運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-02-26 第75回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十六日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席分科員    主査 笹山茂太郎君       木野 晴夫君    小坂善太郎君       櫻内 義雄君    西村 直己君       山崎  拓君    石野 久男君       馬場  昇君    安井 吉典君       青柳 盛雄君    田中美智子君       近江巳記夫君    兼務 岡田 春夫君 兼務 中村  茂君    兼務 村山 喜一君 兼務 米原  昶君    兼務 大橋 敏雄君  出席国務大臣         自 治 大 臣         (北海道開発庁         長官)     福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官井出一太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国務大臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         任用局長    小野 武朗君         人事院事務総局         給与局長    茨木  広君         内閣総理大臣官         房総務審議官  佐々 成美君         総理府恩給局長 菅野 弘夫君         北海道開発庁総         務監理官    秋吉 良雄君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         科学技術庁原子         力局次長    福永  博君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁長官官房         会計課長    竹谷喜久雄君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁企画調整         局環境保健部長 橋本 道夫君         環境庁自然保護         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      大場 敏彦君         国土庁計画・調         整局長     下河辺 淳君         文化庁長官   安達 健二君         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君         社会保険庁医療         保険部長    山高 章夫君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         食糧庁次長   下浦 静平君  分科員外出席者         北海道開発庁計         画官      野々山伸彦君         国土庁計画・調         整局計画課長  小谷善四郎君         文部省大学局審         議官      三角 哲生君         農林大臣官房審         議官      二瓶  博君         農林省構造改善         局建設部長   福澤 達一君         通商産業大臣官         房参事官    日下部光昭君         通商産業省立地         公害局公害防止         指導課長    山中 正美君         工業技術院総務         部産業公害研究         調整官     奈須  洋君         労働省職業安定         局庶務課長   白井晋太郎君         建設省道路局企         画課長     浅井新一郎君     ————————————— 分科員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   黒金 泰美君     小坂善太郎君   西村 直己君     山崎  拓君   石野 久男君     馬場  昇君   青柳 盛雄君     田中美智子君 同日  辞任         補欠選任   田中 武夫君     安井 吉典君   近江巳記夫君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   山崎  拓君     西村 直己君 同日  辞任         補欠選任   小坂善太郎君     黒金 泰美君 同日  辞任         補欠選任   石田幸四郎君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     石野 久男君   安井 吉典君     田中 武夫君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     近江巳記夫君 同日  辞任         補欠選任   田中美智子君     金子 満広君 同日  辞任        補欠選任   金子 満広君     瀬長亀次郎君 同日  辞任         補欠選任   瀬長亀次郎君     石母田 達君 同日  辞任         補欠選任   石母田 達君     青柳 盛雄君 同日  第三分科員米原昶君、第四分科員岡田春夫君、  第五分科員中村茂君、村山喜一君及び大橋敏雄  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計予算総理府所管(経済  企画庁、国土庁を除く)      ————◇—————
  2. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和五十年度一般会計予算中、総理府所管を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中美智子君。
  3. 田中美智子

    田中(美)分科員 まず、総理府に質問いたします。  女子職員昇格問題ですが、大体五等級のところでぐっととまっているわけですね。特に恩給局は、六等級の二けたのところでは、男子が二人しかいないのに女性が六十九名たまっています。それから統計局に至っては、職員二千二百名のうち、女子が千八百六十名という非常に婦人の多いところですけれども、ここでも六等級の二けたは男子は零、婦人が三百五名もたまっております。この点は、どのようにお考えでしょうか。
  4. 菅野弘夫

    菅野政府委員 お答え申し上げます。  私は恩給局でございますので、どうも恩給局以外のことはあれでございますが、恩給局につきましても、私は一ラインの部局の長でございますので、もちろんその人事任命権その他があるわけではございません。いま御指摘等級昇格の問題につきましても、恩給局としては、こういう人が適当であるという意味の推薦と申しますか内申と申しますか、そういうものをやっておるわけでございまして、最終的な権限を持っておるわけではございませんので、その点は、あらかじめお断りしたいと思います。  恩給局の現状でございますが、いま先生が御指摘になりましたように、たとえば五等級で申しますと、男性が二名ですけれども女性高位号俸にたまっているという御指摘はそのとおりでございますけれども、五等級というポストは、これも先生十分御存じのとおりに、係長でありますとか主任でありますとか、そういう役付ポストでございまして、そういう役付ポストに適当な人を——適当な人をと申しますのは、男女能力の差があるというわけではございませんけれども、そういうものをすべて総合して、最もふさわしい人を挙げた結果が、そういうことになっておるわけでございまして、別に女性能力が劣っている、あるいは女性差別しているから、いまのような結果が出たということではないというふうに思っております。
  5. 田中美智子

    田中(美)分科員 最終責任を持てないということは、どういう意味かよくわかりませんけれども、適当な人を選んでみたら、それは女は入っていなかった、男だけであったという御返事だと思います。  次に統計局の方に——一応ずっと御意見を伺いまして、後にしたいと思いますので、御意見を聞かせてください。  一応恩給局は、最終的な責任は持てないが、採用してみたら全部男であったという御返事だったと思います。統計局もそうでしょうか。——それでは、統計局が来てないそうですので、待ちまして後にしたいと思います。  次に、通産省に質問したいと思いますけれども、ここでも女子が三百九十二名いるうち、七割が六等級以下ということになっているわけです。この点については、どのような考えを持っていらっしゃいますか。
  6. 日下部光昭

    日下部説明員 御説明いたします。  いま御指摘の点は、昇格あるいは昇任の問題と関連しておるわけでございます。昇格等級別定数というものに限度が御承知のようにあるわけでございます。昇任係長課長補佐という定数みたいなものがありまして限度がある。われわれとしては、当然適材適所主義ということを大きく基本として従来やっておるわけでございます。この過程で当然男女差別というものは、私どもとしては行っておりません。具体的に申しますと、たとえば係長ポストにだれを昇任させるかということを考える場合には、部下の統率であるとか、あるいはそのセクションに関係のある国民の皆さんですね、中小企業の方々とか消費者の方とか、それから労働組合の方とか、いろいろありますけれども、そういう方との信頼関係を保ちながら効率的に仕事ができるというような人として、だれがいいかということをわれわれとしては考え昇任を決めていくわけでございます。その過程で、女性として適任者がいるということでありながら、女性だから、これはやめよう、男性にしようということは毛頭行っておりません。  それで、本省内部部局について見ますと、たとえば四十九年度を四十七年度と比較してみますと、主任という役付ポストがございますが、これは女性について申し上げるわけでございますが、四十七年度に比べて四十九年度は五三%アップ、要するに主任の数が女性について、それだけふえておるわけでございます。それから係長で四五%アップぐらいのことをやっておるわけでございます。われわれとしては当局と組合との交渉その他で、そういう女性処遇の問題というのは、いろいろ常日ごろ承っておりまして、私どもとしても問題意識は十分持っております。したがって、定数要求等の段階でもいろいろお願いしまして、人事院でもいろいろ御理解はいただいていると思います。そういう形で特に女性に関連のある主任ポストであるとか、あるいは係長、これは男性女性いろいろありますけれども、そういうものについて、できるだけふやしていくということを人事院の御理解を得ながらやっていくという方向で、いま努力をしておるわけでございます。  この点については、男女差別という単純な話はもともと非常におかしな話で、適材適所でやりながら、女性処遇というものもできるだけ改善していくという方向で、いま努力をしておるところでございます。
  7. 田中美智子

    田中(美)分科員 通産省お答えは、商工業者を相手に信頼関係仕事をしなければならない。その中で適材適所で採用していったら、男が皆五等級に行って、女の方が六等級にたまったんだ、結果的にはそうなっているんだ、しかし、これは男女差別でないというお考えで、その中に少しずつこれからは改善していくというふうなことですので、やはりそこには男女差別がないと言いながらも、改善しなければならないと言うことは、そこに大きな疑いがあるということを一応通産省はお認めになっていらっしゃるんだと思います。そのお言葉の中に、いま人事院の御理解を得てというふうに言っておりますが、人事院は、これについては御理解をしていないのか、どのような見解を持っていらっしゃるのか、人事院総裁にお尋ねしたいと思います。
  8. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お答えいたします。  性別等によって各種の差別をしてはならないということは、憲法なり国家公務員法なりではっきりと保障をしておるところでございまして、したがって、いま各省関係者からも御答弁がありましたように、昇任昇格等につきましても、ただ単に男女の別だけで差別をしてはならないことは、当然のことでございます。  公務員昇任昇格につきましては、公務員法なりあるいは給与法におきまして基本的事項を決めておりますほか、具体的な基準等につきましては人事院規則で定めておりますが、その趣旨は、要するにそれぞれ官職の職務と責任に応じて最もふさわしい人を、その勤務成績なり能力なり適任等に基づく選考によって選択するということが基準でございまして、人事院といたしましても、各任命権者に対して、そのような指導と申しますか、お願いを申してやっておる次第でございます。  いま通産省からお話のございました等級別定数という仕事は、われわれ人事院仕事でございますが、これは毎年各省庁の実態あるいは要請等を十分に伺いまして、毎年度これを実情に合わせて改定をするということをやっております。  御承知のように、いま五等級問題というのが一つの大きな問題点に相なっておりまして、そこで枠が非常に窮屈であるということがございますが、その点につきましても人事院といたしましては、毎年度できる限りの改善を行っておりまして、これに基づきまして——まあ役付でございますので、係長ということが原則になっておりますけれども職員構成実態等を見まして、主任というようなことで、これを五等級に格づけをするということで、六等級から上げていくということも、できる限りのことはやっておりますし、今後もその職員構成実態等に合わせまして、できる限りの改善措置を講じてまいりたい、かように考えております。
  9. 田中美智子

    田中(美)分科員 できる限りの改善をなさるというふうにおっしゃっていらっしゃいますので、これを具体的にどのように改善していかれるか、今後見ていきたいというふうに思います。  ことしは国際婦人年でもありますし、世界婦人が集まりまして、日本公務員の中にこのような大きな差別があるというふうなことは、世界婦人の間の話題になると思います。そういう意味で、人事院各省の今後の改善の方法というものをはっきりしていただかないと、文化国家と言われる中で非常に恥ずかしいというふうに思うわけです。  現実差別はしていないと、こう言いながらも、十二月に永年勤続で、二十年勤続で表彰されている。その中には、あなたは非常に優秀であるということが書いてある賞状をもらいながら、それで六等級の二けたにいつまででもとまっている。その上に特一、特二、特三などというふうな、いままでないものをくっつけて、まだそこに婦人をためていくというようなことがなされているということは、人事院総裁十分御存じだと思いますけれども、六月にあります世界婦人会議でもこれは話題になりますので、こういうことがないように、ことしの四月には徹底的に改善方をしていただきたいというふうに思います。  次に、農林省に伺いたいと思うのですけれども農林省はたくさんの研究所を抱えていらっしゃいます。蚕糸とか食糧とか農業技術とかというような研究所があるわけです。この研究所には室長が八十名いる。そのうち婦人は二名しかなっていないわけですね。こういうところが、男子は二等級の十一以上になりますと、みんな室長になるし、早い人は三十歳、遅くとも四十歳までには全部室長になっているわけです。それが女性の場合には、二等級の十九号になってもまだ室長にもなれない、五十歳になってもなれない。そして大学を出て学位をとり、研究論文をさんざん発表し、世界の有名な学会でも発表して、世界的にも認められている婦人研究者というものが室長にもなれないで、研究費も非常に少ないままで放置されている。これは男、女の問題ではなくて、人間能力開発と、また能力の適正な使い方というものに対して非常に大きな問題だというふうに思いますが、これについて農林省はどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  10. 小山義夫

    小山(義)政府委員 お答えいたします。  いま私ども農業関係試験場は二十ございます。御指摘の八十名あるいは二名という数字は、その中の特定一つ試験場ではないかというふうに、人数の規模から言うと考えられますが、固有名詞の御発言がございませんでしたので、農業関係試験場全体としてお答えしてよろしゅうございましょうか。  いま室長について御指摘がございましたけれども、まず最初に御理解をいただきたいことは、室長と同等あるいはそれ以上の格づけ待遇をしております主任研究官という職がございます。これは行政職で言いますいわゆる主任とは、ちょっと名前が似ておりますけれども、全く違いまして、主任研究官及び室長はすべて二等級の中から選ばれまして、それから主任研究官にも室長にも管理職手当がついております。主任研究官は大部分が二等級でございますけれども、中には一等級研究部長をおやりになった方が、研究部としての管理をやめて、もう一度本来の自分の研究業務に専念をしたいというふうな御希望があって、場の中の人事でもそれが適当だというふうな場合には、また主任研究官という職に戻って、研究をみずからおやりになるというふうなことも例があるような非常に幅の広い職種でございます。したがいまして、待遇あるいは男女の区別というふうな問題を考えますときには、私ども主任研究官室長は同じに扱って物を考えております。  そういうことからいたしますと、農林省農業関係試験研究機関全体で申しますと、室長及び主任研究官は、男性について言えば、男性の総研究者の中で五一・二%でございます。同じことを女性で申し上げますと、女性の全研究者の中で、その職種が占めておりますのは四三%でございます。若干女性の方がパーセンテージについて低いということはございますが、あるいは特定試験場について言えば、それがもっと、男女がほとんど同じような比率になっているというふうな状況も試験場によってはございます。個別のお話でございましたら、またそれについてお答えを申し上げますけれども……。  したがいまして、どの方をどのポストにつけるということになりますと、その人の研究歴とかあるいは専門が何であるかというふうな場合がございますので、一般行政職のように、この人をその次のこちらに移してというふうには、試験場の場合にはなかなかまいりませんで、できるだけその人の研究専門分野を生かしてというふうになりますので、パーセンテージについては若干の差はございますけれども男女差別というのは、私どももするつもりはございませんし、実際にもそんな大きな差別はないというふうに考えております。
  11. 田中美智子

    田中(美)分科員 実際に差別をする気はない、もちろん差別をしていますということになれば憲法違反になりますから、そのようなお答えはできないということはわかりますけれども、実際に婦人室長にしない、これは現実の問題として非常にたくさん出てきているわけですね。  これは各省を通しましてほんの一部分をピックアップしたにしかすぎません。総理府にしても、統計局にしても恩給局にしても、通産省農林省、そして国税と、どこを取り上げましても、適材適所人間を配置してみたら全部男であって、結果的に女はその位置に行かなかったという結果が出ているということだけは具体的な事実です。やはりこれをしっかりと見ていただかないと、幾ら男女差別はしていないと言いましても、そういう形が結果的に出ているということは、これは世界婦人が見ましても、どう見ても、日本公務員というものは、勤務して十六年たちますと大体差別があるんだということは、世界人たちが見る客観的な事実だと思うわけです。  それで、前にも一度このことは取り上げたわけですけれども、たとえば一般職の方で、高校を卒業しまして勤務すると、大体十六年ぐらいから昇格がおくれてくるわけです。それで、五十五歳で退職するまで、大体本俸で五百四十六万円の損失をする。同期に入った男性と比べますと、五百四十六万円も損をする。当然退職金も二百三十二万円損する。そして、七十五歳まで生きたとして、年金を六百九十九万円損する。これはオーバータイム、出張、そういうものは全部カットした数字ですけれども、締めて一千五百万円というものが、公務員になれば、同じ高校を卒業して勤めた男女の間に差が出てくる。  また、研究職女子にしますと、二等級の十九号で退職したとしまして、管理職手当が百二十五万五千三百四十四円損をする。本俸で百六十七万四千円損をする。退職金が百五十三万八百三十円、ボーナスが四百三十五万二千四百円、そして、恩給の上でまたずっと損するわけですから、それがまた七十五歳まで生きたとして、二百三十一万千二百円損をする。こういうふうになりますと、大体千百十二万三千七百七十四円、非常に細かい計算ですけれども、こうした金額的な、昇格差別によって一人の婦人損失を受けるということです。  これは、ただ一つの例として計算をしてみたというにすぎないことですけれども銭金の問題ではなくて、こうした状態が先輩たちの中にあるということは、この本人たちの受ける精神的な打撃というものや、心が傷つくというものは、はかり知れない大きなものです。人間生まれてきて、働くということが最も人間としての能力を伸ばし、また大きな喜びであるにもかかわらず、その働く場でこのような差がついている。優秀になればなるほど、この差が大きく開くということは、人の心をどれだけ傷つけているかということを、人事院総裁はお考えになったことがあるでしょうか。  働く婦人というのは、年々ふえております。そして、人間の一生を考える上で、婦人の一生を考える上で、働くということを考えないで婦人の一生を考えるということはできない時代になったということは、婦人少年局でもはっきりとそのようにうたっているではありませんか。そういう中で、やはり婦人の出世の道というものは、男女差別なくいくのが当然だというふうに思うわけです。このような明らかな、特に統計局のように、ほとんどが婦人がやっているという中で、六等級の二けたの中に何百人もの婦人がずっとたまっているというようなことは、幾ら言葉差別をしていないと言っても、余りにもひどい差別だというふうに私は思います。  それによって働く意欲を失い、そして、それが大きな社会の損失につながっているんだということを、もう一度政府はしっかりと考えていただきたい。そのためにこそ、ことしは全世界婦人が集まって、婦人差別撤廃婦人能力開発というもの、そして、人類の平和に婦人が本当に貢献できるようにということで、一堂に会して、地球上の男女差別を総ざらいしようということしに、人事院総裁は頭の中も心の中も、もう一度考え直し、反省していただきたいというふうに強く要請いたします。  最後に一つ、国税庁の問題があるわけですが、人事院総裁にお伺いしたいのですけれども、この人事院規則の八−一八の「採用試験」というのがあります。この中の税務のところですけれども受験資格の中に税務というところで、これは「年令が十七才以上二十才未満の男子」というふうに書いてあるわけです。税務署に行く場合には、この試験に合格するのは、男子しか試験を受けられないわけですから、女子は一人もいないわけですね。一般職の方から回ってきている人たちは、お紅茶の入れ方とか電話のかけ方というふうな研修をわずか二カ月やって、これで税務署員として使っていくわけです。男子の方は税務大学校に行って一年三カ月の研修をする。そして、もう一年目には半年の差がついておる。  先ほど申しましたのは、勤めて十六年くらいたってから差がつくということを私は言っておるわけですけれども、今度の場合は、就職して一年目から、同じ税務署で働いている男女がもう半年の差がつくわけですね。こういうことはどういうわけなんでしょうか。なぜ、ここに男子というふうになって、女子受験資格がないのか、この理由を、時間がございませんので簡潔にお答え願いたい。人事院総裁にお願いします。時間がありませんので。
  12. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お答えいたします。  税務仕事というのは、御承知のように、調査とかあるいは検査さらには滞納整理等の仕事が主体になるわけでございます。これらはやはり仕事の性質上、男女能力差別するとかなんとかいうことでなくて、やはり女子仕事の性質といたしましては、困難な業務が多いわけでございます。そういうことで、税務というのは、やはり長い経験を要することでもございますので、終身職としてこれをロケートしていくということを考えてみますと、やはり業務の性質から男であることが望ましいというふうに考えられますので、現在の採用が国税庁といたしましても男子しか見込まれないというようなこともあるので、国税庁と協議の上で、税務試験については受験資格男子に限っておるのでございます。しかし国税業務の中には、いまお話のございましたように男子に限られる特段の理由のない仕事もございますので、これには他の一般の区分から、現実に相当数の女子を採用いたしておるというのが現実の姿でございます。
  13. 田中美智子

    田中(美)分科員 これは聞き捨てならない言葉だと思います。調査やそれから滞納の整理をしたりするということが男子の方に向いていて、女子に向いていないということは、だれが決めることができますか。田中角榮さんの税金一つきちっと締められないような男性——私が、女性でするならば田中角榮さんの税金の滞納などは一遍に調べ上げてしまうということはできると思います。それが、女性にそういう能力がないというふうに人事院総裁がおっしゃるならですよ、男性には一体どういう能力があるのですか。すぐなれ合いしたり、金をもらったり、酒飲まされたりして税金をごまかしたりするというようなことをすることが、これが男性能力でしょうか。こんなことは男も女もないじゃありませんか。人間としてじゃないですか。なぜ女だけに税務大学校に行かせないということが、これが妥当になるのですか。どうして女に困難であるのか。長い経験が要るからこそ、入ってすぐに税務大学校で教育をしてずっとやるべきじゃないですか。それを、初めから女には困難だということは、一体どこの学会でだれがどのように決めたのですか。その科学的な裏づけをいただきたいというふうに思います。  これは絶対に改善していただかない限りは、明らかに男女差別に間違いないことだと思います。なぜそれが、藤井さん、あなたが決めることがどうしてできるのですか。もう一度はっきりとした御見解をいただきたいと思います。
  14. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 これは私が決めたと申しますよりも、従来、長い間の実例なりあるいは実態から申しまして、こういうふうになってきておるのでございます。  事実、税務の業務というのは、女子にはふさわしくないもののあることは、これは事実でございまして、この点は、国税関係だけではなくて、地方の職員についてもそういうふうに相なっておりますし、また、差別とおっしゃいましたが、別に、郵政関係等につきましても、特に男子のみに限ってやっておる職種もあるわけでございます。
  15. 田中美智子

    田中(美)分科員 なぜ女子にふさわしくないところがあるのかということです。時間がありませんので、女子にふさわしくないという仕事はどういう仕事であるのか、具体的にきちんとしたものを書いて提出していただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。——この問題だけでなくて、きょうずっと取り上げました昇格差別の問題ですが、これは差別がないと言っても、現実にはこういうふうに婦人だけがずっと底辺に置かれている。そこの婦人たちが非常に差別と感じているし、そして、非常に働く意欲を失っている。人によっては気持ちがすさむ、心を傷つけられているという現状があるわけですので、この問題というものを公務員制度審議会に諮問していただきたいというふうに思います。いますぐには解決できないと思いますが、公務員制度審議会にこれを諮っていただきたいと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  16. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 公務員制度審議会の問題は、私の所管外のことでございまして、政府の問題だと思います。
  17. 田中美智子

    田中(美)分科員 公務員制度審議会にこれをぜひ諮問をしていただきまして、今後とも研究課題にしていただきたいというふうに思います。  先ほど申しました、どういう点が女子に向いていないのかということを、細かく具体的な問題として、いつまでに提出していただけますでしょうか。
  18. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 帰って相談をいたしますので、その結果、できるだけ早い機会にお手元にお届けいたします。
  19. 田中美智子

    田中(美)分科員 質問を終わります。
  20. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 次に、岡田春夫君。
  21. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 三十分の時間しかございませんので、要点を率直にお伺いいたしますから、ひとつ簡単に御答弁をお願いいたしたいと思います。  私の御質問いたしますのは、アイヌ民族の問題であります。皆さんの方はウタリ問題と、こういうように言われるようでありますが、私たち社会党としては、アイヌ民族という名称を使っております。これは一つの立場を明確にしたことであります。  そこで、アイヌ民族の問題で、新年度予算を見ますと、二億三千二百万円、前年度に比べまして六〇%の増、こういうことになりまして、昨年からアイヌ民族問題の窓口が北海道開発庁でやられまして、開発庁としては大変努力をされておったわけでございまして、それなりの成果はあったと私は考えております。  しかし、全体から見ますと、やはりまだまだこれは努力が足りない。北海道では、四十九年から七カ年計画を立てまして、総額五十四億円という予算の計画を立てているわけであります。そういたしますと、今度の二億三千二百万円では、五十四億円の目標はとうてい達成するわけにはいかぬということになります。なぜならば、五十四億円の計画の中で、五十年度の予算要求としては六億数千万円が要求されてまいりました。そういたしますと、実は三分の一しかとれておらないということになるわけであります。  そこで、私はお伺いをいたしたいのですが、まず第一に、北海道で決めました七ヵ年計画というものを、国としてはお認めになっているのかどうなのか、この点からお伺いをいたしたいと思います。福田開発長官にまずお伺いをいたします。
  22. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘になりました道が作成いたしました福祉対策五十四億につきましては、先生御案内のように、地元におきましてウタリ福祉対策懇談会といったいろいろな手続、ウタリの方々の御意見等々、いろいろ練りに練ってできた案でございまして、これにつきましては、開発庁といたしましては十分これを尊重いたしまして、その実現に関係各省と緊密な連絡をとって努力いたしたい、このように考えております。
  23. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 それにもかかわらず、実際に予算としてできたものがわずかに三分の一である、これではあらゆる努力はいたしますと申されましても、これは目標の五十五年までに達成するということはできないわけでございますが、大臣、これに対してはどのように今後の措置をおとりになるか。
  24. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 ただいま御指摘になりましたように、五十年度のいわゆるウタリ福祉対策の特別な計上額といたしましては御指摘になったような数字でございますが、これ以外に、全国枠といたしまして、配賦の段階でウタリの福祉対策に向けられるべき金が、住宅改良事業であるとか、あるいは福祉とか、あるいは保育所あるいは世帯更生資金、そういうのもございますし、さらにまた、一般道単独事業というものもございまして、昨年の場合は約七億九千万円の総体の事業になっております。五十年度におきましては、まだそういうことは未確定でございますが、その方面につきましても十分私ども努力いたしまして、先生の御期待に沿うよう、五十四億を達成できるよう、今後十分努力いたしたいと思っております。
  25. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 七億とあなたはおっしゃっておるが、勘違いじゃないの。それは道を入れてですか。——道のことをあなたに聞いたって始まらないでしょう。ここは国の予算ですよ。あなたは、そのほかに厚生省関係であると言うのだが、概算どれぐらいありますか。そんなに何億とないですよ。あるのならお話し下さい。
  26. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 福祉対策事業費の五十四億は全体の事業費ベースの数字でございます。そこで、昨年の場合で申しますと、四十九年度におきましては特別な国費の枠といたしましては一億四千五百万円でございます。それがいろいろ事業費ベース、先ほど申しましたように、住宅改良であるとか保育所であるとかいろいろのもの、それから道の単独事業、全部入れますと事業費ベースでは七億九千五百万円、こういう数字に相なるわけでございます。
  27. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 それは道のものを含めてでしょう。あなた、ここで道の予算も審議しろと言うのですか。道のことは、あなたに何も権限はないですよ。あなたがそういうお話をされるなら、私はここら辺は余り時間をとりたくなかったのだけれども、ことしの場合においても、道を含めたら七億三千二百万円です。その中で国の分として補助その他をやってもらいたいということで、北海道で要求をいたしてまいりましたのは六億七千九百万円です。差し引き道の関係は七億三千万から六億七千万を引いたのですから、六千万円です。国の方でやってもらいたいというのは六億七千万円。これに対して、去年は国の方では一億四千五百万円だった。それに対して、国の方でもう少しふえたのですか。そういうことをお話しになると、これは私はちょっと納得ができない。あなたの方は道の予算まで含めて、これは国の成果でございますなんと誓われたって困る。  大臣、これはどうでございますか。道の予算までこれは国の成果でございますとまで言われたのじゃ、あなたこれは話にならぬですよ。国の方の予算が余りにも少ないじゃないか、五十年度は六億七千万を要求したのに実際にもらったのは二億三千万しかないじゃないか、三分の一しかないじゃないか、こう言っている。あなたのお話を聞いていると、二億三千万以外に、まだ数億も、いかにも厚生省で出してもらえるかのごとき言い方をお話しになっているのだが、そんな金はあるのですか。
  28. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 昨年の場合を申し上げますと、国費といたしましては、ことしの二億三千二百万円に対応する特別な枠としては一億四千五百万円でございます。そのほかに先ほど申しました全国枠で配賦をされる国費、全体合わせまして三億九千百万円という数字に相なっております。(岡田(春)分科員「一億五千万がふえた」と呼ぶ)もっとふえておることになります。一億四千五百万円が、全体で三億九千百万円という数字に昨年の場合はなっているわけでございます。それに対応いたしまして、今後も不良住宅改良とか、あるいは保育所とかそういった経費につきまして、全国枠の配賦について私ども十分努力をいたして)御期待に沿うよう努力いたしたい、このように考えているわけでございます。
  29. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 それでは、いまのお話のような不良住宅その他の五十年度の概算はどのくらいになりますか。
  30. 野々山伸彦

    ○野々山説明員 お答えいたします。  現段階では一般枠と申しますか、その中で五十年度に行いますものは、実施段階で確定いたしますので、まだ明確ではございませんが、保育所の整備でありますとか住宅地区改良、(岡田(春)分科員「金額だけでいい」と呼ぶ)事業費として現在、道がかねてから要望しておりますのは、約二億六千万円でございます。
  31. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 そうすると二億六千万円。去年は二億五千万ふえたのだ、こういうお話ですね。ことしは要求額で二億六千万、そのまま、まるまる認められたとしても二億六千万。まるまる認められることはないだろうから、そうすると合わせまして約四億七、八千万、これはことしの金額になりますね。そうすると、六億七千万から見ると、まだ二億足りない。六割はできたが、四割はまだ足りない、こういうことになるわけですね。それでよろしいですね。
  32. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 いまのは国費でございますから、事業費に直しますと、地方負担を加えるとふえますから、もっとふえるのじゃないかと思います。私ども試算では、これは正確なことは申し上げにくうございますけれども、去年が七億九千万円の事業費でございます。ことしは九億円台にはいくのではないか、こう私ども考えております。
  33. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これに時間をとると、私はほかの重要問題をやれませんから、これ以上やりませんけれども、あなた計算違いますよ。要求しているのは六億七千万しかないのに九億になる、そんなばかな話はないですよ。常識で考えたって、そんなことは考えられないでしょう。大臣どうです。要求が六億だというのに九億になるというのだから、こんなばかな話がありますか。これは私は納得いたしません。しかし、問題がほかにたくさんありますので、後で時間があればまた聞いてまいります。  たとえば具体的な例で、文部省の関係で就学資金として道のウタリ協会が要求をいたしてまいりましたのは、高等学校の進学奨励補助費と一緒に大学の就学奨励補助費、各種学校の補助費、こういうものを要求したのだけれども、こういう点は文部省の段階で査定されてしまって、高等学校だけしかもらってない。しかも、われわれ聞いてみますと、新年度からは同和対策の関係では大学関係に対しても予算が認められる。アイヌ民族の問題について、大学、各種学校の点については要求を出したのに、これさえも査定して削られている。削られているのに六億が九億になるなんて、そんな話は、私はどうしても常識で考えられない。文部省いかがでございますか。同和対策の場合には大学を認めたが、アイヌ民族については、高等学校は認めるけれども大学あるいは各種学校は認めなかった。この点はどういうわけですか。
  34. 三角哲生

    ○三角説明員 五十年度の概算要求に当たりまして、高等学校進学奨励費補助の要求はいたしまして、明年度予算案に計上されておるわけでございます。それは五十年度の概算要求に当たりまして、まず全国的な進学率が九割を超えております高等学校から手がけたいということで、高等学校について措置をいたしたのでございます。大学につきましては、今後十分検討してまいりたいというふうに考えております。  なお、各種学校につきましては、各種難校に学ぶ生徒に対する育英と申しますか奨学措置というものは、まだ手をつけてございませんので、これはなお慎重に検討する必要があると思っております。
  35. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 それじゃ大学は今後必ずやると約束できますね。いいですね。
  36. 三角哲生

    ○三角説明員 五十年度におきます高等学校についての実行状況を見つつ、十分検討してまいりたいと思っております。
  37. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 十分とおっしゃることは気に食わないので、やりますとおっしゃった方がいいと思うのだけれども文化庁長官がお見えになっておりますから、アイヌ民族の問題については、これもいかに削られているかという例を申し上げますが、道の方で要求したのを見ますと、こういうようになっている。  たとえば民族文化の資料の保存のためにアイヌ語の採録あるいはアイヌ文化の文献整備、チャシの調査、こういう点をいろいろ実は出しているわけですが、チャシの調査は三百五十万、アイヌ語の採録は五百万、文献整備は二百万、つつましいけれどもこういう要求を出している。ところが今度の予算を調べますと、アイヌ語の採録はわずかに五十万、それからチャシは百七十万、文献整備はゼロ、これで民族文化を守るということになりますか、どうなんですか。  アイヌ民族の問題について、文化庁の長官、文化問題に大変造詣が深いそうでございますから、アイヌ民族の文化という点から、こういうものを保存するということで、ひとつ若干御意見を聞かしていただきたいし、こういう予算では話にならない、アイヌ語の辞典さえ現在ないのですから、こういう点では本腰を入れてやっていただくようにひとつお願いしたいと思うので、この御見解を伺いたいと思うのです。  特に私一昨年、こういう問題について要求をして、ウエペケレの翻訳というのをやってもらったのです。文部省は金を出した。この問題についても、出した出したと言ってずいぶん言われるけれども、何ぼ出したと思いますか。たった三十五万円なんです。これでは話になりません。文化庁長官として文化保存のために、ひとつ思い切ったことをやってもらいたいのですが、その見解を伺っておきたいと思います。
  38. 安達健二

    ○安達政府委員 アイヌ文化が歴史上、芸術上あるいは学術上貴重なものをもっておるということは申すまでもないわけでございまして、その関係で、まず私どもの方の関係ではチャシ、いわゆるそういうアイヌの民族の重要な文化遺産であるところのチャシでございますが、これにつきましてはすでにモシリアチャシ跡ほか三件を史跡に指定いたしておりますけれども、なお北海道全体にわたりまして相当数があるということで、四十八年度、四十九年度、二カ年間かかりまして分布調査をいたしまして、二百七十四基というものを確認をいたしたわけでございまして、この五十年度から、これらのうちの重要なものにつきまして、測量をして正確な状況を把握する、そしてそのうち重要なものを、さらに史跡に指定をするというような段階で、この保存に当たりたい、こういうように考えておるわけでございます。これがチャシの問題でございます。  それからアイヌの民俗資料といたしまして、一つは有形のものがございまして、アイヌの生活用具のコレクション、これは函館市が持っておられます。あるいはアイヌの丸木舟、これは北海道大学が所有しておりますが、これを重要民俗資料として指定をいたしておるわけでございます。  それから、いまお話が出ました無形の民俗資料というような関係では、御指摘のございましたアイヌの言語、言葉、特にユーカラは非常に有名でございますが、これにつきましては金成マツさんの伝承されるところのユーカラの録音テープを収録し、これをローマ字に手写するというようなことをいたしております。  それから、さらにアイヌの芸能につきましては、昭和五十年度に現地公開補助ということをして、アイヌの芸能をひとつ保存してまいりたい、あるいはもう一つ、いま御指摘になりました言語の問題でございますが、民俗史料の緊急調査ということで、先ほど五十万円とおっしゃいましたけれども、北海道の方で非常に御要望がございますので、補助金額を百万円にいたしまして、ごくわずかでございますけれども、しかし、この事業は長い間かかってやらなければいけませんので、私どもは前向きでこれを処理してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  39. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 五十万円が百万円になりましたか、ずいぶん上がりましたね。倍ですね。大変なことです。こんなことでは問題になりません。百万円になったからといって大変やったようにおっしゃるが、そんなことでは困るんです。  アイヌ文化資料館の建設についての要望も文部省に出ているはずだが、これはどうなさいますか。
  40. 安達健二

