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小林(進)
委員 二十分の
質問時間を与えられましたことを感謝いたします。
実は、私は
韓国問題の
質問について、三人の参考人を
委員長に要請いたしました。一人は前駐韓
日本大使の後宮虎郎君、それから太刀川、早川の両君であります。ところが与党・
政府の強硬な反対がありまして、ついに太刀川、早川両君をここに参考人として呼ぶことができませんでした。しかし太刀川君は、ここにも記事がありますように、どうか私をひとつ国会に招致して、この私が拘禁された真実を聞いてもらいたい、できないならば代議士さんのパーティーでもよろしい、私の真実の声を聞いてもらいたいという要望を出しておるのでありまするが、残念ながらそれができない。できずして、
国民の負託にこたえ得なかったことは、残念の至りでありまするけれども、与党・
政府の頑迷なところ、やむを得ません。ただ後宮大使につきましては、彼は外交官である、外務省の役人である、外務省の役人であるが、しかしなおかつ、
政府委員として国会に出て
答弁をするその資格は与えられていない、だから外務省に対する
質問があれば、
外務大臣その他
政府委員に
質問をしてくれ、こういうことでございまして、なかなか
理事会における話が合いません。その妥協策として、後宮大使に予算の
理事会にひとつおいでを願って、そこで疑問とする
質問を聞いていただく、そこで疑問が解けたらそれでいいが、解けなければこの午後の
委員会で
質問をする、こういうことになったのでございます。その結果、いまの昼休みを利用いたしまして、約三十分にわたり、後宮大使から疑問とする点を拝聴いたしました。その結果、私はなお問題の解明を得るに至りませんでしたので、そこで、この
委員会において改めて
質問をさせていただくわけでございます。
私が後宮大使に
質問いたした問題点は六点であります。
一つは、後宮大使が、先月の二十八日であります、首相官邸に
三木首相を訪ねられ、そして最近の
韓国情勢を報告された。その後、後宮氏は
総理官邸の出口において記者団の
質問を受けられて、そしてそこで
回答をせられた。その
内容について伺いたいのであります。
第一は、
金大中氏
事件はすでに空洞化したという
談話があった。これが私の疑問とするところであります。どうして一体空洞化したのか、その空洞化したという
内容はどうかと
お尋ねをいたしました。この
事件については、これは
韓国側でもそういう意見になっているので、
韓国側の見方を私は
説明したのだ、その理由は、先月の十一日から
金大中氏の身の自由もやや復活をして、
政治活動も野党の党首並みに動いていられるようであるし、
出国の問題についても、ぜひ出たいというふうな強い意向ではなく、外国の力を借りて出るまでのことはないようにも言われているかに思われる、それやこれやを含めて、
韓国人はもはや
金大中さんの問題は空洞化しているという、そういう
韓国側の意見が出始めているので、その
韓国側の意見を私は伝えたにすぎないという御意見がございました。この点は、私が先ほども申し上げましたように、
金大中氏自身は、私はなお二十四時間、四六時中監視せられている、監禁の状態にあると言われているのでありますから、後宮大使の
説明は、
韓国側の意向としても間違っておることが明らかになりました。
第二点につきましては、こういうことを言われておるのでございまして、
金大中事件に関連して、
わが国の
捜査陣は、
金東雲元
一等書記官の件ではまだ強気だが、
韓国側も文世光の背後
関係研究を
日本に要求しておる。
両国は見合った
関係にあるから、この問題を
解決するにはどちらかが目をつぶるか、双方がどろを吐き出して謝るしかない、こういう不穏当な
談話をされているわけでございます。
そこで、私は第二点として、後宮大使に、文世光の問題について、
日本側も背後
関係を何か持っているものを白状して、そしてどろを吐くか、あるいはお互いに黙っているかということは、一体何を
意味するのか。文世光の背後にある隠れたる事実というのは、一体何を指すのか教えていただきたいということで、
質問したわけでございます。
これに対して後宮さんは、双方がどろを吐くなどということは、確かに不穏当な言葉でございましたから、これは取り消します。しかし、私がこれを言った真意は、何も文世光氏の背後に秘密の
関係があるとか、どろを吐かなければならぬ事実があるということを言ったのではない。ただ
韓国側に対して、
金東雲氏の問題を早く
解決しよう、わが
日本に引き渡せ等々の要求をする場合に、必ず
韓国側は、
日本側はそうおっしゃいますが、それならば、しかし
韓国が
日本に要求している文世光の背後
関係、あるいは北朝鮮との
関係、あるいは朝鮮総連との
関係、あるいは
韓国の青年同盟との
関係等も、同じく
日本側もひとつそれを
解決してくればいいじゃないか。私の方が、
金東雲の問題を早く
解決せいと、
日本が要求すると、
韓国の方で、それでは文世光の方のいま申し上げたような問題も、
韓国がせっかく要求しているのだから、それを
解決すればいいじゃないか、そういう
韓国側の気持ちを、私はこう表現しただけの話であって、決して文世光の背後に特別な
関係があるというようなことを言った
意味ではない、こういうふうに
説明をされました。
外務大臣、よく聞いてください。それで、私はその問題は
一つ終わりました。
第三番目の問題といたしましては、これは某雑誌に載っていることでございますが、後宮大使
談話として大変なことが言われておる。これは、
日本のマスコミの
姿勢に対する問題であります。これは短いから読み上げる。駐韓
日本大使後宮虎郎
談話であります。「
日本の特派員は」、これは
韓国にいる特派員であります。
裁判所に「入れてもらえなかったけれども、」
