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1975-06-05 第75回国会 参議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月五日(木曜日)    午前十時十七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         林田悠紀夫君     理 事                 熊谷太三郎君                 楠  正俊君                 小柳  勇君                 須藤 五郎君     委 員                 岩動 道行君                 小笠 公韶君                 剱木 亨弘君                 斎藤栄三郎君                 菅野 儀作君                 福岡日出麿君                 矢野  登君                 吉武 恵市君                 阿具根 登君                 鈴木  力君                 対馬 孝且君                 森下 昭司君                 桑名 義治君                 中尾 辰義君                 安武 洋子君                 藤井 恒男君    国務大臣        通商産業大臣   河本 敏夫君    政府委員        公正取引委員会        事務局取引部長  後藤 英輔君        農林大臣官房審        議官       中川 正義君        通商産業政務次        官        嶋崎  均君        資源エネルギー        庁長官      増田  実君        資源エネルギー        庁石油部長    左近友三郎君        中小企業庁長官  齋藤 太一君        中小企業庁次長  小山  実君        中小企業庁計画        部長       吉川 佐吉君        中小企業庁指導        部長       河村 捷郎君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○石油開発公団法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  前回に引き続き石油開発公団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 須藤五郎

    須藤五郎君 最初に、資源主権問題についてお伺いいたしたいと思います。  いま日本石油開発企業は、海外で四十近いプロジェクトを推進しておりますが、これらの契約方式はどういう実情になっているか、お答え願いたいと思います。
  4. 増田実

    政府委員増田実君) 四十九年七月現在のプロジェクトで、これは石油開発公団投融資対象になっているものにつきまして、三十五件の内訳をお答え申し上げたいと思いますが、そのうちいわゆる利権付与方式になっておりますのが十四件。それから鉱業権付与方式になっておりますのが三件。リース方式になっておりますのが一件。それから合弁事業方式になっておりますのが三件。それからいわゆるPS契約方式、これの中にはいろいろな形態を含んでおります。生産物配分、あるいは利益配分、それから非常に複雑な形になっております、私どもジャングルコントラクトと申しております方式、それらを含みまして十三件。それからサービスコントラクト方式が一件。  以上が内訳でございます。
  5. 須藤五郎

    須藤五郎君 いま伺っていますと、大体利権付与方式と思われるものが全体の五割、十八件余りあるということが察せられるわけですが、この方式産油国資源主権を侵害するものではないか。どういうふうにお考えでございますか。
  6. 増田実

    政府委員増田実君) 利権付与方式につきましては、これは私どもは古い開発方式だと思っております。最近の産油国資源主権主張からだんだん契約方式が変わりつつあるというのが世界大勢でございます。その意味で、今後新しい契約が結ばれますときには、この古い形の利権付与方式というものは消えていくものだ、こういうふうに考えておるわけでございますが、ただ、いま申し上げました十四件の利権付与方式につきましても、その後産油国が、資源主権立場からこの契約改定をいろいろ申し入れておるわけでございまして、その交渉もいろいろ行われておるということでございます。そういうことからいたしまして、利権付与方式というものは、これは古い形の利権形態でございますが、これにつきましても最近契約改定がなされつつある、これが現状でございます。
  7. 須藤五郎

    須藤五郎君 国連におきまして、資源恒久主権の問題がたびたび決議されておると私は聞いておりますが、たとえますならば、資源恒久主権に関する一九五二年決議では、自国の天然資源を自由に使用し、開発する権利を認めておる。また、天然資源に対する恒久主権問題に国連の場で一応理論的に決着をつけたと言われるところの一九六六年決議では、資源開発販売外国の手によらず、資源所在国が自力で行うことが望ましい、こういうふうにされております。資源開発に従事する外資は、受け入れ国のコントロールに服さなければならないと思います。資源は、本来所在国に属するものであり、したがって、資源所在国資源開発に従事する外資経営利益に対するシェアを増大させる当然の権利を有すると、明確に国連では決議しておるわけでございますが、国連においても明確に決議され、しかも、現実の動きとしましてもパーティシペーション参加あるいは利権契約方式PS方式などに移行しつつあることから考えますならば、利権付与方式産油国資源主権を侵害していると考えるのが当然ではないかと思うんですが、どういうふうにお考えでございますか。
  8. 増田実

    政府委員増田実君) ただいま須藤先生がおっしゃられましたように、国連におきましてたびたび決議が行われ、資源主権内容といたしましては資源の探査、開発処分というものを資源国みずからの手で行う、こういうことがうたわれておるわけでございます。そういう意味から言いまして、従来の利権付与方式につきましては、従来の利権付与方式運用その他の実態につきましては、ただいま申し上げました資源主権との関係で、これにつきましていろいろ問題のあることはそのとおりでございますが、ただ、利権付与方式ということで現在行われております開発実態あるいは運用、その他に関しましては資源主権というものを尊重するということで、たとえば、利権付与方式に基づきまして開発が行われ、生産が行われておりましても、たとえば生産量につきましては産油国、つまり、資源国指示に従って産油量の調整が行われるということで、昔のように、開発しております会社が勝手にその生産数量を決め、それから出ました油を処分をしているということは、現在では、なくなってきておるということでございます。  そういう意味で、私が申し上げたいのは、いろいろな形式契約がございます。それで古く、たとえばアラビア石油昭和三十二年に行われました契約でございまして、その形式はもちろん古い利権付与方式でございますが、すでに六〇%のパーティシペーションというものが行われております。また、アラビア石油におきます生産数量あるいはその販売数量につきましても、いろいろ資源国からの指示と申しますか、規制を加えられておる、こういうことで実態が変わっておるわけでございます。その意味で、形式としましては、確かに先生のおっしゃられるように、資源主権としていろいろ問題がある契約が残っておるわけでございますが、現実やり方としましては、資源主権尊重という立場でこれが運用されておるというのが現実でございます。
  9. 須藤五郎

    須藤五郎君 それじゃもう一遍端的に伺いますが、先ほどあなたの答弁の中にも、利権付与方式は好ましい方向ではないというような意見があったと思うのですが、この利権付与方式を今後もずっと続けていく方針なのか、国連ではこういう意見を出しておるが、それをなお今後もずっと続けていくというお考えなのか、どういうふうにしようというわけですか。
  10. 増田実

    政府委員増田実君) 利権付与方式が好ましい、好ましくないということで私申し上げたというよりも、かつての利権付与方式契約資源主権との間には問題がある。しかし、そういう形式で行われている契約につきましても、現状では資源尊重立場でその運用が行われているということを申し上げたわけでございます。  それから、先生のお尋ねの、この利権付与方式というものを今後も続けていく方針であるかどうかということでございますが、これは世界大勢といたしまして、古い形の利権付与方式というものはもうほとんど行われないと思います。それからまた、形として利権付与方式というものの体裁をとっているものがもし新しく行われたといたしましても、十分その資源主権というものを尊重した運用方式という中の、つまり、やり方その他が変わってきた内容でこれが結ばれるということになることは、もう間違いないと思うわけでございます。そういう意味で、かっての古い形の利権付与方式というものは今後これで進めるべきではない、こういうことを私ども考えております。
  11. 須藤五郎

    須藤五郎君 何かあなたの話を聞いているというと、実質的には利権付与方式なんだが、言葉の上では利権付与方式という言葉ではなく違った形の、いわゆる実質的には利権付与方式を今後実行していこう、こういう意図を持っていらっしゃるように私には聞こえるんですが、そういうことを絶対やらぬということを、従来の利権付与方式というものは行動的にも絶対とらないということをはっきり明言できますか。
  12. 増田実

    政府委員増田実君) どうも私の説明が不十分で、先生に全く逆の誤解を受けましたわけでございますが、基本的立場としましては、わが国資源主権国恒久主権というものを尊重する基本的立場に立つわけでございます。その意味で、今後の開発方式につきましては、形式のいかんを問わず、実質につきましては資源主権尊重する形で持っていく、こういうことをはっきり申し上げたいと思います。
  13. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは、ちょっと角度を変えてお尋ねしますが、利権付与方式により採鉱中のものが試掘に成功し、採油に入った段階で、当然産油国の側からの事業参加、あるいは一〇〇%国有化などの問題が起こってくることが予測されると思うのですが、この際通産省として、基本的にどのような態度で対処すべきだと考えていらっしゃるか。
  14. 増田実

    政府委員増田実君) 最近、OPECの一部産油国におきまして見られるこの事業参加要求につきましては、これら諸国資源主権のあらわれとして、わが国としてもこれを十分尊重すべきことは当然であると考えております。しかしその場合、わが国開発企業としても資金技術等の面でこれら諸国石油開発に応分の貢献をしてきたことは事実でございますので、事業参加要求を受け入れる場合にも、これまでの投資に対する適正な補償と、それから今後の石油引き取りに対する適切な配慮等を要請するということは、当然認められるべきものと考えております。私どもといたしましては、これらの事情を十分見きわめつつ、わが国石油開発企業相手国友好関係のもとに事業活動が進められるように指導しますとともに、今後新たなプロジェクトにつきましても、産油国側立場尊重した契約が行われるように配慮いたしたい、こういうふうに考えております。
  15. 須藤五郎

    須藤五郎君 当然産油国側から事業参加要求が出た場合、それに対しては何ら条件をつけないということなのか、また、産油国が一〇〇%国有化などの問題が起こった場合に、それをすなおに受けとめるという態度なのか、何ら無条件でそういうことを受け入れるということなんですか、そこはどうなんですか。
  16. 増田実

    政府委員増田実君) 先ほど答弁申し上げましたように、この経営参加資源国からのパーティシペーションの要請につきましては、これらは資源主権尊重立場から受け入れるべきものと、こういうふうに考えております。  ただ、先生がおっしゃれますように、全部無条件ということでやるかどうかということにつきましては、これも先ほど申し上げましたように、パーティシペーションが行われて株の移動が行われるわけでございますが、これにおきましては、当然これは産油国はその分についての補償と申しますか、買い取りを行うわけでございますが、これにつきましては適正な補償をよく話し合った上で行うということでございますし、また、その開発につきましては多額投資、それから技術陣の投入を行っておるわけでございまして、やはりその貢献度産油国に評価してもらうということが当然ではないかと思います。そういう意味産油国が諸物件を、産油国に全く移る油ではございますが、その場合にもその油の取り扱いにつきまして、いろいろな取り決めというものについて従来の開発会社が要望するというのは、これは当然だと思うわけです。ですから、資源主権尊重する立場というものは、これは根本的な方針でございますが、先生のおっしゃられますように全部無条件向こうの言うとおり全部やるのか、それとも十分話し合って、そして適正な取り決めのもとにこのパーティシペーションへ移すかということであれば、私は後者であると。ただ、このときに産油国資源主権を、これは繰り返しになりますが、十分尊重し、また友好裏話し合いをすべきものと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  17. 須藤五郎

    須藤五郎君 この間安武委員質問に対して、それは融資買油の問題につきまして、ひもつきではないかという質問に対して、ひもつきではないというお答えだったと思うのですね。そういうふうにあなた答えてますよ。融資買油ひもつき融資じゃないんだというふうな答えだったと思うのですが、それで私は、政府は、従来ひもつきひもつきと言っていたことは一体どういう状態を政府ひもつきというふうに考えておるのか、伺いたいと思います。
  18. 増田実

    政府委員増田実君) 融資買油契約につきまして、これがひもつきであるからひもつきを外すべきだということで、先般安武先生からの御質問があったわけでございます。それに対しまして、私はひもつきでないということで御答弁申し上げたんではございませんで、融資買油というのは、これは当然将来、それの見返りとして石油を買う約束が行われている。これについてひもつきという名前を付するかどうかは別といたしまして、石油がくっついております。ただこれにつきましては、産油国におきまして国営石油会社がみずからの手で石油を掘る、これに対しましての資金援助日本に求める、これに対する協力の方法といたしまして二つあるわけでございますが、資金供給いたしまして、そして、その見返りとして将来産出されました石油日本が買い取る契約というものが結ばれる場合と、それからもう一つは、金だけを出して、そうして将来の石油については何ら触れないということがあるるわけでございます。  それで、前者につきましてをまあいわゆる融資買油というわけでございます。それから後者は、これは資金の貸し付けでございますから、石油開発公団投融資対象にはこれはならない。と申しますのは、石油開発公団法の第一条の目的から言いまして、日本における石油安定供給に役立つということになるわけでございますから、その場合は、むしろ輸銀とか経済協力基金対象になります。こういうことで御答弁申し上げたわけでございます。
  19. 須藤五郎

    須藤五郎君 従来、ひもつき融資というのは、日本から金を向こうに、第三国に貸して、その貸した金で日本生産品を買うという条件をつけてやって、これがひもつきだとわれわれは言っていたわけですね。ところが今度は、日本融資をした、その融資のかわりに向こう生産品日本に売るというひもをつけることだと思うのですよ。その売買は違うけれども両方とも一つの義務づけをしたやはりひもつき融資だと私は言って差し支えないと思うのですが、その点政府はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  20. 増田実

    政府委員増田実君) ひもつき融資ということばをつけるかどうかは別といたしまして、実態先生のおっしゃられたとおりでございます。ですから、日本から石油開発に必要な金を、向こうが希望しております金を貸しまして、そうして将来はその見返りとして石油供給を受ける、こういうことでございますから、石油供給とこちら側の融資というものは、それぞれ関係があるわけでございます。ただ、これにつきましては、資源主権を侵すものであるかどうかということにつきましては、この資源主権尊重しないとかあるいは侵すという形態ではない、こういうふうに私どもは思っておるわけでございます。  それにつきましては、これは先方が、先ほども申し上げましたように、みずからの手で有望な油田を掘りたい。そのために国営石油会社探鉱開発を行う。ただ、これには多額資金が要るので、外国からの資金供与を求める。それで資金供与を求める際に、将来、産出されました石油をその資金供与をした国に優先的に上げましょうということですから、これはまあ資源国産油国がみずからそういう条件を決めて、しかもまた一方においては、将来の市場をそういうことで確保するということでございますので、ひもつき融資と言われて、そしてこれが資源主権というものに対して侵すというものではない、こういうように私は思っております。まあこれも前回安武先生にそういうことで御答弁申し上げた次第でございます。
  21. 須藤五郎

    須藤五郎君 いま利権付与方式による開発資源主権に対する侵害になるということは、さきにも私は指摘しましたように、国連における諸決議でも国際的常識と、こういうふうに言えると思います。ところが残念なことに、政府は一貫して国連の場においても資源恒久主権に関する決議反対態度を、あるいは棄権態度をとってきた。これは皆さん御存じのとおりです。ただ一回だけ賛成したのが、その決議内容が不十分であることを理由に多くの社会主義国などが棄権態度をとりました。一九六二年度決議でございますが、このような姿勢海外資源開発に乗り出すならば、これらは産油国の厳しい批判を浴び、また、国際的にも孤立化方向に向かうのではないかと思うのですが、その点どういうふうにお考えになりますか。できれば大臣の責任ある答弁をしておいてもらいたいと思うのです。
  22. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 日本のとってまいりました態度につきましては、いまお説のようなことでございますから、その都度それぞれ理由があったわけでございます。それにつきまして長官から答弁をいたします。
  23. 増田実

    政府委員増田実君) 国連におきましてたびたびこの資源主権恒久主権決議が行われておるわけでございます。この資源主権というものがはっきり出ましたのが、先生先ほどおっしゃられました六二年の決議でございます。これにつきましては日本は賛成いたし、この以後いろいろの決議がさらに行われたわけでございますが、そのときに日本留保あるいは棄権しておるということにつきまして、いま資源主権日本尊重しないかどうか、この態度がおかしいではないか、こういう御質問でございますが、この六二年の資源主権というものが初めて正確にこの決議にうたわれたときに、日本が率先して賛成したわけでございますから、むしろ国連の中では、日本先進国の中では非常に早くから資源主権尊重立場を出しているということは認められておるわけでございます。  ただ、じゃ後でなぜいろいろ留保したり棄権をしたかということにつきまして御説明申し上げますと、これは、先ほど私の資源主権に関しまして御答弁申し上げた中に入っておるわけでございますが、国有化をいたしますときに、これは当然それに対する代償補償の問題があるわけです。たとえば、いまARAMCOの一〇〇%パーティシペーションサウジアラビア政府との間に交渉が行われておりますが、この全株をサウジアラビア政府の方が引き取る、その代償は幾らにするか、こういう交渉現実に行われておりまして、当然代償が出るわけでございます。  これは没収ということではございません。そのときに、両方にいろいろ意見があるというときに、まずそれは国内法で処理する、つまりサウジアラビア国内法で処理する。しかしながら、どうしても意見が合わないときは、これは国際的な仲裁機関にゆだねて、そしてその問題の解決を持っていくというのが、国際的ないろいろ問題を生じたときに当然ではないかというのがわが国主張でもあるわけです。これにつきまして、その後のこの資源主権に関します各種の決議におきまして、これがはっきりうたわれてないとか、あるいはいまのわが国主張が入れられてないということで留保反対をいたしておるわけでございまして、資源主権そのものに対して日本が非積極的であったというわけではないというのが現実でございます。
  24. 須藤五郎

    須藤五郎君 日本政府資源主権主義に対する考え方は、やはり何かこだわりがあるように私には聞けるんですがね。要するに、やはりそこに出資した者の権利が先になって、資源主権に対するその国の主権というものが後になるような印象を受けるんです。それでなければ、国連でこの主権問題が出た場合、素直に日本政府は賛成してよかったんじゃないかと思うんです。なぜそれを反対しなければならぬか。その反対した理由の中に、やはり皆さん考えている出資に対する権利とか、そういう問題が含まれているような感じがするわけですが、その点はどういうふうに考えますか。
  25. 増田実

    政府委員増田実君) 資源主権の問題で一番問題になっておりますのは、これはほかにも若干問題がありますが、先ほど申し上げましたように、外国企業国有化が行われるに際しまして、国内法及び国際法に従い妥当な補償が行われるべきであるというのが日本主張であるわけです。  これにつきまして、ここのところに問題があるわけですが、資源主権というものは尊重すべきであるという立場日本ははっきり出しているわけですが、資源主権尊重する。そうすると資源主権国自分の判断として、外国会社自分の国で資源開発する、これにつきましてはこれを国有化いたしたいという決定をする、ここは資源主権尊重として当然尊重されるべきであると思うのですが、国有化するに当たりまして、これを没収をするか、あるいは適当な補償を払って話し合い国有化をするか、ここに問題があるわけでございまして、いま資源主権国もこれをただ没収する、取り上げてしまうということを言っておるわけではございません。適正な補償をいたした上で、自分資源主権立場からこれを国有化するということを主張しておるわけです。  それで問題は、先ほども申し上げましたが、補償額決定に当たりましてこれを国内法だけでやるか、あるいは国内法でまずやって、さらに問題が残った場合に国際的な仲裁を受けるかどうか、この点が問題なわけでございます。ですから、先生先ほどおっしゃいましたように、日本が非常に古い利権付与方式的な海外開発姿勢をとって、それが国連決議その他であらわれているということは、全くそういうことではないということでございまして、ただいま申し上げましたように、補償やり方、手続、国際法との関係ということで適正な補償を行われた上で国有化されるというルールを打ち立てたい、こういうことでございます。この点につきまして、どうもくどい説明を申し上げて恐縮でございますが、資源主権というものは、日本立場としては十分尊重し、また、それでなければ今後の海外における石油開発はできないと私どもは思っております。
  26. 須藤五郎

    須藤五郎君 政府資源主権軽視の態度は、海外資源だけでなくて、わが国資源にまでその考え方が及んできておるように思います。今回の改正で、領海及び大陸だなにおける探鉱について公団の投融資業務の対象とすることを明記しておりますが、従来の大陸だな開発などについては、目的達成業務として投融資対象にしていたはずでございます。それを今回改めて明記したのはどういう理由によるものか、お伺いをいたしたい。
  27. 増田実

    政府委員増田実君) 従来から大陸だな開発を行っておるということは先生のおっしゃられるとおりでございまして、従来からも目的達成業務の運用で、大陸だなにおきます石油開発につきましてこれを投融資対象にいたしておったわけでございます。今度の改正で「本邦周辺の海域」ということになっておりますのは、この大陸だなに関しましてわが国の領海内というものが含まれておらなかった、これをつけ加えたいということが趣旨でございます。もう一回申し上げますと、日本の領海は三海里になっておるわけでございますが、陸地から三海里の範囲内の領海は大陸だなではございますが、本邦内ということでございますから、従来、石油開発公団投融資対象海外における石油開発ということになっておりまして、領海内の大陸だなが対象になっていないということで、これをも対象にいたして、そしてできれば日本の周辺の大陸だなの石油開発等を行いたい、こういう趣旨で、本邦周辺の海域における石油開発というものを対象とするということが今回の法改正の一つの改正点になっておる、こういうことでございます。
  28. 須藤五郎

    須藤五郎君 これを明記した理由としまして、日韓大陸だな開発協定との関係で共同事業に対し資金供給することを目的にしたものである、こう言われております。いろいろなことが世間で言われておりますし、また、意見書を私のところへ送ってこられた方もございますが、この点ではどうなのでございましょうか。
  29. 増田実

    政府委員増田実君) 今回の改正で日韓大陸だなの開発投融資対象に新たに加えられるということは、これはございません。と申しますのは、むしろ日韓大陸だなが、もし協定が成立いたしまして、この開発が可能ということになりました場合には、一応法的には、従来も大陸だなに対する業務を行ってきたわけでございますから、それと同じように行えるわけです。つまり、今回の改正によって初めて日韓大陸だなが可能になるということではございません。先ほども御説明いたしましたように、今回の改正によりまして初めて可能になるのは、この三海里以内の日本の領海の大陸だなの開発でございまして、それの外は従来からも行っておるわけでございますから、そういう意味では、新たに今度の改正によってこれが可能になるということは全くないわけでございます。
  30. 須藤五郎

    須藤五郎君 まだ日韓大陸だなの協定は国会で承認もされていませんから、あなたはそういう答弁をなさると思うんですが、将来仮に大陸だな協定が成立した後も、日韓大陸だな開発にはこの資金を使わないとはっきりおっしゃることができますか。
  31. 増田実

    政府委員増田実君) 日韓大陸だなにつきましては、仮定の御質問としていま言われたように、つまり協定が成立して、そして日韓共同開発というものが可能になったときに石油開発公団投融資を行うかどうか、こういうお尋ねでございます。  これにつきましてお答えいたしますと、この日韓大陸だな開発につきまして、これは国際的紛争の対象にもしそのときなっておる、あるいはその紛争が生ずるおそれがある場合には石油開発公団投融資は差し控えたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  32. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう少しはっきりとさしておいてください。将来にわたってもこの大陸だなの開発には協力しないと、こういうことははっきり言えるんですか、どうですか。資金供給しないということがはっきり言えるんですか。
  33. 増田実

    政府委員増田実君) 日韓大陸だなにつきまして私が申し上げましたのは、これが国際的紛争となっている間は資金供給することはない、こういうことで申し上げたわけでございます。ですから、これにつきまして関係諸国その他も十分この日韓の共同開発について何ら紛争の対象としないという状況になりましたときは、これはそのときに投融資を行える、これを行うかどうかは別でございますが、行える立場にあるわけでございます。
  34. 須藤五郎

    須藤五郎君 大陸だな資源というのは、言うまでもなくわが国固有の資源だと、こう思います。わが国主権の及ぶものである。したがって、その資源の活用も、国民の利益につながる活用がわが国のように資源小国では一層求められておると思いますが、この点についてはどういうふうなお考えでございますか。
  35. 増田実

    政府委員増田実君) わが国におきます資源というものは、これはいま御質問の中にもありましたように、資源小国としてのわが国立場からこれを十分尊重すべきでございますし、貴重な日本資源としてこれを取り扱うべきということは先生のおっしゃられるとおりであると思います。
  36. 須藤五郎

    須藤五郎君 韓国は、昭和四十五年一月及び五月に海底鉱物資源開発法を制定、公布し、これに基づいて鉱区設定を行い、このときよりアメリカ系のメジャーに租鉱権を与えておりますが、これらの企業名を通産省は掌握しておるかどうか。
  37. 増田実

    政府委員増田実君) いまの韓国政府が鉱業権を与えました外国会社及び、これはまあ韓国の会だと思いますが、その名前を申し上げますと、ガルフ石油、それからシェル石油、それからカルテックス石油、それからこれは韓国の会社だと思いますが、KOAMという韓国の石油開発会社でございます。この四社に対して鉱業権を与えてる、こういうことになっております。
  38. 須藤五郎

    須藤五郎君 日本側におきましても、西日本石油開発日本石油開発、帝国石油などが鉱区権を出願中であると聞いておりますが、これらの企業の主要株主及び過去の探鉱の際の共同事業の相手方企業名、さらに、計画では米系メジャーとの共同事業にするとも言われておりますが、その場合の企業名、これらの点について明らかにしておいてほしいと思います。
  39. 増田実

