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1975-03-25 第75回国会 参議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月二十五日(火曜日)    午前十時二十三分開会     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         林田悠紀夫君     理 事                 楠  正俊君                 小柳  勇君                 須藤 五郎君     委 員                 小笠 公韶君                 剱木 亨弘君                 斎藤栄三郎君                 菅野 儀作君                 吉武 恵市君                 阿具根 登君                 鈴木  力君                 対馬 孝且君                 中尾 辰義君                 安武 洋子君                 藤井 恒男君    政府委員        科学技術庁振興        局長       木下  亨君        通商産業政務次        官        嶋崎  均君        特許庁長官    齋藤 英雄君        特許庁総務部長  三枝 英夫君        特許庁審査第一        部長       土谷 直敏君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        文化庁文化部著        作権課長     国分 正明君        厚生省薬務局経        済課長      森  幸男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○特許法等の一部を改正する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  前回に引き続き特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 鈴木力

    鈴木力君 私は、この法案についての御質問を申し上げる前に政府のお考えを先に伺いたいのは、どういう表現をすればいいのかわかりませんけれども、特許法という法律はともかくとして、特許を受けて、そしていろいろそれが利用され、あるいは社会に貢献をしていくという、その基礎になる科学技術研究といいますか、開発といいますか、そちらの一つ基礎ができ上がったところに特許法という法律が有効な働きをするだろうというような気持ちがあるものですから、そこで、政府全体としていまの日本科学技術研究開発と言ったらいいでしょうか、そういうことに対する基本的な考え方と、それから基本的な方針といいますか、あるいは仕組みなんかについてもひとつまず最初にお伺いしておきたい、こう思います。これは次官に伺った方が一番いいと思います。——どなたでもこれはけっこうです。
  4. 木下亨

    政府委員木下亨君) 非常に御質問が大きい課題でございますので、どういうふうにお答えしたらいいかと思いますが、まず、国の科学技術政策といいますか、そういうことでございますが、これは、基本的には内閣総理大臣を議長にいたします科学技術会議でその大きな方針をきめていく、こういうことになって、そういう形でやっております。まあ試験研究は大きく分類いたしまして国公立の研究機関でやるもの、大学で行っておるもの、それから企業等でやられておるもの、こういうふうに分けられると思いますけれども、いずれにいたしましても、全体がやはり整合性のとれた開発が行われなきゃならないということで、全体の取りまとめは、科学技術会議がその方針を出していくということでやっております。  なお、国の研究所各省に属しておりますので、その総合調整という業務は、これは科学技術庁が行うということで設置法でもきめられておるわけでございます。それから、大学研究につきましてはこれは文部省が行う。それから各省と申し上げましたが、各省各省みずから行う研究と、それから所管の業種に対して民間の行う研究を助成すると、こういう仕事も各省で行っております。そういったことの各省関係取りまとめ科学技術庁が行うし、それから文部省関係といいますか、大学関係調整科学技術会議が全体として行う、こういうやり方でやっております。
  5. 鈴木力

    鈴木力君 仕組みはいまお伺いしました。そういう仕組みが必要であろうと思うのですが、私が実は一番先にこのことをお伺いしましたのは、時間がありませんから、余り具体的なことをふろしきを広げないつもりですけれども、いろんな諸統計を見ましても、あるいは表に出た一つの現象を見ましても、どうもこの外国といいますか、外国研究開発日本研究開発度合いといいますかね、何となしに非常に日本の方がまだまだおくれているという感じがするんです。  これはたとえば、私の考え方が違っているのかどうか自信もありませんけれども、私はきのう日経新聞を見ましたら、東洋レーヨンが、何ですかエクセーヌとかという何かをいま開発をして、そして相当手広くヨーロッパ諸国等にも輸出をしておる。ところが、それがアメリカデュポンという会社ですか、デュポンという会社から特許法のあれで異議申し立てがあって、三年間争ってきた。そして結局、結果は政治的な解決という新聞の解説がありますけれども、デュポン社に六十万ドルですか、それからそれの使用権を持っておるクラレに三十万ドルの、合計九十万ドルを支払ってやっとこの紛争解決したという記事があるのですね。  それはまあそれでそのとおりなんでしょうが、私が気にかかるのは、東洋レーヨン技術陣に言わせると、何ら特許権を侵害をしていない、つまりそのデュポン社ポロメリック物質ですか、よくわかりませんけれども、そういうデュポン社からの異議申し立て事項について、東洋レーヨン技術陣の方は、これは異議申し立て事項に当たらないという自信を持っているということが言われておるわけです。しかし、それは東洋レーヨン業務都合上によって政治的に解決をした、こう言われておるわけです。これはまあ政治的に解決をしたことのいい、悪いということを言うんじゃなしに、もし技術陣の言うことが本当であったら、自分たち開発したものであるにもかかわらず、類似のものであって外国会社から異議申し立てをされると、金額はともかくとしても、そちらが正しいという判断のもとに日本の業界が動かなければいけない、こういう地位に日本外国とがあるとすれば、これは資本関係の大きさがどうかということにいくと、また話は少し別の形になりますけれども、科学技術開発あるいは研究開発というレベル日本の方が相当に底が厚くて、底も厚いし規模もきっちりしたものにもし進んでいるとすれば、こういう技術陣といいますか、研究開発のその当事者を泣かせるような結果にならないんじゃないかということを、これは私は新聞記事を読んでみて自分なりにそういう気持ちで読んだんです。  だが、私はさっき言いましたように、このことだけではなしに、たとえばわが国では、技術開発特許輸入しているものの方が輸出をしているものよりは数字の上でははるかに多い。要するに、先進国に依存している依存の度合いというのは、まだまだ非常に大きいということだと思うんです。そうなってまいりますと、先ほど御説明を伺ったこの仕組みが、仕組みが悪いという意味じゃないんです。仕組みが悪いという意味じゃないが、単に歴史が浅くておくれているのか、あるいは他にもう少し原因があるのか、その点の究明をずっとしていかないと、今度まあ国際条約によって国内法改正をして、国際的なレベル日本特許権関係ではいくんだ、こう言っておるけれども、その土台のところを忘れていくと、法律改正してもどうも私は余り本質的な意味からすると、意義が非常に薄れてくる、そういう感じがするものですから、この辺についての御見解も伺っておきたい、こう思うんです。
  6. 木下亨

    政府委員木下亨君) いまの東レとデュポン関係の具体的なことは私もよくわかりませんけれども、確かにまだ日本技術開発力は少し弱いと思います。ただ、非常に近年わが国技術開発力も急速に伸びてまいっておりまして、研究投資の額で見ますと、アメリカは非常にこれは大きいわけでございますが、まあアメリカ、ソ連は非常に大きいんですが、フランス、イギリス、西ドイツ等と比較いたしますと、日本の実績はむしろそれらの三国よりは多い状態にまでいまなってきております。したがいまして、技術は蓄積が必要でございますから、現在の時点ではまだどうもやや劣るものがあるわけですけれども、だんだん先進国並みになってくるものと考えております。先生おっしゃいますように、日本技術が劣っておるから外国との特許紛争でつまらない金を払わにゃならぬというようなこともあるかもしれませんが、しかし、いまのお話は私は、やはり解決を早くつけたいということで、徹底的なその国際的な特許論争をやらないで解決をされたのではなかろうか、まあこういうふうに考えるわけでございます。
  7. 鈴木力

    鈴木力君 ですからね、私はそこが問題のポイントじゃないかという感じがするんですよ。どうして日本技術開発がおくれてきたかということに、もちろん私は本当言うと、いま局長さんがおっしゃったように、従来こういう面の学問の研究なり、あるいは科学研究開発なりに対する日本の国の金の出し方ということがいままで非常におくれておったということを考えてもおったし、そういうことをいろんな機会に言ったこともあったんです。だから、たとえば大学にいますと、いわゆる頭脳外国に流出をして、貴重な頭脳日本にとどまっていない、そういうところに基礎的な理由があっただろうと思います。だから、一つの通産省なり、あるいは何々省なりということのどうこうということじゃなかろうかと思うんです。  ただ私は、いまの局長さんのお答えをいただいたことでもそう思うんです。それはいまの東洋レーヨンが、これは一つ具体例でありますから、別にこのことを知っているか知っていないかということじゃないですよ。新聞記事で言いますと、東洋レーヨンがイタリーに何とかという合弁会社をつくるために政治的に解決をしたんだと。これは東洋レーヨン一つ企業としての営業をやるために政治的解決をしたんであって、私はその企業の立場からしたら、それはそれで妥当だろう。しかし、そういう形で企業研究成果というものを企業の意図によってつぶしてしまっていくというような習慣なり風習なり考え方なりが基本的にまだ日本にあるのではないかということです。  これは企業という意味じゃ、本当はいま東洋レーヨン企業だから企業という言葉を使ったけれども、企業というだけの話ではなしに、一体研究なり開発なり科学なりというものに対する価値観というものが、たとえば企業営業考え方あるいは都合ということと合わせると、そちらのほうが優先をしていく、そして研究成果という一つのものがそれによってつぶされていくと言うと、少し話が適切でないかもしれないけれども、泣かされていく、そこでとどめられてしまう、あるいは日の目を見ないでしまう、そういう科学というものに対する価値観が、日本政府全体としても少し薄いのではないかという気持ちがあるんです。それで、たまたまいまの東洋レーヨンの例を出しましたけれども、その辺の思想的な転換を図らないでいきますと、どの法律をどういじってみたところで、経済的には日本はずっとこう伸びてきた、投資の額は伸びてきたと言うけれども、一番大事な目玉というものを抜かしたまま進んでいったら、将来過ちを犯すのではないかというふうに思うんですがね。この辺は私は、やっぱり政府としてももう少しメスを入れた検討ということをしてもらっていいのではないかという気持ちでいま申し上げている。いかがですか。
  8. 嶋崎均

    政府委員嶋崎均君) ただいまの鈴木先生の御質問まことにごもっともだと思うんです。御承知のように特許法工業所有権関係の法規はわが国の場合に、明治の年代から非常に古い歴史を持っておるわけでございます。その間、日本人の創意工夫を発揮させるという意味で、そういう新しい工業所有権等について温かい保護を与えるということが特許公開主義と相まって、公開されることによってより進んだ科学的な新しい思想発明というものをつくり出そうということで、非常に日本近代化貢献をしてきた制度であるというふうに思います。  反面、また日本の場合には、御承知のように、相当外国からの特許の導入というか、そういう面でも非常に弾力的に対応してきたことは事実でございまして、特に戦後、戦争中のああいう世界の中から隔絶した状態にあって非常におくれた、それを取り戻すために、まあ最近の科学技術輸出輸入状態というものを見ましても、残念なるかな相当日本輸入の方が多いという数字になっておることは、だんだんにいままで御議論をされ御審議を願った過程でも明らかになっている。しかし、最近の十年間ほどをとってみましても、アメリカにおけるところの特許取得状況とかあるいは西独における特許取得状況、そういうものから見ましても——まあ米国相当大きいけれども、米国でも西独に次ぐような特許状態になっておりますし、それから西独での特許状況を調べましても、日本相当高い水準になってきている。そういうことを背景にして、もうすでに昭和四十五年、前の特許法改正以後、日本の場合でももうそろそろ物質特許を取り入れてやって、科学分野においてそう競争に立ちおくれることはないんじゃないかというようないろんな示唆もありまして、各界各層の御議論を聞いて現在までこの特許法審議というものを進めてきたわけでございます。  そういう過程で、どうやらいままでの段階でいきますと、こういう分野でも相当国際競争力が高いということが認識をされ、そういうことを十分受け入れてやっていけるという産業界意見もあるわけでございます。そういう状態背景にしまして今度の特許法改正に踏み切ったわけでございます。先ほど話がありました、私、具体的にそのケースの内容は知りませんけれども、幾つかの会社方々に聞いても、特に化学会社方々に聞いてみますと、だんだんこのごろは一方的に特許を取り入れるということは非常にむずかしくなりまして、だんだんクロスライセンス方式というか、一面、特許を取り入れるためにこちらの持っている特殊の特許あるいは技術というものを交流をしていく、そういう形でこういう分野企業が互いに切磋琢麿し、互いに発展し、互いに科学技術進歩あるいはそれを通じて高い生活水準科学技術水準というものを実現をしていく、そういう形にだんだんならざるを得ない。自分のところが、何もなしに相手から技術輸入しようと思ってもなかなかむずかしいような状態になりつつある。  幸いにして最近におけるわが国科学技術民間における投資あるいは間接的にいろいろな国、大学等の、研究所等成果というようなものもあって、ようやく日本で取引の材料になるようなそういう技術的な基礎というものがだんだんできてきている。そういうことで非常に日本外国特許も取りやすく、輸入しやすくなっているし、逆に日本特許も出ていく、だんだんそういう水準になってきているというふうにお話を聞いておるわけでございます。  そういう段階でございますので、私はまあいろんな評価の方法があると思うし、ただ単に数字的に言って、アメリカ西独での特許取得とか、あるいは日本の現在の技術輸出技術輸入とのバランスの問題を金額的に比べるとかいうようないろいろの問題ありますけれども、もう世の中は御指摘のように非常に科学技術が高度化し多様化しておって、その中でただ単に一方的に輸入をして、それを日本実施権だけ持ってやるというようなことだけでは解決しないようなあんばいになってきている。しかし、逆にそういうものを受けて立てるようなクロスライセンス方式とか、そういうようなことでやれるような状態に現在なっておるのだというのが一般認識のようでございます。そういう観点から、今度物質特許という問題も御審議願い、またこういうことを明らかにすることによって、反面特許公開主義というものと相まって、今後いよいよこの技術的な進歩が期待できるのではないかというのが、今回の物質特許制度を取り入れた理由であると私は認識をしておるわけでございます。  お答えになったかどうかわかりませんが、そういうぐあいに認識をしておるわけでございます。
  9. 鈴木力

