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参考人(
中島篤之助君) 私が、「
むつ」が漂流しておりますときに実は
調査団が
——調査班というのが正確な名称の
ようでありますけれ
ども、派遣されまして、それを受けてしゃへい
技術検討小
委員会等でいろいろ計算をされた結果を中間
報告という形でたしか十一月の中ごろ発表されておるわけであります。しかしそれはいわゆるはっきり申しあげて、官庁の
報告でありまして、われわれそれを読みましても、何といいますか、結果が書いてあるだけで吟味ができない
ような
資料であったわけであります。最近になりまして、
日本原子力学会誌に、たしか二月号に解説という形でそれらの結果がどういうことでこうなったというふうなことが発表されました。それから
原子力学会が四月の初めに工業大学でございまして、私そこで実際に一連の御発表がありまして、「
むつ」へ行かれた宮坂氏を初め計算をされた
方々の御発表があるのを聞きまして、いろいろの実は疑問があったのが解けたということが現状でございます。やはり私の
結論はつまり非常に不十分なデータであって、それはニュートロンが
漏れたというぐらいのことは、これは確かに言ってよろしいんですけれ
ども、それが十の五乗エレクトロンボルトであるとかなんとかということはとうてい言えるはずがないのではないかというふうに思います。第一に不備である点の第一は、これは
調査班の構成でありますけれ
ども、原研の宮坂氏以外は三菱の方が四人、それから石川島播磨の方がたしか二人、宮坂氏が入って合計七人という構成だったと思いますが、お持ちになっている
測定器が非常に不十分である。
一つの例を挙げますと、どう言いますか、
測定器のキャリキュレーションができていない、ですからこれは、非常にこれは
技術的な話になって恐縮なんですけれ
ども、たとえば
原子力学会誌に出されたものでも、たとえばTLDのデータ読み値
——読み値そのまま、読み値というのが縦軸にありまして、それからBF3のカウンターにつきましてはこれは計数率というのが書いてありますけれ
ども、ところがそういう発表がされ、読み値というのは、これは読み値でありまして、これはよくフォールアウトの
実験なんかで空から放射能が降ってくるときに何カウントというのはこれは
意味がないということは、このごろ大体常識になっているのですけれ
ども、それと同じ
ような値にすぎないのでありまして、それが物理的にどういう
意味を持っているかということのためには、これは当然
測定器のいろいろな
中性子に対する
エネルギースペクトル等々が計られていなきゃならない、つまりキャリキュレーションがされていなければいけないわけであります。にもかかわらず、どうしてああいう結果が出たか、これは結果を、
実験値をそのまま使って出たのではなくて、あのしゃへい
検討委員会のやつは、計算機をお使いになりまして、それで
計算コードの計算値からどうもそういうことをおっしゃったらしいというのが、その当時はよくわからなかったんですが、
原子力学会等の
報告を聞いて
ようやく私はわかった。そうしてそのとき、同時にBF3カウンターはやはりこれも原研の同僚である小林君が船に乗っておって、そしてその使ったのを
原子力学会に備えてキャリキュレーションした結果を
原子力学会で発表されておるということは、十一月十五日にしゃへい小
委員会が
報告を出された時点ではそのBF3の較正
実験は終わっていないわけでありますから、これはレスポンスのわからない
測定器でもってお計りになった結果でもって非常に断定的なことをおっしゃってしまっておるということにならざるを得ないのであります。これは私の疑問であります。ですからそのほかにも非常にたくさんのそういう疑問がございます。それから第一、ああいうふうに計算機を使ってしかもそれにその実測値を当てはめるということをおやりになっているわけでありますけれ
ども、こういうことは最近いろいろな
科学のほかの分野でもやっておることでありまして、それ
自体はかまわないのですけれ
ども、そういう方法をおとりになったのが悪いということじゃないのですけれ
ども、問題は計算にお使いになるモデルが正しいかどうか、それから使った