    ○安達政府委員 こういう資料館の建設等につきましては、現在は各都道府県が自主的にそういうものをおつくりになる場合に、その計画に対しまして助成をするというたてまえでございます。したがいまして、ウタリの文化資料館等につきましても、北海道におきまして計画が具体化するならば、われわれとしても前向きにひとつ助成の方向に進みたい、こういう考え方でございます。
  41. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これは重要な問題があるのですが、開発長官にぜひお答えをいただきたい。  過去二年間アイヌ民族問題について審議会をつくれ、こういう点を私は去年の分科会、おととしの分科会でも要求いたしてまいりました。これに対して当時の齋藤厚生大臣、江崎北海道開発庁長官、昨年の場合にも、また齋藤厚生大臣と北海道開発庁長官の町村氏が、これは必ずやります、しかし、その窓口をまずつくらしてくれ、こういうことで窓口が北海道開発庁になってできた。ところが、審議会の方はいまだにできていない。約束は必ずやりますと、私、速記録を読んでもいいのだけれども、時間がないから省略をいたしますが、やると言いながら、いまだにやっていない。ほおかむりをしてほうってある。今後どういうことをされるのか、伺っておきたいと思います。
  42. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 岡田さんがウタリ問題について非常な御熱意を持って当たっておられることについては私も承知しておりますし、敬意を払っておるところでありますが、政府といたしましては、昨年の五月に、御指摘があったように、北海道ウタリ対策関係省庁連絡会議をつくりまして、そうして北海道開発庁政府の窓口になっておることは御案内のとおりでございます。その後関係省庁と連絡を密にして、ウタリ対策を国の立場からも積極的に推進してまいる所存でございまして、先ほども指摘がございましたが、この予算も、七年間には大体五十四億円というものをめどにして事業費を実行いたしてまいる、こういうことになっておりますので、これらの問題の推移等を十分勘案いたしまして、審議会設置の問題について考えてまいりたい、かように存じます。
  43. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 とおっしゃるのは、前向きに年度内に考える、こういうことでございますか。
  44. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 そこまでは、年度内という期限を切ってお答えをすることは困難でございますが、前向きでは考えてまいりたい。経緯その他、いろいろの事業の推移とか、あるいはその他いろいろの問題を調査をした上で考えてまいりたい、こういうことでございます。
  45. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 年度内にやっていただかなければ予算の審議になりませんよ。五十一年にやりますなんと言われたのじゃ、これは予算の審議じゃありませんよ。年度内にやってもらわないと話にならない。前向きにやるということは、年度内で考えるということだと思いますが、それでよろしいのですね。
  46. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私が前向きにと言ったことは、年度内ということとは同意義語には相ならないかと考えておるわけでございます。
  47. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 予算の審議は五十年度予算ですよ。やらないとおっしゃるのですか。そういう意味ですか。
  48. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 これはもちろん予算の審議の問題でありますけれども、この予算委員会において取り扱っておるのは、必ずしも予算自体だけではございません。その他の問題、長い問題も含めて討論をしておるのが従来の経緯だと思うのでありまして、前向きであるということは、必ずしもその年度内ということには結びつかないのじゃないかと思いますが、岡田先生の御熱意のほどは十分了承いたします。
  49. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 しかし、これは大臣、そういう言い方をされると、何か年度内にはやらないのだという印象を与えますよ。それは年度内を含めて努力をするというのでなければ、年度内にはやらないのだというお話のような印象を受けるので、そこははっきりしておいていただきたい。
  50. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私は岡田先生から、前の長官その他がそういう約束をしておるということを承りましたが、私は、いままでのところは、そういう約束をしておるというお話はまだ聞いておりませんし、たとえそういうように前長官が約束をされておったとしても、私はいまの立場においては、先ほどお答えをしたような方針で臨んでまいりたいと思っております。
  51. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 前向きでやるのですね。
  52. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 前向きにやるということは申し上げたとおりでございますが、年度内にそれを実現するということについては、ここでお約束をすることはできません。
  53. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 それはちょっと困りますね。もう一つ大きな問題があるのでいまやれないのですが、それでは年度内にやらないということになるわけですか、その点、もう一点だけ伺っておきます。
  54. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 やる、やらないの問題は、今後の検討にまたせていただきたいと思います。
  55. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 前向きに検討するということですね。
  56. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 こういうことは誤解を生むといけませんから、前向きであるということは、そういう事態の推移等を見ながら慎重に検討していくということで、年度内にやるということを前提にした前向きということであれば、そこまでは申し上げることは私は困難かと思います。
  57. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これは非常に重要な問題です。政府の姿勢がそれで明らかになった。年度内にやらないか、やるかというのは、ここまで言えないというお話だが、いかにも年度内にはやらないかのごとき態度に見られる。私はそれでは納得いたしませんし、これはもっと別の機会でも明らかにしていきたいと思いますが、もう一つ大きな問題がある。  それは去年の五月だったと思いますが、実は社会党のアイヌ民族対策特別委員会から政府に正式に申し入れをしたのです。これはどういう件を申し入れたかというと、第一点は、先ほどあなたが御答弁になった窓口をつくるという問題。アイヌ民族問題で北海道開発庁を中心にして窓口をつくりなさい。この点が一つ。第二の点は、アイヌ民族の文化教育基金制度をつくりなさい。この二つの点を実は申し入れをしたわけです。  これに対して、当時の二階堂官房長官が、口を改めてわれわれを呼びまして、回答をもらったのです。これは社会党のアイヌ民族対策特別委員会の人々と現地のアイヌ民族の人も加わりましてお話を伺った。  そのときに、あなた方の御要望であったので、窓口は北海道開発庁にすることに決めましたから御了解をいただきたい、これが一つであります。もう一つは、アイヌ民族の文化教育基金制度の問題については五十年度の予算でやりましょう。そのとき、金額まで出たのであります。そこまではっきりお約束をされまして、五十年度の予算でやりますからと、こういうことになっておりましたので、われわれ期待をいたしておりましたが、この予算には全然ないわけであります。  これは開発庁の長官ではなくて、官房長官お見えですから、官房長官にお伺いをいたします。これについてここまではっきりわれわれに正式に公約をされた。われわれを呼ばれてそういうように約束をされたのでございますから、これについては、予算に出てないが今後どういうようにされるのか、官房長官からひとつ御意見を伺っておきたいと思います。
  58. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 ただいま御指摘の問題でありますが、いま開発庁なり文化庁なり、それぞれアイヌ民族の問題に対する政府考え方は示されたとおりであります。  いまおっしゃる基金の問題でございますが、実は大変相済みませんが、私もまだそうつまびらかにはしておらないのであります。したがいまして、これは当時のいきさつ等も十分に調べてみるつもりでございますが、岡田さんの方にも何かもう少し一歩進めた具体的な提案等もしおありでございましたら、そういうものも伺わせていただきまして、まあ前向きという言葉がはやるのですけれども、十分これは検討に値する、こういうふうに存じまして、これからそういう問題の御相談にも応じたい、かように考えております。
  59. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これで終わりますが、前向きに大いにこれはやるべき値打ちがある、こういう御答弁になったと思いますが、若干申し上げておきますけれども、社会党としては三十億円の基金制度をつくってくれ、こういうことまで言っている。そうしたら、まあ冗談とは私は受け取らなかったのだが、二階堂官房長官は、それはけたが違うんじゃないのか、もう一けた上なんじゃないのか、三百億の間違いじゃないのか、こういうことまで言われたのです。  まあこれは前向きのあらわれだと私は解釈しますので、ひとつ官房長官も、前向きに考慮に値することである、こういうお話ならば、これはぜひ実現のできますようにお願いをしたいと思います。われわれも具体的な案がございます。それからアイヌ民族の人でやはりそういう関係に基金を出したいという人もありまして、アイヌ民族の人の中からすでに三千万円は出されております。  こういう状態でございますので、重ねてぜひとも実現のできるように、官房長官に特段の御努力をいただきますようにもう一度お願いをいたしておきたいと思います。
  60. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 岡田さんの御熱意に深く敬意を表します。
  61. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これは大いに傾聴するに値打ちのあることだ、これは努力するという形で先ほどお話しになりましたが、そういう意味でひとつ御努力いただけますか、どうですか。
  62. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 先ほどお答えしたとおりでございます。
  63. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 それじゃ、もう時間がないですから、終わります。
  64. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 次に、馬場昇君。
  65. 馬場昇

    馬場分科員 科学技術庁長官を中心に、原子力船「むつ」の問題について質問をいたします。時間が限られておりますので、ひとつ端的にお答え願いたいと思います。  まず第一点は、原子力船「むつ」の安全の問題についてです。「むつ」が放射能漏れ事故を起こしたわけですが、その原因は遮蔽装置ではなかろうかと言われておるわけですけれども、遮蔽装置は設計なり計算について未知の部分というのは比較的少ないのじゃなかろうかと私は思うわけです。  さらに原子力船の問題につきましては、未知の部分や困難の多い燃料棒の破損の問題とか、蒸気発生器の細管の腐食の問題とか、緊急冷却装置の安全装置等の機能の不全の問題とか、冷却水パイプと炉本体の応力腐食割れなどの問題もございますし、さらに使用済みの核燃料の安全な再処理の問題、放射性廃棄物の死の灰の最終処分の問題など、まだまだ遮蔽装置どころではなくて非常に複雑なむずかしい問題があるわけでございまして、そういう基礎的な実験研究を重ねないと、「むつ」の放射能漏れ事故どころではなしに悲劇的な事故を起こす可能性があると私は思いますし、長官としては原子力船「むつ」は安全だというようなことを国民に自信をもって言えないのではないかと思うのですけれども、原子力船が安全かどうかということについての長官の御見解をまず伺いたいと思います。
  66. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私はこの前の予算委員会で、ここにおられます石野先生の御質問にもお答えしたのでございますが、いわゆる事故というものと故障というものをある程度分けて考えていく必要がありはせぬか。広義の事故と言いますと故障ももちろん入るわけですけれども、しかし狭い意味に解釈しますと、いわゆる第三者あるいは乗組員に被害を与える、あるいは海を汚染するといったような、そういう意味の大きい事故は、これは狭義の本当の事故だと思います。したがって、パイプに何か故障が起きたとか、穴があいたとか、あるいは放射線漏れだとかいったような、こういう言わば故障という問題とやっぱり分けて考えるべきではないか。  というのは、そういう故障が大きい事故につながらないように、普通の産業では見れないような、非常な何段階にも分けた装置がしてあるのが実は原子炉でございまして、その間にどういうことをやっているのかということをお話ししますと長くなりますから、それは省略いたしますけれども、そういう点から考えますと、おっしゃるように故障は私はいまの状況、現状ではこれはないとはもちろん申されませんし、発電炉等を中心にして考えますと、まだまだ故障はたくさん出ます。しかし、これが大きい事故につながった例があるかというと、一件もないわけです。  それから、アメリカの原子力委員会が二年ばかり研究した成果によりましても、確率はほとんどゼロに近い確率で、絶対安全だという言葉は使わぬでくれというお話でございますから、絶対安全という、その絶対という意味は大変むずかしいのでございますけれども、私は少なくとも第三者に、乗組員に肉体的に被害を与え、あるいは海を汚染するというようなことはまず考えられないというふうに申していいのじゃなかろうかと実は思っております。
  67. 馬場昇

    馬場分科員 故障はあるかもしれないけれども事故はないのだ、こういうことを長官が言い切られるわけですけれども、やはりいろいろまだまだ未知な部分があるし、故障はある、その故障があれば事故につながるということはもう当然だろうとぼくは思うのですよ。  ここで私が言いたいのは、いま言われましたことについては、責任をとってもらわなければいかぬと思うのです。国民に向かって安全だと言えるかという質問を私はしているわけですけれども、第三者に被害を与えるとか海を汚染するようなことはないと思うとおっしゃって、自信を持っておられます以上、もし事故でも起きた場合には、ひとつ責任をとってもらいたいと私は思います。  そういう意味で、次に「むつ」の事故の責任の問題について伺いたいのです。これは原子炉の安全専門審査会等が、これは安全だというようなことを言っておるわけですし、それから、たとえばむつを母港にするときに科学技術庁の長官だとか、原子力委員会だとか、あるいは事業団等はこれはもう絶対大丈夫なんだ、事故も故障も起こさないのだというような宣伝をして、母港をむつにつくったわけですけれども、しかし実際、ああいう事故を起こして現在のような状態になっております。これは私は非常に国費のむだ遣いにもなっているし、漁民にも被害を与えているし、国民も騒がせておるわけでございまして、政治的にも責任が非常に大きい、私はこういうぐあいに思います。ましていわんや、こういう故障が起きたのに出力試験を一応やっているわけですから、死の灰が幾分かあるわけですから、さらに研究を困難にしておるという事態もあるわけです。  こういう問題についてやはり原子力委員会なり、科学技術庁なり、事業団なり、あるいは審査会なり、こういうところの責任の問題はどうなっておるのかということを簡単にお答え願いたいと思います。
  68. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 おっしゃるとおり、根本的に申し上げますと、故障を起こした原因が那辺にありやという真相をつかんだ上でありますと、大変的確なわけでございますけれども、この問題は御承知のようにただいま内閣で特別な懇談会をつくりまして、鋭意去年の十一月の暮れから何回か重ねてだんだん勉強中でございまして、それができますと非常にはっきりすると思います。たとえば業者側にあるのか、事業団にあるのか、あるいは原子力委員会の審査にあるのか。そういったような問題がはっきりしますと。  まだそういう段階まではいっておりませんので、最終的な責任の所在はまだ不明確でございますけれども、それにいたしましても、御説のようにああいう問題が起きて、あれほどの事件になったということに対する政治責任というものは当然あるはずであります。第一次的な一番の責任者というのは何といっても事業団でございますから、事業団の副理事長ですか、あるいは専務理事等は更迭いたしまして、理事長ももう前から辞意を漏らしているのですけれども、実はそのかわりがないのでございます。そのため、もっぱら実は後任を考えている最中でございます。それから役所の方でございますけれども、これはやはり大臣はもうかわってしまいましたから、その次ということになるのですけれども、やがて時期が来れば、そういう意味からした責任等も直接の問題じゃないとも思いますけれども、やはり人事の入れかえ等も考えなければいかぬじゃないかというふうに実は考えているのでございます。
  69. 馬場昇

    馬場分科員 やはりきちんと事故の調査会もあるそうですけれども、これがはっきりしますと、また、それに伴う責任ということが出てくると思いますが、いま長官言われましたように、政治的な責任とか、事業団の責任があると思うのです。責任をおろそかにしておけば、また次のことも起こるという心胆を国民側も持つわけですから、きちんと責任をとってもらいたいと思うのですが、ここで原子炉を製造したのは三菱重工ではなかったかと私は思うのですが、会社は別につくっているようでございますけれども、この保証責任というのはどうなっているのかということをちょっとお伺いしておきたいのです。  大体いまからこれを補修し、改善のためにも費用なんかも要るわけでして、また今日のような事態になっていると、相当費用も要るわけですけれども、大体普通小さい機械、器具を買いましても、故障なんか起きた場合には一年保証と二年保証とあるわけですよ。そこで、この原子炉の故障について製造した三菱重工の保証責任というのはどうなつているのかということについてお伺いしたい。
  70. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 保証契約が時効にかかりそうなので、一年の分をもう一年延長したように聞き及んでおりますけれども、しかし一年延長しても実はまだ出港もできなかったという当時の状況で、法的にはどうも時効が切れているのじゃないかという話を私聞いておりますけれども、詳しい内容は担当官から申し上げたいと存じます。
  71. 生田豊朗

    ○生田政府委員 この設計を担当いたしましたのは三菱原子力でございます。三菱原子力が下請の形で三菱重工を使いまして、つくったのは三菱重工でございますので、契約関係は事業団と三菱原子力の契約関係でございます。この建造契約によりますと、当初原子炉の引き渡し後一年間が保証期間になっておりました。ただ、ただいま大臣からも御説明がありましたように、引き渡し後試験の開始まで相当の時間が経過いたしまして、めどがなかなかたたないということでございますので、引き渡しがございましたのが昭和四十七年の八月でございます。したがいまして一年後は昭和四十八年の八月でございますが、それを延長いたしまして、昭和四十九年の三月まで延長したわけでございますが、そこで再度延長の合意が得られませんでしたので、それなりになっております。したがいまして、契約面では三菱原子力の保証の期間が切れているということでございます。  ただ、この問題につきましては、契約上はそういうことでございますが、ただいま大臣の御説明にもありましたように、今後の事故の原因の究明に当たりまして事故の原因がはっきりいたしたときは、その原因に応じましてしかるべき責任がとれるように指導いたしたい、かように考えております。
  72. 馬場昇

    馬場分科員 普通の船舶の場合でもきちんと実験をして、そうしてから引き渡しておるようですが、原子力船は特殊かもしれませんけれども、一年契約をしておったのに二年少し延ばした。しかし、この事故が起きたときには保証の期間切れであったということですけれども、やはりいま最後の部分で原因がはっきりすれば保証はしてもらうのだということが話されましたので、幾分安心するわけですけれども、きちっとした設計をした者、建造した者に責任があるとすれば、これはあくまでも保証を、大きい企業であれ何であれ、正々堂々と要求してさせるべきだと私は思いますので、ぜひそうしていただきたいと思います。  次に、原子力船「むつ」の定係港の問題についてお尋ねいたしますが、ぼくは新聞で見たのですけれども長官はごく最近、四月にはこれを決めたいのだ、候補地も幾つかあるのだ、こういうことをどこかで新聞に発表せられました。これについて具体的にもう少し詳しく説明していただきたいと思います。
  73. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 この前、去年の十月に地元側と、「むつ」の事件が落着する際に取り交わした問題がございまして、ほとんど全部約束どおり実行したのでございますが、最後の、第二定係港の指定を半年後、すなわちことしの四月いっぱいぐらいまでに決めてもらいたい、それから「むつ」そのものの船体を移転するのはおおむね二年半後でよろしいというふうな取り決めになっておるわけでございます。  したがって、その話し合いどおりに何とか決めたいということで、昨年暮れから私、就任以来、実はこれは片手間でできる問題でございませんので、私の方の政務次官を本部長にいたしまして、科学技術庁、運輸省、それから事業団のそれぞれの達識といいますか、経験豊富な者が集まりまして、そして専門にその選定にただいま取りかかっております。  その状況いかんということでございますが、こういうところに持ってきてもらいたいという希望の個所もございますし、あるいは机上でこういうところがよろしいのじゃなかろうかというところも選定いたしまして、二十数カ所実は候補地にいたしまして、その後またふえてまいっておりますが、いろいろな選定条件がございますので、まずどういう点に着目して選定すべきかという選定基準を幾つか考えまして、それによりまして、先ほど申しました本部の、要員の皆さんが検討しまして、順位づけと申しますか、こういう観点からいけばこういうところがいいのじゃないか、こういう観点を中心にいけばこういう点がいいのじゃないかというふうな順位づけをいろいろやってはおりますけれども、まだ、これでひとつ具体的に進めようというところまでは至っておりません。馬場先生もよく御承知のように、これは許認可みたいに中央官庁が判こを押せばそれで終わりだという問題ではないのでありまして、実はそこからが出発点でございますので、これからの進め方をどうするか、実はいま検討している最中でございます。
  74. 馬場昇

    馬場分科員 むつの人々には、大体半年後には母港を決めるのだという約束をしておられるわけです。それが四月だということですが、問題は四月までに決められるのですかどうですかということが一つです。これははっきり、間に合うとか、決めるとか決めないとか、それだけ答えてください。  それから、希望の個所もある、あるいはこちらから机上で見て適当だと思う個所もある、合計二十カ所ぐらいいま検討しておるのだというようなことですけれども、最終的には向こうが希望したところに決めるのであって、こちらから押しつけるというようなことはあり得ないのだ。  その辺について、ごく簡単に、後でまた触れますので、二つお願いします。
  75. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 根本的には、地元の少なくとも知事とか町村長あるいはその他の政治機関と行政機関と申しますか、要するに地元の皆さんの納得のいかないままで決めるということはいたしません。これは必ず地元の納得を得まして決めたいと思います。したがいまして、四月末日までに確実に決めるかということになりますと、これは相手のある問題になってきますので、いま申しましたような地元の了解を得るということになりますと、どの程度までの範囲になれば決まったと言い得るか、これまた大変解釈の問題もあるだろうと思いますけれども、希望といたしましては、その時点までに約束どおりやりたいということと、それから、そのためのあらゆる努力は現在も払っておりますし、払うつもりでございます。こういうことでございます。
  76. 馬場昇

    馬場分科員 いま長官はせっかく努力を払っておるとおっしゃるのですけれども、私の感じからいいますと、全然努力は払われていないというぐあいに思います。といいますのは、やはりむつに定係港をお願いしたときに、私の聞いておることでは、大体お願いしたいと申し出てから二カ月のうちにむつは決まった、こういうぐあいに聞いておるわけです。何も知らないままに決まってしまった、こういうぐあいに聞いておって、まあ、ああいう結果になったわけでございます。  私はやはり、決める場合には、いま長官も地元の意向なんかおっしゃいましたけれども、原子力基本法に示された民主、公開というような原則というのは、この母港を決めるときにも適用すべきであるというぐあいに思いますし、さらに原子炉の設置に係る公聴会開催要領なんかもあるわけですから、これはもうそのままその開催要領に合わないとしても、政治的にはああいう大きい問題を起こしたのですから、少なくとも公聴会でもやりながら公開で民主的に決めていく、こういう手続を踏まなければならないと私は思うのです。ところが、四月には決めたいという願望を持ちながら、少なくとも公聴会というふうな問題、あるいは公に出て民主、公開で議論するというような問題、こういう点についてやはり全然努力をしていられないのじゃないか、私はこういうぐあいに思うのです。  そこで、問題は一つだけですが、これは簡単に答えてもらいたいのですが、母港選定に当たって、その地域でなり、あるいはその県でなり公聴会なんかを開かれる気持ちがあるかないかということだけについて、ひとつ答えてください。
  77. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 いよいよ問題が具体的になって、そうして現地の合意を得たいというふうな場合には、地元でいろいろ不安の要素もあるというふうな事態でありますれば、お話のような公聴会等を開いて、それで地元の納得を得られるものであればそういうことはやるべきだというふうに考えますけれども、これはもう少し事態が進んでみませんと、いまからこうだと言うわけにはいかぬと存じます。
  78. 馬場昇

    馬場分科員 やはりいろいろ事情はあると思いますけれども、原則としては原子力にかかわる問題でございますから、その基本法の示すとおりに、公開で民主的に事を運ぶという原則をぜひ貫いていただきたいと思うのです。  次に、地元のことになってはなはだ恐縮ですけれども、私の県、熊本県宇土郡三角町というところがございまして、三角港というのがあるのですが、ここの地元ではいろいろ話が出ておるのです。そうしてまた、一部の人が誘致運動か何か知りませんけれども、打診行為を行っております。さっき二十カ所候補地に挙がっていると言われましたけれども、この三角町の三角港が挙がっているのかどうかという点が第一点です。  それから第二点は、先ほど長官は、地元の皆さんの納得がいかない場合にはこれはだめなんだとおっしゃいましたけれども、この三角の町について申し上げますと、町会議長さんというのが個人的に、これは政府なり、あるいは自民党のどなたかに打診をしたという程度のことのようですけれども、実際、町長さんは、安全の確認の保証もなくて周囲の合意も得られないから、町としては誘致する考えはないということをはっきり言っておられます。また町議会は、議長が個人でやったのだといって問題になりまして、個人でやったことは申しわけないと言って、町議会で議長個人が陳謝をしておるということもございますし、県は、何も聞いていない、具体的に何もしていないと言っております。漁協関係者の話を聞きますと、とんでもない非常識な話だ、こういうことを言っておるのですが、さっき長官は、地元関係者の了解なしにはだめだと言われましたけれども、こういう状態のところに果して母港設置ができるのかできないのかということについて、地元のことで恐縮ですけれども、候補地に挙がっているのかということ、いま言いましたような実態ですから、こういうところはどうなんですかということについてお答えを願いたいと思います。
  79. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私、先般青森県むつ、それから福島、茨城県東海、この三県をそれぞれ視察に参りました。行く先々で新聞の皆さんがたくさん会見を申し込まれて聞くことは、私の県に候補地がありますかということで、各県の皆さんとも、まず自分の県が大事だ、こういうことですから、いやあなたの県には候補地がございますなんということになりますと、これは妙なことになりますし、あなたの県に候補地があるとかないとかいう具体的な話は、まだ検討の段階ですから一切公表はいたしません。事実総理にも申し上げておりません。そういうことですから、具体的な事例に対しましてはこの際表明を避けたいと思います。  したがいまして、いまの熊本県の問題でございますが、これも候補地にのっているとかのっていないという点は、私から言うのは差し控えさしてもらいたいと思います。  それからいまの三角の話ですけれども、先ほどお話しいたしましたように、私ども直接まだ現地交渉に移っておりませんので、そういう実情があるということはいまのお話でちょうだいいたしましたが、これからどう進めるかという点に関しましては、参考までにお話をちょうだいしておきたいと存じます。
  80. 馬場昇

    馬場分科員 具体的な地名については言えないとおっしゃる気持もわかります。しかし、私の気持ちとしては、さらに進んで、そういう常識を破った形で、公開というような形でやるべきだという気持ちを持っていることは伝えておきますが、これは一般論から言いまして、たとえば町長さんもだめだ、あるいは町議会もだめだ、あるいは県知事さんもだめだ、その関係の漁協の人もだめだ、こういうところにはできないんだなということは、一般論として、さっきもお答えになりましたけれども、もう一遍念を押しておきたいと思います。  それからもう一つは、これはまた特定地域を言うと答えにくいと思いますけれども、定係港をつくるということになりますと、やはり人家が余り密集していないところが当然だろうと思いますし、さらにまたある程度の一定の土地が必要です。ところが一定の土地も余りない、人家が密集しておる、こういうところは技術的に不適当だと私は思うのですけれども、これについて長官の見解を承っておきたいと思います。
  81. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 定係港とは何ぞやという問題にかかわることになりまして、これは話せばいろいろ議論はありますけれども、要するにいま油が高くなった結果、原子力船が採算に合うという事態に近づきつつありますので、各国では非常に積極的にこの問題を進めつつございます。したがって、海洋国である日本も、将来原子力船というものはつくらない、あるいは外国の原子力船が来るのは一切拒む、こういうことでありますと、これはどうなるかということは目に見えることで、そういう将来のことまで考えていきますと、定係港等の選択の仕方がまたうんと変わってまいります。  そうじゃなくて、「むつ」なら「むつ」だけを避難港のように入れるというようなかっこうでありますと、これはまたやり方がいろいろあるわけでございまして、そういう根本的な条件の吟味によって決まってくる問題ですから、お話のような点は、一応こういう場合には差し支えなかろう、こういう場合には困るというふうに、私は問題によって変わっていくのではなかろうかと実は思います。
  82. 馬場昇

    馬場分科員 さっき申されたのとちょっと違うのですけれども、たとえば地元の皆さんの納得のいかないようなところには持っていかぬということを最初に言われたのですよ。いま私が聞いたのはその点を聞いているのです。それから技術的にもやっぱり密集地帯はいけないのじゃないか。
  83. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 技術的に密集地帯の話でありますが、それはいまお答えしたとおりでございます。  それから、地元の反対があってどうにもならぬというところにやるとなりますと、これはやろうといってもできないわけでございますから、それは無理だと存じます。
  84. 馬場昇

    馬場分科員 特にこれは長官並びに関係者に私、申し上げておきたいのですけれども、あそこは有明海、不知火海に面しておるわけですよ。ところが御承知のとおりに、あそこの有明海、不知火海というのは、水俣病を起こしまして、水銀で汚染されまして、あの悲惨な水俣病患者を生み、漁民なり住民を塗炭の苦しみに陥れたところなんですよ。  こういう水銀汚染を受け、世界の公害の原点と言われたこの地域に、今度また原子力船を持ってくる、これは絶対に住民感情としては受け入れることはできない、こういうことはもう火を見るよりも明らかです。そしてまた行政としても、ああいう悲惨なことを起こした海はきれいにして、安心できるようにしてやるのが行政の責任であるし、こういうところに心配があるものを持っていくというのは、行政としてもとるべき道筋ではないと私は思うのです。こういう点について最後に長官の御見解を承って、質問を終わりたいと思います。
  85. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お説は十分参考にいたしたいと存じます。
  86. 馬場昇

    馬場分科員 終わります。
  87. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 次に、山崎拓君。
  88. 山崎拓

    山崎(拓)分科員 今日、資源の問題が人類の未来を限るということが言われておるわけでございますが、食糧の問題と並びまして特にエネルギーの問題、これについてきょうは科学技術庁長官にお伺いをしたいと思います。  一次エネルギーのうち八五%を海外に依存し、かつまたその海外に依存するエネルギーの大宗を占める石油、この石油が第四次中東戦争でわが国に供給削減が行われるという事態が一昨年の暮れに発生をいたしまして、特に無資源国日本の置かれておる立場というものについて、国民が深刻な不安を来たしているわけであります。したがいまして、エネルギーの将来の見通しについて、国民の前に明確なとるべき施策を示すことが政治の責任である、かように考えるのであります。  私は、昨年の八月初めでございますが、アメリカに参りまして、フォードさんに、当時まだ副大統領でございましたが、お目にかかった際に、フォードさんが、日米関係において最も大切な問題は、エネルギー問題における協力関係であるということを申されまして、強い印象を受けたのであります。その際、アメリカはエネルギーのプロジェクトインデペンデンス、独立計画を持っておって、向こう五カ年間に百億ドルの金をつぎ込んでエネルギーの自給を図りたい、こう言われたわけであります。  アメリカでさえこのようにエネルギーの問題についてはきわめて真剣に取り組んでおるわけでありますが、わが国の置かれている状況にかんがみまして、二十一世紀には石油換算十六億キロリットルのエネルギーを必要とされておると言われておるわけでございますが、そういう長期視点に立って、いかなる施策をもって対処されようとなさっておるか、まず基本的な見解をお伺いしたいと思います。
  89. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お説のように、日本が従来同様主たるエネルギー源を石油資源にのみ、と言っては少し言い過ぎかもしれませんが、頼っていくということは、これは経済的面からも、資源的な面からも大変危険なことだと存じます。したがいまして、できますれば、もっと多様性を持って、安全性も考慮しつつエネルギー源というものを考えるのは、国として当然じゃなかろうかという観点に立ってまいりますと、いまおっしゃったように十六億キロリットルも日本が油を使わなければいかぬという、そういうことは事実上もう許されないことでございますから、将来のエネルギーの需要量の算定の仕方もいろいろあろうと思いますし、いままでとはまた違ってまいりましたので、安定成長下となりますと、従来と違った経済規模になるでしょうから、その経済規模を賄う発電量はいくらか、それを何々資源で賄うか、こういう分別になるわけでございますけれどもお話のように、資源エネルギーのない日本でございますから、できますれば将来は日本自体で賄えるようなクリーンなエネルギーで、しかも資源は豊富なもの、言いかえれば、水素とか太陽とか、あるいは核融合というものに頼っていくのがこれは一番望ましいわけでございます。  しかし、といっていま一足飛びにそういうものができるかと申しますと、これはまだ研究段階でございますから、とてもそこまでまいりません。といって油にのみ頼るということもこれは許されない。となりますと、何に一体頼っていったらいいかという問題になりますので、山崎先生も十分御承知かと思いますが、石炭なりあるいは原子力発電なりに頼っていくのが、ここしばらくの間、少なくとも二十数年間こちらの方にだんだんウェートをかけていくということは、エネルギーの対策としては当然のことではなかろうか。  ただ、その数字は一体どうなっているのかということになりますと、いままでの数字はございますが、副総理もこの前に予算委員会で説明しておりましたが、近く安定成長下における経済の長期見通しというものをつくる予定なので、その際、国としてのエネルギー対策の分別をはっきりしたいというお話がございましたので、正式にはその際決まっていくと存じます。
  90. 山崎拓

    山崎(拓)分科員 ただいま長官からお話がございましたとおり、石油にこれから大幅に依存していくというわけにはまいらない。そこで、原子力発電の重要性が考えられておるわけでございますが、この原子力発電、昭和六十年に六千万キロワットというような見通しでございましたが、この点はきわめてむずかしい、こういうことでございます。ただ、そうではございますが、とにかくエネルギーの需給の見通しに対しまして、やはり政府は的確なものを持っておりませんと、国民は非常に不安でございますので、できるだけ早急に長期的な見通しをお立ていただきますように要望申し上げる次第であります。  そこで、ただいまお話のございましたクリーンなエネルギーとしての核融合の問題だけにしぼってきょうはお伺いをしたいわけであります。  核融合エネルギーにつきましては、もう人類の夢と申しますか、この核融合エネルギーが実用化されれば、エネルギー問題は解決をする、こう言われておるわけであります。燃料資源が豊富でございますし、また安全性が高い、あるいは定常的な放射性廃棄物の処理の問題がないこと等非常に従来のエネルギーにない利点を持っておるわけでございまして、しかも海水中の重水素、これは二百兆トンあるそうでございますが、全部利用されたら、それによって生ずる全エネルギーは、最初から世界じゅうに存在した化石燃料に含まれるエネルギーの一億倍、こういうことでございます。  そこで、核融合エネルギーの開発を国がいわゆるナショナルプロジェクトとしてもっと本格的、真剣に取り上げる必要があると考えるのであります。そういうことでございますが、原子力委員会が昭和四十三年の七月に核融合研究を原子力特定総合研究に指定をいたしまして、自乗四十四年から四十九年、六年間を研究の第一段階としてやってこられたわけであります。そこでこの研究の第一段階、これはトーラス型装置によるプラズマの閉じ込めに関する研究を主計画とするとなっているわけでございますが、大変むずかしいのでありますけれども、その成果はどうであったのかということをまずお伺いしたい。  さらに、現在のわが国の核融合研究の水準ですね、第一段階における成果を見て、今日はどういう段階にわが国はあるのかという点についてお伺いしたいと思います。
  91. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私は、まずもってこのたびの予算の際に、山崎先生初め自民党の若いと申しますか国会議員の皆さんが未来エネルギー議員懇談会というものをつくって、そして核融合に問題をしぼって、非常な熱意をもって勉強なさっているさまを、私も出席して拝見いたしまして、全く感銘に打たれました。どうぞひとつ将来ともこの方面に、皆さんの存命中に実用化していくよう、ひとつ一生懸命がんばっていただきたいと思います。  そこで、御質問の点でございますが、原研のトカマク、これは成果は温度で七百万度、密度が十兆でございますか、十の十三乗。それから時間は〇・〇二五秒ということで、御承知のように所要の一秒なりあるいは一億度あるいは百兆でございますか、こういう普通に言われている基準まではまだほど遠いのでございますけれども、しかし非常な成果を上げまして、世界のこの方の水準から見ますと、まず列強に伍して劣らずに、わが方の研究も進んでいるというふうに規定づけてよろしいのじゃないかと思います。  そこで今年度からお話のように第二段階に入りまして、皆さんのおかげで望みどおりの予算もつきました。したがって、目的どおり今年度から臨界プラズマの試験装置を開発したいということで、いま計画進行中であります。
  92. 山崎拓

