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1975-06-19 第75回国会 参議院 商工委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月十九日(木曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員の異動  六月十九日     辞任         補欠選任      鈴木  力君     竹田 四郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         林田悠紀夫君     理 事                 熊谷太三郎君                 楠  正俊君                 小柳  勇君                 須藤 五郎君     委 員                 岩動 道行君                 小笠 公韶君                 剱木 亨弘君                 斎藤栄三郎君                 菅野 儀作君                 福岡日出麿君                 矢野  登君                 吉武 恵市君                 阿具根 登君                 竹田 四郎君                 対馬 孝且君                 森下 昭司君                 桑名 義治君                 中尾 辰義君                 安武 洋子君                 藤井 恒男君    国務大臣        通商産業大臣   河本 敏夫君    政府委員        国税庁直税部長  横井 正美君        通商産業政務次        官        嶋崎  均君        通商産業省生活        産業局長     野口 一郎君        中小企業庁長官  齋藤 太一君        中小企業庁計画        部長       吉川 佐吉君        中小企業庁小規        模企業部長    藤原 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  前回に引き続き中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 対馬孝且

    対馬孝且君 先般の委員会におきまして、若干法案にまつわる問題に関しまして質問いたしてまいりましたが、きょうは法案重点をしぼってこれから順次質問をいたしてまいりたい、こう思いますので、時間が五十分ということでございますから、ひとつ答弁者側も要領よくお答えを願いたいということを冒頭申し上げておきます。  まず最初に、中小企業近代化促進法昭和三十八年に制定をされましたが、その時代要請に基づいて改正が行われたわけでありますが、今回大幅に改正をしようという時代背景は一体何にあるのか。特に中小企業は、二年以上に及ぶ総需要抑制のもとで極度の不況に悩まされているわけであるが、今回の改正に当たってこの点の配慮は一体どうなされているのか、この点、まず冒頭お伺いしたいと思います。
  4. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 現行中小企業近代化促進法昭和三十八年にできた法律でございます。当時、御承知のように、ちょうど日本経済開放経済に入ろうといたしておりまして、資本自由化、貿易の自由化が日程に上っておった時期でございましたので、わが国中小企業につきましても、海外の企業との競争に打ちかっていきますために、国際競争力強化というものが、当時中小企業の一番大きな課題になっておったわけでございます。そのために、中小企業近代化促進法制定をいたしまして、中小企業国際競争力強化と、もう一つは、産業構造高度化目的といたしまして重要な業種指定をいたし、その近代化促進をしてまいったわけでございます。  ところが、石油危機を契機といたしまして資源有限性が明らかになり、そのほか、過去の高度成長に伴います各種のひずみが出てまいりまして、日本経済も今後は従来のような高度成長期から、いわゆる安定成長期に大きくその進路が変わろうといたしております。こういうふうに成長率が、今後日本経済が鈍化すると考えられますが、一方では、中小企業にとりまして、そのコストの上昇、たとえば原材料の高騰、賃金上昇といったような負担面では、むしろ従来よりも高負担情勢になりつつございます。と同時に、中小企業にも公害防止の問題でございますとか、価格の安定、あるいは安全の確保、省資源、省エネルギーといいました各種の社会的な責任要請をされておるわけでございます。こういった低成長下におきまして、高負担に耐え、社会的責任を遂行し、同時に、追い上げてまいります発展途上国との競争に打ち勝っていくということで、どういうふうに中小企業はあるべきかという問題がございます。  もう一つは、今後の福祉型経済下にありまして、いろいろと多様化してまいります国民ニーズ中小企業もこたえていかなければならない、こういった非常に大きな環境変化が見られるわけでございます。こういった環境変化に対応いたしまして、大きく申しますと国民ニーズにこたえていくということが一つと、もう一つは、こういう環境変化に適応して、その適応力の強い中小企業育成をしていく、こういう趣旨におきまして、中小企業近代化促進法改正いたしまして、最近のこういった新しい要請にこたえ得るような中小企業育成を図ってまいりたい、こういう趣旨で今回の改正法案提案をお願い申し上げた次第でございます。
  5. 対馬孝且

    対馬孝且君 十七日の当委員会におきまして、河本通産大臣に、基本的な姿勢としまして、高度経済成長時代にでき上がった近促法でありますから、いま長官から答弁がありました、低成長時代に入った今日の中小企業を守るという立場に立つとするならば、むしろ基本的な法改正提案をされるべきではないかということを質問いたしました。大臣からは、この問題につきましては、一応そういう考え方もおありでしょうけれども、現状の情勢、あるいはいま言ったそういう流れに対応して、極力ひとつ中小企業のための対策をとっていきたいという意味お答えがございました。  そこで私は、いまもこれに関連して長官にお伺いしたいのでありますが、つまり、高度経済成長時代から低成長時代に切りかえての近促法という提案になっているわけでありますが、あなたは衆議院商工委員会で、わが党の佐野議員質問に対しまして答えているのでありますが、従来の業種指定要件は、わが国産業国際競争力強化産業構造高度化に加えた国民生活の安定、向上は並列の関係にあると考える、こういう意味答弁をされているわけであります。そこで、もし低成長下時代に対処していこうとするならば、新しく加えられました国民生活安定の向上ということをかなり、いまも強調されましたし、衆議院商工委員会でも強調されているのでありますが、この条文の中で、国民生活向上という点に改正を強調されている点について、具体的にどういうふうに国民生活向上する立場での改正が行われようとしているのか、ひとつこの具体的な考え方についてお答えを願いたいと思います。
  6. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 従来の近代化促進法は、そのねらいが産業構造高度化と、産業国際競争力強化というところに力点が置かれておったわけでございます。で、先ほど申し上げましたような日本経済をめぐります環境変化に対応いたしまして、今回国民生活関連性の高い物品とか役務とか、こういう業種をむしろ対象業種として追加をいたしまして、そういうものを今後育成対象力点を置いてまいりたい、こういうのが改正趣旨一つでございます。  そのために、具体的には第一条の目的の中に、「国民生活安定向上」を図るということを目的に加えておりますのが改正のその趣旨を生かした第一点でございますし、業種指定要件といたしまして第三条に、「国民生活との関連性が高い物品又は役務を供給する」事業というものを、この近代化計画対象業種として指定できるように法律改正をいたしたところが第二点でございます。また、近代化計画内容におきましても、近代化計画をつくるに際しましての配慮すべき重要事項といたしまして、「従業員福祉向上消費者の利益の増進、環境の保全」と、こういうものを近代化計画の中に盛り込むように改正を加えておる次第でございます。
  7. 対馬孝且

    対馬孝且君 いまそういう抽象的なお答えで、業種指定その他を拡大をして、国民的な見地で救っていこうという、一口に言うならそういうことだろうと思うんでありますが、中小企業近代化が先ほど言った昭和三十八年に成立をされまして、それで、先ほど言った時代背景というものを私は申し上げたのでありますが、特に四十四年の改正は、中小企業国際競争力というものがかなり重点に置かれて、力点に置かれて改正をされている、こういう理解を私なりにいたしているのであります。  そこで、構造改善を進める必要な、いまも出ましたけれども業種指定という問題なんでありますが、率直に申し上げまして、この法律ではこれ以外の業種中小企業がやっぱり取り残されているのではないかという懸念が、ちょっとこの法案趣旨から言って判断をされるわけであります。特に資本力の小さい、労働者数の四人とか五人とかのつまり零細規模企業は、こういった業種指定がなされたとしてもどれだけこの構造改善事業が推進をしていけるのか、あるいは結局取り残されていくのではないか。比較的大きな中小企業は残っていくことになりかねないけれども、いま申し上げましたような本当の零細規模関係というのは、機能的にやっぱり救われない結果になるのではないか。  そこで、同法律の中で現在まで百二十四の業種指定されて、百八十三件の近代化計画が策定をされています。これは私なりに調べてまいりましたが、そのうち構造改善関係は三十五業種指定をされまして、五十件の計画が承認されているわけであります。この業種指定によってどのような層が、どういう形で近代化なり構造改善成果を上げることができるのか。つまり、中堅の中小企業ランクはもちろん上があるだろうけれども、もっと下のランク下層に位置づけられている零細規模関係については、結果的には、この構造改善成果という意味では恩恵を受けないのではないか。こういう点については指定業種の兼ね合いを含めてどう考えるか、これをちょっとお伺いしたいと思います。
  8. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 構造改善業種は現在三十五業種ございまして、それぞれ構造改善計画を実行中でございますが、この構造改善計画はたてまえといたしまして、その指定されました業種業界ぐるみ計画を立てていただくということを私どもは希望をいたしておりまして、その業種に属します企業の少なくとも過半数が参画された計画であることを、私どもは承認する場合の要件にいたしております。事実、実績の上で見ましても、その指定業種の大体六五、六%が企業として参画をいたしておりまして、相当数小規模企業もその中に加わっておるわけでございます。  この構造改善計画の中での小規模企業参加比率を見てみますと、大体八六%が小規模企業である、こういう数字が出ております。いま日本の全体の中小企業の中での小規模企業割合が約八一%でございますので、むしろ構造改善計画におきましては、小規模企業参加比率全国平均よりも高い、こういうような結果になっておりまして、現在行われております構造改善におきましては、小規模企業の非常に大きな部分参画いたしまして、中小企業の中の大きな部分と一緒になりまして構造改善が進められておる、かように了解をいたしております。
  9. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま数字的に八六%、かなり小規模の企業指定業種の中で救われていると言いますが、たとえば十七日にもちょっと申し上げましたけれども零細企業対象と言われる最近の豆腐業、あるいはクリーニング、軽印刷と、こういう関係をずっと見てまいりますと、必ずしも長官の言うような状態で恩恵をこうむっているかといったら、そうではないんだね。この点がやっぱり問題だから、この前十七日に大臣に基本的な姿勢をお伺いしているんでありますが、つまり、新事業分野を確立する法律は何らか必要ではないのか、こういう問いを私はいたしました。それなりお答えがありましたが、そこらあたりが実際問題として、いま長官が言うような、それなら何で、いまクリーニング業界、軽印刷、きょうも一時からあるんですけれども、あるいは豆腐業界だとかその他の業種もかなり集まって、特に新事業分野に関する何らかの法律を定めてもらいたい、こういう下からの非常な盛り上がりが来ているわけです。  それと、この前私が申し上げたでしょう。北海道も、ほかの町は私は知りませんけれども北海道における札幌興信所の、四十九年の十一月から五十年の一月までにおけるあの倒産の実態をずっと見てみますと、ほとんどいま言ったような小規模の五人から十人、あるいは三十人から五十人という層が圧倒的に八〇%まで位置を占めているわけです。だから、長官が言うような実態であるとするならば、何でそういう問題がいま起きているのか、ここらあたりに、今回の現行法改正が本当に日の当たることになるのか、ならないのか、その点の問題なんですよ。この点をもう一回伺いたいと思います。
  10. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 私どもは極力、この構造改善業種指定が行われました場合には、そこに属しております企業のできれば一〇〇%御参画いただいて、新鋭設備の導入なりその他の技術開発等をやっていただきたいと思っているわけでありますけれども、やはり企業にはそれぞれ御意見がございまして、特に小規模企業も多数参画はしておりますが、漏れております中には、小規模企業の方が割合としては多いだろうと思っております。こういった小規模企業の中にはまだ生業的な分野も相当ございます。そういった方々につきましては、現在、まず指導が第一であると考えまして、御案内のように、商工会議所あるいは商工会全国で六千名の経営指導員を配置をいたしまして、日夜経営指導に当たらせておるわけであります。  また、その経営指導を受けまして経営改善のために資金が必要でございます場合には、二百万円を原度としてはおりますけれども、無担保・無保証で低利の資金を貸し出しておりますし、そのほか、そういった零細企業向けには、県から無利子の設備近代化資金というものの貸し出しの制度もございます。また、信用保証の面で百五十万まで保証人なしで、無担保保証をする制度もございまして、経営指導員によります指導と、それからそういった金融面補完措置によりまして、それぞれに、できれば生業的なものから企業的なものに、漸次内容を充実して成長していただくように努力はいたしておるわけでございますが、何せこの四百万の小規模企業がおりますので、全面的になかなか手が行き渡らない面があることは私どもも反省をいたしておりまして、さらにこういった施策を充実してまいりたいと考えております。
  11. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこでもう一歩突っ込んで、下層対策という意味でちょっとお伺いしたいのでありますが、つまりこの大企業中小企業関係を見れば、確かに二重構造あるいは三重構造という形になっておるわけですけれども、いまこの小規模関係とまた別な形で、この間、十七日の午前中に参考人もちょっと申しておったように、系列化の中で下請あるいは孫請というような形でなされているこの小規模の企業、こういう問題に対して、この間の全国中央会団体の専務のおっしゃることには、もっとできるだけ組織化をしていきたいということを強調されましたが、この組織化が非常になかなかむずかしいわけですね。むずかしいという意味は、この下請関係組織化とこう言ったって、現実に単価は買いたたかれ、あるいは使われている労働者賃金は遅払いも起きているというような今日の状況下では、組織化と言ったってそう簡単にできる次第のものじゃないでしょう、現実に私は北海道の例を見てわかるのですけれども。したがってそういう意味では、果たして今回の近代化構造改善ということが、この下請なり孫請という関係でのそういうクラスの関係について、一体どういうふうにこの法律の中で出されるのか、こういう点についてはどう考えますか。
  12. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) この近代化促進法は、同業関係の横の連携を保ちまして近代化を進めようという趣旨のものでございますが、もちろん下請業種関係対象業種に相当入ってまいっております。たとえば歯車業界、それからネジの業界あるいは鋳物業界、こういう業種は従来指定業種になっておりまして、それぞれ近代化を進めておるわけでございまして、こういった部品を供給しているものは、広い意味での下請業種になるわけでございます。  もう一つ、ある特定企業との関係におきまして下請をなしておりまして、その企業との関係において、その企業に納入しておる下請業者が集まりまして組合を形成をして、その親事業所との交渉力を持つとか、あるいは親事業者技術面等の支援を受けながらその下請自体近代化を図る。こういうやり方をとります下請育成方策としては、もう一つ下請中小企業振興法という法律がございまして、そちらの方で、同業種でなくていろいろな異業種関係でございましても、あるいは親事業者に物を納入しておるという意味下請群が一団となりまして組合をつくりましてその近代化を図る、こういう仕組みがもう一つあるわけでございます。  近代化促進法の方は、特定の親事業者に納入する下請群というよりは同業者鋳物業者とか歯車業者とかいったような同業者の横の結合におきます組合をつくってもらいまして、そこを中心にその近代化を図っていこう、こういうやり方でございますが、まあ両方の行き方それぞれに応じまして効果が上がろうかと思いますが、近代化促進法におきましては、そういった横の同業関係のシステムとしての近代化、こういうものを進めておるわけでございます。しかし、その中には下請に該当する業種も相当多数入っておるということになろうかと思います。
  13. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで、この問題について大臣にひとつ基本的な考え方を再度お伺いしたいのでありますが、いま長官からそれぞれ答えられましたけれども、今回のこの近促法の一部改正によって一番問題は、何といっても先ほど言った小規模の企業が、この法律の中でどこまで生かされるのか、救われるのかということが大きな問題なんですよね。問題は、やっぱりそこらあたりに日を当てなければ、これは十七日も大臣に申し上げたように、根本的にはこの高度経済成長のときに近代化という言葉ができ上がったのだから、言うならば、GNP世界二位を達成するためのそういう流れの中で、時代の対応ででき上がってきたのだから、本来ならば、低成長に入ったら根本的にやっぱり変えるべきなんですよ。  その考え方は別にいたしまして、本当にこの近促法の中で、いま言った指定業種拡大なりそういうものを含めて、小規模の企業対策あるいは零細企業、こういう関係における質的な向上、同時に、近促法における法の運用の中で生かされていく、十分にまた救われる、こういう政策は貫いていきたいのだと、こういう大臣の御所見があるかどうか、この点について再度ひとつ大臣の決意をお聞かせいただきたい。
  14. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほど長官から、構造改善事業には小規模企業が相当幅広く対象になっておるという具体的な数字を挙げての説明がございましたが、日本中小企業の場合に、特に小規模企業対策というものが大変大切でありますから、今後ともこの構造改善事業には小規模企業対策といいますか、小規模企業構造改善事業に幅広く含まれるように、運営の面でひとつ従前にも増して格段の配慮を払っていきたい、かように思います。
  15. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで再度、長官にもう一回お伺いしますが、この近促法に対する関係業界反応が一体どうかという問題が一つあるわけです。その意味では、十七日の参考人として出てこられた方々所見それなりに私は聞きました。むしろそういう方々ではなくて、それ以外の、先ほど言った小規模の業界におけるそういった反応というものを、つまり今回の中小企業の要望が完全に、この法律をつくることによって非常に困難ではないのかという見方が零細企業にあるわけです。しかし、この近代化促進法マイナス面というものに、率直に耳を傾けるべきだという意見も私は聞いています。しかし、いま私が聞きたいことは、政府側として、今回の改正に対する関係業界反応というものは一体どういうふうにつかんでいるかということをひとつお伺いしたいと思います。
  16. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 小規模企業関係でございますけれども、今回特に、先ほど先生も御指摘ございましたように、従来の産業構造高度化とか、国際競争力強化といった指定要件に加えまして、国民生活関連の深い業種指定をできるように指定要件拡大をしたわけでございまして、私どもの身近なもののサービスあるいは物品の供給、こういう業種をこれからどんどん指定をしてまいりたいと考えておりますので、こういう業種におきましては、従来以上に小規模企業参画するケースが多いのではないかというふうに考えております。  それからもう一つは、業界全体としてはまとまりが悪くって業種指定まで至らないという場合でも、関連事業ぐるみ構造改善計画ということが今回一つ改正点になっておりまして、ある特定業種に材料を供給する部門でございますとか、あるいはそれの流通を担当する部門ですとかいったような、関連業界部分的に参画ができるようになっております。そういたしますと、個別に個々の小規模事業者等関連事業者という形で特定事業者のつくります構造改善計画参画が可能になるわけでございまして、ここらのあたりでも、小規模事業者が従来以上にこの構造改善計画参画する道が開けてまいっておるというふうに考える次第でございます。  業界反応と申しますか、意見でございますけれども中小企業団体中央会はもちろん、各種中小企業団体の御意見も承りましたし、また、中小企業近代化審議会に各中小企業の代表の方が多数委員として参画しておられますけれども、その審議会にもお諮りをいたしまして、細かく御審議を願ってこの法案を作成したわけでございますが、多くの方々皆歓迎の旨を表明しておられまして、むしろ、この成立を期待していただいておるものというふうに了解をいたしております。
  17. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで私は次に、中小企業近代化促進法が今日まで目指してきたのは、何といっても中小企業と大企業との格差を是正をしていく、こういうことと、生産性向上を図ることにより、わが国産業経済高度化あるいは国際競争力に打ちかつ、こういう促進の形で今日までの近促法というのはどちらかというと、そちらにウエートをかけられて運用されてきておるのじゃないかと思う。  そこで、現行法に基づく助成措置実績なんですけれども、これはどの程度実績としてあらわれているのかという意味で具体的にお伺いしたいのでありますが、中小企業近代化構造改善事業を図ることが現在必要な業種に先ごろ指定をされているわけでありますが、たとえば金融税制上の助成措置がとられるわけであるが、今日までの指定業種と、指定業種に対してどのくらいの貸し付け実績があったかということが第一点。  それから、指定業種においては近代化促進貸し付け、つまり中小企業金融公庫、それから企業合同貸し付け中小企業振興事業団、それから、特定事業にあっては構造改善貸し付けの中小公庫、企業合同の、先ほど申しました知識集約的なこの貸し付け振興事業団があるわけでありますが、どのくらいの実績が大体この中で行われているのかという点を、ひとつ具体的な数字をもって御説明を願いたいと思います。
  18. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) この近代化促進法に基づきますいわゆる近代化貸付というものでございます。これは指定業種につきまして中小企業金融公庫から低利の融資を行っておりますが、昭和三十八年の本法施行後四十九年度末まで、この三月末までの累計が融資額で二千百億円に相なっております。  それから構造改善関係貸し付けでございますが、これは構造改善事業業種特定業種につきまして融資を行いまして、近代化貸付よりもさらに金利が安くなっておりますけれども、四十五年からこの制度が始まっておりますが、同じくことしの三月末までの実績が千十九億円の融資実績でございます。  それから、構造改善業種におきます合併等の承認実績は百七十一件でございます。また、構造改善業種につきましては、機械設備につきまして二分の一の割り増し償却を認めておりますが、この割り増し償却の実績が八百十二億円に相なっております。  それから中小企業振興事業団が、いわゆる知識集約化事業中小企業組合でやります場合に、八割無利子で融資をいたしておりますけれども、この融資実績は四十八年度が一億三千万円、四十九年度が二億五千万円でございます。
  19. 対馬孝且

