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1975-02-05 第75回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月五日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 竹下  登君    理事 谷川 和穗君 理事 湊  徹郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    大久保武雄君       大野 市郎君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    黒金 泰美君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       塚原 俊郎君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    細田 吉藏君       前田 正男君    松浦周太郎君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       楯 兼次郎君    楢崎弥之助君       堀  昌雄君    湯山  勇君       青柳 盛雄君    中川利三郎君       平田 藤吉君    正森 成二君       田中 昭二君    渡部 一郎君       安里積千代君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      竹岡 勝美君         警察庁交通局長 勝田 俊男君         防衛庁参事官  岡太  直君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         外務大臣官房長 大河原良雄君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵省主計局長 竹内 道雄君         大蔵省国際金融         局長      大倉 眞隆君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君         厚生省社会局長 翁 久次郎君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林大臣官房技         術審議官    川田 則雄君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         水産庁長官   内村 良英君         水産庁次長   松下 友成君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省機械         情報産業局長  森口 八郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         運輸大臣官房審         議官      中村 四郎君         運輸省海運局長 薗村 泰彦君         運輸省鉄道監督         局長      後藤 茂也君         運輸省自動車局         長       高橋 寿夫君         運輸省自動車局         整備部長    田付 健次君         労働省職業安定         局審議官労働         省職業安定局失         業対策部長   岩崎 隆造君         建設省道路局長 井上  孝君         自治大臣官房審         議官      山下  稔君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       藤井松太郎君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   庄司 幸助君     平田 藤吉君   増本 一彦君     青柳 盛雄君   正木 良明君     渡部 一郎君   矢野 絢也君     田中 昭二君 同日  辞任         補欠選任   平田 藤吉君     正森 成二君   田中 昭二君     矢野 絢也君   渡部 一郎君     正木 良明君     —————————————本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計予算  昭和五十年度特別会計予算  昭和五十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。渡部一郎君。
  3. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、現在の社会混乱の中にありまして、最大混乱点であります生命の存在の尊重に立つ政策に対し、総理及び関係閣僚が、当委員会において、非常に貴重なものであるとして、それを防護するべき姿勢を示されたことに対して、敬意を表しているものであります。  生命と健康を維持することは、政治の一つの基本的な課題であります。ところが、今日、私どもは、この問題に対して、決して賢明な施策をとってきたとは言いがたい点が多々あるわけであります。私はそこで、日本の国政の施策というものが、一人の個人に対しては、非常に大きな打撃を与えたり、あるいは苦しみを与えたりしている例がたくさんあるということを、そして生命尊重ということを第一の観点として、施策の基礎を作り直さなければならないときが来ているのではないかという立場から、きょうの御質問をするわけであります。  まず私は、交通遺児の問題について申し上げたいと存じます。  関係閣僚もすでに御存じのことでありますから、話は大幅に省略しながらお話をさせていただくわけでありますが、すでに全国で六十二万人という家族が、自分一家の中の柱と頼む人を失い、そして交通遺児と称せられる人が全国で十五万人も生じているわけであります。     〔委員長退席小山(長)委員長代理着席〕 そして、その交通遺児を抱えている親の収入というものは、調査によれば、大体平均して、四万円、五万円、六万円、この辺のランクが最高である、最大の人数を持っておる。これはインフレに加速されて、交通事故により一家を破壊されている方々がどれぐらいひどい生活状況に追い込まれているかは、もう話のほかである。  ところが、もうはっきり申し上げるのでありますが、交通遺児育英会の方から出された予算案、三億円というものに対して、費用は半額しかついていないではないかという非難の声も上っております。また、実際的に、三万円、四万円、五万円、これはまだ話がわかるのでありますが、中には、家計の収入が、一万円台という方々であるとか、二万円、三万円というような方々が、全体の一〇%近くもある。これはむしろ生活保護世帯として考えられているのでありますけれども、一家の中心的な働き手、三十代、四十代の方を一挙に失った家庭生活の破壊というものは、また恐るべきものであろうと思うのであります。したがって、この交通事故によって生じた欠損家族とでも言うべきこのグループに対して、どういう施策をもって臨まれようとされているのか、まずお伺いをしたいと思います。
  4. 植木庚子郎

    植木国務大臣 お答えいたします。  渡部委員仰せのとおり、非常に痛ましい交通遺児家庭がたくさんおられるのでございまして、五十年度には実態調査官さらにいたしたいと存じておりますが、四十六年の総理府調査によりますと、仰せのような要保護遺児は八・九%、準要保護遺児が二九・一%、合計いたしますと三八%という数字に上っております。  これに対します政府施策につきましては、交通遺児だけではございませんで、非常に多くの国の援助保護を必要といたします恵まれない母子家庭がございますので、これは国の政策といたしまして、福祉政策を展開していかなければならないのでございまして、これはまたこれとして、政府は取り組んでいるのでございますが、交通遺児に対しましては、御承知特殊法人自動車事故対策センターによりまして、育英資金を貸し付けております。これは昨年十二月から一時金六万円を七万円にいたしまして、来年度から毎月の育英資金五千円を六千円にそれぞれ増額をいたします。これは小学校、中学校の生徒でございます。また財団法人交通遺児育英会に対しましても、来年度から現行の補助金一億円を一億五千万円に増額いたしまして、一人当たり貸付金増額いたします。高校生につきましては五千円を一万円にいたしますし、大学生に対しましては二万円でございます。こういうふうに一人当たり貸付金増額いたしますとともに、対象人員の枠の増大の措置をいたすことにいたしているのでございます。各関係省庁十分連絡をとりまして、今後とも、この援護に一段と力を入れてまいりたいと存じております。
  5. 渡部一郎

    渡部(一)委員 交通遺児に関してもう一言申し上げますと、前回、全国交通遺児と母親の全国大会の第二回が開かれた際に、そちらの会からの強い要望が何点か出ているわけであります。ところが、各党の議員がそこに出ているわけでございますが、自民党を代表される方々答弁は明快でなかったと、ここに記されてあります。その内容は、寡婦の、一人ぼっちになったお母さん雇用促進法、このお母さん方は、必ずしも援助をもらうことを求めるよりも、自分たちが何とかして町役場に勤めさしてほしいとか、学校給食調理婦にさしてもらいたいとか、そういうけなげな願いを持っているわけであります。恵みよりも仕事場をという、こうした願いというものが、寡婦雇用促進法法制化に結びついておる。そうしてそれは、いままでに、体の不自由な方々に対しても同等のやり方が施行されている事実があることを考えれば、当然これぐらいのことは考えられてしかるべきである。また、強制保険を、ランクをうんと引き上げてもらいたい、五千万円ぐらいのランクにしてもらいたいという要求もここに出ているわけであります。私はこれらについて政府はどういうふうに考えておられるのか、お答えにならぬといかぬと思うのであります。  なぜかといえば、自民党のそのときの代表がお答えになる内容よりも、これは政府の意思として、こうした問題に対処しなければならぬと思うのでありまして、交通遺児家庭抜本的救済策一つとして、特にこの二項目に対して、どういう立場から臨まれようとされているのか、ひとつお伺いをしたいと存じます。
  6. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 交通遺児お母さんだけにあらずして、一般寡婦方々が勤め先を求めているということは、おっしゃるとおりでございます。そこで、全国の職安を通じて就職促進なども図っておりますが、五十年度からは、寡婦の方を雇い入れる事業主に対しては、月九千円ずつ一年間出して雇用奨励をする、こういうふうにしております。
  7. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私の質問はまだほかにもあるのですが、どなたかその先をお答えください。
  8. 植木庚子郎

    植木国務大臣 いまお話がございましたような施策労働省から行われるわけでございますが、寡婦方々就職につきましては、交通事故関係だけではございませんで、種々困難がございます。そこで、全国職業安定機関におきまして、家庭環境等に十分配慮して、きめ細かい就職の相談、積極的な職場開拓というのが行われているわけでございますが、五十年度からは、先般成立いたしました雇用促進法に基づきまして、事業主に対する雇用奨励措置を講ずることになっております。今後は、各般の対策の充実と相まちまして、事業主に対する雇用奨励措置を積極的に活用してまいらなければならないと存じます。  寡婦の就業問題につきましては、社会一般、特に事業主の理解を深めなければなりません。また、この障害となっております諸問題の一つ一つを克服していかなければならないのでございまして、この雇用の義務づけを法定するということにつきましては、いろいろ問題があるようでございます。しかしながら、これはいまのお話のように、大きな問題でございますから、検討する必要があると存じております。
  9. 渡部一郎

    渡部(一)委員 寡婦雇用のために少額のお金を事業主に出すという、それはきれいに聞こえるわけでありますが、実際面から言いますと、これは非常にやりにくいことを示している。だんだん年をとっていかれる婦人の労働力の質というものは、必ずしも労働市場においていいとは言いがたい。したがって、義務づけられた雇用というものがむしろ必要になる時代は、もう目に見えておる。それに対して、事業者に対して多少の金額を用意した、しかも少ない予算措置がとられたということでこの問題が解決したとは、私にはとうてい思われない。また、事故保険の引き上げの問題、これは大問題が起こるのは目に見えているが、それは当然検討にかからなければならぬ問題であります。そうでなければ、事故者を抱えて国内に、まるで一つベトナム戦争以上の戦争を腹の中に持っているような状態で、交通問題というのは推移していかなければならない。すでに六十二万家族というこのでかい被害者に対して、ろくろく救済措置がとられない。これは三木総理日清戦争日露戦争より大きいのです。日清戦争日露戦争のときは、戦死傷者に対して補償がとられたではありませんか。こんなみすみすこじき化してくる集団をそのままにしておいて、補償措置というものが考慮されないとしたら、これは日本国交通政策はもう根本的に狂っていると言わなければならない。総理、その辺はひとつ十分御認識をいただきたい。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題は、戦争のないときに一万人を超える死者があるわけですから、交通事故を防止するということが一番大事で、昨年度三千人ばかり死者が減ったという状態に置かれている、事故が減少の傾向にある、これは、いろいろな交通上の施設あるいは取り締まり等によってもたらされたわけでございますが、まず第一番に、そういう犠牲者を少なくするということに全力を傾けなければいかぬ。今後ともこれは努力をいたしていくつもりでございます。こういう何千人も死者が減ってくる傾向というものを、やはり助長していくような施策を充実していきたい。  また、渡部さんが御指摘になった母子家庭とか遺児に対して、政府としては、母子年金とか、私も、特に遺児教育資金というものに対しては注意を払って、増額をしたわけでございますが、これは御指摘のように十分といかない面もございましょう。こういう点で、これに対する民間の団体もあるし、今後ともそういう団体とも協力して、こういう不幸な母子家庭生活の安定のために、一段と努力を払う必要があると考えております。
  11. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは話が一つも進まないですな。  総理私が伺ったのは、賠償保険その他に対しては抜本的に増額考えなければいけない、検討しなければいけないのですよということを一つは申し上げた。もう一つは、交通遺児家庭お母さん方に対して、雇用促進法の改正の内容が不十分であって、実際には、その就業を事業所に対して義務づけなければだめですよと、こう二つ申し上げた。御検討があまり行われていないようですから、私はこれは聞いてもだめだなという深い失望を感じながら、次にいきますけれども、しからば、いま総理が逆に言われた交通事故を少なくするという問題で申し上げておきたい。  実際、事故死亡なさっている方は一万数千人という膨大な数が出ております。その膨大な数を食いとめるために、監督諸官庁は非常に努力されておる。現に死亡者も少しは減ってきた。しかし、その中の大きな原因一つ、きょうは一つだけ申し上げますけれども、車に乗っている方々が、いわゆる安全バンドというバンド自分の体に巻いた場合にどれくらい死亡者が減るかという問題について、私はこの間問い合わせしました。答弁を求めていると時間がかかりますから、私はずけずけと言いますが、警察のほうの簡単な見積もりだけで、大体三千五百ないし四千人が死なないで助かるということが予測されておる。これは運輸省自動車局に以前伺ったときも、やはりそういう数字が出ておる。これだけのことがわかっているのに、それが強制されない。それが実際は安全バンドを締めろとは言いにくい。なぜかと言えば、みんながきらう。なぜかと言えば、教育がしにくい。いろいろ伺ってみると、どこに原因があるかというと、実際には車にバンドのついていない車がある。バンドをつけろと車に対して号令をされたのは、実に四十六年からである。そうすると、走行している車の中で、まだ三割を超す車が、実際にはバンドを装着していない。したがって、取り締まりをするべき警官は、酔っぱらい運転以上の危ないのを見ながら、この車は取り締まる、この車は取り締まらないということではやりにくいということを理由にして、実際には取り締まっていない。したがってその車は堂々と走って、数千人が死んでいく。  私は、これはやり方はめんどうくさいかもしれないけれども、実際がどういうことになっているかを御認識いただかなければならない。これは、通産大臣自動車業界を代表して、安全バンドなどをつけろという世論に抵抗しているというように考えて、通産大臣がこの数千人の死亡者責任を負うのか。警察庁長官あるいは自治大臣が、取り締まりをいいかげんにサボったということで責任を負うべきなのか。あるいは運輸行政がまずいということで、その責任運輸大臣が負うのか。総理どうお考えでしょうか。これはまさに行政谷間にある問題である。三千数百人の人をむざむざ殺しているのは一体だれが責任者なのか、私は伺いたい。むしろこれに対して、積極的に取り締まるぞという方向を警察が出し、積極的に自動車メーカーと交渉するぞという姿勢通産大臣に出、運輸行政全体としてこれはまずかったという大反省が運輸省に生まれ、そしてその三者の連絡のなさを解消しなければならぬ。あたりまえのことです。  ところが、交通遺児に対してはきれいな口をきくけれども、恐らくこの問題に対しては、だれもがお答えになれないだろうから、私は申し上げる。総理、あなたの監督される大臣は、この問題に対して三者とも責任を負えないのです。三者とも責任を負っていない。そして、たった一言の決断で済むものが、きょうもまたむざむざと人が倒れていく。一年間で三千人の人が死ぬということは、一日十人の人が死んでいくということじゃないですか。その十人の死というものを背景にしながら、ここでひな壇に座っていられる勇気があるとしたら、それは人間の命というものをどれくらい軽視していられるかの証拠ではないか。私がこういう理屈を申し上げて行政がいくとは思っていない。しかし、行政のやるべきことは、やさしいことをするのが行政なんじゃなくて、行政谷間の問題を埋めるのが行政なんである。大臣自分所管のことをやればいいのではない。現実は、所管に割り当てられて問題が起こるのではなくて、所管所管の境目、妙なところに問題が発生するものである。水島コンビナートの油だって、所管が次から次へ変わるような流れ方をした。それは油をつかまえて文句を言うわけにはいかないじゃないですか。だから、この問題に対して、だれが責任を負い、だれが埋め、そしてこれは安全バンドをつけろという大方針のもとに、政府が乗り出さなくてどうするのですか。  私は、ここに非常にいやな感じをして、この質問をしているわけなんです。これに対してどなたかから的確な御返事をいただきたい。所管大臣からまずお答えになるのがあたりまえだろうと思う。しかし、所管大臣お答えになりにくいなら、総理が決断されて、この問題は片づけると言明をなさらねばならない。生命と健康を守ると言われたあなたのいままでの方針と照らしても、やられねばならないと私は思います。
  12. 木村睦男

    木村国務大臣 御質問の前段の損害賠償の問題でございますが、自動車強制損害賠償保険によりまして、現在、御承知のように、死亡の場合は、一千万円の金額は強制的に保険に入って補償されるということになっております。これも、この制度ができまして、最初百万円くらいからスタートいたしまして、今日一千万円になりました。しかし、その間物価の値上がりその他経済情勢が大分変わってまいっておりますので、さらにこれをもう五百万、千五百万の線まで上げたい、ことし中には何とか上げたい、こういうふうな考えで、現在その準備を進めておるところでございます。  なお、この損害補償の点は、ただいま申し上げましたのは強制的に補償を受ける額でございますが、それ以外に、自動車を持ちます者が任意で、ことに自動車運送事業をやっております者については、任意でもっと上積みの保険に入るように、ということの指導もいたしております。  それから、ベルトの問題でございますが、これは、自動車をつくります場合に、安全ベルトを備えつけるように、ずいぶん前から指導をいたしております。ことに、高速道路がだんだんできまして、ハイスピードが出し得る状況になりますと、この効果は非常に高いわけでございます。そこで、現在指導でもってつけさしておりますのは、ほとんどの車に指導をいたしております。ただ、バスそれから特殊車両、こういったものまでまだ手が及んでおりません。バス等につきましても……。
  13. 渡部一郎

    渡部(一)委員 現実にだれもはめていないということを問題にしているんだよ。あなたはそれに何もなさっていないから、問題にしているんです。
  14. 木村睦男

    木村国務大臣 ベルトの、車に備えつけの問題は、そういうことでございます。そうして、ベルトを備えつけまして、それを常に乗る者がつけるようにということの指導の問題でございますが、これは、警察等とも連絡をとりまして指導はやっておりますが、これを義務づけるという問題は、これは現在はまだそこまではいっておりません。諸外国の例をいろいろ調べてみますと、ニュージーランド、フランスあるいはオーストラリア三国ぐらいでやっておるという程度でございますが、今後とも各省と連絡をいたしまして、御指摘の方向に向かって努力をいたす覚悟でおります。
  15. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ただいまお話ございましたように、安全の保安基準につきましては、運輸省が定めておりますし、この義務づけあるいは取り締まり等につきましては、これは警察庁がやっているわけでございますが、お説のとおり、このベルトをつけますことによります安全上の効果というものは大変多いという例が出ております。ただ、中古車等につきましては、これはまだついていないという状況でございます。道路につきましては、高速自動車国道及び自動車専用道路について、着用を義務づけておる、しかし罰則はない、こういう状況でございますので、これは各省庁にまたがることでございますから、早速、総理府交通安全対策室がいろいろ調整をいたしまして、この問題が少しでも前進をして、渡部委員仰せのような方向に進んでまいりますように、安全の全きを期しますための努力をいたしたいと存じます。
  16. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私の言ったことは、そうのろのろした答弁を求めていないのですけれどもね、総理。もう非常にだらしないのはよくわかりますでしょう、これを聞いておられると。おたくの閣僚がだらしがないのが。保安基準というのは四十六年からできておるのです。ところが、その保安基準に基づいて警察取り締まりができるかというと、自動車がばらばらで、取り締まれないと言っているんです、警察はすでに。いま呼び出してくだすっても結構ですけれども。だから、警察の方でそこを一歩進んで取り締まるためには、交通取り締まり関係は、もう一歩装備を充実するなり何なり、手数をふやすなりしなければできない。保安基準はインチキなもので、どこまでを強制するかどうか、これは何にも明確に書いてない。運輸省自動車に全部バンドをつけろと言っているけれども、そのバンドのつけ方は雑で、アメリカあたりから見たら話にならぬようなつけ方をさしておる。現に自動車に乗ってみれば、安全バンドは全部天井にくくりつけられているか、車体の下でごみと一緒になっているじゃないですか。こんな指導がありますか。だれもが責任を持ってないから、言っているんじゃないですか、私は。そのうち関係省庁でよく連絡してなんて、いつまでにやるんですか、ほんとに。いつになったら人殺しやめるんですか、この内閣は。私は、一人の命の問題を大事にしない者は、何万人の命の問題を論ずる資格はないと思っている。私がいら立って言うのは、三千人も助かることがわかっているものを、何で早くやらないのですか。何でそういう態度が出ないのですか。
  17. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 渡部さんの御提起になった問題は重要な問題でございます。自動車事故による死亡者を少なくするということは、これは政府としてもできるだけの措置を講じなければならぬわけであります。この問題は、おそらく中古車の問題もあり、いろいろ技術的に困難な面もあると思いますけれども、いま御提案は、非常にわれわれとして傾聴しなければならぬ御質問であることを認めます。こういうことで、いま道路交通法などによって、高速道路に対しては一応そう努めなければならぬということになっておるんでしょうが、これをもう少し、どうすれば実際に人命を救助できるという統計も出ておるのですから、この問題を、いろいろのむずかしい問題はあると思いますが、それを乗り越えて、そういう趣旨に沿うたような方向に持っていくために、これは各省にまたがるからといって、こういう問題で責任の所在をなすり合いするようなことは許されないことですから、私の方で各省とも連絡をとって、できるだけ実現可能な方法で、この問題と前向きに取り組みたいと思います。
  18. 渡部一郎