    政府委員増田実君) 日本石油開発が提携いたしておりますのはテキサコ・シェブロンのグループでございます。それから帝国石油が共同開発を行っておりますのは、一つはカルフ、それからもう一つは、これはいま常磐沖でやっておりますが、エッソでございます。それから西日本石油開発でございますが、これはシェルと共同事業を行ってるということでございます。  それから、先生のお尋ねの株主構成は、ちょっといま手元に資料がございませんので、調べましてお答えいたしたいと思いますが、一応簡単に主なる株主だけ申し上げますと、まず帝国石油でございますが、主なる株主は日本証券金融、それから大阪証券金融、日鉱不動産、こういうことになっております。それから西日本石油開発でございますが、これは三菱商事、三菱重工、三菱鉱業、三菱電機、三菱化成、それにシェル興産が入ってます。それから日本石油開発でございますが、これは日本石油が主なる株主でございます。
  40. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは後で出しておいてください、資料。  日本側におきましても西日本石油開発日本石油開発、帝国石油などが鉱区権を出願中であると聞いておりますが、これらの企業の主要株主及び過去の探鉱の際の共同事業の相手方企業名、さらに、計画では米系メジャーとの共同事業にするとも言われておりますが、この場合の企業名、これらの点について明らかにしておいていただきたいと思います。
  41. 増田実

    政府委員増田実君) いまの御質問につきまして、主なる株主は先ほどお答えいたしましたとおりでございます。  それから、現在の共同作業、共同開発を行っている相手方も先ほど説明申し上げましたとおりでございます。  それからもう一点、先生から御質問ありました、将来の、たとえば日韓の共同開発にもし当たる場合に、これらの会社がどこと組むかということにつきましては、これはまだ私どもの方もこれに関する申請を受けておるわけでございませんので、むしろ、今後協定が通り、それに基づく鉱業法の改正が通りましてから申請を受け付けて、そのときに具体的なアメリカあるいは外国の共同会社の有無またはその名前が出てくるわけでございますので、そういう意味で、現在の段階では、日韓の大陸だな共同開発の相手方というのは、いろいろ言われておりますが、まだ確定しておる段階ではない、こういうことでございます。
  42. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうしますると、日本側や韓国側、いずれも実質的にはアメリカ系のメジャーが両方から出ておると思うんですね。そして両方から出ていって開発するというのがいまの実情だと思うんですが、なぜ自国資源開発をメジャーの権益を保障するような形で行うのかどうか、これこそわが国あるいは国民の貴重な国内資源を売り渡すものではないかというのが私の意見です。このようなメジャーによる開発は規制すべきではないか。どうお考えでございますか。
  43. 増田実

    政府委員増田実君) 日本の大陸だなの共同開発におきまして、メジャーとの共同事業方式というものが採用されておりますし、また今後も、こういうメジャーとの共同方式というのは非常に多いというふうに思っておるわけでございますが、これにつきましては、先生の御意見もございますが、政府といたしましては、やはりこれらの地域につきましては、高度な開発技術とそれから相当な資金力を要しますので、メジャーとの共同事業を行うことが日本の大陸だな開発を促進するためのむしろ利点である、こういうふうに考えておるわけでございます。  と申しますのは、一つには、日本開発企業が、相当複雑な条件でございます日本の大陸だなにつきまして、海洋掘削の技術、経験というものが豊富なメジャーを共同事業者として、そして、共同事業を通じましてまたメジャーの開発技術の吸収もできます。そういう意味で、この共同事業というものはむしろ促進すべきものというふうに私ども考えておるわけでございます。それからまた、こういうように日本におきまして共同事業が行われることによりまして、海外におきますいろいろ日本開発するときにも技術的な問題でメジャーの協力が得られる。あるいは先ほど申し上げましたように、メジャーと共同作業をやることによりまして、その共同作業を通じて技術を吸収できるといういろいろなメリットがありまして、そういう意味で今後の石油開発事業にとってむしろプラスになる、こういうふうに考えています。  ただ、先生がおっしゃられましたように メジャーと共同作業をやりまして、そして日本の近海でとれました石油をメジャーが勝手にどこかに持っていくということでは、これは資源小国としての日本資源尊重立場からいろいろ問題があると、こういう御指摘でございますが、これにつきましては、共同事業の契約に当たりましては、一つには、日本側の企業がオペレーターとして事業の主体性を持つということを入れておりますと同時に、またその油につきましても、メジャーの分につきましてもこれを日本に売るということを約束さしておるわけでございます。これはいろいろな形式で約束さしておりますし、また、これにつきまして私どもは、成功いたしました場合にメジャーが日本の近海でとれた油を外国に勝手に持っていくようなことはさせないということでやる方針にいたしておるわけでございます。
  44. 須藤五郎

    須藤五郎君 一昨日も参考人の方が見えまして、石油開発公団総裁はあなたと同じような意見を述べていましたよ。日本には技術が足りないとか、資源がまだ足りない、環境が悪いとか、そういうふうな意見を述べてメジャーとの協力を言っておりましたが、しかし一方、こういう意見を述べておれば、いつまでたってもメジャーに頼らざるを得なくて、日本石油というのはメジャーに首根っこを押さえられることになるんじゃないか、だからメジャーから独立をしなきゃいかぬという意見も一部にはあるように伺いました。  私は、政府方針として、いまのような、あくまでも技術の面において、また資力の面においても、メジャーを唯一の頼りにしていくということは間違っておると思うんですね。メジャーと協力するという形で、そうしてその国内唯一の資源をメジャーに握られていくということは非常な私は問題があると思うんです。これは日韓大陸だなだけの問題ではないと思うんです。  さらに深刻なのは、四十九年七月現在で大陸だな開発プロジェクトなるものは八つ、八プロジェクトありますが、これらはすべてメジャーとの共同開発になっております。しかも、これらに対しまして石油開発公団が出資しているものもあります。これでは自主供給源の拡大どころか、自主供給源の売り渡しでもあると言われると思うんです。石油開発公団の目的はもともと自主供給源の拡大にあったはずでありますが、これでは本来の目的にも反するものではないかと考えますが、どうでございますか。
  45. 増田実

    政府委員増田実君) いま先生からおっしゃられましたように、現在、わが国大陸だな石油開発事業八プロジェクトにつきましては、これはいずれもメジャーあるいはインデペンデントを含みまして外国石油会社との共同施業となっている、御指摘のとおりでございます。これにつきましては、先ほど説明いたしましたように、技術の問題その他から、これらの技術力というものを吸収しながらやっていくということでやっておるわけでございます。ただ、石油開発公団投融資いたしておりますのは、外国会社に対して投融資しておるわけでございませんので、共同事業を行っております日本側の会社、しかも、先ほど申し上げましたように、日本側の会社が一応オペレーターとして、あるいはこの計画についての主導権をとるという形を確認して、そしてその上で投融資対象にいたしておるということでございます。  それから、先ほどの繰り返しになりますが、これらが成功いたしまして油が出ました場合には、これは全部日本がこれを使うということで、この油が外国に出ることのないようないろいろな措置をしてあるわけでございます。
  46. 須藤五郎

    須藤五郎君 これで終わりますが、もともと、鉱業法におきましても、鉱物資源開発は公共の福祉の増進に寄与することを目的としており、鉱業権者の資格は日本国民あるいは日本国法人に原則的に限定しております。この法の趣旨からいたしましても、メジャーとの共同事業は規制すべきではないかと思います。いわんや、これらに対しまして石油開発公団から投融資を行うというのはみずからの資源主権を放棄するものである、この点についてお伺いして私の質問を終わります。
  47. 増田実

    政府委員増田実君) わが国の鉱業法では、鉱業権を受けられますのは「日本国民又は日本国法人」ということで限定いたしておるわけでございます。その意味におきまして、日本の大陸だなにつきましての鉱業権者というものは日本人及び日本法人でございます。ただ、先ほども申し上げましたように、この鉱業権の上で実施する場合に、メジャーの事業参加を得てそして一緒に掘るということは、これは鉱業法の違反ということにはならないわけでございまして、鉱業権はあくまでも日本側の会社日本人もしくは日本法人に保有されておるわけでございます。それから、石油開発公団投融資をいたします対象といたしましては、当然鉱業権を持っている会社あるいは日本側の共同事業者を対象といたしておるわけでございまして、これにつきましても、一応鉱業権者というものは日本側に限定されておるということははっきりいたしておるわけでございます。
  48. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  石油開発公団法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  51. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  小柳君から発言を求められておりますので、これを許します。小柳君。
  52. 小柳勇

    ○小柳勇君 ただいま可決されました石油開発公団法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の四党共同提案による附帯決議案を提出いたしたいと存じますので、御賛同をお願いいたします。  案文を朗読いたします。    石油開発公団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法施行にあたり、次の諸点につき万全を期すべきである。  一、石油開発公団の機構・人員の充実と機能の強化等をはかり、わが国石油資源の自主的かつ安定的供給体制の確立に努めること。  二、石油開発に関する技術、資金、情報等を効率的に活用しうるよう、現在の民間石油開発体制の整備に努めること。  三、石油備蓄の増強、探鉱開発の拡大等に要する資金需要の増大に対処するにあたっては、石炭政策に支障を来たさないよう配慮すること。   右決議する。  以上であります。
  53. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいま小柳君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  54. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 多数と認めます。よって、小柳君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し河本通産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。河本通産大臣
  55. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) ただいま議決をいただきました法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を尊重いたしまして、万全を期する所存でございます。
  56. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時二十分休憩      —————・—————    午後一時七分開会
  58. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  59. 森下昭司

    ○森下昭司君 それでは、まず最初に不況対策の問題についてお尋ねをいたしてみたいと思うわけであります。  わが国の経済の中に占めまする中小企業者のウエートというものは就業人口で全就業者数の約七七%、そして出荷額が全出荷額の約五〇%の面からも、依然としてきわめて大きな産業構造の中での重要な役割りを果たしていると思うのであります。しかし、最近のこの二年間にわたる深刻な不況によりまして、さらに不況から脱し切れなくて、今日低迷の状態が続いているわけであります。  こういう中小企業の危機的な状況の中におきまして、政府がとってまいりました政策と申しまするのは、いわゆる金融政策、特に政府系三中小企業金融機関を通じまして出されましたものが、言うならば不況対策の目玉的な価値があるというようなことになっていたわけでありますが、実際には政府資金というものは大体におきまして、民間資金等と比較いたしますると相対的に非常に少ないわけであります。いわば焼け石に水だと言っても過言ではないと思うのでありまして、政府が当面いたしておる不況の中におきまする中小企業者のために、今後税制、金融あるいは組織化などについての対策についてどういうような考えを持っておるのか、その基本的な、重点的な考え方を最初にお伺いをいたしたいと思います。
  60. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 中小企業の景気の現状でございますが、ほかの一般の景気の現状と同様に、大体三月ぐらいに底を打ちまして、たとえば三月の中小企業の方の生産指数で見ますと、前月比が一・二%増というように、まあ反騰の傾向に変わってまいりまして、出荷も若干伸びてまいっております。その結果、在庫がやや減少の傾向に向いつつございます。ただ、こういうことで、景気が底をついたとは申しましても、その反騰力は非常に弱い状態でございまして、しかも、その生産の水準が非常に低い状態にございます。  たとえば今年の三月の生産指数は九八でございまして、昭和四十五年を一〇〇として九八でございますので、四十五年よりもっと前の生産水準まで後戻りしたと申しますか、低い水準まで落ち込んでおる状態でございます。そういう状態でございますので、非常に資金繰りも困難であり、業績も非常に悪化をいたしておる、こういう状態でございます。  先生御指摘のように、従来中小企業向けの不況対策といたしましては、まず政府系金融機関の資金の増強、再度にわたりまして政府系三機関に追加をいたしまして、特に不況色の濃い業種を中心に融資をしてまいったわけでございます。そのほかに、信用保険の面でいわゆる不況業種というものを指定する制度がございまして、これを活用いたしまして、現在製造業の大体半分に当たる業種を不況業種として指定をいたしております。この指定を受けますと、信用保証の面で通常の場合の倍額まで信用保証が受けられる、こういう制度になっておりまして、大体普通の場合は五千五百万まで信用保証が受けられますので、一億一千万円まで保証が受けられると、こういった制度も発動をいたしておるわけでございます。  それからもう一つは、民間の金融機関にお願いいたしまして、特に不況の度合いの強い業種を指定いたしまして、役所が中に立ってあっせんをする、こういう形で中小企業救済特別融資制度というものを設けております。すでに、昨年末までに約二千億のそれの実行をいたしまして、さらに今年度に入りまして、つい先般、五月の末にさらに十三業種、五百五十億分の特別融資の発表をいたしまして、現在それの審査中と申しますか、申請を受け付けまして、その申請の手続中でございまして、七月から融資の実行に入りたい、こういうふうに考えております。  こういうことでいろいろ融資の面で手を打っておりますので、最近、特に年を越しましてから倒産企業の数もやや昨年よりも落ちついた形になってまいりまして、三月は千件を超えましたけれども、一−二月が八百件台、四月も九百件台、五月はあす発表になる予定でございますが、大体千件を割る見通しでございます。ただ、中小企業の最近の特に切実な声は、金融面ではいろいろ対策を講じてもらったけれども、借り入れ金は返済の必要もございますし、金利もつきます。むしろ実際の仕事の面で、要するに需要量と申しますか、受注量がふえて、それによって自分の経営が安定することを特に最近では強く望んでおりまして、いわゆる金よりも仕事が欲しい、こういう声が強くなっております。これに対しまして、中小企業だけに仕事を与えるような仕組みというのはなかなかむずかしいわけでございまして、結局、全体としての景気振興と申しますか、そういった形での仕事の増加ということが当面の必要な課題になってまいるわけでございますが、輸出がなかなか先行きの見通しにかげりがございますし、設備投資は非常に不振でございまして、現に繰業率が七割、八割という状況でございますので、中小企業の設備投資は昨年の七、八割という見通しにいまのところなっております。  そういたしますと、結局、財政面からの景気刺激というものが一番有効な当面での対策になるわけでございまして、そういう意味合いで、御承知のように先般来第一次、第二次の不況対策を決定をいたしまして、現在実行中でございます。つまり、たとえば公共事業の契約を極力早めるとか、あるいは住宅金融公庫の融資を急ぐとか、あるいは住宅ローンの強化を図るとかこういったこと。あるいは公害防止関係資金をふやしまして、公害防止投資をさらに促進をいたしますとか、そういった面から事実上仕事がふえるような対策を講ずることによりまして、さらに回りめぐりまして中小企業関係にも仕事がいく、こういう効果を期待をいたしておるわけでございます。  なかなか景気の回復がはかばかしくございませんで、底は打ちましたものの横ばい状態でございますので、さらに第三次の不況対策が必要かと存じまして、現在鋭意検討中の段階でございます。
  61. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまお話を聞いておりまして、いろいろと諸施策をお進めになっているのでありますが、従来の不況対策というものが金融措置を重点とすると申しますか、それに非常にウエートがかかっておるような印象はまぬがれ得ないのであります。たびたび本委員会でも問題になりましたが、中小企業に対しましても、たとえば官公需の受注機会の増大を図っていく必要があるのじゃないかというような意見も出されておりまして、中小企業庁長官からはその点についてのいろいろな御説明もありました。公共投資あるいは公共の需要を図っていくということも必要でありましょうが、やはり中小企業に対しましてはきめ細かいと申しますか、言うならば、かゆいところに手の届くような施策というものを進めていく必要があるのではないだろうかというような感じが実はしているわけであります。  五十年度に講じようとする政府の中小企業施策の中をながめてみましても、やはり金融面におきましても相当額が掲載をされたとして、いわゆる不況対策として特段の、言うならば、施策を施すという点について施策が講じられていないような感じが実はいたしているわけであります。でありますから、私は、少なくとも不況対策として官公需受注の機会をもう少し与えていくとか、あるいはまた組織化の問題——近促法の改正案も、中小企業振興という意味からまいりますれば一つの組織化の一翼を担うわけでありますが、そういう組織化の点について、近促法以外の問題についての考慮をどうしていくのか。  あるいはまた言うならば、税制面の中におきましても若干の本年度改正等が行われておりまするが、なお私は、税制面における中小企業者の優遇というものを考えていく必要があるのではないだろうか。また、公定歩合の引き下げに伴いまして、当然預金金利の引き下げとかいろいろなことが言われておりますが、長期貸し出し金利の引き下げ等の問題等についても考えていく必要がある。こういう一つ一つ具体的なきめ細かい政策というものが行われていく必要があるのではないだろうかというような実は感じがいたしているわけでありますが、いわば中小企業政策一つ一つ取り上げて、これが不況克服の決め手だというものは私はないと思うのであります。言うならば、総合的な政策の上に立って行われていくということでありますけれども、特に中小企業政策の中で本年度不況脱出のために、たとえばいま長官が言われた、むしろ税制面や金融面よりも仕事をよこせ、こういう声が強いんだというならば、仕事を与えるために中小企業庁としてはどうすればいいかというような具体的なお考えでもあるのですか。
  62. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 特に中小企業向けに仕事を確保する施策の一つといたしまして、官公需の中小企業向けの確保の問題がございます。この問題は、四十九年度におきましては二八・七%という目標設定をいたしまして、各省庁を督励をしてまいったわけでございますが、昨年十二月までの中間におきます実績をとりましたところ、二九・四%という成績になっております。私どもとしましては、こういう不況下でもございますので、さらにこれを進めまして、できれば三〇%程度まで達成できるようにいたしたい、かように考えまして、ことしの二月四日でありましたか、閣議でその点を各省にまたお願いをいたしまして、さらにもう一踏ん張り中小企業向けに官公需を出していただくようにと、そういうお願いをいたしたわけでございます。その実績は、ただいま各省庁から報告を些細に伺っておるところでございまして、まだ集計ができておりませんけれども、各省庁大変御努力を願っておるところでございます。  五十年度におきましてはこういう状況でございますので、四十九年度以上にこの中小企業向けの官公需の確保を図ってまいりたい、こういう意気込みでおりまして、これも昨年の実績の検討とあわせまして現在各省庁といろいろ話し合いを進めておる段階でございます。まだ最終的な数字がまとまっておりませんけれども、なるべく早くこの数字を決定をいたしまして、閣議決定をして各省庁に守っていただく、こういう段取りに持ってまいりたいと考えております。  それから、御指摘の組織化の面につきましては、いわゆる高度化資金というものがいろいろ中小企業の共同事業の柱をなしておるわけでございますが、これにつきましては、昨年度が事業規模といたしまして大体二千億円相当ぐらいの事業規模の予算を計上いたしておりましたが、五十年度につきましては、二千四百億の規模のものを達成できる予算の確保をいたしておるところでございまして、この共同事業を通じまして組織化をさらに進めてまいりたい、かように考えております。  税制面につきましては、中小企業につきましては大企業と違いまして特別に安い税率——資本金一億円以下の者につきまして、その所得額が従来は六百万円まで二八%の税率でございましたが、今年度から七百万まで二八%という低い税率を適用をいたしております。資本金一億以上の企業の場合は四〇%の税率でございますので、相当低い税率になっておるかと存じます。  中小企業向けの特別に仕事を確保する施策ということでございますけれども、いろいろ中小企業の振興助成関係の予算は計上はいたしておりますが、中小企業の仕事の確保と申しましても、結局は景気が振興いたしまして、それが中小工業、あるいは商業等々の仕事の拡大となってまいるわけでございまして、そういう意味におきましては、私どもとしましてはまず当面の不況から脱出をいたしまして、早く景気を不況から成長率の高い、高いと申しますか、成長する経済の方へ移すということが、何と申しましても中小企業の仕事の確保の一番基幹になる施策かと存じまして、そういう方向でいろいろと大蔵省その他にもお願いをいたしたところでございます。
  63. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は、仕事を欲しいという問題は、うらはらにいけば、この近促法で新しく制度化されようとする新分野への進出というような問題とも、非常に私は関連があるのではないかと思うのであります。後ほどその点について重ねて御質問いたしたいと思っておるのでありますが、今回の改正が、高度成長時代から、いまお話がありましたような不況下、しかも、低成長時代への転換に対応した国民福祉経済を達成するということを目的にしてこの改正案が提出をされたというふうに理解をいたしているんでありますが、もともと高度経済成長をいたすために集中化し、あるいはまた協業化を促進し、あるいはまた近代化を促進してきたという法律のもとにおきまして、低成長時代に入って今回の改正で国民生活安定だとか、あるいは従業員の福祉向上だとか、あるいは消費者保護だとかいうような項目を加えたといたしましても、やはり近代化促進法の運用というものは根本的に私は変わってきたのではないだろうかという感じがいたします。  というようなことを考えてまいりまするときに、いままでの近代化促進法の運営と今後の運営とは、いま申し上げたように、私は基本的に考え方を変えなければいけないというふうに思うのでありますが、今後は近代化促進法を推進するに当たってどういうお考え方を持って進められようとしておるのか、その点もあわせてお伺いいたしたいと思います。
  64. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 現行の中小企業近代化促進法昭和三十八年にできました法律でございまして、当時、ちょうど日本経済が従来の封鎖型経済からいわゆる国際的な開放経済に移ろうとする時期でございました。貿易の自由化、あるいは資本の自由化が漸次進展を見る予定でございましたので、外国商品の流入あるいは外資の進出、こういうものに対抗いたしまして、日本の中小企業が発展できるようにということで、いわゆる国際競争力の強化というものを大きな旗印といたしまして中小企業の近代化を進めよう、こういうことでこの法律ができたように私ども考えております。  ところが、ただいまお話しのように、日本経済もこれから従来の高度成長でございませんで、いろいろな資源その他の制約から成長が鈍化する、いわゆる安定成長型の経済に移っていくかと存じます。そういうふうに安定成長に変わってまいるわけでございますけれども、一方で中小企業のコストの面を見てみますと、賃金の上昇あるいは資材の高騰等、非常にコスト面では上昇する要因が多いわけでございます。加えまして、いろいろ中小企業に対しましても社会的な責任が従来以上に課せられてまいっております。環境保護の問題、あるいは消費者問題としての製品の安全の問題あるいは省資源、省エネルギー対策の問題。こういった低成長下で、コストは上がりながらいろいろと社会的な責任が増してくる。  こういう状態に対応いたしまして、今後の中小企業というのは、一面ではさらに合理化を進めてコストを下げる必要があるわけでございますけれども、同時に、発展途上国の追い上げ等もございまして、今後の発展の方向は単にコストを下げる、いわゆる従来的な近代化、合理化ということ以上に、より付加価値の高い商品を目指して、この産業の事態が付加価値の低いものから高いものに漸次移っていく、そういう意味での新しい技術等に裏打ちされました付加価値の高い商品を生み出していく、こういうことが大切になってくるんじゃないかと考えるわけでございます。  そういう意味におきまして、従来型の産業から、それが需要の停滞等がいたしておるような予想をされます業種につきましては、より成長性の高い分野へ転換を進めていくということが、今後非常に重要な課題になってまいるのではないかと考えるわけでございまして、そういった意味での、いわゆる新商品なり新技術の開発というものの促進に力を入れた点が今回の改正点の第一でございます。  もう一つは、これからいろいろと国民のニーズが多様化をしてまいりまして、各種の需要が出てまいるかと存じます。これは日本経済が今後いろいろ福祉型の経済に変わってくるというようなことと、所得水準の向上とを考えますと、いろいろニーズがふえてくる。こういう新しい需要に中小企業がこたえていかなければならない。特に輸出産業ではございませんけれども、いろいろと私どもの生活をより豊かにし、充実していくための新しい需要というものにこたえるべく、中小企業はそういう責任を負わされておるわけでございまして、そういう意味での、国民生活に非常に身近な物資なりサービスを供給する業種の近代化というのが、今後もひとつ必要になってまいるのではないかと考えておるわけでございます。  そういった業種を新たに近代化促進法の対象業種に指定をいたしまして、その近代化を進めていくというのがもう一つの今回の改正の柱でございまして、この両点相まちまして、それに従来からのいわゆる生産性向上ということの必要性としては薄らいでおるわけではございませんので、従来の施策に加えまして、より加工度の高い産業への転換、それから国民生活上必要な業種の振興、こういうものを加えまして中小企業の近代化をさらに進めてまいりたいというのが、今回の改正の趣旨でございます。
  65. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は、改正の趣旨というよりも運営の心構えというものを実はお尋ねいたしているのであります。いま長官は、大企業との間の格差を是正するための生産性の向上というものがいままでの近促法の大きな目標であった、それが第二近促、第三近促になって今回の改正になった。今回の改正は、私は先ほど指摘いたしましたように、国民生活部門の言うならば国民のニーズに合うような中小企業になっている、それが新分野への開拓転換というような方向にもなるということになるのでありまして、近促法の運営については、いま長官が最後に、生産性向上も入っておりますよということではなくて、今後近促法を運営するについては、どこの部門を重点的におやりになろうとしておるのかということを私はお尋ねするのです。そして、従来の近促法にあった生産性の向上という問題についてはどういうふうな評価をしてお見えになるのか、この二点をお尋ねします。
  66. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 従来の業種指定の中心は、国際競争力の強化と産業構造の高度化ということが指定の要件でございまして、大体そういう方向に即して業種指定が行われておったわけでございますけれども、今後は、もう一つ今回加わります国民生活の安定向上、こういう業種をさらにどんどん追加をいたしまして、そういった業種の振興を図ってまいりたいというふうに考えます。  それから従来の業種、これから指定される業種共通の問題でございますが、従来はどちらかといいますと製造業に片寄り、かつ、生産性の向上というのが非常に施策の中心をなしておったわけでございますけれども、今後はサービス業でございますとか商業分野、流通部門も対象にいたしたいと存じますし、それから近代化計画をつくります上におきまして、従業員の福祉の問題、消費者の利益の増進の問題、あるいは環境の保全の問題、こういった事柄を近代化計画の中に盛り込みまして、十分そういった配慮を加えた近代化ということに力を入れてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  67. 森下昭司

