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浜本万三君 私は、
日本社会党を代表して、
政府提案の
原子爆弾被爆者に対する
特別措置に関する
法律の一部を改正する
法律案について反対討論を行うものであります。以下その反対の
理由を申し述べます。
第一は、
原爆被爆三十年を迎えまして、先般法案の審査に資するため、当
委員会から
委員派遣として
広島、
長崎両県に視察に参りました。その際、
被爆者やその遺族からいずれも多年の念願である
原爆被爆者援護法を
被爆三十周年を迎えたことしこそぜひ制定してほしい旨強い要望があったことは派遣
報告で御承知のとおりであります。しかるに本法案は、
原爆被爆者の悲願である国家補償の精神に基づく援護法にこたえたものではありません。
本来、
原爆被爆者の
医療及び
特別措置のいわゆる二法は社会保障の枠内で
規定されたものであって、国家補償に基づいてはおりません。
もともとサンフランシスコ条約において対米請求権を放棄した
日本政府は、国際法違反の非人道的な原子爆弾を投下した米国にかわって
原爆被爆者の
方々に対して国家の責任において補償すべきことは当然であります。したがって、死没者の弔慰金はもちろんのこと、全
被爆者や遺族への年金、
被爆二世、三世への援護措置などは本法案ではどこにもうたわれていないのであります。
第二に、本法案は、特別手当などの諸手当の増額と保健手当及びいわゆる家族介護手当の新設などが挙げられ、一見して前進したかのように見えます。しかしながら、たとえば特別手当の一つを取り上げてみても、その手当額は引き上げられたが、認定
基準の厳しさや所得制限に加えて、生活保護の収入認定等いろいろの制限があるために、
原爆被爆者手帳交付者は三十五万六千人のうち昭和五十年度予算では特別手当の対象者はわずかに三千七百十六人であって、
被爆者の置かれている実情から見てもとうてい援護措置とは言えないのであります。
また、新設された保健手当は健康な
被爆者に対しても支給されるもので、爆心地から二キロメートルの
範囲に限定したため、一部の地域を分断、差別することになります。さらに、この二キロメートルの距離とした被曝
放射線量二十五
レムという
国際防護委員会の
基準はすでに古い
基準であり、科学的
根拠のきわめて薄弱なものであることは当
委員会の
審議及び参考人の意見でも明らかであります。
なお、保健手当の性格からして、直接
被爆者全員に支給し、所得制限は撤廃すべきであります。
法律による直接
被爆者の数は約二十四万人で、これに対する保健手当の対象は約四
万三千名で、わずか六分の一であります。
また、
原爆病院など
医療施設に対する国の助成措置が不十分であるため、
施設は老朽化し、累積赤字は多額になり、これが改善を要求する声が強くなっています。この際、
政府は一日も早く科学的な検討を行い、もろもろの不合理な点を是正するように強く要求するものであります。
第三に、われわれは野党四党による
原爆被爆者援護法案を提出しております。この法案は
内閣提出の本案の欠陥を是正し、真に
被爆者の要求にこたえたものであります。
どうか
政府におかれては、いまからでも遅くはありませんから、本法案を撤回し、野党による援護法案に同調されるよう強く要求いたしまして私の反対討論を終わります。