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1975-02-21 第75回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十一日(金曜日)    午前十時二分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 竹下  登君    理事 谷川 和穗君 理事 湊  徹郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    大久保武雄君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       塚原 俊郎君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    前田 正男君       松浦周太郎君    森山 欽司君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       嶋崎  譲君    島本 虎三君       楯 兼次郎君    楢崎弥之助君       堀  昌雄君    湯山  勇君       青柳 盛雄君    寺前  巖君       平田 藤吉君    松本 善明君       松本 忠助君    安里積千代君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁参事官  菅沼 照夫君         防衛庁長官官房         長       斎藤 一郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊明君         科学技術庁原子         力局次長    福永  博君         環境庁水質保全         局長      大場 敏彦君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵大臣官房審         議官      後藤 達太君         大蔵省主計局長 竹内 道雄君         大蔵省銀行局長 高橋 英明君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君         厚生省医務局長 滝沢  正君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         海上保安庁長官 寺井 久美君         労働省労働基準         局長      東村金之助君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業訓練         局長      藤繩 正勝君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省住宅局長 山岡 一男君  委員外出席者         会計検査院長  白石 正雄君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   楯 兼次郎君     島本 虎三君   青柳 盛雄君     松本 善明君   田代 文久君     平田 藤吉君   中島 武敏君     寺前  巖君   矢野 絢也君     松本 忠助君 同日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     嶋崎  譲君   松本 忠助君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   嶋崎  譲君     楯 兼次郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十年度一般会計予算  昭和五十年度特別会計予算  昭和五十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  理事会の協議により、質疑を順次許します。島本虎三君。
  3. 島本虎三

    島本委員 十五日の質問につきまして、いわゆる伊達火力の問題で、警察官並びに海上自衛隊、この警備過剰による公害行政で、総理考えている理念と発言とが完全に無視された、こういうような事態が判明いたしましたので、特に総理並びに関係の皆さんにこの点の解明を願いたい、こう思って参った次第であります。  環境権裁判伊達火力強行着工、これは当時の環境庁長官でありました三木総理が一番よく知っているはずであります。北海道北海道電力に対して、昭和四十八年六月の十三日ですが、着工に当たっては絶対流血の惨を避けよ、そしてこの際忍耐強く話し合いを行いなさい、こういうふうにして指示されたはずであります。当時の二階堂官房長官並びに中曽根通産大臣も同様でございました。しかるにかかわらず四十八年六月の十四日に機動隊を導入して強行着工した、そして流血の惨を引き起こした、こういうような事態があったわけであります。そして六月の十五日、次の日ですけれども総理は、機動隊の導入は非常に遺憾である、今後は生命環境を守るために厳しい態度で臨む、これをはっきり言明したわけであります。そして北海道電力に対しては、建設を計画する以上、将来にわたって住民の理解を得る必要がある、困難であっても忍耐強く話し合いを続けるべきだ、こういうふうに、再び十五日の日、総理としてこれを通達したわけであります。それが、十三、十四、十五日の三日間における、当時の環境庁長官三木総理の言葉であります。十五日の議事録はここにはっきりあるのであります。  しかるにかかわらず、その後漁民側は、全道労協を入れて、一月の二十日ころまで円満に話し合いを続けてきたわけですが、突然今度は一月の二十二日の早朝に、資材搬入ということで第二十四北光丸を強行入港さしたわけです。驚くなかれそのときには、海上保安庁第一管区、第二管区を動員して、合計二十二隻の舟艇、それとヘリコプターまで動員して警備に当たったというわけです。そしてその間に、漁船十三隻のうち一隻がその船にはさまれて押しつぶされた、その乗っていた二人がようやく陸に上がったとたんに業務執行妨害で逮捕された、こういうような事態があったわけであります。まさに漁民生命を無視した殺人未遂行動であるのに、逆に漁民三名を——当時は三名ですが、これを逮捕するということ、すべて企業側であって、公害行政のとるべき態度ではないはずであります。そうして当時の道警の警備体制、私服、制服約四百人です。反対側は約百人しかいないわけです。こういうようなことでありますけれども、陸海空で公害行政に対してまさにこれ弾圧行政をもって臨んだということになるわけであります。過剰警備以外の何物でもございません。総理の言っていることはまさに逆であります。  そうなります場合に、私どもとしては、協調話し合い、そうしてそれを主張する総理であります。しかし、下部においては敢然とこういうような一つ弾圧行動が行われた。これは許さるべき問題じゃないと思います。まして二月の十四日には機動隊をまた百名を出しているのです。ヘリコプター一台を出しております。そうして舟艇約四隻を出しているのです。そのときに反対する者は一人もいなかったのであります。それでも、もうあらわれるであろうという想定で、こういうようなことをやっているのです。一体これはどういうことですか。ここのどこに対話協調があるのですか。どこに総理が言った忍耐強く話し合えという態度があるのですか。これをいま平気でやっているのは、総理考えと一致しない面が行政の面ではあらわれております。まことに遺憾であります。総理にこの点の解明を求めます。
  4. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御指摘伊達火力に対する資材搬入の場合、私もいろいろ調べてみましたが、海上保安庁が出てまいりましたのは、反対のために相当漁船が結集して、そうして人命の上においても非常に危険がある、そういうので、これはやっぱり人命尊重秩序の維持という点から、そのまま放置しておいては大変なことになるという配慮から海上保安庁出動をしたということでありまして、過剰防衛ではない、生命秩序保持のためであるという報告を受けておりますが、できるだけ原子力発電というものは今後日本が進めていかなければならぬ問題でありますので、そしてまた原子力発電に対する技術も開発をされて、安全というものに対しては、日本が問題もあるようでありますが、ヨーロッパでもアメリカでも、原子力発電というものは非常に……(島本委員原子力じゃない」と呼ぶ)火力発電の場合でも、電力の供給というものに対しては、これは大きな問題でありますから、火力に限らず、原子力に限らず、これはやっぱり大きな国の問題として進めていかなければならぬ面がありますので、どうか地元人たちによく話し合って、そういうふうなことのないようにしてもらいたいというのは、変わらない私ども考えでございますが、さりとて現地にそういう不祥事件が起こるというような予測をされるような場合に、そのままじっとほうっておいていいかということになりますと、そうはいかない。やはり生命秩序保持に当たらなければならぬというのが、海上保安庁としては当然のことでもありますので、そういうことになったと思いますが、今後過剰防衛といいますか……(島本委員過剰警備」と呼ぶ)過剰警備に至る、そういうふうなことのないようには十分注意をいたします。
  5. 島本虎三

    島本委員 二月十四日には、機動隊百名出たときは、だれも反対する人がいなかったのです。いないのにそれほど出しているのです。これは過剰でなくて何ですか。過剰以上でしょう。一人でもいるならばということになりますが、一人もいないときにそういうことをしている。(「過剰じゃない、異常だよ」と呼ぶ者あり)まあ異常でしょう。  それだけではございません。ここに一つ重大なのは、室蘭から伊達までの間二十五キロのパイプラインルート、これがいま、住民はどうなっているのか不安で見詰めている最中ですが、北海道電力では、約六十ヵ所にわたってボーリングの調査を終えているのです。そして三月以内にこのルートを申請する方針だと言っているのです。しかし、まだ秘密のまま住民には一切発表してないから、知事の方では、住民の同意がなければこれは認可は当然できませんので、こういうような状態の中で、まだ秘密のままやって、話し合い態度に入っておりません。こういうようなことは、住民との問のみぞを激化させるもとになろうかと思います。また、そういうようなことによって、警察の方もいつでも出てやるんだ、保安庁の方もいつでも出せるんだ、こういうような一つの思い上がった気持ちがあるから、依然としてこういうような一つ強硬態度を譲らないのじゃないか、こう思われるのであります。したがって、安全性の問題が一番問題なんでありますから、これはもう話し合いを継続させなければならないと思います。この話し合いは、総理自身が初めから言っていたことなんですから、もう話し合いをしてないのですから、どうしても話し合いの上に立って合意の上でこれを実施させる、これが基本線だと思うのでありますが、総理、これはいかがですか。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 海上保安庁とすれば、これは重大な事態が起こるのではないかという予測をされるような場合に、あらかじめその警備に当たるということはあり得ると思いますよ。何にも起こらなかった、起こるようなことではなかったというけれども、やはり生命秩序を維持しようという側に立てば、そういう場合を予測してあらかじめ警備体制をとるということはあると思いますが、いずれにしてもこの問題は、会社側地元側とにおいて十分話し合って円満に事を運ぶということが一番理想的でございますから、今後できる限りそういう努力をいたすようにはわれわれとして指導をいたしてまいる考えでございます。
  7. 島本虎三

    島本委員 それになお、この漁民殺人未遂として告発しているのですが、これはもうどうなっているのか、さっぱりその方面は取り上げないでほったらかしてあるようで、あいまいになっているようであります。これも対等、社会的公正を欠く行為じゃないかと思いますので、あいまいにしないで、こういうような点に対しても徹底的に当たるべきじゃないかと思うのです。ましていま重要なのは、北海道沿岸に三海里辺まで、公海でありますけれども、盛んにいま漁民とのトラブルが起きているのであります。トロール船で全部網が切られているのであります。そういうようなことになりますと、外国の船でありますけれども保安庁の船もそういうような点は十分監視しなければならないはずです。あの沿岸にずっと行っているのはただの四隻。最近少し増強されたと言っているが、まして二十数隻もこういうようなところに注ぎ込むなんて、まさに言語道断じゃありませんか。今後国費の乱費をやめさせなければならないし、人命無視、こういうようなことに対しても、やはり徹底的にこういうようなことをやめさせなければならないと思います。この点について、公害行政、これは住民中心のものでなければなりませんので、今後厳重にこれを言い渡しておいてもらいたいと思うのです。今後これに対して厳正な態度を求めますが、運輸大臣、それから国家公安委員長のこれに対する所信を求めます。
  8. 木村睦男

    木村国務大臣 海上保安庁といたしましては、極力話し合いで、そういうことのないように期待しておったのでございますが、当日の情報で、約七十隻の漁船反対に出る、それから廃船を沈めて妨害するというふうな情報が入ったものですから、非常に寒いときのことでもありますし、もしも人命に支障があるような事故になったらということを心配をいたしまして、大体お話のような巡視艇、それから航空機を出して警備に当たったわけでございまして、過剰警備というふうなことにはならないと考えてやったわけでございますが、今後とも、こういう問題につきましては、人命尊重ということでぎりぎりの線で警備をいたしたい、かように考えております。
  9. 福田一

    福田(一)国務大臣 警察といたしましては、もちろん公害問題をなおざりにしていいという考えなどは一つもございません。しかし、公害問題を取り上げた場合においても、それが暴力によって左右されるというようなことでは、私は法治国の任務はできないと思うので、警察としての任務を遂行したということにはなりません。そこで、なるべく話し合いでやってもらいたいという気持ちでおりますが、しかし暴力行為が起こるような場合においては……(岡田(春)委員暴力行為はなかったのだよ、そのときは全然ないのだよ」と呼ぶ)起こる可能性がある場合におきましても、予防的な措置をとるということも警察一つの仕事でありますから、先ほど、十四日に何ら公害関係人たちが出ておらない場合にもそういうような出動があったということでありますが、そういうのも予防措置として認めていただきたいと思っております。
  10. 島本虎三

