが、ことしは、いまは二月、まだ現在存在してやっておる。したがいまして、もう北海道の新聞は毎日毎日大きな活字で書いておるし、それから現地は大騒ぎです。もう漁民は激高その極に達しておる。強行出漁を辞さないようなことになってきております。したがいましてこれは大変なんです。私に言わせれば、この十年間にわたって初めてではない。何回も何回も何回も、あらゆる機会に私どもは訴えている、政府に対して善処を要望してきた。にもかかわらず、減るどころかふえているということは一体何をやっているのか。私はあえて政府が手をこまねいて黙っておったとは言いません。それぞれ努力したことは認めるが、一つも実になっておらないではありませんか。だとすれば、われわれは、いまの政府は、全く怠慢その極に達していると言わざるを得ないんであります。一体何をやってきたんだ。向こう側との話し合いでネックになっているのは何なんですか。  ついでに現況をお話しますが、もう激高した漁民は沖に出てソ連の船の周りを回る、ソ連船の漁船の操業を邪魔するといったような、こういう直接行動に出るような気配も見える。そこで、そうなったら大変ですから、海上保安庁の巡視船が行って、それをそういうことをするなと言うのか、まあ警備しておる、早い話が。ところが、第一管区の船だけでは足りなくて第二管区から応援を求めて現在警備している。もっとも第一管区の巡視船でもいまドックに入って修理している船等もあり、したがいまして、第一管区だけの巡視船では足りなくて、第二管区からの応援も求めてやっておる。ところが、北海道の海というのは御案内のように、日本海もあれば、オホーツク海もあれば、太平洋がある。いま問題を起こしているのは太平洋岸です。しかしいま冬の海ですからまだ。日本海やオホーツク海の方で何か海難事故でも起きた場合に、それを救助に行く、そういう体制が抜かりなく行えるのかどうか。それをいまトラブルを起こしている地帯に第一管区の船が皆行っているわけですから、そういうようなことになったらどうするんだ。現在のところは、漁具被害の程度でございますが、しかしこれが人命損傷の被害にいかないとは、拡大していかないとは保証できないような状態になってきておる。もしも人命の損害が起きたような場合には、一体だれがその責任をとるんですか。この点について、それぞれ外務省やそれから農林省のいままでのやってきた経過なりお考えを述べていただきたいし、それから海上保安庁の方は、海上保安庁としてこの現状を一体どう把握されておるのか。もう時間がありませんのでごく簡単ですけれども、大事なところだけをはっきり御答弁願います。
  87. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) まず、それでは、外務省におきましてソ連側とこれまで折衝してまいりました、あるいはいま考えております措置についての御説明を申し上げたいと思います。  ソ連漁船団の近海における操業につきましては、御指摘のとおりいま始まったことではないわけでございますが、水産庁からの御連絡も受けて外務省としては、ソ連側に対して、こういう事件が起こりますたびに、漁具等の損害についてもソ連側に申し入れを重ねてまいりました。たとえば昨年中におきましてもすでに六回ソ連側に申し入れております。本年に入りましても二回申し入れております。これはモスコーにおけるわが方の大使館のみならず東京におけるソ連の大使館を通じても行っております。去る一月には、宮澤外務大臣が訪ソされました際、先方のグロムイコ外務大臣に対して本件について、特にソ連側の操業の自粛ということを強く要望いたしてまいりました。その際、グロムイコ外務大臣も、ソ連側の漁業関係者にしかとその旨を伝えるということを約しております。  なお、こうした当面の問題とともに、年来ソ連との間でこういう問題について、こういう問題を防止すること、それから、紛争が起こったときに解決することについて話し合いをしよう、という申し合わせができておりまして、昨年の十一月にも専門家の会議をいたしまして、ただいま水産庁と私どもの方で協力して、鋭意、わが方としてもソ連と話し合うこういう問題についての取り決めの案の検討を急いでおりまして、これを得次第近い将来に早くソ連との間で交渉して問題の基本についても解決をしていきたいと考えておる次第でございます。
  88. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 私どもの方といたしましても、事故の報告があると同時にそれを外務省の方に出しまして、ソ連側に抗議及び損害の請求をするということでやってきているわけでございます。ただいま欧亜局長からも御答弁がございましたけれども、いずれにいたしましても、本件、公海の漁業でございますので、根本的な対策といたしましては、今日、米ソあるいはソ・ノルウェー、あるいは英・ノルウェーというようなことで漁業操業協定が国際的には結ばれておりますので、一日も早く操業に関する国際協定をソ連と結びまして、操業協定を結びまして、本件の根本的な解決を図らなければならぬ、こういうふうに思っているわけでございます。
  89. 山本了三

    説明員(山本了三君) 海上保安庁からお答え申し上げます。  海上保安庁は、ソ連の漁船がわが国の近海で操業をいたします場合には、巡視船艇あるいは航空機をもちまして、まず動静の把握ということをまず行っております。で、いつ、どこの海域に、どれくらいの船が操業しておるかということを把握しております。それらのソ連の漁船団に対しましては、日本船との間にトラブルが起こる、そういったようなことを警戒いたしまして、船艇、航空機をその場合には派遣をして警備を実施すると、そういう基本方針でやっております。で道南の場合におきましては、私ども、襟裳の西の道南海域には、巡視船艇五隻でもって常時三隻警戒配置につく、それから襟裳の東の海域、訓路の外の海域でございますけれども、におきましては巡視船艇四隻をもって常時一隻これは必ず警戒につく、警備に当たる。そういう態勢で対処いたしております。で、そのほかに、漁船が一斉出漁をする、そういったような場合には、多数の船が出ますし、あるいはソ連の漁船が非常に多数参っておる、そういった場合には、こういう基本の線を崩しまして、さらに多くの船艇を集めて警備を実施する、そういう方針で臨んでおります。  で、そういった場合に、先生御指摘のとおり、道南には巡視船艇がそうたくさんございません。したがいまして、道西と言いますか、あるいは二管から巡視船艇を派遣しまして増援して警備を実施しているわけでございますけれども、巡視船艇を派遣しました後の、留守の、何と言いますか、基地と言いますか、におきましての警備でございますが、あるいは海上保安の問題でございますけれども、これは当該管区の船艇、これを総合的に運用いたしまして、その穴を埋めて緊急時に備える。そういう体制にいたしております。  こういったことで海上保安庁といたしましては、水産庁あるいは道庁こういったところとよく連携をとりまして、トラブルの防止あるいは海難の防止、これに全力をあげてまいりたいと、そういうふうに考えております。
  90. 川村清一

    ○川村清一君 ただいまそれぞれ省庁から御説明をいただきましたが、根本的な解決にはなりません。それで、この解決のためには、まず、農林大臣は、現地の情勢というものを、これは、実際に耳では聞いておっても、目でまだ見てないと思いますので、早急に行って現地の状況を見ていただきたいということが一つ。  もう一つは、これを解決するためには、十年間の経緯のある問題ですから、これからやります、これからやりますというような答弁では満足できないんです。毎回私は質問して、そういう御答弁をいただいているんです。ですから、いま即刻やることは、第一に領海十二海里を宣言することです。これは、これによって完全には解決しませんよ、でも現在のトラブルの六〇%から七〇%は解決します。国連会議において合意を得てからなんという、そんな御答弁では満足できません。なぜかならば、今日まで同意してこなかったのは日本だけではないですか。いま日本が十二海里を宣言するのにどこの国が反対しますか。反対する国は一つもありません。現にソビエトだって、アメリカだって、それからカナダだって、十二海里領海かあるいは専管水域十二海里というものをもう決めているではありませんか。ラテンアメリカの国々ではもう一九四〇年代、第二次戦争が終わった後において二百海里を勝手に宣言しています。したがいまして、あの海域ではアメリカの漁船がつかまって賠償金などを払っているではありませんか。だれに遠慮して即刻十二海里を宣言できないんですか。すぐやることです。  次は、沿岸漁民に被害を与えておる責任者ははっきりしておる、加害者がはっきりしておるんです。加害者がその損害に対する補償をしないとするならば、当然、日本政府が肩がわりして払うべきです。その漁具の被害及びソ連漁船が来ておるために漁に出ないで休んでおるその損害、これは払うべきです。  次には、昨年十一月の末から十二月の初めにかけて両国の専門家会議で取り決めたこの事項ですね、この事項に基づいて早急にこの会議をやることです。第五項にこう決められておりますね。取り決めの早期締結のため、できるだけ早い時期に次の会合を持つことが適当であると認めた、と。この合意に基づいて速やかにこの会議を持って、できれば紛争処理委員会でもつくって、そうして被害の実況を調べるとか、あるいは現にソ連の漁船がどういうようなことをやっておるのか、それを調べてソ連政府にそれを認めさせるべきであります。これを即刻やるべきだ。そうすると、この問題は解決する。いまの御答弁ではそういうふうにやりますとか、こうするつもりですとか、そんな答弁は十年来続けてきたことではありませんか。少なくとも、私は、十年間それを聞いておる。昭和四十年以降聞いておる。そんなことでは私は満足できません。即刻やりなさい。どうですか、安倍農林大臣
  91. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず第一に、私の現地視察の件につきましては、これまでに国会の御発言もございましたし、また、現地からの強い要請もございますので、何としても参りたいということで計画をしておったわけでございますが、幸いにいたしまして国会のお許しも得ましたので、この二十二日の土曜日に現地を視察し、さらに関係漁民の皆様方とも懇談をいたしましてまいりたいと思っております。  それから、この問題の解決につきましては、いまお話がございましたように、やはり、一日も早く専門家会議を開いて、紛争防止に、あるいは紛争の処理についての協定を結ぶことが先決であるわけでございまして、わが国としてもこの専門家会議を開くために今日までもソ連側を打診をいたしまして、これを進めるための努力を続けておるわけでございまして、実は、水産庁長官もソ連に一日も早く派遣をしたいと、こういうふうに考えて今日までずっと打診を続けてきておるわけであります。実は、二十二日には出発できると、こういうふうな予定も立てておりましたが、どうも、ソ連側がもう少し待ってほしいというふうなソ連側の回答がまいりまして、三月初めごろに行けるようになるんじゃないかと思いますが、水産庁長官に早くソ連に行ってもらいまして、専門家会議を開くための段取りを進めてきてもらいたいと思っておるわけでございます。  それから領海十二海里、場合によっては専管水域十二海里を宣言しろということでございます。この領海十二海里の問題につきましては、これは農林省だけで決定できるものではないわけでございますが、私も今日のわが国の漁業の情勢からみまして、三海里を十二海里にすることが妥当である。この十二海里にすることにつきまして努力をいたしたいと思うわけでございます。ただ、今日十二海里とするに当たっては、外務省の関係あるいは運輸省の関係、いろいろと各省間で話を詰めなければならぬわけでございます。と同時に、また、ジュネーブの海洋法会議でこういう問題も含めて総合的にいろいろと討議されるわけでございますので、わが国としても、この海洋法会議において有利な態勢を進めていくためには、この会議というものを、状況を見きわめた上でやった方がいいんじゃないかという判断もあるわけでございまして、したがって、この領海十二海里の点につきましては、さらに各省間の話を詰めながらジュネーブの会議の模様を見て対処していきたいと思うわけでございます。  一方、領海十二海里はそういうふうにいろいろと、問題といいますか、まだ詰めなきゃならぬ問題があるとするならば、専管水域十二海里は農林省だけでやれることだからやってしまえと、こういう御意見があることも事実でございます。私たちも、この問題につきましては真剣に検討もいたしたわけでございますが、専管水域十二海里ということになりますと、実は、今日までの外国の漁業の実績というものは認めなきゃならぬ。こういう問題があるわけでございまして、そうなってくると、ソ連の今日までの実績ということを認めなきゃならぬというふうな状態にも相なるわけでございますので、これが果たしてこの南下船団等に対する効果があるかということになりますとまことに疑問の点があるわけでございます。そういう点で、やっぱり、私たちは、領海十二海里を推進するほうが得策ではないだろうかと、こういうふうに考えております。  それから、今日までの漁業者の被害といったことについてどういうふうに考えておるかということでありますが、この被害の補償につきましては、今日まで水産庁としても、外務省を通じましてソ連側にしばしば要求しておりますが、ソ連側は、これに対して何ら回答してないというのが現実の姿でございますが、今後の被害につきましては、これは、専門家会議等において十分討議をし、わが国の主張を通さなきゃならぬとは思うわけでございますが、なかなか困難であることは、これはもう今日までのソ連側の態度から見ても明らかでございます。そうした中にあって、やはり今日まで、沿岸漁業者の皆さんが非常に長い間の期間をかけて育て上げた漁場が破壊をされておる。そして沿岸漁民の皆さんの漁具やあるいは網等が多大の損害を受けておる。これは、私としても、そのまま見過ごすというわけにはまいらないのではないか、やはり何らかの国としての措置を講じなければいかぬ。そこで私といたしましても、政府部内におきまして、十分ひとつ折衝をいたしまして、何らかの救済措置が、関係漁民の損害に対して行われるように今後最大の努力をしていきたいと思っております。
  92. 川村清一

    ○川村清一君 私の与えられた時間がなくなったのですが、委員長のお許しをいただいて、もう一問挙げさしていただいて終わりたいと思います。  まず最初に、安倍農林大臣が早速現地を視察においでになるという意思を表明されまして、これは敬意を表します。しかし大臣、いまあなたが私に答弁されたようなことぐらいの考えを持って現地へ行って漁師の方々に会って、説明したって、現地の漁民の方々は絶対承知いたしませんよ。吹き上げられますよ、これは。その点を覚悟して行って下さい。  そこで、領海十二海里の問題。私は、あえて領海に固執しません、専管水域でもけっこうでございますが、この問題は、いまあなたはそういうような御答弁をされておりますが、実は、漁業白書の質問などで私は、本会議佐藤総理大臣なんぞにも質問しているのです。佐藤総理自身が、いまどき三海里などというのは常識ではない、これを広げるために前向きで検討させます、こういう御答弁をされておるわけでございます。にもかかわらず、今日、政府は、いまのような御答弁である。要すれば、なぜできないのか。いろいろそうすると支障があると。だれが支障があるのか。そのことによって、国益という名前、国益を守るためにそうだという御答弁になるわけですが、国益とはだれかということになる。その国益という名のもとに沿岸漁民が泣いてしまってもかまわないのか、がまんせいというのか。  それから、領海十二海里は、それは一九六〇年の第二次国連海洋法会議におきまして四つの条約が採択されておる、領海、公海とか大陸だな条約とか。その中で、結局決まらなかったのは領海の幅の問題なんですよ。それはアメリカ、イギリス、日本の共同提案で領海六海里、その外側にさらに六海里のいわゆる排他的漁業水域をつくって専管十二海里。こういう考え方が、いわゆる三分の二の賛成を得られないままにそれが決まらなかった。ですから、この十五年間日本は、決まらないのだから三海里だ三海里だとがんばってきた。ところが、日本が三海里だとがんばっている間に、世界の国々は、多いところは二百海里あるいは十二海里、二十海里、五十海里とそういうふうに勝手にどんどん決めてしまった。そんなもの認められないと言ったところで、日本の北のほうの漁民が、ソ連の、もと日本の北方領土だから返せといっていますそこへ、十二海里の中へ入っていくと、皆拿捕されておるじゃありませんか。これが現実の姿ですよ。それを、いろいろな問題があるからできない。国際的に合意を得た後においてやるということは、今度の三月からのジュネーブ会議できまったら、日本も十二海里を宣言するということなんでしょう。よその国はもうみんなやっているじゃありませんか。もし領海でなかったら専管水域でいいですよ。農林省だけでできるじゃありませんか。このことによっていまの問題は約七〇%解決するのですよ。  その次に、この補償の問題。これもできない、肩がわりはできない、しかし何らかの形で考えようと。そういうことでは、とてもじゃないけれども、その問題は解決いたしませんよ。  ですから、もう私これで質問やめますが、大臣は北海道へ行かれるわけですから、行ったときに一体どう説明されるか。いまのような説明されたって、それは吹き上げられますよ。まさか、けしからぬと言ってかかってくる者もございませんけれども、吹き上げられますから、それは覚悟して行ってください。いま一回、私が言いましたが、もう一度御答弁ください。それで私の質問を終わります。
  93. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 領海十二海里の問題につきましては、私は、非常に積極的な考えを持っておるわけであります。これは今日の漁業の情勢から見ましても、ぜひともひとつ実現をしたい、こういうふうに思っておるわけでございますが、ただ、農林省当局だけの問題でなくて、やはり政府全体の問題としてこれは合意に達しなければならぬわけでございます。その点については、私自身としては積極的に努力をいたしたいと思うわけでございます。  同時にまた、海洋法のジュネーブ会議、それまでに、やはり領海十二海里をきめてやるのか、あるいはそれを、ジュネーブ会議状況というものを中においてこの問題を考えていくのかということになりますと、これは外交的な一つ方向ということにもなってくるわけでございますので、そういう点はやはりこれからの日本の国益というものを考えて、外交政策の中にあって慎重に対処する必要があると思うんですが、しかし、私といたしましては、領海十二海里というものはぜひとも実現をしたい。  専管水域につきましては、現在専管水域を宣言したからといいまして、いままでの専管水域の実例から見ましてもやはり実績というものを認めなければならない。その前提の上に立った専管水域ということになるわけでございますので、そうなってくると、現在のソ連船の操業も認めなきゃならぬというふうなことになるわけでございますので、これまた私たちも考えたわけでございますが、むしろ専管水域でいくよりは領海十二海里でいったほうがわが国の沿岸漁業を守る上におきましてはより効果的である、そういうふうに考えておるわけでございます。
  94. 原田立

