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1975-01-31 第75回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年一月三十一日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 竹下  登君    理事 谷川 和穗君 理事 湊  徹郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       塚原 俊郎君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    細田 吉藏君       前田 正男君    松浦周太郎君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    楢崎弥之助君       堀  昌雄君    湯山  勇君       青柳 盛雄君    中川利三郎君       平田 藤吉君    不破 哲三君       沖本 泰幸君    矢野 絢也君       安里積千代君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         管理局長    長橋  進君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 山縣 習作君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         公正取引委員会         事務局経済部長 野上 正人君         警察庁刑事局長 田村 宣明君         警察庁刑事局保         安部長     荒木 貞一君         警察庁交通局長 綾田 文義君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         行政管理政務次         官       阿部 喜元君         行政管理庁行政         管理局長    小田村四郎君         防衛庁参事官  菅沼 照夫君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛施設庁長官 久保 卓也君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    岩田 幸基君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         国土庁土地局長 河野 正三君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済局次         長       野村  豊君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         大蔵大臣官房審         議官      後藤 達太君         大蔵省主計局長 竹内 道雄君         大蔵省主税局長 中橋敬次郎君         大蔵省理財局長 吉瀬 維哉君         大蔵省銀行局長 高橋 英明君         大蔵省国際金融         局長      大倉 眞隆君         文部大臣官房会         計課長     宮地 貫一君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省年金局長 曾根田郁夫君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林大臣官房予         算課長     渡邉 文雄君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松本 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      森  整治君         食糧庁長官   三善 信二君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省立地         公害局長    佐藤淳一郎君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         通商産業省機械         情報産業局長  森口 八郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         運輸省鉄道監督         局長      後藤 茂也君         運輸省自動車局         整備部長    田付 健次君         郵政政務次官  稲村 利幸君         郵政省郵務局長 石井多加三君         郵政省貯金局長 船津  茂君         郵政省人事局長 神山 文男君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      東村金之助君         労働省職業安定         局審議官労働         省職業安定局失         業対策部長   岩崎 隆造君         建設省道路局長 井上  孝君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治大臣官房審         議官      山下  稔君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省行政局選         挙部長     土屋 佳照君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       藤井松太郎君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      前川 春雄君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 一月三十一日  辞任         補欠選任   青柳 盛雄君     不破 哲三君   正木 良明君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     青柳 盛雄君   沖本 泰幸君     正木 良明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計予算  昭和五十年度特別会計予算  昭和五十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。不破哲三君。
  3. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党革新共同を代表して、内外政策の一連の問題に関して、また予算の基本的な方向に関して、三木総理その他の閣僚に伺いたいと思います。  まず、最初に伺いたいのは、国民生活政府の基本的な政治姿勢の問題であります。  これまで、六〇年代の高度経済成長政策時代以来、その結果が、いま非常に深刻な形で国民生活の上にあらわれております。私ども、この問題を以前から分析をしてまいりまして、この根本には、単に成長率が高過ぎるというだけの問題ではない、つまり、成長率を高めるということで、大企業資本蓄積、それからまたコンビナートづくり、これを国の経済政策の第一義の目的にする、そのために、国民の安全や健康の問題も犠牲にされれば、さまざまな行政財政の上でも、いわゆる大企業本位と言われる不公正な仕組みがつくられている、この問題を繰り返し指摘してまいりました。池田内閣のときにも、佐藤内閣のときにも、田中内閣のときにも、この問題を指摘してまいりました。政府行政財政姿勢が、国民サイド国民の側ではなしに、大企業サイド、財界の側にあるのではないかというのは、ただ私ども共産党だけではなしに、多くの国民がひとしく抱いている疑問であります。  ところが、その中で、その大企業本位政治が、いわば田中内閣金権政治という形で、非常に極端な形であらわれました。その後三木総理金権政治批判を言われ、それからまた高度成長政治転換しなければいかぬ、社会的不公正を変えなければいかぬ、こういう問題を掲げられて内閣総理大臣につかれた。それならば従来の大企業サイド姿勢転換するんではないか、その根本的な反省の上に新しい政治を求められるんではないか。国民三木内閣に若干の期待を抱いたのも、そこに大きな理由があると思います。  ところが、昨年の臨時国会、それからまたこの通常国会での質疑の経過を見ますと、たとえば総理大臣答弁の中では、いままでの自民党政治に大企業本位の面があったというのは独断論である、大企業本位、大企業サイドと言うのは当たらない、そういうことを総理自身が何回もこの国会の席上で明言をされました。それからまた、高度成長政策の問題に関しても、問題は、成長率が高過ぎたからこれを緩めるという問題である、別に高度成長政策の中に大企業本位仕組みがあったとは思わない、こういうことを言われたわけであります。  そうなると、一体三木内閣が考えられている転換とか、それから新しい政治とか、社会的公正とか、従来の政治に大企業本位という欠陥がないのであるならば、これについては改めて転換する必要もないし、また景気が悪くなったから成長率を低くする、それだけで済むはずであります。ここに、今後の三木内閣が当面している、それからまた国民が当面している物価の問題や、不況の問題や、公害問題や、さまざまな問題に対して、この新しい内閣が本当に国民的立場に立った回答が与えられるかどうか、それはこの基本的な政治姿勢にかかっていると思うわけであります。  率直に申しまして、三木総理が提出された今年度の予算案施政方針演説を見ますと、たとえば物価の問題にしても、大企業の横暴な物価のつり上げの問題については全く触れないで、もっぱら労働者の賃上げによるコストへの影響だけを問題にされるとか、それから世界でもまれな法人に対する課税が、実効税率を調べてみると、大企業に行けば行くほど税率が低くなる、こういう逆累進の問題についても、現実には何ら手を打たれないとか、公共投資の問題についても、産業基盤優先立場を、言葉では変えなければいかぬと言われながら、五十年度予算に関してはさっぱり変わっていないとか、三木さんが、大企業本位政治を反省していないということが、そのままあらわれているように感じられるわけであります。  そこで私は、まず最初に、総理基本姿勢の問題として伺いたい。三木内閣は新しい政治、新しい転換を看板にして出発されましたが、従来の自民党内閣政治を率直に振り返られて、そこには大企業サイド、大企業本位というような欠陥や弱点がなかったと考えられておられるのか、その点をまず第一に、政府基本姿勢の問題として伺いたいと思うのです。
  4. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 不破さんはいま、自民党経済政策が大企業本位であるというふうに断定をされました。自民党経済政策が、高度経済成長ということにウエートを置いたことは事実でございます。それが結果として大企業というものの力をつけたことは事実でしょう。けれども、不破さん、お考えになっても、日本という国は資源もない国であって、物を外国から買ってきて、しかもまた、そういう物を材料として加工して外国に売って、いわゆる加工貿易のような形で日本の国というものは成り立っておるわけでありますから、そのためには、やはり、進んだ技術を取り入れて国際競争力を持つような企業というものが育って、そして日本国民生活水準を支えていく一つ基礎になるように、日本経済力をつけていかざるを得ない立場日本はあるわけでございます。そのために国民生活水準も上がったことは事実です。この間の——まあ、この間というわけでもないが、戦争直後の廃墟の後、食べる物もない、着る物もない、ああいう状態から今日の日本を考えたときに、日本が、一つの物資といっても、それを支えるものは生産ということですから、そういう点で、戦後日本経済成長のために政策ウエートを置いたということは、その当時の事情としては誤ったものではない。  しかし、今日になってくると、そういうものを支えるいろんな条件というのはすべて失われたわけですから、ここで高度経済成長から安定成長に切りかえていかなければならぬ。そうなってくると、いままでのような経済政策というものは大きな転換がなければならぬし、そういう時代になってくると、高度経済成長のように、国民のいろんな要望がその中で吸収されるという状態ではないのですから、社会的公正ということが大きな問題になってくるわけでございます。そういう点で、大きな日本転換期を迎えて、産業構造国民生活も、すべての点で大きな転換を要求されている。  だから、結果として、いま言ったような大企業というものの力はつげましたけれども、それは大企業中心政治をやったというよりかは、高度経済成長ウエートを置いた結果そういう力がついてきたのだ、こういうことに私は考えておるのであって、大企業中心というのも、国民生活水準を向上したいという政府の意図がそういうことになったのであって、大企業中心政治を考えたものではないということでございます。
  5. 不破哲三

    不破委員 まあ、結果として大企業本位になったということのようでありますが、いまの総理のお話を伺っていますと、戦後の混乱期から今日まで、成長を続けるためには高度成長が必要であった。しかし、われわれが問題にしているのは、戦後の混乱期からの復興過程ではなしに、一九六〇年代以後。もう六〇年代の出発点は、戦前の水準をはるかに上回ったところから日本は出発したわけです。そこからの高度成長を問題にしているのですから、そのことを問題にするのに、敗戦のとき大変だったじゃないかという話をされるのは、よく田中さんが好きな話でしたが、まさに三木内閣は、話のやり方まで田中総理に似てきたと感じるわけであります。  しかし、この問題は、一般論で、議論をしていても、それこそ立場の相違ということになりますから、私は、具体的な政府行政の問題、それも、三木さんが環境庁長官として田中内閣時代に直接タッチをされた問題について、具体的な素材をとらえて、政府政治姿勢という問題を伺いたいんです。  というのは、これは公害の問題であります。特に今日、政府が最終的な態度決定告示という形でやられようとしている自動車排ガス規制の問題、私はこの問題をとらえて、国民サイドか、それとも大企業サイドかという問題を詰めたいと思うのです。というのは、この問題が、ただ企業を大きくするのをどうするかとか、大企業の存在を否定するか肯定するか、そういうような問題ではなしに、きわめて現実的な差し迫った問題で、国民の健康と安全を優先させるのか、それとも企業の利益を優先させるのか、これが非常に具体的にあらわれる問題だからであります。  たしか三木総理が、前内閣環境庁長官に就任される前だったと思いますが、五十年度、五十一年度の自動車排ガス規制に関する告示が発表されました。あなたはそれを前長官から引き継いだはずであります。このことに関しては、多くのジャーナリズムで取り上げられて周知でありますけれども、日本国民、特に都市周辺に住んでいる国民に関しては、きわめて切実な問題であります。  政府が発表、決定された環境基準窒素酸化物二酸化窒素について見ますと、これが国民の健康の大敵であることはもう周知でありますが、現在、大都市状況について調べてみますと、東京の場合には、毎日毎日、二酸化窒素による大気汚染を克明に調べている研究所があります。この衛生研究所の調べによると、東京大気汚染状況が、政府が決めた環境基準を超えている日数が一年間でどれくらいあるかというと、九三・九%、環境基準以下というのは六・一%しかない。大阪の場合はどうかというと、一年間に九八・七%、基準以下は一・三%しかない。つまり、政府が決めた環境基準のそれよりもひどい公害の中に大都市の人間は毎日毎日暮らしていて、息がつけるのは、年末年始の工場や自動車が休みになるときぐらいだ、これが実態です。  ですから、光化学スモッグについても年々これが増大しています。もう政府は御承知でしょうが、七二年には全国で百七十六回光化学スモッグの警報が出て、二万一千二百四十五人の被害者が届けられております。七三年には三百二十八回起きて、三万一千九百六十六人の被害者が届けられています。世界の各国を見ても、窒素酸化物二酸化窒素その他による被害がこれだけ急激に増大している国はない。これはもう明瞭な事実であります。だからこそ、七二年の十月に、三木さんが環境庁長官に就任される以前に、五十一年度にはどうしても窒素酸化物規制を、一キロメートル自動車が走るときに〇・二五まで落とさなければいけない、これが決められたと思うのです。あなたは、環境庁長官になられていた間に、そのかなりの期間は、これは守るということを言われました。最後のころには、どうも怪しげな発言に変わったようでありますが。それが、去年の十二月に総理大臣に就任されて、いわば自分がかつて手がけられた問題を引き継がれた最初の仕事がこの問題でした。公害問題。  ところが、どうもいまの政府政治姿勢を見ていると、五十一年度規制を守るということはとっくに忘れられてしまって、〇・二五の規制をやめるという方向に変わっているようであります。あの代表質問答弁でもそういうことが言われました。一体政府がこれだけ三年前には重視をされ、そしてこれをやらないと日本国民の健康は守れないということを主張されて、あの五十一年度規制窒素酸化物自動車一キロ走行当たり〇・二五グラムということを決められながら、なぜ三年後の今日、目前に期限が迫ったらそれを簡単に変えられたのか。しかも、五十一年度規制としていま挙げられている数字は、自動車大型車について言いますと、〇・八五という当初の規制予想値よりも四倍近い大変な数字であります。そういうような、三年間にしての転換がどうして起こったのか、そのことを、前環境庁長官であり現総理である三木さんに、直接まず伺いたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私の政治姿勢に関連して不破さん御質問でございましたが、これは、不破さんにも国民皆さんにも、この事情は御理解を願いたいと思うのであります。  私は、環境庁長官に就任しまして、そして一生懸命に環境庁長官として、国民の生命と健康の保持に取り組んできたことは、これはもう国民皆さんもおわかりのとおりでございます。これは、日本アメリカ等に比べても、自動車の台数が平地の面積当たり八倍も九倍も多い。こういうことで、自動車から出る排気ガス一つの健康に対しての悪影響というものは、無関心ではいられるわけはないわけです。五十年度規制にも、不破さん、あれには、アメリカが延ばしたから延ばしてくれということをいろいろと強く言われたけれども、五十年規制は守られるというメーカーがあったから、私は強行したのですよ。五十一年度規制も、この窒素酸化物が、いま御指摘になった光化学スモッグのやはり大きな原因であると言われていることは、学者などもいろいろと立証されておるわけでありますから、ぜひとも五十一年度の規制は実行したかった。環境庁長官をやめる直前まで、メーカーを呼んで私が言ったことは、もういろいろなデータをそろえて、〇・二五という基準が実行できなければ、何とかそれに近づけないかということを説得したのですよ。これは新聞なんかにも報道されました。  ところが、御承知のようなことで、内閣の初閣議にこれはかかってきたのです、私の初閣議に。そして、大気部会で決めまして、これは告示するということであった。私はそれを差しとめたわけだ。普通の場合は、大気部会で決めたら、それなりに告示になっているのですよ、いままで。しかし、健康に与える影響の重大なことを考えて、それではいけない。これは従来ないことですよ。それを中公審の総会で、やはり慎重に国民的立場から検討すべきであるということで、それを中公審の総会の議に付するのでなければ、大気部会だけでは決めてはいけないというのが初閣議の決定であったわけですね。初閣議はいろんなことをやらないわけですけれども、それをやったわけであります。  それで、中公審にかかって、中公審は一日で終わるはずが一日で終わらなかった。中公審のメンバーは、御承知のように九十名くらいあったと思いますよ。労働組合からも入っています。学者もたくさんに入って、市民の代表も入っておれば、また地方自治の団体も入って、あのメンバーが偏ったメンバーだとは思わないですよ、不破さん、あの九十名。その人たちが何日かかかって慎重に検討した結果、どうしてもやはりいまは技術開発の面で——窒素酸化物というものはどこも取り扱っていないですよ、規制を。それだから、日本だけがもし窒素酸化物に対する技術開発ができれば、世界に率先するわけですからね。無理なことを、できないことを強要するということは、技術開発ができないことになれば、自動車はやはり製造をやめなければならぬというようなことになって、今日の近代的な社会において、そういうことはできませんから、いろいろ検討の結果、二年間延期したわけですね。そして大型車に対しては〇・八五、小型車については〇・六ということで、中公審が、こうしていろいろな附帯決議がついていますが、決めた。それだけの人が決めたものを、私は技術的なデータを持ってないのですから、それはいかぬ、政府はやはり予定どおりやるというようなことは、それは勇気を持ってやれと、不破さん、あなたは非常に合理主義者ですから、まさかそういうことをおっしゃいませんでしょうが、しかし、それはできないのですよ、そこまで来れば。  それで、政府が認めたけれども、それだけではいかぬと思って、この排出ガスに対する閣僚協議会というものを私は設けまして、この善後措置を、税制上からも、あるいは交通の規制の問題からもございましょうし、いろいろな技術開発の面もあって、それをもう一遍検討して、これはやむを得ないにしても、できるだけ窒素酸化物に対する被害を少なくするために、いま閣僚協議会で、もう何回も会議をやりましたが、これに対して、いろいろなそういう条件のもとでも、なおかつ、いま御指摘のような、国民被害をできるだけ最小限度に食いとめるような一つの善後措置を講じておるわけです。二年延ばしましたけれども、これからできるだけ督促して、その二年を短縮するように努力をしたいと思っておるので、三木内閣の、国民サイドメーカーサイドかという試金石だとおっしゃるのですから、どうか私が、国民サイドに立って政治をやろうとしておるということは御了承を願いたいのでございます。
  7. 不破哲三

    不破委員 その変わった判断は、三木総理は、技術的なことはデータもない、要するに中公審の判断を尊重するということだと思うのです。中公審と言いましても、総会あり、大気部会もありますが、この問題を専門的に扱ったのは、自動車公害専門委員会、ここだと思います。その自動車公害専門委員会の扱った諸データが、総会に全部出されたかどうかはあまりつまびらかではありませんが、恐らく出されていないと思うのですね。だから問題は、内閣が三年間に変わった判断の根拠というのは、自動車公害専門委員会がやった審議、ここにある。  それで、その点で私はまず伺いたいんです。というのは、御承知のように、この五十一年度規制に関しては、昨年六月に政府が聴聞会をやりましたときに、各メーカーがそんなことはとてもできないと、もう新聞がみんな「開き直ったメーカー」と書きましたが、大変な抵抗をいたしました。だから、各メーカーの技術的なデータや判断だけに依存していたんでは、これは初めからできないという答えが出るのはあたりまえなんです。それに対して政府が、公正な委員会で審査をすると言うからには、資本から独立した、企業から独立した客観的な科学的な専門知識を持って判断のできる委員会がこの問題に当たらないと、これは政府が依拠しようと思っても、依拠するもの自体が企業サイドになってしまう、こういう問題があると思うのです。  そういう点で、私、自動車専門委員会のメンバーを見てみますと、十人のメンバーがあります。この十人のメンバーの中に、日本自動車工業会の安全公害委員委員長の家本さんという方が入っておられる。それから石油連盟の公害対策委員会の委員長片山さんという方が入っておられる。それから残りの八人の中で、五人までは政府直轄の研究所の技術者だそうであります。十人の委員会の中で七人までが企業サイドといいますか、企業そのものと、われわれが企業サイドではないかと疑問を持っている政府機関の代表で、残りがそうではない学者だ。しかも、そこには住民の代表もいなければ、これを直接扱っている自治体の代表もいない。こういうところの審議が、本当に企業サイドでなくていけるものかどうか、この点について私どもが疑問を持つのは当然だと思うのです。  それで、これはその間の事情に明るい大臣の方にお聞きしたいと思うのですが、一体こういう企業代表を含みながらやられている委員会が、企業の判断に引きずられないで、つまり、めちゃくちゃに抵抗する企業をいわば抑え込んで、本当に科学的な技術的な真実を追求して、それでぎりぎり環境基準を達成するための可能性を追求する、そういうことが実際にできたのかどうか。  それからまた、この委員会が企業からの代表を含んでいながら、国民に対しては審議経過は全く非公開であります。私もきのう政府側に、小沢環境庁長官が江田さんへの答弁の中で、審議経過はいつでも差し上げますということを言われましたので、私の方もいただきたいと思って、政府に盛んに交渉をしたのですが、そうやって出てきたのは、わずか十数行あたりの年表であります。つまり、そういう形でわれわれの側には全く非公開でありながら、企業代表を含んでいるのですから、企業の側には筒抜けでないか、こういう疑問もある。その点で一体、いわば政府がこの方針を預けられた自動車公害専門委員会というものが、企業サイドでない、企業とは独自の技術的判断ができる、そういう権威とそういう資格を持った委員会であったのかどうか、そのことを関係の大臣に伺いたいと思うのです。それからまた、なぜ国民に公表しないで、企業に筒抜けを認めているのか、この問題であります。
  8. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 御指摘でございますが、専門委員会というのは、大気部会の中に専門委員会をつくったわけでございまして、名の示すとおり専門委員会でございますから、一般の消費者代表等は入っていないことは、これはやむを得ないわけでございます。エンジン関係の専門家とか、あるいは衛生関係の専門家とか、気象関係の専門家とか、交通関係の専門家を入れて専門委員会をつくることは、これは御了承いただかなければいかぬと思うのでございます。  ただ、先ほど総理が言われましたように、大気部会で一応結論は出しましたけれども、住民代表や、あるいは労働組合の代表や、一般のいわば公害を受ける側の代表の意見も十分聞かなければいかぬというので、御承知のとおり、中公審の総会まで開きまして、いろいろ審議を願いました。それでも不十分だというので、さらに部会長全部集まりました総合部会というものを開きました。この総合部会には、御承知のとおり、高田委員とかあるいは労組の代表等も入りました総合部会でございますので、総理の御指示で、このように念を入れて審議会で審議をしていただきましたので、この点は、ひとつ御了承いただきたいと思うわけでございます。  ただ、公開をしてないじゃないかというお話でございますが、これは中央公害対策審議会で、委員の先生方が集まられまして、審議会の議事運営規則というものを、この審議会の委員皆さんがお互いに決めておられるわけでございます。その審議会の議事運営規則の中に、たとえば、「都会の決議は、会長の同意を得て審議会の決議とすることができる。」という規定がある。したがって、大気部会がすぐ答申を会長の了解を得てされようとしたわけでありますが、総理の御指示もありましたし、和達会長にもお話ししましたところ、会長が、先ほど言いましたような、総会並びに総合部会の念を入れた審議をざらに継続していただいたわけでございますが、その十二条の中に、「審議会、部会及び専門委員会の議事については、会議録を調製し、会議の概要を記載しておかなければならない。」ということがございまして、こり結果、私どもは、概要を整理いたしまして、昨日も申し上げたのですが、いろいろ専門的なことをパンフレットにして出しましたり、必要があれば、この概要については私どもいつでも、整理をしましたものを必要な方にはお見せしたいと考えておるわけでございます。公開の問題につきましては、やはり審議会の独自の御決定に待って決めなくてはいかぬ問題でございますので、これは和達会長とも御相談をいたしまして、今後の審議会のあり方——そういう御批判が出ないように、一体どういうふうな審議のやり方をしたらいいかということについて、この六日に総合部会を開きまして、中央審議会の議事の運営について、もう一度さらに御検討を願う、こういうことになっております。
  9. 不破哲三

    不破委員 私が聞いたのは、その自動車公害専門委員会が果たして資本から独立しているかどうか、国民には公開しないが、企業には筒抜けではないか、それで一体やれるのかということを伺ったわけであります。いまのお話ですと、総合部会には消費者代表も入っているから、自動車公害専門委員会の方は企業サイドでもこちらでチェックするからよろしいというお答えかとも受け取れるのですが、私が伺っているのは、八月から十二月にわたって、四カ月間にわたって審議をした自動車公害専門委員会そのものはどうか。  端的に伺います。資本から独立して技術的な判断ができる委員会であったのか、それとも資本の提供した技術的な判断をうのみにした委員会であったのか、これが第一であります。  第二には、国民に非公開でありながら、資本の代表を入れて、資本の側には筒抜けで、いつでもどんな対策でもできるような、そういう筒抜け委員会ではなかったのか。この二つの点、明確に環境庁長官に伺いたいと思います。
  10. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 不破先生は御承知と思いますが、自動車公害専門委員会の委員を挙げますと、委員長は八田先生で、これは東京大学の教授で、エンジン関係の方でございます。そのほか学者と、たとえば政府研究所の関係の専門家がほとんどでございまして、先ほどおっしゃったわずか二名の方が、自動車関係の業界なり、あるいはまた、そういう石油関係の公害委員をされておる方である。したがって、業界サイドで専門委員会が審議をされたというふうには、私どもは全く考えておりません。
  11. 不破哲三

    不破委員 筒抜け問題はどうですか。そう言われていますが……。
  12. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 これは、私ども専門委員会の先生方を御信頼して御審議を願っておるわけでございますので、一々、その先生方がどういうような、おっしゃるようなことになったのか、それはもうわかりませんし、また、決してさような先生方は、私どもがいままで専門委員会としてお願いをした先生の中には、おられないと信じておる次第でございます。そうでなければ、世界で一番厳しいような五十年規制、すなわち一酸化炭素とか炭化水素の問題をいままでの十分の一にしたり、あるいは窒素酸化物を従来の二分の一に一遍にするような非常に厳しい、まあ三木総理政治姿勢もありましたが、そういうものがこの専門委員会で答申をされているような結果にはならなかっただろうと思うのでございます。五十一年の規制につきましても、御承知のとおり、窒素酸化物については一・二グラムでありましたものを、〇・六とさらに半減するわけでございますから、世界で最も厳しい排ガスの規制をやるような、この結果をごらんになって、これが業界サイドという御批判をいただくのは、私どもはどうも納得いかないわけでございます。
  13. 不破哲三

    不破委員 私はここに自動車公害専門委員会の議事録の要旨を持っています。これはどこから出たものかと言いますと、自動車工業会が業界の加盟各社に配ったものであります。それも最初のうちはタイプ刷りです。だんだん審議が激しくなってきて対策を立てる必要が出てくると、もう自動車工業会の便せんに——恐らく会議に参加した人がメモしたものでしょう、便せんそのままのリコピーが全部加盟各社に配られている。これを私は言うのです。あなたはいま、そういう委員の方はおられないと言いましたが、その中にはちゃんと委員名を書いて、何とかメモと書いてあるのまであります。それで、国民に非公開でありながら業界には筒抜けだ。済んでから配るのなら、まだ話は多少は了解の余地があるかもしれません。しかし、刻々加盟各社には、この専門委員会ではこういうことが議論になっているぞということが、恐らく業界代表でしょう、業界代表の手からこういう形で流れて、対策が立てられている。まさに手のひらの上であなた方は審議をしたわけじゃありませんか。  それで、これは非常に読みにくいので、私、総理への参考のためにタイプ刷りにしてまいりましたので、差し上げておきますから、ちょっとこのメモをごらんになっていただきます。  しかも、問題はその手続だけじゃないのです。私はこの議事メモを読みまして大変驚きました。いままで政府の方は、昨年の十二月の国会でも、ここに集まられている先生方は権威のある先生ばかりである、だから非常に技術的、専門的な討論をやられているので、しかも、それを周りに煩わされないで率直に意見交換ができるように非公開にしているんだということを、たしか政府委員の方は、衆議院でも参議院でも答弁されているはずであります。  ところが、ここには大体主な委員会の議事録が全部出ておりますが、その内容を見ますと、内容がまた驚くべきものであります。これは私、天下の批判にさらすために、欲しい方にはどなたにでも差し上げるつもりで、公開するつもりでありますが——私がやったのではない。自動車工業会が公開したのですから。しかしこれを見ると、私ども国民が健康と安全をゆだねている委員会というものが、企業サイドでつくられた場合にどういう実態になるか、まさに驚くべきものであります。  第一に、八月三日の大気部会、八月九日の最初自動車公害専門委員会で、委員長である八田氏自身が言っている言葉があります。  それは何かというと、五十年対策は自動車産業として初めて扱うシステムだから、これから先への前進は大変むずかしいんだ。五十年対策を実行して、そのフォローアップだけでも大変なんだから、その上五十一年対策を行うのは困難である。五十年対策だけでも燃料費が悪化している。エネルギー問題がひどくなる。日本だけ厳しい規制をとると輸出に影響を与える。そういうことが心配だが何かはやらなきゃいかぬ。価格、維持費のアップ、燃費の悪化、運転性の悪化等から、これ以上規制を厳しくして果たしてユーザー、使用者が使うかどうか。使用者が低公害車を使用した方が有利というふうにしないと、委員会としては問題になる。政府が決めたNO2の環境基準についても、少し問題がないか、委員会としても取り上げられるだろう。この五十一年度規制を技術的にどこまでやるかという話が一行もなくて、やったら大変だという話が八田委員長の口から大気部会にも出され、それから最初自動車公害専門委員会でも述べられている。  そればかりか、その最初会議をやって、三社の自動車メーカーを視察に行きます。それからまた集まったときには、事もあろうに通産省が資料を出して、公害をこれ以上厳しくするとどんな大変な経済結果が起きるかということを、具体的なこういう数字まで挙げて詳細に説明をして、初めから水をかけているわけであります。  そして、そういう議論がずうっと続くもんですから、十一月二十日、もう審議の最終段階のころですが、環境庁の方から、余りのことに困ったのでしょう、この議論を国民の健康優先の議論として展開し直さないと説得力がないから、燃費の問題だとか運転性の問題だとかいうことは、なるべく後回しの議論にしようではないかという提案が、わざわざ環境庁から十一月の二十日に出ている。それも国民への説得力という角度からの問題提起であります。これが第一。  それから第二には、先ほど環境庁長官は、専門的に十分な学識があると言われました。ところが、九月の二日の会議で八田委員長自身が、エンジン専門家の先生に、五十一年度規制に関する考え方や暫定値の考えを聞く必要がある一いまのお話ですと、八田委員長は大変なエンジンの専門家だと言われましたが、八田委員長自体が、エンジン専門家の先生に五十一年規制に対する考え方、暫定値の考え方を聞いたらどうかということを提案している。それでだれが否定したかというと、日本石油連盟の片山委員であります。否定の理由は、「技術的面に関しては専門家の先生方の情報の質と量がメーカーより優れているとは考えられない。」もうこれでエンジン専門家を呼ぶという話は最後までお流れであります。ここにも、この委員会がメーカーの提供する技術的なデータだけではなしに、その判断までうのみにしたことが明瞭にあらわれているわけであります。これが第二点。  第三点、時間がありませんから簡潔に述べますが、十二月五日、この委員会が〇・八五という最終的な決定をしたときの議事録が出ております。各委員にどうしたらいいかというアンケート調査をしております。出席していた委員は九名であります。そのうち八名までが〇・九ということを上限として提案をしているわけです。ただ一人の委員だけが〇・八を最高にしている。ところが、それがなぜだめになったかというと、環境庁から出ている方から、「トヨタは〇・九なら出来ると言っている。メーカーの言いなりである。事務当局としては、〇・九を戴いてもどうしようもない。」こういう発言があって、そうしたら八田委員長が、この議事メモによると、じゃ〇・八五でどうか。まるでバナナのたたき売りであります。  しかもそのときに、私、驚くべきことだと思うのですが、トヨタの〇・九ができるというデータは一体どこから来たのか、われわれ委員会はそんなものはもらっていないということが問題になりました。そうすると、環境庁から出ている方が、ある先生から長官が渡された資料である。ある先生というのですから国会議員ではないかと思いますが、それ経由で長官から渡された資料に、トヨタは〇・九ならできるということがあった。ところが、委員会に渡されている技術的なデータは、〇・九は不可能だ、一・〇から一・一だということが渡されていたわけであります。それで、これが紛糾しまして、そんなものがあるとすれば委員会に配られた資料との関係はどうなるのかとか、メーカーの言うことは信用できないとかいうことがここで議論になって、かなり紛糾している。つまり、メーカーの出した技術的な資料をうのみにしてやってきたが、最後になって、いわばそれが正確なものでなかったということが委員会自体にもわかる、これが十二月五日の最後の委員会であります。  そして、そういういきさつを経て、〇・八五ということが決められた。それについてある委員が言っております。どうも十分に裏づけられているとは思えない、〇・八と〇・九を足して二で割って〇・八五にしたというのは多少ひっかかる。私、飛び読みをしているわけでありますが、全部を読んでも似たような議論であります。これが資本から独立した、技術的な専門知識と技術的な判断を持った委員会の討論であるかどうか。私は、この問題に対してほんとうに真剣に考えている国民や専門家の皆さんがこの議事内容を見たら、ともかくびっくりすると思うのです。びっくりするどころか、まさに政治に対する不信を新たにするし、政治に対する怒りを覚えると思うのです。  環境庁長官は、こういう審議の経過について多少とも報告を受けた上で、いま言われたようなことを述べられているのか、それとも、私どもがいただいているような、このごく簡単な資料だけの報告を受けて答弁をされておられるのか、そこら辺を伺いたいと思います。
  14. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私どもは、中央公害対策審議会の委員を慎重に御選定申し上げてお願いをした以上、中央公害対策審議会の委員の先生方の議論について、特に私、着任以来は、行政的な圧力を加えたり、あるいは政治的な配慮を求めたりしたことは、一回もございません。自主性にお任せをし、その審議にゆだねておったわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、いろいろ従来の経過にかんがみまして、三木総理が特に、中央公害対策審議会の総会あるいはその他の手続によって、さらに慎重に審議をしてもらいたいという御指示に基づきまして、和達会長ともいろいろお話をして、その後先ほど申し上げたような慎重な手続をとっていただいたわけでございます。  十二月の九日以後のことについては詳細存じておりますが、それ以前のことにつきましては、私は詳細に存じておりません。ただ、もしそういうようなことがありとすれば、将来専門委員会のあり方等について十分検討をいたしてまいりたいと思います。
  15. 不破哲三

    不破委員 つまり、自動車公害専門委員会は企業の判断やデータをうのみにした、政府はこの自動車公害専門委員会の結論をうのみにしたということだと思うのです。いま大気部会とか総合部会とか言われましたが、恐らく総合部会に参加されている皆さん大気部会に参加されている皆さんも、一番肝心の審議をゆだねた専門委員会がこのような状態であったということは何ら報告も受けないし、知らないで討論に参加している。客観的な学者が技術的に検討して、〇・八五以下は絶対に不可能なんだということを主張するわけですから、それを前提にして議論をされていると思うのです。だから私は先ほど、この事実を知ったら国民が怒り専門家が怒るだろうと言いましたが、公害対策審議会のその他の部会に参加して、こういう土俵の上で審議を余儀なくされた多くの諸先生方も、その気持ちは共通だと思うのです。私は、そういう点ではまさに、いま政府が決められようとしている新しい告示なるものは、それこそ国民サイドに立っていない、企業サイドに立った答申の上に基づこうとしている、これが重要だと思います。  しかも、先ほど三木総理は、五十三年度規制はできるだけ早くやりたい、できたらもっと早くするように努力したいということを言われました。ところが、この十二月五日に討論をされている中身を見ますと、それこそ自動車工業会の代表である家本委員から、五十三年度規制に関しても猛烈な抵抗が出ている。五十四年度にしろ、五十四年度にしたって次の暫定値しか出ないのだ、しかし、それでも五十三年度よりは五十四年度に延ばしたほうがよろしいということが言われていますし、この討論の中で、八田委員長自体が、五十三年でよろしい、しかしまた五十三年——このとおり読みますと「五十三年度にせざるを得ない。その時点でまた暫定値」を決めよう、こういうことかちゃんとこの専門委員会の中では議論されているわけであります。  つまり、五十三年度まで延ばして、五十三年度に努力する見通しもなければその姿勢もない。当然五十一年度を五十二年度に延ばしたら、また次の暫定値、〇・八五を〇・七五にするか知りませんが、そういうものを考えて時を過ごそうではないか、そういうことを議事録にとどめておこうとか、そういうやりとりが平気でやられております。それからまた、もう一つ大事な問題は、運輸省がやる実際の生産された自動車の点検、それの枠を緩めようじゃないか、暫定値をつくっても、ばらつきを広く見れば多少排気ガスの多いものでも認められるようになる、この暫定値をやるんだったら、ばらつきを広く認めてもらいたい、そういうことが平気で議論をされて、それもお互いに記録にとどめておきましょう。つまり、五十三年度という期限の問題に関しても、暫定値の実施の問題に関しても、まさにこの委員会は、極端な言葉を使えば、企業代表と——ちゃんと政府の代表も入っているわけです。環境庁からも入っているわけです。環境庁の責任ある役職の方の立ち会いのもとに、企業代表と専門委員会のいわば密約の場になっている、こういう委員会であります。私は、恐らくきょう初めて三木総理も、それから環境庁長官も、この資料をごらんになるのでしょうし、率直にこの資料の内容を検討してもらいたいと思うのです。そして、こういう審議に基づいて政府がやろうとしていることが、一体果たして国民サイドの結論であるかどうかということを、内閣として、もう一度根本的な再検討をしていただきたい。  そして私が求めたいのは、もちろん先ほど三木さんが言われたように、何の技術的根拠もなしに、来年四月から〇・二五をやれということを決定しようとしても、これは政府としてなかなかやれないでしょう。しかし、いまのままで放置しておいたら、先ほどの密約にあるとおり、五十三年度も危ない。五十四年度も危ない。結局のところ、大企業サイドで、この〇・二五という政府がわざわざ決めた目標が、無期延期をされるのは確実であります。  だから、私がここで総理に求めたいのは、本当の意味で資本から独立した公害対策審議会、そしてその自動車専門委員会、全く資本から独立して、わざわざエンジンの専門家を呼んでこないとわからないような、そういう委員会ではなしに、企業代表の入らない、ちゃんと十分な学識経験を持って、そして自治体の代表や住民の代表も入るような、そういう委員会を改めてつくって、この問題の抜本的再検討を三木内閣のもとでやってもらいたい、この問題であります。あの答申に基づいて三木さんが新しい告示を出されるとすれば、それこそ前内閣以来の企業サイドの汚名をそのまま承知の上で引き継ぐことになるでしょう。それをやらないで、改めて御破算にして、抜本的な再検討をやっていただきたい。これが私の三木内閣に対する要望であります。その点、総理の率直な見解を求めたいと思います。
  16. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国民の生命、健康を守るということは、これはもう政治の基本でありますから、いろいろ御指摘になりまして、こういう会議録もちょうだいいたしたわけでありますから、委員会の運営というものに対しては十分検討いたします。それは、メーカーなどに対しては、必要があるときには参考人として呼んだらいいので、やはり国民の生命を扱う問題を取り扱う委員会というものは、いやしくも国民企業サイドに立つような印象を与えることはよろしくない。委員会のあり方等にも検討を加えます。  しかし、この委員会が全く企業サイドに立って決定したというようには私は考えてはおりませんが、いろいろこういう会議録など、いま御指摘になったようなことを見ますと、やはり委員会のあり方というものは検討する必要があるということは感じますので、十分検討さしていただきたいと思います。
  17. 不破哲三

    不破委員 私が伺っているのは、そのこととあわせて、五十一年度規制を新しいそういう委員会で抜本的に再検討し直してもらいたい。この審議に基づく答申をそのままうのみにして、政府告示を強行するつもりか。それとも、いますぐやり直すとは言えないでも、こういう議事録を検討されて、内閣として責任をもって再検討する必要があるかどうかの態度を改めて決めてもらいたいという点であります。
  18. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 中公審の委員は、不破さん御承知のように各方面の方が入っておるわけです。いろいろ専門委員会の方で技術的なことは検討するにしても、いま言った学者の人も十分入っていられますし、労働組合からも、あるいは地方自治体の代表もお入りになっておるし、九十名ばかりだと思いますが、大変な人々が寄って、何日もかけてこれは認めるということになったので、いま申した五十一年度規制をもう一遍やり直す考えはございません。  しかし、今後のあり方については、十分な検討を加えて、できる限り国民の疑惑を招かないような委員会の運営のあり方にするということは検討を加えるというお約束をしましたが、中公審が決めたものを、もう一遍これを白紙に戻して再検討するということはできないことを申し上げます。
  19. 不破哲三

    不破委員 そう言われますが、一たん中公審が決めたものを再諮問を決めたのは昨年ですよ。つまり、中公審が一遍決めたものが絶対変えられないものであるならば、何であなた方は昨年再諮問したのですか。つまり、事情が変われば再諮問できるというのは、あなた方みずから実行したことじゃありませんか。だから、その審議の経過についてこういう疑義がある。しょっちゅう総合部会や大気部会のことが出ますが、恐らくその方々はこういう審議の経過には責任がないはずです。その大もとである自動車公害専門委員会の審議の経過に、私がこういう疑惑を証拠をもって提示しているわけですから、改めてその問題について再諮問する必要があるかどうか、内閣として検討するのは当然じゃありませんか。私は、内閣の検討を経ないで、ここで三木さんに即答しろとは言っておりません。これもお読みになっておられないでしょうし、事情も聞く必要があるでしょう。しかし、この問題はそういう性格の問題ですから、それがわかりながら、あなた方がこれを強行されるとすれば、これはあなた方は同罪ということになりますよ。その点について、内閣で再検討して、去年再諮問したように、もう一度再諮問する問題について再検討する余地がないのかどうか、改めて伺いたいと思います。
  20. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 昨年諮問いたしましたのは、再諮問ではないのであります。四十七年に中間答申をいただきましたときには、理想的なリードラインというものを中公審からいただきまして、そしてあれは大気汚染防止法の十九条に基づく許容限度の告示ではありませんで、それはよく今後の状況を見て決定をすることにいたしまして、とりあえず理想的なリードラインというものを、国家行政組織法に基づく環境庁長官としての行政を今後進めていく方針を、一つの要式行為をもって定めたものでございます。したがいまして、昨年の諮問は、そういう行政方針というものにのっとって、技術開発の現状から見ていかなる規制値を決めるべきかということについての考え方から、諮問をいたしたわけでございますので、再諮問ではございません。  御承知のとおり、先生も最近の新聞でお読みのように、アメリカにおいても、触媒法そのものについても一部からいろいろな疑義が生じております。この排ガス規制の技術的な開発の状況というものは、世界的にまだ非常におくれているわけでございます。私どもは、今年も研究費をうんと増額しまして、何とかして公害防止の技術を各方面にわたって検討しなければならないと考えておるわけでございます。したがって、国民の健康を守る立場から、私どもが世界に例を見ないこんな厳しい規制値を考えて、その実行を求めているわけでございますので、とりあえずはこれでひとつ暫定値としてやらせていただきまして、将来技術開発を、政府においても中公審の条件にありますから、ひとつうんと進めていく。あるいは、それだけでは健康を守る、大気汚染状況というものを改善していくということはできませんので、総量規制なり、あるいは税制の対策なりによりまして、中古車の問題も解決をするなり、あるいはいままで規制の対象でなかったトラック等の規制を強化しまして、所期の目的を上げるようにしてまいりたいと考えております。     〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕
  21. 不破哲三