    ○森下昭司君 この間発表されました中小企業白書の中で、言うならば、輸出型産地の輸出向けの出荷というものについての調査の結果が出ているわけであります。それによりますと四十六年、四十七年と二年連続微減を示した後に、四十八年には前年比〇・五%、四十九年は見込みではありますが、同じく一五・三%と大幅な減少を続けたと、中小企業庁の輸出型産地実態調査が明らかにしております。これは私は、一面においては不況という点も見逃せないのでありますが、一面においては近促法に基づきまして生産性の向上をして中小企業と大企業の格差をなくし、国際競争力をつけるというこの目標が、まだまだ長官の言われるように一応の成果があったという段階ではなくて、まだ日本の中小企業というものは国際競争力の中において、いわゆる力が弱い点があるのではないだろうかというような、一つのバロメーターとしてこういうような調査結果が出るのではないだろうかと私は思うのでありますが、この結果についてはどうお考えですか。
  68. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 今回の中小企業白書で明らかにいたしましたように、中小企業性業種の輸出の伸び率は非常に鈍化を見つつございます。と同時に、中小企業性商品の輸入が非常に伸び率が高まってまいっております。  これの事情と申しますか、原因でございますけれども、従来、近代化促進法等によりましていろいろと産地の近代化を進めてまいったわけでございますが、それはそれなりに相当の効果を上げておると私ども考えておりまして、この近代化の期間、大体五年を一つの区切りとして近代化を行っておりますが、大半の業種におきまして生産性が倍近くに上がっておるわけでございます。  ところが何と申しますか、発展途上国の工業化のスピードがそれ以上に速かったということが一番大きな原因でございまして、根本的には発展途上国の方が非常に賃金が安い、日本の半分あるいは三分の一といったような国が東南アジアにたくさんあるわけでございまして、その低賃金を武器といたしまして貿易に出てまいっておりますので、雑貨工業等、どちらかといいますと労働集約的な分野におきましては、まず輸出におきましてアメリカその他での市場をだんだん狭め、さらには繊維品の例で見られますように、日本市場自体に相当に大量に流入してくる、こういう状態になってまいっておるわけでございます。  こういった発展途上国と日本との賃金の格差を生産性の向上、機械化で乗り切れる間は対抗ができるわけでございますけれども、先方も非常に最近は最新鋭の機械を入れておりまして、近代化が進みつつあります。そうなりますと、結局発展途上国でつくれないようなより高級な、あるいは技術を生かした商品に漸次変わっていくという方向以外には、発展途上国と競合する商品についての日本の長い目で見た行くべき道はないのではないかと私は思うわけでございまして、そういう意味で、今回の改正の柱となっておりますいわゆる新分野進出促進制度というものを設けたわけでございますけれども、より付加価値の高い、より高級な商品の分野へと転換をする、あるいは従来商品につきましてもより技術の開発に力を入れるということを、今後はさらに努力していく必要があろうというふうに考えておる次第でございます。
  69. 森下昭司

    ○森下昭司君 より高級化へ向けていかなければならぬという点については同感でありますが、私の言わんとするのは、近促法ができて昭和三十八年以来いろんなことをおやりになってきた、そして生産性の向上だ、国際競争力の強化だ、産業構造の高度化だというようなことをやってきて、一応の成果があったのだということではないということを私は強調しているわけであります。言うならば、近促法ができてまいりまして、いまだ十分中小企業者の期待にこたえ得るような運営や助成や、あるいはまた財政的な政策等がとられていないということを私は指摘せざるを得ないわけであります。  そこで、私は今回の改正によりまして、いわゆる真に国民福祉を目ざす中小企業の政策というものが行われなければならないという観点からまいりますと、どうしても中小企業の中で大部分を占めてまいりましたいわば零細企業、小規模企業対策というような、小零細企業とこの近代化対策との問題の関係について、今後の小零細企業に対する政策をどう考えていかなければならぬのか、この点について具体的なお考え方があれば述べていただきたいと思います。
  70. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 大体日本で中小企業の事業所の数が約五百万ございますが、その八割がいわゆる小規模企業でございまして、製造業で申しますなら二十人以下、商業サービス業で申しますと五人以下といった小規模層が四百十万ございます。非常に大きなシェアと申しますか割合を占めておるわけでございます。この小規模企業は、経営面その他非常に大企業とはもちろん、中小企業の中でも上の層に比べますといろいろまだ立ちおくれている面があるわけでございまして、この小規模企業の経営の近代化については、いろいろきめ細かい施策が必要だろうと考えるわけでございます。  そのために、私どもの施策といたしましては、指導体制の確立がまず必要であろう、こう考えまして、全国の商工会議所、それから商工会に現在六千名の経営指導員を配備をいたしまして、この経営指導員がいろいろと小規模企業の方々の相談に乗りまして、経営の改善に指導をいたしておるわけでございます。また、その経営改善のために必要な資金につきましても昭和五十年度におきましては二千四百億の資金を国民公庫に用意いたしまして二百万円までではございますけれども、一件当たり無担保で保証人なしの融資を実行いたしております。また、この経営指導員も今年度中にさらに千名の増員をいたす予定にいたしております。  そのほか、小規模企業向けに各県に設備近代化資金制度というものを設けまして、小規模企業が入れます近代化設備につきましては、所要資金の半分までではございますが、無利子で融資をいたしております。あるいは設備の貸与制度等もとっております。また、共同化のための資金につきましては、特にことしから始めた制度でございますが、小規模企業か必要とする工場群のために、さきに振興事業団が工場を建設をいたしまして、これをリースに出しましてその中に小規模企業の方々に入っていただく。その場合の金利は無利子でございまして、そういう形をとりましてこういったきめ細かい指導と資金融資とを通じまして、小規模事業の一層の改善を図っておるわけでございます。  また、役所の組織といたしましても、昨年の七月から中小企業庁の中に小規模企業部というものを発足をさせまして、小規模企業の指導官というものも数名本庁に置き、また、全国の通産局にも配置をいたしまして、いろいろと小規模企業の方々の御相談に乗るような体制を整備をいたしております。これによりまして、従来のやや生業的とも見える小規模企業を、よりいわゆる近代的な事業へと改善を図っていくということに力を入れておる次第でございます。
  71. 森下昭司

    ○森下昭司君 今年度は、小規模事業に対する無担保・無保証制度、これは何百万円までになりましたか。
  72. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 一件当たりの融資額は二百万円でございまして、これは昨年と変わりございませんが、その中で運転資金につきましては、従来は五十万円を限度といたしておりましたが、今年度から百万円までというように倍額までに限度を引き上げております。
  73. 森下昭司

    ○森下昭司君 最近、地方公共団体の中に無担保・無保証制度をそれぞれの地方公共団体独自の制度として設けまして、三百万円まで無担保・無保証を実施しておるというようなのが数県あると私聞いておりますけれども、そういたしますと、政府も四十八年百万、四十九年度二百万と増額をいたしてまいりましたが、五十年度は運転資金だけの改善ということでは、不況下におけるやはり零細企業に対する対策としてはやや薄いのではないだろうか。もう少し無担保・無保証は、いまのインフレ下の状況等を考えてまいりますと、四十八年百万、四十九年二百万という経緯等からまいりましても、五十年度は三百万円までぐらいは設備資金については無担保・無保証制度を実施するのが妥当ではないかと私は思うのでありますが、この点についてはどうお考えですか。
  74. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) この制度は、特に小規模企業向けに低利で融資をする制度でございまして、七・二%の金利で融資をいたしております。通常の場合ですと国民公庫は九・四%でございますので、非常に優遇した制度になっておるわけでございます。このほかに国民公庫で三百万円まで、これは通常金利ではございますけれども、無担保融資の制度がございます。それから信用保証の面におきまして、百五十万円まで市中銀行から借ります場合に、無担保で、保証人もなしで保証協会が保証をする、こういう制度がございまして、こういった制度を総合的に御利用いただきたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、各府県でいろいろ制度融資ということで国の融資に上積みをして、それぞれの地方に応じましていろいろな融資制度がございまして、大変私どもも感謝をいたしておるわけでございますが、この国の経営改善資金制度につきましても、さらに今後できるだけその内容につきまして改善を図ってまいりたいと考えております。
  75. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は、言うならば中小企業対策の強化というものは、やはり国が積極的な姿勢を示さなければいけないということを一つの前提とし、かつ、そういう考え方を強く持っている一人であります。  いま長官からいろいろとるる御説明がございましたが、やはり無担保・無保証の制度があり、そうして歴年非常な努力で貸し出し規模も、そうして貸し出し一件当たりの金額も上昇してきているわけなんです。特にこういう不況下、そうして、不況から脱し切るにはなお相当な期間が必要だということは、長官自身も先ほどお認めになっているわけであります。そうだといたしますれば、ほかの機関の金融も併用することはさることながら、政府が中小企業、特に零細企業に対し熱意を持っておるということを示しますためにも、私はやはり無担保・無保証というものは三百万円までは上げるべきであるという考え方を実は持っているわけであります。  今年度一応の発足はいたしましたが、やはり非常に歳入問題等が出ておりますけれども、これは財投等によって無担保・無保証制度を補うことができるわけでありますから、そういう意味からまいりますれば、私は、追加と申しますか、年度途中で状況によっては三百万を検討する必要があるのではないだろうかという考え方を持つのでありますが、今年度はどうしても二百万でなければならぬというお考え方があるのかどうか、三百万というものを検討する必要がないという考え方なのか、はっきりしていただきたい。
  76. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 小規模企業は、先ほど申しましたように四百万事業所ございまして、ことしの枠の二千四百億でまいりましても、去年までの貸し付け分を全部合わせましても、まだ全体の一割まで行き渡るかどうかという状態でございまして、一件当たりの枠を拡大をいたしますと、総体の予算を非常にふやせば別でございますけれども、普及率と申しますか、行き渡る率が下がるわけでございまして、当面は、なるべく広く利用していただくというところに力を入れておる次第でございますけれども、今後の問題としましては、さらにその内容の充実につきまして努力をいたしたいと考えております。
  77. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は、特にこの中小企業白書の中で、小売業などにおきます家族的構成でありますが、従業員の規模が一人ないし二人は、中規模程度の企業と比べました場合に、中規模程度の企業を一〇〇といたしました場合に、その生産性の格差が四二もある、言うならば半分程度の生産能力しかない。しかも、そこで働きまする賃金を比較いたしましても八七だ。このような差があるという状態等を考えてまいりまして、先ほどからお話しになりました国民的な立場に立って国民福祉型の中小企業政策、そしてこの近促法の改正ということ等を考えてまいりますと、こういう零細企業の対策というものの強化がまず必要になってくるのではないだろうか。むしろ、近促法の対象にもなり得るような事業というものは、比較的中小企業の中でも私は個々に比べればいろいろな問題がありますが、一般論から申し上げますれば、比較的順調な業種が多いのではないだろうかというような実は感じがいたしているわけであります。  言葉をかえて言えば、小規模なこういった一人ないし二人の零細企業の方々は、近促法の対象として一つの事業を行いたくても行い得られないような、また、その負担に応じることができないような弱小な状態に置かれているのではないだろうかというような感じがいたすわけであります。そういう点からいたしますれば、私は、やはりいろいろな御説明がございましたが、この零細企業対策を充実強化するためには、とりあえずいま申し上げたような、たとえば無担保・無保証制度の二百万を三百万に拡大強化発展させるというような、具体的な政策が行われなければいけないのではないだろうかというような感じがいたしておりますので、さらにひとつ、その点についての今後の検討を希望しておきたいと思うのであります。  次に私は、中小企業のこの近促法の問題とも関連をいたしまして、非常にいま話題にもなり、かつ私ども社会党といたしましては数年来主張してまいりました、中小企業の事業分野の確保についての法制化の問題について、この機会に数点承っておきたいと思うわけであります。  私どもといたしましては、今日、この日本経済が低成長時代に入りますれば、やはり企業間の競争が非常に激しくなる。特に、大企業が多角的な経営を目指しまして、いわゆる中小企業の分野へ進出してくることは明らかであります。そうなりますと、中小企業と大企業との間のトラブルは今後増加をしてくることも予想されるのであります。たとえば、たとえ通産省が中に入って調整をいたしましても、大企業の進出そのものは押さえることはできないのでありまして、いままでがそのような経過をたどっていると思うのであります。  私ども社会党は、以前からこの問題をとらえまして、早急に中小企業の事業分野の確保についての法制化を要求してまいりましたし、また、みずからも私ども法律案提出をいたしているわけでありますが、このわが党の方針であります大企業の中小企業分野への原則的禁止の趣旨から言えば、通産省の行いまする行政指導というものは、進出そのものを押さえることができないので、全く無意味であると私は考えているのであります。そうなりますと、やはり法制化をすることが一番の近道であると思うのでありますが、政府が従前のとおりの行政指導を進めていくことにこだわることなく、思い切って法律を制定していくという考え方はないのか、この際明確な御答弁をまず最初にいただきたいと思います。
  78. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 中小企業の一部にも、大企業の進出を法律でもって禁止なり抑制をするような立法が欲しいという要望は、いろいろ私どもの方にも参っております。非常に念を入れまして、いろいろと従来検討を続けてまいっているところでございますが、基本的に私どもは、法律を持ちましていわゆる中小企業分野への大企業の進出を抑止をするということは、どうも現状では問題が多いのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。  その理由といたしましては、一つは、健全な競争を通じまして現在維持されております産業の活力を弱めて、特に技術進歩を阻害するおそれがあるのじゃなかろうかということ。それから競争が減殺されますと、安易に価格引き上げとか、あるいは消費者利益の侵害を招くおそれもあるのじゃないか。それから中小企業自体、余りに過保護に過ぎますと、近代化の意欲が低まってまいりまして、結果的に合理化がおくれたり、競争力の減退を招きまして、中小企業自体の成長、発展を妨げるおそれもあるのではないだろうかと考えるわけでございます。また、経済が生々発展をいたしておりますので、特に中小企業指定分野というものを固定的に考えることが必ずしも経済の実情にそぐわないのじゃないかというように考えるわけでございまして、やはり経済の発展は自由な競争にあるというふうに考えるわけでございまして、そういう意味で、法律による規制は、まあ私ども正直に申しまして消極的な意見を持っております。  そうかと申しまして、大企業が非常に急速、大規模に進出をして、そのために中小企業が事業の機会を失うと申しますか、倒産がふえるとか、こういうことは当然避けなければならないところでございまして、これにつきましては、基本的な考え方としましては、私どもは、まず当事者で十分話し合いをしていただく。で、話し合いがつきません場合には、たとえば商工会議所なり何なり、あるいは地方自治体、あるいは全国的な規模の問題でございますれば、それぞれの主務省がこれに割って入りまして、なるべくそういった話し合いによって話をつける。  その場合も、基本的な考えとしましては、進出を一切禁止をするということではございませんで、中小企業が大企業の進出に対応しましてみずからの体力をつける。みずから合理化を図って、特に新式な技術が必要であればその技術による設備を導入をする、こういうことで、大企業と競争できるようになるまで大企業の進出をまあある程度遠慮していただく、規模等を縮小して、中小企業が対応する時間をかしていただく。こういうふうな考え方で進めまして、中小企業自体もみずからそういう刺激を受けることによって近代化が進んでいくということが、全体として合理化、それによる消費者利益の確保ということが期待できるんじゃないかというふうに考えている次第でございます。
  79. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまいろいろと理由をお述べになって、消極的だというお話でございますが、私どもはいろんな機会に述べてありますので、詳しいことは避けておきますけれども、この国会でも問題になりましたが、大日本印刷の進出による軽印刷業界との対立の問題を初めといたしまして、クリーニング業界でありますとか、あるいは豆腐業界でありますとか、更生タイヤ業界などが現実に大企業の進出によって大きな影響を受けているわけであります。この業界はどれを取り上げてみましても、その業界に占める業者の数は、私が先ほど指摘をいたしました小零細企業が主体であることは言をまちません。したがって、私どもといたしましては、こういった過去の例からまいりまして、いろいろ進出を阻止することが事実上できていない。  いま長官は、商工会議所だ、あるいは商工会だ、あるいは地域における話し合いだ、いろいろなことのお話がございましたが、結果におきましては、多少の制限がございますけれども、結果は大企業が進出をしていることは間違いのない事実であります。したがって、年月を経るに従って中小企業がその領域を荒らされまして、中小零細企業は、結局は事業転換をせざるを得なくなるまで追い込まれてしまうというような状況下にあるわけであります。でありますからこそ私どもは、大企業が進出する前に何らかの歯どめをかける必要があるというふうに考えているわけであります。その歯どめが、私ども要求いたしておりまする事業活動分野確保の法制化であると私どもは思うのであります。その意味からも強く法制化を要求するのでありまするが、いまお話がありましたように、消極的だ、こういうことになりますと、やはり私は、弱い者は泣けというのが通産省側の考えだろうと言わざるを得ないのでありまして、重ねてこの点についてお尋ねをいたします。
  80. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 弱い中小企業を泣き寝入りさせまして大企業の進出を拱手傍観する、こういうつもりは決してございません。むしろ競争を通じまして、中小企業自体もそれに刺激をされていろいろと近代化が進む。そういうことによるコストの低下、消費者利益の確保を期待をいたしているわけでございまして、必要に応じましてそういった大企業の進出につきましては役所が割って入りまして、たとえばいまお話のございました大日本印刷の進出のケースにつきましては、自分で全国に数十店舗を出すという計画でございましたけれども、これを二店舗以内にとどめるということで話がついたわけでございます。それから洗たくの、クリーニングのケースにつきましても、みずからたとえば工ーデルワイス等のケースにつきまして、幾つか支店を出すという計画を、既存のクリーニング店を使うというふうな了解で話がついております。豆腐の問題につきましても、現在、農林省が鋭意進出しようと希望しておる側との話し合いを進めておる次第でございまして、基本的に私どもは、大企業の進出の場合に、中小企業はむしろそれと同じような技術を、採用が可能な場合には採用しまして、量産化に向く商品ならば量産化を図るように、必要な設備の導入、技術の導入につきましてあらゆる援助をいたしたい。  そういうことによりまして中小企業側の合理化をそれぞれ進めて、合理化によって大企業と対抗できるような方向に持ってまいりたい、こういうふうに実は考えておる次第でございまして、もし、大企業の進出を一切禁止をするとなりますと、そこの間に競争が行われなくなるわけでございまして、それはややともしますと、中小企業側がその保護の中にあぐらをかいて、合理化意欲が減退をするという懸念もないではないわけでございます。したがいまして、すべてこの技術進歩に対応しまして中小企業も前向きに対処する、それへの援助はあらゆる援助を惜しまないつもりでございます。
  81. 森下昭司

    ○森下昭司君 中小企業を犠牲にして大企業を支えるつもりはないという趣旨のお話がございましたが、そして大日本印刷の軽印刷業の問題、あるいはクリーニングのエーデルワイスの問題を具体的にいまお述べになりました。しかし、この大規模小売店舗の進出を事実上阻止することは非常にむずかしいわけであります。  この間もある雑誌を読んでまいりましたら、北海道でも、札幌に、関東からいわゆる大資本が大規模小売店舗をつくりたいということの進出計画発表になりましたら、道知事や札幌市長が先頭に立って、地元の中小企業を守るために進出反対なんだというようなのろしを上げて、成り行きが注目をされるというような記事が載っておりました。現に私どもの名古屋地方におきましても、西友の進出が伝えられておりまして、いま話し合いが行われておりまするが、この大規模小売店舗の進出をいわゆるだめだと、法的強制力があるかと申しますと、法的強制力は一つもございません。  建てる建物は、建築基準法なりなどに適合いたしておりますれば、建物の建設を認めなければなりませんし、また、入ってまいりまする店舗が、たとえば、保健所の許認可を必要とするものであれば、その許認可があればそれを拒否することもできません。したがって事実上は、今日までの状況は、地元が反対をいたしましても、大規模小売店舗の、大資本の進出を押え得る強制的な根拠が一つもございません。最後は中小企業者が泣き寝入りをせざるを得ないというような状況下にあるわけでありまして、長官先ほどから、いろいろな話し合いをする、そしていろんなことについて割って入るということがありましても、現実の姿というものはそういう形になっていないということは、長官自身も全国的にいろんな事例をごらんになって、私は御承知のことだと思うのでありますが、そういう実態というもの、特に大規模小売店舗の、大資本の地方諸都市への進出の実態について御存じになっているかどうか、その点をひとつこの際お尋ねをいたしておきます。
  82. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 大規模小売店舗の新増設につきましては、大規模小売店舗の調整法という法律が御承知のようにございまして、大都市の場合には三千平方メーター以上、地方都市の場合には千五百平方メーター以上の店舗を開業いたします場合には、その四カ月前でございますが、通産大臣に届け出ることになっております。その届け出がございますと、御承知のように法律に基づきましていろいろ調整が行われまして、地元の意見等を、商業活動調整協議会という機関で小売商代表の方、それからそういった大規模店舗側の代表の方なり消費者の方なり、そういった公正な三者構成によります商業活動調整協議会におきまして、その大規模店舗の開業を認めるかどうか、あるいはその規模を縮小させるかどうか、開業時期をずらさすべきかどうか、こういう点を検討いたしまして、通産省に答申を出すことになっております。  それに基づきまして、もし地元においてはこれを縮小さすべきであるというような答申が参りますと、通産大臣は縮小の勧告をいたします。勧告が聞き入れられなければ命令を発動することになっておりまして、そういう意味におきまして、法律の制度としては、そういった大規模店舗の開業につきましてはいろいろ小売商との利害を調整する制度が現在できており、現に働いておるというふうに私は考えるわけでございます。  先生御指摘のように、そういった調整が行われておるけれども、実際にはどんどん認可されておるんじゃないかという意味での御質問ではないかと存ずるわけでございますけれども、これはスーパー等が進出することによります小売価格の定価等による消費者の利益の問題もあるわけでございまして、結局、総合的な観点から地元の商業活動調整協議会で検討が行われまして、その結論に基づきまして、通産省としてはその問題についての処分を行っておるわけでございますので、この法律を厳格に運用することによりまして、十分小売商の利益は保護されるものと考えております。
  83. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は、長官がそういうお話をされましても、いまお話があった、たとえば売り場面積をある程度縮小する、営業時間帯を短縮をする、休業日数をふやすというようなことが商業活動調整協議会で協議をされるわけなんです。しかし、そういう大規模小売店舗の進出をだめだと言ってはねつける、不許可ですよと言うことは現行法律ではできないはずであります。でありますから、結果においては地元の零細企業は泣かざるを得ないというような立場になるし、最初にお話を申し上げた札幌に対する進出に対しまして、道知事や札幌市長が先頭に立って反対の意思を御表明なさざるを得ないということになっているわけなんです。私は、そういうような実態というものをもっと考えていただかなければならないのではないだろうか。  いま消費者、消費者というお言葉がございました。では、失礼でありますけれども、スーパーに売っているものはすべて他の商品と比較して安いかというと、そういうものじゃないんです。よく牛乳が一きょうは時間がありませんからやりませんが、牛乳が目玉商品で、スーパーと地元牛乳販売業者が対立をいたします。もう朝日新聞を読みますと、ことしは夏の陣開始なんて書いてあります、おもしろおかしく。あるいはスーパーが、言うならば牛乳以外に豆腐を出してくるというようなこと、その目玉商品によって客を寄せて他の商品を売るわけなんです。その商品は、外の零細企業が売っておみえになる商品とそう大差はないと言われております。あるいは高いものがあるかもしれません。  でありまするから、消費者、消費者と言われますけれども、昨年の中小企業白書をごらんになってもわかると思いますが、スーパーの進出には消費者は賛成だとお答えになった方が、それでは現実にスーパーでお買い物をなさるかというと、そうではなくて、地元の方は案外地元の小売店でお買いになっているという調査統計が出ているはずであります。おたくの方にあるはずであります。というようなことを考えましたときに、私は、今度の近促法を通じて国民経済の福祉、あるいは国民のニーズに合わせてやっていこうというような政策をおとりになろうとするならば、やはり零細企業を中心にした言うならば対策というものを考えた場合に、こういうような大規模小売店舗を初めとする大企業の進出に対する何らかの歯どめが必要であるということは、私は言を待たないと思うのであります。  現に、ことしの中小企業白書にも、大企業の進出による紛争の発生、これは大企業といろんな進出について問題があったと答えた組合の中からおたくが選別したものの中でも、いわゆる大企業と紛争の発生があったとするものは八十五組合もあったと言っているんです。全国の中で八十五組合だと簡単に言いますけれども、この一つの組合には何百、何千という業者が入っているのです。その数は、影響は非常に大きなものがあるということは、もう私から指摘するまでもないと思うのであります。  そこで、齋藤長官に私は重ねてお尋ねをいたすのでありますが、私が三月十九日の参議院の予算委員会で最後に質問をいたしました。長官は、この事業分野の確保に関する法律案を出すか出さないかは、現在行っておる中小企業の実態調査報告を見た上で法律案考えるかどうかということを決めたいと。そうして調査対象といたしましては、進出をいたしました大企業あるいはまた進出を受けた中小企業、あるいはまた消費者等の意見を聞いて、私はそういう調査結果というものが出ているのではないだろうかと思うのであります。  そういうようないわゆる三者側から意見をとって、今回のいま私が一部分を読みましたけれども、中小企業白書の中における大企業問題のこういう調査回答が出ているのか。あるいはただ単に、この白書にも断っておりまするように、当該対象というよりも、広く中小企業の組合を対象にして、その回答だけによって御判断をなさろうとしておるのか。この白書に載った調査結果は、いま申し上げたように組合だけを対象にしたのか。私がいま指摘いたしましたように、消費者だとか進出した大企業だとか、あるいはまた進出の被害を受けた中小企業だとか、そういった方々の意見も入っているのか、まず最初にそのことをお尋ねしたい。
  84. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 昨年度、大企業の進出とそれの影響調査というのを実施をしたわけでございますが、それはまず組合につきまして、約一万組合をとりましてその意見を聞いております。それから大企業側につきましては三千ぐらいだったと思いますが、しております。それからあと消費者の意見として、約七百人の消費者モニターの意見を聞いた次第でございます。  その結果でございますけれども、過去三年の間に自分の属する業種に大企業の進出があったという中小企業の組合の割合は一五%でございます。そのうち、紛争が生じたと言っておりますのが八十五組合ございます。  それから、大企業の進出に対する評価でございますけれども、中小企業組合側は大体不利でありたという評価をいたしておりまして、六三%が中小企業にとって不利であったということを一万組合の調査におきましては述べております。それから逆に消費者の方は、大企業の進出が消費者にとってよかったとするものが七四%でございます。  それから、こういう情勢に対しまして何らかの摩擦回避措置が必要かどうかということにつきましては、基本的には自由であるべきだけれども話し合い等の摩擦回避措置は必要であるという意見が一番多数でございまして、中小企業の組合においては全体の四六%がそういう回答をいたしております。大企業側の七四%が話し合い等をやるべきだと、それから消費者は五三%がそういう意見を述べております。それから、中小企業者のために事業分野を固定的に確保すべきであるという、いわば法律等によりましてのそういった措置をとるべきかどうかということにつきましては、中小企業の組合側では四割が賛成を言っておりますが、消費者におきましては一九%がこれに賛意を表しておる、大企業側では当然のことながら一一%がそれに賛成、こういう調査結果になっておる次第でございまして、中小企業側はこの分野調整については積極的でございますし、消費者はむしろ大企業の進出は非常にプラスが多いということを言っておりまして、相反する答えが出ているわけでございます。  私どもとしましては、先ほど来申し上げておりますように、こういった意見も参酌をしながら、いろいろな方の意見を伺っておるわけでございますが、どうも中小企業業種というものを固定的に法律等で定めることには、現実にそういった業種の選別も、いわゆる線引きも非常にむずかしいものがございますし、運用の基準等も非常にむずかしい面がございまして、むしろやはり現実的な行き方としては、実際の実情に応じて話し合いを役所がやらせるという方が効果があるんじゃないかと考えておるわけでございます。
  85. 森下昭司