    ○原田立君 大事な問題なので、前の委員と質問がダブる点があるだろうと思いますが、はしょらないで御答弁いただきたいと思います。  農林省は五十年度予算については予定どおりの予算措置を講じたと、こういうふうな御意見のようでした。先ほど鶴園委員からも、また神沢委員からも厳重な指摘があった。私も同じように指摘したい。政府の今度の対前年比が一二四・五%の伸びである。要するにそれに対して、農林省は一一九%なのですが、これはどうしても安倍農林大臣、えらそうな口をきいて、これで攻める農政をやりましたとは言いにくいんじゃないか、こう私思うのですけれども、ひとつ所信のほどをお伺いしたい。
  95. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回のこの予算は抑制基調の中で編成された予算でございますが、その中におきましても、よく御存じのように、社会保障、社会福祉関係、教育関係予算というのが非常に大きく伸びたわけでございまして、そういうふうな状況の中にあって、農林予算は御指摘のような予算の伸び率に終わったわけでございますが、しかし予算全体、農林省関係予算そのものにつきましては、伸び率こそ国全体の伸び率においては及ばなかったという面はあるわけでございます。が、公共事業においても多少、他の公共事業部門に比して多少伸びたわけでありますし、また一般事業費関係につきましては二四%と、これはこの十年来ない伸び率でございますので、そういう一般事業費が伸びたということも、これはまあ御評価をいただきたいと思うわけでございます。もちろん、十分な予算ではなかったわけでありますが、私としても最善を尽くして、まあいろいろと御批判もあるわけでございますが、一面においては御評価もいただいておるわけでございます。
  96. 原田立

    ○原田立君 農林大臣がそういうふうに、すぐいばっちゃうもんだから、すぐ次に後の意見が出てきちまう。やっぱり、一二四・五%になると、いま調査室に計算してもらったらば、約一千億ぐらい足んないんですね。一一九%と一二四%と計算すると、約一千億違う。だから、先ほど鶴園委員が指摘したように、〇・五%とか、あるいは一%とか二%減ったというんなら、まだわかるんだけど、五・五%減って、それで公共事業の方にやったからいいじゃないか、とかなんとかいうようなことでは、ちょっとまずいんじゃないかと思うんですがね。やっぱり、いま何をやるにしてもお金がなければできないんですから。もう今年度は、これで決まっちゃったんだからどうしようもないと思うんですけれども、少なくとも、この次、五十一年度やるときには、あなた大臣かどうかその点はよくわからぬけれども——あんまり失礼な言い方して悪いけれども。少なくとも農林予算はもっと底上げをすべきだと思うんですよ。その御見解はいかがですか。
  97. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いろいろと御批判はあるとは思うわけでございますが、先ほどから申し上げましたように、今回の予算につきましては、私たちとしても、全力を尽くしたし、それだけの評価もあったと思うわけでございますけれども、しかし確かに御指摘がございましたように、これからの農政転換をやろうというときですから、これはもう底上げをしていかなきゃならぬし、そのためにも食糧の総合政策を確立をして、ひとつその基礎を固めて、五十一年度からの予算編成に臨んでいきたいと、こういうふうに思っております。
  98. 原田立

    ○原田立君 これまた先ほどお話がありましたが、農林大臣大臣就任後、いわゆる攻める農政と。——攻める農政という意味がよくわからないというお話、あるいはまた五十一年度から始めるべきではないか、というようなのが大島委員からも、青井委員からも、与野党の先生からも、みんな意見が出ておった。だから、与党の先生がわかんないんだから、野党のわれわれだってよくわかんない、攻める農政という意味がですよ。それで、もう少し明確に、攻める農政を御説明願いたいと思うんです。
  99. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私の攻めの農政というのは、実は、私が、今日の農業を取り巻く情勢に対して、私自身の認識の上に立って、基本的に積極的な農政を進めていくべき時期だと、また、そういう時期も熟しておると。こういうことで私の政治姿勢を述べたわけでございます。  五十年度予算につきまして、何にもあらわれてないんじゃないかということでございますが、私としては、五十年度予算の中にあって、非常な抑制基調の中には組まれましたけれど、私自身が考えております、あるいは飼料の増産対策とか、あるいはまた裏作の奨励対策であるとか、あるいは金融、税制等についての改善であるとか、あるいは漁場整備の推進であるとか、そういった新しいこれからの農政の芽というものは、これは出ておると思うわけでございます。そういう点については、野党の皆さんからは非常な御批判をいただいておりますが、与党の皆さん方からは大変評価していただいているわけでございます。
  100. 原田立

    ○原田立君 まあそれはどちらでも構いませんけれども大臣、大事な点は、私はやっぱり農業、林業、漁業、その関係者の人たちが、それをなりわいとして安心して生活ができる、仕事ができる、食べていける、こういうのが究極の目的だろうと思うんですよ。いまのように、あれが値上がりだ、これが値上がりだなんというようなことで、食うや食わず。あるいは三ちゃん農業だなんというようなことになってしまったんでは、これはやっぱりだめだと思うんですね。だから、大臣が言われる、いわゆる攻める農政というのは、食える農林漁業をつくるのだ、それがその目的なんだと。そこのところに焦点置かなきゃいけないんじゃないか、こうぼくは思うけれども。そういう意味で、どういうふうにお考えになるか。あるいはそういう意味のための助成措置というのは十分に行われなければ、攻める農政にはならない、その点いかがですか。
  101. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに、いま御指摘がございましたように、農家の経営が安定をしていく、いわゆる食える農業といいますか、これを確立をしていくということは、非常に大事なことであろうと思うわけでございます。確かに高度成長の中において、農業全体が非常に脆弱なものになっておるということは、私たちもこれを認めていかなきゃならない。その上に立ってこれからの農政を進めていく、そうして農家の経営安定を図っていく。そのための措置としての生産対策を充実し、さらに再生産が確保されるような価格対策を充実をしていくということが、これからのわれわれが大いに力を注いでいかなきゃならぬわけでございます。そういう点についても、ひとつ全力を尽くしていきたいと思うわけであります。
  102. 原田立

    ○原田立君 五十一年以降の米の生産調整についてどう考えているのか、これが一つ。それから、休耕田対策はどういうふうにするのか、その二つですね、その二つお答え願いたい。
  103. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 生産調整、稲作転換事業は五十年度で終わるわけでございますが、五十一年度からこの稲作転換事業を続けていくのか、あるいはこれを終わりとするのか、この問題でございますが、これも時期的にも六月ごろまでには私は結論を出さなければならないと思います。が、この稲作転換事業を今後続けていくかどうかにつきましては、米の需給関係とか、あるいは今後、生産を拡大をしなければならない農作物と米作との関係であるとか、あるいはまた、国際的な食糧の需給の問題等も十分配慮をして、六月ごろまでには今後の方向を決めていきたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから休耕田につきましては、確かに今日、休耕田の一部が相当程度稲作に復元をしておるわけでございますが、一部はやはりそのままになっておるという状況があると思うわけでございまして、私たちとしては、この休耕田がそのままになっておる実態というものを正確に把握するということが、まず、大事でございますので、実は五十年度の予算においても、その調査費をつけたわけでございますが、五十年度中に、休耕田の実態を正確に把握をして、その上に立って、休耕田で、そのまま残っておるたんぼにつきましては、これを復旧させるための稲作転換事業等を積極的にやはり行っていかなきゃならぬ、こういうふうに思うわけであります。
  104. 原田立

    ○原田立君 これ一月二十五日の読売の記事なんですけれども、これによると、大臣は「五十年度まで実施することになっている米の生産調整は、五十一年度以降も何らかの形で残す必要があろう」と、こういうようなお考えが述べられているわけです。ところで、二十三日に三木首相が出席して行われた、いわゆる農業問題懇談会では「食糧需給が窮迫している時に米の生産調整を続けることは国際的にも不信を招く。直ちに撤廃すべきだ」と。こういうことは、農業団体ばかりでなく、財界からもこういう意見が出ているんでありますけれども、こういうところから勘案してみると、農相の態度は全く後ろ向きではないのかと、こう思うのです。五十二年度には備蓄を二百万トン、五十一年は百五十万トンというようなことですけれども、これは私はよくわからないのですけれども、五十年度は一体どうなのか。それから、生産調整は五十年度百二十五万トンの予定を百万トンにし、五十一年度は五十万トンにすると。五十二年度は一体どうなるのか。ここいら辺数字として出ていないのですけれども、いかがですか。
  105. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 生産調整の問題について先生方はもちろんよく御認識でございますが、われわれがいろいろと接触する範囲におきましては、十分な御認識のない方もあるわけでございまして、御存じのように、四十九年度からは、いわゆる減反といいますか、休耕田は廃止をいたしまして、稲作転換事業に四十九年度、五十年度はなっておるわけでありまして、生産を拡大をしなければならない他作物への転換ということでありますから、私は稲作転換というのはそれなりに一つの意味があると思うわけでございます。その稲作転換事業をどういうふうにするかということは、先ほどから申し上げましたように、現在のところはまだ検討中でございまして、方向を決めておるわけではございませんが、先ほどから申し上げましたような米の需給関係等も十分配慮してこれは決めていきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  106. 原田立

    ○原田立君 大臣、余り時間が私ないんでね、実際の問題を三点ばかり聞いておきたい。これは、前もって通告してなかったから初めて聞くだろうと思いますので、お聞き願いたい。  一つは、国鉄が各地で貨物廃止合理化を行っているわけでありますけれども、このうち九州福岡県の筑肥線の前原駅、それから浜崎駅、それから大川野駅——浜崎と大川野は佐賀県でありますけれども。それから唐津線の相知駅、この四駅が貨物取り扱いを廃止すると。こういうことが報道され、地元のミカンあるいは農家の人たちは、「コストアップにつながり産業界への打撃が大きい、生産農家を見殺しにするのか」と、こう非常に強い反対に立ち上がっているわけです。これは本当は国鉄のほうに聞くべき問題なんだけれども、農林大臣、こういう国鉄の合理化なんかが安易にやられては、いまの生産農家が困るように、非常にその苦情が多いわけです。だから、こういうのに対しては、もう少し農家保護という立場、あるいは食糧問題としてとらえて、こういう合理化案なんかに対しては、もっと農林省として国鉄のほうに、運輸省のほうに強硬に言うという姿勢を示してもらいたいと思うのですが、どうでしょう。
  107. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) どうも国鉄の合理化計画・それの推進に当たりましては、農林省としても権限外のことでございますが、いまお話しのように、やっぱり農作物の輸送等について影響があることもこれは事実でございます。まあしかし、国鉄としては膨大な赤字を抱えておるわけでございまして、そういう中にあって合理化するために貨物駅等の廃止計画を今日まで実現をしておるわけですが、その中にあってやはり地元の皆さん方の理解を求めながら廃止をしてきておるというのが今日までの姿であろうと思うわけでございますので、そういう点につきましては、やはり国鉄当局としても地元の了解を得られながらやられることが適当ではないだろうかと、私はそういうふうに思うわけであります。
  108. 原田立

    ○原田立君 地元の了解を得ることが一番大事ですよね。その点だけでもひとつ運輸省に言ってくださいよ。というのは、この新聞報道されているのは、「この地元の反対にもかかわらず国鉄の地元関係者に対する説得は「合理化に協力してくれ」の一本ヤリ。三月十日のタイムリミットを前に「既定方針通り実施する」と方針を固めた。」というんです。こうなっているんですよ。地元の了解なんか得ないまんまに、何とか納得してくれ、納得してくれという、こういう姿勢で行っているというんです。こういう姿勢じゃ、いま大臣が言われることはおきれいな話であって、実際には通用しない。国鉄、運輸省に厳重に言ってもらいたいと思うんですが、どうですか。もう一辺御答弁願います。
  109. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私のほうの管轄外といいますか、権限外のことに属するわけでございますが、私の県等におきましても貨物駅の廃止が行われたわけでありますが、これについてはやはり地元民の理解を求めながら廃止が行われておるわけでございますから、国鉄としても、そういう基本的な考え方というものは私は守りながらやっておると、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。それに対してこちらがいろいろと介入をするということにつきましては、これはいろいろと問題もあるのではないかと思っておるわけでございます。
  110. 原田立

    ○原田立君 じゃ、この問題はこれで終わりにしますけれども、余りそんなこと言ってたんじゃ——もっと悪口言いたいけれども、やめます。現地へ行ったら怒りますよ、そんなことじゃ。  それから、柴立次官もおいでになるが、鹿児島の喜入のコンビナート、あれなんか非常に地盤沈下、不等沈下が問題であるという。ほとんどのものが不等沈下になっているんじゃないかと、こういうふうになっているし、消防庁のほうで全国的に調査したということなんですが、これはどういうふうになっているか。消防庁の人が来ていたならばそれに対して答えてもらいたいし、と同時に、農林大臣、この前の委員会のときにも提案しておいたんですけれども、タンクの回りにだけ防油堤をつくるんじゃなくて、コンビナート全体に対してもっと厳重な防油堤を築くべきだ。そういうふうにすることが、大臣所信表明の中で強く言っている沿岸漁業の擁護につながっていくんじゃないか、こんなふうに思うんです。そこいら辺のところを、コンビナート全体に防油堤を築くべきだということについてのお考えはどうなのかということが一つ。  それから、消防庁のほうでは、一体どんなふうな状況になっているかということを報告をしてもらいたい。いま挙げた喜入、あるいは何か一つの具体的な例で。それから、水島なんかは一体その後どうなっているのか。それから名古屋、横浜。いま大抵新聞報道されていますけれども、そこいら辺あらあら報告願いたい。もしなければ概括的なものでけっこうですし、あとで資料でまとめてもらってもかまわない。
  111. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 水島の事故が契機となりまして国会等でもいろいろと御議論がございまして、実はわが国のコンビナートによるところの事故についての防災体制を強化し、総合的な防災対策を推進すべきであると、こういうことで、実は三木総理から福田自治大臣に対しまして、総合的な防災対策を、各省と協議の上立案をし、そして今国会においても、これが立法を行なえ、というふうな指示がございまして、福田自治大臣を中心といたしまして、今日までコンビナートの事故に対する総合的な対策、並びに立法化という作業がいま進んでおる段階にあるわけでございまして、そういう中にあって水産庁の立場からも、この防災対策等につきましても、いろいろと意見を述べておるわけでありまして、いま御指摘のございましたようなコンビナートの事故によって沿岸漁業者が被害が起こらないような具体的な措置をとることにつきましても、目下協議をいたしておるわけであります。これはおそらくこの国会に間に合うような立法措置も行われるのではないかというふうに考えておりますが、この点につきましては、消防庁からも答弁をすると思っておるわけでございまして、私たちも、あくまでも沿岸漁業を公害から守る、あるいはコンビナートの事故から守っていくということにつきましては、積極的に今後とも取り組んでいきたいと思うわけでございます。
  112. 永瀬章

    説明員(永瀬章君) お尋ねの油を敷地外に出さない問題を先にお答え申し上げますが、これにつきましては、水島の事故の場合に、非常に大量の油が海上に流出いたしまして、多くの被害をもたらしたことはまことに申しわけないと考えております。この事故の原因の調査につきましては、タンクの亀裂という問題が一番基礎的な問題でございますし、また、非常に技術的にもむずかしいと申しますか、入り組んだ問題も抱えておりますので、御案内のごとく、消防庁に、水島のタンク事故に際しましての事故原因の調査委員会を大学の先生方を中心といたします十五名の委員方で結成いたしまして、現在その究明に鋭意努力していただいているところでございます。  なお、この結論をまちませんと、タンクそのものの今後の構造をどのようにすればいいのか、あるいは基礎との関係におきましてどのような安全対策をとっていけばいいのかということは出てまいりませんので、この結論をまってそのようなことを措置をいたしたいと考えておりますが、一方タンクに付属いたしておりました垂直型の階段でございますが、これがタンクの底板の破裂によりましてその油の勢いで吹き飛ばされて防油堤をこわした、そしてこの破口から油が敷地内に流れ、また敷地外にも非常に多くのものが及んだということから考えまして、タンク以外の今後規制を強化していくべき、いわば安全を確保していくべきタンク以外のものにつきましての改正、あるいは指導基準の改正というものについて現在検討を続けております。  したがいまして一番大きな問題といたしますと、敷地外に出たということが一番大きな問題でございますので、これは土堤のようなものをさらに工場周囲につくらせ、そして特に問題は排水口でございます。この排水口を緊急にふさぐことができる方策を考えさせる、設けさせるということを第一の目的とし、そのほかの要件につきましてもなお検討を続けながら、新しい安全性の確保を図っていきたい、かように考えております。  それから不等沈下の問題でございますが、喜入の基地のタンク、これは御案内のごとく十万キロリットルと十五万キロリットルの二種類のタンクがございまして、十五万キロリットルの場合には、直径が実は百メートルもございます。この中で最大の沈下量を示したというのが八十何ミリという報告が県から電話では入ってまいっておりますが、直径が大きいものでございますんで、直径に対します不等沈下の量という比でとってまいりますと、いわば角度でございますが、これは百分の一以下というような数値になってまいりまして、他の場所におきますところの、新聞報道で、他の場所で報道されております数値よりは低い数値でございます。ただタンクにつきましては、どのタンクも絶対平らなタンクというのはございませんで、現在調査いたしておりますが、不等沈下ゼロのタンクというのはミリオーダーではどこかで出てまいりまして——ミリのオーダーでもゼロというのは見つかっておりません。しかしながら、このタンクの傾斜が非常に大きい場合は危険になりますし、それほど大きな傾斜でなければ危険ということには相ならないかと思います。で、各地の数値は現在取りまとめ中でございますし、荒い傾向につきましては一両日中に発表できるように鋭意急いでおりますが、細かい数値につきましては、どのタンクが直径幾らに対してどれだけの沈下量を示したというような数値については、なお今月いっぱい程度府県からの報告が上がってくるのにかかると思います。したがいましてお尋ねの水島あるいは名古屋、川崎というあたりの細かい数値につきましては、現在なお手元に届いていない状況でございます。  以上でございます。
  113. 原田立