    渡部(一)委員 じゃ、総理のその御答弁を私は信用して、もうちょっと事態を見守りたいと思うのです。  現在、自動車の中で装備がないのが三三%あります。これは運輸大臣所管です。通産大臣責任です。そしてバンドを締めていない人は、実際走行車の実に九割以上に上ります。これは警察責任です。自治大臣所管です。そして、その両者の連絡調整がつかず、一貫した方針が決まらないのは運輸大臣責任です。総理、これは明確に日を切って、時間を限って御指導になるようにお願いします。  私は、今度は全然別のことをちょっとお伺いしたいと思うのです。いまから農林行政及び厚生行政について、ちょっと申し上げたいと思う。  これは、食物の自給を達成するという観点から、当委員会でも数々の議論が行われております。最初の原則的な話を、総理にまず確かめたいのでありますが、食糧の安定供給ということは、わが国の基礎的な方針としていままで理解されておった。ところが、現在、そのもう一つ前段階に考えられることとして、食物は安定供給するという言葉のもう一つ前に、食物というのは安全なもので、そして、栄養価のあるもので、少なくとも人体に対して打撃を与えるものではない、という暗黙の合意が存在した。だからこそ私たちは、安心して米を食い、麦を食い、食物を食い、そして生命を維持することができた、こう思うのです。ですから私は、食物を、人間の口に入るもの、体に摂取されるものを監督あるいは所管される省庁というものが一番気をつけなければならぬことは、まず食物について言うならば、改めて繰り返すようですけれども、安全、健康こそが第一であって、そして採算性とかなんとかいうことは、その上に築かれるべき命題である、こう思うのですけれども、総理はどうお考えですか。
  19. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 全くそのお説のとおりだと思います。食品の安全というものが確保されることが、もう第一前提だと思います。そういう意味において、食品の安全確保については、厚生省において、いろいろな衛生試験所もございますが、これは絶えず周到な点検を行って、国民が食生活に安心できるような措置をとることが、政府の大きな責任だと思います。
  20. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理のただいまの御意見のと太りに行政が推移されれば、私はもう言うことはない、実を言うと。これから少しいろいろなことを、総理、聞いていただきます。  一つは、奇形児が最近増大しつつあります。これは厚生省の出されている統計でありますが、頂生統計協会の発行された「厚生の指標」昭和四十九年七月号によりますと、後期死産に占める先天異常の割合は、一九六一年に対し一九七一年、昭和三十六年に対して四十六年は、先天異常で二・五八倍、二分脊椎で三倍、無脳症で三・二二倍、その他で四・〇二倍になっております。奇形児が実に四倍に近くなっているわけです。また、いやなデータを次々と申し上げるわけでありますが、「悲劇を予防する医学を」によると、医師立ち会いによる死産中の先天異常、その中の無脳症が全体の死産の中でどれぐらいを占めるかと言いますと、死産総数の中でパーセンテージが見る見る上がっております。〇・〇五から六、七、八、九、一〇、二〇、三〇、四〇、五〇、六〇、七〇というふうに上がってきております。実に倍率で言いますならば、大体一九五一年から七二年の間、約二十倍というふうになっております。ここはちょっと見取りにくいかと思いますが、カーブが一直線状に上がっているのは、この先天異常の率の表であります。  また最近の数々の婦人団体における非公式的な調査によりますと、流産、死産、奇形児発生、これが異常増加しているようであり、私もある婦人の百人ばかりのグループで先日調べましたところが、全体の約三分の一が流産、早産、死産、奇形児発生の被害に見舞われております。この三分の一に近いという状態は、異常を通り越しております。日本でこうしたような事故発生がいままでにどれぐらいあったかというデータは、遺憾ながらあまり詳しくはないのでありますが、従来の経験例からして、数%以下というのが当然のところであると思います。  人間の体が壊れてきた、奇形児発生のグラフが異常に伸びているのは、昭和二十七、八、九年ごろ、及び昭和三十五年ごろを契機として、極度に段がついて伸びております。昭和三十五年を契機にして伸びておりますのは、食品添加物であります。昭和二十七、八年ごろを大体中心にして伸びておるのは農薬であります。私が、まだろくろく調査されていないこうした問題について、予見を試みることは科学的でなかろうと思いますから、私はそれ以上の推論を申し上げることは控えたいと存じます。  しかしながら、人体に入る異常物質というのは、大きなものを取り上げてみますと、大体どれぐらいのものがあるか。これはもう次の四種類しか大体なかろうというのが医者の定説のようであります。  一つの大きな群が食品添加物です。数百年前には食品添加物は存在しませんでした。ごくここの十数年、二十数年でどっと入ってきたのです。  もう一つは農薬です。堆肥を使っていた時代は歴史年代として長いが、ここのところへ来て、科学的な手法によってつくられた農薬、これが二群であります。  第三群が飼料添加物であります。牛、豚、鶏に与えられる飼料が、最近とんでもないのが多いということがわかっております。たとえばストレプトマイシンのような、人間に与えられる抗生物質が牛や豚や鶏に与えられる。そのために人間の血液がこういう抗生物質で汚染されているという報告がすでにありまして、政府所管される遺伝研究所においては、人間の血清をとって人体の抗体、細菌に対する抵抗のグラフをつくろうとするのですが、現在の日本人の血清をとったのでは基準にならない、全部が汚染されていて。そこでわざわざオーストラリアからその血清を購入しているという話が現にあり、予算が使われております。つまり日本人の人体が全部そうやって抗生物質に汚染されるということは、私たちが医薬品で汚染されたのではなく、食物で汚染されていることを意味しております。そうしてこの食物は何かということでたどると、鶏、特に豚等に与えられている膨大なマイシン族の存在がこれを証明しております。これは後ほどまた申し上げます。飼料です。  第四番目がいわゆる工業廃棄物です。工業廃棄物は、カドミウムによってお米が汚染したとか、あるいは水銀であるとか、これは打撃がでかいために、今日まで比較的注目され、追撃も容易であった。また分析も容易であった。  ところが、食品添加物、そして農薬、飼料添加物、特にこの二つは農林省の所管でありますが、この二つについては、ほとんどと言っていいほど、見直しが余りされたことがない。私はここで申し上げておきますが、農薬を全廃しようと言っているのではありません。非常に危険性が高いことをいまから指摘いたします。この四つに対して重大な問題がございます。  この本の中に、やはりニールという方が、「すべての先天異常のうち、遺伝性のものは二〇%をこすことはなく、染色体異常も一〇%をこえず、ウイルス感染によるものも一〇%かあるいはそれ以下で、残りの六〇%はその他の主として環境要因によるものであろうとのべている。」つまりこういう異常状態の発生の六割というものは環境要因である。私がいま述べました四項目、これはまさに大きな問題になるのではないかと私は申し上げるわけであります。  そこで、まず話は、最初に持ってきましたのは食品添加物群につきましてであります。論議の時間が余りないようでありますから、私はある程度自分の方でまとめて申し上げます。  総理食品添加物はいま三百三十六種類と言われております。多少の増減はございますと思います。ところが、この食品添加物でどんな試験が行われているかという試験手法について、私は調べてみたんです。そうしたら、実は三百三十六種類というのは、厚生省はずいぶんやかましくいろいろなことを言っておられるわけでありますが、安全性の試験についての公表が行われていないんです。安全性の試験をしているのかもしれない、していないのかもしれないのですが、データが全部公表されない。データが公表されないで、安全ならばそれは私は問題にしないのですが、たとえば総理、前に国会で問題になりました亜硝酸ナトリウムというのが、ありました。魚肉ハム、ソーセージとか食肉とかいうものに入っておりますが、これは発がん物質であるということで、すでに委員会でも何回か論議されました。これについての安全性の試験は公開されておりません。公開されていないものです。  また、一つずつの薬品の名称を申し上げることは、私はちょっと控えさしていただこうと思うのです。めんどうなのと、もう一つはよけいな打撃やよけいな大混乱が起こるおそれがあります。この中で、私どもの心配では、毒性試験をしていないもの、天然に存在していないもの、アメリカで使用していないもの、毒性が強過ぎて大変危険なものというようなものが、大まかに言いまして現在百ぐらい指摘されております。  特に着香料という変なものがあります。着香料というのは、においをつけるということになっておるのですが、その着香料というのはまことに妙なことでありまして、「食品衛生調査会において調査審議を行なう際の基準」の中に「食品添加物は、原則として添加した食品の化学分析等により、その添加を確認し得るものでなければならない」となっております。添加したのがわかるような基準のないものは、そんなわけのわからないものは、使うとどれくらい使ったかわからないから、使ってはいけないとなっておるのですが、この着香料については分析ができない。これにひっかかる。この着香料というのが百種類もあるのであります。  ですから、どう考えても、この食品添加物群はおかしいんじゃないか。ですから、いろいろな各種の、こちらからもあちらからも安全性についての学問的見解があります。そのすべての見解を網羅することは不可能だと思います。しかし、安全かどうかについて、安全性の試験はこういうふうにしましたと公開する。少なくとも、学問の世界に公表しなければならない。公表すれば集団の目によって監視ができる。これは当然のことだと思うのです。薬事法というのによりますと、ついでに申し上げますと、薬事法の四十一条というのは、これは一般の薬に対する態度でありますが、これは安全性の公開という項目があります。ところが食品添加物だけは安全性の公開という項目がない。したがって、こんなとんでもないことになったと理解されるわけですね。  いま、私が厚生大臣伺いますから、聞いておいていただければわかります。厚生大臣は、この辺よくお調べになって、きょうおいでになったはずであります。私は厚生省との間で食品添加物問題については何回か論議もいたしました。現在の食品添加物の認可は、一時かたまってどんと行われたことがある。そこで、現在の手法で点検し直しますと、たとえば発がん性であるとか、たとえば催奇形性、これは奇形の発生の試験であります。催奇形性であるとか、こうしたものについては、ろくろく手法が確立されていないのです。ですから、最新の方法によって、いま全部一遍総点検し直すということが大事なことの第一ではないか、私、提案します。  第二は、今度は三年ごとくらいに、ともかくそのときの最新の手法で全部点検し直すことが必要ではないか、これが第二です。  第三番目は、安全性試験をやったら、ともかく安全性試験はこういうようにやりまして、こういう結果が出ましたからこうなりますと、薬事法の四十一条にほぼ準拠して、食品添加物についても公示をするべきじゃないか、公表するべきじゃないか。これは消費者の四原則の一つでもありますけれども、検査方法を公開する、データを公開するのが大事なんじゃないかと思うのですけれども、どうでしょうか。  厚生大臣、私はまとめて一遍に申し上げましたから、途中のデータや薬品名やその他で多少異同がありましたらお許しをいただきたいのですが、その基本原則の問題についてお答えいただきたい。
  21. 田中武夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  第一問の遺伝性毒性についてのメトーデ、方法論につきましては、食品医薬品安全センターにおきまして今後これを確立するという方向で、鋭意これを急いでいるわけであります。  第二問は……(渡部(一)委員「安全性の公開です」と呼ぶ)公開については、今後の分については全部いたすという所存でございます。(渡部(一)委員「それからいままでのを全部再点検するということです」と呼ぶ)いままでの分につきましては、実はこれについてたくさんいろいろな種類のものがあることは、先生御案内のとおりであります。それで、昭和三十八年以降に指定されたものにつきましては、これは相当の基準でやっておりますので、まずまずということだろうと思いますが、それ以前に指定されたものについていろいろ問題があるようでございますが、これらにつきましてもいろいろな種類のものがございます。たとえばすでにアミノ酸やビタミン等食品に常在している成分、これについても、自然にあるものを合成したというところにいささかの問題があろうと思われますし、それからWHOの評価済みのもの、あるいは最終食品に残存していないもの等々いろいろなものがありますが、これについて検査の能力も実はあるようでございます。  率直に言って、私、大臣になったときに、一年に三品目か四品目しか新しい検査項目に入れられないというのは一体どういうことかということで、反問をしてみましたが、どうも技術的に聞いてみると、余りそう怠けているふうでもございませんですが、いずれにいたしましても、相当の検査が必要だと思いますので、これにつきましては、心配なもの、あるいは緊急なものから、逐次これを調査をいたしまして、全部の品目について調査をするように、機関の整備等を急いでひとつやっていきたいという方針でございます。
  22. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、聞いておられるとわかりますでしょう、大臣が困っておられることが。つまり薬の検査というのは手間がかかるのです。それで、添加物の場合は特に時間がかかるわけです。その上に予算措置がだめなんです。大蔵大臣、これをわかっておいていただきたい。予算措置が全然だめなんです。ランクが二けた違うのです。そして優秀な人を集めなければならない。ところが、その優秀な人を集めるのに金がかかるものですから、製薬会社の人に頼んじゃったりするような、検査方法の不備があるんです。検査にならぬ分がある。だからAF2騒動のときに、御承知のとおりですけれども、上野製薬側に寄っちゃって、向こうのデータをもらったような事実がある。ですから、ここのところで年間で三品目ないし四品目ずつやるとどのくらいかかるかというと、百年かかるわけですね。だから、百年かかって食品添加物を検査し終わったころは、その影響のために、おそらくこの奇形児発生のデータはもっと上がるだろうと私は思うのです。これは食品添加物でいま危ないぞと言われているものを検査するのでさえ、これなんです。だから、三品目か四品目しか検査していかない、これは命を尊重するという姿勢では全くあり得ない。これは残念なことに、素人の常識の方が健全なんです。三つずつ検査したら百年かかるじゃないかという、この危機感がないところに問題がある。だから、その都度行政で、検査をし抜いていかなければならない。最新の技術ができるたびに検査していかなければならない。そして安全性を公開しなければならない。安全試験をこういうふうにしましたと討論にかけなければならない。  いま厚生大臣は、いままでの厚生大臣とはこの点ずいぶん違う。すばらしく前進された答弁なんです。これは正直言って、総理そうなんです。それはなぜかと言ったら、これから安全性の試験したものは、これからの分は全部公開すると言われた。これだけでもすごいんです、実は。秘密主義でいままでとびらをあけたことがなかったんですから、あいた、これは画期的なことです。そして、三品目ないし四品目しか検査できないということに着目されて大臣指摘されたというのは、それは大臣の卓見なんです。大したものなんです。ところが、いままでのプロみたいな顔していた大臣がどういうことをなすったかというと、そういうのはいままでのしきたりで、いままで二つか三つだったから、三つか四つならいいものだ、というような調子で、問題にさえしなかった。総理、ですからこれは厚生大臣及び大蔵大臣を督励していただいて、そうして特別の予算措置を講じて、食品添加物群についてはここで早急に一回全部再点検して公表する。それまでは使用量についてはなるべく控え目にする。全部禁止にするということについて困難があるのは、私はわかっております。私はきょうは、そんなことを議論しようとしているわけではありません。ともかく食品添加物を一遍全部、いまの既存の技術でざっとやったらどうか。  ついでに申し上げますが、一品目の検査に数千万円かかります。しかし、この検査の費用として全部ついているのは、二、三品目の分しか予算がついておりません。だから、何とか研究所がある、食品添加物の研究所がある、食品何とかセンターがある、こういうお言葉がありますが、そういうのは、事実上はその人件費その他に使われておって、実際に検査する具体的な段階では、何もできてない。こういうふうに命を守ることについて金がついていなかったのが、いままでの一番悪いところです。総理、ここのところで総理の決意を表明していただけませんか。
  23. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 従来からも、私は、食品添加物の問題というものは、環境庁長官の時代も非常にやかましく言ってきたわけです。それはなぜかと言えば、食生活に国民が多少でも不安を持ったり、不安ばかりでなしに、それが実際問題として次の世代に大きな影響を持つわけですから、そういうので、これには、いま言ったような食品添加物の検査というものは、そう簡単にいかないということは、渡部さん御存じのとおりでございますが、多少いろいろ問題のありそうな食品に対しては、点検をすることは当然だと思います。そういうことで、どのようにして食品添加物の一つの検査というものの体制を強化するかということは、私もこれから十分関係省とも話し合って、この問題は確立の体制をとりたいと思っております。
  24. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理お答えとして、それで結構です。ただ、総理、申し上げておきますが、これは早い機会に——もう一回要望しておきますが、早い機会にすぐ全部点検すること、よろしゅうございますか。全部すぐ点検すること。それからその次に、数年ごとに最新技術でその都度見直しをするシステムをつくること、これは私やかましく申し上げておきますが、これをぜひやっていただきたい。
  25. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、やはりいろいろな技術的な問題もあろうと思います。そういうことで、御趣旨はよくわかります。できるだけ御趣旨の線に沿うような形で、食品添加物の安全検査の体制を強化するように努力をいたします。
  26. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、それでその問題いまひとつおきまして、次に農薬にいきます。  農薬は、ここにまだ話がたくさんあるものですから、少し飛ばしていきますが、ここに「農薬要覧」というのがあります。番号を見ますと、一万七千くらいついています。恐らく五千種を超える農薬が現在使われていると思われます。総理、農薬というのは口に入らないと思っていたから、こんなにたくさんできたわけです。口に入らないという前提があるからです。口に入らなければ、あるいは虫を殺すとかそういうのならば、まさか人体にリンクしてこないという前提があったからこそ、かなり人体の安全という点では雑な考え方で、こっちは恐縮なんですが、どんどん認可された。厚生省が農薬を認可したら、恐らくこんなに認可しないでしょう。食品添加物で三百何十種なんですから、厚生省は恐らくまあ五百種も認可したらいいところだろうと私は思うんです。農林省は五千種認可した。そこには、人体にリンクするということが考えられていなかった節がわるのではないかと私は思うのです。これは想像です。  ところが、最近に至りまして、いろいろなことがわかってまいりました。まず、これは農薬に対する基礎資料を農林省から提出を求めたものがありますから、私の方でいま読んでみます。「農薬について登録されているものは四十八年九月三十日現在で五千二百二、使用量については農薬要覧の四ページから一六八ページを参照のこと」なんて書いてあるんです。何万トンになるか、そろばんがはじかれたことがどうもないみたいなんですが、安全性をチェックするものの関係法規、機関、人員、予算等についてと、こうあれをしましたら、関係法規というのは農薬取締法関係法規、これなんです。そこで、これをめくってみますと、どんなことが書いてあるかというと、「農薬安全使用基準」というのがあります。それで農薬の使い方について、農薬を使う人にこういうことが望ましいよと、「公表するものとする」と書いてあるだけなんです。農林省は公表する。それでこの後ろの方を見ますと、カキ、ナシ、リンゴ、ナツミカンなんという例が載っておるのですが、もいで出荷するまでの四十五日前からはもう使っちゃいけない、人の口に入る可能性のある一カ月半前から使っちゃいけないと、ここに書いてあるんです。これはカキの例です。  こういうような公表で農薬がちゃんと使われ得るかといったら、それは、現実問題としては、こういう使い方でない部分が相当部分出てくることは、もう十分予想できると思います。人体に関しないなら、こういう雑な言い方でも大丈夫です。ですから、この農薬取締法というのは、取り締まっているのではない、農薬公表義務づけ法とでも言うべきものですね。それで責任転嫁法とでも言うべきものだろうと、私は悪口を言えばそう思います。  それで、これをチェックしている機関は農林省の農薬検査所であります。財団法人の残留農薬研究所でありまして、両者の人数は五十五人前後であります。そしてその予算につきましては、今期予算で数千万円の予算がついております。  ところが、ここに最後のところでこう書いてあります。「農薬安全評価試験技術確立費」と書いてあります。もう一つは、「農薬催奇形性試験技術確立費」と書いてあります。これはどういうのかというと、奇形が発生するのを試験する技術を確かめる費用、これから試験のやり方を決めるんだと言っているわけです。またもう一つは、農薬が安全かどうかを評価する試験の技術を確立するための費用だと言っているんです。いまから始めているわけですね。これはもう何も人体関係はできていなかったことを示しております。内容については、私は細かく技術的に議論しようと思いませんが、これは正直打ち明けた話だろうと思うのです。  私は、これ以上、この問題で農林省をここでぎゅうぎゅう言わせるつもりは実はない。気の毒というよりも、むしろ農薬と人体との関係についてはほとんど的確なものがなかったという感じが、ここのところでは出てきているわけですね。  ここに「農薬安全使用基準のしおり」というのが、農林省農蚕園芸局植物防疫課の監修で出ておりますが、「人体許容一日摂取量(ADI)」というのがここに書いてあります。「(ラット、マウスなど)に一生涯(約二ヵ年)毎日農薬を混入した飼料を与える慢性毒性試験、二世代以上にわたって農薬を毎日与えて子孫に及ぼす影響をみる繁殖試験及び農薬の摂取により奇形の子ができないかをみる催奇形性試験、その他の毒性試験で、なんら健康に影響が認められない量を求め、この無作用量に少なくとも一〇〇倍の安全率を見込んで算出する。」となっております。これは厚生省の方に聞いてごらんになればすぐわかりますけれども、この試験はまことに雑で、人間に対してはこんな基準では批判にたえられません。最近では、ミカン畑で農民が農薬を使うことによって訴訟が起こっております。これによっておそらく千人程度が死んだというデータを掲げ、ニッソールというミカン農薬に対しての訴訟が行われております。また久留米では、農薬工場の周りに同じ円形に肺ガンが増加しているというデータをもって訴訟が行われております。農薬は、食べる消費者にとって大事であると同時に、農薬を使用する人にとって、非常に大きな健康問題の重要な種になることを、これは指摘しております。  だから、私はここではちょっと論議がしにくいのでありますけれども、いま農林大臣に伺ってみます。農林大臣お答えいただきます。農林大臣、農薬の検査基準を今後至急完成しなければならない。至急完成するためには、少なくとも人体の専門家である厚生省とよく連絡をおとりいただいて、厚生省の検査基準とも合わせて、より安定した、より安全な基準を一刻も早くつくる、それが大事だと私は思いますが、どうお考えですか。
  27. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ただいま渡部さんの御指摘がございましたように、農政につきましては、国民食糧の確保とともに、国民に提供する農産物の安全を確保するということが非常に大事なことであろうと思うわけでございますが、農薬の安全性の確保について、従来から農薬取締法でやっておるわけですが、これについていろいろと問題があるという御指摘でございます。これは厚生省が指定するところの食品衛生法による食品中の農薬の残留基準を決めていただいて、それに基づいて農薬取締法で、農薬安全使用基準を設定するわけでありますけれども、いまお話がございましたように、やはり予算上の措置等につきましても十分でない点があることは事実でございますし、今後とも、これは農林省としては、厚生省あるいは環境庁等とも密接に連絡をとって、何としても農薬は、いまお話がありましたように、農産物ということに直接つながっていくわけでありまして、そういう安全性を確保するために、これは万全の措置を今後とも講じていかなければならぬと思っております。
  28. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これは総理大臣、この残留農薬に対する表現、いまお聞きになったとおりなんです。これがいけないのです。というのは、悪いのですけれども、いまキャベツの例をちょっと申します。残留農薬というのは、これぐらい以上残留農薬があってはいけないのだという観点の検査を、まず厚生省が基準を決めて農林省に言うと、農林省は何キログラム以上は畑にまいてはいけませんよというように公表する。そして出荷の何日前からまいてはいけませんよ、こう言うのですね。ところが現実はどうか。この農薬を厚目にまいた方が腐らないし、厚目にまいた方が場合によっては果実は大きくなるし、農民はそれを否定することはできませんですね。だから残留農薬基準から、まくのは何日以前はまいてはいけませんというまき方を、農林省が決めて発表しても、現場はもっと残酷です。現場は大量にまかれてしまいます、農薬会社はたくさんまくことを奨励しているのですから。そして農薬をまく基準についてのPRは、農薬の袋を多少手にしてみましたけれども、ほとんど書いていないのです。何キログラム入りとパックがあるだけです。それで中にはカップに三分の一とか四分の一とかという微妙な表示がついているのがあります。しかし、そんなものは、農民の場合に、忙しい働き手の場合に意味がない。そうすると、手で一しゃくり二しゃくりというふうになります。したがって、農薬でまぶしたようなキャベツが出る場合がしばしばあります。  最近のスーパーマーケットの話を一つしますと、総理御存じかどうか知りませんけれども、私はトマト好きなんですが、最近トマトの味がしなくなりましたね。スーパーで、この間トマトを私は買いました。そしてトマトを台所に置いておいたのです。忙しいものですから、はっておきました。四カ月たったのですが、トマトは腐らない。トマトというのは、十日もたてばもう完全に腐るのが本当ですね。トマトが腐らない。私がトマトは何をかぶっているのだろうと思ったのが、こんなに農薬を調べた理由です。そうしたら、トマトがかぶっているのは、もう一種類や二種類じゃない。農薬のどれが原因なのか、私はまだわかりませんが、腐らない。ついでにキュウリもほうり投げておりましたら、キュウリは現在四カ月、まだ元気よく台所で寝そべっています。それからもっといやなことは、キャベツが腐らないのです。腐らないということは、それはいいことであると同時に、人体に対しても、人体の微生物、人体の微妙な細胞に対しても影響を与えることを示しています。  私は、さっきも言ったように、農薬を全部使うなと言っているのではありません。間違えないでいただきたい。しかし、こういうような調子に行っちゃうのに網をかぶせるためには、この雑な農薬取締法、農薬はこれ以上使ってはだめだよという公表をしたというだけの法律、これは取締法では全くなかった。この「農薬安全使用基準のしおり」、こんなものにわれわれの命の安全をまかしていいかという問題が残ってしまいますね。だから、いま農林大臣の言われたのはそれなんです。残留農薬基準を厚生省に決めていただきました——厚生省は決めたのです。厚生省は農林省に押しつけたのです。農林省は、はいはいといただいて、何キログラム以上使ってはいけないと設定したのです。それで終わったのです。二人の大臣責任はないのです。そして人に奇形が発生するのです。これは二つの省の間に問題が起こったのではない。現場を見なかった、政策立案というものに依存してきた結論がここへ来たと私は言いたい。これも十分御認識をいただきたい。  そうすると、農林大臣、この法律は直さなければだめです。こんなのじゃだめです。これはもう破れた障子紙みたいなものです。もうずたずたなんだ。これは「関係法令集」と書いてあるけれども、法律のかっこうになっていない、本当に残念だったけれども、そしてこれはあなたの責任と私は言いたくない。あなたは農林大臣になられたばかりじゃないですか。私は期待しておるのです。こうでないものを出していただきたい。そうしなければ、このままに推移するのだったら、私は、人間の存在に対して農林省は打撃を与えたという非難を、次の瞬間にはかぶらなければならぬと思うのです。だから、私のほうはこれは問題提起です。きょうは詰めようとしたって、詰める方法はないじゃないですか。だれも答えられません。  次の問題に行きます。今度は三番目の問題です。それは畜産飼料です。総理、畜産飼料について、これはおもしろいことがあるのです。畜産というのは牛、豚、鶏等の動物です。そして、これに対していま増産が叫ばれているのです。  この畜産飼料というのはどういうようにやられているかというと、「飼料添加物公定書」という、法律によらない文書によって、添加物が表示されているんです。こういうものです。これは昨夜いただきまして、拝見したんです。総理、これでもう私は驚いちゃったんです。何が驚いたか、ちょっと字が小さくて読みにくいのですけれども、いまそっちへ持っていってごらんに入れますが、一つは、何とかマイシン、かんとかマイシンというマイシンとかペプチンとか、そんなものがずらっと並んでいるのです。人間の体に入って医薬品に使われるべき抗生物質の耐性、抗生物質に対する抵抗性をつくるのに役に立つものがずらっと並んでおるのです。全部で二十五ありまして、そのうち九つだけ除きまして、十六がそうです。これはちょっとどうかと思います。これは農林省にもきのう、やめていただきたいと申し上げましたら、当委員会で返事をするというお話でしたから、後で御答弁を求めますが、そういうことになっておるのです。  もう一つは、この資料のあれで驚いてしまいましたのが、大臣はAF2騒動は御存じだろうと思います。AF2につきましては、前官房長官、副長官等にもお世話になりましたし、皆様方にも大分御助力いただきまして、AF2の使用に関しては、催奇形性、発がん性等につき重大な疑問があるということで、使用を禁止していただいたはずなんです。ところがこの中にそのAF2があるんです。正確に言えば、AF2の同族であります。台糖ファイザーのつくっているパナゾン、パナゾ、ン飼添、それから上野製薬のつくっているフラゾリドン、フラゾリドン飼添——飼添というのは飼料添加物の意味です。それから同じく上野製薬のつくっているフラミゾール、アラミゾール飼添、そしてこれは何の変哲もないのですけれども、調査室から調べてもらいましたら、これについては飼料添加物であるというたてまえで、これは食品じゃない、AF2は食品に入っておる、こっちは飼料添加物に入っておるんだということで許可が行なわれ、使用量はフラゾリドンについては年間五百トン、それがいま二百トンぐらいになっている。パナゾンについては四十トン、現在十トン程度。これは農林省の担当官から聞いたものであります。  そういうものを使うのはどういう意味があるか。ちょっとごらんいただきます。これはちょっとすご過ぎるんではないか。私は農林省のこれからを期待する一人ですけれども、少なくともこのマイシン族の多用については控えるべきであり、かつ、ニトロフラン系加合物、AF2類似のものについては、即時に使用を停止されることが妥当ではないか、こう思うのですが、御答弁をいただきたい。
  29. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほど農薬取締法の問題についての御指摘につきまして、これはいろいろと使用上問題があるわけでございますが、これについて、やはり、農民の対応の仕方、あるいは農民に対する理解等も深めていかなければならぬ問題でもあると思うわけでございますが、いずれにいたしましても、農薬取締法について、さらに基準等につきましては、ひとつ見直していきたいと思います。  それから、飼料の問題でございますが、確かに飼料の添加物等につきまして、安全性の確保といったことについていろいろと御議論があることも当然でございまして、農林省としても、厚生省と密接な連携のもとに、確保には努力いたしておるわけでございまして、今度の国会に、御存じのように、飼料の品質改善に関する法律の改正をお願いしておるわけでございますが、その中に飼料添加物についての安全性を加えて十分御議論をいただき、見直していこうという方針でございます。  さらに、AF2、それに類似する添加物のお話でございますが、いまお話のように、二百トンばかり現在も使用しておることは事実でございます。しかし農林省としても、これについては、農民の方から使用さしてほしいという非常に強い要望があるわけですが、しかし、これについては十分理解を求めながら、これはひとつぜひとも縮小、やめさしていくように、今後最大努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  30. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣、それははっきり言わないとまずいですよ、そんなのは。それは農民が求めているからだなんという言い方をするのでは、農林省にならぬじゃないですか。農民が求めていても、やめさせなければならぬことはありますよ。AF2がいけないということは厚生省が言ったんだから、それなら厚生省の係官から、もう一回、AF2がいいか悪いか議論しましょうか。やめるのはあたりまえじゃないですか。マイシン族が危険だということはあたりまえじゃないですか。何でそれくらいやらぬのですか。私は、あなたが答えやすいように、ほかの全体的なことについて何にも触れていません。もう目先で、危険の中の危険の、本当の一部に限って、これだけやめろと言っているのじゃありませんか。しかも、ちゃんとほかに代替する薬品が残るようにして、私は質問しているじゃありませんか。それでなければならぬなんというものはないじゃないですか。それではあなたは、農民のこともわかっていないかもしれないけれども、人の命ということもわかっていないとしか言えませんよ。
  31. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いままでの安全性については、現在までのデータによりますと、畜産物等への残留は認められない、こういうデータが出ておるわけでございまして、現在はそこで、採卵鶏用には使用しない、あるいはブロイラー、肉豚用には、食用としての出荷前の使用禁止等の措置をとっておるわけでございます。
  32. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これはまことに残念ですけれども、総理、あの方は係官のつくった文章をそのまま読んでおるのです。私がこんなに慎重に議論してきましたのは、農林省のいままでというのは、雑な試験で、人体等への影響をあまり考えなかった。だから、鶏にAF2を食わして十日もたつが見つからないじゃないか、こう答えた。AF2の恐ろしさというのは、非常に認めにくいところにある。分析しにくいのです。しかも体の中に入るとほとんど見えなくなってしまう。そして分解されたときに打撃を与えることにある。だからAF2であんな大騒ぎをしなければならなかった。だから疑わしきは罰するというやり方で、これをとめざるを得なかった。現在そのデータは続々出てきて、肝臓がんの発生を初めとする大問題がずらっと出始めているところです。そのAF2の同族で、より乱暴な製剤であるこれらのものを、飼料に使っていいわけはない。鶏や豚は前の日までえさをついばむじゃないですか。そうしたらストレートに人間に入るじゃないですか。そんなことは常識の常識なんだ、ところが農林省の検査方法というのは雑だったのです。  いま、飼料の品質改善に関する法律の改正をしたいとおっしゃっているけれども、私はもう一つ申し上げなければならない。飼料のいままでの検査というのは、総理、栄養分と異物混入検査しか行われていない。ここにデータがあるのです。雑なものが入っていないかということと、異物が入っていないか、砂や何かが入っていないかという検査しかしないんだ。人体の検査なんかしていませんよ。どこにあるんですか。これは実際の検査官のデータじゃないですか。これはひどいよ、そんなことを言うのは。農林大臣、それはまずいですよ、あなた。あなた、そんな答弁をなさるのはまずいですよ。少なくともAF2に関しては、厚生省が禁止するほどの問題であったということを認識したら、とりあえずとめて、検査なすったらいいじゃないですか。検査技術が確立されていないのに、がんばって使わせるというのはどういうわけですか。検査技術はできていないんじゃないですか。飼料の品質に関する法律を改正するとおっしゃっている。しかし、これをやる人員がいるかというと、いない。人体の専門家は農林省にいないじゃないですか。それに、飼料の人体に対する安全性の問題は農林省がやるなんというのは、越権行為です。少なくとも重大な問題があると言わなければならぬ。農林省は自分の省を、厚生省を含んだほどの大きなものにするというならできるかもしれない。厚生省でさえいま問題が多いじゃないですか。どうしてこんな法律でごまかそうとするんですか。私は、飼料の品質改善に関する法律はわからない。しかもこっそり交渉が行なわれている。  総理AF2及びこのマイシン族については、少なくともマイシン族については、飼料に抗生物質を入れると、薬に対する抵抗性が生まれてしまう。それは人間が抗生物質を飲んでも効かないことを示してしまう。そうしたら、いまの医療体系は覆ってしまう。これほどの問題があるんだから、鶏や豚に対するマイシン族の使用は大幅に削減せよというのは、私はあたりまえの議論ではないかと思う。AF2についてはいま申し上げたとおりです。総理御理解をいただけないでしょうか。
  33. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 きょうの渡部さんの御質問、きわめて重要な問題に触れている。私は、やはり安全性というものに対しては、政治全般についてやはりこの際、もう一遍いろいろと見直して、体制の弱い面も確かにあります。これは強化する必要がある。やはりこれからの政治の中における、食品にしても、あるいは飼料にしても、生命、健康にやはり直結する問題ですから、安全性の確保に対する体制というものは、これは再検討をいたします。ただ、マイシンが飼料としてよくない、これは人体に入って抵抗性を失うかどうかということは、これは私がいろいろ即答というより、専門家の意見も徴さなければならぬ。また、厚生省でも農林省でも、人体に影響のあるということについて、これは十分な注意をいままで払ってきておることは事実であります。しかし、その体制は強化する必要があるというのが私の見解であります。これはやはり今後、体制については十分に研究をいたします。
  34. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、もうほとんど持ち時間がなくなってまいりましたので、まだ膨大な議論をしなければならないのですが、総理がいままとめておっしゃってくださいました。食品の安全についての体制を強化すると言っていただいた。それを私は大いに期待したいと思うのです。ただ、いままでなかったに等しいということを考えていただきたい。機構の一つずつは存在している。しかしそれが総合されていない。いわんや予算措置が行われていない。方向性がなっていない。農林省と厚生省との間の連絡が悪い。そしていま農林大臣がここで、AF2関連の飼料をとめると発言できなかったほど、抵抗の強い何かが存在しているということも、御理解をいただかなければならぬと私は思うのです。安倍農林大臣の名前は、AF2とともに一生記録されるでしょう。  次に、いま、石油たん白、SCPというような微生物たん白の問題が起ころうとしている。これをえさの中に混入することについて、厚生省は否定的な見解を表明されておられる。前回までは厚生省段階で食いとめられた事実がある。ところが農林省は、いまこれに大胆なる予算措置を講じ研究を再開、業者は喜び勇んで、この危険な石油たん白が売れると叫んでおるわけであります。これは現実問題として、そういう方向へ業界は挙げて進もうとしておる。私は、これもまた重大な危険性があることを、きょうは予告するにとどめたいと思うのです。そして石油たん白問題がすぐ議論できなかった理由は、こうした幾つも幾つもの問題点かもう全部壊れているので、私は一つずつ一つずつじゅんじゅんときようは申し上げた。まことに初歩的な話から恐縮な議論でございましたけれども、農林関係の議論はそれにとどめたいと思います。  最後に私は申し上げるのでありますが、一つだけ外交問題についてお尋ねをしたいと思います。  日中友好平和条約について、現在、その影響が好ましくないと、ソビエト政府からは再考を求めておられる由、新聞情報をもって伺っております。また、この交渉が意外にまとまっているにもかかわらず、実際にはスタートしていないことも了解をいたしております。私どもは、日中友好平和条約について政府が一歩前へ前進されるのか、あるいはここのところで後ろへ引き延ばされるのか、国民の注目はここにかかっております。  私が申し上げるのは、これから外交である時代が来たと思います。一つの決断をするに当たって、アメリカもソ連も中国もみんなを考慮しなければならぬ、それはもう当然のことであります。一国の大使がどこかへ来たからといって、大騒ぎする必要は別になかろうと私は思います。議論は勝手。多少のことに内政干渉などと大騒ぎする必要も、これまたなかろうと私は思います。しかしながら、この日中友好平和条約が何となく進みにくい雰囲気になりつつあるということについては、私は国民の代表の一人として、率直に総理の決断をお伺いしたい。そして、どれくらいのところでこれを持ち込んでいかれるかということについても、重ねて当委員会での決意の表明を伺いたい、これを総理と外務大臣にお伺いしたいと存じます。
  35. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日中平和友好条約は、共同声明の中にも明記され、国会においても、参議院、衆議院、ともに両院満場一致の決議で、平和友好条約の締結を促進すべき決議が行われておるわけでございます。国民の総意である。したがって、この問題が、相手があることですから、話がまとまらなければ別でありますが、まとめることに、日本の外交は自主的に判断をしてやるわけでございますから、これが進められにくい雰囲気があるというふうには考えていないわけでございます。どうか、そういう点では、話が先方との間で煮詰まれば、これはもうちゅうちょはしないということでございます。
  36. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま総理の御答弁になりましたような基本線に従いまして、すでに二回、中国側と話し合いをいたしております。両国の将来への友好関係を確固たるものにいたすためにつくる条約でございますので、特に日を切って急ぐというような考えはございませんけれども、しかし、両方の合意が見られれば、できるだけ速やかに話し合いを詰めていきたい、こう考えておりまして、先ほど渡部委員の言われましたことは、まことに私、賛成でございます。こういうことでありますから、多面的、多角的な外交ができるのであるというふうに考えておるわけでございます。
  37. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは私、次に、もう時間がなくなりましたから、最後に、アラブ外交についてまとめてお伺いいたします。  総理は、今回の施政方針演説の冒頭で、アラブ外交に対する意欲的な姿勢と原則を表示されました。これは明らかに原則的な立場であろうと理解をいたしております。そして、かくのごとく明快に述べられたことに敬意を表する一人であります。しかし私は、この問題について多少のことを申し上げたいと思うのでありますが、現在、アラブ外交問題は、事実始まったばかりで、大問題がたくさんあるわけであります。  まず、この地域における大使館数、人員等はきわめて薄く、メンバー、陣容においても非常に少ないことが明らかであります。数字を申し上げる余裕はありませんが、アラビア語を練達に話せる者がわずかに十名程度という一事をもってしても、これらアラブ諸国に対して正当な交渉ができようとは思われませんし、課長以上でアラビア語を話せる人がいないというお話伺いましても、それは明らかだと思います。  また、現地のアラブ諸国の中では、首長国連邦のように、おのおのが一国扱いされることを望んでいる連邦国家があります。そういったところには領事館等を多数配置しなければならないことも事実でありましょうし、数が全く足らないどころか、支障を来たしていることは事実であります。しかし、それを一つずつ充足するとしても、とりあえず東京において、彼らが従来よく求めておりましたPLO事務所のようなものは、至急開設なすった方がいいのではないかと私は考えております。モスクワやニューヨークやパリにあるものが、日本に置いて悪いはずはなかろうし、アラブ側とも、またその反対側とも均等につき合うことが、わが国の友好外交の基礎をなすであろうと思うからであります。  また、石油問題とからんで、アラブ等に対し武力行使をするというふうにアメリカ側が言うたことに対し、政府は一回もそれに対し、抗議をされたことがないというのは問題であろうと思います。  また、国連問題で、アラブ側を支持するというようなことについて、ニュアンスを多く与えながら、PLOのある問題に対しては反対の意思表示をされたことも、非常に問題が多かろうと思います。  これらに対して、政府の一括しての御見解を承りたいと存じます。
  38. 小山長規

