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1975-06-03 第75回国会 参議院 地方行政委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月三日(火曜日)    午前十時三十七分開会     —————————————    委員異動  五月三十日     辞任         補欠選任      源田  実君     井上 吉夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 金井 元彦君                 安田 隆明君                 野口 忠夫君                 神谷信之助君     委 員                 安孫子藤吉君                 井上 吉夫君                 岩男 頴一君                 橋本 繁蔵君                 赤桐  操君                 加瀬  完君                 小山 一平君                 和田 静夫君                 阿部 憲一君                 上林繁次郎君                 市川 房枝君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    福田  一君    政府委員        総理府賞勲局長  秋山  進君        警察庁長官官房        長        下稲葉耕吉君        警察庁刑事局長  田村 宣明君        警察庁刑事局保        安部長      荒木 貞一君        警察庁警備局長  三井  脩君        法務省矯正局長  長島  敦君        外務省アジア局        次長       中江 要介君        資源エネルギー        庁次長      熊谷 善二君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君    説明員        警察庁刑事局保        安部防犯少年課        長        鈴木 善晴君        法務省矯正局総        務課長      米田  昭君        文部省大学局学        生課長      十文字孝夫君        自治省財政局財        政課長      石原 信雄君     —————————————   本日の会議に付した案件地方行政改革に関する調査  (連続爆破事件捜査状況に関する件)  (警察行政及び地方行財政等に関する件)     —————————————
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る五月三十日、源田実君が委員を辞任され、その補欠として井上吉夫君が選任されました。     —————————————
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 地方行政改革に関する調査を議題といたします。  まず、連続爆破事件捜査状況について、報告を聴取いたします。三井警備局長
  4. 三井脩

    政府委員三井脩君) 爆破事件被疑者の検挙と、その後の捜査状況について御報告申し上げます。  一連爆破事件捜査しておりました警視庁では、去る五月十九日、韓国産業経済研究所爆破事件被疑者八人を逮捕し、その後、二名を指名手配いたしました。また、被疑者自宅等二十カ所の捜索を行って、証拠資料約五千九百点を押収いたしました。以下、この事件捜査概要について御報告申し上げます。  まず第一に、被疑者逮捕共犯者指名手配でありますが、五月十九日、都内で七人、仙台市で一人、合計八人の被疑者を一斉逮捕するとともに、その後、新たに共犯者二名を割り出して指名手配を行い、全国的に捜査を進めております。  なお、逮捕した被疑者の一人斉藤和は、警視庁において取り調べ中、体調に異状が認められましたので、警察病院に収容いたしましが、同日午後二時十五分死亡いたしました。自殺でございます。  二番目に、被疑者の氏名でございますが、この十名は次のようであります。  その第一は、佐々木規夫会社員東京都足立区梅島に住んでおります。二番目に、黒川芳正、これは元会社員でありますが、東京中野区に住んでおります。三番目に、斉藤和、職業は喫茶店のウエイターであります。東京都江東区に住んでおります。四番目は、斉藤和の内妻であります浴田由紀子、これは臨床検査技師であります。五番目は、片岡利明会社員で、東京都練馬区に住んでおります。六番目は、会社員大道寺将司東京都荒川区に居住いたしております。七番目は、同人の妻であります大道寺あや子会社員でございます。八番目は、短大生荒井まり子、宮城県仙台市に住んでおります。九番目は桐島聡明治学院大生で、中野区に居住し、目下指名手配中であります。十番目は宇賀神寿一明治学院大生でありまして、指名手配中ですが、杉並区下井草に住んでおります。  三番目に、この罪名犯罪事実でございますが、今回これらの被疑者逮捕した罪名は、爆発物取締罰則第一条違反、これは爆発物使用でありますが、その犯罪事実は、先ほど申しました韓国産業経済研究所に手製の時限爆弾一個をセットして、本年四月十九日午前一時ごろこれを爆発させ、この研究所ドア等に時価約百万円の損害を与えたという犯罪事実でございます。  四番目は、捜索差し押さえ状況でございますが、これまでに被疑者自宅等二十カ所の捜索を行い、証拠資料約五千九百点を押収しておりますが、その主なものは、爆弾製造に関するものとしては、爆弾の原料となる除草剤クサトール等、これが百八十キログラム。また、塩素酸カリウム黄血塩等薬品類配線済みトラベルウオッチ乾電池等。それから、ぺンチ、ハンダゴテ、ヤスリ等の工具、それからビニール被覆線、針金、空きかん等があります。このほかにモデルガン十数丁、邦文の小型タイプライター一台、「腹腹時計2号」の原稿などを押収しております。  なお、被疑者佐々木規夫宇賀神寿一、この両名のアパートの居室の床下に、秘密の地下室がつくられてあるのを発見しております。  五番目は、捜査状況でございますが、今回逮捕した犯人グループに到達するに至った捜査の経緯を申し上げますと、昨年八月三十日以来の一連爆弾事件をもとに犯人像を分析した結果、容疑適格者として、幾つかのグループ、人物とともにこのグループが浮かび上がりました。次第に焦点をしぼって、慎重、綿密な捜査を続けておりましたところ、四月十九日の韓国産業経済研究所爆破事件がこのグループの犯行である疑いが強くなり、さらに裏づけ捜査を積み重ねて今回の一斉逮捕に至ったものであります。  これまでの取り調べ結果を総合しますと、「東アジア反日武装戦線」は「狼」、「大地の牙」、「さそり」の三グループで構成され、「狼」グループ三菱重工事件帝人事件を敢行し、「大地の牙」グループ三井物産事件大成建設事件を敢行し、さらに「さそりグループ鹿島建設事件を敢行し、さらに間組本社及び間組大宮工場同時爆破はこの三グループが共同して敢行した疑いが濃くなっております。  今後の捜査見通しといたしましは、他の一連爆破事件との関係について見ますと、三菱重工事件以降十一件に及ぶ全爆破事件について、一部被疑者の自供や押収品等から見まして、このグループが全部を敢行していた疑いがさらに濃くなってきておる現状でございます。  また、他に共犯者があるかどうかという点につきましては、「東アジア反日武装戦線」の主な構成員逮捕したものと思いますが、さらに共犯がいないかどうか、これを目下鋭意捜査中でございます。  なお、今回この一連爆破事件をほぼ全面的に解決できる見通しを現在得たところでございますが、このことは、捜査員努力もきることながら、広く国民各位の御協力のたまものでありまして、深く感謝申し上げる次第でございます。  以上でございます。     —————————————
  5. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、本調査について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 和田静夫

    和田静夫君 何か私の手違いで、一時間ばかり時間が少なくなっていますので、答弁簡潔にお願いしたいのです。私も簡潔に申し上げますが。  まず警察庁昭和四十三年の日本鉱業株式会社金密輸事件についての若干の報告をお願いします。——それじゃ、私が事件概要を言いますから。  量にして四千七百九十二キログラム、約五トン。金額にして当時三十五億円という巨額の事件が起こっておるわけです。それで、金メッキ材料のシェアでは国内市場の約五割を占めると言われる業界最大大手の一つ、これが日本鉱業株式会社。で、大阪地裁でまだ係争中のものです。そこで、本来警察庁に別に関係をさせての質問じゃありませんが、日本鉱業のこの会社会長河合堯晴さんという人が勲一等瑞宝章を授与された。で、結果的に辞退した。しかし、私はこの事件を知ってましたからね。総理府並びに推薦通産省資源エネルギー庁に対して、人を介して、あなた方の方でこれは取り消すべきである。間違っているのじゃないかということを何遍も御注意申し上げたけれども、両方の省は、それは総理府責任だあるいは通産省責任だということのやり取りで、そして結果的には本人辞退をさせるというような形に持っていった、そういう疑いが実は濃厚であります、これは。結果的には辞退をされた。しかし、辞退をされたから実は済むというものではないのでありまして、すでに官報で発令をされておった。そこで、まあ御本人にも注意を申し上げた。そういう形の中からまあ辞退が起こったということです。そこで、河合さんは、昭和四十三年に密輸事件関係した日本鉱業会長なんですね。このためにおやめになったのかどうか。河合さんも推薦した資源エネルギー庁の見解、どうですか。
  7. 熊谷善二

    政府委員熊谷善二君) お答え申し上げます。  今回の河合堯晴氏叙勲の件につきまして、ただいま御指摘の問題がございました。私どもとしましては、推薦団体からの推薦を受けまして推薦を申し上げたわけでございますが、そういった密輸事件になお会社係争中であるということを知りましたので、こういったいささかでもやはり世間からの批判を招くような件にかかわりがあるとすれば、辞退をいたされるのが適当じゃないかと、こういう判断はいたしておりましたが、会社側の方から自主的に辞退をしたいという申し出がございまして、それをお受けしたというわけでございます。
  8. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、河合さんは辞退されたが、あなたの省は前に、当時——この河合さんは技術者ですからこの問題には余り関係をされていなかった。しかしながら、当時の社長であったもう亡くなられた方ですがね——三間安市さんは勲一等瑞宝章を授与されていますね。しかも、御本人事件関係をしていることを認めていた。ところが、あなた方の方の推薦があった、総理府もこれを受けた、こういう形でもってまあ親授式まで終わってしまった。今度の場合は親授式前々日辞退をされた。こういう形になっているのですが、こういう責任は一体どこにあるのですか。
  9. 熊谷善二

    政府委員熊谷善二君) 私どもとしましては、推薦申し上げます以上は、十分その辺の事情調査をいたしまして推薦すべきであったと考えております。今後はこういったことの再び起きないよう、十分推薦団体にも周知徹底をいたしますし、また私ども部内に、そういった調査十分調査を行うよう、今後努力をしてまいりたいとかように考えております。
  10. 和田静夫

    和田静夫君 これに対する責任はどういう形でとられるのですか。叙勲のこの根拠法令というのを聞きたいのですよ。それとの関係においてどうされます、これは。
  11. 秋山進

    政府委員秋山進君) 叙勲関係法令との関連におきましては、必ずしもこの案件については欠格条項ではございません。ただ運用上の問題として、当賞勲局において政府の方針として、国民感情にそぐわないような方々については叙勲を差し控えるという形で運用をしております。たとえば有罪の判決を受けた者あるいは犯罪容疑者叙勲することが国民感情にそぐわない者というようなことで運用をいたしておる状況でございます。したがって、河合堯晴氏につきまして、この運用上の問題として不適当であるということでございます。
  12. 和田静夫

    和田静夫君 おたくの、賞勲局の内示に際しての指示及び注意事項の四の2ですね、「本人又はその関係する法人等刑事事件により起訴されている場合(判決が確定するまでの間を含む。)」。で、河合さんも三間さんも、明確にこうなれば対象外でしょう、対象外ですね。しかも、これ、日程がこう延びちゃって国会とまっていたからいまの時期になってしまったけれども、私がこの問題を国会で取り上げるということが皆さん方におわかりになってから辞退が起こったりいろいろしているんですよ、これは。そういう関係でちょっと時期を失してしまったんだけれども、いま総理府賞勲局が出しているところのこういう一応の各省に対する注意事項から見れば、通産省は間違っているわけでしょう。
  13. 秋山進

    政府委員秋山進君) 私ども注意事項が通産の方に十分徹底しなかったということは事実でございます。
  14. 和田静夫

    和田静夫君 実は、その事実でございますと——これは一体内奏責任者三木総理大臣にありますか、責任は。
  15. 秋山進

    政府委員秋山進君) 内閣の助言と承認でございますから、内閣代表者である総理内奏をされる責任者でございます。
  16. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、三間さんの場合は明確に問題がある。本人もこのやみ事件関係しているということを認めているわけです、亡くなられた方ですけれども。今度の場合も、実は御注意申し上げたら、もうすでに内閣総理大臣の手から天皇のもとに内奏した後だ、したがって、なるべく穏便にと、こういう形が皆さん方から返ってきているのですよね。そんなことで一体よいのですか、これは。で、処理として、そういう経過はもう言いませんがね、この過って叙勲をされた者に対する処理はどういうふうにされるのですか。
  17. 秋山進

    政府委員秋山進君) 河合堯晴氏の場合、まだその事実について、審査段階で私どもは存じませんでしたので、十分な審査をいたしておりませんので、この方がこれに該当し、不適格であるかという結論はその段階では出しておりません。  それからなおつけ加えますが、私ども発令後この事実を知りましたのは別の方から知りまして、この措置について十分な指導をいたしてまいったつもりでおります。
  18. 和田静夫

    和田静夫君 いや、私が問題にしているのは三間さんの場合ですよ、辞退されたものはもう事実行為はないのですから。
  19. 秋山進

    政府委員秋山進君) 三間さんの場合につきましては、今回知ったわけでございますけれども、必ずしも違法な発令ではないわけでございまして、ただ、不適当な発令であったということで私ども責任を感じておる次第でございます。
  20. 和田静夫

    和田静夫君 資源エネルギー庁はすでに二度も叙勲推薦に関してこういう誤りを犯しているのですよ。不適当な状態のことをやっているのですよ。大会社社長だから、会長だからという安易さでもって大変安易に取り扱われているということがありませんか。いまそういう答弁されていますけれども庶民感情から言ったらこれは許せないのじゃないの。どういう形の処理をされますか、過去の問題について。あなた方はたとえば自発的に、ことしの四月には、やみカルテルなどで公正取引委員会の摘発を受けただけのいわゆる九社の社長など幹部クラス、こういう者については叙勲のリストから外されているでしょう。そうすると、これは全くミスだったのか、あるいは私のいままでの担当省とのやりとりから言ってみて、どうも知っていたけれどもいろいろの兼ね合いがあってということなのか、その辺だけちょっと明らかにしてください、総理府じゃなくて。
  21. 熊谷善二

    政府委員熊谷善二君) 私どもも、この係争案件につきましては、御推薦段階においては確認をいたしておりませんで、その後の情報によりましてその事実を知った次第でございます。
  22. 和田静夫

    和田静夫君 時間とりたくないからあれですが、おたくから出されるでしょう、われわれでは調査ができないから御本人記入してくださいとか、いろいろ調査票をね。いま一々のことを言いませんがね。それらを裏づけ的には何も調査をせずこおたくの場合はやったと、いままでは推薦行為を。そういうことですか。
  23. 熊谷善二

    政府委員熊谷善二君) 一般に推薦をいたします際には、推薦団体に対しまして長官名で通知をいたしまして、推薦団体においての心得といたしましては、先ほど賞勲局からもお話ございましたように、私どもとしましても留意事項として、叙勲を受けることが国民感情にそぐわない者、たとえば罪を犯した者あるいは犯罪容疑者あるいは刑事上の欠陥や社会的な不道徳のあった者は差し控えるということを、留意事項として推薦母体の方には指導をいたしておるわけでございます。で、推薦母体におきましても、この辺の事情につきまして十分今後調査をしてもらえることと考えますし、また、私ども自身といたしましても、その辺の実態の把握につきましては、今後推薦に当たって十分努力をすべきだというふうに考えております。
  24. 和田静夫

    和田静夫君 過去にさかのぼっては、おたくの場合は何も反省がないということですか。それから今後も、たとえば叙勲が行われた後においても、不適当であるあるいは不適格であるというような形での事件を後から知ることはたくさんあり得ましょう。そういうものに対しての処理というものはどういうふうにされていくわけですか。
  25. 秋山進

    政府委員秋山進君) 御案内のように、叙勲個人功績に対して行われるものでございますので、不適格なものについては、これは褫奪令というものがございまして、褫奪令によって処理されると思います。それから不適当なものについては、これはたとえば今回のような場合は、個人的には社会的な御功績、これが評価されておるわけでございますから、その意味においてはこの叙勲というものはそれにふさわしい叙勲をしている。ただ、その叙勲行為自体国民感情にそぐわない点があるかないかという判断、それによって私どもはできるだけそういうことのないように努力をしていくという以外の措置はしないでおるわけでございます。
  26. 和田静夫

    和田静夫君 さっぱり答弁になっていないんですがね。端的に言って、不適格であったと、不適当であったと、このことについてはどこに責任をおとりになるあれがあって、そしてどういう形でこれは処理をされるんですかと聞いている。
  27. 秋山進

    政府委員秋山進君) 責任所在でございますが、それぞれの事務処理上の責任でございますので、その意味において、それぞれの省庁において、それぞれの事務手違いというものについて責任調査して処理をしていただきたい、こういうふうに考えます。
  28. 和田静夫

    和田静夫君 これで最後にしますが、総理府のいまの答弁を受けて、あなたの方ではどう処理されますか。過去の三間さんの問題。
  29. 熊谷善二

    政府委員熊谷善二君) 先ほど申しましたように、私ども、今回の河合堯晴氏の件につきましては、御本人自体功績によるものではあると思いますが、いささかでもそういった国民感情にそぐわないというような懸念があるといたしますればやはり問題があるという考えがございますので、先般の御指摘三間さんの件も含めまして、今後かかることのないように、部内並びに関係推薦母体等に対する指導を十分いたしてまりたいと、かように考えております。
  30. 和田静夫

    和田静夫君 もう事個人に関することですから、私は本当は余り取り上げたくもなかったのですよ。しかし、該当庁の方のわれわれにこの問題で接する態度というのは、実に憤慨せざるを得ない態度です。われわれは善意でもってあなた方になるべく傷がつかないように注意を申し上げているにもかかわらず、各省間の責任のなすり合いが行われるというようなばかげたやり方というのは、これは十分に反省をしてもらいたい。そのことだけを申し述べておきます。  そこで、警察官不祥事件というのが非常に頻発をしているんですね。しかも交通事故などの過失ではなくて、警察官の地位を利用した故意のものが目立ちます。それに対する監督者措置も適切を欠いているように感ぜられるのをたくさん見るわけです。警察官という特殊な職務にある人たちがある一定の悪事を働いて、しかもそれを監督者がかばうというようなことになれば、これはどんなことでもできるということになっていきますし、規律を正して警察官も社会の規範、法律に従うことを明確にしていかなきゃならぬということを実は痛切に感ずるんです。たまたま昨晩の夕刊を見れば、「警官事故届けず 横浜戸部署単車同乗の少女死ぬ」という記事が載っている状態ですね。少しさかのぼってみますと、ことしになってから特にての二、三カ月を見てみますと、大阪府警旭署巡査長が、留置場で親しくなった空き巣常習者と組んで十四回もどろぼうしていた事件が三月三十一日に逮捕されている。北海道警室蘭署巡査で、結婚を控えて新婚世帯道具を全部盗んでためて、そうして警察独身寮に運び込んだ事件、これも三月三十一日に逮捕されている。大阪府警刑事部警官が、酒に酔って選挙事務所で大暴れをして、選挙事務所から金を受け取った事件が四月七日に起こっている。元警察官が兵庫県西宮署の交番で短銃を盗んだ。それを使って近くの生協に侵入をした。ガードマンに発見され、短銃で重傷を負わせた事件が四月三十日から五月六日までの間。あるいはいま言った五月三十一日には横浜戸部署警官単車事故の無届けが起きている。これらの取り調べ結果と処理について、ちょっと簡単に報告を受けます。
  31. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) ただいま御指摘のような事故が起きまして、私どもまことに申しわけないと、非常に残念である、このように思っております。それぞれの事故につきましては、具体的によって来る背景、直接的な動機につきまして、それぞれの都道府県で詳細に監察をいたしまして、それによりまして監督責任、これは具体的に申し上げますれば責任のあると思われます署長でございますとか、場合によりましては本部長でございますとか、あるいは警察署課長でございますとか、そういうふうな者まで、本人はもちろんのことでございますけれども責任所在をはっきりしていくということで処置しておるわけでございます。私どもといたしましては、国民の御理解と御協力を得まして円滑な警察職務執行を行い、警察法に示されております警察の責務を果たすべく努力をいたしておるつもりでございますけれども、一部には、ただいま御指摘のような事案の発生を見ておるわけでございまして、まことに申しわけないと存じている次第でございます。今後こういうふうなことが起きませんように、警察官の教養の問題でございますとか、規律の振粛の問題でございますとか、積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  32. 和田静夫