    鈴木力君 だんだん法案内容についてもお伺いしょうと思いますけれども、私がいまこのことを申し上げた意味は、いろいろといま次官がおっしゃるような、あるいは各省ともそれなり苦労をして——私に言わせれば科学研究というものは相当金もかかるものだけれども、金の面からも人の面からも相当制約を受けながらも、それなり苦労をしているし、努力をしているということは、私は評価しているつもりなんです。ただ、そういう中に基本的に言って、この科学というものの価値観がどうも先進国と比べるともう少しこの科学というものに対する考え方認識を改める必要がありはしないかということが私は言いたいことだったんです。  それで、今度は非常に小さなことを伺いますが、余り漠としておるのですけれども、その意味ではたとえば科学技術庁にしてもあるいは特許庁にしても、発明なりそういう関係民間団体等育成等も図っておれば、あるいはそれに対する補助等も出しておるということも伺っております。それはそれなりに、私はそれなり意味を持っており、それなり効果も上がっておると思いますけれども、そこで私は一つ伺いたいのは、たとえばいろんな団体科学技術庁の担当で言いますと、日本発明振興協会とか発明学会とか、あるいは婦人団体でありますとかいろんな団体等に御指導なさり、あるいは助成等もなさっていらっしゃるわけです。そうしたところの団体研究というものとそれから特許権というものと、あるいは特許権につながらないけれども、科学とすれば非常に貴重な開発というものも出てくるだろう。そういう状況がどういうぐあいになっているのだろうということをちょっと私は気にかかっておるもんですから、最初にまずそれを伺っていきたいというふうに思うのです。
  10. 木下亨

    政府委員木下亨君) 科学技術庁では、おっしゃいましたような発明奨励団体お世話をしております。これらの団体は、みずからそこの団体の中で試験研究を行うというようなことは実は余りございませんで、展示会をするとか、それから発明のコンクールをするとか、いろいろ発明特許にしようとする場合の指導を行うとか、こういうようなことが主な業務になっております。私の方はそのほかに、地方にあるいろいろ発明センターとか科学技術センターというようなやはり法人お世話をしております。こちらの方では開放実験室というものを持ちまして、これには若干の予算によって設備補助をいたしておりますが、この開放実験室では発明家方々がそこの設備を使って試験研究をされる、こういうことにしております。したがいまして、そういうところから生まれる発明といいますか、新しい技術については、その団体並びにそういったセンターといったところが特許権を得るように大いに指導をしてやっておる、こういうのが現状でございます。
  11. 鈴木力

    鈴木力君 どこか一つの例でちょっと説明をいただけませんか。
  12. 木下亨

    政府委員木下亨君) 社団法人全国発明婦人協会の例で御説明申し上げますと、ここの協会昭和三十六年一月に任意団体として発足したものでございますが、四十五年の三月に社団法人として認可を得ております。それで、発明思想育成に関心のある全国女性を糾合いたしまして創意工夫奨励指導を目的としておる団体でございます。  やっておりますことは、「身近な生活発明くふう展」を初めといたしまして、そういった展示会が主でございますが、事業特色は、ほかの団体ではなかなかむずかしい一般女性基礎的な発明意欲の高揚からアイデア発想指導等を行って、さらに全国的な組織を通じて作品の展示等女性発明意欲を高めるための事業、こういったところに特色がございます。  それから、地方発明センターと先ほど申し上げましたが、これは発明技術相談とか機械設備の貸与、試作及び試験の受託、それから資料の閲覧、それから技術講習会とか展示会、こういったことをやっておりまして、当庁はこれらの事業指導するとともに、先ほど申し上げましたように、開放研究設備増設等に対して補助金を出しておる、こういうことでございます。  それでどんなところがその地方発明センターとしてあるかということをちょっと申し上げますと、近畿地方発明センター新潟地方発明センター兵庫地方発明センター、それから中部科学技術センター大阪科学技術センターといったようなところがこういった業務を行っております。
  13. 鈴木力

    鈴木力君 実は私、このことをお伺いしたのは、特許法との関係から言うと、こういう団体が何か一つ行事をやった場合に、行事といいますか、展示会なら展示会をやってそこに公開されるもののうち、特許法として適用されるといいますか、特許権を得られるというものは大体どの程度出てくるだろうというようなことを実はお伺いしたがったんですが、時間が大分たちますから……。私はそのことをお伺いしたいのは、やっぱりさっきからの議論と変わりはないわけですけれども、そういう御指導をいろいろと科学技術庁もやっていらっしゃる、特許庁もやっていらっしゃるという。非常にいいことをやっていらっしゃると思うけれども、やっぱり何となしに私は、基礎科学研究との結びつきということを政府がどこで結びつけてやっているだろうかということだと思うんです。  何となしにマニアが集まって、ここで新案なんかをやってアイデアのいいところの競い合いも非常にいいことだけれども、そしてそれもしてやらなければいけないことのうちだけれども、日本全体としてこの水準を考える場合に、そういうところのセンターをつくって何人か集まって、マニア——マニアと言うと非常にしかられるたろうがらその言葉は適当でないと思いますが、それも必要だけれども、そういう一つ民間研究する一とに対する基礎科学との結びつきをだれがしてやったら一番適切だろうかということが、実は私はそういうことをこそ、その方法をこそ政府自体がそれこそ研究開発をなさらないと、という感じが私はいろいろ伺っておってするんです。そのことはもうきょうの直接の問題でもありませんけれども、特許法がというか、特許法に基づく施策が、行政が生き生きとしていくには、やっぱりそこの底に基礎科学との研究開発というものがずうっと日本の全体の中に流れているところからこの特許制度というものが本当に効果を上げてくるだろうし、力を増してくるだろう、そういうような気持で伺ったわけでありますが、これはまあ私の意見を申し上げたということにしておいてもよかろうと思います。  それで、後でいまの法案とも関係が出てまいりますが、先ほど次官から、物質特許を今度取り入れるということを伺いました。それは国際的にもそういうところに来ておるわけですから妥当だと思いますが、実は厚生省の方においでをいただいておりますので、最初厚生省の方にお伺いして、一日ここにいてもらわないようにするために先にお伺いをしておきたいと思いますが、たとえば今度の物質特許の対象になる医薬品、あるいはその他の食品とかいろいろ出てまいりますが、この医薬品についての日本における研究開発の体制がどうなっておるのか、ちょっとお伺いいたしたいんです。これは今度の特許関係が直接あるかないかは別だけれども、その研究開発相当進んでおるということ、あるいは進めるということと、今度の特許法にこれを取り入れたということは、私は直接相関関係があるだろうと思いますから、そういう意味でお伺いしますが、これはこの種のものが何も企業研究をするんだということにはならないと思いますけれども、特にわが国の場合には、医薬製造業というのはものすごく小規模の企業が多い。恐らく企業自体を見ますと、企業開発する力というものは余りありそうにも見えない。しかし、企業それなり研究はやっているだろうと思います。これ、厚生省としてそういういまの体制あるいは実情等について伺いたい。
  14. 森幸男

    説明員(森幸男君) ただいまの先生の御質問お答え申し上げます。  わが国医薬品産業の研究開発水準というものが現在どういうふうになっておるかということでございますが、これは従来、わが国医薬品産業というのは、外国技術によりまして開発された医薬品に依存する傾向というものが比較的強いというふうに言われてきたわけでございますが、近年わが国研究開発水準というのは急速に高まってきていると私ども考えております。この研究開発水準というものを一体どういうふうに見るべきかというその見方がいろいろあるかと思いますが、たとえばこれを研究費にどのくらい、研究開発費にどのくらいの費用を投じているかという面から見てみますと、医薬品工業の場合には、これは総理府統計局で行っております科学技術研究調査報告というのがございますが、その結果で見ますと、四十三年度を一〇〇といたしまして四十七年度に二五九・〇と、かなり著しい伸びを示しておるということが言えるわけでございますし、また、売上高に対する比率というもので見ましても、四十三年度ごろは三・三%程度であったものが、四十七年度には四・六%にまで上昇しております。この四・六%という数字は、化学工業と比べましても、また製造業一般と比べましてもかなり高い水準にございまして、業種別に見ますと、これは最高の水準になっておるということになってございます。  これは研究費にどれだけ投じたかという面から見たわけでございますが、それでは実際にその研究成果の面でどうかということでまた反面見てみる必要があるかと思います。これにつきましても、またなかなか適当な資料が実はないのでございますが、私どもの方でこういう数字をちょっと当たってみたわけでございます。わが国では、これは医薬品の場合には、新たな医薬品を製造するという際には厚生省の承認を必要としております。その製造承認をとる、あるいは海外から入れてくる場合には輸入承認というのを受けることになっておりますが、そういう輸入承認を受けました新規の医薬品の中で国産技術によるものが一体どのくらいの比率を占めているであろうかということを調べてみたわけでございますが、これは時間の制約等もございまして、四十四、五年ごろ以降しか数字がございませんが、四十四、五年ごろを見ますと、大体三〇%程度であったかと思います。これが四十八年、四十九年になりますと四三%、四八%ということで、こういう数字から見ますと、かなり水準が高くなってきているということは言えるかと思います。これは一般的な状況をいままず申し上げたわけでございます。  先生が御指摘のございました二番目の点で、医薬品産業と言っても大きいものもあれば小さいもの、中小企業もいろいろあるではないかという御指摘でございましたけれども、この物質特許制度につきまして、これを導入することがそれでは医薬品産業、特に小中企業にどういう影響を及ぼすかということで考えてみますと、この物質特許制度は、製法特許段階と比べますと、一般的に言いますと、それは研究開発力の乏しい企業にとりましてはいろいろな影響が生ずるということは避けられないわけでございますが、全体として言えますことは、中小企業だからと言って直ちに不利な影響が出てくるということはないんじゃないんだろうかというふうに考えております。  その理由は、中小企業の場合には、研究開発分野というものを特定のものに限定して研究を行っているというものがいろいろございます。したがって、大企業の場合には研究分野が非常に広いわけですが、中小企業の場合には特定の分野ではございますが、そういう独自の専門的な領域におきまして集中的な研究開発をやっておるということで、そういう特定の分野につきましては、いろいろ研究開発効果というものを期待することもできるんではないのか。また、そういう研究開発成果が製法特許の場合ではいろいろ、まあ防衛研究といいますか、自分開発した製法が他に取られることのないような防衛研究に力を注がにゃいかぬということもあったわけですが、それが今度の物質特許制度になりますと、そういう面にかける研究の余力というものが不要になってまいりますので、そういう意味からいたしますと、中小企業の場合でも、独自の専門的な領域で新たに物質を見つけ出していくというようなことになれば、その分野での成長発展という面で今後必ずしも不利なことにはならないんではないだろうかという気がしているわけでございます。  まあそういうことで、私ども厚生省といたしましては、この物質特許の導入というものを契機といたしまして、今後医薬品産業の研究開発水準というのをこれからさらに強めていくように努力をしていきたいというふうに考えております。
  15. 鈴木力

    鈴木力君 そういういまの研究機関はどういう機関があるんですか、企業のほかに。
  16. 森幸男

    説明員(森幸男君) この医薬品研究ということになりますと、これは実際の研究はもうほとんど各企業研究機関研究所というもので行ってございます。
  17. 鈴木力

    鈴木力君 実態は企業で行っておる——いまの課長さんのお答えは、私はこれはちょっと納得できないんでね。中小企業は中小企業なりにそれなりのプロパーを研究しているんであって、その影響がないという御見解なんです。しかし私が私は素人でよくわからないけれども、今度多少私もある程度の報告なりなんかを見る限りにおいては、これは外国でもそのようですね。この物質特許というこれとの関係で言えば、やはりどうしても大きな研究機関のところに開発がというか、発明といいますか、可能性が非常に出てくる。これはただ小さい化粧品の発見みたいに、何かの花のめしべをいじくっているうちにちょっとしたにおいを見つけた。それのデータをずっと調べてみたらまだなかったから、それを香料に入れて新発声とやるのとは、やっぱり医薬品となるとそんなもんじゃなかろう。そうなってきますと、ただ単にそれを見つけるというか、物質をつくるというだけではなしに、それの効果研究までがずっといかなければいかぬのでしょう。そう簡単に……。  たとえば医薬品の業者、企業ということを言いますと、いま私が調べていただいたところによると千七百八十四ある。そのうち従業員十人未満の企業が六百二十四あるんですね。それから十人−九十九人が八百八十四ある。いわば千七百八十四のうち従業員百人未満の企業が大体千五百あるわけです。三百人未満が百八十三ある。こうなってきますと、そういうところはそれなりに小さかものを研究しているだろうとおっしゃるその感覚は、私はちょっとこの今度の制度に対応する感覚だとは思わない。企業が勝手に小さなところは小さななりにやったらいいじゃないかということを、わが厚生省の課長さんがおっしゃるとすれば納得できないですね。そういうおそれがあるから、私に言わせれば、政府はやっぱりそれなりに対しての何かの対策というものが同時にいかないと、この法案は、まあ全体から言うと同じことと言えるかもしれませんけれども、いまの日本の実態から言いますと、非常に問題が出てくるような気がする。その辺の問題意識ぐらいは厚生省は持たないとこれはいけないのじゃないですか。
  18. 森幸男

