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1975-04-18 第75回国会 衆議院 本会議 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年四月十八日(金曜日)     —————————————  議事日程 第十五号   昭和五十年四月十八日     午後一時開議  第一 作業環境測定法案内閣提出参議院送     付)  第二 刑事補償法の一部を改正する法律案(内     閣提出)  第三 家畜伝染病予防法の一部を改正する法律     案(内閣提出参議院送付)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  永年在職議員野田卯一君及び二階堂進君に対   し、院議をもつて功労表彰することとし、   表彰文議長に一任するの件(議長発議)  議員請暇の件  公共企業体等労働委員会委員任命につき同意を   求めるの件  日程第一 作業環境測定法案内閣提出、参議   院送付)  日程第二 刑事補償法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第三 家畜伝染病予防法の一部を改正する   法律案内閣提出参議院送付)  文化功労者年金法の一部を改正する法律案(内   閣提出)  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出)   及び政治資金規正法の一部を改正する法律案   (内閣提出)の趣旨説明及び質疑     午後一時六分開議
  2. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  永年在職議員表彰の件
  3. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) お諮りいたします。  国会議員として、また、本院議員として在職二十五年に達せられました野田卯一君及び二階堂進君に対し、先例により、院議をもってその功労表彰いたしたいと存じます。表彰文議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  表彰文を朗読いたします。  議員野田卯一君は国会議員として在職すること  二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の  伸張に努められた  よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院  議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員二階堂進君は衆議院議員当選すること九  回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし  民意伸張に努められた  よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院  議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕  この贈呈方議長において取り計らいます。     —————————————
  5. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) この際、野田卯一君及び二階堂進君から発言を求められております。順次これを許します。野田卯一君。     〔野田卯一登壇
  6. 野田卯一

    野田卯一君 ただいま、私が国会議員在職二十五年に及びましたことに対し、院議をもって御丁重な表彰の御決議を賜りました。まことに身に余る光栄と存じ、感謝にたえません。  これひとえに、永年にわたり御指導、御鞭撻をいただきました先輩、その他各位の御厚情のたまものでありまして、心から厚く御礼を申し上げます。(拍手)  特に、参議院一回、衆議院八回の選挙を通じて、常に温かく力強い御支援を賜りました郷土岐阜県の皆様に対し、心から感謝申し上げるとともに、今日の光栄とこの喜びを分かち合いたいと思います。(拍手)  顧みますと、この二十五年間、私は政策活動に主力を傾けてきました。近代政治の生命と言われる政策に情熱を注ぎ、時代の要請に即応する適切な政策を立て、これを国民に公約し、忠実にこれを実行し、政治に対する国民の信をつなぐことに努めました。  また、対外的には、発展途上国に対する経済、技術、医療、文化等各面にわたる協力に没頭し、海外に赴くこと五十回、これらの国々の民生の向上と政治の安定に寄与することに力をいたしました。  終戦後の混乱期に、一身を犠牲にしても全国民の命を守ろうとされました天皇陛下の御仁慈、恨みに報ゆるに徳をもってし、敗戦日本の崩壊を防ぎ、その復興を念願された蒋介石総統アジア精神、親しく温かい薫陶を賜った吉田茂先生の限りなく国民を愛された至情、これらの大徳、大精神は、私に深い深い感銘を与え、政治家として進む指針を示されました。  いまや、時局はまさに重大であります。内外に問題は山積し、世界情勢は大きな転換期を迎えて、複雑多岐激動変転、端倪を許しません。わが国の前途も多事多端であります。  私は、国会議員として最善を尽くし、世界の平和と日本国民の幸福を守るために、いささかなりとも貢献いたしたい念願であります。  何とぞ、今後ともよろしく御指導、御支援を賜りますようお願いいたしまして、御礼の言葉といたします。(拍手
