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1975-03-04 第75回国会 衆議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月四日(火曜日)    午前十時四分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 竹下  登君    理事 谷川 和穗君 理事 湊  徹郎君    理事 山村治郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君       植木庚子郎君    大久保武雄君       大野 市郎君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    塚原 俊郎君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       保利  茂君    前田 正男君       松浦周太郎君    森山 欽司君       綿貫 民輔君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       楢崎弥之助君    堀  昌雄君       湯山  勇君    田代 文久君       中川利三郎君    平田 藤吉君       坂井 弘一君    広沢 直樹君       安里積千代君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         警察庁長官   浅沼清太郎君         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    岩田 幸基君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省条約局長 松永 信雄君         大蔵大臣官房審         議官      旦  弘昌君         大蔵大臣官房審         議官      藤井 淑男君         大蔵大臣官房審         議官      後藤 達太君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       西沢 公慶君         大蔵省主計局長 竹内 道雄君         厚生省年金局長 曾根田郁夫君         農林大臣官房         長      大河原太一郎君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業審議官 天谷 直弘君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 水谷 剛蔵君         自治大臣官房審         議官      石見 隆三君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     綿貫 民輔君   山村治郎君     松野 頼三君   金子 満広君     田代 文久君   紺野与次郎君     平田 藤吉君   正木 良明君     坂井 弘一君   矢野 絢也君     広沢 直樹君 同日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     江崎 真澄君   坂井 弘一君     正木 良明君   広沢 直樹君     矢野 絢也君 同日  理事山村治郎君が同日理事辞任した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任  昭和五十年度一般会計予算  昭和五十年度特別会計予算  昭和五十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を進めます。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 私は、総括質問に入る前に、いま国民が一番関心を持ち、なおかつ恐れております間組本社爆発の問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。  三菱重工の爆撃から始まって大成建設など、この民主的な平和なわが日本には考えられぬような、凶悪な一連の爆発事件が連続して行われておるのであります。しかもこれに加えて、頻繁として要所要所には、まだ実行行為には至りませんけれども、爆発予告とも言うべき脅迫の電話等が行われて、世道人心はまことに戦々恐々たるものがあるのでございまして、これに対しましては、私も実は数カ月をかけて私なりに資料を集め、きょうその資料に基づいて実は御質問申し上げるという予告もしていたのでありまするけれども、どうもしかし、私の集めた資料にはまだ的確な証拠がない。自信がありませんので、これを後日にしたわけでありますが、それにいたしましても、捜査当局の御苦心は並み並みならぬものがあると思います。特に現警視総監は、そのために直接に被害・を受けて愛妻を失われた方でもあります。それは精魂を傾けて問題解決のために御努力願っていると思うのでありますけれども、特に、いままだ生々しいこの間組事件の問題について、どういうぐあいに調査をつけ、どういうぐあいな状況になっているのか、これをひとつお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  4. 福田一

    福田(一)国務大臣 御指摘のこの凶悪犯爆弾事件に関する問題につきましては、警察当局といたしまして、一般皆様方の非常な不安を巻き起こしており、何としてもこの事件解決をしなければならないという決心で、総力を挙げて努力をいたしておるのでございまするが、今日に至るまでまだその解決を見るに至らない、犯人の逮捕を見るに至らないことについては、まことに遺憾に存じておりまするが、今後も大いにひとつこの問題の解決のために警察総力を挙げて努力をいたしたい、かように考えておりまするが、ただいま御質問がございました具体的の捜査内容その他につきましては、政府委員から答弁をさせていただきたいと思います。
  5. 三井脩

    三井政府委員 間組事件は、過去に昨年八月三十日、三菱重工事件発生いたしましてから、続いて三井物産の事件帝人中央研究所事件、そして大成建設。また、被害は少のうございましたけれども、昨年十二月二十三日には鹿島建設内装研究所において爆破事件がございました。  これに続いて起こった事件でございまして、事件は、二月二十八日金曜日、午後八時ごろ、ほとんど同時に三カ所において爆破いたしました。第一回目は間組本社の九階において、それから三十秒ないし一分の後に同じく六階において爆破をいたしました。同時にまた、埼玉与野市にあります間組大宮工場におきまして、八時ごろこの爆破が起こったわけでございます。簡単に申しますと、三件がほとんど同時に発生をいたしたという状況でございまして、このうち、間組本社におきます爆発におきましては、重傷者一名を出しておるわけであります。  本件発生と同時に、警察では現場に急行するとともに、緊急配備等を実施いたしまして、現場における犯人の捕捉また目撃者確保等努力をいたしました。引き続きまして、当日から始めておりますが、現場における実況見分を行っておるところであります。  現在までのところ、この現場状況から申しますと、火薬の種類並びにその威力等につきましては、まだはっきりいたしておりませんが、三菱重工に次ぐかなりのものであろうというように考えるわけであります。  また、この事件をめぐりまして、埼玉与野市の大宮工場関係におきましては、この事件直前の七時四十五分ごろ、大宮工場に隣接をいたします日通の倉庫の事務所に対しまして、日通前の通りに爆弾を仕掛けた、したがってすぐ交通遮断をしなさい、こういう予告電話がございました。ここでは、間組大宮工場という名前を挙げておりませんが、交通遮断交通阻止線をつくったらどうかというようなことを言っておりますので、もしそのとおりに行動いたしますと、ちょうど爆発がその阻止線のところで起こる、こういうようなところで人に対する加害をねらったものというような感じもいたすわけであります。  その後、この間組本社事件に関しまして通告文が参りました。これは、実際に到着いたしましたのは、都内新聞社に対しまして三月二日に到着しておりますが、この通告文消印等を見ますと、事件翌日の三月一日の正午から午後六時の間に、都内中央郵便局管内ポスト等に投函したものと思われるわけであります。  この通告文の中身は、「東アジア反日武装戦線さそり」という名前で、活字を切り張りしたものをリコピーしたものでありますけれども、内容といたしましては、間組に対してキソダニ・テメンゴール作戦としてこの爆破を行った、こういうふうに、簡単でありますが、言っておるわけであります。この「東アジア反日武装戦線さそり」という名称は、昨年十二月二十三日、ただいま申しました鹿島建設内装研究所に対して、威力が小さいものでありましたけれども、仕掛けた爆発物事件関係で、その後に参りました通告文に同じくこのような記載がございます。この鹿島建設の際には、この「さそり」というのは、「東アジア反日武装戦線に参画するさそり」、こういうような言い方をしておりますが、今回ははっきりと「東アジア反日武装戦線さそり」、こう言って活字を切り張りしておる、こういうことであります。  また、爆発状況等を見ますと、単なる爆発だけでなくて、何らかの燃焼効果をねらったという特徴が、他の事件とは違って鹿島建設並びに本件間組の場合には見られるわけであります。したがいまして、九階等でかなり火災の状態だったというところも、爆発以外の燃焼による被害の拡大ということもねらって行ったものというように考えるわけであります。  そういう意味におきまして、現在の捜査段階は、現場火災消火のために水浸しになったという状況もありますので、現場の検証とともに、破片その他を全部収集をして、さらにこれをふるい分け乾かすというようなことから始めまして、現場からのいわゆる地取り捜査というものに力を入れておる段階でありますが、同時に、ただいまこの通告文をよこしました「さそり」なるものが、どういうグループであり、どういうものであるかということについても、鋭意捜査を進めておる段階でございます。
  6. 小林進

    小林(進)委員 こうした凶悪な、しかも科学的な犯罪に対しては、日本警察当局は、裏表ない、精魂を傾けてその犯人検挙のために努力されておるという、その点においては国民はひとしく疑うところはないと思います。しかし、いまの御報告にもありますがごとく、まだ犯人の本体はつかんでいない。まことに残念にたえない次第でありますが、この際、さらに英知を傾けて御努力を請うとともに、私はこの際総理にもひとつお願いをしておきたい。  こういう知能犯といいますか、しかも科学的な犯罪を計画している者は、やはりいままでのような捜査方式では、困難。素人でありまする私の考えでは、国民的規模において国民警察当局協力する、そういう体制がやはりでき上がらなければならない。わが隣に住む人は何者ぞ、疑っちゃ悪いけれども、どうも少し出入りがおかしいじゃないか。まあ悪いけれども、警察当局協力する意味においてそういう話もしてみようかという、善人を悪人と見立てるような間違いがあっては困りますけれども、そういう被害を避けながらも、国民的協力市民的協力町民的協力というものをやはりどこかの場で国民に要望し、協力を頼むという姿勢が出てこなければならぬ。だれがそれをやるか。やはり私は、総理大臣等政府の口を通じて国民にそういうことを求めるのも、この際大変重要な仕事じゃないかと思いますので、あえて総理のこの問題に対する発言を求めたいと思うのであります。
  7. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小林議員の御指摘のように、こういう知能犯的な犯罪は、国民的な協力を得て捜査情報などを収集しないと、警察の手だけでは十分でないことは御指摘のとおりだと思います。したがって、機会を通じて国民の皆さんにも、これは非常な社会不安のもとになるわけですから、こういうことで協力を願うような方法は講じてまいりたいと思います。
  8. 小林進

    小林(進)委員 警察当局にも、御苦労さまですが、さらにひとつ全力を傾けて、一日も早く事件解決のためにお努力されることを願いまして、本論の質問に入りたいと思います。  総括でございますから、この一カ月有余の間における残された問題の中で、さらに重要という問題を二、三取り上げて私なりに質問を続けてまいりたいと思います。  第一は、韓国問題全般についてでございます。  金大中事件でございますが、金大中氏の事件は、一つはわが日本主権侵害の問題であります。いま一つは、金大中氏という人の内外の出入を兼ねた身の自由ということであります。自由を確保するというこの二つの問題が絡まっているわけでありますが、この金大中拉致事件につれてわが日本主権独立が侵されたということは、これは建国の歴史の上にもかつてないのです。非常に重大な問題だ。だれがどうとるかは別といたしましても、これは日本歴史の上にはとうてい黙過することのできない問題でありまするから、私は大平外務大臣のときから数十回に及んでこの問題の解決を強く要望いたしてまいりました。そのほかに、主権侵害に関する質問主意書というものも私は文書にして、昭和四十八年の十二月二十日、衆議院議長前尾繁三郎氏を通じて田中総理大臣にこれを求めた。これに対して時の総理大臣田中角榮氏から、昭和四十八年十二月二十八日に回答を得た。その回答は満足なものではありません。改めて昭和四十九年の一月十四日、衆議院議長前尾繁三郎氏を通じて再び質問主意書を提出をいたしました。続いて四十九年一月二十二日、再び内閣総理大臣田中角榮氏を通じて返答が参りました。まだ満足なものではございません。しかしその中に一つ確定したものがある。それは何かと言えば、金大中氏の自由に関する問題でありまするが、この問題については、再度にわたる回答書の中で、いわゆる金大中氏の自由は確保せられておる、そういう了解が両国の間にでき上がっている、こういうことが繰り返し述べられていることと、いま一つは、後でも申し上げましょうが、金東雲一等書記官金大中拉致行為に関与していたという、この事実は政府側も明らかに認めている。ただ、彼が一等書記官であるというだけで、韓国という公権力の発動による行為であるか否かは不明だ、ただ金東雲一等書記官関係しているというだけで、韓国公権力に基づく日本主権侵害という結論は出すわけにはいかない、こういう答弁なんでありまして、いわゆる金大中拉致事件金東雲氏が関係をしているということは、政府答弁書の中にも明らかになっておる。  ところが、今日に至るまで、まだ金大中氏は、わが日本へ来ることも、アメリカへ行きたいという旅券を韓国政府に出して二年有余たってもアメリカへ行けないという現状にある。その後の金大中氏のいわゆる出国も含めての自由の保障の問題が一体どうなっておるのか、まず外務大臣お尋ねをいたしたいと思います。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 問題が二つ提起されておりますので、そのおのおのについて申し上げます。  まず、金東雲氏の問題でございますが、昨年の八月に韓国政府から、金東雲書記官がいわゆる拉致行為に加担したとの証拠が得られなかったため捜査を中止する旨を通報してまいりましたけれども、わが国としては、この韓国捜査結果には納得がいかないというふうな立場でございまして、現在、韓国側に対してさらに詳細な説明を求めているところでございます。昨年の十月二十五日付でこの点について照会をいたしておりますが、その後なお回答に接しておりませんので、今年の一月三十一日にさらに韓国側回答を求めるための催促をいたしておるわけでございます。これが金東雲書記官関係の問題でございます。  次に、金大中氏につきましては、私ども直接に十分な情報を持っておるわけではございませんけれども、最近、報道等々によりますと、韓国のいろいろな政治活動に、野党系政治家数名とともに参加をしておられるように見受けられますので、この点では、もとよりわが国のような自由な政治活動というわけではございませんでしょうけれども、韓国一般市民と差別待遇されていない程度の政治活動の自由を持っているのではないかという判断をいたしております。ただ、最近また、一日限りであったようでございますけれども、自由を拘束されたという報道がございまして、これにつきましては、過去の経緯もございますので、韓国側に対して、それがどのような性質のものであったかということを照会をいたしております。実は、韓国が連休でございました由で、したがいまして、昨日、月曜日に、先般のことにつきまして照会をいたしたところでございます。  次に、同氏出国の自由の問題でございますが、御承知のように、同氏に過去に選挙違反事件があったという容疑で裁判が行われまして、同氏裁判官の忌避をしたということが、大法院において、いわばその主張のゆえに裁判が差し戻しになるというようなことになっておりますから、そういう公判が継続中であるということがあって、出国というものが簡単に認められないということが韓国政府立場のようでございますので、この点は、その選挙違反事件の終結というものを、われわれは注意を持って見守っているというのが現状でございます。
  10. 小林進

    小林(進)委員 四十八年十一月一日に韓国金鍾泌総理日本に参られた。当時の田中総理大平外務大臣に面接されて、金大中事件については一応陳謝の意を表せられた。ここで大平外相は、日本に対する主権侵害の問題は解決した、政治的に解決した、こういう一方的な判断をされた。これは日本独立主権とを売った歴史上永遠に消えない大きな汚点です。しかし、その問題はしばらく置くとして、そのときの政治的結着条件として、一つ金大中氏の身柄をどう処置をするかということ、これは留保された。二つ目には金大中氏の出国の自由が了解された。以上二つであります。これが政治的解決というときの条件なんです。ところがこれが一つ解決されていない。いま外務大臣のお話の中では、まあ韓国並みの自由は与えられている、しかし選挙違反裁判問題がある、彼は拒否しているから、その問題で若干の拘束を受けているのではないかというふうな、まあ想像も加えたどうもあいまいな説明があった。  これは外務大臣に申し上げておきますが、あなたは最も優良な官僚出身です。あなたと同じ型なのに前に愛知揆一という秀才がおられた。われわれは、愛知揆一宮澤氏を、官僚の頂点における、これほどそつのない、しかも無性格国務大臣はないと評価をしている。だから、まごまごしていると白を黒とも言い含める、そういう官僚的技能をあなたは非常に巧みに持っておられる方だだ。けれども国会です。特に外務大臣などというものは、筋と哲学を持たなければ勤まらない。官僚官僚でいいのです。これは無性格でやっていればいいが、あなたは国務大臣として、少し哲学のある、渋みのある、信念のある回答をしてもらわなければいけないのでありますが、金大中氏は、最近みずからの心境をこう語っている。語った日にちを言いましょう。一九七四年十一月二十九日です。彼はソウル市における自宅の中で、いままで一度も口にしなかった日韓両国政府に対して、事件処理の仕方について初めて批判の談話を発表した。いいですか、大平さん。あなたも前外務大臣なんだから、あなたの罪は一番大きいのだから、よく聞いてください。  彼はこう言っている。一年前の七三年十一月一日に両国政府は何を決着したのだ。政治的決着です。結局、いまになってみると、何も決着をつけていないということになってしまった。私の自由の問題も、すなわち金大中氏の自由の問題も、事件真相究明も非常に遺憾である、こう言っているのであります。あなたはこの談話を御存じでありましょう。知っておられますね。頭を下げられましたから、知っておられることにしましょう。なお加えて、この両国政府決着に対して、最初から疑問を持ち納得ができないと言っている。金大中氏は納得ができない。世論を無視したこの両国政府責任は重い、彼はこうはっきり言っていますよ。私個人としては、最初からこれは決着にならないと予見していたから驚かないが、両国間の虚構に対しては——虚構です。真実を偽って虚構をつくり上げた。虚構に対しては、私の事件だからというだけでなく、この事件を踏み台として両国の本当の親善を熱望していたので、怒りを禁じ得ないのが私の現在の心境です、こう言っているのであります。  日本政府三木総理大臣国民はあなたの外交姿勢には相当の信頼を置いております。三木外交には筋があるという見方をしておりますが、この金大中氏の最近の発言をあなたはどうおとりになりますか。そのときにもあなたは閣僚の一員でいられたはずであります。
  11. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 金大中氏が日本に滞在を許されておって、それを日本政府が保護する責任があるわけですね。それがああいうふうに強制的に拉致された。したがって金大中氏の人権という問題に対して非常な関心を私は持っておるのです。日本政府としては責任を果たしていない面があるわけです。そういう点で、しばしば韓国政府についても、金大中氏の普通人、一般の人と同じような自由の回復というものに対しては非常な関心を持っておるわけです。  最近では、御承知のように、新聞、報道機関などを通じて、いろいろな政府に対して批判的な演説などもされておるようなことがあるやに聞いておりますので、その自由が相当回復されつつあるということに対して、われわれも、そういうことは人権問題からいって一つの——こういうふうになっていくことに対して、われわれ自身も評価をしておったわけですが、しかし、私はまだ少し釈然としないのは、金大中氏自身がいろいろなときに発言するときに、いろいろな発言に気にかかることがあるわけですから、今後とも金大中氏の人権問題というものに対しては、重大な関心を日本政府は持ってまいります。あらゆる機会を通じて金大中氏の人権が回復されるように努力をしていくつもりであります。いま、選挙違反というような、これは国内法の問題でありますから、私がとやかく言うことはございませんけれども、とにかく滞在を許されておった金大中氏の人権の回復というものに対して、日本は関心を持つ道義的な責任を持っておると考えております。
  12. 小林進

    小林(進)委員 金大中氏の選挙違反といえども、一九七〇年、朴さんと大統領を争ったそのときの選挙違反です。五年も六年も前にやったものをおとりにというか、材料にして彼の身柄を拘束している。そのやり方がいいか悪いかは別といたしまして、総理金大中氏の人権に重大な関心を持っていただくということは、これは日本国民として一つの救いであります。  しかし金大中氏はこう言っている。私の事件解決二つの柱、一つは私の韓国の内外での自由、これであります。いま一つは私が拉致された事件の真相の究明である。この二つは全くいまでは無意味なものになってしまった。国外への旅行はおろか、国内の活動の自由も完全に封ぜられて、二十四時間厳しい監視のもとに置かれている、彼自身はこう言っている。事件捜査についても、私に関しては何の具体的な進展もなかった。たとえば、事件当時、九段のホテル・グランドパレスにいた三人、金大中氏と梁一東民主統一党党首、それに金敬仁国会議員と、金東雲当時の駐日大使館一等書記官との対面もなされていない。せめてこの対面くらいさせてくれてもいいじゃないか、捜査の必要があるならば。この対面もされていない。  結論的に言って、両国政府事件解決する本当の誠意があったのかとさえ、いまは疑問を持っている。日本政府が、日本の外務省が本当に私の問題を解決するという誠意があったのかということさえ、いまは疑問を持っている。日本に対して言いたいことは、日本政府努力した面は評価するが、日本政府がもっと透徹した態度、毅然とした態度を見せていたら、あるいは私の事件をめぐる世界の日本政府に対する評価も違っていたと思う、こういうことを言っているのであります。  また、日韓関係が朴大統領夫人狙撃事件を契機として悪化した問題についても、金大中氏は両国関係について、何回繰り返しても同じだが、国民不在の外交をやめて、両国民納得を意識した外交をやりなさい、これ以外に言葉はない。残念ながら両国政府の、国民の意思を度外視したやり方で行っている今日の外交が、だんだん国民レベルでも後退をしていることは残念にたえません、こう言っているのであります。  この金大中の言葉から見れば、これは日本政府のいままでの答弁は、大平外務大臣答弁も含めて、全くうそを言っていたことになる。政府は国会議員のわれわれをだまし、国民をだましていたということになるのであります。その責任を一体どうおとりになりますか。そして今後この問題をどう処置されますか。外務大臣、ひとつ真剣にお答え願いたいと思います。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金大中氏が、真の自由を求めるという立場から、ただいまのように不満を漏らされたという心境は、私どもも想像するにかたくございません。そのただいま御紹介になりました金氏の発言の中で、日本政府の尽くした誠意は認めるがということがございましたように、確かに当時から政府としても誠意は尽くしておったつもりでございます。これは金氏も一応認めておられるわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、わが国捜査当局が誠意を尽くしました結果と韓国捜査当局の結果とが、なお突き合っておりませず、その点については、日本政府としましては満足いたしておりませんので、韓国に対してさらに照会し、説明を求めておりますことは、先刻申し上げましたとおりでございます。  なお、わが国の外交方針について金氏がいろいろに批判をされますことは、これは金氏の自由でございますけれども、私どもとしては、韓国との友好関係、ことにいろいろな経済援助等々、韓国国民の民生の安定と向上ということが即両国の友好関係の基本であるというふうに考えまして、そのような配意のもとに外交関係を続けておりますつもりでございます。
  14. 小林進

    小林(進)委員 残念ながら外務大臣の御答弁に了解をするわけにはまいりません。特に外務大臣が、両国国民の幸せのために経済その他の外交を進めるとおっしゃっておりますが、日本国民韓国の大衆も、そのように理解してはおりません。しかし、三木首相がこの予算委員会の中で、前回、両国国民いずれの国を問わず、国民の基盤に立った外交でなければならないということも、だれかの質問に言われた。そのときは、場内の聞いている者は、確かに胸を打たれたはずであります。しかし、宮澤外交の中に、かつての大平外交の中に、民衆の基盤に立った外交姿勢があると国民はだれも考えていない。あなた方の外交は密室の外交です。両国の一部の者の利用と利益、そういう者のために行われている外交だ。いわゆる宮澤外交だ。昔の宮廷外交ですよ。今日の言葉でいけば官僚外交です。その残滓を残している。それば三木外交宮澤外交の本質は全く違っている。国民はばかじゃないんですから、大衆は利口なんですから、ちゃんとその本質は見抜いていますよ。  そこで、私は申し上げますけれども、警察庁にお尋ねしたい。  警察庁は、ホテルにいた三人と金東雲一等書記官について、その後一体どういう捜査を行われたのか。私は中間までの報告は聞いているが、その後一年間ばかりの警察当局捜査の進展状況は聞いていないので、あるいはソウル等にも行かれて、金大中氏等にも一直接会って、こういう真実を捜査してこられたのかどうか。そのことも含めて警察庁長官からお伺いをいたしたいと思うのであります。
  15. 三井脩

