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1975-02-13 第75回国会 参議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月十三日(木曜日)    午前十時二十七分開会     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         林田悠紀夫君     理 事                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小柳  勇君                 須藤 五郎君     委 員                 岩動 道行君                 小笠 公韶君                 剱木 亨弘君                 斎藤栄三郎君                 菅野 儀作君                 福岡日出麿君                 矢野  登君                 吉武 恵市君                 阿具根 登君                 鈴木  力君                 対馬 孝且君                 森下 昭司君                 桑名 義治君                 中尾 辰義君    国務大臣        国 務 大 臣        (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君        通商産業大臣   河本 敏夫君    政府委員        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局長     熊田淳一郎君        公正取引委員会        事務局経済部長  野上 正人君        通商産業政務次        官        嶋崎  均君        通商産業審議官  天谷 直弘君        通商産業大臣官        房長       濃野  滋君        通商産業大臣官        房審議官     大薗 英夫君        資源エネルギー        庁長官      増田  実君        資源エネルギー        庁次長      熊谷 善二君        資源エネルギー        庁石炭部長    高木 俊介君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        厚生省医務局医        事課長      手塚 康夫君        厚生省保険局保        険課長      吉江 恵昭君        通商産業省立地        公害局石炭課長  脇山 敏雄君        労働省職業安定        局失業対策部企        画課長      守屋 孝一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (石炭問題に関する件)  (通商産業省基本施策に関する件)  (経済企画庁基本施策に関する件)  (昭和四十九年における公正取引委員会の業務  の概略に関する件)     —————————————
  2. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 対馬孝且

    対馬孝且君 私は、新石炭政策全般にわたりまして総括質問を申し上げたいと、こう考えます。大臣が衆議院の予算委員会との兼ね合いがあるようでありますので、大臣に直接の基本的な姿勢につきましては、いま委員長とも打ち合わせをいたしましたが、所信表明の後で大臣に対しまして基本的な姿勢をただしてまいりたい、こう考えます。  何といっても、今日の石炭政策を見直すという問題が、昨年来一応ムードとして石炭対策という問題が持ち上がってきております。そこで、私は、一月の二十四日に三木総理大臣施政方針を非常に期待をいたしておったのでありますが、施政方針の中に出てくるエネルギー対策という問題は、全く石炭の「セ」の字にも触れなかった。石炭対策の一言も三木総理大臣施政方針の中に触れられていなかったということは、いかに政府側石炭政策を本当に見直して、これに真剣に取り組もうという基本的な姿勢に欠けているのではないか、こういう点を指摘をせざるを得ません。したがいまして、これからそういう観点で、特に専門的な立場でひとつ問題点を整理をして、通産関係並び労働省、それに厚生省関係ということでお答えを願いたいと思っています。  まず一つは、私は、ことしの昭和五十年度政府予算案を見せていただいたのでありますが、石炭関係にまつわる予算案を出されておりますけれども、当初、通産省当局が大蔵省に要求いたしましたのは、一千二百五十五億二千三百万円を復活折衝段階で提示をされておりました。しかし、結果的には復活折衝なども行って、最終決定が千百億円という程度にとどまっているわけであります。前年度対比をいたしましても、結果的にはマイナス予算案であります。もちろん閉山計画等については減少するという、計画上のあれから落ち込んでいる部分もございますけれども、私なりにこの予算案を検討していく場合に、見ました場合に、新規予算というのは調査委託費の二億五千万円程度しかついていないのじゃないか。  前年度対比してみますと、たとえば生産費問題保安対策費の問題、あるいは合理化事業団貸し付け等の規模の問題は若干ふえておりますけれども、総体的に見ますと、四十九年度物価の値上がり等、想定いたしますと横すべり、いわゆるスクラップアンドスクラップという基本的な石炭政策姿勢は、予算案から見る限りにおいては見直したということにならないのじゃないか。そういう意味では二億五千万という問題自体が、新規調査委託費でありますが、こういう面から判断をいたしまして、ほんとうに石炭政策を見直そうという通産当局の構え、姿勢があるのかどうか、その点について冒頭、ひとつ予算からくる石炭対策見直しになっていないと、これを率直に指摘をせざるを得ません。この点について、ひとつ当局考え方をお伺いしたいと思います。
  4. 高木俊介

    政府委員高木俊介君) ただいま先生指摘のとおり、五十年度政府石炭対策予算案といたしましては、千百億でございます。昨年度の千百三十九億という数字に比べますと、確かに四十億の減という数字はあるわけでございますけれども、昨年の千百三十九億の内容といたしまして、昨年度——四十九年度でございますけれども、予算の中には閉山対策費として七十四億という金が組んであります。この金が五十年度は七億ということで、約六十七億の減になっておりますし、なお、昨年度国債会計の繰り入れといたしまして百億予算計上いたしておりますものが、五十年度の分につきましては四億八千というようで、ここで約百億の減があるわけでございます。なお、閉山に伴います産炭地振興関係予算といたしまして、約十億が四十九年度では組まれております。こういうものを四十九年度予算からまず除外するという姿勢に立ちますと、千百四十億の予算は九百六十ないし七十億の予算であるわけでございます。これに比べまして五十年度、千百億の予算を確保したということになるんじゃなかろうかと思います。  なお、内容的には、いま先生から御指摘のございましたように、五十一年度の新政策につなぐという思想のもとで、五十年度は少なくとも現在の山が閉山してはならないという思想に立ちまして、直接対策費ということでは百億の増を見ているような次第でございます。こういう観点から見ますと、確かにトータル的には四十億の減がございますけれども、内容的には充実された予算案ではなかろうかというふうに考えております。  なお、産炭地関係につきましては、本年度、新たに公団に対する利子補給ということで一億九千万ぐらいの予算を組んでおるわけでございますけれども、これに見合います、いわゆる財投分ということで、四十八億の金が財投のほうから出ているわけでございまして、この金は、石特会計と同等の性質を持つ金であるというふうにお考えいただいてもいいんではなかろうかと思います。
  5. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま、昭和五十年度石炭関係予算案に関する問題についての当局考え方が回答されましたけれども、私は、本質的には、四十九年度予算と変わっていないと思うのです。  それでは具体的な質問をいたしますけれども、私は、四十九年十一月二十八日の鉱業審議会総合部会等資料を一覧させていただきました。これを見ますと、これまさに相変わらず石炭政策が見直っていないという感がするのは、もちろんこれは結論は出しておりませんけれども、四十九年度に対処いたしまして、昭和五十五年度国内炭目標というのは、二千八十万トンというベースです、これは間違いであれば別ですけれども。それから外国炭海外炭を含めての日本需要ベースというのは一億一千万トンベース、端数は切り捨てますけれども、昭和六十年度には一億三千万、その場合も国内炭は二千八十万トン、こういうことです。そうすると、結果的には海外炭国内炭を含めると、需要ベースはどんどん増大をしていながら、原料炭一般炭を含めて、相変わらず国内炭というのは二千万トンベースで押え込んでいるというあたりに根本的にやはり、五十一年度をいま高木石炭部長が展望して、つなぐ予算案だと、こう言われましたけれども、つなぐならつなぐような、もっとジャンプをする予算案になっていなければならないのじゃないか。  どういう意味ジャンプをするかということになると、私はやっぱり一番問題は、何といってもここに示されておりますように、生産体制改善対策費というものが、これは伸びをいたしていますけれども、結果的にはいま坑道掘進、一メーター掘るのに対して大体二〇%から三〇%のコスト増になっているわけですよ。特に夕張、有明の新鉱開発地帯を中心に考えた場合にそうなるわけです。したがって、私はそういう点から考えまして、どうして当局として、こういった鉱業審議会自体が、まさに異常な昭和五十年度、六十年度に対して、一億を超える出炭ベースということを目標にしていながら、国内炭というものは相変わらず二千万トン台も変わっていないというところあたりに、やはり根本的な流れがあるから、予算案についても結果的には大幅に変えていく、ジャンプをするような予算になっていないのじゃないか。二億五千万と私は先ほど新規の問題を申し上げましたが、私は石炭マン炭鉱マンでありますから申し上げますけれども、二億五千万でどういう開発ができるのですか。具体的に私はお伺いしますけれども、岩石のボーリングをかりに千メーターおろすとしたら一億円かかるでしょう。海上ボーリングをおろしたら、こんなものあんた、二億五千万一ぺんにぶっ飛んでしまう。いまありませんけれども、海上ボーリングやるところは。大体そういう感度から言って、ただ見せかけとしては、何か石炭見直したようなかっこうだけ、ポーズだけは、こう何か見せかけはしているけれども、それは素人から見れば、二億五千万ついたのだから、何とか石炭は上向いたのだろうなんて、こう言うか知らぬけれども、私みたいな専門家に言わせると、こんな二億五千万ぐらいの調査委託費ボーリング費つけたって何できるのですか、端的に言いますならば、天北開発調査程度のことはできるでしょう、率直に申し上げますならば。露頭採掘費調査あるいは斜坑採掘範囲炭鉱なら可能かもしらぬけれども、本格的に私はここでお伺いしたいのは、次の点です。  昭和三十一年度通産省日本実収炭量というのを発表しておるわけです、前回もお答えがありましたけれども。私はまあ、いろいろ学識経験者、私の経験などを調べてみましたら、日本通産省が当時三十一年に発表いたしました実収炭量というのは、フランスソフレミン科学者調査をした日本埋蔵炭量というのが今日の一応の根拠になっているわけです。これは誤りだったら指摘してもらってけっこうです。しかし、それ以来、日本における炭鉱実収炭量、いわゆる理論炭量、可採炭量ということを実態的に把握したことはないでしょう、歴史的に。それは、個々の部分では出ていますけれども。  私は、こういう意味からいって、これを洗い直す時期に来ているんじゃないか。日本全体の石炭を洗い直してみるという、本格的に石炭を見直すというならば、日本の将来を展望して、昭和六十年を展望して、日本理論炭量、可採炭量実収炭量というものは十億トンであるともこの前発表を——トン当たり一万五千をベース基準にして十億トンということが発表されました。われわれの試算でいくとまだあるんですよ。したがって、本年はそこらあたりを洗い直すにしてはこれはお粗末じゃないですか、石炭部長。二億五千万円でもって日本の全炭鉱石炭を本当に見直して、資源を大事にする、あるべき炭は掘るということになれば、私は二億五千万円ぐらいの調査委託費でもって石炭を見直すんだという基本的な姿勢にはどうも受けとめられない。こういう観点から考えとすと、私は、この二億五千万という調査委託費は一体どういうものに使おうとしているのか、どういう使い方を考えているのか。それから、いまの段階でこそ石炭全般埋蔵実収炭量ということを見直すための調査が必要ではないか、そういう意味ボーリング調査がやっぱり必要だ、探炭坑道掘削はやっぱり必要である、こう考えるんだが、この点についてどう考えるかということをお伺いしたい。
  6. 高木俊介

