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広沢直樹君 私は、
公明党及び
日本共産党・
革新共同を代表して、ただいま
議題となりました
大蔵大臣大平正芳君の
不信任決議案について、その
趣旨を御説明申し上げます。(
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まず、
決議案を朗読いたします。
大蔵大臣大平正芳君
不信任決議案本院は、
大蔵大臣大平正芳君を信任せず。右
決議する。
〔
拍手〕
当面する
わが国の経済危機は、
政府・
自民党の長年にわたる産業経済至上主義による高度経済成長
政策の失政によるものであり、いまこそ、経済的、社会的ひずみを
是正して、
国民生活の安定のために、これまでの経済
政策の抜本的転換を図らなければならないことは、いまさら論をまつまでもないことであります。大平大蔵
大臣も、去る財政金融
政策についての所信表明演説の中で、
わが国の経済社会は、今日、物価の騰貴、資源の制約、環境の汚染等、数々の問題に直面している一方、
国民精神生活において、世代の断絶、老後の不安など、不満と焦燥の念が高まっているとの認識に立って、
政策の
基本から改めて見直すことから出発しなければならないと述べておられるのであります。しかるに、大平大蔵
大臣は、高邁な理想だけは掲げながら、その実行は全くこれに逆行しているのであります。したがって、あえてここに
不信任決議案を
提出するものであります。(
拍手)
不信任の第一の
理由は、不況と物価高が併存する中で、
国民生活は、
政府統計にも明らかなように、拡大した社会的不公正が
是正されないばかりか、低所得層ほど、将来の生活不安に備えて、消費を切り詰め、貯蓄をするという自衛
手段に訴えざるを得ない
現状にあります。また、中小零細
企業においても、健全な経営を行う中小
企業に対し、不当なしわ寄せが生ずることのないよう、きめ細かい対策を講ずるとは言いながら、不況対策、金融
政策等は大
企業中心に進められ、その実態は、相変わらず月平均一千件前後の倒産が続き、加えて、
政府の失業
統計でも明らかなように、約百三十万人と言われる完全失
業者を出すなど、経済的、社会的不安の増大する中で、これに対応する具体的、かつ実効ある対策を積極的に講じようとしないのは、まさに
国民に対する背信的
行為と言わなければなりません。(
拍手)
不信任第二の
理由は、こうして
国民生活がますます苦況にあえぐ中で、酒、たばこの値上げをしようとしていることであります。
これは、
三木内閣の公約である社会的不公正の
是正並びに大平大蔵
大臣の当初の財政演説の
趣旨を、みずから放棄するものと言わなければなりません。インフレによる所得や資産等の格差の拡大による社会的不公正の
是正に当たっては、まず第一に、現行の不公平税制を抜本的に改革すべきであるにかかわらず、これを一部手直し程度にして、逆に、みずからの失政によって招いた財政危機を訴え、歳入欠陥の
責任を大衆課税の強化に転嫁し、大衆負担の強化という、
国民に犠牲を強いることによって対処しようとしているのであります。
また、酒、たばこの値上げは、他の物価に及ぼす影響はきわめて大きく、ただでさえ上昇機運にある諸物価にはずみをつけ、
政府主導型の物価高を再現することは必至であります。これは、大蔵
大臣があれほど公約された物価抑制に対して、明らかに相反するものであると同時に、
政府の言う物価抑制とは、
国民大衆を犠牲にするものであることを証明する以外の何物でもありません。このように、
国民大衆の犠牲を強いることを断じて容認することはできないのであります。
次に、これまでの大きな社会的ひずみをもたらした高度経済成長型の税財政、金融
政策を変えようとしていないことであります。
すなわち、これまで高度経済成長
政策のてことなってきた大
企業優遇の租税特別
措置、これをそのままにして、中小
企業よりも軽い大
企業の法人税の不公正を
是正しようとせず、また、土地投機等による資産の増価など、インフレによる不当な資産格差の拡大を放任するなど、不公平税制を
温存し、社会的不公正の拡大を放置していることは、断じて許すべきではありません。(
拍手)
さらに、低成長経済への移行の中で、大平大蔵
大臣は、高
福祉、高負担、また直間比率の手直し、さらに、税金で負担するか、公共料金の引き上げかといった、税金を最も取りやすいところから取るという
姿勢で、大衆に負担を転嫁しようとしているのであります。こうした考えは、これは現在の不公平税制に、さらに大衆重課という、二重の不公正をつくり上げる結果となるのであり、
国民の
期待を裏切る税制といわなければなりません。
次に、金融
