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1975-02-25 第75回国会 参議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十五日(火曜日)     午後一時十分開会     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         林田悠紀夫君     理 事                 熊谷太三郎君                 楠  正俊君                 小柳  勇君                 須藤 五郎君     委 員                 岩動 道行君                 小笠 公韶君                 剱木 亨弘君                 菅野 儀作君                 福岡日出麿君                 矢野  登君                 阿具根 登君                 鈴木  力君                 対馬 孝且君                 森下 昭司君                 桑名 義治君                 中尾 辰義君                 安武 洋子君                 藤井 恒男君    国務大臣        通商産業大臣   河本 敏夫君    政府委員        通商産業政務次        官        嶋崎  均君        通商産業審議官  天谷 直弘君        通商産業省貿易        局長       岸田 文武君        通商産業省生活        産業局長     野口 一郎君        工業技術院長   松本 敬信君        資源エネルギー        庁長官      増田  実君        中小企業庁長官  齋藤 太一君        労働大臣官房会        計課長      橋爪  達君        消防庁次長    森岡  敞君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        海上保安庁警備        救難部救難課長  安芸 昭助君        労働省職業安定        局雇用政策課長  小粥 義朗君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査通商産  業省基本施策に関する件)     —————————————
  2. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 小笠公韶

    小笠公韶君 先般の委員会におきまして通産大臣所信表明を拝聴いたしたわけでありますが、これに関連して若干の事項について御意見をお伺いいたしたいと思います。  まず、最近の日本の諸情勢を見ておりますと、いろんなことがございまして、その行方というものがなかなかつかみにくいので、特に最近の世相の一つの特徴としてムード的な傾向に支配されるというふうなものが多いようであります。私は、そういうような中におきまして、一昨年の石油ショック以来、日本経済産業というものが大きな困難な事態にぶつかっておりますので、これからの通産行政を扱っていく上においてどういうような方針でいかれるのか、まず、その点について、経済運営基本的な態度というようなものについてお伺いいたしたいのであります。  第一に、現在の日本経済情勢はいわゆるスタグフレーション不況インフレ併存状態にありますが、この不況インフレの併存する日本の今日の姿というものは一時的な現象としてこれをとらえておられるかどうか。私は、こういう現象長期的展望に立つときに、産業政策の進め方に大きな差が出てくると思うのでございまして、そういう点において現在の状態がどうなっていくか。通産大臣所信の中に「調和のとれた安定成長」を図っていきたい、こういうふうな御趣旨が述べられておるのでありますが、いま申し上げましたような将来に対する見方と、その見方の中にあって「調和のとれた安定成長」とはどういうことを考えておられるのか、まずお伺いいたしたいと思います。
  4. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず、いまの経済情勢をどう考えておるかということでございますが、御案内のように、一昨年秋の第四次中東戦争契機として起こりました石油問題から端を発しまして、狂乱的な物価の高騰、こういうことになりましたために、御案内のように総需要抑制ということでとりあえず物価抑制を図っていく、摩擦現象は万やむを得ない、こういうことで強力な総需要抑制というものを続けてきたわけでございますが、そのために幸い物価はやや小康状態になりまして、消費者物価もまあ大体政府目標であります、この三月末におきまして対前年比一五%程度という目標は十分達成される、こういう見通しも出てまいりましたし、卸売物価のほうも、これもここずうっと下がる傾向でございまして、これも安定してきた、こういうことが言えると思うのでございます。  そういうふうに物価小康状態を示してきましたので、これまで顧みられなかった総需要抑制に伴う摩擦現象、ひずみ現象、これの対策を急いでまいる必要がある。こういうことから、去る二月十四日に、部分的な不況対策、部分的な手直しと申しますか、そういうことをスタートさせたことも御案内のとおりでございます。  ただ、これだけでは、最近景気落ち込みが大変ひどうございまして、たとえば各重立った産業とも二割ないし七割という大幅な減産でございまして、しかもまあ在庫はふえる一方である。こういう非常な落ち込み、こういう経済界の実情から考えますならば、とても二月十四日の部分的な不況対策では景気は浮揚しない、依然として低迷状態が続く、こういうふうに思われますので、再び来月の中旬にもう一回各業種ごとに、各地方ごと産業の実態を正確にとらえまして、そしてこの第二次の対策を立てていきたい、こういうスケジュールを組んでおるわけでございます。  そこで、いまお話しのように、しからば現在の不況インフレという、こういうスタグフレーション状態をどうとらえるかということでございますけれども、政府基本方針では、この五十年、五十一年を調整期間にしたい、そして五十二年から正常な経済運営に持っていきたい、こういうことで五十年、五十一年を調整期間として運営していくという基本方針があることも、これも御案内のとおりでございます。ただ、今度の世界的な景気変動、大不況の背後には石油問題がありますので、やはり石油問題がどう解決されるかということが私はこれからの経済運営の一番の基本になると思います。石油問題が有利に解決できるということであれば、世界全体の景気の浮揚も早いと思いますし、石油問題の解決がこじれるということであれば、やはり相当長期間かかるのではないか、経済の回復には相当時間がかかるのではないかと、こういう感じもいたしまして、確定的なことは一にかかって石油見通しにあると、まあこういうふうに申しても過言ではない、かようにいま考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、当面の問題は不況対策である、こういうふうに理解をいたしております。でありますから、通産省行政も、当面は不況対策に全力を入れる。あわせて、基本的な方針といたしましては、この石油問題以来、これまでの産業構造ではやっていけませんので、産業構造を変えなければならぬとか、そのためには新しい技術開発が必要であるとか、あるいはまた貿易立国でありますから貿易を伸ばすためにはどうしたらいいかとか、そういう長期的に基本路線を確立し進めていかなければならぬ問題はたくさんあるわけでございますが、当面の課題としてはこの不況対策と、こういう方針で取り組んでおるわけでございます。
  5. 小笠公韶

    小笠公韶君 今度の石油問題を契機として起こっております日本産業経済界変動、それに伴いまして、これからの日本経済運営上、低成長がいわゆる四%、数%といいますか、こういうような形において当分の間持続する。そうしますと、いわゆる従来実質二二%前後の成長から約一割落ちてくる。したがいまして、日本経済は一割小型になると申しますか、小さな形になってくると推定されます。  で、このことは産業規模というものの過剰が出てくるんじゃないか。内部で入れかえがあっても、産業構造の改編ができても、総体的に見ると、産業に、そこに過剰なるもの、過剰な設備、過剰企業というものが出てくることが考えられるんではないか。そういうような一回り小さくなった経済という上に立って、われわれはものを考ていく必要がこの際あるんではないかと私は思うのであります。いわゆる五十、五十一年を調整期間として、五十二年から正常経済に移るといっても、その正常とは小型の正常の姿でなければならぬ、私はそう思うのであります。  したがいまして、さらに私は日本産業を構成しております多くの中小企業というようなもの考えますと、石油問題以外に、後進国からの追い上げというような問題によりましてさらに外圧を受けてくるわけであります。  あれこれ考えてみますと、ここに産業政策をスタートさせるに当たりまして、いま申し上げましたような小型日本経済というものを前提にして私はもの考えていくべきである、こういうふうに考えるのでありますが、こういうふうな点について、産業再編成というような言葉がいいかどうか知りませんが、そういうことに対して通産当局としてはどうお考えになっておられるのか、一度御意見を伺いたいと思うのであります。
  6. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 日本のこれからの産業のあり方を考えていきます場合に、私はいろんな問題点があると思うんですが、その一つは、わが国には人口が非常に多いということであります。産構審答申等にもございますが、これから十年の間にほぼ千万近い、千万弱でございますが、人間の雇用というもの考えていかなきゃならぬ、こういう問題もあります。それから資源がありませんから、必要な資源をやはり貿易によって確保しなければなりませんので、資源をどう確保するか、まあ言葉をかえて言いますと貿易をどう伸ばすか、こういう問題が私はあると思うのでございます。  すでに御案内のように、経済規模が小さくなる、これがいいことか悪いことか一概には言えませんけれども、経済規模が小さくなりますとどういう問題が起こるかというと、直ちに失業問題が起こるわけであります。すでに先般総理府から発表になりましたように、この状態が続けば完全失業者の数は三月末には百三十万弱になる、百二十六万か七万になる、こういう見通しも出ておるわけであります。三月末といいましても、これは来月のことでございますが、しかも新規に職を求める青年が毎年たくさん出てくる。産業規模が小さければ、こういう連中の就職もできない、こういう問題が当然起こってくる。でありますから、まず日本の場合は、私は宿命的にこの雇用問題というもの産業政策上大きく考えていかなければならぬというふうに思うわけでございます。  そういう意味から、私は、これからはとにかく低成長なんだと、こういうことを議論する方々も多いのでありますけれども、低成長でやっていけるならそれで結構でありますけれども、低成長の場合には、いま申し上げましたような大きな失業問題、大きな社会不安、これが起こることはこれはもう既定の事実でありますから、できるだけやはり世界摩擦を起こさないような形で、日本特殊事情考えながら経済成長考えていくべきであろう、こういうふうに思うわけであります。  それじゃ、しからば経済成長はどれくらいがいいのかということになりますと、意見が分かれるところでありまして、産構審などの意見では軌道に乗ったところでは、六、七%くらいであろう、こういう意見も出ておりますし、先般、日経センターあたり見通しでは七%くらいである、こういう見通しも出ておるわけでありまして、先ほどのお話の四・三%というのは、これはまあ五十年度の現在の不況を背景とした見通しでございまして、五十一年度以降の経済見通しというものは私はよほどそういう点を考慮しながら慎重に考慮していかなければならぬ、こういうふうに思うわけでございます。
  7. 小笠公韶

    小笠公韶君 ここしばらくの間、いま申し上げましたような経済規模になる、そういう点から見まして問題がいろいろと起こると思うのでありますが、その間にあって、産業経済運営に当たりまして、政府企業との関係というものはどういう間にあるべきか、いわゆる行政指導限界というようなものについてどう考えていくか。先般問題になりました石油やみカルテルと申しますか、あのときにも問題になったのでありますが、行政指導限界政府企業自主性との接点をどう見ていくか、これは今後の通産行政上最も大事なところで、行政を明確にはっきりさせるところであると思いますが、どうお考えになるか、むずかしいところだとは思いますが。
  8. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私は、政府産業界との関係につきましては、できるだけ政府産業には介入しないほうが、いままあ何かにつけて行政指導という言葉がありますが、そういうことはできるだけしないほうがいい。産業界の自主的な判断によってそして企業活力を与えていく、企業自身活力によって経済が伸びていくということが私は望ましいと思います。  ただし、それはあくまでも原則論でございまして、経済混乱をいたしまして、そのために国民生活が大変な迷惑を受ける、そういうふうな場合には、これはもう当然強力な行政指導というものが必要だと思いますし、それから余りにも過当競争になりまして経済界混乱をしてかえって大きな不況とか大混乱が起こる、そういう場合にもある程度の行政指導というものは必要であると思いますが、よほどのことがない限り、行政指導はできるだけ力を小さくして、そして産業界の自由な活力によって経済を伸ばしていく、そういう方針が私は民主主義国家の常道ではなかろうか、こういうふうに思います。
  9. 小笠公韶

    小笠公韶君 自由社会を守るという言葉がよく使われておりますが、自由社会を守るという立場から考えましても、いま申し上げましたような行政企業との関係をある程度明確にしておく必要があろうかと思うのです。  それに関連して、私はいま政界の一つの目になっております独占禁止法改正問題について若干伺いたいのであります。  大臣は、先般の所信表明で「わが国経済バイタリティを損なうことのないよう配慮しつつ、前向きに取り組んでまいる決意であります。」と述べられております。そこで、独禁法問題というのは日本だけでなく、アメリカ、イギリス、西独等でも独占禁止法問題が大きく取り上げられておるのであります。これは世界的な一つ傾向のようでありますが、わが国のこの独占禁止法第一条はその規定から見ますると非常に読みにくい規定であります。議論の分かれる規定でありまするが、この独占禁止法改正の率直な目的は何であるのか、この目的を明確にせずして、伝えられるところの九項目というようなものがアプリオリとして与えられ、そしてその範囲内で議論を進めておると思うのであります。  私は、独占禁止法第一条のというか、独占禁止法改正問題につきましては、その目的は、大きくいって物価政策という問題が考えられる、物価政策のために独占禁止法の活用を図っていく。それから第二として、純経済政策として独占とか寡占とかという問題に対して、規模利益の追求を認めない、規模利益の制限をしていく必要がある、こう考える。  まあいずれかになるわけでありますが、いま考えられておる物価政策という立場からもの考えていく場合に、独占禁止法第一条の規定というものが、いわゆる「公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者利益確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」と書いてあります。この規定から見まするときに、独占あるいは寡占等に対する規模利益を排除しているとは考えられないのであります。私は、そういう意味において、今回の改正をどうしてもやらなきゃならぬ目的というものを明確にすることによって独禁法改正問題の姿がわかりやすくなるんではないかと思うのであります。この点について、通産大臣企業経済バイタリティを損なうことなく前向きに対処すると、前向きに対処する目的は何であるかお伺いいたしたいと思います。
  10. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 独占禁止法を今度改正するという政府方針がきまりましたのは、自由主義経済にも一つルールが要る、やはりこのルールを守っていかなきゃならぬ、そういうことから改正問題が取り上げられておるわけでもありますが、具体的な内容等につきましては、いま総理府のほうでせっかく作業しておられまして、近日、成案ができ上がるそうでありますから、私からこの内容について申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思いますし、適当ではないと思います。ただ、先ほども申し上げましたように、日本の場合には特殊事情がある。特殊事情とは何ぞやと言いますと、人口が多くて雇用問題を解決しなきゃならぬというこの問題と、資源がなくて貿易によって資源確保していかなきゃならぬ、こういう宿命的な二つの大きな課題があるわけであります。したがいまして、産業活動というものが萎縮してはいけない、産業活動自由濶達にとにかく大きく世界に伸びていかなければならない。これが私は日本の生きる基本的な要件であろうと思います。そういう場合に、日本の置かれた立場を忘れて枝葉末節の問題に走って、そして企業活動を束縛するとか、あるいは企業活力を損なうような方向に持っていく、そういうことがあっては私は大変だと思うんです。  でありますから、内容を論議する場合も、そういう基本方針でひとつ本末転倒しないように、ぜひともりっぱな独占禁止法改正案というものができ上がっていくことを期待しておるわけでございますが、前向きとは何ぞやという御質問でございますけれども、前向きとはいまのルールがよりよい方向改正せられる、こういう願望でございます。
  11. 小笠公韶

    小笠公韶君 気持ちの上の独禁法扱い方はよくわかるんでありますが、ただ法律的に見た場合、私はいま議論されているところの目的というものが不明確であって、そこから議論の混迷が起こっているんではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、もしも伝えられるところのように公取の試案の九つの項目というようなものにもしわたると仮定するならば、第一条をいじくらずしてできないんではないか、そこに法律論が残るんではないかと実は心配をしておるわけでありまして、その点につきましてまあひとつお考えを願いたい。  それで、特に私はいい機会でありまするから、たくさんの法律がございますが、独占禁止法第一条ほど読みにくい法律日本法律にはないんではないかと思うのであります。したがいまして、いまの国民が読んですぐわかるような方向に書き直すということもこれひとつ今日の私は大事なことだと思うのです。こういう意味におきまして、通産省産業行政を行うに当たりましてこの独占禁止法問題というものはいつも頭にひっかかる一つであります。しかも解釈がいずれにもとれるような立法であります。こういう点から見て、通産行政を円滑に行っていくという意味におきまして、今回はいい機会でありますから、通産大臣として一条問題に留意せられることをお願いしたいと私は思うのであります。これは私の意見で、お願いであります。  それから、私は、独占禁止法問題で議論のあることは、第一条におきまして、予防的措置あるいはカルテルとか、そういうものあるいはその他の抑制行為というものにつきましては、それが作用するときにのみ本法が動くのであります。たとえば企業一つが非常に大きくなってきた、形態自体が大きいからいわゆる一条違反になるんではない、それが独占的あるいは市場の過大な支配力を起こすというようなときになって初めてなにが出てくると思うのであります。ここに一条の諸行為というものが形式の問題でなしに行動に、アクションになって初めて独占禁止法の対象になるということを特に御留意願いたいと思うのであります。  これは昭和四十二年の改正に当たりまして、従来の考え方を相当緩和して今日に至っておるのが独占禁止法の歴史でありますし、まあ独占禁止法の問題につきましてはなお細かないろいろな問題がございますが、私は適当の機会にまた——特にこれは総理府の御所管でございますから、そういう機会にお伺いいたしたいと思うのであります。  ただ、通産行政を円滑に、しかも国民の期待によく沿い得るために今度の改正という問題がいかに重要な関係を持っておるかということをしみじみ考えまするがゆえに、産業経済を守る立場におる通産大臣としては、この問題をぜひひとつ特別に御留意を願いたいと考えておるわけであります。特に、最近、ともすれば企業のいわゆる経営規模利益というものが無視されてきている、自由主義経済におきまする規模利益というものを放棄して自由経済は成り立たぬのであります。特に、そういう点において規模利益を十分に認めておる、独禁法一条は認めておるんだというふうに御解釈を願いたいと思います。  私は続いて若干の問題についてお伺いいたしたいのは、いわゆる資源政策の問題でありますが、資源政策につきましては、私が申し上げるまでもなく日本の国否国際的にも有限資源の使用の問題としては重大な問題でありますが、私は、日本資源政策基本安定供給確保、いかに国民的必要を満たしていくか、満たすために安定供給確保していくかということだと思うのでありますが、この安定供給のためにはいろいろな問題がありましょう。特に油につきましてはほとんど外国に依存しておりまするからいろいろの問題があると思いますが、私は安定供給確保のためには開発の推進の問題、国際協力の問題、備蓄の問題、この三つがさしあたり考えられると思うのであります。  それに続いて考えられる問題は、資源エネルギーの節約問題だと思うのであります。政府は「資源エネルギーを大切にする運動本部」を設置いたしておりますが、これは国民的運動として節約運動をやることになっておるようでありますが、実際問題としてその活動は私は微弱なのじゃないかと思うのであります。欧米の油を中心とする資源節約の体制がいかに厳格であるかは私が申し上げるまでもありません。日本のただいまの姿におきましては、あくまでもいわゆる国民運動的精神運動としてこれを展開していく、こういうことで足りるんだろうかという心配すらするのであります。この節約運動、いわゆるむだ遣いをやめるんだ、こういうようなことについて通産大臣はどうお考えになっておられますか。
  12. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 「資源エネルギーを大切にする運動本部」が最近総理府にできたわけでございますが、これは確かに御指摘のようにまだ活動が不十分である、軌道に乗ってない、これはもう御指摘のとおりでございますが、これはできたばかりでございまして、これからだと思うんです。でありますから、私はこの運動が非常に大切であるという観点に立ちまして、これはもう国を挙げて推進していかなければならぬ、もっと強力な運動を展開していかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  13. 小笠公韶