    島本委員 いまそういう答弁がありましたけれども、二月十四日の日には、機動隊が百名動員していても、反対派はその時期一人もいないのです。それにヘリコプターを飛ばし、艦艇や舟艇四隻、こういうようなのがやっているんです。これではヒットラーの時代にゲッぺルス宣伝相が、うそも三回言えば本当になると言って国民を欺いたやり方と、一人もいないのに警備が必要だからというこのやり方と、似ているじゃありませんか。こういうようなことをやったならば、公害行政に対してはまことに冒涜でありますから、十分これは気をつける必要があろうかと思います。  それと同時に大蔵大臣に、このためには、もう近隣の市町村へ十億、そして漁業協同組合伊達の方には二億五千万円、有珠の漁協には四億五千万円、その他約二千万円ほどそれぞれ支出しているんです。公害防止のために、そして、はっきりとこういうような紛争をもう起こさないための話し合いのためにというならわかるのです。これを強行するためにあらかじめ口どめにこういうのを出している。こういうようなものを認めておいていいんですか。私はこれは、大臣として十分この点に対してメスを入れるべきだと思うのです。こういうようなことをしていながら料金の値上げをし、そして強行強行でやっているんです。公害行政としてはこれは許されません。大蔵大臣総理のこれに対する最後の決意を聞いて、私は終わりにしたいと思うのです。
  11. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 総理大臣答弁を必要といたしますな。いいですか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 いまお尋ねの趣旨は、電源開発特別税配分使用についての御注意であろうと思いますが、仰せを待つまでもなく、この種の財源の配賦執行につきましては適正を期していかなければならぬと考えます。
  13. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大蔵大臣の申すとおり、適正を期するということであろうと思います。
  14. 楢崎弥之助

    楢崎委員 一言。大蔵大臣のそのことを総理に聞いたのではなくて、公害行政をやる上において、こういうようにして、話し合いを無視したり対話協調を無視したりしてやる望ましくないことが起きているのだ、最後にあなたにこれに対する所見を聞きたい、こういうようなことだったのです。大蔵大臣の裏づけをしてくれというのではなかったのです。
  15. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 やはり公害行政全般としては、地域住民との間に話し合いを円満にしていかなければ、工事をやるにしてもいろいろな障害が起こるわけですから、その努力は当事者の間において忍耐強くやる必要がある、そういうことが私の変わらない方針でございます。
  16. 島本虎三

    島本委員 ありがとうございました。
  17. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて島本君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  18. 楢崎弥之助

    楢崎委員 過日の総括なり一般質問で残しておる問題を二十分でやるのは、すべてできません。したがって、時間をはみ出たものはまた残るということになるわけでありますが……。  まず、一般質問で、医療用原子炉の問題については前の内閣で約束をされたことでございますから、具体的に、事務的に一体これをどうすべきか、大蔵大臣は検討するとおっしゃいましたが、事務的にどうするかというようなことを、担当主計官なり何なりで私、詰めていきたいと思いますが、その点はどうでしょうか、大蔵大臣
  19. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 医療用原子炉設置の問題でございますが、楢崎先生も御承知のように、国会で問題になりまして、原子力委員会でも、それを受けまして真剣に検討したことは御承知のとおりであります。その結果、とりあえずは放射線医学総合研究所にサイクロトロンの優秀なものを置いて、これは用途が広いわけでございますから、それで研究した方がいいのじゃないかという結論になりまして、世界でも最優秀のサイクロトロンをただいまつくり上げて、ことしからその実験に入るということになっておるのは、御承知のとおりと存じます。それに先立って、東京大学の医科学研究所でも、小さいサイクロトロンでありますが、これで研究を進めていることも御承知のとおりでございます。  で、そのものずばりの医療用原子炉を設置するかどうかという問題でございますが、とりあえずは、さっき申しましたようにサイクロトロン研究を進めると同時に、従来の実験炉あるいは作業炉等を兼用して実験を進めてみたらどうだろうということで、これも御承知のように、原研のJRR3、あるいは日立製作所の炉とか、あるいは京都大学原子炉とかいうものを使って、十数回研究を進めまして相当成果を上げておることは、これもおっしゃるとおりでございます。したがって、そういう結果を踏んまえまして、医療専用原子炉を設置するかどうかを真剣に検討してまいりたいというふうにただいま考えております。
  20. 楢崎弥之助

    楢崎委員 せんだって申し上げたとおり、川崎の工業用一つある原子炉を使って佐野教授等がすでにがん治療をやっているわけです。そして非常に回復例がいいし、そうして佐野教授は、御承知のとおりこの問題の国際学会学会長でもあるわけです。それで外国からも患者が来ているのですね。私は、これはがん患者にとっての光明でございますから、国際的な権威である佐野教授三木総理、ぜひお会いをしていただいて、その下働きはいたしますから、現状を十分把握されてその重要性についての認識をひとつ深めていただきたい、このように思いますが、総理どうでしょうか。
  21. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 がん治療は、われわれとしてもこれから非常に力を入れなければならない。不治の病ということで、患者の人にもこれほど不幸なことはないわけですから、楢崎さんの御指摘のような佐野教授、これに対して——いろいろながん治療、ことにそういう場合には脳腫瘍なんかの場合に一番効果があるのでしょうが、会うような機会がありましたら、私も話を聞いてみたいと思います。
  22. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ありがとうございました。私も連絡をして、その機会をぜひ実現したいと思います。  それで大蔵大臣、先ほどの事務的な詰めを担当官といろいろやりたいと思いますが、その点はどうでしょうか。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 結構でございます。
  24. 楢崎弥之助

    楢崎委員 じゃ、そのことでこの問題はいろいろ担当主計官等とも詰めたいと思います。  次に、四十九年度の航空自衛隊総合演習についての想定は、委員長の裁断によって理事会に提出させるということで、また提出するということでございましたが、これは委員長に聞いていいのか、防衛庁長官に聞いていいのか、資料は提出されましたか。
  25. 坂田道太

    坂田国務大臣 いま検討をいたしておりまして、提出できるところは提出いたさせます。
  26. 楢崎弥之助

    楢崎委員 委員長、いまお聞きのとおり、これはまだ理事会に提出されてないそうですから、この問題は当然残るわけであります。それを確認をいたしておきたいと思います。  次に、総括質問から引き続いて一般質問で問題にいたしました埼玉銀行谷古宇産業グループの問題であります。  総括質問で私は埼玉銀行谷古宇産業に対する融資残、一応私が把握しております融資残を提示して、これが事実かどうか御調査をいただきたいという要求をいたしました。今度は一般質問で、大蔵大臣の御答弁では、これは明らかにできないという御返事であったわけです。そこで私は、これはなぜ重要かと言いますと、私はここに谷古宇産業に対する企業調査を持っておるのです。これは昨年十月の調査であります。したがって、昨年三月段階の谷古宇産業のいろいろな実態がここに明らかにされております。並びに谷古宇産業の確定決算報告書を私はここに持っておるのです、四十一年から昨年までのものを。  これで見ますと、私がこの前指摘した融資残の内容はほぼ合っております。この前申し上げた点と違う点をちょっと申し上げておきます。この確定決算報告によって確かめたところで、若干この前申し上げた点を訂正をいたしておきます。  この前申し上げなかった点も言っておきますが、四十二年三月末、谷古宇産業に対する埼玉銀行融資残は九千八百万円、四十二年三月末十二億六千六百五十五万、四十四年三月末十九億三千九百三万。それから四十六年三月末は、私は二十四億九千万とこの前申し上げましたが、この確定申告によると二十四億六千七百万、だからほとんど合っていますね。それから四十七年三月末は、私は三十一億二千万と申し上げましたが、この確定申告によりますともっと多いですね、三十八億五千六百七十八万。それから四十八年三月末、私が申し上げたのは二百十九億一千万になっておりましたが、この確定申告書によると、若干少なくて百七十八億五千四百七十三万。それから四十八年八月末百十四億九千万と申し上げておきました。これに追加をしたいと思います。同年、四十八年九月末の融資残は、確定申告書で二百六億二千七百六十七万になっております。さらに、昨年三月末の融資残は、私が申し上げたのは三十四億九千万になっておりましたが、確定申告書によると六十八億になっております。したがって、私が申し上げた融資残とほとんど匹敵しておる。  これだけの融資をこの谷古宇産業埼玉銀行はやっておりますが、これが果たして適正な融資であるか。私は異常融資であるということを申し上げた。この調査報告によると、まず第一番の指摘が、「経営者の積極経営並びに政治家と銀行支援から急激に伸びた不動産業者である」、そして「商品土地の販売不振と金融情勢から資金操作全く難渋、銀行並びに商社支援により辛うじて当面糊塗しているが、先行き全く不安」。  そこで、建設大臣にお伺いしますが、一般質問のときに、谷古宇産業が持っておる土地について現在住宅公団が買い上げの話を進めておるのではないかという質問をしたら、そういう事実はないということでしたが、もう一遍確かめておきます。
  27. 山岡一男

    ○山岡政府委員 調べましたが、前回先生に御報告いたしました二件を買っておるということでございまして、あとは当初計画の中ではないそうでございます。
  28. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは住宅公団がうそを言っておりますね。この調査によりますと、岩槻市の川通町、十三万四千坪、これがいま交渉をされておる。この調査報告によるとどうなっておるかと言えば、「岩槻市川通町を住宅公団に売却すべく全力を尽くしているが、これが実現できるかどうかで今後の情勢に大きな変化が来る。現状では住宅公団以外に大口の土地購入者はないが、公団の場合は十五万坪内外を必要とし、中途半端な物件を手持ちにしておる当社としてはかなり苦しいわけである」。まだあります。「今期は岩槻市川通町の販売に失敗したら破局的な減収になる」「今期は岩槻市川通町の土地が予定どおり坪当たり七万円内外で売却できればよいが、これに失敗した場合は大きな赤字計上は避けがたい」。岩槻のこの川通町の土地が住宅公団に買い上げられるかどうかで、この谷古宇産業が成り立っていくかいかないかの瀬戸際に来ているという調査であります。で、現在の資金繰り状況については、「積極的な事業拡張策に自己資本の蓄積が伴わず、資産構成はアンバランス化している。この問の資金は銀行融資で賄ってきたわけだが、地価が上昇して先行きが活発で金融事情のよいときはプラスの面が目立った。したがって銀行資金の流用、商社金融による設備増強が急速に進んできた。しかし前期より事情が一変し、取引銀行では資金回収に努めており、高額な融資を参議院で問題にされるなどの政治的な問題もあり、協力度は弱まっておる。加えて、田中総理の系列にある大商社の政治力も薄らいでおり、前途は波乱含みとなっておる」、これが企業報告であります。  ここに谷古宇産業のパンフレットがある。ここに谷古宇産業グループがずっと書いてあります。谷古宇建設工業、取引銀行は埼玉銀行草加支店。埼玉コンサルタント株式会社、取引銀行は埼玉銀行県庁支店。埼玉興業株式会社、取引銀行は埼玉銀行草加支店。埼玉牧場株式会社、取引銀行は埼玉銀行県庁支店。埼玉石産株式会社、取引銀行は埼玉銀行県庁支店。埼栄開発株式会社、これは取引銀行は日本信託銀行でありますが、川越支店。これは後ほど問題にしたいと思います。それから第一産業有限会社、取引銀行は埼玉銀行草加支店。このように谷古宇産業グループ埼玉銀行がほとんどですね。みずからグループと言ってこう宣伝しているわけですからね。  このような融資は、集中審議で問題になったとおり、一般預金者保護という立場から見て異常融資である。そして聞くところによれば、いま埼玉銀行はこの谷古宇産業に対して、会社更生法の手続をとったらどうかというような勧誘もしておるやに聞いております。大変な問題であろうと思います。  そこで、いま一つ、時間がありませんから私は指摘だけいたしておきますけれども、これを見ますと、四十八年に座間の瑞穂町というところの土地を谷古宇は買収しておりますね。この資金は埼玉銀行が融資しておる。そしてこれを有名な小佐野さんに売っておる。その仲介利益二億円のうち一億円を田中総理に献金をし、七千万円が金利で抜けた。結局、谷古宇の利益は三千万ぐらいしかなかった。本人が言われておる。まあほかに、本人が電話をかけたのを聞いている人もありますけれども、とにかく、四十七年七月の総裁選挙のときに、どれほどこの谷古宇さんが田中総理実現のために金を使ったかということも告発で明らかになっておりますね。一々言う時間がありません。  それで、私は総括質問のときも若干指摘をいたしておきましたけれども、建設大臣にちょっとお伺いしますが、例の田中金脈問題で、室町産業が下田かいわいの土地を買って、これが宅建業法違反という指摘を受けておるようですが、その事実と、それから室町産業がどれだけの土地を買ったか、それだけを明らかにしてもらいたいと思います。
  29. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 室町産業と新星企業につきまして、昨年の十一月の末以来調査を開始しておりまして、どれだけの土地を買ったかということにつきましては、宅建業法に照らしましていま調査中でございまして、ほぼ結論は出ておりますが、現段階でははっきりと申し上げられません。
  30. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの御答弁のとおりです。実はこの問題にも谷古宇甚三郎氏が介在をいたしておる。そしてその背後に埼玉銀行の融資がある。いまの室町産業が買った下田の土地は、ホテル後楽園から買ったわけですね。そしてこの土地を今度は東邦企業に売った。四十六年八月二十五日に設立されております東邦企業というのは、社長が例の田中金脈の入内島さんですね。そしてこれが今度は四十七年二月、竹中工務店に土地込みで合併された。そして東邦企業の持っておった、室町産業から買った土地は、会社ごと竹中に合併しましたから、買収されたから、竹中の方に移っておる、こういう関係になるわけです。いずれにしても、この問題はいま調査中ということでございますから、いずれ明らかにしていただきたい。  それから、埼玉銀行谷古宇産業に対する融資の点については、答えられないということでございましたが、決算報告で明らかになっておりますので、これももう一度御調査の上、これは大変な問題に発展する可能性がある、一般預金者の利益から考えても重要なかかわり合いがありますから、明白にしていただきたい、このように思います。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 埼玉銀行谷古宇産業グループに対する融資問題でございますが、融資残高がいかがになっておるかということにつきましては、個々の私的取引でございまして、公の席で役所側が言及すべき性質のものではないと存じますので御勘弁いただきたいと存じます。  土地が投資物件として有望視され、あるいはレジャー産業の将来が云々されておった当時、金融機関がこの種の部面に相当額投資をいたしたことは事実でございます。それが今日裏目に出まして、金融機関も、また融資を受けた側も困っておる事態に逢着しておることも、また事実であると私は存じております。しかし、いま金利の支払いがとまったとかいう事態までの報告は、まだちょうだいいたしていないわけでございまして、この種の融資が円滑に、しかもできるだけ早く整理されまして、事態が平穏に返ることを期待いたしております。
  32. 楢崎弥之助

