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1975-02-25 第75回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十五日(火曜日)     午前十時開議  出席分科員    主査 笹山茂太郎君       木野 晴夫君    櫻内 義雄君       井上  泉君    石野 久男君       金丸 徳重君    吉田 法晴君       青柳 盛雄君    諫山  博君       瀬崎 博義君    近江巳記夫君       鬼木 勝利君    兼務 上原 康助君 兼務 太田 一夫君    兼務 米田 東吾君 兼務 和田 貞夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 稻葉  修君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君  出席政府委員         警察庁刑事局長 田村 宣明君         科学技術庁長官         官房長     片山 石郎君         科学技術庁研究         調整局長    伊原 義徳君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         国土庁長官官房         審議官     横手  正君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務大臣官房会         計課長     近松 昌三君         法務大臣官房司         法法制調査部長 勝見 嘉美君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 長島  敦君         法務省保護局長 古川健次郎君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君  分科員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  高橋 俊見君         経済企画庁総合         計画局電源開発         官       伊藤 謙一君         環境庁水質保全         局調査官    小川 洋二君         運輸省自動車局         業務部長    真島  健君         自治省財政局指         導課長     関根 則之君         最高裁判所事務         総長      寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君     ————————————— 分科員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   田中 武夫君     金丸 徳重君   青柳 盛雄君     瀬崎 博義君   近江巳記夫君     松尾 信人君 同日  辞任         補欠選任   瀬崎 博義君     紺野与次郎君   松尾 信人君     新井 彬之君 同日  辞任         補欠選任   紺野与次郎君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   金丸 徳重君     中村 重光君   津川 武一君     小林 政子君 同日  辞任         補欠選任   中村 重光君     井上  泉君   新井 彬之君     鬼木 勝利君 同日  辞任         補欠選任   鬼木 勝利君     有島 重武君 同日  辞任         補欠選任   井上  泉君     吉田 法晴君   小林 政子君     諫山  博君   有島 重武君     小川新一郎君 同日  辞任         補欠選任   吉田 法晴君     田中 武夫君   諫山  博君     青柳 盛雄君   小川新一郎君     近江巳記夫君 同日  第二分科員上原康助君、米田東吾君、第三分科  員太田一夫君及び和田貞夫君が本分科兼務とな  った。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計予算総理府所管科学  技術庁関係)並びに裁判所及び法務省所管      ————◇—————
  2. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和五十年度一般会計予算総理府所管を議題といたします。  科学技術庁に関する事項について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金丸徳重君。
  3. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 私は、災害対策関係仕事を言いつかっております者の一人といたしまして、主としては地震予知に関する問題につきまして、長官初め皆さん方の御意見を拝聴し、また、いろいろとお願いをいたしたいというようなことから、きょうの時間をちょうだいいたしました。  まず初めに、地震予知につきましては、かねがね災害対策の問題といたしましても、たびたびいろいろな角度から検討を進めてまいったのでありますが、問題が重要でありまするし、相当時間がかかるというようなことからいたしまして、なかなか思うような対策も伺うこともできません。私どもといたしましてもその探求に苦しんでおったところでありました。しかるところ、たびたび、これはもう今回の予算委員会その他におきましても取り上げられたことであるのでありますが、昨年暮れ、地震予知に関連することといたしまして、例の多摩川下流における地盤隆起などを土台といたしまして、地震予知連絡会の方から重要な警告が公表されました。この警告といいますか見解の発表は、数日して地震予知研究推進連絡会議の方へも届けられておるようであります。したがって、これは長官の方におきましても相当深刻に受け取られて、対策が練られ、進められておると思うのであります。これについては、総括的に長官どのようにお受け取りになっておられ、また、これにどう対処されようとなさっておられるのか、それから承りたいと思う。
  4. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 御指摘のように、多摩川下流地域地盤隆起現象につきましては、その対策並びに人心の今後の帰趨等を考えますと、非常に重大な問題でございますので、政府といたしましても慎重な構えでこれに臨んでおりましたところ、お話しのように、地震予知連絡会会長萩原先生から、私の方で主宰しております地震予知研究推進連絡会議議長である武安事務次官あてに、十二月二十七日に書簡が参りました。  ただいまお話しの件はこの書簡についてかと存じますが、この書簡にございますように、いままでの観測では、もちろん結論ではございませんけれども、しかし、今後大いに研究をする必要がありますが、現在の段階でそれほど事前に心配するということは、少し杞憂じゃなかろうかというふうな結論のように見受けられますので、今後、この問題のみならず地震予知に対する研究を、これはまだ研究段階でございますので、むしろ実用化方向に向かって今後大いに進めてまいりたいということで、実はことしの予算のときにも特に中曽根幹事長からもお話ございまして、重点事項にして予算をつけようじゃないかということで、実はもうほとんど要求どおり予算がついたようなかっこうで、せっかくいま努力中でございます。
  5. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 確かにこの警告文は、非常に慎重に世間への反響などをも特に心を配って書いてあるようであります。私も丁寧に読みました。読めば読むだけ、学者グループ配慮のほどに頭が下がるようであります。そして大臣もお触れになりましたように、あるいはこれは杞憂に結果としてなるかもしれない、そうも願いたいのであります。ただ、そのことはそのことといたしまして、この学者グループあるいは関係グループによって組織されております予知連絡会のねらうところは、もう一点あるのではないかと思います。  この警告文によりまして世間にある程度やはり心構えをしてもらう、万一という言葉は使ってあるのでありますが、その万一、したがって九千九百九十九まではいいのでありましょうが、その万一を考慮して、できるだけの心構えなり対策を、世間全体、国民関係住民全体とも進めてもらいたい、そういう非常に切なる願いが一つ込めてあると思います。それを受けまして現地住民は、御承知のように、各人それぞれがいろいろな知恵をしぼって、ある者は食糧を備蓄し、ある者は住宅の強化を図るとか、また関係庁におきましては逃げ道をつくっておくとか、あるいは橋の強化を図るとかということをやっておるようであります。それが一つのねらいだと思います。それは備えあれば憂えなしであり、十分やった方がよろしい。  ただ、それと同時に、その末尾の方に特に書いてあることに私は関心を持たざるを得ない。それは、「今後、各種研究観測が進み必要な資料が入手できますと、社会に対しより正確な判断を伝えることができるものと思います。」こういうことでございます。そのより正確な資料を欲しかった、そして万が一ではなくて、万が五千も六千もの確信といいますか、そういうものの積み上げの中で、今度こそは信頼されるような形で、要らない警告はしないが要る警告だけは、もっと強い言葉をもってやりたいのだという念願がこれは伏せてあるような、非常に含みのある言葉のように思われるのであります。その含みのある警告を受けてこれからどうなさるのか、そのような要請に対してどうなさるのか、これはむしろ事務当局として進めておられると思いますから、事務当局の方からまずお伺いいたした方がよろしいと思います。
  6. 伊原義徳

    伊原政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、この地震予知の問題特に川崎地域の今回の問題につきましては、行政所管庁ともこれは非常に重要な問題であるということを認識いたしまして、地震予知連絡会会長文書をいただきまして、実はこれは十二月二十六日に見解の御公表がございましたが、翌二十七日直ちに地震予知研究推進連絡会議を開催いたしまして、特に川崎地区についてどう対応すべきであるかという連絡協議を至急いたしたわけでございます。  その結果、まず川崎地区におきましての各種観測を集約的に強化して行うことが必要であろう。先生も御指摘のように、地震予知につきましては非常に長期研究目標でございまして、将来の問題として相当長年の時間をかけ、人材を集中して初めて的確な地震予知ができるものである。現在は、萩原先生文書にもございますように、まだ的確に予知ができるということではない。しかし、一部やや気になる状況が出ておるということで、さらにいろいろな面からの観測強化する必要がある、こういうのが専門家の御意見である。この専門家の御意見を踏まえまして、まず関係省庁で現在具体的にどういうことをやっているかということを御説明申し上げます。  関係いたしますのが海上保安庁国土地理院国立防災科学技術センター気象庁、それから地質調査所、こういうところでございます。そのほかに各大学関係いたしております。それで、昭和四十九年度におきましては、とりあえず各研究機関の持っております人員予算をやりくりいたしまして、川崎地区観測強化を行う。海上保安庁では水準測量東京湾沿岸約十キロメートルにかけて行う。それから国土地理院と協力いたしまして検潮作業を行う。それから、国土地理院精密変歪測量ということで三角点十二点につきましての測量を始める。これは実は経費の関係からいたしまして、科学技術庁にございます特別研究促進調整費を支出いたしまして、この作業をやる予定にいたしております。それからさらに微小地震観測につきましては、防災科学技術センターが担当をいたしまして、地上あるいは既設の深井戸を利用いたしまして実施する予定にいたしております。気象庁といたしましても、既設観測網資料をもとに引き続き監視を続ける。それから地質調査所でございますが、まず既存の資料を収集いたしまして、川崎地区についての所見を明らかにする作業をすでに始めております。そのほか大学におきまして、特に京都大学東京大学等におきまして、たとえば川崎地区重力測量とかあるいは井戸水の中のラドンの量とか、そういったものも観測を進めております。  なお、昭和五十年度におきましては、先ほど大臣からも御答弁がございましたように、予算もかなり見ていただいておりますので、その予算の範囲内でさらに鋭意観測強化いたしたい、こう考えておる次第でございます。
  7. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 川崎地区における心配の事態につきましては、緊急にそう動き出されて、集中観測をさらに強化するということでありますが、私がこの際お伺いいたしたいのは、それと同時に、全国的に地震心配のあるところは、ここ川崎地区ばかりではありませんで、あるいは南海地方におきましても奥羽地方におきましても、その他の地帯においても、言うところの地震の巣というものは、何か聞くところでは日本国じゅう八カ所かなんかある。特に重点地区が二カ所か三カ所あるというふうに聞いておるのでありますが、それらについては今後どうなさるつもりでございますか。私は、今回の学者グループ警告にかんがみて、一層全国的にも調査網なり観測網強化充実を図らなければならないのではないか、したがって、五十年度の予算においてそれがどう盛り込まれておるだろうかということを、長官の御決意とともに承りたかったのであります。  先ほど長官の方では、もう要求どおり予算がとれておるということであります。私はそれは大変ありがたいことだと思います。しかし、一番心配されますことは、大事な大事な地震予知という問題についての、いままでの国の体制というものが余りにもおくれておりはしないかということであります。元が少ないのであります。そして要求体制も余りにも微弱である。だから、その体制の中から要求されたものが十分にとれているからといって、現在の川崎地区における警告を発せられるような状況において、おびえかかっておる国民安心感を十分に満足させるわけにはいかないのではなかろうか、こう思うのであります。もちろん問題が問題ですから、おっ取り刀で息せき切って飛び出すということだけであってはいけないと思います。思いますけれども、今度はこの機会においては、いままでとは思いを新たにした体制なりあるいは規模なりにおける予算の措置あるいは人員充実というものがなければならないと思うのであります。いかがでありましょうか。
  8. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 全く御説のとおりかと存じます。いままでのいわば各省ばらばらで思い思いにやりました程度では、この問題は不十分でございまして、といって、ことしの予算はもう要求済み予算でございますので、お説のとおりまだ不十分かと存じますが、しかし今後力を入れまして、もっともっと充実して、予知研究実用化するための体制整備のためにもっとがんばらなければいかぬと思います。
  9. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 そこで問題は、私は、もうことしはというか、五十年度予算におきましてはまさにそういう段階だと思います。したがって、次は再来年度予算、五十一年度予算に対する、あるいは今後における息の長い計画の中で、国民を安心させるような方向に持っていっていただかなければならないということになるのであります。  そこで、局長、あなたの方で研究調整をなさっておられるのでありますが、きのう私はこの問題につきまして国土地理院の方の意見も求めたのであります。建設大臣にも要望申し上げたところでありますけれども、しかし、何といいましても、国土地理院にいたしましても、あるいは先ほどいろいろお聞かせをいただいた関係省庁にいたしましても、実は、たとえば測量の方に専念されたり、気象庁の方で言いますと地震観測の方にむしろ奔命これ疲れるというような状況ではなかろうか。それからまた、非常に真理探究をなさってくださっておるところの大学関係にいたしましても、真理探究と、一つには学生の指導、教育ということにも力が入るわけであります。したがって、どうしても隔靴掻痒の感を痛感せざるを得ないような状況なんです。それらを取りまとめるという意味におきまして、それらをさらに強化するという意味において、科学技術庁における陣容なり体制なりというものの強化が、まず先決として必要じゃないかというようなことを、きのう私は国土地理院お尋ねをしながら感じたところであります。この点についてはどういうお考えでありましょうか。局長の方から事情なりをお聞かせをいただき、長官の御意見も承りたいのであります。
  10. 伊原義徳

    伊原政府委員 お答え申し上げます。  地震予知研究推進体制問題ということの御質問、それと予算ということかと思われますが、先生御高承のとおり、この地震予知につきましては、専門家がまずどう判断し、どう考えるか、それを行政機関としてどう受けとめるか、この二つの問題があると思うわけでございます。この専門家の御意見がどういうふうにいただけるかということにつきましては、国土地理院長諮問機関であります地震予知連絡会、ここが十分専門家としての御意見を御検討の上お出しいただく機関である。その専門家の御意見を受けまして、行政省庁として十分横の連絡をとりまして、総合的、計画的、有機的に研究並びに観測を進めるというのが、私どもがお世話をいたしております地震予知研究推進連絡会議、こういうことになるわけでございます。  非常に長期的に見まして、この地震予知研究をどのように推進すべきであるか、この問題につきましては、地震予知連絡会におきましてもいろいろの御意見がございますし、さらに文部省の測地学審議会というのがございまして、この測地学審議会でも何回かにわたりまして、地震予知研究推進ということの建議もいただいておるわけでございます。そういうふうな御専門の方面の御意見を十分体しまして、行政省庁といたしましても、機構の整備予算獲得等にさらに一段の努力を重ねてまいりたい、こう考えております。
  11. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 総括的な御意見としてはそういうことであろうかと思うのですが、それで間に合うかどうかということなんです。いままでのテンポなりいままでの体制であればそういうことであろうかと思うのですけれども予知連絡会の方で初めてなんですね、見解を公表して世間警告したということは。これは私は大事なことだと思うのです。軽々に受けとめてはならない問題だと思うのです。よくよくのことだと思うのですよ。それに対して、いままでこうであったからというだけでは相済まないように思うのですが、これはもう長官も御同感くださっておると思います。時間の関係もありますから、くどくどしく申し上げません。  ただ一つ、いま局長の方からのお答えの中に触れられましたが、測地学審議会が二、三年前内閣総理大臣に向かって建議をされておる。これは公式の建議として重要なる影響を関係省庁に持っておられると思います。長官、ちょっとお手元にないかと思いますので、私ここでこれを読んでみます。「本審議会は、昭和三十九年以来追加改訂を含めて三回にわたり、地震予知推進に関する計画実施について、内閣総理大臣および関係省庁大臣建議を行なってきました。幸いにして同計画関係省庁の協力によって順調に進み、計画の各項目について多くの成果をあげることができ、地震予知実用化についてかなり明確な見通しを立てることができるようになりました。」こう言ってくれておるのであります。  地震予知ということは大変むずかしい、世界の学者が粋を集めて研究を進めても、なかなかつかまえにくいようでありますけれども、それにもかかわらず、こういう見通しを立てて政策の推進を求めてこられておるのであります。これを受けまして、各省庁はどの程度強化され、思い切った体制の立て直しというか、出発をされておられるのか。私は試みに十年この方のこうした各省庁における動向と趨勢というものを、予算数字によって比べてみたのであります。確かにふえております。ふえてはおりますけれども物価上昇その他のことを差し引きますと、画期的などという感じを、どうひいき目に見ても持てないような動向なのであります。どうもやっぱりおざなりな、申しわけ的体制であったのではないかと疑わざるを得ないような数字が見えるのであります。こういうことについては、どういう御見解の中で今後なさろうとなさっておりましょうか、承りたいのであります。
  12. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいまの予算の問題についてちょっと御説明申し上げますと、これはいろいろ考え方によってまだまだという御意見もあるかと思われますが、たとえば、昭和四十八年度の地震予知関係予算は七億数千万円でございまして、それが四十九年度に十五億円台になりまして、さらに五十年度予算で二十億円を超える、こういう状況になっております。そういうことから申しますと、ある意味では、この財政硬直化の非常に厳しい条件のもとで、これだけ予算をふやしていただいたことは、かなり画期的に重点を置いて、財政当局としての御配慮をいただいたものと私どもは考えておる次第でございます。  なお、長期的に見まして、地震予知というものをどういうふうに考えるかということにつきましては、これはいろいろ専門家の間でも御意見があるようでございます。たとえば、先生御高承のとおりかと思いますが、第七十一国会の衆議院の科学技術振興対策特別委員会におきまして、萩原地震予知連絡会会長の御意見といたしましては、これはその当時の金額でございますが、年間三十億円程度をつぎ込めば、五年ぐらいたてば長期予報について大きなめどが立つであろう、それも地震の大きさがマグニチュード七以上の地震についてでございますが、それに対して長期的には大きなめどが立つであろうというふうな御意見も表明されておるわけでございます。こういうことから申しまして、かなり長期的に研究を進めなければ、なかなか早急に的確な予報ができるという状態にはならないということのように私どもも承知いたしておる次第でございます。
  13. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 もう時間がありませんから、詳しいお尋ねは私は次の機会に譲らざるを得ないのであります。ただ、いまの数字からいたしましても、数年前において年間三十億円、そのころは七億程度、したがって、そのころからすでに四倍の予算があって五年かかるならばということのようであります。その体制が速やかにとれておったらばといううらみを、私はいま改めて持たざるを得ないものですから、そういう体制を速やかにとってもらいたいのだ、こういうことでございます。  もう時間も参りますけれども長官、私は地震予知仕事がもう少し速やかに、またもう少し正確に進められているならば、国の防災対策基本計画というものは、もっと国民に安心されるような形で、もっとあるいは経済的にも進められるのではないかと思うのです。ただしそれが、予知対策実施がなかなかむずかしいがゆえに、そしていままでおくれにおくれておるがゆえに、今日なお異常な不安の中で、今回の警告にいたしましても、おずおず物を言わなければならないような状況にあるのであり、私はそのうらみをこれから後までも続けてはならないと思いまするがゆえに、この機会において学者などの意見を十分聞きながら、なお学者のこの建議にもあるのでありますけれども、たとえば中央防災会議の問題にいたしましても、あるいは地震予知連絡会の改組の問題にいたしましても、その陣容充実の問題にいたしましても、やるべきことがたくさんあろうと思うのです。これらについて、この機会に思い切った対策を御推進願っておきたいという意味におきまして、最後に長官の御意見をちょうだいいたしたいと思います。
  14. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 まことにありがたい御激励でございまして、先ほど申しましたように、不肖私、長官を拝命いたしましてから、主として原子力のほうに力を入れておりましたが、正直お話をしますと、予算の始まる前に、伊勢神宮に、一月四日に総理のお供をしてお参りに参ったときに、中曽根幹事長も一緒でございまして、佐々木君、ことしは核融合と、それからがん対策、それから地震予知、この三つを最大眼目でひとつ取り上げようじゃないか。総理もおりまして、非常に結構だからと言うので、ことしの予算のときには、私どもこれを最重点にいたしまして力をいたしたつもりでございますが、いかんせん、お話しのように根がしょぼしょぼとしたものですから、ことしは大いにひとつ力を入れまして、来年からの、五十一年度予算にはお気に召すような体制まで持っていきたいと実は念願しておりますので、お言葉どおりひとつ努力申し上げたいと存じます。
  15. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 時間が来ましたので、残念ながら次の機会に譲らしていただきます。  どうもありがとうございました。
  16. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 次に、米田東吾君。
  17. 米田東吾

    米田分科員 私は、きょうは原子力、特に原子力発電の問題にしぼりまして長官に御質問をしたいと思いますし、関係各省にも御質問を申し上げたいと思うわけであります。  まず私は、佐々木長官に御答弁をいただきたいのでございますけれども、今度の、七十五通常国会の予算委員会をずっと続けてまいりましたが、全般的に見まして、原子力の関係につきましては、相当突っ込んだ議論があったと思うのです。これは原子力行政、エネルギー政策含めてのことでございます。しかも、三木総理あるいは福田副総理、それからあなた、佐々木長官等々の、最高の責任者であられる皆さんの御答弁から伺いますところでは、少なくとも「むつ」以来のやはり原子力行政、それから石油ショック以降のエネルギー政策、こういうようなものを総体的に受けとめられまして、一つの原子力行政の転換期を迎えておる、エネルギー政策についてもしかりである、こういう判断をしておるわけでありますけれども、私の理解でよろしいかどうか。このことを、実はまず第一に長官から聞きたいわけであります。  特に、くどいことを申しませんが、三木総理や福田副総理からは、これはまあ総論とは言いましょうけれども、たとえば原子力発電等については、六十年六千万キロワットという当初の目標を相当変えていかなければならぬのじゃないか、エネルギーの需要の面から言っても、あるいは公害、環境破壊、国民の関心、いろいろな面から考えても、これは見直す必要がある、それから原子力行政等についても、もっとシビアに、そして特に安全だというようなことは、そういう絶対的な言葉は使わない、国民の側に立って原子力行政についても見直す、こういうようなことも言われておるわけでありますから、それらから感じる私の判断としては、いままで企業寄りの原子力行政、経済の高度成長政策に沿った原子力行政やエネルギー政策というものが大きく転換をする時期を迎えておる、こういうふうに私は受け取っておるわけでありますけれども長官見解はどうでございましょう。
  18. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 御説のとおりでございます。  付加して申し上げますと、原子力発電の必要性に関しましては、日本ほど各国の中でも、その必要性を感じるところはなかろうと存じます。この理由は、くどく申し上げるまでもなしに、資源面から、あるいは採算面から、あるいは外貨の節約の面から、あるいは運輸、貯蔵等の至便という面からいたしましても、この際、原子力発電を大きくやらなければいかぬという必要性は、日本ほど激しいところはないと思います。  また、各国の動向を見ましても、フランスのように、今後一切油の発電はやめて原子力発電に切りかえる、イタリア、ドイツも大体それに近い状況であり、米国は、今後十カ年間に二億数千万キロ、日本の全発電の三倍に相当するくらいの軽水炉の原子力発電をやろうという計画で進めておるようでございますし、また最近の情報によりますと、石油の産出国でありますイランですら、石油は燃料に使うのをやめようじゃないか、もっぱらこれは原料として化学工業に使うべきである、したがって、燃料として発電に使うのは全部原子力に切りかえようというので、フランス、米国等々と話し合って原子力発電に切りかえていくように承知しております。  世界の情勢もそういうふうな情勢であり、日本は特に油オンリーに依存しておる、この行き方というものは、将来のエネルギー政策としては当を得たものじゃなかろうということで、原子力発電に期待するところは大変大きいのでございますけれども、御説のように、現実面として、その必要性にこたえ得るような進め方ができるかと申しますと、現実の問題として、「むつ」の問題初め、その他立地問題等を考えますと、そういうふうに現実面では進めない。希望があっても進めない。その主たる原因、あるいは決定的な原因と申しますのは、安全の問題であることはお話しのとおりでございます。  したがって、この際、エネルギーとしての原子力を今後ともさらに進めようとするならば、まずもって、その前提である安全問題を従来以上に国として、あるいは企業として、あるいは研究所として、総力を結集してこれを解決すべきではないか。これはもう国民全部の要望でもあり、政党政派を問わない希望であることは事実でございますので、私どももひとつこの際、安全問題に思い切って取り組もうじゃないか、お話しのように、今年度を期しまして、一つの新しい転機という考え方で、まず安全問題にひとつ取り組もうじゃないか、こういうふうに実は考えておる次第でございます。
  19. 米田東吾