    小笠公韶君 私はその資源エネルギー開発に関連しまして若干の点についてお伺いいたしたいのでありますが、まず第一に、最近の資源ナショナリズムというような風潮によりまして国際商品の多くのもの国際カルテルが結成されつつある。この国際カルテルの問題はいままでOECDでも扱っておりませんし、われわれ資源の少ない国にとりましては価格の面におきましてもあるいは供給体制におきましても重大なる影響を受けるものであります。この国際カルテルに対して政府はどういうふうな考え方をもって対処しておられるのか。日本事業者の一人が国際カルテルに参加するときは公取に届け出する義務が独禁法にございますが、全然日本の関与してない国際カルテルにつきましては手がつかぬのであります。この点についてのお伺いをまずいたしておきたい。
  14. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) OPECの活発な動きを契機といたしまして資源ナショナリズム的な運動がだんだんと世界に広がりまして、いろんな品目につきまして国際カルテルができておるわけでございますが、私は大部分のカルテルは政治的にそう強固なものではない、したがって、景気変動によって価格はある程度動くのではないか、こう思うんです。ただしかし、油だけは現在のところ一〇〇%政治的な値段できめられておりまして、コストとかあるいは需給とか、こういう経済的要因と一切関係なしに動かされておりますので、これは特別なものでありますが、それ以外のものは私はどうしてもやっぱり景気変動を当然受ける、こういうふうに思います。  それはそれといたしまして、こういう動きというものはやはり日本のような資源の少ない国にとりましては好ましい方向ではない。もしそれが安定的な供給のために役立つというならば別でありますが、そういう場合はほとんどない、むしろマイナスの面が多い、こういうふうに私は思います。
  15. 小笠公韶

    小笠公韶君 この問題は石油以外は問題はないと申されますが、必ずしもそうじゃございません。たとえばすずを一つとってみても、いろいろ挙げればたくさんあると思いますが、この国際カルテルによる価格のつり上げ、生産の制限、こういうような問題につきましては、国際的視野において解決してもらうように努力を払っていただきたいと私は考えます。  次に、私は石油開発に関連して次の二つの問題があるのではないかと思うのであります。  一つの問題は、現在、日本の海外石油開発会社はアブダビ石油を初めとして二十数社に及んでおります。で、これらの会社の現状から見ますると、技術要員が底をついておる。一人の技術要員があちこちの会社を兼務するという形になっておる。こういうことでは今後われわれ資源開発におきまして非常に困るのであります。したがいまして、技術要員の養成というものを私はぜひ深刻に受けとめてほしいのであります。予算編成の途中におきましていろいろ要望しましたが、なかなか認められておりません。私は日本のこれからの資源の最大なるものは人間の技術力であると考えておるものでありまして、そういう意味から技術要員の養成というものについての努力をぜひお願いしておきます。  それからもう一つ石油開発につきまして昭和五十年度予算について御説明がございましたが、石油開発公団法の改正、それに対する資金の大幅投入等がございましたが、いままでの日本石油開発の資金調達というもの考えてみますと、多くは民間の企業の資金を土台とし、それに政府関係の金が補完的に出ておるという姿になっております。ところが、一昨年の石油ショック以来、いわゆるOPECを中心とする産油国の勢力の台頭に伴いまして、まだ石油を出しておらない賦存国におきましても、石油に対する主張は非常に強くなってきております。したがいまして、今後、これらの地域で石油開発日本企業がやるとしまして、資金の調達が非常に困難になってくる。  それはなぜかと申しますと、いわゆる石油開発企業にうまみがなくなったからであります。そこに危険性があって、しかもうまみが少なくなってきているというのが今日の石油開発の現状であります。この事実を率直に受けとめて政府石油開発体制というもの考え直すべきではないか、この昭和五十年度予算編成を振り返ってみまして、そういう感じを私は禁じ得ません。私は、しかも、こういう傾向は相当続くものと思うのであります。  それから第三点の問題としましては、世界石油生産状況、流通状況、消費状況というのが今日の姿のようになってまいりまして、私は日本石油企業、特に開発企業というものが、先ほど申し上げましたように、二十数社に及んでおる、こういう姿でいいのかどうか、開発企業体制というものにもう一度再検討を加える必要はないであろうか。私は石油資源開発について日本の民族系石油企業といわれている企業の姿を見るとき、脆弱なるものがその地域地域につくられてきておるだけである。しかも先ほど申し上げましたように技術要員すら十分でない、こういう姿であります。そういう点から、ここらの問題にも先ほどの資金の問題とあわせて考え直さなければ、石油政策というものはいつの間にか流されてしまうのではないかという感じを持つのであります。  これらの点につきまして、通産大臣石油政策というもの、特に石油の生産開発に対して基本的にこれらの情勢の変化にどうこたえていくつもりであるか、御意見を伺いたいと思います。
  16. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) わが国エネルギーの一番大きなもの石油でございまして、その石油の占めるシェアをだんだんと減らそうとしておるのが現状でございますけれども、なかなか急速にはいかぬと思うのです。原子力にも問題がありますし、それから石炭にもいろいろ問題がありまして、そのシェアを急にふやすということは非常にむずかしい、こういう問題がありますので、やはり当分の間は石油に大きな重点が置かれなければならぬ。その石油問題について先ほど開発と備蓄とそれから国際協力がある、あわせて節約の問題がある、こういう御指摘がございましたが、全く私も同じ意見でございます。  特に、開発問題では技術者のことにお触れになりましたが、若干技術者を持っておるというのは日本では一社か二社でありまして、ほかの会社はきわめて脆弱である、したがって思うように仕事ができない。二十数社というお話がございましたが、これはたしか石油開発公団と関係のあるところが二十数社でありまして、それ以外のところもまだだいぶあるようであります。したがいまして乱立といいますか、そういう形でいまの石油開発が進んでおる。成果は上がらない。六つばかりの企業からは幾らか石油が出ておりますけれども、これとても大した数量ではありませんし、他のものに至っては前途なかなか遼遠である、こういう状態でありますから、まず技術者の問題を根本的に考え直せ、それから同時に石油開発のあり方、姿というもの考え直せ、こういう御提案でありますが、私も全く同意見であります。  特に、OPECを中心とする産油国が一〇〇%シェアという構想を打ち出しておりまして、せっかく開発いたしましたアラビア石油その他の油に対してもいろいろ問題が起こっております。そういうやさきでありますから、開発地点の選択とかそういう問題も含めまして、やはり抜本的にこの際検討し直す必要があるのではないか。これまでの流れに流されて、そして大きな筋道を見失う、こういうことでは百年の悔いを残すことになりますので、御指摘のような方向で私は抜本的に検討すべき時期である、かように思います。
  17. 小笠公韶

    小笠公韶君 石油の消費節約運動に関連しまして私はお考え願えないだろうかと思うことは、石油スタンドの多過ぎることであります。私は余りにもガソリンスタンドが多過ぎる、こういう問題についてもう少し効率的な配置ができないだろうかというふうに感ずるのであります。  資源を大切にするという意味におきましても、こういう問題を、一挙にはまいらぬでありましょうが、徐々に直していく。いわゆる業界の自主的な動きでも何でも結構でありますが、石油の消費量全体が減ってきておるのに、いわゆる中小企業としてのスタンド店舗というものは維持しにくくなってきておる、こういう実情にあるようでありまして、この点もお考えおき願いたいのであります。  それから、私は資源エネルギーの節約の問題に関連しまして一つ御提案したいことは、いわゆる規格という問題、主要な生活用品あるいは学用品あるいは主要な食料というものに対する簡素なる規格を制定してそれによらしめるという、規格の普及と申しますか、御承知のとおり農林物資については農林物資規格化の法律、工業品にはいわゆる工業標準化法ですか、そういうものがございますが、もう少し広くこういう問題を考えるべきではないか。それは同時に資源の節約になるのみならず、国民生活一つの引き締めを与えると思うのであります。  私は子供の入学期になって子供の学用品、机はあんなりっぱなものは要らぬのではないかと実は思うほどりっぱなものが百貨店に並んでおる。こういうところに、やっぱり国民を引き締めていくという見地からも資源節約意味からも、規格制度に対する再検討というものをお考えおき願うべきである。私はそういうような点で、先ほどの節約運動の本部あたりが、太鼓をたたく前に、具体案として提案していただいたらどうだろうか、こういうように思うのであります。ぜひひとつお考えおきを願いたいと思います。  それともう一つ、これは毎回でございますが、省資源、省エネルギーということになってまいりますと、産業構造が当然に変わってまいらなければならない。いわゆる産業活動規模の縮小と同時に質的な変化が起こらなければならない。そこでよく産構審等におきましていわゆる産業構造の改善ということが言われてすでに久しいが、具体的なもの一つもできぬ。たとえば知識集約型産業の育成とか、その例として電子計算機の部品とかデザインとか若干のものを挙げられてここ数年になる。私は今日の姿から考えますると、この不況のもとにおいて、しかもこの不況が間もなくもとに返るのだ、昔の景気循環論にあるような景気の循環が起こるのだと期待しにくい今日の姿であります。こういう姿をあわせ考えながら、いわゆる産業構造の改善という問題にもう少し真剣に取り組んでいくべきではないだろうか、こう思うのであります。お題目だけではもう時間的に間に合わぬのであります。  そういう意味において、この産業構造の改善問題、省資源、省エネルギー産業の育成に対して、予算的にも法制的にもいま少し力を入れてやるべきではないか。そうしませんと、いまの産業経済の流れの中にあって当然改善転移すべき産業がいつの間にか洗い流されてしまうのであります、転換の時期を失うのであります。こういうところに本当に今日の産業政策上速やかに手を打つべきものがある、こう考えておるのでありまするが、通産当局はこの問題に対してどういうふうな積極的手を打たれるおつもりでありますか。少なくとも産構審の答申を待ってぼつぼつやりますというならば、御答弁にならなくて結構であります。両三年来の答弁でありまするからもう結構であります。もう少し親切にこの問題を取り上げるべきであると私は思うのであります。御意見がございましたらお伺いいたしたいと思います。
  18. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 現在の世界的なエネルギー問題、資源問題を背景といたしまして、当然、わが国にも産業構造の転換が行われなければならないわけでありまして、そういう背景から考えますと、いま私は最大の課題であろうと思います。  ただしかし、昭和三十年代から四十年代にかけまして、かつての軽工業、まあ繊維工業が重化学工業に主導的立場を譲りましたが、それにやはり二十年ほどの歳月を要しております。どうしても今度は新しい産業構造に転化をして、まあ御指摘のような高度な付加価値の産業、まあ言葉をかえて言いますと知識集約型産業、こういうものに転換する必要があるわけでございますが、これにはやはり日本だけではやっていけない、こういうふうな背景があると思います。でありますから相当時間がかかると思うんです。  ただしかし、いまお話がございましたが、それじゃ政府のいまのやり方でいいのかと言われますと、これは私は不十分であると。やはり後から後からやっておるというふうな形ではこれはいけませんから、もう少し積極的にこの産業構造転換のための具体的なプランというものをもっと打ち出していくべきである、そして予算などももっとふやしていくべきである、産構審から出てくる答申を待って、そしてそれを参考にとこういうことではなくして、もう少し積極的に取り組んでいく必要がある、そういう御指摘には全く賛成であります。
  19. 小笠公韶

    小笠公韶君 通産大臣の御所管かどうか知りませんが、経済企画庁かもしれませんが、消費者保護行政の強化の問題であります。物価の安定のためにも国民生活を豊かにする意味におきましても、私は消費者行政というものが大事であると思います。  四十三年でありましたか、消費者保護基本法ができまして、消費者保護基本法の制定を契機にして日本行政の中に消費者行政というものが取り入れられてまいったのであります。幸いにして各府県とも消費者行政課といいますか、消費課といいますか、そういうものができておる。私は、この消費者行政の問題につきまして、最近は、物価インフレ対策不況対策というようなことに追われて、消費者行政が少し手薄になっているんじゃないかという感じを禁じ得ない。特にその問題におきまして府県でやっております消費センターとかあるいは生活センター、こういう方面の活動が必ずしも十分でない。しかも予算が十分でない。たとえば地方の消費生活センターの設置、運営あるいは商品テストの施設費、こういうものに対してはほとんど補助がいってない、府県で賄わしている。  こういう点で、私は、経済企画庁として国民生活安定緊急措置法に基づく特別対策費として五十億のつかみ金が計上されている、こういう金をどんどん使って、地方のやはり消費者と密接したところにおいて生活の実態を現代的近代的に指導していく、こういう必要があるんではないかと考えるのであります。  私は、そういう意味において、消費者保護基本法というものをもう少し活用して、特に主婦の方方を対象としてこの運動を展開することこそ本当の資源の節約でもあるし物価対策でもある、各自の生活のいわゆる合理化でもある、こういうふうなじみちな意味におきまして消費者行政の強化という問題についてぜひともいわゆる特段の配慮を煩わしたい。  特に伺いたいのは、消費者行政というか消費者教育という問題をどう考えておるか。いわゆる高等学校、中学その他、いわゆる学校教育、社会教育と両面に分かれましょうが、学校教育におけるこれらの消費者教育というものをどの程度まで政府は進めておるのか、私は経済企画庁でおわかりでしたらお教えを願いたいと思う。
  20. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) きょうは経済企画庁来てないのです。
  21. 小笠公韶

    小笠公韶君 それじゃ結構です。  時間が参ったようでありまするから、簡単に最後に私は中小企業政策についてお伺いいたします。  中小企業政策につきましては各方面の御努力によってだんだんと実が入ってまいりましたが、ここで私はひとつ大きい問題があると思うのであります。それは今日のこのインフレ不況の併存しておる産業、しかもエネルギーその他の資源の少ないという点からくる環境の中におきまして、中小企業のある種のものはどこに行くんだという問題があると思います。特に最近は金融措置ではもういかぬのだと、仕事をよこせ、こういう痛切な声すら聞いておるのであります。ここに大きく中小企業の中に波打っておる構造変化というものをどうつかまえていくかという問題であります。  特に例を挙げるまでもなく、繊維品を一つ取り上げましても、いわゆる近傍の諸国から入っている物で全部賄われておる。これが近い将来に回復する見込みはないでありましょうか。織布業あるいはより糸にいたしましても、あるいは縫製業にいたしましても、そういう存在の基礎に影響をする事態に際会いたしておるのであります。そういう産業はほかにもまだ幾つかあるのであります。こういうふうなことを考えてみますと、日本中小企業政策をすらっとなでるだけでは中小企業政策にならないという段階にまで事態は深刻化いたしておるのであります。  こういうように私は実は思うんでありますが、大臣は今日の中小企業不況状態中小企業の困難な状態を一時的なものと見ておられるのか、中小企業の中に大きな変革が徐々に忍び寄っておる、ここに何らかの手を打たなきゃならぬのだと、こういうふうにお考えになっているかどうか、その御所見を伺いたいと思います。
  22. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) さしあたっては、この中小企業問題は、先ほどもちょっと申し上げましたように、非常に不況が深刻化いたしまして、重立った産業に大幅な減産が行われておる、こういう状態でありますから、全部の中小企業が多大な影響を受けておる、不況になっておる、これはお話のとおりであります。  ただ、その中において構造変化が行われておるのではないか、こういうお話でございますが、私もそのとおりだと思います。やはりある種の産業、むしろ大部分の中小企業につきましては、これからの構造的なあり方そのものから考えていかなければならぬ、こういう大きな問題をはらんでおると思います。今度、中小企業関係法律を御審議していただくことになっておりますが、それも構造変化に対処して中小企業を強化ていく、こういう立場からお願いをするわけでございますが、そういうことを考慮しながら中小企業政策に取り組んでいきたい、こう思います。
  23. 小笠公韶