  7. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 二階堂進君。     〔二階堂進登壇
  8. 二階堂進

    二階堂進君 このたび、院議をもちまして、衆議院在職二十五年、永年勤続表彰の御決議を賜りました。まことに身に余る光栄と存じ、感激にたえません。  これはひとえに、今日まで御指導と御鞭撻を賜りました先輩同僚各位、並びに郷里鹿児島皆様方の御支援のおかげであります。心から感謝の意を表するものであります。(拍手)  顧みますれば、昭和六年以降、日米間の外交関係は日一日と険悪な情勢へと進み、ついに昭和十六年には最悪の事態となりました。この間の大部分をアメリカで過ごした私は、日米開戦の非を訴えんと決意して帰国いたしました。そして、昭和十七年に行われたいわゆる翼賛選挙に非推薦で立候補し、厳しい弾圧下選挙に臨み、ついに落選の苦杯をなめました。これが政治家を目指した私の人生のスタートでもありました。(拍手)  私は、終戦後、敗戦混乱日本復興をいかにすべきかを考え、郷土先輩、故山本実彦先生等とともに日本協同党を結成し、昭和二十一年四月、連合軍占領下において初めて行われた総選挙当選し、本院の議席を得ました。  翼賛選挙以来、私の政治家としての生活は三十年余になります。この間、わが国も幾多の変遷を経、多難な道をたどって、今日の平和、繁栄を見るに至りました。思いをめぐらせば、まことに感慨無量であります。(拍手)  今日、内外政治経済外交などをめぐる諸問題は果てしない混迷を続けており、特に、石油ショック以来、ひとしおその感を深くしております。私は、国政に参画する一員として、一日も早く新しい秩序を築き、これら諸問題の解決を急がなければならないと責任を痛感いたしております。  これからも、過去二十五年間にわたる国会議員としての経験と知識を生かし、諸先輩の教訓をかみしめながら、平和日本の推進と安定した地域社会の建設に、一層の努力を続ける決意であります。  何とぞ、今後とも御指導、御鞭撻をお願い申し上げまして、謝辞といたします。(拍手)      ————◇—————  議員請暇の件
  9. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。  沖本泰幸君及び三宅正一君から、四月二十八日より五月十一日まで十四日間、岡田春夫君、斉藤正男君、嶋崎譲君、土井たか子君、楢崎弥之助君、馬場昇君、安井吉典君及び横路孝弘君から、四月三十日より五月七日まで八日間、右いずれも海外旅行のため、請暇申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。      ————◇—————  公共企業体等労働委員会委員任命につき同意を求めるの件
  11. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) お諮りいたします。  内閣から、公共企業体等労働委員会委員隅谷三喜男君及び舟橋尚道君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  12. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。      ————◇—————  日程第一 作業環境測定法案内閣提出参議院送付
  13. 前尾繁三郎

  14. 大野明

    大野明君 ただいま議題となりました作業環境測定法案について、社会労働委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、最近における職業性疾病動向等にかんがみ、適正な作業環境を確保し、職場における労働者の健康を保持するため、作業環境測定士の資格及び作業環境測定機関等について必要な事項を定めようとするもので、その主な内容は、  第一に、事業者は、指定作業場作業環境測定を、その使用する作業環境測定士または作業環境測定機関に実施させなければならないこと、  第二に、作業環境測定士及び作業環境測定機関は、労働大臣の定める作業環境測定基準に従って作業環境測定を実施すること、  第三に、作業環境測定士は、作業環境測定士試験に合格し、かつ、所定の講習を修了した者等で、労働大臣登録を受けた者をいうこと、  第四に、作業環境測定機関は、労働大臣等登録を受け、他人の求めに応じて、事業場における作業環境測定を行うことを業とする者をいうこと、  右のほか、試験機関及び講習機関指定、業務に対する監督等について所要規定を設けること等であります。  本案は、三月二十六日付託となり、四月十五日の委員会において質疑終了し、採決の結果、原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  15. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第二 刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出
  17. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 日程第二、刑事補償法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。法務委員会理事保岡興治君。     —————————————  刑事補償法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔保岡興治登壇
  18. 保岡興治

