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1975-02-03 第75回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月三日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 竹下  登君    理事 谷川 和穗君 理事 湊  徹郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    大久保武雄君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       塚原 俊郎君    西村 直己君       根本龍太郎君    藤井 勝志君       細田 吉藏君    前田 正男君       松浦周太郎君    森山 欽司君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       阿部 助哉君    板川 正吾君       楯 兼次郎君    楢崎弥之助君       堀  昌雄君    湯山  勇君       栗田  翠君    小林 政子君       津川 武一君    中川利三郎君       平田 藤吉君    林  孝矩君       正木 良明君    安里積千代君       河村  勝君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         防衛庁参事官  菅沼 照夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    岩田 幸基君         国土庁計画・調         整局長     下河辺 淳君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君         公安調査庁次長 渡邊 次郎君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         大蔵大臣官房審         議官      後藤 達太君         大蔵省主計局長 竹内 道雄君         大蔵省主税局長 中橋敬次郎君         文部大臣官房長 清水 成之君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         食糧庁長官   三善 信二君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省機械         情報産業局長  森口 八郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         労働省労働基準         局長      東村金之助君         労働省職業安定         局審議官労働         省職業安定局失         業対策部長   岩崎 隆造君         建設省道路局長 井上  孝君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省財政局長 松浦  功君  委員外出席者         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   大来佐武郎君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月三日  辞任         補欠選任   多賀谷真稔君     板川 正吾君   荒木  宏君     栗田  翠君   平田 藤吉君     津川 武一君   矢野 絢也君     林  孝姫君   小平  忠君     河村  勝君 同日  辞任         補欠選任   板川 正吾君     多賀谷真稔君   栗田  翠君     小林 政子君   林  孝矩君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十年度一般会計予算  昭和五十年度特別会計予算  昭和五十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算昭和五十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。湯山勇君。
  3. 湯山勇

    湯山委員 私は、教育問題と食糧自給の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。(私語する者あり)
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと御静粛に願います。
  5. 湯山勇

    湯山委員 まず教育問題についてでございますが、総理は、今回の施政方針演説におかれまして、相当の時間を割いて教育の問題にお触れになりました。内容のある、しかも誠意のこもった演説でございまして、傾聴いたしたわけでございます。その中で、特に永井文部大臣を選任したという具体的な事実を背景に持たれまして、お述べになりましたので、ぜひ総理のおっしゃったような方向で進めていただきたい、という気持で質問をいたしたいと思うのです。  総理が、教育国家百年の大計であるというような意識をお持ちになられて、全人類は運命共有体であるというような意味のこと、それから、二十一世紀というものは地球社会時代だというようなこと、これも全く同感でございます。そういうことを考えれば、教育には、もっともっと、繰り返してもっともっと力を入れなければならない、ぜひそうしていただきたいと思うのですが、今回特に、私学助成の強化とか教員の待遇改善、あるいは育英奨学資金増額等に力をお入れになった。その後でお述べになったお言葉は、これはぜひお聞きしたい点でございまして、総理は「しかし、そのためには、まず教育を本来あるべき場に引き戻すことが必要と考えます。教育政争圏外の静かなる場に移さなければならぬと考えます。」そのため、「あえて政党人でない永井君を文部大臣に起用した次第であります。」こうお述べになっておられます。この総理の言われる「本来あるべき場」というのは、一体何をお指しになっておられるのだろうか。お述べになったところから考えてみますと、それは、政争圏外の静かな場、それが本来あるべき場だ、こういうふうに受け取れるというように私は判断をいたしました。それはそれなりに理解できます。  ただ、その後のお言葉で、本来あるべき場に引き戻さなければならないという、これは言葉じりじゃありませんけれども、引き戻すというには、何か力が働くというような印象も受けたわけで、総理がかねがねおっしゃっておる対話協調ということと、引き戻すという、そういう何か力を感じさせられるようなお言葉との間には、どういう関連があるのだろうか、というようなことを感じたわけでございました。現に、文部政務次官ですか、けさ新聞で見ますと、福岡かどこかで演説をされて、日教組という団体は羊の皮を着たオオカミだというようなこととか、文部大臣を簡単に利用させないとか——これを問題にしておるのではありませんが、というようなことを言っておられるというようなことから見て、引き戻すということはどういうことをお考えなのか。あくまでも対話協調で、そういう静かなところへ移すのだというお考えなのか。あるいはこれについてやはり何らかの立法措置その他でやっていこうとされておるのか。この点、まずお伺いいたしたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 湯山さんも過去を振り返ってみれば、わりあい昔は学園というものは静かな場所であった。われわれの学生時代考えてもそうであった。また外国などを旅行して、一番美しくて静かな場所というものは、やはり学園なんですね。そういうことで、今日の日本教育界の現状を見ますと、余りにも学園の中に政治の争いというものを持ち込まれて、やはりこの雰囲気を一新しなければ、私は日本教育の刷新はできないと思っておるわけです。  そういう点で、これは自民党もむろんいろいろと努力をしなければならぬし、湯山さんの、またほかの野党の各位の御協力も得て、教育の本来あるべき姿、政争圏外に置くというふうに持っていきたい。引き戻すということは、昔と比べてみて、本来あるべき姿とは違うわけですから、こういうことをまあ引き戻すという言葉を使ったので、力でこれはできることじゃありません。教育の場を力でできると私は思っていない。対話協調という、私が申しておる精神は、私の内閣の姿勢を貫いた精神である、さように御了承を願いたいのでございます。
  7. 湯山勇

    湯山委員 総理のお考え、よくわかりました。  ただ、今日の日本教育政争が持ち込まれているという言い方をする人もありますし、あるいは、教育の場をかりた政争であるというようなことを申しておる方もありますし、あるいは先般代表質問成田委員長の、むしろ自民党考え教育へ押しつけたのじゃないかというようなことについて、総理は否定をされて、むしろこの際、社会党その他の皆さんの力をかりてぜひひとつ正常な場に移したいというようなことを申されました。政争の圏内にある、あるいは学園の中に政争が持ち込まれている、いろいろありますけれども、それは表面的にはいろいろ現象的に出ておるものはあると思うのですけれども、私ども協力を申し上げるということから申しますと、一体それがなぜ起こってきたか。一概に政争ということで片づけていいかどうかというような問題について、やはり話し合いの糸口なり、あるいは文部大臣が言っておられる、もつれた糸を解きほぐすという点から言えば、検討しなければならない問題があると思うのですが、この点は、総理はいかがお考えでございましょうか。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この点は、どの政党がどうというような問題を、私は言っておるのではないのです。深いいろいろな原因があることは事実でございますが、それをみんなで協力して、そしてひとつ教育の本来あるべき静かな場所に戻そうではないかということで、これは、自民党がよくて、野党が悪いなどと私は言っておるのではないのです。そんな単純なものではない。そのことはよく問題を認識はいたしておるつもりでございます。
  9. 湯山勇

    湯山委員 そこで、やはり具体的な問題でいろいろ申し上げたことの方が、よくおわかりいただけると思いますので、私は、今日いろいろそういう憂慮すべき事態がある、それの根源というものは一体何かということについてお尋ねもいたしたいし、意見も申し述べてみたいと思います。  それは、本来教育というものは、憲法教育基本法に示された方向に従って進めていく、これはいずれも異論のないところであるというように思いますが、その憲法教育というものは、私は今日いろいろ混乱が起こっておる中で、非常に大きな要素を占めているということを痛感いたしております。それは総理もよく御存じと思いますし、特に三十八年の議会生活を通して、その間における動きというものをよく御存じと思いますが、戦後、日本の進路は百八十度大きく変わってまいりました。その方向づけをしたものが今日の日本憲法であって、その憲法がつくられるときには、特に憲法の柱になっている個人の尊厳あるいは主権在民、そして平和、これらの大きな柱について、それぞれ議論がなされております。その中で、特に問題は第九条の戦争放棄条項にあったと思います。  当時のいきさつを私なりに調べてみましたが、総理はもうその場にいらっしゃったわけですから、特にこの点お尋ねしたいのですが、あの憲法が制定されるときに、戦争放棄条項審議に当たって、自衛力というようなものの論議があったときに、吉田総理がこういう意味のことをおっしゃっておられます。古来、戦争自衛のためという名で行われている、大東亜戦争もまたしかりであった、自衛のためといえども、日本の国は軍隊を持たないんだということをお述べになっておられますが、これは総理も御記憶になっておられるところと思います。それが今日はその当時と変わってまいりまして、自衛のための自衛力を持つということは当然だ。そして総理自身も、先般の本会議場では、私は無防備論者ではないというようにおっしゃっております。いま申し上げておるのは、憲法解釈の是非の議論、これをきょうはしようというのではございません。ただ、いまのような考え方、そういう国の方針がそこで変わってきたという事実だけについて、総理は、それはそうだというようにお認めになっていらっしゃいますでしょうか。この点、内容議論じゃございませんから、経過だけについてお答えいただければ結構でございます。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは法律学者としての考え方でないのですが、一政治家としての見解を、私はこういうふうに述べておきたいと思うのです。  憲法というものは一つの理想を掲げたものですね。現実の間には、確かに私は格差があると思います。しかしその憲法は、書かれたときの活字そのもの、書かれたときの活字そのままというのではなくして、時代変化とか国民意識認識是認、こういうものによって、その解釈というものは生まれてくるもので、そして、しかし一方的に解釈をするということは危険でありますから、それはやはり判決によって積み重ねられてきて、新しい解釈というものは生まれてくる、こういうふうに、私は一政治家として考えておるわけです。したがって、いろいろな経過には確かに変更はありましょうけれども、そういうものが憲法ではないだろうか。書かれたときの活字そのままで、その解釈は何らの変更がないというものではなくして、やはりその時代時代、その時の国民意識是認、こういうものでやはり解釈というものが生まれてくる。しかしそれは一方的な解釈でなしに、やはり裁判所における判決、こういうものに裏づけられていかなければならぬものである、こういうふうに考えていますから、いろいろな経過一つ一つとらえてみますと、確かに変化があることは事実でありましょう。そういう解釈、そういうふうに私は考えておるものでございます。
  11. 湯山勇

    湯山委員 いまの御説明内容については、私には私の考えがありますけれども、それはきょうの問題ではございませんから。ただそういう経過で、解釈が変わってきたということをお認めいただいたので、それで御答弁は結構でございます。  そこで、私がお尋ねいたしたい……
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 湯山さん、ちょっと吉田さんの一いまのは憲法関連をしますから、政治家考え方というだけではいきませんので、吉田総理発言について、事実関係について、この機会に法制局長官発言を求めておきたいと思います。
  13. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいま湯山委員が仰せられましたように、憲法制定議会におきまして、吉田総理は、昭和二十一年六月二十七日の衆議院の本会議で、原議員の御質疑に対しまして、「戦争抛棄ニ関スル本案規定ハ、直接ニハ自衛権ヲ否定ハシテ居りマセヌガ、第九條第二項ニ於テ一切ノ軍備ト国交戦権認メナイ結果、自衛権発動トシテノ戦争モ、又交戦権モ抛棄シタモノデアリマス」と答弁をし、また、同年の六月二十九日、衆議院の本会議野坂議員に対して、「近年ノ戦争ハクハ国家防衛権ノ名ニ於テハレタルコトハ顕著ナル事実デアリマス、故ニ正当防衛権認ムルコト偶々戦争誘発スル所以アルト思フノデアリマス」と答弁しておりますので、その点は湯山委員の仰せられるとおりでございますが、その直後に、吉田総理自身によって、次のように補足され、かつ修正をされております。昭和二十一年の七月四日に、衆議院憲法改正案委員会において、林委員質問に対しまして、「私ノ言ハント欲シマシタ所ハ自衛権ニ依ル交戦権抛棄ト云フコトヲ強調スルト云フヨリモ自衛権ニ依ル戦争、又侵略ニ依ル交戦権、此ノ二ツニ分ケル区別其ノコトが有害無益ナリトハ言ツタ積リデ居りマス」、それからまた、昭和二十四年、これは大分後でございますが、十一月二十四日、衆議院予算委員会におきまして、黒田委員の御質疑に対して、「戦争に訴えざる範囲内の自衛権は、独立国家である以上、これを持っているということに解するのが常識であると思います」と答え、また昭和二十六年……(湯山委員「もう結構です」と呼ぶ)よろしゅうございますか。  そういうような経過をたどっておりますので、それだけ申し上げておきます。
  14. 湯山勇

    湯山委員 たまたまいまおっしゃったように、二十四年からのは内容的に変化があることは、私もよく存じております。これは吉田総理自身の心境にも御変化があったんだと思いまして、それはそのとおりです。二十一年当時と二十四年以降とは変わっているということさえわかれば、それでもう十分だと思います。  さて、これはそのとおりですが、問題は、そこから教育の問題に返りたいのです。というのは、教育の面では、これだけ大きな日本の歴史的な転換期に当たって、教育が動揺してはいけない。戦前、戦後の教育は大きな変化があるはずですから、特に憲法をめぐって大きな問題がありますから、そこで文部省は遅滞なく、ここにあります「あたらしい憲法はなし」というものを出しました。これを出したのが二十二年の八月です。つまり、いま法制局長官の言われたもので言えば前段段階、そこでお出しになっておられます。それではこの憲法についていろいろ述べておりますが、ただいまの戦争放棄について、こう述べております。「こんどの憲法では、日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊軍艦飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは、「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。」こう説明しております。  これは私は正しいと思うのですが、この考え方というものは、三木総理の、二十一世紀地球社会人あるいは運命共有体、こういうお考えに通じてはいませんでしょうか。総理、いかがですか。
  15. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その教科書を拝見しておりませんが、やはり教科書を貫いておる精神は、憲法主権在民平和主義あるいは基本的人権の尊重ということが全部を貫いておるわけです。九条の解釈について、教科書はいろいろな立場を紹介しておるだけで、一方的な解釈はしておらないものだと私は承知しておりますが、詳しいいろいろなことは、文部大臣のほうからお答えをすることにいたします。
  16. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの湯山先生のお言葉でございますが、「あたらしい憲法はなし」というのは、これは昭和二十二年に出ておりまして、いまおっしゃったとおりでございます。その後、法制局長官が御説明になりましたような、そういう憲法の条文についての解釈変化というものも生じました。  そこで、教育の方はどうなっているか、それはまた、二十一世紀とのつながりでどうかということを申し上げますと、これはやはり、本当に平和を実現していくということは、人間の歴史上の大変重要な営みであるかと思います。  そこで、いま二十一世紀ということをおっしゃいましたが、二十一世紀は、わが国はもとより、平和というのは一国だけじゃございませんで、いろいろな国々が相互に関係を保ちながらつくっていく、そういう諸国間の関係と思いますが、それに向かって進んでいくという基本的な考え方というのは、私はわが国民の間において変わったものではない。そして、教育におきましては、さてそれを実現していく上にどういうふうにしたらよろしいかということを、政治とかあるいは司法の立場とは違う立場で、また必要があれば御説明申し上げますが、進めていこうとしているものだ、かように考えております。
  17. 湯山勇

    湯山委員 よくわかりました。私もそういう理解をしております。というのは、いまのように当初こういう考え軍隊を持っていなかった。それが実際には、その後、兵隊軍艦飛行機も持つということになりましたから、実態が変わってきたわけです。そうすると、憲法というものはいまおっしゃったように、教育憲法と、それから政治憲法と、それからもっと言えば裁判憲法と、三つ解釈によってあるというような実態になってきた。  そこで問題は、それがいい悪いを、きょうは論議いたしません。問題は、この憲法を子供に教えてきた、その教育内容がいまのように、つまり国政治がそういう方向に変わってきたのであれば、これと政治実態との矛盾というものが当然出てまいります。先生たちは、これでいいんだ、心配ないんだ、正しいことが強いんだということを教えてきている。一方、政治の方は、それでは心配だから、飛行機も持つ、軍艦も持つ、こういうふうに変わってきた。その変わったときに、文部省あるいは教育の指導というものは一体何をやったかということをお尋ねしたいのです。それについて、何か適切な指導——先生は困っています。これを教えたが、実態は変わってきている、正しいことは強いんだと言ったけれども、やっぱり軍艦の方が強いんだということにならざるを得ない。これでは実態と変わってきている。  今度は、子供たちの意識と先生とまた違う。先生の場合、事実の政治の流れを見て、ああいうことかなと思っても、教えるときにはそういうわけにまいりません。文部大臣は先般参議院で、教育というものは、教育の過密ダイヤの解消ということも大事だし、正しい美しい日本語の学習ということも大事なんだということをおっしゃいましたが、もしこれ正しい日本語で憲法九条を読んで、そこから、飛行機も持っていいんだな、軍艦も持っていいんだなというようなことが出てくるかこないか。もし出てきたとすれば、それは大変な間違いで、正しい日本語からは出てこない。そういう矛盾が起こっていますから、当然ここで正しい指導というものをしなければならない責任が、政府にはあるというように考えます。ここで何かやったかどうか。いかがですか。
  18. 永井道雄

    永井国務大臣 私、この問題について、先生おっしゃいますことを考えますと、かようなことではないかと思っております。  いまの「あたらしい憲法はなし」ですね、これは昭和二十二年にできたわけなんですが、その後変化が起こった。そうすると、どういう変化が起こったかというと、これは私などが申し上げるまでもないのですけれども、一種の冷戦状態と申しましょうか、そういう国際的な緊張というものが起こりました。そして、そういう情勢が極東にも反映いたしました。  さて、そういう中で教育をどういうふうに進めていったらよろしいかという問題が起こるわけですが、それについて若干資料的なものに即して申し上げますと、たとえば——資料について申し上げるより、その前に一つ申し上げておきますと、今度そういうものを教えるときに、小学校、中学校、高等学校、それぞれ発達段階が違うと思うのでございます。そこで、その発達段階に応じて教えていくということがございますが、それはまたあとで詳しく説明するといたしまして、その前に、たとえば中学校の社会科でどう教えていくかという、憲法のところを読みますと、これは三百三十五ページから三百三十六ページまでに、指導書からの引用を申し上げるわけですが、前段におきましては、いまの新しい憲法の話ですね、平和主義の問題。そしてわが国というものが、戦争の非常な惨禍を受けたばかりか、原爆の経験をいたした、こういうことが繰り返されないように、ということを言うんですが、後段になりますと、一「いっぽう、アジアにおける国際情勢の変化が原因となって、わが国が一九五〇年以来自衛力をもつことになり、その後それが増強されて自衛隊が設置されるに至ったことにも触れることが望ましい。」こうなっております。
  19. 湯山勇

    湯山委員 結構です、そこまでで一応。  そこで、文部大臣、学習指導要領にそう書いてございますか。
  20. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま読みましたのは、中学校社会科指導書でございます。
  21. 湯山勇

    湯山委員 指導要領じゃないんでしょう。
  22. 永井道雄

    永井国務大臣 そうです。指導要領では、もう少し違うことがございまして、これは先生御承知ですが……。
  23. 湯山勇

    湯山委員 いいんです、わかっています。  その指導書はいつ出ておりますか。
  24. 永井道雄

    永井国務大臣 その年月日は、政府委員からお答えいたします。
  25. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 中学校指導書社会科編は、昭和四十五年五月に出ております。
  26. 湯山勇

    湯山委員 それで問題なんです。変わってきたのは、昭和二十四年、二十五年でしょう。二十年間一体何をしておったんですか。しかも学習指導要領じゃありません。いまのは正規の文書じゃないんです。この指導書という解説書。これに触れたものはわずかにそこだけしかありません。しかもその説き方というのは、はなはだ不親切です。  本来、憲法というのはこうだと、いまおっしゃったように、従来のようなことを述べて結構です。しかし一方こういうこともある。いま大臣読まれたとおりです。これはいまの憲法解釈だ。しかし、「いっぽう、アジアにおける国際情勢の変化が原因となって、わが国が一九五〇年以来自衛力をもつことになり、その後それが増強されて自衛隊が設置されるに至ったこと」——その後です、問題は。「にも触れることが望ましい。」たったこれだけです。この大きな変化をこれだけで片づけようとしておる。二十年間一体何をしていたか。私は、ここらに、今日の教育がいろいろ問題をはらむに至った原因があるということを感じております。まことに不親切千万である。出たときには、これば大変だというので、こういうのを出しておきながら、だらだらっとして、それで教育憲法は、いまなおこのまま生きているのです。学習指導要領は、このことについては変わっておりません。これでいいんですか。教育の責任を果たしていますか。文部大臣、いかがです。
  27. 永井道雄

    永井国務大臣 政治もそうでございましょうが、教育というものも常に理想を持ちますが、しかし、完全に理想に到達するということはありませんから、足りないところも十分あるということは、まず最初に謙虚に考えておくことが非常に必要だ、私はかように考えます。  それでは、何もしなかったかというふうにおっしゃいますと、それはそうではないんではないでしょうか。わが国におきまして、この九条をめぐりまして、教育外の場におきまして相当対立があったりしたことは、申し上げるまでもございません。そういう間でどういう教科書を出していくかという問題がございまして、この教科書を、ですからいろいろ工夫するんですが……(湯山委員「それもわかっていますから結構です」と呼ぶ)そうですか。しかし、それが実は先生のおっしゃいました、教育の方は何もしなかったのですか、あるいは文部省考えなかったのですかという問題に関連いたしますので、それはやはり、小中高それぞれの段階に応じまして、特にいまの問題を考えさせるような、そういうものをつくり上げていくということはしてきた、これは私は申し上げておく必要があるかと思います。
  28. 湯山勇

    湯山委員 文部大臣、あまり事務当局の答弁に忠実にお答えにならぬ方がいいと思うのです。教科書のも、私も知っています。いまのような妙な指導書を出して以後、教科書にも「一方においては」とあるのですけれども、どっちがほんとうかと言われたら、大臣は、一体どっちがほんとうですか。「一方には」ですよ。いまの指導書でも、これもこうだ、しかしそれ以後こういうふうに情勢は変わって、一方にはこういうふうになっていることにも触れておけと、二つ対立している。教科書もそうです。どっちをあなたはとりますか。総理はどっちですか。私は無防備論者だからこっちだ、私はこっちだ、これは自由なんです。指導じゃありません。これは並べただけです、教科書も。それから指導はありました。それはたとえば、憲法の条文に深く触れるな、大勢だけ言って細かく触れるなというのですが、国の理想、方向を示した憲法の中身を詳しく説明するなというような指導がありますか。これはありません。そうせざるを得ない。法務大臣、笑っておられますけれども、笑い事ではないのです。  そうなってくると、先生たちは、これがほんとうだと教えてきておるのですから、一遍自分で。これが違うのは困るという気持ちになるのは、これは当然です。それに対して、二十年間、公の指導というものはないのですよ。何もしないでおって、しかも指導書——指導要領ではなくて指導書で、いまのように、どっちでもいいようなことをやって、かえって混乱さしている。ところが教育の現場はそうはまいりません。そこで、やはり教育では、この教育憲法を守らなければいかぬ、政治憲法裁判憲法は、これは教育の場にはふさわしくない、こう思って憲法を守ろうとする。これは当然だと思います。教育基本法にもそう書いてある。  ところが、それに対して、結局変わってきたのは、文部省の姿勢が変わってきました。文教行政の姿勢が変わってきた。それは、いまのような、教育の過密ダイヤの解消とか定員法とかいうのもありますけれども、しかし、やはり大きく変わったのは、そういう憲法を守ろう、それに反することには反対するという、決してこれは政治活動と言えないような面に対しても、なおかつ、政治活動規制の教育二法が出る。教育委員は任命にするという、民主的な場を取り上げる法律が出る。それから、学習指導要領は一層拘束力を強化する。こんなものが指導強化してくる。適切な指導を一つもしていない。そこで、いまのようなことが強化されてくる。それから今度は、いまのように、この憲法ではいかぬというようなのを抑えるためにも役立つ勤務評定、これが出てくる。ですから実際は、そういう意図でなくても、これと結びついてくると、それらが皆政治的な色がついてくるわけです。そうすると、これに対しては反対する。  たとえば校長を管理職にするなんということは何でもないことです。議論にならないんだけれども、いまのような教育憲法政治憲法、この中で、やはり教育はこれを守らなければならないということになってくると、管理職になってくれば上から抑えてくるんじゃないかという心配は、これは政争じゃありません、私に言わせれば。当然教師の良心からそうせざるを得ないという面が出てくる。これをもって政争だと言えば、それはおかしいのです。今度の総理がおっしゃった給与の問題、人材確保の給与にしても、これは教員優遇に反対する先生なんて、一人もいません。ただ、これを五段階にして、上の方にはこうだこうだというふうにすると、そのことが政治憲法の押しつけのような形になりはしないか、こういう学習指導要領になりはしないか、こういう心配があるから、それは困ります、話し合いしようじゃないかと。幸い、そういうことが除かれて、衆議院では、われわれは反対、参議院で修正、それにまたわれわれは賛成する。あれは議会主義、議会政治のお手本みたいになったじゃありませんか。反対したわれわれが修正でまた賛成、これが大事なのです。これなくして、一体話し合いと協調と言ったって、それは空念仏に終わる。この政治圏外へ置くということの背後には、いまのような認識がなければならない。というのは、政治憲法に対しては、どうしても管理的な立場の人は妥協的です。これは否めない。文部大臣はどうか存じませんけれども、妥協的になります。迎合的になります。  その一つの例を申し上げますと、先生は労働者かどうかというような議論もそうです。これについても、これは本当言えば不毛の論議だと思いますけれども、しかし、先生は労働者であってはならぬというようなことをだれが言っておるかというと、国立教育研究所の所長、と言えば国家公務員でしょう、いかがですか。文部省の役人ですね。この所長がどういうことを書いているかというと、これは「中等教育資料」ですから、発行は文部省です。編集は、文部省の中学校教育課と高等学校教育課が編集であります。これの十一月号のトップに出ておる論文には、こう書いてあります。  「元来「教師は労働者なり」と規定する背後には、」——もっとあとからでいいです。「そもそもわれわれが労働者と表現する働きは、英語のレーバーラーに該当するものであるが、それはラテン語のlab。rに由来する。その原義は、いやいやながら働き、ヘトヘトになって働くことであり、古代ローマにおける奴隷の働きを指したものなのである。これに対して勤労なる語句は英語のワークに該当し、その語源は古代ゲルマン語のWerkである。意味するところは、働くことを人間の本質の一つh。m。faberとする人生観に立つものであって、これこそ人間本来の在り方なのである。われわれが共通に願いとするところは、すべての人が例外なくよきワーカーたることであって、何人もレーバーラーであってはならないということである。この意味で専門職たることをその本質とすべき教師が、いわゆる労働者であってよいはずはなく、このことは本来」云々と、こうなっています。そうすると、実質はいまも労働過重で、こうかもしれませんけれども、とにかく労働大臣というのは奴隷大臣ですよね、この言葉で言えば。労働省というのは奴隷省ですか。レーバーでしょう。これは文部省の資料ですよ。この考え労働大臣は肯定しますか。
  29. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えいたします。  私は、日本の今日を支えているのは、働く諸君の勤労の汗の上に立つと思っておるのでありまして、いまのような表現は変わった表現だ、こう思っております。
  30. 湯山勇