    小笠公韶君 最後に一言、お考えおき願いたいと思うことは、中小企業構造改善に対処して考えられる問題は、中小企業の海外進出の問題あるいは海外投資と申しますか、進出。この問題について具体的にお考えをさらに進めていただきたいと思うんです。来年度の予算では十数億、十三億ですか、ついておるようでありますが、もっと共済制度を考えるとかいろいろな意味においていわゆる海外進出しやすい環境をつくっておくようにお願いいたしたいと思います。  私は以上若干の点について御意見を伺ったのでございますが、何と申しましても物質的資源に乏しい日本の国の資源は人的資源であります。この人的資源をいかに活用するかということがわれわれが今後国際協力の上において日本産業の発展の上において最も基本的なもの一つだと思います。そういう意味におきまして技術、特に基礎技術の研究開発に対して通産行政一つの大きな柱としてこれは進めていただくようお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  24. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 私は河本通産大臣に対しまして中小企業全般の政策に関しましてお伺いをいたしたい、こう思っています。  いまや、もう触れましたが、中小企業政策という問題は国民の緊急課題でございまして、暗い谷間に置かれているまさに弱者同然の社会的な問題として発展をいたしています。したがいまして、不況の影響は中小企業の上にも大きく覆いかぶさってきているわけでございまして、その根本は何といっても総需要抑制、金融引き締めの政策はこれで明らかに中小企業に対しては政策的な失敗として中小企業にしわ寄せになっているのではないか、こういう指摘をせざるを得ません。  したがいまして、中小企業がいま抱えている問題につきまして幾つかの問題がございますが、私が前に調査をしてみますと、倒産件数は四十九年一月から十二月までに一万一千七百五件、間違いであれば御指摘願って結構です、負債額が一兆六千三百二十六億円、この一年間においてはまさに史上空前の倒産とまさに負債額であります。こういった倒産は九〇%までは資本金が一千万未満の小零細企業であります。  三木総理は、施政方針演設の中で、物価抑制対策として総需要抑制は引き続き続けていきますが、健全な経営を行う中小企業などに対しては不当なしわ寄せが生ずることのないようきめ細かい対策を講ずる、こういう言明をいたしているのであります。去る十三日の商工委員会におきましても、河本通産大臣所信表明の中に「中小企業をめぐる経済社会環境は著しい変貌を遂げつつありますので、五十年度におきましては、新たな構想を加え、一層の施策」の充実拡充を図ってまいりたい、こういう所信が表明されました。  そこで、私は、今日の中小企業の置かれている状況は健全な経営を行っている中小企業が不当なしわ寄せを受けているという実態があるということであります。まさに健全経営が不当なしわ寄せを受けるということはこれはまさに矛盾ではないでしょうか。それは三木総理は全く抑制基調予算の中で社会的公正を期することは特に配慮した、本年度の予算の中で特別配慮をいたしましたと言明をいたしておりますが、五十年度一般会計二十一兆二千八百八十億円、この中で中小企業対策費というのは千二百七十八億円で、まさにコンマ以下であります。〇・六%に相当する中小企業対策費になっているではありませんか、話にも何にもならないと言わなければなりません。  政府は、二月十四日に不況対策を明らかにし、中小企業向けとして、一つは融資枠の拡大、二つ目は官公需の昨年の二九・四%から三〇%以上に中小企業向けに拡大するということを明らかにされました。いま中小企業の一番望んでいる問題は金の問題よりも——いまも出ましたが、仕事であるということです。仕事がほしい、これが今日の倒産を生んでいる実態であります。仕事と金であります。  そこで、私は総論的にまず基本姿勢で大臣にお伺いいたしたいのは、中小企業に対して社会的公正を期すためにどのような、先ほど申しました五十年度におきまして新たな構想を加えて一層の施策拡充を図ってまいりたいという抽象的な表現に対しまして、どういう抜本的な基本姿勢をとるのか、これが第一点であります。  第二の問題は、先ほども申し上げましたが、いわゆる二月十四日に出されました不況対策、新聞発表になりましたが、閣議決定としまして、中小企業金融公庫から当面七百億円の中小企業経営救済融資を行う以下を含めまして、約六項目ほど出されました。しかし、これで一体中小企業は救われるのか。救われるというふうに大臣は思っているのかどうか。この点に対して、まず私は基本的な姿勢についてお伺いをいたしたい、こう考えます。
  25. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 初めに中小企業の倒産件数等についてお話がございましたが、非常に多数の中小企業の倒産が続いておりまして、しかも一向によくならない、こういう実態にあるわけでございますが、私どもも大変憂慮いたしまして全力を挙げておるわけでございます。  ただ、この中小企業関係の予算が十分でない、こういうお話でございますが、私はこの全部の予算の伸びに比べまして、中小企業関係の予算の伸びはそれを上回っておりますし、それからさらに別に政府関係の三機関から融資いたします金額も前年に比べまして非常に莫大な金額になっております。大幅にふえております。そういうふうに総合的にお考えいただきましたときには、政府はまず現段階において考えられる手はほとんど全部中小企業に対しても打っておる、まあこう申しても過言ではないくらいいろいろ配慮しておるつもりでございます。もちろん十分とは言いませんけれども、できるだけのことはやっておるつもりでおります。  それから、当面の不況に対して二月十四日の六項目でやれると思うか、こういう御質問でございますが、私もこれでは不十分であると思います。ただ、しかし、総需要抑制、こういう基本的な政府の枠もございますし、その枠内におきまして、とりあえずの対策といたしまして二月十四日の六項目対策を打ち出したわけでございまして、引き続きまして来月もう一回詳細な調査をいたしまして次の手を打っていきたい、こういうふうに考えております。  なお、先ほどの御質問の、しからばこの中小企業に対して新しい対策としてどういうことを考えたのかという御質問でございますが、それにつきましては長官から答弁をいたします。
  26. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 先ほど小笠先生からもお話ございましたけれども、中小企業をめぐります環境が非常に変化を見せつつございまして、従来の高度成長から安定成長に移ろうといたしております。発展途上国の追い上げも急でございますし、また、資源の不足等もございまして、より加工度の高い分野に中小企業も転換を進めなければならない、こういう状況にございますので、中小企業につきまして、いわゆる新しい技術開発、それによります新商品の企業化、こういうことをさらに進めまして、中小企業自体の構造改善をさらに促進してまいりたい、かように考えまして、中小企業近代化促進法の一部改正法案を今国会に提案をいたしたい、こう存じておるところでございまして、よろしく御審議をお願い申し上げたいと考えております。  それから、小規模企業者の対策も最も力を入れておる点でございます。全国に五百万中小企業の中で従業員二十人、あるいは商業サービスで五人以下という小規模が四百五十万ございます。こういった方々のいろいろなめんどうを見ますために、特に金融面で無担保・無保証の融資制度、いわゆる経営改善資金制度と呼んでおりますけれども、これの融資規模を前年度の千二百億から二千四百億に、倍額に増額をいたしますとともに、その融資の条件等につきましてもいろいろ改善を図っております。また、こういった零細な中小企業を指導いたしますための体制の強化にも力を入れておりまして、全国の商工会、商工会議所に配置をいたしております経営指導員を約千名さらに増員をいたしまして、従来の六千人から七千人に持っていく。あるいは税金関係の申告の指導をいたします顧問税理士も前年度千名新たに設けましたが、さらに二百五十名増員を図りたい。それから、経営指導員等の中小企業の指導をいたします方々の資質の向上のために、中小企業大学校というものを五十年度から着工にかかりたいと考えておりまして、五十年度は一応その土地と、それから設計費が予算上計上を見ております。  さらに、中小企業に働きます従業員の施策の充実を図りたいと考えておりまして、一つは融資面におきまして、のれん分け融資制度というようなことで、中小企業に働きます従業員の独立の喜びを、期待を持たせるということでございますとか、そのほか高度化資金を極力中小企業で働きます従業員の施設の改善関係に優先して使ってまいりたい。たとえば託児所とか、あるいは共同の従業員の宿舎とか、こういうものに二・七%の低利の資金を投入してまいりたいと考えております。また、金融面におきましても、先ほど大臣申し上げましたように、三機関の融資規模が前年度、年度当初二兆円でございましたけれども、約二兆五千億に拡大をいたしております。また、一人当たりの融資限度も、従来の中小公庫で八千万でございましたのを一億に引き上げ、国民公庫は八百万から一千万に引き上げております。そのほか信用保証協会の保証料率の引き下げをもくろんでおりまして、そのための原資であります信用保険公庫に対する国庫出資も大幅に出資をいたしております。かようにいろいろと改善を図りまして、総合的に中小企業の体質の改善と強化を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  27. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま総論的に大臣基本姿勢、中小企業庁長官考えている施策について答えがあったんでありますが、金融もかなり大幅にふやした、指導員もふやしたというようなことをいろいろ挙げられていますけれども、二月十四日の対策では十分ではないということも大臣から率直にお認めがありました。しかし実態は、私は政府のおひざ元で——はっきり申し上げますけれども、政府のおひざ元である労働省が民間金融関係、各省そうだと思うんでありますが、六十三行を指定しているんですよ。たとえば、政府機関が印刷業なら印刷業に業務を指定した場合、その場合の融資対策を、銀行を指定しているわけです。その指定銀行が六十三銀行あります。  私、これ間違いであれば——表を持っておりますから読み上げますけれども、たとえば北海道の例で言えば北海道銀行と、こうなる。これは零細企業あたりが北海道銀行あたりなどと取引はいたしておりませんよ、こんなの。信用金庫か小さな銀行と取引をしているのであって、そんな大銀行と取引しているわけはないじゃないですか。そこが私は官僚的な中小企業対策だと指摘をしたいのです。それは見せ金としては、なるほど一千二百億になるのかもしらぬけれども、実際に零細企業が北海道銀行と取引ありますか。私は北海道ですけれども、これははっきり申し上げまして、ございません。その前が政府機関、三機関といわれる、つまり国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金、こういう関係を指しているのだと思うのですけれども、そういう関係から言ったって、大体政府機関みずからこういう銀行指定を大銀行に指定しておいて、そうして中小零細企業を救いますと、こう言ったって、こんな現実離れをしたような銀行指定をしたって、これはみずからおひざ元の中小企業対策の姿勢を正すべきじゃないかと私は考えているのです。あえて金融問題が出ましたから私は申し上げますけれども……。  それで私は、次の点を大臣にも根本的にお伺いしたいのでありますが、やっぱりいままで再三中小企業、零細企業が訴えておりますのは、先ほど、総予算の中で〇・六%は、必ずしも三機関を通じて低いとは思わないという大臣の答えがありましたけれども、現実に借りられない金を何ぼつくったって、現実は〇・六%じゃないですか。総予算の中で占める割合というのは、〇.六%よりないでしょう、どう見たって。本当に対策が重点的だと言うなら、全体、総予算の中で、私は中小企業の本当に区画整理をしていただいて、たとえば中小の零細企業の分に対するあるいは住宅、上下水道、その他の仕事向けに対する金融措置はこれこれである、あるいは具体的なそういう制度として本当に予算が大幅にふえているなら別だけれども、結果として総予算が〇・六%である限りは、これは全体として中小が見直されているということにはならないのじゃないですか。私は、この点再度質問いたします。  それからもう一つは、根本的な問題でありますけれども、抜本的な改革が私は必要であると思うのですよ。いまなお予算が見直されない。中小企業対策をやっておると言ったって、現実に先ほど私が申し上げた、かってない史上空前の倒産件数になっている。これを救おうとすれば、農民には農林省があり、労働者保護のためには労働省がある。中小企業のためには中小企業省があってしかるべきであるというのが当然だと思うのです。そういう点から考えますと、まず一つは、中小企業と大企業の格差がますます開いていっているということです。これは労働条件だけから私は言っているのではないのです。大企業中小企業の付加価値の問題を見ても、だんだん開いていっているじゃありませんか。これははっきり言って狭まっていっていませんよ。  それから第二の問題では、中小企業の協業化、共同化という問題が実際的にそれでは進んでいるかどうかというと、これも私は協業化、共同化という問題は、それほど中小企業対策としては進んでいない。  三つ目の問題では、中小企業の勤労者並びに企業者の福祉向上の増進という意味からも、これもまだ大企業に比較して前進をしておるという点では考えられない。そういたしますと、ともあれ、中小企業の政策の総合的一元化ということが必要ではないか。これに対しては、施策と予算を裏打ちをする意味においても、中小企業政策の一元的な政策をとる段階に来ている。私は、思い切って河本通産大臣が、三木内閣の対話と協調を言うならば、本当に国民のコンセンサスを得るとするならば、暗い谷間に置かれている中小企業のために、中小企業省というものを絶対に独自性をもってこの際設置をすべきであると考えるが、この点大臣の所見をお伺いをいたします。
  28. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず最初に、中小企業の予算のことでございますが、これは一般会計と財投とあわせてひとつごらんをいただきたいと思うのでございます。相当私は重視した予算になっておると、こういうふうに思います。  それから、中小企業と申しましても企業数で五百万もございまして、その中小企業の中にやはり大、中、小、零細というふうに分けられるのではないかと、こう思うんです。そういうことから考えまして、いろいろな中小企業金融機関がありますが、それぞれやはり貸し出しの対象が違ってくると思います。でありますから、その立場立場で金融機関を利用していただく、こういうことになろうかと思うんです。なおしかし不十分ではないかというお話に対しましては、私も決して十分であるとは思いません。やはり日本の全生産の五割、それから従業員数にいたしまして三千万ということを考慮いたしますならば、まだまだ不十分でありますので、今後とも充実していかなければならぬと、こういうふうに基本的には考えております。  それから、中小企業省という問題でありますが、中小企業の非常に大事であるということ、その大きな役割り、それから日本経済において大変な仕事をしておるという、いろいろなことを考えますと、私は、中小企業対策というものはいろいろな面で充実していかなければならぬということは全く同感なんです。ただしかし、いまの段階では中小企業庁を強化することによって私はその任務を果たされ得るのではないか。かえって中小企業省をつくりますと、まあ中小企業という特別の仕事があるわけじゃありませんで、やっぱり全体の産業の中に中小企業の分野というものが存在するということ等を考慮いたしますと、中小企業対策は大変大事ですけれども、中小企業庁の強化によって十分やっていけると、こう思います。
  29. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま、中小企業庁を充実強化をしてやっていけるということですが、私は次の質問の中で、現在の段階では中小企業庁だけでは対応できない実態が出てきているという判断をいたしておりますから、具体的な事例を挙げてこれから中小企業対策の中でその矛盾を解明をしていきたいと、こう思います。  私は、率直にいま中小零細企業が求めているのは、何といっても仕事が欲しいということです。仕事を与えるということが最優先ですね。そこで問題になることは、やっぱり政府機関の官公需の仕事が——三〇%官公需の仕事をひとつ中小企業に回そうと、こういう方針が出されました。そこで私は、この官公需の仕事の内容について、中小企業向けに具体的にどういうふうに官公需の仕事を与えようとしているのか、これをお伺いしたいんです。  そこで私は考えます場合に、総需要抑制による公共事業の繰り延べ、抑制に対処するためには、中小零細企業の担当する生活関連公共事業についての繰り延べの緩和をして、たとえば上下水道、あるいは住宅、福祉関係、こういった問題についての受注確保ということをいまの段階で図るべきではないか、こう考えますが、この点について大臣考え方をお伺いをしたいと、こう思います。
  30. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 公共事業の中の生活関連関係は、例の八%の繰り延べをしないで年度内消化を図って、それを中小企業に回したらどうかという御質問の御趣旨かと存じますが、私どもも、そういったことができないだろうかと思いまして、財政当局ともお話をいろいろ伺ってみたわけでございますが、各省庁一応八%繰り延べということは相当前からそういう方針がきまっておりましたので、そういう段取りで各省庁仕事をいたしておりまして、むしろその残りの九二%につきましていまのままでいくといろんな事情からなお五十年度に繰越しが出そうである、こういう状況でございましたので、当面は、いわゆる今年度内消化することになっております九二%につきまして繰り越しが出ないように完全消化を図りたい、こういうことで、先般の不況対策でその辺がきまりまして、いま年度内完全消化を目指しまして各省庁が努力をいたしておるところでございます。
  31. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そこで私は、具体的に現在の官公需の実態をどう見ているのかということについてお伺いしたいんです。三点ほど具体的に整理をして質問いたします。  一つは、各省庁の官公需の大企業中小企業向けの割合がどうなってるかということです。各省——通産省、労働省あるいは大蔵省関係の大企業中小企業に割り当てられている仕事の割合が一体どういう実態になってるか。これは当然中小企業庁として、先ほど大臣がりっぱな答弁をしてるわけですから、中小企業庁といえども全体を把握をしてやっているというのであれば、これがどういう割合になってるかということが第一点。  第二点目は、公共事業関係で国の、いま中小企業庁長官も言われましたが、年度内の公共事業実施の場合に、地方公共団体の財政が実際に困難な現状は御承知のとおりであります、それが財源的にどういう立場対策がとっていけるのか。いわゆる公共事業は年度内に実施するのに対して、地方末端での財源がそれにタイアップして直ちにそれに対応する態勢になるのかどうか、こういうことが対策はとられているかどうかということです。これがどうなってるかという問題。  それから三つ目は、住宅公団、電電公社、国鉄などの中小企業向けの仕事の実態はどのようになってるか。したがって、私はそこで官公需の中小企業への配分については全体一律に扱うのではなくて、具体的にやはり先ほど申しましたように零細優先という立場で仕事を与えるという行政指導は当然なされていると思いますけれども、いま申し上げました三点についてお伺いをしたいということと、さらにこれからの改善目標について明示をしていただきたい、こういうふうに考えます。
  32. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 官公需の点でございますが、官公需の中小企業向けの割合でございますけれども、四十八年度——前年度で申し上げますと、実績が全体の官公需の中の二七・七%でございまして、そのうち国の発注分の三七・二%が中小企業向けに発注されております。それから公社、公団につきましては二一・八%でございまして、合計いたしまして二七・七%という実績になっております。  今年度につきましては、目標といたしまして二八・七%の目標を立てましたが、十二月までの実績を各省庁から徴しましたところ、目標を上回りまして二九・四%という実績でございます。その内訳は、国の発注関係は四二・八%、公社公団が二丁六%でございまして、国ば目標を上回っておりますけれども、公社、公団関係目標よりやや下回った状態にございます。さらに年度末までにこれを目標まで、あるいはさらにできればそれを上回るように各省庁に努力願うように、先般二月四日に閣議了解をお願いをしたところでございます。  それから、公共事業につきましての地方財政の裏づけと申しますか、裏打ちの問題につきましては、現在財政当局でいろいろと御検討中のようでございまして、私どもまだその詳細につきましては結論が出てないように伺っております。  それから個々の公社、公団の進捗状況でございますが、これは閣議決定をいたしました目標は国一本、それから公社、公団一本でございまして、個々の省庁別あるいは公団、事業団別の目標というものを閣議決定をいたしておりません。もちろん総体の国としての、あるいは公社、公団全体としての目標が出ますときに、その内訳としての各省庁のつくりましたおおよそのそれぞれの目安はあるわけでございますけれども、それはそれぞれの部局での一つの目安でございまして、政府として決定した目標は、公社、公団あるいは国一本でございますので、それぞれの予算執行を担当しておられます省庁別の内訳につきしまては、ただいまのところちょっと公表はしないような、各省庁がそれぞれでおやりになっておるということでございます。
  33. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そこで私は、各省の実態がわからなければ中小企業の実態も把握できないんじゃないですか。ただ大枠で三〇%そうなっていますと、いまの説明を聞くと確かに伸び率が国の場合は三二%、公団の場合は二七・八%と、こういう説明ありましたけれども、私はそれではやっぱり大枠だけの中小企業対策であって、総理が言うきめ細かい対策ということにはならないと思う。この点で私は資料要求をしたいんですが、具体的に、一つは先ほど申しました官公需の大企業中小企業の割合の関係の資料を出してもらいたい。それから住宅公団、電電公社、国鉄の中小企業向けの内訳の資料を提出を願いたい、こういうふうに考えますが、これは先ほど大臣の答弁によれば、中小企業庁といえども全体を把握しておるんだからできると言われたんですから、これはぜひひとつ資料要求をいたします。この点どうですか。
  34. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 各省庁の十二月末の実績は、私ども手元にいただいてはおりますけれども、これは各省庁の数字でございまして公表する数字でないわけでございます。非常に事業予算と申しますか、プロジェクトの多い官庁と企画的なことを営みます官庁とではその予算の執行の内容が違いますので、おのずと中小企業向けに非常に出せる官庁と申しますか、そういうものの多い官庁と、大型プロジェクトが多くて中小企業向けの比率がどうしても予算執行上下がる官庁とがございまして、一律にいかない面があるわけでございます。そういう意味で、いろいろその数字は一律に横に見られますと誤解を招く点もございまして、各省庁と協議をいたしませんと、ちょっと私どもの一存でここに御提出するというわけにまいりません。
  35. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 これは大臣にお伺いします。いまの問題はひとつ資料を——われわれ国民が納得いけるというのは、そういう資料がなければ、政府自身でどれだけ中小企業対策のために仕事が与えられ、仕事を優先されているのかという実態を目の前で見せてもらわぬとこれはわかりませんよ。なぜそういうことを言うかというと、私は次の質問を申し上げたいんです。それもあわせてひとつお答えを願います。  私は、官公需発注のあり方について問題があるのじゃないかという事実について指摘をいたします。それは官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律第三条、これはいかに中小企業育成のために仕事を与え、そして便宜供与を与えるかという意味での優先的な目的がここに書かれています。ところが政府のおひざ元で、中小企業対策についてこの官公需についての中小企業受注確保に関する法律の第三条の考え方に反しているんじゃないかという事実行為がある。私はこれを率直に指摘いたします。  それはどういうことかと申しますと、労働省の官房が二月一日付の文書をもって、ここに文書がございますが、印刷業者に対しまして市中価格よりも三分の一の安い価格をもって強制的に押しつけています。たとえば、具体的な例を挙げますけれども、タイプオフの九号扱いが、八百五十円という価格で労働省はやれということです。市中価格が二千二百六十円。それからカメラの版でありますが、B4というのが四百五十円という価格でこれをやれ、市中価格が千二百三十円。それから、たとえばタイプオフの一枚が一円、これに対して一般の市中価格は三円三十銭であります。これはしかも、財団法人経済調査会発行の「積算資料」という、正式の政府機関で出している「積算資料」の最後の印刷関係のページに載っております、その価格であります。こういう実態に対して強制的に労働省がこの案を業界に示して、これでやらなければ君のところには仕事をやらない、結構です、お断りしても結構だ、こういうやり方は一体……。  労働者あるいは弱者救済のために最も保護をされるべき労働省が、しかも市中価格の三分の一の値段をもって強制的に強要している。これを入札にぜひしてもらいたいと業者団体が言ったら、それを拒絶をしているという事実がある。これはどうなんですか。これでは一体、先ほど私も申しましたように、官公需についての中小企業者の受注確保法律の精神に全く違反しているではありませんか。これで一体中小企業対策になっているか、私は中小企業の事情を聞きましたけれども、泣き寝入りして泣いているんですよ。自殺一歩手前にある。あえて私がこういうことを言うと、政府はあの業種については直ちに出入りを禁止されるだろう、こういうことも言っています。現実に労働省がこういった正式なこの資料もってやれという、しかも強制的にこれを押しつけて入札制度を拒否しているという事実、これは明らかに中小企業に対しては中小企業救済どころか、私に言わせれば、中小企業に対して一方的な犠牲を押しつける政府の施策ではありませんか。これが一体中小企業対策となるかならないのか、弱者救済とも言われる零細企業を救うことがこれでできるのか、こういう問題についてお伺いします。
  36. 橋爪達