    ○原田立君 もう時間がないんで、たいへん申しわけない。もう大分超過しちゃったんですけれども、消防庁ね、一月の二十六日に、佐賀県の杵島郡の住ノ江港、そこでシェル石油の新佐賀油槽所の油の荷揚げ中に、溶接の切れ目から——ちょっと切断して、発火して、重傷一名、軽傷三名、こういう事故が起きた。あすこで、もしその油漏れがばあっとなったらば、有明海のノリは大変な被害になっちゃうわけですよ。そこでこの構造を見てみましたら、それはあなた専門家だからわかっているだろうと思うけれども、こういう一つの管に無理無理ボールを突っ込んで、それで油のかすを取るんだそうだな。だけど無理無理入れるという、こういう角度が九カ所もなんとある。それでそのボールが入るときにはこんなに揺れるそうだ。その溶接の継ぎ目が裂けないのがおかしいぐらいじゃないかと、こういう意見なんです、現地では。問題は現地の住民の許可を得ないままに、相談をされないままに、これができているということは、実は非常に大きな問題点の一つだと思う。漁業を守るためにも、そういう点も含めて厳重に見てもらいたい。これは答弁は要らないですから資料がありますから、そちらへ差し上げますからお調べ願いたい。
  114. 塚田大願

    ○塚田大願君 私は、まず大臣に、日本農政に対する基本姿勢について若干お伺いしたいと思うんです。大臣は、この間の所信表明でも言われましたが、将来にわたって食糧の安定的供給を確保する体制を整備することが今後の農政基本、中心課題である、わが国農業自給力を高めることであると。こういうふうにおっしゃったわけです。で、考えてみればこれはあたりまえのことなんですね。きわめて当然のことです。国としての義務でもあります。ところが、問題は、こういうきれいごとでは済まないところにいま日本農政が当面しているということです。要するに、こういう国民の願い、農民の願いを無視した農政がいままで続けられてきたというところに、あえて大臣所信表明にこういうことを言わなきゃならない理由があると思うんですよ。そういう点から見ますと、やはり、じゃ、あたりまえのことを無視したということはどういうことなんか、という点についての深い反省が必要ではないかと私は思うんです。ただ、きれいごと、あるいは官僚作文で済むほど事はやさしくないわけであります。  私はこうだと思います、もっと突き詰めて言えば。一つは、日本農政というのは、いわゆる農業から土地を奪い、水を奪い、労働力を奪い、そして大企業中心の高度成長政策を続けた、これが第一じゃないかと思うんです。  第二は、いわゆる国際分業論なんかの立場から、安ければ農作物でもあるいは石油でも外国から買えばいいじゃないかということで、石油もつぶし、石炭もつぶし、農業もつぶして、アメリカを中心とする海外の農産物に依存してきた。海外からの輸入依存政策、これが私第二だと思うんですね。  この二つの点について、この原因から、今日こういう問題が起きてきて、食糧自給率が政府の統計では七三%、これはもちろん価格ベースでありますから、これをTDN換算で言えば大体四二、三%、こういう状態にまで追い込んだ。その根本的な原因について私は、大臣所信表明は何ら反省がない、こういうふうに考えるんですが、その辺について大臣はどういうふうにお考えなのか、まずお聞きしたいと思います。
  115. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) わが国農業は高度経済成長の中におきまして、一面においてはやはり生活水準が向上し、あるいは農家所得が拡大をしていった。農業環境等につきましても、前進した面もあると思うわけでございますが、反面におきましては、確かに農地が壊廃をしていった、あるいはまた農業人口が流出をしていった、また、専業農家が、専業農家から兼業農家へということで兼業農家がどんどんふえていった、あるいは過疎という面も強く出てきたということで、まあ高度成長の中におきまする農業を見れば、確かに私は全体的に脆弱化していっているということは、これはもう否めないわけでございます。  そこで、やはりこれからの農政は、いままでのそうした高度成長下にある農業から安定成長に移っていく農業あり方として、やはり転換をすべき点は転換をしていかなければならぬし、あるいは軌道の修正を行うとするならば軌道修正等も行っていかなきゃならぬ。私はそういうふうな考え方のもとに、これからの農政に取り組んでいきたいと思うわけでございます。  ただ、自給率の非常な低下という面につきましては、これはやはり高度成長経済の中にあって食生活が多様化し高度化したということから、それに対応してやはりわが国の畜産物の生産が二倍、三倍というふうに伸びていった、そういうことも自給率が低下したということについて大きな原因である。と申しますのは、やはり畜産物における中小家畜の飼料は外国に依存せざるを得ない。そして、今後とも、これについては将来ともやっぱり外国に依存せざるを得ないというふうなことは、これはわれわれとしても、現実的にこれをとらえた上に立って農政を進めていくことは、これはもうやむを得ないのではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  116. 塚田大願

    ○塚田大願君 やっぱりいまの答弁でも、この大臣所信表明の線からあまり出てないという感じがしますね。なるほど高度成長政策はあんまりよくなかった。だから、これから安定成長だと。これはこの間、三木さんも言っていらっしゃるわけですが、しかし、そう言いながら、やっぱり高度経済成長政策基本というものは進めるのだということがその根底にある。私は、そこが問題だと思うんです。安定成長という言葉のあやではないんですね。やはり本当に安定成長をやろうとするならば、いままでの高度成長政策の過ちというものに対する抜本的な反省といいますか、掘り下げがなければ、私は、やはり進まない。特に農政の場合には私はそうだと思うんです。ここまで落ちた、そして農民の不信というものはかつてないほど強い、こういう状態でございますから、私はやはりここで単なる言葉のあやではなくて、本当にいままでの農政が進めてきたその根底、つまり高度成長政策、つまり大企業中心といいますか、農民切り捨て、農業切り捨ての政策、そして同時にまた、外国からの食糧のかさのもとに入っていく、そういうアメリカ依存の農業政策、こういうものに対する私は根本的な反省がなければ、食糧の自給ということを幾ら言ったって、私は、自給率は高まらないと思うんです。  それは政府だけではありません。御承知のように、財界や何かでもいろいろ農業問題懇談会なんというものがありまして、自給率、自給論ですか、自給政策なんかがいろいろ文書で出ておりますけれども、やっぱり何といいますかね、空念仏といいますか、根本に触れようとしない。言葉だけで大変りっぱな美しい言葉が、作文が出される。そういうことでは、私は、本当にこの農政転換と自給率の向上といういまの大きな課題というものは達成されないと思うんですが、その点につきまして、もう一つ大臣にお伺いしたいと思うんです。
  117. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、やはり高度成長の中におきまして、確かに農業に対するいろいろの問題が起こってきたことは、これはもう事実認識としてこれを的確につかんで、その上に立った農業政策というものを打ち出していくことが基本であろうと思うわけであります。そういう中にあってやはり国内の資源的制約もあるわけでありますから、自給力を高めていくということにおいても、ただ単に、それが何もかもすべての農産物において自給力を高められるというものでもないわけでありまして、わが国の気象条件、あるいは生産条件等の中において、やはり可能な限りの自給力は高めていく。しかし、自給力を高めることのできない農産物につきましては、これはやはり外国に依存せざるを得ない。やはりアメリカを中心とする穀倉国に依然として今後とも、そうした農産物についての輸入は仰がざるを得ない。これについては私たちは、安定輸入ということで表現をしておるわけでございますが、安定輸入を図っていく。これは、どうしてもわが国自給力を高めるということと、さらに安定輸入をするという二本立てでなければ、私は、これからのわが国国民食糧確保するということは困難であろう、こういうふうに思うわけでございます。
  118. 塚田大願

    ○塚田大願君 どうも大臣答弁は、私の質問に真っ正面に答えていただいてないという感じがします。もちろん、この安定輸入の問題は、飼料の問題。私これから質問したいと思っておるわけですが、そうではなくて、いまの農政の当面しているこの課題をどのような姿勢で突破するか、改善していくかという問題について私は聞いているつもりなんですが、すぐ安定輸入のところに話がいっておりますから、私も、それならばもうちょっとそういう具体的な各論にわたって質問をしていきます。  いま、いみじくも飼料の輸入の問題をおっしゃいましたが、農林省が出されました「農産物の需要と生産の長期見通し」ここにもいろいろ問題が書いてございますが、最初にお聞きしたいのは、この見通しというのは、たしか四十七年の試案ですね、生産目標の試案。これを基礎にして、たたき台にしてこれをおつくりになったんだと思うのですが、その点はそういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  119. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答え申し上げます。  先生おっしゃるとおり、四十七年には、五十七年を目標年次とする試案を発表いたしましたが、御案内のとおり、その後、国際的な農産物の需給関係も大いに異なりましたし——当時におきましては、なお高度成長で年率八%とか一〇%という成長率を予定した、農産物事情等を前提といたしました需要なり、あるいはそれに対応する供給の見通しであったわけでございますが、その後、農産物の国際需給等の大きな変化もございますし、また、経済もただいま、しばしばお話が出たように、経済成長率も高度成長から安定成長と、したがって、消費支出も四十七年当時の作業とは全く条件が変わってきたというようなことを踏まえまして、全く新しい観点で作業をし直したわけでございます。
  120. 塚田大願

    ○塚田大願君 さて、いま問題になりました、大臣がおっしゃいました濃厚飼料の問題なんですけれどもね、この四十七年に試案が出されましたときも、これは大分問題になりました。特にこの試案の中での濃厚飼料の自給率、これがやはり一三%くらい下がる、四十五年から五十七年の十一年の間で。これでは自給率に対する積極的な姿勢がないじゃないかというようなことで、ずいぶん批判もありました。私もこの委員会で質問をいたしました。この濃厚飼料の問題で、当時の会議録がございます。四十八年四月十九日の会議録であります、参議院農林水産委員会。ここで私、この濃厚飼料の問題について質問して、当時の櫻内農林大臣、それからいま答えられました大河原さんが、まだ、たしか畜産局長だったころだと思うのですが、やはり答弁をされております。で、この濃厚飼料の自給率をどう高めるかということは非常に重要だということを、櫻内大臣もおっしゃいました。これはもう慎重に検討いたします。この濃厚飼料の、特に濃厚飼料の自給率を高めるということについては、私は全く同感でございますと。「あの展望と試案はこれを農政審議会にお願いして、そしてほんとうに専門的な見地から最近の諸情勢を織り込んでの再検討をついせんだってお願いしたところでございまして、私はこの検討の中におきましても、飼料関係については特に早く一応の案をまとめてもらいたい。こういう気持ちで」おります、こういう答弁がされました。大河原畜産局長も大体似たような答弁をされたわけでございます。そして今度この見通しというものが出た。早速拝見をいたしました。いまのように、官房長がおっしゃっておるように、これはもう本当に新しい情勢に即応した立場からこれをつくったということなのですけれども、これを拝見しますと、やはり濃厚飼料の自給率というものは、やはりここでも下がるようになっている。そうでしょう。四十七年から六十年まで大体一・四%下がるのです。ましてその四十七年度は、過剰米でずいぶん自給率を高めました。この過剰米を含めますと三六・三%あったわけですが、これが六十年には二八・三%ということになる。大変大幅に下がるということになるわけであります。この辺についてはどうして一こういういまの情勢でこの畜産を振興するという立場から考えてみますと、この濃厚飼料という問題は非常に重要な問題でありますけれども、やはり今度の見通しでも下がっているような、こういう立場でどうして一体日本食糧の自給率を高めるということができるのか。いま大臣は安定輸入だということをおっしゃっているのですけれども、そんなに甘い見方で本当にこの問題が解決できるのかどうか、ひとつお伺いしたいと思うのです。
  121. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 濃厚飼料の自給率は、五十七年生産目標試案では二〇・五%ということになっておりますが、今回の自給率につきましては六十年で二八・三%という試算をいたしておるわけでございますので、その点については、五十七年度の生産目標よりは上がっているというふうに言えるわけでございます。が、この濃厚飼料につきましては、やはり国内におきまして、粗飼料等の生産を今後とも拡大をするとともに、裏作を活用した大麦等の増産によりまして、国内的に自給率を高めていくという考え方でございますが、全体的に見ますと、この濃厚飼料につきましてはやはり大半は外国に依存せざるを得ない。これはやはりわが国における気象条件、生産条件がそぐなわないということから大半はやはり外国に依存せざるを得ないということ、これは、わが国の現状からしてやむを得ないのではないかと、こういうふうに私たちは判断をいたしておるわけであります。
  122. 塚田大願

    ○塚田大願君 大臣、やむを得ない、やむを得ないと言ってたんじゃ、これはいつまでたったっても、やむを得ないことになって、問題は一つも前進しないんです。これをどう前進させるかというところに私は、農林省責任もあるし、また知恵がなければいかぬ、こう思うんですがね。  で、いま大臣は、まあやむを得ないから外国から輸入するんだとおっしゃるんだが、しかし、最近の外国の事情はもう皆さん御承知のとおりで、あのアメリカの大豆輸出規制では、もう日本国中がひっくり返るような騒ぎすらしておるんですね。  私、昨年の秋オーストラリアに視察に行ってきましたけれども、あそこでもグレーンソルガムの問題について聞いてみました、政府に。そうしたら、もう飼料なんかの問題じゃなくて肉を買ってくれというのが向こうの注文。そんなに簡単に飼料の輸入なんかができるような情勢ではないと思うんですね。  そういう点から考えてみますと、この試案「見通し」というものは「見通し」の見通しが大変甘いと私は考えるわけです。たとえば、同じこの「見通し」の中に小麦の輸入を六十年には五百八十九万トン輸入するという数字になっておりますね、八ページにあります。四十七年は五百三十七万トン、これをもっとふやしていくと、こういう見通しです。しかし、いま言ったように、国際的には大変な事情が起きていることは事実だし、アフリカやインドやパキスタンなんかの事情は聞くだけでももうたくさんのはずです。だからこそ、今日国際的な食糧問題というものに火がついておる。こういうことなんでありますから、そういう情勢の中で、なお六十年に五百八十九万トンも小麦を輸入するなんということがはたしてできるのかどうかですね。私はちょっとそういう点では、ただ、ことばのあやでなくて、実際の実情等その数字から考えてみまして、私はこの見通しというのは、大変これはおざなりと言っては失礼かもしれませんが、少し甘過ぎるというふうに考えています。その点ではどうですか。
  123. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあ私、飼料穀物については大半を外国に依存せざるを得ない、今後ともそうなる、と言ったことにつきまして、そういうふうな国際情勢ではないという御指摘でございますが、私は、現在のところ、飼料穀物については、世界の貿易量が五千万トンぐらいある。その中で一千万トン程度わが国は輸入しているわけですから、二割を輸入しておると言ってもいいわけであろうと思うわけでございますが、今後の世界食糧の動向を見れば、大体十年間ぐらいで貿易量は九千万トンぐらいにはふえていくであろうと、こういうふうに考えておるわけでございます。そういう中にあって、わが国の畜産の成長、あるいはそれに伴うところの畜産物の消費の増大等考え合わせると、そういう中にあって、やはり飼料穀物の輸入は増大していくわけで、大体千七、八百万トンぐらいの輸入ということになるわけでしょう。そうなったときに、やはり貿易量において二割のシェアというものは、これは今日といえども、十年後といえども変わらないのじゃないか。ですから、まあ私が安定輸入というのは、この世界の貿易量におけるところの占めるシェアというものをわれわれは維持していく限りにおいては、今後とも安定輸入ということは確保できるのではないかと、こういうふうな考えに立って今日の試算を発表をいたしたわけでございます。
  124. 塚田大願