    和田静夫君 どろぼう常習者巡査長という関係ですがね、留置場における看守人のあり方が問われているような気がするんですよ。で、看守の勤務の状態に問題があったのではないだろうかということを一つ考えます。  まとめますが、二番目の問題は、警察独身寮世帯道具一切を持ち込んでいるわけですね。これ、だれも不審を抱いていないのです。で、警察の施設である独身寮の一室を盗品でいっぱいにしていたということですから、これは管理監督がそういう意味では大変ずさんだということになろうと思うんですね。  それから三番目の事案は、選挙事務所で暴れた、金を受け取った事件なのにこれは上官がかばわれた。その当の事務所へ行って、おたくも金を払ったんだから選挙違反じゃないかというようなことで、内々に済まされようとした。事件を引き起こしたところの警官はもちろん悪いんですが、その後の上官処置というのも非常に問題だろう。警官事件を内々で済ますことになれば、これは警察官、どんなことでもやれるということになります。また、今回の事件も運悪く発覚しただけで、実際にまだまだいろんな事件が内部処理されているのではないかという疑惑を、どうも上官が非常にもみ消すという事案が報道されますから、考えざるを得ないということになる。  四番目の事件に至っては、これこそまことにかばい立て、隠し立てておったがゆえに傷害事件にまでなるということになっていると思うんです。短銃盗難、ピストルの盗難があのときすぐ公にされておったならば、一体あそこまでいったんだろうか。内々に処理をされようとしたがゆえに、ガードマンに対する傷害事件というような悪い結果を引き起こしてしまった。短銃盗難の届け出が本署へ出るのが数十時間おくれていると、こう言われておる。この時間のロスがなかったならば、ガードマンの傷害事件というのは起こらなかったかもしれない。そういう意味におけるところの体制点検というものが緊急を要するのではないかと、こう思うんですが、いかがでしょう。
  33. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) まず、看守のあり方の問題でございますが、具体的に被疑者と毎日接しているわけでございます。そういうふうなことでございますので、特に規律の問題それから心構えの問題について厳重でなくちゃならぬはずでございます。制度上、現在のような看守につく人たちのあり方がいいかどうか、年齢構成がどうだ、あるいはどういうふうな警察経歴をした人を看守にしたらいいかどうか、あるいはまた看守からどういうふうなところに配置がえになるような制度がいいかどうか、そういうふうな問題もございますし、それから本人自身の努力と言いますか、心構え、そういうふうな問題もあるわけでございまして、こういうふうな点につきまして、御指摘のように、看守事故というものが引き続いておるわけでございますし、私どもといたしましても、全国的に検討を加えまして、何とかいい方法はないものかというようなことで検討を続けているところでございますし、今後もそういうふうな形で進めてまいりたいと思います。  独身寮世帯道具を運んだということでございますが、この点につきましては、本人が近く結婚する予定になっておりまして、いろいろ準備をしていたようなことがあるわけでございます。一般的に、警察官が結婚をいたします前には、そういうふうな施設に直ちに世帯が入れるような施設がございまして入れるようなことならいいわけですけれども、実情といたしましてはそういうふうな宿舎が不足いたしておりまして、民間のアパートを借りて順番を待つとかいうような形でなされているわけでございます。そういうふうなことで、近く結婚をする者が、一般的に、寮のあいている部屋を借りまして世帯道具を準備し、結婚する際にそっちの方へ移るというようなこともあり得るわけでございますし、現実になっておるわけでございます。そういうふうなことで、監督者も十分配慮がつかなかったという点はあろうかと思うのでございます。  それから、選挙事務所で飲酒して暴れたという、三番目の御指摘の問題でございまするが、金の御指摘の問題につきましては、私ども調査のところ出てきておりません、いろいろ事実関係を調べておるわけでございますけれども。そういうふうなことでございまするが、いずれにいたしましても決してほめた話じゃございませんし、十分注意してまいりたいと思うのでございます。  四番目の、兵庫県の拳銃が盗まれたという事故でございますけれども、これは新聞等にも報道されていたとおりでございまするが、本人が宿直勤務に服しておりまして、深夜に火災が発生いたしました。火災の現場に派出所をあけて行っておるわけでございます。その間に、先ほどお話がございましたように、元警察官で勝手を知っている男が警察の中に侵入をいたしまして、屋上の中に、天井裏の方に入り込んでしまったというようなことでございまして、それを知らないで火災の現場から担当の警察官が帰ってまいりました。そして派出所の中で睡眠を、仮眠をとったわけでございます。仮眠をとりました際に、拳銃を格納庫におさめまして、拳銃のかぎを自分のまくら元の布団の下に置いたわけでございまするが、疲れのために熟睡いたしまして、犯人がそのかぎをとって格納庫から拳銃をとり、格納庫を締め、そしてかぎをもとのところに戻して逃走したという状態を知らなかったわけでございます。この点はまことに違憾なことでございます。目が覚めまして拳銃がないということがわかりましたので、すぐ上司に報告いたしまして、警察としては処置いたしておるわけでございます。目が覚めるまでの数時間の間は本人もわからなかったわけでございますし、犯罪の発生、被害の発生ということが探知できなかった状態であるわけでございまするが、本人がその発見に気づきましてから、直ちに上司に報告し、そして県警といたしましても緊急の処置をとったわけでございますけれども、実情はそういうふうな状態でございました。
  34. 和田静夫

    和田静夫君 総じてこれらの、昨日のは個人の無届けだとしましても、部下に対する管理監督が、ある意味では大変寛容なんではないだろうか。監督者である上官が、事件を引き起こした部下をかばって内々に処理しようとする傾向性が非常に強いように、報道その他から言っても感ぜられるんですね。これでは警官だけが特権的に法にさないでもよいという思想を植えつける、そういう危険性が十分にあることを判断をせざるを得ませんので、この辺は十分に留意をされた警察官教育というものが行われるべきだと思うんです。こういうような形でのある一定の雰囲気が警察官の中にあるとすると、たとえば警察官が人種的な偏見に基づいて行動をすべきではないということはこれはもう明確な哲理でしょうけれども、そうした点について、警察学校などでは、一体、どういう教育あるいは日常の指導を行っていらっしゃるわけですか。
  35. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 御指摘のように、警察国民の方々を相手にいたしまして、毎日、人と人と接触をすることによりまして仕事を遂行いたしておるわけでございまして、人間関係というのは特に尊重してまいらなければならない、このように感じておるわけでございます。それだけに、警察の中におきましては厳格な規律というものが要請されていくわけでございます。と同時に、やはり警察は階級社会でございまするけれども、お互いに気持ちを合わせて治安の維持に当たっていこうということも要請されるわけでございます。しかしながら、何と申しますか、警察の内部規律の問題と、部下をできるだけめんどうを見ていこうということとは別個の問題でございまして、その辺が、警察の社会においてはむしろ厳しくなければならないのではなかろうか、こういうふうに私ども考えておりますし、警察学校を初めといたしまして、それぞれの学校の教養におきましても、いま申し上げましたことを特に気をつけてやっておるつもりでございますけれども、こういうふうな事態の発生を見ていることはまことに残念でございます。今後ともいろいろな具体的な事例に徹しまして、いま申し上げましたような考え方を基礎として、現在もやっているわけでございまするが、さらに強く推進してまいりたい、このように思います。
  36. 和田静夫

    和田静夫君 特に、外国人に対する人種的な偏見という形のものが、どうも警察官にかなり多くあるんじゃないかということをきょうは二、三取り上げるので、前段でお伺いしたんですが、その教育という問題について。  現在、日本に七十五万人の外国人がいると言われています。そのうちの六十四万人相当程度が朝鮮の人たちであります。在日朝鮮人については、これは日本人あるいは日本国家としても、過去における歴史的な犯罪的なある意味での事情などというものがあるわけですから、日本の国家として、もう十分に考慮をし続けていてもし過ぎることはないと考えなければならないものだと私は思うんですが、ところが実情がどうもそうなっていない。警察官に対する指導を、特に昨晩の朝日の夕刊でも、「朝鮮学校生と国士館生 トラブル再燃」という大きな記事が出ていますけれども、どういう指導をされているのか、あるいは特段の配慮が払われているのか、少し説明をしてください。
  37. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 外国人に関します警察指導教養のあり方の問題だろうかと思うのでございますが、私ども基本的な考え方といたしまして、在留が認められております外国人につきましては、原則として日本国民と同様な法的な地位が与えられておりますので、その法令の違反等に対しましても、警察としては、日本国民に対すると同様に厳正、公正に処遇するということを基礎にいたしております。ただ、御指摘のように、外国の方々は言葉が違ったり、あるいは風俗習慣などが違っておりますので、その処遇の過程でややもしますと誤解を生ずるようなこともあるわけでございまして、そういうふうな点、言語や風俗習慣などの相違ということを十分に理解いたしまして、礼儀正しい中にも筋をしっかりするような態度で処遇に当たるようにというふうなことで指導教養いたしておるわけでございます。
  38. 和田静夫

    和田静夫君 少し具体的なものに触れますが、在日朝鮮人に対する意図的な暴行事件がどうも続発をしているという感じがいたします。それも許しがたい人種的な偏見に基づいていると考えられますから、私は深く憂慮をするのですが、四月十日に、町屋駅で朝鮮高校生三名が、十名ずつ二手に分かれて待ち構えていた国士館高校生に木刀、ナイフ、生け花用の剣山などの武器で襲われています。三名とも全治二週間以上のけがを負っている。ところが警察官は、電車の中に逃げ込んだ犯人を追わずに、わずか二名を逮捕しただけで他は黙過をしたという状態になっていると思われます。  翌四月十一日には、やはり国士館生が朝鮮人高校生を襲って、そうしてビールびん、こん棒、鉄パイプ、チェーンなどによってけがをさせましたが、パトカーで駆けつけた警察官は、被害者である朝鮮高校生を連行、取り調べをしているという手違いを起こしているように思われます。  それからその他、四月十日にも池袋駅で朝鮮高校生が襲われています。これは在日朝鮮人の人権を守る会という弁護士などの調査に基づいたものが私の基礎資料でありますが、たびたび国士館生が暴れて、しかも警察官が適切に処置していないという、こういう事実関係がございますか。
  39. 荒木貞一

    政府委員(荒木貞一君) お示しのことについてすべてお答えするわけにはまいりませんけれども、一般的に申しまして、警察といたしましては、ただいま官房長からも御報告ありましたとおり、事犯の処理につきましては積極的に再発を防止する意味努力をいたしておるわけでございます。私どもも、千葉県の本部長として三年ばかりおりましたけれども、こういう事犯の処理につきましては、積極的に現場で処置し、あるいは学校、父兄等に働きかけまして、そういう事態が起こらないように努力するように関係者に対してその方針を徹底いたしておるところでございまして、全般的に申し上げますと、東京、神奈川、千葉等において朝鮮高校生が加害者という立場で発生した事件が三十四件発生し、十七件検挙して三十六名の方に補導の措置をとっておるわけでございます。さらに、日本高校生の加害事件といたしましては発生事件が七件ございまして、うち検挙四件、十九名の補導をいたしておるわけでございます。お互い同士の相互暴行という発生件数十件に対しまして、これは全部十件検挙して、五十名の検挙、補導の措置をいたしておるわけでございまして、一方に加担をするようなそういうふうなたてまえでなく、法の厳正な施行と、その少年等の将来を考えて、また朝高生に対するいろんな問題が議論になっております関係で、そういう誤解のないように努力しておるのが実情でございます。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 先ほど言ったのよりももっと前に、ことしの二月にも、千葉県で朝鮮中高校生が黒ジャンパーを着た集団に襲われています。二月十九日に、朝鮮高校生二人が船橋駅パール街で、防寒コート、革ジャンパー、長靴等のやくざ風の男五十人に、これも木刀、ヌンチャク、チェーン等で襲われた。で、警官が三名やってきた。逃げおくれた二名の犯人を捕らえたが、一時間ほどの調べですぐ釈放したと言われています。  その他、本八幡駅二月十四日、船橋国際前二月二十二日、船橋駅二月二十五日、津田沼駅二月二十五日、幕張−新検見川間で二月二十五日、西千葉駅で二月二十六日などです。この同一時期に、しかも似通ったグループに朝鮮高校生が襲われている。  それから二月二十七日に千葉駅では、高校生四名を、たばこを吸っているという情報があったとの名目で十名の警察官が連行をした。これらの件について犯人グループを調べているんですが、ここでも警察官態度が大変不適当であったと訴えられているんですよ。これらのことは御存じですか。そしてこの事実関係はいかがですか。
  41. 荒木貞一

    政府委員(荒木貞一君) 朝鮮高校生をめぐるお示しの事実関係につきましては非常に関心を持っておりまして、千葉、神奈川等につきましては、そういう具体的な事象、あるいは関係者の方々が私どものところへ参りまして、その実情を申していただくと同時に、その責任措置についての強い要請もございます。そこで実情を十分把握して、それなりのやはり県内における措置をとると同時に、今後未然に事犯を防いでいくという形の指示を徹底をいたしております。しかし、先ほども申し上げましたとおり、警察が検挙している中には、やはり朝高生からの加害事件あるいは日本学生からの加害事件というようなものがやはりございまして、本当に単純な動機によってだんだんエスカレートし、仕返しをし合うような傾向になっておるわけでございます。どこかでこれを断ち切っていかなければならぬというのがわれわれの今後の捜査なり補導の状況でございますので、十分そのための御協力もお願いをいたしたいし、今後も努力してまいりたいと思っております。
  42. 和田静夫

    和田静夫君 私、きょう問題にしたいのは、実は警察官のこれらに対する態度なんですよ。実はこの朝鮮中高校生に対する警察官態度に、どうも人種的な偏見が先行しているような感じがしてしかたがないのであります。  いろいろ当事者からの訴えが私のところにも来ております。時間もありませんからその全部を申し上げるわけにいきませんが、三河島の交番から警官が出てきて、おまえたちけんかしたろうと言って無理やり交番に連行したという、一九七四年ですが、九月九日のそういう事件。全然そういうことはないので中高校生の方から抗議をしたら、そうしたら、朝鮮人やろう、うるさいと、そういうような言辞を弄する警察官。それから七四年の九月六日には、朝鮮第一小中学校の生徒たちが授業を終えて帰るために校門を出た。そうしたら、警官が待ち受けていて、そして三河島駅で朝高生が日本学生と争ったと口実をつけて、そして登録証を見せろ、おまえたちが殴ったんだろうというような形での尋問を始めているという訴え。で、パトカー三台と警官十二名ほど増強して、そうして強圧的に連行をする、そういうものが起こっていますね。あるいは一九七四年の九月五日、これは東京朝鮮中高級学校の生徒二名が帰るために地下鉄の町屋駅に下車した。そうすると、警官が六名、おまえたちけんかしたろうという形のことで連行しようとしている。あるいは一九七四年の十一月の中ごろに、大田区の梅方でリ・チャン・シク君というのがオートバイで走っているところを検問をされた。で、免許証の裏面に日本国籍を離脱して朝鮮名になっているのを見ると、このやろうと言って頭を殴りつけるという状態が起こっている。  その他たくさんの訴えがあるんですよ。一体、こうした尋問というのは、この訴えが事実とすれば、明確に行き過ぎであって、職務質問をするだけの要件がないように考えられるのです、私、客観的にこれを見てみると。これはいかがです。
  43. 荒木貞一

    政府委員(荒木貞一君) お話しのようなことが事実であるとするならば、私どもとしても十分反省、検討していかなければならないし、根本的に教養の問題があるとするならば、これまた考えていかなくちゃならぬと思うのでございます。しかし、先ほども申し上げましたとおり、昭和四十九年中、その朝鮮高校生と日本高校生合わせて二百五十人の検挙補導をいたしておりますし、本年も九十九人の検挙をいたしております。その過程において、やはりその場の雰囲気においていろいろな問題があることも事実でありましょうけれども、たとえそういうふうな雰囲気の中でも、お話しのようなことがあってはやはり警察としてはいけないと思います。ですから、今後そういう事実に基づいて、それぞれのところで強い反省をして誤解のないように取り組んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  44. 和田静夫

    和田静夫君 任意の捜査のはずですからね。したがって、事実上はこの強制連行をするということになれば、刑訴法あるいは警職法に違反するということになりますね。それはそういうことでしょう。
  45. 荒木貞一

    政府委員(荒木貞一君) お話しのようなことを事実として盛り上げてみますと、いろいろ法律的な解釈もそうなろうかと思いますけれども、現実の事実というものの認定なり把握というものが現在なされておりませんので、やはりそういうふうなお立場のお話を十分ひとつ参考にして将来考えてまいりたいと、こういうふうに思います。
  46. 和田静夫

    和田静夫君 外国人登録法の十三条によりますと、十四歳以上の在日外国人というのは外国人登録証を常に持っていなければならないということになっています。この法の規定というもの自体、いろいろ歴史的な事情を考えたときに、非常に厳しいものだというふうに思いますけれども、ともかく慎重な取り扱い方が必要でしょう。  ところが、現実には何かたくさんのケースが起きているんです。これも一九七四年の四月十八日、川崎駅前での事件でありますが、丁さんという二十二歳の女性が、東京での集会の帰りに朝鮮服の姿でもって国電川崎駅構内から出た。そうすると、駅前の派出所勤務の警官に、おい待ちなという形で呼びとめられた。そして、登録証を見せろと、こう言われた。たまたま彼女はその日は洋服を着がえて出たために、登録証を忘れていたらしい。持っていないので、家がすぐそこだから連絡して持ってこさせると言うと、無理やりに派出所に連行されて、夜の十時を過ぎているにもかかわらず、身柄を川崎警察署までジュピター車で連行をして、そして夜中の一時ごろまで犯罪人扱いをするという形で取り調べを受けている。登録証を持ってくるんだという形でのその人の申し出を拒否するとともに、後日略式命令で四千円の罰金が科せられたということになっていますね。どうも聞くところによると、彼女は毎日通勤のためにその派出所の前を通っておって、自宅も歩いて十分ほどの近くにある。ある意味では、そこのお巡りさんたちとは顔見知りでもある。これは一体、これぐらいは過酷なものなんですか、携帯の義務というのは。  あるいは、これは千葉県の朝鮮初中級学校の二年のぺさんという男の子ですが、十月の六日ごろ、これも千葉駅前で駅前交番の警察官が、登録証を持っているか、持っていないと答えたら直ちに交番に連行。二時間にわたって大変な取り調べをしたというふうに訴えてきています。そして生徒の家に電話をかけて、登録証はあるかと言って、これは確認をしてから帰した。しかし、その間二時間という時間ですね。電話をかけて調べるだけの善意があるのならばあれをすればいいし、特にこの子は十四歳未満です。法的に言っても義務を負っていない者に対してこういう形での取り調べが行われる。人種的偏見に基づかないだろうか。  あるいは七五年の二月二十三日に、四名のチェ、ファン、ムン、ブという子たちが、日曜日の午後三時ごろに自宅付近でもって自転車で遊んでいた。パトカーが近づいてきて、何をしている、学校はどこだ、何年生かというような形で、何の気なしに聞きながら、何分かたったらまたやってきて、おまえたち朝鮮人学校に通っているのだったら登録証を持っているだろう、見せろという形になって、家のそばで遊んでいるわけですから、持っていないという答えをすれば、これまた深川警察まで連行。そうすれば、夏姿でもって家の付近で子供たちが遊ぶという行為のときにも厳しい法的規制を求めていくという形。そしていずれもこれは十四歳未満なんですね。これも何か偏見に基づいていないだろうかということを痛感をいたします。  そこで、外国人登録証の呈示を求める条件は何ですか。
  47. 三井脩