    政府委員(橋爪達君) お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘によりますと、官房から二月一日付でそういう意味の通達を出したということでございますが、私どもといたしまして、そういうような通達を出した覚えはございません。ただ、先生の御指摘になりましたいろいろな価格をお聞きしておりますと、それは入札あるいは随意契約の応募の場合の官庁側の見積価格、予定価格を積算する必要がございますので、そのための内部的資料かと存ずるわけでございますが、そういう性格のものでございまして、それをもちまして強制的にどうこうするというような性格のものとは違うわけでございます。
  37. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いや、内部的資料であろうと何であろうと、業者側が受けとめているのは、この価格でもってやらなければあなたのところには仕事がやれませんということはどういうことですか。内部的な資料なら内部的な資料として、この価格は、これが入札をするにしてもこの政府の「積算資料」に出ている市中価格の三分の一価格をつけて、これが「積算資料」の内示資料でございますと、それが中小企業を救うということになりますか。しかも、業者側が受けとめているのは、これでやらなければ仕事が来ません、こう言っているじゃないですか。これはどうなんですか。仕事が与えられないということは、この価格でやれということじゃないですか、どんなうまいことを言ったって。しかも、民間サイドでやっているんじゃないんですよ。官庁が物を言う限りは、官庁から仕事が断られたら大変だということで中小企業が泣き寝入りをするというのは当然じゃないですか、いまの実態としては。その点もう一回お伺いします。  あわせて、なおもう一度この手に類したことを私はほかに中小企業庁長官に申し上げます。管理問題について、もう一点こういうやり方については直すべきだと思うのは、これもはっきり法律の精神に私は反していると思うんです。農林省の場合は、印刷物発行は農林共済会が実権を持っているんです。農林共済会が実権を持って、農林共済会が全部窓口になって印刷業界を通している、こういうことです。そのうちから手数料を取ってピンはねをする、結果的には印刷業者が買いたたかれる、こういうことになります。  こういう官庁の官公需の発注のやり方というのはきわめて不明朗なやり方だと私は思うんです。はっきり言っていわゆるピンはねじゃないですか。ピンはねをして、そして中小企業を買いたたいている。これが何で中小企業の救済に通ずるのかという問題です。いま野たれ死にして中小企業が大変だと言っているときに、こういった問題とあわせて考えますならば、私は本当に大臣にも考え方をお伺いしたいんでありますが、この種のこういうやり方について抜本的に改めない限り、本当に中小を救うという姿勢になっていない。言葉でどんなうまいことを言ったって、こういうやり方をやっている限りでは、この点については結果的には中小企業は泣くだけです。こういう問題もあわせてお伺いしたいと思います。
  38. 橋爪達