    湯山委員 そういう解釈を認められますか、労働大臣。これは公の出版物ですよ。適当とお考えになりますか。
  31. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 内容をよく読んでおりませんからわかりませんけれども、私は、教育者の場合に、単純にただ搾取されるようなレーバー、そういうふうな考え方には同意いたしません。
  32. 湯山勇

    湯山委員 そういうことを聞いておるんじゃありません。教育者が労働者と言うのはいけないと言うのですが、労働基準法にはちゃんと教育に従事する者は労働者と書いてありますね。そうでしょう、労働大臣。
  33. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 労働基準法の労働法規は、公務員である教職員に対する適用除外の場合を除きまして、教育に従事する者に対しても適用されておりまして、言いかえれば、教職員もその限りにおいては労働基準法等の労働法規上の労働者であります。
  34. 湯山勇

    湯山委員 これも議論するんじゃないのです。実はこういうことを書く必要はちっともないでしょう。ないものを、国立教育研究所の所長が出す、ここに問題があるということを申し上げておるわけですから。  そこで、いまの教育政争の場からのけていく、そういうことに御協力したいということで申し上げております。これらから考えてみると、単純に現象面から、それは政治的だとかなんだとか言い切れないものがたくさんあるということもおわかりいただけると思いますが、総理、いかがでしょう。
  35. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまのいろいろ質疑応答を聞きまして、何か湯山さん、こういう不信感情というものは除けないものでしょうかね、皆協力して。たとえば労働者の問題。教育者は労働者かどうかということを、教育議論する場でそんなに長い時間をかけて論議される国というのは、余り私は知らないですね、実際。だから、これは労働者、労働大臣の方から言えば、そういうことになっておるけれども、何か国民の調子からすると、筋肉労働をされておる人とは違った大きな専門職というのですか、そういうふうな感じですよ、常識から言えば。     〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕 そういうことで、労働者かどうかということが長いこと議論になり、教師の待遇改善をしても、何かそのことによって、これが教育に対する国家権力が介入する糸口になるのだという、そういう考え方を、まず国会の中から、やはりもう少し教育を信頼の場に戻すようなことはできないものでしょうかね。これは、そうやって両方が疑ってかかれば、教員の待遇改善もなかなかできないということになってきて、何か教育界にある不信感情というものを一掃する——自民党もこれは検討いたします。だけれども、野党の方においても、どうかやはりもう少しこういうところから一段抜け出して、もっと教育本来のもので、お互いに与野党の間で論議が闘わされるような雰囲気になることを本当に望みたいなあという感じを、質疑応答の中に受けたということを率直に申し上げておきます。
  36. 湯山勇

    湯山委員 文部大臣、私が質問したことは、いま総理のお答えと同じことを聞いておるのです。同じ意見で同じことを聞いておるのです。そうお感じになりませんか。総理、そうなんですよ。そう言われているが、私が言うておることと同じことだ、第三者が聞いておっても。文部大臣、言ってください。
  37. 永井道雄

    永井国務大臣 全くさようだと思います。
  38. 湯山勇

    湯山委員 総理、おわかりいただいたでしょう。本当に同じことを言っておる。全く一分一厘違っていません。だから、私の言うことを総理は多少誤解されておるのじゃないか。同じことを言っておるということはおわかりですか。もう一遍言ってください。ちょっと気になります。
  39. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 湯山さんも長い間教育界におられて、教育のことを御心配になって、そういう立場からの御質問だ、その善意はいささかも疑いません。
  40. 湯山勇

    湯山委員 善意だけじゃなくて、いまの労働者問題もそうなんです。こんなつまらぬことを議論しちゃいかぬということを申し上げておったのです。そうじゃない、本当に教育の本質に立って考えれば……。  しかし、いまの政治憲法教育憲法の問題、これは重要だ。それについては、文部省、何もしていない。しておると言うけれども、それは答弁用でしておるだけで、実態は申し上げたとおりしていないのです。そうなってくると、教育政争の場から静かなところに移すというのには、お互いに考えなければならぬ大事な問題がたくさんある。  特に、いまの問題なんかは、話し合いの糸口としても大事だということを申し上げておるので、それでいま現象的なものを取り上げて、こういうことだ——労働大臣だってもっとはっきり言いたいのだが、あれぐらいしか言わないのは、これもやはり何かこだわりがあるのではないかと言われても仕方がないようになるわけです。これを申し上げておるので、これについてはまだいろいろありますけれども、いまの点で、そういう細かい端端の問題にこだわらないで、本質に立って、しかも対話協調でやっていく、そのために文部大臣をお選びになった。これも本当に結構なことですが、こう申し上げていくと、やはり総理大臣みずからがこういう現場の教師との話し合いの場に出ていくというぐらいの御決意が、施政演説からは当然出てきていいんじゃないか。場合によっては、総理自身話し合いされるというようなお考えはございませんか。
  41. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういう考えはあるということを申し上げておきます。必要に応じて、私が出ていったらいい場合には、私は出ていくことを少しもいといません。
  42. 湯山勇

    湯山委員 当然そうでなければならないと思います。  これは余分なことを申し上げますけれども、私、アメリカの大統領でだれが一番教育を熱心にやったかというのを調べてみました。そうしますと、まあ有名な人かどうか、ジョンソンという人がずいぶんやっています。任期中に教書を三回も出して、あの人の在任中に教育予算を三倍ぐらいにふやしています。やはり一国の最高責任者というものが、いま言ったように、教育の問題については先頭に立っていく。その意を受けて文部大臣が、全国民の信頼を得るという立場で、直接それに当たっていく。そしていまのような教師が大きく混乱するような場合には適切な指導をしていく。二十年もほっておいて、昭和四十五年になってやっと、しかも、こんなんじゃない、あってもなくてもいいものを、何か端っこに書いてある、それだけしかありませんじゃ、それは教育の責任を果たしていない、二十一世紀に対処するということにならないということを考えますので、ぜひ実現していただきたい。  それから、ついでにと言っては恐縮ですが、こういう学習指導要領ですが、これでしかも拘束力が強いのです。変える必要があると思います。先生たちがもっと自主的に、本当に生き生きと使えるように、これを変える御意思はありますか。
  43. 永井道雄

    永井国務大臣 それは、学習指導要領は軽々に変えたらいけませんね。しかし、いまのような先生御指摘の重要な問題、こういうふうなものについては、十分検討して、そして変えなければいけない問題が起こってきたら、それは変えていかなければいけない。
  44. 湯山勇

    湯山委員 まあ重要な問題を含んでおるということをお認めになっての御答弁ですから、了解いたします。  それからいま一つ、この際お尋ねしたいのは、高校進学生が九〇%を超えて、県によっては九六%というようなことになってまいりました。そうなってくると、完成教育という場が、従来の中学から高校へ変わってきております。これについて六・三制を含めてどうするか、それから高校も、もう九六%にもなれば、義務制にすれば、私立高校に対する助成の問題なんかは、当然これ義務制ですから、国が負担しなければならない。こういう問題も出てくるので、それらも解決するのですけれども、高校義務制の問題を含めて、六・三制というものを検討するか、あるいは六・三そのままで、高校の問題は別途考えるということなのか、これについてどのようにお考えでしょうか。
  45. 永井道雄

    永井国務大臣 いまの高校の義務化、それから六・三をどうするかというお話でございますが、義務制というものを考えますときには、少なくも二つの観点が必要だと思うのです。一つは、義務制という場合には、もちろん財政的な裏づけが本当にあるということが保障されていなければならないと思います。それからもう一つは、義務制といいます場合には、教育学的な見地から考えまして、たとえば高校なら高校の三年間を義務化することが、その国の文化の中あるいは将来との関係においてどうしても必要であるという、非常に学問的な裏づけが必要だと思います。そうしますと、それは、湯山先生に申し上げるまでもないのでございますが、実は高校だけの問題じゃなくて、幼稚園をどうするかというような問題が出てまいります。ですから、もし義務化ということを言いますと、幼稚園、それから高校がどういう関連があるかということも考えなければいけない。私はこういう考え方を一般に持っておりまして、そういう意味では、一種の保守的な人間でございますが、せっかく制度ができますね、ところが、その制度というものが本来ねらっていたものをなかなか十分に実現できないで困る場合があるのでございますね。  そこで、わが国のいまの六・三制を考えますと、受験体制が相当激化いたしておりますために、本来義務教育でもっと中身を充実してやれるはずのものが、やれていないという面がある。だから、まずさしあたっては、いまの制度の中で、中身を充実していくということをねらっていくべきだと考えております。  ただし、高校の問題につきましては、これは奥野前文部大臣の時分から検討を続けておりますことですが、やはり一貫教育という立場から、小中高の教科の精選というふうな問題も考えてみる。そしてその次に、いま先生がおっしゃいました高校義務化あるいは幼稚園義務化というふうなことを考えるべきで、いまあります制度、その中で必ずしも望んでいるほどの中身ができていないときに、それを充実させていくというような考え方がやはり妥当なんではなかろうかというのが、私の考えでございます。
  46. 湯山勇

    湯山委員 この問題につきましては、時間があればいろいろお尋ねしたいし、意見も述べたいのですけれども、基本的に、総理大臣ときょうは意見が一致をしたことは、大変いいことだったと思います。それだけに、総理大臣みずから乗り出していかれるという御決意もお示しになりましたので、ひとつぜひ、本当に一番大事なことはそこにあるということを事実をもってお示し願いたいということをお願いして、教育関係質問を終わります。  次は、方向がまた大変違いますけれども、食糧自給の問題。これも総理演説の中では、非常に大事だということをお説きになりましたし、それから、国際化に対応する農業問題懇談会では、いままでの農政というのはネコの目農政であったということを、総理もお話しになったというようなことが伝えられておりまして、私どもも、今日の日本の農政では、これは大変だということを感じております。ちょうど今回、こういうことを考えておるときに、「農産物の需要と生産の長期見通し」というものが、まだ公のものではありませんけれども、発表になりました。これはやがて総理大臣から農政審議会に諮問をされる、それに対する答申はまずこのとおりになるだろうということを、会長の小倉さんが言っています。ですから、きょうはそういうものをもとにして、私ども考えておる計画と対比しながら、お尋ねしたいと思うのです。  まず、大変率直なことを申しますけれども、この答申は、農林省の中で事務局があって作業したのですから、農林大臣は内容をよく御存じだと思います。これをごらんになって、こういう見通しでいけば、日本の農業、食糧は心配なくなるというようにお感じですか、これでは困るなどお感じですか。農林大臣いかがです。
  47. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この答申案は、いわゆる需給部会の中間報告でありまして、いま湯山さんのおっしゃいますように、総会を経て正式に答申されるわけでございますが、この報告が作成されるに当たりましては、農林省からいろいろとデータを出して、それに基づいた中間報告という形になっておるわけであります。その内容、私も読んだわけでございますが、現在の日本の食糧の自給体制といいますか食糧の実態、生産実態等はきわめて厳しいものである、資源的な制約等が非常に厳しいということを、私は非常に痛感をいたしたわけであります。
  48. 湯山勇

    湯山委員 農林大臣、この長期見通し、これが出てくれば閣議決定して、これに従って新しい農政が進められていく。この見通しに従って進められた農政で、果たして、食糧は大変大事だ、食糧自給を向上しなければならないという、総理の御意向に沿うような政策が出るとお感じになりますか。
  49. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 総会の最終的な御答申を見て、その上に立って、総合的な食糧政策を打ち立てていかなければならないと思うわけでございまして、現在の中間報告に対する評価は、まだ中間段階でございますから、差し控えたいわけでございますが、私どもとしては、資源的に非常に制約の中にある日本の農業を、可能な限り自給力を高めていく、こういう方針にのっとって、この中間報告はまとめられたものであると思うわけでありまして、まだ総会の段階がございますので、この答申がきまるまでは、いろいろとまだまだ内容等につきましても、あるいは変更が加えられるかもしれないと思っております。
  50. 湯山勇

    湯山委員 変更が加えられるのならば、変更しないと大変なことだと思うのです。そして総理大臣は、食糧自給というのはエネルギーと同じように大事だ、石油ショックが食糧だったらこれは大変だったということをおっしゃっておられまして、かなりの期待を持っておられますけれでも、しかし、いま農林大臣は、可能な限りぎりぎりのところまで生産していくんだとおっしゃいましたが、そうなっていないのです。もしこれが出るとすれば、穀物の自給率はいまよりも低下する。現在の四二%ですか、それが三七%に減ってくる。それからもっと私が問題にしたい点は、これにはこういう付属文書がありまして、「いわゆる潜在自給力について」というのがあります。潜在自給力というのは、やればここまでいくけれども、ここまでやっていないんだということです、極端に言えば。ですから穀物も、この見通しでは三七%だけれども、潜在自給力、これをうんと活用していけば五四、五%いく、こういうことなのですか。もしこれが答申で出た場合は、総理は、こんなものはだめだということで、ぜひひとつこれを無視してやっていただきたい。  というのは、こういうことです。このいまの案では、潜在生産力というので、ほんとうにやればここまでできるけれども、まあここまででとめておく。へそくり答申のようなもので、隠し財源がまだあるのです。これでは、今日世界で一番自給率が低い、世界で一番たくさん輸入しているその国が、こうやって米の生産調整までやっておるし、まだできるのに、ここまでしかやらないということでは、これはもう国際的な不信感は一層大きくなってくる、生産意欲もなくなってくるということですから、いまの扱いは非常に慎重を要すると思いますので、大変失礼ですけれども、総理に私の所見を述べて、ひとつ御配慮願いたいと思います。  そこで、ではなぜこんなものができたかというと、これをつくった需給部会の川野重任さんはこう言っています。審議会というのは、行政府の行おうとしている範囲を超えて発言できるものではない、結局いま農林省がやっていこうとしておることがベースになってしかできない、こう率直に述べておるのですから、推して知るべしだと思います。ここからは改革は出てこない。審議会というものがそういうものであれば、いろいろ提案はありますけれども、新たな、それにかわる食糧自給のための諮問機関なり、あるいは別な機関を設けるということも必要じゃないかと思います。これも御配慮願いたいと思います。  そこで私は、具体的にいまこれで考えられているものと潜在しておるものをあわせて、これじゃいかぬ、ここまでいけるじゃないかということを申し上げながら、総理の今後の御参考に供したいというように思うのです。  まず、農業をやっていくということになれば、何といっても土地が基礎になります。その土地についてですが、この長期見通しでは、一体、土地の利用率——利用率というのは、土地をどれだけ使うか。通常は夏、冬がありますから、土地を満度に使えば二〇〇になるわけです。夏が一〇〇、冬が一〇〇、合計二〇〇%、これが満点です。現在がどうで、この計画ではどうなっておるか。農林大臣いかがですか。
  51. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 裏作の面積につきましては、現在は大体百五万ヘクタールぐらいの……(湯山委員「違うのです、利用率。」と呼ぶ)利用率ですか。ちょっと……。
  52. 湯山勇

    湯山委員 いや、私、言います。これは昭和四十七年が一〇二・一です。農林省の資料です。使われておる農地のまあ半分です。それから四十八年は一〇〇・三、ほとんどぎりぎりの、半分しか使われていない。あとの半分は半年休んでいます。それから六十年はこの計画でどこまでいっておるかというと、一一四・三です。ですから、半年でいくとまだ八〇%余りが休んでいるということになります。これでは土地を活用しておるということにはならない。それは北海道のように、冬使えないところもあります。それから水がたまってだめなところもあります。ですが、これは一五〇くらいまでは持っていかないと、努力しているということにはならない。  まず、こういう点を指摘いたしまして、そのためには、やはり農業の基盤整備が非常に大事である。この基盤整備の予算が、今年は大臣も力を入れたと承っておりますけれども、しかし、前年比が一〇三・四%ですか、とにかく三・四%程度の対前年比の伸びです。しかし、農林省には四十八年に閣議決定した土地改良の長期計画があります。これは十カ年で十三兆ですか、これだけの金を入れて、長期にわたって土地改良をやっていく、これがもう三年目です。そこで、三年間たてば三分の一くらいはできているだろうと思いますが、現在どれくらいできておりますか、仮にこれがやれたとして、今度の三千五百九十五億、これを入れたとして、進捗状況はどれくらいになるとお思いになりますか。
  53. 大山一生

    ○大山政府委員 数字の問題でございますので、私から答弁させていただきます。  四十八、九年の決算がまだ出ておりません。したがいまして、四十九年度の長期計画ベースにおける、つまり事業費ベースにおきます四十九年の事業費が決定していないわけでございますが、仮に四十九年度予算をとり、そして五十年度の予算を入れて概算いたしますと、一兆九千九百十五億、十三兆に対しましての進捗率は一五・三%ということに相なります。
  54. 湯山勇

    湯山委員 事業量は大体六千億見当になるということは、私も存じております。だから、費用の上では、確かにいまのように一兆八千億程度になるのじゃないかと思いますけれども、物価が相当値上がりしております。したがって、昨年の場合も、六千億の事業量だとしても、それの八割程度。ことしは、物価の値上がりでそれのまた二割減ぐらいになりますから、実際は事業量にすれば一割いっていないと思うのです。そうなってくると、土地改良の長期計画さえ満足にできないで、基盤整備に力を入れているというようなことが言えるのだろうかどうだろうかということを疑問に思いますが、総理大臣、どうお感じでしょうか。現に長期計画十カ年の一年分に割った分さえできていないのです。これで基盤整備をやる、食糧増産をやると言っても、できないと思うのですが、いかがでしょう。
  55. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 湯山さんも御承知のように、今年度の予算は、できるだけ抑制していこうという予算で、公共事業というものは全部抑えたわけですね。その中で、確かに土地基盤整備には、私も非常に重大な関心を持っておったわけです。その中で、伸び率は御指摘のように少いけれども、相当配慮したわけでございますから、今年だけでこの長期計画の前途を予測することは、少し無理がある。今年は特別な状態のもとの予算編成であったと御承知願いたいのでございます。
  56. 湯山勇

    湯山委員 これで、同じようなことを承るのが二回目になります。昨年も同じような議論をしたのです。そして、福田大蔵大臣と田中総理の間に若干の意見の食い違いがありまして、それは三木総理御存じだったと思います。そのときも同じような御答弁をなさって、来年からしっかりやる、こういうことでしたが、ことしもまた、三木総理からも同じことを聞くというのは、はなはだ残念です。基盤整備というのは、本当にこれがなかったらできないのですから、もうひとつ思い切ってやっていただかないとならない。十カ年計画は手直しなさいますか。農林大臣、いかがです。手直ししないとできないでしょう。
  57. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま長期計画は、おっしゃいますように、大変伸び率はおくれておるわけでありまして、単価のアップ等も比べれば、御指摘がありましたように、十分の一といったような段階ではないかと思うわけでございますが、十年間で十三兆を全部消化するということは、一八%以上今後毎年伸び率を見ないとできないということになるわけですから、大変なことだと思うわけでありますし、これも、農政審議会の御答申を得て総合政策を打ち立てるときの段階におきまして、全体的な全国の総合計画等につきましても検討するということになっておりますから、それとあわせて、慎重に検討していかなければならないと思います。
  58. 湯山勇

    湯山委員 そのとおりですが、農政審の答申を得てというのだけは、おのけになって答えてください。そうしないと、よけいなことを言わぬといかぬことになりますので。後で申し上げますけれども、農政審はそんなことを考えていないのです。それで、直さなければならないというのも、事情はよくわかりますけれども、直して後退したのでは何にもならないのです。前進するような手直しがされるかどうか。総理大臣、そうでなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。
  59. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も、農業政策の上で、土地基盤整備というものは柱だと思いますので、今後これが後退しないように努力をいたしたいと思います。
  60. 湯山勇

    湯山委員 そこで、この基盤整備を国費でやる、あるいは公費も含めて国費でやるということを、私どもは提唱しております。農林大臣は、受益者負担ということもあるから、国費でやるということはやらないのだということですが、どうですかね。これは国費で思い切ってやるということに踏み切られてはいかがでしょうか。というのは、形の上では受益者負担の分も含んでおりますけれども、しかし米価なんかでは、米価の生産費の中に必要な土地改良の費用が含まれています。後で国費で埋めておるわけです。国費というか、とにかく特別会計で埋めている。これは御存じでしょう。農林大臣、いかがですか。
  61. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この基盤整備事業につきましては、湯山さんも御存じのように、現在は農業者の受益者負担といいますか、その利益もありますし、つながっておるわけでございますから、国費と地方公共団体の補助、その補助残につきましては、低利の融資措置ということによってやっておるわけでありまして、全額国庫負担ということは、現在われわれは考えておらないわけであります。今後とも、農民負担が軽減するような方向で、いろいろと考えていかなければならぬと思いますが、全額国費ということは適当ではないと思います。
  62. 湯山勇

    湯山委員 実際は、生産者米価の場合に、四十七年でも、土地改良、水利費というので、百五十キロ当たり五百三十二円、それから建物、土地改良設備で五百九十二円見ておるわけです。だから結局、これらの人の自己負担分は、米価の中の生産費で返ってくる。ですから、これが幾らになるか、三百億になるか五百億になるか、まだ計算していませんけれども、そういうこともされているのですから、これは国費で持っても決して不都合じゃないと思うのです。あるいは公費を含めて持つことは可能だと思います。それをやらないと、なかなかむずかしいんじゃないですか。大蔵大臣はいかがですか。  ちょっと大蔵大臣、そうしますと、香川県なんか、そんなにないとお思いでしょうが、香川県だって、まだまだ基盤整備すれば使える土地はたくさんありまして、ため池だけでも六千二十六・二ヘクタールあります。お隣の三木総理のところから水をもらって、ため池をつぶしたら、直ちに香川でも六千ヘクタールできるのですよ。これを国費でやってやってもいいのじゃないですか。大蔵大臣はどうお考えでしょうか。
  63. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま農林大臣からお答えしたとおりに私も考えておりまして、国費で負担する考えもございませんし、またすべきものとは思いません。また、米価の算定基準の問題とこの基盤整備の補助の問題とは、全然話が別だと思います。
  64. 湯山勇

    湯山委員 現在、地方財政も相当厳しいものですから、これを受けてやれと言っても、なかなかやれない。それから農家自身、それじゃ自己負担でそれを持ってやれと言っても、やれないような状態になっていることを御存じないのでしょうか。そうでなければ、いまのような御答弁は出てこないと思うのです。たてまえ議論から出てこないで、どうすれば一体基盤整備を進めて食糧増産できるかという点から考えれば、もっと考え方があるのじゃないかと思うのです。大蔵大臣、もう一遍いかがでしょう。
  65. 大平正芳

    ○大平国務大臣 中央と言わず地方と言わず、財政は苦しいわけでございまして、苦しい中から、金を有効に使うことを通じて、農業の生産力、自給力を増していただくように御配慮願いたいものと思います。
  66. 湯山勇

    湯山委員 農林大臣は、公費負担分を多くしていくように努力するということですけれども、これはたてまえは違うと言いながら、同じ農家に、ある分は土地改良の費用が返ってくる、あるところは返ってこないというように、かなりまちまちでして、大蔵省のたてまえから言えば、違うと言えば違いましょうけれども、受ける側からすれば、矛盾としか映らない。これは御配慮願いたいと思うのです。  時間の都合で急ぎますが、そこで、基盤整備、土地の拡張で、いま一番当てになるのは何かと言えば、水田の裏作、これであって、この答申もそうですか、これに目をつけています。これで見ると、今度の見通しでは、大体、いまのところ冬作を放棄しておるが、使えるのが百五万ヘクタールある。これをこの土地改良計画によって、六十年までにわずかに二十五万ヘクタールふやして、百三十万ヘクタールにする。そこまではいいのです。その百三十万ヘクタール水田裏作ができるような土地をつくって、全部使うかというと、使わない。そうでしょう。全部使わないで、百三十万ヘクタールお金もかけて造成しておきながら、六十年で使うのは、その六〇%の七十八万ヘクタールだ、あと五十二万ヘクタールは荒らしておいて、ほっておくんだ、こういう計画です。そうなっておりますね、農林大臣。
  67. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 そのとおりでございます。
  68. 湯山勇

    湯山委員 そのとおりでございますと言っても、お金をかけて百三十万ヘクタールできておるのでしょう。そのできておるものを、六〇%使って、五十二万ヘクタール荒らしておく、それでいいのですか。
  69. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはやはり、裏作を一〇〇%するということは、もちろん百三十万ヘクタール全部裏作に活用するということが理想的な形だと思うわけでございますが、湯山先生御存じのように、作期の調整の問題とか、あるいは土地利用の利用権の問題だとか、その他所有権の問題とか、いろいろと社会、経済上解決しなければならぬ困難な問題もあるのじゃないだろうか、こういうふうに思うわけで、農林省として見通しをつけた場合は、可能な限りの水田の裏作利用としては、七十四万ヘクタールぐらいが精いっぱいじゃないか、こういうふうに考えて、出したものと思うわけであります。
  70. 湯山勇

