-
-
-
○
藤田進君 私のときは
お互いに座ったままで、胸襟を開いて。立ったり座ったり十五分ぐらいはどうもロスがあるようなんで。いいですな。
まず最初に
財政運営のことですが、この前、五月二十九日に当
委員会で
大蔵大臣は、
予算に定められた
支出は忠実にこれを
実行いたしますということでしたね。これはきょうも変わりありませんか。
-
-
-
-
-
○
国務大臣(
大平正芳君) 常に
歳出需要に対しまして
節減を図ってまいる、国費を大事に、大切にするということは
財政運営の
基本でございます。
財政が相対的に楽な
時代であろうと、
財政が非常に
運営が厳しくなってまいりました
時代であろうと、これはいわば
公理というものでございまして、公金でございますから、これを常にあらゆる
費目にわたって洗い直して適正な
執行をやるということは、常に心がけておかなければならぬことでございます。忠実な
執行をするということは、そういう厳正な
執行をやるということと矛盾するものではないと
考えております。したがって、今
年度の、五十
年度の
予算につきましても、これから各
省庁と御
相談をいたしまして、行政的な
経費につきましてはできるだけ
節減を
お願いするように話し合いを進めてみたいと
考えております。これは例年やっていることでございますし、ことしもそういうことをやってまいるのは当然の務めだと
考えております。
-
○
藤田進君 たとえば「
補助金等の
既定経費について、従来の
制度慣行にとらわれず根本的な
見直しを行います」と、こういうわけで、そうすると、
予算の総額あるいはそれぞれの
費目の
金額は忠実に
実行するが、その
内容を、たとえば
補助金などは
既定経費に相当な制約を加えるように言われておるわけですけれども、
金額は変えないけれども、まあ不要とは言わないにしても不急なものとか、そういうものを整理、合理化するという
趣旨なんですか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) たとえば四十九
年度におきましても、
予算編成のときにすでに八%の
行政経費の
節減を各
省庁に
お願いして
予算を組んだという
経緯がございまするし、
補正予算を編成する際に、その財源の一部に充てるためにさらに五%
節減を
お願いするというようなことをやってきたわけでございます。したがって、
藤田さんの言われるように、
金額に影響のない
見直しということはないわけでございまして、若干ながら
金額の更正を要することになると思うんでございますが、これは先ほど申しましたように、常に
財政当局といたしましては、
予算を
執行される各
省庁と協力いたしまして
財政の
運営について厳正な
執行を図るという
意味で毎年やっていることでございますので、これはことし取りやめるというわけにはまいらないと私は
考えておるわけでございます。
さらにもう
一つ先ほど申し忘れたんでございますけれども、御
案内のように、
財政硬直化という問題が去年来問題になってまいりました。もっとも去年来というよりは、正確にはずっと以前から
日本財政の
硬直化が
政府の内外で論議されておりましたことは御
案内のとおりでございます。で、
硬直化を打開いたしまして、
財政の
資源配分機能というものを十分生かしてまいるようにすることは当然またこれ
財政運営の
基本に係る大事なことだと思うんであります。ところが、年々歳々やはり当然
増経費がふえてまいる、その絶対額もふえるし、そのシェアも拡大するというようなことは
財政の
機能を損ねることになりかねないので、
内閣といたしましても、これはやはり
財政の
硬直性を打開することを
考えにゃならないということで、
財政制度審議会の方にそういう方向でひとつ
硬直性打開の
方途いかんという諮問をいたしまして御
検討いただいておるわけでございますし、
自治省は
自治省の方で、
地方財政調査会の方へまたそういった御
審議を
お願いいたしておる
経緯がございます。しかしこれは、短時日の間にこういったことについての御答申をいただくというわけにはまいらぬと思いますけれども、これから五十
年度中にも直ちに
実行しなければならぬ、またできるというような中間の御意見でも出てまいりますならば、それはまたくみ上げて
実行してまいるということも、いわば当然のわれわれの
責任と
考えておるわけでございまして、ことしの
財政の
歳出の忠実なる
運営ということにつきましては、そういういろいろの約束というものを当然踏まえた上で申し上げておるということを御
理解いただきたいと思います。
-
○
藤田進君
予算に定められた
支出は、これを忠実に
実行いたしますということなんですから、
歳出関係を見るときに
社会保障関係費以下ずっと細かく出ておりますね、これはそのまま
実行するということなんでしょう。そこのところがわからないんですよ。いま聞けば去年も抑えた、去年は次
年度へ繰り越したりやっているんですよ。しかし、ことしは忠実に
実行するということなんだから、
硬直化問題と一応離れて。われわれ
考えるのに
歳入欠陥がかなり大きい、大幅だと言われているし、あとで副
総理にもお伺いしますが、そういったような面から
危機宣言のようなものが出ていて、かなり
成立した
予算よりも
内容が違ったものが当面
歳出実行されるというふうに思われたわけですが、二十九日には忠実にこの
予算は
実行すると言われるんだから、
歳出面に関する限りはこれはこの
予算にあるように
歳出は
実行されるんだ、こう受け取っていたわけです。そこのところが、
節減するなり何なり去年もやったことだということと、どうも矛盾があるように思うんです。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) それは忠実に
実行するということを文字
どおりお聞き取りいただきますならば、あなたのおっしゃるとおりだと思います。ただ私が申し上げた
意味は、本来この
歳入欠陥が生じかねないというような客観的な
情勢でございますならば、
予算は
成立いたしましても、行
政府といたしましては、せっかく
成立させていただきましたけれども、その
範囲内において
実行予算を組んで各
省庁に
お願いするというのがあるいはやるべき
措置であるかもしれないけれども、いまのような
景気が
停滞いたしました
状況におきまして、そういうことをやることは私は適切でないと判断いたしまして、せっかく
成立させていただいた
予算は忠実に
実行したい。つまり、言いかえれば
実行予算を
お願いするというようなことはしないという決意を表明いたしたわけでございます。そのことは当然のこととして従来やっておりまするような、つまり
経費を常に
見直しながら、むだはやめていこうというような
措置を排除するものではないということは、当然の
公理として踏まえてやっておるのでございます。その点は、
原則としてとかという
ことばがあれば、あるいは御
理解が容易にいけたのではないかと思いますけれども、多少
ことばが足らなかったことは残念に思いますけれども、
趣旨はそういう
趣旨でありましたことを御
理解いただきたいと思います。
-
-
-
-
○
国務大臣(
福田赳夫君)
歳入欠陥が五十
年度で予想される、こういう異例の
事態であります。これに対しまして
考えられる
一つの
方法は、
歳出面をこの際極力抑えていく。その手段として
実行予算を編成する。つまり
予算は
成立いたしましたけれども、その
成立した
予算の
範囲内においてなるべく多くの
経費の縮減を図るという意図を持ちまして、計画的に
予算の
執行のあり方を変更、縮減する、こういうことも
考えられるわけなんです。また多くの場合におきまして、そういうことをした経験があるわけであります。しかし、いま
景気情勢なんかを
考えますと、そういう
方法は妥当でないのではないか。まあ一番大きな国の費用、これは
地方交付税交付金でございます。これを変える、そういうこと、これはどうも
地方財政の
状況を見たってなかなか困難だ。次いで
地方財政に対する各種の
補助金があります。これだって、
地方財政の
状況から見てこれを削減することもなかなかむずかしい。それじゃ、その次の大きな
支出項目は何だというと、
社会保障費、これもいまの
国民生活の
状況から見まして、これを縮減することもむずかしい。そういうふうに、縮減的な修正を加えることのむずかしい
費目が、今日の
経済情勢から見まして、あるいは
社会情勢から見まして、多々あるわけなんです。ですから、その仕組みを根本的に変えるということはしない。
つまり実行予算編成というように、かつてしばしばとられたような
歳入の減少、見積もりより減るであろうというおそれのある
事態に対する対処の仕方、その仕方はとりません。しかし、
財政運営の
基本的な
考え方として、
予算を効率的に使用しなければならぬ、これはもとよりのことでありますから、その
財政運営の
基本原則につきましては、これは堅持してまいる、こういう
考え方を
大蔵大臣は申し上げておる。私は、
閣議で
大蔵大臣から御
説明があった、そのとき、私の
理解はさようなものでございます。
-
○
藤田進君
大蔵大臣の言ったことに対する
理解はそうでしょうが、副
総理として、具体的にしからば、この
補助金にも手をつけるし——いま
硬直化しているものは手の
つけようがないでしょう、いま例示されたような……。それ以外については、まず
歳入面では新しい
税収確保を図るとか、あるいは
公共料金を引き上げるとか、いろいろ
大蔵大臣は言われているわけです。しかし、
物価なり
景気対策等、総合的に
経済運営をする場合に、その担当でもある副
総理としては、五十
年度予算、いまは
歳出を論じておりますが、これをどのように
手直しなり
見直しなりするのか、これを
国民は聞きたいんです。
補助金についても
慣行にとらわれないで、根本的に
見直しを行うというのだが、いまだに決まっていないものが多いです。宙ぶらりんになっていますよね。一方、
景気対策との関連から見てもこれは問題があります。ですから、
歳出についてはもっと具体的に、
弾力性のあるものについて恐らく手をつけられるんでしょうが、これを今後どういうふうに
歳出の
実行を図っていくのか、これを聞きたいわけです。
-
-
○
藤田進君 あなた答えるんなら、この間、私が言っていた、いま作業しているという各
省庁との協議、あの
内容、経過を一緒に答えてもらいます。
-
-
○
藤田進君 それでも、これは文書にされているものを見ると「五十
年度の
財政執行」という中に、3以下、大きくは3、4としてこれは出ているんですよ。あなたの方にもそうなっているはずです。五十
年度ではないと、将来の問題だというふうには受け取れないですよ。これが
一つ。
それから、
補助金等については、
事務費等、それは大いに
節減できるものはした方がいいでしょう。そうじゃなくて、
補助金等の
既定経費についてですよ。だから、
補助金をかなり削減するという
方針でいま各
省庁とやっておるじゃございませんか。それがいま言うように、
事務費程度であって——確認しますが、
予算に盛られている
金額及びその
内容については
補助対象を含めて、これはもう従来
どおりということでなくて、今回はどうするのかということを、
具体案を示してもらいたい。
大蔵省はある指標を示していま各
省庁とやっておるわけですから、それを聞きたい。
-
○
政府委員(
辻敬一君)
節約のやり方につきましてはいろいろあるわけでございまして、たとえば四十八
年度は、
補正予算におきまして
原則八%、それから一部低率を適用いたしたもの四%というような
節約をいたしております。また四十九
年度におきましては、当初
予算におきまして
原則八%の
節約ということで約二百億円を
節約いたしております。さらに
補正予算におきまして
原則五%の
節約、これが約百二十億円でございますが、その百二十億円の中に、先ほど申しました
補助金などの事務的な
経費、これが三十五億円ほど含まれておるわけでございます。本
年度につきましては再三申し上げておりますように、まだ具体的な
方針を決定しているわけではございませんが、ただいま申し上げましたような従来の
節約の率、
考え方等を参考にいたしまして各省と詰めている
段階でございます。
-
-
-
○
藤田進君 だって、
予算にはきちっともう
費目を明示してあるわけで、これを忠実に
実行するという
意味なんでしょう。そうなんでしょう。
-
○
国務大臣(
大平正芳君)
国会ではその
範囲内においての
歳出権を
政府に付与されたわけでございます。われわれといたしましては、その中で、その
範囲内におきまして、いま申しましたように、可能な限り
節減をいたしまして、厳正に
執行いたすということをいたしておるわけでございまして、ことしもそういうことは
お願いして差し支えないんじゃないか、これが
財政運営の当然の
態度であるべきではないかということでございまして、
実行予算を特にことしは
考えるというようなことをやらないということが、
景気対策から申しましても、ことしは、われわれは終始やるべきじゃないかと思いまして、その点を特に私は忠実に
執行して
経済の安定に資したいという
意味の
発言をいたした
基本の
考え方でございますことを御
理解をいただきたい思います。
-
○
藤田進君 いままでは忠実に
実行できない。たとえば
インフレ対策上総
需要抑制、そのために
公共事業費を抑える、これはもう
成立直後すぐやったものですね、去年も。ことしは、あなたが言われるのは、
予算は
成立したものを忠実に
実行すると言いながら、
内容については、これをずっとセーブしていこう、こういうところにやっぱり問題があるのです。あなたがこれをどちらも言い直さないでおさめようといったって、だれが聞いたって、現実に
局長の方で言うのはもう
補助金も含めていま
相談しておるというのでしょう。これは、やっぱり従来は忠実に
実行できない。それは
インフレがこう高進してはね。
狂乱物価だ、総
需要抑制だという理由があったから相当抑えてきたわけでしょう。ことしも従来と同じと言っちゃ、そのことになるのじゃないですか。ことしは
歳入欠陥が原因でそういうことになる、そうじゃありませんか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) 私が申し上げておるのは、忠実な
執行ということは、厳正な
執行ということと矛盾しない、毎年毎年われわれは与えられた
歳出権の中でできるだけの
節約を各
省庁との御
相談の上
実行しておりますこと御
案内のとおりでございまして、ことしもそういうことはやります、ただ
予算の
骨格につきまして
実行予算を組むというようなことはやらない、それから去年やっておりましたように、
公共事業費につきまして契約を規制するというようなことはやらないという
態度を堅持してまいりたいと申し上げておるわけでございます。
-
○
藤田進君 あなた、そう強弁されますが、そこで新たな
税収確保というのはどういう税を
考えられておりますか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) 新たな
税収確保という点につきましては、いま
政府が
税制の
改革について定まった
考えを持っておるわけではございません。ただ今日までの
状況において私が
考えておりますことは、そして
国会を通じて御
質疑に答えておりますラインは、
経済がこのように衰弱といいますか、
停滞といいますか、そういう
状況にありますときに、大がかりな
税制改革をやるとか、あるいは一般的な増税を
考えるというようなことはすべきでないと
大蔵大臣としては
考えております。しかしながら、こういう
一般的景気の
停滞の中にありましても、比較的、相対的に申しまして困り方が少ない階層あるいは相当の利益を上げておる部門もあるわけでございまして、
お互いの助け合いの
経済でございますので、そういう中で選択的に
増収を図る道はありはしないかという点について、いま
政府として
検討はいたしていることは事実でございます。ただ、まだ
国会に対しまして
検討の結果を御報告するというところまでになっておりませんで、いずれ、そういったことについて
検討が進みますにつれまして
国会に御報告をしなければならぬときが来るかもしれませんけれども、いまそういうことは
考えていないわけでございます。
-
○
藤田進君 だから、新たなものを
検討しておられますその
検討は何ですか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) いま申しましたように一般的な増税というようなことではない……
-
○
藤田進君 いや、それはわかった。そうではなしに新しいもの。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) だから、現実の現行
税制の中で、
増収の道がどういうところにあるか、そういった
検討をいま
政府としてやっておるわけでございまして、これはまだ
国会に御報告するまで確信を持ったものをいま持っておるわけじゃございません。
-
○
藤田進君 重ねて聞きますが、確信はないにしても、こういうものがあるという
検討過程にいまあることは答弁されたわけで、その
検討過程にあるものは何と何ですかと、こう聞いておるわけです。
検討過程ですから、いま
国会に出すというものじゃなくて。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) いろいろ、さしあたりまして
増収を図る、しかも、それを選択的に行うという点で、あらゆる面について実は
検討を加えております。主として、まず第一に上がってまいりますのは、従来からいわれておりますような政策的な租税上の
措置、それから新たにこういうことはどうだろうかとかねがね
国会でも御
審議がございました、むしろ逆の
意味における政策的な
税制措置というようなものを全般的に私どもの
段階でいま
検討しておる最中でございますけれども、たとえばそれは引当金でございますとか、準備金でございますとか、あるいは交際費でございますとか、そういった面すべてをいま私どものところで
対象といたしております。
-
○
藤田進君 だから、いまの交際費とか、それはわかりましたが、それ以外にあるでしょう、こういうものを
検討しているというのを、それを言ってみなさい。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) いま申しましたように、交際費もその一例でございますし、引当金、準備金、それから従来からいろいろ
国会の方で御論議がございました、こういう点について
考えるべきではないかと言われておった点が多々ございます……
-
○
藤田進君 こういう点とは何です。付加価値税とかなんとか……。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) たとえば広告税でございますとか、それからギャンブル税でございますとか、そういったものを
検討しております。
-
○
藤田進君 じゃ、その一覧表を出してください。いま聞いただけでは……、
検討している新税の。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 新税と申しますけれども、全部私ども
検討いたしますのは、まずはさしあたりまして現行の
制度で政策的にやっております
措置でございますから、新たな税目というものは第一次的には上がっておりません。
それから、第二次的に出ておりましたのは、いま申しましたように、従来から
国会からいろいろ御示唆のございました点でございますから、御要求がございますれば、
検討しておる
費目としましてお出ししてもよろしゅうございます。
-
○
藤田進君 少なくとも
大蔵大臣としてはこういうものをしたいとか、これは閣内のまた折衝なり、いろいろあることはわかりますが、当面
検討している、いま例示されたもののほか、あるいは新税とか、これひとつお出しいただきたいと思います。いいですな。
-
-
○
藤田進君 この
委員会終わるまでに。
それから、いま各省と折衝していると言うんだが、これは大変な
事態になって、
歳入関係、これからくる
歳出は、これは急がなきゃならぬでしょう。昨年の場合でも、もうこの時期にはどの程度
抑制するかということをやっていたんです。とすればいつできるんですか、いまの協議の結論というものは。そして何をどのように
抑制していくと、各省に最終的には指示するんでしょうが、いつできますか。
-
○
政府委員(
辻敬一君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、たとえば公共事業等の施行につきましては、最近の
経済情勢にかんがみまして、過去二年間のような
抑制を行わないことにいたしているわけでございます。公共事業等の円滑な
執行ができるように
措置をいたしておるわけでございます。先ほどから申し上げておりますのは、各
省庁の
行政経費、旅費でございますとか、
庁費でございますとか、そういうもの。それから
補助金の中に含まれております同様な
経費でございます。その率を幾らにするか、あるいは一部低い率をどのようなものに適用するかという具体的な
方針につきましては、何度も同じようなことをお答え申し上げて恐縮でございますが、各
省庁とただいま詰めている
段階でございます。
-
○
藤田進君 それは聞いたから、それはいつ終結するのか、いつそれが決まるのかということを聞いているんです。
-
○
政府委員(
辻敬一君) 従来
節約を正式に決定しておりますのは、補正のときでございますと
補正予算の際でございます。
節約の
方針をきめますのは四十八年でございますと八月でございます。四十九年でございますと十月でございますが、御指摘もございますので、できるだけ早く各
省庁と詰めまして、具体的な
方針を決定いたしてまいりたいと思っております。
-
-
○
政府委員(
辻敬一君) 従来でございますと、補正の際に人件費等の増額の財源の一部に充てるというようなことで、その際にあわせて
節約を織り込んで
補正予算を提出している例が多いと思います。
-
-
○
政府委員(
辻敬一君) 五十
年度の
予算の
執行につきましては、もとより
節約だけの問題ではございませんで、いろいろな問題があるわけでございます。そういう問題点につきましては、
前回の
委員会以来、
大蔵大臣から申し上げているところでございますから、そういう全体の一環といたしまして、どういうふうにするかは今後の問題だろうと思います。
-
○
藤田進君 いつと言えないが、しかし、一応目途を持って、いつまでに各
省庁との協議を終えてという確定を予定しなければ、これはどんどん
歳出の方も生き物ですから動いておるし、その辺はどうなっているんですか。
-
○
政府委員(
辻敬一君) 御承知のように各
省庁の
行政経費でございますから、そう一度に
支出するわけでございませんで、支払い計画等にのっとりまして
支出をいたすわけでございますので、各
省庁がそれぞれ
実行の
段階において、いろいろ配分いたしておるところだろうと思いますが、御指摘の点もございますので、できるだけ早く
方針を決定するように努力をしてまいりたいと思います。
-
-
○
政府委員(
辻敬一君)
節約につきましては、先ほどお答え申し上げておりますように、
原則の率をどうするか、低減の率をどうするか、一部除外するものをどうするかというような事務的な作業がございますので、何月というところまで申し上げかねるわけでございますが、再三の御指摘でございますので、できるだけ早く決めるように努力してまいりたいと思います。
-
○
藤田進君
大蔵大臣、いつまでにやらせますか、これ。各
省庁には区分別に、種別別に指示しておりますじゃないですか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君)
藤田さんの御心配は、それが決まらぬ場合におきましては、各
省庁における
実行計画、そういうようなものが決まらない
状況にあることは、行政の渋滞を招き、ひいては
経済の渋滞につながりやしないかという御心配であると思いますが……
-
○
藤田進君 そうなっているのですよ。実際に
補助金なんかもらう方はね。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) したがって、そういう御注意の点は十分私どもも心得なければならぬことでございますので、何月何日までという約束をいまここで申し上げる自信はございませんけれども、できるだけ早く各
省庁との打ち合わせを遂げまして、御心配のことがないように私として
責任を持って配慮してまいります。
-
○
藤田進君 税収
関係、
歳入欠陥ですが、副
総理、企画庁でもいろいろ
検討されているようですが、
大蔵大臣は、この間、本院の委員の質問に対して、九千億ぐらい、その辺になるかなあというような、どの程度見込めますか、いまのところ。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君)
大蔵大臣は、四十九
年度に八千億の税収欠陥を生じたと、それを単純に五十
年度に延ばしていきますと、これは九千億程度のものが出る計算になる。しかし、現実の問題とすると、さあ五十
年度の税収欠陥が出るのか出ないのか、これはこれからの
景気が一体どういうふうに、一応
経済がどういうふうに動いていくか、そこにかかってくるんじゃないかと思うのです。いま九千億前後か、あるいはさほどまではいかぬが、ある程度の税収欠陥が出るのか、あるいは税収欠陥が出ないで済むのか、その辺のことは、まあいまとにかく
年度が始まったばかりでございまして、これからの
経済の成り行き、これが非常に大きな影響を持つと思うのですが、そういうことを見ないと、いま予断ができない。率直に申し上げまして、さように存じておるわけです。
-
○
藤田進君 これは
物価問題とそれから
不況対策、いわゆるスタグフレーション、これは
お互いに与党も野党もなしに胸襟を開いて十分話し合いもしてやっていかなきゃならぬ。増税があるというなら、酒、たばこ、これもかかっていますが、いま本院の
委員会に。上げる必要ないですよ、あなた
物価上げて困るでしょう。それをあいまいにしておいて、たとえば実質成長率を四・三%、しかし、これを企画庁にあなた指示されて作業
見直しをやれと。大体二、三%ぐらいの実質成長に落ちるんではないかと、こういうことなんですね。そうなればますます
景気は、これはいま言われる税収に響いてくるだけの大きなファクターを持つでしょう。それから今度の春のベース改定も一七%と言ったって、どうもいまのところ一三%台じゃないですか。一%が五、六百億の
減収になるというのですからこれはもう明らかでしょう、すでに。いま
企画庁長官、副
総理としてそうのんきなことを言っている時期じゃないんじゃないですか。実質成長率どのぐらいになりますか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) いま
藤田さんが五十
年度は二、三%で、それで、そういう見当で改定作業を命じたというような話をされておりましたが、そういうことはいたしておりませんです。まだ
年度が始まったばかりでありまして、それはもう改定なんというようなことはいささかも
考えたこともなし、また時期的に言いましても当然そういうことかと思いますが、結局、
財政とのつながりは、さあ成長がどういうふうになっているかという問題もある。それから
物価がどういうふうになっておるか、これも大きく響いてくるだろうと、そういうふうに思いますが、ただいまのところ私といたしましては、ことしの
経済見通し、あれは四・三というふうにコンマ以下の数字までつけてやっておりますが、そこまで正確に言う、これはなかなかむずかしいことでございますが、私は四・三%という成長率であらわしておる気持ち、つまり、なだらかに
経済が上昇過程に本
年度はずうっとなっていくのだと。そして四%がらみの年平均になる、こういうコースですね、大筋は私はそういうふうに動いておると思いますし、またそうさせたいという気持ちで政策誘導をやっていきたい、こういうふうに
考えております。
-
○
藤田進君 これは私が言うだけでなくて、六月一日の新聞紙上、日経新聞とか、これははっきり出ておるのですが、これは新聞の間違いですか、それじゃ。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 私も新聞見ましたけれども、あの数字、あの二、三%というあの記事、これには企画庁といたしましては
責任を持ちかねることでございます。
-
-
-
○
藤田進君 「指示した。」と書いてある。二、三%は別としても指示もしていない……。
-
-
-
-
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 六月一日「日本
経済新聞」「実質成長213%に?