    政府委員(橋爪達君) 先生御承知のとおり、印刷物の発注等におきましては、会計法及び予決令等に基づきまして実施するわけでございまして、その方法には、競争入札による場合と、金額等が低い場合には随意契約でやる場合があるわけでございます。いずれの場合にも多数の者に入札させる、あるいは見積価格を出させる、そこで最低価格のものに発注する、こういうようなことになるわけでございますが、その際官庁の方としましては、やはりそれをチェックする意味で予定価格というのを積算しておく必要がある。そういう必要から、印刷物につきましてはいろいろな積算をやっているわけでございます。  その予定価格は、物価変動等によりまして改定を行っているわけでございまして、労働省におきましても、昨年来の物価の動向に応じまして改定をやっているわけでございます。ただ、役所の印刷物の場合には、あるいは大量であるとか、定型的なものが多いとか、あるいは昨年の版が残っておるとかそういうような関係もありまして、市価よりは安いというようなケースも間々あるわけでございます。実際の入札を見ますと、その予定価格より低く入札する場合もあります。あるいはまた、それではできないということでそれ以上の場合も出てくるわけであります。そういう意味では一つの標準価格的なものと言うことができるわけでございます。  先生御指摘のこともございますので、今後におきまして、物価の動向等ともにらみ合わせて中小企業の圧迫等にならないように改定を行ってまいりたい、こういうように存じておる次第でございます。
  39. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) ただいま労働省からお話ございましたように、官公需の発注につきましては、会計法規の制約がございまして、予算の適切な使用に留意しながら行うことになっているわけでございます。と同時に、一面で極力中小企業向けに官公需を確保するという別の要請がございまして、その調和をいかに図っていくかというところが私どもの一番苦心の存するところでございますが、発注の価格につきましては決して安いだけがいいわけではありませんで、最近の物価動向等を配慮いたしまして、適切な価格になるようにということにつきましては、かねてから中小企業庁としましては各省庁、発注側に実はお願いをいたしておる点でございます。ただいま先生の御指摘のような点、私ども各省庁の中小企業の官公需確保の連絡会議を持っておりますので、その際あたりに再度お願いをいたしまして、適切な価格で発注をしていただくというようにしてまいりたいと存じます。  なお、印刷は非常に中小企業に向いた仕事でございまして、ことしの予算で見ますと、十二月までの各省庁の発注実績の中で印刷関係は九〇%が中小企業に発注されております。そういうことで、中小企業向けの官公需としては非常に確保されておる分野でございます。
  40. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま労働省、中小企業庁長官からありましたけれども、こういう問題がもし出されなければ、結果的には中小企業者は泣き寝入りをしてこの値段でやらざるを得ないということになるわけです。内示であろうと何であろうとこういう問題を出す場合は、少なくとも中小企業の今日の置かれている実態というものは、非常な物価の上昇なども勘案して——私はこれは大臣にお伺いしますけれども、少なくともこういう問題については、やっぱり大臣みずから関係各省に対して、これは先頭に立って中小企業に犠牲を、しわ寄せをする、こういうやり方の官公需の発注というものについては正しくない、こういうことについて積極的に取り組む意思があるかどうか、この点についてお伺いします。
  41. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 官公需の発注の仕方等につきましては十分調査をいたしまして、改善すべき点があれば改善するように指導いたします。
  42. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま指摘をしたような問題についてどう考えるかと私は聞いているんですよ。改善をするのかしないのかということ。  それから、先ほどの農林共済会の問題、答弁していない。
  43. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 農林省の印刷の発注の件につきましては、私ども初めていま承りましたので、農林省によく実情を伺ってみまして、その状況によりましていろいろお願いもしてみたいと思います。
  44. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 大臣、そこでどうなんですか。いま具体的に出されました問題について、具体的に改善をするように関係各省に対して大臣として直接この問題については指導するということについては。
  45. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) よく調べまして、なお改善すべき余地があれば改善するように相談をしたいと思います。
  46. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 改善すべきだって、出ているわけでしょう。現実にこういう問題を内示として出している、こう言っているんですから、労働省はいま認めたわけでしょう。こういう問題について、労働省に対して直ちに訂正するならする、改善するならする、こういうことを私は聞いているわけですよ。これがまた泣き寝入りになっては困るんで言ったんです。こういうことを正してもらいたいというのがせつない零細企業の訴えなんだから、それを聞いているんです。一般論を聞いているんじゃないんですから。どうですか、その点。
  47. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 大変恐縮でございますが、もう一回よく相談をいたしまして、改善すべき点がありましたならば改善するようにいたします。
  48. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま言ったように、そういうふうに中小企業庁全体が把握されてないでしょう、大臣。先ほど中小企業庁でもりっぱにできると、こういう大臣の回答がありましたけれども、いま一つの問題をとらえたって、横の関係というものは全然とられてないじゃないですか、中小企業庁は、農林省の問題にしたって調べなければならないということで。そういった中小企業対策ではやっぱり抜本的な対策にならないということです。そういう意味で、私は冒頭申し上げましたように、中小企業庁ではなくて、中小企業の重点対策のために中小企業省というものを位置づけるべきである、こういうことを言うのは当然じゃないですか。  そこで私は、さらに官公需の問題についてなお明らかにしておきたい点が一つございますから明確にしておきます。  先ほど労働省、農林省の問題を具体的に挙げました。そこで私は、ここではっきりしてもらいたいことは、受注機会の増大が必ずしも受注増につながらないという場合があるわけですね。だから入札制度という問題について問題があるのじゃないか。先ほど言ったように、随意契約ではなくて、きちっと入札をさせて、その場合の基準価格というものは、これは業界が納得する上に立ってなされるべきものであって、押しつけられるべきものではないということです。そういう考え方がやっぱり基本に立っていないと、お前のところに仕事をやるんだからこれでやるのがあたりまえだというのが大体、政府みずからそういう物の考え方で出発しておったら、民間会社がそれにまさることをやるのは当然じゃないですか。今後そういう受注、発注についての根本的な改善策についてどう考えているかということについて、長官にひとつお伺いしたいと思います。
  49. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 先ほど申し上げましたように、各省庁が予算を執行します際には会計法規の制約がございまして、なるべく予算を適切に使いまして、適切な単価で適切な仕事を確保するということが予算の適切な執行上必要なわけでございます。したがいまして、余りに発注形式がルーズに流れることは、いろいろ問題が一面であるわけでございます。  ただ、そうかといってコスト等、あるいは最近の物価情勢等も反映しないような最低価格を設けまして、ただ安ければいいというものでもないことは先生御指摘のとおりでございます。そういう意味では、各省庁の入札におきます最低予定価格のつくり方等につきまして、十分最近の物価等を反映されてつくっていただきますように、各省庁との連絡会議等におきまして、各省庁に十分徹底方を期してまいりたいと存じます。
  50. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 次に私は、下請のしわ寄せ対策について中小企業庁長官大臣にお伺いしたいと思うんであります。  その一つは、大企業、大商社が下請企業にしわ寄せをはかっている例がきわめて多い。実績が出ています。それは二月二十日の衆議院予算委員会でもわが党の佐野議員が明らかにしておりますが、西陣撚糸等の倒産ばかりではないが、私が最近調べましたのでは金沢紡織の九十名の人員整理、それから事業合理化を行おうとしておるが、この原因は、明らかに下請工賃の大幅な切り下げで累績赤字が六億を超えたということが倒産の理由であります。  テトロンの五〇デニールでキロ当たりが三百四十円の加工賃が百二十円に低下をした。ナイロンの場合は、一一〇デニールがキロ当たり二百五十円から百五十円に低下をした。一方、九月以隆電力料金がキロ当たり二十九円五十銭から十二円上がって、この負担額は月額二百万円を増加するに至った。荷づくり運賃はキロ当たりが三十四円三十銭上がって、これまた月額五百万円の負担額の増加に相なった。結果的には、加工賃が下がって他の諸経費が上がったわけですから、赤字になるのは当然であります。したがって、このような不当な加工賃を下げて下請企業の人を人員整理に追い込んだのは、金沢紡織の場合は、私の調査によれば、明らかに大商社のための犠牲による整理であると考えざるを得ません。  こういった問題について通産省としてはどのように対処されようと考えているのかお伺いをしたい、こう考えます。
  51. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 下請代金支払遅延等防止法によりますと、法律で保護する典型的な分野としまして一つは、商品を受領いたしましてから六十日以内に代金を支払うこと。それから、その場合の支払うものとしては、仮に手形で支払います場合には割り引くことができる手形というのが要件になっております。そのほかにもいろいろ親事業者が守るべき事柄を決めておりますけれども、その中に不当対価の問題がございまして、同種の商品について、あるいはサービスについて支払います対価を著しく下回った対価で支払われておる場合には、これは不当な対価ということで下請代金支払遅延等防止法の第四条の違反ということになるわけでございます。ただいま先生御指摘のケースがこれに該当いたしますかどうか、実情を直ちに調査してみたいと存じます。  ただ、これは特定の者に対してだけ、非常に一般の市価よりも安い単価で仕事を押しつけていた場合でございまして、一般的に不況のためにそういった下請の単価自体が下がってきておるという場合にはこの不当なる対価ということにならないわけでございまして、その辺、現在のように不況が深刻化してまいりますと、仕事を出します方の親企業自体も、その商品の価格が下がるとか、資金操りが困難になるといったような事情もございまして、下請に対します対価が単価におきましてもだんだん下落しつつありますことは最近の傾向でございます。  それで、こういうことによりまして、下請が不当に倒産等に追い込まれないように、私どもは一つは金融面で特に不況度の強い業種につきまして資金面の確保を図りますとともに、個々の問題につきましては、苦情がありますれば承りまして個別に親事業者との間を解決をする、こういったこともいたしておるところでございます。
  52. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 あわせて私は、北海道でも四十九年度一年間の倒産件数は千十二件、これまた千件を突破したというのは北海道始まって以来であります。負債額は八百三十億三千二百万円と新記録になっております。  この中で私は申し上げたいのは、いまの金沢紡織と類した例なんでありますが、産炭地振興のために通産省企業誘致をいたしました。これは歌志内の例でありますが、これも縫製品工場が設置をされまして、結果的には加工賃の単価買いたたきによって、この誘致をした企業——産炭地振興のための企業が再び倒産の寸前にあるという状況にあるわけです。炭鉱が閉山をされてそのために企業誘致をした、せっかく安住の地をここに求めようと思った労働者が、また企業誘致をされた企業が倒産の寸前にある。これは縫製品工場でありますけれども、こういった問題等が出てきておるのは、いま言ったように、加工賃が三分の一に減るということは、長官、これはどんなことを考えても、何ぼかそれは下落してきているかもしれませんけれども、あなた、加工賃が三分の一に買いたたかれるということはないでしょう。これは明らかに不当と私は言わざるを得ないと思うのです。私は少なくともこれは公正取引委員会あたりでこういった不当な加工賃——北海道では率直なところ産炭地振興における縫製品工場、それから建設業界、木工、繊維、弱電、こういう関係に非常に見られます、これははっきり申し上げて。固有名詞は挙げませんけれども。したがって、そういう問題について中小企業庁長官として、あるいは大臣として、公正取引委員会に対して、不公正な下請の取引についてどういう処置をとろうとしているのか。ただ調べて対処するというのではなくて、公正取引委員会を通じてあるいは勧告をさせるとか、直接行政指導をするとかというような対策をとるべきではないか、こういうふうに考えますが、この点ひとついかがですか。
  53. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 下請の受注状況、たとえば受注の単価でございますとか、受注量でございますとか、支払い条件等につきまして、サンプル調査で毎月三千企業ぐらいを調べておりますが、これによりますと、昨年の十二月の受注単価は全国の平均で前年同期、一昨年の十二月に比べまして二・五%高という数字になっております。これは平均でございますが、最近のような物価上昇時に前年同月二・五%高というのは、コストのアップを考えますと非常に下請の側としては苦しい状態になっておるんではないかというふうに考えております。  で、繊維の場合には、特に不況の度合いがきついためにその下落率も高いようでございますが、下請代金支払遅延等防止法違反になりますかどうかは、一般的に下請代金が下がってまいりました場合にはこの法律の違反にならないわけでございまして、一般の市価以下に非常に極端に特定の企業だけが下請の単価が安いという場合は、いわゆる買いたたきということで対象になってまいります。一般的に、最近下請単価の低下状況が激しいわけでございまして、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、一面ではいろいろ金融面で手を打つ、あるいは苦情処理をする、それから下請振興協会を活用いたしまして新しい仕事のあっせん等もいたしております。  また、法律違反関係の取り締まりにつきましては、最近、親事業者の取り締まりの調査件数を相当にふやしておりまして、調べました結果違法の疑いがあります場合には立ち入り検査をし、改善指導を指示しまして、これに従わない企業は公取に措置請求をいたすことにいたしております。取り締まりも最近特に強化をいたしておるところでございますが、御指摘のようなところはさらに取り締まりを強化いたしまして、違法な事実が発見されますれば行政指導、改善方を勧告し、聞かれなければ公正取引委員会に措置請求をする、こういった手続を進めてまいりたいと存じます。
  54. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そこで私は、発注者と委託加工業者の取引契約についてちょっとお伺いしたいんですが、実態を調べてみますと、本来なら書面契約形式をとることがほとんど少ないんですね。ほとんど口約束で商慣習が行われているというのが実態であります。  したがって私は、ここで問題になりますことは次の点でありますが、いわゆる、中小企業の同業工業組合に対して発注代表との間の契約事項については、共同行為もしくは団体交渉をとり得る措置を行うような行政指導をすべきじゃないかと、こういうふうに考えますが、この点についてはどうですか。
  55. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 下請に仕事を出します場合には、必ず契約書と申しますか発注書を交付することが法律上の義務になっておりまして、口約束だけのものは違法な契約でございまして、私どもの取り締まりの改善指導の対象になってまいります。  なお、組合を必ず通ずるような契約にしたらどうかという御指摘でございますが、組合が共同受注をするということも私どもいろいろ奨励、促進をしておるわけでございますけれども、そういうケースの場合は、組合自体が受注者でございますので、組合の名前で契約をすることになろうかと思いますけれども、組合員自体のそれぞれの契約につきまして組合の名前で契約するというのは、ちょっと実情から外れるのじゃなかろうかと存じます。
  56. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 なぜそう申し上げるのかといいますと、これはあくまでも本来ならば書類契約をするべきなんですが、そうなってないんですね。結果的には口約束でやっぱり押しつけられて、最後には約束違反であっても泣き寝入りするという状態があるわけです。私は、そういう意味で、先ほど言ったように、できるだけ協同組合と発注者との間で契約を結ばせるような行政指導をしたほうが健全——健全というよりも中小企業の健全化の意味においても必要なことではないかと、こう考えて言っているわけです。その点どうですか。
  57. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 中小企業自体は力の弱いものでございますので、極力この組織化を図りまして、協同組合なり協業組合なりその他の組合化を図って、組合の共同受注という形で個々にはできないような大きな仕事も取るというふうなことで、そういった組合による受注を促進するということはぜひそういうふうに進めてまいりたいと思っております。
  58. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それでは次に、労働省にお伺いします。  雇用保険法の適用の実態についてちょっとお伺いしたいんでありますが、雇用保険法が一月一日から御案内のとおり施行されております。この中で雇用調整給付金制度がございますが、この点について、本年の一月一日からの繰り上げ実施状況の中で大企業中小企業の適用状況がどうなっているかということを、簡潔にひとつ実態をお答え願います。
  59. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 雇用調整給付金制度は、ことしの一月から実施いたしておりますが、一月の実施分とそれから二月に行う休業の予定をあらかじめ届け出ていただくということになっておりまして、それを一月末現在で取りまとめたところによりますと、届け出をしました事業所数が総数で約三千四百ございますが、そのうち大企業が約三百、中小企業が約三千百という数字になっております。その届け出に基づきます休業予定の延べ日数を申し上げますと、合計で三百四十六万延べ人日、そのうち大企業分が百五十八万延べ人日、中小企業分が百八十七万延べ人日になっております。
  60. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 この点ひとつ、いま聞きますと、実態としては中小企業の適用がかなりまあ見られています。昨年の十一月に二千二百五十名の大量解雇を行いました東洋紡あたりが、雇用保険法の施行によるまでは退職金を渡さないというようなことになっておりましたが、この雇用保険法が通ってから該当者の復帰を認めて雇用調整金の適用になった、休業補償をまあされた、結果的にはこれはいいことだとは思います。労働者にとってはいいことだと思いますが、このように大企業の場合は安易に適用されがちになるけれども、中小企業の場合はかなりシビアであると聞かされておる、非常に厳しいということを聞かされますので、この点は運用に当たっては中小企業の適用というものについて最大のひとつ考慮を払ってもらいたいというふうに考えますが、この点どうですか。
  61. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 雇用調整給付金制度の実施の基準の中でも、できるだけ中小企業が利用しやすいようにということも国会審議等の過程等で御意見もございましたし、そうした点を踏まえて基準を考えております。具体的には、休業の規模中小企業の場合は四分の一でいいけれども、大企業の場合は三分の一であるとか、あるいは、払った休業手当の一部を政府が助成するわけですが、助成率は中小企業は三分の二であり大企業は二分の一であるということで、できるだけ中小企業が利用しやすいようにいつでも考えているつもりでございますが、さらに業種指定等についても中小企業関連業種をできるだけ対象に指定していくということも考えておりますので、できるだけそういう方向で検討してまいりたいと思います。
  62. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それでは最後に、中小企業の金融対策につきましてお伺いをいたしたいと思います。  先ほども出ましたが、不況対策の一環として貸付総額をふやしたということを長官からもお答えを願っておるわけでありますが、しかし、中小企業の実態を見るに、やっぱり担保が目いっぱいついているということですね。目いっぱいついて、保証協会なんかでも、保証額の限度いっぱい借りているために、問題は、何百億ふやしても、やっぱり借りたくても借りにくいということですよ。確かに見せ金としては、先ほども発表になりました。これだけ、一千二百億もふやしました、こう言っていますが、問題は、不況対策のポーズとしてはそんなような効果があると思うのでありますが、私はそういう意味では、次の四点についてひとつ政府はさらに積極的に前向きで検討してもらいたい、こういうふうに考えます。  その第一の問題は、中小企業にとって、零細企業に対してもつなぎ運転資金の緊急融資を強化する必要があるのではないかということが第一点であります。  それから第二は、先ほど申しました政府系の三機関、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金、こういった機関の融資枠の拡大に当たって担保の見直しをしてもらいたい。いわゆる担保物件がなければ絶対だめだというあれではなくて、そういう見直しをすることを検討してもらいたい。担保の評価額になったとしても、経営実態によってはその分をある程度超過して貸し出すというようなことも考えてもらいたい。  それからもう一つの問題は、政府資金の借入金でありますが、返済期間が来ているものに対しては二年間——仮に返済期間が来たとしても経営実態として、これが非常に倒産一歩手前である、あるいは不渡りを出す一歩手前だ、会社更生法適用の段階だというような以前の状態の段階が大事なんですから、こういう場合はやっぱり二年間の期間を延長してはどうか、延長する方法を再検討してもらいたい、こう考えます。  次の問題は、政府機関の国民金融公庫の場合なんかそうでありますが、申請をしても、なかなか結論が出るまでには相当な時間がかかるという中小企業の実態が非常に訴えられています。ある程度、先ほども申しましたように、指導員その他、そういう問題も、経営指導員強化などと言われていますけれども、この融資決定のスピードアップをひとつ積極的に行政指導をしてもらいたい。  それから、私としては、特に中小の中の零細企業に属している部分でありますが、谷間と言われる零細企業、こういう方々が一番底辺にある方々ですから、この方々を守る意味でも無担保・無保証の融資制度をいま一歩改善をいたしまして、貸付限度額を当面三百万円台に拡大をして、貸付期間を五年間延長してはどうか、こういう点についてひとつ検討する用意があるかどうかということについてお伺いしたいと思います。
  63. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) 幾つかの御指摘がございましたが、第一の非常に不況業種につきましてのつなぎ運転資金の緊急融資の問題でございますけれども、これにつきましては、政府系の三機関につきまして昨年の十一月に七千億の追加をいたしまして、相当にこの資金が行き渡っておるのじゃないかと存じます。それから、そのほかに市中の金融機関にお願いをいたしまして、中小企業救済特別融資制度というものを設けておりますが、昨年までに大体千三百億融資が実行されております。最近、今月の上旬に、さらに三十数業種を対象といたしまして七百億円融資をすることを決めまして、ただいまその手続中と申しますか、融資希望の中小企業から申し込みを受け付けておる最中でございます。こういったつなぎ融資につきましては、今後もその資金の逼迫状況を見まして、必要があればさらにどんどん追加をしてまいりたいと考えております。  それから、三機関の融資につきまして担保の見直しをすべきじゃないかというお話がございましたが、確かに大分借入金がかさんでおりますところでは、さらに借りるについて担保がないといったような向きもあるやに聞いております。こういう場合には、倒産防止という観点から極力弾力的に扱うように、三機関に対しましてはかねて指導をいたしておるところでございます。また、中小企業信用保険法のいわゆる不況業種というものに指定をいたしますと、通常の場合の倍額まで信用保証が受けられることになります。この中で、たとえば無担保による保証が通常の場合ですと五百万でございますけれども、不況業種の場合は一千万まで無担保による保証が保証協会から受けられることになっておりますので、この不況業種の指定につきましてもこれまでに二十九業種を指定をいたしまして、大体細目で教えますと百七十業種ぐらいになります。全体の業種の一四、五%に当たるものがすでに指定を終わっておりますが、さらに近く追加指定をいたしたいと考えておりまして、こういった信用保証制度を活用してもらいまして、無担保による融資を受けていただくように指導してまいりたいと考えております。  それから、返済猶予の件につきましては、政府系の三機関につきまして、個々に、申し出に応じまして極力弾力的に応じるようにというような指導をいたしております。ただ、それぞれの、個々の借り入れをしておられる事業者の経理内容を離れまして、まとめてある業種を一定期間返済を猶予する、こういうことは非常に悪平等に流れますので、あくまでやはり窓口で個々に事情を伺いまして、非常に返済が困難と認められる企業につきましては返済を猶予するという措置を迅速にとるように指導をいたしておりまして、たとえば、昨年の四月から暮れまでで約二万件弱返済猶予の件数が出ております。  それから、融資のスピードアップの件につきましては全く御指摘のとおりでございまして、特に昨年の九月ごろが資金需要が多い割りには全体の資金枠が少のうございまして、待たせる期間がだんだん延びてまいっておりましたが、その後七千億の追加等をいたしましたので、昨年の九月末で国民金融公庫のいわゆるお待たせ期間というのが大体三十五、六日になっておりましたけれども、昨年の十二月末では二十八日ぐらいまで短縮を見ております。こういった金融梗塞時でない通常時が二十五、六日でございますので、昨年末が二十八日でございますので、もう一息というところでございます。さらに資金枠の確保を図りましてこの待たせる期間を極力縮めるようにいたしたいと思います。また、商工中金とか中小企業金融公庫の場合も、緊急に必要とする運転資金の場合にはあまりお待たせしないで貸すように、いろいろ便宜を計らうようにも指導をいたしておるつもりでございます。
  64. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いまお答えがございましたが、そういう意味ではこの中小企業の資格条件だけにこだわらずに、それはマージャン屋をやるとか、キャバレーやるとか、ボーリングでもやるというならばこれは別だけれども、そうでない限りはやはり実際上生活権の問題なんですから、そういう意味での中小企業対策の指導というのを、もっときめ細かい、出先の国民金融公庫あたりにやっぱり資金枠を拡大できるような行政指導を積極的に指導してもらう、こういう点だけを特にひとつ強調して終わりたいと思います。
  65. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、繊維の問題につきまして若干お伺いをいたします。  今日の経済状態につきましては、先ほどからいろいろありましたように、非常に失業者も百万人以上を超えておりますし、倒産も相当な数にふえておるし、長年にわたる総需要抑制、金融引き締め作用によって景気が非常に冷え切っておる、こういう状態でありますが、その中でも繊維業界はもうこれは手のつけようのないようなひどい状況になっておることは、大臣も十分御承知だろうと思うわけであります。すでに業界におきましても、再三にわたる陳情等も来ておるわけですが、政府はいま繊維業界の現状をどのように掌握しておるのか、まずそこからお伺いしましょう。
  66. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) お答え申し上げます。  ただいま先生からお話がございましたように、繊維は非常に市況産業で、景気変動に敏感でございます。戦後、何回か日本経済不況期を体験してまいりました。そのたびにいつも繊維は非常に苦しい目に遭ってきたわけでございますけれども、今回の繊維不況はこれまでの不況と違いまして、いままでの不況でございますと、広い繊維の分野におきまして、一部が悪い場合、一部がいいというようなこともあったわけでございますけれども、今回の不況は、天然繊維のみならず化合繊全体を巻き込み、あるいはまあ縫製品とか、あるいは二次製品のようないわゆる川下といっておるものがございますけれども、そういうもののみならず、綿とかフィラメント等のいわゆる川上の素材分野をも含めまして、全分野を巻き込み、非常に深刻なものがございます。特に深刻の程度もさることながら、他の業種に先駆けて不況になったわけでございまして、これはまあ繊維の種類によって違いますけれども、早いものはもう一昨年の秋ぐらいから、遅いものでも昨年の春というような状況から、非常に情勢が悪くなってきておるわけでございます。  試みに、ちょっと指標、数字的なものを申し上げたいと思うわけでございますが、昨年の四十九年の鉱工業生産指数が先般発表になったわけでございます。それによりますると、繊維は年平均生産指数で対前年マイナスの一三・四%、生産でございますが、マイナスの十三・四%、それから出荷でございますが、これがマイナスの一五%という数字になっておるわけでございます。試みに、これを一般の鉱工業生産全般と御参考までに比較して申し上げますと、鉱工業生産全体では平均で生産はマイナスの二・三%、出荷はマイナスの四%こういうことになっておるわけでございます。この数字一つ見ましても、先生御指摘のように、繊維産業が当面している問題というのは非常に重かつ大なるものがあろうかと思うわけでございます。  で、昨年の秋以降非常に情勢がまずくなってまいったわけでございますけれども、年明けたならば、何とかもう少し一段落するのではないかという期待も実は年末にございました。幾つかの市況商品相場等も若干の上昇を見たものもあるわけでございますけれども、年明けましてから一月、二月、この予想に反しまして依然横ばいの傾向を続けているわけでございます。いわゆる市況で大底を打ったという感じは、実は昨年の十月あるいは十一月ごろであったかというふうに感ずるわけでございますけれども、いわばその底を打っているというような状況でございます。ただ、さらに悪化して、より突っ込んでいるという感じではございませんけれども、ともかく、申し上げましたように長引いておるものですから、産業あるいは企業の耐久力との問題これもあり、私ども事態を楽観できないものというふうに見ております。
  67. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、時間もありませんので私は端的にお伺いしますが、繊維の市況を圧迫しているその中で一つの大きな問題としては、わが国の大企業が海外進出をしている。向こうの安い労賃でもって加工したものを、つくったものわが国に逆輸出をしている、これが相当市況を圧迫しているというようなことが業界でも声を大にして取り上げられているわけでありまして、いわゆる韓国を初め、東南アジア等からの輸入の規制について、何とかしてもらえないかという声が非常に大きいようでございます。  この問題も、昨年来当委員会におきましてもいろいろと質問等もあったわけでして、また、この問題につきましては私も多少問題があるということは心得てはおりますが、この際に、やはりこういうものをほっておくということはいけないし、できるのかできないのか、この辺のところもはっきり聞きたいし、そういうことで私はお伺いしておるわけです。その場合に、特に絹織物のわが国への輸入の量、それから、わが国の生産量に対してどの程度に何%ぐらいになっておるのか、さらに、近隣諸国とわが国との繊維の貿易のバランスの状態、そういうものをひとつ数字的に説明してください。
  68. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) まず、昨年の繊維製品の輸出入でございますけれども、御指摘の点は輸入の問題だと思いますが、まず御参考までに輸出入の数字を、非常に大ざっぱで恐縮でございますけれども申し上げたいと思うわけでございます。  昨年一月−十二月つまり暦年でございますけれども、繊維の輸出の方から申し上げますと、全体の輸出額は約四十億ドルでございます。そのうち問題の製品の輸出は三十三億五千万ドルでございます。それに対しまして輸入でございますが、輸入は原材料、製品込めまして約三十六億四千万ドルでございます。そのうち問題になります製品の輸入でございますが、これが十七億七千万ドルという数字になっておるわけでございます。  問題になります輸入でございますが、まず全体で三十六億四千万ドルという数字でございますが、これは四十八年に比べまして九四%、すなわちマイナスの六%ということで、対四十八年に比べますと減ったわけでございます。問題の製品でございますが、この十七億七千万ドルという輸入額は、四十八年のそれに比べまして六%の増という数字になっておるわけでございます。特に問題になりますこの製品の輸入につきまして、実は四十八年が十六億八千万ドルという数字になりまして、四十七年に比べて三倍という数字になりまして、非常に問題になったわけでございますけれども、昨年の輸入につきましては、ただいま申し上げましたように六%の増にとどまったのでございます。  特に特徴的なのは、この年間を通じては実は四十八年を上回ったわけでございます。これは景気の鎮静ということもあろうかと思いますけれども、月を追いまして減ってきておるわけでございます。まあ通関で見まして減ってきております。大体のピークは昨年の一月からほぼ六、七月ごろまででございまして、夏の終わりごろから秋、それから冬にかけまして大分鎮静化してまいってきたわけでございます。  これを大ざっぱに申しますと、大体昨年の秋ではほぼ十月−十二月で一億ドルぐらいのペースにぺースダウンしております。これが昨年の春ぐらいでございますと、大体月二億ドルぐらいというふうに考えていただきたいと思うわけでございますが、ほぼ月一億ドルというペースに下がってきておるわけでございます。したがいまして、それからわれわれ輸入の成約統計等の先行指標で今年の輸入の見込みをつけるわけでございますけれども、このように減ってまいりました輸入鎮静化の状況は今年もさらに続いていくであろう。まあ、春から夏程度にかけまして鎮静化の傾向は続くであろうというふうに見ております。
  69. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、その中で絹織物の輸入量ですね、できましたら韓国、香港、台湾、東南アジアと、国別にひとつわかっておれば……。
  70. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) ただいま手元の絹織物に関しましての数字を探しますが、その前に、御質問のありました近隣諸国との貿易のこともちょっと御参考までに申し上げたいと思います。  私の手元にありますのは昨年の一月と十月で、まだ一−十二はまとまっておりませんけれども、一−十月の数字で申し上げますると、実は韓国、台湾、香港及び中国もそうでございますけれども、両国間の貿易日本側の著しい出超でございます。この四国だけを合計してみますると、約三十億ドルに上る出超でございます。たとえば韓国では約八億ドルの出超、台湾に対しましては九億ドルを超える出超、こういう数字になるわけでございます。  ただ、繊維をとってみますると、これは日本側の入超でございます。韓国に対しましては約三億ドル、台湾に対しましては約一億ドル、香港に対しましては日本側は若干の出超でございますが、ということで韓国、台湾はそれぞれ繊維の貿易日本側の入超という数字になっております。この中身は織物、特に縫製品の関係で入超だというふうに考えております。
  71. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで大体の数字はわかりましたけれども、こういったような輸入製品がいまわが国の繊維業界の市況をどの程度撹乱をしておるのか、それはいかがですか。
  72. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) ちょっと御質問の趣旨をもう一度……。
  73. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いまあなたに話しておったから……。  いまあなたから数字をお伺いしましたが、まあ韓国からは三億ドルの入超だということですね。こういうふうな輸入繊維製品がわが国の繊維市況をどの程度撹乱をしておるのか、その辺はいかがですか。
  74. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 今回の不況を招いた原因はいろいろ考えられるわけでございます。その一つの要因として、著しい輸入の増加ということが働いておるということはもちろん否定すべくまでもないことだと思います。量的にどの程度の撹乱要因になっているかというのは、いろいろな原因がからまって出ている現象でございますので、このくらいだということはなかなかむずかしいわけでございます。量的な問題を申しますると、輸入全体が内需に対して占める割合等から見ますると、これは繊維によっていろいろ比率は変わってまいりますけれども、昨年の私どもの方の推定によりますると、糸ベースで換算いたしまして、昨年は全内需量の一二、三%ぐらいではないだろうか、四十八年よりは若干落ちたわけでございますけれども、一二、三%程度ではないだろうか、こういうふうに見ております。
  75. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、この輸入の問題がいま業界でも非常に問題になっているんですが、いまあなたは総論的におっしゃったけれども、ある国からある品物によってはかなりの圧力もあるわけですから、この輸入規制という問題に対して、貿易自由の立場もありますし、また総体的な輸出入貿易のバランスの問題もあるし、政府としては一体どういうふうにこれは考えているのか、また今後、そういった要望に対して政府はどのように指導していくつもりなのか、私は時間もありませんのでずばっと聞きたいことを聞きますが、それを伺いたいと思うんです。
  76. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 最近の輸入の動向は先ほど申し上げたような状況でございまして、この不況ということ、あるいは内需の落ち込み需要落ち込みというようなことがあろうかと思いますけれども、徐々に落ちついてきておるわけでございまして、まだ四十八年初頭の状況ではございませんけれども、大分落ちついてきたということは先ほど申し上げたわけでございます。しかしながら、ともかく輸入が国内の景気、景況に与える影響というものは、私はやはり相当あると考えるわけでございまして、この輸入が秩序よく行われる、あるいは節度のある輸入が行なわれるということは、繊維産業の安定とそれから振興のために非常に大きなファクターだというふうに考えておるわけでございます。  そこで、私どもの方は昨年来いろんな措置をとってきたわけでございます。ともかく、まず第一には、この輸入の状況がどうであるかということを把握するということが、その後のいろいろどのような措置をとるにせよ、一番基礎的な大事なことだというふうに考えておるわけでございますので、従来からありますところの輸入の通関統計はもちろんでございますけれども、インボイス統計の拡充とか、あるいは先行指標としての輸入成約状況の把握というようなことに努めてきたわけでございます。大蔵省にも協力をいただきまして、予備費等をとってそういう作業を進めてきておるわけでございます。で、そういう指標を早くつかまえる、で、そのつかまえたその指標の動きをウォッチしておりまして、その状況に応じて適切な行政指導の手を打っていくというのがいままでとってきたわれわれの態度でございます。  しかしながら、そういう方法をやると同時に、現実的な輸入に対しまして節度のある、秩序のある輸入ということのために業界の指導をやってきておるわけでございまして、具体的には、商社あるいは輸入業者等を個別に、あるいは組合等の組織を通じまして輸入に対し自粛を要請してきておるわけでございます。それから、国外あるいは関係国に対しましても、政府ベースあるいは民間ベースを通じまして、日本側の事情の理解をしていただくと同時に、日本に対する輸出につきましても、こういう状況にかんがみて自省をするようにという要望をしてきておるわけでございます。  そういう意味で、それが輸入の抑制であるということができるのでありますれば、そういうことでやってきておるわけでございますが、直接的な輸入の禁止、あるいは輸入の制限をとるべしという声が業界の一部にあることは事実でございます。で、私どもも繊維の業界が非常に苦しいということはよくわかっているつもりでございます。そういう声に対しまして、あるいはそういう声が上がることにつきまして、理解はできるわけでございますけれども直接的な輸入禁止、あるいは輸入抑制ということは、なかなか関連するところ、影響するところが非常に大きいものでございますので、慎重に考えなきゃいかぬということでございます。ただいま、私どもは行政的になし得る行政努力を一生懸命展開している次第でございます。
  77. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ、今日まで政府行政指導ということで何とか指導してきた、こういうことなんですが、これは何回も聞いているんですよ、こういう答弁は。ですから、あなた方が商社等を呼んで行政指導をなさって、その行政指導の効果というのはどういうふうになっているのですか。その辺いかがです。
  78. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 私どもの行政指導によってどれだけ輸入が減ったか、あるいは輸入が落ちついたかということでございますけれども、その辺の要因の分析というのは非常にむずかしいものでございます。私どもそこを幾らということをただいま申し上げることはできないわけでございますけれども、経済不況と申しますか、そういう景気がダウンしているということ等と相まって、数字的には先ほど申し上げたように非常に落ちついてきているということになっておるわけでございますし、先行きの見通しにつきましても、ここ半年ぐらいの状況につきましては輸入の成約の状況等から勘案いたしまして昨年の秋から冬にかけて月一億ドルというぺースはさらにトーンダウンするのではないかというふうに見ておる次第でございます。それから個別のものにつきましては、私ども相当の効果が上がっているというふうに考えております。
  79. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ところが韓国の方は、行政指導でこれは三億ドルも輸入がふえておるでしょう。こういうような数字も出ておるところもあるわけですな。ですから、せっぱ詰まった状況に追い込まれた繊維業者にとっては、これは死活の問題ですから、非常にこれはやかましいことなんですね。ですから、それについて大体のことは局長さんからお伺いしました。私も、それはむずかしい点はわかっておりますよ。また、大蔵省もあまり、なかなかいい返事がないし、その辺大臣立場からお考えになってどうお考えになっていらっしゃるのか、一遍大臣からの答弁をお伺いしたいと思います。
  80. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これはさっき局長が申し上げましたように、やはりできるだけ話し合いで解決をしていく、これが一番総合的に考えまして望ましいのではないか、こういうふうに思いますので、そういう方向で努力をさしておるところでございます。
  81. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあこれ以上私も追及しませんがね。  それで、これから一体輸入規制の問題につきましては、これは非常に困難であるから今後も行政指導で続けていくということですが、しかしそれだけでは、繊維業界はこれは大変な状況にあるわけですので、とてもそういう答弁だけでは業界の方もなかなか承知しないと思います。それで、今後こういった繊維の救済対策といいますか、不況対策にどういうようなことを通産省はお考えになっていらっしゃるのか。これはいかがです。
  82. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 政府不況対策、まあ全般の問題になりますると私の立場からちょっと申し上げかねるといいますか、詳しく私存じておりませんけれども、二月の十四日の日に、政府としては当面の不況対策につきましていろいろの措置を講じたわけでございます。で、私どもの方は、先ほど申しましように、昨年から実は非常に不況の状況になっておるわけでございますので、昨年の秋以来、金融面の対策を中心としながら、さらに生産面、需要の喚起策、あるいは通商面、あるいは雇用面、その他等、総合的に不況対策を展開してきたわけでございます。で、今回の閣議で決められた不況対策につきましても、そういうことで、繊維につきましては一層の力を入れて最優先的にいろいろな手を打ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  83. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ答弁を聞いていると、抽象論ばっかりで、不況対策項目といっても大方金融の問題だけでして、さっきから何遍もあるよううに、まあ金だけではどうしようもないじゃないかと、こういう状態です。ですから、もう少し考えてもらわなければいけないと思うのですね、どういうふうにやっていくのか。繊維の構造対策の面、あるいは需要対策の面はどうすると、この辺の答弁を私は聞きだいわけなんだけれども、通り一遍のそんな答弁じゃどうしようもないのだよ、これは。いかがです。
  84. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) ただいまは、当面の不況をどうやってしのぐかということにつきまして、やっていることを申し上げたわけでございますが、問題は、やはり御指摘のように、こういう体制であっては、その場しのぎにはなるかもしれないけれども、長い目で見た場合の繊維産業の安定なりあるいは発展なりということから申しますと、実に不十分なわけでございます。そこで、当局といたしましても、繊維産業の発展をはかるために長期的にはどうあるべきかということにつきましては、先生御存じだと思いますけれども、一昨年の秋に、産業構造審議会の繊維部会での「七〇年代の繊維産業政策のあり方について」という答申をいただきまして、それをもとにしながら、昨年の春から夏にかけまして新しい構造改善を進めるための法律を制定していただいたわけでございます。で、その法律に従いまして、ただいま昨年の秋以降その準備を進めてきたわけでございますが、諸般の準備ができまして、今般この繊維工業構造改善臨時措置法に基づく新しい構造政策を展開し始めたわけでございます。  これは一口に申しますると、あくまでも需要の把握、そして需要に応じた生産体制及び適品の適量生産ということを目指す、及びそれを可能にするためにいわゆる知識集約化グループ、まあわかりにくい言葉でございますけれども、そういうグループ化を進めるということによって合理的な国際協調体制のもとにおいて日本の繊維産業を発展し得る、その方向を打ち出してただいま実施に入ったわけでございます。
  85. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ、構造対策といいましても、これは多少時間のかかる問題ですからね。当面中小企業、零細企業いろいろありますけれども、業界が生きるか死ぬかというようなことですよ。あるところに行きますというと、もうこの過剰設備の廃棄処分をやってくれないかとか、もう織機一台について何百万も借金を持っている、どうしようもないと、いまこういうことですから、構造改善は構造改善でいいけれども、構造改善だけでは救われないわけです。その辺のところをどうお考えになっていらっしゃるのか。それとも、もうしようがないから倒れるものは倒れてしまえ、こういうふうなお考えなのか、もう少しその辺のところをお伺いしたいんです。
  86. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 先ほど私、金融面に力を置いた説明を申し上げましたけれども、同時に、金融面のみならず、生産面あるいは需要面、労働面でいろいろな手を打っているということを申し上げたわけでございます。  その一例を申し上げますると、この毛紡績及び綿紡におきましては、当面の不況の乗り切り策として不況カルテルを現在やっておるわけでございます。この延長の問題が現在上がってきておるわけでございますけれども、当面、そういう縮小をいたしました需要に対する生産体制を整備しながら、他面において需要に適合したような生産をやっていく、こういう体制でおるわけでございます。  ただいま先生御指摘になりました、非常な借入金の増大をどうするんだというようなことにつきましては、これは一律繊維産業というわけにはまいりませんけれども、産地の実情に応じながら、私どもも間に入りまして、返済の猶予というようなことにつきまして力をかしているわけでございます。やや長期的に見ました設備の過剰度云々ということにつきましても、これは各業界もこういう御時世でございますので真剣に考えておるわけでございます。私どものほうもそういう勉強はしておるわけでございますが、たとえば仮より機の業界につきましては、その設備過剰という問題を解消するために、業界ぐるみになりまして現在共同でこれを廃棄をするという措置を進めておるわけでございまして、これを私どものほうは資金面から援助をすると、こういう体制でございます。
  87. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これは、いま最後にお答えがありましたが、過剰設備は共同で廃棄処分する、それに対するところの援助は何とかしたいというお考えのようですが、そこのところはもう少し明確に答えてください、どうするのか。
  88. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 中小企業の場合に、設備を共同で廃棄しようということを支援する措置といたしまして、中小企業振興事業団にそういう資金枠がございます。その資金の条件は、貸し付け期間は十六年、無利子というかなり有利な条件で相当額の資金が用意してございます。五十年度現在の予算案では四十数億かというふうに考えておりますけれども、そういう資金もございまして、中小企業が自分たちの力で何とかしようという場合には、中小企業のその貸付枠でバックアップすることができるわけでございます。
  89. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 時間もないようですが、最後に、九州方面、特にこの鹿児島大島の特産になっております大島つむぎの問題ですが、これはもうわが国の伝統産業として、また鹿児島県におきましてはかなりの所得にもなるわけです、財源にもなるわけですが、これがもう韓国からの輸入で大きな打撃を受けておる。これは大臣も御存じのはずです。これも何回か委員会でも質問があったわけですが、これに対して一体どういうふうに対策をお考えになっていらっしゃるのか。これは一般的な繊維というよりか、あそこしかできない、鹿児島大島、この辺のところ、みんなこれで飯を食っているのですが、これがどうも韓国の輸入品に——まあイミテーションですが——相当やられて打撃を受けている。非常に深刻な問題になっているのですが、これに対する対策は何らかお考えになっていらっしゃるのか、いかがですか。
  90. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 奄美大島本場大島つむぎが鹿児島県、なかんずくこの奄美大島の特産物といたしまして、その当該業界のみならず奄美大島、その地方の地域経済、さらに言うならば地域社会に持っている大きな影響ということは、私ども十分認識しているつもりでございます。  先生御指摘のように、この二、三年来韓国からの輸入が増大してきているわけでございます。ただ、どのくらい輸入されているのか、あるいはどのくらいふえつつあるのかということの把握はなかなかむずかしいわけでございます。私どものほうは昨年来、いろいろな形で調査なり推計なりをいたしてきているわけでございますけれども、私どもの推計によりますると、昨年一年間でつむぎが、このつむぎと申しますのは、本場大島つむぎのみならず村山大島つむぎ、あるいは十日町つむぎというような、つむぎというもの全体で約十五万反ぐらいではないだろうか、十万反ぐらいが輸入されておるのではないだろうかというふうに見ておるわけでございますが、ただいま問題になっております本場大島つむぎ、これは推計するよりしようがないわけでございますけれども、そのうちのほぼ二割ぐらいとすれば約三万反というものが昨年輸入をされたものというふうに考えております。  で、問題は、数百年代伝わってきておりますところの本場大島つむぎと韓国でつくられます本場大島つむぎのまあいわば類似品とどのように区別をつけるか、特に消費者がそういう区別を知って買うのかどうかということがまず第一の問題でございます。韓国から入ってくる大島つむぎが、どうも表示の仕方あるいは売り方等が、本場の大島つむぎと紛らわしいということが第一の問題であるわけでございますが、この点いわゆる厳格な表示の励行という面につきましては、私どもも鹿児島県あるいは現地の組合の方々と協力をしながら、できれば本場大島つむぎの統一された表示をつけるようにという方向で指導をしてきたわけでございます。今回、公正取引委員会からの規約通達等もございまして、近くその線で具体化するであろうというふうに聞いておるわけでございます。  それから、一方、輸入されるものでございますけれども、輸入されるものにつきましては、これは韓国つむぎ、あるいは韓国産、あるいは高麗つむぎ、要するに原産地を的確に正確に表示をすべきであるという考え方から、税関等につきましても協力をしていただいているわけでございますけれども、韓国側にもわれわれの希望を伝えまして、その線で協力をしてもらう話し合いを進めているわけでございます。  一方におきまして、韓国産の大島つむぎの輸入そのものについてでございますけれども、これは先ほど繊維製品の輸入につきまして申し上げましたのと同じように、繊維の輸入組合を通じ、あるいは個々の商社、特に大手の商社に対しましては個別に指導をしております。それから、たくさんの専門の中小の商社等もありますので、輸入組合あるいはその他の組織を通じまして、輸入につきまして自粛をするように昨年から要請をしてきているわけでございます。一方、その問題につきましては、政府ベースにおきまして韓国にも日本側の事情を伝えて、対日輸出について自粛をするような要望を続けてきておるわけでございます。   それから、それは当面の措置でございますけれ  ども、やはり長期的な観点から大島つむぎの産業  を振興するということが非常に大きな問題だ、重  要であるというふうに私ども考えておりますもの  ですから、今般、伝統工芸産業振興法に本場大島  つむぎを指定をいたしまして、業界、県と協力を  しながら長期的な観点に立っての振興計画の作成  及び振興計画の実施につきまして、われわれもこ  れを大いにバックアップするつもりでおるわけで  ございます。
  91. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、繊維の中でも特にこう  いったような伝統的な産業に対しては、一般的な繊維の扱いということでなしに、まあ伝統産業の立法措置もできたのですから、当然それは保護的な対策もしてもらえるわけでありますが、いまのような状況では、これはもう相当な打撃を受けておりますよ。だから伝統産業法律ができたから、あれで援助すればいいじゃないか、また、公正取引委員会から、原産地表示をして、韓国製品はこれは韓国製品でありますと、それもやっておるから、あとは輸入の問題に対しては行政指導をしていけばいいと、こういうようなことでありますけれども、現地は深刻に、韓国のイミテーションに対しては強力な措置をとるようにこれは要望しておるわけです。  それも私は、だれが教えたか知りませんが、もともと向こう独特の技術であったものを、向こうに技術指導をして今日ここへ来ておるわけですからね。こういうものは、また今後特に厳重に監督をし、保護をして、これがつぶれないようにいろんな対策を講じていかれるように私は希望いたしておきます。まあこまかいことを言うといろいろあります。表示の問題にしても、それは大きい表示なんかありません。どこかすみっこに小さい字で、なかなか見てもわかりゃしないような表示のしかたとかね。それは公取の指導がありましょうけれども、それをひとつ今後、さらに目を光らせて対策を練っていただきたいと思います。時間がありませんので……。  繊維問題はそれで終わりまして、あと少し時間がありますから、これは総論的になりますけれども、水島の流出油の事故の問題につきまして若干お伺いをしたいと思います。  まず一つは、水島石油タンクの油の回収状況はいまどうなっておるのか、それが一つと、それから、あの回収に当たりましていろんなものが、オイルフェンスだとかあるいはまた油の吸収板だとか、回収船だとか、こういうものが使われたわけですが、結局はあまり役に立たなかった。最後的に効果があったのは漁民のひしゃく、これがかなり威力を発揮してタンクの中にためたわけです。それで、今後もこういう問題は注意をしても多少起こるかもしれません。ですから今度役に立たなかった油の回収に対して、今後、油の回収ということに対してこれはどういうようなもの考えていらっしゃるのか、まずその辺をお伺いしましょう。この二つ。
  92. 安芸昭助