    楢崎委員 委員長、これでやめますが、問題が残っておる点だけはひとつ確認をしたいと思う。  そこで、なお建設省関係では、いまの下田の土地の問題と、さらに住宅公団は事実を隠蔽しておりますから、これもはっきりしてください。
  33. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと待ってください。——ちょっと楢崎君に申し上げます。埼玉銀行の問題で、この問理事会会議をいたしまして、なお銀行局長にも話をいたしました。それから埼玉銀行へも私から話をいたしました。残高は出していいと言っております。なお、担保の額がどれだけで、それから残高がどうというのを出してもいい、しかし月末までお待ち願いたい、そう言っておりますから、それは出させることにいたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  34. 小林進

    ○小林(進)委員 ちょっと議事進行でございますが、いま月末までという資料提出のお話がございましたが、やはりこれは予算委員会の仕上げまでには、大変重要な一つの議題でございますので、予算委員会の議事の進捗に支障のない程度に、ひとつ委員長からもその資料を提出するように御督促を願いたいと思います。
  35. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 わかりました。さよう取り計らいます。
  36. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは委員長にこの点はお任せをしまして、一応残した問題をおいて終わります。
  37. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田春夫君。
  38. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の質問は、この間、総括質問の中で、中東問題に関する施政演説と外交演説の間の食い違い、この問題について私は質問をいたしたのでございますが、これについては、単なるケアレスミステークとか、そういう形の技術的な問題ではない。これはまさに政策上の違いである。この点は、アラブの民族問題に関するいわゆる考え方の違い、すなわち政策上の明らかな違いであって、この二つの演説の間には重大な政策上の相違があるという点を実は指摘をいたしたのであります。ところが、遺憾ながらこれについては、政府並びに自民党の諸君の間では、必ずしもこの問題の重要性についての認識がまだ十分に持たれておらないという感じがいたしますので、重ねて私はこの問題を明らかにいたしてまいりたいと思います。  ここに二つの文章があります。これは施政演説と外交演説であります。この二つの公式声明と言われるべき演説の中で、中東問題に関する部分をもう一度私は静かに読んでみたいと思います。そして皆さんの御判断をひとついただきたいと思います。  まず一つの演説の中で、中東問題に関する部分は、「中東情勢の動向は、いまや全世界に多大の影響を与えるものであります。わが国としては、」若干言葉を除いて「国連安全保障理事会決議二百四十二号に基づいた公正かつ恒久的な平和が一日も早く実現することを切望してまいりました。」しばらく文章を除いて、その次に「わが国としては、関係各国が建設的かつ現実的立場に立って、武力紛争の再発を抑え、問題の解決に向かってさらに努力することを強く希望するものであります。」これが一つの演説であります。もう一つの演説は、「中東戦乱の再発を防ぎ、公正にして永続的な中東和平達成のために、世界各国がそれぞれの立場で、これに協力することが必要であると思います。」その次から重要です。「日本としては、国連安保理事会決議二百四十二号の実行を関係諸国に対し、強く求めるものであります。」それから数行除いて、その次が重要なんです。「ただ、その決議は、パレスチナ人に関しては、難民にしか触れておりません。パレスチナ人の正当な権利は、国連憲章に基づき承認さるべきものであります。また、エルサレム問題は、平和的話し合いによって解決されるべきものであります。」これが二つの文章であります。  これは明らかに二つ違っているのであります。さきの文章は宮澤外務大臣の外交演説であります。後の演説は三木総理の施政演説であります。この二つの点を比べた場合に、これは単なるケアレスミステークと言うわけにはまいりません。問題は、アラブ民族の民族問題として自決権を認めるのかどうかという問題であります。  それじゃ具体的に伺いますが、宮澤さん、あなたの方では安保理決議二四二号については触れております。そこで、安保理決議二四二号には、パレスチナの正当な権利ということ、すなわち自決権ですね、自決権を認めておりますかどうですか。
  39. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、御指摘のように、総理大臣が所信表明で言われましたように、二四一号がその点に触れていないので、それだけでは十分ではないということでございます。
  40. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたが十分でないとおっしゃるわけですか。それをお認めになったわけですか。
  41. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総理大臣の所信にございますように、政府といたしましては、いわゆる難民としての問題にしか二四二号が触れておりませんので、さらにその正当な権利を国連憲章に基づいて承認すべきものであるという、そのような総理大臣の所信が述べられまして、それがわが国の外交の方針になっておるものでございます。したがいまして、二四二号そのものはその点に触れていないではないかと言われますことは、仰せのとおりでございます。
  42. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、いまの御答弁を伺うと、総理大臣方針が正しいので、これに触れておらないんだ、そういうことなら、宮澤さん、訂正されるわけですね。
  43. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前回にも申し上げたわけでございますが、総理大臣の所信のこの部分は、わが国の政策態度として初めて国会の場において総理大臣が公に表明されたのであります。もとより、総理の所信表明演説と外交演説とは、十分に調整を図りつつ書かれたわけでございますが、特に総理大臣としてこの部分を国会を通じてわが国の立場を世界に向かって表明された、非常に大切なことであると考えまして、いわば一つのハイライトであるというふうに考えるわけでございます。でございますから、外交演説におきましても、同様のことを述べるというのも一つ考えでございましたけれども、いかにも同じ問題をやや低いレベルで事務的に繰り返すことは、かえっていかがかと存じまして、この総理の所信によりましてわが国の外交方針が明らかにされたわけでございますから、あえて私が実は重複を避けたわけでございます。
  44. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、実はこれは、あえて事務的な問題としての問題では済まない問題です。これは後で申し上げますが、ここに昨年の外交青書がある。この外交青書の中でも、総理大臣の演説は外交部分だけを抜粋してあり、外交演説である外務大臣の演説は全文載せてあります。そうすると、外交演説というのは、あなたのおっしゃるとおり、総理の施政演説と関連はありますけれども、しかし外交演説は独立した公式声明であると見なければならない。その意味では、単なる省略ということでは済まない問題であります。外交演説のあの文章から、いわゆる民族問題についてはわれわれは全然読み取ることができない。ところが、いまの御答弁によると、民族問題については総理大臣のおっしゃるとおりでありますと、このようにおっしゃっている。これは明らかに外交演説とあなたのいまの答弁とは食い違っている。訂正なさるなら訂正をなさってください。単なる解釈上の補足説明ということでは、これは許されません。これははっきり訂正されるなら訂正をなさってください。  総理大臣、もう一つ重大な問題があります。それはなぜならば、いま宮澤外務大臣は民族問題について肯定的態度をとられたけれども、この文章の中では、まさに肯定的ではない態度が明らかになっている。どの点か。二つの演説で比べてみましょう。いいですか。三木さんの演説では、パレスチナの自決権を認めるとともに、最後の部分であなたは、「エルサレム問題は、平和的話し合いによって解決されるべきものであります。」と述べている。これは何を意味するか。エルサレム問題の解決は話し合いを行う、この話し合いはパレスチナ人を一方の当事者として認めていることである。そうでしょう。そうでなければ話し合いの解決なんかできないのだから。しかるに宮澤さんの演説を見てごらんなさい。宮澤さんの演説はこの点に関しては、「わが国としては、関係各国が建設的かつ現実的立場に立って、」云々、努力すべきであると、こう言っている。ここには「関係各国」という言葉があるだけであって、この「関係各国」の中にはパレスチナは入りません。なぜならば、パレスチナの国家はまだないんじゃありませんか。したがって、パレスチナの国家というものがない現在においては、外交演説の中には、総理方針である当事者としてパレスチナ人を認めるという考え方が明らかに入ってない。入ってないですよ。「関係各国」と書いてあるじゃないか。明らかにこれは当事者として認めておらないじゃありませんか。それならば明らかに、決議二四二号しか認めておらない宮澤演説は、当然論理的には当事者ということを認めておらないということになる。これは三木演説と政策上の食い違いがあることは明らかじゃありませんか。三木さん、どう思われますか。
  45. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ことさらにパレスチナの問題を外務大臣の演説で落としたと私は思わない。なぜならば、一九七〇年、七一年国連でパレスチナの自決権を認める国連決議を行って、わが国もそれに賛成をしておるわけでございます。だから、そういうパレスチナ人の自決権を認めるという政府の方針がなければ、その国連決議に賛成すべきではないわけで、それを賛成をしておるわけでありますから、そこで私の施政方針演説で取り上げましたけれども日本の外交方針というものは、その場合において明白にそういう態度を決めて国連の決議に賛成をしたわけでございます。したがってわれわれは、パレスチナ人が国連憲章に従って民族自決の権利を持っておるということは、もうその事態からすでに日本の外交方針としてあったわけでございますから、特に宮澤外務大臣が外交の演説の中でそれを避けて通ったというふうには、どうか解釈をなさらないで、外交演説は総理の演説と、必ずしも全部触れなければならぬという問題でもございませんから、そういう点でこれを意識的に避けたものではない。あるいはそれを一緒に申しておったほうが念が届いたのでしょう。しかし、それは意識的に避けたものではないということは、御了承を願いたいのでございます。
  46. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は、総理大臣、これ了解できないですよ。なぜならば、あなたの説明で意識的であるかないかという説明があっただけで、外交青書にも出るような公文書の中にそれが書いてないとすれば——特に民族問題というのは、アラブ問題で最大の問題です。これが公文書にないことは、意識的に避けたとか、意識的な問題とか、そういう問題ではないです、これは。これは本質的な政策上の問題であります。だから、政策上の食い違いであるから、二四二号しか認めないんだから、あなたのおっしゃるエルサレムの解決についても、パレスチナを当事者としては認めておらないのであります。いいですか。だから関係各国という解釈しかしないのであります。そのあらわれ、どうですか。この間から私はPLO問題であなたにいろいろ質問をした。その後で外務省の態度を見てごらんなさいよ。PLOについても、事務所開設問題についても、非常に違う態度をとっているじゃありませんか。総理と違う態度じゃないですか。これは外務省の一貫した態度が、二四二号しか認めないのであって、パレスチナの民族解放の自決権の問題を認めてないということを意味しているのであります。ですから、あなたのここでの説明では、私は了解できない。これは訂正なさるべき問題であります。解釈の問題ではありません。まさにいまお話のあった国際的な問題であります。ですから、訂正をなさるなら、これは当然衆参の本会議において訂正なさってください。訂正してもらわない限りにおいては、われわれはこの外交文書、正式の公文書である文書においてはわかりません。これは単なる形式問題ではございません。国際的な重大問題であります。これははっきり衆参両院において明らかにしていただきたい。特にあなたは三十数年の見識ある政治家としてやってこられた方として、国会の権威と公正の面から言って、私が申し上げているこの問題は、衆参両院の本会議でおやりになったんだから、訂正をなさるならば衆参両院でおやりなさい、これが見識ある態度ですよと私は再三申し上げている。議会政治家で議会を守るというならばやはりそれはたてまえに立って、訂正をなさるなら衆参本会議において訂正をなさっていただきたいと思います。私は重ねて総理に要求をいたしたいと思います。
  47. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が総理大臣として内閣を代表して外交方針を述べたわけでございます。総理方針というものが日本の外交の全般について述べてあるわけですから、当然それが日本の外交方針になるわけで、各閣僚が担当の部門について、私と同じようなことを演説でしなければならぬということでもないわけでございますから、特に私と考え方が違っている場合には本会議で訂正ということが必要でしょうが、もうしばしば宮澤外務大臣も、何も違ってはいないのだ、総理方針日本の外交方針であると述べておりますから、訂正というような必要は、これは私はあるとは思わないのです。だから、よく言えば、そういう重要な問題ですから、外務大臣の演説にもこれはつけ加えた方が適当であったかもしれませんが、これを訂正するというふうな、そういう食い違いということではないわけでございますから、それは岡田議員においても事情を御了承願いたいのでございます。これは世界的にも、私の外交演説は、アメリカにおいても相当長文に紹介され、あるいは中東においては無論のこと、ヨーロッパにおいても紹介されておるということでございますから、したがって国際的にも、中東問題の核心である民族問題を日本の政府が軽視しておるということには、そういう国際的誤解は与えてないものだと信じております。
  48. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣、まさしくお話のとおり、中東問題の核心は民族問題である、いま答弁されました。この核心の問題が外交演説に書いてないということならば、これは重大じゃありませんか。しかも外交演説という公式な声明でありますから、単なる瑣末の問題ではないのであります。私はただいまの総理答弁では納得いたしません。これは訂正をなさるのなら、あなたの見識において、衆参本会議においてこれを訂正なさってください。この点は簡単な問題じゃありません。単なる形式の扱いの問題ではありません。技術問題ではありません。政策の食い違いの問題であります。いま国際的に反響を呼んでいるのは、三木総理の演説が反響を呼んでいるのであって、宮澤外務大臣の演説が反響を呼んでいるのではありません。なぜ反響を呼んでいるか、民族問題を踏み切ったからです。民族問題を踏み切ったところに反響がある。宮澤さんは民族問題について踏み切ってないから反響がないのです。ここははっきり違っていますよ。これは衆参両院本会議ではっきりしていただきたい。そうでない限りは私は了解いたしません。総理、もう一度……。
  49. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どうも私はよくわからないのは、宮澤外務大臣しばしば申しておるように、全然違いはないということで、その演説の中に全部総理の言うことと同じ演説をしなければならぬとは私は思わない。そういうことでございますから、中東問題の平和的解決のときには、国際的にも二四二だけを言う場合が岡田さん多いのですよ。パレスチナ問題を私のは非常に念を入れて言った方で、大抵国際的には二四二と皆言うのですよ。それがやはり中東問題の和平の一つの大きな基礎であると、これはもう国際的に言うので、それにつけ加えてパレスチナの自決権というのは非常に念を入れて言ったので、普通は国際的な二四二、こう言うわけでございますから、したがって宮澤外務大臣も、パレスチナ問題というものが中東の和平のためにはいかに重要な課題であるということは十分に認識しておるのですから、私と考えが違っているなら、訂正しろということはその筋が通りますが、考えは違ってないわけでございまして、そういう点はひとつ御了承を願っておきたいと思うのでございます。
  50. 小林進