    湯山委員 それなら、いまでも百五万ヘクタールあるので、それを使うのは七十八万ヘクタールであるから、お金をかけて百三十万ヘクタールにする必要はないのです。まして、農林大臣が今度緊急飼料増産対策で三十一億七千万円を新たに得て、これで今度は未利用地の大体これから使えるだろうというところの一割、十万ヘクタールの土地をつくって、えさをつくる。これも表をつくって裏があいているのですから、所有権はもう決まっているわけです。一番使いやすい条件にあるのを五十二万ヘクタールほっておいて、新たに三十一億円使ってこんなことをする必要もないと言われたら、どうします。私が大蔵省だったら、それを言いますよ。こういうことが一体いいですか。金をかけてつくって、五十二万ヘクタールをほっておく、こんなことを許して、一体いいかどうか。総理大臣、言っておることがおわかりでしょうか。いかがでしょう、こんなことは。
  71. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 食糧の増産には、裏作の利用ということが一番手っ取り早いのですが、私も湯山さんのような疑問を持つのですよ。いろいろ聞いてみると、やはり米の早場米が多くて麦の収穫とダブったり、あるいはまた裏作の場合でも——麦ですわね、麦の場合でも、麦というものは諸外国でも相当大きな耕作反別をもってやっておる。それを日本の零細な規模、そういう点で、なかなか——素人が考えたら、たんぼをできるだけ使って、そして食糧増産をやればいいのじゃないかと言うのですが、実際のやっておるものから言うと、それに対してのネックがいろいろあるようで、これはやはり一番手っ取り早い食糧の増産ですから、今後研究してもらう余地が多いと思います。
  72. 湯山勇

    湯山委員 まだ十分おわかりいただいていないのは、冬あいておるのは百五万ヘクタールじゃないのです。三百七万ヘクタールあいています。その中に、寒くてできない、雪でできない、水でできない、いろいろあります。それを全部のけて、もうきょうからでも使えるというのが、現在百五万ヘクタールある。その上に、十年間でまた二十何万ヘクタールつくって百三十万にする。今日ただいま百五万はすぐできるのです。どうしなくてもできる。それをまたふやす。これは三百何ぼの中の三分の一です。それだけ精選して使えるものがあるのに、それをなお六十年には五十二万ヘクタールも残しておく、これは遺憾じゃないかというのですから、これはだれが考えてもそうです。ここらに非常に問題がある。そこで非常に悪く言えば、いまの安倍農林大臣の御自慢の緊急飼料増産さえ、これは問題じゃないか。これは減せと言うのじゃないのです。これはこれでおくかわりに、この使えるものを早く活用しなさいということを申し上げておる。そういう計画にしないとだめだということです。  私どもはもっとあると思うのです。現在の冬作をやっていない三百万ヘクタールの中でも、土地改良をやれば二百万ヘクタールぐらいは使える。昭和三十四、五年ごろは、すでに麦だけでも百三十万ヘクタールつくったのですから、二百万ヘクタールは冬作可能地帯があるわけです。これを全部どう生かしていくかということに力を入れなければ、これは間違いじゃないかということです。そうしないでほっておいたら、農地というものは使えなくなる。これはもう御存じだと思いますけれども、前の農林事務次官——書いておったのですから、名前を言ってもいいのですが、檜垣さんが、生産調整というのは悪政だったけれども、米が座敷まで上がり込んでくるということになったので、仕方なく悪政に踏み切った。それはそれとして、間違っておったのは、休耕田がすぐもとに戻るというように思っておったのは、どうもうかつだっだと、正直に白状しています。いまほっておいたら、ブタクサが入ってくる、セイタカアワダチソウが入ってくる、公害田になってしまって、簡単に使えるようにならない。それを、いまのように、せっかく造成して五十二万ほっておくとか、まだ裏作のできるところがたくさんあるのに、それはもう勘定に入れないでほっておく、その点だけで、この見通しはもうだめだということが言えますので、これは検討の必要があると思うのです。  農林大臣、土地改良すれば冬作可能になる土地というのは、どれくらいあると思いますか。私どもは二百万ヘクタール以上あるというように考えておりますが、どうですか。
  73. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 農政審議会の需給部会に出した農林省の見通しでは、六十年には百三十万ヘクタール水田裏作の可能面積を得ることができる、こういうふうに出しておるわけであります。
  74. 湯山勇

    湯山委員 ですから、それはいま言ったように、現在使えるのは百五万、それから改良して二十五万やってです。その改良計画というのは、いまのようないいかげんな計画ですから、全くあってもなくてもいいようなものです。本当にそうです。三年間かかって計画の一割もできないというようなんですから、これは当てにならない。いまのように新たに力を入れてやれば、二百万ヘクタールぐらいは裏作可能になる。これは私どもの調査です。もっとあると思いますけれども、戦後いろいろつくった経験を見ますと、新潟で小麦もつくっています。そんなものまで入れればもっとふえますけれども、少しがんばってやればいけるというのは、二百万ヘクタールでしょう。そうすると、そこだけでも、はや百万ヘクタール違ってくる。  それから次は、新しい農地の開発。これも、この見通しでは、これから農地にできる可能性のある土地は、百五十万ヘクタールと見ています。それなら、それを全部農地にするか草地にするかというと、この計画では、その中の七十万ヘクタールをやって、農地にできるんだけれども、八十万ヘクタールほっておく、こうなっておりますね。農林大臣、いかがですか。
  75. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 大体、これから農用地に開発される可能面積は、いまおっしゃるように、百五十万ヘクタール、十カ年計画で開発を行って、農用地として活用できるとしている分が八十六万ヘクタール、こういうふうに試算をして、需給部会に出しておるわけであります。
  76. 湯山勇

    湯山委員 そうすると、六十四万ヘクタールはほっておくわけですか。文書で見ると、八十六万じゃなくて八十万です。この出ておる文書では、七十万ヘクタールはほっておく、こういうことですね。
  77. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 局長から答弁させます。
  78. 大山一生

    ○大山政府委員 いま言われました経済的なベースも含めまして、四十四年に補測調査した結果では、百五十万ヘクタールの開拓適地がある。その中で、長期計画におきましては、四十八年から五十七年までに七十万ヘクタールの造成をいたしたい、こういうことでございます。先生が言われました八十数万というのは、それを六十年まで延ばしたときの線上にある数字を申し上げておるわけでございます。  百五十万ヘクタールの中で、それでもなお五、六十万の面積を残すではないか、こういう御質問でございますけれども、われわれ下の方から積み上げるかっこうとしてございます農振計画におきまして、ほとんどの町村におきます農用地区域内の計画も全部できております。その結果を見ましても、その適地が全部農用地に入っておるということには必ずしもならぬにいたしましても、山林原野として開発すべきもの約八十六万ヘクタールという数字も出ております。したがって、現実可能性ということを含みまして、五十七年までに七十万ヘクタール農用地を造成いたしたい、こういうことでございます。
  79. 湯山勇

    湯山委員 いずれにしても、半分程度はほっておくということです。これも納得できないのです。そして、町村の意向を聞いたと言うけれども、いまの町村でそんなに積極的にこれを受け入れる態勢はない。地方財政、それからいまの状態からですね。ですから、そうじゃなくて、もっと積極的にならないとこれはだめです。結局できない。食糧自給はできないで、後退するばかりです。  ことに、いま町村の問題をお取り上げになりましたけれども、本当に市町村にやらせれば——私どもはむしろ、市町村にやらせろ、そうしたら、これは百五十万じゃなくて、まだまだ百万ヘクタールぐらい出てきます。というのは、ゴルフ場が十五万ヘクタールぐらいある。それから、私の知っておるので言いますと、愛媛県のある小さな市ですが、農地面積は二千二百七十ヘクタール。ここが農地以外で、主に山林ですが、ゴルフ場を六つつくることにしました。とにかく農地はもうできないという果樹地帯ですが、五百ヘクタールぐらい、ゴルフ場ならできる、こういうことなんですから、本気で探せばまだまだある。市長は、それはいよいよのときは芋をつくると言っておりましたが、やる気になればまだできるのです。いま財政的にこの計画を受け取れと言うから、自治体はしり込みする。そこで低下する。そうじゃなくて、これを推して、費用は国が見てやる、安心してやれとか、費用についてはこういうふうに措置をするから、それなしで計画を立ててみよと言えば、また倍以上になります。これは自信を持って言えます。だから、いまの農政のベースでやったんじゃ、それはいまのとおりですけれども、改革していくんだ、増産するんだという姿勢に立てば、まだまだできるので、これでいけば八〇%自給は決して困難じゃありません。この計画には、農地だけでもそれぐらい問題がある。  それだけじゃなくて、次に、土地はそうやってできたとしても、さっきからお話しのように、じゃ、つくろうという気持ちにならなければ生産はできていかない。農地は、いまのように、この計画以外に、私どもの計算ではまだ二百万ヘクタールは、積み残しを合わせて出てきます。積み残しだけでも百万ヘクタールを超えています。傾斜だけから言えば、いまの国有林を含めて、林野で、十五度以下で高度千二百メートル以下、これは七百万ヘクタールあるのです。それまで出せとは言いませんが、可能なものでも二百万ヘクタールはある。これをひとつよく頭に入れて、農林大臣やっていただきたい。土地が幾らあっても、いまの状態ではつくらない、受けない、これは当然です。それは農業所得が少ないからで、四十七年は、農業所得が一で農外所得が二の割合、大体そうなっていますが、農林大臣いかがですか。
  80. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 政府委員から答弁します。
  81. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  おっしゃるとおり、農業所得と農外所得の割合は一対二でございまして、四十八年の新しい数字を申し上げますと、農業所得七十四万二千円、農外所得百五十六万六千円ということに相なっております。
  82. 湯山勇

    湯山委員 いま四十八年の御発表がありましたとおり、七十四万と百五十六万、つまり農業所得はわずかに七十四万にしかすぎません。あとは農外所得でやっている。つまり出かせぎ、日かせぎ、こういうことだと思います。これを一体どう埋めていくかということを考えなければ問題は解決しない。現につい二十八日ですか、静岡で、県道工事で女の人が三人、土砂崩れで死んでいます。しかもそれは五十歳、四十四歳、四十三歳、農家の主婦の本当に大事な人が死んでいる。こういう旧かせぎをしなければならない。それから、こういう収入を得るために、わらはもう焼いてしまっておる。わらを燃やしておいて賃労働に急いでいるということですから、農地は荒れるに任せています。堆肥なんかやる余裕はありません。さらに、その手間を浮かすために、需要はとにかく農機具に殺到しています。いま昨年、総需要抑制、不景気というような中で、農機具業界だけは笑いがとまらない、そういう状態になっていると思いますが、農林大臣は御存じでしょうか。
  83. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 農機具業界といいますか、農機具会社で一、二非常に株の配当等も高率配当しておるという会社があることも事実でございまして、農林省としては行政指導によりまして、農機具につきましては、価格の安定を図るようにやっておるわけでございます。
  84. 湯山勇

    湯山委員 後段はいいとして、今日これだけ総需要の抑制と物価問題でみんながまんしている。農機具業界は笑いがとまらない。ボーナスなんかも二倍出たところもあります。これは、じゃ農機具業界は安心できておるかというと、安心していない。この後がこわいという状態です。異常です。なぜそうなったかというと、結局、とにかく農機具を使えるものは使って、時間を浮かせて出かせぎに行こう、日かせぎにいこう、そのための要素が大きいわけで、こういう異常が起こっている。ですから、これで公共事業が減ってくるというようになってくると大変だし、それから、いまこういう状態を受けて、年々Uターン現象がふえる、こうなってきているんです。そうすると、農地はいまのように余裕がたくさんある。やれば——やればです。やらなければだめですけれども、農地はたくさんある。それから、農外収入の道はだんだん厳しくなってくる、Uターンはふえてくるのですから、本気でここで取り組めば、農業を建て直す道はあるんですけれども、ただ今日の価格がなかなか合わない。そこで、農業収入でもずいぶん農家は苦労しています。  どういう苦労をしておるかというと、たとえば施設ですね。年じゅうキュウリ、トマトがあることは、これはいいことでもあろうけれども、とにかく施設へ傾いて、施設がどんどんふえて二倍以上。それから菊なんかも年じゅうあります。これは珍しいといえば珍しいが、それは総理、いかがでしょうか。総理は心の温かいということをおっしゃいましたが、春も菊がある、秋もある。菊を見て、ああ秋だなという感じがわかないような、これはどう思いますか。私はあまりいいことじゃないんじゃないかと思うんですが、総理いかがでしょうか。
  85. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も昔の人間ですから、何か時期に花も咲き、また時期のしゅんの物を食べたいという個人の嗜好からすれば——しかし全体の国民の嗜好が年じゅうそういうものを要求するわけですから、市場価値があるのですけれども、個人的嗜好から言えば、やはり菊は咲くときに咲いてほしいし、キュウリはまたキュウリのできるときに食べたいというのが個人的嗜好でございます。
  86. 湯山勇

    湯山委員 これは、農家もそんなにしたいわけじゃないんです。費用はかかります、手間はかかります。そして、いまのようなことですから、しかしそうしなければやっていけないというのが、いまの実情です。  それから、私どもが一番感じたのはミカンです。ことしはミカンがどうにかキロ百円という程度の維持ができて、市場価格の上ではまあまあというところですけれども、そこへ行くまでにどれだけ苦労したかというと、六月ごろに薬で摘果をしました。八月から九月、もう収穫が目の前に見えておるものを摘んで落としました。この摘果というのは、身を切られるような摘果だったと思います。これをやった。それから今度は選果。出すときに大き過ぎるのをのける、小さいのをのける、皮のすれているものものけたんです。これは試験場長に聞きますと、皮のすれておるようなミカンの方がおいしいんです。それは、ミカンは日当たりがよくて風通しのいいところのものがうまいので、皮にすり傷があるようなのがほんとうはうまいんだけれども、これはのけなければならぬ。そういうことですね。生産者、消費者を無視したそういう操作、選果を行って、やっとこれキロ百円を維持した、こういうこともやらなければやっていけない。これをどうするかです。  私は、やはりここでやらなければならないのは、土地の確保の見通しがつきますから、今度は価格保障です。値段をどうするかということが非常に大事な問題だ。で、米、麦、大豆、えさといったような価格保障がなければこれはできない。そこで価格保障の原則は当然二つあると思います。それは元へ食い込んだんじゃだめだと思います。原生産費は補う、それからただ働きはいけない、所得の保障をする。     〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕 いろいろなものにいろいろな価格維持の制度、安定制度がありますけれども、その二つがかなえられていない価格制度というものは、価格制度のうちに入らないと思います。総理大臣も御同感だと思いますが、いかがでしょうか。
  87. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 農作物にはいろいろな特性もあり、需要もあって、われわれ戦時中の時代も知っておるのですが、たとえば果物、野菜なんかが一番統制ができなくて、やはり一つの市場のメカニズムに任したほうがいいものもございますから、だから湯山さんのおっしゃるように、農家経営を安定させ、生産者の意欲を向上さすためには、価格問題というものはやはり大きな柱だと思いますが、その農作物のいろいろな特性や需要によって、あるいは所得保障方式、パリティ方式、不足払い方式とか、あるいは基金制度、ミカンのように買い支えをする、一概に全部、食管方式のようなもので農作物の価格を保障せよというのには、無理がある感じがいたすのでございます。
  88. 湯山勇

    湯山委員 言われることはわかるのです。それは、同じような方式で、全部生産費所得補償方式でやる、米と同じ方式でやるということが適当かどうか、これは検討の余地があります。ただ、出てきた物が、価格保障する必要があるというので、不足払いの制度もあるでしょう、パリティもあるでしょう。あるけれども、そうやって保障の必要があると思って制度化したものが元が切れる、肥料代も切れ込むというようなことではいかぬし、ただ働きもいけない。たとえば裏作で麦をつくる。四十七年、四十八年の一日の家族労働費を見ますと、四十七年で米は三千四円、それから小麦は七百二円です。それから四十八年で、これは農林省の資料ですからこちらから申しますが、米が四千八十四円、小麦が千五百三十四円。そうすると、きのうまで稲刈りをやって、稲の後整理をする、きょうから小麦を植える地ごしらえを、同じ畑で同じ人がする。きのうまでは米の手間に入るから一日当たりが四千円、きょうから小麦の地ならしだから、同じ土地で同じ人が同じくわを持って働いておって千五百円、こういう矛盾をなくさなければならない。全部についてやるかというと、そんな無理はできないことはよく知っております。しかし、今日、麦が大事だ、穀物の自給を高めなければならぬというのが大命題です。それなればこそ、麦については一俵に千円の奨励金まで出している。そう出して、やはり米に似た労賃にならなければ、裏作をつくれと言ってもつくらない、こういうことを具体的に申し上げておるので、そういう矛盾のないようにしなければならないということは御了解願えると思いますが、いかがでしょうか。
  89. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 農家所得、農家の生産意欲、そのために価格政策の持っておる意義は大きいと思います。したがって、農作物の特性に応じて価格を安定さすような工夫は、一段といたす必要があると思います。
  90. 湯山勇

    湯山委員 いまの点、農林大臣ももちろん同感でしょうね。やってください、責任者だから。
  91. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 生産対策とともに価格対策というのは、やはり非常に大事であると思っております。したがって、これから農産物ごとに、価格政策というものは充実させていかなければならぬと考えるわけであります。
  92. 湯山勇

    湯山委員 もうあまり時間がございませんので、いろいろあるのですけれども……。  私どもはこの際、非常に大事な、重要な作物ですから、せめてえさ用の穀物、つまり濃厚飼料、大豆、これはさしあたり食管の中に入れる、国が管理するという必要があると思うのですが、そのことについて、農林省としては検討の余地はございませんか。  それからもう一つ、いままでのように価格の決め方というものが、これこそ、教育の問題ではいろいろ申しましたが、価格の決め方への政治介入ですか、こういうことが余りにも大き過ぎるんじゃないか、むしろ生産者と交渉によって決めるというようなシステムをここで考えていったらどうだろう、そういうものも含めて考えていくような二とはないかどうか、この二つについて、農林大臣から。
  93. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 大豆とか飼料穀物につきましては、食管の制度に組み入れろということでありますけれども、飼料穀物、大豆とも、やはり国際的な関係もあるわけでございますし、これをいま食管会計、食管制度の中に組み入れるという考えは持っておりません。
  94. 湯山勇

    湯山委員 将来はどうですか。
  95. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 将来とも、これは大豆は大豆の法律に基づきます価格政策を充実していって、大豆の増産を図っていきたいと思うわけでありますし、飼料穀物につきましては、これはやはり国内で自給を高めていく、増産を図っていくということは非常に困難ではないか、やはり外国からの安定輸入に依存せざるを得ない、飼料穀物については、私はそういうふうに思っております。
  96. 湯山勇

    湯山委員 よく話せばわかっていただけると思うのですが、まだよく御理解いただいていないようですから、別な機会にします。  それから、生産意欲を向上するためには、米の生産調整というのはやはりやめるべきだ。あと一年のことでしょう。一年たてばまた何かの対策を立てなければならぬのですから、この際一年早くやめたからといって、そう大したことはありません。ことに、これは坂本二郎さんという人が言っておるのでは、東京の一般家庭では、現在の備蓄は三日程度しかない、少しよけい持ってもらえばそう困らぬのですから、思い切って、農業重視だと言うのなら、あと一年のことで、どうせそれから後考えるかなんかしなければならぬのですから、この生産調整をやめる、これぐらいやらなかったら、本気で農政に取り組むとは言えない。攻めの農政になりませんよ、農林大臣。  それからもう一つ、やはりいま心配しておるのは、つまらぬことのようですけれども、一億四千万のSCP、微生物たん白、これは消費者もですが、生産者もまた、いや、増産せいと言ったって、やがてまた大工場で食糧をつくるということになるんじゃないかという心配をしています。これらは、一億四千万ですか、減額を提案するというのはおかしいですが、こんなのは大蔵大臣、削っていいんじゃないですか。この微生物たん白ですね、これは削ったからといって、どうということはないので、むしろもっとアカデミックな本当の研究の方へ回して、農林省がわざわざやらなければならぬ問題じゃないと思う。この石油たん白と言われる微生物たん白の研究、これはおやめになって、生産調整もやめる、これひとつ御決断をなさってはいかがでしょう。
  97. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 生産調整につきましては、五十年度が稲作転換最後の年で、百万トンということにいたしておるわけでありますが、これは去年、ことしはいわゆる稲作転換で、生産を増産しなければならない飼料作物であるとか、あるいは野菜、大豆といったものに転換をするという意味があるわけでございまして、ことしでこの稲作転換の事業は終わるわけでございますが、今後につきましては、米の需給等も十分考えまして、これは検討をしていくべき課題であろうと思うわけでございます。  それから、微生物たん白の予算についてでございますが、私も予算を編成するときに、婦人の団体等から、この予算を計上すべきではないという御要請を受けたわけでございます。しかし、これは石油たん白ではなくて、農林水産物の廃棄物、麦わらであるとか、あるいはミカンのかすであるとか、そういうものを研究して、それからたん白質の非常に必要な濃厚飼料をつくりていくという研究をするわけでございますから、私は、これはこれなりに安全性というものを十分考えれば、研究の意味はあるんじゃないだろうかというふうに考えております。(湯山委員「石油たん白じゃないのですか」と呼ぶ)私は科学的なことはよく承知しておりませんが、石油たん白ではない、こういうふうに聞いておるわけであります。
  98. 湯山勇

    湯山委員 ちょっと頼りないようですが、時間がありませんので、非常に残念です。申し上げたように、八〇%自給なんかは、本当にやろうと思えばできる。それには農政が大事なので、あるいは食糧政策会議か何か、思い切った食糧基本法とか、そういうものをおつくりいただいて、ぜひこれをやっていただかなければ大変だと思います。  なお、水産の問題に触れたいのですが、いまの自給は水産資源一千万トンに支えられておるので、これが崩れたら大変なんです。これについて、海洋法会議に臨む態度、これもぐらついておりますが、しっかり締めないと、これは大変だと思います。その他ありますが、時間が参りましたので、以上申し上げまして、ひとつ総理大臣の御熱意に合うような政策をぜひ進めていただきたい。御要請して終わります。(拍手)
  99. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて湯山君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  100. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、参考人出頭の要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、海外経済協力基金総裁の出席を求めることといたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩します。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  102. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正木良明君。
  103. 正木良明

    ○正木委員 本日は、独占禁止法の改正問題と地方行財政の問題、その後、不況対策の問題等に入りたいと思いますが、時間が足りないかもしれません。そういう問題で皆さん方に御質問を申し上げたいわけですが、その前に、ちょっと三木総理に確認のためにお尋ね申し上げたいことがございます。  去年の十二月の二十六日に、三木総理は画期的な資産公開をなさったわけでございます。あのときに南平台の総理のお宅ですね、お屋敷と言うべきでしょうか、あの発表の千五十四平米よりももっと広いように私は思うのですが、その点いかがでございましょうか。
  104. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 借地があるわけです。
  105. 正木良明

    ○正木委員 その借地は、どちらの土地をお借りになっていらっしゃるのでしょうか。何遍も立っていただくのはあれでございますから……。それで、それには借地契約がございますか。借地契約がございましたらば、契約に基づいて、無償なのか、そうではないのかということ……。
  106. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 借地契約があり、それに対しては借地料を払っておる。
  107. 正木良明

    ○正木委員 これは、住友セメントの土地が五十一番地の五十六が四百五十三・三平米、五十一番地の三十五が百十九平米、それぞれ借地で契約をなさっているということはいま承りました。これは、住友セメントとあの土地の所有者であられる御子息の啓史さんとの間の契約でございましょうか。それとも総理との契約ですか。
  108. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういう御質問のあることを予期しませんでしたので、よく私は事情を、どういう契約になっているか、契約があることは事実でございますけれども、調べてみます。
  109. 正木良明

    ○正木委員 実は、きのうたまたま毎日新聞が、田中総理の税金の問題、これはまだ国税庁が正式に発表したものじゃなさそうでございますけれども、報道をいたしております。やはり田中総理にも、お屋敷の中に別の企業があって、そこの土地をお使いになっておる、これに対して追徴金が要求されるような報道がございました。これはまだ正式な発表がありませんのでどうかと思いますが、三木総理にも同じような形のものがありますので、その間がどのような経過になっているのか。これについて、国民の間でもいろいろとうわさをいたしておるようでございますので、きょうは確認のために申し上げました。  御存じないということでございます。したがいまして、御存じのない部分、いわゆるどなたと契約をなさっているのか、ないしはその借地料は幾らほどになるのか、そういう点について、これはまた改めて公開をしていただけるのでしょうか、どうでしょうか。
  110. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 調べたらすぐにわかりますから、弁護士がやっておるわけですから、それだから聞き合わせて、あなたの質問の途中でも申し上げます。
  111. 正木良明

    ○正木委員 それでは、そのお答えを待って、質問するものであるならば質問するということにいたします。  さて、独禁法の問題でございますが、この改正の内容、ないしは改正に際して、いろいろな点について十分御考慮をいただいて、三木総理がかねてからおっしゃっていますように、独占禁止法の改正についてはできるだけ完璧を期したものを案としてお出しいただきたい、こういうために御質問を申し上げるわけです。  それで、最近の例で、この独占禁止法違反事件と関連して、非常に遺憾な事実がございます。それは農業機械の値上げの問題なんです。  農業機械は、御承知のとおり大手メーカーとして、久保田鉄工、ヤンマー農機、井関農機、三菱機器販売、佐藤造機、この五社がございますが、この五社が、実は昨年の四月二十六日に、全農向けの耕運機、トラクター、コンバイン、バインダー、それから田植え機のやみカルテルで、公正取引委員会から勧告を受けているんです。しかしこれらの会社は、やみカルテルの事実はない、むしろこういうことはいままでずっとやってきた慣例であって、公取の勧告というのは間違いだというようなことで、勧告を拒否いたしまして、現在審判中だそうでございます。  内容をいろいろお聞きしてまいりますと、どうもメーカー側はある意味での引き延ばし作戦をやっているようで、なかなか審判が進まない、こういうことでございますが、ところが、審判中にもかかわらず、本年の一月一日から値上げを実施いたしました。で、この値上げは決して低いものではございませんで、平均五%以上でございます。大きい物になりますとやはり二、三万の値上げになっているわけなんですが、こういうふうに、勧告を受け、審判中であるにもかかわらずこういう値上げをする、こういうことが好ましいのか、好ましくないのか。これは公取委員長お尋ねしましょう。どうでしょうか。
  112. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいまの、審判中であるから値上げをすることは好ましくない、これはまあそのとおりでございます。ただし、私どもの方としては、現在のところ、それをとめるという権限はないのであります。  このいきさつをちょっと簡単に申した方がいいと思いますが、要するにカルテルであると、私の方が勧告をしたわけです。勧告をしたのが一昨年の十二月、それから昨年の二月、二回にわたりまして、値上げカルテルと私の方が判断した事件について、三月に手入れをいたしまして、四月に勧告をいたしました。ところが、勧告を受諾せず、五月から審判を継続中でありますが、その後値上げについて、行政指導による凍結が主務官庁で行われた。これは問題ありますけれども。それで九月になって、数%でありますが、値上げの認可があり、認可というのは公的なものではないと私は思いますが、独禁法の立場からも、これはかねてから好ましくないと申し上げておりますが、値上げについて認可が行われたということで、その後の価格の推移を見ますと、実は十二月までは上がっておらぬ。値上げの認可は行われましたが、それを一月に実施したのではないか、こう思うのです。  その辺に問題の若干複雑な点がございますが、凍結中はほぼ据え置きに近い状態だった。ところが、値上げの認可が行われ、おくれて一月に実施されたのではないか。農機具に対する需要は、どういうわけか異常に強いのでございます。そういう背景をもとにして値上げが行われたということでございます。これについては、私いま、審判中の事件でございますので、カルテルであるということが確定したわけではございません。でありまして、ここでとやかく申し上げるのは差し控えておきたいと思います。
  113. 正木良明