政府見通し
見直しへ
副
総理が指示」というような見出しになっておりますが、私がさような
見直しについて指示をした事実はございません。
-
○
藤田進君 ないということになれば、その記事が間違いということになるのですか。事実がない……。
-
-
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 間違いであるかどうか、とにかく指示した事実はございません。
-
○
藤田進君 では、だれかほかの者がやっているわけですか、どうなんですか。
-
-
○
藤田進君 それから、一方、
不況対策ですが、
福田さんはかなり胸襟を開いてものを最近言ってきたなと、
大平大蔵大臣は昔と違って大分かたくなになってしまっているなという印象を受けていたのですが、きょうはどうも同様にかたくな過ぎるように思うんです。立って答弁するとかたくなるだろうと思って座ってやっているのですが、同じことですね、これは。
そこで、あなたは
不況対策では財投を中心に
考えるといったような
発言、これも間違いかもしれませんが、これは今度
不況対策、十六日を一応のめどに第三次を出すんじゃありませんか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 十六日ごろですね、ごろです、まだ。ごろ、
経済対策閣僚会議を開催いたしたい。その際、第三次
不況対策、
景気対策をとるかどうか、とるとすればその
内容をどうするかということを話し合ってみたい、かように
考えております。
-
○
藤田進君 これは日本記者クラブの昼食会で六月二日に言われていることなんですが、
財政投融資の活用が中心だという
一つの
考えを示しておられる。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君)
景気対策をとるとすれば一体どういう手段があるか、これはこういう際には
財政と金融ということになるのでありますが、私は、金融の質的側面といいますか、金利ですね、これは
景気に多少の影響があり、ことに企業の採算に影響するところが多い。それから
物価にいたしましては、コストを引き下げるという
意味においていい影響がある。こういうふうに
考えますが、金融を量的側面から緩和するという政策をとってみましても、いま企業におきましてかなり稼働率が低下しているわけです。すなわち遊休設備を抱えているという状態でありますので、過去の
景気転換時のように、金融をつけたから設備投資が一斉に始まるというような傾向はなかなか期待することはむずかしいだろう。ただ、公害投資でありますとか、あるいはボトルネック産業に対する投資でありますとか、そういうようなことは
考えられます。しかし、おしなべて一斉に金融をつけたから設備投資が始まって、そして
景気を持ち上げるという、そういう作用を大きく期待することはこれは困難であろう、こういうふうに思います。
それからもう
一つ、
景気観測上重要な要素である個人消費です。この個人消費は、これは私も非常に静かになっておりますがそういう原因は一体何だろうということを
考えてみるのですが、結局、
物価が静かにはなってきておるものの、いわゆる高値安定、非常に高い、それに対する拒絶反応といいますか、たじろぎといいますか、それが非常にいまの消費動向に出ておると、こういうふうに見ておるのであります。これはしばらく改善されるということも
考えられない。逐次改善ということはありましょうけれども、急速に一斉にというわけにはいかない。そうすると、残る要素というのは、これはどうしても
財政ということになる。
財政ということになると、さあプロパーの
財政、これを見てみれば、税収は非常に心細い状態である。そういうような状態でありまするが、そういう中においてこの
予算を拡大するということはなかなか困難だろうと思うのです。そうしますと、どうしてもこれは幅広い
意味の
財政、つまり
財政投融資、幸いにして郵便貯金を初め公的預金、これはふえておる、こういうような状態でありますので、活用を
考えるとすると、その辺が中心にならざるを得ないかな、こういうふうな見解を持っております。
-
○
藤田進君 その中に、いま建設大臣は各知事とも折衝して、そして
国会が終わったころに三省で、副
総理、
企画庁長官も入れて、国土庁なり建設大臣でひとつ
相談しようということになっているようですが、本四架橋、これが児島−坂出はこれを一挙にやろう、それから尾道−今治は、尾道−大三島、続いて尾道−因島、それから鳴門大橋、こういうようなことが言われておりますが、
企画庁長官とされては、それはいまの財投で
景気浮揚策等を含めて、これは三ルート同時着工で、起工式直前にとめたわけですが、新幹線北陸等も含めて特にこの本四架橋、これは財投でやるんですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 本四架橋につきましては建設大臣が、
景気が非常に
停滞しておる、そういう際に公共事業を起こす、そういうような一環といたしまして本四架橋問題、これはひとつ前進させてみたらどうでしょうかと、そのための具体的な御提案というか、仮谷試案とも申すべきものを私どもに話があったわけです。それに対しましては、これはちょっと結論は出ない、そう簡単な問題じゃない、しかし、はっきり申し上げられることは、
景気対策としてこれは
考えない、
景気対策ならば
景気対策で、あるいは住宅をやるとか、上水道、下水道、いろいろ他に問題があるので、本四架橋を
景気対策の一環として
考えるという
考え方はとらぬ、こういうことは申し上げておるんです。ですから、
国会でも済みまして時間の余裕ができるという
段階で、とくとさらにまた意見も承り、御
相談もいたしましょうと、こういう
段階で推移しておる、かように御承知を願います。
-
○寺田
熊雄君 関連。
副
総理、三月三十一日の
予算委員会の
経済企画庁
関係の分科会で、いまの本四架橋について私も副
総理に質問したんですが、本四架橋につきましては環境アセスメントがいまの
政府、公団ともに全然できていないわけですね。環境アセスメントができていない間は大規模な建設事業はやるべきでない、地域開発も含めて。それが
政府の
方針になっておるように思うんですが、私もその点環境アセスメントが完全にできるまでは着工すべきではないんじゃないかということを副
総理に御質問したわけですね。副
総理も、それは全く自分も同感なんだと。で、そうするというところまではっきりした御答弁があったと思うんです、これは速記録を見ていただけばわかりますけれども。そのお気持ちにはまだ変わっておられませんか、どうですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) もちろん結論を出しますというような際におきましては、この環境アセスですね、これは大体のところを完了いたしまして、そして決断の重要な資料とするということにしなければならぬ、これは
考え方は変わっておりません。
-
○
藤田進君 それで、
企画庁長官としては、それに同意するんですか、しないんですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) いまはとにかく政務鞅掌でありまして、いま
物価を、一体一けたをどうするか、また他面において
景気の誘導をどうするか、これで頭がいっぱいでありまして、
景気対策とも
関係のないという判断の本四架橋の問題、これを
検討するいとまがないんです、率直に申し上げまして。それで、
国会でも済みましてある時間ができるという際につぶさに
検討したい。これは、相当、いまお話もありますとおり、環境の問題もありますし、
経済全体の
運営の
基本的な
考え方に対する影響いかん、こういう問題もありまするし、これは広範な
検討をして判断を下さなきゃならぬ問題であります。まあ慎重にひとつ協議してみたい、かように
考えております。
-
○
藤田進君
国会を終えれば
物価が頭から消えるような話ですが、これは、ますますあなた
物価は軒並み上がるようになっておりますね、私の調査を見ても。行政指導ぐらいではとても抑え切れないように思うですよ。むしろ、
国会を通じて
国民にも訴える、企業にも訴えるという姿勢でなければ。
国会が終わればもう頭の中が空になるから、本四を
考えようというように受け取れるわけで、どうも納得いきません。
まあ、それにしても、時間がないので結論を急ぎますが、私は、こま切れにやって次はいつ開通するかわからないというような——これだけ膨大な投資をする、その投資効率といい、あるいは
経済効果といい、やはりこれは問題があると思うんです。これは、児島−坂出の場合は一挙にやろうというのですから、建設大臣はそう言っている。知事にもそう
説明していられるわけです。あと二線については、こま切れに、とりあえずやれるところからやっておこう、やれなければそれでしまいだと、こういうわけでしょう。そういう、この種事業というものは、その場限りのことでは、これはどうにもならぬと思うんですね。やっぱり全通してこそ初めて
経済効果が出てくる。償却もしなきゃならぬでしょう。どうなんですか、その辺は。こま切れで……。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) これは、
藤田さんおっしゃるように、まあこれは、国土開発の全局をにらみまして、その中の一こまとして
考えなきゃならぬ大きな問題なんです。そういうようなことでありますので、私もいま御質問に対して慎重なお答えをいたしておる、こういうことであります。
とにかく、これは、相当重要な問題でありますので、慎重の上にも慎重を期しまして、これは本当に日本国全体のためにぜひとも必要だという認定がなけりゃ、これはどうとも判断の下しかねる問題である、こういうふうに
考えております。
-
-
○大塚喬君 立って話した方が話しいいもんですから、私はひとつ立たしていただきます。
福田副
総理、
経済企画庁長官が午前中だけの出席ということでありますので、
大蔵大臣には午後からひとつ時間をかけてみっちり質問をさしていただくことにして、午前中は
福田さんにひとつ質問さしていただきます。
前回、
福田さんにこの
大蔵委員会に出席願ったのは二十九日、その翌日
総理府統計局から五月の東京都区部の消費者
物価指数が発表されたわけであります。で、普通なら、当然横ばいか下落の方向をたどるであろうと、こういう
物価が五月分一・〇%上がったということで、
政府の公約である本
年度末
物価指数一けた台、九・九%というものは赤信号、こういう報道がなされておったわけであります。貯金の食いつぶし、こういうことで、四月が二・五%、五月が一%ということで、あと残されたのは月平均〇・九三%と、こういうことで新聞でも大々的に取り上げられたわけであります。
前回も二十九日にも
福田さんから、この問題について見通しどうかと、こういう質問がありましたが、大丈夫だと、こういう
趣旨の
発言がございました。改めてこの
政府の公約第一次の目標一けた台の公約というものが見通しどうかということでひとつ重ねてお尋ねをいたします。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 四月の全国の消費者
物価指数が二・二に上がったわけですが、それから東京区部の五月の消費者
物価指数が一%上がったと、それをとらえまして、この五十
年度中の上昇率一けた台、これがむずかしいんじゃないかと、こういうお話でございますが、四月のこの二・二というのは、これは授業料、保育料、これが
年度のつけかえだと、こういう
関係で〇・七二%上がっています。それから各種の月謝でありますとか、宿泊料などの教養また娯楽、こういうもので〇・六八%。それからこれも季節の変わり目でございますので、果物でございますが、これが〇・四八%、こういう
状況で二・二%という上昇したのですが、これは昨年も三%上がっている。私は二%内外かなあと、こういうふうに思っておったんですが、それを多少出まして二・二%ということになった。それから五月は、昨年は〇・三%これは全国でありましたが、ことしは東京だけで言うと一%ということになります。その中身を調べてみますと、一番大きなのが夏物の婦人服等で〇・四三%、それからその次が野菜です。これが〇・二八%それから入浴料などが、これ値上げになっております。そういうような
関係でこれが〇・二四%、それからレモン、これが五倍の暴騰をいたしたわけであります。これが〇・一八%ということになっておりますが、これは大体私は季節的、臨時的なものであり、五月も全国指数というのはこれよりは下のものが出るだろうと、こういうふうに見ておりますが、そういう臨時的、季節的な要素というものを
考えてみますると、
物価が鎮静化の傾向にあるという基調は、これは変わっておらぬ、こういうふうに見ておるわけです。この前もたしか申し上げたと思うのですが、ことしの
物価環境というのは非常に私は昨年に比べていい、ことにいま
物価は、需給
関係よりはこれはコスト
関係で押し上げられるということになっておるわけですが、昨年の賃金、これは大きく
物価に対応しておると思いますが、これはとにかく三二・九%去年は春闘で上がっておる。ことしはそれが一三・四%というところへ落ちつこうとしておる。これは非常な変化です。それからもう
一つ、海外の
物価が去年は軒並み上がり続けたわけでございまするけれども、ことしは頭打ちである。それから
公共料金、いま議題になっておるわけでございまするけれども、去年は
公共料金が、六月電気料金が営業用は七〇%、家庭用が三〇%、またガスも同じような幅の上がり方、それを受けまして国鉄、私鉄またトラック、バス、タクシー、交通料金が全部上がっておるわけです。米価は三二%の上昇と、こういうようなことでございます。それに比べますると、本
年度の
公共料金、これは御
説明もしばしばいたしておるとおり厳に
抑制だと、そうして電信・電話も抑えます。あるいは国鉄も抑えます。塩につきましてもこれを抑える。そういうような
措置をとりまして、まあやむを得ざる事情で上がることになりますのは、酒、たばこ、郵便料金。まあ米価、麦価の問題が残されておりますが、これは慎重に
検討する。とにかく昨年は
公共料金の
関係で、
物価押し上げ要因になった。その度合いは三%、そういうふうに見られるわけであります。三%をちょっと超えます。ことしはとにかくたばこ、酒、郵便料金で〇・九%である。あと若干あります。ありますが、あるかもしれないが、それらを仮に加えましても昨年の半分以下になるだろう、こういうふうに、非常にこれは昨年とは変わった状態になっておるということは申し上げることができると思うのです。
そういう展望の中で、
政府がこれは需要管理政策をとる、また主要の資材につきまして、その需給価格について綿密な行政指導を行う。またかたがた財界の値上げムードに対しまして自粛を求める。私は求め得ると思いますが、そういうことをいたしますれば、私は、これはまあ本
年度の一けた消費者
物価上昇目標はもう実現できる、こういうふうに
考えておるわけでありまして、決して暗い見通しは持っておらない。しかし、まあとにかくことし春闘がなだらかに済んだ。これはまあ
福田さんやれやれだろうと言うような人がありますが、私は逆なんです。あの結果を見まして、これはもう
政府の
責任いよいよ重いなあ、まあ何としてもあのなだらかな春闘妥結、その背景となった
物価問題これに対して、これはもう
政府が言っておる一けた台の
物価、こういうことはぜひ実現しないと大変なことになる、かように
考えております。
-
○大塚喬君
福田さんの答弁をお聞きすると、大分確信がある、自信があるという、こういう
態度をいつでもお見受けするわけです。で、
国民もそのことを期待しておると思うんですが、実際問題として、最近の
情勢は、いまおっしゃったこととは逆行しておる感じを強くいたしております。
一つは、長い間——長い間というか、農林省が価格に介入をしてきておった砂糖が、この五月の十六日から実庭用で二十八円、一キロ当たりの小袋が値上がりをする。それから続いて航空料金が値上げに——東南アジア線が七%、それからヨーロッパ線が八%。それに続いて今度は私鉄が大幅な値上げをする、こういう報道がなされ、またきょうの新聞には行政指導をしておると、こういうことの、大手鉄鋼メーカーが九月分の出荷から一五%程度上げる。牛乳がまた七月から値上げがされる。こういうことが相次いでぼんぼん出される。こういうことになると、一体
福田さんがいま確信持って答弁いただいたことが大丈夫なんだろうかなと、
国民はみんな不安を持っておると思うんです。それと一緒に、私がどうしても見解をお尋ねしたいと思うことは、行政指導というものの限界、効果というものが一体あるんだろうか。私はどうしてもそのことについて疑問を持たざるを得ません。で、これはもう酒の問題にしてもしかりでありますが、行政指導ということで
物価が抑えられるなら、
福田さんが指導すると言った直後に、直ちに大手鉄鋼メーカーが一五%値上げをするんだ、こういうような
発言は出てこないはずじゃないかと、こういうふうに
考えるわけでございます。行政指導ということは、結局、何と申しますか、下を支える効果だけが残って、弊害だけが残って、
国民不在の行政につながるものではないかと、いままで口だけで言っておる行政指導という問題は、やっぱりこの際
検討をし直す、こういう時期に来ておるのではないかと、こういうことと一緒に、
政府のやっておることが、本当に
国民から信頼されるということになれば、それに伴う
政府の効果的な
実行措置がやっぱり必要じゃないか、業界に対する金融規制の問題とか、あるいは公共事業の発注を停止するとか、こういうような問題が当然一緒に
考えられて
実行に移される、こういうことになれば、
政府の言うことも本腰を入れているなと、なれ合いじゃないんだなと、こういうことを感ずるわけでございますが、これらの問題についてもひとつ見解をお聞かせいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 各物資所管官庁は、行政組織法に基づきまして、行政指導、これをなし得る立場にあるわけですが、行政指導はどこまでも行政指導でありまして、法的な強制力、これはないわけです。特殊な立法に基づく行政指導、これは法的効力を持つわけですが、一般の物資につきましては法的拘束がない。
そこで一番大事な問題は、何といっても需給を緊迫した状態に持っていってはならぬ、こういうことなんです。そういうことで、需要管理政策、これは厳重にとり続けてまいる、こういう
考え方をとるわけでございますが、でありまするから、大塚さん御指摘のように、各企業はいま経営が苦しいと、そこで苦しまぎれに製品価格、取り扱い商品価格の値上げをするということを希望するのは、私はそれは
理解できますけれども、値を上げて果たして売れるかと、こういうことになりますると、そう簡単にこの希望は実現をされないわけでございます。そういう状態を
経済政策全体の
運営の
基本としておりまするから、そう簡単には希望は実現されない。また、それにもかかわらずあえてというような向きがありますれば、それこそまた行政指導、これは法的強制力がないにいたしましても、いろんな指導をすると、こういうことを各物資ごとに精力的にやりますので、まあ企業の多くは商品、製品の値上がりを期待はいたしておるものの、これが実現の可能性というものはきわめて少ないと思う。ただしかし、この間の砂糖に見られるごとく、半年ぐらい前に砂糖の値段が暴騰する。そしてそれが船に積まれてわが国にいま高い値段で入着をしてくると、そういうような事情のあるものもあります。そういうものが多少の
手直しをしなければならぬという、そういうものが出てくること、これはやむを得ませんけれども、去年のようにどの商品もどの商品も値上がりだというような状態は、ことしは出てこない。こういう私は観測と
方針を持っておるわけでございます。何が何でも私は一%消費者
物価上昇目標というものは実現しなければならないし、また実現できるものである、こういう見解をとっておるわけであります。
-
○大塚喬君 じゃ、最後に、各
省庁が旗は振ったけれども、実際はあとについてこない、ばらばらじゃないかという、私はそういう感じがするわけでございます。今後の足並みをそろえる問題についてどういうふうに対策をお
考えでございますか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 各省の
物価行政担当者を網羅いたしました
物価担当官会議、これをしばしば開くわけでございます。また、近く開催いたしますが、そういう道筋を通じまして、各省にはきめ細かく
お願いもし、また御協力も願っておる、こういうので、私も
物価担当官会議には努めて出るようにしております。いままでは長官が出るなんていうことは、めったになかったのですが、私はその会議にはみずから出まして
お願いもし、またいろいろ実情も述べるというふうにしているわけでございまして、かなりこれは強力に、有効に働いております。また各閣僚におきましては、もちろんこれは
物価政策が最大の政策課題であるということは十分承知しておりますので、その間の意思の疎通につきましては、これは私は万全の体制だと、こういうふうに思いますが、しかし、それにしてもときどきエラーがあるのです。そういうことにつきましては、事後におきまして調整の
措置を十分講じる、こういうふうにいたしております。
-
○大塚喬君 終わります。
-
○鈴木一弘君
前回五十
年度税収の不足の見込額ということで、だいぶここで議論があったのですけれども、まだまだどうも突っ込みが足らなかったという感じで、明確になっていないという感じが非常に強いわけです。
前回の御答弁だと、四十九
年度の税収不足七千六百八十六億円、そこを基礎にしてフロートしていくといいますか、税収の伸び率を掛ける、そうすると九千億ということになるという、そういう五十
年度の不足の
一つの計算が出たわけですけれども、詳細にわたってくると、一体それが本当なのか、あるいは一兆五千億になるか、二兆になるかということになると、残念ながら答弁がいただけなかった。五十
年度が終わってみなければ五十
年度で本当にどのくらい不足だったのか、足りたのかということを計算しろったって、これは不可能なことですけれども、当然
予算編成のときから、これは科学的根拠をもってこのくらいになるだろうということでやられるのだと思いますけれども、そうすると、そのときにもデータがあり、見込み等を立ててやられたとすれば、今回ここまでの間にいろいろの変化があった、そういうことから改めてまたここで現在の時点で、現在の条件でデータをそろえてやることは不可能じゃないだろうというふうに思うのですね。その点二度、三度と同じ
ことばかり聞いているようなんですけれども、その辺の御答弁をひとつ伺いたいのです。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) 先般の
委員会で鈴木先生の御質問に答えて、五十
年度の税収の見積もりを発射する土台が、すでに税収不足で明らかになったように、低かったということでございますので、それを単純に計算してみますと、約九千億ぐらいの
減収が計算上出てまいるということを
一つ申し上げました。
それから第三の点といたしまして、雇用の問題、一七%増ということをベースにいたしまして
考えておるけれども、それが一%狂えば幾らの計算上
減収か出てくる。それから法人税の税収——法人税の収益が一%狂えばこの程度の税収の狂いが生ずるだろうという三つのことは、いまの
段階において言い得る最大限のことじゃなかろうかということを申し上げたわけでございます。それで、それがどのように肉づけされてまいるかということは、今後の
経済の推移に係ることでございます。この
経済の推移はどのように推移してまいるかということは、これから内外の
経済がどう動くか、
政府がどういう政策をいたすかいたさないか、そういったことも影響してまいるわけでございますので、全くいま見当がつかないわけでございまして、したがって、先ほど副
総理からもお答えがありましたように、
政府として
経済の見通しについて再
検討するというような時期ではない、したがって、われわれの方も五十
年度の
経済がどのように推移していくかということを想定して、税収がどう動くのだろうということを計算してみるという
段階ではないと心得ておるわけでございます。問題は、当面の
経済情勢に対しまして
財政当局として何をすべきであるか、何をすべきでないかということに私どもとしては全力を挙げなきゃならぬと
考えております。
-
○鈴木一弘君
歳入不足に、穴があくときという、まあそういうときだという大事なときなんですけれども、そういうときに、いまのように黙してどういうふうになるか言えないというのは、ちょっと私は納得ができにくいんです。五十
年度の
予算の
審議のときにも、租税の見込みについてはこれは間違いなく多分なるだろう、こういうことからいままで
委員会でもそういった論議は少なかったと思うんです。いまこういった
事態になってくると、改めてもう一遍五十年一体どれぐらい足りなくなるのかということは、ここで計算し直しできると思う。できなければ、これから先すでに八月以降になると、五十一
年度の
予算編成にもかかってくるわけなんです。五十一年の税収見積もりも、一年間の
歳入が全部終わらない、だから、わからないということができちゃうわけです。するとこれから先は、五十一
年度の税収の見積もりはやらないでいく、こういうことになっちゃうわけです。いまのお言葉を返すと、そういう矛盾が出てくる。五十一
年度のことをやるのに、そこまでいかなければわからないんだということになったら、これは見積もりも何もできない。見込みもできない。動いてきているからには、ここで改めて五十
年度幾らという見積もりは当然私はここでやれるんじゃないかと思うんです。これは税収の不足の問題と同じことすね。そういう姿勢が非常に大事じゃないか。特に憲法の第九十一条、
財政法の四十六条こういうところで
国会及び
国民に対して
財政の
状況を報告するという義務が、
国民、
国会に対してしなきゃいけないという義務が課せられている。年四回やればいいんだということだけじゃなくて、そういう精神から言うと、こういう
財政が、税収が悪くなるだろうという
状況のときには、その精神から見ても、積極的にこのぐらい不足なんじゃないかというぐらいの計算はして、はっきりと示していくということが、憲法の上からも、法の上からも大事だと思うんですけれども、その点いかがですか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) 御質問に対して、二つのことをお答え申し上げたいと思います。
一つは、
政府として見積もりをすべきときにはどんな困難がありましてもしなきゃならぬということでございます。ただ、いま五十
年度の
歳入見積もりをもう一遍見積もりがえをするという
段階でないと
考えておるわけでございまして、またその必要があると私は
考えておりません。
第二に申し上げたいのは、あなたおっしゃるように、
国民に常に
財政の現況を御報告申し上げて
理解を深めてまいる、民主政治の
基本であると思います。しかし、
政府は
経済評論家でないわけでございます。
政府が申し上げることにつきましては、それだけの
責任を
国会に対して持っておるわけでございます。したがって、ある想定に基づいてこういう数字も出てくる、こういう数字も出てくる、まあ計算上の仮定の計算は幾らでもいたしますけれども、たとえば五十
年度の
歳入はこの程度と、
政府としては
国会に対して御報告を経過的に申し上げたのであるということになりますと、これは単なる
経済評論家の数字ではなくて、それに対して
責任を持たなければいかぬわけでございます。私どもが
国会に出す数字というのは、
責任が持てる数字でなければならぬわけでございます。決して
国会に出すことがおっくうであるということを申し上げておるわけではなくて、こわいんです。間違ったら大変なことでございますので、私どもといたしましては、どうしても必要なときに見積もりをしなければならぬ。それについては最善を尽くして、もうこれで
責任を果たそうという決意、決断に基づいての数字を御報告申し上げるようにさしていただきたい。何となれば、われわれは
国会に対して厳粛な
責任を持っておる
政府でございますから。そういう立場を御
理解をいただきたいと思います。
ただ、それでは行
政府の実際は、何もそれじゃやってないかというと、それは仰せのように、もう
財政状況、国庫金の流れにつきましては毎日注視を怠っていないわけでございまして、これがどのように税収に響いてまいりますかということについても、絶えざる関心を持っておることは事実でございますけれども、しかし、それを感覚的にある時点においてとらえて申し上げるということは、
政府としては慎むべきではないかと私は
考えております。
-
○鈴木一弘君 まあそれは
政府部内で
大蔵省とその官僚だけが
財政の危機については毎日毎日
検討して知っているというだけじゃ、私は、これは法律の上から、憲法の、
財政について
国民及び
国会に知らせるという義務を課せられているわけですね、そういう点から見ても納得ができないわけです。
ここで
福田副
総理にお伺いしたいのですが、すでに
大蔵大臣の経験もお持ちになっていられて、こういうような国家の
財政窮迫のときに、いま申し上げたように、その実情を
国会と
国民に知らせるというのは、当然
内閣としてとるべき私は義務があるのではないか、それと同時に、このぐらいの不足になっているということも示すべきじゃないか、これは三木
内閣の
責任として当然やるべきだろうと思うんですけれども、その点いかがお
考えになりますか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) まあ先般
大蔵大臣は
閣議において財源欠陥が四十九
年度において生じたと、それに対する対処はどうすると、こういうことについて
説明し、それに応じてどういうふうにこれから心構えを持って
財政運営をすべきかということを申し上げておるわけです。また、それに基づきまして、当
委員会におきましても、その他の場所におきましても御
説明をいたしておるわけであります。いま私は、
政府としてできるところはその辺が精いっぱいじゃないか、そういうふうに思うんです。これを数字的にこれだけのものが不足になりそうだと言うには、まだ
年度が始まったばかりでありまして、それは非常にそこには困難がある。これは御
理解が願えるんじゃないかと思います。もう少し時間が経過するということになって初めて、計数的にこんな見通しになりそうだということが言える。その際にはそれを率直に皆さんに申し上げて、御協力を賜らなければならぬ、かように
考えます。
-
○鈴木一弘君 先ほど経企庁長官、例の指示した、指示しないの問題がありまして、指示した事実はないという再
検討のですね、こういう話が、答弁がございましたけれども、まあ当初の
経済見通しで成長率が名目一五・九、実質四・三、そういうことになっておりますが、経企庁長官のお
考えではどうでしょうか。当初は
年度初めから
景気は緩やかに回復をする。そうして順次、逐次つま先上がりになっていくという見通しがあったわけでございますが、何か回復の時期がずれているような感じがする。そうなると、四・三の実質、名目一五・九ということが果たして実現できるのか、それよりもはるかに低目になっているのか、二ないし三%ということになると、ずいぶん低目になってくるわけでございますけれども、その点はいかがお
考えですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) これは率直に申し上げますと、私どもが
予算を編成すると、そういう時点においてまあ
年度早々からで多少上昇カーブの状態になっていくだろうと、こういうふうに見ておったんですが、その状態は若干ずれておる、こういうふうに申し上げることができると思います。しかし、まあ第二・四半期ごろからは
景気は上昇過程に転ずると、こういうふうな見方をしておるわけです。私どもが非常にこの
経済見通しとして大事なことだと思っておりますのは、
一つは
物価なんです。
物価は先ほどから申し上げているとおり、
経済見通し、その線に向かって動いておる、こういう見通しです。それからもう
一つは
景気の動向であります。これがまあとにかくなだらかなカーブを描きながら上昇過程に転ずる、これはそのとおり私も動いておると見ておりまするし、そうさせたい、また、そういうための政策誘導をしたい、こういうふうに見ておるわけです。その間若干ずれがあるという点だけは、これは否めない事実になってきておる、こういうふうに見ておるわけです。
-
○鈴木一弘君 そうなると、どうしても税収が下がってくるだろうということはもう否めなくなってくるだろうと思うんです。私は、先ほどは長官は
見直しを指示した覚えはない、事実はないという話だったんですけども、私は
見直しを指示するのが本当はあの記事を見て時宜に適したものだと思っておったんですが、そうしたらきょうは指示してないというのでがっかりした感じがしたんですけれども、実際いまのように
景気の動向が若干ずれが出てくれば、当然成長率が下がってくる。そうなると、それは税収に響いてくる。しかし、税収は同じに確保するということになると、名目の成長率は変わらないで、実質の成長率は落とすという、
物価が上がってしまうという結果を生むわけです。もしそうでなく
物価の方をきちんとしていくんだということになれば、名目の成長率も下がる。当然税収がおっこってくるという結果になるわけです。そういう点から見ても、この税収がたとえば成長率四・三というのが二ないし三%になった、こういうことになれば五十年の税収への影響が名目はそれに従って半分に下がったとなれば、間違いなく半分は減ってくるという簡単な計算ができてくるわけです。その点についてどのように
考えられますか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) この