    政府委員高木俊介君) いま先生の御指摘の点でございますけれども、三十一、二年に国内で行ないました炭量調査におきまして、二百億トンという数字が出ておりますのは事実でございます。なお、昨年、一万五千円の生産費で掘れる炭は幾らあるかというようなことで図上計算いたしました結果が十億トンということになっておるのは、いま先生も御承知のとおりでございまして、本件につきましては、合理化事業団の持っております資料、あるいは現有炭鉱資料というものをべースにいたしまして、一応経済性というものを入れた埋蔵量ということでの計算をやったわけでございまして、今回の二億五千万の新鉱関係開発可能の調査費でございますけれども、この金をもちまして、炭量が幾らあるという調査をする考えはございませんで、むしろ、開発できるかできないかの企業化調査ということで、いわゆる環境問題も含めまして、環境調査あるいは開発可能性というようなことの調査のための予算でございまして、これには当然現在でも地点としまして五地区十六地点ぐらいのところが考えられるわけでございます。  このために、予算要求といたしましては一応六億の予算要求さしていただいたんでございますけれども、当省初めての予算であるというようなことでもございまして、本年度二億五千万円しか確保できなかったわけでございますけれども、まずこの二億五千万円をもちまして、一応掘れるか掘れないかということをベースにいたしました、環境までも含んだ可能性調査をするということで本年度は実施したいというふうに考えておりまして、ただ、三十一年あるいは三十二年ごろ実施いたしましたような、単に国内に幾らの炭量があるかというようなことは、すでに当時の資料で二百億トンというようなことで、これは三十センチ以上の石炭を入れておるような次第でございまして、現在三十センチの厚さの炭が掘れるかどうかというのにも、これはいろいろ技術の組み合わせがあろうと思いますけれども、そういう点で本年度の二億五千万円の予算というのは、可能性調査ということからいきますと十分な意義を持っているものではないかというふうに考えております。
  7. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま、二億五千万の調査委託費、それから石炭を総ざらいに見直すべきじゃないかという私の質問に対しまして答えがあったんですけれども、それは抽象的にお答えになっておりますけれども、私は、この段階でやっぱり本当に石炭を見直すというなら、やっぱり日本全体の三十一年の先ほど申し上げましたフランスソフレミン学者経済根拠経済合理性という問題はもちろんあるでしょうけれども、もう一回やっぱり全般的に見直す時期に来ているんじゃないか。なぜそれを申し上げるかというと、もうやっぱり既成炭鉱というのは御案内のとおり、深部開発でどんどん深いところに入っていっているでしょう。で、深部開発計画がどんどん進んでいっているという状況は、これはやっぱり保安上の問題に一つは重大な関連があるということが一つと、それからもう一つはやっぱり温度の問題です。働く作業環境労働環境条件が、湿度、温度が高まってきて、実際上坑内でもう労働が不能になるという問題が、事実上奔別炭鉱の例の場合でも、石炭がありながらああいう結果になったという一要素もやっぱりそういうところにあるわけです。だから私は、この時期に石炭を見直すというならば、全体的にやっぱり洗い直してみるべきじゃないか、こういうことが一つです。  それから、いまお答え願いましたけれども、これは抽象的でなくて、今回、まあ二億五千万という限られた額面より出てないわけですから、通産省は六億要求をしたというんだが、結果は二億五千万よりならなかったということは、結果的に大蔵原案に抑えられたということになるんですけどね。そこで私は、こういう二億五千万程度の微々たるものであるとすれば、いま石炭部長から答弁ありましたけれども、やっぱり地域的に限定をしたらどうだ、重点地域に限定したらどうだ。私なりに北海道、九州の炭田をずっとこう見てまいりまして判断することは、当面は天北炭田、それから石狩炭田——石狩地域ですね、それから釧路炭田、それから北松炭田筑豊炭田という、こういう重点地域を指定して、特に先ほど言ったように露頭採掘並びに斜坑採炭である程度——まあ三十センチ程度あるいは五十センチ程度で採掘可能かどうかということをやっぱり選定をすべきじゃないかと。地域選定を行って、この分の国内炭の再開発ということを考えたらどうだということが当面の課題ではないのかと。それを何かこう、二億五千万何とはなしにばらまいちゃう、一般論的に調査をしていくんだというような、いまお答えを願った企業内調査というようなことを重点に置くということなんですけど、私はやっぱりこの重点地域をきめて、そしてやるべきではないかというふうに考えてるんだが、この点はどうかという問題が一つ。  それからもう一つは、具体的な問題としまして、この二億五千万は通産省ベースだけで調査費を使うという方針を立てられるのか。少なくとも私はこの点については、学識経験者なり、日本の鉱山、地質学者なり、あるいは労使関係を含めて、専門委員会等設置をして、石炭見直し一環としての国内炭復活意味での専門委員会あるいは調査委員会等設置をして、この二億五千万の調査費を有意義に活用するという方法考えてみてはどうかというふうに考えているんですが、この点についてお伺いをしたいと、こう考えます。
  8. 高木俊介

    政府委員高木俊介君) 具体的な調査対象地域あるいは調査方法等につきましては、新規区域及び石炭鉱業合理化事業団鉱区を保有しておりますもの、あるいは消滅した鉱区がございますので、そういうものにつきまして既存資料ベースとしながら、いわゆるいま先生指摘がございましたように、学識経験者あるいは事業団等に入っていただきまして、まだこれは具体的には決まっておりませんけれども、御趣旨に沿うような線で学識経験者専門委員会をつくり、いま御指摘のとおり、いわゆる新政策へのつなぎの一環としての調査を実施いたしたいというふうに考えております。
  9. 対馬孝且

    対馬孝且君 全く意見が、お答えが私の考えているとおりおやりになるということですから、私も賛成であります。そういう点で、ひとつ計画早目にその委員会設置をしていただいて、そしてやってもらいたいということを特に申し上げておきます。  それから、次の問題で私はお伺いをするんでありますが、問題は国際炭国内炭兼ね合いの問題で、根本的に、私はやっぱり経営体制のあり方についてひとつ専門的に答弁を求めたいと思うんであります。  かねてわが社会党は、この石炭政策を本当に見直して、長期展望に立って安心をした石炭政策を樹立をするならば、御案内のように、昭和三十年に合理化臨時措置法が提案されたときには、石炭鉱業安定法案、これを社会党対案として出しております。三十七年には同法案を一部修正をいたしまして、鉱業安定法案というものを出しております。それから昭和四十三年の三月には、石炭鉱業国有法案並びに日本石炭公社法案という法案対案として石炭政策見直しのために出してまいりました。しかし、当時から申し上げておりましたように、もはやスクラップ政策ということだけでは必ず日本の将来にエネルギー危機は起こるのではないか、その当時からわれわれが訴えておりました。しかし、中東紛争にも見られますように、一昨年のパニックという問題も起きて、結果的には日本エネルギー危機という問題も起きたではありませんか。しかも、石炭がなくてつぶれていっているということじゃないんですね。鉱量が枯渇をして閉山をしたというためしはないんです。率直に申し上げますけれども、いま高木石炭部長お答えになったように、経済合理性という、石油との対比関係石油価格より石炭が高いから結果的には石油のほうにウエートを置くということでつぶされたというのが今日の石炭政策であります。第五次石炭答申までは、全くスクラップアンドスクラップ政策であります。これが結果的に私は、今日の自民党政府石炭政策を誤っていたということは率直に指摘をしなければならないと思うんであります。  そこで私は、今日で、いまこの体制問題でお伺いしたいことの一つは、もう私企業ということについては限界にきているんじゃないか。それを証拠に具体的な例を挙げます。朝日炭砿の例が一番いい例だと思うんです。あの中小炭鉱の三百足らずの朝日炭砿が、結果的には現行の法律では救うことができなかったんですよ。われわれはずいぶん提案もいたしました。あるいは、出炭ベースを上げるためにも協力しようという増産運動も展開をする——高木石炭部長御存じのとおりであります。石炭部長もずいぶん努力をされましたけれども、結果的には朝日炭砿はついに閉山ということになり、新鉱開発についてはついに——この前、商工委員会では私に対しましては石炭部長は、何らかの形で新鉱開発はいたしますと、こうお約束しているんでありますが、遺憾ながら、実質上朝日の横暴きわまる野村政策によってだれ一人として朝日炭砿についてくる者はいないという結果から、この朝日炭砿の新鉱開発ということは、事実上今日停とんしている状態にあるわけなんです。  私はそういう点から考えまして、ひとつ朝日炭砿でさえ今日の現行法では救われないし、あれだけの国家資金を投資しても、結果的には朝日炭砿は救われなかったということから判断をしてみまして、もうやはり今日の段階では、ますます個別企業という段階では石炭開発ということは困難になってくるんではないか。そういう意味では、この際やっぱり体制問題ということを、国内政策だけの問題でなくて、私は考えるときに来ているのじゃないか。先ほど申し上げましたように、この間私は、海外石炭開発株式会社社長に来ていただきまして、約三時間話し合いをいたしました。田口社長も言っておりますけれども、これから海外炭が、先ほど言ったように、昭和五十五年度一億一千万、昭和六十年度が一億三千万ベースにどんどん上がっていく。一方、国内炭は二千万トンベースである。私は国外炭が入ってくる、どうしてもこれは電力、鉄鋼の需要側関係でやっぱり使わざるを得ないわけですから、あるいはミックスをし、混炭をするということになるでしょう。  その場合に石炭だけをミックスし混炭にして鉄鋼、電力に使うというだけでなくて、海外炭から得る商社のもうけ、三井、三菱、限られているわけですね、いま、もう。三井、三菱商事会社、こういう外国炭の輸入スペアが持っているわけですね。あるいは日商岩井、伊藤忠、こういったそういう関係がずっと上がってくるわけですけれども、かなり商事会社の段階で一定のマージンを取っていることは事実であります。これはもう常識です。商事会社というものは。したがって、そういう面についてやっぱり国内炭国外炭とを一応一元化して、そうして、公社制度もしくは公団化をして、国外炭のこの商社に入るマージンから一定のトン当たり幾らというものは公社、公団に入れる。あるいは炭価アップの問題も、現在高木部長段階でおやりになって努力されておるようですけれども、そういう問題も含めて、石炭体制というものはもはや今日の段階では、新政策考える場合に見直してみるという時期に来ているのじゃないか。  私は何もいますぐ二段跳び、三段跳びにやろうとは思いませんけれども、例を言えば、少なくともこれから行なわれる新規国内炭の再開発、これは例ですよ。新規露頭採掘あるいは封鎖鉱区といわれる鉱区の再開発、法改正がもしなれば、後ほど質問いたしますけれども、そういう全般の問題を含めて、この際、販売それ自体も一元化する方向の段階に来ているんじゃないか。それは、先ほどそこで言った国外炭との兼ね合いにおいてもそうせざるを得ない段階に来ているのじゃないか。なぜかと言えば、公害問題にやっぱり兼ね合いがありまして、当然窒素酸化物が発生すると、公害防止協定の兼ね合いなどから言っても、おのずからそういう問題がこれから出てきているわけであります。そういたしますと、そういった石炭産業それ自体が一千百億という国家資金が投入をされているという事態を考えれば、もう今日の段階でイギリスにしても、フランスにしても、必ずそういう方向に体質を変えていっている。西ドイツにしても、七割の方向で体質が変えられている。こういう体制の方向にやっぱり検討する時期に来ているのじゃないか、このように考えますが、この点についてひとつ考え方をお聞かせ願いたい、こう思っています。
  10. 高木俊介