裁判所というのは、太刀川、早川の
裁判であります。「両君の
裁判は公開だったんです。両君の家族も
日本大使館員も入り、閉廷すると、そのつど大使館員が
日本の特派員たちにくわしく話しました。にもかかわらず、
日本の新聞は彼らを殉教者扱いにして、キャンペーンをやってきたわけですが、金芝河さんの
発言でいっぺんに論調が変った。これはたしかに変な話です。私の
立場として新聞批判はさしひかえたいけど、いえることは、金芝河さんという象徴的な人がああいう
発言をしたことで、
日本の新聞の心理的タブーが解けたんじゃないか。つまり、逮捕以来、両君に対する同情が強く、
日本は殉教者的イメージに包まれていて、そのイメージを害するような
報道はしなかった。それが金芝河さんの
発言で目からウロコがとれたということじゃないでしょうか。私が知っている限りでは、現地の特派員は、」ここからが問題なんであります。「金芝河さんと同じような印象を持っていましたけど、東京で書かれる記事はぜんぜんニュアンスが違う。
日本のデスク
段階で、
日本全体にある殉教者的フンイキに合わせて書いたか、あるいはそう考えて書いた」ものと思います、そういうことでございましたから、私はこの真意を聞いたわけであります。
これに対して後宮大使は、私は、この記事はこの某雑誌の記者に直接会って話したことではない。電話を通じて向こうが一方的にどんどん聞いてきて、私がその聞いていることに答えようと思って考えていると、そうですね、ああですねと言って追い詰められて、そして書かれた記事である。ただ、在
韓国における
報道陣の問題については、
韓国にいる特派員も東京にいる特派員も、同じように、太刀川、早川の問題については非常に同情的に、偏向的なそういう見方をしているんですねという問い合わせがあったから、そこで私は、それは違う、現地の特派員の人たちは実情を正しく知って、正しく
報道している、こういうふうに、私はむしろ現地の特派員の偏向性を否定して、彼らの正しい
報道を擁護するつもりで私は言ったのだ。その私の
談話がこういう記事になってあらわれたのであって、これは私の真意ではない、こういうふうに語られましたから、それも私はそのとおりに聞きおきました。
第四番目の問題でありますが、これは大使みずからに関する問題で、太刀川、早川両君は四月からことしの二月まで十カ月月、われわれに言わせればまず無実の罪と言いたいところでありますけれども、革命運動に従事した、北朝鮮から兵器を持ち込む手伝いをした、あるいは
日本の全学連と一緒になって、朴政権打倒の革命運動の陰謀をたくましゅうしたいということで、二十年、長期の刑を着せられたわけでありますが、この問題に関して、在韓の
日本の大使館が一体何をやったかということをお聞きしたのであります。
早川、太刀川君が拘禁をされたその直後の五日目か四日目に、手島というソウルの大使館の
一等書記官が面会に来て、そして三十分ばかり会見をした。しかもその会見も、擁護しようということでなしに、おまえさん余り弁護士なんか頼まない方がいいよ、
韓国側の
裁判や要求に素直に従った方がいいよ、そういうことが中心で終わった。あとは十カ月の間何も来なかった。いよいよあすは釈放せられるという前日に、初めて思い出したように、拘禁をされていた安養という刑務所に手島という
一等書記官が来た。他国において人権をじゅうりんせられ、生命の危機にさらされ、さめざめと十カ月も泣いている
日本人に対して、大使館としてはあまりにも冷淡ではないかという声が、本人のみならず世論としても巻き起こっておるが、この問題はどうなんだと聞きました。
これに対しては、大使としても、人道上の問題として、私自身は心にもかけ、大変力を入れたけれども、形の上にあらわれなかったことはまことに遺憾であった。
アメリカと
韓国の間には条約があって、そういう
犯罪行為の、面会だとか差し入れだとかいうような問題は、権利として存在するけれども、
日本にはそういう
犯罪処遇ですか、そういうことに関する条約がないために、心ならずも庇護ができなかったというお話がございました。以上で終わったわけであります。
そこで、問題はやはり
外務大臣に返るのでございますけれども、私どもはこの後宮大使との会談も通じて、何か文世光問題に対して、彼が本当に陸夫人を殺害し、あるいは文世光の後に何か遠謀、策謀をたくましゅうする共犯か主犯があるのかということを私は聞いた。
日本国民として、あくまでも真相を知りたいということで聞いたのでありますけれども、ついに後宮大使の答えの中から出てこなかったとするならば、
日本の外務省は、全く根拠のないところに陳謝大使を出して——陳謝ではないとおっしゃいましたけれども、そういう卑屈な態度を続けておられる。まさに
宮澤外交は、相手が強ければいつも引っ込んで、理由もない、筋もない、そういうその日任せの外交を続けていられるのではないかという
国民の疑惑は、残念ながら、後宮大使の予算の
理事会における
質問においては、そうしか、やはり疑いは解けなかったということであります。こういう問題についてて、いま一度明確に答えていただきたい。
なお、あわせて、わが党の安宅
委員から、椎名メモについても
質問がございました。あのメモは一体何だという
質問もございました。私文書か公文書か、これはあなたも先ほどお話がございましたけれども、この椎名メモを持っていくについても、親書の
内容にまで向こうと−−向こうの要求に応じたと言ってはなんでありますけれども、打ち合わせをして、そして事前に
韓国政府の了承を得て、そのメモを持っていった。そういう形のものは、一体世界の外交史上の中にもないのではないか。なぜそれほどのことをやらなければならないのかということに対しては、ちゃんと大使の御返事もありました。けれどもその御返事をここで言いません。そういう点について、
外務大臣のきちっとした御
答弁を、もう一度承っておきたいと思うのであります。