    対馬孝且君 一応四十九年度、今日までの実績それなりにわかりましたが、それならば、ひとつ今回の改正後の助成措置は一体どうなっていくのか。ここらあたりが一番中小企業の皆さんが聞きたいところだと思うんですよ。したがって、今回の改正関連事業と新分野に対する進出促進業種に対しても、金融並びに税制上で助成措置が図られるわけであるが、その内容について、どういうふうに今回の改正した後の法律の中では特徴点として生かされていくのか。先ほど金融面だけのあれが出ましたけれども、税制面を含めてあれば示してもらいたい、こう考えます。
  20. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 従来からの指定業種なり、構造改善業種につきましての助成措置は従来どおりでございますが、今回新たに本法で適用になります、いわゆる関連業種につきましては、金融面におきましては、中小企業金融公庫から近代化促進貸付並みの低利によります融資を行うことになっております。また、知識集約化貸付の対象にもいたすことにいたしております。  それから税制面におきましては、関連業種につきまして、合併等がございました場合の課税の特例を適用いたします。それから技術開発面の税制といたしまして、構成員が組合に研究費として納入した負担金は損金算入を認めます。また、組合がそう言って集めました資金で、分担金でもってつくりました試験研究施設につきましては、圧縮記帳を認めることにいたしております。また、組合員につきましては、試験研究費がふえました場合、つまり試験研究費ということで組合に納める金が増額してまいりました場合には、その増加分は試験研究費の増加試験研究費とみなしまして、税額控除制度を適用することにいたしております。また、関連業種構造改善関係の施設につきまして、特別土地保有税の非課税を行います。それから事業所税につきましても、非課税といたしております。それから進出促進業種につきまして、これが他の部門に新商品を開発して転換してまいります場合には、この新しい事業を営むための設備資金につきまして、構造改善業種並みの八・四%の金利によります低利資金を融資をすることにいたしております。それから、知識集約化貸付を研究開発関係について振興事業団から行いますことも同様でございます。  税制面につきましては、技術開発税制が新しく適用になることになっておりまして、先ほど申し上げましたように、関連業種の場合と同様に、組合が試験研究施設を取得しますために組合員に賦課金を課しました場合には、その損金算入を組合員について認めますと同時に、その金で組合が設備を取得いたしました場合に圧縮記帳を認めます。また、増加試験研究費の税額控除制度を適用いたします。また、固定資産税等の面におきます特別土地保有税の非課税、事業所税の非課税等々も適用することにいたしております。
  21. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま、これから法改正に伴っての一応の金融並びに税制の一つ恩恵と言いますか、そういう点のあれはそれなりに一応わかりました。  次の問題は、新分野の進出計画制度についてちょっとお伺いをしたいと思います。改正案では、新商品の開発や新技術の合理化等を通じまして、新たな事業が新分野拡大をしていくということが強調されているわけであります。この中小企業に対しての助成を、いま申し上げましたようにしていこうとする制度を設けることになっておりますけれども、一口に新商品の開発とこう言いますけれども、簡単にいまの不況並びに大企業の大型化というようなことから判断をいたした場合に、多額な資金と開発のためには長期間を要するのではないか。この間も参考人がちょっと申し上げておりましたけれども、仮に新分野に既成の企業が行く場合には二年くらいかかるのじゃないか、その二年間を何らかの形でやっぱり法で保護していく必要があるだろうということを明治大学の渡辺先生が強調されておりましたが、全く私は同感だと思うのです。  そういう意味では、そのための制度ができたとしても、どれだけそれを中小企業に一体利用ができるのか、こういう疑問を実は持っておるわけでありますが、もしこの制度が十分でないとしましたら、適用条件の緩和、あるいは新商品の開発等を認める範囲の拡大、こういった制度に対して弾力的にやっぱり運用する必要があるのではないか、こういうふうに考えますが、この点どうですか。
  22. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 大企業と違いまして、中小企業の場合には、資金力それから人材の面で、御指摘のように、なかなか新商品の開発ということは容易ではないと私も思います。ただ、やはり中小企業は、その創意と工夫でいままでにも時代変化に十分対応してまいってきておるわけでございまして、今後も新しい各種の需要、つまり、ニーズの多様化に伴いまして各種の需要が出てまいるかと思いますので、それに応じまして各種の新商品を中小企業中小企業なりに開発をしていかれるのじゃないかと期待をしておるわけでございますが、特に本法におきましては、一般的に中小企業が転換する場合の助成ではございませんで、一応需要の停滞とか発展途上国の追い上げ等で、将来がやや懸念が持たれますような業種につきまして業種指定をいたしまして、その業種に属する方々がグループを組んで研究開発をし、新商品がめどがつけば企業化される、こういう場合にいろいろ助成をする制度を盛り込んだわけでございます。  個々の企業がおやりになる分は本法の対象になっておりません。これはやはりなかなか研究開発は簡単なものでありませんので、自力でやれるような方は別途それぞれ研究補助金等の制度もございますが、そちらを利用していただくようにお願いすることにしまして、本法では、特にある程度まとまって研究開発をして、共同で自分たちの力を持ち寄って新分野への商品の開発をしよう、こういう形のものにつきまして対象にしておるわけでございまして、いわば何人かで寄りますれば、それなりに補い合って力が出てくるのじゃないかと考えるわけでございます。  それから、新商品と言います場合に、全くこの世になかった商品を生み出した場合というほどに厳格に考えておるわけではございません。従来からあります商品でも、その機能等が非常に新しいものになりまして、取引通念上新商品ということで扱われるようなものであって、しかも国民の新しい需要にこたえ得るもの、こういうものであれば、本法にいう新たな事業分野というふうに解釈してまいりたいと考えておりまして、新商品の判定につきましては、極力弾力的に考えてまいりたいと考えております。
  23. 対馬孝且

    対馬孝且君 次の問題は、この法律を見ますと、新分野進出計画制度における計画策定の主体性の問題なんですがね。つまり新分野の進出の場合は、この法案の中で言いますと、「商工組合等」でなければ認められないというような法文化になっておるわけですね、問題は。この制度は積極的に利用させることを考えた場合に、さらに中小企業が低成長時代に対処していくためには、いまもありましたように、新商品や新技術を開発するに当たって、この助成の対象を、「商工組合等」という、「等」とついていますけれども、つまり商工組合というふうに限定するのはどうも問題があるのじゃないか、こういう意見が率直に、特に零細企業関係で多いわけです。  したがって、商工組合などについて加入していなくても、たとえば優秀な商品、技術の開発をできる力を持っているとするならば、その商品化までに結びついていくための資金調達が困難であるという企業も少なくないわけであります。先ほど私はそういう意味でお尋ねしたわけでありますけれども、この制度を積極的に活用するためには、こうした個々の企業に対して助成措置を含めて検討する必要があるのではないか、これが零細企業方々の本当の率直な素朴な声です。この点、「商工組合等」ということの問題を含めて考え方を明確にお聞かせを願いたい、こう思います。
  24. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 前向きの構造改善につきましては、商工組合等の場合に、構造改善計画をつくります主体は、大体私ども全国一本で一つ組合一つ計画を立てていただく。その中にその業種全体が含まれる構造改善計画ということで運用してまいっております。これはその業種全体の構造改善をシステム的に図ろうという趣旨でそういった運用をいたしてまいっておるわけでございますが、新分野進出計画の場合の計画策定の主体は、一本にしぼるつもりは全然ございません。商工組合でもよろしいと思いますし、協同組合でも結構でございます。したがいまして、一番小さい場合には、四人おりますと協同組合成立いたすことになりますので、四人のグループの方が相寄って何か新しい仕事への計画を立てたい、こういう場合でも、内容が確実であれば結構だと考えておりまして、一つのたとえば促進業種指定をしたといたしまして、一つ業種について一つ計画というふうには考えていないのでございまして、新商品の開発関係一つ業種について幾つのグループも、十も二十もグループができても構わない。したがって、一つのグループは最低四人以上であればいい、こういうふうに考えております。
  25. 対馬孝且

    対馬孝且君 もう一回だめ押ししますが、それでは「商工組合等」という法文上の問題、これは解釈等の問題で、これだけ見ると何か既成の商工組合でなければというような、印象というよりもそういう観念になっちゃうんだね。長官はそう言っているけれども、実際は末端へ行って出先で運用する場合に、いや、そうではありませんということになったんでは困るんですよ。したがって、ここらあたりもうちょっと明文化したらどうだろうと考えますが、この点どうですか。いま言ったような考え方があるとするならば、もうちょっとこの法文の中で「商工組合等」という従来の固定観念的なものを対象とするのじゃなくて、かなり幅のある運用をするんだという意味での法のあれをはっきりした方がいいんじゃないか、こう思いますが、この点どうですか。
  26. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) ここで改正法第五条の「商工組合等」と言っておりますのは、法律に規定がございまして、本法の施行令の第二条の三でございますが、「商工組合等は、次のとおりとする。」ということで、第一が商工組合、それからその連合会、第二が事業協同組合及び協同組合連合会と、あと酒造組合とか民法の公益法人とかを列挙いたしておりますが、こういうふうに定められておりまして、特に政令で定めております第二号の「事業協同組合」がここの「商工組合等」の中に含まれておりますので、この協同組合という形で申請をしていただけば、取り上げられ得る対象になるわけでございます。協同組合は、先ほど申し上げましたように、四名以上のグループをおつくりになれば成立することになりますので、そういった小グループでも本法の対象にしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  27. 対馬孝且

    対馬孝且君 その点一番問題点になることであって、協同組合というふうにすればいいじゃないかと簡単に言いますけれども、たとえば二十か三十集まって、ひとつお互いに助け合ったりしようじゃないかということで、いわゆる親睦会にちょっと毛の生えたような形のものが多数あるわけですよ。率直に申し上げれば長官がよく御存じだと思うんです。ある程度そういうものが協同組合的手続さえすればそれでいいということに理解していいですか。
  28. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 法人格のない親睦会といったような同業者ではぐあいが悪いと思いますが、法律の定義で申しますと、やはり事業協同組合法によって認可をとられました協同組合というものでございますれば、本法の第五条の対象として取り上げたいと考えます。
  29. 対馬孝且

    対馬孝且君 時間が来たようでありますが、最後に一つだけお伺いします。  国民生活関連業種関係につきまして、再度だめ押しの意味大臣長官にお伺いしたいのでありますが、改正案では、近代化計画指定業種と先ほども答弁がございました。単に国際競争力強化産業構造高度化を図るだけの業種ではなくて、つまり国民生活安定向上、この近促法からいくとそれだけが取り柄なんだよ、これは率直に言うと。私は口の悪い方だからずばり言いますけれども、今回の近促法改正では、国民生活向上福祉向上ということだけがこの法案のよりどころと言っては悪いけれども、何かそういうものよりないじゃないかという感じがするのです。  そこで、先ほど来長官は抽象的にお答えしているのですが、国民生活安定向上を図る上での重要な業種対象とすることになっているが、国民生活安定向上を図る上で、こうでしょう、図る上で重要な業種とは具体的にどのような業種が入るのか、その点をはっきりさせておきたいと思うのです。その点どうですか。   〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕
  30. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 今回の新しい指定要件によります国民生活関連業種というもので私ども考えておりますのは、国民生活の上での利用度の高い業種でございまして、まず、衣食住といったような生活必需品を供給する業種、それからそれだけにとどまりませんで、文化、教養水準の向上とか、健康の維持、増進といったような関係物品なり役務対象にいたしたい。そのほか生活環境の保全、向上に必要な物品役務あるいはそれの関係の原材料、中間品を消費財に支配的に用いられるものも含めたい、かように考えておりまして、たとえば健康の維持、増進という意味で、富山の家庭配置薬あたりでございますとか、あるいは食品関係でのソース業あるいは住宅関連産業ですとか、廃プラスチックの再生業でございますとか、あるいは文化関係では製本業とか、こういったものを、まだ業界の要望の非常に強い業種もございますし、これからお話し合いを進める業種もございますが、そういったものをどんどん取り上げてまいりたいと考えております。
  31. 対馬孝且

    対馬孝且君 最後に大臣に。  この法案の全体をいま、時間がありませんので、ある程度ポイントだけこうしぼって質問をしたわけでありますが、先ほど私特に申し上げましたように、やっぱりこの法案で、低成長下時代でもっと基本的に法案改正が必要ではないか、むしろ新たな事業分野を確立する法律が必要だという声が、先ほど来申し上げましたようにほうはいとして高まっておるわけであります。  これはこれとして、最後にお伺いしたいことは、この中小企業を守るための事業分野に関する新法律制定をするという、こういう考え方について通産大臣としてどう考えるか、これを最後にお伺いしたい。
  32. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これまでの近促法の運用の中心は、経済の高度の成長に即応いたしまして国際競争力強化、こういう面で主として運用をしてきたわけでございますが、今回の法改正によりまして、内容が根本的に変わりまして、先ほど来いろいろ御議論がございましたように、国民生活関連の深い業種あるいは福祉関係、こういうものを対象にしようということで、運用の内容が根本的に変わるという趣旨法律に盛ってあると思うのでございます。そういうことで、私はこの法律そのものが、今回の法改正をお認めいただきますならば根本的に変わる、質的に変わる、こう申しても過言ではないと思います。そういう意味におきまして、新しい法律をつくらなくても今回の改正をお認めいただくことによって十分その法改正趣旨は徹底される、こういうふうに考えておりますので、新しい法律をつくってこれにかえるという考え方は、ただいまのところはございません。
  33. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま大臣考え方を参考までにお伺いしたことでございますから、私らとしては、やっぱりこの法律だけでは中小企業の末端の零細企業を守ることにはならない、こういう考え方には変わっておりませんので、その点だけ明らかにして質問を終わりたいと思います。
  34. 小柳勇

    ○小柳勇君 いまの対馬君の質問とも関連なんですが、きょうも全国から中小企業団体の代表が集まりまして、中小企業企業分野確保の法律制定に対する請願行動を起こすわけです。大臣は、現在の法律を活用することによって大企業分野中小企業分野それぞれの分野で調整していくということでありますが、通産省の出先機関もたくさん仕事がありまして、もちろん調整委員会どもありますけれども、いまのように不景気になりますと非常にその声が強いわけです。弱肉強食の機運がたくさん現地にあります。したがって、後で午後中小企業庁長官に代表が請願することをとりなしてくれということで、その話もいま進めておるところでありますが、いま自民党に聞きますと、自民党の商工部会でもまだ最終結論は出ていないようであります。現在ある法律を少し整理して事業分野の確保に関する法律、名前が悪かったら少し変えてもいいのですけれども、この際はもう少し画然とすべきではないか。  特に、後で質問するのでありますが、下請代金支払遅延等防止法あるいは官公需受注の法律どもできましてもう数年たちましたけれども、なかなか実行不可能です。おのおのの事業分野を確立をして、その法律に基づいて下請代金支払遅延防止なり官公需発注なりを発動する。だから、現在通産省関係法律、特に中小企業関係法律を整理統合して、もう少し低成長時代に沿うような法体系にすべきではないか、そういうことをしみじみ考えるわけでありますが、その問題に対する通産大臣の御見解と、並びに直接担当している中小企業庁長官の見解を聞きたいと思います。
  35. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず第一に、経済事情の激変に即応して、新しい中小企業関係の法体系を整備すべきではないかという問題でありますが、確かに御指摘のように、一昨年の第四次中東戦争の影響を受けまして、自来経済は激変を続けております。ただしかし、政府の方といたしましては、四十九年、五十年、五十一年、つまり来年いっぱいをもちましてこの経済の調整期間と心得まして、この三カ年の間に経済の体調を整えまして、そして安定成長の軌道に乗せていく、こういうことで現在軌道を修正中である、そういう段階でございますので、現在私は混乱期であると思います。  したがいまして、混乱が起こったからといって、直ちに新しい混乱期に即応する法体系の整備ということではなくして、来年いっぱいの経済の動きを見まして、日本の経済がどういうふうな形に落ちつくか、また将来動いていくか、こういうふうな一応のめどがいずれはつくわけでございますから、そのときを待って、また改めて検討するということは必要であろうかと思いますけれども、現在の混乱期に一挙に何もかも法体系を考え直すということは、少しまだ時期が早いのではないか、こういうふうに考えております。  それから第二の問題点でありますが、事業分野の調整ということにつきましては、私どももその必要を認めておるわけでございます。大企業がみだりに中小企業分野に入り込んで経済秩序を乱してはいけない、この点におきましては、全く私どもも同意見でございます。  ただ、そのやり方でございますが、法律をつくって、法律によってこの分野を確定いたしまして、一定の分野には大企業は一切出てくることまかりならぬ、こういうことにする方法と、そういうことではなくして、行政指導によりまして、また話し合いによりまして、大企業がみだりに中小企業分野に入り込まないように持っていく、こういうやり方とどちらがいいかということでございますが、私どもといたしましては、法律によって一つ分野調整を確定していくということは、これはむしろ産業の発展のためにマイナスになる要素がある程度あるのではないか、こういう考え方のもとに、行政指導いたしまして、話し合いによってこれを解決していく、その方がむしろプラスであろう、こういうふうな考え方のもとに、これまで行政指導中心に、トラブルが起こったときには話し合いでおさめていく、こういう方針できたわけでございます。幸い、幾たびかトラブルが起こりましたけれども、大体行政指導による話し合いでほぼ話はついたと思っております。  そういうことでございますから、法律をつくってこの分野調整をするという考え方は、現在の時点では少し行き過ぎではなかろうか、むしろ産業のためにはよくないのではないか、こういう考え方のもとに、先ほど御指摘もございましたが、行政指導するといっても、それだけの自主的な体制がないではないか、こういうお話でございますので、各通産局にもそれを専門に扱う若干の担当者を配置をするとか、あるいは府県にもそういう担当者を置いてもらうとか、そういうことをいろいろお願いいたしまして、いま申し上げましたような方向に沿いまして処理したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  36. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 大企業の急激、大規模な進出によりまして中小企業の活躍の機会が失われるということは、絶対に避けなければならないと私どもも考えておりまして、そういう意味におきましては、大企業のみだりな進出は、これを行政指導によりましてすみやかに調整を図るということにいたしたいと考えておりますが、法律制定をいたしまして分野を確定をするということにつきましては、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、非常に経済は流動的でございまして、その分野の確定がきわめて実際上むずかしい面があるように考えるわけでございます。  これまでにも産業分類上数百の業種がございますけれども、従来大企業が主としてやっておったものが、中小企業性の分野に変わったような変化もございますし、逆に、中小企業の主たる分野であったのが大企業分野に変わったのも若干はございまして、その辺業種間の変動は非常に流動的でございまして、技術変化なり需要の変化によりましてその辺が常に変化を見せております。これを一義的に線引きをいたすことは実際上は非常にむずかしい面がございます。  と同時に、ただいま大臣からも御答弁申し上げましたように、競争ということはやはり産業の進歩のためにも必要ではないかと考えるわけでございまして、そこに余り厚い障壁を法律によって設けまして過保護になることは、中小企業自体が進歩の意欲を失うという面におきましても好ましくない面もございます。また、消費者利益の問題、技術革新の問題等々も考えますならば、この問題は、やはり実情に即しまして行政指導を適宜、適切に働かすことによりまして、現実的な解決を図っていくのが最も実際的ではなかろうか、こういうふうに考えている次第でございまして、立法化につきましては、いろいろ多角的な検討がまだ必要ではなかろうかとただいまのところでは考えておる次第でございます。
  37. 小柳勇

    ○小柳勇君 少し長官、突っ込んで話してみますが、たとえばいま起こっている問題、耳にしている問題は、熊本の中心街に、私の隣の県ですけれども、そこにダイエーが進出をすると。ダイエーと思いましたが、名前はちょっとね。したがって、中小商店街の方が反対運動をしているという話を聞きました。これは一つの例にしますよ。具体的にはちょっと私も確かでありません。その場合に、これがだめですと言うことについては若干いまの法律では問題があると思うんですね。だから、調整がつく、つかぬの問題がありましょうが、そのときに、たとえばダイエーが出ることについては地元の人は、一般の消費者は賛成するかもしれませんね、安いマーケットが出れば。ところが、その辺の何百の中小商店街の人は大反対するわけです。だからそれで阻止しようとする。そこで、それを阻止できればいいけれども、どうしてもそれができないようなときに、一つの代案としては、その二百か三百の商店街に対して、ダイエーと同じように安く、多量に販売できるようなシステムを与え、資金を与えるということですね。だから道は二つあると思う。  その大企業進出を押さえる方法が一つと、大企業が出ても、もう商店街の方がわっと組織化して、スーパーマーケットみたいな体制になったから、もう出てもダイエーの販売はできませんよとなると、ダイエーも考えるでしょうね。だから、消極的に大企業の進出を押さえる方法が一つと、もしそれができない場合は、今度は逆に、そのいまある中小商店街の何百かを、わっと通産省なりで指導して、あるいは財政的に援助して、金融的に援助して、あるいは経営の援助をして、それに対抗できるシステムをつくらせるという方法もあるわけです。  いま、法改正の問題は、単純にいまの大体の私ども法律としては、おのおのの中小企業分野を確立して、それには大企業を進出させないようにしようと。で、この中小企業の方には少し政府が援助しよう、そういう考え方なんですがね。それを法律をつくろうと——いま法律をつくることには反対のようでありますから、それじゃ具体的に、そういうように積極的に、スーパーなどが簡単に進出できないように、在来の商店街などにいまの団体組織法とか、あるいは商工組合法とか、あるいは中小企業近代化促進法とか、構造改善法とかを適用して、それに匹敵するだけの指導あるいは金融体制をとりますか、その点をお聞きしておきたい。
  38. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) ただいま立法の御議論か出ておりますのは、製造業の場合、たとえば印刷業等は製造業という部類になっておりますが、あるいはクリーニング業、ホテル業といったようなサービス業の場合、これを何らか法律的な根拠に基づいて大企業の進出を調整するかどうかというのが議論になっておりまして、確かに、法律的にはその調整そのものを図る規定は現在ないわけでございます。ところが、いまの先生御指摘のいわゆる大規模店舗——百貨店なりスーパーマーケットの進出による小売商との調整の問題につきましては、大規模店舗の調整に関する法律という法律が現にあるわけでございまして、その法律に基づきまして、大規模店舗の進出については事前の届け出制を課しまして、現地の商業活動調整協議会で調整を行い、それの報告に基づきまして大規模小売店舗審議会におきましてその大規模小売店の進出を認めるか認めないか、認める場合でも、時期をずらすとか、あるいは規模を縮小させるとか、いろいろ調整をすることは法律的に可能になっておるわけでございます。また、その調整について大規模小売店側がそれを承諾しない場合には、主務大臣が命令をもってこれを強制することもできるように法律的にはなっております。したがいまして、小売店と大規模店舗の進出の問題のトラブルの調整につきましては、ただいま申しました大規模小売店調整法の運用の問題といたしまして、より小売商の利益を重視するかどうか、こういう問題かと存じますので、十分地元の小売店の利益も配慮しながら運用するように心がけたいと考えます。  と同時に、消費者利益の保護もこの法律にうたわれておるところでございまして、一概に、この大規模小売店の進出が、一面では地元小売商の利害に非常に影響しますと同時に、流通革命と申しますか、消費者物価の引き下げに寄与している面もあるわけでございます。したがいまして、それが非常に大きな影響を与えます場合には、店舗の面積を削りましたり、進出の時期を延ばしましたりして、中小企業者側に対応の時間的な余裕を与えますと同時に、中小企業の小売店につきましては、各種助成措置を現に講じておるところでございます。  一つの方法は、中小企業者自体が、小売商自体かスーパーマーケットを建設をする、あるいは百貨店を建設をする、いわゆる寄り合い百貨店と申しまして、百貨店的な形式の中に小売店が皆入るやり方でございますけれども、こういった寄り合い百貨店、あるいは小売商のスーパーマーケットにつきましては、中小企業振興事業団から二・六%の低利の資金を貸し出す仕組みを現在用意をいたしております。また、小売店の商店街がより魅力あるようにして大規模店舗に対抗できるようにいたしますために、アーケードの整備でございますとか、街路灯の建設、共同駐車場の建設、こういったものにも二・七%、内容によりましては無利子の金を中小企業振興事業団から融資する制度がございますので、これをフルに活用いたしまして、大規模のスーパー等に対抗できるように中小企業者自体を育成をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  製造業、サービス業につきましては、そういった調整法という法律はございませんけれども中小企業団体法の中に、大企業の進出によりまして影響を受けるというおそれがあります場合には、商工組合がこれと交渉をいたしまして、進出の時期の延期なり、規模の縮小等につきまして契約を結ぶ制度がございます。特殊契約制度と呼んでおりますけれども、実際にはまだこの契約が結ばれた例はございません。なぜかと申しますと、実際にはやっぱり、法律の発動という形をとらないで交渉をやりたいということを中小企業側が希望しておられるケースが多いわけでございまして、そういう意味で、法律を後に控えながら事実上まず話し合いをやっていただきまして、話し合いがまとまらない場合には、主務省なりあるいは府県なり通産局なり、適当な機関が中に入りましてあっせん、調停をする、こういうような形で実際的にはほとんど解決を見ておるように思います。これは、やはり後にただいま申しました団体法による特殊契約制度、この契約の申し入れがあった場合には、交渉応諾義務が相手方に、大企業側に課されておりますし、話がまとまらない場合には、主務大臣があっせん、調停をするような規定もございますので、この法律の規定をバックといたしまして実際上のあっせん、調停を行っておる、こういった実情になっておるわけでございます。
  39. 小柳勇