    政府委員高木俊介君) 昨年の七月二十二日でございますけれども、「新しいエネルギー情勢に対応した石炭長期展望」ということで、これは片一方、エネルギー調査会の審議と並行いたしまして実施いたしました石炭鉱業審議会の中での総合部会の報告でございますけれども、五十五年度——六十年度につきまして、二千万トン以上の国内炭を生産するんだというようなことを提言になっておるような次第でございまして、また片一方、エネルギー調査会の方での将来の石炭の供給量というものにつきまして、輸入炭も含んで、五十——六十、二千万トン、輸入炭につきましては、五十五年度一千万トン、六十年度二千万トンというような数字がエネルギー調査会の方の供給サイドとしての報告が出ているわけでございます。  これと並行いたしまして、十月の一日に石炭鉱業審議会へ大臣から今後の石炭のあり方といういうことで諮問になりまして、現在審議の途上でございますけれども、実は今月の二十一日に総合部会を開催する予定にしておりまして、これは炭価問題と長期取引問題ということで、いわゆる量と価格ということにおきまして、いままでの石炭政策と違いますのは、すなわち価格、量というものを入れまして、供給サイドと需要サイドの結びつきをはっきりしておきたいというのが考えでございます。こういう線で一応炭価問題、長期取引問題を二十一日の総合部会で決定していただきますと、その後引き続きまして、いま先生から御指摘のございましたような輸入炭を含むいわゆる今後の政策あるいは体制問題ということについて、これの実現のためのいろいろな御検討をしていただくという段取りになっております。もちろんその場合、国内炭に悪影響を及ぼさないような輸入の仕方というものも考えなくてはならぬというふうに思っておりますし、そういう点につきまして審議会で御審議いただき、国内炭の二千万トン体制が崩れないようないろいろな方策というものを考えなくてはいかぬのじゃないかというふうに考えております。
  11. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで私は、審議会の関係につきまして、当局側の考え方をお伺いしますが、諸外国においてはやっぱりいまも話を申し上げましたが、アメリカ、フランス、イギリス、西ドイツあたりでは、石炭産業についてはいずれも総エネルギーの中に占める割合としては、日本のようなもう一〇%を割るような国というのは、実際問題としてどこにもないでしょう。むしろアメリカなんか大増産計画をやっているというような状態ですよね。そこで私はやっぱりここで申し上げなきゃならぬことは、いま高木石炭部長が、審議会でもって大臣から答申を願って審議をしているという状況なんですが、これ六月ころ出されたんでは、石炭見直しにならないんじゃないですか。この点ちょっと私、当局側の考え方をお伺いしたいのですよ。五十年度はもうこの予算で押し切っちゃうんだ。だから新規五十一年度からやるんだと、こう言うんですがね。  現実に石炭部長も一番頭を痛めておると思うんでありますけれども、あえてこういうことを私、固有名詞を挙げません。ある大炭鉱でさえ、新鉱開発をやっているある大炭鉱で、今年度における三月末決算が二百九十六億の赤字を出さざるを得ないということを言っているわけですよ。これは固有名詞をあえてこの場ですから避けます。しかし、まさに日本では有望と伝えられて、絶対な大炭鉱だと言われながら、二百九十六億で資金繰りが四苦八苦という状況に陥っているわけですよ、もう今日の段階で。ところが六月に答申を出されて、それから昭和五十一年度に新政策にのせると、こう言うんですけど、これに一体この炭鉱が対応できるのか、そこまで持ちこたえられるか。そういう情勢を迎えているだけに、まず、ざっくばらんに私は率直に申し上げますけれども、やっぱり石炭見直しということについては、私は見直しは叫ばれているけれども、さっぱりよくなっていないということです、山元組合員の感情というのは。あるいは産炭地の住民の感情はよくなっていないという感じですよ。これはもう通産、長官以下全部頭にひとつ入れてもらいたいんです。先ほど言った朝日炭砿三百人、あの山ぐらい救うことはできなかったのかという感情は、いまもう炭鉱に働く労働者にとっては、全く相変わらず石炭産業お先真っ暗であるという実は不信感であります、不安感であります。  また、今度御存じのとおり、労働者はなかなか思うように集まっておりません。平均年齢はいま、労働省もおわかりのとおり四十三歳であります。炭鉱労働者の平均年齢四十三歳。しかも昨年の十二月には御案内のとおり、上砂川で、水力採炭が絶対安全で絶対災害が起こらないといった炭鉱に十五人の犠牲者が出る、こういったようなことで相変わらずこの保安問題としては、抜本的には一つも改善をされていない。一方、住宅環境を見れば、今日の都市では水洗トイレというのは常識ですよ。しかも、ふろつきの近代化住宅がたくさん造成をされています、町場では、都市では。あるいは炭鉱では一年間に畳何枚取りかえるかという程度の実は環境の改善です、福祉の改善です。畳を一年に三枚取りかえるか四枚取りかえるか、いま常識的に考えられないですけれども、率直に申し上げますけれども、いままだ一部朝日炭砿の奥地に行きますと、外便所というのがあるんですよ。こういう炭鉱地帯がまだあるということは、旧態依然として、一部では労働省の努力によって雇用促進事業団のアパートなども建設計画に沿って努力をされて建てられておりますけれども、いまなおそういうところがあるということです。  しかし、こういう一方では、閉山によって置き去り老人が五百人もまだ潜在しているんですよ。全部東京に就職に来るけれども、老人は全部置きっ放しですよ、炭鉱は。置き去り老人だけは暗い谷間になって残っているというのが実態でしょう。現に具体的に挙げますというと、美唄の東部、東美唄地域というのは、これはもう置き去り老人の全くの地域です。こういった状態の中で考えていきますと、私はいま石炭部長お答えになっていますけれども、ほんとうに石炭を見直すということでもし考えるのであれば、私は、やっぱり石炭鉱業審議会の答申が六月まで待って五十一年度の新年度方針を打ち出したんでは、これはまた石炭産業等の中におけるある炭鉱閉山の憂き目を見るというきわめて緊迫した状態にあるという現状認識をいたしているわけであります。この現状認識は私は違いがないと思っているのです。  ないとすれば、答えとしてはどうするかということになれば、私は、少なくとも今通常国会の段階石炭政策を見直すための、率直に申し上げて立法措置をやっぱり改善する必要があるんじゃないか、いわゆる石炭合理化臨時措置法というのが御案内のとおりでき上がったのは、スクラップ政策のためにつくられたのが合理化臨時措置法であります。それは部長御案内のとおり、長官御案内のとおりであります。ウエートはそこに置かれて合理化臨時措置法というのはでき上がったわけです。ただ、社会党石炭鉱業安定法案対案として出したというのは、日の目は見なかったけれども、そういう考え方を持たざるを得なかったのはそういうことなんです。  今日の段階で私は一つは、次の質問になるのでありますが、鉱業審議会の答申の結論を早めるべきではないか、これが一つです。今国会において、通常国会の段階でいま言った既存の炭鉱に対する手当て、国家資金の投入あるいはこれから、先ほども出ました二億五千万の調査委託費がつきましたけれども、具体的に当面可能なことはと言えば、国内炭需要拡大を言うならば露頭炭が手っ取り早くできるのですよ。高木部長御存じだと思うのです。露頭採掘というのは石狩炭田の一部にもあるし、あるいは天北炭田地区の中の羽幌、あの一帯の地域にもあるわけであります。これはもちろん炭鉱労働者の数は必ずしも多くはないわけでありますが、一定の露頭採掘炭は直ちに可能である、これによって需給体制に対応する国内炭の拡大という方向に一歩をとることも一策ではないのか。そういう意味では、私はやっぱり現行法の封鎖鉱区並びに買い上げ鉱区に対する、現行法律ではできません、これは率直に申し上げまして。そういう意味でも、とりあえず通産当局側に現行法を改正をして、買い上げ鉱区、封鎖鉱区並びにそういった露頭採掘条件にかなう法律等の改正を考えているかどうか、この二点についてお伺いをしたいと、こう考えます。
  12. 高木俊介

    政府委員高木俊介君) 一番初めに先生から御指摘のございました、ある企業の二百九十億の赤字の問題でございますけれども、本件につきましては、昨年から国といたしましても、現在の新鉱開発の助成の強化というような点で大蔵とも話をしている段階でございまして、この件は近々話がまとまるんではなかろうかというふうに考えております。なお、国だけの助成ではどうにもなりませんので、需要業界にも昨年から呼びまして、大体需要業界の協力体制も整いつつございます。また、国あるいは需要業界のこういう協力によりまして、これは企業努力でございますけれども、銀行融資というものも大体めどがついておりまして、いま先生御心配にはなっておりますけれども、この点が片づきますと、本年度及び五十年度につきましては、問題なく経過してくれるんではないかというふうに私なんかは判断いたしております。  それから、当然国の助成と、一方炭価問題というこの二つにおいて企業は成り立っていくわけでございますので、そういう点も十分配慮しつつ、各山のきめ細かい運営をやっているつもりでございます。  なお、ただいま答申を早めるべきではないかというような御指摘がございましたけれども、先ほども申し上げましたように、今回の新政策としましては、需要業界と石炭業界、供給サイドの結びつきということが一番必要でございますので、このためには十分な両者のコンセンサスを得られなくてはならぬのではないかと思います。そういう点である程度時間を必要といたしますし、また、これを実施するための政策あるいは対策というものにつきましても、十分な検討をしなくちゃならぬということで、できるだけ早めるようにはいたしますけれども、現在のところは五月ないし六月に答申をいただくという予定でございます。  なお、露頭炭の問題につきましては、現在でも鉱区調整という形で露頭炭を掘らせられるところは掘らすようにいたしてもおりますし、できるだけ鉱区調整を利用しつつ生産を増大していただくようにお願いしておる段階でございまして、先生の御指摘の点は、むしろ、かつて自分で保有していて事業団に買い上げてもらい、あるいは売ってしまったところの鉱区、露天掘りの問題ではなかろうかと思いますけれども、これは確かに法律上の問題でございますので、こういう答申をいただいた後、こういうものも含みまして、すべて見直したいというふうに考えております。
  13. 対馬孝且

    対馬孝且君 それでは、答申については五月ないし六月ということですけれども、法改正については、答申の結果を見て法改正をするということでは、やっぱり通産当局というのは独自の石炭政策の施策を持っていないんじゃないかということになるんですよ。私はむしろ、この審議会の意見を尊重するということは結構だと、結構だが、通産省独自としても、これは私らのほうには後ほど大臣から午後の冒頭所信表明があるようでありますけれども、まあ石油備蓄法案から始まって幾つかの法案が出されておるわけです。したがって私は、当面通産省としてこの一つの、一定のそういう法改正の準備なり構えをとるべきではないか、この点についての検討をしてもらいたいということですよ。これをただ答申が出てからやるんだというようなことは、これは常識的なことであって、もっと石炭政策を見直すというならば、一歩前に出て、一応具体的に、どの点とどの点が法改正が必要なのかというポイントはわかり切っているわけですから、まあ石炭を扱っていればこれはもうわかることであって、そういう意味でのやっぱり準備をするという考え方があるのかないのか、その点についてもう一ぺんお伺いします。
  14. 高木俊介

    政府委員高木俊介君) 当然答申の中に盛ります、盛り込まれるであろうという事項につきましては、場合によっては法改正も必要でございましょうし、あるいは予算の処置ということで片づく問題もあるんじゃなかろうかと思いますけれども、いま御指摘のとおり、事務局としましては、こういう問題が出たときはどういうようなふうに改正しなくちゃならぬのか、あるいは予算的な措置で済むのかというようなことは十分検討しておるつもりでございますし、今後も引き続き審議今の審議とあわせまして検討していく予定でございます。
  15. 対馬孝且

    対馬孝且君 次に、保安対策の問題でお伺いかしたいと思います。  昨年の暮れにも、阿具根団長を中心にしまして現地調査団で行ってまいりました。それで、上砂川炭鉱の災害爆発のそれなりの原因につきまして明らかにしておりますけれども、私は、この上砂川炭鉱の災害を言おうと思っているのじゃないのです。これから石炭見直しとタイアップして、保安対策に対してどういう強化策を考えられるか、この点について、石炭見直しとタイアップしてこの保安対策の強化を考えるべきじゃないかということなんです。その意味では、今回の上砂川炭鉱の水力採炭方式という災害の結果については、東大の学識経験者も入っていただいてそれなりの結論が出されようとしております。また、中間結論が出ております。私はそうではなしに、既成炭鉱が全般的に言って相当やっぱり深部開発に入ってきていると思うのですね。有明と北炭夕張新炭鉱の新鉱開発を除いては相当まあ深部に深まってきている。そういう段階の中で、これからこの保安技術の開発ということがやっぱり非常な重要なポイントを占めるのじゃないか、こういうふうに判断をするわけであります。  そこで、この前私は、そのことにつきまして具体的に申し上げているのでありますが、一つは、労働省——通産省で管理をするのじゃなくて、労働省保安管理を移管してはどうか。それはまあ通産省というのは生産機能を管理する場所であって、労働省というのは労働者の基本権を管理する、その世話をする省でありますから、そういう意味では労働省がやっぱり保安管理をするのが正しいのじゃないか。もっと言うならば、保安管理機構というものを独立管理部門ということにするのが一番望ましいと、これは社会主義の国では当然おやりになっている。私もソビエト炭鉱も入りましたし、ヨーロッパの炭鉱も入ってまいりましたが、実際そうなっております。  したがって、そういう機能の改革ということとあわせまして、私は北海道に鉱山保安技術センターというものを開発してはどうかという問題を提起をしたいのです。なぜこれを提起するかというと、岩見沢に御案内のとおり爆発試験所がございます。現実にそれなりのあれをやっていますけれどもね。まあ最近は傾斜採炭その他水力採炭ということで、採炭方式が非常に多様化してきているわけです。変わってきているわけです。採炭方式が変わらざるを得ない条件にきているわけです。なぜかならば、深部にどんどん入っていくものですから、結果的にはこの通気と排気の関係というものが非常にやっぱりむずかしくなってきている。特に私は率直に申し上げますけれども、太平洋炭鉱あたりでは海底部に入っているわけですから、もはや一定のこの排気を通気の関係では保安上の問題で私は限界にきていると思っているのです。  したがって、こういう問題等もあわせて考え合わせれば、やっぱりこれから新しい石炭政策に対応するこの保安対策強化というものがあっていいんじゃないかというふうに考えるわけです。この点について、通産省としてこの問題を、これからのこの深部開発に伴う保安対策強化というものをどういうふうに考えられるか。また、すでに現在幾つかの災害が発生している。この発生の原因の上に立ってどういう保安改善というものを強化をされるべきであるのか、この点をひとつお伺いをしたいと思います。
  16. 脇山敏雄