    不破委員 そう言われますが、三年前に決めたときには、今度決めるときには「許容限度の設定年次をいたずらに遅らせることは厳に避けるとともに、技術的に可能なかぎり最もきびしい許容限度の設定を行なうものとする。」それで諮問されたわけでしょう。私は、その諮問のとおり、内容が、果たして「技術的に可能なかぎり最もきびしい許容限度の設定」を、資本から独立した立場で追求したのかどうかということを言っているわけであります。そうじゃないということに関して、私は資料を挙げて政府に求めているわけであります。そのことが明らかになった段階でも、今度の中公審の答申はこの「技術的に可能なかぎり最もきびしい許容限度の設定」を行ったものであると、あえて三木内閣が判定をされるなら、それでいいでしょう。しかし、こういう判定をされるということは、たとえどんなに具体的な事実を挙げてこれが大企業サイドであることが証明されても、三木内閣はそれをうのみにせざるを得ない、そういうことをみずから証明したことになりますよ。  私は、だから何遍も言いますが、この問題に関して、十分資料を吟味する前に即答せよとは言っていないのです。こういう資料を私どもが明らかにしましたから、果たして政府が諮問した現在の技術的状況で可能な厳しい許容限度の設定が正しく行われたものであるかどうか、そこに疑義があるかないかということについて、内閣が改めて検討するというのがあたりまえじゃないでしょうか。それをやった上で、三木総理国会に、しかしこれは部分的なきずであるから問題ないと言われるなら結構でしょう。そういう検討もしないで、どんな事実が出ようが既定方針変わることなしというのであるならば、それは国民の目の前での三木内閣姿勢として、それはそれとして伺いましょう。その点について総理答弁を伺います。
  22. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御承知のように、中公審というものは、もうあらゆる人々が入って検討をしたわけです。そういう中公審が、それは総合部会のいろいろな結論も根拠にはなっておるでしょうが、そして結論が出て、それに附帯決議をつけて、その附帯決議に沿うて関係の閣僚会議まで設けて、附帯決議の趣旨に沿うて今後あらゆる総合的な面から対策を立てようとしておるのですから、いま不破さんの質問に、それまでした一つの五十一年度規制を、私がいま、これを変えますとか再検討をするとか言うことは、それは不破さんがお考えになっても、無理な御注文であることはわかると思う。  しかし政府としては、政府の考えておることは、国民の生命、健康というものを守るということを第一義的に考えようという姿勢は変わらないのですから、こういう問題について重大な関心を持って検討を続けることはいたします。けれども、いまここで、その五十一年度規制を変更するという意思を総理大臣から申し上げることは適当でない。そういうことは考えておりません。検討はいたします。
  23. 不破哲三

    不破委員 三木さん誤解をされているようですが、私はここで即答せよとは言っていないのですよ。こういう材料を提供するのだから、そのことを検討して、この材料を吟味した上で、再検討する必要があるかどうか吟味をすることを求めているのですよ。それを、絶対変えない、何が起きてきてもこれは変えない。今後のことは考えるが、五十一年度は答申どおり告示するということなんですか。それとも、私が提供した資料を十分吟味いただいて、それで再検討の必要があるかないかということを、改めて内閣として判断するというようにお考えなのですか。この点だけ端的に、三本節で長くなしにお願いします。
  24. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは自動車メーカーとしても、いろいろ生産工程などに対して設備の変更も伴わなければなりませんから、そんなに急に言って、この五十一年度規制がこれから検討してまた変わるかもしれぬというようなことは、これは非常な混乱が起こりますから、五十一年度規制というものを、いま私はここで変えるという意思はございませんが、私の願いは、国民の生命や健康を守るということを第一義的にしたいのですから、この提供されました資料は十分に検討して、そうしてそのことが今後の公害対策の上において取り入れて、あるいは反省して検討しなければならぬ点があったら、十分検討はいたしますけれども、五十一年度規制というものに対して、いま私は変更する意思は持っていない。しかし、この与えられた資料に対しては、十分な検討を加えるということだけは約束をいたします。
  25. 不破哲三

    不破委員 この問題になると、三木総理も非常にがんこにがんばられる。私はそれにはやっぱり背景があると思うのです。というのは、この議事録でもう一つ特徴的なことは、科学者といってもかなりの方が、技術者といってもかなりの方が、通産省あるいは運輸省、そういう政府関係の研究所の方であります。議事の内容を見ますと、この方々の意見がほとんどやはりメーカーサイドの意見になっている。つまり、先ほど通産省の話をいたしましたが、こういう国民の命にかかわる問題に関して、政府や各省庁が大部分企業サイドになってしまう。また、そうやって企業サイドで結論が出ると、新しい内閣になってもなかなか変えようとしない。この背景に、私は政治姿勢の問題、政治献金の問題を考えざるを得ないわけであります。  この問題に関して、自動車工業会がどれだけの政治献金をしているかということを、私、独自に調べてみました。自動車工業会が理事会で各社に割り当てて決定しただけでも、四十四年七月から去年の九月までに、国民協会そのほか自民党各派に献金したものを若干入れますと、私の調べだと二十七億一千二百万円。民主社会協会に対する献金が一億九千七百万円。これは全部日本自動車工業会の理事会で決定をして、会員各社に割り当てたものであります。御参考までにこれも差し上げましょう。  その中で、これは自動車工業会自体が非常に気にしていたようでありますが、昨年の上半期の参議院選挙に向けての献金額が四億八千万円、これが非常に多いのであります。自動車工業会の代表が国会に喚問されたときに、いろいろ頭を痛めた。国民協会の献金の御三家というのがある。銀行、鉄鋼、電気。ところが、銀行が四億四千万、電気が四億、それよりも大きい、御三家以上の献金を今度自動車工業会が四十九年上半期にやったというのは、排ガス規制の問題との関係を聞かれたらどうしようか、首をそろえて協議をしたという話を伺いましたが、業界自体がそういうことを気に病むぐらい、献金とこの排ガス規制の問題との関係は非常に明瞭であります。  しかも、そういう関係があるかないかは私存じませんが、まだ五十一年度規制について専門委員会で審議されている最中の十一月七日に、自民党の政調会では、五十一年度規制は経済的な観点から大いに配慮せよ、厳しくやるなということをわざわざ決めて、環境庁などに申し入れている。こういう事実を考えますと、やはりこういう問題で自民党自民党政府が大企業サイドになるというのは、これはこの政治姿勢に関係があると見ざるを得ないわけであります。  毛利前長官は、国会でこれが問題になったときに、私はそういう自動車産業のような公害産業からは一銭も政治献金はもらうべきでないと思うと断言されたということを、私は議事録で拝見しました。もし政府が本当に大企業サイドでないという姿勢をとられるなら、政治資金の規制を立法化することは、国会の問題でいろいろありますが、しかし、三木さん自身が総裁である自民党自身の政治姿勢として、こういう公害産業からはお金はもらわぬ、これは法律を待たないでも決定できるわけであります。前長官が党を代表していないときにそういうことを言ったわけですが、自民党を代表している三木総理大臣は、クリーン三木と言われるならば、それを多少でもこの分野で証明する。自動車産業とか電力産業とか、鉄鋼産業とか石油産業とか、公害でこれから政府が大いに取り締まらなければ、国民の利益、健康の守り手と言えないという産業から、今後はわが党としては献金はもらわぬ、こういう態度をとるのが当然だと思いますが、その点について所信を伺いたいと思います。     〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕
  26. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も相当長く環境庁長官をいたしておったわけですが、この政治献金ということは、初めて不破さんの資料で承知したんです。そんなことは頭にないわけです。企業自民党に献金をしておるからということで、一回も意識したことはない。一回も意識したことなくて、この政治献金というものが、自民党政治というものに対して、これを曲げて、献金をもらっておるから排気ガス規制を緩めるというような考え方は、これは持っておりません。これはそういうこととは別個の問題として考えておるわけでございます。  また、政治資金規正法の問題については、私はこの国会に、なるべく国民の疑惑を持たれないような形の政治献金にしたいということで、せっかく政治資金規正法に対して、国会提出の法案をいま検討を加えておる途中でございます。今後の政治資金のあり方は、国民の疑惑を持たれないような形に改正をしたいと願っておるものでございます。
  27. 不破哲三

    不破委員 そうすると、公害産業からの献金も悪ではない、今後もらわれるというお考えですね。
  28. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 不破さん、いろいろとお挙げになって、鉄鋼とか、あるいは電力とか自動車、皆公害産業であるというふうに断定をされましたが、公害産業と、こういう断定はいかがかと思う。その公害は、無論、産業の面において、いろいろ煙突から煙を出せば、皆やはり公害ということに関連があるわけで、企業を皆分けて、公害産業か、しからざる産業かと分けることはいかがでしょうかね。その点は私はやはり少し、そういう分け方をするということになれば、いかにも自動車工業、鉄鋼産業なんかに働いておる人は、労働組合の人だけでも、政治献金よりも、労働組合としても、公害産業に働いておるというようなことは、やはり非常に肩身の狭い思いをするわけでございまして、どうも、そういう産業を公害産業と、こう断定することについてはいかがかと思うのでございます。
  29. 不破哲三

    不破委員 前毛利長官は、自動車産業は公害産業だと、そう言ったわけです。つまり、田中内閣環境庁長官よりも、三木内閣は、企業献金は悪でない、それに固執する点では後退している。これは明確であります。それは三木内閣のクリーン度をはかるものとして伺っておきましょう。  それから、いまの三木さんの答弁の中で、公害産業である自動車産業から献金をもらう問題と、労働者がそこで働いている問題を同列に非難するような発言、同列に非難さるべきだというような発言をされたのは、私は大変不見識だと思います。この問題は取り消しなさい。
  30. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自動車工業を公害産業であると、こう断定して、それはやはり肩身の狭い思いをしますよ。産業は公害産業、公害産業の社員、公害産業の組合ということになってくると、何かこう肩身の狭い思いをするのじゃないでしょうか。確かに公害の面は、自動車というものは、排気ガスを通じてやはり非常に公害問題に対して周到な配慮をしなければならぬ産業であるということに、私は異存はないんですよ。しかし、産業を公害産業としからざる産業とに分けて、自動車工業、公害産業なり、こういうふうに断定するのは、不破さん、いかがでしょうか。だから政治献金の問題は、私はこの問題とは別個に、国民の疑惑を受けないような形の政治資金規正法の改正をやりたいと言っておるのであって、自動車工業を公害産業と頭から断定することには、不破さんの意見に私はどうも一致しない。  それは、自動車産業労働者に対して、私は侮辱したんじゃないですよ。だけれども、働いている人が公害産業に働いておるということになれば、何かこう肩身が狭い。一方において自動車産業のもたらしておる貢献もいろいろあるわけですから、そういう点で断定するということはいかがかと言っておるわけです。
  31. 不破哲三

    不破委員 私は別に字引の話をしているわけじゃないのです。自動車産業の公害が問題になっていて、政府が取り締まる立場にある。ところが、その取り締まりの姿勢が決まらぬ。それの背景に献金がある。これだけの事実を明らかにして、それでもなおもらうつもりがあるかと聞いたら、あなたはもらうと言われました。これははっきりそれこそ記録にとどめておきます。  しかしこの関係は、たとえば先ほど言いましたが、自民党の政務調査会が十一月七日に、自動車排気ガスの五十一年規制についてということをはっきり決定をして、各省庁に申し入れております。そういうところに、もう客観的な委員会に一応任してあるのに、その審議の途中で、余り厳しくするなという行動を党がとる。こういう行動があれば、これと政治献金の背景の問題を考えるのはあたりまえであります。  それから、いままででも私どもは、田中総理時代に公開質問状を出しましたが、いろいろな産業、たとえば電力産業について見ると、値上げがない四十七年には六百六十万円しか献金していないのに、四十八年に六十倍の四億七百十五万円献金があると、そのときから急に値上げの問題が問題になってくる。そういうことが、電力の場合でも、あるいは紙の場合でも私鉄の場合でも、絶えず繰り返されているわけであります。だから私は、ほんとうに総理国民の疑惑のない政治資金規制を考えるのであるならば、公害が問題になる産業、正確に言えば、それから公共料金として決定権を政府が持っている産業、あるいは行政指導上でも、重大な基礎物資で、政府の決定や認可いかんで値上がりが決まる産業、そういう産業からは政治献金はもらわないということを、当然の節度の中に含めることを要望して、次の問題に移りたいと思うのです。  次の問題は、いま総理にお渡しした政治献金の資料の中に、昭和四十六年十一月、沖縄国会対策というのが一億円、自動車工業会から国民協会に献金をされております。これは非常に重大な問題だと思うのです。ここに国民協会からそのとき自動車工業会にあてたマル秘文書があります。マル秘という判こを押してあるから、かなり大事にしたのでしょうが、「先般自民党より申入れのありました沖縄返還協定批准国会関係資金醵出要請の件につきましては、」パレスホテルで御相談した結果、「同協定批准ならびに関係法案の成否が今後のわが国の進路に及ぼす影響の重大性に鑑み、党の要望にこたえて所要の資金を醵出」したい。自動車工業会は一億円出しでくれという話であります。当時の一億円といえば、大体総選挙のときの選挙資金の三分の一であります。協定を国会で通すのに、国会の審議費用は全部国の予算で賄っているわけでありますから、特別にそういうお金が要るようには思えない。自動車工業会に一億円というと、われわれよく会計の内幕は知りませんが、国民協会が集めたお金は少なくとも十億円を下らないでしょう。そういうお金を、国会で沖縄返還協定を通すために自民党国民協会に要請をする。そして国民協会が各産業に割り当てる、集める。一体何でしょう。私はこれは事国会に関するだけにきわめて重大だと思うのです。選挙の金権政治が問題になった。ところが自民党は、ああいう国の運命にかかわる協定を国会で通すのに、これにもお金が要ると言う。まさに金権政治国会の中に持ち込むものじゃありませんか。私はこれは国会議員として絶対に見過ごすわけにいかないと思うのです。三年半前のことではありますが、これはわが国の国会の大問題であります。  私はこの点で、自民党総裁である三木首相に、一体このときに、何のために国会対策費と称して何億円の金を業界から集めたのか。何に使ったのか。事は国会の問題でありますから、調査の上、国会に明確に報告をしてもらいたい、それを要望するものであります。
  32. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 不破さん、私はその経理に関係をしておりませんし、よくわかりませんが、調べて御報告をいたします。
  33. 不破哲三

    不破委員 それでは私は次の問題に移りたいと思います。  次の問題は民主主義の問題であります。  総理は、施政方針演説で、私はいかなる暴力にも反対するということを明言されました。私は、いま日本国会で、日本の国の政治で暴力が問題になる場合、いろいろな暴力がありますが、国の政治ということを考えます場合、暴力に四つある。  一つは、昨年自民党からも提案のありました一連の爆弾事件であります。この事件は、私どもの調べでも、七〇年代五年間に八十八件も頻発をしている、これも重大であります。それから、革マルとか中核とかいう、ああいう暴力集団。これは、去年一年間でも十一人の死者、五百人以上の犠牲者を出しました。最近七年間をとってみると、三十七名の死者、四千三百名を超える負傷者を出しています。いまでも全国の大学で、彼らが暴力をふるうために、学生が自由に登校できないのが無数にあります。さらに右翼のテロや暗殺。一昨年、熊本でわが党の委員長への襲撃事件がありましたし、成田社会党委員長への襲撃未遂事件もありましたが、こういう問題もある。それから最後に、昨年来われわれが国会で問題にしております解同朝田派によるさまざまな暴力がある。  私は、政府が本当に民主主義の姿勢を貫くなら、こういう暴力について、この暴力はこういう理由があるから除外をするとか、そういうことではなしに、国民の生命と安全、権利を侵すような暴力に関しては、理由のいかんを問わずこれを抑える、反対する、こういう立場をとるのが当然だと思いますが、改めて総理の見解を伺いたいと思います。
  34. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いかなる理由によるにせよ、暴力というものが許されて民主主義というものは成り立つわけはないわけです。いかなる種類、いかなる場所においても、暴力というものは絶対に排撃するというのが、政府の強い態度であることを重ねて申し上げておきます。
  35. 不破哲三

    不破委員 いま挙げた四つの中で、私が特にきょう問題にしたいのは、解同朝田派の問題なんです。これは特別な理由があります。  というのは、この解同朝田派の暴力というのは、ほかの暴力とは多少違いまして、ほかの暴力に関しても、いろいろな党利党略から、あれはみんな共産党反対だから、泳がしておいたほうが党略的には得だというような話も多少耳にすることがありますけれども、解同朝田派の暴力に関しては、それがふるわれるところでは、自治体であれ警察であれ教育委員会であれ、そういういわば公権力、公的な機関がその味方にされてしまう。よく西部劇などで、ギャングが保安官をやっていて、住民が恐怖に苦しむというようなものがありますが、いわばそういう状態が現出される。そこにこの暴力の特別な恐ろしさがあるわけであります。  たとえば、私ここに、昨年、八鹿町の町民から私や党に来た手紙を持ってきておりますが、ともかくこわい。なぜこわいかというと、だれも守ってくれない。憲法は守ってくれません。警察も県教委も解同の手下です。だから、いろいろ警察から取り調べに来る。だれが本当のことを言えるでしょうか。言ったことが全部相手にわかるかもしれない。そうなったらだれが守ってくれるでしょう。そういうことで、何通も手紙があります。大抵の手紙にはそのことが書いてあります。いま八鹿町では、昨年国会で問題にしたときと違いまして、もう町民の方々もこういう恐怖の状態から立ち上がって、先日は明るい町づくりの会というのを結成して、青年といいますか、有権者七千五百人ぐらいの町ですが、三千五百人からの会員が立ち上がるというような、新しい町づくりの運動が起こっておりますけれども、しかし問題は、公的な機関がそういう暴力派の味方をするという状態は、残念ながらいまでも解決されていないのです。そこに問題があるのです。私たちは昨年来、福田自治大臣や永井文部大臣に、どうも八鹿町では、あるいは南但島では、町当局や県の教育委員会、町の教育委員会、学校当局、そういうものが暴力派の手助けをしている、この問題について、政治の責任として十分調べて対処をしてほしいと、何遍も要望してまいりましたが、いまだに事態は残念ながら解決しておりません。  福田自治大臣に伺いたいのですが、昨年来の調査の中で、但馬の一帯で、こういう町当局と解同朝田派の暴力事犯との関係について、政府の調査で明らかになっていることがあったら伺いたいと思うのです。
  36. 福田一

    福田(一)国務大臣 暴力の問題に対する政府の見解につきましては、総理からお答えをしたとおりでございますが、八鹿町の問題について、具体的な捜査をいまいたしておる段階でございます。そこで、その捜査の段階でございますから、これをいまここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、われわれとしては、自治体の関係者も含めて、そういうものについて捜査をいたしておりますから、だからその捜査の問題は別として、方針を言われるならば、これはもうそういうような不公正なことがないようにできるだけ努めてまいるように、警察当局も努力をいたしております。現在でも八鹿町には相当数の警官を置いて、そういうような暴力行為が起きないように、いま対処いたしておるところであります。御了承を願いたいと思います。
  37. 不破哲三

    不破委員 町の問題ですが、ことしの一月十一日に、丸尾という、あなた方が二度逮捕されたこの主犯ですね、主犯とされている容疑のある人物ですが、彼を議長とする八鹿高校差別教育糾弾闘争共闘会議というものが、組織の再編成を行いました。ここにその再編成の文書がありますけれども、これを見ますと、驚いたことには、丸尾という容疑者を議長とした共闘会議があって、その下に、各町に共闘会議町本部というものがあります。それが八鹿、養父、大屋、関宮、美方、生野、朝来、和田山、山東、村岡と、十カ町の町本部ができております。この町本部の電話番号が書いてありますが、彼らの共闘会議の本部の電話番号は、全部町役場の代表番号であります。つまり町当局が主犯である丸尾を議長とする共闘会議の下部組織になっている。それで、実際に昨年事件が起きた当時は——去年、国会で議論になってからは、余り私が本部長だと名のらなくなりましたが、去年の段階では、大体どこの町長も、朝来にしても八鹿にしても、この町の共闘会議の本部長は私ですと、町長が平気で名のって活動している、こういう実態であります。  この問題は、この事実を国家公安委員長の耳に報告をして、こういう状況の打開のために、政府がしかるべき責任を果たすことを要望したいと思うのですが、もう一つの問題、さらにそれにまさるとも劣らない重大性のある問題は、教育委員会の関与という問題であります。  永井文部大臣、文部大臣は、県の教育委員会や町の教育委員会、学校当局のこの問題に対する介入の問題について、現状についてどういう報告をお持ちですか。
  38. 永井道雄

    ○永井国務大臣 この八鹿高校、朝来中学校における問題でございますが、特に八鹿高校において暴力が用いられた。これに対して教育委員会あるいは教育関係者、校長先生が暴力に加担しているかどうかという問題でありますが、これまでのところ、兵庫県教育委員会からの報告では、暴力というものに加担しているという報告は受けておりません。  暴力それ自体の詳細な調査というものは、ただいま公安委員長から御報告がありましたように、事実関係というものを十分に調査しなければならない問題でございますが、それについては公安委員長が申されたとおりでありますが、暴力に教育委員会関係者、校長が参加しているというふうには、私たちはいままでのところ、報告を受けておらないというのが実情でございます。
  39. 不破哲三

    不破委員 文部省が県の教育委員会からそういう報告を受けていないということは、きわめて奇怪なことだと思うのです。  この間、参議院で星野議員が、南但馬では一月の十八日に、事もあろうに中学生を全部集めて、そしてこの犯罪を起こした解同の丸尾派、これの応援の決起大会をやった、それについて学校当局が関与している疑いがあるかどうかと質問しました。文部大臣の答弁は、県教委の報告によればそういう事実はないと、こういう答弁だったと思います。ところが、いまはテレビ時代ですから、この永井文部大臣の答弁がテレビで南但馬にやはり放映されました。私どものところには、即座にさまざまな報告が上がってきました。文部大臣は全くうその発言をしている。正確に言えば、うその報告を受けている。  たとえば、それで早速いろいろな書類が回ってきましたが、あの南但馬の中学生を集めた丸尾派の暴力事犯応援の集会場をだれが借りたかというと、これは中学校の教頭であります。ちゃんと書類もあります。だれが周りの町から中学生を運んだかというと、これは町当局が出したマイクロバスであります。それから、生野中学という中学では、十七日、前の日に、この集会に生徒を参加させるかしないかというのを、生徒を自習にして、職員が大職員会議をやっている。結論としては行かないということになった。ところが、放課後に、校長が生徒を全部集めて、あしたの集会には行きなさいということで、行ったという。ほかの関宮中学という中学では、行った数が少なかった。そうしたら、朝田・丸尾派に動かされている生徒の解放研から校長が結問されて、校長の訓辞の仕方が悪いから余り行かなかったのだ、解放研やその代表に、学校の職員を全部集めて、教育をさせろ、こういう要求が出ている。これは一例ですけれども、こういう無数の事実が即座に、私どものところへ上がってまいりました。文部省が本気で調べるならば、こういうことはすぐわかることであります。  私がこの問題を言うのは、昨年、八鹿のあの暴力事件、五十何名の教師が十何時間もリンチを受けて、大変な被害を受ける。いまだに入院している人もあります。それが異常であるだけではなしに、それが明らかになった今日でも、あの南但馬の学校全体がそういう方針で支配されている。これが日本の教育にとって大問題だからであります。  私はここにいろいろな資料を持っておりますが、たとえばことしの正月に養父町では、三つの中学校の共同の決起集会が中学生によって行われました。休み中であります。そのときに、建屋中学校というところでは——ここに書類がありますから、あとでお渡ししますが、中学校長、生徒会長、解放研部長の連名で、全校生徒への緊急連絡が出ております。「下記により養父町内三中学校共闘会議による決起集会が行われることになりましたので、緊急ですが、早昼を食べて午前十一時三十分までに中学校に集合してください。」。校長名の緊急連絡であります。  それから、また同じ一月六日に出ていることですが、朝来町では、教育長職務代行者古川某という人物の名前で、隣の八鹿高校の生徒で朝来町に住んでいる在学生とその保護者に対して、学習会のお知らせが行っております。八鹿高校の問題は、部落問題抜きの特定思想のでっち上げにより全国規模の闘いになってまいりました、だから学習をしなければいけない、一月八日、町の福祉会館で学習をやるから来なさいという連絡であります。講師はだれか。丸尾という、福田さんの方で二度もつかまえた男であります。これが講師で、それに教育長職務代行者古川というのが並んで講師になる。町からの投書によりますと、実際に来たのは丸尾だけだったという。  それから、また一月十一日には、朝来町で同じような集会がありました。これは自治大臣の管轄になりますが、そのお知らせは、区長会長、婦人会長、それから、これは文部大臣になりますが、その町の幼稚園、小学校、中学校全部の育友会長、PTAです。これの連名で全部の町民にお知らせが行って、三世帯に一人ずつ集まってください。つまり、町当局とそれから学校当局、教育委員会、これが全部一緒になって、そういうことをやっているわけであります。  しかも、さらに重大な問題として報告しなければいけないのは——これは全部、私どもの独断ではなしに、彼ら自身が出した文書によって明らかにできることでありますが、最近丸尾を逮捕しました。朝来における橋本先生というのを、六日間も集団で包囲して、投光器や拡声機で攻撃をして、不法監禁したという事件であります。ところが、その事件の彼らが出した文書を見ますと、共闘会議のメンバー、この橋本糾弾闘争の参加者、共闘参加者がずらりと出ております。その中には、教育委員会の但馬教育事務所長、但馬文教府長、豊岡市教育委員会、但馬教育委員会連合会、そういうものがずらり名前を並べています。これがいろいろな努力によって解除をされて、一応この糾弾が終わったというときに、総括会議が今度やられている。十月三十日に朝来町の福祉会館で総括会議をやっております。その総括会議の記録を見ますと、きょうの会議の趣旨説明をやったのは、兵庫県教育委員会但馬事務所長上田先生。教育委員会事務所長です。何をやっているかというと、「橋本糾弾第一次は勝利した。闘いはこれからである。……赤旗のビラ」と書いてありますから、わが党がまいたビラに対して闘おうということを、教育委員会の但馬事務所長が総括会議をやっているわけです。  さらに、八鹿事件が十一月の二十二日にありました前の日の二十一日には、但馬地区の教育事務所から但馬全体の教育委員会に連絡があって、教育長、教育委員全員が集められまして、緊急会議。そこで、八鹿における糾弾闘争では解同の立場を支持する、この決議を全部やって、応援する体制を相談し合っているわけであります。これはそれに参加をした豊岡市の衣川という教育長が、悪いとは思わないと、はっきり私どもの調査に応じて答えていることであります。  しかも、あの十一月二十二日の十三時間にわたるテロのときには、県の教育委員会がその学校にずっと参加をしていました。以前から数日間にわたって参加していました。理由があるのです。いままで但馬でそういう糾弾が行われるときに、県の教育委員会が立ち会っていないと不法な犯罪ということになるので、糾弾がやられるときには全部、町の教育委員会か県の教育委員会が立ち会うことになっている。八鹿は県立高校ですから、町では間に合わない。県からわざわざ乗り込んでいって、参事が立ち会っている。そしてこの暴行当日、現場に出入りしているのが教育委員会の関係者。赤いはち巻きを締めて教育事務所長は出入りをした。そして警察から問い合わせがあったら、教育委員会の関係者と校長が、何も平穏無事であって警察は手を出す必要なし、そういう答弁をしたと言って、警察当局が大変怒っている状態であります。しかもそればかりか、校長が、まだ教員の数が足りない、逃げたのがいるということになって、欠席している教員の家へ全部電報を打って、業務命令で、来いということをやりました。この業務命令も、教育委員会の参加者が同意をして出しているわけであります。最後にすっかり暴力が終わって、傷ついた先生たちが一人一人引っ張り出される。確認会といって、謝らされます。謝らされるところには、ちゃんと立会人として、上田という教育委員会の事務所長が立ち会って参加をしている。問題はこれだけ深刻なんです。しかも、そのあと十一月二十五日には、兵庫県教育委員会の文教府から、この闘争の総括会をやりたいから集まれという指示がありました。これは文部大臣も御承知のとおりであります。それについて、私どもが抗議をし、現地でも抗議をし、文部省にも抗議をしました。ようやくその直前になって取りやめたわけであります。つまり、そういう八鹿の暴行、朝来の暴行、全部これが教育委員会の共謀のもとにやられているということは明白な事実なんです。その点について、文部大臣はいまだに何の報告も受けていないのか、何の調査もしていないのか、そのことを明確に伺いたいと思います。
  40. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私が申し上げたいことは、この問題について、教育委員会から報告が来るのを待って拱手傍観しているということではないのでございます。そうではありません。ただいま御指摘がございましたように、但馬文教府の関係で開かれようとした会合、これもやめるようにというふうにして、それは開かれなかったことは、お言葉の中にあったとおりでございます。そのほかに、昨年の十二月十九日には、朝来中学校解放研の生徒が中心になって、八鹿高校事件の関係者尾崎竜に対する激励のはがきを出すというような事柄もございましたが、これに対して、校長がそれを取りやめるようにという指導を、兵庫県教育委員会もやりました。これに対して文部省は、こういう方向を進めるようにということもやったのでございます。  そこで、さように申し上げているということは、万全の措置をとってすべてのことをみごとに処理したかというと、そうであると申し上げているのではないのでございます。私は実は関西に住んでおったんです。そこで、同和教育というものが、わが国の教育を推進していきますために非常に重要なものであるということを、相当程度は認識しているつもりでございます。同時に、これはなかなかむずかしい、それもまた認識しているつもりでございます。  そこで、暴力は絶対にいけないのでございます。暴力は絶対にいけない。しかし、これを進めていく進め方につきまして、幾つかのポイントがあると思いますが、まず不破書記局長も御賛同いただけることの一つは、わが国の教育を進めていく上に、文部省というものに非常に責任があります。と同時に、単に中央集権的に進めていくということではだめなんだと思います。そのためにこそ教育委員会というものがあるわけでございますから、教育委員会というものがやはり責任と判断を持たなければいかぬ。そこで、それを十分に尊重しながら、われわれが非常に熱心に連携、そして連絡をとりながら事態に処していくということは、きわめて大事なことです。そこで絶えず連絡をとっている。(発言する者多し)
  41. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御静粛に願います。質問しているのは不破君なんですから、静粛にしたまえ。
  42. 永井道雄

    ○永井国務大臣 次に、もう一つのことを申し上げたいのは、暴力は絶対にいけないんですが、同和教育というものは非常にむずかしい、そして重大なものでございますから、これに関しまして、これを進めていく上で、いろいろ違う考えというものもあるんです。この違う考えというものが、純粋に教育的に——暴力はもとよりのこと、政治的な配慮というものを持たずに、純粋に教育的にいろいろな考えというものがお互いに交差いたしまして、そこから実りある効果というものが出てくるように配慮しなければならない。  そこで、私たちはなお、その気持ちを持って、大いに兵庫県の教育委員会と連絡をとりながら、実は山崎政務次官も行きました。いま申し上げたような幾つかの事例がありますが、かといって、それでもって満点であるというようなことを申し上げるのではない。なお一層の努力をしなければいけない。いま承りましたいろいろな資料というようなものも、十分に参考にして考えていかなければならない、かように考えております。
  43. 不破哲三

    不破委員 いま具体的な指導をしたと言われました。たとえば寄せ書きの問題についても徹底しないわけです。これはきのう現地から受けた報告ですが、生野小学校という小学校では——小学生ですよ、すべての学年の小学生に、丸尾らの逮捕者に対する寄せ書きを、先生が率先してやらしている。中学じゃないんです。そういうことが、文部省の指導にもかかわらず、起きているような異常なことがいま兵庫県では進んでいるんです。いま教育の中央集権の問題と地方自治の問題を言われました。そのとおりであります。しかし、県の教育委員会が、国の憲法にも合わない間違った立場根本的に立ってしまって、異常な事態が兵庫県に進行しているとしたら、そのときには政府の責任きわめて重大なんです。だから、私はこのことを申し上げているわけです。  そこで、教育委員会のことについて伺いますが、昨年の十二月十三日に、兵庫県の教育長白井に対して、部落解放同盟兵庫県連小西——朝田派の兵庫県連ですが、そこから抗議文が出されております。質問書が出されております。これに対して、県の教育委員会がどういう態度をとったか、報告を受けておられるでしょうか。受けているかいないかだけ伺いたいと思います。
  44. 永井道雄

    ○永井国務大臣 受けております。
  45. 不破哲三

    不破委員 兵庫県の教育委員会が出した回答についても御存じですか。
  46. 永井道雄

    ○永井国務大臣 存じております。
  47. 不破哲三

    不破委員 知っての上で、兵庫県教育委員会について、そういうことを言われているんだとしたら、私はこれは問題はもう少し深刻度が中央の方にも及んでいると見ざるを得ないかもしれません。というのは、この質問と回答は、きわめて日本の教育の歴史の中でも異常なものであります。  紹介しますと、第一の質問は、「八鹿高校教師群に対して、どのような措置をとるのか。」つまり殴られて、暴行されて傷を負わされた教師群に対してどういう措置をとるのか、これが第一の質問であります。それに対する県教育長の回答は、「八鹿高校の教師群に対しては、」中をちょっと省略しますが、「継続的な指導説得をとおして、教職員の体質改善を図っていきます。また、人心一新を図るため、段階的、計画的な人事措置をも含めて考えていきます。」つまり、体質改善を図って配転するというんです。  これは前歴があるんです。というのは、去年の四月でしたか、兵庫県立の姫路の高等商業で、朝田派に踊らされた解放研が五人の先生をボイコットする、そして県の教育委員会からも学校にたまたまちょうど来ている日に——また来ている日なんですが、その来た人物も、八鹿高校に行った人物と同じですが、その生徒たちによって、先生方がぶん殴られる、全治十日間のけがを負う、こういう事件があります。県の教育委員会がどういう措置をとったかというと、人事刷新の措置であります。殴られた先生方が、もう教壇に立つ必要はない、研修を受けろと言われて、いまだに四人の先生は、研修と称して教壇から追われている。その研修の中には、解同県連による教育を受けろ、こういうことまで県の教育委員会は要求している。去年のことであります。現に進んでいる事態であります。これが第一項。  第二の質問は、「文部省に対して、どのような報告をなされるのか。」文部省への報告の仕方の質問であります。その答えは、「文部省に対しては、事件の現象面にとらわれず、」——現象面というのは暴力事件。「現象面にとらわれず、同和問題の本質を正しくとらえ、この視点にたって同校の同和教育の実態を、詳細に報告いたします。」つまり、先生方に問題があったんだという彼らの立場に立って報告をいたします。「なお、地元市町、解放運動団体の見解ならびに流布された差別キャンペーン等は別紙として添付いたします。」つまり、どんどんいろいろなビラも送って、暴力じゃない、問題はここにあるんだということを、文部省に対して報告をし、文部省の体質改善を図ろうというのでしょう。  第三は、「県警に対して、どのような意思表示をされるのか。」今度は福田さんの関係であります。これに対しても、「県警に対しては、純すいな教育的視点から、差別解消を阻害している事実を明らかにし、部落問題の本質をふまえて対処されるよう申し入れます。」ややこしい言葉ですが、余り取り締まるなということを、その見地から申し入れたい、これが回答であります。  最後に第四項。問われてもいないことに関して答えているわけですが、「今後は、同和教育を正しく位置づけ、解放同盟兵庫県連との連帯をはかりながら」やっていく。県の教育委員会が解放同盟兵庫県連との連帯を図る。いまあなたが言われたように、解放運動の中でも、同和教育の問題でも、いろいろ立場もあり議論もあります。そのどれが正しいかということに関して、ここで議論しても時間が足りないでしょう。しかし、そういう中で暴力的な事犯まで引き起こした解同朝田派との連帯を、県の教育委員会が基本方針として約束する、そういうことになったらば、教育の中立性はどうなりますか。教育委員会の責任が果たせるでしょうか。  私は、このような回答を解同県連、朝田派に対して平気でやるような、しかもその日はまさに十二月十九日、この席で永井文部大臣が村上議員の質問に対して、教育の中立性に関して大いに強調されていた、まさにその日であります。そのときに県の教育委員会はこういう態度をとっている。これはまさに異常な事態であり、こういうことがあるから、あの南但馬のようなことが起こるのだ、問題はそれだけ深刻だということを言いたいと思うのです。  しかも、兵庫県の教育委員会だって、昔からこのようなでたらめな態度をとっていたわけじゃないのです。ちょっと報告をしておきますと、事の起こりは七二年四月であります。ここで県の教育長が解同朝田派に徹底した糾弾を受けた。その結果、この四月に、教育委員会の指導主事を杢谷という教育次長が全部集めて、そこには解同の幹部も何人か参加をして、そこでいままでの非を全部認めて、これからは解同朝田派とその方針で県の教育をやる、これがわれわれの方針だということを、全部の指導主事の前で言わされたわけであります。それから兵庫県の教育の荒廃が始まった。問題は南但馬だけじゃないのです。あなたも調べて御存じでしょうが、姫路にも神戸にも尼崎にも、あるいは芦屋にも、県立や市立の高校が解同朝田派に握られてしまって、教育がもう大変荒廃してしまっている。それはその付近では周知だという高校が、そういう地方にも続々出ております。  そういうところまで県の教育委員会が落ち込んでいるときに、この問題の禍根を絶つには、まさに日本の憲法に基づき、教育基本法に基づいた、あるいは教育の中立を保障した、同和教育についても、同対審の答申に基づいた正常なルートに根本から変える責任が文部省にある。日本政府にある。その点に関して、永井文部大臣がどのような見解をお持ちなのか。もう文部省には本当の報告はしないということを解同朝田派に約束をした県の教育委員会の報告をいつまでも待って、それで日を暮らされるつもりなのか、そのことを伺いたいと思います。
  48. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいまお読みになりました回答書でございますが、実は私もそれを持っております。そこでよく読んで検討したのです。それに対してどうしたかというと、こういうふうな回答書というものの内容、趣旨は不適切であるということを、すでに教育委員会に言っております。ということは、どういうことであるかというと、教育委員会が報告をしてくるのを待って、そうして、ああそうですかという仕事をしているのではないということでございます。そうではない。そこで、いまや教育委員会と一層話を進めていくべく、すでに着々と仕事をいたしております。しかし、今度は教育委員会のために申しておきたいことは、いままでの報告を受けましたところでは、暴力それ自体に加担しているという報告はない、このことは申し添えておく必要があります。
  49. 不破哲三

    不破委員 教育の問題は、これは非常に重大な問題であります。兵庫県の教育委員会のもとには、何百という、小学校、中学校、高校合わせると千二百十八の学校が預かられている。そこに通っている生徒、児童の数は七十八万人であります。そういう膨大な学校とたくさんの数の子供たちに対して責任を負っている教育委員会が、やることなすこと、文部大臣が不適切だと言わなければいけないような、そういうことを基本方針にして行動している。その結果いろいろな事態が起きている。私は、これは単に地方の問題ではなしに、国政上の重要問題として、ぜひ、この兵庫県の教育の現状について、文部省がしっかり調査をされて、この国会予算委員会に、どういう点で不正常なのか、このことを報告されることを求めたいと思うのです。  この問題が特に重要なのは、単に兵庫だけにとどまらないからであります。たとえば東京でも、何回もわれわれ国会でも問題にしましたが、東京の解同朝田派から要求書が出されています。学校の副読本をつくれ、彼らの立場に立った副読本をつくり、東京の中学、小学、高校の全部の先生を彼らの立場で研修をせよ、そういう立場に立たせろ、こういう要求が平気で東京都に出されているわけであります。こういうことがやられているのは東京だけでもない。関西各地でも、日本の多くのところでも、どんどんどんどん広がっている現状であります。その一番典型的な、一番極端にあらわれているこの兵庫の問題に関して、永井文部大臣の最初の仕事の大きな問題の一つになると思いますが、どうかぜひ全面的な調査をされて、その中間報告でもいいですから、この国会に報告をしていただきたい。教育の現状が正常であるかどうか、その問題について報告をしていただきたい、そのことをお願いしたいと思います。要望したいと思います。考え方を伺います。
  50. 永井道雄