    説明員(森幸男君) いま先生のおっしゃったことと、私の先ほどの説明があるいは不十分だったかと思いますが、さきに説明最初段階で、やはり中小企業が、何ですか、研究規模が低いために、あるいは小さいために研究面でその影響を受けることは、これは否定できないということを申し上げたんですが、結局それはいま先生のおっしゃったようなことで、研究開発に対する投資の規模がやはりその大企業に比べて中小企業が低いということは否定できませんし、それは低ければ低いなりにやはり研究開発の力というのは弱いわけでございますから、そういう意味では先生のおっしゃったことはそのとおりかと思います。  ただ、私が申し上げたかったのは、中小企業でございましても、全般的な面で研究を大企業と同じようにやっていくことは非常にむずかしいであろう。しかし、それぞれ中小企業でございましても、自己の得意な分野研究開発を進めていくのであれば、この物質特許になっても、それはそれなり技術開発競争の中でやっていくことができるのではないだろうか、こういうことを申し上げたのですが、その最後の点がやや強く響き過ぎたかと思いますが、その点は、私の考えておりましたのはそういうことでございます。  それからもう一つ、先生最後に数字をお出しになられまして、非常に小さい小企業、あるいはむしろ零細企業と言ったほうがいいようなそういう企業がたくさんあるではないかというお話もございました。これは確かにこういうきわめて小さい企業の場合にはこれは従来ももちろんそうでございますが、やはり医薬品研究ということになりますと一定の研究要員が必要である、あるいは一定の研究の費用が必要である、研究の場所も必要であるというようなことになってまいりますと、なかなか小さいところでは実際のところ研究開発を進めていくということはむずかしいと思います。  現在の医薬品産業の実態、そういう小企業だとか零細企業というのは、では一体どういう分野で生きているのかということになってまいりますけれども、それは結局特許関係がないと申しますか、もうすでに以前からつくられてまいっております基礎的な医薬品、そういう分野でそういう小企業あるいは零細企業は生産を行ってやってきておるということでございます。これは蛇足かもしれませんが発言させていただきます。失礼いたしました。
  19. 鈴木力

    鈴木力君 だから私は厚生省の御認識に、これはやはり将来の研究開発ということですから、たとえば小さいところで家伝薬をつくって、そしてそれだけで売っているという業者がたくさんあるだろうと思います。それはそれなりに生きているからそれでいいのだと、これは別なテーマになりましょうが、いまの特許法とそれから研究開発のテーマとしてはちょっと適切でないかもしれませんが、物の考え方が。しかし、私が一番先に言った科学というものの価値感というものが政府に共通されておりますと、研究開発企業だけに任しておくということ自体が私は本当は承服できないです。全部国立でやれということでもありませんよ。でありますけれども、特に医薬品なんかになってまいりますと、人間の命と関係のあるものの研究開発ですから、相当公的な性格を持たなければいけないし、また、基礎科学というものが相当にここに働いていないといけない問題でもありましょう。そうするというと、いまの民間研究機関あるいはその研究に参加する学問といいますか、科学者といいますか、そういうような形のものをつくり上げていくという努力がなければいけないだろう。  私は、本当は厚生省相当そういうことをいまやっていらっしゃるのだろうということを期待しながらこの点をお伺いしたのですけれども、何となしに企業任せでございますというような、そんなことそうでないだろうとは思いますけれども、そういう点で私は、こういう法改正に伴ってやはり担当の厚生省はそうした研究開発仕組みというものをともに検討していかないといけないのではないかということです。従来もこれは特許制があろうとなかろうと、それぞれが企業企業の立場で研究しているのだから、必要なら特許を取ったらよかろうということも、それは一つ企業の見方だろうと思いますがね。だが、科学というものは経済行為によって任される科学ではなしに、やはり国なり社会の主導型の科学というものが基礎にあるという頭をいつでも持っておいていただいて、それが特許法によって実際に生かされていくのだというものが必要だ。これは決して特許庁だけの仕事であったり、科学技術庁だけの任務であったりということであってはならないだろうと思う。厚生省にしてもあるいはその他の省にしても、常にそういう感覚が働いているときにこういう法律というものが私は効率を上げてくるだろう、そういうことを考えていま伺ってみたのです。大分時間がたちますので、あと伺いませんけれども、そういう点ではひとつ厚生省もしかるべき御検討はいただきたいと思います。  時間が大分たちましたので、文化庁からも来ていただいておりますので、先にそちらの方をお伺いをして、それから直接法案の点について伺いたいのですが、この法律には出ておりませんけれども ソフトウエアの法的保護の問題についてお伺いをいたしたいのです。時間がありませんから、あまりつべこべ言いませんが、少なくともWIPOの会議でも、ソフトウエアについての保護ということはこれは検討すべきだ、すでにいろいろな議論等もなされておるはずです。特許庁からもどなたかたぶんそこに出席なさっていらっしゃるはずです。そういうことから、著作権で保護できないかという考え方一つあるように伺います。それから、これは工業所有権で保護できるのかできないのかという検討もなされていらっしゃるように私は伺いました。いま保護の必要性があるかどうかという議論は、そういう形からすると私はしなくてもいいだろう。大体保護をしなければいけないところまでいま来ている。そこまでは一致しているだろうと思います。  それで、端的に伺いますけれども、あれは昭和四十何年でしたか、工業所有権関係審議会の方でも報告が出ているわけですね。それから著作権審議会の方からも報告が出ている。その報告に対していまどういう対処がなされていらっしゃるのかということを結論的に伺いたいのです。  まず一つは、著作権審議会の方は、著作権で保護できるという趣旨の中間報告が出ておるように承っております。文化庁では、いまどういうことを検討されて、どういう結論に達しておられるのか、あるいは中間であれば中間でもけっこうですが、まず、文化庁の見解から先に伺いたいと思います。
  20. 国分正明

    説明員(国分正明君) ただいま先生の御指摘の報告は、昭和四十八年の六月に、著作権審議会外第二小委員会を設けまして、そこで一年余り御検討いただきまして、私ども報告という形でその結論をちょうだいしているわけでございます。この審議会での検討は、現行著作権法のもとにおきましてコンピュータープログラム等を中心といたします著作権問題についての解釈がどうなっておるか。それからまた、解釈上の限界はどういうところにあるか、及び将来どういう方向で対処したらいいのか、およそそういう内容でなっているわけでございますが、ただいま御指摘の……
  21. 鈴木力

    鈴木力君 時間がありませんから、答申の内容は私も拝見しましたから説明していただかなくてもけっこうです。答申を受けて何をしたかということを言ってください。
  22. 国分正明

    説明員(国分正明君) 御指摘の点につきましては、コンピュータープログラムの多くは学術的な分野の著作物であるという結論づけをいたしております。したがいまして、現行著作権法による保護というものが当然ある、こういう解釈に立っております。  なお、ただ現行著作権法によります保護でございますと、たとえばプログラム自体を複製するということについては著作権が及びますが、その中身を実施するということについては、著作権制度のたてまえといたしまして、そこまで著作権で取り入れておりません。そこに限界があるということです。それから著作権におきましては、そのプログラムが貸し出される、あるいは譲渡されるということについては、現在権利が及びません。これは頒布権と呼んでおりますが、及ばないということになっております。それからまた、現在の著作権制度によりますと、その著作権の帰属はプログラムの作成者にあるという形になっておりますが、多くの場合、プログラムの開発企業体で行われているということから、現在の帰属の形でいいのかどうかというような問題提起がなされております。これらにつきましては、審議会の報告では、いま直ちにどうこうということではなくて、実務界における契約慣行がどういうふうになっておるか、あるいはただいま先生御指摘ございましたように、国際的に検討されておりますので、その検討を見きわめつつ当分の間そういう問題について慎重に対処しようということでございますので、私どももそういう態度で対処している次第でございます。
  23. 鈴木力

    鈴木力君 特許庁の御見解はどうですか。
  24. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 先生がお話ございましたのは、通産省の産業構造審議会の情報産業部会で出された答申じゃないかと拝察をいたしますが、その最後の結論のところでございますが、わが国におきましては、特許権で保護することにつきましてもいろいろそのままでは問題がございます。ただ日本特許法では、ハードウエアに関係するソフトにつきましては現在でも特許権を与えております。純然たるソフトにつきましては問題が別でございまして、特許権を与えておりません。純然たるソフトウエアにつきましては現在WIPOにおいていろいろ詳細な議論が行われております。したがいまして、先行き法的保護に関します国際条約が結ばれる可能性が次第に出てきております。したがいまして、現時点におきましてわが国のみが早急に新規立法を行うことは必ずしも得策ではない、こういうのがこの答申の最終的な結論でございます。しかしながら、これを放置するということだけではなくて、現在試験的に、たとえばプログラムの登録制度ということを暫定的にやってみたらどうかというサゼスチョンがございまして、現在情報処理振興事業協会等におきましてプログラムに対します登録あるいは認証制度というのを実施している次第でございます。
  25. 鈴木力

    鈴木力君 これはもうこうなりますと、私は政府に伺わなくちゃいかぬと思います。大体見解は、少なくともソフトウエアの保護はもう必要な時期に来ている。特に日本の場合には、ほとんどどちらかというとアメリカのものがずっと入り込んできている。で、だんだん数がふえているけれども、日本でもそれぞれのソフトウエアというものを開発しながらいまそれを使っておる。これがだんだんに権利が犯されてくるというような状況になってきますと、国際的にも保護をしなければいけないというところで、どういう形かは別としても考え方はいろいろありましょう、そういうところに来ている。それを、どっかの様子を見ておってというようなことでは、私はちょっと積極性が足りないんじゃないかという気がしますね。少なくともアメリカは著作権で保護しているでしょう。これは後でお答えいただけばいい。私が聞いている限りでは、アメリカはもう著作権で保護をしている。これが全部保護できるかどうかは、さっき文化庁からおっしゃったとおり、著作権には著作権のいまの守るべき範囲というのがあります。ですけれども、少なくとも著作権でもう動き出しているというところもあるわけです。そうするというと、日本日本なりのものというものにもう少し積極的な姿勢というものが私は必要だと思うんです。これは大臣がいらっしゃいませんが、次官のひとつ御見解を伺いたいんです。
  26. 嶋崎均

    政府委員嶋崎均君) いま御指摘の問題でございますけれども、御承知のように、ソフトウエアについて何らかそういう知的な創作という面があるとするならばそれを何か保護をしていったらどうかということで、だんだんに非常に電子計算機、あるいはそれに伴うところのソフトウエアの進歩に伴って、何かそれを保護しなきゃならないのじゃないかということが議論をされておることは事実でございまして、また、先ほど文部省の方からもお話がありましたように、著作権サイドからの保護はどうするか、あるいは特許関係の面からこれをどういうぐあいに保護していくか、さらにはまたコンピュータープログラムを登録制度というようなことで流通というか、活用というか、そういうものをどういうぐあいに処理していったらいいだろうかというような、いろんな方面から検討することが必要であるということは当然のことであると思うし、また、そういう段階に来ておるということは私たちもそう考えておるわけでございます。  ただ、非常にむずかしい点は、国際的にプログラムの保護はしなきゃならぬということは提唱もされ、また、理解もされておるわけでございますけれども、具体的にコンピュータープログラムをどのように保護するのか、その具体的な方法ということになりますと非常にむずかしい問題がたくさんあるわけでございます。先ほど文部省サイドから著作権の面から見られた問題点は指摘されましたけれども、特許の方から見ましても、これをどういうぐあいにして公開をしていくのか、また、これを特許公開をした場合に、特許されたものがどうして保護をされていくのか、それからどれくらいの期間それを保護しておいた方が適当なのかといったような技術的な問題があるわけでございます。そういう問題をめぐって国際会議等でも、当方からも人を派遣していろんな論議はしておるわけでございます。世界知的所有権機構といったような機構もありまして、その中でこの問題をどういうぐあいに消化をしていったらいいかということがだんだんに論議はされておるわけでございますが、いま申しましたような従来の特許制度なり、著作権制度と全く新しく出てきたソフトウェアとの調整というか、少なくとも保護しなきゃならぬ実態はわかっても、それをどういう形で保護をし、また、それぞれの著作権法なり、あるいは特許法なりの意図している保護の内容というものとどう調整するかというような問題が残っておるわけであります。  一方、御存じのように、ソフトウエアの社会というのは非常に目まぐるしい進展を遂げ、流動化している。そういうことで、実際は世界的にもそれをどういうぐあいに処理するかというのはなかなかむずかしい、そういう段階でございますので、日本としましても、本当にどういうぐあいにこの対処をしていくかということを、世界のそういう動向等の絡みにおいて考えていかなきゃならぬということでありまして、決して後向きに放置するということでなくて、前向きにそういう動きに対してどうついていき、どう対処した方がいいのかということを具体的に論議をしなきゃならぬ段階である、そういうぐあいに理解しておる次第でございます。
  27. 鈴木力

    鈴木力君 ソフトウエア法的保護調査委員会というのは通産省の委員会でしょう。四十七年の五月に中間報告書が出ているわけであります。そしてことしは五十年、もう少しで丸三年になるのだ。報告を受けて通産省は、いまのところ三年かかって、むずかしいということがわかったという御答弁しかいただかない。そうでしょう、次官のいまの御答弁は。必要だけれどもむずかしいんですという答弁でしょう、長々とおしゃべりいただいたけれども。むずかしいことは最初からわかっておるわけです。三年たってむずかしいと言う。何年たったら具体的に何かできるのですか。この報告を受けて通産省は具体的に何をしたか、それを伺いたい。
  28. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) お話のとおり、四十七年の五月にソフトウエア法的保護調査委員会報告が出ておりまして、その具体的最終結論はいま申し上げましたとおりでございますが、これを受けまして通産省としましては、情報処理振興事業協会にプログラムの概要を記した書面を提出して、これを認証しかつ登録をすると、その登録をいたしまして、これを一般に公開をいたしまして、ソフトウエアの流通と申しますか、それに資するように制度を設けて、現在その制度を実施いたしております。  私、担当部局でございませんでその詳細を存じませんけれども、現在、そういうソフトウェアに対しますいわゆる登録制度あるいは登録したものに対する公開制度、それをもとにしてソフトウエアの流通が行われておる、こういうふうに私どもは考えておる次第でございまして、先行きの問題につきましてはその状況等も考えまして、今後いろいろ案が提示をされておることは私ども知っております。したがいまして、それにつきまして検討を一方では重ねておるわけでございまして、特許庁内部でも実はソフトウェアに対しますスタディーグループを設けまして、その点は検討、研究を行っております。
  29. 鈴木力