    説明員(脇山敏雄君) ただいま先生から保安の問題につきまして御質問ございましたので、私、立地公害局の石炭課長でございますがお答えさせていただきます。  確かに、先生のおっしゃるように保安の問題につきましては、現行炭鉱は大変な問題を抱えておるというふうに私ども十分に認識をしております。深部移行の問題につきましても、現在国内炭鉱の平均深度は五百数十メーターでございますけれども、毎年二、三十メーターずつ深部移行が進んでいくわけでございます。現在一番深い炭鉱では、北炭の幌内という千メーターぐらい掘っている山もございます。深部移行が進んでまいりますと、単なる直線的にその保安の条件が悪化をするということではございませんで、いろんな、たとえば地圧の問題とかガス突出の問題とか、自然発火の問題、温度も上がってまいりますし、条件というのはどんどん、単なる直線的というんでなくて、もっとそれ以上のペースで条件が悪くなっていく、それに対処しながら保安を確保していくということでございますので、相当の技術的な工夫なり改善をしていかなければ対処をしていけない状態になってきておるということは、私どもは十分承知しておるわけでございます。  そういうことでございまして、学識経験者を集めました深部対策委員会というのをつくっておりまして、これは昨年の六月中間報告を出したところでございますが、従来の経験の延長に立って対処できる問題と、それからまた、深部へ移行していくに従いまして従来経験してなかったような新しい問題も出てまいりますわけですから、そういうそれぞれの問題につきましてやはり十分工夫をし、研究技術問題としてもこれと取り組んでいく必要があるというふうに考えておりますので、それについて必要な予算措置についてはことしも相当、私ども保安の方で持っております予算の中では七〇%も予算を伸ばしております。それから、ガス突出とか地圧とかそういう問題につきましてもそれぞれ委員会をつくっておりまして、学識経験者を集めまして、衆知を集めてこういった問題に対処していくという姿勢でやっておりますの  で、今後ともそういう方向で努力していきたいと考えております。
  17. 対馬孝且

    対馬孝且君 先ほどの、いますぐの問題じゃありませんけれども、将来的に展望した場合に高度の技術化という技術研究もちろんありますけれども、絶対災害が起こらないと思った水力採炭が災害が起きているというような現実があるわけですから、先ほど言った学識経験者による深部対策委員会というものを持たれているということは結構なことです。それなりに意義あると思います。ただ、私はもう一歩進んで、現地にそういう保安上の技術研究センターというようなものを、現在の岩見沢の状態を機能強化をするか、あるいは吸収をするか、あるいは新規にするかは別にして、そういったような構想というものをひとつ検討してもらいたいというふうに考えているんですが、この点についてはどうですか。
  18. 脇山敏雄

    説明員(脇山敏雄君) いま石炭技研が中心になりまして保安の研究を進めておりますわけですが、現在保安の研究に、技術問題に対処し得る人がいるところといいますのは、大学、それから公害資源研究所というものがあります。それから企業の技術者も若干ございます。そういった人たちをどのようにうまくアレンジして仕事をやっていくかということであろうかと思いますので、そういう方面では十分工夫をしてやっていくつもりでおります。
  19. 対馬孝且

    対馬孝且君 それでは次に私は、石炭労働者の労働基本権の問題につきましてお伺いをしたいと思います。これは通産省になるのか、労働省になるのか、基本的な考え方をまず最初にお伺いしてから具体的な問題に入りたいと思います。  私は、新石炭政策を確立をする場合に、炭鉱労働者の見直しがなくて石炭対策を見直すことはできないんじゃないか。これが一番ポイントの問題のやっぱり柱です。石炭産業の見直しということは、もちろん体制問題、それから総合エネルギーの位置づけの問題ありますけれども、労働者の見直しがなくして今日の石炭産業を見直すことはできないんじゃないか、こういう考え方がやっぱり当局側としても政府側としても持つべきじゃないか、こう考えます。  そこで私は、今回の何といっても石炭労働者の置かれている条件というのは、先ほども申し上げましたけれども、一般他産業を水準にして考えた場合に、一番危険な労働作業をしていつ死に至らしめるかという、そういう命を的に働いている産業というのはそう数はないわけです。中でも石炭産業というのは、朝入坑して、晩になればガス突出、あるいは落盤事故によって全くもう死に至らしめるという条件が出てくるわけであります。そういったような条件の中で働いている産業の中で、賃金水準といえばいまなお鉄鋼産業をまだ大きく下回っているんですね、率直に申し上げて。炭鉱労働者の願いは、せめてメタル並みに賃金の水準を上げたい、到達したいというのが炭鉱労働者のささやかな願いであります。昨年、幸い通産省の努力もございまして、一方、千四百円というベースアップによりまして鉄鋼産業に一歩近づくという段階になりましたが、まだ大きく開いております。私は、やっぱり一つは何といっても他産業並みの賃金水準レベルに上げる、こういう行政指導が——労使間に介入するとか私そういう意味で言っているんじゃないんですよ。そういう立場ではなくてやっぱり労働者の見直しなくして石炭産業の見直しがないわけですから、そういう意味で他産業並みの水準ということが、賃金、期末、退職手当、こういう面で見ればやっぱり新制度化をしていいんじゃないか、そういうふうに考えているんですが、それが第一点であります。  第二の問題は、時間短縮の問題ということが非常に問題になって、現在若年労働者が炭鉱労働者に魅力を持たないというのは二つよりないんですよ。一つはやっぱり先行き炭鉱が不安だということですね。いつつぶれるかわからない産業に就職したってしょうがないじゃないか、お先真っ暗な産業に入ったってしょうがないじゃないかという、いわゆるヤングといわれる若い層に対して魅力がないということですよね、一つは。いま一つの問題は、人間らしいという言葉、率直に言わしてもらうんですけれども、一番方、二番方、三番方という三交代勤務によって、夜の夜中に出ていって朝方帰ってくるという仕組みになっておるわけです。そういうことは他産業にも——もちろん製紙工場とかいろいろそれは他産業にも見られますけれども、炭鉱における三番方制度というのはこれは実際異常なんですね。入ったこと、ごらんになった方がおそらくないから御説明申し上げますけれども、実際入ってみるとこれは人間並みの作業ではないんです。だからそういう意味では、諸外国でも炭鉱は全部やっているのでありますが、拘束六時間、在坑というのは坑内の滞在時間八時間、そして三番方の採炭作業は禁止する。そうして週休二日制による採用を行って、ILO条約の四十六号批准というものをこの際政府は一歩進んでやっぱり検討してみるという考え方はないか。こういうことについてひとつまず根本の問題としてお伺いをしたいということが第二であります。  第三の問題は、炭鉱労働者年金という制度がございます。これはもう話にも何もならないですね。詳しくは時間がありませんから申し上げませんけれども。特別年金というのは本当にもう炭鉱労働——私も炭鉱に二十七年働いたわけですが、三十年勤めて退職金が幾らだと思いますか。一級採炭夫で坑内に三十年間、太陽に当たらない労働して三十年間勤めるとして三百五十万円だ。三百五十万の退職金、三十年間ですよ、採炭夫で。太陽の日差しを本当にこの三十年間見ないでまともに働いたとして、三十年間勤務して三百五十万円の今日の退職手当金であります。一般産業と比較して、公務員全体と比較した場合に、一体どうですか。三百五十万で土地を求めること、高い方だったら土地一つ分買い求めることができないではないですか。そのぐらい悪条件な土地を買おうとか、家を建てるというような状態、定年退職して何とかしょうなんというような状態になってないですよ、実際問題として。年金を見たら全くもうスズメの涙金のような年金です。私はこの際、炭鉱労働者に魅力を持たせる意味でも、炭鉱年金という年金制度を大幅に改善をするという考え方を持つべきじゃないか。  こういうふうに、まずやっぱり炭鉱労働者の見直しなくして石炭政策見直しがないということを私考えますならば、この点についてひとつどういうふうにお考えになっているか、お伺いをしたいとこういうふうに思います。
  20. 守屋孝一

    説明員(守屋孝一君) 炭鉱労働者の確保問題、また、炭鉱労働者の雇用安定問題につきましては、まさに先生指摘のように、まず何よりも将来に対する炭鉱における展望と労働条件の問題また保安の問題、これが確保の面でも安定の面でも非常に大きなウエートを占めるということは、私どもも十分承知しております。その中で、いま先生いろいろ御指摘ございました賃金水準の問題であるとか、あるいは労働時間の問題、こういう点につきましては、私ども企業を直接助成するという立場にない——ちょっと管理官庁という立場もございますので、はなはだ通り一遍の話になって非常に恐縮なんでございますが、やはり私どもといたしましては、何よりも労使の方々がこの問題の解決に向かって自主的にひとつ大いに努力していただく、そういう中で炭鉱が将来展望が開けるとともに、労働条件も労働力の確保の面でも、また、そこに働く方々の安定した生活を得るためにも非常にプラスになっていくということが、われわれ非常に望ましいというふうに考えております。  なお、この炭鉱年金の問題につきましては、これは直接所管しておられますのは厚生省でございますが……
  21. 吉江恵昭

    説明員(吉江恵昭君) 厚生省でございますが。年金局のほうで所管しておりますが、先生のおっしゃる御趣旨は了解しておるつもりでございますので、ただいま了承したつもりでございますので、帰ってそのことを正確に伝えたいと、かように思いますが、よろしゅうございましょうか。
  22. 対馬孝且

    対馬孝且君 それでは次に労働省にひとつ、端的にお伺いをいたします。  私は、先ほど申しましたように、炭鉱労働者の置かれている生活環境という実態をるる何回も申し上げましたが、これ、非常に人間並みの生活をしていないというような条件下に置かれておりまして、ともあれ何といっても、せめても労働者の環境を改善をしてもらうということがやっぱり一番大事な点じゃないかと思うんです。  そこで、住宅福祉施設の問題につきまして、私は抜本的に見直ししてもらいたい。労働省は雇用促進事業団の住宅などについては、赤平、夕張そういうような地域でそれなりに努力を願っていますけれども、いま一歩住宅の強化、促進ということについてやっていただかないと、これはやっぱり限られた戸数ですから、仮にこれから国内炭を定着させると、労務者を定着して、国内炭の再需要を伸ばしていくにしても、まずマイホームが本当に近代的な都市並みになってくるということになれば、やっぱり魅力を持つということです。  この間アンケートをとったんです。何に一番魅力を持っているか、炭鉱労働者に定着をするために魅力があるかと言ったら、一番大きく上がってきているウエートというのは、何といっても先ほど言った先行き不安の問題それから労働条件の問題、保安の問題、住宅の問題です。やっぱりこういう問題が中心になってきておりますので、私はせめても、この雇用促進事業団の住宅関係あるいは年金住宅を炭鉱地帯に先行させることができないのかどうか、先行投資をして住宅計画を促進をするという、そういうのをテンポを速めるという役割りを労働省としてはぜひひとつとつてもらいたい、これをひとつ、労働省考え方を、まずぜひ対策をしてもらいたい。  それから、特に労働者がいま願っておることは、この炭鉱地帯の中に家族ぐるみで——学校も病院も公園も住宅も全部あって、言うならば本当に総合団地計画といいますかね。ことし、この間私、愛知県へ行ってきましたけれども、春日井市にございますようなああいうベッドタウン、とまでいかなくても、ああいったような環境の条件というものがあったならば、かなり炭鉱労働者は定着をし、魅力を持つのではないか、せめてこれは現場が悪条件ですから、住む場所ぐらいは本当のいい場所に住ましてやる。ということではやっぱり総合団地計画、これは労働省だけではございません。もちろん建設省あたりになると思いますけれども、そういった総合団地といったような——将来展望として考えてもらう必要があるんじゃないかという点を考えておりますので、この点をひとつぜひ検討していただきたいと思っているわけです。  それからもう一つの問題は、やっぱり率直に申し上げまして医療整備の問題でありますけれども、どうもこれは砂川災害にも見られましたし、一般災害でもそうでありますが、医療対策が全く不十分だということです。これはもう率直に申し上げます。これはもちろん僻地対策ということであるのでありますが、これは炭鉱病院に行きますと、まず一つは外科医がいない、内科医がいない、歯科医がいないということです。率直に申し上げますよ。それから災害率というのは、これは全産業で一番高いのは炭鉱でしょう。そんなかすり傷程度や手を折った、足を折ったというのは日常茶飯事、全部これは災害であるわけです、炭鉱地帯では。これに対応するような医療整備体制になっていないということです。まず外科医がいないということでしょう。こういう問題についてやっぱりどう医療体制を整備していくのかということが緊急な課題ではないか。これは毎回道段階でも、道行政にも実は反映をされているんですよ。道行政にも反映されていますけれども、一向にして——努力をしますとか何とかと言いますけれども。  たとえば具体的に例を申し上げます。北海道に北大病院、医大病院という両医大があります。ここから医者が回ってくる。それは回ってきたって一週間に何日か回ってきてさっと帰るだけで、ただ名目上来たというだけですよ。ところが、災害というのはそんなあなた、何日に災害が起きるということじゃなくて、日常災害は起きているわけですからね。そんな医者がいませんから災害が起きませんということ、保証はないわけですよ。こういうことについて、まず道行政の中ではずいぶん指摘をしてきましたけれども、僻地対策と同じで、いまなおこの医師確保対策がなされていないということです。これは厚生省に申し上げたいことです。したがって、この点について、炭鉱地帯における医療対策の整備を、医師確保を考えてもらいたいということが一つ。  二つ目は、どうしても医師確保がいまの状態では抜本的になかなか困難でありますから、これはいますぐの問題ではありませんが、私は将来展望としてやっぱり炭鉱労働者の、特にこの空知管内の、南北空知の石炭産炭地域を中心にした総合病院あたりをつくることが望ましいのではないか。現実には労災病院——美唄労災病院、岩見沢労災病院がありますけれども、これは皆さん知っているとおりもう限られた、けい肺患者その他で満杯というような状態で限度に達しています。率直に申し上げて。したがって私は、やっぱり将来的にはこういう問題もぜひひとつ検討してもらいたいというのが率直な考え方でございます。したがって、当面は炭鉱病院の、特に重大災害、日常災害に対応する医師の確保、これをどのように具体的に確保していただけるか。将来的にはいま申し上げましたような対策をどうとっていただけるか、この点についてひとつ当局側の考え方をお伺いしたいと思います。
  23. 守屋孝一