    ○小柳勇君 事業分野確保については、いろいろ各党も意見があるようでありますからまたの機会にいたしますが、いま当面いたしておりますこの不況対策の問題について冒頭に質問いたします。  いま中小企業などが倒産する例、理由をいろいろ調べてみますと、一番多いのは手形の不払いですね。不払い手形を握って倒産するというのがほとんどのようです。手形の支払いがスムーズにいきさえすれば何とかこう資金が回転するんですけれども、それでやられているのが大きな問題点ですが、不況対策として政府関係機関に金融の枠が広がる、これはいいことです。ところが、借りられる企業というのは健全なんですね。倒産寸前にある企業にはなかなか貸さない。借りられないわけですよ。担保能力ももう限度がきているし、保証も立ちませんね。それで相手からもらった手形の不払いで倒れていく。  こういうような不況になったというようなときに、一番打撃を受けるのは大企業よりも中小企業零細企業です。政府の金融機関の資金を、枠をふやすと同時に、特別に、たとえばどこか一つの会社が倒れたと、それで将棋倒しに倒れていきます。どこかでそれを断ち切るような対策を立てなければ、いまの中小企業倒産というものを阻止できないですね。これは法律も特別にありませんが、緊急的に何かそういうものをお考えになったことがあるのかどうか。将棋倒しになる中小企業を、緊急の措置として、あるいは損金などを見ながら損金の見積り枠内で、このところはひとつ断ち切ろうというようなことをお考えになれるのかどうか、あるいは過去にそういう例があったのかどうか、説明を求めます。
  40. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 中堅企業と申しますか、親企業が倒産して、そこに納入をしておりました中小企業が連鎖倒産をする。これを防止する制度といたしましては、信用保険法の面におきまして倒産関連保証制度というものがございます。大口の倒産がございますと、その倒産企業を告示をいたしますと、その倒産企業に債権を持っております中小企業につきましては、倍額まで信用保証が受けられる。こういう制度になっておりまして、最近におきまして、四十九年度中に日本熱学、阪本防績、三省堂と、こういったいわゆる親企業に当たります倒産を八十企業これまでに指定をいたしております。この八十企業に対しまして債権を持っております中小企業者は倍額まで信用保証が受けられる、こういうふうなことで一つは運用をいたしております。  それからもう一つは、親事業者が倒産いたしますと、借り入れのいまの保証が倍額受けられるにいたしましても、債権の回収が非常に困難になりますので、そこに納入しておりました中小企業者自体非常に苦しくなるわけでございますから、一番望ましいのは、そういった納入先の中堅企業が倒産をしないことが望まれるわけでございまして、そういう意味におきまして、実際には、これまでにも随時倒産の危険のある中堅どころの企業につきましては、担当の原局の方からそれぞれ必要に応じまして、日本銀行あるいは関連市中銀行等々に大蔵省等とも相談をいたしまして融資方を要請いたしまして、倒産に至らないうちに救済をするということを機動的に行っております。これは倒産に至らないで救済をした例でございますので、一々名前を挙げるわけにまいりませんけれども、これも数十企業に上っております。
  41. 小柳勇

    ○小柳勇君 不払い手形を持って倒産するという企業は本当にかわいそうなんですよ。平素は一生懸命まじめにやっている。たまたま倒れる、その信用を確認できないですよね、興信所を持たないのだから。いつも信用して取引しているのだから。たまたまこれが倒れたために、こちらが一生懸命やっているのにその手形で倒れていく。こういうものは本当に何とかしてやりたいと思うけれども何ともできないですね。そういうときには、われわれとして、現地におる者としてはどういうようにしたらいいか。たとえば福岡通産局がありますけれども、特にそういうところに行って何らか手当てができますか。
  42. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) そういうふうに非常にお困りの節は、お話しいただければ、政府系金融機関から緊急融資をするようにこれまでにも手配をいたしておりますし、今後もそういうふうにいたしたいと考えております。
  43. 小柳勇

    ○小柳勇君 それから、大手メーカーで自分の会社で設備投資をやる。小さい中小企業の鉄工所を入れて仕事をやらせようと。そんな手形の支払いで一年以上も、ちゃんと初めから、契約のときからもう一年以上も手形延伸がなされるような例を御存じですか。
  44. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 年間大体二万二千件ぐらい、親事業所並びに下請事業者事業所から調査報告を求めまして、下請代金支払遅延等防止法に基づいて、そういった手形の発行状況あるいは代金の支払い状況を調査をいたしております。特に昨年から総需要抑制下になりまして、手形の期間が長くなる傾向にございまして、相当やはり違反のケースが出てまいっております。
  45. 小柳勇

    ○小柳勇君 もう少し具体的に言いますと、たとえば大きな鉄鋼会社があるといたしますよ。そこに機械の設備をするといたしますね。それをその中小企業の鉄工所がやります。これは下請代金支払遅延等防止法の適用になりますか、なりませんか。
  46. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 製造委託、修理委託が下請代金法の場合の下請の定義でございますので、製造を委託した場合は代金法の対象になると思います。
  47. 小柳勇

    ○小柳勇君 製造じゃないの。全然違うのです。こっち、製造するのは鉄鋼を製造しているのだから。設備というのはその鉄鋼を製造するのじゃない。他のある部分の機械を施設するだけなんです。それで手形支払いするわけです、こっちの工作した人に対してこの親企業が。そのものはいまの法律では適用できないのではないかと思うが、適用できるのですか。
  48. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 機械の製造を委託をして、機械を納入してもらうわけでございますね。
  49. 小柳勇

    ○小柳勇君 ノー、ノー。こっちはもう大きな鉄鋼会社、キューポラで鉄鋼生産している大きな鉄鋼会社、この鉄鋼会社のその生産するための機械をただ据えつけるわけ。これは製造の下請じゃないわけ。その工場の機械の新設。それはいまの法律では下請代金支払遅延等防止法の適用はできぬのではないかと思うのだけれども、そういう盲点でこれが一年も二年も——二年でありません、一年以上の手形支払いになっておる。
  50. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 具体的なケースはちょっと当たってみませんと、代金法が適用になるかならないか、非常に微妙なケースだと思いますが、適用になります場合には、手形は割り引ける手形でなければならないということになっておりまして、大体百二十日から百五十日を限度ということで取り締まりを行っておりますので、それ以上の、たとえば一年といったような手形は代金法違反でございますので、代金法適用になっておるケースであればそういうものは改めさせて、割り引ける手形に切りかえさせるような指導が必要だろうかと思います。
  51. 小柳勇

    ○小柳勇君 まあ割り引ける手形では——ただ機械が、細部の問題についてもうちょっと問題がありますけれども、そういうのがたくさんあるんです。下請代金、下請企業じゃないんですよ。大きなメーカーの部分部分を新設していくのだから。  そうしますと、そこにたくさんそれの関連事業というものはあるわけでしょう。そういう人が仕事をしているわけです。そんな人は言えないわけです。一年ぐらいの手形で仕事をしていますよ。おそらく中小企業庁も把握していないのじゃないかと思っています。それはしかし、いま大手企業ども不景気ですから、で、中小企業としては仕事さえあればいいということですから、手形一年でも仕事をやらせてくださいということでやっていますけれどもね。  そういうものは、私ども気のついたのは中金などにお願いをして、中金の融資などをいまお願いしているけれども、法的には、いまの法律では何ともならぬようです。下請代金支払遅延等防止法にはかからぬと思うのですよ、同じ仕事を下請するのじゃないですからね。新たに機械設備をやっているのですから。ただ大企業中小企業との差があるだけで、下請じゃないわけです。大企業の設備を新設するわけですから。そういうものがたくさんありますから、それをがまんしながら中小企業の鉄工所などが仕事をしておるということです。  これも会社としては大変なことですけれども、高利を借りながら仕事をしていかなければならぬような現状ということも、実態は現地の通産局では把握はしていると思いますけれども、十分にひとつ気にとめておいていただきたい。そんなものが倒産の原因になっていくわけです。余り手形が長いものですから高利を借りるわけです。そういうものも十分にひとつ気をつけておいてもらいたい。  部分的にいきますとたくさん問題がございますけれども、時間がございませんから、問題をしぼって質問してまいります。  近促法ができまして相当長い期間たちましたが、言うならば、生き残る優秀な企業だけはどんどん法律を適用されて、活用して生き延びていきまするが、この法律、近促法などの適用を十分知らない中小企業零細企業もたくさんあるが、このPRの方法なりあるいは活用の方法に対して、各業種団体などを通じてPRをやっておられると思うけれども、もう少し本当に末端の方に行き渡って、それじゃひとつこういうふうにしてもらおうかというようなものが必要、もう少し活用法を出すことが必要じゃないかと思うのです。このりっぱな法律改正をいまやることも必要ですけれども、それ以前に、もっと古い法律を適用する方にもっと知らせていかなければならぬ面がありますが、その点についてはいかがですか。
  52. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 確かに先生御指摘のように、中小企業関係は非常にいろいろな施策がございますけれども、なかなかPRが末端まで届かないうらみがございまして、さらにその点力を入れたいと考えておる次第でございます。  一つは、私どものテレビあるいはラジオその他パンフレット等を通じますPRと、それを府県の総合指導所等を通じてPRしていただいておりますほかに、これからは商工会議所商工会におります指導員が全国に六千名配置をされております。こういったところにも政府が、中小企業庁がとっております各種中小企業施策を流しまして、零細な中小企業方々にも、どういった施策が中小企業庁で十分にとられておるかということを浸透いたしますように、さらにそういった面での広報活動に力を入れてまいりたいと考えております。
  53. 小柳勇

    ○小柳勇君 ここに私は構造改善計画をやりました業種の四つの表を持っております。鋳物業、それから印刷業、酒屋の組合あるいは作業工具製造業。で、グループ化は進んでおるようでありますが、実際このグループに入りまして構造改善をやりました数というのは、わずかの数しか上がっていません。構造改善でももう少し積極的にやれば、各業種でもっとこう進捗するんじゃないかと思いますけれども、五年間の実績を見ましても構造改善が進んでいない業種が多いわけです。この構造改善計画の進捗状態をとらえてこれからどういうふうにおやりになりますか、お考えを聞いておきたい。
  54. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 構造改善の進捗状況でございますが、五カ年間の構造改善期間が終了いたしましたものにつきまして進捗状況を見てみますと、この一、二年の不況で若干おくれておりますが、たとえばマッチ業の場合には九八・八%、それから酒屋さんの構造改善は一〇〇%進捗いたしております。作業工具で九五・二%、合板業界は一〇〇%、それからみがき棒鋼で九一%というふうに、おおむねこの五年の間に終了したものにつきましては、所期の目的に近いところまで進捗を見ておるやに考えておりますが、繊維関係がややおくれておりまして、綿スフ織物の構造改善は五四%、メリヤスが五三%というように、最近の繊維不況を反映いたしまして、繊維の構造改善は当初の目標に比べまして大幅におくれております。今後もこの構造改善につきましては、参加者の拡大と、それから当初の予定期間内に所期の目的を達成しますように、おくれぎみのものにつきましてはさらに促進を図りたいと考えております。
  55. 小柳勇

    ○小柳勇君 たくさんありますけれども、時間がありませんから結論的なことをお聞きしたいのですけれども、官公需の受注の法律下請代金支払遅延等防止法ができましたときにも、ちょうどこの委員会におりましたが、非常な熱意を持ってつくったわけです。ところが、実施状況につきましてはなかなか完全になされていない。それは企業の体質的なものもありましょうし、やはり親企業にお世話になっていますから申告するようなこともなかなかできない、人間的なそういうものもありますね。公取の人数ももちろん弱い。そういうことでありますが、しかし、この法律をもう少し厳正に適用してもらって、いまの時期でありますから、特に官公需の発注をちゃんとするとか、下請代金支払いについては遅延しないようにするとか、そういう指導なりあるいは監視なりぜひ必要だと思うんですけれども、この際ですから、長官の決意を聞いておきたいのですが。
  56. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) この不況下にますます支払い条件が悪化する傾向にございます。取り締まりの面では特に力を入れておりまして、昭和四十八年度は大体年間一万八千件ぐらいの調査をいたしましたが、四十九年度につきましては二万二千件の調査をいたしております。そういたしますと、やはり二千数百件の違反の疑いが出ておりまして、約千件ぐらい立入検査をいたしておりまして、悪質なものは、公正取引委員会に四十九年度に約八件ほど送致をいたしております。その他のものにつきましては、行政指導で改善方を指示をしまして、大体指示したものにつきましては改善が行われたことを確認をいたしております。  ただ問題は、何しろ経済事犯でございまして、六十日の期間内に金が払われていないとか、あるいは長期の手形が出ておる、こういうのが違反になるわけでございますが、いろいろ親事業者を調べますと、親事業者と申しましても、中小企業が親事業者である場合が非常に多いのでございまして、違反自体も中小企業の違反が八、九割になるようであります。つまり、資本金一千万以上の企業が一千万以下の企業下請に出します場合に代金法の適用がございます。それで、資本金一千万から一億円までのいわゆる中小企業が非常に多数あるわけでございまして、そういう方々の違反に至った事情を聞きますと、やはりもう一つ上の親事業者からの仕事が減ってきたとか、資金繰りがつかなくなったとか、最近の不況を反映いたしまして、中小企業である親事業者自体が資金繰りに苦しんでおるというケースが非常に多いわけでございます。  こういう問題につきましては、一面で行政指導いたしますと同時に、やはり金融面の措置を講じまして、特に不況色の強い下請業種には優先的に政府系の金融機関からの資金を流す、こういうふうな措置をとりまして、極力違反の出ないようにいたしておりますと同時に、やはり基本は、早く景気が回復することがこういった問題の抜本的な解決策になるわけでございますので、一面で早く景気が進行されますように、各方面にお願いをいたしておるところでございます。  官公需につきましては、実際の発注は各省庁なり公社、公団が行いますので、私どものほうはその督励役を担当いたしているわけでございますが、機会あるごとに各省庁お集まりいただいてお願いをいたしておりますが、その結果四十九年度につきましては、年度初めに大体全体の政府並びに公社、公団が外注に出します分の二八%強を中小企業に回すという計画でございましたが、年末では二九・四%という途中の実績になっております。いま年度全体の集計をやっておるところでございますが、ほぼ三〇%に近いところまでいくんじゃないか、かように考えております。  五十年度につきましては、現在各省庁と交渉中でございまして、なるべく早く計画をまとめたいと思っておりますけれども、こういう情勢でございますので、さらに中小企業向けの比率が上がるように、現在各省庁と鋭意交渉中の段階でございます。
  57. 小柳勇

    ○小柳勇君 最後に政務次官にお尋ねいたしますが、この委員会の後大島つむぎ、伝統工芸品の法案の打ち合わせをやりたいと思いますから、今日までの韓国との折衝、ずいぶん積極的にやっておられますから、その経過についてお話をお伺いしたいと思います。
  58. 嶋崎均

    政府委員(嶋崎均君) ただいまお話のありました大島つむぎの関係でございますが、御承知のように昨年の本場大島つむぎの、奄美大島の特産でもあり、また本土の鹿児島でもつくっておるわけでございますけれども、それの生産量が対前年で相当量少なくなってきておるというようなことを背景に、昨年の春ごろから奄美大島を中心に、本場大島つむぎの韓国からの輸入問題というのが大きく取り上げられて、何らかの形で規制をしてもらいたいという地元の御熱心な陳情行動があったわけでございます。  ただ初めの間は、そうは申しても四十八年度非常に好況であったというようなこともあり、それから、実際に数字がどういう形をたどっていくだろうかというようなことについて、必ずしも判断が得られないというような時期もあったわけでございますけれども、昨年の暮れあたりから、何らかの措置を講じなければならないのじゃないかというようなことをわれわれも心配をし出したわけであります。  そこで、実際、繊維全体が実は非常に苦況の中でございますので、大島つむぎとよその繊維と比べて見てどうだこうだというような議論をしますと、なかなか問題は多いわけでございますけれども、何しろ局地的な産業でございますから、またそのなりわいは、それによってしか立たないというような島でございますので、私たちも何らかの手段を講じなければならないということで、ことしの二月に、ここにおられる後藤審議官に、そういう事態を踏まえて、韓国からの大島つむぎの輸入について向こうと十分相談をして、できるだけ秩序ある、韓国側からすれば輸出、日本側からすれば秩序ある形で輸入が行われるというようなことに努力していきたいものだと。  もう一つは、非常に商売のやり方むずかしいわけでございますが、原産地表示といったような問題がありまして、どれが本場大島つむぎであるかということを明確に表示するために、日本側でもいろいろと努力しなければならぬ点もありますけれども、中に入った商売をやる人が、原産地表示の扱いをいろいろもじったように取り扱われるようなケースもあるやに聞いております。そこで、やはり公正な競争をするという意味で、原産地表示ということについて、はっきりやっぱり何か手段を講じなければならないのじゃないかというようなこと。  それから、こういう伝統産業に属することですから、どんどん韓国からそういうものが入ってくるというのは、どうも姿としてはおかしい。そういう意味で、韓国でそういう設備投資をやられても、本当に大島つむぎの名声を傷つけられるようなものが入ってくるのは、やっぱり好ましくないんだといったようないろいろな観点から交渉をしていただき、その時分には、もうすでに皆さん方御承知かと思いますけれども、まず原産地表示の問題については、韓国の方でもできるだけしっかりした原産地表示をつけて、間違いがないような扱いをしていきましょうということ。  それからもう一つは、セマウル運動その他でつむぎ生産というものを大きく取り上げてやっていくということはやらないで、したがってまた、設備投資も今後はつむぎについては強力にやっていかないようにする、そういうことを背景にして秩序ある輸出を考えていきましょうといったような大枠についての事務的な話が進んだわけです。  しかし、その後もいろいろと現地からの要望もあり、かつまた繊維一般についても輸入制限というような動きが出てきたりしておりましたので、韓国との間の繊維問題を何らかの形で調整をし、また話し合いして、両国関係がスムーズに運用できるように、しっかりした基礎の上に置いておくことが非常に大事なことじゃないかというような観点から、私は四月十四日から十七日まで、後藤審議官はもう一日残っていただいて交渉をやるということでやったわけでございます。  ちょうどその直前に、当委員会の理事会でも大島つむぎ伝産法の改正というような形で、大島つむぎを念頭に置かれた法案改正案というようなことも出ており、ただわれわれとしては、法律的にそういうことをやるのは、貿易立国になっておるわが国として好ましくないので、できるならば外交努力で秩序ある輸入というものが図られるということが望ましい、そういうようなことも私たちを勇気づけて、しっかりやってこなきゃならぬというようなつもりで出かけたわけでございます。  結果的に申しますと、私行きまして、外交部の長官、あるいは商工部の長官あるいは第一無任所長官といったような大臣方々に表敬を兼ねていろいろこの問題について、繊維全体の問題あるいは絹織物の問題、その中での大島つむぎの問題。三つのポイントがあったわけですが、問題は、最後のところを整理をしてお話し申し上げますと、結果的にオーディナリーなエクスポートというか、秩序ある韓国からの輸出、それは大まかにそういう方向でありましたけれども、何が秩序ある輸出かというようなことが整理された。  その数字につきましては、大島つむぎを生産をしている日本の地域の事情というものをよく考えると、過去の実績以上に大きく伸びるということは非常に問題だということで、いろいろとネゴシエートの結果、基本的には一九七四年の実績水準で日本に輸出をしましょう、それを大きく超えるというようなことにならないようにしましょうと、そういう大まかな合意ができたわけです。  ところが、そういう実績水準といいましても、本場大島つむぎというものをきちっとセットするのには、抽象的にそういう実績水準ということでは向こう、韓国の側でも行政指導がむずかしいでしょうし、わが方でも、いろいろ商社等を指導をする場合に問題が出てくるだろうという観点から、その数字を韓国側は余り望みませんでしたけれども、いろいろと仕事をやっていくたてまえを考えますと、手順を考えますと、どうしても数量を決めておかなければならぬというようなことで、その数字、いろいろな交渉の過程はありましたけれども、三万五千反ないし四万反という水準が一九七四年度の実績水準である、こういうこを前提に決めたわけであります。そういうこともって韓国側も内部的な指導をしていただくわれわれも輸出の取り扱い業者等に指導する、ういうことで、従来抽象的に言っていた秩序輸出という言葉の中身を詰めたというのが一段階。  あとは、第一次に後藤審議官に行ってもら問題点について、再度私の相手になるような部長官、あるいは商工部の次長あるいは次官、ういう段階できちっと碓認をしようというこで、原産地表示の問題、これもしっかりやるとうことは間違いなしにやっておりますし、今後もやっていきましょうということ、それからセマウル運動その他でこれを推進をして、設備をどんどん増設をするというようなことはやらない、そういうことを決めてまいったわけでございます。  その後の経緯でございますけれども、何しろ交渉月が四月でございますから、その後輸入の数字できちっと、はっきりとれるような数字というものはまだ出ておりません。一−三月の輸入水準というものはわりあい高うございます。しかし、国内的な生産も去年に比べて一−三月の水準というのは相当高いというのが実績。それから業況等につきましても、現地の鹿児島あたりでよく調べておりますが、そう極端に悪くなっているという……それは去年に比べては少し上がり気味だというような感じだろうというようなことを得ております。しかし、われわれ交渉の経緯を踏まえて、韓国側に忠実にその実施をやってもらわなければならぬということで、数字的にも、あるいは税関でたとえば大島つむぎというのはどういう性格のものだというようなことを区分けできるような勉強を、業界の方でもマニュアルみたいなものをつくっていただけるように要請をしたりして、順次確実にトレースをしていきたい。  全般的な繊維交渉の過程で、三カ月に一遍ぐらいは両国間で交渉をしようという大まかな合意を得ておりますし、何か特別な問題がありますればその都度やりましょうということになりまして、来月にはちょうど三カ月目に当たりますので、向こうの担当者にも来てもらい、それまでにわれわれいろいろ詰めた問題を、また、問題点になるようなことを整理をして、確実に大まかな合意に達しておる事柄の履行されているかどうか、また履行されていくように跡づけをしていきたいというのが今日までの状況でございます。  非常に簡単でございますが、一応御報告いたします。
  59. 楠正俊