    鈴木力君 登録制度をつくって公開して流通をされておる、そこまではできたということだろうと。私は、だから一番先から言ってることなんですけれども、このことについては作者といいますか、製作者といいますかね、これの権利をどう保護するかということが一つのテーマとして据えられないと、どっか一部を欠くような気がするわけです。だから、少なくとも私はそういう条件であるなら、アメリカがやっているように、まず、著作権の部分だけでも適用して保護できるようなそういう道を開きながら、著作権ではみ出す点をどう保護するかということが具体的に進められるということも一つ方法ではないか。  もっとも、この製作者の権利の帰属ということも、製作者の製作権というか著作権——仮に著作権でいきますというと、著作権者の帰属がどこへいくかという問題は、これは著作権の保護で言えば、映画の著作者の権利の帰属がどこにいくかということと同じ議論に発展をする可能性はありますね。可能性はあるけれども、それにしてもしかし、そこでも保護できるものは法的に保護をする。それが不完全だからということで新しいものをというなら、もう通産省がもっと積極的に滑り出さないとこれは手おくれだ。手おくれになるというのか、適切な行政とは言えないような気がします。  少なくとももう三年もたっておる。難易のほどは、むずかしいことはいろいろある。むずかしい条件が出そろったら、これはできないはずがないと思うんです。それはひとつ御検討いただきたいと思います。まあ私はこれ以上この問題を言いませんけれども、いまのようなこういうコンピューターの時代になってきてまだソフトウエアの問題が解決をしないということは、先進国に入ろうとしている日本として余り自慢じゃない。そろそろ諸外国の動静を見てと言わないで、日本だってたまには先にいいことをしてみてもいいじゃないですか。ということで、ひとつもう少し積極的なお取り組みをこれは御要望申し上げたい、こう思います。  それで、あと具体的な法案のことについて若干お伺いをいたしたいんですが、実は法案につきましては、さきにわが党の小柳理事の方から総論的な御質問を申し上げて、総論的なお答えをいただいております。しかし、これは正直に申し上げまして私も全くの素人でありまして、どんなに考えてみても、また法案を読んでみてもどうしても私にはわからない、理解のできないところが非常に多いので、これはまことに初歩的なといいますか、とんちんかんなことも御質問申し上げるかもしれませんけれども、しかし、私みたいな国民もまだいるだろうと思えば、がまんしてひとつわかるような御説明をいただきたいとこう思います。  そのうちの一つは、多項制の採用について小柳理事が質問したのに対するお答えもいただきまして、私も伺っておったのですけれども、どうしてもよくわからない。それで外国状況や何かについてもできれば簡単にまず、多項制が外国ではどういう形で採用されているのか、それから運用の実態がどうなっておるのか、簡単にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  30. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 諸外国はほとんど多項制を採用しております。それで、この制度内容と運用を非常に短時間で申し上げることはなかなかちょっとむずかしいのでございますが、かいつまんで申し上げますと、これらの国々は、自分の国の特許法あるいは特許制度歴史からそれぞれいろいろの制度ができておるわけでございまして、通例一般的に言いますと、大部分の国が一つの出願をするのについてその出願の範囲内が一発明である、一つ発明であるということがおおむねこれは法文にある国もありますし、ない国もございますが、大体それが基本的な原則になっております。それでその一発明の範囲内におきまして、その中でいわゆる多項制と申しますか、発明の構成なりあるいは実施態様なりそういうものが記載できるというのが通常のかっこうでございます。  そこで、概要を各国別にごく簡単に申し上げます。  簡単に申し上げますので、あるいは私の言い分が十分でないことを恐れますが、あえて申し上げますと、たとえばアメリカにつきましては明文上一発明一出願の規定はございません。アメリカ特許法の百十二条というところに、特許の「明細書には出願者が自己の発明であると信ずる主題を特に指摘しかつ明瞭に請求する一またはそれ以上の請求事項を」、クレームですけれども、これを「結論的に記載しなければならない。」ということしか書いてありません。それ以上の規定はございません。  実務上の運用におきまして、この一発明か多発明か、複数の発明であるかということを厳重に実はしておりませんで、その場合によりましてその範囲が少しずつ違っております。技術分野、そのサーチ範囲あるいは技術の分類、そういうものにかんがみましてどういうふうに問題を実質的に具体的に処理するかということにむしろ主眼が置かれておりまして、非常に実際的な解決によっておるようでございます。したがいまして、一発明一出願ということが原則ではありながら、実際の運用という点で一発明の概念、範囲というものは明瞭ではないということでございます。実際上一発明のいわゆる同一性といいますか、そういうことで、判例によって個々それぞれ判断をしてやっているというのがアメリカの例でございます。  それからイギリスの例では、特許法の二十一条に、「一の特許は、一の発明に対してのみ付与される。」という規定がございます。さらにこれは一発明一出願の例でございます。それにつきましても一発明とは何であるかということは、日本法律と違いまして実は法律に何ら規定もございません。したがいまして、イギリスにおきます一発明の概念は技術水準、明細書の記載の方法、仕方によりまして、より狭くなったり広くなったりして把握をされておりまして、いわば相対的な水準というふうに考えられております。そういうものを一または二以上のクレームで書かなければいけないという規定になっております。  それから西ドイツにおきましては、同じように余り……
  31. 鈴木力

    鈴木力君 いいです、その辺で。大体いいです。それだけ伺って時間がなくなってしまったので。
  32. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) あと西ドイツ以下、日本の今回の法案は西ドイツに非常によく類似しておりますが、西ドイツもほぼ同様な規定がございます。
  33. 鈴木力

    鈴木力君 それで外国でもいろいろな記述がある。多少実は私も拝見をしたのですが、わからない。わからないなりに読んではみたのですけれども、ただ私は気にかかる——気にかかるといいますか、今度改正して多項制を採用しようとする趣旨はもっぱら今度の条約でしょう。何ですか、PCTですか、あの条約に加盟して過日わが国もこれを批准をした。それに見合って国内法改正をしなければいけない、こういう必要上——まあ条約が必要上というか、それなりに国際的な日本の立場ということからの改正だというふうに理解しておりますが、それはそのとおりで、私もそうすべきものだとは思います。  どうしてもわかりませんのは、いま一発明という説明がございましたですね、そこで一体条約と国内法というのが基本的にどういう関係にあるのか。つまり、私はこういうつもりで伺います、余り時間がありませんが。少なくとも発明なら発明というものに対する解釈が、条約と日本国内法との解釈が統一をされていないと相当な混乱を起こす危険性がありはしないかというふうに考えますけれども、その辺はどうなんですか。
  34. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) ただいまの御質問は、条約と日本特許法の問題というよりも、むしろしぼりまして、発明の概念におけるPCTと日本特許法関係というふうに私ども受け取りましたわけでございますが、それで申し上げますと、PCTは、実は出願の手続なり形式なり、あるいはそれ以外のプロセスと申しますか、手順ということは決めておりますけれども、実体的な判断ということ、一発明が何であるかということなり、あるいはその特許性があるかどうかということの判断につきましてはPCTにはほとんど規定がございません。逆に言いますとPCTは手続規定と、そう言い切るのは多少危険でございますけれども、PCTは簡単に言えば手続規定でございまして、実体的な判断は各国の特許庁にまかせられておるというのがPCTルールでございます。  それで、いまの多項制の問題は、付言して申し上げますと、多項制——日本は一項で書いておる、PCTでは諸外国がそうでありますので多項制になっているという、その特許請求の範囲の記載方法が違っているということでございます。したがいまして、その記載方法に当然内容も伴ってきますが、それをPCTに合わせるようにしたいということが今度多項制を採用しました対外的な理由でございます。対内的な理由は別にございますが、対外的な理由はそういうことでございます。
  35. 鈴木力

    鈴木力君 それで、さっきドイツの話も出たんですが、これは特許庁の出している「工業所有権法逐条解説」、これの三十八条の「字句の解釈」で一発明の解釈を「発明の単位をどういう基準によつて定めるかはきわめてむずかしい問題である。ドイツ、イギリス等においては一発明一出願の原則のみを規定し、その例外についてはなんら規定していないが、先に例示した肥料P1と肥料P2」云々と、こうありまして、「場合は一出願ですることを認めている。」と、ずっと解説をしておって、「これは一発明ということの意味を広く解釈しているからにほかならない。すなわち、相互に技術思想としての関連が密接なものについては二以上の技術内容のものでも一発明であると観念しているもののようである。」というふうな解説ですね。「現行法についても、こうした立場から立法する案も検討されたが、これはわが国の従来の発明の単一性についての考え方相当違ってくるので、経過的な混乱をさけるため、採用しなかった。」と、こうなっているんです。  そうすると、私は、この解説は、単一性についての考え方をとる限り、ドイツや何かの考え方は採用できなかったというふうに読めますね、日本語として読みますと。そうすると、今度は多項制に移行するという場合には、当然このドイツやイギリスの考え方を採用すべきであると私は思う。何と頑強に意地を張って採用しないで、単一性ということを主張した解釈をずっと貫いて多項制を解釈しようとしておる。どうも私は、思想的にといいますか、思想的にと言うと適切な言葉かどうかわかりませんが、何か一貫していないような気がする。どうしてこのドイツ、イギリスのような解釈を採用できなかったんですか。
  36. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 先生がいまお尋ねの点は、特許法の概念の基本的な問題に触れる問題でございまして、私どもこの問題につきまして、実は昭和四十六年から昭和四十九年まで、おおむね三年間審議した実質的な内容のほとんどは、実はその検討でございました。したがいまして、非常に重要な問題でございます。  先ほどちょっと申し上げましたように、実はドイツ、イギリス等につきましての一発明の概念というものは、判例上大体は決まっておりますが、明文の規定はございませんので、非常に伸縮がございます。日本のように一発明というものの概念というものがはっきりしておりません。したがいまして、それを日本特許法にそのまま取り入れることにつきましては、特許法の基本的な考え方を全部一応、極端に言えば改正しなければいけないという問題になります。日本で言っております発明といいますのは、日本特許法の第二条の一項に「「発明」とは、」という定義がございまして、三項でこの発明について、「この法律発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。」ということで、「物の発明」と「方法発明」と「物を生産する方法発明」というふうに、三つございまして、その三つについてそれぞれの実施方法、要するに、権利の内容はこうであるという明文で規定がしてあります。これが日本特許法発明の俗な言葉で言えば単位であります。要するに、この一発明の単位ということを基礎にいたしまして、日本特許法の全文はこれで成り立っております。  したがいまして、アメリカはこれは一番違うわけでございますが、ドイツ、イギリスのように、発明というものにつきましての——じゃ、しからば、イギリスの一発明の範囲とは、単位とは何であるかということを私どもいろいろ検討いたしました。発明の単一性というのは、従来の判例からいけば大体こういうことであろうというある程度の推測はつきました。そういう報告書も出されております。しかしながら、それがある場合におきましては多少ずつやはり判例で違っております。それは、そのときの具体的なケースによっての判断が多少ずつ違うようでございます、明文がございませんので。したがいまして、これは判例によっていろいろ移り変わっているわけでございます。  したがいまして、その範囲が実は一つの、まあこういう言葉で申し上げて、シングル・ゼネラル・インベンティブ・コンセプトという言葉一般的な、何と申しますか、一つ発明思想と言いますか、一般的な概括的な発明思想と言いますか、そういうもので統一されているものは一発明であるというふうに概念をされておるというのが一般的な考え方でございます。したがいまして、日本のように物の発明、あるいは方法発明等という区別がないのでございます。そういうふうに非常に大きく違いますと同時に、かつ、ドイツ、イギリス、ことにアメリカにつきまして、それぞれ発明の概念、一発明の単位というのが必ずしも明瞭でないということ等もございまして、私どもの方もいろいろ考えました末、やはりそれをとることにつきましては、日本の明治十八年以来やってきました法律のいわば非常に大きな改正ということにならざるを得ない。  しからば、そういう方法をとらないでほかの方法で、いまのPCTルールなりあるいはたとえばドイツ流のことかできないだろうかということを考えました。それは現行法の基本は昭和三十五年でございますか、三十五年法の改正のときに審議を重ねました結果、いわゆるいまお話がありました三十八条の併合出願というところでその点を救いまして、この三十八条で書いてありますことは、いわば一般的な、まあ共通したと申しますか、発明思想で貫かれておりますものにつきましては、一願書で出願ができると、日本では二発明という二つの単位であっても一出願でできるというふうに、ここで双方を総合しまして、実体的には一出願で、たとえばドイツの制度におけるとほとんど同じような出願ができるという制度制度をつくったわけでございます。そういうふうなことで、結局結論的には、一出願で出願し得る範囲というものは、大体そのドイツあるいはそれ以外の国とほぼ同様の範囲で一出願できるということにしたわけでございます。  ところが、それは三十五年法の話でございまして、そのとき欠けておりましたのは、要するにこの三十六条の現行の五項にありますように、「発明の構成に欠くことができない事項」しか現行法では書けない。それに対しますいわゆる実施態様的なものが書けない。ドイツで言いますと、これは下位概念と言っておりますが、下位概念的なものが請求範囲の中に書けないというのが、その三十五年法のときにドイツ的なものと日本的なものとの外形的に見て一出願ということから見た違いでございます。それを今回、実施態様というものを請求範囲の中に書かせることによりまして、それを合わせようということでございます。したがいまして、結果的に見ますと、一出願できる範囲という観点から考えますれば、ほとんど相違がないという結論になっている、こういうことでございます。
  37. 鈴木力