    米田分科員 わかりました。  そこで、長官にお聞きしたいのでありますけれども一つは、六十年六千万キロという従来とってまいりました目標、これは福田副総理お話によりますと、当然見直す、しかも相当控え目になるだろう、こういうことも予算委員会で言われておるわけであります。これはまだ検討段階だろうと思いますけれども、この目標というものは、非常に私は重要だと思うのであります。  そこで、その後の動き等によりますと、電力業界では、これらの問題について自主的に検討されまして、せいぜい二千五百万キロワット程度が精いっぱいだ、自主的にそういう目標を検討されておるように聞いておるわけであります。政府としては、大体その見当でこれから皆さんが、通産その他科学技術庁、いろいろ関係省庁あると思いますけれども、そういうめどで、これからこの六十年の目標が設定されるというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  20. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 御承知のように、国の経済あるいはエネルギー問題の長期観測は、私もかつて経済企画庁でこういう問題を扱っておりましたので、その道行きはよく知っておるつもりでございますが、副総理のおっしゃるように、やはり安定成長下の日本経済の今後の伸びというものは、一体どういう姿になっていくだろうかという新しい長期計画に取り組む予定のようでございますから、それができますと、その経済の伸びに従ってどれほどのエネルギーが必要であるか、そのエネルギーの中で発電量はどのくらい必要であるかということが、おのずから出てまいります。もちろんその際には、エネルギーの節約問題等もございますし、あるいは貯蔵問題等もございます。  しかし、それこれを勘案して一体どれぐらいのエネルギーが要るか、そのエネルギーの中で発電量はどのくらい必要か、発電量は何々をもって賄うべきかというところに問題が入っていくわけですが、その発電量を賄うのに、いまのような油だけの火力でいって一体いいのか、限界を設けないで、必要な分だけたいていくということでいいのか、石炭あるいは地熱等新しい問題に切りかえる必要はないか、それから原子力発電にはどれくらい負荷をかけたらよろしいか、あるいはサンシャイン計画のように長い将来を見越した核融合とか、太陽熱とか、あるいは水素発電とかいろいろありますけれども、しかし、そういう長い間、ここしばらく三十年ぐらいの問というものは、一体何にウエートを置いた方が日本の、先ほど申しましたように、あらゆるエネルギーのあり得べき姿としてよろしいか、そういう検討をもう一遍、やはりこの際、安定経済下あるいは新しい油の問題の変化に伴って、日本のエネルギー体制というものがどうあるべきかということを、再検討する時代に私は入っているのじゃないかと思います。  政府といたしましても、当然経済企画庁が中心になりまして、この作業に入るはずでございまして、それ以前に、たとえば通産省で産業構造審議会でございますか、等で一案を出すとか、あるいは産業界は産業界で案を出すとか、また原子力委員会の稲葉委員は稲葉委員で稲葉私案を出すとかいろいろございます。したがって、大体現状を踏まえていきますと、この程度じゃなかろうかという案もあります。しかし、またニードからいきますと、国の絶対の必要性からいきますと、いやいやそんなんじゃだめだぞという議論もありますし、それこれあわせまして、先ほど来申しましたような本格的な一つ結論は、私はやはり国の安定経済下において長期計画がどうなるか、その間において、どういう位置を占めるかという国家的な作業が進むと、はっきり問題が出てくるのじゃなかろうか。  ただ、一つ言えますことは、やはり六千万キロというものは、現状の体制からいきますと、相当無理があるんじゃないかと私自体も考えます。
  21. 米田東吾

    米田分科員 いろいろ御丁寧な答弁をいただいておりますけれども、何しろ時間の制限があるものでございますから、なるべくひとつ要点を言っていただきたいと思います。  業界といいましょうか、電力業界が政府対策、態度あるいは福田副総理の発言等を受けられまして、いろいろみずから検討された結果が、当面二千五百万キロワット程度がせいぜいじゃないかという自主的な判断をされたやに聞いておるわけであります。これらは相当根拠のあるものに今後なっていくのじゃないか、こう思っておりますので、そこで、大臣の御見解を聞いたわけであります。ひとつ早急に政府としての目標の設定をされますように、これは申し上げておきたいと思います。  それから三木総理が、これはわが党の石野代議士の質問に答えられた言葉の引用でありますが、政府は、政府が近く発足させる原子力問題懇談会で安全の見地から原子力行政を見直し、地域住民を含めた防災体制整備、確立させることを約束されたわけであります。これは二十一日の予算委員会の集中審議の段階であります。ここで言う原子力問題懇談会、これは総理諮問機関のように聞いておりますけれども、これが機能しませんと、「むつ」のいろいろな今後の問題とか、原子力行政のあり方とか、あるい安全、立地についての審査の方法とか、いろいろそういうようなものがなかなか滑り出さないように実は思うわけであります。  そこで、この原子力問題懇談会、きのうあたりの新聞によりますと、まだメンバーすら全部決まっておらないように聞いておりますが、いつごろこれが機能を開始するのか、そうしてどういう順序で作業をされようとするのか、ひとつ長官の方から、構想がありましたらお願いします。
  22. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 実は、先ほどの九時からの、きょうの閣議で官房長官からお話がございまして、閣議口頭了解ということで、けさ原子力行政懇談会が決まりました。メンバーも十四人ございまして、特に労働界から二人、それから地方行政の方たちも二人、あるいは学識経験者はもちろんでございますが、非常に多彩な色彩の配慮をした懇談会でございますというお話でございました。きょうメンバーも決まりましたので、遅くとも三月上旬までには第一回の会合を開きたい、そして少なくとも一年かからずして結論を見出したいというお話でございます。  ただ、これはお話しのように「むつ」問題が解決のときに二つ提案がございまして、一つは、「むつ」の原因究明をする技術的な検討機関と、それからもう一つは、この際原子力行政を根本的にひとつ考え直そうじゃないかという二つの提案がありまして、原因究明の技術的な方は去年の暮れに発足いたしまして、ただいまどんどん進んでおります。  きょうできましたのは行政面の問題でございまして、これは御承知のように、いままでのように開発と安全とを一つ機関でやるという従来の行き方というものは、この際、抜本的にひとつ考え直すべきじゃないか、それから安全に対する配慮は、もっと責任の所在等も明確になるような国としての体制を整えるべきではないかといったような強い反省をもととして出発したものでございますから、お話しのように、この機関が原子力問題に関して万般の問題をやるというのではございませんので、いま申しましたような行政環境をどう進めるかという問題に限られるべきものであって、その他の問題に関しましては原子力委員会が現存しておりますので、原子力委員会で従来どおり進めていく。それで原子力委員会まで含めて原子力行政をどうするかという問題でございますので、従来の原子力委員会が、自分のことを自分でどうこうするということはおかしいじゃないか、やはりもっと高い懇談会で検討すべきじゃないかということで、こういうふうになったように存じております。
  23. 米田東吾

    米田分科員 ひとつお願いを申し上げておきたいと思いますが、そうしますと、この懇談会は三月中には第一回の会合が持たれて……。
  24. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 三月初旬までにはやります。
  25. 米田東吾

    米田分科員 そして、一年以内に当面の結論が出る、こういうことになるわけであります。おそらくこの懇談会は、いま大臣も触れられましたけれども、原子力委員会自体をまず取り上げて、子の機能なり権限なり、それから、いままでの反省の上に立ったいろいろなあり方が検討されるのではないか。産業問題研究会ですかからも、この原子力委員会は、政府から切り離して独立機関にすべきだとかいろいろな構想等の提起もあるようであります。従来の原子力委員会はあなたが委員長で、行政に付随した委員会になっておるわけでありますから、この際、ひとつ権威のある独立した原子力委員会に切りかえていく、そういうような面を総合的にひとつ検討されまして、行政の確立にまず資していただきたい。  それからあわせて、安全専門審査会という制度があるわけであります。これは私は、原子炉の安全審査というところに大体主体があったのではないか、こういうふうに思うでありますが、私が関係する柏崎の原発なんかを見ますと、安全審査の段階はむしろ立地条件、地盤、地質の関係により重要な面がある、こういうようなことも現実に私ども当面しておりますし、もっとそういう立地、特に地質、地盤関係、そういうようなものを重視した、たとえば地震専門学者だとか、地質工学の学者だとか、あるいは関係のそういう方々をもっと充実させるような方向で、安全専門審査会の方もひとつ大いに充実をしていただきたい、こういうふうに申し上げておきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  26. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 原子力委員会のあり方等に関しましては、私は私なりの考えを持っておりますけれども、ただいま申し上げましたように、せっかく内閣に懇談会をつくって、そこで真剣に衆知を集めて検討しよう、こういうことになっておりますので、その結論にまちたいと存じます。  それから、安全審査の問題で、炉自体の原子工学的な検討だけでは困るじゃないかというお説のようでございますが、実は、立地問題は大変重要でございまして、従来から立地問題を決める際のいろいろな条件、たとえば地盤がどうとか、あるいは逆転層がどうなっているとか、あるいは人口の稠密度はどうとか、いろいろな考える要素がございまして、そういう点を全部総合して結論を出すようになっておりますので、その点は、従来と変わらずに今後進んでいくものと考えております。
  27. 米田東吾

    米田分科員 ひとつ安全審査の段階における審査機関強化等につきましては、特に御留意をいただきますように重ねて申し上げておきたいと思います。  次に、私、新潟県の柏崎の原発予定地に関係する問題についてお聞きしたいのでありますが、時間がありませんから結論的に申し上げますと、柏崎の東京電力が予定しております百十万キロワットの一号炉の設定、これは昨年の七月四日の電調審の答申に組み込まれておると私は承知しております。それで、この電調審の答申に組み込まれた根拠は、あの柏崎の予定地は地盤その他立地、環境すべて適格、適当であるという東電から出された資料によってそのような判断をされまして、政府の方としては電調審にかけて、そして答申を得たということになっていると私は思うのです。  当時から、この柏崎につきましては、特に地質、地盤の関係につきましては、地元住民からいろいろ問題提起が具体的、科学的にございました。しかし、そういうものは一切無視されまして電調審の答申に組まれておるわけであります。特に最近、東京電力がこの地盤、地質調査についての一連の生資料を出しまして、そうしてこれは公にされたわけでありますが、私ども検討いたしましたし、地元の関係住民検討いたしておるわけでありまして、その結果、われわれが疑問とし、問題を指摘してまいりましたことはほとんど科学的に誤りはない。むしろ誤りがあるのは、東京電力がこの生データを適当にすりかえたり、あるいは捏造したりしてつくり上げておるところに問題がある、こういうことが明らかになったわけであります。  したがいまして、この七月四日の電調審の答申に組まれておる柏崎についての計画というものは、適地であるという根拠が科学的に崩されており、しかも、そうでないということが証明されない今日の段階でございますので、これはもとへ戻すべきじゃないか。こんな危険なものをそのままにして、あの答申が生かされるということは、私はもう大変な問題だと思いますし、しかも、これから安全審査にかけて、そこでもう一遍審査をしましょうといっても、電調審の答申は一つの既成事実になっていくわけでありまして、われわれは電調審の答申自体が根拠がない、崩れたという見解を持っておるわけでありますから、したがって、これはもとへ戻すべきじゃないかということを私は申し上げるわけでありますけれども、このことについて、経済企画庁あるいは通産省、科学技術庁を含めまして、私のこの指摘と要求に対してどのように考えておられるか、ひとつ答えをお聞きしたいと思うのです。
  28. 伊藤謙一

    ○伊藤説明員 ただいま先生指摘の点でございますけれども、この点につきましては、地元の住民の方からも意見の申し出がございまして、これにつきましては通産省が窓口になりまして、これに対処するということになっておりますが、そういったことで、通産大臣から当庁長官意見の申し出のあった旨の連絡をいただいております。それとも関連するわけで、当庁といたしましては、これにつきまして検討いたしております。  基本的な考え方といたしましては、原子力発電所の安全性の問題につきましては、個々の発電所の計画を電源開発基本計画に組み入れた後におきまして、原子炉等規制法あるいは電気事業法に基づきます許可、認可、検査等の段階で十分この問題を審議いたす、そういうふうに考えておる次第でございます。
  29. 米田東吾

    米田分科員 間違ってもらっては困るのですがね。原子炉のことや電源開発という次元のことを申し上げているのじゃないのです。立地にかかわるあの土地の地盤、地質の問題について私は申し上げておるわけなんです。土地が不適当だという結論が出ている以上、ここに百十万キロを認めるという電調審の答申というものは、意味をなさないじゃないか、根拠は崩れたじゃないか、したがって、これはもとへ戻しなさい、こういうことなんです。質問の趣旨わかりませんか。
  30. 伊藤謙一

    ○伊藤説明員 先生の御質問の点でございますけれども、若干繰り返しになるかもしれませんが、電源開発調整審議会におきます計画決定段階では、そういった基礎地盤の地質を含みます安全性の問題については基本的には検討をいたさない、基本計画に組み入れた後におきまして、いま申し上げましたような諸法令に基づきます許可、認可、検査等の段階で、これを十分に検討して安全性の確保をはかる、そういう考え方になっておるわけでございます。
  31. 米田東吾

    米田分科員 時間が来たのですけれども、そんないいかげんなものなんですか、電源開発調整審議会というのは。地盤について、あなたの方では審査をしない、検討をしない、それは安全審査の段階でということは、これは逆じゃないですか。少なくとも組み込まれている。あなたの方の電調審の答申の書面によりますれば、適当だという判断をされておるわけなんですよ。その根拠は、東電の資料によって適当だというふうに判断をされているわけなんだ。それをそのままうのみにしたのですか。  そうすると、電調審は全然トンネルであって、企業から来た資料をそのまま認めて、うのみにして、そして国の重要な原子力発電という新規の事業を認めていく、こういうことになっているのですか。これは大変な問題だと私は思いますが、時間がありませんので、いずれまた後に譲りますけれども、これは納得しませんから、この点だけ申し上げておきたいと思います。
  32. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 東電から原子力委員会に設置許可の申請が出ますれば、私の方では当然その申請に基づきまして、原子炉そのものの安全性あるいは立地の妥当性に関しまして検討することになっております。まだ東電から実は出てきておりませんので、発動はしておりませんが、それに先立ちまして、御承知のように二月二十一日でございますか、新潟県知事から私あてに要望書がございます。私は、この要望書を丹念に読んでみました。審査に際しましては、十分ひとつ尊重いたしまして、審議を進めたいと存じております。
  33. 米田東吾

    米田分科員 通産省、来ておりますか。
  34. 井上力

    井上(力)政府委員 ただいま科学技術庁長官から御答弁がございましたように、私の方におきましても、原子力委員会委員長あてに提出されました新潟県の要望書の写しをいただいております。この中には、いろいろ県の方で御検討いただきました結果、あるいはそれに関連いたします審査に対します要望が種々記載されておりまして、私どもの方といたしましても、原子力委員会と緊密に連絡をとりまして、安全性の問題に万遺漏なきよう検討してまいりたい、かように存じております。
  35. 米田東吾

    米田分科員 私、これで終わりますけれども、最後に申し上げておきます。  その知事からの要望書を私も承知しておりますけれども、この中身は、国に出す要望でなくて、企業の東京電力に知事が厳重に指摘をする注意事項であり、要望事項だ、こう思っておるのです。国は、知事が言っておるように、安全審査会の段階で最終的に国の責任なんですから、大臣がおっしゃるように、慎重に検討されるのは当然のことなんでありますが、これは知事が出すのは越権だと私は思います。むしろ知事は、そういういろいろな不安、疑惑がある東京電力の調査、審査、東京電力の企業自体にそういう要望書を出して、いま緊急に手を打たせることが必要なんじゃないか、実はこう思っておるのでありまして、それを、時間がありませんから省略いたしましたが、そういうことも、大臣にひとつ御配慮いただくようにお願いしたいと私は思っております。  なお、私が言っている本当の趣旨は、それ以前の電調審の段階で根拠が崩れたんだから、これは白紙に戻したらどうかということを実は質問したのでありまして、時間がありませんで要領を得ません。御答弁は不満でありますけれども、これで終わります。
  36. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 次に、瀬崎博義君。
  37. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 原子力問題に関する懇談会が正式に発足したそうなんですが、まず、それについてお尋ねをしたいのであります。  正式の名称はどういう名称なんですか。
  38. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 原子力行政懇談会という名前でございます。
  39. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 前内閣のときには、検討委員会とかなんとかいうような名前で発表されたことがあるように思うのですが、そういう名前から変わったわけですか。
  40. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 内容は同じでございまして、「目的等」ということで、「政府は、原子力行政の基本的なあり方を検討するため、臨時に、原子力行政懇談会を開催する。」そういうことで、内容はもちろん検討でございます。
  41. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 昨年来、長官もよく御存じのとおりの不祥事件が続きました。分析化研のデータの捏造事件、「むつ」問題、それから、実質的に動いている原子力発電所は一基か二基という原子力発電所の相次ぐ事故、こういうことで、科学技術庁政府に、果たして日本の原子力開発を進めていく能力や資格があるのかどうか、これが問われている今日だと思うのです。いま発足いたしましたこの原子力行政懇談会なるものは、そういう一連の不祥事件や問題の反省の上に立って発足させられているのか、あるいはそういう反省とは無関係につくられているのか、まず、そこをお聞きしたいのです。
  42. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 これは突如として生まれたものじゃないのでございまして、御承知のように、いまお話しのような去年の事件、なかんずく「むつ」問題等を契機にいたしまして、従来のままの行政の姿でよろしいかといいますと、そのままじゃいかぬじゃなかろうか、特に安全サイドに対する従来の体制は、まだまだ国としては不十分じゃないかというふうな反省の上に立って、今後の原子力行政をどうするかという事態になったと存じております。
  43. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 一応反省の上に立っているというお話なんですが、いまの「むつ」の問題にしても、原子力発電所の相次ぐ事故にしても、また分析化研の問題にしても、それぞれ科学者専門家が、いずれはかかる事故が起こるであろうと批判をしておった事件ばかりなんですね。ですから、いま振り返ってみるならば、結局、こういう政府の原子力開発のやり方に批判的な立場をとってきた専門家や科学者の言い分、主張が正しかったということが事実によって証明されているのではないかと思うのですね。  そういう点で、今度の懇談会のメンバーの人選に当たって反省が生かされているのかどうか。つまり、いままで政府のやり方に対して批判的な立場をとってきた人々も、このメンバーの選定基準の範囲内において検討されたのかどうか、これをお尋ねしたいのです。
  44. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 この種の委員会は、学識経験のあることはもちろんでございまするし、同時に、判断が公正であるのが一番望ましいのでございますから、学識経験者の中から、この人であれば最も学識も経験も豊かであり、判断も公正に下すだろうという人を選んだのであるというふうに考えております。  特に、先ほども申し上げましたが、きょうの閣議の際に官房長官から、この懇談会には労働界からの代表と、実際に安全問題あるいは立地問題等で苦労しておられる地方行政のベテランの皆さんも入れまして公正を期してます、こういうふうに説明がございまして、私は、その意味では非常にいいメンバーではなかったかと思っております。
  45. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 私の質問したことに答えていただきたいわけなんです。私が聞いているのは、政府は反省をした上でこういうことをやったのだ、こうおっしゃる。だとするならば、今日までいろいろな事故が起こっていることに対して、あらかじめそういうことが起こるであろうということをいろいろと主張してきた人もあるし、この国会でも、そういうことを述べておられた学者もあるわけなんです。だから、あなたの言われる公正というのが、これはきわめて高度に科学技術的な問題での公正なんですから、当然そういうふうな学者にも選定の範囲を広げて、いろいろ御検討なさったのかどうか、そこだけ答えていただければ私はいいのです。
  46. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いわゆる学者というサイドから申しますと、たとえば伏見先生のように、日本学術会議の副会長をやっておるような方もおりますし、この人はまた御承知のように、物理学の方では日本の第一人者であることは御承知のとおりでございまして、そういう配慮も十分払いつつ人選に当たったものと考えております。
  47. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 特に「むつ」問題などは、安全審査が基本設計だけであって、詳細設計以後については大変な手抜きがあったという点で国民を驚かした問題であったわけなんですが、その点では、根本的に事故をなくす、安全な原子力発電所をつくっていくという見地に立つならば、安全審査基準であるとか、安全審査のやり方を根本的に再検討する、こういうことがどうしても必要だと思うのですね。これをやる気で、政府は懇談会などの発足に今日取り組んだのですか。
  48. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 もちろん、この懇談会で取り上げる一番のポイントは、何と申しましても原子力の安全問題を確保するためにはどういう機構が一番望ましいか、あるいは原子力基本法に明記してあるように、日本の原子力の利用は平和に限るという鉄則を守るための、いわば番人としてのお目付役はどういう機関がよろしいか、そういう点をいろいろ配慮して、単に開発のみならず、国の安全と申しますか、あるいはそのもの自体の原子工学的な安全性をどうしたら確保できるか、これは一つには、安全の研究を独自にどういうふうに進めるか、あるいは審査、検査の機構をどうするか、あるいは国民の理解を得るためにはどういう措置が必要かといったような問題等を十分考慮した上、今後の原子力行政のあり方というものを判断していくべきではなかろうかというふうに私は実は考えております。
  49. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 お目付役をつくるもよし、いろいろ機構を考えるもよし、また国民の理解を深めるために努力されるもよかろう。また、安全研究を進めるもいいと思うのですが、問題は、そのことが安全審査の基準に対して一定のシビアなものを要求していくのか、シビアなものに変えていくのかどうか、審査のやり方そのものを、本当に安全が確保されるようなものにしていくのかどうか、ここが大事なんですね。この確信、やる気があるのかどうか、それを聞いているわけなんです。ただそれ一つだけ答えてください。
  50. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 もちろん、おっしゃる点がポイントでございますから、そういう点に重点を置いて、そしていわゆるALAPと称するアズ・ロー・アズ・プラクチカブルという原則を日本としては貫いていかなければいけませんから、そういう点も考慮しつつ、安全基準あるいは安全審査の仕方等を十分考えて対策を立てていくべきものと考えます。
  51. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 重ねて聞きますが、そうすると、安全審査基準であるとか審査の実際のやり方、こういうものを科学的できちんとしたものに変えるつもりで政府はやるんだ、こういうことなんですね。
  52. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、この懇談会ではそういう細部にわたってまでは入らないと思います。むしろその方は、ただいまの現存している原子力委員会で、このたび専門部会をつくりまして、いまおっしゃいました基準等を、従来以上に検討を深めようじゃないがというので、せっかくごく最近出発したばかりでございまして、そういう面で専門的に詳細に問題を深めていくんだと思っております。
  53. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 長官は、先ほどは安全審査そのもののやり方が問題の核心だとおっしゃった。ところがいまは、これは細部の問題だ、こうおっしゃっている。一体どっちがどうなんだかわからないし、どうもこの懇談会は、主として機構の方を考えるというお話のようなんですね。そういう意味では、俗な言葉になりますが、仏はつくろうとしているかもしれないけれども、問題の魂は現在の原子力委員会にやってもらうんだ、こういうふうに聞こえるんですね。そういうことなんですか。
  54. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いまの大体定着しつつある考えといたしましては、開発行政と、原子力の安全を研究あるいは審査、検査の一貫性等々をする機関とは、同じ機関じゃなしに分別して進める方がいいんじゃなかろうかといったような意見が、ほとんど大部分じゃなかろうかと実は感じます。で、そういう面を中心にいたしまして、現存の原子力委員会のあり方等も含めて、今後原子力行政をどうすべきかというのが本題でございまして、この懇談会自体が基準の細部にわたってどうとか、あるいは検査、審査のやり方等の細部はどうするかといったようなところまでは、とてもこの懇談会ではできない、またやるべきじゃないというふうに考えております。
  55. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 わかりました。つまり魂に当たる安全審査、一番大事な安全審査そのものについては、この懇談会に期待してもだめであるということですね。  ここでお聞きしたいのですが、普通よくこの種のものは諮問委員会というふうな形でつくられるのが多いと思うのですが、わざわざ懇談会とされているのは何か理由があるのですか。
  56. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 察しまするに、総理諮問機関でございますから、自由な発言で総理にお答えできるようにということで、法的な基礎を持った委員会ではなしに、拘束力のない懇談会という形式をとったんじゃないかというふうに考えております。
  57. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 いみじくも言われましたが、拘束力のないものということなんですか。議事録はとっていただこうという考えを持っているんですか、また、そういう議事内容等を公表するつもりでやっていただくおつもりなのか、そこらの政府側の方針をちょっと聞きたいのです。
  58. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 これは委員会が発足いたしまして、委員会自体で皆さんが御相談して決めることと存じます。
  59. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 少なくとも政府の方がお願いをしてつくられた懇談会なんです、メンバー等についても。しかも、政府がいままでのやり方に何らかの反省を持ってお願いしているのだと思うのです。問題提起は政府の方からしなければならないだろうし、どういうふうなやり方をしてくれという政府の要望がなければ、たとえ緩い形にもしろ、総理諮問機関としてつくった意味もなくなると思うのです。だから、私が聞いているのは、政府としては、どういうことをこの懇談会にお願いしようとしているのか、議事録の点ではどうなのか、あるいはまた議事内容の公開の点についてはどうなのか、こういう点は政府の意思はどうなのか聞いているのです。
  60. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほど申し上げましたように、この懇談会の目的なり、あるいは何を審議すべきかという大綱的な点は、お答えしたとおりと存じます。  問題は、公開するのか非公開にするのかといったような問題に関しましては、もちろん公開が一番望ましいのでありますけれども、しかし、物によっては、あるいは懇談会でございますから、自主的に問題をその場合は決めるのではなかろうか、こういうことを申し上げているのでございます。
  61. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 それほど懇談会の自由な討議を保障されるとすると、そもそも何らかの結論をこれに期待していらっしゃるのか、それとも、それぞれメンバーの意見は出しっ放しで終わっていただこうというのですか、どっちなんですか。
  62. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 これは申すまでもなしに、懇談会として結論を出してもらいたいということでございます。
  63. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 もしその結論が出た場合、さっきのお話ですと、政府はなるべく拘束しないようにするとおっしゃっているのですが、懇談会側のそういう結論に対して、政府はどういう態度で臨もうというのですか。
  64. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 拘束しないという意味は、逆にとってもらっては困りますので、そうではなくて、委員自体の発言等に関して拘束をしないということを私、申し上げているのでございまして、自由に発言していただくようにしたいという意味でございまして、できたそのものは、総理諮問機関で、こういう重大な懇談会で出てきた結論でございますから、当然総理自体が、それに対する今後の措置をどうするかということを、具現化するための措置をどうするかという点は、お考えになると思います。
  65. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 自由な発言は、政府側として拘束する意思は毛頭ない、それは当然です。逆に、出た結論については、政府側の考え方がそれに拘束されると言われるならば、それこそ五十一年規制問題で起こったあの自動車専門委員会のでたらめな内容ではないですけれども、これはやはり国民の目の光っているところでやってもらいませんと、問題を残すと思うのです。こういう点では、われわれも今後この懇談会の運営等については十分注目をしていきたと思うのです。  きょうは時間が非常に短いので、本当に政府が原子力発電所等の安全を真剣に考えているかどうかのもう一つの問題として、これもまたしばしば指摘されたことなんですが、特に、直下型の地震などは原子力発電所に重大な災害をもたらすのではないか、こういうことが言われてまいりました。また、最近では、石油コンビナートでいろんな事故が起こって、なおさらのこと、この直下型地震との関係がある意味では注目されております。ちょうど昨年伊豆沖地震がこの種の地震であったわけですね。専門家お話によりますと、こういう地震の調査研究では、断層が動いた後、なおずるずると地面が一定期間動くそうですね。専門語では余効変動、アフターエフェクトとかおっしゃっているそうです。ただ、これは第一回の測定を早くやらないと、非常に調査測定の効果が薄くなる、こういうふうに専門家がおっしゃっているのです。このことについては、科学技術庁は御存じですか。
  66. 伊原義徳