    ○森下昭司君 いま私は、数字までは、後で聞こうと思いましたが、お答えになりましたので、私もまあそのことはわかりました。  ただ、いまお話がありました中で、消費者が中小企業者のために事業分野を確保すべきであるという問題に対してのお答えがありましたが、この白書の中で自由に進出してよいと答えたものが二八%であります。ですけれども、いま長官のお答えになったのは、自由に進出してもよいという回答のほかに、あるいはわからないとか、あるいは来た方がいいのではないかというあいまいな態度の方も数字の中にお入りになってそういう過大な数字をお出しになったのじゃないかと思いますが、この白書の中では二百六十五ページに「「自由に進出してよい」とするものは二八%を占めている。」のですから、消費者はたった二八%しか大企業の進出については賛意を表していないわけです。これは明らかな数字ですよ。間違いですか。
  86. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) そのとおりでございます。
  87. 森下昭司

    ○森下昭司君 でありますから、あなたの論法をもってして逆に言えば、私はやはり、中小企業の分野確保については消費者側は、言うならば、余り大きな関心を持っていないという考え方を持つのが妥当ではないだろうかというように思うわけであります。しかし、中小企業者が組合の回答で四〇%を占めているという事実は、中小企業者にとって非常に重要な問題があるということを私は物語っていると思うのであります。しかも先ほど、大企業の進出によって影響を受けたと言って答えられました、いわゆる大企業の進出があったと事実を答えられた一五%の組合の中で、言うならば、大規模小売店の進出が多く見られた小売業において最大の三〇%に実はなっておるわけです。いかに大規模小売店舗が大きく零細中小企業に影響を与えているかということは、この白書みずからお答えになっている。続いてサービス業一四%、卸売業一三%でありまして、製造業はわずかの一一%。でありまするから、私はこの実態等を把握してみますると、中小企業者にとって事業分野確保の法律制定は死活の問題である。特に小売業、サービス業等についてはそのことが強く言えるのではないだろうか、こういうように思うわけであります。  長官は、いまの御答弁の中にありましたように、調査結果をどのような立場、どのような観点、あるいはもっとしさいに言えば、回答した組合の内部の事情とか、置かれている条件などを検討して精細な判断というものを下していかなければ私はいけないのではないかと思うのでありますが、今回の調査結果からいたしまして、そして先ほど消極的な考え方であるということを述べられたのでありますが、その調査結果を前提に消極的な考え方であるというその図式の中で、どのような立場、どのような視点を置いてそういう消極的なという結論をお出しになったのか。結論というとちょっと行き過ぎかもしれませんが、そういう考え方に傾いておるということなのか。その点はっきりしておりませんが、どの立場で、調査結果をどのような視点に置いてそういう御判断をなさったのか、これをお答え願いたいと思います。
  88. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 小売商の中におきます一般小売商と大規模店舗との調整につきましては、現に大規模小売店舗法がございますので、その法律による調整が現実に行われておるわけです。あの法律の運用としましては、非常に中小企業に悪影響がある場合には、進出そのものを認めない場合も法律の運用としてはあり得る形の法律でございますので、その法律の運用の問題であろうかと存じます。  サービス業、製造業等につきましては、大規模店舗法のような式の調整法はございませんけれども、今回の調査の結果から見ますと、先生御指摘のように、事業分野を固定的に確保すべきであるとする意見は中小企業組合で四割ございましたが、同時に、同じ中小企業組合の四六%に当たる方が基本的には自由であるべきである、で、ただ話し合い等の摩擦回避措置は必要である、こういうふうに、基本的には自由であるべきであるという答えの方が多いわけでございます。消費者の答えはもう当然でもございますが、五三%が基本的には自由であるべきであるという答えでございまして、固定的に事業分野を確保すべきであるという意見は、消費者の場合には一九%でございます。したがいまして、私どもといたしましては、技術進歩等に対する影響の問題もございますので、極力現行法を活用いたしまして、調整を必要な場合には進めてまいりたい。現行法と申しますと、中小企業団体法等に特殊契約制度というものがございます。
  89. 森下昭司

    ○森下昭司君 まだ一回も使ってない。具体例があればそういうことを例に出しなさいよ。
  90. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 発動した例はございませんけれども、これがバックになりまして、話し合いがまとまるケースも多いわけでございまして、そういうことによりまして紛争も、相当のケースは実際上話し合いで妥結をしておる例が非常に多いわけであります。なるべくそういった現実的な措置で解決を図ってまいりたいと考えております。
  91. 森下昭司

    ○森下昭司君 反論する前にちょっとお尋ねしますが、いままた消費者五三%というお答えがありましたが、さっき私二八%と言ったら間違いないと言っておいて、いま五三%と言われましたが、どうですか。
  92. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 完全に自由にすべきだというのが二八%で、それから基本的には自由にすべきであると、しかし、問題があれば話し合い等をやらせたらよかろうというのが五三%でございます。
  93. 森下昭司

    ○森下昭司君 ですから、それは五十何%という問題は、私がさっきも言ったむしろ無関心層であって、そういったものを、いかにも事業分野について固定化することには反対だというような数字を挙げることは、私はどうかと思うんであります。白書にはそんなこと書いてないですよ、二八%しか。だから、そういった白書にも書いてないことを、ここへ出てきて国会で答弁するということは、私はどうも不穏当だと思いますね。妥当性を欠きますよ。そこのところちょっと注意しておきます。  そこで長官、私がそういうようなお尋ねをしておるのは、もっと極端に言えば、たとえば四〇%でも中小企業者は分野を確保してくれと言っているんですよ。ですから、大企業の立場で判断しているのか、四〇%という中小企業者を保護してやる、守ってやるんだという考え方で判断しているのか。いまあなたが後段に言いました五十何%か知りませんけれども、消費者の立場に立って考えているのか。極端に言えば、この三つの立場でどう判断したかという問題なんです、この調査結果は。そんなぐうたらぐうたら話し合いを何とかかんとかですね、さっきの答弁の繰り返しを私は聞いているんじゃない。どういうような立場、どういうような視点に立って消極的だという考え方——結論とは言いませんよ、私は。考え方を持つに至ったかと聞いているんですよ、一口でね。私はいま言っておるように、大企業の立場で判断したか、中小企業の立場で判断したか、消費者の立場で判断したか、もっとはっきりしろというんです。
  94. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) この問題は、非常にむずかしい問題と申しますか、中小企業の立場からだけで判断すべき問題ではないと私は思います。なぜならば、この影響するところは非常にまあ物価問題、消費者利益の問題等にも影響が大きいわけでございまして、総合的に判断する必要があろうと考えるわけでございますが、同時に、中小企業の立場から考えましても、余りに過保護に過ぎるやり方は、決して中小企業のためにもならないと思うわけでございまして、むしろ中小企業の近代化意欲を刺激をし、合理化を進めるためにはある程度の競争は必要であると考えておりまして、みずから合理化を図ろうとするものを助成をするというのが、私どもの最近におきます中小企業政策の基本的な考え方でございます。  したがいまして、かきねをつくりまして一切大企業が入れないというふうにいたしますと、どうしても過保護的になりがちで、あぐらをかきまして合理化意欲が鈍る、こういう面がございますので、やはり競争は必要であろう、時代の進歩のためにも技術の開発促進のためにも私は刺激が必要であると考えます。ただ、そうかといって、大企業がじゅうりんをするということは決して好ましいことではございませんので、そういう大規模な急激な進出の場合には適切な対策、つまり調整を講じまして、主として話し合いになりますけれども、それによりまして中小企業がみずから近代化するための時間を与える、そういうことで大企業側に自粛をしてもらう、こういうことがやはり一番現実的な考え方ではなかろうか、こういうふうに考えた次第でございます。
  95. 森下昭司

    ○森下昭司君 非常に競争だ刺激だという言葉を使われておりますが、たとえば中小企業団体の組織に関する法律の第十七条に、この十七条第一項四号のような事態が発生をすれば、これは翻って二十八条で組合協約をつくる、さっきまあ特殊契約という言葉がございましたが、ここのところは組合協約をつくる、いわば事実上のカルテルですね。そういうことを商工組合自体の中でお認めになっているんですよ。ですから、中小企業の中で、失礼な話でありますが、中小企業は事業分野を確保しようとする。なのに競争が必要だ、刺激が必要だというような、いわゆる商工組合の事業の中の十七条第一項四号との関連において、これはどういうような想定のもとでおつくりになったんですか、それじゃ。
  96. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 中小企業団体法におきましては、非常に不況の事態に遭遇いたしました場合には、大企業は独禁法によって不況カルテルが認められることになっておりますが、中小企業の場合には、中小企業団体法によりまして商工組合等が調整行為をすることを認めております。その要件も、やや独禁法の場合よりも緩やかな要件になっておるわけでございます。  また、大企業の進出が非常に悪影響があるという場合には、商工組合が大企業とその大企業の進出行為を延ばしてもらったり、あるいは縮小してもらうための話し合いをする規定がございまして、大企業はその話し合いに応じなければならない。それから話し合いがまとまらない場合には、主務大臣があっせん、調停をする規定がございます。ただ、あくまでこれはやはりあっせん、調停でございますので、話がまとまらなければ強制はできない形になっておりますが、これをバックといたしまして事実上のあっせん、調停をいたしまして、大半のケースについては解決を見ておるように私は見ておる次第でございます。
  97. 森下昭司

    ○森下昭司君 私はそんなことを聞いているんじゃないんですよ。私の聞いているのは、盛んに長官が、事業分野の確保をする法律をつくれ、大企業進出の歯どめをつくれと私が言うと、いや、中小企業が発展していくためには競争が必要なんだ、刺激が必要なんだ、過保護はだめじゃないですかということを繰り返して言うから、それじゃ中小企業団体法の十七条で商工組合の事業の上の調整が規定されているじゃないかと言うんです。中小企業者同士の調整行為は、これは結構です。今度は大企業が中小企業をのもうとする、食いつぶそうとするような行為に対しては、競争が必要だ、刺激が必要だと。  生産性の向上を目指す近促法、いいですか、長官生産性向上を目指すといって今日までつくられた近促法、当然そんな大企業が中小企業を食いつぶすとわかり切っているじゃないですか。同じ中小企業者の集まりである商工組合の中では調整行為は結構ですと言っている。しかも、中小企業を食いつぶそうとする大企業が進出する場合は、それはさっきは、御指摘になりましたように、三十条の二もありますよ、特殊契約大臣の勧告権もありますよ。食いつぶそうとする大企業の進出は、いや、健全な競争は必要です、刺激は必要です、過保護になっては中小企業の進歩がとまります、そんな理屈が中小企業政策の行政の一貫性からいって通る理屈ですか、一体。行政の一貫性からいっておかしいですよ。だから、私は、この中小企業団体法の十七条第一項四号と大企業進出分野確保に関する法律の消極的だという根拠と、どういうふうに行政の一貫性からお答えになるんですかと聞いているんですよ。
  98. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 中小企業団体法の第十七条第四項の組合協約の規定でございますけれども、これは、商工組合が事業に関しまして組合員のために、たとえばいわゆる縦の協約、原料を供給する人たちとその原料の納入価格等について話し合いをするとか、あるいは流通部門の方々とお話し合いをするとか、そういう関係の協約を結ぶことができる、こういう規定でございまして……
  99. 森下昭司

    ○森下昭司君 制限なんだよ。制限だよ。あなた自分で言っているじゃないか。公正取引委員会のカルテルよりは緩やかだけれども、調整行為だと言っているじゃないか。皆書いてある、ここに。販売価格から数量からみんな制限しろと書いてある。
  100. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 十七条の第一項第四号は調整行為でございまして、不況時におけるいわゆる不況カルテルに当たるものが中小企業の場合にはこの十七条第四号でございます。
  101. 森下昭司

    ○森下昭司君 違うんだよ。私の言っているのは、力の弱い中小企業を一気にのみ込むような大企業の進出に対して、私らはさっき言ったように、法案まで提出して法律をつくれと言っている。あなたはそのときの答弁の中で、中小企業の分野を確保する法律をつくれば過保護になります、進歩がとまります、競争が必要です、刺激が必要ですと、だからそういった法律によって規定することは、反対という言葉は使わない。あなた賢いですから。消極的だという答弁。それじゃいま言ったように、調整行為を認めたこの中小企業団体法、中小企業者の仲間内だけの調整行為は結構ですよと、その仲間内の問題よりもなおこわい力を持つ大企業が中小企業をのもうとするような、そういう行為を取り締まるというよりも、歯どめをかける法律をつくるという場合に、さっきも言ったように、競争が必要だ、刺激が必要だと言うなら、なぜ商工組合の十七条第一項四号というような規定が設けられるか。これは行政用語かもしれませんが、行政の一貫性ですよ。行政の一貫性から言って、こちら側は調整行為は認めます、こちら側は調整行為は認めませんよというようなことが中小企業政策として成り立つのですかと私は聞いているのですよ。
  102. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) この団体法に基づきますいわゆる不況カルテルと申しますか、調整行為はあくまで臨時の行為でございまして、中小企業が非常に不況に遭遇いたしました場合に、この商工組合の調整行為が主務大臣の認可を得て行われるわけでございます。これは不況を克服するための臨時措置でございますので、不況がなくなれば当然これは認可の期間が切れまして通常の形に戻るというわけでございまして、常時調整行為が行われるわけではございません。一方、今回の分野調整法は、業種を指定いたしますと大体その分野には未来永劫大企業は入って来れない、こういうふうな形のものが想定されておるようでございますけれども、それは非常に分野を固定的に考えまして、流動する経済の実情に合わないじゃないかということを危惧するわけでございまして、この臨時的な緊急避難としての調整行為としての不況カルテルと決して矛盾はしないんじゃないかと考える次第でございます。
  103. 森下昭司

    ○森下昭司君 ところが、あなたは矛盾しない、矛盾しないと言いますけれども、中小企業に対する大企業の進出に対しては、これは臨時的な措置も何もないのですよ。無防備なんですよ、中小企業は。それじゃ、少なくとも同一の一貫性を持つなら、大企業の中小企業に対する進出にも臨時的な措置があったっていいじゃないですか。
  104. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 調整行為を実施中に大企業が進出してくる、その業種について。その場合に特殊契約制度というものがございまして、大企業も中小企業がやっている調整行為と同じ内容を守りなさいということをやるような制度がございます。
  105. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は調整中のことを聞いているのではないのです。さっきから何遍も念を押しているのですよ。あなたは一貫性はあるんだと答えておみえになるでしょう。ですから、そうなれば、いまのような大企業が中小企業に進出することについては無防備なんです、中小企業者は。軽印刷業界の問題もクリーニング業界の問題もありましたね。あれ、臨時的措置として何らかとめる歯どめがあるんですか、ないでしょう。あなた方が話し合いでそういうことをしたというだけのことなんです。それは商工組合の場合は、たとえば臨時に措置があるでしょう。私はいま立場を変えて、あなたは一貫性があるあると言うならば、一貫性があるように大企業の中小企業に対する進出も考えてみたらどうですかと言っているのです。何も調整中に大企業は進出するということを聞いているのではない。いま大企業が中小企業の分野に進出する場合には何ら制約をするものはない。臨時的に制約するものも何にもないのです。一貫性を保つ意味なら、一歩前進して私聞きますよ。消極的な考えよりも、大企業は中小企業の分野に進出する場合に臨時的措置をお考えになりますか。
  106. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 当面現行法を活用いたしまして、この団体法によります協約制度あるいはそれを裏打ちといたしました話し合い、その話し合いの成り行きによりましては、私は役所が調整を図る。そういうことによりまして、現に大半のケースは解決を見ておりますので、さらにこれを強力に進めるということによりまして、なるべく当面は進めてまいりたい。これが効果が上がらないで、どんどん大企業が出てまいりまして、中小企業がじゅうりんされるというケースが非常にふえて、悪影響が非常に出てくるというような状態になりますれば、さらにまた検討をいたしたいと存じますが、当面は現行法を活用してまいりたい。なお、各通産局に調停専門のこういった問題についての窓口の担当官を置きたいと思っておりますし、各府県に調停のための審議会を設けてもらうように、すでに去年の暮れに全国の各知事にお願いをいたしましたし、それから中央にございます調停審議会も、従来はやや不活発でございましたけれども、今後こういった調停が必要なようなケースが起こります場合はどんどん審議会にも案件を諮りまして、その御意見を承りながら、実際になるべく迅速にそういった調整を進めてまいりたいと考えております。
  107. 森下昭司

    ○森下昭司君 時間がないので非常に残念ですけれども、私はいまのお話の中で、中央調停審議会を今後活用したいと言いますけれども、この八十一条を受けて、八十二条でありますが、関係大臣の「諮問に応じ、組合協約及び特殊契約に関する重要事項」ですから、その前段として第十七条の五は発生をいたしておりますが、三十条の二の特殊契約ができなければなりません。その上に通産大臣の特殊契約の認可があって、その問題等について八十二条で審議をするということであります。でありまするから、特殊契約というものは成立をしなければ、中央中小企業調停審議会なるものは、これは動きがとれないわけです。たとえばその他事項、あるいは目的条項等がございまして、目的を達成する云々なんということがあれば、大臣が諮問するようなこともありますが、これはちゃんと限定された審議会の諮問の内容が載っておるわけでありますので、長官が言うように、簡単に特殊契約もできていないのに、中央中小企業調停審議会が動きますよということはあり得ないはずなんです。これは私の法律見解が間違いなら間違いでいいですよ、そんな簡単なものじゃないんです。  そこで、ひとつ長官に具体的にお尋ねいたしますが、最近事業分野の問題等について、自民党の中にも、何らかの形で中小企業の権益を守るべきだという与党内の声も出てまいりました結果、中小企業庁としては悪い言葉で言えば妥協案、その妥協案の一つとして、法律の制定はあくまでも消極的でありますから、中小企業の分野へ進出しようとする大企業の側に自主的な倫理綱領というような構想をお考えになって、これから具体的な動きをしようというお話がありますが、その点についてのお考え方をお聞かせ願いたい。
  108. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 日本の企業が海外に進出します場合の現地でのあり方につきましては、大日本貿易会が前にそういった倫理綱領みたいなものを定めたことがございます。私のこれは希望でございますけれども、大企業側におきまして、この中小企業の分野への進出について自粛すると申しますか、非常に悪影響を与えないような形で十分中小企業の情勢を配慮しながら考えていただく、そういう意味での大企業の行動倫理といったようなものが大企業側におきまして考えられますならば非常に幸せであると考えております。
  109. 森下昭司

    ○森下昭司君 これは積極的に私はやる意思があるのかどうか。時間が来ましたのでまことに残念であります。実は、具体的に豆腐業界のことをお聞きしようと思って、農林省の方に御出席をしていただいておりますが、時間が来てしまいましたので、大変残念で申しわけないと思っておりますが、最後に、大臣にひとつお尋ねをしておきたいと思うのであります。  私が申し上げるまでもありませんが、大企業が中小企業に進出する形態といたしましては、大企業側自身が直接中小企業の分野に進出するという、私が先ほどから指摘しておりますほかに、既存の中小企業者に資本投入をしてみたり、あるいは役員を派遣したりして、実質的な支配権を握ることによって進出することも多いわけであります。これは中小企業の業種というものが比較的細かいし、地域性業種でもありまして、伝統的熟練技術を要する業種が多いなどの理由によるわけであるが、これらの形の中で進出した大企業が中小企業の系列化を進め、系列会社、専属下請などに再編成していき、だめな企業は切り捨てていくということになってくるわけであります。このことは、単に中小企業者の生活を奪うのみならず、長い間日本経済を支えてきた中小企業の経営基盤を奪うことにもなりかねないのでありまして、やはりその経営基盤を守っていくのが中小企業庁であり、また通産行政であると私は思うのであります。この意味から申し上げましても、私どもは強く大企業の進出を規制いたしまして、中小企業の存立基盤を確保していくことを要求するわけであります。  したがって、消極的であるという齋藤長官のお答えがございましたが、私がいま指摘いたしました大企業に倫理綱領を求める、これは経団連との話し合いになりまして、経団連の出方いかんによって決めるわけでありますが、長官が御指摘になったジェトロ等の話がございましたけれども、これは日本の商社の海外活動に対する規制をするということでありまして、中小企業を対象にいたしましてこういう大企業に倫理綱領を求めるのは、私は画期的なことだと思うわけであります。そういう点で、非常に経団連の出方等が注目をされるわけでありますが、法制定に消極的であるというならば、私は先ほども申し上げたような行政の一貫性から、商工組合における調整行為等が認められておりまする以上、弱い中小企業の権益を守るためにも倫理的な措置も必要でありましょうし、いま申し上げた妥協案という言葉は悪いかもしれませんが、この大企業に倫理綱領を求めることも一つの方策だと思うのでありますが、そういう点を含めまして、大企業の中小企業進出に対す問題等について、最後に大臣の所見をお伺いしておきます。
  110. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほど来、分野調整についての御議論を拝聴しておりましたが、要するに長官の言っておりますことは、分野調整はある程度必要であるけれども、新しい法律をつくらなくても現在の法律でもやれる、現に何回かトラブルが起こったけれども、そのトラブルも大体解決してきた、だからこれまでのやり方でなおしばらくやってみたい、どうしてもできないという場合には、そのときに検討してみたい、こういうことでございますから、事業分野を何らか調整するという点におきましては、これは精神は私は一致しておる、こう思います。  それから、大企業が自発的に中小企業の分野に出てこないということのために、何らかの自発的な行動規範というようなものをつくればどうか、こういうお話でありますが、これも昨年、いま御指摘のように、海外進出企業が自発的に、海外における企業活動の行動規範というものをつくりまして、また、引き続いてそれをフォローアップする機関等もできておりまして、相当な効果を上げておるわけでございます。そういう意味から考えまして、私はいまお話しの大企業が自発的に、みだりに中小企業の分野には出ていかない、こういう行動規範をつくることによって、一つの産業秩序をつくり上げるということは大変結構である、私もそういうことのできるように強く希望をいたします。
  111. 桑名義治