    小山(長)委員長代理 時間が終了しておりますので、明快にお願いします。
  39. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 パレスチナ問題を冒頭に私が申し上げたのは、今年度の最大の国際課題は中東問題である、しかもそのことの和戦の行方というものが、日本に対して致命的な影響を与える可能性を持っておるからでございます。そしてその原則は、御指摘になりましたように、武力による領土の占領や拡張は認めない。一つは、イスラエルを含む中東諸国の生存権を保障するということが骨子になっておる国連安保理事会の一九六七年の決議、これがやはり中東に公正にして永続的な平和達成の基礎である、こういう認識のもとに、これを促進するわけでございます。それに、一九七一年後加わったパレスチナ人の正当な権利を国連憲章に基づいて回復しなければならぬ。そういうことが基礎であって、こういう基礎の上に立って、政府は、日本のできる力には限度があるにしても、あらゆる場合にこういう原則による、二四二決議による中東の和平達成に努力をしていくつもりでございます。石油問題は中東の平和と安定とは切り離しては考えられないという見解でございますから、中東の和平達成に対しては、日本の力の限度において、今後努力をしていきたい。  PLOに対して日本が事務所の開設を認めるかというお話でしたが、パレスチナは、国連においてオブザーバーとして出席を認められたわけでございまして、まだ国としての状態にはなっていないわけでございます。だからここで国家の承認というような形の段階ではない。しかし、事務所の開設ということについては、そういう申し出があれば、その段階において検討をいたす所存でございます。  また、アメリカの中東政策についていろいろ御発言がございましたけれども、キッシンジャー国務長官の発言は仮定の場合でありますから、恐らく石油の全面的禁輸のような状態の場合を仮定して、発言をしたのでありましょうから、仮定の発言に対して私がここで私の解釈を申し上げることは適当でない。しかし、御承知のように、この三月には、日本政府の言っておるベース、対話と協調というような精神にのっとって、産油国と消費国との間に話し合いをしようというわけでありますから、現実にとっておるアメリカの政策というものが、われわれ日本政府のとろうという政策と大きく背馳しておるとは考えていないわけでございます。あくまでも、日本は力による中東問題の解決には賛成しない、対話と協調による中東問題の解決というものが、日本の中東に対する基本的態度であると御承知願いたいと思います。  在外公館の点は、外務大臣からお話をすると思いますが、外務省というのは、ほかの国に比べて陣容が至って貧弱であります。本年度は相当人員の増加もありまして、そのことは中東に対しても相当増員がなされて、その結果強化はいたしましたけれども、渡部さんの御指摘のように、どうも日本はそういう発展途上国に対しての外交の陣容は弱体であるということを、私もやはり認めざるを得ない。これはやはり今後強化していかなければならぬということは同感でございます。
  40. 小山長規

    小山(長)委員長代理 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十八分休憩     午後一時三分開議      ————◇—————
  41. 小山長規

    小山(長)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。
  42. 正森成二

    ○正森委員 現在、第五次中東戦争が三カ月以内に起こるとか起こらないとかいうことが、新聞紙上をにぎわしております。もしこういうような事態が起こりますと、これはわが国のエネルギー問題から見ても大変なことでございますし、アラブ諸国人民の民族自決権あるいは国の独立、世界の平和にとっても非常に関係のあることであります。七三年の十月、十一月の事態を見てもわかりますように、わが国にとっても死活にかかわるきわめて重大な問題であるというように思います。  そこで、まず、最初に、総理としては、この中東問題を政治的に第一級の重大問題であるというように考えて対処しておられますかどうか、それを伺いたいと思います。
  43. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が、異例のことであります、施政方針演説でこの中東問題を第一番目に取り上げたのは、今年度における世界の最大の課題であるし、その和戦の行方というものが日本に対して致命的な打撃を与えるという、その問題意識から、あのような取り扱いをいたしたものでございます。
  44. 正森成二

    ○正森委員 そこで、所信表明演説に入ります前に、総理は、非常に御苦労なことですが、一昨年特使としてアラブ諸国を歴訪されました。そのときの記事を見ますと、私の訪問は油ごいではない、訪問の目的は中東問題の公正、永続的な解決に少しでも貢献したいことである、というようにお述べになったと思うのです。そしてまた、問題の根源は中東紛争の解決そのものであることを痛感するというように言っておられますが、いまでもこの御見解に変わりはないかどうか。そして中東紛争の解決そのものとは何を指すのかということについて伺いたいと思います。
  45. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も、石油問題の解決は、中東に平和と安定がもたらされることが真の石油問題の解決である、したがって、ただ石油の問題だけを解決しようとしても、それは中東自体の和平の問題と結びついておる、こういうふうな認識で、そういう発言をしたものでございます。  この、どうして解決するかということは、結局、一九六七年の安保理事会決議二四二号、これがやはり一番公正な解決案だと私は信じています。そのとき、私自身が外務大臣であったわけですから。これは国連の安保理事会の非常任理事国であった。それで推進したわけです。  それはなぜかと言いますと、武力による領土の占領や拡張は認めない、イスラエル軍は、一九六七年戦争以後の領土の拡大については、兵力を撤退して、そういうことはしてはいけないということが一つと、もう一つは、イスラエルを含む中東諸国に対する生存権を認めること、これが必要である。また、その後の国連決議に、パレスチナ人の問題にも触れまして、国連憲章に言うパレスチナ人に対する正当な権利というものは回復されなければならぬ。ほかにもありますけれども、これがやはり根本の原則であるし、これがまた公正な一つの解決の原則だと思いますから、こういう線に沿うて、中東の和平というものは達成されることが一番好ましい。  それで、中東から帰りまして、相当な疲労もあったわけですが、すぐに私はアメリカへ行ったわけです。なぜかと言ったら、アメリカの持っておる中東和平への一つの——イスラエルとの関係もありますから、アメリカの力というものはやはり非常に評価せざるを得ない。だから、キッシンジャー国務長官とも、フォード、そのときは副大統領であったのですが、いまの大統領とも、かなり時間をかけてこの問題について話をして、アメリカの積極的な努力というものを要請したわけでございます。  そういう点で、石油問題の根本の解決は、中東の和平の達成にある。これは私の考え方の基本にあるわけでございます。
  46. 正森成二

    ○正森委員 いま一応の御説明を承ったのですが、最初に二四二号が基本であるというように言われたのですが、その後に言われていることは、必ずしも二四二号に含まれていない問題も若干ある。それが証拠に、総理の所信表明演説の冒頭に中東問題がございますが、それを見ますと、二四二号の決議に関連して、「その決議は、パレスチナ人に関しては、難民にしか触れておりません。パレスチナ人の正当な権利は、国連憲章に基づき承認さるべきものであります。」というように述べておられるのですね。これは私は、総理が、二四二号では不十分である、それにさらにプラスアルファといいますか、もう一項目なければならないという考えを表明されたものだと思うのですが、いかがでしょう。そしてその詳しい趣旨はどういうことですか。
  47. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、その後、一九七一年の国連の決議の中に、パレスチナ人の正当な権利の回復という国連の決議がございまして、日本はこの決議に賛成をいたしたわけですから、難民だけというのでは、ちょっと根本的解決に欠けるところがあるので、その後の国連決議も加わりまして、国連憲章に基づくパレスチナ人の正当な権利の回復というものも、当然中東問題解決の大きな基礎になる。そこで言う正当な権利の回復というものは、結局、国連憲章第一条に言うイコールライトというのですか、同権といいますか、民族自決の権利でございます。
  48. 正森成二

    ○正森委員 国連憲章をここに持ってまいりましたが、「人民の同権及び自決の原則の尊重」ということが言われておりますね。いま総理が言われた、「パレスチナ人の正当な権利は、国連憲章に基づき承認さるべきものであります。」というのは、このことを指すわけですね。  そこで私は、さらに伺いたいのですけれども、あの第四次中東戦争の直後に、総理はつとに御承知のことだと思いますが、アラブ首脳会議が開かれまして、一九七三年十一月三十日に基本的な宣言を行っております。その中で言っておりますのは、もちろんすべての占領地域からのイスラエルの撤退でありますけれども、それと同時に、パレスチナ人民の国民的権利の全面的回復という言葉を使っております。そこで、勘ぐるわけではありませんけれども、このパレスチナ人民の国民的権利の回復、あるいは最近のフランスとエジプトとの共同宣言でも、祖国を持つパレスチナ人民の権利というように言っておるにもかかわらず、祖国とかあるいは国民的権利という言葉をわざわざお避けになったのは、そこに違いがあるからですか。
  49. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは違いはないと私は思いますが、その民族自決権というものを具体化していく過程においては、関係諸国との話し合いもしなければならぬし、したがって、国連憲章を引用したのは、それは力によるのでなくして、いわゆる平和的な話し合いによってそれが回復されることが望ましいという意味であったので、格別根本において違いがあるとは思いません。
  50. 正森成二

    ○正森委員 根本においては、パレスチナ人民の国民的権利というのとは違わないのだという、非常に大切な答弁だと思うのですが、そうだといたしますと、御承知でございましょうが、四十九年の十二月に、国連に、パレスチナ解放機構、PLOを招請いたしまして、この招請そのものにはわが国は賛成いたしました。ところが、そこで行われましたパレスチナ問題の決議については、わが政府は棄権をしているわけですね。この重要な内容というのは、「パレスチナ人民の固有権を再確認する」「外部からの干渉のない自決の権利」「民族独立と主権の権利」ということを承認するというのが大眼目なんですね。  そこで私は、わが国はアラブとの友好を唱えながら、なぜこれについて棄権するというような態度をとったのかということが伺いたいのです。これは非常に多くの国の賛成を得ておりまして、八十九対八ですね。棄権が若干多かったということなんですが、それはなぜですか。
  51. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのことに対しては、もう七一年からずっとパレスチナ人の自決権というものには賛成をしておるわけですから、それは日本はもう前から賛成の意思を表示しておるわけですが、しかし、日本の願っておるのは、中東に永続的な平和を望んでおるわけです。そうなってくると、やはり、パレスチナ人の権利の回復と同時に、イスラエルを含む中東諸国の生存権というものも、そこに確保していくということで、均衡のとれた中東の和平の達成になるわけで、そういう点が、何か中東の永続的な和平のためには少し均衡を欠いておるのではないか。だから、趣旨は賛成なんですよ。だけれども、もう少し中東の永続的な平和というものを考えれば、やはりこの問題にも触れておくことが好ましいのではないかということで、反対で棄権したのではない。賛成だけれども、それだけでは、この中東の和平のためには何か足らないではないかということで、まあ棄権という手段をとったので、反対の棄権ではない。趣旨には賛成であるが、やはりもう一つ均衡をとる必要があるということが、棄権という態度をとらせたものでございます。
  52. 正森成二

    ○正森委員 いまの総理の御答弁を伺って、何か反対の棄権と賛成の棄権というものがあるようで、心の中の気持ちを言われたのだと思って承ったのですけれども、しかし、バランスといいますか、公正で永続的なものに少し欠けるように思うということを言われた意味は、明確なお答えはありませんでしたけれども、ずばりと言えば、関係国一つまり、イスラエルも含む生存の権利ということが明記されていないからだというように承ってよろしいでしょうね。それの前提で、以下質問いたしますけれども。     〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕  そうだとすると、これはなるほどおっしゃるように、ここに棄権をいたしましたときの斉藤国連大使の一般討論演説がございますが、これを読みますと、「一九六七年戦争による全占領地よりのイスラエル軍隊の撤退」であるということと、それから、「全関係国の領土の保全と安全の尊重」ということを言われ、さらに、「パレスチナ人の自決への正当な権利を確認し、かつこれを尊重すること」、これが「平和達成のために不可欠である」ということを言い、さらに、「パレスチナ人が彼らの故郷に帰還するか、あるいは、彼らの財産の補償をうけるかのいずれかを選択する権利」も認めるということを言うているわけですね。そうだとすると、国連でのこの決議というのは、パレスチナ問題についての決議なんですけれども、この内容をしさいに見てみますと、総理がいろいろ御心配のようですけれども、「憲章の目的と原則に従い」という言葉が入っております。そうすると、総理の所信表明演説の「国連憲章に基づき」ということの中に、その平等と自決権というのは入っておるのだということをおっしゃいましたように、また、「憲章の目的と原則」というのは、諸国家の平和と安全、生存の確認ということもあるわけですし、さらに、その内容の個々の項目を見ますと、「パレスチナ人民が中東の公正かつ永続的平和達成のための主要当事者であることを承認する。」という文句があるのですね。これはPLOやアラブ諸国が非常に苦労して入れたことだと思うのですね。「主要当事者である」ということは、相手方がなければならない。相手方はアラブ諸国ではあり得ないので、これは明白にイスラエルである。ということは、ここで、「パレスチナ人民が」「主要当事者であることを承認する。」ということを入れることによって、そしてまた、「国連憲章の目的と原則に従い」ということを入れることによって、これは、イスラエルを抹殺するとか、地中海へ追い落とすとかというようなものではないということは、明確に前提にされているのですね。  そうだとすると、賛成の棄権ではなしに、賛成された上で、斉藤大使が演説の中で、これはその近隣関係諸国の生存について配慮するものであると確信するということを言われた方が、アラブ諸国に対して、同じアジアの国として——同じアジアと言ったって、中東とアジアは別ですけれども、非常によかったと思うのですね。なぜそういう態度をおとりにならなかったのですか。
  53. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま御指摘になっております決議三二三六と安保理事会決議二四二号との関連は、先ほど総理がお述べになったとおりでございまして、その間の整合性について、必ずしもそのままでは適当ではないというのが、決議そのものについての私どもの見解ですが、同時に問題は、国連が決議案を通すということ、これも大事なことでございますけれども、最後にはジュネーブ会議なり何なりの形において、中東問題が和平的に決着を見るということがより大切でございますので、いわば、やや一方的と思われるような決議案が非常に多数で可決されることによって、もう一方の当事者がジュネーブ会議でサインに臨むというその立場を、非常にかたくなにさせるということがありましたならば、最終的な和平の決定にはかえって有用な作用をしない、そういう考慮は当然あったわけでございます。
  54. 正森成二