    伊原政府委員 伊豆半島沖地震に関しましては、科学技術庁におきまして関係省庁と十分連絡をとりました上で、特別研究促進調整費によります特別研究のテーマに取り上げまして、ただいま調査を実施中でございます。
  67. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 私が聞いたのはそうじゃないのです。そういう調整費の査定に当たっている科学技術庁としては、こういう地震の調査研究に当たっては、余効変動というのだそうですか、こういうものの測定が非常に大事だ、これは地震が起こった直後早くやらなければならない、こういうふうに言っておられるのですが、そういうことを科学技術庁は承知しておりますか、こういうことなんです。
  68. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいま御指摘の点、その余効的変動につきましても、全体の研究の一環として調査研究をすることにいたしております。
  69. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 この伊豆沖地震の調査研究については特別研究促進調整費、特調費ですか、これをつけておりますね。緊急研究というのですか、この予算はいつ、幾ら支出されておりますか。
  70. 伊原義徳

    伊原政府委員 予算額は四千四百九万三千円でございます。
  71. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 いつですか、その支出は。
  72. 伊原義徳

    伊原政府委員 二月四日に関係の手続をすべて終わりまして、関係省庁に移しかえをいたしております。
  73. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 ことしのですか、それは。
  74. 伊原義徳

    伊原政府委員 ことしの二月四日でございます。
  75. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 伊豆沖地震は一体いつ起こっておりますか。
  76. 伊原義徳

    伊原政府委員 昨年の五月九日でございます。
  77. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 天災は忘れられたころにやってくるということわざがありますが、政府予算は、地震は忘れたころにやってくるのですか。これで役に立つと思っているのですか、どうですか。
  78. 伊原義徳

    伊原政府委員 この特別研究費につきましては、地震が起きました後、関係省庁でもって、この地震についてどういう対応を講ずべきかということで、いろいろ打ち合わせをいたしまして、十分その省庁間の連絡が密になるようにということで、非常に打ち合わせの回数も重ね、その関係で多少支出がおくれたわけでございます。しかしながら、実際の研究の態様といたしましては、十分遺漏のないように措置できるものと考えております。
  79. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 この研究の調査報告は、いつ結論しなければならないのですか。
  80. 伊原義徳

    伊原政府委員 今年度いっぱいに結論を出すということになっております。今年度末、すなわち昭和五十年三月三十一日ということになるわけでございます。
  81. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 先ほど言いましたように、この種の地震の測定は急がなければならない。ところが、半年以上もほったらかしにされて、いろいろ研究計画を出して、その中にも急ぐ必要があると書かれているそうですか、どれだけの予算が決めてもらえるものか、どれだけの調査を進めていいものかわからないまま二月まで来て、予算がついたら最後、三月三十一日までに全部調査を終わり、報告を出さなければならない。忘れたころに費用をつけて、つけたが最後素早く使え、これが果たして研究の実態に合っていると思っているのですか、どうですか。
  82. 伊原義徳

    伊原政府委員 先ほど御答弁申し上げましたのは、原則といたしまして年度内に研究を完了するということでございますが、実は研究と申しますのは、その性質上繰り越して使用せざるを得ないということが往々にして出てまいるわけでございます。したがいまして、この特別研究促進調整費につきましても、繰越明許費という分類になっておりまして、そういう意味で、どうしても繰り越さざるを得ないという場合には繰り越して使用ができる、こういうことになっております。  しかしながら、先生指摘のように、支出が非常に遅くて、年度内になかなか使いこなせないというふうなことは好ましくないことでございますので、今後、できる限り早く支出をするように努めてまいりたいと考えております。
  83. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 いろいろと地震予知の問題は国会でも議論され、指摘されているわけなんですね。こういう一番肝心で、やろうと思えばできることを、いずれ実際金は出すんですね、生きた研究に使えるような出し方くらいが一体できないものなのかどうか。こういう点についてひとつ新長官でもある佐々木さん、一つは原子力の安全性を本当に考えているのかどうか、あるいは相次ぐコンビナートの安全性の問題を本当に考えているのかどうか、これは三木内閣の試金石にもかかわる問題だと思うのです。ひとつ長官の今後のお考えを最後に述べていただきたいと思うのです。
  84. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いまの研究調整費等の出し方が、お話のような実態でございますれば、私は、何か特殊な原因でもあってそうなったのではないかと思います。通常の場合は、いまのようなことはあり得ないと感じますが、しかし、それが現実でございますれば、いろいろ内容もいきさつも聞いてみまして、今後そういう出し方でなしに、できるだけひとつお話しのように早期に出して、そうして研究の実際の足しになるようにするのがいいんじゃなかろうかというふうに考えます。
  85. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 私、質問を終わるつもりだったのですが、いま大臣が、そんなことは通常ないはずだ、何か特殊な原因があったのではないか、こういうふうに言われたので、これはもう一遍聞かなければいかぬですね。何か特殊な原因でそうなったんですか。でたらめにもほどがある。
  86. 伊原義徳

    伊原政府委員 一般的に申しまして、特別研究促進調整費につきましては、各省庁との協議、連絡、これを非常に慎重にやっております。ただ、大臣の御答弁は、それにしてもどうも少し時間がかかり過ぎたということで、事務当局に対するおしかりである、こういうふうに承知いたしております。
  87. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 これは大体政府関係機関研究者が全体として指摘していることなんです。私は、最も端的な例をここに挙げた。つまり、最も急がなければならないこの測定研究がこんな状態であるという、これは最もいい例なんですね。ほかも調べていただいたら、全体似たり寄ったりなんです。ですから、これは根本的にやはりやり方を検討してもらわないと、実際の研究には役立たない。こういう点で、再度ひとつ大臣見解お尋ねして、本当に今度は終わりたいと思います。
  88. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 お話しのように、改善する余地がありますれば、当然改善すべきだと思います。
  89. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十五分休憩      ————◇—————     午後三時十七分開議
  90. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和五十年度一般会計予算中、裁判所及び法務省所管を議題といたします。  まず、最高裁判所所管の当局から説明を求めます。寺田最高裁判所事務総長。
  91. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 昭和五十年度裁判所所管予定経費要求額について説明申し上げます。  昭和五十年度裁判所所管予定経費要求額の総額は一千二百三十六億四千四百七十万一千円でありまして、これを前年度予算額一千八十三億九千百三十六万六千円に比較いたしますと、差し引き百五十二億五千三百三十三万五千円の増加となっております。これは、人件費において百四十億八千九百九十五万八千円、裁判費において二千六百八十六万四千円、司法行政事務を行うために必要な旅費、庁費等において十一億三千六百五十一万三千円が増加した結果であります。  次に、昭和五十年度予定経費要求額のうち、主な事項について説明申し上げます。  まず、人的機構の充実のための経費であります。  特殊損害賠償事件等の処理を図るため、裁判所事務官六人の増員に要する経費として三百八十九万一千円、交通事件、すなわち道路交通法違反事件の適正迅遠な処理を図るため、簡裁判事三人、裁判所事務官十人の増員に要する経費として一千五百五十八万円、調停制度の改正及び拡充強化を図るため、裁判所事務官五十一人の増員に要する経費として三千二百九十五万二千円、寄託金事務の処理を図るため、裁判所事務官四人の増員に要する経費として二百五十八万九千円、合計五千五百一万二千円を計上しております。  以上、昭和五十年度の増員は、合計七十四人でありますが、他方、定員削減計画に基づく昭和五十年度削減分として、裁判所事務官四十八人の減員を計上しておりますので、これを差し引きますと、二十六人の定員増加となるわけであります。  次は、裁判運営の能率化及び近代化に必要な経費であります。  庁用図書、図書館図書の充実を図る等のため、裁判資料整備に要する経費二億三千六百十三万二千円、裁判事務の能率化を図るため、複写機、計算機等を整備する経費二億三千三百八十一万九千円を計上しております。  次は、裁判所施設の整備充実に必要な経費であります。  裁判所庁舎の新営及び増築(新規七庁、継続十六庁)に必要な工事費及び事務費等六十二億三千七百八十五万一千円を計上しております。  次は調停制度の改正及び拡充強化に必要な経費であります。  調停委員の手当として二十四億六百四十九万六千円、調停室の整備等に要する経費として四億五千四十九万五千円を計上しております。  次は、裁判費であります。  証人等の日当を増額する経費として一千八百二十一万一千円、国選弁護人報酬を増額する経費として一億五千七百三十三万八千円を計上しております。  以上が、昭和五十年度裁判所所管予定経費要求額の大要であります。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。     —————————————
  92. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 次に、法務省所管について、政府から説明を求めます。法務大臣稻葉修君。
  93. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 昭和五十年度法務省所管予定経費要求の内容につきまして、大要を御説明申し上げます。  昭和五十年度の予定経費要求額は二千二百七十九億三千百五十九万二千円であります。前年度予算額千七百六億八千三百四十六万四千円と比較しますと、五百七十二億四千八百十二万八千円の増額となっております。  増減の詳細は別途の資料により御承知願いたいのでありますが、その内容を大別して御説明いたしますと、第一に、人件費関係の増であります。その額は五百十八億三千五百六万五千円であります。これは、公務員給与ベースの改定等に伴う増額分、昇給等の原資としての職員基本給及び退職手当等の増額分が主なものでありますが、そのほかに、副検事、法務事務官等六百三十八人の増員に要する人件費が含まれております。  ここで増員の内容について申し上げますと、一、交通事件、財政経済事件、公害事件、公安労働事件等に対処するとともに、公判審理の迅速化を図るため、副検事五人、検察事務官百二十三人、二、登記事件、国の利害に関係のある争訟事件及び人権侵犯相談事件に対処するため、法務事務官三百十八人、三、刑務所における看守の勤務条件の改善と医療体制充実を図るため、看守百一人、看護士及び看護婦十二人、四、非行青少年対策充実するため、少年鑑別所教官十人、保護観察官二十人、五、出入国審査及び在留資格審査に対処するため、入国審査官二十人、入国警備官三人、六、暴力主義的破壊活動に対する調査機能を充実するため、公安調査官二十三人、七、法務本省における訟務事務処理体制充実するため、法務事務官三人となっております。  他方、昭和四十九年の閣議決定に基づく定員削減計画(第三次)による昭和五十年度削減分として四百八十八人が減員されることとなりますので、これを差し引きますと百五十人の定員増加となるのであります。  なお、以上のほか、法務本省における訟務事務処理体制充実するため、官房訟務部参事官二人の増設及び恩赦事件の適正迅速な処理を図るため、中央更生保護審査会委員二人の常勤化がなされております。  第二に、一般事務費の増五十四億一千三百六万三千円であります。これは、事務量の増加に伴って増額されたもののほか、積算単価の是正、職員の執務環境の整備改善並びに保護司実費弁償金及び人権擁護委員実費弁償金の単価引き上げに伴う増額分等であります。  次に、主な事項の経費について概略を御説明いたします。  第一に、法務局、地方法務局において登記、供託、戸籍等の事務を処理するために要する経費として三十億四千三百七十七万円、第二に、検察庁において刑事事件を処理するための検察活動に要する経費として十四億一千八百四十二万二千円、第三に、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院の被収容者の衣食、医療、作業等に要する経費として百二十五億九千三百四十七万三千円、第四に、保護観察に付された少年等を更生させるための補導援護に要する経費として二十二億六千八百四十一万六千円、第五に、出入国の審査、在日外国人の在留資格審査及び不法入国者等の護送、収容、送還等を行うのに要する経費として二億九千二百九十七万六千円、なお、外国人登録法に基づき、在日外国人の登録及び指紋採取の事務を処理するために要する経費として五億七千八百十八万三千円、第六に、公安調査庁において処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費として十四億四千六百五十八万四千円、第七に、法務局、検察庁等の庁舎及び刑務所、少年院等の収容施設の新営整備に要する経費として七十六億九千七百七十九万四千円が計上されております。  最後に、当省主管歳入予算について一言御説明申し上げます。  昭和五十年度法務省主管歳入予算額は六百六十六億五千八百四十八万五千円でありまして、前年度予算額六百四十四億三千百三十三万三千円と比較しますと二十二億二千七百十五万二千円の増額となっております。  以上、法務省関係昭和五十年度予算案について、その概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議を賜りますようお願い申し上げます。
  94. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 以上で説明は終わりました。     —————————————
  95. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鬼木勝利君。
  96. 鬼木勝利

    鬼木分科員 私がいまからお尋ねしたいことは、外国人タレントの入国管理についてでございますが、その質問に先立って、これは大臣に初め法務省の各位に特に御了解を得ておきたいと思うのは、これはあくまで国内の日本人タレントの職域、生活を守るんだ、こういう観点から私は御質問を申し上げるのでありまして、いささかも国際友好親善の度を損なうことのないようにという趣旨のもとにお尋ねをいたしたいと思うのです。  入国管理令の第四条の九でございますが、「本邦で演劇、演芸、演奏、スポーツその他の興業を行おうとする者」この法令の条文によってお尋ねするのでありますが、聞くところによりますと、法務省は公開興行の目的で入国するところの外国人のタレントに対して資格審査を厳重にするのだ、そこで入国規制の運用を強化するのだ、このように承っておりますが、その動機、それから方法あるいは実施時期について、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  97. 影井梅夫

    ○影井政府委員 外国からの芸能人の日本への入国が、本来の目的に沿いまして行われている限りは、私どもこれを歓迎したいと考えております。  ただ、最近の現実を見ておりますと、公開の公演その他芸能人としての活動を目的として入国しながら、その実際を見ておりますと、そうした公開の公演という目的をはずれまして、それ以外の、たとえば女性の場合にはキャバレー等のホステスの活動をしておるとかという現象がかなり目立ってまいっております。  また、外国人のタレントが日本に短期間在留いたしまして、公開の演奏をしてくれるということは歓迎すべきだと思いますけれども、最近の傾向といたしまして、一部の外国人タレントは、むしろ日本を本拠にして、実質的に見てまいりますと、もう日本に定着しかかっているという者もかなり見受けられる。  これは具体的に申し上げますと、私どもの取り扱いといたしまして、こういった芸能人につきましては、大体最長六カ月までの在留を認めているのでございますが、この六カ月の期間が経過いたしますと、近隣諸国にごく短時日出国いたしまして、また日本に舞い戻ってくると申しますか、日本に帰ってくる、そして六カ月の期間日本の中でいろいろな活動をいたしまして、また近隣諸国に短期間出て、また日本に帰ってくるという現象がかなり顕著に出てきている。  これはただいま先生指摘のとおりに、日本の同業者に対する圧迫ということも一部感ぜられ始めておりますので、入管令で規定いたしました本来の目的に合うようにひとつ活動してもらいたいということが動機で、今回その措置を私ども現在検討しているわけでございます。
  98. 鬼木勝利

    鬼木分科員 いま局長お話を聞きまして、おたくから出ている規定といいますか、新たに今度外国芸能人が入国するその取り扱いについての骨子をここへいただいております。四カ条あるようでございます。いまあなたの御説明で逐一これはお尋ねしたいのですが、その中の一つで——これは私、なぜこういうことを取り上げたかと申しますと、先ほど申し上げたとおり、実は新聞にも載っておりましたが、私のところに陳情が来ておるのですね。もう少しこれを取り締まってもらいたいという陳情です。  というのは、いま国内でバンドマンは外人が三千人、日本人のバンドマンは九千人、そうすると約三割が外国からのバンドマン。ところが、いまあなたの御説明のように、観光を目的としてやってきてバンドマンをやっている。そのバンドマンは楽器も何も持ってこないそうです、観光ですから。観光ということになれば、これはもう文句なくビザで入ってこれる。そうして楽器は日本のプロダクションの方で貸与するそうです。それでやる。そうして帰るときにはそれを持って帰る。向こうは楽器が高い、こっちの方は安いそうです。楽器の方のことは私、詳しく調査していませんけれどもね。  そういうことで、バンドマンの方から私のところに陳情が参りまして詳しくお話を聞いたのです。時間がありませんので詳細は申し上げませんが、いずれにしましても、いま局長がおっしゃるように、非常に生活が圧迫されておるわけですね。  そこで、おたくの四カ条の中に、四カ条全部聞きたいのですが、外国の芸能人組合ですか、ユニオンですか、そのユニオンから芸能人としての資格証明を求めるということがおたくの方に載っている。タレントの資格証明を求めるとありますが、そうすると、向こうのユニオンが資格を証明すれば有名人、無名人に限らずというふうにわれわれは解釈をしておりますが、有名人と無名人というものの査定基準ですね、有名人と無名人というのはどういうことで決めるのか、あるいはまた向こうのユニオンが証明すればそれをそのまま受け入れるのか、そういうようなところをどういうふうにチェックされるのか、それをちょっとお尋ねしたいのです。
  99. 影井梅夫

    ○影井政府委員 この区別を、客観的に非常に厳密にするということは非常に困難でありまして、大体常識的に判断せざるを得ないかと考えております。  芸能人の人たちが査証申請をいたします場合に、大体その本人の本国と申しますか、本国にございます日本の大使館あるいは総領事館に査証申請に来るわけでございます。そこで、そこにございますわが方の総領事館なり大使館が、その査証申請を受け付けるに当たりまして、大体その国でどのぐらい有名であるかということはある程度事情を承知しておりますので、そこで一種のチェックができるかと考えております。それからこの申請が私の方に参りまして、私の方でチェックいたします場合に、かつて入国歴のある者につきましてはその記録が残っておりますので、その記録に一応当たってみる。そこで、前の日本における在住歴が好ましくないというような場合には、これを拒否するということをやっております。有名人とそうでない者の区別というのは、客観的な非常に厳密な基準というのはなかなか設定しにくいのでございますけれども、大体常識的にそのように処置しております。  なおついでに、ただいま規制強化の面を打ち出しているわけでございますけれども、同時に、これは国際的に著名な演奏家であるとか、あるいはプロのスポーツ選手、こういった人たちにつきましては、従来の手続があるいは余りにも複雑であるかもしらぬということで、特に著名な演奏家であるとか、あるいはプロのスポーツ選手の入国につきましては、入国の手続の簡素化はできないかということをあわせて検討いたしております。
  100. 鬼木勝利

    鬼木分科員 これは皆さんのおっしゃるように、やはり査定が非常にしにくいと私は思うのですが、なるほどおっしゃっていることは私らと同じ考えです、著名な方とか、あるいは芸能人としての資格を向こうのユニオンで証明しておる者だとかについては。  それから、安い報酬で日本にやってくるというようなことはもうやらせない。一定限度額以下の低報酬の契約による者は入国を認めない。一定限度額以下の低報酬とおたくの四項目の中の第二項に載っているのですが、一定限度額というのはどういうところが決めていらっしゃるのですか。
  101. 影井梅夫

    ○影井政府委員 現在は一応の基準といたしまして、日本に在留しております間に、食費を除きまして一カ月に十万円という線を考えております。この線よりも安い報酬で働くという申請は、これを拒否するという措置をとっております。
  102. 鬼木勝利

    鬼木分科員 そうしますと、一定限度額が食費を除いて十万円。そうすると、十万円以上十五万円でも二十万でも結局いいということに解釈されると思いますが、そういう著名な人は基準はない、常識で考えるのだ、それはそうでしょうね。学校の点数をつけるようなわけにもいかぬだろうと思うのですがね。  そうしますと、そういう著名な人に対しては、六カ月を経なくてもまた入国ができるとか、あるいは長くおることができるとかいう特例がございますか。
  103. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいまの一カ月十万円の基準でございますが、まずこれにつきましても、これが絶対というふうには考えておりませんで、たとえば、それぞれの民族文化の紹介というような、これはグループの場合が多いかと考えますけれども、そういった場合には、一カ月十万円以下の報酬であっても、その性質にかんがみましてこれを認めるというふうな措置をとっております。それから特に著名な演奏家その他につきまして、これは通常は十万円などという基準よりもはるかに高額の場合が多いかと思いますけれども、これまた場合によりましては慈善的な意味でということになりますと、その基準は十万より低いこともあり得るかと考えますので、この十万円という線を絶対なものとは考えておりませんで、そういった非常に性質の明らかな場合には、特例を考えてまいらなければならないと考えております。  なお、最近の国際的な物価その他にかんがみまして、現行の十万円という線は少し低過ぎるのではないか、多少これを高くする必要があるのじゃないかということで、目下検討を進めている段階でございます。
  104. 鬼木勝利