    鈴木力君 説明を聞けば聞くほど何か無理していらっしゃるじゃないですか、長官。結局こういう解釈を出しておいて、そして、結果的には多項制に移行するためのつじつまを合わせるために、また別の方向にただし書きをつけてみたり、あるいは同じ願書で二つのものができると、併合、併願制ですか、それを採用してみたり、何となしにここの発明の解釈のところで意地を立てて、そして、それにつじつまを合わせるためにあちこちいじっているというような感じがしてならない。同じ手続になるならば、もう特に今度国際的に多項制を採用して入り込むというならば、そういう諸外国に通用されているものをむしろ解釈として切り変えた方が、そうしてそれに法案を整備をした方が何となしに自然なような気がする。ところが、一つのところに頑張って意地を立てているものだから、それに合わせるためにまたあっちをくっつけたり、こっちをくっつけたりしてこれで結構いけるんですという説明になるわけです。それから何となしに、もしいまの長官のおっしゃるような解釈だったら、やっぱりここの字句の解釈というのをちょっと直さないと、私どもが読ましていただくと、この解釈によって少し私どもは混乱するような気もする。それは私がわからないからということになるだろうと思いますけれども、わからない人間が大部分いるんですから、長官クラスの人ばっかり国民ならこんな議論しなくてもいいんです。国民を迷わせる法律ですよ、この法律は。と言うと私の独断かもしれませんけれども。  もう一つだけ端的に伺いますが、たとえばドイツならドイツでこういう解釈をしておったために、日本から見て不都合だという実例がありますか。
  38. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 日本とたとえばドイツの場合で、発明の単位が違いますから、したがいまして、当然それに伴う概念上の相違はございます。しかしながら、実際上の請求範囲を今度書きます場合に、日本に出願する場合は当然日本語でなければいけませんが、その場合における考え方につきまして、非常に大きな修正を要するということはなかろうかと思います。  それで、それからもう一つつけ加えさしていただきますが、いまドイツの例で申し上げましたけれども、実はアメリカ、ドイツ、イギリス、それぞれ制度は同一ではございません。違いますから、したがいまして、日本が仮にどっかの制度をとる場合には、どの国の制度をとるかということによりましても、これはかなりやはり相逮がございます。発明の単一性の考え方……
  39. 鈴木力

    鈴木力君 そんなこと聞いているんじゃないのですよ。時間がないから、質問に対してはそのとおり直接に答えていただきたい。  ドイツがこういう解釈をしておるために、ドイツ自体の特許の扱いについて、日本から、横から見て、あれは不都合だということが実例としてありますかと聞いている。あるとかないとかで答えてください。
  40. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) ドイツの制度でやりますと、ドイツ自身としては私は別に不都合は何もないと思います。ただ、日本にそれをそのまま輸入をすることは、私はいままで考えたことはありませんが、そこだけを変えることは事実上不可能でございます。
  41. 鈴木力

    鈴木力君 不可能だという考え方でこの解釈を出していることはわかる。わかるけれども、具体的にこれが不可能だという説明がないわけでしょう。さきの統一した考え方を、何となしに、これは死んでも放さないというそんな様子にしかどうも私は見られない。もちろんそれは特許庁内にも相当議論があるでしょう。この解説にさえもそういう「案も検討されたが、」とこうある。まあ結果的にはこうなったという説明ですから、それはそのとおりでよろしいと思う。  私、まあ単一性と単項性というのは同じだというつもりで聞いているわけじゃありませんがね。これは違うということは私もわかりながらいま質問しているわけですけれども、日本法律のあり方で、そこはそれとしても、そういう解釈の上に立つから、たとえば多項制を採用する場合にも、今度の解説のようなただし書きのところでこうくっつけている。何となしに法律の体裁からしても、解釈も、ドイツ式の解釈をとっておけばもう少し法律の体裁がよくなりそうなような気もする。まあそんなようなことを考えられるのですけれども、それは同じことを繰り返すことになるかもしれませんが。  そこで、今度この「実施態様」という言葉が出てまいりますが、この実施態様というのは一体どういうことを言っておるのか。いろいろ資料を見、解説も伺ってみたけれども、これもまた私は聞けば聞くほどわからなくなる。もう少しわかりやすい説明ありませんか。
  42. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 実施態様の概念は、例でお話を申し上げました方がとも思いますので、例でちょっと御説明を申し上げたいと存じます。  一例といたしまして、「特許請求の範囲」の「発明の構成に欠くことができない事項」というふうなところに、「金属フレームが、無孔外皮を有する発泡グラステックスにより覆われている自動車用ハンドル。」という、そういう構成に欠くことができない事項を書いたといたします。そういたしました場合に、これは無孔外皮を有する、穴のない外皮を有する発泡グラステックスにより覆われている自動車用ハンドルということでございます。いわゆる一種のハンドルのショックアブソーバーの方法一つだと思いますが、それで、それの実施態様といたしまして、その発泡グラステックスのところを第二項としまして、実施態様に「発泡グラステックスが、発泡ポリウレタンである特許請求の範囲の記載一の自動車用ハンドル」であると、こういう記載をいたします。  この例でおわかりいただけますように、一に書いてあります特許請求の範囲、発明の構成自身が、各種のいろいろなことを総合してここに掲げておりますが、その中の発泡グラステックスの部分を具体的に発泡ポリウレタンというものにするという、そういう自動車用ハンドルである、これが実施態様になるわけでございまして、しかもその上にさらに、「特許請求の範囲の記載一の自動車用ハンドル。」とありますから、一に書いてあります発明の構成の技術的特徴は全部含んだ上で、その上の一部をこういうふうに限定をいたしておるわけでございます。したがいまして、実施態様と申しますと、それ以外の事項もそれぞれ一の、要するに構成に欠くことのできない事項技術的特徴を全部含みながら、それをある部分につきまして具体化し、あるいは限定して、その特徴なりあるいは一番いい状態を示し、場合によりましては、その権利の範囲をはっきりするというふうな作用を実施態様は持って、おるわけでございます。
  43. 鈴木力

    鈴木力君 それで、今度の法律に実施態様ということが初めて出てきたんでしょう。いままでにこの法律に実施態様という言葉が出ておったでしょうか。
  44. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 実施態様自身の言葉特許法に初めて出てきた言葉でございますが、歴史的に考えますと、大正十年法のこれは施行規則でございますが、施行規則に「實施ノ態様」という言葉がございました。
  45. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、この施行規則の「實施ノ態様」ということと「実施態様」というのは同義語としてこの法律では使っているんですか。
  46. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 技術的な表現といいますか、といたしましては同意語でございますが、法律的には、旧法の場合は、大正十年法は請求範囲外でございますから、法律制度では違いますけれども、技術的な表現としては回しでございます。
  47. 鈴木力

    鈴木力君 そうなってきますと、これはまたどういうことになりますか。昭和四十二年十一月一日付の審査部長からの通達か何か見ましても、従来そういう「實施ノ態様」等は一つの例として挙げられておって、それはあまり審査の対象にしなくてもいいということになっておったのと違うんですか。
  48. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) いま先生お尋ねの原文を実は見ておりませんのでわかりませんが、おそらく私が想像しますところ、大正十年法の「實施ノ態様」のことではないかと思いますが、その大正十年法の「實施ノ態様」は施行規則でこれは付記することができるという規定になっておりまして、別項で付記することができるということになっております。したがいまして、請求範囲ではない、要するに特許請求の範囲の範囲外のものであるという概念でございます。
  49. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、従来の「實施ノ態様」というのは、特許請求の範囲外のものである、それと同義語をここに「実施態様」と持ってきて、今度は範囲内になるでしょう、この「実施態様」が。そうするというと、従来の解釈が全然違ったものを、全然違う用語を法律に持ってきて、そこに定義なしに法律がいけると思うのは、どうも私はこの点は疑問なんですね。だから、「實施ノ態様」という言葉で、範囲外のものであるという解釈であるなら、「実施態様」というのは範囲の内のものであるという解釈と全然違った解釈になる、逆さまの解釈になるわけでしょう。その場合に、法律用語に使うというのは、私は多少軽卒だという気がしますよ。だけれども、これを使うことが適切だということであれば、ここに定義が必要になってきやしないか。  私が伺うと、例で説明をしますということになる。しかし、法律は一々例で説明して歩くわけにいかないでしょう。やっぱり法律の中に定義というものが一つ必要になってきやしませんか。特に私がさっき言ったように、だから発明ということの考え方が、単一性ということでこだわってこうずっときているわけだと、それだけにきているならば、用語の解釈というやつも統一をしないといけない。外のものを内に入れるという場合に、同じ用語でだれがそういうふうに読めるのですか。
  50. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 大正十年法の特許法の施行規則で書いてございますのは、「特許請求ノ範囲ニハ發明ノ構成ニ欠クヘカラサル事項ノミヲ一項二記載スヘシ但シ發明實施ノ態様ヲ別項二附記スルコトヲ妨ケス此ノ場合ニ於テハ其ノ附記タル旨ヲ明示スヘシ」、これが大正十年法の施行規則でございます。私どもの方のこれに対します解釈は、請求範囲は一項に記載をしなければいけない。それを実施態様というものは別項に付記します、こういうふうに書いてあります。したがいまして、明らかにこれは請求範囲ではないと。別項でございますから、一項以外でございますから、請求範囲外であるというふうに私どもはこの施行規則から判断をしております。判例もまたそういうふうになっております。  それから今回の改正法におきましては、三十六条の五項に、「特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載しなければならない」。これが本文ございまして、それを要するに引きまして、「その発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」、「その発明の」と書いてありますのは、まさにこの五項の本文に言っております「発明の詳細な説明に記載した発明」の「発明」でございます。「その発明の実施態様を併せて記載する」、「併せて」というところで「のみを記載しなければならない」ということで「併せて記載する」ということでございますので、その点は特許請求の範囲にはこれこれを記載しなければいかぬ、あわせてこれも記載することができるのだということで、請求範囲内にあるというのが私どもの解釈であります。
  51. 鈴木力

    鈴木力君 何か手品みたいな説明になるんですね。「発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」でしょう。「併せて」という意味は、別項とあわせてというのは違うということになりますけれども、それもまたこのことがあって「併せて」これをというのと、同じテーマで別項にということとは、日本語の解釈では項目が違うのか、一方の項目になるのかということにしかならないのじゃないですか。少なくとも外だというものの用語を内側に持ってくる場合に、あわせて記載することができるというだけで理解ができるだろうかということですよ。だから、「実施ノ態様」と「実施態様」という、この「ノ」を取った意味というのが、こうなんだからこうなんだというもう少し定義めいたことをきっちり整理する必要がある。  私は、やっぱり法文に入れるのか、あるいは別に定義として出すのかあれだけれども、これはできればやっぱり私は用語の定義というやつをきっちりしておかないと、特許の今度は対象になるわけですから、請求の範囲の中に入るわけですから、その辺がはっきりしないと、何かこの法律は通ったが、わかったのは特許庁の長官一人というような法律は私はつくるべきじゃないとこう思う。これはあとで理事会等でも御検討なさるでしょうけれども、もう少しわかりやすい法律という意味からはぜひひとつ御検討いただきたいと思う。全然違った概念の同じ用語を違った場所に持ってくるんですから、よほど扱いは慎重にしなければいけない、そう思う。  それから、時間がだんだん進みますからもう一つ多項性で私は伺っておきたいのは、これも私はよく理解ができないのは、三十六条の今度の改正の「前項の規定による特許請求の範囲の記載は、通商産業省令で定めるところにより、しなければならない。」このことにつきましては、前にうちの小柳委員が質問をされて、そうして、その省令の案は出しますという御答弁をちょうだいした。今度私もその案をちょうだいはいたしました。それでいま時間の都合もありますから、この案について一々どうこうとは言いませんけれども、少なくともこの省令の要綱を見ましても、さっきの実施態様という言葉はそのままになっている。実施態様とは何ぞやということはここにも入っている。  それからもう一つはこれだけのものが、このただし書きじゃなくて六項にあるものが、三十九条によって拒絶の対象にもなるわけです。こういうものがここにただ単に省令で定めるということで逃げていいのかとうか。——まあいいです。いま中身のことを言うわけじゃありませんです。少なくとも私は、このことが拒絶の対象になるような条項であるだけにこれは法文に入れるべきであるという主張です。こういうことを政令でずっとやっておいて、そして後でこのことがいろいろな最も重要な部分になるわけです。最も重要な部分は省令でもっていくという、私はこの法律の作成の考え方にはどうしても賛成できませんです。これはどうしても省令でなければならないという理由がもしあればお聞きかせいただきたい。
  52. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 現在三十六条六項は、お話がございましたように委任省令になっております。したがいまして、これは記載事項でございますから、形式なことでございますので、委任省令になりますと同時に拒絶理由にはしますけれども、無効理由にはいたしておりません。具体的な権利の問題に、権利になりました後の無効理由にはいたしておりません。  それで、なおそれとの比較でございますが、たとえば現行法に十七条の第二項二号という規定がありますが、方式違背という規定があります。この方式は全部——全部というのはちょっと言い過ぎですが、ほとんど全部は省令できめております。その省令でもし方式違背になりました場合には十八条によりまして出願無効になります。したがいまして、審査にも回らないのでございます。そういうふうに、これは法律と省令との区分をどういうふうにするかということは非常にむずかしいのでございますけれども、ある一定の事項はやはり省令に委任せざるを得ないと考えております。  一番いい例でございますと、たとえば方式違背の場合で、施行規則には、願書は日本語で書かなきゃいかぬと書いてあります。こういう場合には翻訳をつけろと書いてあります。英語で全部出てきた場合には方式違背になるわけです。そういうふうな問題は全部省令で実は書いてあるわけです。これは一例でございますけれども。したがいまして、私どもがこれを見ましたのは、もちろん省令で書くか条文で書くかというのは、場合によりましては体裁の問題でもございましょうし、あるいは各国との特許法との並びの問題でもございましょうし、あるいは国際条約との並びの問題でもございましょう。それで、いま私が申し上げておりますこの記載の云々という内容につきましては、各国の特許法あるいはPCTの規定もそうでございますけれども、ほとんど全部といいますか、むしろ全部と言っていいと思いますが、これはルールといいまして、施行規則に書いてあります。
  53. 鈴木力