経済見通しと
財政との
関係でありますが、これは確かに非常に大観いたしますると密接な
関係を持つわけです。ただ、その間におきまして、
景気動向というものが
年度の中で時期的にどういうふうに動いていくかということもまたこれはより密接な
関係が税収との間に出てくると思うんです。
四十九
年度振り返ってみますと、どうもまだ的確な数字的判断はできないんですが、感じとしてはこれは実質成長からいうと
経済見通しよりはややいい、これは
年度を平均しますから。ところが、時期的に見ますと、上半期は相当高いカーブであったのが下になってこうずっと落ち込んできておるんです。そういうようなことで、下になってからこの税収というものに相当大きく
経済の動きというものが影響しておるというような感じがいたしておるわけですが、五十
年度を展望してみる、そうすると、四十九
年度とは逆で、上の方は余りはかばかしくない
景気状態でありまするけれども、だんだん下に至って
景気が回復過程をたどるということになるものと見、またそういうふうな政策誘導をしたいと、こういうふうに
考えておりますので、いまのこの時点で、さて
財政が一体どうなるんであろうか、
経済の影響を受けてどういうふうになるんだろうかということは非常に予測困難な
段階でございます。いずれにいたしましても、
経済見通しとしては四・三%というふうには見ました、あるいはそれが多少下がるかもしれませんけれども、しかし、
財政との
関係におきましては、だんだん先へ行って
景気が上昇するという点を
考えますと、税収が一体どういうふうになるかということはなかなかいま予断を許さないという
段階のように
考えておるのであります。
-
○鈴木一弘君 これは
大蔵大臣にお伺いしたいんですけど、対前
年度比で三兆五千七百八十億円というのが租税・印紙収入の増であり、補正後比で一兆九千六百六十億円の増加ですね、これは成長率をそれに見込んだときのやつです。それが二%、三%、いま四・三を確保と言われましたけど、ずれ込みがあるということがもう御答弁からも若干うかがえます。もし半分におっこったとすると、その半分、機械的に言えば当初比で一兆五、六千億、補正の後だけでも九千億から一兆円程度の租税収入というものが落ち込むというふうに
考えられるわけです。その点いかがでございましょうか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) ある仮定を置きますといろいろ計算が可能であることは御指摘のとおりたと思います、しかし、いま
年度が二カ月弱経過した
段階におきまして、
年度全体を展望しての見積もりというようなものについて自信のある数字を御提示申し上げるということはできないことは、いままでたびたび御答弁申し上げたとおりでございます。しかし、御指摘のようにいろんな前提を置きまして、いろんな計算をしてみることは可能でもございまするし、私どもといたしまして絶えず
経済の推移ということと、それから税収との関連ということについて絶えざる関心を怠らないでおらなけりゃならぬことは当然と
考えております。
-
○鈴木一弘君 税収不足の
内容はもうなかなかうまく出てきませんので、この辺でやめますけど、相当大幅になるということだけははっきりしています。
そこで、
大蔵大臣は、公債
対象の
経費の問題、これについて財源の対策について言われたときに、極力公債依存は避けたい、やむを得ないときも建設公債でいきたいという御答弁でした。そうすると、現在公債
対象の事業というのがその
経費が三兆五百二十四億円、五十
年度の国債が二兆円となっておりますから、残りは一兆円ちょっと、その一兆円ちょっとの残された
範囲内で処理をするということになると思いますけれども、しかし、いろいろ
財政努力をしても間に合わないときは、それを超えた赤字公債ということや増税、この二つしかないわけでございますけれども、その赤字公債ということになってくるのかという点が
一つ。これについては
福田副
総理もたしかどこかで公債の増発は
考えないという、そういう
趣旨のことを言っておられますけれども、これは
大蔵大臣と同じ
考え方に立っているということなのか、このいわゆる建設国債としてあと一兆円ちょっとまでは
考えられるわけですが、そこまでは出すというお
考えがおありなのか、これは両大臣にぜひお伺いをしておきたいと思います。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) 同じような御答弁を申し上げて恐縮なんですけれども、
年度が始まって二カ月足らずでございまして、今後の
経済の推移に応じましてどれだけの
歳入を確保できますか、いま確たる展望がきかない
状況でございます。けれども、先ほど御答弁申し上げましたように、
経済がこういう
停滞いたした
状況でございますので、せめて
予算は
骨格を崩すことなく忠実に
実行いたしたいということでおりますことは、先ほど
藤田さんの御質問にも答えたとおりでございます。だとすると、
歳入上
減収が生ずるかもしれない状態におきまして、いま鈴木さんが御指摘のような
事態が起こりかねないという御心配も十分
理解されるところでございます。けれども、今後の推移に応じましてどの一体
歳入欠陥が出てまいるのかどうか、出てまいるとしてどれだけ出てまいるものかという見当がまずつかなければいまの御質問にはお答えできないわけでございます。しかし、そう木で鼻をくくったような御答弁を申し上げても恐縮でございますが、
考え方といたしまして、そういうことを前提にしてお聞き取りいただきたいと思いますけれども、先ほどもお答え申し上げましたように、
財政当局といたしましては大きな増税、一般的な増税を
考える時期ではないかと
考えております。したがって、できたら選択的な
増収の道はきめ細かく
考えていけないものかということでいま
検討をいたしておりますことは、先ほど主税
局長からお答え申し上げたとおりでございます。そういったことで、財源不足の場合にどれだけのお金が国庫として期待できるかどうか、これはひとつ将来の問題だと思いますけれども、鋭意
検討しておるということを申し上げさしていただきたいと思います。
それから、
歳出面におきましても、追加
財政需要につきましては、できるだけ御遠慮いただくように
財政当局としてはぎりぎり努力をしてまいらなければいかぬと
考えておりまするし、不要不急の
経費につきましても、大した財源が出てこないかもしれませんけれども、できるだけこれも整備していきたいと
考えておるわけでございまして、かたがた、漫然公債に依存するというようなことのないように、極力できるだけ手だえを講じてまいりたいと思うんでございまして、万一公債に依存せられる場合におきましても、何とか建設公債の枠組みの中で処理できる
範囲内でとどめていかなければならぬのが私どもの務めではないかといま
考えております。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君)
財政運営並びに特に公債に関する所見につきましては、
大蔵大臣と私は全く同一の見解を持っております。この点につきましては大福寸分のすき間もございません。
-
○鈴木一弘君 最後に、いまの公債の問題で、たとえば税のやり方を変えて、ガソリンの消費税、こういう税を一般財源に持っていく、いわゆる目的税を一般財源にして、そうしてその方も公債の増発で補っていく、こういうようなことをちょっと耳にしたこともあるんですけれども、そういう
考え方はあるのかないのかということが
一つと、先ほど増税の話がございました、選択的増税、その中で、たとえば貸倒準備金、貸倒引当金の問題がございますが、そういう点についての
考え方なんかは相当固まっているのか。特に金融機関
関係の貸倒引当金勘定の繰入限度額が千分の十になっております。それ製造業は千分の十五なんとこうなっておりますけれども、こういうものについての
検討等もあるのかないのか。この二つだけを伺って終わりたいと思います。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) 先ほど申しましたように、現行の
税制の中で、選択的に申して
増収の道がないかということを
検討しておるということでございます。で、どれどれを取り上げることにしたというようにまだ決めておりません。これは
閣議事項でございますので、私どもとしてはまだ
検討いたしておるということでございます。
なお、何か補足することがあれば事務当局から……。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 揮発油税は現在道路整備財源に充てられることになって事実上の目的税となっておりますが、その使途につきまして一部変更するというようなことはまだ
財政当局として議題に上がっておりません。
-
○渡辺武君 私、
前回の当
委員会で、
歳入欠陥を生ずるだろうというふうに見通した根拠と申しますか、具体的な計数を資料として御提出いただきたいということを
お願いしたんですが、その後理事会に提出されました「「五十
年度税収見積の改訂試算」について(メモ)」というものを拝見することができました。これを拝見しますと、どうやら計数的に
説明らしきものがあるなあと思われますのは、「四十九
年度税収不足額七千六百八十六億円を税収
予算額の伸び率を用いて五十
年度ベースに引き伸ばすと約九千億円という計数が得られる」ということだけなんですね。しかしその後に、こういうことが書いてある。五十
年度税収がどうなるかについては「このような単純な機械的計算によって算定することはできない。」と言って、
大蔵省みずからが、この四十九
年度の
歳入欠陥が出たから五十
年度自然減収が予想されるんだというその見通しそのものを、これは「単純な機械的計算」だと言って、いわば否定同然の
態度をとっておられるという状態なんです。で、それでは五十
年度の「
経済見通し」が間違っていたのかと思いまして見てみますと、「当面これを改訂することは、
政府としては
考えていない。」という
説明になっているのです。
これでは一体、五十
年度自然減収が出るかもわからぬと、その見通しが非常に強いんだという
趣旨のことを
前回の
委員会で御
説明されて、しかも、そういう
事態が明らかになったのは、四月の半ばごろに確たる計数が明らかになったから、そういう見通しを立てたんだという御
説明があった。その確たる計数というのは一体何だろうかという疑いが依然として残るわけです。この点について、もう一度
大蔵大臣の御
説明をいただきたいと思うのです。確たる計数というのはどういう計数なのか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) その確たる計数と申しますのは、四十九
年度の税収の
減収額というものが去年の十二月末に決算期の到来する法人税収、あるいは三月十五日の確定申告をベースにいたしまして、どういう見当になりますか、相当の
減収になりはしないかという懸念は濃厚であったわけでございますけれども、計数を具体的に捕捉するまでに至っていなかったわけでございますけれども、四月十五日現在におきましてほぼ四十九
年度の税の
減収額というようなものに見当がついてまいったわけでございます。四十九
年度の税の
減収額というものを指して申し上げたつもりでございます。
-
○渡辺武君 そうしますと、なおこれは念を押すことになりますけれども、五十
年度の
経済見通しについては、そのときには
政府見通し
どおりにいくだろうというふうにお
考えになっていたわけですか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君)
政府はそのときに五十
年度の
経済の見通しを持っておりましたし、いまも持っておるわけでございますが、それを変えるということを決めていないわけでございますので、それはそのまま私どもの机の上にはあったわけでございます。
-
○渡辺武君 そうしますと、四十九
年度にふたをあけてみたら、つまり締めくくりをしてみたら
歳入欠陥が出たということそれ自体は、一体どういう事情から
説明できるでしょうか。たとえば四十九
年度の
政府経済見通しを基礎として
大蔵省の税収見積もりがあって、そして予想していたところが、実際税収の結果を見たら八千億円ばかり不足したということになるわけでしょうけれども、その理由は、これは
経済見通しそのものが狂ったのか、それともまた
大蔵省の税収見積もりそのものが狂ったのか、どこに原因があったとお
考えですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君)
補正予算を見積もります
段階におきましては、もちろんその
段階で
政府の
経済見通しについての
見直しも行われるわけでございます。そういう数字を基礎にいたしまして、まあかなり秋深くなっておりますから、税収の実績も
年度といたしましては相当あるわけでございまするから、それを
基本といたしまして補正の税収を見積もったわけでございます。で、その際には私どもは、課税の実績とそれから
政府の
経済見通しを両々見ながら、しかも、また私どもの判断としまして、あと数カ月の間に税収がどういうふうになっていくであろうかという見通しを持って昨年も補正見積もりをしたわけでございます。
さかのぼって反省をいたしますと、やはりいろいろな事由がございますけれども、
一つ一つのデータといたしましては、たとえばボーナスの見積もりが違ったとか、あるいは一年決算法人の税の伸びが、ことしわれわれはもう少し落ちるだろうと思って下げましたけれども、それをさらに下回ったというようなこととか、あるいは申告所得税におきまして営業その他の申告
状況が思うほど伸びなかった、特に土地の譲渡所得につきまして、われわれはこれも落としたわけでございますけれども、大幅にそれを下回ったというようないろいろな要素が絡まるわけでございます。一にかかりまして、もちろんそれは私ども税収を見積もらなければならない当事者としましての見積もり誤りでございます。
-
○渡辺武君 そうしますと、
大蔵省の
責任だという
趣旨の御答弁だと思いますが、その
大蔵省の
責任に属する間違いによって四十九
年度の
歳入欠陥が生じた、そしてまたそのことから引き続き五十
年度の
歳入欠陥も予想されるということになりますと、これまたやっぱり
大蔵省の税収見積もりの間違いということになりますか、
責任の所在としては。
-
-
○渡辺武君 私は、
大蔵省の
責任から、こういうような
事態が生まれてくるということについて、なおもう
一つ考えてみなきゃならぬ点があるじゃないかというふうに思います。
どういうことかと申しますと、五十
年度の税収見積もり、それ自身が、大き過ぎたんじゃないか、過大に過ぎたんじゃないか。つまり、別の言葉で言いますと、
経済企画庁を中心にして
政府が五十
年度の
経済見通しを、予想を立てるわけですね。それを根拠数字として、そうして恐らく、税収がどのくらいだろうかということをはじき出すと思うのですね。そのはじき出し方が過大な税収を見積もりとして出すようなはじき出し方であったんじゃないかという感じがしますが、その点はどうですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) その点につきましても、私どもは、見積もりました土台が狂ったのでございますから、それも見通せなかったという点においては過大であったと言われましても、私どもはそれにお答えするすべはございません。しかし、その当時、いろいろ
経済指標をもとにいたしまして、あるいは課税実績見込みというものをもとにいたしまして算定をいたしましたときには、五十
年度については私どもは相当慎重な税収見積もりをしたつもりでございます。それは、たとえばこれは非常に大ざっぱな数字できっちりと当たりませんけれども、簡単に御
理解いただくためには、たとえばGNPの名目成長率と税収の
関係を見ていただきましても、その乖離を示しますいわゆる税収の弾性値と申しますか、そういうものから見ていただきましても、昭和四十年代においての推移の中ではかなり低目に出ておるつもりでございます。私どもは相当
抑制的に見積もったつもりでございました。
-
○渡辺武君 私、
お願いして、
政府の見通した
経済成長率を基礎として税収をはじき出す上で、名目
経済成長率に対して税収の弾性値、これを
一つの指標として
考えてみたいと思いまして、計算を
お願いしてありましたが、五十
年度をどのくらいに弾性値を
考えておられましたか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君)
税制改正後の数字で申しますと、五十
年度の税収は、おっしゃいました弾性値は〇・八一でございます。それから
税制改正を捨象いたしましてそれを
見直しますと、五十
年度につきましては一・〇四でございます。
-
○渡辺武君 それでは、その
税制改正後で
考えてみたいと思うんですけれども、その以前の
年度ですね、これで実際の名目成長率と、そうして決算での実際の税収、これとの弾性値はどんな状態になっておりますか。
〔理事山崎五郎君退席、
委員長着席〕
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 先ほど申しましたその〇・八一というような数値を示しましたのは昭和四十四年以後にはございません。それより少しさかのぼりまして見てみましても、あの、例の昭和四十年でございますけれども、このときにはまさにいまの昭和五十
年度のような
事態であったわけでございまして、あの当時、私どもは、四十九
年度についてもこのような大きな税収不足が生ずるということは見通せなかったわけでございまするから、かなり低目のいまおっしゃいましたような弾性値のもとに五十
年度の税収を見積もったつもりでございます。
それから、ちょっと訂正させていただきます。あれは昭和四十六年。あのときはいわゆる円の切り上げ問題でもってかなりわが国の
経済が打撃を受けたときでございます。このときは、〇・七四という数値を示しておりました。これは特異の年と思っておりました。
-
○渡辺武君 つまり、ことしも
景気が回復に向かうということは予想されるにしましても、従来の高度成長の時期と比べてみれば、いわばさま変わりの深刻な状態だということについては、これは
政府の
経済見通しが実質四・三%の成長率だと言っていることから見ても私は明らかだと思うのです。
決算の数字で、つまり実際の税収と、実際の各日
経済成長率、これとの比較で、私ども計算してみますと、いま言った不況の年の昭和四十六年の税収の弾性値〇・七四。それからさらにさかのぼりまして、さらに同じような不況の年の昭和四十年は〇・三二、昭和四十一年が〇・六八、こういうことになっております。今度の税収の見積もりが、それは確かにいままでの高度成長の時期、特に
景気のよかった時期に比べれば〇・八一という低目な状態だということはあなたのおっしゃるとおりですけれども、しかし、従来の不況の年と比べてみると明らかに税の弾性値は高いのです。この辺に私は
政府の発表した、つまり
経済企画庁の計算した五十
年度の
経済成長のいろいろな見積もりの数字がある、それを根拠にして税収をはじき出す場合にもやっぱり過大なはじき出し方をしたのではないかという感じがします。特に、源泉所得税、これの弾性値が昭和五十
年度は一・二八、あなた方からいただいた数字ですと一・二八ということになっております。昭和四十四年から四十八年の間の五カ年間平均の源泉所得税の弾性値は一・五〇となっている。非常にそれに近い数字になっているわけです。法人税、これは従来五カ年間平均の税の弾性値は一・三九だが、昭和五十
年度は〇・四二という異常にこれはまた低く見積もっている。法人税は非常に低く弾性値を見積もりながら、しかも、労働者の給与などにかかわる源泉所得税、これは一・二八と非常に高く見積もっている、こういうところに私は五十
年度の税収見込みが過大に失したというふうに言える根拠があるのじゃないかというふうに思いますが、その点どうでしょう。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) まず、源泉所得税でございますけれども、いまおっしゃいましたように、四十四年から四十八
年度の平均が一・五〇で、五十
年度の見込みが一・二八で非常に接近しておるとおっしゃいますけれども、実はこの一・何がしという〇・以下のところの差というのが税収に非常に大きく響いてくるわけでございます。したがいまして、一・五と一・二八というのは実はかなり税収としては響いてくることをまず御
理解をいただきたいのでございます。
それから、法人税につきましては、御指摘のとおり、四十四年から四十八年までの平均の一・三九に対して〇・四二と、これはまた非常に低くなっておるわけですけれども、これはまさに法人の利益というものが、収益、売り上げの伸びに対しまして非常に敏感に収益の増減というのがより以上激しく変動するものでございますから、そういう見積もりをしたわけでございます。これは必ずしもこういう見積もりをしましたから、実際の税収がそういうことになって法人について
負担が軽いのだということではございませんで、仮に私どもの見積もりが法人について過小でございますれば、実績としましては非常に大きく出てまいりまして、これはもう天下に明らかになるわけでございますから、決してそういうことのためにあえて法人税の税収を低くしたわけではございません。これはまさに先ほど御批判のように、私どもは五十
年度につきましてはかなり
抑制的な
経済の進行というのを想定しながら法人税について見積もりをした、一般的な税収についてもそういう
態度であったということの
一つのあらわれと御
理解いただきたいのでございます。
-
○渡辺武君 それは
説明になりませんよ。たとえば源泉所得税一・二八という弾性値ですね。過去五年間平均一・五〇と比べてみて、私はこれはちょっと高いんじゃないかということを言っているのです。ところが、いや、それは高いとは見られないんだという御
趣旨の
説明ですけれども、先ほど
大蔵大臣の御答弁の中でも、今度の労働者の賃上げは卑俗な言葉で言えば大体一七%というふうに見積もっていたけれども、しかし、実際はそれより低かった、これも五十
年度の
自然減収の
一つの原因とも
考えられるんだという
趣旨のことを答弁しておられるでしょう。つまりそのことは、
大蔵省の源泉所得税の見積もりが高きに失したということになるんじゃないですか。どうですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) その点につきましては、私どもは一人当たりの雇用所得の伸びを一七%と置き、雇用を一%伸びると置いてみた結果の源泉所得税の伸びでございまするから、その結果が一七を割るということになりますれば、確かに一・二八というのを示さないわけでございます。しかし、全体的な基調としましては、私どもは全部につきまして
経済見通し、その他を参酌しながら
抑制的な税収を見積もったつもりでございます。
-
○渡辺武君
抑制的な税収を見積もったのにもかかわらず、
予算成立後に
歳入欠陥が出るだろうということを言わざるを得なくなったという
事態があるんじゃないですか。だとすれば、あなた方自身が
抑制的に見積もったと思っているそのこと自体が、実は過大な見積もりであったということになるんじゃないですか。どうですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) その点は、先ほど私が申しましたように、四十九
年度の課税実績見込みを基礎に五十
年度を見積もったわけでございまするから、そのときから四十九
年度の課税実績見込みをもう少し的確に見通し得ましたら、もちろん今日のような
事態は招来しなかったわけでございます。それが過大であるという御批判は私はもう十分お受けしなければならないと思っております。
-
○渡辺武君 半ば認めたようですけれども、私はそれでもなお不満なんです。と申しますのは、大体五十
年度予算の税収見積もりをする場合に、過大に見積もるというその理由が、いま言ったように、四十九
年度の税収見積もりを過大に見積もっていたから、いわば自動的にそうなったんだという以外に、もっと深いところにあるんじゃないかという感じがします。
それはどういうことかと申しますと、大体ことしの当初
予算の、昨年の当初
予算に対する伸び率は二四・五%、そうでしょう。これは昭和四十八年の二四・六%に次ぐ、ほぼ匹敵するものすごい
予算規模の拡大のテンポです。まさに
経済の基礎がもう変わっている。いままでのような高度成長はできない、深刻な不況だというときに、当初
予算の比較ではありますけれども、しかし、戦後第二番目というような莫大な膨張
予算を組んだ。当然
支出が膨張すれば、それに伴う
歳入を
考えなければならぬ。公債の方は二兆円ということで
抑制した。なぜ
抑制したかといえば、私はやはりあの田中前
総理大臣のあの
事態をめぐって、自民党の政治に対する
国民の批判が非常に強くなった。特に
物価の問題が大きな問題になっている。だから、田中
総理大臣にかわって自民党の危局を解決するんだということを言って登場した三木
総理大臣としてみれば、赤字公債をそう大きく組むわけにはいかぬ。だから、二兆円という規模で抑える。そして
歳出の方はどうかといえば、従来の高度成長型の
歳出、たとえば
公共事業費の中でも産業関連の投資は総投資額の中の二、そして生活関連の投資は一というような仕組みが依然として残されている。その上に、防衛費は戦後最大の伸びだ。対外
経済協力費、これらも相当大幅な伸びを見込んでいる。そういういままでの構造を維持したままで、しかも、
国民の批判を何とかやわらげるためには、
社会保障費なども多少はつけなきゃいかぬということで
歳出はうんと膨張した。
歳入の方は、赤字公債二兆円で抑えたから、どうしたって税収を大幅に見積もらなければ
予算のつじつまが合わない、こういうことから、私は、
歳入にやはり過大な見積もりをせざるを得ない政治的な原因があったのじゃないかと思います。この点は
大蔵大臣どうですか。
-
-
○渡辺武君 そう否定するだろうとは思いました。肯定したら大変なことでしょうから。しかし、いずれにしても、目いっぱいの
歳入ということだと思いますね、
歳入見積もりこの点はどうですか、
大蔵大臣。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) 私といたしましては、主税局の練達な諸君の見積もりを信頼して、それを採用いたしたわけでございまして、しかしそれは、過去におきましては往々にして
自然増収ということを結果いたしたわけでございますが、四十九
年度は不幸にして
自然減収という結果になったわけでございます。あなたが御指摘のように、見積もり技術は大変むずかしい技術でございまして、主税局においても、いままでの経験を傾け、英知を傾けてやった結果でございますけれども、合わなかったことは大変残念でございます。しかし、全力投球をいたしたことが結果的にこうなったわけでございます。人間のやることでございますから、間々こういうことが起こり得ないとは言えないと思います。しかし、事がこうなったことにつきましての結果
責任は、私が負っておるわけでございます。
-
○渡辺武君 いずれにしましても、毎年の例で、当初
予算は組んだが、しかし、米価の問題あるいはまた労働者の賃上げの問題等々あって、いつの年も
補正予算を組まなければならぬ。あるいはまた風水害などで、どうしても組まなければならぬというような
事態は、これは
財政当局としちゃ十分予想しておかなければならぬことだと思うのですね。ところが、そういう予測が、
考えなければならぬのにもかかわらず、一歩誤れば
歳入欠陥が出るというような税収見通しを立てるというようなことは、私は、いま
責任の所在は
大蔵大臣にあると言われましたけれども、その結果
責任まことに重大だというふうに
考えざるを得ません。その点確認されますか。
補正予算も
考えていなかったということ、どうですか。
-
-
○渡辺武君 恐らく五十
年度になお
補正予算を組まねばならぬだろうということについては何にも
考えていなかったのですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 税収を見積もります場合には、翌
年度につきまして一年間の税収をその時点におきまして適正に見積もることが慣例でございます。したがいまして、その
年度中に起こります補正財源を予定しまして、当初
予算に低目に見積もったということはございません。
-
○渡辺武君 時間も余りないから、その点はこのくらいにしておきますが、私どもがこれを重要視しておりますのは、
大蔵省の見積もりが狂ったとか、狂わないとかというような単純な計数的な問題で問題にしているのじゃないのです。そうじゃなくて、この
大蔵省が、いわゆる
財政危機宣言なるものを発して、この中で、
歳入欠陥が起こるだろうということを
一つの理由としていろいろ言っている。いわば国の政策に関する問題を述べている。この点、これが
予算案を
審議している真っ最中の
予算委員会での各大臣の答弁あるいはまた本会議での施政
方針演説等々で言われたことと全く食い違っている。これは重大な問題だと私は思う。その点を問題にしなければならぬと
考えております。
一つ、二つ例を申しますと、ここには「公務員の給与改善問題、米価問題等
年度途中に予想される追加
財政需要につきましては、厳に慎重な
態度で臨む」ということも書かれております。それからまた、さらに後の方になりますと、「社会保険についても費用
負担の在り方を見直す必要があります。また、
公共料金につきましては、」「安易な
財政依存を厳に排除し、利用者
負担の
原則に立って、」云々と「適正な水準の料金を設定する必要が」あるということを言っている。つまり
物価を上げろということでしょう、
公共料金を。あるいはまた社会保険料、これも
政府の
財政負担はなるべく少なくして、そうして
国民の
負担でいけという
趣旨のことでしょう。一体いままで
政府が施政
方針演説などで言っていたことは何なのか。福祉優先の政治をやる。
物価安定が最重点
施策だということを繰り返し強調されてきた。ところが、それと全くさま変わりの政策がこの
財政危機宣言の中で述べられている。特に
地方財政について「国と同一基調の下に
経費の
節減等に努め、節度ある
運営を図るよう要請致したいと
考えます。」これがどういう結果となって生まれているか。
自治省が次官通達を出している。そうして、言ってみれば、地方の
公共料金を一斉に引き上げろという
趣旨のことを
自治省通達でもってこれを強要をするという状態が起こっている。一体これが
物価安定を最重点課題とするのだという
政府の言明とどう一致するのか。もっと言えば、三木
総理大臣の施政
方針演説では、こういうことを言われているのですよ。福祉優先の政策ということの中で「福祉重視の質的充実の
時代へ転換するために、地方行政の果たす役割はいっそう大きなものとなります。このときに当たり、自主的で
責任ある地方行政が実現されるよう国と地方との
関係をはじめ、地方行
財政のあり方について全面的に見直す必要があると
考えております。」つまり、福祉重視の質的充実の
時代へ転換するために
見直しをするのだ、こう言っているのです。ところが、
大蔵省の出しているのは
歳入欠陥だから、福祉の点は二の次、三の次にして、
公共料金を上げろという
趣旨のことじゃないですか。こうした答弁の食い違い、これについて
福田副
総理はどういうふうにお
考えですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君)
自治省から次官通達が出まして、
地方財政を強化するために適度な、適正な
公共料金の改定ということを進めたい、こういうふうなことを言っておるのです。それを実は先日新聞で見ましてびっくりしまして、これはどうも
受け取り方によりましては大変なことになる。これは国においても
公共料金抑制方針、こういう大
方針をとっております。その中において、
物価の
状況に配意しながら、まあやむを得ないというようなものについて、やむを得ざる
措置をする、こういう
態度でなければならぬわけなんで、その辺どうもあの通牒をただ単に読みますと、
受け取り方によっては
公共料金の引き上げを勧奨しておる、こういうようなことにもなりかねないので、いまあの通牒の扱いをどうするか、こういうことについて
自治省と企画庁との間で話し合いが進行しておる、こういうことでございます。
-
○渡辺武君 どうも時間がもう来てしまったようですから、簡単に一、二点だけ伺いますが、いま
自治省の通達についてはわかりましたが、この
福田経済企画庁長官がびっくりしたというような通達の出た原因は、これは
大蔵省の
財政危機宣言にあると思う。
大蔵大臣はこの問題についてどういう対処をいたしますか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) 福祉政策といい、
物価政策といい、地方行
財政の充実と申せ、やはり根底に健全な
財政がなければならぬと思うわけでありまして、それと矛盾するようなことがあってはならないと
考えております。
財政の
責任を持っている私といたしましては、常に福祉をも
考え、
物価も
考え、地方行
財政もいろいろ
考えてまいりながら、その根底にやはり
財政の健全ということに対して重い
責任を感じて、それに対して鋭意努力してまいりたいと
考えておりまして、このたび私がとりました
措置は間違っておるとは
考えておりません。
-
○渡辺武君 それはおかしいじゃないですか。こういう
事態を生んだのはあなたの
責任だと盛んに言っていた、そのあなたの
責任から
自治省がこの通達を出した、
責任に属する問題から。この
自治省の通達について、あなたどういう
態度をとります。
財政の健全化は必要だと言っている、
地方財政の。健全化のためにどういう
措置とりますか、その二点を伺いたいと思います。
-
-