    鬼木分科員 そうしますと、たとえば外国人タレントが入国をした、ところが、事実に反して目的外の活動をしておる、そういう外人タレントがおった。その場合に行政指導するのだ、これはわかりますが、もっと厳しい、何か退去命令を出すとか、何か罰則でもあるとか、そういうことはお考えになっていらっしゃらないのですか。ただ行政指導をするだけですか。また、退去命令でも出されたような事実がいままでにあったかなかったか、そういう点をちょっと。
  105. 影井梅夫

    ○影井政府委員 芸能人として入国いたしまして、芸能という目的以外の活動をしている者、そういうケースがかなりございます。従来、私どもの運用といたしましては、その中には日本のそういった法令を必ずしも正確に知らない者があるというような事情も考慮いたしまして、したがいまして、それを発見した場合に、直ちに国外退去を命ずるという措置はとりませんで、これに対して警告を発するということで処置をしてきておりました。  こういった芸能人として入国をして、その目的に違反した者に対して退去強制を行った例があるかという最後のお尋ねでございましたが、従来まではその例はございませんでした。
  106. 鬼木勝利

    鬼木分科員 これに関連して私はお尋ねをしたいのですが、今度は日本の国内のプロダクションについてです。たとえば外国人タレントが入国してくる。その場合に日本の国内にこれをあっせんするところのプロダクションがあるわけなんですよね。ところが、そのプロダクションが、これはそういうことはあってはならないと思いますが、聞くところによりますと、ややいかがわしい悪質なプロダクションがあるというようなことを聞いておるのです。  そこで、法務省としては、おたくの方としてはこの調査をなさっておるのか。大体これは個人の秘密に関係しますから、特定などこということは私、承らなくていいのですが、大体においてあのAとあのBあるいはCはどうもいけない、あるいはいまあなたのおっしゃるように警告をされたとか、あるいは取り調べられたとかいうようなそういう悪い前歴があるとか、あるいは非常に悪質であるとかいうような、つまり外国人タレントが入ってくるのとインチキの取引をやるような、あっせんをするようなプロダクションが国内にあることを皆様方がキャッチしておられるかどうか、あるいはブラックリストにでも載せて、日ごろからそれをよく監視していらっしゃるかどうか、そういう事実があるかないか。これも私はいろいろうわさを聞いたからお尋ねしておるのですよ。そこまでおやりになっておるかどうか、この点どうなんですか。
  107. 影井梅夫

    ○影井政府委員 外国人タレントのあっせんを業とする者の中に、大体善良なあっせん業者が多いのでございますけれども、ただいま先生指摘のような多少目立つ者もございまして、これにつきましては従来私の方から、その目的外の活動をしている芸能人をあっせんした日本のあっせん業者につきましては、入国の際に、その日本のあっせん業者が入国目的に沿った活動を行わせますという誓約書を入れまして、そこで保証を約束しているわけでございますけれども、そういった悪質と申しますか、そういう悪質のあっせん業者は保証能力がないというふうに考えまして、そういうあっせん業者の保証による外国芸能人の入国は、認めないという措置をとっております。  お尋ねのそういった調査を行っているかという御質問でございますが、これに対しましては、私ども調査を行っております。  それから、そういった悪質の業者が保証する外国人タレントの入国、これは拒否しておるかというお尋ねであったかと思いますけれども、先ほど御説明申し上げましたように、そういったあっせん業者の保証能力というものは私ども信頼いたしませんので、そういう業者の保証による入国は認めないということは、現に行われております。
  108. 鬼木勝利

    鬼木分科員 御説明はわかりました。わかりましたが、先ほどあなたの申されたように、目的外の活動をしている、たとえばキャバレーなんかでホステスか何か知りませんけれどもやっているというような、こういう大都会の東京だとか大阪、神戸、横浜というような、ああいうところに入り込んでキャバレーあたりでもぐって仕事をしておるのをどうして摘発するか、どうしてそれをチェックするか、警察なんかもむろん協力はしておられると思いますが、私はこれはなかなか容易に判明しがたいんじゃないかと思います。昔のように隠密隊を繰り出すということもなかなか大変でしょうが、どのようにこういうのは取り締まっていらっしゃるか。先ほども申し上げましたように、国際親善、友好ということを損なうてはいけないけれども、こういう悪いことに対しては徹底的にやってもらわないと善良な人が困る。それでお伺いしておるわけです。
  109. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま例といたしまして、キャバレー等における外国人ホステスの例が出ましたので、この例について申し上げます。  入国管理局でこれをどのようにキャッチしているかということでございますが、御承知のとおり、いま非常に少ない人員でやっておりますので、私どもの方で積極的にこれを発見するということは非常にむずかしいのが現実でございます。しかしながら、キャバレー等の風俗営業の場合には、いわゆるもぐりの外国人ホステスがおります場合には、同業者からの通報であるとかあるいは警察からの通報等もございまして、その通報に基づきまして私の方でそれを調べるということをやっております。芸能人として入りました者のほかに、日本に観光のために入国した者の中からもそういった種類のホステスというものが間々出てまいりますが、その発見の端緒は、ただいま申し上げましたように、同業者からの通報その他、通報が大部分という現状でございます。
  110. 鬼木勝利

    鬼木分科員 だんだん時間が迫ってまいりましたが、これはいずれにしても皆さん方の御苦労は大変だと思います。また、お考えは大変結構だと思います。  ここにある四カ条、これは時間がありませんから一々読み上げませんが、これはおたくから出ているものです。この四カ条の取り締まり規定をいつから実施されるか、その点が一つ。  それから、最後に大臣に総合的にちょっと私、お願いがあるのですが、これは単に外国人タレントの入国者のみならず、これは正式なビザを持って入国をする方は別でございますが、そういうもぐりの方の問題をきょう私、取り上げたわけですが、これは全体の一般密航者ですが、承るところによりますと、現在推定で十万人ある。これは流動しているのではなくして、現在日本に在留しておる密航者が十万人ぐらいあるのだというお話を承っておる。  私は九州ですが、長崎に大村収容所がございまして、今度新たに建てかわっておりますが、聞くところによりますと三百人ばかり収容ができる。そうすると、現在日本に密航在留者が十万人もおるとすると、これはもう暗黙のうちに十万人は定着したようになっているのじゃないか。何でも年に二回ほど送還の船が出る。年に二回船を出したからといっても、十万人の密航者ということになれば、これをもっと厳しく取り締まって、年に五回も十回も船を出して送還でもするというようなことにしなければならない。しかし、長崎の収容所には三百人しか入れられませんから、入れるところがないから、送還をさせないで、そのままに十万人定着させてほったらかしているのか。これを年に五回も十回も手をつければ入れるところがない、船は年に二回しか出していない、そういうことで黙認して、十万人ということがみすみすわかっておりながら、むろん推定でございますけれども、放任してあるのか。  こういうことになりますと、先ほどのはそういうよからぬのがやってきて、バンドマンも困ったというようなことの陳情を私、受けたということを申し上げた。ところが、現在日本に十万人からの密航者があるということになりますと、これは大半労働者と思いますが、そうすると、やはり日本の労働者をこれは非常に圧迫する。向こうは低賃金でございます。彼らは労働を目的としていますから、体も非常に強いし、仕事もできます。それを低賃金で雇用する。そうすると、やはり日本人の労働者を圧迫する。これらはおおむね労働者と思います。ほかにもたくさんおると思いますし、いろいろな各種の職業の方がおられると思うが、大体労働者と思う。そうしますと、やはり日本の労働者を非常に圧迫するということになる。  そういう点におきまして、これは大臣にお願いですけれども、何らかの方法でこの密航者はやはり私は整理すべきだ、かように考えますが、その点、大臣のお考えはいかがでございますか、ちょっと承りたい。
  111. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 法務大臣就任早々、各局の所管事項の説明を承りました際に、入国管理局長の説明の中にもそういうことがございまして、先生指摘のとおり、相当な人数の密入国者が在留していることは、労働移民を黙認しているようなものでございまして、わが国労働市場を圧迫することは当然でございますから、鋭意こういう点についての改善を、入国管理当局によく改善策を講ずるように、先生の御指摘のようなことに対応して体制を整えるようにということを申している段階でございます。なるべく早く先生の御指摘のような弊害が除去されるように、一生懸命にやりたいと思っております。
  112. 鬼木勝利

    鬼木分科員 時間が来ましたので、それではどうぞ管理局長さん以下各位の方々、この問題はたいへんむずかしい問題だと思いますけれども、事外国に関係していますから、国際的な問題もございますので、行き過ぎてもいけませんけれども、正常な形をもって入国管理事務を遂行していただきたい。また、国内全般の密航者というものに対しては、いま大臣の御抱負も承りましたので、その点もひとつよろしく御配慮願いたいと思います。  大変ありがとうございました。終わります。
  113. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 次に、和田貞夫君。
  114. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 時間もありませんので、質問は簡単にしますので、御答弁の方もひとつできるだけ簡単にお願いしたいと思います。  私、昨年の秋に所用がございまして網走の方へ参りました。せっかくの機会でございましたから刑務所を訪れて、一回見学をさしてもらうように依頼をしたわけなんですが、たまさか家内を連れておったために、女の人が一緒におるからだめだということで、残念ながら入ることができなかったわけなんですが、まあ刑務所というのは、どこにあっても、おってくれ、おれのところへ来てくれというようなところはないわけです。網走にある刑務所とか、市街地に近い、あるいは市街地に取り囲まれた中にある刑務所、これはやはり住民の感情として、何とかならぬか、こういうことになるわけでございますが、現在、法務省の方で、そのような地元の自治体あるいはこの地方住民の方から、移転をしてほしいという要求あるいは要望をされておる刑務所というのは大体どのぐらいあるか、お尋ねしたいと思います。
  115. 長島敦

    ○長島政府委員 お答え申し上げます。  現在、移転要請を受けておりますのが、五十二カ庁でございます。
  116. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 私の地元にあります大阪刑務所も、その一つに数えられるわけでありますが、これは長い歴史を持っておるわけです。御案内のとおり、ちょうど堺市の表玄関である国鉄阪和線の市駅の駅をおりて三百メーターほど歩けばこの刑務所に到達する、こういう地域でございまして、いわば市の玄関先にある、こういうところであります。  大阪刑務所は、その収容能力が約二千七百二十五人というように言われておるわけですが、いまどの程度の受刑者が収容されておるか、お答え願いたいと思います。
  117. 長島敦

    ○長島政府委員 十二月末で二千二百十一名でございます。
  118. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 この収容能力から言うと、かなり少ないわけですが、これはもっと入れよという意味じゃございませんが、やはりかなりの大きな施設でありまして、最近その定員いっぱいに収容するというようなことはほとんどないように聞いておるわけです。したがいまして、この移転ということに強い要望があるわけですが、漸次この刑務所の施設を、これは市街地のどまん中にあるわけですから、できるだけ縮小していく、そういうことをお願いするわけで、去年も分科会でお願いしたところが、その方向努力する、こういうことでございました。  ところが、昨年、職員の官舎を新たに建てられたわけですね。しかも鉄筋建てです。そうすると、せっかく漸次規模を縮小していく、施設を縮小していくように努力するということを言われながら、そういう鉄筋化した職員官舎が建っていくということになりますと、これは信用しないわけなんです、これは逆行しておるじゃないかということで。確かに市民の感情に逆行しているわけです。今後もなお規模を縮小していくということを言われながらも、そういう既成事実をつくり上げていって固定化していくというようなことなのかどうか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  119. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 和田さん御指摘のようなことがあるようでございます。まことに矛盾していると思いますが、担当者の説明を聞いてみて、いたしたいと思います。私は、それはあなたと同じ気持ちを持っておるわけです。
  120. 長島敦

    ○長島政府委員 御指摘の建物は、あすこに大阪医療刑務所という新しい医療刑務所ができまして、そこに勤務いたしますお医者さんとかその他の職員のために建てたものでございますが、これは、あすこにそれを建てましたから居座るというようなつもりで建てたわけではございませんで、前々から医療刑務所をつくるということがございまして、それに伴ったものでございます。  今後の問題といたしましても、いろいろなものをあすこへ建てていくという考えはございませんが、あすこにあります官舎が非常に古くなってきておりまして、これを立体化するというようなことになりますと、また相当空き地も出るというような点もございまして、ここら辺を地元がどういうふうにお考えになりますのか、集約立体化して空き地が出た方がいいというお考えになりますか、あるいはそういうこともまかりならぬということになりますか。これはまだ、今後地元の方とよくお話をした上で話を進めてまいりたいというふうに考えております。
  121. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 刑務所があって、同じ法務省の敷地であるから鑑別所がやってきた。また来はしないか、こういうことを恐れておったわけですが、いま言われるように新たに医療刑務所が来た、それに伴うところの施設ができたのだ、こういうことになって、施設があの周辺にふえていく、このことをやはり私たちは危惧しておるわけなんです。縮小していくという形に逆行しているわけです。今後なお、いま言われましたような医療刑務所ができた、また何かができていくというようなことがありはしないかということを、ここでひとつ明確にお答え願いたい。
  122. 長島敦

    ○長島政府委員 あそこに、今後新しい矯正関係の施設をつくるという考えは毛頭ございません。
  123. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 先ほどお答えいただきました二千二百十一人の受刑者の中で、いわゆる暴力団と言われる組関係の収容者は、大体どのぐらいありますか。
  124. 長島敦

    ○長島政府委員 約三〇%と承知しております。
  125. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 大体私もそういうように聞いておるわけなんですが、御案内のとおり、この刑務所の周辺が道路に囲まれておりまして、民家が立ち並んでおりまして、その組関係の受刑者が出所する際に、早朝から出迎えと称して自動車を並べまして、そしていかめしい姿でずらっと大ぜいの組関係の者が並ぶわけなんですよ。これには近所がまいっておるわけなんです、普通の姿じゃないわけですから。だれが見ても暴力団員、組関係員ということがれっきとしてわかる姿で大ぜいがずっと林立するわけです。これには、付近の住民が非常に恐々としておるわけです。出てくる者を迎えに行くな、こう言うことはできないかとは思いますが、そういう姿を何とかなくするような方法がないものかどうか。たんぼの真ん中や山奥に刑務所があってそういう姿があっても、これはまあ、付近の住民の方の目につかないわけでありますけれども、とにかく好むと好まざるとにかかわらず家屋が林立しておるわけですから、何とかそのような姿がなくなるような対策というものはないだろうかと思うのですが、何かいい案があったら、ひとつお教え願いたい。
  126. 長島敦

    ○長島政府委員 最近、行刑施設に暴力団の収容者の比率が次第にふえておりまして、出迎えも次第にはでになってくる情勢にございます。大阪以外にも各地でそういう問題が起こってまいりまして、実は私ども、警察庁とも相談いたしまして、真剣にいま対策を立ててきております。  対策として一番大事でございますのは、暴力団員の中で、出所いたします場合にどのくらい出迎えが来るかということをあらかじめ察知することでございます。刑務所といたしましては、暴力団員に面会に来る者、あるいは手紙が参りますが、そういうところから、大体出迎えがどの程度来るという状況がわかります。警察の方は警察の方で、一方情報を集めております。そういうことで出迎え人が相当来るということがわかりますと、刑務所と警察が連絡会議というのを開いておりまして、交通規制の方法あるいは出所させる場合のやり方、いろいろ相談をいたします。それと並行いたしまして、刑務所の方からは本人に対しまして、出迎えを自粛するように手紙を出すように勧めます。それから、それでも効果がございません場合には、刑務所の所長名で暴力団の幹部の方に対して出迎え自粛を要望する。同時に警察からもまた、暴力団の幹部に対して出迎えを自粛するように指導する、こういうようなことをやりまして、それに応じない場合には不利益がある。たとえて申しますと、実際にやりました例は、出所満期で出ます日の午前一時三十分に出所させておる例もございます。こういうふうな意表をついた時間に、予想外の時間に出所させるといことで裏をかくという手もございます。  そういうようなことがございまして、最近成功いたしました例が三つもございました。当初二千人から出迎えが来ると言っておりましたのを、そういう方法をとりまして、結局、家族二名しか来なかったという成功例が二件ございました。こういう成功例、失敗例がございます都度、情報として各刑務所にこれを流しておりまして、それを参考にして対策を立てるようにということで、いま全力を挙げていろいろな手を考えてやっておるということでございますので、できるだけこういう御迷惑がないように、今後なお努力いたしたいと考えております。
  127. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 幼稚園の通園者がおりますし、小中学校の通学者がおりますし、ちょうど出所の時間の前から来ておるわけで、子供にいたしましても、幼稚園の子供を送るお母さんにいたしましても、これはもう恐々としておるわけです。いま言われましたようなことを、特に市街地に面する刑務所につきましては、私は大阪の刑務所だけとは言いませんが、ひとついま言われましたように、厳重にそういうことのないように、付近の住民が恐々としないように、万全の措置を講じてもらうようにお願いしたいと思うのです。  そこで、刑務所の移転につきましては、地元の市町村が、あるいは自治体が、移転先を見つけてくれれば移転することにやぶさかでない、これが法務省の態度です。ところが、移転先を見つけることができるような地域であれば、これはその努力はしますよ。しかし、大阪というようなところで、大阪府下どこを見渡しましても移転先というのは、どれだけ逆立ちになって探しましても移転先は見つかりません。  したがいまして、先ほどお答えいただきましたように、五十数カ所に及ぶ移転を要望されておる刑務所があるとするならば、やはり法務省の方も、地元が移転先を見つけたらいつでも移ってやるぞ、なければいつまでもここで居座っておるのだ、こういうように見られないように、やはり年次計画を立ててもらって、国の計画で、特に市街地の中にあって付近の住民に非常に迷惑をかけるというような刑務所には、やはり順序をつけて、年次計画の中で移転計画を立てていくという考え方に立ってもらわないと、地元ではどうもこうもならぬわけなんです。そういうようなお考えに立っていただいて、今後計画的に刑務所の移転についてお考えになるかどうか、この機会にお聞かせ願いたい。
  128. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいま先生の仰せになりましたように、従来のやり方は、代替地を地元で探していただくということで、いままで相当多数の施設の移転をやってまいりました。ただ、仰せのように、その地元を幾ら探してももう土地がないというような都市が二、三いま出てきております。こういうものにつきましては、その地元という狭い範囲ではとても問題は解決いたしません。  したがいまして、私どもの方も全国的な規模でそういう問題を検討いたしますために、研究チームと申しますか、プロジェクトチームと申しますか、そういうものをつくって、いま全国的視野で検討を始めておるわけでございます。  御承知のように、この問題はなかなかむずかしい問題でございまして、実は国民の皆様方の御理解がもっと進みまして、たとえば、刑務所が移ってまいります場合に歓迎をしていただければ、もっと事は簡単でございますけれども、行こうという目星をつけましても、そこで反対運動が起こる、土地は買収できないというようなことがしばしば起こってまいりまして、そこの作業の進め方、適地の選定等非常な困難がございます。ですけれども、これは逃げを申しておるのではございませんで、そういう面でいまどうにもならないというような施設につきましては、検討を進めておるという状況でございます。年次計画で毎年一つ一つ行くという程度のテンポでは、とても参らないむずかしい問題でございますけれども、そういう向きで順次解決をしたいというふうに考えて努力しております。
  129. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 市民の皆さんは実情というのをわからぬから、たとえば、島をつくってそこへ持っていったらいいじゃないか、こういう意見を言われる方もあるわけですが、しかし、そうはいかぬわけです。やはり刑務所に働く職員もおられることだし、職員の家族もおられることだし、子供さんもおられることですから、学校の関係から市場の関係から、社会環境、生活環境が伴わないとどうにもならぬということはよくわかるわけです。  しかしながら、必ずしも刑務所の施設に職員の官舎が必ず伴わなければならないということではないと思うわけです。一定の距離がありましても十二分に通勤ができる、あるいは非常の場合には直ちに所の方へ出動できる、こういう一定の距離があれば、私はそのことの解決策もまた見つけ出せる可能性も出てくるんじゃないか。必ず刑務所の周辺に官舎がなければならぬというような、旧態依然とした考え方に立ってもらうと、なかなかこの問題の解決ということはできないわけでありますが、いま申し上げましたように、三時間も四時間も離れたところというと、刑務所という性格から当を得ないと思います。一定の距離を置いて通勤ができる、あるいは非常招集の場合には対処できるというようなことがあればいいと私は思いますので、そういうような点を含めて、ひとつ地元にこだわらないで、刑務所の移転計画というものをば法務省の方で国の責任で、地元も協力するが国もここまで積極的に努力をするんだという姿勢を見せるためにも、そういう計画を何とか立てていただきたいものだ、こういうように思うわけですが、ひとつこれについては、大臣の方からお答え願いたいと思います。
  130. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 収容所の全国的な計画的な適正配置については、法務省内で検討を進めております。大阪刑務所のような場合はたくさんほかにもございますが、お説のように、必ずしも職員宿舎と収容所が同一場所になければならぬということでもありませんし、私も、そういう点についてある一つの考えを持って、こんなにしたらどうかというようなことを言っているんですが、それは公の席上で言いますと、いろいろこれはまた、いやなものが来るという妨害が入ったりしますので、そういう点を御賢察の上、いま全国的に洗い直して適正配置計画を立案中、一生懸命やっておる、こういうことでひとつ御勘弁を願いたいと思うのでございます。
  131. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 ひとつ御努力をお願いしたいことを、要望しておきたいと思うわけであります。  そこで、時間もありませんので、私この機会に、法務大臣とお会いし話をするという機会もなかなかないわけでございますので、刑務所以外の問題について、ひとつ要望しておきたいと思います。  今度法務省の予算で、人権相談関係の職員の増員をされたということ、私は敬意を表したいと思うわけなんですが、それにいたしましても、まだまだ万全でないと思うわけなんです。特に、御案内のようにいわれなき部落差別の問題です。この点につきましてはあなたの方で把握されておるわけでありますが、昭和四十七年におけるところの、あなたの方の出先の人権相談所に差別事犯として持ち込まれた件数が約三万です。翌四十八年になりましたら四万を超えておるわけです。四十九年ではおそらく五万件を超えるということで、部落差別を解消していくということでなければならないのに、年々ふえていっておる。増加をたどっておる。しかも、そのあなたの方で受けられた相談件数の中で、完全に処理されるというのは一割にも満たない、一割どころか一%にも満たない、こういう姿であります。それほどこの部落差別の完全解消というのはむずかしいことであります。  政府が、同対審答申を受けましてせっかく特別措置法を制定されて、ことしで七年を迎えるわけです。この特別措置法に基づきまして、ことしも約九百億の予算を組んで政府としても取り組んでいただいておるわけでありますが、しかしながら、同対審答申にも言われておりますように、国民的な課題としてこの問題を解決しなくてはならない。それには国あるいは自治体が責任を持って、責務としてこの問題の解決に当たるんだ、こういう強い姿勢を政府当局も示されておるわけでありますが、なかなかそういうふうにはなっておらない。  これらの問題につきまして、特に国民的な啓発については、たとえば同和教育については、単に被差別部落の住民を対象とした同和教育をやっていくとか、あるいは社会教育を充実していくということだけじゃなくて、むしろ、被差別部落の存在しない地域にわたっても、全国民を対象にして、なぜ部落というものが存在をしたのか、なぜ部落というのはつくられていったのか、こういう歴史的な過程というものも国民の中に理解をさしていく、そして、いま政府あるいは自治体がこれだけ一生懸命になってやっておるんだから、国民皆さん方の御協力をひとつお願いする、こういう啓発活動というものが非常に欠けておるわけです。これはどの省でやるかというと、おれのところはこうでないとかああでないとか言う。やはり人権問題を所掌されておる法務省としては、先頭を切ってこの問題に取り組んでいただかなければならないと思うわけであります。  総理府の広報室というのがありまして、中央紙、地方紙、あるいはテレビ、ラジオ、雑誌、あらゆる刊行物、宣伝網を通じまして政府機関の広報活動をやっておられるわけでありますが、その経費が昨年一年間で三十億を超えておるわけです。三十億を超えるような予算の中で、措置法制定以来七年目を数える今日まで、まだ一回たりととも、あるいは新聞に一行たりとも、国民的な課題となっておるこのいわれなき部落差別の解消のために、政府がこれだけ一生懸命にやっておるんだ、ひとつ皆さん方の御協力も頼みますよというような啓蒙活動というものは、一回もなされたことがない。そういうことでありますから、なかなか国民的な課題になり切らない。なり切らないから、せっかくあなたの方で、政府の方で努力をされましても、予算を使い過ぎるとか、予算が多過ぎるとかいうような論議までも国会で出てくる、これが実態じゃないか、このように思うわけであります。  したがいまして、せっかくの機会でありまするので法務大臣にお願いをしておきたいわけでありますが、関係省庁とひとつ御連絡をとっていただきまして、せめて年に二回や三回、できるならば月に一回でも、やはり政府の広報活動を通じて、部落差別の問題について、ひとつみんな力を合わせてやりましょう、こういう啓発活動をぜひともやってもらうように努力してもらいたいと、私は強く要望したいわけでありますが、一言、私の要望について法務大臣の方の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  132. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 部落差別の問題はなかなかむずかしい問題でございますが、要するに、差別されていると考える人の心の問題、また、差別をするような思い上がった非部落民の心の問題が根底にありますものですから、ただ予算額を増額して啓蒙活動をやれと言いましても、部落差別をなくする啓蒙活動をやられることが差別だというようなことになったり、そういうこともございましてね。  しかし、これは法務省の人権擁護局だけの問題ではなくて、一般教育問題、国民全体、内閣全体の問題でありますから、その点については、和田さんもそのようにお考えのようでございますし、われわれも一生懸命に今後、まず法務省の内輪の見解をまとめまして、それから閣議の席上等において、われわれの考えておる解消の方策はこうなんだ、ついては、これは単なる一省でよくすべきものじゃないから、内閣全体としてやらなければならぬということで、まずそういう意思統一をして、しっかりかからなければならぬというふうに思うのでございます。これはなかなかむずかしい問題でございますね。お答えにならぬかもしれませんけれども先生のお気持ちは私らと本当に同じです。一生懸命にやりたいと思います。
  133. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 時間が来ましたので、終わらせていただきます。
  134. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 次に、太田一夫君。
  135. 太田一夫

