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1975-02-06 第75回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月六日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 竹下  登君    理事 谷川 和穗君 理事 湊  徹郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    大久保武雄君       大野 市郎君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    塚原 俊郎君       西村 直己君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    細田 吉藏君       前田 正男君    松浦周太郎君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    板川 正吾君       岡田 春夫君    楯 兼次郎君       堀  昌雄君    湯山  勇君       青柳 盛雄君    中川利三郎君       平田 藤吉君    増本 一彦君       小川新一郎君    大橋 敏雄君       安里積千代君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         公正取引委員会         事務局経済部長 野上 正人君         行政管理庁行政         監察局長    大田 宗利君         防衛庁参事官  菅沼 照夫君         防衛庁長官官房         長       斎藤 一郎君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         科学技術庁研究         調整局長    伊原 義徳君         沖繩開発庁振興         局長      井上 幸夫君         国土庁土地局長 河野 正三君         国土庁水資源局         長       宮崎  明君         法務大臣官房訟         務部長     貞家 克己君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         大蔵省主計局長 竹内 道雄君         大蔵省主計局次         長       高橋  元君         大蔵省主税局長 中橋敬次郎君         大蔵省理財局次         長       金光 邦夫君         大蔵省証券局長 田辺 博通君         大蔵省国際金融         局長      大倉 眞隆君         国税庁次長   磯辺 律男君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         林野庁長官   松形 祐堯君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業大臣官         房審議官    宮本 四郎君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省通商         政策局次長   江口 裕通君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁次長     熊谷 善二君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         運輸省海運局長 薗村 泰彦君         運輸省船員局長 山上 孝史君         運輸省自動車局         長       高橋 寿夫君         海上保安庁長官 寺井 久美君         郵政政務次官  稲村 利幸君         労働大臣官房審         議官      細野  正君         労働省職業安定         局審議官労働         省職業安定局失         業対策部長   岩崎 隆造君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         自治大臣官房審         議官      山下  稔君         自治省行政局選         挙部長     土屋 佳照君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月六日  辞任         補欠選任   多賀谷真稔君     板川 正吾君   青柳 盛雄君     増本 一彦君   正森 成二君     平田 藤吉君   正木 良明君     大橋 敏雄君   矢野 絢也君     小川新一郎君 同日  辞任         補欠選任   小川新一郎君     矢野 絢也君   大橋 敏雄君     正木 良明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計予算  昭和五十年度特別会計予算  昭和五十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。阿部昭吾君。
  3. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 私は、三木総理に最初にお伺いしておきたいのでありますが、三木さんが総理大臣として登場されたその当時は、従来の保守政治の形と変わったものが出てくるであろう、こういう期待国民はみんな持ったと思います。しかし、二カ月間経過をしたわけでありますが、総理大臣になる前と、三木内閣が誕生してから以降の三木総理のいわば物の言い方、対応の仕方、これがだんだん総理になる以前とは違ってきておる、従来の自民党のいろいろ問題を持っておる体質そのままであるという印象を国民は強く受けてきておるのであります。私どももそう感ぜられてならないのであります。  確かに、いま起こっておりますインフレにしても、あるいは不況にしても、現在日本の構造的な基本矛盾とでも申しましょうか、そういう非常に根の深いものだと思うのであります。しかし、そういう根本矛盾に対して、三木内閣は的確にメスを入れるであろう、こういう期待国民は持っておると思うのであります。しかし、この二カ月間を経過してみますると、三木さんの政治というものが従来の行き方とちっとも変わらぬという感じをみんな持っておるのであります。私は公選法特別委員会のメンバーでもありますから、改めて政治資金の問題や選挙制度問題等については論議をしたいと思うのでありますが、どうもこの問題もしかり。また独禁法に対する態度にしても、三木さんが当初言っておることと表に出てくることとはだんだん違う、こういう感じを私どもいま持たされておるわけであります。これはやはり政治に対する信頼というものを失っていくことになるというふうに思います。  この問題の論議はさておくといたしまして、わが党の江田さんが、いまのこの深刻な不況に対して政府は的確に対応しなければいけない、こういう問題の提起をされました。この問題提起に対して、江田さんの質問の翌日から、不況対策あるいは景気政策、こういう議論が政府の内部でも直ちに起こって顕在化しつつある。これは私は政治あり方としては大変いい姿だと思うのであります。  しかし問題は、一体、この政府がいま動き出したと言われておる不況対策はどういうものなのかということが、なかなかはっきりしないことであります。私どもは、政府が動き出した不況対策というものは、あのインフレ、また今日の不況、こういうものをもたらした根源を再び頭をもたげさすという形での景気緩和政策ということになっていく、こういう懸念を強く持っておるのであります。したがって、政府不況対策というものは一体どういう観点を踏まえて展開されようとしておるのかということを、冒頭簡潔にひとつお聞きをしたいのであります。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今日の経済事情に対する政府施策、これに対する阿部さんの御懸念、私はごもっともだと思うのです。私どもも同じような考え方、つまり不況対策はとります、しかし、再び物価を混乱させあるいは国際収支を大幅に狂わせるというようなことがあっては相ならぬ、こういう配慮、これが基本的な考え方になっておるわけです。したがいまして、これを別の言葉で言いますると、総需要抑制政策のこの基調は堅持する、しかし、総需要抑制政策が生ずる摩擦的現象に対しましては、これは機動的、弾力的な措置を講ずる、こう言っておるわけです。これはまさに、阿部さんの御懸念、それのないようにということを旨としてやっておる、こういうふうに御理解願います。
  5. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そこで、概念的にはわれわれが懸念しておるもと状態に戻る景気浮揚政策はとらない、こうおっしゃるのでありますが、具体的には一体どうするのか。たとえば福田総理がかつて、一方では不況不況だと言っておりながら、大商社や大企業の中では高率株式配当などどんどん行われておる、これは抑えなければいかぬ、こういう御発言をなさったことがございました。しかし、いままでの不況というのは、不況で本当に苦しんでおる者と、たとえば私の郷里などに起こっておる状況を見ますると、この数年の間に地方にどんどん工場がつくられた、この工場のほとんどが仕事がない、首切りあるいは休業、こういう状況に陥っております。しかし、そういう地方につくった工場系列下に置いておる本体企業というか、この大もとの方は、福田さんが指摘いたしましたように、高率配当などをどんどん行っておるのであります。したがって、いま起こっておる不況というのは、弱い者いじめという形での不況なんであります。弱い者が非常に苦しむという形態での不況が非常に根が深く広がっておるわけであります。したがって、言葉としてはおっしゃるのでありますけれども、具体的には一体どうするのか。たとえば繊維とか電機とか、こういう系列支配下にある下請工場は、もう全く身動きできないような状況にあるわけであります。こういう不況産業というもの、その中でも特に下請や末端の方がひどい状況になっておる。したがって、恐らく今度行おうとする不況対策というのは、いまの福田さんの言葉で言えば、選別をしながらてこ入れをやっている、こういうことになるんだと思うのであります。しかし、いまこの政府不況対策をどういう形で展開するのかということになると、一つには金融緩和という問題があるんだと思うのです。一つ公共事業繰り延べをしておる部分、これを早期に消化をするようにする、こういう形が当面とられる不況対策。しかし、いまのこの組み立てられておる諸関係から考えました場合に、この金融緩和にしても、公共事業繰り延べを急いで消化をする、こういうことを仮にやるとしても、やはりまたもとのもくあみになっていくということを私ども懸念しないわけにはいかない。そのやり方は、一体具体的にはどうなさろうとするのか。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 インフレにいたしましても、デフレにいたしましても、これは激しい状態でやってくると、どうしても弱い小さい立場の人が被害をこうむる、こういうことになるのです。私どもが、安定成長政策をとらなければならぬ、こう言っておるのは、高度成長というか、そういう体制下では、非常にすばらしい高さの成長という時期が来たかと思うと、そういう状態下においてはどうしても物価が上がります。国際収支が悪くなります。それでまた抑制政策デフレ政策をとるわけです。また、デフレ政策が功を奏しまして、物価落ちつき国際収支もよくなれば、また高度成長だというので高い高さの発展をする。その間に、この景気のでこぼこのたびごとに、小さい弱い人というものが犠牲をこうむるわけです。そういう状態があってはならない。高さはそう高くなくてもよろしい。よろしいが、しかし景気というか、経済が安定した速度で発展するということ、これを期待しておるわけですが、今日の経済状態の中で、とにかくインフレです、このインフレによる小さいものへのしわ寄せというものは、これはたいへんなものだろう。これは早く直さなければならない。こういう問題があると同時に、インフレ退治作戦の結果、摩擦現象が起きている。それがまた小さいもの、弱い者にどうしても行きがちだ。これに対しましても配慮をしなければならぬ。とにかく、インフレ対策デフレ対策、両面並行してやっていかなければならぬ作戦でございまするが、その二つのいずれの対策を見ましても、弱い者、小さいものに対しての配慮、これは非常に重要だ、こういうふうに考えておるのであります。  いま不況対策についてのお話でございますが、この不況対策、どうしてもこれは財政金融、これが主軸になる。その財政対策をとるにいたしましても、金融対策をとるにいたしましても、やはり、中小企業だとか、零細企業でありますとか、そういう方面への配慮をきめ細かくやっていかなければならぬ、そういうふうに考えております。
  7. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 具体的にもっと明らかにして伺いますと、今度の不況対策というのは、弱者中心不況対策をとる、こういうふうに考えてよろしいのですか。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ非常に正確に言いますれば、インフレ抑圧政策の与えた摩擦現象に対しまして手当てをする、こういうことでありますが、しかし、その摩擦現象というものの多くは、ただいま申し上げましたように、小さいもの、弱い者に偏っておる、こういうふうに見ております。
  9. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そういたしますと、前に総理は、いまのインフレ不況もと中小企業が非常に苦しんでおる、それには政府関係機関融資ども七千億も出したじゃないか、こういうことを答弁されました。七千億出した、出したとおっしゃるのでありますが、これは前の実績から比べまして、そんなによけい出したということじゃないのであります。私どもの計算で一千億程度しかふえておらない。したがって、政府関係中小企業機関融資の問題などは、情勢に応じてさらにいつでも敏感に対応する、こうおっしゃっておるのでありますが、今度の不況対策というものが、結局またもとのもくあみになっていく、そういう懸念は、いまの副総理答弁をもってしても、私どもいま、その答弁ならば安心だというふうにはなかなか信用するわけにいかないという気がするのであります。これが一つ。     〔委員長退席小山(長)委員長代理着席〕  それから第二の問題は、総需要抑制と、こういうわけであります。しかし、総需要抑制といっても、産業活動の非常に鈍い地方社会と、産業活動の非常に活発な地域、これが一緒くたに総需要抑制、こういうやり方をなさったと思うのです。産業活動の非常に鈍い地方社会において、産業活動の活発な地帯と同じようなやり方で総需要抑制をやりました結果、地方は非常に深刻な経済混迷というのが深まってきておる、こう思うのであります。したがって、今度の総需要抑制というものを、いまの公共事業の押さえてある分を解除する、このやり方も私は選別をして、そして産業活動の鈍い、不況の非常に深刻に広がっておる場所、業種、こういうものを中心にして考えなければいけない、こう思うのであります。  それから、さっき申し上げました、不況と言っても業種ごとに全部違うのであります。不況の中で非常に好況な部分も一部にはあるわけであります。したがって、不況業種というものを全部もろにてこ入れをすることができるのかどうか、私はなかなかそうはいかぬだろうと思うのであります。したがって、不況産業をどうするかという場合には、この中でも業種ごとにいろいろな選別が加えられなければならない。選別を加えて、不況業種に対しててこ入れをするという場合に、将来、日本産業構造産業社会はかくあるべきだという一つベースを持っておって、そういう観点から政治政策コントロールを加えていかなければならぬと思う。そうすると、てこ入れをされるべき業種、ちょっと日本の将来の長期的な産業構造あり方から言って、コントロールをしなければならない、チェックをしなければならない、あまり大きく広げてはいけないという部分もあるんだと思うのです。その選別政治政策としてはやらなければならぬだろうと思うのです。それをやる場合に基準は一体どこに置くのか。不況対策てこ入れをされる業種、されない業種を一体どういうふうにするか。いままで政府の方では、とにかくもうかるものは何でもやりなさいということで野放しでやってきたわけですね。そういうことを思いますと、かつてエネルギー政策に対して、石炭産業から石油にとってかわるという場合には、政策転換というので国が石炭産業に対して大変なてこ入れをしたわけです。したがって、いま不況対策をとるといっても、業種的には不況産業全部もろに底上げをするというのではなくて、将来、日本産業社会かくあるべきというベースを持っておって、いろんな選別を加えなければならぬだろうと思うのです。という場合に、チェックをされるべき業種、そういうものについてどういう対策を講ずる、こういうことがなければならぬだろうと思うのです。どうでしょうか、そのあたり。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 第一点は、私の答弁ではどうも安心ならぬ、また不況対策をとった結果、またもとのもくあみというお言葉でございましたが、さようなことはもう絶対にいたさないということを旨としてやっているんです。さればこそ、総需要抑制政策基調はこれを堅持する、こう申し上げているんです。つまり総需要抑制政策というのは、物価国際収支、これの安定を実現するというための施策でございますから、これは基調として外さぬ、これを強調しておるわけであります。ただ、いま不況対策というものの性格は、そうは申しましても、総需要抑制政策が与える摩擦現象に対しましては手当てをしなければならぬ、こういうことなんです。ですから、この点はひとつよく御理解をお願いしたい、こういうふうに思います。  第二の点は、これは不況対策をとる場合において、選別的な考え方業種的にあるいは地域的に必要ではあるまいか、こういうお話でございますが、もとよりそういうふうに考えておるわけでありまして、地域におきまして経済政策の影響が厳しく響かないようにという配慮から、たとえば地方道等その他で地方の細かい土木建設の工事は重点を置いて配分をいたしますとか、財政上もいろいろそういう配慮をいたしております。  それから産業方面におきましては、摩擦現象の起きたそれに対する対策、これが主になるわけでございますが、もちろん、みんな同じ基準で同じ量をそれに対して投入するというような、そんな平板的なものにはなりません。結局、総需要抑制政策をとる、堅持していくゆえんのものは何かというと、やはり経済を将来安定させるためなんです。そういうことを考えますと、前のような高度成長という時代は、これはなくなってくる。低成長時代になる。そうすると、やはりその辺をよほど一つ一つ企業もにらんで対処していかなければならぬと思うのです。夢よもう一度というような考え方で、そしてまたいままでの勢いで設備投資を行うというようなことがあったら、全体の日本経済としてどうなるかというようなことを考えると、これは一つ一つ企業について、将来いかなる立場にあるべきかということも十分配慮しながらやっていかなければならぬ。そういう一つ一つの詰めにつきましては、通産省におきましても、十分検討いたしまして対処いたしておりますから、これもひとつ御安心願いたい、かように存じます。
  11. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そこで当面の大きな問題は春闘だと思います。従来、政府の側で不況対策景気政策という問題に対して非常に慎重であったのには、春闘というものを意識をされておったというふうに言われておるわけであります。そこで、春闘というものを私ども考えますると、最近の地方中小商店、あるいは大都会でもそうだと思うのでありますが、商品の売れ行き、特に生活物資の売れ行きが非常に低下をしておる、こういう状況。そういう意味で見ますると、政府の側、財界の側は、労働者の賃上げというのは全部インフレのプッシュ要因だ、こういう言い方をなさるわけですね。最近、ずうっと客観的に考えました場合に、労働者の賃金というものは一体何か。やっぱり大衆消費であり、あるいは生活消費であり、こういう部分だと思います一この労働者が、去年の春闘ベースアップが行われたといいましても、それ以降のインフレによってほとんど帳消しにされた。年末にボーナスが出て若干変わったのでありますが、可処分所得は、九月から十一月段階までは前年に比較してむしろ低下をしておる、そういう状況になっておるわけですね。  そういう面から見ますると、最近の労働者の生活水準というのは、このインフレの中で大きなやっぱり被害者の一人である、こういう立場にあると思うのです。したがって、労働者の賃上げということを、政府はしきりに、再びインフレのプッシュ要因の大きなものなんだ、こう宣伝なさるわけでありますけれども、私はどうもそこはちょっと違うと思うのであります。したがって、この春闘に対する政府のもっと冷静な対応、これがなければならぬと私は思うのです。それがまず一つ。  それからいま一つは、これからずうっとどうするのかということを考えますと、私どもも、いまの市場経済——あるいは政府の皆さんは自由経済とこうおっしゃると思うのですけれども、私どもも、市場経済というあり方を根底から否定する、こういう立場には立っておらない。しかしながら、これを野放しに、もうけほうだい、御自由にどうぞおやりなさいということになると、土地にしても、あるいは大商社のいろんなやり方にしても何にしても、ああいう経済混乱を招いた大きな元凶、原因になったということから考えますと、市場経済というものを前提にするとしても、ここに一定の計画の原理というものが入ってこなければいけない。それなるがゆえに、今度の独禁法の改正などという問題が大きな政治課題になっておるんだと思うんです。そういう面から考えまして、政府が目指している、近年の大きな混乱の中から次に一体どうするのかということについて、どうもこれならば安心だというような路線は全然提示をされてきていない。  特に、独禁法に対する政府の、特に三木総理の御発言などは、総理がこう言ったと思うと、また次の日の新聞では、政府部内あるいは財界、いろんなところから不協和音が出、次どうなるのかということ。これは政党政治ですから、与党などの動向に対しても私ども敏感に目をみはっておるわけでありますが、三木さんがこう前言っておったかっこうのいい部分が、だんだんぬるま湯になって、結局また同じになる。いやな言葉だが、もとのもくあみに戻っていく、こういう感じがしてならぬのであります。  そういう意味では、特に当面、三木内閣春闘に対して、従来のように、労働者の賃上げはインフレを突き上げていく大きな力なんだということは、いまずっと客観的にいろいろな論議を聞いておりますと、労働者の置かれておる現状、去年からことしにわたってのいろいろな統計、こういうものから見まして、労働者の賃上げ、春闘というものはインフレを突き上げていく要因なんだという一方的な言い方は、いたずらに政治、社会の情勢を混迷化させるにすぎない、こういう判断を私ども持つのですが、どうでしょう。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この春闘に関しての態度は、しばしば申し上げておるとおりに、政府は労使の賃金交渉について介入する意思はない。ただ、そうした背景をなす環境づくりに対しては、政府としても、労使交渉の基礎になる環境については責任を持たなければならぬ、そういう点で、物価などに対しても、政府が目標を設定して、これに対して責任のある態度をとりたいということをしばしば申し上げておるわけでございます。  ただ、重大な関心を持たざるを得ないのは、阿部さんがお考えになっても、高度経済成長期には労働生産性というものは高まっていくことが当然であった。低成長時代になってくると、そんなに労働生産性は高まる余地はないわけです。だからしたがって、賃金と生産性とのバランスというものはなかなか維持できなくなるわけですから、どうしてもこういう場合には、もし大幅な賃上げということになればコストプッシュの要因になるということは、これは否定できないわけです、生産性でカバーできないわけですから。そういう意味からして、物価と賃金の悪循環は労働組合も非常にきらう点でありまして、幾ら名目賃金が上がっても実質賃金が上がらなければ意味がないわけです。そういう意味で、物価も幸いにして鎮静化の方向にある現在の経済情勢を踏まえて、労使間で節度のある賃金交渉をしてもらいたいと政府が望んでおることは当然なことであって、それは介入する意味ではない。経済運営の責任を持っておる政府としては、そういう強い願望を持つことは当然のことであるということでございます。介入する意思はございません。  また、独禁法に対して、私がときどき何か言ったことを取り消す、そんなことは一遍もないのですよ、阿部さん。ここで私が答えておることは、先般の正木議員に対しても、やみカルテルで不当な利益を得たものに対しては、これを吸収するような措置は考えねばなるまい。しかし、具体的な企業分割をどうするとか、あるいは株式の保有に対してどうするかとか、あるいは課徴金をどうするかとか、そういう具体的なことは、いま政府の中においても、懇談会などを通じて各方面の意見も聴取しておる段階であるし、党の方でもいわゆる山中委員会で、これは党としても検討を始めておるので、この際に私から具体的に内容に触れて申し上げることは適当でないということで、阿部さん、少しも変わってないのですよ、私の言うことは。私が、本会議とか、またなにで言っておることで、具体的に項目をとらえて私が申してあることはないわけでございますから、そんなに言ったことが変更になると言われることは、私としては少し承服のできないことでございます。  また、その他についても、私がここで申し上げておることが後退したというふうには、私は考えてない。まあ政党内閣でありますから、党の方との調整は要しますから、私が考えておるようなことにいかぬ場合もあるでしょうが、私はこの際、国民の批判というものもじかに身に受けとめておるわけでございますから、世論の動向も考えて、独禁法にしても、政治資金規正法にしても、あるいは公職選挙法の改正にしても、できるだけ国民の要望に沿うような案をつくりたいと努力をしておるわけでございまして、そんなに何か言ったことが後退したという印象は、これは少し承服いたしかねますので、申し上げておく次第でございます。
  13. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 時間の関係で進みますが、いまの御答弁をずっとお聞きいたしまして、不況対策についてはもとへは戻さない、したがって、不況業種についても——われわれは、不況業種はそのままもろに全部てこ入れというわけにいかぬ部分が出ると思うのです。将来の展望を持った一つ基準に基づいて、チェックすべきところはチェックをしたてこ入れをせねばならぬことになると思うのです。そうすると、いままでは、もうかることは何でもやりなさいと、こう言ってやってきたわけですから、これはやはり政治の責任だと思うのです。したがって、今回この不況対策の中で、大企業中小企業も全部一遍にてこ入れをされるというのではなくて、私どもは、その重点はあくまでも、従来日本の構造的な状況の中で最も苦しんでいる中小企業に、あらゆる力点を入れた不況対策でなければならない。その中で一緒くたにいかぬわけでありますから、選別をする場合に、将来もうあまり広げちゃいけない業種についてはどうするのかという対策も、きめ細かに立ててもらわなければならぬと思うのです。  次に進みます。次は農林省であります。  私が去年の予算委員会でも取り上げた霞ケ浦干拓事業というものを政府はやっておるのでありますが、この事業は総計画で百数十億円の大きな計画であります。計画を始めましてから現段階でも十年くらいたっておると思うのです。事業はちっとも進んでおらぬのです。いままでこの事業にどれだけの金を政府はつぎ込みましたか。
  14. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 霞ケ浦開発計画の事業費は、昭和四十八年度までの支出額が十九億六千三百万円、四十九年度三億、五十年度が二億二千万円を用意しております。
  15. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 御案内のように、農工両全の開発を進める、こう言って鹿島に大きな工業開発を行ったわけであります。鹿島開発というのは莫大な水資源を必要とする事業である。鹿島工業開発の水資源あるいは首都圏の水資源確保という観点で、この霞ケ浦の持っておるいわば水がめとしての性格は非常に重要なものなのであります。こういう鹿島開発を一方に進めながら、一方では干拓をやって水がめのキャパシティーを小さくしていく。このあれはどうも逆行しておると思うのです。むしろ霞ケ浦周辺の農業開発を考えました場合に、干拓をやってあそこに農地造成をやるなどということよりも、霞ケ浦の水資源というもので周辺の農業に水利を開き、効率の高い農業生産を確保する道、これをあの地域の農村の皆さんは大きく望んでおるのです。  ところが昭和五十年度でも、この霞ケ浦の干拓事業に農林省の方は相当の事業費を計上しようとしておるようであります。四十九年度も人件費だけ使っただけで、事業は何にもできなかったのです。全然できないのです。一方で総需要抑制だ、予算のしっかりした運営をやらなければならぬと言っておきながら、全然事業のできないようなところに毎年毎年莫大な予算を使って、事業ができませんから繰り越しをどんどんやっていく、こんなばかげた予算のつくり方はないと私は思うのです。総理は、現状のところこの予算は最もりっぱなもの、こういう判断をして提案をしておるのでありまして、私の方から修正するなんという意図は全然ございません、こういう答弁を何度もしておるのでありますけれども、霞ヶ浦干拓事業の予算なんというのはどうなるのですか。ことしの秋、五十年度の年末になったら、必ずまた繰り越しをやらなければならぬのです。その部分ぐらいは修正すべきだと私は思うのです。  そこで、これとの関連で申し上げますけれども、あの事業は進めることができない状況になっておるのです。私は、去年の予算委員会の際に、漁業補償というものをしっかりまとめなければ、霞ケ浦に漁業をやっておる漁民がたくさんいらっしゃるのでありますから、この漁民の皆さんの漁業権というものをしっかりと消滅をさせなければ、農林省がいまやろうとしておる事業は一歩も進まぬのです。いろいろな経過がありました。そこで、その漁業補償がどのようにやられておるか、調査をして報告をしてもらいたいということを、去年の予算委員会で当時の倉石農林大臣、会計検査院に対して要望いたしましたが、それがちっとも上がってこない。恐らくまたこの年度末に、四十九年度の予算も相当の繰り越しになるのです。おととしの分も繰り越しになっておるのです。ことしもまた繰り越し予算を盛ってあるのですよ。いまの予算もまた繰り越しになるのです。  農林大臣、あなたは攻めの農政に転換する、こう言っておるのですが、むしろ筑波地方の農民や常東地方の農民は、霞ケ浦の水がめとしてのこの性格——工業開発もあり、首都圏の水資源という問題もあり、また周辺の農村では、その水を農業水利としてもっと効率の高い農業をという願望が非常に強い。こういう面からは、既往のいきさつにこだわらずに、霞ケ浦の干拓事業というものはここで大転換を遂げるべき時期だ、私はこう思うのですが、農林大臣どうでしょう。
  16. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまお話がありました高浜入干拓につきましては、地元の非常に強い要請があって事業に着手したわけでありまして、首都圏における野菜の生産基地という大きな農政上の立場から、これを始めているわけです。しかし、いま御指摘がございました漁業補償の問題でございますが、これにつきましても、私が聞いたところによりますと、漁業協同組合から委任を受けた茨城県の漁連会長との間に、その配分は茨城県連が一切の責任を負って実施するということを前提として補償額を取り決めて、これを支払っておるわけでございまして、これは漁業権消滅の補償の方法としては一般に行われておるところで、間違ってはいないと思うわけでございますが、いまお話がございましたように、一部の漁民の方から反対がありますし、また地元の中にも反対があることは事実でございます。しかし、先ほど申し上げましたように、やはり大規模な野菜の生産基地をつくっていく、こういうふうなたてまえから、これはすでに一部事業に着手をしておりますし、今後とも地元の皆さま方の協力を求めながら事業を進めていきたい、こういうふうに考えておりまして、事業の進捗率は一三・四%ということでありますから、非常におくれておることは事実でございますが、今後はひとつ地元の協力を求めながらこれを進めていきたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  17. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 農林大臣、あまり御存じないんじゃありませんか。漁業補償の問題が中心になって、漁業協同組合の総会ではこの干拓事業の推進について否決されておるのです。それ以降、いろいろな手練手管を使いましたが、問題は一歩も進まぬ。そこへ農林省はどんどん予算だけつける。したがって事業をやることはできない。毎年毎年全部繰り越しになる。したがって、少なくとも話し合いをしていこうというなら、まず五十年度の予算の中からはこの予算は落とすべきじゃありませんか。こんなむだな話はないと思うのです。  それから、首都圏の野菜、そういうものの基地として、こうおっしゃるのですが、これも農林大臣、攻めの農政をやられようというなら、もうちょっと首都圏を中心とする野菜生産の生産農民の状況というものを調査すべきだと思うのです。野菜は、問題は生産が少ないんじゃないのですよ。流通対策がうまくいっておらぬのです。キャベツでもレタスでもホウレンソウでも、畑のままでどんどんみんなつぶしてしまうというのがたくさんあるじゃありませんか。したがって、野菜生産の基地をつくるなんということよりも、首都圏の野菜をどうするかということについては、私は流通対策のほうがもっと問題だと思う。  茨城県のあの周辺の農民の皆さんの総意を聞いてごらんなさい。この干拓事業というのは、前の自民党幹事長の橋本さん、これが意地になっておるのです。私もあの辺の地域の皆さんの意向をいろいろ聞いてみました。あなたは一部の反対とおっしゃるのですが、漁業協同組合の総会が開かれない状況になっているのです。開けば一遍でこの事業はだめということになってしまうのですよ。だからそれを開くこともできない。したがって、いま五十年度予算に盛っておる事業費なんというのは絶対に執行できません。四十八年も四十九年も事業は全然進まぬで、構造改善局の出先機関の人件費だけこの何年間か使っているだけなんですよ。こんなむだなことはやめたらどうですか。あなたは攻めの農政をやろうというのでしょう。こんなむだな農政をやろうというのじゃないでしなう。もう一度お聞きしたい。
  18. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、食糧確保といいますか、野菜生産基地をつくる、そして大規模な機械化農業もこの地でできるということで、地元の皆さん方の非常に強い要請に基づいて着手をいたしたわけでございまして、その後、お話のように、漁業組合の反対等も現在あっておるわけですが、漁業補償につきましては、先ほど申し上げましたように、総額十一億七千二百万円補償金を支払って、すでに漁業権の喪失等の手続も完了しておるわけでございますが、しかし、一部の漁民の皆さんが強い反対をいたしておられることも事実のように聞いておるわけでございまして、そういうことから進捗度はおくれておりますが、今後地元の皆さんと、いろいろと反対もあるわけですが、ひとつ誠意を持って交渉を進めながら、何とかして大規模な農用地の確保、そして野菜団地の造成は進めたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  19. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 私はこのことだけに時間をとっている余裕がございません。  そこで、総理大臣に伺っておきたいのですが、おととしも去年もことしも、おそらく五十年度も、事業費は全部繰り越しになるのです。そして、構造改善局の人件費だけが毎年毎年一億何がし使われていくのです。この状態から見た場合に、これは予算から外すべきじゃありませんか。毎年毎年事業を執行できない予算を、この総需要抑制下の非常に厳しい予算を組まなければならぬとき、そのままにしておくというのはおかしいじゃありませんか。総理大臣、どうでしょう。
  20. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま阿部さんと農林大臣との質疑応答を聞いておりますと、農林大臣も、事業の進捗がおくれておることは事実だけれども、各方面とも話し合って今年は事業を進めていきたい、ということを一生懸命に答弁しておったようでございますから、せっかくこういう総需要抑制の中で組んだ予算を執行できるように、われわれも農林省を督励いたすことにいたします。
  21. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 もし昭和五十年度もこの予算を執行できなかった場合に、人件費だけ食って事業は全然進まぬという場合、どういう責任をとりますか。三年間もそういう状況が続いておるのです。ことしもそうであったという場合にどういう責任をとりますか。
  22. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そんな三年も予算をとって事業が進まないというようなことは、予算の効率的な運営からいっても、これは適当でないわけですから、今年は農林大臣を督励して、ぜひともそういうことのないように私も努力をいたしたいと思います。それができなかったときはどういう責任か、そういうことを考える前に、一生懸命にことしはこれの実現のために努力をするということで、われわれも農林省を督励をしていきたいと思う次第でございます。
  23. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 時間がございませんので、これ以上は次の機会に譲りますけれども、農林大臣、あなたは攻めの農政をやろうとおっしゃっておるのです。私はこういうむだなことをやめてはどうか。これは最終段階で、われわれはこの予算審議の際に、この問題は当然にこの予算を修正してもらわなければならない。国全体の予算から見ればわずかの部分です。しかし、この厳しい情勢下において、こういうばかげたことをそのままにしておくという手はないと思うのです。したがって、将来この予算審議の最終段階に、私は予算修正の一つの問題点として提起をしておきたい、こう思います。     〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、農林大臣に伺いますが、この前わが党の湯山委員提起をされましたけれども、この間、農林大臣の諮問機関であります農政審、この需給部会が、昭和六十年度に七五%の自給度ということで、私はその見出しだけを見ましたときに、現在、輸入飼料などをも全部換算いたしますと四三%と農林省は言っておる、これを七五%にしようというのは大したものだ、うん、やはり攻めの農政だわい、こう思って大きな関心を持ってあれをよく読んでみましたら、そうじゃなくて、えさや何かは全部除外をして、現在の七三%と言われておるものを十年後に七五%にする、穀物などはもっと下げていく、むしろ自給率はもっと下がる、こういうような計算になっておるのです。したがって、これは農政審の答申の案だと言われておるのでありますが、このままでは攻めの農政とは合致しないと思うのです。  そこで、前提として価格政策、その中では特に価格政策と不可分なものに流通政策があると私は思うのです。私は都内のいろいろなところをずっと回ってみますると、生産地で三円か五円で出荷をされた、こんな渋抜きしたカキが七十円、八十円もしておるのです。ほとんどただ同然で買いたたかれましたリンゴが、こっちへ来ると百五十円もしておるのです。大根なんかでも、十円やそこらで出荷された大根が、こっちでは百五十円もしておるのです。したがって、流通政策というものをもっと——確かに野菜なんというのは非常にむずかしいものなんです。だけれども、もっと根本的な対策がなければどうにもならぬと思うのです。この数年間の農林省の流通対策なんというものをずっと見ておりますると、市場中心としてなるようになりなさいということ以上のことを何にもやろうとしていない。  そこで私は、きょうは時間の関係で全部を提起するわけにはいきませんけれども、かつて農業基本法が制定されて、それに追っかけて、御案内のように農協法の改正、農地法の改正が行われた。その農協法改正の中に、農業の協業化、政府のことばでは。私どもこれを共同化と呼んでおります。農業共同化への道を農協法改正、農地法改正によって開いたわけなんです。ところが、実際上農業の共同化というものに対して、農林省が前向きな意欲的ないろいろな政策を展開したかということになると、ちっとも展開しておらぬのです。依然として自立経営農家の育成、こう言っておるのです。農林大臣、どういう農家がこの自立経営農家になっていくのですか。大体こういう程度のものから自立経営農家というのですというようにお考えになっておられるのか、お聞きしたいのです。
  24. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 自立経営農家というものは、他産業と比較をして十分採算のとれる農家、他産業の従事者の所得と比較をしてそれに十分匹敵する農家の所得を上げ得る農家というふうに受け取っております。
  25. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 それじゃ、他産業と比較できる規模の農家というものは、どういう規模の農家ですか。他産業と均衡のとれる農家というものは、規模的にどういう農家ですか。
  26. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 政府委員から答弁させます。
  27. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  四十七年の他産業との比較所得は百八十二万円になっております。したがいまして、その年々で、水田なりあるいは酪農なりその他によって、頭数その他の規模が動きます。
  28. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 農林大臣、この間もわが党の湯山委員の御質問に対して、いまや農外所得の方に圧倒的ウエートがかかっておって、農業所得の方は、全体としては農家所得の中で割合が農外所得よりもはるかに三分の一程度に低下をしておる、こういう状況になっておるわけですね。その中で、自立経営農家というものは一体どういう農家なんですか。兼業や出かせぎや何かをうんとやって、そして他産業——他産業ということになると、農業じゃないところで農家が働いて金を取ってくるわけでありますから問題なんですが、出かせぎをやるような農家を大いに奨励する。他産業と匹敵できる農家というものは、農業基本法で言うようなそういう状況は全然崩れてしまっておるのです。いま一体農業だけで他産業と匹敵できるような所得を持っておる農家というものはどの程度いるのですか。農林大臣がそんなことわからぬで攻めの農政なんかできませんよ。
  29. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  四十七年で戸数としては総農家戸数の六・五%でございます。
  30. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 農林大臣、こういう状況であります。  そこで私は、農林大臣にしっかりと承っておきたいのですが、日本農業をどうするかということになると、政府言葉で言えば協業化、われわれの言葉で言えば共同化、こういう方向を追求しない限り、生産性の高い農業というものをつくることはできない。食糧危機に際して日本国民食糧を本当に賄うような農業の状態というのは、個別経営の形態では限界なんです。個別経営の農家経営というものの中では、それは小さなハウス栽培とかいろいろなものはあるでしょう。それにしてもいろいろなむだが非常に多いのです。したがって私は、この共同化というもの、協業化というものが、次の日本農業の大きなポイントになってこなければならぬと思うのです。  そこで、現在の農業協同組合、この農協の体質と農業の協業化、共同化というものは、本当にかたく結合させなければうまい運営はできないと思うのです。現在の農協を構造的、体質的に変えていかなければならぬと思うのです。たとえて言えば、現在の農協でほとんどの農協が、流通面にだけに非常に偏ってきておるわけですね。そして農協本来の生産活動というものは全部よけて通るという状況が、農協運動の中に非常に一般的になっている。なぜか。それは、農協が組合員の所得と生産を大きくしていくための生産活動というものに力を入れる、たとえば政府のお勧めで肉牛などをうんとやった、やった結果は、いまもう肉牛農家というのは、総理大臣、まるっきりめちゃくちゃなんですよ。そうすると組合員は、政府も言うし農協も言うし、そこで私どもは畜産やりました、肉牛やりました、やった結果いま惨たんたる状況じゃないか、どうしてくれるのだ、こうなってくるのです。だから農協は、生産活動はできるだけ組合員の自主性に任せて、余り責任を持つようなかっこうの介入はしない、そして流通面だけをすっと通っていく。金融とか物資のあっせんとか、そういう部面だけを通っていってやっていくというのが、いまの農協の体質になっているんです。したがって私は、政府が本当に農業の共同化、農協の体質改善と並行して本腰を入れなければ、私どもの言う攻めの農政、将来の食糧を賄うような日本農業というものの構築はできないと思っておるのです。安倍農林大臣は就任以来、守りの農政から攻めの農政だというので、私ども大変期待をしておったら、どれを見てもちっとも攻めておらない。霞ケ浦のことだって、あんなむだなことをやっておるなら、もっと別に攻める部分はいっぱいあると思うのですよ。  したがって農業基本法を改正する用意があるか。あなた方の御用学者や御用役人の中でも、もう農業基本法は改正しなければならぬという議論が起こっておるのです。農林大臣は農業基本法を改正しようとしておるのかどうか。
  31. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほどからお話がありましたように、やはり農業における共同化を進めていくというお考え、また農協に、金融だとか流通対策のみでなくて、思い切って生産対策を推進させるべきであるというお考えについては、全く私も同感でございます。共同化につきましては、協業組織ということで、機械だとか、あるいは集団組織の育成だとか、いろいろなこともやっておるわけでございますし、農協は農協自体として営農指導員等を確保して生産対策にも努力しておりますが、しかし全体的に見れば、まだまだその自覚をまって生産対策を重視していただきたいと、私も全く同じような考えを持っておるわけでございます。  それから農業基本法につきましては、三十六年にできたわけでございますから、現在と制定当時とで農業の客観情勢が大きく変わっておることは事実でありますけれど、しかし、農業基本法制定のときの基本的な理念あるいは根幹、農業総生産を増大していく、生産性を高めていく、あるいは選択的な拡大をしていく、所得を向上していく、そういうふうな基本的な理念においては、現在それを改めていく必要は私はないと思うわけでございます。  しかし、農政審議会でいま、先ほどからお話がございましたように、中間報告があって、そしてこれから総会が持たれて、最終的な答申を三月かあるいは四月ごろにいただくことになっておるわけでございます。その際に、農業関係の法体系、法律制度のあり方についていろいろの御答申もあるかもしれないわけでありますが、そうした御答申を踏まえて、各方面の意見を徴しながら、食糧の総合政策を打ち立てる際に、これもひとつ改めて考えてみたい、こういうふうに思っております。
  32. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 農林大臣、農協法の目的は何でありますか。農協法の目的をどういうふうに認識されておるのですか。——そんなものをいまから見なければならぬようでは、農林大臣、攻めの農政もへったくれもないですよ。
  33. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 法律の内容は私知りませんが、農協の目的、あり方というものは、やはり農業者の組織でございますから、農業の社会的な、あるいは経済的な地位を高めていくということが本来の姿でなければならぬ、こういうふうに思っております。
  34. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 私がさっき言ったとおり、農協は農民の協同組織を促進するという使命を持っておるのです。そして農民の経済的、社会的地位の向上を図り、国家的な貢献をする、大まかに言ってこういうふうな目標を持っておるのですよ。その最大のものは、農民の組織的な伸展を図る、生産組織の促進を図る、これが農協本来の使命なんです。いま農協はちっともその目標のとおりに運営することができない。なぜか。  たとえば畜産農家に対するえさの問題なんかでも、どうにもならぬのです。農協がどんどん生産活動に力を入れてきた。ところが、力を入れたところほど組合員はいま惨たんたる状況にありますから、農協は組合員からひどい批判を受ける。政府は、この農協の法律はつくったけれども、ちっとも農協法本来の目的に沿うような農業政策の展開をしておらぬということなんです。きょう私は時間がないので、いろいろ聞きたい点があるのでありますが、当面、えさの問題で畜産農家はがたがたしておるわけですから、その緊急の対策を攻めの農政の安倍農林大臣はどのように準備されておるのか。
  35. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 飼料につきましては、今後この飼料の生産を拡大していくということが基本的な農政の要請でございまして、第一には、何としても裏作を拡大して飼料の生産を図っていく。これは六十年の目標にも、大体、飼料作目につきましては、裏作の充実によって三倍程度増産を図ろうという計画を持っておるわけでございますし、同時に、飼料の生産基盤を強化していくための粗飼料の緊急対策予算として、今回五十年度予算で三十億を取ったわけでございますが、これはこれとして、いろいろな予算措置等を講じながら飼料の増産を図っていくということでございます。
  36. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 農林大臣、これからえさの国内生産を進めていきますなんて言うが、いま現実にえさが値上がっておって、しかも肉牛なんぞは市場価格がどんどん下がっていく、どんどんまいっていっているわけでありますね。これから国内でえさをつくりますなんという話では、全然対策にならないのです。当面、緊急の対策はどうするつもりか。これはいろいろ農林省に聞いてみても準備がないのですよ。  しかし、農業基本法制定以来、米だけじゃなくて、今度は選択的拡大生産で畜産やりなさい、果樹やりなさい、野菜やりなさい、こう言って勧めたのは政府なんですよ、そうでしょう。そうして、これからえさをつくりますでは、いま行き詰まっておる畜産農家はどうなるか。いまみんなまいっちゃっているのですよ。当面の畜産対策、えさ対策をどうするのか。いまのあなたのような答弁ではどうにもならぬのです。  この問題は、さらに次の機会に私は譲りたいと思いますが、あなたの攻めの農政というものの輪郭を、そんな審議会やなんかいろいろなところ、やる気のない人々に任せておってもしようがないのです。私は、十年間でオリジナルカロリー計算四三%の自給度から七五%にするのだと思って、攻めの農政だと思って感激して、中身を読んでみたら、えさや何かみんな除外をした現行七三%から二%上げるだけですというのです。こんなような攻めの農政なんということじゃ攻めじゃないでしょう。したがって、あなたの攻めの農政とは一体何かということ、審議会や何かにいろいろ相談をかけるにしても、あなた自身の攻めの農政はかくなるものですというものを、予算委員会が終わるまでにひとつ鮮明にしてもらいたい。そうでなければ食糧危機に対応なんかできません。そのことを申し上げておきます。  時間の関係で次に進みますけれども、次は建設省であります。  最近、大変不愉快な新聞が毎日出るのであります。これは建設省の北陸地建の局長が去年七月一日にやめました。そうすると、その直後から五回、六回にわたって、天下り就職をやった小松建設工業とかいう会社に、三億からの工事が持参金契約として契約されておる。そのほかにもいっぱい私どものプロジェクトの調査では出てきておるのです。私どもがここで問題にするのは、現在の日本の建設業界のあり方であります。この根本を解明しなければ、こういう不正、腐敗、これを根絶をすることはできないと思うのです。  いま御案内のように、けさも私のところに、建設現場へ出かせぎに来ておる郷里のある方から電話が参りまして、いままでならその月の月末まで働いた賃金というのは翌月の五日にちょうだいしておったのですが、今度は月末まで働いた賃金は翌月末の支払いになりました。一カ月おくれなんです。自分たちが出かせぎにおる間はよろしい。しかし、いずれ四月、五月になれば帰ってまいります。従来、この一カ月おくれの支払いというものは、最後に帰ってから以降送金されないで、賃金不払いという状態が起こった例が非常に多いのです。したがって心配で心配でどうにもなりませんという電話であります。  そこで、私がずっと聞いてみますと、元請がいるのです。これは鹿島建設。その下に下請さんがいるのです。それから三段階目の下請がいるのです。そうして一番下で賃金を一カ月たってから支払いますというその業者は、建設業法による許可を受けておらざる業者であります。こういう状態は、全国一般、どこでもみんな通用しておる。地方なんかに参りますと、大手業者が元請になるのです。そうすると、この元請が下請に渡すときは、いやな言葉ですが、ピンハネをやるわけですね。そうして、その二段階目の請負が三段階目に渡すときも、さらに頭金だけを取って、実行予算というのを別に渡してやらす。そうすると、しようがないからこの賃金不払いのようなことをやらなければならぬ、こういう状況になっておるのです。そうしてこの元請のほうは、一つの現場に対してせいぜい若い技術者が一人か二人行って、一億や二億ぐらいの仕事ですと、二人か三人の若い技術者が行って監督してということなんです。資材もいろいろなものも、全部孫請段階あたりが本当に惨たんたる状況の中でやっておるという状態ですね。  したがって、この業界の根本の問題は、現行の何重もの重層請負形態というもので、そうして建設業界が次第次第に——総理大臣御存じかもしれませんが、建設業者は物すごく数が多いのです。十何万人もいるのです。しかし、十何万人の業者がおっても、この中では寡占支配。元請、下請、孫請といった系列的な支配体制ですから、元請の方になると、全く管理的な運営だけで莫大な利益を上げておる、こういう状況ですね。この重層的な請負の形態を、業法の改正をやってまずチェックをしなければいけないという問題があると私は思うのです。建設大臣どうでしょう。
  37. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 阿部先生御承知のように、建設業界は圧倒的に中小業者が多く、九九・四%まで中小業者であり、しかもその中で五七・六%が個人営業だ、こういう形になっております。したがって、こういうふうな中小業者が非常に多いということが、結局過当競争や重層下請を発生させる一つの背景になっているということは事実だと思います。しかも、それがあることによって雇用関係を不明確にする、労働災害を頻発せしめる、ダンピングあるいは手抜き工事が発生する、こういつたような、おっしゃるような国民経済的にもまことに見逃すことのできないような問題が起こっておることは、まことに残念なことであります。したがいまして、これを排除して適正な請負関係を確立するということが建設行政の最も重大な課題であると私も思っております。  したがいまして、建設省においては、従来から業界に対しては強く勧告、指導もいたしてまいったところでありますが、特に今回は、元請業者の契約管理責任というものを強化していかなければならぬということ、それから末端までの契約内容を把握するような措置を十分に講じていかなければならぬ、そういうように考えまして、目下鋭意努力をいたしておるわけであります。  なおまた、中小業者の体質の改善でありますが、これがまた一番大事な問題でありまして、専門化、経営基盤の強化をはかることによってその立場を強化していかなければならぬことは当然であります。このために、御承知でありましょうが、五十年度は建設業振興基金というものも一応発足をさせまして、これを足がかりにして今後の中小企業の体質改善に対して鋭意努力をいたしてまいりたい、こういう考え方でございます。
  38. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 それから入札制度であります。総理大臣、入札制度はいま本来の競争入札というこの原理が貫かれておるというふうにお考えでしょうか。ほとんどが全部談合なんです。談合というのは、競争入札の原理を貫いたということになるのでしょうか。  これは公正取引委員会にお伺いしたいのでありますが、たとえば大手の業者が最も顕著なのでありますが、これはいま業界全般にしみ込んでおります。あたりまえのことになっておるのです。その場合に、たとえば十社なら十社の業者が指名されるということになりますと、だれかががんとしてがんばって談合が成り立たぬという場合があるのですが、談合を成り立たせなかった、がんばった業者は次から指名されないという慣行があるのです。これは競争入札の原理がそこで消滅をしておるのです。談合をやる場合に、今回はAならAの社がとりなさい。とれますと、談合でまとまるのですから、私はこの金額で入札をいたします、あなたはこの金額で、少しずつ刻んで、みんな十段階に刻んで、そして一番低いところへ談合でまとまった業者が札を入れる。そうすると、予定価格や何かの線で一遍で落札しない。次また若干刻みを変えて二度目の入札をやる。それでもなおかつ落札しなかったということになると、今度は発注者が乗り込んできて、随意契約みたいな形態で予定価格をほぼ明らかにして話をまとめる。こういう形態が業界一般で行われておるのです。そして、今回はその談合段階でA社がとった、次また同じようなメンバーの入ったときはこの業者にする、そして同じメンバーがまたほかの工事で入札に入ったときは、その次のときはこの業者ということを、そのときに談合で話を成り立たせる。こういうあれはカルテルじゃないかと私は思うのです。公正取引委員長どうでしょう。
  39. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 業界の実情はおっしゃるとおりだと思います。カルテルであるとおっしゃる点もそのとおりなんでございます。ただ現行の独禁法では、行為が終わってしまった、こう認められるときは法律は働かないのです。そこの点に問題がございます。ですから、いままでその談合の現場を取り押さえるというところまでいっておりませんので、建設業者についてほとんど実績はないのです。これは私ども大変遺憾だと思います。  しかしその談合が、計画的に初めから制度として仕組まれている場合があるのじゃないかと思います。実は建設業界ではありませんが、建設関連で、今年度に入ってから八件、私どもそういうものを取り扱っております。それは制度的にもうでき上がっておる、価格もあらかじめ談合で決まる仕組みになっておる、そういう制度的なルールがはっきりとでき上がっているというものに対しましては、これは行為が継続しているということで排除措置をとることができます。それ以外はなかなか非常に困難な情勢にある。過去の分についても適用ができるという法律があれば、また別でございます。
  40. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 これは、このあり方が現在のいわば行政に対する不信を招く非常に大きな原因になっておると思います。したがって、これは行政管理庁長官、いまの入札制度というものを、これは各省どのようにしてやるのかわかりませんけれども根本的に検討して競争入札の制度が厳正にやられるような制度にしていかなければ、行政に対する信頼も権威も失われておると思うのです。したがって、行政管理庁あたりが中心になって、行政に対する信頼を確保する、こういう観点でやってもらわなければならぬ問題じゃないかと私は思うのですが、どうでしょう。
  41. 松澤雄藏