    ○小林(進)委員 議事進行。  ただいまの岡田質問に対する総理、外相の御答弁では、やはり外交演説として本会議場でおやりになった、この国民全部に与えた、あるいは国際的には海外にも与えた日本外交の姿勢というものは、何ら解決するまでに至っておりません。残念ながら解決するまで至っておりません。したがって、委員長、御承知のとおり、この問題は、予算委員会の理事会から、正式文書をもって議運の委員会に問題の処理を委託をしております。議運もいま精力的にこの問題の解決のために努力をいただいておりますので、やはり理事会は、従前のとおり、議運の委員会の結論待ちでこの問題を処理いたしたいと思いますので、さようお取り計らいを願いたいと思います。
  51. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの小林君の議事進行に関する御意見、そのとおりでございます。ただし、まだ議運でどう処理するかということは解決しておりません。したがいまして、議運に対しまして、予算委員会としてこの問題の処理を速やかに進行できるように、なお督促することにいたします。
  52. 小林進

    ○小林(進)委員 けっこうです。
  53. 岡田春夫

    岡田(春)委員 意見を述べて、私は終りにいたします。  総理大臣も問題性ははっきり御認識いただいたと思うが、宮澤演説とあなたの演説の明らかな文章における食い違いは、これは政策上の食い違いである。どういう点で食い違っているか。二点である。  第一点は、パレスチナの民族自決権というものをあなたは認めている。その証拠に、ただこの決議には云々という意向であなたは書いている。宮澤さんは、ただその決議というので、二四二に対して一部のクレームをつけておらない。この点が違う点。いわゆる自決権を認めているか認めていないかという点が第一点。  第二点、エルサレムの問題についてあなたは、当事者として話し合いをしろと言っている、パレスチナを。いいですか。ところが宮澤演説を見ると、パレスチナを当事者としては見ておらない。なぜならば、関係各国の話し合いと言っているからである。これは明らかに政策の食い違いであります。ただいまの三木総理の御答弁、そういう補足説明によっては、私は納得いたしません。ただいま小林理事からの議事進行によって、議運との間で煮詰める、こういうお話がありましたので、私は、今日の段階では、この二つの点についての明らかな政策の違いの点については、きょう御納得のいただける答弁がなかったというように考えます。私は納得いたしません。したがいまして、委員長並びに議運その他におけるお取り計らいを、私はしばらくの間見たいと思います。私はこの問題については留保いたします。これは納得がいきませんので、重ねて衆参両院の本会議においてこの点についての訂正を求めまして、私の意見を述べまして、私は質問を終わることにいたします。
  54. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 岡田君に申し上げますが、留保するとかしないとかという問題とはちょっと違っておりまして、先ほど小林君の動議によりまして、議運に重ねて請求をする、こういうことでありまして、留保をするんだということでありますと、ちょっと趣旨が違いますから、御了承願いたいと思います。
  55. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは留保という点を訂正するなら、私はこれで了承はいたしません。現在の総理大臣並びに外務大臣答弁を了承するわけにはまいりません、留保ではなくて、そのように私は意見を申し述べて終わりにいたします。
  56. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと三木総理大臣から説明があります。
  57. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 将来の誤解を生じてはいけないので、一つ申し上げておきたいのは、二番目の理由に、岡田さんはエルサレムの問題を出されましたが、私の演説には、平和的に解決せよということで、パレスチナを交渉相手にせよとかどこを交渉相手にせよとは言ってないわけです。それはやはり自決権というものがどういう形に具体化するかということはこれからの問題である。ああいうオブザーバーとして国連にパレスチナ人を代表して出席をしたわけでございまして、これはやはりエルサレム問題というのは、解決されるまでの間には——これは一番最後になると思いますよ、エルサレム問題は中東問題の。そういうのでありますから、どこの国と交渉をせよとかなんとかいうのでなくして、そこには国の名前は指摘しないわけです。平和的な話し合いでこの問題を解決してもらいたいということを言ったので、その点が宮澤演説と食い違いがあるという御指摘は事実と違いますので、それは申し上げておいた方がいいと思います。
  58. 岡田春夫

    岡田(春)委員 委員長、私は納得できません。あなたがそういうことまで言うから、また私は質問しなければならなくなる。
  59. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。先ほどの……
  60. 岡田春夫