    ○塚田大願君 その貿易量のシェアの問題から換算して将来大丈夫だと、こういうふうなお話ですけれども、それはまあいわば数字のマジックといいますか、統計を自分なりに使っておるだけのことでございまして、客観的な情勢というものは私はそんなものではない。いま申しましたが、国際的な食糧事情というものは大変深刻になってきておる。しかも、最近の事情を見ましても、この資源ナショナリズムといいますか、先ほど水産関係で出ておりましたけれども、そういうものが強くなってくる。そういう中で、しかも食糧の絶対的供給量というものは、生産量というものは、決して需要を超えているような状態というものは永続されない。  私は、これは農林省は専門家ですから、おそらく資料をお持ちだと思うのですが、私も資料を調べてみました。たとえばFAOが一九七一年に調べました資料を見ますと、一九八〇年、つまり昭和五十五年でございますけれども、そのときの予測を見ますと、小麦で、生産と需要はほとんどとんとんです。生産が三億九千五百万トン、需要が三億七千七百万トン、わずかに千八百万トン余ると、こういう数字がFAOの統計で出ております。  それから粗粒穀物に至りましては、まさにマイナスである。供給が足りないという数字が出ておるはずであります。  それからアメリカの農務省の長期予測を見ましても同様であります。アメリカのこの予測はもっときびしいですね。一九八五年、つまり昭和六十年には、小麦は生産に対して需要が十万トンふえる、したがって供給が十万トン不足する。それから粗粒穀物に至ってはそれを上回る供給不足が出る。こういうふうに、外国の権威ある統計を見ますと、みんな先行き暗いです、真っ暗です。これはおそらく今日の世界的な常識ではないかと思うのですね。あえて一々数字を挙げるまでもありません。将来の食糧の見通しというものは大変に暗いのです、今日。そういう中でなおかつ、いままでの貿易シェアが二〇%だから、これからも大体安定輸入はできるというふうにお考えになることは、私は大臣としては大変少し軽率ではないか、甘過ぎやしないかというふうに考えるのですが、その辺もう一回お聞きしたいと思います。
  125. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はシェアの問題だけ申し上げましたが、もちろんシェアだけで安定輸入ができるということではないわけでございまして、わが国としても、この安定輸入のためには、できる限りの努力を続けていかなければならぬわけでありまして、たとえば今後とも飼料穀物の輸入について、中・長期にわたる契約を輸出国との間に結んでいくとか、あるいはまた、多元的な輸入の方向をこれから開拓をしていくとか、さらにまた国際協力事業団による開発途上国におけるところの農業協力、それによって生まれるところの輸出余力をわが国において求めていくとか、まあそういうあらゆる努力を続け、それと相まってシェアというものが大きく崩れない限りは、これは安定輸入はできるのじゃないかと。さらに国際的にも備蓄に関する国際機構も生まれるという段階にもきておるわけでございますから、そういう中にあって、備蓄等に対する積極的な協力も行なっていくということになれば、総合的に私は今後は食糧の、全体的にはやはりいま御指摘がありましたように、やはり不足という基調はあるわけでございますが、わが国国民食糧確保する、食糧飼料については安定輸入ができるのではないかと、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
  126. 塚田大願

    ○塚田大願君 その見通しについては、その数字の見方その他いろいろ要素が入ると思うんですけれどもとにかく私の言いたいのは、そういう数字を使ってどうこうというんではなくて、本当に国民食糧確保するという立場から一番確実な安全な道はないかと、やっぱりみずからの自給力を高めることだと。問題は、その点を申し上げたいんで、この数字をどうこう、輸入の数字をどうこう申し上げるつもりはないんです。もちろんある程度輸入がなければ、日本食糧は成り立たないことは、それは確かでありますが、しかし、基本的には、われわれみずからの力で自給していくということが基本だろうと。そういう観点から申し上げているんであります。けれども、いまのお話では、やっぱりどうもいままでどおり金にあかしてエコノミックアニマルぶりを発揮して、国際的にもきらわれ、しかし当たるを幸い、買い占めていくというようなこの考え方や行き方、政策であったなら、私は本当に日本がますますもって国際的にも孤立をして、経済的にもまた、この食糧面でも窮地に立っていくのではないかということを大変心配します。ですから、いま大臣がおっしゃった開発輸入の問題でもそうです。  私、去年インドネシアへ行ってきましたけれども、やっぱりインドネシアあたりで、どんどん金にあかして開発輸入をしようとしても、私は、いまの国際情勢では、そう簡単にいかないということを身をもって感じてきましたし、それからもう一つ、国際備蓄ということをおっしゃいましたけれども、例の悪名高きキッシンジャー構想、六千万トンの国際的な備蓄をしようというふうな構想ですね。そういったものに、安易に日本が追随していくようなことがありましたならば、ますますもって非常に日本食糧事情というものを危険にさらしていく方向ではないかと、私はそういうふうに考えます。  しかし、きょうはその辺について深い論議をする余裕はございませんから、これは改めて論じたいと思いますが、いずれにしましても、いま数字をちょっと見ましても、今度の長期見通しというのはやはりほんとうに基本的に食糧を自給していくという立場から見ると、大変弱いものになっておるということです。そういうふうな感じがいたしますが、さらに土地、耕地の問題について少し掘り下げてみたいと思うのです。  御承知のように、これは大臣も異議がないところだと思うのですが、農業生産を高めるかぎと申しますか、決め手は、私は、農民の意欲だと思うのですよ。その点については私は大臣だって異議がないと思うのですが、じゃ、具体的に農民の意欲を高めるといったらどういうことか。その点で私は、やはり一つは先ほども出ておりましたが、農産物の価格保障の問題だと思うのです。で、この問題は、われわれもずいぶんここでも論議してまいりました。主要な農産物の価格は米並みの生産費所得補償方式、こういうものをとるべきではないかと。こういう価格政策をとれば、黙ってたって農民は一生懸命につくってくれるという観点から、この価格政策がまず第一。それから第二は、やはり何といっても、土地問題の解決だろうと思うのです。で、その土地問題にいたしましても、この見通しやその他の政策大臣も先ほどおっしゃったように、農用地の造成拡大という問題もございましょう、それから既耕地の基盤整備という問題もございましょう。とにかくこの土地問題も非常にたくさん問題ございますけれども、こういう土地問題を解決する、これが第二じゃないかと思います。これが本当にうまくいけば、私は、農業の生産向上というものはかち取っていける、こういうふうに考えて、ここでも耕地面積のことについて少しお伺いしたいと思うのです。  先ほども出ましたが、この四十七年の試案のときにも、これ大分問題になりました。この試案によりますと、四十五年から五十七年の十二年間に六十万ヘクタールを減らす、こういう数字になっております。まあこの耕地を減らして生産をあげるとは、一体どういうことだということで、これも問題になりましたが、今度の見通しの場合には、先ほどからも出ましたが、大体、何ですね、四十七年五百七十二万ヘクタール、六十年五百八十四万ヘクタール、プラス・マイナス十一万七千ヘクタールふえるということになっておりますな、そういうことですね。ですから、試案の場合には減ったのですが、今度の場合にはふえている。これはまあけっこうなことだと思うのですが、そうですね——その点はよろしゅうございますか、ちょっと確認してください。
  127. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 今度の「農産物の需要と生産の長期見通し案」として先般申し上げましたところでは、造成を八十六万ヘクタール、そしてその間に壊廃という問題につきまして過去の壊廃の趨勢と経済成長率との関係を考慮いたしまして、まあ個人の消費の伸びを仮に五%というかっこうで試算するとすると、壊廃としては七十万ヘクタールが出てまいる、こういうことでございます。
  128. 塚田大願

    ○塚田大願君 ここには二つ数字が出ているのですよ。このいまおっしゃった七十万ヘクタールの壊廃、しかし八十六万ヘクタール造成する。これでいきますと、プラスマイナス十六万ヘクタール。しかしこっちの数字を見ますと、四十七年を基準にしていますから十一万ヘクタール、こういうことになるのです。
  129. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 先生言っておられるのは、二つの問題をごっちゃにされているような気がいたしますので、ちょっと申し上げますと、土地改良長期計画の際の背景となりました四十八年から五十七年という土地改良の長期計画、この際における見通しが、先ほど先生の言われた線でございまして、あとで申し上げました壊廃七十、造成八十六というのは、六十年の見通しとして今回、今度農政審議会で御審議いただいている案ということでございます。
  130. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃ、まあとにかくそこはいいですよ。とにかく一応ふえる、こういうことですから、大変けっこうなことだと考えたいんですけれども、どうもそこでもう一つ矛盾が出てきますのは、草地の面積です、草地。畜産のための草地。この草地の面積は一体どのぐらいになる見込みなんですか、六十年度では。
  131. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 作付面積で申し上げまして、四十七年度、基準年次でございますが、これが七十六万八千ヘクタールと置いておりまして、これが六十年度におきましては百四十六万九千ヘクタールの作付が行なわれる、草地を含めたいわゆる飼料作物全体の作付面積でございます。なお、そのほかに粗飼料源といたしましては、野草地あるいは山林の林内放牧等によります野草の利用というものがそのほかに加わるわけでございます。
  132. 塚田大願

    ○塚田大願君 この見通しの十八ページに「採草放牧の用に供される土地の面積が二十五万ヘクタール程度と見込まれる。」と、こう書いてありますな。十八ページです、見通しの。二十五万ヘクタール、そうですね。
  133. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) ええ。
  134. 塚田大願

    ○塚田大願君 そうしますと、六十年で大体草地は二十五万ヘクタールと見込まれると、こういうことになりますと、四十七年のときのこの見通し、試案ですね。試案を見ますと、この試案では二十三万七千ヘクタールとなっておるんです。試案、九十五ページです。二十五万ヘクタールと二十三万七千ヘクタール、まあ大したことではないです。大体似たようなことということになるんですね。そうしますと、どうもおかしいのは、新土地改良計画では四十万ヘクタールふやすということになっておるんですな。これは閣議決定されたものでありますけれども。四十万ヘクタールふやす、四十八年から十年間に。農地に三十万ヘクタール、草地四十万ヘクタール、この四十万ヘクタールというのはどうなるんでしょうか。
  135. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 便宜、私がお答えいたしますが、造成される草地というものも肥培管理すれば農地でございます。畑でございます。今度の農産物の需給と生産の見通しで五百八十五万ヘクタールと称しております中の畑、ですから二百九十五万ぐらいだと思いますが、その中に造成される草地が含まれるわけでございます。四十六年の土地改良長期計画当時に、草地というものを田畑と別に出しておりましたのは、当時の草地における管理状態から、必ずしも農地という範疇に入らぬ場合が統計上あり得るということから分けていたわけでございますが、最近の草地造成というのは、その後の肥培管理が非常によくなってまいりました、技術的な管理もできるというようなことになってまいりましたので、需給の見通しといたしましては五百八千五万ヘクタールという中に草地が入っておる、草地という畑が入っておる。  こういうことでございます。
  136. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 最初、先ほどお尋ねいただきました十八ページの二十五万ヘクタールといいますのは、先ほど私が野草地と申し上げたものに該当するわけで、いわゆるいま構造改善局長がお答えしました耕地の中に入っております飼料作物といいますか、あるいは草地とは別のものでございます。いわゆる野草地、肥培管理しない野草地、これが二十五万ヘクタール、五百八十五万ヘクタールのほかにあると、こういうことでございます。
  137. 塚田大願

    ○塚田大願君 まあ草地をどういうふうに見るかというのは、大変いろいろややこうしい区分があるんですね。が、それはそれでいいです。ただ、私いまの問題ですがね。この四十七年の試案では草地と耕地をはっきり別項目に書いてありますね。   〔委員長退席、理事高橋雄之助君着席〕 ところが、今度の試案はその草地の項目がないんです。で、いまおっしゃったようにそれは草地も耕地のうちだと、こういうことで耕地の中に入っておるんですね。そうしますと、だから私さっき聞いたんです。耕地がふえるようになっておる、試案のときには耕地が非常に減ったと、しかし今度の場合には、耕地がとにかく四十七年と六十年比べると十一万七千ヘクタールふえることになっておるんですね。四十八年でいえば十六万ヘクタールふえるということになるんですけれども、とにかくこっちの十六ページの比較で見ますと、十一万七千ヘクタールふえる、しかしこの中に草地が二十五万ヘクタール、四十万のあれが入っているということになりますと、これはどうなるんですか。プラスじゃなくてマイナスになるんじゃないですか。プラス十一万七千ヘクタールでなくて、マイナス三十万ヘクタールということになるんですよ、四十七年と六十年の比較を見るならば。落ち込むんじゃないですか。プラス・マイナスですれば。そういうことでしょう。——そうですよ。どう見たってあんた、この草地四十万ヘクタールというのが全然抜けて、全部耕地にプラスして、いかにもふえるように数字がつくられておるということです。こんなことは皆さん、農林省はあれですか、全然考えないでおやりになったということですか。どういうことです、これは。われわれには理解ができない。
  138. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 五十七年度の見通しをつくりました際、それまでもずっとそうでございますが、草地は農地の外という別の計算もしておったわけでございますが、これは草地は、造成が始まりましてから造成技術がだんだん進みまして、一般の耕地とほとんど変わらなく最近はなってきておる。しかも肥培管理も行なわれておりまして、これが統計上飼料作物の作付面積——これは農地についての飼料作物の作付面積と重複する面があるという実態になっておることがわかってまいりましたので、重複を避けるという意味におきまして、今回におきましては、人工造成草地につきましては一般の作付面積の中に含めて算定をするというように改めたわけでございます。
  139. 塚田大願

    ○塚田大願君 それは、だから、そういうやり方で書いたんだとおっしゃるならそれでいいんです。問題は、この数字です。数字にたいへん矛盾が出てくるといいますか、からくりが出てくるんです。いかにもふえるようになるんだけれども、前の四十七年式に草地を別に計算をすれば、逆に三十万ヘクタールぐらい減るということになるんですよ。なぜ、こういう、からくりといいますか、作為をするのかということをお聞きしたいのです。
  140. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 五十七年の目標をつくりました当時は草地と一般の耕地におきます飼料作物の作付面積が別立てにして、その意味では先ほど申し上げましたように、二重計算になっていた面があるわけでございます。したがって、いまから思えば、その分は二重計算で水増しであったというようにも見られるわけでございますが、実態につきまして先ほど申しましたように、最近の造成技術あるいは草地の飼料管理の実態から見まして、やはり一般耕地とほとんど変わりないというような実態にございますので、そういう二重計算を避けるという意味で今回は一般の耕地におきます飼料作物の作付面積の中に含めて計算をしておるということでございますので、実態に合わした計算をしておるということでございます。
  141. 塚田大願

    ○塚田大願君 それならば、この長期見通しにそのことをはっきり書くべきですよ。何も書いてないじゃないですか。われわれは、国民は、農林省が発表されたこれを信用して見ておるんです。ところが、そんなことが書いてなくて、ぺろっと数字だけ、改ざんと言ったら少し語弊があるかもしれませんけれども、こういう書き方で、いかにも耕地がふえて自給率が高まるんだというふうな印象を与えるような、こういうつくり方というものは、私は全然これはもってのほかだと思うんです。こういうこそくなやり方で国民をだますわけにはいかないでしょう。したがって、そういう意味ではこれは大臣、もう時間もありませんから、大臣に聞きたいと思うんですけれども、こういう作為はやめていただいて、本当に裸になって国民や農民に訴えて、自給はこういうふうにしなきゃいかぬ、耕地もこういうふうに拡大しなきゃいかぬ、というふうに、わかるようにしていただかなければいけないと思うんですが、その辺、大臣どうですか。
  142. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、従来はやはり二重計算ということになっておるんじゃないかと。ですから、今回は、実態に合わしてこういう試算をいたしたのであって、いま先生のおっしゃるような、ごまかし的なあれではないと私は思いますし、野草地はこれ以外に二十五万ヘクタールあるということにつきましては、畜産局長からも申し述べたとおりでございます。   〔理事高橋雄之助君退席、委員長着席〕
  143. 塚田大願