    ○理事(楠正俊君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時六分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  60. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  61. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まず最初に私は、この十六日に経済対策閣僚会議で決められました第三次不況対策について、中小企業者の立場から若干の質問を行いたいと思います。  インフレと不況の同時進行、すなわちスタグフレーションといいますか、この不況下の物価高の中で、中小零細業者がどのような状況にあっていま一番何を求めているか、これはいまさら私から言わなくても、政府当局はよく御存じのことと思います。しかし、これまでのと申しますと、二月の十四日、三月の二十四日、二回にわたりますところの不況対策ですね、また今回の六月十六日、第三次不況対策が出ましたが、そのような中小零細業者に対しまして、本当の意味での血の通った施策となっているかどうか、私はいささか疑問に思っておるわけでございます。  今日、この厳しい経済情勢を招いたそもそもの原因は、政府の大企業優先の高度成長政策にあり、また、その破綻に伴う総需要抑制政策にあったことは、これは周知の事実でございます。その結果、昨年は企業の倒産件数も約一万二千件、一兆六千四百九十億円、戦後最大と言われる記録を出しました。総需要抑制策による影響も大企業と比べると、中小零細企業の方がうんと早くからその被害を受けてまいりました。出口のないトンネルなどと言われ、先の見通しもなく、その日の生活をも心配しなければならないという深刻な状態が続いておりまして、とうとう最近、自殺者まで出てきたというような悲惨な状態でございます。このように中小零細業者の経営の実態は悲惨な状態なのでございます。しかし、今回とられた第三次不況対策を見ましても、そのほとんどが第一次、第二次と変わらず、この深刻な業者の要求に合ったものとは思われないのです。もっと中小零細業者実態に合った要求にこたえた、きめの細かい施策が必要と考えますが、この点につきまして大臣所見をまずお伺いいたしたいと思います。
  62. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 今回の第三次不況対策一つの特徴は、中小企業に対して相当の配慮を払っているというところにあると私は思います。中小企業の当面の問題は、体質の改善という、こういう基本的な問題があるわけでありますが、当面する問題といたしましては、やはり仕事をできるだけたくさんつくり出すということと、それから金融面による特別の配慮をするということ、大きく分けますと、この二点に尽きるのではないかと思うのでございます。  そこで、新たに仕事をつくり出すという面につきましては、今回も公共事業の上半期の枠を相当繰り上げまして、御案内のように七〇%ということにしたわけでございます。昨年は上半期の契約高が五〇%でございまして、それを第二次不況対策で六五%まで増加させ、さらに今回七〇%ということにしたわけでございまして、本年の公共事業の枠が昨年の繰り越し分も入れまして約七兆八千億ということになっておりますから、五%の繰り上げということになりますと、相当大きな金額になりますし、さらにその波及効果等も考えますと相当な額になると思いますが、特にその場合に、中小企業に仕事が回るように特別の配慮をすることにいたしまして、この官公需の中小企業に対する仕事の配分をできるだけふやしていこう、こういうことを文書によりましても明記いたしております。できるだけこの仕事の分野配慮をしていこう、こういうことでございます。  それから第二点は、金融の面でありますが、金融の面では、文書にも載っておりますが、中小企業に対しては特別の金融配慮を払っていこう、金融対策を考えていこう。それは、市中銀行等民間金融機関による中小企業に対する融資を促進するということだけではなくして、政府系の三機関からも特別の配慮を払っていこう、こういうことを特別に対策として明記をいたしておるわけでございます。  あわせて、中小企業の当面の問題は、昨年の年末以来いろいろ金融措置を講じておりますので、金融面では比較的私はそう大きなトラブルなしに中小企業はきたと思うのでございますが、ただ、仕事がないために、金は借りられましても、仕事をすることによってその金を返していくことができない。したがって、返済期日が来ますと返せない、こういう事態が各地で発生しておるわけでございます。  そういう場合には、政府系金融三機関におきましては特別の配慮を払いまして、返済猶予等については相談をすると同時に、また、市中の金融機関等におきましても、そういう事態が発生いたしましたならば、通産省あるいはまた地方の通産局が中に入りまして、行政指導によりまして、できるだけ話し合いによって返済期限を延長する、そういうふうなきめ細かい対策配慮していくことにいたしております。万全ではございませんが、現時点においてできるだけ、仕事の面と金融の面で中小企業には配慮を払ったつもりでおります。
  63. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大臣は非常に心を尽くしていらっしゃるような御答弁でございますが、しかし今日、大臣、金融だけでは救われないということは、これも大臣もいま述べられたとおりだと思うのです。いまはもう中小企業の人は金よりも仕事と、こういうことを言っているような時代なんですが、そこで私、二、三の問題についてその対策の具体的内容についてお聞きいたしたいと思います。  第一次対策から第三次対策まで三回にわたりまして、「官公需について、中小企業者の受注機会の増大に努める。」と、こういう政策をとってこられましたが、その実効は一体どれほどのものがあったのか。五十年二月十四日の第一次対策を発表して以降に官公需の発注総額がどれだけあって、そのうち中小企業にどれだけ回ったか、ひとつ答えていただきたいと思います。
  64. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 官公需でございますが、昭和四十九年度の当初の目標は二八・七%でございまして、官公需の予算総額が五兆一千億でございましたので、このうち一兆四千七百四十億を中小企業向けに回す、こういう計画で出発をいたしたわけでございます。それに対しまして、先般四十九年の十二月末で四月−十二月の間で中間的に集計をいたしましたところ二九・四%という比率になっておりまして、年度当初に立てました中小企業向けの比率よりも若干上回った結果になっておったわけでございます。けれども、私どもといたしましては、こういう不況の状況でございますので、さらに各省庁に馬力をかけまして、できるだけ中小企業の方に発注をしていただこう、こういうふうに考えまして、去る二月四日と記憶いたしておりますが、閣議了解をお願いいたしまして、年度末まで期間はわずかでございましたが、さらに各省庁を督励していただくようにと、こういうことを閣議了解をしていただいた次第でございます。ただいま四十九年度、年度いっぱいの数字につきまして各省庁から御報告を願っておりまして、集計中でございますけれども、まだ正確な集計ができ上がっておりませんが、大体三〇%前後に達する見込みでございます。
  65. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 何%。
  66. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 三〇%前後に達する見込みでございます。
  67. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 四十九年度は第三・四半期が二九・四%、そこまでは実際に調べた結果わかったわけですね。その後のことがまだ確たる数をつかんでいらっしゃらない。大体三〇%ぐらいだろうと、こういうことなんですか、どうなんですか。
  68. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) おおよその数字はすでに集まっておりまして、いま精算中と申しますか、最終の細かい集計中でございまして、きのうまで私聞いておりますところでは二九・九五%という数字に相なっております。
  69. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最初の計画が二八・七%というところへ数を置いて、それで二九・九五、この年度末には三〇%になるだろうという、そういう考え方ですね。そこにも私は非常な冷たさがあるようにも思うんですね。大体そういうめどで中小企業が果たして救われるかどうかということですね。私はもっと高いところに置いて、衆議院の方でも私たちの党が言ったと思うんですが、われわれは少なくも五〇%ぐらいは目標にしてやってもらわぬと困るということを言っているはずでございますが、私はそういう方向で行ってもらいたい。実際にどれだけ実績を上げたかどうか、まだ集約がはっきりとできていないというような御返事が、やはり政府の姿勢を示しているように私は思うんですね。  本当に政府におきまして、官公需の発注を中小企業にふやすという姿勢があるのかどうかという点、私はどうもさっきからのあなたの発言でも、二九・九五あるいは三〇%を達成するんだろうというので、もう安心していらっしゃるような印象を受けるんですが、それでは先ほども申しましたが、どうも中小企業を救うことができない。そういうように私は思いまして、もう少し積極的な態度が政府に必要なんじゃないか、こう思います。口ではいろいろなことをおっしゃいましても、具体的に施策をやらないでは、中小企業は私は救えないと思うんです。  そこで、第三次対策での官公需の中小企業向け発注をどの程度考えていらっしゃるか、伺っておきたいと思います。官公需発注の総額がどれだけあって、そのうち九月までの上半期分がどれだけあるのか、そして中小企業にはその何%を発注するのか、計画なり目標があればひとつ示していただきたいと思います。
  70. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) まず、四十九年度の実績の問題でございますが、官庁の会計は四月末で全部締めておりまして、それの集計をやっておりますので、二十八省庁それから公社、公団にわたっておりまして膨大な金額でございますので、なかなか細かい集計がまだ間に合いませんで、正確な数字をきょう申し上げる段階に至っておりませんが、四十九年度につきましてはほぼ実績が出てまいりまして、集計をいたしておるところでございます。三〇%という数字は、過去十年ぐらいの間に一回もまだ到達したことのない高いレベルでございまして、そういう意味では非常に各省庁御努力を願ったというふうに私どもは思っておるわけでございます。いま五〇%というお話がございましたけれども、地方自治体等のような場合と違いまして、国の予算の場合には非常に大規模プロジェクトが中に含まれてまいりますし、特に電電公社とかあるいは道路公団、住宅公団等々、公社、公団、国鉄等になりますと、大口のプロジェクトが新幹線の工事等ございまして、なかなか技術その他の関係で、中小企業にもともと回らない仕事の関係がございます関係で、急激にその率を引き上げるということが困難な事情もございます。  その中におきまして、できるだけ分割発注をするとか、あるいは共同受注体制を中小企業にとらせるとか、指名入札の場合にはランク制をしきまして、上位ランクのものは小口の下位ランクの仕事には指名に加えないとか、いろいろな配慮をいたしましてこの三〇%というものを達成をしたわけでございます。特に中小企業向けの特定品目と申しましても、家具とか繊維品とか印刷等々のものにつきましては、八〇%、九〇%という発注率になっております。それから、特に公社、公団の方が率が低いわけでございまして、中央官庁の方は大体五〇から上の率に発注率がなっているわけでございます。これは先ほど申しましたように、大型プロジェクトが少ない省庁と非常に多い省庁とによってその率が変わってくるわけでございます。  五十年度につきましては、ただいま鋭意各省庁、公社、公団と折衝中でございまして、なるべく早くその目標を策定をいたしまして、閣議決定をして発表をいたしたい、かように考えまして、ただいま鋭意その詰めを急いでおるところでございますけれども、まだ今日段階では、五十年度の分につきましての中小企業向けの額が各省庁で最終的な確定に至っておりません。これは各省庁の予算の内容全部につきまして、中小企業向けを出先まで全部にわたりまして洗い上げますので、ちょっと時間をおかしいただきたいと考えるわけでございます。
  71. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、もっと具体的な答弁が得られるかと思ったんですが、具体的な答弁が得られない。結局、今回の政府の不況対策を見ましても、中小企業者に対する政策は、官公需の中小企業への発注を増大することを見ましても、何の具体的計画も目標もないというのが事実のように思われます。もっと私は真剣に、中小零細業者のためのきめの細かい施策が必要と考えるべきだと思うのですが、先ほど大臣もそのようにおっしゃったのではないでしょうか、大臣、どういうことでございましょうか。
  72. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 実は、この中小企業対策につきましては、総理からも何回か、中小企業に対する官公需の割合をもっとふやせないのか、こういうふうな御指示がございまして、その都度、私どもも改めていろいろ検討してみるわけでございますが、先ほど長官が言いましたように、中央には中小企業のやれない相当大量の仕事がありまして、そういう仕事がちょっとふえますと、中小企業のパーセンテージが一遍に下がってくる、こういうことでございます。地方の県あるいは市などでは、七割程度のものを中小企業に回すということは仕事の性質上可能でありますが、中央の方はなかなかむずかしいという何があるわけでございますが、しかし、仮にむずかしいような事態があっても、建設省の方などにもお願いしまして、分割してこれをやらせる方法はないかとか、いろいろな点を工夫をしてもらっております。そして、少しでもふやしていこうというのが政府の方針でございますので、その点はできるだけのことをやっていこう、こういう姿勢のもとに進めておるわけでございます。
  73. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ここに第三次不況対策なるものを私持っておりますが、この中にも「官公需について、中小企業者の受注機会の増大に努める。」と、こういうふうに書かれておるわけなんですね。私はどういうふうに増大に努められ、どういうふうな内容かというところまで聞きたいんですが、まだそれはこれからのことだろうと思いますから、これは追求はいたしませんけれども、この精神を本当に理解して、具体的な施策をどんどんと進めていってほしいと思うんです。  これは政府のあれと比較になるかどうかわかりませんが、東京都の中小企業契約の実態を私はとりました。これは四十七年度と四十八年度しかありませんが、工事契約につきましては昭和四十七年度は二千五百三十一件、うち中小企業に千八百五十三件、七三・二%が中小企業の方に回ってきておるわけですね。それから四十八年度は契約件数が二千二百五十四件、そのうち中小企業には千七百四十件、七七・二%、こういうふうに中小企業に回される分が非常に多いんですね、パーセントで。  それから、物品購入につきましても同じようなことが言えるわけなんです。四十七年度は契約件数が三千百七十三件、中小企業に対する件数が千四百九件、四四・四%。それから、昭和四十八年度が三千八百八件のうち中小企業に対して二千四百三十七件、六四・〇%と、こういうふうになっておるわけです。これほどのパーセントに政府がやることは困難かもわかりませんけれども、自治体でもこの程度中小企業に対して非常に気を使って、こういうふうな状態なんですから、政府当局は、この非常事態に対しましてもう少し私は積極的な態度をとっていただきたい、こういうふうに思います。
  74. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) いま大臣も御答弁申し上げましたように、自治体の場合には小口の工事なり物品調達が多うございますので、中小企業向けの比率は四十八年度で全国平均六五%になっております。ただ予算規模の大きい東京都、大阪府等になりますと、金額で申しますと、大体中小企業向けが四五%でございます。東京都が四十八年度四〇%でございまして、どうしても予算が大きくなりますと率が下がってくるわけでございます。国の場合も件数だけで見ますと、件数の八〇%が中小企業向けに出ております。金額で申しますと三割でございます。そういうことでございまして、できるだけ努力はいたしておるつもりでございます。
  75. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こういう時代ですから、特に大臣中小企業対策に対して心を砕いていただきたいと思います。  それでは、中小企業近代化促進法改正案に基づきまして少し質問をいたしたいと思います。  私は、中小企業近代化そのものを否定するものではございません。近代化しなければやっていけない面もあるということはわかるわけでございますが、しかし、それは中小企業者の手で自主的、民主的にみずからの計画を持って近代化を行う、そうして、それに政府が助成をするというのでなければならないと私は思っております。その計画が政府や大企業、また一部の中小企業者の手によってつくられ、それを多数の中小零細業者に押しつけるということをやれば、これは中小零細業者のための近代化ではなく、政府や大企業、また一部の中小企業のための近代化施策と言わざるを得ないと思います。  今回の近促法改正に当たりまして、私はそういう観点から、法律に沿って少し質問をしてみたいと思うわけでございますが、まず、構造改善事業についてでございますが、この計画作成主体が商工組合等というように限られているのは一体なぜでございましょうか。新分野進出の場合は四人以上の事業協同組合でもできるのに、構造改善事業はできないことになっております。これは一体どういうわけか、説明をしていただきたい。
  76. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) ある業種構造改善業種として指定いたしました場合に、その業種全体の業種としての近代化と申しますか、構造改善を図ろうということがねらいでございまして、そのために、その近代化構造改善計画にその業種に属する方々の過半数が参画をしておられるということを、私ども構造改善計画を承認する場合の一つ要件にいたしておるわけでございます。過半数が参画をしておるような計画を立案するような組合ということになりますと、やはり全国ベースの商工組合、工業組合とか商業組合でございますとか、あるいは全国ベースの協同組合ないしはその連合会でございますとか、あるいは全国ベースでできました社団法人、民法三十四条にあります社団法人とか、こういうものでないとなかなか全国ベースの計画の作成ができないのじゃないか、こういうように考えまして、そういうふうに限定いたしておるわけでございます。  構造改善の実施主体につきましてもっとソフトな形に緩めたらどうかという御意見もございますけれども、私どもは、その構造改善計画が全体としてきちんと遂行されますには、その組織が永続性のあるものでございまして、民主的な運営が確保されるような組合であることが必要であろうというふうに考えておりまして、そういう意味合いで、商工組合ないしはこれに準ずるような組合というものを計画作成主体にいたしておるわけでございます。  ただ、実際にはその計画に基づきまして運用されます内容は、企業の合同が行われましたり、あるいは何十というグループ化による協業組合、協同組合がその計画の中身として生まれてまいりまして、そこでそれぞれ気の合った中小企業の方が幾つか寄られて、協同化等によりまして規模の利益の拡大を図って共同発注、共同受注等をおやりになったり、あるいは能率のいい設備の導入を図ったり、そういったことが行われるわけでございまして、計画の中身としては、その中に何十という組合がいろいろと入ってくるというよりも、中小企業者が幾つかグループを組んで、そのグループの集まりが商工組合による構造改善計画という形で出されてくるわけでございます。
  77. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 長官ね、中小企業の場合は、同じ業界の中でも地域的な特殊性や企業の規模の大小の差がある、同一にそれを見ることは私少し無理があるように思うのですね。しかし、計画は統一されたものであり、同じ目標を各業者に課せられることになっておりますね。これでは、その特殊性に合った業者や力のある業者はその計画に沿っていくことができますけれども、地域の特殊性を無視されたり、また、力のない業者にとりましてはそれが大きな負担となり、無理な設備投資をしいられたりする場合があるわけです。そうして一時よくこれは言われた言葉ですが、近代化倒産というような状態に追い込まれていかざるを得ない。これでは私は、中小企業近代化促進とは言えないんじゃないかと思うのです。一方であなたたちの考えているような目的がかりに達せられたとしても、一方でこういう近代化倒産というような状態が起こるというのでは、本当の中小企業対策と言えないように思う。もっと中小零細業者意見をよく聞いて、業者の自主性に基づいたきめ細かい施策を要する、こういうように私は思っております。そういう点から、構造改善計画の作成主体につきましても、県単位の組合とか、四人以上の自由組合どもできるようにして、そうして計画の承認についても大臣がやるのではなく、地域の特殊性を一番よく認識しておる都道府県にやらせるとか、また、市町村の意見を反映させるなどの制度が私は必要だと考えますが、この点どうでございましょうか。中小企業近代化計画についても、国が計画を定めるのでなく、同様の考え方でやった方が、同様の考え方というのはいままで述べた考え方ですが、実情に合ったものができるのではないか、こういうように私は考えますが、大臣、私の考えが間違っておりますか、どうでございますか。
  78. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) この近代化計画は、私は中小企業を、産業全体のあり方を全国的な立場からやっぱり判断していくということも必要だと思うのです。特に今度の構造改善事業はいろいろやり方をこれまでと変えておりますしいたしますので、知事とか市長が認可をするということは私は適当ではない、やはり主務大臣が認可をするというのが適当じゃないだろうか。伝統産業というようなものはまた若干別の意味を持っておると思いますけれども、そういうふうに考えております。
  79. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) いま大臣もちょっと最後にお触れになりましたが、特色のある産地等の場合には、その産地だけの構造改善計画といったようなものも認めておりまして、弾力的にその辺は考えたいと考えております。なお、一つの県内だけを対象とした構造改善計画も、そういった産地的なものの場合には従来におきましても認めておりまして、そういうものにつきましては、今後は知事を経由して計画承認の申請を出させる、その場合に知事の意見を付すことができるようにする、こういったことを手続上改善を加えまして、地元の御指導をいただきます府県知事等、地元の行政機関の意見を十分反映させるようにいたしたいと考えております。
  80. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ある面が近促法で救われる、また発展していくと言っても、ある面で取りこぼしが、またそれになじまない人たちがどんどん落とされていく、そしてつぶれてしまうというようなやり方自体がこれまでの近代化法にあったわけです。だから私たちは、そういうことではいけないんだ、やはり自主的な立場に立って、みずからの考えで立ち行くような方法を考えていくというのが一番正しいので、政府はそれに対して金をつけたらいいんだ、政府の言うとおりにしなければ金を出さぬぞというようなやり方はやはりひもつき融資であって、そういうことじゃいけないんだということを私はずっとこれまで言ってきたわけです。ですから私たちは、やはり中小企業対策である以上、そういう不公平と言うとまたこれは言葉が足りないかわかりませんが、そういうマイナスの面がないように、できるだけ心を配っていくのが本当だと思うんです。それにはやっぱり中小企業者自体の自主性というもの、また、その人たちの立場をいろいろ考えていくという点から、その人たちの意見を十分把握して組み入れて、そうして皆さんの対策を立てていくのが私は本当だと思うんですが、現在のところそういうことになっていないように思うんですね、そういう業界の。一つの商工組合とかそういうものの意見を聞くことにはなっているか知らぬが、それに入ってないような人もあるわけですね。そういう人たちの意見を聞くというようなことがないので、その地域地域の問題や地方の実情に最も詳しいやはり都道府県並びに市町村まで、その人たちの意見もよく聞いてそういう取りこぼしのないように、みんなが救われていくというような、そういう近代化の方向で私は行ってもらいたい、これが私たちの希望なんですね。そういうふうに行ったらどうですか、その方が皆さんも感謝されるんじゃないですか。
  81. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 構造改善業種は、やはり海外との貿易の現状の問題でございますとか、全国的な需給の変化の問題とかということを考えながら策定するわけでございますので、全国的な商品でございます場合には、全国一本の構造改善計画というたてまえをとっておるわけでございますけれども、その中におきましても極力地方地方の実情を反映させまして、きめ細かく落ちこぼれのないようなふうに計画を立案したいと考えますし、もちろん計画をおつくりになるのは業界でございますが、その中に十分各地の意見が反映されるように私ども指導してまいりたいと考えますし、各地の意見も十分これから伺うように、先生御指摘のような点を十分これから織り込んでまいりたいと考えます。
  82. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 中小企業近代化計画は主務大臣が定め、その計画のもとに当該指定業種に属する中小企業者や中小企業団体に対し必要な指導を行う、こういうふうにありますが、これまでどのような指導をやってこられましたのでしょうか。
  83. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) まず、業界の実情調査をいたしまして、中小企業は非常に数が多い割りに、細かい業種になりますとなかなか実態がわからなかったきらいがございましたけれども全国に所在する企業の数でございますとか、その業種近代化の実情、取引の実情、そういったものをまず詳細に調査をいたしまして、それに基づきまして今度はその業界方々の重立った方の意見を伺いながら近代化計画の案をつくりまして、それをその業種別の近代化審議会の分科会にお諮りしまして、そして近代化計画は定めておったのでございます。  近代化計画でいろいろ近代化の目標が定まり、そのためのどういう設備を導入するとか、どういうふうにして生産性の向上を図るとかといったような近代化計画の中身が決まりますと、それに即しまして、実際には各府県の総合指導所、あるいは府県の公設の試験所、あるいは商工会商工会議所指導員、こういった方々が実際の手足となりまして中小企業指導いたしまして、その近代化の目標が達成できるように指導いたしておるわけでございます。それからもう一つ中小企業団体中央会の系統の指導員も各県におりまして、組合指導というよりは中央会の指導員が指導を行っている、こういう形でございます。たとえば商工会会議所の指導員が約六千名、それから総合指導所の指導員が約千五百名、それから、府県の公設試験所の技術指導を行っております者が約四千名、中央会系統で約四、五百名だと思いましたが、こういう方々の手をかりまして、実際にはいろいろ指導を行っているところでございます。
  84. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 変な質問ですが、近代化の実効がありましたか、どうですか。
  85. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) この近代化指定業種につきましては、指定業種になりますと割り増し償却ができます。それから業種ごとに指定いたしました、こういう設備を導入したらどうかという設備の導入につきまして、低利の資金が政府系機関から出ることになっておりまして、そういうことによりまして中小企業の設備の、いわゆる入れかえと申しますか、新鋭設備への切りかえは相当に進捗を見、生産の高も大きくなり、生産性も向上を見たと考えております。それによりまして、たとえばJIS工場もふえましたり、不良品の出る率が下がったとか、各面におきまして近代化の実が上がっておるというふうに考えております。
  86. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ここに中小企業庁の施策普及室の調査した資料がございます。これを見ますると、近代化のための設備近代化資金融資制度という施策があるということを知っているのは、製造業者で三四・四%、それから卸、小売、サービス業で二〇・一%しかないのでございます。その施策を利用するかどうかを決めるのはあくまでも私、中小業者の側にあると思うんです。本人にあると思うんですが、施策の普及ぐらいはもっとやってもいいのではないだろうかと考えるわけです。知らないのです。それが実情だと思うんですね。その点どうですか。
  87. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) ただいま御指摘の設備近代化資金と申しますのは、府県に回転基金がございまして、国と府県が同額を出し合いまして、無利子で中小企業が導入します近代化設備に資金を融資いたしておる制度でございまして、主として従業員百名以下の小規模企業向けに出しておる制度でございますが、非常に利用率が高くて、需要が多いように聞いておりますけれども、何しろ小規模事業者、四百万事業所がございますので、相当に私どもPRに努力しておるつもりでございますけれども、ただいま御指摘のように、まだ知らないという方もあるようでございます。  昨年の七月から、私ども中小企業庁の中に小規模企業部というものを設けまして、小規模企業指導制度というものを設けまして、門戸を開放しまして、何にでも御相談に応ずるということでやっておりますが、非常にいろんな御相談に見えますけれども、その相談を承っておりますと、非常にまだまだ私どもの施策が知られていない。非常に初歩的な、中小企業向けの融資制度というのはどういうのがありますかといったような質問が非常に多いのでございまして、そういう意味からはまだまだ私どもの努力が足らないと思っておりまして、テレビ、ラジオ等のマスメディアを使いましたり、パンフレットを作成したり、いろんな手段を使ってPRには努めておりますが、さらにPRには努力いたしたいと考えます。
  88. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こういう制度があれば中小企業の人たちは助かるわけなんですね。国と都道府県の無利子の設備近代化資金融資制度というようなことなんですから、中小企業にとっては一番ありがたい私は制度だと思うんです。このような中小企業が最も喜ぶ制度に対する普及率が、宣伝が行き届いていないで三四・四%、片方の卸や小売の方は二〇%しかこれを知らないということは、これは何といっても私は政府の落ち度だと思うんです。こういうものこそ一〇〇%の人たちに知らして、そして一〇〇%の人たちがこれを利用することができるようにしむけていくということが私はやはり政府の責任だと思うんですが、今後、これに対して大いに力を入れるということが約束できますか。
  89. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 御指摘のとおりでございまして、できるだけ努力をいたしたいと考えます。
  90. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 次は、別な問題に入りますが、国税庁は見えていますか。——国税庁にお尋ねするのでございますが、納税者が青色申告か白色申告でやっているかどうかということは、通常第三者が知り得ることができないと思うんですが、これは一体第三者が知り得ることがあるんですか。本人の口から別に、私は青でやっています、白でやっていますということはだれにも言っていなければ、第三者は知ることができないと思うんですが、その場合でも第三者は知ることができるんですか。
  91. 横井正美