    山崎(拓)分科員 ただいま第一段階の成果についてお話があったわけでございますが、これによりますと、温度におきましてはまだ米国やソ連のデータに劣っておるが、プラズマの閉じ込め時間は最長の記録であるというようなことも資料には出ておるわけでございまして、一応世界の水準に伍して進んでおると解釈していいのではないかと考えるわけであります。  そこで、ただいまの第二段階、昭和五十年度が初年度ということでことしの予算が計上されておるわけでございますが、第二段階はお話のとおり、プラズマの実験装置を昭和五十四年度に完成させるという目標でございますけれども昭和五十年度予算で、その研究の着手に必要な額が認められておるのかどうかという点をまずお伺いしたい。  それからさらに、第二段階の研究開発に着手するに必要な人員の面の確保はどうかということが第二点であります。  それから、この第二段階のいわゆるプラズマ実験の結果もたらされるプラズマの条件は、どのような条件を目標にしておられるのか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  93. 福永博

    ○福永政府委員 技術的な御質問でございますので、私から御説明させていただきます。  まず第一点の予算の件でございます。先生御案内のように、今度の第二期計画と申しますのは、原研におきまして臨界プラズマ装置というものを建設し、これを利用して研究を進めるというのが主な内容でございます。もちろんそのほかにも、関連いたしますプラズマの診断技術でございますとか、あるいは材料の研究でございますとか、そういったものはございますけれども、主な内容は原研の臨界プラズマ装置の建設でございまして、これの初年度に必要な経費としましては約二十五億円ほど計上いたしておりまして、これで初年度は十分研究を進めさせていただけるのではないかと考えております。  それから人員につきましては、これもただいま申し上げましたようなことで、原研の人員増がその主たる内容になるわけでございますが、これにつきましても十分な人員をただいまのところ考えておりまして、その面におきましてもまず研究は円滑に進められるのではないかと考えております。  それから第三点の、この臨界プラズマ装置というものはどの程度の内容のものであるか、こういうことでございますが、技術的にいろいろ申し上げますと長くなりますので、簡潔に結論だけを申し上げますと、いままでの実験装置といいますものは、そのプラズマの生成に必要なエネルギーというものは考えませんで、もっぱらプラズマの閉じ込め、それを高温化する、こういったことを考えて進めておったわけでございます。  今度の臨界プラズマ実験装置になりますと、入力に要したエネルギーと、そのエネルギーを利用して生成させた核融合装置と申しましょうか、それによるエネルギーがバランスする。つまり、外部にはエネルギーは出ないわけでございますけれども、入力に要したエネルギーと生成されたエネルギーがバランスする、こういうものを目指しているわけでございます。
  94. 山崎拓

    山崎(拓)分科員 制御核融合には磁場閉じ込め方式と慣性閉じ込め方式がある、こう言われておるのでありますが、わが国の進んでおりますトカマク方式、これはいわゆる前者であって、慣性閉じ込め方式の研究開発は十分に進められていない。そこで、アメリカでは後者のレーザー方式の方が好成績をおさめておるというふうにもっぱら言われておるわけでございまして、ローソン条件の達成のためにはこちらの方が早いのではないかという最近の国際的な学説もあるようでございますけれども、わが国は今日のトカマク方式だけで研究開発を進めていいのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  95. 福永博

    ○福永政府委員 御案内のように、ただいま私、御説明いたしましたように、トカマク型を中心にして、原研でこれを中核にして研究を進めるというのが第二期でございます。  それから先生御質問のように、そのほかにもいろいろなアイデアと申しましょうか、方式と申しましょうか、そういうことが考えられ、かつ研究も進めれております。たとえばレーザーの方式によるものでございますとかあるいはステラレーター方式とか、いろいろございます。世界的にもそういう各種の方式がいわば並行的に進められているのは、先生お話しのとおりかと存じます。  私どもは、こういった世界研究の現状を踏まえまして、この第二期計画においてはどういうふうな進め方をしたらいいであろうかということで、各界の権威の先生方にもお願いいたしまして、原子力委員会の中に核融合研究開発懇談会というものを設けまして、いろいろ御意見をちょうだいしたわけでございます。  その結論だけ申し上げますと、一つは、世界的にもいま研究が進められているトカマク型を中心とするのがよかろう。それについては、バックグラウンドといたしましては、原研がいままでやってまいりましたJFT2を使った研究が継続されて、かつ生かされるであろう、こういうような背景もあったわけでございます。しかしながら、そのほかのいろいろな方式によります違った考え方の核融合研究というものも、これは決してなおざりにするわけではございませんで、現に大学等を中心にして進められておりますけれども、これらにつきましてもトカマク型を相補うような、補完するような形でなお今後の研究を続けていくべきであるということで答申をいただいております。  そのような答申を踏まえまして、今回の五十年度の予算につきましても、私ども科学技術庁の方では、この原研のトカマクを中心とした予算を組んでおりますけれども、他方、文部省関係では他のいろいろの方式による研究を進めていただくというようなことで計上されている、かつ同時並行的に研究は進められる、こういうふうに了解いたしております。
  96. 山崎拓

    山崎(拓)分科員 問題は、この第三段階以降、実験炉の炉心モックアップ試験装置、核融合動力実験炉、核融合動力原型炉、核融合動力実証炉というふうに、ほぼ五年単位で計画が進められることになっておるわけでございますが、こういう計画が円滑にかつ迅速に達成せられるためには、よほど思い切った国の取り組み方が必要でございますが、ただいまお話がございました核融合研究開発懇談会の報告の中に、これをやるためには「充分なる資金と広く関係各界から多数の優秀な人材を確保し、これらを有機的に活用し得る新しい研究開発実施機関、すなわち具体的には特殊法人核融合研究所を設立することが必要である。」こういうふうに明確に書いてあるわけでございますが、この核融合研究開発のセンターを国家的なプロジェクトとしてこれをやるおつもりがあるかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  97. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 核融合の問題を国家プロジェクトとして今後総力を挙げて開発に邁進するという点に関しては、私も全然同感でございまして、きのうもちょっとお話ししたのですが、この一月の伊勢の大神宮に総理が参りました際、私もお供しましたが、中曽根幹事長が一緒でございまして、日本は核融合とがん対策、それから地震予知、この三つを今年度の予算の最重点にひとつ取り上げようじゃないかというお話がございまして、総理も賛成でございました。  御承知のようにこの三つの予算はほとんどノータッチでつけられたようなかっこうになっております。また、この核融合問題に対する自民党内の、あなた初め若い方たちのみならず、最高首脳部の方にも非常に強い要望がある。それを受けまして、私どももこれはむしろ本命として今後推し進めるべきでなかろうかと思います。  それから研究所の問題でございますが、お話のように核融合開発懇談会の報告にはそのとおり載っておりまして、それを踏んまえまして、ただいま原子力委員会で具体的にどうしたらよろしいか検討中でございます。まだ結論ができておりませんけれども……。
  98. 山崎拓

    山崎(拓)分科員 この問題につきまして、なおお伺いしたいのですが、同じ報告によりますと、「核融合研究所の設立は、昭和五十一年度を目途とし、可及的速やかに設立準備組織を設立する必要がある。」こう書いてあるわけでございまして、ひとつもう早速に検討を開始していただきたいのでございますが、私ども昭和五十一年度の予算編成期にはぜひこの設立準備費をつけていただくように、これから猛運動を展開する決意でございますけれども、この点について長官のお考えをお伺いしたい。  さらに、もう一点ついでにお伺いしますが、これは新聞の報道によりますと、足立前科学技術庁長官が、水戸射爆場跡地の一部を研究所の建設用地にという発言を閣議でなさったということが出ておったわけでございますが、このような研究所をつくりますためには、少なくとも五十万坪くらいの敷地が必要である、こう言われておるわけでございまして、そういう点について佐々木長官のお考えはいかがでございますか。
  99. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 研究所の新設問題に関しましては、ただいま申し上げましたように、原子力委員会で検討中でございますので、五十一年度を期しまして早く結論を出していただいて、その結論に従って私どもも具体的な準備にかかりたいと思います。  それから、敷地の問題、立地の問題でございますけれども、前の足立長官がそういうお話をしたということは私、聞いておりますけれども、地元の話し合いがこれは先決でございまして、地元にはまだ何らそういう話を進めている段階ではございませんので、そういう点ももう少し詰めて、そして向こうが適当だということになりますれば、よく地元とも話し合いを進めまして、話し合いがつきますれば、そういう方でやった方がいいのではないかと実は思っておりますけれども、まだ具体的に折衝に入るなんという段階ではございません。
  100. 山崎拓

    山崎(拓)分科員 最後にもう一問だけお伺いしたいのですが、核融合開発研究、核融合エネルギーの実用化は、恐らく日本人の手によって成るであろうが、それは日本ではない、こういう言い方をする向きがございまして、つまり江崎玲於奈博士がアメリカに頭脳流出したと同じように、わが国にいっぱいおります優秀な核融合の研究者が海外に流出するおそれがある、このように言われておるわけであります。そこでこの核融合の実用化だけはぜひとも日本人の手によってはもちろんでありますが、日本によって先駆的にやりたいという国民の一人としての私も強い希望を抱いておるわけでございます。  冒頭に申し上げましたアメリカのエネルギー独立計画でございますが、その予算の概要はよく御承知のとおりでございますけれども、百億ドル、五年間の予算の中で実に五十五億四千万ドル、邦貨換算一兆七千億でございますが、これを原子力関係に割いておるわけでございまして、その中で核融合炉に二六%、十四億五千万ドルを割いておるわけでございます。九千九百億円、五年間ずっとやるというようなことでございまして、それに比べますと、わが国の予算はまことに微々たるものである。これは政府の予算でございますから、アメリカはもう民間の研究開発も進んでおりますから、合わせて年間邦貨にいたしまして二千億円くらいはつぎ込んでいるのではないか、このように言われておるわけであります。  それくらい思い切った金をつぎ込んで、かつ先ほど来議論いたしておりますような総合的な研究所を設立をいたしまして、十分な研究条件を研究者に与えないと、先進諸国の核融合研究開発におくれをとることにもなります。かつまた、日本の国によって研究開発が実現をするということにならないのではないかという懸念を持っておるわけでございます。ひとつ最後に長官の御決意のほどをお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  101. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 まことにありがたいおぼしめしで、私も全然同感でございます。  ことしの予算の際も、大蔵大臣との大臣折衝で最終的に決めるので、事務的には余りいじらぬでもらいたいということで、大臣折衝で最終的に決まりました。ほとんどこちらの要求どおり大蔵省もつけてくださいまして、ただアメリカとの比較におきましてはまことに微々たるものではないかと申されましたが、そのとおりでございまして、しかも研究の成果がほとんど出てないということでございますが、今後はお話のように研究所とかあるいは敷地とか、いろいろ具体的になりますと、これは大変な大金を食うわけでございますので、私ども一生懸命がんばるつもりでございますが、若い皆さんはひとつライフワークとしてこれに取っ組んでもらいたいということを希望を申し上げたいと存じます。
  102. 山崎拓

    山崎(拓)分科員 終わります。
  103. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議
  104. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安井吉典君。
  105. 安井吉典

    安井分科員 短い時間ですから、能率的にひとつお聞きしていきたいと思います。  一番初めに、前国会の科学技術振興対策特別委員会で、診療放射線技師に、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律による放射線取扱主任者の資格を付与してほしいという、そういう請願を特別委員会で採択をして政府に送付しているわけでありますが、これは、当然法律の改正が必要になってくると思います。委員会の審議の中では、各方面から検討をしても問題はないということで、結論を出しての採択であったわけです。ですから、政府でも速やかに法律改正の手続をお始めいただくことが本当ではないかと思うのですが、いかがですか。
  106. 福永博

    ○福永政府委員 診療放射線技師、エックス線技師に放射性同位元素障害防止法に伴う放射線取扱主任者と同じ資格を与えたらどうだ、こういう要望は確かに私ども承っております。  しかしながら、この問題につきましては、現在私どもの方では放射線障害防止法というもの全般の見直しを検討中でございまして、その中の一環といたしまして、厚生省等関係省庁とも連絡をとりながら、御趣旨も踏まえて検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  107. 安井吉典

    安井分科員 そういたしますと、この請願の趣旨のとおり入れるのは入れるにしても、全体的な見直しを完成を待っての提案にしたいということだそうでありますが、しかし、そうなりますと、いつまで置かれるのかということになるわけです。大体その見直しが終了して、国会にその法改正が提案できるのはいつごろというふうにお考えですか。
  108. 福永博

    ○福永政府委員 ただいまお答えいたしましたように、障害防止法の一環として考えていきたいということでございますが、これは病院等の関係もございますので、厚生省の意見も私ども十分伺ってみなければなりません。  それから、法律全般の見直しでございますので、まだいつまでというような、確たる見通しはただいまございませんけれども、なるべく早い機会にやりたいと思っております。
  109. 安井吉典

    安井分科員 大臣、これですね、そういう要望があって、私どもその要望どおりやっても無理はないというふうに判断をしたわけです。これはもう全会一致です。そういう経過があるわけですから、できるだけ早目にこれができますように、総体的な作業が進んでいるのだとすれば、その作業をできれば今国会中にでも終了して提案ができるようにと、私はそういうことまで申し上げたいわけでありますが、いかがでしょう。
  110. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 厚生省との関係もあると思いますが、御趣旨に沿うように至急検討させたいと思います。
  111. 安井吉典

    安井分科員 次に、去年非常に大きな問題になりました原子力船「むつ」の関係でありますが、これはこの予算委員会でも、いろいろな場で幾度も幾度も取り上げられておりますから、同じことを繰り返したくはないのでありますけれども、しかし、四月十四日がたしか新しい母港の決定のタイムリミットだと思います。そこまででの決定ということになるとずいぶんいろいろ問題があるのではないか。特に、前日の四月十三日が知事選挙の日で、十四日はたしか開票でしょう。それから市町村長や市町村議選が始まるという地方統一選挙のさなかなわけですね。ですから、そういう微妙な時期であり、しかも、この母港決定は同じく微妙な地元問題がからんでくる、こういうことであります。  ですから、そのタイムリミットまでに決めるというのは、政府が一方的に決めるのを言うのか、それとも地元の完全な了解、納得を取りつけて調印をするとか、そういうきちっとけじめをつけるのを四月十四日と考えておられるのですか。その辺ちょっと明確にしていただきたい。
  112. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 現地との取り決めの際のそこら辺の吟味は、そこまで細かく勘定してやったのでないように聞き及んでおります。しかしながら、やはり本格的に地元との話し合いもつけて、そしてこれであればというところまでやれれば、これは一番よろしいのでございますから、そういう方向でということでせっかくがんばっております。  しかし、いみじくもいまお話がございましたように、これは大変政治的な問題であり、しかも、選挙のさなかにこういう問題を地元に持ち込むということが、一体どういうことになるのかという点等を考えますと、これは、地元青森県との話し合いはそのとおりでございますけれども、ほかの県等で話を進める際に、選挙のさなかで、受ける方は大変どうも困惑するんじゃないかという感じもいたしますので、そこら辺のこれからの流し方と申しますか、いろいろそれは検討してみたいと思っております。
  113. 安井吉典

    安井分科員 しかし、このタイムリミットまでに政府が新しい母港の最終決定に至らなければ、青森県の方の地元に対する重大な違約になるわけですね。もし決まらなかったらどうされますか。
  114. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 おそらく、そういう地方選挙までいろいろ影響等を考慮して時限を決めたんじゃなかろうと私は思います。草々のうちに決めたものでございますから、したがって、私どもはベストを尽くして努力いたしますけれども、まあ四月十五日といいますか、四月いっぱいくらいにはと思っておりますけれども、仮に四月いっぱいにいたしましても、それまでにできるだけひとつ決めたいということで努力したいということで、いまのところは、努力をすると言う以外に、相手のあることでございますから、実は大変憂慮しております。
  115. 安井吉典

    安井分科員 そういたしますと、この十四日のタイムリミットまで決まらないで四月の末ころまで延びることもあり得る、そこまで政府考えておられる、こう理解していいわけですか。
  116. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 これはたしか、半年以内とびしっとそういうふうに決めたとか、ちょっと私、立ち会っておりませんので、そこら辺の吟味はまだ足らぬのかもしれませんが、仮に四月十五日とかいうふうに、文字どおり、決めましてから一日も狂わさずに半年という日時を切ってということになりますと、やはり四月十何日かだったと思います。ですから、それまでに決められれば一番結構でございますけれども、しかし、もし決まらぬ場合はどうするか、その決めるということは一体どの程度までが決まるというのかという点もいろいろあろうかと思いますが、しかし、ただいまの段階はそういうことでなしに、とにかく約束の期限までには、政府としてはできるだけひとつ努力をして問題を処理してみたいという覚悟で、ただいま一生懸命努力中だと言う以外に申し上げようがないのでございます。
  117. 安井吉典

    安井分科員 何か、最初のころの鈴木さんが行って話し合いをしたころよりも後退したような印象を受けるわけで、それはまた地元にはね返りますからね。ですから、政府としてのきちんとした公約はきちんと守る、そういう方向で進めていただくことをこの機会に申し上げておきたいと思います。  そこで、原子力船の事故防止について、全米科学アカデミーの組織である全米調査会議が十二月一日に、原子力船について国際安全基準を設けようというような提言をしているようであります。私もこれは新聞で見た程度なんですけれども、原子力船「むつ」を進めている日本政府としては、これはもちろん日本政府に対する提案じゃありませんけれども、どういうふうな考え方を持っておられるか、その辺伺います。
  118. 生田豊朗

    ○生田政府委員 ただいま先生指摘の点でございますが、昨年科学技術特別委員会におきましても御質問がございまして、そのときは、私ども新聞でしか承知していないというお答えを申し上げた点でございます。  いろいろ調べたわけでございますけれども、米国の関係といたしましては、米国政府の海事局というのがございまして、それの国立海事調査センターがございますが、それが各国の原子力船の安全基準、安全規制等の収集とか調査を行っておりまして、各国にこれを配付する、そういう事業活動をやっております。わが国もその調査活動には協力しております。  それから、アメリカではございませんけれども、OECDの原子力機関の組織下にございます原子力施設安全委員会におきまして、原子力船の安全性に関する技術的諸問題を討議する専門家の作業グループを設置したいという提案がございまして、近く第一回の会合が開催される予定でございます。  私ども、現在まで承知しております国際安全基準につきましての各国の動きはそういうことでございまして、昨年の十二月に新聞に出ましたことは、いろいろ調べましたのですが、正確にはまだ情報をキャッチしておりません。
  119. 安井吉典

    安井分科員 これは仮定の問題ですけれども日本の原子力船「むつ」は動けませんが、外国の原子力船は動いているわけで、もしこれが日本の港に寄港したいということになったら、政府はどうされますか。
  120. 生田豊朗

    ○生田政府委員 これは、原子炉規制法によりまして安全審査をする必要がございます。安全審査をいたしまして、安全審査に合格いたしましたときに入港を認めるということになるわけでございます。
  121. 安井吉典

    安井分科員 ですから、その日本基準と、ほかの国の、原子力船「むつ」はまだ動くわけじゃないのですけれども、それがほかの外国の港でも行く場合ですね、それぞれの国の規制が違うということから、国際的な統一した基準をつくったらどうかという提言も私は無理からぬものだ、こう思うのです。  それでは、いまのところは、まだそういうふうな具体的な提案も国際的にはないし、日本政府としてもそこまで考える必要はない、こういうことですね。
  122. 生田豊朗

    ○生田政府委員 原子力船が、今後近い将来に実用化されることの見通しが強いわけでございますが、そうなりました段階に、現在のように、一々その国の安全審査をうけてから入港ということでは、実用性の点から非常に問題があるということで、これは先生の御指摘のとおりでございます。  それで、何らかの国際条約の形をとりまして、条約加盟国の一つの国の安全審査を通っていれば、ほかの国の安全審査を一々受けなくてもよろしいというその前提としては、当然、先生指摘の安全審査の国際化ということが必要でございますが、そういう動きがアメリカを中心にしまして強くなっております。私も昨年、「むつ」に関連いたしまして当時のアメリカの原子力委員会の事務局の方からそういう話を聞いたことがございますので、今後そういう動きが急速に一般化してくるのではなかろうか、かように考えております。
  123. 安井吉典

    安井分科員 四十九年版の原子力白書はついに出せなかったということのようですが、この次お出しになるのはいつごろですか。
  124. 生田豊朗

    ○生田政府委員 四十九年版の原子力白書を出せないことになりまして、大変申しわけないと思っております。ただいま最近の情勢を十分に取り入れて稿を練っております。大体六月ごろに出すことをめどにいたしまして、いま内容を固めている段階でございます。
  125. 安井吉典

    安井分科員 それは、四十九年版を出せなかったのは、余りにトラブルが続発して大変な状態であったということが一つの原因だったようでありますけれども、それじゃ四十九年のそういう実態をも含めて六月ごろお出しになる、こういうことですか。
  126. 生田豊朗

    ○生田政府委員 昨年は、先生承知のように、原子力行政にとりましていわば狂乱怒濤の時代でございましておくれてしまったわけでございますが、いろいろの問題がその間に提起されたわけでございますので、四十九年におきます動きも全部入れまして、新しいものを出したいということで、いま準備を進めております。
  127. 安井吉典

    安井分科員 そこで、私は北海道からいま帰ってきたのですけれども、きょうの北海道新聞に科学技術庁長佐々木義武さん、「この人に聞く」というインタビューが出ているわけです。その佐々木さんといま問答しているわけですけれども、いろいろ言われております。その中で、石油との比較において原子力発電のコストは石油の半分で済む、一キロワットアワー当たりわずかに四円前後で済む、だから原子力発電でなければだめなんだということを力説されているわけでありますけれども、四円ぐらいで済むという資料は、私が科学技術庁からいただいたものには、とてもいまそんなもので済むようなことには伺っておりませんし、それから、石油の半分ぐらいだというのも少しオーバーではないかと思うのですが、大臣の御認識をひとつ伺います。
  128. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 その新聞にどういうように出たかまだ見ませんけれども、私のところへ取材に参りましていろいろお話ししました。ただその際、コストの問題を特にベトンにしたつもりはございませんですが、もしそういうふうに載っておれば、それも一つの取材の方法かとも存じます。  いまのコストの問題ですけれども、ただいまの軽水炉系統でいきますと、大体四円から五円というのがコストの単価でございまして、一方、油の方のコストは、いま一バレル十ドルから十一ドルという目安でいきますと、七円から八円というのが大体の標準であると思います。ですから、ほぼ半分ぐらいと見ていいのではないかということで、少しラウンドの数字で恐縮でございましたが、話したという記憶がございます。
  129. 安井吉典

    安井分科員 科学技術庁の方に私がお願いしてつくっていただいた資料では、四十九年六月試算ということになっておりますが、原子力はキロワットアワー当たり五円二十五銭、石油火力の方は八円七十九銭、こういうふうになっております。ただ、ちょっと時間がないので深く入った議論はできないかもしれませんけれども、これはおそらく今日のような故障続きの実態を踏まえての計算ではないはずです。稼働率八〇%、これが経済ベースだと言われているわけですけれども、おそらくそんなところを基礎にしているものじゃないのですかね。  ですから、去年一年なら去年一年間における実際の稼働率はどれぐらいになっているのか、それをひとつお話し願いたい。
  130. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 あとで資料を出しまして、正確な資料で御説明したいと思いますが、普通八〇%、七〇%、定期検査が日本では大体七十日でございますから、それをのけますと七五%フルに動いてということになりますけれども、いまお話しのように、故障が起きて休むというケースも多うございまして、稼働率の平均はたしか五五%ぐらいじゃないかと思います。しかし、計算は大体そのぐらいの目安でコストをはじいておると私は考えております。
  131. 生田豊朗

    ○生田政府委員 御説明申し上げます。  四十八年でございますけれども、一番高いのが日本原子力発電の東海発電所、コールダーホール、これが約七〇%、それから同じく日本原子力発電の敦賀発電所、これが七八・九%、一番低いのが美浜の一号でございまして二七%、ほかのものが大体五〇%前後ということになっております。
  132. 安井吉典

    安井分科員 これは四十八年でしょう。四十九年になったら、まだ数字が出ていないわけですが、おそらく私は大変な数字になっているのではないかと思うのですよ。ですから、八〇%や七五%ぐらいを基準にして原子力は安い、こういう宣伝をされることに無理があるのではないか。  それから、その問題についての議論をすれば問題はたくさんあるのですけれども、この中には廃棄物の処理やあるいは廃炉の処理費等は入っていないのでしょう。火力発電所のなれの果てはそんな配慮は要りませんけれども、廃炉の処理がいずれ来るということまで計算に入れる場合、あるいは廃棄物の処理はいまだに最終的な見通しもついていないというふうな段階ですが、私は、そこまで計算に入れた考え方をしてみる必要があるのではないか。原子力発電所というものを次の段階の重要なエネルギー源として考える以上、そういうことについての配慮はどこまで進んでいるのか、その点ひとつ伺います。
  133. 生田豊朗

    ○生田政府委員 先生の御指摘は、大変ごもっともな点でございます。  まず稼働率でございますが、昭和四十九年につきましてまだ集計ができておりませんが、大体申し上げますと、ほとんど五〇%台のものが多うございまして、コールダーホールが七〇%以上であろうかと思います。それから、美浜の一号は一〇%を割るような非常に低い稼働率になっておるかと考えます。  そういうことでございますが、これは大変細かいことで恐縮でございますが、この負荷率の計算と申しますのは、定期検査の時間まで入れて計算いたしますので、フル稼働、年間一〇〇%稼働いたしましても八〇%ぐらいにしかならないわけでございますので、八〇%との違いが正確な意味の稼働率でございます。五〇%以上の稼働率でございますと、私は、その段階ではまだ石油火力に対して競争力を持っているというふうに考えております。ただ、もちろん差は縮まってまいります。  それからもう一つ、廃棄物の処理あるいは廃炉の処理その他の御指摘は大変ごもっともな点でございまして、私どもも、原子力発電の特殊性を考えます場合に、やはり核燃料サイクルに要します費用をコストの中に入れないといけないのではないかというように考えております。これまでのコストの比較は、いわゆる発電コストでございますので、先生指摘のように、そういう核燃料サイクル関係の付帯的なコストは入っておりません。これをどの程度計算いたしますか、いまいろいろ検討しておる段階でございますが、感じで申し上げますと、私は、現在のような石油の高価格が続きます限りは、稼働率が多少落ち、それから核燃料サイクル関係の付帯的な費用がふえましても、まだ原子力発電というのは十分競争力があるというように考えております。
  134. 安井吉典

    安井分科員 それから、コストの中で大事なのは建設費ですよ。おそらくこれは四十八年度ベースくらいで計算しておられるのではないかと思うのですけれども、現在新しい発電所を建設する費用というのは、私は恐ろしい上昇を示しているのではないかと思う。だから大堀電源開発会社の総裁も、とても六千キロなんというのは夢だという言い方をしているのは、これは建設費の大幅な暴騰を指して言っているのではないかと思うのでありますけれども現実にコストをつり上げるような要素は次々あるし、また、いまの廃棄物等の問題についてはまだ見通しさえ立っていない。  そういうような段階で、大臣がおっしゃるように、四円だ、石油の半分だ、安いからやれと、北海道は原子力発電所はまだないわけですが、その北海道へ行ってじゃんじゃんやっておられる。どうも私はそういう政府の態度に非常に不安を感ずるのですが、やはりもう少し慎重にやっていただきたい、こう思うわけです。
  135. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 各炉別の操業度がどうであって、それによる単価をはじけばこうなります、初めにつくるときはどのくらいの計算でやったのが、その後の資材の値上がり等で、現実にはこういうふうな単価になりますといったような資料を少し整備いたしまして、関係委員会等ででもお話し申し上げたいと存じますが、きょうは時間がございませんので、詳しい話は先ほどの程度にとどめたいと存じます。
  136. 安井吉典

    安井分科員 それでは、いろいろなケースを見込んだ原子力発電所のコストについて、もう少し精密な見通しの資料をお出しいただきたい、そのことをお願い申し上げて、科学技術庁関係の質問を終わります。
  137. 生田豊朗

    ○生田政府委員 通産省と相談いたしまして、ただいま先生指摘の点も考慮に入れまして、資料を作成してお出ししたいと思います。
  138. 安井吉典

    安井分科員 自治大臣というよりは、きょうは北海道開発庁長官というお立場なんでしょうけれども、自治大臣であられることには間違いない。それに行政管理庁長官もおそろいでありますので、地方自治法の附則第八条の改正をして、地方事務官という前世紀の遺物をなくせということについて、今日までいろいろと主張を続けられてきた問題をちょっと伺っておきたいと思います。  政府の行政管理庁やいろいろな機関も、廃止方針を幾度も幾度も繰り返し出された。自治省と関係三省と行管の五大臣の覚書も出た。それからその後も、いろいろ関係閣僚会議が開かれた。四十九年の五月の地方行政委員会では、五十一年三月三十一日をめどに、地方事務官は地方公務員とするという趣旨の決議が行われた。こういう経過の中で、伝えられるところによりますと、今度の国会も自治法改正が提案されないということ、これはおかしいと思うのですが、ひとつそれぞれのお立場で、きょうは両大臣のほかに厚生省もそれから労働省もお見えになっていると思うのですが、御意見を伺いたいと思います。
  139. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 お答えを申し上げます。  地方事務官問題につきましては、すでに安井先生も御案内のように、従来長い間の問題としてその解決が要請されており、特に、昨年の地方行政委員会の附帯決議によって、五十一年の三月までに決着をつけるべきであるという御趣旨がきまったわけでございます。  これはありていに申しますと、あの附帯決議をつくるときに、実は当時私は国対委員長をいたしておりまして、私の部屋で、うちの労働、厚生、運輸、それに地方行政の関係議員が集まって、時期尚早である、そういう附帯決議、そういうことをする必要はないのだ、お断りした方がいい、それはまだ無理だという話であったわけでありますが、私は、長い間の懸案としてこれが主張されてきたのでありますから、やはり前向きで処置をすべきであると考えまして、附帯決議ならいいじゃないかということで、私が取りまとめたという実は経緯があるわけでございまして、あの附帯決議自体が行われる段階においての自民党並びに政府部内における空気は、そのようなものであったということをまずもって御了承賜りたいと思うのであります。  しかし、この問題を解決しなければならないということについては、いまでもその考えを捨ててはおりません。関係各省との間に連絡をとりつつ解決を図りたいと思っておるのでありますが、現在のところにおいて関係省との話し合いが、法案を提出するような具体的なところまではまだ進んでおりません。むしろ、なかなかむずかしい状態になっているとお答えをいたしたほうが確かかと思います。しかし、私としては今後もこの解決の努力は続けてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  140. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 行政管理庁といたしましては、昭和四十八年の十月に関係の五閣僚の方々の懇談会を開きまして、以来行政管理局長が中心となって、関係省庁の官房長会議等を開きまして本問題を解決したい、こういうわけで努力をしてきておるのでありますが、衆参両院地方行政委員会の附帯決議等も各方面から種々意見が述べられておりますが、何とかして私たちは早目に解決をしていきたいものだ、こういうふうに考えまして、できるだけ早く解決するような方向努力していきたい、かように考えております。
  141. 山高章夫

    ○山高政府委員 ただいまの地方事務官の身分移管の関係でございますが、これは身分と申しましても、社会保険業務の実態、それから今後どう持っていくか、そういうことと非常に深くかかわりのある問題でございまして、その関連において検討すべき問題であるというぐあいに考えております。  将来、社会保険業務が円滑、適正な実施をされ、国民の福祉に十分寄与できるというような方向関係省と検討を進めてまいりたいというぐあいに考えております。
  142. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  地方事務官の問題につきましては、先生指摘のような経緯もあり、慎重に検討中でございますが、労働省におきましては、特に職業安定行政の性格から第一線の公共職業安定所は国の機関であり、その職員は国家公務員であり、都道府県段階の職員だけが地方事務官であるという特異性があること等から、早急に結論を得ることは困難な状態にございます。また、最近の逼迫した雇用情勢の中で安定行政は困難な諸問題に直面しておりますので、このような状況下におきまして、職員に不安を与え、行政上の混乱を招くことのないよう、この問題についてはさらに慎重に検討しているところでございます。  今後につきましても、円滑な業務の執行体制の確立、それから職員の身分の安定等の地方事務官制度をめぐる諸問題につきまして、検討経過を踏まえながらさらに検討してまいりたいと思います。
  143. 安井吉典