    太田分科員 それでは、私のお尋ねを申し上げます。  これは法務省、運輸省、自治省にわたってのお尋ねになりますが、要旨は、会社更生法という法律があります。このごろの過密過疎の問題にも関連をしておりますが、とりわけ、経済界の変動に遭遇いたしました地方のバス企業が採算が悪化いたしまして、借入金はふえる、利払いに耐えられない、物を買おうとしてもその金がない、賃金を引き上げなければ従業員はとどまらない、安全施設は講じなければならない、住民の要望にもこたえなければならないというので、こういう公共性を持つバス企業が、非常なバランスシートの悪化というものに直面をいたしまして、これを、事業再建の道を会社更生法に求めるという傾向が出てまいりました。  更生法の内容については、私の方よりは皆さんの方からお話をいただいた方が妥当であると思うのですが、更生法というのは、結論は、このバス企業というようなものを一つ具体的に考えてみますと、国民の足、県民の足、住民の足というものを守るという使命がありまして、採算は悪いけれども、運輸省からの補助金ももらいながら、県や市町村の助成金をもらいながら維持しておりましたのを、もうここまで来たならばそんなことを言っておれない、公共性なんということは言っておれないというので、バス路線の廃止、それから回数の削減、安全施設の弱体化、従業員の整理、こういうようなことを考えつつ、さらには、一般の担保権のない債務に対しまして、会社更生法によるところの切り捨てをねらいまして、再建をもくろもうというような傾向が出てきたのです。     〔主査退席、木野主査代理着席〕  私は、一般の商事会社とは違いまして、認可事業であるバス企業が更生法の中に逃げ込んで、ただ会社だけ残れば、もうかるようになれば、国民も市民も県民も労働者も債権者も困ろうが、そんなことは関係ないというのは、いささか問題ではなかろうかと思いますので、そういう破壊的な更生法に隠れることは許されないと実は思うわけなんです。  そこで、最初に法務省にお尋ねをいたしますが、更生法第一条に、「この法律は、窮境にあるが再建の見込のある株式会社について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的とする。」とあります。この会社更生法の精神についてお尋ねをしたいのでありますが、認可事業の公共的な機関が、民営バス事業が、これを利用しようとすることは行き過ぎと申しますか、いささか穏当を欠くと申しますか、そういうそしりを免れないように思いますが、法務省としては行政的にどうお考えでございましょうか。
  136. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 お答えいたします。  会社更生法の趣旨は、ただいま先生お読み上げになりましたような、一条に規定されておるところに尽きておるかと思います。  そこで、いかなる企業でありましても、窮境に陥り、そしてそれを再建することが社会のために必要であると認められた場合には、更生手続によってその再建が図られることになっておるわけでございますが、しかし、いろいろ会社によって事情も異なるものがあろうかと思います。そういう場合に対処いたしますために、裁判所といたしましては、会社更生手続開始の申し立てがありました場合に、関係の監督行政庁に通知いたしましてその意見を求めるとか、あるいは調査委員というものを選任して調査をさせるというような手続が規定されておりまして、そのような意見聴取とかあるいは調査によりまして、会社更生手続を進めるのが妥当であると認めた場合に、初めて会社更生手続の開始決定をする、こういうことになっております。  したがいまして、裁判所が適正に法律を運用されまして会社更生手続が進められておるということでありますれば、本来の目的のとおりに運用されているということになろうと思うのでありますが、私、個々の事件につきましては承知いたしませんので、一般的な点につきましては、そのように理解しておるということでお答えさせていただきます。
  137. 太田一夫

    太田分科員 民事局長さんのお話、それはそのとおりのたてまえになっておるわけでありますから、私も理解いたしますけれども裁判所が適正に運用されてそれを行うことができれば、更生法の適用そのものはそう問題を起こさないと思います。そういう法体系があって、これが生きておることは事実でありますから、別に差しつかえありません。  ただ、私どもが思いますのは、認可事業であるということですね。自由企業でありませんから、認可事業であるバス企業が、しかも普通ならば、過疎地帯においては採算を無視してバスの運行をしておるというのが日本全国のいまの実態であります。それは、そうしなければ病院に行くことも他村に出ることもできない人口過少地帯におきましては、必要やむを得ざることでありますので、その要望にこたえて、採算を無視して運転をしておるということは、赤字を覚悟しておるわけです。そこで、その赤字の一部を運輸省は補助金として支給する、また県も同様に出す、場合によっては、もっとひどいところは市町村も出す、こういうようなたてまえになっておるわけであります。したがって、その辺の商事会社あるいは製造会社が非常に窮境に立ったという場合とは違いまして、会社更生計画の策定等につきましては非常にむずかしいものがあると思います。最後には私はできないと思うのです。更生計画の策定、その実施ということにはならぬだろうと思いますが、そこに逃げ込むことによってまず申し立てをすれば、財産保全命令は出ますから、支払い手形の決済をせぬでも済むという事態が起きます。そこで、もうそういうところに逃げ込もうかという悪い気持ちが出ておるのです。  管財人の選定あるいは調査委員の選定とかいうのは、適当な人があるかないかなかなかわからないのでありまして、地方裁判所の窓口だけに会社更生法の申し出を受け付けられるところがあるわけですから、そこにわあっと押しかけられたら、裁判所もたまらないと私は思うのですよ。  これについて、この際、最高裁の田宮総務局長さんにお尋ねをいたしますが、裁判所といたしましては申し出があると受けざるを得ない。それで更生の見込みの有無を調べさせる。更生の開始ということになれば管財人を選定する。それから更生計画をつくらせて、それがいいか悪いか見て判断をして、認可するならする、しないならしない、こういうことをしなければなりませんが、果たして裁判所は、一般の商事会社は別として、こういう公共性のある機関、認可事業というものに対して、それをなし得る用意というか、準備はあるのでございましょうか。能力という言葉を使うと問題があります。私は能力を疑っておるわけじゃありませんけれども、そういう特殊な公共事業、認可事業に対して、更生の見込みがあるかないか、そこまで裁判所が調べるということだけでも大変でございましょう。たくさんの争訟事件があるところにそういう問題がどんどん割り込むことについて、どんなものでございましょう、田宮総務局長さんの御見解を承っておきたい。
  138. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 現在の更生法のもとにおきましては、株式会社ということで、特にその企業がどういう事業をしているかということについて差別をしておりませんので、更生手続開始の申し立てがございますと、裁判所としては、それが一定の要件に合致いたしている以上は、これを受け付けざるを得ないわけでございます。  更生手続の申し立ての受け付けばそうでございますが、果たして手続を開始するかどうかという点につきましては、法律にもいろいろ細かい規定がございまして、特に申し立てが誠実になされたかどうかという点、また更生手続によることが債権者の一般の利益に適合するかどうかといったような点を、十分調べるわけでございます。確かに、裁判所といたしまして、当該企業が果たして再建の見込みがあるかどうかという点については、いろいろむずかしい、苦労するところでございますけれども、この点につきましては、当該企業の関係者、銀行、一般債権者、労働組合といったようなところを審尋いたしまして、さらには、調査委員等に命じて当該企業の将来性というものを十分検討した上で開始決定をいたすわけでございます。開始決定をしたからといって、直ちに更生計画ができるわけではございません。また更生計画をつくるのに際しましても、十分調査検討した上で計画をつくりまして、さらにまたその計画が実行可能であるかどうかという点につきましても、管財人その他の関係者を十分審尋し、その他検討いたしました上で、最終的に当該更生計画を認可するという手続をとっておりますので、更正手続の運用につきましては、裁判所としては、一般債権者等に犠牲が強いられないように十分注意をして運用している、こういう状況でございます。
  139. 太田一夫

    太田分科員 総務局長さんにもう一度重ねてね尋ねをするのですが、そういうことであろうと思うのですよ。債権者に迷惑がかからないようにするという考え方は、一般商事会社の場合そういうことだと思うのです。私が申し上げております。認可事業であるバス事業というものは、市民、県民、国民に迷惑がかかるのですね。更生決定となれば必ず過疎路線は切り捨てでございますよ。これは一つの予見された先例がありますから。そうなれば、バスがなくなる過疎地帯というのがたくさん出てまいりますから、当該自治体は半身不随になるわけです。住民の福祉なんというのは飛んでしまうわけです。  そこで、更生の見込みがあるかないかを調べるのに調査委員を置くとおっしゃいますけれども、これは最後は裁判官の判断でございましょう。各地裁がそれだけ忙しい中で、さらにこういう特殊な認可事業に対してまで、再建の見込みの有無について突っ込んだ研究やらいろいろ配慮をするということは、裁判官にとって大変なことだと思うのです。普通の場合と違うのですからね。東京の民事部というのはなかなか有名でありまして、ここには有能な方が雲集していらっしゃるということでありますが、これは申請が非常に多いからそういうことになっておるのでしょうね。地方だって、これから、バス会社などはたまりませんから、そこへ逃げ込もうとするのですよ。そういう動きがもう出てきているわけです。これは岩手県の例でございますが、岩手県にはそういう例が二社出ておるわけです。認可事業であります関係上、一人や二人の管財人が全権を握って会社の運営を行い、その再建計画をどんどん実施していくなんということは、認可されたときの諸条件からはるかに逸脱することになるような気もしますので冒険だと思うのです。  ですから、そういう公共性を持つ認可事業に対してはいかがなものであろうか。十分対応していただけて、いや、そんなことをしてはだめだよ、自主更生でいきなさいとかなんとか言える能力とか判断を速やかに立ててくださるような仕組みになっておればよろしいけれども、来た以上はやらなければならないというたてまえだから、何でもやりますよというよろず屋さんのようになったときには大変だと私は思いますが、いかがですか。
  140. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 確かに、御指摘のように、認可事業等についてはいろいろむずかしい問題があると思いますけれども、現在の法律のたてまえでは、そうした認可事業について特別の取り扱いをするということになっておりませんので、裁判所としてはそれを事件として受け付け、これを検討しなければならないということになっておるわけでございます。  確かに認可事業の特殊性ということで、当該裁判所としてあらゆる角度から十分慎重に検討するということは必要だと思いますが、そのような具体的な事件の処理ということになりますと、私どもが云々するというよりは、当該裁判所が判断することでございますので、その点、御理解いただきたいと思います。
  141. 太田一夫

    太田分科員 川島民事局長さん、法務省として、たてまえ論としてどんなものでございましょうかね。先ほどからのお話ですと、利害関係者の意見を聴取するとか調べるとかおっしゃいましたが、当該認可権を持つ運輸省なら運輸省の意見をも徴することは、大事な要素ではなかろうかと思いますが、そういうことはどんなものでしょう。
  142. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 お話を伺いまして、非常にむずかしい問題があるということを承知いたしたわけでございますが、会社更生法で監督官庁の意見を求めるという制度がございますので、そういう認可事業につきましては、そういった点を特に重視いたしまして、運用されることが望ましいことであろうというふうに考えます。
  143. 太田一夫

    太田分科員 よくわかりました。  そこで、ちょっと運輸省にお尋ねをいたしますが、バス事業の赤字対策としては、いま運輸省といたしましては、生活路線維持のための諸補助制度がありますから、これによって再建をされるつもりでありましょう。そしてまた、ことしは、昨年よりは二倍以上の補助金額をも予算化されておるように承っておりますので、補助金によって赤字路線も維持して、県民、住民の要望にこたえるというバス事業の本来の目的を発揮させるに遺憾ないような措置は、相当講ぜられておるのではないかと思います。  ある企業経営者が、銀行からの借入金の非常な重圧に悩み、さらにこれ以上もう借り入れをふやすこともできない、逆に元金の返済、利子の支払い等をせがまれ、さらに物品等の買い入れ金の決済を迫られますと、そこで、若干モラトリアムの思想がある会社更生法というのは、垂涎の的であろうと思う。そこに逃げ込もうとする気持ちもわからぬわけではないが、これは四方八方に迷惑をかけるものであって、会社更生法で得をするのは当該法人である株式会社というもの、それからもう一つは債権が保全される銀行だけなんです。あとは七割か八割債権切り捨てでありますから、担保を持たない債権者なんというものはひどい目に遭っておるわけです。同時に、先ほど申し上げましたが、労働者が大変ひどい目に遭うわけです。  そういうような傾向に対して、運輸省は、赤字バス事業の再建策はどうあるべきか、この点について、更生法との関連についてお答えをいただきたいと思います。
  144. 真島健

    ○真島説明員 バス、特に先生がいまいろいろお話しになりましたような地方の過疎地域を走っておりますバス事業、この経営改善あるいは住民の足の確保というようなことは、私どもの最も重要な課題の一つでございまして、この件につきましては、先ほど先生もお触れになりましたが、私ども、従来の補助制度を四十七年度から大幅に改正をいたしまして、いままでのやり方から一歩進んだわけでございます。  その要旨は、過疎地域におけるバスの採算悪化というのは、これは普通の私企業として適正な運賃水準で十分採算のとれない路線が出てまいっておる、こういうことでございます。しかも、それが地域住民の足の確保ということにつながるということで、私企業に対してそういう社会的な負担をかけるということは、これは国あるいは公共団体として看過できない重要な問題でございますので、そういう社会的負担に対する国及び地方公共団体の援助という制度を四十七年度に確立いたしまして、それ以来毎年相当の補助制度の拡充をやってまいりまして、五十年度におきましては、先生先ほどおっしゃいましたが、四十九年度の二・六、七倍の予算を一応いま御審議を願っておるわけでございまして、これが通ることによりまして、地方バスの経営改善は、四十九年度に比較しても非常に前進ができるのではないか、こう考えております。  なお、金融、資金繰り、これは補助金が増額になりましても、御承知のように、出る時期が年度末になるというようなことがございまして、その間の資金ショートによる会社経営の困難というものをなくする意味で、特に四十九年度春闘以来の非常な金融難の情勢に対処するために、私ども政府関係の三金融機関、またそういう中小でないバス事業ももちろんございますので、そういうところに対する、日銀関係にいろいろお願いをいたしましての資金繰りの緩和というようなことを、懸命に努力を続けておる次第でございます。  以上が、私どものいま基本的にバス経営改善のためにとっておる施策でございます。
  145. 太田一夫

    太田分科員 先ほど川島局長さんがおっしゃった中に、当該監督官庁である運輸省の意見を聞くということは、法にも制度化されておるから、これは重視してやられることが望ましいとおっしゃいましたが、これは運輸省、今後ある場合には、当然あなたの方に意見を求めてこられるものと確信をしておられますか。
  146. 真島健

    ○真島説明員 法務省当局で関係官庁の意見を徴すると言っておられますので、先ほど先生がおっしゃいました岩手関係につきましても、まだこれは裁判所でいろいろと検討しておる段階で、更生法の適用決定という段階に至っておりませんが、しかるべき時期に御相談があるものと考えております。
  147. 太田一夫

    太田分科員 次は、自治省にお尋ねをいたしますが、もしもこの更生計画実施と相なりましたときには、債権者が七割も八割も債権を失うということや、株主が減資一〇〇%なんという、そういう波をかぶるということも当然あり得ると想像しなければなりませんが、バス路線の場合においては合理化ですから、当然に過疎バス、過疎路線の切り捨てが行われます。その場合には、住民の要望があれば、自治省は白バスを出して住民の要望にこたえるということに相なると思いますが、市町村営のバスを出すということが、今後各地において赤字バスの増加に伴って行われる、更生計画の決定開始と相なればそういう波を受けますが、そういうことは望ましいことだとお考えになりますか、どうですか。
  148. 関根則之

    ○関根説明員 過疎地域におけるバスにつきましては、現在民営で行われているものは、できる限り民営として継続することが望ましいわけでございますが、先生お話しのような、いよいよやむを得ない事態に立ち至りまして、住民の足を確保するためにどうしても市町村でそれを運行せざるを得ないという場合には、やはりやむを得ない措置としてみずから経営をしていくというやり方について、やむを得ないものというふうに考えております。  なお、その際には、ことしから運輸省の方に代替バスの開設費についての補助金等も盛ったようでございますが、それらに対する裏づけ財源につきましては、自治省としても財源措置をしていきたいというふうに考えております。
  149. 太田一夫

    太田分科員 地方財政の困窮化の折から、さらに大きな赤字をしょって、民間バス会社にかわって赤字をしょってもやむを得ないと考える自治省は、まことにもって偉とするに足ると思うのです。偉大なる偉だと思う。本当にそれを自治省の総合見解としてよろしいかどうか、課長さんですから私は若干疑いますが、時間がありませんから、これはさらに別の機会をつくります。  最後に、法務大臣、いまの会社更生法とバス会社という関係について、何か所見はありませんか。国鉄も更生法にかけたらいいだろうという意見もあるくらいですからね。赤字路線をどんどん切っていけばいい、そして切った路線は、いまのお話で自治省に押しつけていく、そして普通の債権者は七割、八割も犠牲をしのぶ、しばらくの間はモラトリアムだ、支払い停止だというような荒手術というのは、一般のバス会社などがやるべきことじゃないと私は思っておりますが、そういうことは裁判所の司法権の発動でありまして、私どもがいま具体的なことをとやかく言うことではないが、ただ、法のたてまえ論としてはいかなるものであろうか、何か御感想がありましたら、最後に一言だけおっしゃってください。むずかしいことですね。
  150. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 一般の国民のいままでの受けておった利益が、急に断ち切られるというようなことについて、国民の権利を、法務省としても考えるべきではないかという御趣旨のようですが、これは運輸行政、地方行政など各省にまたがるいろいろな問題がありまするから、研究をさせていただきますようにお願いをいたします。
  151. 太田一夫

    太田分科員 終わります。
  152. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、井上泉君。
  153. 井上泉

    井上(泉)分科員 いま、法務大臣が判を押すと、すぐ執行のできる死刑囚は何人ぐらいおりますか。
  154. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私、ちょっと数字を覚えておりませんから、刑事局長から数字をお答えさせます。
  155. 安原美穂

    ○安原政府委員 記憶に基づいて申し上げるので、一、二名違うかもしれませんが、現在、四十七名と承知しております。
  156. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、その四十七名で、法務大臣が就任をされてから、この判を押した死刑囚はありますか。
  157. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いろいろ忙しい中でサインする場合があるから、その中にはあるかもしれませんが、いまのところはそういう記憶はございませんです。
  158. 井上泉

    井上(泉)分科員 法務大臣、大物の法務大臣と言われる人が、人の命にかかわるのをそんなに簡単に扱うんですか。本当にこれは常識的に考えられぬのですが。
  159. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 だから、死刑執行のサインであれば、きっとそんなことはきちんと、これは大事ですよ、とあると思うのです。したがって、いままでは私、そういう場面に遭遇しておりませんから、四十七人いまだ全部、死刑執行一人もしておらぬ、こういうことであります。
  160. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、刑事局長に重ねてその点を確認しておきたいと思いますが、法務大臣は大物なるがゆえに、たくさんの書類をさっさと判を押した中に、そういうものもあるかもしれぬというようなあやふやな話をされておったのですが、万が一にもそういうことはないと思うのですが、あなたが出した大臣決裁の判の中に、死刑囚をもう処刑せよという大臣判をもらったことはありますか。
  161. 安原美穂

    ○安原政府委員 死刑の執行ということは、非常に深刻でかつ重大なことでございます。したがいまして、従来から、何大臣のときに死刑を執行したかどうかというようなことは、当該大臣にとられましても心を痛められる事柄でもございますので、何大臣のときに、死刑を執行したかということは、仮にございましても、申し上げることを遠慮さしていただいておりますので、今回につきましても、さような見地からひとつ御了承をいただきたい、かように思います。
  162. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは何大臣のときにどうやったということは問いませんが、いま稻葉法務大臣が就任をされてからは判をついてないかということですから、その点、非常に大臣が大物ですから、悪く言えばぼやっとした気持ちで判をついておる中にそういうものがあっては大変なことなので、いま法務大臣が、事人命に関することであるから、そういうことは判をついてないだろう、こういう話を、私の二回目の質問でそういうことを確認された御意見だったのですから、あなたに確認をしておきたいと思うのです。
  163. 安原美穂

    ○安原政府委員 大臣が間違ったことを仰せられるとは思いませんので、大臣がそうおっしゃればそうだというふうに御理解いただくべきかと私は思いますけれども、私の立場からは、大臣からはそういう決裁がございましたということを申し上げるのは御勘弁いただきたい、かように思います。
  164. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、大臣がそういう決裁をしていないということを信頼をして、私は硬骨の人として——うっとりの恍惚じゃないですよ。かたい骨の硬骨の人と言われておるあなたでありまするから、あなたの言を信頼して、あなたが就任以来まだ死刑囚の死刑執行の判を押してない、こういうことを承知しておって間違いはないでしょうか。
  165. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 事人命に関することでございますから、いろいろ決裁を持ってきますけれども、これは大したものでないとか、これはちょっと見ておいてくださいとか、いろいろありますね。死刑の執行の判をとるに、これは大したことでございませんなんという刑事局長があるものじゃないです。必ず、これは死刑執行の判でございますよ、こう言うにきまっていると思います。したがって、そういう重大な決裁書類に、いまだ出くわしたことはございません。
  166. 井上泉