    ○正森委員 いま外務大臣からそういう答弁がありましたが、総理も聞いていただきたいのですけれども、しかし、思いますに、この問題でイスラエルが同意できるようなものを初めの段階で国連で決議するというようなことはできないですね。第一、PLOを招請するということにだって、イスラエルは真っ向から反対しているわけですからね。ですから、現在の段階では、国連決議を守っておらないのは一体だれかといえば、これはイスラエルです。六七年戦争から全く撤退しておらない。全く初歩的な第一歩さえ踏み出していないときに、それを承知の上で両者に公平だなどと言ってみたって、それは本当に公平ではないので、国連決議を守っておらないような当事国に対しては、いわゆる公平でない、厳しい態度をとることが、実質的意味での本当の公平なんですね。  それから、考えますと、こういうわが国の態度ですが、そういうことを言うなら、なぜPLOの招請自体に賛成されたのか。これはもうイスラエルが真っ向から反対していたのですからね。そのことによって気分を損なうというようなことになれば、これは解決できない。しかし、PLOが国連に当事国として事情を聞くということで来るのはあたりまえだという世論ができ、国連でその招請が決まったことが、さらにイスラエルに対して、世界の大勢はそういうことだということで、譲歩しなければならないという気持ちを起こさすわけですから、私は、宮澤外相のいまのそういう説明というのは必ずしも納得できないと思うのですね。  それで、これは総理に対して失礼ですけれども、総理がこの間、もう一年三カ月前になりますか、中東へ行かれまして、エジプトへ行かれた。そして、たしか晩さんの席上だったと思いますけれども、アラブの有名なことわざを引用されましたね。「言葉は雲、行動は雨」ということです。御承知だと思うのですね。アラブというのは砂漠の国だから、口だけで言っていたって、それは役に立たない、言葉は雲みたいなもので、雲か幾ら出てきたって、実際に砂漠に必要な雨が降らなければだめだ、こういうことなんですね。そういう点から考えますと、総理はあの危機のときに行ってこられて、そしていろいろ御活躍をされて、御苦労だったと思いますけれども、そのときに、行動というのは雨で、言葉というのは雲だというように、わざわざ引用されたたてまえから言えば——しかも、いろいろなものを見ますと、アラブに正義があるというようなこともおっしゃったようでございますから、そうだとすると、わが国から見て若干不十分だと思われる点がもしありましたら、斉藤国連大使の演説の中で、わが国はこういうことを期待しておるとかいうことを言って賛成してもよかった、むしろ賛成すべきであったということは、当然言えると思うのですが、あの晩さん会の席上でおっしゃった言葉を思い出して、総理お答えをいただきたいと思います。
  55. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 中東との関係は、御承知のように、日本は中東から石油の八〇%を輸入しており、石油の安定供給という上からいきましても、だれよりも中東の平和と安定を望んでおる国でありますから、そのために、パレスチナ人に対しての正当な権利というものが回復されなければ、あそこに和平が達成できぬことは身にしみるほどわかるわけでございますから、国連のときの態度というものに対して、いろいろな御批判もあろうと思いますが、まあ、外務大臣が申したような判断で、そういうことをしたわけでございますけれども、われわれは、パレスチナ人というものに正当な——それは民族自決権を具体化する、こういう態様、姿でやるかということは、これからやっぱり関係諸国との話し合いもしなければならぬでしょうけれども、パレスチナ人の立場にはきわめて同情的な立場をもって、この自決権を行使するような態様が決まりますれば、われわれとして、できるだけのあらゆる協力を惜しまない覚悟でございまして、国連の決議というものがいまのいきさつのようなことでなされたにしても、それは中東の真の和平を望むということから出たのであって、決して、パレスチナ人に対しての日本の冷たい態度でもなければ、ただ言葉は雲というようなことで言ったものではない。非常に同情をして——私も難民のキャンプを見まして、シリアですか、こういう人たちのこういう状態を本当に一日も早く解消する責任を持っているという感じが、われわれは強くしたわけであります。国連で決議もしておるわけですからね。
  56. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう御答弁があったわけですが、さらに私はちょっと伺いたいのですが、わが国が石油問題で非常に困りました四十八年の十一月二十二日に、まことにおくればせながら、二階堂官房長官が談話で、中東問題パレスチナ問題に対する考えを言って、そのときに、「今後の諸情勢の推移いかんによってはイスラエルに対する政策を再検討せざるを得ない」と述べているのですね。  そこで、それ以後の一年三カ月を考えますと、いろいろ動きはございますけれども、基本的な問題、すなわち、イスラエルが六七年戦争の占領地から撤退しているかどうか。パレスチナ人民の、総理は国民的権利と言ってもいいんだとおっしゃいましたけれども、そういう国民的権利を認める方向に、その代表であると国連決議で認められたPLOを認めるような方向に少しでも動いているかというと、これはなかなか動いていないですね。そうだとすると、一年三カ月もたっているのですから、石油問題が一応危機的状況を脱却したから、もう何もしないでいいんだということになれば、三木特使が行ったのはやはり油ごいだったのかということになりますから、「今後の諸情勢の推移いかんによってはイスラエルに対する政策を再検討せざるを得ない」という、その何らかのステップをおとりになる必要があるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  57. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まあ、われわれの望みよりも動きは遅々とした点もございますが、昨年の一月でしたか、エジプトの間に兵力引き離しの協定ができるし、五月でしたか、シリア・ゴラン高原などでできまして、イスラエルもまた、話し合いによってこの問題を解決しようという方向にあることは事実でしょう。したがって、せっかく当事国の間にそういう機運が起こっておるわけですから、しかも、だれも二四二号というもので解決するよりほかはないということは、アラブ諸国も、多少の例外はあるようだけれども、一応賛成をしておるようでありますから、そういう機運をますます日本の場合でも助長をして、せっかくそういう軌道に乗ってきているわけです。そういうことで、この問題を解決するために努力するということが、中東の和平達成を願っておる日本立場としては、現在の段階でとるべき態度ではないか、こういうふうに考えております。
  58. 正森成二

    ○正森委員 そういう場合に、国連においては、PLOの招請ということにわが国は賛成したわけですから、PLOに対してどういう態度をとるかということは非常に大事なのですね。  そこで、外務省に伺いたいのですが、現在、PLOの事務所を自国内に設置することを認めて、一定の活動を保障している国は、世界で幾らぐらいありますか。
  59. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 アラブ諸国のみならず、非アラブ諸国にも、かなりたくさんございます。政府委員からお答え申し上げます。
  60. 中村輝彦

    中村(輝)政府委員 PLOが事務所をどこの外国に置いているかという正確なことはわかりませんけれども、われわれの知っている限りにおきましては、まずほとんどのアラブ諸国に置かれているようでございます。それから、アラブ諸国でないところには、十二カ国ぐらいのところに置かれているようでございます。その扱いぶりは、必ずしも同一ではないようでございます。(正森委員「総計で幾らぐらい」と呼ぶ。)総計で、アラブ諸国と非アラブ諸国加えまして、三十数カ国ぐらいでございます。
  61. 正森成二

    ○正森委員 私がきのう外務省からもらった資料では、二十八カ国になっているのですが、してみると、一日の間に三十数カ国で、五、六カ国ふえたということになると、非常なスピードでPLOは世界で承認を受けておるということになるので、非常に結構なことである。あるいは、外務省の局長と課長クラスでは答弁が大分違うのかということですが、それは結構です。結構ですが、それを見ますと、アラブ諸国がほとんど全部と、それ以外の国では、東独、ルーマニア、ユーゴ、キューバ、中国などのほかに、パキスタン、マレーシア、フランス、そしてこれは国として存在を認めているというのではないかもしれませんが、国連代表もあるものですから、アメリカにもPLOの代表事務所のようなものがあります。  そういう点から考えますと、わが国も、中東問題に重大な利害関係を持っている国として、かつ総理が非常な同情をもって見ておるというたてまえからして、PLOの事務所をわが国に、わが国の法律の範囲内の活動をするということを条件に、設置するということを前向きに御考慮なさるお気持ちはありませんか。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはけさほど総理がたしかお答えになりましたと思います。どのような具体的な申し出があるかにもよりますが、申し出がございましたら、その段階において検討いたしてみたいと思っております。     〔委員長退席、湊委員長代理着席
  63. 正森成二

    ○正森委員 渡部議員の質問に対してお答えがあったことを伺っておりますが、その段階で検討するというだけではなしに、積極的に、前向きに検討するというようにお答えになる意思はありませんか。
  64. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる事務所というものが、どのような性格を持つものとして先方が希望するかということを、実は考える必要がございますので、そういうことも含めまして、本来否定的な立場考えようという気持ちではございませんで、内容がどういうものであるかということをよく見る必要があると思っております。
  65. 正森成二

    ○正森委員 積極的な立場で、そういう点も考慮していただきたいということを申し上げておきたいと思います。  次に私は、概論的なことを伺ったわけですが、具体的に、三木内閣が中東あるいは石油の問題についてとっておられる態度について、これから具体的に伺っていきたいというように思うのですけれども、外務大臣の演説にもありましたように、政府は、国際エネルギー機関というのですか、IEAですか、参加されて、国際エネルギー計画というのですか、IEPといっておるようですが、それに参加するということになっておるのですね。まあOECDの枠内で、というふうに言っておりますけれども。これは臨時国会で、他の議員からもお話がありましたから、どういう内容かということは聞かずに、私から申し上げますが、大まかに言いますと、石油の節約、代替エネルギーの開発、それから備蓄を義務づける。それから禁輸措置等がとられたときには、一定の条件で削減七%、一〇%というようなことで、それを上回るというような場合には石油を融通するというのが大体の仕組みですね。細かい点では少し不正確な点があるかと思いますけれども。しかし、この協定は、政府が参加しておられるようですけれども、アラブ諸国にとっては、これはアラブ諸国に対する対抗措置であるというように、非常に反発が強いというように報道されているのですね。後で詳しく言いますけれども。こういうものに参加しておって、逆に中東でいろいろな問題が起こったときに、友好国でないというようにむしろみなされる、消費国が団結して圧力をかけるのだというように見られる、という可能性が非常に強いのではないかと思うのですが、いかがですか。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 恐らく経緯をよく御承知でいらっしゃると思いますので、ごく簡略に申し上げますが、わが国としては、そのように産油国が受け取るということがあってはならないということで、昨年の二月以来十一月まで、努力をいたしてまいったわけでございます。その結果として、国際的な機関であるOECDのもとに置くことが対決色を緩めることであるというわが国の主張が通りまして、今回のようなことになったわけでございますし、また、昨年暮れにマルチニクで米仏両大統領の合意がありましたことも、御存じのとおりであります。そしてまた、IEAには、産油国との対話についての常設作業部会というようなものも設けることにいたしました。  ただいまの段階で私の見ますところでは、産油国は、そういう経緯にもかんがみまして、このような努力、このような仕組みというものを敵対視してはいない。先般の産油国側の会議にもございましたように、フランス式のとは書いてございますけれども、そういう消費国との会議というものに、自分たちは積極的に入っていこうというような姿勢が見えておりますので、今日までのわが国の努力が、ほぼ理解されておるというふうに考えております。
  67. 正森成二

    ○正森委員 そういうような御認識ですけれども、しかし、必ずしもなかなかそうとばかりは言い切れないのですね。  御承知のように、九月二十三日にキッシンジャー国務長官が国連で演説をし、同じころフォード大統領がデトロイトでの世界エネルギー会議で演説された。さらに十一月十四日のキッシンジャー氏のシカゴ演説というようなのがあるのは、もちろん御承知のことだと思いますが、その当時、アラブの産油国は一斉に反発をいたしまして、当時の新聞を見ますと、たとえばベイルートの有力紙のアン・ナハルというのは、「アメリカ、アラブ産油国に宣戦布告」というような見出しで、これに対して反発をしておる。あるいはアルシャルクというシリア系の新聞は、「フォードとキッシンジャー、産油国を脅迫」というように見ておるのですね。これはいまでも基本的には変わっていないので、この間のOPECの閣僚会議でも、たとえばアルジェリアなどは、IEAを解体することを求める——いろいろの配慮から、それを決議の中へ書き込むというようなことはされなかったけれども、そういう態度をとっておるということは非常にはっきりしているのですね。  そこで私、総理伺いたいのですけれども、本会議での質問へのお答えの中で、総理は、アメリカの政策とは大筋で変わらないのですよ、という意味のことを言われたのですけれども、そのアメリカの政策考えとやはり大筋は変わりがないということなんですか。
  68. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 キッシンジャー国務長官の発言なども、われわれは承知しておるわけですが、これは仮定の場合をとらえていろいろ言っておるわけで、恐らく、全面石油の禁輸のようなことを頭に入れて言われたのでしょうが、これは、まあわれわれが解釈するということは適当ではないと思うので、われわれが問題にするのは、アメリカのとろうとする現実の政策であります。これは、私もキッシンジャー国務長官と去年の一月に会ったときも言ったし、フォード、当時の副大統領にも言ったのですが、日本は力の対決によって石油問題を解決するという政策には賛成でない。あくまでもやはり産油国との話し合いによって、そして石油問題を解決しなければ、力によって石油問題が解決できるとは思っていない。これは日本立場というものを明らかにいたしまして、その後、アメリカ自身も現実にとろうとする政策は、フランスのジスカールデスタン大統領とフォード大統領との会談の結果にも見られるように、三月には産油国も含めて、話し合いによる一つの、この諸問題を論議しようという予備会談が開かれることになっておりまして、アメリカの現実にとろうとするベースは、われわれのベースだと思っているのです、話し合いによる解決。  そういう点で、私はアメリカが現実にとろうとする政策をとらえて、日本考え方と、これはそう大きな食い違いがあるとは思わないというのが、まあ本会議の私の答弁の背景になったものでございます。
  69. 正森成二

    ○正森委員 まだ私が質問しない間から、ビジネス・ウイークに載ったのを非常に気にされて御答弁になったようですけれども、それはもう少しあとでゆっくり聞かしていただきますから、そのときにお答えいただくとして、しかし、いまの答弁から出てきましたのは、いろいろアメリカは言うておるかも知らぬけれども、実際にとっておる政策というのは、大筋において変わらないのだ、こう言われておるのです。しかし総理、あとでビジネス・ウイークの問題などには触れますけれども、責任ある大統領や国務長官がああいうことを言うということは、そのことはやはり一定の効果をねらった政策なんですね。そこのところをやはりお考えにならないと、いや、あれは勝手に、どこか宇宙と関係のないようなところで言うておることだけで、実際にとっておる政策はこうだから大筋に変わりはないのだというふうにお考えになるのは、非常に危険じゃないかという気がするのですね。それはあとでもう少し申し上げます。  ただ、いまはIEAとかIEPの問題について伺っておるのですけれども、キッシンジャー氏の考え方によると、石油の価格の引き下げというのは、消費国と産油国との対話によっては達成できないのだと言い切っているのです。対話では達成できないのだ、引き下げる客観的な条件が備わったときにのみ引き下げることができる。だから、彼の言っている対話というのは、友好を前提とした対話ではなしに、整うべき条件をこしらえてから、力を背景に対話をして、そして下げさせるものは下げさせるという考え方なんですね。ですから十一月二十六日に、アメリカの石油協会の総会の席上で、サイモン財務長官かこういうことを言っておるのです。「アメリカが“ゆすりの集団”にねじ伏せられることはあり得ない。」スモール・バンド・オブ・ブラックメイラーズという言葉——私、英語は発音があまりうまくないですけれども、つまりアラブ産油国をゆすりの集団と見立てて、そんなものにゆすられるいわれはないんだ、そういうことは絶対にない、これがアメリカの考え方なんですね。そこから政策が出ているのです。  そうだとすると、そういうアメリカの政策あるいは考え方と、まあ武力介入ということは別かもしらぬけれども、大筋で変わりはないのだ、現にIEA、IEPはアメリカも一緒に署名、調印しているのですから。ということになると、これはアラブ諸国に対する非常な対決の姿勢、対決を背景にした対話であるというように言わなければならないと思うのですけれども、いかがです。
  70. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 終始、日本の申しておることはかや対決によって石油問題は解決できない。これは日本がもう終始言っておる態度でございますから、アメリカ自身もいろいろなことは言っておるようではありますが、最近の現実にアメリカがとろうとする政策は、これはやはり話し合いをしようとしておるのですからね、現に。だから、そういう点で、その限りにおいては、私はいま日本考え方と大きな距離は考えられない。話し合いのベースにアメリカも寄って、この問題を解決しようとするような方向に動いているということを言っておるだけでございます。
  71. 正森成二

    ○正森委員 総理の御見解に同意できませんけれども、もう少し聞いていきたいと思います。  IEPの十七条によりますと、どういう場合に融通制度が発動されるかということが書いてありますね。それについて、私の解釈が間違っておるといけませんので、簡単に説明してください。
  72. 宮崎弘道

    ○宮崎(弘)政府委員 十七条に規定してございますとおり、石油の供給が一定パーセンテージ削減された場合、この協定の条項による手続を経まして、融通スキームが発動するということになっております。ただ、その手続と申しますのは、やはりこのIEAの理事会におきます一定の議決ということを条件といたしまして、融通スキームが発動されるということになるわけでございます。
  73. 正森成二

    ○正森委員 私がわざわざ条文まで挙げて聞いているのですから、そんな雲をつかむような話なら、何もわざわざ聞かないのですよ。そんなことは知っているから、条文に基づいて、もっと正確にお答えなさいということで、局長答弁委員長が指定なさるのを、私は何も言わなかったのですから。しかし、何の資料を持ってきておられるのか知らないけれども、あるいはよく御承知ないのかもしれないけれども、私の方から申しますと、そんなものじゃないですね。  十七条を見ると、これは七%ですけれども、「一日当たり石油供給の削減を受けている場合又は受けるものと予想する理由がある場合には、第八条から第十一条までの規定に従い、入手可能な石油の融通が当該参加国に対し実施される。」こうなっているのですね。だから、その削減を受ける場合だけでなしに、削減を受けるものと予想する理由がある場合にはそういうことが行われる、こうなっているのですね。これはもう非常に重大なことなんです。こういうことまでIEPでは決めているのです。しかも、その融通を受けるということをどういうぐあいにして決めるのかという点について、いま事務当局は、理事会でいろいろ手続がございますというような、のんきな話をしておりますけれども、この協定の条文を見ると、そんななまやさしいものではない。十九条にはこう書いてあるのです。「事務局は、第十三条、第十四条又は第十七条に規定する石油供給の削減が生じた場合又は生ずるものと予想する理由がある場合には、その認定を行うものとし、各参加国及び集団全体に対する削減量又は予想される削減量を算定する。」事務局が認定するのです。そうしてその事務局の認定は、同じく十九条の三項によって、機関理事会は「事務局の認定を検討するために会合する。」しかし——しかしというのは私の言葉ですが、「緊急時の措置の発動は、機関理事会が、特別多数決により、更に四十八時間以内に緊急時の措置を発動しないこと、単に部分的にのみその措置を発動すること又はその措置の実施期限を別に設けることを決定しない限り、確認されたものとみなされ、参加国は、その確認の後十五日以内にその措置を実施する。」こう書いてある。いいですか、機関理事会が事務局が認定したものに対して特別多数決でノーと言わない限り、自動的に事務局の認定が動き出すのです。こういう規定になっておる。  しかも、OECDの枠内というようなことを外相は言ったけれども、御承知のようにOECDというのは、決定にしろ勧告にしろ、全会一致なんです。ところがこのIEA、IEPというのは全会一致じゃない。多数決なんです。現在十六カ国参加しておるけれども、多数決なんですね。したがって、わが国が反対しても、その多数決に従わなければならないということになるのです。しかもその多数決の票たるや、ここに条文がありますけれども、それを見ますと、総理はよく御承知かとも思いますが、六十二条で、十六カ国がそれぞれ自分の国の一般加重票というのを三票ずつ持っておる。そのほかに、石油消費加重票というのが石油消費量によってずっと加算されて、全部で百四十八票あるけれども、アメリカ合衆国一国で実に五十一票、三分の一以上持っているのです。ですから、学者の書いた論文によれば、事務局の認定を阻止しようとしても、アメリカとほか一国ないし二国がいやだめだと言えば、事務局の認定どおり動くことになっているのです。こういう問題なんです。しかもそれは、削減の場合だけでなしに、削減が予想される場合も、事務局が認定するのです。  これは、私の質問の冒頭に、中東、エネルギー問題というのは死活にかかわるものだと言ったけれども、その死活にかかわることを事務局に事実上任せるということになるではありませんか。そう思いませんか。——いまあなた答えなくていいですよ。外相、そんな大事な問題は外相がまず答えるべきじゃありませんか。
  74. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  75. 宮崎弘道

    ○宮崎(弘)政府委員 ただいまの、供給不足が生じた場合ないしはそのおそれがある場合ということにつきましては、国際エネルギー機構の中に、常設作業部会といたしまして、緊急時の常設作業部会というものが設置されております。そこで、どういう事態に相なった場合にその供給不足が生じたと認定するかということを、事務局の資料に基づいて検討いたしまして、そして、IEAの理事会に最終的には上げるたてまえになっております。したがいまして、事務局の恣意的な判断によりましてその事態を認定するということは、十分防ぎ得るような仕組みができておりまして、この常設作業部会ないし理事会におきます討議によって、その上で事態を認定し、そして表決によって発動するか否かを決める。御説のとおり、その表決方法は加重投票でございますので、最終的な投票につきましては、いま条文に示しているとおりでございますが、その間の過程につきましては、IEAの中で詳細な手続が設けられておるということでございます。
  76. 正森成二

    ○正森委員 そんないいかげんなことを言って、一国のエネルギー問題をごまかそうとしたってだめですよ。この条文には、そんなことはちっとも書いてないですよ。読みましょうか。十九条の二項に「運営委員会は、事務局による認定の報告の後四十八時間以内に、収集された資料が正確であること及び提出された情報について検討するために会合する。」とか、あるいは「報告」するということは載っております。それならば、肝心のところの三項で、運営委員会の認定とかあるいは運営委員会の報告とかいうように書いてあればいいですけれども、肝心のところは、「事務局の認定を検討するために会合する。」と、こうなっているのですから。そして、特別多数決で阻止しない限り、確認されたものとみなされて——法律的には、みなすなんというのは大変なことですよ。四十八時間たっても甲論乙駁、決まらなければ、事務局の認定どおり、そのままどんどんいく、とこうなっているのです。  しかも、いま事務当局は、いかにも常設作業部会とか運営委員会がいろいろなことをなさるように言うてますけれども、そんなこと、条文にはちっとも書いてない。十九条の六項を見ますと、こう書いてある、逆に。いいですか。「事務局は、この条の規定に基づいて認定を行うに際し、事態及び執られるべき措置の妥当性に関する見解を求めるため石油会社と協議する。」と、こうなっているのです。いいですか。運営委員会と何とかするとか、各国と何とかするとかとはなっていないのです。「石油会社と協議する」と、こうなっているのです。石油会社と協議して決めた事務局の認定が、アメリカともう一国か二国の反対がない限り、そのまま通ることになっているのですよ。  しかも、ここで言う「石油会社」という言葉の定義が二十六条でわざわざできているのです。こう書いてある。「「石油会社」とは、国際石油産業において重要な役割を果たす国際会社、民族会社、非一貫会社その他の法人をいう」と。「国際石油産業において重要な役割を果たす国際会社」といったら、メジャーじゃないですか。結局、メジャーと相談をして事務局が認定して、その認定は、アメリカ及び一、二カ国の反対がない限り、そのままずっと通ってくると、そういうことになっておるのですよ。そんなものに日本は参加しておるのです。エネルギー、特に日本のように八〇%まで石油に仰ぎ、九九・七%まで輸入に頼っている国で、こういうようなことを決めて、それで一体一国の主権を全うすることができますか。事務局が認定し、その認定はメジャーと相談する、はっきりそうなっているじゃないですか。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず運営委員会の関係でございますが、十九条の二項によりまして、運営委員会が機関理事会に報告を行うわけでございます。ごらんのとおりであります。  それから、いま石油会社と言われましたのは、まさしくメジャーでございます。どうしてこういう規定が必要かと申しますと、結局、ただいまのところ、各国に石油の大きな部分を供給しておるのはメジャーでございますから、メジャーに対して、これだけの削減をしなければならない、あるいはこれだけの融通をせよ、そういうふうにメジャーを使いませんと、石油の出し入れは動かないわけでございます。これは現実がそうでございますから、このような機構を設けて、メジャーというものを全然疎外をしたのでは、節約をしようにも、融通をしようにも、する方法がないわけでございますから、そこでメジャーの意見を徴するというのは、むしろこの目的を達するためには当然の、しなければならない手続になるわけでございます。
  78. 正森成二