    政府委員三井脩君) 外国人登録法によりますと、外国人登録証を常時携帯をしておるということがその義務とされておりますので、その場の状況に応じて、その疑いがあるというようなときに見せてほしいということを言うわけでありまして、もっぱらその現場の状況いかんということになろうかと思っております。
  48. 和田静夫

    和田静夫君 いまの答弁ですがね、たとえば先ほど来事例に挙げたとおり、十四歳以上の方に対するところの答弁ならいまの答弁を受けとめといてもよろしいが、起きている事犯が、先ほども一言ったとおり十四歳未満の子供たちに対してです。しかも、前提的には何年生かというようなことを聞きながら、しかも呈示を求めるという、みずからの方に誤りがあるわけですね、警察官の方に。こういうようなことが繰り返されては大変不幸なことではないかという感じがいたしますね。しかも、十四歳未満の子たちを、不携帯だからということでもって、ここじゃどうも話にならぬからちょっと署まで来いという形で警察官が民衆に接するという態度は、一体、一番最初に私が質問をした警察学校における教育、警察官のあり方の問題とどう考え合わせたらよろしいのですか。
  49. 三井脩

    政府委員三井脩君) いまお話しになりました具体的事案について私たち全部承知いたしておりませんので、どのような事情にあったのかという点について、個別の事案について申し上げることはできないわけでございますけれども、官房長が先ほど申し述べましたように、外国人であっても日本人であっても、その間に差別とか特別の先見といいますか予見といいますか、そういうものを持つことなく処理をするというのが基本的立場でございます。ただ、外国人の場合には登録証を持っておるということでありまして、まあ運転の場合に免許証を持たないで運転をすることができないと同じような意味で、他と違う立場もありますけれども、その辺を含んでの処理ということでありまして、基本的にはそういうことであろうと思うわけであります。
  50. 和田静夫

    和田静夫君 事実関係の問題については、それでは私に訴えられているものについて後ほど提示をいたしますから、これは皆さん方の方でお調べを願って返していただくという処理の仕方を一遍とりたいと思いますが、よろしいですか。
  51. 三井脩

    政府委員三井脩君) 資料をいただきましてよく検討いたしたいと思います。
  52. 和田静夫

    和田静夫君 警備局長。特に答弁の中で、たとえば携帯の問題一つで言えば、十四歳という基準があるわけですから、その未満の子供たちに対して行われている行き過ぎ行為、こういうものはやっぱり即刻注意を喚起するということがいま必要だと思うのです。これは私が資料を提示するまでもなく、ちゃんと指示をされますか。
  53. 三井脩

    政府委員三井脩君) 具体的な事案の資料をいただきまして、検討した上で考えることにいたします。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 具体的な問題については、私の方も処理について必要としますから提示をいたしまして、即刻改めるものは改めてもらいますが、基準について、もっと一般の警察官にはっきりさせるということは、これは一般的なものとして必要でしょう。そういう措置をぜひやるべきだと思いますが、おやりになる意思はありませんか。
  55. 三井脩

    政府委員三井脩君) その点につきましても、資料を検討した上で考えたいと思います。
  56. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。  和田君が指摘された点はそのとおり取り運んでいただきたいと思いますが、その前に、そういう取り扱いというのは常識的には判断ができませんね。警察官というのは一応の常識者ですわね。それで、国民にどういうふうに接するかというような訓練も当然教科課程において行われてきているはずですね。それが、いまのような行為が仮に行われたとするならば、一体、それは個人の意思でやったとは思われない。何か特別の、一つの行政の処し方についての指示に基づいてやったとしか判断できない。そういう事実は全然ないのか。外国人、あるいは朝鮮人なら朝鮮人に対してどういうように措置をしろと、あるいは接しろと、あるいは調査をしろと、そういうことは全然なかったのかどうか。なくて、いま和田委員指摘のようなことが行われたとすれば、その警察官の常識というものを疑いますね。これは単に警察の行政のあり方いかんでなくて、日本人の朝鮮人に対する人種の問題もありましょうし、外交上の問題も生じますよ。そういう子供たちが悪影響を持って帰り、そして逆に子供のときに住んでおった日本の印象から、日本に対して悪影響を受けたそのとおりの見方をするということになれば、これは国際的にも大きな問題ということにも私はなりかねないと思う。そういう事案が、特に朝鮮学校と日本人学校の特殊の生徒との間のいろんなトラブルというものは、たびたび出ているわけです。どういうように日本の政府として朝鮮の生徒を保護するか、あるいは被害から守るかと、こういうことは行政指導として当然警察として出していなければならないはずだと思う。にもかかわらず、いまのような指摘が行われたとすると、どんな点を一体いままで一般の警察官に対して警察庁指導してきたのか疑わしくなる。その点をひとつ御説明をいただきたい。
  57. 三井脩

    政府委員三井脩君) 特別にいま挙げられたような事例のように、外国人である子供について、登録証の呈示を求めるようにやれというような指示はいたしておりません。
  58. 加瀬完

    ○加瀬完君 出しておらないでいま指摘のとおりのことが行われたとするならば、これは今後の指導の問題ということになりますけれども、少なくもいまの指摘されたような問題が起こり得る可能性というのは、いままでの事案からして考えられるわけですよ。ですから、朝鮮人の学校あるいは生徒に対してどういう扱い方をするかということ、当然これは警察庁としては出してなければおかしいと思う。たくさんの事件が生じているでしょう。そうすると、朝鮮の国籍、特に学童とか生徒とか、こういう子供に対する保護というのは日本政府の義務でもありますよね。それなら適宜な扱い方というものが警察庁から指示されなければおかしいと思う。何にも出しておらないということは、一体それならば、外国人の保護の義務というものを警察はどういうふうに考えておったかという新しい疑問も生じてきますよ。それらの点はどうでしょう。
  59. 三井脩

    政府委員三井脩君) 警察で所管いたしますのは、外登法の罰則の適用というようなことでありまして、対登そのものは警察ではないわけでございます。したがいまして、犯罪一般の問題と、こういうことになるわけでありまして、その間について外国人と日本人と格別の差はないということでありますから、公正に、かつ公平に処理をするというのが警察官の基本的なあり方、心構えでありますので、ただいま挙げられたような事例は私たちは初耳でございますけれども、それらの点につきましては資料をいただいて検討した上で考えると、こう申し上げておるわけでございます。
  60. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連ですからこれでやめますが、いまのような事例があるかないかということは、御検討の後で、あればそういうことを行った者をどう処置するか、あるいは今後それがないようにどう方法、対策を講ずるかということは、おっしゃるとおりだと思います。思いますけれども、朝鮮人学校の生徒に対する問題というのは、たびたび起こっている。おっしゃるように、公平に措置をすると、日本人も外国人も同様に、学童、生徒に対しては被害が与えられないように保護すると言うなら、いままで被害が与えられるおそれのあった朝鮮国籍の学校の児童、生徒に対しては、特別の保護対策というのが講じられてしかるべきじゃないですか。それがほんとうの意味の国際関係を円満にすることでもあるし、あなたのおっしゃる外国人、日本人を問わず、公正な警察の扱い方ということになるんじゃないですか。何にもないならいいですよ。あるいはこれは適当な言葉ではありませんが、ある国の国籍人が特別に犯罪行為を行うような意図があり、行ったということであればこれは別ですよ。そうではないでしょう。善良な生徒、児童でしょう。それが暴行が行われていることは事実ですよ。いま和田先生の御指摘を待つまでもなく、暴行事案というのは幾つかあった。これを、相手方の国の人たちはそれが報道された場合にどういう受け取り方をしますか。こういうことを考えたら、公正というならば、より重点を、外国国籍のある学童、生徒に対してやはり保護対策というものを十二分に講ずるということが、当然のこれは日本政府の義務でしょう。認識がおかしいと思うのだ、私は。その証明書の保持も、免許証の保持と同じような——言葉じりをつかまえるわけじゃありませんが、考え方です。運転をするときの免許証の保持というのは、法律で決まっているわけですよ、これは。しかし、十四歳未満の子供が一々国籍証明書を持つということは、法律じゃどこにも決まっていませんよ。幾つだと聞いて、仮に一歩譲って幾つだと聞いて、それが十四歳未満であるならば、生活の仕方に犯罪、虞犯になるおそれがあるならそれは指導するのが当然だけれども、法的拘束力を与える何らの根拠もないでしょう。ですから、受け取る方の側からすれば、人種差別をしている、べっ視感を持ってわれわれの民族に接していると、こういう判断を当然してくるわけですよ。日本人の全部はそういう考え方持っていないんですよ。しかし、日本政府の形を変えた一つの代表と目される、そういった警察官の考え方の未熟さが少なくも指摘をされるような行動をしたという受け取り方をされるということは、非常に国家として大きな責任ですよ。だから、ああいう問題があったならば、十二分に末端の警察官にそういう誤解がないように、これは指導を徹底をさせるのがあなた方の義務でなければおかしいと思う。それが公平であることですよ。この際は外登の外国人を十二分に保護することが公平の原則ですよ。それがなされているとは御答弁からも私は受け取れない。まあ和田さんの御指摘の内容を調べていただくとともに、内容のいかんにかかわらず、私はもう少し積極的に保護対策というものを末端の警察官に徹底させていただかなければならないと思うんです。これは私の希望でありますが、この点は御考慮いただけますか。
  61. 荒木貞一

    政府委員(荒木貞一君) 先ほど、朝鮮の学生の方の被害の立場、加害の立場、いろいろございますけれども、やはり朝鮮高校生の方や、あるいはそれの対象になるような日本の学生の方々の両方に対して、事案の未然防止のために、第一線の警察といたしましては、重要な駅頭その他に警察官を配置して、あるいは学校の先生にも働きかけて出ていただいて、そういう努力をいたしておるわけでございます。  それと同時に、いま十四歳の問題が議論に出ましたので、保安部長という立場で、少年を保護するという少年警察的な立場で、今後の問題をひとつ申し上げてみたいと思います。  外国人の登録の問題全般については警備局の所管でございますので、    〔委員長退席、理事安田隆明君着席〕 全般的な考え方としては警備局長のお話しのとおりだろうと思うんでございますが、私ども、年端のいかない十四歳前後の少年に対して、外国人登録法のやり方等についていまお話しのような事案がもしあるとするならば、やはりお話しのように今後考えていくということが警察の立場としても大切であろうと思うのです。そういう意味合いで、ひとつ今後検討をして事案のないようにいたしますので、御高配を願いたいと思います。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 加瀬委員の方から大体総括的なことを言われましたから、この問題で特に私はもう一つだけ求めておきますが、国士館高校や大学生との関係事案がいっぱい報道されるわけですよ。たまたま昨晩もありました。夕刊にもありました。で、現職の警官の中で、国士館高校やあるいは国士館大学の卒業生というのが大変多いと一般的に言われていて、警察から大学だけの資料が届きましたが、高等学校がわかれば後で教えてもらいたいんですが、心情的に国士館生に加担するなどということはあり得ないとは思いますけれども、そういうような疑いを抱かせるような形での警察側の処理の仕方というものが起こらないように、十分に考えておいていただきたいと思うんです。インドシナ半島の次は朝鮮半島であると言われるように、アジアの体制の中で将来の外交関係に禍根を残すようなことが国内的ないろいろな要件の中で起こるというようなことも、私たちとしては十分に考えておかなければならないことであって、そういうことも大きく踏まえながら、十分な反省、そして警察官に対するところの教育、それらを徹底をしていただきたい、こういうふうに考えます。  法務省の長島局長が、何か皇居の用件で急いでいられるようですからちょっと外れますが、一、二だけ質問をまずしておきます。  二月二十六日の衆議院の法務委員会で、稲葉法務大臣とあなたは、代用監獄の問題——後ほど私は代用監獄の問題をきょう少し時間をかけて論議をいたします。法律上の解釈では法務省に責任があり、運用上の責任警察にあるという趣旨の答弁をされておりますが、そういうことで確認をしておいてよろしいですか。
  63. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 現行法の法律的な解釈に関する限りそうでございます。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 法律的には国の仕事であるが、運用上の責任というのは都道府県警察に生ずるということですか。
  65. 長島敦

    政府委員(長島敦君) こういうことでございます。監獄法そのものは代用監獄にも適用がございます。    〔理事安田隆明君退席、委員長着席〕 したがいまして、都道府県の警察が代用監獄を運営しておりますが、運営するに当たりましては監獄法に従って運営をしなければならないということになります。  監獄法に基づきまして、監獄法の施行規則という法務省令が出ております。この施行規則には二色ございまして、一つは、監獄法自体に、命令の定めるところによって行うとかいうふうな規定がございますが、その場合には、監獄法の施行規則が、法務省令でございますけれども、監獄法と一体をなしておりますので、府県の留置場を運営しております警察もこの法務省令に従わなければならないということになります。  ところが、法務省令の中には、監獄法に根拠を直接置きませんで、いわば法務省の持っております監獄を運用するための法務省令というのがございます。これが監獄法施行規則の中に多数含まれておりまして、たとえば食事の問題でございますとか、いろんな問題がございますが、そういう意味で、その施行規則は法務省所管の監獄にのみ適用があるというふうに理解しております。そういうことになりますので、食事その他の問題につきましては、警察の方で独自にお決めになる留置場規則というものによっておやりになっておるということでございます。  法務省はこの監獄法を所管しておりますので、そういう意味で、監獄法及びそれの委任に基づきます施行規則の運用が法の趣旨どおりにいっているかどうかという点につきましては、責任があると申しますか、要するに、その解釈につきまして解釈を誤っているというような点がございます場合には、これは法務省の最終的な見解が有権解釈になるというふうに考えておりますが、現実の運用につきましては、これは別個の行政組織でございます警察の方の留置場をそのまま実は代用しておるという関係でございまして、行政法上の組織が全く違うものでございますから、法務大臣が日々の運営等につきまして指揮監督するということは、組織法上は現行法ではできないということになっておるわけでございます。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 代用監獄の廃止問題というのは非常に長い歴史、討論があるようですが、廃止についていまどういうふうにお考えになっていますか。
  67. 長島敦

    政府委員(長島敦君) ただいま、先生御存じのように、監獄法の全面改正の作業を非常に急いで進めております。そこの中におきまして、代用監獄の問題も非常に重要な一つの問題点でございまして、先生御指摘のように、過去にいろんな研究もございますし、いろんな指摘もございます。そういった問題をすべて目下検討しておる段階でございます。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 代用監獄は、立法の当初から望ましくないとされてきた。明治四十一年三月五日の衆議院監獄法案外四件委員会で、なるべく留置場は将来におきましても監獄として用いない方針をとるつもりであるとお答えになっている。それから七十年近くたっているわけですね。一体、代用監獄の廃止のために具体的にはどういう努力をされているんですか。いろいろ検討されていることはわかっていますが、そっちの方向に向いているんですか。
  69. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 現実の問題といたしまして、先般も国会でお答え申し上げたわけでございますが、現在の拘置所あるいは拘置支所の実情から申しますと、現在代用監獄に収容されております者を全部お引き受けするということはとうていもう不可能な実情でございます。そこで、これを一気に廃止するという点は、ただいまもちろん検討はいたしておりますけれども、きわめて困難であろうということでございますが、それで、そういう点も踏んまえまして、代用監獄制度を仮に存置するといたしますならば、どういうかっこうで、もっといい制度と申しますか、現在ありますようないろんな欠陥はどういうふうにして直していったらいいのかというような点を中心に実は考えておるわけでございます
  70. 和田静夫

    和田静夫君 具体的には後ほど論議します。  ベトナムの大使館に——先ほどの朝鮮の中学生や高校生の問題に引き続いて外国人の問題ですが、最近のベトナム大使館に留学生が入った事件ですね、簡単に報告をしてください。
  71. 三井脩