    説明員(守屋孝一君) まず、住宅の点につきましてお答え申し上げます。  先ほど先生お話しの大規模な住宅の先行投資というようなことになりますと、これはやはり基本的には住宅政策の立場から進めるべきものかとも存じます。と申しますのは、労働政策、特に雇用対策という立場からこの住宅問題を取り上げてまいりますと、そこにはおのずから限界もございますが、しかし、私どもは先ほど先生もおっしゃいましたような雇用促進事業団で雇用促進住宅というのを建設しております。これは御承知のとおり、労働者の方々が地域間の移動を円滑にすることを目的として設けた住宅でございまして、ちなみに、北海道におきましてはすでに昭和四十八年度までに三千七百戸を建設しております。また、昭和四十九年度におきましては、四百四十戸の建設を現在進めているところでございますが、御承知のように雇用促進住宅は、その制度の趣旨から見まして、労働者の方々の移転就職をより容易にするためにこれを設けておりまして、私どももこの趣旨に沿いまして、今後産炭地域についてもその地域の実情等を十分考慮しながら建設を進めてまいりたい。そうして、移転就職する方々の住宅の確保に努めていきたいというように考えております。  また、それと絡みまして福祉施設の問題でございますが、これにつきましても炭鉱労働者の方方の福祉を増進するということ、また、それは雇用なり生活の安定にもつながる問題でございますし、あわせて石炭鉱業における労働力確保、あるいは定着の促進にも大いに資するものというように私ども考えておりまして、これにつきましても昭和四十四年度より雇用促進事業団で産炭地域に労働福祉施設を建設してきております。北海道ではすでに建設中のものを含めまして七カ所設置してございます。今後におきましてもこのような趣旨、観点に立ちまして、必要な地域に必要な施設を設置していこうという考え方で検討を整備してまいりたいというように考えております。
  24. 手塚康夫

    説明員(手塚康夫君) ただいま労働省の方からもお話しございまして、私どもの方は一般的な医師の確保、医療整備の問題でございますが、まず第一に申したいのは、現在の日本の医師数、これは四十八年末の推定値になりますが、十三万九千五百人という数で、人口十万対比にいたしますと百二十八・一と、これは欧米諸国に比べてやはりまだかなり低いという状況でございます。そのために全国的に医師が足りないという現象を起こしているわけですが、これに対しましては、厚生省といたしましても文部省に四十三年、四十五年あたりに要望いたしまして、その後国立医大を中心に新増設を進めております。当面の目標として、昭和六十年には人口十万対比百五十人の目標を立てておりますが、これは達成できるというふうに考えております。  ただ、先生指摘のように、そういった全国的な医師数の問題だけではなくて、実は地域差の問題もあるわけでございます。炭鉱などは厚生省としても関心を寄せている僻地の最たるものだというふうにわれわれも理解しております。ただ、現実に現在の時点では全体に医師数の足りないところに持ってきまして、僻地に医師を張りつけるという政策はなかなか困難な点がございます。先生も長期の展望として御指摘になったような、総合病院をそういったものにつくるべきではないかということに対しましては、今年度予算でそういった僻地に対して中核病院というものを整備していこうじゃないかということで、新たな予算も計上して御審議を願っているわけでございます。  特に産業関係の災害というものはまたその特殊性もございます。通常の医師よりもやはりそれについての特別な知識、技能を持った者の方がよりいいわけです。この点では労働省の方でも産業医大を設置するという構想を持っておられて、それを推進しておられるわけです。長期的にはそういったもので逐次整備を図っていきたいというふうに考えております。
  25. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは特に厚生省に当面対策として、長期的な考え方はわかりました。ただ、当面対策として、問題はいま外科医がいないということです。外科医がいなければ、坑内で落盤事故があったり、あるいは鉄さくでもって落ち込んできて、あんた腕折った、足折ったといったって対応できないよ、問題は。私はこれだけは早急に、もちろん僻地対策とは同一だということにはならない、問題は、これは重大災害ですから。重大災害に対応できるような当面緊急の医師対策だけは、厚生省の行政指導という立場でひとつやってもらいたいということを強く私は申し上げておきます。
  26. 手塚康夫

    説明員(手塚康夫君) 先生の御趣旨はよくわかりました。厚生省としてもその意思は体しますが、直接には厚生省が特定の地域の産業、たとえば炭鉱に医師を張りつけるといったことは実は所管からいってもできることではございません。むしろこれは関係省庁、特に労働省ともまた御相談の上、必要な措置を考えられるならば講じていきたいと考えます。
  27. 対馬孝且

    対馬孝且君 それでは最後に、もう一回労働省炭鉱離職者の援護対策につきましてお尋ねいたします。  御案内のとおり、炭鉱離職者臨時措置法に従って炭鉱を離職した者は黒い手帳を発行するということで、三カ年間黒い手帳である程度生活を最小限度見るということで法律が制定されて、今日まで来ております。しかし、皆さん御案内のとおり、昭和三十五年には炭鉱常用労働者が実に二十二万五千人おったんですね。これに臨時夫、関連労働者を入れますと約三十万なんです。これにまつわる家族を含めると百万人となるわけですね。これだけのやっぱり家族が実は率直に申し上げて政府のスクラップ政策で山がつぶされて社会にほうり出された、こういう結果になっているわけです。  われわれは追跡調査をやっているのですが、遺憾ながら現在では四〇%の方々がこれは失業しているんです。おそらく労働省はこの追跡調査をやっておらないと思いますけれども、四〇%も失業して、これも全部調査をしましたが、札幌あたりでさえ二回から三回転職いたしております。ほとんど二回から三回転職いたしております。結果的には北海道に仕事がないから東京に来る。東京に来てみたところが条件が違うと、賃金も違うし福祉施設も違うというようなぐあいで、二度ならず三度ならず転職をしているわけです。こういった状態で非常に再失業の実態——今日の不況の中では、特に炭鉱労働者が非常に苦悩を重ねているというのが今日の実態であります。特に北海道では、黒い手帳をもらったという連中が大体三年間で切れているわけです。したがって、この暗い谷間といわれる失業者が存在をしているわけです。現実にもう黒い手帳は切れて、そして滞留失業者というのが千二百人を数えているんです、約一千二百名であります。これは私どもの調査でありますが。  ところが、こういう方々については、この黒い手帳を離れて一般失業者に落とされているものですからなおさら気の毒なんですね。したがって、政府は、現行炭鉱離職者臨時措置法をいま一遍やっぱり強化をすべきでないかというのが一つの意見であります。たとえば三年間という期間をもう一年延長するとかいうことを検討してもらいたい。炭鉱離職者臨時措置法の適用期間というものを延長してはどうかということが私の一つの問題の考え方質問であります。  それから、具体的にやっぱりいま実際にめんどうを見ているというのは相談員です。山元離職者相談員というのがおりまして、労働省の配慮によりましてやっておるわけですけれども、率直に申し上げてこれはもう限度があるんですね。このいま不況の谷間の中でどんどん倒産をしてきている。やれ一時帰休だ、解雇だ、どんどん中小企業はまたほうり出されておる。そこに潜在失業者がいる、炭鉱離職者がいるわけです。これはどうにもならないわけです。再就職を求めようたって求める場所がないということです、現実の問題は。こういう問題では、やっぱり相談員というのがより限られた相談員でこれをやるということは限界があるということよりも、不可能に近いということです、これ、労働省にはっきり申し上げますけれども。  私は、その点ではこれは率直に言って非常に北海道は九州に比較して恵まれてないんじゃないか。一番滞留している北海道に相談員が非常に数が少なくて、そして対策がとられていないということはどういうことなのか。その点で私は、率直にこれお伺いしますけれども、先ほど通産関係予算に触れましたけれども、五十年度石炭対策予算案の中で、労働省所管対策費というのがここに載っております。ことしはふえてますね。これ、ふえた分というのは、一体増額された分はどういう内容のものが増額されているのか。これ、ちょっとあわせてお伺いをしたいし、私はぜひこの相談員を北海道にひとつふやしてもらいたいということと。  それから、相談員の大体生活……、賃金、給与ベースが話にならないんですよ、これはもう。大体自分が満足に生活できないのに人の生活のめんどう見れるかというような給与ベースになっているわけだ、この相談員のベースというのは。これは少なくとも労働省は生活保護者に等しいような相談員の給与ベースを与えておいて、そしてこれで何とか、おまえ、人の世話を、炭鉱労働者の仲間を見てくれと、もう一回山へ帰って石炭を掘れと、こう言ったって、そういう姿勢にならないでしょう、実際問題として。  私は、ここらあたりはもうちょっと本当に血の通った政治ということを行うのでなければ、実際問題としてこれはいま率直に私なりの考え方を申し上げますならば、私も関係の出先の炭労なりに申し上げているんですけれども、これは炭鉱の人間をもう一回山へ帰す以外ないですよ、はっきり申し上げて。山へ帰す場合には、市町村の段階では、すでにおわかりだと思うんだけれども、三笠にしたって、夕張にしたって、赤平にしたって、再就職仕度金制度というのがこれは三万円ついているわけですよ。これは市の予算でつけてますよ。これ、市が三万円つけてんだから、少なくとも再就職に山へ帰る仕度金ぐらいは、私はもうちょっと国の制度できちっと制度化をすべきじゃないか、こういうことを考えているんですが、この点、ひとつあわせてお伺いをしたいと、こう思います。
  28. 守屋孝一

    説明員(守屋孝一君) お答えが若干前後するかもわかりませんが、まず石炭対策関係労働省予算でございます。これも離職者対策といたしましては、たとえば先ほどもお話しになりました黒い手帳に絡む就職促進手当、これを最高日額を四三%アップいたしまして、五十年度におきましては四三%のアップということで考えておりますし、また、雇用奨励金等の単価の引き上げ、さらにはこの就職促進手当というのが私どものいろんな諸給付の基礎になっております。この単価が上がるということがたとえば再就職奨励金の額が大幅に上がるということにもつながってまいりまして、そういう意味での離職者対策の増額には私ども努めたつもりでございます。なおまだ不十分な点もずいぶんあるかと思いますが、一応私どもの努力はしたつもりではおります。  それから、それに絡みましてその手帳の延長問題ということでございます。これにつきましては古い過去経緯もございまして、実はこれを三年ということに決めましたとき、これは保険、いわゆる失業保険と違いまして全額国庫負担であるとか、あるいはまた一般的に就職可能な期間、就職活動やって再就職可能な期間はどの程度かというのを見ましたとき、ほぼ三年で九五%まで、もちろん全員というわけにはまいりませんが、九五%まで就職されるという実態もございまして、まあこの三年と決めましたので、これを延ばすかどうかという問題は非常に慎重に検討しなければ——非常にお答えがまずくて恐縮なんでございますが、慎重に検討しなければならない問題があるかと存じます。しかし、私どもといたしましては、現在炭鉱離職者の方々が一たん就職された後でまた再離職されるという実態についても所々方々から情報を得ておりまして、実は先生まだ労働省は何もやっておらぬだろうとおっしゃいます。まさにそのとおりと言いかねるのでございまして、実はいま鋭意実態調査をやっております。この実態調査の結果も十分勘案いたしまして、今後私ども離職者対策を進める上で離職者の実態に応じた適切な対策を推進してまいりたい、かように考えております。  また、前後いたしますが、山元協力員のお話かと思いますが、山元協力員につきましては、これは離職者の発生にある程度合わしてこの人数を増減しておるという事情もございますが、しかし、何はともあれ、こういう山元協力員の方々が実際に炭鉱離職者の方々に接して、各種の援護措置に関する指導援助のために非常に御活躍いただいているという現状を私どもも十分認識しておりまして、今後は離職者対策とあわせて確保対策の面でも何らかの活用ができないものかということをいま考えております。また、そういう中でこの協力員の方々の謝金につきましても、今後さらに改善すべく現在検討中でございます。  最後になりましたが、再就職奨励金のお話でございますが、実は私どもの方も、制度といたしましては再就職奨励金という制度がございます。ただ、これにつきましてはさらに若干検討すべき問題もございますので、また検討の上、御回答申し上げることになるだろうと存じます。ひとつ……
  29. 対馬孝且