    安井分科員 いま四省を代表する御発言があったのですが、慎重に検討しておりますと言われる。実は、これは昭和二十一年から聞かされていたせりふです。地方自治法の附則第八条、当分の間地方事務官を置くというのは、地方自治法が憲法と一緒につくられたときに置かれた規定で、それからずっと国会での審議で質問をすると、に検討をしておりますと、それだけで四半世紀来ているわけですからね。当分の間というのは一体いつまでなのかという基本的な疑問さえ抱かざるを得ないような問題です。  ですから、いままで国会で答弁され、あるいはまた福田自治大臣は国会対策委員長として、各党の意見のまとめをされたようなお立場の人でありながら、それでも今度の国会へは提案ができないと言う。これは実はおかしいと思うのですね。しかし、ここでやりとりしていても、今度の国会にすぐ出そうもないような空気だということは私も察知できますが、後の問題もありますからこれ以上きょうは詰めませんけれども、慎重な検討というのはもう一カ月か二カ月の間にしてもらいたい。ごく短期で結論を出してもらいたい。そのことだけきょうは要望して、この問題を打ち切ります。  そこで、これから北海道開発庁長官としての福田さんへのお尋ねでありますが、北海道開発予算は、ことし初めて前年度よりも〇・八%下回りました。北海道開発庁という役所が置かれて以来初めてのことであります。特に、開発実施の事業費は一・四%のダウンで、全国の公共事業費の伸びにも及ばなかったという実態があります。大体諸物価は三〇%ぐらい上がっておりますからね、恐らく事業費は三〇%ぐらい去年よりも落ちているのではないか。いままで一千町歩の土地改良ができたのが、ことしは七百町歩しかできない、一例を申し上げますとそういうふうなことになっているのではなかろうかと思います。  そういう実態の中からも、第三期総合開発計画なるものは見直さなきゃいけないという意見が強まってきた。それは単にお金の問題だけではなしに、過密過疎は相変わらず厳しくなるばかり、石炭はつぶしてしまった、そして石油に頼ったけれどもそれがいま大変な事態になって行き詰まってしまった、環境問題が起きてきた、公害問題も起きてきた、土地の騰貴もどんどん進むということで、もうかつて夢見たような北海道開発の進め方というのは、まさに夢で終わって、しかも、そういうふうなむずかしい問題の方が強まってきたという現状であります。  ですから、国全体の経済政策がいま大きな転機に来ているのと同じように、北海道の開発の進め方についても、これを一つの重大な転機として取り組んでいくべきでないか、こういう意見が強まっているのは御承知のとおりです。ですから、第三期計画そのものを見直すべきではないか、そしてまた新しい計画の策定を進めるべきではないか、そういうようなことで、政府部内でも作業が進んでいるように聞くわけですが、それらの点についてまず伺います。
  144. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 お答えいたします。  ただいま先生指摘がございましたように、昭和五十年度の北海道開発予算は、前年に比べまして〇・八%、事業費といたしましては一・四%の減額を見ております。これは恐らく、私どもの試算でございますけれども、四十六年の事業量並み程度じゃないか、こう考えております。  そこで、いろいろ試算をいたしまして、四十六年からこの五十年までの約五年間を計算して出しますと、開発事業費だけで申し上げますと、大体年率一三%を目途にこの三期計画というものを描いておったわけでございますが、いま私ども計算によりますと、名目では一八・四%、しかしながらデフレーターいたしますと、これが八・五%程度というような私どもの一応の試算がございます。  したがいまして、ただいま先生が御指摘になりましたような、今後のこの政府投資と申しますか、開発事業費といいますか、この三期計画の目標どおりに達成するかどうかということは、非常に微妙な感じがいたしておるような次第でございます。なおかつ、ただいま先生がいろいろな点で御指摘がございました、特にエネルギーの問題の見直し、それから特に、先ほども指摘の低成長パターンへの切りかえというようなことに応じます所得水準の見直しとか、開発規模の問題とかというような問題、さらに、御指摘がございましたように環境問題、それから住民の福祉問題、そういったような問題、いろいろ問題点としてクローズアップしてきておるわけでございます。三期計画をつくった当時といまの経済情勢、社会情勢は、資源問題、物価問題、環境問題において、いまだかつて見ないような試練の年になっておるような状況でございます。  こういった点を踏まえまして、北海道では御案内のような総合開発委員会でむしろ新しい長期計画を策定すべきである、こういった中間報告をいただきまして、これは昨年の九月の三日でございますが、そういったことをもとといたしまして、先般の十一月五日でございますか、北海道開発審議会からも、新しい長期計画をこの際策定する必要がある、こういう建議をいただいたわけでございます。私どもは、今後の日本経済社会あるいは北海道の社会経済の望ましい姿を先見的に見通しまして、新しい長期開発計画を本格的に策定するということに相なったわけでございます。
  145. 安井吉典

    安井分科員 国土庁の方にひとつ伺いますが、いま開発庁の方からお話がありましたようなそういう状況は、北海道だけじゃなしに全国的な姿で、今日までの政府の、高度経済成長を石油がぶ飲みのもとに追い求めてきて、力の弱い者を踏みにじっていくという、そういう経済政策の結果がいまのような事態に来ているのではないかと思うのです。  それはそれとして、国の経済社会基本計画や新全総等も見直しの作業を始めるという言明があるわけであります。国土庁としてのその問題についての作業の方向やら、あるいはまた基本的な構想の中身等をまず伺います。
  146. 小谷善四郎

    ○小谷説明員 お答え申し上げます。  現在ございます第二次全国総合開発計画、新全国総合開発計画でございますが、これは昭和四十四年に閣議決定されたわけでございますけれども、先ほど来先生からいろいろと御指摘いただきましたように、計画策定後、土地問題、環境問題等々いろいろと問題が深刻化してまいりまして、そういうことから計画の総点検ということを現在進めているところでございますが、さらにその後、エネルギー問題とか食糧問題等国際的にも大問題になりまして、計画の見直しということが必要になってきたというふうにわれわれは認識しております。さらにまた、内外情勢がいろいろと変化してまいりましたので、そういう意味での新しい経済政策とも調整を図って見直していくということも必要だろう、そのような考え方に立っております。  このような情勢にかんがみまして、私どもといたしましては総点検作業の成果を踏まえまして、国民と国土とが安定してどんなかかわり合いを持ち得るかというような超長期の展望をさらにいたしまして、その上で、昭和六十年を目標年度としました第三次の全国総合開発計画を、現在のところ五十年度中に策定したいというふうに考えております。  それで、この第三次の全国総合開発計画の考え方でございますが、それはこれから各方面の御意見を承りつつ詰めていくことになるわけでございますけれども、一応粗いところで申し上げますと、有限な資源、環境あるいは土地、水、そういうものをまず前提にしなければいけないだろう、その上で国民生活の充実を図るということを目標にいたしまして、国土の環境条件を整備するにはどうしたらいいか、そういう面での基本計画として策定してまいりたいと考えておりまして、その際、地方公共団体とも十分に意見の交換を行うということなどによりまして、地域住民の意向が十分計画に反映されるように努めてまいりたい、そのようなことから、そのような形でこれから計画策定作業に入ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  147. 安井吉典

    安井分科員 北海道開発庁として、新しい長期計画の方向についてどういう作業が行われているかということを、ひとつ伺っておきたいわけであります。  いまの第三期計画というのが一つあるわけですね。それとその新しい計画とをどう関連づけていくのか、それから第一、新しい計画の名前はどうするのか、その新しい計画はいつからいつまでのものとするのか、第三期計画の目指するところと新しい計画との違いは一体どこなのか、どういう点を見直そうとしているのかということです。それから、いつまでに策定をするつもりなのか、策定のスケジュールです、そういったことをこの際明らかにしていただきたいと思います。
  148. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 まず、現行の三期計画と新しい長期計画との関係でございますが、新しい長期計画は、先ほど国土庁からも申し上げましたように、昭和六十年を目標とする長期計画ということになっております。したがいまして、北海道総合開発計画も現在の第三期総合開発計画、五十五年まででございますが、それを越える長期の、おおむね六十年を目標とする長期計画の策定ということになってくるわけでございます。  したがいまして、これをいつ実施するかという目標でございますけれども、これはさらに北海道開発審議会等の意見も聞かなくちゃなりませんが、御案内のように、道の意見をまず煮詰めてまいりまして、それが内閣に意見が出ます。それを尊重いたしまして作業等は詰まってまいりますから、どうしてもかなりの策定作業の期間を要します。従前ですと大体二年近く、したがいまして、実務的に申しまして五十二年度から実施ということにならざるを得ないのではないかと考えております。したがって、始期は五十二年度、それから終期おおむね六十年度、こういった形になろかと思います。したがって、現在の第三期計画は、この新しい長期計画ができましたならば、発展的にそれに乗り移っていくというかっこうに相なります。その間は、現行の三期計画の幅広い弾力的運用で対処するということになるわけでございます。  それから、名称の御指摘でございましたけれども、実は、部内でも名称をどうするかということは、率直に申しましていまのところ、いま先生お答えできるような名称はまだ確定をしておりませんのが実情でございます。  それから、どういう考え方のもとにつくるかということでございますけれども、これはいま道の住民の意向というものを、ニーズというものを、ことしの一月から把握に努めておりまして、各界各層の意見をいろいろ聞きまして煮詰めてまいりたい、このように考えております。
  149. 安井吉典

    安井分科員 大体方向は一応御説明をいただいたわけですが、名前はまだないということになりますと、夏目漱石のネコみたいなことになるわけです。  ただ問題は、私は三期計画が行き詰まってきたというその実態をどう踏まえるかということ、つまり三期計画は、さっき申し上げたような高度経済成長の波の中につくられているわけで、したがって、これからの計画との違いというものはそこで大きく出てこなければいけない。人間の生活を優先させる方向というようなものが強く打ち出されてこなければいけない。そういう三期計画との違いが明確にされなくてはならぬと思うわけでありますが、この際もう少し明らかにしていただきたいのは、国土庁の進めつつあるその新全総とそれからこの新しい計画とは完全に一体的なものになるのか。つまり国土庁が進めている全国の計画の方針のもとに、北海道のやつがただ下請的につくられていくのかどうか、その点がちょっと気になるわけです。  一方、北海道というのは一つの自治体なものですから、自治体としての北海道としては、住民の意思を反映した開発の計画というものが当然あってもいいと思う。したがって、上から決めたものを国に追随する形で押しつけてくるというふうなことではやはり問題があるので、道民の意思を十分に反映していく、道民参加の計画という方向を目指していかなければならない。とりわけ昔と違って、住民の意思というのは実に多様化しています。そういうようなものに対応するものでなければならぬと思います。その点はどうでしょう。  それからもう一つ、北海道開発法そのものも、これはさっき言った日本経済の上がりしなにつくられた法律で、そういう中で今日までの北海道開発計画そのものもつくられてきているわけです。だから、いま多様化された道民意思を反映しながら、いまの新しい実態に即したような、環境の問題や公害の問題やそういったような問題に対して、十分な配慮ができるようなそういう北海道開発法でなければいけない。特に目的事項が、むしろ生活の方を優先させる、美しい自然を守ることを優先させるというそういう方向が必要なのではないか。つまり、新しい新々全総ですか、その全国計画との関連とそれから北海道開発法の改正そのものが必要ではないかという、この二点をひとつこの際伺います。
  150. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 全国総合開発計画と北海道開発計画は、国土総合開発法の十四条で調整を図られることになっております。したがって、この調整を図ることは当然でございますが、私どもといたしましては、北海道としての特殊性、特色というものは当然あるわけでございまして、あの開発可能性を秘めた北海道を開発するということ、しかも国土の均衡ある発展に資するということ、これは今後においても意義は失われないものだ、こう思っておるわけでございます。  北海道の住民のニーズというものは多様化しております。そういったものを十分くみ取りまして、新全国総合開発計画の国土庁の策定作業の段階において、私どもといたしましては、北海道総合開発計画もできるだけ速やかに、輪郭といいますか、基本的な方向といいますか、そういったものもできるだけ固めてまいりまして、新全国総合開発計画の策定の段階においては十分調和してまいりたい、このように考えているわけでございます。
  151. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 北海道開発法がずいぶん前につくられておるので、実際に合わなくなっておるのじゃないかというお説でございますが、確かにそういう考え方ももっともな面があるわけでありますけれども、またこれを改正するといたしますと、北海道には国の負担の問題その他について本土とは違った比率をもって処置をしておる問題とか、北海道というものが持っている潜在能力をいかに活用していくかというような点から見てみますと、そういう点を重視した予算の編成、あるいは本土とのかかわり合い、あるいは政府部内の調整ということをやっていけば、まあまあやり得るのではないか、事態に即応できるのではないか。むしろそこへ手をつけることによって、問題が、逆にマイナスの面も出てくることを考慮しなければならないのではないかというふうなことも考慮されますので、今後慎重に検討をいたしてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  152. 安井吉典

    安井分科員 福田長官に最後にちょっと申し上げておきたいのですけれども、北海道に、長官について一つ話があるわけですよ。組閣のときに自治大臣を仰せつかって、記者会見に臨んで自治大臣の抱負をお述べになってから、記者団の方から、北海道開発庁長官の方はどうですかと言ったら、あれ、おれはそんな大臣仰せつかったのかな、こう言ったという話が一つ話で伝わっています。そういうことは大臣について一種の汚名だと思うのですが、それを挽回する意味でこれからやっていただきたいわけです。  最後に私が申し上げたいのは、いま大きな価値観の転換の時期に来ていると思う。だから、これは北海道の開発だけじゃなしに、国全体の経済政策、経済社会発展計画なるものがあるとすれば、それの全体の問題だと思うのですけれども、経済効果というものにウエートを置き過ぎてきた、だから、何か事業をやるとすれば、これは経済的に間に合いますか、もうかりますかというのが一つの価値基準であったと私は思う。今日まで北海道の開発予算の編成でも、必ずその予算要求には経済効果という欄があって、その経済効果の大小によって事業量が決められていく。  私は、いまこういう時代になって、経済効果にかわる価値観として生活効果、その仕事をやることによってその地域の住民に、あるいは国民の生活に対してどれだけプラスになるのか、そのことをやることによってどれだけマイナスになるのか、マイナスになるようなことはやらないで、生活効果の上がるようなものを積極的に進めていく、そういう価値観の一つの大きな転換期に来ていると思います。そういう方向で、私は北海道開発庁長官としての大臣に臨んでいただきたい。いかがですか。
  153. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ただいま、私が組閣のときに発言したことにちょっとお触れになりましたが、あのときは、実は組閣の内容で、そういうことを言っちゃおかしいけれども北海道開発庁長官はほかの人がやるような話があったものですから、それでちょっとそういうような発言をしたわけで、私は何も北海道を無視して申し上げたわけじゃありません。  それから、いまあなたのおっしゃったこと、ごもっともな点もございますが、やはり北海道が持っておる一つの潜在力といいますか、これを国としてどう開発していくかという問題と絡めながら、北海道の道民の福祉というものを考えていくというのが私は方向だと思うので、いままでのような高度成長の立場において北海道の開発をやるということについては、スローダウンをする面があっても、だからといって北海道が持っておる潜在力というものを無視し、北海道の特異性というものを考えないわけにはいかないと思うのでありまして、やはり北海道が持っておる潜在力を重視して、その意味で北海道の開発に相当なウエートをかけた予算の措置をとってもらうようにしていただきたい、かように私は考えておるわけであります。
  154. 安井吉典

    安井分科員 北海道が持つ潜在能力だとか、置かれている経済的な立場などを無視せよと私は言っているのではないが、そういう中においても福祉こそ優先すべきだということ、その点を強調したかったわけですが、時間がありませんので、これで終わります。     —————————————
  155. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 次に、総理府所管中、環境庁に関する事項について審査を進めます。  まず、政府から説明を求めます。環境庁長官小沢辰男君。
  156. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 昭和五十年度の環境庁関係予算案について、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十年度総理府所管一般会計歳出予算要求額のうち、環境庁予算要求額は二百二十六億九千七百六十三万九千円であり、これを前年度の当初予算額百五十四億七千六百九十六万円と比較すると、増加額は七十二億二千六十七万九千円であり、その増加率は四六・七%であります。  次に、予算要求額の主要な項目について御説明いたします。  第一に、公害対策について申し上げます。  まず、大気汚染等防止対策及び水質汚濁防止対策については、環境基準の設定及び各種規制基準の強化を引き続き計画的に推進するほか、新たに日本近海における海洋汚染防止対策の確立に資するため必要な調査を行うこととしており、また、蓄積性汚染、自動車公害、新幹線の騒音及び振動並びに悪臭についての対策を確立するための調査を行うなど、九億六千三百六十七万円を計上しております。  このほか、地盤沈下及び廃棄物対策費として七千七百六十五万円、土壌汚染防止及び農薬対策費として一億六千三百三十一万円をそれぞれ計上するなど、公害規制を強化する等のための経費として、総額十二億四百六十四万円を計上しているところであります。  次に、公害監視設備整備費については、発生源監視設備整備費の充実を図るなど、地方公共団体の監視測定体制の整備を重点として、十四億三千九百十九万円を計上しております。  環境保全企画調整等の経費については、環境影響評価の実施を促進するための経費、環境保全長期計画を策定するための経費のほか、新たに瀬戸内海環境保全臨時措置法に基づく基本計画の策定に必要な経費を計上し、これらを合わせて一億五千百四十七万円、また、公害防止計画についても一千三百二十五万円をそれぞれ計上しているところであります。  次に、公害健康被害補償対策費についてであります。公害健康被害補償法に基づく被害者救済対策の推進を一層充実するほか、新たに水俣病センターを設立することとし、これらの経費として五十七億四千九百二万円を計上しております。  公害防止事業団については、その事業規模を一千百七十億円に拡大することとし、これに伴う事務費等の助成費として二十四億八千四百二十九万円を計上しております。  公害の防止等に関する調査研究の推進のための経費については、科学的な調査及び試験研究を一層促進するため、総額四十一億一千八百五万円を計上しております。  このうち、国立試験研究機関等の公害防止等試験研究費として土十八億四千六百二十二万円を環境庁において一括計上し、各省庁の試験研究機関等における試験研究の総合的推進を図ることとしております。  また、光化学スモッグに関する調査研究費一億八千二百万円、化学物質の審査判定のための基礎調査研究費一億二百万円、水質汚濁に係る総量規制導入のための調査研究費六千七百万円など、公害による健康被害、大気汚染、水質汚濁及び自然環境保全等に関する調査研究費として八億三千百八十三万円を計上し、必要な調査研究を進めることとしているほか、環境保全総合調査研究促進調整費として四億四千万円を計上し、関係省庁が所管する各種の環境保全に関連する調査研究の総合的な調整を図ることとしております。  さらに、国立公害研究所に必要な経費として十三億四千二百二十七万円、公害研修所に必要な経費として一億一千百五十二万円を計上しております。  以上、公害対策費の総額は百六十六億一千三百七十四万円であり、前年度の当初予算額に比し、六十四億九十一万円の増額となっております。  第二に、自然環境の保護整備対策について申し上げます。  まず、自然公園等維持管理に必要な経費として四億四百十四万円、交付公債による民有地の買い上げ制度については、新たに国定公園にも拡大することとし、その事業費総額を六十億円と予定し、このために必要な経費として五億四百五十九万円を計上しております。  鳥獣保護については、従来に引き続き渡り鳥の保護対策を推進するとともに、新たに自然保護行政と天然記念物行政との調整に基づいて、特殊鳥類等の保護事業を行うなど、一億四千三百四万円を計上しているところであります。  さらに、国立公園等の整備を図るため必要な施設整備費として二十三億二千百七万円を計上しております。  以上のほか、新たに自然環境保全目標基準を作成するなど、自然環境保全対策費として七千九百十九万円を計上しておりますので、自然環境の保護整備対策費の総額は三十四億五千二百四万円であります。  なお、このほか、建設省所管予算として、国立公害研究所の施設整備のため二十四億五千七百十一万円、公害研修所の施設整備費として七千九百七十九万円がそれぞれ計上されております。  また、国立公害研究所の施設整備に係る官庁営繕の国庫債務負担行為として三十五億三千三百万円が予定されております。  以上をもちまして、昭和五十年度の環境庁関係予算案の御説明を終わります。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  157. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて説明は終わりました。     —————————————
  158. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小坂善太郎君。
  159. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 私は、お許しを得まして環境庁長官に御質問したいと思いますが、ただいま本年度の予算の説明がありまして、非常に御熱心に環境問題に取り組んでおられるのでありまして、心から長官の御熱意に敬意を表したいと思います。  そこで、私、特にこの際お伺いしておきたいと思いますことは、公害に対しますところの長官基本姿勢であります。  御承知のように、わが国が高度成長をやっておった時代に、高度成長は無限であるかのごとき説が一部にあったのでありますが、私は、結局、資源と労働力というものが桎梏となって、これは有限なものであるということを言い続けておったのでありますが、いまにいたしますと私もはなはだ不敏であったと思います。そこにこの環境の問題、公害の問題というのが非常に大きく横たわっているということであります。そういう点からいたしますと、この環境問題は、実は高度成長が一応足踏み状態になり、今後も資源の問題等からいたしましていままでのようなものは望み得ないと思いますが、環境問題は実は高度成長時代のかさぶたのごときものになって、われわれの市民生活の上にのしかかっておるわけでありまして、そういう点から見ますと、これからいよいよ環境問題、公害問題の整理期に入っていく、こういうふうに思うのであります。  そういう際に、やはり一番重要なものはまず人命の尊重、健康の保全であると思う。しこうして、その基準となるべきものは科学的な学問の尊重の姿勢である。科学に基づき、学問を尊重する中において公害基準を設定して、これを守らせていくということではないかと思うのでありますが、ひとつ長官基本的なお答えを承っておきたいと思います。
  160. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるとおり、環境行政のあらゆる対策をとる基本には、どうしても科学技術の正しい認識がなければなりません。私どもは、他にもいろいろ私の考え方の基本になる点がございますけれども、その大きな一つの柱の中に、やはり科学する心というものを本当に正しく持っていかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  161. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 大変明確にお考えを述べていただきまして、大いに多といたします。ぜひそうしたお考えでお願いしたいと思うのでありますが、ただ、私はこの際、この席をいただきまして御質問したいと思っておりますのは、イタイイタイ病の問題についてでございます。  私は、実は昭和十三年から二十年ごろまで新潟県の直江津に住んでおりまして、仕事関係で伏木の港などによく行きましたし、氷見というあたりにはよく行っておったのでございますが、そのころ佝僂病があの辺にあるということが言われておりました。これは北向きの非常に日当たりの悪い家が多いし、非常に重労働である、ことに経産婦が栄養失調からそういう病気になっておることもいろいろ聞きましたが、何せ栄養思想が少ないので困ったものだということを聞いておったのであります。  その後、イタイイタイ病の問題が非常に新聞紙上をにぎわすに至りまして、やはりあの原因はカドミウムである、しかも神通川流域というのは、その上の神岡鉱山に三井金属の製錬所があるから、そこから流れてくる汚水によって、飲料水あるいはたんぼを通して米の中にカドミウムが蓄積され、それによって腎臓障害になり、そして今度は腎臓障害が骨軟化症になり、そしてそれに栄養失調であるとか、日光の不足であるとか、重労働であるとか、あるいは妊娠、そして出産というような問題が重なって、あの実に痛ましいイタイイタイ病というものをつくっているということを新聞紙上等で知りました。ああそういうものかと思い、患者に適切な治療が行われて、病気がなくなるようにと念じておった。それから四十三年になりまして厚生省の見解が出まして、裁判も確定し、私などは素人でございますので、かつて聞いておった佝僂病、イタイイタイ病は、まさに恐るべき重金属カドミウムのしわざである、こう思っておったわけでございます。  ところが、最近になりまして、文芸春秋の二月号に「イタイイタイ病は幻の公害病か」というルポルタージュが出て、私ここに持ってまいりましたが、これを読みまして、私はほかの人よりも、実はそういう地域におっただけに関心を持っておる点もございまして、これはやっぱり一度よく伺っておかなければならぬ、こう思って質問をさせていただくことを考えるに至ったわけであります。  ところで、昭和四十三年の厚生省の見解でございますが、これは私いま簡単に言いましたような、カドミウムを経口摂取する、これがカドミウムの慢性中毒を起こす、そして腎臓障害を起こす、これは腎臓そのものよりは腎皮質の方のようでありますが、そこで骨軟化症になる。そこへ栄養不足とか多産、重労働というものが加わってイタイイタイ病になるという御見解、この見解は、その後厚生省から環境庁が引き継いでおるというふうに了承しているわけでありますが、これは今日においてもそのままにお考えになっているかどうか。  それから、時間の関係で一まとめに伺いますが、この文芸春秋を見ますと、その後に実はカドミウム説というのが非常に少数説になってきている。文春によりますと、萩野という人と石崎という人、これは二人ともお医者さんでありますが、それに小林、吉岡、この四民であって、小林さんも吉岡さんもお医者さんではなくて、小林さんは分析である、吉岡さんは農業栄養の研究者である、こういうことでありまして、お医者さんにすると二名である、他はそうじゃないのだという記述がございます。私もそれはそれはと思いまして、いろいろ聞いて歩いた。そうしたら、どうも皆さん大体そういうことを言っておるのでございます。だとすると、ここで伺いたい焦点は、七年前の厚生省見解をそのまま環境庁が受け継いでおられるか、こういう点であります。大臣から御答弁願いたいと思います。
  162. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 厚生省見解は、カドミの汚染が即このイタイイタイ病の原因であるような見解ではなくて、カドミが絡んでいることを認め、それのみならず、やはり老化現象あるいは栄養不足その他のいろいろな障害の複合的な結果、こういうものになったというふうに見解が出ていると思っております。カドミがすべての原因で腎障害から即腎性骨軟化症に至ったという結論をしているものではないわけでございまして、現在のところ、私どもはこの研究班をもちまして、また研究調査費を過去二年前から計上して、この道のあらゆる専門の医学者の方々に、さらに検討を進めていただいている最中でございます。したがって、カドミそのものが腎から骨軟化症にいく際の決定的な原因だというふうに断定したものではない。むしろそれも絡んでおりまして、そしてその他の要因と複合的にイタイイタイ病というものになったのだろう、こういう見解のようでございます。  なお、詳しいことは保険部長がおりますので、お答えさせていただきたいと思います。
  163. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 まただんだん専門的なお話は伺うことにしまして、大臣のいまのお話でございますると、非常にカドミが絡んでおるのだが、主であるのか従であるのか、要するに複合的な作用であるということでございます。これはだんだん御質問したいと思いますが、厚生省の四十三年五月八日の見解の中に、「昭和四十三年度は公害医療研究費補助金をもって医療研究を行ない、」云々、「なお、その詳細な実施計画は富山県地元の主治医および金沢大学医学部と協議のうえ決定することとしている。」こういうことになっていると書いてあるのです。これは何回ぐらいこういうことをやっておられますか。これは部長で結構です。
  164. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 その後の研究過程でございますが、四十三年の見解を出しましてから、カドミウムの汚染及び影響に関係する学者の方を総動員いたしまして、特に四十四年よりイタイイタイ病及び慢性カドミウム中毒に関する研究班というのを組織いたしまして、四十四年、四十六年、四十七年、四十八年、毎年おのおの部会を分け、分担をいたしまして研究をいたしてまいりました。その中の一部門にイタイイタイ病に関する研究部門と、イタイイタイ病に関する鑑別調査研究の部門がございまして、そこで医学的な問題を扱ってまいったわけでございます。治療の問題につきましては、特に四十六年にビタミンDの過剰投与の問題が提起され、それから、詳しいビタミンDの投与の研究報告等もその中で扱われておる次第でございます。
  165. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 いま橋本さんは、要観察地域の住民診断、検診をやった。これは四十五年に二万八千人やって、その中で八名追跡検討をしている、こういうお話でございますが、四十五年からもう五年近くたっておるので、その後どういうふうになっておりますか。
  166. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました要観察地域といいますのは、四十四年度に暫定対策によって始めまして、七地域ございまして、現在私どもの把握しております四十八年末までの全体の検診の数字は、ほぼ七県で三万二千二百余名検診をいたしておりまして、第三次検診に参りましたのが三百四十五名というところでございます。そのうち、これは延べ数でございますが、延べ数で七百七十三人の方々が、カドミウムの鑑別診断研究班におきまして、イタイイタイ病か慢性カドミ中毒かというものの対象としてやられたという実態がございます。
  167. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 いま延べ数と言われましたが、延べ数というと、一人の人が三回治療を受ければ三人と、こういう勘定ですか。
  168. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま申し上げましたのは検診の数でございますので、一人の人が鑑別診断研究班に三回来れば三と上がってまいります。
  169. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 わかりました。それ以上詳しいことは、この際時間の関係もあるから、そういう点を伺っておくだけにします。  神通川以外にカドミウム汚染度の高い地域が全国にあるわけですけれども、そこではイタイイタイ病は一例もないということが響いてあるわけです。文芸春秋にそう書いてあるのですが、これはどういうふうになっておりますかということ。  それから武内教授という方が、「日本臨床」これは昭和四十八年の六月号でありますが、ここで所見を述べておられる。それから梶川教授という方、この方は病理の方のようでありますが、病理学的にいろいろ所見を述べておられるのです。  これは後でまたいろいろ伺いますけれども、御質問したいのは、本当に一例もなかったのかということ、それからもう一つは、イタイイタイ病患者と認定されて、治療した結果、認定を解除されたという人もあると思うのですが、これが何人いるか。それから、富山県の神通川流域における最近のイタイイタイ病の発生状況はどうであるか、この三点をお答え願いたい。
  170. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 第一点の、他の地域をいろいろ調べてイタイイタイ病と鑑別診断される患者があったかという点でございますが、四十八年度までの研究班の扱った事例におきましてはございませんでした。ただ、研究班の扱ったものではございませんが、対馬において三例、萩野博士が自分で三十九年に行かれたときに見られたケースがあるという報告を受け、公文で照会した事例がございます。四十九年度におきましては、長崎県の事例と兵庫の生野の事例を、去る二月二十四日鑑別診断研究班にかけまして検討中でございまして、腎と骨軟化症ではないかと言われる所見がございますので、なお今後の総合研究の成果をもって判断をするということで、現在まだ検討の過程でございます。  それから、第二点の病人の発生状況でございますが、認定されて生きておる方が、四十九年末現在で七十二名おいでになるわけでございます。なお、そのほか死んだ方等すべて含めますと、百二十八名の方が認定されておるということでございます。このうちで亡くなられた方が、全体で五十六名おみえになるという数字でございます。  最近の患者発生の問題でございますが、患者のほとんどすべては四十三年以前のケースでございまして、近年になりますと、四十六年認定一名、四十七年ゼロ、四十八年二名、四十九年三名ということでございまして、このケースはいずれも要観察の患者の中から認定されたものであるというぐあいに私ども報告を受けております。
  171. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 大臣、どうも私も医学の方は素人なんですけれども、これで一月ぐらい勉強してみたのですよ。それで、私がおかしいなという感じがしますのは、いまお話のように、イタイイタイ病というのは最盛期は昭和二十二年ごろなんですね。それで、それから非常に減ってきておるのですけれども昭和三十五年前の患者というものは骨が非常にやられておる。腎臓は余りやられていない。それ以降の者は、骨はしっかりしているけれども、腎臓がひどくやられておる、こういうことだというのですね。そうすると、カドミウムの関係が主たる原因であるとすると、どうも三十五年前の例というのはちょっとわからぬのですな。カドミウムはやはり骨にいきなり来るというふうには思わないのですが、その辺、どういうふうに見ていらっしゃるのですか。
  172. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 イタイイタイ病は、腎臓と骨の障害による症状が組み合わされましてなった病気だ、こう言われているわけでありますが、その発生原因についてはいろいろな学説があるようでございます。その中で、カドミウムがどの程度関与をしているかという点について、いまだに学問の論争がありますので、したがって、私どもがお願いしております総合研究班で、病態生理学的にも、またその他の面からも十分検討を願った結論を得ないうちは、私どものような素人が軽々に、そうであるとかないとかと言うわけにはいかないんじゃないか。私は、この点はもう幾ら時間がかかりましても、また経費がかかりましても、本当にひとつあらゆる面から専門的に検討願いたいと思っておるところでございますので、いま先生の御意見に、そうだとかそうでないとか言うようなことは、ひとつ差し控えさせていただきたいと思っているわけでございます。  私、公害と環境保全の特別委員会で、共産党の木下先生から、今度の二十四日にやりました研究班の認定の審査会に、反対の人を、しかもそれが兵庫県でそうでないと判断したその委員会の委員長をやっている人を入れるとは何事だという御意見がありましたけれども、そういうお立場をとられるのはどうかなと思います。むしろ、いろいろな学説があるわけですから、それぞれそうでないと思う方もそうだと思う方も、あらゆる症状の例をよく医学的に検討願って、そしてお互い学者の良心から自由に討議をしていただいて、結論を出していただきたいものだ、こういうお答えをしたのでございますが、そういう方針で今後も進みたい、かように考えております。
  173. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 大臣のそのお考えは、私も賛成ですね。どうも公害の問題になると、一つの熱狂的なムードというもの、何とかパワーというものが非常に大きな力になって、落ちついた、学問的な雰囲気を離れた議論になる。それを検討しておる人は、やはり一番それに専門的な関心を持つ人が多いわけですから、たとえば、腎臓とカドミウムの関係を勉強している人であるとか、あるいは病理としてイタイイタイ病、骨軟化症の問題を検討している人だとか、そういう人を入れなければ話にならぬわけです。そうすると、そういう人はいままでにいろいろな意見をすでに発表している。そういう人を入れるのはおかしいじゃないかというような議論になりますと、極言すれば、だれも専門家がいない素人ばかりの委員会ということになってしまう。  そういう委員会は全く無意味なんでございますが、ただ私、ちょっと気になりますのは、文春の中に、落ちついた学問的な雰囲気の中で論じ合えなくなっているのだ、そういうことを言っている方の記述があるのです。こういう点はひとつ大臣、あなたの勇気と英知をもって排除して、純粋に学問的な立場で、しかも、その人の前歴がどうだとか立場がどうだとかそういうことでなくて、客観的に見て学問的にその人が正しいことを言っているということはわかるわけでございますから、そういう雰囲気の中で議論されるということを、ひとつ大臣の責任において言っていただきたいと思うのです。
  174. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。そういう方針でいくべきだと思います。
  175. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 村田勇博士、この方は富山中央病院副院長でありますが、「環境保健レポート」これは一九七二年四月、日本公衆衛生協会でありますが、その中で、ビタミンDの大量投与でイタイイタイ病患者の腎障害を逆に増悪せしめたと思われる、という見解を述べておるのであります。  また、文芸春秋によりますと、萩野氏の言動がきわめてその場限りであって、放言に終わっておるということを事実を挙げて指摘しておるわけでございます。中でも、この本院の委員会において、ビタミンDの投与の単位を一万倍間違って言っておる、あるいはまた、骨軟化症と骨粗しょう症との区別がつかない、そういう成因の異なる病症についての根本的な理解に乏しい、そういうことが書かれておるわけですね。これは私は大変なことだというふうに思うのでありますが、環境庁としては、これは重大な責任を持っておるわけでございますから、この萩野医師の能力をどういうふうに評価しておられるか、御答弁願いたい。
  176. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 萩野先生能力という点については、私どもは何とも評価のいたしかねるものでございますが、現地でイタイイタイ病の患者さんを最初から診ておって、臨床的に診断をし治療をしてきた人は、萩野先生と村田先生と、ごく一、二の方であるということでございまして、やはり貴重な臨床の専門家として参加いただいておるということでございます。  なお、ビタミンDの過剰投与の問題でございますが、四十六年の研究班の中でその議論がございまして、四十七年の研究班レポートに、萩野先生から自分の扱ったケースにつきましてのビタミンD投与の細かなレポート、それについての評価というものも詳細に報告をされまして、決してそのデータを出されなかったというような事態はなかったわけでございます。
  177. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 その評価をこの公式の場で言わせるのは無理かもしれませんね、あなたはその方の第一人者で、全体を統べておられるのだから。しかし、この文春で見ますと、一万倍違うというのは、ちょっとどうも余りに素人くさ過ぎはしないか。何か最後に一万単位と響いてあったから万と万と掛ければ億だ、一億三千五百万単位を間違って一万三千五百単位と申しました、というのが書いてありますね。これは委員会の速記録にあるわけですが、そういう程度。あるいは裁判の弁護士さんが、あれは本当にお医者さんですかねと言ったというのがあるのですね、こういう点。  それはまさにあなたの言われることはわかりますよ。この中において、婦中町の真ん中で医者を先祖からやっておられて非常に大事な存在である、それはわかりますよ。しかし、大事なんだからその人にすべてを預けて、役所はその人がいいと言うのだからそれに従っていくというのでは、私はあなたの責任は全うできないと思いますがね。そういう点で聞いているのですよ。どうですか。
  178. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 私のお答えがいささか言葉足らずのところがあったかと思いますが、臨床の専門家ということ、全体的な意味でのいわゆるゼネラルプラクティショナーということで患者さんのめんどうを見ておられたということでございまして、実際この研究あるいは認定審査というようなグループの中には、骨の問題に関しましては整形外科の方がおいでになりまして、また、レントゲンのリーディングの問題につきましてはレントゲンの専門の方がおられますし、内科の問題につきましては内科の方がおられるということで、それらの方々の中で自由な論争をされて、いろいろ結論が出され、研究報告が出されてきているということでございます。そういうことで、このカドミウムがイタイイタイ病にかんでいるということも萩野先生が着目をされて、いろいろ個人で努力をされ、農学の先生と取っ組まれた後、金沢大学の総合研究班が、これを三十八年から四十年までいろいろな角度から研究した、その報告が基調になって厚生省見解ができておるわけでございまして、萩野先生一人の能力を私どもが全部信用してやっているとかいう、そういう意味ではございませんで、学問の研さんをいたしながらやっておるという状態でございます。
  179. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 同じ金沢大学の梶川さんという教授が、イタイイタイ病というものは骨軟化症であって、カドミは主な原因じゃない、こういうことを言っているわけですね。萩野さんは、カドミが主な原因だ、こう言っているわけですね。  そこで、あなたは、萩野さんは非常に貴重な存在だから、その人の意見を大いに重用しなければならぬというような意味のことを言っていらっしゃいますが、どうも私はそこに少し問題があるように思うのですね。従来の行きがかりもあるでしょうけれども、そういうことでなくて、最初に大臣が言われたように、本当に学問的な立場から、しかも学問というのはしょっちゅう進歩していかなければならぬものだし、現にしているものでありますから、やはりそういう立場に立って考えていただかなければならぬというふうに思うのです。  そこで、動物実験では、ビタミンDを全く与えないと約三週間で骨軟化症になる、カドミウムは長い間投与しても骨軟化症にならない、しかも、イタイイタイ病は動物実験ではそういうことで再現できない、こう言われているのですが、それはどうでございますか。  実は、私がここへ持ってきた書類によりますと、これは「ビタミン」という雑誌の一九五五年のもので少し古いのでありますが、ここで、食糧研究所の宮崎さんという方と早川さんという方が、シロネズミを使ってビタミンDをやらなかったら二週間で発現した、こういうことを書いております。それから、これもやはり「ビタミン」のものですが、佝僂病は三週間程度でその所見があらわれる。まあシロネズミを使っての事例というと他にもありますけれども、大体そんなことを言っているのが多いのですね。  そういうことで、どうもビタミンDをやらなければ確かに佝僂病になるんですね。カドミウムじゃならないというのだから、これは全然その関係を否定できないとおっしゃいますけれども、ではどっちが主なんですか。カドミウムですか、ビタミンDの不足ですか、どっちなんですか。
  180. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 動物実験の問題でございますが、カドミウムだけで、ほかは全くノーマルな状態にいたしてやってみても、これは腎臓の障害を起こし得ますが、骨までは参りません。今度はカドミウムと低栄養、たん白を減らしカルシウムを減らすという低栄養にいたしますと、腎臓の障害を起こし、骨の病変を起こしてまいりまして、骨の萎縮あるいは骨粗しょう症というものが起こってまいりますが、それで骨軟化症が証明されるかどうかという点につきましては議論がございまして、骨軟化症も一部あったという報告もございます。  なお、ここ一、二年来の研究報告の中に、カドミウムを投与して栄養の状態を落としてやったら、この腎の病変と骨軟化症としての骨の病変との両方があらわれたという京都大学研究成果がございますが、この研究につきましては、追試の必要があるというぐあいに言われております。  また、このカドミウムとビタミンDとどちらが主かという御議論でございますが、私どもは、いままでの研究の中で一番の問題は、腎病変からどうして骨に行くかというところでございまして、そこの関係が幾つかのケースがあるわけでございます。  腎が悪くなって、そうしてまたそのために、カドミウムだけで骨の方も腎の病変のために悪くなるという純カドミウム説、これはもうきわめて少数で、萩野博士でもそれをとっておるかどうかは私はどうも疑わしいというぐあいに思っております。  それからもう一つの非常に極端なのは、腎の病変がありまして、全く何の関係もなしに骨軟化症が栄養、ビタミンDの不足等からあった。これはカドミウムとの因果関係は全く消えるわけでございますが、全く栄養だけでこれが説明できるかという点には難点がございます。先ほど先生指摘の梶川教授の報告の中には、骨軟化症の病変というものに対してカドミウムがかんでいると見るのはおかしいのではないかということでございまして、腎のところには違う御意見をお持ちでございます。  そういう栄養だけの問題という点には、そういう議論の方もおられますが、どうもそれだけでは無理なところがあるということでございまして、第三番目には、この腎の病変があって代謝が狂ってくる、そこに栄養も悪いというような問題がありまして、悪循環をなして、腎の病変と栄養等も絡んだ骨軟化症を起こすような状態、腎の病変でも骨軟化症を起こすような基礎の状態が出ますから、その両者が悪循環をなしてイタイイタイ病を形成したのではないか、この折衷説と、もう一つは、骨軟化症は全く無関係にあって、あとで腎が悪くなったということでございますが、政府見解は、どちらかと言いますと最後から二番目の、悪循環をなしておるということでございまして、腎と骨との間でカドミウムが主因をなすか否かということは、まだ私どもはいまのところ、非常にいろいろの説があって、なかなか判断がつきかねるというような不確定要素があるというぐあいに考えております。
  181. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 いまの御説明を聞いていますと、カドミウムが骨へ直接行く、これは極端にそれだけ抽象してみると、ないということですね。それから、腎が悪くなって骨軟化症になる、これも単純にそのことだけとってみればない、こういうことですか。  それからもう一つ、カドミウムが腎に影響はあるものと考える、しかし、それがあるからイタイイタイ病になるんじゃなくて、いろいろな複合的な他の関係、あるいは本人の栄養状態、そういうようなものがあってイタイイタイ病になる、こういうことですか。
  182. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生のおっしゃった一番最後の仮説に従来の見解は立っておるということでございまして、それにつきまして明快な解明は、まだできていないということであります。  なお、カドミが骨に直接アタックするかという問題につきましては、従来はそういうことは余り考えられないということでございましたが、日本の新たな研究で、骨に直接影響するのではないかという実験報告が出てまいりまして、国際学会でも注目されているものがございます。
  183. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 だんだん時間がなくなって、これは倍ぐらいもらわぬとちょっとできませんな。だから、ひとつ簡単明瞭な質疑応答でいきましょう。  それで、水俣病はメチル水銀ですね。そこで、どうもイタイイタイ病も重金属の関係があるんだろう、だから、メチル水銀が水俣病なら、イタイイタイ病はカドミウムだ、こういう「はじめにカドミありき」という考え方からこの問題が提起されたんじゃないかということを、文春に書いてあるわけですね。それに学問上の一つの副木を当てるような意味で、喜田村教授が言っておられるわけですね。喜田村教授は、メチル水銀の発見者、水俣病の原告ですよね。その人が、このイタイイタイ病に関しては、そうじゃないんだ、こう言っておられるわけですから、私はやはり役所は、これは相当慎重に扱っていただかないといけないんじゃないかというように思います。  どうも喜田村教授に言わせると、カドミウムの検出方法も、PPm単位の定量分析も疑わしいと、こう言っているのですよね。これは、環境庁はどうしてこういうデータはいいんだと、こう頭から決められているのですか。
  184. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 喜田村教授が御自身でそのとおりのことをおっしゃったかどうかということは、事実問題を私は存じませんが、水俣病がメチル水銀であって、そこでこちらには毒性のあるカドミウムがあったからイタイイタイ病の原因だろう、そのような思考過程でカドミウムが疑われたわけではございません。非常に論理的な思考過程で、いろいろ調査をした上でカドミウムが疑われてきたということでございまして、雑誌に書いてあることとはちょっと事実は違っておるというぐあいに考えております。  また、濃度の測定の問題でございますが、濃度の測定につきましては、御承知のように、微量分析といいますのは日進月歩でございます。このカドミウムの問題の研究されたころの分析方法は、ジチゾン法といいますものと発光分光分析という測定法でございまして、その測定法としての限界はございます。これはその測定法としての限界はございますが、その時代にはその時代なりに国際学会にも通用した測定法でございまして、測定を行った小林教授の分析の能力といいますものは、私は学問的にはっきりしているものであるというぐあいに考えております。  ただ、その後の問題は非常に問題があるということは、金沢大学研究班の中にもございまして、その後四十年度以降、厚生省は研究費を取りましてから分析測定の標準化ということに非常に力を入れ、特に四十四年度に報告されたものの中で、カドミウム汚染及びその影響を究明するための分析法のスタンダードをつくった。そのときに喜田村教授もこれに絡んでやっておるというものでございますので、確かに時代と技術の限界はあろうかと思いますが、現在、非常に改善されてきておるということは申し上げられると思います。
  185. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 非常に苦心をされて、より正確な分析というものを編み出しておられる御努力というものは多とします。ただ、これは風聞ですよ、風聞みたいなものだけれども、何か国立大学先生あるいは県の関係先生、そういうのは役所がこわいんだと言うのですね。どうもうっかりしたことを言うと橋本さんからやられはしないか、非常に恐れおののいて、何となく萎縮した雰囲気が漂っておるという話を聞くのですけれども、あなたに会っていると、あなたはそんな人じゃない。なかなかりっぱな温厚な紳士でいらっしゃる。ただ、そういう面があるということは、私も役人の端くれをやったこともありますけれども、あなたが思うより一般の人はこわいんだ。ことにあなたは厚生省の見解を書いた人です。だから、書いた橋本最高権威ににらまれると、その委員会にも入れてもらえないんじゃないかというような雰囲気がある。何となくそういうものがあるということは、あなたはそんな方じゃないと私は思うけれども、それはひとつ頭にとめておいてください。  これは事がなかなか重要だと思うのですね。やはりあの文春のを見ると、何か義憤を感ずるようなことが書いてあります。何かないか、それだそれだ、それでいけというのでわあっとそうなっちゃったというような書き方がしてあります。しかもその中で、萩野医師がヘリコプターでおり立って、これは間違いない、オーケーです、イタイイタイ病です、こう言った、そこで大がかりな調査をしたら、大山鳴動何もなかった、そういうのがあちこちあるというのですね。これは責任者として見られて、どうですか。
  186. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のようなことで私が受け取られるとしますと、非常にみずから戒めてかからなければならないというぐあいに考えております。カドミの研究班は非常に皆さんフランクな方で、研究班の場所では大声で言い合いをしても、非常に意見が違っても、後ではごく普通に交わっておられる方々だということだけを申し上げておきます。  いまの萩野先生が、あちこち行かれてイタイイタイ病だと言ったという問題でございますが、私どもは新聞にどういう形で載っておったか存じませんが、萩野先生御自身が行かれたのは対馬と生野と、群馬でございますか、そこに書かれたような事実があったかどうかということは、私どもとしては承知をいたしておりません。ただ、イタイイタイ病ではないかという非常にセンセーショナルなニュースがあったようだなという覚えはございますが、先生御自身がおっしゃってそのような記事になったか否かという事実につきましては、私ども存じません。
  187. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 何かイタイイタイ病の裁判の証言では、診療記録があると萩野さんが言っておられるのだが、国会に呼び出されたら、実はそういうものはない、何とかいう県会議長をやった自分の親類がそんなものは置いておかぬ方がいいと言うので、古いデータはみんな破っちゃったという話をしておられる。その間に食い違いがあるわけですけれども、いやしくも国会で言う証言と裁判所で言う証言が違う、これはやはり問題だと思うのですが、時間がありませんからいま答弁しなくてもいいです。調査して御報告を願いたいと思います。  それから、外国に神通川流域に見られるようなイタイイタイ病の例があるかどうかということを、ひとつお示し願いたいと思います。
  188. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 労働衛生の方で、カドミウムの中毒でイタイイタイ病と同じように腎と骨にきました例の報告が、世界的に、私の知っている範囲内では十五例あるというぐあいに承っております。なお六九年に一例加わったということですから、ひょっとしたらもう一例ぐらいふえているかもしれません。もう一つは、写真を見るとイタイイタイ病とそっくりのケースがイスラエルのある地域にございまして、ベドウィン族の病変の中にきわめて同じようなものがあった。けれども、ベドウィン族の場合には、環境汚染との関係の追求はされておらなかったというぐあいに存じております。
  189. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 ベドウィンというのは、あなたも御存じのように、羊を追って遊牧する遊牧の民です。だから、一カ所の米や麦を食うわけではない。固定的なところの水を飲むわけでもないのですからね。これはちょっと違うんじゃないですか、私、素人でわからぬけれども。あそこの神通川流域の決まった場所で、決まった場所のカドミウムのPPmの高い米を食うからこうなったということの例証に、ベドウィンの例を持ち出すというのはちょっとおかしいですね。  それから、私の聞いた範囲では、スウェーデンのフリーバーグ氏のは、これは乾式製錬の工程で集約してコットレルに取るときのフュームが肺に入る、こういう例でしょう。ですから、カドミウムが水に溶解して地中で植物に吸収されて、それを人間が食ってなったという例ではないと思うのですよ。むしろ、この問題を言い出しているのは、萩野さんを頂点とする一つのスクールなんだな。だから、そういう外国の例は、あなたのような権威者がここで言うと、どういうことなんだろうということにもなると思うのですよ。フリーバーグなる者が日本に来て萩野さんに会って説明を聞いて帰って、そしてWHOなりFAOなりに行ってそういう話をすると、これは向こうにあるような話になって、逆輸出みたいになっちゃう。これはやはりこっちでよくきわめないと、FAOの報告なんか、私も勉強してみたら、何か日本の米は半分以上食えなくなっちまうような話をプロポーズしている。サゼストじゃない、プロポーズするというので、多少遠慮しているわけだけれども、そういうことをほうっておくと、やはり非常に要らざる不安を日本国民に与え、また世に誤った認識を与えることになって、はなはだよろしくないと私は思うのですよ。そういう点は、ひとつ時間があればもっと詰めたいのだけれども、言いっ放しでやっていきます。  それからもう一つ、カドミウムの腎臓への影響ですね、これはどういう程度ですか。私は昭和二十九年に労働大臣をやって、けい肺法という法律をつくったわけです。あのときは、とんかちとんかちたたいてシリコーンの入っている石や金属を使う者は肺の中に粉じんがたまって、それが吸着してけい肺になるというので、あの法律をつくったわけです。これはちょっと違うので、外国の例なんか、いま言ったように直接肺に入るわけでしょう。ところが経口投与、すなわち米や水を通ずる場合だと体内にたまらないというのですね。人によっては九七%出ちまう。九五%出るというのは普通のことのようです。そうするとみんな体外に出ちまう。あと五%あるいは三%というものがたまっていく。それが一体腎臓にどういう影響があるというふうにお考えになっているか、この点をひとつ聞かしておいてください。
  190. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 御質問のカドミウムの腎臓影響でございますが、労働衛生の方では、先生の御指摘のようにスウェーデンのフリーバーグ等が、労働衛生の中でのカドミウムの中毒による腎臓の障害、尿細管の障害というものを出してまいっております。日本におきましては、イタイイタイ病のときに、初めに腎、次に骨ということで、腎の段階でこれを早く発見して防ごうということで、フィールドの調査研究で腎の異常があるかどうかという研究をいたしておりまして、現在のところでは、腎の尿細管の機能障害はある、しかしながら、病気と言えるかどうかということにつきまして、その評価をしなければならないということで、四十九年度の調査研究は、この問題に一番方を入れているところでございます。  なお、諸外国ではカドミウムの中毒があったわけでございますが、日本ではイタイイタイ病の問題が取り上げられるまで、カドミウムの作業所はございましたが、労働衛生で取り上げられた例は一例もなかった。イタイイタイ病を取り上げて以降あらわれてきたということは、労働衛生としての一つの問題を示しておるかと思います。  吸収は非常に少のうございますが、生物学的半減期というのは二つ説がございまして、十六年から三十三年ないし三十六年という非常に長いものまであるというところでこの問題があり、蓄積の影響ということが現在問題にされております。環境庁としまして、腎の問題に現在最大の力を注いでいるところでございます。
  191. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 秋田県の小坂町でカドミウムによる腎症としてマスコミに非常に大きく取り上げられましたあの問題ですが、その容疑者は、専門家の会議でどのようになっているかということをお聞かせ願いたいのです。  私の手元にあるのは昭和四十九年五月三十一日付の朝日新聞、これによりますと、見出しのところは、「カドミウムとじん臓障害因果関係認める」とうんと大きく出ておりますが、この結論というところには、「秋田県鹿角郡小坂町の患者を国の公審病患者に認定するかどうかについては、この日の会議では否定的な意見が強かった。その理由としては「尿濃縮力の低下、じん性糖尿、低リン血症などの尿細管機能障害は認められるものの軽微な症状で、病気と呼ぶのに疑問がある」」こう書いてあるのです。それをお認めになりますか。
  192. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 秋田県の調査研究には二つございまして、一つは、県が行った調査研究であり、もう一方は、県とは独立に東北大学医学部の斉藤先生たちが行われた研究でございます。その研究の詳細は省かせていただきますが、近位性尿細管機能異常と認められるものがあるということは両者一致したところでございます。県の精密検診にかかるべき方で二人亡くなられた方がございまして、その人の解剖所見を見てみますと、死んだ直接の原因には腎は関与いたしておりませんで、膵臓ガンと肝硬変であるとなっておりますが、ともに中等度ないし軽度の近位性尿細管異常を来しておったということでございまして、近位性尿細管異常ということが一体どの程度の障害であるかという評価を、現在いたしておるところでございます。いま認定できるかどうかというところに評価の問題が絡むということでございますので、あくまでも腎尿細管の機能障害ということで、腎症という言葉の表現は、いまだ研究班グループの中では受け入れられておりません。
  193. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 余り時間がなくなったので、ちょっと質問を急ぎます。  そこでもう一つ伺いたいのは、いま〇・四から一PPmまでの米は準汚染米ということで配給してないわけですね。実は昭和四十三年の厚生省の見解をここにいただいたんですが、この中に、例のカドミウム説をとる石崎教授が、動物実験の経験から推して、一PPm前後の食品中のカドミウムの含有量の程度ではカドミウム中毒があらわれるとは思われないという意見だと、こう書いてある。一番頼りにしている萩野さんと石崎さん、この石崎さんは、一PPmなんか問題じゃないんだと言っているのですが、それをどうして汚染と見ているのか。  それから、ついでに伺うけれども、これはどのくらい在庫があるのか、食糧庁に伺っておきたい。
  194. 下浦静平