    三井政府委員 まず、私からお答えいたしますが、ただいまお話のありましたグランドパレスホテルにおける三名の人たちの問題でありますが、このうち梁一東氏並びに金敬仁氏につきましては、事件発生後なおわが国に滞在中に事情を聞かしていただきました。滞在を延期して聞かしていただいたわけでありますが、なお、これだけでは十分でありませんので、一たんお帰りになってからまた来ていただきたいということを当時お願いをし、またその後、そういう要請を韓国側に対していたしておるところであります。  なお、金東雲書記官につきましては、御存じのように、九月五日に出頭を求めたわけでありますけれども、その当時はすでに日本におらず、また出頭について応じていただいておらない、こういう状況でございます。  この事件を解明し真相を明らかにするために最も大切なことは、事件現場におった人たち、この関係者について、事情を直接にわが警察が、捜査当局が聞くということが事件解明のための常道であり、本質的に大切なことでございます。したがいまして、そのような努力をただいま申したような方法でいたし、要請をいたしておりますが、今日まで実現に至っておらないということであります。  なお、金東雲書記官を調べるために韓国捜査員を派遣するかという問題につきましては、私たちは、このためには韓国側の了解が要るという手続上のこともありますけれども、何といいましても、わが国において発生した事件で、わが国における部分につきまして、日本捜査当局がこれを取り調べる、事情を聴取するということはわが国において行うことが、捜査といたしましてベストであるというように考えておりますので、関係者のわが国への再来日を求めて調べる、これを基本方針といたして努力を続けておるという状況でございます。
  16. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 ただいまもお答えいたしましたが、警察といたしましては、金大中氏、あるいは梁一東、金敬仁両氏、これら関係者の供述を得ることが本事件の真相解明に一番必要であるという観点で、外務省を通じていろいろお願いをしておりまするし、また、その経緯は外務大臣からもお答えのとおりでございますが、なお、先ほど御質問にもありましたように、四十八年の十一月二日に金鍾泌首相が来られました際に、金東雲書記官については、韓国における捜査の結果を日本警察に通報するということを約束されておられまするので、われわれとしては、その通報を得てなお真相の究明を図りたい、このように考えておる次第でございます。
  17. 小林進

    小林(進)委員 ちょっと待ちなさい。その通報は来ましたでしょう。去年の八月十四日、いわゆる捜査の結果犯罪の事実がない、証拠がないと言われた、その通報に対して、その後どう措置をされたのか承りたいと思います。
  18. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 昨年の通報は、梁一東、金敬仁両氏が金東雲書記官を目撃していないということ、あるいは金大中氏も金東雲書記官現場において目撃していないということ、また金東雲氏自身も現場におらないし、犯行について否認をしておるというような内容のもとに、本件捜査を中止するということでございまして、その内容におきましては、私どもも、金東雲一等書記官の遺留指紋の問題、あるいはいわゆる犯行に使われたと思われる車両の問題、それら物的証拠につきましては、何らの回答に接しておりませんので、先ほどもお答えがありましたが、私どもとしては、それらの結果について、なお具体的、詳細な通報を得るようにお願いをしておるということでございます。
  19. 小林進

    小林(進)委員 まだ具体的な通報を求めているという、韓国の返事待ちということで、どうもその後の具体的な捜査は何もおやりになっていないような形でございますが、これはまことに残念にたえません。そういうところに私どもは納得ができない。外務省の姿勢なりあるいは警察庁の姿勢なりを国民は疑わざるを得ない。何か目に見えない黒い力でも後ろにあるんじゃないか、何かの取引があるんじゃないかと、どうしても疑わざるを得ないのであります。こういうことを解明してもらわなければ、われわれは日本の外交に信頼を置くわけにはいかないのであります。  昭和四十九年、去年の十一月五日であります。韓国側から、日韓閣僚会議を開きたい、それができなければ外相会談を開きたいと言ってきたのであります。そのときの外務大臣が木村俊夫さんであります。その木村前外務大臣はこれに対し、外相会談などが開かれるためには日韓の間にもっと友好的な雰囲気が生まれなければならぬ、金大中事件について韓国側は了解事項を実践する必要があると、強硬にこれを突っぱねているのであります。これを国民はみんな知っているんだ。確かに木村外交は骨がある、筋が通る、りっぱなものだという、これが国民の気持ちの中に親炙しておりまするから、彼の外務大臣の在職期間は短いけれども、まだ木村外相に対する国民の信頼というものは深く静かに流れておりますよ。今度の三木内閣改造に、だれをやめさしても木村外相だけはひとつ置いてもらいたいというのが、祈るような国民の気持ちだった。これはあなたの最大の人事のミスでしたよ。  新聞なんかによりますと、宮澤さんは、この国会が終わると五月にも、金大中事件をそのままにして閣僚会議を開く、そして金を貸したり何かするのは、もう閣僚会議じゃあまり世間が了承せぬから、その下の事務屋レベルのぺースにさせて、またどんどん国民の税金でも韓国に貸してやろうかというような、そういう計画をお進めになっているということでありますが、真相であるかどうか、外務大臣にお伺いします。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、従来から政府の態度は一貫しておると考えておりまして、実は最近韓国の副総理が見えられまして、私と会談をいたしました。その際この問題が話題になりまして、私から、閣僚会議を開くとすれば、これはいままでの問題がきれいになって、本当に将来への友好ということの最初のステップになる、最初の具体的なあらわれになるというような雰囲気のもとに、閣僚会議を開くとすれば開くべきものだ。どうも私としては、いまそのような環境が熟しているとは判断いたさないということを申しましたのに対しまして、先方の副総理から、自分としても、閣僚会議を開くとすればそのような雰囲気のもとに開くべきものと思う、この際特に急いでやるというような問題ではないであろうという発言がありまして、この点は、政府立場は先方も了承しておられるものと考えております。
  21. 小林進

    小林(進)委員 いまの外務大臣の御答弁、それがそのまま真実なものであれば、私ども非常に喜びにたえません。ぜひそうしてもらいたいと思う。いままでのもやもやの問題を洗い直す、そういうことの上に将来閣僚会議を開いて、一切きれいになった上に日韓両国国民の永遠の友好のステップを踏み出したいというなら、これは賛成です。そのための第一のもやもやが金大中事件。しかしこれ一つではありません。まず金大中問題を国民納得する形できっぱりとしていただきたい。これは日本国民だけではありません。韓国国民大衆もまた同じような願望を持っておるのでありますから、これは警察当局もきちっとやってもらいたい。これが宮澤答弁に対する第一の解決しなければならない問題。  第二の問題として、あなたが本当にいままでの問題を洗い直すと言えば、第二の問題は、先ほど言われた金東雲一等書記官の問題です。この金東雲一等書記官の問題についても、国民は非常に疑惑を持っております。何で疑惑を持っているか。去年の八月十四日に、当時の在韓日本大使の例の後宮君が韓国の外相に呼ばれた。そこで金東雲一等書記官証拠がないからシロだよと、こう三十分ばかりの間に言われて、それが済むとすぐ韓国情報は、もはや韓国における金大中拉致事件捜査本部は解散した、もう捜査をやめた、しかし、将来新しい証拠でも出ればその時点で韓国は考えるが、これはもうこれで解決だ、こういうふうにやった。くどいようですが言いますよ。それが八月の十四日だ。その後の次の十五日に何が起こりましたか。その翌日の八月十五日に何が起こりましたか。いわゆる文世光による朴夫人の狙撃事件が起きた。余りにもタイミングが合い過ぎるじゃないか。国民はみんな疑っておりますよ。もし八月十四日に、日本警察金東雲一等書記官の指紋までもとらえたこの嚇々たる犯罪事実を、韓国は一方的に、これはシロでございます、証拠はありませんから、捜査をやめましたと言ってくれば、八月十五日における日本国内の世論や国民の怒りが、それは日本国内じゅうを覆い隠しましたよ。日本国民は挙げてこの不信に基づいて、韓国政府の一方的な回答に対しての怒りが爆発したでしょう。その爆発するという八月十五日に朴大統領夫人の狙撃事件が起きたのだから、舞台はくるっと変わってしまった。今度その翌日になったら、韓国側日本に向けて、この朴夫人を殺した文世光は日本に住んでいたのだ、日本警察のピストルを盗んだのだ、日本は陳謝に来い、わが大統領の夫人を殺したことに対しては日本政府日本国民責任があるから陳謝に来いと言って、主客が転倒してしまった。今度は日本が謝ったり、イチャモンをつけられたり、あるいは被告の立場に立つという状態に一夜にして変わってしまった。あまり物事のできぐあいがいいじゃないかというのが国民の世論である。また国民が深い疑惑を残しているもとなんであります。  そこで、次の問題点。一体、金東雲一等書記官の問題もわれわれはどうしても了承をすることができないが、それと文世光の問題をなぜ切りかえしてしまわなければならぬのかという問題。金東雲一等書記官の問題は、金東雲一等書記官の問題としてあくまで追及すべきである。朴大統領の陸夫人を撃った文世光の問題は文世光の問題として、これを徹底的に真実を追及していただけばよろしい。だから金東雲の問題も、あなたの答弁が真実ならば、これを解決してください。  第三の問題は、いま私が言った文世光の問題だ。この問題についても、外務当局、警察当局の明快な回答を得なければ、日韓会談は私は軌道に乗せることはできないと思う。第三点として、文世光事件についてまず椎名副総裁の訪韓の問題から私は御質問申し上げたい。  椎名氏は、昨年の九月十九日、政府の特使として韓国を訪問された。そして朴大統領と会談された。当時の首相田中氏の親書を手渡しするとともに、六項目のメモなるものを差し出された。そのメモは、新聞の報道によれば、陸大統領夫人の悲劇的最期について謹んで哀悼の意を表する、これが一項目。第二項目として、日本政府としても、狙撃事件犯人日本政府発行の旅券を入手したこと、日本警察のピストルが盗まれたことなど、犯行の準備が日本国内で行われた点についてはそれなりの責任を感ずるものであり、遺憾の意を表する。第三点、事件は繰り返されてはならず、日本政府は再発防止に最善を尽くす。第四点、日本政府としても捜査を行っているが、韓国側協力を得てさらに事実の究明を行い、その結果に応じて必要な措置をとる。法を犯した者に対しては厳正に処罰をする。五点、韓国政府の転覆を意図する犯罪行為や要人へのテロ活動は厳正に取り締まる。これは朝鮮総連など団体構成員であると否とを問わず、犯罪行為を取り締まるということだ。第六点、今回の事件によって日韓関係が危うくなることは日韓両国いずれにとっても利益にならない。両国政府は、相互の関係を強固な基盤の上に置くよう努力すべきだという内容であります。  この椎名メモについて私は質問いたしますが、事件の真相が明らかになっていないというのに、田中総理の訪韓に続いて政府特使を重ねて送るという、史上類例のない外交処置をとった、その外務省の判断は一体何か。これが一つであります。韓国政府は特使派遣を要求し、さらには特使の人選についてまで要求してきたという。まあこれは新聞報道でありまするが、それは一体事実かどうか。二点であります。政府は、こういう韓国政府の要求を内政干渉と一体考えないのかどうか。また、世界の外交慣例から見ても当然な要求と見ているのかどうか。以上について外相の答弁をお願いしたい。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当時、椎名特使が訪韓されましたことにつきまして、関係の記録、関係者の話を総合して申し上げますと、政府立場は、朴大統領狙撃事件につきまして、わが国立場韓国政府の最高首脳部に正確にお伝えするということと、何分にも隣国の大統領夫人が亡くなられたことでありますので、そのことについて哀悼の意を表する、こういう目的であったと承知をいたしております。
  23. 小林進

    小林(進)委員 隣国の大統領夫人がお亡くなりになったのでありますから、哀悼の意を表するのは当然、そのためにいわゆるナンバーワンの田中総理が間髪を入れず哀悼の意を表し、弔意を表しに行っておられるのであります。私はそのことを聞いているのじゃない。椎名副総裁を派遣をした、その外務省の判断は一体何かと言うんだ。  第二番目は、名指しで特派大使の派遣を要求されてきた、それが本当か。こういう韓国政府の要求、指名までされて特使が出かけて行くことは一体内政干渉ではないのか。世界にこんな例があるのか、これを聞いているんです、それを答えていただけばいいんです。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特使派遣の目的は、先ほど第一に申し上げましたことば、この事件についてわが国立場韓国政府の最高首脳部に正確に伝えるということであったわけでございますが、本件につきまして、特使の派遣あるいは具体的な人名を名指してというようなことが韓国側から要請がございましたということは、私は承知をいたしておりません。
  25. 小林進

    小林(進)委員 こういうところになると、いわゆる宮澤外交の真価が出てくるのです。明々白々だ。みんなが知っていることだ。みんなが知っていることです。それをあなたはけろりとして、そういう人名まで指定されてきたことなんか私は承知をしておりません、こう言って逃げる。これはいわゆる秀才官僚答弁だと私は先ほどから申し上げておる。あなたはそれで私への答弁は逃げられるでしょうけれども、国民はそれで了承しますか。この中にいる人は一人でも了承しますか。うまい答弁だなと思うくらいのものであります。私は、時間がありませんからもう言いませんが、それは了承できません。この問題は、きょうの予算委員会における一つの留保の問題です。改めてまたどこでも私はやります。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕  椎名メモとはどういう性格のものなんです。次にお尋ねいたします。六項目のメモを出しました。そのメモの性格についてひとつお尋ねをいたします。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる椎名メモと言われるものでございますが、椎名特派大使は田中首相の親書を携行され、大統領に意のあるところを伝えられたのでございますけれども、その際、その内容につきまして口頭で敷衍をされました。そして、その発言内容は、誤解を生じませんようにメモにして先方に手渡したという性格のものでございます。その内容は、先ほど小林委員が、こういうものと理解をしておるがと仰せられましたことが、まず概してその内容をなすものでございますが、したがいまして、このメモ自身の性格は、両者で合意をしたものであるとか、あるいは法的拘束力を持つとかいうものではございませんで、口頭で述べられましたことを、誤りがありませんように文字にしてメモとして手交をした、こういうものと承知をいたしております。
  27. 小林進

    小林(進)委員 ここにも大変議論のあるところでありますが、だんだん予定の時間よりはずっと経過いたしまして、一切の質問を終わるわけにはまいりませんので、これも私は残しておきます。これも了承できません。  第三番目の質問として申し上げますが、文世光は日本警察官のピストルを盗んだ、盗まれた日本国民被害者で、盗んだ犯人韓国人の文世光だ、しかも韓国の政情との関係において発生したこの盗難事件に対し、責任を感じ陳謝をすべきものは犯人の所属をしている韓国政府ではないかというのが国民感情なんです。韓国政府に対する激しい怒りが生じているが、この日本国民感情に対して政府はどう解釈されるのか。逆なんだ、政府は。政府は、日本警察がピストルを盗まれたから日本の方に責任があると言って謝りに行っているのだが、これは国民の感情としてはどうしても了解できない。たとえば、反対に今度は日本人が、あるいはイギリスでもいいが、外国の警察官からピストルを奪ってきて日本犯罪を犯した場合に、政府は、その英国なり盗まれた外国の政府に対して謝罪を要求しますか。要求できると考えますか、われわれの常識として。あなた、できますか。この国民感情、あなたどう考えられますか。答弁を願いたい。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、お尋ねの厳密な意味におきましては、恐らく法律関係あるいは犯罪そのものの事実関係関係がございますと思いますので、その点はそれぞれの専門家に、もしなんでございましたらお尋ねをちょうだいしたいと思いますが、私ども一般に考えましたことは、日本の旅券の不法入手というようなことがあったと考えられること、また拳銃がわが国の中で窃取された、盗取されたというようなことがあったと考えられること、この二つのことは、わが国の行政に関係のあることでございますので、その限りにおいてわが国が無関係とは言えない。両方ともいわば行政上の、申してみれば瑕疵と申し上げることができると思うのでございますが、そういうことに関係がございますので、そういう意味では無関係とは申せないというふうに考えたものと存じておりますけれども、具体的な法律問題あるいは犯罪そのものの事実関係は、お求めがありますれば政府委員から御説明を申し上げるべきものと考えます。
  29. 小林進

    小林(進)委員 私は何も関係がないとは言ってない。そんなこと聞いているのじゃないのです。外国人が日本警察からピストルを盗んでいって外国で犯罪を起こしたのに、一体何で日本が謝らなければならないのか、こっちは被害者じゃないかということを私は申し上げているだけの話だ。関係があるないを聞いているのじゃないのです。あなたの話はいつもそうやってポイントが外れる。これが官僚答弁というのだ。だめですよ、あなた。被害者が加害者の国へ謝りに行くとは、そんなばかな話がどこの世界の常識にあるかと私は言っている。国民感情は承知しませんよ、あなた。しかし、いまの拳銃の問題や旅券の問題は後で質問しましょう。  次に、あなたに質問いたしますが、韓国では椎名特使を陳謝特使と報道をしている。日本ではそのように報道されていないのです。一体いずれの国の政府がその国の国民をだましているのか、これをお尋ねをしたい。椎名さんは本当に陳謝の特使なのか、特使でないのか。特使でないならば、韓国政府はうそを言っているということになる。陳謝の特使ならば、日本政府がうそを言っていることになる。お聞かせを願いたいと思う。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点につきましては、椎名特使は、このたびの朴大統領夫人の死去に際しまして深い哀悼の意を表しておられますけれども、厳密な意味わが国を代表して陳謝をされたというようなことはございませんし、したがいまして、厳密な意味でそれを陳謝特使と言うことは適当でないというふうに私どもは考えております。
  31. 小林進

    小林(進)委員 それでは、韓国政府が椎名さんを陳謝特使と言っているのは、韓国側政府がうそを言っていることになりますね。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 状況状況でございますから、椎名特使は十分に哀悼の意を表されたものと思いますが、わが国立場から申しますれば、それは国の名において陳謝をされたという種類のことではなかったと思っております。
  33. 小林進

    小林(進)委員 それでは、相手の国がうそを言ったということが明らかになりましたね。この点は一つ明確になりました。  次に申し上げますが、文世光事件に関連して、日本警察の権威を利用し、全くうその報道韓国でなされていたことについては、国会において  これは何回も追及されているが、この一連の韓国における報道について、警察庁の当時警備局長、いまは警察庁の次長になられた山本さんは、当時、いずれも日本警察当局が発表したことはない、記事の訂正を求めるなどきちっとさせたい、調べてみると答弁をいたしております。警察当局は、この答弁に基づいてどういう処置をとり、韓国側はこれにどういうふうに答えたか、御答弁を願いたいと思います。
  34. 三井脩

    三井政府委員 事件関係につきまして韓国側から通報をいただき、またわが方で国内捜査をした内容について、ICPOその他のルートを通じて韓国側に事実を通報しておる、韓国側からも通報が来ておる、そういう状況でございます。
  35. 小林進

    小林(進)委員 まだ返事がないわけですな。
  36. 三井脩

    三井政府委員 すれ違いでございます。
  37. 小林進

    小林(進)委員 もっとこれは厳しく催促してください。こういう重大な問題を国会の答弁だけにして、後は野となれ山となれでは、ちゃんとその答弁が実行に移されている証拠がない以上は、せっかく世界一すぐれている警察などというその信頼も薄らいでまいりますから、即日行動に移し、われわれが督促しない前にちゃんと書面をもって回答が届けられるように行動をしてもらいたいと思います。  次に質問の第七、椎名メモの中に、韓国側協力を得てさらに事実の究明を行うと述べているが、韓国政府はすでに文世光を処刑してしまった。捜査を打ち切った。日本側の捜査もどうもそれに基づいて打ち切られているようでありますが、この間に、刑事犯人引き渡し条約というものは日本では締結されていないが、このICPOを通じて、日本捜査当局韓国捜査当局から送られてきた資料、特に科学的証拠というものをひとつ明らかにしてもらいたいと思うが、この点、警察当局いかがでございましょう。
  38. 三井脩

    三井政府委員 本件事件は、一口に文世光による朴大統領狙撃事件、こういうことになるわけでありますが、これをわが日本警察立場から見ますと、中身は二つに分かれます。  一つは、文世光が日本国内においてこの狙撃事件の準備をしたということでございます。この準備の点が、わが日本警察といたしまして犯罪となるわけでありますから、この点の捜査を行う。殺人と実際に狙撃をした、こういう点は、外国人による外国における犯罪ということですから、わが日本警察がこれを捜査すべき管轄権を持たない。つまり情況ではありますけれども、日本警察捜査の対象にならない、こういうことでございます。したがいまして、私たちといたしましては、日本で行われた犯罪行為、これを捜査するに必要な限度において、情況として資料をいただくという限度にとどまるわけであります。
  39. 小林進

    小林(進)委員 まあピストルを盗んだことが、あなたに言わせると、これは殺人罪の予備だと言うのだろう。私は、これが予備に該当するかどうか、法務大臣、これは犯罪問題、殺人問題だから、ひとつあなたと議論をしたいところだけれども、残念ながら——委員長、これ一時間ばかり時間を延ばしていただければ私はこの問題だけですやりますがね。これは民族の重大問題ですから、どうですか一時間私の持ち時間を延ばしてくれますか。
  40. 谷川和穗

    ○谷川委員長代理 小林委員に申し上げます。どうぞ質疑を続けていただきます。
  41. 小林進

    小林(進)委員 この質疑の継続中に十分考慮をすると言われるのであれば、私は安心して質疑を進めたいと思いますが……。  次に、韓国の元海軍参謀総長、これは実に信頼すべき人です。名前を言いましょう、李竜雲中将、この人がこういうことを言われている。信頼すべき筋からの話であるが、陸夫人に命中した弾丸は文世光が発射したピストルの弾丸とは別のものだと語っております。しかもその信頼すべき筋とは、人物も職責もはっきりしているが、これは私も知っております。しかし特にここで私は言わない。なぜ言わないかは、これは私より外務大臣がよく御存じでしょう。不実企業の当然たる実態調査の書類でも、これを出せば、この資料をここで言えば、それは直ちに韓国の中においてこの調査に従事した人が処罰をされるだろう、殺されるだろうとあなたが言った。それだけはここで言わぬでくれとあなた言われた。それは外務大臣が証明せられたように、韓国という国はそういう事実を言うと殺される国だということを外務大臣がおっしゃったのであります。それでありまするから、私は知っているが言わない。言わないが、しかし実に信頼すべき人物、ここでは名前を伏せますが、日本捜査当局は、韓国側から、文世光の発射した弾丸が陸夫人に命中した証拠となる科学的捜査資料を得ているのかどうか、持っていられるのかどうか、お尋ねいたします。
  42. 三井脩