    ○正木委員 私どもがこれでいろいろ調べてまいりますと、値上げの必然性というのがほとんど感じられないような状況なんです。というのは、井関農機は四十九年度経常利益は対前年比約十二倍、佐藤造機は四十九年度経常利益は対前年比約五倍も伸びておるわけですね。こういうような状況の中で、やみカルテルによる大幅値上げをした結果、こういうものが出てきた。したがって、そういうふうな状況の中でまた再び値上げをしなければならないというような理由は何もないと私は思うのですね。そういう状況の中で、いまも公正取引委員長がおっしゃいましたように、現行法規ではこれを取り締まることはできぬし、同時にまた、どこかから認可が出たということですが、これはある種の行政介入が行われたのではないかというふうに思われますが、これはまた後ほどお聞きすることといたします。  したがって、公取委員長にもう一度お尋ねしたいのですが、少なくともこういう勧告を受け審判中であるときに、そういうことを無視しながら、しかももうかっている会社が、そういう農業機械というような、農業者にとっては必需品を値上げしていく、こういうことは、やはりどうしても現行独禁法というものを強化するよりほかにやり方はないと私は思うのです。そういう意味で、やみカルテルの場合、価格の原状回復命令ないしはそれを抑える緊急停止命令、こういうふうなものを行わなければ、こういう弊害というものはいつまでたってもなくすることはできないだろう、こういうふうに私は思うのですが、まず公取委員長、どうでしょうか。
  114. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私どもの公正取引委員会立場から申しますれば、御説のように、現状のカルテルの破棄という問題については、いろいろそういう不合理といいますか、結果においては何にもならないといいますか、そういうことがあり得るわけでございます。そこで何らかの対策が必要であって、もし価格の原状回復命令というものを、全く実情を無視して機械的に運用するとなると、これは問題があると思いますが、しかし、そういう手段も必要であろうと思いますし、それから課徴金の問題ですね。審判をもって争っておりますれば、その間じゅう課徴金はふえるという仕組みにするというのが私どもの考えでございますから、両方をうまく併用すれば、カルテルに対処するのは現在よりははるかに改善されるんじゃないかと考えております。
  115. 正木良明

    ○正木委員 そういう意味で、独禁法の改正というのは非常に重要な意味を持っておるし、そういう不当な、横暴な値上げというものに対抗するために、ぜひとも必要なものではないかというふうに私は考えているわけです。  そこで、総理に改めてお聞きいたしますが、成案としておまとめになり、それを法律案としてお出しになるのは、大体いつごろを予定なさっておりますか。
  116. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三月中旬までには出したいと思っております。
  117. 正木良明

    ○正木委員 三月初めじゃないのですか、三月中旬ですか。  それで、この独禁法の改正問題というのは、総理も御賛成のようであり、そのことは、本会議代表質問ないしはこの予算委員会質疑の中でも、再三にわたって総理が言明なさっていらっしゃいます。そこで、総理がよくお使いになるのは、この独占禁止法の改正問題については骨を抜かぬ、骨抜きはしませんということをおっしゃっているわけです。骨抜きをせぬという言葉は非常に結構だと私は思うのですが、この実体があって、骨があって、その骨を抜くか抜かぬかという話でありまして、実体がないのに、骨を抜くとか抜かぬとかというのは、どうも話としては、抽象的には何となく前向きだという感じは受けるんだけれども、実体としてわかりません。  そこで、総理が頭に描いていらっしゃる独占禁止法の改正問題、この具体的な問題の中で、どの骨は抜かないのだ。恐らく私は、公取試案なんというのが頭の中にあるんじゃないだろうかと思いますが、それならばそれで結構です。そこからは一切骨は抜かぬのだというふうに、われわれも具体的に解釈ができるわけなんですが、ただ骨を抜かぬ骨を抜かぬでは、どこに骨があるのかもわかりませんので、その点どうでしょうか。
  118. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も骨を抜かぬというような言葉では言いたくないので、具体的に言えば、申した方がいいと思うのですが、世間で、独禁法の改正というものは、こういう問題について手をつけなければならぬというような世論というものはあるわけですから、そういうふうなものを頭に描きながら、抽象的に、骨を抜かぬと言ったわけですが、それなら具体的にその成案を示せということですが、いま御承知のように、総務長官のもとで懇談会もできまして、非常に建設的な論議が行われておりますし、政党内閣として自民党の方にも、これに対する委員会ができて検討を始めておるんですから、この席上で私が、頭に考えておる、こういう点はぜひとも独禁法に盛り込みたいということを申し上げる段階としては、適当でない。そういうことで、骨を抜かぬというふうなことを申しておるわけでございまして、まだ具体的に内容を申し上げる段階ではないということを御了承願いたいのでございます。
  119. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、骨抜く、骨抜かぬの問題で、総理が頭に描いていらっしゃる具体的問題というのは、そうでないならばそうでないでお答えいただいて結構だと思いますが、一つは、明確な形で具体的に出ていますのは、公正取引委員会の試案、それともう一つ、いま独改懇、独占禁止法改正問題懇談会で、総務長官のもとで協議が重ねられているようでありますが、それから出てきたもの、それから骨を抜かぬというのか。この後また、恐らく与党である自民党との調整をなさるかもわかりませんが、その調整をした後の問題であるのか。その点いかがでしょうか。
  120. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その結果として、国会に提出する法案として、世間が自由経済下における経済秩序として弊害があると強く指摘しておるようなものに対しては、こたえるものでなければならぬと考えております。詳細な日程等については、総務長官からお答えをいたすことにいたします。
  121. 植木庚子郎

    植木国務大臣 お答えいたします。  この間もお答えを申し上げましたように、五回にわたりまして独禁法改正問題懇談会を開いてまいっておりまして、ただいま、その中で出されました御意見、問題点を整理中でございまして、これを二月十日の第六回目の懇談会におきましてさらにもう一度御討議をいただき、御意見を伺う、こういうことになっております。  ここで取り上げられておりますのは、カルテル対策、寡占企業集中対策、さらに、不公正取引の規制問題、あるいは消費者保護、中小企業保護、公正取引委員会の権限、機能の問題、全般、各般にわたっておりまして、ここの懇談会におきましては、有識者の方々がそれぞれの立場で御意見を出しておられますので、これを一本の形で集約化するというのは、少しむずかしいという見方をいたしております。しかしながら、いま総理からお答えがございましたように、広く国民の理解を得られます成案を得たい。これは二月の十日に第六回目の懇談会を開きました後、法案作成の作業に入るという考え方でございます。したがいまして、いま総理からお話しのように、三月の中旬には成案を得たい、このように考えているのでございます。
  122. 正木良明

    ○正木委員 そういたしますと、総理のおっしゃった骨を抜かぬというのは、大体言葉のあやとしておっしゃったのであって、結局の話、独改懇の意見がその中で採用されるとしたって、その採用される採用のされ方が、どのようなされ方をするか、まだ今後の問題でありましょうし、自民党との調整の問題がありましょう。そうして、法案が作成されて出てきた結果のものは、われわれにとっては骨を抜かれた後であるかわからぬけれども、しかし総理は、これからは骨を抜かぬ、こういうことになりそうな感じなんですがね。そういうことがございますので、いかがなものなんでしょうか、この独占禁止法改正問題懇談会の審議された内容、こういうものは公開される御予定はございますか。
  123. 植木庚子郎

    植木国務大臣 お答えいたします。  懇談会を開会するに当たりまして、委員の方々と、公開、非公開の問題について御相談を申し上げました。その結果、全会一致をもちまして、自由な発言を懇談会において自由にしたいという御意向でございました。したがいまして、この懇談会は非公開とすることにいたしたのでございます。しかしながら、そこで出されました意見、これは各項目につきまして、賛成意見あるいは反対意見、問題点の指摘あるいは条件等々、いろいろな御意見が出ているのでございまして、この点につきましては、いま申し上げましたように、一応皆さん方から一通りの御意見は出ておりますけれども、二月の十日にもう一度、いままでの整理いたしましたものをもとにいたしまして、御意見をお寄せいただくという形をとっておりますので、いままで出されましたものを公開いたしますことは、それぞれの委員の方々のお立場等もございますし、非公開の立場をとっておりますので、いまの段階では、公開をするということは差し控えさせていただきたいと思うのでございます。
  124. 正木良明

    ○正木委員 懇談会の中では、やはり産業界の代表の方々が相当強い抵抗をなさっているというふうに聞いております。私が心配いたしますのは、自民党の中にも相当強い御意見をお持ちになって、公取試案自体に対する考え方についても、相当な批判意見がある。したがって、独改懇でどれだけいい意見が出たとしても、それがどれだけ採用されるかどうかということについては、私たちは非常に疑問に思っているわけですね。したがって、私はいままでは、総理の骨を抜かぬという言葉を頼りにすがりついてきたような感じなのですが、その骨のありどころもよくわからぬというようなことでありますので、こうなってまいりますと、やはりどうしてもある程度公開をしていただくということはどうなんだろうか。これは一応その懇談会のメンバーの皆さん方に再度諮っていただいて、国民に対して、自分たちの意見はこういう意見である、ということを発表していただくチャンスをつくっていただくようにお願いした方がいいのではないか。この点いかがでしょうか。
  125. 植木庚子郎

    植木国務大臣 懇談会におきましては、大変活発な御意見は、それぞれ全員から出されておりますが、何か非常な激論が激突をしているという形ではございませんで、委員の方々も申しておられるのでございますが、きわめてアットホームと申しますか、自由にそれぞれの御意見を出しておられるのでございます。したがいまして、私どもといたしましては、これを公開、非公開いずれにするにいたしましても、きわめて貴重な意見がこの中で出されておりますので、これを最大限参考にして、政府の案をつくりたい。これには私も毎回出席いたしておりまして、十分御意見を拝聴いたしておりますので、この御意見を参考にしながら、政府の責任において法律案を作成させていただきたい、このように思うのでございます。  なお、いまお話のございました公開問題等につきましては、どの程度のものがよろしいか、あるいはしてよろしいかよろしくないかというようないろいろなことにつきましては、次回の懇談会において委員の方々と相談をさせていただきます。
  126. 正木良明

    ○正木委員 それはよろしくお願いしたいと思います。  それからもう一点、基本問題について総理お尋ねしたいのです。  二十七日の本会議で、自民党の松野政調会長が質問に立たれまして、公正取引委員会の権限と機構の問題に触れられて、「公正取引委員会に現状のまま多くの権限を集中することばかりでは、その公正な運営はできません。ある意味では消費者行政庁の新構想も必要かと思います。」と述べられました。私どもは内容が詳しくわかりませんけれども、従来から行われている自民党内の論議から言いますと、これは実質的な公正取引委員会の改組論ではないかというように感じております。  総理お尋ねしたいのですが、私は、この公正取引委員会の改組論というものはよほど慎重に考えないと、いま公正取引委員会がやる気をなくしてしまうなんということになりますと、大変なことになってしまう。むしろ公正取引委員会の権限を強くするということで、その能力をまだまだ発揮してもらわなければならぬ問題がたくさんあるわけでありますから、こういう問題について、総理から、そういう議論はあるけれども、公正取引委員会の権限を弱小化するような、ないしは改組するというような考え方はないということをお約束をいただきたいと思うのです。  従来から、この独禁法の問題が非常に強く議論になりますと、しょっちゅうこの問題が出てきております。新日鉄の合併の事件のときなんかでも、こういう問題が起こってまいりましたし、今回もこういう問題が起こりりつある。これは私は非常に遺憾なことであります。要するに、これは具体的に言って、骨を抜かない一つに、公正取引委員会の骨を抜かぬということを、ここでお約束していただきたいと思うわけです。
  127. 植木庚子郎

    植木国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、懇談会の御意見拝聴の中で、公取委員会の権限、機能の問題につきまして、いろいろな角度から御意見が出ているということは事実でございます。しかしながら、この際、それぞれの項目について、あるいはまたこの権限、機能の問題につきましては、御意見を伺っている最中でございますので、これをどうするとかどうしないとかいうようなことにつきましてコメントすることは、この際お許しをいただきたいと存じます。
  128. 正木良明

    ○正木委員 いま総理お尋ねしたのですがね。これはやはり総理、非常に基本的な重大な問題です。したがって、改組されることあるやもしれずというような考え方でこれに臨んでもらうと大変なことになる。これはやはり総理からはっきりと、そういうことには手をつけぬ、こういうことはお約束いただきたいと私は思うのですが……。
  129. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 公取の果たしておる役割りというものは評価をするわけですね。先ほど申し上げましたように、懇談会の中においても、いろいろとこの問題に触れても議論がされておるわけでございますから、その議論の途中で、私が結論的なことをここで申し上げるのは適当ではないのではないかと考えております。
  130. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、最終的に法律案をつくるまでの過程において、公正取引委員会改組論というような問題が出てきたときには、総理は改組することもあるかもしれぬということと受け取ってよろしいですか。
  131. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういうことも含めて、いまこの懇談会でも検討を加えておるわけですから、そういうことで、私がこの段階で断定的なことを申すのは、これは適当でないと思います。これは国会に法案として出すわけですから、これは皆さんの注目されておる法案ですから、国会の論議を通じていろんな御批判を受ける場合があるわけで、これはやみからやみに葬れる問題ではないわけでありますから、その場合に十分御批判を願う機会があるわけですから、いまの段階で断定的なことは申し上げないが、世間が納得するような独禁法の改正にしたいという考え方は、これはもう当然に私は持っておるものでございます。
  132. 正木良明

    ○正木委員 これは別な言い方をしますと、もしかしたら骨を抜くかもしれませんというお答えと受け取らざるを得ないのです。いいですか。あなたは骨は絶対抜かぬとおっしゃったじゃありませんか。骨を抜くのと一緒じゃありませんか。骨を抜くことがあるかもしれませんというお答えと、私はとらざるを得ませんよ。公正取引委員会の改組論なんて重大な問題を、これの骨は絶対抜かぬというなら、私はまだ議論の余地があると思うけれども、これじゃもう、骨を抜くかもわかりませんというお答えのようなものを承って、私はこの独占禁止法の強化問題に対する三木総理の姿勢というものに非常な疑問を感じざるを得ないのです。どうですか。
  133. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そうじゃないじゃないですか。何も公取の機能を弱体化するとかなんとか、私は言っておるのではないのです。これは、これだけ世間が注目しておる独禁法ですよ。そうして国会で、野党としても注目をされておる法案ですから、当然に十分な御批判にたえるものでなくてはならぬ、そういうわけですから、世間から見て納得されぬような法案を私は出そうとは思っておりませんから、いまちょうど政府の独禁法改正の作業にかかろうと思っておる最終段階ですから、この段階で結論的なことは申し上げられませんが、世間が納得するような独禁法の改正をつくろうという決意であることだけは、表明をいたす次第でございます。
  134. 正木良明

    ○正木委員 いいですか、ここに、総理のお考えの中にちょっと詭弁がありますので、このことについて御指摘申し上げておきます。  いいですか、骨を抜かぬというのは、現行の公取の機能や現行の独禁法から骨を抜かぬという意味でおっしゃったわけじゃないでしょう。その前提として、独占禁止法は強化されるべきであるという三木総理の大前提のお話があり、そういうお考えがあって、それから骨を抜かぬとおっしゃったのじゃありませんか。いま三木総理のお話では、いまの公正取引委員会から骨を抜こうなんて考えておりませんということですが、それじゃ、いまから骨を抜くか抜かぬかということの議論になるじゃありませんか。そうではないでしょう。だから、そういう骨を抜かぬという一番肝心なもの、それが公正取引委員会の機能なんです。いいですか。それはむしろ強化されるという方向でいくということから、骨を抜いちゃいかぬというふうに私たちは受け取っているわけですから、それをお約束なさるべきではないでしょうか、そう申し上げているのです。——総務長官、よろしいわ、あなたは、総理の決意でないと。あなたの私的な機関の意見を聞くということだけで、使い分けているわけだから。そうでしょう。これは総務長官の私的な懇談会ですと、片方ではそういう言い方をしながら、片方では、向こうで結論が出ていませんからどうにも返事ができません、というような使い分けをしちゃいけませんよ。だから、少なくとも重要問題である公正取引委員会の機能について、総理からはっきりと、これは強化しなければならないのであって、改組するなんて考え方はないということを聞きたいと言っているのです。
  135. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 正木さん、どうでしょうかね。いま懇談会といっても、皆やはり多忙な人を呼んで、いろいろな意見を述べてもらっておるのです。その人たちがいま検討しておるのです。それは政府が法案を出すときは、政府の責任において出すわけですが、いろいろな意見を聞いて、国民の納得できるような独禁法の改正にしたいというので、いま話をいろいろ聞いておるときですから、そういう人は、私的機関であるにしましても、政府がせっかく閣議で決定したわけですから、そういう意見が出ておる途中で、私がいろいろな結論的なことをここで言うことが、懇談会に委嘱した人にも——そういうことは、おわかり願えるのではないでしょうか。  しかし、言っておることは、これはやはり、独禁法を弱体化するためにこんなことをやっているのではないのです。したがって、公取委員会なども、それを弱体化して骨抜きにするなどという考えで、こういうものをやっておるのではないのです。やはり自由経済の中に新しい秩序を打ち立てたいというのですから、何かこう正木さん、独占禁止法を弱体化しようとしておるのじゃないかというお疑いがあるとするならば、それは私の意図と違います。これはやはり強化していこうというために、これだけのことをしておるのですから、そういまから、何か公取の機能も弱体化して、そうして独禁法は骨抜きにしようとしておるのだという疑いがあるならば、これは私の考え方とは違う。そういうことで、あまりお疑いになって、何かこう……(正木委員「時間がないんです」と呼ぶ)いや、あなたがあまりそういうことを疑っていられるから、そうではないんだと、それはやっぱり独禁法を……(正木委員「あなたはいつも、相手が悪いと言うけれども、あなたは骨を抜かぬということを言ったじゃありませんか。あなたが懇談会のほうに委嘱してあるのだから、その結論が出るまで私は答えは出せませんという答弁をするなら、それでいいですよ。しかしあなたは、骨を抜きません、ある実体の中から骨を抜きませんと言うのだから、あなたの頭の中には実体があるはずであるという解釈をするのは、国民はだれだってそうですよ」と呼ぶ)
  136. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと正木君、あなたの質問総理が答えているのですから、答えを聞いてください。
  137. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 正木さん、それは結論は近いうちに出るのですからね。いまはそういう途中だから、私が結論的なことを申すことは……(正木委員「骨抜きなんて、かっこうのいいことを言わない方がいいですよ」と呼ぶ)いや、それはやっぱり、私が積極的に取り組むということを申し上げたので、そういう意味で、これは独禁法を弱体化するという意味ではないと御了承を願いたいのでございます。
  138. 正木良明

    ○正木委員 いまはっきりわかりました。あなたは積極的に取り組もうという意味を骨を抜かぬと言った程度なんだというふうに解釈せざるを得ません。あなたが骨を抜かぬと言った陰には、実体があるはずだから、その実体を聞こうとしたわけですからね。そこで、具体的な問題に入りましょう、時間がどんどんたちますから。いま総理の手元にも資料をお渡しいたしております。これはやみカルテルによる利得の概算額というものを私が試算したものです。これは、下の注にも書いてございますが、四十七年、四十八年、四十九年の独占禁止法違反事件の中で、全国的規模で行われて、しかも生活物資に密接な関係のある品目を選びました。そうして試算の方法といたしましては、やみカルテルによる利得額の概算額はどういう出し方をしているかというと、このやみカルテルが組まれて、それからそれがなくなるまでの期間、その平均引き上げ単価から協定前の単価を引きました。したがって、実質的なやみカルテルによって値上げされたと思われる金額です。それに対して期間中の出荷量を掛けて、利得概算額を出しました。期間中の平均引き上げ単価は、期間中の出荷量で期間中の出荷金額を割ったものです。ただ問題は、この期間中における原材料等の値上げは、この場合考慮いたしておりません。資料といたしましては、公正取引委員会の審決集、通産省の統計各種、たとえば化学工業統計月報、紙・パルプ統計月報、繊維工業統計月報等、また日銀統計等を参照いたしました。  この中で、まず一番は無水ブタノール、これは日本触媒外七名が公取から審決を受けておりますが、占有率一〇〇%、四十七年四月十日に審決がございました。これは四十六年四月二十一日から四十七年四月十日、約一年間近くやみカルテルをやっておりました。協定前の単価はキログラム五十五円です。期間中平均引き上げ単価がキログラム六十一円です。したがいまして、六十一円から五十五円を引いた六円というものが、われわれとしては、やみカルテルによるところの値上げ金額というふうに推定をいたしました。統計資料から、この期間中の出荷量は二十四万五千八トン、出荷金額が百四十九億五千四百万円ということになっております。この計算によりますと、この無水フタノールの場合は、われわれの概算によると、カルテルによって利得を得た額と言われるのが十四億七千万円に上るであろう、こういうふうに算定をいたしておるわけです。高圧ポリエチレンであるとか、酸化チタンであるとか、合成染料であるとか、外装用ライナー、中芯原紙。コーテッド紙、これはアート紙です。それから上質紙、紙です。ポリプロピレン、合成樹脂です。中低圧ポリエチレン、合成樹脂です。塩化ビニール、合成樹脂です。この十一項目にわたって、われわれが計算をしてみました。こういうふうに計算をしてまいりますと、この合計額が、概算ではございますが、実に四百五十三億二千万円という利得を、このやみカルテルによって、その期間中に得たというふうにわれわれは考えておるわけです。この金額は、このカルテルの期間中に出荷いたしました四千三百九十八億七千八百万円の実に約一割、一〇%にわたるものが、この利得額というふうに考えられるわけでございます。  そこで、これは比較的正確に、われわれとしては最高に努力をしてはじき出した数字でございますが、公取委員長、この数字をどのようにお考えになりますか。
  139. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 恐らく、私どもの方の課徴金の計算の方法をおとりになった。ですから、値上げ幅にその期間中の出荷額ですね、出荷量といいますか、それを乗じて出された。実は私の方はずっと以前には、価格の報告をとっていなかった。最近はほとんどの場合に、価格の推移は徴しております。しかし、出荷量を出し、出荷金額を出すというところまでは、まだ事務は至っておりません。したがいまして、これの全部について点検はできませんでしたけれども、最近いただきましたから……。ただし、一番上の、たとえば無水フタル酸について計算してみますと、ほとんど同じ金額になります。ぴたりと合うというわけにはいきませんがい六十一という数字が六十になるという程度でございますから、その全体についても、まあせっかくお調べになった結果は、ほとんど間違いない、正確に近いものであるというふうに思います。
  140. 正木良明

    ○正木委員 これは実は一部分なんです。一部分なんですが、一部分だけを抜き出しても、これくらいのものがあるのです。総理、こういう実態、やみカルテルの結果こういう利得が生じてきておるということについて、どのようにお考えになりますか。
  141. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 やみカルテルによってこういう不当な利得を得られるということは、全く遺憾なことで、独禁法の改正などにおいても、やはり背景の中にこういうことも考えられなければならぬことは、そのとおりだと思います。
  142. 正木良明

    ○正木委員 それで、一枚めくって、資料二、資料三をちょっとごらんいただけますか。  これをいろいろ調査してまいりますと、四十八年から四十九年の間、価格協定が行われた中で、狂乱物価の主役だった石油関係、それから紙、セメント、プロパンガス等の合計は、九十八件のうち四十九件というふうに、半分を占めておるわけです。そこで、この資料二の四十八年、四十九年、これはカルテルの数を業種別に挙げております。たとえば、石油及び石油製品販売は四十八年十二件、四十九年六件です。そうして、この括弧の中に入れてございますのが、いわゆるやみカルテルの中でも価格協定の数字を示しております。備考に四十七年の分を書いてございますが、価格協定のものを比べてまいりますと、四十七年に比べて、四十八年は実に四倍、四十九年は三五倍というようなやみカルテルが行われておるわけです。資料三は、この同じ企業が何回も何回も独占禁止法の違反をいたしております。これの累犯という言葉が適当であるかどうかわかりませんが、何遍も繰り返していわゆる独禁法違反をやっておる、こういう資料です。ここでは住友化学工業が四十九年に六回繰り返してやっている。宇部興産は四十八年二回、四十九年三回。旭化成は四十八年三回、四十九年一回。日本油脂は四十八年三回、四十九年一回。大体三回以上だけを抜き出してみました。このほかに、二回というのは数がたくさんございます。三回だけを悪質と見て抜き出してみましたが、これだけのものがございます。二十三大企業がそれぞれ三回以上、四十八年、四十九年の両年にわたって独禁法違反を繰り返しておる、こういう実態でございます。  公取委員長、これはもう皆さん方がおやりになったことでございますから、私ども間違いのないように期しておりますが、一応確認をいたしておきます。いかがでしょう。
  143. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これらの表はおおむね正しいと思います。若干そごしております。しかし、それはここで改めて申し上げるほどのことはないんですが、たとえばここにあります独禁法違反の四十九年の価格カルテルが、五十五件のうち四十七件である。そうなっておりますのは、これは五十二件が五十五にかわりまして、それから四十七が四十八になります。その程度の誤差はございますが、これは審決件数としては、ほとんど大した問題になりません。  それから累犯件数も——この場合の件数とは、審決の件数ですが、これは全く同様なことを行いましても、一回の違反が二件になる場合がございますから、それはもちろん考えておかなければなりませんが、審決の件数としては、トータルでは、この内訳においてもほぼ合っております。若干そごしておるところがございますけれども、余り大差ないということを申し上げておきます。
  144. 正木良明