    ○松澤国務大臣 この問題につきましては、第一次的には、やはり建設業に対する指導監督の行政を所管する建設省がやっておる問題であって、また農林省がやっておるような問題であります。したがって、行政管理庁といたしましては、政府全体としての行政運営の是正や改善を推進する立場にございますので、今後建設省側の対応措置を十分に注視しつつ、必要に応じていまのお話のような方向に全力を尽くしていってみたい、かように考えます。
  42. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そこで私は、いまいろいろわが方の調査でも、あとで資料を建設大臣のほうに提出をいたしますけれども、いま起こっておる非常に不明朗な天下り持参金工事契約、とにかく予定価格と工事契約高が一厘寸毛違わぬというものがずらっとあるのですよ。こういうことは問題にならないと私は思う。しかも先ほどの談合の場合ですが、ちょうちょう発止やるわけなんです。その場合に、わが方は天の声を持っておりますなんというのが出てくるのです。天の声というのは、発注者の側で、今回はこの業者ですと、そこにあらかじめ予定価格その他の線を全部はっきりさせておくということだろうと思うのです。わが方は天の声ということになると、他の業者はみんな、はいわかりましたということで、そこで談合がまとまる。これは制度そのものの問題ではなくて、むしろ刑事上の問題、刑事責任を問われなければならぬ性格の問題だと思うのです。この業界では、こういうことさえいま一般的に横行しておるのです。  したがって、いま新聞紙上でも伝えられ、わが方でも幾つかの乱れというものを調査しておるのでありますが、建設大臣の責任において建設省独自で正確な調査をされて、本委員会にその調査結果について報告をされるよう。それはいいですね。
  43. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 持参金つき天下りといったような事実はないということを私は本当は申し上げたいのでありますが、新聞等に報道をされておりまして、国民の疑惑を招いておることはまことに遺憾であります。したがいまして、今回、省内に特別の調査班を設けまして調査を進めておるのでありまして、その結果によりましては、入札制度を含めて十分に検討を加えて、必要があれば改善措置も講じてまいりたい、かように存じております。委員会等においてまた御報告申し上げることにいたします。
  44. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 大臣、これは予算委員会が終わるまでの間に、その調査結果を当委員会に提出をされるように、いいですね。
  45. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 そのように努力をいたします。
  46. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 次は、土地問題であります。  私ども社会党の土地調査プロジェクトは、かつての日本物価狂乱の元凶として、土地投機というのがいわば導火線になったというふうに判断をしておるのであります。きょうは時間の関係で多くを申し上げることはできません。その中で、これは前国会において、田中内閣は国土総合開発法、国総法というものを出そうとした。しかし私どもは、この国総法というものの中にある性格は、いわば開発万能主義、したがって土地の狂乱化というものをさらに拡大する、これはいけませんというので、この法律の中のもう一つの側面であった土地規制という方を、国土利用計画法という観点で、これは残念ながら最後に各党一致にはなりませんでしたが、少なくとも私ども野党が積極的に提唱もし、与党も政府の方も、われわれの主張点というものを大幅に入れて、国土利用計画法というものが成立を見たわけであります。これが昨年末に実施をされておるわけでありますが、その結果だけとは言いません。言いませんが、現在、公示価格というのは、そのまま土地の実勢そのものとは言いがたい面があるのでありますけれども、国土庁発表では、土地については、大都市圏においては二けたのダウンをしておる、全国平均でも九%程度土地価格というのが低下をしてきておるという、こういう状況が出ておる。これは金融政策もあり、あるいはいろんなものがあったと私ども思うのでありますが、国土利用計画法という、この土地規制という制度をこの国会においてつくった、これも大きな成果であったというふうに、議会政治の成果の一つとして私ども評価をしていいのじゃないか、こう思っておるのであります。  しかし、このままで安心してよろしいかということになると、御案内のように、銀行も、あるいは商社も大企業も、土地に対して莫大な投資をやって、そして虎視たんたんとして、一体どうするかということをねらっておるのであります。したがって、今後の土地政策というのは、いま土地法もでき、いろんな状況で地価は鎮静化の方向にあることは、他の物価と違って、今度一五%程度の値上がりで三月末抑えようなんてそんなものじゃなくて、とにかく二けた台も大都市圏では下がったという状況になっておる。こういう状況にあるのでありますが、まだまだ安心できないと私どもは思っておるのです。したがって、国土庁においてこの状況を踏まえて、土地というものをよりしっかりと、土地が再び——いままだ企業も何も、全部土地に莫大な投資をやって、虎視たんたんなのであります。この状況をしっかりと見きわめた対応策がなければならぬ、こう思うのでありますが、金丸長官の見解をこの際聞いておきたいと思います。
  47. 金丸信