    ○塚田大願君 そんな場当たりの答弁では私は承知できませんし、また、国民も、これは二つ比べて見れば、はっきりするんですからね、その矛盾というものは。やはりそういう点を、失敗だったら失敗だと、あるいは、こういう見通しのようなこういう計算の仕方が正しいんだとおっしゃるならば、そのような立場からはっきりした説明がほしいと思うんです。この試案だって、何も四十七年の試案だっていいかげんにおつくりになったわけじゃないでしょう。今度の見通しだって、やっぱり中間報告だといったってそうでしょ、責任を持ってお出しになったんですから。そういう点ではそういうあいまいなことでなくて、やっぱりもっと率直に私は問題を提起しなきゃいかぬと思うんです。三木さんも、クリーン三木だとおっしゃっておる、対話と協調だとおっしゃっておる。にもかかわらず、農林省だけが、わけのわからないものを出して、間違ってないんだなんて開き直ったってこれは始まらないと思うんですよ。  さあ、じゃ、そんなことをいつまでもやっておるわけにもいきませんから。いずれこれはもっとはっきりさしてもらうように、さらにこれからも質問を続けるということにして、最後に、基盤整備の問題だけ一言お聞きしたいと思うんです。  この基盤整備の問題は、もうこれも土地問題の大きな課題でございまして、利用率を高めるという意味からいいましても、この基盤整備は非常に重要だ。ところが、先ほど論議されましたが、ことしの予算を見ますと、農林省予算は全体の予算に比べて伸び率は低いと言われましたけれども、この基盤整備の能率はもっとひどいんですね、そうでしょう。三千五百億円ですか、ことしは。これは三・四%の伸びでしかありませんな。大変低いんですよ。農林省全体の予算の伸び率は一九%で低いと言われたが、これは三・四%しか伸びてない。これで果たして、どれだけの基盤整備の事業ができるのか。四十八年の事業量の半分もこなせないんじゃないかと思うんですけれども。しかも、しかもですよ、いままでの新土地改良計画が出されましてから実績を見ましても、これはもう大臣も、どこか、衆議院ですか、どこかでお答えになっておりましたけれども、四十七年、四十八年、四十九年、この三カ年で一五%しか進んでない。ところが、この土地改良計画が出されましたときには年率二四%という見込だったはずですな、年の伸び率が。三年たっても一五%、これで一体どうするのだ。そこへ持ってきてことしは三・四%しかふえてない。これで本当に土地の基盤整備、土地改良というものをやれるというふうにお考えなのかどうか、まずお聞きしたいと思うのです。
  144. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに今年度の予算におきまして基盤整備予算につきましては、三・四%しか伸びておらないわけでございますが、これはもう御存じのように、今日の五十年度の予算編成が抑制基調という中で行われましたし、道路であるとか、港湾であるというような一般公共事業は零%にとどまったわけでございますから、そういう中にあって三・四%にしても、伸びたということは、それだけの私は意味があったと思うわけでございます。しかし、こうした伸び率でもちろん、いまお話がございましたように、新土地長期改良計画というものは、こういうような状態で進んで達成ができないことは、これはもう明々白々でございます。また今日までの三カ年間の事業の進捗率あるいは予算の消化率等を見ますと、確かに低いわけでございます。このままのやはり伸び率でおっては、これは十カ年間ではとうてい達成できないわけでございます。  今後は、そうした今日の事態というものを十分認識をして、これからのやはり食糧自給力を高めていく、それはやはり基盤を強くしなければならぬという見地から、今後はやはり基盤整備の予算獲得については真剣に取り組んでいかなければならぬことは、これまた当然のことであります。大体いまの伸び率でいきますと、いまから七年間というものを大体一八・六%程度の伸び率でいけば、十三兆という全体計画は達成をできるということになるわけでございます。これをいままでの進捗率からいきますと、非常に困難な面はあると思いますけれども、これは必ずしも不可能ではない。国民的な農業に対する認識が新たになり、さらにまた政府としても、本格的にこの基盤整備というものに取り組んでいけば、私は、この長期計画は、事業は遅れておりますけれども、進度は遅れておりますけれども、必ずしも不可能ではない。何とかこれを達成するように最大の努力をしなければならぬと、こういうふうに思っております。
  145. 塚田大願

    ○塚田大願君 時間も来まして——もっとこの基盤整備の問題はたくさん具体的な問題がございます。いま大臣も一八・六%の年率でやればやれるかもしれないと、こういうことなんで、大いに期待したいところですね。ところが、大体こういう改良計画を見ましても十三兆円という膨大な計画はあるんだが、一体どこをどうしてどのぐらいやるのかという具体的な計画というのはないんですね、これは。ですから、私はどうせ今度この見通しに沿ってこの土地改良長期計画も改定されるんだと思うんですけれども、その場合には、もっと具体的な策定計画というものをひとつおつくりになる必要があるのじゃないかというふうに考えます。これは注文です。注文ですからお答えいただかなくてもいいです、いずれ改めてもっとこまかいあれをお聞きする機会もあろうかと思うので。  最後に、そういう意味では、とにかく大臣も基盤整備事業は一生懸命やるとおっしゃっておるので期待いたします。確かに大変だと思うのですけれども、やはりやらなければ、これは裏作をやるといったって、これはできっこないんですから。しかも農民の皆さんにとっては、この基盤整備の要求というのは大変強いですね。ついこの間も、私のところに一つ陳情がありましたし、請願も出ておりますので、この点について最後に一つだけお伺いして終わりたいと思うのです。  場所は、新潟県北蒲原郡国営阿賀野川右岸の農業整備事業です。この問題についてちょっと最後にお伺いしたいんですが、これは大変大きな灌排事業でして、日本でも有数な大きな事業だったので恐らく農林省御存じだと思いますが、昭和十六年から始まりまして、四十七年に完成したんです。約三十年間かかって完成をしたという事業です。これは御承知のように、新潟の北蒲地帯は大変な有数な稲作地帯でございます。が、同時に非常な湿地帯で、地盤沈下もする、あるいは阿賀野川の洪水のときには、二度も被害を受けるというふうなことで、地元の農民の皆さんにとっては、灌排事業の完成というのは、大変大きな喜びであったわけです。その点ではよかったんですが、ところが、いよいよ金利、あるいは賦課金の徴収が始まるという段階にきて、農民が二〇%の負担になっておったんです、県条例で。国が六〇%ですか、県条例で、県が二〇%、農民が二〇%、こうなっておったんです。その二〇%というのが非常に不当だと。というのは、あそこの灌排事業の集水面積というのは、約四万ヘクタールあるわけです。四万ヘクタールのうち農地が一万四千ヘクタールです。残りの二万数千ヘクタールが、これは山なんですね、ほとんどが。で、山の水がそこへ全部集まってくる。そういうところなんです。しかも最近は、町がどんどん広がりまして、いわば都市排水がやっぱりその排水路にみんな集中してくる。そういういわば国の治山事業、あるいは都市計画に基づく排水事業、そういうことまで水利事業が全部一つにしてやっておる。こういうことでありますから、それを農民だけに負担させるのは無理ではないかということになりまして、県も、農民の二〇%のうち五・一%をさらに追加して、県が負担する、こういうことに最近なりまして、昨年ですか、残りの一四・九%が農民の負担と。しかしなおかつ、それでは農民の負担があまり大き過ぎるので、市町村が負担しろというようなことを県が言っておるんですけれども、しかし、市町村もいまの財政難ではとてもそんなことはやれないと。こういうことは、むしろ国が負担してくれるべきではないかというので、市町村を含めまして、地元の農民の皆さんが陳情に見えてるわけです。  で、いまのような自給率を高めるというような情勢から考えてみましたときに、やはり農民の生産意欲を高めるということが、先ほど申しましたように、一番基本の問題ですから、そういう観点から言いますと、そういった基盤整備事業に、あるいは土地改良事業に、思い切ってやはり財政投資をしていただいていいんではないか。つまり、補助をもっと高めてもらっていいんじゃないかと思いますし、そうしなければ、ほんとうに農民の信頼、協力を得ることはできない。そういう点でひとつ、せっかく大臣が、整備事業を大いにやって、自給率も高めたいとおっしゃっているさ中でございますから、この問題もひとつ解決していただきたいと思うんですが、その辺のお答えをひとついただきたいと思うのです。
  146. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 先生いまいろいろと阿賀野川国営灌漑排水事業、主として排水を中心とする事業でございますが、その御紹介をかねて問題点を御指摘になったわけでございます。確かに、四万ヘクタールと言われましたが、四万七千ヘクタールの流域を持つ中で、受益面積として二万四千五百ヘクタールでございます。
  147. 塚田大願

    ○塚田大願君 左岸を含めると。
  148. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 左岸を含めますので、したがって、二万四千五百ヘクタールという受益地区を持っている、そこにおける排水事業でございます。先生御存じのように、土地改良事業におきます排水事業と申しますのは、十年確率の洪水を対象といたしまして、ある程度の湛水を許容するという限度のもとにおいていわば計画を立てる、こういうふうなことで行われ、そうしてまた受益地はそれらの浸水なり、湛水による被害を受ける農地及びそれに一連のつながりのある地域、こういうことを対象として実施いたしておるわけでございます。確かに国営事業でございますので、国費の負担は六〇%、いま先生が言われましたように、残りの四〇%の中で県が二五・一%ですか負担することになっておりますので、残は仮に農民負担といたしますと、平均いたしまして反当五百円弱と、こういうふうな負担に相なるわけでございます。そういう五百円というものが高いかどうかという問題はございますが、排水事業という問題について、やはり三分の二の同意を得、そうして被害がある地域を対象として行われている事業である。で、水は高きから低きに流れるということで、確かに集水面積といいますか、の方が普通は大きいわけでございます。この阿賀野川につきましても、大体標準的な集水面積に対する受益面積の比率になっております。たとえば名取川あたりはもっとはるかに大きい集水面積ということになっておりますが、農民の、いわばその被害を受ける農地の排水をするための施設ということで行う土地改良事業でございますので、農民負担金をゼロにするというわけには参らぬと思っております。ただ、現実の問題といたしまして、地元において一部市町村に負担をしてほしい、また市町村にもそういうことについて検討をしているやに聞いているわけでございますけれども、ほかの地区の問題等もございますが、それらの市町村が仮に負担する場合に、果たしてそれが公共事業といいますか、交付税の対象として対象になるかどうか、なじめるかどうかという問題もあろうかと思います。反当負担金が、地元で負担するのが反当五百円というようなこともございますけれども、いずれにいたしましても、大きな事業として行われているわけでございますが、それらの市町村の問題につきましては、将来ともこれが交付税の対象になじみ得るかどうかというような問題もやはり自治省と相談してみたいというふうに考えております。
  149. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 基盤整備事業が非常に大事であることは当然でございまして、今日の基盤整備事業は国の補助、さらに地方公共団体の補助、補助残についての融資というような形で行われておるわけでございますが、今後とも、基盤整備事業を推進していくためには、やはり農民の負担というものをできるだけ軽減していくことについては、私も努力をしてみたいと思っております。
  150. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃあまあ、そういうことで基盤整備事業を、特に土地の問題、それからさっき申し上げました耕地面積の問題ですね、こういう問題も、ひとつ大いに検討していただきたい。このことを注文つけまして終わります。
  151. 向井長年

    ○向井長年君 時間がだいぶ経過いたしておりますが、私は端的に質問いたしますから、端的に答えていただきたいと思います。  大臣初め皆さん方お疲れと思いますけれども、しばらくしんぼうしてください。  実は、この毎通常国会なり、あるいはまた大臣、新大臣就任、こういうときには、常にりっぱなこういう所信表明が出されております。非常に、一読いたしますならば、われわれはこれに対して難点があるというわけではありません。すべて賛同すべきことが書かれております。しかし、これは、一つ意欲を持ってやるという、意欲精神的なそれであって、事実上これがやれ得るかと言えば、先ほども質問がそちらでありましたように、やはり予算の裏づけ、あわせてやはり生産者であり、あるいは消費者である、あるいはまた、それぞれの分野における皆さんの協力がなければできない問題でしょう。すべてはそうでしょう。したがって、私は、これをあえて羅列しておると、こういうことを言うのです。したがって、こういう問題を実際取り組もうとするならば、やはり農林大臣が、先ほどからも答弁ございましたが、予算の獲得は、他の省なり、またこの緊縮財政の中において比較論を言っておるのであって、事実上これで万全ということは私は言ってないと思うのです。そうでしょう。一九%伸びたといっても、やはり人件費がその中でどれだけ占めているか、あるいは食管会計がどれだけあるか、公共事業はどれだけできるかと言えば、十分な新規事業はほとんどできない、こういう現状じゃないかと思うのですよ。その点私は、与党内部では、農林大臣えらいがんばったと言われて称賛されておるそうですけれども農林省全般として国民に与える影響は必ずしも十分ではない、これはひとつ大臣は自覚せにゃいかぬと思いますが、いかがでしょう。
  152. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も今日の食糧事情から見て、またわが国自給力を高めるという見地から見まして、今度の予算につきましては最大の努力はいたしましたけれども、もちろん十分なものでないということは十分これは自覚して、その反省の上に立ってひとつ総合的な食糧政策を打ち出し、来年度からのひとつ予算獲得に対して万全を期していきたいと思っております。
  153. 向井長年

    ○向井長年君 実は、私、この間の総理初め三大臣所信表明に対して本会議上で代表質問いたしました。参議院というところは残念なことに大臣五人しか答弁できないことになっておるのです、本会議では。五人以上はできないということを議運で申し合わせておるのです。農林大臣に私は聞きたかったのだけれども、その他の要項があって総理大臣に聞いたところが、総理大臣はあいまいな、全く要点を外した答弁をいたしております。したがって、私はその問題についていま大臣にただしたい。ただしたいのだが、この中に大半加わっております、精神は、あるいは表現は。ところが、これは事実上具体性がないと思います。これは抽象的に表現してあるだけであって、それで、先ほどもたびたび質問の中で言われておりますけれども、自給率のいわゆる増加にしても、この問題について幾ら農林省がどういうかけ声を出そうと、あるいは国会のわれわれがここでいろんな形で注文をつけようと、これはそう簡単にできるものじゃない。やはりやろうとするならば、それの具体的な施策が必要である。具体的な施策と言えば何であるか。私は、いま食糧問題が一番中心となっておれば、食糧憲法とも言うべき食糧基本法というものをまず制定すべきではないかと、こういうことを私は言った、この間。この点どうですか、農林大臣食糧問題が中心であるとするならば、食糧の憲法とも言うべき農・畜・漁業を入れましたこの食糧基本法というものをまずつくるべきである。そして、この基本法を制定して自給度の目標を立てる、自給度の目標を設定する、あるいはまた、農地の拡大をやる、あるいは漁港の整備をやる、その他強力な食糧自給化のこの方策を立てるということ、これが私は具体的な問題だと思う。次に来るものは、これを実施に移そうとするならば、先ほど申しましたように、ここの所信表明にも書いております。一番最後に「農林水産行政推進のために、本委員会及び委員各位の御支援、御協力を切にお願いを申し上げる次第であります。」、こう書いておりますよね。これは結構だと思う。これだけ、われわれの協力だけでは、だめなんだ。ここに加えて生産者の協力をもらわにゃいかぬ、いわゆる農民ですね。続いて消費者のいわゆる協力をもらわにゃいかぬ。だれだ。国民です、一般消費者は。こういうことが一貫されてこの自給度を高めることが実施に移されるのじゃないか。こういう感じが私はするのですが、この点どうでしょう。
  154. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 食糧をめぐる新しい情勢に対処して食糧基本法をつくるべきであると、こういう御議論は各方面からも出ておるわけでございます。私も確かに、最近の情勢は、過去の情勢とはずいぶん変わってきているということも認識をいたしておるわけでありまして、そういう認識の上に立って、農政審議会における御答申を待って、その御答申を得て、総合的な食糧政策を打ち出したいと、こういうふうな決意でおるわけでございます。この総合的な政策を打ち出すに当たって、やはり法制問題——法律、法制についてこれを考えなきゃならないというふうな判断になれば、これはやはり法制を改正をしていかなきゃならぬと思うわけでありますが、私は、現在のところは、とにかく農政審議会の答申をいただいて、その上で総合的な食糧政策を打ち出す、そして、それを具体的に現情勢変化の中にあって一つ一つ着実に施策として実現をしていく、これのほうがむしろ優先をすべきじゃないかというふうに考えておるわけですが、しかし、いろいろの御意見もあるわけでございますし、総合政策を打ち出す段階に当たって改めて考えてみたいとも思うわけでございます。とにかく、これからの農政を進める上におきましては、やはり国会の御協力だけではなくて、もちろん生産者の御協力が必要であるし、さらに最も大事なことは、いまお話がございました国民の理解と御協力というのが一番大事じゃないか。幸いにいたしまして、今日の食糧問題をめぐる変化から国民的に、食糧に対する関心が高まり、農業に対する施策を強化すべきであるというコンセンサスというものが、だんだん生まれつつあるような状態にあるということについては、私も非常にこれに対してありがたく思っておるわけでございます。こうした国民的世論を背景にしてやっていきたいと思います。
  155. 向井長年