    三井政府委員 持っております。内容は、文世光が本件狙撃事件に使用いたしました拳銃の番号並びに試射弾丸の送付を受け、鑑定の結果、間違いないという結論が出ております。
  43. 小林進

    小林(進)委員 言えば、文世光が盗んだのは二丁のピストルなんですが、その二つのピストルのうちのどっちを使ったかということまで、これはちゃんと明確に回答してくれなくちゃいけぬわけですけれども、時間がないから、問題は山ほどあるのでありまするから次に進みますけれども、韓国捜査当局から日本に送られてきた文世光の自供に基づいて警察当局は裏づけ捜査を行っていたが、どういう結果が出たか。  一つ、朝鮮総連と文世光及び事件との関係はどうか。いいですか、よく覚えてくださいよ。  第二番目は、韓国青年同盟と事件との関係は一体どうなったか。  三番目、文世光の活動資金は一体どこから出たのか。  四番目、文世光が韓国青年同盟金君夫委員長に出したと言われる手紙の一通が、金君夫氏に届いていないのに民団中央系の新聞「統一日報」に掲載されていたが、この手紙の捜査結果はどうなったのか。  五番目、文世光は大阪空港よりピストルを持ち出したことになっているが、こういうことは一体可能であったのかどうか。また職務怠慢の係官が一体明らかになっているのかどうか。  以上五点についてお尋ねいたします。
  44. 三井脩

    三井政府委員 まず、朝総連と文世光との関係でございますが、朝総連の大阪におけるメンバーと文世光が会っておったということはわかっておりますけれども、その会った内容、何を言われたか、どういう話をしたかという点は明らかになっておりません。  また、韓青の関係につきましては、文世光自身が韓国青のメンバーであったということはわかっております。  第三に、資金の関係は、まだ百数十万の資金がどこから出たのかという点について明らかになっておりません。(小林(進)委員「少しは明らかになったでしょう」と呼ぶ)若干の点はわかっておりますけれども、百数十万についてはまだ未解明でございます。  それから、金君夫氏への手紙につきましては、そういう手紙を出したということはあるようでありますけれども、その手紙の行方、内容等については明らかになっておりません。  五番目に、大阪空港から持ち出したということでありますが、ラジオのケースの中に拳銃を入れて持って行った、こういうふうに言われておりますけれども、捜査の結果、その具体的事実関係は明らかになっておらないという状況でございます。
  45. 小林進

    小林(進)委員 警察は非常に遠慮して物を言っていられますが、たとえて言えば、韓国の青年同盟金君夫君に対しては、これは日本警察が、金君夫氏の宅に午前六時、大阪府警が二十人もどやどやと入ってきた。そして、そういう私簡があるだろう、文世光からの手紙があるだろう。私は見たことも拝んだこともありません。ないか。全然見たこともない。しかしせっかく来たのだから君の家の中を捜査をさしてください。よろしゅうございます、どうぞ御捜索ください、しかし私のところにはないのですよ、ないのだけれどもどうぞごらんください。しかしその手紙はあるところにはある。先ほども言うように「統一日報」には、金君夫君、文世光といって、こういう手紙が来た。おまえがひとつ革命をやるのなら金は云々する、アメリカから持ってくるという、こういう手紙が金君夫君のところに行ったといって、ちゃんと民団系の新関に写真が大きく出ているのだから、そこにはあるのだろうから、そのあるところを捜索されたらいかがですかと言って本人は忠告をした。この捜索をおやりになりましたか。ここにはあるはずでしょう。新聞に出ているのですから。これをおやりになりましたかどうか。  それからいま一つ、あなたはまだ一生懸命相談しているようだから、いま一つ言いましょう。  一体、文世光が百数十万の金を持っていたと言うが、少なくともそのうちの五十万円は文世光の母親の陸末蘭が文世光に渡している。その陸末蘭という文世光の母親は、大阪ですかの秘苑、いわゆる妓生パーティだ。その秘苑のマダムか何かやって、韓国へしばしば行ったり来たりしている。朴さんが大統領の韓国へしばしばこの母親は行ったり来たりしている。これが子供のいわゆる文世光に五十万円の資金を与えている。これは間違いないでしょう。  いま一つ言いましょうか。これは韓国政府の発表によると、文世光は、赤不動病院、これは東京にあります。その病院へ朝鮮総連系の人の世話で入院をした。その病院で何をやっていたか、射撃の訓練をした、こう韓国政府側は発表した。ところがこの赤不動病院は、これは何も朝鮮総連ではなくて、この赤不動病院の院長さんは韓国の籍の人であって、金振玉という人なんです。そして事件前の昨年の五月の二日には、在日韓国医療奉仕団の一員としてちゃんと韓国へ行っていられる。こういう事実を知っておられるでしょうから、私の言ったことに、時間がありませんから、ひとつ御答弁願いたい。
  46. 三井脩

    三井政府委員 文世光が母親から金を借りたという事実はありますが、母親は、金を貸したその使途、文世光が何に使うということについては、小遣いという程度で、事情を十分に承知をいたしておりません。  次に、母親の陸末蘭さんが大阪の秘苑とどういう関係にあったかということでありますけれども、秘苑に一時出資をして共同経営者に名を連ねたという一時期がありますが、他の経営者との関係で、短期のうちに資金を回収して秘苑から手を引いておるということでございます。  また、東京の赤不動病院の問題につきまして、だれの紹介によって赤不動病院に入ったのかというところは、われわれの捜査ではまだ明らかになっておりません。また、この赤不動病院の院長ということでありますが、経営責任者並びに医療の責任者としての院長と、両方の関係があるわけでありますけれども、経営責任者の方は商工会の理事長というような立場にあるわけで、またこの院長につきましては、いま御指摘のように、外国人登録証の上においての国籍の記載としては韓国、こういうことになっておるわけでございます。  それから金君夫氏あての手紙につきましては、私たちが、本件犯行に関連を持って、押収をしたいという目当ての手紙ではないものが新聞に出ておるというように承知いたしております。
  47. 小林進

    小林(進)委員 最初からないところばかり。あなた、二十名も三十名も捜査に行って、ちゃんとありますといって新聞にまで報道している、そういう大事なところへ何も手をお入れにならぬで、新聞見たら、それは必要のない書類だから要らぬなどということは、やはり国民納得できませんよ。厳正、中立な警察のやり方をする。そういうような答弁じゃだんだん疑いを増すことになりますから、それはやはり公正に、怪しいところは全部、韓国系であろうと何系であろうとやっていただきたい。  私はまことに残念です。まだまだ資料が山ほどあるのです。ありますけれども、しかし時間がないからこれを追及できないが、いまもお話しのとおり、文世光は朝鮮総連の使嗾を受けて、朴大統領を狙撃したと言うけれども、文世光が韓国へ行くまでの間に、彼の周辺にいる者はみんな韓国系だ。健康であるにもかかわらず病院に入ったら、その病院の院長さんは韓国系の院長さんである。自分の母親は、韓国系の、最も秘密を要するそういう秘苑などというところの出資者であったり、そして韓国へ行ったり来たりしている。なるほど、ちゃんと自分のせがれに活動資金として金も渡している。けれども、それは何のために渡したんだ、小遣いとして渡したんだなどということは、何も警察当局からその渡した理由まで私は聞く必要はない。どうもそういう説明の仕方も、むしろ国民の側から見れば納得できないのであります。そういう状況なんだ。しかも撃ったピストルが文世光のピストルじゃないということは、最も確度の高い、そういう韓国の参謀総長の口を通じて明確に語られている。実に疑問が多いのであります。非常に疑問が多い。そういう事実をひとつみんな明らかにした上で、日韓の永遠の友好のために問題を処理していく。まずここから始めなければいかぬ。だからだれもが信用していない。そして文世光のその自供も明らかにしないうちに、彼はさっさと処刑されて、殺されて死んだのであります。もう処刑されてしまった。こういう実体を、あなた方は国民に信ぜよといっても、信ずるわけにまいりますか。この民主主義下、なぜ一体真実を国民に知らせようという努力をされないのか。私は、時間がないから、強く要望しておきます。  なお、太刀川、早川君の問題についても、私は相当細かい資料を持ってまいりました。残念ながら時間がない。しかし、きょうはこの午前の部が済みますと、前駐韓大使の後宮さんに予算の理事会へ来ていただいて、理事会の中で私のお尋ねすることにお答えしてくださることになっておりまするから、私は、太刀川君と早川君の問題については、その後宮大使との問題を解明をした後で、もし疑問点があれば午後の部にも入って質問させていただきたいと思います。  しかし、一言申し上げたいが、この太刀川君も早川君も、どうかひとつ政府の手によって、われわれが十カ月拘禁をされ、拘束をされて、二十年の長期の刑を付せられたこの真実を究明してくれと、彼らは叫んでいますよ。外務省、究明されましたか。  私が最も残念にたえないのは、この太刀川君、早川君が、一九七四年四月五日朝六時に、四人のジャンパーを着た韓国警察官によって拉致をされた。その間、日本の大使館は四日後ですか、一回太刀川君を呼び出して話をしてくれた。それだけであります。あとは十カ月後、釈放される前日に安養の刑務所へ大使館一等書記官の手島君が来てくれたという。外国にいて活躍するこういう人たちの、いわゆる涙にぬれた事実を非常に冷淡に扱っているこの外務省の出先のあり方が、これでいいかという怒りに似た感情を私は持っているのでありますけれども、残念ながら時間がありませんから、これは午後にいたしましょう。  しかし、この問題に対して、外務委員会で宮澤さんはわが党の堂森君の質問に答えて、この太刀川、早川に対する韓国裁判は最も公正に行われたとあなた言われたそうですな。その点だけでも間違いないか、ひとっここだけ申してください。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 外務委員会におけるお尋ねは、この裁判をでっち上げであると思うが政府はどう考えておるかというお尋ねでございました。それに対して私から、両君とも容疑を受けて自分の立場を法廷において説明をする、当然のことでありまして、したがって、両君が真実と思っておられるようなことが一つある、それに対して、恐らく韓国の検察側は、検察側において真実と思うことを述べていたに違いない。したがって二つの真実と思われることがあって、その間、そのゆえに裁判が行われたものと考えます。したがいまして、その裁判が不公正に行われたと考える理由がありません限り、片側だけの真実と称せられるものを政府が取り上げるということはいかがなものでございましょうかと、このように御答弁を申し上げました。
  49. 小林進

    小林(進)委員 若干私が調べたこととはニュアンスが違うようであります。これもまたひとつ調べて、午後の部にいたしましょう。  ここに、「韓国国会における対日外交五項目」というのがございます。一九七四年八月二十八日、朴大統領狙撃事件に関連して、韓国国会の外務委員会の対日外交五項目という統一見解です。外務委員長が要約した統一見解が五項目にわたっている。もちろんこれは韓国の外務委員長がこれを要約して韓国政府に要望したものであります。  それによると、第一に、「大統領狙撃事件に対する日本政府の道義的責任と政治的及び国際法上の国家的責任が明白であるので、政府日本政府から公式の陳謝を受けるなどその責任を厳に追及すること。」これが一つであります。  いままでの質問の中に、朴大統領狙撃事件にたった一つ日本の国内において殺人の予備行為が行われたというそれだけの問題がある。いわゆる旅券というものは韓国の領事館が出したものなんでしょう。朴大統領に対する旅券の交付は韓国の領事館がやったので、何も日本政府責任じゃない。問題は予備行為。その予備行為も、警察がピストルを盗まれた被害者じゃないか。ピストルを盗まれておりながら、犯罪の予備行為が行われたから責任を感じますなんという、私は信頼する警察のその間抜けた答弁を聞いていやになっちゃった。一体何を言っているのです。ピストルが二丁も盗まれていて、その盗んだやつの罪を追及しないで、盗んだピストルで韓国へ行って大統領夫人を殺す準備をしたから、予備行為が行われた点においてわれわれは責任がありますなどという、そんなへなちゃくれた答弁が一体どこにありますか。私はいままでの質問を通じて、公式に陳謝すべき理由なんか一つもない。依然として日本は、文世光によって日本の国内においてピストルを盗まれたり、旅券をごまかざれたり、あるいは吉井夫妻の本籍を盗まれた大変な被害国であって、むしろ韓国側から陳謝をしてもらわなければならぬ被害者の立場にあるという感じを深うした。それをしかし韓国国会は、依然として日本の陳謝を公式に求めているというのは納得できない。  第二番目であります。「政府は背後共犯である吉井夫妻と金浩龍ら在日朝総連の幹部及び韓青の幹部に対する強制捜査を実施し、事件の背後の全貌を究明することに積極的に協調することを日本政府に強力に働きかけること。」時間がないのが残念ですが、吉井君は共犯じゃありません。金浩龍氏はこの文世光の犯罪関係しておりません。それを、関係しているから強制捜査をせい、こういう決議がなされておる。  第三番目だ。「日本政府に対し北朝鮮が朝総連を通じ日本を対南赤化戦略基地としていることに鑑み、朝総連とその前衛行動隊たる韓青を直ちに解散」せい。韓青だ。韓国青年同盟を「直ちに解散し、その他の日本内の反韓国的活動を制度的に規制することを強力に働きかけること」。規制に協力せいという。いいですか、これはまとめて聞くのですから、答弁をよく覚えてください。  第四番目は、「日本の一部のマスコミの無責任かつ、内政干渉的であり、悪意に満ちた対韓偏向報道姿勢が日韓間の国民感情を悪化させる重要な要因となっていることに注意を喚起させ、日本政府が適切な措置を取るように要求すること。」と書いてある。  それから第五項目であります。「もしも、日本政府の法的、道義的責任に対する解除措置が納得し得る程度のものではなく、日本の非協力捜査姿勢により最後まで事件の背後の全貌が究明されない場合は日本の対韓姿勢が非友好的であると断定し、政府日本に対して外交の凍結もしくは国交の断絶までも含む強硬な外交措置を取ること。」こういう要求をされています。  これに対して、もう時間がありませんから、外務大臣、それから警察当局、明確にひとつ御答弁をいただきたい。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仰せられますように、韓国の外務委員長がそのような五項目をおまとめになったことは承知をいたしております。これにつきまして、もとより、政府として感想がないわけではございませんけれども、他国の国会において行われております審議についてあれこれいたしますことは、適当なことではないと存じますので、それにつきまして申し上げることは御遠慮をさしていただきたいと思います。  なお、わが国といたしまして、わが国の政治、行政は、わが国の憲法、法令の範囲内において行われるべきものでございまして、それにたがうようなことは、どのような要求がございましても、これに応ずるわけにいきませんことは、申し上げるまでもございません。
  51. 三井脩

    三井政府委員 わが国におります団体なり個人にしろ、これが法違反、犯罪を敢行するということでありますと、その性質のいかんにかかわらず、これを捜査をし取り締まるというのは当然のことでございます。また、団体を解散させるかどうかということは、警察の権限ではないわけでございます。さらに、特定の容疑者その他の人物について、強制で捜査するか、あるいは任意捜査の方法によるかということは、もっぱら事件の具体的状況及び性質によって、捜査当局が純粋に捜査的に、つまり事件の真相を解明するという立場から判断し選ぶべきものであるというふうに考えております。
  52. 小林進

    小林(進)委員 それは、吉井、金浩龍に共犯の疑いがあるかと私は聞いているのです。そういう抽象的な答弁をお伺いしているのじゃないのです。どうも警察答弁は少し煮え切らぬで、私は期待どおりにいかぬのは非常に残念です。朝鮮総連も金浩龍も吉井夫妻も共犯の事実はないわけですから、私はそれを聞いている。  時間がありませんから残念ですが、私は、韓国国会が韓国政府を通じて日本にこれほど厳しい抗議を申し入れてきているのですから、われわれ国会議員としても、これに対応して日本国会の意思というものをきちっとする必要があると思います。  そこで、私は委員長に、日本国会の意思をこの衆議院予算委員会において決定せられるように要望いたします。私の素案を読み上げますから、これを全会一致で採用していただきたいと思います。     対韓外交五項目  一、金大中事件は、あきらかに韓国わが国に対する主権侵害であり、朴政府の道義的責任と政治的及び国際法上の国家的責任であるので、政府は、朴政権の責任を徹底的に追及すること。  二、政府は、朴政府に対して、金大中氏の身柄を事件前の原状に復帰せしめるよう要求するとともに、金東雲および背後共犯組織であるKCIAに対する強制捜査を実施し、事件の全貌を究明することに積極的に協力するよう強く働きかけること。  三、文世光事件および太刀川、早川事件は、多くの証言によってねつ造であることが明白となっている。  政府は、朴政府に対して、公式に陳謝を受けるなど厳重にその責任を追及し、日本大使館乱入等にみられる反日活動に対し、今後制度的に規制するよう要求すること。  四、政府は、朴政府高官の一部言動は、無責任かつ内政干渉的悪意に満ちた対日偏向の姿勢であり、日韓間の国民感情を悪化させる重要な要因になっていることに注意を喚起させ、朴政府が適切な措置をとるよう要求すること。  五、もしも、朴政府の法的、道義的責任に対する解除措置が納得しうる程度のものでなく、非協力捜査姿勢により最後まで事件の背後の全貌が究明されない場合は、政府は、韓国の対日姿勢が非友好的であると断定し、経済協力をはじめ一切の経済関係の凍結をも含めた一切の関係を白紙に戻して原点に帰られること。  以上、国会の予算委員会の意思として政府に要望せられるように要求いたします。委員長の善処を望みます。
  53. 谷川和穗

    ○谷川委員長代理 ただいま小林委員から御発言のありました御要求につきましては、理事会で十分検討することにいたします。
  54. 小林進

    小林(進)委員 残念ですが、時間がもう過ぎておりますので、これはひとつ理事会で慎重御審議をいただいて、どうぞ採択せられることを強く要望いたしまして、次の問題に移りますが、これは対韓国の経済援助の問題についてであります。  今日までわが国が有償、無償の援助を通じて、恐らく十七億ドル近くの金が経済協力基金、輸銀等も含めて韓国に投資されているのではないかと思う。あるいは、韓国は現在、外資の借款が総額七十億ドルに達しておるのであって、その返済の時期も迫ってきていて、恐らくわが国で二億や三億ドルの援助をしたとしても、それはいまの韓国のこの膨大な外債の利子の支払いや返還のために、大半はもう費やされてしまうのではないかという点を日本国民は非常に恐れております。  韓国の経済状況、外債の状況等をひとつ簡単に御答弁をいただきたいと思います。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国のここ十年余りの経済状態につきましては、国際機関の判定によりますと、まず、いわゆる当時の発展途上国でございますが、発展途上国の中ではよく経済の再建が客観的には成績を上げておるというのが国際機関の判定のようでございますが、しかし、御指摘のように、石油危機以来かなりの問題を持っておるように存じます。  なお、具体的な数字につきましては、政府委員から申し上げます。
  56. 小林進

    小林(進)委員 日本も低所得国になり、国債の保証債なども入れたり、あるいは国債発行等も、去年は二兆二、三千億円ですか、ことしも二億円と大変借金国になりつつありますから、国民の大切な金でありますから、そういう外交の正常化とともに、経済面においてもひとつ、国民の税金でありますから、その費消の点においては慎重に、ひとつ控えられるようにお願いします。これは時間がないので、残念ながらそれ以上は言えませんので……。  最後に一つ韓国問題の最後では、大陸棚協定の問題に対して、これで一時間ぐらいやりたいのですが、時間がないのでこれは項目的に申し上げます。  日中航空協定の要旨などは、まず自民党、党の機関に提出して、そして論議をされた。その結果のものが協定になってあらわれておるにもかかわらず、この日韓大陸棚協定については、これは一度も自民党の党内の正式機関にもかけられないまま、昨年の一月三十日忽然としてこれは調印されてしまった。そして、この調印に対しては、中国、北朝鮮、台湾等から抗議の声明が来ております。何で一体こういう無鉄砲なことをおやりになったのか。  しかも、日韓大陸棚協定は、これはもう昭和四十三年、一九六八年になります。これはまずわが日本の、通産省の関係になりますけれども、日本石油開発株式会社がこの方面の鉱区の出願をしている。鉱区の出願をずっとやって、一万七千二百四十七件も出願をしている。昭和四十三年十二月には八千二百七十九件も出願をしておる。こうやって日本最初に手をつけていくと、はからざりき、今度は一九七〇年、二年ばかりたった一月に、韓国で海底鉱物資源開発法というものをちゃかちゃかとつくり上げている。そして、一九七〇年五月末には、同法に基づいて、朝鮮の近海から東シナ海にかけて七つの開発指定地域を設定した。そのうちの一つがいまやっている大陸だなの南の方ですよ。いわゆる南部の共同開発に関する協定も、さっさと一方的にこれは韓国が決めてしまった。決めたはいいが、決めるというと、その第七区——当時の七区ですか、いまは日本の南方共同開発の地区のその鉱区の鉱区権も、さっさとアメリカに売ってしまったんだ。アメリカに売っておいて、そして処理して、いやならこっちが勝手にやりますよ、アメリカに掘らせますよ、何ならお話にいらっしゃい、ひとつ大陸棚協定でもやりまして、あなたも仲間に入れてやりましょうというような形ででき上がったのが、この日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定という形になってあらわれてきた。まず取るべきものは取る、殴るべき人の頭は殴っておいて、仲よくしたいならばいらっしゃいという、こういうふうな発想のもとでこの大陸棚協定ができておるのでありますが、しかもその過程においては、大事な自民党の党内の正式会談も行わないでさっさと決めているという、こういう不可解なやり方が、この民主主義下のわが日本において許されていいかどうかという問題御答弁を願いたいと思います。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最初に、私どもの党内のことについてお尋ねでございましたが、前回党内で議論をいたしまして国会に御提出をいたしたわけでございますけれども、審議未了となりました。今回はまだ国会に御提出を申し上げてございません。御指摘のように、私どもの党内にも、本件については議論のありますことでございますので、それを待ちまして御提出をいたしたいと考えております。  なお、第二点でございますが、海洋法会議との関係もございますが、昨日も申し上げましたように、南の部分、いわゆる経済水域二百海里というものが海洋法会議で決まりましても、かなりの部分は両国の経済水域が競合した地域に入るということになります。なお、海洋法会議の結果、やはり大陸だなというものの考え方はおそらく残るものと思われますが、そういたしますと、やはり両国の競合関係が起こってまいりまして、しかも、大陸だなというものの性格から、大陸から自然に地形が延びるという、そういういきさつがあったりもいたしますので、そこで私どもとしては、ともかくそういう論争はこの際別にして、両国で共同開発をし、果実を分かち合うというのがわが国の国益に最も適するものである、こう判断をいたしました。  海洋法会議の結果が、競合した場合にどういうふうにするということが明確に出ますとこれはよろしいのでありますけれども、そのような情勢でございませんから、やはり中間線ということで考えることがわが国の国益を守るゆえんであろう、かように考えておりますが、御承知のように、まだ御審議のための御提出をいたしておりません。
  58. 小林進