    保岡興治君 ただいま議題となりました刑事補償法の一部を改正する法律案について、法務委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、最近における経済事情にかんがみ、刑事補償法規定による補償金の額を引き上げようとするもので、その内容は次のとおりであります。  第一点は、無罪裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者が、未決の抑留、拘禁または自由刑執行等による身体の拘束を受けた場合の補償金の日額を、八百円以上三千二百円以下に引き上げるものであります。  第二点は、死刑執行を受けた者が、再審等の手続において、無罪裁判を受けた場合の補償金の最高額及び死刑執行を受けたことによって生じた財産上の損失額が証明された場合に、その損失額に加算する補償金の額をいずれも一千万円に引き上げるものであります。  当委員会においては、三月十四日提案理由説明を聴取し、自来、参考人の意見を聴取するなど、慎重審査を重ね、去る十五日質疑終了し、翌十六日採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し、附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  19. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第三 家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付
  21. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 日程第三、家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。農林水産委員長澁谷直藏君。     —————————————  家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔澁谷直藏登壇
  22. 澁谷直藏

    澁谷直藏君 ただいま議題となりました家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、最近における家畜伝染性疾病発生状況等にかんがみ、豚水胞病家畜伝染病に追加して、その蔓延の防止のための措置を講じ得ることとするほか、牛のブルセラ病及び結核病に係る検査制度合理化を図ろうとするものであります。  本案は、三月二十六日参議院から送付されました。  委員会におきましては、三月二十八日安倍農林大臣から提案理由説明を聴取し、四月十六日に質疑を行い、同日質疑終了採決の結果、本案全会一致をもって、原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  なお、本案に対し、委員長提案により附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  23. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  25. 羽田孜

    羽田孜君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、内閣提出文化功労者年金法の一部を改正する法律案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  26. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 羽田孜君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。     —————————————  文化功労者年金法の一部を改正する法律案内閣提出
  28. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 文化功労者年金法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。文教委員長久保田円次君。     —————————————  文化功労者年金法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔久保田円次登壇
  29. 久保田円次

    久保田円次君 ただいま議題となりました文化功労者年金法の一部を改正する法律案について、文教委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案の要旨は、近年における社会的経済的諸事情の著しい変遷を勘案して、文化功労者年金の額を改定し、速やかに支給するため、法律で定めている年金の額を政令で定めることとし、昭和五十年四月一日から施行しようとするものであります。  本案は、去る二月十八日内閣から提出され、同日当委員会付託となり、三月十四日政府より提案理由説明を聴取し、自来、慎重に審査をいたしましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  かくて、四月十六日本案に対する質疑終了、本日、本案に対し、三塚博君外三名から、この法律は、公布の日から施行し、昭和五十年四月一日から適用することを趣旨とする自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案に係る修正案が、また、山原健二郎君から、文化功労者年金の額は現行どおり法律で定めることとし、その額を二百四十万円に引き上げること等を趣旨とする日本共産党革新共同提案による修正案が、それぞれ提出され、次いで、本案及び両修正案について採決を行いましたところ、山原健二郎提出修正案は否決され、三塚博君外三名提出修正案及び修正部分を除く原案は、賛成多数をもって可決、よって、本案修正議決されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  30. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  31. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり決しました。      ————◇—————  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出)及び政治資金規正法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明
  32. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案及び政治資金規正法の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。自治大臣福田一君。     〔国務大臣福田一登壇
  33. 福田一

    国務大臣福田一君) まず、公職選挙法の一部を改正する法律案趣旨とその内容概略を御説明申し上げます。  この改正法案は、最近における選挙実情にかんがみ、衆議院議員の総定数及び各選挙区において選挙すべき定数について是正を行うとともに、選挙の腐敗を防止し、及びその公正を確保する等のため、供託金の引き上げ、選挙公営拡充寄付文書図画の掲示及び機関紙等頒布制限強化並びに連座制強化その他所要改正を行おうとするものであります。  以上が、この法律案趣旨であります。  次に、この法律案内容概略につきまして御説明申し上げます。  その第一は、衆議院議員の総定数及びその各選挙区において選挙すべき議員定数是正であります。これにつきましては、昨年来、国会において各党間で検討された結果、合意を見た線に沿って、衆議院議員の総定数を十一の選挙区について二十人増加することとしております。  第二に、供託金の額を実態に合わせて大幅に引き上げることとしております。  第三は、選挙公営拡充であります。すなわち、国会議員選挙においては、公職候補者は、その者に係る供託物国庫に帰属することとならない場合に限り、政令で定めるところにより、政令で定める額の範囲内で、選挙運動用自動車無料で使用すること及びポスター無料で作成することができることとし、また、衆議院議員の総選挙及び参議院議員通常選挙においては、確認団体が、選挙運動期間中、政策普及宣伝及び演説の告知のために行う広告は、一定の限度内で無料とし、これらに要する費用を国庫で負担することといたしました。  第四としては、候補者の名前を書いた大きな立て札看板などがはんらんし、批判を招いている実情にかんがみ、公職候補者等政治活動のために使用される公職候補者等氏名またはこれらの者の氏名が類推されるような事項を表示する文書図画及び後援団体政治活動のために使用される当該後援団体の名称を表示する文書図画は、一、政令で定める総数の範囲内で、政治活動のために使用する事務所ごとにその場所において通じて二を限り、掲示される立て札及び看板の類、二、ポスターで、ベニヤ板等で裏打ちされていないもの、三、演説会等の会場においてその開催中使用されるもの、四、確認団体が使用することができるものを除いては、一切掲示できないことといたしました。  なお、これに違反する文書図画があると認めるときは、都道府県及び市町村の選挙管理委員会は、これを撤去させることができることといたしました。  第五に、選挙運動員実費弁償、報酬の基準単価実態に合わせて適時に合理化できるよう政令で定めることといたしました。  第六は、公職候補者等寄付禁止についてであります。すなわち、公職候補者等選挙区内にある者に対してする寄付は、政党その他の政治団体または親族に対してする場合及び公職候補者等がもっぱら政治上の主義または施策を普及するために当該選挙区内で行う講習会等において必要やむを得ない実費補償としてする場合を除き、全面的に禁止することとするとともに、この場合の講習会等には、参加者に対して供応接待が行われるようなものを含まない旨を明らかにいたしました。また、公職候補者等がその役職員または構成員である会社その他の団体が、これらの氏名を表示し、またはこれらの者の氏名が類推されるような方法でする寄付についても、政党その他の政治団体に対してする場合を除き、一切禁止することといたしました。  第七は、機関紙等頒布規制でありますが、選挙時に無償の政党機関紙等が大量に頒布され、選挙の公正が害されていると同時に、ビラ公害とも言われている現状にかんがみ、選挙に関する報道評論掲載した機関紙誌号外等選挙期間中は頒布できないこととし、号外等以外の機関紙誌機関紙誌以外の一般の新聞紙、雑誌についても、選挙に関する報道評論掲載しているものは、選挙期間中は有償でなければ頒布できないこととしております。  第八は、連座制改正であります。現行連座制では、刑事裁判総括主宰者等の刑が確定した後、検察官による当選無効訴訟が提起され、その判決によって当選無効が決まる仕組みになっていますが、今回の改正では、総括主宰者等が刑に処せられた旨の通知を受けたときは、これらの者が総括主宰者等に該当しないことを理由とし、当選が無効とならないことの確認を求める訴訟をその当選人が提起しない限り、当選が無効となる制度に改めることとしております。  