    政府委員三井脩君) 四月三十日の事件だと思いますが、当日午後十時ごろ、現在では元南ベトナム大使館、この正門前にべ平統のメンバー——べ平統といいますのは、御存じのところだと思いますが、ベトナムの平和と統一のために闘う在日ベトナム人の会というのが正式の名称でありますが、このメンバーを中心に、約五十人のベトナム人が集まりまして、この大使館の解放を叫びまして、正面から突入を図るといったような状況がありました。この大使館の警備に当たっておりました所轄の警察署署員並びに機動隊員、当時は、その時点では十五名でありましたが、この警察官がこれの規制に当たりました。五十人ぐらいのうち十人ぐらいは、制止を振り切って正面の鉄のとびら及びその横の土手を乗り越えて大使館の邸内に侵入をし、さらにそのうちの一人は、大使館の女子職員からかぎを取り上げて、正面の鉄とびらの施錠を外して開放をしました。で、これに乗じて、外側にいた五十人のうちの二十名ぐらいが警察官の制止を突破をして正門から邸内に侵入をし、座り込んで気勢を上げたという状況であります。これに対しまして、所轄の警察署長は、大使館の書記官から侵入者の排除要請を受けまして、この書記官とともに侵入者に対して退去警告を行ったのでありますが、これに応じなかった者を二十九名、建造物侵入罪で現行犯の逮捕をいたしたわけでございます。  以上が事案概要でございます。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 私が当事者のベトナム人留学生数人から直接聞いたところを要約をいたしますと、まず動機と目的は、問題の四月三十日はサイゴン政権が、御存じのとおり無条件降伏をして崩壊をした日でありまます。で、祖国が長い戦争の後に新しく生まれ変わることになった。で、その日の留学生の気持ちがどんなものであるかというのは他言をあえて要しません。ところが、当日昼ごろに旧政権の大使館から留学生に対して、電話で、日本に五年間滞在できる。パスポートを発行する、よって海外に出国したい者もまた許可をするとの連絡が出されて、それに応じて大使館に行った者の中から、大使館では書類をたくさん車に積んで運んでいたという情報が入って、留学生たちは、すでに大使としての有効な外交的権限を失ったと当時考えられる大使館の行動に疑問を持って、そして確かめようとする、そういう当然な思惟で、それがベトナム南部解放の夜をベトナム大使館で過ごしたいという気持ちも交錯をしながら、三々五々留学生たちが大使館に集まった。これが目的であった。  で、それに対する警察の対応なんですが、警察がそうした事情を全く現場の人たちの中では考慮をしていなかったことはどうも確実なようなんですね。数人の留学生が当初は横門から入ったり、あるいは乗り越えた人もいるようですが、大使と話し合いたいということを警備の警察官に言ったんですが、これは帰れ帰れとその警備の警察官はただ言うばかりであって、それじゃ警察のよく話のわかる指揮官にお会いをしたいと言ったら、何度頼んでも的確に答えなかったという形になっている。これはどうも私は事実だろうと思うんですね。私も長い大衆行動の中で現場の警察官の皆さんと接触した経験を持っていますから、どっちみち指揮官の皆さんと話をしなけりゃ何も話が通じないというのは、これは警察——あるいは警察の側からいけば常識でしょう。  そういう形で答えなかったから、学生の興奮した諸君は、いま言ったように正門の横の小さな門からくぐり戸で入る、あるいは乗り越えて中に入る。その後に正門が開かれたので、学生たちは報道関係者も含んで警官とともに中に入った。これに対して警察側は警告もしなかった。組織的に阻止をされたわけでもない。いまの局長の御答弁とずいぶんこの辺は違うんです。あなたの方はかなり後の状態の説明をいまされた。当初の状態はいま私が述べているところでしょう。これはくしくも——めったにテレビ見る機会がないんですが、私はくしくもテレビを七時半から見たらドキュメンタリーでやっていましたから、まざまざと、まさかあのNHKの写真が偽りであろうはずありませんからね。警察が警告もしなかったし、組織的阻止もしていなかった、初めは。ただ、中にいた一人の警官が学生の一人を殴り倒した、留学生を。これが導火線となって少し混乱が起こった。その後で続々と機動隊が押しかけて、かつ警察側の態度は一層強圧的になって、中に入った者を閉じ込める。外に出ようとした数人も外へは出さなかった。で、門を閉じて封鎖する一方、後から来たために中に入れなかった者を約二百メートル離れたところまで実力でもって押しやって、そのまま約二時間近く、夜十二時ごろまでそういう状態が続く。中にいた三十名ぐらいは、革命政府の旗を上げて、手に小旗を振って歌を歌ったようですね。警察官は割り込んできて旗を引きおろした、小旗を引き破った。その後に、警告もなく、警棒で殴る、くつでける、踏みつける、髪の毛を引っ張る、こういうような暴行を加えて、一人ずつ逮捕して代々木署へ連行した。そのうちの一人は意識不明で入院して、翌日病院で釈放される、こういう状態ですね。  あるいは暴行、暴言の例、全員が何らかの被害を受けているわけですが、その幾つかを挙げてみますと、警棒で、前頭部、後頭部、胴、背中、胸、五回殴られた、一時意識不明になったという人、これは池袋署。胸をけられて倒れて、髪の毛をつかまえて引きずられて意識を失った、これは代々木署から御存じのとおり井上病院に入院して五月一日に釈放。頭、足、背中を殴られて、杉並署内で引きずられたときに少し体を痛めたというような者。指絞をとるときに、六人がかりで殴られたり、ぞうきんを口に押し込まれたり、机に頭を押しつけられて腰を強打された。足、両腕、背中、腰にあざがある、こういう人、杉並署の事例。あるいは、けられて手足にけがをして、後から首を絞められて、そして腕を背中に折り曲げられ、倒されて貧血を起こした。足をつかんで引きずられた、肩から背中にかけて痛んでいる、そういう女性の人。  それから侮辱的な言辞の問題ですが、池袋の署では、ベトナムに帰れ、黙っていると釈放しないとどなられたりおどかされたりしている事例。駒込の署では、二十年かかるかもしれぬと取り調べ官が言う。強制送還の場合もあるとおどかす。あるいは野方署では、答えないと釈放しないと言っている。あるいは碑文谷では、指紋をとるためのインクを落とす特別の石けんを与えられなくて、おまえたちベトナム人はそんなにきれいにする必要はないと言って侮べつ的な言葉を投げかけられる。  そういうような状態というものが留学生の皆さん方から口々に訴えられています。これは捏造でしょうか。日本人が使うところのそういう野卑な言辞、そういうものが一体つくられるでしょうか。私はそうだとは思えない。こういう事実をやはりいま認めて謝罪をし、極力原状回復をする処置をとる必要がある、こう思うんですがね。どういうふうにお考えになっています。
  73. 三井脩

    政府委員三井脩君) ただいまいろいろお挙げになりましたけれども、暴行の事実はございません。たとえば逮捕した者を病院に収容したと、こうおっしゃいますけれども、これは警察官逮捕したのではありません。五十人ぐらいおった中に、一人病人と思われる人がいて、この人が道路上にへたり込んだというのを発見いたしまして病院に収容したのであります。なお、石けん云々とかということもあありますが、これはそれぞれの署について、さようなことを言われましたので事実を調べてありますけれども、石けんは現に使っておる、こういうことでありますし、また指紋の問題につきまして、新聞等によりますと口にぞうきんというようなことも言っておりますが、さような事実は全くございません。なるほど、本人が指紋を採取することについて、これは刑事訴訟法に基づきまして、逮捕被疑者について警察官が指紋を採取することができるということになっておりますが、これに本人が応じなかったというので、三人がかりで手を一本一本、本当は指紋用紙というものは一枚の紙ですからスムーズにいきますと足りるわけでありますけれども、この指紋用紙の紙を、五本の、まあ十本になりますが、一枚一枚切って一つの指に当てる、こういうようなことでやったのでありまして、さような事実は全くございません。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 そういうふうに言われるのなら、五月九日の夕刻の七時半からのNHKのテレビを一遍ここで映写してみましょうか。映写してもらうという機会をつくる必要があります。あのテレビの中で、明確に警察官が手を上げている状態というのは出ているじゃありませんか。あれは捏造されているんですか。あそこで捜査をされている警察官の足の動作というのは、捏造されてわざわざ撮り直されたドキュメンタリーですか、あれは。これはNHKの名誉にかけて明らかにしなければならぬことでしょう、一つは。そんなことは一つもないと言われるんですか、あなたは。多くの国民は見ているんですよ、あのテレビを。
  75. 三井脩

    政府委員三井脩君) この二十九名を現行犯逮捕したわけでありますから、逮捕の過程における実力の行使ということはあり得ると思います。しかし、警察官が意図的に、また意識して暴行を加えるというようなことはない、こういうように考えております。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 これは事実関係明らかなんです。あなたはごらんになりましたか、それじゃそのNHKのテレビは。
  77. 三井脩

    政府委員三井脩君) そのテレビ見ておりません。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 これは一遍理事会で協議をしてください。いまのような答弁は理解をするわけにはいきません。  時間がありませんからもうちょっと基本のところで少し論議をしたい。外務委員会の問題であるかもあるいはしれませんけれども、一体、当日旧サイゴン政権というものは崩壊をしている。ということは、大使の権限はそこで消滅をしている。あなた方はそれから依頼を受けたと、こう言われるわけです。ウイーン条約の第十条の2によりますと、使節団の任務の終了というのは、派遣国の通告を受けることになっている。また、三十九条の2の規定、四十五条の(a)の規定によれば、外交官特権、使節団の公館、財産、公文書等を保護しなければならないと解せられないこともありません。しかし、派遣国政府が存在しない以上、使節団の任務も存在しないことだけは確かなのではないでしょうか。ということは、使節団の身辺を保護しなければならない場合なら、そういうことが起こった場合ならばともかくとして、話し合いに来た学生を排除する理由ということにはならぬというふうに思われるんですが、これはどこの答弁ですかね、外務省ですか。
  79. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御指摘の四月三十日現在における在京ベトナム大使館の法的な地位を国際法に照らしてみますと、サイゴンにおける当時のチュー大統領下の政権が事実上崩壊した。したがって、在京大使は事実上外交使節としての任務を遂行することができなくなったということがあると思うのです。そのことから、直ちにそれではその外交使節及び使節団員は全員外交特権を失うかといいますと、これは先生も御承知のように、外交関係断絶の場合におきましても、その国を出るまでは外交特権が引き続き認められるというたてまえになっておるわけでございます。  派遣国からの通告の問題でございますけれども、任務の終了を通告する主体が事実上崩壊しておれば通告ができないじゃないか、こういうことになろうかと思います。その点につきましては、法律的に見ますと、日本は南ベトナムにおけるチュー政権というものを合法政権として承認してきた。それが事実上崩壊して新たな政権が樹立され、この政権を承認した段階で政権の交代が国際法上行われる、日本にとりましてですね。そういうたてまえから判断いたしますと、五月七日に日本政府が臨時革命政府を承認いたしますまでの間は、これは法律的には旧政権の政権が法律的には存続している。これは事実上崩壊しているけれども法律的には存続している、こういう考え方をとらざるを得ない。  なぜそういうことになるかと申しますと、これは申し上げるまでもありませんが、外交関係というのは国と国との関係でございますので、南ベトナムという国を日本が承認して、その正当政府がどこであるかということが問われていた。いま具体的に問題になっております在京大使館の建物、つまり大使館という建物の不可侵権、あるいはその建物の秩序と安定を守る接受国の義務、こういうものは、その政権に対して負っている義務ではなくて、国際法上はその国に対して負っている義務だ、こういうことになります。そういうたてまえから、現に臨時革命政府は翌日の五月一日になりまして、在外にあるいままでの政権下の在外公館はすべて在外公館としての機能は停止するけれども、その保管、管理の義務は引き続き旧政権下で派遣された外交使節が負うんだという声明を出しておることから見まして、国家としての継続性と政権交代の過渡期の処置というのが、国際法の法的な原則に従ってとられてきた、こういうふうに私どもは認識しておるわけでございます。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 この事件は国際情勢を反映した非常にデリケートな事件でありますが、たとえば五月一日の読売新聞によりますと、いま局長が言われたのとは違って、在日留学生の間で不穏な動きがあるので、乱入を実行するような者がいたら直ちに排除してほしいということを、前日の二十九日に大使館から要請があったというふうに報ぜられておりますが、この事実はありますか。
  81. 三井脩

    政府委員三井脩君) その点は私たちは存じません。したがって、なかったものだといまのところ私は思いますが、われわれの認識といたしましては、この二十九名逮捕というような事案は突発的な事案というように考えております。
  82. 和田静夫

    和田静夫君 先ほど、否定をされましたから、したがって、論議の焦点として取り上げられるかどうかはちょっと疑問でありますが、私たちに対する訴えによれば、たとえばベトコンを許さない、あるいは後進国のくせに、おまえたちは手を洗わなくてもよいなどという、人種的な偏見が警察官の暴言として吐かれたと訴えられています。また、強制送還もあり得る、あるいは二十年かかるかもしれないなどというような脅迫的な言辞、黙っていると釈放しないというような黙秘権の告知義務の違反が現場の警察官によってどうも行われている、そういう訴え、あるいは指紋採取のために、いまお話がありましたように、二人以上でもって押さえつけて捜査取り調べを行う、こういうような形、そういうことが警察署で行われた。  これは事実関係の争いでありますから、後ほど参考人にでも来ていただいて、いまあなたの方は否定をされたわけですから、論議をしてみなければ明らかにならないと言えばそれまででありますが、一つだけ事実関係があるんです。それは臨時革命政府の旗が警察官によって引きずりおろされて損傷をされましたね。臨時革命政府の請求があれば、刑法九十二条、外国国章の損壊等に当たる犯罪になると思われます。これは昭和三十三年、長崎の国旗事件では、御存じのとおり、国旗としては認められなかったが、軽犯罪法で略式命令で罰金を取って処置していますね。これはそういうふうに何かの処理をされますか。
  83. 三井脩

    政府委員三井脩君) まず、事実関係ですが、ポールに旗が立てられたことは事実でありますけれども警察官がこれを引きおろしたという事実もありませんし、また損傷したという事実もありません。  次に、法律論でございますが、この場合は、ただいま外務省からお話があったように、まだ臨時革命政府が承認しておらない段階でありますので、これは刑法上の国旗ではないと私たちは認識いたしております。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 押収されていますね、この国旗は。現在この国旗は、おたくの手元にあるわけでしょう。
  85. 三井脩

    政府委員三井脩君) 逮捕被疑者とともに押収いたしました。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、損傷しているかどうかというのは、ここにその国旗を資料として提出してもらえばわかるわけですが。
  87. 三井脩

    政府委員三井脩君) 旗が損傷しておることは事実でございますけれども警察官が損傷をしたということはないと、こういうふうに申し上げたつもりでございますが、あるいは言葉が足りなかったかもしれません。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 その損傷は、どこで起こったんですか。
  89. 三井脩

    政府委員三井脩君) 旗を引きおろすときに起きたそうであります。事実調べました。警察官が引きおろしたものではございません。
  90. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、引きおろしたのは、留学生がおろしたという主張ですか。
  91. 三井脩

    政府委員三井脩君) 大使館員でございます。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 大使館員……。
  93. 三井脩

    政府委員三井脩君) はい。
  94. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、その大使館員がおろすときにおろさせない妨害行為があって損傷をしたと、こういうことなんですか、警察の認識は。
  95. 三井脩

    政府委員三井脩君) 大使館員が引きおろして、ポールの根元までおりてきたときに、それを留学生の一人と思われる人がひったくった、引っ張ったと。したがって、まだ片っ方はついておりますから、その部分が裂けたと、ちぎれておりませんが裂けております。その人が逮捕被疑者でありますから、その逮捕被疑者とともに警察において持っておると、こういうことでございます。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 カメラや手帳などもまだ押収をされたままになっていると訴えられていますが、そうですか。
  97. 三井脩

    政府委員三井脩君) カメラか手帳という具体的品目は、私、存じませんけれども、当時、所持品で押収すべきものは現行犯逮捕に伴う手続として押収措置するということでありますので、押収したものはまだ還付してないかと思いますけれども、ただいま現在のことはちょっとわかりかねますけれども、押収しておると——もとより押収しなかったものもあると思いますけれども、押収しておるものは多分まだそれと一緒にあると思いますが。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 手帳など、留学生が留学生として必要とするものですね、いまの生活の中で。そういうものを早急に返してやるべきだと思うんですが、そういう意思はありませんか。
  99. 三井脩

    政府委員三井脩君) 捜査状況と具体的な事情によりますので、個別に捜査をやっておる捜査担当の部局において考えるべきだと思います。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 いろいろ論議をしました。仮に百走譲って、警官による規制がたとえば正しかった場合でも、これは国家公安委員長にぜひ見解を述べていただきたいんですが、警棒をふるう、あるいはけるなどというような行動というのが、刑法百九十五条に私は当たるというふうにあの場合に感ずるんですが、起訴もできないような薄弱な理由で無防備の学生に襲いかかるというのは、日本の民主警察としての姿勢を、どうもあの場合はドキュメンタリー、NHKのニュース、あの描写を見ていても、これは私は見た国民のひとしくが感じたところだと思うんです、あの事態というのは。いたずらにやっぱり事実を否定されるばかりが、私はこの事犯については能ではないと思う。謙虚に反省をされてるということが、私は日本の警察のためにも必要なことだということを考えるんですが、国家公安委員長、どうお思いになりますか。
  101. 三井脩

    政府委員三井脩君) その前に……。  この事案が起訴にならないような薄弱な犯罪であると、こういう点については私たちは見解を異にいたします。起訴するかどうかは検察当局の起訴便宜主義に基づくものでありまして、これは起訴に値しないというようにわれわれは考えてはおりません。  それからまたもう一つ、起訴云々の問題を離れまして、現実に人が管守しておる建物、これに不法に侵入をするということになりますと、それはわれわれとして、その建物の保護、こういう立場において法秩序維持のために処理をしなきゃならないというように考えます。  また、反省するかどうか、こういうことでございますが、私たちはどんな事案でもそうでありますけれども、よりよくわれわれが処理をする、こういう意味におきまして、常に反省、検討を加えると、こういう基本的姿勢でございますので、こういう点についてもこれを素材として反省し、検討し、よりよい方法を編み出していくといいますか、みがいていく、こういうふうに努めてまいりたいと思います。
  102. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) いま警備局長がお答えしたことで大体尽きておると思いますが、私はどういう事情があったにもせよ、また、どういうような、今後、この種の問題がまた起きないとは限らないのでありますが、とにかくちゃんと門が閉まっておるのに、へいを乗り越えて入るとか、門の中へ入ってかぎをあけるとかいうようなことをして、そうして建物の中に入るというような行為は、私はやはり好ましいことではないし、不法な処置ではないかと思う。いかに——もしそれが罪人であっても、罪人に対してでも、やはり実力的な行為をすることは、これは私は認められておらないと思うのであります。この場合においては、こういうような非常の、異常なことではありますけれども、まだ、館員として考えて見れば、正規の政府ができて、そうしてそれに自分の建物、あるいは持っておるすべてのものを異常なく引き渡すべき義務があると思うのであります。その義務を、これは職を解かれたからと言って、やっぱり善良な管理者としてこれを管理しておくのは私は当然なことで、その管理を阻害されるようなことがあればこれを排除することを警察に求めても、少しもこれは不法なことだとは思いません。こういう事件が起きたことは、まことに残念なことではありますけれども、しかし、それだからといって、正常に維持されておる建物の中へ無理をして入って、そしてかぎをあけて入って、そして何らかの要求をするというようなことは私は認めるべきではない、また、そういうことがあれば、これは要請がなくても私は本当は排除をするのが至当ではないかと思う。  ただし、そのやり方がどうであったかということになりますと、具体的にけったとか、殴ったとかいろんなことがあるとすれば、そういうことはこれは事実関係でありますから、もし、そういう事実があったといたしますれば、それは私は今後大いに注意をしなければならないと思いますが、しかし、向こうが抵抗をした場合には、やはりこれを押さえるという意味で力を使わないわけにはいかないと思います。だから、これは事実問題でもって問題を処理していくよりほか仕方がないんじゃないかと。われわれとしては、とにかく暴力というものが、また、いかなる場合でも、こういうような常軌を逸するといいますか、人の管理をしておる建物の中へ、どういう理由があったとしても、不法といいますか、力をもって入っていくというようなことは、これは私は慎んでもらいたいものだと、こういう感覚、感触でございます。しかし、こういう事態にそういうようなことが起きて、いろいろの問題、疑問を起こすようなことが起きたことについては、私は残念なことだと思っております。
  103. 和田静夫

    和田静夫君 ともあれ、当夜、報道によれば、西ドイツなど数ヵ国で同様の事態が生じたが、どこの国でも一人の逮捕者も出ていないというのが報道であります。それは私は当然なことであって、話し合いに来た者を逮捕する、あるいは自分の将来がどうなるのかといって心配をして集まったその者を逮捕をするという形のことは、日本の警察だけで起こったということに大変な不幸を感じます。先ほどから議論をしましたように、大使館の管理権が旧大使にたとえば法的に存続するにしても、すでに外交交渉を行える大使でない以上、この大使館の管理権も、きわめて限定をされた、物件的なものに対する管理権に私はとどまるだろうと常識的には思います。そして学生たちは、話し合いに行ったのであって、建物を損壊をしたりあるいは大使を傷つけるなどの意図がなかったことは明白でありますし、その後も日本でもって留学生生活を続けていきたいという諸君でありますから、そういう事情というものは私は十分考慮される、形式的な、あるいは法律の解釈学的なそういう立場だけに依拠をするのではないということ、それが私はやはり必要なんだろうと思う。当日の、世界のいわゆる警察の中でも異例に属する過激な規制であったということだけは私は指摘をしておきたいと思う。後日の報道によれば、南ベトナムの留学生が次々にフランスならフランスにビザを求めて出て行きたいと。将来の身分などについて、日本の政府に対して大変な不信をこの事件以降持ち続けているという事態というものを、警察当局というものも十分にやっぱり反省の資にしてみる必要がある。そういう態度というものは私はやっぱり必要だろうと思う。単に取り締まるだけが能ではないだろう。そういうことを特に意見として申し上げておきたいと思うのであります。  あと、わずかな時間しか残っていませんが、先ほどちょっと触れましたが、代用監獄の問題で、幾つかの問題を述べておきたいと思います。  時間がなくなりましたから、通告したその他の問題はきょうは取りやめますが、監獄法の第一条三項に、「警察官署ニ附属スル留置場ハ之ヲ監獄ニ代用スルコトヲ得」と規定されいるわけですが、実情はこれはどうなんですか。恒常的、包括的に利用されているのではないのですか。法務省。
  104. 米田昭