    岡田(春)委員 一問だけ……。
  61. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 許しません。  岡田君の発言に対して小林理事から議事進行がありまして、そうして正式に予算の理事会から議運の理事会の方へ文書も出してありますが、なおそれ以上督促をするということだけをお約束をしたので、それを、総理が発言をしたからといって岡田君がまた発言をするというのでは、それは切りも果てもありませんから、これで岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴切君の御発言、ちょっとおくれておるようでございますから、順序を繰り上げまして、田中武夫君。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどの岡田議員の質問に関連いたしまして、いろいろ食い違いがあるようでございます。  もう一度確認をいたします。それはあくまでも、総理答弁をせられたから、それに対し岡田委員はまた質問する、こういうことは当然な成り行きなんです。しかしこれは、先ほど小林理事が提案したように、重ねて委員長から議運の委員長へ交渉していただく。その議運の委員長というか、議運の回答を待って改めて論議する、そういうようにしていただくことを、私の質問に入る前にもう一度確認をいたしたいと思いますが、いかがですか。
  63. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 そのとおりにいたします。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 わかりました。それでは私の質問に入りたいと存じます。  三木総理大蔵大臣、去る二月の十七日、実はこれは不公正是正の集中審議のときに行った質問の続きのというか、保留の分なんですが、そのときに私は、播州信用金庫の実例を挙げて、悪質な歩積み両建てについて質問をいたしました。その後、大蔵省は係官を兵庫県の方に派遣せられて、双方から意見を聞く等々の調査をせられたように仄聞いたしております。  そこで、その上に立ってお伺いをいたします。まず大蔵大臣、その調査の結果どのようにお考えになっておるのか。と同時に、総理には、今日、企業の社会的責任、ことに金融機関の負う社会的責任はきわめて大きいと思います。また、社会的不公正の是正は三木内閣の大きな課題でございます。したがって、まず総理、いま申しました金融機関の負う社会的責任ないし社会的不公正の是正についてどのように——これは何回もお伺いし、やりとりがあったと思いますが、総理の認識をもう一度確認いたしておきたいと思います。
  65. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 社会的不公正の是正というものは大問題であります。いまはインフレがやはり社会的不公正の問題の根源をなすものである、だからインフレを抑制しなければならぬということで、当面の政策はとっているわけでございます。また一面においては、インフレの進行の途上において非常な犠牲を受ける人たち、そういう人たちに対して、社会保障、社会福祉の政策をできるだけ充実して、その犠牲を少なくしょうということで努力しておることは、御承知のとおりと思います。また一方において、強いものの立場——御指摘の銀行などに対しては、これは強い立場にあるわけでありますから、歩積み両建てのような、こういうことに対して、中小企業者が非常な負担の過重を来たすようなことは厳に慎むべきであることは申すまでもございません。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 歩積み両建て預金につきましては、かねてからその自粛の徹底を指示してまいりましたところでありますが、現下の金融引き締め政策のもとにおいて、金融機関の社会的責任が一層重きを加えております折から、いまなお行き過ぎた歩積み両建て預金の例が後を絶たないのは、まことに遺憾であります。  このような状況にかんがみ、この際改めて銀行局長通達を発し、各金融機関においては、現在の情勢下における社会的責任に深く思いをいたし、金融機関業務の基本的姿勢の問題として、歩積み両建て預金自粛の本旨に立ち返り、その自粛の徹底についてなお一層努力するよう指示する所存であります。また、今後もし不当な事例が生じた場合には、従来にも増して厳しい責任の追及等の措置をとる考えであることも、あわせて周知徹底させるようにいたします。  播州信用金庫の歩積み両建ての問題につきましては、かねてからその適正化につき強く指導してまいりましたところでありますが、今般再び御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。つきましては、今後におきましても、貸し出しに当たり、預金の拘束を要求するがごときことを行わないことはもちろん、そのような印象を与えるおそれがあるような態度は厳に慎むよう、同金庫の理事長を招き厳重に注意する所存であります。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 大体、私の要望するような点に触れられましたが、改めてここで大蔵大臣に要望いたします。  銀行局長通達ということでございますが、今日まで何回となく出しておられるが、それが徹底していない。そこで、できるならば、銀行法二十三条によるところの大臣命令というような形式がとれるかどうかわかりませんが、それに値するような、すなわち銀行法二十三条は、法令または主務大臣である大蔵大臣の命令に違反したときには、役員の改任または業務の停止等々の厳しい処分をすることが明記せられております。それに値するような通達というか、命令というか、それを出してもらいたい。それにはまず第一に、改めて金融機関の社会的責任を強調する。第二点は、金融機関の姿勢を正し、歩積み両建てについてはより厳しい態度を大蔵省は持っておるということ。そうして、それに違反したときには、今日までも若干の処分等もあったやに伺っておりますが、厳格なる態度で臨み、厳しい処分をもするという決意があらわれるような命令ないし通達にしていただきたい。  さらに、いまおっしゃいましたが、当該金融機関である播州信用金庫に対しては、責任者を呼び出して、特に特別な警告を与え、そうして、そのことについて確約書をとる等々の措置をとっていただき、それになお違反するような場合には、今度は本当に業務の停止あるいは認可の取り消し等々もやるぞという態度をひとつあらわしていただきたいと思います。いかがでございます。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御答弁申し上げました銀行局長の通達でございますが、従来の銀行行政に関する重要な事項と同様な通達でございまして、タイトルは銀行局長通達でございましても、私の指示により発するものであり、効力的にも大臣名と異なるものではないことを御承知願いたいと思います。  また、その実施状況につきましては、私自身重大な関心を持って対処してまいるつもりでございますので、御信頼をいただきたいと思います。(田中(武)委員「それから播金は」と呼ぶ)播州信用金庫の理事長を東京に招致いたしまして、今後も十分戒めてかかるわけでございますので、いま田中委員が御指摘の点につきましては、十分納得のいく措置をとってまいるつもりです。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 公正取引委員長、いいですか。先日も明確な答弁をいただいたから、もういまさら確認の必要もないと思うのですが、先日も申しましたが、三十八年四月十一日に、公正取引委員長から全国信用金庫協会長あてに警告というか、が出されております。この際、さらに一般金融機関に対しまして、ひとつ同様な警告というか、そういうことを、これは明らかに地位利用の不公正取引でございますので、公取委員会としても厳しい態度を堅持しておる、そういうことが徹底するような方法をひとつ考えていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  70. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私はずっと以前から、この歩積み両建ての問題には十分な関心を持っていますが、それを公正取引委員会が具体的に取り上げましても、早く言えばおどしにもならぬ。やはり銀行局が、大蔵省がつまりいろいろな特別な監督権を持っておりますから、たとえば店舗行政を通じても、そういう具体的な差、余りけしからぬことをすると言えば、そういうものは待遇の上でこらしめるということだって可能なわけでございます。それから役員についてもいろいろ文句をつけられる。ところが公正取引委員会は、そういう監督権を直接持っているわけじゃない。ことに今度のような場合、実は過去の行為になってしまっているのです。不公正取引をやろうとして未遂に終わった。しかしそれはすでに過去の行為になっておりまして、一つのきっかけにはなりますけれども、いま大蔵省の方で大蔵大臣が明言されましたように、しかるべき措置を厳重にとって、十分今後のそういうことを防ぐ、こうおっしゃられておる。私ども調査をいたしまして、調査した事項を大蔵省の方に、しかるべき措置をとってくれ、こういうふうにするのが一番いい方法じゃないかと思っておりますので、その点そのように御了解願います。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 あと一言だけ。おっしゃるとおり、第一次的というか、所管は大蔵省です。しかし地位利用の不公正取引であるということだけははっきりしております。現に昭和三十八年四月十一日、公正取引委員長の名で全国信用金庫協会長あてに、三十八公経整というのはどういう符号か知りませんが、第二百五十九号で文書が出ておるようです。これは文書を出すとか出さないとかは別として、ひとつ不公正取引であるということを何らかの方法で、公正取引委員会としても重大な関心というか、決意があるということを表明するような方法を考えてもらいたい、こう申し上げておるのですが、もう一言だけお願いします。
  72. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 何らかの方法によりまして、すでに実は私ども調査をしておりますから、これは不公正取引だということで調査をしておるのです。ですから、それでわかっておるはずでございますが、それぞれの金融機関の実情にかんがみて、そういういま御要望のあったようなことについて、もちろん私どもの単独でなしに、大蔵省と協議をした上で、私の方の名も必要であればちゃんと出します。そういうことで、何らかの方法で善処をしたいと思っております。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 時間も来たようですから、これで終わります。  ただし、この種の問題については、ここで終わったのではなくて、あらゆる機会において、私はまた時間があれば、吉國さんとも銀行法二十三条の精神について議論もいたしたい、こう思っておることを申し上げて、終わります。
  74. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に、石野久男君。
  75. 石野久男

    ○石野委員 総理にお尋ねいたしますが、一昨日来コンビナートの災害に対する防災体制というものの論議が非常に盛んに行われました。しかし原子力に対する防災の体制について、自治省あるいは環境庁その他関係のところで、必ずしも地域防災の体制というものが十分でないということがよくわかりました。また政府としては、企業コンビナートの防災が、不測の事態で、たとえば水島とか四日市とかというようなものが出ておることにかんがみても、原子力がこれだけ各地に炉が設置されているという実情のもとでは、やはりずいぶんと原子力については安全確保のために努力していることはよくわかりますけれども、しかし不測の事態で事故が起きたときは容易なことではなくなるということは、もう環境庁長官をやられた総理はよくおわかりだと思います。そういう意味で、政府として、この原子力に対する防災の体制を特にこの際とるべきでないかということについて、はっきりした御答弁をいただくことはできませんでした。この際、総理から、その問題に対する考え方をひとつ明確に示していただきたいと思います。
  76. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 石野さんもおわかりのように、将来のエネルギー源として原子力に依存しなければならぬわけでありますが、     〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕 きのうも佐々木科学技術庁長官を私のところに呼びまして、相当長い時間かけて話をしたのは、安全性というものに対して、これが国民に不安を与えることであっては、幾ら原子力が将来エネルギー開発の中心になるといっても、これは工事は進んでいかないですから、安全局というものを今度設けたけれども、機構だけつくっても意味はなさないわけですから、そこで安全確保というものに対して、あるいは工事の検査、あるいは管理の面、あるいはいま御指摘のあったような原子炉の設置者並びに地域住民に対する防災体制の整備という、これを総ざらいして、安全というものに対して全力を傾けてもらいたい。そうでなければ、これはなかなか進んでいかない。そこで原子力の安全に関して懇談会というものを近く発足するつもりです。それで、いろいろなエキスパートの意見も聞きまして、いま御指摘のような原子炉のある地域の防災ということも頭に入れて、安全という点から原子力行政を見直して、国民の不安にこたえるようにいたしたいという決意でございます。
  77. 石野久男

    ○石野委員 原子力を見直すためにいわゆる衆知を集めるということは、非常に結構なことなんです。従来は、開発のために衆知を集める努力をしてまいりました。安全性の問題が若干おろそかになっていたという例は、もうみんなお互いにわかっておるところですから、そういう意味での防災体制をやはり積極的に、これはただ考えるというだけではだめだと思うのです。私が特にこのことを申し上げるのは、水島にしましても、それから四日市の石油タンクの炎上の問題にしても、従来そういうことは予測もしていなかった事態が出ている。そういう意味から、原子力にもしその予測せざる状態が出た場合には大変だから、そのことオンリーでも、これは体制をつくらなければいかぬということを私は申し上げておるのであって、ただ一般的な概念として考えるというだけではだめなんです。具体的にそういうような体制が必要だ。特に炉を設置しているところでは、避難道路がみんなできているわけです。しかし、避難道路をどういうふうに使うかも、自治大臣自身がわからないわけですから、こういうようなところは、具体的に避難訓練までやるということが必要だ、そういうふうに私は考えておりますが、総理はそういう点についての配慮はいかがでございますか。
  78. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 炉の安全というばかりでなしに、地域住民をひっくるめた防災体制を整備いたします。
  79. 石野久男

    ○石野委員 それはしっかりひとつやっていただきたい。  それから、いまお話がありました原子力を見直すための懇談会をやるような意向のあることを新聞情報で承りました。それは結構なことだと思いますが、やはりここに入るメンバーが一つ問題だと思うのです。特にここでは労働者を入れるということになっておりまして、これは非常に結構かことなのです。しかし、現場の労働者を入れるということになれば、当然のこととして、電力産業労働者としての電労連の方も入れるし、それが主として含まれておる同盟関係、それから総評が入るのはいいのですが、ひとつ電機機器労働者の入っておる中立労連関係がございます。やはり政府としては、電力労働者だけでなく電機機器労働者も入れるという意味からしますと、これは後で科学技術庁なりあるいは労働省関係で、当然のこととして労働者団体としての中立労連、特に電機労連の諸君に対する呼びかけは必要だろう、こういうように思いますので、そういう点はひとつ配慮の中に入れておいてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  80. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 これは内閣でただいま人選を進めている最中でございますが、労働者側の代表といたしまして、ただいまお話ございました電労連、恐らく総評だろうと思いますが、から代表選手を出していただくということになるんじゃなかろうかと、私は仄聞しております。ただ、いまの電機機器の方の労働組合の方は、ただいま対象になっておらないようでございますが、お話でございますから、検討してみたいと存じます。
  81. 石野久男

    ○石野委員 もう一つ、その委員の中に、私は考えてもらいたいことは、学者の諸君がたくさん入っております。しかし、これは従来ともみんな、政府がつくっておりました各委員会の中に入っておった学者諸君なんです。しかし、従来の政府の原子力行政に対して批判を持っている学者が入っていないのですね。私はやはり批判を、批判というのは否定という意味じゃなしに、積極的に批判している学者諸君がおるわけですが、こういう諸君をもっと政府が委員会の中に入れませんと、やはり魂が入らない、安全性に対する問題点の解明はできない。そういう点は、やはり委員の構成の中でもう一度考え直すべきじゃないかというふうに考えるのですが、その考え方をお持ちいただけるかどうか、ひとつ……。
  82. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 石野先生の御指摘のような方向で、人選を進めるつもりでございます。
  83. 石野久男

    ○石野委員 総理に、昨日も私は、原子力関係する労働者が、最近被曝線量が漸次ふえている。それはアメリカもWASH二一一の資料でもはっきりさせておるところなんです。そしてまた、日本もそういう傾向にあると思うのです。その中で特に注意をしなくちゃならないのが、現場でいわゆる法で規定されている従事者という労働者、それ以外のいわゆる下請の労働者などの被曝線量、特に人レムが非常に多くなってくるわけです。これはほかの閣僚諸氏にはお渡ししておりますが、総理にひとつこれをどうしても見ていただきたい。  この資料をごらんになってもわかりますように、社員と請負とのなにを見ますと、人レムというのは非常に多いのです。これは人レムが多いということは、レムは確かに社員よりも請負は少ないのですけれども、いわゆる総被曝線量としての人レムが非常に下請、請負労働者には多い。このことは、やはり下請の諸君が数多く被曝している量が多くなっているということなんです。この問題については、どうしてもひとつ監督を厳重にしてもらう必要があるということで、私は昨日、労働省に対しても要請しました。  もう一つの問題がここにありますが、これをもう一つ見てください。  その表でごらんになっていただきますとわかりますように、三レムを超えるところの被曝者が、四十八年度において福井県で五名、それから四十九年度で一名というのが出ているわけなんです。三レムというと、法によりますと大変なものになるのです。一・五レムが大体普通人の中間のところでございますから、専従の方で五レムということです。それが下請の場合で三レム以上というのがそんなに出るということは、これは非常に重大な問題だと思います。これは被曝線量管理という立場からしましても、重大視しなくちゃならないことに存じます。そういう意味で、私は、やはり労働者の被曝線量に対する管理の問題については、特に総理は厳重にひとつ各関係者に対して指示を与えていただかなければいけない、こういうふうに思います。そういう点で、特に総理考え方を聞かせていただきたいと思っております。
  84. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どうしても、将来エネルギーは原子力に依存していかなければならぬわけでございますから、その従事する労働者が被害を受けるということでは、非常に不安を増すわけでございますので、被曝線量に対する被曝者対策というものに其十分に今後力を入れていくように指示をいたします。
  85. 石野久男