政策についても、大
企業と経済的強者に甘く、経済的弱者である中小零細
企業を倒産に追い込んできたことは、
政府発表の経済指標が余すところなく雄弁に物語っております。総需要抑制や金融引き締め
政策を通じて、
わが国の経済体制をますます大
企業本位の独占体制をつくり上げることに
努力してきたことは明らかで、これでは、社会的公正を確立できる金融
政策に転換などできるはずがありません。
企業の倒産が非常に激しいにもかかわらず、金融緩和のタイミングを誤り、公定歩合の引き下げ時期が遅きに失し、しかも、公定歩合の引き下げ幅を小出しにし過ぎた結果、五十年度の日本経済を完全に失速させ、四十九年度に引き続き、とても
政府経済見通しが
実現しないばかりか、経済の自律回復は当分望みなしという状態に陥れた大平大蔵
大臣の金融
政策の失敗は、厳しく追及されなければなりません。(
拍手)
次に、
三木内閣の看板は、社会的不公正の
是正であったはずであります。狂乱物価とインフレで、
国民大衆の預貯金が大きく目減りしたことは、大平大蔵
大臣もこれを認め、特に四十九年度
国民生活白書は、この点を大きく取り上げておりました。そして、目減りを補償すると、しばしば
国会の質疑を通じて
政府は
国民に約束してきたところであります。しかるに、今回、実施された貯金目減り
措置は、
福祉年金の受給者に限り、しかも限度五十万円、金利は年一割という、非常に矮小化した形でお茶を濁したにすぎません。
国民生活白書が指摘した、一世帯二十一万九千円、世帯数は三千二百万の預貯金目減り対策は、一体どこに消えてしまったのでしょうか。
大平大蔵
大臣がやられた目減り
措置は、金融機関による
福祉対策であって、決して、国がインフレによって生じた預貯金の目減りの施策を行ったのではありません。
国民が
期待したこの預貯金目減りを全く放置して、あえて省みない大平大蔵
大臣は、
国民の損失で大
企業の債務者利益の擁護に回ったと言ってよく、われわれは
国民とともに、こうした事実を糾弾せざるを得ないのであります。(
拍手)
最後に、四十九年度、約八千億にも及ぶ膨大な歳入欠陥に伴う
責任であります。
これは、
政府が四十九年度の税収見積もりについて、四十八年の年度内自然増収二兆数千億円という異常な事態を
基本とした結果であり、また、四十九年度の税収は、四月の年度初めから、対前年同月比の伸び率が非常に落ち込む傾向にあったし、このことは、税務当局がだれよりも一番よく知っていたはずであります。いかに税収見積もりがずさんであったかを示すものであります。また、この税収不足の補てんを、五十年度の歳入になる税収の繰り上げや不用額、国庫納付金等で埋めることにしておりますが、このように、本年度の歳入になるべき分を繰り上げて計上するというやり方は、余りにも安易過ぎると言わなければなりません。
国会は、五十年度予算の歳入は、そうした操作をすることはないということで了承しておりますが、実質的な予算の修正を、大蔵省の省令の変更というようなやり方は、
憲法八十三条
違反のやり方であり、許されるべきことではございません。少なくとも
国会の事前承認を受けることが、財政民主主義及び
国会と行
政府の財政処理のたてまえからいって当然であります。さきの稻葉法務
大臣の欠陥
憲法発言といい、大平大蔵
大臣の
措置といい、
憲法九十九条
違反のやり方であり、こうした大蔵
大臣を信任するわけにはいかないのであります。(
拍手)
さらに、
昭和五十年度予算編成における
主務大臣としての
責任であります。
予算編成時において、経済の指標ともいうべき実質経済成長率、
消費者物価指数等の見通しを、従来の高度経済成長下と同様に行った結果、今日のような状態では、四十九年度に引き続き、五十年度はいまだかつて見ない大幅な歳入欠陥、慢性的不況、
政府主導型の物価上昇機運が予想されているのであります。この点については、わが党を初め
野党各党の
要求の結果、緊急に予算
委員会を開催し、その対策を
国民に明らかにするように
要求したにもかかわらず、あくまで予算編成時における見通しに固執し、
主務大臣として的確な見通しを持たないばかりか、
国民に対して明確な見通しを示そうと
努力さえせず、
国民生活を不安と焦燥の中に置くことは、
三木内閣はもとより、財政金融を所管する
主務大臣としての
責任はきわめて重大であると同時に、その
責任を免れるわけにはいかないのであります。(
拍手)
以上、大要申しました
理由により、ここに不信任案を
提出した次第であります。
何とぞ、各位の全面的御
賛同をお願い申し上げ、私の説明を終わらせていただきます。(
拍手)
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