    説明員(安芸昭助君) 先生が御指摘のように、今回の油回収船は全部で二十六隻、延べ三百五十隻がこの油回収に当たったわけでございますが、これは十分なまだ性能のいい回収船がなかったということ、それから、油がだんだんとスラッジ化して非常に回収がしにくくなったということ、これはまあ現場への到達がかなりおくれたせいもございます。そういうことで、この今回の事故を契機としまして、いままでの回収船の改良、改修、それからまた開発を現在急いでおります。そうして、今後満足すべきもの開発されたときは、法令の整備を含めて、関係企業等に備えつけを積極的に推進したいと考えております。  なお、現在回収船は全国で四十三隻整備されておりますが、現在も引き続き関係者に対していいものを紹介しながらこの増強について指導を行っております。  なお、運輸省では現在すでに二隻回収船を配置しておりますが、本年度末には、三月末にはさらに二隻、それから来年度には二隻増強することにしております。
  93. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、油の回収船が今度用をなさなかったところに問題があるわけです。油がどろどろになって、だんごみたいにほかの物体とひっついてしまって全然用をなさなかった。これからどういうように油の回収船を改良されるのか、開発されるのかしりませんが、お考えになっていらっしゃるのか、それが一つ。  それから、アメリカの油の回収船なんか非常に効率がいいという話を私は聞いております。今回マラッカ海峡のあの祥和丸の事件、あの油の流出問題でも、それは水島よりか油の量は少なかったかしりませんが、あれだけ座礁して大騒ぎしたわりあいに油の回収が非常に早かった。それも、何かアメリカの警備隊が来てさあっとやったとかというような話も聞いているんですがね。日本のほうは大方一月、二月かかってあのような状態なんです。  ですから、アメリカの効率のいい回収船はどういうようになっているのか。それから、日本の回収船はこれからどういうような改良、開発をしていくのか。また、そういうような回収船を民間の企業に配置させるのか。あるいはまた、政府、保安庁あたりで完備してやらせるのか。もう時間ありません、一括して答弁してください。
  94. 安芸昭助