    説明員(米田昭君) 矯正局総務課長の米田でございます。  御賀問の趣旨は恒常的、つまりたまたまあるときに監獄に代用することがあるということではなくて、常に——常にと言うとおかしいのですが、いわゆる恒常的に監獄の代用というか、監獄として用いられているかという御質問でございますね。御質問のとおりでございます。
  105. 和田静夫

    和田静夫君 その費用はだれが払っていますか。
  106. 米田昭

    説明員(米田昭君) お答えいたします。  代用監獄として用いられるという事態になりましたときは、「警察署内ノ留置場ニ拘禁又ハ留置セラルル者ノ費用ニ関スル法律」というものがございまして、これに基づきまして、条文によりますと、一たん警察費から支弁された後、「監獄費ヨリ之ヲ償還スヘシ」となっておりまして、結局現在は警察は都道府県警察でございますので、都道府県の請求によりまして法務省の予算から支払っております。
  107. 和田静夫

    和田静夫君 昭和四十八年度における実績額、延べ人数、単価及び単価の内訳を示してくだざい。
  108. 米田昭

    説明員(米田昭君) 昭和四十八年の償還金額実績額は、全国で三億二千百三十六万百八十八円でございます。延べ人員が百三十八万五千百七十三名でございます。単価についてお尋ねでございますが、これは四十八年と五十年と、参考までに両方を申し上げましょう。この実績となりました四十八年度の単価は一日一人当たり二百三十二円でございます。これが、五十年度におきましては一人一日当たり三百五十八円でございます。内訳は、賄い費として、結局食料費でございますが、四十八年につきましては二百二十七円、雑費が五円。五十年のそれにつきましては賄い費三百五十三円、雑費五円とされております。
  109. 和田静夫

    和田静夫君 この代用監獄の費用負担については、地方財政法の十二条二項の五「司法及び行刑に要する経費」には該当しませんか。自治省。
  110. 石原信雄

    説明員(石原信雄君) 代用監獄の性格からいたしまして、地方財政法第十二条2の第五号に該当すると考えます。
  111. 和田静夫

    和田静夫君 そうすれば、「地方公共団体が処理する権限を有しない事務に要する経費」であって、「国は、地方公共団体に対し、その経費を負担させるような措置をしてはならない」と解してよろしいですね。
  112. 石原信雄

    説明員(石原信雄君) そのように考えております。
  113. 和田静夫

    和田静夫君 留置場看守に当たる警官巡査はどういう部課に所属をしておりますか。警察法施行令の附録の内部組織から言えばこれはどうなりますかね。それに従事する警官巡査は、全国で何名になりますか。
  114. 田村宣明

    政府委員(田村宣明君) ただいま手元に詳細な数字を持っておりませんが、約四千名ほどでございます。所属はそれぞれの都道府県警察の職員でございます。
  115. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、先ほどお聞きをしました単価二百三十二円のうちには、この看守の人件費も、それから都道府県の資産である留置場の維持管理、補修費も含まれているとはまあ考えられませんね。消耗費、水、光熱費、合わせて一日一人当たりわずか五円なのでしょう。それはそういうことですか。
  116. 米田昭

    説明員(米田昭君) 先ほどお答えいたしましたとおり、四十八年につきましては二百三十二円でございますが、二百二十七円が食料費、五円が雑費でございます。文字どおり雑費でございます。
  117. 和田静夫

    和田静夫君 先ほど自治省に確認をしましたとおり、「国は、地方公共団体に対し、その経費を負担させるような措置をしてはならない」のですよ。ところが、これは都道府県が負担しているという結果になるでしょう、法務省。これは法律に法務省自身が違反をされておるのですがね。国家公安委員長、どうされますか。
  118. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 今後の問題として詰めたいと思います。一種の超過負担になる可能性がある。
  119. 和田静夫

    和田静夫君 これは大臣の答弁があった後ですが——法務大臣は謹慎中なものだからきょうは出てこれないというので法務大臣はお見えになっていないのですが、自治大臣、よろしいですね、これ。
  120. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 事務的に自治省と法務省、両省の間で詰めさせるようにしたいと思っております。どういう姿が一番好ましいことであるか、いまあなたのおっしゃった意味を体して、この問題をやはり考えてみる必要があるというのが私の考え方です。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 留置場看守ですがね、これは刑事部に属するわけでしょう。
  122. 田村宣明

    政府委員(田村宣明君) 刑事部でございます。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、警察法施行令附録の第一、第二の刑事部の項に、看守の仕事に該当すると考えられる規定がないと思うんですがね、どうですか。
  124. 田村宣明

    政府委員(田村宣明君) 明文の規定はございませんが、捜査活動に伴う必要な行為、身柄を確保し逃走を防止をして証拠の隠滅を防止をするということは、捜査活動そのものとは言えないかもしれませんけれども、それに伴って必要な仕事である、こういうふうに私ども考えます。
  125. 和田静夫

    和田静夫君 代用監獄。
  126. 田村宣明

    政府委員(田村宣明君) 警察留置場が、代用監獄に、監獄法の一条の三項によりまして監獄に代用することができるということに基づいて代用監獄に指定をされておるというのが実情でございますので、それに伴いまして留置場に勤務をする警察官看守がこれを看守をするということは、当然この前提として考えられてくるというふうに解釈ができるというふうに思います。
  127. 和田静夫

    和田静夫君 いつも大変厳しく法律解釈されるあなた方が、ここだけこんな形じゃ困るんですがね。明確に法律に違反しているじゃありませんか。で、さっき私が指摘をしましたとおり、金の面でも費用を払わないし、都道府県の施設をほぼ無料で使用して、そればかりか、都道府県の職員の人件費も払わない。で、国の仕事をさせているんですよ。地方財政の問題がいろいろ言われているときですがね。法の元締めである法務省がそうやっているんですよ。余り警察ここは無理しない方がいいと思うんですね。警察だって潤沢にお金があるわけじゃないでしょう。
  128. 田村宣明

    政府委員(田村宣明君) まあ予算等の問題は別といたしまして、代用監獄というものが別個に存在しておるということではなくて、府県警察の営造物である留置場というものを監獄に代用するということでございまして、その設備はあくまでも留置場の設備でございますし、職員も、いま御指摘のように留置場警察職員でございます。したがいまして、その根拠としては、監獄法の一条三項によりまして留置場が代用監獄に指定をされました場合に、これに警察留置場看守である警察職員がこれを看守をするということは、法に違反をしておるということではないというふうに私は考えます。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 自治省行政局も——これは法制局長官でも呼ばなきゃだめかもしらぬけれども、監獄の仕事は自治体の仕事の中にないんですよ。ですから、非常に無理なんです、あなたいかに言われても。時間が来たものですから、少しあれにしましょうか。この次までもう一遍論議延ばしましょうか、それじゃこれ。少しこの辺研究してみてください。私は財政の側面と機構の側面と両方から、一度この代用監獄の問題で、もう一つあと論議としては代用監獄の廃止問題というやつにいくんですけれども、そうしましょうか。
  130. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) いまの問題は法務省、警察庁、自治省、それぞれでもってもう一回詰めてください。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃここで質問を保留して、また次の機会に継続いたします。
  132. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 午前中の質疑はこの程度とし、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      —————・—————    午後一時五十一分開会
  133. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  地方行政改革に関する調査を議題とし、午前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  134. 神谷信之助

    神谷信之助君 最初に、大津署の宿直手当の水増し請求事件について報告を求めたいと思います。  これは京都新聞の報道によると、「昨年だけで六百万円」、それを「せん別などに使う」というように載っていますし、それから読売新聞によりますと、「〃水増し〃十年」「年五百万円ピンはね交際費、せん別に回す」というふうにあります。きわめて重要な幾つかの問題を含んでいる問題じゃないかと思いますので、ひとつその事件概要をまず報告をしていただきたいと思います。
  135. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) ただいま御指摘のございました事案につきまして御説明申し上げます。  滋賀県警察からの報告によりますれば、以下申し上げるような状況でございます。  大津警察署は、交代制の警察官を除きますと、当直勤務に服する人員が約九十名でございます。これを一個班十五名の六個班に分けまして、六日に一回ずつというふうな形で当直勤務を行っておるわけでございます。これに対します予算の処置は、情勢の変化等に対応いたしまして増強できるよう、一日十九人分が内示されておったわけでございます。  この大津警察署は、御承知のように、滋賀県の県都の大津市を管轄区域としておるわけでございまして、その立地条件から警察の対象事案も多く、事件事故につきましては、それぞれの種別にもよりますが、県下のおよそ二〇%ないし四〇%を負担いたしておりますほかに、各種の警備、警戒、取り締まり等の業務が非常に多うございまして、しかもその相当数が、日曜日でございますとか休日でございますとか、あるいは夜間というふうな状態になっておるわけでございます。こういうふうな状況下にございますために、基準の十五名の当直員のみでは処理し切れない場合が多うございまして、したがいまして、生活の知恵と申しましょうか、というようなことで当直以外の者を非常招集なり何なりして事件処理に当たらせるということになるわけでございまするが、そこをおおむね十五名のほかの署員を——ほかの署員といいますか、当然宿直勤務に服する者以外の署員を輪番で予備当直員というふうに指名いたしまして、事件が多発し、あるいは規模の大きい事件が発生した場合に、優先的にこの当直員を増強のため当直勤務につかせていたのでございます。で、このような予備当直に指名された署員を中心にいたしまして、しばしば実際の当直につく者を増強しているものでありまするが、その人員は事件の態様によって区々であったわけでございます。  ところが、正規の十五名の当直のほかに、ただいま申し上げました予備当直員が臨時に当直についたというような場合の宿直手当の予算は、ただいま御報告申し上げましたとおりに四名分しかないということでございます。そういうふうなために、臨時についた者の中から四名にのみ手当の全額を支給いたしまして、ほかの人たちに支給しないということは不公平になるというようなことでございますので、当直勤務についた四名の者に手当の全額を支給いたしまして、このうちの一部をその四名の人から拠出してもらいまして、そしてそれをプールいたしまして、ほかに当直して予算の都合上宿直手当の支給を受けられない人たちの補食費でございますとか、深夜の出退時の交通費等に充てんしていたというような実情でございます。
  136. 神谷信之助

    神谷信之助君 もうちょっと聞きます。毎日十五名分の宿直手当、それプラス毎日四人分の宿直手当が予算化されていると、そういうことですか。
  137. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 十九名分の宿直の予算が内示されておるということでございます。
  138. 神谷信之助

    神谷信之助君 こういう状態というのは、全国ほかにもあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  139. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 私ども聞いておりますところではございません。
  140. 神谷信之助

    神谷信之助君 大津署の宿直の人員ですね、予定ですが、一応は平常の場合は十五名、そうしていろいろな臨時の必要に応じてということで十九名の予算が内示されている。これは全国大体そうじゃないかと思いますが、実際上忙しい署——大津の場合は琵琶湖も持っているし、そういうこともあって、日曜、祭日、その他の夜間が多いというお話ですが、そういう署というのは、全国に大津署以外にはないですか、忙しいという点では。
  141. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) それは大津以外にも全国にたくさんございます。
  142. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、大津署以外ではこういう問題はどういうような処理の仕方をやっているわけですか。いわゆる予算の枠以上に宿直をした人たちに対してどういう措置をしているのですか。
  143. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 予算の運用につきましては、これは効率的で、かつ合理的な運用というものを考えなくちゃいけないわけでございますし、四季それぞれの繁閑の問題というふうなものもございます。それからまた、警察は突発的な事案というものがよく起こるわけでございますので、あらかじめそういうふうな問題を考えておくということも必要であろうかと思います。そういうふうなことから全体的な計画を立てまして、予算の範囲内で適切な運用をするというのがたてまえであろう、このように思います。    〔委員長退席、理事安田隆明君着席〕
  144. 神谷信之助

    神谷信之助君 しかし、たてまえはそうであっても、私も滋賀県警へ行って警務部長にいろいろ話を伺ったんですが、実際問題として、十九名分予算があっても、一カ月あるいは年間を通じてみたらそれをオーバーしちゃう、だから宿直をしてもらっても払えないという状態が起こる、こう言うんですね。ぼくはそれは全国でたくさん警察署があるのに大津署だけがそんなことになっているというのはどうも考えられないのだけれども、ほかの署なんかではそういう場合、どういう処置をするんでしょうか。警察庁ではどういうようにそういう点は指導されているんですか。
  145. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 御承知のとおりに、それぞれの府県警察は、府県を単位とする独立した自治体警察というふうなことをたてまえといたしております。したがいまして、このような人件費等の予算は都道府県費で賄うということに原則として相なっておるわけでございます。  したがいまして、具体的に滋賀県警察の場合におきましては、まず言えますことは、県警の本部なりにおきまして、県下各署、これはもちろん本部を含めましての勤務の実態というふうなものを正確に把握いたしまして、そして先ほど来御説明申し上げますとおりに、仕事の繁閑あるいは突発的な事態に対処するための配慮、さらにはまた、県下各警察署それぞれ多忙でございますけれども、そういうふうな中におきましても、先ほど来御説明申し上げておりますように、県庁の所在地でございます大津警察署と仕事の面で比較いたしまして、それほど忙しくないと言っては語弊がございますけれども、そういうふうな署もあろうかと思います。そういうふうなことで、まず宿直人員の適正な割り当てと申しますか、そういうふうなことを合理的にやってみる必要があるのではなかろうか、こういうふうに思います。それからさらにまた、年間を通じましてのそういうふうな一定の予算の枠の中での宿直勤務ということが一応考えられるわけでございますので、そういうふうなものに対処する四半期別の重点的な配慮というふうなことも必要だと思うのでございます。  さらにはまた、非常に突発的に大事件が起こるというような場合で、どうしても賄い切れないというようなこともあるいはあろうかと思うのでございます。そういうふうな場合におきましては、県警の責任者等が県の財政当局に、いろいろとお願いし、また県議会の御了解を得ながら、そういうふうな予算的な措置も、補正なり何なりでやっていただくというふうなことも必要ではなかろうかと、このように考えておるわけでございます。
  146. 神谷信之助

    神谷信之助君 いまおっしゃるようなことは、いろいろ滋賀県で県警の警務部長に話をしますと、いろいろそれで考えておるんですね。ですから、大津署の場合は一日四人分プラスしていますが、ほかの署はそれほどでもないというので一日一人分ぐらいにするというように、繁閑の度合いも考えやっているんだけれども、やりくりがつかないので、それで大津署がこういうことをやっていましたと、こうなっているんですね。  ですから、これはなかなか、しかも宿直手当だけの問題じゃなしに、超勤手当が、聞いてみますとやっぱり相当不払いの状態になっているんですね、実働、実際にやっているのと比べますと。職場からの投書なんかを見ますと、四割から六割程度しか支給されていない、そういう状況にもなっている。超勤手当の方は本俸と調整手当の一二%ですか、で来ていますから、それ以上はどうにもこうにもならないというようなことで、それも不払いなものだから、宿直手当をただで出すわけにいかぬので、それでやりくり算段するという方法を考えたということに結果としてなりましたということですね。これはしかし、どうなんですか、大津署だけがそういうけしからぬことをやっているということになるんですか。どうなんですか。
  147. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) ただいまお話がございましたように、一応地方財政計画を自治省の方でお立てになるわけでございまして、そういうふうな際の警察官の超過勤務の額につきましては、御指摘のように本俸プラス調整手当の一二%ということになっておるわけでございます。一般の職員につきましては六%ということでございますので、そういうふうな比較の論で申しますれば、一般職員の方々よりも倍になっておるというふうなことで、そういうふうな意味からはよく見てもらっているということが言えるのではないかと思います。  しかしながら、顧みまして私どもの実態というふうなものを見てみますと、先ほど来御報告いたしておりますように、いつどういうふうな事件が突発するかわかりませんし、そういうふうな際に、重大事件が突発いたしまして、治安の責めに任じます私どもとそれを放置するわけにもいかない、どうしてもやらなくちゃならないというようなことで、一二%の枠の中で、形式的には超過勤務の命令を出しますけれども、事実上は超過勤務の命令のないままに、すなわち、その支給の対象になり得ないである程度の仕事をせざるを得ないというのが実情であろうかと思うのでございます。そういうようなことで、大体六、七割ぐらいが事実上支給の対象になって、あとが、まことに残念でございますけれども、実態にそぐわない面もないわけじゃないというふうに思うのでございます。  そこで、私どもといたしましては、毎年のようにこの一二%の枠を何とか上げてほしいというふうなことで努力いたしておるわけでございまして、昭和三十八年度以前は、率直に申し上げまして九%であったわけでございます。それが三十九年から一〇・二%になりました。それから四十六年度から一一・五%ということになりました。四十八年度から一二%というふうなことに相なったわけでございます。これは自治省の方で地方財政計画をお立てになります際に私ども強くお願いいたしまして、こういうふうな結果になっておるわけでございまして、決してこれで十分であるとは思いません。何とかもう少し改善していただくように私ども努力しなけりゃならないと思いますし、今後ともやっていくつもりでいるわけでございます。  それから、全国的な地方財政計画についてはそういうふうなことでございまするが、中には県によりましては一二%を上回ってめんどうを見てもらっておるようなところもあるわけでございますし、それぞれ、都道府県、それから私ども相まちまして、こういうふうな勤務環境の改善、処遇の改善というふうな点について努力してまいりたい、このように考えております。
  148. 神谷信之助

    神谷信之助君 ところで、こういう大津署の宿直手当の水増し請求、これはどうなんですか、いいことなんですか、悪いことなんですか。
  149. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) いろいろ実情を調べてみますと、御指摘のように決してほめたことじゃございません。私どもといたしましても、実態に合うように、先ほど申し上げましたような形で内部の改善のための努力、内部の点検というふうなものをいたしますと同時に、関係当局に対しましてもいろいろな努力をしてまいりたい、このように考えております。
  150. 神谷信之助