    ○金丸国務大臣 金融引き締め、あるいは土地税制の改善、国土利用計画法実施というようなことで、土地の鎮静というものが行なわれておるということにつきましては、議員立法でこの計画法が実施されたわけでございますが、まことに議会政治の姿としても喜ばしい結果だったと私は思うのです。このまま置いて今後土地の安定化をはかれるかという御質問でございますが、十分な警戒はしなければならないことは当然でありますし、金融緩和の場合は、不急不要のものについては、資金の導入というような問題についてはこれを排除して、そしてまた、この国土利用計画法を的確に利用して、その上に投機的な土地売買というものは排除しながら公的介入を強くしていくということでいくなれば、いけるのじゃないか。しかし、油断するわけにはいきませんから、国土庁としては、あらゆる角度から、現在、こういう場合はこうしよう、こういう場合はこうなったらこうしょうというようなことを考えておる次第であります。
  48. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そこで、これはぜひ国土庁において御調査を願いたいと思うのでありますが、先ほど私は、茨城県の鹿島の問題を霞ケ浦干拓という観点で取り上げましたが、私が鹿島の問題になぜ深い関心を持ったかということになりますと、鹿島の工業開発の中心になっておるのが住友であります。私の郷里にもいま住友の工業開発が進んでおります。そこでいろいろ鹿島開発というものに関心を持って調査をしてみました。そうすると、鹿島開発の土地買い占めでぼろもうけをしたグループが、むつ小川原の開発へ乗り込んでいって土地買い占めをやっておるのです。しかもその中には、これはむつ小川原の横浜という地区でありますけれども、これを中心にして、三百数十ヘクタールにわたって、自民党の参議院議員であります竹内藤男さん、この人が、ちょうど田中さんのやり方と同じように、竹内さんの秘書あるいはその人脈につながる皆さんが、土地買い占めの会社を創立をして、そうして鹿島でやった手口をそのまま、むつ小川原へ乗り込んでいって、そして私の調査では、約四百ヘクタールに近い土地買い占めをいまやっております。当時買い占めました土地は、平均で恐らく十アール大体三万とか四万とかという非常に安い値段で買った。最近私ども調査をしてみますと、十倍も二十倍も三十倍もしておるのです。そこで現地では、農地法違反だといって訴訟なども起こっております。  私、先ほど申し上げました茨城県の鹿島の関連で非常に関心を持って、私の郷里の住友を中心とする開発は鹿島の開発の繰り返しであってはならないというので、いろいろな開発の原則というものを明らかにして、企業との間にもいろいろやりとりをしながら、わが地域の開発は過ちなき開発をしなければならぬと、こういうので、まずい面が起こらないようにというやり方に私どもいろいろな問題でいま力を入れております。ところが、この鹿島でやった同じグループが、いまの竹内参議院議員を中心として、むつ小川原地域で土地買い占めをやっておるのです。いま、むつ小川原の開発というものもなかなかそう簡単に進まぬ状況になっています。これは、最初竹内さんの人脈の皆さんが買い占めた土地を、莫大な金ですから、その次には丸紅飯田が肩がわりをしておるのです。ある意味では、買い占めを最初にやるときから、恐らく丸紅がバックにあったんだと私どもは見ております。そして今度は訴訟が起こった。そうすると、丸紅からまたこのグループの手に戻して、いま訴訟が争われておる。訴訟は四百ヘクタールに近いもの全部じゃありません。しかし、このようなやり方は、ひとりむつ小川原のみならず、先ほど申し上げましたように、全国至るところで、いま大商社や大企業や、あるいは政治関係もいろいろに介在しておることは、私どもたくさんの例を知っております。そしてこの皆さんが、私が冒頭申し上げました金融緩和とか景気政策とかということの中で、また頭をもたげようということで虎視たんたんとしてねらっておる。  たとえて言えば、これは三木さんと非常に関係の深い、三木さんを尊敬されておる政治家である、去年の予算委員会で私が追及いたしました千葉県の大網白里における優良農地買い占め、これは地崎宇三郎さんの地崎組であります。ところが私ども国会であの問題を提起をした。そこで、莫大な優良農地を買い占めましたけれども、千葉県当局は買い占めた農地全部の開発は認めなかった。ほんのわずかしか認めなかった。北海道拓殖銀行から土地買い占めの資金を出させて、そして莫大な優良農地、つい最近農用地開発を終わったばかりの優良農地をどんどん買い占めたわけなのです。買い占めましたけれども、ある部分しか宅造や開発許可は出なかった。残っておる土地は、物すごいものを買っておりますから、どうするか。私どものプロジェクトの調査に入っておるのでは、たとえば千葉県の開発公社あたりで買い取ってくれぬかといったような動き等も始まっておるそうであります。  滋賀県で革新知事が登場した。ところが、この開発公社を新しい知事が就任して調査をしてみたら、物すごい赤字で身動きがつかぬという状況が起こっておる。したがって、土地の問題というのは、ようやくいろいろな情勢で国土利用計画法なども生まれて、いろいろな方法がこれからとられるとしても、しかしながら、安心できる状況かということになると、そうは言えない要素がうんとあるのです。私が茨城へ行ってみたら、鹿島開発で味をしめて、そしてこのグループがむつ小川原で土地買い占めをやって一もうけやって、今度は——————————————という動きがあるぞなんという、そんな話さえ人の口に上っておるのであります。私はそういう意味では、国土庁の今後のあり方としては、まだまだ安心できるような状況には絶対にない。そういう意味で、ぜひひとつこの状況に対する調査をされて、将来過ちなき方途をしっかり講じてもらわなければいけない、こう考えるのであります。後で御答弁があればお伺いいたしますが、時間の関係で次へ進みますけれども、時間の関係で詰め切れないと思うのでありますけれども、調べてごらんなさい。出せと言うなら全部氏名を出しますよ。そういううわさをしておるのです、みんなが。  そこで私は、次の問題に進みますけれども、きのうわが党の楯委員から運輸大臣に御質問があった。地方の住民の公共的な交通機関、どんなにマイカーが進み何が進んでも、お年寄りや病人、こういう皆さんには、何と言ってもバス交通というのはかけがえのない交通手段なのであります。たとえば幼稚園や保育園の園児の皆さんが、交通会社全部赤字でありますから、なかなか通園の時間にうまくマッチするようなダイヤを組んでもらえない。したがって、午後の四時ごろに幼稚園や保育園が終わりましても、五時半や六時ごろまで待っておらなければならぬ。こういうような問題がしょっちゅう提起される。そこで私ども、バス会社なんかにかけ合いますると、もうにっちもさっちもいかない赤字なのです。  そこで、過疎バスに対する国の補助というものがある。去年は二十二億ぐらいだったのが今度は五十八億だと言っている。これは運輸大臣はたしか大蔵省に対して八十億の要求を出された。そこで五十八億になったが、あの制度から言いますと、県及び地方自治団体の出していただく分があるわけですね。これはいま地方自治団体どこでもみんな物すごい赤字なんです。大変財政的に苦しい。したがって、自治大臣の方におかれまして、いまのこの長い展望としては、交通政策をどうするのか、地方のローカルな交通手段をどうするのかということは、運輸省を中心にもっと根本的につくらなければならぬと思います。しかし、当面この過疎バス補助に対する自治体の負担というのが今年は相当問題になってくる、こう私は思うのでありますが、自治大臣におかれて、きのうの運輸大臣の御答弁と関連して、どういう対策を御準備かということをお聞きしたいのであります。
  49. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまの過疎地域のバスの問題、それからその他学校関係の幼稚園とかそういう方面問題等について、運輸省が来年度予算において相当な補助をすることになっておりますが、それに関連して、どうしても地方自治体もそれに応ずる負担をいたさなければならないことは、お説のとおりでございます。これはもう当然な要望でございますので、自治省といたしましては、地方の交付税もしくは特交その他の面で十分にそれに見合うだけの措置は完全にとるようにいたす方針でございますし、また五十年度の予算においては、それを見込んで全部措置をいたしてございます。
  50. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 私は、いまの不況下において失業者が非常に多く出てきておる、こういう問題に対してどういう対策を講ぜられるのか。あるいは住宅五カ年計画などでも、計画を達成できないままで終わろうとしております。こういう問題であるとか、あるいは地方自治体の超過負担の問題とか、もっともっとお尋ねしたいことがたくさんあるのでありますが、時間の制約がございます。いまの過疎バスの問題、これはまた機会を改めて、根本的な対策をどのようにするのかということについてはお尋ねをしたい、こう思うのであります。  最後に、去年カラカスの海洋法会議で、まあこの日本の態度なんていうのは、全く何と言うのか、私ども見ておりまして、ちっとも心構えがない、こういう感じを持たざるを得ないのであります。したがって、資源に乏しい日本、人口の非常に多い日本、食糧の問題でも非常に困難な状況に直面しておる日本、またこの地下資源の問題を考えてみますると、たとえばマンガンなどで言えば、海では二千億トンぐらいの埋蔵量があるのじゃないか、陸地では十億トンぐらいではないか。ニッケルなどでも、海の方には十億トンぐらいあるのじゃないか、陸の方には〇・一五ぐらい。あるいはコバルトなどでも、海では三十億トンぐらいじゃないか、陸地の方では〇・〇一ぐらいしかない。こういうぐあいに、海洋というものの持っておる可能性、これは私はやはり海洋国日本としては本腰を入れた解明がなければならぬと思うのです。  そこで、一体政府にこの海洋問題に対して立ち向かう学術機関があるのかということになると、どこへ聞いてもそんなものはない。日本であるとすれば、東海大学に海洋学部というのがある。政府は時たまそこへ出ていって、調査委託費みたいなものを出して何かちょっとやるという程度のことであります。したがって、一つは、海洋学術機関、これはやはり政府の責任においてしっかりしたものをつくって、本腰を入れた取り組みがないというのは怠慢ではないか、こう思うのであります。  第二の点、沖縄海洋博であります。これは一体どういう目的でやられて、そして目的のとおりにいま本当に進んでいるのであろうかという疑問を多くの国民が持っておるのであります。あのときは何とはなしに、沖縄復帰だ、したがって海洋博でもということで始まったみたいに感じられます。しかし沖縄海洋博というものは、漫然と何とはなしにというわけにはいかぬものじゃないか。沖縄県当局もこの海洋博の問題で苦しんでおる問題がたくさんあるようであります。沖縄海洋博というのは一体何なのか、どういう目的で、目的どおりに本当に運用されているのか。足らざる点があるとすればどうしようとするのかということが第二であります。  第三の問題は、私は郷里でサケのふ化放流事業をやっておる協同組合の事業に関係しております。(「時間だ」と呼ぶ者あり)わかりました。いま終わります。日本の養殖漁業というのは、技術的には世界で非常に水準が高いと言われておる。いまやられておる養殖漁業というのは、みんな生けすで囲った湾内か港内漁業であります。そういうちゃちなことではなくて、日本で養殖をやった稚魚や何かは全世界に広がっていって、世界の資源確保に貢献する。私が関係しておるサケのふ化放流事業なんというのは、まさに全世界に対する資源提供という側面も持っているのであります。こういう分野にもっと力を入れるべきじゃないか。特にその中でサケのふ化放流事業はうんと赤字の事業なのであります。この赤字の事業に国は補助を出して買い取っておりながら、その買い取った国の補助金に対して益金算入をやらして、課税をやっておるのです。これは私は逆じゃないかと思うのです。このことだけをお伺いいたします。
  51. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず第一番に沖縄海洋博の問題でございますが、沖縄の海洋博の準備は順調に進んでおります。七月の二十日に開会することになっておりますが、予定どおり開会できる予定でございます。  では、何のために沖縄海洋博を開くかということでございますが、これは御案内のように、一つは沖縄の復帰の記念事業でございまして、これを機会に沖縄でいろいろな関連土木事業を興しまして、そして沖縄を整備する、同時に沖縄を世界に紹介する、こういう目的があるわけでございますが、あわせて、先ほど御指摘のように、人類と海洋は切っても切れない関係にございまして、人類の将来は海洋の開発にある、こう申しても過言ではないと思うのでございます。そういう意味におきまして、海洋技術の開発とかいろいろなことを含めまして今回の博覧会をやることにしたわけでございます。  それから、第二の御質問の海洋の地下資源の問題でございますが、これもお説のように無尽蔵であると言われております。したがいまして、海洋の地質の調査であるとか、それからもう一つ、海洋のそういう資源を開発するためには一体どういう技術が必要なのか、そういう技術の開発、こういうことが必要でございますので、政府の方では必要ないろいろな対策を立てまして、その準備を進めておるところでございます。
  52. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 時間が超過しておりますから、簡潔に、わかりやすく言ってください。
  53. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 これは大変多岐にわたる問題でございまして、各省間にわたっておりますから、また基礎的には、何といっても海洋に対する科学技術の進展がなければ進まぬわけでございますので、国のプロジェクトといたしまして、海洋科学技術開発推進連絡会議というものを関係省の間でつくりまして、もう四年くらいになりますが、ただいま私どもの方が中心になりまして進めておりますし、特に、基礎的な、また総合的な科学を研究するために、海洋科学技術センターというものを横須賀近くに設けまして、潜水夫の訓練とかあるいは海底居住、海底作業の研究のためにシートピアなんという、特殊な船をつくりましてただいまやっておる最中であります。
  54. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 お話がございましたように、経済水域二百海里をつくるということで世界の大勢が動いておりまして、これはわが国の遠洋漁業にとりましては非常に深刻な事態であろうと思うわけでありまして、二百海里以内の漁獲高が大体四百五十万トンと言われておりますから、やはりこの漁獲を今後とも確保していくためには、北洋関係につきましても、各国との間の折衝をこれから強力に進めていかなければなりませんし、あるいは開発途上国につきましても、国と国との間の協力関係をさらに強化をして操業の確保を図っていかなければならぬと思います。  そういう中にあって、いまお話がありました栽培漁業等につきましても、予算等につきましても相当増額をいたしておりますが、今後ともさらに栽培漁業は充実をしてまいりたい。いまは沿岸でやっておりますが、これを沖合いでやるということにつきましても実験的には成功をいたしておりますから、こういうことも今後どんどんと実現をしていきたいと思います。  いま阿部先生がやっておられるサケの放流事業でございますが、お話がございましたように、これは赤字であるわけであります。課税については、これは赤字でございますから——確かに益金として算定されておるわけでございますが、一方、組合における稚魚のふ化育成に要する費用は経費として算定しておるということで、実質的には課税になっていないというようなことでございますが、この事業につきましても、さらにこれはひとつ全面的に強化措置をとっていかなければならぬと思います。  それから最後にちょっと。先ほど飼料問題について、私、価格対策の方を落としたわけでありますが、価格対策につきましては、この前の臨時国会でお願いをして成立をさせていただきました安定基金によりまして、異常負担につきましてはこれをカバーしていくということをやっておるわけでありますし、また牛肉につきましては、今度お願いをいたしまして畜安法に指定していただいて、指定食肉ということにいたしたい、こういうことで価格対策の方も今後とも充実をしていく考えでございます。
  55. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 以上で終わります。
  56. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 先ほどの阿部君の発言中、適当でないと認められるような点があったかのように思われますので、速記録を取り調べの上善処いたします。  これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  57. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。増本一彦君。
  58. 増本一彦

    増本委員 私は、わが党の総括質問の最後でありますので、特に三木内閣政治姿勢について、いま一度お伺いをしたいと思います。  初めに総理にお伺いしますけれども田中金脈の究明は、三木内閣が責任を持ってやるべきだと私は思います。いまやっておられることは、国税当局による税金の追徴問題だけ。それも三年間の修正申告でお茶を濁そうとなすっておる。あの田中金脈の問題を見てみましても、幽霊会社を使って政治資金の裏金を表に出すような手口だとか、あるいは裏金の政治資金の実態がどうなっているのか、こういうような問題がきわめて重要でして、政治を金権化してきた手口と実態は、これは徹底的に調査をして解明することこそ、誕生の経過から言っても三木内閣の務めではないかと私は思うのです。その点について、まず簡潔に総理の決意を聞きたいと思います。
  59. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しばしばこの問題についてはお答えいたしておりますとおりに、田中氏自身も、みずから政治家として国民の疑惑に答えたいと言っておるわけですから、いま御自身で調査を進めておるわけです。したがって、一日も早くこれが国民の前に明らかに解明をされることが——一番知っておる本人が一番これを解明しやすい立場ですから、それをわれわれは望んでおるわけでございます。  二番目の問題は、政府としては、単に国税庁に限らず、田中氏の行為に違法行為があるならば、これは田中氏であろうがだれであろうが、法規に照らして厳重な処置を講ずることは申すまでもないわけでございます。また、いろいろと国会においても御調査などがあれば、政府としてできるだけの協力をしょう、こういうことでございます。  そういうことで、こういうふうな政治不信にもつながる問題でありますから、一日も早くこういうことが解明をされることを強く望んでおる次第でございます。
  60. 増本一彦