その他、いわゆる解散電報等禁止、罰則の強化等所要規定の整備を図ることにしております。  最後に、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとし、衆議院議員定数に関する改正規定は、次の総選挙から施行するものといたしました。  以上が、公職選挙法の一部を改正する法律案趣旨と、その内容概略であります。  次に、政治資金規正法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨内容概略を御説明申し上げます。  政治資金規制につきましては、昭和四十二年の第五次選挙制度審議会の答申以来、各政党においてはもちろん、政府においても、検討検討が重ねられてきたことは御承知のとおりであります。顧みますれば、政府も過去三回にわたって政治資金規正法改正案提案しましたし、各野党におかれてもそれぞれの立場に立って改正案提案がされましたが、いずれも審議未了となっております。そして、またその後の国会審議においては、常に政治資金規制の問題が論議の対象として取り上げられてきたと言っても過言ではありません。  このような経緯にかんがみまして、最近における国民世論動向政党政治現状とを考慮しつつ、現実に即した政治資金の授受の規制政治資金の収支の公開の強化個人の拠出する政治資金に対する課税上の優遇措置などを講ずることにより、政治活動の公明と公正の確保を図ることが、この法律案趣旨であります。  次に、この法律案内容概略につきまして御説明申し上げます。  第一は、政治資金寄付制限についてであります。  まず、寄付量的制限につきましては、個人のする寄付にあっては、年間二千万円を超えてはならないこととし、会社労働組合その他の団体のする寄付にあっては、それぞれの団体規模に応じて制限を加えることといたしました。この場合、会社のする寄付については資本または出資の金額、労働組合等のする寄付については組合員等の数、その他の団体のする寄付については前年における経費の額を基準として、それぞれの団体規模に応じ、一定範囲内で、ある程度弾力的にその制限額を定めることといたしております。また、これらの制限額範囲内において寄付をする場合には、政党及び政治資金団体に対する寄付については制限を設けないこととし、それ以外の政治団体または個人に対する寄付については、同一の者に対し、年間百五十万円を超えてはならないことといたしました。しかしながら、現在の選挙制度のもとにおいては、直ちにこれらの規制を行うことは必ずしも実情に即さないので、当分の間に限り、政党政治資金団体及び公職候補者は別として、それ以外の政治団体に対する寄付については、政党政治資金団体及び公職候補者に対する寄付の限度額の二分の一という別枠を設けるとともに、その範囲内においては、年間百五十万円を超えて政治活動に関する寄付をしてはならないことといたしました。  次に、寄付の質的制限につきましては、国または地方公共団体から補助金等の給付金の交付を受けている、いわゆる特定会社その他の特定の法人のする寄付は、選挙に関すると否とを問わず、一定期間、これを禁止することといたしました。また、国または地方公共団体から資本金等の出資を受けている会社その他の法人のする寄付についても、選挙に関すると否とを問わず、これを禁止することといたしました。  さらに、三事業年度以上引き続いて欠損を生じている会社のする寄付、匿名及び他人名義の寄付並びに外国人等のする寄付につきましても、選挙に関すると否とを問わず、これを禁止するとともに、寄付のあっせんにつきましては、寄付者に威迫を加えたり、寄付者の意思に反して賃金、下請代金等から天引きして寄付を集めることのないよう措置することといたしました。  以上の政治活動に関する寄付制限と関連して、その違反者に対する所要の罰則規定を設けることといたしております。  第二は、政治資金の公開の強化についてであります。  まず、政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ、その収支の状況を明らかにするため、いわゆる法人会費等は、たとえ形式上は会費や党費であっても、これを寄付とみなして公開の対象とする措置を講ずることといたしました。  次に、政党その他の政治団体の会計帳簿及び収支報告書に記載すべき内容等についても、改善、合理化を加え、政党及び政治資金団体にあっては年間一万円以上の寄付、その他の政治団体にあっては年間百万円を超える寄付は、すべて公開することとしたほか、機関紙誌の発行やその他の事業による収入も具体的に報告すべきこととし、政治資金の公開の趣旨強化することといたしました。なお、この場合、政党及び政治資金団体の収支報告書には、当該団体の行う自主監査の意見を記載した書面を添付することといたしました。  さらに、政治団体の届け出の方法等につきましても、改善、合理化を図ることとし、その届け出は自治大臣または都道府県選挙管理委員会に対して行うこととしたほか、政治団体の届け出があったときは、その内容を公表して、これを国民に周知することといたしております。  第三は、個人の拠出する政治資金に係る課税上の優遇措置についてであります。  政党その他の政治団体に対する政治活動に関する寄付個人拠出を奨励するため、個人政治活動に関する寄付をした場合においては、政治資金規正法または公職選挙法規定による報告がされているもので一定の要件に該当するものは、その寄付金について課税上の優遇措置を講ずることといたしました。  