    ○向井長年君 大体、大臣、そういう意欲のほどわかります。実際、政府各省——これは農林省だけじゃありませんけれども、各省は常に、農政審議会とか審議会の答申を待ってということを言われる。これは民主的で、しかもいろいろな意見が総合されて生まれてくるからいいことです。いいことだけれど、担当省が意欲を持ってこうやりたいということをやっぱり具体的に出さなければ、これは生まれませんよ。常に、こういう問題をひとつ審議してくださいといって出すんでしょう。そうすると、それぞれ専門的な立場からいろんな審議がされますよ。そして一つの答申が出てくると思う。しかし、これはやはり本当に国民が待望する問題になるかどうか。あるいは基本的に海外との問題もありますから、そういう問題についてもう少し私は、特に安倍農林大臣農政通とも言われておりますし、従来のたびたび農林大臣やった人じゃないのだから、新進気鋭ですから、これは意欲を持ってやっぱり具体論をまず農林省一つの仮案として出すべきではないか。こういう感じがいたしますので、これは要望しておきます。  そこで、先ほども言ったように、現在、最近におきましては特に過渡的に海外依存でしょう。こういう問題について、日本は適地がないのだ、いや、これはできないのだ、あるいはまた価格がこうだ、値段が。こういう形で非常にこれ輸入を重要視いたしておりますけれども、国内自給化を増大しようとするならば、もっと研究すればできるんじゃないですか。たとえば、これは小麦であろうが、大豆であろうが、あるいは飼料であろうが、いろいろあると思いますけれども、しかし大豆ごときはどうなんですか。日本、いままでどこでもやっておったんですよ。われわれ子供の時代は、もうたんぼのあぜから、畑から、各所で大豆をつくって自給自足でやったものですよ。自分のところで豆腐を食べようと思ったら、その大豆を持っていって豆腐をもらってきた。油をもらおうと思ったら、その大豆を持っていってもらったんですよ。そういう時代がこの昭和の初め、大正の末期にはあったんですよ。そうなれば、いま適地がないということじゃない。これは、やっても生産が伴わぬし、価格も、やっても、やった人が損をするという形では意欲もわきません。これ幸い休耕地もあるんでしょう、休耕地も。そういうところに、そういうものを若干、政府も助成しつつ育成強化していったらどうですか。そうして先ほど私言った食糧基本法をつくって、そういう問題も具体的に出しなさいと。そうなれば、行政的に生きてきて、輸入にまたなくとも、輸入を半減することもできるではないかと。こういうことで、この問題をとらえて先般も質問したわけです。だから、ただ自給化を高めます、いや、それより努力します、と言っても、やはりそういう施策というものが具体的になければならぬ。具体的に出して、農民にも協力をもらう、あるいは政府もそれに対して助成指導もやる。こういうところで生まれてくるんですよ。この問題、かけ声だけではいかぬということ、この点を私は、特に大臣に、今後自給化の、あるいはまた自給度のいわゆる増大に対しましては、そういう立場に立って意欲を持って指導をしてもらいたい。これは要望も含めて質問いたしたい。
  156. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大豆につきましては、これから自給力を高めていく有力な作目の一つとして取り上げておるわけでございまして、奨励金等の措置もとっておるわけでございますし、今後とも、いまお話がございましたような畦畔等におけるこの大豆が増産されるように、政府としても助成その他を強化をしていきたいと思っております。現在の試算では、食用大豆につきましては、現在非常に落ち込んでおるわけでございますが、十二万トンばかりの生産でございますが、これを十カ年計画でひとつ三倍、四十数万トンにはぜひとも引き上げていくということに対して意欲を持って取り組んでいきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  157. 向井長年

    ○向井長年君 一つ提案しますがね、これどうでしょうか。そういう意味において、これも先般やりましたけれども。それは、総理大臣の諮問機関でもいいし、農林大臣の諮問機関でもいいですけれども、やはりこういう食糧全般について、生産者、消費者あるいは学識経験者あるいは団体、そういうものを含めての国民食糧会議というようなものを設置する。十分ひとつ国民からも協力をもらわなきゃいかんから、いろんな意見を総合して、それの推進を図るために、こういうものを考えられたらどうですか。私はいいと思いますよ。国民も理解をもって協力もすると思いますよ。いかがですか。
  158. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどから申し上げましたように、食糧の総合政策を打ち出す段階に当たりまして、いろいろの法制、制度等も含めていろいろと私も考えてみたいとは思っておるわけでございますが、いまの食糧会議といったものにつきましては、私は積極的な実は考え方を持っておるわけでございまして、これもひとつあわせて検討してみたいと思います。
  159. 向井長年

    ○向井長年君 水産庁長官、いま政府機関の中に、行政機関の中に庁というのがありますね、水産庁、林野庁それからエネルギー庁、中小企業庁。これ、庁ってどういう意味で庁になっているんですか。農林省の部局の中にも、庁が三つある。どういういわゆる使命を持っているんですか、庁というのは。わかっていますか。
  160. 内村良英

    政府委員(内村良英君) これは歴史的な経緯もございまして、農林省の中へ水産庁、林野庁、食糧庁とあるわけでございます。そこで、内局の局よりは外局の庁というものは権限等が広いという面もございます。しかし、なぜ水産庁があるかというようなのは、これは、やはり歴史的な中から出てきたものだと、こう思います。
  161. 向井長年

    ○向井長年君 歴史的といって、それはあなた抽象的だ。そうじゃないんですよ。庁というのは、少なくとも重要性だ、まず第一にね。農林省の中においても、部局として重要性を持つところが庁になり、しかも、それは多岐にわたって他のいわゆる行政機関の関連を持つということでしょう。たとえば水産庁であれば、運輸省にも持つでしょう、あるいはまた外務省にも持つでしょう。そういうようにして多岐に各省にまたがる問題があるから、農林省の内の、もちろん農林大臣の所管ですよ、所管はそうあっても、庁というものを別につくっておるんですよ。歴史的ってあなた、そんなことぐらい知らなければだめだ、長官が。そうでしょう。だから、私は、そういう意味で重要性があると思う、庁というのは。そうなればある程度独自的に、これは大臣の承認は得なければいかぬけれども、監督指導はもらわなければならぬけれども、独自的にあらゆる政策というものは具体性を持つべきですよ、庁というところは。長官は特に。だから、長官という名前がついておるのですよ。そうでしょう。  だから、その点で、先ほども水産関係がたくさん出ましたから、私は重複するから言いません、たくさん用意して来ましたけれども。もう時間がないから言いませんが、ただ今日まで食糧たん白ですね、漁業のいわゆる国民に対するたん白資源、これは五〇%でしょうか。これはいままでは魚は投機的な対象になっておったんですよ、投機的な値段の上がり下がりの。こういうことではもういかぬのであって、国民のたん白資源の供給資源としてこれは非常に重要な役割りを持っている。これをひとつやはり認識されて、そうなれば、やはり量的にもあるいは生産の計画的にも、これは一定のそういう問題を具体化して出していかなければいかぬのじゃないか、こう思うわけです。そのためには、それも先ほど言った食糧基本法にも入るわけですよ。入るわけですけれども、そういう問題が具体性を——先ほどの公害の問題があれば、あるいは領海海里の問題もありましょうが、そういうやはり具体性を持った生産計画、これは漁民との間の、あるいは団体との間の。そしてやはり量的な供給という問題、これもアンバランスであってはいかぬはずですね。そういう問題についてはどう考えておられますか。
  162. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま先生から御指摘がございましたように、今後におきましても、わが国国民生活において、動物性たん白質の半分は魚で供給しなければならぬという構造は変わらないと思います。それから御指摘のように、価格については非常に変動があるということもこれは事実でございます。と申しますのは、一つは、やはり生鮮食品であるということと、それから漁獲に非常に振れがあるというところから価格変動が出ているわけでございます。それで、これにつきましては、農産物、畜産物のように事業団をつくって政府が流通に介入すべきではないかというような意見もございますけれども、私は、やはり魚の場合には、非常に種類が多い、それから生鮮食品である、それからさらに標準価格ができにくいというようなことから、畜産物、農産物のような価格政策はやはりできないんじゃないか。そうなりますと、一体どうするのかという問題になるわけでございますが、やはり漁協系統を中心とする水産業の団体の共同出荷、あるいは需給調整というようなものを育成しなければならないんじゃないかと考えまして、五十年度におきましては従来に比べまして約三倍の予算をそれに要求しているところでございます。
  163. 向井長年

    ○向井長年君 この漁業は、国際的動向にだいぶ支配されますね、これは。そういう中から漁業従事者が、現状のような中では職場喪失というものが出てきておりますよ、いまや深刻な問題として。そういう問題について、水産資源保護法というのがありますが、これに基づいてそういう諸君に対する国家助成というものが考えられるんじゃないですか。みずからの企業が怠慢であって、あるいは失敗をしてこういう状態が生まれておるのではなくて、国際的なこういう情勢の中からこういう問題が出て、その諸君はいま深刻な問題になっている。それに対しては、こういう資源保護法の問題を適用した中で、その人たちに対する救済措置はとれないものかどうか、この点一言お聞きしたい。
  164. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 水産資源保護法のたしか十一条だったと思いますが、この規定に基づきまして補償するということは法律上非常に問題があると思います。しかし、いずれにいたしましても、今後仮に経済水域ができまして遠洋漁業が縮小していくというような場合には、それに従事している漁業労働者の人たちのことが大問題になるわけでございます。そこで私どもは、これは単に農林省の所管だけじゃございませんで、先ほどお話がございましたけれども運輸省の所管の問題がございます。そういったようなことも考えながら、その人たちが困らないようにしなければならぬということは一つのわれわれの行政の使命だというふうに考えております。
  165. 向井長年

    ○向井長年君 これは私きょうは時間がございませんから具体的に詰めませんが、検討しておいてください、いずれまたお聞きいたしたいと思いますから。  時間がございませんから特に畜産局長、これは養鶏問題ですが、養鶏あるいは卵価という問題についてはこれは飼料が中心ですね、飼料。先ほどもいろいろありましたね。この飼料がほとんど海外輸入である。トウモロコシにしてもあるいはマイロにしてもほとんどが海外から輸入されなければできない。そうすると、国際情勢で左右されるということですね。たとえばいわゆるアメリカならアメリカに不作があった、あるいは他の諸国が買い付けをたくさん一挙にやってしまった、こうなってきたときは、これは非常に不安になりますね。こういうような諸外国の情勢で大きな変動が起きてくる。これに対して国内政策としてどういうことを考えておるかということですね、まず第一に。たとえば最近エネルギー——石油問題でも備蓄備蓄といわれておりますね、消費節約から備蓄、こういうことがいわれておりますが、たとえば飼料備蓄という問題も考えられると思うのですよ。しかし、この飼料備蓄という問題については大体これは商社が中心にやっておるのでしょう。そうすると、買って外国で備蓄していくという問題もあると思うのですよ。そうなればなかなかこっちに入ってこない状態が生まれるですね。そうなれば国内備蓄というものが生まれてこなければならぬはずですよ。そういう問題も含めて、政府は、今後この飼料に対する安定供給という問題に対してどうお考えですか。
  166. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 国際的な飼料の需給事情あるいは価格事情の急変によります飼料原料の不安定性をいかに軽くするか、防止するかということが特に、養鶏の場合は御承知のように配合飼料にほとんど依存しておりますだけに重要になってくるわけでございますが、これにつきましては、一つはまず量の問題といたしましては、やはり輸入原料につきまして、できれば政府間あるいは民間の長期的な相手国との取り決めを何らかの方法でやるというようなことも量的な確保をする一つの手段だと思います。また、発展途上国その他を含めまして相手国の農業開発に協力することによりまして、余裕のある場合には優先的に輸入をするというようなこと、あるいはそれらのこととも関連しますけれども、輸入先の多元化を図るというようなことによりまして量的な確保を図るということも一つあると思います。  それからもう一つ価格問題でございますが、これはただいま御指摘ございましたような備蓄によって価格の極端な振れを軽減していくということが必要だと思いますので、現在わが国飼料メーカーは通常約一ヵ月ぐらいのランニングストックを原料として持っておるわけでございますが、やはり一ヵ月ではいざという場合に不安であるということでございますので、四十九年度から予算も計上いたしまして五カ年計画で、従来の通常りランニングストックを自主的にメーカーがやっております一カ月分に加えまして、国が援助することによりましてさらに一カ月分ランニングストックといいますか、備蓄的な意味のランニングストックの増をするということで、四十九年から実施を予定しておりましたけれども、御承知のように、昨年春先にやや好転するかと思われたのがアメリカの不作等によりまして夏以降また急騰したということがございまして、輸出制限するのじゃないかといううわさもあったくらいで——自主的な輸出制限をある程度しているわけでございます。そういうことで量的に確保が非常にむずかしい状態でございます。さらに価格も非常に高いものですから、そういう高いところにスタートさせるのもいかがかということもございますので、四十九年は残念ながら不執行に終わっております。それを五十年度からこれも予算でお願いしているわけでございますが、同じような考えで五十年度を初年度にしてただいま申し上げましたように一カ月のランニングストックの増ということを目標にして援助をしていきたいというように考えております。  さらに食管におきます操作飼料につきましても、もちろん一部ストックをふやしていくということも民間とあわせてやっていく考えでおります。直接的な価格安定につきましては、現在、民間に従来ございました配合飼料価格の安定基金の機能を補完するために、海外要因によりまして世界的な穀物の市況なり、あるいはフレートなり、あるいは円が安くなったとか、そういう海外要因によって配合飼料原料が異常に値上がりした場合には、その異常部分につきまして配合飼料価格の値上がり分の一部、異常部分について、現行三基金が補てんする場合の補てん財源の二分の一を国が見るということで、先般の臨時国会におきまして補正予算六十億を成立をさしていただきましたので、それと五十年度の追加造成二十億ということで、合計八十億の国の造成補助でスタートするということにいたしたわけでございます。これは今年の一月からの値上がり分に適用してやっていきたいということでございます。以上のような対策によりまして需給並びに価格の安定を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  167. 向井長年

    ○向井長年君 そういう形で具体的にいろいろと農林省施策されておるのはけっこうですが、ただ、一般的な、商社が自由に買い付けをし、自由にそういうことをされておるという問題があるやにわれわれは思うのですよ。これはやっぱり相当畜産局なり農林省が、それに対する価格の面、量的な面、計画備蓄の面、これを十分ひとつ監督指導しなければならぬのではないかという感じがするわけです。  この問題そういうことでけっこうですが、それと同時に、もう一つは、たとえば卵価の安定、価格安定の問題ですが、これはほんとうはコストを基礎として、そして価格が形成されるのがあたりまえでしょう、普通の場合は。そうですね。言うならば、生産費所得補償方式と申しますか、われわれがいつも主張する米の場合でもそうですが、そういう中からコストがきめられてくるというのがたてまえでなければならぬと思うのですよ。ところが野菜とか卵というのはそういうことになっていない。ここにいろいろな問題が起きてくるのですよ、そうでしょう。こういうアンバランスを今後どう考えていくか。いろいろな方策があると思うけれども。私は、ほんとうはそういう一つのコストに対する基礎が中心となって価格が形成されるというのが正しいあり方だと思うのですね。生産者もそれで納得すると思うのです。そういう点について私はいま直ちにどうせいということは言いませんけれども、これに対して十分検討する必要があるのじゃないかという感じがいたします。  特に市場の問題、この問題一つ考えてみても、卵の場合は、市場は、私的市場ですよ、そうでしょう。だれがどこへ売って、そしてどれくらい売っておるか。畜産局長わからないでしょう、国民もわからないのですよ、私はそうだと思う。私的市場であるために。少なくともこういう国民のたん白源——これも漁業と同じようにたん白源ですから、これについては、少なくとも六大都市と申しますか、主要都市くらいにはやはり中央のいわゆる公的の市場というものが生まれてくるのが私は当然ではないか、またつくらなければならぬのではないかという感じがいたしますが、この点についてどう考えられますか。
  168. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 卵の流通機構の中で卸売市場が重要な役割りを占めるわけでございますが、これがただいま御指摘ございましたように、生産者団体系と商系を含めまして公的な中央卸売市場になっていないということで、種々問題があることはわれわれも承知しております。これは長い伝統もあり、あるいは現在の流通事情に即応した形で続いておるわけでございますが、今後の問題として研究すべき問題の一つではあるというふうには思っております。
  169. 向井長年

    ○向井長年君 研究というのは、私の言ったことは、そうあるべきだという感じから研究するんですな。そうありたいと、そのために十分検討したいということですね。いいでしょうか。
  170. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) そのとおりでございます。
  171. 向井長年