    神谷信之助君 ところが、これ、警務部長さんに聞きますと、いまおっしゃるようにそれをプールをして、そして宿直はしたけれども手当がもらえない人たちのために、補食費あるいは栄養剤、そういうのに回したというお話でした。ところが、新聞を見ますと、京都新聞、讀賣新聞も、このピンはね分が一括して署の会計課にプールをされて、そして署長、次長級の交際費や飲食費のほか、転勤職員へのせんべつとして千ないし三千円ずつ使われたというように報道しているわけです。これはどうなんだと言って確かめましたが、これはもちろん、そんなのは否定をされるわけです。否定をされるけれども、どうもはっきりしないわけですね。いや、それは使っていましたというように簡単にはそうおっしゃいませんし、われわれの方は別に司法権があるけじゃないから、そうでないのを疑いを晴らすこともできない。一般県民の方もそうですね。これはどういうことになるんだということになってくるわけです。  それからもう一つは、先ほどその十五人プラス四人分、この四人分の人については、本人の同意を得てプール、拠出をしてもらった、こういうようになっているんだというお話ですけれども、実際はこの事件が明るみに出てきたのは、そういうことになっていることを知らないで、給与の支給の明細と片一方もう一表あって、今度は控除の方の明細があって、その控除の項目にはAは体育費、あるいはCは宿直費、Eは旅行費、ずっと二十項目の分類があって、問題のその「当直過分」というのはPの項で表示をされている。ですから、もらった人が初めわからなくて、一体何のためにこれを引かれているのかというのがわからなくて、そこで疑問を持って、そして新聞記者諸君の方に話が出て、それが記事になって明るみにやっと出たんです。これがなかったら、恐らくなかなかこれはわかりっこないんです。  そう考えますと、全国的にもやっぱりいろんな方法を考えなければ、大津署だけがべらぼうに忙しいというはずはない。東京でも、あるいは京都でも、忙しい署というのは、事件の多い署というのはあるわけですから、どんどんと突発的な事件が起こると、それに必要に応じて宿直をせぬならぬ、予算をオーバーするというのは、しょっちゅう、ある程度忙しいところには起こっているんじゃないかと思うんですけれども、これが大津署だけでほかには絶対にないんだということはどうも信用できぬのですが、その点はいかがですか。証明できますか、何かで。
  151. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 先ほど御説明いたしましたように、プールいたしました金は、宿直の際の補食費でございますとか、あるいは交通費などの実費弁償的なものに充てられていたというふうに私ども現地から報告を受けておるわけでございます。  それで、全国的にどうかと言われますと、全国に警察千二百幾つあるわけでございますし、このケースが起きまして一つ一つ点検したわけでもございません。しかしながら、およそ大津署がやっていたようなことは、私どもの常識から申し上げますならばちょっと考えられなかったことで、先ほど来申し上げておりますように、これは決してほめた話でも何でもない。また、われわれ十分やはり反省いたしまして、今後の職務の遂行なり警察の運営の中で生かしていかなければならない問題だと、このように考えております。
  152. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、よそでは予算がないから宿直をしても宿直手当が一銭も出ない、何らの措置もしてもらわないというのは、よその場合にはそういうやり方をやっているということになるんですか。大津署の場合はプールをしてみんなで分けたけれども、ほかの署では、十九人分来ているんだから十九人分は宿直手当を出してやって、それ以上の分についてはもう一銭も渡らぬというやり方をやっているということになるのですか。
  153. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 仰せられますように、実態に合った宿直勤務の仕方をしている、こういうふうに信じております。
  154. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう一つわからぬのですがね。聞き方を変えますけれども、大津署のような場合はどういう処置をしたらいいんですか。十九名分きているわけです。だから、プラスアルファしているのは一日四人分ですからね。ですから、それは一ヵ月ですと百二十人分、十五人分の枠以外に百二十人、これは予備費としてある。それをオーバーして百五十人も宿直した、そうすると、オーバーした三十人に対してはもう払わぬでもいいということになるのですか。どういう措置をとっているんですか。
  155. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 先ほど御説明いたしましたように、それぞれ府県を単位とする警察という形で運営いたしておるわけでございますので、まず全体の警察署を見てみまして、それぞれの宿直人員がそれで適切であるかどうかという判断がまず必要であろうと思うのでございます。大津署の場合、具体的に申し上げますならば、そういうふうに毎日のようにいわゆる予備当直の人たちが出てきて実質的に宿直をしなければならないというような状態であるならば、まずその基本になっております十五名の当直というのがやはりそれでいいのかどうか、もう少しふやした方がいいのか、減らした方がいいのか、そしてその予備当直みたいなものに当たる人員のために、その人たちの勤務というものが当然の当直というような形の枠の中に入らないかどうか、そういうふうなものを一つ一つの署につきまして具体的に点検する必要があると思います。また、そういうふうなことをやってみたいというようなことを、滋賀県警では反省の上に立って言うておるわけでございます。そういうふうなことで、宿直人員の再検討というのをやってみまして、そしてさらに、どうしてもやはり不可欠だというようなことになりますならば、当直人員そのものの増加をいうふうなものを県当局なり何なりにお願いするというふうなことになろうかと思います。
  156. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあお願いするのは必要だと思うのですよね。これは滋賀県の警務部長と話をしたときにも、やっぱり一つはそういうことで管理職自身も努力をせにゃいかぬとかいう問題とか、それからやっぱり実績どおりやらにゃいかぬ、水増しなんかはやってはならぬということ。それから勤務体系の合理化。それから予算が不足をすれば、管理職として当然県なり警察庁に要請をして手当てをしてもらうように言わにゃいかぬ。いままでは、超勤手当が払えなくても、警察官というのはただ働きをするのはあたりまえだ、少々のことは目をつぶらにゃいかぬのだという考え方で処理をしてきたので、今後はやっぱりそういう点はひとつ十分考えてみなければならぬということをお話しになっていますね。私はここのところが非常に大事なことになるのじゃないかと思うのです。もう薄給に甘んじ、そして時間外労働をやろうがあるいは宿直をしょうが、予算がなければ、それはもう公務に携わっているものとしてしんぼうしなきゃならぬということで、職員の方は、警官にはしんぼうさせるとか、そのことで必要な予算を要求する、あるいはそういうことを明らかにして職員の待遇を保障するという点で努力に欠ける面がある。  そのことは今度は警官、職員の中に不満をずっと引き起こしてきますね。いろいろな問題がやはりその中で疑いを持たれる。実際に毎日々々十九人以上の人が宿直をしていたのか、いていないのか、これはわれわれでは調べようがない。それから補食費やその他に使われたのだというようにおっしゃっておるけれども、それもわれわれの方では調べようがない。これについてはどうなんですか。警察庁としては、実際に現地に行って監察というのですか、監査ですか、やって、こういう疑念を晴らすということはお考えにならないのですか。やらなくてもいいのですか。  私は第一線で超勤手当もろくに払われない中でがんばっている人たちが、こういう新聞を見て、宿直手当をピンはねをされて年間五百万円、あるいは六百万円と言う新聞もあります。それで交際費やせんべつに回す。こういう記事を見たら、一体自分たちの職場、厳正であるべき警察がこんな状態でということになって、実際働く意欲を失うことになると思うんですよ。こういった点を、当該の県警本部から報告を求めて、それで滋賀県警はこう言っておりますということだけで済まされるのかどうか。やっぱりしかるべき機関が出ていって、実際にはどうなのか、ちゃんと点検をして、それがもし疑惑であるなら疑惑を晴らすということをしなければ大変だ。  しかもこれは十年間続いているんです。そして県警の幹部は知らなかったと言っているんです、このことが新聞に出るまで。言われるまで知らなかったと言っているんです。歴代の大津の署長が交代で、署長か次長ぐらいの間と会計課長ぐらいですね、ごく少数の幹部がそれをやっているということを知っているだけで、県警本部も知らない、こうなっているんですよ。この辺は一体どうお考えでしょうか。
  157. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 御指摘のように、私ども本件につきましては、警察庁といたしましても重大な関心を持っております。こういうふうなことがあってはならないわけでございます。そういうふうなことで、実は本日全国の警察本部長会議をやっておるわけでございますけれども、昨日、現地の責任者と私ども会いまして、現地の実情も聞きますし、私どもの考えも率直に申し述べて、県警といたしましても、先ほど来申し上げておりますように、そしてまた先生御自身が県の警務部長から御聴取のとおりに、その改善について努力するということを申し上げておるわけでございます。私どもも大きな関心を持ちまして、この種の事態に対処してまいりたいということでございます。  なお、金銭の出納の問題におきましては、警察庁というよりも、むしろ県を単位とする警察でございますので、県の監査の方の対象に、具体的に申し上げますと金銭の出納についてはなるのであろうと思うのでございますけれども、私どもも先ほど来申し上げておりますように、重大な関心を持って実情の聴取に当たり、そしてまたいろいろ意見を申し上げている、指導もしているという状態でございます。
  158. 神谷信之助

    神谷信之助君 この滋賀県の場合は、御承知のように、昨年の秋に革新統一の武村新知事が誕生した。それ以来、土木部の監理課員の接待費の水増し事件、これが大津の地検に摘発されましたし、例の外郭団体の県の開発公社が、上田建設グループですね、これと手を結んだ土地転がしをやって四百六十四億円の債務を背負うという、そういう放漫経営が出て、これはいま県会で大問題になっているわけですね。したがって、五十年度の当初予算でも、ほとんど新規の事業が組めないというような赤字団体に一挙に転落をしました。非常に厳しい状況の中で、そういう腐敗、汚職を摘発しなければならぬ警察署でそういう水増し請求事件がやられる。それは特別の会計ですから、そういう特別の会計を持ちますと、これは明るみに出ないんですから、高潔な署長さんならいいけれども、少しゆっくりした署長さんになったらもうわからぬようになってしまう。あるいは会計責任者がわからぬようになってしまう。こういう状況が当然起こってくるし、そういうのになれてきますと、いろんな腐敗とか紊乱なんかが起こってくる。そういう危険もあるわけです。ですから、これはひとつ私はちゃんとしなければいかぬし、必要なそういう警官の超過勤務手当なり宿日直手当というようなものは、これは当然法律上支給しなければいかぬのですから、むだ遣いはやっぱりしちゃならぬにしても、必要なものは出さなければならぬ、こう思うんですよね。  ところが、警察庁の方から出される予算の内容にしましても、それから都道府県議会で警察予算についていろいろ質問をして回答を求めましても、実は警察の予算の中身というのがもう一つはっきりしないわけですね。特に捜索費あるいは警察活動費ですか、そういったものが本当に一体どう使われるか、何に使われるのか、予算の段階で。いろいろどこの議会で聞きましてもはっきりしない。国会の中でも、警察活動費の内訳は一体どうなっているのかということを聞いてもなかなかはっきりしない、そういう状況になっています。これはたまたまそういうことで、そういうやつもあるのだから、そういうのもいろいろうまく使ってやればうまくいくのじゃないか、よその署はそういうことをやっているのじゃないかということを滋賀県警の警務部長さんに言うたら、よその方はどうなっているか知りませんけれども、それはひとつ研究したい、捜査費なんかの流用できるものはないか、そういうことも含めて、こういう水増し請求というようなことはやらないような措置を考えてみたい、研究したいというお話です。そういう話を聞きますと、捜査活動費といいますか、これが食料費もあれば報償費もあるでしょうし、旅費もあるでしょう。あるいはその中に超過勤務手当に類するものもあるかもしれぬし、いろいろなことで使えるのじゃないか。どうなっているかさっぱりわからぬということですが、この辺はいかがですか。
  159. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) それぞれの予算につきましては、国会で御承認いただきました予算書の費目なり項目があるわけでございまして、それに従って運用をしなければならないわけでございます。私どもといたしましては全体的な立場に立ちまして、やはりただいまお話しになりますように、合理的な、効率的な予算の運用というふうなものをやらなくちゃいけないわけでございますので、    〔理事安田隆明君退席、委員長着席〕 なかなか困難な面もございますし、また警察の予算は、御承知のとおりに国費と地方費の二本立てになっておりまして、ほとんど約九〇%近くが地方費になっておるわけでございます。そういうふうなことで、府県の実情もございますわけでございますし、いろいろ困難な面もございますけれども、御指摘のように、そういうようなことを言うておられる段階ではございませんので、あらゆる角度から検討いたしまして、請求するものは請求する、必要経費として要求するものは当然いただくというような形で運用してまいりたい、このように思います。
  160. 神谷信之助

    神谷信之助君 ところが、おっしゃいますが、予算委員会でも、警察予算についての資料の提出をわが党は要求したわけですね、冒頭に。ところが警察関係は、予算の資料については提出できませんと言って断られています。昨年もそうです。今年度の予算の審議に当たってもそうです。大きい項目のものはありますよ。実際その中身がどうなっているのか、それに必要な資料の請求をしても提出されたことがない。そして、先ほどの警務部長の話じゃないですが、捜査費その他をうまく流用してやればやれぬことはないのだという話も出ている。そうすると、本当に超過勤務手当が足らないのか、宿日直手当が足らないのかわからぬようになります。やろうと思えば何でもやれる。しかもそれは秘密のベールに包まれている。私はそこに今度の問題が発生する原因もあると思うのですよ。警察の予算をもっと公開をし、民主的にして、なるほどこれなら足らぬじゃないかということを明らかにしないと非常に困るわけですね。  警察官がいろいろ投書をしてきています。時間がありませんからいろいろ読みませんが、それを見ますと、いろんなそういう点での不満が出ています。判こを全部それぞれ庶務のところでつくっておって、そして超勤の予算の令達に基づいて改めて命令薄をつくるというようなやり方、これは一般事務の職場ででも往々やられるところはあるのですけれども、そういう状況がやっぱり警察でも大きな顔をしてやられています。それから特に昇任試験に対する不満なんかも非常に強くて、警官の自分たちの意見というのが自由に言えない。にらまれたら最後、何遍昇任試験を受けようが、これはもう通りっこないんだというようなことも言われています。あるいはまた夜学に通学が可能だという、そういう募集ポスターで受験して、そして巡査になったけれども、入ってみたら夜学にも気特ちよく通わせない。そして残業をちょっと残ってやってくれと言われる。募集ポスターの誇大詐欺広告、契約違反だという。そういう投書も来ています。数え上げると幾つもあるんですが、そういう何といいますか予算の面でも国民の前に明らかにされず、国会でわれわれ要求をしても提出をされない。で、職場の中では階級制が確立をして、そして下部の下級巡査なんかのいろんな不満要求というものをくみ上げるということはしない。こういうような問題がたくさん、これ何人かから出てきているんですが、こういう点については一体どういうようにお考えでしょうか。
  161. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 警察は限りある人員で社会の治安維持に当たっておるわけでございますし、そういうふうな立場から申し上げますならば、一人一人がりっぱな有能な警察官であると同時に、やはり警察の組織体が一致団結いたしまして有機的に活用するというようなことによりまして、初めて実効のある治安の確保というのが私どもできるのではなかろうか、国民の方々の御期待にこたえ得ることではなかろうかと、このように考えておるわけでございます。したがいまして、その組織員の一人一人がやはり気持ちを合わせてやるようにいたしますためには、私ども常に勤務環境の改善、待遇の向上、そういうふうな点について意を用いなければならぬわけでございます。警察には御承知のとおりに労働組合はございません。それだけに、やはりみんなが気持ちを合わせて、特に幹部の者たちが細かく気を使いまして、国民の方々の期待にこたえ得るような警察の運営に当たらなければならないということでございます。いろいろ御指摘の点もあるわけでございまするが、十分そういうふうなことをも私ども踏まえまして、ただいま申し上げましたように精進してまいりたい、このように思います。
  162. 神谷信之助

    神谷信之助君 大体警察で、例の毎年一月の中旬から二月の上旬にかけて、武道始め式というのが各署でやられますね。そのときには防犯協会とか交通安全協力会ですか、いろんな警察に日ごろ協力してもらっている著名人の方々に案内状を出して招待をするというようなことが各署でやられているようですが、こういうことはそのとおり事実ですか。
  163. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 全国的に必ずしも同じように行われているとは言いがたいと思いますが、多くの県においてそういうふうな実態があるというふうに思います。
  164. 神谷信之助

    神谷信之助君 そのときに、いわゆる参加をされる方あるいは欠席をされる方も、祝い金といいますか、寄附が大分集まるという話なんですが、その辺はどうですか。
  165. 下稲葉耕吉

    政府委員下稲葉耕吉君) 武道始め式と申しますのは、年の初めに当たりまして、警察というのはそれ相応の気力、体力を練らなければならないわけでございますし、平素から武道にいそしんでいるわけでございまするが、そういうふうなことで、これは部内の行事でございます。部内で武道の演練をやる、そういうふうなことを称しているわけでございますけれども、やはり警察の活動というのは、御承知のとおりに、国民の方々の御理解と御協力をいただかなければならない。具体的には管内の方々ともいい雰囲気で仕事を推進するということが、逆に言いますと、警察的にも何といいますか、りっぱな関係といいますか、関係が維持できるということではなかろうかと思うのでございます。そういうふうなことで、お話しのように防犯協会の方々でございますとか、あるいは交通安全協会の方々に、せっかく武道始めをやるということで御招待申し上げているわけでございまして、そういうふうな方々が、それはもちろん手ぶらで来ていただきたいわけでもございますけれども、まあ気は心というわけでございますか、中にはお酒をお持ちになる方もいらっしゃいますし、あるいはお祝いというような形でお金をお持ちいただく方もあるようでございます。警察といたしましては、もちろん武道始めは警察の費用で賄うべきでございますし、またそういうふうな努力をしているわけでございますけれども、せっかくお持ちいただくのをお断りするのはどうかというふうなことでありがたくいただいている。そしてお持ちいただきましたそういうふうなものにつきましては、やはりその武道始めというような趣旨でお持ちいただくのでございますので、署員の体育でございますとか、あるいは演練でございますとか、そういうふうな際の補食費、そういうふうなものに使わさしてもらっているというのが実情のようでございます。
  166. 神谷信之助

    神谷信之助君 表向きはそうなんですが、どうもそういうことです。ですから、私はやはり警察が、そういうことで警察の費用で武道始めをやっているのですから、そういうお酒を持って来てもらったりお金をもらったりする、そういう関係をつくるということ自身が痛くもない腹を探られることですから、これは毅然とお断りをするというようにする必要がある。そういうわけのわからぬ表に出ない金が、とにかく幾つかの形で警察にはあるようで、そういう疑いをますます深くするわけです。  そこで、それに関連してそれに似たような問題で、大垣署でパチンコの景品の換金組織に現職の大垣署長や課長がその役員になっておったという事件があって、岐阜の県警本部長から疑惑を招くからやめなさいという特別の指示をしたという、そういうことですが、その件についての報告を求めたいと思います。
  167. 鈴木善晴

    説明員(鈴木善晴君) お答え申し上げます。  大垣市には、パチンコ屋がお客に提供しました景品を買い取る機関としまして、現在大垣市社会福祉事業協力会というのがございます。この協力会は、暴力団がパチンコの景品買い取りに介入して、その利益を有力な資金源にしているということで、暴力団追放と、それから社会福祉事業への協力ということを目的にしまして、昭和三十七年十二月一日に設立されました岐阜社会福祉事業協力会、それの支部として設立されておりましたものですが、昭和四十五年の二月二十五日に独立して大垣市社会福祉事業協力会ということで現在に至っているものでございます。この大垣市社会福祉事業協力会には無報酬の顧問及び幹事というものが置かれておりまして、昭和四十五年二月二十五日以降、顧問には大垣警察署長と大垣市長、監事には大垣警察署刑事課長と大垣市の民生部長が就任して現在に至っておりましたが、こういう機関に現職の警察官が就任しているのは大変好ましくないことであるということで、大垣警察署長と同署の刑事課長は、今年の五月十二日のその協力会の理事会において辞任をしております。
  168. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこでいま、社会福祉事業協力会ですね、社会福祉事業への貢献なんかを名目につくられたとおっしゃるんですが、調べてみたら去年一年間の買い取り額というのは十三億五千二百七十五万円、うち純益は四千五十八万円。実際に社会福祉施設に寄付されたのは、わずかそのうち百万円。民間の団体だけれども会長をやっている細野さんですか、この人は元の大垣の署長で、常務理事をやっている牛丸さんというのは元の岐阜中署長で、暴力団の資金源になってはいかぬという面もあってか知りませんが、警察の方が幹部になっていますね。これは福祉事業団体といっても大分おかしな感じがするのですが、こういう点はどうですか、御調査になりましたか。
  169. 鈴木善晴