    対馬孝且君 まあ、そういう点で検討して善処するということですから、一応了といたします。私の当局側に対する具体的な質問はこれで終わりますけれども、基本的な石炭政策の柱については、大臣の所見のあとで質問を続けたいと思います。  これで終わります。
  30. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      —————・—————    午後一時二十三分開会
  31. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  まず、通商産業大臣から通商産業省基本施策について所信を聴取いたします。河本通商産業大臣
  32. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) 第七十五回国会における商工委員会の御審議に先立ち、通商産業行政に対する私の所信の一端を申し述べます。  その基本的方向でありますが、わが国経済は、これまで、世界に例を見ない順調な発展を遂げてまいりましたが、反面、この目覚ましい成長の過程において、環境汚染・物価問題の深刻化、社会資本の立ちおくれ等のいわゆる高度成長のひずみが顕在化する一方、国際的にも資源ナショナリズムの高まり等経済成長の制約要因に直面するに至りました。とりわけ、一昨年秋の中東戦争に端を発した石油危機は、価格と量の両面からわが国経済及び国民生活を大きく揺さぶり、狂乱物価と物不足を引き起こし、わが国経済は、戦後これまでに経験したことのない混迷に陥ったのであります。幸い、このような混乱も、近時、ようやく収束いたしましたが、後遺症が治癒するまでには、なお相当の期間を要するものと思われます。  以上のような内外経済情勢の変化を考えるとき、わが国経済は、今後、新しい安定成長路線へと、その進路を転換していくことが必要とされるのであります。それは、わが国にとりまして、未知の道程であるばかりでなく、従来のように先例を求めて進むことも困難であります。したがいまして、われわれは、これまで幾多の困難を克服する際に発揮されたあのたくましい国民のエネルギーと英知を結集し、新たなる国民的連帯のもとに、当面する諸問題を一日も早く解決しながら、調和のとれた安定成長への道を切り開いていくべきであると考えます。  私は、こうした認識のもとに、国民福祉の一層の充実と国際社会への貢献を目指して、通商産業行政を積極的に展開してまいる所存であります。以下その概要を申し述べます。  第一に、当面の経済運営のあり方と物価の安定でありますが、物価の安定こそは、すべての国民の切望するところであり、福祉社会を実現するための基本であります。  このため、政府といたしましては、これまで物価の安定を最重要政策課題として、総需要抑制策を中心とする各般の施策を実施してまいりました。この結果、最近に至り、本年三月における消費者物価対前年同月比上昇率を一五%程度にとどめるとの目標も、ほぼ達成可能と見込まれるに至りました。しかしながら、コスト面からの物価上昇圧力は根強く、また物価と賃金の関係が強まることも予想されますので、物価の動向には、今後とも警戒が必要であります。  一方、最近の鉱工業生産の動向を見ますると、低下幅は期を追って拡大し、昨年十二月には、過去最大の落ち込みを示しました。また、景気動向の実態を把握するため、先月、私は産業界の方々と懇談いたしましたが、主要産業の景気の実態は、昨年十二月末ないし本年一月から急速にさま変わりし、不況の進行には著しいものがあると判断されます。  このように、長期にわたる引き締めの結果、摩擦現象やひずみが深刻化しつつあることにかんがみ、政府といたしましては、先般経済対策閣僚会議を開催するなど真剣な検討を重ね、今後、総需要抑制基調の枠内におきまして、財政面、金融面等からきめ細かい対策を機動的に講じていくことにいたしております。また、景気が過度に停滞し、わが国経済が失速するおそれがある場合には、物価動向に留意しつつ、機動的な経済運営を行ってまいります。  同時に、経済運営に当たりましては、物価問題の重要性にかんがみ、当省といたしましても、中小企業・流通部門の合理化、近代化等に努めるとともに、生活関連物資基礎資材等につきまして、需給・価格動向の監視等の施策を引き続き行ってまいります。その一環として、五十年度におきましては、小売段階における生活関連物資の需給・価格情報を収集し、状況の急変に即応した措置を講ずるなど物価対策の強化・拡充を図ってまいる所存であります。  また、秩序と活力のある産業社会を実現するため、競争条件の整備には特段の配慮を行ってまいります。独占禁止法改正問題につきましても、現在、総理府を中心に、検討が進められておりますが、私といたしましては、わが国経済のバイタリティを損なうことのないよう配慮しつつ、前向きに取り組んでまいる決意であります。  次に、資源エネルギーの安定供給の確保の問題について申し上げます。  一昨年の石油危機を通じ、われわれは、資源エネルギーのほとんどすべてを海外に依存するわが国経済の脆弱性を痛感するとともに、資源エネルギーの安定供給の確保がわが国経済及び国民生活を営む上で、いかに重要であるかを、改めて認識いたしました。  一方、世界の資源エネルギー情勢をみますと、資源の制約化傾向と資源ナショナリズムの台頭がますます強まりつつあり、わが国経済の前途の厳しさが憂慮されます。われわれは、かかる認識の上に立って、わが国経済のセキュリティ基盤を培養すべく、資源エネルギーの安定供給の確保に全力を傾注していく必要があります。  まず第一に、もはや、個々の国家単位では対処し得ない資源エネルギー問題の現状にかんがみ、わが国は、資源保有国、消費国等すべての関係国との協調を図ってまいります。このため、国際エネルギー計画(IEP)に基づく緊急時における石油相互融通、エネルギー節約等を推進していく一方、産油国とは対話を通じて、相互の理解を深めるとともに、経済協力を中心とする経済交流を促進するなど国際協調を図っていくことにしております。  第二に、わが国エネルギー供給の大宗を占める石油につきましては、緊急時における石油の安定供給を確保するため、石油備蓄対策の抜本的強化を図るとともに、資源確保のため、石油開発対策を強力に推進することが肝要であります。すなわち、備蓄対策につきましては、昭和五十四年度末までに九十日分の備蓄を達成することを目標として財政面、金融面等からの各般の施策を拡充するとともに、石油開発につきましても、石油開発公団機能の強化・拡充を図ってまいる必要があります。  このため、今国会におきまして、石油開発公団法の改正等石油開発石油備蓄促進のための所要の法案を提出する予定ですので、よろしく御審議をお願いいたします。  第三に、今後におけるエネルギーの安定供給を図るため、国産エネルギーである水力、地熱、国内炭の確保に努めるとともに、準国産エネルギーといわれる原子力の開発を積極的に推進してまいる所存であります。  さらに、新エネルギーの開発は、将来のわが国エネルギー供給の長期安定化を図る上できわめて重要でありますので、太陽エネルギー、地熱エネルギー等の豊富かつクリーンな新エネルギー技術の研究開発を行うサンシャイン計画を、引き続き強力に推進してまいる考えであります。  一方、エネルギーと並ぶ貴重な金属資源につきましても、内外における探鉱開発を積極的に進めてまいります。  また、資源に乏しいわが国にとりましては、資源の有効利用を図ることが特に必要でありますので、廃棄物の再資源化事業等を強力に推進してまいります。  以上の供給面における施策と並んで、需要面におきましても、内閣に設置されたいわゆる「資源とエネルギーを大切にする運動本部」を中心にして消費節約の国民運動を引き続き強力に展開してまいるとともに、産業及び民生両面におけるエネルギー使用の合理化、省資源省エネルギーのための技術開発等に全力を傾注いたします。  また、長期的観点から省資源省エネルギー型産業構造を構築すべく、国際分業の理念に即応した海外立地の合理的展開を図るとともに、技術集約型産業の育成に努めてまいります。  次に、保安の確保と公害防止対策の充実について申し上げます。  無公害で快適な社会は全国民の希求するところであり、その実現に全力を注いでまいります。  まず、工場立地に当たって、公共の安全の確保と環境保全のため万全の措置を講ずることが何よりも重要であります。昨年末の瀬戸内海における石油流出事故は、関係方面に多大の影響を与えており、私は、この事故を大きな教訓として、今後の防災安全行政の強化に全力を傾注してまいる所存であります。  環境保全を図る上で最も重要なことは、工場立地の計画段階で十分な調査及び評価をすることであります。このような観点から、従来の産業公害総合事前調査を一層拡充するほか、大規模工場の立地に当たっては、企業みずからも十分な環境アセスメントを実施するよう指導してまいる方針であります。  次に、一昨年における石油コンビナートの爆発事故や、最近の家庭におけるLPガスの爆発事故など高圧ガスによる事故が後を絶たず、その保安対策の強化が緊急の課題となっておりますが、この問題につきましては、昨年七月に高圧ガス及び火薬類保安審議会の答申を得ましたので、今国会に高圧ガス取締法の改正をお願いすることといたしております。  第三に、自動車排気ガス規制につきましては、昨年末、中央公害対策審議会の答申が出され、いわゆる五十一年度規制は暫定値によることになりましたが、当省といたしましても、今後とも答申尊重の立場から、規制が円滑に実施されるよう関係業界を強力に指導してまいる所存であります。  また、金属鉱業等に係る蓄積鉱害の問題につきましても、施策の充実を図ってまいります。  次に、中小企業行政の一層の推進について申し上げます。  中小企業の経営の安定を図り、その健全な発展を促すことは、わが国経済の発展にとって不可欠であります。このため、従来から中小企業施策の拡充を図っているところでありますが、現在、長期にわたる総需要抑制策の結果、中小企業を取り巻く経済環境が極度に悪化しておりますので、健全な経営を行う中小企業等に不当なしわ寄せが生ずることのないよう、摩擦現象の回避に万全を期してまいる所存であります。  さらに、わが国経済が高度成長から安定成長へと転換するのに伴い、中小企業をめぐる経済社会環境は著しい変貌を遂げつつありますので、五十年度におきましては、新たな構想を加え、一層の施策の充実を図ってまいります。  すなわち、金融面におきましては、政府関係中小企業金融機関の貸付規模の大幅増加、貸付条件の改善、信用補完制度の充実等中小企業に対する資金供給の円滑化を図ることといたしております。  また、中小企業の約八割を占める小規模企業者につきましては、その施策の充実に特に留意する必要がありますので、無担保無保証の小企業経営改善資金融資制度を飛躍的に拡充するとともに、経営指導員の大幅増員と待遇改善、研修体制の拡充等に努めてまいります。  さらに、中小企業を取り巻く経済的社会的環境の変化に適切に対処しつつ、中小企業の構造改善及び新事業分野への進出を図っていくため、中小企業近代化促進法の改正案を提出いたしますので、よろしく御審議をお願いいたします。  次に、対外経済政策の積極的展開について申し上げます。  近時、国際経済は、原油価格の大幅引き上げに伴う国際流動性の著しい偏在、国際的規模でのインフレの高進と不況の深刻化等、戦後最大の困難に直面いたしております。  こうした多難な時代にありましては、通貨、通商両面における一層の国際協調のもとに、新しい国際経済秩序を構築することが必要であり、わが国も、この新秩序建設に積極的に貢献していくべきであると考えます。  特に、通商面におきまして、今般米国の新通商法の成立により、新国際ラウンドの本格的交渉を始める基盤が整いましたことは、貿易立国として自由無差別を基本理念とするわが国にとりまして、まことに喜ばしいことであり、本ラウンドの成立に全力を傾注してまいる方針であります。  次に、経済協力につきましては、先進国、開発途上国双方の調和ある発展なくして国際経済の安定と繁栄はあり得ないとの認識に立ちつつ、わが国としては、今後、量的拡充のみならず、質及び方法の面におきましても、抜本的拡充を図ってまいる必要があります。  その具体的実施に当たっては、相手国の真のニーズを見きわめつつ、その実情に応じ、適切な協力を行ってまいります。  国際経済社会の一員として重要な地位を占めつつある中東諸国に対しましては、これら諸国の工業化推進等のための技術の供与、技術者の訓練等技術面での協力を初め、各種の総合的な諸措置を積極的に講じてまいる必要があると考えております。  また、わが国企業の海外活動の適正化についても、十分配意してまいる所存であります。  次に、工業所有権制度の拡充等について申し上げます。  工業所有権制度につきましては、長年の懸案である物質特許制度の導入、累増する商標未処理案件の解消を図るため、特許法等の改正をお願いすることといたしております。  また、本年は、「海——その望ましい未来」をテーマとする沖繩国際海洋博覧会の開催の年に当たりますので、その成功に万全を期する所存であります。  最後に、以上申し述べましたように、本年は、国内的には調和のとれた安定成長を、また国際的には新しい国際経済秩序構築を目指して、新たな時代を切り開くために、力強い一歩を踏み出す年であります。  私は、こうした重大な時期に通商産業行政を相当する者として、その責務の重大さを痛感いたしますとともに、歴史を誤らぬよう、激動する時代の流れを直視し、発生する諸問題に対しては、的確な判断と果断かつ迅速な決断を行い、国民各位の御理解と御協力のもとにこの難局の克服に全力を傾注してまいる決意であります。  委員各位におかれましても、一層の御理解と御支援を賜りますようお願い申し上げます。輝かしく、かつ希望に満ちた福祉社会が一日も早く訪れることを希求いたしまして、私の所信表明といたします。
  33. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、経済企画庁長官から、経済企画庁基本施策について説明を聴取いたします。福田経済企画庁長官。
  34. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 経済運営の基本方針につきましては、さきの本会議で詳細に申し述べお聞き取りを願ったところであり、また、本日は私のあいさつを印刷にして皆さんに配付してありますので、特に私が重要と考える点について皆さんに申し上げ御理解を賜りたい、かように思います。  いま日本の経済は未曽有の困難と言っていいと思うんであります。いろいろな問題がふくそうしておるわけですが、それを整理してみますと二つの問題に分けられると思うんです。  一つは、わが国のこれからの長期にわたっての経済のかじの取り方をどういうふうにしていくかという問題であります。それからもう一つは、当面のこの混乱した経済の事態をどういうふうに収拾するか、そういうことであります。  第一の長期的課題につきましては、これは私は大変な事態に直面していると思いますのは、世界が非常な転換期にある。私は人類始まって以来の転換期と言っても過言でないと思うんです。つまり、われわれはいままで資源というものを頭に置いて暮らしてこなかった、それがいよいよそうはいかない資源有限時代という時代になってきた、そういう意識が世界じゅうに満ち満ちておるわけであります。そういう間におきまして、各国の経済のかじの取り方、これは資源を持っている国も持たない国もみんな変わってくる。私は、本会議で申し上げたんですが、これからの世界情勢というものは、これは波乱含みの低成長時代、こういう時代に入っていくのじゃあるまいか、そういうふうに思っておるのであります。  そういう間において、資源小国であり、食糧小国であるわが日本がどういう体制を整えるべきかということになりますと、これはもう結論はおのずから明らかだと思うんです。つまり、いままでの十五年間の高度成長政策をここで大きく転換いたしまして、国際情勢をにらみながら静かで控え目の成長、そういう考え方を基本とした経済政策に大きくかじを取り変えていかなければならぬだろう、こういうふうに思うんです。しかし、それの切りかえはなかなか容易じゃありません。とにかく十五年間にわたって企業にも家庭にも、あるいは国、地方の財政にもしみ込んだ、その高度成長の勢いというものをどういうふうに払拭するか、これはなかなか大変な問題だと、こういうふうに思っておるんです。  まあしかし、世の中が変わってきた、こういうことを国民によく理解してもらわなければならぬ。そのために政府はこういうふうに変わっていくんだという考え方、これを国民に明らかにしなきゃならぬ。そういうことを考えながら昭和五十一年度を始期とする長期経済展望をひとつつくってみたい、経済社会基本の計画であります、これをつくるいま作業を始めておる次第でございます。  この作業によりますれば、これは経済成長の速度が変わってくる、これはもう当然そうなってきます、低成長政策になる。しかし同時にそればかりじゃないんです。やっぱりいままでの高度成長下では社会資本の立ちおくれというような問題がある。このわれわれの生活周辺の整いというものが立ちおくれておる。いままでは何といっても産業、特に工業発展中心である。そういう体制から、われわれの生活優先という立場に立ってのこの国力の配分ということを考えなければならない。同時に、高度成長期と違いまして、社会的公正という問題に大きく目を見開かなければならぬ、こういうふうに思います。さらに、国でも地方でもあるいは事業でも家計でも、省資源、省エネルギーに徹した運営ということを考えなけりゃならぬ、こういうふうに思いますが、それらの考え方を盛り込みました長期計画を速やかに策定いたしまして、そして国民の御理解を得たい、こういうふうに考えておる次第でございます。  第二の、当面の問題につきましては、とにかくあれだけの混乱、昨年度のごときは国際収支百三十億ドルの赤字である、消費者物価は一年度間に二四%も上昇する、こういうような後を受けてのそういう混乱からの脱出でございますので、そう簡単にいかないです。私はまあ二年ぐらいは落ちつきまでにはかかるんじゃないかというふうにも思いますが、なるべく早く混乱から脱出したい、そういう努力をしたいと思っております。  国の経済のかなめは何といっても国際収支と物価でございまするが、この二つの面におきましては、まず国際収支、これは昨年度の百三十億ドルの赤字、これがかなり改善されまして、ことしはまあ赤字は解消はできませんけれども、五十億ドル程度の赤字と見られるのであります。物価の方は、これは皆さん御承知のとおり、もう卸売物価のごときは今日この時点におきましては横ばいというような趨勢になってきております。  それから消費者物価につきましては、これもかなり鎮静化してまいりまして、昨年十二月の全国消費者物価指数、これは〇・四である。それから本年一月になりましてからの東京区部の指数、これが〇・二である。かなりこれは改善をされてきておるわけであります。私はこの状態を踏まえまして、まあ三月末、年度間の上昇率一五%程度以内というのをぜひ実現をしたい、こういうふうに思いまするし、またそれを踏まえまして、昭和五十年度におきましては、これはもう消費者物価の上昇を年度間何としても一けた台に持っていきたい、そして来年度のなるべく早い時期に消費者物価の上昇が定期預金の金利、この水準以下になるようにということを目指して、着実にかじ取りをいたしてまいりたい、かように考えております。  ただ、この私の申し上げましたプログラムが成功するかどうか、何とかして成功させなきやならぬと思いますが、その途上において重要な問題が二つあるんです。一つは物価と賃金の問題であります。一つは物価と景気の問題であります。  それで物価と賃金の関係につきましては、本会議で申し上げたとおり、もう高度成長期における物価と賃金との関係と低成長下における物価と賃金との関係が本質的に変わってきておる。この点をもう国民全体が深く理解すべきである。私は賃金問題の決定に政府として介入するという考え方は、これはよろしくない、こういう考え方でありますが、しかし、労使の間でそういう情勢の変化を踏まえて、合理的妥当な賃金決定がなされることにつきましては重大な関心を持ち、またそれを期待をしておるわけでございますが、同時に、政府としては、その賃金決定が合理的に解決されるように、その環境づくりにつきましてはベストを尽くさなければならぬ。その最大のものは何といってもこれは物価の安定である。  そういうことで四十九年度につきましては、御承知のように主要公共料金の引き上げを一切停止するとか、あるいは物資についての一つ一つの需給並びに価格についての状態を監視するという体制。それからさらに総需要抑制政策は御承知のとおりの状態で、これを堅持してまいるということで臨んでまいりましたが、さて五十年度以降につきましても、やっぱり総需要抑制政策というものはこれは堅持してまいらなけりゃならぬし、同時にまた、重要公共料金につきましても、まあ例外はありまするけれども、極力これを抑制するという方針を貫いてまいりたい、かように考え、また個別物資の需給価格につきましても、これも格段の配慮をしてまいりたい、そういうふうに考えておるんですが、切に賃金決定が合理的に決定されるということを期待してやまないのであります。  それからもう一つの問題、これはいま通産大臣からもお話がありましたが、物価、国際収支の方は好ましい方向で動いておりまするけれども、その摩擦現象といたしまして景気の沈滞というものがあります。鉱工業生産が非常に落ちてきた、あるいは滞貨整理これが思わしく進行しない、あるいは雇用環境が悪化してきておる、非常に大きな景気現象が出てきておるわけでございまするけれども、さて、これをここで道を誤ると、また物価問題に非常なはね返りになってくる。その間の調整をどうするかということがこれは非常に大きな問題であるというふうに考えておるのでありまするが、とにかく国民の願うところは物価の安定である、物価安定優先という考え方は、これは貫いていかなければならぬ、こういうふうに考えます。しかし同時に、よって生ずる摩擦現象に対しましては、これは真剣にその状況を見定め、そしてそれに対する対策はとっていかなければならぬだろう、こういうふうに考えておるわけでありまするが、物価と景気の問題につきましてはさような考え方で臨んでまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  何せ非常にむずかしい時期でありますので、いろいろな困難がありまするが、最善を尽くしまして速やかに物価を安定させ、また経済を安全運転ができるようにいたしたい、最善をそのために尽くしてまいりたい、こういうふうに考えておりますので、また皆さんから格段の御鞭撻、御教示にあずかりたい、よろしくお願い申し上げます。     —————————————
  35. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 次に、昭和四十九年における公正取引委員会の業務の概略について、公正取引委員長から説明を聴取いたします。高橋公正取引委員会委員長
  36. 高橋俊英