    増本委員 国税問題に限らないとおっしゃるけれども、現実にはほかにはほとんどなされていない。その事跡もない。もう一つは、田中氏の発表をお待ちになっていると言いますけれども、一体いつそれが出てくるのかもわからない。総理は、自由民主党の総裁ですから、日限を切って早く発表をさせるという手だてを私はとるべきだと思うのですが、そういうことをおやりになるかどうか。  それからもう一つは、国会で要求があれば協力をすると言われますけれども、それだったら、決算委員会、大蔵委員会その他必要な所管の委員会への田中氏の喚問の手だてを総裁としておとりになるなどして、積極的に総理自身がおやりになるべきだというように私は考えますが、この二点についてお伺いします。
  61. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題を解明するのに一番詳細に知っておる者は、田中氏自身でありますから、田中氏自身としても、いろいろな国民の疑問に対して一日も早く答えたいと思われておるに違いございませんが、われわれとしても、できるだけ早くそういうことが出されるようお伝えをいたしたいと考えております。
  62. 増本一彦

    増本委員 日限をお切りにならない。そしてまた国会への喚問等についても、総裁としてのイニシアチブは積極的におとりになるような言明をなさらない。私は、こういう三木内閣の体質、政治姿勢、これは三木内閣自身にも同種の金脈につながる問題があるのではないかという疑惑を一層強めざるを得ないのであります。  そこで私は、河本通産大臣の政治姿勢を通じて三木内閣政治姿勢を一つ一つただしていきたいと思います。  初めに、河本通産大臣にお伺いいたしますけれども、あなたは就任直後の記者会見で、国会議員、政治家たる者は土地は一切扱ってはいけないと思う、それは道徳的に許されないからだ、道路や河川の着工、改修を知り得る立場にいるからで、絶対に土地を扱ってはいけない、こう述べたと報じられています。あなたの見解は、この記者会見でのお話のとおりと承っておいてよいか、その点をまずはっきりさしてください。
  63. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 あくまで私は、原則的にそういう態度をとるということが正しい、かように考えております。
  64. 増本一彦

    増本委員 次にお伺いします。  河本通産大臣は、三光汽船と新光海運とは親子の関係にはないというように答弁されてきましたね。しかし、新光海運と三光汽船や河本通産相との間には、単純な取引関係ではない特別な関係があるように思うのです。新光海運の登記簿上の本店を調べてみますと、兵庫県姫路市新在家字高田二百三十六番地の四。しかし、ここの土地、建物は三光汽船の所有ではありませんか。そしていま、もう一つの子会社である瑞東海運の取締役である戸田須耐巳、この方が居住をして、三光汽船が買って建物は新築をして、それをいま新光海運の本店として提供をしている、こういうことになると思いますが、この事実はどうでしょう。
  65. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かに先ほどお話しの戸田という人物は姫路におります。しかし、新光海運の主たる営業所は大阪にございまして、姫路の事務所は名義上の事務所でございまして、いわば本籍のようになっておりまして、仕事は大阪でやっておる、こういう状態でございます。  なお、私が、子会社ではない、こういうことを申しましたのは、三光汽船は新光海運の株式を持っていない、こういう趣旨から言ったわけでございます。
  66. 増本一彦

    増本委員 三光汽船の所有建物が新光海運の登記簿上の本店になっている、このことはいいですね。  あなたは、三光汽船が新光海運の株は持っていないから子会社ではないとおっしゃるけれども、会社を支配できるのは株だけではありません。金融的にその会社を従属させることができれば、やはり同じような効果をもたらすことができるわけですよ。三光汽船と新光海運とのこの金融的な関係を見ましても、公表されているだけでもきわめて密接であると思うのです。  三光汽船の有価証券報告書を調べてみますと、昭和四十三年の九月期には二億六千百四十五万円、四十四年三月期が四億三千二十五万円、四十四年九月期が四億三千九百六十五万円、四十五年三月期が四億三千五万円、四十五年九月期が四億四千四十五万円、四十六年三月期が四億九千五百六十万円、四十六年九月期に至れば、三倍増の十二億六千六百万円、四十七年三月期は十三億八千四十万円、四十七年九月期が十五億七千万円以上、四十八年三月期は十六億九千万円、これだけの金額について債務保証をなさっていらっしゃるわけです。この残高だけで大変なものだと私は思うのです。これは要するに、三光汽船の筆頭株主として多数の株を保有させるためにも、それから例のジャパンラインの株の買い占めなどでも問題になったように、ほかの株の投資やあるいは株の買い受けをやらせるために、そういう資金的な手だてをいわば三光汽船の信用を利用させてやってきた会社であるということは一目瞭然であると思うのです。しかも、新光海運という会社は、資本金が四千五百万円で、私たちが調べても、従業員は大阪営業所に三人、本店の姫路に三人くらいしかいない、こういうようなことを公的な機関にも言っている、こういう会社ですね。この事実はお認めになりますか。
  67. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 新光海運と三光汽船は、資本的には何ら関係はございませんけれども、業務の面では非常に密接な関係にありまして、新光海運の持っておる数隻の船を三光汽船がチャーターしておる、こういう業務関係では非常に密接な状態になっております。  それから、人は数人しかいない、こういうお話でございますけれども、これは御参考までに申し上げますと、大体日本の船会社というのは人が多過ぎるのです。ノルウェーなどごらんになれば、とにかく数十隻の船を持っておりましても、これは、もうきわめて少数の、わずか数人の人間がコントロールしておる、こういう状態なんですね。日本の場合はむちゃくちゃに人が多くて、その十倍もかかっておる、そういう状態ですから国の補助金も要る、こういうことになっておるわけでございますが、私は、船会社に人が少ないというのは当然じゃないかと思うのです。船のオペレートをしておりませんと、人は要らないのです、船を持っておるだけでは。ごくわずかな、数人の人間でやれる。オペレートをしている場合には相当人が要るんですけれども。でありますから、少数の人間でやるということは、海運経営の鉄則でございまして、これは第一番の条件だと私は思います。でありますから、数人の人間でやっておるということは決して不思議ではございませんし、それから四千五百万の会社が株の持ち方が多いじゃないかとかいろいろ言われますけれども、あるいはその資産が多いじゃないかと言われますけれども、私の承知しておる限りでは、非公開の会社で、資本金の十億円の会社で数千億の借金をしておる、こういう会社もありますから、だから必ずしも、資本金が小さいから活動の内容とか資産の内容が多過ぎるではないかとか、そういう議論は私はかみ合わないのではないか、こういうふうに思います。
  68. 増本一彦

    増本委員 要するに、新光海運の経営哲学を代弁されるほどに密接な関係の会社であるというように承っておきましょう。  そこで、あなたは神奈川県の箱根町の仙石原イタリに別荘をお持ちですね。土地が八六六・一一平米、建物が木造かわらぶき二階建ての建物。これは昭和四十八年十月の二十七日に新光海運株式会社から買ったことになっている。所有権の移転登記は四十八年の十一月一日です。この別荘は新光海運の名義で昭和四十三年八月十五日に買ったことになっているけれども、実はこの時点から真実の所有者は、河本さん、あなた自身ではなかったのかと思うのですが、いかがですか。
  69. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 箱根に家があることは事実であります。ただ初めは、新光海運の所有の家を私は借りておったわけです。しかし、昭和四十八年にそれを買い取った、こういう事実はございます。坪数その他おっしゃいましたけれども、私はそれは正確には記憶しておりません。
  70. 増本一彦

    増本委員 四十八年からあなたのものになったと言われるけれども、それではこれは何でしょう。これは昭和四十七年十二月一日付で、あなたの別荘のある地域の温泉荘自治会というところでテレビ簡易共聴会というのをつくって、テレビの共同アンテナの管理をするようになった。四十七年十二月一日という時点では、まだあなたの所有になっていないはずです。ところが、これにはすでに河本敏夫別荘としてこの自治会に加盟しておられる。ミスタージャイアンツの長島茂雄と並んで名前が書いてあります。つまり、新光海運の登記名義で建物を手に入れたけれども、実質的な所有関係はあなたのものだという一つの証拠であると思うのですが、いかがですか。
  71. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 その事実は、テレビの共聴の手続がどうなっているかということにつきましては、実ははっきりした記憶はありませんけれども、先ほど申し上げましたように、昭和四十三年から私はその家を借りておるわけです。借りておるわけでございますから、あるいは借りておる者の名前でテレビの手続をしたのではないか、こういうふうに考えます。
  72. 増本一彦

    増本委員 すでに地元でも、これがあなたの建物だということは、前から当然視されていたのです。つまり、新光海運の名義を借りて別荘を持ったわけです。しかし、税務署の目の届かない近所づき合いでは、みんなあなたは———————————河本個人でやっておられる。つまり、そういうところでは色はちゃんと出ておるのだということだと思うんですがね。  まだあるんですよ。この箱根の別荘の地続きとその付近に、箱根町仙石原字イタリの千二百四十五番の二百二十二、原野七百八十三平米から後、字卯花尾千一番の六十七、山林九百二十八平米外九筆で、合計八千五十三平方メートル、二千四百四十坪の土地も、昭和四十四年の三月から四十五年の八月にかけて新光海運が買ったことになっています。ところが、いまこの河本氏名義となった別荘の地続きに、もう一つ新しい別荘を新築中です。箱根は御承知のように国立公園なので、自然公園法に基づいて神奈川県箱根公園事務所に建築許可の届け出をしなくてはならない。そこで、この箱根の公園事務所で私どもが調べたら、この申請書の添付の図面は、建築名称というところに、「新光海運(株)河本邸新築工事」、こういうようになっている。いま、しょうしゃな別荘を新築中です。あなたも大臣になられてから見に行かれたことがありますね。この土地と新築中の別荘も、本当は、河本さん、あなたの個人財産ではないかと思いますね。田中総理が目白台の邸宅の敷地の一部を、あの東京ニューハウスという幽霊会社に持たせて資産取得を隠してきたのと同じように、河本さんも、新光海運という会社を使って土地資産の取得をして、税法上はそれを隠してきたんじゃないか。つまり、あなたの土地買い受けの代金相当額は、所得として隠すことができる。新光海運の方は、三光汽船などの債務保証もあって、借入金で土地を買ったことにすれば税金を免れることができる、こういうやり方をおとりになっているんではないかと考えるんですが、いかがですか。
  73. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、初めは、数年間は借りておったわけです。しかしその後、たしか四十八年ごろだったと思いますが、買い取っておるわけです、代金を支払いまして。でありますから、御質問のような趣旨ではございません。
  74. 増本一彦

    増本委員 この新築中の別荘の表の看板には、新光海運社員寮というような趣旨のものがある。ところが、これは写真ですけれども、ごらんになってわかるように、実際は個人のしょうしゃな別荘なんですよ。そして公園事務所への届け出も、所有名義人が新光海運株式会社ということになっているから、頭についているけれども、河本邸の新築工事だということになっている。公園事務所は県の管轄で、そこに出されている書類をいただいたりするということはできません。  そこで、これは委員長にお取り計らいをいただきたいのですが、神奈川県の箱根公園管理事務所に届け出をされている箱公第四の一四九号のこの建築許可の申請書と、それの添付図面をぜひ当委員会にお取り寄せをいただきたい。その点を理事会でお諮りをいただきたいというように思いますが、いかがでしょう。ぜひ理事会で御協議をいただきたいと思います。
  75. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 増本君に申し上げます。  理事会には諮りますが、そんなに一々人の財産を調べる委員会じゃないと思うんですがね、ここは。政策を御検討願う場所であって、どうもちょっと私にもよくわからないのですが、通産大臣、ひとついまのを出してもらうように、いかがですかな。
  76. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまのお話は、実は新光海運が来客用に寮といいますか、そういうものを建てる計画でスタートしたのです。しかし、昨年来の金融の引き締め等によりまして、なかなか会社としてつくるということがむずかしくなりましたので、そこで、私に肩がわりをしてくれと、こういう話がありまして、まだ最終的には手続は終わっておらぬと思いますが、まあ事情やむを得なければそういうふうに最終的にはしたい、こういうふうに思っておるわけでございまして、書類を出せとおっしゃれば出さぬこともありませんけれども、それはまた個人的に御説明しても納得していただけるものではないかとも思いますので、いかがなものでございましょうか。
  77. 増本一彦

    増本委員 そういうことであれば、なおさら私は理事会でぜひ御協議をいただきたいと思うのです。私が財産を一々どうするという問題は、私は後で政策的な問題もそれぞれお伺いしたいと思いますけれども、それが一つ一つ政治姿勢にかかわると思っているからです。そのことは委員長も十分御理解をいただきたいと思うのです。
  78. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 余り理解しませんね。私は判断に苦しみます。
  79. 増本一彦

    増本委員 そこで、こういうような新光海運の名義にして、あなたが資産の取得を隠しているという疑惑は、私は消えないのです。たとえば河本さんの申告所得を見ますと、公表されている数字では、昭和四十三年分が一千三百三十万円ぐらいですかね。これは議員歳費と社長給与分だけだと思うのです。昭和四十四年は郵政大臣になったので、その分で八百八十万円ぐらいだったと思います。つまり、当時の河本さんの公表所得では、こうした箱根の土地をお買いになるだけの資力がない。あそこは特等地で、当時でも坪一万円、二万円はした土地だと言われている。ですから、新光海運の登記名義にして、真実は河本さんの所有として、またその意思でお使いになってきた。そのことが、先ほどの自治会での取り扱いや今度の新築工事の建築許可申請にもあらわれているというように、私は見ざるを得ないのです。この点は大事な問題なんで、ひとつ積極的に疑惑の解明を図っていただきたいというように私は思います。
  80. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かに昭和四十八年に、さっき申し上げましたように、その土地を買ったことは事実でありますけれども、それは坪数もきわめて小さいものでありますし、それからまた、誤解があってはいかぬということで、専門の不動産鑑定士というような者にきちんと査定をしていただきまして、間違いのないように価格を出してもらいまして肩がわりをしておるわけでございますから、私は、おっしゃるような疑惑はありませんということを申し上げます。
  81. 増本一彦

    増本委員 それから、この新光海運は実はほかにもたくさん土地を買っていらっしゃるのですね。あなたは先ほど、海運会社だというようにおっしゃったけれども、船舶、海運の関係よりも土地とか株を主たる営業としている会社ではないか。ですから、西宮に昭和四十三年に山林を四千八百五十平米とか、あるいは横浜にまで土地を買っていられる。海運業であるはずのこの会社が、実は株をやり、後でも触れますけれども、こういう土地の買い占めをなすっている。その資金が実は三光汽船の債務保証による銀行の融資である。これは三光汽船自身が、実はそういう土地の買い占めを陰でいろいろ指図しておやりになっているんではないか。この点はどうでしょうか。
  82. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 新光海運の土地のことをおっしゃいますけれども、これはどこの会社でも、将来社員用の住宅をあらかじめ用意するとか、あるいは船員用の住宅を用意するとか、あるいは寮を建てるとか、そのための土地を用意するとか、その程度のことは、私は常識として、いまおっしゃった土地の買い占めという中には入らぬのじゃないかと思うのですね。土地の買い占めと言えば、それよりも数千倍の大規模な行為をやれば別ですけれども、そういうふうな社員とか厚生施設用の土地を、あるいは来客用のそういうもののためにいろいろあらかじめその程度のことを準備するというのは、それは私は船もありますししますから、そんなに議論の対象になるようなことではないように思うのですけれども
  83. 増本一彦

    増本委員 私が指摘しましたこの西宮市鷲林寺字剣谷というところは、これは山林ですよ。決して来客用の建物だとか社員寮を建てるような場所ではありません。そればかりではないのですね、実は三光汽船も四万坪以上の土地を買っていらっしゃいますね。昭和四十七年の十月から昭和四十八年の五月にかけて、群馬県の吾妻郡嬬恋村大字鎌原大カシコ千五百三十一番の山林全部で四十筆。これは登記簿謄本を見てみますと、全部地目が保安林ということになっている。地元での調査によりますと、平均一坪当たり一万円だったそうですから、これだけで四億円以上の買い物ということになります。これは嬬恋村の水源涵養保安林なんですね。浅間山ろくの別荘団地として、付近はいま大手の不動産会社が盛んに開発をしている場所です。しかも近くを西武の有料道路も開通している場所。三光汽船は昭和四十八年の十二月一日付で群馬県当局にこの水源涵養保安林の指定解除の申請をなすったが、一度却下された。ところが、それにこりずに昨年の十一月に、今度はその土地の一部に社員寮を建てるという理由をつけて、また水源涵養保安林の一部解除を申請している。あなたは当時は社長をなすっていられる。この山林が水源涵養保安林であることを知っていたのでしょうか。その点はどうですか。
  84. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 お話しのような事実は私は承知しております。それはどういう趣旨かといいますと、ちょうど昨年、三光汽船が創立四十周年になりましたので、社員のスポーツセンターとかあるいは社員の休養地、こういうようなものをどこかまとめてつくりたいという計画を二、三年前から進めておりまして、実は昨年の四十周年を記念いたしまして、そこに建てる予定をしておったわけでございます。それまでは四十年間、そういう休養施設というようなものは一切なかったものですから、記念事業としてやりたい、こういうことで計画したわけでございますが、金融引き締め等の問題もございますし、さらにいろいろな、いまお話しのようなこと等も出まして、そこでまだ計画は実現しておらぬわけでございますが、初めから保安林ということを知っておったかどうかというその点につきましては、私は詳しい事情を承知はいたしておりません。
  85. 増本一彦

    増本委員 土地をお買いになるときは、必ず先に登記簿は閲覧するはずです。その地目に保安林ということになっている。四十筆全部が保安林。社員寮を建てるというんだったら、当初、水源涵養保安林全部の指定解除の申請をするということ自体がおかしいのですね。水は嬬恋村の住民にとっては命の綱ですよ。水源涵養保安林というのは、そういう意味で大変大切なものであるはずです。なぜ三光汽船は、保安林である間は建造物が建てられない、開発もできない、こういうような土地を四万坪も買い占めたのか。あなたは、土地には手を出さない、国会議員、政治家が土地を扱うべきではないというようにおっしゃっている。しかし付近では別荘団地の開発が行われて地の利のいいところだ。そこで、こういう住民にとって大切な保安林を買って、それを解除して、そうして土地でも三光汽船は同じようなことをおやりになるという意図が、この中ではっきり私はあらわれていると思う。ちょうどあの田中さんが、信濃川河川敷を買い占めたり、鳥屋野潟の水の底で、そこにはどういう土地があるのかもわからぬような場所を買い占めたと同じような疑惑を、私は持たざるを得ないです。これがもし、あなたは土地投機ではないというように言われるんだったら、三光汽船はこの土地は絶対に他に転売しない、保安林解除は撤回して、むしろ水源涵養保安林として住民の水を確保するための管理や保全をしっかりやるとか、そういうことを私ははっきりさせるべきだ。これが企業の責任であり、ましてやあなたも、政治家は土地を扱うべきではない、そういうモラルをお持ちであるんだったら、それは政治姿勢として私ははっきりさせるべきだというように思うのですが、いかがですか。
  86. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、社員寮だけではございませんで、総合的なスポーツセンター、休養地をつくるという計画でスタートしたわけなんです。いまその計画が中絶いたしまして実現をしておらぬわけでございます。まあ、おっしゃるように保安林という問題があれば、これは当然そういうことになるわけでございますが、保安林を転売して利益を上げるとか、そういうことでは絶対ないんです。厚生施設としてこの程度のことは、四十年間に初めてやるわけでございますから、許されてしかるべきじゃないか。ほかの船会社あたりでもこの程度の施設というものは皆持っておるわけですからね。でありますから、記念事業としてこの程度のことは、もしいろんな条件が整ってやるということであれば、私は許されていいのではないか。しかも自己資金でやるわけでございますから、これは私は差し支えないのじゃないかと思うのです。ただ問題は、おっしゃるように、保安林が解除されないとか、そういう問題がずっと尾を引くようであれば、そのときには当初の計画が実現しないわけですから、一体どうしたらいいのか、その時点において検討してみたい。ただ重ねて申し上げておきますが、土地の売買によって利益を得る、そういう趣旨では絶対ございません。利益を得るためならば、ほかに幾らでも方法あると思います。
  87. 増本一彦

    増本委員 語るに落ちるというのはこのことだと思うのですね。しかし、保安林というのは、そういう意味でも適当な場所だというようにあなたは思いますか。たとえ厚生施設のためでも、一部の、あなたの企業のために住民の水資源にも支障を来たすというような事態になることもあり得るわけですね。そうでなくても周辺がそういう別荘団地で乱開発が進んでいる場所ですよ。  それで一つ農林大臣にお伺いします。  これは民有林ですから、県が一応責任持って、林野庁が行政指導をするという立場になる。こういうように水源涵養保安林などが開発によってなくなってしまうというような事態はできるだけ差しとめて、そして資源は正しく保全をしていくという立場に立って行政指導をさるべきだと私は思うのですね。この点で、あなたのほうで、この問題についてどう対処され、どういう行政指導をされるか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  88. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまの具体的な事例につきましては承知しておりませんが、保安林につきましては、もちろん特にいまお話がありました水源涵養保安林、これは、水の涵養機能を確保しなければならぬ、いわばダムにかわる機能を働かせるわけでございますし、きわめて重要な意味を持つわけですから、農林大臣の指定ということになっておりますし、これを解除するといった場合は、保安林に指定をしておく理由がなくなった場合とか、あるいは他の公益目的のために保安林を使用する必要が起こった場合にはその指定を解除することもあるわけでございますが、水源保安林等につきましては、非常に大事な水資源を確保していく、水の涵養機能を高めていくという意味がありますから、これをなるべく維持していくということが大事であろうと思っております。
  89. 増本一彦

    増本委員 実態を正確にひとつ判断され、こういう保安林が、このような一つ企業のいわばエゴですね、そういうものによって破壊されることのないように、厳重な、厳格な、厳正な行政指導をひとつされるように強く希望しておきたいと思います。  そこで、通産大臣にお伺いしますけれども、大阪市西区江戸堀上通一丁目二十五番地に登記簿上の本店があって、代表取締役が花井穂、資本金が五千九百八十八万円、極東商事株式会社という会社は御存じですか。それは三光汽船や新光海運とどのような関係にあるのか、河本通産大臣とはどういう関係なのか、あなたも取引があるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  90. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 その会社の存在は私は知っております。花井君も知っております。これは、いまから十数年前、昭和三十四、五年ごろであったと思いますが、三光汽船に勤めておりました一部の者がつくった会社でございまして、船舶の投資とか、あるいは有価証券の投資とか、あるいは保険の代理店とか海運の代理店とか、そういうことを目標につくった会社であると承知しております。三光汽船とは株式関係は一切ありませんし、さらに私個人とも株式の関係は一切ございません。
  91. 増本一彦

    増本委員 この極東商事株式会社という会社は、商業登記簿を見ますと、海運業やそのほか保険代理業、海運仲立業、不動産投資及び貸し付けというような営業目的が掲げられていますけれども、中身は営業目的にもある有価証券投資オンリーの会社ですね。  この会社の株主を調べてみましたら、瑞星海運が一万九千四百株、新光海運が一万八千六百株、住友生命が八千株、和光証券が八千株、岡川恭典という人が八千株、花井穂が六千株、ナショナル証券が六千株、新日本証券が二千株、和光不動産二千株、その他二千株の人が一人、こうなっている。瑞星海運というのは、この国会でも問題になりました三光汽船の関係会社の一つで、昭和四十九年の四月三十日に、瑞星海運と、昔の東光商船ですが、ここと合併をしたという、三光汽船にとってはきわめて深い関係の会社です。いま一万九千四百株はこの瑞東海運のものになっている。新光海運については、三光汽船の筆頭株主であり、先ほど申し上げたような会社だ。しかも特徴的なことは、和光証券とかナショナル証券とか新日本証券という三つの証券会社が、実質的にはこの証券投資専門の会社の株主になっているということです。  ですから、三光汽船の関連会社が証券会社と手を結んで、証券投資専門の会社をつくっていたんです。これならば株式市況の情報も早いですよ。株価の操作もできる。そうして事実昭和四十七年から四十八年にかけて、この極東商事株式会社は、あの三光汽船のジャパンラインの乗っ取り事件のいわば中心となって、二億円以上は株式譲渡益を上げた疑いさえあるのです。  大蔵大臣にまず伺いますが、証券会社が他の企業と組んで、実質的には証券投資の専門会社をつくって証券市場でいろいろな活動をする、暴れ回る。株式操作もできるでしょう。このようなことは、証券取引法などから見て、あるいは証券市場の健全な維持とか発展とかいう点から見てどのように考えるべきなのか、まず大臣の見解を伺います。
  92. 大平正芳