    ○永井国務大臣 国会にどういう姿で報告するかどうかということは、これは検討しなければいけないと思いますが、しかしながら、すでにいろいろ調査を進めているのでございますから、その進めている調査というものを適切な方法で、当然ここで議論の材料にしていただくということは、私どもの務めであると、かように考えております。
  51. 不破哲三

    不破委員 あと一つ伺いたいのですが、兵庫県では、県の教育委員会が同和教育指導員というものを、五十六名ですか、任命しています。この中に、南但馬で言いますと、解同の組織の書記長であるとか、書記長代理であるとか、支部長であるとか、そういう者が任命をされるわけです。それで県から六万円ほどの給料をもらう。行動費は全部県持ち、行動は報告しなくてよろしい。つまり、そういう公務の役職を受け、人件費を保障してもらって、そしてそういうような糾弾会をやる。この指導員の一人が八鹿高校のテロ事件のときにも、ちゃんとその現場に居合わせたことは確認をされておりますが、そういうことがやられているわけです。  だから、解同朝田派が行動する場合、これはそういう公の肩書きを使って行動する場合が非常に多いのです。しかもその行動の内容は、人件費は県が持っていますが、行動の内容は、彼らの組織の行動どおり、県に報告する必要もない。こういう制度が、教育の分野だけではなしに、大阪、京都、東京など調べてみますと、かなりの分野に広がっております。あるいは指導員だとか相談員だとか、そういう名称をつけて、実際に公務員でない者に肩書きを与えて、人件費を払って彼らの活動を保障する、彼らの無法な行動が公務の名のもとにやられるようにする、そういう制度が非常に広がっておりますが、自治大臣、この制度について御存じかどうか。御存じだったら、それが適切であるかどうか、そのことだけ最後に一言伺いたいと思います。
  52. 福田一

    福田(一)国務大臣 そのようなお話は聞いておりますけれども、実際にわれわれの方でまだ的確に把握してはおりません。しかし、いずれにしても、そういうこともありとすれば、行き過ぎは是正しなければならない。私は、同和対策というものは、やはり国としてはやらなければいかぬ、差別撤廃はせなければいかぬというたてまえに立っていきますが、そのやり方については、いままでのような対立関係がなくなって、そして差別がなくなるようにぜひしなければならない、また皆さん方にもお願いをいたしたい、こういう気持ちでおるわけであります。
  53. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 午前中の質疑は終了いたし、午後零時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後零時三十二分開議
  54. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。不破哲三君。
  55. 不破哲三

    不破委員 午前に続きまして質問をいたしますが、今度は、外交、安保の問題、これについて伺いたいと思うのです。  総理は、代表質問のときにも、安保の問題に関して、野党といえども、日米安保条約堅持ということは当然の前提として、日本政治を議論すべきじゃないかというような意味の発言をされました。この問題について、大分本会議でもいろいろ議論がありましたが、私はここでもやはり、具体的な事実に基づいて、一体どちらが国益に合うのかということをいまの時点で吟味してみる必要があると思うのです。  特に最近の日本をめぐる情勢を考えてみますと、一方ではベトナムへの再介入という問題が、総理がいかに言われようと、現実にアメリカ政策の問題として日程に上っております。それからまた、中東、ペルシャ湾に第七艦隊が進出する。この第七艦隊はどこに根拠地があるのか、それがすぐ問題になります。これは横須賀、佐世保が第七艦隊の根拠地であるということは隠れもない事実であります。こういう点では、一体、わが日本が結んでいる日米安保条約、それに基づいてアメリカに貸してある在日米軍基地、これがどういう役割りを果たしているのかということを、一九七五年という今日の時点で、われわれははっきり見きわめてみる必要があると思うのです。  それで、まず総理に伺いますが、総理は、日米安保条約は自衛隊とともに日本の防衛のためのものであると言われました。つまり、日米安保条約に基づく米軍基地、これは日本の防衛のための基地だということになると思うのです。  それで、これから先は質問なんですが、現に日本に置かれているアメリカの部隊や日本に置かれているアメリカの基地の中で、日本の防衛を主たる任務にしていない、海外に出動して海外で戦争行動をとることを主たる任務にしている部隊や、それを主たる任務にしている基地がある場合に、三木総理は、これを安保条約に基づく当然の基地として肯定されるのかどうか、それをまず伺いたいと思うのです。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 安保条約の目的といたしておりますところは、わが国の安全及び極東の平和、安全に寄与するということでございますので、わが国だけというふうに申し上げることは適当でないかと思います。そのために基地、地域、施設の利用をする、こういうことでございます。
  57. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この安保条約の性格、われわれは侵略的な性格には見ていない、防衛的な性格である。これは御意見が違うかもしれません。そういうことで、日本は、海外におけるアメリカの軍事行動は、事前協議によってチェックすることになっておる。われわれの主たる関心は、日本の安全であるということは申すまでもないわけです。したがって、そういうアメリカの軍事行動に対して、それが日本の安全に重大な関係があるかどうかということは、われわれが事前協議でチェックすることになっておる。  それから、最初に御指摘になった、野党が安保条約を堅持すべきだと私は言ったことはございません。政権の交代の場合において、国防とかあるいはまた外交とかいうものに対して共通の基盤があることが、円滑な政権の交代が可能であって、成熟した議会政治の国はそういう方法をとっておると言ったので、不破さんに対して安保条約を強要するような僭越な考え方はない。野党は野党として、おのおのの政策をお持ちになることは当然でございます。
  58. 不破哲三

    不破委員 別にわれわれ強要されるつもりはありませんが、三木さんがいま言われたこと、成熟度を、三木さんが言われたとおりに解釈すれば、そうなるということを少し翻訳して申し上げただけであります。  それで、先ほど宮澤外相が極東の平和ということを言われました。その極東の平和の概念の中には、台湾の防衛は入りますか。
  59. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 極東ということは、地理的にきちんと定義できるわけではございませんが、一般的にフィリピンあたりから以北というようなことは言われております。しかし、元来、極東というのは、御承知のように、地理的な概念ではなくて、わが国の平和と安全、それに相互的に関係のある地域というふうに、従来解釈としてとられておると思います。
  60. 不破哲三

    不破委員 じゃ三木総理に伺います。  前内閣のときに、日本と中国の間に共同声明を出しました。そして平和五原則を確認すると同時に、一つの中国の立場をとられました。アメリカがもしこの立場に反して、台湾の防衛、つまり台湾を防衛することになれば、いわば日本政府立場から言えば、一つの中国という立場ですから、中国の内政問題に介入することになります。台湾の防衛のために日本の基地を利用したり、台湾の防衛の任務を持った部隊を日本に置いたりすることになれば、これは日本政府の国策上も重大な問題になると思いますが、その点について伺いたいと思うのです。極東の範囲に台湾が入るか、入らないかではなしに、具体的に台湾の防衛という任務を持った米軍部隊が、安保条約のもとで日本にいられるかどうかという点であります。
  61. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申しましたとおり、地域としては含まれると解すべきでございましょうが、ただいまのような御設問にお答えすることは、私は日本の国益にならないと思いますし、現にそのような事態が起こらないふうに情勢が進んでおりますことを、私ども非常に喜んでおります。
  62. 不破哲三

    不破委員 外務大臣のレベルですと、そういう答弁になるのかもしれませんが、今度は総理大臣のレベルで、もう少し高度な答弁を聞きたいのです。  お答えできないというのでは、国会の議論にならないのです。安保条約というのは、厳格な解釈の問題でありますから、いろいろな問題を出されて、それはノーコメントの部分である、そういう聖域があったのでは、これは国会で安保の議論はできないじゃありませんか。台湾防衛という任務を明確に持った部隊が日本の国土にいることを認められるかどうか、ということを私は端的に伺っているわけであります。答えないということは肯定と解釈せざるを得ませんが、総理大臣の見解を伺いたいと思います。
  63. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 外務大臣が申したように、極東の範囲を、ここまではどの島が入る入らぬと言うことは非常にむずかしいことだと思います。私はやはり、安保条約というのは、日本の平和と安全というものが私の頭の中にあるわけですね。そういうことで考えて、まあ台湾というものも、極東というものの平和と安全の中に入らぬということは言えないと思います。しかしわれわれは、台湾にそういうふうな事態が起こってきて、安保条約を発動するような事態が起こることはないというような前提に立って、物を考えておるわけでございます。
  64. 不破哲三

    不破委員 では、もう一遍、明確に伺います。  戦争が起こったらどうするかと聞いているのではないのです。安保条約に言う極東の平和の中には、極東には、日中間のあの共同声明が出された以後も、台湾が入るというようにお考えなんですかどうかと、改めて聞きましょう。
  65. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府立場は、先ほど申し上げましたとおりでございますが、なお法律的にどうかということであれば、中華人民共和国政府と台湾との間に仮に対立があった——紛争が発展する現実の可能性があると私ども思っておりませんが、仮にそういうことがありますと、基本的には、それは中国の国内問題であると解すべきと思います。
  66. 不破哲三

    不破委員 そういう立場がようやく明確になりましたが、そうすると、その国内問題のために、米軍を日本の基地にそれに備えておくということは、安保条約の趣旨には現状では合わないと思いますが、いかがでしょう。
  67. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は法律解釈を申しただけでありまして、そのような事態は幸いにして起こらないような方向に進んでおる、これが私の考え方でございます。
  68. 不破哲三

    不破委員 私は、将来の問題ではなくて、現在の解釈を聞いているわけなのです。どんな部隊でも任務があるわけです。自衛隊だって任務なしにいるわけではないでしょう。みんな任務を持って、一定の役割りをするつもりでいるわけでしょう。現在の日本に台湾の防衛を任務とした部隊がいるとしたら、それは安保条約のもとで認められるかどうか、こういう問題です。外務大臣が答えにくかったら、前外務大臣と相談されても結構ですから、三木総理の見解を伺いたいと思います。
  69. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどお答えした以外に、つけ加えることはございませんが、条約の問題であれば、政府委員である条約局長がお答えをいたします、必要があれば。
  70. 不破哲三

    不破委員 必要です。
  71. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 先ほど外務大臣からお答えいたしましたように、安保条約に規定されておりますアメリカ合衆国軍隊の施設、区域を使用いたしますときの目的、これに、日本の安全並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するためというのが、条約上の限定と申しますか、制約でございます。したがいまして、そういう目的に寄与するアメリカの軍隊が日本の施設、区域を使用することは、安全保障条約上当然に許容されているわけでございます。
  72. 不破哲三

    不破委員 台湾の問題ですよ。そんなことは別に聞いてないのですよ、そんな幼稚園みたいな話は。台湾が極東に入るのかどうかと……。
  73. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 その極東と申します場合の地域的な範囲については、先ほど外務大臣がお答えになられたとおりでございます。台湾の地域は、地域的な概念としては入ってまいるわけでございます。
  74. 不破哲三

    不破委員 法律的な解釈としては、外務大臣は、台湾と中国の間に問題が起きたらば中国の国内の問題だと言われたでしょう。その国内問題のために、法律的には日本の基地を貸すことになるのですか。はっきりしてくださいよ、これは大問題でしょう。専門家の意見を聞くと、専門家がいよいよ怪しくなるのでは困りますから、だから私は、高いレベルで、三木さんに伺っているわけですよ。もう中国と共同声明を出してずいぶんになるのに、いまだにその解釈ははっきりしないのですか。政府がかわるたびに、改めて聞かないと答えは出ないのですか。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もう一度整理をして申しますと、いわゆる極東というのは、地域的な——必ずしも地理的な概念ではありませんけれども、先ほど申しましたような理由において、あの地域はその中に入ると考えることが相当である。次に、わが国の施設、区域を利用しております米軍は、わが国の安全及び一般的に極東の平和と安全に寄与するためにおる、こういうことでございます。
  76. 不破哲三

    不破委員 時間もありませんから、少し具体的に伺いましょう。総理は、どうも定見をお持ちのようでないので、立ち上がりませんから、もっと具体的に伺います。  沖縄には嘉手納に米空軍がいますが、あそこに第一八戦術戦闘航空団というものがあります。これは昨年九月の嘉手納空軍基地の再編制で、空軍基地の発表ですが、「嘉手納空軍基地における主な再編制は、第一八戦術戦闘航空団が当基地を代表する部隊に指定されたことである」というように発表されております。つまり沖縄の米空軍の最も代表的な部隊であります。本土を含めても、日本に派遣されている米空軍の一番代表的なものがこの第一八戦術戦闘航空団で、この機能、役割りによって、日本の米軍基地の機能、役割り、これが大半決められると言ってもいいくらいの位置を持っています。  防衛庁の長官または関係者に伺いますが、第一八戦術戦闘航空団はどういう任務を持って嘉手納に駐在しているか、伺いたいと思います。
  77. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 ただいまの第一八戦術戦闘航空団でございますが、これは日本に対します防空の即応体制と、それから米軍のカバーしております地域に対する支援体制というのが任務であるように聞いております。
  78. 不破哲三

    不破委員 その米軍の支援体制の地域は、どの範囲ですか。
  79. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 米軍の支援体制については、細かいことは私ども承知しておりませんが、先ほどから言われております極東の地域ということになると思います。
  80. 不破哲三

    不破委員 そうすると、つまり朝鮮で問題が起きようが、あるいは台湾と中国の間に問題が起きようが、その戦争に参加するつもりの部隊というように解釈をしていいですか。
  81. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 そのように解釈してよろしいと思います。
  82. 不破哲三

    不破委員 これはきわめて重大なのです。つまり、中国との間にああいう共同声明を出し、一つの中国という立場に立ちながら、もし一たん台湾が中国との間に事を構える、そういうことになった場合には、日本におる米軍は、その台湾の側に立って戦争をする、それをちゃんと承知の上で、嘉手納に基地を貸してある、こういうことになるわけですね。これでよろしいですか、外務大臣。
  83. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私の答弁は、先ほどから申し上げておりますとおり、一般に極東の平和と安全に寄与する、こういうことに尽きると思います。
  84. 不破哲三

    不破委員 そろそろ三木さんに見解を伺わないといけないと思います、これは重大な国際問題ですから。  一体日本にある米軍が台湾防衛の任務を持っているかどうかということは重大問題なんですよ。これを認めるのが、中国との国交回復後の安保条約なのか、それとも、それをその部分に関しては認めないのが安保条約なのか、そこのところ、総理の明確な見解をまず伺って、次へ進みたいと思うのです。
  85. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 極東の範囲内に入るということは、先ほどから申し上げておるわけでございます。われわれはそういう事態は起こらないと思っておりますが、いろいろな軍事行動というようなものがあった場合には、事前協議の対象になる。事前協議におけるわれわれの日本立場は、その極東の平和と安全が日本の平和と安全に対してどういう影響を持つかということが、判断の基礎であることは明らかでございます。
  86. 不破哲三

    不破委員 私は明確な答えを期待しているのです。それは問題は明確だと思うのです。あなた方は、中国と国交回復の共同声明を出された。一つの中国という立場をとられるというように明確に約束された。だから、そこから出てくる答えは、さっき宮澤さんが言われたように、台湾海峡をめぐる事態は中国の国内問題である。国内問題ならば、日本は干渉できないはずであります。介入できないはずであります。しかし、たとえ日本の自衛隊が動かないでも、その国内問題に対して介入しようとねらう国があって、それが日本の基地を利用しようとすれば、これは国際政治の上では、主体性のある日本の主体的な行動——そういう国に基地を貸したという、そういう軍隊に基地を貸したという、主体的な行動になるはずなんです。それが問題なんですよ。それを認めると言うのであれば、これは、前の佐藤・ジョンソン協定のときの台湾条項というものは、さっぱり消えるどころか、依然として有効に日本が守っているということになる。一つの中国の立場を守っていないということになる。だからはっきり言っているのです。  将来どんな事態が起きたかではなしに、現在の日本に、台湾防衛の任務を明確に持った米軍がいたら、三木さんは、これは日米安保条約と、中国との日中国交回復の国際的義務と、両方に照らして、合法的なものであるとお認めになるつもりですかと、このことを伺っているのです。これは専門家でなくとも、答えられるはずであります。
  87. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御議論の前提に、一つ大事なことが抜けておるのではないかと思います。それは、安保条約そのものは、あくまで集団的な自衛権というところにあるわけでありまして、よそに対してこちらから手を出すというような性格を持っていないことは、もうよく御存じのことだと思います。そして、その集団的自衛権の範囲において、極東の範囲ということを言っておるわけでございますから、ただいまおっしゃいましたようなケース、特にある地域だけを目指して、何か軍隊がいる、いないというようなことは、私は、現実の問題として、ないのである、こう考えております。
  88. 不破哲三

    不破委員 外務大臣がアメリカと条約を結んで——宮澤さんは、日米交渉にはかなり歴史的にお詳しいと思っているのですが、在日米軍に関してそれぐらいの認識しかお持ちでないとしたら、これまた私は非常にはだ寒い、心寒い思いがします。何も地域的任務を持たないで、安閑として暮らしている軍隊なんというのは、地球上どこにもないのです。軍隊が配置されているからには、必ず明確な任務を持って存在しているわけです。  それでは具体的に申し上げましょう。具体的な材料に基づいて、議論を前へ進めたいと思うのです。  ここに私は、沖縄復帰後、沖縄返還協定後に、米太平洋空軍が出した第一八戦術戦闘航空団についての書類、まああの航空団はF4Cファントムという部隊から成っているわけですが、この沖縄におけるファントムの作戦行動要領という文書を持っています。これも御参考までに、政府がお持ちならいいのですが、お持ちでなければ渡しておきます。(三木内閣総理大臣「持っていると思いますがね」と呼ぶ)もし持っていて、さっきの宮澤外務大臣の答弁が出てきたんだとしたら、これは国会をだますにもほどがあると思う。  この文書によりますと、これは実はちょっと解説をしますと、ファントムF4Cの作戦行動要領というのは全世界的に決められているのです。これがファントムF4Cの全世界の作戦行動要領であります。このうち第八章というのがありまして、これはこの部隊が配置されるその先々での現地の作戦行動を決める。つまりローカルな地方作戦行動の第八章があります。これがこの全世界共通版には抜けているわけです。それでいま差し上げたのが第八章であります。つまり、沖縄におけるローカルオペレーション・プロセジャー、沖縄における作戦行動要領を決めたのがこの第八章なんです。それで、日付は一九七三年一月三十一日になっていますから、紛れもなく、沖縄がわが国の施政権下に入った後の資料であります。  これは全体で二十三節から成っております。セクションAからセクションWまで二十三節になっているのですが、その中で、前半には全般的な極東での作戦行動が書いてある。ところがセクションLからセクションSまで八項目はコリアンオペレーション、朝鮮での作戦行動についての指示であります。見出しだけでも、朝鮮での作戦行動、朝鮮での兵器投下、朝鮮での地上攻撃戦術、朝鮮での夜間地上攻撃、朝鮮での空中戦攻撃、朝鮮での空中給油、朝鮮での迎撃訓練、朝鮮での計器要領、これだけのことを明確に定めているわけです。次のセクションTからセクションWまでは台湾オペレーション。台湾での作戦行動、台湾迎撃訓練、台湾兵器投下、台湾機能点検飛行の特徴、この四節が台湾に関して決められているわけであります。  つまり、どこの地域を限定して持っていないどころか、この文書で明らかなように、沖縄に駐留している第一八戦術戦闘航空団は、朝鮮での作戦と台湾での作戦を二大任務にして、毎日毎時そのための訓練をやっている部隊であります。このことを、文書をお持ちで御存じなんでしょうか、外務大臣に伺いたいと思います。
  89. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この文書の性格をよく存じませんので、いまこれについてあれこれ申し上げることはできませんけれども、おっしゃいましたように、いまのようなことが書いてあります。書いてありますが、しかし、どうも戦闘行動のようなことは一向に書いてないように見えます、この見出しを拝見しますと。
  90. 不破哲三

    不破委員 これは戦争計画書ではないのですよ。作戦行動要領、つまり、あなた方の言う平時におけるこの部隊の訓練や行動や活動や、そういうものを定めたものであります。だから戦争をやるということはここには書いてありません。書いてあったら大変です。しかし、この部隊が朝鮮での地上攻撃、朝鮮での迎撃作戦、朝鮮での空中戦、台湾での地上攻撃、台湾での空中戦、台湾での迎撃作戦、こういうことを平時において作戦行動要領の主要部分にして訓練をやっておるということは、この部隊が戦時になったらどこで戦争しようとしておるか明白であります。  それから、この問題についてさらにもう少し突っ込んで考えてみますと、現在嘉手納にいるファントムは二つの部隊に分かれております。第四四、第六七という部隊です。それが米中接近以後、それまで台湾に独自に配置されていたアメリカの空軍が一応撤退しました。それじゃ台湾防衛の任務はどうなったのかというと、これは嘉手納にいる第一八戦術戦闘航空団が引き受けたわけであります。このことは嘉手納で出している米軍基地の機関紙、嘉手納ファルコンというものがありますが、これにも明瞭に書かれておるのです。それ以後台湾の防衛を引き受けている。ですから、現在でも四四と六七の部隊のうち、一つは必ず台湾の清泉崗というところに派遣している。これが大事なんです。嘉手納にいる嘉手納の司令部が台湾の出先機関を指揮下に置いているというだけじゃないのです。二つある戦闘機中隊のうち、一つは必ず行って、一カ月交代で交代をしているわけです。つまり両方とも台湾防衛の任務を持っているわけですから、嘉手納を根拠地にして、一カ月交代で絶えずファントムの部隊が行く。十二月にある部隊、六七が行っていれば、一月には四四が行く、二月には六七が行く、こういうチェンジで、台湾防衛をこの部隊が引き受けている。架空の問題ではないのです。まさにこれは現実に起きている。現在の日本に配備されている第一八戦術戦闘航空団の任務であります。  それで、さらにもう少しこの部隊の実態をわれわれが調べてみたところを言いますと、もう一つ第一八戦術戦闘航空団にはRF4Cといって、ファントムですが、偵察用につくられたものがあります。これは私どもその航跡をずっと調べてみますと、ほとんど朝鮮に毎週のように行って作戦しております。  それで、この問題は、私どもさっき言った台湾防衛の問題とあわせて、核の問題が出てくるのですけれども、この部隊、これは第一五戦術偵察中隊、RF4Cから成っている部隊ですが、この部隊が昨年の十月に、コマンドモーニングという演習を朝鮮でやりました。どういう演習かといいますと、全面戦争が起きたときにこの部隊がどういう役割りを果たせるか、ちゃんと果たせるだけのものになっているか、その演習であります。  私ども、その演習の報告書を読みまして驚きました。何を任務にしているかといいますと、私ども前からいろいろな軍事雑誌を読んで、RF4Cというのは、これは核戦争の目と言われている。つまり、アメリカの核爆撃機が敵地を爆撃する、核で攻撃をする、そのときに核爆撃の被害を偵察することを主任務にした部隊だということを前から聞いていたのですけれども、このコマンドモーニングという演習の報告書を読みますと、まさにそのとおりなんです。後でまた資料を差し上げますから、真偽のほどは丹念に確かめていただきたいのですが、この搭乗員が緊急核爆弾効果判定——上から写真を撮る、それで核爆弾の効果がどれだけあったかということを、写真を飛行機の中で現像してすぐ判定をして、その結果を部隊の司令部に送るという任務を与えられている。その任務がちゃんと果たせるかどうかということが、この報告の中に書かれているわけです。  最後の搭乗員は、緊急核爆弾効果判定のための写真判読を行い、核緊急写真情報報告を作成するよう要求された。そのときに用紙がうまくそろっていなかったからまずかったとか、演習ですから、そういう欠陥もずっと書いてありますけれども、ともかくこの部隊がそういう核爆撃の支援部隊としての任務を担っている。それが嘉手納にいて、朝鮮での作戦行動に備えて行動している。これが一つ重要な問題です。  それからもう一つ続けて言いますと、F4Cと核の問題も、われわれの調査で非常に明らかになってまいりました。たしかこの核の問題では、私、三年前に福田総理が外務大臣であったころに、沖縄協定で沖縄が日本の施政権下に入った場合、日本に核部隊を置くかどうかということは大問題になるという質問を、この席でしたことを覚えております。その判定の大事な目安は、沖縄にある空軍部隊が、模擬爆弾にせよ、核投下訓練をするかしないか、これは大事じゃないか。核兵器を持ち込まないと言うのなら、核投下訓練をして、いつでも核攻撃できるような部隊を置けないじゃないか、その点から言えば、この訓練を認めるかどうかということは大問題になるということで、伺ったことがあります。そのときに、佐藤首相と福田外相は、沖縄返還後は模擬爆弾の演習を差し控えてもらう、もう核投下訓練はやらないようにアメリカに警告する、警告すれば必ず守ってくれるだろうということを言われました。それは間違いなかったですね。
  91. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 警告と言ったかどうか、要請するというふうに言ったように覚えております。まあ大体、しかしおっしゃるとおりでございます。
  92. 不破哲三

    不破委員 要望はいいですが、福田さんの記録によりますと、つまり、これからアメリカに申し入れをする、警告を発する。日米間ですから、法的にはいろいろむずかしい問題があるのですが、これは解決し得るのではあるまいかと、かなり外務大臣として明確な見通しを言われました。私は、アメリカがその警告を受け入れないときはどうするつもりだということを聞きましたら、これは福田さんではなしに佐藤首相ですが、私どもは共産党とは違っておりまして、アメリカとは十分信頼し合うということですから、日本のこの率直な要望は必ずこたえてくれる、こういうことを答弁されました。ところが、昨年来私どもが指摘していますように、この要望はこたえられないで、沖縄での核訓練が再開されています。そうですね。その点についてお答えできる大臣の方にお聞きしたいと思います。
  93. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年の七月でありましたか、八月であったと聞いておりますが、米側から、日本国民の核兵器に対する特殊な感情はよく知っておる、しかし自分たちもいろいろな可能性、その中にはもちろん考え得るいろいろな可能性があると思いますけれども、それに対して常に訓練をしておかなければならないという立場は了解してくれるであろう。したがって、いわゆる模擬爆弾でございますか、その演習について、そういう日本国民の気持ちも考えながら、最小限にこれをとどめることを考えたい、こういう答えがございました。  で、確かにいろいろな可能性に対処しておかなければならないというのは、これは当然のことでございましょうから、その立場は理解できないわけではありませんけれども、私どもとしては、日本人の国民感情はこうでございますから、なるべくそういうことはやはりやめてほしいということは、今後とも先方に要請をし続ける考えでございます。
  94. 不破哲三

    不破委員 できるだけ最小限にしたいということで、結局、前佐藤内閣のときには、本土復帰後は日本の国内では核訓練はやらせないようにすると、政治的な約束を国会でされたのに、それが破られた。破られても、最小限にするという言い分だったから認める、これがいまの内閣立場だと思うのです。しかし、いま差し上げました資料をよくごらんになっていただきたいと思うのです。アメリカのF4Cは、沖縄の嘉手納にいる部隊は、最小限どころか、沖縄で核訓練することを基本任務にしているのです。  このセクションDというところに、兵器使用という項目があります。その中には、スペシャルウエポン、特殊兵器という項目がありますが、この特殊兵器の訓練を作戦行動要領の中に特別に入れてあるのです。つまり、沖縄復帰後にわざわざつくられた七三年一月三十一日付の文書で、復帰後の日本で核訓練を恒常的な任務としてやるのだということを明確に規定しているわけです。しかもその中には、核訓練の場所として、伊江島と出砂島という二つの島が指定されています。われわれいままで伊江島だけだと思っていたのですが、出砂島という、これは無人島ですが、この無人島が改めて核訓練の場所として指定されていることを知りました。  それで、この文書には後ろの方に地図がかいてありまして、政府には差し上げてありますから、ごらんになれると思うのですが、こういう地図がありまして、伊江島で核訓練をやるときには、パターンニュークリア、核投下用のパターンとして、こういう軌跡を描いて、こういう航路を描いて進入する。そこまで明確に指定されているわけです。  それからまた、もう一つの出砂島、これも指定をされています。これは夜間の核訓練の指定図であります。これが出砂島における、これは昼間の核訓練の指定図であります。こういう指定図まで明確にして、恒常的な任務として、核投下訓練をやっているのです。しかも、これはわれわれも、三年前の沖縄国会のときには、まだそこまで知らなかったのですけれども、あのBDU8、BDU12という二つの模擬爆弾だけが核訓練かと思っておりましたら、これはわれわれの誤認でした。これらの文書によりますと、現在アメリカでやっておる核訓練は、SUU21という特別な訓練用の爆弾投射器、ディスペンサー、これをつけてやっております。ああいう実際の模擬弾でしたら、一遍に一つか二つしか積めないのですけれども、この訓練用のディスペンサーをつけてやりますと、ミニチュアの爆弾を使いまして、一回に六個ずつ運べるわけです、一つのディスペンサーで。だからそれだけ大変な回数ができるわけで、このディスペンサーであるSUU21というものをつけた核訓練が、アメリカでは基本になっている。  それで、それについて、最近、これはことしの一月十三日から十九日の第一八空軍のフライトプラン・スケジュール表ですが、これを見ますと、爆撃訓練がことしの一月——一週間前です。一週間に全部で八十回やられています。全部で八十回やられている爆撃訓練が、先ほど核訓練場として指定された伊江島で、全部、私が言いました核訓練用のSUU21というものをつけてやられております。これが明らかに記載をされておるのです。ただ、SUU21というのは、これは初めは核用に開発されたものですが、その後、核、非核両用に使われておりますから、この八十回の訓練全部が核だとは私は申しません。しかし、われわれが以前に考えていたBDU8、BDU12、この二つの訓練以上に大規模に沖縄で核訓練がやられていることは、間違いなく、私どもこれらの資料で明らかになりました。これが日本政府の知らない間に、嘉手納の米軍によって進行している事態であります。  ここにちょっと地図をかいてきましたが、これがアメリカが空軍訓練に使っている沖縄近辺の海域です。この中で赤印をつけてあるところが、核訓練に使っている海域であります。  それから、さらにもう一つ言いますと、嘉手納の米軍は台湾にも核訓練場を持っております。これが嘉手納の第一八戦術戦闘航空団が台湾に行った場合に行動する作戦行動要領ですが、これは非核三原則がありませんから、もっと明瞭に、スペシャルウエポンと言わないで、ニュークリア訓練、核訓練ということが、もう何のためらいもなしに明記されております。その中にも、どこに訓練場があるかということがかかれてありますが、これが台湾の周辺海域における第一八戦術戦闘航空団の訓練場です。この中で赤印をつけているところ、これはNOレンジと言っておりまして、これが米軍が指定した核訓練場です。つまり、わが日本にいる第一八戦術戦闘航空団は、伊江島であり、出砂島であり、さらに台湾へ出かけていったときには、東石と書きましてトゥンシー射爆場と呼んでおりますが、アメリカは別名NO射爆場と呼んでおります。ここで核訓練をやっております。こういう状態なんです。しかも、こういう資料から明らかになるのは、南朝鮮でもちゃんと核訓練場があります。これは古温里という射爆場ですが、ここにも嘉手納にいる米軍部隊はしょっちゅう出かけていって、いろいろな射爆訓練をやっております。  つまり、私が先ほどから申し上げていることは、決して日本が将来アジアに新しい変化が起きた場合どうなるかという仮定の問題ではないのです。あなた方が安保条約のもとでちゃんと認めている嘉手納の米軍が、現実にそういう任務を持って配置をされておる。そうして現実に台湾に訓練場を持ち、朝鮮に訓練場を持ち、沖縄でも、伊江島ばかりか出砂島という新しい訓練場まで持っている。連日連夜とは言いませんが、大規模に、固有の任務として核投下訓練をやっている。そういう核部隊だということであります。  ここには、私は二つの問題がある。一つは、そうやって、朝鮮でも問題ですが、ここでは台湾の問題をしぼって言いましょう。台湾防衛の任務を明確に持って、絶えず二つの中隊のうち一つは台湾にいる。そしてかわるがわる台湾に行っては、台湾海峡で核攻撃の訓練をやる。こういう部隊を日本に置くことを認めることが、三木内閣の国際的な義務からいってどうかという問題、日米安保条約で認められるのかどうかという問題、そこまであなたは安保条約で肯定されるのかという問題、この問題が一つであります。  もう一つの問題は、この部隊は紛れもない核部隊だということ。核弾頭がここにあるということは、なかなかそれは言えないでしょう。しかし、この部隊が沖縄復帰後の作戦行動要領で、明確に核訓練を自分の固有の任務としてうたい、核訓練場を指定し、毎月のように核訓練をやっている。つまりこれは、いざというときには核攻撃をする部隊だということであります。それを固有の任務にした部隊だということであります。  非核三原則は、核をつくらず持たず持ち込ませずということだと、あなた方はいつも言っております。しかし、核を使わなければ意味のない部隊、核を使おうと思って連日連夜訓練をしている部隊、それを置くことが非核三原則にもとらないのかどうか、この二つの点について、これは基本的な政治問題ですから、総理の明確な答弁を伺いたいと思います。
  95. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず第一にはっきり申し上げておくべきことは、わが国には核、核兵器は入っていないということであります。  第二に、しかしながら、わが国はそうでありますけれども、世界各国には核弾頭、核兵器を持っておる国は幾つかあるということであります。したがって、アメリカ軍がいろいろな場合に備えて訓練をする、その場合に、万一わが国あるいは極東のどこかで核攻撃を受けた場合にはということを考えて訓練をするのは、私は、しかるべきことであろう、そうでなければ、実際核の抑止力というものは成立いたさないはずではないかというふうに考えるわけであります。  そのことと、先ほど総理の言われました、しかしわが国の場合にはさらに事前協議という規定がある。これだけ申し上げますと、お答えになると思います。
  96. 不破哲三

    不破委員 宮澤さんに伺いますが、それなら、万一の場合には、米軍が日本の国内に核を持ち込んで、日本政府がそれを事前協議で認める、こういうことはあり得るわけですか。
  97. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私の申し上げましたのは、不幸なことであるが、万一わが国あるいは極東の地域が核攻撃を受けるかもしれない、その場合に備えて訓練をするのは当然のことではないか、というふうに申し上げておるわけです。
  98. 不破哲三

    不破委員 核攻撃を受ける心配があるから、受けた場合の防衛策について訓練をするというならわかります。私が言っているのは、防衛訓練じゃないのです。核爆弾を落とす訓練であります。飛行機が嘉手納から飛び立って、核攻撃を他に対してする訓練であります。だから伺っているのです。そういう、仮にあなたが言われたような場合、極東のどこかで核戦争が起こった場合には、あなたは日本への核兵器の持ち込みを認める場合があり得る、そうお考えなんですかと聞いているのです。
  99. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 認めることはありません。
  100. 不破哲三

    不破委員 それなら、あなた方はそのことを、日本はどんな場合にも核兵器の持ち込みは認めないということを、アメリカにはっきり通告したことはおありですか。
  101. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本が核兵器の持ち込みを認めないということは、もう何回となく日本立場は明らかにし、アメリカも十分に承知いたしておる次第でございます。
  102. 不破哲三

    不破委員 それなら、そのことが十分わかっているアメリカが、核兵器を嘉手納に持ち込まなければ意味がないような任務をこの部隊に与え、嘉手納に核兵器を持ち込まなければ実行できないような演習をやり、いざというときに備えているというのは、どういうように解釈したらいいのでしょうか。アメリカには、日本政府が言ったことを理解する能力がないのでしょうか。
  103. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 軍隊がいろいろな訓練をすることと、現実に核兵器を持ち込むこととは、これははっきりと区別をして考えなければならない。
  104. 不破哲三

    不破委員 核攻撃をする任務を持っていない者が、その訓練をするわけはないのです。訓練というのは、いざ戦争というときに間違いなく任務を果たせるようにやるのが訓練ですから、戦争が始まったときにそういう任務を持たない部隊に、訓練のときだけは別のことをやらせる、そんなむだな時間の使い方をする軍隊はどこにもないわけです。だから私は何度も言っているのですけれども、日本にいる米軍部隊が核攻撃の訓練をしているということは紛れもない、いざというときには核攻撃をする任務を持っている部隊だ、これは常識から言っても、論理から言っても、そのとおりだと思いますが、いかがでしょう。
  105. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いずれにしても、核兵器の持ち込みは認めないというのが、日本のきちんとした明白な立場でございます。
  106. 不破哲三

    不破委員 そういう核兵器の持ち込みは認めないのが日本の確固とした立場であるなら、そういう核攻撃の訓練を日本の国土内でやらせないこと、これは当然じゃないでしょうか。核攻撃の訓練を認め、いざというときには持ち込んでやるんだという構えにある米軍を認めて、それで日本は核部隊を認めないとか言っても、全くそれは言葉の上だけになる。いままで緊急出撃の問題でも、われわれは戦闘作戦行動の基地にしないと言いながら、実際にはベトナムの基地に何遍もなりました。核の問題について言えば、核攻撃の任務を持った部隊、核訓練をすることは認めないというのは最小限の要求じゃないでしょうか。どうでしょうか、その点は。
  107. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この訓練に対して、私、詳細にどういう訓練をしておるかということを十分に承知しておるわけではございませんが、繰り返して申すように、いかなる事態が起ころうとも、核兵器の持ち込みは認めないというのが日本の方針ですから、この日本の主体性を貫くことはもう明白でございます。したがって、そういう核というものの訓練をする必要はないというお考えも起こるかもしれませんけれども、軍隊というのが、やはり多様なものに対処して訓練をするということは、これは軍隊として当然なことであるけれども、私は、ここで必要なことは、言えることは、どういう場合にも、どういう事態が起こっても、核兵器の持ち込みは日本は認めないんだ、この方針は変わらないということだけを申し上げておるのでございます。
  108. 不破哲三

    不破委員 それなら伺いますが、私がいま言ったような、米軍がこういう演習場で核訓練をやっていること、沖縄の米軍が台湾にまで出かけていって台湾で核訓練をやっていること、そういうことは米軍から通報がありましたか。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、わが国の基地あるいは地域においてそのような訓練をするということは、何もわが国に通告をする必要はない、基地、地域を利用する一つの形態であります。  先ほどから総理が言われておりますように、わが国には核兵器が持ち込まれる、持つということはないのでありますけれども、しかし、万々一他からそういう攻撃を受けるということは、これは恐らく不破委員といえども、そういうことはあり得ないとはおっしゃらないでありましょう。これに対して訓練をするということは、私は何ら差し支えないことであるというふうに考えております。
  110. 不破哲三