    ○石野委員 いま一つ、この安全性を確立するために、先ほど総理は、政府としても安全局をつくって云々というお話がありました。私は科学技術庁の中に安全局を設けることを決して悪いとは言いません。非常に結構なことです。しかし問題は、原子力委員会が従来のようであっていいのかどうかという問題でございます。むしろ原子力委員会の中に、安全規制ということで、いわゆるアメリカのような、規制委員会のような性格のものにしていくべきでないかというふうに考えるのです。そういうことからいたしますと、原子力委員会は、開発の側面と規制の側面とを明確にしていくということが大事だと思います。そういう点で、ただ科学技術庁に安全局をつくったというだけで、「むつ」の問題を契機として出てきた原子力安全性の問題について、対策が十分だったと言うことはできないと思いますが、総理は、そういう点についてはどのようなお考えをしておられますか。
  86. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も、安全審査という問題についてはひとつ考えてみよう、いままでの方式でいいのかどうか、安全審査の面については、安全審査委員会なんかのあり方についても検討いたしたいと考えております。
  87. 石野久男

    ○石野委員 ただ安全審査の問題で検討するということを聞いているのではないのです。私の聞いているのは、原子力委員会の性格を、従来とは違ってアメリカのように、いわゆる安全規制委員会というものにすべきでないか、そういうふうにしなければ目的は達しないのじゃないかと考えるので、総理の意見をもう一度お聞かせ願いたい。
  88. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういう懇談会を置こうというのは、原子力委員会のあり方も含めて、検討を加えたいという考えでございます。
  89. 石野久男

    ○石野委員 だとしますと、原子力委員会の性格をどのようにするかということをも含めて、懇談会を持つということになれば、当然のこととして、原子力基本法の内容にも触れてまいります。したがって、やはり政府としては、原子力基本法の一部改正という問題も考えなければならなくなってまいりますが、そのような考え方でおられますか。
  90. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは基本法をどうこうするという考えではございませんが、原子力というものを委員会のあり方も含めて検討して、その検討の結果によって、法改正が伴うようなことがあればやらなければなりませんが、いまは原子力基本法を改正するという前提でやろうということではないわけであります。
  91. 石野久男

    ○石野委員 しかし、原子力委員会の性格を変えるということになりますると、基本法の中で原子力委員会任務が与えられております。その任務の中の性格が違ってくるわけでございまするから、当然のこととして、それは基本法に触れざるを得なくなるわけですね。それをよけて通ることはできないと思います。そういう意味では、総理もやはりそれだけの決心が必要なのではないですか。
  92. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは日本の将来のエネルギーとして、原子力発電に依存することが、新しいエネルギーの開発の時期までの間、そういうことにならざるを得ないわけでありますから、これを促進していくためには、安全性という問題に対して、あらゆる不安あるいは事故の防止、こういうことに対して万全の策を講じなければなりませんので、この方がいいということで、それが法改正につながるならば、そういうことも当然に考えなければならぬと思います。
  93. 石野久男

    ○石野委員 原子力安全性の問題については、一つの哲学が必要だと思うのです。安全に対するどういうようなフィロソフィーを持っているかということが非常に大事だと思います。そのことは電気産業労働者の中からも、すでに提言として提起されておることなんです。そこで、その安全の問題について、政府あるいはまた関係者は、従来とも、安全の問題を余りやかましく言うと、住民、国民の側で不安感を持って、そして炉の開発はできなくなるというようなことから、安全の問題について触れることを避けてきているように見受けられる。そういうことを、やはり政府の側で考えておったり指導者が考えておったら、いけないと思うのです。私は、むしろ安全の問題について積極的に飛び込んでいくことによって、住民の協力が得られるというようにしなければいけないだろう。そういう意味で、私は昨日も、防災体制の問題については、遠慮なくもう少し積極的にやらなければいかぬということを申し上げたのです。きょう、関係の閣僚にたくさん出ていただきまして、私がこのことを総理にお尋ねするのは、各関係官庁でその問題についての指示が明確に徹底しませんと、地域で住民の不安感が増大するというふうに思いますので、その点について、改めて総理が閣僚の間に徹底させるように、特に原子力行政にそれをさせるようにしていただく決意のほどをお聞かせいただきます。
  94. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは原子力の平和利用の面において、発電ということは、日本のエネルギーの将来を考えたときには大変な大きな意味を持っておる。したがって、今後各閣僚にも協力を要請しまして、そして安全の確保ということに対しては、政府は徹底的にこの問題と取り組む必要があると考えております。
  95. 石野久男

    ○石野委員 もう時間が来ましたから、これで終わります。
  96. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 これにて石野君の質疑は終了いたしました。  次に、嶋崎譲君。
  97. 嶋崎譲

    嶋崎委員 去る十八日の予算の一般質問で、文教行政についてただしたのですが、総理がお見えになっておりませんで、最後の詰めができませんでしたので、きょうは改めて質問をさせていただきます。  総理はすでに御承知と思いますが、去る二月三日の毎日新聞に、山崎文部政務次官が福岡における教育正常化福岡県民大会に出席されて、そこで御発言をなさった記事が報道されております。その記事は二つの問題点があると思いますが、一つは、新聞の記事によりますと、「日教組が文相を利用してかかろうとしているのは事実だ。しかし、現実にはその履歴とは違うということは就任以来起きたことでわかる」こう言いまして、三つの経過について発言がございます。「昨年十二月十四日、日教組が文相に面会を要求してきたが、政務次官らが阻止した」、第二番目は、「同二十七日、日教組など六団体が文相に表敬訪問したさいも、日教組の面会時間を延長させないため面会順序を五番目にした」、三番目に、「一月末、岡山市で開いた全国教研集会の招待状を文相に送ってきたがメッセージも拒否した」、こういう三つの経過を説明した後で、(発言する者あり)
  98. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 静粛に願います。
  99. 嶋崎譲

    嶋崎委員 「羊の皮をかぶったオオカミには」というように、「羊の皮をかぶったオオカミ」というのが日教組だそうでございますが、「(文相を)そう安易に利用させない」と締めくくったと報道されております。つまりここで総理にお聞きしたいのは、まずここの最後に言っている「羊の皮をかぶったオオカミ」というようなけだものになぞらえて、学校の先生方の集団や個々の先生方をオオカミと規定するようなことを、文部政務次官が発言しているということについてどう思うか。これが第一点。  第二点は、ここの経過にありますように、文部政務次官が文部大臣と日教組や教育の諸団体と会うことについて、その中に介在して、おれに任しておけというかっこうで、会わせないような工作をとるという権限があるのかどうかという、この二点であります。  これに関連して、総理は今日まで、教育というものを政争の場から静かな環境の場に移したいと、たびたび発言してこられました。そのために、二十数年来なかった、民間から起用された永井文部大臣大臣に就任させたのだと思います。総理のいままで述べられてきた政争の場から静かな環境の場へという教育の軌道修正、そのために文部大臣を任命された。その政策の基調からして、いま言った二つの点がこれでいいかどうか、総理の見解をお聞きしたいと思います。
  100. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も、どういうことであったかということを文部省に聞いたわけですが、教員が非常に違法の争議行為を繰り返している事態というものを、山崎政務次官は非常に憂慮しておる。誠実な人間でありますから、何とかしてこういう事態はなくできないかということを日ごろ非常に憂えている、教員の争議行為というものを非常に心配しておって、そういうときに、そういう比喩の言葉に出たんだと思うので、教員を侮辱するという意味ではなかったと思いますが、何かそれだけを取り上げるといいますと、羊にしましてもオオカミにしても、獣みたいなものになりますから、これはやはり——しかし本人は、教員を侮辱するという意味でなしに、何とかして争議行為というものはやめてもらえないかということを非常に強く思っておったので、そういう激烈な言葉が出たと思うのですが、それはいろいろ、後の段については、私は事実は知りませんが、山崎政務次官も三木内閣の政務次官でございますから、この内閣の政治のモットーは対話協調である、この精神を体して、大臣も政務次官も、当然に政治の基本的な方針としてもらわなければ困るし、本人もそういう心がけのもとに、大臣、政務次官に就任をしたわけでございますから、私の基本的な考え方と考え方が違っておるとは、私は思っていないわけでございます。
  101. 嶋崎譲

    嶋崎委員 総理、政務次官は、集会そのものが、教育正常化福岡県民大会という大会で、そこには某統一地方選挙の候補者その他が並んでいて、教育を政争の具にしていく集会で、私の調査によれば、その前に発言された人が、羊の皮をかぶったオオカミとして、教師の集団に対する敵対的発言をされているのです。その後を受けて、その言葉をそのまま政務次官がとらえて、そして羊の皮をかぶったオオカミと規定して、文部大臣には会わせませんということを、文部大臣が諸団体と会うことについてチェックいたしますということを、その集会で約束した。これが総理の言う——教育を政争の場にしている集中的なあらわれじゃございませんか。だとすれば、対話協調と言い、しかもいままでのような政争の場から静かな場に移すということのために、民間からわざわざ永井文部大臣を起用されたのは、少なくとも教育における軌道修正ということを明確に打ち出そうとされた三木内閣の政策のあらわれだと思うが、それがどうして対話協調という考え方に同じだということになるんでしょうか。私はわかりませんね。そうですか。
  102. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 個々の問題については、いろいろ問題があると思いますが、この内閣対話協調でいくということをしばしば言っているんですから、この内閣方針に反して、政務次官が行動しておるとは思わないのです。個々の行動については、いろいろ嶋崎さん御批判の余地があるのかもしれませんが、基本的な態度において、それと違った政務次官がおるとは思っていないわけでございます。
  103. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうおっしゃっても、もしこの新聞の報道がうそだとしたら、どういうことになりますか。この報道では、羊の皮をかぶったオオカミには文相を容易に利用させないと発言をされて、その前に、二番目に私が質問しました、日勤組という教師の集団が会いに来たのを阻止したとか、それからまた、表敬訪問に来たときに順序を一番後にして時間を短くしたとか、そしてメッセージを送らせないようにしたとか、政務次官が中に入って、新たな対話協調のための文政をしこうとしておられる永井文相に対してチェックをかける、その人が、羊の皮をかぶったオオカミと規定されている。その事実は、少なくとも、私の調査でも発言があります。だとするとこれは、対話協調で結構で、意見が一致していますというふうに、納得するわけにはいきませんよ。いかがですか。
  104. 永井道雄

    ○永井国務大臣 お答え申したいと思います。  対話協調というのは非常に大事でありまして、私はこれは三木内閣全体の方針と思いますが、とりわけ教育の世界において重要であります、しかしながら、この対話協調というものを実現していく過程におきましては、対話協調をしながら、人々が多少意見を異にするということもまたあります。そういうものに一つ一つ対処しながら、対話協調というものを深めていくということが大事であります。  そこで、まず「羊の皮をかぶったオオカミ」でございますが、私はどなたもまたどの組織もオオカミと思わないのです。これはもう申し上げるまでもございません。さらに、政務次官であれ事務次官であれ、私の活動に対していろいろ建設的批判をしてくださることは大変結構であります。しかしながら阻止というのは妥当ではございません。で、さような考えで仕事をしておりますから、山崎政務次官にも「オオカミ」の話をしまして、私の考えを申し上げました。お話をいたしましたところ、山崎政務次官も、私も三木内閣対話協調の精神で働いていくつもりでございます、こういうふうに申されました。また、日教組と去年の暮れに会いましたときも、これはお調べになればわかりますが、実は相当長い時間私はお目にかかりました。さらにまた、教育課程審議会に、日教組の教育制度検討委員長をやっておられる梅根悟和光大学学長にも、三月十一日においでいただいて、公聴会で御意見を述べていただく考えでございます。それだけでなく、日教組の委員長ともお目にかかって対話を続けていく考えでございます。その過程におきまして、ときどき私もはやりますから、いろいろ批判をしていただく、これは大いにやっていただけば結構ですが、阻止は困りますし、いままでそう阻止されていないと思っておりますから、本当に阻止があったらば私はこれは大変と思いますが、今日までのところ——なかなか人間は、本当に対話協調ということはスムーズにはいきません。また、それぞれの人に少しずつ考えの違いがあることこそ、かえって実りのある将来に到達できるわけでありますから、さような話を山崎さんにいたしますと、はい、私もひとつ対話協調という原則は守ってやっていきましょう、ということでございますので、私はこの態勢で今後もやっていく、こういう考えでございますことを申し上げて、私の答弁といたします。
  105. 嶋崎譲