    ○向井長年君 それで、最近の卵価安定基金の問題については、去年から畜産局も大いに努力されて、先般の飼料の暴騰に伴っての今後政府の助成をしなければならぬということで、ことしの予算で五億六千万円ですか、三年計画で出されましたね。これは私は、非常にいいことをやられたと思いますよ。いままでは、何らこれが助成措置がなかった。規制だけをするですけれども、あるいは規制協力を要請するけれども、それがなかったというのを、今度は、された。わずかではあってもされた。これはいいと思います。いいけれども、そうなって、政府からわずかの資金でも出したために、おれの言うことを聞けよ、ということで規制を強くして、生産者がこれに対して損をする。極端に言えば、そういう状態が起きては何にもなりませんな。  この卵価の基準価格というものが昨年度は二百七十円であった。それで、いろんな団体がありましょうが、それぞれの要望が出ておると思います。最近あなたの方で二百七十三円と出したのですか。私が漏れ承るところによると二百七十三円と出した。この基礎はどこから出たのですか。その算定基礎は何ですか。これは、先ほど言うように、従来の、過去のやはり需給体制の中からこういう問題が出てきておるんでしょう。コストから出ておるんじゃないですね。そうなると、それが、二百七十三円というものを出された根拠はどこにあるか。この根拠によって、今後あなたの方の締めつけによって、一つには八〇%だと、いままでは一〇〇%の補てん率をやっておるのが八〇%に下げたという問題。あるいはまた、補てん原資の範囲内でということで、なかった場合においては、借金してでもやっぱり補てんをしてきたはずですね。これが今度からは、その原資内でやる、それから超過すればもうやらぬぞ、というこの締めつけ方。こういう二つの問題はどうなんですか、これは。
  172. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 五十年度から、卵価安定基金に対しまして、補てん財源に対して国が助成をするという道を開いたわけでございます。しかし、基金があくまでも自主的にやるものに対しての助成でございますので、基金が今年度幾らかと、来年度からの補てん基金は幾らかということを種々これから検討いたしまして、出てまいりますのをわれわれが協議を受けまして承認をするという手続になるわけでございます。従来は、掛金等につきまして完全に自主的にやっておりましたので、その意味では、国の助成があるということは、やはり政府の何らかの規制が及ぶということは、これはやむを得ないことだと思います。ただ、あくまでも基金がみずから決めるものに対して許可をするということでございますから、適正な価格水準であれば、われわれとしても当然それは許可していくということにしたいと思いますが、ただいま御指摘がございました二百七十三円云々は、まだこれは基金の内部でも検討中でございますので、私どもがそういうように許可をしたというような段階には至っておりません、もちろん。  それで、あと、そのやり方につきまして、従来は、毎日一定の保証基準価格より下がれば、一日でも下がれば必ず補てんするという仕組みになっておりましたけれども、国が助成をする機会に、これは生産者の団体の方でもそういう合理化をしたいという希望もすでにあったわけでございまして、これは、無理やりそういうふうにしてもらおうというわけではないと思いますが、われわれ、一カ月の平均価格が補てん基準価格を下回った場合にその八〇%について補てんをするというような仕組みに変えていきたいというように考えておるわけでございます。  なお、財源の範囲といいますことは、もちろんこれは三カ年計画で資金を造成しまして、三カ年ぐらいに必要な造成目標ファンドによって補てんをする必要があるだろうという一種の設計をするわけでございますので、これは実行してみますと、いろいろ足らないということもあり得ますけれども、そういう場合には、当年度の造成資金をもって不足だという場合には、もちろん融資ということもあるいは必要になろうかと思いますが、あまり放漫になることはやはり避けていくべきではないかというふうに考えております。  なお、価格の算定の方法につきましては、もちろん先生の御指摘のように、長期的に見ますればやはり生産費を償わないものは再生産が維持できないということはございますけれども、御承知のように、卵につきましては、春から夏にかけて非常に季節的に毎年低落をする。補てんはそのときに起こり得る。毎年じゃなくても起こり得る。しかし、夏から冬、正月にかけてはかなり高騰するわけでございますので、その辺、補てんのときだけ、仮に月単位であっても補てんをして、一定価格以上かなり上がったときにそれを補てんの逆のことをやるわけにはまいらないということもございますので、生産費は一つの基準にはいたしますけれども、毎年の保証価格は、それだけではなしに、やはり市場の実勢というものを基本にしながら、それに生産費の上昇等のファクターも加味しながら適正にきめていくべきものではないかというふうに考えております。
  173. 向井長年

    ○向井長年君 もちろん政府からそういう助成関係をとれば、それに対して生産者は、協力体制をとるのはあたりまえである。これはすべては国民に対する答えだと思いますよ。したがって、生産調整もこれはしなけりゃならぬ、これは当然だと思う。ただ、問題は、この基金というものは、いま二つあるにしても、基金というものにはそれぞれ生産者が積み立てをしておるでしょう。その積み立ても、一キロ当たり一円五十銭が二円になったんでしょう。ふやしたんですね。ふやした。政府も出した。そして今度は、一〇〇%もらっていたやつが八〇%だ、今度の補てんが。そうしてしかも、原資がなくなったら打ち切るんだ。こういうことでは、やっぱりせっかく政府が温かい気持ちで助成をして、生産にも協力しなさいよ、調整にも協力しなさいよと、こう言ってやってきたやつを、えさやってあとは食うなというのと一緒じゃないですか、これは。このやり方をやっぱり農林省は、もっと温かい行政をすべきであると私は思う。官房長、大河原官房長、前の畜産局長で、その時分から、やいやい言うた問題ですよね、いま涼しい顔をしておられるけれども。それはそうですよ。したがってやはり、政府が、生産者を喜ばして調整し、その行政の枠の中にはめて国民にこたえようとするならば、政府から助成をする一つの資金を出したことは非常に喜ばしいが、それならば、それに見合った形においてのこの補てん関係も行うべきであって、生産者が、いや、これはやってもらったけれども、これだけ、がちゃがちゃやられて、しかもいままで一〇〇%のやつが八〇%に助成が切り下げられる——そうしてしかも、基金の積み立てはふえたと。これではあんまり納得しませんよ。これは私は多くは言いませんから検討してください。その問題が一つ。  それからもう一つは、二百七十三円は部内でいろいろと検討しておる素材だと思いますから、まだ具体的な要望もあると思いますので、これもあわせていろいろな要望を受けて検討をお願いいたしたい。これは大臣、よく聞いておいてくださいよ、いま畜産局長に言っておりますけれども。これはやっぱり、先ほど言うように、生産者も、あるいは国民も、そうしてまた政府も、お互いがああよくやったという形をつくり上げなきゃならぬと思いますよ。その意味において、この問題をひとつよろしくお願いします。  それから最後に一もう時間がございません。委員長一つだけ。  実は、こういうことを聞くんですけれども、これはどうなんですか。これは畜産局長、鶏のマレック病というものがあるんですってな。これは人間で言えば、がんみたいなものですか。これがはやると、鶏が死ぬか、あるいはこれが育たないと、こういう状態になるわけですが、これに対してはワクチンの使用をしておるんでしょう。そのワクチンの使用という問題について、これは非常に結構なことだと思います。しかしながら、このワクチン使用した結果事故が起きたという状態が出ていますね、現状。そうでしょう。つかんでおられますか。この事故が起きたという問題については、少なくともこれは農林省の中でどう措置しようとするのか。あるいはまた、おそらくこれは国家検定済みと思いますよ、このワクチンに対しては。そうなれば、その不備の点はどこに責任があるんですか、これは。このワクチンを使用した、国家検定を受けたワクチンを使ってそして事故が起きた、鶏がどんどん何千羽、何万羽と死んじゃったと。そうすると、こういう問題は、検定を受けてそれを使ったんだという言い分もあるでしょうし、農林省としては、これに対してどういうように対処しようとするのか、その責任の所在は那辺にあるのか、これを聞いていきたいと思うわけです。
  174. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 昨年の春以降一部のメーカーがつくりましたマレック病用の生ワクチンを接種したひなから、マレック病類似の症状が出て、貧血あるいは下痢あるいは脱毛というようなことで事故が発生をしております。これは、二つのメーカーが生産をいたしました生ワクチンのうちの一部のロットについて発生をしたわけでございます。これにつきましては、われわれとしては、後になってそういう実態があるということを聞いたわけでございますが、その一メーカーのほうにつきましては大部分、メーカーとふ卵業者、あるいはふ卵業者と生産農家の間で金銭的に解決がついているように把握しておりますが、もう一つのほうにつきましては、なお話し合いがつかないということで、現在われわれも指導いたしまして話し合いを進めるようにいたしておるわけでございます。これの原因につきましては、いろいろ調査をしております。獣医師会等にもお願いをいたしまして、専門的な立場から、農林省の中はもちろんでございますが、検討しておりまして、まだ何が原因であるということは最終的に結論は出ておりません。  しかし、現に事故が起こっておるということでございますので、従来の例に従ってできるだけメーカーなりディーラーなりと、それから生産農家との間で見舞い金その他の形で話をつけるというようなこと、そのためにディーラーなりメーカーなりで非常な負担があるということで、融資等の要請も一部ございますので、その辺は検討しておるところでございますが、原因が最終的にまだ判明しておりません。現在なお鋭意検討中でございますので、その結果を待って、どのような措置な最終的にするかということは検討してまいりたいと思っております。
  175. 向井長年