    ○正森委員 私はその答弁を伺って、なるほどなと思いましたね。実に開き直った答弁だ。わが国のエネルギーの運命がメジャーに握られるというのはあたりまえで、仕方がないんだ、そういう御答弁であります。  しかし、私は宮澤外相に伺いたい。いろいろやる場合に、メジャーを使うのはまあ結構としましょう。使われているじゃないですか。スキームを発動するかどうかという情勢やらそういうものの認定に、メジャーの意見を聞くと、こうなっているじゃないですか。そんなものはなぜ各国政府が決めないのです。十九条の六項を見てください。十九条の六項を見ると、「この条の規定に基づいて認定を行うに際し、」つまり発動するかどうか、そういう状態が起こっているかどうか、「事態及び執られるべき措置の妥当性に関する見解を求めるため石油会社と協議する。」と、こうなっているのですよ。だから、事態の判断、つまりまさに最高の政治的判断をすべきこと、しかも、削減がすでに起こってしまったという段階じゃないのです。見てもわかりますように、十七条には、そういうことを予想する理由がある場合、それまでメジャーに協議して事務局が決める。その事務局の認定はアメリカ及びもう一、二カ国の積極的反対がない限り、各国がどう思ったって、そのまま進んでいく。一体何事でしょう。しかも外相は、それは当然のことでございます。こういうことをおっしゃる。私はわが国のエネルギー政策のために、まことに寒心にたえない。総理、大局的にごらんになってどう思われますか。
  79. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま十九条の六項についてお読みになりましたので、正確にそれを申しますと、「措置の妥当性に関する見解を求めるため石油会社と協議する。」と書いてありまして、石油会社の意見に従うということは書いてないのでございます。決定するのは機関理事会でございます。つまり、現状におきましてメジャーというものが世界の石油の多くの流通機構であることは、これはよかれあしかれ事実でございますから、われわれが、こっちから削減しよう、こっちに回そうと決定しましても、それを実行する力、現実の実行のチャンネルというものは、各国が持っているわけではない、メジャーが持っているわけでございますから。そうかといって、メジャーにわれわれのこの作業に協力してもらわなければならない。そうでありますから、意見を徴することは必要であろう。その上で、われわれの決定がかくかくであるから、メジャーはわれわれの決定に協力をして、それを実行してもらいたい。現実の問題としては、そういう仕組みをとりません限り、石油の供給削減なりあるいは融通なりというものが現状ではできないということは、これは事実でございますから、こういうことを現状でやろうとすれば、やはりメジャーをわれわれの体制の中へ組み込むということは、これは避けられないことではないかというふうに思います。
  80. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 外務大臣の説明したとおりだと思います。
  81. 正森成二

    ○正森委員 私は、総理がわざわざアラブ諸国まで行ってこられたから、だから、もう少し大局的な御答弁があると思いましたけれども、外相と同じだということになれば、現状を認めて、メジャーがこうなんだからこうするより仕方がない。そこには、日本国として、日本のエネルギー問題や、あるいは庶民のいろんな問題、産業の問題を、わが国の主権に基づいて自主的にどうするのだ、そのためにメジャーに対してどうするのだ、あるいはメジャーがそれほど大きな力を持たないためにどうしたらいいのだという経綸が聞かれないのです。それで政治がいいでしょうか。  このことは、何も私だけが言っているのじゃないんですよ。たとえばニューヨーク・タイムズの九月三十日号というのがあります。いいですか。「赤旗」じゃないんです。ニューヨーク・タイムズなんです。そのニューヨーク・タイムズに、ロバート・クレーマンという人が論文を載せているんです。その論文の中でも、こういう問題に対する重大な危惧の念が述べられている。どう言っているかというと「アメリカの高官は述べている。合衆国の目指すところは迅速な意思決定の可能な強力な機構である。アメリカ高官は多数決制を国際機構における敵陣突破と叫んでいる。」いいですか。同盟国を敵陣と見立てて、四の五の言わせないために敵陣突破なんだ、こう言っているということをニューヨーク・タイムズが書いているんです。そして「フランスは」これもやはりこの中の記事ですが、「フランスは投票制に反対し、まだ最終的な結論を出していないが、」——フランスは入りませんでしたね。「この計画をNATOのエネルギー版と批判している。」こう書いているのです。「その理由は、軍事色の濃いこと、一本化された機構とアメリカのリーダーシップである。」こう書いているのです。ニューヨーク・タイムズに載った見解でさえ、これは国際機構における敵陣突破であり、NATOのエネルギー版であるということを言うているんですね。それくらいのものなんです。それに対してもう少し、これはちょっとぐあいが悪いとか、そういうようなお考えがあってしかるべきだというように私は思うんですね。  なお、この問題は、きのうキッシンジャー氏が演説をしましたね。その問題を申し上げるときにもう一度触れたいと思いますが、通産省に伺いますが、通産省は、あの危機がありまして以後、あなた方の方のお書きになった、エネルギー問題についての中間取りまとめとか、あるいはエネルギーについて出しておられますが、その中で、メジャーだけに頼るというのはぐあいが悪いから、DDオイルあるいはGGオイルといいますか、そういうものをふやす方向で、これは一気にそんなものが一〇〇%になるわけじゃありませんけれども、考えなければならないということを言明されましたね。それは現在どうなっておりますか。また、そういう方向を維持されようとしますか。
  82. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 DD原油でございますが、ふえるように努力をしております。しかし、いろいろのいきさつがございまして、四十八年度が大体年間千六百万トンでございますが、四十九年度は二、三割ふえまして二千万トンを若干超える、こういう結果になるのではないか、かように考えております。
  83. 正森成二

    ○正森委員 そういう方向で努力をなさる、ふやすということは間違いがないのですか。いま何かうなずかれたようですけれども。
  84. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 DD原油を幾らかでもふやしていきたい、こういうふうに努力をすべきだと考えておりますが、しかしながら、御案内のように、石油の価格問題というものは非常に次から次へ変化をしておりまして、先般まではメジャーの油が安かったけれども、最近はほぼ同じになるとか、次から次へ変わっておりますので、いまきめたことをずっと引き続いてやれるかどうかわかりませんが、現段階におきましては、DD原油をふやすように努力をしております。
  85. 正森成二

    ○正森委員 そういうように努力しておられるようですけれども、特にアブダビ会議以後、メジャーの利権原油とDD原油というのが非常に値段が接近しましたね。特にユーザンスを使いますと、大体三十日延期してもらうと、バーレル当たり九セントくらい安くなるということですから、九十日に延期されるということになれば、これは値段の点では全く遜色ないということになるんですね。これは御承知のとおりであります。しかし、通産省の指導によるのだと思うんですけれども、通産省はDDオイルを比率を高めて、一挙にではないにしても、メジャー依存を緩めるというようなことを言うておりますけれども、依存を緩めるとまでは言うていないけれども、高めると言っているけれども、やってきたことは、実際そうではないのではないですか。たとえば、あなた方は、石油消費国会議がありましたときに、十三カ国が集まりまして、DDオイルの入札をする場合に、余り高い値を入れないようにしようじゃないかというようなこと、つまり消費カルテルみたいなものを結んで相談をなさったことはありませんか。あるでしょう。
  86. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御案内だと思いますが、一昨年の秋、石油ショックが起こりまして、石油価格が世界的に非常に混乱をいたしました。あるものは一挙に二倍になる、あるものは三倍になるというふうに、一時的に大混乱が続いた時代が、ごく短期間でございましたが、ありました。そのときに、余り法外な値段を出してはいかぬ、こういう行政指導があったというふうには聞いております。
  87. 正森成二

    ○正森委員 それだけではなしに、ニューズウイークの去年の三月十一日号、それを持っておりますが、それを見ますと、消費国会議に参加した十三カ国の政府は、私的にではありますけれども、値段を高く入札するのをやめて、統一戦線をつくろうということをきめたということが書いてあります。去年の三月十一日のニューズウイークですから、それより前であります。こういうことをなさっている。ですから、消費国会議というのは、結局、産油国と対決しよう対決しようという姿勢を出しておられるんですね。通産省公報の去年の十月十一日号を見ますと、DDオイルをふやすということで、いろいろ書かれておりますね。これは御承知のとおりだと思うんですけれども、この中身を見ますと、そのためにやるべきことが大分書いてある。たとえばGG原油安定のためには政府間の方がいい場合がありますから、そういう「輸入円滑化を図るため産油国の実態に即した共同輸入会社を設立し、これに対して「石油備蓄公団」から出資を行う。」とか、あるいはもし値段が高い場合には、その差額を融資するとか、あるいはその利息をどうするとか、時間がありませんから詳しくは言いませんけれども、そういうことが書かれている。ところが今度の予算では、備蓄会社については、なるほど手当てはできたかもしれませんけれども、DDオイルあるいはGGオイルを輸入するための手当てはされましたか。あるいはされなかったとすれば、それはなぜですか。
  88. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御案内のように、備蓄のための予算は計上しておりますが、DD原油をふやすための予算は、それは計上しておりません。これは各油会社が、やはり利害関係に応じて臨機応変に措置をする、そういう性質のものだと考えております。
  89. 正森成二

    ○正森委員 総理、お聞きになりましたか。そういうように、備蓄の関係のようにIEA、IEPに非常に関係があるというものには、予算をちゃんとつけておられるんですね。ところが、わが国の自主性をふやすということに一定の役立つDDオイルあるいはGGオイルというようなものについては、いま通産大臣お答えになったように、真剣に取り組んでいないんですね。そういうような態度で、外相が言っておられるように、メジャーがこういう状況だからそれを認めるよりしようがない、メーファーズだというようなことでは、これは一国の政治として非常に困るのじゃないですか。よかれあしかれキッシンジャーは、よいところはない、悪いところばかりだとわれわれは思いますけれども、ともかくきのうの言明でも見るように、ものすごい執念を燃やしていますね。わが国としても、わが国のエネルギー問題を解決するために自主的な——アメリカはわが国じゃないですからね。やはり他国なんですから、そういう立場で、きちんとなさるという必要があると思うのです。  時間がございませんので、総理が先ほど私が言わないうちに御答弁になったビジネス・ウィークの問題についてお話しして、答弁を承りたいと思うのですけれども、総理が、御承知のように、ビジネス・ウィークの一月二日に発表されましたキッシンジャー長官との一問一答によりますと、「私はここでわれわれがどんな状況においても武力を使わないと言っているわけではない。価格引き下げのために武力を使うかどうかと、先進工業国が実際に絞め殺されるような重大な危機に直面した場合の武力行使とは別問題である。」これは和文で、多少人によっては訳が違いますけれども、そういうように言われたことは事実であります。これが、載りました原文の英語文であります。この言明は非常に重要でありますが、非常に大事なことは、一問一答で思わず出てきたというのじゃなしに、その後確認し、フォード大統領が繰り返し繰り返し確認をしているということなんですね。これは、まさに一定の政策を世界に明らかにするために言われたものであるというように解さざるを得ないのです。  そこで、私は総理に、先ほど少しお答えになりましたけれども、わが国はこういうような言明には反対であるということを、当然おっしゃるべきであると思いますが、いかがですか。
  90. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、ビジネス・ウィークを例にとって、一問一答ですかね、インタビューの形の。それは仮定を置いていろいろ意見を述べられておるわけですから、その仮定というものをここでいろいろ私自身が解釈するのは適当でないと思うのです。私どもが注目することは、アメリカの現実政策です。現実政策というものが、いま言ったように、三月には産油国との間に話し合いによって解決しようという態度が出てきておるのですから、われわれが重視するのはその政策なんですよ、それが、われわれは力によって石油問題は解決できないのだということが基本的な日本考え方ですから、したがって、そういうことのベースにアメリカも乗ってきておるということを注目して、現在のアメリカの政策がわれわれの考え方と大きく違っておるとは思わないという評価をしたわけでございます。それは現実の政策に変化が起こってくれば、アメリカと日本との間には石油の事情も違いますから、必ずしもアメリカの政策と一致せなければならぬというわけではないわけでございますから、現在の段階において、アメリカも話し合いのベースに乗って努力しようとしておる。その政策に対しては、日本考え方と大きく違わないということを私は申しておるのでございます。
  91. 正森成二

    ○正森委員 総理は、そういうことをおっしゃいますけれども、決して仮定の問題ではないんですね。非常に現実的なものとして、演習をやるとか、あるいは実際にペルシャ湾に軍艦を派遣するということをやっているのです。たとえばリビアの油田の占領というのを想定して、イタリアのサルジニア島の沿岸で、昨年の十月から十二月にかけて三回にわたって、海兵隊が参加をして、油田占領の演習を行っているということがございますし、あるいはUSニューズ・アンド・ワールド・リポートを見ますと、これは場所まで書いてあるわけですが、中東現地と似た条件にあるカリフォルニアのモハビ砂漠で、第二海兵隊水陸両用師団の一部が軍事演習を行った。あるいは精鋭な陸軍第八十二空挺師団はテキサス州のフォートプリスの砂漠で演習を行った。この第八十二空挺師団というのは、C5Aに乗りまして、米本土から直接空輸ができるものである、こういうように言われておる。あるいはそれだけでなしに、一九七三年にも演習が行われたわけです。そのときの第二海兵旅団の演習は、これは写真も載っておるわけですが、相手方の仮想敵国になった兵隊は、リビア軍とそっくりの制服を着ておった。写真に撮って記事に出ているのです。そういうような事態がありますから、これは決して単純な仮定の問題ではなしに、現実を想定して、そういうことを行っていると言わなければなりません。  また、私が持っております情報によりますと、きわめて最近に、沖縄におりますわが国の第三海兵師団の一部が、いま私が言いましたカリフォルニアかテキサスかどこか、場所は申し上げませんけれども、現実に行きまして、やはり油田地帯占領を想定した演習を行ったという情報があるのです。そうすると、これはわが国に存在する海兵師団が現にそういうことを想定して演習を行い、一たん緩急があるときには、第七艦隊ともども出かけていくということだって考えられないわけはないと思うのです。  そうしますと、総理は、こういう問題に対して、あくまで仮定の問題である、こういうようにおっしゃいますか。あるいはそれに対して私は、態度を表明される必要があるというように思うのです。たとえば私は、ここにル・モンドを持ってきておりますけれども、ル・モンドなんかを見ますと、これは、ことしの一月九日ですけれども、フランス共産党のマルシェ書記長の質問に対して、一月九日にフランスの外交委員会に当たるところで、フランスはそういう問題にくみしないのだ、反対であるということをちゃんと言明しているのです。私は、こういう態度をこそ、わが国の総理はとられなければならない、こう思うのです。沈黙は承諾につながる、こういうように言われて、フランスでは外相がそう言っているんですが、明確な答弁を求めます。
  92. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 現実の外交をやる場合に、具体的にその国の外交政策としてあらわれてくることに対して、われわれ見解を述べることはありますが、いろいろな仮定をしてインタビューで話をしたことを、いろいろな情報によって、一々日本総理がその場でそれに対して解釈を加えるということはどうでしょうかね。われわれが注目しなければならぬのは、現実にとるアメリカの政策である。これに対しては、われわれが現実にとる政策が違ってくれば率直な見解を述べますよ。日本が話し合いによってこの中東問題の解決をしなければならぬということは、繰り返しわれわれも、私も主張しておりますし、これは先方に対しても直接伝えたんですからね。副大統領、いまの大統領にも伝えたし、キッシンジャー国務長官にも伝えて、話し合いによって解決をしなければ、やはり中東の和平の達成はできないということを言っておるのですから、いろんな情報に対しては、私がここでコメントをすることは適当ではないと思います。
  93. 正森成二

    ○正森委員 コメントをなさらないとおっしゃいますが、私はその問題は聞くとして、それでは現実の政策で、キッシンジャー氏がきのう演説をなさった。これだけ石油が高いから、ともかく下げよう下げようとふだんはおっしゃっている。ところがそれに対して、石油の最低価格を決めて下に下がらないようにしよう、こういうように言っているじゃありませんか。それに対してわが国の政府は、これは現実の政策だと思うんですけれども、IEAに対して提案しようというようなことを言っておりますが、一体どういう態度をおとりになるのでしょうか。また、その代替エネルギーの開発については、これはコスト高になる、だから、一定の価格を維持しなければならないから、これは課徴金だとかあるいは消費税を設けるというようなことを言ったり、代替エネルギーの開発のためには、各国で費用を分担してやらなければならない、こう言っています。しかしわが国では、そんなに簡単に代替エネルギーができるわけではない。それの技術やら資源やら、いろんなものを持っているのはアメリカなんですね。そのアメリカのためにわが国が金を出し、そしてわが国の国民は、仮に石油が安くなっても、安い石油を買うことまかりならぬ、やはり高い石油を買え、こういう現実政策に御同意なさるつもりなんですか。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨日のキッシンジャー氏の構想というのは、私も報道で読んで考えておるわけですけれども、基本的には、商品協定というものを考えようということであろうと思います。まあ一般的に、このように、供給者側にも将来について確たる見通しが実はない、需要者側にも将来についてやはり不安があるというときには、商品協定というものは成立しやすい状況が確かにあると私は思います。また、産油国の立場をいろいろ考えてやりますと、長期の安定した需要というものを必要としているだろうということは、わが国の立場としてもよくわかるわけでございます。ございますから、私なども、現在のこのお仕事を預かります前、昨年あたり、国際的なフォーラムでは、やはり長期の商品協定というようなものが両者を結局満足させることになるのではないだろうかということは、エコノミストのような立場からは実は言ったことも実際にございます。そこまでは、私はよろしいと思うのですが、その商品協定になりますと、やはり長期的な供給量、需要量、最低価格といったようなものが出てくるわけで、それは経済的な要因から出てくるのが本当なんですが、問題は、その代替エネルギーというものを別に考えまして、これが可能なためのフロアプライスをそこへ盛り込むということになると、これは別の要素が入ってきてしまって、問題なのではないか。もしある国が、そのような代替燃料の国内投資を確保する必要があるとしますならば、そういう産業に対して国内的にいろいろ奨励する措置もあるはずであって、国際的に輸入課徴金を一律に設けるとかなんとかという話に一足飛びに飛んでいくということは、論理がそこへすぐにはつながらないというのが、私があの報道を読みました感想でございますけれども、いずれにしても、これはアメリカが決められることではありませんで、IEAがございますから、そこへ提案をしてこなければならない。提案をしてまいりましたら、その際十分にわが国の考えも、それを見た上で、述べていくべきだと考えています。
  95. 正森成二

    ○正森委員 いま宮澤外相からお話がありましたけれども、これは非常に大変な問題なんですね。新聞の報道を見ましても、キッシンジャー長官は、「われわれはその価格が現行の石油価格より低くなることを期待するものだが、それは代替エネルギーの開発助長に十分な程度の高いものでなければならない。」十分な程度高いものでなければならない、こう言って、産油国に対しては「いま値を下げるか、代替エネルギーが本格的に軌道に乗った時点で目も当てられぬ価格の下落を受けるか、そのどちらを選ぶかだ。」ものすごい脅迫ですね。こういう立場と一緒に行っておったのでは、アラブの友好国だとかなんとか言ったって、向こうが、あいくちをふところに突きつけて、有限の、それだけしか資源のないというアラブ諸国が、その石油がまだ有効な間に自立化を達成したいと、こう思っているその気持ちに対して、大変な思い上がった、自分の国だけのことを考えているということになるんですね。われわれも、もちろん石油が高いことだけを望むわけではありませんけれども。  そうしますと、アメリカにはエネルギー自立計画というのがあるのは御存じだと思うんですが、それを見ますと、こう書いてあるのです。「石油の需給均衡の面からいえば、輸入石油価格を一バーレル当たり七ドルに抑えたいとしながらも、十一ドルの価格が続くならば」——いまは十一ドルより安いですけれども、「一九八五年にはエネルギーの自立が達成できる。」と、こう書いてあるんですね。つまりアメリカにとっては、アメリカ一国の国益からいえば、アメリカは大して輸入しないわけですから、一九八五年までには自立したい、それにはむしろ十一ドルのほうが早くできるのだと、こう言っているのです。そんな国と同じに結びつけられたのでは、これはもうとんでもないことだ。これがアメリカの現実にとっておる政策であります。私は総理考えていただかなければならぬ、こう思うのです。  そこでもとへ戻って、あなたが仮定だと言われたキッシンジャーのビジネス・ウィークの発言にかわりますけれども、これは繰り返し繰り返し大統領によって肯定されているんですね。あなたは、本会議でわが党の津金議員の質問に対して御答弁がありましたけれども、そのときに、言葉だけでなしに「行動は雨」というつもりかしれませんけれども、首をこう絞められるまねをして、絞め殺されるときにはと、こう言われたんですね。私はあの姿を拝見して、いや三木総理は議会の子だとおっしゃるが、演劇の子じゃないか、演技もなかなかお上手だというように思ったのです。絞め殺されるというのは、どういう場合のことを言っているのですか。これはよその人の言ったことだからおれは知らぬ、と言えばそれまでかもしれませんけれども、これは非常に大事な問題ですね。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど代替エネルギーが開発されることがアメリカだけの国益であるようにおっしゃいましたのですが、私ども、そうは思っておりませんで、代替エネルギーが開発されることは、それによってわれわれ全体が利益する可能性がございますし、次に代替エネルギーが開発されて、アメリカが仮にアラブの石油を輸入する必要がなくなりますれば、それだけの輸入は、その他の国に当然向けられるべきでありますから、そうなりますと、量の面でも価格の面でも、当然に他の国に影響がございます。その点は私どもはそう考えております。  次に、首を絞められるということ、ストランギュレーションという言葉は、その後いろいろに説明がなされてまいりまして、結局、大統領はそれに対して、たとえば一九七三年の中東石油危機のようなもの、あれはそれには当たらないということをまず申しました。次に、これは押し倒されて、やられる前の寸前の状態である、まあ緊急避難のような状態であるということを申しました。キッシンジャーはさらに最近、これはウォーフェアを仕掛けられたときである、ウォーフェアというのは、おそらく戦闘行為というような意味と思いますが、いずれにしても、その後定義されましたところは、緊急避難、正当防衛を必要とするような極限状況というふうに説明されておると思います。
  97. 正森成二

    ○正森委員 宮澤さん、言われてもおらないのによくお話しになりますけれども、私、総理伺いたいと思うのです。  そこで申しますけれども、宮澤外相は言葉がおできになりますから、ストランギュレーションという言葉をお使いになりましたけれども、ストランギュレーションというのは、絞め殺すということですけれども、字引などを引いてみると、窒息させるとか、それから血管を押えつけて血液の流れをとめるというようなもともとの言葉なんですね。つまり、キッシンジャー氏がここで言っていることは、石油を空気だとかあるいは血液と同じように考えて、その流れがとめられるというような場合は、これは絞め殺されることなんだというように考えていることなんです。ですから、宮澤外相は、いま押し倒されるとか緊急避難だとか、いろいろなことを言いましたけれども、もともとそんなことはないのです。  現に、それを言うたころに、いろいろ新聞記者から質問をされて、フォード大統領はこう言うておるのですね。「新たな石油禁輸が行われれば、これは首を絞められた状態に相当するか。」と畳みかけられて、大統領は「一九七三年の禁輸と比較にならないものであれば確かにそのとおりだ。」こう答えているのです。それはもう新聞に広く報道されているところであります。またロックフェラー副大統領はこう言っておる。「絞殺とは経済的戦争状態である。」つまり経済的な問題であるんだということをちゃんと言うているのです。ですから、大体考えて、アラブ諸国が大国アメリカに対して、出かけていって、アメリカがノックダウンされて、緊急避難でも起こさなければどうにもならないような、そんな武力を持っていますか。全然持っていないです。だからこそ、繰り返し繰り返し報道でそういうことを言うているのです。  また、アラブ諸国は、七三年のときに禁輸措置を発動しましたけれども、どういう状態で発動したかと言えば、御承知だと思いますが、十月六日に戦闘行為が起こって、それでも発動していないのですね。そして諸外国に協定を求めましたけれども、十月十五日に至って、アメリカが、通常のいままでの援助どころか、公然と武器輸送をやるということをニクソン大統領が言明して、そしてどんどん武器が行ったのですね。そのときに初めて、クウェードでOAPEC諸国が集まって、十七日に石油の削減を決め、さらにそれから様子を見て、二十日になってから初めてサウジアラビアが、アメリカに対する禁輸を決定したのです。ですから、戦争が起こったからといって、一方的にやっているんじゃない。そうすると、非常に重大なことは、アメリカがそういう態度、国連決議を守らないイスラエルを援助するということを戦争のときにやらなければ、これは発動されないのですね。  ですから、アメリカがこういうことを言っているというのは、決してそんな緊急避難とか正当防衛とかいうことじゃなしに、逆に経済的な目的を理由として武力発動をする、国連憲章がまさに禁じている、そのことをやるということを言明したものじゃないですか。これは実に重大だと思いますが、総理お答えください。
  98. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま私が仮定の言葉だと言ったのは、いま言ったように、解釈にもたくさんの解釈があるわけですから、だから一つの極限を仮定して言った言葉でありまして、そのことが、武力介入とか、あるいはまたいろいろな行動になってあらわれたときには、これは、わが国としてはわが国の立場があるし、外交は、その国の国益を中心にして進められるわけでございますから、そのときに対して、わが国の立場というものを明らかにすることは当然でございます。いまある極限を仮定して言った言葉、内容についても、解釈にいろいろ違いがあるわけでございますから、私はやはり注目するのは、現実のアメリカの政策というものが、われわれのこれに対して賛成もし反対もする一つの尺度になるので、仮定の言葉だけで、ここでそれをわれわれ自身が想像して、こうするんだ、ああするんだと言うことは適当でないと感ずるのですよ。やはり問題にするのは現実の政策である。アメリカとはエネルギーの事情、も違うわけですから、わが国はわが国としての国益の立場に立って、外交をやっていくことは当然でございます。
  99. 正森成二