    小林(進)委員 私はこの問題についてもひそかに聞いておりますが、総理大臣も、この協定が済むまでは余り内容をお知りにならなかったのじゃないかということも聞いておりますが、しかし、公式の場で総理大臣に、おれは知らぬよなんて発言させたんじゃ、それは与党内の問題で大変なことになりますから、あえて質問いたしません。そのお笑いの中に万感の思いがこもっておると私は理解いたしまして、質問はいたしませんが、ともかく、いまも言うように、韓国が勝手に鉱区も決めて、それもアメリカのコーリアン・アメリカン・オイル何とかというところへ、ちゃんとみな鉱区を売ってしまっているんだ。売った後に、日本も仲間に入るなら入れてやる、共同開発でいきましょう、こういうような実績をつくりながら問題を持ってくるその話の中に——いまも外務大臣がいみじくも言われたように、争いをするよりは中間線をとっても、重複するかどうかで争いをするよりは共同開発の方がよかろう、日本はこういう判断に立ちましたと言って、第六次日韓閣僚会議のときに大平さん、あなたが1何でもこういうあいまいな問題が出てくるとみんなあなたの名前が出てくる。あなたと時の通産大臣の中曽根さんだ。第六次の閣僚会議に行かれて、会議を開きながら秘密会談が別室でやられたんだ。何の秘密会談だろうと思ったら、その中でこの骨子ができ上がったんだ。韓国とけんかしているよりは、仲間同士で仲よく掘ったらよかろうから、ひとつ共同開発でいきましょうという話がそこで出てきた。実に不可解千万であります。     〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕  しかも、いまは本当に時間がないので残念でありまするけれども、この二つの協定はいわゆる北部の地域の協定と南部でできているが、北部の方は中間ベースをとっている。北部の方の地域は、ここにもあるように、中間線論、両方から中間をとっているが、南部の方へくると大陸だな方式をとって、わが日本の九州から沖繩の方までずうっと寄って、そうして大変な漁区が共同開発の中に持っていかれるという形でございます。この南部の共同開発地区の協定に基づいて、九州から対馬寄りに寄っているわが日本の大事な漁業地区、こういうところを共同地区にされて、わが南部地区における漁民の生活が一体保てるのか。農林大臣、駆け足でひとつ答弁してください。
  59. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 本協定の対象となっておる海域は、いまお話がございましたように、わが国の漁場としては非常に優良な漁場でございます。この協定を見ますと、この漁場の確保につきましては、協定内におきまして水産業者の了承がなければ開発ができない、こういうことになっておりますし、あるいは汚染防止、さらに損害補償等につきましても明記してあるわけでございまして、水産業の振興という上からは支障はないもの、こういうふうに私たちは考えております。
  60. 小林進

    小林(進)委員 農林大臣もひとつがんばって、日本の漁民を永久に泣かせることのないようにやっていかなければいけませんが、ただ、いままでの外相の答弁の中に、新聞報道等によりますと、どうも日中平和友好条約等と一緒に差し違えでこの日韓大陸棚協定をやられる、そういうような政府側の意思がしばしば報道されるものでありますから、国民は非常に心配したのです。これは日本の固有の主権です。これは日本の大変な財産です。こんな財産を、こういう不可解な経過をたどりながら共同開発地域にされたのじゃ大変だということを恐れたのでありますけれども、いまの御答弁の中では、まだ批准書は国会へお出しになっていないということでございますから、非常に安心いたしました。永久にお出しにならなければ、外務大臣に対する信頼はここで復活いたしましょうが、こういうのはお出しにならぬ方がいいです。  しかも、いまも申し上げますように、あなたの言う海洋法会議、これは三月十七日からジュネーブで開かれる。昨年はカラカスでございましたか、暑い夏に開かれたが、この海洋法会議の中で、経済水域というものはもうほぼ決まるのじゃないかと言われている。二百海里論はもう決まるのではないか。去年のカラカスの会議のときには、この経済成長の日本だけが反対したのでありますが、もはや大勢は反対できないであろう。何かあなたは、そのために三月十四日ですか、閣僚会議を開いて、その問題に対する閣議の意思を決定されるということでありますから、そうなれば、このいまの大陸棚協定というものも、これは根底から変わらなければいけない。いままで韓国のもとに、日本のこんな対馬のそばまで持ってきたようなものも、今度経済水域二百海里になれば、この全貌は変わらなければならぬし、両方の地域から重なるところも出てきましょう。こっちから二百海里、あっちから二百海里ということになりますと、狭いところは重なってくる。  そういう問題もありますから、これはひとつ白紙に戻して、どうしても協定をやりたいというならば、そういうジュネーブの海洋法会議も済んだ後を見きわめながらいま一度やり直すというお考えはないかどうか、お答え願いたいと思います。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経済水域というものは二百海里が大勢でございますことは、御指摘のとおりでございます。そこで、海洋法会議で経済水域というものが国際的に承認をされたという場合を仮定してみますと、この南の地域のかなり多くの部外が、両国の二百海里の経済水域の中に入ります。重複をいたします。その場合にどうすべきかということについて海洋法会議が決定に至れば、これはそれに従うわけでございますけれども、恐らくこういうケースについては、海洋法会議としては決定をし得ないであろう、関係国にゆだねられるであろうというのが第一の関係でございます。  第二の関係は、そのような経済水域が設定されたといたしましても、大陸だなという概念は恐らく消滅することはなく、やはりそのまま残るであろうというふうに考えております。そういたしますと、大陸だなというのは、もともと大陸から海へという観念でございますために、島国でありますわが国にとりましては、わが国として十分な理論武装はいたしますけれども、大陸に近い方の主張というものは、また、それなりに考えてみなければならぬ点がございまして、その場合にもどのような調整をするかという問題がやはり残ります。両方から考えますと、中間線というのがわが国にとって一番国益にかなうであろう、これは恐らく間違いのない立場と存じておりますが、本件につきましては、たまたま条約でございますので、政府としては、合意いたしましたものを国会に御提出をいたすべきかと考えております。まだ御提出を申し上げてございませんけれども、そのような状況でございます。
  62. 小林進

    小林(進)委員 いまのあなたのお話のとおり、中間線論が一番正しいというならばなおさらであります。この南部の方の共同開発は、中間線論じゃなくて、大陸だなの立場に立っているわけです。大陸だなを中心として決められるとなると、ここに中国からも故障が出た、台湾からも故障が来ている、北朝鮮からも故障が来ている、こういう関係国間で話し合ってやるべきじゃないかという話が来ているにもかかわらず、あなたは、この問題について北朝鮮と話をしないじゃないですか。中国とも話をしていないじゃないか。  中国は、昭和四十九年二月四日に相当強硬なる声明を発表している。日韓大陸棚協定に対する中国外交部スポークスマンの声明で、中国の主権侵害する行為であると言っているのだ。共同開発区域を確定したことは、中国の主権侵害する行為である。中国政府は決してこれに同意することはできない。もし日本政府と南朝鮮当局がこの区域で勝手に開発活動を進めるならば、これによりて引き起こされるすべての結果に対して全責任を負わなければならない。こういう外交声明としては大変強硬なものが出ている。  時間がないから本当に残念ですけれども、一言簡単に聞きますけれども、いま日中漁業協定をあなたはお進めになっておりますけれども、この日中漁業協定にあなたは勇ましいことを言って、中国が無理な要求を強いてくるなら急いで協定を結ぶ必要はない、中国が折れ合おうと言うのであれば折れ合おうというのでこの漁業協定交渉を再開した、こういうことを言われて、中国にはなかなか強いことを言われているようでありますが、そんな強さがあなたにあるなら、韓国の大陸だなの方についても少し強いことを言ったらどうですか。韓国の問題になるとあなたはへなへなとして何にも言えなくなってしまう。  いま底びき禁止の区域と軍事警戒区域の問題が中心になって大分難航しておるようでございますが、この話し合いの中に大陸だなの問題、中国のこういう声明の問題も一体出なかったかどうか簡単にお聞きしますと同時に、あわせて日中漁業交渉の見通しも簡単にひとつお話をお聞きしたいと思います。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日韓大陸棚開発協定につきまして、中国が昨年そのような声明を出されたことはよく知っておりまして、それに対してわが国は、今回の協定は十分中国側の立場を配慮したつもりである。と申しますのは、中国がどのような主張をしてこられましても、そこからかなり余裕をとりました線を引いているつもりでございますので、日本政府としてはいつでも中国側と話し合いをする用意がある、また、もとは説明もしてあるわけでございますが、こういう立場をとっております。  なお、日中の漁業交渉につきましては、農林大臣から御説明をいただけるかと存じます。
  64. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日中漁業交渉は、いま始まったばかりでございますが、これまでの経緯から見ますと、昨年の五月に軍事警戒ラインと黄海東海の規制措置をめぐりまして、両国の間に非常に大きな主張の差がありましたので、物別れになっておりますが、今回はいま始まったばかりでございまして、われわれとしても、何とかして今回の交渉を成功させたい、こういうふうに願っておるわけでございます。
  65. 小林進

    小林(進)委員 実はこの大陸だなの問題も、私は詰めたいのでありますが、まだ問題が三つばかり残っておりますので、最後に総理大臣、自民党のこれは有力なメンバーですが、こんなことを言うと、韓国ではありませんからまさか殺されることもないと思いますけれども、やはり支障があると思いますから名前は伏せますが、これは単独ではありません。一つの。パーティの多くの人から、政府がいまやっている大陸だな交渉は大変危険である、このことだけはひとつ君も与野党一致した意見であるとして質問の中に加えておいてくれと言われましたから、これを読み上げます。  第一、この南部共同開発地域は日本の経済水域になるところである。一体何ゆえに共同開発の地域に入れるのか、認めるわけにはいかない。  二つ目、これは試掘のために、深削のために、みんな穴を掘るから、これで海底の状況が変わってしまう。全部五島列島の南部に入るのでありますから。試掘の段階で穴をぼこぼこ掘られたら、九州の漁民の生産資源が全部荒らされてしまって大変な影響がある。  三つ目、石油がもし出てきたときに一体その公害がどういうふうになるか。大変な公害になるぞ。水の下二千メートルのところに大体石油はあるんだ。この石油の噴き上げを防ぐために、ガス穴を掘ったり、あらゆるバイ。ハスを設けたりして原油の噴き上げるのを防いでいるんだけれども、ちょっとでもこれを誤れば、水島の公害ごときの問題ではない、日本海全体が恐るべき公害に荒らされてしまう。  第四番目、公害が起きたとき、あるいは韓国行為によるものは韓国裁判にかけるし、日本のものは日本裁判にかけるという協定になっておるが、一体いまの韓国の国情の中で公正な裁判ができると思っているか。これで解決をしないときは、両国から一人一人合同委員というものを出して、そして話し合いで解決するとなっているけれども、何らそういうことで解決の見通しがつけられると日本国民は考えていない。  それから五番目、この作業をするために莫大な金がかかる、何兆円もかかる。これを一体どこから出してどう交渉するのか。心よからぬ政治家は、両国の中でこれまたねらっている者があるぞ。しかも出た石油のコストは、素人の考えだが、いまの相場の二倍くらいの非常に高いものになる。何と言ってもこの共同開発地域は、日本の最大の資源であり、しかも、これは動かないんだ、海の底だから。もっと慎重に構えてくれるようにということを、君の口を通じて三木総理大臣にくれぐれも言ってくれと言われたのがいまの問題であります。  総理、拳々服膺してひとつお考えいただきたいと思いますが、あえて総理の御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
  66. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろ参考にいたすことにいたします。
  67. 小林進

    小林(進)委員 つれないお声でございましたが……。  時間もありませんので、次に私は国内問題に移りたいと思います。  三木総理は、ともかく社会的不公正を是正して公平な政治をおやりになってきた。私は、その公正の問題に関連して、これはかけ足で申し上げますが、わが政治の中で一番むだなものは交際費だと見ているのです。いわゆる交際費というのは、もとを言えばこれは飲食、飲み食いの金であります。日本の飲み食いの金は、昭和四十八年の二日から昭和四十九年の一月までにおける法人企業の実態調査、これは民間の株式会社だけですが、国税庁が算出した企業の交際費で課税の対象となった総額は一兆六千四百五十九億円であります。これは昭和四十七年に比較しまして三千二百億円の増であります。それから昭和三十八年には四千五百六十二億円でありましたが、これがだんだん上がっていって、昭和四十七年には一兆三千二百五十五億円になっている。これはもう二・三一倍にふえているのです。ぐっとふえた。それから四十八年になると一兆六千億円でまた三千億円もふえたのであります。これは社用族です。これはみんな飲み食いに使うのでありまして、この交際費をもっと分析すれば、いわゆる社用族の交際費というのであって、これは言うまでもなく料亭の費用です。バー、キャバレー、ゴルフ場。それから贈り物で払われるのは、アルコールでジョニーウォーカー黒などという一級品。こういう金額で使われるのでございますが、この一兆六千億円というのは、これは予算書でも見られるように、わが国の五十年度の全社会保障関係費の約半分です。文部大臣おられますか、文教予算よりもずっと多いんです。私ども社会党は防衛予算を非常に問題にしますが、この防衛予算よりもこの飲み食いの金は三千億円も上回っている。  この一兆六千億円という金額をどうして算出されたのか。時間があれば国税庁長官に聞きたいのですが、長官いますか。——あなた長官じゃないじゃないか。国税庁長官いますかと言ったらあんなのが手を上げた。ごまかしちゃだめだよ。だてや酔狂で私はこの日まで二十年飯を食っているのではないのであります。委員長、こんなのは時間から省いてください、これも私の持ち時間に入るのでありますから。  時間がないから私は申し上げますけれども、この一兆六千億円を出した計算方式は、全国に百二十九万九千社の企業があるんですが、その企業の中から五万六百二十七社を抽出調査いたしました。これは国税庁がですよ。そうして、その期間の中の総売り上げ額を調べた。これは三百四十二兆一千六百二十億円でありますが、前年よりは二四・九%、六十八兆円くらいふえている。その中で資本金十億以上の企業は〇・一%しかない。それだけの企業が一千七百五十二社で交際費が三千二百三十七億円であります。一年間でですよ。  総理、国の総理ですからよく聞いてください。その中で一つ例を申し上げますと、交際費という項目が有価証券報告書に出ていますが、それによると住友商事というのは、なかなかずるくて載せておかないのです。大手五社だけで合計百十六億九百万円、一日当たり三千百八十一万円ずつ飲み食いに使っているのです。三井物産が三十八億二千二百万円、三菱商事二十五億二千六百万円、日商岩井二十一億九千九百万円、伊藤忠商事二十一億九百万円、丸紅十九億三千万円です。これが民間の法人が四十八年一年間だけで飲み食いに費やした費用なんであります。そのほか、調査の対象に含まれない交際費だとか、あるいは非課税の対象額とされた巨額な部分だとか、そのほか官庁、ここでやる飲み食いは交際費には入っていないのでありますから、それから自治体が使う公用族の交際費などというものを入れたら、これはどんなになるかわからぬ。  これも時間があれば、ちょっと国税庁に聞きたかったのでありますけれども、時間がないからやめますが、こういう巨額な金を少し節約してくれると、後でも言いますが、たばこなんか値上げする必要はないのです、酒なんか値上げする必要はないのです。  時間もありませんけれども、まだ三十分ばかりありますから、一つの例を申し上げますが、これは東京の銀座のバーから企業の経営課長のデスクに届けられた交際費の請求書の内容なんです。私、見せてもらったんだが、四人様でバーへ飲みに行った。そのときの内容は、輸入ウイスキー一本二万五千円、これは小売店で買うと五千円でいい品物です。オードブルというちょっとしたつまみ物が出てきますが、四人分で四千円だ。フルーツ、ミカンの皮みたいなものだが、これが四千円です。バターせんべい、これが千円です。それから同席したホステスの飲んだジュース。一杯千円です。それからテーブルチャージ。総理知っていますか、このテーブルチャージというのを。これが五千二百円。それからホステスへ、これはもう規定で四千円です。マダムのあれが二千六百円。マダムが向こうにいて、いらっちゃい、これだけで二千六百円。税金五千百三十円。合計五万七千六百三十円。これに対してこの企業の課長は、案外安い勘定だったね、こう言って交際費として落とされている。そうして国税庁は、ああこれはもう無税だよ、税金はいいんですよ、こう言うから税金を払わない。  こうして高額な飲食代金が黒い濁流となって、毎晩、銀座、新宿、赤坂、新橋を押し流し、そして一カ月の給料では及びもつかない飲食天国が日本の夜を占領している。いまや会社や国は富裕で、個人の消費がこれによってみんなカバーされている。いま不景気だといっても、会社へ行くと、課長さん、あなたの月給は昇給停止だ、あるいは五%減俸だと、表面はこうやっている。春闘に備えるために管理職の賃金を抑えると言っている。ところが、後ろへいったら、社長が肩をたたいて、交際費がある、おまえの給料は五%下げるが、そのかわり今夜は銀座へ行ってひとつ一カ月分飲んでこい、そしてチャージ五千二百円出せ、みんな会社が払ってやる、こういうシステムでわが日本の企業は回転をしている。銀座、赤坂、新橋の飲食店は繁栄している。酔っぱらい相手の婦人労働者は、われわれよりも高給のいわゆる月給取りとなって勤務している。  労働大臣、時間がないから聞かないけれども、こういう高給サラリーマン、いわゆる女性職業人を夜な夜なはべらしていることが健全な社会と言えますか、あなた。私は時間があればあなたに聞きたい。  厚生大臣、あなたこっち向きなさい。いま看護婦の手がない、あるいは社会福祉施設の人員がない。あるいは社会福祉施設の中では、あの身体障害者の子供を養いながら腰痛病にかかっている女がみんなやめていく。看護婦さんをやめてどこへ行くか、ここへ来るんですよ。看護婦をやって公共に従事しているよりも、バーへ行って、いわゆるいらっちゃいとやった方が高給になる。(笑声)いや、笑い事じゃないんだ、厚生大臣。これは実績があるんですから。看護婦さんが一番多いんですよ。これがバーのホステスに流れている。こういうような医療従事者を、こういう高給サラリーマン、俗称夜のチョウ等に変えている。それを養っているものは全部交際費なんだ。これを社会的不公正としてあなたは是正するという心情でおやりにならぬか。  私は、何もこれをやめろと言うのじゃないんです。この一兆六千億円は四十八年ですから、昨年度は恐らく二兆円になっていましょう。幾何級数的にふえていくんですから。その二兆円という金を、いまも言うように、そのまま国民生活安定という方に使われれば、いま国民年金、福祉年金を、わが社会党は血みどろになって二万円にしなさいなんで言うが、三万円ずつくれたってこれは余って返る。しかし私は、二兆円の交際費を全部やめなさいなどというやぼなことは言いません。決して言わないが、その二兆円の交際費に仮に——一兆六千億円でいいです。一兆六千億円に仮に一般並みの税金をかけたとしたら幾らになるかというと、まけてくれない国税だけかけたとしたら、その税金が四千九百九十億円、まあ五千億円です。税金をかけたっていいじゃないですか。それに地方税もある。三二%のプラス地方税が一千五百九十七億円、まあ一千六百億円です。この交際費のために地方税も、一千六百億円ももらうべき金をもらわないで赤字になっているんです。それを国税をやる大蔵大臣は、四十八年度の剰余金を、さっさと四十九年の臨時国会で先食いしちゃったけれども、そんな無理な財政を組まなくたって、これに正当な税金をかければ、ちゃんと先食いしただけの金は向こうへ行く。しかし、私は、これに全部税金をかけろとはまだ申しません。まだ申しませんが、税金をかければ五千億でございましょう。  大臣、ことしの五月から酒の値段をお上げになりますね。お上げになりますが、酒を値上げして一体幾らの収入をふやされれていますか。総理は、余り数字はお好きではないようでありますけれども、五月から酒の値段を上げて、ことし一年で上げる分が一千七十億円ですぞ。この交際費に普通の税金をかければ五千億円になるのです。一億国民がこのインフレの中で苦しみ抜いて、ああ生きる望みもない、一杯の酒を飲んで苦しみを忘れようかといったら、そこへどさっとあなた税金をかけようというんだ。総理、五月からたばこをお上げになりますね。たばこを上げて、一体これで幾らの増税になるんです。一千六百億円ですぞ。この交際費に税金をかければ五千億円です。たばこも酒も一銭も取らなくたって、この両方で増税する分が二千六百億円ですから、まだ半分余っちゃう。そのうち地方税に一千六百億円も回る。なぜ、この高物価の中で苦しみ抜いている、一億国民のたった一つの救いである、酒は涙かため息かという憂さ晴らしの酒に、こういう過酷な税金をかけなければならぬか。ああ世の中味気ないぞ、せめて煙でもふかそうかという、そのふかす煙に千六百億円もかけて、こういう特殊の法人が、たった百二十九かなんか、法人が夜飲み食いで満腹している金に五千億円も六千億円も七千億円もまけてやるという、これが一体クリーン三木、社会公正の政治と言われますか、あなた。私は、一億国民に全部これを訴えて回るけれども、おまえの言うことは間違っていると言う人は一人もなかった。  それで、いまのこの税金をまけている方法は、どんな企業、会社でも、一法人には四百万円です。四百万円交際費はいいよ、もう無税だよ、それにプラス資本金千分の一までは無税だ、それ以上まだ飲み食いすると、それ以上のものにはいわゆる七五の分に税金をかける、こういうシステムになっておるんですよ。だから、会社の社長は言うんですよ。おれの会社は一千万円利益が出た、四百万円交際費に使わないと、一千万円に税金をかけられて持っていかれちゃう。それで、四百万円。ぱっぱっと遊んでいると、後の六百万円にしか法人税がかかってこないから税金が軽くなる、飲まないと一千万円に税金がかかってくる。だから飲みたくない、ホステスさんの顔を見たくないけれども、やむを得ずこの四百万円だけは使いますと言ってわっさわっさと使うから、一兆六千億円なんです。皆使わなければ損だと言うんだ。税金で持っていかれると損だからおれは使うんだ、税金をかけられるから飲み食いをしなければ損だ、泣きの涙で遊んでいると言うんだ。  だからその分を、その四百万円を無条件にやめてくれるというのを、総理、せめて三百万円までにしたらどうか。三百万円にして、プラス資本金の千分の一、プラスそれ以上のものの七五というのを一〇〇%税金をかける、こうなったら、その分でも、私のざっとの計算ですけれども、三千億円ぐらいの税金が上がってきます。そうすると酒も一銭もかけぬでよろしい。たばこも一銭の値上げをしなくてもよろしい。一億国民は、ああクリーン三木の情けで、たばこも酒の値上げもこれで終わったかと思う。これは総理、あなたがいまやろうと思えばすぐできることです。何でもない、そんなことは。これはおわかりにならなければ、原稿を私はやりますから、あなたよく見てください。私は、一銭一厘もうそを言わない、生きたままの政治を申し上げている。総理、いまの私の提案をどうお受けになりますか。
  68. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 一律四百万円の控除というものは、中小企業というものを考えた結果でありましょうが、とにかくいま小林さんの言われている数字は、私もそのとおりの数字だと思うのですが、交際費は課税を強化してきておるのですけれども、いま社用族的な浪費というものの弊害の面も大いにあると思いますから、今後とも交際費の課税は強化していく方向で進めてまいりたいと思っております。いろいろと実例を挙げて、非常に感銘深く拝聴いたしました。
  69. 小林進