    ○桑名義治君 昭和四十八年度から今年度に至るまで、日本経済は非常な不況の時代を迎えたわけでございます。その間、第一次、第二次のいわゆる景気対策というものを打ち立ててまいりましたが、最近の報道によりますと、全産業界の実情を調査をし、その動向によっては第三次景気対策を立てる、こういうふうに報道されておるわけでございます。そこでその内容と、それから、いつごろこの第三次景気対策を立てられる意思があるのか、そこをまず伺っておきたいと思います。
  112. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま現在、産業界の実情をあらゆる角度から調査をいたしております。近くその調査結果がまとまりますので、来る十六日に経済閣僚対策会議を開きまして、そこで今後の経済運営をどうするかということについて協議をすることになっております。  ただ、これまでいろいろな方法によって調べました結果、まだ最終総合報告は出ておりませんけれども、現在までの感触を申し上げますと、日本の景気は三月ごろでようやく底を打った、こういう感じでございますけれども、それからは大体まあ横並びのような形で続いておる。ところが、底を打ったと言いましても、結局一年半前の石油問題の起こりますあの当時に比べますと、鉱工業生産は二割前後減っておるわけでございまして、中小企業の分野におきましては、先ほど長官も話しておりましたように、昭和四十五年前の水準に戻った、非常に悪い状態、その悪い状態でずっと底をついた、こういう形でございますから、何らかの相当思い切った対策が必要である、こういうことを考えまして、いま関係の各省と相談中でございます。
  113. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの大臣の御答弁では、三月ごろがいわゆる最低の底で、あとは平行線をたどっておる、こういうような意味の御答弁でございました。  そこで、先ほども申し上げましたように、第三次景気対策についていろいろ報道されておりますが、その内容についてはどういう方向でもってこの対策を立てていくかという、その大綱はまだ決まっておりませんか。
  114. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まだ細かいことは決まっておりませんが、やはり産業の状態が非常に悪いという一番大きな原因は、需要面でなかなか新規の経済活動を刺激するような新しい需要というものが起こってこない、こういうことが一番大きな原因でございますから、需要面で何らかの刺激をする方法はないか、需要を喚起する方法はないかということが一つだと思います。それから第二は金融問題金融及び金利の問題をどうするかということだと思います。第三は、貿易が輸出、輸入とも非常に悪い状態になっておりまして、特に輸入の状態が非常に落ち込んでおるわけでございます。だからこの貿易面をどうするか、この三つの点が中心になると思います。
  115. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで先ほどから、いわゆる中小企業の現在の状況については、昭和四十五年度からを比較をしてみますと、生産率が九二%に落ち込んでいる、こういうふうなお話でございますが、現在の不況の実態というものを大企業、中小企業というふうに分けてみた場合にどういうふうな比較できますか。
  116. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) まず生産で見てみますと、これは工業製品の生産指数を中小企業と大企業とで分けてみたわけでございますけれども、ことしの三月の中小企業の生産指数は九八・三でございまして、いま大臣から申し上げましたように昭和四十五年を一〇〇とした数字でございますので、四十五年の水準より以前の状態でございます。一方、大企業の生産指数は三月が一一四でございまして、前年同月比で見ますと、大企業の場合も一六%マイナスでございますが、絶対レベルとしては中小企業よりも生産の規模が高いということが言えるかと存じます。  それから、もう一つ特徴的な点は価格の動向でございまして、中小企業製品の価格は、昨年の三月以来毎月前月比で下がっております。ことしの三月まで去年の十二月を除きまして毎月下がってまいりまして、ことしの三月の中小企業製品の卸売物価は、工業製品価格でございますけれども、前年同月比マイナス五・二%でございまして、去年の三月を一〇〇といたしますと九五の水準にございます。  一方、大企業の方の製品は、去年一年間十二月まで毎月前月比で上昇を見せておりまして、ことしの一月になりまして初めて前月比がマイナスになりまして、後は一、二、三と毎月前月比が下がっております。ことしの三月の水準は、去年の三月に比べまして大企業製品はプラス五%でございまして、五%高という水準になっております。中小企業がマイナス五%、大企業がプラス五%ということでございますので、価格の動きで見ますと、非常に中小企業の商品の方が早く下落を始めて全然持ち直していない。大企業はずっとやはり上がってきて、ことしに入って初めて下がり始めた、こういうふうな形が見られるわけでございます。  ただ、水準で申しますと、中小企業製品の価格水準は一五六でございます、指数が。大企業は一四五、ことしの三月でございますが。もともとこの従来の不況になる前におきましては、中小企業の方がどうしても生産性が上がりにくい面がございまして、上昇率が早かったわけでございます。その結果、石油危機後の不況に入りましてからは中小企業製品がずっと落ち込んできたわけですけれども、まだ三月の水準で見ますと、水準自体は中小企業の方が高い水準になる。しかし、前月比で見た場合にはいま申し上げましたような形になっておる。去年より中小企業は低いし、大企業は去年より高い、こういう状態でございまして、非常に中小企業の方が今回の不況をよけい影響を受けておるということがこれから言えようかと存じます。
  117. 桑名義治

    ○桑名義治君 現在の日本の不況下における中小企業の実態というものが非常に厳しい立場に置かれているということは、いまの御答弁でも、生産指数あるいはまた価格こうやった面からものぞけたものではないか、こういうふうに思うわけでございます。そうやった意味からも、中小企業対策というものが現在の日本の経済の中における手当てが非常に緊急度を増してきておると言わなければならない、こういうふうに私たち認識をしているわけでございます。  そこでもう一点、これはもうごく卑近な一つの見方かもしれませんが、ことしの住宅金融公庫の貸し付けをやりましたところが、一日で割り当てを終わってしまった。むしろ足りなかった。こういうような結果が出ているわけでございますが、これをどういうふうに理解をされますか。
  118. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) ことしのあれは四月二十日でございましたか、今年度分の住宅金融公庫の受け付けを始めましたところ、たしか八万戸の受け付け予定に対しまして約十四万戸の申し込みがあったわけでございまして、年度間が十四万戸でございますので、一年分に相当するぐらいのものを一遍に受け付けたという状況でございます。  この理由として考えられますのは、一つは一昨年あたりは大体年度間百九十万戸くらい住宅が新規に着工されております。平均十五万戸ベースでございます。それに対しまして四十九年度は百三十万戸ぐらいでございまして、大体月平均十万戸ベースに落ちておるわけでございます。これは一つは、金融引き締めによりまして住宅ローンが非常に出にくくなった。それから建築費等も非常に高騰をしたとかといったような事情からかと思いますが、いずれにしましても、昨年の建築のベースが落ちておりますので、一般の庶民の皆さんのマイホームの夢というのは非常にやはり強いわけでありまして、それが今回の住宅公庫の受け付けに殺到したんじゃないかというふうに思われます。  もう一つは、御承知のように、住宅金融公庫の金利は五・五%でございまして、現在の市中金融機関の住宅ローンの金利水準に比べまして半分強ぐらいという非常に安い金利でございますので、利用できる限りにおいてまず住宅公庫の金を使って、足りない分を住宅ローンで埋めるというふうな利用者の方の気持ちが働いてこういうふうな形になったんじゃないかと考えます。
  119. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの御答弁ございましたように、国民そのものの生活も非常に緊迫をしているという、そういう一つの姿を示唆したものではないか、こういうふうに思われるわけでございます。それと同時に、先ほど答弁にありますように、中小企業というものが生産指数から言っても、あるいはまた価格から言いましても非常に大きな波をかぶっていることは事実でございまして、先ほどの論議の中にもございましたけれども、中小企業者は金よりも仕事が欲しい、これは切実な声であろう、こういうふうに思っておるわけでございます。  そこで、その対策としていろいろなことがいままで論議をされてきたわけでございますが、具体的にこういうふうな措置をとったという事例があるならばそれを具体的に示していただきたいし、さらに、その事例がこういう効果を及ぼしたという効果が面前にあらわれているならば、それも説明を願いたいと思います。
  120. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 従来、中小企業庁としてとってまいりました対策の中心はやはり金融面の措置でございまして、まじめに働いておられる中小企業の方か、資金の回転がうまくいかないために非常に苦しい状態になるということを極力避けなければならないと存じまして、まず、政府系三金融機関の活用、去年四十九年度二兆円の枠でございましたが、これに七千億を昨年の暮れに追加をし、三月にまた五百億の追加をいたしました。さらに、第一・四半期におきましては年度間二兆四千億の枠を計上いたしておりますが、そのうちの大体二八%に当たります七千億円を第一・四半期の融資枠として用意をいたした次第でございます。  それから、信用補完の面におきまして不況業種の指定制度を活用いたしまして、現在四十六の業種が指定になっておりまして、細かく数えますと数百の業種になるわけでございまして、製造業の約半分がその適用になっております。それから民間金融機関の特別融資制度、これを十二月までに大体二千億の融資を行いまして、現在、また五百五十億の追加を申請を受け付け中でございます。こういう金融措置と、それから特に中小企業向けの仕事の確保という意味で、官公需の確保につきまして、四十九年度にできれば三割ぐらいまで持っていきたいということで、各省庁に何回もお願いをいたしまして、現在、結果を集計中でございますけれども、昨年の十二月末の中間集計では二九・四%という数字に相なっておるわけでございます。  こういうことによりまして、一番の効果といたしましては、倒産が危惧されましたよりは低い水準で、わりあい何と申しますか、一服状態で推移しておるということが言えようかと存じます。この一月、二月が八百件台でございまして、三月は千件台になりましたけれども、去年の三月よりも少ない千三十件でございました。それから四月が九百件台でございますが、これも去年の四月よりも低い。それから五月は、あした発表になりますが、大体去年の五月よりも少ない数字になる見通しでございます。こういうふうにわりに倒産の数が、もちろん高水準でございますけれども、安定的に推移しておるという点は、こういった金融面の効果ではないかと考えておるわけでございます。  中小企業者の方は、仕事がほしいという声が切実でございますので、先般来の不況対策によりまして公共事業の繰り上げ発注、それから住宅金融公庫の融資の促進、住宅ローンの促進、あるいは開銀なり公害防止事業団に対する財投の追加等によります公害防止投資の促進と、こういう金融財政面の措置によりまして投資関係を活発化いたしまして、それを起爆点として仕事をふやしていく、こういうふうな措置を講じておる次第でございますが、ただいままでのところ、必ずしもまだ第一次、第二次の不況対策の効果が目に見えて出ておるというふうな段階にまだ至っていないような感じが私はいたしております。
  121. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、これは言葉のあやと言われれば言葉のあやになるかもしれませんが、しかし、とらえ方というふうに考えていただければ一つの議論になるんじゃないかと思うんですが、大臣答弁の中で、低成長という言葉を使われるときもある。それと同時に、安定成長という言葉を使われるときもある。で、通産大臣はどちらをとられますか。というのは、安定成長ということになれば、この社会の、この経済のひずみの波をかぶる、そういう企業が少ない。そしてまた、徐々に伸びていくという姿をもって初めて安定成長と言えるんではないかと思うんです。ところが、現在は非常に成長は落ちておる。それと同時に、そのひずみが大きくあらわれている。そうやった立場から考えた場合は決して経済は安定をしていない、こういうふうに断ぜざるを得ないわけです。そうなってくると、現在の経済動向に対する取り組み方が自然にそこからあらわれてくると思うんですが、大臣としてはどちらの言葉をとられるか。それによって大臣の決意が私はうかがわれるんじゃないかと思うんですが、この根本的な問題から、取り組みの姿勢からまずお聞きをしておきたいと思うんですが。
  122. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 現在の経済の姿は、私はマイナス成長だと思います。マイナス成長が続きますとどういうことになるかといいますと、結局、要するに雇用問題、非常に大きな影響を受けまして失業者もふえますし、それからさらにまた、新規の就職をすることができない、こういう問題が起こりますし、その他のいろいろ不都合なことがたくさん起こってくるわけでございます。  そこで、何とかいまのままマイナス成長から抜け出さなければならぬわけでございますが、その場合にどういう方向に抜け出すべきか、低成長でいくのか、あるいは安定成長でいくのか、そういう御質問だと思いますが、私は、やはりいろいろな条件さえ整うならば、低成長ではなくして安定成長に持っていくべきである。条件が悪くて、なかなかそういう方向にも持っていけないということであれば別でありますけれども条件さえ整っているならば、何も無理やりに低成長に押さえ込むことはない。しからばその条件とは何かと言いますと、要するにエネルギーの面、特に石油の面で今後日本は必要な量を確保することができないんじゃないか。また、必要な量を確保できてもそれを買う金がないんじゃないか。そういうことから根本的な制約を受ける。同時に、あわせてその他資源の面からも制約を受ける、こういうふうかことから低成長しかできない、こういうことを言われておったわけでありますが、幸いにエネルギーの分野におきましては、いま総合エネルギー閣僚会議を開きまして、通産省からもいろいろ資料を出しておりますけれども、低成長でなければならぬというふうなデータは少しも出てまいりません。安定成長をしようと思えば必要な安定成長ができる、こういうエネルギーに関する資料が出ております。  そういうことから考えますと、先ほど触れましたように、まず日本の場合は人口も非常に多いわけでありますので、毎年新規の職を求める人たちも多い。それから産業の発展に伴いまして、第一次産業から第二次産業、第三次産業にかわっていこうという人も多いわけでありますし、それから合理化の結果、新しい職場を求めなければならぬという人も当然出てくるわけでございまして、どうしてもそういう人たちの数を計算をいたしますと、ほぼ年間百万弱になるわけでございます。でありますから、そういう人たちの少なくとも新しい雇用の機会というものをつくり出す産業の姿でなければならぬというふうに私は第一に考えます。  それから第二には、やはりアジアの先進国といたしまして、東南アジアの国々に対してはもちろんでありますが、自由主義経済の相当なウエートを占めております日本としては、単に東南アジアだけではなくして、発展途上国に対するいろいろな経済協力ということも必要だと思います。やはりこれはある程度の成長をしておりませんと、経済協力をすることもできない。さらにまた、福祉社会をつくる、あるいは国民生活を向上させる、こういうことを考えましても、これも財政収入が伴わないとできませんし、ましてや、西欧に比べて非常に貧弱な社会資本の充実ということを考えますと、これも相当な財政収入が必要である。  こういういろんなことを考えますと、先ほど申し上げましたように、日本経済の発展を制約すると思われておりましたいろいろな前提条件が解決されるという見通しが立つ以上は、私は国民のバイタリティーというものを伸ばしていく、それを無理やりに押さえ込んで低成長ということでなければならぬということは、これはないと思いますし、また、そういう考え方は日本の場合には適当ではない、安定成長に持っていくということが一番望ましい、こういうふうに考えております。
  123. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで大臣のお考えは、今後の日本経済のあるべき姿というものは、いわゆる安定成長でなければならない、こういう言葉で集約されると思います。ところが、現在の日本の経済情勢というものは、これは完全な低成長時代であることには間違いはないと思います、そういう意味から言いましても。そこで、今後長期的にわが経済が高度成長から低成長へと、こういうふうに移行してきたわけでございますが、これから抜け出すためには、公害防止費用や、あるいは従業員の福祉厚生費用の増大、立地難、流通費用の増大などで、中小企業というものの負担増というものが非常に大きくなってきていることは事実でございまして、中小企業にとりましては二重苦、三重苦の苦しみを負っていることは事実であります。  そうやった意味から、今回の法改正も一応出てきたというふうに考えられるわけですが、これは私は、まだ抜本的なかじ取りにはならないと思います。そういう意味で大きく中小企業政策のかじ取りを変更していかなければならないのではないかというふうに思うわけでございますが、どういう方向に持っていくことが、低成長から安定成長へ入ろうとする現在におきましては最も大事なことであるというふうに思われているか、その点について伺っておきたいと思います。
  124. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 従来の高度成長になれました中小企業にとりまして、これからの安定成長というのは、環境としては非常に厳しくなるものがあると私は思います。しかし一面、今後の日本経済の安定成長の場合の姿を考えてみますと、福祉型経済に日本の経済は変わっていくんではないかと思われるわけでございまして、その場合には、いわゆるGNPの中の需要項目といたしまして、今後伸びが期待されますのは、一つは国民の消費需要でございますし、それから民間住宅の形成、こういうものが需要項目の中では伸び率が高くなるんではなかろうか。逆に、民間の設備投資でございますとかいったようなものの伸び率はやや鈍化するのではないか、かように見られるわけでございます。  住宅投資が伸びるということは、中小企業にとりましては非常に福音でございまして、と申しますのは、投資の種類によりまして中小企業向けの仕事が非常に多い投資とそうでない投資とございますが、住宅投資等はいろいろ産業連関等で調べますと、その投資の大体五二%が中小企業で担当される、こういった統計、分析が私どもの今度の白書で出ておりまして、住宅投資が今後従来以上に活発になるということは、非常に中小企業の仕事がふえるという面を持っておると私は思います。それから、個人消費関係が伸びるということも、いろいろ需要の多様化という意味におきまして、中小企業向けにとっては明るい方向であろうと考えます。  それからもう一つ、従来以上に今後伸びると考えられますのは、いわゆるサービス部門の経済でございます。これは飲み食い等のサービス、小企業関係等のほかにも、特に今後期待が持たれますのは企業サービスの関係でございまして、企業の企画とか調査、あるいはソフトウエアの作成でございますとか印刷とか、もろもろの企業活動に伴うサービス部門というものは、非常に今後企業活動として新しい仕事としてふえていくんではないだろうかと考えられるわけでございます。大体、サービス部門はあまり規模の利益が働かない分野でございますので、こういう面が特に伸びるということは、小規模の中小企業にとっては仕事がふえることを意味するかと存じます。そういう意味で成長率は今後、従来のような高度成長からやや成長率が鈍化するかとは思いますけれども、経済め方向が、中身として非常に中小企業向きの需要が伸びていくという意味におきまして、中小企業の将来は一面において明るい面があると思います。  ただ問題は、そういった需要にこたえていくためには、中小企業も非常に、特に技術開発という面におきまして、従来以上に今後は努力をする必要があるんじゃないかと考えるわけでございます。特に発展途上国の追い上げが急でございますので、より付加価値の高い高級な商品あるいはサービスに転換をし、また新しい商品、サービスを生み出していくというためには、どうしても技術開発、技術に支えられる面が必要でございまして、そういう意味で今度は中小企業経営にとりまして、技術の重視ということと市場の情報の重視と申しますか、市場の動向を常に鋭く把握していく、こういう態度が必要ではなかろうかと考えます。
  125. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、現時点における中小企業の姿というものはほとんど大企業の下請によって成り立っている、こう言っても決して言い過ぎではないと思うのですが、そうやった意味から見まして、現在の不況の長期化によりまして、親企業の大幅の減産あるいは資金繰りの悪化、こういうものを反映して中小企業の下請条件、取引条件が四−六月期に向けて支払現金比率の低下あるいは検収期間及び手形サイトの長期化、それから納入単価の引き下げ、こうやったあらゆる面で一段と悪化をするのではないかというふうに見られているのでありますけれども、いつも問題に出されているのは、下請代金支払遅延等防止法のいわゆる十分な運用がなされていないということでございまして、この法律は一部にはざる法だと、こういうふうに酷評さえされているわけでございますが、このような声にこたえて今後いままでとってきた措置、それから、今後どういうふうなこの問題に対して取り組みをなされようとしているのか。これは公取と通産省と双方からお答えを願いたいと思います。
  126. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 不況になりまして、下請関係のいろいろな支払条件が悪化しつつあるのは御指摘のとおりでございます。私ども、大体毎月約三千社の下請につきましてサンプル調査をいたしておりますけれども、月別受注量が減っておりまして、この四月の受注量は、前年の四月に比べまして約三割減って七〇%弱でございます。また、下請単価も去年の十二月までは前年同月比で上回わっておりましたけれども、ことしの一月以後は去年の同月の水準以下の下請単価になっておりまして、たとえば四月が九四・五でございますので、去年の四月の下請単価を一〇〇として約五%以上落ち込んでいるわけでございます。また、現金比率も月別低下を見せております。  これの対策といたしましては、まず下請の非常に不況の度合いの強い業種に、なるべく優先的に政府系の資金を流していくというふうなことで資金繰りの面の困難をやわらげますとともに、基本的には景気の回復ということが基本施策になるわけでございますが、特に、代金法による規制の違反が出ないように取り締まりを強化をいたしておりまして、四十八年度は大体年間一万五千件の親事業者関係の調査をいたしましたが、四十九年度は二万二千件に調査件数をふやしまして、これは私どもがやりました件数で、あと公正取引委員会の方でも相当多数の調査をやっておられまして、大体親事業者を悉皆調査で調べるということで、公取と分担をいたしまして調査をいたしております。こういう不況でございますので、違反の件数もふえておりまして、四十八年度が違反容疑が千百五十四事業所ございましたが、四十九年度は、去年の十二月までの九カ月間で二千三百カ所の違反容疑がございました。違反容疑につきましては、立入検査をいたしましたり、役所に招致をして実情を聴取し、内容に応じまして是正の勧告をいたしておりまして、悪質なものにつきましては、公正取引委員会に案件を回しまして、公取の勧告等の措置を請求をいたしております。  こういうことで、特に取り締まりを強化しておりますけれども、その取り締まりによる効果は非常に私は上がっておると思うのでございます。こういう取り締まりが行われることによりまして、親事業者はきちんと六十日以内に払うとか、割れないような手形を出さないとかいうようなことをやっておると思いますが、ただ、親事業者自体が資金繰りが悪化していることも事実でございまして、そういう意味で違反がふえておるという面がございますので、一日も早く景気の回復を図りたいということで、そういった面での施策に努力をいたしておる次第でございます。
  127. 後藤英輔

    政府委員(後藤英輔君) 不況が深刻化してまいりましたために、そのあらわれが親企業の下請業者に対する取引条件等に影響が出てくるということはいろいろな面において言われておりますので、私どもも、この法律の運用の範囲内におきましてできるだけ厳重に法律を運用いたしたいということで、従来の親企業に対する調査に対しましても、調査件数をふやすとか、あるいはまた、ある時期において親企業の調査でもって問題のなかったような報告が参っておったようなものでも、後にその下請業者の方からさらに調査をいたしまして、両面から調査をするというような方法などもあわせまして、調査方法にもいろいろと研究をいたしまして、厳重に法律の運用を図ってまいっておるところでございます。  昨年度調査いたしました——最初に書面でもって親企業から詳細な下請との取引の内容についての報告を求める調査をいたしますけれども、この件数が、四十九年度でございますけれども約一万三千八百件、四十八年度においては一万二千件ほど、それから四十七年には八千件でございましたけれども、こういうふうにして件数を逐次ふやしてまいっております。四十九年度におきましては、そのうち親企業が約一万でございまして、先ほども申しましたように、同時に下請業者の方からの調査も合わせましてこれが約三千八百、両方合わせまして書面調査を実施いたしました件数が昨年四十九年度で一万三千九百件でございます。なおそのほか、こういう下請調査の親企業を中心にいたしました書面調査の中でもって問題がありそうだと思われるものにつきましては、法律の規定に基づいてこれは立入検査をいたします。  立入検査をいたしまして、それぞれに対しまして所要の措置を講ずるわけでございますけれども、昨年度は立ち入りいたしまして措置した件数が八百四十二件、四十八年度には七百十六件でございましたけれども、下請の状況が非常に厳しくなっているということから、自然に違反の件数と思われます立ち入りを要する検査もふえてまいってきております。なおこの中には、先ほどの公取の書面調査のほかに中小企業庁の長官からの措置請求の件数が五件、それから下請業者からの申し出によって調査をするといった件数も五件ございます。このいずれの下請業者からの申し出というような件数も、従来はこれはほとんどございませんでした。下請業者が自分の方で、親企業者からこういうふうな取引条件についても不利な扱いを受けておるということを申し出ると後の取引に影響いたしますということで、下請の方は泣く泣くといいますか、名前を出さないということからそういう件数は比較的少のうございましたけれども、昨年はそういう件数も五件ございました。  立入検査をいたしまして、悪いものにつきましては、法律の規定に基づいて勧告をいたします。また、それに至らない程度のものでありましても、行政指導でもってこの法律に定められているような遵守事項を守らせるようにということをやらせております。  この法律の運用につきましては、下請関係と申しますのは非常に複雑な関係でございますので、どうしても法律でもって見る範囲というものは限定されております。そういう意味においては、この法律がまだ十分に下請関係全部をカバーしているという点等はないかと思いますけれども、少なくとも、この法律でもって下請関係として遵守事項を定められている親企業につきましては、私どもの方といたしましても、先ほど申しましたようないろいろな件数増加、あるいはまたは調査の方法を工夫するというようなことで、不況のしわができるだけ中小企業、下請業者に及ばないようにということでもって現在法律を運用している次第でございます。
  128. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの御答弁にありましたように、まずこの違反件数から申し上げましても、四十八年度の一千百五十から四十九年度の二千三百と、約二倍に違反数が伸びておるわけでございまして、この事実を一つ取り上げてみましても、いかに中小企業あるいは下請企業が今回の不況の、また、ほかの意味での波をかぶっているかということが明瞭になったわけでございますので、なお一層のこの点についての法の運営を厳正にしていただきたい、こういうふうに希望するわけでございます。  そこで、次のまた問題に移りたいと思うんですが、昨年末の不況に対して、政府系三機関の中小企業の融資規模というものが、四十九年度分の約二兆円に加えて昨年五月に千五百億、九月に一千億、年末に七千億と、こういうふうに追加をされているわけでございます。そこで、この三月にさらに五百億を追加したわけでございますが、今後とも融資規模を拡大をしていくということも必要であります。しかしながら、これから一番の問題は、これはもう返済面の措置をどうするかということが一番要請をされることだと思います。そこで、返済が困難と認められる業種の状況を勘案をしまして、できる限り猶予を考えていくべきではないか、こういうふうに思うわけでございますが、この点については中小企業庁としてはどういうふうにお考えでございますか。
  129. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 政府系の三機関につきましての貸付金の返済猶予につきましては、非常に要望が強いわけでございます。私どももこういった不況の実情にかんがみまして、どうしても返済が困難であるというような事業者が返済猶予を窓口に申し込んでまいりました場合には、その事情を聞いて、極力弾力的にそれに応ずるようにしてほしいということを再三三機関に通達をいたしまして、各支店並びにその代理貸しをやっております銀行へもその趣旨を徹底をするように指導をいたしておる次第でございまして、その結果、四十九年度の年間の返済猶予の件数が約三万件に上っておりまして、四十八年度が一万五千件でございましたので、倍増いたしております。
  130. 桑名義治