    政府委員(横井正美君) ただいまの御質問は、納税者のいわゆる記帳指導等に関連する問題かと存ずるわけでございますが、私ども、新規の青色申請者あるいは将来青色申告になろうというふうな御希望のある方等につきまして、記帳指導をいたすということにいたしておるわけでございます。その場合におきまして、指導機関といたしましては税務署もございますけれども商工会議所商工会等の税務署以外の機関もあるわけでございます。これは御承知のように、中小企業庁におかれましては、中小企業零細企業の経営の健全化、合理化、あるいは近代化ということで、記帳能力の向上等についていろいろ施策を講じられておるところでございますし、それが同時に、私どもの自主申告——適正な自主申告体制に合致するものでございます。そういうことから、記帳の能力の向上につきまして、中小企業庁と私ども相ともに携えまして努力をしておるところでございます。  この場合におきまして、納税者の御意向を尊重しながら、適切な指導機関にお願いをして指導をしておるわけでございますが、その場合におきまして、新規の青色の方、あるいはまた将来青色になりたいという白色の方、これにつきまして関係指導機関に住所氏名を連絡をする、こういうことが必要になるわけでございます。その場合におきまして、青色申告を今度申請なさった方であるとか、あるいは将来青色申告をやりたいという御意向を持っておられる方であるとかというふうなことを、関係指導機関に通知をいたしまして指導をお願いする、こういうことになるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、ただいま須藤先生御指摘の、青色であるか、あるいは新規の青色の方か、あるいはまだ青色になっていない方かということが商工会議所商工会等に知れるということもあるわけでございます。  これをどう考えるかということでございますが、私どもはその方が青色であるか白色であるかということは、納税者の方のプライバシーに関することではないというふうに存じておりますし、またこれは、先ほど来須藤先生の御指摘のございました中小企業の経営の近代化、これに資するものでございますので、そういう点からやむを得ないところだと、かように考えておるわけでございます。
  92. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 納税者が青色か白色かということは税務署はわかると思うんですよ。しかし、税務署以外の人が、あそこのうちは、あそこの商店は青色だとか白だということは、本人の口から言わなければわからぬことですね。他の第三者が知ることができるかどうかということです。税務署はおそらくそれを扱っているんだから、それはわかることは当然だと思うんです。そうでしょう。隣の商店の人が、本人が言わないのに、あそこは白だ、青だということはわからぬわけでしょう、どうですか。
  93. 横井正美

    政府委員(横井正美君) 私どもの方から一般論といたしまして、あの方が青色である、あるいは白色であるということを申すことは必要もございませんし、また、慎まなければいけないことだろうと思っております。しかしながら、ただいま私が申しましたように、中小企業零細企業の経営の近代化、そのための記帳能力の向上ということは非常に大切な仕事でございますから、それをお願いいたしまする機関に対しまして、その中小企業零細企業の方が記帳能力があるのかどうか、記帳指導を要するかどうか、こういう点について御連絡をすることはやむを得ないことでございますし、と同時に、それをいたさなければ記帳指導が推進できない、また、中小企業零細企業の方の近代化もできない、こういうことでございますので、その点を御了解いただきたいと思います。
  94. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その税務署の考えはおためごかしですよ。本人がどうしたい、どうしてほしいということを言ってないのに、何もそんなことを税務署がとやかく本人のプライバシーに関することに立ち入ることは必要がないと私は思うんです。  そこで、もう一つ中小企業庁にひとつお尋ねしたいんですが、商工会議所が中小業者の納税について、青色でやっているか、また、白色でやっているかということを知ることができるんですか、どうですか。この場合、納税者はだれにも、私は何色ですということは言っていないんです。納税者本人は何も言ってないのに商工会議所がそういうことを知ることができるかどうかです。税務署からでも知らされなきゃわからぬはずだと思うんですが、そこはどうなんですか。
  95. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) いまの御質問でございますが、一般的にはおっしゃるとおりだと思いますが、記帳指導するに当たりましては、実際には青色であるか白色であるかというのは、本人の方からのお話も当然あるわけでございましょうし、記帳指導に当たっては、そういうことも当然配慮のうちに入るだろうと思いますが、なお、先ほど国税庁の方からも話がございましたように、記帳指導について国税庁と私どもと協力関係でやっておるわけでございまして、記帳指導について国税庁より御依頼がある、御照会があるというふうなこともあるわけでございまして、その際には、そういう意味合いからわかってくるということは当然かと思います。
  96. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 何ですか、そうすると商工会議所に、本人がそれを報告する義務があるのですか。私のところは青だとか白だとか、そういうことを知らせる必要があるのですか、どうなんですか。
  97. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 別に本人に商工会議所がそれを報告を求める権限その他があるわけではございませんし、強制的にそれを報告させているというような実態はないかと思います。ただ、現実問題として記帳指導の推進をやっておりますので、その過程で当然にわかってくることはあるということを申し上げたわけでございます。
  98. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃどういう方法でわかるのですか、本人は言わないのにどうしてわかるのですか。
  99. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 本人が言う場合にわかるということを申し上げたわけでございます。
  100. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ここに一つの文書があるのですよ。これは姫路商工会議所から一業者に出した手紙なんですね。本人は何も言ってないのですね。姫路商工会議所が五月二十六日に発行したこれは文書です。会員の名前は特に気を遣って私は消しておきました。ちょっと読んでみまするとこうなっております。「当会議所では、毎年青色申告者を対象に、記帳開始から決算・申告までの無料指導を行なっています。つきましては、姫路税務署より貴殿を昭和五十年度の指導対象者にするよう通知がありました」、本人が申し出たわけでも何でもないわけですね。こういう内容の文書で本人のところへ来たわけです。ここでは税務署から通知があったと言っておりますが、国税庁、税務署はこういうことをやっているのでしょうか、どうでしょうか。
  101. 横井正美

    政府委員(横井正美君) 御承知のとおり、三月十五日が確定申告の期限でございますが、それは同時に新規の青色申請の期限でもございます。確定申告に当たりましてとか、あるいはまた調査の際におきましてとか、青色申告のお勧めをするということが私どもの重要な仕事になっておるわけでございます。特に確定申告時期におきまして新規に青色申請をされる方が非常に多いわけでございます。そういうことからいたしまして、四月になりますと私ども新規に青色を申請されたというふうな方のおたくに参りまして、帳簿の備えつけ状況でありますとか、あるいは記帳の状況等につきましていろいろお伺いをするようにしております。そして、指導を要しない方とそれから指導を要する方、これを振り分けまして、指導を要するという方につきまして、御本人が税務署なりあるいは商工会議所なりの指導をお受けになるお気持ちがありますかということをお伺いし、かつ希望される指導機関も自分で御判断をいただきました上で、そういう御希望のある方について所要の指導をするということのために手続をとっておるわけでございます。  いま御指摘の件につきましては、恐らく税務署の記帳確認調査におきまして指導が必要であるということになり、御本人が商工会議所から指導を受けるということについて希望を表明されたということに基づきまして、姫路税務署が姫路商工会議所に御連絡をしたと、こういうことであろうと存じます。
  102. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういう答弁もあろうかと思いまして、私はこの点よく本人に問い合わせたわけです。本人は、そういうことを一切外には言ってない、私は白だとか青だとか、白を希望する、青を希望するというようなことも言ってない、指導をしてほしいなどということは一切言ってない、こういうことです。そういう場合に、私は、青色でやるか白色でやるかということは当然その納税者の秘密の事項に入ると思うのですが、どうなんですか。本人は何も言ってないということはそういうことだと思うのですよ。税務署はどういうふうに考えますか。
  103. 横井正美

    政府委員(横井正美君) 私ども中小企業庁と御相談して指導しております対象人員は、四十九年で約四十万の方があるわけでございます。こういう方々にこの記帳指導をいたしまして記帳能力を向上し、経営の近代化等に資するということで非常に大事な仕事でございます。そういうことのための手順といたしまして、その方が記帳能力があるかどうかということは、当然その前提としてわかっていなければならないことでございますので、そういう意味合いから、先ほど申し上げましたように、記帳の確認調査等をいたしておるということでございます。  その場合におきまして、青色であるのか、新規になるのか、将来青色をお考えになるかというふうなこと等も、税務署としましては当然それを考慮に入れて指導対象を選定しなければいけない、こういうことでございますので、その場合におきまして、青色であるか白色であるかということを、時に商工会議所に御連絡しなければいけないということも生ずるかと思いますが、これは私は先ほど申しましたように、御本人のためにどうしても秘匿しなければいけない、プライバシーに属することだというふうには考えないものでございます。  なお、ただいま御指摘のありました姫路の個別のケースにつきましては、万々そういうことがないようにかねてから指導をいたしておるところでございますけれども、なおよく事情を調べますとともに、今後とも強制にわたるようなことは絶対ないように配慮をいたしたいというふうに存じております。
  104. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま、そういう問題で衆議院で追及されたことを思い出されて、メモが回ってきたんだと思いますけれども、これは単なる税務署の事務のやりよいようにという一方的な考え方でやっておるんであって、本人はそういうことを希望していなければやる必要はないんじゃないですか、こういう立ち入ったことを。あなたのところは青色でやりなさい、青色でやればこうこうだから指導もしますよなどということは本人に任せておいたらいいことで、なぜ税務署がそういうことをやるのですか。これは守秘義務の範囲に入ることと違うのですか、どうですか。そこはどういうふうに考えているのですか、税務署は。
  105. 横井正美

    政府委員(横井正美君) 御本人の選択にお任せするということでなければならないということは当然でございます。ただ、全体の背景といたしましては、中小企業庁、私ども相携えまして、中小企業近代化あるいは自主申告の推進ということに当たっておるわけでございますので、中小企業方々が記帳能力をつけるということのためにそういう指導を受けられるということは非常に結構なことでございますし、政府といたしましても、それに援助の手を差し伸べるということは当然の責務であろうかと、こう考えておるわけでございます。  それは守秘義務に当たる事項かどうかという点につきましては、先ほど申し上げましたように、その事項には当たらないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  106. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 税務署が直接本人に、あなた青色申告しなさいと、こういうのも私は出過ぎだと思うがね。特に商工会議所はなぜ本人にこういう通達を出したか。そうすると、商工会議所はどこから——あの人は青色申告でやっていない、白色だと、だから青色にしなさいということを商工会議所が言ってきたわけですね。そのために指導します、あなたはそういう指導対象者になっておりすすということは、税務署の指導対象者になっておるということですね。そうすると、税務署が商工会議所にそういう内容を通知しなければ商工会議所はわからないのでしょう。わかるのですか、商工会議所は。
  107. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 先ほども御説明いたしましたように、記帳指導一般について推進をしている立場から、国税庁の方から御連絡を受けまして、商工会議所はそういう場合にはやっております。
  108. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 わかりました。そうすると、税務署が通知しなかったならば、知らせなかったら商工会議所はわからないのだ。税務署はなぜそんなことをするのです。商工会議所になぜ知らせる必要があるのです。なぜあるのです。これは納税者から言ったら守秘義務です。こんなこと知られたくないですよ、あそこは青だとかあそこは白だというようなことはね。そういうことは一般に知られたくないことだ、納税者の立場上。それをなぜ税務署はみずから進んで商工会議所に知らせるのか。どこにそういうような権限があるのですか。
  109. 横井正美

    政府委員(横井正美君) これは先ほど申し上げましたように、強制をするとか、あるいは権限に基づいてするとかいうことではございませんで、中小企業近代化等のために政府として中小企業零細企業に援助の手を差し伸べるということでございまして、御希望のある企業の方に手を差し伸べることになっておるわけでございます。したがいまして、ただいま御指摘の案件の過程におきましても、私どもは国税庁の指導に従いまして、税務署としては御本人の希望を聞きまして、商工会議所指導を受けたいというふうなことから商工会議所に御連絡をしたのだろうと、かように考えるわけでございますが、なお、具体的なケースでございますので、よく実情を調べたい、かように考えるわけでございます。
  110. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 本人は商工会議所指導を受けたいということは一言も言っていないのです。私は青だとか白だということもだれにも言っていないのですよ。税務署は何だか親切ごかしで、親切な立場からやったというようなことを言いますけれども、本人はそんなこと迷惑千万だと言っているわけですよ、こんなの受けることは。それよりも、第一こういうことを税務署がやることが、商工会議所にあの人は青だとか白だとかということを知らせること自体が、これはやっぱり守秘義務の範囲に入る問題で、あなたたち守秘義務を侵していることになりはしませんか。どうですか、そうなんでしょう。
  111. 横井正美