    ○正森委員 時間が参りましたから、最後に一問だけ伺わしていただきたいと思います。  総理、いま仮定の問題、仮定の問題と言われますが、私が言いましたように、一国の大統領や国務長官が繰り返し繰り返しそういうことを言明されるということは、一定の効果をねらった現実の政策なんです。あるいはおどしなんです。そういう効果をねらって、そういう発言をするのですね。  私は、いまから三十数年前のことを思い出すわけですが、こういう文章があります。「遂ニ經濟斷交ヲ敢テシ、帝國ノ生存ニ重大ナル脅威ヲ加フ。」「事既ニ此ニ至ル。帝國ハ、今や自存自衛ノ爲、蹴然起ツテ、一切ノ障擬ヲ破砕スルノ外ナキナリ。」あの太平洋戦争だって、禁輸されたというようなことで、経済断交をあえてした。「自存自衛ノ爲、蹴然起ツテ、一切ノ障擬ヲ破砕スルノ外ナキナリ。」こうなっているのですね。そういうのに通ずるようなことを言うというのは、もってのほかだ。  四十九年十二月十七日に国連で、「侵略の定義」というのが総意で——総意というのは全体の意思ですね。これは採決せずに採択された。その「侵略の定義」を見ますと、いろいろ書いてありますけれども、こういうようになっているのです。「政治的、経済的、軍事的、又はその他のいかなる性質の事由も侵略を正当化するものではない。」こうなっているのです。またもう一つ重大なことには  「他の国家の使用に供した領土を、当該他の国家が第三国に対する侵略行為を行うために使用することを許容する国家」もまた侵略である。つまり基地を与えておって、その基地から第三国が出かけていって、いま言ったような経済的目的のために武力を行使するという場合には、与えている国家もまた侵略に加担するものであるというのが国連の侵略の定義なんです。そうすると、わが国は横須賀等を第七艦隊の基地に与えておる。いま言いましたように、沖縄の第三海兵師団というのは、砂漠戦の用意までしておるというようなことになると、これは一体どういうことになるかということを思いますので、総理は、この「侵略の定義」から見て、いやしくもそれに該当するようなことをさせない、しないということを言明できるかどうか。それを伺って、委員長、時間でございますので、終わらしていただきます。
  100. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、やはり中東に対しても、日本の大きな役割りがあると思っているのです。経済的に見ても、石油の問題をとらえてみても、中東にこんなに依存しておる国はないわけですから、中東がまた再び平和が崩れてくるという場合に、一番の被害を受けるのは日本ですからね。そういう点で、そういう対決の方向に向かって動いていかないで、やはり産油国に話すべきことは話し、そうして消費国との話し合いをするということに対して、一番その利益を受けるのは日本ですから、大いに日本の外交が、いまもあなたが言われるように、アメリカは戦争の準備だ、そういうふうに考えないで、そうしてアメリカとも友好国でありますから、だからそこにこそ、日本の中東外交というものが大いに貢献しなければならぬ余地がある。戦争が起こって、日本はどうなるのですかね。日本の経済というものは、すぐにこれにかわるべきエネルギーといったところで、なかなかないわけですから、中東の和平を望むものは、やはりそういう国の利益からいって、日本が一番切実なわけですから、今後の中東外交というものは、そういう点に力点を置いて、今後積極的に日本は働く余地があると、私は考えておるわけでございます。
  101. 湊徹郎

    ○湊委員長代理 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  次に、楯兼次郎君。
  102. 楯兼次郎

    ○楯委員 まあ、ざっくばらんに申し上げると、大人の話を子供が聞いておって、どうもこれは筋が通らぬ、理解できぬというような初歩的なことを、これから一時間五十分にわたってお伺いをしよう、こういうつもりです。  まず第一に、大蔵大臣にお伺いしたいのですが、財政法六条に、四十八年度の剰余金の半額は国債の償還に充てなくてはいかぬ、こういうことがぴったり明示をしてあるわけです。ところが、一日配られましたあなたの方の法律案によりますと、昭和四十八年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案、二分の一を五分の一しか償還をしない、こういう法律を出されたのです。これは財政法六条の原則を否定した法律案じゃないか、こう思うわけですが、見解をひとつお伺いしたいと思います。
  103. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 ただいまお話のありました特例法でございまするけれども、財政法六条の原則を崩しているというわけではございませんで、ただ、昭和四十八年度には非常に多額の剰余金が御承知のように発生いたしまして、本来でございますれば、公債発行下の財政でございまするから、剰余金が出ましたときには、その年度において国債の発行を縮減していくということが一番望ましいわけでございまするけれども、四十八年におきましては、譲渡所得税等におきまして、不測の剰余金が発生いたしましたので、年度内に国債の発行を減らすということができませんでした。そこで、公債発行はなるべく減らしていくということが望ましいわけでございますし、昭和五十年度におきましては、むしろその分の二分の一を五分の一に減らしまして、それに相当する分だけ国債の発行を減らしていきたいというのが、この法律の趣旨でございます。
  104. 楯兼次郎

    ○楯委員 いまの答弁を聞いても、原則を曲げてまで五分の一に減らすという強力な根拠はないようにとれるのです。だから、前例があるとするならば、その前例はどういう場合であったか、もう少しわれわれにわかるように、五分の一に減らした根拠を明快に言ってください、金があったからどうとかこうとかいうことでなく。
  105. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 二分の一で計算いたしますと、来年度、昭和五十年度におきます剰余金の国債整理基金への繰り入れが三千四百億ほどになるわけでございまするけれども、昨年、四十九年度におきます国債整理基金への繰り入れも千三百億ほどでございますし、五分の一にいたしましても、大体四十九年度と同じくらいになるということが一つございます。  それから二分の一を五分の一にするのは、あるいは十分の一でもいいじゃないかというような御意見もあろうかと思いまするけれども、それにつきましては、かつて昭和三十八年及び三十九年に、五分の一に減らしたことがございます。その先例もございますので、五分の一といたしたわけでございます。
  106. 楯兼次郎

    ○楯委員 前に減らした慣例があるというならば、どういう理由でそういう慣行をつくったか。大体四十八年度の償還対象額は四千七百億円あるところです。これは昭和四十三年発行の返還が来ていますからね。だから、そんな減らす必要はないと思うのですよ。だから、前例があるとすれば、その前例はどういう場合であったかという、その慣例を明示してもらいたい。
  107. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 ただいま三十八年及び三十九年に、二分の一を五分の一に減らしたことがあると申し上げましたけれども、当時といまとでは多少事情が違う。と申し上げますのは、御承知のように、昭和四十年に新しく国債を発行いたしたわけでございまするから、昭和三十八年、九年には、まだ国債を発行しておりませんでしたから、当時とは必ずしも状況は同じであるとは思いませんけれども、しかし……
  108. 楯兼次郎

    ○楯委員 まあまあ、いいですよ。
  109. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 そういうことでございます。
  110. 楯兼次郎

    ○楯委員 いま堀君が、理由はほかにあると言う。全くほかに理由があるわけですよ。(堀委員「ほかの理由を聞いてください」と呼ぶ)ほかに問題があるから、そうもいかぬが、結局、前年度の二四・五%、それ以内に予算の膨張率を抑えなければならぬ、その必要から、これは操作したにすぎぬのじゃないですか。どうですか、大蔵大臣
  111. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一たん一般会計の昭和五十年度の歳出に立てまして、国債整理基金特別会計に繰り入れていくということになりますと、それだけの予算の規模の膨張になりますことは、御指摘のとおりでございます。
  112. 楯兼次郎

    ○楯委員 だから三木総理に、こういう、そんな子供だましな——私は初歩的な質問をすると言ったのですが、こんな子供だましなことをやらぬでもいいじゃないですか。たとえば予算の復活折衝のときに、何か官房長ですか、官房長の隠し金を五百億だということで、交渉しておるうちに、最後は四、五倍になった、こういうことを聞いておるわけです。だから、こんな子供だましな細工をして、本年度の予算は前年度よりいわゆる規模が小さい、中道予算であるなんというような演説をやらなくてもいいじゃないか、こう思うのですが、どうですか、総理
  113. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、形式的に規模を小さくしてみましても、それが手軽であるとは私は思いません。ただ、そういう細工をいたしましても、いま政府委員から説明がありましたように、四十八年度の剰余金が異常に多かったというわけでございますので、国債整理基金に繰り入れる額は、相当額、五分の一をもっていたしましても確保できるということでもございますので、そういう手段をとらしていただいたわけでございまして、特に意地悪くいたしたつもりはないわけです。
  114. 楯兼次郎

    ○楯委員 大蔵大臣が大まじめでそんな答弁をするような原因じゃないと、私は考えておるわけです。だから、私のこういう意見に対して異論があったら、また言ってください。  次に質問をいたします。  これは法制局長官にお伺いしますが、憲法の第八十五条に「國費を支出し、又は國が債務を負擔するには、國會の議決に基くことを必要とする。」この議決の内容でありますが、この債務を負担することの中には、債務を保証することも、これは含んでおると理解をするのが当然だと思うのですが、この見解をひとつお伺いしたいと思います。
  115. 吉國一郎

    吉國政府委員 憲法八十五条は、ただいまお読みになりました規定でございますが、これは国の財政についての、国会の最高機関として、あるいは立法機関としての権限を規定したものでございまして、国が債務を負担すると申しますのは、国の公法上あるいは私法上の債務全般を指すものでございますから、保証債務につきましても、その債務性に着目いたしまするならば、この債務の規定に入ると存じます。
  116. 楯兼次郎

    ○楯委員 では、いま法制局長官の解釈に基づいて、次の点に疑義がありますので、大蔵大臣質問したいと思います。  それは、今度の特別会計の内容を見ると、民間の外国為替銀行に対して、四十九年度には十億ドル、三千八十億円の債務が保証してある。さらに五十年度には二十億ドル、六千百六十億円の保証を予定しておるのですが、これは国会の議決を必要としないのか。予算書のどこにも載っておらないわけです。だから、いまの法制局長官の答弁と照らし合わして、われわれは非常に疑義を持つわけですが、この解釈をひとつ答弁していただきたいと思います。
  117. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 ただいまちょっと数字を調べておりますので、すぐ御返事を申し上げます。(小林(進)委員委員長、時間を見てくれよ、こんな時間まで持ち時間に入れられたらかなわない」と呼ぶ)
  118. 湊徹郎

    ○湊委員長代理 時間は正確に計算をいたします。——急いでください。
  119. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 申しわけございませんけれども、特別会計というお話でございましたけれども、何の特別会計でございましょうか。
  120. 楯兼次郎

    ○楯委員 外為ですよ。
  121. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 ちょっとお待ちください。
  122. 湊徹郎

    ○湊委員長代理 このままで、暫時休憩いたします。     午後二時五十五分休憩      ————◇—————     午後三時二分開議
  123. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより再開いたします。  竹内主計局長
  124. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 いまのお話でございますが、財政法の十五条で、国庫債務負担行為についての規定がございまして、財政法十五条におきましては、「法律に基くもの又は歳出予算金額若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外、国が債務を負担する行為をなすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。」と書いてございます。すなわち、法律に基づくもの以外のものにつきましては、国が債務を負担するのには、予算で、国会の議決を経なければいけないということでございます。  そこで、ただいまの二十億ドルのお話につきましては、外国為替資金特別会計法の第五条第三項におきまして、大変長い条文でございますので、省略して簡単に読ませていただきますが、「大蔵大臣は、外国為替等の売買及びこれに伴う取引上必要があると認めるときは、」云々、「外国為替等に係る債務の保証をし、又、この会計の負担において、」何々「借り入れることができる。」という規定がございまして、その五条三項に基づきまして、外為会計が債務保証することが、法律によって授権をされておる。その授権に基づいて、債務負担行為がされているということでございます。
  125. 小林進

    ○小林(進)委員 議事進行について申し上げますが、いまの主計局長がお読みになりました財政法の第五条は、それはあなたのおっしゃるとおりです。憲法の八十五条を受けまして、財政法で言うように「法律に基くもの又は歳出予算金額若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外、国が債務を負担する行為をなすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。」こうなっているのです。いまあなた方は、外替銀行に対する債務を国が保証する行為は、法制局長官が言われたように、債務負担行為だと言われておる。債務負担行為であるならば、やはり憲法、財政法に基づいて、ちゃんと国会の議決、承認を経なければならぬということは明確であります。あなたは、外為法の第五条を言われたけれども、それは借金してもいいということだけの話であって、国会の承認や議決を経なくても、そのままでよろしいなんということは、一つも書いてないのであります。保証行為が債務負担行為であるか否かがこの質問の中心議題でありまして、その保証行為が国の債務負担行為であるという法制局長官の明確な回答がある限りは、これは当然国会の議決もしくは承認を経なくてはならぬ。なぜ経ないかということを言っておるのでありますから、これは大変な違法行為であり、国会無視の行為であります。これはあくまでも予算書はもう成立しませんから、いままでお出しになりました予算書は、全部憲法あるいは財政法に基づいて書き直して提出してもらわなければ、これ以上審議を続けていくわけにはまいりません。委員長において善処せられんことを、これは強く……(笑声)  笑い事じゃありません。大変な問題であります。えてして最近は、だんだんだんだん行政府がわがままをしてきまして、こういう立法府無視の行為が最近は目立って多くなりました。まず、この前にも兼さんが言われた剰余金の使用の問題も、あるいは四十八年度の剰余金のしりを四十九年度の臨時国会にもう出しておる。国会決算の承認も経ないうちに、もう昨年の暮れの臨時国会に出しているというがごとき、例を挙げれば切りがないのです。全部日本の行政府は国会無視の行動を平気でやっておる。重大な問題でありますから、私どもはこの際、厳格にこの問題を処理していただかなければ、予算委員会として問題を進めていくわけにはまいりませんので、これは委員長において善処していただきたいと思います。
  126. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 そこで、大蔵省竹内主計局長、ただいまの問題について……。
  127. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 私の説明が悪かったので、十分御理解いただけなかったかと思いますが、財政法十五条に書いてございますのは、法律に基づくもの、または継続費の範囲内におけるもののほか、そういうもの以外で国が債務を負担するには「国会の議決を経なければならない。」と書いてあるわけでございまして、法律に基づくもの、あるいは継続費の範囲内にあるものについては、国会の議決を受ける必要はないということが書いてあるわけでございます。憲法八十五条で、国が債務負担をするためには国会の議決に基づくことをもちろん必要としていますが、学説といたしましても、その議決の形式というものにつきましては、法律によるもの、条約によるもの、あるいは予算によるものというものがあり得るのだというのが定説になっておるようでございます。
  128. 小林進

    ○小林(進)委員 議事進行です。  主計局長は、白を黒と言い、黒を白という詭弁を弄しておられます。憲法で言う、すなわち国が債務を負担する場合としては、ここにありますように、四つの場合があります。あなたのおっしゃるように、一つは法律です。条約を含む、に基くもの。歳出予算金額の範囲内のもの、これが二つ目です。三つ目は、いま言われた継続費の総額の範囲内のもの。次が問題なんです。その四番目は、その他のものとあるのです。その、その他のものの中を細分いたしますと、これをまた二つに分けて、特定の事項として、国会の議決を経て行うもの、これが一つです。いま一つは、災害復旧その他緊急の必要ある場合に、国会の議決を経た金額の範囲内で行うもの。これがすなわち憲法で言う八十五条の内容です。これも学説です。いま言われた債務保証行為は、第四のその他のものに該当するというのがもう学説であり、もう一般化したポピュラーな議論なんです。この意見は、これは定着しておるのです。  いま、あなたのおっしゃったこの債務保証行為というものは、その他のものの中にちゃんと含まれるのでありまするから、何と言われても、これはやはり国会の議決を経なければならぬ。これはもう画然たる定着した意見なんでありまするから、あなたは白を黒と言い含めようとしたところで、そう国会を安く見られちゃいけません。軽視をされてはいけませんので、どうかひとつ委員長の明晰な頭で、公正な審判を下していただきたいと思いますが、これは国会上大事な問題であります。あえて要望いたします。
  129. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 ただいまお話がございましたのは、財政法第十五条二項の問題を御指摘になったのだと思いますけれども、二項は「災害復旧その他緊急の必要がある場合」ということで、一項とは別の問題でございまして、一項では、法律に基づくものにつきましては、あらかじめ予算をもって国会の議決を経なくてもよろしいということが書いてございますので、その法律に基づくものは何の法律に基づくかと申しますと、先ほど申し上げました外為特会法の第五条に基づくものであるということでございまして、財政法第十五条二項の問題とは別の問題であるというふうに考えております。
  130. 小林進

    ○小林(進)委員 それは大変な間違いです。いまのように、財政法の第十五条の一項、二項、三項がありまして、あなたは一項だけを説明されるが、第三項まで一遍見てください。これは外為債務の保証とは違うけれども、「地方公共団体の債務の保証又は債務の元利若しくは利子の補給」云々であって、これは、国内における地方公共団体の債務の保証までも、ちゃんと国会の議決を経なければならないと、第三項で明記しているのです。問題の重要性を考えていただいても、地方公共団体の債務の保証と、対外国にまたがる問題の債務の保証と、それは常識から考えたって、物の軽重が違うじゃないですか。単なる地方の保証債の、国会の議決を経なければならぬというのと、外為の債務の保証などの、国会の議決を経なければならぬというのは、常識から考えたところで、その結論は出てまいりません。(「外為のところ、もうちょっと正確に言ってください」と呼ぶ者あり)
  131. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 もう一度申し上げますと、財政法の第十五条でございますが、第一項は「法律に基くもの若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外、国が債務を負担する行為をなすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。」、それから、ただいまお話がございました財政法第十五条の三項の問題でございますけれども、三項は、国が債務を負担する行為により支出すべき年限の問題でございます。年限は五カ年間以内であるということが書いてあるわけでございます。ただし、地方公共団体その他の場合につきましてはこの限りでないということが書いてあるのでございまして、財政法第十五条の三項は、国庫債務負担行為の年限を基本的には五年、地方公共団体その他、あるいは法律に規定のある場合についてはその例外とするという条文でございまして、債務負担行為そのものの例外ではないわけでございます。
  132. 小林進

    ○小林(進)委員 これは議論がよけいはずれてしまいましたよ。はずれてしまいましたが、やはりもとへ返りまして、「継続費の総額の範囲内におけるものの外、国が債務を負担する行為」、こうなっているんです。問題はこれなんです。その他国が債務を負担する行為はすべて国会の議決を経なければならぬ。すべてということではありませんけれども、その他国が債務を負担する行為、これは明確なんです。だから、その債務の保証が「債務を負担」に入るか入らないか。その保証が債務負担行為でないという法制局長官の答弁でも出れば、問題は振り出しに戻りますけれども、その債務を保証する行為は債務負担行為だという結論が出ている限りは、継続であろうと災害であろうと、それ以外のその他の債務であろうとも、やはり国会の議決を経なければならぬというこの条文に、そのものぴたりと当てはまるのでございまするから、どうあなたが詭弁を弄されても、だめでありまするから、これは理事会で協議……。
  133. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 法律解釈によるものですから、法制局長官から答弁をさせます。
  134. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまの問題財政法の解釈の問題でございますので、私からもお答えを申し上げます。  先ほどお答え申し上げましたように、憲法第八十五条においては、いわば国の財政の運営に関しまして、第八十三条の基本原則を受けまして、「國が債務を負擔するには、國会の議決に基くことを必要とする。」ということを明定いたしております。保証債務が債務の負担に入るということは、先ほど申し上げたとおりでございます。この憲法第八十五条の規定を受けまして、財政法、昭和二十二年法律第三十四号の第十五条におきましては、まず第一項で、これは大原則でございますが、「国が債務を負担する行為をなすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。」この大原則がございますが、それには例外がございます。一つは「法律に基くもの」でございます。第二番目には「歳出予算金額」の範囲内のものでございます。歳出予算で、たとえば人件費幾らということが計上してございまするならば、その歳出予算金額の範囲内においては、債務負担をすることがあっても国会の議決を経る必要はございません。これはもう当然のことでございます。第三番目には、「継続費の総額の範囲内におけるもの」でございますが、これも当然のことでございます。  そこで、「法律に基くもの」というものが、その第一の例外でございます。法律に基づいて国が債務の負担をするということはいろいろ例がございます。そこで、先ほど外国為替資金特別会計法の第五条について、大蔵省主計局長から申し上げましたが、第五条は、「外国為替資金の運営」について規定をいたしております。第五条の第一項で、「外国為替資金は、外国為替等の売買に運用するものとする。」とここで大原則を示しまして、その第三項で、「大蔵大臣は、外国為替等の売買及びこれに伴う取引上必要があると認めるときは」といたしまして、「この会計の負担において」ということで、いろいろな契約をすることができることを、根拠を示しておりますが、その中に、「外国為替公認銀行等の外国為替等に係る債務の保証をすることができる。」という規定がございます。第五条の第三項の半ば以下の規定でございますが、もう一遍申し上げますと、「大蔵大臣は外国為替等の売買及びこれに伴う取引上必要があると認めるときは、この会計の負担において」——外国為替資金特別会計に債務が帰属するという意味でございますが、「この会計の負担において、外国為替公認銀行等の外国為替等に係る債務の保証」をすることができるという規定がございます。この第五条第三項の規定に基づいて、大蔵大臣が今回債務の保証をすることになるわけでございますが、それは財政法第十五条第一項の「法律に基くもの」ということで、国会の議決を経なければならないものの例外になっておるということでございます。  それから、ついでに申し上げますが、第十五条の第三項で、地方公共団体の債務の保証について規定がございます。これは第三項の規定自体が「国が債務を負担する行為に因り支出すべき年限は、当該会計年度以降五箇年度以内とする。」五年以内しか認められない。十年も二十年もの長いものは認めないということの例外といたしまして、国会の議決によって年限を延長する場合であるとか、外国人に支給する給料、恩給であるとかというものと並べまして、地方公共団体の債務の保証の場合には五年以上のものも容認をするという例外規定に挙がっているだけでございまして、この規定は、地方公共団体の債務の保証についても、当然これは第一項の法律に基づくものでないものにつきましては、あらかじめ予算をもって国会の議決を経るものでございますが、その経るものについても、五年以内という制限はかからないということを規定しただけでございます。  要約して申し上げますと、財政法第十五条では、大原則としては、あらゆる国家の債務負担行為については、国会の議決を経なければならないという原則がございまして、その例外の第一として、「法律に基くもの」という規定がある。その「法律」として、外国為替資金特別会計法があって、外国為替資金特別会計法第五条第三項において、大蔵大臣に対して、「外国為替公認銀行等の外国為替等に係る債務の保証」をする権限を与えている。その規定に基づいて大蔵大臣が保証契約をすることについては、第十五条第一項の「法律に基くもの」として、「国会の議決」の例外と相なるということでございます。
  135. 小林進