    ○下浦政府委員 〇・四PPmから一・〇PPmまでの米についてでございますが、これは先生おっしゃるとおり有害であるとは判断できないということでございますが、ただいまこれを配給いたしておりませんのは、消費者感情を重視して配給をいたしてないということでございます。  それから第二点の、どのぐらいの数量になっておるかということでございますけれども、これは四十八年産米までの数字でございますが、五万四千トンということに相なっております。
  195. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 いまの数字について、私、実は昨日農林省へ行って聞いてきたのですが、四十九年度は一万七千トンあるのでしょう。そういうことをあなたの方が言っているのだから、君、そんなうそを言っちゃいけないや。そんなことじゃだめだ。ちゃんと答えなさい。四十八毎度は五万七千四百トンと言っているのですよ。
  196. 下浦静平

    ○下浦政府委員 四十九年度はまだ買い入れが全部済んでおりませんので、見込みの数字でございますから、固まった段階で申し上げたいと思います。
  197. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 まあいいや、時間があと十分しかないからね。それはあなたに厳重注意しておく程度にしましょう。時間があれば本当にしぼり上げますよ、そんないいかげんなことを言うなら。与党質問でも余りむちゃを言うたらいかぬ。もっと勉強しろ。     〔主査退席、木野主査代理着席〕  それから、治療費について非常に不明朗だということが文春の三百三十四ページに書いてあるわけです。これは、厚生省は一体見逃すことなのかどうか。私、これは厚生省に聞こうと思ったら、けさ厚生省の課長さんが来て、昨晩よく話し合った結果、全部環境庁にやっていただくことになっていると言う。それはいいけれども、私はまだ後でも聞きたいのだが、医者の対策というものをこれに限って全部、橋本さん、あなたが取り仕切っていいのかね。これは話し合いでそうなっているなら別だけれども、厚生省には環境衛生局もあるし、医務局もあるし、薬務局もあるのでしょう。それをみんなあなたの下に据えちゃって、これは大臣、ちょっと問題ですな。あなたの言うように科学的な研究をするということなら、やはり厚生省の医務局、ことにこれはあなたのアルママーターだな。厚生省、内務省、これはあなたの御出身になった場所なんだから、そこの意見をもう少し聞かなければいけないんじゃないですか。
  198. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 一昨年の九月に国会で公害健康被害補償法というものが成立いたしまして、公害の影響による健康被害の補償については、環境庁の所管ということになっておるわけでございます。
  199. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 小沢さん、あなたも党人なんだから、こうなっていますなんということを言っちゃいけないですよ。私は、これは純医学的な見地から検討すべき問題であるにもかかわらず、厚生省が全くおりちゃっているのはどういうことかということを聞いているのです。
  200. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 四十三年五月に厚生省が統一見解を出しまして、イタイイタイ病についてああいうようなことになりましたのは、完全に学問的な立証が行われるまで行政が何ら決断を下さないということになると、水俣病のように二度も同じような誤りを繰り返して、人命を損なうような重大な公害問題を生ずることもありますから、その当時までに調査研究で結論が出ましたものを基礎にして、あのような判断を下したのだろうと思うのです。  したがって、その後環境庁に移ってからいろいろ学問的な調査研究を進めるにしたがって、いまの骨軟化症に至る過程でのカドミの影響というものについて、まだまだ学問的に相当論争のある問題だということで、今日のような、何年も続けて総合研究班をやっておるわけでございますから、むしろ、こういうめんどうな問題、公害にからんでくるような問題を厚生省にやれと言っても、厚生省はこの健康被害補償法の制定以来、これはぜひ環境庁で全部やってもらいたいということで、それを受けて私の方はやっているわけで、その場合に、先生が先ほど来おっしゃっておりますような学問的研究、しかもそれが自由な雰囲気のもとで冷静に行われる学問的な研究、討論というものの結果を尊重して進めてまいった方がいい、こういうふうに私は考えますので、どこの役所でやろうと、やる方の側の科学に対する、何といいますか、尊重の考え方をしっかり踏まえてやればどこでも同じじゃないかと思います。私どもの至らないところは、国のあらゆる研究機関を動員してやりたいと思いますので、現在のところ、じゃこれを厚生省でやったらいいじゃないかと言われましても、私ども政府一体でございますので、その点は、先生の御趣旨は十分のみ込んで、科学的な、学問的な結論に従って今後は進めてまいる、かように私は思いますので、御了解いただきたいと思います。
  201. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 私は、小沢さんのことを少しも非難しているわけじゃないのですよ。あなたのおっしゃることはよくわかるし、ことに学問的な、科学的な基礎の上に立った行政をやっていこう、この信念を曲げないとおっしゃることには敬意を表します。そうでなくちゃいかぬと思うのです。ただ私は、医師への健康保険の支払いあるいは自由診療になってからの支払い、それから、この中で見ますと、必要のない要観察者がいきなり入院を強いられるとか、いろいろなことが書いてあるのですね、これをごらんになっていると思うのですが。そういうことは、やはり健康保険なり自由診療なりを扱っているのは厚生省なんですから、これは厚生省の方とよく御協議になる必要があるのではないか、こういうことですから、それはお願いします。  もう時間がありませんから、最後に二問だけ伺いますが、まずこの主たる原因は何かということです。いままでいろいろ伺ってきましたが、複合的なものだということであります。しかし、その中においても、主たる原因は何かということをもっと突きとめる必要があると思うのですね。それにはまず、カドミウムとイタイイタイ病の関係で、病理学の見地からこれは立証されるのかというと、されないのですね。これは梶川教授あるいは武内教授がこれを立証しているわけです。それじゃ中毒学の方から見ると、たとえばメチル水銀のような、そういう因果関係があるかというと、これは喜田村教授が否定しておられる。それから、それじゃ動物実験でそういうことがあるかというと、これはさっきも質疑で明らかになったように、再現されないのですよね。それから臨床医の方でどうかというと、これはいまの萩野さん、石崎さん、石崎さんは萩野さんよりずいぶん緩いというか、主張がまろやかなようですけれども、それ以外の人はみんな、そうじゃない、否定的だというのですね。  そこで、厚生省の四十三年の見解は、腎性の骨軟化症だという考え方というものは、その後の学問の進歩に従ってこれを再検討する、一度出したんだからあくまでこれを突き通すというようなそういうこだわりを捨てて、もっと柔軟な姿勢でこれを再検討する、こういうお考えはないかということを伺いたいと思うのです。
  202. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私、先ほど申し上げましたように、四十三年の厚生省の見解というものは、学問的な究明が完全に行われた結果であるとは実は申されないと思うのです。その当時までに集まったいろいろなデータを基礎にしまして、それにやはりイタイイタイ病にかかった患者の救済という目的と、それからカドミウムの公害汚染防止という両方の目的を加味して決断を下したんじゃないか、かように考えておるわけでございます。  そこで、四十三年の当時までに集められた基礎的なデータをもとにした複合的な原因であって、その中にカドミがかんでいるというふうに結論を下しました厚生省の見解は、先ほど部長からも中間的な見解をとっておるんだという説明がありましたが、その当時としては、それはそれなりに決して間違っている見解ではないと私は思います。  ただ、先生おっしゃるように、この問題については、お挙げになりましたようにまだいろいろな疑問点がございますものですから、そこで、私どもはこれを引き継いで以来、調査費を計上して鋭意学問的な調査をやっているということでございますので、この調査の結論を待たないうちは、いま私がここで、あれは誤りだったからもう撤回するとか、あるいは正しかったからあのとおりだと、どちらかに明確にお答えすることはなかなかできないわけでございまして、総合研究班の結論を待って私は何らかの断を下したい、かように思います。
  203. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 これは一年ぐらいに時間を限って、そして純学問的な立場からやれ、こういう態度で御指導願えぬものでしょうか。大臣ひとつやってくださいよ。
  204. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 それでは簡単に申し上げます。  生野のケースの議論といいますのは、この問題に非常に関係のある議論でございまして、従来よりもより濃厚な、集中された議論が行われるだろうと思っております。しかし、一年間でいまのいろいろな問題点のすべてが解明されるとは思いませんが、少なくとも過去五年間の実績と今後の方向というのを、この一年間で一回よくさらい直してみるということは必要であろうというぐあいに考えております。
  205. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先生が一年を限るという意味は、結論を早く出して、それぞれ患者救済は患者救済として別の面からきちんとやる。で、この問題を何といいますか、何かムードで騒ぐようなことをきちんと収束させたいという政治的な願望からだろうと思います。すべてが解明できるかどうかわかりませんが、できましたら、私どもできるだけひとつ一年以内にそうした何かの統一的な、学問的な結論が出るように努力はいたしてみたいと思います。
  206. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 最後に一つお願いですが、この結論が出るまで、さっきもお話があったように、準汚染米だけでもストップする考えはないか。これは、何かトン二十二万円以上のものを一万九千五百円ですかでカゼインのりに回しているんですね。そういうことを少しストップするという考えはないですかね。  それからもう一つは、大がかりな土壌改良をやるわけで、これも土壌改良をやったはいいが、もっと高いところにカドミウム汚染の多い土壌が存在すると、せっかく改良しても、上から雨が降ればまた流れてしまうというような問題もある。私、実は土地改良のお世話を申し上げているわけですが、どうやって土を運び去り、また運び入れるかということも、何か非常に大変な問題だというふうに聞いているのですね。一方、小沢大臣の非常な御努力と御誠意によってそういう結論を早く出すということであれば、そういうことはしばらく先へ譲る、一時中止するという考えはいかがですか。
  207. 大場敏彦

    ○大場政府委員 土壌改良のお話がございましたが、確かに御指摘のとおり、排土すること、それから客土すること、これは大変なことでございます。また同時に、そういったことをやりましても、上流から汚染水が流れてきてむだな投資になるというようなことがあってもいけませんので、対策の樹立につきましては、特に慎重を期したいと思います。  それからまた、地域の指定につきましても、不要なところを指定することはむだなことでありますし、かえって農民の意思に背くことにもなりかねないことでございますから、細心の注意を払って実施したい。中止しろという仰せでございますが、これは気をつけながらやはり実施していきたいと思っております。
  208. 小坂善太郎