    ○正木委員 むしろ公取の御調査だと、四十九年の場合は、価格協定違反が一件ふえるというような状況になってまいります。  総理、これもちょっと御感想を承りたいのですが、こういう状態というものをどういうふうにお考えになりますか。
  145. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは現在公取のほうでもいろいろ調査をしておるようですから、こういうことで独禁法の違反があるということは、企業としてもやはり、社会的責任を持っておるものとして、これは非常に遺憾なことであることは、もう申すまでもないわけでございます。
  146. 正木良明

    ○正木委員 それはそうでしょう。この対応をどうするかということについてお聞きしたいんですがね。やはり私はこういうふうな実態に対して、このような企業行動がとられる市場構造というものはずいぶん問題がある。これはあとからいろいろと申し上げてみたいと思いますが、まずカルテルの規制ということを厳重にやらなければならぬと私は思うのです。基本的には、ここで出てまいりますように、カルテルについてはやり得だという考え方があるわけです。実際問題としては、価格に変動は与えられないし、同時にまた、それだからといって、告発され刑法上の罪になるということもきわめて少ない。勧告を受けたときに頭を下げて、解散いたしますというようなことをすれば、それで一応新聞広告で済んでしまうと、また再びそれを繰り返すというような、いわゆるやり得、こういう風潮があるわけです。そうすると、これを根絶するためにはどうすればいいか。少なくとも、こういうやり得という風潮をなくさなければなりません。そのためにはどうしても、やみカルテルというものはもうからぬのだ、やみカルテルをすると手ひどい目に遭うのだという形のものをつくり出していかなければならぬ、私はそう思うのです。そういう意味で、総理は、これにどういうふうに対応していけばいいか。  私は、一つは、こういうやみカルテルには原状回復命令、いわゆる価格の引き下げ、同時にまた、そのやみの利得については、これを課徴金として取っていく、これが当然のことだと思うのです。要するに、課徴金については、これはかってやった不当な利得に対して、その利得を取り上げていくということでありましょうし、同時にまた、将来にわたってはどうか、やみカルテルの後の期間の問題についてはどうかと言えば、これはやはり原状回復、価格を引き下げるという、やみカルテルをやる前の価格に引き戻すということでなければ効果はないと私は思うのですが、総理、いかがですか。
  147. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 正木さんの言われるように、やみカルテルはもうけにならぬのだということは必要だと思います。そういうことは、やはり独禁法の場合においても十分頭に置かなければならぬ点だということは、私も同感でございます。
  148. 正木良明

    ○正木委員 そのために私は、具体的には、一つは価格の引き下げ命令権というものと課徴金の問題を提起したのですが、このお考えについて、総理の個人的な感じでけっこうです。恐らく、そんなことを言うとまた影響しますから、ということになりますから。しかし、あなた個人として、こういうことはやはり必要だなとお思いになるかどうか、お聞かせください。
  149. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 個人というわけにも、こういう問題はいきませんが、とにかく正木さんの言われるように、やみカルテルをやればそれはもうけにならぬのだということを、どういう方法にするかということはこれからの検討でしょうが、そういうことが独禁法の改正の中には十分にやはり盛り込まれる必要があるということは、私もそう思います。
  150. 正木良明

    ○正木委員 公取委員長さん、どうも価格の引き下げ命令、私たちはいわゆる原状回復という方が適当な言葉じゃないかと思っておりますが、やみカルテルを組む以前の価格に引き戻すということ、これが産業界あたりでは、どうも統制価格になるんじゃないかというような意見があるようですが、公取委員長はどうお考えになりますか、この点について。
  151. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 初めの段階では、これは値下げ命令という発想でおったのです。それが、値下げ命令というのよりは、原状回復とした方がいいんじゃないかという御意見が強かったので、そういうふうにしました。要するにこの考え方は、カルテル価格は人為的につくられた価格であって、決して市場原理に基づいてできた価格ではない。それが破棄を命ぜられまして、それに従ったといって新聞広告等をしましても、少しも動かないというのが——極端に不況になれば別ですが、そうでない限りは、いままでの推移を見ますと、ほとんど下がらない。つまり破棄は名目であって、何ら実体を伴っていませんから、やはりそれを実質的に破棄が効果あるようにするというのには、ある程度、公取委員会でも価格そのものに介入するのはやむを得ないんじゃないかという考え方なんです。  しかし、それに対して明白に反対論があるということは、私は認めます。公正取引委員会が、原因はどうであれ、価格そのものに介入するのはおかしいということを言われる専門家の方がおられるということも確かでありますから。また私は、いまの段階では、要するに価格の面でも効果ある措置をとればいい。効果がなくて、五年もたってから、たとえば判決で確定した、そして価格にそれからは介入するというのでは、意味がないんじゃないか。その辺をどのようにしたら現実的な効果を持つようにし得るかということが、一つの研究課題であろう。そういう点は、私どもの方もいろいろ違った考え方を持っておりますが、しかし要するに、ある程度実情に即したところまでは、人為的な価格を打ち破って、下げていくのが自然の勢いじゃないか、自然のあり方じゃないか、こう考えております。
  152. 正木良明

    ○正木委員 公取委員長考え方と私とは同じ考え方なんですがね。どうも、そういうことで統制価格になるとか——私は、統制経済のもとにおけるところの統制価格というのと、価格の引き下げ命令というものとは、本質的に違うものだというふうに思っております。時間がありませんので、議論はできませんけれども。  そういうことで、やはりどうしてもここで考えていただきたいことは、いまお渡ししたような資料の実態というのがございます。こういう実態の中で、やはりどうしても、やみカルテルはやれば損をするのだ、やり得ではないのだということを認識させるための非常に強い措置というもの、これは両面から、価格引き下げ、いわゆる原状回復命令と、課徴金という形でとっていかなければならぬ。この点はどうか御記憶にしっかりととめておいていただきたいと、私は思います。  実際、価格の引き下げがやみカルテル以前まで戻されないということになりますと、課徴金で非常な手痛い目に遭うのだから、それは必要なかろうという議論がありますけれども、どうも消費者の方にとりましては、価格が下がらないということについては、何の便益も、いわゆる効果ももたらさないということになるわけですね。やみカルテルで上がったら上がったままということになってしまいます。そのためには、現行独禁法二十五条、二十六条におけるところの損害賠償ということが言われておりますが、これも聞こうと思ったのだが、全部こっちで言ってしまいますが、もしこれを生かして、そうして価格引き下げがなくて、そういう損害賠償で片をつけようとするならば、やはりここで別な手段が必要になってくるわけです。というのは、裁判ということになってまいりますと、一般の消費者はその知識もなかなか乏しゅうございますし、その裁判費用だとか、また裁判の期間であるとか、いろいろの問題で、なかなかそう簡単に損害賠償の提起はできません。したがって、どうしてもクラスアクション、われわれはこれを集団代表訴訟制度と呼んでおりますが、こういう制度をどうしてもとらざるを得ない、こういうふうに私は考えるわけです。こういう点について、消費者保護という立場から、福田経企庁長官、どうでしょうか、この考え方、ございますか。
  153. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 消費者を今日どういうふうに保護していくかということは、非常に重大な問題になってきているのです。その中の一つの検討材料として、ただいまお話しのクラスアクション、こういう問題があるわけです。これは私どもの役所でも、国民生活審議会に部会を設けまして、加藤一郎教授を中心に御検討願っているのです。ただ、これはいま御論議のありました独禁法だけの問題じゃないのです。あるいは公害の問題についても、いろいろ問題が起こってくるだろう。そういう民事訴訟体系、これをどうするか、こういう問題につながってくるだろう、こういうふうに思うのですが、なお、私どもも、非常に興味ある問題でありますので、十分検討してみたい、かように考えます。
  154. 正木良明

    ○正木委員 同じ問題で、公正取引委員長総理にお願いします。
  155. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いま副総理がお答えいたされましたように、この問題は、独禁法だけじゃありません。ほかの問題にも、クラスアクションというのは、民事訴訟一般の問題として、ことに損害賠償請求についてかかわり合いがある。そういうことで、私どもとしては、いまそれについてどうこうという意見を述べる段階ではないと思うのです。大変めんどうな問題である。たとえばアメリカでも、クラスアクション制度がいままでは公然と認められておった。ところが非常にそれに問題がある。違憲ではないけれども、ちょっと疑いがあるといいますか、その程度の最高裁の判決がありまして、むしろ若干逆行しておるというふうな傾向がございます。ですから、これは訴訟問題一般として、相当十分な検討を必要とする問題ではないかと思います。
  156. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま副総理からも、公取委員長からも、答弁があったように、検討の課題だということですから、これ以上、私が言うことはございません。
  157. 正木良明

    ○正木委員 いま公明党で、このクラスアクションの法律案を用意いたしておりますので、またそれが出ましたら、よく検討してみてください。それで、できるだけこの方向へ行っていただかないと、これはいま独禁法の問題ですから、それに限りましたけれども、おっしゃるとおり、公害の問題にも非常に重要な関係のあるものですから、よろしくお願いしたいと思います。  次に、寡占対策についてお伺いしたいのです。  最初に福田経企庁長官にお願いしたいのですが、四十九年度の経済白書においても、生産集中度、この実態ということについては御報告がございますが、長官として、この寡占化傾向ということについて、どういうふうに感じていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  158. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、その問題につきましては、大きいものが必ずしも悪であるというふうには考えません。やはり企業なんかでも、かなりの規模を持つということで初めて対外経済競争力、そういうものができますので、これは日本経済的な角度から見て、規模が大きくなるから、それが非常に企業のあり方として問題だ、こういうふうなとらえ方はしませんけれども、問題は、私は、その企業の規模の問題よりは、その企業の大きな規模を踏まえての活動のマナー、そういう点にあるのではないか、そういうふうに思うのです。ですから、そういう企業の活動について公正なルールをつくる、これを遵守する、こういうことが大事じゃないか、そういうふうに、大局論としてはとらえております。
  159. 正木良明

    ○正木委員 実は白書の中では、やはり非常に警告的におっしゃっているわけです。「四十三年、四十四年度ごろから上位三社の集中度の上昇が目立っている。このような生産集中度の高まりは、価格協調が行われやすい素地が大きくなっていることを示している」のだというふうに、経企庁がお出しになった白書の中でも御指摘になっているわけですね。したがって、こういう寡占化傾向というのは、大きいから悪であるという単純な考え方で処理することはむしろ非常な問題があるというふうに考えるわけです。そういう意味からいって、高度の寡占企業においては、やはりどうしても景気変動に対して価格が硬直的であるということ、そうして非常な高収益を上げているということ。ということは、逆に国民の側、消費者の側から言いますと、非常に高い価格で物を買わされているというふうになってくるわけです。こういう事実があるにもかかわらず、現行独禁法では、こういう高度寡占に対しては何の規制も行われていないということですね。  そういうことで、公取の試案におきましては、企業分割制度だとか原価の公表、あるいは持ち株制限の強化、こういうものが出てきておるわけです。これについて総理は、この企業分割、原価の公表なんということをどうお考えになっておりますか。
  160. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはいま世間も注目しておる問題点でございまして、これは十分に検討されなければならぬ課題で、今度の改正法の中の一つの大きな柱をなすものだと思います。これは十分に検討さるべき問題であると思います。
  161. 正木良明

    ○正木委員 公取委員長、この企業分割について、商法の改正がなければならぬという議論があるようでございますが、公取はどうお考えになっておりますか。
  162. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 確かに、完全な意味での企業分割を行おうといたしますと、つまり一つの会社を仮に二つに分割するとした場合、その解散と同時にそれぞれ二つの新会社が生まれる、こういう規定、これは現行商法にはございません。したがいまして、商法の規定がそのためには必要であろう、こういう意見はありますし、また私どもも、法的にはそういう手当てが必要であると思います。  ただ、一部の譲渡、重要なる一部の譲渡については、商法上の規定がございます。これは株主総会の特別決議を要することになっておりますが、それよりは公法上の命令の方が優先するということを書けば問題ない。実質的には、そういう方法で、当面は同じ効果が期待できるものと思いますけれども、なお法律的には、相当詰めなければならぬ点があることは事実でございます。
  163. 正木良明

    ○正木委員 原価の公表について、改正試案では、「原価公表の対象となる業種または商品等は、公正取引委員会が規定する。」ということになっておりますけれども、試案で言う原価の公表の企業、業種、商品というのはどういうものを予想されておりますか。
  164. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いま原価公表なる制度そのものが検討されて、法律案になっていないその段階で、私どもが、これこれはそれに該当するのだということを述べるのは少し早過ぎるのじゃないかと思いますが、ただ私、かつてすでに、ほかの委員会でございますが、述べましたビールとか板ガラス、他にもう一種挙げましたが、そのようなものは、少なくともそれに該当するだろうと、こう申したことがございますが、いま全部についてどうあるかということは、私は大体の見当を申しますと、私のほうで言う高度寡占は大変たくさんございますが、恐らく十業種内外にさしあたりはとどまるのではないか。将来はわかりません。
  165. 正木良明

    ○正木委員 ちょっと時間が迫ってまいりました。大分聞きたいことがございますが、ひとつ飛ばします。  そこで、株式所有の問題についてお聞きしたいのですが、これは三枚目の資料四というのをちょっと見ていただけませんか。日本製紙連合会加盟の各社というのを、一応私どもで取り上げてみました。大変な実態がございます。ただ、これは悪意で取り上げたということではございません。これは日本製紙連合会加盟の各社が何回か大変なやみカルテルを繰り返しておりまして、四十八年の十二月には、公正取引委員会から異例の警告書というものまで出ているのです。たとえば四十七年の九月一日に、日本製紙連合会に公取が立ち入り調査をした。そうしてずっと調べまして、四十八年の二月九日に、日本製紙連合会に対して公取が勧告をいたしております。立ち入り検査があって、勧告される前の日に、四十八年の二月八日に——これはまだ表には出ておりませんけれども、二月八日に、昭和四十八年五月二十一日から一〇%の値上げをするというカルテルを組んでいるのです。いいですか、勧告される前の日に組んでいるのです。これが、昭和四十八年十二月七日に、またこのカルテルについて勧告を受けております。また、四十八年六月二十一日には、今度は上質紙でやっている。コーテッド紙でやって、また上質紙でやっているというようなことが繰り返されて、そうした異例の警告になっているのですね。  実は株式の所有という問題をよほど厳しく規制いたしませんと、こういうやみカルテルが繰り返して行われるような素地が、実に完全にできているということです。これを表にして示したわけです。ここで実線で示しておりますが、たとえば王子製紙はすっと上に筋を引っ張っておりますが、日本パルプ工業の株を九・三%。これは日本パルプ工業の全株のうちの九・三%を所有しているということです。1と書いてございますが、これは株主の中で第一位の株主であるということです。そして役員を一人、日本パルプ工業へ派遣いたしております。そうして、王子は、神崎製紙にも十條製紙にも、そのパーセンテージを示してございますが、株式を持っております。山陽国策パルプにも持っている。また北越製紙にも持っている。本州製紙にも持っている。日本加工製紙にも持っている。また本州製紙は日本パルプ工業に持っている。神崎製紙も十條製紙も、日本パルプ工業の株を持っているというような関係で、これは全然業種の違う会社であるならば、別の解釈もできるかもしれません。しかし完全な競争会社。完全な競争会社が、こういう形で役員を派遣したり、また株の持ち合いをしておるということ自体、これを見ればもうたちどころにわかることは、要するに、もうカルテルを組むというようなことについては実に簡単にできるということが、これは素人目にも明らかにわかることではないだろうかというふうに考えております。こういう点から見て、こういう傾向が進展していく、そうすると、競争制限ということはもうますます強くなってくると見ざるを得ないと私は思うのです。  したがって、公取委員長にお聞きしたいのですが、私は、こういう株式保有の制限という問題については、むしろ公取の試案というのは緩過ぎるのじゃないかという考え方を持っているのです。この表にいたしておりますのは、それぞれ資本金二十五億円以上の会社です。あるいは金融界以外は百億円という線を引っ張っていらっしゃいますけれども、これでは、とてもじゃないけれども、こういう問題は規制することはできなくなってくる。こういう競争会社の株式保有というような問題について、公取委員長はどういうふうな考え方をお持ちになっているか、まずお聞きしたいと思います。
  166. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 株式保有の制限は、昭和二十二年の法律から二十四年に改正され、それから二十八年に改正されるに従いまして、非常に大幅に緩和されちゃっているのです。ですから、二十四年の法律の段階では、これはすでに緩和されておりますが、競争会社の株式は保有してはいかぬ、こういうふうに厳しくなっておりますし、それから、競争を減殺するおそれのあるときはいかぬ。それがいまはどうなっているかと言いますと、同じく第十条でございますが、競争を一定の取引分野で実質的に制限することとなる場合には保有してはならぬ、こういうことになっておりまして、いまおっしゃられましたところから考えまして、確かに、全体の保有制限のほかに、少なくとも競争を減殺することとなる場合は保有してはならないという規定を入れたらどうかということで、実は専門家の学者の方から、これは落ちているのじゃないかということを指摘されておりますが、しかし、いま私どもの原案を、この段階で変える気持ちはありません。しかし、実質的に制限というと、これは判定が非常に困難である。減殺ということならばずいぶん違います。そういう点では、競争会社の株式取得は、原則として禁止、そして競争減殺という場合にも保有が禁止されるということが、実はいま言うのはおかしいのですけれども、御指摘のとおり、そういう法律、そういう規定があったほうがいいように、私は思います。
  167. 正木良明

    ○正木委員 非常に前向きな御意見をいただいて、ありがたいと思います。いまのことを、総務長官も総理も、お聞きいただいたと思います。これは非常に重要なことでございますので、競争会社の間におけるところの株式保有の問題、これが非常な競争制限につながっていくという問題で重大なものを含んでおりますので、どうかひとつこのことはぜひとも参考にしていただきたい、これをひとつお願いしたいと思います。これについて、ひとつ答弁してください。
  168. 植木庚子郎

    植木国務大臣 いまのようなお説が懇談会でも出ております。十分に検討させていただきたいと存じます。  なお、先ほどの点について、事実問題一つだけ申し上げたいのでございますが、公正取引委員会の権限の問題でございますけれども、実は五十年度の予算の編成に当たりまして、定員削減の中にありましても、公取委員会の定員は二十六名、そこから三名は削減されますけれども、強化をすることにいたしまして、法案が改正せられましたならば、十名がこれに当たるというような定員の獲得までいたしておりますので、公取委員会に対する政府の姿勢を御理解いただきたいと存じます。
  169. 正木良明

    ○正木委員 ふえたことは非常に結構なことだと思います。それは評価いたします。ただ、将来にわたって、分割するとか改組するということになると、そういうふやしたやつだって、横っちょへ持っていけばいいわけですからね。これは非常に問題になるわけです。やはり総理が再々おっしゃっておりますように、社会的不公正の是正ということの一つの柱としての、この独禁法の改正というのは非常に重要な問題でありますし、これはもう国民も注目していることでございますから、いまいろいるな関係があって、明確な答えがいただけなくて残念でございますけれども、政府案がどのようなものになってくるか、それについては、私たちは注目していきたいと思います。  一言、予算案については修正しないということを盛んにおっしゃるわけですが、こういう問題については、たとえ野党の意見であろうと、どんどん取り入れて、独占禁止法の改正については、修正を前向きに考えていく、こういうことであるかどうか、その点、ひとつ総理に最後にお願いしたいと思います。
  170. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 法案の修正権は国会が持っておるわけでございますから、野党の御意見で、自民党としてもこれはそういう改正をした方がいいというときには、当然に修正は可能であるわけでございます。
  171. 正木良明

    ○正木委員 時間がなくなってまいりました。ここで地方自治関係の問題をいろいろ申し上げたかったのですが、時間がございませんので、地方自治関係の問題の中で、比較的簡単に皆さん方からお答えのいただける問題一つだけを申し上げます。  それはいわゆる地方事務官制度の問題です。これはもう御承知のとおり、地方事務官制度という問題はずいぶん前から問題になっておりまして、政府にとりましても、何回かこの問題で、要するに大臣間に協定と申しますか、申し合わせがございます。それにもかかわらず、一向にこれが進展しておりません。たとえば、昭和四十三年十月の第一次、昭和四十四年七月の第二次、それぞれ行政改革計画について閣議決定をされている。この問題について検討した結果、関係大臣で、昭和四十三年十一月には地方事務官制度の廃止方針について大臣間の覚書、これが木村行政管理庁長官、小川労働大臣、赤澤自治大臣、また陸運行政については木村行政管理庁長官、中曽根運輸大臣、赤澤自治大臣、これで締結されている。そして一昨年の四十八年の十月には、福田総理が行政管理庁長官でございましたが、齋藤厚生大臣、新谷運輸大臣、加藤労働大臣、江崎自治大臣、この五大臣で、速やかに結着がつくようにということでの合意がなされておる。そのほか、全国知事会の要望、全国都道府県議会議長会の要望、全日本自治団体労働組合の要請、各審議会の答申、こういう中で、地方事務官制度という、臨時的に、地方自治法ができたときにつくられたものが、昭和二十二年から昭和五十年ですから、もう実に二十八年にわたって、「当分の間」という形で置かれたままである。  これは基本的に申し上げますと、やはり地方自治に対する官治制度の残滓でありますし、中央集権の一つの問題点であるし、同時にまた、その府県で働いておる人たちは、もういわゆる地方公務員であらねばならぬのにもかかわらず、国家公務員で、人事の交流もうまくいっていない、そして不満もある、こういう中で、この地方事務官制度というのは非常に重要な問題をはらんでいるのです。しかも、去年、この問題について、衆参の地方行政委員会では、昭和五十一年の三月三十一日をめどとして地方事務官を地方公務員にするようにと、全会一致の附帯決議までつけられておるということです。こういうふうに非常に多方面からの要請が激しい。しかも国会でも、これを何回か決議をいたしておる。こういうものが、いつまでも各省間の合意が達せられないために、大臣の方はうまくいっておるのだけれども、下の方でうまくいかないために、これが停とんしておるということは、私は非常に大きな問題があるだろうと思うのですがね。  この点について、時間がありませんから、まず自治大臣、それから、ちょうどそこに副総理いらっしゃいますから、福田総理に、それから、公平を欠いてはいけませんから、厚生大臣、労働大臣、運輸大臣、そして最後にひとつ総理、この問題についてどう考えているのか。これは重ねて申し上げますが、国会の決議もあることでありますから、非常に強い機運になっているのでありますから、本当に地方自治を民主主義の場にするということからも、こういうものは一掃しなければならぬことでありますから、前向きの御答弁をお願いしたいと思います。
  172. 福田一

    福田(一)国務大臣 この問題については、正木さんは非常に専門的な方でもあられることはよくわかっております。また、御指摘になった点、すべてわれわれも非常に重大であると考えておるのでございまして、特に昨年の衆参両院の地方行政委員会におきまして、附帯決議で、五十一年の三月までにはこれを解決しなければいかぬということまで要請されておるのでありますから、われわれとしても、せいぜいそれについては前向きで努力をいたしておるところでございます。ただ、これはもう私が申し上げるまでもなく、この制度につきましては、いろいろまた業務の性格といいますか、内容の問題、それからまたどれだけ効率性があるかという問題、それからまた地方と中央との分担の問題ということについて、もっともっとまだ事務的にも詰めていかなければならない問題がいろいろございますので、実はそういう面を前向きでいま検討を続けておるというのが、現在の段階でございます。
  173. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この問題は長い問題で、私もそういうお尋ねを受けますと、どうも申しわけないような感じがするのですが、とにかく政府の大方針は決まっておるわけです。「当分の間」ということで今日のような措置になっておるわけでありまして、しかも国会では御決議もある、こういう問題でございますので、速やかにこの問題を解決するという方向で努力をいたします。
  174. 田中武夫

    田中国務大臣 私のところの地方事務官は、社会保険事務を担当しているわけでございますが、この仕事の性質上、国が経営の責任を持ち、そして画一的に、統一的に能率的にやるために、これを地方公務員にして、全部の仕事を機関委任に持っていくことが一体いいのか。それとも逆の方向に持っていって、地方事務官問題に終止符を打つのがいいか。これについてはいろいろと議論のあるところでございまして、いずれにいたしましても、こういう地方事務官制度という、当分の間と言われ、しかもそれについていろいろと中途半端な制度というものに、この際は終止符を打ちたい。しかし、その方向はどちらの方向に持っていくかについては、いろいろ議論があるところでございまして、強いて申すならば、私の方は、この仕事を全部地方機関委任にするということについては、非常に危惧の念を持っているということを申し上げておきます。
  175. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 労働大臣長谷川峻君。時間がありませんから、簡単に。
  176. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 御案内のように、第一線の公共職業安定所は国の機関で、その職員は国家公務員、県庁にいる者が地方事務官でございます。今日のように雇用安定が非常にむずかしいときに、こうした職員の不安、事務の業態等々も考えながら、国会の決議にどう沿うたらいいかということで、慎重に検討しているところです。
  177. 木村睦男