第四は、政党その他の政治団体の概念の明確化その他の措置についてであります。  今回の改正によりまして、政治資金寄付に関しましては一定制限が加えられることとなり、かつ、政党本位の政治活動の推進を図るため、政党に対する寄付政党以外の政治団体に対する寄付を区別して制限することとなりますので、政党政党以外の政治団体との区別を明確に規定することといたしました。  また、政党中心の資金調達を容易にするため、各政党について一の団体を限って政治資金団体を設けることを認め、これに対する政治資金寄付については、政党と同様の取り扱いをすることといたしました。  さらに、党費、会費及び政治活動に関する寄付等の概念についても、その内容を明確にして、規制合理化を図ることといたしております。  このほか、議会制民主政治のもとにおける政治資金のあり方につきましては、さらに検討を重ねることとし、この改正法の施行後五年を経過した場合においては、その施行状況を勘案し、政治資金個人による拠出を一層強化するための方途及び会社労働組合その他の団体の拠出する政治資金のあり方について、さらに検討を加える旨を明記することといたしております。  以上が、この法律案趣旨内容概略であります。(拍手)      ————◇—————  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出)及び政治資金規正法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  34. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。佐藤孝行君。     〔佐藤孝行君登壇
  35. 佐藤孝行

    ○佐藤孝行君 ただいま説明がありました公職選挙法の一部を改正する法律案につき、自由民主党を代表して質問をいたします。  申し上げるまでもなく、選挙は議会制民主政治の基礎であり、正々堂々たる政策論争を展開して国民の審判を受けるべきものであり、わが国民主政治の健全な発展のためにも、われわれは、国民の期待する公正な理想選挙に向かって、制度をよりよく改正しなければならない責任と義務があります。  現行選挙制度の弊害を改め、金のかからない政策中心の選挙を実現するためには、寄付行為や文書、出版物の規制、罰則の強化選挙公営の拡大強化も必要でありますが、基本的には、個人本位の選挙制度を改め、政党本位、政策中心の選挙制度を確立する必要があると考えますが、総理は、欧米先進諸国の小選挙区制、比例代表制ないしは小選挙区比例代表制と比較して、現在のわが国のような中選挙区単記制が最良の制度であると判断されているのかどうか、その見解を承りたいと思います。  また、この問題について、内閣総理大臣の諮問機関である選挙制度審議会が、長い年月をかけ、政党本位の選挙制度を実現するための具体的方法を取りまとめ、内閣報告されておりますが、今回提出改正案には、その審議会の報告が何ら生かされていないことは遺憾と思いますが、この点についても、あわせてその見解を伺いたいのであります。  次に、衆議院定数是正に関して二、三質問をいたします。  今回の公職選挙法改正案には、衆議院議員選挙区別定数の不均衡是正のほか、数多の規制措置等が含まれておりますが、参議院選挙制度改正、特に全国区制や地方区の定数是正の問題は、全く取り上げられておりません。  現在の参議院選挙区制を固定したものという前提に立って、今回、衆議院改正のみを行うことは、不合理であり、これだけでは、現行選挙制度の問題点や弊害は、一向に改善されるものではありません。したがって、定数是正をやるにしても、その前提となる選挙区のあり方を根本的に考えて、しかる後に断行すべきものであると思いますが、この点について政府はどう考えているのか、また、基本的態度は何か、この際、明らかにしていただきたいのであります。  また、二院制をとるわが国憲法のもとにおいては、衆議院定数是正も、参議院全国区制の改正も、個々に切り離して考えるべきものではなく、基本的には、両院一体とする選挙制度全般のあり方との関連において検討しなければなりません。  従来、政府は、この問題は相互に密接な関係があるので、総体的に検討すべきものと思うという態度であったが、その基本的態度に変更を来したのはいかなる理由によるのか、この際、明らかにしていただきたいと思います。  さらに、今回提出された改正案によると、東京第七区は定員八名、神奈川一区は同じく八名、大阪三区七名となり、定員六名以上の選挙区が、今度の改正案では全国で六区できることになっております。これでは現行選挙区制のたてまえを変更することであり、適当ではないと考えられますので、この際、これらの選挙区を分区して、三人ないし五人区とすべきものと思うが、この点についても明確な答弁をいただきたいのであります。  今回の公職選挙法改正の直接の動機となったのは、昨年六月の参議院議員選挙であります。以前から指摘されていたことでありますが、全国にわたって十万枚のポスターを張るための準備、資材、その労力、その費用等を考えるとき、短い期間に全国にわたる選挙運動をすることは、関係者にとっては、精神的にも、肉体的にも、あるいは物質的にも大変な負担であり、国民の側にとっても候補者の選択が困難であり、したがって、タレントや特定の組織を持っている人でなければ当選できないような仕組みになっていることは、総理自身御承知のとおりであります。したがって、今回の改正においては、この参議院の全国区制の改善こそ真っ先に取り上げるべきではなかったかと思います。