    ○向井長年君 これで終わりますけれども、原田がわからぬというふうなこと、おかしいんですよ。というのは検定を受けたんでしょう、この製造メーカーでは。そうすると製造メーカーのときにはよかったということですか。そうして次に小売商というのか、販売、こういう中で、貯蔵の中でそういう問題で悪いワクチンになったのか。そんなことは農林省調べられれば、これは技術的にわかるんじゃないですか。原因がまだわからぬというのは、うやむやではいかぬと思いますよ。今後の問題、これは農林省責任になりますよ。一般から言えば、検定を受けたものじゃないかといえば農林省責任がある、こうなりますからね。その点はやはりもう少し、ただ事態を、起きた問題の解決だけを急ぐのではなくて、やはり原因の探索というものを明確に早く、早期にすべきだ、私はそう思いますよ。どこに原因があるか、どこでそういう問題が悪くなったのかという問題はやはり少なくとも早急にこれはひとつ畜産局あるいはそういう関係の、技術関係で早速出してもらいたいと思いますが、どうでしょう。
  176. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 農林省の試験研究機関等、専門家を動員していろいろ検討しておりますが、学界でもいろいろ検討されておりますので、われわれとしても早急にその原因については結論を得るようにしたいと思っております。
  177. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 大臣ね、長時間でお疲れと思いますが、私が最後でありますので、がんばってください。  わが国農業政策あるいは食糧政策がこのままではいけないということは、これはいまに始まったことではない。数年来、あるいはいやその前から心ある人々によって強く訴えられたことである。それが今日ようやく高度成長から安定成長経済運営の基調を移行させるという、こういう柱を打ち立てて、ここにりっぱな大臣表明も出されたわけでありますが、私は遅きに失する、こう一応これを受けとめるわけでありますが、大臣いかがお考えでしょうか。
  178. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどから申し上げておりますように、高度経済成長が今日まで続きまして、これが今後は安定成長という方向へ大きく路線を変更していくわけでございます。高度成長時代にあっては、農業につきましても、いろいろ努力はいたしましたものの、やはり高度成長に伴うところのいろいろなひずみというものが出てきたことは、これはもう事実でございまして、これは率直にわれわれとしても、受けとめていかなければならぬわけでございますが、ちょうどこの路線が変更になるというこの機会こそ、いままでの農政におけるいろいろな問題点を取り上げて積極的にこれを解決をしていく。まさにそういう意味では農政の新しい一つ転換の時期がきていると、こういうふうな認識のもとで今後とも農政を進めていきたいというふうに私は考えておるわけでございます。
  179. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いわばこの骨組みに対して肉づけをするのはまさにこれからである。あるいはその肉づけは用意されておるかもしれませんが、大臣は、去る一月二十九日の私の代表質問に対して「世界的に見て食糧不足は恒常的な情勢となっており、自給率を高め、生産・価格対策を強めていく方針だ。しかし輸入に頼らざるを得ない作物については、輸出国との友好関係に努め、安定化を図る。さらに農業審議会の答申を得て総合対策を確立する。」と、こういった意味の答弁をしておられます。ここでくどくど申し上げません、先を急ぎますので。問題の柱を立ててお尋ねしますので、失礼ですけれども、漏らさないようにメモをお願いします。  まず第一点は、その御答弁の中から私はお尋ねしたい。  一、自給率は何をどのように高めていくのであるか。  二、輸入に頼らざるを得ない作物とは一体何々か。  三、輸入に頼らなくても、あるいは現在は頼っておるが、将来は完全自給できると考えられるものもあるに違いない。こういった現在は輸入には頼っていないものも含め、あるいは現在は輸入しておるが、今後の推移によっては輸入はせぬでもいいと、こう見通しのつくもの、あるかないか。  四、輸出国との友好関係はどのように進めていかれるのか。  五、農業審議会の答申はいつまでに得られるのか。  まず、この五点についてごく簡明にひとつ御回答を願います。いずれ、また後ほど掘り下げていきたいと思っておりますので、きょうは簡単で結構です。
  180. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 自給率を高めるということにつきまして、私たちは自給力を高めるという表現をいたしておるわけでございますが、自給力、自給率ということになりますと、十カ年の試算でも出しておりますように、これからの人口の増加であるとか、あるいは生活水準の向上であるとか、そういうものを基礎として自給率を高めるということになりますと、なかなか一律的に高めていくということはむずかしいわけでございます。が、そういう中にあって、全体的にわが国の米を初めとする食糧生産の自給体制というものを強化していく、そういうことを私たちは、大きな眼目として自給力を高めるという考え方に立って、これからの施策を進めていきたいと、こういうふうに考えておるわけであります。  それから第二番目の、輸入に頼らざるを得ない作物は何かということでございますが、私は、これはやっぱり飼料穀物がその最大のものであろうと思うわけであります。その中におけるトウモロコシ、コウリャン、これは中小家畜のいわゆる濃厚飼料になるわけでありますが、これが今日まで畜産の増大に伴って非常にふえてきたわけでありますし、今後とも畜産の安定成長に伴ってふえるわけでありますが、これをやはりトウモロコシ、コウリャン、まあ食糧農産物につきましては、その他砂糖につきましても、なかなかこれの増産は非常に困難でございまして、そういう作目につきましては、今後とも輸入に頼らざるを得ないであろうと思うわけでございます。  さらに第三点として、今日まで、輸入しておるけれども今後輸入しないで完全自給できる作目は何かというお話でございますが、これは完全自給ということになりますと、私たちは、現在の段階においては米であるとか、あるいは野菜といったような農作物については、これは完全自給を今日もしておるわけでありますし、今後ともできるという見通しをつけておりますが、しかし、その他の農作物につきましては自給力は高めていきますが、なかなか完全自給というところにはいかないだろうと思います。が、しかしそういう中にあって極力自給力を高めていく作物としては、たとえば大豆であるとか、あるいは飼料作物であるとか、あるいは麦類であるとか、そういう作物については、今後できるだけ可能な限りの自給力を高めてまいりたいと思うわけでございます。今後とも、やはり外国に、農産物の輸入については依存する分野は非常に大きいわけでありますから、そうした輸出国との間の友好関係を樹立していくということは非常に大切なことでございます。これは、ただ農業関係のみの友好ということよりも、全体的な、総合的な日本との協力関係というものを樹立していくということが、またこれを推進していくというのが基本的な考え方であります。そういう中にあって、輸入の安定を図っていくためには、いわゆる中長期にわたるところの契約、協約といったようなものを結んでいくということも必要でございましょうし、あるいは、世界的な立場に立って備蓄問題等についても国際協力協力をしていくというようなことも必要であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。  最後に、農政審議会の答申についての御質問でございますが、大体中間報告も出ましたし、いよいよ総会が、この二月の終わりごろには第一回の総会が持たれることになっておりまして、四月の初めごろには御答申が得られるものと私は考えております。
  181. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、いま沖繩農民にショッキングな重大な事件が起こっておるんです。これだけ申し上げればあるいはぴんと感じ取っておられると思うんですが、沖繩の基幹作目は何といってもサトウキビとパインであります。ところが、そのパイナップル産業に一大支障が、障壁がきておるわけであります。  結論を申し上げれば、何としても、国の力で解決してもらいたいというのが結論でありますが、しかし、その実情を確認してもらう意味において、私から大急ぎで申し上げますと、まず、沖繩産のパイン、四十九年の十一月末在庫品が百一万九千五百三十六ケース、それから四十九年十二月生産予想が十九万一千四百七十五ケース、計百二十一万余ケース、ストックがあるわけなんです。さらにかてて加えて、四十九年十二月からことしの三月出荷予想が約三万九千ケース、五十年の三月末在庫予想が百十七万二千余ケース、五十年の一月初めの本土在庫、他県における在庫が七十一万五千余ケース、合計百八十八万ケース余りストックがあるわけなんです。それにかてて加えて、グローバル品として、五十年一月初めに在庫品が三十万ケース、それから入荷予定量の百五万ケースの残り分の二十万ケース、合計五十万ケース。さらにかてて加えて、例の問題になっておりました冷凍パインかん詰めのまた飛ばっちりを食らいまして、輸入量十月七十四万余、十一月三十九万余ケース、総合計二百四十四万四千二十五ケース。これだけ実はだぶついておるわけであります。この滞貨の対策に対して、県内滞貨量の百二十万ケースの処理として、いま県庁初め学校、病院ホテル、旅館、飲食店その他もうあらゆる個人、団体職業、職場を通して、一個でも二個でもという、売りさばく猛運動を展開し始めておるわけでありますが、なかなからちが明きません。そこで業者は、もう金に詰まって泣きづらにハチと。総需要の見通しとこの外貨の割り当てに対して、政府とされまして、四十九年、去年百四十万ケースのうち、下期の三十五万ケース割り当てを中止さしてもらった、これは大変いいことだと思います。そこで引き続き五十年も、外貨割り当てを控えてもらいたい、これが一つの要望であります。引き続きこの例にならって、五十年も外貨割り当てを控えてもらいたいということですが、政府にその意思ありやなしや、ぜひそうしてほしい、こういうことなんですが、それに対する大臣の見解を……
  182. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) パイナップルのかん詰めは、昨春以来総需要抑制等の影響によりまして、消費が大幅に減退いたしましたし、あるいは冷凍パインを原料としたかん詰めの製造が急増いたしましたために、非常に供給が過剰になり、いま御指摘がございましたように、大変な在庫を抱えていらっしゃる、滞貨を抱えていらっしゃるというふうな状況であります。政府としても、十分認識をいたしておるわけでありまして、こういう状態に対して、御存じのように、四十九年の十二月一日以降冷凍パインを原料としたかん詰めに対する表示の励行及びJAS受検の促進をいたしておるわけでございます。  また第二番目として、輸入冷凍パインの現行関税率二〇%を三五%に引き上げると、この点についても閣議が決定をいたしたことも御案内のとおりでございます。また、先ほどお話がございましたように、輸入パインかん詰めの四十九年下期分については、たな上げをするということで、関係方面とも折衝を今日までしてきております。  さらに五十年度をどうするかといういま御質問もあったわけでございますが、私たちとしても、これは今後の消費の動向を——これはいま御指摘のように、非常に消費の面においても、期待できるような状態が起こるかどうかは私も困難だと思うわけでございますが、それを見てこれは対処していきたいというふうに考えるわけでございます。  なお、滞貨の融資につきましては、沖繩振興開発金融公庫によるところの対策も講じておるわけでございますが、今後とも滞貨の解消、パイン産業の安定について沖繩県、沖繩開発庁と協議の上対処してまいりたいと思っておるわけでありまして、やはり今日の沖繩におきましてパインの占める農業あるいは関連産業のウエートというものは非常に大きいわけでございます。今日までの農業、基盤整備一つをとってみましても、やはり本土の基盤整備と比べますと、沖繩の基盤整備は非常に遅れているわけでございますし、さらにやはり沖繩の独自の亜熱帯の農業というものをこれから推進していくということを考えますれば、さらにまた沖繩に対しては、特別な処置というものを講じていかなきゃならぬ現状にあると思うわけでございまして、そうしたことを全体的に判断しながら、私たちも、これに対して十分配慮をしていかなきゃならぬと、このように考えておるわけでございます。
  183. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いま大臣から特別な配慮というお言葉がありましたが、ごもっともだと思います。私なりに非常にそのことを大事にしたいと思います。と申しますのは、沖繩に置かれておるすべてが、他県には見られない特殊な沖繩の状況がございます。その特別な状況の中から起こる事件というものは、事態というのは特別の配慮でしか解決できないということなんです。その意味においてぜひひとつ、私がいま要望申し上げました五十年度においても外貨割り当てに対する配慮をぜひひとつ講じてほしいということを強く要望申し上げます。  次に、金融対策。金融対策がまた大変な重大な問題であります。この金融のいま資金額の現状を申し上げますと、金融機関から三十九億一千余万ですね、それから未払い原料代が九億二千八百七十万四千円、それから未払い砂糖代が二億九百四十万円ですね、それから未払い空きかん代八億四千五十六万七千円、それから未払いその他として二千三百万円、合計五十九億一千四百九十五万四千円、ざっと約六十億ですね。この六十億の金がいま必要なんです。ところが、それに対して政府は、四十九年は、操業資金として八億五千万円配慮していただいた。ところが、これはもう焼け石に水にしかすぎない。まだ六十億の借金をこれから必要とするわけなんです。政府は、これに対処してもらわなければいけない。こういう状態にいま追い込まれて、県庁関係者初め業者が待機をしておることは御承知のとおりでありますが、この借入金の配慮に対して大臣いかが決意していらっしゃるでしょうか、お聞きしたい。
  184. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ちょっと具体的な面は先に答えさせます。
  185. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) ただいま滞貨の状況、それから資金の必要の問題につきまして先生からお話があったわけでございますが、まあ先ほどの滞貨の量は全体でございますが、そのうち四十九年度末に沖繩に残っていて売れないという滞貨約九十万ケースあるというわけでございます。そこで、まず第一にやるべきことは、この滞貨を解消するということがまず第一であるわけでございます。したがいまして、これを極力早く本土の輸入業者に引き取ってもらうということ、これを前前から要請しているわけでございますが、先生も御案内のように滞貨九十万ケースございますが、そのうち約八〇%、これはいわば特定のブランドを印刷したかん、いわば結びつきがあるわけでございます。したがって結びついたいわば代理店にこれは早く引き取ってもらうと。引き取ってもらえばそこから金が払えるわけでございますから、したがいましてそれを要請しているわけでございまして、引き続きましてその方をやってまいりたいと思うわけでございます。  それからそれ以外に、いわば結びつきの印刷かん以外のもの、いわゆる白かんがあるわけでございますが、これにつきましては需要の開拓、こういうことも行うようにいろいろ指導しているわけでございます。御案内のように、総需要抑制下で販売なかなか困難でございますが、従来、比較的沖繩のものはこれまでは順調に売れたという経緯があるものでございますから、なかなか販売努力というものが、一般に比べますと若干もう少し努力してもらわなければならぬ面もございますから、こういったことも努力をしなければならぬというふうに考えているわけでございます。そうやって滞貨を解消する。  それから、さらに基本的には、今後また滞貨の原因になる量がふえては困るわけでございますから、先ほど来申し上げましたとおり、冷凍パインの方もいろいろ抑制をするということもいたしたわけでございますし、さらに、輸入につきましても下期の発注は当面見合わしておるわけでございますが、五十年につきましてもそういったいろんな事情を見合わして慎重に検討する、こういう基本態度をきめているわけでございます。  さらに、当面滞貨融資の問題でございますが、これは先ほどお話ございましたが、これまで約十三億円につきまして、大部分はすでにもう融資済みでございますが、沖繩の振興開発金融公庫の資金でございますとか、あるいは県資金を預託いたしまして、商工中金、県信連を通ずる融資でございますとかをいたしたわけでございますが、さらに、それに対しまして、目下のところ、私どもが聞いている話では約二十億円追加融資を必要とするという意向があるわけでございます。私ども、これにつきまして、資金需要の内容をいろいろ検討いたしているわけでございます。これまでも再再資金需要につきまして御要望がありまして、その都度できるものからやったわけでございますが、一体、この資金需要の内容は、先ほど各種の未払金のお話もあったわけでございますが、それと、いわば受信能力と申しますか、担保の問題もあるわけでございます。それから資金源の問題もあるわけでございます。それと、どの時期に具体的にどのように必要になるのかと。これにつきまして、実は、沖繩県に対しまして、その内容につきましていろいろ具体的資料の提出を求めておるわけでございまして、いろいろその辺を具体的に詰めませんと通達は出ないものですから、いま、県を通じまして資金需要の具体的内容を、目下資料の提出を求め、お互いに相談をしている過程でございますから、それを経ましてから必要な対策を講じなきゃならぬというように考えておるわけでございます。
  186. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひひとつこの対策を、要望に沿うように、そして速やかに手を打っていただきたいことを強く要望申し上げておきます。  それから、さきの冷凍パインの輸入関税の問題ですね、二〇%を三五%にアップしてくださったというが、これは、この実施の時期はいつからですか。
  187. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま関税定率法が国会に出ておりますので、この法律が通り次第直ちに発動したいと思っております。
  188. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いつからですか。
  189. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) したがいまして、法律が通ってからでございますが、おそらく新年度早早になろうと思います。これからの国会審議の状況いかんでございますが、通例でございますれば、年度内に普通は成立いたすわけでございますから、通りましたら早急に執行いたしたいというふうに関税当局等要請をいたしております。
  190. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間がじりじり迫ってまいりますので、次に、沖繩農業の振興策という面から二、三お尋ねしたいと思います。  沖繩農業が立ちおくれておるということをどのように理解しておられるかお聞きしたいんですが、お聞きするまでもなく、戦争による破壊あるいは四半世紀にわたる異民族支配、基盤整備の不備、農業用水の不足、かてて加えて海洋博のとばっちり、こういった要因がさらに立ちおくれに拍車をかけておることはこれは否めません。  その中で、特に農業用水の確保の面から、沖繩は、四十九都道府県で、全国で年間降雨量は多分二位でしたかな。宮崎が第一位で沖繩が第二位、二千三百ミリ、年平均が。国は千七百ですから、とにかく全国で最高の上位の降雨県である、ところが、降雨量では全国的に優位にありながら、水では最も困っておる県である、こういうところに矛盾があるわけなんです。それで問題は簡単です。そんなにだぶついた雨が降るならば、その水をためればいいじゃないかということになります。そのダムの対策に対して計画ありやなしやお聞きしたいのです。
  191. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 沖繩の基盤整備の基幹になります農業用水の確保の問題でございますけれども、沖縄はサンゴ礁が多い、こういうふうなこと、それから流域が非常に少ない、こういうことからダムの適地は非常に少ないわけでございます。しかし、石垣島でありますとか本島北部、これにつきましては多少の適地はある、こういうことでございまして、今年度から、過去におきます調査の結果といたしまして、石垣島で初めて国営の灌排事業を着工、全計着工するこういうことがことしの予算において出ているわけでございます。そのほか、名蔵川でありますとか、それから宮古島西部、こういうところにつきましても、それぞれ水の問題を求めて調査いたしておりますとともに、あまり大きな川はございませんけれども、その中でも主要河川といわれる二十七河川につきまして現在流水調査等を行いまして、その水の活用の方法をいま検討しておる、こういう段階でございます。  宮古島につきましては、ダムというわけにはなかなかいかないと思いますので、淡水湖を利用するか、あるいは必要あれば地下水を活用するというようなかっこうで水の確保を図ってまいりたい、こういうふうなことで対処しようとしているわけでございます。
  192. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いま、石垣島のいわゆる宮良川を中心とするダム化ですね、これはいつから施工されるか、ひとつそれを聞かしていただきたい。
  193. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 土地改良事業でもって行いますので、農民の同意がまず前提となるわけでございまして、農民の同意が、いつになるかという問題はございますが、予算的には少なくとも年度内早いうちに全計を終わり着工できるようにしたい、こういうふうに考えております。
  194. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それから宮古島は不思議に、非常に御承知のとおり山がなくて平原地で、そのかわり地下水はどの島よりも豊富にあるという調査がなされていますね。それで最近、地下ダムをつくるという話も出ておりますが、それは政府としてはどうお考えであるか。また過去二、三年、この地下水の調査の打ち込みがなされておりますが、それがまだ回転していないわけなんですが、それを予定どおり地下水を吸い上げる装置を実現されるつもりなのか。それとも地下ダムの建設の構想もあるのかどうか、お聞きしたい。
  195. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 先ほど、宮古島西部を全体設計で、とってと、こういうことを申し上げましたのは、宮古島におきまして、場所についてはまだ未定でございますが、淡水湖をつくりたい。こういうかっこうで淡水湖によって水を利用するということを考えているわけでございます。  そのほか、宮古島の東部でありますとか、そういう地帯につきましては、これは淡水湖というわけにもなかなかいかぬようでございますので、必要あれば地下水の活用ということについて現在手法等も含めて検討しているわけでございます。  ただ、地下ダムといいますか、地下水の利用という問題につきましては、これはやはり地下水をとることによる地盤沈下等への影響ということもあり得るわけでございますので、そういったような問題も含めて、今後慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  196. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、畜産奨励と関連して、これも時間がありませんので、ごく簡単にお聞きしたいんですが、日本人の年間一人当たり食肉の摂取量は、幾らを目標にしておられますか。
  197. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) 四十七年度の実積が、牛肉、豚肉、鶏肉等合わせまして、一人当たり年間純肉食量が十四・二キログラムでございますが、いま、しばしばお話に出ます六十年度の長期見通しでは、十八・六キログラムということに相なっております。
  198. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 なぜ私がそれを最初にお聞きするかといいますと、日本人は、外国人のように肉食をする必要はないかもしれません。あまり肉食とりましても、命を短くするそうですから、長寿にならぬそうですから、外国人のように肉を多食する必要はないとは思いますが、しかしそれは、限度からしますと、基準からしますと、あまりにも低位にある、いまおっしゃった例からしましても。  これは、農林省の畜産局食肉鶏卵課の統計によりますと、アメリカが百十六キロですね、オーストラリアでは百七キロ、フランスが九十六キロ、西ドイツが八十九キロ、イギリスが七十五キロ、日本がいまおっしゃったとおりに二十キロ——十七、八キロである。外国の四分の一ないし六分の一にしかすぎない、こういう低位にあるんですね。どうしても、この面からも畜産を奨励して、もっともっとたん白を、海のたん白も、魚も当然でありますが、こういうところに重大な根拠があると、こう思うわけなんです。ところが、畜産の危機をいま来しておる。その畜産の危機も、申し上げるまでもなく、もう飼料の高価ということが原因だと言われておるわけなんです。その飼料対策をどのように考えておられるか、それを示してもらいたい。
  199. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 昨年——その前に一昨年からそうでございますが、特に、昨年、配合飼料価格が非常に高騰したということで、特に、中小家畜を中心にいたしまして、全畜種につきまして経営の大きな圧迫になったということで、緊急対策とあわせて恒久対策についても、種々検討しておったわけでございますが、今後の飼料対策といたしましては、何と申しましても、乳牛あるいは肉用牛という大家畜につきましては、これは本来草食動物でございますので、できるだけ国内で粗飼料を増産をいたしまして、粗飼料の給与率を高めていく、これは現在まだ低位の水準でございますので、これをできるだけ高めていくということのために、草地開発をさらに推進をする。あるいは外延的な拡大だけではなしに、既耕地を、裏作を含めまして、飼料作物の作付に利用していくということによりまして、ただいま申し上げましたような粗飼料の給与率を高めていきたい。たとえて申し上げれば、四十七年度では粗飼料の給与率が五七%であるのを、七五%ぐらいまで乳牛については高めたいと、こういうような目標を設定をしておるわけでございます。しかし豚だとか、あるいは鶏という中小家畜につきましては、これは草食性じゃございませんので、どうしても飼料穀物に依存せざるを得ない、これが現状で、御承知のように海外に大部分を依存せざるを得ない。  今後を見ましても、トウモロコシ、コーリャン等につきましては、生産性の格差、あるいは価格関係から見まして、国内で大いに振興するということにつきましては、非常に困難がありますので、大麦等につきましては、極力増産をはかっていくといたしましても、大半を占めますトウモロコシ、コーリャンという飼料穀物につきましては、やはり海外に依存せざるを得ないので輸入の安定をはかるということが第一。さらに輸入の安定のためには、長期契約の問題だとか、あるいは輸入先の多元化の問題、相手国の農業開発の問題等が関連するわけでございますが、そういうことによります輸入の安定化とあわせまして、国内で輸入原料の備蓄をはかっていくということも必要だというふうに考えまして、当面一カ月ぐらいの在庫の増を、民間を含めまして目標といたしまして備蓄をしていくということに努力をしておるところでございます。さらに、価格の不安定に対しましては、現在これまでございました配合飼料価格安定基金という民間の三基金に対しまして、異常高騰の場合の補てん財源につきましては、新たに国が一部、資金造成に対しまして、援助をするということをこの一月から実施することにいたしまして、それに必要な新しい特別基金という組織も二月一日に発足をいたしまして、一月の値上がりに対しまして対処するということをやっておるわけでございます。これらの粗飼料対策と配合飼料対策といいますか、濃厚飼料対策とあわせて飼料の自給と価格の安定に従来以上に努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  200. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これで、私の持ち時間が終わりますので要望申し上げます。いまの自給飼料の根本解決ですね。これ解決なくして畜産の奨励ということはあり得ないということを私は断言する。それほどこの自給飼料の問題は根本的に解明しなければいけない。こう思っておりますので、力を入れてほしい。  それから、一つ資料の要求をいたします。それは、各都道府県別、各県別農道——農業道路ですね、農道の普及率、これの資料を要求いたします。いつまでに出してもらえますか。
  201. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 実は、あれ四十六年ですか、琉球政府が要土地改良調査を実施しているわけでございます。ただ、当時の琉球政府のつくりました耕地面積というものが、現在の沖繩の統計事務所のつくっている面積と約一万ヘクタールほど違うと、こういうふうな実態もございますので、畑が約四万二千と言われている現在において、約五万五千ぐらいの要土地改良面積があるというような資料が出ておるわけでございます。そういう前提のもとで資料はなかなかつくりにくいわけでございますけれども、まあ沖繩と内地と比較して、たとえば畑灌をやるべき面積といいますか、やらねばならぬというかっこうで琉政が出している資料による率と、内地との比較、道路の舗装をしなければならぬ率というようなことでございましたら、これは提出できると思いますが、先ほど申し上げましたように、絶対値の面積において相当の誤差があることはひとつお許し願いたいと思います。
  202. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 最後に——まあ最後といってお願いですが、この場でどうかとも思いますが、大臣初めどうかお集まりの皆さん、先ほど来私が訴えましたパインかん詰めですね、ぜひひとつ家庭でも、一個でも二個でも消費して下さるように御要望申し上げまして、終わります。  ありがとうございました。
  203. 佐藤隆

    委員長佐藤隆君) 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十五分散会      —————・—————