    ○小坂(善)分科員 ちょっと局長、勘違いしていらっしゃるのだ。いま上流から流れてくる水はもうきれいになっているのですよ。これはもう政府の報告にそういうことが出ているのだ。私は、わずかだけれども勉強したが、ここにも書いてあるのですよ。私が言うのはそうじゃなくて、上流から流れるのではなくて、川の流域にあるたんぼを客土していい土を入れても、たんぼよりもっと高いところから雨が降るとどろが流れてくる、こういうことなんです、上の方にあるのだから。これは、何かカドミウムをたくさん含んだ土の中で栽培した稲から、よけいカドミウムを含んだ米が取れるということに、必ずしも因果関係が一定していないのだそうですね。ですから、そういう点の究明も必要だと思うのです。ですから、注意しながらやると言うのだが、できるだけひとつ注意して、ゆっくり結論を見ながらやる。これは国費ですからね、むだなことをやってもしょうがない。聞けば、六百町歩もやるという計画が出ているようですけれども、そういうことはやはり慎重にやっていただきたい。ここで直ちに見送るということは言い得ないとすれば、強い希望を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  209. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、笹山茂太郎君。
  210. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 私は、本来主査である者が質問するということでありますが、それは公害の問題について、やり方についてよほど慎重にやってもらわなくちゃならぬ、こういうことを私の体験から申し上げる次第でございます。  というのは、今度新しく農用地土壌汚染防止法といったような法律が出まして、農民が土壌をよくするということについては、これはだれしも双手を挙げて賛成するものでございます。私も若いときにおいて、日本列島は火山列島である、酸性土壌が多い、どうしても酸性土壌を矯正しなければりっぱな土壌が出てこない、生まれない、土壌改良をやる、こういったことで、土壌改良に取り組んだ経験もあるのでございますが、今度の農用地の土壌の汚染防止等に関する法律、この点については、まず農用地についてはカドミウムと化合物、銅とその化合物、これを重点的に取り上げられて、そうしてその土壌の上に生えたところの農作物が一応有害植物である、こういうふうに認定しておるような状態でございます。  私の郷里は、全国で最大の汚染地域になっておるのでございます。いままでも汚染地域として取り上げられたところがあるのでございますが、これから被害地域に認定されようとするところの面積は、三千ヘクタールないし四千ヘクタールもあるというふうなことを聞いておるのでございます。まとまったところのこうした被害地域、これは全国最大の規模でございます。そうすると、どういうことになるかといいますると、その土地でいままで無事平穏に暮らしておった農民が、もう米はつくれぬ、つくっても売れない米だ、こういうふうになってきまするというと、まさに農村の住民は途方に暮れるわけでございまして、いままで長い間その農地を信用し、またその土地の上でできたところの米を食べて、売って、そうして生活したところの農民が、今度はいきなり、法律ができたから米は売るな、その米は毒が入っておる、こういうふうに言われてまいりますというと、非常に農村秩序というものは急転するわけでございます。  その原因は何かといいまするというと、それは東京に送ったところの米から、どうも検査した結果カドミウムを含んでおるらしい、一体その米はどこでできたか、よく調べてみると、秋田県平鹿郡雄物川流域でできたところの米だ、それは困った、そこで今度は検査官がどっと乗り出してきて、その米はどこだどこだと、その村に行って、今度は一体どこのだれがつくった米だ、どこのたんぼでできた米だ、それで計算器を借りて今度は検定してみるというと、確かに米も、また井戸水も、あるいはまたその地域の土壌もカドミウムが検出された、これは青天のへきれきでございます。いままで何百年もあるいは何千年もと言ってもいいくらい長い間、そこに農村があり、農民があって、安心して米をつくってきたのが、おまえのつくっておる米を食べてはいかぬ、毒が入っておる、政府がそういう毒の入っておる米を買うわけにはいかぬ、もう買わない、どうしていいか、これで暮らしができるか、こういうことでございます。  だから、私はやはり、小沢長官に御意見をちょうだいしたいのでございますが、この公害行政ということは非常に慎重に、またその波及するところの効果をよく考えていかないというと、いたずらに地域住民を混乱に陥れる。地域の福祉を増進するというのがわが党の使命であるならば、こうした法律を実行する場合におきましても、やはり慎重に考えて、そうした結果はどうなるということを判断すれば、その結果がこういうことが予想されるから、あらかじめそういう場合においては農民、農村の困らぬようにしてやろう、こういった準備なしに、いきなりもって、おまえはけしからぬ、おまえが犯人だというふうなことで農村を撹乱するということは、私は非常に困ると思うのでございます。  そこで、この地域というものは、大体米単作地帯でございますので米しかとれない、米を商品にして売った代金でもって、そしてまた農閑期におきましては、東京その他に出まして出かせぎをやって生計を立てておるところの農民でございます。そういう状況のもとに、今後毎年毎年政府の汚染米というものがどんどん多くなってきて、それが、公害対策基本法に書いておりますとおり、国または地方公共団体が行うところの公害の防止事業については、地域の住民として協力しなければならないとはっきり書いてございます。そこで地域の住民に、あなた方の土壌は、どうも役所の判定によると悪いのだそうだから協力してくれ、あるいはまた、あなた方のつくっている米はこれから買わないようにするからがまんしてくれ、こういうふうに、これはまた協力する義務が住民にあるのでございます。ところが、あの基本法の第六条に書いておるとおり、地域の住民が協力をする責務があると言って、役人さんが来て、おまえは反対するのはけしからぬ、協力する義務を放棄しておる、欠いておるというふうなことを言われましても、私は、その点については、この地域住民の理解というものを求めなければ強行突破できるようなものではない、こういうふうに考えるのでございますが、この地域住民の協力という問題に関しまして、あらかじめ地域住民の協力し得るような理解を求めながら進めるという態度、これを長官どう考えられますか、まずその点からお尋ねいたします。
  211. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 地域住民の御理解を得てすべての公害行政を進めていかなければいかぬということは、もう当然のことでございますので、十分御理解を得る手続を進めてまいるようにしなければならないと考えております。  それから、先生、先ほどの米のカドミの問題でございますが、食品衛生法、これは私どもなり農林省の所管でありませんで、厚生省の所管の中で食品衛生法という法律があって、その法律に基づいて米の成分規格というものが決められてありまして、一PPm以上のものは食用に供してはならぬと、こうあるものですから、これは、その問題でございましたらやはり厚生省の食品衛生の方の規格の問題の論争になろうか、かように考えるわけでございます。
  212. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 ただいま長官は、一PPm以上の米は食品衛生法の関係だから厚生省の所管、こういうお答えでございました。なるほど、所管関係においてはそのとおりでございます。ところが、一PPm以上の米、このところのどれが一PPm以上の米だということを認定することは、一体どういうふうにやっておるか、何を基礎にしてやっておるか。それは、公害のカドミを含んでおるところの土壌があれば、その土壌から出たものは個別検査なんかしませんよ。全部役場の台帳に控えておって、字何番地の土地は公害の地域だ、土壌だというふうにレッテルを張られますと、そこから出た米はみんな赤札を張っておるのですよ。赤い荷札を張って、私は悪いことをしましたとこうでしょう。そうして一PPmないし〇・四PPm、これはそれに準ずるところの悪い米をつくりましたと黄の札を張れと言うのでしょう。そして、食糧検査所に持っていく。その黄色い札と赤い札との関係を区別する基本というものは、あなた方の方で土壌汚染の防止法に基づいて判定した調査の結果に基づいて台帳をつくるのです。だから、食品としてこれは有害か無害かという判定ではなくして、そのあなた方の調査の結果に基づいた台帳でもって、そこからできたところの米はもう全部だめだ、こうなっているのでしょう。だから、厚生省がまずそういうことの所管であるようだけれども、その一PPm以上という米の判定については、実は厚生省はやっておらないのですよ。だから、農民は苦しくて、こっちの一PPm以上の米、政府の買い上げない不合格米、これは農民のところに政府から、おまえのたんぼはだめだ、このたんぼはいいという公表をするところの命令がありますね。ちゃんと役場がその命令に基づいて、何字何番地の何筆の土地は、もうそこからとれた米はだめだ、こういうふうに台帳に控えているのでしょう。だから、これは所管は厚生省であっても、土壌の汚染防止法ときわめて密接な関係があるのでございます。  そこで、私は、この住民の協力を求めるということは、協力する仕組みがあるということは、やはり地域住民の常識とマッチしなければならないというふうに思っておるのでございます。私の地域、まあ三千ヘクタールあるいは四千ヘクタール、全国最大の規模でございます。この全面積が、今度公害、カドミウム地帯として網をかぶせられてくるのでございますが、私もその汚染米を食べてここまで生き長らえたところの人間でございます。そうして、このカドミ地帯、土壌としては最不適である、こういうふうに認定されたところの地域というものは、案外に長野村が多いのですよ。健康に害があるというふうな米を食って、八十も何ぼも生きておる人がざらにある。だから農民は、おまえのつくった米は不適格品だ、毒が入っておるというふうなことを言われましても、自分たちの体験から見るというと、わしの米を食って先祖代々こう長生きしておる。しかもまた、その地域に限って、私の方ではイタイイタイ病なんていうものは一人もいません。これはいない。富山県にはあるかもしれないけれども、いないのですよ。そうして、その地域の町村のうちで、その部落だけは長寿村なんですよ。長生きする。健康に悪い米を毎日食べて、そうして町内一の、また全県一の長寿村なのです。そうすると、そこにどういう結びつきがあるかということ。健康に悪い米を何十年も食べて、私も食べてきたのです。ここまで生き延びました。ところが、地域住民は、おまえたちの米は毒が入っておるからもう政府は買わないというふうなことを言われましても、ピンと来ないですな。秋田県の公害のそうした鉱毒の地域におきまして、カドミと硫黄の地帯におきまして健康調査をやっておりますね、厚生省でしょう。そういう調査の結果はどうなっておりますか。多分イタイイタイ病も一人もないし、むしろ長寿村の方が多いのじゃないですか。それをまず伺いたい。
  213. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御質問の秋田におけるカドミウム汚染とその影響調査でございますが、秋田県当局は四十五年度より鉱山地域におきましての健康調査を実施しておりまして、四十八年度には二千七百三十五名についての健康調査を実施しました。四十九年度には一万一千六百七十九名を対象として調査を進めているところでございまして、五十年一月三十日現在で第二次検診として千百五十五名が受診しているところでございます。四十八年の調査の結果によりまして八名の要精密検診者が選び出されまして、そのうちの二名は精密検診を受けました。その精密検診の結果につきましては、秋田県の公害保健対策懇談会の専門委員会において検討が加えられ、二名のうち一名は腎、尿細管の障害が認められた。あとの一名は同様の障害が推定されるという結論でございました。他の二名につきましては、精密検診以前に亡くなられましたため、秋田大学医学部において病理解剖を行いましたところ、死因はそれぞれ膵臓ガン及び肝硬変ということが確認されましたが、病理所見として近位性尿細管の軽度ないし中等度の変性病像が見られるということでございまして、残りの四名の方はまだ精密検診をお受けになっておられないという状態でございます。  また、そのほか東北大学の医学部で四十九年の三月にこの検診をした結果を報告されましたものによりますと、秋田県の小坂町の細越地域というところでは、九十六人の受診のうち四名は多発性の近位性尿細管異常症ということでございまして、腎臓の機能に障害を来たしておるというような状態であったということでございますが、このことは直ちに医療を要する程度の重い病気とは言えないということでございますので、現在研究を進めておるという段階でございます。
  214. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 私は医学的知識はほとんどないのでございまして、検査の仕方なんかはわからぬのでございますが、私なりに調べてみたのです。そうしたら、いま公害防止対策事業をやっておる、秋田県でも発祥地と言われるところの仙北郡西仙北町の杉沢、柳沢部落というところで調べてみたのですよ。これはいまカドミの土壌を掘り起こし、除去して客土をやっている。一体、そこの部落の健康状態はどうか。精密検査はやりませんが、ただ何歳以上の人が何人おるか、老人がおればまず健康の村だというふうに私は考えるのですよ。そこで調べてみたところが、この汚染土壌の最も激甚であるというふうな部落、杉沢、柳沢部落、これは一PPm以上の米がうんととれるところです。これを先祖代々にわたって食べてきたところの部落の住民でございます。それが六十歳以上の人は町全体では一四%あるのです。ところがそのカドミ汚染米を食べておる部落の六十歳以上の人は、町全体の平均を上回って一七%あります。ということは、どうも町全体の中から見ても、その部落が特に長野者が少ないというならばわかりますけれども、何か調べてみた結果を見ると、その部落に限ってパーセンテージが一般平均よりいいのだもの。長寿者が多いのだもの。そうすると、医学的に精密検査をやってどうのこうのとあるのでしょうけれども、どうもこの部落は長年の間あのカドミの入った米を食べて、そうして長生きしてきた人が八十五歳。八十歳以上の人は三人おるのです。  人体に障害があるところのカドミの米であるならば、これを八十年も食ったら大抵まいっちゃうのですよ。害があるならばですよ。じゃどういうふうなことでもって、そのカドミ濃度のひどい米を食って八十五歳でも長生きするところの人体実験をやってきたのでしょう。厚生省、食品衛生法によって一PPm以上の米を科学的に分析すると、これは人体に入る、口に入ると有害食品である、健康を害する米だということに基準としてはなっているのでございますけれども、どうもこういう強度のカドミ米を、カドミを含んだところの米を食べて八十五年も長生きするということ、その不思議さというものは、やはり地域住民にはどうもおかしいと言うのだ。毒が入っているのだ、食うなと言ったっておかしいと言うのです。そういう点について地域の住民の理解を求めるには、これは有毒米だ、だからだめだ、こういうふうに説得する方法はどうしたらいいですか。だれでもいいですから、ひとつ名案を授けてください。どうもぼくにはわからぬ。
  215. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私が答えるのがいいのかどうかわかりませんが、先生のいろいろ調査をされた現実の感じと、科学者が集まって食品衛生法に基づく米の規格成分を決定した一PPm以上は有害であるという結論と、どうも先生が、長い間そこに住んでおられ、また現に住んで長生きをされているその実感との開きがある、この問題をどう考えるか、こういうことなんでございますが、これは結局どうも私は国務大臣として、現在厚生省の食品衛生調査会であれだけ学者が集まって決定した、一PPmまではいいのだけれども、それ以上になると有害だぞというものを、政治家の私がここでこれは間違いだと言うわけにはもちろんまいりませんし、また、さりとてお話を聞いておりますと、先生の地元における実感というのもなるほどもっともだな、こう思うのでございまして、この辺のところがどういう関係になっているのか、よく私は所管の厚生省にもお伝えをいたしまして、なおひとつよく検討してもらうようにいたしたいと思います。  また先ほどちょっとお触れになりましたが、地域住民の納得のいく方法、できるだけ理解を得て進めていかなければいけませんので、私ども汚染地帯を確定する地域指定に当たっては、十分慎重の上にも慎重にやっていかなければならぬだろうと思います。この点はまた秋田県でも再調査をやっておられるようでございますし、軽々にある地点だけをとらえて、それであと広くこの辺一帯はというような結論を下さないように、できるだけ慎重に科学的な分析の結果をもとにしてひとつやっていくべきものだ、こういうふうに考えております。
  216. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 実はいま申し上げたように、おまえのつくっている米はもう有害であるということを説得しましても、なかなか先祖代々長生きしてきているのだからどこが悪い、こういう反発があるのですよ。だから一方において土壌の汚染防止は大事なことだから、これは上流の鉱山あたりにやかましく言って、カドミを流すようなことは絶対差しとめなければならないのでございますが、どうも有毒米というふうなことを言われますと、農民は政府に売る権利をシャットアウトされる。毒のある米を買わないと言われればやむを得ない。いま県はやむを得ず農民を救うために有毒の米を、何に使うかはわかりませんが、政府米と同じ値段でもって県が買い上げているのですよ。霞ケ関の食糧庁があるように、秋田県にも県庁に食管会計がある。これは汚染米を買っているところの食管会計です。そしてやっと農民は政府に売れなければ県庁が買ってくれるそうだからというふうに安心しておりますけれども、そういう状態。  汚染米の取り扱いについては全国的な状態はどうでございますか。山形県あたりは休耕田については県が相当補助を与えている。汚染米というものはどうにも持っていきようがないでしょう。一体どうしますかね。ほかの県がもし賢明な方法をとっているならば、教えてもらいたいのです。いま汚染米の発生状況、生産状況はどうなんですか。農林省の方でひとつ準汚染米を含めて。
  217. 下浦静平

    ○下浦政府委員 全国のトータルで申し上げますが、昭和四十八年産米までの数字で申し上げますと、一PPm以上の政府の在庫量、これが三千四百トン、それから一PPm未満、〇・四PPm以上が五万四千トン、計五万七千四百トンでございまして、四十九年産の政府買い入れ量、これは見込みでございますけれども、これがおおむね一万七千トンぐらいというぐあいに推定をいたしております。
  218. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 汚染米の生産状況は毎年増加しているのですか。増加しておらない、あるいはストップしているような状態ですか。傾向としましてどうなんですか。
  219. 下浦静平

    ○下浦政府委員 年産別に申し上げます。  四十四年産以前の米が一万三千トン、それから四十五年産米が一万三千六百トン、四十六年、四十七年産米、これがそれぞれ六千八百トン、八千七百トンと一万トンを割っております。四十八年産米が一万五千三百トンということになっておりまして、これは気象の条件等もございますし、あるいは予防対策等の徹底のぐあい等もございますので、必ずしもその年にどの程度出るということがなかなか推定が困難な状況でございます。
  220. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 環境庁の調査が進むに従って汚染米がふえてきていると思います。そうした場合において、食糧庁としてはどこにも配給ができないというこの汚染米をだんだんためていくわけですね。農民の気持ちとしましては、売ってもくれない、食べてもくれない、また使ってもくれないというふうな米はつくりたくはないのですよ。一体農林省は、このカドミ汚染地域に対して米の生産地ではどうやったらいいのか。農民の気持ちとしてはやはり喜んで食べてもらえる米を作りたいのですよ。それを毒だというふうに待遇される米をわざわざ好んで農民はつくるわけにいかない。どうすればいいのですか、そういう事態は。農林省の生産対策として将来大きな問題になると思いますから、承っておきます。
  221. 二瓶博

    ○二瓶説明員 すでに対策地域の指定になり、あるいは計画地域の承認になっておりますところは、先ほど先生もおっしゃいました秋田県の柳沢地区のようなところは、これは土壌改良の仕事を進めております。なお、そういう地域等におきまして一号地域等になっております地域、これらにつきましては極力食用でない、非食用の作物等に転作するように指導をいたしております。  なお、秋田県の場合のように、そういうことをやっておりますが、なおやはり米をつくりたい、県の方も買い上げ措置等もただいまお話しのとおりございます。そういうところにつきましては土壌改良資材等の投入、こういうものもやっていきたい。なお、二号地域、これは一PPm以上の米の発生のおそれのある地域、こういう地域につきましては土壌改良資材等の投入等に対して助成もして、そういう面については極力一PPm以上の米がとれないような、そういう指導をやっていきたい、かように考えております。
  222. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 では時間が来たようでございますから、またこの次にお願いします。
  223. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、村山喜一君。
  224. 村山喜一

    村山(喜)分科員 私は今日、日本開発計画というものが新しく問い直される時代を迎えまして、その中でいま新全総の計画も凍結状態というのですか、新しい社会経済発展計画も練り直しをしなければならない、そういうような状態の中にありまして、きのうは国土利用計画法によります新しい審議会が設けられて、いろいろ検討が行われているという報道が新聞にも明らかになってまいりました。そういう状態の中で、これからの経済の成長は、過去の高度成長政策はもう絶対にとることはできないんだ。資源は有限であるという立場から安定成長の道を歩かなければならないということを、総理を初め関係大臣は皆言っていらっしゃるわけでございまして、そのような時期を迎えました昨今、鹿児島県の金丸知事の方から私たちの方にも文書が参りまして、「新大隅開発方向について」ということで基本的な考え方を取りまとめてまいりました。ついてはこれについて御指導御助言をお願いしたいということで文書が参っております。  そこで私はこの問題について、これからの開発方向並びに公害防止、環境保全という立場から問題を提起しながら環境庁長官のお考え方を率直に承ってみたいと思うのでございます。  そこで、まず「新大隅開発方向について」というこの資料は、大臣はお読みになりましたか、なりませんか、それからお伺いいたします。
  225. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私ども局長のところへは鹿児島県の出張所からそれが届いてございまして、この前参議院でも質問がありましたので、その機会にべっ見をいたした程度でございます。
  226. 村山喜一

    村山(喜)分科員 関係局長はどなたですか。これをどういう手続で、相談という形で受けられたのか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  227. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 私どもこういうような大規模開発に基づきますいろいろな問題を審査します場合には、十分地元におきましていろいろな検討をしまして、住民の意見等も聞きました上で、相当まとまったものについて審査する、こういうたてまえをとっているわけでございます。したがって現在の段階では、私どもの伺っておりますところでは、今後県におきましていろいろ地域住民とか関係方面の意見を聞いて開発計画を作成するためのたたき台だということでございますから、まだこの内容についての具体的説明を受ける段階でない、こう判断しているわけであります。
  228. 村山喜一

    村山(喜)分科員 考え方を説明したにすぎないのであって、具体的に相談を、計画をつくって持ってきたものではない、こういうとらえ方をしておいでになりますが、当然そうだろうと思うのでございまして、前の新大隅開発計画が二十年後のビジョンという形で昭和四十三年の十二月に答申が行われまして提案をいたしましたときには、総合開発、新全総の開発計画に基づいてつくられたものであることが説明をされておりました。  この際ちょっと確認いたしておきますが、この新全国総合開発計画というのは、現在の時点においてはどういう状態になっておるのか。その後新たに国土利用計画法がつくられまして、その中には五つの地域区分を行うようになっているわけでございます。都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域、この五つの地域区分との関係において利用計画を審議会でつくり、あるいは基本計画を各都道府県でつくりまして、市町村でつくったものを提出をするようになっていると承っているのでございますが、国土利用計画法に基づくそういう基本計画等については、いつまでに出しなさいということで指導をしていらっしゃるのか、あわせて承っておきたいと思います。
  229. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 お答えいたします。  昭和四十四年に閣議決定いたしました新全国総合開発計画につきましては、その後総点検を行う、あるいはその中に盛られた計画につきまして、環境に対する調査を中心として事前調査をしているということでございまして、その後の情勢にかんがみまして、その実施についてきわめて慎重な態度をとっておるところでございますが、最近の情勢にかんがみまして、今年度、できれば次の新しい全国総合開発計画を、経済計画とも歩調を合わせてつくりたいという予定を立てまして、目下作業に入っておる段階でございます。  なお、もう一つの国土利用計画法に基づく仕事でございますが、お話がございましたように、国土利用計画審議会の第一回目がようやく開かれまして、これも本年度内を目標といたしまして全国の国土利用計画を策定するという作業に入っております。この全国国土利用計画につきましては、都道府県別の国土利用計画あるいは市町村別の国土利用計画との総合調整が必要でございますから、そのための仕事を始めるということでございますが、何せ全市町村の国土利用計画がそろうというのには、やはりある程度時間をかけざるを得ないという実情でございます。  さらに、そのほかに国土利用計画法に基づく土地利用基本計画という計画が知事のところでつくられることになっておりますが、この計画は、いま御指摘いただきましたように五地域区分をいたしまして、それぞれの地域ごとにそれぞれの担当の法律がございまして、実際の開発の規制を行っていくということにつながっておりますので、土地問題の現状にかんがみまして、この土地利用基本計画をおくらせるということは実情にそぐわないということで、本来であれば国土利用計画、市町村計画ができてからということが本筋でございますが、実際の実務上は、この土地利用基本計画というものを急ぐということで各県に指示しているところでございます。
  230. 村山喜一

    村山(喜)分科員 新しい総合開発計画というものは、昭和五十年度を起点にいたしまして練り面しの段階にあるわけでございます。なお、国土利用計画法に基づく利用計画というものがつくられることになっておりますが、これまたいま局長から御説明がありましたように、おととい審議会が発足をしたという段階だ。その中で土地利用基本計画は早く出さなければならないということで、知事の方でそれぞれ作業をされているようでございますが、国土庁といたしましては、この土地利用基本計画は、まあ大まかなものではありましょうが、三月の末までに出すようにということで指導をなさっていらっしゃるというふうに承るのですけれども、そのとおりでございますか。
  231. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 土地利用基本計画につきましては、現在各法令が持っております地域をそのまま踏襲いたしまして、ごくわずか微調整はいたしますが、思い切った変化を伴う開発を認めないという前提に立ちまして、この三月までに出していただくように通達を出しております。
  232. 村山喜一

    村山(喜)分科員 そういたしますと、ここに述べられておりまするような特定地域開発といいますか、大規模の開発、新大隅開発のようなものは、それに含まれていない、こういうように承っておってよろしゅうございますね。
  233. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 鹿児島県から提出された後に正確にお答えする方があるいは適切かと思いますが、私は、新大隅構想というものは土地利用基本計画の五地域区分には入らないというふうに考えておりまして、ただ、その五地域区分をいたしました図面のほかに、さらに、将来調整すべき事項というものを、事前にチェックする意味で書かせるようにしておりますので、あるいはその中に、将来固まった場合には修正をするということを県側が提出するかどうか、その辺は県から出た上でお答えさしていただきたいと思います。
  234. 村山喜一

    村山(喜)分科員 やはりこの問題は、新しい全国総合開発計画が片一方においてつくられ、片一方においては国土利用計画法に基づく国土利用計画がつくられなければならない、そういうような考え方に立って、これからの開発の問題というものについては、それとの関連なしに国土利用基本計画というものを知事が策定をすることは現実にそぐわないし、また法の趣旨とするところは、そういうようなものではないと思う。やはり新しい全国総合開発計画なりあるいは国土の利用計画というマクロ的なものが決まっていく中で、そういう特定地域の開発計画というものは、当然土地利用基本計画の中で考えられなければならない問題だ、こういうふうに考えるのでございますが、そういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  235. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 ただいまわが国におきまして行われている開発事業には非常に多様なものがございますし、開発事業によりまして、その段階も著しく異なりますから、一般的なことをお答えすることは非常に困難でありますけれども、いま御議論いただいております新大隅の開発につきましては、その構想が固まるまで、現実の行政に直ちに反映することは適当ではないというふうに私どにも考えております。で、むしろいま御指摘いただきましたように、国におきます全国計画が決まるということも一つ必要でございますけれども、このたび県が出されましたように地域主体に考えるということや、あるいはその地域の環境調査が終わるということも一つ重要なことでございますから、そういった手続を経て正式に決めた上で、法律上の所要の手続に入りたいということを基本的に考えております。
  236. 村山喜一

    村山(喜)分科員 私たちが聞いておりますと、環境の事前調査といいますか、環境調査というのは大体来年一ぱいぐらいまでかかるような話を聞いているのですが、環境庁の方では、その事前の環境調査というものが、どういうふうになされているというふうに受けとめておいでになりますか。
  237. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 新大隅の環境調査につきましては、環境庁を中心にやっていただいておりますが、私どもの方で、関係する省庁が多いものですから、相互に調整をする立場にありますので、お答えをさしていただきますが、いま御指摘いただきましたように、計画を最終的に固めるためにも、まだもう少し基礎調査が要るというふうに判断しております。  しかし、環境のための調査というものが、その構想を練る段階あるいは基本計画を練る段階あるいは工事の実施に入る段階あるいは工事中の段階あるいは工事が終わってからの段階ということで、幾段にもわたって慎重に調査をする必要があると思いますが、その意味では、まだ当分調査を続けるということになると思います。しかし、基本計画を定めるための基礎調査につきましては、いま先生指摘のように、あと一年ぐらいでおおよその調査を完了できるものと予定しております。
  238. 村山喜一

    村山(喜)分科員 だんだんにわかってまいりましたが、そうなってまいりますると、やはり小沢環境庁長官にお尋ねをしておかなければならないことになってまいります。いま基本的な計画をつくるのに、環境の基礎調査が大体あと一年ぐらいかかる、こういうようなものであるようでございます。また、工事を始めた場合には、アセスメントの手法等を用いまして、いろいろな調査を続けてやらなければならないこともまた事実でありましょう。  そこで、私はこの際、いままで日本の経済というのは重化学工業中心の経済の高度成長政策をずっととり続けてきた、そういう立場から新全総というものを見直しをしなければならない段階に入ってきている。その中で、いわゆる国民の環境権というものが、どういうふうに保護されなければならないのか、これが問われているのが今日の新しい時代の問題点ではなかろうかと思うのであります。そういうふうに考えてまいりますと、一地域の開発の問題だけではなしに、日本列島全体を、日本列島改造計画ではなくて、日本列島を再度見直しをする計画が立てられなければならない段階だというふうに考えるのでございます。  そのときに、今度の予算の内容を環境庁のを見てみますと、大気汚染防止あるいは水質汚濁防止、地盤沈下対策、土壌汚染あるいは公害監視等の施設整備の問題とか、あるいは調査研究、こういうようなものはあるようでございますが、一体これだけで環境庁としては、環境保全という立場から、それらの公害をいかにして未然に防止をし、いかにして、そのいい環境を守るかという立場だけで処理されていいものであろうかどうかということが、私にはわけがわからないのでございます。  というのは、たとえばアメリカの環境保護庁というのがあるようでございますが、そこは、いかにして資源というものを有効に使い、そして、いま一方交通の資源というものをリサイクリングの中に乗せて、そして資源の積極的な活用を図っていくというような立場から、いろいろ都市部のごみ対策の問題等も環境庁で進めながら、その捨てている資源というものを活用をしていく、こういうような方向が出されているようでございます。たとえば、一個のアルミかんをつくるのには、かんの重さの五倍のボーキサイトの原料を使わなければならない。そして四・七倍の重油を使って、それに約十倍の産業廃棄物を排出をする、その中で一個のアルミかんがつくられるのです。このことを考えながら環境行政というものについては見直しをするんだというのが、いま進められている方向であるようでございます。  とするならば、いまことしの予算の中に出ておりますような内容のものだけで、果たして十分であるのだろうかということを私は考えるのでございます。それと同時に、第六十四臨時国会でございましたか、公害関係の法案の審議が行われまして、十四の法律の新設やあるいは改正が行われたのでございますが、そのときに、私たちの意見と与党の意見との間に食い違いがありました。その食い違いはまだ解決を見ていないものも残っているわけでございます。  そういうような状態の中で開発を進めていくとなれば、当然そこには、環境を守ろうという住民の要求と開発優先の産業の姿勢との間にトラブルが発生をする、そういうような状態の中で、また経済の高度成長政策を追いかけるような、しかも重化学工業中心の考え方で開発計画を立てるということは、これはもう今日の時代に即した場合には間違いではなかろうかと思うのでございますが、環境庁長官には、従来から論議いたしてまいりました私たち社会党の環境保全の憲章草案というもの等を一応目を通していただくように申し上げておりましたが、それらについてなお足らざるところは一体今日環境行政の中においてどういうようなものがあり、どういうような点を補完をしながら、先ほど私が申し上げましたようなリサイクルの中で資源を十分に活用していくという方向のものを考えながら、環境行政というものをやるべきだというふうにお考えにならないかどうか、この点についての小沢長官のお考えをお聞かせいただきたいのでございます。
  239. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 いまここで、社会党の提唱された例の憲章について、それぞれ細かく意見を申し上げる時間はございませんし、また、いずれゆっくり、ひとつその問題はあれしたいと思うのですけれども、私はいま先生がおっしゃったように、日本列島全体を本当に見直しまして、そしていわゆる環境行政が先取り的に全国の、五十一年から始まる新しい経済の、またそのもとにおける各官庁の五カ年計画をつくる基礎になるような考え方を示すべきだと思っておるわけでございます。ただ遺憾ながら、緑の国勢調査もいたしましたし、いろいろ環境保全についての長期計画の中間的ないろいろビジョンについても答申をいただいておるのでございますけれども、まだそれが詳細にまとまっておりません。  私は、おっしゃいますように、個々のどこの地域の開発の問題が出てきた、さあ事前の環境影響調査をやれ、また、どういう規模の開発が行われる、それに伴い大気汚染、水質保全はどうなるかというアセスメントをやれというようなことに追われていないで、日本全体の中で、それぞれの地域はいかにあるべきか、環境保全全体の面から先取り的に意見を出すべきではないかと思うのです。これがいままで欠けておったんではないかと思うのでございまして、そういう意味でようやく最近基礎的なデータがそろい始めておりますので、一方、国土庁の先ほどおっしゃいました国土利用計画が先行して、そのもとの利用基本計画というものがつくられるべきものだと思います。理論的にはそのとおりなんでございますが、当面の緊急を要するいろいろな問題があって、この利用計画が先に先行しているような状況でございますが、とにかく大隈半島についても、私は日本全体の中で環境保全を第一義的に考えながら、いかに開発が進められるべきかという点を、そういう観点から考えていく必要があるのじゃないかと思っております。  ただ私どもは、いま県がいろいろ環境調査をやっていただいておりますので、そのデータを見まして、それからもう一つ重要な点は、国定公園の例の地域指定の問題がございますので、これらの措置等の決定をしましてからアセスメントに入りたい。その問題をそのままにして、開発を前提にするようなアセスメントをするわけにいきませんので、その点は現在のところ、私もまだ詳しく聞いておりませんので、よく県の状況を聞き、一方においては、国土全体の中での大隅半島が環境保全全体の見地から、いかにあるべきかということと絡み合わせて検討させていただく、こういう考えでございます。
  240. 村山喜一

    村山(喜)分科員 時間がありませんので、これは参議院の公害の特別委員会でも取り上げられまして、大臣の方から、自分も調査に行ってみる、なお国定公園地域であるから、開発の規制は大臣の権限としてできるんだ、だからそれをいまの段階の中にあって解除するようなことはしない、こういうように承っておりますので、そういう立場で、いま大臣がお話しをいただいたことを了承いたしたいと思います。  そこで私は、もう時間の関係がございますからこれ以上申し上げるゆとりがございませんが、たとえば紙をつくる場合に、故紙を利用いたしますと、大気汚染の状態、いわゆる汚染度合いを二六%に減らすことができる、それから水の汚染度は六五%に減少させることができる。それから鉄の場合には、古鉄を使いますと、大気汚染の度合いは一四%でおさめることができる、あるいは水の汚染は二四%に減少をさせることができる、エネルギーは七四%のエネルギーを節約ができる。こういうような一つの事実が証明されつつあるわけです。  したがいまして、これから先、新しい開発を進めていく場合には一体何だろうということでいろいろ検討して、志布志の魅力というのは実に海にあるんだ、港にあるんだということを知事が言っておりました。立地の可能性があるのは石油産業と食品コンビナートしかないんだ、工業の集積が足らない状態の中では、機械工業とか造船とか自動車産業というのはできないんだから、やはり石油を持ってこなければならないんだという理論構成だけでは、今日もうそういう時代ではないんじゃないか。もっと日本全体を見直しながら、重化学工業の、資源の浪費産業の最たるものとして、日本が諸外国からも指摘をされておる中にあって、これから先の新しい産業というものはどうなければならないのかということを見直しをしながら、しかも食糧の自給率が四三%に落ちて、米だけで、穀類を取れば七%しか自給率がないといわれる今日、これらの問題を総合的に勘案をしながら国土の開発を進め、公害のない住みやすい環境が保全をされるような状態をつくり上げていくために、ひとつ小沢長官がおいでになる間は、まあ慎重な配慮をされる方向を先ほどお聞きをいたしましたので、私も安心をいたしておりますが、しかしながら、世界の資源が枯渇をしていく時代の中における日本のこれからの新しい経済のあり方、並びにそれに伴う環境保全のあり方ということについては十分な配慮をして、先駆的な役割りを果たしていただくように要望しておきたいと思いますが、大臣の御所見を最後に承りまして、終わりたいと思います。
  241. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 生産手段としての資源のみならず、環境資源についても有限であるということが、もう本当に痛切にわかってきた今日でございますので、先生のようなお考えで、排出物についても、それをさらに利用する点を、御指摘になりましたいろいろな例をお伺いするまでもなく、当然考えていかなければいけませんし、また開発そのものの今後の方向というものが、日本の産業構造の変遷と相まちまして、従来のような考え方を変えていかなければいかぬということも、ごもっともだろうと思います。  大隅半島の問題については、私は、先ほど言いましたように、そういうような総合的な見地からする面と、それから地域的な面と、具体的に当面問題にする国定公園の自然保護の問題と、三様の立場から慎重に、総合的に検討を進めていく、こういう考えでございます。
  242. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、中村茂君。
  243. 中村茂

    中村(茂)分科員 中村でございますが、私は、ビーナスラインの美ケ原線問題について長官の御意見を承りたい、こういうふうに思います。  そこで、若干の経過をまず申し上げておきたいと思いますが、ビーナスラインというのは、和田峠まですでに完成しているわけであります。和田峠から美ケ原にかけて美ケ原線を有料道路で引こうという計画であります。大石元環境庁長官がこの問題について、自然破壊につながるのではないか、こういうことで現地を視察しまして、やはり前に設定したルートでいくと大変自然破壊になる、こういうことで、その中間にある扉峠まで一応許可になり、いま工事中で、この五十年度に完成する。しかし、一番問題になりますのは、その扉峠から頂上の美ケ原までの線について、これは四十七年の十二月でありますけれども、県当局は大石長官のそういう指示等もあって、一応ルートの変更の申請をしたわけであります。現在、その変更されたルートについて問題になっているわけであります。  そこで長官に、若干私の意見を申し上げておきたいというふうに思うわけでありますが、この頂上につながるルートが一応変更になって、それよりも若干下に来て和田線というのがあるわけでありますけれども、その和田線というのは自衛隊がつくった一応の道になっているわけでありますが、その線におろして変更のルートが申請されたわけであります。しかし、そのルートにしましても、当初大変に問題になっておりました自然破壊の面からいくと、そこには動物が非常に多い。また天然の植物が非常に多い。こういう動物、植物また水源になっておりますから、水等の自然環境というものが、変更されたルートによっても相当破壊されてくる、こういう問題が一つあります。  それから二つ目には、いま扉峠まで許可になってつくっておるわけでありますけれども、当然扉峠のところまで許可になっているわけでありますから、そこのところまでつくることはいいわけでありますが、そこで終わりだとすれば必要のない、扉峠の頂上の谷のところにその谷を横断するところの大きな橋を、扉峠までの許可に合わせてつくったわけでありますが、そうなってまいりますと、すでに許可になるということを前提にして、その大きな橋をつくったというふうに言わざるを得ません。峠の一番高いところに持ってきて、そこで終わればそれでいいわけでありますけれども、必要ないわけでありますけれども、その橋をつくること自身、もうその向こうの、いま環境庁にお願いしておりますルートにつながる谷間でありますから、私はそういうことを考えてみた場合に、環境庁と何か連絡でもあって、すでに許可されるということが前提になって、膨大な金をかけ、その頂上のところに横断のりっぱな橋をつくったというふうに勘ぐらざるを得ません。そういう問題が一つあります。  それから、三つ目には、これは私、前から非常に問題にしてきたのですけれども、そのルートに接近したところについて伊藤商事が、武石村という村があるわけでありますけれども、その村から、村の土地を八億円で買って、美ケ原の高原保養地をそこにつくっておるわけです。しかも、そのつくっているところに、いま道路を完成したわけでありますけれども、武石村は八億円で自分の山を売って、その半分の四億円でそこにつながる道路をつくったわけであります。私が一番心配しますのは、また、前からいろいろとそれについて問題にしてきましたのは、そこのところに非常に広大なそういう保養地をつくることは、それは結構でありますけれども、そのつくる前提が、いま問題になっております扉から美ケ原の頂上につながるルートの延長が当然行われるということが前提になって、そういう道路がどんどんつくられているということになりますと、一番心配しております。そのルートをつくることによって、なお第二次、第三次の自然破壊、それから乱開発が行われていく、こういう要素になる問題でありますので、まず、このルートについて長官の態度と見解をお聞きしたいというふうに思うわけであります。
  244. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 八ケ岳中信高原国定公園内の美ケ原におきまして、先生おっしゃいますような経過がございまして、公園計画上の道路計画が一応、前に決定になっておりましたのを、貴重な景観地である台地の上、頂上線を通るというところが、非常に自然保護上問題が多いということで、扉峠までで一応とめるように県の方に指導を行いまして、その結果、扉峠までの工事が現在やられておるわけでございますが、その適当でないという道路にかわる代案といたしまして、もう少し下の方の地域を縫って通る案を長野県の方から、当初の計画の路線を大幅に変更した道路計画の申し出が、現在、環境庁の方に出ておるわけでございますが、環境庁といたしましては、この計画案につきましても、まだいろいろと問題がございますので、この変更案につきまして、現在、現地の事情に明るいいろいろな専門家の方々の意見などを徴したり、あるいは私どもの方でもいろいろと検討を重ねておりまして、自然保護上あるいは公園利用上の観点から、これが適切であるかどうかということの検討中であるわけでございまして、今後はさらに、自然環境保全審議会の意見を聞いた上で、最終的に判断を行いたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、二番目の扉峠のところの橋梁の問題でございますが、これは、あの峠のところの地域の地形の関係上、やはり狭い地域でございますので、景観上問題がある程度あると思いますが、やはり橋梁をかけざるを得ないんじゃないかというふうなことで、その計画については一応了承しておる次第でございます。  それから三番目の、武石村が林道巣栗線をつくりまして、これをもとの計画の路線につなげようということでつくってきておるのじゃないか。それについてどう考えるのかという御質問ではなかったかと思いますが、巣栗林道との間の問題につきましては、まだこれも検討中でございまして、いろいろな御意見のある方もございますので、まだ結論を出しておらない状況でございます。
  245. 中村茂