    ○大平国務大臣 証券会社は免許営業になっておりまして、自己資本に対しまして一定の比率以内において他の株式を保有することができることになっているわけでございまして、いまの法の規制の上におきましては、その範囲内でございますならば、他の会社の株式を保有することがございましても、それが直ちに証取法違反になるというものではないと承知いたしております。
  93. 増本一彦

    増本委員 それでは、一般に証券会社が別の会社をつくって、そして証券投資をいろいろ一緒になって別会社でやる、そしてその会社に莫大な利益を保証していくというようなことは、証券会社のあり方としていかがなんでしょう。
  94. 大平正芳

    ○大平国務大臣 証取法で禁止されている違法行為というようなものを行いますことは、もとよりいけないことでございます。株価操作をやるというようなことは、それはどの会社がやってもいけないことでございますが、そこの株主の構成に証券会社が入っているとか入っていないとかいうこととは関係がないと思うのでございまして、言いかえれば、その会社の株式を証券会社がたまたま保有しておるということ自体が、直ちにとがめられるべきものとは私は考えません。
  95. 増本一彦

    増本委員 証券会社というのは、いわば証券市場の正しい発展に責任を持っていると思うのですね。だから免許の企業にしている。証券会社は証券市場で株の売買の仲介をして、それによって手数料を得る、これが本来基本のあり方ですね。だから、店頭商品として一定の株を持つ、商品株を持つということはあっても、みずからもうかる株に乗り出して売ったり買ったりするというのは、これは証券市場を撹乱させることになる。このことは、大蔵省でもこれまで何回となく通達を出したりして、証券会社等に厳に戒めてきたことだと思うのです。その点はいかがでしょう。
  96. 大平正芳

    ○大平国務大臣 通達のことでございまするし、詳細なことを証券局長から説明させます。
  97. 田辺博通

    ○田辺政府委員 証券会社の自己取引についての御質問だと思いますが、おっしゃるとおり、証券会社の本務と申しますのは、ブローカー業務と申しますか、他人の仲介をして公正な株価形成に参与する、こういうことでございます。しかし、自己取引が全くいけないかというと、そうでもないのでございまして、私どもといたしましては、自分で売ったり買ったりする部分は補完業務、補完的な役割りにとどめるようにという趣旨で、いろいろと行政指導をしておるのはそのとおりでございます。
  98. 増本一彦

    増本委員 そこで、この極東商事の役員を見てみますと、昭和三十九年から四十一年にかけて、河本さんの右腕とも言われている三光汽船の現在の代表取締役の岡庭博氏が監査役、新光海運の代表取締役の上田信男氏も四十八年当時の監査役、同じく新光海運の代表取締役の佐々木治氏が現在の監査役、いまの代表取締役をしている花井穂氏は、これは先ほど通産大臣も言った三光汽船の元取締役というふうに、河本さんのいわば人脈でつながっている。  そこで、一体この極東商事というのは、三光汽船の株をどのぐらい持っているのかですね。それは三光汽船に対する投資のためなのかどうか。この点、おわかりでしたらお答えください。
  99. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま株数は正確には記憶ありませんが、若干はあるかもわかりませんが、私は大した株数ではないと思います。
  100. 増本一彦

    増本委員 私はいまここに、極東商事の昭和四十七年六月一日から四十八年五月三十一日までの事業年度の貸借対照表を持っています。お願いしておきましたけれども、ひとつ先に国税庁の方で、この会社の法人税の確定申告書と照合をしていただきたいのですがね。実はこの貸借対照表を見てみますと、流動資産も固定資産も、その圧倒的な大部分が全部有価証券です。ですから、ほかの海運業務等をやっているというような会社でないというのは明らかなんですね。この投資有価証券の方が二億四千六百九十四万二百円、流動資産の中の有価証券が十二億九千四百二十五万八千百円です。この昭和四十八年五月三十一日の事業会計年度のさなかというのは、いわゆる三光汽船によるジャパンラインの乗っ取りと言われた事件のあったときでしたね。そのことはどうですか。
  101. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私はその決算の数字は詳しくは知りませんが、ジャパンラインとの関係は、実はこの数年間にわたりましていろいろ背後関係がございましてね。いまおっしゃるような乗っ取りとかそういうものではございませんで、業務提携をしながらひとつ日本の海運、ひいては世界の海運の安定的な経営に持っていこうではないか、こういうことからスタートをいたしまして、途中で若干の誤解等が入りましたためにいろいろ言われたわけでございますが、初めから話しますと、これは非常に長くなりますので申し上げませんけれども、決してそういう趣旨ではございません。
  102. 増本一彦

    増本委員 この時期に、極東商事は明らかに三光汽船の意を受けて、ジャパンラインの株の買い占めをしているのですね。その売り戻しが発表されたのは昭和四十八年の四月の末だったと思う。だから極東商事は、ジャパンラインの株を一度買ったものを手放して、その売却益は恐らく二億円以上出ている。流動資産の有価証券は、これは言わずと知れた三光汽船の株であると思う。つまりジャパンラインについては、乗っ取りだったわけですから、投資有価証券の勘定項目に入る。流動資産として三光汽船の株を売っているのですね。こういう傾向になると思うのですが、この貸借対照表とそれに基づく明細から見て、大体こういう傾向でこの四十八年五月三十一日事業会計年度が申告の中で推移をしているという点は、国税庁の方、いかがですか。
  103. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 お答えいたします。  四十八年五月期のこの極東商事の申告所得額、これは公表金額でございますが、六億一千四百十九万二千円でございます。それが、どういった内容によってこの所得を上げたかということにつきましては、これは公表されておりませんので、この場で御答弁することはお許し願います。
  104. 増本一彦

    増本委員 私どもの調査によりますと、この極東商事という会社は、安いときに株を買って高く売りますね。(「それは当然だ」と呼ぶ者あり)投資専門会社だからですよ、それをプロパーにやっているから。だから、四十七年十月に極東商事は、あなたの方で出されたこの大株主名簿を見ますと、三十二番目で四百四十四万四千七百九十九株を持っている大株主の会社です。五月末にはこの決算で十二億九千万円になっていますから、取得価格が大体最低価格七百二十円ぐらいでしたから、あなたの方の有価証券を見ましても。そうすると、四十八年の五月の末の十二億九千万円の残高で計算すると、すでに百八十万株この決算の時期には持っている。つまり減っているわけです。四百四十万株持っていたものが百八十万株になった。つまり、この期間に処分した株が二百六十四万株、一株について百五十円上がれば四億円はもうかるわけですね。二百円になれば五億三千万円の売却益が出る。全体として、この当時三光汽船の株が大きく値上がりをした時期です。五百円上がれば十三億円になる。これだけの売却益が実は出ていながら、公示されているこの極東商事株式会社の法人の申告所得額が六億一千四百万円。明らかにこの企業が過少申告をしている疑いがあるのではないか。この企業の株主に、新光海運とかあるいは瑞東海運とか、そうしてさらに証券会社が三社もかんでやっている、こういう事実はきわめて重大だと思うのです。国税庁の方でその関係については調査をされているのかどうか、もしいないとすれば、株の推移等から見て明らかに疑いを持たざるを得ないわけですけれども、どのように処理をされるか、御答弁いただきたいと思う。
  105. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 この会社のその前の期、いま御指摘を受けました前の期につきましては、当該税務署の方で実地調査をやっております。それから、ただいま御指摘になりました期につきましては、机上で申告書の処理をやって所要の措置を済ませております。その次の期につきましてはまだ未処理でございます。
  106. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 増本君、ちょっと待ってください、通産大臣から答弁するそうですから。
  107. 増本一彦

    増本委員 いや、答弁が漏れているんで、いま国税庁の調査の関係だけ聞いて、この点についてさらに、そういう現在の事態の中で、単なる机上の調査で一定の書類が整っているかどうかということだけでなくて、私は再度実態にわたる調査をすべき事案だというように思って、そこで指摘しているわけです。その点はいかがですか。
  108. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 税務調査は一定の周期をもってそれぞれ調査いたしております。したがいまして、もし必要があると認めた場合には実地調査をすることも考えておりますけれども、ただいまのところ、一定の周期の中においてこの問題を処理していきたい、かように考えております。
  109. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私はいまお話の詳しい数字は全然わかりませんけれどもお話を聞いておりましてちょっと不審に思いましたのは、商売をしておる会社は、やはりもうかる仕事と損する仕事があるんじゃないかと思うのですね。ですから、それのバランスが決算になるのじゃないかと思いますので、その点ちょっとおかしいように思いながら聞いておったわけでございます。
  110. 増本一彦

    増本委員 ゲインもあればロスもあるというのは、それはそのとおりですよ。だけれども、この企業については、流動資産の有価証券は、この貸借対照表にあらわれている残高と、それからあなたの方で出された大株主名簿にあらわれている保有株との関係で見ると、その大部分が、あるいはそのほとんどが三光汽船の有価証券の評価額としてあらわれているというように見ざるを得ないのですよ。そして七百数十円で買ったものが、それ以降どんどん株の値上がりが行われて、売却益を本来膨大に出しているのに、その点が計上されていない。しかも、前期からの繰り越しの欠損はないということを前提にした記載になっているのですね。そういう点を見れば、これは明らかに所得隠しのような状態があるというように見ざるを得ない。それを机上調査だけで済ますというのは、私は、国税庁、納得いかないですね。これは厳密に、実地調査を含めて再調査をすべきだというように思います。  しかも、この昭和四十七年から四十八年にかけて、三光汽船の株は大変値上がりをしている時期です。ちなみに四十七年の十月から四十八年の三月をとっても、七百三十円から八百五十五円であった株価が、三月には最低値で一千四百七十円、最高値で一千七百円、こういう状態になっている時期です。これはおわかりだと思うのですね。だから、取得価格七百二、三十円であった時期に大株主として四百四十万以上もの株を持っていた者が、五月三十一日の期末の残高では、十二億九千万円というから百八十万株くらいにしかならぬわけです。平均法で評価しますからね、株の取得については。そうだとしたら、それを売った分は、この値上がりで見ると、株価はほぼ最高値で倍近い値上がりをしているわけだから、二百六十四万株の株を処分しながら、その売却益がどういう状態になっているか。磯辺さんが答弁されたところだと、公示所得が六億一千四百万円、これは余りに過少じゃないか。だから、合理的な、根拠のある疑いが示されれば、当然法人税法に基づく実地調査をするというのが、私は税務調査の公正な、妥当なやり方だと思う。そういうことで調査をし直して、こういう点での疑惑についてしっかりとした解明をすべきだということを私は言っているのです。だからもう一度その点は答弁していただきたい。
  111. 磯辺律男

    ○磯辺政府委員 先ほど御答弁いたしましたように、私たち税務で法人の調査をいたします場合には、一定の周期をもちまして、実地調査、それから机上処理あるいは調査省略というふうな循環的な調査をやっております。この会社につきましても、御指摘の前年度につきましては実地調査をいたして、所要の税務上の措置をとっておるわけでありますけれども、その翌年度におきましては机上処理をやって、また書類上の措置をとっております。  これは一般論として申しますと、有価証券の売買等につきましては、時価というものがはっきりいたしております。しかもバランスシート上にあらわれます有価証券の保有数というのは、またこれも明らかでございます。したがいまして、この売買益というものに対しての不正計算を行うケースは、一般論として非常に少ない。これは机上処理で済ましてもそれほど大きな問題はないというケースが多いわけであります。したがいまして、この会社についても、恐らくそういった税務上の周期と、それからそういった税務当局の判断によって机上処理が行われて所要の措置を講じたものと思われますけれども、しかし、先生が御指摘のように、もしこれはきわめて大きな問題があるのじゃないかというふうな御指摘でありましたら、もちろん税務当局といたしましては、いろいろな情報の入り次第、それについての必要な措置をとるというのは当然であります。したがいまして、それをもし必要と認めたならばまた私たちはいたしますし、あえてやる必要がないということでありましたら、また適当な時期にこの調査の見直しをするということもあるかもしれません。  以上でございます。
  112. 増本一彦

    増本委員 それからちょうどこの時期は、先ほどお話ししたように、最高値で四十七年十月が三光汽船の株は八百五十五円であったのが、十一月には一千二百五十円、十二月には二千五百二十円、四十八年一月が二千四百六十円、二月が二千七十円、三月が一千七百円。最低値で見ても、七百三十円が七百五十円、十二月が一千百円、一月が一千七百八十円、二月が一千四百七十円、三月が一千四百七十円、こういうように株価は高値で推移をしているのです。なぜこういう高値の株が仕切られたのか。いままでもこの三光汽船については、株価操作があったのではないかという疑いが持たれて、この国会でも質疑が行われてきたわけです。この三光汽船の株は浮動株が非常に少なくて、市場に出ている株はいつも二、三%だというように証券市場でも言われているところですね。そういう中で、この極東商事が主力になって、和光証券やナショナル証券、新日本証券、こういう証券会社が加われば、何をするかということも明らかだと思うのです。三光汽船の株のクロス商いをやって、値段をつり上げているのではないか。これだけどんどんと四十七年の十月以降二倍以上に株価が値上がりをしているときに、この三光汽船の株に手を出した大衆投資家こそ、大変な被害をこうむったはずです。だから私は、こういう有価証券投資専門の会社に証券会社が出資をして、そして情報を流し、あるいは一緒に株のつり上げに加担するような、そういう疑惑のある営業活動をやるということは、厳に規制しなくちゃいけないと思うのです。そのことを実は極東商事がやってきたのではないか、こういう疑惑を持たざるを得ないのです。ですからこれは、単に補完的な自己売買をやるためにとか、あるいはそういう会社にこれらの和光証券、ナショナル証券、新日本証券という会社が出資をしてやってきたものではない、いわばそういう証券取引法の脱法行為をこの極東商事株式会社を通じてやっている、そういうようにも見ざるを得ない。証券取引法の五十八条では、だれでもやってはいけない不正行為として禁止をしていますね。有価証券の売買その他の取引については、不正の手段や計画または技巧をしてはいけない。有価証券の売買その他の取引を誘引する目的で虚偽の相場を利用するようなことをしてはいけない。そしてそれに違反したら三年以下の懲役、三十万円以下の罰金だということまで決めている。だから、こういうように決算の面でも疑惑を持ち、しかもクロス商いをやって実際には株価をつり上げてきているような、その母体にこの極東商事株式会社があるのではないか。そういうような営業活動まで証券会社に認めてよいものか。あるいはそういう疑惑について一体大蔵省としてどういうように対処をするか。私は、こういうような会社、あるいはそれに出資をしている関係の証券会社に対しては、厳重な監査をするなり、あるいは関係の証券取引所をも含めて厳重な調査をすべきである。そのことを強く要求するのですが、大蔵省はいかがですか。
  113. 田辺博通

    ○田辺政府委員 お答えいたします。  私ども、極東商事がそういった株価操縦といいますか、株価操作をしているというような事実はキャッチしておりませんけれども、およそ何人といえども株価操作をするというのは、証券取引法百二十五条に違反する行為でございますので、もしそういう事実があれば厳重な処分を必要とする、こう考えます。  それから、証券会社とそういったような投資をやる会社との関係でございますが、お尋ねの極東商事に限らず、先ほど大臣から御答弁ありましたように、証券会社は金融機関として一〇%以上の相手の株を持ってはいかぬ、こういうことになっております。つまり、密接な資本関係あるいは支配関係と申しますか、そういうものを厳に戒めているわけでございまして、本件につきましては、その一〇%の範囲内でかなり数の多い証券会社が株を持っているというのか、持たされているというのか、その辺のあれはよくわかりませんが、ちびちびとたくさん持っている、こういう状態でございますので、特に極東商事に対してある証券会社がきわめて支配的な関係にあるとか、そういうことはないのじゃないか、こう考えております。つまり、一個の商事会社の株を、資産の運用あるいは取引上の関係からつき合っている、こういう状態でございますと、これをあながち責めるということはむしろ適当ではないのではないか。おっしゃるとおり、五十八条によりますところの不正の手段を講ずるとか、あるいは百二十五条に違反するような具体的な行為、これを取り締まるべきではないか、こう考えております。
  114. 増本一彦

    増本委員 実際にこの証券会社が具体的にどういう行動をとったのか、その結果、この三光汽船の株価がつり上げられていったというところに問題があるんだということで私は言っておるわけですよ。だから、そういうようなことが二度と起こらぬようにするためには、具体的にその時点でのそれぞれの証券会社の行動がどうであったのかということを含めて、実態を厳重に調査して把握をし、適切な行政指導をするということが私は証券局の使命だと思うのです。そのことを強く要求しておきます。  時間がありませんので次に移ります。  三光汽船のチャーター船であるオーシャン・ソベリン号事件についてお尋ねします。  これは、昨年の四月十二日の明け方に、静岡県焼津港でマグロをおろして、数カ月ぶりで会うことのできる肉親や妻子の待つ郷里の高知県の室戸港に急ぐマグロ漁船が、これは第十一昌栄丸といいますが、リベリア船籍の三光汽船のチャーター船、オーシャン・ソベリン号と潮岬の沖合いで衝突して、漁船乗組員十七名のうち十四名が死亡したという事件です。海難審判所の審決も出ています。昌栄丸に過失があったが、オーシャン・ソベリン号の不当運航も事故の原因である、こういうように認定されているはずです。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕  私が尋ねたいのは、法律上の責任云々の問題ではありません。この事件の後始末についての政治家としての河本敏夫氏のとるべきであった行動についてなんです。私は、河本さんがこの事故の報告を受けたときに、どのように感じただろうかというように考えるのです。十数名の犠牲者が出た。みんな一家を支える柱であった人たちです。船は船底を上にして、中に十数名を入れたまま十二時間近くも浮いていた。死に直面して犠牲者の家族への心情はどうだったろうか。この不幸な知らせを受けた家族の心中はどんなであったろうか。あなたはこのようなことを考えただろうか。だから遺族の人たちは、あなたや三光汽船の代表が、郷里でしめやかに行った合同の葬儀にも出てくれなかった、焼香一つしてくれなかった、同じ日本人として、同じ海の男としてこれでよいのか、こう言っている。きょうは、この委員会の傍聴席の片すみに遺族の代表の人たちも来て、あなたをじっと見ているはずです。政治家河本敏夫さんとしての、こういう問題についてのあなたのお考えを私は聞きたいのです。
  115. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 オーシャン・ソベリン号の昨年四月高知県沖における事故、まことに私も遺憾に思っております。  実は、私がこの事故を承知いたしましたのは、大変申しわけないことだと思っておるのですけれども、昨年の十月なんです。昨年の十月にその事故の報告を受けたのです。     〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕  それじゃ、それまで一体どうしておったかと言いますと、結局、このオーシャン・ソベリン号というのは、船籍はリベリアでございますが、ギリシャ人船員が乗っておりまして、その船を三光汽船が一年三カ月チャーターしておったわけです。そしてそういう事故が起こりまして、いまお話しのように、事故が起こったものですから、神戸の海難審判所におきましてこの海難審判がございまして、海難審判の結果審決が出まして、事故の主たる原因は漁船にある、ただしオーシャン・ソベリン号も責任がないわけではない、そういう趣旨の審決が出たわけでございます。だから主たる責任ば漁船、一部責任はオーシャンーソベリン、こういうことじゃないかと思うのです、簡単に言いますと。  そこで、オーシャン・ソベリン号の英国における保険会社、その代理店が日本にございますが、そのオーシャン・ソベリン号の保険業務を扱っておる保険会社の代理人と遺族の方々との間に、事後の処理について交渉があったようでございます。そして保険会社のほうは、まことに申しわけないことではあるけれども、こういうふうな海難審決の結果、主たる原因が漁船側にあるという場合には要求の損害の二五%は払いましょう、それに対して遺族の方々は四割を払え、こういうことで交渉は行われておったというふうに私は聞いておるのです。  ちょっと一言だけ追加さしていただきますが、こういうふうな海難審判の場合は、実は百年の近代海運の歴史におきまして、これは船舶所有者の責任、こういうことになっておりまして、したがいまして保険も、こういう保険をPI保険というのですけれども、こういうふうな、人命に関する保険とか、油の汚染に関する保険とかは、PI保険でつけておるわけです。そのPI保険をやはりオーシャン・ソベリン号の所有者がつけておるわけです。その代理を保険会社がやっておる。そういう意味で、保険会社と遺族の方々との間の交渉は行われておった。そこに若干の金額の食い違いがありまして妥結に至らなかった、こういうふうに実は聞いておるのです。  いま葬式の話が出ましたが、こういう場合には、日本にちゃんとしたその船会社の代理店がありまして、これは世界的に有名な会社でございますが、その会社から、あるいはまた代理店から葬式に参列しておわびを言わなければならぬ、またごあいさつもしなければならぬ、お慰めもしなければならぬというのが当然であったと思います。しかし、その間連絡が不十分、多分私はその間知らなかったのではないかと思うのですけれども、そういうことで、おっしゃるような手抜かりがございまして、まことに申しわけないと思っております。しかし、幸い話し合いも、相手が二五%、一方は四〇%というところまで来ておるようでございますから、私はその間、話し合いを続けられるならば話は妥結するのではないか、こういうふうに実は期待しておるわけでございます。
  116. 増本一彦