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) この
財政危機宣言という
大蔵大臣の
閣議の
発言要旨を見ますと、ちゃんと理路整然と書いてあるんです。そこで、「五十
年度の
財政執行」これにつきましては、「安易な公債の増発は厳に慎しむ」というための
措置をとるとか、それから、
歳入の制約に対しては、「
行政経費の
節約を初めとする
既定経費の
見直し」なんかをやっていきたい、
地方財政についても同様のことを
考えたい、こう言っているんですが、その次に、「今後の
財政運営」と、「今後」というのはこれは五十
年度じゃないんです。五十
年度じゃなくて、これからいわゆる中期的、そういう
意味においていろんなことを
考えていかなけりゃならぬが、その中で、財源面におきましては、
税収確保について
検討するほか、社会保険についても費用
負担のあり方を見直す必要がある、また
公共料金については、
物価の安定に極力配意することは申すまでもないが、安易な
財政依存を厳に排除し、利用者
負担の
原則に立って、コストとの関連における適正な水準の料金を設定する必要がある、これらの問題については、
財政制度審議会、
税制調査会等の意見も聞きながら早急に
検討を進め、結論を得たいと、こういうふうに言っておるんで。
-
○渡辺武君 「今後」というのは、三木
内閣退陣後ということですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) いやいやそうじゃなくて。つまり五十
年度につきましては、一項設けまして、いろいろ述べておる。それからさらに、その先の中期的な
財政運営、これをかようにいたしたい、中期的
運営、五十一
年度とすれば、もう来年来るんですから、もうそろそろいまから
検討を始めなけりゃならぬ、その心構えを
大蔵大臣として述べておる、こういうことかと
理解いたします。
-
○渡辺武君 答弁と食い違っておるかどうか、どう思いますかということですよ。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 私は、
大蔵大臣の答弁をずっと伺っておるわけではないんで、それを私がお答えするわけにはまいりませんけれども。
-
-
-
○栗林卓司君
経済見通しの問題で副
総理にお伺いしたいんですが、先ほど話題に出ました六月一日の日経の記事でございますが、
政府見通しの
見直しを指示した事実はございませんと先ほど御答弁でした、それはそれで承るわけですけれども、その御回答を聞きながら、なおかつ私たちは、むしろこの六月一日の日経の記事の方が本当なんじゃないかという気持ちが残って仕方がないんです。なぜかと言いますと、やっぱり見通しというのはどだい当たらないものだというわれわれの経験がある。民間の研究機関、例として申し上げますと、昨年の十一月ごろ、平均しますと、実質成長率六・六%と言っていたのが、ことしの三月になりますと三・五%に修正して、ほぼ半分になりました。ある研究機関では、八・〇と言っていたのが二・六ですから三分の一近く落としてしまった。これもどうかと思うのですが、なかなか見通しというのは当たらないのだという従来の経験則がありました。ところが、どうも五十
年度の
政府見通しというのは、従来の単純な見通し、見積もりというものと性格が違ってきたんじゃないか。たとえば九・九%
物価上昇率目標については、目標として達成するように努力をします、実質成長率四・三%についても、これも近づける努力をいたしますと、その
意味で、単なる見積もりではなくて、目標性を持った非常に固い数字に変わってきた。これは私は一面いいことだと思うんです。これからというのは、あらかじめ優先順位を決めながら定めた指標にどうやって沿っていくかという政策
運営をしなければいけないと思いますから、その
意味で再々の質問にもかかわらず、九・九は守るように努力します、四・三%も近づけますという御答弁は
理解できる。そこで、それを
理解したとしても、今後続けてそれを取り巻いているいろいろなものを
考えてまいりますと、どうしてもわからない点が出てくるという点でお伺いをしたいと思うのですが、その前に、大変重ねての愚問でございますが、念のためにお伺いしますと、一応これは
歳入との問題で言っておりますから、実質をやめまして名目成長率に直して一五・九%と、消費者
物価上昇率目標の九・九%、この目標に実態を一致させることが一番いいと副
総理はお
考えになっておる、そう
理解してよろしいでしょうか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 私は、
物価も、また
景気の先行きも、大体まあ見通しのような線に沿って動くことを切に期待しておるのです。しかし、だから
物価目標も、あるいは
景気目標もこれをともども達成したい、こういうことを念願しておりますが、いろいろ
情勢の変化等もあって、
景気か
物価かという選択といえば、私は
物価政策、これを優先的に
考えなければならぬ、こういうふうに
考えております。九・九と申し上げておりますが、しかし、九・九がたとえば八%になりそうだというときに、私は九・九にこれを持っていくという、そういう
考え方はとりません。九・九を割り込む、こういう方がむしろ好ましい状態だ、こういうふうに
考えておるのでありますが、もし仮に九・九というのが、そういう好ましい形になったということになれば、名目成長率はそれだけ落ちるんですが、落ちてもそれは大変私は結構なことだと、こういうふうに
考えております。
-
○栗林卓司君 とにかくしゃくし定規に九・九びた一文欠けてもという
意味ではありません。その
意味で、いまのお
考えでいいと思うんですが、とにかく
考え方として整理をしてまいりますと、
物価上昇率目標では九・九であり、名目成長率では一五・九だ、これを指標として掲げたわけですから、そこに近づけていく努力をしてまいりますし、そこに近づけていくことがまず第一
段階の想定される一番ベストな状態でありますと、こうなると思うんです。そこで、そういう
政府の
経済見通しに沿って税収見積もりもあるわけですから、これも重ねての愚問ですが、税収見積もりも、過不足なく入ってくるのが一番ベストである、そう
考えることになりますが、大変愚問ですが、一応念のために伺います。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 税収の見積もりに近いところに実績が落ちつく、これが理想的なものだと、もとよりそう
考えております。
-
○栗林卓司君 そこで、取り巻く部分でどうしてもわからない面が出てくるということで申し上げるのは、先ほど主税
局長もお答えになりました、別に
補正予算のことを
考えて税収見積もりにさじかげんをしているわけではございません、その
意味で、当初
予算に想定した税収ができ得れば過不足なく入ってくる状態が一番望ましい、それは片方では九・九なり、あるいは一五・九なりという指標に近づけていく努力だということになりますと、
補正予算の財源というのは、
基本的な
考え方としては税外
歳入に求めるという理屈になると思うんです。これまではなるほど
自然増収がきわめて多かったですから、こういった議論しなくても済みました。しかし、これからはそういう
時代ではなくなってきたわけですから、もし
補正予算が不可避だとすると、しかも、当初
予算の収入というものは
政府の期待
どおり入ってきたという条件を置いたとすると、どこに財源をお求めになりますか。税外収入ということになると、常識的には公債で賄うのが
補正予算の財源調達の
基本であると
考えざるを得ないんではないでしょうか。先ほどの話の続きからいきますと、どうしてもそうなるように思うのですが、副
総理はどうお
考えになりますか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 仮に補正要因が
歳出面において出てきたと、こういう際に、その財源を一体何に求めるかと、
自然増収に求めることはできないというその場合にどうするかと、こういうことだろうと思うんですが、それはそのときの
経済、社会の
情勢全般を見なきゃならぬだろうと思うんです。まあそれだけの
歳出要因が出てきたと、これはもう増税だと、こういうことも私は
一つの見識だと思うんです。あるいは増税でなくて他の何か税外収入ということを
考える、こういうこともあると思いますが、安易に公債だと、こういうことは、私はそう気の進まない行き方じゃないか、そういうふうに
考えるのです。公債というのは、本当に万やむを得ずと、そういう場合にのみ
考えられる問題だと、かような認識を持っております。
-
○栗林卓司君 そこのところで、それはそのときの
状況を見てと言われますと、そこで最初からわからなくなってくる。で、五十
年度の場合を
考えますと、補正をやるかどうか、これは仮定の問題ですが、実際にはまずあると見なければいけないと思います。そこで、五十
年度の当初
予算について、
歳入不足が出るか出ないかということは、これもまた仮定の話だからわかりませんが、当初
予算の
歳入規模に対してすら
歳入不足が出るといま想定することはにわかに困難だと思う。といって
自然増収が出るということを
考えるのも、これはまたきわめて困難であります。そこで、
補正予算の財源をどこに求めるか、それはそのときになってみりゃいろいろとありますけれども、そのときになって、あるいは
自然増収があるかもしれない。
景気の回復がもっと早く時期的に来るかもしれないということになりますと、話が前に戻りまして、一五・九%というものが少し変わってくるんでしょうかというようにどうしても聞いております方では短絡して
考えてしまう。ですから、
自然増収がない場合の御質問でしょうということなんですが、そのとおりなんです。これから
自然増収多くは期待できない、なおかつ
補正予算というのは毎年諸般の
状況から組まざるを得ないということになると、その財源をどこに求めていくかというのは、
財政運営の
基本の問題としてもう整理をしておかなければいけないんじゃないでしょうか。公債即悪だという
考え方では私はいかないんじゃないか、むしろそう思うのですが、その点いかがでございましょうか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) やっぱり
財政は、
歳出要因が出てきた場合に、まあそれを
国民全体の
負担で解決をすると、こういうことになるわけなんです。その
歳出要因をいかに
国民が分担するかというその仕方の問題、そういう性格のお話のように承ります。
そこで、やはり私は、あらゆる努力をして、そうして普通
歳入でその
財政需要にこたえるという
考え方を進めるべきじゃないかと思うんです。これはもう
年度の途中において
歳出要因がいろいろ出てきた、そうしたらもう議論の余地もなく公債を出せばいいんだと、そういうことはきわめて不健全な
考え方だと、こういうふうに思うんです。ですから、できるだけ努力をして、普通財源で求める、また場合によりますれば、
歳出の方におきましても、不要
節約、そういうものを求める、そして、どうしても対処し切れないというその分について公債の発行を
考えると、こういう手順になろうかと思います。
-
○栗林卓司君 お話だけ伺っておると、やっぱりよくわからなくなるんですけども、いまの副
総理のお答えを非常にまた短絡して要約して申しわけないんですが、
歳入増、普通
歳入で。なかなか
年度再増税でということは、これは実際問題、そうできた
相談ではないと思いますから、それを具体的な
一つの政策の選択項目としてお
考えになっているとは思えません。そこで、
自然増収を期待するような
景気政策をとるのか、あるいは
歳出の削減をとるのか、どちらかの努力をしながら、普通税収入で公債を出さなくても
補正予算が賄えるように努力をしますという
意味のことをおっしゃった、そう受け取ってよろしいんでしょうか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) まあ財源を充実する、税収を多く求めようと、こういう目的で、そうして
景気政策をとるという私は
考え方はとりません。やはり
経済は
経済として、これは正常な成長発展をするということを念願しなけりゃならぬと思うんです。そうしないと、これは
経済の
運営を非常に誤るという結果になる。いま私は、
景気は底には来たというふうには見ておりまするけれども、この底からの立ち上がりの勢いというものが非常に微弱である。そこで、何らかの対策を、この
景気浮揚のための対策をとる必要があるんじゃないかということを
考えなきゃならぬ、そういう時期に来ておると、こういうふうに思うんですが。それは、そういう
経済全体の動きという見地からそう
考えるんであって、税収を、欠陥が出そうだから、その穴埋めのためにそういうことをするんだ、そんなようなことは毛頭
考えておりません。
-
○栗林卓司君 そこで、大変理屈っぽいことを申し上げているようで恐縮なんですが、最初の質問に戻りますと、一番望ましい状態というのは、一五・九の九・九——びた一文欠けてとは言いませんが、そういう当初想定した状態に沿っていくのが
政府として一義的に望ましいと思います。と言うことは、当初
予算の税収が過不足なく入ってくることがまずもって一番望ましい。こうなりますと、実は
自然増収というのは、そこで
考え方から出てこない。残るのは、
歳出の削減ということになります。それとてもこれは軽々にできない。ということになると、残るところは、いろいろな税外
歳入という問題があるとしても、結局公債ということになっていくんだろう。そうは言っても、いまそんなこと簡単に答えられますかということだと思うんですが、私が先ほど来申し上げて、質問している気持ちというのは、もしそれが避けがたいということであれば、どういう公債の消化
方法にしたらいいのか、公債を取り巻く環境をどうやって整理をしていったらいいのか。しかも、もし補正
段階ということになると、ことしの年末にきわめて巨額な公債が場合によって必要になったときに、一時的にそれが市場に出ていくということは、副
総理がおっしゃる、
経済政策全般との面でうまく調和をするんだろうか。それやこれやを
考えますと、それはそのときになって
考えてということではなくて、もう本当は
考えなければいけない時期である。それが、これからは
自然増収が期待できなくなった時期でございますと、これまで
政府が言っていた
意味であるし、高度成長から静かで緩やかな
経済成長に入ってきた時期なんだと言っていることの
意味ではないんだろうか。私は、ここで赤字公債無制限に出せと言っているわけではないんであります。ただ、こういった問題も、もう逃げては通れないんじゃないか。ところが、これはまた、こうやって置いておくから、
補正予算の財源どうなるかわからないし、これをお伺いしてまいりますと、それはそれでまたいろいろと努力をしてということになると、出発点の一五・九がどっかへ吹っ飛んでいってしまって、残るところは九・九なのか、一五・九なのか。
先日、ある新聞の社説を見ていたんですけども、新聞の社説でさえいま気迷いがあると思うんです。副
総理は、先ほどのお答えの中で、
経済成長か、
物価安定かと言われたら、
物価安定をとりますというお答えですが、少なくも一五・九と九・九は同時達成目標として
政府見通しに入っているわけです。質問をすると、はい、同時、努力しますというお答えが返ってくる。とは言うものの、実際にこの生きている、
経済の姿の人たちが、何を判断根拠にして
政府の今後の政策を推しはかりながらそれぞれのミクロの計画を組んでいったらいいのか、そこのところでもう少しわかるようなフレームを組み立ててくれないか、これがいま私たちが実は先日来
歳入欠陥問題について御答弁何回伺っても、どうしても御
説明をいただいた気がしない理由じゃないか。で、もう時間がありませんから、最後に一点だけ副
総理の御所見を承りたいと思うんですが、見通しというのは、従来は間違ってもまあしようがなかった。しかし、これからは優先順位を定めながらあらかじめ定めた指標に従って、でき得れば計画的に
経済を
運営していきたいということになりますと、今後
経済企画庁で出す
政府見通しにしても、もう少し使えるように、
年度一本ではなくて、四半期別であるとか、現在の動いている姿に対してもっと早く情報のフィードバックが返ってくる。今日まだ六月ですから、
年度初め以降日がたってないのでよくわかりませんということが余り言わなくても済むような努力を急ぐべきではないか。そのテストケースとしていま
歳入がどうなるかがわからなくて、まことに議論立ち往生しているわけですから、余り恐れないで見積もりを是正を指示されながら私たちに出すべきではないかと思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) いま私は五十
年度の
経済見通しは、大体見通しの線で動いておると思うんです。まあずいぶんくどく申し上げておりますが、
物価は一けた台の線を動いておるし、また動かせたい。それから
景気にどうだと言いますれば、多少のずれはあるけれども、下上がりに徐々な緩やかな回復をする、そういう過程を必ず通るであろうし、また通らせたい、そういうふうに
考え、そういう見通しと目標に従いまして政策
運営をしておるわけですから、そのラインにつきましては、まあ
国民も御
理解を願いたい、こういうふうに
考えております。
-
○栗林卓司君 終わります。
-
○野末陳平君 先ほどの
質疑で
大蔵省の方が新税とか増税のようなことを
検討していると、ギャンブル税とか広告税とか名前挙がりまして、いずれそれが資料でいただけるということですから、ここで細かくやるわけではありませんが、
検討ということになれば、やはり何か
原則のようなものがあってなされていると思うんですけれども、増税や新税を
検討している
基本方針といいますか、根本姿勢みたいなものを簡単にまず。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君)
基本方針は先ほど来
大蔵大臣からお話がございますように、この
経済政策と合った
増収策は何かということでございますから、一般的なものよりは選択的なもの、しかも、比較的余裕があるものというものを生み出すべくこれから努力をするわけでございます。
-
○野末陳平君 選択的なものというのを、じゃ、もっとストレートにちょっとえげつなく言いますと、どういう層をねらい撃ちするんですか。やはりこれはお金とらなきゃならぬですから、かなり余裕のある層といいますと、たとえば資産を持っているというそっちの層とか、法人とかいろいろありますね。それから高額所得者とか、いろいろあると思うんですが、そういう聞き方してお答えいただけるかどうかわかりませんが、どの層をという質問に対しては、どうお答えになりますか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) その点は選択的なものであり、この
経済に適合したものであれば、われわれとしては
検討対象にすべて挙げたいわけでございまするので、いまからどういった階層の人あるいはどういった所得分類をねらっておるかとあるいはどういった形態のものをねらっておるかという限定は全然いたしておりません。
-
○野末陳平君 まあじゃ、いずれはそうせざるを得ないだろうと思いますし、それから
経済政策に合ったという点はまた
考え方がいろいろあるんじゃないかと思います。資料いただいてから細かいことはお聞きしたいと思うんですが、ただ、気になるのは、税収がだんだん減ってきた、不足がちでちょっといままでのような
増収が見込めないということで、何か新税、増税という
検討を始めたとなれば、それは非常に安易でおかしいと思いますし、それから今度さかのぼって言いますと、
自然増収がふんだんにあるときに、それを全部使っちゃってプールしておかなかったというのも、またいまから
考えればまずかったというふうにも
考えます。そこで、
福田副
総理にお聞きしますが、やはり副
総理が
大蔵大臣のころは
自然増収は非常に気前よく減税の方にやったんですが、これはこれでみんな
国民も喜んだと思うんですがね。やはりこれからはもうそういうこともできそうもない。
大蔵省の方でも
財政安定基金
制度などの
検討ということもちらっと新聞で読みましたが、いかがでしょうか、
自然増収のあるときはいままでの、今度の苦い経験を生かして、やはりある程度の金を別にプールしておくようなことをこれから
考える
時代だと思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君)
自然増収が、これは一般論ですが、
自然増収が多額に出たというような際、それをプールしておいて安定基金というか、そういうような効果を発揮せしめるというのは、これは
一つの
考え方でありましょうね。いままでは
自然増収がありますれば減税というような
国民の要望、これは非常に強かった、そういうようなことで減税を実施しておりますが、そういう際に減税を差し控えて、安定基金なんというのは私どもとすればぜひやってみたいような構想なんですが、現実の問題は
自然増収どころじゃない、
自然減収が出てくるかどうかという問題でございます。
-
○野末陳平君 ですから、
財政安定基金
制度なんて、そんなことを
考える余裕もないと、
大蔵省としてはそうなんだろうと思うんですが、やはりしかしこういうときに、またせっかくのアイデアが出てきたときに
考えなきゃいけないとも思います。あれ新聞でちらっと読んだだけなんですが、その後やはりあれは本格的に
検討するようになっているんですか。
-
○
政府委員(
辻敬一君) ただいまの
財政安定基金の構想につきましては、確かに新聞報道をなされたわけでございますが、現在私どもといたしまして、まだ公式に
検討中という
段階ではございません。ただ、この種の構想に類似するものといたしまして、先年来
財政制度審議会におきまして
景気調整資金の設置について
検討いたしてきたところでございますが、これもまだ結論を得るまでに至っていないわけでございます。ただいま副
総理からもお答えがございましたように、今後予想されます低成長下におきます
財政におきましては、
自然増収は期待できない、場合によっては
自然減収も生ずることも
考えられないところではないわけでございますので、このような場合に備えまして何らかの仕組みを設ける必要があるかどうかということは
一つの
検討課題であると思っております。今後十分研究する必要があると
考えております。
-
○野末陳平君 まあしかし、目先のお金の方が大事だと思います。そこで、
福田副
総理にいらしていただいているので、改めていままでのこの
大蔵委員会の
質疑などを思い起こしながらお聞きするんですが、たとえば四十九
年度に一兆八千億ぐらいの大幅な減税やりましたね。まあいいんですよ。あのときはあのときで
自然増収がたくさんありましたから、減税で
国民も喜んだ、いいんですが、ほくたちの野党があのとき反対したのは、あれはかなり、特にサラリーマンなどにとって、サラリーマンにしぼれば、あれは重役減税だということを言ったんですね。上に非常に厚かった。だから、上に厚過ぎる減税はちょっとどうなんだ、少しこれをもっと下に厚くなるようにできないかというようなこともここでずいぶん議論になりました。結果的に重役減税をわれわれは反対したんですが、いま
考えてみて、あの重役減税と言われたときの一兆八千億の案が、案というかあの減税が、何かいまになって響いているんじゃないか、別にあれでもって税収不足幾らか生じたとかいうことを言うんじゃないんですがね。何かあればいま
考えると、決して成功ではなかったとぼくは思っているわけですよ。やはり重役減税と野党が批判したけど、それだけの
意味がここで出てきたんじゃないかと、何か取るべき相手からも税金をかなりまけちゃって、重役減税をやっちゃったけれども、やはりあれはいま反省すべきことじゃなかったかと、失敗だったんじゃないかと、そういうふうに思っているんですが、副
総理はいかがでしょう。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君)
税制の理論から言いまして、多年議論があった問題は、高額所得者に税率調整の効果が及ばない、こういう問題で、これは税のたてまえからどうも均衡がとれておらぬじゃないか、そういう議論がかなりあったんです。しかし、それを一体
実行する時期いかんと言うと、ささいな減税というような際に、それを
実行するわけにはいかぬ。しかし、二兆円減税というあの大幅な減税をするというこの機会こそは、この議論に決着をつける時期じゃないかというので、
税制調査会におきましてそういう答申が行われ、それで
実行されると、こういうことになったわけでありまして、あの時点におきましては二兆円減税をやるかやらないか、その大幅な減税どうかということにつきまして、相当これも議論がありましたが、いわゆる高額所得者に税率調整を波及せしめるということにつきましては、まあ大体大方の人がこの際やらなけりゃその機会はないぞという意見が多かったわけでありまして、それが採用されたということなんで、私は、今日顧みてみまして、別にあれが悪い
措置であったというふうには
考えておりません。
-
○野末陳平君 そこはちょっと
考えが違うと思うんですが、実を言いますと、副
総理もそうだと思うんですが、あの大幅減税のおかげで、すでにぼく個人の所得税はかなり安くなって、まあちょっとまけ過ぎてもらったという感じがしないでもないですよ。で、反対していて——いや、それはまじめな話ね。反対していて、結果的に恩恵をこうむっているんだから、非常に矛盾しているんで、まあ後味よくないわけです。ですから、税率調整ということ、あるいはこれもっと広げれば、不公平とか不公正とか、そういうようなことにもなるんでしょうけれども、その辺にこだわり過ぎたお
考えじゃないのかと思うんですね。あのときでなければ確かに税率調整できなかったと言われればそのとおりですが、結果的に見てやはり上に厚くなっていることもまた確かなわけですよ。それをぼくなんかはやはり自分で感じますので、ここらで増税、新税というような
考え方も、それは当然いま必要になってきましたが、しかし、ちょっと待てと、所得税の中で
手直しをやって、まけ過ぎた分をもう少しまたきつくし直して、
手直しをして、所得税の中で
増収を図る
考え方もいまあっていいんじゃないかと。税率調整がどうのこうの言う前に、われわれは上に厚い減税案のおかげでちょっともうけ過ぎた、まけ過ぎてもらったと思うんですよ。それをやっぱり返上するというのは変な言い方ですが、どうなんでしょうか。
大蔵大臣にもお聞きしたいんですが、
福田副
総理はそういうお
考えで間違ってなかったということなんですが、それはそれでいいんです。そこで今度、今
年度所得税の
手直しをやって
増収を図るという
考えのもとに、あの重役減税ちょっと直して、われわれに少しきつくなるようにしても、ぼくは間違いじゃないと思うんですよ。そういう
考え方いかがですか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) 先ほど申しましたように、一般的な増税というようなことはいま
考える時期でないという判断をいたしております。したがって、選択的な
増収の道はないものかという点を
検討いたしておるわけでございます。その中で、所得税の中で若干考慮の余地がないかという御質問でございます。私は、日本の所得税はたびたび本院におきましても御答弁申し上げておるとおり、諸外国に比較いたしまして累進税率の高い部類に属しまするし、所得再配分
機能を果たしておる優れた
税制であると評価いたしておるわけでございます。これを根本から直してみるというようなことはいま
考えておりません。
去年の
税制についての評価でございますけれども、多くの子供を持ち、ちょうど就学適齢期の子供をたくさん持っているというような方々、社会的な交際あるいは結婚適齢期の子供を持っているというような階層に対して相対的に軽くなるような
税制措置がとられたことは、私はそれなりに評価すべきではないかといま
考えておりまして、それを特にこの際
考え直してみるつもりはないかというお尋ねに対しましては、今日ただいま私は消極的でございます。
-
○野末陳平君 しかし、いまの例でいろいろお金がかかる層にとっては非常によかったということがちょっと出ましたけれども、しかし、たとえば給与所得控除が青天井になっているとか、細かく言えば税率をかなり緩くしたとかいう点、いまのお話だと、大体年収何百万円のところまでは線を引かないとちょっとだめだと思うんですね。だから、そういう
意味で何でもかんでも重役減税が悪かったから、かせぎのある人から取っちまえということを言うのじゃなくて、あの税率を調整した、あの税率を緩和し過ぎた、もう再
検討をここですべきではないかと思うんです。あるいは青天井になったあの給与所得控除でもやはり
考え直すべきではないかということを言っているんで、大臣のおっしゃったように、一番お金がかかって、かなり税金も高くてきつかったという層があることは確かなんですよ。だから、その層は喜んだけれども、その層からもまた取っちまえということは言っているわけじゃないんです。再
検討するのがまず筋じゃないかと。事実選択的な増税、新税を
考えているんだったら、所得税の中で、やはりそれも、そういう
考え方を所得税の中に入れて
手直しを
検討するのは、ぼくは全くむちゃな議論じゃないと思うんですね。現に富裕税などという
考えも出るわけでしょう。もちろん
大蔵省は本格的に
検討になっているかどうか知りませんけれども、富裕税というのはやっぱり通常言えば金持ち階級とか、かなりの所得がある、かなりの資産がある、生活が有利な人ですな。そういう人たちに対して新税などを
考えるんだったら、これも
考え方を、そこをさっき言った所得税の方に持ってくれば、やはり再
検討してもいいんじゃないか、こういうふうに
考えているわけです。それでもやはり
大蔵大臣、私の
考えに対して
検討するお気持ちは全然わきませんか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) いまお答え申し上げましたように、いまの日本の所得
税制というのは、諸外国に比較いたしまして累進のカーブも高いわけでございますので、私は、特にこの
税制は去年の改正も含めまして、できが悪い
税制とは
考えていないわけです。現在の
税制の中で選択的
増収を図る道、たとえば主税
局長が申しました引当金、準備金等でいま免税になっておるものをもう少し御遠慮いただくということで詰めてみる必要ありゃしないか、その他いろいろ細かく
検討してみまして、どのぐらいの
増収が確保できますか。
財政は何も必要以上の銭をちょうだいする必要はないんですから、税金はできるだけ軽い方がいいわけでございますから、いまのわれわれが
考えておる
措置でどのぐらい確保できるか。それで必要にして十分なのかどうか。あなたがおっしゃるように、さらに所得税につきましても、法人税につきましても、なお切り込んで
検討する必要があるかどうか。それはやはり今後の税収と
財政支出との
関係におきまして、ぎりぎりそういうところまでまた
考えなけりゃならぬようなことのないように、なるべく私どもは持っていきたいと思いますし、しかし、万一そういう
事態になれば、当然また仰せのように
考えなけりゃならぬと思います。
それから富裕税というやつは、あれは御
案内のように資産税でございます。所得税ではないわけでございまして、つまりその年の収入が課税標準になるんじゃなくて、財産を持っておるがゆえに税金がかかるわけでございますので、したがって、それにつきましては、たびたび本院でも本会議、
委員会で申し上げておるとおり、やはりその捕捉が第一しっかりしないと、軽々にこれは取り上げるべきじゃないと私ども
考えておりまして、それはたびたびおしかりを受けておるんでございますけれども、それじゃそういうことが捕捉できるような、やっぱり執務体制をもっと充実せにゃならぬじゃないかという御指摘がいろいろあることは私もよく承知しておりまするが、いずれにせよそれを捕捉することがまず前提でないかという点だけは御
理解をいただきたいと思います。
-
○野末陳平君 そうしますと、先ほどの資料が出てくる中にどういう税が入っているか、それは知りませんけれども、
補正予算を組む
段階までにある程度の結論は出てくるんですか。というのは、いままで
どおり例年のやり方でいくと税調にまあ出しますね、その結論が出てきて来
年度からの、つまり来年の
国会になって、そういう新税、増税はよくここでも
検討するんですけれども、今度
補正予算のときにそういう案は出てくる、出てくるというのは変ですけれども、それまでに結論を出して、もし
自然減収がはっきりしてくれば、早く
増収を図らなければならないと思うのですが、そういうことは
考えられるのですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 税は、御承知のように大部分は法律事項でございまするので、法律改正を要するわけでございます。もちろん
税制調査会の御議論を経ました上で必要な
措置をとりますから、法律事項でございますものは、仮に行うとしましても、やはり次の
国会以降の問題かと思います。
-
○
委員長(
桧垣徳太郎君) 午前の
質疑はこの程度とし、午後二時三十分まで休憩いたします。
午後一時二十三分休憩
—————・—————
午後二時三十六分開会
-
-
○大塚喬君 いよいよきょうから問題の酒の値上げ法案の
審議に入ることになったわけでありますが、率直に申し上げて、この
酒税法、製造たばこ法の改正を一日も早くともう期待をされておるのは、
大蔵大臣それから専売公社総裁とあと
関係のごく一部の人だけが一日も早くと、こう期待をされておると信じます。
国民の大部分はこの法案がそう簡単に早く通られたのでは迷惑しごくと困っていると思うんです。私はそういう立場でひとつ十分に