    嶋崎委員 もう時間もありませんが、福岡で発言をされて、その後に文部大臣と政務次官との間の話し合いの結果、たとえばこの中にある「オオカミ」というような言葉でなぞらえたことについて反省があり、同時にまた、阻止したと言われるような表現を招くような行動は今後しない、対話協調に協力すると言われた。しかし、それ以前に、すでに全国の人たちに新聞で報道されているわけですから、今日は反省されておるとすれば、少なくともこの時点で発言された内容については、三木内閣の施政の方針や永井文部大臣の姿勢の基調からして、これは不穏当な発言だと考えます。そういう意味で、三木内閣としては、いまは反省されておられるとすれば、前の発言について何らかの処置をとっていただきたいということを要求します。いかがですか。
  106. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本の教育界の現状というものは、これは一新しなければならぬと思うのは、長い間の一つ協調のできない態勢があるわけですね。だから両方とも言葉の上の点については、言葉だけをとらえて言えば、言われるような御趣旨の批判を受けるかもしれませんが、一方において教員側の方にも、いろいろいま言ったような争議行為などに対しても、違法であることは間違いないのですから、こういうことで、いま日本の教育というものが非常に苦悶の多い時代だと思いますね。協調までいっていないのですよ。だからできるだけ対話というものをスムーズにやって、そして協調のところまで持っていかなければならぬ。その対話の過程において、いろんな、それだけを取り出してみれば必ずしも適当でないような表現もあると思いますよ。対話というものが対話までいかないわけですからね。そういう過程において、冷静な場で考えられればいろいろ適当でないと思われることもありましまうが、しかし山崎政務次官ができるだけ協調という、話し合って協調していこうという、この根本の精神を私は疑っていないのです。そういう点で、いまの過程では、いろんな場合において誤解を受けるようなこともあるかもしれませんが、しかし山崎政務次官は何とかして日本の教育を正常化したい、そして皆が協調して教育本来の目的に協調できるような体制をつくりたいという熱意の持ち主であることは、疑いないわけでございまして、その過程においていろいろなそういうこともあったわけでございましょうが、しかし根本のねらいは、教育を正常化して、そして教育者と協調してやりたいという熱意の、少し熱が過ぎたわけでございましょうが、そういうことであったことは、どうか御理解を願いたいのでございます。
  107. 嶋崎譲

    嶋崎委員 もう時間が来ましたから……。  三木内閣が登場して、永井さんが任命されて、今日まで新しい方向に軌道修正が行なわれようとしているときに起きた事件ですから、これについて何らかの処置をとることが、三木内閣の文政における軌道修正を具体的に示すことだとぼくは思うのです。ですから、対話協調でいくという一般的抽象的な理念じゃなくて、現実に起きた問題を一つ一つただしていく中で、軌道修正というのは国民大衆の中に明らかになっていくことだと思う。  そういう意味で、対話協調という精神から変わらないとすれば、この政務次官発言については、三木内閣として並びに永井文政として、今後何らかの処置をとっていただくことを強く要望したいと思います。いかがですか。
  108. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私もこの文教という問題については、非常に重視しておるわけですから、山崎政務次官ともよく話をいたしてみることにいたします。
  109. 小林進

    ○小林(進)委員 議事進行。いままでの政府との対話を聞いておりますと、総理大臣も文部大臣も、もっぱら政務次官の心情あるいは心根、そういった目に見えない要素だけを盛んに釈明、弁明をされておりますけれども、われわれは彼の信条、精神が右だか左だかを問うているのじゃないのであります。文部政務次官としてあらわれた行動、その言質を問題にしているのでありまして、それがもはや最も神聖な教育の場を通じて、いわゆる教育の職務に携わっているそういう人たちを動物扱いにしたという、そのあらわれた言論と行動がどうかということを言っているのであります。それを精神要素で言われたところで、問題の解決になりません。やはりそのあらわれた形に、政府がどう責任ある措置をとるかということを訴えているのでございまするから、私どもはこの問題で、党としても、あるいは予算委員会を預っている理事としても、了承するわけにはいきません。これを委員長がいま一度理事会に戻して、理事会の中で、この問題に国民が納得するようないわゆる結論を出すということをここで御了承いただければ、私はこの問題は、一応質問者に質問を打ち切らしていただきたいと思います。
  110. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 理事会で相談することにいたします。  これにて嶋崎君の質疑は終了いたしました。  次に、寺前巖君。
  111. 寺前巖

    寺前委員 この間、私どもの共産党・革新共同の石母田議員が、労働大臣に対して雇用保険法身めぐるところの問題での質問をしました。そのときに職安局長がおらないということで保留になっている問題があります。出された問題というのは幾つかあると思いますが、特に日経新聞で、二月十日に遠藤労働省職業安定局長と工藤編集委員との対談の中に、こういうふうに書かれている。「この一−三月の危機を乗り切るために、極端かもしれないが、労使が一緒になって、悪用、乱用しても、それによって人員整理を免れればいいじゃないか。むしろ労働組合と経営者がアベックになってこの制度を利用し、切り抜けていくことはいいのじゃないかと思う。」悪用、乱用とは何事だという問題提起が一つあったと思います。あわせて、その後で工藤編集委員から「よそが一時帰休をやっている。うちの会社はそれほど深刻ではないんだが、この際かなり金を出してもらえるのなら、業績をよくするために一時帰休をやろうじゃないかという形で、労使間で話し合いをすることも可能じゃないですか。」と言ったら「あり得ると思います。」要するに雇用保険法というものを使って、悪用してもいいじゃないかということの中身はこういう形で提起されて、「あり得ると思います。」という答えになってきている。一体何と考えているのだということが、石母田議員の質問だったと思います。労働大臣はその後お調べになったと思いますから、私はその件について大臣からお答えをいただきたいと思います。
  112. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 おっしゃるように、石母田議員からこの前お話がありました。当日職安局長がおりませんので、帰ってまいりましてから、直接本人に真意を確かめましたところ、悪用とか乱用を容認するという趣旨ではございませんのでして、御承知のように、雇用調整交付金制度、この趣旨は失業の防止を図ることにあります。そういうことからしますと、現下の厳しい雇用情勢の中において、一人でも失業者を少なくするために、この制度の、法の趣旨に沿って積極的に活用してもらいたい、そういう期待をした発言であったということに私は承りまして、そのとおりである、まさに労働省の姿勢もそのとおりだ、こういうことで本人からの話を理解しているわけでして、皆さん方に誤解を生じさせたことに対しては、私自身が遺憾の意を表して、今日まで来たところであります。
  113. 寺前巖

    寺前委員 いまも私も指摘しましたように、誤解を生むという問題でいいのだろうか。工藤委員が——私は重ねて聞きます。「うちの会社はそれほど深刻ではないんだが、この際かなり金を出してもらえるのなら、業績をよくするために一時帰休をやろう」「あり得ると思います。」という局長答弁です。これこそ悪用、乱用している中身じゃないか。何も失業対策の問題以外のものにいかれてしまうじゃないかということに対するお答えにはなっていないと思います。悪用、乱用という言葉、それは誤解を生みました、第一の話だけですよ。第二番目に、具体的事実において悪用、乱用の中身が出ている。中身においてこんなことが許されるということになったら、明らかに悪用、乱用じゃないか。大臣、この点についてどう思いますか。こんなことが法の趣旨でしようか。
  114. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 そこが舌の足りないところでして、御承知のように、雇用調整にかかる場合は、労使が話し合って申請するわけです。その標準、基準等々は労働省で査定をいたしまして、これを業種別に決めるわけでございまして、その辺のところは、社労の委員でもあるあなたはよくおわかりのことでございますので、本日、いなかった局長の話を私が確かめたところ、私たちの審議している法の精神そのものを——言葉の足りないもの、ある場合には表現が相手に誤解を生じるというふうなところは、私は遺憾に思っておるわけでございます。
  115. 寺前巖

    寺前委員 遺憾、遺憾では済まぬと思う。この際に金を出してもらえるんだったら、業績をよくするためにこの法律を使おうじゃないかということを提起したら、あり得ると言うんだよ。これをとめると言うんだったらわかるよ。これは法の趣旨に反するから、基準を厳しくしてそういうことにならないようにします、と言うんだったらわかるけれども、職安局長は「あり得ると思います。」と言っているんだから、これだったら、悪用、乱用をよろしいという宣伝をやったことになるんだ。何と言われたって、これは理解できませんよ。これが悪用一乱用の中身じゃありませんか。大臣、そんな言葉の悪用、乱用のところだけひっかかってごまかざれたらだめじゃないですか。言葉はもちろんけしからないけれども、「あり得ると思います。」という結論を出しているというところが問題なんです。この点、どうですか。
  116. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 遠藤職業安定局長、正確に答えてください。
  117. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私の、二月十日の日本経済新聞に掲載されました工藤論説委員との雇用保険にかかわる対談の中で、悪用、乱用という字句がありまして、その点で御指摘を受けておりますが、この冒頭にありますくだりにつきましては、実は一時間半余りの対談の中身が要約掲載されたわけでございまして、この条項につきましては、昨年の十月に某大手メーカーが二千数百名の一時解雇、人員整理をいたしました。その人員整理された二千数百名の復職闘争が行われておりまして、本年一月から雇用保険法によります雇用調整給付金制度が実施されるということになりまして、組合と使用者側の話し合いの結果、このうちの希望者約二千名近くが復職されることになった。それで復職に伴って、その後の工場経営の状態から一時休業という制度が実施されることになりまして、その者が雇用調整給付金制度の対象になる。片方では復職採用をしながら、片方で一時休業をやって、こういう雇用調整給付金を受けるというのは、言ってみれば、悪用じゃないのか、乱用じゃないのか、こういう声があるけど、どうですかというお尋ねがありまして、私は、この解雇された人たちが復職されるということは、千数百名失業者が減るということでございます、会社の、企業の負担においてこういう人たちが復職されるということは大変結構なことでもありますし、それがあたかもこの雇用調整給付金制度の悪用であるというような誤解があるならば、それは全くの誤解でございます、そういう意味で乱用、悪用だと言われるのは、それは私は結構でございます、そういうことによって復職させてもさせなくても、雇用調整給付金の対象にはなり得るわけでございます、それをあえて企業の負担で復職させられるということは、私ども現下の失業情勢の中で、一人でも失業者を少なくしよう、解雇させないようにしようという趣旨から、結構でございます、こういう趣旨のことを申し上げたのが、その部分だけが活字になったわけでございまして、その点、大変誤解を招くような発言になったかのようでございまして、その点、私は大変遺憾だと思っております。  それからその次のくだりで、いま御指摘ございました、よそが一時休業やっているから「うちの会社はそれほど深刻ではないんだが、この際かなり金を出してもらえるのなら、業績をよくするために一時帰休をやろうじゃないか」、それに対しまして、私が、あり得ることだと思います。それでそのあとにございますが、それは「目をつぶるということですか。」という工藤論説委員の問いに対しまして、私は、そうではなくて「シビアにやっていくつもりです。」ということを申し上げております。これは、経過を申し上げますと、今回の雇用調整給付金制度につきましては、まず不況業種であるかどうかということが一つの前提基準になります。その際に、当該業種が、これは産業分類の中分類、小分類、細分類にわたって行いますが、その不況業種であるかどうかの指定をいたします際には、生産実績、それから雇用面の残業時間数、それから採用、いわゆる入職率、こういったもののデータをとりまして、これが過去三ヵ月間に標準よりも五%以上下回りていること、それから指定の前月、最近月におきまして一〇%以上下回っている、こういうことを審査いたしまして、その上でこの雇用調整給付金制度の対象になる不況業種であるかどうかという指定をいたすわけでございます。この点につきまして、私どもは、相当シビアに、厳格に判定をいたした上で業種の指定をいたしておるつもりでございます。  したがいまして、その業種指定が行われました業種の中で、それぞれの企業、それぞれの工場の経営内容については千差万別だと思います。比較的その中で業績のいいものもあるでありましょうし、ぎりぎり土壇場で、工場閉鎖、倒産寸前までいっているものもあるかと思います。これは、いずれも、業種指定がありました以上は、休業すれば、その休業に対して調整給付金が適用になりますが、その場合に、他のギリギリまでいった企業に比べると比較的余裕のあるところも、そこまで土壇場までいかない前に労使が協議して、労使合意という前提の上に立って休業を行われるならば、それは私どもはこの調整給付金の対象になるわけでございます。したがいまして、その業績の内容が一々どうであるかというところまでは、この雇用調整給付金制度の適用の対象として、審査の内容に入っておりません。したがいまして、労使がこの危機を切り抜けるためにそういう制度を活用しようということでありまして、それによって失業者を出さなくて済むというのならば、私は結構だ、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  118. 寺前巖