    鈴木力君 よそのこと等、いろいろな全部見たわけじゃありませんから、いまあわてて見てもよくわかりませんけれども、少なくともこれが今度の改正の一番の中心点でしょう、一つの多項制というところの。そのときに、ただし書きに実施態様を書くことを妨げないと書いておいて、中身は省令ですと、大体こういう法律というのは、私は体裁上から言っても、その重要なポイントというものはきちっとやっぱり法令に入れておく。つまり、実施態様を書くことを妨げないと、こう書いておって、そしてその前項の規定による請求の範囲の記載はこれこれこれであると、さっき言ったように実施態様という言葉の定義もない。定義もなくて前に使っておるのと逆の解釈、逆の意味言葉にこれを読めとこう言っておる。そうしておいて、その中身は省令でございます。まあそれは原案をつくった政府とすれば、政府の立場を主張するのはあたりまえです。それを別にどうこうとは言いませんけれども、しかし、われわれの例から見ますと、これは国民が読むんです。法律というのは国民がこの法律によって拘束をされるので、もう少し重要な点は法律としてきっちりとしておくへきだ。これは私はもうこれ以上——意見は伺いますが、しかし私は、相当強硬な意見を持っている。これは相当法文の中に入れなければ、危なくてこの法律には賛成できないという気持ちがあることをいま申し上げておきます。  それで大分時間がたちましたが、もう一つだけ私はお伺いをしたいのは、この特許法の中で審査官のあり方の問題でお伺いいたしたいんですけれども、私も全部法案を読んだわけじゃありませんが、審査官という者、あるいは審判官、この人たちがどういう立場で法的に保障されているといいますか、位置づけをされていらっしゃるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  54. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 審判官、審査官は、一定の資格を持った人が、たとえば審査の場合でございますと特許庁長官がその人にこういう点について審査をさせると、こういうふうな法文がございまして、それによりまして当該出願案件を審査をするということでございます。それで、この審査ということ、ことに審判というものにつきましては、司法的な色彩がかなり強いことはこれは当然でございます。それと同時に、行政庁のやる処分でございますからして、当然行政的な処分であることもまた間違いはございません。これは先般松本参考人がるる申し上げたとおりでございます。したがいまして、私は、性格としてはその両面を持っているというふうに考えております。
  55. 鈴木力

    鈴木力君 その両面を持っているということは、これは私も理解できます。ただその場合に、仮に行政的な位置づけというものがあるにしても、たとえば業務の中身から言いますと、それなら行政的な一つの縦の系統によって、おまえの審判が審査がけしかる、けしからぬということを行政の上から業務命令にこれを直せとか直さないとかと言うことがあり得るんですか。あり得ないんですか。
  56. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 当該審判官なりあるいは審査官が判断をいたします基準になります、要するに審査基準なり何なりというものにつきましては、これは統一をなるべくするようにいたしまして、統一した基準を相談をしてつくっております。その基準に従いまして審査官、審判官が個々の具体的な例を審査をし、あるいは審判をするわけでございます。  私どもはその個々のそういう一般的な基準に従った審判なり、個々のケースの審判の判断なり審査の判断に関しましては、これは審査官、審判官が第一義的に責任を持つものだと考えております。
  57. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、第一義的には責任を感ずると、その後の場合の責任はどういうことになります。
  58. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 審査官、審判官が判断をいたしましたことにつきましては、当然のことでありますが、ことに審査の場合でございますけれども、当然これはいい場合には公告をいたしまして、異議申し立てということで、一般大衆の審査に付しましてから最終決定にするということになるわけでございます。
  59. 鈴木力

    鈴木力君 その異議申し立てというのは、行政の系統の異議申し立てという意味じゃないでしょうか。
  60. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) おっしゃるとおりでございます。
  61. 鈴木力

    鈴木力君 そこで私は、司法的な性格と行政的な性格を持っているということは、いまの国家行政組織の中の系列から見ましてもそれはそのとおりだと思う。しかし、それだけに私は法文にこの審判官の独立権というようなものを法律で保障しておくということが非常に重要なことではないかということなんです。都合によって、決裁を受けてこの決裁がだめだったというようなことは、恐らく事実上はあり得ない。いまそういうことをおやりになっていらっしゃらないでしょう。あり得ないと思います。あり得ないけれども、あり得ないだけに法文に明記をしておいて、そしてさらにこの審査官の責任というものを明確なものにするということが、国民から見れば非常に安心できる審査官であり、安心できる審判官になる。これがどうも私が伺ったところでは、余りこの法文には独立性ということがはっきりしていないみたいなんです。その点についてはいかがなんですか。
  62. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 一般的な業務内容なり独立性につきましてのいまのお話は、あるいは業務のやり方はいまお話しのとおりでございます。それで、私どもがただ考えますのは、それにつきまして、他の法令なりあるいは他のそういう職についている人との比較、それをやはりこれは国家行政組織全体として考えるべきことじゃないかと思います。これはむしろ特許庁長官の判断以上のことであろうかと思いますが、たとえば国税の審判官、あるいは公正取引委員会にも審判部というのがありますけれども、そういういろいろか例を私どもも一、二調べましたけれども、そういう例は実はございません。それからなお、その場合におきましてこれはそういう明文で書くかどうかということにつきましては、私どもそれに相応するやはり資格要件であるとか、そういうものにつきまして各方面から実はいろいろ意見がございますので、もしそういうふうになりました場合には、その辺もあわせて考えざるを得ないというふうな問題点もございますので、いまにわかにその点では踏み切れないというのが私の考え方でございます。
  63. 鈴木力