    不破委員 あなたは何も研究されないで、核攻撃を受けたときの訓練だというように断定をされますが、それは全くこっけいです。よくごらんになれば、これはまさに核攻撃を受けたときの、戦闘爆撃機の核によるさまざまな地上部隊に対する攻撃訓練だ。戦術空軍ですから、戦略爆撃機じゃないんです。敵の核兵器の基地を戦争のときにたたくとか、そんな訓練ではなしに、地上部隊やそういう戦術部隊を核でたたくという訓練を、いま盛んに日本の基地でやっているわけです。だから、そういうことを吟味もされないで、簡単に、核戦争の防衛任務だと言われないようにしてもらいたいと思います。  それからまた、(「核併用だ」と呼ぶ者あり)核併用じゃないんです。ちゃんとスペシャルウエポン、ニュークリアウエポンと明記している文書で、私どもは正直に申し上げているわけです。この問題について言いますと、五十年代には、あの岸内閣のときでさえ、政府国会で、核を認めないというのは核部隊の駐留を認めないことだと、はっきり明言されたことがあるんです。ところが、事前協議制度ができて、ちゃんと核問題について条約が整備されたということになった六十年代以後に、実際には政府に何の通報もない。政府も知らない。政府も調べようとしない。われわれが調べてわかることでも、政府はさっぱり調べようとしない。その間に、米軍の核体制というのは、日本を中心に着々と進められておる。核訓練の頻度も非常に激しくなっておる。こういう事態を前にして、最後に核を持ち込むことはないということを幾ら総理大臣が言われても、既成事実は着々とつくられているわけです。  よく政府は言うんです。この部隊は、どこかよそへ行ったときのために訓練しているのだろう。そういうことで言い抜けられたことは何遍もあります。そうでないことも、ちゃんとわれわれの調査の中で明らかになっております。  といいますのは、私は、いま第一八戦術戦闘航空団の任務について言いました。この任務は、先ほど差し上げた文書の中で、地域的にも明確に規定されているわけです。しかし、もっとはっきりしていることは、嘉手納基地といういわば属地的な文書もあります。基地についての文書であります。  これは昨年十二月の国会で、参議院で問題にしましたから、外務省も防衛庁も御存じでしょうが、やはり沖縄復帰後の米軍の文書の中で、嘉手納の基地の災害防衛の任務を規定した文書があります。その中に、われわれが嘉手納基地で対処し、予想しなければならない災害にはどんな種類があるかということが問題になっておりまして、その中で、核攻撃、宮澤さんの言われる戦争のときの核攻撃、戦時、こういう問題もあります。台風などの災害もあります。通常弾薬の事故もあります。それから核兵器の事故ということが、嘉手納基地で現在予想しなければならない災害として、はっきり明記されているわけです。これは嘉手納基地がどこかに移ったときの訓練じゃない。嘉手納基地という特定の地域に関する災害対策の文書であります。その中で、はっきりわれわれが予想しなければいけない事故の種類として、核兵器災害ということが書かれている。核兵器の災害が起きたときには医者の体制をどうするとか、こういうことが書かれている。  核兵器がなければ、だれが災害対策の訓練やるでしょうか。基地では核兵器の災害対策の訓練をやる。その部隊は、伊江島や出砂島や、さらに台湾に出かけていって、核攻撃の訓練をやる。偵察機の部隊は、核攻撃をしたときに相手にどれだけの被害を与えたかということの演習を、去年十月に現にやっておる。これは全部、沖縄がわが国の施政権下に置かれて以後に起こっておる事態であります。ここまで、あと核弾頭さえ表に出せば核部隊として十分に活躍できるという前提を、安保条約のもとで、三木内閣の施政権下に着々と整えるのを指をくわえて見ておって、非核三原則は守るから安心をしてくださいと言われても、戦争というものは、そういうようなことでは済まないわけです。  現実にそういう体制を配備すれば、その基地が、戦争になればまさにその機能を果たすわけであります。われわれそのことを、基地を第二回目の安保条約改正で貸してから四年後に起こったあのベトナム戦争で、いやというほど経験しました。あれだけ日本の基地を自由に使われながら、ただの一度も事前協議もない。それと同じことが、核の部隊でこれだけの規模で進行しておる。これはすべて私の推測一切加えておりません。従来のわが党の調査のように、米軍の紛れもない文書、この信憑性は確実であります。その文書に基づいて、これだけの事態が進行している。この事態に対して、従前から政府が言っておるように、核の訓練を認めない、せめてその歯どめでもはっきりさせなければ、日本の基地が核戦争に使われることを防げないではないかということを言っておるわけですが、これを全部、あなた方は安保のもとで肯定されるおつもりですか。  それから、最後にもう一つ。さっき何遍も聞いておりますが、そういう任務を持った部隊を嘉手納に置いて、台湾で核訓練まで毎月交代でやらせておいて、それでちゃんと国際的な責務が果たせるとお思いか。最後に三木総理自身にお答えを伺いたいと思います。
  111. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 不破さんは、核戦争というものをいろいろ前提にされておりますが、もしも核戦争が起これば、これはもう人類は破滅ですよ。だから私どもは、これはやはり、不破さんも私も、核戦争を絶対に防ぐということが、これはもう人類の生存の大前提ですからね。あなたのように、核戦争は起こるものだというふうな前提を立てる前に、核戦争を防ぐためにどうするかということでお互いに知恵をしぼることが、いまの時代に生きておる者の責任だと私は思う。  それで、もう一つは、あなたが心配をされておることは、日本が核戦争の基地に、もしも仮定した場合になるのではないか、核兵器が持ち込まれるのではないかということについては、お互いにもう少しやっぱり自主的に考えようじゃないですか、持ち込ませないのですから。また核戦争の基地になるときには、事前協議で、そういうことを認めるわけはないじゃありませんか。そういう点で、われわれは自主的にそういうことの判断をする自由を事前協議において持っておるのですから、御懸念のようなことは、われわれは日本には起こさないということは明白にいたしておきます。
  112. 不破哲三

    不破委員 核戦争を防止する、それからまた、日本が核戦争の基地にならない。日本が基地にならなければ、核戦争の起こる確率は非常に減るわけなんです。だからこそわれわれは言っているのです。そのために、核戦争の任務を持ったような部隊は日本から排除するというのが、政府が前々から宣言している非核三原則、それに対して当然ではないか。だからこそ、佐藤内閣のときに、福田総理が外務大臣であったときにも、そういう見地から、核訓練は認めないということを政府の責任で明言されておる。その立場をしっかり実行することが、あなたが言われる核戦争を防ぐことに役立つではないか。それが問題なんです。核戦争を防ぐためにどんどん核部隊の増強を認める、こういう立場が矛盾していることはおわかりでしょう。だから私が言っている。あれだけ米軍文書を挙げて証明した。まだ足りなければ、幾らでも資料をお見せしますが、証明した核部隊を、あなた方は日本に、核部隊であることがわかっても、お認めになるつもりかどうか。それからもう一つ、どうしても言わないのですが、その部隊が沖縄から絶えず台湾に行って、台湾防衛の任務につきながら活動していることもお認めになるかどうか。この二つの点について、端的に総理大臣自身の御見解を伺いたいと思います。もう宮澤外務大臣の御見解は十分伺いました。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十二分に申し上げるために、もう一言申し上げます。  わが国が核攻撃を受けないということがはっきりしておれば別でございます。しかし、そういうことは万々一のこととして考えておかなければならないでございましょうから、したがって、それに対する訓練が行われていることは、私は別に排除すべきことではない。台湾云々については、先ほど申し上げたとおりであります。
  114. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 外務大臣が答えましたとおりでございます。
  115. 不破哲三

    不破委員 最後に。私、けさ大企業サイドの問題について伺いました。民主主義の問題についても伺いました。最後に、外交の根本問題として、安保の問題というものも伺いました。しかし、率直な感想を申しますと、安保の問題では、佐藤内閣末期の佐藤首相及び福田外相の答弁よりも、はるかに後退した答えしか得られませんでした。核訓練を差しとめるということもやはり言わない。核攻撃の危険が世界にある限りは核部隊の存続を認める、それからまた、台湾防衛の任務を持った部隊であっても、安保のもとで沖縄にいてもよろしい、こういう答弁しか得られませんでした。  それからまた、内政の問題でも、私は、大企業サイドの問題、国民の健康を大事にするのか、それとも大企業の利益を守るのかという、一番はっきりした問題として、自動車産業の公害問題、献金問題を言いましたが、それについても、総理答弁は、まあ何遍も言いますが、前内閣環境庁長官よりも後退した答弁でした。私はここに、この新しい内閣のやはり外交、内政の限界があるということを、この討論で率直な感想として言わざるを得ないと思います。  そのことを最後に申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。(拍手)
  116. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  次に、矢野絢也君
  117. 矢野絢也

    矢野委員 私は、公明党を代表いたしまして質問をいたしますが、冒頭に、私の質問立場、公明党の考えの基本について概略を申し上げながら、まず総論的にお伺いをして、次に逐次具体的な問題の御質問をいたしたいと思います。  三木総理が言われましたように、確かに昭和五十年は、戦後三十年の歴史のピリオドを打つ、新しい出発をするターニングポイントであるということは、国民がひとしく感じておるところです。しかし、それを言われる三木総理政府が、どこまで本気にそれを理解し実行されようとしておるか、実はそこが疑問なんです。たとえば安定成長あるいは社会的公平ということを盛んにお説きになるわけであります。これはもう当然のことで、私自身異論があるわけではございません。しかし、日本がいままでのように、海外から安い資源を大量に買い込んで、その資源を、環境破壊や公害をまき散らしながら処理し生産をする。そして国内では、大企業が管理価格で、高い価格で国民に売りつける。そして海外にはダンピング同様の出血輸出をする。そしてエコノミックアニマルだと悪口を言われる。国土はもう公害だらけになり、国民はインフレで苦しむ。海外でも悪評さくさくたるものがある。しかも歴代自民党内閣は、そのようなやり方を、金融、財政、税制のあらゆる面で、大企業優先、あるいはまた生産第一主義、これをバックアップしてきたわけです。そして生産が伸びればいいのだ、資本の蓄積のために大企業がもうけてくれればいいんだ、輸出が伸びればいいんだ、パンが大きくなれば分け前もふえようじゃないかというような、いわゆる成長オンリーと申しますか、幾らパンが大きくなっても、パンの分け前が不公平である、あるいはまたインフレとか公害、お粗末な福祉というふうに、そのハンは毒入りのパンになってしまっておるということには何の配慮もしなかった。そして公害問題とか高物価、お粗末な福祉、これは適当に後始末をすればいいんだということで、国民が苦しんで、ようやくみこしを上げるといいますか、それで十分じゃないか、こういう発想ですね。その結果としての今日の不公正の拡大、そしてインフレで国民が苦しむ。これが昭和五十年までの戦後三十年間の日本の歩んできた道じゃないかと思うわけです。  そして石油ショック、これを契機にして、いままでのような、生産第一主義や輸出第一主義、大企業優先主義、成長至上主義という、その路線の前提条件というものが、資源問題で崩れてしまった。私たちはかねてから、こういう資源浪費の経済構造はだめだ、もっとまじめに経済の安定成長ということを考えた福祉中心の路線に早いこと軌道修正をしなければいかぬということをやかましく言ってきたわけです。しかし政府は、それに対する十分な対応をなさらないで、このような外部から高度成長を支えてきた条件が崩れて、いやおうなしに対応せざるを得なくなってきておる。そして三木さんが、安定成長だとか、社会的公正だということをおっしゃるわけであります。  さまざまな反社会的なことをやりながら、大企業は自転車操業的にやってきたわけでしょうけれども、かつて、少しではあったけれども、技術革新とか自己改革へのバイタリティーを、三十年代の日本企業はまだ持っておったと思います。しかし、最近の日本企業は、買い占めとか、便乗とか、売り惜しみとか、あるいは公共料金の値上げというような、いわゆる寄生的な性格が非常に強くなってきておる。このことを忘れちゃならないことだと思うのですね。そして物価は上がる。国民生活は苦しむ。そしてインフレによって、資産家は寝転んでおっても財産がふえる。汗を流して働いておる者は、働けども働けども生活が楽にならない、財産もできない、こういったことだと思うのですね。  ですから、三木総理、あなたの言う社会的公正とか安定成長、これはいま私がるる申し上げた、いままでの経済の枠組み、あるいはそれを支えてきた政治の基本的な方向、あるいは政界や財界や官僚界の、言いたくはありませんがこの癒着、こういうものに徹底的にメスを加えて、そして大胆な政策転換をする、こういう決意があって初めて国民が信頼できるんじゃないかと思うわけでありますが、まず、その辺について、総理の決意を伺いたいと思います。
  118. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 矢野さんも御承知のように、日本は、これは貿易をやっていかなければ食うていかれないわけですね。原料ばかりでなしに、燃料、原料、食糧までを輸入しなければ、今日、日本は生存を維持していけない。そうなってくると、もうその貿易には国際競争が激しいですから、新しい技術を取り入れて、そうしてやはりいい品物で、これを国際競争場裏においても安く売るようにせなければならぬ。そういうものに対して、持っておった大企業のバイタリティーというものは、適当な評価を、矢野さん、しなければいかぬと私は思う。しかし、あなたの御指摘のような、大企業が資本力に任せて、そして反社会的なこともしたというような事実もございます。全部の企業がそうではない。しかし、その中にそういう企業があったことは、これはもうわれわれも認めるにやぶさかでないわけでございますから、そういうものに対しては、今後、独禁法とか、環境基準を強化するとか、いろいろな点で、この企業の持っておる社会的責任を果たすようにしなければならぬわけでございます。     〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕  しかし、いま矢野さんも御指摘のように、日本高度経済成長を支えた条件はもう失われたし、そればかりでもないと思う。国民もまた、量的な拡大よりも質的な充実を望んできている。だから条件というものは、外ばかりの条件ではなくして、国内的な条件もあります。そこで私は、新規まき直しと、こう言っておるわけですが、矢野さんの御指摘のように、産業構造も、あるいはまた政治のあり方も、あるいは国民生活のあり方も、いろいろな面で、ここは日本は、従来の惰性にとらわれないで——惰性にとらわれてやっていこうとしたってやっていけないのですから、私はそういう点で、古い言葉で言えば諸政一新、こういう決意で取り組んでまいりたいということでございます。  しかし、そのことは、矢野さんお考えになっても、いままでずっとこの高度経済成長になれてきて、そのもとにおけるいろいろな仕組みができておるのですから、それを安定成長という路線の中で、やはりそれに適応した仕組みに変えていくということは、容易なことではないわけでございます。しかし、矢野さんを初め、皆さんの御協力を得て、そうして私は、この転換期に政権を担当する責任を持った者として、全力を傾けて、この転換期の日本政治の担当の責任を果たしていきたいという強い決意であることは、最初に申し上げておきたいのでございます。
  119. 矢野絢也

    矢野委員 ところが、いま三木さんも言われた安定成長のために、政府はいま何をやろうとしているか、あるいはこの一年間何をやってきたか。少なくとも国民の目から見て印象的にはっきりしておることは、物価安定を合い言葉にして、総需要抑制政策、金融、財政の引き締めの強行——私は大枠として、この総需要抑制政策に反対するものではございません。これは念のために申し上げておきます。しかし政府の考え方は、ただ金を締めればいいんだということで、そして伸び率指数のみ、たとえば成長率の伸び、物価上昇率の伸び、この伸び率を抑えるんだというところに非常に力点がかかっておるように見えるわけであります。  私が言いたいことは、そんな金を締めてそして伸び率を抑える、いわゆる抑制型の考え方よりも、なぜいままで日本の経済が高度成長経済、はっきり言えば異常成長経済に走らざるを得なかったかというこの原因、あるいはまた走らせるようなこの枠組み、ここに徹底的なメスを加えて、そして安定成長のいわば構造的な舞台装置と申しますか、これをはっきりつくってこそ、これから本当の意味の安定した経済ができるんじゃないかと思うのですよ。ところが、総理がいま強い決意だとおっしゃっていますけれども、現実にいまやってこられたこと、またこれからやろうとすることは、やはりこの金融引き締め、そしてそれで需要を抑え生産を抑えて、そして景気を減速さしていくんだというところに、どう考えても力点がかかっているわけで、構造的な、たとえば資源の配分、所得の再配分、そういったところに根本的なメスを加えるという姿勢が、残念ながら見受けられません。  わが党の竹入委員長代表質問におきまして、あなたに対する四つの踏み絵ということで、一つ政治資金規正法の改正、そして独占禁止法の改正、自動車排ガスの問題、老人の年金問題、こういったことをあなたに提起したわけであります。これはなぜかと言いますと、そのような数字の伸び率だけじゃない、構造的な、安定成長あるいは福祉成長と申しますか、舞台装置をつくるためには、少なくともこの四つの条件が必要なんですよ、という意味で申し上げておるわけであります。  具体的に申し上げましょう。たとえば環境整備を企業の責任においてやらせる、これは国民の健康や国土を守るために当然のことでありますけれども、そのように企業の責任を明確にすることによって、企業のいわゆる総資本対生産高の比率は下がってくるのは、これはあたりまえですね、それだけ企業のコストが環境整備にかかるから。そういうようなことから、結果的に経済を減速さしていくという考え方、金融を締めるだけではなくしてですね。あるいはまた、大企業の持っておる莫大な土地、これはもう一遍も再評価してありませんね。これを再評価することによって、法人の土地再評価税というものを取る。それを福祉基金として国民に回す。そういうことによってまた、成長は結果として減速していくじゃありませんか。あるいはまた、政府の公共事業につきましても、生産オンリーじゃない、国民生活優先の生活関連公共事業にもっと力を入れていく、あるいは財政面におきましても、そのような立場で運用していく。これは大企業は、いままで政府から受けておったこのカンフルがなくなるという意味で、つらいでしょうけれども、そのつらさを越えてこそ初めて、本当の安定成長が実現できると思うのです。  あるいは独占禁止法の問題もそうであります。独占禁止法は、何も企業をいじめるというよりも、本来、資本主義の持っておる自由競争の原理、これを独禁法を厳しくすることによって回復さして、そうして経済のバイタリティーをもう一つよみがえらせようというところにねらいがあるのでしょう。また、そういった過程において、当然経済は減速していくわけであります。  いろいろ申し上げましたけれども、そのような具体的な諸問題について、総理が本当に、なるほどこれは経済構造、資源の配分、所得の再配分に根本的なメスを加えようとしているんだという、強い決意というよりも、具体的な方策あるいはまたビジョン、そのためのスケジュール、こういったものがなければ、幾ら三木さんがおっしゃっても、これは信用できないのですよ。だから、失礼な言い方でありますけれども、三木総理のことを、総論あって各論なしだなんていうことを言いますが、私から言わしめれば、総論というものは本来そのようなビジョンでありスケジュールである。具体的諸問題、独禁法とか、企業公害についての責任の明確化、あるいはまた財政の配分の問題、こういう具体的なビジョンと内容、これが総論であって、私から言わせれば、総論も各論もない、言葉だけなんだということに、まあ大変失礼な言い方でありますけれども、思うわけであります。だから、こういった考え方ですね、これをひとつ前提にして、私の質問にお答えいただきたいわけであります。  特に、最近政府は、三月には消費者物価対前年同月比一五%ということを合い言葉にして、総需要抑制政策はさらに堅持するんだという。そのこと自体、私は反対しません。それとセットになった構造改革があれば、私は反対しません。しかし、それなしに、ただ三月の消費者物価は一五%に抑えるんだ。終わったら、これはまた大企業から言われて、構造改革を伴わない大企業優先の政策へ戻っていく。また昔来た道、脱兎のようにまた成長経済の方に戻ってしまう。なぜそうかと言えば、経済の構造が変わっていない、金を締めたり緩めたりだけで操作をしていらっしゃる。だから私は、これまた失礼な言い方でありますけれども、あなたの路線は、成長路線ではなく乱高下路線である。上がったり下がったり、しかも締めるときには、中小零細企業国民の犠牲において、この成長率をカットしていく。これは後ほど具体的に資料をもって申し上げますけれども、成長率が下がるといっても、弱い人の犠牲において成長率が下がっているんじゃありませんか。そして、少し数字の上で何とかかっこうがつけば、構造が変わっていないから、またもとへ戻って、大企業優先の反社会的なことが行なわれる。もうこういう乱高下路線は困るわけであります。  そういう意味で、以下具体的に、まず最初に税制の問題、次に銀行問題、ざらに福祉あるいは国際金融問題などについて伺っていきたいと思います。総論が長くなりましたが、一応、私の質問立場というものを御理解いただいた上でお答えを願いたい、そういう意味で申し上げたわけでございます。  そこで、社会的公正、最近非常にあなたが使われて、何となくそういう世の中が来るのかしらというような幻想を国民が持っておるのかもわかりません。言葉だけじゃ楽にならないんです、はっきり言いまして。この社会的公正というものは、本来二つの面がなくちゃならぬ。一つは、本当にこのインフレのために苦しんでおる弱い立場の方方を守るということ。二つは、強い者、大企業とか大金持ちが勝手気ままなことをやりました。この不労所得をどのように吸収して弱い立場の方々に回すか。弱者対策と強者対策、この二つの面が明確に出て、社会的公正ということが言えるんじゃないかと思うわけです。  それが一番効果的といいますか、本来それを目的としておるのが、私は税制度だと思うわけでありますけれども、少なくとも、この税制度を見る限りにおいては、この社会的公正ということは裏切られたんじゃないかと思います。たとえば、所得減税といいましても、これは全くのミニ減税でありますし、物価上昇、名目賃金の値上がり、これを考えれば、これはもう逆に大増税、大衆課税の強化。あるいはまた、これはもう、大金持ちであっても、働く人であっても、一日に飲む酒というのは、そんなに百倍も千倍も変わりませんね。たばこだって変わりません。つまり、そういうふうな大衆が使うお酒とかたばこの値上げをするということは、これは逆累進というかっこうになる。つまり、大衆課税の強化じゃないかという問題がありますね。特に、お医者さんの税金の特例措置、土地譲渡の問題、利子・配当の問題、こういったことを見たら、どう考えても、取りやすいところから取って、抵抗の強いところや、言っちゃ悪いですけれども、政治献金その他の関係のあるところからは、つまり大企業からは余りもらわないようにしようということじゃないかと勘ぐりたくなるわけです。  そこで、所得税の問題で具体的に伺いますが、大蔵大臣、五点続けて申し上げますから、お答えを願いたいと思います。  所得税の減税について、政府は毎年、消費者物価上昇に対して物価調整所要額というものを公表し、措置してこられたわけであります。これは、たとえば昨年の十月の勤労者世帯の可処分所得、使えるお金というものはマイナス六・一%であるということからも、名目賃金はふえても実際に使えるお金は減っておる。毎年この物価調整所要額というものを明確にしてこられたけれども、今回、このどえらいインフレ、この減税に当たって、どの程度の物価調整所要額というのをお考えになったのか、その根拠を聞かせてもらいたい。でなければ、この減税が物価値上がりを頭に置いた減税であるかどうか、われわれには判断がつかないわけであります。これが第一点。  第二点は、所得税納入者の数。給与所得者、どちらかというと収入の少ない人ですね。この給与所得者の納税人数というものは、四十九年の見込みが二千七百十四万人、そして今回の税制改革、五十年は給与一八%アップということを一応見込みますと、二千七百五十一万人と、給与所得者の納税人口、人数というものが、今回の税制度によって大幅にふえるわけです。一方申告所得者、これは八百万以上の方が申告をするということになっておるようでありますが、これは多額収入者です。この申告所得者は、四十九年は五百七十三万人、五十年は五百五十八万人。減っておるわけであります。納税者の数ということから見ましても、今回の税制度は明らかに、給与所得者の納税人口がふえ、多額納税者である申告所得者の数が減ってきておる。これはどう考えても大衆課税の強化じゃないか、お金持ち優遇じゃないかと思うわけでありますが、この人数の面からひとつ御説明願いたい。これが第二点。  第三点は、給与所得者控除というものは、四十八年度までは最高七十六万円で頭打ちになっておったわけですね。それ以上幾ら収入がふえても控除は七十六万円ということで、それ以上の控除は認められなかったわけです。去年から年収六百万円を超える収入につきましては一〇%の控除を認めるということで、これは青天井になったわけであります。つまり一千万円なら百万の控除、二千万円なら二百万の控除。それまでは七十六万で頭打ちということになっておった。こういう青天井の控除というのは、金持ちに非常に親切じゃないかとだれしも考えるわけであります。ところが本年度は、このような悪いやり方、金持ち優遇のやり方が是正されておらない。相変わらず青天井になっておる。極端なことを言えば、一億の方は一千万控除してもらえる。従来までは七十六万が頭打ちであった。これについてなぜ是正しなかったか。これが第三点であります。  第四点は、利子・配当の所得、こういったもので暮らしている方々、これは課税最低限は年々大幅に引き上げられてきておりますが、四十九年は標準家族で三百五十七万円、これが課税最低限ですね。そして五十年、今回の税制改革では四百四万九千円。利子・配当の所得で暮らしている人の課税最低限は約四十八万円も上がっておる。ところが、汗を流して働いておる給与所得者の控除、課税最低限というのは、四十九年は百五十万七千円、ことしは少しばかり上げて百八十三万。それでも三十二万しか上がっておらない。これまた明らかに、働いておる者の税金は厳しくて、不労所得とまでは言いませんが、楽をして利子・配当をもらっておる方々の課税最低限の上がり方が大きいわけですから、これまた金持ち優遇じゃないか。これが第四点であります。  第五点は、自然増収、これはずいぶんふえておるわけでありますけれども、自然増収に対する減税の割合、これは五十年度は低過ぎるんじゃないかというように思います。たとえば四十七年は、自然増収が八千二百六十二億、減税が二千四百八十二億で、割合が三〇%。四十八年は、自然増収が二兆五千六百五十六億、減税が三千三百五十五億、一三・一%。四十九年は、自然増収が三兆六千八百五十四億、減税が一兆二十億、二七・二%。ことしは三兆五千七百八十億の自然増収の見込み。三兆五千億も見込まれながら減税は二千五十億、わずかに五・七%。いままで、二〇%、三〇%、このように自然増収に対する減税の割合が多かったわけでありますが、ことしはえらくこの割合が少なくなってきておる。自然増収というのは本来税の取り過ぎなんです。その割り戻しと言うと変でありますけれども、それに対する減税の割合が低いというのは、全くこれはもう増税であります。これが第五点であります。  私、ずいぶん長くしゃべりましたが、次にいろいろお聞きしたいことがありますものですから、まとめてお聞きしたわけでございます。この五点、お答えを願います。大蔵大臣から。
  120. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大蔵大臣からお答えをいたしますが、最初に、矢野さんの言ったことで、国民に誤解を与えることはよろしくないので、申し上げておきたいと思うのです。  それは、一五%の物価水準になれば、あとはまた爆発的に物価が上がっていくんじゃないかということは、やはりインフレマインドということは非常に経済政策の中で重視しなければなりませんので、申し上げておきたいと思うのですが、政府は、一五%ばかりでなしに、明年度においては一けた台にするという約束をしておるわけです。物価問題というものを長期的に見ておるんだ。ただもう三月末に一五%にするというだけではなくして、来年度にわたっても、物価に対する政府の責任を明らかにしておるわけでございます。したがって、三木内閣は、景気が上がったり下がったり、そういうことではないので、なるべく安定した状態で、国民生活をそういう面から安定さしていきたいということを願っておるわけです。  物価問題について国民が一番願っておるのは、矢野さん、物価の安定じゃないでしょうか。それをやるためにはいろいろな方法がありますけれども、財政、金融面から抑制策をとるということ。物価安定の政策としては、これがやはり一番重点に置かるべき政策。その間、弱い立場の人たちがこの抑制政策のもとで非常な打撃を受けないように、一々言えと言えば申し上げますが、きめ細かく中小企業対策は手を打っておるんですよ。そして、いずれにしても苦しい時代でありますから、その時代に中小企業が倒産をしたり、また中小企業の失業者が出たりすることをできるだけ少なくしようと、もうこれは知恵をしぼってやっておるということは、ひとつ御理解を願いたいのでございます。  そういうことで、将来に対して長期的に日本の経済の安定を考えておるものだということで、余り上がったり下がったり——国民皆さんもごらんになっておるのでしょうが、そういう不安を将来に与えることはよくないというので、一言申し上げておきます。
  121. 大平正芳

    ○大平国務大臣 矢野書記長から、所得税の問題につきまして、五点にわたりまして、具体的な御質疑を御意見を交えてちょうだいいたしました。この詳細につきましては、数字にわたることでございますので、政府委員から補足説明をいたさせたいと思いますが、考え方だけを私からまずお聞き取りをいただきたいと思います。  第一、税制の改正ばかりでなく、あらゆる制度改正がそうでございますが、従来の沿革、過去を背負っておるわけでございまして、大胆にすっぱりと改正をいたしたい気持ちはやまやまでございますけれども、これまでの沿革というものからどのように脱却して新たな改正に向かうかということにつきましては、政府も一生懸命に努力をいたしましたけれども、なお十分でないという御指摘でございますが、その点につきましては、政府の苦心のところを御理解いただきたいと思います。  たとえば、あなたが第一に挙げられました物価調整減税でございますが、所得税は四十九年度に大きな減税を国会で認めていただいたわけでございまして、五十年度はそれが平年度化する年でございます。したがいまして、今度の税制改正でお願いをする以外に、この四十九年度でお認めをいただきました減税の平年度化が組み込まれておるという沿革があるわけでございます。したがって、私といたしましては、でき得べくんば、この大幅な改正で、所得税の改正はことしはがまんしていただきたかったのが本音でございます。けれども、その後の物価の情勢を見ながら、また各階層別の、あるいは独身者、あるいは夫婦者、あるいは家族持ち、いろいろな関係、いろいろな階層の負担をよく見ておりますと、与党からも、それから各野党からも、これでは足らないのじゃないかという御指摘も具体的にちょうだいいたしまして、それも首肯すべき理由があると判断いたしまして、若干の物価調整減税をさしていただいたわけでございます。そういう事情をおくみ取りいただきたいと思います。  それから第二は、歳入、特に所得税のような歳入の大宗を考える場合におきましては、これは財政全体の歳入を確保しなければならぬという政府立場について御理解を賜りたいわけでございます。矢野書記長のお話のように、社会的公正を具現するために、もっと大胆なことをいろいろなさなければならない気持ちは重々ございますけれども、私どもといたしましては、歳入を充足するという別の、これはもう申すまでもない、釈迦に説法で恐縮でございますけれども、そういう任務を持っておるということでございますので、御期待になかなか沿い得ないという事情をまず御理解をちょうだいしておきたいと思うのでございます。  あと具体的な数字の問題も含めまして、主税局長から説明をさせます。
  122. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 まず第一点の、物価調整のためにどれくらいの所得税減税が必要であるかというお尋ねに対してお答え申し上げます。  政府の経済見通しによりますと、消費者物価が来年度におきまして二・八%伸びるということになっております。それに対応いたしまして、従来のように物価調整所要額というのを計算いたしますと、約四千四百億円ということになります。ただ、それに対応いたしましては、先ほど大臣からお話し申しましたように、四十九年度の大幅な所得税減税の平年度化というのがございます。これが約三千五百億円、これに充てられ得るということになります。したがいまして、五十年度におきまして、いわゆる物価調整のために追加して必要な財源としましては、約九百億円ということになります。  第二の、納税人員の点でございますけれども、申告をいたします納税者の納税人員が、見込みにおきまして減っておるのはどういう理由によるかということでございますが、申告所得者といいますのは、必ずしも大口の所得者ということに限っていないことは、矢野委員も御承知のとおりでございます。特に今回の見込みで申告所得者の減を見込みましたのは、一つは、別途御提案申し上げます所得税法の改正におきまして、たとえば営業につきましての白色申告者の専従者控除を引き上げるというようなことがございますから、そういうことで、営業につきましての申告者の数が落ちるということがございます。あるいはまた、現在、給与の収入者につきまして、八百万円を超えますところの給与の所得者は、年末調整を行いませんで、確定申告を出していただくという制度をとっております。これを今回の改正案では一千万円に引き上げるということを予定いたしておりますので、これによりまして、従来の給与所得者で八百万円から一千万円の人が、申告から単純な源泉だけになるという減少がございます。そういうことで、合計いたしまして、申告所得税の納税者の減が見込まれておるわけでございます。  第三点の、給与所得控除につきまして、昨年の大改正でいわゆる給与所得控除の天井を撤廃いたしたことについて、今回の改正で見直しをしなかったかという御質問でございますが、これにつきましては、実は昨年の大改正で、従来からのいろいろな経験あるいは論議を踏まえまして、天井を撤廃いたした直後でございます。また、それはそれなりに私は理由があったことと思いますので、今回はもちろん、そのことにつきましては改正を考えておりません。  それから第四の、いわゆる配当だけの所得者につきまして、今回いわゆる課税最低限が三百五十七万円から四百五万円程度に引き上がるということについてでございますが、これは、そういう計算をやります場合には、最後のところはいわゆる適用税率でもって違ってまいるわけでございまして、給与所得者の夫婦子供二人の課税最低限が百八十三万円になるというところの適用税率と、それから三百五十七万円から四百五万円に至るところの適用税率の差でもって、課税最低限の幅に食い違いがあるということでございます。  それから最後に、いわゆる自然増収の中で減税に充てました割合が今回は非常に少ないではないかという御指摘でございます。確かに、たとえば三兆七千八百五十億円に対しますところの二千五十億円というのは、お示しのように五・四%でございますけれども、実はそこに、先ほど大臣から申しましたように、昨年の所得税の大幅減税の平年度化の数字があることをあわせて御勘案いただきたいのでございます。それは、昨年の所得税の大改正の平年度化が、実は本年計算をいたしますと、約四千五百億円ぐらい見込まれるわけでございます。それを両方に、分母と分子に入れていただきますと、五・四%というのは約一五%になるわけでございます。そういう数字もあわせて御勘案願いたいのでございます。
  123. 矢野絢也

    矢野委員 昨年の減税がことしに入っておるのでというお話がございましたけれども、そういう論法でいけば、一昨年の減税も入っておると言えるわけでございまして、言っちゃ悪いですけれども、これは国民の既得権みたいなものですよ。むしろ前内閣は、あの当時の異常な物価高に対してそれが必要であるという判断でおやりになったわけですので、それをことし持ち出して、去年大幅に減税してあるからことしはやらなくてもいいのだと言わんばかりの理屈は、余り勤労者に対する説明にはならないと思うのですね。  こういう問題を具体的にいろいろ私申し上げたいことがございますが、きょうは総括質問でありますから、総論的に申し上げていきたいと思うのですけれども、結論として、先ほど申し上げた青天井の問題にしても、利子・配当の問題にしましても、勤労所得税に比べれば、どう考えてもこれは優遇されておる。大蔵大臣がおっしゃったとおり、財政の充足は、私、大事な問題だと思うのですよ。あなた方はすぐ、野党は福祉をふやせ、税金は減らせ、こんなばかなことがあるかなんてよくおっしゃるようでありますけれども、そんなむちゃなことは、公明党は言わないです。ですから、福祉をやるためには当然収入は必要だと思います。そういうのは、不労所得で、汗を流さないで、しかもインフレの原因になるようなあくどいやり方をしてべらぼうにもうけているところからたくさんお取りなさい、そしてまじめにがんばっている人の税金を少しでも軽くしなさいということを申し上げているわけでありまして、そういう方向政府が税制度の発想をお変えになれば、財政の充足のためにこうだああだという説明を、勤労所得税について、もっともらしい言い方をなさる必要はないわけであります。  その一つの具体例として、これはいつも問題になりますが、お医者さんの特例措置の問題であります。この措置についてはいきさつがあることは、私も十分承知しております。しかし、国民多くの方から、余りにもこれは不公平過ぎるじゃないかという声を多く聞くわけです。そして政府の税調も具体的に、このように今度は変えたらどうかというような案をお出しになったわけでしょう。これはわれわれから言えば、まだ不十分だと思いますけれども、お医者さんの所得で一千五百万以下の所得、この額自体、私は高い金額だと思いますけれども、一千五百万以下の所得については、従来どおり七二%の控除にしましょう。しかし、一千五百万から三千万までの所得については、この必要経費の控除を六二%に下げましょう、そして三千万から五千万、これは五七%にしましょう、こういう点、私は十分だとは思いませんよ。まだ不公平が残っておると思いますけれども、まあしかし、政府の税調がこのような考えをお出しになった。それが、結果としてその程度の特例措置の改革もできなかった。これは三木総理、幾ら社会的公正だ、何だかんだと言っても、あなた方は、抵抗の強いところ、うるさいところのそのような既得権を温存させて、それを改革できない。そして、いま申し上げた所得減税、具体的に五点の不公平ということを申し上げましたけれども、こういったところでは、本来ことしは所得減税をやりたくなかったんだとまでおっしゃっているのですよ、これだけ物価が上がっているのに。そんな弱腰なことで、社会的公平だなんということはできるでしょうか、総理。まず、この医師の税制の特例措置、せっかく政府の税調が、あなたの諮問機関がそういう案を出しながら、結果としてこれが採用できなかった。これはおかしいですよ。答弁をお願いいたします。
  124. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 昨日もお答えしたと思いますが、矢野さん御承知のように、あの七二%の所得税に対する特別措置は、昭和二十九年にさかのぼってそのいきさつを考えなければいけない。そのときには診療報酬の適正化という前提がついている。適正化を行って、そしてこの特別措置をやめるという前提で、あの七二%というのは、なかなか医者の適正な診療報酬ができないから、所得保障という意味もあそこにはあったわけでございます。  これは、各党の共同提案によって特別措置というものは認められたわけでございますから、税調でそういうことがあったといっても、七二%の特別措置というものを廃止するときには、診療報酬というものに対する再検討もどうしても必要になってくるわけでございます。で、医者の技術料などというものに対しては、やはり医師会などにおいても非常な不満を言っておりますが、そういう面も確かにあると思いますよ。だからこの際、そういう特別措置が国会で可決されたときのいきさつから考えても、どうしても診療報酬の適正化という問題は、これをそのままにほおかぶりするわけにはいかないわけでございますから、そういう点で、やはりその特別措置の通ったいきさつからして、適正な診療報酬に対しても検討を加えて、そして今日では国民は、七二%というのは特別措置としての控除率が少し高過ぎるのではないかという高い批判もあることも、われわれ承知しておりますが、やはりそういう立法の趣旨にのっとって、われわれは処理しようというので、この国会でこれを御審議を願うような税制の改革をすることには、法案成立のいきさつから無理があるということで、何かの圧力に押されたというわけでもないし、社会的公正というものを期そうという熱意が足らなかったわけではないわけでございます。その前提を踏まえて考えておるわけでございます。
  125. 矢野絢也

    矢野委員 原理的に申し上げまして、税制度のこういう不公平の改革ということと、あなた、いま所得保障だとおっしゃいましたけれども、そういう問題を、税の原理から考えて、絡ませて考えていくということは、私は本来おかしいものだと思うのですよ。そんなことを言ったら、大企業の法人税を改正するためには、公共料金の値上げも認めてやらなければいかぬという理屈が、すべてについて当てはまるわけです。あなたは二十年前のいきさつを言っておられますけれども、公明党はそれには関係ございません。まずはっきり申し上げておきますけれども。私にそんなことを押しつけられたって、知ったこっちゃない。  それからもう一つは、いま言った原理的な混同というのがあるのじゃございませんか。私は、税の不公平という面では、正すべき点は正す、そして、もしそれでお医者さんがやっていけないということであるならば、それはそれでおやりになったらいいじゃありませんか。ということは、この医療制度の改革というのは、診療報酬だけの問題じゃないのです、私たちから言わせれば。医薬分業の問題もあるでしょう。あるいはまた、各種健康保険組合制度の統合なんということを言っておりますけれども、こういう問題もあるでしょう。こんなものは、こっちを改革しなければさわらないなんて言ったら、これはいつまでたってもできませんよ。原理的には、まず税制度の上の公正を期する、その上で——私は何もお医者さんをいじめるために言っているのではない。もちろん病気になったらめんどう見てもらわなくちゃなりませんですからね。公明党も、この診療報酬は技術料という立場で大幅に上げろということを言っておるわけです。ただ、ほかとの絡みもあって、なかなかできないのでしょう。ですから、そういう過去のいきさつを理由にして、この不公平税制が是正できなかったということは、弁解にもならないと私は思うのですよ。伺いますけれども、総理、これは来年までにやれますか。
  126. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 過去のいきさつで、ここで申し開きをするというのではないのですけれども、法律ですからね。どうも診療報酬が適正を欠いた面があるからという、その所得を保障するという意味がなければ、こんな七二%もの所得控除をするわけはないわけですから。それは、そういういきさつがその当時にはあったわけですから、これは、自民党の中においても大調査会を設けまして、できる限り診療報酬の適正化という問題をあわせて研究をして、そして、これは無論、来年度の予算編成に間に合わせたいという目標のもとで、鋭意検討を始めておるわけでございます。  また、矢野さんの御指摘のように、医療制度全般については、医薬分業等の問題もあります。そういう点で、これは政府としても、医療制度全般については検討すべき大きな課題だと思いますが、少なくとも診療報酬と所得税の特別措置については、自民党の方で鋭意いま検討を進めておる次第でございます。
  127. 矢野絢也

    矢野委員 これは来年までにおやりになるということを、私は記憶にとどめておきたいと思います。  次の問題に行きます。  利子・配当課税の問題でありますけれども、これは五十年度がタイムリミットであったものを、また五年間延長ということで、二五%を三〇%に税率を上げられたということなのですけれども、五%上げたからこれで公平になったというものじゃないのですよね。利子あるいは配当で得た収入と自分の給料の収入を総合課税すれば、もっと高い税率が適用される人が多いわけですよ、こういう株式その他の配当をもらっている人は。ところが三〇%にすれば公平になったというようなものではないわけです。だから、こういう不公平税制はよくないと国民は批判しているわけでしょう。これはなぜ、今回せっかくこのタイムリミット、この五十年に来ておりながらできなかったのか、その理由を伺いたいのです。これは大蔵大臣に伺います。
  128. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは本会議でも御答弁申し上げましたとおり、つまり、利子・配当等の捕捉が、政府の持っておるただいまの行政能力では十分でございませんので、ただいま実行する条件がないという判断でございます。それは矢野さんおっしゃるとおり、これが源泉選択税率二五%を三〇%にすることによって公平感が出るなんというように私は考えてはおりません。あなたの御指摘のとおりでございます。それで、これが総合課税されることが望ましいことは、重々仰せのとおりと心得ておるわけでございますけれども、何せ、これを一人一人に捕捉いたしまして、名寄せをいたしまして総合してまいるということは大変なことでございまして、ただいま政府はまだその自信がないわけでございます。しからば、そういう状態を、いつまでたってもできないから放置しておるかというと、そうではないので、そういう状態をつくり出すべく努力は重ねておるわけでございますが、ただ、また五年間の猶予期間をお願いいたしましたゆえんのものも、そういう大事業であるだけに、それだけの余裕を認めていただきたい、そういう趣旨でございます。
  129. 矢野絢也