    増本委員 もう時間ですから終わりますが、お金を払えばそれで済むという性質の問題で聞いているのじゃないのです。あなたが経済人ならともかく、政治家として、そういうときに、同じ同胞が海の底に沈んだ、残った遺族はどうなんだ、どうしてそういうことに心をいたさないのか。そういう冷酷無情な態度で通産行政をやられたら私はたまらぬと思う。そのことを私は強く指摘して、時間ですので、これで終わります。(拍手)
  117. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて増本君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田春夫君。
  118. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は、外交問題を中心にして、政府に対して若干の御質問をいたしたいと思います。  質問の項目を分けまして、第一は対外政策の基本方針、第二は発展途上国と日本との関係、第三はアジアの軍事情勢と日本の態度、第四は日中関係の諸問題、大きく分けましてこの四つについて御質問をいたしてまいります。  まず第一の対外政策の基本方針についてでございますが、予算委員会が始まりましてからの三木総理答弁を伺っておりますと、今日の国際情勢は大きな変化を遂げている。特に宮澤外務大臣の本会議における外交演説を伺いますと、「今日の世界は、新しい秩序を求めつつ、変動の過程にある」、このように指摘をされておりますが、私はこの点については同感であります。  それでは、総理の言う変化、あるいは変動の原動力は一体何であるか。それは昨年の国連総会や国際会議にもはっきりあらわれていると私は思います。すなわち、激しい民族解放運動の結果として、過去の植民地体制が崩壊し、全世界に百カ国に余る新興国が誕生して、第三世界として団結し行動しているところに原動力がある。この動きの前には、米ソ超大国の主導権も支配権も及ばなくなっているのが今日の特徴と言わなければなりません。  しかるに、総理の施政演説を拝読いたしましたところ、対外政策の基本方針を見れば、相変わらず日米関係を基軸とするという名のもとに、必要以上の対米依存関係を続け、他方、アジア・アフリカ、ラテンアメリカの第三世界に接しようとしております。これでは黄色いアメリカ人として目に映るだけであって、日本に対する真の意味での信頼関係が生まれてくるとは考えられません。  フランスは発達した資本主義国であります。したがって、アメリカと同一の基盤に立って連帯関係を持っておりますけれども、しかし、日本と異なる点は、一定の独自性を持って第三世界に接しているということであります。すなわち、国の進路に対して一定のプリンシプルを持っているということであります。  総理はこの間も答弁をされましたが、われわれは西歴二〇〇〇年を展望すると言われました。そのためには、日本はまず一定のプリンシプルを持って、その上に立って、いかなる超大国にもいたずらな追随をしないで、アジアの一国としての独自性を持って第三世界と連帯することが外交政策基調でなければならないと思う。あなたはその場合に恐らく、だから国際協調をいたしますと繰り返すかもしれません。しかし、国際協調は方法論であって、プリンシプルではない。資源不足なアジアの一国である日本にとっては、今後進める場合のプリンシプル、原則というものを持て、その上に立って国際協調を具体化されるのでなければ、原則のない国際協調は八方美人に終わる。結局は他国の物笑いになるという危険が非常にあると言わざるを得ません。  私はまず、対外政策の基本方針として、総理のその基本的な考え方を伺いたいと思います。
  119. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 外交の基本はやはり国益の追求に置かなければならぬ。しかし、その国益は、しばしば私が申しておるように、狭い、目盛りの短い国益というのでなくして、広くやはり世界の動向を頭に入れた、世界の中にわれわれは生きていく、世界とともに生きていくという、そういう意味で国益の追求ということを考えなければいかぬ。しかし、出発はやはり国益ということが中心になることは、これは外交の基本であります。  そこでやはり、日米関係というものを岡田さん言われましたけれども、日米関係は大切であります。やはりそう日米関係を軽視することは私はよくないと思っておる。経済関係から言っても、日本の貿易関係でも、三〇%と言ったのが大分減ってまいりました。けれども、輸出入の二十数%、それだけの関係を持ち、あるいは安保条約の関係もございますし、あるいはまた、日本とアメリカとの間には、政治的にも、政治体制といいますか、そういう点でも同じ自由民主主義諸国である。いろいろな点で非常に関係は深い。だから、日米関係というものを犠牲にして日本の平和と安定はない。したがって、日米関係は大切であるということは、私はやはり日本の国益というものを考えて、これを余り軽く見ちゃいけない。  しかし、いま岡田さんの言われたように、今日の世界が動いておることは、御指摘になったように、東西関係から南北問題に移ってきた。最近の国連などにおける国際会議を見ても、海洋法会議でも食糧会議でも、人口会議でも、あるいは石油関係でも、その根底にあるものは南北関係である。先進国と発展途上国との調和のある発展ができなければ、世界というものは、世界の平和も繁栄もありません。今後、やはり二十世紀の後半の四半世紀は、結局南北問題というものでないでしょうか。東西関係も大事ですよ。大事であるけれども、重点はそういうことに移って世界は大きく動いておる。  その中で、御指摘になったように、日本立場というものは平和というものに依存しておる。これだけ依存しておる国はないわけですから、世界の政治体制は違っても、世界と広く友好関係を結ぶという基本の線は日本は当然持つべきでありますが、その中でも日本は、欧米諸国と比べて、最近にやはりこれだけの近代国家になったのですから、発展途上国が経済社会発展のために苦労しておること、その苦労が一番わかるのは、私はこれは日本人だと思う。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕 そういうところで、急速に先進工業国となって、発展途上国のいまの経済的自立への困難な道というのは身にしみてわかる気がするわけです。したがって、日本の今後の役割りというものは、南北の間に調和のある関係——考え方も違うんですからね。国際会議に行っても根本考え方が違う。これをどのようにして、一番そういう悩みというものをわかっておる日本が、南北問題の解決のために国際政治の上で寄与していくかということが、やはり世界とともに歩むという日本の外交の大きな重点になる。それは、東西関係を私は軽く見るものでもございませんけれども、しかし、世界を動かしていく大きなエネルギーは南北問題である、こういうふうに考えております。
  120. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間が余りないので要点だけ御答弁いただきたいんですが、いまの御答弁を伺って、私も非常に同感するところも少なくありません。ただ、言葉をあげつらうということは大変失礼かもしれませんが、私は、南北問題という言葉をお使いにならない方がいいんじゃないか。これはやはり先進国と後進国というような思想の基礎の上に立って、何かおまえらを引っ張っていってやるんだというような、そういう印象を与えますので。特にまた、先進国という言葉などについても、まあ三木さん、発展途上国という言葉をお使いになったことは大変進歩だということで、私は敬意を表するわけですが、それ以外の言葉などについても、これは国際関係の中で、特に第三世界の国々は、言葉の端々にまで注意をすることを私も経験いたしておりますので、一言申し上げておきます。  そこで、第三世界に対するアメリカとフランスの違い、これは基本的に言うと、いまも御指摘になった、世界を動かし発展させている民族問題に対する立場の相違にあると思うのであります。すなわち、フランスは発展途上国の政治的独立と経済的自立を尊重して、新しい世界秩序、この内容はどういうものであるかは別として、これにみずからを位置づけようと努力をしている。ところがアメリカの場合は、現在の世界体制をあくまでも維持する。そして発展途上国に対しては、いままでどおりの従属と支配を続けようとしている。これが、一昨日のキッシンジャーの石油問題に対する演説を見ても、宮澤さんはきのうは反対に近い御意見を述べられましたが、こういう面でもはっきり私はあらわれていると思う。  そこで、近く国際石油会議が開かれるわけですが、その場合に、米仏の態度は違う。アメリカの場合には、消費国と産油国の会議ということを考えている。フランスの場合には、この二つの国々だけではなく、発展途上国を含めて第三者会議で進めようとしている。OPECの諸国はフランスのこの態度を支持している。こういう場合に、日本はどちらの側に立ってこれを進められようとしているのか、三木さんにお伺いしたいと思います。
  121. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本は非常に役割りがある。中東問題に対しては、一番利害関係を持っているのは日本ですよ、これだけ石油に依存しているのですから。もう少し日本が——やはり中東の和平ということですからね。石油問題と言ったって、中東が真の公正な平和が来なければ石油はいつも不安定ですよ、供給は。そういう点で、日本が常に言っておりますことは、力の対決によって石油問題は解決できない。これはやはり産油国も消費国も、消費国の中には発展途上国も入る会議であって私はしかるべきだと思いますよ。  そして、先進工業国と言うのがお気に召さないが、私は先進国と言っているのではない。工業的にアドバンスしておる国ですが、しかしこの二つの関係が意見が違うのですから、考え方も。これはどうしてこの調和を発見するかということが次の新しい秩序だと思うのですよ。この問題が解決しなければ、世界の平和と安定と言ったってできっこないですから。そういう点で日本の外交というものは大きな役割りがあると思う。それはアメリカみたいな立場と違うですよ。あれだけの経済力を持っておるのでないんですから。日本日本立場があるから、そういう点で、それが南北両方の一つの調和というか、それがなければ世界の平和も安定もないという立場に立って、今後日本は独自の立場で貢献できる余地があると考えますから、やるべきだと私は思う。(岡田(春)委員石油会議について」と呼ぶ)石油会議でもそうです。(岡田(春)委員「米仏の関係は」と呼ぶ)米仏と、そういうふうに考えたら——日本のイニシアチブで考えたらいいじゃないですか。一番中東に対して利害関係を持っておるのは日本ですからね。アメリカかフランスにつかなければならぬという考え方に私は賛成しない。日本日本の案で、これは両方が話し合って解決しなければ……。消費国の中へは発展途上国も入るわけです。ことに石油の産出しない発展途上国がどれだけの打撃を受けているか。これはわれわれだったら、輸出でもして油の値上がりをまた転嫁もできるけれども、そういうことができないのですから。そういうことで、皆が世界の問題としてこの問題を解決できるように日本の外交というのはやっていくべきで、アメリカかフランスか、どちらへつくのかという考え方は私はとらない。
  122. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ了解をこのようにいたします。中東問題で一番日本が関心が深い、重要な関係がある。そうすると、少なくとも中東の主要国であるOPEC諸国の態度と同じような態度をとっていくであろう、こういうように私は理解して進めたいと思いますが、時間もありませんので続いて質問をいたしますので、あと一緒にお答えください。  もう一つは、日本はこの間の国連総会で、第三世界を中心とするアジアグループを選出母体として、安保理事国、経済社会理事国として選ばれました。今後二年間、日本の国連における役割りというのは非常に重要であります。いままでのようにアメリカの代役のような役割りを続けておったら、アジアグループからは相手にされなくなってしまいます。たとえば、いま問題になった、先進国とはなどと言って、先進国はアメリカの見よう見まねをすることなどというような考え方では問題にならないと思う。  昨年の国連における重要議題であった中東問題、南アフリカの問題、ナミビアの差別問題あるいは憲章改正問題は、これは重要課題であります。この場合の基本的なスタンドポイントは、いわゆるアジアグループ、選出母体であるアジアグループの側に立つのか、超大国アメリカの側に立つのか、こういう点は明確にしておいていただかなければならないと思います。先ほど御答弁があるはずであった点を含めて、御一緒に御答弁をいただきたいと思います。
  123. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、OPECの側に立つか、どっち側に立つかというのではなしに、日本石油問題を解決するのにも、やはり消費国との間にも円満な話がつくことが石油問題解決の道だと思いますよ。産油国だけが一方的にということだけでは、実際問題として解決しないです。そういうことで、どちらの側につくかという、何か主体性を向こうに置いたような考えでなしに、日本石油問題を真に解決するのにはどういう方法がいいのかということで、どちらかにつくという、常に主体を先方に置く考えでない外交を、日本はこれからやらなければいかぬと思うのでございます。  また、いま外務大臣からその場合のことは答えますけれども日本はやはり、第三世界と岡田さんが言われる、これから発展していこうという国国、こういう人の立場というものには十分な理解と同情を持っていかなければならぬが、そのことが全体の世界の調和を破るようなことであっては、これはやはり世界全体の平和と安定にはなりませんから、そういう立場に十分な理解と同情を持ちながら、しかも世界との間に一つの調和のとれるような解決方法というものを模索するところに——むずかしいですよ、日本の外交は。しかし、その役割りが日本の外交の役割りであって、そういうことをしないで、日本の外交というものは、どっちかについて常に右したり左したりすることでは、日本のこれだけのいろいろ力を持った国の外交としては、きわめて物足らない外交となると思います。
  124. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 実は基本方針についても、もっと詳しくいろいろ伺いたい点があります。しかし、時間の関係もありますので、続いて発展途上国と日本との関係、この点は大変重要でございますので具体的に伺ってまいりたいと思います。  いま、発展途上国にとって最大の課題というのは、政治的にも経済的にも完全な主権の回復、いわゆる自主自立の国際的地位を確立するということだ。そこで総理も、この点を御認識の上で、中東問題が最大の課題であるという形で、これは日本の単なる石油問題だけではない、国際的な問題として、課題として取り上げられている。  そこでお伺いしたいのは、この間の本会議の施政演説、最初の部分において中東問題解決の基本方針が述べられております。私もこれに対して同感する部分も少なくありません。全部同感とは言えませんが、少なくはありません。そこで伺いたいのですが、この基本方針、これは昨年十一月の中東問題に関する二階堂官房長官の談話、これと内容が全く一致していると私は思う。したがって、中東問題の基本方針は二階堂官房長官の談話を継承すると、新内閣ですから、そういう意味で演説の中で確認されたものだと理解したいのでございますが、これはいかがですか。
  125. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 全くそうです。やはり中東問題の解決は、安保理事会の二四二号が基礎になる。その上に、一九七一年以後の国連決議のパレスチナ人の国連憲章による権利の回復、これを加えたものがやはり中東和平の基礎だと思います。二階堂官房長官の談話も、前内閣以前のそれを踏まえて言っておるのですから、これは考え方は変わりません。
  126. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そこでお伺いしてまいりますが、施政演説の中で総理は、「パレスチナ人の正当な権利は、国連憲章に基づき承認さるべきものであります。」と述べておられる。それでは、「パレスチナ人の正当な権利」とは具体的に何ですか。
  127. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 イコールライトといいますか、同権、あるいはパレスチナ人の民族自決の権利であります。
  128. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 イコールライト、それから自決権ということになりますと、自決権も広い意味で言われたのだと思いますが、これは独立の権利、郷里への復帰の権利も含まれていると思いますが、いかがですか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 厳格に申しますれば、自決権の中には、独立権、それから他の国と連邦を結ぶ権利、その他当事者が適当と思われる権利と、三つございますけれども、現実には独立という場合が大抵であろうと思われます。  それから、郷里及び財産に復帰する権利というのは、これは隣人と平和に暮らすという基盤の上において郷里と財産に復帰する権利、それを意味するものと思います。
  130. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は、郷里復帰権というのはパレスチナ問題で決議をしておって、斉藤国連大使がそこまで言っているから私は言ったのであって、宮澤さんは一般論として御指摘になって、別にこれは否定はしておられないわけですから、これらをお認めになったと理解していいですね。  そこで、パレスチナ人を代表するものはパレスチナ解放機構、すなわちPLOであるという、この事実を総理大臣はお認めになりますか。
  131. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 パレスチナ人の中にも、御承知のようにいろいろなグループがあるようではございますけれども、現在、国連等におきますあのような状況から考えまして、PLOが代表であると考えることは相当であろうと思います。
  132. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 相当とおっしゃるのは、政府の基本的態度という意味ですか、どういう意味ですか。相当という言葉は非常にいろいろな意味を持っております。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 パレスチナ問題が議論をされます国連の場において、PLOの代表がその討議に参加することにわが国は積極的に賛成をいたしたわけでございますので、そのことから御判断なされまして、わが国としては、やはりPLOがパレスチナ人の代表として語る、討議に参加することを認めたものと考えてよろしいと思います。
  134. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうなんですよ。私は、賛成されたパレスチナ決議にその条文があるから、そう言ったのです。日本はそれを支持するという態度をとった。  もう一つ、パレスチナ問題の主要な当事者はパレスチナ人である、これも総理、間違いないでしょう、総理は言っておられるのだから。
  135. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは当然のことであります。
  136. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 きのうの答弁を伺うと、PLOの事務所を日本に置く用意がある。PLOがパレスチナ人を代表するものであり、日本に置かれるであろうPLO事務所は、当然パレスチナ問題の主要な当事者としての事務機関である、こういうように理解せざるを得ないのですが、この点はいかがですか。
  137. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨日も申し上げましたとおり、現実にそのような要請をまだ受けておらないわけでございますけれども、したがって、要請を受けた上で判断すべきことですが、恐らく、パレスチナ人の事務所ということであれば、先刻申し上げましたとおり、PLOからそのような要請がある、それをパレスチナ人の要請と考えるということが相当であろうと思います。
  138. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 宮澤さんは非常に慎重な方で、言葉を結果において同じことをおっしゃっているわけですが、持って回ったようなお話なんで、もう一度、PLOの事務所は、パレスチナ問題の主要な当事者であるという、それの事務機関であると理解しても、総理、大丈夫ですね。——いやいや、総理に伺いましょう。これは総理に伺った方がいい。
  139. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 持って回ったとおっしゃいましたが、実を申しますと、パレスチナ人にもいろいろなグループがございますことは岡田委員の御承知のとおりでございますから、いまのPLO、アラファト議長の代表するグループでないグループから事務所を置きたいというようなことがこれは理念的には考え得るので、その場合にどうするかということも考えておかなければなりませんので、先ほどのようにやや持って回ったことを申し上げたので、これは御了解いただけると思います。
  140. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは私了解できないのです。国連で当事者であるということにあなたは賛成しているのだから、当事者であるという事実を認めなければいけないと思うのです。それは総理そうでしょう。  外務省はあれですか、事務所の開設はPLOの承認に結びつくとは考えていない、そういう見解ですか。それも一緒に答弁してください。
  141. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御了解を願いたいと申し上げたのは、持って回った表現をしたことの意味を実は申し上げたわけでございます。ですから普通に考えまして、事務所を置きたいという要請は、あるとすれば恐らくアラファト議長が代表されるPLOからあるであろう、そう考えるのが私は常識的であろうと思います。その場合、その事務所の申請について、事務所を認めること即パレスチナ、PLOの国家としての承認である、政府としての承認であるというふうには、一緒のこととしては私ども考えておりません。
  142. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 直ちにそれだとは考えでない、それはわかります。しかし、それにつながるものであると考えられますかどうですかと先ほど伺った。
  143. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 将来いろいろな条件が熟しまして、この団体が政府を構成するであろうということをわれわれが考えるのでなければ、事務所設置を考えるということの意味は非常に薄いものになるわけでございますので、事務所の設置の要請があれば考えると申し上げました意味は、そこからひとつ御推量をいただきたいと思うのでございます。
  144. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ちょっと推量できません。総理の方は言いたいことはきっとあるはずなんです。  それじゃ総理の方に伺いましょう。事務所ができた場合に、このパレスチナの代表に外交特権を与えるのですか、どうですか。
  145. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 要請がありましてからと昨日来申し上げておりますのはその点でございまして、先方の要請いかんにもよりますし、そのときの情勢いかんにもよるだろうと思います。要請を見て考えると申し上げておきたいと思います。
  146. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 外務省は非常に消極的な態度だと受け取らざるを得ない。  それじゃ三木総理に伺います。三木総理、その代表が来ました場合に、公式に総理大臣としてお会いになりますか、どうですか。——これは外務大臣じゃないですよ。総理大臣の意見ですから、総理大臣答えてください。
  147. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 用心深くと言いますのは、まだ……。
  148. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 公式的にお会いになるかどうか。
  149. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは会いますよ。必要に応じて私は何びととも会うことは拒まないわけでございます。
  150. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは暮夜ひそかに会うのじゃないのですよ。公式に会うのですよ。総理官邸に行って会うのです。そういう点は重要な点です。  そこで、もう一つこれは総理に伺っておきたい。総理がわざわざ施政方針の中であそこまで言われたのですから。昨年十月ラバトにおけるアラブ首脳会議では、ヨルダンも含めてPLOはパレスチナ人民唯一の合法代表であると満場一致確認されました。それでは、PLOは唯一合法の代表であるということを、日本は、総理大臣はお認めになりますか、どうですか。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ラバトの会議のことでございますので私から申し上げます。  ラバトの会議がそういう決定をしたことはおっしゃるとおりでございます。私どもは、その決定そのものはそれといたしまして、これによってイスラエルの立場と申しますか、これはイスラエルも紛争当事者の一つでございますから、ジョルダンとまず話をつけて、そうしてPLOとさらにつけていこうといういままでの解決方式に、多少困難な問題が一つ加わったというふうに実はあのときに考えたわけでございます。御承知のとおりのことだと思います。ですから、ラバトの会議そのものを私どもが認める認めないということは、この際全体として申し上げることはいかがかと思いますけれども、前段でお答えいたしましたように、PLOというのがパレスタイン、パレスチニアンの代表であると考えることは、これはもう常識的にそう考えることが相当ではないかと、先ほど申し上げましたとおりでございます。
  152. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 どうも核心を外すのです。持って回った言葉の中で、唯一合法の代表ということをお認めになりますかと聞いたら、首脳会議がどうなりました、こうなりました、こういうことで終わるのです。  総理大臣に伺いましょう。唯一合法の代表であるかどうか。それは、国家の代表としての承認とか政府の承認は問題があるかもしれないが、唯一合法の代表であるかどうか、それを伺いたい。これは、総理大臣の方が内閣全体を統括するのですから、あなたお答えください。
  153. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御承知のように、まだ国家を形成しておるわけでございません。国連でもあれはオブザーバーとして認めた、そういうわけでございますから、用心深くというわけではないのですけれども、外務大臣としては慎重な発言をせざるを得ないことは御承知……。
  154. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 人のことはいいですよ。あなたはどうだ。
  155. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはパレスチナ人を代表するものである、こういうふうに考えておる。
  156. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 唯一合法ですか。
  157. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 唯一合法までいっているかどうか。これは私は用心深くというのは、この発言というものはやはり国際的にも、でありますからね。ですから、実際唯一合法と私がここで言い切れるかどうかは知らぬが、やはり実際問題としてはさように考えますけれども、まだ国としての形成までいっておりませんから、これは、これから実際問題として民族自決権をどう具体化していくという過程の中には、やはりいろんな紆余曲折もございましょうから、だから、実際問題としてはさように考えているのだという答弁にとどめておきたいと思います。
  158. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 三木さんの心理は非常にはっきり読み取れました。実際問題としてはそうであろうけれども、事実問題はいろいろ考えなければならない、これは非常に重要な発言です。これは唯一合法の代表であるということは非常に重要なことです。まあそこら辺はこの程度にしてもっと進めます。  総理は、先ほど申し上げたパレスチナ人の正当な権利とは自決権、独立の権利、郷里復帰権、こういうこと、これは国連憲章で承認されなければならないとおっしゃったが、これはもう昨年きまっているわけですね。昨年の十一月、パレスチナ民族自決権に関する決議の中で、これはもうはっきり承認されている。——いま首を横にお振りになったけれども、斉藤国連大使は公式演説でこう言った。これは採決の際の公式演説。日本政府はパレスチナ民族の自決権、郷土復帰権等が中東和平に欠くべからざる原則であることを一貫して認識してきた、したがって、わが代表団は決議案の原則に完全に合意していると述べた。ところが、これはこの間も問題になったが、ここまで言っておきながら、日本代表は奇妙なことに棄権をした。これは御存じのとおり。これはなぜ棄権したのだと言ってこの間質問があった。これに対して総理はこう答えた。私、速記録で調べてきた。イスラエルの生存権にも触れなければバランスを失うのだ、パレスチナ人の自決権には賛成だけれども、バランスを失うから棄権をしたのだ、こう答えた。ということならば、この決議の中に安保理事会決議二四二号が何らかの形で触れられているならば、これは当然賛成すべきである。言葉をかえて言うならば、中東問題和平解決のための政府の基本方針というのは、安保理二四二決議とパレスチナ自決権が不可分の関係にある、二つを両立させなければならないというのが基本方針だと考えてよろしいですか。
  159. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 結構でございます。
  160. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうですね。  それでは、伝えられるところでは、表決に当たって国連の日本代表部は、安保理二四二決議を確認すると発言した上で賛成したい、こういうことを本省に請訓した。ところが本省はこれを拒否して、棄権をしなさいと訓令を与えた。これは三木さんよりも外務大臣の方がいいでしょう。今度こそ外務大臣、答えてください。これは事実か、どうですか。
  161. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は実はつまびらかにいたしませんので、政府委員が存じておりましたらお答えを申し上げます。
  162. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 お答えいたします。  この問題の表決に近くなりました段階で、種々省内あるいはニューヨーク代表部から意見がございましたことは事実でございます。しかし、いろいろな要素を慎重に検討いたしました結果、棄権という態度に決定いたしたわけでございます。
  163. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは答弁ではないですね。私の質問というのは、賛成投票だ、ただし安保理二四二の確認の発言をする。しかし本省はそれを拒否して、棄権しろという訓令を与えた。いまの答弁はそれに対する答弁ではないですよ。これはもう総理大臣、お聞きになっておわかりでしょう。どうですか。もっとはっきりしてください。
  164. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま政府委員のお答えいたしましたところがすべてであろうと思います。     〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕 その間に現地代表部と本省との間にどのようなことがあったかということについては、恐らくこれ以上明確に申し上げるのを差し控えたいというのが政府委員の気持ちであろうと私は推察をいたします。
  165. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 宮澤さん、あなたは実情を知らないのですから、局長答弁させるとおっしゃったのでしょう。そうしたらあなた、推測の域ならば、これは答弁になりませんよ。この問題もいろいろありますが、事実はそうなんです。これは確認してもよろしい。  そこで、もっと進めましょう。これは総理も言われているが、決議二四二でイスラエルの国家としての生存権が確認されている、これはそうですね。  それでは総理に伺いますが、決議二四二に基づくイスラエルの領域並びに境界はどこからどこまでですか。
  166. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それがこれからの交渉の中身であるんじゃございませんか。
  167. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうですか。交渉の中身はそんなことではないでしょう。二四二の前提になっている点、二四二は、戦争で広げているのでしょう、その前提になるものは何だ、こう言っているのです。
  168. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ですから、その大きな枠としては、一九六七年の戦争によって、武力によって占領した地域は返還されなければならない、そうして武力による領土の取得というものは認めない、こういうことが大枠になっていると思います。
  169. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは総理大臣は、一言で言うと、パレスチナ民族の自決権を認めている、それから独立権、郷里復帰権を認めている。そうすると、パレスチナ民族の郷里復帰権の郷里はどこなんですか。パレスチナ民族の自決権に基づくパレスチナ人の国家の領域はどこですか。
  170. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その問題は、私がいま言っておるように、民族自決権というものをどう具体化していくかということがこれからのやはり中東問題解決の大きなかぎの一つに私はなると思う。それを平和的に解決するということですから、これがやはり中東問題の和平達成の一つの大きな難関でもあるし、やはり大きなかぎになる、こう考えています。
  171. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しかし、それでは答弁になりませんよ。あなた、まさか、パレスチナの国家の領域というのはアメリカの方にありますなんて答えるわけないでしょう。問題は、イスラエルの領域の問題の一部であるか、どこであるか、全域であるか、この問題じゃありませんか。どうですか。
  172. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政府委員から答えます。
  173. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 パレスチナの領域あるいはパレスチナ国家というものを仮につくる場合に、その範囲はどこかという御質問でございますけれども、その点こそまさに問題の核心にあるところでございまして、それの唯一の定義といったものはございませんし、関係者間においても、その辺の理解の仕方、主張というものはいろいろございます。まさにその点が今後解決すべき重要な問題の中心にあると理解しております。
  174. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、これは了解できないです。  それじゃ概論的に言いましょう。領域のどこからどこまでということを言わなくたっていいですよ。パレスチナ国家の郷里ということもわからないと言って郷里復帰権を認めましたというのは、これはどういうことですか。その郷里は一体どこなんですか。国家の領域というものがたとえば話し合いで決まるにしても、郷里というものは一体どこなんですか。総理がお認めになったので、総理、どこですか、郷里復帰権。
  175. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはただいま政府委員から申し上げたとおり、それがわかりましたら、もうこの問題は実は片づくわけでございますから。たとえば一九四七年ごろから、分割についての考え方はいろいろ御承知のようにあるわけでございますね。しかし、それが両当事者が一致をいたさないわけでございますから、それがまさにこれからの交渉の中心になるわけであります。
  176. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しかし、どこまでということにしても、イスラエルの四七年の地域中心とした領域はどうかという問題なんですよ。まさかあなた、パレスチナはアメリカにあります、日本にありますとかアジアにありますなんということじゃないでしょう。その地域の問題でしょうと言っているのです。その問題だとおっしゃるのかどうかということを聞いているのです。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 でございますから、その四七年の決議案というものは、御承知のようにアラブ側が拒否をしているわけでございます。そういういきさつがございますから、余りそういうことをいまかれこれ申さない方が恐らくいいのであろう、両方の合意で物事は決まるのでございますから。そういう配慮で申しておるのでございます。
  178. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これでやはり、宮澤外務大臣の態度、思想がわかりました。イスラエルが拒否しているんだから言わないのだ。(宮澤国務大臣「拒否したのはアラブですよ」と呼ぶ)アラブも拒否しています。しかし、イスラエルも、四七年の領域の中へパレスチナを持ってくるのはいいと言っているのですか、それでは。そう言っているのですか。
  179. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 とにかく、これを拒否しましたのはアラブでありまして、この決議は成立していない。イスラエルはあたかも受諾するごとき一場面があったようでございますけれども、結局アラブが拒否したために、この話はまとまらなかったというふうに了解しています。
  180. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しかし、イスラエルだってそれを認めるわけはないじゃありませんか。だからいままで続いているのじゃないですか。  そこで私、伺いましょう。これほど、イスラエルという国家、あるいはパレスチナという国家の領域問題まで食い違っている。その根本の点が、先ほど両立しなければならないと言われた、安保理二四二号決議とパレスチナ自決権が両立しなければならないというところに問題がある。いいですか。私は、こういう三木さんの態度、当面の態度については、一応了承いたします。  三木さんは先ほどから、両立しなければならない。しかも本日の答弁によると、これは自決権、独立権、郷里復帰権であるということまでお認めになった。総理の施政演説はそうなっている。ところが、宮澤外務大臣の演説には——いいですか、外交演説です。これについては、ちょっとこれはここで読んでみた方がいいでしょう。少々長くなります。「中東情勢の動向は、いまや全世界に多大の影響を与えるものであります。わが国としては、その推移を重大な関心をもって注意深く見守るとともに、国連安全保障理事会決議二四二号に基づいた公正かつ恒久的な平和が一日も早く実現することを切望してまいりました。」ここにはパレスチナ自決権については全然触れておらない。明らかに総理の意見は、二四二と自決権を、はっきりなければだめですと言っている。外務大臣は二四二だけで解決すべきだと言っている。中東和平解決の基本方針が二人の間で食い違っている。しかも、これは両方とも施政演説、外交演説でございますから、いわば公式の声明のごとき性格を持ったものです。この公式の声明の性格を持った、そういう性格のもので食い違った演説をしておられるということは、私は了解できない。しかも、あなたの場合においては——つけ加えましょう、あなたの場合には、二四二だけではだめなんだ、そういうことを言っている。これははっきりしている。なぜならば、「決議は、パレスチナ人に関しては、難民にしか触れておりません。」と言っている。確かにあなたのおっしゃるとおりだ。二四二は、パレスチナ人を難民問題としてしか扱っておらない。そうすれば、難民問題なら自決権というものは出てこないわけであります。ここに明らかに食い違いが生まれている。パレスチナの自決権の問題について、外交演説と総理の演説の食い違いがはっきりしている。この点は、総理、どうですか。
  181. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 食い違うわけはないのです。それは、二四二の決議、あれは一九六七年ですか、一九七一年も七二年も、パレスチナ人の自決権に対しての国連の決議に、日本は賛成をしておるわけですからね。これはもう総理大臣も外務大臣もそういう基盤の上に立った演説でありますから、それは何も食い違って言わなかったということではなしに、普通はもう二四二の決議という中に——パレスチナ問題というのを解決しなければ、中東に和平が来るわけはないではありませんか、岡田さん考えても。だから、それは意識的に外したのではないのですよ。それは当然に日本は、もうずっと国連でもパレスチナの自決権には明白に賛成の立場をとって、決議に日本は賛成をしておるのですからね。これは何人といえども、そういうことは当然の前提になって日本は中東問題というものに対処しておるのですから、意識的に外すようなことは絶対にありません。外せるものではないのですよ。
  182. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 外せるものじゃないとおっしゃっても、書いてないじゃないですか。全然書いてないじゃないですか。だから問題にしているのですよ。書いてないことが問題なんです。書いてないから、これは外したと見ざるを得ない。外交演説だけでも、世界的にこれは非常に注目を浴びるのですよ。宮澤外務大臣の演説全文を見たらパレスチナ問題は全然書いてない。とすると、これは外していると言わざるを得ないじゃありませんか。外せないものを外しているところに問題がある。どうなんです、外務大臣。いや、総理大臣