審議を尽くさせていただきたい。それで話が食いかじりになってはいけませんので、私の質問の順序は、初めにビール、それから清酒、それからウィスキー、果実酒、それに関連をして、その間
酒税法の問題、酒の行政の問題について関連をして質問をさせていただきたいと思います。
委員長にもひとつ十分
審議の機会を与えていただきますように、初めに強く
お願いを申し上げます。
初めに、質問に入ります前に、ちょっと大変簡単な疑問でございますが、この点がどうも気がかりになっておるものですから、初めに
大蔵大臣にお尋ねをいたします。
酒税法の一部改正案の
趣旨説明の際に、税
負担率が低下をしておることを理由にして酒税の引き上げを図っておるわけでありますが、ビールは現在大びん——一部値上げもしたところあるようですが、私は、大びん一本百六十円ということで話をさせていただきます。で、この税金が四二%の六十七円、今回の改正案によれば、十五円引き上げられることになって五一%の
負担率が回復をすると、引き上げられると、こういうことでありますが、これから私が質問をいたしますいわゆる税金のほかに、便乗値上げの問題が入ってきておるわけであります。各社ともコストアップを口実にして二十円程度値上げを図る構えのようであります。そうなりますと、百六十円のものが十五円と二十円アップで百九十五円になる。そうしますと、この税金は八十二円になるわけでありますが、税
負担率がこの便乗値上げということを加えて同じく四二%になってしまう。こうなりますと、今回酒税は、値上げをやったらまた小売り価格が上がって四二%になる、こうなりますと、これは
酒税法をここで
審議をして仮に通ったということになると、即座にまた値上げの理由が残されすぐ値上げになりそうな、そういうことになるだろうと思うわけでありますが、この点について今後
大蔵大臣としてどのようなお
考えか初めにお聞かせをいただきたいと思います。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) いまお話しのように、確かに百六十円のときに税
負担は四二%程度でございます。これが仮に二十円プラス十五円上がりまして百九十五円になりますれば、おっしゃるように四二%になりますが、十五円の税
負担増がないといたしますと百八十円でございますから、その
負担率は三七%程度になるわけでございます。したがいまして、その間における若干の回復をやはり税率の引き上げでもって
お願いするというわけでございますが、それはともかくといたしまして、四十三年におきましてはこれが五〇%程度の
負担でございましたものがだんだんと下がってまいっておりますので、それを全部とは申しませんが、おっしゃるように、わずかな程度でございまして、二十円の小売り価格の引き上げによってその分は飛んでしまうほどではございますけれども、今回若干の回復を
お願いしておるのが今回の増税案でございます。ただ、それが直ちに改正前の四二%程度になるからといって、すぐさまこれを引き上げるかどうかということは、これはまた今後の
物価水準、
財政、消費生活、そういったものをいろいろ勘案しなければなりませんから、直ちに四二%を回復するという
考えではございません。
-
○大塚喬君 いまの答弁で問題があると思うのですが、そうすると、いまの答弁では、小売価格の二〇%値上げというのは、もう既定の事実としてどのメーカーのつくったビールについても認めるということを前提にしていま答弁をいただいたと思うのですが、全部これは認めるということになるわけですか。
それから、ちょっと論理的に四二%が低いということで均衡をとる、そういう理由で今回ビールの値上げが実施されるわけでありますが、そうなってくると、いま主税
局長の答弁だというと、いまははっきりしないということでありますけれども、ここでその理由を私どもが認めるということになれば、来年もまたビールが四二%になってしまうのだから
負担率を回復するのだと、こういうことで値上げを認める前提を残すことになるわけであります。この点についてひとつさらに明確にお答えをいただきたいと思います。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 百六十円のビールが一部二十円値上げになりまして百八十円になっております。それから十五円の増税をただいま御
審議いただいておりますから、それが全部合計いたしましたと仮定した百九十五円について
負担率は四二%になるということを申し上げたのでございます。価格につきましては国税庁の方からお答えをいたすと思いますけれども、そういうことで百九十五円が四二%の
負担率をあらわすであろうということでございます。しかも、その四二%というのは、別に固定的なものでもございません。それはちょうど四十三年当時の五二%が絶対的な水準でないのと同様でございます。しかし、従量税という
制度をとっております以上は、価格がだんだんと上がってまいりますれば
負担率は下がってまいります。それがやはり一般の
物価水準、他の税
負担、それから
国民の消費生活水準あるいは
財政の事情ということから、必要に応じてはまた
負担を高めなければならないということもございますけれども、それは一義的に四二%、五二%ということを前提に
考えてはならないということでございます。
-
○大塚喬君 どうも値上げの理由についてまだ釈然といたしません。
角度を変えて、この酒税の引き上げの問題ですが、一体他の間接税と比較して、酒税というのが増税の必要性があるのかどうか、増税の余地があるのかどうか、私はこの点について大蔵当局の明確なひとつ、他の間接税、物品税、こういうものに関して、これだけ酒税は引き上げなければならないのだ、こういう明確な理論的な根拠をお示しいただきたいと思います。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) これはずっと前からでございますけれども、酒、たばこにつきましては、間接税の中でもかなり高い
負担を忍んでもらっております。これはまた国際的にも実は酒、たばこにつきましてはそういったのが一般でございまして、やはりその消費の態様ということからこれは是認されておるのではないかと思います。
それで、他のわが国におきますところの間接税の中ではかなり従価税
制度を持っておるのがございます。そのものは値段が上がってまいりますれば、やはりそれにふさわしい予定いたしました税
負担をそれぞれしておるわけでございまするから、従量税につきましてこの十年来のような価格の上昇がございますれば、あるいはまたそれに伴いますところのいろいろな所得、
物価動向というものの中で、やはりかつて数年前に
負担をしていただいた税
負担というものが、今日一般水準から見まして低くなっておるというときには、数年置きぐらいには見直す必要があるわけでございます。
-
○大塚喬君 この酒税の引き上げが私は不当に高いものであるという感じをぬぐい切れません。これは過去四十三年五月のいわゆる酒税引き上げのときと比較いたしてみて、ビールの問題について申し上げますならば、酒類中一番ビールの消費量が多くて、酒税収入の中でも五〇%以上ビールの税金が超えておるわけであります。
前回のときには大びん一本の小売価格が百三十円、これが七円税金が上がったものと承知をいたしておるわけであります。今回はこれを二二%引き上げた、十五円引き上げになる、こういうことになりますと、特に
国民の消費量の多いビールをこんな高い値段で引き上げる、こういうことになれば、
国民生活に与える影響はきわめて大なるものがある、こういうふうに
考えるわけでございますが、この大幅引き上げの理由というのは一体どういう理由なんですか、
財政的な理由なんですか、そこのところをひとつ重ねてお尋ねをいたします。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君)
基本的には
財政上の理由でございます。しかも、そういう税
負担をあえて含んでいただいた後のビールの価格は、やはり他の
物価水準から見まして、あるいは所得の水準から見まして、耐えていただけるであろうという判断が加わっております。
-
○大塚喬君 このビールの値上げの問題について突っ込んで質問をいたすわけでありますが、御承知のように酒の問題ほどどの他の業界に比べても、業界と官庁が密着しておる
関係は他には例がほとんどないのではないか、ともかく製造から販売まで一切合財国税庁の指導監督下にあって、はしの上げおろしにまでともかく国税庁がくちばしを入れてくる、こういう
関係にあろうと私は率直に認めるものでございます。そうでなかったらひとつその問題についてもぜひひとつ反論をいただきたいと思うわけでありますが、こういう
関係の中で今回ビールの値上げが行われる。私は
国民に密着した、しかも、大衆的な飲料と変わってきておる、しかも、消費量の多いビールだけに、この問題について特にお尋ねをいたしたいわけでありますが、初めに、質問の前段として、ビール業界のシェアについて、最も新しい数字はどうなのかひとつお聞かせをいただきたいと思います。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 四十九
年度末におきます各ビールのシェアを申し上げますと、麒麟麦酒が六二・六%、サッポロビールが一九・五%、朝日麦酒が一三・一%、サントリーが四・八%、このようになっております。
-
○大塚喬君 朝日が幾らですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 一三・一%でございます。
-
○大塚喬君 一三・一……。
この寡占の問題が第一の問題点でありますので、このような経過がどういうことで生まれたものか、ひとつお尋ねをしたいわけでありますが、集中排除法で昭和二十四年に大日本麦酒が分割をされて、日本麦酒、朝日麦酒と、こうなったときの、当時の業界のシェアはどんな実情でございました。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 大変申しわけございませんが、ただいま手元に資料ございませんので、調べまして後ほどお答え申し上げたいと存じます。
-
○大塚喬君 じゃ、いまの答弁はひとつ保留ということにして、現在のこのような超寡占の業界、ビール業界に出現をしたのは一体いつからでございますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) ビール業界で特に麒麟麦酒のシェアが著しく大きくなってまいりましたのは、やはり四十
年度後半が特に大きくなっているわけでございます。
-
○大塚喬君 その麒麟がトップに躍り出たのはいっになりますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 昭和二十九
年度の移出実績から麒麟がトップになっております。なお、このときには三六・六%のシェアを占めております。
-
○大塚喬君 重ねて質問の予備的な問題としてお尋ねするわけですが、一体日本人というのは、アルコールとの
関係は世界各国に比してどんなぐあいでしょう。日本のアルコール消費量と申しますか、飲酒量、まあ飲んべえの度合いですが、一体日本はどんなぐあいでしょう、世界じゅうに比較して。
-
○
政府委員(星野孝俊君) これは一九七〇年の資料でございますけれども、主要国の
国民一人当たりの酒類の消費数量の概算を申し上げますと、日本を一〇〇としましたときに、イギリスは一一一、フランスは二八三、西ドイツが二一九というふうな一人当たりの純アルコールの消費量になっております。
-
○大塚喬君 それは日本の消費量というのは、アルコール換算でどのくらいになります。
-
○
政府委員(星野孝俊君) アルコール換算で四・七キロリットルでございます。
-
○大塚喬君 この酒の消費
支出が、個人の家計費に占める割合は最も新しい数字ではどんな現況でございましょう。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 現在一番新しい確実な数字は、四十八年でございまして、家計調査の中において酒類消費資金は一・〇%でございます。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先ほど誤った御答弁を申し上げましたので、訂正さしていただきます。一年当たり純アルコール消費量は四・七リットルの間違いでございます。
-
○大塚喬君 いまの主税
局長の答弁ですね、個人の家計費の消費
支出に占める割合は〇・何というそんな低いものですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 四十八年で申しますと、家計におきますところの消費
支出金額十一万六千九百九十二円に対しまして、酒類に対しますところは千六百九十円、一・〇%でございます。
-
○大塚喬君 そうしますと十一万六千円というのが家計費の総額で、そのうち一千六百円がお酒の
支出だと、こういうことになるわけですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 一・〇%はちょっと間違いました。実質収入
金額に対しまして一・〇%でございます。収入
金額のうちで、先ほど申しました十一万六千九百九十二円と申しますのは、七〇%でございまするから、収入のうちの七割を消費
支出に充てております。収入の一%を酒類に充てておるということになります。
-
○大塚喬君 そんな数字で済みますかな、間違いありませんか。
-
-
○大塚喬君 それでは一体その酒の販売
金額、それからその酒税収入で、昭和四十八年、四十九年、五十
年度の見通し、これをひとつお聞かせいただきたいんですが、いまのような数字で果たして済んでおるのかどうか。ここで答弁いただく数字がでたらめな数字を発表されたのでは、大変こちらも今後の質問の土台が狂いますので、ひとつはっきりしていただきたいと思います。
-
-
○大塚喬君 四十八、九、五十。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 四十八
年度の酒類消費資金は二兆三千二百八十六億円、四十九
年度二兆六千二百二十一億円、五十
年度二兆八千四百七十億円でございます。それに対応しまして四十八
年度の酒税収入は八千二百二十六億円、四十九
年度は、補正後の数字でございますから、ちょっと若干これを下回りましたが、補正後の数字で申し上げさせていただきますと八千八百五十億円、五十
年度は、五十
年度の
予算額で申しまして一兆三百十億円でございます。
-
○大塚喬君 そうしますと先ほどの数字は、これはまるっきり違ってきますね。個人家計の消費
支出に占める割合が一カ月当たり一千六百何がしと、四十八年、四十九年、五十年二兆円を超える酒の売り上げがあるわけですね。そうすると一世帯当たり何人でお
考えになっておるのか。そのような低い数字でおっしゃられて、この酒の値上げが一体われわれのその生計費の増加とどんな
関係があるかという問題の論議はちょっとできかねますので、いまの問題もう少しはっきり間違いのないところを答弁いただきたいと思います。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 私が申しました家計調査は統計局の調査で間違いがございません。それは全国の勤労者世帯につきましての家計調査でございます。この点につきましては間違いがございません。
それから消費資金全体から申しまして、確かにこの家計調査との間に乖離がございます。その
一つは一体何かということは、常々私どもも勉強いたしているわけでございまするけれども、
一つは、どうも家計以外の消費がかなりあるんじゃないかということでございます。それからもう
一つは、家計調査のこれはやむを得ない事情かと思いますけれども、いわば御主人が小遣いの中から飲まれてしまいまして、家計調査の帳簿に上がってこない酒類消費が確かにあることは事実でございます。と思いますけれども、家計調査として出ておる数字としますれば、先ほど申しましたように、実収入
金額に対しまして一%という数字でございます。
-
○大塚喬君 まあ、
政府指導のもとにこのような酒税の値上げが、
物価の問題はもちろん、個人の家計まで重大なその影響が出ることを私は懸念をしておるわけですが、この問題、先ほど答弁いただいたように、麒麟が六二・六%という超寡占商品ということに現状ビールが至ってきておるわけでございます。
で、
大蔵大臣にお尋ねいたしますが、このようなビール業界の寡占状態が進行してきたと、一体どういうところにこの大きな原因と申しますか、理由があるとお
考えでございましょう。
-
-
○大塚喬君 ちょっとこれは大臣にひとつ、今後のこともあるんで大臣にひとつお聞かせいただきたい。
-
-
○
政府委員(星野孝俊君) ビールは、明治の初期にわが国に導入されましたわけですが、それ以来いろいろな曲折を経ておりますけれども、ビール産業の特徴として幾つかの点を挙げられると思うのでありますが、その
一つは、規模の
経済性が非常に大きいということでありまして、ある程度以上の規模の設備を持たないと、とてもコスト競争で打ちかっていけないという特徴がございます。またしたがって、設備建設のためには巨大な資金ば必要になると、こういう特徴がございます。また第三には、ビールはほとんど同質の商品であるにもかかわらず、嗜好性あるいはイメージ商品的な性格が非常に強い商品でございまして、既存のメーカーについて、消費者のブランド選好が一たび形成されますと、消費者の嗜好の保守性が非常に強いという
関係もございまして、強いブランドがそこで確立されてしまうわけでございます。こういうふうなことを背景に、明治以来熾烈な競争が行われました結果、現在のような非常に少ないメーカーによるいわゆる寡占という状態が形成されているわけでございます。
なお、明治二十年代には銘柄で百余銘柄、明治中期の社数で十数社のビール製造会社が当時はございましたのが今日の状態になっておるわけでございます。
-
○大塚喬君 このビール業界のこのような寡占の進行ということは、そういうことだけで解決つく問題でしょうか。一体この
酒税法というものの存在が、このようなビールの寡占を特に助けたというような、そういうことはお
考えになりませんか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君)
酒税法によりますところのビールに対する酒税は一律でございます。それから大体いま売られておりますビールの小売価格もほぼ均一のようでございますが、そういう税
負担によりましてこの寡占を招来したということは全然ないと思います。
-
○大塚喬君 じゃ、その問題の論議はこれからひとつ本気になってやることにして、ビールの値上げの問題が昨今新聞に報道されております。それで大手の卸業者がまあ十円値上げをしたという記事が出ておって、これは先ほど値上げが三月、四月に発表になったサッポロ、朝日を除く麒麟とサントリーの問題でありますが、この業者の値上げは、マージンの値上げですけれども、主税局はすでに
相談を受けておったのですか。それをもし
相談受けておったとすればオーケーを出したということになるわけですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先生御承知のように、ビールの価格はすべて自由価格がたてまえになっておりますので、その価格の設定あるいは価格の引き上げについて国税庁に
相談し、協議するということはございません。
-
○大塚喬君 どうもそういう答弁が出るだろうと思ったわけでありますが、現実に全国どこへ行っても、どこのメーカーのビールも全国一律、同額でございますね。そういう中でこのビールが自由価格ですと、こう答弁で逃げて済むようなそういう問題で、この卸業者がマージンを引き上げたと、こういうことになるものかどうか私は疑問であります。
で、ビールの価格体系についてお尋ねをいたすわけでありますが、まあ麒麟を
一つ例にとって、何でも国税庁はよく知っておると、もう特別に
関係深い間柄だというのでお尋ねをいたしますが、現在まで百六十円という、ビールの小売価格、一体その生産者価格は幾らで、卸価格は幾らで現状過ごしてきておったわけでありますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 現在百六十円のビールと百八十円のビールがあるわけでございますが、百六十円のビールについて申し上げますと、酒税が六十七円九銭でございまして、それからメーカー手取り額が五十四円七十一銭、それから卸が十二円、それから小売のマージンが二十六円二十銭と、こういうふうになっております。
-
○大塚喬君 私が聞いておるのは、そうすると、そのいまの答弁でどれが生産者価格になるんですか。生産者価格は幾らですか。それから卸価格が幾らですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) メーカー価格は五十四円七十一銭でございます。それに当然税金が加わるわけでありますから百二十一円八十銭ということになります。
-
○大塚喬君 卸価格はどうなんですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) それに卸価格が十二円加わりますから、百三十三円八十銭。
-
○大塚喬君 いまの数字は麒麟の生産者価格、それから卸のマージン、こう受け取ってよろしいわけですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 申し上げますと、麒麟の場合には価格のたてまえが、何といいますか、他の朝日、サッポロ等とたてまえがちょっと違っておりまして、麒麟の場合には生産者価格は——先ほど申し上げました百三十三円八十銭というのは、朝日、サッポロ、サントリーの卸マージンを含んだ生産者価格でございます。つまり二
段階制になっておるわけでございます。それで麒麟の場合には三
段階制でございますから、メーカーの価格しか決めませんので、これは百二十一円八十銭ということになります。
-
○大塚喬君 そうしますと、麒麟の場合は百二十一円八十銭、小売価格が百六十円、こういうことになるわけですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) そのとおりでございます。
-
○大塚喬君 そうしますと、この麒麟、それからサントリーの卸業、問屋が十円、六月二日、六月四日、六月七日と大手の問屋がそれぞれ値上げをいたすわけですね。この百二十一円八十銭という生産者価格、小売が百六十円という価格、この価格の中で、もう
一つ卸業者のマージンというのがどれだけになるかが問題
一つ残っておるわけですけれども、これはどういうことで卸業者のマージンが十円引き上げられなければならない、そういうことになったんですか、これは。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 実は今回の流通
段階での麒麟の価格の引き上げは、これは御承知のように生産者価格は変わっておりませんので、もっぱら流通のマージンが引き上げられることになったわけでございます。そこで麒麟麦酒につきましては、先ほど申し上げました価格に、卸の
段階でこれは今回二円五十銭のマージンの引き上げを図ったということでございまして、それに対応しまして小売の
段階で五円五十銭のマージンの引き上げが行われた、合計八円引き上げられた、こういうことになっておるわけです。
-
○大塚喬君 そこのところに、いよいよわからなくなってくるわけでありますが、麒麟の場合には生産者価格があって小売価格、二
段階ですね。違いますか。じゃ、そこのところをひとつもう一度聞かしてください。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 麒麟の場合には、生産者価格がございまして、それとは別に今度は卸のマージン、卸は生産者から仕入れたものに卸のマージンを加えてそれを小売に売るわけでございます。小売はそれに小売のマージンを加えて消費者に売る、こういう形になっておるわけでございます。
-
○大塚喬君 いまの答えは間違いありませんか。
-
-
○大塚喬君 麒麟の場合の流通体系と申しますか、そういう卸の価格というのがはっきりしておらないんじゃないですか。それで内口銭ということで、十二円なら十二円、それから業者に自社株を無料配付をして卸業者に礼をしておるという、そういう現状じゃありませんか。それから運賃料の
補助金を出して卸業者の利益を守ってやっておるという、そういうのとは違いますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先ほどから申し上げているとおりでございまして、株でという話は私ただいま初めて伺ったんですが、マージンを株式をもって充てるということは私聞いておりません。
それから御指摘のように、運賃補助の
制度はございますが、これは一応卸手数料とは別の形になっております。通常は、しかし、この二つを含めて卸の手取り額というふうにしばしば申しておりますけれども、形は運賃補助と、それから手数料とは別ということになっております。
-
○大塚喬君 どうもいまの答弁は事実とは違うと私は思うんですが、そうしますと、もう一度お伺いしますが、麒麟の生産者価格、蔵出し価格は幾らで、卸が幾らで小売店に入るのか、最終的に小売価格は百六十円というのは明白でありますから、そこのところは結構ですが、事実はそうではないと私は思いますけれども。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先ほどから申し上げておりますとおり、麒麟は製造者税込み価格、税込み販売価格、つまり卸に卸す価格でございますが、これは百二十一円八十銭になっております。それから卸のマージンは、これは運賃補助含めまして十二円ということになっております。
-
○大塚喬君 麒麟がそうなんですね。
-
○
政府委員(星野孝俊君) おっしゃるとおりでございます。
-
○大塚喬君 今度はその麒麟の流通政策についてお尋ねをしたいわけですが、戦後麒麟の流通政策というのは非常に厳しいものがあったと、これは業者から聞かされておるわけであります。それでその小売店の一揆というようなことも昭和四十三年、昭和四十四年、ずいぶん何度かあったようでありますが、いずれも厳重な本社の統制によって卸あるいは小売のマージンというようなものを規制してきたようでありますが、そうしますと、今回の卸業者の値上げ、これは麒麟のメーカーの方は、このことについては承知をし、その上で値上げをやらしたと、こういうことに
理解をしてよろしいわけですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 私どもの承知しておりますところでは、ビール価格は自由であるというたてまえから、卸が独自の判断で引き上げた、こういうふうに聞いておるわけでございます。
-
○大塚喬君 酒類全般に及ぶ価格問題ですが、そうしますと、自由価格であるというものが従来百六十円、今度十円値上げになれば百七十円、二十円値上げになれば百八十円ということになるわけですが、自由価格であるものがこのように戦後ずっと引き続いて管理価格と申しますか、値段が均一だということが引き起こされたのは一体どういうことが原因で、どのような手を打ってきたからこういうことになったとお
考えでしょう。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先ほど申し上げましたとおりに、ビール業界は決して、何といいますか、寡占によって競争を行っていないというふうな業態ではございませんで、むしろシェアの推移に見られますように、非常に販売面において積極的な販売競争が行われているわけでございます。しかし、御指摘のように、確かにビールの価格は皆同じように、百六十円というふうな同じようなものに一本化されているということでございまして、その原因でございますけれども、これは
一つには、ビールの価格が非常に、先ほど主税
局長からもお答えしましたとおりに、全体として消費者
物価その他の上昇率から見ましても非常に低い価格で設定されている。したがって、なかなか一本当たりの利益、マージンというものが非常に少ない。しかも、先ほど御
説明したとおりに、大規模な工場でもって大量生産をすると。そういうふうなことから、一本当たりの利益が非常に少ない。しかも、製造コストは大体同じようなものであるということで、価格競争の余地が比較的少ない、他の商品に比べまして。そういうことが
一つ言えようかと思います。
それからもう
一つは、品質の差でございますけれども、これがなかなかきき酒等をやりましてもしばしば大体これは当たらないというぐあいに言われておるわけでございまして、三社なり四社のビールをきき酒しましても、どれがどこの会社のビールであるかなかなか専門家でないとわからない、そういうふうな、
内容的にも余り差別がつきにくいような商品であると、そういうこともございます。
それからもう
一つには、やはり長い間統制価格の
時代を経ておりまして、その間、大変長い間単一価格になじんできたと。したがいまして、今日になりましてもなかなかその単一価格
制度から離れることがむずかしいと。そういうふうな幾つかの事情によりまして、価格が単一化する傾向にあるのだと
考えております。
-
○大塚喬君 そういうことだけで答弁をされたわけですが、現実にこのビール業界というのはカルテルということについてはどうですか、このような値段が均一だということについて。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 業界に対しましては、私ども、かねてからカルテルあるいはカルテルと誤解されるような行為、そういうことのないように厳重に慎むように常日ごろから注意し、指導しているところでございますので、今日までそういうカルテルのようなものはなかったと、このように信じておるわけでございます。
-
○大塚喬君 カルテルがなかったと、はっきりこう断言できるわけですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 実質的にカルテル行為があったかどうかという最終的な判断は、実は国税庁の所管ではございませんので、これは私ども最終的な断定はできませんけれども、先ほど申し上げましたように、常日ごろからそういうことは厳重に注意するように指導しておりますので、そういうものがなかったものと信じております。
-
○大塚喬君 この問題は、後刻公取にもひとつ出席を願って、突っ込んだ質問をしなければならないと思いますが、私は、具体的なひとつ例でこの問題の事実
関係の有無をもう少し明らかにさせてほしいと思います。
昭和四十三年、一本このときには百二十円だったものが、税金が先に上がったわけでありますが、そのときに、その口火を切ったのはサッポロビールであります。これが百二十円から税金七円、それからマージンが三円上がって百三十円になったわけであります。で、このときは、サッポロが上げた、それから朝日が上げた、サントリーが上げた、麒麟が上げたということで、あっという間に一週間程度で全部上がったわけでありますが、この事実は、そういう
関係を全く疑いを残さない、こういう値上げの
方法でありますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 四十三年のケースでございますが、私どもとしては、その場合におきましても談合等の事実があったとは聞いておりません。
-
○大塚喬君 このときは、理由は、原材料費、人件費のコストアップということで値上げになった。で、その次に上がったのが百四十円になった昭和四十五年十月であります。このときのトップバッター、火つけ役は朝日がなりました。で、その次の今度は昭和四十八年十一月、それから今回の値上げをずっと調べてみますと、どうもバッター順が決まっておる。ローテーションが決まっておって、かわり番にずっとやってくる。それで今回は三月に上げた、四月に上げたということですが、まだ、小売マージンだけ上げて、メーカーの方は値上げを認めないようでありますけれども、これもできるだけがんばるということでありますが、どこまで持つものやら、やっぱり同じようなパターンが繰り返されて今回も全部メーカーが値上げになると、こういう予測が強いわけであります。こうなってきますと、一体このビールの値上げというもの、指導監督の厳重な国税庁が、私は、
政府の
物価安定というような
施策とは離れて、どうも臭いなという、こういう感じを、事前の了解を与えておるなというような感じがするわけでありますが、ローテーションが決まって、業者が一斉に次々にごく短期間の間に値上げをする、こういう問題については一体どのようにとらえておいでになりますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) たとえば、今回朝日麦酒、サッポロビールが値上げに踏み切っておりますけれども、この間の事情について申し上げますと、実は一昨年の秋以来、いわゆる石油ショックによる諸
物価の高騰があったわけでございますが、御承知のように、朝日麦酒は一昨年の十月に価格の改定をしたわけでございます。その後、いま申し上げたような石油ショックがございまして、原材料を初め諸
物価が非常に上がったと、加えまして、人件費も昨年相当アップしたと、こういうことで、実は大変採算が悪くなってきて、価格を改定しなければならないという動きが出てきたわけでございますが、私どもとしましては、そういう確かに石油ショックによってコストが非常に高くなってきていると、そういう事情は十分認識できるわけでございますけれども、非常に厳しい
物価情勢の折でもございましたので、どうかひとつ万全の企業努力を払って、コストアップをできるだけ回避してほしいということを強く実は要請してまいってきたわけでございます。しかし、企業の側では、その私どもの要請を受けまして、実は広告宣伝費その他のコストにつきまして相当大幅な合理化努力をしたわけでございますけれども、なおかつ最近になりまして、どうしても採算がとれないということで、去る三月七日に朝日麦酒が価格の改定をしたわけでございます。同様の事情がやはりサッポロビールについても、原価事情あるいは人件費の事情等はほぼ同様な事情があったわけでございまして、そういう