    説明員(鈴木善晴君) 確かに先生御指摘のように理事長、理事にも元警察官が就任しているということは事実でございます。こういう協会、これは先ほども申しましたように、昭和三十七年当時、暴力団がパチンコの景品買い取りでこれを有力な資金源にしているということで、各地において暴力追放と社会福祉事業への協力の一環としてこういう組織がつくられたわけでございますが、もちろん警察がこういうものをつくらしたということでは全然ございませんで、警察としてはこういう景品買い取りというような組織があること自体、好ましいことではないと考えております。もちろん、現在の風俗営業等取締法及びこれに基づく各県の条例には直接違反するものてはございませんけれども、パチンコでとった賞品がある機関に持っていくとお金に変わるということは著しく射幸心をそそることになりますので、そういう観点から私どもとしては決して好ましいことではないと考えております。したがいまして、そういう組織があること自体も好ましいことではないと思っておりますが何分にもこれは警察が慫慂してつくらしたものでも何でもございませんで、たまたまそういう自然発生的と申しますか、民間の方が御自分でおつくりになった組織にたまたま元警察官が入っているという事実もあるということではございますけれども、私どもとしてはこういう組織が存在すること自体余り好ましいことではないと思っております。
  170. 神谷信之助

    神谷信之助君 さすがは警察で、非常にうまく言われましたね。たまたまそうなったということなんですが、幾つもあるのですよ、警察関係のある外郭団体。こういう外郭団体と非常に密接なつながりを持っておるし、そこでなれ合いが起こるし、ですから先ほどの宿直料の水増し請求事件でも、実際にその金が、本当に宿直をしたけれども手当をもらえない人たちに回っているのかどうかということもはっきりしないし、というような疑惑がたくさんあります。  たとえば、これも一つあるのですが、これは五月の二十八日です。京都の木津町の町民センターで、相楽郡の交通安全協会の総会が昼間から開かれました。午前九時から午後一時までの間ですね。これに出席をしたのは、郡の交通安全協会の総会ですから、正・副会長、理事、賛助会員のほか、白岩木津署長、幸長同署次長ら、全体で七十人ほど集まって、そして総会議事をやった後、懇親会に移ってオードブルでビールを飲むと。ところが、ここに半分近くの人が自動車で来ているのです。零時半ごろに散会になって、ビールを飲んで赤い顔をした人たちが、真っ昼間ですからわかるわけですね、そのまま車に乗って帰る。飲酒運転をやった。こういう事件が起こっているわけです。  白岩署長は、総会の前日に初めてビールが出るということを聞いて、車に乗って来ないように関係者に厳重に指示をした、席上でもマイカーの人はビールを飲まないよう訴えたので、ほとんどの人が守ってくれたと思っていると言っています。しかし、町民の方から大騒ぎになりまして、署長も酒を出すのは適当でなかったというように言っておりますが、安全協会の会長は、これまでの慣例で、お茶がわりにビールを出しただけだということで余り気にもとめていない状況なんですね。ところが、もう一つ問題は、この町民センターというのは、館内で酒を飲酒することを禁止している町民のセンターなんです、内規でですね。それを警察署長まで参加をしたそういう会合で、白昼公然とビールが出された。しかも飲酒運転をやって帰る。本来ならば、一般の人ならもうすぐ、飲酒運転とわかっているのですからね、現行犯逮捕の問題でしょう。少なくとも自動車からおろさなければいかぬ。そのことはわかっておりながら警察署長も次長も見逃しておりますし、それについて何もしない。だから、これにもなれ合いがあるのです。  こういう状況が、その一端ですが、幾つか出てきておりますので、私はこれは非常に大変なことだというように思うのです。そういう意味で、先ほども言いましたが、これはひとつ大臣にお伺いしたいと思いますが、本当に警察の予算をもっと明朗、それから公開をしてもらいたい、すべきである。わが党が警察予算の資料要求をしても、毎年拒否をして出さないというような状態、そして捜査費が一体何に使われているのか、そのことを追及しても、これは国会の場でもそうですし、都道府県議会の場合でも、それは国から来るので県議会の関係事項ではありませんと言って答弁を拒否をしております。どこへ行ってもとまっている。そしてそういうところから、宿直手当はよく出て六、七割、ひどいところになりますと四割ぐらいしか出ていない。そして水増し請求をやって特別会計、別途会計というようなものをつくる。あるいはいろんな警察署のやる行事に酒や金品の授与を受ける。そして、それで署員の福利厚生あるいは演芸会なんかに使うのだと言っておりますけれども、これは自由に使えるわけでしょう。幹部が自由に処理する。こういうやつが幾つか挙げられるわけですね。この辺ひとつ、国民から信頼されて初めて警察の仕事というのは私はできると思うのですが、これではなかなか国民に本当に信頼をされる警察にならない。この点についてひとつ大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  171. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 警察予算の問題は、これは事務からもお答えをいままでいたしておると思うのでありますが、諸種のいろんな事情がございまして、つまびらかにいたしておらないようでございます。できるなればそれはやった方がいいと思いますが、その事情は十分御勘案を願いたいと思うのでありますが、今回の滋賀県の事件に関連して申し上げますならば、これは各滋賀県の警察において、各署別の基準及び当直人員の定め方とか当面手当予算の配賦の方法というようなことはこれは私再検討をして、そして予算の総枠の範囲で効率的かつ合理的な勤務体制をとるようにこれは工夫しなければならない。あなたの御指摘のようなことで不明朗であるということではいかがかと思いますので、合理的な勤務体制をとり、そしてそれに応じてちゃんと支払いも支出もする、こういうことでなければならないと思います。もしこれで予算が不足すると、実際はどうしても宿直をしたような場合に、それを何か不明朗な形で何かをためておいて、あるいは拠出さして、そしてあれするというようなやり方はどうも私は不明朗だと思うので、やはり事実に合致したようにしてやってはどうかと思います。よそでは、何か私の聞くところでは、三月ずつにちゃんとした勤務状況に基づいて要求を出しまして、その要求に基づいて支出をいたしておる、こういうふうにも聞いておるわけでございます。警察官の給与とかその他の処遇については私としても今後大いに努力をいたさなければならないと思いますが、いずれにしても、実情に合って、しかもそれが何と言いますか、皆から疑問を持たれないような予算の使い方をしなければならない、かように私は考えるのでございまして、いま神谷さんが御指摘になったような問題も含めて十分今後も検討してまいりたいと、かように考えております。
  172. 神谷信之助

    神谷信之助君 大臣、これは警察官の定数は、国会で、国の方で決めるわけですね。そしてそれは都道府県の方で財政を支出しなけりゃならぬ、こうなるわけですね。しかも自治体警察と言いながら、最近はまさに国家警察であって、都道府県知事だとか都道府県の公安委員長がちょっとやそっと言ったぐらいでどうなるものではない。自治体警察の本体がもう非常に崩れてきている状況にある。それは各府県知事あるいは公安委員長さんの話など、京都の湯浅さんなんかの意見を聞きますと、そういう話も出てきますね。ですからそういった問題も含めて、ひとつ私は本当に自治体警察のあり方、自治体警察らしい警察制度を考える必要がある。そして本当にもっと、大臣は予算の中身というのはできるだけ明らかにすべきだと、それは原則だとおっしゃっている。しかし、いろいろな諸般の事情というようなことをおっしゃって、実際には明らかにされていません。ですから、そういったことも含めて、ひとつ明るい開かれた警察をつくるために私は大臣に特に努力をお願いしたいと思います。  時間の関係がありますからその次に移りますが、先般の予算委員会の分科会で、企業ぐるみ選挙について調査をすることをお約束をなさったんですが、私は具体的に提起したのは新日鉄広畑と、それから川崎重工の神戸ですね、それから岡山のクラレ、この三つの事例を挙げてこれらの点についての調査報告を求めておきましたが、ひとつこの機会に報告をしていただきたいと思います。
  173. 田村宣明

    政府委員(田村宣明君) 前回、予算委員会の分科会で御指摘がございました各事項につきましては、直ちに関係の県警察にその内容を連絡をいたしまして、各県警察におきましては鋭意容疑事実の把握に努めたのでございますが、公職選挙法の違反として立件するような容疑事実を把握するには至らなかったという状況でございます。
  174. 神谷信之助

    神谷信之助君 どうもそれはちょっと具体的に内容がわかりませんので、そういう容疑事実を認められなかったとおっしゃったって、私の方はさっぱりどの点がどうなっているのかわからぬのです。それはどうしてくれますか。別途報告を私の方に文書でしてくれますか。
  175. 田村宣明

    政府委員(田村宣明君) 御承知のように、企業ぐるみ選挙というふうに言われますが、公職選挙法の規定自体には、規定の中には、企業ぐるみの選挙運動を規制をするというような規定はございません。御承知のとおりでございます。したがいまして、個々の行為が公職選挙法のそれぞれの規定に違反をするかどうか、こういうことになるわけでございます。ここでいろいろ例を挙げておられます、この例について、これを一つずつ専従の係員を置きまして、それぞれの、項目について相当期間、たとえば広畑製鉄所につきましては約一カ月間にわたっていろいろと調べております。ここで事務所の問題とか、訪問をさせるとか、あるいは無災害達成記念の記念品を持っていくとか、いろいろ挙げておられます。こういうものを一つ一つ調べたわけでございますが、これが選挙法の規定に触れる、違反になって立件するような事実として認定をし、それに対する資料というもの、証拠というものがあるかという観点での調査をやったわけでございますけれども、これはそういうふうな事件として立件するような事実というものを把握することができなかった、こういうことでございます。ただ、この過程で、文書等につきまして違反疑いのあるようなものが二、三ございまして、そういうものは調査に基づきまして警告をして、やめるというような措置はとっておりますけれども、ここに御指摘になっておりますことにつきまして、要件として立件をするというところまで警察の調べでは把握確認をするということはできない、こういう状況でございます。
  176. 神谷信之助

    神谷信之助君 去年の参議院選挙のときには、御承知のように堀米選管委員長が企業ぐるみ選挙について異例の警告といいますか、意思表示もしましたし、それから最高裁の第三小法廷の判決で、威迫とは、不安というか困惑の念を抱かせて、そして選挙の自由を妨害する。だから脅迫ということではないわけですね。だが、相手の人が、ここで言うことを聞かなきゃ将来がうまくいかぬのじゃないかという不安を持つ、それだけでももうそれは選挙の自由の妨害になるんだというのが最高裁の判決でも出ておるわけです。いま少し報告を聞きましたけれども、私はいまの報告では納得することはできません。改めてこれはさらに追及をしたいと思うのです。時間の関係でこれはひとつこの程度にして、次に移ります。  次は、先般五月二十五日でしたか、岡山大学の構内で大沢君という学生が殺されるという事件が起こりました。この殺人事件概要について報告を求めたいと思います。
  177. 三井脩

    政府委員三井脩君) 五月二十五日、日曜日午後八時十五分ごろ、岡山市にあります岡山大学学生寮の寮生ら約十人が、大学教養部の前の道路上におきまして、マイクロバスを先頭にしたマル青同、つまりマルクス主義青年同盟でありますが、そのメンバー二十数人との衝突事案がありました。マル青同はマイクロバスを学生の中に突っ込みまして、さらに鉄パイプなどで襲うということで、寮生側十五人が加寮三日から一カ月の傷害を受けました。  当日発生いたしました事案はこういうことでありましたが、その後二十七日になって、大学当局から警察に対しまして、寮生の大沢真、十八歳がこの二十五日の夜以来行方不明になっているという届け出がありまして、警察において捜索をいたしましたところ、二十九日になりまして、大学から約五キロ離れた採石場の山林の中に死体で遺棄されておるのを発見したわけであります。死因は、解剖いたした結果、頭蓋骨複雑骨折によるということが判明いたしております。事案概要は以上でございます。
  178. 神谷信之助

    神谷信之助君 ひとつこの事件で、昨日、岡山県警の警備部長にお会いしたかったんですが、お会いできなかったものですから、一応問題点についての質問を出して、この委員会までに報告をするように要請をしたんですが、それはできていますか。
  179. 三井脩

    政府委員三井脩君) ただいま事案捜査中でございますので、その資料に提出については御容赦願いたい、こういうことで本日お答えを申し上げる次第でございます。
  180. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、問題を追求することができぬじゃないですかね。たとえば、マル青同というのが岡山大学に姿をあらわしたのが、大体四月、八日という人もありますが、大体多くの人は十六日と言っています。マイクロバスで岡大に来たと。四月の中旬に岡山にあらわれて、城下マンションというところにアジトをつくりまして、これについては岡山の東署、西署はすぐつかんで、そして尾行等を行って彼らの動きをつかんでいたという話があるんですが、その事実関係は一体どうなんですか。
  181. 三井脩

    政府委員三井脩君) 四月の中旬に岡山でマル青同の動きがあるということを知り、これについて警戒をいたしておりました。ただ、知るという程度の中身でございますけれども、逐一知っておったというわけではありませんが、警戒すべき対象ということで構えておったということでございます。
  182. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃ、二十五日の事件当日の行為そのものについてお伺いしたいんですが、二十五日午後四時過ぎに、二台のマイクロバスに分乗したマル青同と称する連中が、岡山大学の構内にある北津寮に侵入をして学生に危害を加えた。三週間に及ぶ重傷を加えるというような危害を加えて、そして一たん午後五時ごろ引き揚げた。こういう事件が二十五日日曜日に起こりましたが、このことについては県警の方には連絡が、報告が入っていたのか、入っていなかったのか、いかがですか。
  183. 三井脩

    政府委員三井脩君) 当日、マイクロバス二台と乗用車などで二十五、六人のマル青同と思われる者が北津寮に行き、寮に入ったということは、岡山大学の、当日日曜日でありますが、日宿の職員から西署の当直の警察官が通報を受けております。
  184. 神谷信之助

    神谷信之助君 それで警察の方はどうしたんですか。
  185. 三井脩

    政府委員三井脩君) 警察の方は、その内容といいますか、視察員を出して状況を見る努力をいたしました。
  186. 神谷信之助

    神谷信之助君 大学の方からは警備の要請なりあるいは出動の要請はあったのですか、なかったのですか。
  187. 三井脩

    政府委員三井脩君) 大学からは出動要請はございません。ございませんでした。
  188. 神谷信之助

    神谷信之助君 警備要請は。
  189. 三井脩

    政府委員三井脩君) 警備要請もございません。
  190. 神谷信之助

    神谷信之助君 きのう岡山大学の谷口学長にお会いをしたら、十七時三十分、大学は警察に連絡をとって警備要請を行った、こういうように学長は言っているんですが、全くなかったんですか。
  191. 三井脩

    政府委員三井脩君) 大学からは警備要請はありませんで、午後六時三十分ごろ、大学学生部の次長から機動隊の待機をお願いするということはございました。これが警備要請であるかどうかということはまた言葉の問題かと思いますけれども、要するに警察来てくださいというような意味のことは全くなかった。単に警察待機しておってくださいというだけのことはございました。
  192. 神谷信之助

    神谷信之助君 待機の要請があれば、どういうことなんですか、西署にじっと待っておるんですか、それとも大学の近くまで部隊を出すわけですか。どういう——警官を配置するわけですか。
  193. 三井脩

    政府委員三井脩君) 待機要請自身は、ただ待っておれ、待っていてくれというような意味でありますから、大学がそう言っても、別にわれわれはそれに拘束されることはないわけでありますけれども、待機のもとになる事態というものをわれわれとしては考え、警戒のために視察員を出すという意味での警戒というものはやっておりました。
  194. 神谷信之助

    神谷信之助君 これも大分大学側と違うんですね。新聞によりますと、五時半と六時半というのが二つあります、警察へ連絡したといいますか、通報した。で、大学側は最終的に昨日、それは五時半に行いましたというように、統一見解ですか、統一発表を学長がしています。そうして警備要請というか待機要請というか、いずれにしても、それをやったら警察の方が岡山大の西門のところまではすぐ来てもらえるということを期待をしておったと言っています。ところが、実際にはなかなか来てもらえなかったということが一つ問題だというように思います。  それから、事件が起こりまして、八時十分ごろ、陸上競技場付近に集結した学生の集団にマイクロバスが突っ込んで、そうして負傷者が出て、一、二回あの周辺をマイクロバスでぐるぐる構内を回って、そうして八時半ごろに二台のマイクロバスは引き揚げていったわけですが、この一連の暴力事件によって、最後には死体になって出てきた大沢君を初め十数名の学生が危害をこうむったわけですが、この時点で暴力事件が起こったんですが、警察の方は現場検証はなさったんですか、すぐ。あるいは現場検証をなさったのは、いつになったんですか。
  195. 三井脩

    政府委員三井脩君) 現場検証は大学側で、検証はもう御存じのように国立大学でございますから大学側の立ち会いがなければ実施できないわけでございます。警察といたしましては、当日直ちに現場検証をしたいと、こういうことを学校に申し入れましたけれども、大学当局におきましては、当日は困ると、こういう返事で、つまりその意味は、立ち会いも出さぬという意味も含まれておるかと思いますけれども、立ち会わなければ執行は不可能でございますけれども、当日断られた。じゃ翌日朝はどうかと言うと、朝は学生がおって困る、したがって、授業がなくなった夕方にしてくれと、こういう大学側の返事でございまして、当日の夕刻実施いたしておるという状況でございます。
  196. 神谷信之助

    神谷信之助君 現場検証の状況はどうだったんですか。そういうような暴力事件、八時十分から八時半ごろの間に暴力事件が起こった。その現場は、翌日の夕方でしょう、警察が現場検証したのは。ちゃんと現場は保存されておったんですか。どうなっておったんですか。
  197. 三井脩

    政府委員三井脩君) 現場におきまして検証を実施いたしました結果、竹ざおとか角材、パイプなど十六点を押収をする、その他タオル一本などを押収をいたしました。当日警察部隊を出してその警戒も行いましたが、学生が約八十人で学内デモ、抗議の意味でデモを実施するという状況でありました。ただいまお話しの、どういう状態で保存されておったかという詳細については存じませんけれども、検証並びに押収ということはいたしておるということでございます。
  198. 神谷信之助

    神谷信之助君 現場へ行きましたけれども、構内の寮と学校との間の通路上ですから、別になわが張ってあるわけでなしに、その後も明くる日まる一日、学生が通行しているわけですね。だからどうにも私は解せないんですが、なるほど大学側の立ち会いを必要とするけれども警察の側から言えば、事件が発生すれば直ちに現場検証して、初動捜査をやらないことには大変なことになるわけでしょう、犯人をつかまえるにしても。ところが、それを大学がそう言うからということで、この事件に限りじゃないかと思うんですが、現場にも顔を出さない、見ようともしない。まあ見ようとしたけれども大学がうんと言わなかったといったことにしても、それは警察の方の立場というのをはっきりさせれば、どうしても困るということにならぬわけのものじゃないかと思うんですが、どうしてもそれだけ現場検証がおくれたことになるんですか。
  199. 三井脩