  183. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総理大臣の所信表明の起草に当たりましては、私ももとより参画をいたしました。ただいまのパレスチナ問題についての総理大臣の所信表明というのは、非常に大事な部分でございます。しかも演説の中のきわめて大切な部分にそれが書かれております。そこで私、実は考えまして、私も同じことを書こうかと考えたのでございますけれども、しかし、このような大事な問題は、やはり総理大臣の演説が何といっても中心になるのでございますから、総理がここで言われれば、もうその世の中に与える印象、効果は非常にはっきりしておりますので、私がまた同じことをなぞって申すのもかえってどうかということで、実は書かなかったのでございます。それだけのことでございます。(「了解」と呼ぶ者あり)
  184. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、了解できません。それは了解できません。なぜならば、あなたが先ほど全く同一の内容であるという二階堂官房長官談話を見てみましょう。ここにありますよ。これを見ると、二階堂官房長官は、「中東紛争解決のために下記の諸原則が守られなければならない」、そしてその後に、いわゆる四原則なるものが明らかにされた。四原則の第一、第二、第三、これは安保理決議二四二を具体的に確認したもの。第四は、すなわちパレスチナ民族の自決権の問題が確認されている。しかもその上で、この談話によると、「わが国政府は、上記の諸原則にしたがって、公正、かつ、永続的和平達成のためにあらゆる可能な努力が傾けられるよう要望する。我が国政府としても、もとよりできる限りの寄与を行なう所存である。」こうまで言っている。四原則が実現できるようにやってくれ。ところが宮澤さんは、総理も言われたけれども、ここは入れなかった。これは通りません、外交演説は公式声明ですから。第四を除いたということは、明らかに従来の官房長官談話という公式声明、これと外交演説が食い違っている。外交演説というその文章と明らかに食い違っている。これは世界的な背信行為ですよ。背信行為じゃありませんか。どうですか。初め四つで決めてくださいと言って、後で三つにしましょうと言ったら、背信じゃありませんか。そうでしょう。総理の意見は四原則なんだ。宮澤演説は三原則なんだ。これははっきりしているじゃありませんか、総理
  185. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 総理大臣の演説は、世界的にも影響を持ちますし、きわめて重要でありますので、これは閣議でも相当時間をかけて、この私の演説内容というものは閣議の決定をしたわけであります。しかも、ただ形式的に読んだだけでないのです。相当な時間をかけて、外務大臣も終始出席をいたしまして、意見も述べたわけでございますから、私の施政方針演説が政府を代表する意見であって、宮澤外務大臣がその私の施政方針演説に違った意見を持っておるから、それをつけ加えなかったのだという意味ではないことは、十分御了承を願いたいのでございます。
  186. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは了解できません。あなたはさっき、国連の採決の際に二四二と自決権とが両立しないからこれに棄権をした、四原則が確立されないから棄権したのだ、国連の表決はその態度をとった。宮澤さんは、四原則を認めないで、三原則しかあれしなかった。(発言する者あり)いや、書いてあるか書いてないかというのは重大問題ですよ。外交演説の問題としてはこれは重大問題です。ここまで違う点がはっきりしているのに、それで、パレスチナ人民の問題としてこの問題がいまこれほど問題になっているにもかかわらず、このように言っている。  なぜ私はこれを指摘するかというと、三項目、三原則これだけを認める態度がアメリカの態度なんですよ。二四二だけで解決しようというのがアメリカの態度なんです。外務省はそれに追随しているんですよ。それが本音なんですよ。外務省はそれだから、三木さんの言うとおりでございますとは言いながら内容が違うのです。さっきPLOの問題についても、あなたの言葉と宮澤さんの答弁のニュアンスが違うでしょう。これはそれをあらわしているんですよ。いいですか、総理大臣の施政方針と宮澤さんの方針とは、これは違うのです。(「違わないよ」と呼ぶ者あり)違いますよ。これははっきりしていますよ。四つの第四を認めていないんだもの。認めるのですとおっしゃるなら、認めるとおっしゃってください、第四を。
  187. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、もう総理大臣の所信表明にありますとおりが、これが政府の外交方針でもあるわけでございます。  なお、アメリカに追随したということを言われましたが、もし私の記憶が正しければ、いまの問題の決議二三三六、わが国は先ほどのような理由で棄権をいたしましたが、たしかアメリカは反対をいたしたと私は記憶いたしております。
  188. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いいですか。その問題よりも、あなたはそれじゃ、四原則を認めるという内容である、そういうことを御答弁なさった。それならそういう補足説明は予算委員会では困ります。本会議でやったなら本会議でやってください。衆議院と参議院の本会議の中でやってもらわなければ、これは明らかになりません、文章は明らかに違うんですから。これを訂正をするなり補足をするのならば、これは衆議院の本会議でやっていただきたい。(正示委員「本会議で質問すればよかったのだ」と呼ぶ)いや、質問の問題ではないんだよ。正示君、君、大蔵省の役人でありながらそんな不謹慎なこと言いなさんな。  これは、それじゃ本会議で御訂正を願いたいと思います。本会議で訂正する以外にありません。
  189. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君に申し上げます。委員長から岡田君に申し上げますが、宮澤内閣じゃありません、三木内閣ですから、どうぞ誤解のないように。総理大臣が施政方針演説を発表したら、それに外務大臣は従っているということは当然なことです。どうぞひとつ解釈の違いがあったら……(岡田委員「それはあなたの解釈の違いだよ」と呼ぶ)委員長としてそういうことを言うのです。
  190. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 委員長が言ったからといって絶対じゃないよ。三木内閣だというのは、私も前からわかっていますよ、そんなこと。それでも外務大臣と総理が違うのだから……(発言する者あり)
  191. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと御静粛に願います。  三木総理大臣に申し上げます。ひとつこのところは、はっきりあなたは表明してください。
  192. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 岡田さんにそういう誤解を与えたとしたら、非常に不幸なことでございます。内閣の外交方針は総理大臣の外交方針、これに尽きておるわけでございまして、意識的に宮澤外務大臣がそれをはずすというようなことは、三木内閣もとにそういうことはあり得べからざることでございますので、どうか私の申しておる、パレスチナ人の正当な権利の回復、これがなければ中東の和平というものは均衡のとれたことにはならないというふうな考え方であることを申し添えておきます。
  193. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 なお、宮澤外務大臣、ひとつ、ただいま総理大臣の発言にあなた、一致しているかどうかということをもう一遍……。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま総理大臣の述べられましたとおりでございます。
  195. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 荒舩委員長の言うとおりなんです。三木内閣なんです。それは私、知って言っているのです。しかし、三木内閣の中の総理大臣と外務大臣の方針が違うから言っているのです。いま二人とも同じでございますとおっしゃるのなら、これは文章において明らかに違うのですから、衆議院、参議院の本会議で御訂正ください。これは予算委員会の問題ではありません。これは国会の公正、権威の問題であります。これはもう、そういう話は私は、そういう形では——先ほどの御答弁はわかりました。手続の問題としては、これは衆議院、参議院の本会議において処理をしてください。
  196. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 田中さん、何かありますか、議事進行で。議事進行ありませんか。  岡田君に申し上げます。岡田君、私から申し上げます。そっちは理事で、私は委員長ですから、私のことを聞いてください。  どうです、あなたと政府との考え方が多少違うようですので、だから予算の終末において予算委員会の報告を本会議で私がいたしますが、そのときにこの点を挙げて、あなたの御納得のいくような発言をすることではいかがでございますか。
  197. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 処理方法としては、あなたのおっしゃることも一つの方法だと思います。しかし問題は、衆参両院本会議の発言ですから、それをもとにして審議を進めるわけですから、審議の進めようがないじゃありませんか、中東問題に関する限りは。二つの方針があるということじゃないですか。
  198. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 二つの方針があるとは私は思いません。
  199. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いやいや、いまは答弁によってそのようにおっしゃったけれども、文章においては二つの方針になっているじゃありませんか。だから、これは本会議で明らかに釈明してください。
  200. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 それでは、岡田君に申し上げます。——ちょっと、そこをひとつどいてください。私が申し上げているのです。どいてください。皆さん、こっちへ引いてください。  それではいかがでしょう。本会議のときに岡田君から御発言を願って、それで答弁させたらどうでしょう。
  201. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それも一つの方法だと思います。しかし問題は、審議をするのが続かないということなんです。
  202. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 どうしてですか。
  203. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それはそうでしょう。本会議で提案した二つの原則があって、どっちの原則で外交問題、中東問題を質問するのですか。政府の方針はどっちだというのです。(「それは同じものだ」と呼ぶ者あり)それは同じものだとおっしゃるのなら、政府が本会議で同じものですと、まずやりなさいよ。その上で質問やりましょうよ。そうでなければ話にならぬじゃないですか。
  204. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 それでは岡田君に申し上げます。——岡田君、私とあなたとで話をしているのですから、私の意見を聞いてください。ほかは雑音ですから。  機会を得まして、何か本会議のとき、そういうなにでございましたら総理から発言をしてもらうことでいかがでしょう。(岡田(春)委員「外交の基本ですから」と呼ぶ)外交の基本方針だからそういう……。
  205. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行。  それでは、議事進行で動議として発言させていただきます。  この問題につきましては、これは本会議の問題である、こういう岡田委員の発言です。それに対して委員長は、本会議でこういう方法がある、こうおっしゃっているわけです。しかし三木内閣だから、総理が言ったこと、これが全部だとおっしゃる。それはそのとおりです。ならば、外交演説は要らないわけなんです。そこで、このままで結構ですから、取り扱いについてちょっと理事間で相談をする、その時間をお与え願います。
  206. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 それではひとつ、ここで理事の御協議を願います。休憩はいたしませんから、どうぞ速やかにひとつ。——御静粛に願います。
  207. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行で動議を提出いたします。  先ほど来、岡田質問に対して混乱がございます。委員長からいろいろな提案もございました。しかし、本会議ということになると議運との関係も出てまいります。そこで、それらの問題をも含めて、その取り扱いについては理事会において協議をする。必要ならば予算委員会と議運との間でも話し合う等々をも含めて予算の理事会で協議する。そういうことにし、この問題につきましては、岡田委員はなお質問を留保いたしておりますので、その点についても理事会で、質問の機会といいますか、それも考えていただくことを含めて、委員長から私の動議に対して御了解をいただけるならば、特にまあ委員長の顔もありますから、岡田委員に了承をしてもらって次の質問に入っていただきますが、いかがでしょうか。
  208. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 田中武夫君の動議、私は至当であると思いますので、さよう決定をいたしました。  そこでなお、本会議の問題につきましては、議運との連絡等々もありますから、それらは追って理事会で御相談をすることにいたします。
  209. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、そういうことを確認し……(発言する者あり)どうも与党の理事さんは少し異議があるようですが、その点についてもし異議がございますなら……。
  210. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 異議はないようでございますから、さよう決定をいたします。
  211. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、そういうことで……。
  212. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田春夫君。
  213. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この点は形式問題ではないんですよ。形式問題ではない。なぜならば、先ほど申し上げた、ここにあります二つの公式声明で、たとえば、三木さんよくお聞きくださいよ、外国の人で外交演説だけを見た人は、これにしか理解できません。外国の人で総理の演説だけを見たならば、これにしか理解できません。それならば、明らかに食い違っていると言わざるを得ないじゃありませんか。それは食い違っておりません、総理のおっしゃるとおりですと答えたのは、いま答えたのであって、国際的には、これが発表されたときには違ったものとして発表されている。しかも中東問題については、日本がどうとるかというのは、世界的に非常に注視している。それだけに、これが違っているというのは、これは単なる手続問題ではないのです。重要な問題です。これは、もう一つ言うならば、総理考え方と外務省の考え方に食い違いがあるのです。なぜならば、いいですか、あなたのおっしゃったとおりのことを斉藤国連大使はやっている。それを本省は拒否して棄権さしている。ここに食い違いがあるのです。だから国際問題として問題だと言っているのです。いいですか。その態度は何かというと、さっきは反対したとか賛成したとか言ったけれども、アメリカの態度に一致するのです、外務省は。だから重要なんです。これは言い足りなかったとか書き損じたとかの問題、そういう扱いの問題じゃないのです。内容の問題なんです。方針の問題なんです。だから、衆議院の本会議で訂正しなさい、こう言っているのです。手続の問題ではないのです。この点総理大臣、よく御認識ください。よくおわかりでございましょうか。
  214. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君に申し上げますが、総理答弁させます。
  215. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま皆さん、この問題の処理を委員長の裁定でお決めになったのですから、よく御相談をしてくださるようにお願いをいたします。政府考え方は従来申し上げたとおりでございます。
  216. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は、この点を留保しておりますから、これ以上進めません。  時間もだんだん過ぎておりますので、第三のアジアの軍事情勢と日本の態度、これも非常に重要な問題がありますので、総理、お聞きいただきたい。  アジアの軍事情勢という場合、アジアというのは何か。アジアの中には安保条約で言う極東が含まれているのは当然です。ところが、それではアジアの軍事的な意味での範囲とは一体どこからどこまでを言うのだ。極東だけだとは言えないはずであります。アジアの軍事的な範囲はどこまでかというのは、これは外務省あるいは防衛庁でもけっこうでございますが、坂田さんおられますね。——坂田さん、もっと前に出てくれませんか。あなたにこれからどんどん質問します。  軍事的な意味におけるアジアの範囲というのは、安保条約の極東が入ることは言うまでもない。それじゃ極東だけを言うのか、もっと違うのか、これをお答えいただきたい。
  217. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 防衛局長からお答え申し上げます。
  218. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 軍事的な意味におきますアジアの範囲という御質問でございますが、私ども日本中心といたしまして考えた場合に、日本の平和と安全ということにつきましては、御案内のとおり、日米安全保障条約によりまして、日本並びに極東の平和と安全ということで、その極東の範囲につきましては、すでに統一見解が出されているとおりでございます。  現実に日本の問題ということにつきまして、私どもがどういうふうに考えておるかと申しますと、いま申し上げました極東の範囲ということ以上に超えて問題を検討しておりませんし、その範囲で日本の安全保障は十分足りるというふうに考えておるわけでございます。
  219. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ちょっといまの御答弁、私にはわからないんですがね。安保条約に基づく極東の範囲、これはフィリピンの北ということでこの前統一見解が出た。それとアジアとは一致するわけですか。なぜならば、安保条約というのは日本とアメリカと両方で合意されたものです。アメリカとしては極東の範囲以外にアジア全体にも行動するわけだ。合意された日本の側として、それがわからないということはないでしょう。そうでしょう。そうでないと、あなた、どこまで行ってどうするのだといって、わけがわからないじゃありませんか。それを、アメリカの見解はこうであるが、日本はこれについてどうである、賛成であるか反対であるか、そういう点が明確にならなければ、安保条約の行使についての限界というのがきまってこないじゃありませんか。そういう点をはっきりしてください。
  220. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、日本の安全と平和を守るためという前提条件がございます。そのために、日米双方において、日本並びに極東の平和と安全ということが合意されておるというふうに考えております。
  221. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 防衛局長、もう少し御勉強ください。日本と極東の安全のために日本の基地を供与するというのは第六条であります。二つです。ですから、日本の安全のためにだけではない、極東の安全のために行動する。だから、その範囲は極東であるが、それ以上のアジアはどうなんだ、こう聞いている。ここら辺は、まだ御答弁のできる段階でないとするならば、ひとつ御研究をいただけますか、どうですか。
  222. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように、安保条約には日本、極東というようなことがございますけれども、アジアということは概念としてはないと考えております。一般にアジアというものをどうかと言えば、これは歴史的にも地理的にも非常にかっきりした定義は、使い方によって違っておるようでございまして、たとえば外務省などで、局などで所管いたしますときにはパキスタンまで考える。あるいはエカフェなどではペルシャ、イランまでを考えている。またスポーツ団体などでは中近東までも含めることがある。一様ではないと思います。(岡田(春)委員「私、軍事的な意味で言っている。」と呼ぶ)軍事的な意味といっても、そういうものを定義したものは安保条約にはありません。
  223. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ないから聞いているのです。軍事行動がしかもそれにあるから聞いているのです。  それじゃ伺います。外務大臣、かつて椎名外務大臣が、南ベトナムは極東の周辺である、フィリピンの北であっても周辺である、極東の中に入らない、安保条約の極東の安全に影響を与えることはあり得る、したがって、極東の安全のために日本の基地を使用する米軍が南ベトナムにおいて行動しても、それは直ちに条約違反とは言えないと答えた。  それじゃ伺いますが、私、具体的に伺いましょう。あなた、さっきからえらいごきげんが悪いようですが、あなたのおっしゃるアジアの一部と考えられるインド洋及び周辺の陸地は——今度は安保条約ですよ、極東の周辺に入りますかどうですか。
  224. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 安保条約との関連で申し上げますならば、わが国の施設、区域を使用しております米軍が、わが国及び極東の平和、安全の維持に寄与する実態というものが認められます限り、その行動範囲がよその区域に及ぶということは条約は禁じておらない、こういうお答えになろうと思います。
  225. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 具体的に伺いましょう。禁じておらないならば、インド洋並びにその周辺の区域も、椎名外務大臣の言う極東の周辺に当たる、こういうように理解してもいいですか。
  226. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段の御答弁が基本の御答弁でございますが、さてそこで、通常の場合、米軍がインド洋ないし、あるいはペルシャ湾とおっしゃいましたが、その地域でございますね、それに日本の施設、区域を使用して戦闘作戦行動を行うということ、これが認められるかどうかということになりますと、これにはおのずから限界がある、こう考えるべきだと思います。
  227. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 法的根拠はありますか。
  228. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それを別に禁じておるような法律、条約はないわけでございます。
  229. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ、やってもいいわけですな、条約上。
  230. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 条約、法律、その基本にはやはり相当因果関係というようなものがございますから、私は、おのずから限界がある、これは政策の問題としてそう考えています。
  231. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたは戦闘作戦行動だけに限定されましたが、平時的な軍事行動はどうですか。
  232. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 平時的な軍事行動と言われる意味はどういうこと……。それは前段に申し上げましたとおりでございます。わが国及び極東の平和、安全の維持に相当の因果関係があるということであれば、行動範囲をここ、ここと限るということは適当なことでない。他地域に及ぶことは条約が禁じていない。しかし、それには常識的な限界があろうということは、これは申し上げるべきだと思います。
  233. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 具体的に政策の問題として、それじゃ外務大臣の御意見として、インド洋に第七艦隊が軍事行動する場合、横須賀の米軍基地を使った場合には、これは認められますか。
  234. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 戦闘作戦行動に関しましては、おのずから限界があると申し上げたとおりと思います。
  235. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 限界とは。
  236. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 つまり、もっと平たい言葉で申しまして、インド洋とかあるいはペルシャ湾でわが国の施設、区域を基地として戦闘行動が行われるというようなことは、普通の場合を考えますと、それは安保条約が想定しておる範囲を出ておる、常識の限界を超えておると考えるべきではないか、作戦行動の場合。
  237. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたは軍事的戦闘作戦行動を言われましたが、もう一度伺いますが、インド洋において偵察行動あるいは威嚇行動、こういうものが事実平時において軍事的に行われる可能性がある。今日も非常にある。そういうものはどうでございますか。
  238. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 偵察、情報の収集等は、それがわが国及び極東の平和、安全に無関係とは言い切れない場合があろうと思います。
  239. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 無関係な場合がないとおっしゃるなら、インド洋における行動はすべて関係がある、したがって、それは安保条約に違反しない、こういうことになるわけですね。  それじゃ具体的に伺いましょう。昨年の三月、シュレジンガーの国防報告に基づき、インド洋のジェゴガルシア島がアメリカの海空軍基地として拡張されることになり、近くC5Aギャラクシー、B52、原潜の発着が可能になると言われている。これについて、いまあなたの日本関係ないとは言えないとおっしゃったことを事実ここで言っている。この点についてムーラー総合参謀本部議長は、中東と日本など同盟国を結ぶ燃料補給線を保護するために必要である。そうすると、こういう意味で、インド洋の軍事行動、偵察行動、こういうものは、安保条約上、あなたの御解釈から言うと違反ではないということになる。日本関係があるから保護するんだと、こう言う。特にC5Aギャラクシー、これは足の長い飛行機です。日本の基地からジェゴガルシア島まで無着陸で行けます。当然、安保条約に基づいて、日本にある米軍の基地からC5Aギャラクシーがガルシア島に無着陸で行動するということがあり得るわけです。これは補給活動。しかも、その理由としては、中東と日本などを結ぶ燃料補給線として必要である、そのための軍事行動を行う。先ほどの御答弁から言うと寸これは安保条約違反ではないという解釈になりますが、そう確認してもよろしいですね。
  240. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま仰せられましたのは、ジェゴガルシァ島のことだと思います。これは御承知のように、ジェゴガルシア島にどのような目的でどのような基地を置くかということは、まだ何にも決まっておらないわけでございますから、それを検討してまいらないとならないと思いますが、いずれにしても、それはわが国の安保条約とは関係のないことである。  そこで、わが国の安保条約によって施設、区域を使うということについて、これは御承知のように、まずそれが自衛のためでなければならないという大枠がございます。その次に、わが国及び極東の平和、安全に寄与するという、そういう目的がございますから、ただ態様だけでこの行動はどうだ、あの行動はどうだとおっしゃいましても、そういう大枠の範囲内で、しかもどのような安保条約に定めた目的に沿うものであるかどうか、それを判断しなければ、抽象論としては私はお答えができないというのが正確ではないかと思います。
  241. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたは抽象論をお答えになって、だから具体的に伺いましょうと言って私が質問した。これに対して具体論は答えられないと言う。どっちも答えられないということでしょう。それじゃ政府答弁をやらないということと同じじゃないですか。それなら私、了解できませんよ、そんな答弁じゃ。具体論も答弁できない、抽象論も答弁できない、そうしたら何も答弁できないということでしょう。  まだありますよ。この間空母ミッドウェーは横須賀基地を出港している。どこへも寄らないで、マラッカ海峡を通ってインド洋へ行った。さっきからの極東の範囲その他の答弁から言うと、安保条約の範囲に基づかざる範囲の中にミッドウェーは入った。これは安保条約の適用外を行動しているのだから、安保条約違反じゃありませんか。これはどうなんですか。(「軍事行動じゃない」と呼ぶ者あり)いや、平時における行動だって、軍事行動ですよ、全部。だめだよ、そんなことじゃ。
  242. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 お答えいたします。  ただいまミッドウェーについての御質問がございましたけれども、先ほどの外務大臣がお答え申し上げましたとおりでございまして、ミッドウェーについて申しますならば、日本の施設、区域を使用しておりますところのミッドウェーが、日本及び極東の平和及び安全の維持に寄与しているという実態がなければならない。それがなければ、その行動というのは正当化されないと私どもは考えております。しかし、その実態が認められる限りにおいては、同艦が、日本あるいは極東の範囲、地域的な範囲内においてのみ行動しなければならないという制約は、安全保障条約上設けられていないんじゃないか。でございますから、そういう実態が認められていない場合におきまして、かりに先ほど御指摘がありましたような行動があるとすれば、それは安保条約上認められないということになるだろうと存じます。
  243. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 条約上はいまの答弁は筋が通っている。ただ、具体問題としてさっきから伺っているように、アジアの範囲というのは決まらないからこういう問題になる。極東の周辺の中にアジアが入るのかどうかということを含めて、具体的にこれは、外務省、防衛庁、今後ひとつ詰めていただきたい。そういう点をはっきりさしてもらわないと質問ができません。そこでその希望を申し上げておきます。  第二点は、アメリカは何のためにインド洋の軍事増強を行っているのか、軍事行動をやっているのか。最近、新聞では、インド洋における米ソの艦隊の増強が非常に激しいと言われている。中東問題に関係あるんじゃないかと思うが、その現状や、なぜそういうようになっているかの理由を、ひとつこの際伺っておきたい。
  244. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 私どもの狭い範囲内の情報でございますので、全部をカバーしているかどうか、わかっておる範囲内でお答えを申し上げたいと思います。  まずインド洋につきましては、御案内のように、国連の事務総長からインド洋におきます安全保障理事国の活動というものが報告をされまして、これは関係国の方からクレームがついてもう一回修正案が出された、これは先生も御存じのとおりでございます。その中で、特にいま御質問のソ連とアメリカがどういう状況になっているかということでございます。また、それぞれのねらいが何であるか、こういう御質問でございますので、その点に限ってお答え申し上げたいと思います。  まずソ連でございますが、現在——現在と申しますのは、これは資料が四十九年、昨年の十二月中旬の資料でございますので、若干古くなっておりますが、インド洋におります船が約三十隻でございます。そのうち戦闘艦艇と言われますものは、原子力潜水艦を含めまして十五隻、その他は補助艦艇、こういうことでございます。  それから、一方アメリカの方でございますが、昨年の十一月から十二月まで、第七艦隊の隷下にございますコンステレーションという空母がございますが、これを筆頭といたします五隻がインド洋を航行をしておったということが伝えられております。それからことしに入りましてから、ことしの一月以降でございますが、空母のエンタープライズ、これを中心といたします六隻がインド洋におる、現在なおおるというふうに私どもは聞いております。  それから、これに対するねらいはどうであるかということでございます。これにつきましてはいろいろ説がなされております。学説その他も出ておりますけれども、結局、これは私どもの推測にすぎないわけでございまして、まずソ連側の意図といたしましては、インド洋に対する軍事的なプレゼンス、これはどちらもやはり同じような意味合いがあるかと思います。それで、まあいろいろの推測があります中で、アメリカの原子力潜水艦の持っておりますポラリスA3、これは御案内のように射程が四千六百キロをオーバーいたしますので、インド洋から直接モスクワをねらえるというような威力も持っております。その辺の問題もあるのではなかろうかというふうに、これはきわめて客観的に申し上げておるわけでございますが、そういうこともあるであろう。それから、御案内のように、スエズ運河の開通ができました場合に、ソ連艦隊といたしましては、黒海艦隊との合流ということも容易になるであろうというような問題に絡めての問題でございますがございます。  それから一方、アメリカのねらいは何であるかということでございますが、先ほどムーラー統幕議長の発言を御引用になっておりましたが、あの辺がアメリカの考え方ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  245. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 インド洋における軍事的プレゼンスの問題、これは非常に重要な問題なんで、米ソ両艦隊によってインド洋の平和が大きく乱れている。これは中東問題であります。まさにインド洋の制海権争覇の問題である。米ソ超大国のいわゆる覇権争奪の問題だ、こういう問題と言わざるを得ない。そこで、この問題もこのあともっと伺ってまいりますが、もうちょっと話を変えましょう。今度は宮澤さんに伺いたい。  一昨日の楢崎答弁によると、核の積載艦の領海通航は無害通航とは認められない。したがって原則としてこれを許可しない。しかし、アメリカ核積載艦の通航は事前協議があるはずだから、これは拒否する。しかし、日本の方で確認できるかといったら、軍艦は本来不可侵であるから、米側から事前協議がない限りわれわれは確認できない。こういう一応の統一見解があった。これはどうですか、結局わからないということでしょう。しかし安保条約を信用する、イワシの頭を信心することです。イワシの頭信心論ですよ。これは事前協議があるから心配ありませんよというやつ。  しかし、もう一つこれは重要なことがある。ところが、外務大臣は同時に、アメリカ以外は、非核三原則を宣言することによって、日本に対して無害通航の権利のないことを知ってもらっておりますと答えた。いつあなたは宣言されたのですか。海洋法会議ででも宣言したのですか。そんな宣言をした例はありませんよ。自民党の歴代政府は、三木さんも御存じのように、国内法にすることさえ、これはまだ認めてないじゃありませんか。法的な手続は全然ないんじゃありませんか。外国に対して宣言した例があるのならお答えください。  もう一つ。宣言はない、それならわからないということだ。しかし、わかる方法としては一つあるかもしれません。外交手段によって通告するという方法もあるでしょう。それではソ連に対して、原潜が盛んにあるという、さっきも話に出たが、非核三原則を堅持しておりますから、日本としては無害通航を認めるわけにはまいりませんという外交手段の手続をとった例がありますか。宣言もやっていない。それもやっていないでしょう。その点はどうですか。
  246. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは私はこういうことだと思います。そもそも一国の領海を他国の艦船が通るということは、本来から言えば通らないのが普通でございます。でございますが、国際航行を便ならしめるために、いわば領海についての権利を一部領海条約で譲ると申しますか、そのような形で領海条約ができておりますから、本来、領海を通過するものをどれを無害とし、どれを有害と考えるかは、条約の一般的規範の中では、沿岸国の主権に属することだというふうに私は考えておるわけでございます。それでございますから、わが国が許さないという方針、これは国会でもこうやって御答弁を申し上げておるわけでございますから、これは当然関係国は知っておるべきものであると私は考えます。で、どういう場合に許す、どういう場合に許さないかということを一つ一つ言うのも私は一案だと思いますけれども、そもそもそれは主権国が決められることで、相手の了解を得る得ないという種類の問題ではない、こういうふうに私は考えておるわけです。
  247. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは法的根拠がありますか。ないでしょう。演説を聞いているかどうかなんて言ったって、あなた、外交手段としての手続をソ連に対しておとりになりましたか。
  248. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 法的根拠は十分にございます。つまり、領海の通過を許すか許さないかということは、本来領海を持っておる主権国の主権に属する、これは最も基本的な法的な根拠でございます。
  249. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 無害航行というものは、それではどうなんですか、法的根拠はないのですか。
  250. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 無害航行というのは、領海条約によってその主権がある程度譲られた形で一定の場合に認める、これこそ法的根拠がそこにあるわけで、もともと基本にありますものは、そもそも主権国の主権に属するというのが一番根本的な法概念でございます。
  251. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、さっきから御質問しているソ連に対して、そういう問題に対して外交手段による話し合いをされましたか。
  252. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 話し合いとおっしゃいますのは、私は失礼ですが、適当な言葉でないので、これは主権国の主権に属することでございますから、話し合って相手の了解を求めるというような種類のことではないと思います。
  253. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、知らないと言ったらそれきりじゃありませんか。国会の論議と言っても、国会の論議なんか知りませんよと言ったら、それきりじゃありませんか。あなた、そんなことを言ったら、主権に関する問題として、そんなの知りませんよ、国会でいろいろ言うでしょう、それきりじゃないですか。そんなナンセンスな話、問題になりませんよ。だから、もっと具体的に言いましょう。  私、なぜこれを言うかというと、いいですか、海上自衛隊幕僚監部では、日本海はソ連海と改名してもおかしくない程度の制海ぶりである。ソ連太平洋艦隊は最近増強が著しく、米七艦隊をしのぐ実力を持って、約三十隻の原潜のうち相当数が極東に派遣されておると公式に言っておる。そうしたら、いまのような問題が現実に起こるじゃない。起こっているじゃない。あなた、それは国会で答弁をしているから大丈夫ですなんて、そんなのは理由になりませんよ。世の中の国民に聞いてごらんなさい。宮澤さんの言うのはナンセンスだと言いますよ。  そこで、この機会に伺っておきますが、ソ連の原子力潜水艦だってわれわれ了解するわけにいきませんよ。アメリカの原潜だって不満だが、日本はソ連の原潜だって日本に入ってくるのは困りますよ。一体現状はどうなっているんだということなんです。太平洋あるいは——ここまで防衛庁が言うなら、太平洋、日本海において一体この状態はどうなっているんだということを明らかにしてもらわないと、この原潜の問題については日本は黙っておれないですよ。これは防衛庁長官、はっきり答弁してください。
  254. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 防衛局長から答弁いたさせます。
  255. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 公表資料によりますと、極東艦隊におりますソ連の艦でございますが、約五百四十隻でございます。そのうち潜水艦は九十四隻、原子力潜水艦はそのうち三十一隻でございます。
  256. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そのほかは。さっきあなた、太平洋の話、全部説明、海上幕僚監部で言っていますよ。
  257. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 重立ったものを、いま潜水艦のお話が出ておりましたので、潜水艦の話に限定をして申し上げました。  そのほか、水上艦につきましては新しいミサイルを搭載しております巡洋艦クレスタII型というのが二隻ございますし、同じくキンダ型というのが一隻、それを含めまして八隻おります。それからミサイルを搭載しております駆逐艦等を含めましたものが五十三隻おるというところでございます。
  258. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もっとはっきりしてもらわないとまだわからない点が多いのですが、私は北海道でございますので、いろいろ聞いておると、最近ソ連の漁船団が太平洋沿岸の北海道から銚子までずっと大挙押し寄せて、漁民に相当の被害を与えている。北海道だけでも去年までの五年間の六倍の被害を与えている、こういうことが言われております。しかも、防衛庁の関係者の話ですが、軍事関係船もその中にいるという話が出ておりますが、これは運輸大臣ですね。海上保安庁、ここら辺の実態は一体どうなっているのか。しかもソ連に対して、こういう点は漁民の被害ですから、抗議するものはしてもらわないと困る。一体どういうことをやっているのですか。
  259. 木村睦男