関係で四月の四日にサッポロビールの価格の改定が行われたわけでございまして、これはやはりそういうコストアップという要因は、これは各社共通にあるわけでございますから、その結果として、ある一定の期間を置いて、たとえば朝日とサッポロが出たということになるのでありまして、それはあくまで結果でありまして、事前にそのことについての談合等があったというふうには私ども
考えていないわけでございます。
-
○大塚喬君 そうすると、この値上げについては指導してきたと、かかわり合いがあったということをお認めになったわけですね。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 私どもは、価格の引き上げを回避するように、できるだけ企業努力によって価格の改定を回避するようにという
意味で、業界の協力を要請してまいったわけであります。
-
○大塚喬君 そうすると、協力を要請して、効果はなかったと、国税庁の指導というものは馬耳東風、受け流されて何の効き目もなかったと、こういうことになるわけですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先ほどから申し上げておりますとおり、実は昨年の秋からこういう話があったわけでございまして、それを私ども要請しまして、まあ三月——朝日麦酒について申しますと、三月までは業界の方の協力が得られたわけでございますが、やはり業界、企業の方も経営事情もございますので、行政指導の限界と申しますか、私どもとしては行政指導をしてまいったんでございますが、企業の経営収支上からやむを得ず価格の改定が行われたと、こういうことでございます。
なお、御承知のようにサントリー、麒麟につきましては現在まだ価格改定が行われておりません。私どもはやはり、原価事情という事情はわかりますけれども、これらの二社につきましてはなお引き続き協力を要請しておる
段階でございます。
-
○大塚喬君 まあ、国税庁というところは大変おっかないところだ、税務署の役人というのは、一番おっかないところだと、こうふだん世間から見られておるわけであります。で、さっきも申し上げたように、製造から販売まで一切合財監督権、免許ということで首根っこを押さえておる国税庁がやっても、このメーカーの値上げというのは抑えられなかったと、こういうことになるわけですね。
ところで、私は、実は各メーカーの有価証券報告書というのをいただいて一応
検討をいたしたわけでございますが、ここの中で、資産のふえ方、それから内部留保、引当金、こういうふうなものを見ますと、どう
考えてもいま即座に値上げをしなければならないというのは、なかなか私には——見方か不十分なのかもしれませんけれども、そういう見方がどうもできかねます。ところがささっと値上げをしてしまう。一番おっかない国税庁の役人が指導してもだめだと、こういうことになれば、私どもはまずこれはどうしたらいいのか大変迷ってしまうわけでありますが、その指導の仕方というようなものが何か
国民に、国税庁は値上げをしないように指導をしておるんだと、こういうゼスチュアだけのような、スタンドプレーをやっておると。いままでの、四十三年、四十五年、それから四十八年、五十年という値上げのやり方を見ますと、表向きはともかく抑えるというようなことをやって、内心ではもう意が通じ合ってて、以心伝心、キャッチボールをやっている間に時が過ぎてぱっと上げてしまうんだと、そういう感じをするわけですが、本気になって一体このビール値上げの問題について国税庁は業界を指導して現在に至っておるんですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) おっしゃるとおりでございまして、私どもこのビール業界につきましては真剣な気持ちで対処しておるつもりでございます。
なお、先ほどの御質問で即座に御返事ができなかった点がございますので、これをこの際補足さしていただきます。
昭和二十四年、企業分割当時のビール各社のシェアでございますが、麒麟麦酒が二五・三%、それから朝日麦酒が三六・一%、日本麦酒が三八・六%、以上でございます。
-
○大塚喬君 今回のビール値上げということになるわけでありますが、ビールの税金、一体よその国と比べて日本のビール税の
負担はどんなぐあいですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) わが国のビールの税
負担は確かに諸外国に比べて高い水準を持っております。先ほども御
説明いたしましたように、わが国では約四二%ぐらい現在の
負担でございますけれども、外国では二割前後というのが実情のようでございます。
-
○大塚喬君 他の国が二割前後ということで見ますと、日本の場合は二倍以上、はるかに高い税率を
負担をすると。で、私がそういう税率について不満を申し上げますことは、それらの国々の所得水準、それから社会福祉政策、こういうものと関連をして、日本は決して進んではおらないと思います。それなのにこのような大衆飲料化した、消費量が拡大しておるビールをこのように値上げをするということについて、日本には何か特殊なそういう値上げをしなければならない理由があるのでしょうか、いかがでしょう。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) それはいまお示しのように、わが国におきます社会生活事情と諸外国におけるそれとの違い、またその中におきますところのビールの消費の態様というものがまだまだ差があるというふうに私ども
考えております。と申しますのは、先ほど二割前後の
負担率を持っておりますと申しましたビールが、それらの国におきましてはかなり実は酒よりはいわゆるソフトドリンクの方に近いような印象を持たれております。ところが、これに反しましてわが国においてはまだまだ生活水準がいまおっしゃいましたようにそれほど高くない、その中におきましてビールといいますのはやはりまだ朝から飲んでいる、昼から飲んでおっていいかというと、どうもその国の消費の態様と比べてみますとまだまだ違っておるようでございます。これはまあビールが輸入されましてから、かなり高級な飲料としてわが国の消費生活の中に入ってきた、しかもそれが、かなりだんだん家庭生活の中には入ってきておりますけれども、しかし何といいましてもその消費のかなりの部分といいますのは、やはりわれわれ一般的にお酒の税金を
考えます場合には、高級酒を消費するような態様として飲まれておる部面が非常に強いわけでございます。そういう観点から私どもは、こういうビールの酒税というものを、ビールを飲まれる方には
お願いをしておるわけでございます。
-
○大塚喬君 いま日本のビール税の問題、これはまあ低いから上げろということになってるんだと思うんですが、諸外国のあれが二〇%という平均は、一体どこの国の実例ですか、それは。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) たとえばアメリカでございますと一九%から一八%ぐらいでございます。フランスで申しますと一七%ぐらい。西ドイツで申しますと二〇%から一八%ぐらい。イギリスで申しますと二三%から二五%ぐらい、こういうような数字になっております。
-
○大塚喬君 西ドイツやフランスがそんな高い数字で、それは何年の数字ですか。もっとはるかに安いんじゃないですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 年数は、実は正確に千九百何年と申し上げられませんけれども、一番最新の資料でとったわけでございます。それで、それらの国におきましては、アメリカは付加価値税という形でございませんけれども、州の売上税という形でございまするが、ヨーロッパのイギリス、西ドイツ、フランスにおきましては酒税のほかにさらに付加価値税をもちろん
負担をいたしておりますから、そういうものも合計をいたしまして、先ほど申しましたような数字に、税
負担になるわけでございます。
-
○大塚喬君 そのビール値上げ、酒税値上げに不満という立場でよその国との比較をお聞きしたわけなんですが、いまの数字はどうも正確な数字とは、ちょっと私が調べたものとはずいぶん違いがあるものですから、これは後ほど何年の税率で、その出典が、何から一体そういう答弁をされたものか、ひとつ後ほどこれはぜひ明らかにしていただきたいと思います。
それから、蔵出し税
制度の問題について、これは寡占と
関係ある問題ですのでお尋ねをいたしますが、造石税からこの蔵出し税に変わったのはいつでございましょう。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) わが国は明治二十九年から酒税を取っておりますが、ずっといわゆる造石税でございました。昭和十五年に——いままで造石税一本でございましたのに、蔵出し税というのを併課いたしました。さらに、十八年からは、その併課いたしました蔵出し税の中で、現在のような級別に類した一級から四級までの税
負担の差をつけましてやってまいりました。十九年には、昔の造石税を廃止をいたしました。蔵出し税一本にいたしました。昭和二十八年から今日のような課税
制度になっておるわけでございます。
-
○大塚喬君 この蔵出し税にいま変わった理由、もう少しはっきりお聞かせいただきたいことと、この蔵出し税というものについて実際どういう適用の仕方をしておるのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 蔵出し税と言いますのは、実は今日の酒税の取り方と大体似ておるわけでございます。製造場から出ましたときに、その量に応じまして決められた税額を取るということでございます。むしろ違いますのは造石税でございまして、昭和十五年までに取っておりました造石税はお酒が造成をされました
段階で税金を取るわけでございます。したがいまして、そのときにいろいろ問題になりました点は、
一つには造石税、造石のときに取るわけでございまするから、現実に清酒であれビールであれ、そのお酒が蔵を出まして売られたというまでの
負担をしなきゃなりません。その間の金利
負担がかなり蔵出しの時期によって違ってくるということが
一つでございます。
それからもう
一つは、特に清酒に多かったんですけれども、造石いたしましたときには、ある一定、差は少しございましたけれども、かなり高い度数でもって課税をされますけれども、現実にそれが蔵を出、消費者の手に小売り店を経て渡りました
段階では、また度数が違っておるわけでございます。いわゆる割り水が行われるわけでございますから、現実には造石税として納められました税金と、消費者が小売店で買ったときのそのお酒の中に含まれる税金の
負担がかなり違っておった、むしろその
負担は、いわゆる高級酒について割り安でございましたから、そういう点が問題である、主としましてはこの二つの難点が指摘されておったわけでございます。
-
○大塚喬君 その税の納め方はどういう仕組みになっています。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 造石税につきましては、たしか年四回決まった時期に納めておりましたから、先ほど申しましたような実際に売り上げとなって入ります時期との差によってそれぞれの業者の金利
負担が違ってくる、そこに
一つの難点があったわけでございます。
-
○大塚喬君 蔵出し税、どういう仕組みで……。
-
-
○大塚喬君 そうしますと、きょう出したとすればきょう税金を納めるわけですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) それは今日の酒税におきましても、きょう出しましたものをきょう納めるわけでございませんで、今月中に出荷、製造場を出ました酒税は、来月末までに申告納税をしてもらうたてまえでございますし、場合によりますれば、さらに一カ月納税の猶予を受け得る、こういうたてまえになっております。
-
○大塚喬君 そうしますと、
原則として税金は——届け出は、きょう出荷をしたと、こういうことになればその届け出は翌月、七月末までに届け出をすればいいと、こういうことになるわけですか。
-
-
○大塚喬君 それだけですか。それでもう七月の末には納めるわけですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 七月に申告をし、それに対応する税金を納めてもらうのがたてまえでございますけれども、先ほど御
説明いたしましたように、もう一月間納税の猶予を受け得る途も開かれているわけでございます。
-
○大塚喬君 私がもう少しそこをお聞きしたいことは、そうしますと、最近のビールメーカーの代金回収期間の平均は一体どの程度になっております。
-
○
政府委員(星野孝俊君) これは各社によってそれぞれ若干の違いがございますが、平均して約五十日程度になっております。
-
○大塚喬君 平均して五十日ということになれば、今月に出荷した、そうすると平均して十五日間——月の初め、月のおしまいかありますけれども、平均して十五日間そのいわゆる出荷の際の蔵出し税が延びるわけですね。それで七月いっぱい一カ月間それは届け出を猶予を認められておるわけですから延びる。それからその次も延納する期間が認められておるということになれば、合計して平均七十五日間延納が認められる、こういうことになる。それで、平均してということですが、一体、その業績のよろしい麒麟は一体平均どのくらいの延期が認められる、代金回収期間は平均どのくらいになっていますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) その月々によりまして多少違いますが、四十二、三日から四十四、五日ぐらいでございます。
-
○大塚喬君 そうしますと、麒麟の有価証券報告書によれば、これの百三十五期、昭和四十九年七月三十一日現在で見ますというと、酒の税金は一千三百五十八億円、それから百三十六期、これは昭和四十九年八月一日から五十年の一月三十一日まででありますが、このときの税金は二千六十五億円。そうしますと、この税金の延納ということで七十五日間認められる、実際は四十二日間で代金が回収になる、こういうことになりますというと、三十三日ぐらい税金の運用利益が出てくるわけですね。このような膨大なお金が実際に月八%ということで計算すれば、この運用利益だけでも年間に十六億かそこら程度ぐらい、少なく見ても出てくるのではないか、こう
考えるわけですが、これは事実このような運用利益が生じられるような仕組みでこの延納
制度、蔵出し税
制度というのが現行とられておるわけですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) いまお尋ねの麒麟がどういうような支払い条件になっておるかと、個別にこの
制度というのはしんしゃくするものでございませんで、たとえば酒類全体につきまして一体どのような支払い条件になっておるかというようなことから判定をいたしまして現在の納期限の延長
制度というのが設けられておるわけでございます。したがいまして、
酒税法の三十条の六をごらんいただきましても、格別に個々の支払い条件ということに着目をいたしませんで、むしろ担保を提供いたしましたならば、しかも、期限内に申告をいたしましたならば、一律にそういう納期限の延長を受け得るというようなシステムでございます。現にいろいろ支払い条件というのは、個々の企業あるいは個々の酒類あるいは時期によって相当の変動がございます。そのたびごとにこの納期限の延長
制度というのを認めたり認めなかったりするというのもいかがかというようなことから、今日こういうような
制度をとっているわけでございます。
-
○大塚喬君 時間がちょっと中途半端になって少し戸惑っておるわけですが、ビール会社の値上げの問題について、
酒税法という法律の中で二重三重の恩典を、恩恵を与えておる。そういう中で、昭和四十三年のビール値上げ以来、監督が
大蔵省主税局か国税庁かどうかわかりません、あるいは業界のトップメーカーである麒麟というメーカーが監督になっておるのかどうかわかりませんが、ともかくオーダーを決めて、同じようなパターンで値上げが繰り返される。そのことに関して国税庁、それほど厳重な指導監督下にある業界に対して一言も、うんもすんもない、こういうことについて
国民が不満がある。しかも、その経営の
内容というのは、それぞれ見てみますというと、決して悪いものではなくて、他の業界から比べてきわめて有利なビール業界がもう定例行事のような形でどんどん上げる。それについて国税庁や何かは行政指導するということを言っておりますが、実際は
国民の目をそらす、こういう効果だけしかなくて茶番劇を繰り返しておる、こういう感じがするわけであります。
で、私はひとつ率直にお聞かせいただきますが、これらの業界、まあすでにサッポロ、朝日が値上げをしてしまったわけでありますが、問題の麒麟ですが、一体その麒麟麦酒の値上げを
大蔵大臣はお認めになりますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先ほどもお答え申し上げたわけでございますけれども、ビール各社の経営
状況について申し上げますと、一昨年以来の諸
物価の高騰等がございまして、それで今日までこれを企業努力で耐えてコストの軽減に努め、価格の引き上げを避けてきたわけでございますが、さきに申し上げましたとおりに三月と四月に朝日とサッポロが価格を改定したわけでございますが、なお私どもはその際にも、コストアップの事情はなるほど同じような事情でございますけれども、やはり各ビール会社それぞれ
状況も異なりますし、経営
内容も異なりますので、この価格の問題については自主性を発揮して、他のビール会社が価格を改定したから自分も追随するというふうなことではなしに、あくまでも慎重に対処してほしい旨申し入れしてございます。したがいまして、今日に至りましても麒麟、サントリーは価格の改定はまだ行われていないわけでございますが、ただ申し上げられますことは、先ほどからるる申し上げておりますとおりに、今回の値上げの要因がほぼ各社共通の原材料費を中心とし、あるいはまた人件費を中心とするコストの増加でありますので、そういう
意味においては各社とも皆原価事情が悪くなっているわけでございまして、そういう事情でありますので、かつまたビールの価格は自由価格でございますので、経営事情を無視してまでその値上げを押さえているということはこれ行政上問題があろうかと思いますので、この辺は私どもとしても行政の限界というものは
考えておるわけでございますが、今後ともなお麒麟につきましては企業努力を要請してまいっておるところでございます。
-
○大塚喬君 業界のいろいろの新聞や雑誌などの報道を見ても、麒麟が業界の最高の優良企業であるということだけはこれはどなたもお認めになる。現在企業努力というようなことでそれぞれ努力をされておると思いますけれども、いま現在で麒麟、これがビール値上げの必要性ということについては、私は現在ではともかくそういう必要の
段階ではないのではないか。この自由価格ということですが、一切国税庁の方に
相談なしにフリーハンドでこれらの値上げというのは現在実施をしておるわけですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先ほどから申し上げておりますように、価格の決定は企業が自主的に行うことになっております。
-
○大塚喬君 そうするとどんなにもうかって、どんなに内部留保を残し、引当金を残し、不動産をどんどんふやしても、そういうものについて値上げをする場合に国税庁は何のタッチもしないで値上げを認めると、
国民生活というようなものはもうお構いなしだと、
国民不在のそういう行政を国税庁は進めるというお
考えですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) たてまえは自由価格でございますから、おっしゃるように価格の決定は会社でできるわけでございますが、しかし、現実にビールのような、何といいますか
国民全般に愛用されている、そういう商品は、消費者を無視して勝手にいいかげんの値上げをするというふうなことは、事実問題として許されないわけでございまして、ビール会社の首脳部におきましても、その辺のところは十分に認識しておるわけでございますから、仮に価格改定が行われるとしましても、それはあくまで合理性の認められる
範囲で、しかも最小限度のもの、こういうことになろうかと思います。
-
○大塚喬君 そうなりますと、これは少し寡占との
関係が残ってくるわけでありますが、
大蔵大臣に今度はひとつ答弁願いたいんですが、このようなビール業界の寡占状態、先ほど理由をお聞きしたわけでありますが、どうもはっきり私は把握することが残念ながらできませんでした。長期展望に立って、私はこのような業界というのは収益の最も低いメーカーに基準を合わせて、そしてそれをダシに使って他のもうかっておる業界というのが同じ百八十円、あるいは今度税金込みで百九十五円と、こういうことになる。もう他方には
硬直性があって値段を下げることは、自由価格だ、自由価格だと言ってながら、実際に現実には
一つも一社でもビールが値下げされた、安く売られたというようなことは聞かない。生協やなんかが値下げをしたということになれば、地方の税務署が寄ってたかって袋だたきにして値下げをさせない、こういうことが現実に国税庁がとっている行政の実態であろうと思うわけであります。このような寡占状態がどんどん進んでいく、このようなビール業界について
大蔵大臣として、長期の展望に立って一体いいのかどうか、ひとつ
大蔵大臣の最後に所見をお聞かせいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) ビール産業も、わが国の産業といたしまして健全な発展が期待されてしかるべきものと私は
考えております。私ども酒類業界の指導監督を任務といたしておる者でございまして、先ほどから大塚委員からいろいろな角度から御
質疑を浴びたわけでございますけれども、酒類業界全体といたしまして、ひとりビール業界ばかりではなく、わが国の全産業の中で堅実な
運営に御精進いただいて、一兆円を超える租税の
負担にも御貢献をいただいておるわけでございまして、私は、
大蔵大臣という立場で、酒類業界全体に対しましては評価もし感謝もいたしておるものでございます。
それから、価格の問題でございますが、ビールの値段が高いか安いかの問題でございます。私は、われわれが鋭意生産から末端の販売に至るまでいろいろ監督もし、行政指導もしてまいって、これは長い過程を通じて、明治、大正、昭和にわたって、これはわれわれがやっておるわけでございますけれども、それで相当実績を上げておると思うんです。駅弁のお茶を召し上がっても、大塚さんも御承知のように、一杯のお茶を召し上がっても、二十円とか三十円とか言われておるわけでございます。しかも、こちらは約五〇%に近い税金を
負担しておるビールでございます。あれだけかさの張る品物、しかも、あれだけの租税をしながら、あれだけの価格ですみずみまで行き渡って消費していただいておりますことは、私はそれなりに角度を変えて評価していただいても差し支えないんじゃないかと実は
考えております。
しかし、いまあなたが言われた寡占問題というのは非常に深刻でございまして、たしか麒麟は、私どもが
大蔵省におりましたころ二六・七%ぐらいのシェアだったと思います。それがいま六二・六%というシェアにまで上がったわけでございますが、特にわれわれが酒類行政を通じて麒麟にフェーバーを与えた覚えはございません。結局、麒麟といたしましては、それなりの努力をされた結果今日のシェアを築き上げられたと思うのでございます。それは悪であったかと言いますと、私は決してそれは悪と言えないんじゃなかろうかと思うんです。麒麟が不当な行為でもってシェアをふやしたんならともかくといたしまして、フェアな条件の中でかせいでまいったということに対して、私は一概にこれは悪とは言えないのではないかと思うのでございます。麒麟と競うところの各会社がそれぞれ能率を上げていただきまして、いろんな原価要素を吸収していただいて、価格が押し上げられないような
状況をつくっていただくことは大切だと思います。その中で一番船足の遅い企業体のところには下方
硬直性を持っておるじゃないかということでございますが、それはひとりビール業界だけじゃございません。寡占的事業と言われる産業には皆同じような法則が働いておると思うのでございまして、どこで線を引くかということは産業政策上私は非常に重要な問題だと思うのでございます。わが国の消費の
状況から見まして、どこまでがわが国のビール産業が許されていいかという、これまた大きな課題になると思うんでございます。いまわれわれといたしましては、
国民の需要にこたえるビールの生産を四社に免許いたしておるわけでございますが、これをふやそうとは
考えておりませんが、いまこの中で一部を御遠慮いただこうというところまで、そんな
考えも持っていないわけでございます。それぞれの業界がそれぞれ良識を持って自由価格体制、体系の中で分別を働かして現行法制の中でやっていただいておるわけでございまして、特にどうしても黙過できない、見過ごすわけにはまいらないという
状況であると私はいま
考えておりません。
-
○大塚喬君 一言だけ。突っ込み足らないのを大変遺憾に思いますが、答弁の
趣旨というのは、酒税保全ということで、あらゆるものが目をつむられてきてしまっておると。その中には、結果として残るものは消費者不在、
国民不在、こういうことでビールの値上げ、酒類の行政というのが行われておる、こういうことを痛感するわけでございます。きょうは割り当てられた時間がございませんので、その問題については後ほどひとつ機会をつくっていただいて、清酒それからウイスキー、こういう問題の中でもう少しひとつ突っ込んだ討論をさしていただきたいと思います。
-
○鈴木一弘君 きょうは
酒税法の問題について伺いたいと思いますが、最初に全般的な問題として、まず昨行十月この
委員会で日本酒の——きょうは特に日本酒について伺いたいのですが、日本酒の表示の問題について、消費者をごまかしたような表示が問題になっておる。こういう点で質問をいたしました。そのときに、日本酒のおけ買いの問題について、一〇〇%産地のものでなければ、灘とか伏見とかという表示をしてはならない、こういう
意味の答弁を国税庁長官はしているのですが、おけ買いのものが混合されているかどうか。そういう点についても表示をするべきではないかという、こういうふうに思うのですが、その点はいかがでございますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 御質問のように、今回日本酒造組合中央会の方で策定しました表示の自主基準によりますと、おけ買い酒を混合した場合には、たとえば灘の生一本というふうな、そういう産地を表示できないというふうになっておるわけでございます。そこで、御質問のおけ買いをした場合はしからばどういうふうにしたらよいのか。何か明示する
方法がないかということでございますが、現在中央会ではこの問題につきましても
検討中でございまして、たとえばおけ買いをしない場合には、〇〇株式会社醸造というふうな醸造場というふうな名称を使ってはどうか。おけ買い酒が入っている場合には株式会社〇〇製造ということで、製造場を明示するというふうな形で区分する。そういうふうなことを現在公正取引
委員会の方の指導のもとに中央会の方で
検討中でございます。
-
○鈴木一弘君 いま全国で醸造業者は何軒ありますか。全国で酒造業者は何軒ございますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 三千百二十八でございます。
-
○鈴木一弘君 その中で八〇%程度がおけ売りをしているのじゃないですか。おけ売りしている程度はどのぐらいございますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) おけ売りの程度にもいろいろございますが、多少なりともおけ売りをしているという業者を含めまして全体で七六%がおけ売りをしておることになっております。
-
○鈴木一弘君 昭和四十八
年度では清酒の製成量百四十七万キロリットルのうち五十二万キロリットルがおけ売りに流されておる、こういうことを言われておりますけれども、それでよろしいですか。
それから、いま
一つは、そういうように売られて、大体の酒がおけ買いの酒を入れて出されているとすれば、当然表示が必要だと、こう思わざるを得ないのですけれども、その辺がどうか。二つですね。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先ほど申し上げましたように、おけ買いをした酒を混和して製造した場合、何らかの形でそれを表示する
方法がないかということで現在中央会で
検討しているところでございます。
-
○鈴木一弘君 中央会でやっていらっしゃるのはわかりますが、その表示、いままでも自主基準として示してきたのは、原材料の明記とか、製造
方法の表示、この掌握はどういうようにしておりますか。どういうふうに実施して、どうやっているという掌握はどこでなさっておりますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 現在は自主規制でございますから、特にそのための監視員とかそういうことはございませんけれども、体制としましては中央会でその辺を掌握することになっております。
-
○鈴木一弘君 これは消費者の立場から言うわけじゃありませんけれども、まるまる灘の酒だと思っていたら、とんでもない、滋賀の酒が半分以上入っていたなんということもこれはあり得るわけでありますから、そういう点で、全面的に業界かそのまま、いま言われたような自主基準だけで信用できるかどうか。消費者からすると、それならそれでもいいけれども、先ほど答弁があったように、製造と醸造と書いて、醸造は一〇〇%で製造はまざっているという、こういうまぎらわしいことじゃならないだろうと思う。製造元の酒造メーカー、それから混入しているところはどこからということぐらいは入れられてもいいのではないかという、そういうはっきりしたことをやるのが当然だと思います。しかも、公正取引
委員会でもこういう問題について、製造
方法の表示がわかりにくいとか、おけ買い表示の必要性とか、こういう点については非常に原材料のすべてをあらわす点等について不十分な点が多いという指摘もあるようでありますので、その点について、これは強化をさせなければならないと思うのですが、その点についてはどうお
考えでございますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) おけ買いをしてブレンドした酒につきまして、それぞれおけ売りしたメーカーの名前を表示するということになりますと、実は必ずしもブレンドは一社からおけ買いして、それと自社のものと二つを必ずしもブレンドするという場合だけではないのでございまして、場合によっては何種類かの、あるいは幾つかのおけ売りメーカーから購入した酒を自社のものとブレンドする、そういうこともあるわけでございまして、そうなると、ただいまのお話のようなことになりますと、おけ売り会社名をずらっと書かなければいかぬというふうなことにもなりかねませんので、中央会の方では、ただいまのところ、そこまでの
検討は進んでおりません。しかし、御指摘のように、幾つかの問題点が消費者団体の方からもいろいろ提起されているわけでございます。それらにつきましては、現在中央会でも決してこれをなおざりにしているわけではございませんで、
検討中でございます。そしていずれ現在の自主規制は近い将来に公正競争規約に移行する、そういうことになろうかと思いますので、その際にもし改善すべき点があるならば、あわせてそれを取り入れた上で新しい規制を
考えたい、このように
考えておるところでございます。
-
○鈴木一弘君 次は、これはいつもいつも問題になることでありますけれども、酒類の販売の免許
制度の問題、
酒税法第十条第十一号ですか、「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の製造免許又は酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合」と、こういうように免許を受理しない、こういうのがあがっております。いままで、この理由によって免許が出なかった件数というのはここ三年間ぐらいでどのぐらいあったんでしょうか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 具体的にどの条件に該当するから免許しなかったという細部はわかりませんけれども、申請がありまして、その申請に対して免許を拒否された件数を申し上げますと、四十六年が、小売免許でございますが、六百四十四件、四十七年が六百四十件、四十八年が五百二十件、こういうことになっております。
-
○鈴木一弘君 三年間、四十六年から四十八年までで合わせて千八百件という数になります。一年間大体六百件ずつ許可されておりません。これは理由は、酒税の保全上ということなのか、需給の均衡ということなのか、どちらが理由になっておりますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 需給の均衡のためでございます。
-
○鈴木一弘君 酒の税を取るためには問題はない、需給のためであると……。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 申し上げますが、酒税の保全のための
一つの条件として需給の均衡を図るということが免許法の要件の