    矢野委員 要するに、利子・配当の分離課税という制度は不公平である、大蔵大臣もお認めになっているわけですね。しかし、るるその捕捉ができないということの御説明があって、だから自信がないと言う。要するにこれは、利子・配当の分離課税については当分改める気持ちがないというふうにしか受け取れないのですよ。  特になぜそういうことになるか。これは政府の税の考え方が、所得で税をとらえるというところに力点がかかっておる。つまり資産というものを捕捉する。もちろん資産から出てくる利子とか配当、これにも税金をかけなくてはなりませんが、資産を正確に捕捉するという姿勢があなた方にはまず根本的に欠けているわけですよ。このインフレで所得の格差ももちろん出てきました。それで、物価の値上がりによる所得格差というもので、ますます所得の少ない人につらいことになってきておる。とともに、資産の格差も大きくなってきておるのです。一生働いても家を持てない人もおります。しかし、銀行から金を借りたり、自分の手持ちの金で土地を買ったりいろいろな物を買っておる人は、寝転んでおっても財産がふえているのじゃありませんか。資産格差がますます拡大しておるということについて、あなた方は本当に取り組む気持ちがない。だから、こういう利子配当の課税についても、おっしゃりたいことは、無記名の公債もあります、債券もあります、利札を持っていけばもらえるようになっております。だからこれをとらまえようがありませんということなんでしょう、恐らく。根本的に資産課税ということをもう一遍研究するのだという決意に立たなければ、この問題は、五年たっても、いまのような調子じゃ、また延長ですよ。  もう一度伺いますけれども、この利子・配当課税について、本当に総合課税にする決意で作業をお進めになるのか、あるいはもうこのままでいいとお考えになっておるのか。もし総合課税にするなら、具体的に、いつまでにどのような点で体制を整備されるのか、これを大蔵大臣お答え願いたい。
  130. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほども書記長御自身が御指摘になりましたように、申告納税者が八百万人あるわけでございまして、これを担当いたしております税務官吏は約一万人でございます。いわば一人が八百人の所得の捕捉と調定に当たっておるわけでございます。それで、法人の場合、百三十五万という法人に対しまして一万一千人の者が当たっておるわけでございまして、いまの税制は、要するに納税者の誠実な御申告ということを基礎にしないとどうしても実行できない、協力を求めなければどうしてもできないわけでございまして、政府行政能力で財産の状況を掌握するというようなことは非常にむずかしいことなんでございます。しかしながら、それかといって、われわれは手をこまねいておるわけでなくて、年々歳々捕捉の度合いを高めておりまするし、実地調査の度数もふやすように努力を重ねておるわけなんでございまして、仰せのとおり、所得のあるところに税があるわけでございますので、所得はいかなる形態でございましても、その捕捉には鋭意努力してまいらなければなりません。したがって、この総合課税というものを断念しておるわけでは決してないわけでございます。さればこそ、これは五年間の猶予をもう一度お願いいたしておるわけでございまして、その間に、もっともっと諸般の勉強をさしていただきたい、どうすれば公平にやってまいれるか検討さしていただきたいと思っておるわけでございまして、決して断念をいたしたものではございません。
  131. 矢野絢也

    矢野委員 いろいろ伺ってまいりましたけれども、総理、社会的公正というものは、強者のチェックと弱者の救済、これを第一義的に果たしていくというのが税制度なんです。だから、三木さんの社会的公正というものは、今回の税制改革においても鋭角的にあらわれてこそ、国民は信頼もできるし、時間がないとおっしゃるのでしょうけれども、たとえば来年の税制改革についてこうやるのだという決意と具体策があって、この社会的公正という言葉に重みが出てくると思うのですよ。  そこで、いまあなたが中座しておられるときに、私は資産税の問題を御質問しておったわけですけれども、所得の格差だけではなくして、このインフレによって資産の格差が出てきていますね。勤労者はそんな資産なんか持てっこない、ますます手が届かなくなってくる、金持ちは持っている土地がどんどん上がっていく、こういう不公平が出ているわけでしょう。少しでも公平をお掲げになるのなら、資産課税ということは今後の課題として、ここでお約束なさるべきだと思います。     〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕  また、この資産課税ということが軌道に乗ってくれば、いま大蔵大臣がわけのわからぬことを言っておりましたけれども、利子とか配当という資産から出てくる所得への課税も、総合課税として的確にできてくるわけです。だから、私はまず資産課税の原則的なことについて総理のお考えを聞きたいし、その中で特に大事なことは、大企業の持っておる、法人の持っておる土地を再評価して、そして再評価税をかけるべきである。あなたは、今度の予算編成で、老人年金七千五百円のやつを一万円、それを一万二千円にするのに、総理としての政治的手腕を相当発揮されたというふうに聞いておりますけれども、いやみを言うわけじゃありませんが、一万円が一万二千円になりましても、これはあめ玉年金ということには変わりがないのです。ふやしたことは結構だと思います。しかし大してふえていないわけでしょう。そこであなたが困ったことは、財源がないということだったのでしょう。だから、私がいま具体的に御提案申し上げているような資産税、特に法人の土地についての再評価税、これはずっと一遍も再評価されていません。それこそ、昭和十年、昭和五年に買った土地がそのまま帳簿価額になっております。実態は含み資産がふえておるというわけでしょう。ですから、これを再評価されて、そこから福祉基金とでもいうべき、あなたのおやりになりたい仕事の元手になさるのが、私は社会的公正の具体的なあらわれだろうと思います。資産税並びに法人の再評価税について、お答えをいただきたいと思います。
  132. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 矢野さんの御指摘のように、土地を持っておる者と持たない者、これはやはりいろんな不公正が起こってきたことは、そのとおりだと思います。ただ、土地を持っておるからということで課税ということになってくると、それはまだ実際の利益というものは出ていないわけですから、税制の技術の上ではむずかしい点もあると思う。いよいよ土地を処分したときのいわゆる超過利得といいますか、そういうものに対しての課税は、これは税制上簡単でありましょうけれども、ただ、処分しないで持っておる者だけに課税ということには、技術上なかなか問題があると思います。私も、御指摘のように、土地を持つ者と持たぬ者との非常な格差が、土地の異常な値上がりによって生じておるという事実に目をつぶるわけにはいきません。この点については法人も同じでありますが、こういう点では、私に研究の時間を与えてもらいたい。この問題は一つの問題であることは御指摘のとおりだと思います。
  133. 矢野絢也

    矢野委員 私は、資産税の問題につきましても、生存のために持っておる資産、生きるために必要な資産、これは資産税の対象とすべきじゃないと思っておりますが、私の考えでは、たとえば資産とか株式とか、そういうことで一億円を超えるものについては資産税をかけていく、こういうことが適当じゃないかと思うのです。これは私の意見として申し上げておきます。いま総理の、今後これを研究していきたいという言葉、決してこれは言葉だけじゃなくして、本当に実行していただきたいことを要望いたします。  次に移りますが、政府の景気調整政策というものは、主として金融政策に重点が置かれておる。金を締めるとか緩める、公定歩合を上げるとか下げるとかいうことによって、景気の調整を図ろうとする。力点がそこにかなりかかっておる。したがって、いわばそのルートに当たっておる銀行の問題、この銀行行政というものがきちっと行われておらなければ、政府のそういう景気政策の基本が金融調整に置かれておる以上、この銀行の社会的な責任ということについての自覚と行動がなければ、ずいぶんひどいきしみというものが生じてくるわけであります。まあ、商社の買い占め、大企業の買い占めが大変問題になったわけでありますけれども、その資金源を提供してきたのは銀行であるということは御承知のとおりです。いわば役者は商社であり、演出は銀行であると言えると思うのです。  したがって、具体的にこの銀行行政のあり方を質問していきたいと思うわけでありますが、まず第一点は、昨年九月の決算、大企業のベスト三十というものを見てみますと、第一位の第一勧業銀行が三百六十億の利益を上げておる。第二位が住友銀行、三百十五億。第三位が富士銀行、三百七億。以下、第五位が三菱銀行、二百七十七億。第七位が東海銀行、その次が三和銀行、十一番目が三井銀行、十二番目が太陽神戸銀行などというふうに、利益の順位で挙げてみますと、三十の中に十七社も銀行が入っておるわけでありまして、しかも、一番からずっと銀行が並んでおる。こんな不景気な時代にですよ。しかも、トップの第一勧業銀行のごときは、三百六十億の利益を上げておる。これは全くべらぼうな話だと思うわけであります。特にこの九月期決算は、一般の企業は経常利益ベースで一五%の減益だったと言われております。ましてや中小零細企業は、赤字あるいは倒産というような悲惨な状況にあったわけです。にもかかわらず、銀行がわが世の春を謳歌するかのごとく、ベスト三十に十七の銀行が入っておるということです。しかも、一口に申し上げて、都市銀行、これは十三の大銀行のことを申し上げておるわけでありますが、この十三の大銀行、都市銀行は、昨年三月期に比べまして、九月期は、千九百五十一億の利益から二千九百四十八億と、五一%の経常利益での大幅増益になっておるわけであります。五割増しです。しかも、十三行で二千九百億、約三千億円の利益を上げておる。長期信用銀行で申し上げれば、これも同じく五割増しの経常利益です。信託銀行は一八・八%、地方銀行は四一・二%、ここでまた莫大。相互銀行は二八・五%の利益の増大。こういうふうに見てまいりますと、特にこの十三の都市銀行の利益アップというのが目立つわけであります。  なぜこんなにもうかったか。これは貸出金利の上昇が預金金利の上昇を上回って、さらに、この貸出金利の値上がりにおくれて預金金利の値上がりがやってくる。つまり、公定歩合の値上がりに預金金利は連動しておらぬ。あるいはまた、預金については、その期限が到来するまで新しい金利が適用されないということになっております。さらにまた、金融引き締めの情勢下におきまして、企業の資金需要というものが非常に強まってきておる。したがって、歩積み両建てなど、非常に不公平な取引、不公正な利子が現実に強要されておるということが、この利益のアップの大きな理由だろうと思いますけれども、とにかくこの預金金利の変動幅が少ない。そして、景気がいいときには確かに利ざやは少なかったかもわかりませんが、量的拡大でその利益をカバーする。不景気になれば、貸出金利の上昇、利ざやの拡大で利益を確保する。好況、不況にかかわらず、銀行はもうかることになっておるわけであります。  しかも、昨年九月期の都市銀行の十三行の決算の集計で申し上げますと、明らかに利益隠しということをやっております。具体的に申し上げる時間がございませんが、その最たるものは、九月期には価格変動準備金繰り入れというやつ、これは特別損失ですね、四百六十九億円計上しているわけであります。価格変動準備金というのは、銀行が所有しておる株券とか債券の目減りに対応するためのものであると私は理解しておりますけれども、本来銀行が所有しておる有価証券、これは証券会社と違うのです。売ったり買うたりするために、毎期、毎期そんなに積み立てる必要のないものです。一定の率でいいわけです。ところが、昨年九月には、べらぼうに利益がふえたために、その利益を減らすために、価格変動準備金というものを四百六十九億という、まことに異例な高額の組み入れをしているわけであります。  こういった点、総理、まず伺いたいことは、銀行のこのもうけ過ぎ、果たしてこれでいいのでしょうか。  それから、大蔵大臣に伺いますが、大蔵省は、このような大幅の価格変動準備金の組み入れ、こういうものについて、よいとお考えになっておりますか。  なお重ねて、これは御参考までに申し上げますけれども、銀行の決算では、建物の付属設備については、税法基準の一六〇%の償却が容認されております。あるいは退職給与引当金も、一般企業と異なって、自己都合退職の場合の期末に必要な支給額の一〇〇%の繰り入れが容認されております。銀行さんに対しては、大蔵省は非常に親切なやり方をしておる。  総理に、大幅な利益に対するあなたの御感想と、大蔵大臣に、このような決算の露骨なからくり、こういうものを大蔵省としていいと思われるか、伺いたいと思います。
  134. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 異常なインフレ時代における銀行の行為には、確かに御指摘のような行き過ぎの事態があったと思います。これからはそういう状態には参らぬわけでございますから……。しかし銀行としても、大きな大衆の預金を預かってやっておる、社会的責任がほかの企業よりもあるいは強いかもしれない、そういうのでありますから、銀行の業務というものは、非常な社会的責任にこたえるようなビヘービアというものが要求されなければならぬという御指摘は、そのとおりだと思います。
  135. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘の、銀行の利益が非常に膨大に上っておるということでございますが、確かに他の産業に比べまして銀行の収益が多いことは、御指摘のとおりでございます。特に矢野さんが御指摘のように多いのは、貸し倒れ引当金の制度が変わりまして、千分の十二を十に直しました関係上、六百億ばかり益金にどうしても計上せざるを得ない状況に相なったために、特に御指摘の期間に利益が多くなっておるためでございます。  それから、第二の御質問の、手持ちの証券の価格が下がりましたのを、銀行の収入をもって補てんいたしまして、変動準備金がふえたわけで、価格変動引当金の増加があったわけでございますので、それは利益とは一応関係ございません。
  136. 矢野絢也

    矢野委員 昨年九月期は、そういうわけで、三月期に比べて五割増しの利益になっておる。経常利益でですよ。にもかかわらず、そのような価格変動準備金を五百億近く積み立て、そして利益を減らしておるということを私は申し上げておるのでありて、あなたのお答えは全然答弁になっておらぬです。  急ぎますから、次にいきますけれども、とにかくこういうふうに莫大な利益を上げておる。一般国民が銀行さんには泣かされておるという状況をよく聞くわけでありますけれども、お医者さんも、例の不公平な特例措置で評判が悪いですけれども、お医者さんはまだ命を助けてくれるのですわ、一生懸命。銀行は倒れかかったら手を引きますね、死にそうになったら。ひどいものです、これは。  そこで、銀行の企業への融資状況、ここを申し上げてみたいと思うのです。これは表をごらんいただけばわかると思いますけれども、都市銀行は、四十八年十月−四十九年九月、この一年間、貸出額が四兆九百九十億、うち資本金一億円以下の企業、これは中小零細企業、個人を含みますが、一兆七百二十三億、二六・一%にすぎない。ところが一億から十億までは九千十四億、二一・二%です。十億円以上の大企業には二兆一千三百五十三億、五二・七%。十億以上を合わせまして一億以上の大企業には七三・九%融資しておるのです。一億以下の中小零細企業や個人にはわずか二六・一%しか貸していない。二割六分しか中小零細企業、個人には貸さない。それ以外のお金の七割三分、七割四分を大企業に貸しておる。こんな不公平なやり方があっていいでしょうか。別に私は相互銀行や信用金庫の肩を持つわけではありませんけれども、そういったところは七割から八割中小零細企業に貸しております。しかも、これは福田さん、あとでちょっとぜひ聞きたいわけでありますけれども、この貸し出しをごらんいただけばわかると思いますけれども、あなたが昨年、物価の短期決戦だ、総需要抑制政策だということで、金融引き締めをおやりになったけれども、少なくともこの数字の推移で見る限りは、金融引き締めは、一億円以下の企業にばっちりあらわれておる。大企業に対する融資額は、ある時期では、たとえば一昨年の十二月には約七千億、それが昨年の四月から六月には三千億と、やや減りましたけれども、再び回復しておるのです。ところが、一億円以下の中小零細企業、個人に対しては減りっぱなしで、一年前には五千億あったものが二千億にまで減っちゃっておる。だから、あなたの言う物価短期決戦というものは、中小零細企業の金を締め上げて物価を下げよう、結果的にはこういうことになっておるのですよ。  さらに私、続けて申し上げますが、そのような大企業優先の融資をやっておる、金額的にも七割以上が大企業へいっておるだけではなくして、その内容がきわめて反国民的な内容になっておる。日本の銀行全体の不動産投資への貸し出し、これはきわめて大きいです。表をごらんいただければおわかりのとおりですが、銀行全体でものすごく大きいです。しかもその中で、この十三の都市銀行の不動産に対する投資への融資は、この銀行全体の約四割五分から五割になっておるのです。いかに大銀行というものが不動産投資に対する融資を大幅に行ってきたか。しかも残高で見ますと、最近まで月を追って残高がふえておる。ということは、少しも回収されておらぬということであります。  また、年度別の都市銀行から不動産部門への貸し出しというものは、これは残でなくして一年ごとの数字でありますが、四十六年は三千五百四十七億円、四十七年には七千七百七十八億円、ものすごくふえました。四十八年には四千四百億円と減ってきております。四十六年、四十七年、四十八年のあの日本列島改造論に悪乗りをした思惑買い占め、その犯人が銀行であることは、この数字から見ても明らかであります。  総理、これはよく考えてもらいたいのです。銀行は社会的責任がある。その最たるものは預金者の保護でしょう。預金者から預っておるお金を大切に守る。そのためには、貨幣価値を安定させることが銀行の最大の任務なんです。そのためにはインフレと戦うのが銀行の本来の任務なのです。ところが、いま申し上げたとおり、この土地の買い占めだけではないです。商社の買い占めの資金も銀行が提供しております。一番大事な任務である預金者保護、そのためインフレと戦う、それと逆のことを銀行はやってきておるのです。  ところが大蔵省は、預金者を守るためには銀行をしっかりさせなくちゃならぬ、預金者保護という名目で、大銀行を保護しております。これはもう手厚いばかりの保護を大蔵省はやってきておる。一々具体的には申し上げません。その名目は預金者保護ということです。しかし、その銀行が、預金者保護と逆のこと、インフレ促進の張本人になったような融資をしておるじゃありませんか。そういうようなことを見逃して、支店を開設するに当たって応接室の設計はこうなくちゃならぬとか、そんなことばかり監督しておるのです。ですから、私は、先ほど申し上げた大銀行の融資が、一億円以上の大企業には七割以上と偏っておる、中小零細企業には三割以下である、こんなことでいいのかということ。  もう一つは、第二点で申し上げた不動産投資に対する融資額、この十三の大銀行は全体の四割を占めておる。しかもその残は年々ふえてきておる。回収されておらぬ。この二点について、総理の見解を承りたいのです。私が申し上げた、こんなことで預金者に対する銀行の責任を果たしておるか。インフレを促進しておるじゃありませんか、銀行は。
  137. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大銀行の貸し出しが偏っておるじゃないかという御指摘でございます。四十九年九月末現在の数字が手元にございますけれども、都市銀行の大企業向けが四六%、中堅企業向けが二二・七%、中小企業向けが三一・三%となっておりまして、この割合はいろいろな御批判があろうと思いますけれども、都市銀行といたしましても、その任務を一応は果たしておると思うのであります。  中小金融につきましては、民間金融機関のほかに、いろいろな専門金融機関が設けられておるわけでございまして、政府としても、そういう金融機関の育成にも努力いたしておると同時に、都市銀行にも、中小零細金融につきましていろいろな配慮を求めてきておりますし、都市銀行においても、それに協力の実を上げてきてくれているわけでございます。しかし、書記長が言われるように、これにもう少し努力しなければならぬというお示しでございますが、なお一層督励してまいりたいと思います。  それから、不動産金融の問題でございますけれども、確かに仰せのように、貸出残高はまだ減っておりませんけれども、去年の秋ごろから、全体の貸出増加の中で、一般向けの貸し出しはふえてまいりましたけれども、不動産向けの貸出増加率は漸次落ちてきておるわけでございます。したがって、われわれ金融当局といたしましても、そういう点につきまして極力金融機関の配慮を求めておるわけでございまして、逐次実績は上がってまいっておることを御理解いただきたいと思います。  しかし、いずれにいたしましても、金融機関は大変な力を持ち、エリートを集め、大変な実力を擁して、わが国の経済に君臨いたしておりますことは、御案内のとおりでございまして、それに対しまして、それが持っておる社会的責任というのは、書記長が御指摘のように、非常に重大なものがあろうと思うのでありまして、金融機関自体がその任務を自覚していただかなければならぬことは当然でございますけれども、金融行政当局といたしましても、お示しのような方向で、金融行政に十分配慮してまいらなければならぬことは当然と心得ております。
  138. 矢野絢也

    矢野委員 いま大蔵大臣は、中小零細企業のめんどうは、本来の任務として都市銀行以外のところに力点があるんだと言わんばかりのことを言われましたけれども、大銀行には大銀行としての大企業相手の仕事があるんだということでしょう。しかし、いずれにしても、いま申し上げた、そういう買い占め資金とか思惑投機の資金、この残が減っておらないということについて、大蔵省としてほうっておくということはよくないことだ。ほんとうに土地の値段を下げようと思ったら、そういう大企業に貸してある不動産向けの投資の中の、生産とか営業に関係のない、思惑で買い占める土地、そのために貸した金を早急に銀行が回収する、大蔵大臣、これをやらしたらどうですか。
  139. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまの経済体制は、書記長も御承知のように、自由な体制をとっておるわけでございまして、政府が一々手口を指示したり干渉をしたりすることは適当でないと思うのであります。それぞれの企業が、あなたの言われるような社会的な責任というものを自覚されて、着実に実効を上げていただく仕組みに相なっておるわけでございまして、私どもも十分、それが偏向した事態にならぬように気をつけてまいるつもりでございますけれども、一々の手口につきましては、干渉をすることは適当ではないと私は思います。
  140. 矢野絢也

    矢野委員 一々について干渉できないとおっしゃいますけれども、大蔵省というのは、銀行に対して非常に強い行政能力を持っていらっしゃるのでしょう。指導していらっしゃるのでしょう。だから、具体的にこれとこれと言う必要はない。思惑とみなされる土地取得のための融資、これは早急に回収するようにされたい、こういう通達を出せばいいじゃないですか。大蔵大臣、都合のいいときになると、自由だなんという言葉を使い出す。答弁してください。
  141. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ちょっと私の答弁が間違いまして恐縮でした。先ほど私は、不動産の貸し出し実績が、まだ実績は減っていないけれども、このごろ増勢は減っておるということでございますけれども、これは間違いで、実績も漸次減ってきておるということでございます。それから不動産に対する融資につきましては、過去四回にわたりまして、いまあなたの御指摘の通達を出しまして、金融機関の自制を求めておりまして、成果は着々上がっておるわけでございます。
  142. 矢野絢也

    矢野委員 成果が着々なんておっしゃいますけれども、大蔵大臣御存じなかったじゃありませんか。通達も、いま言われてわかったんじゃありませんか。何が着々ですか。いいかげんなことをおっしゃっちゃだめですよ。  それでは、次に進みます。  相互銀行とか信用金庫、信用組合、主として中小零細企業を相手としての融資をしておるということは、先ほどデータで申し上げたとおりですけれども、もちろんこれらの銀行にも、いろいろな問題があります。ないとは言いません。しかし、今日のこの経済情勢にあって、いま中小零細企業は本当に苦しんでおる。この相談相手になっておるのは、そういう大銀行よりも、失礼な言い方だけれども、中小銀行であることは、これは紛れもない事実です。ところが、たとえば政府のお金、公金預金というやつ、これがまた非常に大銀行に偏っているわけであります。全体の公金預金の六割までが都市銀行が扱っておる。あと三十数%が地方銀行が扱っておる。これは自治体との関係があるんでしょう。これは、おそらく努力が足らないから公金預金が取れないんだとおっしゃるかもわかりませんけれども、私は、あなたが中小零細企業に対してそういう銀行がやっておるんだとおっしゃるのなら、公金預金の扱いについても、機会均等をもう少し指導されたらどうか。まさか、政府のお金をそんな小さな銀行に預けると心配だなどというような、不謹慎なことはおっしゃるはずがないと思います、ちゃんと監督、指導しているはずですから。ですから私は、公金預金の機会均等。  もう一つ、日銀貸し出しを見ましても、もちろん日銀貸し出しが、そういう企業に対する融資だけの目的で行われているわけじゃないということは承知しておりますけれども、現実に、都市銀行はそれを当てにして、それを元手にして融資をしておる。ところが、都市銀行には、日銀貸し出しは膨大にしておられますけれども、それ以外の銀行にはもうほとんど出されない。これももう少し検討の余地があるんじゃないか。つまり、中小零細企業を本当にめんどうを見ていけるような相互銀行とか信用金庫、信用組合に、大蔵省の方でもっと力をつけるような、そのためには公金預金の扱いの機会均等なんか、私はいい方法じゃないかと思うわけであります。また日銀貸し出しの問題にしても、もう少し検討の余地があると思うわけであります。もちろん私は、何もそういう銀行の肩を持っているわけじゃない。そういう銀行にも、この後申し上げますが、いろいろ問題があることは承知しております。中小零細企業ということを考えれば、それをなさるべきじゃないかと思いますが、答弁が長過ぎますから、簡単に答えてください。
  143. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国庫金の取り扱いにつきましてでございますけれども、歳入代理店の委嘱は、現在、普通銀行のほか相互銀行、信用金庫に対しましても行っておりまして、中小専門機関である相互銀行、信用金庫に対する歳入代理店の増設には、かねてより配慮してまいったところでございます。なお、今後とも、利用者の利便や取り扱い件数、取り扱い状況等を勘案しながら、引き続き増設に努めてまいりたいと考えております。  国庫金の取り扱い事務の民間機関への委嘱につきましては、国庫金の受け入れ支払いのすべての事務を委嘱する場合と、国庫金の受け入れだけを委嘱する場合とがございますことは、御案内のとおりでございまして、一般代理店につきましては、官庁取引につきまして、債権債務者の利便を図る目的で、官庁の集中いたしておる全国主要地の普通銀行に、現在五百幾つか設置いたしておりますが、今後、官庁の移転、国庫金の支払い高の増加等の結果、必要が生じた場合は、個々の具体的なケースに応じまして、これを拡張していくことを考えたいと思います。  それから、日本銀行の問題につきましては、私から申し上げるよりは、日本銀行からお聞き取りをいただきたいと思います。
  144. 前川春雄

    ○前川参考人 総裁の森永がよんどころない用事で本委員会に参れませんので、私がかわって参りました。副総裁の前川でございます。  先ほど、都市銀行に対して日本銀行の貸し出しが偏重しておるのではないかという御指摘がございました。実は日本銀行といたしましては、そういう方針をとっておりませんのでございますが、多少いきさつを申し上げますると、昭和三十七年以来、日本銀行が供与いたしまする信用の形は、それまでの貸し出しを中心にいたしました方式から、債券あるいはその他の有価証券をオペレーションによって買い入れるという方式に重点を移しております。現に昨年中、日本銀行の信用供与は一兆六千億ございましたが、貸し出しはその間約六千億円回収いたしておりまして、オペレーションで債券並びに有価証券を買い入れました分が二兆円でございます。このオペレーションによりまする買い入れは、大銀行の都市銀行のシェアは四割を割っておりまして、おおむね各金融機関の資金量に応じまして、相互、信金その他を含めまして、買い入れを行っておる実情でございます。貸し出しにつきましては、いま申し上げましたように、都市銀行に対しましては、貸し出し限度額を設定しておりまして、むやみに増加することのないような歯どめをつくっております。ただ、都市銀行は短期の金融資金量の移動の影響をどうしても受けがちでございますので、日本銀行の貸し出しの対象といたしまして、そのときどきの調節をいたしまするときには、都市銀行に対する貸し出しがふえるということはあり得るわけでございまするが、反面、日本銀行といたしましては、窓口規制の点からは、都市銀行に対しては、他の金融機関よりもさらに厳重な規制をしておりまして、日本銀行の資金によって都市銀行が利益を得るということのないように配慮しておるつもりでございます。
  145. 矢野絢也

    矢野委員 次に申し上げたいことは、金融機関が強大な支配力というものを利用して、不公正な取引、いわゆる歩積み両建てということ、これはもうずいぶんひどいことをやっておる。総理も御存じだと思います。歩積み両建てについて、私の方に具体的な事例がたくさん来ております。件数にして二百何十件という具体例が来ております。しかし、残念ながらというか、あたりまえといいますか、半分以上の方が、名前だけは公表しないでくださいということを言っておるわけであります。なぜかならば、報復がこわい、そんなことを言うたら、後でもう銀行からえらい目に遭わされる。中小零細企業にとって、銀行との取引がとまることは心臓がとまると同じことです。ですから、一応名目上は金利は九%だ、やれ一〇%だということになっておりますけれども、歩積み両建てで計算しましたら、一五%にも一六%にもなっておるところが多いわけです。中小零細企業だけじゃないんです。  たとえば、ある大阪の方の会社でありますけれども、製造業ですが、一月月商五億円というから、かなり大きな会社です。この会社の預貸率、預金と借りておる金額の比率は、短期借入金六〇%だ、一千万円から六百万円が、定期預金だ何だかんだという形で拘束されているわけであります。しかも、この六〇%の拘束といいましても、定期預金は三五%にもなっておる。一千万円借りて三百五十万円が定期預金で、後二百五十万円はいろんな預金の形で、一応出そうと思えば出せる形でしょうけれども、事実上出せないという形になっております。だからこの場合、借り入れ利率は九・五%であるが、実質の利回りは一五・二%という高利になっておる。  あるいはBという会社、これは中堅の商社だ。一月の扱いが八億円。この場合は預貸率が約四五%。これは利率で計算しますと一〇・二五%で借りておりますが、実質利回りは一四・三%だというような実例がたくさんあるんです。これはもう申し上げれば切りがないぐらい具体例がありますよ。  そこで、これは銀行局長に、具体的に国民にわかるように、いま大蔵省がこれはいけませんと言って指導しておる歩積みなり両建ての中身を、一遍この席を通じて教えてあげてもらいたい。これはもうこの基準がきまっておるはずです。国民は一々御存じない。だから本来、これはけしからぬやり方であっても、これは商慣習だということで、借りる人は泣き寝入りをしている場合があるわけです。大蔵省として、これとこれとこういうのはいけないやり方ですということを、ここで具体的に国民にわかるように説明してもらいたい、銀行局長。(「明確に言うんだぞ」と呼ぶ者あり)
  146. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 明確に簡単に申し上げます。  拘束性預金のうちで、絶対にいけないとわれわれが指導しておりますのは、貸し出しと同時につくり上げられた預金、いわゆる即時両建て預金、これは絶対にいけない。それから過当な歩積み預金。これは私どもは、割引残高に対し根担保比率が一五%以上のものを過当と言っております。それから特に過当な歩積み預金、手形割引、商手担保貸し出しに際し、そのかわり金の一部で定期を預け入れたもので割引極度七%超のもの、こういうものは絶対にいけない、これは即時相殺しろ、こういうような基準にいたしております。(矢野委員「もっとあるでしょう」と呼ぶ)それ以外に、やむを得ないと言われておる拘束預金といいますか、これは預金担保の貸し出しの担保になっている部分、これは正式に担保権を設定しているものでございます。それから見返りと言われておりまして、担保権設定に必要な書類を徴してはいるが、手続を留保しているもの、それから見合い預金、担保または見返りの措置をとってはいないが預金を留保しているもの、この三つございまして、これは自粛しろ、つまり金利措置をやれ。つまり、預金の金利にプラス〇・二五ぐらいの、その預金額に見合う分の貸し出しは、金利措置をとれ、こういうことにいたしております。
  147. 矢野絢也

    矢野委員 特にそこで問題になるのが見合い預金というやつでありまして、大蔵省の方でもいろいろと銀行にやかましく通達を出しておられるわけでありますから、銀行の方もだんだんやり方が巧妙になってきた。一見拘束でないように見える。しかし心理的に暗黙に圧力をかけて出させないという形のやり方が非常にふえてきているわけです。まだ表面に出てきておるのは、いま銀行局長おっしゃったように、金利措置をとらなければいかぬということで、その分については銀行は金利をアップするということでしょう。表面に出ない心理的暗黙の拘束というやつは、金利措置もとれていないわけです。こういうケースが非常に多くなってきております。しかも貸し出しと預金の日付をずらしたり、Aという支店で貸し出してBという支店で預金さしたりというような、まことに巧妙な手口がふえてきておるわけであります。  総理にここで伺っておきたいわけでありますけれども、そのような、歩積み両建てあるいは暗黙の圧力によって事実上拘束されておる、そのために実際の金利が莫大なものになっておる、そういう被害を受けた国民はたくさんおるのです。言うて行くところがないのです。現にこの国会の席上で取り上げようとしても、私は名前はわかっておりますが、名も言えない実情です。言えば資金の提供を切られてしまう、こういう弱い立場におるわけです。総理は、そのような歩積み両建ての被害を受けておる方々に対して、そういうことがあれば、大蔵省、たとえば地方の財務局その他の機関に申し出てください、責任を持って、名前が出ないように、そういう方々の被害を救済いたしますということを、ここではっきり約束してもらいたいのです。
  148. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 矢野さん御指摘のように、弱い立場ですから、しかも銀行に対してはことさら弱いわけですから、銀行局においても、歩積み両建ては検査の中でも特に力を入れておるのですが、現実にそういうふうな被害を受ける人があるならば、地方の財務局なりに言ってくだされば、これはわれわれとしてできるだけ指導をいたして、そういうことのないような努力をいたします。
  149. 矢野絢也

    矢野委員 現実にそういうことがあるならばなどという認識では困るのです。だから、私は冒頭に、政府の景気政策というものが金融政策を基本として行われておる。まず金融引き締めという形で出てくる。水かさが少なくなってくる。そこで一番苦しむのは、中小零細企業であり、一般国民なんですよ。だから、金融政策を中心に景気調整をおやりになってきたいままでのやり方、十分銀行に対する社会的責任を守らせる行政指導でなくちゃならないということを、私は冒頭に申し上げておるわけでありますけれども、そんなことがあるならばというような調子では、皆、怒りますよ。  次の問題に移りましょう。ただ、私は後ほど大蔵省に対して、この歩積み両建ての実態についてお話をしたいと思っております。これは責任をもって処理をしてもらいたい。本人に被害のかからないように、ひとつ注意をしてもらいたいと思います。  次に、金利体系の問題でありますけれども、前国会で、例の石油に対する行政指導がやみカルテルではないかということが議論になったわけでありますが、そのときの法制局長官の答弁は、これはもう価格に関する行政指導というものが認められるとはいえ、指導を受けました事業者がさらに共同して価格操作を行うことがございますならば、これは独禁法の違反の疑いがございますという意味のことを言っておるわけです。つまり価格に関する行政指導が認められるとはいえ、指導を受けた事業者がさらに共同して価格をきめるということ。ところが、この銀行の金利の場合も、貸出金利の場合にはその疑いがあるのです。確かに日銀で金利の最高限度というものをおきめになる。これは臨時金利調整法できめられておることでしょうから、そのことに対しては何もとやかく言っておるわけじゃない。ところが、最高限度ということであって、本当はそれ以下で各銀行が自由に競争してもらわなくちゃならぬ。にもかかわらずへその明くる日、銀行のえらい人が全部集まりまして、こういうことになったから何ぼでいこうかというようなことで、事実上その最高限度のところに自主規制金利というものをきめておるわけです。これは、私はやみカルテルの疑いがあるのじゃないかと思いますが、これはひとつ公取委員長に、この辺についての御見解を承りたいと思います。
  150. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 確かに全銀協というのは事業者団体でございますから、事業者団体でもって共同してそういう金利を自主的にきめるというふうなことになると、これは私は、少なくとも形の上で見れば、独禁法八条違反だと思います。ただ問題は、これが別に罰則はもちろんございませんが、どれだけの拘束力を持つかという問題と——これは独禁法上の立場でございます。もう一つ、いまの最高金利は、昨年初めのころにきめられました一一・五%でございます。当座貸し越しは除きます。ところが、この申し合わせによる——申し合わせなんですが、それによる最高金利は一一%になっておる。そして標準金利は公定歩合が九%になって、それの〇・二五上だ。だから九・二五になるわけです。ところが、これがだれとだれにその最優遇金利を適用するか、あるいはほかの金利を適用するかということは、必ずしも拘束的でない。だから、その説明によれば、これは一応のめどなんである。めどにしましても、これは形の上で独禁法上問題となると私は思います。しかしまた、その陰に金融政策が、たとえば公定歩合を上げましても上がらないところがある。逆に言うと、公定歩合を下げても優遇金利が少しも下がらない、これでは金利政策は何にもならぬじゃないか。ですから、そこに法律上、私の方の立場から申せば、臨時金利調整法が最高限度だけを決めることができて——これは法律上決めるのですから、何もない場合と違うのでございますが、その下において決めているのですから、いわば余り反社会的な関係はないわけですね。それを上回ることは許されないし、下回るところで決めろ、ことに最優遇金利は公定歩合に〇・二五を乗せただけでしなければいかぬ——いかぬというような申し合わせをしているわけです。しかし、どの手形にそれを適用するかということは自由だ、こういうふうに聞いております。  この問題をめぐっていろいろ問題はありますが、私は、でき得べくんば、法律の上においてもそういうことができるのだという、たとえば日銀のガイドラインでもいいのです。何でもいいが、たとえば臨時金利調整法でそういうことを決めていただければ、問題はもっとすっきりするのじゃないだろうか。というのは、金利政策というものは、公定歩合を上げ下げしても、それに市中金利が少しもついてこないということであったら、金利政策は死んでしまうわけです。私はいまのところ、今度は下げるときに大いに問題があると思います。というのは、いま非常に高い公定歩合であるし、それから預金金利が高いのです。ですから、下げた場合に、コスト割れだという問題が起こるとどうするのかというふうなこともありますが、それでも景気対策として、どうしても大幅に下げなければならぬというときには、市中金利が下がらなければ公定歩合だけいじったって何にもならないわけですから、そういう点を考えますと、金利については、やはり幾らか特別な扱いをしなければならぬが、できることならば、たとえばそういうガイドラインにしても、これは余り結構なことじゃないですから。勧告操短と金利のガイドラインは違うのだという、これは非常に古い話ですが、公正取引委員会が実はそういう決定を行って通知しているのです。返事をしているのです。ですから支障はない、拘束性が非常に強くないということです。  それから、いまおっしゃいました歩積み両建てでございますが、表面の金利は一一%でありましても、実質金利は非常にバラエティーがあるのです。これはもう会社によってみんな違うというのが実態でしょう。だから、実質金利について見ますと、ほとんど拘束力がないのだというふうなところまでいっていますから、どうもただの形式論だけでは論ぜられない。しかし望むらくは、何か法律上そういうことができるというふうにしてほしいのですが、一方には金利の自由化論があるんですね。だから、自由化論を推進する立場から言うと、一切やめてしまえというようなことになるが、これもどうかな。私は自由化には本当は反対です。日本の競争を考えますと、金利を完全に自由化するのは行き過ぎじゃないかというふうな感じがいたすものでございますから、特に、むしろ法律的にそういう手当てを行っていただく方が、筋道としてはいいのじゃないかと思います。
  151. 矢野絢也

    矢野委員 金利の自由化の問題については、いろいろ議論が分かれるところだと思いますが、しかし、現実に金利外競争というものをやっているわけですね。つまらぬと言うと言い過ぎかもわかりませんが、会を開いたり旅行に連れていったりというような、こういうようなことも、金利で競争してもらった方がいいじゃないか。これはもちろん預金という問題でしょうけれども、それとあわせて貸し出しの場合も、確かに公取委員長がおっしゃったとおり、そこで自主規制金利というものがすべてに当てはまるわけじゃない、そのとおりだと思いますが、しかし、私が聞き及ぶ範囲では、その中の常に高い方にといいますか、プライムレートに該当する手形だ、そうでない二流だ、三流だということを、もうランキングを決めておいて、あまり自由な裁量というものが現実においても行われていないように私は思っているわけです。  ですから、金利の自由化の問題も含めて、これは最後に、総理に三点、四点伺いたいわけでありますが、利益が多過ぎるということは、先ほど申し上げたとおりです。しかも貸し出しの実態というものが、大企業に偏り過ぎておる。七割以上が大企業に、都市銀行の場合は偏っておる。しかもその都市銀行は、全部の銀行の不動産に対する貸し出しの四割五分を十三銀行で供給しておる、土地の思惑投資のために。こういったことを私はるる先ほどから申し上げておるわけでございます。さらにまた、不公正な取引の実例として、歩積み両建てということが行われておるし、また、大蔵省にわからぬような形で暗黙の拘束、心理的圧力という形で金利措置をしていないやり方、結果的に金利が一五%に上がるというやり方、こういうことも行われておる。  るる申し上げたわけでありますが、最後にこの問題で、一つは銀行法の改正、銀行の社会的責任、特に預金者を保護するという立場から、銀行はインフレをあおるようなものには融資を慎むということを含んだ、銀行の社会的責任をもっと表面に打ち出した銀行法の改正、これをお考えになっておるかどうか。いま私が具体的に申し上げたことに関連して、お尋ねをいたします。
  152. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 銀行の社会的責任は、矢野さんの御指摘のとおりであります。これは、インフレをあおるような、そういう貸し出しというものは、国民が皆インフレを抑制しようとして努力しておるときに、それは許されることではない、社会的責任から見て。切に銀行の社会的責任を自覚した態度を強く望むものでありますが、銀行法の改正は、これはもう経済の基本法にも匹敵しますから、慎重を期さなければならぬと思います。けれども、銀行のあり方に対しては再検討をすべき時期であるということは、同意見でございます。
  153. 矢野絢也