    政府委員(横井正美君) もし先生の御指摘のように、御本人の希望を全く聞かないで、税務署が一方的に指導の要ありと、その場合の指導機関は商工会議所が適切だということで商工会議所に御連絡をし、商工会議所がただいま御指摘の文書を出されたということでございましたならば行き過ぎでございますので、その点は訂正させたい、かように考えます。
  112. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その点よく調べて善処してほしい。  三月三十一日の参議院の大蔵委員会で共産党の近藤委員が、奈良税務署が納税者の源泉徴収整理番号を外部に出したことを取り上げましたときに、磯辺国税庁次長は、今後そういった行き過ぎのないように是正すべきである、こういうように答弁していらっしゃいます。今回のこの件につきましても、青色申告をしているか、白色申告をしているかということは、納税者か税務署でしかわからないことなんですね、本当は。それにもかかわらず姫路税務署は、商工会議所の毎年行っている青色申告者への記帳指導対象者としてこのような名簿を通知しておることは、納税者の権利を侵害するものであると私は思うわけです、本人が頼んでないことをやったんですから。あなたもさっきそのとおりおっしゃった。本人が希望していない、言っていない、それを税務署がそんなことをやるのは出過ぎたことだとあなたもさっき答弁していらっしゃる。また、このようなことを外に出すということは守秘義務を侵すということになると考えるが、どうか。実際三月三十一日、磯辺次長は是正すると、いまあなたが答えたように同じ意味答弁をしていらっしゃるのです。  これは、一般納税者の守秘義務というものは、この前衆議院の方で田中さんの脱税したということで、税務署がどんどん責められたときに、守秘義務があるから田中さんの税金については一切ノーコメントだ、答えることはできないと言ったのとわけが違いますよ。ちゃんとあれは田中さんが脱税している、不正なことをやっておるという事実があって、それを調べるために国会として田中さんの税を報告しろと、こういうことを言ったのです。これは一納税者、弱い中小企業者なんです。だから、田中さんと同じようには考えていないのですよ。ああいう田中さんのような場合は、守秘義務を守らなくて堂々と国会に報告すべきものだと、私はそう思います。しかし、こういう場合は一般納税者は弱い、その人の守秘義務はやはり守っていくべきだと思うんです。ところが、田中さんには守ってこっちの納税者のは守らぬという税務者のやり方は、これはおかしいと思うんです。  これは理屈に合わないじゃないですか。このようなことが実際にやられておる。国税庁は直ちにこの問題を調査して、こういうことをやめさすように私は指導をすべきだと思うんです。このようなことは全国的にも起こっておるということを私は耳にしております。単に姫路税務署だけじゃないのですね、全国的に起こっている。全国的にひとつ調査して、こういうことはやめさせるように、私は国税庁としてやってもらいたいと思いますが、どうですか、やりますか。
  113. 横井正美

    政府委員(横井正美君) 先ほどお答え申し上げましたように、納税者御本人の希望も聞かないでやっておったというふうなことでございましたならば適当でございませんので、これにつきましては、ただいま御指摘の姫路税務署を含めまして、全国の税務署を適切に指導いたしたい、かように考えます。
  114. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最後に、中小企業庁にお聞きしますが、商工会商工会議所が行っておる記帳指導、これは小規模企業に対してやられるものだと思っておりますが、どのような目的を持ち、どういう方法でやられておるのか、本人が指導を受けたくないと言った場合は一体どうするのか。
  115. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 記帳指導は御承知のとおり、経営の基礎でございますし、それから、小規模企業対策として行われますところの金融面あるいは税制面のいろいろな施策の基礎になるものでございますので、記帳につきましては、小規模企業政策の基礎として記帳指導ということは経営指導の根幹をなすものでございます。したがいまして、税記帳指導員というものも置きまして、商工会商工会議所で記帳指導の推進をしておる、こういうことでございます。もちろん、これは御本人の経営内容に立ち入ることでございますので、本人の意思を無視して、それに反して強制をするというふうなことはできるわけもございませんし、事実行われることはないと思います。
  116. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 記帳指導の押し売りはしないという意味お答えだと思います。しかし、このアンケートを読みますと、こう書いておるんです。「貴殿に本指導を受けられるご意志がおありかどうかを確認いたしたく、御手数ながら来る五月三十一日までに必着するよう下記アンケートにて必ずご回答下さいますようお願い申し上げます。尚、ご回答のない場合は指導を受諾されたものとみなしますので、あらかじめご了承下さい。」と、こういう文面なんですね。そして、この文書の発送が五月二十六日なんです。本人の手元に来るのはそれからやはり二日、遅くは三日ぐらいかかると思うんですね。  それで、五月の二十九日ごろにまあ着いたとしますか。これでは返事の出しようがないわけです。出しても、向こうが、商工会議所が指示した五月三十一日までに必着するようにという文面、着かぬ場合だって起こってくる。着かなければ承諾したものと認めますというのは、一方的な私は押しつけだと思うのです、こういう文面は。本人は私に、こういうことを言われても、返事の出しようがないと言うのですね。私は商工会議所やり方は、有無を言わさずとにかく青色申告を押しつける、こういうやり方ではないかと思うんです。こういうやり方は余り好ましいことでないので、このようなことはやめさした方がよい、やめさせるべきだと私は思うのですが、どうですか。
  117. 横井正美