    井上(泉)分科員 結構なことです。人の命を断つような判を押すことは、これはだれしもちゅうちょすることだと思いますし、また、あなたのような法律に非常に詳しい、しかも人権を守るために弁護士としての仕事も経験を持っておられる方が、私は、死刑囚にそう簡単に判を押すものではない、こう信頼するわけです。  そこで、私はこのことについて特にお尋ねしたいのは、いわゆる帝銀事件で宮城拘置所で拘置をされております平沢貞通さんが、この前は非常に重態のために、一時刑務所外の病院で診断を受けて、そしてその後また刑務所に帰ったということを聞いて、あのときに、どうしてもっと、俗に言う外で療養さし、そしてまた、これは何十年も生きる命でない、あれだけの重症であるのに、しかも戦後三十年も経過した今日、この平沢氏の状態を考えたときに、私は、やはり人権というものを考えた場合に、もう平沢さんに対しましては、これは何らかの形で釈放し、刑務所外で療養のできるような道を講じさすのが温かい政治の姿ではないか、こういうように思うわけですが、大臣、どうですか。
  167. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 お尋ねは、普通の病院で療養さしたらどうか、拘留を解除したらどうかというお尋ねのようでございますが、死刑執行の点については一つの考えを持っておりますけれども、いまの状態で、あの病状で十分治療、療養等は行き届いていると思いますので、さらにこれを世間の普通の病院で療養をさせる必要は、いまのところないように私は思っております。
  168. 井上泉

    井上(泉)分科員 死刑執行の判を押すということについては考えもある、こういうお気持ち、これは非常に含みのあるお気持ちだと思うわけであります。  そこで、いま、この平沢さんがどういう状態の中で宮城の刑務所の中におられるのか、御説明願いたいと思います。
  169. 長島敦

    ○長島政府委員 先ほど先生おっしゃいましたように、一時、平沢の病状が悪くなりまして、肝臓機能等に障害がありましたほかに、悪性の疾患があるのじゃないかという疑いもございまして、御承知のように監獄法の四十三条という規定がございまして、監獄内で医療を行うのが適当でないという場合で、情状にかんがみて相当と認められるときは、外部の病院に移送ができるという規定がございます。そういうことで、東北大学の方で精密検査をしていただくということで移したわけでございますけれども、検査をいたしました結果、老化現象、肝臓機能障害、急性肝炎等がございましたけれども、治療いたしました結果、そういった肝臓機能障害は正常化いたしましたし、食欲も出まして体力が回復するということで、病院側の判断としては、後は刑務所の病室で十分に治療ができるという状態でございましたので、刑務所へ連れ戻したということでございます。  連れ戻しましてから後にも、刑務所におきましては、特別に本人のために病室をつくりまして、東北大学でやりましたいろいろな医療措置とか、あるいは東北大学で食べさしておりました献立等を参考にしまして、その後引き続いて適切な医療措置をとりますほかに、食事等につきましても、バランスのとれた食事を給与するということで、退院いたしました後も、食欲も一応ありますし、体重も変化はないという状態で、現在病室に入っておるという状況でございます。
  170. 井上泉

    井上(泉)分科員 この平沢さんの事件は昭和二十三年で、この当時の、いわゆる占領中のいろいろな事件の中で、死刑囚の七人、だれそれということは、その当時の法務委員会等でもその氏名は明らかにされなかったということでありますが、しかし、これは占領中で、しかも死刑執行もしてないそういう方を、占領中のことでありますので、いろいろ無理のいった取り調べもあったのではないかというようなことから、相当年月を経過した者をもう恩赦を与えよ、こういうことで、神近市子先生が本院に在職中にずいぶんこの運動にも積極的に取り組まれて、そして、もはやそのことが実行されるという土壇場まで来ておったけれども、平沢さん自身も釈放されると思ったし、あるいは神近さんも釈放されると思っておったところが、平沢さんは釈放されずに、その当時の同じ死刑囚であった山本とかあるいは山崎とかいうような何人かは釈放されたという事実があるわけであります。  こういう点から考えまして、なぜその平沢さんを釈放しなかったか、このことを、当時の新聞やあるいはまたその当時の本院での経過等を調べてみますと、何かしら法務官僚が、平沢貞通という死刑囚は非常に世間で話題になってきておる、話題になってきておるから、それに恩赦を与えるということは、そういう運動にいわば負けたというような印象を強く世間に宣伝するようなものである、社会的ないわば影響の少ない山本という女の方や、あるいは山崎という強盗殺人の犯人なんかは余り騒がぬから、新聞も書き立てぬから、これは恩赦を与えてもよかろうということで恩赦を与えたということを聞くわけであります。  そこで私は、人権を守る意味において、なるほど宮城の刑務所の中におっても外で療養するよりも結構だ、こういうわけですけれども、人間は死ぬるときだけは刑務所の中で死なないように、同じ病床にありながらでも普通の病院で一生を終わらすようなことをしてやっても、何ら日本の司法当局、いわゆる法務当局の権威に関するということにはならないと思う。むしろ、大臣が決断をもって恩赦を与えて、そして、本当に何よりも大事な人間の命というものを——もう八十三、四歳という年でありますから、自然にほうっておいてもそう九十も百も生きないと思うのですが、自然に死ぬるを待つということではなしに、そういう占領中の事件で恩赦の運動も盛んに行われ、その中で一度は、小林法務大臣のときなんかは、赤松先生やあるいは神近先生なんかに、もう任しておけ、大丈夫だ、こういう話までされたということが言われておるわけですが、大臣、この際、人間尊重、そして、老人を大事にせよというようなことがいま政治の通り言葉になっておるわけですが、もう平沢さんを執行停止あるいは恩赦というような形で外へ出すような、そういう気持ちは起こらないですか、ひとつ大臣見解を承りたいと思います。
  171. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 人の命を断つことには違いありません、死刑の執行ということは。一度執行されれば、回復しがたい重大な結果になるわけであります。したがって、死刑が確定いたしましても、法務大臣としては刑の執行命令権者としての立場から、十分これを精査し、慎重に執行の是非を決定すべきことはもとよりであり、特に本人から、再審の請求や恩赦の出願があった場合においては、その結論が出るまでの間、執行を差し控えることも必要であると考えておるわけです。  いま先生の御質問の事件につきましては、前述の事情に照らし、直ちに執行命令を発することは考えていない次第でございます。しかしながら、死刑確定者については、懲役等の自由刑の場合のように、高齢を理由とする刑の執行停止の制度もございませんことは御承知のとおりです。また、それでありますから、高齢、病気等を理由として出獄されることは、いまの法律制度には反することでございまして、承れば、中央更生保護審査会に恩赦出願中でございまして、もしこれが恩赦に浴して自由刑に減ぜられるというようなことになれば、その制度が当てはまるわけでございますね。したがいまして、その中央更生保護審査会において恩赦の当否について審理中でございますので、その審理の結果を十分注意深く見守っておるという心境でございます。
  172. 井上泉

    井上(泉)分科員 与えられた時間がありませんので、私、多くを申し上げませんが、この平沢、いわゆる帝銀事件につきましては、いまなお事件の内容につきましてはいろいろと意見がなされておることであるし、しかもまた老齢であるし、大臣が執行を考えていないということの中で、恩赦の請求が通るような、そういう配慮を私はぜひひとつ考えていただきたいということと、やはりそういうふうな者については、いま法律にはない、法律にはないと言うけれども、やはり法律の名によって人を殺すのでありますから、殺すということは殺人ということで、それは法律で殺せるんですから刑法にはかからないのですけれども、やはり殺人犯であっても法律でもって命を救うような道を、私は法学の権威である大臣に考えてもらいたいと思うわけですが、そういうお気持ちはないですか。
  173. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、中央更生保護審査会の審理が結論が出まして、そして減刑というようなことになりますれば、それは無期といえども自由刑になるわけですから、そういうことになれば現在の法律でやれる。そういう方向になるかどうかは、一々具体的な事件について、これはこうせい、あれはこうせいと言うて、法務大臣が中央更生保護審査会に具体的な指図をするということは、この審査会の独立性といいますか、適正な審査にいろいろな影響を与えまして、慎重な審理に支障を来すというおそれもございますので、万事この審査会の結論待ちというのが、法務大臣稻葉修の現在の心境でございます。
  174. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは大臣、結局、法務省のそれぞれの機関によってそういうことが行われるということであって、大臣としての面目というものはどこにあるだろう、こういうふうに私は思うわけでありますが、その点については大臣もそれなりの見識を持っておられると思うので、このことはいずれ次の機会に譲りたいと思うわけですが、牢獄で死ぬような目に遭わさないように、私はぜひひとつお願いしたいと思うわけです。  それで、もう一つ狭山の事件、つまり、狭山裁判ということによって石川青年が高裁で無期懲役の判決を受けておるわけです。狭山事件というものを、ここで裁判事件がでっち上げであるというようなことを論争しておりますと、これだけで大変時間をとるわけです。そこで私は、この石川青年は当時十八歳であった、しかも、逮捕したときには別件逮捕であった、そして、その石川青年はいわゆる未解放部落の青年である、そういう中でこの問題が取り上げられたということは、その事実経過から見てよくわかるわけです。  当局は、何も部落の人間だからそうやったとは言わないと思うのですけれども、しかし、私はそのことをここでは論議をいたしませんが、少なくとも最高裁へ上告もいたしておる段階でありますけれども、十八歳から今日まで、一九六三年ですからもう十二年たっておる。十二年の間まだ刑務所の中で拘置されておるということは、この石川青年の青年時代というもの、青春というものを刑務所の中に閉じ込めておるわけで、これは最高裁の裁判が行われるまで保釈というふうな処置は考えられないものかどうか、そのことを事務当局の刑事局長の方から御見解を承りたいと思うのです。
  175. 安原美穂

    ○安原政府委員 保釈は、御案内のことと思いまするが、職権または被告人側からの請求によってきまることでございまして、検察当局をあずかっておりますわれわれとしては、保釈をすべきであるとかないとかいうことを申し上げることはできないわけでございますが、法律的には職権で裁判所が保釈をするということはあり得ても、いわゆる必要的保釈と申しますか、それには当たらない重い罪名でございますので、結局、裁判所の職権で、あるいは請求によって、あるいは裁判所の考えで保釈をするかどうかということでございますが、絶対に保釈が不可能であるということではないと思いまするけれども、恐らくはこの種の罪名から考えまして、非常にむずかしいのではないかと第三者として思います。
  176. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、そういう問題についての法律的なことはわからないわけですけれども、いま刑事局長の言われるのには、裁判所の権限、裁判所の判断によって保釈ということはあり得るけれども、自分としては、この事件の性質からかんがみて保釈はむずかしかろう、こういう推測をされた御意見だったですが、くどいようですがそうですか。
  177. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほど申しましたように、そういう権限も持たない者のいわば第三者として申し上げると、保釈には、御案内かと思いまするけれども、刑事訴訟法の八十九条で必要的保釈というものがございまして、「保釈の請求があったときは、左の場合を除いては、これを許さなければならない。」とありまして、「被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したものであるとき。」には、その保釈を許さなければならないことになっていないという意味において、結局は裁判所の職権で許すかどうかということになるわけで、裁判所が適当と認めるときは職権で保釈を許すことができるということになっておりまして、適当と裁判所が認めれば保釈を許すことができるわけでございます。  しかし、先ほど申しましたように、非常に重い罪を犯しておる状態というようなことで、法律自体が保釈を許さないでもいい罪名であるというようなこと等考えますと、第三者としての意見でございまして、ある意味においては責任のない言い方ではございまするが、非常にむずかしいのではないかという感触を持っております。
  178. 井上泉

    井上(泉)分科員 むずかしい感触を持っておるし、常識的にその法律の条文から言うと、そういう保釈を許さないことに当てはまるであろう。それのみで解釈すれば、そういう理解がされるわけですけれども、しかし、やはりそういうような場合でも保釈の申請を出し、それで裁判所が、これはそういうなにもあるけれども、これこれの理由で保釈をしてもよかろうという判定もあり得るという、それは過去に例があったのかどうかは別といたしまして、そういうことがあっても、それは裁判所の権限であって、あなた方の権限ではないのだ、こういうことですか。——それで答弁はいいです。  そこで法務大臣、これはあなた若い者のことを考えてひとつ判断をしていただきたいと思うわけですが、こうした十八歳のときに、つまりまだ成年に達していないときに、私どもの方に言わせればでっち上げ、つまり差別という、未解放部落という一つの偏見のもとに、この石川青年が豚の飼育所で働いておった、その豚の飼育所のスコップがなくなった、そのスコップがなくなったことを調査するために、そこらの豚の飼育所で働いておる者は石川とだれとだれとだ、それならばその三人を調べろというようなことをやった。私どもは、これは当局が一つの意図を持ってやったものだという解釈の上に立って、石川青年が無実だと追及しておるわけですけれども、そのことはさておきまして、やはりこういう十八歳の青年が十何年も刑務所の中で拘置をされており、しかもまだ最高裁まで争わねばならないような状態の中に置かれておるわけですが、ひとつ人間的に考えて、保釈というものを大臣は十分配慮するお考があるかどうか、また、政治家としての稻葉法務大臣は、こういう青年は何らか保釈の道を講じてやらなければならぬ、こういうお気持ちがあるのかどうか、ひとつ人間性の豊かなお答えをちょうだいをして、私の質問を終わりたいと思います。
  179. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私自身がどの程度の人間性があるかどうか、自分でもわからぬわけですが、これは人間性の問題とは別に、裁判所の判決でございますから……
  180. 井上泉

    井上(泉)分科員 まだ最終になってないのですよ。最高裁でまだ確定してないのです。あなたは法律の専門家だから、あなたに事件を頼んだら、あなたは保釈の世話をするでしょう。
  181. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 弁護士の立場と、私いま法務大臣として、これから最高裁に行くのかどうなのか、そういう最終判決までには、まだ審理の途中にあるわけで、そういう事件について法務大臣の立場から、保釈すべきものであるとかそうではないとか、そういう見解をこの予算分科会、公の権威ある委員会で申し上げますことは、裁判の審理に妙な影響を与える——そんなことはないだろうと思います、裁判所は独立ですから。けれども、法務大臣としては、そういう言動は慎まなければならぬ、そういうふうに心得ます。
  182. 井上泉

    井上(泉)分科員 終わります。
  183. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、吉田法晴君。
  184. 吉田法晴

    吉田分科員 時間が限られておりますから、答弁はなるべく簡単明瞭にお願いをいたします。  三点お尋ねをいたしますが、第一点は、福岡地裁小倉支部の昇格についてであります。  私、ここに資料を持ってきておりませんけれども、福岡地裁小倉支部というのは、刑事、民事とも福岡地裁よりも件数が多い。このことは法務当局が御存じのはずであります。長年小倉支部の昇格運動をやってまいりましたが、まだ実現をしておりません。これは法務委員になってでも推進をすべき問題だと思っているのですが、北海道には三つ地方裁判所があるが、そのほかの都府県には裁判所一つしかない。同じようなのは八王子にあるかと思いますが、それに近いと思いますが、比較になりません。  そこで、福岡地裁小倉支部の昇格について、法務大臣、にわかにいま申し上げることから熟考の時間はないと思いますが、支部の昇格についてどう考えられますか、意見を承りたい。
  185. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 時間を省略する意味におきまして担当の政府委員をして答弁させます。
  186. 勝見嘉美

    ○勝見政府委員 お答え申し上げます。  下級裁判所の設立につきましては、裁判所法の二条二項におきまして、別に法律で定めるということになっております。その定めを受けまして、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律という別な法律の定めるところによって設立されております。地方裁判所につきましては、ただいま御指摘のとおり、各都府県庁所在地にその都市名を冠した裁判所と、それから北海道に札幌、函館、旭川、それから釧路と、四つございます。家庭裁判所もそのとおりでございます。  ただいま御指摘の小倉支部でございますが、これも御承知のとおり甲号支部でございまして、甲号支部の権限と申しますと本庁とほとんど変わりございません。ただ、いわゆる行政事件訴訟と民事の上訴事件だけは本庁でないとできませんが、ほとんど権限は同じでございます。家庭裁判所につきましては、甲号支部と本庁は全く同じ権限でございます。  ただいま申し上げましたとおり、小倉地区の住民がどうしても福岡まで出かけなければならない事件も、ただいま御説明申し上げましたとおり少しはあるわけでございますけれども、交通も便利でございますし、福岡県の面積等も勘案いたしまして、福岡県に二つの本庁を設立するということにつきましては、私どもといたしましては相当でないというふうに考えておる次第でございます。
  187. 吉田法晴

    吉田分科員 第二点は、監獄法の改正についてでございます。  この監獄法というのは、明治四十一年、私と同じ年、同じ月に誕生をしております。ですから六十六年経過をしておる。大変古い法律です。部分的な修正はなされましたけれども、刑事訴訟法によると、裁判の済まない被告は犯人ではないから、これは人権的な取り扱いも行われておるはずでありますが、まだ新聞も読ましておらぬ、ラジオも聞かしておらぬ、こういう古いものであります。私も治安維持法で土手町の未決監に入ったことがございますけれども、そのままの法律であります。  これは改正を考えておられるということでありますけれども、何か刑法改正と一緒に検討して出そうかという話、もってのほかだと思います。刑法は小野先生が部会長でしたけれども、若いときの小野先生はああいう人ではなかったと私は信じております。逆行するような刑法改正、民主主義を否定するような刑法改正と、民主化さるべくして残っておる監獄法と一緒に出そうという考えはもってのほかだと思います。六十六年たった古い法律、これが残っております。法律の中で最も古い法律、人権が無視されておる法律でございますから、速やかに改正をさるべきだと思いますし、刑法の改正と関連をしてなんということはもってのほかだと思います。この監獄法の改正を速やかになされる意思があるかどうか、大臣に伺いたい。
  188. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 別々に切り離してやってしかるべきじゃないかというお説ですが、刑法改正案はまだできてないのです。政府案はできてないのに、これは全く答申案の段階で、これから手直ししようというのに、もってのほかの法律だとか、逆行するとか、これとパッケージでやるとすればもってのほかだと言われましても、私はそう考えないのです。よく皆さん方の御意見を承って、いい刑法改正案をつくって、そして監獄法も同時に、それも急いで、そしてなるべく早く御要望のような監獄法の改正になってほしい、こんなふうに考えております。
  189. 吉田法晴

    吉田分科員 法務大臣はいまの答弁の中で、刑法改正と一緒に考えないというのはわかります。本来そういうものです。これは新憲法下において、あの当時全面的な改正をさるべきものでした。ところが、刑事訴訟法の方は改正されました。これは被告の防御権も認められておる。ところが、監獄法の上では人の人権というものは全く認められておらぬから、これはもうとうの昔に改正さるべきだけれども、今日まで残っておる。改正について論議をされておることは知っております。知っておりますから、刑法と関係なしに急ぐべきではないか、こういうことを申し上げておるのでありますが、せっかくそこにメモを持っておられますから、ひとつ。
  190. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 監獄法の全面改正については、現在矯正局で法務省内の関係局係官の意見を聴取しながら、法制審議会に諮問するための要綱草案、そんな段階でございまして、これが秋ごろまでかかる、こう申しておるのですが、急がせます。そして、法務省の要綱を取りまとめ、法制審議会に諮問する運びに早くして、法務省としては法制審議会の答申を待って、そしてできる限り速やかに法案を取りまとめて国会に提出する考えでございます。必ずしもパッケージと考えなくてもいいというのであります。
  191. 吉田法晴

    吉田分科員 だんだん世の中がもとに後戻りしつつございます。全くわれわれに関係のない法律でなくなりそうな情勢ですから、早くひとつ直してください。  第三点は、瀬戸内海の石油汚染についてであります。  詳細な経過やあるいは教訓等をここで総括をする間はございません。ただ、一点だけお尋ねをしたいのですが、それは去る十九日に、三菱石油水島製油所の石油大量流出を告発する集会というものが行われました。水島の事故を告発する集会であります。私もこの事故が起こりましたときに、これは大変なことだと、大変深い関心を持ちました。その後、瀬戸内海一帯に広がるまで放置された。広がってから実はあわて出して、政府も調査に行くとか、あるいは民間でも調査をされましたが、そこで一番問題は、法律でいう責任です。民法上の責任もございますし、刑事上の責任もございます。私は、あの汚染の原因は、タンクの欠陥が一つ、それからタンクの点検やあるいは不等沈下による流出の危険についての注意義務を怠っておったということは明らかだと思います。それから防油堤が役に立たなかった。それから防潮堤あるいはタンク群の外壁、一つのタンクから流れ出てもそのタンク群は守られるという施設が何もなかった。それから港の入り口でこれを食いとめる施設もなかった。大量の油流出の際の、油が拡大をするのを防止する施設も用意も全くなかった。要するに防災体制が全くなかった。  以上の点から考えますと重過失だと考えられますが、これは性格から言いまして、私は熊本の大洋火災を調査に参りましたが、あれを思い出させるほど、どこにも防止をする注意義務あるいは施設もなかったということは言えると思います。そういう点では、これは三菱の重過失は論議の余地がない、こう考えるのですが、大臣どうでしょうか。
  192. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 吉田先生、これはいま捜査中の事件でございます。あなたにそう言われると、個人的にはそのように思って、あなた質問が上手だから、私、恍惚としてのめり込んで、さようでございますなと言えばいいのかもしれませんけれども、捜査中にそういうことを法務大臣が言うことは、多少捜査に影響がありますから、やはり何か影響を与えて、指示でもしているようなふうに世間から誤解されるおそれもございますので、公のこういう大事な席上では、そういう具体的な事件について、法務大臣の重過失事件であるとか未必の故意事件であるとかいう見解は、一般的にあれを空に想定してどうだと言われれば答えられるのですけれども、具体的な、いまあれだけの問題を起こしている事件について、捜査当局がいま捜査中の事件について私の所見を申し上げることは、ちょっと差し控えさせていただきたいと思うのです。
  193. 吉田法晴

    吉田分科員 大臣は捜査中というお話でしたが、法務省からどなたがおいでになっているか知りませんけれども、十九日の集会後、告発をするということは決めましたけれども、まだ告発をしておりません。それから、法律違反の疑いがあるということで、どういう法律を決められたとも承知をしておりません。いわば法律的な欠陥があったと言われるから私はここで取り上げるのですけれども、捜査中だというお話ですから、どういう法律で捜査をしておられるのか、承りたい。
  194. 安原美穂

    ○安原政府委員 吉田先生御案内のとおり、捜査をするということは、今度の事件に関しますれば、あそこに過失犯等の犯罪があるという嫌疑を抱くときに捜査機関は捜査をするということに相なるわけでございまして、現在は、その原因等につきまして権威ある機関が調査中でございますので、したがいまして、第一線の捜査機関である海上保安庁あるいは警察も捜査中ではございませんで、この事故につきましての嫌疑があるかどうかという意味においての調査中であるというのが真相でございます。  なお、立ったついででございますが、その場合におきまして、私ども、まだ調査中でございますから、どういう法律で捜査しているかということも、したがって申し上げるわけにはいかないという段階でございます。
  195. 吉田法晴