    政府委員(高橋俊英君) 昭和四十九年における公正取引委員会の業務について、概略を御説明申し上げます。  申し上げるまでもなく、昨年のわが国経済は、強力な総需要抑制策の影響により、物価は後半からようやく鎮静化の方向に向かいつつありますが、同時に景気停滞の色も濃くなり、現在インフレと不況という二つの谷にはさまれたむずかしい局面を迎えております。  際立った物価騰貴によって混乱を来した一昨年とは様相を異にする年でありましたが、公正取引委員会といたしましては、基本的な姿勢を変えることなく、公正かつ自由な競争秩序を確保して、わが国経済の健全な発展を図るため、独占禁止法の厳正な運営にできるだけ努力を払ってまいりました。  しかしながら、近年におけるカルテル違反事件の続発、多くの産業分野での寡占化の進展、さらには高度成長時代から低成長時代への移行という新しい事態を控え、昭和二十八年の改正後二十年を経過した現行独占禁止法がこれらに十分対応できないのではないかという問題に直面したと考えまして、国会でも御指摘がありましたことでもあり、一昨年来、現行独占禁止法に関する改正点につき鋭意検討を重ねまして、その結果、昨年九月に独占禁止法改正試案の骨子を作成し、これを発表いたしました。  この試案は、目下、政府の独占禁止法改正に関する審議等に際し、参考資料とされております。  次に、昨年における独占禁止法の運用でございますが、昭和四十九年中に審査いたしました独占禁止法違反被疑事件は百六十二件、同年中に審査を終了した事件は百三件であり、そのうち法に基づき排除措置を勧告したものは五十九件でありまして、これは昭和四十八年に次ぐ件数となっております。これら違反事件の内容について見ますと、昭和四十八年と同様、そのほとんどは値上げ協定事件であり、また大企業の全国的規模の事件が多くなっており、中でも同一の企業が再三にわたってカルテルに参加するというようなな事例が目立っております。  公正取引委員会は、このような事態に対処して、排除措置を従来以上に厳しく行うことに種々努力いたしましたが、特に石油業者及びその団体の価格・生産数量協定事件につきましては、カルテル事件としては初めて、検事総長に対して告発を行いました。また、小規模事業者の相互扶助を目的とする協同組合に実質的には大規模事業者が加わり、カルテルを行っているケースにつきましで、今回初めて大規模事業者の身がわりともいうべき子会社に対し、組合から脱退するよう勧告いたしました。  次に、許認可、届け出受理等に関する業務としましては、昨年における合併届け出は九百三十九件、同じく営業譲り受け四百三件で、前年に比べ若干減少しており、内容的にも、ほとんど中小企業の合併等でありまして、特に問題となるものはありませんでした。  また、国際契約等につきましては、昭和四十九年中に届け出のあった五千九百八十三件のうち、並行輸入阻止条項、競争品取扱制限条項を含む四百四十八件について、これを是正するよう指導を行いました。  独占禁止法の適用除外関係では、まず、再販指定商品を大幅に縮小するため一昨年十月に行いました告示が、昨年九月から施行され、その結果、現在指定商品として残っているものは、一部の医薬品と化粧品のみとなっております。  次に、不況カルテルの問題でございますが、御承知のとおり、昨年末ごろにかけて、需要の減退により景気が悪化してまいりました短繊維紡績糸及び梳毛糸業界から生産数量制限を主たる内容とする不況カルテルの認可申請がありました。公正取引委員会はこれらにつきまして、認可要件に照らし厳正に審査した結果、不況カルテルが関連業者、一般消費者等に影響することが大きいことを考慮し、不況事態の克服に必要な限度を超えることがないよう実施期間を短縮する等、修正を行わせた上認可いたしました。  なお、総合商社の事業活動につきましては、独占禁止政策上の問題点を検討するため、その貿易、国内取引に占める地位、金融機能、株式所有による系列化、企業集団形成の実態、取引上の地位の利用等の調査を行ってまいりましたが、その結果を昨年一月の第一回調査報告に続いて、本年一月に第二回調査報告として発表した次第であります。  景品表示法の運用について申しますと、昭和四十九年中に同法違反の疑いで取り上げた事件は、千五百七十一件でありまして、このうち排除命令を行いましたもの二十七件、警告等により是正させましたものは八百九十件であります。  公正競争規約につきましては、昨年新たに認定した規約は七件で、四十九年末現在における規約総数は四十九件となっておりますが、さらにその設定を推進するため、目下鋭意努力中であります。  また、都道府県の行います違反事件の処理状況を見ますと、景品表示法の施行権限の一部を都道府県に移譲いたしましてから三年目に当たります昨年におきましては、その処理もようやく軌道に乗ってまいり、処理件数も増加し、違反行為の是正を行わせた件数は約四千件となっておりますが、今後とも都道府県の一層の協力が得られますよう努めてまいる所存であります。  次に、下請事業者の保護に関する施策といたしましては、昭和四十九年中には、下請代金の支払い状況を中心に約一万五百件の親事業者に対しまして調査を行い、七百八十四件について支払い改善等の措置を講じさせました。  以上、簡単でございますが、業務の概略につきまして御説明申し上げました。  何とぞよろしく御指導、御鞭韃のほどをお願い申し上げます。
  37. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 以上で大臣の所信及び政府側の説明は終わりました。  質疑は後日に譲ります。     —————————————
  38. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) なお、石炭問題について通商産業大臣に対し質疑の申し出がありますので、これを許します。対馬君。
  39. 対馬孝且