    ○木村国務大臣 日本近海におけるソ連漁船の操業の状況についての御質問でございますが、ソ連の漁船は昭和三十六年ごろから日本近海に出漁するようになってまいりました。その後逐次増加してまいりまして、多いときは七百隻ぐらい、ことしに入りましてから、これは二月までの数字ですが、百隻ぐらい北海道の南東岸から三陸沖合い、それから銚子沖合い、あるいはずっと下がって伊豆諸島付近にかけて、船団を組んで操業をいたしておるわけでございます。昨年の秋以降の状況といたしましては、例年どおり十月初めに北海道の南東岸に姿をあらわしました。襟裳岬を中心といたしまして、広尾沖から浦河沖にかけて操業を続けまして、その後昨年十一月初めごろから逐次南下を始めました。十二月は北海道の南東岸に一部が残っておる程度で、大部分が三陸沖合いから銚子沖合いにかけて分散して作業をいたしております。しかし十二月の末ごろから、南下いたしました漁船が、逐次再び北上いたしまして広尾沖で操業をいたしておりましたが、現在では苫小牧沖を中心とした浦河沖からチキウ沖沖合いにかけまして操業を続けておる、こういう状況でございます。
  260. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これはもっと質問したい点いろいろあるのですが、もうあと十分しかないなんという話なんで質問できません。  そこでいまお手元に、委員長のところに資料を御配付いたしたはずでございます。統幕会議ですね、制服。昭和四十七年度第四幕僚室の共同調査研究として、「ソ連の海洋戦略がわが国の防衛に及ぼす影響」なる文献を昭和四十七年十一月に作成完了している。しかもこの共同調査研究は、当時の増原防衛庁長官の了解のもとに進められたものである。すなわち、登弘美陸将補を室長とする第四幕僚室、すなわち制服組の共同調査研究であるから、これはあくまでも個人の研究という形ではない。したがって、防衛庁自身の見解としてこれは責任を負わなければならないものだと思う。防衛庁長官、この点は御存じのはずだが、事実関係をまず明らかにしていただきたいと思います。
  261. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 詳細に聞いてみないとはっきりは申し上げられませんが、多分本当であるだろうということでございます。
  262. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 多分本当とおっしゃるが、これが原文であります。原文の一部を抜粋いたしまして皆さんのお手元に配付いたしました。これは個人の研究ではありません。共同研究であります。しかも、これは制服がつくったものであります。しかも、この制服がつくったものを、防衛庁の内局を初めその他にも配付をいたしまして、この中には明らかに政治方針まで書かれております。この政治方針は後で申し上げます。この政治方針まで制服がつくるということは妥当なことであると思いますか、どうですか。
  263. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 それを詳しく読んでみないとわからないと思います。しかし、政治方針というふうに言葉でおっしゃられれば、そのとおりと思います。
  264. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 言葉というのはどうなんですか。そのとおりというのは、何がそのとおり……。
  265. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その実体が政治的なものが入っておるかどうかということは、私いまここで、見てないからわからないということを申し上げておるわけであります。
  266. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 入っておったらどうですか。
  267. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 だから、政治政策といいますか、方策といいますか、そういうことであるならばそのとおりだと……。
  268. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは防衛庁として妥当ですかどうですかと聞いている。(「妥当でないという意味でしょう」と呼ぶ者あり)
  269. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 もちろんそうです。
  270. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 委員長、これは重要な点ですから確認しておきます。  防衛庁長官、そのとおりですと言ったのは、妥当でないということがそのとおりですと、このように答えたと確認をしておきます。
  271. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 このような問題は、まさにシビリアンコントロールという非常に重大な問題でございますので、やはり私が一遍見まして、それからお答えした方が適当かと思います。
  272. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ留保しなければならないのがたくさんありますが、時間がありませんので、もう一つ経過だけを申し上げておきます。  ここに「新防衛論集」という本があります。これは昨昭和四十八年六月と九月、これにこの内容が出ております。政治方針と称するものがあると言われるこれが出ております。ところが皆さんのお手元に配付されました資料をごらんください。この一番後にある小さな紙のやつが、これが本に出ているやつであります。ごめんなさい。一番前ですな。これがこの本に出ている。ところが原文の方は、これと内容が違うのです。  1、2、3、4、5までの全論文がありまして、1、2、3まではこちらに全部出ています。4と5の政治方針に関する部分は全文抜かされて発表されている。隠している部分政治方針があるのであります。そのページ数は、これにいたしまして五十七ページから八十ページにわたるものであります。すなわち三分の一がすべて隠されているというものであります。  まず第一に、制服が共同調査の研究をして、防衛庁長官の承認のもとにそのようなことが行われた。そして政治方針が出されたということは明らかにシビリアンコントロールに反する。  しかも第二の点としては、公表する場合に、共同調査研究ではなくて、この本では個人研究という名のもとにこれが出されている。ですから、私の言いたいのは、個人研究という名のもとに共同研究がどんどん行われているということを裏づける問題である。いや、それははっきりしているのですよ。なぜならば、このはしがきのところにこう書いているのです。いいですか。「本論文は昭和四十七年度第四室共同調査研究項目として研究を命ぜられたものである。」共同研究で、その書いた人は伊藤という形でやっておる。主たる起草者です。個人研究でこれを伊藤という名前で発表されている。一等海佐。ところが実際は共同研究なんです。だから笑い事で済む問題ではありません。  それから、その中にどういう点が出ているか、時間がないので、もうこれで終わりますので、たとえば六十八ページには——皆さんのお手元には七十一ページからしか出しておりませんので、御了解ください。六十八ページには「わが国周辺海域以遠における効果的な海上交通保護のための方策について考慮する必要がある。」これはマラッカ海峡の問題です。だから、私は極東の先のアジアはどうなんだということを聞いているのです。いいですか。その点にも関連する。マラッカ海峡防衛論を主張しております。  第二点、それは資料にあります。七十二ページには、東南アジア「諸国からの自衛隊への留学、研修等を奨励」すると述べて、外国軍隊の自衛隊による養成を主張している。養成訓練をやる。いいですか。  第三点、東南アジアに対して、武器輸出禁止三原則の関連を検討し、可能な範囲で武器の輸出を行えと言っている。これはこの前の国会で私が三原則をやった問題ですよ。制服はできるだけ武器を輸出しろと言っている。総理大臣、これは重大ですよ。  まだあります。七十四ページ。海上自衛隊も海洋開発に対して参加する、これは平時における防衛力の果たすべき中で大きな比重を占めているので、国家的見地からこれを実現しろと要求している。  これはみんな政治方針であります。制服がこんな政治方針を要求しているじゃありませんか。しかも共同研究じゃありませんか。個人の研究じゃないじゃありませんか。問題が重要だというのは、坂田さん、おわかりになったでしょう。  そこで、私は最後に総理に伺っておきますが、このようなことが制服で行われるということでは、シビリアンコントロールというわけにはまいりません。三木内閣の場合に、シビリアンコントロールの問題を厳重にやってもらわなければならない。私、三木さんにこの前の質問で申し上げましたね。日本がファシズムの方向へ進む危険性があるということを申し上げた。シビリアンコントロールの問題だって、これは厳重にしなければ話になりませんよ。こういう点から言って、シビリアンコントロールとこの問題との関連において、総理大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  273. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまの共同研究につきましては、きょう初めて岡田さんからなにを受けるわけです。これは私の方でも十分に調査をしましてみないと、ここで仮定に立ってお答えすることは適当でないと思いますが、シビリアンコントロールというものは厳重にいたさなければ、この問題をおろそかにいたしますと、やっぱり非常な問題が生じてきますから、三木内閣としてシビリアンコントロールは、厳重にシビリアンコントロールの原則を貫く決意でございます。
  274. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 最後に、これほど重大な問題です。  特に私、非常に心配しているのは、坂田さんみたいに温厚な防衛庁長官ができると、だまされる危険性がある。(笑声)本当ですよ。まじめに一生懸命やっておられるのでしょうけれども、おれは文教問題はわかっているけれども、防衛問題は余りわからぬなというようなお考えでいま御勉強中だと思うけれども、しかし、そういう中で制服がこのような形を進める危険性がある。だから私は指摘している。  ですから、私は最後に申し上げます。この点について質問したいことがこんなにあります。しかし皆さん、きょうは初めてだから、おれは知らぬのだと、こういう御答弁では質問のしようがないわけであります。これらの点は、いずれ総理大臣並びに防衛庁長官がお調べになった後で私は質問をいたしたいので、それまで留保をいたします。  以上をもって私の質問を終わります。
  275. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  先ほどの増本君の発言中、適当でない発言があったと思われる部分がありますので、速記録を取り調べの上、善処いたします。  次回は、明七日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十八分散会