    政府委員(横井正美君) いまお話のございました具体的な案件、確かにそのとおりでございますれば、日程等につきましては無理があるかと思います。事務的な問題としてはやや無理のあるケースでございまして、そのようなことはないようにいたさせたいと思っております。  ただ、記帳指導につきましては、やはり先ほどから申し上げておりますように、小規模企業経営指導というものの根幹をなす基礎的なものでございますので、政策としては積極的に進めていかざるを得ないものであろうかと思います。ただ、本質的に個人の意思を尊重すべきものでございますので、強制にわたるようなことはないようにいたす必要があろうかと思います。
  118. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最後に意見です。  税務署は、本人が希望してなければこういうことはやらないと言っている。税務署がやらなければ商工会議所はわからないわけですね、こういうことは。ですから、そういう無理なことは本人の意思をよく聞けるように、時間的にもっと余裕のあるようにやはり処理すべきもので、返事がなければもう承諾したものと認めますよというような高圧的な文書は、私は好ましい文書じゃないと思います。そういう点これからよく注意をしてやってほしいと思います。税務署もどうぞ気をつけてください。
  119. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 最初に大臣に、今回の第三次の不況対策についてお伺いするわけですが、今回の第三次不況対策は、需要を創出して本格的景気浮揚を図るというかけ声をもとに提示されたものでございますけど、第一次、第二次と同様に、物価とのからみ、総需要抑制という枠の中での対策の域を出ていないと私は思っております。第一次、第二次の不況対策は実質的効果が現在出ていない。  その証拠には、景気はおおむね三月で大底をついたというのが一般的な観測でございますけど、産業界の操業率は依然として悪く、企業の固定費圧迫は想像以上でございまして、需要の伸びもないし、主要企業は、依然として水面以下の経営状態に呻吟しているわけでございます。いまの状態でございますと、企業それ自体にみずからの浮揚力が欠落しておりまして、私は深刻な状態を迎えておると思います。たとえば合繊のある企業では、半期経常で七十億の赤字を現に出しておるし、あるいは同じく合繊のある企業では、期中の金利が百四十億というような状態のところもあるわけです。景気刺激目標をはっきりさせ、需要を創出しなければ、私はむしろ物価政策といった面から見ても、このままの状態はマイナスの効果を及ぼすであろうということを懸念するわけです。  一次、二次といい、まあ今回の三次も私は同じだと思うわけでございますが、俗っぽい言い方で、二階から目薬を差すという言葉があるわけだけど、いかにも不況対策というものが微温的で、まあ表現が悪いかもわかりませんが、お役所的な施策である。需要を創出する、そして景気浮揚を図るという政策をいまの時点で打ち出すためには、小出しな政策ではなくて、もっとドラスチックな政策が必要であろうと私は思うわけです。企業の金利負担の軽減を図るという意味において、今回の第三次不況対策は適確であるかどうか、また、河本通産大臣御自身が、今度こそ思い切ったものをすると言っておられたわけでございまして、当該大臣として、今度の第三次不況対策というもののできばえというものをいかに考えておられるか。あるいは、この需要創出効果というものが今度の第三次不況対策で具体的にいつごろあらわれてくるものと思っておられるのか、この辺のところをまずお伺いしたいと思うんです。  なお、私はいまのような第三次不況対策であるなら、早晩第四次不況対策を立てざるを得ないというふうに思っておりますし、一般的な産業界の声もそこにあるというふうに思うわけでございまして、この辺について大臣のざっくばらんな現在の御所見をお聞きしておきたいと思うわけです。
  120. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず、現在の経済の動向でございますが、要点だけを申し上げますと、鉱工業生産は、一年前に比べまして約一五%落ち込んでおります。一年半前の石油ショックが起こりましたときに比べましておよそ二割落ち込んでおる、こういう状態でございます。  いま三月に大底をついたというお話がございましたが、いろいろな経済指標から判断をいたしますと、確かにそういうことが言えると思います。大底をついたということは言えるのでありますが、しかし、何分にも落ち込みが非常に深いわけでありますから、大底をついたと言いましても、不況の現状は非常に深刻である、こういうことが言えると私は思うわけでございます。そして、この三月、四月は比較的これでよくなるのかなあというふうな数字が出たわけでありますが、どうも五月ではもうひとつ予定どおりこれが上向かない、こういうふうなこと等もありまして、私どもも景気の動向に対して大変な心配をいたしておるわけであります。  従前の不況でありますと、この自力による浮揚力も相当ありますし、まあ若干の誘い水をすればだんだんと浮揚していくということも言えたわけでありますが、現在は、国民消費は御案内のような状況でございますし、貿易は均衡縮小ということで輸出も減る、輸入は大変大幅に減っておる、こういう状態でございますし、それから民間設備投資は全然意欲が減退しておる、こういう状態でございますから、ちょっとやそっとの刺激ではなかなか浮揚しない。しかも国民経済全体の規模というものは、ことしはおよそ百六十兆円と想定をいたしておりますので、相当思い切った需要喚起というものが必要であろう、こういう考え方のもとにいろいろ対策を立てたわけでございますが、まあ財政事情等もあり、いろいろな関係から、御案内のような去る十六日に発表いたしましたような内容に落ちついたわけでございます。  当初通産省が考えておりました需要喚起の規模から考えますと、相当規模が小さくなっております。しかしながら、現在政府部内の意見の調整といたしましては、いろいろな意見もございますのでまあ万やむを得ない、こういうふうに考えまして、この第三次景気対策によりましてどういうふうな景気の動きに変わりますか、その動向等をもうしばらくの間見守っていきたい、こう思っております。  ただ需要喚起は、計算方法にもよるのですけれども、一兆六千億ないし二兆円と、こういうふうに計算をいたしておりますので、相当な刺激になることは事実だと思います。それからなお、具体的には書いておりませんが、金利水準を引き下げるとか、そういうような金融対策等に対しても触れておりますし、それから文章には明記してありませんけれども、貿易対策といたしまして、輸出、輸入の現状から考えまして何らかの積極的な対策が必要である、こういう発言を私もその席上いたしまして、そして座長である副総理から、そのとおりであるから、貿易対策に対しては、この文章にはないけれども、特別に関係各省で至急に具体策を相談するようにと、こういう御指示もございましたので、あの文章とは別個に貿易対策を積極的に考えてみたい、こういうふうに考えております。  そういうことでございますので、現段階では、政府としてはやれることを相当やった、ただしかし、効果については、もう少し様子を見ないとどの程度の効果があるかわかりません。そこで、通産省といたしましてはほぼ三カ月ぐらい今後様子を見まして、どの程度の影響が出てくるか、産業の状態をつぶさに調べてみたい、そうして今後の経済運営の参考にするためにいろいろ分析調査をしたい、フォローアップしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  121. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 鉱工業生産それ自体を見れば、いまお話にありましたように、オイルショック前から二割ほどダウンしておるというお話ですが、産業界全体を包み込んでおる雰囲気からすれば、大体三割ぐらいいまやせておるのじゃないかというのが、私は産業界の持っておる実感じゃないだろうかというふうに思うわけです。大臣は閣僚でございますから、なかなか物が言いにくいかもわからないけど、恐らく通産大臣それ自体裸になって、皮をむいて物を言えば、恐らく、こんなことじゃいまの産業実態に照らして間尺に合わないというもどかしさをお持ちであろうというふうに私は思うわけなんです。そういう気持ちがあれば、私はざっくばらんに先々のためにも聞かしておいてもらいたいと思うわけでございますが、貿易の状態は縮小均衡の状態にある、したがって八項目の文章表現はないけど、何らかの措置をとるということでございますが、輸出環境は非常にタイトであるし、需要の状態から見て輸入が激減しておるという状況の中で、具体的に貿易対策をどのようにして対処するのか、その辺もう少し突っ込んで私は聞かしてもらいたいと思うわけです。  それから、需要の喚起策にしても、数字で一兆六千億あるいは二兆円というふうに言われるわけだけど、現実の問題としてこの施策が施行されて、需要が喚起されるというのは大体いつごろになるのか。三カ月ぐらい様子を見てみたいというお話もあるわけだけど、産業界で需要が喚起され、荷動きがもう少し活発になってくるという状況が生まれてくるまでの間、手をこまねいておいて構わないものであるか否か、私はかなり深刻なものを感じておるわけでございまして、その辺のところをもう少し聞かしてもらいたい。  それともう一つは、いまの状態を続けていけば物価が一けた台にならなければならないし、それが最も重要な要件であるという形でこの不況対策ももどかしさを感じておるわけだけど、時期を失すればむしろ物価を押し上げる要因がそこにあるんではないだろうか。いまのまま続いていけば企業としてはどうしようもないわけですから、結局は物価を、価格を操作しなければ帳面が合ってこないわけですよ。そういう方向にむしろ火をつけておるのじゃないだろうか。何か私はそういう面で、アメリカやあるいは西ドイツあたりの施策に比べて、わが国の施策というものがいかにも後手後手であるし、そして用心し過ぎて、はうような状態でしかない。この辺のところをもどかしく私は感じておるので、ざっくばらんにその辺のところを一括して聞かしてもらいたいと思います。
  122. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 一年半前に比べまして、鉱工業生産が二割落ち込んでおるということを申し上げましたが、御指摘のように、現有の設備がどの程度動いておるかということになりますとこれはまた話は別でございまして、いまお話がございましたように、平均いたしまして七割前後しか動いてない、こういう感じでございます。いろいろな統計から考えましても、大体ほぼその数字が出てぐるのではないかと思います。  それから、貿易の問題でございますが、まず輸出貿易につきましては、いま検討しております対策は、一つは、輸出保険の問題をどう取り扱うかという問題、それからさらに輸出入銀行の金融の量、それから条件等をどういうふうにやっていくか、こういうふうな問題について関係方面といま検討をいたしております。  それから、輸入の問題につきましては、発展途上国、特に東南アジアからの輸入が非常に減っておるわけです。概括的に申し上げますと、OPEC諸国との貿易は、日本が約百五十億ドルほどの輸入超過になっております。ことしの貿易は縮小均衡でありますけれども、輸入が激減して輸出が少し減るという傾向でございますから、大体貿易上の黒字は百億ドルぐらいで済んだ。しかもOPEC諸国だけで百五十億の入超でありますから、OPEC以外のところに対しては日本は二百五十億ドル以上の出超になるわけですね。そういう関係もありまして貿易上問題点が非常に大きい。  これを放置いたしますと、トラブルが表面化する危険性が多分にあるわけでございますので、特に東南アジアは輸入が激減をいたしましたので向こうも大変不景気になっておりますし、不景気になれば日本の品物を買う能力も減ってくる、悪循環になってくる、こういうことになっておりまして、そこでこの第一次産品を中心としてもう少し輸入をふやす方法はないかということが、輸入問題で検討をいたしております一つの大きな主眼点でございます。いずれにいたしましても非常に貿易全体が重大な問題をはらんでおりますので、これを世界経済全体との関連におきましてどういうふうに解決をしていくかということが、非常に大きな課題でなかろうかと思います。  それから、物価の問題をお話しになりましたけれども、稼働率が設備に対して七割である、こういうことになりますと、日本の雇用条件というものは終身雇用制でございまして、とにかくもうどうにもならぬというところまでは首を切らないで、労働力を抱え込んでおるという状態でありますので、アメリカなどの労働事情とはちょっと違いますから、統計のとり方などもよほど気をつけなければならぬと思うわけです。いまはそういうことで、実際は不要の労働力を大量に抱え込んでおって、しかも七割の稼働だということになりますと、そのためにコストが非常に高くなっている。稼働率を上げればコストは下がるわけでございます。  それから金利水準は、いま御指摘がございましたように、アメリカやドイツのように機敏に行動できない、機動力がちょっと弱い、こういう感じは免れないと思います。もうすでに両国とも数回にわたって果断に金利対策、公定歩合の引き下げをやりましていろいろ金融対策をやっておるわけでございますが、日本はなかなかそれについていけない。しかも国際的な金利水準と比べますと、日本の金利水準は非常に高いわけでございます。  いまユーロダラーの金利などは、いっときは一五、六%まで上がっておりましたが、最近は非常に下がって五・五%までぐらい下がっておる。そういう実情になかなかついていけない。そういう意味国際競争力も弱っておる。だからどうしても稼働率を上げて金利水準を外国並みに引き下げていく。こういうことが必要でありますけれども、それについていま御指摘のように必要な手が打たれたのかどうか、こういう御質問でありますけれども、私は十分であるということは、これは先ほども申し上げましたように、百六十兆という国民経済の規模に対して二兆という需要の喚起、これが他の条件がいい、貿易の状態もいい、それから国民消費の動向もいい、それから民間設備の状態もいいというときに二兆円出すということであれば、それが誘い水になって景気が上昇すると思いますけれども、ほかの全部が悪い、全部が水びたしの状態になっておる、そこへ二兆円というものをこんな大きな国民経済、百六十兆というものに対して出すわけでありますから、その効果を誇大に宣伝することはちょっとむずかしいと思います。  ただしかし、やらぬよりはましでありますし、それからやはり、GNPに換算いたしまして一%以上のいずれにしても押し上げる要素等もありますので、とにかくいまの政府の財政的な立場から考えまして、一応やれるだけのことをやったわけでありますから、ここでしばらくの間様子を見て、また必要とあらば次の手を打っていくということで、先ほど申し上げましたように、ほぼ三カ月後にもう一回つぶさに実態調査をしてみたい、こういう考え方でございます。
  123. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 まあ言葉じりを私とるつもりはさらさらないわけですが、やらぬよりましといみじくもおっしゃったように、私は、いずれにしたって非常に深刻な状態であるというふうに思います。幸いわが国の労働問題にしても、終身雇用という面で支えられて、大手などではまる抱えの状態を続けておるわけだけど、しかし、これとても一時帰休なども現にやっておるし、中小あたりに行きますと、たとえば今度の一時金の妥結結果などが新聞などで報ぜられておるわけだけど、これはあくまでも表面であって、内実は全部手形ですね、ある意味の。前回の春の賃上げにしたって、妥結した証文は明確にある、協約書は。しかし、実際はそれは払われていない、これが中小企業実態なんですよ。  だから、全部そこで働いておる労働者というのは見せかけの賃上げであって、実態賃金は昨年からずっと据え置きだ、一時金も全部できたときの出世払いだという状況の中に置かれておるわけですから、これはもう産地に行けばすぐわかる。次官のところなんかそうでしょう、石川の産地なんていったらもう中小企業がいっぱいあるわけだけど、大体その傾向ですよ。表面でじっと見ておるのと実態が違うわけなんだから、その辺で私はやっぱり通産大臣、もう少し大蔵省などにも産業界実態というのをもっとつまびらかにするように努力しなければいかぬ。  そのためには、閣僚であるがゆえに現在できたところの三次不況対策というものを擁護するという立場もそれは必要かもわからぬけど、しかし、この点はだめなんだ、こうしなければいかぬのだということは、やっぱりはっきり国民の前にも私は示すべきであろうと思うんですよ。そのことによって産業界にも息吹も沸いてくるし、あるいは目標設定ということも可能になると思う。それが一次であり二次であり、ああいった不況対策、三次もまたそれに右へならえ式でいき、やれるだけのことはやっておるんだからしばらく様子を見ようというだけでは、先々どうなるのだと。経済界では思惑というのが一番こわいわけなんです。どのように私は事態が急変していくかわからぬというふうに思うわけです。そういった意味で、もう一度くどいようだけど大臣所見をお伺いしておきたいと思います。
  124. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) たまたま四十九年度の国の歳入が八千億ばかり不足したということ等の事情もつい先般起きたばかりでございますので、そういうことからもう少し財政等の動向も見守りたい、こういうことも一つは確かに制約になったと思います。ただしかし、幸いなことには、国民消費は落ち込んでおりますが、それにも増して貯蓄の方が、特に少額貯蓄の方が激増しております。でありますから、この少額貯蓄といいましても、これは主として郵便貯金でふえておるわけでございますから、私は、こういうふうな財投関係の原資というものをもう少し動向を見た上で今後大幅に活用する道が開けてくるのではないか、こういうふうにも考えるわけでございます。  そういうことでございますから、もう二、三カ月もたちますとそういうふうな財投の原資の動きがどうなるか、それから国の財政収入がどういうふうに動いていくか、そういうふうなこと等もまた明らかになると思います。でありますから、今回の第三次対策というものは、決して私は十分であるとは思いませんが、しかし、第一次、第二次に引き続きましてこの第三次対策を行い、さらに先ほど申し上げましたような貿易対策ども別途これをやっていく。こういうことをやりますならば、ある程度のやはり効果は出てくる、こういうふうに思うわけであります。  そこで、くどいようでありますが、政府の方といたしましても、景気の動向には非常に重大な関心を持っております。これは雇用問題という問題も背後にはあるわけでありますし、それから海外に対する、発展途上国に対する経済援助という問題も経済成長いかんによっては左右されますし、あるいはまた、三木内閣の一番の基本方針であります社会資本の充実であるとか福祉政策、国民生活向上とか、こういうものもやはりこの経済の動向によって左右される、こういうことでございますので、総理初め各閣僚が非常に重大な関心を持っておりまして、もう少し景気の動向を見守ろうということになっておりますので、二、三カ月たちましたならば、十分な調査をいたしまして、必要とあらば遅滞なく次の手をもう一回打たなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  125. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 三カ月というのを固定した考え方とせずに、事態をよく注視していただいて、もしはかばかしくいかぬような状況が見られるなら、時を失することなく果断な手を打っていただきたい、こういうことを強く要望しておきたいと思います。  長官は三時からちょっと出られるわけですね。
  126. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) おります。
  127. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 そうですか。  長官、いま大臣との間に今度の第三次不況対策をめぐる質疑を行ったわけですが、中小企業という立場から見て、およそ三年間にわたる厳しい景気の引き締め、不況の中で、中小企業がかつてないほどの大きな打撃を受けておるわけです。一つの例として、いまたとえば中小企業に働く人たちの賃上げとか一時金というのが、新聞などで報ぜられておるのとは違う、これはみんなたな上げされておるのだと。言ってみれば、まあ空の証文みたいなものだというふうに申し上げたのです。これはもう事実なんです。  こういった実態の上に立って、中小企業容易じゃないわけですが、長官として、最近の中小企業の不況をあおいでおる動向と、それから今後の中小企業の見通しなどについて、概括的にお話を聞きたいと思います。
  128. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 中小企業の場合には、大企業以上に今回の不況の影響を受けておるように私は見るわけでございまして、大企業中小企業と分けました工業生産指数をとっておりますけれども、この三月で中小企業の生産指数は、四十五年を一〇〇といたしまして九八でございまして、四十五年よりもっと前の水準にまで落ち込んでおるわけでございます。大企業の場合には、この三月は一一四という指数でございまして、昭和四十七年ぐらいの水準かと思います。  そういうふうに非常に生産の落ち込み方が大きいということと、もう一つは、価格の低落の状況が、昨年の三月以来中小企業の価格が毎月前月比下がっておりまして、ことしの三月で、大体前年同月比でマイナス五%ぐらいの価格水準でございます。ところが、大企業の製品について見ますと、下がったと申しましても前年同月よりもまだ高い水準でございまして、ことしの三月で、大企業の製品は前年同月比五%高、中小企業はマイナス五%、こういうふうに明暗が分かれておりまして、生産も落ち、価格も非常に落ち込んだ、こういうことで、非常に中小企業の影響は大きかったわけでございます。御承知のように、倒産が毎月ここのところ八百件から九百件出ておりますけれども、ほとんどは中小企業の倒産でございまして、資本金一億円以上の倒産はこの中で大体毎月二件ないし三件でございまして、残りは全部中小企業でございます。  こういう状況でございますので、特に中小企業につきましては、もともと力の弱いところに不況の影響のしわを非常に受けておるということで、政府としても、この中小企業の受けております不況を救済するために特に手厚い施策が必要であろうというふうに考える次第でございまして、そのために、特に従来は金融面に力を入れまして、各種の政府系金融機関の融資の増額でございますとか、あるいは民間の中小企業救済特別融資制度の適用でございますとか、あるいは信用保険の面におきます不況業種指定制度を活用いたしまして、現在、製造業のほぼ半分に当たる業種を不況業種というふうに指定をいたしまして、信用保証を倍額まで受けられるという制度を適用してまいっておるわけでございます。  ところが、最近は中小企業も金よりも仕事ということで、特に需要を喚起するような施策をとってほしいという要望が強いわけでございますので、そういう趣旨を体しまして、最近の一次、二次、三次にわたります不況対策におきましては、大臣からもただいま申し上げましたように、住宅金融公庫の融資の増額によります住宅建築の促進、あるいは公共事業の契約の繰り上げとか、あるいは公害防止投資の促進でございますとかといったようなことを通じまして、まあ回りめぐってこれらの仕事は中小企業に相当部分が回ってくるわけでございますので、こういう仕事をふやすことによりまして、一日も早く景気の回復を図りまして、中小企業の苦況を救うようにいたしたいと考えておるところでございます。
  129. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 中小企業に対する資金の融資という形が年末などを通じてしばしば行われ、まあ大変中小企業もその面では喜んでおるわけですが、いま長官おっしゃったように、いまの状態じゃ資金需要が減少したというよりも、むしろ仕事をくれという意味での声が非常に強くなっておるわけです。その面において、勢い今回の不況対策においても中小企業の官公需の受注確保の問題、あるいは中小企業それ自体の需要を喚起するための施策ということが論ぜられなければならないわけですが、この点については、先ほど来各委員の方から質問があり、詳細な答弁があったので、私は重複しますから省略します。  一つだけ聞いておきたいのは、金融措置ということと同時に、中小企業の中から返済猶予をしてくれ、いわゆる既往の償還猶予ですね。そういう声が非常に強くて、これについてもしばしば、画一的じゃないけど、ケース・バイ・ケースという形で措置されてきたと私は承知しております。  非常にこのことは即効性があって、中小企業にとってはありがたい施策であるわけだけど、たまたま私、中小企業の懇談会に出た折、質問を受けて当惑したんですが、たとえば商工中金の場合に、政府の施策に基づいて償還猶予を行う場合には新規契約を結ばされる。新規契約を結ぶ場合には、九・六%を上限としてそれまでの金利の一%以内で新規契約を結ばされるんであると、これは政府系公庫の他の二機関とは違う特殊な措置ですね。通産省で言う場合には、政府系三機関について既往の償還猶予を行うんだというふうな発表が新聞にもばっと出るんだけど、商工中金の場合には、償還猶予はやりますが金利上げなさいよと、これではちょっと不都合じゃないだろうか。商工中金とたとえば国民金融公庫との性格の違いというものもある意味ではわかりますけど、政府系三機関が償還猶予を行うというときに、商工中金だけがまだ延ばしてやるけど金利は上げますよというようなことでは、私はおかしいというふうに思うわけで、この辺の実態がどうなっておるか、聞かしていただきたいと思います。
  130. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 最近の中小企業の苦境からいたしますと、過去の借入金の返済に非常に困難をいたしておる向きが多いわけでございまして、返済猶予の要望が非常に強うございます。これにつきましては極力弾力的に対処いたしまして、ケース・バイ・ケースでございますけれども、窓口で審査をして、もっともと考えられる苦しいような状態の場合には極力返済猶予を行うように、政府系三機関を指導をいたしておりまして、それは単に三機関だけでなく、市中銀行等で三機関の窓口をいたしております直接口でない向きにつきましても、よくその趣旨が徹底するように指導をいたしておるところで、いわゆる代理貸しにつきましても、そういう指導をいたしておるところでございます。  ちなみに、昭和四十九年度の返済猶予は総体で約三万件行いまして、金額にいたしまして千六百億強になっております。その中で、商工中金の返済猶予額は約八百億でございます。ただいま、返済猶予をした場合の金利がどうなっておるかという御質問がございましたけれども、全く政府資金で運用いたしております中小企業金融公庫国民金融公庫につきましては、原則として当初貸しましたときと同じ金利で猶予分も継続をいたしておりますが、商工中金につきましては、返済猶予と申しますか、期限を延ばします場合には、その延長する時点の商工中金が採用いたしております金利に切りかえることを原則とする、こういうたてまえを商工中金はとっておるわけでございます。  その理由は、まるまる政府資金に頼っております二つの国民公庫、中小公庫と違いまして、商工中金の場合にはその使っております資金が、御承知のように八割は自分で調達をいたしました、いわゆる「ワリショウ」、「リッショウ」という債券を発行いたしまして、それによりまして貸し出しの原資を調達をいたしておりますので、その分が金利水準が上がってまいります、原資がコスト高になってまいってくるわけでございます。こういった政府の出資分でない、商工中金が自分で調達します資金が全体の八割ございまして、そのために、延長いたします場合にはその時点の金利でないとなかなか採算上苦しい。  こういう事情がございまして、原則としてそういった貸し出し、この返済猶予を行います場合は、その時点での商工中金の貸し出し金利というものを適用するたてまえをとっておりますけれども現実には一挙にそこまで上げますと、非常に金を借りております中小企業に影響が大きいとき、特に相手が零細でしかも経営が悪化しておるとか、災害等の特殊事情があったとか、こういう場合には格段の配慮を払いまして、現実に商工中金がとっております貸し出しの金利水準よりもさらに低い水準を適用するとか、ケース・バイ・ケースでいろいろ弾力的な措置はとっておりますけれども国民公庫とか中小公庫のように、一番最初の貸し出し時点での金利をそのまま継続するというわけにまいらない事情がありますことを、ひとつ御了解いただきたいと思います。
  131. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは私、直ちにこれを訂正するということは困難かとは思うわけだけど、商工中金の場合といえども、全くこういう平常時において個々の企業の都合によってたとえば償還猶予する、これは市中銀行だってあることだと思うのです。したがって、そういった場合には、そのときのその銀行との話し合いによっていろいろなケースがとられたってこれはやむを得ないことだと思うけど、一連の政府施策に基づく形として償還猶予を行うのだ、中小企業については政府系三機関が行うのだという施策をとるときには、私はやっぱりこの措置はちょっとおかしいと思うのですよ。その辺の使い分けが必ずあると思いますね。本当に自己都合によって行うときは、これはもう私は何をか言わんやだと思うけど、政府が、たとえばオイルショックによってこういう状況になっておるのだから返済猶予をやりますよというお墨つきでやっておるわけですから、この点は、やっぱり中小企業庁としてもはっきり施策を立ててやるべきであると私は思います。だから、いますぐにということがむずかしければ、十分この辺の検討を進めてもらいたい、これはお願いしておきたいと思います。  それから、時間の都合でちょっと法案内容については先において、繊維のことについて私お聞きしておきたいと思うわけです。  わが国の繊維産業は、どちらかといえばこれまで輸出産業として発展してきたわけでございますけど、発展途上国からの追い上げによって現在の状態では輸出が停滞する、そして輸入が増大するという貿易パターンの重大な転換期に入っておると思います。しかも、この情勢は今後さらに深刻化するおそれがありまして、繊維産業としては基本的な性格において、合成繊維も含めて原料をほとんど輸入に依存しておる。先ほど大臣は、わが国の貿易全体を考えて貿易の均衡を図っていかなければならない、また、拡大を図らなければならないということをおっしゃったわけだけど、繊維産業という状態を取り出してみても、貿易のパターンというものが変わった中で、なおかつ貿易収支の均衡というものを常に念頭に置いていかなければならないと思うのです。ここのところが非常に繊維産業としてはむずかしい状況にあるわけでございますけど、まあこういった情勢の中において行われております繊維品の輸出会議、これは六月五日に通産省が開催しておるのですが、この輸出会議でどういうことが論議されておるのか、その辺の状況を知らせていただきたいと思います。
  132. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 先日、先生いまおっしゃいましたように、六月五日に、これは恒例のことではございますけれども、繊維製品の輸出会議が開かれたわけでございます。ただいま先生御指摘のように、繊維製品は、その昔はわが国の貿易を輸出用に支える非常に大きな柱であったわけでございます。この柱は年々まあ細くなってはきておりますけれども、しかしわれわれの認識、業界の認識におきましても、やはりわが国の輸出において非常に重要な産業である、輸出産業であるという認識は参列者一同再確認をしたわけでございます。その席で議論が出ますことは、これは御存じだと思いますけれども、まず第一に四十九年度の貿易の状況を振り返り、五十年度における輸出の見通しを立てる、それで、その輸出の見通しを共通の目標にしながら官民ともに輸出につとめる、こういう趣旨のものでございます。  御参考までに、その際に立てられました五十年度の輸出見通しの数字を申し上げますと、繊維製品、繊維産業といたしましては約三十七億四千万ドルの数字でございます。これは残念ながら四十九年度の実績に比べますると約四%の減という数字になっているわけでございますが、これはいろいろ厳しい内外の貿易環境の中にありましても、大いにこれを目標にしながら努力をしようということになったわけでございますが、その際、業界側としてなすべきこと、あるいは政府に要望することということにつきまして、双方ともいろいろ懇談をしたわけでございます。  かいつまんで申しますると、先ほど言いましたような繊維産業が輸出産業として重要であるという共通の認識のもとに、やはり今後の輸出を促進するためには何よりも輸出環境の整備が大事であるということで、この整備のために、精力的に経済外交を政府としては推進してもらいたい。御高承のとおり、繊維の輸出につきましては長いこと、先進国を中心といたしましていろいろ輸入規制あるいは輸入制限的なネットワークが実は張りめぐらされておるわけでございますが、これも年来の努力により徐々に減ってきておるわけでございますけれども、依然輸入制限的な動きというものはあるわけでございますので、これを経済外交によって強力に排除をする、こういうふうにして輸出環境を整備するということがまず大事ではないか。これは政府の責任だ、仕事だと。しかしながら、同時に業界側におきましても、やっぱり海外の同業との無用な摩擦を避けるために業界間の交流というものは大いにやりたい、それから政府としてもやってもらいたいということでございます。  それから、問題の発展途上国からの追い上げということは、輸出におきましても、あるいは内需におきましても大きな問題になっているわけでございますが、このためにはやはり発展途上国、海外におけるニーズがどういうふうになっているかという見通しのもとに、海外におきましても、やはりいろいろ日本の繊維製品に対するニーズというものも変わるでしょうし、あるいは高度化、多様化してまいるのではないか、そういう見通しのもとに、移り変わります海外のニーズに適応するような繊維産業に脱皮をする必要があろうということでございまして、この辺は一口で申し上げますると、知識集約型の産業へ体質改善をしなければならぬということでございまして、これは国内の政策あるいは業界の努力ということになるわけでございますけれども、幸いなことに、昨年来繊維構造の改善のための法律がございますので、この辺をてこにしながら、官民ともに協力してやっていこうということでございます。  基本的には、ともかく従来の繊維製品の輸出のパターンが、好況のときに、つまり内需が広がりますと輸出のインセンチブと申しますか、輸出意欲が落ちる。昨年のように国内が不況のときには、市場に出すというような傾向があったわけでございまするけれども、今後はともかく国内の好況、不況にかかわらず安定した輸出をやろう、長期的に輸出市場を確保していこう、これが非常に大事なことでということで、官民ともに協力して輸出取引秩序の維持にも大いにつとめましょうというようなことでございます。  大筋を申しますと、以上のようなことでございます。細かい具体的な措置等につきましていろいろ議論が出たわけでございます。官民とも隔意なき意見の交換をし、非常に私ども有益だったというふうに了承しております。
  133. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 諸外国において、いまお話にもありましたが、ことに先進諸国においてはそれぞれ繊維品については輸入規制のネットワークがあるわけでございまして、その障壁に大変苦慮しておるのがわが国の繊維産業実態だと思います。その一つの例として、豪州における新規制限措置というものにどう対処するつもりか。  それから、最近報道されました、ECにおける輸入監視制度というものが七月から発動されるということでございますが、これはどういうものであり、またどう対処していこうとするのか、この辺のところを具体的に聞かしてもらいたいと思います。  さらに、この会議の中で、国内市況の安定化対策として市況安定積立金制度というのが創設されるということでございますけれども、これもどういう性質のものであるか。  以上の点、お願いをいたします。
  134. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) オーストラリアにおきましては、政権が交代してから保護貿易的な貿易政策の傾向を強めてきておるわけでございますけれども、昨年、貿易収支の逆超等を理由にいたしまして、突然幾つかの品目につきまして輸入制限的な措置をとったわけでございます。その中に御指摘のように繊維製品も幾つか入っておるわけでございますが、私ども直ちに外交ルートを通じまして、事情の聴取あるいは双方の意図の連絡あるいは抗議を申したわけでございます。これは御存じのように、その後外交ルートによりまして現在オーストラリアとの折衝が、外交交渉が続けられておるわけでありますので、その方を通じまして強力にオーストラリアの輸入制限の撤廃に努力をいたしてきたわけでございますが、今後とも大いにつとめるつもりでございます。  それから第二点の、ECが輸入監視制度をとったということにつきまして若干御説明をいたしますと、御指摘のとおり、今年の五月七日からECにおきましては輸入監視制度をとることを決定したわけでございまして、これは七月一日から一年間の予定で実施されるわけでございます。  この中身は、このEC加盟国は、各月の上旬のうちにそれに先立つ二カ月間の繊維品の輸入の実績、これは数量と価格でございますが、それを品目別及び国別にEC委員会に出すということを義務づけるものでございます。ECというのは、これは御存じのように各国の集まっている共同体でございますので、いろいろ貿易上の統計の整備がおくれるということが前々からECとしては、内部の問題でしょうけれども問題にしておりまして、統計の迅速化ということを目的として本制度をつくったものだというふうに向こう側では言っているわけでございまして、輸入監視制度というより、むしろECに言わせますと、これは統計のチェックシステムであるということを言っております。  最近、エルンストと申します在東京のEC代表部の方がおられるわけでございますが、そこにいろいろ聞きましたところ、エルンストの言うところによりますと、日本は入っておらぬ、この本制度対象になっていないということを言ったそうでございますが、この点、現在ECの方に確認中でございます。このECの今度の監視制度というものは、先ほど説明をいたしましたように、ECの中でECとして早く数字をつかむことが目的とすることであって、輸入制限的なものではないんだということを言っております。ですから、輸入業者あるいは輸出業者から新しい資料を出すというような意味において、新たな負担を課するものではないんだ、こういう説明をしておるわけでございます。  これに対してどういうふうに対処するかという御質問でございますが、私どもの方は以上の説明でございますけれども、やはりこれが輸入制限的な運用にならないようにウオッチをしてまいりたい。日本対象になっていないということでありますると、ちょっと問題は別でございますけれども、ともかくこういう制度が新しくできると、現在のような状況下においてとかく輸入制限的に使われがちでございますので、そうならないようにウオッチを続けてまいりたいと考えております。  それから第三点の、輸出会議におきましての市況安定積立金の問題でございますが、輸出会議の席上、いろいろ業界の方から政府に対して要望が出たわけでございます。たとえば市場開拓準備金制度を続けてくれとかいろいろございました。その中の一環として、市況安定積立金制度をつくってほしいという要望がございます。これは主として織物業界から出てきたものでございますけれども、この内容は名の示すとおり好況時に得た利益は積み立てておく。で、市況が悪くなって損失が出るというような場合にこれを取り崩していくということで、いわば市況の好不況を安定化しようということで、税金の繰り延べによって税負担の安定化を図ろう、こういう制度でございます。私どもの方、本件の趣旨はわかるわけでございますけれども、なかなかこういう税法上の問題になりますると、特に現在のような時点におきましてむずかしい問題があり、容易に設けることは困難ではあろうというふうに考えておるわけでございますが、なお検討を続けたいと思っております。
  135. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 輸入の問題についてちょっとお伺いするわけですが、繊維の原料を除く輸入については、昭和四十五年が三億ドル、四十八年が十六億七千万ドル、四十九年が十七億七千万ドル、製品輸入というのは毎年多くなっておるわけです。ことに、ことしの一−三月の製品輸入は増勢を示しており、四月の繊維品輸入の成約状況は対前月比で三六・三%の増である、綿糸、綿布、絹織物などですね。繊維それ自体のひっくるめた輸出入ということになると、なおわが国は出超であるというような物の見方もあるわけだけど、製品別に見てみると非常にばらつきがあるし、物によってはわが国の内需の二〇%に近い輸入を受けておるという状況があるわけですが、一−三月の製品の輸入成約状況は大体どういう傾向になっておるか、知らしてもらいたいと思います。
  136. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 成約の状況というお話でございますが、その前にちょっと御参考までに輸入の通関、輸入の状況を見てみたいと思うわけでございます。  長期的に見た場合には、先生がおっしゃったように繊維製品の輸入は相当なテンポで伸びてきておりましたし、特に四十八年は特殊な事情だと思いますけれども、一挙に三倍という伸びがあったわけでございますが、昨年の夏以降は鎮静してまいりました。  御参考までに、これを年度で見ますとはっきりすると思いますので申し上げてみますと、四十八年度に繊維製品の輸入額は二十億ドルでございましたが、四十九年度におきましては約十五億ドルというぐあいに、二三%ほど前年比減ったわけでございます。この傾向は一−三月、ことしになりましても続いておるわけでございまして、大ざっぱに申しまして、ことしになってからの輸入額というものは月平均、一−二月平均で大体九千万ドルぐらいというふうにお考えいただいて結構ではないかというふうに考えます。これはちょうど昨年の同期の数字に比べますると、約半分ということでございますので、相当輸入は最近でも落ちついているというふうに言ってよろしいのではないかと思うわけでございます。物によっては、そうは言っているけれどもふえているもの、あるいは減り方の少ないものもあるではないかという趣旨のことを先生申されたわけでございます。  御参考までにその点見てみたいと思いますが、ちょっと手元にある数字が一−四月でございますけれども、糸で申しますと対前年五七%でございます。それから織物でくくりますと五三%、二次製品で見ますと四七%というようなことでございまして、総じて申しまして前半の傾向と同じように、いま申し上げたように糸、織物、二次製品、でこぼこはございますけれども、やはり大体半分ぐらいという状況でございます。ただ、例外なのは絹織物でございまして、絹織物が前年同期に比べて若干の増と、数字では六%の増ということになっております。それを除きましては大体半分ぐらいということでございます。そういう輸入の実績を踏んまえまして、問題なのは今後どうなるかということだろうと思いますが、それを示すのは成約の数字でございます。  全般的に申しまして、この成約統計というのは昨年十二月からできたわけでございますが、十二月、一月、二月と成約は非常に落ち込んだ数字になっておりまして、ただ三月、四月と増加に転じたわけでございます。ですが、前年あるいは前々年等に比較して考えますると、増加はいたしておりますものの、まだ低水準と考えていいのではないか。ただ、綿織物につきましては、確かに三月に成約がふえたわけでございますが、これはいろんな事情によりまして私どもそう長続きすることではない、いわば一時的な現象ではないかというふうに見ているわけでございますが、四月に入りまして綿織物の成約量は減少をいたしました。したがいまして、確かにふえているわけではございますけれども、これが通関となって、実際の輸入となってあらわれる状況において、秩序ある輸入の増加という範囲を越えるぐらい入ってくるものであるかどうか、これは成約統計がまだ昨年始めたばかりでございますので、われわれの方も確たる見通しはつきにくいわけでございますけれども、いまの状況から見ますると急増するということではないのではないか。特に、いわんや四十八年に見られたような思惑輸入というような現象は起きないのではないかというふうに考えておりますが、なお情勢のウオッチを続けたいというふうに考えております。
  137. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 いまの局長のお話ですと、全体としては大体落ちついておるが、部分部分において成約の段階で少しピークしておるものがあると。しかし、それはスポットであろうという御見解ですが、業界あたりでは非常にこの辺が敏感でございまして、大体一−三月で繊維産業わが国の生産と同じように大体大底をついておる。まあその反動としてこの四−六月にかけて川中段階がややタイトになっておるという状況です。しかしこれは御存じのように三割ほどカットした状態でタイトということですから、フル操業ではない。そういった折に少しずつ荷が川中段階で動き出したかなというときに、成約を見ると、ぽっとこの数字が上がっておるじゃないかということで、にわかに繊維産業連盟あるいは綿工連あるいは紡績協会などで輸入規制の動きが顕在化してきておるわけです。  これら一連の輸入規制の動きについて、まあ産業界ですから非常に敏感に反応するのは私は当然だと思うわけだけど、たとえて言うならば、この紡績協会が出しておる要望事項の中で「四十七年の第三次円対策として打ち出された一律二〇%の関税引き下げの撤廃。」、二つが、「繊維は発展途上国といえども日本と同じ先進国と同列に考えるべきで、このため特恵関税は廃止すべきである。」、三つ目は、「関税切り下げ交渉」これはケネディラウンドを指しておるわけですが、「の対象品目として繊維は除外すべきである。」具体的にこの三つほどの要件を出して政府に施策を請うという表明を行っておるわけです。  これら綿繊維輸入の問題ももちんでございますが、一連の輸入規制に対する業界の動きについてどのように当局としてごらんになっておるか、あるいはどのように対処していこうとなさっておるか、そこら辺のところを聞かしてもらいたいと思います。
  138. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 昨年の秋以降からいまに至るまでの輸入の状況につきましては、先ほど御説明したとおり、相当落ちついているというふうに見ているわけでございますし、先行きにつきましても、ただいままでのわれわれが入手し得る情報では、個々の品目によって若干の差はあるものの、急増というようなことはないのではないか、これは市況の変化によってどうなるかわかりませんけれども、そういうような大ざっぱな見通しを持っておるわけでございます。  しかし、先生御指摘のように、この不況下におき、かつ四十八年の輸入急増の痛手をこうむった業界といたしましては、その後遺症も残っておる折から、本件につき非常にナーバスになるということは、私どもとしてもよく気持ちとしてはわかるわけでございます。われわれの方は、日本が自由貿易を国是とするというたてまえでございますけれども、しかし、さらばといって輸入が野放しになっていいものとは考えていないわけでございます。やはり秩序ある輸入ということは、業界の健全な発展のためにも、貿易の発展のためにも必要であるというふうに考えているわけでございます。  ただ、そのための手段、方法、あるいはどういう措置をどのときに実施するかというタイミングの問題等もございます。われわれの方では、ともかく秩序ある輸入の実現ということを目指しまして、いろいろな考えられる手法あるいは行政措置を対内的にも対外的にも総合的にとりまして、輸入の秩序化に努めてきているわけであります。ただいま御指摘にありましたようなこと、あるいはガット国際繊維取り決め上の措置、あるいはガット十九条による措置とか、いろいろ直接的な輸入を規制する措置も、わが国はそういう制度を採用しているわけでございますので、そういう措置が定める条件、あるいは事態が起こった場合に、わが国としてもそういう措置をとることができるのは当然だと思うわけでございます。  ただ、現在のような状況及び先行きの見通しにおきまして、直接的に関税を引き上げるとか、あるいは輸入の割り当てを行うとかいうような直接的な輸入規制措置を現段階においてとるかどうかということになりましては、いろいろ考えるべき要素がたくさんあるわけでございます。その制度が定めている要件を充足している、あるいはそれでなければ事態を克服できないような状況にあるかどうかということ等もございますし、あるいはもっと広く相手国との、つまり輸出国との貿易の状況、あるいはわが国における貿易全体のポジション等々いろいろ総合的に考えなければならないということでございまして、直接的な輸入制限につきましては、慎重にいま考えなければならないというふうに思うわけでございます。  ただいま先生が言われたような問題につきましても、以上のような考え方に立ちまして、実態を把握しつつ、今後の見通し等につきましても十分な検討をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  139. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 局長の立場からは、現在の状況の中でそれは輸入規制をやるべきだということは、なかなか言いにくかろうと私は思うわけですが、ここに関西経済研究センターというのが「繊維産業の展望」という中間報告を出しておる。この中で輸入問題について次のように述べておるわけです。「単に輸入の量的規模の見通しだけでなく、関税率ならびに特恵関税についても見直す必要がある。とくに、個々の品目についての関税問題を取上げる窓口」これは米国の関税委員会のようなものを指しておるわけですが、「窓口を早急に設置すべきである。また、既存の繊維輸入組合を発展させて全輸入業者を網羅した輸入組合に再編成し、秩序ある輸入のための体制を整える。」必要がある。  この経済研究センターの立案に当たったのは多くの学識経験者、第三者などを網羅した研究機関でございまして、私は一つの見識であると思うわけです。したがって、輸入防遏というものがいつ起きるかわからぬという点がわが国の土壌の中にあるわけですし、また、発展途上国からの追い上げも現にあるわけですから、かたくなな態度じゃなく、このような第三者の研究結果などもよく参考にして今後措置されたい。幸い、諮問機関として需給協議会というものも発足しているわけでございますし、聞くところによれば、各部落ごとに検討を始めるということでございますから、十分産業界意見ども聴していただきたいと思います。  時間がありませんので先に急ぎますが、新構造改善の進捗状況についてお尋ねしたいと思うのです。  七〇年代の繊維産業のあるべき姿というのを求めて、繊維工業構造改善臨時措置法が昨年の七月一日に施行されたわけですが、折から不況というような異常な事態もあったわけですけど、実施要領ができたのがことしの二月三日、したがって、それから四十九年度の申請を受けつけるというのでは実際問題として間尺に合わない。四十九年度の構造改善の第一年度は、私はまさに出鼻をくじかれた状態にあったと思うのです。これは五年間の時限立法ですから、時限が来れば失効してしまうわけです。したがって、新しい繊維産業像を求めてこの措置を早く定着させていかなければならないのに、いろいろな事情があったにしろ、その実施が延び延びになって今年度にずれ込んできておるということは、私は非常に重要な問題であろうと思います。  そこで、まとめてお伺いしますが、今度の臨時措置法の大きな特色として異業種間の結合をうたっておるわけです。勢い中小企業を垂直的に網羅するという形になるわけですから、よほどこの新構造改善事業というものの趣旨が徹底されなければならない、その趣旨の徹底が私は完全じゃないというふうに思います。どうしても大蔵省などと折衝を重ねてまいりますと、実施要領それ自体が積み上げられていって、素人ではとてもじゃない難解である、なかなか理解し得ないという恨みがありますので、なおこの辺のPRに努めてもらいたい。  それから、承認基準がきわめてきびしい、したがって、現実中小企業をフォローすることができぬのじゃないだろうかと私は思います。この承認基準というものをもう少し弾力的に運営すべきであろう、きちょうめん過ぎると私は思います。  それから、構改資金負担割合は国が六〇%、実施者が三〇%、都道府県が一〇%ということになっておるわけだけど、昨今の歳入欠陥などもあって、繊維の生産地である福井だとか石川というようなところはともかくとして、そうじゃないところにあっては、都道府県が予算措置を講じていないというところが見受けられるわけです。これでは受けざらがないということになるわけですから、せっかくの構改も始動しないということになるわけです。政府としては、各自治体に対して十分この辺の意思疎通を図り、適切な措置を講ずべきである。地方自治体において歳入欠陥でどうしようもないというのであれば、これは国が持つということも私は考えなければならないのじゃないだろうかというふうに思うわけですが、その辺の考えはどうか。  それから、現在の構造改善法案というのは五年の時限立法で、いま言ったように昨年七月に施行されて、実際はことしの春から動き出したのだけど、これをつくり上げた時期は、すなわち産業構造審議会が作業を行ったのは四十八年ですね、昭和四十八年に七〇年代のあるべき姿を求めて構造改善というものを打ち出し、法律ができたわけですね。四十八年と現在とでは二年間しか過ぎていないとはいうものの、その間に例のオイルショックという問題があり、フレームワークが全然違っておると私は思います。輸出入の関係もそうだし、発展途上国の状況もそうだし、わが国自体の経済の動かし方も四十八年と現在とでは大きく違う。したがって、この法律をつくる予見条件が、予見が、フレームワークがまるっきり変わっておるわけなんだから、現状に照らしてもう一度産構審を開いて、現在のこの臨時措置法が適切であるか否かということを諮問すべきであろう、見直すべきであろうと私は思うわけです。この辺のところをひっくるめてひとつ御答弁いただきたいと思います。  それともう一つ、今度の構改に乗ろうとする場合に、広域化の問題がありますね。都道府県が二以上にまたがる場合、こういった場合の都道府県の負担というのは一体どうなるのか、この辺のこともお聞きしておきたいと思います。
  140. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 先生が御指摘されるように、構造改善事業がおくれているという点について私どもも感じている点でございまして、五年の時限立法でございますので、今後この約半年にわたるおくれを取り戻したいというふうに考えておるわけでございます。  趣旨の徹底を図れということはまことにごもっともでございまして、私ども日ごろ痛感しているわけでございます。大体実施要領の中身が決まりましてから、二月、三月に一応精力的に地方を回りまして、府県を主たる対象といたしましてPRといいますか、趣旨説明、実施要領の説明等をやったわけでございますが、私自身も、通り一遍の説明会だけではこれは浸透するものではないというふうに考えておるわけでございます。あらゆるメディアを通じまして、本構造改善の本旨が誤りなく末端まで理解されることが大事だというふうに考えている次第でございます。その方向において今後とも努力をいたすつもりでございます。  承認基準がきびしいではないかという御指摘でございます。きびしいのは日本の繊維産業が置かれている環境でございます。先ほど来からの状況にありますように、後進国の追い上げ、あるいは先進国の輸入制限的な動きに対処して長い発展を確保するためには、きびしくとも乗り越えていかなければならない仕事だろうというふうに考えているわけでございます。  ただ、もちろん具体的な数値等につきましていろいろ定めておりますけれども、これはやはり制度を動かしていくためのめどということで守っていただきたいわけでございますが、先生御指摘のように、これを制度趣旨に照らして弾力的に運用せよということにつきましては、私も趣旨として賛成でございます。ともかく、一度決めた基準というものが形骸化して、それだけが先走りするということにならないように、実態に即して制度本来の目的を達成するためにいかにあるべきかという観点から承認基準を運用してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、決められた承認基準というのは、実は先ほど先生御指摘のように、二月に通牒を出したわけでございますので、いま直ちにどこをどうということにつきましては、もう少し状況を見て、実態が動き出した結果を見てのことだというふうに考えております。  第三に、構造改善資金の府県の負担割合、自治体の負担の問題でございます。  確かにこういう御時勢でございます、一割分といえども府県によりましてはなかなかつらいのではないかという点、御指摘ごもっともだと思うわけでございますが、情勢変化等を見、かつ府県の負担力等も考えながらこの構造改善事業を進めていくわけでございます。いついつまでに必ずやらなければならぬということではないというふうに考えておるわけでございますし、一〇%の負担というのは、多いといえば多いわけでございますが、何とかその府県における繊維産業のウエート、重要性等を考えて、府県にもできるだけの協力をしていただきたいというふうに考えておるわけでございますが、先生御指摘のように、自治体との連絡も今後一層密にしてまいりたいというふうに考えております。  この新構造改善事業の基本になっておりますところの、昭和四十八年の繊維工業審議会の答申を見直すという問題を先生いま提起されたわけでございます。  御指摘のように、最近この一、二年の環境変化は非常にはなはだしいものがあったわけでございますけれども、ただ、四十八年当時にこの見通しを、答申を検討している段階におきまして、将来日本の経済も過去のような高度成長ではあり得ないだろう、特に、繊維産業をめぐる環境というものは内外ともに非常にきびしくなるであろうということは、当時予見される限りにおいては織り込んで検討をされたものというふうに私承知しているわけでございます。その辺の状況を織り込んで見通しの数字等につきましても作業をされたようでございます。  しかしまた、一度決めたものは動かさないということでもないわけでございまして、このような変化を織り込んで、基本的な方向としては、この見通し、繊維工業審議会の答申というのは正しい方向を示していると思いますけれども、ただ状況というものは随時流動して変化していくわけでございますので、そういう変化に応じた肉づけあるいは具体化、具体化するに当たってそういう状況を十分考慮して運用していくということにつきましては、私ども全くその方向で運用してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  基本的な見直しということになりますと、政府としても、来年度をスタートにいたしますところの新しい経済の基本計画を検討する方向で進んでおります。それから通産省といたしましても、産業構造審議会の長期見通しというものの見直しもやります。そういうその辺の基礎的な検討がどうなるかということ等も織り込みまして、しかるべき時期に、先生のおっしゃるような見直しをやろうというふうに考えておるわけでございますが、いま直ちには基本的な見直しまで進むのはいかがかというふうに考えております。  それから最後に、広域の計画について、都道府県の負担割合はどういうふうに考えるのだという御質問がございましたわけでございますが、これにつきましては、他の中小企業に対して、一般的に中小企業につきましてはいろいろ事業団を中心といたしまして助成の措置をとっているわけでございますので、そういうような場合に、やはり先生の御指摘のような広域の問題が出てくるわけでございます。したがいまして、そういう中小企業振興のための他の広域措置、広域的な計画において助成措置がとられている場合に準じて考えてまいりたいというふうに現在のところ考えております。
  141. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは局長、局長もかたくなに一度つくったものは固執するという考えはないというふうにおっしゃっておられるから、その点は私も理解するわけだけど、四十八年も現状を見通したというふうに言われるけど、実態はやっぱりそうじゃない。たとえば繊維品の輸入問題一つ取り上げてみても、確かに産構審の中で論議はされておるけど、いまのような切実な状況というものは、ここまでは想定していなかったというふうに私は思うわけなんです。だから発動して、残念ながら時期が延びて、昨年七月からというものの、実態はことしからということですから、まだ申請の段階、第一次締め切りがやっと終わったぐらいですかね。そういう段階なんだから、その出ぐあいなども見て、私はやっぱりある時期には、フレームワークが変わったという状態のもとに検討を省内ででも行ってほしいというふうに思います。  それから弾力的な運用については、これはひとつ十分お考えいただきたい。局長も弾力的な運営については賛成だというふうにおっしゃったわけですから、出先にも十分そのことは通知していただきたいと思います。  時間がないから、繊維については最後に一問だけお伺いいたしますが、繊維取引の改善委員会というのが発足をしておるわけです。これは産構審でも述べておりますように、繊維産業は、製造、紡績それから編み織り、それから染色仕上げ、縫製の多段階的な生産構造を分断的に持っておる。その間に商社、問屋を介在させて、繊維の相対的な流通経路というのはきわめて迂回的であるし、複雑であるというのはだれしも認められておるところです。そのために生産と流通との結合が弱く、各段階の取引においてリスク負担が不明朗である。これらの不合理な点が繊維産業全体を有効なシステムを形成させていないというふうに述べられておるわけで、これは私そのとおりであろうと思うんです。  このような複雑過ぎる生産流通構造背景にして、しかも複雑な繊維品の取引機構、これがきわめて非近代的で、非合理的な慣行が多過ぎる。取引契約の不明確、手形サイトの長期化、手形の金利負担の不分明、決済条件の不公正、製品の引き取り遅延、契約の一方的キャンセル、不当返品、割引リベート、押しつけ販売、いろいろな問題が未解決のまま現在存在しておるわけです。このような不合理な取引慣行の結果が、商品仕入れ、在庫調整、販売計画などについて取引当事者間で責任の所在が不明確となって、生産、流通各段階の業者の経営態度も安易に流れてしまう。そして実需をはるかに超過する仮需を発生する。これがコストを高くするし、最終製品段階において競争力を弱めるし、消費者に過度の負担を負わせる。この間に弱者と強者の関係が出て、中小企業者、中小商工業者が絶えず泣かされておる。これが私は、残念ながら繊維の流通における非近代性の実態であろうと思うんです。  そのために通産省も、繊維取引改善委員会というものをつくって各所から事情を聴取しておる。この事情聴取しておるというだけでも、私は陰に陽にいい効果を及ぼしておる。みんながやっぱりえりを正さなければいけないというムードを醸しておることを見ることができますし、大変結構なことであろうと思うんです。しかし、この取引改善委員会関連業界の要望事項というものを通産省がまとめておられるわけですが、この中にも幾つか、こんなことがいまの世の中にあるのかとびっくりするような内容が掲載されておる。これを丹念に私は掘り下げていただきたい。このことがすなわち中小企業の弱体化を見せておるわけですから、中小企業庁としても、具体的にこの問題をつぶしていく方法を考えていただきたいと私は思います。ここの問題について質問しようと思ったけど、時間がありませんから、この取引改善委員会というものを十分作動さしてもらいたいということを要望として申し上げておきたいと思います。  最後に、長官にお伺いしますが、前の委員会でも私、取り上げたことでございますが、行管に直属する統計審議会の議を経なければならないのだけど、産業標準分類というのがことし洗い直されるそうです。私は、具体的な問題として以前に取り上げたのは、繊維製品輸出梱包工業組合というのがあるわけでして、これらはまさに繊維に直結した梱包運送をやっておるわけですね。ところが、産業分類でいきますとこれが運輸サービス業に入るということになるので、さまざまな構造改善指定業種にはなり得ない。そして、たとえば今回のような不況に際して、雇用保険法の適用業種にも指定されない。これは引っ越し屋さんなどとは違って、産業にまさに密着しておるんだけど、それが運輸サービス業であるがゆえにそういう指定を受けずに、製造業が不況になれば、直ちにこれはもうそのまま不況になるという状態でありながら、法の適用を受けずに放置されておるという状態があるんです。したがって、この種のものはもう少し私は詳細に検討して、分類のときにはよく考えていただきたい。まあ率直に申し上げるなら、これらは製造業に指定すべきであるというふうに思うわけです。この辺のところを問題としてひとつ長官に提起しておきたいと思います。  それから、大臣に私お願いしておきたいのは、先ほど生活産業局長にも質問したわけですけど、いわゆる繊維産業というのは好不況の波に覆われておるわけでございまして、そのための、安定化のための自助努力というものをやっぱり考えなければならないという空気が芽生えつつあるわけです。これは大臣の地元でありますが、兵庫県の西脇、これは有名な先染めの織物産地ですけど、ここでは、みずから安定化のための基金制度というものをつくっておるんです。たとえば登録織機一台当たり月額三百円を共済賦課金として集める。そして好況時にはずっとこれを蓄えておいて、不況になったときには共同管理してここから金を貸し出しする。非常に私はいい制度であると思う。予算委員会でも私は、前の福田大蔵大臣に、こういった措置について税法上の何か恩恵を与えることができないのかということを指摘しました。福田さんは、直ちにいまの税法にはなじまないという御答弁であったわけだけど、一遍、大臣もこの辺のところを前向きに検討していただいて、不況になったときにみずから蓄えたものでお互いの業界をカバーしようという制度育成すべきである。不況になったから直ちに国に泣きついて国の施策を仰ぐというだけでは私はいけないというふうに思うわけですから、このような健全な芽を育ててもらいたいというふうに思うわけです。大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。  以上、ひっくるめて全部申し上げました。
  142. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 繊維業界に、そういうふうな自助努力の傾向が出てきたということは大変結構なことだと私も思います。ただ、いまおっしゃったような内容のものが、いまの税法上直接認められるかどうかということが問題はあろうと思います。そこで、他の償却制度とかいろんな税制と総合的に考えまして、何らかの解決方法はないかということ等につきまして、前向きかつ総合的に検討してみたいと思います。
  143. 齋藤太一