一つに規定されているわけでございます。したがって、当然酒税の保全が目的でございます。
-
○鈴木一弘君 許可されたのはどのぐらいあるのでございますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 四十六年から申し上げますと、四十六年が三千六百七件、四十七年が三千三百八件、四十八年が二千七百六十五件でございます。
-
○鈴木一弘君 大体二割くらいがいま許可をされなかったわけですけれども、こういうように免許
制度というのを引いている理由は、排除する理由の方ははっきりと法律の上にありますけれども、私伺いたいのは、それじゃなぜこれを免許
制度にしなきゃならないかということです。その理由について伺いたいと思います。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 販売業の免許
制度をとりましたのは昭和十三年でございますけれども、そのときの以前もかなり酒税
負担は重うございましたが、十三年、支那事変を契機にいたしまして、かなり増税の機運になってまいりました。その
負担に耐えてもらう、酒類で酒税の保全を図らなきゃならないという要請が非常に強かったわけでございます。そういった
事態は今日においてもなおやはり続いておると思います。
先ほど来いろいろ御批判がございましたけれども、やはり私もまだ酒税の
負担というのは
財政上かなりのものを
お願いをしておると思っておりますが、そういうもの、そういう酒税を保全するためには、販売業者におきまして過当競争をやられますと、経営上どうしても乱売ということになりかねない、そういうことになりますれば、やはり売り掛けというものについての確保の道が十分講ぜられないというおそれはございます。それがひいてはだんだんさかのぼってまいりまして、卸、メーカーというものの売り掛けの確保、したがいまして、酒税の確保ということについて非常に支障を来すおそれがございます。そういう観点、酒税の保全上需給の均衡ということがやはり非常に大切な要件でございますので、そういう観点から免許を付与します場合には考慮してもらうことになっております。
-
○鈴木一弘君 製造の場合はどういう理由でございますか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) メーカーの免許につきましては、一層そういった要請が強いわけでありまして、みずからがやはり税金を納める納税者になってもらうわけでございまするから、そういう酒税保全という要請は一番強いわけでございます。かたがたそういう酒税というものを担いますものにつきまして、やはり相当の技術、経験ということも必要でございますので、免許
制度は昔からとっておるわけでございます。
-
○鈴木一弘君 それでは、酒類等の販売について免許が受理される場合は、どういう条件を満たしているときに許すのですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 酒類の販売免許につきましては、法律に基づきまして実施しておるわけでございますが、その具体的な許可行政の細部につきましては、国税庁長官の定めるところの取り扱い基準がございまして、その基準に従いまして免許行政をやっておるものでございます。
-
○鈴木一弘君 それでは、その取り扱い基準を具体的に示してくれませんか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 非常にこれは、文章で書いてありまして、長いものになっておりますけれども、要約して申し上げますと、
一つは、人的要件といいますか、そういうものがございます。それからもう
一つの要件としましては、需給調整上の要件というのがございます。それからもう
一つ、一般免許要件としまして、個人の資力とか、あるいは資産の
状況とか、そういうふうな基準がございます。それからなお、距離基準というのがございまして、一定の距離間隔を置いて許可をする、こういうふうなことになっております。
-
○鈴木一弘君 これはただそれだけでは、かなり細かい
内容のようですから、これは資料として
委員会に出していただきたいのです。基準の一覧表を。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 後ほど御提出申し上げます。
-
○鈴木一弘君 それから後でまたいまの基準
内容については質問したいと思いますが、いままでの答弁から伺っていると、酒類の製造販売の免許、これは
一つは、やはりどこまでも酒税の確保、保全、これが最大の目的、製造の場合もそういう御答弁でした。まさか密造云々ということじゃないだろうと思います。そういう点から見るというと、どうしても既存業者というものを守っていくということになりやすい。そういう点でひとつぜひ参考に伺いたいのですけれども、諸外国の場合の酒類の製造販売の許可、営業権、こういうものはどうなっているのでしょうか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 酒といいますのは、やはりアルコール飲料でございまして、いろいろ社会生活上の平安ということを確保するために、各国とも非常にこれについては関心を持っておるようでございます。したがいまして、販売免許につきましても各国は免許
制度をとっておるようでございます。
-
○鈴木一弘君 ただそれだけじゃわかりにくいので、これも資料をまとめて出していただきたいのですが。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 私どもの手元でわかります限りの国につきまして資料を御提出申し上げます。
-
○鈴木一弘君 じゃ、その問題の質問は保留します。
ひとつ関連して、先日、四月三十日の日に、薬局、薬店の開業について距離制限を決めた薬事法の規定、それに対して最高裁判所の判決が出ております。これは薬事法のいわゆる距離制限の規定ですね。それは憲法二十二条に違反をする、つまり職業選択の自由違反であるということから、そういう判決がされ、現在厚生省ではその薬事法の改正を準備中ということを聞いておりますけれども、この最高裁の違憲判決は、酒類などの販売についても距離制限がある、そういうことから見ても、憲法二十二条との関連から重大な問題が出てくるわけです。私はそう見ているのでございますが、
大蔵大臣、お
考えはいかがでございましょうか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 薬事法の免許につきましての最高裁の判決につきまして、私ども勉強中でございますけれども、そこに展開されております論旨は、やはり薬事法の免許といいますものは、薬局の経営の保全ということをねらいとしておるようでございます。経営が乱れますれば、そこでどうしても不良医薬品を販売する。不良医薬品を販売するということは、
国民の保健上非常に問題があるということで、距離制限等の免許基準ができておることについては、いまおっしゃったような難点があるということのようでございます。
そういうことに関連いたしまして酒税の方を
考えてみますと、先ほど来申しましたように、たとえば酒類販売業者の免許につきましては、酒税の保全上、酒類の需給均衡ということを非常に重視いたしておりますのは、ひとえに酒類販売店の経営というものがかなりバランスよく安定しておらなければ、酒税が保全できないということでございます。ややその点は、薬局の経営の不安定さが不良医薬品の販売、ひいては
国民の保健につながるということとは違いまして、経営の不安定は、即売掛金回収の不安、すなわち酒税保全に非常に支障があるということでございまするので、私どもの
考えといたしますれば、かなり違った次元のものであるというふうに思っております。
-
○鈴木一弘君 これは薬屋さんの場合だって、同じような競争になって収入が減る、競争が激しくなれば、これは税の方には、酒税じゃありませんけれども響くのは当然ですよね。だから、
意味では同じ
意味になると思う。どう見てもこの場合は既存業者優遇であるというような、そういう行き方が、憲法二十二条の職業撰択の自由を損なうものである。公共の福祉とか、いま言った酒税保全ということになれば、公共の福祉が優先することになるわけですけれども、しかし、その公共の福祉よりも、職業撰択の自由の方が先ではないかというのが、この憲法二十二条の判決だと思うんですよ、薬事法に対する。だから、そういう点では、これは私はそういう点非常に
理解ができないのです、いまの答弁では。この問題はまたもっと先で詰めたいと思いますので、憲法論争になってきますから、きょうはこの程度でやめますけれども。
ここで、この問題に関連して
一つ二つだけ聞いておきたい。
一つは不服申し立て、この販売免許を許可されなかったとき、不服の申し立てはどのくらいあったか、ここ十年ぐらいの間のやつをひとつ聞かしていただきたい。
-
○
政府委員(星野孝俊君) ただいま手元に資料がございませんので、後ほど調査してお答え申し上げたいと思います。
-
○鈴木一弘君 その中で距離制限に引っかかって不許可になったものはどのぐらいか、
年度別に示していただきたい。
-
○
政府委員(星野孝俊君) これは調べてみないとわかりませんが、距離制限が基準になって拒否されたというものを、そういうふうにはっきり具体的に拾い出せるかどうか、ちょっと私自信がございませんが、調査してみたいと思っております。
-
○鈴木一弘君 いま
一つは、この酒類の販売免許、特に小売の免許についてはすでに十年ぐらい前から免許
制度を廃止するということがずっと言われてきている。四十五年の
衆議院の
大蔵委員会で、国税庁長官が、行政管理庁から小売免許制廃止の方向で
考えるべきだと指摘されている点を認めている。ただ、酒類の供給の正常化、酒類全体の消費の安定をするまでは据え置くという、こういう答弁がされている。このときは、いまの主税
局長は当時間税部長で、清酒製造業の安定に関する特別
措置法案がかかっているときです。そういうときの答弁だからこういう答弁があったのか知りませんけれども、いまだに供給の正常化、消費の安定というのはされていないのですか。供給の不正常化、消費の不安定と、こういう
状況でございましょうか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 私は、その当時、仰せのように間税部長を務めておりまして、いろいろそのことについて答弁をいたしました。正確にいま鈴木委員がおっしゃいましたようなふうにお答えを長官がいたしましたかどうか記憶がございませんけれども、いま思い起こしてみますと、
一つは、私が申し上げましたのは、そんなに酒類について販売用免許は数字的には厳しくないということを申し上げました。現実に当時十二、三万軒の酒屋が免許になっております。それを上回るのはたばこの販売店の二十万軒近いものくらいしかございませんでした。それからその次には、酒というものについてのやはり批判ということが、要請される上におきましては、免許
制度は必要でございますということを申し上げました。
三番目には、やはり酒税の保全という
意味から、先ほど御
説明いたしましたようなことを申しましたけれども、やはり消費と申しますか、販売と申しますか、酒類販売業界の事情からいいまして、なかなか免許なしで自由に販売店ができました暁においても、なお酒類の需給が非常に整正と秩序よく行い得るかという自信は今日でもございません。やはりどうしましても販売競争というものはますます激化をすることによりまして、酒税の保全という点についてはやはり相当の心配があるというふうに
考えております。
-
○鈴木一弘君 販売の激化とか、そういうことじゃないんです。言われていた御答弁は、当時のは、供給の正常化、全体の消費の安定ということなんですから。消費が急にふえたり減ったり、あるいは供給ができたり、できなかったりという、そういうことがなくなればいいということでしょう。それまでは小売免許は据え置く、こういうふうに国税庁長官が答弁をしているのです、これ。それからもう五年たっております。このときの安定法による構造改善は四十八年で終わっていると思いますね。そういう点から見て、このときは、それじゃ清酒製造業の安定に関する特別
措置法を通すために適当なことを言ったということですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) なお、よく私もそのときの長官のお答え、あるいは私の答えを調べてみますけれども、私はあのときにはやはり免許
制度というものは、なかなかそう撤廃はできないというような基調でお話を申し上げたつもりでございます。しかも、そのときの法案は、確かに清酒製造業の安定基金というものをつくることについていろいろ御
質疑があったと思いますけれども、その法案を
成立さしていただきたいために申し上げたつもりではございませんで、やはりそのときから酒類の販売業界について存在しました不安定さというものは、私はなお今日も残っておるというような認識でございます。
-
○鈴木一弘君 これは
大蔵大臣、いまのいわゆる憲法問題に端を発しているこの間の薬事法の判決から見て、小売についてはこれは前向きにいろいろ
検討して、早急に、もう五年前に一応の約束があるわけでありますから、たとえば国税庁長官にしてもそういう答弁があったからには、もう
考えるところにきているのではないか、何らかの具体的
方法を出すべきじゃないかと思うのですがいかがですか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) いま主税
局長がお答え申し上げましたとおり、われわれといたしましては、現行のやり方を変えるというつもりは持っておりません。しかしながら、御指摘の問題がございますので、その点につきましては慎重に行
政府として
検討さしていただきたいと思います。
-
○鈴木一弘君 この清酒製造業の安定に関する特別
措置法が通ったとき、このときの答弁の中には三千五百八十二軒あるところの清酒業者を二千八百八十六軒にまでしていきたい、こういう答弁がされております。先ほどの答弁を聞いていると、現在三千百二十八軒、六百七十六軒減らしますと言ったのが、実際は四百軒しか減っていない、この法律に従って、きちっと構造改善をされて、転業したり、廃業をしたり、合併をしたりあるだろうと思いますけれども、どういうふうな経過をたどったか、法案を通すときだけこれは
審議したのでは話になりませんので、もう終わったところでありますから、詳しく御回答をいただきたいのです。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 御質問の
内容は、四十五年から実施しました構造改善事業の成果という御質問と思いますが、これは五年間実施しまして今年三月末をもって一応終了した形になっておるわけでございます。その経過並びに成果について申し上げますと、当初昭和四十四年十二月の構造改善計画、この十二月に策定されたわけでございますが、それに対する四十九
年度末までの実施実績の割合を申し上げますと、全体では一三〇・八%、全体の計画では二千百二十七業者をいろいろ集約等を行うと、こういう計画に対して二千七百八十三という実績が出ておるわけでございまして、そういう
意味では一三〇・八%という実績になっております。また、この計画策定時の集約を達成した企業数の割合は、これは七七・七%、当初三千五百八十二に対しまして二千七百八十三ということになっておりまして、計画時の見込みの五九・四%を相当上回っております。また企業合同につきましては、
税制、金融等の助成をてこにしまして、七十九グループ、参加企業数二百二十社の実績を上げております。また、共同精米も四十八グループ参加し、企業数で四百七十四社ということで、これもかなり合理化に寄与しているわけでございます。またその間におきます清酒の課税率数量も年率四%という安定的な伸びを示しまして、その結果、製成数量階層別に企業数を見てみますと、全体的には当初計画したときよりもかなり上の方に全体がシフトしておると、規模が大きくなってきておると、こういうことで、生産性も上がっているように認められます。
それから、中小業者につきましても、設備近代化資金や低利の近代化融資を受けまして設備、機械等の改善を行いまして、その
意味でも省力化等の合理化が進められておるわけでございます。ただ、いま申し上げましたのはいい成果の方を申し上げたわけでございますが、一方、問題点もないわけではございませんで、実施された構造改善事業の
内容が、これはもちろん当然でありますが、業界、業者が自主的に計画を立てて、これを国税庁がバックアップしたという形で実施したわけでございますが、その集約化のやり方といいますか、構造改善事業の
内容がやややりやすいものを選んだという傾向もないわけではないのでございまして、たとえば企業合同よりも、比較的やりやすい中間的なステップである、たとえばおけ取引の提携化とか、あるいは系列化とか、こういうふうなものを選んだということもありまして、その点は実は今日になって問題を残しておるわけでございまして、当初計画しましたときには、こういう提携おけ、あるいは系列おけのようなものでも、その後進みまして、やはりグループ化が進むことによって一体的な事業
運営が行われ、さらに集約化が進むんではないかと、こういうふうに期待をしたわけでございますが、御承知のように、清酒製造業者はやはり独立企業家としての意識が非常に強いわけでございますので、御質問にもございましたように、転廃業者の数で見ますと、必ずしも当初の計画を達成できていないわけでございます。そういう
意味におきまして、実はこういう形のグループ化を行った業者につきましては、グループとしては一応計画した規模に達しておるんでございますが、個々の企業ごとには、やはり生産規模といいますか、そういうものは適正規模に達しておりませんで、依然としてやはり個々の企業の零細性あるいは過多性といいますか、そういうものが解消されていないと、こういう
状況になっておりまして、この点が今日問題になっているわけでございます。
-
○鈴木一弘君 時間が参りましたので、これで終わりますけれども、当時、四種類の形に分けて、おのおの何件ずつぐらいにしたいということが中橋間税
局長から答弁がございます。まだ一一%の原価の引き下げができるはずという答弁もあります。したがって、それについて一体どうなったかという
内容の資料を、細かい資料でございますけれども、ぜひこの
委員会に提出をしていただきたい。それに従って続けていきたいと思います。なお、あといろいろ資料の要求がございますけれども、次回のときに要求をいたしたいと思います。
きょうは、これで質問を留保しておきます。
-
○近藤忠孝君 まず、酒の問題でありますが、最初にお聞きしたいのは、酒類製成数量についてであります。
昭和三十年の初期に比べまして、今日ずいぶん大きな伸びを示しました。全体的に見ますと、これは昭和四十七年の統計ですが、昭和三十二年に比べて三・七一倍、特にビールが多くて六・三三倍、清酒は二・八五倍です。しかし、その後だんだんと伸びがゆるやかになってきまして、四十三年との比較で申しますと、清酒などは一・一三倍、ビールでも一・五九、全体で一・四〇という、伸びがだんだんと低くなっております。ということは、今後の見通しとして、やはり
国民の需要もそれほど多くはないんじゃないかと思うんですが、この酒の製成についての限界もそろそろきているんじゃないかとも思うんですが、この点についてどうお
考えか御答弁いただきたいと思います。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 確かに酒類全体あるいは個別の酒類につきまして、移出しました
状況を累年とってみますと、年々において消長はございますけれども、おおよその趨勢としましてはおっしゃるようなところだと思っております。確かにかなりの量はここ二十年ぐらいの間に伸びてまいりましたし、生活態様といたしましてもいろいろなレジャーもふえてまいりましたですから、酒類の消費が従来
どおりに今後も伸びていくとは私どもも
考えておりません。
-
○近藤忠孝君 この点について大臣にお伺いするんですが、大臣として、酒税確保の問題もあるんですが、今後
国民にもっともっと酒を飲んでもらって伸びをふやしたいと思っておるのか、もう限界だと思っておるのか、この辺についてのお
考えをお聞かせいただきたいと思うんです。
-
-
○近藤忠孝君 そういたしますと、これ、財源の問題ですけれども、酒にそれほど多くを期待するのは余り適切ではないんじゃないかというぐあいに思うわけです。と申しますのは、国税収入全体に占める割合を見てみましても、たとえばこれは戦前昭和九年から十一年の
段階ですと、酒だけで一七・六%という大変大きなウエートを占めています。だんだん減ってまいりまして、四十九年では五・五%です。今回これが少ないというので、この率を上げるために、この酒税の引き上げということなんですが、
〔
委員長退席、理事
河本嘉久蔵君着席〕
いまも言ったとおり、需要が、だんだん伸びがとまっている。しかも、いまの大臣の御答弁のとおり、余り飲酒を勧めようという気持ちもないとなりますと、酒税に多くを期待するということがだんだん
情勢に合っていないんじゃないか、このようにも思うんですが、これについてのお
考えをお聞きしたいと思うんです。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 確かに先ほどのように、酒類の消費というのは鈍化の傾向にあるかと思いますが、今回増税を
お願いしておりますのは、たとえば国税収入の中で酒税の占めておりますウエートが低くなってきたから、特にそれを回復するために増税を
お願いするということではございません。むしろ私どもは、一般の
物価水準、消費水準、所得水準が上がっておりますその中で、酒類に投ぜられておる、あるいは酒税を
負担してもらっておりますところの
負担率が、四十三年なら四十三年に比べまして非常に低くなっておりますから、それを若干でも回復していただこうというわけでございます。したがいまして、昭和九−十一年にたとえば酒税が一七・六%を占めておったというのは、むしろ租税体系全体の仕組みでございまして、それは直接税、間接税のウエートのあり方とかいうようなことでございまするから、別途の観点から
検討いたすべきものでございまして、むしろ私どもはそういった全体の国税の中の酒税といいますよりは、酒の小売価格の中の酒税ということで、
〔理事
河本嘉久蔵君退席、
委員長着席〕
仮に四十三年から賃金が二・七倍も上がっております、一般の
物価がこういうふうになっております、そういう中で酒税
負担もそれ相応にもう少し
負担をしていただいてもいいんじゃないかというのが、この今回増税を
お願いしておる
趣旨でございます。
-
○近藤忠孝君 いまの答弁の小売価格の中における酒税の割合の問題と、国税収入の中における酒税の割合というのは決して無
関係じゃないと思うんです。現に五十
年度予算では、四十九
年度に比べて率は多くなりますね。そのように小売価格における酒税の割合をふやせば、当然全体の中における割合もふえる、これは因果
関係があると思うんです。となれば、いまの御答弁すなおには
理解できないんですが、どうですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) それは小売価格の中に占めます酒税の
負担率を高めるということは増税でございますから、それがない場合と比べれば酒税の国税の中に占めるウエートはふえることは明らかでございます。しかしそれは、国税全体の中の酒税の
負担をある
年度を基準に置きまして回復しようというよりも、むしろある一定の所得水準の中から酒類に対して投ぜられます消費資金、その中に占めますところの酒税というものをある程度、たとえば四十三年当時と比べて回復しようというのがねらいでございます。
-
○近藤忠孝君 この問題もやはり時の流れ、また
国民生活の様式の変化、こういったものに順応していくべきだろうと思うんです。
いま言われたような小売価格の中における酒税の割合の問題にしましても、そういう中で
考えていけば、何も下がってきたから上げなきゃいかぬ、そういうことをそんなにもむきになって
考える必要ないんじゃないか。やはり
国民生活の変化があり、
経済や社会の変化があるんですから、これがだんだん下がっていってもやむを得ないし、またむしろ
一つの傾向じゃないかと、こういうぐあいに
考えるんですが、これはいかがですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) おっしゃるようなことで酒類の消費がだんだん減ってまいる、そういうことで酒税が減少するということは私どももそれをあえて増税によってカバーをする必要が一般的にはないんでございましょうから、それを特に増税で今回
お願いをするというものではございません。ただ問題は、たとえば同じお酒の中でも従価税率をとっておりますものは、この数年間の間にお酒の値段が上がりますれば、それに対応して重い
負担をしてお酒を飲んでいただいているわけでございますから、それと同じように、一般の小売価格が上がっておりますのに、税
負担だけが昔のままの据え置きであるというのを今回若干上げていただこうという、バランスの観点から、お酒の中のバランスということをあるいは物品税の
負担としまして、従価のものは先ほど申しましたような同じような
事態があるわけでございまするから、そういった従価税率と従量税率との
負担の調整というところに主な観点を持っておるわけでございます。
-
○近藤忠孝君 いまの答弁の中で酒税を上げる根拠の
一つがなくなっているんじゃないかというぐあいに
考えます。
そこで、次の問題に入りますが、先ほど鈴木委員からも質問のありました小売の免許の問題です。この点についてお伺いしますが、先ほど言ったような、たとえば申請者の人的要件、販売所の場所的要件、さらに酒類の需給調整上の要件その他の
一つの基準があるということでありますが、実際に免許を下付するときは、これらの条件を具体的に厳しく調査し、かつ
検討した上で免許をおろすものかどうか、この点を伺いたいと思います。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 条件につきましてはあくまで厳正に調査しております。ただし、運用につきましては、いわゆる弾力規定なるものがございまして、たとえば新市街地が開発されたような場合とか、そういう特殊な場合には、その条件をある程度緩和して実情に合うように運用してよろしいと、こういうふうになっておりますので、運用の面についてはそういう実情に合うように弾力的に運用しておるところでございます。
-
○近藤忠孝君 実際調査は現場を見たり、その他の条件を具体的に調査するんですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 具体的に調査しておると、このように承知しております。
-
○近藤忠孝君 それはすべての場合に調査しているんでしょうか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) すべての場合に調査しております。
-
○近藤忠孝君 現在具体的に酒類小売販売店は数はどれぐらいありますか、全国で。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 四十九年三月三十一日現在で小売店の数が十四万三千二百六十六軒ございます。なお、四十六年から卸売業者でも希望があれば小売ができると、こういうふうな小売の免許を与えることになっておりますので、そういう卸で小売の免許をとったものを入れますと十六万九百三十二軒でございます。
-
○近藤忠孝君 大変な数ですけれども、この数は実際の営業を小売業者がしていく上で適切な数とお
考えか、もうこれも飽和
状況にきているとお
考えか、この辺いかがですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) これは地域あるいは
経済状況の変動によりましてどうしても若干変ってきますので、たとえば最近全体として総
需要抑制あるいは不況というふうなことを言われておりますので、酒屋さんの販売実績も落ちております。そういう点から言いますと、最近は小売屋さんもなかなか容易でないと、こういうふうに聞いておるわけでございますが、全体としてはほぼ実情に合ったところで免許されていると、このように承知しております。
-
○近藤忠孝君 そういたしますと、今後、将来の問題ですが、今後、将来も免許を下付していくというこの見通しについてはいかがですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) やはり今後の人口の増加とか世帯の数の増加、あるいは一人当たりの消費量の増加ということも
考えられます。もちろん全体の酒の販売量としては、先ほども御指摘がありましたとおりに最近は非常に伸び率が下ってきておりますので、そういう
意味では従来ほど急激な伸び率ということは期待できませんけれども、やはり需要の増というものは安定的に期待されると思いますので、それに応ずる免許の付与は必要であろうと、このように
考えております。
-
○近藤忠孝君 最近特に問題になっておりますのは、この免許の
関係で、特に大型店——スーパー、百貨店、生協、農協等こういう大型店の免許取得のことが特に問題になっております。そこでお伺いしたいのは、現在こういう大型店、それぞれ何店ぐらい免許になってましょうか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 最近の実績を三
年度ほど申し上げますと、スーパーマーケットについて申し上げますと、四十六
年度五十八件、四十七
年度五十件、四十八
年度が三十七件でございます。
-
○近藤忠孝君 内訳はどうですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) これはスーパーマーケットでございます。ほかに何か……。
-
○近藤忠孝君 その他に生協、百貨店、農協、これについてはいかがですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 同様の数字を生協について申し上げますと、四十六
年度十五件、四十七
年度二十二件、四十八
年度十三件。百貨店が四十六
年度十七件、四十七
年度二十三件、四十八
年度三十件。農協について申し上げますと、四十六
年度が十七件、四十七
年度が十一件、四十八
年度が十九件でございます。
-
○近藤忠孝君 四十六年以降のことはわかりましたが、その結果全体でそれぞれが何店に達していますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) ちょっといま手元に資料が見つかりませんので、調べましてすぐにお答えを申し上げます。
-
○近藤忠孝君 質問を続ける
関係で、私の調べた資料によりますと、スーパーは七百三十六店、生協が二百七十六店、百貨店が四百二十一店、農協は三千三百十八店、大変大きい数です。そこで問題は、最近、先ほどの資料でも特にスーパー、百貨店の免許の取得が大変多くなっているんですが、この免許の取得に関していままでの既存業者との間にいろいろな問題が起きていると思いますけれども、その点についてはどう把握しておりますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 大型店の免許に際しまして地元の小売業者、小売組合等からいろいろ反対の声が上がっているケースは各地にございまして、これらについては私どもとしては報告のある
範囲内では承知しておるわけでございます。
-
○近藤忠孝君 いまの答弁のとおり、実際、百貨店、大スーパーが相当な数で毎年免許を受けています。その結果、たとえばもうすぐお隣にいままでの既存の小売販売店がありながら、すぐそこに百貨店できる、あるいはスーパーできる、たちまちにして営業に影響出てくるんですよ。こういう事実がずいぶん報告されているんですが、このスーパー、百貨店に対する免許の基準、これは一般とは違うと思うんですが、これについてはどういう基準をもって臨んでいるか、いかがですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) スーパーの場合は、一般の基準を適用するということになっておりますが、百貨店につきましては、特にその及ぼす影響につきまして国税
局長でよく判断して定める、こういうことになっております。それから生協の場合には特定の会員だけしか利用できないような、そういうものに対しては
原則としては免許は出さない。ただし、例外として員外利用の許可を知事からとった場合には一般の免許申請者と同じような条件で審査する、こういうふうになっておるわけでございます。
-
○近藤忠孝君 先ほど、これ冒頭にお伺いした点ですけれども、これらの百貨店など実際に免許をおろす際に、具体的にその付近の
状況を全部お調べになるんですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 調べて
検討することになっております。
-
○近藤忠孝君 そういたしますと、具体的に実際これは大阪にあった例ですけれども、ダイエーの進出に際して、たとえばすぐ百メートルぐらいのところに一店がある。それからさらに百メートル
範囲ですと、実際既存の小売店か二十六店もある。そんなところに、しかもこの地域は、あの空港公害問題でむしろ人口が減っているという地域です。そういうところにこのダイエーの小売免許をおろすという、こういう問題が実際起きているんです。この問題は御存じだと思うんですけれども、これも実際調査され、どういうそれに対する把握をされ、そしてどう処理されるのか、その点について御答弁いただきたいと思います。
-
○