    矢野委員 銀行問題、具体的にいろいろ伺ったわけでありますが、どうも依然として大銀行を保護するという立場での答弁であったことが残念です。これはさらに具体的にそれぞれの委員会において問題にしていきたいと思います。  ただ私たちは、銀行に対して特別の恨みがあるということよりも、いま銀行のやり方が余りにもあこぎなために、中小零細企業が苦しんでいるんだということを、総理にぜひひとつ留意していただきたいという意味で申し上げておるわけでございますから、ぜひ善処をお願いいたします。  次に移りますが、公明党は、従来一貫して、在日米軍基地の問題に取り組んでまいりました。国民の生命財産、さらに平和と安全を守るために、公明党なりの努力を払ってまいりました。特に昭和四十三年以降、再三にわたって米軍基地の総点検を行って、日本に核兵器持ち込みの疑いが非常に強いということを再三指摘してきたわけであります。特に、ラロック証言、あるいは横須賀を母港とする航空母艦ミッドウェーの乗組員たちの証言と、それぞれ各野党も、日本に核持ち込みが行われておるという具体的な指摘を行ってきました。あるいは平和諸団体もそのような調査をしてきたわけでありますが、いまや日本に核が持ち込まれておるということは、国民感情から見れば常識みたいになってしまっておりますよ。  ところが政府は、誠意をもって国民のこういう不信や疑惑を解消する努力をしてこなかったわけであります。結果的には、政府は、日米安保体制のもとでアメリカを信頼するという説明に終始しておられるわけであります。これじゃ国民は納得できないわけでございまして、一層不安が出てくるわけです。  そこで、三木総理に伺いますが、これまで、いまだかつて一度も核兵器が日本に持ち込まれたことはないと、本当に総理は信じておられますか。また、そのように信じておられるならば、その根拠を御説明いただきたいわけであります。
  154. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ラロック証言のときも、日本政府アメリカ政府に照会をしたことは、御承知のとおりです。安保条約のいわゆる事前協議、これはもう、安保条約の条項は厳重に守る、日本人が核に対して持っておる異常な心理というものは理解をして、日本国民の意思に反するようなことはしない、ラロック証言は一個人の証言で政府立場ではない。まあその文句と同じだというわけではないが、そういう意味の回答を得ておるわけであります。  また、フォード大統領が先般来日されたときにおいても、いまのような意味の発言があったことは御承知のとおりでございます。アメリカの大統領が、日本国民の持っておる核兵器に対する特別な関心をよく理解して、国民の意思に反したようなことはしないと、アメリカを代表する大統領が言っても、その大統領の言は信用できない、そういうことを言っても、持ち込んでおるに違いないという立場をとりますと、やはり友好関係というものはもう成り立たないわけなんです。大統領が行って国民の前で言うことももう信用できぬ、こういうことになってまいりますと、日米両国の友好関係の基礎というものはそれで崩れるわけでございます。  私は、そういう意味において、アメリカ政府がしばしば繰り返して述べ、大統領が日本に来て、われわれに対してそういう発言をしておることを信頼し、アメリカが核兵器を日本に持ち込んでおるようなことはないということを信じておるわけでございます。
  155. 矢野絢也

    矢野委員 要するに、事前協議制度があって、核を持ち込む場合には必ず相談があるはずだ、相談があれば日本は断るのだ、いまだかつて、核を日本へ持ってくる、そういう相談がなかった、だから持ち込んでおるはずがないということが第一点。それからアメリカの大統領が、そういう日本立場なり考えはわかっておると言うておるから、一番偉い人がそう言っているのだから、信ずるしかしようがないじゃないかという意味に聞き取れたわけであります。  次に伺いますけれども、いま申し上げた事前協議のことです。この第二項の「装備における重大な変更」ということで、核弾頭及び中距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設、これは事前協議の対象になる、戦略、戦術、攻撃型、防御型いかんを問わず、すべて核兵器の持ち込み及び建設は事前協議の対象となって、日本はノーと断るのだ、こういうことであると私は理解しておりますが、これは外務大臣、簡単にお答えください。
  156. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように、事前協議につきましては、ただいまおっしゃいました「装備における重要な変更」、これはただいまおっしゃいましたとおりでございます。それから、「配置における重要な変更」がございます。それから「日本国から行なわれる戦闘作戦行動」、この三つがあるわけでございます。
  157. 矢野絢也

    矢野委員 核兵器の場合は、当然事前協議の対象になるわけでありますけれども、これは専門的なことでありますから、防衛局長に御答弁願いたいと思うのです。つまり、核、非核両用の場合は、どうやら政府の見解は、事前協議の対象にしないみたいな言い方をしてきているようですけれども、これ自体、私はおかしいと思うのです。いずれにしても、核専用の場合は明らかに断る、これは事前協議の対象になり、かつ断る、こういうことでありますので、防衛局長にお尋ねしたいのですが、次の兵器は、どれが核専用であり、どれが両用であるか、御答弁願いたいと思います。  まず、空対空ミサイルのジーニーというのがあります。それからファルコンというのがあります。それから空対地ミサイルの場合はブルパップというのがあります。それから対潜兵器アスロック、それからアストール、MK45というやつですね。それからルル、MK101と言われているものであります。サブロック。いま兵器の名前を申し上げたわけでありますが、いずれが核専用であり、いずれが両用であるかを御説明願いたいと思います。
  158. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 お答え申し上げます。  まず、空対空のジーニーでございますが、これは核専用でございます。それからファルコンでございますが、この通称ファルコンは非核でございますが、核ファルコンというのがございまして、そういう意味では、ファルコンは両用と申し上げてよろしいと思います。それから空対地ミサイルのブルパップ、これは両用でございます。それから対潜ミサイルのアスロック、これは両用でございます。核の場合には核爆雷を使用いたします。それからアストール、MK45でございますが、これは両用でございます。それからルル、これは核爆雷でございますが、これは核専用でございます。それからサブロック、これも核爆雷でございまして、核専用でございます。
  159. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、ルルはMK101であると理解しておる。MK101はどうでございますか。MK101は核専用ですか、両用ですか。
  160. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 MK101は、ジェーン年鑑によりますと、核専用ということになって、核爆雷という説明になっておりますが、ルルとMK101が同一物であるかどうかについては、私どもまだはっきり確認をしておりません。
  161. 矢野絢也

    矢野委員 ルルとMK101は同義である、このように、私たちは常識的には理解しておるわけでありますけれども、まず公式の文献ではともかく、常識的にはそういう理解がいいかどうかということが一点。くどいようでありますけれども、MK101は核専用であるかどうか、もう一度答えてください。
  162. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 MK101につきましては、いまお答えいたしましたように、一部の公表資料で核爆雷であるという説明がなされております。ただし、いま申し上げますように、ルルと101が同じものであるかどうかについては、はっきりした確証を持っておりません。
  163. 矢野絢也

    矢野委員 話がまたもとへ戻りますが、いずれにしても、アメリカの戦略というものは核戦略であるということは、もう総理も御承知のとおりですし、太平洋やインド洋を行動するアメリカの艦隊が核装備をしておるということも当然だと思いますね。ところが、それがたまたま日本の港に入ってくる、あるいは飛行場を使うという場合、日本の領土、領空、領海の外で一々核を取り外して入ってくるなんということは、これはラロック氏も、そんなことはあり得ないと言っておるわけであります。にもかかわらず総理は、私は核は持ち込まれていないと信ずると、先ほどおっしゃっているわけでありますし、歴代自民党内閣も、そのことを繰り返してきたわけであります。たとえばわが党の議員の質問に対して福田さんは、かつて外務大臣のときでございましたが、万が一核が持ち込まれたりしておったならば、もしそういうことになれば、これは日米国交上の最大の重大問題であるという意味のことを言われました。これは私は全く同感です。あるいはまた佐藤元総理も、もし核が持ち込まれておるという事実が本当ならば、そういう事実があるならば、私は進退をかけて政治責任を明らかにするという意味のことまでもおっしゃった。事はそれほど重大であるということだと思うのですね。  そこで、三木総理に伺うわけでございますが、あなたは核は持ち込まれていないと信じていらっしゃるわけでありますから、それは大統領はこう言っているから、あるいは安保条約の事前協議で相談してこないからだというのが根拠だと思うのですけれども、万が一持ち込まれておったら、総理、重大な政治責任があると思うのですよ。これはちょうど事前協議ができて以来、六〇年安保から十五年ですか、ずっと政府は言い続けてきたわけでありますから、その辺、自民党歴代内閣政治責任は重大であるということと、三木総理御自身の政治責任もきわめて重大であると私は思いますが、総理の御決意を承りたいと思います。
  164. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 お説のとおり、これは政治責任としてきわめて重大な責任であるばかりでなしに、日米友好関係の基礎が揺らぐ大問題である。われわれは、やはり大統領は一国を代表し、その大統領が訪日をされて発言されることに対して信頼を置くということは、友好国としての当然のことでございます。また、相手もまたその発言したことを守る責任がある。そういう関係において、友好関係は成り立つものだと考えております。
  165. 矢野絢也

    矢野委員 それは当然のことだと思いますね。  そこで、わが党の安保、核兵器問題のプロジェクトチームがいろいろと調査をしてきたわけでありますが、その調査につきまして、総理に具体的に御説明をしてみたいと思うわけです。  これは、要するにアメリカ海軍の軍用船のキムブロー軍曹号に関する貨物保管計画公式書類というものであります。内容はあとでまとめて申し上げますが、この図面をまずごらんいただきたいのです。図面の左上、これは念のため日本語訳を書いてございますが、積み込み開始が一九六五年の三月十七日である、この図面の左上でございます。それから、積み込み終了が一九六五年の三月二十七日である、こう書いてございます。あとずっと右へいきますが、船首部とか船尾部とか平均とかいろいろございますが、飛びまして、ベッセルUSNSというのがございますが、本船はUSNS、ユナイテッド・ステーツ・ネーバル・シップということらしいのですが、米海軍軍用船という意味でありまして、そして船の名前はサージャント・キムブロー号と書いてあるわけであります。  さらに右へいきますが、船積み責任者、これはUSネーバル・ウエポン・ステーション、つまり米海軍武器部であると書いてございます。そしてその右は、積み込み港はアメリカ・カルフォルニア州コンコードというところである。そして仕向け地は太平洋地域。その下に、第一寄港地がグアムである、第二寄港地が台湾高雄である、第三寄港地が台湾基隆、第四寄港地が沖縄、第五寄港地が佐世保、第六は田浦、これは横須賀です。第七が追浜というふうに書いてございます。  そして、右の一番上にDDカーゴ・ストウエッジ・プランとございますが、このDDというのはアメリカの公式文書のサインであります。貨物保管計画公式書類という意味であります。  そして、この書類の一番左の下、端っこを見ていただきたいわけであります。DDフォーム四八七ですか、という意味のことがここに書いてございますね。DDとは公式文書のサイン、印であります。つまり、この四八七号書式というものは、一九五七年の八月一日より公式文書書式として採用しましたという意味のことがこの左端の下に書いてあるわけです。そしてその上に船のかじみたいな絵がございますが、斜め上にO・ロムバルドという方の名前が載っておりまして、この方はNWS、つまりこれはネーバル・ウエポン・ステーション、コンコードの米海軍兵器部のロムバルドさんが書いたものであるという署名がございます。  いま、この書類の説明をしたわけでございますが、この書類のちょうど真ん中から左下——この図面には、船のそれぞれの荷物を積む場所が書いてあるわけですね。キムブロー号という船の、たとえば第一船倉にはどういうものを積みなさい、第二船倉にはどういうものを積みなさいということで、船積みをするときのいわば指図書とでもいいますか、それで第四船倉、この図面でいきますと、真ん中左の下の方、日本語で摘要がございますが、田浦と書いてございます。それから十五ドラム、これは十五本という意味でございますね。メタルコンテナ、金属製の容器に十五本。そして、先ほど申し上げたWHというのは、ウォーヘッド、弾頭という意味であります。そして、MK101と書いてあるわけであります。これは要するに田浦行きの荷物として、核専用爆雷であるMK101のWH、ウォーヘッド、弾頭を十五個この船に積み込みましたと書いてあるわけであります。  くどいようでありますが、これはアメリカの公式文書でございますし、日付も明確になっております。そして、このMK101の記載のところには、田浦であると明確に書いてあります。これは横須賀でございます。そして船の寄港地も、グアムから高雄、基隆、沖縄、佐世保、田浦と明確になっているわけであります。明らかに米軍が核兵器、核爆雷MK101を積み込んだという直接の書類であります。  もう一遍要約して申し上げたいと思いますが、要するに、アメリカ海軍軍用船キムブロー軍曹号は、カリフォルニア米沿岸警備隊のコンコード港において、アメリカ海軍兵器部の指示に従って、一九六五年三月十七日荷積みを開始し、同三月二十七日荷積みが完了、そして下記の仕向け地に向かって武器、弾薬が運ばれた。その際の寄港順位は、グアム、台湾の高雄、基隆、沖縄、佐世保、田浦、追浜。この計画書によれば、ほぼ船内の中央機関部に隣接した下部保管庫、図によれば上部、中部、下部の三段の保管庫に分かれていますが、田浦に揚陸されるものとしてMK101の弾頭十五ドラム、これはメタルケース、及び千百五十二箱の爆弾部品、十四箱のミサイル補助発進装置並びに破壊用爆薬が積み込まれていることがここに明記されております。  なお、この図面の左の下の方にずっと細長い表がございますが、積み荷揚陸明細というものを、重量トン並びに容積トンであらわした一覧表がございますが、田浦で下部四番船倉より三十重量トン、これはロングトン、四十八容積トン、メジャートンを荷揚げしたことが記入してあります。なおしかも船内貨物保管計画書に、アメリカ海軍兵器部のコンコード沿岸警備隊駐在のロムバルド氏によって作成された旨が記載されている、こういう意味でございます。  しかも、もう一つの図面があるのです。これはこちらの事情がありまして、お手元にお配りすることができません。これは総理に見てもらってもいいと思いますけれども、この図面は、この船積み書が、沖縄とか台湾の基隆とか横須賀とか、いろいろ順番に行くわけですね。だからその場合、このコンコードから送り状が田浦に来るわけです。沖縄向けにはこれこれだ、田浦向けにはこれこれだという明細がつくわけでございまして、その明細に従って、田浦では、田浦だけで荷おろしをするカーゴリストというものをつくっているわけであります。これは、この図面と全く表裏一体になったカーゴリスト、つまり荷おろし明細書というものがあるわけです。その中には、これはUSNS、つまりアメリカ海軍軍用船キムブロー号という明細がございまして、そしてこの真ん中のところにございますが、これをちょっと総理、ごらんいただきたいと思います。  ここに、一番上の欄から言いますと、ホールドという欄がある、これは船倉。一番上の欄ですね、四LHという船倉、四番船倉とございますね。だから、この図面に合っております。それから仕分け番号は一七五八番、これはそこに書いてあるとおりです。それからクラスは一〇Aである。アメリカ沿岸警備隊のこういう武器取り扱いの書類がございますが、一〇Aというのは主として核兵器の区分けであると、私は理解しております。そして、品目名称のところにウォーヘッドMK101ということが載っております。そして、エリア、おろし地は田浦である。そして、十五メタルコンテナであるということも書いてあります。そして仕向け先は一番右端に岩国と書いてあります。つまりこれは、田浦でおろして岩国へ持っていく、こういう意味の積みおろしのカーゴリストであります。  図面の説明はいま終わったわけでありますけれども、最初の大きな図面におきまして、MK101、これは先ほど防衛局長が、核専用であるということを言っております。そしてこれはアメリカの公式文書であります。そして明らかにこのように、アメリカ海軍の兵器部の名において、キムブロー号という船の第四船倉にMK101を積み込みなさい、積み込みましたという、これは書類であります。そうして今度は、田浦の方でそれを整備して荷おろしをする際のチェックの資料として、いま総理にお見せしたこのカーゴリストというのがあるわけですね。これは、間違いなくこのキムブロー号からMK101を積みおろしました、そしてこれは岩国へ差し向けます、こうなっているのです。  この岩国というのは、総理もう御存じのとおり、P3といいまして、対潜哨戒機、しかもルルという核爆雷を搭載する。これはもう御存じだと思いますが、そのような核爆雷ルルを搭載する対潜哨戒機P3が常駐している基地であります。こういったことからも、この田浦から岩国へ仕向けるということは御理解いただけるかと思いますが、そういうわけで、私たちは核持ち込みは歴然たる事実であると考えておるわけです。総理は対話と協調ということを言われますから、私はおとなしく伺っておるわけですから、まじめにこれはひとつお答えを願わなくてはならないと思います。  いま申し上げたとおり、公式文書で、田浦向けに核を積み込みましたよと、船の名前までわかっています。日付までわかっています。サインした人の名前までわかっています。しかも、おろしたということは疑いのない事実であります。持ち込まれたのじゃないかとか推測の話じゃないのです。まぎれもなく持ち込まれておるという証拠を、私はいま総理に御説明したわけです、図面をお見せして。どうでしょうか、総理。あなたは、大統領の話を信ずる、大統領が持ち込んでないと言うなら持ち込んでないのだ、それを疑うことは国際友好上ぐあいが悪いのだ、だから私は核持ち込みはないと信ずると御答弁をなさいましたけれども、私は具体的にこのような事実に基づいて、持ち込まれました、積み込まれ積みおろし、岩国へ行きましたということを申し上げておるわけです。どうでしょうか、核が持ち込まれたということをお認めになりますか。
  166. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまちょうだいしたばかりの紙でございますし、これがどういうものでございますか、よく調べてみませんと、これだけで議論をいたすわけにはまいらないと思います。  その次に、ただいま御指摘のところにWHMK101と書いてございますけれども、その同じ船倉に、今度は15−DRMSと書いてございますのは、おそらく15ドラムではないかと思いますが、そのほかに、同じところにいろいろなものが入っております。ブースタースとかバースタースとか、いろいろな物がまたそこへ混載されておるというようなことから、さあ、ただいまおっしゃいましたようなことになりますのでしょうか、どうでしょうか。この紙の性質、それから私どもは専門家でございませんから、必要があれば、これをどういうものであるか専門家に見てもらいまして、また後日お返事を申し上げる、こういうことが一番いいのではないかと思います。
  167. 矢野絢也

    矢野委員 宮澤さん、私はあまりよけいなことを言いたくありませんけれども、何かこのMK101核爆雷とそれ以外のものが一緒に入っているから、これは違うのじゃないかということをおっしゃる。それはあなた、核兵器を全然御存じないのです。私たちが調べた調査によれば、核兵器というものは、盗難にあったり紛失したら、これはえらいことだけれども、いわゆる普通爆弾のように簡単に爆発するというたぐいのものじゃない。これはもうはっきりしているのです。ですから、ほかの物と一緒に同じ船倉にそれが積み込まれておる、だからこれはおかしい、そんな話は全然ナンセンスでございまして、私は冒頭から、MK101は核専用であるということは確認しているじゃありませんか。しかも、この公式文書には、送り状、積み込み表と荷おろし表と両方に、MK101というのは出ているじゃありませんか。そんな白々しい御答弁は私聞きませんよ。  もう一つ念のために申し上げますけれども、おそらく、何だかんだ言ったって、これは十年前のことじゃないかという頭があるかもわかりませんけれども、とんでもないことです。十年前であろうが、十五年前であろうが、たった一回でもこういうものが持ち込まれた、これは重大なことです。しかもこの持ち込まれた核兵器が、核爆雷MK101が——これはマーク101ですね。岩国へ行って、それがよそに行ったという証拠はどこにもない。しかもそれを積む対潜水艦哨戒機がいまだに常駐しておる。それを必要とする飛行機がいまだにおるわけです。だから十年前に入って、いまだにあるかもわかりません。恐らくあると思います。しかも公明党はたまたまこの資料を入手しましたが、これ以外の核持ち込みはたくさんあると、私は推測いたします。宮澤さんは、この書類を初めて拝見しましたとおっしゃいますけれども、横須賀へ行ってごらんなさい。この書類は、横須賀の米軍のいろいろな荷物を揚げたり下げたりする日本人の運送業者なら、ああこれは米軍の公式書類だと、これはだれでも言います。しょっちゅう使っている書類です。私が言えば、この書類はすぐ入ってくるのです。たまたまその書類の中に、核兵器が積み込まれたという記載がいままではなかった。今度はあったわけです。だから、これが何か頼りない書類みたいなことは、宮澤さん、言わぬでおいてくださいよ。いやしくも私は一党を代表して、しかも確実な資料に基づいて申し上げているのですから。総理、いかがですか。——いいです、あなたはもう。
  168. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一度も頼りない書類だというようなことは、私は申し上げておりませんので、初めて拝見した書類でございます。どういう性質の書類かわかりません、また専門家でなければ読めないことが書いてあるようでありますから、必要があれば調べさしていただきます。こう申し上げております。
  169. 矢野絢也

    矢野委員 総理、つい私は大きい声を出しましたけれども、私たちは、反アメリカだとか、あるいはアメリカを敵視するとかという立場を、公明党は頭からとろうとしておるわけではないのです。日本の置かれている現状、いままでのいきさつから見て、本当の意味の正しい日米友好というものが必要だと、公明党は考えているのです。そのためには、お互いの主権の尊重、お互いが約束したことは破らないということがあって、本当の意味の信頼ができると思います。ところがあなたは、これは公明党だけじゃないのですよ、各種の平和団体や各野党が、日本に核兵器が持ち込まれているじゃないか、どうなんだと言えば、いや、アメリカの大統領がそんなことはないと言っております。だからそういうことはないと私は信じております。あなたはアメリカの大統領を信ずるのか、日本の野党を信ずるのかと私は逆に言いたくなる。国民の心配をまともに聞いて、そしてまじめに取り組もうという姿勢がいままでなかったのですよ、はっきり言いますと。だから、これは初めて見ましたから調べますでは、ろくな調べ方はしません、はっきり言いまして。初めから結論は出ているのですから。核持ち込みはない、あってはならない、そういう前提で、いままでいろいろなことを政府はやってきたのじゃありませんか。ですから私は、本当の日米友好というものをしっかりしたものにするためには、公明党の立場が変われば、こういう核の持ち込みの疑いのある安保条約——基地があるからこういうことになるのです。安保条約はやめたほうがいいと思いますが、これは公明党の考えです。それを私は三木さんに押しつけようとは思いませんが、しかし、最低限言えることは、条約を守るということは大事だと思いますよ。安保がいいとか悪いとかの議論を抜きにして、事前協議という約束がある。その約束を抜きにして、現にこれを持ち込んでおるということは、はっきりしなければならぬと私は思うのです。そういう意味で私は申し上げているのです。余りにもこれはひど過ぎます。  だから私は、先ほどからるる申し上げましたけれども、この問題について、外務大臣じゃなしに、総理からひとつ次の点について伺いたいのです。これは重大な条約違反です、第一点は。もし持ち込まれていたとしたなら——私たちは持ち込まれておると断定していますけれども。日米国交上の最大の重大事である、先ほどもあなたがおっしゃっていたとおり。だから、このような持ち込まれた事実に対し、この条約違反に対し、安保条約の運営に重大な支障があると私は思いますが、政府はどういう決意でアメリカと交渉なさるのか。  第二点は、いままで国民にうそをついてきた。うそをついてきたというか、アメリカにだまされ続けてきたというか。好意的に言えば、だまされてきた。はっきり言えば、調べようと思えばわかることだって、意識的に調べないで、核は持ち込まれておりませんといううそをついてきた。この政治責任というものは私はきわめて重大だと思う。この政治責任をあなたはどうおとりになるか。あなたはこの当時の外務大臣でもある。この時点であるかどうかは別として、自民党歴代内閣における外務大臣をお務めになった。  この二点について、総理の明確な御答弁を伺いたいが、この二点の前に、私が先ほど伺ったことを外務大臣ばかり答えて、あなたは答えない。核持ち込みが事実だとお認めになるかどうか、それをまずお答えをいただいてから、この二点についてお答えいただきたい。
  170. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 矢野さん、私も初めて矢野さんから伺うわけでございます。したがって、外務大臣がよく調べさしてくれと言うことは、私は無理でない。ここでこれを見せて、核が持ち込まれたということをすぐに認めて、その前提の上に立って日米関係をどうするのだという矢野さんのお話は、少し性急に過ぎるのじゃありませんか、矢野さん。これは初めてだ、そういうことでありますから、よく調べさせてほしい……(矢野委員「私はもしということで申し上げたのだから、もし持ち込まれておればということを申し上げたのです」と呼ぶ)
  171. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと待ってください。あなたは質問しておるのだから、答弁を聞きなさい。
  172. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 アメリカの大統領がそういうことを、先般日本へ来て——矢野さん、外交をやりましても、最高の首脳部が約束したことは、そんなものは約束しても当てにならぬ、こういうことになりますと、両国の友好関係というものはなかなか維持しにくいのですよ。だから、私が大統領の言を信ずるということが——国民の常識から見ましても、一国を代表する大統領が言うことが、言ってもすぐに信用ならぬと疑う、そういうものであって両国のほんとうの友好関係は成り立つでしょうか。そういうことで、総理大臣として、アメリカ大統領の言うことを信頼するということは、国際関係としてはまあ常識のことなんです。  しかし、いまあなたがこういう問題をお持ち込みになりましたから、これには調べさせてくれ、いまここで、どうだ、これを認めておまえの責任はどうだ、日米関係はどうだと、矢野さんおっしゃることは、やはりこれは少し性急なお話ではないでしょうか。
  173. 矢野絢也

    矢野委員 だから、あなた方がお調べになるということについて、調べるなとは、私は申し上げておりませんよ。しかし私はこれは事実だと申し上げておるのです。あなたは事実かどうかわからぬとおっしゃるんでしょう。もし事実ならばという前提で、私はこの二点を伺ったんですよ。これは事実だときめつけて、あなたにいまその前提で答えろと言っておりませんよ。私は、これは事実だと、具体的な証拠に基づいて言っておる。あなたは調べるとおっしゃる。それは結構でしょう。しかし、もしそれが事実ならば、申し上げたこの二点について、どういう御決意で臨まれるかということを聞いておるのです。何も私は決して短兵急なことを申し上げていないのです。  それともう一つは、調べるとおっしゃるのなら、どのようにして調べられるのですか。たとえばキムブロー号が何月何日にどこそこへ来ておる。これはアメリカの軍用船一切についてでありますけれども、まず、ほんとうに掌握できているのですか。私たちは、この船のことについて、あるいはそれ以外のことについて、運輸省にも外務省にも、あちらこちらに聞きました。さっぱりわかっておらぬ。アメリカ軍に、これは本当でしょうか、こういう資料が出てきましたけれども、政府はこんなものは多分うそだと思いますけれども、いかがでございましょうかと聞く。そんな書類は知らぬと言われたら、ああそうですか。恐らくいままではそんなことじゃありませんか。具体的にどのようにして調べるのか、まず教えてください。
  174. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど御指摘の田浦でございますが、田浦でありますと、これは施設、区域の中でございます。したがって、これは普通の軍用船でございますか、原子力潜水艦等々でありませんから、普通入港についての許可は要らないということになっています。しかしながら、これだけの書類がございますと、これがどういう性格の書類で、ここに書いてあることがどういう意味かということは、これはもう十分わかると思います。調べます。
  175. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、いま申し上げた、もし仮にそうであったとした場合はどうかということをお答えください。
  176. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 矢野さん、どうでしょうか。私は、こういう国際関係で、一つの仮定を置いて、そしてこういたします、ああいたしますと言うことは適当でないと思うのですよ。したがって私は、最初矢野さんに申し上げたように、これはやはり核兵器を持ち込まさないということが変わらざる日本の方針であるし、アメリカも約束しておる、こういうことでございますから、もしそういうことであれば、これは重大なことですと申し上げておるのですから、矢野さんの資料をもとにして、これを、一つの仮定を置いて、その場合にはこういたします、ああいたしますということを、この席で私が言うことは適当でない。全体としてお答えをしておるわけです。もしそういうことがあれば、これは重大な政府の責任でもありますし、日米関係にとっても重大なことだ、全体として申し上げておる。したがって、矢野さんの場合に、もうこれは持ち込んだに違いない、こういうことの事実の上に立って、その場合にああします、こうしますということを、矢野さんのこの与えられた材料に対してお答えするのは適当でない。全体としての私の態度については、述べたとおりでございます。
  177. 山田太郎

    ○山田(太)委員 議事進行。  ただいまのこの問題は、矢野委員は単なる推測で核持ち込みを議論しているのではありません。アメリカ海軍公式文書四八七号書式に基づく「貨物保管計画公式書類」を証拠として、アメリカ軍用船キムブロー号によって核専用爆雷MK101が間違いなく横須賀田浦に持ち込まれていることを指摘しているのであります。またそれが間違いなく荷おろしされていることを証明しておるのです。先ほどの矢野委員質問にもございましたように、国民をこれまで欺いてきた政治責任はどうなるのか。その点についての答えすらもない。この際、委員長は、この問題の重要性にかんがみて、この処理を、長い時間とは言いませんが、理事会を開いて検討されんことを望みます。
  178. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいま山田君の御発言でございますが、政府は誠意をもって調べると言っている。調べてもらいたいということであろうと私は思うのです。一方的にこれは断定することはでき得ないと思います。したがいまして、政府はなるべく速やかにこの調査を願うように、委員長はこれを取り計らいたいと思います。(発言する者、離席する者あり)ちょっと席へ戻ってください。どうぞお願いします。(「暫時休憩して理事会を……」と呼ぶ者あり)休憩いたしません。後ほどの質問の終わった時点におきまして、理事会を開いて、適当に御相談をいたします。次の発言者もあり、いろいろな関係上から、この際休憩いたしませんが、このきょうの会議が終わりましたら、理事会を開いて協議をいたします。(発言する者あり)外務大臣より発言を求められておりますから、これを聞いてください。
  179. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま矢野委員よりお示しをいただきました米海軍軍用船サージャント・キムブロー号の船積みにつきましての書類でございますが、私ども、できるだけの方法を尽くしまして できるだけ早て時期に調べまして 結果が出ましたら、御報告を申し上げます。
  180. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 矢野絢也君に申し上げますが、政府はきわめて短時間のうちに、できるだけ誠意を持って調べるということで、いかがでございましょう。
  181. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はできるだけのことをして調査をいたさなければなりませんが、書類の発行者、どこで出された書類かということが、まずこの限りではわかりません。それから書類の時点が一九六五年、十年前でございます。一番考えられますのは、サージャント・キムブローという船、これをまず確認をするというようなことからすることが一番いい方法かと思いますけれども、どういう方法をとりますか、できるだけの方法をいたしてみまして、その上で、余り時間が長引くようでございましたら、中間段階で御報告を申し上げます。
  182. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 矢野君に申し上げます。  なるべく速やかに調査するようでございますが、時間がかかるようでしたら、適当なときに中間報告をさせます。わかりましたか。
  183. 矢野絢也

    矢野委員 お調べになるということでございますから、それはそれでやむを得ないと思います。ただ、従来政府の調べ方というのは、もう本当のことを言って、初めから否定してかかるという立場でお調べになる。うまいこと核持ち込みはないということにしようという意図でおやりになっていることは、いままでの経緯から見ても明らかなんです。ですから総理、これは大統領を信用なさるのは結構ですけれども、しかし、これが事実なら、本当は条約違反でしょう。幾ら仲よくしなくちゃならぬといったって、総理、これは怒らなければいかぬ問題ですよ。怒るだけの問題じゃない。そういう立場でこの問題をお調べになっていただきたいということが一点。  それから、私の要望として、総括質問が終わるまでに結論をいただきたい。これが二点。  さらに、先ほどあなたは二つの問題についての態度を言われませんでしたが、その前に、私がもし持ち込まれておったらどうですかと伺ったら、重大な政治責任があるし、重大な日米間の外交上の問題になるとおっしゃった。より具体的に聞きたかったわけでありますけれども、いろいろ私その後のお尋ねしたいことがたくさんございますが、その答えが出るまで、この質問を保留さしていただきます。
  184. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいま矢野君の発言中ですが、どうぞひとつ外務大臣、なるべく正確にしかもでき得る限り早く中間報告をしていただくようにお願いしたいと思います。もう一遍ひとつ答弁……。
  185. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 委員長のただいまの御指示に沿うようにいたします。
  186. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、あと国際金融問題その他お尋ねしたいことがたくさんございますが、時間の都合もありますので、結論だけを申し上げておきたいと思います。  ただ、この問題に関しては、私の質問の権利を保留させていただきます。  それで、三木総理、私は、税制の問題とか、あるいは銀行の問題、特に冒頭において、これからの経済の路線のあり方について、私の意見をるる申し上げました。特に、金融一本やりというやり方じゃなくして、独禁法とか、政治資金規正法とか、あるいは企業公害責任を明確にするとか、年金制度を作るとか、資源の配分、所得の再配分について、単なる抑制型ではなくして構造の分析、改革を意図しなければ、本当の安定成長にならないということを私はるる申し上げたわけでありますが、その意味で、わが党の竹入委員長からも、あなたに対して、四つの踏み絵という形で問題を提起したわけであります。きょうお尋ねした範囲では、満足する答弁ではございませんでした。大変残念ではございましたが、いずれこの問題については引き続き質問をするといたしまして、本日、私の質問を一応これで終わらせていただきます。(拍手)
  187. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま委員長の御指示のように取り計らいたいと存じますが、もしお差し支えがなければ、先ほど総理に御提示がありまして、部数がないと言われました書類、それも、もしコピーをちょうだいできましたら、もう少し完全にその方も調べられるかと思いますが、どうぞ御善処をお願いいたします。
  188. 矢野絢也

    矢野委員 部数がないのではございませんで、船おろしの方のリストは、カーゴリストの方は、現物を差し上げると、私たちの取材に協力をしてくれた方に御迷惑がかかるという意味において、こちらの方は御遠慮しているわけでありますから、その点は後日御相談をしてやっていきたいと思います。ではよろしくお願いいたします。
  189. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 矢野さんにお答えしておきたいのは、総需要抑制は何もずっと永久にやるわけじゃございません。いわゆる物価を鎮静させたいということで、これが目的を達すれば正常な状態に返るわけですから、その場合には、矢野さんの御指摘になっておったような、産業構造とか年金制度とか、こういうものも安定成長に沿うような再検討を加えなければならないことはお説のとおりだと思っておりますから、それは違った考え方を持っておるわけではない。総需要抑制でずっと経済政策をやろうという考えではないことだけは、御理解を願いたいと思っております。
  190. 矢野絢也