    ○桑名義治君 この件数から見ましても、中小企業がいかに不況にあえいでいるかということが、またこれは明瞭になってくると思います。中小企業対策としてはいろいろな面から措置をしていかなければならないと思いますが、この面につきましてもまた特段の御配慮を願いたい、こういうように思います。  そこで次に、中小企業振興事業団のことについて少しお伺いをしておきたいと思いますが、中小企業構造の高度化を促進するために中小企業振興事業団がその役割りを果たしていく、果たしているということは言を待たないわけでございますけれども、中小企業を取り巻くいわゆる環境の変化に伴いまして、振興事業団の機能もさらに一層重要視されていくことだと思います。果たして中小企業施策の新たな要請に対しまして、現行のままでその機能を果たしているかどうかということでございます。昨年小規模企業に対する高度化事業の新設、それから海外高度化事業の創設、さらには先進企業の持つ技術を中小企業に発展させるための技術交流促進事業に乗り出すなど、事業団の機能拡充が検討されたと、こういうふうに聞くわけでございますが、この点についてはどういうふうになっているのか、実態をお知らせ願いたいと思います。
  131. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 振興事業団は、中小企業の共同事業と申しますか、組織化を行いまして営みます各種の共同事業に非常に低利の資金融資をいたしまして、こういった合理化のための共同事業の推進を図っておる機関でございますが、その資金計画は、事業量で見まして、昭和四十九年度が千九百四十億の事業量を予定いたしまして、それに必要な助成額を予算計上いたしておったわけでございますが、昭和五十年度におきましては二千三百七十億で、二三%増しの予算を計上をいたしております。それによりまして製造業の、たとえば工場団地の造成でございますとか、商業で申しますならば中小企業者がみずから共同でスーパーマーケットをつくるとか、あるいは商店街の近代化、あるいは、いわゆる寄り合い百貨店というものを中小企業者がつくる場合の資金を非常に低利に供給いたしておるわけでございます。特に五十年度には、新しく幾つかの府県にまたがります高度化事業につきまして、従来と違って府県の負担を非常に軽くいたしまして、事業団が相当部分を分担をするというような形によりまして、幾つかの府県から中小企業が集まってきて、ある共同事業をするということをやりやすくしたのが一つの新しい点でございます。  もう一つは、小規模事業者のために、小規模事業者が入るべき工場団地を、工場の建物を先行して事業団がつくりまして、それをその中に入居する小規模事業者にリースをする、こういう制度を設けたのでございます。しかも、これは九〇%融資をいたしまして、そこに入居する人は一割の頭金を出せば入れる。しかも、事業団が三割、県が三割の分担、こういう制度によりまして、非常にこういった施設の利用が小規模事業者にとって利用しやすく今度なっていくんじゃないかと考えておりますが、こういった新しい二つの制度を今年度発足をさせることにいたしました。
  132. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、この振興事業団の件でございますが、さらに、この必要資金が事業団の資金一切で賄われていないことは、これは事実でございますし、各都道府県も資金を投入をしてその財源を賄っている、こういうことになるわけでございますが、今後とも事業団の機能の拡大、それとさらに加えて、昨年度あたりから盛んに言われております地方財政の危機、こういう両面から果たしてこの財源を確保することができるかどうかということが一つの問題点に上がってくるんじゃないだろうか、こういうふうに思うわけでございますが、その点についての措置をどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、そこをちょっと伺っておきたいと思います。
  133. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 振興事業団の資金は、ただいまお話しのように府県の出資分と国からの出資分が大体同じ額を、無利子の金を同じように出しまして、それに事業団の財政資金、利子のつきます財政投融資を加えまして、その三つの資金をソースとして融資が行われております。その結果、無利子の資金が非常に割合が多うございますので、総体として金利は大体二・七%でこの融資が行われておるわけでございます。  最近の地方財政の窮迫によりまして、府県側がことし予定されておる出資分を出していけるかどうかという点につきましては、確かに予算編成後に出てきた問題として非常に頭の痛い問題でございますが、昨年からでございましたか、起債を認めるような仕組みもできておりますので、極力こういうことを活用いたしまして、中小企業側の希望があります限りにおきまして、府県の財政の窮迫のために、融資が中小企業の要望にこたえられないというようなことのないようにいたしてまいりたいと考えております。
  134. 桑名義治

    ○桑名義治君 現在の地方自治団体の財政事情の窮迫というものは、これはいわゆる現金で調達ができないということと同時に、起債の額も非常に大きくなっておるというところにも大きな問題を含んでいるんじゃないかと思うのです。いわゆる自転車操業になっているところに問題があるわけでして、さらにこういう不況が訪れてくると、当然この中小企業対策等について一番負担をかけなければならないのは大都市ではなくて、そういうふうに非常に財政的に逼迫した市町村であることは事実である、県であることは事実であると思うのです。そういった意味から、果たしてこれが起債でもって補うことだけで事が処理をされるということは、ちょっと私は大きな疑問を抱くわけでございますが、さらに法改正なら法改正をここで行いまして、そして国と各地方団体との負担分を、負担率を変えていくという方向に持っていかなければならないじゃないか。  なぜ私はこういうことを申し上げるかと言いますと、地方財政というものは右から左へすぐに好転するということは考えられないわけです。それと同時に、また先ほどからの論議でもありますように、いわゆる景気の動向というものが急上昇するということもまた考えられない。そういう二面性から考えた場合には、この負担分の比率というものを変えていかなければならぬときがいま来たのではないかというふうに考えるわけでございますが、その点どうでしょう。
  135. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 高度化資金の国と県の出し方につきましては、出資分つまり無利子の金の出し方については、国と県が同額を出すというのが、この制度始まって以来十数年一貫した基本的な原則になっておるわけでございます。国も四十九年度につきまして歳入不足がございまして、五十年度もなかなか困難が予想されるわけでございまして、府県の分を仮に減らして、国の負担分を大きくするということにいたしますと、さらに国の財政負担がふえることになるわけでございますけれども、国の財政面も恐らく県と同様になかなか楽観を許さない面がございます。  したがって、もし県の負担を軽くするとすれば、国の出資分も同額に落として、いわゆる財投資金を増額するという形による解決の方向にいく可能性が非常に強いわけでございます。ということは、無利子の金が減りましで、利子のつく資金の割合が上がっていくということになるわけでございまして、現在の二・七%という融資金利がずっと上昇するということになる恐れがございます。そうなりますと、かえって中小企業者の負担を増加することになる面もございまして、そういう意味で、私どもとしましては、現在の金利水準を下げることは望まれても、引き上げるということについてはぜひ避けたいと考えておりますので、そういう意味で国の出資をふやすことも困難といたしますと、なかなかこの問題むずかしい問題を含んでおりまして、私ども非常に頭を痛めておるところでございます。
  136. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、長官が頭を痛めろと、これは解決方法がないということでございますな。そうすると、いわゆる企業の規模というものを非常に縮小しなければならないというときに来ていることにつながるわけでございますが、そうせざるを得ないのですか、方法としては。
  137. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) まあ一番早道と申しますか、そういった場合の資金不足を補う道は、やはり起債をふやすという道ではないかとただいまのところでは考えております。
  138. 桑名義治

    ○桑名義治君 その起債の道は、いわゆる利子が高くなるからだめだということになるでしょう。そういうふうなお答えをいまいただいたわけですよ。そうすると、もう方法としては縮小以外に手はない。ところが現在の不況下、あるいは近代化、あるいは企業の協業化ということをいろいろ考えてみると、当然この新しいそういう設備というものを必要にしてくるということになれば、これは非常にむずかしい問題でございますね。こういう問題に対して、大臣、どういうふうにお考えになりますか。地方団体は非常に財政的に逼迫している、国の財政も緊迫している、だからお互いに資金の持ち分についてはこれは比率を変えることはできない、五分五分でなければいけない。そうすると、あと財投でまかなう以外にない。しかし財投でまかなうとするならば、これは利子が高くつく。こうなってくると、本当にもう三者行き詰まりで、これはどうしようもないということになるわけです。そこで考えられることは、結局は事業を縮小する以外にはない。こういうふうな結論しか導き出すわけにいかないわけですが、どうです、大臣
  139. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 府県の方ともいろいろ話をいたしておりますが、起債によります分は、それを実際の融資に利子をかぶせることをいたしませんで、県がその利子分は負担をして、出資の形で出していただいておりまして、それはもちろん起債がふえますと、そういう意味での県の利子負担がふえますけれども、現在のところは起債分も、実際には金を出されるときには無利子の金として出していただいておりまして、現在の金利水準を維持をいたしておるわけでございます。
  140. 桑名義治

    ○桑名義治君 この問題については、まだ鋭意検討していただきたいと思います。  そこで、従来政府の中小企業対策の一環として近代化ということが非常に叫ばれてきたわけでございまして、また、近代化対策ということが中心であったといっても決してこれは言い過ぎではないと思いますが、中小企業の近代化というものは何をねらっていたのかという点が、私は不明瞭ではなかろうかというふうに思うのです。一口で言うならば、中小企業があまりにも多過ぎる、あまりにも小さ過ぎる、したがって、数を整理して統合をしていく、こういう具体的な方向づけがいわゆる近代化につながっているというふうにも見えますし、それから近代化の進め方のもう一つの分としては、協業化あるいは合併ですから、したがって企業を大きくしていくこともある、こういうふうな見方もできるわけでございます。実際には、中小企業の中でも比較的規模の大きい健全なところは、積極的に助成していく一方、そうでない企業は自然淘汰されて、そして切り捨て整理をするという選別政策、こういうふうな考え方もできるわけでございますが、いままでの近代化対策というものは、基本的な、根本的な方法ではなかったのじゃなかろうかというようないま疑問がわくわけでございますが、この点はどうですか。いわゆる近代化という意味は、実際は根本的な意味はどこにあったのでしょうか、ねらいは。
  141. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 従来の近代化促進法におきます近代化という場合に、一番力点が置かれておりましたのは、一つは設備の近代化、これによりまして生産性を引き上げる。もう一つは、新鋭設備が導入しやすいように、経営規模におきましても、合併なりあるいは協業化、共同化を進めまして、経営の規模なり方式の適性化を図る、こういうことによりまして、経営規模においてもあるいは生産規模においても、要するにいわゆる大規模の、規模の利益の追求ということを一つの手段といたしまして、生産性を向上し、コストを下げ、それによって大企業との賃金格差なり生産性格差を縮小を図る、こういうことが従来の近代化の一番中心の手段をなしておったように考えます。
  142. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、今回の近代化促進法の改正では、今日の中小企業を取り巻く環境問題を的確にとらえているというふうに考えてよろしいかどうか。  それと、従来の高度成長から現在は低成長経済というふうに、大きく中小企業を取り巻く経済環境というものも変わってきたわけでございますが、中小企業を取り巻く環境というのは、非常に複雑に変化をしていることは事実ですが、今回の改正によるいわゆる効果、あるいは中小企業業界における反応というものがどういう反応が出ているととらえておられますか。
  143. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 今回の改正の主な点は、一つは、従来のこの法律の対象になります業種の指定要件が国際競争力の強化、あるいは産業構造の高度化を目的とした業種ということでございましたけれども、さらに今度国民生活の充実、向上ということを目標とする私どもの生活と非常に関係の深い、私どもの生活を豊かにするような業種を対象にしてできるように指定要件を拡大を図ったのでございまして、これによりまして、衣食住だけでなく、文化、教養水準の向上でございますとか、健康の維持、促進とかいったような業種が指定できることになりまして、そういった中小企業の近代化が進められる点が一つの大きな効果であろうと存じます。  それから第二点は、発展途上国の追い上げ等によりまして非常に停滞しつつある産業につきまして、技術の開発を推進しまして、新しい産業分野に転換を図っていく、こういうことについての各種の助成措置を規定をいたしまして指導を行い、それによってより加工度の高い商品に転換を図っていくということにした点が大きな改正点の第二点でございます。  それからもう一つ、従来からの近代化業種等につきましても、特に今後は近代化計画の項目といたしまして、一つは技術の開発というところに非常に力を入れまして、単にでき上がった設備を買ってくるということよりは、新しい技術を開発していくということを近代化計画の大きな柱にいたしました点と、もう一つは、近代化計画の中に、従業員の福祉の向上でございますとか、消費者利益の増進の問題、あるいは環境の保全、こういったことを近代化計画の中に盛り込むべき項目として、配慮事項として計画に書くことによりまして、そういった面を十分配慮をしてまいれるようにしたといったような点が改正点の第三点でございます。  もう一つは、産地等におきまして、その業種だけではなかなか近代化が進まない場合に、関連部門ぐるみの構造改善計画というものを立てられるようにして、そういった関連部門にも助成措置を及ぼすということによりまして、構造改善がより進みやすくしたという点も改正点の第四点でございまして、こういうことを通じまして、今後の安定成長下での中小企業の発展を図ってまいりたい、こういうふうに考えた次第でございます。
  144. 桑名義治

    ○桑名義治君 業界の反応はまだわかりませんか。
  145. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 業界は、この審議会等でもお諮りいたしましたし、各界から意見を伺っておりますけれども、大変に歓迎をされておるように私は承知いたしております。
  146. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、今回の改正案では、従来の近代化基本計画と近代化実施計画を一本化して近代化計画と、こういうふうに統合したわけでございますが、この統合した主な理由というものはどういう理由でございますか。
  147. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 従来は年次別の計画と、それから五年先を決めました基本計画というふうに二つに分かれておりまして、年次計画を実は毎年毎年つくっておったわけでございますが、一つは、非常にこれの事務が繁雑で、年度末にならないとなかなかできないというような状況もございまして、むしろこれを統合いたしまして、機動的にローリングプラン的に必要に応じて改定を加えていくということによって、むしろ現実に即した計画ができるようにいたしたいというように考えました点が、基本計画と年次計画を一本にした主な理由でございます。
  148. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、この中身について少々入りたいと思うのですが、今回の法改正の中で「従業員の福祉の向上、」が挙げられているわけでございますが、その従業員の福祉向上の中で、特に一点お伺いしておきたいのは、中小企業者におきましては、いま一番悩みになっている事柄、これは衣食住の中の住、それと同時に、これは従業員一同が希望している自分の持ち家、こういうことが非常に大きな希望になっているわけでございます。そしてまた、こういう中小零細企業の経営者の方々も、今後従業員の足をとめるためには、この持ち家制度というものを会社の中でもつくっていかなければならない。これが非常に大きく従業員を確保する、あるいは足をとめる原因になるんだ、要因になるんだ、こういうふうに言っているわけでございましす。  大企業の方でも、最近は社宅をつくるということよりも、退職金あるいはまた会社の中のローンあたりで持ち家を建てて売り出すという事柄が非常に行われて、これは好評なんでございますが、中小企業にいたしましてもこういう制度、こういうことをやっていかなければ今後の人手を確保することができない。あるいはまた、こういう制度をつくり上げていくことそのものが中小企業の今後の発展にも大きな要素になっていくんだと、こういうふうな希望が強いわけでございますが、この「従業員の福祉の向上、」云々というふうに一項目挙がっておりますが、こうやったものを含めているのかどうか、その点もちょっと伺っておきたいと思います。
  149. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 近代化計画の中に盛り込んでもらいたいと思っております従業員の福祉向上関係といたしましては、労働条件の改善、作業環境の改善、あるいは福利厚生施設の整備でございますとか、レクリエーションその他健康管理関係と、こういうものをその業界としてどういうように持っていこうとするかということをその中に書いてもらいたいと実は考えておるわけでございます。  持ち家制度、持ち家の促進は、これは一番大事な問題でございますが、この点につきましては、いわゆる勤労者の財産形成制度というものが現在いろいろ進められておりまして、特にことし、さらにそれが法律の改正が行われましていろいろ内容が改善を見ております。  特に中小企業に関係の深い点で申しますと、この勤労者が財形貯蓄をいたします際に、事業主がこれに援助をいたしました場合には、その事業主の援助分を無税にする。それから、事業主の援助分に見合いまして国もプレミアムをこれに出す。これは小規模企業の場合には事業主の援助額の一〇%相当額を国もプレミアムをつける。一般の中小企業の場合には事業主が出した額の五%相当額を国も出すということで、この財形貯蓄をさらに促進をした点と、それから財形貯蓄によります融資は、従来は事業主に融資が出ておりましたけれども、持ち家促進の個人融資制度というものが五十二年から行われることになりまして、大体積み立てを三年いたしますと融資が受けられる、一千万円まで受けられることになっております。また郵便貯金、簡易保険、生命保険等も財形貯蓄の対象にするというようなことが今回改正が行われておりまして、こういった財形貯蓄制度の各種の措置の充実、改善によりまして従業員の持ち家制度というものが非常に前進をみるのではないかと考えております。
  150. 桑名義治

    ○桑名義治君 建設省の方か労働省の方おられませんか。——それではいいです。内容はわかりましたから、それで結構です。  そこでまた、中身に入りたいと思いますが、関連業種協調による構造改善制度についてでございます。  この改正案の構造改善事業において、従来の特定業種のほか、その周りの関連業種を含めたいわゆる関連業種協調型の構造改善制度を創設するということが一つの柱になっているわけでございますが、この制度を設ける理由及び効果についてまず伺っておきたいと思います。
  151. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 仮にたとえば、廃プラスチックを集めまして再生利用する業種を、生活関連業種ということで近代化業種に指定をいたしました場合に、一つは廃プラスチックを集荷してくる業者の協力が必要でございます。それから、集めてきた廃プラスチックをさらに機械にかけまして新しい別のプラスチック製品にかえるわけでございますけれども、そういう機械の開発、あるいは金型の開発というものが必要でございまして、それのためにはそういった機械メーカーの協力が必要なわけでございます。それから、でき上がりました新しいプラスチック製品を販売するにつきまして流通部門の協力が必要になってまいります。  こういうふうに、仮にの話でございますけれども、たとえばこういった例で考えてみますと、廃プラスチック再生処理業という業種があったといたしましても、なかなかその業種だけでは近代化の目的が達成されない面が多いわけでございまして、そういった集荷業者とか機械メーカーとか流通部門の協力があって初めて近代化が効果を上げる場合が多いかと思います。そういったケースが過去にも指定業種についてもいろいろございましたので、そういう経験にかんがみまして、関連業種ぐるみで構造改善計画を立てた方がより効果が上がると思われる場合には、そういう関連業種も含めた構造改善計画が立てられるようにいたしまして、そういう関連業種にも助成措置を及ぼすということによりまして、より近代化なり構造改善が円滑に進むようにいたしたい、こう考えまして、関連業種ぐるみの構造改善制度というものを新たに設けることといたした次第でございます。
  152. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの説明の中では、非常にメリットの分をお話しになったわけでございますが、そこで、じゃデメリットは何かということで頭を向けてみますと、関連業種というものは、特定業種に比べて企業の実態というものは非常に小規模であるということが考えられるわけでございます。そこで結果的には、特定企業本位の構造改善事業計画になりはしまいか、こういう恐れが一つあるわけです。したがって、そうやった場合を想定しますと、関連業種がいわゆる犠牲となる恐れはないのかということが一つ、これは二つ目ですね。それからもう一つは、関連業種が特定業種の加工下請メーカーであった場合に、親企業と下請企業という支配関係の固定化を促進していくのではないか、こういう心配があるわけでございますが、この点についてどういうふうにお考えでございますか。
  153. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 関連業種は、原料供給部門あるいは流通部門等々が関連業種になってまいりますので、逆の場合もあるわけでございまして、原料供給者の方が力が強い、したがって、そっちに特定業種が振り回されないかとか、流通部門が、大手商社ということは少ないかもしれませんが、商社の力が強くて、逆にそっちの方から買いたたかれるとかというような懸念もあるわけでございまして、そういう意味におきましては、関連業種と特定業種の関係はケース・バイ・ケースによりまして、特定業種が強い場合もあれば関連業種が強い場合もあろうかと存じます。そういう意味合いで、私どもがこの計画を審査をいたしまして認めていく場合に、共存共栄でうまくいくような内容になっておるかどうかということを、結局その計画のケース・バイ・ケースによりまして、十分に計画の内容を審査いたしまして、ただいま御指摘ございましたようなおそれがないような計画になるように指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  154. 桑名義治

    ○桑名義治君 私が心配したのは、一般的な見方としてはそういうことが言えるんではないかと思うんです。で、いま長官説明は、その反対の場合もあり得るということでございますが、一般的には私は、私の心配したような方向考えられるんではないかというふうに思うわけです。十二分に注意をしてということでございますが、ただ単にいわゆる言業の上のあやではなくて、十二分に実態面をつかみながら、配慮しながらこの運営に当たっていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、構造改善事業に対する助成措置の、いわゆる金融、税制について特定業種と関連業種に分けてどういうふうになっているのか、御説明を願いたいと思います。
  155. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 特定業種と関連業種では助成措置に若干差がございまして、特定業種の方が中心でございますので、助成措置が手厚くなっております。  まず、構造改善貸付制度と申しまして、この構造改善計画ができました場合に、設備資金につきまして中小公庫からは八・四%の金利の資金を貸し付けることになっておりますが、関連業種につきましては八・九%の、〇・五%高い金利の資金が貸し付けられることになっております。一般は九.四%でございますので、この場合でも一般よりは安い金利になっております。  それから、税制面におきまして、特定業種につきましては、その導入した設備につきまして二分の一の割り増し償却制度が五年間適用になりますけれども、関連業種の場合には、この割り増し償却制度が適用になりません。それ以外の、たとえば信用保険の面で近代化保険制度を適用するといった問題は、関連業種も特定業種も同様でございますし、技術開発関係についてのいろいろ税制面の優遇措置がこの法律に書いてございますけれども、これは全く平等に適用をいたしております。それから地方税におきまして、特別土地保有税を非課税にする、あるいは事業所税をかけない、構造改善のために取得した土地等につきましてですね。そういう点は差別なしに適用することにいたしておりまして、結局、中小公庫の融資の金利に若干の差があるという点と、割り増し償却制度が関連業種には適用がない、この二点が違っておる点でございます。
  156. 桑名義治