    小林(進)委員 これをおやりにならないと、また地方選挙に負けます。私どもはこれだけをしゃべって歩いている。国民はみんな納得してくれます。三木さん、これをおやりにならなければ、クリーン三木氏、社会の公正は通りませんから、本当にいま一度ひとつ総裁室でゆっくり考えていただいて、あすからでも実施していただきたいと思うのです。切実な要望であります。  それから次は、二つ問題であります。委員長、ほんの少しでありますからお情けをいただきまして……。  いま一つは、西ドイツの財形貯蓄に関する問題です。これは時間がないので本当にいま言い切れないんでありまするけれども、この財形貯蓄というものは、これも私は実は分科会で労働大臣に言ったのです。しかし、労働大臣と私のやりとりじゃだめなんです。やはり総理も、大蔵大臣も、副総理も、経済企画庁長官も理解してくれなければだめなんでありまするけれども、この西ドイツには勤労者財産形成促進法という法律があるのです。日本はこれはまねしているのです。その立法趣旨をひとつ私は総理に申し上げます。  西ドイツと日本は同じく敗戦国です。同じように負けました。その負けたドイツがわが日本のように経済が安定している。その安定の理由が一体どこにあるかということを、総理、われわれは真剣に追求しなければいけない。私はそれを発見いたしました。何ですか。それは勤労者財産形成促進法というすばらしい法律がある。この法律をつくったドイツの政府の立法趣旨、これは御承知のとおり、実は、一九五二年に亡くなったアデナウアー、あの人の発想から生まれてきたのですからね。そのドイツの立法趣旨、「企業は戦後の荒廃からありとあらゆる政府の助成を受けて資産を築き上げ繁栄を遂げてきた。勤労者の預金は信用の形で産業に供給され、勤労者は預金金利を受け取ったが、企業はそれ以上の利益を上げた。」勤労者の預金によって利益を上げた。「企業資本の蓄積の一部はこの差額である。」いまもうけている蓄積は、この勤労者の預金の差額によって今日の繁栄を来したのであります。「いまや勤労者が政府と企業の助成を受け、みずからの財産を築くべきときだ」これが勤労者財産形成法ができ上がったドイツの立法趣旨なんです。  こういう立法趣旨に基づいてドイツは何をやったか。まず住宅貯蓄割増金法、プレミアつきです。すなわち、労働者が住宅をつくるという目的のために貯金をいたしますと、十年間据え置きという条件にいたしまして、政府がその労働者の貯金に一年間二五%から四五%ずつ割り増し金をつけてやる。いいですか、労働大臣、間違ったら間違ったと言ってくださいよ。それから、そのかわりつくる家には限定がありますが、一定規模の住宅の建設については、新築した後十年間は不動産税、固定資産税は全部免除です。  第三番目には、これは住宅貯蓄ではない、一般の貯蓄です。労働者貯蓄割増金法という法律がある。これは一九五九年にできている。普通の貯金を労働者がやると、五年間ないし七年間は据え置くということを条件にして、その貯金に毎年国が二〇%ないし四二%ずつの割り増し金をつけてくれる。どうですか。こんな十分な手厚いことをしたが、それでいいかと言ったら、まだ足りないと言って、今度は一九六一年、いよいよ社会民主党の内閣になったら、勤労者財産形成促進法という法律をつくった。いままである二つの貯金法は、低所得者には貯金ができないからだめだ、無一文の労働者でも財産の形成ができるようにこの法律をつくろうということで、単身者で年収二万四千マルク、日本の金にして大体二百六十万円前後、その勤労者を対象として雇い主とその契約を結ぶと、その雇い主が最高六百二十四マルク、大体七万円、それを賃金と別にその労働者の名前で貯金してくれる。その貯金をするというと、その貯金を見て政府が、その雇い主の貯金額の三〇%、子供三人以上の場合は四〇%、日本の金にして最高二万一千円を、そのまた雇い主の貯金に金を出してくれる。これは法律ではありません。そうすると今度は銀行が、私もお手伝いさしていただきます、ずいぶんもうけましたからと言って、奨励金をそれにつけてくれる。そうやって労働者は、一文の金もなくてもちゃんと財産ができ上がる、そういうことになっているのであります。  こういうよい法律がドイツにでき上がっておるから、ドイツの労働者は春闘をしない。長谷川労働大臣、あなたはことしの二月二十五日に閣議で西ドイツの春闘の状況説明した。あなたの心情はわかる。なかなかりっぱなものだ。西ドイツの賃上げ状況は大体六・五%ぐらいで、七・五%アップの中で一切の官公労、民間の賃上げ要求は済んでいる。整々とドイツの春闘は終わったというが、りっぱです。それはそういうわけだ。こういう財形促進法の中で、ドイツの二千二百万の労働者のうち千七百万人が加入して、そして安定した生活をしているから春闘もおさまる。福田総理、あなたはいま、明けて春闘、寝て春闘、この春闘はまさにわが日本の経済に重大影響を与えているけれども、心配はするが何もしない。いま日本の労働者は貯金すればみんな減っていくのだ。国民経済白書の中にもあるように、これは政府の発表ですけれども、四十七年の末に日本の勤労者は百七十三万円の平均貯金を持っていた。一年たって四十八年の暮れになったら、その貯金が、利子がふえたから百八十万円にもなったかと思ったら、百五十一万円。一年間たったら元金が二十二万円減っていた。四十八年の暮れから四十九年の暮れになった。今度は幾らになったといったら、百七十三万円が百二十一万円に元金が減っているじゃないか。そういう残酷非道な政治をやっていて、寝ても起きても春闘が気になるんだと言っても、それはだめだ。せめてこのドイツの財産促進法を、同じ環境にあるのでありまするから、これをやらなければだめだ。強く要望いたします。どうですか、総理大臣、私の言う資料はうそがありますか。総理、どうです。こういうところに、社会的公正の三木内閣が新しい角度を打たなければだめなんであります。どうですか。
  70. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 やはり民主主義は財産を持つことがより安定になると思いますから、政府も財産形成については相当改善を加えておるわけです。ドイツの場合は、一つの社会保障全体の体系もあるわけで、たとえば国民健康保険なんかは、日本は一兆円も出しておる、ドイツは一銭も出してないわけですから、これが何十%出すからそのままというわけにはいきませんけれども、やはり今後の勤労者の生活安定のためには、住宅と結びつけたこういう財産形成ということは、日本も強化していくべきだと思います。
  71. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私が賃金、賃金と言っておって春闘問題を処理しよう、こういうお話ですが、その反面何もしないというようなお話ですが、この点が気がかりでありますので、私はお答えさせていただきます。  やはり社会的公正という見地、こういうことから申しましても、あるいは勤労者の賃金問題、そういう立場から申しましても、物価の安定ということ、これはもう最大の問題である、こういうふうに考えるわけであります。何もしないと言うが、この物価の安定という問題につきましては、最大の努力をいたしておるわけでありまして、御承知のとおり、相当実績も上がってきておる。私は、勤労者の立場のために大きな条件を整えつつあるということを篤とひとつ御了知おきを願います。
  72. 小林進

    小林(進)委員 総理、副総理の御労苦を若干評価はいたしましょう。ゼロというのもなんでございますから評価はいたしますが、ともかくドイツの財産形成促進法をひとつ大いに研究していただきたい。向こうは二十年の歴史があります。こっちはごまかしのものができてまだ三年くらいでありますから。しかし、一歩一歩でも近づくような方法を考えていただきたい。  もう終わりになりました。最後に最も力を入れたいのは、やはり原子力発電所の問題であります。柏崎市、刈羽村等にまたがる広大な地域に、東京電力は、一千万キロワットという世界にない、実に夢のような広大な原子力発電所建設計画を進めておりますが、この地盤はきわめてもろく、小断層が多数あるばかりでなく活動層の存在する疑いもあるのであります。県から原子力委員委員長あての報告にもあるように、県知事から原子力委員長に行っておりますが、県の調査によると、一般構造物については問題がないが、原子力発電所のような特殊構造物については、この地盤では安全性が確保できない恐れがある。このような状況の中で、電源開発調整審議会が審議を終了して、これをパスさしているということは、実に不可解千万であるというこの問題があります。しかも、東京電力が電調審に提出をして認可申請をした資料によると、地盤の調査資料は大湊地区のものである。こっちの地区なんです。私は現場ながめました。ところが、その後の計画は、荒浜地区にこの発電所を設けるというふうに、ずいぶん地区が変わっちゃった。そればかりか、申請書類においては、立地はマイナス二十メートル、地下二十メートル、こういうことに申請書が出ているにもかかわらず、その後マイナス四十メートル、倍以上の地下へ持っていくように計画は変更になっておる。大湊と荒浜では地盤条件が全く違うし、マイナス二十メートルと四十メートルでも条件は全く違っている。したがって、電調審で審査した東電提出の資料は、現計画の審査のための資料には全く成り立たないものである。電調審の調査を白紙に戻し、国と県との責任をもって十分にひとつ調査をし、審査をされることをお願いいたしたいのであります。  特に、地盤問題は立地条件の最も基本的な問題であって、まさに電調審で基礎審議の重要な案件とすべきものであるにかかわらずこれをパスした、これをおろそかにした。しかも、このような重大な地盤を残したまま原子炉安全専門審査会の原子炉を中心とする安全審査にまかせるようなことは絶対に危険である。あくまでも電調審は白紙に戻し、調査と審査をやり直すべきであると思うのでありますが、いかがでございましょうか。  現に新潟県知事君健男から原子力委員委員長佐々木義武氏に、公文書をもって、いかにそれが不安定なものであるかという資料が来ております。なお、その種類の調査資料としては、新潟県商工労働部長、これは労働省から出向している加藤君という非常に優秀な部長が、これがまた地盤問題検討結果報告書というものを設けて、秘密な調査をして非常に不安定であるということを言っておるのであります。これは大変な問題でございますから、どうぞこの問題については、電調審の主管官庁である経企庁長官、それから原子炉安全専門審査会のある科学技術庁長官から、ひとつ御親切な御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思っております。
  73. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御指摘の東京電力の原子力発電計画につきましては、昨年の七月すでに電調審の審議会におきまして、これを開発すべきものとして基本計画に組み入れておるのです。この組み入れを白紙に還元するということはできません。できませんが、しかし地元民の皆さんにはこれは安心していただかなければならぬ。ここでいよいよ具体的な手続に入るわけでありますが、これは、原子炉等規制法、それから電気事業法、この二つの法律に準拠いたしまして、一方は原子力委員長科学技術庁長官に対し、また他方は通産大臣に対しまして認可の申請があるわけであります。その申請の段階におきまして精査いたしまして、御安心のいただけるように必ずいたします。御安心願います。
  74. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 まだ東京電力から原子炉設置の許可申請か出ておりません。それが出たのを待ちまして、お話のように、この二月二十一日に新潟県知事から私あてに地盤の審査について要望がございますので、その要望を尊重いたしまして、慎重に審議いたしたいと存じます。
  75. 小林進

    小林(進)委員 若干時間がおくれまして、まことに失礼をいたしました。不満足ではございますが、委員長の御命令もございますので、これで私の質問を終わりたいと思います。
  76. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  午後一時五十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  77. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  理事会の協議により、この際、特に小林進君の質疑を許します。小林進君。
  78. 小林進

    小林(進)委員 二十分の質問時間を与えられましたことを感謝いたします。  実は、私は韓国問題の質問について、三人の参考人を委員長に要請いたしました。一人は前駐韓日本大使の後宮虎郎君、それから太刀川、早川の両君であります。ところが与党・政府の強硬な反対がありまして、ついに太刀川、早川両君をここに参考人として呼ぶことができませんでした。しかし太刀川君は、ここにも記事がありますように、どうか私をひとつ国会に招致して、この私が拘禁された真実を聞いてもらいたい、できないならば代議士さんのパーティーでもよろしい、私の真実の声を聞いてもらいたいという要望を出しておるのでありまするが、残念ながらそれができない。できずして、国民の負託にこたえ得なかったことは、残念の至りでありまするけれども、与党・政府の頑迷なところ、やむを得ません。ただ後宮大使につきましては、彼は外交官である、外務省の役人である、外務省の役人であるが、しかしなおかつ、政府委員として国会に出て答弁をするその資格は与えられていない、だから外務省に対する質問があれば、外務大臣その他政府委員質問をしてくれ、こういうことでございまして、なかなか理事会における話が合いません。その妥協策として、後宮大使に予算の理事会にひとつおいでを願って、そこで疑問とする質問を聞いていただく、そこで疑問が解けたらそれでいいが、解けなければこの午後の委員会で質問をする、こういうことになったのでございます。その結果、いまの昼休みを利用いたしまして、約三十分にわたり、後宮大使から疑問とする点を拝聴いたしました。その結果、私はなお問題の解明を得るに至りませんでしたので、そこで、この委員会において改めて質問をさせていただくわけでございます。  私が後宮大使に質問いたした問題点は六点であります。  一つは、後宮大使が、先月の二十八日であります、首相官邸に三木首相を訪ねられ、そして最近の韓国情勢を報告された。その後、後宮氏は総理官邸の出口において記者団の質問を受けられて、そしてそこで回答をせられた。その内容について伺いたいのであります。  第一は、金大中事件はすでに空洞化したという談話があった。これが私の疑問とするところであります。どうして一体空洞化したのか、その空洞化したという内容はどうかとお尋ねをいたしました。この事件については、これは韓国側でもそういう意見になっているので、韓国側の見方を私は説明したのだ、その理由は、先月の十一日から金大中氏の身の自由もやや復活をして、政治活動も野党の党首並みに動いていられるようであるし、出国の問題についても、ぜひ出たいというふうな強い意向ではなく、外国の力を借りて出るまでのことはないようにも言われているかに思われる、それやこれやを含めて、韓国人はもはや金大中さんの問題は空洞化しているという、そういう韓国側の意見が出始めているので、その韓国側の意見を私は伝えたにすぎないという御意見がございました。この点は、私が先ほども申し上げましたように、金大中氏自身は、私はなお二十四時間、四六時中監視せられている、監禁の状態にあると言われているのでありますから、後宮大使の説明は、韓国側の意向としても間違っておることが明らかになりました。  第二点につきましては、こういうことを言われておるのでございまして、金大中事件に関連して、わが国捜査陣は、金東雲一等書記官の件ではまだ強気だが、韓国側も文世光の背後関係研究を日本に要求しておる。両国は見合った関係にあるから、この問題を解決するにはどちらかが目をつぶるか、双方がどろを吐き出して謝るしかない、こういう不穏当な談話をされているわけでございます。  そこで、私は第二点として、後宮大使に、文世光の問題について、日本側も背後関係を何か持っているものを白状して、そしてどろを吐くか、あるいはお互いに黙っているかということは、一体何を意味するのか。文世光の背後にある隠れたる事実というのは、一体何を指すのか教えていただきたいということで、質問したわけでございます。  これに対して後宮さんは、双方がどろを吐くなどということは、確かに不穏当な言葉でございましたから、これは取り消します。しかし、私がこれを言った真意は、何も文世光氏の背後に秘密の関係があるとか、どろを吐かなければならぬ事実があるということを言ったのではない。ただ韓国側に対して、金東雲氏の問題を早く解決しよう、わが日本に引き渡せ等々の要求をする場合に、必ず韓国側は、日本側はそうおっしゃいますが、それならば、しかし韓国日本に要求している文世光の背後関係、あるいは北朝鮮との関係、あるいは朝鮮総連との関係、あるいは韓国の青年同盟との関係等も、同じく日本側もひとつそれを解決してくればいいじゃないか。私の方が、金東雲の問題を早く解決せいと、日本が要求すると、韓国の方で、それでは文世光の方のいま申し上げたような問題も、韓国がせっかく要求しているのだから、それを解決すればいいじゃないか、そういう韓国側の気持ちを、私はこう表現しただけの話であって、決して文世光の背後に特別な関係があるというようなことを言った意味ではない、こういうふうに説明をされました。外務大臣、よく聞いてください。それで、私はその問題は一つ終わりました。  第三番目の問題といたしましては、これは某雑誌に載っていることでございますが、後宮大使談話として大変なことが言われておる。これは、日本のマスコミの姿勢に対する問題であります。これは短いから読み上げる。駐韓日本大使後宮虎郎談話であります。「日本の特派員は」、これは韓国にいる特派員であります。裁判所に「入れてもらえなかったけれども、」裁判所というのは、太刀川、早川の裁判であります。「両君の裁判は公開だったんです。両君の家族も日本大使館員も入り、閉廷すると、そのつど大使館員が日本の特派員たちにくわしく話しました。にもかかわらず、日本の新聞は彼らを殉教者扱いにして、キャンペーンをやってきたわけですが、金芝河さんの発言でいっぺんに論調が変った。これはたしかに変な話です。私の立場として新聞批判はさしひかえたいけど、いえることは、金芝河さんという象徴的な人がああいう発言をしたことで、日本の新聞の心理的タブーが解けたんじゃないか。つまり、逮捕以来、両君に対する同情が強く、日本は殉教者的イメージに包まれていて、そのイメージを害するような報道はしなかった。それが金芝河さんの発言で目からウロコがとれたということじゃないでしょうか。私が知っている限りでは、現地の特派員は、」ここからが問題なんであります。「金芝河さんと同じような印象を持っていましたけど、東京で書かれる記事はぜんぜんニュアンスが違う。日本のデスク段階で、日本全体にある殉教者的フンイキに合わせて書いたか、あるいはそう考えて書いた」ものと思います、そういうことでございましたから、私はこの真意を聞いたわけであります。  これに対して後宮大使は、私は、この記事はこの某雑誌の記者に直接会って話したことではない。電話を通じて向こうが一方的にどんどん聞いてきて、私がその聞いていることに答えようと思って考えていると、そうですね、ああですねと言って追い詰められて、そして書かれた記事である。ただ、在韓国における報道陣の問題については、韓国にいる特派員も東京にいる特派員も、同じように、太刀川、早川の問題については非常に同情的に、偏向的なそういう見方をしているんですねという問い合わせがあったから、そこで私は、それは違う、現地の特派員の人たちは実情を正しく知って、正しく報道している、こういうふうに、私はむしろ現地の特派員の偏向性を否定して、彼らの正しい報道を擁護するつもりで私は言ったのだ。その私の談話がこういう記事になってあらわれたのであって、これは私の真意ではない、こういうふうに語られましたから、それも私はそのとおりに聞きおきました。  第四番目の問題でありますが、これは大使みずからに関する問題で、太刀川、早川両君は四月からことしの二月まで十カ月月、われわれに言わせればまず無実の罪と言いたいところでありますけれども、革命運動に従事した、北朝鮮から兵器を持ち込む手伝いをした、あるいは日本の全学連と一緒になって、朴政権打倒の革命運動の陰謀をたくましゅうしたいということで、二十年、長期の刑を着せられたわけでありますが、この問題に関して、在韓の日本の大使館が一体何をやったかということをお聞きしたのであります。  早川、太刀川君が拘禁をされたその直後の五日目か四日目に、手島というソウルの大使館の一等書記官が面会に来て、そして三十分ばかり会見をした。しかもその会見も、擁護しようということでなしに、おまえさん余り弁護士なんか頼まない方がいいよ、韓国側裁判や要求に素直に従った方がいいよ、そういうことが中心で終わった。あとは十カ月の間何も来なかった。いよいよあすは釈放せられるという前日に、初めて思い出したように、拘禁をされていた安養という刑務所に手島という一等書記官が来た。他国において人権をじゅうりんせられ、生命の危機にさらされ、さめざめと十カ月も泣いている日本人に対して、大使館としてはあまりにも冷淡ではないかという声が、本人のみならず世論としても巻き起こっておるが、この問題はどうなんだと聞きました。  これに対しては、大使としても、人道上の問題として、私自身は心にもかけ、大変力を入れたけれども、形の上にあらわれなかったことはまことに遺憾であった。アメリカ韓国の間には条約があって、そういう犯罪行為の、面会だとか差し入れだとかいうような問題は、権利として存在するけれども、日本にはそういう犯罪処遇ですか、そういうことに関する条約がないために、心ならずも庇護ができなかったというお話がございました。以上で終わったわけであります。  そこで、問題はやはり外務大臣に返るのでございますけれども、私どもはこの後宮大使との会談も通じて、何か文世光問題に対して、彼が本当に陸夫人を殺害し、あるいは文世光の後に何か遠謀、策謀をたくましゅうする共犯か主犯があるのかということを私は聞いた。日本国民として、あくまでも真相を知りたいということで聞いたのでありますけれども、ついに後宮大使の答えの中から出てこなかったとするならば、日本の外務省は、全く根拠のないところに陳謝大使を出して——陳謝ではないとおっしゃいましたけれども、そういう卑屈な態度を続けておられる。まさに宮澤外交は、相手が強ければいつも引っ込んで、理由もない、筋もない、そういうその日任せの外交を続けていられるのではないかという国民の疑惑は、残念ながら、後宮大使の予算の理事会における質問においては、そうしか、やはり疑いは解けなかったということであります。こういう問題についてて、いま一度明確に答えていただきたい。  なお、あわせて、わが党の安宅委員から、椎名メモについても質問がございました。あのメモは一体何だという質問もございました。私文書か公文書か、これはあなたも先ほどお話がございましたけれども、この椎名メモを持っていくについても、親書の内容にまで向こうと−−向こうの要求に応じたと言ってはなんでありますけれども、打ち合わせをして、そして事前に韓国政府の了承を得て、そのメモを持っていった。そういう形のものは、一体世界の外交史上の中にもないのではないか。なぜそれほどのことをやらなければならないのかということに対しては、ちゃんと大使の御返事もありました。けれどもその御返事をここで言いません。そういう点について、外務大臣のきちっとした御答弁を、もう一度承っておきたいと思うのであります。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの小林委員の御指摘は六点にわたっておりますので、それにつきまして政府の考えを申し上げます。  まず第一の空洞化云々ということ、後宮大使は韓国の見方を紹介したまでだと申し上げた由でありますが、これにつきましての政府の考え方は、午前中にも申し上げましたように、いわゆる金大中事件になるものは終結しておりませんで、幾つかの点について、わが国はまだ満足をしておる状態ではない、かように認識をいたしております。したがって、空洞化したというふうには、政府は考えておりません。  第二点でございますが、金東雲氏についての捜査と文世光関係捜査とが、先ほど見合いと言われましたか、いわゆるお互いに目をつぶるとかいうような点でございますけれども、これはもう申すまでもなく、わが国捜査は、憲法、法令に基づき、厳正にしかも犯罪の容疑のあるときにのみ行われるべきものであり、またさように行われておるわけでございますから、その方針をもって金東雲事件捜査をいたし、そしてこれについて韓国側と目下見解を異にしておる、十分な説明を最終的に受けておらないという立場でございますし、他方で文世光事件について、わが国捜査陣としては、法律上許される捜査は当然しておられると思いますけれども、その限界を越えての捜査はは、わが国の制度としてできないことでございますし、またやっておられないことはもちろんであると存じます。  第三点に、わが国のマスコミュニケーションについて、及び金芝河氏の発言との関連でございますけれども、これについては、後宮大使は、批判がましいことを言うのではないがという前提で、週刊誌でございますか、意見を発表しておる由でございます。後宮氏が個人としてこういう問題について感想を述べ発言をすることは、これは自由でございますけれども、少なべとも、それは政府の見解ではございません。  第四に、太刀川、早川両君の問題につきましては、後宮大使自身が誠意は尽くしたつもりであるが、それが表面にあらわれることが少なく残念であったと申しましたことは、そのとおりと考えます。なお、その関係で条約云々とおっしゃいましたのは、領事条約であろうと思いますが、確かに領事条約が締結されておりませんために、こういう際に不便があるということは事実であると存じます。これが締結されておらないことについては、従来若干の技術的な理由があるようでございますけれども、いずれにいたしましても、このような条約は、今回の問題にもかんがみまして、なるべく早く締結すべく前向きに考えるべきものであると、政府としては考えております。  それから第五点、椎名特使が行かれましたのは、いわゆる謝罪使節ではないということにつきましては、午前中にも申し上げましたとおり、この件につきましてのわが国立場韓国の最高首脳に伝える、あわせてその機会に弔意を表するということでございまして、陳謝という性格を持っておるものではないと考えております。  最後に、その際先方に渡しましたメモの性格についてでございますが、椎名特使が先方にわが国を代表して話されました会話の内容は、もとより公にわが国を代表するものでございますが、その際発表等に関し誤解があることを避ける必要もありまして、それをメモにして手渡したことでございますので、これは記録というような意味を持つものと思います。それ自身が交換公文であるとか外交上の性格を持つ文書ではない、というふうに政府は考えております。  以上でございます。
  80. 小林進