政府委員(星野孝俊君) この免許につきましては直接の所管は税務署長ないしは国税局で処理をしておりますので、私どものところへは詳細な報告は必ずしも上がってこないわけでございますが、御質問の大阪の問題については詳細は承知しておりませんけれども、そういう問題があってトラブルが起きておるということは承知しております。ただ、この事案は実は申請されてからもうかなりの期間を経過しておりますので、やはり結論はなるべく早く出さなければいけない、こういう認識を持っておるわけでございます。ただ、何分にも地元の小売市販業界から免許の付与につきまして相当強い反対の運動がある、こういうふうに聞いておりますので、地元の国税局において慎重に
検討を進めるようにしているところでございます。
-
○近藤忠孝君 こういう店に免許があるということは、それだけでも大変問題なんですけれども、さらにこれらが酒を
一つの目玉商品にしまして、値段を周囲の小売店に比べてもう問題にならないくらい安くして、そしてどんどん売り出す。そしてほかの商品についても客を寄せつけるという、そういった目玉商品に使われているところに実際大きな問題があるわけであります。
大臣、これ具体的にごらんいただきたいんですけれども、これは新聞折り込みです。新聞折り込みの中に具体的にはっきりしておりますけれども、たとえばスコッチ、スタンダードの人気銘柄、これが普通の値段ですと三千五百円のものがこのデパートのバーゲンセールで二千二百五十円、こういう値段です。それからさらにホワイトホース、卸価格がAの場合には二千五百三十円、Bの場合には二千九百六十円、小売ですとAは二千八百円、Bは三千七百円ですが、これが実際二千三百八十円で売っているんです。ジョニーウオーカー赤、卸価格が二千五百三十円であるのにこれが二千三百八十円、ジョニーウオーカーの黒ですと、卸売が五千三百円のが四千八百八十円という、こういった形で目玉商品にするわけです。となりますと、これはてきめんに既存の業者の営業に直接響いてくる。これは明らかです。しかも、新聞広告を大々的にやりますと、これは宣伝力でも決定的にもう問題にならない。こういうことは、先ほども問題になりましたけれども、小売業者の営業の安定を具体的に損なっておるんです。しかも、先ほどのデータにあるとおり、これらの百貨店、大スーパーがどんどん免許を受けて、こういった形でやっている。このことは大変問題だと思うんですけれども、どうお
考えでしょうか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 御指摘のスーパー等におきます目玉商品としての安売り、これはしばしば問題になっておりますが、私どもも、スーパー等でこういう目玉商品的に安売りをするということによって業界を混乱させるということのないように、地元税務署を通じて指導を行っているところでございます。
-
○近藤忠孝君 実際指導しておってもそのとおり堂々とやっておるわけです。そういう広告はそれだけじゃなくてほかにもあります。そうなりますと、実際はどんな指導をしたのか、これを具体的にお聞かせいただきたいと思うんです。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 私どもとしては、こういうケースに対しましては、先ほども申し上げましたとおり税務署を通じまして指導しておるわけでございますが、大部分の業者の方は実はそうした指導に協力していただいておるわけです。先ほどから申し上げていますように、酒の価格は一応自由価格ということになっておりますので、私どもが法律を根拠にそれを規制するということはできませんけれども、事実上行政指導ということで、やはり業界を混乱させるようなそういう安売りはひとつ避けてほしいということで指導しておるわけで、それにつきましてはかなりの業界の方々から協力をいただいておるわけですが、たまたまただいま資料にもございましたような、そういう比較的資力が強いというふうな業者の場合に、御指摘のような現象が起きる、こういうふうに私ども認識しておるわけでございます。
-
○近藤忠孝君 私が指摘したいのは、既存業者がたくさん存在している中に、そして現在の数ですらほぼ飽和
状況になっている、そういう中にデパート、スーパーですね、どんどん進出してきて、それだけでももう小売業者に対する影響がある、その上こういったことをやっていることに大変大きな問題があると思うんですが、さらに私が指摘したいのは、今後さらにこの認可がなされていくんじゃないかという、こういう心配があるわけでございます。
そこでお聞きしたいのは、現在申請中の数がどれだけあるのか、これも先ほどの内訳に従って御答弁いただければいいと思うんですが、どうでしょうか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 申請件数でございますか。
-
○近藤忠孝君 はい、申請件数、未処理のもの。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 申請件数と未処理について申し上げますと、四十六年から申し上げますと、全体の申請件数が五千七百七十七件、四十六
年度。四十七
年度は五千五百五十八件、四十八
年度が四千四百七十九件でございます。なお、未処理件数は四十八
年度末で七百六十六件になっております。
-
○近藤忠孝君 いま言った未処理件数のうちスーパー等ですね。
-
○
政府委員(星野孝俊君) ただいま申し上げましたうちのスーパーについて申し上げますと、四十六
年度は申請百五十六件、四十七
年度は百二十三件、四十八
年度が百三十件、なお四十八
年度末におきます未処理が百三十二件になっております。
-
○近藤忠孝君 これらの百三十二件の今後の処理の方向、これについてはいかがですか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 特にこのスーパーにつきまして特別な扱いをするというそういう規定になっておりませんので、私どもとしては、スーパーにつきましても通達の定めるところに従ってその免許基準に該当するかどうか
検討して処理してまいりたいと思いますが、ただ何分にも先ほど申し上げましたとおり、現在の業界が不況に見舞われておりまして、全体として売れ行きも
停滞ぎみであると、経営がかなり苦しいと、こういうことを聞いておりますし、またスーパーに免許を出しました場合に、周辺の小売業者に対して非常に大きな影響を及ぼすおそれがあると、こういうおそれもございますので、この辺のところを勘案しながら慎重に
検討してまいりたいと、このように
考えております。
-
○近藤忠孝君 いまの答弁ですと、基準からいって、どうもこれをチェックする
方法がないかのようにも聞こえます。ただ、実際の小売業者の現状を見ますと、中にはずいぶん大きく営業している業者もおりますけれども、ごく普通の、ごく平凡の標準的な業者を見てみますと、大変苦しいようです。みんないま配達しませんと買ってもらえない、配達に大変な労力と費用がかかって、そのマージンの率もずいぶん落ちておる。
一つの計算によりますと、たとえばビールですと一カ月に三千本売らぬと——普通三千本くらいしか売れぬということですね。三千本ぐらい売ったのでは利益は七万八千六百円、実際
経費が人件費その他見てみますと、とてもこの利益をはるかに上回ってしまう。実際にビールで採算が合う月というのは七月、八月、九月という売れ行きのいい月で、月に六千本ぐらい売れる月だと、そのときにどうやら採算が合うということです。これは小売業者の実際上の報告です。となりますと、また
一つの例ですが、もう子供も酒屋の跡継ぎしないと、そんな例もたくさんあるという、こういう中で今後、いま言ったような百貨店、大スーパーの免許がもうどんどん行われてまいりますと、実際のこれらの人々の経営をさらに悪化させて、それこそ営業はできない
状況になってくる、そういう
状況があると思うんですが、これらについて、これは大臣、どう対処されていくおつもりか、最後にお聞きしたいと思うんです。
-
○
政府委員(星野孝俊君) ただいま御指摘のような点は、私どももいろいろ聞いておるわけでございまして、したがいまして、先ほど申し上げましたとおりに、そういう周辺の小売業界、小売業者に与える影響、そういうものをよくよく慎重に
考えまして、それで
検討してまいりたいと、ただ現在の通達では、先ほど申し上げましたとおりに、スーパーを特別扱いをするということになっておりませんので、その辺はスーパーについて特別に許可条件を厳格にして異なった扱いをするということはできませんけれども、御指摘のような
状況ございますので、その辺を十分勘案して慎重に処理してまいりたいと、このように思っております。
-
○近藤忠孝君 大臣いかがですか。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) いま間税部長から御答弁申し上げたとおりに心得ております。
-
○近藤忠孝君 時間来てしまったのでここで打ち切りますけれども、この問題、もう少し問題ありますので、続いて後に質問させていただきたいと思います。
-
○栗林卓司君 きょうは酒税の
関係につきまして、時間もありませんので、予備的な
内容を幾つかお伺いしたいと思います。
で、最初にお伺いしたいのは、酒税を引き上げるということになりますと、当然これは原価を構成するわけですね。原価がふえた分だけまるまる価格にはね返していいよという環境で、先ほど来議論があったわけではないと思います。一応市場価格——市場を通じて価格が決まってくるというたてまえでございますから、その
意味で酒税を一応御提案になったとして、業界の改善努力でどれくらいが吸収されるものと期待しておいでですか。あるいはその分野のことは全く
考えておられませんか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 酒税その他いわゆる間接税につきましては、私どもは、本来それが消費者に転嫁されることを予定をいたしております。今回の酒税の増税分につきましても、それはやはり消費者に転嫁されるべきものと
考えておりますので、メーカーあるいは流通
段階においての吸収は予定いたしておりません。
-
○栗林卓司君 価格というのは、市場競争の結果、形成されるということは前提としてあるわけですね。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 当然価格は需給によって定まるわけでございますけれども、間接税は、私どもは
お願いをいたしておりますときには、やはりそれは当然その中に織り込まれて消費者の
段階まで順次転嫁をされていくということを予定いたしております。
-
○栗林卓司君 転嫁されるかされないかは、市場競争の結果決まることでございましょう。それだけ税金を上げたからそのままそっくりということは、上げる前の原価
負担が適正だという前提がなければその理屈は成り立ちません。ですから、間接税というのは、回り回って消費者が
負担するものだという
考え方はあるとしても、それはあくまでも市場競争の結果どういう価格が形成されるかという
機能の中でどうなるかということであって、自動的にその額が即価格に反映されるというものではないと思いますが、間違っておりますか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) それは自由競争の
経済でございますから、おっしゃいますように、当然価格というのはあらゆる原価要素のもとに定まってきますし、それにまた最終的には需要というものが影響するものでございますけれども、間接税を
考えます場合には、やはり後転ということを予定いたしませんで、すべてそれは順次前転をされるというふうに
考えております。それで、それが十分果たせないというときには、何かその間接税についての
考え直すべき点があるのでございまするから、そういう点については十分反省をいたさなければなりませんけれども、今回の酒税の増税分については、私どもは順次前転をしてまいるというふうに思っております。
-
○栗林卓司君 それは順次そうなっていくということでございますか。順次というのは、ある時間を置きながらではなくて、そのつどでございますか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 私が順次とお答えしましたのは、納税者でありますメーカーから卸、小売、消費者という
段階を順次経て前転をしてまいるということでお答えをしたものでございます。
-
○栗林卓司君 では、聞き方をちょっと変えてお伺いしたいんですが、税
負担が相当程度低下してきたということは、小売価格との見合いでございますという先ほどの御答弁がありました。で、これは相対的な
関係ですから、小売価格との
関係で相当程度低下してきたということをおっしゃるからには、その小売価格の形成というのは、妥当であるという判断が前提にあるんでしょうか。というのは、小売価格の方が市場の性格に従って異常に高い、こちらは量に従って従量税なんだから、見かけはなるほど下がったかもしれぬ、しかし、直すのは市場価格の方を下げなさいという理屈も理屈としてはあるんではございませんか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) それは確かに小売価格が非常に甘目にできております。その小売価格に対しまして現行の税
負担率が非常に低いという場合もあるかもしれませんけれども、酒類に関します限りは、公定価格あるいは基準価格の
時代を経ますし、先ほど来いろいろお話のございましたように、国税庁もかなり関心を持って、上げないようにという要請をしばしばやっておりますから、その価格については、いわばむしろ辛目になっている状態だと思います。そういう
段階でございますから、やはり今回の増税分というものも、あるいはそれがない前の小売価格に対しますところの
負担率のその分母になります小売価格といいますものは、なかなか税
負担部分を吸収し得るほど楽なものではないというふうに
考えております。
-
○栗林卓司君 妙に理屈の理屈を言っておるようでございますけれども、ほかの業界ですとそうはっきりと、これは間接税分だから消費者に転嫁されるんです、市場価格というのは確かにこうなっているんですというように
政府みずから太鼓判を押していただけるところというのはほとんどないんです。実際には上げたくても上げられない。いろんなところに食い込みながら価格形成がされていくんですが、事酒に関してははっきりとそこまでものがなぜ言えるんだろうか。
それとからんでお伺いするわけですが、酒税の保全ということなんです。類似した物品税と比べてみますと、物品税には免許という
制度も申請という
制度もないわけです。なぜ酒税に関して保全ということが特筆されなければいけないのか、その点はどう
考えたらよろしいですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) やはり酒税というのはかなり歴史的なものでございますし、それを担っておりますメーカーといいますのも数多い零細な業者が大部分でございます。そういう観点から申しますと、この高い税
負担を担っておる業者という、特に清酒が従来の酒税の大部分を占めておりました
時代からのことでございまするので、そういった過去のいきさつから免許
制度というのが発足をいたしましたし、また余り方々でつくられるのも、社会生活の秩序という面からしても好ましくないという観点からできました免許
制度が今日に両々相まちまして至っておるものと
考えております。
-
○栗林卓司君 そういたしますと、市場競争外的な配慮を加えながら酒税の保全という、いわば酒の持っている特殊性に照らしながら
考えてきたということだと思うんですが、それはそれとして
理解するとして、そうなると、免許を与えたということについて、与えた
政府の側はどの程度の
責任を感じなければいけないのか、与えたからには、それが経営として成り立つところまで保障するのかしないのか、それは競争で御随意ですという立場をおとりになるのか、この辺は先ほど来のこととあわせてどう
考えたらよろしいんでしょうか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) その点は特にむずかしい点でございまして、先ほど来、大塚委員は、国税庁は清酒、ことにビールー——酒類業界に非常に密着しておるという御批判をお漏らしになっておられましたけれども、やはり、免許業者でございまするから、しかも、重い酒税の保全上かなり重要な役割りを担っておる業者でございまするから、そういう観点からは、それを所管いたしております官庁とすれば、かなりその業界の適正な発展ということは常時
考えていかなければならないと思っております。しかし、それにも限度がございまして、やはり企業一般の競争というものを阻害してまで、あるいは他の業界に比べて過分の保護を加えてまでそれが許されるとは思っておりません。したがいまして、かつて昭和四十五年当時に先ほどもお話が出ましたような清酒業界につきましてのいろいろな
措置を
お願いしましたそのときにも、国としましても二会計
年度にわたりまして十四億という金を投ずることによりまして、かなり近代化という面を促進するというようなことまでやったわけでございます。しかし、それを土台として、努力をいたしますのはやはり業界自身でございます。個々の企業でございまするから、余り深くなく、しかも、酒税という重い
負担を担っておる業界ということで相当程度やはり関心を持たざるを得ないというのが、酒類業界に対します私どもの立場でございます。
-
○栗林卓司君 平たく例を挙げて申し上げますと、普通租税債権の確保ということになると、メンドリと卵で言いますと、卵の確保だと思う。酒税の場合にはメンドリを確保する。となりますと、それは自由競争なんだろう、適度のと言ってその限界をどこで引くんだろう。これが免許という行為が持っている
意味ではないか。したがって、メンドリはいなくなってもよろしい、卵さえ確保できれば、というお立場なのか。三千を超えるその酒造業者について、その先行きの運命までメンドリのことを
考えていくのか。
考えてまいりますと、これはいまさら申し上げるまでもありませんが、自由競争などと言っていたら、片っ端からつぶれていくわけです。どの辺のところにいま折り合いをつけておいでになるわけですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 清酒業界で申せば三千を超えますし、酒類メーカー全体としますればかなりの数になるわけでございますが、しかしそれが、全部が全部、非常に激しい競争に耐えながら、しかも、酒税保全の役割りを果たしてもらえるかということになりますれば、だんだんその状態はむずかしくなっておると思います。それだからこそ国税庁では業界の近代化ということに努力をいたし、また業界でもそういうふうにいろいろなことを
考えてもらっておるわけでございますけれども、どの辺までのところをそれでは今後の清酒業界の中核として
考えるかというのは、やはり今後の業界自身が判断をいたすべきことだと思いますので、われわれとしますれば、できるだけの環境を整備します。しかも、その環境整備については、余り業界に過当のものではない、しかも、免許その他酒税という観点からの応援ということもやりながら、しかも、今日のような消費者の立場ということもございまするから、そういう点を兼ね合わせながらの業界指導ということで、なかなかむずかしいと思いますけれども、そのときそのときの事情に応じながら私どもはやってまいりたいというふうに従来から思っておったわけでございます。
-
○栗林卓司君 なかなか、言葉として、それで済まなくなってきたんじゃないかという気がいたしますのは、数字が違っているかもしれませんが、ことしの二月末のみなし古酒ですか、この在庫を見ると二百三十三万石ある。年間需要というのはせいぜい九百万石。この二百三十三万石をどうするかが先ほどのメンドリにからむ話だということになると、この需給計画まで
政府はかみ込んでいかなければいけないのか。それは中央会だとおっしゃるのか。この二百三十三万石をどうするかが、三千百二十八——大多数がきわめて小さな蔵であるわけですから、それの将来にかかわりがあるんだと
考えますと、今回の酒税でも、仮にその蔵の側から見てみて、これは
予算の基礎になる数字でしかいま申し上げられませんけれども、清酒だとちょっと単位が違いますが、四十九
年度で
予算に組み込んだのが百七十三万キロリットル、五十
年度が百五十九万キロリットル。どういう基準で減ると御判断になったかわかりませんが、いろいろな
状況を兼ね合わせてだと思うんです。需要は減ってくる、原価を構成する税金は上がる。しかも、先ほど言われましたように、これ以降の原価高の要因が入ってきたとすると、間接税をまるまる一〇〇売り値に反映しなければいけない
状況だとおっしゃったわけですから、それの値上げも全部サポートしなければいけない。それで、ではこのメンドリ分一体どこへ行くかと言いますと、業界の自主的努力だけで済むんでしょうか。ここのところはやっぱりもう整理をしないといけないんじゃないか。自由競争にゆだねるんなら、もう覚悟して卵は要るけれども、メンドリはこれは仕方がないということで座ってしまうのか、質問はあとに譲りますが、ここの点について御見解を伺いたいと思います。
-
○
国務大臣(
大平正芳君) メンドリが大事か卵が大事かなんという議論でございますけれども、両方とも大事なんです。われわれは長い間かかって酒類業界というものを築き上げてまいりまして、御
案内のように大きな財源を確保してまいったわけでございまして、
政府といたしましてはこれは一大アセットなんでございます。いままで維持しておったけれども、これは自由競争にゆだねるとか、そんなぞんざいなことはできないんです。これは両方とも成り立つようにやってまいらなければならぬわけでございます。したがって、いま御指摘のように、非常に消費は衰えてきた、生産はやや過剰ぎみであるという御指摘でございまして、私もそのとおりに思います。したがって、これをどのように今後やってまいりますか、中央会のみに任せるわけにはまいらぬと思います。やはり
政府が親切にこれは介入をいたしまして、この重大な局面を健全な方向に誘導していかなければならぬ
責任があると
考えております。そういう点につきましては、十分
責任を持って対処したいと思っております。
-
○野末陳平君 初めに酒税の引き上げと
関係なく、小売価格そのものの値上げの見通しをちょっとお聞きして、それから
酒税法の改正の中身をお聞きしようかと思うんですが……。
どうなんでしょうか、まず清酒の方ですが、これもかなり業界いろいろ苦しいような話も聞きますが、値上げの見通しといいますか、やはり
大蔵省の方ではかなりその辺業界の事情も御存じだと思うんですが、どんなふうになっているんでしょうか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 清酒でございますが、清酒につきましても昨年価格改定をいたしましたが、その後原料代、特に米価が改定されましたので、この
関係で原料用酒米の価格がアップしたわけでございまして、それ以外に人件費あるいは輸送費、そういうようなもののコストアップ要因があるわけでございますけれども、やはり全体としてはそういうものは無視できない、相当清酒製造業者としては全般的に苦しい
状況にございますが、現時点におきまして、業界におきましては現在企業努力をもって対処していると、こういう
状況でございます。
-
○野末陳平君 しかし、企業努力をもって対処してももう時間の問題なんで、余りいやなことを先にばかり延ばされても困るんですが、どうも、遠からず、もちろん年内には上げざるを得ないんじゃないかと。業界としては上げなきゃとうていやっていけないんじゃないかと思いますが、それについてはいかがでしょう。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 御質問のとおりのコストアップ要因があるわけでございますから、これを現在の清酒業界の経営の実態からいいますと、これを全部合理化でカバーしようとしましても、これは、企業の零細性というふうな問題もございますし、それからコストアップの幅もかなりの幅になるようでございますので、そういうものを全部企業努力で回復するということは、これはむずかしいと思います。したがって、今後いつまでも価格を抑える、価格の改定を行わないというふうに抑え込んでしまうと、こういうことはできないと思いますが、現時点におきましては、まだ、業界におきましては、価格の改定という問題につきましては、現在、業界として自主的な努力をしておる、こういう
段階でございます。
-
○野末陳平君 まあおそらく上がるんじゃないかと、あるいは上げなければこの業界はやっていけないと、そういうふうに思っているんですが、そうなりますと、小売価格そのものの値上げと、それから、いま
審議中の酒税の方による小売価格の上がり分と、何か二重に上がるような感じで、非常に酒税の引き上げのタイミングが悪いと思いますけれども、今度はビールの方は、さっきから話が出ていました朝日とサッポロは百八十円と出ていますが、麒麟の方はどうなんですか、これももう時間の問題だと思いますが、時期と値上げ幅はそちらでは大体どういうふうに見通されていますか。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 麒麟麦酒の値上げの時期と、値上げ幅はどうだという御質問でございますが、私ども、値上げの時期につきましても、値上げ幅についても何ら情報を得ておりません。
-
○野末陳平君 いや、しかし驚きましたけれども、本当ですか。まさかそんなことないでしょう。じゃ、全然情報を得てなくて、突如そういう案が出てきて、突如それを認めざるを得ないと、そういうふうになるんでしょうかね。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先ほど申し上げましたとおり、値上げの時期、それから値上げ幅、そういうものについては私どもは何ら承知しておりません。
-
○野末陳平君 しかし、予想はつけていらっしゃるんでしょう。いままでの、先ほどからの
質疑でもそうですけれども、やはり、いずれは麒麟も百八十円なら百八十円、あるいはほかの案があるかもしれませんけれども、上げなければおかしいじゃないかということは、当然そちらも御承知だと思ってあえてお聞きしたんですがね。
-
○
政府委員(星野孝俊君) 先ほどからの御質問にもお答え申し上げましたとおりに、今回、朝日、サッポロビールが価格を改定いたしましたが、これは、一昨年来の石油ショックによる原材料等の大幅なアップ、それから人件費の高騰、こういうものがございまして、企業努力によりまして
経費の
節減その他相当の努力を行ったわけでございますけれども、そうしたコストアップ要因を全部吸収できなかった。そこで、やむを得ず価格の改定が行われたわけでございます。同様の事情は、麒麟麦酒についても申せるわけでございまして、大体、原料事情その他は他社と同様の
状況にございますし、人件費のアップもまた同様の
状況にございますので、そうしたコストアップ要因、朝日麦酒、サッポロビールに見られたようなコストアップ要因というものは麒麟麦酒についても同様に存在するわけでございます。したがって、そうしたコストアップ要因をいつまでもすべてこれを企業努力で吸収しなさいと、こういうふうに申しましても、そこはやはりおのずから限度があるわけでございまして、コストアップ要因を価格に転嫁するということは
考えられるわけでございますが、私どもとしては現
段階におきましては、麒麟麦酒に対しましていまなお自粛を要請しているような、そういう
段階でございます。
-
○野末陳平君 そうすると、だから自粛を要請して、値上げしないようにということを要請しているわけでしょう。だから、それだったらば麒麟麦酒がどういうふうにしたいかと、その辺の事情はやはりわかっているわけでしょう。だから、そこをちょっと
説明してほしいと、こう言ったわけですよ。
-
○
政府委員(星野孝俊君) その点につきましては、先ほどから何回も申し上げておりますが、価格改定の時期、それから価格改定の幅というものにつきましては、私ども全く情報を得ておりません。
-
○野末陳平君 このことであれやこれや言っても始まりませんからやめておきますけれども、いずれにしても酒税の引き上げと、それからこれと別にいろいろなコストアップ要因による小売価格そのものの値上げと二つが重なりますから、結果的に消費者にとってはかなりの値上げということになるので、非常にこの法案についてはおもしろくないと、こう思っておるんですが、さてビールをどういうふうに扱うかということでお聞きしますが、清酒の二級酒とそれから合成、それからしょうちゅうなどを据え置きにしてある。これを据え置きにした理由について簡単にお聞きします。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 据え置きにしましたのは、いわばお酒の中でも大衆に利用されておるものでございます。そういうものにつきましての税
負担は今回据え置くことによりまして、その酒類を愛好しておられる方についてはその
負担を
お願いしないということにしたわけであります。
-
○野末陳平君 大衆に対する
負担の軽減だということで二級酒、合成、しょうちゅうなどを据え置いたということですね。そこで、その大衆というのはどういう層なんですか。低所得者という
意味ですか、それとも幅広い人たちというか、幅広い愛好家というか、どういう
意味で大衆ということをお使いになったんですか。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) これは過去二十五年ぐらいの間に酒税を増減税しました機会が数回ございます。そのときに、値上げをします場合には、大体いわゆる高級酒というものについて値上げをしましたし、減税をします場合には、いわゆる大衆酒ということについて減税をやってまいりましたのがこれまでの
経緯でございます。そういう中で大体上に入るものと下に入るものという部類がおのずと分かれてきたのが、今回またそれを大体勘案をしまして、税率を据え置くものと、引き上げるものと分けたものでございます。
-
○野末陳平君 そうすると、ビールは据え置きにならないで上がるわけですから、上の方に入ることになりますね。いや、しつこく何か言うようであれなんですがね、結局ビールは、これははっきり分かれている。そうすると、ビールは、いままでの二十五年間の高級酒とかいろいろ言って分けてきた上の方に入るということは、大衆が利用しないという部類ですか、これは。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) 高級酒に入らないという分類に入っておるわけでございます。従来も大体酒税を増税いたしましたときには、ビールは増税される部類に入っておりました。それはなぜかと申しますと、これは先ほどもお答えしましたように、ビールの消費の態様というのはまだわが国におきましてはヨーロッパ諸国におけるそれとはかなり違っておるということでございます。最近なるほどかなり家庭消費というのはビールについても多く見られるようになりましたけれども、まだまだその大部分といいますのは、私どもが
考えてみましても、いわゆる高級的な酒の消費の部類に入れてもしかるべきものではないかというふうに思います。
-
○野末陳平君 いや、そうなるとちょっとわからなくなっちゃったんですがね、家庭ではといったって、ビール、家庭で飲みますよ。だから、別に高級品的な扱いは全然
考えられないんで、ほくがお聞きしたいのは、二級酒と清酒と合成とそれからしょうちゅうを分けたと。そうすると、ビールとそれらを分ける根拠は全然ないということを言っているわけなんですがね。もしそれを二級酒、それから合成、清酒、それからしょうちゅうなどは、税収の方がこの率を上げたところであまり見込めないと、ビールは相当見込めるからというような理由ならば、これはわかるんですよ、はっきりしているから。それだったらわかるんだけれども、何か消費の態様がとかということでこれを分けているというと、この分けている根拠がさっぱりわからないんですが、もう一回。
-
○
政府委員(
中橋敬次郎君) それはもちろん清酒の特級酒でも一級酒でも家庭で飲まれるわけでございます。しかし、それを飲むときにそれだけの金を投じ得る所得階層というものがあるわけでございまして、ビールも確かに一般の家庭でも消費をされます。しかし、まだまだビールが輸入をされてそんなに日にちがたっていないということから、かなり高級的な消費に向かっておるわけでございます。したがって、ビールは現在でも、これは税金が高いんでございますけれども、一本二百円近くのものというのが相当飲まれておる。ビールが六本でいわば千二百円近くでございますから、それに対応しての清酒というようなことから
考えてみますれば、やはり上等な部類、所得 消費資金から言いましても上等な部類に属するという判断は、これは従来の酒税につきましてずっと
考えてきましたことでございますし、先ほど申しましたように増減税の際にもそういった分類でございましたし、これをいま改めるほどにまだビールの消費の態様というものはわが国では変わっていないという判断でございます。
-
○野末陳平君 ああそうですか。それはちょっと大分ぼくの
考え方と違ったんで、ぼくはビールは上等だとは思っていなくて、要するに上等で高いからビールの税額もかなり多いのじゃなくて、たくさんの人が飲んでいるからだと。だから、全くこれこそ大衆の飲み物だというふうに解釈していたわけです。まあいいです、そういうお
考えだということは聞きましたけれども、もちろんこれで終わるわけじゃありませんから。きょうは時間が来ましたけれども、大分
考え方が違うんでちょっと納得しませんが次の機会に譲ります。
-
○
委員長(
桧垣徳太郎君) 本日の
質疑はこの程度といたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時四十八分散会