    ○小林(進)委員 大体、いま法制局長官が、第十五条までわれわれの主張を全部認められたが、外為法の第五条の第三項を持ってきて、こういう法律があるから、第十五条の例外事項に入るとおっしゃったのですが、こんなことは、私どもはもう前から全部研究してきているのです。そして、最後にはそういう回答が出るだろうと考えたのでありますが、しかし、この問題をさらに追及をすると、また法制局長官自身の権威にも関してきますから、私は、これ以上議論をすることをやめて、もしその説明どおりいくとすれば、これは政府のいわゆる債務保証行為が、天井もなければ下もない。こんなことでもって、国が、何兆円あるいは何百兆円も、国会の承認なしにどんどんこれを借金されたら、一体国の財政はどうなるのですか。国会の存在はどうなるのですか。天州知らず。また、これは四十九年から始められた新しい方式なんでありましょうけれども、こうやってだんだんふえてきているのでありますから、これは立法上も大変ゆゆしい問題なんですが、これ以上法律論を闘わせると、質問者に迷惑になりますから、私は最後に言います。  この問題は、大変国の基幹に関する問題ですから、留保をしていただいて、いま少し研究を重ねながら、理事会に持ち込んで、専門家の意見も聞きながら、統一見解を近い将来つくる、こういうことでひとつ御承認を得れば、私は、議事進行に関する発言はこれで控えたいと思います。
  136. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいまの議事進行について、小林委員から御発言がありましたが、明日の理事会において、さよう研究をいたすことにいたします。  では、先ほど楯兼次郎君の質疑で中断いたしましたが十分間でございますので、それを勘案いたしまして、四時三十八分まで質疑を続行いたします。  続いて、楯兼次郎君の質疑を許します。楯兼次郎君。
  137. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行。法制局長官が一応、法律的解釈を加えられました。しかし、これは私も何回かこの委員会でやりましたが、憲法八十五条のいわゆる国庫債務負担行為、これにたくさん抜け道といいますか、ある問題である。したがって、これは理事会において、立法府の立場から、この憲法八十五条、及び先ほど来問題になっておる関連法規、条文等について十分に検討をしていきたいということを保留いたします。そういうことでひとつ理事会において研究する、これをお認め願いまして、質問者には次に移っていただくことにしますが、それだけはひとつはっきりと……。
  138. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 わかりました。明日の理事会で、さよう審議をいたすことにいたします。  楯兼次郎君。
  139. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、理事の方でお取り扱いが決まりましたので、私は質問を続行いたします。  ただ、一言言っておきたいことは、法制局長官あるいは主計局長の解釈をもってしても、では一体、限度をどこに置くのか。お話を聞いておると、一年間で約九千二百億でしょう、来年になったら恐らく、これはオイルダラーの借款ですから、二兆円ぐらいになると思うのです、もう際限なく、国会の議決もなくて、大蔵大臣が知っておられるかどうか知りませんが、どんどんとこの金額がなっていく。一体、われわれが大まじめな顔をして二十何兆の予算を審議している片方では、何兆円になろうとも、保証は自由自在だ、そんな予算の論議の仕方があるかということですよ。だから、まあ五条三項の解釈はどうか知りませんが、あとで理事の方でやっていただくとして、常識的に考えたって、こちらは一億円の金の議論を大まじめにやっておるのに、片方は何兆円でも、国会の承認も得なくて、勝手に保証できるというような予算の論議の仕方がありますかということです、だから私は、せっかくいい機会ですから、理事会で十分検討をして、日本の国会が予算審議で笑われないような審議の状態をつくっていただきたい、こう思います。  これから質問に入りますが、以下は常識的な質問をいたします。
  140. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。  ただいま楯兼次郎君からの御発言、ごもっともでございます。まことにそのとおりだと私も思います。したがいまして、あしたの理事会、続いて、結論が出なければ、毎日理事会で検討を重ねます。そうして、ただいまおっしゃるとおりのことについては、立法府の立場といたしまして、十分審議を尽くしたいと思います。どうぞお任せを願いたいと思います。  楯兼次郎君。
  141. 楯兼次郎

    ○楯委員 その点をはっきりさして、以下進めたいと思います。  三木さんにお伺いしたい。お伺いというより、私は非常に不満なんです。というのは、私は、前に国対委員長をやっておりまして、三木さんの所信表明に対して点数をつけた。私は、非常に積極的にやっておられるので、まあ山吹の花ではあるけれども六十点だ、こう言ったら、社会党の控室でみんなにひやかされたわけですよ。終戦以来、総理に六十点なんという点数をつけた国対委員長はおらぬと、こう言ってひやかされたのですが、しかし、積極的に諸問題の解決をやろう、こういう意欲に対しては、反対党のわれわれも敬意を表さざるを得ない。  ところが、きょうまで代表質問あるいは予算委員会状態を見てまいりますると、私は非常に失望をいたしました。また、国民の国会論議に関心を持ってみえる人たちも失望したのではないか。まあ私は、いままでここで議論になりましたから、一々細かい点は申し上げませんが、まず企業献金では、わが党の江田さんが第一陣にやりましたように、あなたは総裁になられるまでは、企業献金はいかぬ、個人献金でなければいかぬ。ところが、もう企業献金も、これは悪ではない、むしろ反対より賛成のような態度でおられる。それから、高度経済成長について、非常に所得の格差が今日のインフレと不況をもたらしたのでありますが、しかし、高度成長必ずしも悪くはないと言う。高度成長を歓迎したのは、財界と、高度成長によってほろもうけをした人たちなんですよ。そういう立場に立って、悪くはないと言う。それから、予算修正ぐらいには、できるできぬかは別として、野党の要求に応じていただけると、こうわれわれは期待しておったのですが、それはほとんど断定的に、これはだめだ。こういうことでは一体、三木さんにわれわれは何を期待したのか、何でいままであれだけいい点をつけてきたのかと言って、私自身がみんなからひやかされ、笑われております。  それから、特にここで議論になりました核の問題については、もう繰り返しませんけれども、これはもう常識だと思うのです。アメリカの有名な人たちも、もう日米の核のだまし合いはこれ以上いかぬ、ここでだまし合いをやめた方が、真の友好が促進される。荒舩委員長の裁断によって、国会として核の問題を検討しようという決定になりましたから、私はまあまあと思いまするけれども、言葉は悪いようでありますが、三木さんを見ておると、われわれが子供のときに聞いた裸の王様ですか、核の問題については、裸の王様のような気がしてしようがないのです。ここへ核を持ってきて、さあ、あるじゃないか、あるいはどこかで事故が起きたとなって初めて、野党の言い分がわかったというようなことでは、これはいかぬと思うのです。  こういう点について、非常に私は失望をしておるのでありますが、しかし、まだ国会は五月の末までありまするから、ぜひひとつ、われわれ国民が期待をしておるような積極的な姿勢をこれからとっていただいて、期待にこたえるようにしていただきたい、こう思います。  私は、三木総理自分の思ったことを本当にできるのは、この国会以外にはないと思うのです。これはもう言いにくい言葉でありますが、おそらく、会期末、総選挙でもあって、自民党内の勢力分野が変われば別でありますが、いまの構成のまま来年の通常国会なり臨時国会を迎えたら、もう、三木総理の、あれもやりたい、これもやりたいという積極的姿勢は、天の声としては通らないと思うのです。いまなら、三木総理のこれからやろうとする問題について、多少党内に反対があっても、いわゆる天の声といいますか、やらにゃいかぬという世論の絶大な応援があると思うのですけれども、この国会を、何もやらないような今日のような状態で過ぎたならば、もう次の国会からは、前の歴代の総理大臣とどこが変わっておるのかという、批判の声の方が大きくなってくるんじゃないか、こう思うのですがどうですか、失礼な言い方でありますが。
  142. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は楯さんに敬意を表しておるものであります。余りとらわれない物の考え方をする政治家として、敬意を表しておるのであります。その楯さんの社会党内における評価を下げるようなことをしては相済まぬわけでございますから、いろいろおほめをいただいたようなことが、これが、楯君の観測が間違っておったというようなことのないように努めてまいって、あなたの名誉は必ず守るように努力をいたすわけでございます。  そこで、こういう点が、楯さん、違うんですね。どうしても楯さんの場合は、一刀両断に、何と言うんですかね、悪か善か、こういうふうに断定する方が歯切れがいいわけですね。高度経済成長の場合でも、これはもうすべてけしからぬ、大企業と自民党が組んでと、こういうふうに言った方が歯切れがよいわけでしょうが、私はやはり、物を見る場合に、一方的に白か黒かという断定は非常にむずかしいと思う。また、高度経済成長のいろいろな矛盾とか、あるいはひずみというのは認めるんですよ。だから、これはやはり路線を変えようというのですけれども、それを全部、高度経済成長というものが悪だったという断定にだけはいかない。それはやはり一面において、生活水準を上げたり、いろいろな雇用の機会も増大した面もあるんですが、しかし、その速度というものが、やはり周囲とのバランスを逸した面があるわけですから、そういう点での言い方であって、私はもう高度経済成長の礼賛者じゃないのですよ。むしろ私は、もっと前から、やはり安定成長論者であったわけですよ。そういうことで、それが楯さんからごらんになったら、もっと歯切れよくやった方がいいのでしょうが、私、実際責任ある者としては、やはりメリットはメリットとして認め、また悪い点は悪い点として認めることが必要だと思うので、高度経済成長の礼賛者ではないということでございます。  また企業の面も、楯さん、私は前から言っているのですよ。個人献金と党費によって政党の資金は賄うことが理想だけれども、まだ日本の社会風土がやはりそこまで行かないんですね。個人献金というものは税制的な措置も要るでしょうし、そういうことで、経過的な措置は要る。それはなぜそういうことを言うのかというと、悪だとは思わないのです。これは悪だと思わないということは、企業というものは大きな社会的存在ですから、民主政治の健全な発展のために企業が応分の貢献をしようということが悪だと断定することはできない。しかし、それが節度を越えたり、その裏にいろいろな取引があるならば、これは悪ですよ、そういう取引があって、政治を不明朗にすれば。そういうことを考えてみると、企業の政治献金も、これはもう善か悪か、こう断定を、やはり今日の社会的風土のもとにおいて、することに無理がある。しかし、世の中のいろいろな点で、政治に疑惑もありますからね。これはやはり党費と個人献金で賄うことが一番理想でしょう。それまでの経過規定というものは要るということを繰り返して言っているので、私がにわかに意見が変わったわけではないのですよ。  そういうことで、いま例としてお挙げになりましたような問題について、これはやはり弊害の面は除去していくことに対して、できるだけ勇気を持ってやろうと思っておりますから、どうか楯さん、いま失望なさらないで、もう少しごらん願えれば……。  私は、いろいろ申し上げておることに対して、政治家として長い経歴で、こういう総理大臣を何回もやるつもりはないわけですから、全力を挙げてやりたいと考えておる次第でございます。ひとつ御理解のある御協力を賜りたいと思います。
  143. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、質問だって、揚げ足取りも何もやっておらないですよ。だから本当にやってもらいたいのです。ところが、あなたはいろいろ言葉の上では、演説を聞いておるともっともだと思って、われわれなんかころっとまいってしまうのですけれども、実際やってくれぬじゃないですか。  たとえば、国会の運営について一言申し上げたいのですが、対話と協調だ、いや党首会談だ、野党とも話し合ってやる。私はそんなことを毎回毎回繰り返していただかなくてもいいのです。ひとつ対話と協調、野党と一緒にやろうじゃないか。特に参議院の情勢から言ったら、もう野党の協力なくしてはやっていけない。それなら、終戦以来野党が要求しておるように、野党第一党に副議長をやりましょう、常任委員長も、参議院のように議員の案分比例によって、お互いに、与野党とも国会の運営に責任を持って、さあ行きましょうと言えば、あなたがここで何回も繰り返し同じような答弁をしなくったっていい。それはできるかできぬかわかりませんよ。あなたがそうやると言っ、たって、いろいろな批判その他があろうから、それはわかりませんけれども、副議長は社会党にやれ、常任委員長も十名ぐらいは案分比例で野党にやれ、そこで共同責任でやっていきましょうと言えば、もうそんないろいろの対話、協調だとかなんというような話は要らぬと思うのです。それでもう実現してしまうのですよ。ところが、五月の国会が終わるまで、いわゆる共同責任を持って、対話と協調でやっていこうという現実的な姿があらわれないというところに不満があるわけです。  それから、予算の修正を、あなたはもうだめだというふうにわれわれは受け取っておるのですけれども、こんなばかなことはないですよ。われわれは一カ月、何で朝晩予算問題で議論しておるのですか。よりベターな面があったら、修正すればいいじゃないですか。なぜできないか。そのできないという根拠を、ひとつ言っていただきたいと思います。
  144. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先ほどの人事の問題についても、私は、必要なことは与野党間の信頼関係の回復だと思うのですよ、実際は。人事の問題でも、やはりお互い信頼感があれば、非常に解決しやすい一つのことになると思いますよ。こういうことになったら大変なことになりはしないかという、お互いに不信感というものが現実にあって、これは解消していかなければならないが、そのことが阻んでおるので、要らぬじゃないかと言うけれども、私は頻繁に野党との話し合いをやるつもりですよ。やはり各政党が、いろいろ意見が違っても、信頼関係を持たないと、議会政治はうまくいかないのですよ。  そういう点で、予算の修正についても、楯さん、いまここに予算を出しておいて、どうぞ修正してくださいという予算じゃなくして、この条件のもとで最善を尽くしたのです。しかし、皆さんが、この方がベターだ、修正をしようということで、自民党も賛成するならば、予算の修正は絶対応じませんと、そんなととが言えるわけがないでしょう、国会でお決めになるわけですから。しかし、初めから修正してくださいという予算ではなくして、いまの条件のもとでは、いろいろ御不満もあろうけれども、政府としては最善を尽くした予算ですということで出したわけですが、これを皆さんごらんになって、いろいろ御不満があるし、それが自民党ももっともだということならば、国会はやはり修正権を持っておることは当然でございます。ただ、出したときから、どうぞ修正してください、こういう自信のない予算ではないということを申し上げておるのでございます。
  145. 楯兼次郎

    ○楯委員 たとえば総選挙があって、参議院のように与野党の勢力が接近した——逆転をした場合は別ですが、接近をしたというときになって、野党と協力してやらなければならないから副議長を上げましょう、常任委員長を上げましょうということは、追い詰められた、いわゆる三木さん以外の総理大臣がやることなんですよ。そうならない前に、共同責任でやりましょうというところに、三木内閣の誕生のゆえんがあるのじゃないか、こう私は思っておるから申し上げたのです。  それから、独禁法の改正であるとか、政治資金規正法の改正であるとかいう重要法案は、いや党首会談だ、野党の意見を取り入れてやるということ、これももう私は、ここで議論をする必要のないくらい言ってはみたけれども、まことに困難である——できないという断定は、さっきおっしゃったから、私はしませんが、困難じゃないですか。独禁法の改正は、自民党ばかりじゃない、政府の方に対して、業界も、ここ二、三日の新聞等を見ると、挙げて猛反対しておる。それから選挙法でも、政治資金規正法でも、企業献金はもちろん、連座制の強化——私、時間の関係で言わなかったのですが、あなたは何か新聞の投書に対して、「拝復 三木武夫」という書簡で、連座制の強化なんか大々的に約束されておるのですよ。ところが、ここにおられる法務大臣その他、新聞等ですから真偽はともかくとして、そんなことはだめだというような空気でしょう。だから野党の意見どころじゃない。自民党、あなた方の意見すら、いまの段階ではまとまらぬじゃないですか。だから、野党の意見を入れてやっていこうという余地を、今後あなたの努力によってつくっていただかなければ、これは公約違反になると私は思うわけです。  そこで、これはちょっと乱暴な提案かもしれませんけれども、政治献金は、本年は企業から一切拒否をする。総理、本年一年は企業献金を一切拒否していただいて、そんな金があったならば、自分の会社の製品の値段でも下げてもらう。われわれは、企業献金に気を使わない立場で、独禁法の改正を大々的に慎重にやったらどうか、こう思います。それから、ことし六月にあるか、福田総理の話によれば秋にあるそうですか、総選挙があったら、もう企業献金なしの選挙を一遍ことしやってみるというような決意でやられたらどうかと思うのですが、どうですか、この点。
  146. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まあこれだけ政治に、しかも金にまつわる不信が多いときですから、だから、たとえば企業献金にしても、そのことが政治の方向を曲げるようなことがあっては、これはもう政治の不信というものはさらに一段と高まることは明らかでございます。われわれは、国民全体の利益といいますか、バランスを考えなければ、今日の政治はできないのですから、企業の意見だけによって——いろいろな法案を作成する場合に、全体的な、国民的な立場で法案の作成に当たるのであって、そういうことによって、われわれが政治を曲げるようなことは絶対にいたさない所存でございます。(楯委員「私の提案について言ってくださいよ、乱暴な提案だけれども」と呼ぶ)  この企業献金というものを、いますぐにここでやめてしまえということは、いま申したように、ある一つの経過的な期間が要る。これは、楯さんの言うことはわかりますけれども、しかし、政治というものは現実に運営をしていかなければならぬわけですから、だから節度を設けることはいいけれども、いますぐ全部ここでドラスチックな改正というものは現実的でない面がありますので、そういうお約束はできないわけでございます。
  147. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、時間の関係で次へ進みますが、いま一番問題になっておるのは、高度成長政策の見直しですね。各野党の質問に対して、見直す、見直す、こういうことを言われまするから、今度はこの見直す対象を二、三点にしぼって、お伺いをしたいと思うのです。  とにかく高度経済成長をやって、富と所得の格差、不平等の拡大、インフレと不況、今日の状態になってしまったわけです。そこで社会的の格差是正が今後の大問題になるわけです。そこで、いままでやってきた高度成長を前提とした経済の基本計画を初め、諸計画の改定をやらなければいかぬと思うのです。たとえば、総理初め各大臣は、ここで質問があると、何々調査会、審議会に諮る、こういうことを言われますが、いままで高度成長下にあった審議会とか調査会とか、そういうものを根本的に改組しなければ、内容を変えなければ、高度成長政策の見直しには通じない、こう私は思うわけです。  したがって、私がここで提案をしたいのは、関係審議機関の構成と性格を全部この機会に変えるということをやったらどうか、こう思うのです。たとえば中央公害対策審議会ですか、小沢環境庁長官は、もう業界の代表なんか有害無益である。まあ形はどういうふうか知らぬけれども、委員をやめてもらうというようなことを簡単に言う。きのうきょうの新聞で見るわけですがね。私は、そういうことをやることが高度成長政策の根本的見直しに通ずる、こういうふうに考えるのですが、どうお考えになりますか。
  148. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、楯さんお考えになっても、大変な大きな転換でありますから、これはすぐ、もう短期間の間に諸般の政策というものの方向転換はできないことは御承知のとおり。大きく言えば五十一年度からの社会経済計画というものを見直すということで、企画庁で作業を進めておることは御承知のとおりですね。また社会保障制度についても、長期計画を五十一年度から立てようということで、多少の時間的余裕が要るわけです。  それから審議会などについては、いま新しく発足する場合とか、あるいは改組をする場合とかいうものについては、こういう大きな転換というものを頭に入れて、できる限りそういうことも頭に入れた人選をすることに努めておるわけでございます。しかし、現に作業をしているような審議会がありまして、楯さんの言うように、審議会を全部一遍解消してやり直すということは、実際的ではないと思いますが、今後の審議会については、いろいろ人選については、こういう転換期であるということを頭に入れた人選を、できるだけいたそうという心がけでおるわけでございます。
  149. 楯兼次郎

    ○楯委員 その点がちょっと総理と私は違うのですよ。いまこそ、基本になる審議会の機構と性格といいますか、これを変えることが出発点じゃないですか。だから、高度成長に協力した同じ顔ぶれで、同じやり方で、幾ら違ったことをやったって、これは何にもならぬと思うのですよ。しかも、もう細かい点は言いませんけれども、これを質問しようと思って調べたら、審議会が百九十六あるのですな。びっくりしちゃう。百九十六あって、これは本当に御用機関で、都合のいいときには活用、都合の悪いときには隠れみの、こういうことでやってこられたわけです。だから、こんなばかな審議会、調査会は整理するとともに、内容を根本的に変えなければだめだ。  ここで、わかり切ったようなことでありますが、話の順序で二、三、例を挙げてみたいと思います。大体、われわれの考えでは、高度成長の弊害が出てきたというのは、いわゆる資本蓄積と重化学工業の基盤育成というわけで、金融、財政、税制を挙げて、大資本というか大企業にサービスした結果、なったわけですね。ところが、この審議会の二、三の例を見ると、たとえば経済審議会、これは福田さんのところの経済企画庁にあるのですが、何をやるかというと、長期経済計画の策定でしょう。委員三十名ですよ。それで委員の顔ぶれを見ると、三十名中十七名が財界の首脳ですよ。それから官僚のOBが三名。三十名の委員で二十名が財界と官僚のOBで、どうして生活本位というか安定成長というか、国民のための長期経済計画ができるか、こう私は思うわけです。だから、このメンバーをかえなければいかぬと思うのです。財界首脳なんというのは、もうこんなものは一人も入ってもらわぬでもいいじゃないですか。十七名ですよ、三十名の委員の中で。そうして国民のための、どうのこうのなんて言ってみたって、こんなものは、もう基本がそうですからね、出てくる結果というものはもう決まり切ったことなんです。  それから税制調査会もそうでしょう。税制調査会は総理府ですか。二十九名の委員中、財界から十名出ておるのですよ。それから資金運用審議会、これは七名ですね。商工会議所会頭、銀行頭取というような人が代表になって入っておる。ところが、主人のほうの零細貯金層は一人も入っておらないわけですよ。こういう偏った審議会で、まじめな国民の政治ができるかどうか。どうお考えになりますか。
  150. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 楯さんのおっしゃることは、私はごもっともだと思うのです。私の担当しております経済審議会、これは会長が木川田一隆さんです。木川田さんの任期が来ましたので、いろいろ考えてみたのです。しかし、私はいろいろ考えてみまして、木川田さんという人は、もうずいぶん前から高度成長政策を転換しなければならぬという、まあ非常に熱心な安定成長論者なんです。その人を任期が来たからと言ってかえるということは、これは残念だな。またあれだけの貫禄を持っている人ですね、なかなかこれは探しにくい。こういうことで、まげて再度やっていただくということの御了承を得た、こういうわけなんです。  それから、その経済審議会の中で非常に重要なのは総合部会。この部会長につきましては、これは円城寺次郎さんにお願いをしておるわけです。この人も世の中を非常に公平に見ておる人だ、私はこういうふうに考えておりまして、この円城寺さんにも引き続いてひとつやってもらいたい、こういうふうに考えておるのです。  その他の委員につきましては、これは差しかえもいたしておりますが、全体といたしまして、日本の経済、これのかなり代表的な人々にお集まり願っておる。これは経済と言ったって、大企業ばかりじゃありません。労働組合の方まで含めまして、各界の人がその意見を代表し得るような仕組みになっておる、こういうふうに考えておりますので、事、経済審議会につきましては、御説はもっともですが、現実の問題として、御心配になるようなことはない、こういうふうに思っております。
  151. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、個々の人をいいとか悪いとか、どうこうと言っておるわけじゃないです。いままで、われわれの立場から言えば、間違った結論を出してきた人たちを、この際再検討をして、バランスのとれた委員にしなければいかぬじゃないか、こういうことを言っておるわけですよ。いままでの委員がいままでのようにやったって、同じことじゃないですか。  たとえば、私は不思議でかなわぬのは、ヨーロッパ諸国の経済の成長率は、いままででも四、五%でしょう。それ以上の国もあるかもしれぬが、日本は欧米並みになると、大騒動しておるというような点もおかしいと思うのですけれども、とにかく、一応いままでのやり方を変えると言うなら、その変えるエネルギーといいますか、基本になるこの審議会、調査会のメンバーの入れかえくらいやらぬことには、これは変えると口では言ったって、実行が伴わぬと思うのですよ。だから私どもは、学者なり専門家を主体とした、バランスのとれた委員にかえていただいて、新しい観点から、口だけじゃなくて、国民生活を第一に考えた結論を出していただく、そういう審議会にしてもらいたい、こう思うわけです。総理、どうですか。
  152. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 審議会のあり方については、少しマンネリになっておる点もございますし、また審議会で、必ずしも動いてないような面もございますので、これは検討をよくいたします。御趣旨の点も頭に入れて、検討いたします。
  153. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、交通問題をやってもらいたいという党の要請がありますので、ちょっと交通問題を質問してみたいと思います。  皆さんもごらんになったと思いますが、国道を通ると、交通安全協会の立て看板があるわけですね。その立て看板には、「せまい日本そんなに急いでどこへ行く」、こういう立て看板があるわけですよ。歴代閣僚連中にこれをかみしめてもらえば、今日のような結果にはならなかったんじゃないか、こういつも車に乗っておって思っているのですがね。「せまい日本そんなに急いでどこへ行く」これは全く日本の経済にとっても、今後いい警告になると思うのです。  そこで、運輸交通政策の見直しをやってもらいたい。特に私は、過疎バス、過疎地帯におけるバスと私鉄の運転確保、足確保という点で強調をしたいのでありますが、とにかく何でもいまではジェット、新幹線、高速道路、スピード化で、逆に言うと、近いところが遠くなってしまっておるわけですよ。駅で隣の町へ行こうと思って汽車を待っておっても、ちっとも来ぬでしょう。ぴゅうぴゅうと急行が通過していくというので、遠いところが近くて、近いところが遠くなってしまっておる。したがって、通勤であるとか通学、特に病気になったときなんかは非常に困るわけです。だから今後は、大衆輸送といいますか、公共輸送を中心に、交通問題は考えていかなければいかぬのじゃないかと思うわけです。  ところが、口ではそう言いましても、いまの中小企業の運輸業者というのは、赤字と物価高でダウン寸前なんですね。だから、いままでのような営利企業本位では、全廃になっちゃうわけです。  そこで、この過疎バス対策について、政府はどう考えるのか、いままでどういうことをやってきたか、やろうとしておるかという点を、これは運輸大臣ですか、答えていただきたいと思います。
  154. 木村睦男