    説明員(安芸昭助君) 海上保安庁がことし二隻、来年一隻を増強、整備するのはアメリカのロッキード社のクリーンスイープという回収船でございます。これは一時間に七十五トシ回収できると、まあ相当状態がいい状態でございますが、そういうことで、これは通常はコンテナ化しまして陸上輸送しまして、現場へ持っていって現場で海上へおろして、船を出して回収するということで、今回の場合は現場へ到着するのに二、三日かかりましたが、これで行きますと非常に早く現場へ到着できる。これが三隻あれば相当回収効果が上がると考えております。それから、日本のいまの回収船につきましても、かなりいろいろのタイプがありまして、この間も油をためるまでは非常によかったが、吸収するポンプが能力が悪くて、十分取った油をタンクへ入れることができなかったというようなことがありますが、これもポンプが、非常にそういった質の粘度の高い油でも回収できるようなポンプがありまして、そういうポンプを改良すればかなり効果が上がると考えておりますので、そういう改良も早急にやれば非常に効力が上がると考えております。
  95. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ時間もありませんから、この不等沈下の油のタンクの問題につきまして最後にお伺いしますけれども、これは消防庁が調べた結果が新聞等にも出ておりますが、全国で不等沈下のタンクが百九、ほかに防油提が亀裂をしたものが三百十八、つまり、合計しますと欠陥のタンクが四百二十七、日本の海岸べりにずっとこうあるわけです。  それで、これは非常に危い状態にあるわけですので、まずタンクの設置基準というものはどうなっておるのか。それから、いろいろ私も聞いたところによりますと、アメリカの米国石油協会——APIの企画をもとにしてやっておることを聞いておりますが、その辺のところはいかがなっておりますか、ちょっとお伺いしたいんです。
  96. 松本敬信

    政府委員(松本敬信君) 石油タンクの設置基準と申しますか、JIS規格といたしましては、昭和三十七年の三月一日の制定で「石油貯ソウの構造」、これは「(全溶接構成)」ということでかっこ書きしてございまして、この企画は主として小型規模のタンクを想定して制定されたも一のでございます。そしてまた、構成部分の溶接ということに関して中心が置かれておったというようなものでございます。また、このJISは制定後十数年もたっておりまして、現状のような大規模石油タンクが出てまいりましたので、これを見直す必要が出てまいりまして、実は昭和四十九年三月二十六日に現行JISの改定作業を日本工業標準調査会にお願いしてあるところでございます。  それで、これは一般機会部会というところの石油貯槽専門委員会で審議中でございますけれども、いままで論議されております改定の主眼点としましては、まず第一番は、大型タンクに関する規定をこれに含めるということがございます。  それから、もう一つは、いままでの現行のJISは軟鋼が対象でございましたが、材料にはこれからは高張力鋼等の新しい材料も含める必要があるということ。  それから第三点としまして、最近とられております耐震設計等の安全技術の導入の検討というような、この三つを主とした主眼点としまして、いま改正の審議をお願いしておるわけでございますけれども、さらに今回の水島の事故等もございますので、これを教訓にいたしまして、この改正作業にも生かしていくようにいたしたい、そういうふうに考えて、いま作業を進めているところでございます。
  97. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、ここに私は日本工業標準調査会の「石油貯ソウの構造」、これを持っておりますが、これはいまおっしゃったように三十七年三月に制定された。三十七年から十何年になっておるんですが、この間一ぺんもこれは検討されてない。改革もされてない。しかも、このJISはタンクの地上部分しか載ってない、そういうふうに私は規定されてないと聞いておるわけです。これもちょっとおかしな問題である。  もう一つ不可解なことは、このもとがアメリカのAPIですか、アメリカの米国石油協会の規格をもとにしてできたんだとおっしゃるわけですけれども、このアメリカのAPIの方はこれはもうちょいちょい改定も加えてあるらしい。ところが、日本の方はこれはほったらかしでこのままであった。しかも、地盤のことは全然書いてない。しかも、一括して言いますけれども、このアメリカのAPIの英文の和訳がこれが日本にないとかという、これもおかしな話。さらに、そのほとんど政府はタッチしないで、民間の方の技術陣営に任せっきりであったと。そういうものをまた政府が監督をする。監督する側に全然これはノータッチでは非常にうまくないではないかと私思うわけです。いろいろ私は一括して言いましたが、これは大臣、非常に大事な問題だと思います。いまのことをひとつ一括して答弁してください。
  98. 松本敬信

    政府委員(松本敬信君) この見直しのことでございますけれども、JISにつきましては三年ごとに実は確認はすることになっておりまして、三年ごとに確認はしてまいったわけでございます。その間にこの改定ということについての意見が出ませんので、前のものをそのまま確認して現在に至ったわけでございますが、先生の御指摘のように、この中には基礎工事のところのJISは入っておらないわけでございます。  それから、APIではリコメンデーションという形で基礎工事についてのリコメンデーションがついておるようでございまするので、私どもといたしましても、今後のこの改定に当たりましては、基礎工事に関してはあるいは参考というようなことで、リコメンデーションに相当するようなところでそういうものの記述もしていくような検討もしてまいりたいと思いますし、また、基礎工事についてのJIS化につきましても、専門委員会で前向きに検討をしていただくというような方向に進みたいと考えておる次第でございます。
  99. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは最後に……
  100. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) あと一問で。
  101. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、いま私が申しました中で、この設置基準、JISの規格の問題につきましても、ほとんど民間に任せっきりだったという、そこら辺は問題だと思うのですが、これはどうなんでしょう。監督機関が全然知らぬで民間に任してつくってくれと、こういうことじゃ非常にうまくないと思うんだが、その辺は実情どうなっているんですか。
  102. 松本敬信