    ○桑名義治君 時間がもう大分迫ったわけでございますが、新分野進出計画制度についてまずお尋ねをしたいと思いますが、今回の改正は、中小企業が新たな事業分野への進出をするとき、これを積極的に助成しようとする制度でございますけれども、しかし、実際に進出をしようとするときには、二つ考えられると思います。それは経営が順調なときにいわゆる進出をする場合と、経営が非常に圧迫をされて新分野へ進出をする場合、この二通りが考えられると思うんですが、現在の経済動向の立場から判断をしますと、多くは後者、いわゆるその企業が圧迫をされたために新しい分野へ進出をしていきたいと、こういうケースが多くなってくるんじゃなかろうかというふうに考えられるわけです。そうなると、不況で資金繰りが苦しい中小企業等については、新商品の開発について資金調達面でさらに苦しくなっていくおそれが生まれてくるんではなかろうか、こういうふうに一つ心配をするわけでございます。この点はどういうふうに考えられておられますか、まずお尋ねしたいと思います。  またその場合、政府として資金面でバックアップはするものとしても、どれだけの企業なり、あるいは商工組合等が進出意欲を持っているのか、また、どれだけの企業が新商品等を開発していこうとする意欲を持っているというふうにとらえられているかということが一つです。  それからもう一つは、中小企業は産地性という一つの特徴というものを持っているというふうに考えられるわけでございますが、従来のものに固執する特性があるわけで、よほど政府としても進出しようとする企業等の側に立った制度利用というものを考えて指導していかなければ、こうやった制度が有名無実になってしまうおそれがあるんではないか、こういうふうに憂慮するわけでございますが、この点はどういうようにお考えですか。
  157. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 今回の白書でも触れておりますけれども、いま御指摘ございましたように、事業がある程度不振になりましてからの他の事業への転換というのは成功率が低いわけでございまして、順調な時代に、その勢いをかりまして他の分野へ新しい仕事を開発していくという場合が成功しておる率が高いように見受けられます。そういう意味合いからいたしますと、この新分野進出計画につきましても、余り行き詰まらないうちに、体力のある、余裕のあるうちに早く転換をしていただくように私どもとしては指導してまいりたいと考えておるわけでございます。  まず、これが適用になりますには、転換を促進する業種を指定することになるわけでございますが、これは私どもとしては、最近の発展途上国の追い上げ等によりまして需要が停滞しておる業種を優先的にまず指定をする、そのほか、生活様式が変わったりいたしまして、需要が伸び悩んでおるというような業種等も指定をいたしたいと考えておりますが、その指定された業種はもう将来性のない業種と、こういう意味では決してございませんで、要するに、業者の数が多過ぎてお互いに非常に苦しんでおられる。むしろいまの業者の数が大分、そのうちの一部が他に転換されれば残った方々は非常にゆっくりやっていける、そういう業種もできれば指定をいたしまして、他の部門への転換によって残った人も発展されるようなことを考えてまいりたい、こういうように考えておりますが、その業種の範囲がどれぐらいになって、そのうち、どれぐらいがこの計画を出してまいりまして新商品の開発に取り組むかという量的な面につきましては、なかなか見通しが困難でございまして、これからこの法律の施行によって、その申請の状況等を見まして、特に指導等も行いながら促進をしてまいりたいと考えております。
  158. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、もう一つ憂慮している問題は、現在の日本の産業の構造、機構というものがほとんど大企業の系列下に入っておるということが一つと、それからさらに中小企業が育った立場から見た場合、中小企業が新製品の開発を行った、あるいは企業化を進めている段階で、大企業がその分野に進出してくる場合が当然考えられるわけでございまして、大企業の資金販売力等で中小企業者の新分野での努力が全くむだになるおそれが十二分にあるんではないかという事柄でございます。この問題につきまして、先ほどから分野調整の問題が提起をされておりましたけれども、この問題も多少論議をしようと思いましたが、あと五分しかもうお約束の時間がありませんので、突っ込んだお話はできませんけれども、しかし、こうやった意味でこの法案がせっかくできて、いよいよ軌道に乗った、そして中小企業が新製品を開発をした、企業化を進めている、この段階で大企業がその分野に進出してきた場合の歯どめが、あるいは防止策があるかどうかという問題、ここまで考えなければいわゆる法律というものは完全に死んでしまうんじゃないか、こういうふうに考えているわけでございますが、この点についてどういうふうな対策をお持ちでございますか。
  159. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 新しい仕事といいますか、新商品を開発されるわけでございますので、いろいろな品物が今後出てこようかと思いますが、物によりましては成長性が非常に高いということで、大企業もそれをやろうというようなことになる場合もあろうかとは存じます。その場合も、お互いに競争し合って発展していかれることを期待するわけでございますが、特に大企業の進出のために、せっかく築いた新しい仕事が食われてしまう、そのために進出した効果がなくなる、こういうおそれがあるような大企業の進出があります場合には、これは非常に国民経済的に見て遺憾なことでございますので、私どもといたしましては、現行法をできるだけ活用いたしまして、行政指導等によりまして大企業の進出について適切な調整を加えたいと考えております。
  160. 桑名義治

    ○桑名義治君 現行法を最大限に活用してということでございますが、それはどういう法律をどういうふうに活用されるわけでございますか。
  161. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 一つは、中小企業団体法によります特殊契約の締結、あるいは団体協約の締結とこういうことでございますが、それを発動しませんでも、それをバックといたしまして話し合いを進めさせ、行政庁があっせんをする、こういうことによりまして解決を図るように努力いたしたいと思います。
  162. 桑名義治

    ○桑名義治君 お約束の時間が来ましたので、一応これで打ち切りますが、いずれにしましても、いま提起した問題は非常に重要な問題と思います。また時を改めて論議を進めていきたいと思います。  以上で終わります。
  163. 安武洋子

    安武洋子君 最初に、現在中小企業の深刻な実情に関連して、不況対策についてお伺いしたいと思います。  現在、中小企業信用保険法に基づく不況業種指定、これは長官は四十六とおっしゃっていましたが、四十五じゃなかろうかと思うんですけれども、四十五業種、これがいずれもこの六月三十日で期限が来ることになっております。多くの中小業者は果たして七月以降も継続されるのだろうかどうか、大きな不安を持っているわけです。私どものところにもたくさんの業種の方々、業者の方々が、継続を願う、こういう陳情に見えておられます。いま中小企業は、私が申し上げるまでもなく、経営は依然として好転の兆しもなく、不況な状態が続いているわけです。ですから、当然いまの業種については引き続いて不況業種指定を行うべきだ、こういうふうに思いますけれども大臣いかがでしょうか。こういう継続、していただけますでしょうか。
  164. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 一応現在の指定業種は六月末で切れることになっておりますけれども先生御指摘のように、依然として不況は深刻な状況にございますので、私どもといたしましては、でき得ればこれを延長いたしたいと考えまして、現在検討中でございます。もちろん、現在の指定業種全部を延長するか、その中である程度もう目的を達した業種もあろうかと思いますので、全部の延長ということにはならないと思いますけれども、必要なものについては延長したいという方向で現在検討中でございます。
  165. 安武洋子

    安武洋子君 ぜひ延長の方向で結論をお出しいただきたいと思います。  それから、続いて伺いますけれども先ほど長官の発言の中でもありました民間金融機関による中小企業救済特別融資制度です。これが五百五十億予定されている、こういうことを御発言なさいましたけれども、この制度の活用の仕方について、これに関連してお伺いしたいわけです。  この制度は、どういう方法で中小業者にお知らせになっていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  166. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) まあ組合を通じまして、工業会とか組合を通じまして取りまとめることにいたしておりますので、そういった機関を通じて中小企業者の方に内容を流しでおります。
  167. 安武洋子

    安武洋子君 それで私のところにも、新聞報道で見たけれど手続がわからない、こういうお問い合わせが来ているわけなんです。私は、この全中小業者にやはり知らせるためにも一般の新聞などに広告すべきでないか、こういうことをひとつお伺いいたします。  それから、それとあわせて所轄官庁における認定の期限ですね、これが六月十四日と、こういうふうになっているのですけれども、これではいまからでしたらもうわずか十日ほどしかないわけです。これでは中小零細業者が知った時分には、もうすでに期日が過ぎてしまっている、こういうことになろうかと思うんです。現にこの前の三月のときにもこの問題が起こって、私どもの党から延長を通産大臣あてに申し入れいたしましたけれども、今回についても期限延長を図るべきだ、こう  いうふうに思いますので、この二つの点について御答弁をお願いいたします。
  168. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 周知の方法につきましては、私どもの方のプレスのクラブに実施要領を発表いたしまして、新聞各紙に書いてもらうことを期待したわけでございますが、一部の新聞で書かない新聞もあったようでございますけれども日本経済新聞その他には出ておったと思います。それから府県にも全部通知をいたしておりますので、府県等からも関係の必要な向きにはお知らせが行っておるかと存じます。この周知の方法につきましては、不十分な点は十分配慮してまいりたいと思っております。  それから、急いで融資を実行いたしたいと思いまして、一応六月十四日までに申請を出していただくようにお願いをいたしておりますが、そういった周知漏れ等で漏れがあります場合は、その期限におくれましても取り上げてまいりたいと思っております。
  169. 安武洋子

    安武洋子君 ではいまのは、手続などさらに親切に知らせる方法という点で、今後もう少し周知の方法についてもお考えいただきたいということで、ぜひ、これを知らなかったということで漏れた業者については、期間を延長していただきたいということをお願いしておきます。  次に移らせていただきます。  次は、私が二月の二十七日のこの委員会で、同和担当経営指導員です、これをめぐる問題で質問をいたしましたので、その点でお伺いをしたいと思うわけですけれども、この経営指導員、それからあるいは同和担当の経営指導員、この重要な役割りというのは、これは改めて言うまでもないと思うのです。先ほど長官の御発言の中で、この経営指導員の問題については御発言ございました。これはやはり近代化、それから協業化、組織化、こういうことなどを推進していくというところにその任務があると思うのです。これは中小企業庁発行の「中小企業施策のあらまし」、この中でも明らかにされているんですけれども、こういう点基本的な点ですので、このようにお考えかどうかということを確認させていただきます。
  170. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 経営指導員は、小規模中小企業者の相談相手となりまして、金融、税制、それから経営一般、労務管理、もろもろにつきまして相談にのりまして、その経営の改善にまあ助言をし、指導をする役割りを持っているものでございまして、極力この人員を増加し、質を向上させ、これの活躍によりまして小規模事業者の経営の改善を図ってまいりたいと考えております。
  171. 安武洋子

    安武洋子君 それで、私が二月の二十七日に当委員会で質問いたしましたその内容は、兵庫県における解同朝田派が同和担当経営指導員、これをめぐる横暴な人事管理をしているということを一つ取り上げたわけです。それから金融制度の不公正な運用実態、これも明らかにしたわけです。この件につきまして、大臣もそれから長官も、調査をするということで約束をしてくださっております。それは商工会議所なり県を通じて調査をすると、そうしてこの調査結果につきましては先日、五月二十二日ですけれども、真砂小規模企業政策課長さんが私の方に口頭でお答えになっておられます。その報告内容というのが私は大変遺憾だと思うわけですけれども、事の重大さにもかかわらず、事実上私がこの席でも再三申し上げましたように、共犯者の立場に立っている兵庫県当局、ここにだけ調査をされているわけです。明らかに、商工会議所を通じても調査をするという御答弁にも反します。そしてきわめて私はでたらめな調査、こういうふうに思わざるを得ないわけですので、改めて約束どおり商工会議所なり関係方面にも再調査をしていただきたい、このことを一つ要求します。  そして、きょう私が改めて一つの点についてここでお伺いをいたします。これは、おたくの方からのお答えに対しての私の質問なんですけれども、これでは、おたくの方では同和担当経営指導員、この日常の業務管理が解同の一つの組織である兵企連に集中管理されている、こういうことについて、人事管理については兵企連の方にお任せをしております、こういうお答えをいただいたわけですけれども、改めて、そのようなことであったかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  172. 小山実

    政府委員(小山実君) 先般の二月二十七日の委員会では私が先生の御質問にお答え申し上げましたので、私からお答えをさせていただきますが、真砂課長から先生に御報告しましたように、先生の御質問を受けましてから早速兵庫県庁に連絡をいたしまして、県庁の幹部から再三にわたりまして事情を聴取いたしました結果を先生に御報告をいたしたわけでございますが、その際に、いま御指摘のございました経営指導員の集中管理の問題も含まれておったわけでございますが、これにつきましての調査結果では、要するに、経営指導員につきましても、同和企業連と連携をとりながらある程度業務を行わせているという兵庫県の報告でございます。ただ、兵庫県の話でございますと、企業連と連携をとりながら行っている経営指導員につきましても、その指導は、企業連への加入、未加入企業の区分なく地区企業全体に対して指導を行わせていると。それから指導実績等についても、必ず商工会議所等を通じて報告をさせるとともに、指導に要した経費はそのつど請求、支払いを行うというふうなことをしておるわけでございまして、一部の地区企業に対して指導と施策の恩恵を与えてないというものがあるならば、兵庫県としても今後十分注意と反省を促したいということでやっております。
  173. 安武洋子

    安武洋子君 私がお伺いしておりますのは、私の方にお答えいただいたのは、人事管理については兵企連にお任せをしているということで、人事の集中管理を兵企連に任せているということを御答弁いただいたと思うんですけれども、間違いございませんね。再度お伺いいたします。
  174. 小山実

    政府委員(小山実君) お話のとおりでございます。
  175. 安武洋子

    安武洋子君 私は大変なことだと思うんです。私は前の委員会でも申し上げましたように、商工会議所の職員なんですね。そういう商工会議所の職員が全くの任意の団体であるそういう兵企連に日常的に人事管理をされている、こういうことが一体行き過ぎでないのかどうか。私はこの点、大臣にお伺いいたします。——大臣にお伺いいたします。
  176. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先にちょっと事実関係を……
  177. 安武洋子

    安武洋子君 事実関係じゃございません。
  178. 小山実

    政府委員(小山実君) 任せているという表現が非常に俗な表現でございますのでいろいろ……
  179. 安武洋子

    安武洋子君 集中管理をしているのですからね、現実に。
  180. 小山実

    政府委員(小山実君) 物議をかもすおそれがあるかと思いますが、要するに、あくまでも経営指導員の管理の主体と申しますか、責任を持っておるのは商工会議所なり商工会でございまして、ただ、その一部を企業連に実際上任せておるということでございますが、それについてのやはり最終的な責任というのは商工会議所なり商工会が負っているわけでございまして、本当に白紙で任せっ放しで何もしてない、その事後のチェックもしないということであれば、これは非常に問題であろうというふうに思います。
  181. 安武洋子

    安武洋子君 どうしてこういう人事か——商工会議所が責任を持っているのですか。現に商工会議所は責任を持っていない。当たりまえなんです。集中管理をされていて、兵企連がこの人たちの人事管理をしている。こういうことが正しいですか、正しくないですかということを私は原則的にお伺いしています。——大臣にお尋ねしております。大臣にまだお答えいただいておりません。
  182. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 現実の問題はいま次長が答弁をしたとおりでございまして、この運営等につきましては、県とも今後も十分相談をいたしまして、万全を期していきたいと思います。
  183. 安武洋子

    安武洋子君 万全でないから私が再三申し上げて、おたくの方の確認された時点でも、やはり商工会議所の職員である同和の経営指導員が企業連に人事管理をされているのですよ。これ、正しいのですか、こういうことをしてもいいんですか。単なる任意の団体、これは別にどの団体でもいいんですか、こういうことをしましても。
  184. 小山実

    政府委員(小山実君) 兵企連が管理をしているという問題のその言葉意味がいろいろあるかと思いますが、先生もこれは十分御存じかと思いますけれども、同和行政と申しますのは非常に複雑な問題でございまして、その地区の実態等に即して十分関係団体等とも連携をしながら事業を進める、こういうことになっておるわけでございまして、兵庫県もその趣旨に即して、従来から兵企連と連携をしながらその仕事を進めてきた、その結果ある程度そういう集中管理と申しますか、事業の経営指導の一部が兵企連で行われている事態が出てきておる、こういうことでございますが、この問題につきましては兵庫県の方も、いろいろ最近の状況から見まして、もしその施策等について具体的に問題が起こりましたらば、この辺の改善については慎重に検討をしていきたいということを、兵庫県知事も県会で答えられていることでもございまして、まあこういう趣旨に沿った兵庫県の今後の努力を、われわれとしてもお手伝いしながら今後も見守っていきたい、こういうふうに考えております。
  185. 安武洋子

    安武洋子君 県の方針とか実情とかにこれはかかわりのない問題です。基本的な逸脱じゃないですか。私は端的にお伺いしますけれども、兵企連がこういう同和担当の経営指導員を集中管理しているということは、通産省としては、これは基本的な逸脱だとお認めにならないのですか。そこをはっきりしてください。
  186. 小山実

    政府委員(小山実君) 先ほど申し上げましたように、あくまでも経営指導員の設置管理の責任を持っておるものは、商工会議所なり商工会でございますので、それが管理者として何らその事務を行ってないということでございましたら……
  187. 安武洋子

    安武洋子君 管理者のところから離れて、ほかで集中管理されておるのです。それでもいいですか。
  188. 小山実

    政府委員(小山実君) それは先ほど申しましたように、経営指導員が必ずしも商工会なり会議所にいつもおるわけじゃございませんので、場所によりましては、現地に駐在して仕事をやっておる場合もいっぱいございます。問題は、場所から考えて見ましても、それは管理者としてもちゃんと報告をとるとか、要するに出勤等についても、チェックするとかいろいろなことが行われているかどうかということで決まる問題であろうと思います。
  189. 安武洋子

    安武洋子君 じゃ、ほかの団体がそういうことをしてもいいんですね、よろしゅうございますね、同じようなことをしてもいいんですね、その点もはっきりしておいてください。
  190. 小山実

    政府委員(小山実君) この問題につきましては、各会議所なり商工会がどういう団体にどの程度のことを、場合によればお願いをするのが妥当であるかという問題でございまして、これはケース・バイ・ケースでいろいろ事情によりまた違うことであろうと思いますが、絶対に仕事を全部みずからの場所でやらなきゃならぬということは、必ずしも必要ではない場合もあるだろうというふうに考えております。
  191. 安武洋子

    安武洋子君 だれも場所の問題で言っておりません。そして、商工会議所や商工会が依頼したんじゃないことは明白なんです。ただ、こういうふうに任意の団体が暴力を背景にして人事管理をしているということについて一体どうなんですか、これを政府は容認なさってお見過ごしになるんですかどうか、この点だけはっきりしてください。
  192. 小山実

    政府委員(小山実君) いつ、いかなる場合におきましても暴力はいけないわけでございますが……
  193. 安武洋子

    安武洋子君 そんなこと聞いてないです。
  194. 小山実

    政府委員(小山実君) この兵庫県の場合におきましては、兵庫県が同和行政の実施に当たりまして、その唯一の同和団体であった兵企連と連携をしながらその事業を進めてきた、こういう歴史的なと申しますか事実に基づいて、逆に今日そういういろいろな意味の問題もまた出てきている。そういう事態に合わして、また兵庫県としても今後これは改善を進めてまいりたい、こういうことでございますので、その努力をわれわれとしては見守りたい、こういう趣旨でございます。
  195. 安武洋子

    安武洋子君 兵庫県がそういう努力をするのに、通産省はどうされるんですか。兵庫県にそういうことを是正するようにという指導ぐらいはされますか。
  196. 小山実

    政府委員(小山実君) 先ほども申し上げましたように、この委員会における先生の御指摘も兵庫県に伝えましたし、兵庫県もそれを受けて、先ほど申し上げましたように、経営指導員の指導について一部対象に漏れがあるというような報道があるならば、それは今後是正をしていきたいということを言っているわけでございまして、兵庫県はその趣旨に沿って今後是正の努力をされることと思っております。
  197. 安武洋子

    安武洋子君 お答えの趣旨がもうちょっと判然としませんけれども、こういう兵企連が人事を集中管理している、こういうゆがみについて、通産省は是正するようにということで指導されますかどうか、これが一点です。そして私への答弁の中でも、やはりこれは補助金が出ているわけですからね、こういう正しくない状態については補助金は打ち切るべきだ、こういうことも会計検査院の方がおっしゃっているわけです。こういうことをなさる御意思ございますか、この点二つお伺いいたします。
  198. 小山実

    政府委員(小山実君) 経営指導員に対する助成の問題でございますが、経営改善普及事業と申しますのは、地方公共団体がいわばその固有の業務として当然できるわけでございますが、そのうち、一定の準則に適合したと申しますか、たとえば、経営指導員についてはこういう資格を持っている者でなければ任用できないとかいろいろな基準を設けまして、そういう基準に合致して行われる経営改善普及事業について、国といたしましても、中小企業振興上非常に結構であるということで、その県が商工会なり商工会議所に補助をいたします場合に、国がその一部を補助する、こういう仕組みになっておるわけでございまして、国といたしましては、補助金を交付する役所という立場から、この補助金が適正に使用されるようにという意味での、県を監督と言いますか、を行う必要があるわけでございます。しかし一方、その県におきましても、本来中小企業の振興というのは固有の業務としてやっているわけでございますから、地方自治の本旨と申しますか、そういう面からその監督につきましてはおのずから国として一定の限度があると。ある補助金の適正な使用を越える問題につきましては、これははっきり監督官庁として、交付を取りやめるとか返還をさせるとかいうことは必要でございますが、それを越えたと申しますか、もっといろいろ細部の問題につきましては、これは趣旨の問題ということになりますと……
  199. 安武洋子

    安武洋子君 的確に答えてください。
  200. 小山実

    政府委員(小山実君) 直ちにそれを適合しないからといって、返還とかどうということにはならない問題だろうと思いますので、この辺のところは、地方公共団体のある程度自主性を尊重しながら、また、この制度の本旨に合うようにということでしかるべく善処していくということが限度であろうかというふうに考えております。
  201. 安武洋子

    安武洋子君 本旨に沿っておりませんし、それから私がもう一つ聞きました、指導をなさるかどうか、通達なさるかどうか、御返事なさっておられません。答弁漏れです。
  202. 小山実

    政府委員(小山実君) それから、集中管理しているのをやめろという通達を出す意思があるかということでございますが……
  203. 安武洋子

    安武洋子君 指導される意思があるかどうか。
  204. 小山実

    政府委員(小山実君) はい。これにつきましては、兵庫県等におきまして、そういう兵企連と連携をしてやってきたという過去の歴史的事実もございまして、また、それが同和対策の推進からプラスであるということでやってきたという歴史的事実もございます。ただ、それに伴う弊害につきましては、今後改善に努力するということでござ.いますから、その努力を今後見守るというつもりでございます。
  205. 安武洋子

    安武洋子君 じゃ、通産省は何もなさらないんですか、いまのお答えならそういうことになりますけれども。じゃ皆さん方は、この委員会でお答えになることに責任をお持ちでないんですか。私、読み上げますけれども、この前に私が質問申し上げたときにどうお答えになっていらっしゃるでしょう。この「経営指導員を設置するのは商工会、商工会連合会あるいは商工会議所でございますので、その管理についてはそれぞれその設置に当たる商工会、商工会議所、商工会連合会等が当たるべきものと考えております。」と、これが一つですね。そして、「御指摘のようにいろいろな問題がございますならば、これはまたしかるべくその補助金交付の趣旨に沿って県を通じて是正をさせる必要がある、こういうふうに考えます。」とか、あるいは「集中管理をされているかどうかというのは、これから調査をいたさなければわからないわけでございますが、要するに会議所が管理者としての責任を全然果たし得ない状態にあるということであれば、これは是正をさしていく必要があると思います。」と。また大臣もお答えになっていらっしゃるわけです。「事実につきまして兵庫県及び商工会議所から正式の報告を至急させまして、」、まあ至急じゃちっともないわけですけれども、「その上で善処をいたします。」。善処なさらないんですか、大臣にお伺いいたします。
  206. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 事実関係につきましては若干触れたわけでございますが、先般、課長がお話をしたとおりでございまして、現状につきましては私どもも満足をしておりません。まあそういうことでございますから、今後とも県の方もだんだんと改善をしていきたい、こういうふうに言っておりますから、十分連絡をとりながらもう少しよくなるように指導していきたいと思います。
  207. 安武洋子

    安武洋子君 やっと指導するというお答えが出ましたけれども、私は、通産省としてなぜこんな明らかな逸脱についてはっきりとした指導をするということをさっさとお答えになれないのか、大変不思議に思うわけです。私は、必ずこういう点については、通産省として責任を持って兵庫県を指導していただきたいということを強く申し入れて、次の質問に移らせていただきます。  次は、近促法についてお伺いいたします。  中小企業の近代化そのものについては、私は、これは中小企業の安定とそれから企業者、それから従業員の生活、これを守るために非常に重要だというふうには思うわけです。しかし、この近代化施策を講じる基礎的な前提が要ると思うのです。それは第一には、中小企業者の過半数の意思が反映されて、自主的で民主的な計画内容にして、政府などの一方的な押しつけにならないようにする、こういう配慮と、それから第二には、近代化の意欲を持つすべての中小企業者が近代化を進められるように国の施策を講じる、こういう二つのことを考慮すべきだと私は思いますけれども大臣、いかがお考えでございましょう。
  208. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) この近代化促進法によります中小企業の近代化は、なるべく必要な業種に広く均てんをさせまして、また、事業者についても、零細な業者が抜けて大きな業者だけが近代化を行う、こういうことも望ましいことではございませんので、構造改善業種の場合には、業界ぐるみということで、その業界の過半数がこの計画に参加しておるということを一つの認可の要件にいたしまして、ごく少数の一部の人の計画にならないように配慮をいたしておるところでございます。
  209. 安武洋子