    小林(進)委員 もう時間が参りましたので、私はこれで終わります。ただ一言申し上げたい。日韓問題、外交や親善、融和が悪化することを私は望んでいるのではないのであります。永遠の平和の基礎をつくっていただきたい。そのためにどうかひとつ、お互いの国民が疑い合い信頼し合わないような、密室の社会や上層部の一部の中で取引が行われたり、暗い形で行われるような外交の姿勢はやめてくれ、そして国民国民とが本当に隣国の友人として、ひざを交えて、信頼の中で永遠の融和を続けるような、そういう外交姿勢を続けていただきたいというのが私の本意でございまして、そのための質問でございますので、総理大臣以下各閣僚、そのためにさらに一層御努力せられることをお願いいたしまして、私の質問を終わることにいたします。  どうもありがとうございました。
  81. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 以上をもちまして、締めくくり総括質疑は終了いたしました。これにて、昭和五十年度総予算に対する質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  82. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 小林進君外十四名から、日本社会党及び公明党の共同提出により、また日本共産党・革新共同の林百郎君外三名より、さらに民社党の小平忠君外一名より、それぞれ昭和五十年度予算三案につき撤回の上編成替えを求めるの動議が提出されております。  これより各動議について、順次その趣旨弁明を求めます。広沢直樹君。     —————————————
  83. 広沢直樹

    広沢委員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本社会党、公明党が共同提案いたしております昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議につきまして、その提案の理由及び概要を御説明申し上げます。  すでに、動議の案文につきましては、お手元に配付いたしてありますので、御参照いただきたいと思います。  まず、動議の主文を朗読いたします。  昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算については、政府はこれを撤回し、左記要綱により速やかに組替えをなし、再提出することを要求する。    右の動議を提出する。  最初に、昭和五十年度予算の編成替えを求める理由を申し上げます。  理由の第一は、三木内閣は、口では対話と社会的不公正の是正を言いながら、施策の実態はまさに「有言不実行」に終わっており、全くのまやかしであります。このことは、三木内閣の初の予算にその実態が如実に証明されているのであります。すなわち、昭和五十年度予算は、次のような基本的欠陥を持っているからであります。  それは、政府が物価安定、社会的公正の確保を公約しながら、公共料金の値上げ、独占禁止法改正あるいは公害規制に対する態度などに明らかなように、大企業と資産所得者の利益を守り、一方では、物価、賃金の悪循環論を振りかざして、インフレと不況の犠牲を国民に転嫁しようとしているのであります。  このような姿勢では、社会的公正に反するばかりか、インフレと不況を一層拡大することは必至であります。  理由の第二は、三木内閣の看板である福祉充実も、老齢福祉年金等のわずかの底上げをしたものの、いままで放置されてきた福祉を充実するにはほど遠く、また、国民、厚生両年金の賦課方式の実施や年金額の引き上げも見送られてしまっています。  さらに、教育費の父母負担が増大する中で、入学金、授業料の大幅値上げを黙視し、国公立、私立間格差の処置や、義務教育無償も見るべきものはなく、すでに高校進学率が九〇%を超える現状のもとで、高校全入制への具体策もとられていないのであります。  理由の第三は、税制改正におきましても、激化するインフレのもとで物価調整減税すらできず、かえって大衆課税の強化である酒税、たばこ定価の引き上げ等、間接税の増税を行い、大企業、高額所得者や資産所得者を優遇する不公平税制を温存し、高度経済成長政策のもとに体系化された税制をいささかも転換しようとしていないのであります。  理由の第四は、今日の地方財政は激増する行財政需要とインフレ、物価高騰のもとで、従来からの貧弱な財政構造のままで超過負担を抱え、危機に瀕しているにもかかわらず、何ら抜本的な措置を講じていないばかりか、逆に事務所事業所税の創設に伴う事業税の自主財源の確保さえ制限しようとしております。  理由の第五は、政府・自民党の政策の失敗によってとらざるを得なくなった総需要抑制政策によって引き起こした不況のもとにおいて、中小企業倒産対策、雇用、失業対策はきわめて貧弱であり、中小企業、労働者の不安、緊迫した農林漁業の危機打開に対しても、国民の声にもこたえていないのであります。  理由の第六は、住宅、土地対策についても、建設戸数を実質的に削減し、住宅困窮者の期待を全く裏切っています。また、三木内閣の公約である環境保全対策も排ガス五十一年規制の延期を初めめ、完全に施策が大幅に後退しているのであります。  理由の第七は、国民生活優先の予算編成が強く求められているとき、依然として四次防計画に固執し、防衛関係費を前年度よりも大幅増額させているのは、国民の声を全く無視したものであります。新規装備費、研究費を初め、新規定員増に伴う人件費の全額削減訓練、演習費等の大幅削減、継続費、国庫債務負担行為の凍結は当然であります。以上の理由から、国民生活の深刻な窮状を軽視し、従来の経済構造、財政構造を温存したままの政府予算案は断じて容認することはできません。  したがって、日本社会党及び公明党は、これまでそれぞれ、その要求を予算委員会の中で明らかにし、政府に施策の是正を求めてきたのでありますが、ここに共同して、政府昭和五十年度予算を撤回し、政府三予算案、財政投融資計画を根本的に再検討し、社会的不公正の是正と福祉を優先し、国民の生活を守るよう編成替えを行い、国民の期待にこたえるべきであることを要求いたします。  次に、編成替えに関する要求の概要を申し上げます。  まず、今日の経済情勢は、インフレ、物価高騰と不況の併存というきわめて深刻な事態に直面し、社会的不公正はますます拡大されています。当面する局面を打開するには、まず、これまでの政府・自民党がとり続けてきた大企業優先の高度経済成長政策の誤りを率直に反省し、国民生活優先の経済路線へ転換することが必要であり、同時に、この方向に沿って、インフレ、物価高の収束、不況の克服はもとよりのこと、現実にインフレ、物価高騰、不況の被害を最もこうむっている社会的に弱い立場に置かれている人々の被害救済に全力を挙げなければなりません。  したがって、昭和五十年度予算は、次の五つの目標、すなわち、  一、インフレ、物価高の抑制。  二、総需要抑制の質的転換と中小企業不況打開、雇用の安定。  三、地方財政の危機打開と超過負担の解消。  四、公平な税制の実現と国民福祉の飛躍的拡大。  五、農林漁業の基盤整備と公害防除、環境保全。 以上を基本方針として、財政の重点的配分を行い、財政構造の根本的転換を図ることによって、インフレと不況の克服、不公平、不公正の是正、生活優先を基本とする編成替えをすることが必要であります。  次に、組替え要求の内容を要約して申し上げます。  まず、歳入関係について。  その一つは、勤労者所得減税と税負担の公平化であります。  インフレ、物価高のもとで勤労者の税負担軽減のため、生活費に課税しないとの原則に立ち、所得税は四人家族年収二百八十万円まで無税とするよう、世帯構成に応じた税額控除を行うべきであります。なお、高額所得者に対しては、課税を強化すべきであります。  二つには、資産所得課税を強化するため、富裕税の創設を初め、利子・配当所得課税の特例廃止、株式譲渡所得課税の復活、有価証券取引税の強化、個人の土地譲渡所得課税の特例廃止等を行うべきであります。  三つには、大企業の税負担の強化と中小企業の税負担の軽減であります。  大企業法人に対して税率を四二%に引き上げ、また、配当軽課税率の引き上げを初め、配当の益金不算入、交際費課税の強化、政治献金課税、広告費課税など、その優遇税制を改めるべきであり、他方、中小企業に対しては軽減税率適用区分の拡大など、税負担を軽減すべきであります。  四つには、大企業や有資産者を優遇する租税特別措置の改廃を行うべきであります。  五つには、土地税制の改革であります。  大法人の所有する土地に対し、土地再評価益課税を行うとともに、土地譲渡所得税に対しては、分離高率課税を行うべきであります。  六つには、酒税の引き上げ、たばこ定価の値上げは行わないことであります。  大衆重課であり、物価高騰の再発原因となる酒税の引き上げ、たばこの値上げは行うべきでありません。また、入場税については、高額料金を除いて廃止すべきであります。  七つには、国債の発行については、赤字国債の発行をやめることを要求いたします。  次に、歳出関係について、増額を要求するものについて申し上げます。  その一つは、インフレ物価対策の強化であります。  酒、たばこ、郵便料金の値上げをやめ、政府主導型による物価高を根本的に改めるべきであります。また、大企業の管理価格の監視の強化、公正取引委員会の機構を強化、国民生活安定法、投機防止法の運用の強化を図ることを要求します。  二つには、社会保障、社会福祉、労働対策の強化であります。  まず、福祉年金を改善し、老齢福祉年金月三万円を目指し、当面二万円とし、特別給付金、障害、母子、準母子年金等を大幅引き上げを図り、また、厚生年金、国民年金を賦課方式に改め、同時に支給額の大幅引き上げを行うため、制度の抜本的改革を行うことを要求します。  また、生活保護基準の引き上げ、老人福祉費、児童手当、心身障害児(者)対策、難病対策等、社会福祉関係費を大巾に増額すること。保育所、老人施設、心身障害児施設、医療施設等福祉施設の緊急整備、並びに社会福祉施設従業員の増員と待遇改善を図るべきであります。  以上のことを含む、社会保障、社会福祉の計画向上を実現するため、社会福祉計画を立て、財政対策を確立すべきことを要求いたします。  さらに、労働対策として、全国一律制最低賃金制度の実施と労働基本権の確保のための施策、雇用安定対策の推進、中小企業の雇用対策の強化など、労働対策の強化を要求いたします。  三つには、住宅、生活環境の整備であります。  従来の産業基盤整備優先の政策を改めて、生活基盤整備重点の公共投資に転換し、公営住宅を初め、公共賃貸住宅の大量建設、公団住宅の家賃の引き下げを図ること、さらに、根本的な議題として、住宅基本法の制定、公共住宅の建設計画の確立をすべきであり、これとあわせて下水道、公園など、生活環境の整備を強力に実施することを要求します。  四つには、公害防止、自然環境保全対策の強化であります。  自動車排出ガス規制、瀬戸内海環境保全対策、環境影響事前評価の充実強化、総量規制の実施の拡大など、公害防除施策の強化、自然環境の保全、整備のための大幅な予算措置を行うよう要求いたします。  五つには、教育、文化対策の充実であります。  義務教育の父母負担引き下げを初め私立大学、高等学校等の経常費、助成費補助の増額等を要求いたします。  六つには、農林漁業、中小零細企業対策の充実であります。  農林漁業対策としては、国民の食糧確保の見地から自給率の向上はきわめて緊要であり、十カ年計画で農用地の拡大、休耕田の復活、裏作、輪作、さらには共同化促進を含めて、強力な予算措置と長期低利融資の充実を要求します。  また、農産物の生産者・消費者価格と供給の安定、畜産危機打開のための飼料増産対策、価格・流通安定等の強化を図ること。林業につきましては、生産基盤整備とともに労働者の賃金引き上げを重点としております。漁業については、養殖漁業、大型漁業など、沿岸漁業整備費の強化を要求しております。  中小零細企業対策としては、これらの企業を不況から守り、その健全化を図るため、中小企業向け官公需の拡大、中小企業金融の拡充、中小企業と大企業の事業活動の調整等を要求いたします。  七つには、資源、エネルギー対策の確立であります。  石油エネルギーについては、輸入、開発、精製の一元化を推進する。また、総合エネルギーにおける国内炭の位置を明確にして、生産力拡大のための予算措置を図ることを要求いたします。  八つには、地方財政の危機打開と超過負担の解消であります。  きわめて深刻な事態にある地方財政危機を打開し、住民福祉優先の地方財政を確立するため、自主財源の賦与、交付税率の引き上げ、超過負担の解消等を図ることを要求いたします。  続いて、歳出の減額について申し上げます。  その一つは、防衛関係費の削減であります。  第四次防衛力整備計画は直ちに中止することとし、新規装備費の取りやめ、提供施設移設整備費の削減、自衛官の定員増、欠員補充を認めない等によって、防衛費は大幅に削減すべきでありますす。  二つは、産業投資特別会計等への繰り入れの削減であります。一般会計からの産業投資特別会計及び港湾整備特別会計の繰り入れを削減することを要求いたします。  三つには、その他経費の削減及び予算の効率使用を図るべきであります。  次に、財政投資計画の国民本位の運用についてであります。  財政投融資計画の大企業中心の運用を改め、国民本位の運用にし、住宅、生活環境、社会福祉など、国民生活基盤投資を充実させる施策に大幅に投入することを要求します。また、財政投融資計画は、運用の民主化を図るため、全体として国会議決とすべきであります。  以上、日本社会党、公明党が共同して提案いたしました昭和五十年度政府予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議の理由及び重点要求事項の概要を申し上げましたが、これらは当面緊急を要する最低限度の要求であります。  政府は、速やかに今回の予算を撤回し、国民立場に立った組み替えを行い、再提出されることを強く要求いたしますとともに、この動議に対する委員各位の御賛同をお願いいたしまして、提案趣旨の説明を終わります。(拍手)
  84. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に、林百郎君。
  85. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議を提出し、その趣旨を説明いたしまして、同僚議員の御賛同を得たいと存じます。  まず第一に、昭和五十年度予算の編成替えを求める理由を申し述べます。  今日、悪性インフレ、物価高と不況の進行の中で、福祉の水準の実質的な切り下げ、労働者の実質賃金の低下、解雇、一時帰休の急増、未曾有の中小零細企業の倒産など、国民の生活と経営は深刻な危機に見舞われております。いま政治に求められているのは、この危機を打開するための具体的な施策を講じ、国民の緊急、切実な要望にこたえることであります。  しかるに、政府提出に係る昭和五十年度予算案は、第一に、郵便料金を二倍から二・五倍、たばこを平均四八%上げ、国立大学入学金は四倍以上など、公共料金の大幅の値上げと、酒税引き上げによる酒の値上げを織り込み、その上、二兆円に上る巨額の赤字公債の発行を予定しております。また、道路、港湾、空港など産業基盤整備中心の公共事業関係費は約三兆円に上り、幹線高速自動車道路の建設には依然として三千五百億円の経費を計上するなど、インフレ抑制、物価安定にはほど遠いものとなっております。  第二に、社会保障関係費の伸びは三五・八%と、前田中内閣の四十九年度の伸びの三六・七%さえ下回っております。老齢福祉年金は十月からせいぜい月額一万二千円、生活保護費も実質でわずか一四・四%の引き上げにすぎません。大都市など一級地で七十歳の老人の食費がわずか三百五十円にすぎない、福祉などとはとうてい言えないものであります。国民健康保険への国の補助も低く抑えられ、保険料の三割以上の引き上げが予定されております。  所得税の課税最低限度は、四人家族、給与所得者で百八十三万円と、生活費に食い込む重税を続けることになっております。しかも政府は、予算案審議の中で、付加価値税の導入を積極的に検討するということを改めて強調していますが、これがこれまで以上の重税を強いるだけでなく、物価の値上がりをももたらし、社会的不公正を一段と広げることは明白であります。  また、失業問題の深刻化にもかかわらず、失対事業打ち切り政策を続け、他方、一時帰休を実施した大企業に雇用調整交付金をつぎ込むなど、労働者のためではなく、大企業向けの失業対策予算が組まれております。わが国の事業所の九九%を占め、三千万人以上の労働者が働く中小企業に対する対策費はわずか一千二百七十八億円、一般会計のわずか〇・六%にすぎません。大企業向けに比べ著しく劣悪な政府関係中小金融機関の貸付条件、金利や期間なども何ら改善されていないのであります。  公共住宅建設戸数は、公営住宅、公団住宅がそれぞれ前年度より一万戸も削減されております。五十年度を最終年度とする住宅建設五カ年計画の達成率は、公営住宅が七九・七%、公団住宅が六三・五%にとどまることになり、個人持ち家住宅建設への融資条件の悪いことも含めまして、三木内閣が住宅難解消のための政府責任を放棄していると言っても過言でないと思います。  戦後最大と言われる地方財政危機に対しても、地方債の起債を前年度比二一・二%増と低く抑えまして、しかも、過去五年間でも一兆円に上ると見られる莫大な超過負担の解消の措置は何らとっておらないのであります。  第三に、五〇年代から六〇年代、七〇年代にかけて拡充されてきた大企業の高蓄積を促進する大企業本位の高度成長促進型の税制や財政や金融の仕組みがそのまま残されているだけでなく、むしろ新たな施策を追加することによってそれが拡大されているのであります。百四十六億円に上る電算機振興対策費、百三十六億円の外航船舶建造利子補給、繰り越し分を含め三十八億円のYX開発費など、大企業への補助制度は依然として続けられ、むしろ強化されております。税制面でも、大企業、大資本家に対する特権的な減免税のほとんどは温存されております。逆に資源対策などの名目でそれを拡大しさえしております。こうして、四十七年度で、資本金百億円以上の巨大企業の実効税率三八・九五%が、資本金一千万円以上五千万円未満の中小法人のそれ、四三・二%よりむしろ低いというような、大企業、大資本家優遇の逆累進制の制度を温存しているのであります。  また、昨年一万件を超える中小企業の倒産は放置されております。他方、殺人公害企業と世論の糾弾を浴びたチッソに対しては、経営不振を救うための開発銀行融資を予定しております。これは、自動車メーカーの言い分をうのみにした五十一年度排ガス規制についての中央公害対策審議会の答申をそのまま告示したことなどと並んで、三木内閣の大企業本位の姿勢が露骨に示されていると言い得ると思います。  第四に、中東、アフリカの産油国に対する軍事侵略をたくらんでおるキッシンジャー構想に追随して、その枠組みの中での石油備蓄体制づくりのために、一千六百五十六億円もの政府資金をつぎ込んで、また海外石油開発、石油備蓄の名で、石油開発公団の資金を前年度の約三倍、二千四百二十四億円にふやすなど、日本に進出しているメジャーも含め、独占資本に莫大な資金をつぎ込むことにしております。一方、総合エネルギー政策に基づく石炭産業の民主的な復興が緊急であるにもかかわらず、石炭産業取りつぶしの第五次石炭対策は依然として推進されておることはきわめて重大であります。  第五に、日米安保条約を日米協力の基本的憲章とうたいあげフォード政権の侵略的な中東政策、ベトナム再介入政策に積極的協力の態度を示し、日米安保条約を軸としたアジアの多角的な反共軍事同盟体制の一層の強化、対米従属的な軍国主義復活推進のための予算措置がとられております。  事実上の防衛分担金であり、拠点基地の集中強化を進めるための米軍基地集約移転費は三百四十三億円に大幅に増額しております。また、四次防推進費は防衛庁発足以来最高の対前年度比二一・四%の膨張を示し、総額一兆三千二百七十三億円に達して、七四式戦車、F4Eジェット戦闘機、ヘリ積載護衛艦など、海外侵略を可能とするような新鋭兵器の大量新規発注を行うことにしております。  さらに、韓国、インドシナ援助などを中心に、新しい植民地主義の推進のための経済協力費は実に一千七百六十七億円にも上っております。  以上のように、大企業の利益を優先させ、国民生活を軽視する本予算案は、断じてわが党の容認できないところであります。政府予算案を根本的に再検討し、高度成長型の税制、財政、金融の仕組みを取り除いて、軍国主義の復活と新植民地主義的対外進出をやめて、国民生活の安定、福祉の向上、日本経済の自主的でつり合いのとれた発展の第一歩を築く予算に編成し直すべきでありますす。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕
  86. 谷川和穗