    矢野委員 委員長、どうもありがとうございました。
  191. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 矢野君に申し上げますが、先ほどの核兵器持ち込みの問題については、後の機会に外務大臣から答弁がありましたら、それについて御発言を願うということで、本日の矢野君の質疑は終了いたしました。  次に、小平忠君
  192. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、民社党を代表いたしまして、三木内閣の内政、外交について、重要な案件についてただいまから質問をいたしたいと思います。  三木総理は、昨年の十二月、政権担当直後の本院における所信表明演説におきまして、次のように決意を表明されました。すなわち、「国民の心を施政の根幹に据え、国民とともに歩む政治世界とともに歩む外交、これは、政治の原点であり、政治の心であります。政治は、力の対決ではなく、対話と協調によってこそ進められなければならぬというのが私の強い信念であります。」この三木総理の決意に私も同感であります。  現下、わが国が直面いたしておりますこの不況とインフレは、世界経済の激変を背景とした、かってない難問題であり、この解決には、一億一千万の国民の協力と団結が必要であると思います。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕 したがいまして、私は、三木総理がその決意を述べられた国民との対話を政治の原点として、有言実行の姿勢を示されるならば、民社党は、野党の立場にあっても、日本の難局打開に責任の一端を担う政党として、国家、国民のために、全面的に協力する決意であります。  問題は、そのような政治の原点を今後どのように具体化し、実行するかであると思うのであります。今日の国民政治不信の根源は、歴代自民党内閣の有言不実行であります。物価問題はその代表的例でした。三木総理の示された国民との対話という課題は、その意味できわめて重要だと考えますが、それはあくまでも総論ないし抽象論としての問題提起にすぎないのであります。  そこで、三木内閣政治姿勢の原点を明らかにしていただく意味で、その対話の中身を明らかにしていただきたいと思うのであります。  三木総理、あなたは、国民とともに歩む政治を実現するために、今後どのような形で国民との対話を図ろうとするのか、その方針を承りたいのでありますが、その前に、先ほど申し上げました、昨年暮れ、政権担当直後に披瀝された対話の政治に対する基本姿勢はいまも変わりございませんか、まずお伺いいたします。
  193. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小平さん、歴史を見ましても、力の政治というものは成功した例はないのですよ。やはり力ではなくして、道理に従って皆の納得を得る政治をするという以外に、ことに今日のような大衆社会時代においては、それはそうでなければ政治にならぬということが私の信念でございます。  したがって、あらゆる機会に野党の方々とも、これはもう党首会談を一遍やっただけですけれども、できれば新聞種にならぬぐらい会いたいと思うぐらいです。そうしていろいろな意見を承り、そういうことをできるだけ政治の上に反映して、国民とともに歩む政治をやりたい。そのためには、やはり政治に対する信頼がなければいけませんから、いろいろと私が申すことは、もう実行するために全力を尽くす。そうして国民から見ても、三木さん汗みどろになってやっているわいという共感がなければ、やはり国民とともに歩む政治にはなりません。民社党は大いにやるならば協力してやろうという、民社党を代表しての御発言、ありがたくその御好意にもこたえなければならぬと考えております。
  194. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、三木総理の政権担当直後の決意が毫も変わっていないことをただいま承りました。  そこで、具体的に国民との対話を実現するためには、たくさんの方法があると思うのであります。欧米においては、三木総理も御存じのように、国民政治や産業の意思決定に参加することが制度化されております。また、党首会談は形式的でなく、きわめて実質的かつ建設的であります。国家の外交的秘密につきましても、野党党首に対して提供されることが慣例でございます。さらに、政府労働組合との関係につきましても、さきの英国におきまする社会契約に示されておりまするように、相互信頼に基づく話し合いが行われております。国民との対話という問題は、それらのことが実践されてこそ初めて本当の中身であろうと私は思うのであります。  たとえば、いま政府にたくさんの審議会がございます。中でも最も重要と思われます産業構造審議会、金融制度調査会、財政制度審議会、こういうものには労働者の代表は一人も入っておりません。また、現下最大の問題であります長期経済計画を策定する経済審議会には、財界代表が十五人入っておりまして、労働者の代表はたった二人であります。このような状態を放置して国民との対話とおっしゃいましても、それは恐らく内容の伴わないスローガンを叫んでおるにすぎないと私は思うのであります。  そこで三木総理、あなたは具体的に、これらの点につきましてまず改善をしていこうという御意思があるのかないのか、まず承りたいのであります。
  195. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小平さんのおっしゃるように、いろいろな審議会等の構成に対しては、やはりいままでのとおりの方式がいいと思わないのです。最近できる審議会は、私も必ず目を通すために、それを私のところに持ってくるようにと言ってあります。それに対して、私はいま言ったような点も頭に入れながら、できるだけ国民各層の意見が聞けるような審議会にしてまいりたいと考えております。
  196. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その点を確認して、ぜひ総理、善処を望む次第であります。  さらに、昨年の末、三木総理は就任早々、党首会談を持たれました。その姿勢につきましては、私は率直に評価するものであります。しかし、その中身は、まだ期待にほど遠いものがあると思うのであります。特にあなたはその際、必要に応じて何回でも持ってよろしいと述べておられましたが、いかがでしょう、政府と野党の対話をより前進させるために、党首会談を定例化されてはいかがですか。  同時に、私は、国家として重要な問題について与野党のコンセンサスを確立する意味から、外交的秘密事項などにつきましても、野党党首に対して、それらの会談を通じて情報を提供するお考えはございませんか。  また、労働界代表とのトップ会談、これもひとつ定例化していったらいかがですか、お伺いいたします。
  197. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どうでしょうか、定例ということになるとどうしても形式的になりますから、必要に応じていつでも会う、こういうことのほうがいいのじゃないでしょうか。日を決めてやりますと、やはり形式張りますよ。しかし、日を決めないで、必要になったらいつでも会おうじゃないかという方がいいのじゃないかと私は思うのですよ。  それからもう一つは、できるだけ情報を提供せよということは、そういうふうに心がけましょう。野党のほうも、しかし責任をお持ちを願わなければならぬということは当然でございますが、できるだけ情報は提供できるように努めたいと考えます。
  198. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理は、定例化すると形式的になるとおっしゃる。必要に応じて開くことがよろしいと。ところが、政府総理が、いや必要がないのだから、ないのだからと言って、結局その機会がないということが過去の例でございましたから、むしろ進んで定例化することがいいのじゃないかと、前向きに私は申し上げました。ぜひ御善処いただきたいと思うのであります。  さらにまた、産業界はもとより、労働界あるいは医師会とのトップ会談がこれまで持たれた経緯はございますけれども、中小企業の代表との会談はないように思うのであります。この種の会談はいかがでしょうか。あなたの国民との対話を実践するという意味で、中小企業代表との会談を定例化するということを、私は特に、今日の零細企業、中小企業の現状を考えるときに、ぜひ期待するものであります。  さらにまた、ことしは特に婦人年でもございます。その意味から、婦人代表と会談を持たれるというようなことはいかがでございましょうか。
  199. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 党首会談、私の必要と言うのは、私自身の判断というのじゃなしに、小平さんのほうからも、必要とあったらいつでも言ってください。いつでも会いますよ。だから、それは一方的な判断だけではないということです。  それから、中小企業の代表者とも、就任早々やはり懇談の機会を持ちました。中小企業というものは、私は大事だと思うのですよ。中小企業というものが安定した基盤をつくらなければ、日本の経済は安定しないと私は思いますから、これは落とすわけはないのであります。昨年末に中小企業の代表者と懇談をいたしました。婦人とも、これはいままでどうも婦人との間の対話といいますか、そういうことは欠けておりましたので、いま人選をいたしておる最中でございます。近くやるつもりでございます。
  200. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はさらに、三木総理が、真に国民政治に対する信頼を回復することを願い、政治の原点として、国民との対話を具体的に前進すると言うならば、その具体策を総合的に実施に移していくということが一番肝心だと思います。それらの課題は、あなたが今回の施政方針演説でも指摘されましたように、政治資金のあり方にメスを入れることとともに、三木内閣政治姿勢を決定する重要な課題だと思うのでありまして、私は、ただいまの三木総理の決意を今後本当に、表現やスローガンだけでなく、対話の政治、話し合いの政治、力の政治、対決の政治ではなくて、協調の政治、これをぜひ実行に移していただきたいと思うのであります。  そこで私は、政治姿勢の具体的な問題として、政治資金規正法の改正と公営選挙の強化についてお伺いいたします。今日のような政局の混迷と政治不信の根源は、やはり歴代自民党政権が一貫して行ってきた大企業偏重、大企業本位の派閥金権政治が大きな要因であると思うのでありますが、この体質にさらに拍車をかけたのが、現行の選挙制度と金のかかる政治資金規正法でございます。総理は、昨年の九月に軽井沢で三木派の研修会がございましたが、その席上であなたは、公然と金権政治を批判するとともに、党総裁になるより近代化の起爆剤、推進役となる、このことを望むと言明されておりましたが、あなたが総理になった、総裁になったということは、いわばそれが一つの歴史的なあなたの使命であると私は思う。そういう意味で、わが国の金権政治を断ち切って、政界の浄化をするということがまず第一だろうと思いますが、総理、いかがでございましょうか。
  201. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小平さんの言われるとおり、政治が金で支配されるということは、そういうことが続けば民主政治は続いていくわけはないわけです。そういう金の支配から政治を断ち切らなければならぬわけであります。そういう意味で、制度的には、私はぜひとも政治資金規正法と選挙の粛正に関する選挙法の改正をやりたいと考えております。  政治資金規正法はやはり、理想的であっても、いますぐ個人あるいは党費だけで賄うということはなかなか無理がありますから、ある過渡期は、やはり企業の献金というものも、党の財政を支えていく一つの資金にしなければならぬと私は考えております。しかし、それについては、けさもいろいろと御質問があったように、疑惑の持たれないように、ある一定の限度を設けた企業献金にしたいと考えておるわけでございます。しかも、その使い方、集め方というものをできるだけ明朗なものにして、そのことが自民党政治に対していささかも影響力のない、国民にも疑惑のないような形にしたい。  選挙法の改正については、もう少し公営を拡大したい。相当公営は拡大していますけれども、まだ拡大する余地は私はあると思う。そしてもう、金がなければ選挙に出られないんだというようなことでは、国会政治を志す若い人たちに対しても政治参加の意欲を失うわけですから、そういう点で、余り金がかからなくて選挙に出られるような、法定費用のごときも守られるような、しかも今日より少し低い水準で、しかもだれもが守られるような、そういう限度に抑えて、選挙に金がかかり過ぎる現状だけは改革をしたいというのが、私の、選挙法、あるいはまた政治資金規正法に対する基本的な考えでございます。
  202. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その点は、昨日来の本委員会における野党諸君の質問に対しましても、一貫して答えられておりますが、総理の当面の大きな政治課題は、やはり何といってもこの政治資金規正法の思い切った改正と公営選挙の強化、いわゆる公職選挙法の改正であります。     〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕  そこで私は、総理に、中に入った問題で、二、三お伺いしたいのでありますが、あなたが総理になる前に、いわゆる個人献金をやるべきだということを主張されておりましたが、昨年、政権担当直後の臨時国会では、これは少し時間をかしてほしいというようなことを述べられて、若干後退をしたような感じでございます。そのことに時間をかすといっても、具体的な方法がなければ意味がないのでありまして、その個人献金について、たとえばアメリカや西独では、個人献金に対しまして、所得控除ないしは税額控除といったような税法上の優遇措置をとっておりますが、このような方法を講ずれば、個人として献金をすることが促進するというような具体的な問題も実はあるわけです。単に時間をかして長引かす、今度の改正は間に合わぬ、こういうようなことでなくて、その点は総理、いかがでございましょう。
  203. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 時間をかせというのは、この国会に提出をしない場合のようなことを言っておるのではないのです。原則としては党費と個人の献金によることが、一番国民から見てもいろいろな疑惑を生じないことではありますし、理想だと思う。それまでに行く間に、経過的な一つの時期が要る。第五次の選挙制度調査会でも、個人と党費によって党の財政を賄うまでに五年間という猶予期間を置いてあったように私は記憶しておるのですが、それを言っておるので、時間をかせというのは、この法案の提出に対して非常に長い年月がかかるという意味ではないわけでございます。また、その場合に、個人献金に対して所得控除を行うことは、これはもうそうでなければ、なかなかやはり個人献金というものが日本の社会慣習の中に根づいていきませんから、したがって、それは税法上の特典を与えなければいかぬ、そういうことは当然だと考えております。
  204. 小平忠

    ○小平(忠)委員 本件に関して、最後の総理の所信を承りたいと思いますが、それでは、ただいま総理が指摘されましたいわゆる政治資金規正法の改正の提案、公選法改正の提案、これは、総理はいつごろ国会に提出する決意でございますか、お伺いいたします。
  205. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政党内閣でありますから、党の方との調整を必要としますが、今国会に提出をするということで、ひとつ御了承を願いたいと存じます。
  206. 小平忠

    ○小平(忠)委員 今国会といいましても、会期末では審議できません。御承知のように、統一地方選挙もございます。私は、少なくとも二月中に提出するというような決意を固めてもらわなければ、今国会で審議して成立するということは不可能と思いますから、どうぞひとつそのような決意で臨まれることを期待いたします。  次に、私はこれから経済問題について質問いたしたいと思いますが、経済問題につきましても、多岐にわたっておりまするので、特に当面のわが国の物価、インフレに最も重要な関係を持つ案件についてお伺いいたしたいと思うのであります。  まず最初に、総需要抑制政策転換についてお伺いいたします。  三木総理は、ただいままでの野党質問に対しまして、総需要抑制政策については当面これを堅持する、具体的には春闘後もこれを堅持すると言明されておりますが、国内の早期転換要求、あるいは米国、西独などの要請にかかわらず、この基本方針を貫く決意でございますか、まずお伺いしたいと思います。
  207. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 総需要抑制というものは、物価を安定さそうということが目的でございますから、春闘を目当てのものではございません。だから、春闘があればどうする、春闘が済めばどうする、あるいは済まなければどうするというものではないわけで、物価がこれで鎮静してきたという見通しが立てば、総需要抑制というものはいつまでもやる政策だとは思っておりません。
  208. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの発言に、総理、若干ニュアンスがございますね。先ほど矢野さんの質問に対する最後の総理答弁も、私は若干そのアクセントにひっかかるものがあるのですが、というのは、実は、これまで総需要抑制政策を堅持することを主張してまいりました財界筋が、去る二十八日の経団連理事会で、土光会長の発言をもってしますれば、すでに景気は急速に冷え込んでおり、政府は不況対策を実施する必要があると指摘しておるのであります。そして近日中にそのことを政府に申し入れることを明らかにしております。この経団連の方針は、いままでの三木総理の言明と食い違うと私は思う。政府政策転換を求めたものと私は受けとめるのですが、三木総理が、もしこの申し入れがあった場合に、政策転換を検討すると言うのか、この問題について、非常に重要でありますから、私はまずお伺いしたいと思います。
  209. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 われわれも、景気の動向に対しては非常に重大な関心を持っておることは当然のことでございます。しかし、いまは苦しいことはわかりますけれども、国民皆の願いも、物価を安定させてもらいたい。物価問題に対する関心が国民の最大の関心事であるし、われわれもさように考えますから、いまの段階において、政府が総需要抑制策の基調を変える考えはありません。しかし、その枠内において、景気の動向なども十分に頭に入れて、そうして不当な影響がないように、ことに中小企業などに対しては特別な配慮を加えてまいることは当然のことでございます。
  210. 小平忠

    ○小平(忠)委員 当然そうだと思います。しかし土光経団連会長の提案は、この総需要抑制政策の看板はそのままにいたしまして、一つは四十九年度予算で繰り越した公共事業の年度内消化を図ることや、さらに日銀の窓口規制の緩和など、やはり一連の金融引き締め政策の量的緩和の即時実施ということを求めておると思うのであります。もしこれを実行した場合にはどういうことになるか。それは私は、総需要抑制策というものは、もはや抑制策ではなくて、不況対策に力点を置いた総需要管理政策だと思うのであります。このような質的な転換を遂げるということになれば、これはただいま総理が言明されたような問題とは、まさに異なる方向に進むのではなかろうか。非常に重要であろうと思うのでありますが、重ねてお伺いいたします。
  211. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先ほども申しましたごとく、景気の動向に対しては重要な関心を持たなければなりませんから、あらゆる努力は、総需要抑制の枠組みを外さない範囲内において努力はいたしますけれども、その基調は、いろいろな御意見はあっても、いましばらくごしんぼうを願うことが物価を鎮静させる、今鎮静の方向にあるわけですから、そういうことでごしんぼうを願いたいというのが政府の態度でございます。
  212. 小平忠

    ○小平(忠)委員 いま当面いたしまするわが国の不況対策と、さらにインフレ抑制という問題は、これは世界いずれの国も調整、コントロールに悩む重要な問題だけに、このかじを一歩誤ると大変なことになると思います。その音一味から、やはり何と言っても今日は物価を下げることが、インフレを抑えることが、私は刻下最も重要な問題だろうと思いまして、特にこの点は総理にお伺いした次第であります。  次に、インフレ、物価問題と重要な関係、関連を持つ行財政の改革と予算編成の基本的なあり方についてお伺いいたします。  総理施政方針演説の中で、新規まき直しの必要性を特に力説され、財政硬直化の問題を含めまして、行財政のあり方全般にわたる見直しと、さらに国と地方との関係を初め、地方行財政のあり方について、全面的な見直しをするということを総理は明らかにされました。総理自身も、このことは決してなまやさしい問題ではない、既成の考え方を変え、既存の権利を手放すことには大きな抵抗もありますし、なかなかこれを打破していくことはむずかしい。しかし、これを実現しなければ日本政治は新しい時代にふさわしいものにできないと、きわめて困難なこの問題に挑戦した総理の決意はよくわかるのでありますが、しからば、この総理の決意は、今後いかなる形で取り組んでいこうとするのか、伺いたいと思います。
  213. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 行財政、これだけの大きな激変を受けたわけでありますから、やはり新しく、日本は既成のいろいろな制度、慣行というものを再検討すべき時期に来ておることは申すまでもないわけであります。  しかし、長い間の既得権益などもございますし、これは口で言うほど容易なものではない。私が言ったのは、まあ最低二、三年ぐらいはやはりこの問題と取り組まなければならぬ。しかし、まず五十一年度から第一歩を踏み出すようにしたいということを申し上げておるわけで、中央の財政については財政審議会、あるいは地方については地方制度調査会、すでにこの問題に対して検討をすることをいますでにお願いをしたわけで、検討を開始することになっております。そういうことで、これは各方面から、新しい時代に即応した行財政というものに対して全面的検討を加えたいと考えております。
  214. 小平忠

    ○小平(忠)委員 このことは、非常に困難だから、むずかしいからといって、歴代の内閣総理は、口にはされるけれども依然として進んでいないという、非常に重要な問題を含んでおりますが、私はその意味で、端的にいまの現状を訴えてみたいと思います。  最近、行政需要の増大とともに、国と地方を通じまして、非常にこれは過度に膨張いたしております。それから、官僚のなわ張り行政財政硬直化の弊害をさらに生んでおります。したがいまして、この行政の改革に当たりましては、やはり何よりも行政事務の中央偏在の弊害を排除して、中央省庁は企画、統制、管理事務に本来の機能を置くべきでありませんか。そして実施事務については極力地方公共団体に任せる。そのために自治体の自主財源をふやして補助金行政を整理する。そしてその地方の住民に施策の選択やあるいは地方議会の自主性を大いにやらせるという、このことが私はまず基本でなかろうかと思うのであります。  昨日も、社会党の江田委員からの質問に対して、総理も率直に、補助金行政というものはなるべく整理して、地方に移譲せねばならぬということを述べられました。非常に重要なことであります。したがって私は、本日この行財政の問題で総理の所信をただすについては、これは基本問題でございますから、重ねてお伺いしたいと思います。
  215. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これから国民の自治ということが重要な国民の関心になってくるわけです。そういう場合に、地方自治体が地域住民と一番密着しておる立場でありますから、福祉行政、あるいはまた環境行政もそうですか、そういうもので、地方自治体の役割りというものは、これからますます増大してくると思います。そういうので、いま小平さんの御指摘になった、国と地方との行政の区分であるとか、補助金の整理であるとか、それに伴って自主財源というものをもう少し地方自治体に与えなければならぬし、そういう点で、この地方行政のあり方というものは、やはり根本的に考え直してみる時期であるということは、小平さんと私全く同感なんです。そういうことで、このことも十分に検討をいたしたいと考えておる次第でございます。
  216. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これをさらに具体化する意味で、総理は政権を担当されましてから、本院の本会議委員会、あるいは記者会見等で、これを進めるために、さらに財政制度審議会の意見も聞いて、いいものをつくっていきたいということを指摘されました。ところが、その財政制度審議会の構成の中身をごらんください。これは委員の定数は二十五人以内になっておりますが、その中で、いわゆる大企業の会長、社長、相談役というような方々が十四人も占めておって、いわゆる労働界、労働者の代表は二人しか入っていない。こういうことで、いかに諮問をして意見を聞いてみたところで、結局、結果は数によって押し切られる、大企業本位の、あるいは真に働く勤労階級の意見が入らぬというような結果になるのでありますが、先ほど劈頭に申し上げましたように、具体的な問題として、そういうことも、いままでのような状態のままでやったのでは意味がない、私はこのように思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  217. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その審議会は私の所管でございますので、私からお答えを申し上げます。  財政制度審議会は、予算編成の基本方針、財政制度の検討等につきまして、年々歳々精力的な御審議をお願いいたしてまいりましたし、その委員の中に先鋭な対立が見られるというようなことも、私は聞いたことがないわけでございまして、今日までよくその職責を果たしていただいておると考えております。しかし、いま御指摘がございましたような点がもしありとすれば、検討するにやぶさかではございませんけれども、ただいままでのところ、円滑に運営し、精力的に役割りを果たしていただいておるものと承知いたしております。
  218. 小平忠

    ○小平(忠)委員 この機会にお尋ねしますが、いま政府のもとにある各種の審議会、これは大変な数であります。しかしその中で、審議会としての機能を発揮している審議会と、中には有名無実、まさに形だけが存在しているという審議会がたくさんあるのであります。一体、現在、国の設けられている審議会の数は幾らあって、その中で有名無実だというような審議会は幾らぐらいあるのか、総理、調査させたことがございましょうか。
  219. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 松澤行管長官がお答えすればいいのですが、ちょっと御病気なものですから、私から申し上げます。  現在、審議会の数は二百四十六ということになっております。これは十年ぐらい前から比べますと一割ほど減ってはおります。しかし、おっしゃるように、この中には、すでに使命を終わったというふうなものもあろうかと思うのでございまして、いま私の手元で、これを一遍洗い直そうと、こういうことに進めておるわけでございまして、またその結果等が出れば、お手元へ御報告をいたします。
  220. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これは私は、きょう行管長官がおられましたら、掘り下げて——行管長官の任務はやはりそこにあると思うのですね。貴重な国費を費やして有名無実とは、これは国民に相済まないことであります。ですから、速やかに実態を調査して、機能を発揮していない審議会は、なぜ発揮しないのか、そんなのはすぐ廃止してしまえという、やはり内閣の指導性が私は必要だろうと思います。総理、ぜひ、この各審議会は、いま官房長官も指摘されましたように、現在二百四十六もあるのでございますから、十分に、速やかにこれに対処していただきたいと思います。  そこで、私は予算の編成につきまして、その基本的なあり方をお伺いしたいと思うのでありますが、予算は、国の政策の骨格を定めるだけでなく、国民経済、国民生活に最も大きな影響を持つものであります。この予算の編成について、従来そのやり方を見まするならば、大蔵省が各省庁に、概算要求を八月末までに出してこい、それは大体前年対比一二五か一三〇ぐらいの見当で出してこい。そして八月いっぱいに出てきたものを、今度は大蔵省が九月から査定に入って、そして年末ぎりぎりになってから初めて、そこで内閣予算編成方針が決められる。まあ早くて十二月の中ごろか、遅いときは十二月のもう末。今回のごときも、十二月二十八日に予算編成方針が決められている。そういう状態で、直ちに数日後には大蔵の原案を内示して、そうして今度はいろいろ予算の分捕り合戦をやって、復活要求を認めて、そして政府案を決める。こういうことをやってきているのでありますが、総理、このような予算編成のあり方が、真に内閣の指導力というか、本当に内閣の権威ある意思というものが、予算原案を作成する上において反映されているかどうか、まず私は伺いたいのであります。
  221. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、これからやはり予算編成の仕組みというものも、閣議の機能を強化したいと思っているのです。政党内閣でありますから、その場合に党の意向も徴するわけでありますが、その予算というものの方針、また優先順位などに対しても、閣議の意思を決めて、そして予算を作業するというような仕組みに持っていきたい。閣議の機能を強化する、こういうことで、将来予算の編成というものはやっていきたいということでございます。
  222. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これは私は根本的に重要な意味を持っていると思うのですが、大体、その概算要求を各省庁が大蔵省に出すその前に、少なくとも内閣が来年度の予算編成大綱ぐらいはお決めになってはどうでしょうか。その大綱を決める場合に、政党内閣、政党政治ならば、私は、野党の意見も聞いたらいかがでしょうか。各省庁が、内閣予算編成の大綱に基づいて概算要求を出してくる、これを大蔵省が査定するのは私はいいと思うのだけれども、何ら内閣の意思も反映しないで、前年度の継続をそのまま踏襲したものを、結局、前年対比一二五か一三〇ぐらいで概算要求を出して、それで主計局が査定をして、それを基礎にして、結局政府案が決まってしまう。これでは、いま総理がおっしゃった内閣の指導性というものが発揮できないじゃありませんか。それも、先ほど申し上げましたように、今回だけではないのです、総理。従来も、十二月の中ごろか下旬に予算編成方針なるものを決めて、それからその編成方針が具体的に予算の中身に入るのですが、これは俗に言う官僚指導型の予算編成なんです。これを改めた方が私はいいと思う。いかがでしょうか。
  223. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ちょっと私から一言お答えさしていただきたいと思います。概算要求の時期、査定の時期、編成の時期にかかわる問題でございまして、やや技術的な御質問でございますから、一言お答えさしていただきたいと思います。  小平さんの言われることは、私もお気持ちはよく理解できるのでございますけれども、経済が、ことしも来年も再来年も、非常に平穏に推移してまいる。来年の状況というものを、あなたの言われる、夏の段階におきまして大体展望ができるというような、条件に恵まれておる場合におきましては、仰せのような時期に、内閣が基本の方針を決めるということも、私はあながち——そのほうがあなたのおっしゃるとおり望ましいのではないかと思います。けれども、今日のように非常に変化の激しい時代でございまして、とりわけ歳入におきまして、明年はどのくらいの歳入が期待できるかというようなことは、相当後になってみないと、それをはかるデータがそろわないという不自由が現実にありますことは、御理解いただけると思うわけでございます。したがって、今日まで、残念ながら、年が押し詰まっての編成、あるいは年が改まっての編成というようなことを繰り返してきたと思うのでありまして、それにはそれなりの理由があったわけでございまして、これは内閣の指導性ということは一応別な理由であるということを、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  224. 小平忠

    ○小平(忠)委員 理解できません。全然それは大蔵大臣違います。何も内閣としての予算編成方針を決めないで、大綱も決めないで、どんどん作業をして、形式的に予算編成方針を年末に閣議で決めたって、そんなもので内閣の指導性を発揮できますか。  もう一つさらに問題なのは、これは国会法、財政法二十七条で、国の予算はいわゆる十二月中に国会に出すことを常例といたしております。これは予算理事会でも問題になっておりまして、昨日、田中委員からも発言がありました。このことは、何のために十二月中に国会に出せというのか、やはり理由があるのです。  現在、政府国会予算を出すのはいつなんですか。休会明け再開国会の劈頭に出してくるじゃありませんか。これは、いまのような予算編成過程をやっていれば、そうなってしまうのです。十二月中に国会に出すとなれば、議員も、この重要な予算案について、内容を十分に検討して、この再開国会に臨んで、本会議並びに本委員会において、真剣な論議ができるその期間があるのです。いまは、再開国会の前日か、あるいは極端なときは当日出してくるようなことがあるのです。そういう意味から、国会法で、国会の常会を十二月中に召集する、予算は前年度の十二月中に国会に出すのが常例、こう決めたのは、そういうゆえんにあるのです。もちろんこれについては、いや、そうなると、歳入面の検討で九月末の税収面の検討をするとそうなるんだと、いろいろ理屈をこねるようだけれども、すべてこれらの問題は、一月繰り上げて作業をしていったらどうですか。私はそういう面から、やはり根本的にこの問題は検討してもらいたい。総理いかがですか、財政法の二十七条には、明確に、十二月中に国会予算を出すということになっておるのです。
  225. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 常例とするということになっておるわけですから、できるだけ出すようにということでございましょう。しかし、いま大蔵大臣も申しましたように、経済の変動の激しいときですから、やはり経済の状態なども把握をして、その上に立って予算の編成をする必要もあって、十二月中になるべく出そうとしても、どうも困難な場合が多いのですね。だから、これは財政法の改正というものもあるわけですけれども、しかしまた、それは国会法の二条でしたか、そういうものと関連があって、これはなかなかむずかしい問題があるわけですけれども、しかしこの問題は、できる限り予算は、そういう財政法の規定もございますし、政府の方としても、できるだけ早く予算を提出するように努力をいたしますと答える以外に、これからも全部十二月中に出しますというお約束も、なかなかむずかしいと思います。なるべく早く提出するように努力をいたします、とお答えをいたすよりほかにはないということでございます。
  226. 小平忠

    ○小平(忠)委員 全然それでは前進がないのです。少なくとも、ただいまの財政法二十七条に規定されておりまする「十二月中に、国会に提出するのを常例とする。」この問題は、私はやはり相当検討しなければならぬと思います。しかし、内閣予算編成方針を、大蔵原案を内示する五日や一週間前に出すというような、そういう無定見さはやめて、少なくとも十二月の上旬に出すとかいうようなことが可能じゃありませんか、この問題は。
  227. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは前には、昭和二十五年、六年でしたか、予算編成方針を七月、八月ごろに出したことがあるのです。そういうのは好ましい形でもあるわけですが、それが定着しなかったのですね。だから、七、八月というものは無理がありましょうが、いまのような時期というのは、少しやっぱり遅い感じがいたします。内閣予算編成方針はもう少し早める必要があるということは、小平さんと同感でございます。
  228. 小平忠

    ○小平(忠)委員 さらに、事前に野党の意見を聞くということはいかがですか。
  229. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 予算の編成のときに、いつの時期に聞くかということは別として、今後野党の意見はできるだけお聞きして、とれるものがあったならば、予算に反映をするような努力をいたします。
  230. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どうも総理、歯切れが悪いですよ。対話の政治、それから私はスタートをしておるのです。後退をしないように、総理、特に望みます。  それと、私は、今回の予算編成、これは従来もあるのですけれども、特に大蔵原案を内示してから政府案を決定するまでの間における、特に今回も国民のひんしゅくを買って、マスコミも相当いろいろ報道いたしておりますその中身は、すなわち公開財源のほかに官房調整費と称する調整財源であります。公開財源は五百億、一般会計の予算の規模二十一兆二千八百八十八億に比較すると、五百億は何%になるのでしょうか。わずか一%に満たない、〇・二五%くらいじゃありませんか。これを公開財源だと言っていろいろ論議し、現実には、この公開財源以外に千七百億を上回る調整費というようなものを、これを復活財源に充てている。私は非常に不明朗だと思う。むしろ堂々と、五百億という公開財源を、別に千七百億を出すのなら、それも一緒に合わせて、今回の二千二百億というものを公開財源にして、それで内示時限までに決めなかった政策予算なり、あるいは野党の意見も国民各層団体の意見も聞いて、りっぱな予算を仕上げてはどうでしょうか。総理、いかがでしょうか。
  231. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今年度の予算編成については、いろいろ御批判もあると思いますが、政府として予算編成方針というものをできるだけ早く決めまして、そしてそれによって大蔵省は優先順位をつけるということですから、予算を編成すれば、まあ今年度のようなことにはならぬと思います。そういう点から改めてまいりたいと思う次第でございます。
  232. 小平忠

    ○小平(忠)委員 改めるという御意見でありますから、私は、これはぜひ真剣に検討してもらいたいと思いますが、私はやはり、この調整財源というものは必要だと思います。というのは、やはり予算は、政府原案を決めるまで、いろいろ経済情勢の変化なり、国民各界各層の意見も十分聞いて反映しなければならないから、たとえ大蔵原案を決定する時限においても、足らざるはあると思いますから、調整財源は必要だと思います。私はむしろ、調整財源を全体予算規模の三%、まあ中には五%ぐらい持ちなさいという意見もありますけれども、三%で、二、三が六千億、そのぐらいの財源があるならば、本当に足らざるを補って、十分に政策予算も取り入れた復活ができるのではなかろうか、このように思うのであります。最後に総理並びに大蔵大臣の意見を聞いて、次に進みたいと思います。
  233. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ことし特に調整財源を多くしたというわけでもないんです。公開財源、それから官房調整費と称するようなもの、これは大体、例年若干のものを手持ちに持ちまして、予算の編成をやったわけでございまして、ことし特にじだらくなことをやった覚えはございません。その点、誤解のないようにお願いしたいと思います。  しかし、公開財源を多くするか、あるいはいまのような仕組みでやるのがいいかというような問題につきましては、いま御注意もございましたし、いい予算をつくるということが終局の目的でございまするので、よく検討さしていただきたいと思います。
  234. 小平忠

    ○小平(忠)委員 別に大蔵大臣、私はいま、今度の予算編成ででたらめな、ふしだらなことをやったとは一言も申しておりません。何もあなた、そんなことをおっしゃらぬでもいいんですよ。むしろあなた、そんなことおっしゃるなら、あの予算の内示直後に、私は党を代表して、野党も大蔵大臣にいろいろ意見を申し述べました。あのときにも、この調整財源の問題で、大蔵大臣はとぼけられたのか知らぬけれども、いや、この調整財源はおれもわからないんだよと言って、とぼけておったでしょう。そういうようなこともやはり国民からひんしゅくを買うのですから、私は決してでたらめだとか、そんなことを言っていないんです。もっと真剣に取り組んでもらいたい。どうすればいいのか、このことを特に申し上げて、次に移りたいと思います。  次は、独禁法の改正についてお伺いいたします。  私は、今日の不況打開、インフレ克服の上に絶対欠くべからざる問題が、この独禁法の改正だろうと思うのであります。三木総理がたびたび演説もされます。また、本院における答弁でも、自民党は決して大企業にのみ奉仕する政党ではない、これを百万言費やすよりも、いま国民大衆が求めている方向への思い切った独禁法の改正、私は、これをやることによって、もうあなたが説明される大企業にのみ奉仕する政党でないということを裏づけすると思うのです。ですから、特にこの問題に関しまして、私は端的に申し上げます。  やはり一番問題になるのは、価格独占に対する調査と告発の権限を公正取引委員会の専属告発にしているところに問題があるのです。やはり消費者の公平な代表機関、こういうようなものをつくって、消費者が、特別に高いとか急激に価格が上昇したとかいう問題について、これを告発するというようなところまで求めていかなければ、本当に解決はできないのです。われわれが以前からも主張しておりました、結局、むちゃくちゃな無謀な価格の暴騰については、ぜひ独禁法を改正して、公取委員会にその価格引き下げ命令を発することができるような権限を与えよという、これは今度の改正案に入っておるようでありますから問題はないのですが、しかしそれだけでは不十分だ。ぜひそこまで拡大することをお考えになってはどうか。それから問題は、この独禁法の改正案を、総理、いつ国会にお出しになる予定ですか。
  235. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三月の、できるだけ上旬に出したいと思っております。上旬というのは、まあ中旬まで入れておきましょう、上、中旬。
  236. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、これは非常に重要だけに、その時期を誤りますと、また今国会も、これは単に主張だけに終わる結果になると思います。三月に入ってはむしろ遅いんじゃなかろうか。遅くも二月中に提案をするという段階にいかなければ、今後の政治スケジュール、いろいろなことを考えますと、非常に困難になってくるように考えます。ぜひこのことは思い切った英断を総理に望む次第です。  そこで、先ほど私の申し上げた独禁法改正について、消費者の意見を反映することについて、公取の委員長、いかがですか。
  237. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 消費者の意見——まあ消費者という意味は、私は、広く独禁法違反によって損害を受けたりする者、そういうものと解しておりますから、中には事業者が入ると思いますが、そういう者の意見をできるだけ尊重していくという基本的な考え方は持っておりますし、これからも変わりありません。ただ、法律的な問題として、ただいまおっしゃられたのは、恐らく公取だけが告発について専属権を持っておる、これをそうでない一般人も告発権が与えられていいんじゃないか、その方がいいというふうなお考えでございますが、これは大変デリケートでございます。  と申しますのは、告発は、刑事責任を問うべきであるということを、いまは公取が判断いたしまして、いままでカルテルなんかたった一件でございますが、きわめてまれでありますけれども、告発いたしました。その告発については、結局は私どもの方の事情もありますが、検察当局、それから高裁の処理能力、こういうことを全然考慮に入れないわけにはいきません。そこで、いわば非常に厳格に、これは告発に値するというものだけを選ぶというふうな態度をとっております。ところで、それが公取の審決などを経ないで、勝手にだれでもが告発できるということになったら、それは一体どこへ告発するのかということ。独禁法違反であるということがまず認定されなければなりませんから、その点が先でございます。そうすると、東京高裁に、いきなり一般人から告発が行くということになりますと、そちらの方で、その裁判で独禁法違反を最初の第一審として取り上げなければならぬ。それを確定しなければ刑事責任を問うわけにいかぬ。そういうことで、公取委員会の方で取り上げている問題あるいは取り上げない問題を、刑事問題として東京高裁がさばき得るのかどうか。そういう点で、完全に二つに道が分かれてしまうというむずかしい問題がございます。  それから、そういう刑事責任を問うのに十分な証拠集めが、果たして一般人に可能であるかどうか。刑事責任でない損害賠償については、別に考える余地がございます。ございますが、これにも大変むずかしい訴訟上の矛盾といいますかがあり得るのでございますので、大変むずかしい問題であるということだけを、いま申し上げておくだけでございます。私ども全然そういうものを否定しようとは思いませんけれども、ちょっと法律上、私どもよりもむしろ法務当局の方に、たくさん難点があるのではないかというふうに考えます。
  238. 小平忠

    ○小平(忠)委員 国民とともに歩む政治、今日のこの不況克服、インフレ克服という意味から、公取の使命がいかに大きいかは、私からいまさら申し上げるまでもないことで、何か問題をこじつけてむずかしく考えると、何もできません。ですから、この点はやはり公正に判断をして、今日のこの独禁法の改正が、真に国民、消費者大衆にこたえる道だという観点に立って、善処していただきたいし、総理にも、このことを特に強くお願いをいたしまして、次に進みたいと思います。  次は、銀行法の改正でありますが、特にわが民社党は、もう一昨年から、この問題を特に強く取り上げておる。昨年暮れの臨時国会でも、本委員会で、同僚竹本委員から、この銀行法の改正については、具体的な内容を指摘して法改正を迫ったことは、もうすでに総理も大蔵大臣もよく御存じのとおりであります。したがいまして、先ほどの矢野委員質問にもありましたが、今日、銀行というものがいかに重要な役割りと、今日のこの日本の経済危機を救うためにどういうような場面にあるかは、いまさら申し上げるまでもございません。その意味から、先ほどの総理答弁を聞いていますと、善処したい、検討したいという程度でありますが、これは総理、本当に検討するような段階でなくて、もう思い切った英断をふるわなければ、あなたが施政演説で述べられたような中身が整いません。私はその段階に来ていると思います。総理のさらにもっと前向きの考え方をぜひお示しいただきたいし、特に私は、きょうは日銀の森永総裁も見えておりますが、日銀総裁の意見も承りまして、この銀行法の改正に直ちに着手して促進してもらいたい、このように思うのであります。
  239. 森永貞一郎

    ○森永参考人 銀行法は、制定以来かれこれ五十年近く経過しておるわけでございまして、その内容には、時代の推移に沿わない点が幾多見受けられるのでございます。新時代の要請にふさわしくこれを改正する時期がもう来ておると私も存じますが、何しろ金融の基本的な法規の一つでもございますので、その改正に当たりましては、よほど慎重を期さなければならないのではないか。政府におかれましても、恐らくは金融制度調査会等に諮問の上、具体的な結論を出されるかと存じておる次第でございまして、いまこの席で私がどの点どの点ということを先走って申し上げることは、少し行き過ぎじゃないかと存じます。審議の推移、世論の推移等にまって、おのずから改正点を煮詰めていくということではないかと存じますので、御了承を得たいと存じます。
  240. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 たしか銀行法は昭和二年だったと思うのです。その後、そのときとは、銀行の役割りも非常に違っておりますしね。検討するというのは、やはり改正の必要ということを頭に置いて、検討を加えるという意味でございます。
  241. 小平忠

    ○小平(忠)委員 重ねて申し上げますが、総理は、いまさらに前向きの姿勢でございますから了といたしまして、真剣に取り組み、このことをやはり短日月に解決していただきたい、このように思うのであります。  次は、公共料金の凍結について率直にお伺いいたします。  昨年の秋から、政府は、消費者米価、国鉄運賃、営団地下鉄、タクシー、このように一連の公共料金の値上げを強行いたしております。ことしもまた、郵便料金、たばこ、酒税の値上げを図ろうといたしております。総理いかがでしょうか。公共料金の値上げについて、たばこと酒税については、参議院本会議における発言を、本院のこの委員会で訂正されまして、実はそれは暫時凍結でなくて、たばこも酒税もやるのだ、こういうようなことをやっておったのでは、本当にいまの物価問題について——先ほど総需要抑制も、時期を見てこれは緩和しなければならぬというようなことを言われたが、このように一連の公共料金を値上げして、総理の考えているような状態が実際考えられるでしょうか。やはりこの際思い切ってあらゆる公共料金を凍結するという決断、そこまでいかなければ解決できない。私は何も永久に凍結せよと言うのではございません。少なくとも消費者物価の上昇が一〇%台、一けた台になるまで凍結してはいかがですか。総理の率直な意見を伺いたいと思います。
  242. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 公共料金は、やはり利益を受ける人がこれを支払うということが原則であるし、次々に公共料金を凍結していきますと、次の公共料金を値上げする場合に、非常に急激な値上げということになって、やはり適当ではないと私は思います。しかし、物価の動向なども考えて、今年は、いまお話しのように、たばこと酒は上げましたが、郵便なども六カ月値上げを延ばすし、当分の間、電信電話、塩、麦などは抑えたわけでございまして、これは財政面から見れば相当無理があったと思いますが、いまは非常事態であるという認識のもとにやったので、これはやはり相当容易でなかったんですよ。財政的な面から見ますと、これは非常な無理もあったわけですが、しかし、物価を鎮静さすということが一番大事であるということで、その点は財政上の無理を知りつつ抑制をいたしたわけで、精いっぱいの抑制であるというふうに御理解を願いたいのでございます。
  243. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どうも総理は、口を開けば利用者負担をよく言われる。利用者負担を力説されることはわからないわけではございません。しかし、政府みずからが、しからば利用者負担について、総理が力説するような実態にあるかどうか、あるいは企業みずからが、生産性向上に本気に取り組んでおる面があるかどうか、そして財源確保に努力しておるかどうか、こういう点をいまこそ真剣に見直し、再検討しなければならぬ。努力しないで、なすべき事をなさないで、いたずらに利用者負担を口にするのは私は筋違いだと思う。  そこで私は、それの具体的な一つの問題点として、公共企業体、すなわち三公社五現業の実態について申し上げたい。  その最も代表的な問題として、国鉄でございます。いま国鉄の現状は、総理はどの程度御存じか知りませんけれども、その内容は、端的に言って、もう国鉄は破産状態なんです。国鉄がいまもし私企業なら、完全に倒産です。私がその実態を、若干数字を並べて申し上げないと、総理はぴんとこないかもしらぬ。  昭和五十年度の資金概計によれば、国鉄の運輸収入は、旅客で一兆三千六百九十億、貨物が二千九百六十五億で、合計一兆六千六百五十五億でございます。これに対して支出は、人件費が何と一兆三千七百四十三億、しかも、この人件費にはベースアップはわずか五%しか見込んでおりません。通常のベースアップが行われた場合は、もはやこの運輸収入ですべての人件費が消えてしまう。要するに、食べていくのが手いっぱいで、仕事は何もできない、これが国鉄の現状です。国鉄総裁お見えになっておりますか。こういうようなことで、一体どうして国鉄の再建をしていくのです。お伺いします。
  244. 藤井貞夫

    藤井説明員 ただいま御指摘のように、国鉄の財政状態、容易ならぬ事態に相なっておるのでありますが、これは何に起因するかということをわれわれは考えざるを得ないと思うのでございますが、国鉄の生産量と申しますか、一人一人の働き方を、一人が何人運んだとか何トン運んだとかいうような数字で見る限りにおきましては、昭和三十二年に百人運んだのが、現在百八十人運んでおるということになりますし、これを外国、ヨーロッパの例など見ましたら、運び方が違うじゃないかというような議論はありますけれども、概してヨーロッパの鉄道の一人の働き方の二倍ぐらい働いておる。これは、殺人的な混乱をおまえたちやっているじゃないかというような議論はございますけれども、そういうようなことになっておりますので、これは国鉄のストとかサボとかございますから、私は大きな声では言えませんけれども、国鉄の財政状態がこんなふうになったということは、国鉄の職員の大多数は一生懸命で働いてくださっているので、職員の生産性が足らぬということじゃなくして、これも先生に恐らくおしかりを受けるだろうと思いますけれども、国鉄運賃がきわめて低位に押さえられているということでございまして、これは昭和十二年などというと戦争の前の話でございますが、それと過日おしかりを受けた十月から上がった賃率を比較してみますと、三百二、三十倍になっている。貨物のごときは二百何十倍であるというようなことでございまして、私は直ちに値上げをしないと再建ができないとかなんとかいう議論はいたしませんけれども、そこも政府並びに皆さんにおいても御考慮願うと同時に、職員には一そう勉励して働かせるという所存でございますので、御了解をお願いいたします。
  245. 小平忠