    吉田分科員 これは総理府の対策本部も調査をされたでしょう。消防庁も調査をして、水島だけではなしに全国のタンクの調査をされた。それの欠陥といいますか、不等沈下についても報告が出ているわけです。ですから、いま大臣が捜査中というのを刑事局長が取り消しましたけれども、刑事局長はどういう法律の違反になるのか実態を調査中ということで、法律の適用についてはまだ結論は出ていない、私もそう思います。そして、いわば幾つかの法律が挙げられますけれども、その法律の中でどれを適用されるのかということもまだはっきりしていない。いわばこれは法律の欠陥の部分だ、こう言われておるのが報道機関その他の常識です。そこで私は、ここでその点については論議してよろしい、こう思いますから質問をしておるわけであります。  ですから、法務大臣としても、あるいはそれを助ける刑事局その他にいたしましても、この問題についてはいわば天下環視の中で、どういうようにしたらよかろうか、捜査当局についても、結果責任を問うことですけれども、それはこういう事態が再び起こらないようにということで処分をすべきかどうかという話になるのですから、逃げないでひとつ論議をしてもらいたいと思います。  そこで、法務大臣は素人ではないと思いますけれども、多少専門的になりますが、いま刑事局長からもお話がございましたからお尋ねをいたしますが、これは民事、刑事両方にわたりますけれども、先ほど申しましたように、タンクの欠陥、あるいは欠陥についての注意義務、あるいは流出の防止の注意義務を怠った、あるいは防油堤、防潮堤で、あるいは港の入り口で食いとめる施設、あるいは大量の油流出の際の油の拡大を防止する施設も用意もなかった、防災体制がほとんどなかったという意味で、私は大洋の例を挙げましたけれども、そういう意味では、重過失かどうかは二の次にしましょう、過失があったということは言い得るのではないでしょうか。これは法律の専門家として研究してどう考えられますか。
  196. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほど申し上げましたように、現在権威ある機関で原因の調査中でございますし、なお捜査機関におきましても、別途原因等につきまして実態の調査中でございますので、検察庁を預かっておりますわれわれといたしまして、具体的な事件につきましてせっかくのお尋ねでございますが、過失があるかないかということを答えることは適当ではないと思いますので、御勘弁を願いたいと思います。
  197. 吉田法晴

    吉田分科員 ちょっとお尋ねしますけれども、法制局か、法律についての関係者は出ておられましょうか。
  198. 木野晴夫

    ○木野主査代理 来ておりません。
  199. 吉田法晴

    吉田分科員 法制局関係は、院も、それから政府の法制局も来てないそうですから、常識的な問題については法務省とである程度論議ができると思ったのですけれども、逃げられますから、その点は別の機会に尋ねることにいたします。  それから、結果と損害の範囲の広範な点はかってなかったと思うのですが、瀬戸内海の沿岸各県、それから漁業への影響、これを報告を見て、時間がありませんから繰り返しませんが、ハマチやらノリやら、あるいはワカメやら、あるいは貝やら、何年漁業ができなくなるのかわかりませんけれども、百二十億という数字が出ている、あるいは百二十億以上になろうかと考えられますが、これらの点については、関係官庁どこか出ておられますか。
  200. 小川洋二

    小川説明員 漁業等の損害につきましては、政府に設けられております対策本部の中で水産庁が担当しておるわけでございます。ただ、私ども対策本部の一構成員として所属しておりますので、対策本部等からの情報でお答え申し上げますと、一月十五日現在で、漁業につきまして、主としてノリとかワカメとかハマチとかその他の養殖漁業、これが一番被害が大きかったわけですが、そういう漁業関係だけの直接的な被害だけで約百五十九億七千五百万円、こういうような被害が生じていると聞いておるわけでございます。  なおこのほかに、材木商あるいは鮮魚商、そういったような、約二十業種にわたります業界からも、損害の補償要求が出ていると伺っているわけでございます。  なお、この被害額につきましては、今後調査の進展とともにさらに増加するのではないか、こう言われておるわけでございます。
  201. 吉田法晴

    吉田分科員 環境庁の答弁によりますと、一月十五日現在、漁業関係だけで百五十九億を超す、こういうお話であります。ところが、いつになったら漁業ができるようになるのか、その点がまだ明確ではないようであります。それから、漁業関係だけでなしに、沿岸漁民の生活が破壊される、それからいま言われましたけれども、木材商だとかあるいは鮮魚商だとか、それから漁業に関連をいたします国民の被害というものはいまの中に含まれておらぬ。いわば間接被害についてはまだ金額は上がってないわけです。私は、この沿岸各県民の生活が破壊をされたという点は大変重大だと思います。この点はお認めいただけましょうか。  それからもう一つ、入浜権といいますか、浜に入る権利ということが言われております。それから、瀬戸内海なり海は国民のものだ、海水浴をしたり、美しい自然を——瀬戸内海がどんなに美しいか、ここで私が繰り返す必要はありませんが、それが破壊された、国民のものであった瀬戸内海が破壊された、いわばスイスの国全体に重油をぶっかけたような状態になっておるわけでありますが、こういう沿岸の県民の生活、あるいは入浜権といいますか、その権限と、関係県民だけでなくて、日本人が全体として受けた被害というものははかり知れないものがあると思いますが、その被害の重大さ、あるいは広範なこと、それからいま漁業関係だけで百五十九億と言いますけれども、これは調べるたびに広がっております。そうして、漁業がいつ再開されるかわからぬということになると、金額にしてももっと大きなもの、それから生活の破壊をどうするかという問題もありますが、こういう種類の公害といいますか、被害について言えば、これはかつてない広範なものであるということはお認めいただけると思うのでありますが、大臣の所見を承りたい。
  202. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 環境は住民の大きな財産でございますから、ああいう事件は、被害まことに甚大、はかり知れざるものがあるという事実だけは私も認める次第です。
  203. 吉田法晴

    吉田分科員 これは告発云々ということですから、刑事責任が関係をしてまいります。民事責任についても、百五十九億という数字を言われましたが、それがどれだけふくれるかわからぬ。あるいは生活の破壊や、いつ漁業ができるようになるかわからぬということで、これも正確に測定しますとどのくらいになるかわからぬ。それから間接被害ですが、刑事関係で考えてみまして、罪刑法定主義ということだから、法律にきまっておらなければ処罰できないということがありますが、これは刑事局長よりも、やはり大臣に聞いた方がいいと思いますが、財産犯罪で見ますと、窃盗あるいは詐欺恐喝で十年以下の懲役、あるいは背任が五年以下の懲役、恐喝が十年以下の懲役、横領が五年以下、業務上横領は十年以下、臓物収受が三年以下、公文書毀棄に至っては七年以下、ずっと見てみますと、器物の損壊で、いわば酒飲んで暴れて店の器物を損壊しただけでも三年以下の懲役または罰金です。罰金の金額は、昔の金額で書いてありますから大変安くなっております。それは改正する必要がありましょう。とにかく財産に対する犯罪を見てもおおむね十年以下、これだけの被害を及ぼして、そうして生活を破壊したものに対して刑事的な責任がもし問えないとするならば、おそらく刑事局長に聞けば、そういう法律がありませんから云々ということを言うかもしらぬと思いますが、私は、裁判所に訴えれば裁判所はその責任を考えるだろうと思う。  財産でなくて人命に関したことを一つ申し上げますと、鉄道、あるいは列車や汽車や電車が走るところは、その専用道路だからそこに入った者が悪い、初めはこういうことでした。ところが、だんだん注意義務を判決で認めるようになって、向こうの方に子供が土手を上がってくるのが見えたら、あるいはレールの中に入るかもしれないということで、前からブレーキをかけてスローで行ってその子供をひかぬようにという注意義務を、これは判決でですけれども負わせるようになりました。この間の飛騨川事件のごときは、実際には注意をしていなかったでしょう。していなかったでしょうけれども、人命を失わぬように道路管理上国が責任を持っているんだということで、これは責任と過失の犠牲です、これは人命のとうとさから来ましたことですけれども。  いわばこれだけの事件を起こして、刑事上の責任が全くないとは私は言えぬと思うのですが、常識的に考えれば、十年以下の懲役または罰金ということになると思いますけれども、やはり具体的なそのものずばりの法律がなければ問題にならぬと考えられますか。これは刑事政策上の問題として、こういう事件を再び起こさないために、法務省としてはどう考えられますかということを承りたい。
  204. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 もし調査を進め、捜査を進め、その結果、重過失とか過失とかいうことで、裁判で十分因果関係があるという立証がされてあれするにしても、やはり罪刑法定主義という刑法理論の根底をくつがえして、法が不備だから法によらずして裁判をするというわけにはいかぬのじゃないでしょうか。これは、いまの私の法律知識としてはそんなふうに思うのでございます。ですから、いつかの児島大審院長の裁判でも、やはりああいう法に基づかずしてやるわけにいかぬかったような状態と同じじゃないでしょうかね。
  205. 吉田法晴

    吉田分科員 時間がだんだんなくなってまいりますから、別の機会に、予算委員会でやらしてもらうかどうかは別にしまして、最後にお尋ねをいたしたいと思います。  刑事局長の狭い見解で言えばそうでしょう。ところが、再びこういう事件を起こさしてはならぬということは、法務大臣としてお考えになると思うのです。そうしたらどうしたらよかろうか、これは私は国会の論議になり得ると思います。それで、告発をすると言っております諸君は、海洋汚染防止法、それから人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律、私は公害罪というのは、健康被害に関する補償の法律ができていると思いますが、その辺は不確かですけれども、水産資源保護法と、同保護法を受けた岡山県海面漁業調整規則の各法規に違反しておる、この各罰則規定を適用して刑罰に処すべきだ、こういうことです。ちょっと時間がございませんので、各法律と今度の事態とを詳細に検討する問はないのですけれども、海洋汚染防止法には、「船舶及び海洋施設から」ということがございますが、油及び廃棄物の排出規制、あるいは廃油の適正な処理、あるいは海洋汚染の防除ということで、今度のような事態が起こらないようにつくった法律としては一番近い法律だと思います。  ですから、これは刑事局長に聞きますが、いま挙げましたような法律を検討しても、それぞれの法律は今度の場合に適用しない、こういうことでしょうか。そこで、法律がなくて責任を問うことができなければ民事責任しかございませんけれども、しかしこれだけの事件が、器物を毀棄しても三年以下の懲役、まあ半年以下ですけれども、懲役に処するという法律があるのに、法律がないからということで見過ごされるでしょうか。この問題は、これは裁判所が判断をすることです。しかし、さっき申し上げましたけれども、人命の尊重の点から言えば、過失致死について判例はだんだん変化をしてきて、過失を擬制するところまで来ております。裁判所に告発をしたら、裁判所は、日本の裁判所に常識があるならば、だんだんひどくなる公害についてやはり何らかの責任を課すべきだ、こう判断すると私は思うのですが、ひとつ大臣と刑事局長から御答弁を願います。
  206. 安原美穂

    ○安原政府委員 このような事故があってはならないということ、あるいは人命が尊重されるべきであるということについては何ら異論はございません。また、刑罰というものが、一面において犯罪の防止という一般予防の効果を持つべきことも異論はございません。ただ、刑罰は万能ではございませんし、罪刑法定主義というものは守らなければならない基本の原則でございますので、いろいろな法律の適用を検討した結果、適用すべき法律がない、そういう意味において、それを直接防止するに役立つ法律がないということが、仮に検察庁の調査あるいは捜査でわかりました場合におきましては、かような事故の防止という観点から、行政機関に対しまして法律の改正を一つ意見として申し上げるということにはやぶさかではございませんが、いまのところ、まだそういう結論にも達していないわけでございます。  ただ、検察庁は決して無関心ではございませんで、第一次捜査機関の調査の結果を待つとは言いながらも、十分な関心を持ちまして、仮に適用する法律としてどういうものがあるかということは研究をいたしておりまして、いま御指摘のような海水汚濁防止法、あるいは水産資源保護法、海洋汚染防止法、あるいは水産資源保護法に関する岡山県の条例、あるいは水質汚濁防止法、あるいは公害罪法というものが適用になる事態があるかどうかという意味におきまして、適用すべき法律の、研究にはいささかも怠りはないというのが実情でございます。
  207. 吉田法晴

    吉田分科員 時間が参りましたから、別の機会にやらしていただきます。
  208. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、上原康助君。
  209. 上原康助

    上原分科員 私は、昨年沖繩県伊江島で起きました米軍人の発砲事件に関する問題を取り上げてみたいと思うのですが、警察庁の方がまだ見えないようですから、その前に一、二点だけ法務省にお尋ねをしておきたいと思うのです。  一つは、基地内に居住している外国人の問題ですが、もちろん地位協定で資格要件がうたわれております。しかし、そうでない民間外国人が沖繩の基地内にかなり居住をしているということが、これも昨年十一月段階で問題になりまして、法務省としても調査をするということを四十九年十一月十四日の沖特委員会で答弁なさっているわけですが、この問題についてその後調査をなさったのかどうか、おわかりであればお答えをいただきたいと思います。
  210. 安原美穂

    ○安原政府委員 私、政府委員でございますが、刑事局長でございますので、恐らくいま上原先生指摘の問題は、いわゆる外国人の在留管理の問題として入国管理局の所管かと思いますが、残念ながら私、その調査したかどうかということを承知いたしません。
  211. 上原康助

    上原分科員 では、これは私の手違いもあるかと思うのですが、入国管理局に指示をしていただいて、その結果を御報告していただけますね。
  212. 安原美穂

    ○安原政府委員 ただいま官房長連絡に参りましたので、できるだけ早く御回答を申し上げたいと思います。
  213. 上原康助

    上原分科員 これは外務省とも関係するのですが、実際問題として、在留するいわゆる軍人軍属であった者が、その資格を失って後に、手続を踏まないで在日している面がかなりあるわけですね。特に沖繩の場合はそういう例がある。ですから、単に外務省に任すのでなくして、法務省としてもこの問題については厳重に調査をして、そして適正な措置をとるように強く要求をしておきたいと思います。  二点目に、これも基地との関係があるのですが、御承知のように、沖繩本島の場合はまだ二二%ぐらい軍事基地に占められております。復帰後返還された土地も、そのうちの約二%前後だと言われているのですが、しかし、境界の不明あるいは地籍の確定ができないという問題がたくさん出ております。これまた防衛施設庁、外務省、開発庁とも関係いたしますが、もちろん、登記をする段階においては法務省の所管でもある。したがって、この種の境界不明土地に対して有効な現行法がないので、場合によっては特別立法が必要じゃないかということを、七十一国会で問題として取り上げましたところ、前田中法務大臣は、必要があればそういうこども政府としても考えてみたい、検討をしてみたいということでした。きょうの段階で詰めるわけには時間の都合でまいりませんが、そういうような境界不明あるいは地籍が確定できないような返還軍用地の問題が多い。法的問題としてこの種の問題を抜本的に解決していくためには、やはり何らかの法的根拠というものが将来必要になってくるのではないかという感を、素人ですが持つわけです。これについては法務大臣の御所見だけを賜っておきたいと思うのです。
  214. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 田中法務大臣時代、先生の御指摘によってそういう返答があったことをいま私、知りましてまことに申しわけありませんが、それならば、必ず法務省の事務当局は、それらのことについていろいろ事務的な手続を進めておると思いますから、事務当局からひとつ報告さしていただきます。御承知願いたいと思います。
  215. 香川保一

    ○香川政府委員 ただいまお尋ねの件は、法務省民事局の所管でございまして、民事局長の出席要求ございませんでしたので、委細は十分承知いたしておりませんが、関係各省といろいろ協議を重ねて、境界不明の土地につきまして、早急にこれを明確化して、登記が明確になるように鋭意研究中というふうに聞いております。
  216. 上原康助

    上原分科員 この問題は、今後の大きな課題としてわれわれとしても早急に何らかの対策を講じていかなければいかぬという立場から、いまいろいろ検討を進めておりますので、法務省としましてもぜひ御留意おきを願って、それなりの御検討を求めておきたいと思います。  そこで、時間がありませんから、先ほど、冒頭申し上げました伊江島の米兵の信号砲射撃事件についてお尋ねをしたわけですが、事件があったのはいつですか。
  217. 安原美穂

    ○安原政府委員 昨年の七月十日でございます。
  218. 上原康助

    上原分科員 今日まで、この事件が起きてからどういう措置を政府はやってこられたのか、法務省に関係する面だけお答えをいただきたいと思います。
  219. 安原美穂

    ○安原政府委員 本件が発生いたしました直後から、検察庁といたしましては重大な関心を持ちまして、警察とは密接な連絡をとりながら、その捜査の内容の報告を受けますとともに、七月十二日のいわゆる現場検分から検事が立ち会いをいたしておりますし、その後の警察の被疑者取り調べ等の状況を聞きながら、参考人の取り調べ等を並行してやっておりまして、去る十二月二十六日に渡久地警察署から那覇地検に、この被疑者でございます二人。軍曹を、傷害罪という罪名で警察から送致を受けましたので、現在、地検において捜査中というのが現状でございます。
  220. 上原康助

    上原分科員 警察当局とも連携を密にして鋭意捜査を進めてきた。しかし、先ほどお答えありましたように、事件が起きたのは昨年の七月の十日なんですね。もう半年を越して八カ月近くもなっている。なぜこんなに時間がかかっているのか、それについてまずお答えいただきたいし、同時に、犯人の方はどうなっているのか、いわゆる加害者の方ですね、身柄は現在どうなっているのか、その点も明らかにしていただきたいと思います。
  221. 安原美穂

    ○安原政府委員 まず、御指摘のように、今日まだ事件の処理が終わらない事情は、要するに、この事件につきましてわが国に裁判権があるか、アメリカ側にあるかということが、双方において意見の一致を見ないということのために、今日まで処理が遷延しておるのでございます。  その理由は、御案内と思いまするけれども、今度の傷害事件を起こしました、事件の原因となりました行為が、公務中の犯罪であるかどうかということについて、日米両国の意見が合わないのが原因でございまして、したがいまして、昨年の七月三十日以来、この点についての意見が合わないがゆえに、日米合同委員会、その下部機関でございます刑事裁判管轄権分科委員会において、七回にわたりまして双方が意見を闘わせて、いまだに落着を見ないというところに、この事件の処理の遷延している理由があるわけでございます。  なお、被疑者両名につきましては、去る七月十一日に、米軍当局でこれらの両者をいわゆる禁足処分、すなわち基地内から出さないという禁足の処分をしておると聞いておりまして、いまだに沖繩に在留しておるというように承知いたしております。
  222. 上原康助

    上原分科員 そこで、この問題は何もいまに始まったことでなく、これまでも内閣委員会あるいは沖繩・北方特別委員会においても何回となく取り上げられてきたわけです。一々委員会における議論のやりとりについて申し上げませんが、政府としては、いわゆる第一次裁判権はわが方にあるという判断をとった、また、公務中の行為でないということも十分反証できるということを繰り返し強調してきたわけですね。それはもう会議録をごらんになれば明らかです。現在はどうなんですか。第一次裁判権は日本側が行使をすべきだというお考えでやってきたのか。いまのように、意見の一致が見られないからということで一年近くも引き延ばして、一体どういうように処理しようとするのか。人権問題から考えても、余りにもわが方の政府の弱腰であるがゆえにこういう結果になっている。もし問題にしなければうやむやになる可能性さえあると私は思うのです。こういう経緯に対して、法務大臣、人権をあずかる責任者としても、一体この問題をどういうふうに結論を出して、裁判権の行使を速やかにやるのか、この際、明確にしておいていただきたいと思います。  さらに、刑事裁判管轄権をめぐる分科委員会は、一体今日まで日米間で、いま七回とおっしゃったんですが、どのように持たれたのか。本当に現在もこの被疑者であるキャロル・E・ロックというのと、いま一人のジョンソンでしたか、そういう被疑者二人は沖繩に、米軍に籍を置いておるのかどうか、ここいらもぜひ明らかにしていただきたいと思うのです。
  223. 安原美穂

    ○安原政府委員 裁判権分科委員会におきましては、いま御指摘のとおり、日本側に第一次の裁判権があるという主張を繰り返しやっておるわけでございまして、その点は、あくまでもこういう裁判権の存在についての争いがあります場合には、合同委員会で解決するという条約のたてまえにたっておりまして、一方的にそう思うから行使するということになっていない日米双方の条約上の義務がございますので、どういたしましても、意見の一致を見るということなくては裁判権が行使できない条約の内容でございますので、今日まで七回にわたりまして事実論、法律論を繰り返し繰り返しわが方としては主張し、先方も、この行為は公務中の行為である、したがって、第一次裁判権はアメリカ側にあるという主張が繰り返されているわけでありまして、いまだにわれわれの反証をもってアメリカ側を説得する段階に至っていないのは、はなはだ遺憾でございますが、決して事柄を遷延して解決を引き延ばしておるということはございません。ただ、努力が実っていないのは遺憾であるということであります。  なお、御指摘の両人の身柄につきましては、なお沖繩におり、アメリカには帰国していないというふうに信じております。
  224. 上原康助

    上原分科員 それは確かめたんですか。
  225. 安原美穂

    ○安原政府委員 沖繩地方検察庁からの報告によると、そのとおりと聞いております。
  226. 上原康助

    上原分科員 いつの時点ですか。
  227. 安原美穂

    ○安原政府委員 いつであるかということは明確には記憶しておりませんが、さように私は報告を受けております。
  228. 上原康助

    上原分科員 ちょっとそれでは納得しかねます。調査をして、現在どうなっているか、これも明確にしていただきたいと思います。  そこで、もう一点、議論を進める前に念を押しておきたいのですが、政府としては、あくまでも第一次裁判権は日本側が行使をすべきであるという態度をいまもとっておられるのか、公務中の行為であったと見ておられるのか、この点について明確にしておいていただきたいと思います。
  229. 安原美穂

    ○安原政府委員 たびたび申し上げておりますように、分科委員会におきまして、第一次裁判権は日本にあるという主張をしておるわけでございます。つまり、公務中の行為ではないという主張をしておるわけでございます。
  230. 上原康助

    上原分科員 そういたしますと、分科委員会で意見の一致を見ない。最終的には日米合同委員会に上げなければいけないわけですね。なぜ今日まで日米合同委員会に——日本側が、あくまで第一次裁判権は日本側が行使すべきであるという判断、確証があるならば、どんなに分科会を開いても、半年も七カ月もやっても不一致であるならば、次の手順を踏む、当然そうでなければいけないわけでしょう。合同委員会、この面で開いたのですか。
  231. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほど申し上げましたように、双方で裁判権の所在について意見の相違を見ましたので、この問題を日米合同委員会に上げましたところ、委員会におきまして、この問題の解決を刑事裁判管轄権分科委員会に付託すべき旨の決定があって、その付託に応じまして目下管轄権分科委員会において討議中でございます。  なぜ上げないのかというお尋ねでございますが、なおまだわが方が説得できないということはない、お互いの合意を見ることはできるはずだということで努力をしておる結果でございまして、じんぜん日を送っておるということではございません。
  232. 上原康助

    上原分科員 どうもそれも納得がいきませんがね。  いま警察庁の刑事局長がお入りになったようですから、例の伊江島の発砲事件について、警察はどういう捜査を今日までやって、この問題に取っ組んでこられたのか。また、先ほどの法務省の御答弁では、被疑者である二人の米軍人は現在も沖繩にいる、軍隊に在籍をしているということでしたが、その身柄は一体どうなっているのか、そこいらについても確たる御答弁をいただきたいと思います。
  233. 田村宣明

    ○田村政府委員 沖繩県警察におきましては、本件につきましては九月中に被疑者の取り調べ、それから関係者からの事情聴取、実況見分その他を大体終わりまして、この信号銃の鑑定を必要といたしましたので、これを鑑定に出しまして、その結果、たしか十月の半ばごろであったと思いますが、鑑定ができましたので、これを添えまして、事件を十二月の二十六日に那覇地方検察庁に送致をいたしまして、一応警察としては捜査を終わった、こういう状況になっております。  なお、この被疑者二人が、現在どこにおるかということにつきましては、ちょっと私、いま確認はいたしておりません。
  234. 上原康助