    対馬孝且君 通産大臣に対しまして、新石炭政策の問題について、三点、簡単に質問申し上げたいと思います。  第一の問題でありますが、一月二十四日に再開をされました通常国会の三木施政方針演説の中に、全く今日の石炭政策の「セ」の字も出てこなかったということに私は愕然といたしました。いままた河本通商産業大臣所信表明がありましたが、いまの所信表明の中にも、石炭の問題については「国内炭」というたった三字だけであります。私は、本当に総エネルギー政策の中で石炭を見直すというのであれば、見直しに対しての大臣の基本的な姿勢があってしかるべきである。しかも、昨年、四十九年六月三日に商工委員会におきまして、中東紛争による石油危機、わが国の総エネルギー政策の中にあって石炭政策を根本的に見直す「新石炭政策の樹立に関する決議(案)」が採択をされているのであります。それにもかかわらず、いま大臣所信表明を聞きますと、新石炭政策に対しては気魄をもって石炭政策を見直そう、こういう意欲は全然見られない。こういう問題について、炭鉱に働くあるいは産炭地に住む住民としては、まさに私は今日失望の一途をたどるものと考えざるを得ません。  したがいまして、すでにこの十年間における石炭は五千万トン体制が二千万トンになり、しかも二百二十二炭鉱が三十七炭鉱に昨年までは激減をしているのであります。こういった状況の中で、しかも、私は率直に申し上げますが、三木総理大臣が通産大臣時代に一番炭鉱がつぶされているのであります。まさしく石炭の取りつぶしを行いました張本人は三木内閣総理大臣であると言わなければなりません。それを引き継ぎました新通産大臣が相も変わらず、石炭問題に対しまして基本的な姿勢として私はこれを受けとめることはできません。いま山元で働く者はともあれ掘れる石炭は一塊の石炭でも掘る。先ほど経済企画庁長官が資源活用の世論がこれからの世の中で大事だと、こう言っていますが、所管の通産大臣がそれに触れていないではありませんか。  それで、私は、今日の総合エネルギー政策の中に占める昭和五十年度以降の石炭ベースについて、新通産大臣はどう考えているのか。私の試算によりますと、年間五十万トン国内炭の再開発、封鎖鉱区の再開発もしくは露頭炭開発において昭和六十年度二千五百万トン体制をすることが可能であるという結論であります。この点について、まず基本的な姿勢をお伺いをしたい、こう考えます。
  40. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) 昨年秋の石油問題が起こりましてから、これは世界各国において石炭が非常にいま重大な課題にもなってきたわけでございますが、わが国は御案内のように石油はほとんど出ない、こういう特殊な事情もありますので、それ以降、石炭対策というものはわが国のエネルギー政策上私はきわめて重大である、かように考えております。  この所信表明の中には、時間の関係で触れるところが少ないわけでありますが、しかし、原子力であるとか水力であるとか、そういうものと並んで石炭がきわめて大事であるということの基本的姿勢だけは強調したつもりでございます。したがいまして、石炭は非常に重大である、大切である、そういう観点に立って石炭行政を進める基本姿勢には間違いはございません。  それから、いまいろいろ審議会に諮問等をしておりますので、最終的な細かい数字をいま私から断定的に申し上げるのはいかがかと思いますが、しかし、少なくとも二千万トンの体制だけは絶対に崩したくない、できることならばおっしゃるように幾らかでもふやしていきたい、二千五百万トンまではふえるかどうかはいま明言できませんけれども、最低二千万トンとして幾らかでもふやしていきたいというのが基本的な姿勢でございます。
  41. 対馬孝且

    対馬孝且君 基本的な姿勢は二千万トンを崩したくないということですけれども、言われてから、大臣、そういう誇張をしたって、もうすでに今日の第五次にわたる石炭政策は、スクラップ政策でつぶされてきたんですよ、山が、先ほど言ったように。現実につぶしたのは、これ自民党の今日の石炭政策によってつぶされたではありませんか、率直に言って。ただ、それを見直すというんだから、来年から見直したんではもう時すでに遅くなるんですよ。  そういう意味で、見直し論として次に大臣に求めたいことは、昨年、中曽根当時の大臣が九州の現地視察で坑内に実際に下がってキャップランプをつけて入っています。少なくとも昭和五十一年度から石炭政策見直したのでは、午前中も質問いたしましたが、北海道のある大炭鉱で二百九十六億の赤字を出して、すでに閉山の一歩手前にあるというような危機感が出ているわけであります。午前中も私は論議いたしました。  そういう意味では、第二点の問題として私が申し上げたいのは、昨年は中曽根通産大臣が九州に入ったんだが、今年は河本通産大臣に北海道に来ていただいて、新政策樹立の前に、期日はいつとは申し上げません、新政策樹立の答申案が出るまで待つという姿勢ではなくて、通産省が一歩先に出て新政策を樹立をする、そのためにひとつ北海道の現地視察をしていただきたい、この点について大臣の所見をお伺いします。
  42. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) 御質問にないことでございますが、私はこの石炭問題は非常に重大に考えておりますので、実は、先般も石炭業界の代表と一日を割きまして通産省の幹部総出で懇談をしたわけでございますが、やはりおっしゃるように百聞は一見にしかずといいますか、そういうこともございますので、ぜひともこれは私も見たい、現地を視察したい、こういうふうに考えておりますので、そういう準備をいたします。
  43. 対馬孝且

    対馬孝且君 それでは北海道へ必ず来るということですね、そういうことですね。
  44. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) そのとおりであります。
  45. 対馬孝且

    対馬孝且君 それでは第三の問題として、私は先ほども午前中質問しておりますから関連いたしまして、これは基本的な姿勢ですから大臣にお伺いしたいのでありますが、現在ある石炭合理化臨時措置法というのは、御案内のとおりこれはまさにスクラップアンドスクラップ政策のためにつくられた法律であります。したがって、本当に政府が石炭政策を見直すというのであれば、この際、合理化臨時措置法を私は廃止をして、石炭鉱業安定のための基本的な法案を検討すべきであると考えるが、この点について大臣の基本姿勢をお伺いいたします。
  46. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) これはいま審議会に答申を求めておりまして、せっかくいろいろ権威者が集まりて検討していただいておりますので、近く答申が出ます。その答申を待ちまして、必要とあらば法の改正も行いたい、かように考えております。
  47. 対馬孝且

    対馬孝且君 答申案を待って法を再検討したいといういまの答弁でありますが、私はこの点だけ明らかにしておきます。少なくとも合理化臨時措置法というのは、先ほど言ったように、スクラップ案でございますから、これから本当に石炭を見直すためにはビルド法案でなければならないわけですから、このためには、私は少なくとも長期を展望した石炭産業のためになる、そうして石炭産業を見直すということは、私はもう一つ大臣に申し上げておきたいのは、炭鉱労働者の労働条件、労働者を見直さずして石炭産業の見直しはない、こういう意味では午前中申し上げましたけれども、石炭労働者の見直しということも含めて、石炭対策の樹立に当たっていただきたい、この点について最後にお伺いします。
  48. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) まことにごもっともな御意見でございますので、そういうふうな方向で進めてまいります。
  49. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大臣、私たちの石炭に対する態度は、石炭日本の唯一の地下資源であるから大切にしなきゃならぬという立場に立っているんですね。しかし、これまでの通産省、政府のやってきた経過を見ますると、石炭は高くつくから、石油が安いから石油に乗りかえろということで、閉山をどんどん進めてきたと思うんですね。あなたは価格の問題で石炭問題を決定していこうというのか。本当に私たち、先ほど社会党委員の話を聞いておっても、やはり石炭を大切にせよという立場だと思うんですね、私らも同じ立場なんですね。地下資源石炭は唯一の地下資源であるから、それを大切にしなければならぬ、そういう立場で私たちはこれまで石炭論議をやってきたわけです。  しかし、先ほどの答弁を聞いていても、石油が昨年非常な困難な状態になったから石炭見直した、こう言わんばかりの御答弁なんです。一体どういう立場に立つのですか。値段の、価格の点に立って石炭より重油が安くつくならば重油を使って石炭を従来どおりつぶしていこうという方針なんですか、それともやはり石炭をあくまでも守っていこう、そしてどんどんと出炭量もふやしていこうというそういう御方針なのか、そこをはっきりまず御答弁していただきたい。
  50. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) まず根本的に申し上げますと、一年三カ月前に第四次中東戦争に基づきまして石油問題が起こりましてから、日本のエネルギー政策というものは私は根本的に変わったと思うのです。  それはどういう点で変わったかといいますと、結局、エネルギーの面で日本はとにかく他力本願である。できるだけ外国から独立しなければならぬ。しからば独立するためにはどうすればいいかといいますと、結局、石炭、水力、地熱あるいはまたそれに準ずるといわれる原子力、こういうものを開発していく、そうしてできるだけ外国依存を少なくしていく、これが私は一つの大きな問題点である、こういうふうに思っております。
  51. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  52. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 速記をつけて。
  53. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産大臣、最近の新聞を見ていますと、キッシンジャーがもう数年たたずして石油の値段が七ドルから七ドル半ぐらいになるだろうという見通しを述べていますね。そうすると、仮に石油が今後五年後に七ドル、七ドル半ぐらいになっても今日と同じように石炭の重要性を政府ははっきりと確認して対策を立てていくのか、七ドル、七ドル半になればまた再び重油に乗りかえて石炭をまま子扱いにしていくのか、そこをはっきり聞かせてください。
  54. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) キッシンジャーの構想といわれることは私はまだ聞いておりませんけれども、仮にどういう問題が起ころうと、要するに、とにかくできるだけ国内資源国内エネルギーというものを確保していって、日本のエネルギーが外国からできるだけ独立していく、それがやはり基本方針でなければならぬ、こういうふうに考えます。
  55. 林田悠紀夫

    委員長林田悠紀夫君) 本日はこれにて散会いたします。    午後二時十三分散会      —————・—————