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政府委員(齋藤太一君) 中小企業の景気の
現状でございますが、ほかの一般の景気の
現状と同様に、大体三月ぐらいに底を打ちまして、たとえば三月の中小企業の方の
生産指数で見ますと、前月比が一・二%増というように、まあ反騰の傾向に変わってまいりまして、出荷も若干伸びてまいっております。その結果、在庫がやや減少の傾向に向いつつございます。ただ、こういうことで、景気が底をついたとは申しましても、その反騰力は非常に弱い状態でございまして、しかも、その
生産の水準が非常に低い状態にございます。
たとえば今年の三月の
生産指数は九八でございまして、
昭和四十五年を一〇〇として九八でございますので、四十五年よりもっと前の
生産水準まで後戻りしたと申しますか、低い水準まで落ち込んでおる状態でございます。そういう状態でございますので、非常に
資金繰りも困難であり、業績も非常に悪化をいたしておる、こういう状態でございます。
先生御指摘のように、従来中小企業向けの不況対策といたしましては、まず
政府系金融機関の
資金の増強、再度にわたりまして
政府系三機関に追加をいたしまして、特に不況色の濃い業種を中心に
融資をしてまいったわけでございます。そのほかに、信用保険の面でいわゆる不況業種というものを指定する制度がございまして、これを活用いたしまして、現在製造業の大体半分に当たる業種を不況業種として指定をいたしております。この指定を受けますと、信用保証の面で通常の場合の倍額まで信用保証が受けられる、こういう制度になっておりまして、大体普通の場合は五千五百万まで信用保証が受けられますので、一億一千万円まで保証が受けられると、こういった制度も発動をいたしておるわけでございます。
それからもう
一つは、民間の金融機関にお願いいたしまして、特に不況の度合いの強い業種を指定いたしまして、役所が中に立ってあっせんをする、こういう形で中小企業救済特別
融資制度というものを設けております。すでに、昨年末までに約二千億のそれの実行をいたしまして、さらに今年度に入りまして、つい先般、五月の末にさらに十三業種、五百五十億分の特別
融資の発表をいたしまして、現在それの審査中と申しますか、申請を受け付けまして、その申請の手続中でございまして、七月から
融資の実行に入りたい、こういうふうに
考えております。
こういうことでいろいろ
融資の面で手を打っておりますので、最近、特に年を越しましてから倒産企業の数もやや昨年よりも落ちついた形になってまいりまして、三月は千件を超えましたけれ
ども、一−二月が八百件台、四月も九百件台、五月はあす発表になる予定でございますが、大体千件を割る見通しでございます。ただ、中小企業の最近の特に切実な声は、金融面ではいろいろ対策を講じてもらったけれ
ども、借り入れ金は返済の必要もございますし、金利もつきます。むしろ実際の仕事の面で、要するに需要量と申しますか、受注量がふえて、それによって
自分の経営が安定することを特に最近では強く望んでおりまして、いわゆる金よりも仕事が欲しい、こういう声が強くなっております。これに対しまして、中小企業だけに仕事を与えるような仕組みというのはなかなかむずかしいわけでございまして、結局、全体としての景気振興と申しますか、そういった形での仕事の増加ということが当面の必要な課題になってまいるわけでございますが、輸出がなかなか先行きの見通しにかげりがございますし、設備
投資は非常に不振でございまして、現に繰業率が七割、八割という状況でございますので、中小企業の設備
投資は昨年の七、八割という見通しにいまのところなっております。
そういたしますと、結局、財政面からの景気刺激というものが一番有効な当面での対策になるわけでございまして、そういう
意味合いで、御承知のように先般来第一次、第二次の不況対策を
決定をいたしまして、現在実行中でございます。つまり、たとえば公共事業の
契約を極力早めるとか、あるいは住宅金融公庫の
融資を急ぐとか、あるいは住宅ローンの強化を図るとかこういったこと。あるいは公害防止
関係の
資金をふやしまして、公害防止
投資をさらに促進をいたしますとか、そういった面から事実上仕事がふえるような対策を講ずることによりまして、さらに回りめぐりまして中小企業
関係にも仕事がいく、こういう効果を期待をいたしておるわけでございます。
なかなか景気の回復がはかばかしくございませんで、底は打ちましたものの横ばい状態でございますので、さらに第三次の不況対策が必要かと存じまして、現在鋭意検討中の段階でございます。