計算コードが、たとえばどういうコードとどういうコード、二つも三つもコードがあった場合に、そのどのコードを使うのがよいかという
ようなことは、これは実は
結論から申しますと、「
むつ」の
ような複雑な体型で初めてそういうコードのチェックができるというのが私は正しい答えではないか、つまりやはり
実験ということであれば、そのちゃんとした計測
実験をやってコードの当否が判定されるべきものであるというのが私の
考えであります。ところがどうもあの
委員会ではそうではなくて、非常に不十分なデータを計算機を非常に、少し言葉悪いのですが、ひねくり回して無理に合わせる、しかも都合の悪いデータは知らばくれて、そして合った、合った。合ったというのですけれ
ども、なぜ合ったのか全くわからない。これはモデルと
実験結果を合わせる問題というのは、これはフィットの問題と申しまして、これはどういう方法を使うかということが、実は計算機を使う場合の一番基礎的なことですけれ
ども、そういう吟味が非常に粗い、はっきり申し上げまして、と思います。私は決して
遮蔽の
専門家ではございませんけれ
ども、何回も読みまして
ようやく話の筋道がわかるぐらい、あの
報告はわからない、わかりにくい
報告でございます。
それからもう
一つ、申し上げておきますと、あのときに原研ではANISNとTWDTRANという二つのコードを使いました。それから船研の方では非常に最近竹内さんどいう方がPALLAS−2D−CYという新しいコードを
開発しておられますが、たとえばそのPALLAS−2D−CYとというのは非常によいコードの
ように印象としては思われるのですけれ
ども、
原子力学会誌にはPALLASの計算結果とANISNの計算結果が黙って書いてあって、ところがそのPALLASの結果は全然お使いになっておらないわけなんであります。この辺のところも私はどうしてだかよくわからないという
ような疑問がございまして、これはやり方が悪かった、けしからぬという
ようなことを言うつもりはないので、やはり一番大切なことは、せっかく進歩した
計算コードが
開発されたのならまさにこの「
むつ」の
ような大きな複雑な体系でこれをきちっとやる。それをやるだけでもやはり百五十億もかけてやった
原子力船を
開発した
意味というのはむしろ初めて出てくるのであって、私はどうしてもきちっとした
調査をしていただきたい。それと同様な御趣旨のことは
大山先生も大変抽象的には
表現しておられまして、改修の前には十分な再吟味の
実験が必要であるということを書いておられまして、もしそういう御趣旨でおっしゃっているとするならば、私が大変こういう失礼なことを申し上げる必要はないのでありますけれ
ども、そういうことを言いたい。それからもう
一つ。これは戻って申し上げますと、さっき申しました「
むつ」の
調査班というのは実は原船事業団から派遣されたものだということを私うかつにも最近
原子力学会誌を読むまでは知りませんでしたけれ
ども、これですと、
調査団の
性格と申しますか、中立性と申しますか、これはたとえば水島の石油事故みたいなことが起こったときに石油会社だけの
調査団だったらばこれは
国民が納得しないというのは当然でありまして、当然
政府なりなんなりが客観的な
調査団を編成して御派遣になって初めて納得される、同じ結果が出るとしてもそういうふうになるというのが当然ではないかと思うのです。たとえば「
むつ」の問題の場合も、これは大変失礼でありますが、たとえば
大山先生が青森の現地に行かれて余り船に
関係しなかった
専門家の
会議をお開きになるという
ようなことをわざわざおやりになり、その後立教大学の田島
先生、服部学君などが一緒に行ってそれで漁民も一緒に見て初めて解決したという
ような経緯があるというのは、これは大変教訓的でありまして、そういう
意味から言ってもこの「
むつ」の
調査班は私は不十分であると思います。だから少なくとも私の
希望は、この
大山先生の
委員会で本当は
調査団を派遣していただきたかった。それが諸般の事情ということをおっしゃる前に
政府に対してやはりもう一度
調査班を出してきちっとした
調査を行うべきであるというふうに言っていただきたかったというのが私の感想、
感じておることでございます。