    ○木村国務大臣 運輸省につきましては、御承知のように陸運事務所というのがございます。この中で、自動車の検査、自動車の登録、それから軽微な行政事務、まあ認可、許可、これだけの事務を持っております。  お話のようないきさつを経まして、現在、関係省の間で、陸運事務所の問題でまとまっておりますところは、陸運事務所そのものは運輸省の出先機関として残す。そして現在陸運事務所が持っております業務の中で、先ほどの自動車の検査と登録の事務は、運輸省の出先機関として陸運事務所がこれを行う。許認可事務の中で、検討いたしまして、知事に委任できるものは委任するという大体の筋はできております。その許認可事務の中で、知事に移すかあるいは陸運事務所に残すかということで、現在は検討いたしております。
  178. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 時間が来ているので、簡潔に。
  179. 木村睦男

    ○木村国務大臣 それからもう一点は、陸運事務所には二千七百名の人間がおりますが、これが県に全部移譲になりますと、人事の動かし方で、Aの県の人間とBの県におりますのが、人事異動ができないというような、いろいろな問題がございますので、そういう問題を詰めながら、結論を急いで解決をいたしたい、かように考えております。
  180. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 長内閣総理大臣三木武夫君。先ほどのあれも答弁願います。
  181. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題は暫定的制度ですから、廃止するという方針でやっておるのですが、正木さん御指摘のように、まだ各省間で話し合い、協議しなければなりませんが、できるだけ早く合理的な結論を出すように、努力をいたします。  それから、先ほどの私の私邸については、敷地のうち百七十二坪は借りています。地主は住友セメントで、地代は年額百五十万円でございます。
  182. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 時間が来ていますから、どうぞ簡潔に願います。
  183. 正木良明

    ○正木委員 これで終わりますから。  いま地方事務官制度について、一通りずっとお聞きいたしました。私が本人じゃないというお考えがあるのかもわかりませんが、それぞれ皆さん方の前任者ないしは皆さん方、かつてやった人たちが、ちゃんと申し合わせをしているのですよね。そういうことであるのにもかかわらず、いまお聞きしますと、そういう中途半端なお答えしか出てこない。これは非常に残念です。  それで、これは反論すれば幾つも、たくさんの反論がございます。したがって、地方公務員にできない、そうして地方事務官という国家公務員の制度を残したままで地方で仕事をさせる、こういうことの中には、いろいろとお話を承っておりますと、特に厚生大臣のお言葉の中には、非常に危惧があるという、やはり地方自治体に対する非常に強い不信感がある。これは私は一掃しなければならないだろうと思います。それは、自分の手下を使っていると信用できるけれども、人に任せてしまうと信用できないということになってまいりまして、これは大変なことになるのです。そうすると、保険業務というのは一切全部国家公務員でやっているかというと、そうではない。そのほか、森林保険なんというものは地方に任している。また、国民健康保険というのは、経営主体が市町村でございますけれども、これだって一切市町村に任せておるわけですね。そうすると、われわれ、いま保険業務というものを、また年金の業務を任してしまって、それは非常な支障が起こるかどうかということについては、非常な疑問があります、そういうお考え方について。やはりこの際、地方自治を伸長し、そうして地方自治を確立するというたてまえから言うと、少々痛い目があるかもわかりませんけれども、それは一切お任せになるという方が、今後の日本の民主主義の発展にとって重大なことではないか。もしこれをあえて抵抗なさるということになるならば、その国家公務員を地方に配置しておって、そこに、課長さんなんというのは、たとえば保険の場合なんかは二人各地方庁にいるわけですが、このポストが放せないから、それで地方公務員にするのがいやなのかというふうに勘ぐられますよ。私がそう言っているわけじゃありません。そういうふうに勘ぐられる。しかも人事交流はどうか。その人たちは保険業務だけで、地方公務員、ほかの地方庁の職員と同じように仕事をしながら、全然ほかの職場へ行けない。そういう昇進の問題等も含めて、現地から、現に地方事務官として地方庁で仕事をしている人たちの強い陳情もあるわけですから、ぜひともこれは早急に、地方行政委員会が示した五十一年三月三十一日までにこれを解決していただくように、特にお願いを申し上げておきます。  それから総理の私邸の問題について非常に明快なお答えがあって、非常に結構でした。ただ私は、資産公開なさったときに、もう少し親切心があるならば、ここまでおっしゃっておいた方がよかったのじゃないかと思うのです。  というのは、こういう質問を、われわれは選挙民から再三にわたって受けるわけです。やはりあなたのところの近所に住んでいる人は知っているのだから。あれはどないなってまんねんと聞かれたときに、それは知らんで、ということになってしまうわけだから。それは三木さんのことだから間違いないやろうと思うけれども、という程度しか言えない。だから、クリーン三木として、三木さんがそうおっしゃるならば、それをはっきりなさるべきであろうと思います。私としては、やはり、住友セメントなんというような大企業と、こういう関係があるということは、本当はおもしろくないと思いますけれども、たまたまそこに土地があったんだからしようがないと言われてしまえばそれまででありますから、結構だと思いますが……。  そうしてこれは、どなたが契約なさっていますか。啓史さんですか。
  184. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまここに持っておるのはこれだけですから、いまお答えしただけのことです。
  185. 正木良明

    ○正木委員 以上、委員長、ありがとうございました。これで終わります。(拍手)
  186. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次に、安宅常彦君。
  187. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は、きょうは、三木内閣の外交方針、それから特に海外経済協力の問題、これに関連して韓国に起きているいろいろな現象、あるいはこれとつながって朝鮮民主主義人民共和国の問題等についてお伺いしたいと思います。  まず最初に、内閣総理大臣にお伺いいたしますが、あなたの施政方針演説というのを、私ぽかっとして聞いたわけではなかったのですが、なかなかうまいことを言うなという程度でありました。しかし、よく分析をいたしてみますと、その裏を読んでみますと、どうもあなたの発想の中には、参議院が同数ぐらいになったということがあるのか、それは別として、何か保革大連合、何か西ドイツみたいな大連合方式か——それはそううまく問屋が卸すかどうかは別ですよ。少なくとも、そういうことを頭に描いて物を言っているような気がするのです。たとえば、外交でもそうだとか、社会的連帯の中で国益を守れなどと言ってみたり、日本丸というボートにみんな一緒に乗ったのだ、運命共同体だ、全国民に、全議員に、議員の皆さんという呼びかけですね、こういうことを言っているような気がしますが、そうなんですか。
  188. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安宅さん、私は実際そう思うのですよ。運命共同体の面がありますよ、日本人に。そういう点で、これはお互いの立場は違っても、全体としての運命は、共同体の面が確かにあるという考えでございます。しかしそれは、一億一心とかいうようなことを言っているのではないのですよ。立場は違っても、全体としての運命というものは、やはり非常に運命共同体的なものがある。人類でもそうですからね。そういう点で、そういうふうな基本的な私の考え方を述べたので、そう思っているのです。
  189. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういうところを、たとえば外交方針について、特に外務大臣が言うようなことじゃないかと思うようなところまで、ゼスチュアたっぷり、大変な大演説でございましたよね、あなたの演説は。しかし、そうは言っても、たとえば一つ一つ聞いていきますが、あなたがそういう発想をされているかは別として、そうは問屋が卸さないんだよということについて、今度は具体的にやっていきます。  あなたは、演説はうまいけれども実行力がどうも、なんという世の中ですから、どうか気をつけて答弁していただきたいと思いますが、どういうことなんでしょうか。外交方針は前内閣の踏襲ではない、私は独自の新しい方針といいますか、そういうことを考えておるんだという、先ほど言ったものと関連して言うならば、そういうことを強く印象づけるために、パレスチナの話をしてみたり、ソビエトとの外交交渉の話をしてみたりなさったのか、こういうことをちょっと前提としてお伺いしておきます。
  190. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自民党内閣ですからね、安宅さん、やはり外交政策の継続性は要る。だから、基本的に前内閣と外交方針が非常に基調が違っておるというわけではないわけでございます。
  191. 安宅常彦

    ○安宅委員 非常に注目しておることがもう一つあります。椎名さんが三木内閣の船出に当たってというのですか、何か新聞に出していますね。あなたを戒めたのでしょうかね、あれは。何か日本じゅうがデタントぼけしているのじゃないか、私はそうは思わないと。これは彼はそう言っています。そしてこの間、韓国に行って来て、とんでもないことまで、あの人、メモや何かで約束してきているのですが、その後の記者会見でも、はてこの人は一体どういうことを考えているのだろうか、世界の大きな情勢の流れの中で——私はいま緊張緩和にあるなんて思っていません。第三世界の動きなどを見てみても、いままでの秩序というものは、先進資本主義国の帝国主義のそういうものが栄耀栄華をきわめる、そういう秩序であるから、われわれの発言権というのは正しい方向に持っていかなければならない、われわれの民族自決権というものをどうしてくれるんだ、われわれの貧困というものは一体どうしてくれるんだ、人口に至るまで、全部発展途上国が文句をつけるという時代ですから、決してそんな緊張緩和であるとかなんかという、一般に言われているようなそういうものではないと思う。ただし、これは人間の英知というものによって、新しい公平な世界の秩序ができる前提の時代、歴史の大きな転換期ではないか、私はそう思っているのです。  そういうことから言いますと、どうしても椎名さんはあなたの任命権者ですからね。総理、そうでしょう。だから、あの論文みたいなのに励まされちゃって、非常に進歩的だと言われておった三木さんが、最近何か財界の話をされると、きっと目をむく、安保条約ということになると、きっと目をむく。韓国ということになると、施政方針の中にたった一カ所も出てこない。こういう態度というのは、どうもあなたはがんじがらめに縛られているのじゃないかということを、私は強く感じているのです。そういうことはありませんか。
  192. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 縛られているというのは、どういうことをおっしゃるのか知りませんが、私はやはり国の国益のためによかれかしという外交をやるわけでございまして、そういうことで、何か外部から強制されて、心にないようなことをいたす所存はございません。
  193. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、一つ一つ聞いていきましょう。  あなたが、パレスチナ人民の権利の問題について、施政方針の相当早いところで言っていますよね。「一九六七年の紛争において占領された領土からのイスラエル軍の撤退を求めています。」これは二四二号の問題を言っているのですが、「同時にまた、イスラエルを含む」云々ということを言って、「ただ、その決議は」——二四二号はですね。「パレスチナ人に関しては、難民にしか触れておりません。パレスチナ人の正当な権利は、国連憲章に基づき承認さるべきものであります。」こう言っていますね。この正当な権利の一番大きな問題は、民族自決の権利であり、民族政権を樹立することだと私は思います。  この間の国連総会で、田中内閣のときには、パレスチナを代表するPLOを国連に招聘する決議には日本は賛成しました。しかし、あとの二つの決議については、これは棄権をしてしまったわけです。これはどういう決議か、あなたは知っていると思いますから、きょうは時間の関係で言いません。そういうことを含めて、今度は国連総会で賛成をなさる、こういう意味ですか。
  194. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国連憲章に従って、パレスチナ人の正当な権利が承認されなければならぬというのは、これは御指摘のような民族自決の権利であります。  そこで、昨年の国連総会のことを言われておるのですが、日本の政府の立場は、一九六七年の国連安保理事会の決議二四二号、これがやはり中東問題を解決する公正な一つの決議だということを考えて、日本は支持しておるわけですね。     〔委員長退席、湊委員長代理着席〕  それ以後は、中東諸国の生存権というものを認めるということが一つある。一方においては、いま指摘されたように、イスラエルの軍事力による占領は撤退しなければならぬ、こういうことでございます。そういうことで、昨年の国連総会の決議は、二四二号を踏まえての決議でないわけですよ、中東諸国の生存権というものに触れてないわけですから。したがって、日本がそれでは均衡を失するのではないかというので、棄権をしたわけで、日本は、パレスチナ人が民族自決という国連憲章における権限は当然に回復されなければならぬという考えですけれども、一方において、中東諸国における生存権も尊重するという二四二の決議というものは、きわめて公正な、均衡のとれた決議だと思う。それを踏まえての決議でなかったから、日本は棄権をしたわけでございまして、そのことがパレスチナ人の正当な権利、これに対して権利を尊重するということにならぬことは、私の施政方針演説がそれの回答をなすものである、というふうに御承知を願いたいのでございます。
  195. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうしますと、長々言いましたけれども、田中内閣のときとは同じことでございます。こういうことですな。  これは、国連の二四二号を踏まえている決議ではなかったというのは、あなたの判断。正式招聘も、すべてあの三つの決議が、オブザーバーを入れるということ、民族自決権の問題も、全部それを踏まえて、イスラエルの民族の権利というものを承認するということが、国連の総意としてもうすでにきまっていることなんだ。決議が通っていることなんだ。あなた、今度日本は、国連の、非常任でありますけれども理事国ですね。そういうときに重要な役割りを果たさなければなりません、いままでと違って。いままではアメリカのしりにくっついて、懸命に、通さないための運動を徹底的にやった。そういう時代ではない時代になってきているのです、このパレスチナの問題に関する限り。そうすると、あなたの言ったことは、あのゼスチュアたっぷりの施政方針演説をぶったけれども、あれは、何だ変わったんだなと思っていたら、前内閣と同じだという理屈になると思います、いまの答弁で。どうですか。
  196. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政府は、パレスチナ人の正当な権利は尊重されなければならぬ、国連憲章に従って。これは、政府として公式にああいう形で言ったのは、私は初めてだと思うのですね、政府の態度としては。だから、そのことは、田中内閣の当時においても、二四二号というものが中東の平和を回復するための基調であるという基調は、田中内閣も私の内閣も変わらぬですよ。このことは変わらない。パレスチナ人の正当な権利の尊重ということは、それは国連の、あれは一九七一年ですか、その決議によってあることは事実ですが、政府が公式に発言をああいう場合でした最初であると私は思っております。
  197. 安宅常彦

    ○安宅委員 総会に出席させるという決議には賛成して、そして民族自決の問題とオブザーバー派遣という決議案、これは通ったのですよ。朝鮮あたりと違う。通った。あなた方は棄権した。そうした場合に、このパレスチナ人の民族自決の基本にのっとってできた政府を、日本は承認するはずだ。国連外交ですから、幾ら棄権したとしても。そういう考え方なのか。おれたちはあのとき棄権したから、承認するわけにはいかない。しかもあなたはさっき重要な発言をしている。二四二号の精神に基づいた決議ではなかったからという、重要な発言をしていますね。そんなふうに受け取っているのですか。じゃ、あんなゼスチュアたっぷりのは、結局あなたは演説だけはうまいけれども、実行はだめだという、それと同じことになる。どうですか。——いや総理総理
  198. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういうことになるでしょうがね……(安宅委員「いや、認めるか認めないのか、あなたは、どうです」と呼ぶ)それはやはり当然に平和的に話し合いを関係諸国として、そうしてそういうパレスチナ人の権利が回復されるようになってくれば、それは当然に認めることは当然でありませんか。これは当然のことです。
  199. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、具体的にPLOがその代表者だということを認知したわけですから、その代表と交渉する気はありますか。用意はありますか。——総理総理です。
  200. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総理大臣の施政方針演説において、PLOは、ただ難民の問題としてだけ取り扱ったのでは適当でないということを、わが国の総理大臣が公の場で、施政方針のそれも最初の方で言われたということが、私は非常に意味があるというふうに考えています。このことは、この問題についての今後のわが国の対処する方針について、一つの示唆を投げかけておるというふうに、恐らく外国がとるであろう、また、それだけのものであったと私は考えているわけであります。
  201. 安宅常彦

    ○安宅委員 アラブの諸国はそうではありません。宮澤さんはそうおっしゃるけれども、二つの重要な決議に棄権をしたということについて、失望を感じておるのですよ。石油が欲しいときだけはちょろちょろ来やがって、そしてキッシンジャーあたりからネジを巻かれて、同じじゃないか、こういうふうになっているのですよ。  示唆に富んだことだということは、含みの多い言葉ですね、外務大臣。では三木さんに、はっきりあなたにも聞きますけれども、この正式に認められた代表と、日本政府は国交樹立の問題で話し合う用意があるか、こう聞いておるのです。示唆ばっかり言ったらだめです。
  202. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこでもう一度、繰り返しがありましたので、その点を申し上げますが、まず二つの決議——棄権をいたしましたその片方の方の決議は、つまり二四二号との関連において整合性がどうであろうか。そのPLOに地位を認めるということは、それでよろしいのでありますけれども、非常にそれを深入りまして、PLOの地域がこうである、ああであるというところまで書いておりますので、そうなりますと、今度は二四二号に言うところのもともとのイスラエルの立場がどうなるかということの整合性が、実際これはお読みになりましても、はっきりいたしません。ですから、あの際にそれを可決することは適当でなかった。  もう一つの決議は、PLOが、国家ではありませんけれども、自分の存在に非常に関係のある大事な問題が議論されるときに、そこへ出て審議に加わることは適当であるというのが、わが国の立場でありますが、それ以外の問題、全く自分に関係のない問題について出てきて審議に参画をするということになれば、国連の加盟国と加盟国でないものとの区別は崩れてしまいますから、そこまで言うことは、この際適当ではない、国連の慣例でもない、こういう意味であります。
  203. 安宅常彦

    ○安宅委員 それは、国連に加盟していようが加盟していまいが——では、国連に加盟している国だって、アルバニアなんというのはまだ日本は承認していませんね。そんなのは一般論でごまかそうといったって、あなたが、どうせ外交は素人だから、ごまかしてやれといったって、だめです。私が言うのは、民族主権というものが、このPLOを代表として、そしてパレスチナ地域に生まれることは当然だというふうに考えておるのか。生まれた場合には交渉する用意があるか。ただ、用意があるかないか。それから民族自決権といった正当なる権利というのは、民族政権ができることが一番大きな権利だと思いますね。だから、そのことについては賛成なのか。二つだけ、イエスか、ノーかでいいですよ。時間がたってかなわないから。——いや、総理総理
  204. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでありますから、国連憲章のもと認められておる基本的な権利は、自決権と平等権である、言われますとおりでございます。したがってわが国は、PLOの自決権と平等権が認められる形でなければ、終局的には中東の紛争は解決をしないであろう、こういう立場をとっておることは、おっしゃるとおりであります。
  205. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから、話し合う用意はない、こういうことですな。そういう政権とは話し合う用意がない、いずれにしても、整合性というものが解決できない限り。
  206. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうではありませんで……。
  207. 安宅常彦

    ○安宅委員 それはあなたの考えでしょう。イスラエルとの関係で言っているのでしょう。
  208. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうではございませんで、この中東紛争が終局的に解決される姿というものは、少なくともこれだけのことを含まなければならない。すなわち、PLOに対して平等権と自決権が認められるということ。それからイスラエルに対して生存権が認められるということ。それは何を意味するかと言えば、結局、二四二号と先ほど安宅先生の言われました決議が、整合性を持った形で実現をする、そういう形でなければ、中東問題というものは解決しないであろうというのが、わが国の考え方である。
  209. 安宅常彦

    ○安宅委員 それは官僚答弁というのです。官僚答弁。それは外務省の何とか局長答弁ですよ。政治家というのはそうではないのです。特にあなたは官僚上がりでも何でもないから聞くけれども、外交の基本というのは、そういうものじゃないです。そんなごまかし答弁ではだめですよ。結局同じだったということなんです。二四二号というのは何かといったら、イスラエルが占領したところから撤退しろというのがまず基本でしょう。撤退したあとで小さくなってイスラエルが生存できなくなったら大変だから、こっちもだめだ、なんという理屈にはならないということをぼくは言っているのですよ。あなた方は、はて、前の国連総会のときと同じ態度を、今度の国連総会で決議が通ったあとでも、日本はずっと持続するのだなということを私は感じました。そうではないのですか。違うのですか。
  210. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは私ども厳しく、イスラエルはやはり占領地から速やかに撤退しなければならぬということは、もう何回も繰り返し私は述べておりますし、アラブ諸国を昨年の暮れに回った後においても、わざわざアメリカに行ってキッシンジャーと会ったのも、二四二号による中東の和平の促進というために、私はアメリカへ行ったわけですから、したがって、この二四二号に従って中東の和平が達成され、そしてパレスチナ人の正当な権利は、関係諸国が話し合ってこの問題を円満に解決されることを、心から願っておることには変わりはないわけでございます。
  211. 安宅常彦

    ○安宅委員 もう結論出ません、あなたの方のあれでは。ただ、きょう大変示唆に富んだと言われた。あなた方も示唆だと言うならば、きょうの毎日新聞で、PLOと交渉せよ、イスラエルはシオニストの行き過ぎたプロパガンダをいまやっている、けしからぬと、初めてイスラエル批判が議会筋でも言論界でも出たという、これも示唆に富んだ報道が載っていますから、間違いないような方針をとってください。パレスチナ人民のところのあなたの演説を聞いていたら、こんなことをしてゼスチュアたっぷりでしたよ。あれはうそだったということ、これだけは確認します。ただ、総理大臣がそういう演説をぶつのは示唆に富んだことだと宮澤大臣が言いましたけれども、そんなごまかしで、緊迫した、非常に重要な資源外交もやらなければならない日本として、そんなかっこうだけのもので通るか通らないかは、あなた方の責任になるだろう、これだけ言っておきます。  それからもう一つ、なぜ朝鮮半島の問題について一言も触れなかったのでしょうか。
  212. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 朝鮮の問題にいって、韓国の問題は、韓国を初めアジア、太平洋地域の諸国との善隣友好ということに触れておりますが、とにかく限られた施政方針演説でありますから、そう何もかも触れるというわけにはいきませんで、そういうことに相なったわけでございます。
  213. 安宅常彦

    ○安宅委員 あなたの施政方針演説の中には、こういうふうなことを言っているのです。「こうした重要な立場にあるわが国が、善隣友好を一層推進することが、アジア、太平洋地域の安定に貢献するゆえんであると信じます。」あらゆる国となら、なぜ朝鮮民主主義人民共和国だけ残しておくのですか。一番近い国でしょう。そういうことと、それから宮澤さんの外交方針演説を見てみますと、二ページの後段で「わが国は、世界の平和と安定の中で初めてみずからの生存を確保することができるのであります。したがいまして、わが国は、第一に、日米関係を基軸にしつつ、体制を異にする諸国をも含め、世界各地域の諸国との友好関係を強化する多角的な外交をさらに推進する必要があります。」大変いいことが書いてあるのだけれども、さっぱりそのとおりいってないでしょう。韓国だけは一生懸命だけれども。金大中事件が起きようと、朴さんのおかあちゃんがやられようと、謝り通しだ。そういうことをやりながら、一方だけに加担して、そして世界の安定した平和なんて保たれるだろうかということに、あなた方はお気づきにならないのかどうか。これは重要なことです。
  214. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 朝鮮半島の安全と平和というものは、日本が一番関心を持っておることでございますから、それはでき得べくんば施政方針演説なんかにも触れておくことがよろしいのでしょうけれども、いま言ったような限られた施政方針演説ですから、関心のあることにすべて触れることはできなかったということで、関心がないから抜いたわけではないわけでございます。  また安宅さん、先ほどのパレスチナ人に対しての政府の立場がごまかしであるということは、私は少し酷に過ぎると思うんですよ。パレスチナ人が国連憲章にいう正当な権利を回復されて、そうして関係諸国とも話し合って、パレスチナ人の安住の地ができることを本当に望んでいるんですよ。だから、ごまかしでパレスチナ人に対しておるということの御批評は、われわれの意図からして少し酷に過ぎる。私は、パレスチナ人の難民のキャンプも見まして、ここで国会でごまかしだという批評を受けることは、私の本意でない。パレスチナ人というものに対して非常に同情の気持ちで、パレスチナが将来話し合いによって解決されて、安住の地ができることを心から望んでおるということは、繰り返して言っておかなければならぬことだと思う。
  215. 安宅常彦

    ○安宅委員 時間がないから触れません。宮澤さんとあなたの言うのと、大変食い違いがあります。答弁についてあっちは非常に慎重で、あなたは外務大臣と食い違った答弁をしているんですよ。そこを覚えておいてください。私はそれ以上言いません。そんなことを弁明したって、何にもならない。  それで、朝鮮民主主義人民共和国のところは、そこまで手が回らなかった。一番先に手が回るのは、本当はそこなんです。パレスチナのことを言うより、ここが問題なんだ。それをあなたは意識的に抜いた。両方とも抜いていますからね。これは重要なことですよ。そして、わが党の阿具根さんが参議院で質問なさったことについて、あなたは何と言っているか。朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立は、まだ時期に達していない。そしてまた、朝鮮の決議に対して国連総会で反対したのは、国連軍という名を冠したアメリカ軍が撤退することによって、これにかわる保障がなかったからだ、こういう答弁をしています。たとえば朝鮮民主主義人民共和国の代表が、そこでは、かわるべき案というものを出しています。李代表が言っていますね。要旨は大体、米軍撤退により生ずる問題については、米国といつでも話し合う用意がある。二番目は、撤退後の南北間の武力紛争防止のため、休戦協定、軍事休戦委員会にかわり、南北合同軍事委員会を設置する。第三番目に、それでも心配ならば、第三者機関の保障が必要ならば、現在の中立監視委員会、スイス、スウェーデン、チェコスロバキア、ポーランドで構成しているものに新しい役割りを与えて、南北間の平和協定の実現まで活動させる。そういう裏打ちがあるのを、あなたは知らなかったのですか。かわるものがなかったから反対した。今度かわるものがあるということになったら、今度は賛成しないことになりますか、どうですか。——総理方針総理方針です。
  216. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの御指摘の点については、実は二十九回総会において採択された朝鮮問題の決議も、ただいま安宅委員の御朗読になりました他の決議と、実体的に、私はそんなに開いておるものではないというふうに考えておるわけであります。つまり、適当な措置及び国連軍司令部解体問題を含む諸問題に関して、適当な機会に当事者と協議をしろというのが成立した決議でございますから、それをお考えくださいますと、二つの決議は、実はそう飛び離れたものではない、こういうふうにも考えられるのではないでしょうか。
  217. 安宅常彦