    木村国務大臣 お答えいたします。  大量交通、過疎バス問題につきましては、マイカーの影響を受けておりまして、かなり経営も苦しい状態になっておることは、御承知のとおりでございます。運輸省といたしましては、もうすでに十年以上たつと思いますが、これに補助金を交付して、そして赤字の補てんをやりながら、地方交通の使命を果たさせようということで、今日まで参っております。  ことに、最近特にひどくなりました。ああいった過疎バス会社で、配当はおろか赤字で倒産寸前というふうなところもたくさんございます。そこで実は、今年度、四十九年度は、それらの過疎バスに対します補助金等いろいろ含めまして、二十二億ばかり出しておりましたのですが、今回御審議をいただいております五十年度予算では、思い切って、大蔵省とも折衝いたしまして、約五十八億補助金を計上することができたのでございます。そしていろいろ細かい、車両の取りかえであるとか、あるいは赤字路線とか、そういう基準を設けて、その補助金を使いますけれども、今日まで非常に苦しかったところが、これである程度救えるのではないか。それから、民間バスではどうしてもやっていけないというところにつきましては、それらの地方公共団体がこれを引き受けてやるようにと、これもいままで指導をいたしております。しかし、地方公共団体が引き受けましても、地方公共団体も苦しい財布でやっておるわけでございますので、今回も、引き受けましたときには、いろいろ地方公共団体と一緒になりまして、資金の融資あるいは一部補助金を出すというふうな方法を講じておりまして、今後さらにこれは充実をさしていきたい、かように思っておりますので、よろしくひとつ御協力願います。
  155. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、運輸大臣のいまの御答弁だけでは、とてもいま四苦八苦しておる過疎地帯における国民の足といいますか、交通機関は救うことはできぬと思うのです。社会党は、ここに堀君、政審会長がおられますが、相談しまして、社会党提案として、四つの法案を、この国会に議員立法として提案をしたいと思います。ぜひひとつ御賛成をいただきたい。それは、こういうことを私ども考えております。  過疎地帯における交通について、国及び地方公共団体は住民の足を確保する責任を明確にしなければいかぬ。いままでは国が、申請があると、経理状態がどうだとか、利益があるかとか、長続きするだろうかというので、許可、認可をしておったわけですね。それでやりっ放しなんですよ。だから、それがつぶれようが困難になろうが、ほうりっ放しです。これではいかぬ。したがって、国ばかりでなくて、地方公共団体は、住民の足を確保するために共同責任をもって運行する、こういう法案を提案したいと思いますので、ぜひひとつ御協力をいただきたい、こう思います。  それからいま一つは、やれやれと言ったって、結局、赤字の連続ですから、倒産寸前ですから、資金的な措置をしなければいけない、こういうことを考えまして、中小民営交通事業金融公庫法案というものをあわせて提案したい、こう思いますので、ひとつ御協力をいただきたいと思います。  これは、私鉄、バス、タクシー等は、先ほど申し上げましたように、大衆輸送、公共輸送機関としての社会的な重要性は、医療機関であるとか、あるいは環境衛生機関、企業に劣らぬと思うのです。医療だとか環境衛生機関には、こういう融資機関があるわけですね。ところが、許可、認可の対象になっておる中小交通業者に対しては、こういう制度がない。したがって、車両の購入、施設の整備等について、低利資金を融資できるように金庫を設置したい、こういう法案を出しますので、ひとつぜひ協力をしていただきたい、こう思います。  それから次に、国鉄の見直しについてやりたいと思いますが、この間、国鉄の五十年度の予算案を見たのですが、大体減価償却分を含めて赤字約七千億円ですね。それから、予算書を見ると、全く子供だましみたいなことが書いてある。ベースアップ五%ですよ。ベースアップ五%を大まじめで予算書の中へ入れておるでしょう。三月になったら、三木総理大臣は消費者物価を一五%に抑える。「出来ないことは言わない」と、これは、先ほど申し上げました投書に対する「拝復」として、あなたはお答えになっておりますから、国民は注目しておりますよ。だから、「出来ないことは言わない」ということは、できなかったらどうするかということになりますから、もし一五%に消費者物価を抑えることができなければ、これは重大な責任問題になるのじゃないかと私は思うのです。  それは別といたしまして、五%の非常識きわまるベースアップの内容である。もし四十八年度に改定した再建計画なんというものは、あの狂乱物価を境にして、根本的な再検討が要ると私は思うのです。国鉄総裁来てみえるようですから、答弁があったあと、社会党としてはこう考えるということを私は申し上げますが、もう破壊をしたようなあの再建計画に基づく——これは五十一年度、何かまた運賃値上げ一五%でしょう。そんなものはやったって、私は何にもならぬと思うのですが、この計画を今後も実施していくつもりであるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  156. 木村睦男

    木村国務大臣 楯さん御提案になりました法案の件でございますが、過疎地帯の対策の法案、中身を拝見いたしまして、十分検討させていただきたいと思っております。  それから交通機関向けの金融公庫を設けるという着想でございます。実は運輸関係の先輩が、ずいぶん昔から交通関係のこういった金融機関をつくったらどうかというふうなことも研究されておられまして、私たちもいろいろと勉強をさせられたのでございます。かといって、いまこういった中小私鉄、バス等に現存と金融機関でめんどうを見ていないかといいますと、かなり見ておりまして、昨年あたりちょっと計算してみますと、千数百億の融資等もやっております。しかし、御着想としては、前々から一部研究もしておりますような結構なことでございますので、十分研究をさしていただきたいと思います。  それから、国鉄の見直しの件でございますが、総裁からも御答弁があると思いますが、全く御指摘のように、累積の赤字も三兆円を超そうかというふうな大変な状態でございます。で、現在の十カ年の再建計画は、四十八年から五十七年、十カ年計画を実は立てたのでございます。御承知と思いますが。しかしながら、すでにそれで予定しておりました運賃改定も一年半もおくれますし、物価は上がります、燃料も上がってきます。また人件費も非常にふえてまいっておりまして、この十カ年計画はとうてい遂行できないという時点に立ち至っております。  そこで、政府全体も、五十年度は一応このままでいきまして、五十一年度から、そういった長期計画を、新しい経済新計画との兼ね合いにおいて立てていこうという方針を立てております。国鉄につきましても、五十一年度から新しい長期の計画を練り直して立てていこう、かように考えて、ことしじゅうに、できるだけ早くその結論を出したいと思っております。私の感じでは、いま崩れました十カ年計画、あれと同じような着想ではとうていできないだろう、こう思っておりますので、いろんな観点から、新しい構想のもとに、十カ年計画を——十カ年になりますか、五カ年になりますか、要するに、長期再建の計画を立てていきたい、かように考えておる次第でございます。
  157. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答えします。  ただいまの御指摘のとおり、国鉄の財政というのは非常な状態になっておりまして、大体、昭和三十九年ごろまでは、償却して赤は出なかったが、三十九年ぐらいから、赤が償却すると出る。さらに四十六年に至りましては、償却前がすでに赤であるというような状態になりまして、現在、四十九年度の末におきましては、大体、累積赤字が二兆近くになっている。先ほど御指摘がございましたように、五十年度は大体七千億ぐらいの赤が出るんだということで、まあ三兆に近いような累積赤字が出るということで、これはまあ大変な事態なんでございますが、一体そんな大きな赤がなぜ出てきたかということをひとつ、皆様すでに御承知願っておることと思いますけれども、さらに御認識を願いたいと思うことは、国鉄の運賃というのは、御承知のように、旅客運賃が、現在、この間値上げしていただいて戦前の三百二十七倍になった、貨物運賃は二百九十五倍であるというようなことにもかかわらず、御承知の消費者物価というのは九百から千に近くなっておるというようなことで、根本的にお金の収入が足らぬということで、これは先ほど大臣がおっしゃいましたように、五十一年度に十カ年計画の再検討をいたしてもらう節は、これは全部運賃でちょうだいするとは決して申しませんけれども、政府が税金を通して御援助くださるもの、それから御利用の旅客が御負担願えるものが、大体現況の二倍くらいにならぬと収支が償えませんという、恐ろしい状態になってきた。  それでこれは、恐らく皆さんは、国鉄の連中が遊んでいるからなんじゃないかという御懸念があることは、これは当然だと思いますけれども、御承知のように、サボタージュやってみたりストをやったりやっていることはありますけれども、その他の時期においては、国鉄の職員というのは非常に働いておる。その例を申しますと、昭和三十二年から去年あたりと比較すると、一人の働き高は一八五%になっている。それで、これは政府のあれなんかに比べましても、大体ヨーロッパあたりの二倍ぐらい働いているといったような一応は数字が出る。しかしこれは、輸送の質が悪くて、あんな殺人的で、働いているもヘチマもあるかという議論もよく承知しますけれども、とにかく、そう国鉄職員が怠けているということにあらずして、運賃がきわめて低位に押えられているにもかかわらず、国鉄の二万キロのうち一万キロは、これは幾ら値上げしても収支償わないような地方路線であって、それを賄い、さらに公共負担を賄い、それでこういった恐ろしい赤字が出てきたというようなことでございますので、運賃を二倍にするとかなんとかいうことは非常に乱暴な議論になりますけれども、そこらもひとつ十分御認識を願って、お助けを願って、毎年、私もしかられることはいやなんで、しかられぬような国鉄にいたしたい、かように念願しております。
  158. 楯兼次郎

    ○楯委員 いろいろ私は問題があると思いますが、いま総裁の言われたように、長期負債、赤字累積、合計いまでも約六兆円ですね。だから本年度の予算書を見ると、七千億プラスになるというようなことですから、まあ運賃値上げなんということを総裁は言われておりますが、一体どのぐらい運賃値上げをすればこれが賄えるか。しまいには、鉄道に乗る人はおらなくなるだろうと思います。したがって、運賃の値上げでこの赤字が消化されるものでもないと思うのです。これは重大な基幹輸送に対する危機に当面をしておる、こう思います。  われわれ社会党は、多少乱暴な議論かもしれませんけれども、負債のたな上げ、公共負担法の制定、あるいは交通施設も固定部分は国や地方自治体の責任でつくれ、こういう三つに分けて、党としては再建方式を考えておるのですが、今後国会の運輸委員会あるいはその他の委員会で、この問題は議論をしていきたいと思います。が、これはもういいかげんなことでは通らないと思うのですよ。  先ほどちょっと過疎バスの話をしたのですが、田舎の方の人たちは、高度成長というやつは本当に悪人だと言っておるわけですね。政府が高度成長を唱えて、GNPが少し上がったら、おった駅員がおらなくなっちゃうわけですな。またGNPが上がったら、今度は小荷物も貨物も扱わなくなっちゃったわけです。それで、世界第二位になったら、レールもバスも来なくなっちゃったわけですね。レールはまくってしまうし、バスは来なくなっちゃう。だから高度成長、GNP世界第二位というのは大悪人だ、日本は金持ちだ金持ちだというのに、あるものまで取っておいて何が金持ちか、こう言って、みんな怒っておるわけですよ。だからこれは過疎過密を通じて、都市、地方を通じで大問題でありますので、これこそ与野党が真剣な討議を重ねて再建方策を考える、こういうことにしなければならぬのではないか、こう思います。  それから、きょう新幹線の点検をやられましたが、私はもう時間がないので細かいことを言いませんが、これは月に一回ぐらいは運転休止をして点検をした方が安全だろうと思うのですが、どうですか総裁。
  159. 藤井松太郎

    藤井説明員 皆さんの御指摘によりまして、新幹線の点検をきょうは三回目をやっているはずでございますが、さらにもう一回やるということでございまして、いままでやった結果を端的に申しますと、明るいところでやったから、暗いところではわからなかったものが発見できたという、データはまだ集まっておりませんけれども、先生御指摘のように、きわめて常識的に言えば、まあ一月に一回ぐらいひとつ見たらどうだというお感じも十分了解されますので、その結果を見てひとつ検討していきたい、かように考えます。
  160. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、身障者に対する交通機関の取り扱いについて、ちょっと聞きたいと思います。  これは社会党が、政府予算編成のときに、身体障害者に対する待遇方の拡大について予算要求したんです。  時間がございませんから、説明はやめて読んでみますと、弱者対策としての交通施設を促進すること。身障者、老人等も普通人と同様に交通施設を利用できるよう施設を進めること。一つ、盲人用信号装置、安全誘導設備、身障者が車いすで利用できる車両、駅諸設備の改良。二番目、身障者介添え人の無賃、閑散時における老人割引の実施等を社会福祉等の立場をあわせて措置すること。これだけを運輸省の方へ要求しておいたのですが、対話と協調、野党の意見を尊重するという三木内閣の初仕事として、どういう取り扱いをしたか、御答弁願いたいと思います。
  161. 木村睦男

    木村国務大臣 身障者が交通機関を利用しやすいようにするという問題でございますが、これは、いまお話がございましたように、鉄道あるいは交通機関の施設の面、あるいはサービスの面、これらを通じまして、社会的なそういった方の対策の一環として、現在すでに逐次やっているところもあるわけでございます。  いろいろやっておりますが、一、二の例を申し上げますと、鉄道につきましては、駅舎で誘導装置、それから点字でもって運賃表をつくっておる。また、自動発売券の機械に点字のテープのはりつけをやって、盲人の人が切符がそこで手に入るようにしておりまして、また、一部、車いすの利用者の方に改札口を拡張するとか、あるいはトイレを身障者の人が使いやすいようにするとか、いろいろやっておりますが、現在のところでは、まだ駅数から言いましても非常に少のうございます。したがって、こういう点はこれから大いに毎年こういう施設をふやしていきたい。この面で、予算の面で今後とも努力をしていきたい、かように考えております。  それから、運賃の割引の点でございますが、これも御承知のように、傷痍軍人は無料をやっております。その他、身体障害者につきましては、国鉄、それから私鉄、バス等、いろいろ多少の違いはございますが、犠牲的に割引をやっております。  しかし、まあこれらのことも、身障者対策として今後さらに指導を強化いたしまして、できる限り、こういう方が交通機関を使いやすいように、また運賃の方につきましても安くするようにしてあげたいという気持ちは持っておりますけれども、これはやはり社会政策の一環として、一つの厚生政策でございますか、そういう面で、幅広く取り上げていくべきである。金額の話にもなりますけれども、先ほども話がございましたように、交通機関は経営上も非常に弱っておりますので、これに一概に社会政策的なサービス、財政上の非常な負担を伴いますサービスを強制するということも、運輸政策上どうかと思いますので、これは広く福祉、厚生行政の一環として、関係省と十分相談をしながら、とにかくこういう方ができるだけ安く、また容易に交通機関を利用できるようにという方向では、努力をしてまいるつもりでございます。
  162. 楯兼次郎

    ○楯委員 このキロ数の問題あるいは一挙に施設改良をやるといっても、これはできぬと思うのです。したがって、まあ運輸大臣、年次計画を立てて実現をしてもらうということをやってもらいたいと思うのです。  それから、この間、新聞の投書等にもありましたが、タクシーも身障者については割引制度をつくってもらいたい、こういう点もひとつ実行方、検討をしてもらいたい、こう思います。  それで、割引をせよ、無料にせよと、こういうことを担当の官庁に強要しましても、これは裏づけがなければいかぬと思うのです。だから、先ほど私が申し上げましたように、公共負担法、無料または割引等についての公共負担法をこの国会に議員立法として提案したい、こう思います。  ここでちょっとお伺いしたいと思いますが、厚生大臣、いま身障者の交通機関の無料バスの話が出たんですが、これらの方に対する待遇の改善といいますか、これは国鉄だ、運輸省だと言ったって、なかなか金の伴う問題ですから、できぬと思うのですよ。だから、政府も、これらに対する福祉政策上の問題として考えていただけないか、こう思います。  それから文部大臣、ついでですが、義務教育学童ですね。義務教育学童の通学費は、まあ義務教育は無料であるという議論はしませんけれども、これはやはり文教政策上、無料としてはどうか、あわせて福祉政策上の問題として考えてもらえないか、こう思うのですが、どうですか。
  163. 田中武夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま運輸大臣が申したように、普通の身体障害者については、ある程度の割引制度はとっておるわけであります。大体五割程度で、いろいろバラエティーがございますが、やっておるわけですが、これをさらに向上をして、完全に無料にするかどうかという問題もあろうと思いますし、一般的に、これについて、交通機関の社会政策的な見地からの割引に依存することなく、社会保障主管省がこれについて金を払うというやり方をお望みだというふうに聞きましたが、これについては、一体私どもとしては、そういう姿が望ましいのか、あるいは身障者のニードにプロパーにこれが使えるように、所得保障の観点から所得を引き上げるという方向でいくのがいいのか、これについては、ひとつさらに検討をいたすべき課題であるというふうに思っている次第であります。
  164. 永井道雄

    ○永井国務大臣 いまの御質問をちょっと確認したいと思いますが、身障者に関する義務教育ですか、一般ですか。(楯委員一般義務教育です」と呼ぶ)義務教育は、御承知のように小学校などの場合には距離が近いですね。それからまた中高——高等学校は違いますが、たとえば京都のようなところは、高校三原則というようなものを守っておるために距離が近いわけです。ですから、いま通学費とおっしゃいましたけれども、通学費を要するところと要さないところとございますね。むしろ要さないところが小学校レベルでは多いわけです。ですから、おそらく中学のお話になると思うのですが、これをどうするかということは、私は即答はできないけれども、十分検討しなければいけない。つまり、どのくらい数があるかということですね、そういうことを考えるべきだと思います。  ただ、特殊教育、身障者の問題ですと、これはすでに保護者に対する支給費目の中に、交通費というのも出ておりますわけです。そういう次第でございます。
  165. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは次に、新交通システムというものについて聞きたいと思うのです。いろいろここで議論をしたいと思ったんですが、時間がございませんので、簡単にお伺いしたいと思います。  本年度の予算で、運輸省、建設省、それから大蔵省の三者間で、それぞれ工事着工についての予算要求をしておって、三者が集まって何か覚書をつくった、覚書を交換したという話を聞いておるわけですよ、助成策について。その内容は何ですか。
  166. 木村睦男

    木村国務大臣 詳細でございますので、鉄監局長から御答弁申し上げます。
  167. 後藤茂也

    ○後藤(茂)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、いわゆる新交通システムにつきましては、私ども運輸省と建設省と両方が、五十年度予算について補助金の要求をいたしました。  結果といたしまして、運輸省には、そのような新交通システムのプロトタイプの設計調査費ということで、約二千万円の調査費をつけてもらうことにつきまして、財政当局とお話し合いがつきました。その論議の過程におきまして、このような新交通システムの助成措置のあり方につきましては、これから先、関係省でよく議論を詰めるべきであるというお話し合いがなされたことは事実でございます。覚書云々のことにつきましては、いまだそのような、はっきりそういうようなものができたということは、まだ御報告する段階ではございません。
  168. 楯兼次郎

    ○楯委員 私が質問をしたのは、いままで交通の一元化、私はきょうは省略したのですが、都市交通の一元化が叫ばれて久しいけれども、実効は上がらないというのが現実なんですよ。実効が上がらないのに、またまたニュータウンであるとか、あるいは都市の過密地帯で、新しい交通の様式を考えて、いや運輸省だ、建設省だというので所管争いが起きておる、こういうふうに思うものですからお伺いしたのですが、こういう問題についての一元化について、総理はどうお考えになりますか。これはまた大問題になるだろうと思うのです。と言いますのは、このシステムに対する、モノレールであるとか、やれ何式というふうなもので、メーカーが全部試作しておりますから、大問題になってくると思うのですよ。一元化の決意を総理に伺っておきたいと思います。あなたは運輸大臣をやられたから、よく御存じでしょう。
  169. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま企画庁の中にも総合交通研究会、それで交通問題も見直す必要があるということでやっておるわけですが、都市交通についても、これは運輸省かな、審議会があって、このことについては、言われたように問題をたくさん抱えておりますので、いま検討を加えておる。これは総務長官からお答えをいたします。
  170. 植木庚子郎

    植木国務大臣 お話のように、交通行政は多岐にわたっておりまして、所管が各省に分かれております。これには歴史的ないろいろな理由があるわけでございますけれども、お話のように多岐多様にわたっておりますために、各省が個別に政策を展開していく、それによって解決をしていくということは大変困難でございます。  政府には、御承知のように、臨時総合交通問題閣僚協議会がございます。したがいまして、交通政策の総合的な調整は、この閣僚協議会で行うことになっております。これをできるだけ活用いたしまして、この場を活用いたしまして、御趣旨に沿うように努力をいたしてまいります。
  171. 楯兼次郎

    ○楯委員 時間どおりでやめますから、もう一問だけです。  きのう、楢崎君と河本さんがここでやられましたね。その海運についてちょっとお伺いしたいと思うのですが、あの売船の中には、計画造船で国庫からの利子補給を受けたものがたくさんあるわけですね。だから、政府から利子補給を受けて、そうして売って金もうけをやるということはどうかと私は思うのですよ。  それから、これは違法であるかどうかは別として、こういう傾向は、きのうの楢崎君の質問を聞いておっても、よくないじゃないですか。衝突事故を起こした便宜置籍船というようなものの、幽霊のような船の増加というものは、好ましい傾向ではないと思うのだが、運輸省としては、こういう問題についてどういう取り扱いをやるのかという点が一点と、それからいま東京湾その他港は船腹の増加で大混乱ですね。したがって海上交通法の再検討というようなものが必要じゃないかと思うんですが、この二点をお伺いしたいと思います。
  172. 木村睦男

    木村国務大臣 船舶の海外への売却の問題でございますが、これは二千トン以上の船を売ります場合には、政府の許可が要るわけでございます。この中で、ただいまお話しになりました計画造船によってつくりました船は、つくってから五年間は売ってはならない、五年経過したら売ってもよろしいという、一般の売却とは別の条件がついております。いずれも売却のときには、二千トン以上の船は政府の許可に係るわけでございますが、政府はどういう判断でこれを認めるかと言いますと、その船舶を売却することによって海上運送の需要供給に影響があるかどうか、それから、わが国の海運の振興に支障があるかどうか、といったような観点から判断をいたしまして、それらの条件に支障がない限りは、これを認めなければならないという規定になっておるわけでございます。これを忠実に実行してやっております。  それから、外国の船を用船する、きのうもいろいろ話が出ておりましたのですが、これは世界的な傾向といたしまして、リベリアですとか、ああいうところに船の籍を置きますと、船に関するいろいろな税金が安いということから、いま全世界にあります船で二一%ぐらいは、そういう船を用船をして使っております。日本の海運企業全体を見ましても、全体で約二四%ぐらいは、そういういわゆる便宜置籍船の船を用船をしておるというふうなことでございまして、これは世界的な一つ傾向で、しのぎを削って、七つの海で海運企業は競争しておりますので、いろいろとそういう工夫をめぐらしてやっておるようなわけでございます。  そこで、こういったいわゆる外国船の用船がわが港内、港湾に入ります場合に、いろいろ事故を起こしております。これを、それじゃ、そういった船の日本の港湾に入ることを禁止したらどうかというふうなことも言われておりますけれども、これはちょっと世界的な国際的な問題でございますので、日本にも外国船がどんどん入ってまいりますから、日本だけがそれをやるということもできないわけでございます。ただ、そういう船に乗っておる船長その他が、日本の港湾事情に疎いという点は確かにございますので、その点は、いろいろな必要なパンフレットをつくって、あらかじめ配付して、港内の様子を知らすようにしましたり、あるいは誘導、指導もやるようにしたり、あるいは水先案内人を乗務させる区間というものを、いま検討いたしておりますが、ふやしていくとか、そういうことで事故の防止には心がけていくという方法を講じておるというふうなことでございます。  海上交通法それから港則法、そういった海上交通の秩序維持につきましての法律が二、三ございますが、これらも港内あるいは沿岸等、かなり最近はふくそうしてまいっておりますので、実情に合うように改正すべき点があれば改正していこうという態度で、検討はいたしております。
  173. 楯兼次郎

    ○楯委員 これで終わります。残余は一般分科会でやります。ありがとうございました。
  174. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて楯君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  175. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、公聴会の公述人の件について御報告いたします。  公述人の人選等については、さきに委員長に一任願っておりましたが、理事会において協議の結果、次のとおり決定いたしました。  すなわち、意見を聴取する公述人の方々は、二月八日午前十時から、日本経済調査協議会専務理事青葉翰於君、重度身体障害者グループ「羊の声」代表宮尾修君、午後一時から、日本タルク株式会社取締役社長森井庄内君、全国退職者の会連絡会議会長桜井資浩君、武蔵大学教授五島貞次君、国民経済研究協会主任研究員鶴田俊正君、二月十日午前十時から日本経済新聞社専務取締役佃正弘君、東京都新財源構想研究会座長木村禧八郎君、午後一時から、日本消費者協会消費者相談室長金森房子君、東京経済大学教授川上正道君、名古屋市立大学教授牛嶋正君、明治大学教授吉田忠雄君、以上の十二名の方々と決定いたしましたので、御報告いたします。  次回は、明六日、午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。午後四時四十二分散会