    ○谷川委員長代理 小平忠君。
  87. 小平忠

    ○小平(忠)委員 政府予算案は、わが国が迫られている平和、福祉、公正、そして新しい国際協調を主眼とする真の政策転換を断行するに足るものではないと思うのであります。むしろ、これまでの自民党内閣がとってきました政策を惰性的に踏襲している予算案と言うべきであります。  わが党は、昭和五十年度こそ真の福祉国家を建設する出発年とするため、最低限、明年度予算を次の趣旨に基づき組み替えるべきだと確信するものであります。  私は、民社党を代表して、次に述べる趣旨により、政府案を撤回のうえ編成替えを求める動議を提出するものであります。  すなわち、明年度予算は、第一に、大幅な大衆減税の実施と税制による富の公平化、第二に、社会保障の画期的な充実、第三に、住宅、生活環境の整備、教育などの飛躍的向上、そして何よりも物価の安定とインフレの完全鎮静化を目指し、こうした基本的諸政策の推進と相まって、深刻化する不況の克服にきめの細かい対策を講ずることにより、国民福祉の全面的な向上を図るべきであります。  このためには、勤労者の所得税は税額控除方式により、標準とする四人世帯の課税最低限を二百五十万円まで引き上げるとともに、酒税の増税など大衆の負担増につながる諸施策を中止して、大幅な減税を行うべきであります。  これにより、少なくとも歳入面では一兆一千九百五十億円の減額を図り、同時に、法人税率の引き上げ、利子・配当などの租税特別措置の思い切った改廃と交際費課税の強化などにより、四千七百五十億円の増税を行うとともに、高度成長政策を進めて以来の顕在化したインフレ、そして最近の異常インフレ等によって膨大な資産利得を得ている資産階層に対する富裕税の創設を行い、明年度においては最低七千二百億円の増収を図るなど、税制における不公正是正を断行すべきであります。  こうした公正を図る制度の改革を行わずして、口先だけの不公正是正を唱えるにおいては、単に政府に対する国民一般の信頼を失わしめるだけでなく、ひいては政治全般への不信さえつのらせ、ついには民主主義政治体制の根源に及ぶと言わなければならないのであります。政府はこれについて真剣な反省を行うべきであります。  次に、明年度政府予算の歳出については、過去数次にわたって改革を指摘されてきた行政経費が、依然として大幅な増額を予定しており、しかも産業優先的な考え方のもとに、産業投資特別会計への出資の継続、電算機産業への補助、産業用に供されることの多い有料道路の建設を促進するほか、防衛費の増額、膨大な予備費を計上するなど、国民が要望する予算にそぐわないものとなっておるのであります。したがって、産業投資特別会計への出資を三百三十億円減額するのを初め、行政経費の二千六百八十一億円、宅地開発公団への出資取りやめで五十億円、日本道路公団への出資減二百五十億円、防衛費で新規装備と定員増の中止により七百六十八億円、予備費のうち一千億円などの減額を行うことにより、総額で五千二百六十四億円の歳出増を行うべきであります。  こうして生ずる財源を、すべての国民が期待する事項に振り向け、総合的に施策を講じつつ、福祉を全体的に向上さすべきは言をまたないところであります。  その第一は、老齢福祉年金を今年十月より月額二万円に引き上げるほか、これに準じて障害、母子、準母子などの福祉年金、手当の引き上げを行うべきであります。  もちろん、こうするためには膨大な一般財源を必要といたしますが、すでに国民的コンセンサスとなっている年金の賦課方式への移行という点からして、拠出制年金積立金から、福祉年金の増額に要する財源の三分の一を充当する修正賦課方式を取り入れることとして、一般会計においては、なお二千二百三十八億円の増額を行うべきであります。  これと同時に、保母、寮母などの増員と給与の引き上げ、社会福祉施設従事者の措置費の増額、国民健康保険への財政調整交付金の増額、在宅重度障害者の電話料の無料化などに四百六十五億円を増額計上して、社会保障関係費に総額二千七百七億円を加える必要があります。  第二は、住宅難にあえぐ国民の要求にこたえると同時に、このような国民生活上の需要に応じて、直面している不況の打開に寄与するためにも、公営住宅建設戸数の増大、高騰する公団家賃の抑制により、快適な住宅生活を国民に提供するため、一千九十六億円を増額計上する必要があります。  第三には、国民多数が利用し、他物価への波及効果の少なからざる郵便料金の引き上げを中止するため、政府が予定している増収額一千数百億円に相当するものを財政投融資資金から融資することとして、その利子相当額を一般会計で負担するほか、公取委の強化、食料品の流通近代化、そして庶民の預金目減り補償対策の一環として、元本保証の少額貯蓄国債を発行するなど、総合的な物価対策関係費として、百五十五億円を増額計上すべきであります。  第四は、教頭職の法定により増員すべき教員の確保、人口急増地域の小・中・高校の増設費の補助及び私立高校への財政援助など、緊急を要する文教政策経費を少なくとも二百九十二億円増額し、いわれるところの教育改革に通ずる第一歩を、明年度予算において踏み出すべきであります。  第五は、立ちおくれている公害防止技術の開発に国が積極的に取り組むとともに、最近に起きた水島の重油流出を初めとする各地における油濁事故の追跡調査と、それによる環境保全対策に資するため、特別に三十四億円を公害対策費として増額する必要があります。  第六は、勤労者の財産形成を促進し、インフレの被害からの救済に資するため、一定の条件を設けて財形貯蓄に割増金を給付するほか、中小企業の中でも小規模な企業経営の改善融資を拡大し、農業に対しては、今日、最も重大化している飼料問題に対処するため、緊急粗飼料増産対策費など、労働、中小企業及び農業対策の向上に要する経費として、総額七百七十九億円を増額計上する必要があります。  第七には、新しいエネルギー源として開発を促進すべき原子力の平和利用についてであります。  少なくとも、今世紀中の実用炉である軽水炉の完全な安全化を期するため、安全行政、安全研究の徹底的な推進を図るとともに、原子力発電の従業員が、年々増大する被曝線量による健康被害を防止するため必要な被曝管理センターなどの早急な設置が必要であることは、もはや言をまたないところであります。  このため、原子力安全対策費として、最小限十六億円を増額計上するほか、地方公共団体による公共用土地取得のネックである資金不足の解決に資すると同時に、過疎地交通の確保、石油コンビナート防災対策の強化に要する経費の補助など、地方財政の強化対策として、少なくとも出資分を含めて総額百八十五億円を増額計上する必要があるのであります。  要するに、わが党は、以上において述べましたように、国の財政が果たす所得の再配分機能を明確化すると同時に、その機能を高め、そしてわが国が、内外の事情に照らして新たな進路を確定する上で、必要とする政策の一大転換を図るためには、政府予算案をぜひとも撤回し、前記の趣旨に基づき、組み替えの上再提出する必要があるので、これを要求しつつ、動議の提出をいたした次第であります。  何とぞ、この動議に御賛同くださるようお願いいたしまして、私の趣旨説明を終わる次第であります。(拍手)
  88. 谷川和穗

    ○谷川委員長代理 以上をもちまして、各動議の趣旨弁明は終わりました。     —————————————
  89. 谷川和穗

    ○谷川委員長代理 これより討論に入ります。  昭和五十年度予算三案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議三件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。湊徹郎君。
  90. 湊徹郎

    ○湊委員 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました昭和五十年度一般会計予算特別会計予算及び政府関係機関予算政府三案に対し、賛成の討論を行い、日本社会党及び公明党両党共同提案、日本共産党・革新共同提案並びに民社党提案の、予算三案を撤回し編成替えを求めるの動議のそれぞれに反対の討論を行うものであります。  昭和五十年度予算三案を通観してみますと、現下の厳しい内外の社会経済の情勢に対応して、第一に、物価の安定を最重点事項としつつ、第二に、当面の緊急政治課題であるインフレ下における社会的不公正の是正と、総需要抑制の過程において生じている各種社会的摩擦の回避を基本方針としているものと言えます。  また、それと同時に、将来に向かってわが国発展の基礎とも言うべき教育の刷新向上や、国民経済に不可欠な基礎資源、エネルギー、食糧の確保など、基本的要請にも優先的にこたえているところに最大の特色がうかがわれるのであります。  現在、国民が最も切実に求めているものは、長期にわたる物価の安定であります。五十年度予算案は、この国民的要請にこたえるため、総需要抑制の趣旨に沿って、財政規模を極力圧縮しております。  一般会計において、公債依存度を前年度当初予算の一二・六%から九・四%に引き下げ、また、サラリーマン等中小所得階層の負担軽減を中心として、国税において平年度三千七百二十億円の減税を行い、なおかつ、予算規模を、前年度補正後に比し一〇・九%増の、二十一兆二千八百八十八億円にとどめているのもそのあらわれであります。また、財政投融資計画も前年度追加後計画に比べ、わずか三・四%増の九兆三千百億円に抑えているのであります。  一部の論者は、一般会計予算案の規模が前年度当初予算に比べて二四・五%も伸びているのは、景気刺激のおそれの高い積極予算であると批判しておりますが、その内容を見ますと、その大半は給与費の大幅引き上げや社会保障関係費の平年度化など、当然増加を余儀なくされる経費であり、四十九年度以降における消費者物価の大幅上昇もあわせ考えるとき、五十年度予算案が実質的にはきわめて厳しい緊縮予算であることは、一点の疑問の余地もないのであります。  このことは、中央、地方を通ずる政府の財貨サービス購入の伸び率が国民総生産の伸び率を下回っていることや、公共事業費が昭和四十六年度の事業規模程度に圧縮されていることによって、端的に証明されるのであります。  また、五十年度予算案が物価の安定に寄与しようとしている意図は、単に総需要抑制策を通じてだけではありません。経済ベースや採算ベースだけから考えれば、当然値上げをしなければならないはずの電信電話料金、国鉄運賃、小麦売り渡し価格、塩小売価格などを据え置き、また、昨年度値上げを予定しておりました郵便料金を、その値上げ幅を極力圧縮した上、半年間値上げを延期していることもその一端であります。  さらに、物価対策関係予算も、一般会計、特別会計を通じて、一兆七千二百六十八億円という巨額に達しているのであります。これは、政府の物価安定に対する並々ならぬ決意を具体的に証明するものとして、高く評価するものであります。  いまや、物価は着実に安定路線に定着しつつあります。今月の消費者物価の前年同月比上昇率が、政府の見通しを下回って一三%台に落ちつくことは、ほとんど確実と思われます。私は、五十年度予算の適正な運営によって、物価はいよいよ安定の一途をたどり、もし、春闘の結果が、労使の理解と努力により、節度ある線に落ちつくならば、一けた台の物価上昇率も、そう遠からず実現するものと期待し、かつ確信するものであります。  五十年度予算案は、ただいま申しましたとおり、全体としては厳しい緊縮健全財政を貫いておりますが、その中におきましても、当面緊急な幾つかの政治課題の解決のために、積極的かつ、重点的に予算配分が行われております。  社会保障関係費につきましては、前年度当初予算より三五・八%、文教及び科学振興費は三四・五%も伸びており、また住宅建設、下水道整備など、環境や福祉につながる政策や、農林漁業の基盤整備、生産振興など、食糧自給度向上のための施策にも、予算や財政投融資が大幅に増額されております。このように重点的な傾斜配分に徹した予算編成は、近年にその例を見ないところであります。  特に、福祉政策においては、老齢福祉年金を初め、各種福祉年金がわが党の公約を大幅に上回って、財源難にもかかわらず六割も増額され、五百万人に及ぶ年金受給者の生活安定に著しく役立っております。  また、新たに、在宅重度障害者福祉手当や原爆被爆者保健手当が創設され、保母その他の福祉施設職員の処遇が大幅に改善されるなど、福祉政策全般にわたって大きな前進を見ております。それは三木内閣の「社会的公正の確保」という政治理念の一端を示すものとして、その意義は大きいものと信ずるのであります。  教育につきましては、わが国存立の基礎条件とも言うべき教員人材確保のための措置、義務教育諸学校における教職員定数の改善、私学に対する助成の飛躍的な拡充、公立文教施設整備の大幅促進など、重要な文教、科学技術政策全般にわたって、予算上、特段の優先的配慮が払われております。  特に、新規の施策として、私立の高等学校から幼稚園に至るまで、国が都道府県に対して助成の道を開くことになったことは、経営難に苦しむ私学経営の改善と、教育内容の向上に資するところがきわめて大きいものと信ずるのであります。  国民食糧の安定的供給確保につきましても、自給度の低い大豆、麦、飼料作物等の生産振興や、水田裏作等、農地の有効利用、漁業施策の拡充などを中心に、一般会計予算を増額するほか、農林漁業金融公庫資金や農業及び漁業近代化資金の貸付枠を大幅に増額し、予算、資金を総合して、農林漁業政策の新展開をはかることといたしております。  また、エネルギー対策につきましても、石油資源開発並びに備蓄体制の整備確立、原子力利用に関する研究開発及び安全対策、サンシャイン計画の推進等に必要な予算と財政投融資を確保しているのであります。  インフレ不況下の雇用対策、中小企業対策も、当面緊急な課題であります。これらについてもきめ細かい配慮が払われており、特に雇用調整給付金制度の発足や、小企業経営改善資金の大幅拡充などは、注目に値するものと存じます。  以上のように、五十年度予算案の内容を通観しますと、経済マイナス成長の年度の後を受け、一方においては世界的なインフレ、他方においては不況の荒波の中で、まさに新しい針路を切り開かなければならないわが国の国政を裏づける予算としては、現下の客観的、現実的な状況から見て、最善のものであると確信いたします。  ただ、時勢はきわめて流動的であります。物価問題の後に続く国民的緊急課題は、恐らく不況の克服であり、雇用の安定確保であろうと思います。  このような意味で、五十年度予算と財政投融資計画は、その編成よりも、むしろ今後の運用いかんに重大な意義があると存じます。  社会経済情勢の推移に応じ、弾力的、機動的に運営できるよう配意されていることとは思いますが、執行に当たっては機を逸することなく、適時適切に対処されるよう特に要望し、五十年度政府予算三案に賛意を表する次第でございます。  なお、今回の予算案に関連して、幾つかの新しい試みが行われました。  その第一は、三木内閣の「対話と協調」の政治姿勢のあらわれとして、予算編成に関して各党党首の会談が行われ、それを受けて、大蔵大臣と各党政策担当当局との間に率直な意見が交わされ、その意見の相当部分が、今次予算案に取り入れられたことであります。  その第二は、野党第一党である日本社会党から、従来のたてまえ論の壁を乗り越えて、かなり現実的かつ建設的な予算修正要求が提示され、今後の予算編成とその審議に、大いなる示唆が与えられたことであります。  その第三は、昨年来の集中審議方式が評価の岐路に立たされていることは別として、理事会等を中心として、予算審議全般を通ずる未解決懸案の処理のため、精力的な詰めが行われ、従来しばしば見られた国会審議の空転を避け、終始積極的に予算審議に取り組む新しい先例が開かれたことであります。(拍手)  私は、これら一連のことを、議会政治の大いなる前進として、きわめて高く評価するものであります。  しかしながら、究極的に提出された野党各党の編成替えの要求動議は、遺憾ながら、過去のたてまえ論の域を脱し切れず、きわめて非現実的な従来のパターンをかなり色濃く残しております。  これらは、いずれも予算全般の整合性や各種政策間のバランス、歳入と歳出との総合的関連等を、体系的、論理的に考えていない、局部的、断片的な修正意見であり、とうてい賛成するわけにはまいりません。  以上の理由をもって、政府原案に賛成し、各党提出にかかる三つの動議に反対の意を表明し、私の討論を終わります。(拍手)
  91. 谷川和穗