    ○安宅委員 やはり大した違いはないんですよ。たとえば国連軍というアメリカ軍を撤退することを考慮して云々というのが、朝鮮側の基本ですね。それからアメリカや日本が一生懸命になって賛成してくれといって大騒ぎして歩いたのは何かというと、この中にもちゃんとフランスの修正案や、それからサウジアラビヤでしたかどこかの修正案が織り込まれておって、国連軍解体を含む朝鮮問題の諸局面に検討を加えることを希望するというようなことも入っているし、ほとんど変わりないような意味のとり方だとあなたがおっしゃるならば、私はあえて言いますが、そんなに変わりないならば、最も近い国として、これこそ、少なくとも両方とも棄権するくらいの雅量があったならば、大変アジアの平和、安定のために、日本は寄与をしたということになったのではないか。これは今後はそういう態度で、少なくとも最低——なかなか容易ではない。キッシンジャーににらまれているならばやむを得ない。やむを得なくないけれども、あなた方、そうですよ。手のひらの上で動いていると、私は言わざるを得ないと思うんですが、そういう場合には、毅然たる態度をとれないとするならば、少なくとも片一方に賛成、片一方に反対、こういう態度はとられないようにする意思があるかどうか。これは総理、外交の大方針であります。朝鮮民主主義人民共和国というものとの交際を、今後どういうふうに続けていくかということの基本でありますから、あなたにお伺いいたします。
  218. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこで、もう一つ補足をさせていただくとすれば、結局、一九五三年の板門店の休戦協定の当事者は、御承知のように国連軍でございますから、その当事者がなくなってしまうという状態になれば、後の安全保障をどうするかという問題が残りますので、そこのところを考えなければならないというのが、私どもの言いたいところであるわけであります。
  219. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういうことを言うから、どこまでも時間を食う。時間を食うのはいやだから、断定的に言っておきますが、朝鮮は何と言っておるか。アメリカ政府と協議する用意がある、しかも、直ちに撤退しろという決議案じゃないですよ、あれは。そうでしょう。あなたは、だから違わないと言ったのでしょう。直ちに撤退しろというのだったら、あなたがいま言った議論は非常にいい意見です、あなた方の立場から言うならば。そうじゃいのです。それを考慮してということになっておるんですよ。だからアメリカ軍とも相談する。  大体、韓国なんというのは当事者能力がないんですよ。休戦協定の当事者はどこですか。国連軍というアメリカの軍隊の代表と、あなた方が言う北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国と、中国の義勇軍の司令官と三つでしょうが。韓国なんてどこにも書いてないんですよ、あれは一そこを考えたならば、当然この朝鮮民主主義人民共和国の提案というのは、正当な提案だと思わなければなりません。そんなに違わないのなら、何もそこまでがんばる必要ないじゃないか、これだけ言っておきます。あと議論しようったって、あなた方は時間かせぎに、一生懸命長々とやるつもりらしいから、私はその作戦に乗りません、やる気はないようですから。  だから、率直に言いますけれども、あなたがアメリカさんに答弁したのは間違いであると言っておきますよ。代案がない、かわりがない、保障がない。——保障はあるのです。保障があるんですから、今後こういう問題は、私の意見などを参考にしながら朝鮮問題について対処していきたいぐらいのことは、ここで答弁できないのでしょうか。新しい総理として、世界の大勢を見渡して、そういうことはできませんか。
  220. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安宅さんの意見もいろいろ参考にはいたしますけれども、あなたの言うようにやるというわけにはいきません。しかし、ここでのいろいろ御発言は、今後の外交政策をやっていく場合において、十分参考といたすことは当然でございます。
  221. 安宅常彦

    ○安宅委員 これも前の内閣と同じだということがわかりました。  それでは次に、ソビエトとの関係ですが、これは最初にちょっと聞いておきますが、それによって私の議論が変わるかもしれませんから。これは宮澤さん、あなた堂々と出てください。あなたにお伺いいたしますが、どういうことなんでしょうか、ここは文章が続かないんですよ。総理の施政方針演説の中で、「日ソ間には懸案としての領土問題を解決して」云々と言っていて、「しかしわれわれが、今から三十年後の日ソ関係を展望した場合」と、ここへぼかんと三十年が出てくるんですな。あなた三十年後まで生きているかどうかわからないのに。これはおかしい演説だと思って聞いていました。ただし、いままで三十年あったのだ、ここまで来る間。その対照としての三十年だというふうに理解はいたしますよ。そしてこの交渉の大前提は、領土問題を解決して平和条約を締結する、こう言っているんですね。  ソビエトはいままで、ヤルタ体制というのでしょうか、ヤルタ秘密協定、あるいはポツダム条項もカイロ宣言も全部含めてですけれども、第二次世界大戦前後に決まった国境の秩序というのは絶対に変えないという基本方針を持ってきた国ですね。世界的にもたくさんありますよ。そういうことで、フィンランドを初め、千島だってその一つだと、私はそういうふうに認識をしている。だから、われわれが侵略によって取った千島ではない、これは樺太との交換条約によって正当に、合法的に領土になった千島、全千島をわれわれが返還を受けるのは当然の権利だということを基本にした方針をわれわれは持っている。あなたのほうの吉田さんは、あのとき放棄したということを頭に入れているかどうか知らぬけれども、四島だけを要求している。そういう立場はあります。立場はありますが、領土問題という、ソ連から見たら厳しい問題を、それを相互信頼の増進でありますが、相互信頼のためにまず領土問題を解決しろと言っているんです、あなたは。ここに紙を張っているんですよ。訂正しているのです。すかしてみたら、相互信頼感の増進。そうでなくて、何か不信感の解消と書いてあるのです。不信感の解消をわざわざ直して、そういうふうにしたのは、何かその前の行に、「懸案の北方領土問題は遺憾ながら依然とし未解決であります。」こう書いてある。ソビエトは、しかし未解決とは言っていなかったのです、いままで。福田さんとグロムイコさんがやったときも、未解決だとは言っていない。解決済みだと言っているのです。いろいろないままでの日本の態度もおかしかったし、ソビエトはその秩序をがんとして変えたくないし、そういうことで、いろいろな交渉があるようですけれども。とすれば、この文章を使ったということは、宮澤さん、あなたの交渉も大変激論して、長い間領土の問題でやってきたそうですか、いままでソビエトは、田中さんが行ったときには、領土とは言わなかったけれども、未解決ということばを使っている。あなたが行ったときから、領土は未解決というふうに変わったのだと、私のアンテナに入ってきた。事実ですか。
  222. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一昨年の、当時の田中総理大臣とソ連首脳との会談のコミュニケで、第二次大戦以後の未解決の諸問題を解決するため交渉を継続する、とあったわけでございます。私どもは、諸問題の最も大きなものは領土問題であると、当然に理解をしておりまして、その理解のもとに、今回交渉をいたしました。また現に、交渉のかなり長い時間、一番長い時間は、領土問題について議論をいたしたわけでございます。したがいまして先方も、領土問題が未解決の問題の少なくとも一つである。私どもにとってはほとんど全部であるわけでございますけれども、少なくともそういうことは先方が認めましたから、そのような交渉が行われたもの、かように理解をいたします。
  223. 安宅常彦

    ○安宅委員 つまり、領土は一番大切なことだとあなた方は言う。信頼感の増進のために、その第一歩は領土問題だと日本は言う。その第一歩とされてはかなわないというのがソビエトですよ。まかり間違えば、そこでもうパンクする、こういう状態がいままでの状態。それを今度は、領土は未解決になった、解決済みではないというふうに、あなたは向こうからそういう言質をとってきたのだと言う。私は政府の高官からそういうことを聞いているし、先ほど廊下で会ったときに、まあ大体そういうことでしょうと、あなたは言っておったね。なぜ公式の場でそれを言えないのですか。
  224. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今年はグロムイコ外務大臣が日本に来られて、続いて交渉いたすことでもございます。したがいまして、この交渉は何としてもわが国にとって目的を達しなければならない交渉でございますので、公の席におきましては、ただいま程度のことをお答えさせていただきます。
  225. 安宅常彦

    ○安宅委員 わかりました。結局、領土を含めすべて未解決という表現で、ソビエト側はそういう態度で臨んできたということを確認してよろしゅうございますか。
  226. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 少なくとも解決済みの問題であれば、長時間お互いに議論をするということはなかったはずと存じます。
  227. 安宅常彦

    ○安宅委員 こういうのを、示唆に富んだ表現として、今度こそは受け取っておきましょう。  ただ、私は先ほど言いましたが、相互信頼感の増進のために領土問題を言う。ただ、ソビエトは領土と言ってないですね。ブレジネフの五原則にもあるとおり、国境と言っていますよ。ですから、その辺のことでちぐはぐなことが起きないように、せっかく日ソ共同宣言のときも、社会党は皆さんを支持して、ソビエトと敵対関係をなくするための一種の努力をしたわけでありますから。その後遺症がいままで残っておる。外交権はあなた方にあると主張しておられる現在、やむを得ない。あなた方はやるのでしょう。その場合には、その後遺症というものを正しく解決する方向に行ってもらいたい、こういうことを私は皆さんに要望しておきます。  それで、私はまだ宮澤さんの演説で、どうにも気がかりなところがあります。朝鮮半島ではまだいろいろと緊張が続いているというところがございますね。そして今度、インドシナのところを見たら「インドシナ各国において、政治的に対立している双方当事者が、外部からの干渉なしに、平和的話し合いにより、和解を実現することが可能になると信じます。」あそこは臨時革命政府もあり、いま戦火の火花を散らしているのです。カンボジアでもそうでしょう。ラオスでもいま実際に鉄砲の撃ち合いが行われている。そういうところを、あなたは外部からの干渉なしに、話し合いによって和解を実現することが可能だという表現をしている。そうして、戦火も何も起きていない朝鮮半島に対しては、「潜在的な不安定要因を抱えているのが現状」だ、だから「わが国としては、かかるアジア地域の情勢にかんがみ、今後とも」云々というふうに書いてあって、ここは外部からの干渉なしに話し合いで解決しないと見ているのですか。これは大変ちぐはぐなんですね。そうじゃないんですか。どうなんですか。両方ともできると思っているのですか。
  228. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 現実的に戦闘行為が行われている、いないということの判断では、もう両者は比べものになりませんで、朝鮮半島においては現にそのようなことはほとんどないと申してよろしいと思いますし、インドシナ半島においては現実に戦闘行為があるわけでございます。その点は、もう御認識はおっしゃるとおりでありますが、インドシナ半島について申しましたのは、これは和解と書きましたのは、結局パリ平和交渉が行われたわけでございますから、あの線でもって両方が話し合いをして、あの約束を守れば戦火というものがおさまるはずではないか、ぜひそうありたいということを言っておるのですし、朝鮮半島については、もう少し実は先のことを申しておるわけで、つまり、両者が統一を目指して話し合いをすでに始めたわけでございますから、これは、もう戦闘状態とかなんとかいうことより、はるかに事態は平和に近い状態になっている、ただ、話し合いによって行く行く統一を図ろうという非常に大きな問題がまだ片づいていない。こういうことで、段階的にはもちろん非常に両方が違いますことは、おっしゃるとおりでございます。
  229. 安宅常彦

    ○安宅委員 大変ちぐはぐですよ、宮澤さん、あなたの演説は。そういう言い方は間違いだと思うんですよ。たとえばパリ会談というのは、アメリカが出兵をしておって撤退をせざるを得なくなり、そのためにアメリカの都合によって、もっとはっきり言うならば、ベトナム民主共和国と南ベトナムの政権と話し合うという条件でわれわれは撤退せざるを得ないということで、パリ会談というのは始まった。だから、話し合いをしているんでしょう。アメリカがいなくなったところでやろう、アメリカが干渉すればまた炎が上がる、現実に干渉している、そういう状態というものに、あなたは目を覆ってはいけませんよ。  朝鮮の場合はどうか。三木さんに聞きたいのですが、朝鮮の場合には、韓国に対しては莫大な経済援助をし、いろいろなところで便宜を図っているけれども、朝鮮民主主義人民共和国に対しては、敵視政策を徹底的にやっておいて、そして話し合いをせよと言ったって、それはできっこない。日本が本当に善隣友好を考えるならば、体制の違った国々ともと、外務大臣も皆言っておるのですから、あなたは、そういう国々と平等な交際をするぐらいの度胸はないのですか、どうですか。そうすると、本当にいま言うようなちぐはぐな表現にならなくなってしまうんですよ、この演説は両方とも。あなたどう思います。
  230. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 各国には、やはり各国とのいままでの経過がございますから、韓国に対しては日本は正式に外交関係を持っている、また北朝鮮に対しては、まだそこまで承認するというところまで成熟していない、こういうことで、外交関係を持っていないわけでございます。そういういろいろなその国々の事情、日本との関係というものによって、交流の間に差ができてくることは、これはやむを得ないことでございます。
  231. 安宅常彦

    ○安宅委員 たとえば、ベトナム民主共和国なんというのは、あなた方は承認する気なんかさらさらなかったのだ。アメリカがやったと言ったら、オウムのようについていって、北ベトナム、北ベトナムと言ったら、今度はベトナム民主共和国直ちに承認、アメリカのけつをあなた方は追っかけているだけです。だから、そういうことを言うのです。中国の場合も、自民党の政府はそうでした。だから、三木さんが総理大臣になったのだから、今度は違うだろうという、われわれは期待を持っておったわけね。まあクロス承認なんということを、キッシンジャーが言ったとか言わないとか言われておりますが、そんなことは関係なしに、自主外交というものは、体制の違った国とも善隣友好を続けていかなければならないとあなたが施政方針でぶったならば、最も近い朝鮮民主主義人民共和国をなぜたった一つ残しておくのか。これは国民の常識ですよ。そうじゃないですか。それを私は言っているのです。堂々と日本は先に国交正常化の交渉をすべきだと思う。そして両方を仲よくして、同じように日本がやったとするならば、日本の影響力というものはありますね。ないなんて言ったって、ありますよ。だから、そのときには初めて、一緒になれないならば連合——何といいますか、第一段階として連邦制にするとか、民族会議を開くとか、いろいろなことが、そこから出てくると思うんですよ。  私は、ここであなたにもうこれ以上質問したって、機が熟していない、それは十年も二十年も言ってきたこと。田中さんも言ったこと。大平さんも福田さんも、皆同じように言ったこと。しかし、あなたが言う場合、質が違うと思うの。なぜか。みんなここでまで、人事の交流やら、スポーツの交流やら、芸術の交流やら、経済の交流やらを無から積み重ねてきたんですよ。それはどういう人たちがやったのですか。あなたが政治姿勢として批判してやまなかったこれらの人々が、実際手がけてきたんですよ。福田さんが何か書簡を持っていってみたり、あるいはベトナムにアヒル一羽なんて言われながらやってみたり、いろいろな努力をしてきた。大平さんは大平さんで、タオルのプラントだけれども、プラントの輸銀使用ということを踏み切って、あなたが直前にオーケーになった。そういう先人がそういう努力をしてきた。もっと率直に言うならば、私は、自民党の中の内政干渉みたいなことを言っちゃ悪いけれども、田中さんのグループと言われている人々が、官房長官や副長官やいろいろな地位についたときに、これらの人々が必死になって、そういう冷たい壁を切り開くために努力をしたのです。そして、それをさせるために、あなたを師表として仰いでいるあなた方のグループの皆さんが、必死になって先頭に立って闘い抜いてきたんですよ、それを実現するために。あなたは両方とも捨てるつもりですか。総理大臣になったら、一将功成って万卒枯るですか。そんなばかな話はないでしょう。そういうことをやってきた人の積み上げを、またさらに一歩前進させるのがあなたの任務ではないですか。いままでのとおり当分の間同じだ、こんな外交方針では、やはり前と同じだったということを私は言わざるを得ない。これは演説だけであって、中身は空だ。これだけで終わり、あとはもう正体が明らかになりましたから。だから、時期が熟しているとか熟していないとかは別、それはあなたの個人的な判断。みんなそういう私の言い分を聞いて、本当にそうだなと思う人がたくさんいるはず。  あなたが環境庁長官のときに、長官室で私に朝鮮の現実について、安宅君、現実は認めなければならない、東西ドイツ制の方式を当分の間やらざるを得ないのじゃないか、二つとも認めなければならないのじゃないか、その上に立って両方が話し合うという情勢に持っていくのが正しいと思うと、あなたは切々と私に訴えられた。あの長官の部屋で演説をしたでしょう。総理になったら変わったのですか。
  232. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま両国との関係について違いがあるということを申したわけですが、これは北朝鮮との間には、いままでいろいろと積み上げてまいりました。この積み上げをさらに重ねていきたい。しかし安宅さんのお話は、直ちに承認せよというお話ですが、そこまで成熟はしていない。したがって私どもの願いは、やはり朝鮮民族の悲願は南北の統一にあると思うのです。これはもうそうだという前提に立って、できるだけわれわれはその統一に対して邪魔になるようなことはしないようにせなければいかぬとは考えておりますが、いまここで承認ということについては、まだわれわれの判断はそこまで成熟をしていない。しかし、今後北朝鮮との関係というものに対して、積み上げていこうという考え方に変わりはないわけでございます。また、一気に朝鮮半島における両国が平和的な統一ができるまでの過渡的な措置として、いろいろな方法というものはやはり考えられないであろうかということで、西独の方式ということも一つの参考になるでしょうが、これはしかし北朝鮮の方はいま賛成をしていないわけでございますから、しかし何らかやはりそのことを、平和的な統一を目指して、そうして何かそこに至るまでの過渡的な措置で、その前向きなことに背かないでできないか、何か過渡的な措置はできないかということに、いろいろ気を配ることは当然のことだと思います。
  233. 安宅常彦

    ○安宅委員 先ほど私、ソビエトのところでも述べるのをちょっと省略したのですけれども、相互信頼感の増進だと、そうして領土問題の解決、平和条約を結ぶ、こうした前向きの発想で、あなた、そう思っているらしい。宮澤さんも努力しているようだが、そうなるかもしれない。しかし、そういう発想で「領土問題に取り組むことができないかと考えております。」というのが施政方針演説なんですよ。する、とかという断定じゃないのです、あなたのは何でも。できないかと考えている、いまでもできないかと考えている。考えてばかりいたって、ロダンの何かじゃあるまいし、あなた、そんな総理大臣ないですよ。だから、それははっきり言わなければならない。  では、私は聞きますよ。いままで経済レベル、いろいろなことで、政治家という人も経済代表団の中で、たとえば中国の場合に経済代表団の中に高碕達之助さんが入っていったり、それからあなたの尊敬する松村さんが行っていたりしたでしょう。それと同じように、朝鮮からも相当の政治家が来ていますよね、経済代表団の中に。ところが、そういう実態があるにもかかわらず、正面切っての政治家の交流、それはいまのところないのです。それを実現することに努力をするぐらいのことは、あなた、前の第一段階として、きょうは、やれますという答弁が出るぐらいのことはないのですかね。それもできませんか。いままでと同じですか。あなたも、日本に代表団が来たときに、非公式に会った人、たくさんいると思いますから。
  234. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安宅さん、できないであろうかということを、非常にあやふやなように言われますが、国際関係というのは相手があるわけですから、こちらが独断的に言うわけには私はいかぬ。できないであろうかということは、外交というものが絶えず何らかの可能性というものを求めて、そうして探求するという態度がまじめな外交の態度であり、むしろ相手の意思も無視して、自分がこうだといって独断することは、安宅さんはその方が非常にはっきりするとおっしゃるのかもしれぬが、国際関係としてはそういう断定はすべきではない。やはりこういうことはできないであろうかという、一つの探求という態度の方が、外交としてはそれはずっとじみちな外交である、こういうふうに考えておりますから、「か」ということを言ったことをいろいろ問題にされることは、私は適当でない。  それから、北朝鮮との関係は、できる限り交流というものはやはり今後も積み重ねていったらいいわけでございますから、いろいろな交流の場合には、外交関係がないわけですから、やはりそのときどきで、これに対して日本が判断をするということで、したがって、できるだけそういう交流を重ねていきたいという意図のもとに、事件ごとに処理していくことが適当であろうと考えております。
  235. 安宅常彦

    ○安宅委員 いままでは経済交流からは一歩も出なかったが、政治交流の場合でも、そのケースケースによっては考えていかなければならない、やる、こういうことの答弁だと承ってよろしゅうございますね。はっきりしてください。うなずいたら、議事録に載らないです。
  236. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 人間の交流についても、具体的な問題ごとに……(安宅委員政治家の交流ですよ、政治家レベルの交流」と呼ぶ)政治という、特にアクセントをつけなくても、人間の交流の中に、政治も入れば、芸術家も入れば、経済人も入るということでございます。
  237. 安宅常彦

    ○安宅委員 なかなか、この人は弁論家だけあって、上手で、それは三木さん、私は率直に申し上げますけれども、朝鮮側がどう考えておるかという話が出ましたから言いますけれども、あなたの党の宇都宮さんが金日成と会ったときでも、日韓条約あったっていいじゃないか、現実の問題だから、私どもは何も言うことはない、日本が独自で、自主的な立場で——キッシンジャーからどう言われたからこうするとかなんとかでなくて、日本が本当に望むならば、私どもはそういうものはあってもいいから、少なくとも南と同じくらいの交際をしてくれたっていいじゃないですか、こういうことを言っているということを、宇都宮さんがあなたに報告しているはずですね。そういうことを考えると、何か向こうは、統一するまで承認してもらわぬでも結構だなんて言っているみたいに考える論議とはまた違う。ただしかし、ソビエトと中国が韓国を承認し、日本とアメリカが北を承認しなんという、そういうのは自主的な日本の外交じゃありませんから、それにくみすることは私は絶対反対ですよ。そういうことを向こうが言っているということを、もう少し、自民党の中で言うならば、久野忠治さんだって議員連盟の団長として行っているし、いろいろ情報が入っておる。あるいは新聞記者の主筆の方々とか編集局長とか、たくさん行っておりますから、これらの人人の意見をよく聞いて、そうして政治家レベルの——そういうことはいま一方的ですから。日本の代表団は何回も行っているが、向こうからは、日本の政府は許可したためしがない。いまの答弁で、その中身によっては、その状況によっては、私ども入れても結構ですとおっしゃったのですから、どうかひとつそういうことをもう少し前向きの、これこそ前向きの姿勢で検討していただきたいと思いますが、どうですか。
  238. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 われわれ日本としても、朝鮮半島の動向というものに対しては非常な関心を持っておるわけです。ここの平和と安全が確保されるということは、日本に対して非常に大きな影響を持つわけですから、われわれが外交を行う場合において、朝鮮半島の平和と安定を今日より一層もたらすのには何かいい方法がないかということを絶えず頭に描いておるということだけは、御理解を願っておきたいと思います。
  239. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういうことを含めて、政治家レベルの相互交流も、それはいままではゼロだったけれども、今度はケースケースで、日本に入れていいという状態が出てくるということをあなたおっしゃったのですから、非常に結構な話だと思います。そういう状態の中で、そうでしょう、ごまかしたのですか。人間は皆、政治家を含むと言ったのです。あなたは首を振っているけれども、どっちなんです。そういうごまかしはしないでくださいよ。私の意見でいいのでしょう。いまの確認でいいのでしょう。
  240. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 人間の交流に対しては、今後ともやはり積み重ねていきたい、そうして北朝鮮との関係というものは、従来の上に重ねていきたいという考えでございます。
  241. 安宅常彦

    ○安宅委員 この問題は、いままで朝鮮との関係があり、いろいろ政府の立場を考慮して、私の質問は、そういうときには、まあ言うならば詰めないで、すっと次の問題に入りました。しかし、情勢が変わっています。あなたは先ほど、議事録にも載っておりますが、政治家レベルの交流も、ケースによっては当然だということをはっきり言っているのです。詰めていくと、だんだん鉄がコンニャクになったり、コンニャクが豆腐になったみたいに変わっていくから、私は心配で仕方がない。いまうなずいておりますが、そういう議事録に残ったことは認めますね。
  242. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 人間の交流を重ねていく。その中には、政治家もあるし、実業家もあろうし、経済人もあろうし、芸術家もあろうし、それはその具体的なケースごとに判断をするということを言っているわけです。
  243. 安宅常彦

    ○安宅委員 くどいようですが、いままでは政治家レベルの交流はなかったが、今度はそういうものを含めて考慮する、という意味に受け取ってよろしゅうございますな。
  244. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 具体的な問題が起こった場合に、日本は判断をする。
  245. 安宅常彦

    ○安宅委員 少なくとも、いままでは判断もしないで、政治家レベルの交流というものは初めからけ飛ばしておいたけれども、今度は違うんだというふうに受け取ってよろしゅうございますね。
  246. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 違うとは私も思いませんが、とにかくその具体的なケースごとに、日本は判断をいたしますと、こう言っておるのです。
  247. 安宅常彦

    ○安宅委員 政治家の場合でも、ケース・バイ・ケースだということですね。
  248. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 人間の中には、いろいろな階層の者が入ることは当然でございます。
  249. 安宅常彦

    ○安宅委員 これも結局は、私は前と同じこと。先ほど椎名さんに激励されましたねと言った。あなたが環境庁長官のとき言ったこと。それからあなたを師表として仰ぐ人々が必死になって、どんな厚い壁でも何とかしてとがんばった。そしてあなたが、政治的な立場が姿勢がおかしいなどと言って批判してやまなかった人々が政府の要職にあったときに、ここまで積み重ねてきたのだ。同じじゃないですか。だから、あなたはもうアメリカの手のひらの上に乗せられてやっている政治家だ、外交は。ゼスチュアたっぷりの演説は全部空念仏だと私は断定せざるを得ない。政治家も人間の中に入っているなんて、そんな総理答弁がありますか。あたりまえじゃないですか、そんなことは。何です。政治家政治家のレベルの交渉をやります、いままではなかったけれどもと、そういうことをなぜ言えないのですか。時間がたっても、この問題ははっきりしておきましょう、どうですか。そんなごまかしじゃなくて、はっきり言いなさいよ、はっきり。
  250. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ごまかしじゃないのですよ。人間の交流という中には、政治家も実業家も芸術家も含まれるのでございますと、こう言っているのですから、ごまかしではございません。
  251. 安宅常彦

    ○安宅委員 いままでの政府の方針は、人間の中には政治家が入っていなかったのです。ようございますね。だが、今度はそれを入れたということは変わったのですなと聞いているのですよ。
  252. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 外務大臣がいま実例を挙げて言っておりましたが、列国議会同盟のときには政治家も来ておりますから、まあ従来と方針がすっかり変わったということでないが、人間の交流を重ねておくときに、安宅さんの言われるような、政治家もその中に入るのはもう当然でございますと、こう言っております。
  253. 安宅常彦