    上原分科員 そうしますと、警察の捜査段階からはもう離れて、検察庁並びに法務省がもっぱらこの問題については担当しているというふうに理解していいですか。
  235. 田村宣明

    ○田村政府委員 先ほど申し上げましたように、警察といたしましては一応捜査を完了いたしまして、事件を那覇地方検察庁に送致いたした、こういうことでございます。
  236. 上原康助

    上原分科員 非常にあいまい、あいまいというよりも消極的な態度でこの問題に取り組んできた感を受けるわけですね。事件の経緯を見ましても、何回も指摘をいたしますように、昨年の七月の十日なんですね。そして米側も最初の七月の十二日の段階は、いわゆる事件は公務中であるから、身柄引き渡しはできないということを表明して、その後また公務中の行為ではないというふうに米側自体も打ち消したわけですね。そういうふうにくるくる変わって、結局日米合同委員会にかけられて、刑事裁判管轄権でも分科委員会が持たれて今日まで至っているわけですが、私が承知をする限りにおいては、刑事裁判管轄権分科委員会も九月の二十六日の段階までしか持たれていないというふうに聞いているのですが、これは事実なのか。そうしますと、十月、十一月、十二月、一月、もう二月もおしまいですからね、分科委員会も過去五カ月持たれていないというふうになるわけですが、こういう事実を考えてみた場合に、一体この事件の処理というものが、事、米人に発砲されて負傷をした日本人が現にいるわけですね。しかも、公務中の行為でないということを法務省みずからそう言いながら、米側に対して裁判の行使ができないということになりますと、人権はどういうふうに守られるのですか。  いま私が言ったように、九月の二十六日段階までしか分科委員会は持たれなかったのか、その後はどういうふうな日米間の交渉をやってこの問題の処理に当たろうとしているのか、どうも刑事局長のおっしゃることだけでは、やっておられると言う割りには、事実関係としては、問題を持ち出さなければ、もう双方の意見が不一致だから仕方がないやということで片づける可能性なきにしもあらずなんです。どうなさろうとするのか。不一致のまま続いた場合には、一体裁判権の問題はそれでいいのかどうか。この点はぜひ責任ある答弁を外務大臣の方からも伺いたいし、米側がそういうことで応じないということであるならば、地位協定に基づいて第一次裁判権があるとするならば、当然行使できるはずなんです。重ねてお答えいただいておきたいと思うのです。
  237. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほども申しましたように、双方の意見の不一致のままで一方が裁判権を行使することにはなっていないわけでございますから、われわれは苦心をして今日に至っておるのでございまして、その点はぜひ御理解いただきたい。  われわれが思えば、反対があってもやれるというようなことには、条約上なっていないわけで、したがって、分科委員会で解決不可能ならば、最終的には日米合同委員会においてどう解決するかということが、高度の政治的見地から図られるということに私どもは理解しておりますが、なお米側を説得して、反証を挙げていくという努力を続けたい、かように考えておるのが現在の状況でございまして、われわれ、同胞の人権がどうなってもよいなどとは毛頭考えていないわけでございます。  なお、分科委員会は、確かに御指摘のとおり九月二十六日に第七回を持って、正式には終わっておりますが、その後も、私どもの刑事局の総務課長が委員長でございますが、先方の委員長と非公式には四、五回にわたって説得の協議を続けておるのが実情でございまして、九月以降正式の分科会が中断されておりますのは、フォード大統領が来日されたり、あるいは米側の委員長が十一月に交代をされまして事情が十分にわかっていないというようなこともありまして、先方の都合で中断をしておるわけであります。  そういうのが現状でございまして、われわれとしては何とか早く解決をしたいという気持ちに変わりはございません。
  238. 上原康助

    上原分科員 いろいろ理由をお挙げになっておりますが、大臣、こういういきさつについて御案内だったのか、恐らく十分は御理解をいただいていなかったのじゃないかと思うのですね。だから、私が申し上げているのは、合同委員会で分科会におろされ、刑事裁判管轄権分科委員会で不一致であるならば、次の段階はまた合同委員会に戻さなければ、手順としてはいかぬわけですね。九月二十六日段階で七回も開いても、日本側にあるのだ、いやアメリカ側なんだ、公務中なんだ、公務外なんだという議論だけして平行線をたどっている。そうであるなら、当然次の手順を踏まなければいけないのですね。それを、ややもすると、国会が開かれぬでこの種の問題を具体的に取り上げないならば、うやむやにされる可能性十分にあるのです。  したがってここまで来ると、合同委員会に上げるか、あるいはさらに分科会で詰めるか、事、人権にかかわる問題であるから、こういうことをうやむやにされたのじゃ、次から次へ受ける基地被害や米軍軍人軍属による行為によって、わが方の人権が幾らでも踏みつぶされていく結果になる。  したがって、大臣、この問題はきわめて重要な問題でありますので、時間ですから、これ以上きょうの段階で議論できませんが、ある程度政府がどう考えておられるかわかりました。今後どうなさるのか、篤と法務大臣としての御答弁を賜っておきたいと思うのです。
  239. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 問題はよくわかりました。事は外交交渉の問題になろうかと思っております。それで、きょう分科会でよくわかりましたから、外務大臣ともよく打ち合わせをし、どうも事務の段階でいつまでやっておっても、公務外だとか内だとか、これは決着つかないような印象を私はいま受けました。そういうことになれば、やっぱり早く合同委員会に移してはどうかというようなことを、こっちの分科会の委員長が向こうに通告するとか、そういうことをして進めなければ、これはうやむやには断じてできませんからね。  そういうことであろうと思いますので、よく事務当局とも打ち合わせ、また外務大臣とも打ち合わせ、外務省の事務当局も鞭撻して、これはもう少しレベルを上げて解決を急がぬといかぬな、こういう気がします。
  240. 上原康助

    上原分科員 時間ですから、うやむやにはしないということですが、これをうやむやにしちやいかないわけですね。人権に関する問題ですから、早急に外務大臣なり、あるいは合同委員会に上げて問題解決を図るように。解決を図るということは、あくまでも法務省が主張しておられるように公務外で、第一次裁判権はわが方が行使をするというその筋を通した解決を強く要求をして、終わりたいと思います。
  241. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、諫山博君。
  242. 諫山博

    諫山分科員 私は、法務局の人員不足、とりわけ登記所での人員不足と、それに原因する幾つかの問題について質問します。  登記所をめぐる刑事事件というのが最近続発しています。私が最近調べた幾つかの事例を紹介しますと、昭和四十八年十二月二十七日北海道新聞、「登記簿抜きとり偽造 閲覧装い法務局から  土地所有権を移転、一千万円だまし取る」こういう見出しで、登記所を舞台にした刑事事件が報道されています。これでは、札幌法務局が告発、札幌地検が起訴。そして新聞記事は、「激増する事件に追いつかぬ登記課職員の手不足、その混雑にまぎれた新しい犯行」とある。こういう事実が北海道で起こったのでしょうか、どうですか。
  243. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 そのような事実が、北海道で起こったことは事実でございます。
  244. 諫山博

    諫山分科員 事件の詳細は省略いたします。  昭和四十九年十二月四日、サンケイ、読売、赤旗、これでは、サンケイは「すきをみて抵当権抹消」、赤旗は「法務局舞台に一億円」とある。そして、司法書士の事務員をしていた人が、浦和地方法務局を舞台にして、自分の土地の担保を抹消し、そして信用金庫から九百万円を借り受けた。報道によれば、昭和三十六年から四十一年にかけて二十五回、同じような手段で一億円近くの詐欺を働いていた。これも浦和地方法務局が告発となっています。そういう事実がありましたか。
  245. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 ございました。
  246. 諫山博

    諫山分科員 同じ浦和地方法務局では、登記書添付の図面を書きかえ、そして国民が被害を受けて国家賠償裁判が提訴されるということがあったようですが、ありましたか。
  247. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 浦和地方法務局大宮出張所において、そのような問題が起こったことがございます。
  248. 諫山博

    諫山分科員 国家賠償事件では、判決はどうなりましたか。
  249. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 賠償請求が認容されております。
  250. 諫山博

    諫山分科員 国は幾らの支払いを命ぜられていますか。
  251. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 現在記憶いたしておりません。
  252. 諫山博

    諫山分科員 別事件。昭和五十年二月三日、読売、「法務局まんまと 地面師不敵 登記簿閲覧、車の中で ニセ印押し名義変更他人の土地売り二千万円」これは読売の記事の見出しです。  この事件では、他人の土地の登記簿を勝手に外部に持ち出した、そしてにせ印を押して名義を変更した。東京法務局城北出張所の事件です。新聞報道では、「現在、どの出張所も激増する事務量に手いっぱいで、閲覧者に対する監視は全くないのが実情。」「被害者からの訴えで初めて気づく怠慢ぶり」とあり、そして出張所長談「とにかく人手不足でどうしようもない」とあります。ここで報道されているような事件がありましたか。
  253. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 車の中でやったかどうかという細かい事実関係は別にいたしまして、そのような登記簿の偽造事件があったことは事実でございます。
  254. 諫山博

    諫山分科員 登記所を舞台に行われた犯罪というのは、新聞で報道されただけでも、数え上げれば切りがないくらいです。法務省としては、この種の犯罪がどのように激増しているのか、その統計資料を持っていますか。
  255. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 特に統計というものは持っておりませんが、事件が起こりました場合には、法務局から本省に報告がございます。その報告によって、御指摘のように、最近数年間にわたって同種の事件が何度か起こっておるという事実を承知いたしております。
  256. 諫山博

    諫山分科員 件数がどのくらいで、最近の趨勢はどうなっているのか、簡単に御説明ください。
  257. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 ごく最近の分を調べてみましたところ、本年に入りましてから告発がありました事件、つまり法務局において犯罪の容疑ありということで告発をいたしました事件が七件に上っております。もっともこのうち、登記所を舞台にしたというのではなくして、偽造の印鑑証明とか登記済み証を登記所に出そうとして、その準備中に発覚したというのが二件ございます。それから昭和四十八年でございますが、告発した事件は三件ございます。
  258. 諫山博

    諫山分科員 登記所で刑事事件が起こるというのは、考えてみれば、絶対にあるべからざることなんです。登記の信頼性というのは社会経済の一つの土台になるはずです。そして不動産登記法あるいはそれに基づく諸規則では、いろいろな厳格なことが規定されておりますから、もし完全に人員が充足しており、そして法律どおりの仕事が行われているとすれば、このような犯罪は起こらないはずだと思いますが、いかがでしょう。
  259. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 仰せのとおり、現在、登記所はかなり繁忙度の高い職場でございまして、職員が職務に忙殺されておるというところが非常に多いわけでございます。その間隙を縫って、この種の犯罪が発生したと思われるわけでございますので、その辺の事情が改善されますれば、このような事件もあるいは発生しなくて済んだのではないか、このように思うわけでございます。
  260. 諫山博

    諫山分科員 私は、全法務労働組合の要請によって福岡法務局の調査をしたことがあります。職場に行って驚きました。たとえば登記所の中でたくさんの人がコピーの仕事をしているわけですが、この大半というのは法務省の職員ではないのです。登記簿が入っている重要な書だなをいろいろ扱っている人がおります。聞きますと、この人たちも法務省の職員ではないと言うのです。民間の人が中に入って仕事をしている。なぜそういう状態になっているかというと、これは人手が足りないからだと言うのです。本来あるべき姿ではないけれども、そうしなければ仕事が運営できない。こういう状態で、いわば外部からの応援者が入ってどうにか登記業務が動いているという実情です。こういう状態ですから、たとえば登記簿を外に持ち出すというような事件も起こるし、あるいは登記官の面前で閲覧しなければならないはずの登記簿閲覧がそうなっていないから、改ざんするというような問題も起こるわけです。  私たちは、こういう職場ではもっと国民にサービスするために、人員をふやさなければならないと思っております。また法務省ともあろうところで、違法業務ではなかろうかと思われるようなことが行われることは絶対に許されない。さらに、これは犯罪の一つの原因になるだけではなくて、たとえば本来なら登記簿謄本なんかをとりに行けば、十分間も待てば大体謄本かもらえるはずなんです。実際は一時間とか二時間待たされる。場合によったら翌日回しになる。こういう状態であることを、法務大臣は御承知でしょうか。
  261. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 所管説明のときに説明を受けまして、これはいかぬなあと、よく承知しております。
  262. 諫山博

    諫山分科員 全法務労働組合の調査によれば、外部からの応援者の年間延べ日数は七十万日、あるいは七十万人といいますか、こういう数字が労働組合の統計で出ておりますが、法務省当局としては、この点、どのように掌握していますか。
  263. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 法務局に部外応援者がおることは事実でございまして、その数は定かではございませんが、私どもが推定いたしたところによりますと、年間、人数に換算いたしまして五十五万程度ではなかろうか、このように考えております。
  264. 諫山博

    諫山分科員 本来、こういう部外者の応援というのはない方がいいのだと思います。法務局の仕事は全部法務局の職員がやるのが当然だと思いますが、あるべき姿としてはどう考えていますか。
  265. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 仰せのとおり、部外応援というものはない方がいいと考えております。もちろん、登記所は国の機関でございますので、これはその職員である者が処理すべき性質のものでございまして、この部外応援というものが登記所の中に入っておるということは、好ましいことではないと考えております。  ただ、部外応援が発生した状況を見ますと、これはかなり古くから登記所が、事件がふえてまいりましてその事務を処理するために、なかなか自分だけでさばき切れなくなったというようなところから出てきたものでございまして、この部外応援の中にもいろいろなものがございます。  たとえば、市町村その他公共事業関係の登記に関連して、登記所に打ち合わせに来る、ついでに登記所の仕事も手伝いましょうということで、好意で手伝ってくださる。それが、だんだん規模が大きくなるというような傾向がございまして、まあ、そういった部外応援というものもあるわけでございます。それから、一般の申請人の立場から、司法書士とか土地家屋調査士というのが出入りしておるわけでございますが、その人たちが、自分の依頼された事件を早く処理してもらいたいということのために、自分たちで補助者を雇い入れて、そして自分たちの事件を早くやるために登記所の手伝いをする、こういう形のものもございます。  いずれにいたしましても、これがないに越したことはないわけでございまして、特に業者の補助者による部外応援、これは極力排除するようにということを以前から申しておるわけでございまして、今後もそういった点につきまして十分努力してまいりたい、このように考えております。
  266. 諫山博

    諫山分科員 私は、この問題では法務省が、部外応援というのは悪であるという立場を堅持することが大切だと思います。部外応援が行われるにはいろいろの経過があると思います。しかし、それはすべて法務省だけに任せていたのでは仕事がさばけない、いつまでも待たされる、こういう背景があるわけです。不動産登記法第十二条には、登記所における事務は登記官が行うとなっております。この立場を貫く限り、登記所の仕事を部外者がする、この現状に法務省自身が甘んじてはいけないと思います。これが一挙に解決できないいろいろ複雑な情勢があることは私も知っております。しかし、こういう状態はいけないのだ、これはなくしなければならないのだという立場を法務省が堅持しなかったら、この問題の解決はきわめて困難だと思いますが、いかがですか。
  267. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 仰せのとおりでありまして、部外応援を排除すべきであるということは、常に本省の方針として法務局に伝えてございます。  ただ、現実の問題として、部外応援というものが入っておる、そうしてこれをいま排除すると事務が遅滞するというようなところもあるわけでございまして、そのようなところでなかなか完全排除ができないでいるというのが実情でございます。私どもは、この部外応援を排除するためにいろいろ苦心をいたしてまいりまして、今回の予算におきましても、大蔵当局にいろいろお願いを申し上げまして、そのためのいろいろな事務処理上の経費を見ていただくというようなこともいたしております。  それからまた、部外応援と申しましても、その部外応援者のやる仕事の内容がごく機械的な範囲にとどまっておる限りは、それほどの、先ほど最初に仰せになりました不正事件に結びつくというようなことが少ないわけでございますけれども、その範囲を越えますと不正事件が発生するということもございますので、そういった点につきましても極力注意をするように、法務局を指導いたしておるところでございます。
  268. 諫山博

    諫山分科員 私は、部外応援を直ちになくせと言っているのではありません。部外応援がなくても済むような状態を速やかにつくり出せ、こう言っているわけです。その条件が整わないのに、いますぐどうしろということを言っているのじゃないのです。  そこで、法務省としては、職員一人当たり年間処理件数というのを計算して、これを基礎に登記所の人員がどれだけ不足しているかということを算出したことがありますか。あれば、現在どれだけ不足しているという数字になっているのか、御説明下さい。
  269. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 われわれの計算では、全体で四千百名ばかり不足しておるというふうに考えております。これはいろいろな計算の仕方がございまして、その計算の仕方にもよるわけでございますが、現在の方法といたしましては、大体、所有権保存登記であれば何分かかる、それから相続登記のようなものについてはどの程度かかる、それぞれの事件の難易度に応じて計算をいたしまして、一人の職員が一日にこれくらいの事務を処理することができるであろうという推定のもとに一応計算したものでございます。それによりますと、最初に申し上げましたように四千名ちょっと不足しておる、こういうことに相なります。
  270. 諫山博

    諫山分科員 いまの数字は登記関係だけですか。
  271. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 さようでございます。
  272. 諫山博

    諫山分科員 行政管理庁に質問します。  登記所での人員不足がどんなに深刻かということはわかったと思います。また、この人員不足が職場の労働者に労働過重としてのしかかってくるだけではなくて、国民サービスヘの切り捨てになる、さらに犯罪発生の温床になっている、こういうことも理解いただいたと思いますが、どうしてこれを根本的に解決しようとしないのですか。
  273. 高橋俊見

    ○高橋説明員 法務省から予算編成に当たりまして要求が出ておりますが、五十年度につきましては、この登記事務を扱っております法務局、地方法務局の職員につきまして、当初に千八百三十二名という要求が出されております。これに対しまして、私ども種々検討、協議いたしました結果、三百十八名の増員をするということにしております。  私どもの考え方といたしましては、定員、機構の膨張というものは極力抑制していく、こういう方針のもとに、増員につきましても、基本的には事務の簡素合理化というものによって対処すべきである。したがいまして、法務省にも、登記関係の事務につきまして、事務の機械化その他の合理化の御努力をお願いしておるわけでございます。ただ、登記事務につきましては、非常に近年事件数が毎年増加しているという状況でございますので、必ずしも合理化だけでは対処できないという事情にありますので、従来から毎年増員をしてきております。  五十年度につきましては、最近、経済情勢を反映して事件数はやや減少傾向というふうになっております。そういう事件数の減少傾向が見られますが、先生先ほど御指摘のような問題もいろいろありますので、それらの事情も十分考慮いたしまして、その間法務省とも協議いたしまして、おおむね昨年と同程度の増員ということを図っていきたいというふうにしている次第でございます。
  274. 諫山博

    諫山分科員 私の手元に、昨年十二月の日付の押してある全法務労働組合の「あぶない あなたの財産と権利」というチラシがあります。これを見ますと、この十年間に登記件数は五・六倍にふえた、職員の増加は一・〇九倍にすぎない、これでは登記の仕事が渋滞するのは当然ではないかと言って、いろんなことを訴えられております。  ところで、行政管理庁としては、法務省が登記関係の職員で四千百名不足しているというふうに計算しているのはぜいたくな計算だ、これは充足する必要のない数字だと見ているのですか。それとも、必要ではあるけれども、他の原因によって充足ができないということなんですか。
  275. 高橋俊見

    ○高橋説明員 先ほどの法務省の当初要求千八百三十二名というものが出ております。これも一挙にはできないというお考えのもとに出されておるわけでございますが、私どももいろいろ検討しましたところ、最近はその事件数も減少傾向になっている。しかしながら、他方では部外応援者とかそういういろんな問題もございますので、その辺を考慮いたしまして、先ほどのような増員ということを考えたわけでございます。
  276. 諫山博

    諫山分科員 私は、民事局長の発言でもちょっと気になったのですが、膨大な部外者の応援が入っている。そしてどうにかこうにか、国民には迷惑を及ぼしながら、またさんざん刑事事件を生み出しながら登記所は動いてはいる。この状態に行政管理庁も安住しているのじゃないですか。足らぬ足らぬと言っているけれども、結局登記所の仕事は行われているじゃないか、こういう感覚で人員を見ているのじゃないですか。いまのようなテンポで登記所の人員をふやすとして、登記業務が将来どうなるかということは予測がつきませんが、人員不足は解決しますか。人員不足の状態が慢性化してしまうのじゃないでしょうか。どうですか。
  277. 高橋俊見

    ○高橋説明員 最近の事件数の増加といいますのが、いわゆる最近の社会経済の進展ということでございますが、最近総需要抑制ということもありまして、事件数が減ってきているということを、私ども一つのポイントとして見たわけでございます。  ただ、私どもがこれでやっていけるというふうに必ずしも考えているわけではありません。しかしながら、人員というものは極力抑制していきたい、その間事務の合理化あるいは機械の導入、いろいろな創意工夫をしていただいて、それなりの努力をしていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  278. 諫山博

    諫山分科員 人員をなるべく抑制したいと言いますが、たとえば自衛隊についてはどうですか、公安調査庁についてはどうですか、公安警察についてはどうですか。こういうものこそ抑制すべきであって、本当に国民に奉仕する人たちについてはもっと人員をふやすというのが当然だと思いますが、この点は、行政管理庁でもっと深刻に事態をとらえていただきたいと思います。  そこで法務省に戻ります。さっきの全法務労働組合のチラシに、これから三つの運動を進めるという見出しのもとに、一、民間人による部外者応援を断り、誤りのない登記ができるようにしますと書いてありますが、これは当然のことでしょうか。
  279. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 先ほども申し上げましたように、民間からの部外応援というものは好ましくありませんので、それを排除するということは私は当然のことであるというふうに考えております。現状は、先ほど先生がおっしゃったような状況にありますので、漸進的に排除していく方が穏便であると思いますけれども、究極の方針としては、当然そうあるべきだというふうに考えております。
  280. 諫山博

    諫山分科員 二番目、登記書類の手抜き調査をやめ、正確かつ迅速に処理ができるようにする。これは具体的にはポイント調査をやめますということのようですが、これも法律から見て当然のことだと思いますが、いかがですか。
  281. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 それはそのとおりであります。手抜き調査は、従来も手抜きの処理ということは、重要な点についてはやっていなかったというふうに確信をいたしております。
  282. 諫山博

    諫山分科員 三番、窓口での応対を親切にやれるようにする。これは具体的には、仕事をしながらの応対を絶対いたしませんということのようですが、これも当然の要求でしょう。
  283. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 そのとおりでございます。
  284. 諫山博

    諫山分科員 この問題をめぐって、昨年暮れからことしの初めにかけて、労働組合では順法闘争と銘打っていろいろな行動を展開しております。そしてこの中で労使間の交渉も行われ、法務省の労働組合としては人員を充足するということが、自分たちの労働条件を守るだけではなくて、国民へのサービスを完全にするためにも、あるいは犯罪を予防するためにもどうしても必要だということで、いろいろな運動をやっております。当局もこの労働組合の正義の要求、正義の闘争をぜひ支持して、いまのような不正常な、法務局にあるまじき事態を一日も早く解消することを要望して、私の質問を終わります。
  285. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 不正事件を発生させたことは大変申しわけないと思っておりまして、今後とも不正事件の発生しないように努力する所存でございます。  順法の点につきましては、私、平素から登記所が法律に従わない処理をやっているというふうには考えておりませんし、今後とも、法律に従った処理を続けていくようにいたしたいと考えております。
  286. 諫山博

    諫山分科員 終わります。
  287. 木野晴夫

    ○木野主査代理 以上で裁判所及び法務省所管の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十六日午前十時三十分第一分科今を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時九分散会