    ○谷川委員長代理 阿部昭吾君。
  92. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 私は日本社会党を代表し、ただいま議題となりました政府提出の昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算案に反対、日本社会党、公明党共同提案の三予算の編成替えを求める動議に賛成、日本共産党・革新共同及び民社党提案の同編成替えを求める動議に反対の討論を行います。  今日のわが国経済の深刻な不況と高物価インフレ、その原因は、歴代の自民党政府の失政にあることは言うまでもありません。二十年に及ぶ高度経済成長政策を改め、経済の基本的転換、経済運営の根本的転換を行わない限り、現在の苦境から脱出する道はないのであります。しかるに政府は、総需要抑制策に金科玉条といった態度で固執し、経済的、社会的に弱い国民諸階層を集中的に圧迫し、他方では公共料金の引き上げを行い、公害対策を怠り、大企業本位、国民無視の政策をとってきたのであります。  政府の安定成長ということは、金融引き締め、総需要抑制政策にはっきりあらわれたように、国民の犠牲によって、依然として大企業の利益を図ろうとするものであって、根本的な経済政策の転換を求める国民の期待を裏切るものと言わなければなりません。  次に、予算案の基本的な欠陥について指摘をいたしたいと思います。  第一に、予算編成方針の課題とされている物価抑制についてでありますが、その実態は、物価抑制の基本に触れていないという最大の欠陥が随所にあらわれています。一連の公共料金の値上げをもくろみ、一五%の目標も、結果は新価格体系の形成を許し、加えて大企業中心の景気刺激策をとるとなれば、年度後半の物価高騰は明らかであります。すでに寡占価格は高騰し、中小企業製品価格は低落をしている。物価抑制のためには、管理価格体系に対してメスを入れることこそ重要なことであります。三木内閣は、独禁法改正の公約も、会社分割の除外など大幅に後退し、財界におもねり、大企業奉仕の姿勢を示し、物価抑制に真剣に取り組む熱意を欠いていると言わなければなりません。  第二に、三木内閣は社会的不公正是正をスローガンにしていますが、その最大の眼目は、インフレ被害者の救済措置であり、福祉の充実、年金制度の改善、預貯金の目減り補償などであります。三木内閣の目玉とされている老齢福祉年金も、十月からわずか一万二千円にしかすぎず、生活保障に足る年金とはもとより呼ぶことはできないばかりか、慢性的高物価のもとでは、実質価値の保証も不可能であります。その上、この額もすでに予定されていたもので、三木内閣の新政策とは言えないものであります。  また、身障者の方々がこの予算委員会でも訴えられましたように、障害者団体の機関誌紙の郵送料の無料化、あるいは盲導犬育成事業費六十頭分とか、福祉電話の設置増など、切実な要求さえ満たされていないのであります。  そればかりか、不公正是正の方策としていまこそ最大限に活用されるべき税制改正においても、国民大衆にはミニ減税で実質増税を行いながら、インフレ利得者、大企業に対しては手を触れないといった、税の不公正是正を求める国民の期待を裏切り、三木内閣の有言不実行政治があらわれていると言わなければならないのであります。高度成長型税制である資産所得、大企業優遇措置を温存させつつ、インフレ便乗、物価高騰の後仕末と言いながら、財産課税の優遇措置を行うといった、税制の所得再配分機能と逆行する、税制の悪用と言わなければなりません。  特にサラリーマンの所得税減税は、自然増収一兆四千六百億円に対し、わずか一千九百億円の減税にしかすぎません。巨額の増税、税の取り過ぎの被害をこうむっているのであります。弱い者、取りやすいところから取るといった弱い者いじめの不公正な税制を実施するのが三木内閣、こう言われても弁明の余地なしと言わなければなりません。政治献金に対する減税措置を検討すると伝えられていることに、私たちは、三木政治の本質をはっきり示していると言わなければならぬのであります。  第三に、中小零細企業対策に、経済転換の方針に立った重点施策が欠けているという点であります。  農業に対しても全く同様であります。強大な寡占企業、大企業の陰で痛めつけられている農林漁業は、国民食糧の今日直面しておる重要な観点から考えましても、もはや無視できないきわめて重要な問題であります。食糧自給計画に基づいて、生産の拡大、農漁民の生活向上の基本方針をしっかり踏まえなければならぬのでありますが、今回の予算に示された三木内閣の政策は、場当たり的対応の域を出ていないと言わなければなりません。中小零細企業こそ、総需要抑制のしわ寄せ、これが決定的にかぶせられておるのであります。毎月一千件を超える倒産、この状況に対して、今回の五十年度予算案は、中小企業のこの現状に対して正確な対応を欠いておるのみならず、依然として弱い中小企業の犠牲において大企業の利益を図る、この観点が一貫して貫かれておるものと私どもは糾弾しなければならないのであります。  第四に、生活環境、自然環境を破壊し続ける公害に対する政策の立ちおくれであります。  瀬戸内海への石油流出事故は、高度成長、石油産業中心の公害発生のあらわれで、公害に対する保守政治の本質をはっきりと示したものでありますが、特に自動車の五十一年公害規制にあらわれた三木内閣の政治姿勢は、これは保守政治の限界、三木政治の本質というものをはっきりと示しておると言わなければなりません。私たちは、まの三木内閣の基本的な政治姿勢に対して、これを追及しなければなりません。     〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕  第五に、福祉充実実行政を直接担う地方財政は、その責任の重さとはうらはらに、戦後最悪の財政危機を迎えております。政府は、その救済措置を講ずるべきであるにもかかわらず、かえって人件費こそ地方財政硬直化の原因と、大きなキャンペーンを繰り広げておりますが、地方財政危機の根本的な原因は、地方の税財源を奪った中央集権の行財政構造にあることは明らかであります。その上に、最近のインフレ、高物価による超過負担の急増にあることは明白な事実であります。福祉社会の実現には、地方財政の向上を欠かすことはできません。この危機を救済すべく全力を尽くすべきであるのに、政府にはその姿勢が完全に欠けているという点であります。  以上、政府予算について具体的批判を行ったわけですが、最後に強調したいのは、三木内閣が対話の政治を掲げながら、わが党提案の最低修正要求項目に何らこたえなかったということ、これは対話の政治に反することであり、官僚主導から政党主導の予算編成への転換にも踏み出し得なかったあらわれと断ぜざるを得ないのであります。  私は、三木首相が国民に対して、総理就任以前に約束された政治方針、政策路線が次々と後退をし、言を左右させ、国民を裏切り、失望させていることは、まことに遺憾であり、今後われわれは力を尽くして追及しなければならないと決意をいたしております。  独禁法、政治資金など、あるいは五十一年規制など、重要政策に対する三木内閣の態度にはっきりと示されております。三木首相は、田中前首相との違いをイメージづけるためであったと思われますが、総理就任直後、私は総理官邸に移る、こう公言されましたが、こんな簡単なことさえも、三カ月たった今日、依然として実行されていない。三木首相の言行不一致に対して、国民は次第に大きな不信を高めておるのであります。  日本共産党・革新共同及び民社党提案の動議につきましては、内容の同じものも多く、国民のために統一をしてわれわれと共同提案を呼びかけたのでありますが、実現に至らなかったことはまことに残念であります。  日本共産党・革新共同案には、内容の一部に政治主義的独断と、同意できない内容が含まれており、賛成できません。  民社党案の大部分は、われわれの共同提案と同じ趣旨のものが多く含まれております。政治的、時間的配慮から統一、同調できなかったことは残念でありますが、わが党の共同提案に、より広範な国民的観点から賛同されるよう要望し、私の討論を終わります。(拍手)
  93. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に、中川利三郎君。
  94. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の昭和五十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算に反対し、また社会党、公明党提出の同予算組み替え動議に反対し、及び民社党提出の同予算組み替え動議に反対し、日本共産党・革新共同提出の同予算賛成の立場から討論を行うものであります。  今国会での予算案審議を通して明らかになったことは、まず何よりも三木内閣の本質及びその性格が、田中前内閣以上の対米従属、大企業奉仕、国民犠性をその特徴としているという点であります。しかも、これらの実態が表面上のあれこれの飾りたてに覆われているだけに、国民にとって一層罪深いものとなっているということであります。  三木内閣は、その公約の目玉として、社会的不公正の是正、福祉重点をうたい上げていますが、本予算案が示すとおり、その構造は、依然大企業本位の高度成長型の税制、財政、金融の仕組みをそのまま引き継いだものであり、高度成長の転換などお義理にも言えたしろものでないことは明白であります。  こうした三木内閣の基本的性格からする反動性は、本予算案審議の焦点となった核問題及び中東問題等に端的に示されたところであります。とりわけ核問題については、わが党により、核攻撃訓練部隊の常駐、SR71機による日米間の秘密取り決めなど、わが国主権と安全に対する重大な侵害が、もはや一片の疑問の余地なく明白となったのでありますが、三木内閣は、これらの深刻な国民の重大関心に何らまともにこたえようとしないばかりか、いたずらに日米安保条約上の信頼と協調の言辞をもてあそび、さらには核攻撃訓練部隊問題に見られる、前内閣以上のむき出しの反動的後退さえ見られるに至っているのであります。わが党は、これを三木内閣による国民に対する新たな挑戦として、断固糾弾するものであります。  政治にとって、国民の生命と安全を守ることほど重大、切実な課題はありません。三木内閣の挑戦は核問題にとどまらず、五十一年排ガス規制における告示の強行もまた、その典型として強く抗議せざるを得ないのであります。本予算審議を通じて、わが党が中公審における審議議経過の実態を一貫して明らかにし、追及してきたとおり、単なる審議会の不明朗性にとどまらず、多額な政治献金をバックとした自動車独占と政府一体の、癒着となれ合いによってつくられた政治的数値であることが完膚なきまで国民の前に明白にされたのであります。これこそ社会的不公正の是正どころか、まさに国民の生命と安全に対する犯罪と言わなければなりません。しかるに三木内閣は、中公審審議のやり直しをという国民の声に対して、強行告示をもってこたえたのであります。  また、あれほど三木総理国民の前に約束していた政治資金規制は、一転して大企業からの献金は悪ではないとなり、むしろ従前の何倍をも可能にするようなしり抜けを図る一方、選挙が各政党間で政策本位で争われるべきであるにかかわらず、田中前内閣でさえ手をつけることのできなかった政党機関紙の配布を制限し、国民の知る権利に対して本格的な圧殺を図ろうとさえしているのであります。また、独禁法改正問題での本委員会審議の経過で見ても、財界の圧力によって、すでに形骸化を予測され、独占のための新たな見直しを配慮するなど、まさに言語道断であります。  三木内閣の大企業奉仕の基本姿勢は、本予算案においてさらに国民生活を圧殺するものとなっていることは言うまでもありません。  まず第一に、本予算案が新価格体系と称して大企業の値上げを野放しにして、これを容認しているばかりか、酒税二二%、たばこ平均四八%、郵便料金二倍以上と、矢継ぎ早の公共料金の値上げを図り、政府主導の物価つり上げを進めていることであります。  また、二兆円に上る巨額の赤字公債の発行を行い、道路、港湾、空港など産業基盤向けの公共事業費は繰越分も含めると三兆二千億円にも達し、三木内閣の口にするインフレ抑制とは逆に、国民の実質収入を減らし、零細預貯金の目減りをしり目にした景気刺激型で、インフレ高進の原因は何ら取り除かれていないことであります。  しかるに、政府は、物価高騰の原因が労働者の賃金にあるかのように言い、租税特別措置による大企業の莫大な社内留保を擁護しながら、一方でそれを隠すために労働者の賃金に攻撃の矢を向けているなど、まさしく本末転倒であります。三木内閣が、真にその言明どおり、物価大作戦を展開するというのならば、まず政府自身が公共料金の引き上げをやめ、インフレ促進の大型、産業基盤整備優先型予算を改め、公共投資を国民の生活基盤に振りかえるべきであります。  第二に、三木内閣の言う社会的不公正是正、福祉重点の中身であります。これを老齢福祉年金で見る場合、わずかに月一万二千円であり、しかも、これさえ十月実施のていたらくであります。また生活保護費は実額でようやく一四・四%の引き上げと、現下のインフレ、物価高のもとでは最低生活を維持するには全く不十分であり、とうてい福祉重点の名に値するものではありません。  庶民が希望する公共住宅の建設も、公営、公団も、それぞれ昨年度より一万戸も削減され、住宅五カ年計画の達成は、庶民の切実な要求にもかかわらず、ますます遠のいています。  また、倒産に直面しておる中小零細企業に対する施策も、ほとんど皆無に近いのであります。  さらに、住民サービスの拠点である地方自治体の財政の危機的状況に対しても、超過負担解消策には何ら具体的政策を示さないのみか、当面する地方財政運営のために必要な地方債さえも抑制し、破局的な自治体財政に何らこたえるものになっていないのであります。  これら過去五年間で一兆円と言われる地方財政の超過負担に対し、政府はわが党提案のように、直ちに調査委員会を設け、調査し、これを三年間で解消する抜本的、具体的措置を早急にとるべきであると考えます。  第三に、エネルギーと食糧問題についてであります。  政府は、本予算案で示すように、産油国に敵対するキッシンジャー構想に積極的に追随し、九十日石油備蓄体制を目指して、千六百五十六億円に上る政府資金を準備し、メジャーに従属する一方、大企業の言うままに莫大な資金をつぎ込もうとしております。言うまでもなく、石油問題の真の解決には、産油国との平等互恵の経済交流を強めるとともに、国内における石炭産業の民主的な振興を図って、自主的で総合的なエネルギー政策への転換を図るべきであります。  また、重大化しておる食糧問題についても、三木内閣は、農業政策の見直し、自給率向上を言いながら、先進資本主義国中最低の穀物自給率を、さらに見通し試算によってなお大幅縮小を見込む一方、これまで以上の農産物の外国輸入に道を開くなど、食糧資源の民族的課題に依然重大な障害をつくっています。  このことは、農地拡大、土地基盤整備、農産物の価格保障、安全性無視の農用機材資材などと相まって、日本農業にとって重大と言わなければなりません。いまこそ農業を基幹産業の中心に位置づける抜本的政策転換のもとに、外国農産物の輸入を最小限にとどめ、真に自給基盤の整備拡大と、農産物価格の安定策をとるなど、多面的な農業保護政策を積極的に行うべきであります。  第四に、日米安保条約を軸としたアジア反共軍事同盟体制強化のための防衛分担金とも言うべき、米軍基地集約移転費は、これを全額削除すべきであります。韓国、インドシナ等への不当なアメリカの肩がわり援助についても、これを大幅に削除すべきであります。  また防衛庁発足以来最高の伸びを示した総額一兆三千二百七十三億円に上る防衛費は、大幅に削減し、民生安定に回すべきであります。  最後に、本予算委員会の審議を通じて明らかになった解同朝田派による不当な暴力による同和予算の私物化、食い荒らしの問題であります。これら同和予算の不公正な執行に対しては、これを直ちに公正、民主的にすべての未解放部落住民のために運用されるよう、即刻是正されるべきであります。  しかるに三木内閣は、地方自治体の財政困難の理由として、口をきわめて人件費の高騰によるものとしてこれを攻撃しながら、事解同朝田派による目に余る地方行財政及び教育破壊と逆差別の拡大には、地方自治権の尊重を理由として、積極的対応しないなど、まことに不当であります。  以上で見てきたように、本予算案は、国民に災厄を広げ、対米従属と大企業本位の政策を何ら変更することなく、逆に一層の国民の犠牲を強めるものとなっています。  わが党は、このような予算案をやめ、五十年度予算を国民生活と福祉向上を最優先し、日本経済のつり合いのとれた発展の第一歩を踏み出す予算としなければならないことを強く主張するものであります。よってわが党は、本政府予算三案に対し、断じて反対し、その撤回を要求するものであります。  また、日本社会党、公明党共同提出にかかる組み替え動議については、歳入関係に土地再評価益課税を掲げるなど、財界の再評価要求に道を開くおそれのある事項が含まれ、その財源の確保策に問題があるばかりでなく、歳出関係においても、大企業のための電子計算機対策費一外航船舶建造利子補給金など、当然大幅に削除すべきものをほとんど容認し、経済の基礎であるエネルギー問題では、産油国敵視のキッシンジャー構想に追随して、石油備蓄構想の名のもとに大企業につぎ込む政府資金千六百五十六億円を容認した上、メジャーへの規制などに触れず、重要な諸点で反国民的な政府予算を容認しているので、反対の態度をとるものであります。  また、民社党提出にかかる組み替え動議については、特権的減免税廃止の問題、超過負担解消問題、安保問題、防衛費削減問題など重要問題について、対米従属、大企業本位の政府予算案に追随しており、わが党と根本的に意見を異にするので、反対とします。  以上をもって、日本共産党・革新共同の討論を終わるものであります。(拍手)
  95. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に、坂井弘一君。
  96. 坂井弘一

    坂井委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十年度予算三案に反対し、日本社会党、公明党両党共同提案の予算組み替え動議に賛成、日本共産党、民社党それぞれの組み替え動議に反対の討論を行います。  わが国経済は、昭和三十年代の後半から、歴代自民党政府が強引に推し進めた高度経済成長政策の帰結として、きわめて困難な局面に立たされております。三木内閣が公約している物価の安定や社会的不公正の是正は、文字どおり、国民の一致した要請であると言っていいのであります。その意味で、昭和五十年度予算案は、三木内閣の公約がどのように具体化されるのか、その内容に多くの期待がかけられていたことは言うまでもありません。  ところが、政府案は、ことごとく国民の期待を裏切った内容であり、三木内閣の公約である物価の安定、社会的不公正の是正も、結局は国民に幻想を持たせただけであり、全くのまやかしものであるということが露呈されているのであります。しかも、本委員会でわが党が明らかにしたように、輸出保険特別会計の編成に重大な欠陥があるにもかかわらず、これにほおかむりをしようとしているのも、絶対に許すことはできません。  今日のインフレ、物価高騰、一方では中小企業の倒産、失業者の増加という困難な事態を克服するためには、よほどの決意が必要であり、しかも現実的、具体的な政策手段が要請されることは、言をまたないのであります。三木総理のように言葉あって実行なしの姿勢では、当面する困難な事態の克服はとうてい及びもつかないと断ぜざるを得ません。  そこで、以下私は、政府案についての具体的な反対理由を申し述べます。  第一は、インフレ抑制と物価安定の面からの問題であります。一般会計の伸び率二四・五%は、列島改造で悪名高い四十八年度予算の伸び率をわずか〇・一%下回るにすぎず、しかも予算規模を圧縮するために、剰余金からの国債償還費の削減、地方交付税精算額などの本年度補正予算での先食いを行っていることは、御承知のとおりであります。  その一方では、物価安定のための有効な具体策もとらず、逆に公共料金の値上げ撤回という国民の強い要求を無視して、郵便料金や国立大学の入学金、受験料の大幅引き上げ、たばこの値上げさえ強行しようとしているのであります。高度経済成長期の財政体質を抜本的に改めようとせず、各種公共料金の大幅値上げを実施したのでは、政府主導の物価上昇は避けることはできないと言わざるを得ないのであります。  第二は、五十年度の税制改正においては、社会的公正の確保どころか、不公正が一層拡大されていくという点であります。政府の税制改正によると、所得税、住民税の減税は、物価調整減税にもならない超ミニ減税にとどめ、酒、たばこ等の間接税を増徴し、実質大幅増税を図ろうとしております。これでは、給与所得者の納税人員の増加、あるいは逆累進的な大衆の重課となることは必至であると言わなければなりません。反面、インフレ高進による所得分配の不公正を是正せず、高額所得者に対する課税強化、利子配当所得、土地譲渡所得に対する租税特別措置の改廃、法人税制強化等を見送ったり、実質たな上げをしようとしているのであります。  今回の税制改正は、国民大衆の犠牲において財源を確保するという、従来の租税構造に何ら改革を加えないばかりか、さらに不公正を拡大しようとするものであり、私の強く反対するところであります。  第三は、歳出の面についてであります。  まず、政府が重点を置いたという社会保障関係費についてであります。なるほど、社会保障関係費は、四十九年度に比べ、あるいは他の経費に比べれば伸び率は高くなってはおります。しかしながらその内容は、遺憾ながら既定路線にわずかの配慮をしたにすぎません。すなわち老齢福祉年金の月額七千五百円から一万二千円の引き上げも、二年前の田中首相の公約に二千円の増額をしただけであり、身障者、母子家庭等の各種年金の引き上げについてもほぼ同様であります。しかも、この措置すら、ことし十月からの実施であります。さらに生活保護基準の引き上げ、在宅重度心身障害者関係の介護手当の新設も微々たるものであります。これではインフレと不況のしわ寄せを受けて苦しんでいる多くの老人、生活保護世帯、母子家庭等の切実なる要求にこたえることができないことは言うまでもありません。政府案の社会保障関係費の増額では、せいぜい物価上昇の後追い的措置としか言いようがないのであります。  社会保障政策で特に申し上げたいことは、その制度面の改善と長期計画の策定を必要とすることであります。国民、厚生年金の賦課方式の実施、医療保険制度の改善等は早急に実施すべきであり、これらと並んで、総合的な社会保障充実のための長期計画の策定が急務なのであります。場当たり的な社会保障政策では、真の福祉の充実はほど遠いと言わざるを得ません。政府が歳出予算の目玉であると言う社会保障関係費が、ただいま申し上げた程度でありますから、他は推して知るべきであります。  中小企業倒産の激増、失業者の増加、さらには農業の危機に対処する具体的な措置がとられていないし、住宅、公園、下水道など生活関連社会資本の整備も、実質的には大幅に後退しているのであります。また、公害関係予算も、国民の健康と環境を守る予算とはとうてい言えない内容であり、教育予算についても、最も深刻である私学の入学金、授業料の大幅値上げを食いとめる具体策を示さず、また国公、私立間の格差を是正する措置もとられていないのであります。  さらに、政府国民の多くが反対している第四次防衛計画に固執し、防衛関係予算を四十九年度より大幅増額しているのであります。新規装備費、研究費を初め、新規定員増をやめることや、訓練、演習費等の大幅削減は当然なのであります。  第四には、福祉の充実と密接に関係している地方財政の危機打開にきわめて後ろ向きの予算案であるということであります。  交付税率の引き上げ措置もとらず、超過負担の解消にも何ら努力しておりません。その上、政府は、地方公共団体の増大する財政需要に対する自主課税権の行使をも牽制しようとしているのであります。  地方財政の危機を放置しようとする政府案に強く反対するものであります。  以上、政府案に反対する主な理由を申し上げましたが、本委員会の質疑を通じて明らかにされましたことは、三木内閣の姿勢は、国民向けのポーズと実際とは大きくかけ離れ、国民に背を向けているということであります。  このことは、他の面においても、たとえばわが党が、本委員会の審議の中で、米軍のわが国への核持ち込みの事実を具体的な公式文書をもって明らかにしたにもかかわらず、三木総理は、かかる重大問題の徹底的解明を図ろうとする姿勢さえも示さず、ただ米側の説得力のない回答でその場を過ごそうという、国民世論を全く無視した態度をとっていることなどとあわせて、明らかであります。  核兵器の日本への持ち込みの疑いは、ますます濃厚となったと言うべきであり、また同時に、事前協議制度や日米安保体制の持つ危険な実態と、わが国政府の欺瞞的な本質が明確になったと言えるのであります。  わが党は、国民に背を向ける三木内閣の姿勢を厳しく追及するものであり、国民不在の政府案に強く反対するものであります。  したがって、国民無視の政府案を大幅に編成替えをする必要があり、インフレ、物価高の抑制、総需要抑制の質的転換と中小企業対策の強化、不況打開、雇用の安定、地方財政の危機打開と超過負担の解消、公平な税制の実現と国民福祉の飛躍的拡大、農漁業の基盤整備と公害防除、環境保全を基本とした日本社会党、公明党の共同提案の組み替え動議について、賛成の態度を表明するものであります。  なお、日本共産党及び民社党の組み替え動議につきましては、その趣旨においては一致するところもありますが、具体的内容につきまして相違するものが多く、反対するものであります。  以上で討論を終わります。(拍手)
  97. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に、安里積千代君。
  98. 安里積千代

    ○安里委員 私は、民社党を代表し、ただいま提案されております昭和五十年度一般会計予算案、特別会計予算案及び政府関係機関予算案に対し、一括して反対するとともに、わが党提案の編成替えを求める動議に賛成する討論を行いたいと思います。  なお、社会、公明両党共同提案並びに共産党・革新共同提案の編成替えを求める動議につきましては、見解を異にするものでありますので、反対であることを明らかにしておきたいと思います。  私は、いま予算委員会の審議を終えるに当たり、失望の念を禁じ得ないのであります。申すまでもなく、わが国経済は、この数年高度成長の破綻が明らかになり、国民生活は激しいインフレとかつてない深刻な不況によって、二重の苦しみを経験しているのであります。このときに当たり、三木総理の登場は、国民に政策転換のわずかな期待を与え、また総理自身、社会的公正の確保を公約し、国政転換の意気込みだけは示されたのであります。ところが、その後の予算編成過程を見まするならば、相変わらず官僚主導型編成を踏襲し、予算案自体についても何ら新味はなく、むしろ酒、たばこ、郵便料金の増税や値上げを強行するなど、国民の期待を完全に裏切ったものになっているのであります。  わが党は、このような政府予算案の諸欠点を、この予算委員会において具体的に指摘し、三木総理初め政府に対し、強くその改正を要求したのでありますが、三木総理はほとんどその声に耳をかさず、いま政府原案を多数決で押し切ろうとしていることは、全く残念としか言いようがありません。三木総理が本当に対話の政治を推し進めようとされるのであれば、政府原案にこだわることなく、野党の声を十分に聞き、真に国民福祉の向上のため、みずから予算修正を行う決意があってしかるべきだと思うのでありますが、その姿勢が見られず、従来の自民党政治から一歩も抜け出していないことを、まず強く指摘しておきたいのであります。  次に、具体的に政府予算案に反対する理由を挙げたいと思います。  その第一は、公平を欠く政府の税制改正についてであります。  現在のインフレのもとにおいては、労働者は生活防衛のため、名目賃金の大幅引き上げを獲得せざるを得ない状況でありますが、所得税はこの名目賃金に累進的に課税される仕組みであり、課税最低限の大幅引き上げを行わない限り、実質増税になることは必至であります。ところが、政府案では、わずかに課税最低限を百八十三万円に引き上げるだけにとどめており、これでは減税どころか、大衆増税であると断言せざるを得ません。  また、政府は財源確保の名目で、たばこの値上げ、酒税の増税を行っていますが、これはまさに大衆の犠牲のもとに予算編成を行ったもので、われわれの断じて許し得ないところであります。  三木総理が社会的公正の確保を唱えるのであれば、当然財源は高額資産家を対象にした富裕税の創設を行い、利子、配当の優遇課税を抜本的に改正し、交際費課税を強化するなどの措置をとるべきであります。  第二の反対する理由は、わが党の要求である公共料金の値上げ凍結を無視し、さきに指摘した酒、たばこの値上げのみならず、郵便料金の大幅引き上げを図っていることであります。  すでに政府は、昨年十月以後に、国鉄運賃、バス料金、消費者米価、都市ガスなど、軒並みに公共料金の値上げを行ったのでありますが、いままた、これら公共料金の値上げを強行することは、政府の物価抑制にかける熱意を全く疑わしめるものであります。  わが党は、すでに昨年来、公共料金の値上げは消費者物価上昇率が一〇%以下に定着するまで凍結すべきであるという現実的な提案を行い、同時に、この間、三公社五現業などの公共企業体の経営近代化、労使の正常化を図るべきであると主張してまいったのでありますが、政府がこの具体的提案を無視し、公共料金の値上げ決定を行ったことは、きわめて遺憾であり、断じて反対であります。  第三の反対理由は、社会保障、住宅政策など、国民福祉の向上について、その対策が遅々として進まず、むしろ後退しているものがあるという点であります。  三木総理は社会的不公正の是正を唱えておられますが、この予算委員会の審議を通じて感じられましたことは、総理の言う社会的公正の確保が、依然として弱者の救済、インフレによる被害の救済というように、何か国家からの慈善事業的救済の考えが色濃く残っていることであります。したがって、これがため、予算の制約を理由に、ことごとく国民の要求が削られ、社会保障対策も全く中途半端に終わっていることであります。それどころか、社会保障政策と並んで最も重要な住宅政策において、公営住宅の建設戸数が昨年の九万五千戸から八万五千戸に、公団住宅も七万戸から六万戸へと、それぞれ一万戸も減少し、政府の住宅政策が著しく後退していることは、見逃すことのできない重要な問題であります。このような事態を引き起こしたのも、政府の福祉に対する考え方があくまで個人中心、自己努力中心主義であり、わが党が主張する国家の責務としての福祉向上という考え方と、いまだ著しくかけ離れていることを強く指摘しておかなければなりません。  最後に、私は以上の観点を踏まえ、改めて政府に要求しておきたいことがあります。  それは、すなわち、わが国が真に福祉国家に前進するためには、広く国民の参加を仰ぎ、長期経済計画を策定すると同時に、国の最重要計画として、福祉向上五カ年計画をもあわせて策定することであります。また、その裏づけとなる長期財政計画が必要なことは言うまでもありません。わが国が現在直面しているスタグフレーションによる難局を乗り切り、国民生活の不断の向上を図るためには、国民の参加こそ重要であり、福祉の計画的向上こそ不可欠の要請であります。この二つの基本政策を忘れ、いかに当面の諸問題を糊塗し、一時的成功をおさめようとも、それは早晩大衆の反逆を招くことは必至であると断言せざるを得ません。このことを、政府は十分反省されんことを願うものであります。  以上、反対理由に述べたことを是正する道は、すなわち、わが党の編成替えを求める動議に賛同することであることを強調し、私の討論を終わります。
  99. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  100. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより採決に入ります。  まず、小林進君外十四名提出の昭和五十年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  101. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 起立少数。よって、小林進君外十四名提出の動議は否決されました。  次に、林百郎君外三名提出の昭和五十年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  102. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 起立少数。よって、林百郎君外三名提出の動議は否決されました。  次に、小平忠君外一名提出の昭和五十年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  103. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 起立少数。よって、小平忠君外一名提出の動議は否決されました。  これより、昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  104. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 起立多数。よって、昭和五十年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  106. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて、昭和五十年度総予算に対する議事は、全部終了いたしました。     —————————————
  107. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  山村治郎君から理事辞任の申し出がありますので、これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  109. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る一月二十九日より総予算の審査を開始いたしまして以来、終始真剣なる論議を重ね、慎重審議を尽くし、本日、ここに審査を終了するに至りましたことは、ひとえに委員各位の御理解と御協力のたまものでありまして、委員長といたしまして、衷心より感謝の意を表する次第でございます。  ここに、連日審査に精励されました委員各位の御苦労に対し、深く敬意を表し、感謝の意を申し上げまして、ごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。     午後四時十五分散会      ————◇—————