    鈴木力君 資格要件というのはもうあるでしょう。いまだれでもただ審査官、審判官になり得るというものでもないですよ。私が申し上げようとするのは、いまの法手続の問題ということもありますけれども、やっぱり一つのこの審査なり審判なりの権威というものを法律で裏づけしておく必要がある。それは行政の中ですから、行政の長がそういう配慮をしつつ運用をしているということは私は信じてはいますよ。だから、そういうことを配慮しつつ運用しているということは中の問題なんですね。中の問題なんでして、国民に対しての権威ということの証明にはならないわけです。対象になる審査を受けるのは国民なんです。そういう点ではやっぱりその司法、特に司法的性格も持っておるだけに明文化すべきだ。いまの長官がおっしゃったような資格要件というようなこともなお必要であるとするならば、それも合わせても結構だと思います。いずれにしても、そうしたものがこういう国民の利益を保障する立場にある審査なり審判なりということには、法律的に独立というか、権威というものを保障するということがやっぱり法律には欠けちゃいけないと思っている。これはもちろん法律のことを言っているんですから、長官がどうこうということにはならないかもしれません。しかし、やっぱりその当局である長官とすればそういう意図をお持ちになるのが正しいだろうと思いますね。  その場合に、特許庁長官が別によその省庁のことをどうこうまでは言わなくてもいいだろう、言わなくてもいいと思います。それは立法作業のときに必要な場合の作業手続というのがありますけれども、特許庁それ自体を権威あらしめるためにも私はこれは必要だ、そう思うんです。ひとつ、これはもう御検討をぜひいただきたいと思うんです。いまにわかにという長官のお話がございましたけれども、私はできればこういう法律改正のような機会に、そういう次陥というものがあるならこれは素直に補強をしておくということが重要なことだ、こう思っていま申し上げたわけであります。大分もう時間がありませんから私はこれでやめますが、実はこのほかに物質特許にも若干の疑問点もあります。あるいはまた特にこの料金改正の問題については、私もわかるような気もするけれども、相当にこれは、このままでいいのかというようなこともございますけれども、きょうは時間がございません。後の機会に私の同僚の方から残りは質問していただくことにしまして、私はこれで質問終わります。
  64. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      —————・—————    午後二時五十八分開会
  65. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  66. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 議事進行。
  67. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  68. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を起こして。
  69. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 商標につきましてお伺いをいたします。  今回の改正は、商標出願の急増に対処するために、その出願の前三年以内に使用されないものは更新登録をしない、こういうことでありますが、更新チェックによってどの程度の効果を予定しておるのか。更新出願の何%をこれによって拒絶でき得るのかですね。  さらに、現在更新出願は出願件数全体の何%ぐらいになるのか。また、更新率はどのくらいなのか。その辺をまず概括的にお伺いいたします。
  70. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 更新チェックによりましてどの程度出願が減るであろうかということは、先行きの予測でございますだけにいろいろのむずかしい事情がございますが、各種アンケートその他等を総合いたしまして、おおむね八%前後の出願の減少効果があるんじゃないかというふうに私どもは判断をいたしております。  それから、第二番目の御質問でございます更新登録出願は全出願のうちどのくらいの割合であろうか、こういう御質問でございますが、おおむね一八から二〇%ぐらい、最近は少しずつその割合が上がっておりますので、四十八年度は一八%程度に相なっております。更新登録出願がありましてから、それによりまして拒絶されるものは現在のところは非常に少のうございまして、おおむね九七、八%程度は更新登録になっております。
  71. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 出願人は、この高い出願料あるいは登録料、手数料を払ってでも、いままで使ってない商標の出願をしてくるわけであります。それはそれなりに出願人にどうしてもその商標が必要である、そういうことで出願するわけでありますが、今回、それを使っておらないということで、それだけの理由で抹殺されるということですが、果たしてそういうことだけで抹殺してよいものかどうか。その辺のところに出願人の方から言いますと、かなり不満もあるようでありますから、長官の明快なる答弁をお願いしたい。
  72. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 商標というものは、本来商標と言いますいわゆるマークと申しますか、マークだけで価値があるものではございませんで、これはそれを使用することによりまして、使用する者の営業上の信用と申しますか、のれんと申しますか、それと一体になりまして、それが商標というものに、そのマークにシンボライズされて出てくる、それと一体となっているものを保護するというのが商標法のたてまえでございます。それは商標法の一条にも書いてありますし、あるいは商標法の三条にもそれに類するような規定がございますが商標というものは使用するということが前提になって商標法が成り立っておるわけでございます。したがいまして、今回、更新登録出願で使用するしないということを過去三年にわたりましてチェックをいたしますということは、そういうたてまえから申しまして、十年たちましても過去三年の間は使用していないというものにつきましては、本来商標法のたてまえから言うと保護の対象になるものかどうかということにつきまして、やはりこれは問題があるんではないかというふうに考えられます。したがいまして、そういう意味におきまして商標法のたてまえから申しましても、その点は私どもの方としては、使用義務の強化をやはりいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  73. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 登録商標を更新出願をしておるわけでありますが、これはいま現在使っておらなくても、これから使う意思もある、そういうものもあろうかと思うんです。しかし、現在使っておらない、使っておる証明がないからだめだ、こういうことになりますと、まあ後からお伺いしますが、いわゆる商標ブローカーみたいなものに先を越されちゃって、そして思わぬ被害を受ける、こういう心配があるからこれは出すわけですな。ところがそれは今回の改正で、使っておらなきゃだめなんだよと、ぱんとこうやられるわけですが、その辺に対して非常に出願者としては不満もあり、また心配もあるわけですが、いかがですか。
  74. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 先生お話がございました商標ブローカーと俗に言われておりますものの存在、私どもも非常にこれは困った存在であるというふうに考えております。どうかしてその商標ブローカーと称せられるそういうものにつきましてはやめていただくようにいたしたいと思っておりますが、その手段として一番私どもが筋として聞きますのは、やはり商標ブローカーは当然自分で使っていない商標を出願をされて、場合によってはそれをよそに譲渡されるわけでございますから、その使うということをもっと強く意識するような法律改正をするということが本来の筋道であろうかと思います。したがいまして、今回もそういう趣旨に沿いまして、商標の使用義務の強化という点を二点にわたりまして改正をお願い申し上げている点でございますが、なおそれ以外に、商標法の第三条に、「自己の業務に係る商品について使用をする商標については、」という登録要件の中に字句がございます。したがいまして、その業務と使われる指定商品との関係をさらに明確にしたいということによりましても、その商標ブローカーというものの存在を、商標ブローカーが出願をするという事態をなるべく防ごう、こういうふうにも考えている次第でございます。
  75. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いま長官のおっしゃった第三条の業務のことですが、この法律の「自己の業務に係る商品について」、この「業務」という用語の解釈、これは従来は、この商標を使用する意思があればよかったんです。こういうふうに解釈をされて今日まで来たように思うわけでありますね。そうすると、今回はこの業務というのは、「自己の業務に係る商品」、これには今回は商標を使っておらなければ、この証明がないとだめなんだ、そういうことになるわけですが、この業務の「自己の業務に係る商品」、この業務の解釈ですね。これは改正前と改正後と変わったわけですか。
  76. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 三条については法文の改正はいたしておりませんが、解釈につきましては従前と同様でございます。
  77. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 だから、いままでは私が最初申し上げましたように、自己の業務に係る商品について使用の意思があれば、それで商標の権利がもらえたわけですけれども、今度はその業務ということが業務に係る商品に使ってないと、使ってなければだめなんでしょう。改正前は使う意思があればよかった。改正後は使っておる証明がなければならない。そういうふうにこの業務考え方というものが少し変わってきているように思うのですが、その辺いかがですか。
  78. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 従来からの解釈が先生お話がございましたように、「自己の業務に係る商品について使用をする商標」というものの解釈は、使用する意思があればよろしいという解釈であることはそのとおりでございます。今回も私どもはこの条文を改正しておりませんが、当然同じ解釈でございます。しかしながら、従来私どもが調査をいたしましたところによりますと、自己の業務とその商品との関係が全く関係のない指定商品が出願をされてくる例がある程度の数見受けられました。したがいまして、その辺につきまして自己の業務にかかわる商品であるかどうかということを願書に記載させまして、その商品と業務との関係をより明確にするということをいたしたいというふうに考えておるわけでございまして、その業務と商品との関係によりまして、その商品が使用される蓋然性があるかどうかということを私どもで判断をいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  79. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、自己のこの業務にかかわる商品でしょう。業務にかかわる商品に使う意思が、それと使っておる証明がなきゃならぬと、これはずいぶん違うわけです。ですから、私は、ここのところが少し解釈が変わったのかなと、こういうふうに思っているのですけれども、この辺どうなのでしょうか。
  80. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 今回省令で私どもが規定をいたそうと思っておりますのは、出願の際に、使用の事実の証明書を出せということではないのでございます。使用の事実の証明書を出せということを今回私どもはしようと思ってはおりません。したがいまして、そこは自己の業務を書かせよう、その業務によりまして、その指定商品についての関係を私どもが正確に認識ができるようにしたいということでございまして、使用事実の証明書を出させるという、全くのいわば使用主義といいますか、それをたてまえとしているわけではございません。  なお現在は、たとえば金融機関の場合でございますとか、証券会社の場合でございますとか、全く商品を取り扱うことができない業務につきましては、従来からもこれは拒絶をいたしております。
  81. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、現行の第二十条の次に二十条の二を加えて、「更新登録の出願をする者は、次に掲げる書類のいずれかをその出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。」、こうあるわけですが、その同時に出す、これはどういうような書類があるのですか、同時に出す……
  82. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) これは更新登録の出願をいたします際に、その使用しているか使用していないかということの意味でと申しますか、証拠書類を出すわけでございます。なお、正当な事由がある場合には、正当なこういうふうな事由があるから私の方は現在使っておりませんと、こういう書類を出す場合もございます。
  83. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですからね、この同時提出をする書類は使用の事実等を証明するためのもの、こういうことですね。そうするとこれは、現在この商標を使っているのだという証明じゃないですか。どういうのか、その証明の中身は。たとえば現物を、ある本なら本にちゃんと商標を使っておる、その現物を持ってくるとか、あるいは何かこう商品に使っているところを写真を撮ってそれをつけるとか、そんなことじゃなかろうかと思いますが、その辺いかがなんでしょうかね。
  84. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 私がいま申し上げましたのは、更新登録出願時における使用証明の問題でございます。したがいまして、いま先生お話がございましたように、その場合における提出書類または提出資料といたしましては、当該登録商標が使用されている状態認識できるものであればいいわけでございますが、具体的な例といたしましては、お話がございましたように、その登録商標が使用されている写真が掲載されておるとか、あるいはカタログがあるとか、そういうふうなものが添付をされておれば使用されているという資料になると私どもは考えております。
  85. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、その自己の業務にかかわる商品について使用する意思を特っておる者、従来の解釈、これはもうだめになるわけですね、その意味からして。
  86. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 先ほど御議論がありましたのは、私が誤解があったかもしれませんけれども、更新登録出願の際ではなくて、最初に出願をする場合、最初の出願というのが法律的には正確であるかどうか知りませんが、要するに、商標権も何もない方が一番最初に出願をする場合に、この商標法の三条の規定が適用になるわけでございます。その場合におきましては、私どもは願書に業務を記載をさせまして、それと商品との関係を見て、その指定商品が使用される蓋然性があるかどうかを判断するということを申し上げたわけでございます。それが最初の出願のことでございます。  後のいまの御質問は、それが商標権になりまして、十年間たちまして、さらにその十年間たったものを更新するかしないかという更新登録出願の場合にどういうふうにするかという、その後のほうの場合のお尋ねであろうかと思います。それで後の方の場合につきましては、私どもは更新登録出願の場合に、これは使用のエビデンスを出させるというふうに考えております。
  87. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、最初に商標の出願をする場合と、それから十年後更新チェック、更新のための出願をする場合とこれは違うわけなんですね。最初の場合はその業務にかかわる商品に使う意思があればよろしい、更新の場合は現在使っている証明をする何かなければいけない、こういうわけですね。そうしますと、今回は出願が非常にたくさん出ておるので、それに対処するための改正でありますけれども、どうせ更新チェックで、更新で出願をしたら拒絶されるから、新しくそれじゃ出願しようか、こういうふうなことが出てぐるのじゃないかと思いますな。そうしますと、出願件数だってそんなに抑制できぬのじゃないか。この辺のお考えはいかがでしょうか。
  88. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 更新登録出願をやめまして新願をします場合には、更新登録出願の場合でございますと、もしほかにどういう出願が、似たようなもの、あるいは同一の商標についての出願がいつありましても、当然それは更新登録出願が適法に出されますならば、かつそれが要件にかなっておりましたならば、それは引き続きまして更新登録になります。しかしながら、新願の場合になりますと、これは仮にその一日前に同じ商標の登録出願があったとしました場合には、これは後願になりますから、したがいまして、要するにこれは新願でございますからして、先後願の関係でこちらの後願の登録申請は拒絶査定になります。したがいまして、そういう危険性が非常に多うございます。あるいは同一の場合はまだしも、類似がございますから、似ているものという範囲がございますからして、こちらの方で似ている範囲の中に入ってきた場合には、それはやはり拒絶査定になりますから、非常にその危険があるわけでございます。その辺はしたがいまして、これは出願人の判断でございますけれども、そういう危険があってもさらに新願をするというお考えの方は、新願になる方がおられると思いますが、十年間権利があって通常の場合は使っておられるわけでございますからして、それは引き続いて同じものを使いたい、しかも、安全にそれがそのまま継続できることを恐らく希望されるだろうと思うんでございます。で、安全にそれが引き続いて権利が続くということは、更新登録出願をしないと非常にむずかしい事態が起きる、こういうことでございます。
  89. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これまた念のためにお伺いしますが、たとえば著名な化粧品会社、まあ資生堂なら資生堂ですね、資生堂にブラバスという登録商標があるわけです。これは化粧品に使っているわけですが、使用しておらない他の商品の商標については更新は許されないことになるのかどうか、この辺はいかがですか。
  90. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 現在の四条の十号の規定によりまして、登録をしておりませんでも、「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」がございますれば、あるいは「これに類似する商標」がございますれば、それはその後出願がありましても、それは拒絶になるわけでございます。
  91. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、そのブラバスという商標が抹消された場合、他人が出願したときは登録は認められるわけですか。
  92. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) ただいまの場合はいずれも、指定商品が同一または類似の場合であるという、そういう前提で御質問だと思いますが、それで考えました場合に、商標権が消滅をいたします。たとえば無効審判になりまして、その商品がなくなったというふうな場合、当然その商標権は抹消されますけれども、その場合には、使用しております場合には一年間はそれと同じ商標は登録にはならないわけでございます。しかしながら、もしその商標がその消滅をする日前一年間使用していなかった場合につきましては、それは除外例にはならないわけでございます。
  93. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから運送業や不動産業、航空業、そういったようなサービス業が持っている登録商標は、例外的に商品を扱っている場合を除いて、ほとんど使用の商標として更新が認められるのかどうか、この辺いかがですか。
  94. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) いまお尋ねがございましたのは概括しましてサービス業をやっておられる方の営業を表示する標章と申しますか、マークと申しますか、それの保護の問題ではなかろうかと存ずるわけでございますが、その場合におきまして、現在の商標法は指定商品と結び付いております関係上、指定商品がないサービスだけのマーク、いわゆるサービスマークというものは商標法の対象の範囲になっておりません。したがいまして、他にいまお話がございましたように、物品の販売をやりあるいは製造をやっておるというふうな場合で、そのマークを付しておる場合は、それが指定商品である場合にはそれはそれでいいわけでございますけれども、そうでない場合には商標法の対象外になっておるというふうに考えております。
  95. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 さらにサービス業あるいは学校法人、宗教法人等が持っている登録商標、こういうものは全部更新が許されないのか。  それから、これは拒絶されても新しい出願をして商標権を取ることができるのか、その辺はいかがです。
  96. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 先ほど申し上げましたように、単なるサービス業だけでございますと、これは現行の商標法の範囲の外でございますけれども、かりにそれが商品と結びついております場合におきましては、それは公益に関する団体でありますとか、あるいはそれ以外の地方公共団体でありますとか、いろいろ営利を目的としない商標でありましても、当然それは登録の対象にもなりますし、あるいはそれを正当な使用をしておれば、当然それは更新登録にもなりますし、通常の商標の取り扱いと全く同様でございます。
  97. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これは三十一国会でも問題になったわけですが、いわゆるサービスマークの出願、これがかなりあろうかと思うわけですが、どのくらいあるのか。また、どのように検討されておるのか。将来サービスマークというようなものを法律でつくる考えがあるのかどうか。これは三十一国会のときは、時の井上尚一長官が、時期尚早であると、このように答弁をしておるわけです。あれから十五年もたっておるし、さらに今回の商標法の改正で、使っておらないものはこれから商標としては認めないとこういうことになるわけですが、これからサービスマークということも考えてみなきゃならぬかと思いますが、その辺はどのような御見解を持っていらっしゃるのか。