    政府委員齋藤太一君) 梱包業につきまして、産業分類上一つの区分を起こしてほしいという御要望は梱包業界の方からも私ども承っておりますので、現在内容を検討中でございます。ちょうど現在行政管理庁の方で産業分類の改正方の作業に着手しておられますので、なるべくその中に盛り込んでまいりたい、かように考えております。  なお、不況対策といたしましての繊維の梱包業界の問題につきましては、梱包業種というものは全国的な規模で考えておりますので、不況業種指定要件に該当いたしておりませんけれども、個別に繊維に関連した梱包業界につきましては、政府系の金融機関からの融資のあっせんにつきまして、実際上あっせんをいたしますので、そういう形で解決をしてまいりたいと考えております。     —————————————
  144. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、鈴木力君が委員を辞任され、その補欠として竹田四郎君が選任されました。     —————————————
  145. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律、案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  148. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  小柳君から発言を求められておりますので、これを許します。小柳君。
  149. 小柳勇

    ○小柳勇君 ただいま可決されました中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の四党共同提案による附帯決議案を提出いたしたいと存じますので、御賛同願います。  案文を朗読いたします。     中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行にあたり、現下の経済情勢に対処し、中小企業の不況対策に万全を期するとともに、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一、中小企業近代化対策をはじめ、各般にわたる中小企業施策について、その普及徹底につとめるとともに、下請代金支払遅延等防止法、いわゆる官公需法等中小企業関係法律の厳正な運用をはかること。  二、近代化施策については、小規模企業者にゆきわたるよう一層きめ細かな配慮をするとともに、国民生活関連業種指定にあたつてはできるだけ弾力的に運用すること。  三、近代化計画の助成にあたつては、従業員福祉向上対策に留意し、特に教育を受ける勤労青少年について就学に必要な時間を確保するとともに、青少年の雇用の安定に関して必要な施策を講ずるよう検討すること。  四、新分野進出計画制度の推進にあたつては、新商品の開発等の範囲を弾力的に考えるとともに、進出した新分野事業活動が適正に確保されるよう配慮すること。   右決議する。  以上でございます。
  150. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいま小柳君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  151. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 全会一致と認めます。よって、小柳君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの附帯決議に対し、河本通産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。河本通商産業大臣
  152. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) ただいまの附帯決議の御趣旨を体しまして、行政に万遺漏ないように期してまいりたいと存じます。
  153. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時六分散会      —————・—————