    ○安宅委員 わかりました。ただし、IPUは日本が招待したのではありません。それは国際機構そのものが招待して、日本が事務局になっただけの話で、これもまた宮澤さんらしい知恵のつけ方であります。こういうことはだめです。ただ、いま最後の答弁は私は了といたします、議事録には正式に載っておりますから。  それから次に、今度は経済協力の問題に入りましょう。  私は経済協力の問題で言うならば、日本の経済協力というのは、どうも輸出振興のため、あるいは自国の利益のため、自国の資本の利益のため、そういうところに中心をいままで置かれてきたのではないか、こういうふうに考えておりますが、これはやはり質的に転換しなければならないと、あなたは言っています。やはりいままでと違った意味で、質的に転換するという意味は、そういうものではなくて、相手の国が自立経済を達成できるような、そういう海外経済協力をしなければならない、こういう意味でこの施政方針演説はやられたのか、それを聞いておきたい。
  254. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、私はやはり海外経済協力というものは、日本の貿易を伸ばすためであるとか、一会社のためというものになされるのではなくして、その海外経済協力によって、その国の経済的基盤を強固にして、自立経済達成に対して協力すべきものであるということをかたく信じております。
  255. 安宅常彦

    ○安宅委員 この間こういうことがありました。日本社会党は、海外経済協力実態についていろいろ勉強したいということで、海外経済協力基金の総裁を呼んで講師になっていただきまして、私は生徒になって伺いましたよ。そうしたら、いみじくもこの方はそう言っています。海外経済協力は一体なぜやるのか、アメリカの場合、イギリスの場合、フランスの例、カナダなどは人道的な問題でやっているようだ、日本は輸出振興のためにやっているというきらいがあると、具体的にいろいろ例を述べて、ずっと言っています。ですから歴代の内閣が、そういうことではない、互恵平等のやり方でやったんだなんと言ったって、総裁が言っているのだから世話ない話で、あなた方がそう言ったって、総裁は私らにそういう講義をしているのです。ちゃんと私はノートをとってあります。そういうことを改めるということだと理解してよろしゅうございますか、信念は別として。
  256. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういう海外経済協力一つ日本の原則に反するようなことがあったら、改善をいたすことは当然のことでございます。
  257. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは海外経済協力基金の総裁に聞きますけれども、たとえば、そういう理念でやっても、マーシャルプランのようにヨーロッパが立ち上がることができた、これは経済力の問題もあるだろうし、教育の問題もあるだろうし、こういう話をなさいました。ブラジルなんかは、そういう意味で非常に成功した例だと私は思っている。しかし、国民所得、GNPがある程度のライン以下の国々は、そこまで行っていないような気がしてならない。だから、なかなか復興しない。どろ沼に金をつぎ込むようなものだ。だから、私ら非常に考えさせられるところがある。しかし、総裁が言っていることは、私心が全然ないかといったら、やはり資源の問題もあったり、あるいは日本の国際的な立場で、これらの国々をつなぎとめておきたいというような気持ち、こういうものはないとは言えない、そういうことまで言っていますよ。こういうことは、ひとつ総理から総裁に対していろいろ注意をしておいていただきたいと思いますが、総裁どうですか、そういうことについて、今後どうするつもりですか。
  258. 大来佐武郎

    ○大来参考人 私、先日、社会党政策審議会で、経済協力問題一般についてのお話をするようにという御依頼を受けまして、申し上げたわけでございますが、先ほどのなぜ援助をするかという問題点につきましては、日本の経済協力にいろいろな面が歴史的にもあり、また現在でもいろいろな面が含まれておるという、五つぐらいの背景を申し上げたわけでございまして、その中で、この輸出促進という点は、現在むしろだんだんその比重が下がっている方だというふうに申し上げたわけでございます。
  259. 安宅常彦

    ○安宅委員 そのとおりですよ。そのとおり下がってきたけれども、GNPの何%とか、利率の問題とか、われわれソフトな方を受け持っている経済協力基金としては、非常に誇りを持っていま一生懸命やっているところだ、しかしドイツの例やなんかもある、本当に援助をされた国が喜ぶような方式というものはもっとあるのじゃないかと思う、しかしそれに近づけようと思って努力しています、ただやはり私心がないとは言えない、資源の問題とか、引きつけておく問題とか、いろいろあるのですよ実は、という話なんです。だから、この問題については、今度あとで……。  もっと重大なことは、政府の命令で、交換公文に載ったもので、外務省の決定したものですね、それをやるものと、一般案件と言って、海外に進出しているわが国の商社、企業、こういうものに貸し付けする分が一五%ほどあります。これは非常に問題の多い融資だと私どもは思っています。日本としては大変いいことだと思っているのか知らぬけれども、多国籍企業みたいになっている、そういうもの、あるいは形態がそうでなくても、事実上向こうの経済権を握っているもの、これに対して、会社の運営がうまく行くように、進出企業がうまく行くようにというので、見境なくこれに、わが国の企業だからといって融資をするなんということがあったならば大変なことになる。こういう例がたくさんあります。だから、私はきょうはこれは述べません。いつかの機会にやりたいと思います。  ただ、ここで一つ決定的なことを、時間がありませんから言っておきますが、この問題に関連して、外務省経済協力局が発行した「韓国第三次経済開発五カ年計画調査団報告書」というものがあります。この報告書の第一ページから非常におもしろいことが書いてあるのであります。ここの結論的な部分を言いますが、韓国の経済状態なんぞをずっと俯撤した後、最後にこういうことを書いてある。「これらはいずれも長期的にみるならば韓国の経済開発の上で有益な役割をになうものと考えられるが、今の韓国の限られた投資財源の制約下では、少くとも五年位の期間でみる限りでは、これらに向ける資金をもう少し農業や輸出に直結する中小企業の整備にふりむける方が賢明ではないか、というのがわれわれの率直な印象である。さらに一言韓国経済について苦言を呈するならば、経済問題に過度なまでに経済外的要素が作用している面が見受けられ」——非常に意味深長な言葉でしょう。経済問題に経済外要素が作用している、過度なまでに、です。そうしてそれを受けて、「その点がわれわれにとって気がかりであった。輸入外貨割当て、商業借款供与枠を受けるためにはすべて有力者の口添えが必要であるとの声が聞かれた。」いいですね、これは重要なことです。  事務ベースじゃない、企業ベースじゃない、経済ベースじゃない、有力者の口添えがなければこれを借りられないんだという声が聞かれた。「また、銀行は商業ベースで資金を貸出す例は皆無ではないかと極言するものもあった。」というのです。銀行は商業ベースで資金を出す、貸し付ける。日本との交換公文によって、福田開発だとか三木何とか商社だとか、安宅産業だか知らないが、そういうものがあるんだ。そういうものに割り当てるときには商業ベースではない。銀行が金を貸すときには、そういう商業ベースで貸す例は皆無だという声が聞かれたというのです。これは外務省、どうですか。これは証拠があって、こういうことを言った人があるから、公式の報告書にこういうことが載ったのです。このことについて私は、実例を、この調査団全部会議を開いて、直ちに、こういうことがあったから、こういう文章を書いたんだという証拠を出してくれと言ったんです。どういうことになっていますか。
  260. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 対外的に関係のあることでございますので、一言だけ御説明をさせていただきますが、そのような調査団は、第五回の日韓経済閣僚会議で合意がありまして、確かに派遣をいたしました。そしてそのような報告書が出され、その中に、ただいま安宅委員が御指摘になりましたようなことが書いてございます。     〔湊委員長代理退席、委員長着席〕  そこで申し上げておきたいことは、この報告書は、調査団が政府に対して報告をいたしたものでございまして、ここに書いてありますことが政府の意見というわけではない。この点はおわかりと思いますけれども、そうでございませんと、日本政府が他国のあり方について、いわば批判的なことを申したということに聞こえやすいのでございますが、そうではございませんで、調査団という専門家たちが、政府に対して所見を報告したものである。この点はそのように御理解を願っておきます。
  261. 安宅常彦

    ○安宅委員 専門家たちが政府に報告をした——はあ、そういうことがあったかで、あと終わりですか、政府は。どういうことがあったんでしょうか。どういう具体的なことがあったから、こういうふうに書いたんでしょうか。少なくともあなた方は事情聴取をしなければならない、こういう文書を外務省経済協力局の名前で出す以上。それは、ただそういうことがあった、ああそうですかでは、国民は納得しませんよ。私なんか特に納得しませんな。経済外的要素がある、銀行は商業ベースで貸すなんというのは皆無だ、商業借款をするときは有力者の口添えがなければだめだ、韓国の中でこう言っているというのです。あなたがそれをどういうふうに——ただメンツや外務省の問題ではなくて、視察団がこう書いた。政府の意見とは違うなんぞという、私はそういう観点から聞いているのではない。経済協力をやる以上、特に韓国というのは、インドネシアに次ぐ非常に大きな経済協力をしている国ですね。いま反日デモがあったりいろいろな問題が出ている中で、こういうことがあっては大変だ、事実を調べなければならない、それを直さなければならない、直すためにはどうしたらいいかという対策を講じなければならない、それが政府の態度ではないでしょうか。政府の意見ではないから私は知りませんと言わんばかりの答弁では、事は済まされない。どうですか。
  262. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府としては、調査団報告書は十分施政の参考にいたしております。いたさなければなりません。しかし、さりとて、ここに書いてあることが日本政府の意見である、こういうふうにおとりいただくことは適切でない。(「とってないよ、だれも」と呼ぶ者あり)念のために申し上げておるわけであります。
  263. 安宅常彦

    ○安宅委員 そんな答弁だめだ。政府に対して報告したのでしょう。報告したら、あなた方はこれに対する対策を立てなければならない。こんな分厚いものを、国家予算を使って、そのままぶん投げておく手はないでしょう。そういうことをやるのが大臣の任務じゃないですか。(「質問に答えないで、念のためになんてよけいなことを言うな」と呼ぶ者あり)よけいなことを言っちゃ困るよ。そして、こういう経済の問題点で言うならば、もっとこの経済協力によって——これは十ページを読んでもらうとわかるのですけれども、まだ十ページの上段では、日本はいろいろ援助したけれども、高度経済はそのためにできたけれども、国民一人当たりの所得というものは平均であって、一人一人の生活水準は上がったかというとそうではない。それに寄与できたかというとそうではない。そこが非常に関心のあるテーマだったけれども、この点は調査がきわめて不十分だったことを率直に認めざるを得ない、なんということを四ページに書いています。  こういうことは、一人一人の生産性や、それからなぜ所得が上がらなかったかということについて、検討をその後やったかどうか。それから、いまのところ自主的な経済になっていない。これは十九ページに書いていますよ。よく読んでください。「投資・貯蓄ギャップや貿易ギャップにあらわれる自立性の欠如、という点に要約されるものと思われる。」結論はそうなんです。  だから、その被援助国の経済の自立のためにやると、あなた方はりっぱなことを言うけれども、結論は全然なってない。その前提は何かというと、有力者の口添えがなければだめ、それから、銀行は商業ベースでは金を貸す場合皆無だ、こういうことを言っている。それが原因だということになっているのですよ。それは報告書があなた方に対して報告していることなんです。これに対してあなた方は、それをお認めになるかどうか。こんなことはうそだ、こういうふうにあなたは思ったのですか、どっちですか。外務省、どうですか。
  264. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、ことにただいま御指摘になりました自立性、これは国内の貯蓄率について消費との関係議論しておるところでございますが、経済的な見方として、こういう見方は確かに私はあるであろう。ですから、そういう客観的な経済的な分析、産業的な分析をしている点は、私ども非常に参考になりますし、対韓援助をいたします場合に十分に考えなければならないことで、これはもう何もそれについて、これは違っているというようなことを申すつもりはないのでございますけれども、先ほどのような点になりますと、これは多少他国の、どう申しますか、国のあり方についてその価値判断を加えるというようなことにどうしても聞こえやすいのでございますから、政府の判断として、そういうことを申すべきではない。またこの報告はそういう性格のものではない。これは念のために申し上げるだけでございます。
  265. 安宅常彦

    ○安宅委員 それはおかしいですよ。いまのは、政府の立場は、向こうの立場考え、政府のメンツを考え、そういう経済援助をしていることは、何か足揚げをとられるのではないかという答弁です。それではなくて、そういう悪いところがあったら、先ほど自立性の問題と揚げ足——揚げ足ですな。あなた方があべこべなことを言っているから、こっちもあべこべになってしまう。その経済の自立の問題、そこは承認すると言うのですね。しかし、商業ベースでない、有力者の口添えがあったということは承認するわけにいかない。報告がしてあるのです。あなた方は、この人たちに行ってくださいと委嘱をしたのでしょう。それを認めないというのはおかしいでしょう。本当にそういうことだったら、大変なことじゃないですか。三木さん、そう思いませんか、どうです。
  266. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういう調査団を政府が派遣したときの報告というものは、海外経済協力の、先ほど言ったのは理想ですけれども、実際また改善を要する面も多々あると思いますから、絶えずこういう調査団の報告というものは、政府の海外経済協力をする場合の非常に重要な参考にすべきであることは、安宅さんの言われるとおりだと思います。
  267. 安宅常彦

    ○安宅委員 なお、念を押しておきますが、調査団で行った人の名前は、高島前経済企画庁次官、副団長は外務省経済協力局参事官、それから慶応大学経済学部助教授の深海さんというのですか、あと通商産業省の貿易振興局資本協力課長の松原さん、農林省の農林経済局国際協力課の本橋さん、大蔵省国際金融局投資第二課の宇野さん、経済企画庁長官官房企画課の菅野さん、通商産業省通商局市場第三課の佐々木さん、外務省アジア局北東アジア課の近藤さん、外務省経済協力局経済協力第一課の結城さん、海外経済協力基金総務部次長の飯島さん、日本輸出入銀行総務部次長中川さん。これでも政府の意見ではないとおっしゃるのが、外務大臣の言い方です。そういうばかな答弁をしないでください。  それでは、あなたどこまでもがんばるなら、時間がないから、私言いますよ。この問題はまだ程度のいい方です。皆さんに資料要求します。外務省の北東アジア課が出した「韓国の不実企業」というパンフがあるはずです。それをぜひ出してください。きょう私が出してくださいと言ったら、あるんですけれども、出せませんというのが外務省の意見。時間がないから全部内容を言います。そんなこと、おかしいじゃありませんか。私は持っている。持っているけれども、あなた方が、どこから持ってきたんだろうというので、毎日新聞の西山さんだとか、外務省の蓮見さんなんという人が出てきたら大変だと思うから、私は出さない。あなた方があるということをはっきり言ったんだから、出してください。出さない理由も聞いていますが、政府のメンツも考えて、きょうは言いません。出してくださいよ。これには重要なことが書いてある。リベートの問題まで書いてある。出しなさいよ。
  268. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その資料のことは、私も聞き及んでおりまして、私どもの事務当局が執務の参考にいたしますために、韓国にございますわが国の大使館を通じまして依頼いたしました調査をまとめたものの由でございます。  それで、不実企業と申しますのは、御承知のように、経営方針、経営が——不実と申しますと、何かわが国では道徳的に悪い言葉になりますが、内容は、経営的にどうであるかというものについて、経営状態を調べたものであります。  そこで、その資料でございますが、全面的に資料をお出しすることは、実は控えさせていただきたいというふうに、私どもは希望いたします。  その理由は二つございまして、一つは、調査を依頼いたしました先が、韓国におきます個人あるいは法人でございます。調査の内容につきましては、かなりいわば客観的に叙述をしてあるのではないかと思われますが、そういたしますと、依頼をされてつくりました人たちに、実は思わざる結果を及ぼす恐れがある。この点は安宅委員のヒューマニズムにお訴えをしたいところでありますけれども、そういうことになることを、私ども一つ心配をいたします。  それからもう一点は、かなり客観的にいろいろなことが書いてございますが、これはむろん日本政府の意見ではございません。事の性質上、ございませんが、相当いろいろなことが書いてある由でございますので、それをそのままお目にかけることが、わが国と相手国との国交にどのような影響を与えるかということも、私の立場としては、少なくとも考えておかなければならないと思いますので、全体的にどのようなものであるか、私どもの執務の参考ではあるけれども、それを全部お目にかけないというわけにはこれはまいらないと思います、予算委員会委員のお話でございますから。しかし、そのものを出せと言われますことは、ただいまのような理由から、ひとつ御考慮を仰げないか、かように考えております。
  269. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は、もっと何も暴露しようと思って、それを目的にやっておるのじゃないのです。いいですか、総理。そういう客観的に見た、韓国人から見た、あるいはどういう人か——私は韓国人ときょう言いません。何か命が危ないみたようなことを言うから。そういう人たちが政府に対して報告をしたのです。しかも政府は委嘱したのです。そうしてそれを北東アジア課がガリ版に刷った、ここまで言っておるのです、課長は。これが今度は印刷になった。それは認めますと言うのです。だけれども、あなたがおっしゃるようなことを盛んに繰り返しておりました。だから、もしそういう海外経済協力という名においてやっている、何かばらせば殺されるみたいなことを書いてあることが、事実、客観的と言っておりますからね、彼はいま。客観的に見たものがそういうものだというならば、大変な事態ではないですか。そういう海外援助をやってはならないことではないですか。そうなんじゃないですか。さっきと同じ理屈です。これは軽いもの。しかも今度はもっとひどいもの、ぜひこのことを反省して改めなければならないもの、これもそうなんですよ。いまのこの報告書もそうですよ。だから、調査団で行った者が会議を開いて、どういうことからこういう文書になったかということを、秘密会でもいいから報告してくれということまで、事務的に私と折衝した政府の人に言いました。だけれども、出せませんと言うのです。ところがきょうも、正式にあなたは出せないと言った。出せないということは、悪いことをしているから出せないのだ。そんな人命にかかわるようなことを、なぜそういうばらしては困るようなことを、あなた方はしたのですか。それをわかっていて、改めようとなぜしないのですか。それをばらしては困るというのだったら、それでは、そういうものを国会やあるいは政府の諮問機関として——あなたは先ほど言いましたね。いつかのここの答弁で、外交の問題で与野党がこんなにかけ離れたら政権の交代はあり得ないと、議会制民主主義を無視するようなことを言いましたよ、三木さん。しかし経済協力も経済外交の一つでしょう。どういうふうにしたらこういう欠陥がなくなるかということを考えて、政府や議会の中に、それをチェックする機関、それから成果を確かめる機関、与野党や学識経験者を入れた諮問機関でも結構です。議会の中にもそういうものを置くなどということがあるならば、私はあえてこの問題を政府に提出しろとは言わない、どうなんですと言ったけれども、だめでした。そこまで私は配慮してやったつもりです。  これは三年前に、田中総理大臣が、「こういうことはお説ごもっともでありますから、そういう場合には、輸銀やそういうものの資料は、これも提出することは当然なことだと考えております。実態を明らかにしたいと思いますし、必要があれば資料の提供は、これも当然のことだと考えております。」と言っておるのです。その当時、「必要があれば」というのです。あのときも私は相当突っ込みましたよ。それから中曽根さんも言っております。たとえばこの経済援助の場合には、入札制度、公開入札でいったらどうか。大平さんはこういうことを答弁しております。日韓閣僚会議が開かれる前に、日韓協力委員会なるものが先に行って、いろいろなことをごちゃごちゃやってきている、そうして閣僚会議が開かれる、交換公文が行なわれる、交換公文が今度出されると、日韓の民間の経済協力合同委員会ですか、資本家の代表が、植村さんあたりの会長が、また東京で会議を開く、こういうパターンは間違いではないか、そういうことは今度改めなければならない、とまで言っておるのです。皆さん、そういうもう三年も前から言われておることを、まだ同じ体質で答弁しておる。あなたは、一たん慣例やそういうものができ上がると、なかなか打ち破れないものであります、しかしそういうことではいけないんだということを、施政方針でぶっているんですよ。  私はくどいほど言っていまして、時間を食ってしまいましたけれども、出せと言ったら、出すまでここでねばって、私は動きませんよ。そんな、極秘の資料でどうにもならないなんて言ったら。正式の、外務省の北東アジア課の名前で出した文書ですよ。そういう部内の討議資料でございますなんということをいまさらつけたって、どうにもならない。それは部内の討議資料であろうと何であろうと、海外援助に重要な関係があることを——出さない理由は、人道上の問題だからということが一つと、それをやった場合には、外務省の中に傷つく人がおるんですよ、先生というのが一つ。二つだったんです、きのうまでは。だから、そういう機関をつくれということを総理が言ってくださるならば、私はあえて言わないとまでは言ったけれども、断固として出さないと言うならば、私は、これが出てこないうちは、海外経済協力をただすところの論拠はなくなるから、これはとてもがまんできない。
  270. 小林進

    小林(進)委員 これは議事進行で発言をいたしますが、いま安宅委員が政府に要求していることは、この海外協力基金または輸出入銀行、そのわが日本の二つの機関が中心になって、韓国に合弁でできている日韓合弁の会社か、あるいは法人か個人に貸し付けたり投資したり、あるいは協力したり補助をした、その金が生きて使われているかどうなっているか、その調査をした結果の資料を見せろというのでありますから、私どもの要求に一分の間違いがありますか。その経済協力基金といい、輸銀といい、これはみんな国民の金です。日本国民の金です。韓国の金でもなければ、特殊な個人の金でもない。国民の金をいわゆる海外経済協力基金の手を通じ、輸銀の手を通じて、そして韓国の合弁会社なり個人なり法人に投資しているのでありますから、われわれ国民の金が正しく使われているかどうなっているかという、その調査の結果を資料をもってお出しいただきたいということが、どこが間違っておりますか。  しかもやはり外務省は、国民の金の使い道の調査の必要があるから、わが日本の韓国における大使館を通じて、大使館の手で調査をさせたのでございましょう。その韓国における大使館の調査が、あれはどういう人たちに依頼してつくったか、どういう人たちに協力を求めたか、それはわれわれの問うところではありませんのです。何か外務大臣のお話を聞いておりますと、韓国の大使館の調査をした資料を出すことが人の命にかかわるとか、あるいは両国関係の友情に関係するとか、まるでわれわれの想像もつかない、われわれ国民の代表を恫喝するような、あるいは恐怖心に陥らせるような重大なる理由で、その資料の提出に抵抗されている。そんなことならば、われわれはとても国会の審議はできません。あくまでもいま言うとおりです。この資料をきちっとお出しいただくまでは、われわれは国民の代表としてこの委員会をお預かりしている以上は、これ以上の審議を進めることはできませんから、委員長において、ひとつ善処されることを強く要望いたします。
  271. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま小林委員の御発言につきまして、前段でございますが、わが国の行っております経済援助等々の詳細について報告をせよということは、これは国会としてさようなお求めがあるのは当然と思いますので、できるだけ詳細に御報告をいたします。これはもう問題がございません。  次に、先ほどの調査団の報告につきまして、調査をした者の意見を言えと仰せられれば、これも問題のないところであります。しかし、その次の不実企業云々というのは、私が不測の事態云々と申しましたのは、幸いにしてわが国ではそういうことがございませんから、わが国に関係のあることではございませんで、現地で調査をした個人あるいは団体に、そのような不測の事態が起こるおそれが現実にあるというふうに、私どもの事務当局が判断をいたしておりますので、この点はどうぞ御判断をお願いいたしたいというのが申したいことで、私は調査の内容を全部お目にかけられませんということを申しておるのではないのでございます。その特定の団体なり個人を不測の事態から保護したいということと、及び、先ほど客観的と申しましたのは、言葉が少し不足でありますが、余りあけすけに述べております点は、先方の国にも、お出しすれば伝わることでございますので、この点もある程度の外交的な配慮を加えることをお許し願えないか、このような趣旨でございます。これらは国費でいたしたことでございますから、私ども確かに執務の重要な参考にいたしておりますけれども、そのままお出しいたしますことは、以上の見地から、ひとつ御検討を仰ぎたい、かように申し上げております。
  272. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは、発言を再開するということは、先ほどの小林さんの関連質問を否定するという意味ではなくて、答弁の中によけいなことがあったのですよ。たとえば商品援助の中。商品援助というのは、プロジェクトでやるものではない。つかみ金ですよ。いいですか。事業がおかしくなったときに出すもの、そういうところで出しておる。たとえば、全部ではないけれども、商品援助の中に陸上走行車両というものがある。自動車、そういうものですよ。こういうものを出してくれと言ったら、あなたの方では、いままで出せないと言った。だけれども、去年の決算委員会では、どこどこ産業が契約したものであることがわかるようにはしないけれども、AとかBとかつけて、どこの会社がやったということまで含めて、何台で、単価が幾らでということを、合計幾らか出せと言った。出してきたものは、全然わからないものを出してきた。資料は幾らでも出します、これは問題ないところでございます——問題があるのです。そういうことを、幾ら出せといっても出したためしがないくせに、なぜ問題がないというのですか。そういうことを弁明して、いまのことを有利に展開しようなんという作戦は、非常に卑劣なやり方であります。じゃ、これだけ言っておきます。あと発言しませんよ。(離席する者あり)
  273. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 席へ戻ってください。どうぞお戻りください。(発言する者あり)私の発言中でかすら、しばらく黙って聞いてください。  資料の要求がございました。理事会でよく検討いたしまして、そして結果を出すことにしたいと思います。よろしゅうございますか。(安宅委員委員長、だめだよ。質問続けられないじゃないか」と呼ぶ)だめじゃありません。理事会で検討して——外務大臣、あまり隠さないで、出せる物は全部出してもらう。そういうことで御異議ありませんか。
  274. 安宅常彦

    ○安宅委員 出せる物は出すじゃだめですよ、全部出してもらわぬと。「韓国の不実企業の実態について」という冊子を出してください。
  275. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それでは私から発言をいたします。  ただいま安宅君の発言に基づきまして、資料は差し出させます。なお、本日のあと二十二分……(安宅委員「それはだめです。あとから弁明した分が入っています」と呼ぶ)いや、休んでいる時間をちゃんとストップウォッチではかっておりますから、大丈夫です。残余の質疑時間は、理事会で検討いたしまして、ちゃんと発言を許します。  本日は、これにて散会してよろしゅうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  276. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 散会いたします。  明四日、午前十時より開会いたします。     午後四時二十三分散会