    安武洋子君 いま私が申し上げたこの二点ですね、この二点について、これは考慮すべきじゃなかろうかどうかということをお伺いしているのです。端的にお答えいただいたら結構です。
  210. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 先生の御指摘のとおりに配慮すべきものと考えております。
  211. 安武洋子

    安武洋子君 新分野の進出事業についてお伺いいたしますけれども、今回の改正案で新分野進出計画制度、これが設置されておりますけれども、この制度を設けられた目的、これを御説明ください。
  212. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 発展途上国等の追い上げによりまして、非常に労働集約的ないわゆる雑貨、繊維その他の業種におきまして、最近輸出が不振になったとか、あるいは輸入がふえてまいりまして、自分たちの生産する商品の売れ行きが落ちておる、こういう業種はだんだんふえてまいっております。発展途上国の追い上げ等に対応、対抗しまして、こういった需要の停滞しておる産業がさらに伸びていきますためには、事業者が伸びていきますためには、新しい成長性の高い商品を開発をしてそういう新しい仕事の方に漸次転換をしていくということが、中小企業の長い目で見た発展のために必要であろうと考えられるわけでございまして、そういう趣旨におきまして、まあ停滞的な産業に属する事業者の成長産業への転換を助成しようというのがこの制度を設けた趣旨でございます。
  213. 安武洋子

    安武洋子君 要するに、中小企業の存立できる分野を拡大していくというのがこの法の目的ですね。
  214. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 分野と申しますとやや語弊がございますけれども、ここで考えておりますのは、新しい商品、新しいサービス等を技術開発等によりまして生み出して、そういうものを供給していくように進めていきたいということでございます。
  215. 安武洋子

    安武洋子君 いまおっしゃったようなことなら、私は非常に積極的な施策ではなかろうかというふうに思うわけですけれども、しかし、中小企業がこの制度を利用して新しい商品を開拓するとかそういうことをした場合でも、大企業がその分野に進出してくれば何もならないわけですね。これは十分に予測されることです。これは先ほどからも討議になっておりますけれども、改正案では、新分野への進出に対しては一定の助成措置を講じていく。しかし、中小企業が進出した分野に後から大企業が割り込んでくる、これについては触れておられないわけです。法の目的というのが、やはり中小企業の存立する分野を拡大していくんだ、新しい商品が開拓できるようにそういうことを配慮していくんだと、こういうことになれば、法の趣旨をやはり生かすということになれば、大企業が後から割り込んでくるのについてはこれは規制すべきではないか、このように思うわけなんです。政府としてはどういう措置をとられるのかということをお伺いいたします。
  216. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) この法律によりまして、新しい商品の開発を助成をし、技術の開発ができましたならば、それの企業化について助成をし、また、古い設備の廃棄についても助成をすることにいたしておりますが、その新事業が軌道に乗りました場合に大企業がその分野に割り込んでくるということにつきましては、まあそれが非常に成長性のある分野で、中小企業と大企業が共存共栄できる場合には問題が少ないかと存じますが、大企業の進出によりまして、中小企業がせっかく開発した分野が食われてしまって、過去の投資が死ぬというようなおそれがあるような大企業の進出が将来起こります場合には、その大企業の進出については行政指導をもってこれを調整して、その中小企業の開発した分野を余り食わないように十分配慮いたしたいと考えております。
  217. 安武洋子

    安武洋子君 行政指導については、先ほどからここの中の質疑の中でも、行政指導は効果を上げないんだというふうなことがもう明らかになっていると思うのです。それは特殊契約一つとっても、いままで一件も発動された例はないし、それからいま実態が、この中小企業性業種に次々と大企業が進出してきている。中小企業が苦況に陥っている、このことを見ても私はわかると思うのです。  それから立法化についても、先ほどからの御答弁を聞いておりますと、大企業を規制すれば中小企業の競争力が弱まる、そうして保護の中にあぐらをかくんだ、こういうふうなことをおっしゃっておられますけれども、果たしてそうか。私はそうじゃないと思います。競争とおっしゃいますけれども、資本力などで圧倒的な力を持っている大企業です。片方は不況にあえぐ中小零細企業なんです。とうてい太刀打ちできるものでない。初めから競争にならない。結果ははっきりわかっております。そうして、過保護になるとおっしゃいますけれども、私は過保護は大企業。いま税制面でもそれから融資面でも、大企業に対しては大変至れり尽くせりです。この中で大企業は非常に技術を開発もさせておりますし、もうけも増大させているわけです。私は、中小企業の技術を本当に進歩させよう、こういう姿勢に立たれるなら、企業の安定を願われるなら、やはり大企業の進出を抑える、その立法化をすべきだと思いますけれども、御答弁をお願いいたします。
  218. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) まあ大企業がやります場合は、通常は非常に量産効果の上がるような大規模の設備を投入するような商品が多いかと存じます。ここで新分野の開発と申しましても、非常にいろいろな商品が考えられるわけでございまして、何が今後ここで開発をした結果飛び出してくるかわからない。それは、恐らく中小企業が最も得意とするような商品が私は多いんだろうと思いますが、その新商品が出るたびごとに、それを大企業が手を出しちゃいけない分野ということで固定をしていくということは、経済の発展という意味でむしろデメリットの方が多いんじゃなかろうか。そういう意味におきまして、新しい商品の場合にはいろいろそういった競争をやってもらいまして、中小企業が十分それで発展する分野も相当多いんじゃないかと思うわけでございます。特に、やった結果大企業が出てきて問題が起こるというようなケースが出ますならば、それにつきましては現行法をできるだけ活用し、行政指導をフルに行いまして、大企業の進出をある程度遠慮してもらうというような結果になるように努力をいたしたいと考えております。
  219. 安武洋子

    安武洋子君 長官の御答弁は、大変大企業サイドだと私は思うわけです。いま大企業による中小企業性業種への進出というのはどんどん増加しているわけですね。お豆腐とか軽印刷業、クリーニング、じゅうたん、かまぼこ、それから鏡、ネジ、ちり紙、野球用のグローブ、菓子、家具、まあだんだん拡大されている一方なんです。  私、一つ具体例を挙げますけれども、最近、楽器の二大メーカーですね、日本楽器製造とそれから河合楽器、これが業界のほとんど零細業である家具の分野に進出をしてきているわけです。日本楽器製造、これは資本金約五十億円、世界最大の楽器会社です。それから河合楽器も資本金が三十六億円、こういう大企業です。両社でピアノ市場の九〇%を占めているわけです。日本楽器は、全国八カ所に直営店を置いて、直接販売方式で初年度には五十億円の売り上げを目標にしている、こういうことを聞いております。それから、河合楽器もすでにユニット家具を販売しております。これは月に一億円の売り上げになっている。そして、この六月から本格的に家具に進出する、こういうことを言われているわけです。  木製家具業、これ家具の生産地の一つに神奈川県があるわけですけれども、そこの四十八年度の総生産額が百十億円です。ですから、日本楽器と河合楽器と合わせまして本格的に進出したら、これに匹敵する額を占めるわけです。しかも約一万二千企業、こう言われる家具業界、その七五%が九人以下の零細業なんです。ですから、二十人以下の企業で七〇%を占めている、そういう状態ですけれども、これではとうてい競争とは言えないわけです。それから、木製家具というのは四十九年度から知的集約化の構造改善事業、これに取り組んでいるわけですけれども、このような大企業の進出を放置しておきますと、技術の進歩どころでない、逆に経営基盤そのものが覆される、こういう状態になると思います。私はいま家具業界、これを実例に挙げたわけですけれども、いま設備力、資本調達力、販売網すべてに大きな力を持った大企業、これを規制しなければ、私は、中小企業が新しい分野に進出してもこれは根底から覆されてしまう、中小企業の存立分野を拡大することにならない、そのためにもぜひこの立法化が要るというふうに思いますので、重ねてお伺いいたします。
  220. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 家具は、私はやはり今後の成長産業であると存じますし、今後もいろいろ需要の多様化によりまして新しい家具等も出てまいるかと存じます。その場合に、日本楽器等のピアノ等で習得しました技術を家具に応用いたしまして、進んだ家具を供給されるということは、それに刺激されて、また、中小企業がつくっております家具の製品の品質の向上というものが、その競争によって期待できるんじゃないかと考えるわけでございまして、こういう業界には大企業が  一切出てきちゃいけないというようなかきねをつくること自体が、むしろ家具業界の近代化意欲をそぐことになるんじゃないかと考えるわけでございまして、たとえば、家具は一面でスウェーデンその他から相当輸入がございますけれども、もし大企業の進出を抑えるとしますと、輸入もとめなければおかしくなります。一方で、家具は相当現在輸出をいたしておりまして、輸出産業として国際競争力を持っていくには、やはり、国内で大企業との競争がなくて、中小企業だけであぐらをかくということは、国際的に見て競争力を失うおそれもあるわけでございまして、私はやはり、現在の国際化の中で中小企業が発展するにはある程度の競争は必要であろうと。その場合に、家具業界がさらに近代化をされるための助成措置は、低利の資金融資その他、あらゆる助成を惜しまないつもりでございまして、たしか近代化促進法でもこの構造改善業種に指定をいたしまして、いろいろ近代化を図っておる業種であるというふうに考えております。
  221. 安武洋子

    安武洋子君 私はいま、何のために家具の例を挙げたか、おわかりじゃございませんのでしょうか。どうして大企業と零細中小企業が競争といって、そういう立場に立てるでしょうか。資本力からして何からして全然違うじゃないですか。現実を見てください。大企業が進出してきたところで中小企業が競争によって伸びている、そういう実例があるなら挙げていただきたいと思います。
  222. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) たとえば、いろいろ電子製品等が大企業等が技術開発をいたしまして、電子機器が非常に日本は得意な分野になってまいりましたけれども、同時に、その部品その他はずいぶん中小企業が生産を分担をいたしておりまして、結局そういうふうに大企業が技術開発をして、それを中小企業が生産を分担するとか、いろいろなそういう形があるわけでございます。ですから、お互いにこういう刺激し合っての技術開発ということが非常に大事な点でございまして、これは中小企業だけがつくる商品、大企業だけがつくる商品——大企業だけがつくる商品というのはおかしいかもしれませんが、というようなかきねを設けることは、やはり私は、技術開発の促進という意味ではマイナスの面が多いんじゃないかというふうに思っております。
  223. 安武洋子

    安武洋子君 いかに長官が大企業サイドに立った御発言をなさるかということが、しみじみとわかるわけなんですけれども、それでは中小企業は、そういう長官では救われない。今度の近促法、こういうものを出して、いかにも中小企業の技術を促進するんだというふうなことをおっしゃっても、それは私は実らないと思います。  それから次に、私、新分野の進出計画の承認基準、こういうものについてお伺いしたいと思うんですけれども、この承認基準はどのように考えておられますでしょうか。
  224. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) その計画が出てまいりましたときに、その商品が将来需要が拡大するということが期待ができて、その商品を営む場合に、経営の安定が見込める、それから資金計画が適切であるとか、それから、新分野でその計画をしております中小企業者の能力が有効適切に発揮される見込みがある、その商品が国民経済なり国民生活に適するというような商品であることとか、もう一つは、それが企業化されました場合に、現在のやっておられる事業の大部分が、その新しい商品の分野にかわられるということを目的としておることが、承認の基準として私ども考えておるところでございます。
  225. 安武洋子

    安武洋子君 改正案の第五条ですね、これでは、新分野進出計画について、「新商品の開発等による新たな事業の分野への進出のための試験研究の実施又はその成果の企業化、需要の開拓、進出促進業種に属する事業の用に供している設備の処理その他の事業」、こう規定していると思うのです。この「試験研究の実施」、こういうのは新分野進出企業にとってかなめになってくると思うわけですけれども、試験研究といっても基礎研究、それから応用研究、開発研究または企業化試験、いろいろあろうかと思うのです。進出していった中小企業の経営の安定、これが確保されると認められるということが承認基準となるということですけれども、新商品の開発の見込みが立っていることが必要だ、こういうことだと思うんです。ということであれば、試験研究の実施というのは、計画申請どきでは、普通どの程度まで必要とするのかということをお伺いしたいわけです。少なくとも応用研究までは済ませていると、こう考えてよいものでしょうか、どうでしょうか。
  226. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) これは、この計画で企業化までをある程度見込んだ計画ということでございますので、全くこれから基礎研究を始めますというような計画では困るわけでございまして、ある程度基礎研究等は終わりまして、むしろ企業化的な研究段階というふうなところの研究をやって、それから企業化計画をしてもらうその企業化計画と、こういうものを計画の中に盛り込んでもらうわけでございまして、余り基礎的な研究をこれから始めるという段階ではちょっと承認が困難かと存じます。
  227. 安武洋子

    安武洋子君 ですから、応用研究までは済ませている、こういうふうに考えていいわけですか。
  228. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 極力その辺は、中小企業者のためになるように弾力的に考えたいと考えておりますが、要するに、もちろん新商品ですからこれからの研究が要る面もあると思いますけれども、必ず応用研究が全部済んでなければいかぬというようなことでもなくて、私ども伺って、大体成功するめどがあるというような程度に計画を伺いまして、わかるような程度に試験が済んでおれば結構かと存じます。
  229. 安武洋子

    安武洋子君 技術の問題というのは、新分野進出事業にとって非常に重要な問題ですので、関連した問題についてお伺いしたいと思うのです。  第一に、中小企業庁で行われた製品分野の転換等に関する実態調査ですね。これで、転換実施上の主な問題点としてどのようなものが挙げられているのか、また、それはそれぞれ何%になっているのか、この点をお答えいただきたいですね。
  230. 吉川佐吉

    政府委員(吉川佐吉君) それでは、御質問の数字についてお答えいたします。  四十九年の十月に実施をいたしましたただいま先生の御指摘の調査によりますと、幾つかの問題点が掲げられてございますが、一番大きな順から申し上げますと、生産技術の習得、それから販売先の開拓、それから事前の調査、情報収集——これは転換先の決定などのためのものでございます。それから従業員・人材確保、資金調達、下請対策、その他、こういうふうになっておりますが、それぞれにつきまして、転換前業績で比較的順調な企業が転換をした場合の構成比でございますが、七四・四、それから五四・六、それから三九・四、三七・九、それから三五・一、一五・二、五・五、それぞれの項目についてそういう数字になっております。それから、転換前の業績が不調な企業につきましても、これも大体同様な数字でございますが、ただ、これに属する企業で特に問題なのは、資金調達、これが五四・九という高い数字を出しております。  以上でございます。
  231. 安武洋子

    安武洋子君 今度全企業中に占める研究実施企業の割合、これは資本金規模別に見てどのようになっているかということと、それから、資本金規模別の研究費支出額構成比、これがどのようになっているのか、お答えいただきたいと思います。
  232. 河村捷郎

    政府委員(河村捷郎君) 従業員別で見ました場合に、中小企業の中で研究を実施している企業は全体の四・六%、大企業では五一・三%でございます。また、資本金別に見ますと、中小企業では四・五%、大企業では四七・四%。大体従業員別で見ましても、あるいは資本金別で見ましてもほぼ同様の数字になっておるわけでございます。  また、研究費の全支出に占める割合でございますけれども、民間の総研究支出額が、これは四十八年度の資料しかございませんが、約一兆五百億でございまして、このうち中小企業の占める割合が約八・四%、大企業が九一・六%ということでございまして、中小企業の占める割合は非常に低いという数字になっております。なお、この数字は資本金別でございますが、従業員別に見ましても大体同じような中小企業で九・六%、大企業で九〇・四%ということで、ほぼ同じ傾向を示しております。
  233. 安武洋子

    安武洋子君 計画の承認を受けるには応用研究程度が行われていて、それから新商品の開発のめどが立っていることが必要だ、こういうことだったのですけれども、だとすると、計画承認が受けられるのは中小企業の中でも一部に限られてしまう、私はこう思うわけです。ここで例をとりますと、資本金百万円から一千万円未満、こういう企業で技術研究をしている中小企業が全体の二・四%にしかすぎないわけです。こういう実情を考えますと、小規模企業では事業協同組合をつくっても、新分野への進出事業に参加できるのはこれは少ない、こういう予測ができるわけですけれども政府はこのようなことについてどのような対策をおとりでしょうか。
  234. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) これは個々の事業者が研究をするということでございませんで、組合等をつくっていただきまして、皆さんでおやりいただくということが一つの助成の場合の要件になっております。同時に、たとえば組合に研究費を出しました場合には、それは損金算入を認めるとかあるいは税額控除を行うとか、増加試験研究費の税額控除制度を適用するとかといったような、いろいろ技術開発面の資金の捻出等につきまして税制上の優遇措置を講ずることにいたしておりますので、こういう税制面の優遇措置を活用されることによりまして、小さな中小企業の場合にも、その組合の共同した力によりまして新しい商品の開発が個々の場合よりはより容易になっていくのではないかと考えております。
  235. 安武洋子

    安武洋子君 御答弁では金融、税制上の措置だけと、こういうことなんですけれども、私は不十分だと思います。小規模企業に対してやはり技術面の援助をすべきだと、こういうふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
  236. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 御指摘のとおりでございまして、現在小規模企業等の技術面の指導につきましては、主として府県の公設の試験研究所の職員の方が中小企業の相談に乗りまして技術指導を行っておりますが、また、その府県の技術関係の指導を振興事業団が行っております。  それから、私どもの方でもいろいろ府県のそういった指導関係資金を出しましたり、施設を整備さしたりいたしまして、府県を通じて中小企業の技術指導を行っておるわけでございますけれども、さらにこの面を強化いたしまして、小規模企業のいろいろ技術開発ができるように十分府県の指導を強化してまいりたいと考えております。
  237. 安武洋子

    安武洋子君 いま御答弁に出ていた小規模企業に対する技術指導の窓口に当たる都道府県の公設試験研究機関ですね、こういう設備体制、私は、これを抜本的に改正すべきでなかろうかと思うわけです。都道府県の公設試験研究機関の研究職員、それから技術指導員、これは全国で四千名ほどだと思うんですけれども、これでは人数が余りにも少な過ぎるわけです。  これは兵庫県を例にとってみますと、中小企業の技術指導に当たる当該機関というのは工業試験場が一つ、それから工業指導所が三つ、地区労使センターが一つ、計五つの機関だけなんです。この五つの研究所の研究職員はわずか百一人、これで兵庫県下の中小企業の製造業四万六千六百十二事業所なんですけれども、この技術を指導しなければならない、これでは中小企業者に行き届いた技術指導ができるはずないわけです。こういう点、私はお考え直しいただいて、もっと充実した人員にしていただかなければならないと思うのです。  東京都でも同じことなんです。都立の工業技術センター、これと繊維工業試験場、これがあるわけなんですけれども、工業技術センターへの相談件数というのが四十九年度で三万七百三十四件なんです。それから、工業技術センターへの依頼試験研究件数というのが三千九百四件なんです。これは研究職員というのがわずか二百名、この二百名でこれだけのことをこなしていかなければならない。これは現場の職員も大変忙し過ぎる、こういうふうに言っております。それから、四十九年度の中小企業の白書を見てみますと、研究開発の着想それから人材養成、技術の実用化こういうことなどで国公立の研究指導機関を利用している利用率、これを調べてみますと、研究開発を行っている製造業でわずか一〇%前後にすぎない。こういうことになっているのも私は国公立研究所の指導機関の設備、体制、これが不十分だから利用できないのだとこういうふうに思うわけです。  近促法の改正によって技術の集約化、それから新商品の開発これがますます重要となってくるというのは明らかだと思うのですけれども、私はそのために技術指導施設費補助金、それから巡回技術指導事業費、それから技術開発研究費補助金、こういうものの関連予算額を大幅に引き上げるべきだ、このように考えますが、いかがお考えでしょうか、御答弁をお伺いいたします。
  238. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 現在、全国の都道府県の国公立の試験場が百八十四ございまして、約四千名の職員で中小企業の技術指導を担当していただいておるわけでございます。ただ、お話しのように、中小企業五百万事業所もございますので、なかなか行き渡らない面があることは大変遺憾に存ずるわけでございまして、そういう意味では、今後も技術の指導関係あるいは研究補助金等の予算をできるだけ私ども力を入れまして増額を図ってまいる必要があるというふうに考えております。
  239. 安武洋子

    安武洋子君 では旧事業分野の設備処理、この問題について改正案ではどのような助成措置を講ずるようになっているのか、御説明いただきとうございます。
  240. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 税制面におきまして早期償却と申しますか、普通まだ償却の年数が相当残っておる場合でも、たとえば三年後なら三年後にその設備を廃棄して新事業の方に移るというような計画になっております場合には、その三年間で残った未償却分を全部償却をしてしまうといったような償却面の措置が一つでございます。  それからもう一つは、高度化資金におきまして、共同で設備廃棄をいたします場合に、残った業者の方々にその設備の買い上げ資金の九割を無利子で融資をする制度がございまして、これは残った方々が転換する人の設備を買い上げて廃棄をする、こういうふうな形をとるわけでございまして、そういう意味では、残った方々の負担に若干なりますが、無利子で融資する制度がございまして、この税制と金融両面をもちまして設備廃棄を進めてまいりたいと考えております。
  241. 安武洋子

    安武洋子君 私はそれではまだ不十分な措置だと思うわけです。新分野へ進出するというのは、中小企業にとって非常にリスクの大きい冒険であると思うわけです。だから、旧事業の設備や機械を処理する場合、国が適切な価格で買い上げる、それに課税しない、このようにすべきだと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
  242. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 事業者の新しい仕事を始められることに伴う古い設備を、国が国民の税金を使いまして買い上げるということにつきましては、いろいろ問題もあろうかと存じまして、それは非常に困難かと思いますが、税制面による早期償却、それから融資等の措置を講じまして廃棄を促進してまいりたいと考えます。
  243. 安武洋子

    安武洋子君 私がいまお伺いしました、この価格で買い上げてそれに課税しない、その点はどうなのでしょうか。
  244. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 国がその事業者の設備を買い上げましても、国がそれをまた国として廃棄するということになるといたしますと、非常に特定の事業者のために国の金を使ったということになるわけでございまして、これは他とのバランスから申しまして非常にむずかしい面があるんじゃないかと存じます。
  245. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  246. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を始めて。
  247. 安武洋子

    安武洋子君 日本の製造出荷額、この約半分を占めているのが中小企業なのですね。この技術関係予算総額、これが約二十三億円、そして一方、大企業向けの技術関係開発費の予算総額、これは中身は電子計算機産業振興対策費、それから民間輸送機振興開発費、それから新エネルギー技術研究開発費、それから大型工業技術研究開発費、それから重要技術研究開発費、これを合わせますと四百四十億円にも上るわけなのです。これは何と中小企業の二十倍にも当たるわけです。この大企業と中小企業の比率を転換させる、こういうことをして私は初めて中小企業の本当の近代化、それから技術開発促進のために役立つと思うのです。最も重要なことではなかろうか、このように考えます。私はこういうことを本当にやっていただきたいということを強調して、このことを大臣にお伺いして私の質問を終わりたいと思いますので、大臣の御答弁をお願いいたします。
  248. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先にちょっと数字と事実関係を申し上げますから。後で私やります。
  249. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) ただいま御指摘ございましたように、電子計算機でございますとか、新しい民間航空機の開発でございますとか、新しいエネルギーの開発、あるいは海水を淡水化するとか、交通管理のコンピューターシステムとかいろいろな新しい技術の開発のために、五十年度の通産省予算で、いまお話ございましたように、四百億円弱の予算が計上されておりますことは御指摘のとおりでございます。これはむしろ民間でもなかなかやれないような、非常に最先端を行きます技術の開発資金を計上いたしておるわけでございまして、これはもう大企業のためというよりも、日本の技術水準そのものを高めまして、世界の技術の進歩に伍して行こう、こういう趣旨のものでございますので、むしろこういう技術が開発されますと、それが企業化される場合に、その相当部分の仕事がまた中小企業に回ってくるという面がございますので、私は、技術開発関係の研究費は、さらにさらに増額されることは必要であっても、大企業向けの研究費を小さくして、中小企業向けを大きくするといったような意味でのただいまのお話は、必ずしも通算省のただいまの技術開発予算については当てはまらないんじゃないかと思います。いずれにしましても、中小企業関係の技術関係約二十数億でございますので、中小企業の数から申しますと少ないことは御指摘のとおりでございまして、さらに増額について努力をいたしたいと考えております。
  250. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 技術開発のための費用は政府の機関だけではなく、民間の企業のいろいろな研究機関等の様子を調べてみましても、最近は大分ふえておりますけれども、なおアメリカやドイツに比べますと、全体として非常に少ない。これではやはり激しい近代産業の競争力になかなか対抗できないと思います。でありますから、官民を問わず、全体としてもう少し私は思い切った増額をしなければならぬと思いますし、同時にいまの研究体制ですね、政府機関は政府機関で行う、民間は民間で行う、こういうふうな行き方、これはドイツなどはやっぱり官民一体となってやるという場合が非常に多いわけでありますが、そういう研究開発のあり方、こういう面等につきましても十分今後検討を加えまして、そうして欧米の新しい開発技術に負けない、こういう体制をとるということが必要である、こう思っております。
  251. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 他に御発言もなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時十七分散会