    寺前委員 これはどう読んだって、あなたがいま指摘された「シビアにやっていくつもりです。」の後はそうならない。「そのワク内であれば、不況業種の中で比較的余裕を持った企業が業績をできるだけよくするために、この際少し休業した方がいいということで、労使が話し合いをするのはやむを得ない場合があると思う。その程度のことはワク内だからいいと思う。」  私は、業績をできるだけよくするためにこの際休もうということまで、この雇用保険法が利用されるということになったら、話は違うと思うのです。一番の基本は、あくまでもこれは失業状態を前提に置いての話なんだから、だからそういうことから見たら、明らかに全体として、うまいことこの際に休んで、そして業績をよくするようにしておきなさいよという指導をやっているということじゃないですか、これの範囲だったら。私は、この問題については、これは明らかに前提に——これは誤解だと言われたけれども、悪用、乱用という思想というのは一貫して流れているということを言わざるを得ないと思うのです。これは行政の中身として、法律に基づいて大臣の責任においてちゃんとやらされているのだから、大臣がこんな角度でやられておった日には困ったものだ。これは明らかに法の趣旨に反する内容をどんどん拡張してやってもよろしいという、違う方向に発展させる指導がなされていると言わざるを得ないと思うのです。  そこで私は、遠藤職安局長がこの問題をめぐって、幾つかのところで、どういう指導をやっているのだろうかと思って調べてみました。これは大臣ぜひとも調べてもらいたいと思うのですが、ことしの一月二十一日に大手町の産経会館国際ホールで、全国職業安定主務課長・職業訓練主管課長全国会議、ここで局長訓辞がなされています。この局長訓辞の中身を読むと——ちょっと簡単に、途中から紹介してみます。  「いま一つだけ申し上げておきたいことは、繰り上げ施行となった雇用調整給付金制度の施行の点で、充分注意してもらいたいことは、きわめて短期間の異例施行で、それだけ天下の経済情勢はひっぱくしており、一月ないしは三月の危機に対処すべく急遽成立させられたことを、十分に認識してもらい、その繰り上げ実施にともない、四、五日の準備で、成立の翌日審議会にかけた。そのとき、給付の基準を計ったが、労使から切実な批判を受けた。業種、休業規模について、その基準に達するまでに大半の企業がつぶれる、それでは期待をうらぎられ何の役にも立たないと、そこで翌日、大蔵省へいき、我々が決めた基準に対する深刻な反対に反省させられたことを、実施に当ってはなしくずしに現実に即応した運用をしたいといって来た。先般の会議(一月七日各都道府県の主務係長の会議)のときも、しゃくしじょうぎの運用をさけて、法を施行していこうとする場合、道をはしる車でも、右はし、又は左はしをはしるが、車輪の一つぐらいはずれても、落ちないかぎりはしってもよいのだ。幅を広げなさい。といった例えば、休業規模をとる場合、被保険者数と所定労働日数のとりかたについては、管理部門ではっきりわけられるものは除外するとか、昨年から一時帰休等措置対象になったものは別紙にカウントすることなど、考慮するよう通達の中へ私自身手を入れた。二十年ないし三十年役人として行政運用・法の執行に当っている第一線職員は、かたくならざるをえないこともよくわかるが、その問題にはだんりょく的、実態にそくするよう十分下部職員に示達のこと、これをしゃくしじょうぎに運用することになると、せっかくの宝が宝のもちぐされになる。」ということを言っていますし、一月二十四日の全国労働基準局長・労働主管部長の合同会議、大手町農協ビルの国際会議室でやった場合にも「道の路肩を二、三歩ふみはずしても、落ちなければよいのだ」ということを言っているし、一月二十一日の会議では「雇用調整給付金はどんどん出しなさい。会計検査院など気にしなさんな、会計検査院からいろいろあったときは、私が責任をもつ、役人こんじょうをすてて、だんりょく的にやりなさい。」  さて、どうですか。業績を上げるためにこの際に利用しなさいということを片方で言っている。片一方の直接の指導官のところでは、そんなもの外れたってかめへん、会計検査院を気にしなさんなと、こういくわけでしょう。私は、基準をつくるのだったらちゃんとした基準をつくりなさい。これは大臣の責任でやらせられることじゃありませんか。  それから、かめへんという、業績をこの際に上げるということはいいじゃないか、この考え方は許されるのか。私は、これは大臣として責任を明らかにしてもらう必要があると思うのです、この際に。業績問題について、そういうことは悪用乱用になるということを、大臣はそう思うのか、思わぬのか。内部の規定については、基準というのはもちろん十分配慮しなければいかぬけれども、基準というのははみ出してよろしい、会計検査院気にしなさんなということは、これは正しくないのじゃないか。これが第二点。  第三番目に、この問題を言うんだったら、大臣の責任で、執行について責任を持たされている以上は、中小零細な分野の人々のあり方について、大企業も含めるような——もちろん雇用保険の方から持つお金の面においての違いとか、若干の問題はあるけれども、中小零細の場合には、たとえば知事が申告してきたら、業種指定なんということにこだわらずに配慮をするとか、特別にそういう中小零細対策を基準の中に入れていく、こういう措置をとるというのだったら私はわかると思うのです。この点についての大臣の見解を聞きたい。  以上三点。
  119. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 この雇用調整給付金制度を利用することによって業績をよくするというふうに御指摘ございましたが、業績が悪化するのを食いとめてよくすることによって、人員整理に至らないで済むということが、この雇用調整給付金制度の法律の趣旨でございます、私はそういう趣旨で申し上げたことが、御指摘のように誤解を受けたとすれば、それははなはだ遺憾でございまして、その点、私は今後十分注意いたしたいと思います。  それから、各種のこの制度の実施に当たりまして、各関係機関に私から示達をいたしました際に、弾力的な運用をやれ、法律の解釈なり定められた基準の執行に当たっては、現実の実態に即して幅を持たせるということを、私はかねがね申しておりますが、それはその基準を踏み外せということではございませんです。基準の運用につきましては、中小企業四分の一、大企業三分の一という休業規模が定められております。その休業規模の実施に当たりましても、昨年暮れの審議会並びに今年に入りましての労使公益三者構成の審議会におきまして、その運用の基準というものをはっきり御検討いただきまして、その結論によって、私は指示をいたしておるわけでございます。したがいまして、その運用をでたらめにやっていいということでは決してございません。その範囲内で、その基準に従って実施いたします限りにおきまして、第一線でいろいろ判定に苦しむ場合もあるかと思いますが、そういう場合は、県庁の担当機関なり中央の私どものところへ問い合わせをするように、そういうことで、具体的な事例におきまして、いろいろ会計経理上の問題が起こっても、それは私が責任を負います、そうすることによって、とにかく一人でも失業者を出さないようにこの制度が活用されることをよく認識してもらいたいという趣旨で、私は申し上げたわけでございまして、その点は、ひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  120. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 雇用保険法が実施されるのは四月一日でございましたが、こういう厳しい経済情勢で、雇用関係が非常に不安でございますから、国会の審議の過程において、一月に繰り上げて実施すべし、こういう御意見なども私たちはよくわかりましたので、一月一日からこれは実施したわけです。  ということは、やはり失業者というものを少なくする、こういうことでございます。そしてまた、これが労使関係のためにも非常によいということと同時に、業種指定あるいは追加指定、そういうこともやりながら、しかもその上に、三分の二は中小企業の方々に出していくということなどによって、最近非常にこれが歓迎をされ、ときにはまた皆さん方からこれが理解をされている、こういうことでございまして、私は、非常な際には、やはり非常な覚悟でやるべきだということを実は申しておる。ですから十二月二十五日に通過した法案を一月一日から実施させるということは非常なことであるから、役所の諸君は休まないで、そして一月一日から皆さんに役に立つようにしよう、そういう気持ちを申したことなどが局長にも伝わり、また、最後には私たちが責任をとって、こういう大事なときにやっていくのだということでありますので、言葉の途中の誤解を生ずるようなことはお許しいただきながら、行政はしっかりと、いまの失業者を一人でも少なくするということでやっていることを御理解いただきたい、こう思うのであります。
  121. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 質疑の時間は終了しておりますから、簡単に。
  122. 寺前巖

    寺前委員 いまの大臣の御答弁の中に、悪用乱用の問題についてはいろいろお話がありましたが、問題は、中小零細な業界に対して、業種指定などせぬと積極的に受け入れるということをやる権限は、大臣の責任でやれることなんだから、それをやるという基準をはっきりするならば、そんなわだちが外へはみ出すようなことを云々とか言わなくたって済む話だ。問題は、そのことはどこに利用されるかというと、大企業になる。だからそこは中小零細のところにはぴちっと、たとえば、一定人数以下の小零細規模のときには全体としてこの対象に入れますということにしてしまったら、そんなことは言う必要ないじゃないか、この問題に対する御答弁がない。問題はここさえはっきりしてしまえば、こんな言葉は出てこないはずなんです。問題はここだと私は思うのです。会計検査院の方もあれだけ言われているのだから、一言だけ最後に御答弁いただいたら、私は終わります。
  123. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 前向きにいろいろな問題を考えてまいります。
  124. 白石正雄

    ○白石会計検査院長 国の支出金が法律の規定に従って厳正に支出せられねばならないことは申すまでもないことでございます。会計検査院といたしましては、御趣旨の線に沿いまして、厳正な検査を実施いたしたいと存じております。
  125. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 これにて寺前君の質疑は終了いたしました。  恐縮ですが、このままの状態で、しばらくお待ちください。     〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕
  126. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、申し上げます。  鈴切康雄君要求資料並びに回答の部分を除き、一般質疑は全部終了いたしました。  なお、鈴切君の資料提出を初めとして、要求資料につきましては、速やかに提出するよう政府に考慮を促します。      ————◇—————
  127. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  明二十二日、参考人として、社会保障研究所所長馬場啓之助君、厚生年金基金連合会理事長伊部英男君、全国難病団体連絡協議会会長石川左門君、東京都盲人福祉団体連合会職業部長三好信寿君、びわこ学園理事長岡崎英彦君、日本精神神経学会理事福井東一君、全日本ろうあ連盟書記長高田英一君、竜谷大学学生竹下義樹君、埼玉県立小原療養所所長藤岡万雄君、日本歯科医師会専務理事武石信治君、日本歯科技工士会会長森谷誠司君、全国精神障害者家族連合会常務理事長山登君、以上十二名の方々に出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明二十二日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十六分散会