    中村(茂)分科員 検討中、検討中というふうに言い出して、もう三年にもなるわけですけれども、しかも前に許可になった扉までは、もうすでに道ができ上がって、五十年度には全部通れるところまで行く、そういうふうになっておるにもかかわらず、いつ聞いてみても検討中、検討中、特に環境行政についてはいろいろな経過がありますし、しかも非常にむずかしい問題でありますけれども、いつも検討中ということで済まされては大変だと思うのです。そこで長官の決断というか、そういうものがどうしても、こういう際には必要ではないか、こういうふうに私は思うのです。  昨年のやはり分科会でありますけれども、当時の長官は総理の三木長官であったわけでありますが、やはりこの問題について私どもお聞きしたら、特にその当時の三木長官は、自然公園内を通る道路については慎重論者だ、そういう立場で検討をして早急に結論を出したい、こういうふうに言われたわけであります。自分が今度総理になって、やはりそういう方向で、いま行政を続けているわけでありますけれども、きょうまたお聞きすると、これは検討、検討、こういうことです。  非常に検討がおくれているわけでありますけれども、しかも、どういうふうに言われても、私、もう一度繰り返しますけれども、納得できないことは、扉峠までで終わりなら、どういうふうに言っても、あれだけの橋をつくる必要はないのですよ、このルートがそこで終わりなら。頂上から向こうへ渡る谷間にかけたわけですから。そうでしょう。地元の問題はいろいろあるでしょう。そういうふうになってくると検討、検討で延ばされる上に、実際には頂上まで許可になっている。そのところに、また全長百二十六メートル、幅六・六七五メートル、それが谷にかかっているわけでありますから、その向こうが許可にならないとすれば、全くむだ金をそこのところに投資したと言わざるを得ないような、百二十メートルにもわたる大きな橋を環境庁で許可すること自身、どうも環境庁の姿勢が、その向こうのところを許可するということが前提で、まさか許可したのではないと思いますけれども、そういうふうに、疑わざるを得ないのです。  それともう一つ長官に含めてお伺いしたいのですけれども、妙高の有料道路を認めぬ方針だということを、新潟で長官が記者会見で発表された内容を新聞で見せていただいたわけでありますけれども、認めない方針について決めた中身として、審議会内部に反対が強い。それからもう一つ、私はどうしても腑に落ちないと思いますのは、二番目として、地元選出の国会議員にも建設不許可の了解を取りつけたということを不許可の理由に、新聞で見た限りしているわけであります。  この場合も経過からして、県ではずっと計画も立ててきたわけでありますし、それから実施する際には県の議会でも決まった案なんです。しかしその後、情勢が変化し、特に大石元長官がじきじきに行って、扉までは何とかいいけれども、その向こうはということでルートの変更をした。ルートの変更をしたにしても、非常に自然破壊の問題がまだある。それから、地元では確かにまだつくってもらいたいという希望があります。こういうのが、いまほとんどどこでも問題になっている自然を守っていくか、それとも開発かというような問題であったり、またこれが手をつけるときには厚生省時代に許可になったところであったり、一つの曲がり角にある時期だと思うのです。  ですから、こういう問題はどうしても地元の了解を得なければだめだとか、地元の国会議員の了解を得なければだめだというものじゃないと思うのです。やはり自然を守るという、自然破壊を何とかしょうという環境庁の方針に従って態度を決めればいいことではないか、こういうふうに私は思いますので、特におくれている関係と、ここの線については、もうここでとめていただいて、しかも、一応そこまでつくるというふうになっているわけですから、そこのところは一応試験みたいな形ででき上がったわけですから、これから車もそこまでは来ます。その向こうについては、これは中止でも結構だと私は思うのです。全然やめるということ——試験道路みたいなものですよね、扉までは。そして、自然がどういうふうになっていくかということを、なお続いて検討して、十年後またここのところを峰まで持っていくかどうかということを検討してもいいじゃないですか。  そういう幅広い考え方と将来のことを含めて、一日も早くここのところでとまるという結論をひとつ出していただきたいということを強く長官に要請しておきたいと思うのですが、長官考え方をお聞きいたしたいと思います。
  246. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 扉峠まで完成して、その先の問題で大石長官が行かれて、このルートはだめだ、別のルートならばという印象を、あるいは向こうが逆に受けたんじゃないかと思うのでございまして、そこで路線変更をして持ってきた、こういう経過のように聞いております。  私は、元来山というものは歩くものだと思っております。したがって、できるだけ認めたくない。たとえ自分の郷里であっても、大事な自然でありますから、妙高の有料道路には、私は着任早々ですが、いろいろ判断をして認めたくない、反対だということを表明して、最近、県にも撤回をしてもらいました。これは何も地元の代議士と話をして、それで了解を得たからやったわけではありませんで、私のその決定を地元の方々に納得していただくように、地元の選出の代議士さんに私が申し上げて、御理解を願ったわけでございます。  環境行政というものはやはり地元の住民と、これはあらゆるほかの問題でもそうでありますが、公害問題にしても、無関係に、私はこう思うから、おまえたちの意見なんか聞かないのだというわけになかなかいかないのです。アセスメントをやって大丈夫だと思ったからやってしまったのだ、おまえたちに何も知らせる義務はないじゃないか、こういうわけにはいかないわけでありまして、それは、やはりそういう手続をとることは、むしろほめていただきたいと思うのです。  私は、この美ケ原の問題については、いままで環境庁が慎重にしていることは慎重にした方がいいと思うのです。二十年、三十年先にしまったと思うよりは、やはり慎重にすべきなんで、これが、先生にとっては、どっちか早く結論を出すのが一年おくれた、二年おくれた、三年おくれたで大変御不満かもしれませんけれども、やはり慎重にすべきだと思うのでございまして、そういう意味で、自然環境保全審議会の意見等もよく聞いてみなければいけないわけでございますから、慎重にやることは、私は事務当局としてもとるべきいい態度ではないかと思っております。  ただ、先生がおっしゃるのは、恐らく、もうこのようなりっぱな自然に道路をつくって車がどんどん行って、二万何か商社が別荘地を買い占めておるようだから、そのための目的じゃないかといりような誤解も生ずるからやめてしまえ、これは認可しないということに早く決めた方がいいだろうという御意見だろうと思うのでございますが、私どもも認めるつもりなら、もっと精力的にやっているわけでございます。  ただ、御承知のとおり、要するに県も地元もいらいろ県道との連絡なりその他道路行政、交通情勢から見ても、地元に対して、地元のまた過疎地帯の問題から見ても、ぜひ欲しいんだという強い要望がありますので、それもむげにできないから、慎重に納得をしていただくような手続を踏まなければいかぬということでございますので、大変おくれておって恐縮ですが、私もこの問題は南アスーパー林道と同じように、一回やはり自分で見て、必要ならばよく状況をあらゆる角度から検討させていただいて、それで私が、在任どれぐらいまでおるかわかりませんけれども、もし、まだしばらくおるということになれば、何とかひとつ自分の手でどちらかに結論をきちっとつけたい、かように思っておるわけでございまして、どちらかと言うと、じゃどっちの方向で検討するのか、全く白紙なのかと言われますと、基本的には私どもは、やはり美しい自然を後代に残すというのが環境庁の使命でございますから、そういう基本的な姿勢はあくまでも崩さぬでおるわけでございまして、ただ、具体的にこの問題についてどうするかという結論は、ひとつ実際この目で見て、責任有としてよくまた審議会の意見も聞いて最終的に判断をさせていただきたい、こう思っておるわけでございます。
  247. 中村茂

    中村(茂)分科員 長官、大体わかりましたが、再度強く要請申し上げておきたいというのは、結論を出す見通しですね。先ほども申し上げましたように、大石元長官が来て、その後環境庁長官小山長官、三木長官、それから毛利長官、それかり小沢長官。大石元長官は実際に行って見たんですよ。その間に四代も長官がかわって、いまも、在任の関係もあるけれどもと、こういうふうに言われて、またかわってしまう。私の早くと言うのは、先ほども言いましたように、こういうふうに長くしていると、実績がどんどんそこへ積み重なっていってしまうわけですよ。ですから、本当に自然を守るという立場にある長官だとすれば、自然を守るという方向でできるだけ早く結論を出してもらいたい、こういう要望でありますから、見通しについて、少なくもことしの夏ぐらいまでに行かれる予定なのか、そこら辺のところをちょっと。
  248. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 大石長官は、茶臼山から美ケ原へ抜ける前の申請の道路の方をいろいろ視察をされて、これではだめだ、別のルートを考えろ、こうおっしゃったわけで、その後相当たってから新しいルートが出てきたので、私もやはり新しいルートを判断するのに、何にも見ないで、図面だけ見まして、これがいいとか悪いとかと言うのは、ちょっと軽々だと思いますので、いま先生夏までに行くかと言われますが、ぜひ行きたいと思います。
  249. 中村茂

    中村(茂)分科員 ありがとうございました。
  250. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、米原和君。
  251. 米原昶

    ○米原分科員 私は、高速道路や幹線道路の周辺で起こっている公害、それに対する環境庁長官自身の対策、考え方についてお聞きしたいと思うのです。  高速道路や幹線道路の周辺では、近年道路公害がますます激しくなっております。問題になった自動車の排ガスの問題あるいは騒音、振動、振動による家屋の被害、日照の問題、実に多種多様な公害が発生しております。これらに対する総合的な対策について、きょうは特に東京都でも一番問題になっている環状七号線の周辺に起こっている公害の実情について述べますから、それについて長官考え方を聞きたいと私は思うのです。  幹線道路の問題については建設省も、昨年の四月でしたか、通達を出しておりまして、新しくできる幹線道路には騒音の緩衝地帯をつくるとか、幅十メートルから二十メートルの間に木を植えるとか、そういうかなり具体的な対案を出しております。しかし、この建設省の通達を見ましても、既設の幹線道路、こういうものについては一向に書かれておりませんし、改善されていないわけです。  東京の環状七号線は、御存じのように東京都内十一区にまたがって、膨大な数の人々がここでさまざまな被害を受けているわけであります。一昨年から一定の交通規制もやられているものの、御存じのように昨年の暮れには東京都が中心になりまして、いろいろな住民団体や婦人団体と共同でこの状態を調査しております。それは新聞にも発表になっておりますし、東京都が公に結論を公表しておりますが、それを見ましても、窒素酸化物については基準の五倍だというようなことを発表しております。あるいは騒音、これも環境基準をオーバーしております。交通量も二年前と比べると二〇%も増加しておる。そういう意味では、環状七号線の自動車公害は、むしろ悪化の一途をたどっているわけであります。  それに対して、ほとんど手が打たれていない。夜間の安眠規制などということは言われておりますけれども、こういうことだけでなくて、抜本的な対策を一歩一歩進める必要があるのではないか、こう考えるわけでありますが、まずそういう対策が必要と思われるかどうか、長官意見を聞きたいのです。
  252. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 環七の問題については頭を悩ましております。対策はぜひ必要だと思います。
  253. 米原昶

    ○米原分科員 そこで、交通規制について言いますと、現状のやり方では余りにも甘過ぎるのではないかと私は思うのです。少なくとも夜間の騒音、振動、これを防止するためには夜間は大型車の乗り入れを全面的に禁止する、こういう措置をとらなければ、いまの状態ではもう解決つかない、これが付近住民の意見です。この点について、どう思われるでしょうか。
  254. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先生も御承知だと思いますが、環七の道路というのは都道でございます。私は、いろいろな行政のやり方があると思いますけれども、都道府県知事が、美濃部さんがもし環七のこのひどい自動車騒音を本当に真剣に考えていただくならば、相当の金をかけて騒音がほとんどなくなるような、住民の方もそう言っておられますが、一部やったところは、ちゃんとなっておるじゃないか、それをおやりになったらどうか。ほかの人件費でいろいろお困りのようですけれども、そういうような点も思い切って行政の予算の配分の重点を考えて勇敢におやりになったらどうだろうか、こう思います。  私のところへ、その問題についておいでになりましたが、課長の方から、そういう問題も騒音防止には非常に大きな対策になるから、それをぜひひとつ皆さんからもおっしゃってもらいたいということを言っておりました。  もちろんそれだけではございません。われわれの方では自動車騒音に関しまして、目下いろいろ検討をいたしておりまして、さらにこれを減らすような対策を、近く基準を決定してやりたいと考えております。また、排気ガスにつきましても、御承知のとおりトラックが非常に多いわけでございますので、トラックに対する排ガスの規制を、今度の乗用車の規制以外に、ひとつ四十八年よりもさらに強化する対策を、できるだけ早目に決定をして守らしていきたい、かように考えておりますし、また緩衝地帯につきましても、既設の道路についても何とかひとつ対策をやっていくべきじゃないかと思いますので、これらの点については、関係省庁とよく協議を進めてまいりたい、かように考えます。
  255. 米原昶

    ○米原分科員 長官が都のやった調査の問題について触れられましたから、それから先に質問しますが、いまおっしゃったのは、昨年の十一月に、東京都の道路交通振動防止対策委員会が新型舗装の効果について報告しているわけでありますが、そのことだと思いますが、ここで報告されているような道路の改修も確かに重要だと思うのです。問題は、それをやるためには相当な費用が必要だという点なんです。これは都としても、できるだけ出さなければならないのは当然だと思うのですが、こうしたものについては、いまも若干触れられましたが、原則的には、国がそれ相当の補助をすべきだと思う。この点について、基本的にはどういうふうに補助の点を考えておられるか、これを先に聞きたいと思うのです。
  256. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 御承知のように、都道府県道路については一定の基準で補助があるわけでございますが、それぞれ都道府県の財政事情等を勘案して決定をされておるのじゃないかと思います。それを取り上げるかどうかは、やはりやる側の姿勢の問題で、私どもも、それぞれ郷里の県あるいは市町村から、ぜひやらなければいかぬ道路については相当の強い要望がありまして、これらを建設省に反映して実行しているわけでございますから、一般的ないままでの行政のやり方と同じように考えていっていいんじゃないかと思いますが、東京都の最近の状況は、非常に財政が悪いようでございますが、いままでの一般的な例でございますと、当然道路行政については一定の基準で補助金が出るわけでございますから、その問題は、今後東京都がどういうような対策をとるかによって、場合によりましたら、騒音防止に非常に役立つ問題でございますので、私どももお力をかしたいと思うくらいでございます。
  257. 米原昶

    ○米原分科員 そうだとしますと、一点、非常に重要な問題点があるのです。現在、こうした公害防止のための道路の改修ですが、こういう道路の改修は、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律、この法律の対象事業にはなってないわけであります。こういう道路、これは確かに極端な例でありますけれども、実際に行ってごらんになればわかるように大変ひどいのです。こういうような場合には、やはり公害の防止に関する事業の適用ができるようにすべきじゃないか。確かに地方財政は非常にいま困っている中でありますから、容易なことではありませんけれども、これが適用されるようになるならば、比較的これは容易になってくるのじゃないか。財政上の特別措置に関する法律を適用することができるかどうか、できるようにすべきじゃないかと思うのですが、この点について環境庁の意見を聞きたいのであります。
  258. 浅井新一郎

    ○浅井説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘の耐振性舗装と申しますかは、御指摘のように環七で五カ所いま実験中でございまして、その成果を見るべく追跡調査をやっているわけでございますが、非常に効果があるということになりますと、これをやる上にはかなりな事業費がかかることになります。一般的な補助の考え方としましては、補修事業ということになりますと、大体道路管理者が単独でやるというような形で原則的には考えられておるわけでございますが、環七問題は相当大きな問題でございますし、それからこういう舗装を全面的にやることが非常に効果があるというようなことで相当な事業費をつぎ込む必要があるというような事態になりますれば、やはり補助の道とかいうようなことも含めて、十分検討しなければならぬと思っております。
  259. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 あなたのおっしゃった公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置、特別かさ上げの問題を、私はさっき申し上げたのじゃないのですよ。一般の道路行政として、いま言いましたように簡単な補修の問題は、それぞれ都道府県が管理していれば都道府県、あるいは市町村が管理していれば市町村でしょうけれども、いま言った特別の面のあるときは、一般の道路の修繕といいますか、そういう問題として考えていただけるのじゃないかということを申し上げたので、この特例のかさ上げの法律を適用できるというふうに申し上げたのじゃないのです。
  260. 米原昶

    ○米原分科員 そうすると、実際問題としては、そういう公害防止に効果があることはわかっても、あまり国からは補助金が出ないということになりますね。そういう考え方でしょうか、長官は。
  261. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 いや一般の都道府県道については、いま建設省の答弁どおりなんです。私が申し上げるのは、特別にかさ上げをする補助事業の対象としては、法律上列挙されておりますから、それには入ってない、こう申し上げておるわけであります。
  262. 米原昶

    ○米原分科員 だから実際の具体的のこの場合、特別に補助をすることはできないということになりますか、こういう場合は。
  263. 浅井新一郎

    ○浅井説明員 原則的には、舗装の場合には、新設事業につきまして補助事業として採択しておるわけでございまして、補修事業は一般的には道路管理者がやるという原則でございますが、一般の補修事業としては、舗装が波打ったとき、そこをはがして部分的に直すとか、そういう小規模な事業がこれまで常識的な補修事業として考えられたわけでございます。そういうものは維持管理的な仕事であるから、道路管理者がみずからやるということで考えておったわけでございますが、これが補修事業の枠を超えて、いわゆる二次的な新設であるというようなことになれば、また改めてやはり考えなければならないのじゃないかと思いますが、この辺はまだ制度として開かれておりませんので、やはり今後の検討事項じゃないかと思っております。
  264. 米原昶

    ○米原分科員 それではこの点は、これが効果があるとすれば、部分的な補修というようなものじゃなくて、全面的に恐らくやらなければならぬ、ある意味で新設に準ずるものですが、そういう立場でひとつこの問題を十分に検討してもらいたいと思うのです。  その点で、道路の改修ももちろん必要ですが、最初私が聞いたのは、交通規制の問題、夜間は大型車の乗り入れば禁止するぐらいな措置をとるべきじゃないか。いままでのところこの問題では、交通事情からしてそういうことは実際上できないのだというような見解を承ってきたのです。交通事情を前提にしたのでは、もうこの公害の問題は解決つかないです。ある意味では、多少交通に障害が出ても、もはやこれ以上ほっておくわけにいかないという事態が、環状七号線の場合は起こっているのじゃないか、こう思うわけです。ですから、そういう場合は、少なくとも夜間の大型車の乗り入れを一定時間禁止するぐらいな程度の規制が必要じゃないか、これが住民の要望なんです。この点について見解を聞きたい。
  265. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 環七のみならず、私どもは大気汚染防止の見地から、自動車排ガスの特に窒素酸化物について環境基準を守っていくために、交通規制の問題を幅広く含めまして、いま検討いたしております。おっしゃるように、相当思い切ったことをやらないと、これはなかなか達成できません。  いまここに具体的に環七の貨物の夜間通行を禁止するということ、これはいろいろな所管官庁もございますので、私はここで申し上げられませんが、そういう問題も含めて、私は本当にこれは総量規制の立場から思い切った対策を講じていかなければいかぬという考え方の持ち主でございますので、いませっかく閣僚協、そのもとにいろいろな部会をつくりましてやっておりますから、警察方面とも連絡をとり、その他貨物ということになると流通の問題にもなりますので、それぞれ所管する官庁あるいはまたトラックの規制を担当しております運輸省とも相談をして、この環七のみならず私は何とかこの自動車全体の交通規制について、公害防止の観点から思い切った対策をとっていきたいという気持ちで、いませっかく検討中でございます。
  266. 米原昶

    ○米原分科員 五十一年排ガス規制についてああいう告示が出まして、非常に不満の声が高いのです。こういう中で、どうしても一方で交通規制をやらざるを得なくなっているのが実情だと思う。そういう中では、これはもちろん関係の部門とも相談されなければならぬでしょうが、現状から言えば、ある場合には多少の故障が起こる面もあると思うのです。それでもこの問題はどうしても環境庁が率先して、とにかく住民の健康を守るということを第一にした措置をとっていただきたいと思います。  健康の問題と関連して聞きますが、例の公害健康被害補償法の地域指定の問題であります。いまのところ、この法律では、問題になっておる窒素酸化物、これが考慮の対象になってないということもありまして除外されているために、昨年行われた東京都内の地域指定の際には、いま申しておるこの環状七号線、ここも騒音がひどいだけでなくて大気の汚染もずいぶんひどいところでありますが、その中で一番ひどい、大原ぜんそくなんというあの大原のある世田谷区あるいは目黒区、こういうところが指定から除外されてしまった。そのほかに東京都内では中央区、台東区、墨田区も除外されております。  これについては、長官も要請があって環状七号線を視察されたと聞いておりますが、この除外された地域、これを一体今後どうされるつもりか。同時に東京の残りの区のうちで新しく七つの区を調査の対象にされたと聞いておりますが、こういう調査の結果はいつ出されるか、指定はいつごろになるかということを聞きたいと思うのです。
  267. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 指定漏れの五つの区につきましては、御承知だと思いますが、汚染量とそれから有症率とは兼ね合いで実はそういうことになっておるわけでございまして、先ほどもちょうどほかの問題で議論がありましたように、私どもは客観的なデータで判断をするわけでございますが、その中にNOxの問題が実は入っておらないわけでございまして、したがってそういう点からすると、どうも現実の住民の体で受けとめている感じと、私どものこの基準との相違があるのじゃなかろうか、私自身もその点は非常に感ずるわけでございます。  しかし、何としてもやはり調査のデータというものがそういうようなことで、一応それを基準にして地域指定をやっているものですから、全くそれを無視して、私がこれはひどいじゃないか、すぐやれよというわけにもなかなかいかないわけでございますが、その点については、東京都に再調査を依頼しておりますから、まずその調査の結果を見て判断をしていきたい、かように考えます。
  268. 米原昶

    ○米原分科員 そうしますと、再調査を東京都に依頼されているわけですが、御存じのようにそのほかの七つの区、これも同時に調査されるわけですね。
  269. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御質問の中の再調査という問題をまずお答えいたしたいと思います。  これは大臣のお答えしたとおりでございますが、具体的には四十八年度に行った調査の、どのような対象をどういうぐあいに抽出したのかという点の再点検を専門家も入れてやっていただいておりますし、またその調査に反応しなかった人というところも非常に問題でございますので、そういう点を現在都の方とも話し合いをしながら再検討をしていただいているという最中でございます。  それから、窒素酸化物の問題の御指摘がございましたが、この点は四十五年から五年計画でやっております複合大気汚染の影響調査という中で、これはかなり窒素酸化物の問題を意識した調査のデザインになっておりまして、それが今年度で全部終わりますので、その解析を来年度はいろいろやるということを頭に置いておりますし、また、調査調整費で約五千万円近くでございますが取りまして、これで国道四十三号線と東名沿線におきまして汚染と影響の両調査をいたしますので、その両者の結果が出てまいりますと、窒素酸化物に対していままでよりかは具体的なものが得られるのではないかというぐあいに期待をしておるわけでございます。  それから、七区の問題につきましては、四十九年度の前期の調査としていたしておりますが、非常に規模も大きゅうございますし、私たちのいままでの経験から見ますと、幾ら早くても秋以降ぐらいになるのじゃなかろうかという感じでございますが、まだ確定をしておりません。
  270. 米原昶

    ○米原分科員 大体伺いまして、いまの調査の進展状況はわかりました。そこでやはり一番重要なのは、長官も言われるようにNOxがいままでのにはこの法律で入っていない。ところがこれが実態と違うというところから、住民もどうも納得できないというのは、それがかなり関係していると思う。ですから、NOxのいまやっておられるような調査が一応ことしじゅうに完了するということならば、ぜひこの問題は一般の国民も納得できるような結論を出していただきたい。区が違っても、当然同じような病人もたくさん出ておりますし、このことを切に希望いたします。  ただ問題は、実際の状況はそれだけでないのです。窒素酸化物による人体被害が認められたとしても、現在の公害健康被害補償法の対象疾病は呼吸器系統の病気だけだとなっております。ことし一月に都の公害研究所が発表した調査報告によると、幹線道路周辺の健康被害については呼吸器系に限らず、頭痛、耳鳴り、胃腸不調などの訴えが広くあることが報告されております。本当言いますと、こうしたものについても、公害健康被害補償法の精神からして当然対象となるようにするのが本筋だと思う。これは相当深刻なものであります。私自身が環状七号線から百メートルぐらい離れたところに住んでおりますからよく知っておりますが、相当ひどい病気の人、呼吸器系の疾患とは言えないのですが、相当あるのです。そういう点でも今後ぜひ調整、検討をやっていただきたい。このこと、いかがでしょうか。
  271. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 先ほど先生お話をいたしました高速道路沿線の調査におきましては、これは補償法とは全く関係をつけない調査でございますが、大気汚染と騒音との両方から見まして、その影響の場合に従来の呼吸器系統の疾患だけではなしに、そのほかの影響は一体どうとらえられるかということの条項も中に入れながら考えております。  ただ、非常にむずかしい問題でございまして、東京都の報告を見ましても、確かに一つの訴えあるいは非常な妨害現象あるいは不快な、一種の心身医学と申しますか、心と体の医学というようなことでしかつかまらないもので、現在の医学では疾病とはならないという形のものが実は多うございます。その辺はどうにも分けかねるということでございまして、これは今後の検討課題として取り組んでいくつもりで今度の調査もいたしておるところでございます。
  272. 米原昶

    ○米原分科員 健康被害とともにもう一つ問題なのは振動による家屋被害。東京都の調査では、環状七号線の道路に面した家屋の三分の一が振動の被害を受けておるという報告になっておりますが、大田区から公害をなくす会という団体の環七沿線住民に対するアンケートでは、実に五〇%もの人が、家が傾いた、こう言っているわけであります。発生源対策を基本としつつ、こうした被害に対しても当然補償が行われるようにすべきだと私は思うのであります。航空機の騒音とか新幹線の騒音については、それ相応の補償が現在すでに行われています。こうした幹線道路とか高速道路、この沿線の被害についても、現実に被害が起こっているわけでありますから、家が傾きかけているところだってあるのです。これを放置しておいては手落ちだと思うので、当然手を打っていただきたい、この点についてお聞きいたしたいと思います。
  273. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 四十九年度予算で、振動による財産被害についてのいろいろな検討をする研究費が計上されまして、ただいまその観点から調査研究を依頼をいたしておるわけでございますが、その結論を待ちませんと、なかなか私どもとして具体策に踏み切れないわけでございますので、これはこれとして別途そうした調査会の検討を進めてまいりまして、その結論を見て私どもは対策を講じていきたい、かように考えます。
  274. 米原昶

    ○米原分科員 時間がありませんから、もう質問でなくて一言だけ、こういう点があるということを言っておきます。  もう御存じと思いますが、東京都は湾岸にいわゆる百メートル道路と言われる道路を建設中です。この道路が全部いまの計画どおり開通しますと、この環状七号線の南側のところで接続するのです。そうしますと、大変な量の車が入ってくる。これはもう大田区の区長を初め区当局が、大変なことになるといっていまから大騒ぎしている問題なのです。大田区当局の試算では、これが開通するだけで昭和六十年には車の数がいまの倍以上になる。ここに詳しい試算のあれを持っておりますけれども、大変なことになるのです、実を言うと。千葉方面から来る車はみんなあそこに入ってくる。大変なことになるのです。しかもまだ横浜に抜けるような道路はつくられていないのですよ、ここに。大変な計画なのです。  こんなものが入ってきたら、いまの環状七号線は公害で東京都内でも一番ひどいところともなっておりますけれども、実を言うと、この辺は湾津道路が入ってきたら全くこの世の地獄と言っていい状態になるだろうということで、大田区役所でも頭を痛めているのです。区長自身がぜひこの問題を国会でやってくれと言って、ぼくに何回も頼みに来たような問題なのです。こういう点がありますから、この湾岸道路の問題、簡単にこんなものあそこにつなぐようなことをいまの段階ですると、後の措置を何も考えないでこんなことをやられたら大変なことになる、当然あの周辺の住民の意見も十分聞いて、区当局の意見も聞いて措置されるようにということをお願いしておいて、これで質問を終わります。
  275. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、大橋敏雄君。
  276. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 私も健康被害補償法に基づく指定地域問題について若干お尋ねします。  お尋ねしたいことがたくさんございますので、言わんとする要点をつかんでいただいて、答弁を簡明にお願いをしたいと思います。  とにかく、近年、硫黄酸化物等による大気汚染は相当改善されてきた。その反面、窒素酸化物等による汚染が相対的に重視され、問題化されつつある。  そこで長官にお尋ねしますが、環境汚染現象はあるけれども公害はない、このような発言をよく聞くのでございますが、この意味承知なさっているかどうかということです。つまり、健康被害補償法に基づく地域指定、この要件が実態にあっていないことを端的にあらわしている発言であろうと思います。そこで、いまも問題になっておりましたが、地域指定の要件を見直される意思があるかどうかということです。
  277. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 現在、先生もおっしゃったように、地域指定の要件に関する資料は必ずしも十分でない現在の時点において、硫黄酸化物を指標としてあらわさざるを得ない、こういうことになっておりますために、窒素酸化物等の問題についていろいろ議論のあることは承知いたしております。したがって私どもは、中央公害対策審議会の答申にもその点が指摘されておりますので、今後は窒素酸化物あるいは浮遊粒子状物質と呼吸器症状有症率の関係を量的に検討した研究を推進いたしてまいりまして、将来その結果が得られれば、当然地域指定の要件の変更をいたさなければならぬ、かように考えております。
  278. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 地域指定の要件を見直す気持ちはあるけれども、いま言った条件等が満たされた段階であるということですが、それは大体いつごろの見通しですか。
  279. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 一番の問題点は窒素酸化物の問題でございまして、この点は私ども普通……。
  280. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 見通しだけで結構です、いつごろという。
  281. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 二年弱でございます。
  282. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 確かにおっしゃるとおりに、これまでの地域指定の要件というものは、大気の汚染程度というものがSO2のみの汚染度で一度から四度という四ランクに分けられております。NOxと粉じんを落とされている。二年以内には何としてもこの地域指定の要件を見直す、こういうことですから間違いのないように。私は、二年以内というのですから、二年かかるとは判断したくありません。もっと早い時期にと言いたいところでございます。  次に、汚染度一から四度ということなんですが、環境基準値との相関等にもこれは問題を残しているようでございます。この一度というのは〇・〇二PPmから〇・〇四PPm、非常に粗い尺度になっているように思われます。そして二度というのが〇・〇四PPm以上である。  そこで、問題になるのは、汚染の程度です。この汚染の程度が、いま言った環境基準値との相関的な問題として、その一度の内容が非常に粗いということが問題になっております。むしろ下限の方は〇・〇二PPmではなくて、〇・〇一七PPm程度にすべきではないかという、これは専門家の意見でございますが、こういう点についての見直しについても行われるかどうか。
  283. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 現在の対象は慢性疾患でございますので、どうしても年平均が中心になりまして、硫黄酸化物の基準を見直すという考えはございません。
  284. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 要するに、著しい大気の汚染というものは年平均何PPm以上と考えられておるのか。それから疾病が多発というのは自然有症率のおおむね何倍を考えられているか、お尋ねいたします。
  285. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 著しい大気の汚染は三度以上、年平均〇・〇五PPm以上あるいはこれに相当するもの、及び疾病の多発といいますのは二度のおおむね有症率の二ないし三倍というところ以上を多発、こういうぐあいに見ております。
  286. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 そこで長官、問題になるわけです。要するに、地域指定の要件というものは汚染程度が三度。三度というのは平均〇・〇五PPm以上、そして二度というのは自然有症率の二ないし三倍というお話でございました。ところが、昭和四十八年度全国各地の値の測定実績を見ますと、全国の最高が富士市で〇・〇四七PPmであったわけです。そうしてみますと、〇・〇五PPm以上を示した測定点がどこにもなかったということになりまして、こういうことでは高過ぎるのではないか、もっと下げるべきではないか、でないと実効的ではない、こういうことでありますが、いかがですか。
  287. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 現在の汚染では、先生指摘のとおりでございますが、過去十年くらいさかのぼって私どもはデータを探しておりますので、東京都の今回の指定も、四十年から四十五年ごろまでの間の数字でございます。現在の汚染度だけではこれにはまりません。
  288. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いずれにいたしましても、厚生省も通産省もこの公害防止の問題についてヒヤリングをなさっておるわけでございますが、私はそのヒヤリングをなさったデータを見せていただいたわけでございますが、きょうはここで披露するだけの時間はございませんけれども、いまの問題は非常に重要視されているところでございますので、いまのようなそっけない答弁ではなくて、これを深刻に受けとめて、これを改めるという方向に行くべきであると思います。  先ほど申し上げましたように、一度というのは〇・〇二PPmから〇・〇四PPmであって、きめが粗い。下限を〇・〇二PPmにしていることも疑問である。年平均値を〇・〇一七PPmにさらに変更すべきではないかという具体的な事例が出ております。これは時間がないから申し上げませんけれども、いずれにいたしましても、この見直しを強く要望しておきます。  次に、調査発動要件の問題でありますが、原則として二度ということでございますね。〇・〇四PPm以上ということでございますが、これはやはり問題であろう。いまSO2の汚染度というものはだんだん低くなってきておりまして、要するに複合汚染の発生ということで、SO2という立場での調査発動要件というものは、これは現実問題として大気の汚染に悩んでいるいわゆる被害者住民にとっては非常に残念なこと、つまり、一体これで救済できるのかと疑いを持つわけでございますが、いかがでございましょう。
  289. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 この件につきましても十年過去にさかのぼりまして検討するということでございまして、公害健康被害補償法の対象となるような疾病の多発という観点から、専門家が議論して決めたものでございます。
  290. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 その専門家が議論した後でのヒヤリングが行われておりますから、あなたもその内容は当然御存じだと思います。私はその立場から言っているわけでございますので、私はこれも重要な問題だと思います。  先ほどの一度から四度の内容につきましても、たとえば三度の〇・〇五PPm、四度の〇・〇七PPm以上というものは余りにも高過ぎる、こう指摘しております。これは何といいますか、ヒヤリングをなさった専門家の終局の意見として出ております。こういうことでは無意味だ、改めるべきだと言っております。したがいまして、これは環境庁長官も胸にしっかり入れられて、今後の検討の内容として重要視していただきたいということです。いかがですか。
  291. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 公害健康被害補償法の適用の基準というものは、先生お話でございますが、私どもは原則的には厳しくきちっと科学的な論拠に基づいて設定をしていかなければいけません。いま先生から、学者もこれは厳し過ぎるんだ、もう少し下げるべきなんだという御意見がある、こういうお話がございましたが、この点はもしそういうことがあるとすれば、私ども意見を十分頭に置きまして検討をさせていただきますけれども、いまのところはとにかく決められた基準というものを客観的にそれぞれの地域に照らして判断をしていく以外にはない。普通の法律と違いまして、この補償はそれぞれ原因者に負担をさせていかなければいけないわけでございますから、その点は健康の保全上必要なぎりぎりの線だけは学問的に出していただいて客観的な事実に基づいてやる、こういう考えでございまして、行政的なあるいは政治的な恣意でやるわけにいきませんので、いま直ちに先生の御意見に同調するわけにいかぬのですが、ただ先生お話の中に、学者もやはり医学的にそういうことを言っているじゃないかというお話がございますので、その点は重要視いたしまして、検討させていただきます。
  292. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 政治的な問題だけでなくて学問的に出ている問題ですので、いまのようにしっかりと真剣に対処していただきたい。  時間が非常に少ないので次に移らせていただきますけれども、現在わが国で排煙脱硝装置を持っている火力発電企業は幾つあるかと言えば、わずかに十二です。これは環境庁からいただいた資料でございます。間違いございません。そこで、その十二カ所の出力を合わせますと、四百十九・二万キロワットであります。それに対する排脱容量というものは百六十七・三万キロワットであります。これはおたくの資料ですよ。それで、出力に対する排脱容量をパーセントで見ますと三九・九%となるわけです。  ところが、これは全国でわずか十二の出力をもってあらわした内容でありまして、この立場からいくと確かに多少の効果はあらわれてきたと思われますけれども、全国の出力六千六十万キロワットを総体にしてまいりますと、わずかに二・七%であります。三九・九%ではなくて、全国的な視野から見ますとわずかに二・七%の効果しか出ていない、こういうことです。つまり、国の行政指導が非常に弱いという一つの証拠であろうと私は思いますが、いかがですか。
  293. 春日斉