    ○小平(忠)委員 まああなたは、総裁に就任されてまだ日が浅いのでございますから、あなたを厳しく責めることはいかがでありましょう。しかし、いま御説明を承って、どこに企業努力を力いっぱいやっておる、生産性向上に取り組んでいる、そんなことは私は絶対言えない。なぜ生産性向上運動を取りやめているのですか。どんないきさつなんですか。
  246. 藤井貞夫

    藤井説明員 過日の生産性向上運動をやめたということなのですけれども、これはいかなる企業でも、生産性を上げるということは、企業の存続する限り永遠に努力しなければならぬということで、私どもがあえてやめたというのは、生産性向上に名をかりて、その間やや勇み足でもって不当労働行為があったというようなことで、これは法に触れるので、厳にやめなくちゃいかぬ。それをとっちめた結果、現場の管理職員とかなんとかが意欲が大分弱くなったということを嘆いているのでありまして、これは極力激励して、昔日の生産性の姿に上げていこうということを考えております。生産性は、先生に申し上げるまでもないのでございますけれども、不当労働行為に走ったということは、これはおわびいたします。
  247. 小平忠

    ○小平(忠)委員 さらに私が指摘したいのは、国鉄の累積赤字の現状です。四十八年度の決算報告によりますと、累積赤字が何と一兆五千九百億ですが、これが五十年度になりますとさらに三兆円にふくれ上がる。それに加えて、また長期負債の方も、四十八年度四兆三千億、これが五十年度には何と六兆円にふくれ上がるということで、これらを加えますと、実質九兆円という赤字企業でございます。一般国民が聞いたら、総理、卒倒するような天文学的な数字でございますよ。したがって、これは一刻も放置できない現状です。この国鉄の赤字なり経営の実態を、総理はどのようにいま把握されているか。ちょっとこれをごらんください。もう話になりませんよ。  さらに私は、いま国鉄総裁が、不当労働行為があったことについては陳謝するとおっしゃったけれども、その後の国鉄におきまするいわゆる管理状態は、まさに無法状態です。そして違法スト、これに対して何ら厳しい管理者の体制もなければ、極端なことを言うと、もういま駅員が駅長の言うことを聞かない。この国民の生命、そして重大なる運輸業務に携わる国鉄がそういうむちゃな管理状態で、一体国鉄の合理化なり新しい国鉄の再建ができると思いますか。このような現状を踏まえないで、単に国鉄運賃だけ上げるというようなことは、これは断じて許されない問題です。違法ストだけでも、私のところに統計がございますが、四十九年の違法ストの損失日だけでも実に一カ月近くになる。順法に名をかりて、いわばサボタージュをしている。このサボタージュは、一年の大半が闘争に明け暮れている。そしてこれによる直接の減収額は何と三百億でございます。こういうような労使関係にあって、一体国鉄運賃だけ上げて、そしてあのストというものが国民にどれだけの迷惑をかけているか、金額だけではございません。このようなことを考えるときに、政府機関、三公社五現業、国の機関でございますが、本当にえりを正して対処しなければならぬと思いますが、総理の所見を私は承りたいと思います。
  248. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国鉄の現状は、経理面から見ましても、いま小平さんの御指摘のように、容易ならぬ状態にございますし、問題を非常に国鉄は抱えておるわけで、この際、国鉄の経営というものは、これは根本的に考えてみる時期である。民社党からは、いろいろこれに対してそういう合理化の審議会のようなものをつくって、徹底的に洗い直してみる必要があるという御提案があるわけでございますが、そういうことも一つの方法かと存じますが、これは、ただ運賃をその場その場で上げるだけでは、根本的に国鉄が安定した経営ができることになりませんから、国鉄のあり方というものに対しては、根本的にいろいろ運輸省とも研究をいたしまして、この問題と取り組むことにいたしたいと考えております。
  249. 小平忠

    ○小平(忠)委員 関連いたしまして、郵政事業について私は伺いたい。  この郵政事業も、国鉄と同様に、現在では収益のほとんどが人件費で占められております。それは、何といってもロスの多い管理体制とずさんな労務管理であります。特に郵政の場合は、古い体質から来る人事管理機構が、非常に現実とは離れておるために、優秀な局員の将来に対する昇進の夢も、結局これは消え去っている。さらに生産性の意欲が減退する。そういうような現状というものは、どうしても改めなければなりません。現実に信賞必罰というけれども、それどころでない。やはり国鉄と同じように、大体郵便局の局員が局長の言うことを聞かない。局長の言うことだけでなく、課長の言うことを聞かない。だから、遅配欠配なんというものはそこからも来るし、まず管理体制がなっていない。私は、こういうような状態を考えるときに、きょうは郵政大臣、お見えになっていないようでありますが、特に国鉄同様に、郵政事業についても速やかに解決をしなければならぬ問題だと思うのであります。  ただいま総理も指摘されましたように、民社党は、この重要性にかんがみまして、実は昨日、佐々木前書記長を長とする、この三公社五現業のいわゆる経営合理化のために、実態はどうか、この実態を把握する意味で、委員会をつくって、三公社五現業、特に国鉄、郵政についてはその実態を調査して、そうしてこの問題に取りかかろうということにいたしました。したがって、政府におきましても、ただいま総理がおっしゃったような点をさらに強化して、やはり公共企業体、三公社五現業全体の問題だろうと思いますので、この際、速やかに三公社五現業の経営合理化審議会というようなものをつくって、そして根本的にメスを入れて、まずこういう点から姿勢を正すことによって、それでなおかつ運賃を値上げしなければ、郵便料金を値上げしなければいけないんだということになれば、国民も協力すると私は思うのであります。総理、いかがでしょうか。
  250. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 本会議でも御答弁したと思いますが、国鉄ばかりでなしに、三公社五現業というものについては、いろいろ問題を含んでおりますから、既設の審議会などもあるんですね、それが活用できるか、できなければ、新たにそういうふうなものをつくるか、これは各省とも十分相談をいたしまして、小平さんの御提案が何らかの形で生きてくるようにいたしたいと考えます。
  251. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 御心配の国鉄、郵政の問題、この三公社五現業のストの問題等々、ひとしく心配しているところであります。いわんや民間の方にレイオフのあるとき、こういう諸君が、公共性あるにかかわらず国民に迷惑をかけていることは、私たちも非常に残念で、労使に会うたびに、その関係の改善について話をしているわけであります。一方また、この秋スト権の解決を見るその機会に、経営形態のあり方も含めて検討しているということも、御理解いただきたいと思います。  なお、先ほど来小平さんから、労働界のことについて段々御心配がありましたが、私はナショナルセンター千二、三百万の労働組合の組織というものは、政治、経済、文化に非常に影響力がありますから、審議会にはなるべくよけい入ってもらいたい。でありますから、今度生まれます国土利用計画審議会の方にも、お二人こちらの方からお願いしているようなことでして、そういう方々には、入って積極的な意見を発表されるように、ぜひひとつ勉強しながら負けない議論をしてくれ、こういうふうにいまからもやっておりますから……。
  252. 小平忠

    ○小平(忠)委員 労働大臣に、私、要求しなかったのだけれども、進んで発言があったのでお伺いしますが、それでは、いま国鉄並びに郵政の実態について、私は総理を中心にただしているのですけれども、あなたは労働大臣という立場から、郵政事業内における組織内の暴力、いやがらせ、この実態を把握されておりますか。まことに遺憾にたえない事態が次から次へと発生しております。したがって、この問題についての実態と、これに対してどう対処されるのか、労働大臣の所見を承ります。
  253. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 直接私の所管でありませんけれども、委員会の席上、あるいはまたいろいろな会合の席上で、そういう話も聞いておりますので、それぞれ労使の関係者にお目にかかったときに、やはり正しい慣行が行われるようにやろうじゃないかということを申し上げて、お願いしているわけであります。  なお、いまから先も、私ども直接の所管でありませんが、研究してまいりたい、こう思っております。
  254. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どうか労働大臣、運輸大臣あるいは郵政大臣と直ちに連絡をとられて、そしてこれが私企業でなくても、特に公共企業体の場合は、やはり労使関係というものが非常に重要です。そのスクラム体制のない限り、国民に奉仕なんかできるものですか。私は、こういった組織内におけるいやがらせとか暴力などは、これを速やかに絶滅して、正しい労使慣行、そして生産性向上に取り組む体制をつくってもらいたい、このことをお願いいたしまして、次に進みたいと思います。  次は、物価問題に重要な関係を持ちまする生鮮食料品の流通対策についてお伺いいたします。  物価問題の解決には、毎日の食卓に欠かせない生鮮食料品を、量、価格の両面で安定的に供給することが非常に重要であることは、これはあえて私から申し上げるまでもありません。そのために流通機構の改善が緊急課題であることは、われわれは早くから主張し、政府もこのことに思いをいたして善処されておるのであります。  ところが、農林省が、タマネギの放出などで知られておりまする野菜価格安定基金に補助金を出して、消費地に野菜の大規模な低温施設を六カ所計画したのでありますが、いま完成したのがようやく一カ所、これも四十七年度中に設置すべきものがまだ完成していない。そして四十九年度においては、事もあろうに、四億四千万円の金を大蔵省に返すという無計画なことでございます。これは何をやっているのです、農林大臣。現在、新鮮な野菜や果物あるいは魚などを、安い値段で、そして常にコンスタントに家庭に配給する、これほど国民にいわゆる切実な問題はないのです。そして野菜の流通機構をやろうじゃないかというわけで、せっかくこれだけの予算を組んでいる。本当に六カ所コンスタントにいっているならば、これは相当な役割りを果たすのです。ところがまだ一カ所もできていない。そして貴重な国費を使わないで四億円も返してしまう、まことに残念でございます。
  255. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 お話のように、生鮮食料品の流通機構の整備は、価格対策上きわめて大事であると思います。そういう立場に立って、農林省としても、消費地における卸売市場の整備とかあるいは集出荷施設の整備、その他いまお話がございましたような野菜の低温冷蔵庫の建設ということを手がけておるわけでございますが、確かにいまお話しのように、野菜の低温冷蔵庫につきましては、四十七年度から予算措置を講じておるわけですが、お話のように、非常に進度がおくれておるわけでございます。  これはやはり一つの理由としては、対象地域が大消費都市ということで、建設用地の取得が非常に困難となっておるということで、あるいは関連事業の遅延が生じたこと等に事情があるわけでございます。四十九年度から、消費都市を実施主体とする事業を設けることとしておりまして、完成をしておる地域は、いま大阪、川崎、東京と三カ所あるわけでございまして、現在、大阪、浦和の二カ所の建設が進められておりますが、しかし、予定どおりには行われておらないわけでございます。したがって、五十年度からは何としても進度を早めなければならぬということで、こうした事業を統合して弾力的に進めよう、ぜひとも計画どおり進捗したいということで、現在この準備を進めておる段階でございます。
  256. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それは農林大臣、大分違いますね。私の党の調査では、完成したのは一カ所ですよ。そして、ただいまあなたは、用地買収の問題があると言うが、用地買収の問題の見通しもつかないで、何で予算をつけたのです。  それから、四十九年度に建設予定だった武蔵野南線、梶ケ谷と大宮の用地買収が失敗している。これなんかも大きな問題です。これは全然いま農林大臣の説明と違います。
  257. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまお話しいたしましたのは、低温冷蔵庫全体として、自治体に補助金を出したりいたしましてやった冷蔵庫も含めてのお話をしたわけでございまして、確かに基金を通じて出しまして、そして完成したのは六カ所のうちの一カ所でございます。
  258. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、最初から基金の話をしているので、全体の話をしているのじゃございませんから。  特に、五十年度予算で低温貯蔵倉庫設置事業を推進するということで、地方公共団体、小売商団体なども対象に加えて、約六億三千万の補助金を計上しております。私は、これは非常にけっこうなことなんです。物価対策上ぜひやってほしいのです。そして基金の事業も成功さしてほしいのです。ところが、まだ基金は発足早々でもあるし、農林省が本腰を入れてやりませんと、せっかくのこういったいわゆる野菜の流通機構を近代化して、そして国民の家庭に新鮮な野菜を配給しようというこの計画が、国費のむだ遣いというのじゃなくて、使わないで返すような結果になってしまいます。農林大臣、このことを私は真剣に取り組んでもらいたい。
  259. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ただいま御指摘のありましたように、確かに非常に進度がおくれているわけでございますので、五十年度は、これら地方自治体、あるいは安定基金や、あるいは生産者団体等を通じまして、これを統合してやることになっておりまして、ぜひとも御指摘のような決意で臨みたいと思います。
  260. 小平忠

    ○小平(忠)委員 次は、預貯金の目減りについて、私は、総理並びに大蔵大臣の見解、並びに日銀総裁が見えておりますから簡単に伺いたいと思いますが、今日のインフレ、物価高によって、各種のいわゆる目減り、その中でも預貯金の目減りに対しまする問題は、特にわが民社党がこれを取り上げまして、強く指摘をいたしておりますし、昨年も私はこの委員会で、当時大蔵大臣であった現福田総理にもこのことを提起して、当時の福田大蔵大臣は、前向きで検討しよう。そのことが今日ではもう与野党全体の強い意見となってきた。ところが、この件に関して総理は前向きに取り組んでおられるけれども、やはり依然として大蔵省の考え方は、インフレ弱者だけを対象にするという考え方、これでは庶民大衆の零細ないわゆる預貯金に対する目減りにこたえる道ではございません。したがって、どうかこのことは、本当に一部の部分的なインフレ弱者だけに限定するというようなことではなくて、もちろんわれわれ民社党の提唱しているのには、やはり金額も制限いたしております。百万円というふうに限定いたしております。そういう面で、本当に私は直ちにこのことは実行してもらいたい、このように思うのでありますが、いかがでしょうか。
  261. 大平正芳

    ○大平国務大臣 すでに本院におきましてお答え申し上げておりますように、いわゆる預貯金の目減り対策といたしましては、インフレ対策を強力に着実に執行してまいることを第一としなければならないわけでございまして、そういう姿勢政府は堅持してまいりたい、それが第一でございます。しかし、こういうインフレ下の預金者の立場というものに対して配慮するところがなければならぬという意味で、これまでも預金者に対する利子の引き上げにつきまして、五回にわたってその改定を行いましたことは、小平さんも御案内のとおりでございます。しかし、これをもって十分であるとは考えないわけでございまして、なお一歩進める余地があるかないか、そういった点につきまして、いませっかく検討いたしておるところでございます。しかし、いまあなたが言われたように、一部の者に限らずに、なるべく広くというお考え、ごもっともでございますけれども、これは金融機関の負担において実行する施策でございまするので、金融機関にそれだけの負担力がなければならぬこと、同時に金融機関の貸出金利との関係も出てまいるわけでございまして、なるべく広くという御希望はわかりますけれども、実行いたす場合におきましても、相当限られた範囲にならざるを得ないのではないかと、大蔵当局としては考えておるところでございます。
  262. 小平忠

    ○小平(忠)委員 せっかく日銀総裁が見えておりますし、この預貯金の目減りについて、森永総裁はどのようにお考えか、伺いたいと思います。
  263. 森永貞一郎

    ○森永参考人 この問題につきましては、一昨年でございましたか、小平先生から前総裁に御質問がございまして、検討をお約束いたしたのでございましたが、その検討の結果を、昨年の当予算委員会の席でお答え申し上げておる次第でございます。  その答弁の要旨は、預貯金の目減りだけでは問題が片づかないのではないか。あらゆる金融資産、あらゆる金銭債権、あらゆる所得についても同じような問題がございますので、預貯金の目減りを補償するということだけでは不公正な結果を生ずる。しかしながら、あらゆる金融資産、債権債務、所得等に及ぼして、物価指数に応じた調整を行うということになりますと、それはできるかできないか、大変むずかしい仕事であるのみならず、その結果、国民物価騰貴に対する抵抗心、インフレに対する抵抗心が弱まって、かえってインフレ心理を強化し、物価騰貴を招くのではないか。さらにまた、実行上の問題といたしまして、消費者物価の騰貴による目減りを補償する財源の源泉は、これは貸付金の利子ということにはね返ってくるわけでございますが、そういたしますと、中小企業に対する金融機関等におきましては、中小企業者に対する貸付利子を大幅に改定せざるを得ないという結果になって、その面からも問題があるのではないかといったようなことから、なかなかむずかしい問題でございまして、実行上は自信がない、むずかしいのではないか、そういう趣旨をお答え申した次第でございます。  私も、最近、アメリカのフリードマン教授などが、インデクセーションというようなことを言っておるのを読みましたのでございますが、やはり佐々木前総裁がお答えになったとおり、預金だけというわけにはいかぬし、さりとて全部に及ぼすということは大変な混乱を招く、しかもインフレーションに対して国民の抵抗心を弱めるというようなことを実は前から考えておったのでございましたが、佐々木前総裁がお答えになった点と全く同じ結論を、当面のところ抱いておる次第でございまして、実行上に多大の難点があるということをお答えいたしたいと存ずるのでございます。
  264. 小平忠

    ○小平(忠)委員 森永さん、あなたは、大蔵省の役人を最後に、各銀行を回られたり証券界を回られて、そしていま日本の金融最高の日銀総裁の地位にあって、あなたの発言というのは非常にこれは重要なんですよ。いま、この問題は、すでに大きな政治問題化、いわゆる法律問題化、裁判問題にまで発展している。したがって、少なくとも、この問題について後退するような考え方は、これはきわめて重大であります。  私は三木総理にお伺いしますが、どうかこの問題は、やはり法律上あるいは現実に金融上、いろんな面で問題がある、めんどうだと言っておれば解決できません。時間がないから具体的な提示はできませんけれども、すでに民社党は幾つかの具体的その方法論を提示して、政府にもいろいろ要求いたしております。ですから私は、この問題は真剣に取り組んでいただきたい、このことをお願いを申し上げまして、時間の関係上、次に行きたいと思います。  次は食糧問題でありますが、一昨年石油に火がついて、御承知のような世界経済が一大混乱に陥りました。今日、私は石油に次ぐのが食糧だと思う。非常に重要な段階に来ておると思うのです。これはもう端的に申し上げて、食糧の危機だ。油に火がついて御承知のような状態ですが、さらに食糧に火がついたらどうなりますか。火がついてからでは遅い。そういう意味で、特に総理は、組閣、政権担当以来、本会議でも、この委員会でも、わが国の食糧の自給率を拡大する、さらに備蓄の拡大だと主張されております。  現に、わが国の食糧のいわゆる自給率というものは、ここ十数年低下の一途をたどりまして、実質、わが国の食糧の自給率は、農林省も発表いたしておりまするように、穀物においてはもう四〇%。これはカロリー計算で、いろいろ計算の仕方がありますけれども、いわゆる総合食糧自給率においても、年々ダウンしているのです。そういうような現状において、穀物が四〇%を割るということは、六〇%以上は外国に依存しなければならぬということは、独立国としてきわめて重大な問題だろうと私は思うのです。特に総理は、去る一月二十四日の施政方針演説において、食糧の自給率を向上することに本腰を入れて取り組むことを示されました。したがって、私は総理にお伺いをしますが、これが従来のような、足らざるは外国食糧に依存して補えばいいという目先の損得勘定でいくのか、それとも、国際的視野に立つ、日本民族の将来を考えた画期的な食糧自給率の拡大に取り組むというのか、これは総理、いかがでしょうか。
  265. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小平さんも御承知だと思いますが、いま農政審議会で、食糧の長期需給計画を立ててもらっております。その根底にあるものは、自給率を高めるということでございますが、これはしかし、専門家の小平さんよく御存じのように、すべての食糧を自給するという目標なんか立てられるものではないわけですから、どうしても輸入に依存する部門は、相当な部分は出てくるわけでありますから、これに対しては安定供給と申しますか、それはやはり国際的にそういう関係を持続していかなければならぬ。しかし、国内で、裏作の奨励でありますとか、いろいろともう少し食糧を自給しようということで本腰を入れれば、いまの穀物の自給率が四三%というのは、欧州諸国などから比較してみても余りにも低いわけですから、これに対する自給率を高めることに、今後努力をしてまいりたいと思うわけでございます。農林大臣からもいろいろなもっと詳細な答弁ができると思いますが、まあ私はそういうことが基本的な考え方でございます。
  266. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理のただいまのお話でも、自給率を高めていこう、それはすべての食糧の自給ができないことはわかっておる。しかし、特に穀物というようなものについてはそれを高めていこう、総理はそうおっしゃいましたが、総理の諮問機関である農政審議会に農林省が諮問する原案、これをこの一月、今月つくりまして、そして去る二十九日にいわゆる諮問案を提出する原案ができた、これも新聞で発表されております。これを見て私は驚いたのです、総理。自給率を高めていこうというのに、穀物だけをとってみても、四十七年の実績が四二%ですよ。それを長期見通しで、六十年度に五%ダウンして三七%しか見ていないじゃないですか。自給率の向上じゃなくて、自給率を下げようというわけです。こんな見通しがどこにあるのですか。こういう原案を何を考えてつくっているのですか。総理、これをごらんになりましたか。これはダウンしているのですよ。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕  私がいま総理に差し上げたその農林省発表の原案によりますと、十年後の自給率は、穀物において、その表に出ておりますように、四十七年度より五%ダウンしている。総合自給率においてわずか二%の上昇ですよ。このことは、昭和三十五年ころの九〇%に比較して、六十年度は七五%というんですから、これは大幅なダウンじゃありませんか。こんな需給計画を立てて、日本が食糧の自給率を向上するなんてことは、私は本末転倒だと思うのです。所管大臣の農林大臣に伺います。
  267. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほどからお話がございましたように、やはり世界的な食糧の需給というのは今後逼迫をしていくことは、そういう方向に行くだろうと思うわけでありまして、そういう中にあって、やはりこれからの農政は、一つは国内における自給力を高めていく。さらに、国内において生産条件の合わない農産物については、外国から安定的に輸入しなければならぬというわけでございます。  いまお示しの農林省の十年の見通し、これは農政審議会の中間報告に提出をしたわけでありまして、今後、農政審議会の総会で御検討をお願いをするわけでございますが、このわれわれの見通しは、昭和六十年には、人口も一四%ぐらい増加をするわけでございますし、また、さらに消費水準も八%ほど上がっていく。そこで、食糧の需要は二三%程度ふえるわけでありますが、それに対して、国内としてはでき得る限り自給力を高めていくわけでありまして、大体二七%は増産ができる。そういうことから、総合自給率が四十七年の七三%、四十八年の七一%から七五%程度までは高められるというふうな見通しをつけたわけでございますが、穀物につきましては、御存じのように飼料穀物、これは畜産の方の、特に豚とかあるいは鶏に食わせる濃厚飼料は、九割は現在も外国から輸入をしておる。一千万トンばかり輸入しておるわけでございますが、やはり生活水準が高くなれば畜産物の消費も高まってくる。     〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕 そういうことから、濃厚飼料についてはなかなか国内において生産条件が合わないということから、トウモロコシ、コウリャンですが、これは国内においては自給力を高めていくということはなかなかむずかしいわけでございます。したがって、畜産物の需要が増大するにつれて、やはり外国からの輸入にまたなければならないということで、大体六十年には千五百万トンぐらいの飼料穀物は輸入をせざるを得ないような状況になるわけでございます。ですから、全体的な穀物の自給率としては、飼料だとかあるいは大豆だとか、そういう穀類等につきましては、増産はいたしますが、全体的には五%ほどどうしても下がっていく、こういうことにならざるを得ないわけでございます。四十七年、八年の生活水準をそのまま六十年度に続けていくということになれば、これは五〇%、六〇%程度の穀物の自給力は確保されるというふうに思うわけですが、生活水準が八%上昇する、こういう前提に立って試算をしたものでございます。
  268. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これは、農林大臣まだ就任早々で、十分な検討はされていないと私は思うが、ここに根本的な誤りがあります。恐らく農政審議会が答申するこの中間報告原案も、まだ閣議の了解も決定もしていない。例のいわゆる地域配分ですね、これからの日本農業のあり方をいろいろ検討して、そして立てているその考え方も、一つも具体化し、それを閣議決定まで持っていけないところに問題があるし、やはりともすれば足らざるは輸入をして補おうという、そういう安易感、損得勘定、そういうところに、私はやはり根本的に問題があろうと思うのであります。したがって、この際少なくとも総理大臣の諮問機関である農政審議会に、自給率を高めていこうというのに、肝心の穀物においては五%ダウンをするような、そんな諮問をするようでは将来が思いやられます。ですから、私は農林大臣に重大な警告を発すると同時に、本腰を入れて取り組んでもらわなければ大変な事態が参りますよということを申し上げたい。  さらに、時間の関係もございますから……。農林大臣は就任されてから、今度の予算につきましても、確かにいろいろ努力をされました。公共事業費の横ばいという段階において、農林予算はかくかく上昇した、備蓄についてもおれは努力して、三十五万トンは結局備蓄に向けて、ことしは生産調整も百万トンにしたのだと、いろいろあなたは言いたいところでしょうけれども、しかし中身を洗ってみると、さあどうでしょうか。ことしの一般会計のいわゆる予算の伸びが二四・五%に対して、農林予算は一九%しか伸びておりません。しかしその中には、九千億といういわゆる食管費が入っております。これを差し引きますと、わずか五・九%でございますから、ことしの農林予算はいまだかつてない貧弱な予算だ。少なくともいままで食管費というものを除いた場合に、最悪の場合でも七%ないし八%の予算を占めておったのです。こういう状態では、本腰を入れて取り組むなんということはできません。どういう考え方で、今後本当に食糧の自給率を本腰でやるということに取り組んでいくのか、決意のほどを、私は農林大臣に伺います。
  269. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 五十年度の農林関係予算につきましては、いろいろと御批判もあると思いますが、しかし、生産基盤の充実等につきましても、公共事業費全般が一〇〇%据え置きという中にあって、多少ではありましたが、三%以上伸びたわけでございますし、その他の新しい生産対策、価格対策の予算も大体獲得することができたと思っております。しかし、これでもってもちろん十分ではないわけでございますし、先ほど申し上げましたように、世界的な食糧不足というふうな状態でございますので、これは本格的に新しい角度に立った農政を進めていかなければならないと思うわけでございます。そういうことで、現在、農政審議会にこれからの長期的な需要と生産の見通しはどうなるかということの御検討をお願いしております。これは中間報告が出ましたが、さらに総会でもって十分御討議をいただきまして、その御答申を得て、新しい角度からの総合的な食糧政策をぜひともひとつ樹立して、国民の食糧に対する安心感を与えたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  270. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ちょっと話がそれております。ぼくがあなたに聞いたのは、いろいろ努力をされたことは認めます。しかし結果的に数字が物を言います。予算が物を言います。その農林関係予算の一般会計に占める割合、ことしは結果的には食管費の九千億を除きますと、わずか五・九%、六%弱では、後退ではありませんか。同時に九千億——いま大臣、聞いていなかったですね。結局、それはやったんだやったんだと言いましても、結果的に予算数字にあらわれてくる。問題は九千億という食管費の中身にあります。あるけれども、これを農林予算にぶち込んでしまうと非常に誤解される。これを差し引けば、現実に六%弱であります。これで現実に農林予算がふえたとか、食糧の自給率を高めていくことに本腰で取り組むんだと言えますかと聞いている。  同時に、この食管費の中でも非常に重要視しなければならぬことは、いままで米の値段を上げるんだから、その逆ざやがふえてくるんだから、赤字補てんだからふえるふえると言っておりますけれども、この食糧管理費の九千億の中には、特別会計への繰り入れが八千百億ですね。そして、そのうちいわゆる調整勘定への繰り入れが七千五百二十億ですけれども、その内訳を見ますると、国内米のいわゆる補てんというものは四千八百億、国内麦が百六十九億。ところが、ここで注目をしなければならぬのは輸入麦です。外麦です。外麦のいわゆる逆ざや、これをこの五十年度予算では千三百七十五億も計上しておる。だから、いままでの外国食糧は安いんだから買って補えばいいんだという安易感は、もういま主張できなくなってきたんです。高い外麦を買って、食管が穴埋めをして国民に配給をしなければならぬというように、時代は変わっておるんです。このことを銘記して、農林大臣、明確な答弁を願いたいと思います。
  271. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほどの六%というのはよくわかりませんが、公共事業費は確かに一〇四・三%、四・三%の上昇でありますが、一般事業費につきましては一二三・八%でございまして、例年は大体一一七%、一七%程度の増でございますから、今回の予算は二三%一般事業費については上がったということでございます。
  272. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大臣、それは私の質問に全然答えていないんだ。そんな役人から示された数字を説明したって、それはもう農林大臣ではありません。農林大臣としましては、本当に今日の食糧の事情というものがどうなっているか、そのことに真剣に取り組んで、前向きに考えてもらいたい。  最後に、総理大臣にお伺いしますが、総理はなかなか勉強家で、食糧問題についてもいろいろ研究されております。やはり日本は昔から瑞穂の国、米は国民の主食である。そういうことで、いろいろ食糧増産、米の生産につきましても、基盤整備に膨大な金を出して、国は積極的にやっておる。そういう中で、いま食糧が足らないぞ、そして一朝有事を考えて備蓄しようじゃないか。昨年ローマで持たれたいわゆる世界食糧会議、その際に、特にキッシンジャー提案では、六千万トンの食糧を備蓄しよう、これを日本が分担をしよう、そういうことを言っておるときに、何たることですか。日本はいまだに米の生産調整をやるんだ。当初の案は確かに百三十五万トンでした。安倍さんが農林大臣になって、とんでもないと言って、あなたはがんばって、三十五万トンは備蓄に回す、これは確かにあなたの手腕を認めます。でも、三十五万トンでなく、生産調整はことしでやめよう、そこまで踏み切れば、私はあなたの政治力を認めるんだけれども、依然として米だけは一〇〇%の自給だ。しかし、米のような重要なものを生産調整をして、そして外国から高い小麦を買って、そして食管に赤字を出して、何たることですか。まさに私はこのことは理解できない。現実にもし生産の結果百万トンの米が余るのならば、備蓄したらどうですか。さらにもっと米を食べさす消費の拡大に政府は取り組んではどうですか。さらに、今日食糧で飢え、飢死者を出しておる後進地域の現状を考えれば、日本は先進国の仲間入りをしておる今日においては、そういうところには、また逆に援助なりあるいは輸出をしてやるということを考えてはどうですか。無定見にも、引き続き生産調整を続けるなんということは、今日の食糧事情からいって、私は断じて了解できない。総理、いかがでしょうか。
  273. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 五十年度が稲作転換の最後の年でございまして、四十九年度からは、いわゆる減反政策というよりは、需要が必要な農作物、たとえば飼料作物であるとか、あるいは大豆とか小麦とか、そういう農産物に米を積極的に転換をしていこうということで、稲作転換事業に四十九年度から転化して、四十九年度、まあ五十年度もこの稲作転換をやったわけでございまして、いまお話しのように百万トンやりまして、そしてこの稲作転換は、飼料だとか、あるいはまた小麦とか大豆等に回すわけでございますが、五十年度で一応稲作転換事業は終わりますので、五十一年度からは、米の需給関係ももちろん考えなければなりませんし、いまお話しのように、世界的なこうした食糧の事情、あるいはまた食糧会議等も昨年は開かれた。そして、開発途上国に対するところの食糧の援助であるとか、あるいはまた備蓄であるとか、そういうことが大きな世界的課題になっておりますので、そういう国際情勢も十分反映をさせて食糧政策を立てなければならぬと思いますし、同時に、いまお話のありましたような米の消費というものを拡大していくことは、これからのわれわれの大きな責任である、責務であるというふうに考えております。
  274. 小平忠

    ○小平(忠)委員 とても質問には答えていないのですが、総理、以上のような次第でございます。農林大臣は別に官僚育ちでないのに、なぜそういう過去のことにこだわるのですか。いままで生産調整は五十年度ということになっておったからことしもやるんだ、これは官僚の言うことなんですよ。政治は動いておるのです。情勢を判断して的確にとらえなければならない。食糧の事情が変わってくれば、五十年度まで生産調整をやることになっておったからやらなければならぬなんというのは、これは政治家の考えることではないと私は思う。転換してはどうですか、総理
  275. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 安倍農林大臣、しっかりしろ、だめだ。
  276. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 何も私は、五年計画があるからやるということではなくて、根本的にはやはり米はまだ生産過剰な状態にある、私はそういうふうに思っておるわけでございます。したがって、今後増産をしなければならない麦であるとか、あるいは大豆であるとか飼料、そういうものに一部を稲作転換をしていくということも、全体的な日本の食糧政策のあり方から見れば、これはやはり当然のことではないだろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。そして米の備蓄といいますか、在庫の積み増しは、確かに多少ふやさなければいけませんので、これは大体ことしの十一月には百万トンぐらい、そして来年の十一月ごろの端境期には百五十万トンぐらいの在庫量は大体持てる、こういうことで計算を立てたわけでございます。
  277. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理大臣、米の問題同様に、いまわが国の畜産は重大な危機に直面いたしております。それは何といっても、いままで濃厚飼料の大半を外国に依存してきただけに、今日のように輸入飼料の価格が暴騰いたしてくると、まさにわが国畜産は重大な危機に直面いたしておる。これにつきましても、えさ対策に最大の配慮をしなければなりませんし、同時に自給飼料の拡大に最善を尽くさなければなりません。農林省は、その意味では自給飼料の拡大には、いわゆる飼料穀物の増大、飼料作物の裏作と、いろいろ考えてやっておりますが、焼け石に水なんです。さらに草地の造成を図っている。結局、大規模草地、小規模草地、大いにやっております。ところが、世界の情勢は日本の畜産をだんだん追い込んで、酪農なんかはどんどん手放していく状態です。小家畜なら一年や二年でもとに戻せるけれども、大家畜は、一たん手放して酪農をやめる、牛を手放すと、十年かかるものです。そういう現状を考えてみるときに、本当に日本は、食糧と動物たん白資源を確保していくという意味から、畜産については本腰を入れていかなければならぬと思います。  私は、時間がありませんから、あるいは同僚委員も、これからの一般質問、分科会、あるいは担当委員会で政府に所見をただしながら、この問題の解決に当たりたいと思いますが、私は最後に、ぜひこの際、豆づくり運動を国民運動として提唱してはどうかと、ひとつ提案したいのです。  というのは、国民全体がこの際、食糧というものに対して重大な関心と協力を持つという意味から、豆づくり運動を提唱してはどうか。実はつい先ごろ、私はある農業新聞の投書欄を見て、非常に力強くうれしく感じたことがあるのです。それはどういうことかといいますと、茨城県にお住まいの笹島千代さんという主婦の方から寄せられた「再び自給自足を真剣に考えよう」という記事であります。内容を要約しますと、世界的な不況のニュースを聞いて、少しでもわが家の家計を助けるために、近所から分けてもらった大豆の種をまいてみたら、八斗の収穫がありました。そこで早速その大豆をもみがらの中に二晩埋めて納豆をつくってみました。この手づくりの納豆を子供たちは買ったものよりおいしいと喜んで食べています。いまこそ自給自足を真剣に考えるときです、というものであります。私はこれを読んで、終戦直後のあの食糧難に際して、豆づくりをやったことをなつかしく思い出しました。大豆というのは、どこでもだれでも、少々の空き地があれば簡単に栽培できる便利な作物です。都会でも庭先でもできます。そこで私は、この際、国民的規模で豆づくり運動をひとつ提唱する。そのことは、つまらぬように思うけれども、そういうことで国民全体が食糧危機の深刻さを意識して、そして自給自足にひとつ大いに邁進していこうということに役立つのではなかろうか、このように思うのでありますが、総理の御所見いかがでしょうか。
  278. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小平さんの御提案、非常にごもっともな話で、われわれも子供のときを考えて見れば、たんぼのあぜはみな豆だった。空き地があればどこでもつくれるわけですから、これは少し農林省が中心となって、全国的に豆づくりの運動というものに努力していくことにいたします。
  279. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理の前向きな御答弁で、どうかぜひひとつ政府としましても取り組んでいただきたいと思います。  私は、社会保障の問題についても伺いたかったのでありますが、時間がなくなりましたので、最後に、中東問題について一点だけ伺いたいと思うのであります。  と申しますのは、この中東問題について、いろいろ本会議でも、この委員会でも論議がありました。政府は最善を尽くしたいと言っているが、単に最善と口先だけでは、これはいかんともできないのでございます。したがって、口先だけでなく、具体的にどう対処していくかという、その問題が一つであります。  もう一つは、非常にこれは重大な問題ですが、去る一月十六日、ワシントンにおきまする国際通貨会議並びに十カ国蔵相会議で、二つのオイルマネー還流政策が採択されました。このことは一つの前進だと私は思います。しかし、ことし中にOPEC加盟十三カ国中九カ国が産油事業の国有化を達成することが予想されるのでありますが、これまでの備蓄オイルマネーは何と一千億ドルという膨大なものであります。この一千億ドルに加えて、この膨大なオイルマネーが蓄積されるという状況を考えますと、いま申し述べましたこの二つの決定は、やはりまさに一時的な応急策にすぎないのではないか、このように思うのであります。折しも、数日前のOPEC特別閣僚会議が、産油国、先進工業国、それから発展途上国、この三者の石油国際会議に参加するという政策決定を行ったことは、私は、産油国、消費国間の協調の道を開いたものと思いまして、率直に歓迎したいと思うのです。  そこで、日本としては、これらの国際会議を通じて、石油供給の公正なルールを確立することに努力する。同時に、オイルマネーの一層の還流について、私は具体策を提示すべきだと考えるのでありますが、この点について、総理一体具体案をお持ちかどうか。これは今後の世界経済の根本に触れる重大な問題でなかろうか、私はこのように思うのであります。したがって、政府の構想をお聞かせいただきたいと思います。
  280. 大平正芳

    ○大平国務大臣 オイルダラーの還流システムの確立は、小平委員が仰せのとおり、世界経済の秩序を維持し、活力を維持してまいる上から申しまして、非常に重大な問題だと思います。で、ことしIMFのファシリティーが拡大されたこと、OECDのファシリティーは、これはオイルダラーばかりじゃございませんで、全体としての国際収支の問題でございますけれども、この二つがともかくも合意を見たことは、大変歓迎すべきことであったと思います。  この二つとも、幸いにいたしまして、わが国が構想いたしておりましたようなラインで決まったわけでございます。すなわち、この還流システムの確立は、いろいろなルートがそれぞれ一つに偏らずに多彩に確立してまいることが望ましいということが一つでございます。それから第二は、あなたがいま御指摘のように、産油国との間にパイプが通ずるということでございます。去年三十億ドルでございましたIMFのオイルファシリティー、これは産油国から仰いだものでございますけれども、ことしはそれが倍増いたしたということも歓迎すべきことでございますが、いずれにいたしましても、わが国といたしましては、こういう還流システムが多元的に確立されて、世界の経済秩序、金融秩序というものが固まってまいりますことについて、応分の協力をしてまいることに努めてまいりたいと思います。
  281. 小平忠

    ○小平(忠)委員 時間になりましたので、これで終わりたいと思いますが、非常に関連がありますので……。  これは、総理御自身が一昨年、当時副総理としてアラブ諸国を訪問した際に、この技術協力を約束されてまいりました。この結果、その現状はどうなっておるのか。当時千七百億円を上回る政府借款、こういうものを約束してきているのですが、これに対して現状はどうか。今度は総理内閣の首班、責任者として、今後これにどう取り組むか、これをお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  282. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それではごく簡単に申し上げます。商品、たとえばセメント等でございますが、を送るというような約束、あるいは先方の公共投資に協力するというような約束は、概して順調に進んでおりますが、問題はいわゆる民間の大型プロジェクトでございます。こちらの民間企業が見積もりました見積もりが、物価の上昇によりまして非常に狂ってきたとか、あるいはどうしても先方は非常に大きなプロジェクトを考えますので、しかも、それが各国とも似たようなものを考えますために、その将来の需要市場がどうなるであろうかというような問題とか、いろいろございまして、どうもその点が現在まで必ずしもうまくいっていない。  しかも、先方がああいうような国々でございますから、必ずしも事柄を分けて細かく考えるというよりは、やはり非常に上層部に、そういう細かいことは入りにくい国であるというようなことから、不満感、時には不信感のようなものが生まれそうな気配がございまして、それは主としてイランとサウジアラビアでございます。  そこで、サウジアラビアに対しては、やはりあのとき約束をいたしました経済技術協力協定を早く結びまして、両方の合同委員会をつくって意思の疎通を図るということが、当面緊急と思います。  イランにつきましては、先般来、河本通産大臣もわざわざ東京の大使にお会いをいただき、私も会いまして、一種の誤解のようなものは解けつつございまして、まあこれから前向きに日本もやってくれるのであろうというような、ほぼそういう、何と申しますか、誤解はなくなりつつある。もっと私ども努力しなければならないと思っております。
  283. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて小平君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二月一日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時八分散会