    政府委員(松本敬信君) これはJISの性格と申しますか、一応そういうことで当方といたしましても、監督と申しますか、それの施行されるのが適正に行われるように努力はしてまいっておりますけれども、今後はなお一層その辺には十分注意しながら、JISの運営については努めてまいりたいと思っております。
  103. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 最初に大臣に、現下のこの経済動向についてお伺いいたします。  至上命題である物価抑制という状態の中で、不況が深刻化しておるわけでございまして、よく言われるように物価抑制、すなわち、総需要抑制不況対策というものが、二律背反ということが言われておるわけですが、ちまたに、この不況を何とかしなきゃならぬじゃないかという声が非常に横溢しており、このまま放置したならば、産業界の中において、どちらかといえばこの復元力を失してしまって、大変なことになるぞということでございます。  これはよく中小零細企業ということを言われるわけだけど、中小零細企業の置かれておる立場というものは、もちろん本当に不況のどん底であるわけだけど、大手の企業においても、あるいは中堅企業においても、このままの状況を放置するなら、あと六カ月ぐらいが限度だというような深刻な状況を迎えておるわけです。私はそういった意味で、物価抑制しなければならないということは国民課題であるが、一面また、この不況を何とかして克服しなきゃならないという声も正視していかなければいかぬと思うんです。こういう観点に立って通産大臣としてこの不況、ことにこの現下の状況の中における全体的な不況対策というものをどうするのか。また、現在の経済状況というものをどのように見ておられるのか。その辺のところを最初にお伺いしたい。
  104. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 石油問題に端を発しまして、いま総需要抑制ということを引き続いてやっておるわけでありますが、これは物価が狂乱状態になりましたので、何とか物価をおさめたいというので、いまの政策をとっておるわけであります。幸いにいたしまして、消費者物価卸売物価も大体まあ安定してまいったと思います。まだ若干の浮動的な要素が残っておりますけれども、まあまあ安定の方向に向かっておる、かように申しても過言ではないと思うんですが、その場合に、物価は安定したけれども、一方において倒産が非常に激増する。しかもそれが毎月続くと。さらに一方でこの失業者の数がだんだんふえてくる。この三月には完全失業者が約百三十万弱とこういうふうに言われておりますが、そういうふうに失業者の数がふえるということになりますと、物価問題を失業と倒産の犠牲において解決しておるのではないか、こういう非難もまた当然出てくるわけであります。  経済政策というものは総合的に考えなければいけませんので、物価も安定し、同時にあわせて失業もなくなる、倒産もない、こういうことでなけりゃいかぬと思うんですが、いま御指摘のようにいろんな摩擦現象が非常に激しく起こっておるわけであります。そこで、去る一月にもほとんど重立った業種と懇談をいたしまして、その実情を調べましたが、二割から七割という大幅な減産をしておりまして、いま御指摘のような非常に深刻な状態でございます。これまでにかつてなかったような不況現象が続いておる。  中には、経済はほっておいても二、三カ月もすれば自力で浮揚してくると、こういうことを言う人たちもおりますけれども、私たちがこの現状を掌握した限りにおきましては、自動的に浮揚する力はない。やはり何か特別の対策というものを立てていく必要があるのではないか。そういうことを考えまして、とりあえず、先般二月十四日に若干の不況対策考えたわけでありますが、もちろんこれだけでは不十分でありまして、後、引き続きまして第二回、第三回というふうにいろいろとその対策を立てていかなければならぬ容易ならざる経済状態になっておる、こういうふうに認識をしております。
  105. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 この不況対策一つとして、公定歩合の切り下げの問題ですね。まあ説によれば三月の下旬、もしくは四月の上旬に〇・五%ほどというような話があるわけなんですけど、産業部門を預かる大臣としてこれをどういうふうに見詰めておられるか。あるいはまた、公定歩合を切り下げた場合の景気刺激に対する波及効果をどの程度に見ておられるか。
  106. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 公定歩合の問題は、日本銀行が責任を持っておやりになるわけでありますから、私のほうからとかく申し上げるのは適当でないと思いますので、差し控えさせていただきますが、ただ、金利の問題がいまの産業界にどういう影響を及ぼしておるかということだけを申し上げますと、二年前には日本の金利は非常に下がりまして、約六%近くまで下がっておったわけであります。企業の資金というものはその程度で調達された。ところが、いまは非常に上がっておりまして、当時の二倍近くになっている。あるいは場合によれば二倍以上になっている、こういう状態でございまして、この金利の現在の水準というものが、私は日本のこれからのコストということを考えますと、非常に大きく押し上げる要素になっておると思うんです。よく押し上げる要因として、ベースアップが大変だと言う人もありますけれども、それは現状では必ずしもそうではない。ベースアップも一つのコストプッシュの要因ではあるけれども、やはり現在の金利水準というものが非常に大きな要因になっておる。  それから、さっき申し上げました減産ですね、これによりまして生産性が非常に低下しておりまして、これがやはり大きなコストプッシュになっておる。こういうふうに考えますと、この金利の現在の水準というものは、異常な状態といっても過言ではないと私は思うのです、非常に高い。  それから、最近御案内のように、ドルが日本へ盛んに流入してきておりますが、これは日本の金利水準だけがべらぼうに高くて、アメリカでもヨーロッパでもだんだん金利が下がりまして、特にユーロダラーの金利水準は、一カ月ものでは最近六%台になっている、七%を割っている。こういうような状態でございますから、そこでドルが盛んに日本へ流入してくる。それによって円高になる。円高になりますと結局、ことしは貿易の条件が非常に悪いわけでございまして、輸出貿易の上で非常に大きな打撃になる、こういういろんな連鎖反応を起こしておるわけであります。でありますから、公定歩合について私は直接申し上げるのは差し控えさせていただきますけれども、以上申し上げましたような日本の金利水準というものが非常に大きな問題を引き起こしておる、こういうことだけを指摘したいと思います。
  107. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 この総需要抑制のもとで、これは物価抑制という至上命題のもとに行われておることだけど、これが波及効果を及ぼして、主として開発途上国からわが国は原材料を輸入しておるわけなんだけど、そういった意味において原材料の輸入が減少するというような状況のもとに、わが国の総需要抑制そのもの開発途上国に非常に大きな圧力になっておる。外圧、外圧とこうよく言われるけど、先進諸国からの問題じゃなくて、むしろ開発途上国のそういった長期契約に伴う原材料の輸入動向とからんで、やっぱり私は一つの大きな問題点一つの大きな曲がり角に来ておるんじゃないか、限界点に来ておるんじゃないかという気がするんだけど、そういった面についてはどのように考えておられるか。
  108. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まあ、総需要抑制ということは物価の安定をもたらしましたけれども、一方で大きな失業問題と、それから倒産問題を引き起こしておる。対外的には、やはり不景気のために輸入の減少という問題が起こりまして、開発途上国から長期に契約しておりますいろいろな原料の輸入等がだんだんと減ってまいりまして、各方面から抗議が来ておるわけです。日本が約束を守らぬとか、こういうことではわれわれの経済がもたないとか、何とかしてもらわなければ困ると、そういうふうないろいろな抗議が来ております。でありますから、そういう面にも大きな波乱といいますか、影響を及ぼしておる、こういうことが言えると思います。
  109. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 総括的にいま大臣のお答えになったことは、物価抑制という形のもとに総需要抑制を行ってきたが、おおよそ物価は鎮静の方向に向かいつつある、したがってこの際、不況対策に本腰を入れなければならない、ついては、金利体系の問題から見ても金利も引き下げる方向に行かなければならぬというふうに私は解釈したわけだけど、それでよろしいわけですね。
  110. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まあ一口に言えばそうであります。
  111. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 それじゃその次に話題を移しますが、生活産業局長お見えだから、繊維の問題について先ほどもいろいろ論議がなされておったんですが、経済全般については、いま大臣がお話しになったようにきわめて憂慮すべき状況にあるわけですが、とりわけこの繊維産業というものが当初、まあ秋口から年末にかけて大底をついて、緩やかな、先の見える状況が来るんじゃないかということをほのかに予測しておったわけです。私もそうだし、おそらく局長もそうであろうと思う。ところが、実際ふたをあけてみるとなかなかそうはいかぬ。本当に深刻な段階を迎えておるわけでございまして、これに対する対策は、先ほど論議を聞いておりましたが、まだまだ私、的確に局長はこの問題点指摘しておられないような気がするんです。  と申しますのは、たとえば現在、綿紡績にしてもあるいは毛紡にしても、不況カルテルを結んで操短をやっておるわけだけど、一面その他の合繊業界などにおいても自主操短をやっておる。すべての業界が操短をやっておるわけですね、余儀なくされておる。ところが、操短をやればこれは生産コストが上がるわけなんです。当面の三月期決算、九月期決算を見詰めて、このままの状態でいったら決算が成り立たないというところから、今度は翻って操短を緩和する、緩和しなければこの決算諸表ができないというような動きすらあるわけです。  現在、繊維が軌道に乗ってきておるんじゃないんだけど、当面を糊塗するために、操短を緩和することによって生産コストを軽減し、それを利益へ流入していこう——これはつじつま合わせみたいなことなんで、中途半端なことをやっておったんでは、それこそロングランでものを見ればこの繊維産業総なめになるんだけど、しかし、背に腹はかえられぬという形でそういった動きもあるやに私聞いておる。そうなってくると、単に不況対策という形のもとでの金融面での対策だけではもはや間尺に合わぬ、何らかの形で需要を喚起しなければならぬというふうに思うわけです。そういった手だてが現にあるのかどうか、あるいは、いま私の申したようなことを局長としてどのように把握しておられるか、その辺をまずお聞きしておきたい。
  112. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 生活産業局長が御答弁をいたします前に、ちょっと補足させていただきます。  私がさっき金利の引き下げということを申し上げましたのは、実質金利の引き下げをどうしてもやる必要がある、こういう意味で申し上げたわけでございまして、公定歩合の問題ではございませんから、その点ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  113. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) ただいま藤井先生から、現在の繊維の景況というものは大変なことなんだという御指摘がございました。私どもも、大筋におきましては、実は、現状認識はほぼ先生と同じような認識を持っておるわけでございまして、事態は繊維産業にとって重大だというふうに考えておるわけでございます。  それで、ちょっと直接のお答えにはなりませんけれども、ともかく、時々刻々に動いていくこの景気の状況をわれわれも一刻も早く的確につかまなきゃいかぬ、実はこういうふうに考えておるわけでございまして、そのために業界あるいは——大体繊維業界は産地をなしておりますから、機屋さん、その他の産地の組合とは常時情勢の動きをとらえられるような仕組みで報告を求め、情勢を聞いておるわけでございます。で、情勢の推移に応じまして、ともかく打てるだけの手を即刻打たなきゃならぬ、必要なだけの手を打たなきゃならぬ、こういう考え方で毎日仕事をやっておるわけでございます。  それで、一体、この不況を打開するにはどうしたらいいかということでございますが、確かに、金融面の政策というのはいわばカンフル注射みたいなものでございまして、根本的にはやはり需要、特に実需が回復することが大事だということは先生がおっしゃるとおりでございます。で、その実需振興のためにはどうするんだということでございますけれども、そうなりますると、これは、基本的にはやはり一般的な景気政策にかかってくるわけでございまして、私どもが直ちにとり得る措置というものはそう数多くはないわけでございます。  しかしながら、その面の一助にもということで、先生御存じのように、昨年来、たとえば——たとえばでございますけれども、たとえば海外に対する商品援助の際には、そういうプロジェクトがある際には、できるだけ繊維製品を織り込んでその中に組み込んでもらうというようなこと、あるいは借款ベース、経済協力に関するプロジェクトがある場合にも、できるだけ繊維製品を組み込んでもらうというような措置とか、実効はちょっとつかんでおりませんけれども、府県のいわゆる災害救助物資としてこれを買い上げてもらうというようなことは昨年の秋以来やってきているわけでございます。  それから、繊維の大きな特徴といたしまして、いわゆる仮需の問題、中間需要でございますが、この仮需が極端にいま冷え切っておる。これは、相当滞貨を抱えておるわけでございますので、当然とも考えられるわけでございますけれども、金融を緩める、あるいは金融措置によりまして仮需の刺激にもなるのではないかということも期待しているわけでございます。
  114. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 まあ業界もいろいろな努力をしておるわけだけど、いまお認めになったように、深刻な状況になっておる。そういう状態を踏まえて端的にお伺いしますが、現在の衣料品価格は適正な価格であるかどうか、どのようにそれを見ておられるか、私、お聞きしてみたいと思います。  現在、すでに採算割れの状態が、もう局長御存じのように、半年も続いておるわけなんです。半年も採算割れの状況が続いておる中でさらに競争をしていくということになれば、これは、この業界がもうすべて共倒れになるというような状況にあるわけなんだけど、この採算割れがさらに半年も続いていけばどうしようもない。そういうことから操短緩和というような動きも一部に出てきておるわけなんだけど、実際問題として、いい悪いはともかくとして、まあ物価というもの石油問題に端を発して軒並みに上がったわけなんです。それらに比して、繊維の現在の価格というものがどのように位置されておると認識しておられるのか、それをまず聞いてみたいと思います。
  115. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) 先生の御指摘の価格でございますけれども、価格にも大ざっぱに言えば二通りあるわけでございまして、いわゆる繊維の業者に直接問題になりますところのいわば卸、あるいは工場の出荷卸の物価という問題と、消費者にとって、末端のユーザーにとって問題になりますところの消費者物価という問題、これが非常に大ざっぱな分け方でございますが、二つあることになるわけでございます。ただいま先生の御質問の件は、いわばメーカーにとっての問題であるというふうに了解をいたしました。  私ども、個々のものにつきまして、詳しいデータをちょっと手元に持ってまいらなかったわけでございますけれども、繊維製品全般平均にならして、これを今度は一般の卸売物価というものと試しに比較をしてみたわけでございます。そうしますと、四十九年一−十二月の卸売物価指数で比較をいたしますると、繊維製品は〇・二%の上昇ということになっておりますけれども、しかしながら、この間四十八年以降の物価の上昇がございまして、卸売物価の平均では三一%強の上昇ということになっているわけでございますので、この他の製品あるいは卸売物価一般との比較におきまして、繊維製品の価格の低迷状態が明らかであろうかと思います。  これをさらに具体的に見るために、特に去年の秋以降の数ヵ月の状況を見まするに、四十五年を一〇〇といたしました繊維製品の卸売物価の平均は、昨年の十二月で一二五・八、四十五年に比べまして三割弱のアップでございますけれども、全体の一般の卸売物価は一五七・四という高い水準を示しているわけでございます。で、この繊維製品の一二五・八というレベルは、前年の十二月に比べますると八四・五、すわなち約一五%落ちているという状況でございます。これは非常に大ざっぱな繊維製品全体の動きでございますけれども、繊維の一般的な価格の下落というのが他の産業に比べて非常に著しいものがあるわけでございまして、そういう状況下におきまして、繊維に携わる事業が、全般的に言えばコスト割れであるということは、これはもう否定すべくもない事実でございます。こういう状況がすでに昨年の夏から秋以降続いていると考えますので、繊維にとりまして、先生御指摘のように、非常に経営は苦しいということだと思います。
  116. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 大臣、いま局長が申したように、繊維産業について見る限りにおいては、卸売物価はダウンしてる、採算割れであるというような状況に置かれておる。しかも、それが半年も続いて低迷しておる。さらに現在の状況を見ると、あと半年ぐらいこういう状況から脱し切れまいというようなことになれば、これは大手ももちろんのこと中堅のいわゆる産元商社あたりにおける倒産ということも考えられる。そうなってくると、これは産地性を持っておる特性から、中小零細の倒産というものは、もう軒並みにいかれてしまうというような状況にあるわけですから、いままでのような単に金融面からの不況対策というだけじゃなく、やはり実需を伴う不況対策というものを真剣に考えてもらいたいというふうに思います。これは要望として申し上げておきたいと思います。  時間がないから次の問題に移りますが、実は繊維産業にあっては、いわばこの十年ほど前から、企業を合理化する意味において工程をカットして、一部外注に回すというようなことがしきりに行われたわけです。たとえば、染色業界において見るなら、おのれが持っていた工程の中の最終工程である梱包、物を包み込む、そしてそれを輸送するという手段を外部に委託するというようなことをやっておるわけです。これはもう染色整理だけじゃなく、すべて繊維産業で行われておる。たとえば、食堂を自分のところでやっておったのを外部業者に委託するというような形で、いろんな分散が行われておるわけです。そこで繊維産業の持つ特性として、しかも産地性ということで、福井県と石川県に染色に関する包装輸送のための企業があるわけです。これはもう染色だけに携わっておるわけですね。だから染色が親企業、そうしてその梱包輸送について、別企業が全く子会社としてひっついておるような状況に置かれておる。  そういった形で、たとえば、福井県の場合には福井県織物包装協同組合という組合を設定して、ここには二千五百名ほどの社員がおるわけです。石川県はもう少し規模が大きい。ところが業種指定、この業界においては全く繊維と同じだと、浮き沈みその他身の処し方も繊維と同じだから、製造業者としての業種指定を受けたいという希望を強く持っておるんだけど、現在の法体系の中から、その業種指定ができないという状態に置かれております。したがって、今度の不況なんかの場合には、繊維の中小零細企業に対しては格段の金融措置がとられておるが、ここにはそれが直接的に繊維という形では及んでいない、こういうことになるわけですね。したがって私は、この業種指定の問題をもう少し幅を広げて前向きに考えてもらいたいということをお願いしたい、これが第一点。  時間がないからあわせてお伺いしますが、労働省お見えでございますが、今度中小零細企業のために、雇用調整給付金というのが支給されておる。これも業種を指定するわけです。そうするといま繊維産業の中でも、染色というのはもう固定費がはっきりしております。燃料であり、しかも油である、人件費である、したがって、これは全部コストアップでどうしようもないということで、最初にこれは業種指定を受けておる。また操短をやっておる。  ところが、いま言ったように、全く親企業と子企業のような状態の中に置かれておるこの織物包装協同組合傘下の中小零細企業は、業種指定が受けられない。したがって、染色整理が操短をやれば勢いこの業種も操短をやるという形になりながら、むしろ親企業たるべき染色整理では調整給付金を受けておるけど、ここは受けられない。こういう谷間の老人的な状態があるわけです。法の趣旨から見て、やっぱりこれはもう少し温かい措置をとって、産地という特性から見て、何とか措置をすべきであるというふうに私は思うんです。一般的な梱包包装業者であって、まあ片手間に染色整理の仕事を引き受けておるというのじゃない、全部これはやっておるわけだから、そういう梱包関係の業種にあっては、雇用調整給付金の対象に当然私はすべきである、こういうふうに思います。したがって、以上の点を通産省と労働省双方からお聞かせいただきたいと思います。
  117. 野口一郎

    政府委員(野口一郎君) ただいまの織物のいわば何と申しますか、包装業といいますか、これを繊維産業の中に加えたらどうかという意味の御質問もあったかと存じます。いまは実は産業分類上は運輸に付帯するサービス業というように分類をされているわけでございます。もちろん先生御指摘のように、染色整理あるいは特に整理等は一緒に扱っているものがかなりあるということでございますので、それはその限りにおいて整理業というふうに扱うことができるかと思いますけれども、この梱包だけしかやってない、あるいは輸送でございますか、これだけしかやってないというものにつきましては、そういうより方をする便法もないわけでございますが、この業種を繊維産業の中に含めて入れられぬかどうかという御指摘でございますけれども、ただ繊維産業というものの分類というものは、これはぴちっときめられているわけでございますので、この現在きめられている繊維産業の中に読むことは直ちには実は困難ではないだろうかというふうに考えるわけでございます。  ただ、さらばといって、いろいろの措置でございますが、金融上の措置その他の措置が、あるいはいまの御指摘雇用保険法上の措置がこれに当たるか当たらないか、該当措置をこの業種に及ぼすことができるかできないかということとこれはまた別問題でございまして、実は私どものほうも、この業種に対しましては中小三機関から昨年融資のあっせんをしたというようなこともございますので、まあ何といいますか、戸籍上と申しますか、名儀上は仮に繊維産業でないといたしましても、金融その他の措置におきましては繊維と同じいわばまま子ではない、実子と同じ扱いをとることはまた十分可能だと、こういうふうに考えております。
  118. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 御指摘の業種は、運輸通信の中の梱包業に該当しようかと思いますが、現在一月から三月まで実施しております雇用調整給付金制度の実施基準、これは昨年暮れの中央職業安定審議会の御意見もいただいてきめて実施しているわけでございますが、これでいきますと、いささかむずかしい問題があろうかと思います。ただ、四月から雇用保険法が全面施行になりますが、そのための実施基準を、この一月から実施の実績を見て検討するようにという審議会からの答申もいただいておりますので、その中で業種の指定基準も含めて実施基準をどうすべきか現在検討しておりますから、先生御指摘の問題については、私どもまだ実情をつぶさに承知いたしませんけれども、実情を調べまして、そうした中で検討してみたいと思っております。
  119. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 最後に一問御質問しますが、いまの問題について、いま言ったような状況にあるわけだから、文章解釈だけじゃなく実態をよく見てもらいたい。だから、福井と石川の梱包包装協同組合については労働省もよく調べてもらいたいと思います。それから大臣も、いまのような状態が、繊維には古い歴史があるものだからこういうような状態があるわけで、業種指定も、定款を変えるなら定款を変えてでもこれは形をとれるわけなんですよ。だから、前広げにひとつ御検討いただきたい。  それからもう一つの問題は、前回の商工委員会で私大臣に申し上げて、大臣のほうからも前向きにひとつ検討しましょうと言っておった問題があるんです。それは、私は、カナダのTCBあるいはオーストラリアのIACのような形での輸入に関する前広げの諮問委員会をつくるべきだということを申し上げた。大臣は、その方向で検討したいという御答弁でした。  その後、現に日繊連あたりでこのように輸入規制というような方向が打ち出されて、中小企業対策委員会で現在論議がされておる。第二回の会議が三月五日に持たれて方向づけがなされるということでございまして、ちまたに輸入規制というような動きが大きく浮かび上がってきておる。だから、何らかの形をやっぱり早急にとらなければ、いまの繊維の状況の中から見て、輸入規制というのろしは大きく上がってくる。  どうかそういう面で、行政指導をやっておる、あるいはインボイス統計をながめておるというだけじゃなく、もう少し突き進んで、前に出てこの輸入問題というもの考えなければ、私は大変な混乱を生ずるというふうに思うわけです。その辺のところ、輸入が内需に占める比率がまだ一二、三%台だけれども、このまま放置したらやがて二〇%になる、あるいは二五%になると言う人すらおるわけです。四分の一が輸入品で占められるということになるとこれは大変な問題になってくるわけですから、どうかその辺のところをよく検討していただきたい。そのことを最後に御質問申し上げてお答えいただきたい。
  120. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま通産省の内部で、生活産業局と通商政策局、貿易局、この三者の間でずっと検討を続けております。まだ結論が出ておりませんが、前向きで懸命にやっておるところであります。
  121. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。     午後五時五分散会      —————・—————