    政府委員三井脩君) 普通はいろいろの犯罪がありますと、私人の家の中で起こっても、直ちに機動捜査隊を初め捜査員がその場に入る、これは検証令状なしに、強制的でなく任意に関係者の同意を得て入る、現場を見るということをやるのが通常でありますけれども、大学の中につきましては、御存じのようなことでございまして、四十三年の学園紛争が大変燃え盛ったころ、ああいうときも同様でありますが、大学側、大学当局者の立ち会いがないと、そのために、検証あるいは捜索——いずれも立ち会いをしますけども、これをしばしば延ばしたり、あるいは時によって全くできなかったりというようなことがあるわけでありまして、大学側の考慮は、警察側がそういう捜査活動をすることによって学内におる学生の刺激になって、これがまた次の事案を起こすことになるおそれがある、こういうのがいつも立ち会い拒否ないしは条件をつけてくるという場合の言い方ということで、捜査の立場から申しますと、大変その点は痛手、捜査そのものの能率的、効率的な遂行という観点から言いますと大きなハンディキャップになっておるということをいままで耐えしのんでやってきておるというのが、大学との関係においてはただいまの現状でございます。  こういう点については平素から大学側にも十分理解いただき、捜索について適切な時期にタイムリーにこれを行うということをやるようにいろいろ努力をいたしておりますから、現実に学園紛争とか、こういうような両派の集団的による内ゲバといったような事態のないところ、そういうところはまた別の意味でそういう検証や捜索の必要も少ないということになろうかと思いますけれども、だんだんとよくなっておるという状況ではありますけれども、時に本件のような事例もなお後を絶たないというのが現在の状況でございます。
  200. 神谷信之助

    神谷信之助君 マイクロバスが今度は八時半ごろに大学から出て行っていますね、マイクロバス二台と白い乗用車一台が。これは結局、その時期には大体近くまで警官は来ておったように思うんですがね。これはつかまえることができなかったんですか。そして犯人は逮捕できたのかどうか、その辺の状況をちょっと聴かしてもらいたい。
  201. 三井脩

    政府委員三井脩君) マイクロバスが出たときは、警察官警察部隊は別の機動隊の待機所の方に待機しておりましたから、そこには部隊としてはおりませんでしたけれども、私服の警察官が視察その他の活動をいたしておりましたので、出ておることは承知いたしております。ただ、行方不明になったというようなことは、その当時はわれわれは聴いておりませんので、そのマイクロバスがそれに乗せて連れて行ったとかというような状況では当時なかったという認識だったものですから、これを職務質問をしたりというようなことはしておりません。  ただし、これはマル青同のメンバーの乗っておる車ということでありますので、これは一体どこに行く車なのかということで、車の行き先は突きとめました。その結果、その行った先はわかったわけでありますが、その翌日その車も逃げていなくなったわけですけれども、この事件といいますか、翌日の手配によりまして、検問でこの車を発見いたしました。そのときに六名乗っておったわけでありますが、これが内ゲバに使われる凶器にもなるようなものを持っておると——まあそれ自身は凶器とは言えませんが。したがいまして、この六人を軽犯罪法の現行犯ということで逮捕いたしました。これは、その前の日にその車の行き先を突きとめておった、またこれはマル青同の車であるということを番号その他によって確認しておったということの効果だと思いますが、したがいまして、現在は、この六名、軽犯罪法でありますけれども、その事態の背景というものも考慮されたことだと思いますけれども、勾留がついております。したがって、その勾留の中で六名を取り調べておるという中で、本件殺人、死体遺棄事件の手がかりも得られることを期待しておるという状況でありますが、何分大変黙秘でございまして、六名のうち身元が——本人はもちろんしゃべりませんけれども、われわれの捜査によって身元判明したのが六名のうちの半分の三名にとどまっておる、こういう状況で、今後の取り調べ、捜査を大いに強力に遂行するということが望まれる現在の段階でございます。
  202. 神谷信之助

    神谷信之助君 殺された大沢君は、人も普通は行かないような採石場の近くで発見されました。四日間まる裸で埋められて、そして木の葉や草、土がかけられ、その上には石が並べられてあったというむごい状態で死体となって発見された。きわめて凶悪な犯罪が行われたわけであります。  そこで、文部省の方、こういう大学における暴力事件、殺人事件というのが後を絶たないんですが、まず岡山大学のこの事件について、文部省の方ではどういう報告を受け取っておられるか、お聞かせ願いたいと思います。
  203. 十文字孝夫

    説明員十文字孝夫君) 私ども大学の方から報告を受けておりますのは、先ほど警備局長の方からお話がありましたように、五月二十五日、日曜日の四時過ぎに二台のマイクロバスに分乗した、いわゆるマル青同と称する集団が岡山大学の北津寮に侵入いたしました。そのときに、寮の自治会の委員長外一名に重軽傷を負わせて逃亡をしたということでございます。さらに、その日の六時十五分ごろ、同じく二台のマイクロバスに分乗いたしましたマル青同の集団が約二十人ばかり、北津寮に侵入したということでございます。その後、八時ごろになりまして、約七十人ぐらいの寮生が、付近にあります陸上競技場のところに集まりまして、寮の中にいるマル青同の集団に対して反撃を加えるというような気配がございました。それに対しましては、大学の方といたしましても、寮の中にいるグループと寮生との間の衝突を懸念いたしまして、寮生に対しまして良識のある行動をとるように、その場から去るようにというような説得を続けていたわけでございまして、ちょうどそのときに突然、八時十分ごろでございますが、その寮生の七十人ばかりの集団の中にマル青同のマイクロバス一台が突っ込みまして、双方の間で衝突になり、乱闘になったという状況であったわけでございます。そのときに重軽傷者十四人が出るというようなことでございまして、恐らくこれは推測でございますけれども、そのときに大沢真君がマイクロバスにひかれたということではなかろうか、そのように報告を受けております。
  204. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、こういう暴力問題について、文部省はどういうように大学に対して指示、指導しているのですか。
  205. 十文字孝夫

    説明員十文字孝夫君) 申すまでもなく、本来本当に自由で、そして秩序ある環境の中で大学の教育研究活動というものは整然と進められなければならないわけでございます。そういう大学の構内におきまして今回のような殺人事件が起こるというようなことにつきましては、私どもまことに遺憾なことだというふうに思っております。  かねがね私どもといたしましては、学園の中におきます暴力というものの排除につきましては、機会あるごとに、たとえば学長会議等でございますけれども、そういうときに、大臣を初めとしまして、私ども関係者の方から大学当局に対しまして、学内秩序の維持の責任が大変重大であるということを指摘いたしまして、ぜひ大学の全教職員を挙げてその責任を全うしていただきたいということで努力を促してきているところでございます。特に、刑事上の事件につきましては、警察当局との緊密な連絡をとりまして、学内秩序を維持していくために適切な処置をとってほしいということを、繰り返し繰り返し大学当局に対して指導してきておるところでございます。  今回の岡山大学におきましても、このたびの事件につきましては、学長初め関係者一同責任を痛感いたしておりまして、再びこのような事件が繰り返されることのないように、全学をあげて暴力排除のための方策を真剣に検討しておるところでございます。私どももさらに大学に対する指導の徹底をはかりまして、大学当局の一層の努力をお願いしてまいりたい、かように考えております。
  206. 神谷信之助

    神谷信之助君 では、この岡山大学はこの殺人事件が起こるまでに、昨年の暮れから考えてみましても、たくさんの暴力事件が起こっておるわけですよ。十二月の十八日、これは岡山大学の北津寮内におるところの赤旗の読者に赤旗を配りに行った女子の配達員、これが二時間半にわたって監禁をされる。赤旗は反革命通信だから配らせない、もしおまえが共産党員なら糾弾するから女子寮に帰さないというようなことを二時間半にわたって脅迫をするというような事件が起こった。その翌日十九日、二十日には、ヘルメットをかぶった竹やり姿で学内をのし歩き出して、そして十九、二十日、二回にわたり、法経の学生部ボックスに襲撃をする。そして七人が一人を追いかけ回して竹やりでめった打ちにする。それから二十日には、学生会館の西で、完全武装の七人が一人の学生をつかまえて暴行をふるった。それを見ていたほかの学生が抗議したら、それに対しても暴行を行う。これはいわゆる北津寮委員会、反戦共闘、解同、解放研、こういうものを名のる連中がこのごろはやっているわけですね。そして今年の二月二十五日、それから二十七日、これは「橋のない川」の映画の上映に反対をして、反戦共闘の連中が同じように暴行、暴力をやる。こういう状況が昨年の暮れからことしにかけて起こっている。すなわち、そのころの北津寮を暴力的に支配していたのは反戦共闘、解放研の連中であったわけです。  ところが四月の中旬ごろに、先ほど言いましたマイクロバスでマル青同の連中がやってきた。そしてこれが教育学部の喫茶室の横の、彼らが勝手に使った解放研の部屋、これも勝手に不法に占拠しちゃったのですが、その部屋を占拠して、そこを拠点に授業時間中に授業を妨害して演説をするとか、あるいは寮の中に入って彼らのオルグというやつをやる、あるいはスピーカーで演説をする、こういう行為が行われた。四月二十三日の朝九時ごろですか、これは岡大の西門でビラまきをしておった四人が襲撃をされた。二十四日の昼には、医学部の学生会の副委員長の広瀬君というのが学生会館で取り巻かれて暴力を受ける、そういう状況が起こりました。  これら暴力行為が起こっているのに対して、昨日谷口学長に、一体そういう暴力行為が学内で起こっているのをあなた、学校当局は知っているのかと聞いたら、学生部長は、学生の方から連絡がないから知りませんと、こう言うのですね。学生の方から言ってくれないからわかりませんというのです。そういう暴力行為が行われたことについて何らの手を打っていません。  それから、学校の建物である、いわゆる国有財産である部屋を勝手に彼らが占拠して使っている。これは知っているかと言ったら、それは知っておりますと。それに対してどういう措置をしたかと言ったら、別に何も措置はしていない。だから自由に暴力的に占拠して、力の強い者はそのまま、ほしいままにできるという、そういう状況が野放しにされているわけです。ですから、これでは学園がまさに暴力によって支配をされるということで、法経の学生大会が開かれて、そうして大学あてに暴力一掃のための公開質問状を出した。これについて学長はどうだと言って聞いたら、それはそういうものが出たということは聞いている。聞いていると言うのです。聞いているというのはどういうことだと言うと、それは当該の学部長に任せてある、だから当該の学部長がしかるべく処理をしているはずだと、こういうことです。  文部省のいまのお話ですと、学長を呼んで、暴力をなくすために、そうして学園の平和と真理追求の学園をつくるために努力をするように盛んにおっしゃっているのだけれども、そういうふうに毎日のように起こる暴力に対して適切な手を打とうとしない。しかも学生の中から暴力をなくそうという運動が起こっても、それに対して見向きもしない、こういう状態が四月の段階に起こった。ですから、ますますこのマル青同の連中は大きな顔をして学園の中を暴れ回る。そうして一たん、四月二十八日ごろになりますとマル青同は姿を消しますが、その後五月の八日、十六日、あらわれてきております。そうして、今度はさらに一たんまた消えて、二十一日から以後姿をあらわして、次から次へと、これも次から次へと暴力行為をやっております。教官が、教授が授業をやっている最中に覆面をしてマル青同の連中が入ってきたものですから、その覆面を取ろうとしたら逆に殴られるという事件が起こった、授業時間中にですね。大学の方は学長じゃなしに、学長がおらないので学長代行の大饗先生というのが、そういうことが授業時間中に行われたら、つかまえて覆面を取って、氏名を確認せよという指示を出した。ですから、憲法の上野先生というのがそれを自分でやったら、逆に殴られちゃった。そういう状況が二十二日、二十三日に起こっております。そして二十五日にとうとう殺人事件にまでエスカレートしているわけです。  こうやって見てみますと、大学の方は一体暴力に対してどんな手を打ったか。したいほうだいやらしているじゃないか。しかも、学生の中から、暴力をなくそう、こう言って学長に要請を出しても、それについて見向きもしない。学長以下全教官、それから大学の関係者、それから学生諸君、これらが暴力をなくすために団結をして、そういう暴力分子を孤立さして初めて暴力なくすことができるわけですね。実際暴力を働いているのは、岡山大学の中のマル青同に入っているのは数人だと言っております、学長の話では。せいぜい数人ぐらいです。だから、全学の学生なり学長以下教官、事務職員まで含めて、そういうしたいほうだいの暴力を許さないということで団結するならば、彼らを追い出すこともできるわけです。学生の中からそういう声が上がっても取り上げようとしないし、そして構内で国有財産をしたいほうだい私有し占有しても、それに対して一片の通告もしない、警告もしない。  そして最後どうなったかといいますと、学長はきのうこう言っているんですよ。五時半ごろに警察に、先ほど言いました要請をした。そうしたら、一たん出たわけです。一たん出たのも、彼らは北津寮の中に四時過ぎに行って、そしてそこにおったプロ青同の、セクトが違う、ブンドですか、寮の委員長です、それをつかまえて三週間のけがをさせた。ちょうどたまたま体育関係の者が、けがをしたものですから一一〇番で救急者を呼んだものですから、あわてて一たん寮から出たんですけれども、そうしてもう一遍六時ごろから侵入した。学長は退去命令を出そうとそのとき考えた。ところが、中に重傷になった学生もおるらしい、あるいは一部の学生がとりこになっているらしい、そこで警察に出動を求めたら岡大の学生も一緒くたになって逮捕されてしまう、それはぐあい悪いじゃないかと思ってちゅうちょしている間にこの殺人事件が起こってしまった。殺人事件が起こった現場には学校側の責任者はだれもいません。その直前に、寮生が約七十名陸上競技場付近に集結をしておるのに対して、学部長以下六名が説得に行ったわけですけれども、これも逆にヤジられて説得し切れずに帰ってしまって、そしてだれも学校の責任者がおらないところで、学生ら勝手にけんかをするならしなさいと言わぬばかりの態度ですね。そういうことでさっさと学長室に引き揚げて、そして頭を抱えて考える。その間にマイクロバスで頭をひかれて大沢君というのは殺されたわけです。やっと大学に入って五十日くらいでしょう。ですから、学校にやっとなれてきて生き生きとした学生生活をやろうとした途端に殺されてしまう。しかも、先ほど言いましたように、むごいような、常人にはできないようなひどい死体の放置をやっています。  私はこの点で、大学当局が本当に暴力をなくすために努力をする意思を持っているのかどうかということを疑うんですよ。同時に、警察の方も私は大変問題だと思います。すでに法政大学初め全国の各地の大学でこの種の暴力事件、殺人事件は後を絶たぬように出ているんです。ところが、なかなかこれらについて解決をしない。犯人はつかまらない。しかもこれは大学にはそう簡単には入れないといっても、暴力事件が起こっているのに行かない。どうにもならない。学長に、警察にそういう暴力事件が起こりそうだったらもっと連絡をしたらどうだと言ったら、学長は、どうも暴力事件が起こりそうだから頼みますと言って、来てみたら暴力が起こらなかったらもう警察の方が怒らはるから、だからうっかりは言えません。それじゃ殺されてしまうまで、けんかが起こるまで警察を呼ぶことができないということになっちゃうでしょう。そういう関係が大学当局とそれから警察との間にもある、こういうように思うんです。それから岡大の場合は、構内に教官なり事務職員の人が住んでいます。その人たちの意見を聞くと、もしどろぼうが入って一一〇番をしても、われわれは警察に守ってもらえないだろう、大学にはわれわれうっかり入れませんと言われてしまいだ、国民だけれども、生命、財産を守ってもらえない状態です、こういうことも言っています。  私はこれは警察の方も、本当に国民の生命、財産を守るというそういう立場にあるならば、必要な体制をとるし、とらなきゃなりませんし、しかも、彼ら出ていったマイクロバスですね。事件が、けんかが起こったのを知らなかったとおっしゃるのですが、知ってるところは知ってるんです。ただ、尾行に回っている、それをつけている人が知らなかったということで、明くる日行ってみたらもぬけのからになっていたということですね。そういう状況を見ましても、なかなかこれは重大な問題ではないか。あと、そのほかのまだ犯人が逮捕されていないという状況で、きわめてこれは大変なことだと。このように考えてみますと、今日の学生の暴力行為が後を絶たないというのは、警察の方もそういう点での手抜かりを次から次にしている。われわれには、泳がせの政策、大学当局はまさにそれに乗って、本当に毅然として学園の自由を守るという立場に立っていない、こういうところが今日いまなお学生の暴力というのが後を絶たないという根本の原因ではないかと思うのですが、この辺、ひとつ文部省の方も警察庁の方もはっきりしてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  207. 三井脩

    政府委員三井脩君) 暴力の排除につきましてはわれわれは平素から苦心をしておるところでありまして、何とかいまの大学との関係におきましても、そういう立ち入り問題その他があるわけですけれども、御協力、御理解を得て適切に出動もできる、また事後の検証、捜索等につきましても、捜査上最も有効なときにやるというような状態に持っていく。暴力についてはこれを一掃、排除するという強い方針で臨んでおるところでありますけれども、一層この点について努力をしてまいりたいと考えます。
  208. 十文字孝夫

    説明員十文字孝夫君) 先ほども申し上げましたように、大学当局におきましては、このたびの事件につきましての責任を痛感しておりまして、この五月二十九日にも学長名で、「さらに学園の平穏と秩序維特に万全を期する」というような決意を告示として表明しておりますし……
  209. 神谷信之助

    神谷信之助君 いやいや具体的には何ですかと言ったら、何もないですよ。
  210. 十文字孝夫

    説明員十文字孝夫君) 私どももそういう具体的な努力というものをさらに積み重ねて大学側に求めていかなければいけないと思いますので、今後、現在せっかく真剣に検討中でございますので、それを十分に一層の努力を促してまいりたいと思っております。
  211. 神谷信之助

    神谷信之助君 最後にしますが、確かにそういう掲示を出しておられますよね、学長は。具体的に万全の措置を、具体的に何をやるのですかと言ったら、それがむずかしいのです、具体的にはどうしていいかわからぬ、これから研究します。ところが、大沢君が殺されてから集会が、千人の集会、千三百人の集会と二回、二十九、三十日ですか、開催されました。これは岡大始まって以来の多数の学生が集まった集会です。そこで多くの学生が、われわれが、いままで暴力が目の前で行われておっても、小さい暴力、大したことはないということで無関心であったことがこういう人殺しを生むようなことになった、暴力を一掃するためにわれわれ学生もがんばらにゃいかぬという、そういう決意表明がどんどんなされています。私は、だから率直に学長があるいは教官が、そういう暴力を憎む学生諸君と話をし、団結をして、そしてそういう暴力を許さない学園をつくるために努力をせにゃいかぬと思うのですけれども、そういう人たちと、学生諸君と話をしようともしないところに問題があるのです。この辺、ひとつ文部省の方でもさらに考えてもらいたいというように思います。  以上で質問を終わります。
  212. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 本日の調査に対する質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時三十九分散会