  98. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) サービスマークにつきましては、現在特許庁としましては正式に検討はいたしておりません。したがいまして、正確にこれをどうするということを現在お答えすることは非常にむずかしいわけでございますのと、それから、サービスマークを現在採用いたしますとした場合におきまして、現在先生もよく御存じのように、約五十万件の未処理案件がございまして、審査期間もかなり長い間いわゆる商品に関係のある商標というものの審査でかかっております関係上、にわかにこれを実施することが非常にむずかしいわけでございます。しかしながら、サービス業というものの日本経済におきます地位というものは、ますます重要になってまいりますし、その就業者の割合等も、私ども非常に割合がだんだん多くなっているということでございます。いわゆる第三次産業の割合というのは、だんだんふえておるように私どもは考えておりますので、サービスマークの重要性というのは、従来よりもますます重要になってきたと思います。したがいまして、本件につきましては、私どももいまの未処理案件が相当程度減少いたしました場合には、このサービスマークの問題につきましては、真剣にかつ前向きに検討いたしたいと思います。
  99. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 今回の改正で最も抵抗がありますのは、いまは使わないんだけれども、どうもへたにすると第三次産業用にこの商標がとられてそれを悪用される。あるいはたちの悪いのはそれを、お前のところはこれ要らないかと言って売り込みに来たり、そういったような商標ブローカー的存在があるわけですね。そういうことは非常に心配をしておるわけですが、この商標ブローカーが社会的にいろいろと被害を及ぼしておる、また、商標ブローカーというものがどういうものなのか、特許庁はこういったようなものも詳しく調査をされているだろうと私は思いますが、その辺の実情はどうなっておるのか、いかがでしょう。
  100. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 現在、商標の出願は先ほどお話がございましたように、一応最初の出願におきましては、商標を使用する意思があるという前提のもとにある商品を指定をいたしまして出願をしてくるわけでございます。それを審査をいたしまして、適法なものはこれは商標権になる、こういうことでございます。したがいまして、私どもの方のその形で見ますと、要するに、ブローカーであるというようなかっこうでは出てまいらないわけでございまして、正確に統計上どういうふうなものが後でそういうことになるかというのはよくわかりません。  しかしながら、いろいろなところで推定をいたしておりますが、現在大体個人出願というものは全出願の一割ぐらいでございます。一〇%ぐらいでございます。この個人出願のされておられます中にも、大部分の方は私は、やはり正当に商標を使用しようというお考えのもとに出願をされておられるんじゃなかろうかと思います。したがいまして、一〇%前後、全部がこれはそういうふうに自分で使わないつもりの商標をとって、よそへ売るつもりであるというふうなことはとうてい申し上げられません。申し上げられませんが、聞くところによりますと、そういう商標ブローカーという話が私どもの耳にも頻々として入ってまいりますことから考えますと、少なくともこの一〇%とは申しませんけれども、たとえばその半分の割合であるとか、あるいはもう少し少ないかと思いますが、割合はそういうふうな傾向があるのではあるまいかと思います。  それからなお、これを業としておられるのはそれよりもっと少ないと思いますが、自分のところで使うつもりで出願したけれども、結果的には、これは仮に流行おくれになって使わなくなった、どこかよそで使わないかというふうなことで、そういうふうな行為に出られるという場合もあり得ると思いますので、その辺のところの実態は非常につまびらかではありませんけれども、いろいろな形態がございます。したがいまして、いまいろいろ申し上げましたけれども、結論的には大体私どもの方は、やはり総出願の中で大胆に推定すれば、一、二%ぐらいはそういう方があるんじゃないかというふうにこれは推定をしております。
  101. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、特許庁の立場から考えて、そういったような商標ブローカー的存在を防ぐにはどういうような方法、手段があるのか、これは出願者の立場から非常に心配をしている点ですが、何かいい知恵がありましたらお伺いをしておきたいと思います。
  102. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) ブローカーの実態がいま申し上げましたように、表面上は非常にはっきりしないものでございますからして、それに対します的確な対策と申しますのは、私どももいろいろ苦心をしておりますが、非常にむずかしくないかと考えております。しかしながら、このブローカー自身は、言ってみれば本来使う意思のない商標を出願しているわけでございますし、自己の業務とその商品というものの関連がほとんどないのではあるまいかと考えられます。したがいまして、私どもは今回その願書に業務を書かして、商品との結びつきをさらに強くさせることであるとか、あるいはそれ以外に使用登録審判の挙証責任の転換であるとか、あるいは更新登録の使用義務のチェックであるとか、そういうふうに使用義務を強化することによりまして、そのことを非常に強く打ち出したつもりでございます。  なおそれ以外には、当然各種の場合に、たとえば業務と反している等いろいろな場合には、当然無効審判その他別途の手段がございまして、そういうものがありますれば、そういう手段によりまして商標権を消滅するということもできるかと思います。
  103. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、この商標の現行法の第四条に、「次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。」こういうふうに出ておるわけですが、この六号に、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」、七号には、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」、八号には、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標」、まあこういうふうに書いてあるわけですね。六号、七号、八号の解釈を少し参考にお伺いをしておきたいと思います。
  104. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 第四条の第一項の六号の「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は」云々云々とございますものの解釈と申しますか……
  105. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 意味
  106. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 意味でございますが、それで「著名なものと同一又は類似の」もの。たとえばの例で申し上げますと、都道府県、市町村あるいは都営の地下鉄、市営地下鉄あるいは都バス、市バス、水道事業大学、宗教、団体あるいはオリンピック、IOCあるいはボーイスカウト、ジェトロというふうな例がありますが、そういうふうな著名な標章につきましては、本号の規定に該当いたしましてそういうものは登録できないというふうに私どもの方は解釈をいたしております。  それから、第七号の「公の秩序又は善良の風俗」ということ、これはもちろん社会情勢によりまして、あるいは経済情勢によりましてこの解釈というものはいろいろ変わってくることではございますが、まあ具体的に例を申し上げることはなかなかこれはちょっとむずかしいかと思いますが、その構成自体が非常に矯激であり、あるいは卑わいな文——文字なり図形を使っておるとか、あるいは商標の構成自体がそうでなくても、指定商品についてそれを使うということにつきまして、社会公共の利益に反するというふうなことがあるとか、あるいは社会の一般的な道徳観念に反するというふうな場合もこれに含まれるのではあるまいかというふうに私どもは考えております。  それからなお、その使用が他の法律によりまして禁止されておりますいろいろな商標あるいは標章がございます。あるいは逆に、それを使うことによりまして、当該国を、国民を侮辱するようなことになる商標のような場合もございましょう。一般の国際信義に反するというふうな場合につきましても、やはりこれは本号規定をというふうに考えております。  それから、第八号の規定でございますが、これはここに書かれておるとおりでございますが、まあ多少の解釈を申しますと、ここにあります「他人」と申しますのは、現在生きておられる方を私どもは言っております。現存する方でございます。外国人も含みます。したがいまして、外国人たると日本人たるとを問わず、現存しておる方は「他人」——「他人の肖像」、「他人の氏名」とありますが、それの「他人」に当たるというふうに考えております。したがいまして、自己の氏名と他人の氏名が一致するような場合、特殊な例でございますけれども、その他人の承詰を要さなければ、それが使えないということになるのではあるまいかと思います。それから、最後にあります「著名な」ということでございますけれども、「著名な」ということの判断、これはまあ非常にむずかしいことでございまして、当然社会常識により審査会が判断をいたすことでございますが、通常の場合には、これは使われる商品、指定商品との関係において著名であるかどうかということを判断することに相なっております。
  107. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、この六、七、八号ですか、この辺は多少今後使われるであろう、利用されるであろう商標の防衛的にも若干使われるような気がするものでお伺いしたわけであります。  次に、前に戻りまして、更新チェックの際に同時に書類を使用しておる証明をつけて提出する。その証明書類が不備な場合には、当然これは権利が消滅するわけでありますが、この辺のところを、ただ書類が不備であるからだめだということは少し官僚的な感じもするわけでありまして、拒絶理由通知に対する意見書の提出時に、その証明を補正し得るようなことはできないのかどうか。それはいかがですか。
  108. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) ここに規定をいたしております、「同時に特許庁長官に提出しなければからない。」ということが書かれてある意味でございますが、これは言うまでもなく、私どもは未処理案件が非常に多く、審査期間が長くかかっておるのを、これを未処理案件の数を少なくし、かつ審査期間を短縮したいということからきております。逆に言いますと、審査の迅速化を私どもの方は考えておるわけでございますので、したがいまして、こういう使用を証明する書類を後で出してくるというふうなことになりますと、審査に非常に手間がかかり、かつ複雑になるということも考えまして、「同時に」という規定を置いたわけでございます。したがいまして、使用の事実を証明する書類を私どもは同時に提出をしていただきたい、こういうふうな改正規定をお願いをしておるわけでございます。  なお、これにつきまして非常に徴細な誤記でございますとか、いろいろそういうふうな問題がございました場合に、これは社会常識上私どもは直せる限度というものはあり得ると考えております。しかしながら、これがいわゆる私どもの言葉で使っております要旨変更というふうに内容が変わるというふうな場合には、私どものほうはこの同時にという規定が死文化してしまいますので、そこまでは私の方はできないというふうに考えております。
  109. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 次に、料金のことにつきましてお伺いをいたします。  今回料金の上げ幅がずいぶん飛躍的に上がっておるということで、かなりの非難があるわけなんです。何回もこの点問題になっておりますが、意匠登録出願手数料が三倍、並びに商標登録出願手数料が五倍、二千円が一万円、さらに更新登録料が二万二千五百円から四万五千円、こういうふうになっておるわけです。こういう五倍というような値上げは、今日の物価対策の面から考えても、いろいろ事情はあると思うのですが、非常に納得しがたい面もありますが、この辺は長官どのようにお考えになっておりますか。
  110. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) ことに商標の出願手数料の五倍についての御質問かと思いますので、その点にしぼりましてお答えを申し上げたいと存じます。  商標の手数料は、御存じのように、出願手数料は現在二千円でございます。それで、特許出願をします場合の手数料も同じく二千円でございます、現行で。しかしながら、昭和四十五年法の改正のときに、審査請求制度を採用しました結果、出願をいたしまして審査をする案件につきましては、これは二千円プラス八千円、イコール一万円の手数料を要することになったわけでございます。それは昭和四十五年法の改正のときになったわけでございます。そのときに意匠と商標の出願の手数料はそのまま据え置かれまして、改正がなくて二千円のままで過ぎたわけでございます。  その経緯で、言うまでもなく、従来、特許の出願手数料も商標の出願手数料も同じように二千円でございましたのが、四十五年法改正以後になりますと、特許は実質的に審査をするものについては一万円、商標は、言うまでもなく出願をする者は全部審査いたしますから二千円。一万円と二千円の差が現在ついているわけでございます。これは従来の歴史的な経緯と申しますと大げさですが、終戦後しばらくの期間以後の経緯を見ますと、特許の出願手数料と商標の出願手数料はほぼ同額になって推移をいたしております。その観点から見ますと、現行の手数料の額というのは、非常にアンバランスであるということが言えるのではないかと思います。かつ、商標と意匠の出願手数料は、昭和三十四年以来だと思いますが、あのとき多分基礎になりました物価水準その他は、三十二、三年ごろの物価水準基礎にしたのではないかと思いますが、それ以来実は引き上げをいたしておらないわけでございます。  そういうふうなことを考えまして、私どもの方といたしましてはいまの商標の二千円というのが、まあ特許との関連と、あるいは実用新案との関連もそうでございますが、実用新案は現在審査請求手数料におきましては六千円でございます。等と比較いたしまして、非常に低くに失しているのではあるまいか。その間の物価の問題ももちろんございますが、等を考えまして、今回一万円ということでお願いを申し上げたいというふうに考えておる次第でございます。
  111. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ長官のおっしゃることもわからぬでもありませんけれどもね。十五年間も上がってないんだからいいじゃないか、ほかとのバランスも考えてくれ、こういうような、それはわからぬでもありませんが、いま政府は、物価という問題を非常に気にしていますよね。こう言えば、商標の手数料みたいなものは物価には大したことありませんよと、こうあなたおっしゃるかもしれませんが、やっぱりこれは国民的感情から見て、福田副総理が目の色変えて物価、物価と、何とか物価を是正することが社会的不公正を是正することである、三木さんがいま地方へ行って盛んにぶってるんですな。そういうこともあるわけですからね。私は何も据え置きにしろとは言いません。しかし、五倍というのは余り聞いたことないです。だからその辺のところはやはり考慮をすべきであろうかと思いますがね。再度お伺いします。
  112. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 商標でいまの五倍に上げるということの、まあ私どもの考え方は申し上げましたわけでございますけれども、結局その負担ということが問題になろうかと思うのでございます。これはそれぞれの企業規模によりまして、非常にたくさん御出願のところもございますし、あるいは非常に少ない御出願のところもございます。したがいまして、これが場合によりましては会社同士を比べまして、一年間の出願件数が百倍以上違う、二百倍、三百倍違うという場合もございます。したがいまして、その負担が多くかかるのは一社で二千件、三千件出願をしておられるところの方がむしろ非常に大きく負担がかかりまして、一社でかりに一年間に平均して十件とか、あるいは場合によってはもっと少ない方が実は多いわけですけれども、そういう方との負担を考えました場合には、その負担はかなり違ってくるんじゃないか。したがいまして、その負担のかかりぐあい、あるいはそれによります各種いろいろ出願の模様等につきましては、私どもはその影響の実態はどっちに出てくるんだろう、どういうふうに実質的な負担がかかるんだろうかということを考えました場合に、私ども見かけはまあ——実際は五倍でございますが、見かけじゃありませんが、私どもが考えます場合と実際的な負担というのは、必ずしもちょっと考えた負担とは逆な負担がかかるんじゃないかというふうな気もいたしますので、そういう事情等も実は考えたわけでございます。
  113. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いずれにいたしましても、五倍というような値上げ幅はどうも納得をしがたい点があります。これはまた理事会で詰めたい、こう思っております、時間がありませんので。  次に、この特許の分類につきまして若干お伺いします。  これはいまでもやっていらっしゃるそうでありますけれども、昭和二十三年に現行の分類表が制定されまして以来、産業構造の激変にもかかわらず、基本的な再検討は今日に至るまでなされないで、国際特許分類の併記に伴い分類付与に伴う問題が非常に深刻化しているようであります。現在の特許庁の現状は、従来からの滞貨処理体制のため何ら再検討の措置がとられないままに分類に関する企画部門の欠如、分類専門要員の不足等によって、この課題の解決というのに非常にほど覆い現状にあるように聞いておりますが、その辺の実情はいかがでございますか。
  114. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 現在私どもの方には、特許公報すなわち公開と公告と二種類対立してございますが、その公報には日本分類、いわゆるJPCと一言っておりますが、これと、国際特許分類というものと両方併記して記載いたしております。したがいまして、一応分類づけを行いまして記載をいたしております。しかしながら、この日本分類と国際分類と申しますのは、これは考え方基礎において多少相違をしたところがございまして、将来私どもが国際条約、たとえばPCTに加入するというふうな場合になりますと、当然いわゆる国際特許分類の方が優先するような形で分類づけを行うべきではあるまいかと考えております。それで、そういうことを考えておりますものにつきまして、それについてのいわゆる要員でございますとか、それに対する企画でございますとか、これにつきましては毎年数人ずつ分類担当の審査官を増員をいたしまして整備に努めておりますが、しかしながら、私ども現在の状態で十分であるとは考えておりません。この方面につきましては今後ますます重要になるであろうと考えられますので、この方面は、特許庁の内部でも私どもは力を入れて充実をすべき部分であるというふうに考えております。
  115. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いま長官の答弁がありましたように、今後分類に関しては整備強化したいと発言がありました。そういうことであるならば、この特許法の五十一条と六十五条に特許法の分類についての規定を挿入したらどうだ、そしてさらにその要員、機構等を明確に今後強化する、改善するという方向に持っていったらどうか、こういうような強い意見もあるわけであります。その辺はいかがでしょう。
  116. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) いまお示しがございました、たとえば特許法の五十一条「(出願公告)」の規定でございまして、「出願公告は、次に掲げる事項特許公報に掲載することにより行う。」ということで、各号記載事項が上がっております。その一番最後のところに、「前各号に掲げるもののほか、必要な事項」という規定がございまして、この規定によりまして現在分類を付与しております。したがいまして、私どもは現行の五十一条の規定によりまして分類付与、公報に掲載することが十分できるものというふうに考えております。
  117. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 十分できるものとおっしゃったが、それができておらないからいろいろこういう意見も出てくるわけであります。そういう意味で、ここにはっきりと五十一条の第三項の中に、たとえば五の次に、「出願公告の番号及び年月日」この次あたりにその出願の発明に属する特許分類と、こういうふうにはっきりと明記をしておけば、特許庁長官の改善に取り組む姿勢もまた少しは変わるのじゃなかろうか。いろいろなそれは制約はあるでしょう。そういう意味で六の「前各号に掲げるもののほか、必要な事項」、この「必要な事項」の中にこの特許分類に関することも入っているんだからそれでいいじゃないかという御意見ですが、それでは少し弱い、こういう意見なんです。法制上の見解もいろいろとあるようですが、その辺はどうなっていますか。
  118. 齋藤英雄

    政府委員(齋藤英雄君) 現行法におきまして、いま申し上げましたように、「前各号に掲げるもののほか、必要な事項」ということで記載ができるようになっておりますと同時に、現実に記載をいたしておるわけでございます。したがいまして、この条文を改正をいたしまして、そういう字句を捜入いたします場合には、通常の法律改正の場合には、あるこういう目的のためにこういうことをしなければいけないということが、政策的にそういう必要性がありまして決定された場合に、現在の法律ではどう見てもできないという場合に初めて法律改正ということが行われるわけでございますので、現行法でできるということに相なりますと、その方面、これを改正することは非常にむずかしいというふうに私は考えております。
  119. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 終わります。
  120. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記をやめて。   〔速記中止〕
  121. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記を起こして。  他に御発言もなければ、本法律案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時五分散会      —————・—————