    ○春日政府委員 排煙脱硝装置につきましては、確かに排煙脱硫装置に比べますとまだまだ問題点が残っておりまして、その普及につきましてもいまだしの感が深いわけでございますが、過去一年私どもがいろいろなメーカーをヒヤリングいたしましても、急速に排煙脱硝装置の規模あるいは能力等々が増加してまいっておりますので、これを火力発電所のみならず必要なところに普及させるようにいたしたい、指導するつもりでございます。ただ、現状につきましてはまだまだ未開発であるということでございます。
  294. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 長官、いずれにしても、脱硝装置は火力発電関係を見ても五十年一月現在でわずかに十二なんです。もう話にならないです。おわかりですか。びっくりなさっているでしょう。ぼくもびっくりしました。本当に話にならぬほどの状態であります。国の姿勢を大きく変えていただきたいと強く要請しておきます。  次に移りますが、公害対策基本法の第二条に「公害とは」という規定がありますけれども、その中に「相当範囲」という言葉があるのですね。「相当範囲」という言葉がありますが、これがいまだに明らかにされておりません。したがいまして、これから、いろいろな問題が起こっておりますので、指定要件を定めて、判断の尺度をつくらねばならぬと私は思うのでございますが、長官のお考えはいかがですか。
  295. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 確かに公害対策基本法自身は、定義を相当包括的に書きます関係で、非常に抽象的な表現になっておるわけでございます。ただ、この「相当範囲にわたる」という表現でございますが、比較的広く解釈されておるわけでございますので、広くと申しますか緩く解釈されておるわけでございますので、そうこれがあるために公害の概念が非常に制約されているという議論は、余り具体的な議論としては承っておりませんが、なお今後、もしそういう必要があれば、具体的な事例について検討するということにやぶさかではございません。
  296. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いま局長が、具体的な事例があれば再検討の必要があろうと言っておりますが、いろいろと出ているようでございます。ぜひともこの「相当範囲」というものについての指定要件を定めて、そして判断の尺度をつくっていただきたい。長官にも、この問題について一言答えていただきたいと思います。
  297. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私も、いまの御質問で、初めてその問題があることを具体的に知ったわけでございますので、いま局長の答弁のように、具体的な事例について、何か支障が出てくるということがあれば、この点の明確化のために検討いたします。
  298. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 では、次に移ります。  地域指定基礎調査ですが、いま、四十歳、五十歳代の成人を主要対象として健康調査が行われているわけでございますが、大気汚染の影響をより鋭敏に受ける幼児、老人等をも調査対象に追加する必要があると思うのですが、その考えはどうでしょうか。
  299. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 四十歳、五十歳の年齢をチェックいたしますと、老人の影響の方もこれは関連をしております。ただ、子供の問題がございまして、この点につきましては、五十年度に子供の問題は取り扱う、こういうことになっております。
  300. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 子供までは対象に入れたということですね。
  301. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 子供の影響をどのようなぐあいにして地域指定の調査に取り入れられるかという検討を、五十年度行う、こういうことでございます。
  302. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 ぜひとも子供ないし老人も追加されることを強く要請しておきます。  時間の関係で、次に移ります。  通産省関係になりますけれども、もちろん環境庁とも関連がありますからよく聞いておっていただきたいのですが、窒素酸化物等の排煙脱硝装置の技術開発が急がれているわけでございますが、工業技術院を通して四十九年度、五十年度、おのおの六億円の補助金が交付されて、関係数社の技術開発に期待をかけられているということでございますが、私はこの姿を見まして、あなた任せ的ではないか、国自身がこの技術開発に本気でなぜ取り組まないのだろうか。  もちろん、こういう会社に補助金を渡してなさることも結構な話でございますが、今度自動車排ガスの規制の延期の問題でいろいろ騒がれた中に、企業の技術開発がおくれたばっかりにということがありますね。つまり、国が主体的に、主導的にやっていないところに問題があったわけですから、この排煙脱硝装置も、国が主導権を握ってやるべきではないかということを言いたいのですが、いかがですか。
  303. 奈須洋

    ○奈須説明員 通産省といたしましても、NOxの防除技術の開発が非常に急務であるということを考えまして、通産省所属の試験研究機関におきましても、みずからその脱硝技術の一番基本になります触媒の開発というものに現に取り組んでいるわけでございます。  その他、五十年度から、特にこれは非常に地域性のある問題でございますので……
  304. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 国の立場で、国はどうしているか、それを言ってもらえばいいのです。
  305. 奈須洋

    ○奈須説明員 国の立場でそういう防除技術についての基礎研究を実施しているということでございます。
  306. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 時間がないからあれですけれども、いずれにしても、国が直接指導して、そうしてまたそれを掌握してやっている機関というのは、きわめて微々たるものなんです。これじゃ問題です。  そこで、環境庁にお尋ねしますが、要するに、NOxの規制値を決めて実施時期を決めればそれで事足れりということでは私はだめだと思うのです。つまり、技術開発について、技術的に解決すべき問題も多く残されているということが、このヒヤリングの中に指摘されておりました。百歩譲りまして、技術開発が達成されたとしますね。規制の時期というものは五十五年だと思います。あと五年しかないわけです。そこで、規制の時期と開発速度のずれがあると思うのです。  先ほど何か二年云々と言っておりましたけれども、これは開発ができたというだけであって、実際に各NOx発生企業にその設備がつけられて、あるいはプラント設置のためのスペースの問題だとか正確な情報の伝達だとか、メーカーとユーザーの系列の違い、その他予算的な問題になりますと、果たして環境庁が言っている規制の時期にそれが間に合うかどうかという問題があるわけですよ。環境庁として、その点の見通しはいかがですか。
  307. 春日斉

    ○春日政府委員 確かにそういう問題があるわけでございますが、私どもは、窒素酸化物につきましても近く総量規制方式の導入を図りたい、そのために地域排出総量の許容限度の算定に必要なシミュレーション手法の開発のための調査研究を……
  308. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 だから見通しですよ、いつごろまでにそれをどうするかということです。
  309. 春日斉

    ○春日政府委員 ですから、四十九年度から実施しておりまして、これは引き続き本年度もやるわけでございます。ただ、直ちに窒素酸化物の総量規制には入れないわけでございますが、できる限り早く導入いたしたいと考えております。
  310. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 通産省に聞きますが、通産省は、いまの問題をどのように考えておられますか。
  311. 山中正美

    ○山中説明員 お答えいたします。  NO2の環境基準の達成年次が五十三年度になっております。その間に合わせるように極力業界を指導していきたい、このように考えております。
  312. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いま通産省の方は、五十三年度にはそれが開発できるということでしたが、いわゆるNOx発生企業が実際に使用するに至るまでには相当問題があろうと私は心配しているわけです。そうしてプラント設置のためのスペース、先ほど言ったような問題ですね、予算的な問題も含めて、環境庁が規制しようとしている時期と符合できるかどうか、その点は大丈夫ですか。
  313. 山中正美

    ○山中説明員 NOx対策というのは、先生指摘のように、影響するところが非常に大でございまして、もちろん技術の問題もございますし、さらに一応触媒の供給力とかあるいは、たとえばアンモニア性の還元性脱硝方法にすれば、アンモニアの供給力というものが非常に問題になってくるわけでございまして、私ども現在いわゆるNO2の脱硝技術を持っておりますエンジニアリング会社、それから今後つけなければいけないユーザーといいますか、生産会社等々につきまして、おのおのどういう脱硝装置をつけるか、あるいはどういう脱硝装置ができるかということを現在調査中でございまして、これがまとまり次第、トータルシステムとしての脱硝対策というのを考えていきたい、こういうふうに考えております。
  314. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それが実際に効果をあらわすような体制になるのにどのくらいの予算が必要だと思われていますか。
  315. 山中正美

    ○山中説明員 まだ完全には試算しておりませんけれども、一応脱硝施設だけに限りましても数兆ないし十数兆の金がかかる、こういうふうに考えております。
  316. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 環境庁長官にお尋ねします。  いま言うように、物すごい予算もかかります。そしてまだ技術開発も見通しだけであって、確定したものでもないわけです。果たして環境庁が規制なさる時期、それに間に合うという自信があるかどうか、そういう点を踏まえてお答え願いたいと思います。
  317. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるようになかなか容易でないと思いますが、容易でないからといって、私の方の基準年次を先に延ばすというようなことをしますとますますおくれますので、やはり目標年次を少しきつくしておきまして、そこに追い込んでいく努力をするのが私どもの任務だ、かように考えます。
  318. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 では長官は、地方自治体の方などと連絡をとって、その要請に応じて、どうするああするという計画ぐらいは立てていらっしゃいますか。
  319. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 御承知のとおり、各県で公害防止計画というものが必要な地域については立てさせております。その公害防止計画にその計画を持ってくるわけでございますので、県の防止計画を見れば、それが大体いつできるかということがはっきりするわけでございますので、それと、私どもがその防止計画をそれぞれやはり照査いたしまして承認をしておりますから、その点の関連はうまくいっていると思います。
  320. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 これで終わりますが、要するにこれは環境庁のみでもうまくいきません。通産省との連絡を密にされて、その時期とずれがないように最善の努力をなさいますことを強く要請しまして、私の質問を終わります。
  321. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、笹山茂太郎君。
  322. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 私は、先ほどの質問に続いて若干厚生省、農林省、また関連して環境庁、各方面に質問をしたいと思います。また、自治省の方についても若干お尋ね申し上げたいと思います。  まず第一に、食品衛生法と汚染米との関係でございます。これは食品衛生法の施行による食品の中で、安全基準というものがありますね。それによりまするというと、カドミ米については一PPm未満でなければならない、こう規定しておるのですね。そこで、こうした汚染地域の農民としましては、心配になっておることは、今度食品衛生法の基準の改定によって、新たに麦とか大豆とかあるいはまた果樹というものが加えられるのではないか。ということは、農林省の奨励によって、今度はその汚染土壌を中心にして何か大豆をつくれとか、あるいは自給飼料の拡大のためにライ麦を植えつけたらいいではないかとか、あるいはまた稲作転換によりまして果樹園をつくっておるところがあるのですよ。そうするというと、カドミ地帯が近傍にあるものですから、当然厳密な調査をすればみんなカドミ土壌地帯なんですよ。そうすると、これは食品衛生法の関係ですが、そこからとれたものは米に限らず、麦ももちろんだめだ、大豆もだめだ、リンゴもだめだ、こういうふうになってきたら一体われわれどう暮らしていったらいいのか、こういったような疑問もあるわけでございます。そういう点についてそういうことはないと、米に限るという姿勢であるかどうか、まずそこからお伺いします。
  323. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 このカドミウムの暫定基準でございますが、食品中のカドミウムの濃度を決めておりますのは、一応総量規制の観点からこれを定めておるわけでございまして、人間が一日に摂取していい量から、米以外の食品あるいは飲料水からわれわれの体の中に入るカドミウムの量を、これは実態調査の量でございますが、その量を除外いたしたあとを米に割り振っておる、かような計算をやっておるわけでございまして、したがいまして、この米以外のカドミウムの食品中の量につきましては、現在の段階において定める考えは持っておりませんが、ただ今後いろいろな学問の進歩によりまして、あるいは国際的な一つ基準ができればまたそれに合わせて検討いたしたいとは思っておりますけれども、さしあたっての段階におきましては、米以外の物についてはこのカドミウムの規制値を定める意思はございません。
  324. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 そうすると安心して農民は大豆をつくったり、また果樹園をつくったり、それは畑ではなくてたんぼを中心にしてですよ、それは安心していいですね。——ではそれはわかりました。  その次には一PPm未満というふうに基準に書いてあるのでございますが、厚生省の希望するところの一PPm未満であるかどうかということの判定の問題でございますが、これについて厚生省から見たところの判定の方法はどうしたらいいか。  というのは、いままで政府買い上げ米あるいは買い上げない米、この判定は、秋田県におきましては立ち毛調査を中心にして判定をしておったのですよ。これは農民にとっては、政府に買われないものと買われるものとの判定でございますから、これは非常に大事な判定でございます。そうしたところが、今年はロット方式という何か方法でもってやったところが、当初立ち毛調査の結果によりまして、これはもう売れない米だ、有毒の米だという判定をされた米が一万六千俵もあったのに、厚生省かどこか知らぬけれども、ロット方式という検定方式になったら八分の一の二千俵になった。一体買う買わないという大事な問題を決定する基準が、ちょっとのやり方によって八分の七も誤差が出るというふうなことは、これは農民の側から見たらおかしなことであるというふうに思います。なぜ秋田県庁は、そのようなロット方式でもってこの米が無害米になるのなら、去年あたりからロット方式をやらないのか、こういったような声もやはり農民から上がっておるのでございます。  だから私は、買う買わないということは、食糧庁の方でその基準というものを判定をして、全国平等に、公平にこれを示した方がいいのじゃないかと思いますが、このことについては、食品衛生法の関係から言ったら、やはり判定は農林省に任せておくわけにはいかぬ、食べるものだから厚生省の定める方法によって判定をしてもらった方がいい、こういったような御意見が何か強ければ、お考えを漏らしていただきたい、こう思います。
  325. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 農林省の方の米穀の買い上げの際の検査と、それから食品衛生法に基づきます検査との間の違いは、検査法そのものは同じでございますが、そのサンプルの取り方が違うわけでございまして、食品衛生法の方では、現に販売をされている米の状況で検査をせざるを得ないわけでございまして、その実態に基づきましてわれわれはその検査法を定めておるわけでございまして、米の買い上げの方の問題につきましては、食糧庁の方の検査方法で結構と思っております。
  326. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 どうもその点はわからないのですね。あなた方の方は流通の過程にあるものを調べて、これは食べちゃいかぬ、売っちゃいかぬ、こうきているでしょう。食糧庁の検査によって、配給米に回してもいいものは買うでしょうし、不適格品は買わないでしょう。その差がなければいいですよ。なければいいけれども、誤差が八倍もあるというふうなことでは、幾ら役所が違っておるといってもどうか。多少の誤差はあってもいいけれども、八倍の誤差があるということはおかしなことじゃないですか。だから、食糧庁の方とあなた方の食品衛生法の立場から見た場合におきまして、これは毒米だ、あるいは毒米でないものというふうな判定はひとつ統一してもらわないと、農民に与えるところの影響が大きい。合格する米と不合格になる米でありますから大変違いがあります。物差しの当てようによってどうにでもなるというふうな状況のまま汚染米対策を進められておっては、私はいたずらに混乱を来たすぞというふうに思います。  また、農産物検査法によって一等米になった。いままでならば一等米というのはなかなか珍しいですよ。ところが、一等米だけれども、これはどうも政府が買い上げるわけにはいかぬ、こういうふうなことになっておる現状でもあるわけなんです。だから、あなた方の方の流通関係の段階の判定と、政府が買って悪いという判定とがこんなに差がある状態を黙って見ているわけにはいかぬでしょう。何とかこれを処理してもらいたいと思うのですが、何か対案がありますか。
  327. 下浦静平

    ○下浦政府委員 お答え申し上げます。  ただいま、生産されました米を食糧庁で買います場合に、カドミウムにつきましての関係では二つの方式があるわけでございます。一つは、土壌汚染防止法の調査、これは細密調査の関係でございますけれども、あるいはそれに類似の県独自でやります調査、そういった関係でいわゆる線引きをしました地域によります産米の判定、こういう一つの方式と、それから先生がいまおっしゃいました倉庫米のロット調査という方式がございます。後者の方は食品衛生法の関係でとられております調査ということになっております。両方の方式がございまして、この調査の結果、一PPm以上ということになりました場合には食糧庁は買い上げをいたさない、こういうことになるわけでございまして、実は食糧庁独自で調査分析をいたしておるわけではございません。この二つの調査のどちらをとるかということになりますれば、私どもといたしましては、これはどちらでもよいのではないかというぐあいに考えております。  なお、農産物検査法の検査でございますけれども、これは先生よく御承知のとおりでございまして、検査の内容といたしましては、容積重でございますとか、水分あるいは異物、着色粒とか、そういったような検査を行って格づけをやっておるということでございまして、農産物検査法の検査の体系とは全く別個の関係にこのカドミウムの関係はなっております。
  328. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 どうもどっちでもいいということは混迷するのじゃないですか。ある県は立ち毛調査の結果に基づいて買い入れ米を判定する。また配給に回った段階において、それがまた別の調査によって合格したり不合格になったりする。その差がなければいいですよ。誤差が八倍もあるのですよ。その八倍も誤差があるようなものをどっちでもいいという政府の態度というものは、私はどうも無責任というふうに思うのです。どっちでもいいのですか。これは食べる米ですよ。どうか食品衛生法の規格基準、これをひとつ何とか混迷を来さないように関係者の間でもっと詰めて、農民に親切な扱いをしてもらいたいと思います。これは要望にとどめておきます。  次に、例の一PPmの問題でございますが、この国会におきましても、同僚の議員からそのたびごとにカナダのアンワー先生お話、あるいはまたスウェーデンの何とか教授の話、WHOの話、FAOの話、みんな名論卓説を聞かされるわけでございます。しかし、その速記録をだれが読んだってわからない。そういうふうな関係にあります。  この一PPmというものは、安全率の七十五倍を持っておるのでしょう。毎日五百グラムですか食べても安全だ、七十五倍なら安全だ。人生五十年とすると三百五十年毎日食べても安全だというのでしょう。そういった安全の高いものでなければ、日本国民の健康に影響、害があるのか。それによって、一PPmに定めることによって、わが郷里のようにもう何千町歩というたんぼがだめになる。そういう影響があるということを考えるならば、七十五倍の安全率というものは、今後において継続して据え置くかどうか。  この点についても、日本は米食の国民でありますから、よほど——これは一PPmと定めているのは日本だけでしょう。諸外国にはないでしょう。それはわかりますけれども、どうもこういう偉い外国の教授の話ばかり聞かされても、ぴんとこないのですよ。さっき言ったように、地域住民の常識というものがある。それで外国の話ばかり聞かされてもどうもわからないという。やっぱり暫定容量でございますから、当初これでやって、後でもって実施の結果を見て、もっと精密なもの、有効なものを出すということであると思います。  この点については、一PPmの根拠あるいは実態について、米食の普及率その他によってよく関係各省で検討してもらわないと、いまの土壌調査が進むに従って、私の郷里のようにどんどんどんどん不合格米が出るというふうな状態では、これはどうもいい政治というふうにはどう考えても言われないですな。どうかひとつ関係各省が一PPmの問題について、これは同僚の国会議員の方から何回も言われたようでございますが、もっと真剣に農民の側の立場になって御検討を願いたいと思います。  次には、五十年度予算におきまして大変カドミ被災の問題については御配慮をいただいておりまして、非常に関係農民が喜んでおるようなわけでございますが、ぜひひとつこの汚染土壌対策の予算については、もっと大飛躍をしていただきたいということでございます。  というのは、どういうことかといいますると、不合格米、汚染米とレッテルを押されたものを、農民の救済のために県が買い上げておるんですよ。県が買い上げて、県はのり屋に売って、白米にして一俵千二百円ぐらいだという。その差額は全部地方自治体であるところの県がかぶらなくちゃならぬ。貧弱な秋田県の県財政でございますから、汚染米がどんどんふえていく、買い上げていく、莫大な損をしてこれを処理しなくてはならぬ、こういうふうな循環を一体どこまで重ね得るかということになりますというと、私は、こういうふうな対策というものは、そんなに永続性があるというふうには思わないのですよ。  だから、そういう点にも触れられて、ひとつ財政的措置といいますか、国の方でめんどうを見てもらう問題については、ことしの予算は決まったものでございますから、しようがないと思いますが、今後の予算についてはひとつさらに充実するように、これは環境庁長官にお願い申し上げます。  次には、五十年度予算の問題と関連するわけでございますが、例の中央公害対策審議会、それからまた鉱業審議会、これから答申が出ておりますね。その答申によりまするというと、生業者の負担というか被害については、これはいまの状態にしておいてはだめだというふうになっております。  こうしたりっぱな答申が出ておるのですが、これに対するところの対策というのはまだ行われておりません。一体この生業者の財産的損害に対して、将来立法等の考えはあるかどうか、長官にお伺いします。
  329. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 カドミの汚染米についての財産補償の問題でございますが、これはことしも農林省から大蔵省に相当強く折衝があったわけでございます。ところが、まだその基準ができておりませんので、大蔵省も非常にお困りになりまして、私ども環境庁と相談をした結果、ひとつ一定の基準を環境庁でつくろうじゃないか、そしてその考え方の基準各省に示しまして、それぞれ米ならば農林省、あるいは他のいろいろな不特定多数、あるいは現存しない鉱害の問題であれば、それを所管する通産省なら通産省というものが、その基準に従って補償の措置について対策を樹立する、こういう申し合わせになったわけでございます。  その間どうするかということで、実は当面四十九年度については、そういう措置ができませんので、特交の措置によってある程度県の方の負担の軽減を図っていこうじゃないか、こういう申し合わせだったわけでございまして、私どもは、五十年度で調査費も相当額計上してございますし、人員も若干、わずか三名でございますが、配置することになっておりますので、この点は、一年間のうちに何とか考え方の基準をつくり上げるように鋭意努力したい、かように考えます。
  330. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 ただいまの長官お話によりまして、非常に関係農民は安心していると思います。  これは中央公害対策審議会が四十八年の四月五日に出している答申でございます。財産被害、特に農業、漁業、こうした被害については、いまのような状態のまま推移することはできませんとはっきり言っているのですよ。  また鉱業審議会、これは四十九年の答申、これについても土壌汚染によるところの事業が完了するまでの暫定期間におけるところの農業被害を救済する対策が最も必要である、喫緊にやれ、こういった答申をしているのですよ。いま休廃止鉱山相手に損害賠償にいく。そうすると、おれのところはもうしようがない、もう鉱山に縁がないから昔先祖が掘った山なんかどうなったって、その被害はおれは責任は負わない。そういうことは今度は事業者負担法ができたからはっきり最終の原因者が負担するということになっておりますよ。  ところが、私の方の源になっておるところの大日本鉱業というのは、もう落ちぶれてほとんど一文も払うところの資力がないのですよ。だから役人さんに聞きまして、そんなに不服があるなら大日本鉱業を相手に民事訴訟をしたらいいじゃないかと言われましても、相手がすかんぴんなものですから、もう払う資力がない。そうすると今度は鉱業法によって損害賠償を請求することもできないのですよ。だからやはりこういう問題については、ある意味政府の方でめんどうを見てもらわないと、この問題は解決しないと思います。  たまたま有名な大会社であれば、それは何億でも何ぼでも出すでございましょう。しかし、休廃止鉱山の多くは貧弱なものでございますから、そう負担能力がないのですよ。だから、どうしても生業の財産的な損害についてはひとつ特別な立法をしていただいて、あの公害によるところの病人に対するところの国家費用負担の法律があるでしょう、やはりああいった線に沿ってこの生業被害についてもひとつよく御配慮をいただきたい、これをお願いかたがた要望しておく次第でございます。  次には、農林省関係でありますが、これはいま汚染土壌を掘り起こして客土をやっておりますね。あの客土の事業というものは本気でやってくれるでしょうね。これは私たちの郷里におきましては、汚染地帯におきましては、何分にも汚染地帯が広がっておりますから、一反歩当たり百万円以上するところの客土事業、これをやるというけれども、一体政府がそんなことをやれるのでございましょうか。あるいはまたその排土をした場合において、そのカドミを含んだところの土壌をどこにも捨てる場所がないのですよ。また客土するような土壌も、どこかの山を一つ崩さなければないのです。  本当にそういうことの可能性があるならば、農民に対して客土でもってやるから心配するなというふうに言われますけれども、可能性の余りないものは、いまから余りうれしがらせて安心感を高めるわけにはいかぬ、こういうふうに思うのでございまして、そういう点について、客土でもって万事オーケー、あと救済してやるんだということが言えるか言えないか、その点も承りたいと思います。  なおまた、雄物川地帯というのは、カドミの汚染地域でありますが、これは国営事業、県営事業、圃場整備事業、こうした土地改良事業が行われておるところでございます。農民としましてはでき得る限りこのカドミの汚染米を出したくないために、水があればカドミ米を出さなくてもいい、こういった要望がきわめて熾烈でございます。  ところが、ここにこういう事業というものが展開されておりますが、私も責任者になっておりますが、着工以来三十年たってもまだ未完成でございます。こういう土地改良事業というものが世の中にあるでございましょうか。そして農民が一滴の水でもほしいという場合におきまして、この国営事業というものは一体来年、五十年度予算はどうなっておりますかというと、去年の半分でございましょう。だから土地改良事業の体制について農林省考えておることは、ここは公害カドミ地帯だからいまやってもだめだというふうなお考えになっておるのか、あるいはまた、あるところにおきましては、銅の化合物によるところの生育障害が起きているところについてやっているところがございますが、圃場整備をやる。そうすると、圃場整備をやろうとしても、おまえたちのところはもう銅及び銅の化合物によるところの汚染地帯じゃないか、延ばそう、こういうふうになってくるような話も聞くのでございますが、こうした事柄は、土地改良事業の進め方については、このカドミ汚染の地域と関連性があるかどうか、それを農民の方にはっきり示してもらわなければいけないと思います。どうなっておりますか。建設部長、はっきりお願いします。
  331. 福澤達一

    ○福澤説明員 お答え申し上げます。  雄物川筋のカドミウムの問題につきましては、前々から先生がおっしゃているとおりでございますけれども、国営事業とカドミウムの汚染との関係でございますが、私ども四十九年の二月でございますが、成瀬川の水に係る約十二点につきまして水質の調査をやっております。その段階ではカドミウムは水質的に非常に悪いという結果は出ておりません。むしろ数字にはあらわすことのできないような微量のものであるという結果が出ております。したがってこの水質については、私どもは現在の段階では心配ないというように考えておりますけれども、なお一回限りの調査によってそれを断定するということでは問題がありますので、五十年度におきましては、さらにその水質の調査につきましては、雄物川筋に初めて補助金をもって本格的に水質の調査をもっと徹底して行いたいというように考えておるわけでございます。  したがいまして、国営事業の推進ということが、カドミウムが土壌汚染という形であらわれておるから中途でしばらく中止をしなくちゃならない、そういうようなことは現在の段階では毛頭考えておりません。国営事業の推進につきましては、従来どおり考えていきたいと思っております。  ただ、ただいま先生の御発言の中に前年度の予算との間に、ことしの予算の方が少なくて開きがあったということにつきましては、それは毎年それぞれの国営地区の位置づけにつきまして、具体的にいろいろと積み上げて検討いたしましたことでございますので、必ずしも毎年予算が伸びるということではございませんが、しかし、国営事業の早期に完成を図るということにつきましては、私ども今後とも引き続き促進についての考え方を取り進めていきたいと思っておるわけでございます。  ただ、雄物川につきましては、何回か、長い年限でございますけれども、計画変更によりまして次々に事業が追加されてきておるという経緯がございますので、形の上では非常に長くかかっておるとは思いますけれども、事業そのものについては相当あの地域全体、一万四千ヘクタールというような広大な地域につきましての事業でございますので、私どもといたしましては従来も努力しておりますし、今後ともこの事業の推進に努力していきたいと思っておるわけでございます。  また、土壌汚染の問題につきましては、これはこの地域につきまして具体的に二・五ヘクタールに一点というような方眼を組みまして、土壌汚染の実態というものを調査を進めておりますので、その結果に基づきまして、これから地域の指定あるいは対策事業というものに対する考え方というものを取り上げていきたいというように考えておる段階でございまして、その結果を待ちまして土壌の汚染対策というものも進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  332. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 あと一、二点で終わります。  いま水源の水質の問題を検査するという話がありましたが、私の方の公害というものは、土の中に埋もれておるところのカドミのあれで、現在休廃止鉱山でございますから、鉱害の水が流れてきておる状態じゃないから、水質の元凶がどこだかという判定は、あまりウエートはない調査というふうに考えております。それよりもあの地帯におきましては、水さえあればというふうなことが農民の常識としてあるわけでございます。ところが古い設計でございますから、いまの田植え機械が発達しない前に立てたところのこの取水量でしょう。いまはああいうことではやっぱり不足でございますよ。そこに今度カドミの公害でございますから、農民が水さえたっぷりもらえばカドミ米はできない。これはカドミと水素と化合すれば吸収されにくいような状態になっていると言われておりますから、そうした還元栽培ということも、これまたあわせて研究してもらったらいいじゃないかというふうに思います。  客土、これなんか本当にできるかどうか。大体どろの捨て場がないくらいでございます。面積は大きいんです。三千ないし四千ヘクタールもあるというのですから、ここに大がかりな土木工事を起こして、一反歩全額国庫負担でもって、一反歩百五十万円出してやるような工事をいまやろうとするのであるというふうなことを言われておりますが、農民はだれもそういうことは信じない。客土をやりさえすればこの被害がおさまるのだというふうに言われましても、とてもそんなものをだれも信ずる者はおらない。だからそういうふうな農民が信じないことを、余り効能があるような顔でもって現在農民の方へ推し進めるわけにはいかぬというふうに思います。  どうか、こうした水さえあればといったような農民の知恵というものがありますから、あなた方の灌排事業が一刻も早くできまして、そして農民の田を潤すということになればカドミ米はできませんよ。農民はわかっていますよ。そうした営農の実態と農業土木の実態とはどうも遊離しがちだ、私はその点を心配するものでございます。どうかそのことについて密接な関係をもって、営農の実際に合うような農業土木、土地改良、これをひとつやってもらわないと農民は助かりませんということを私は申し上げたいのでございます。  以上のような点について、時間がありませんので私はここで終わるものでございます。  長官初め皆さんにおいては、こんな遅くまで御出席を煩わしまして、まことに感謝にたえません。厚く御礼申します。
  333. 福澤達一

    ○福澤説明員 ただいまの先生の御質問に対しまして、私どもはその地域に対して土壌汚染というものと、そしてそれが植物にどういう影響を与えるかということにつきましては、現在県を含めまして検討を進めておる段階でございます。したがいまして、水の問題、土壌の問題を含めまして、これから最も適切な方法はどういう方法であるかということを検討いたしまして、その結果に基づいて適切な処置をとらしていただきたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
  334. 笹山茂太郎

    ○笹山分科員 ありがとうございました。
  335. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次回は、明二十七日午前十時、第一分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時散会