議員生活三十余年に及ぶ、議会の子をもってみずから任ずる三木総理は、だれよりも現行選挙制度の抜本的改革に勇断をもって臨む立場にあり、われわれの三木内閣に期待するところでもあります。この点について、総理の見解をお伺いしたいと思います。  次に、政治資金規正法の一部改正について、政府の基本的見解を質問しておきたいと思います。  その第一点は、政治資金規制のあり方に関する基本についてであります。  改めて指摘するまでもなく、政党やその他の政治団体の自由濶達な政治活動が、議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、けだし、自由濶達な政党やその他の政治団体政治活動を通して、国民各層のさまざまな意見や要求が集約され、これが国政に反映される仕組みになっているからであります。したがって、国民の最大の関心事は、政党やその他の政治団体政治活動が、自由濶達、かつ明朗に行われるかどうかという点にあるのであって、政治活動に要する資金の多寡の問題ではないのではないかと思うのであります。この点は、政治活動と表裏一体の関係にある政治資金のあり方についても同様であり、政治資金の多い少ないの問題ではなく、その資金の集め方や使い方の公明正大であるかどうかが、最も重要な点であります。  そもそも、政治資金というものは、国民政治に参加する一つの手段であって、議会制民主政治の健全な発展を願って拠出される国民の浄財であり、国民の知らないところで不明朗な関係が生ずることのないよう、その状況を国民の前に明らかにし、国民の不断の監視と批判を受け、いやしくも国民の疑惑を招くことがないように、その責任を自覚することが基本でないかと思うのであります。  最近、国会その他において、各政治団体の具体的な政治資金についてさまざまな問題が指摘され、議論されていることは御承知のとおりであり、このような形で批判され、国民の監視を受けることは避けて通れるものでない以上、むしろその使途について、進んで国民の前に明らかにすることこそ必要なことであり、民主政治の健全な発達に寄与する道であろうと考えますが、この点について総理の見解を承りたいのであります。  第二点は、政治資金に対する基本的な考え方についてであります。  改正案によると、政治資金の公開の強化のほか、政治資金の拠出自体に一定制限を設けようとしておりますが、これは、ただいま申し上げたように、現在の政治資金規正法の考え方から見れば、政治資金規制のあり方については一大転換をするものと判断いたしますが、そもそも政治資金とは、国民政治に参加する一つの手段であって、その行為を第三者が、倫理的あるいは感情的な見地から悪と考えるのは間違いであると思うのです。いわゆる企業献金は、明朗で、かつ常識的なものである限り、悪とは思わないと、総理は国会で繰り返し答弁されておりますが、企業献金が是か非かの問題については、御承知のように八幡製鉄事件として、昭和四十五年最高裁判所の判例があり、すでに決着がついている問題であります。  今回、企業等の政治資金の拠出を法律をもって禁止することは、憲法上どうなのか、また、いわゆる企業献金が悪でないと言いながら、これを禁止することに論理的な矛盾を感ずるのは、私一人だけではないと思うが、いかがでしょうか、労働組合が拠出する政治献金と比較対象の上、あわせて御答弁をお願いいたします。  わが自由民主党は、先般の党議で、企業献金を受け取ることを自粛する旨決定をいたしましたは、献金をするかどうか、また、献金を受け取るかどうかといった問題は、特定の場合を除き、基本的には、献金する側の国民と、献金を受け取る側の政党の両者の良識が判断すべき問題であり、法律の介入する分野でないと考えるのであります。この点について総理の見解をお伺いいたします。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  36. 三木武夫

    内閣総理大臣(三木武夫君) 佐藤君の御質問にお答えをいたします。  私に対して、現行の中選挙制度が一番最良の選挙制度であると思っておるのかという御質問であります。  この中選挙制度については、今日も、いろいろな弊害があるということは指摘されておるわけです。第一、個人本位になりやすい。議会政治のもとにおいては、政党政治でありますから、政党政策を通じて正々堂々と争うということが理想であります。したがって、小選挙区にすべし、小選挙区にすることが、政党政治を確立する上において、この方が好ましいという意見が相当にあります。また、選挙制度審議会においても、そういう方向を示唆しておるのであります。  しかし、選挙制度改正というものは、民主政治の根幹に触れる問題でありますから、これはやはり国民的な合意というものも、ある程度成熟する必要があると私は思っております。また、これは政党共通のルールでありますから、各政党間の考え方が余りにも隔たり過ぎておるということも、好ましい客観情勢ではない。したがって、この問題については、今後、日本の議会政治に横たわっておる一番大きな問題点の一つであると考えて、各政党間においても、この問題については十分に検討をしてもらいたいと思います。政府においても検討をいたしたいと思っております。  また、定数是正の前提には、選挙区のあり方というものが根本になる。根本的に選挙区のあり方を考えるべきではないか。先ほども申したように、選挙区のあり方というものは大問題であるということは、申したとおりでございますが、しかし、一方において定数是正というものも、これはいつまでも放置することはできない。一票の重みがこんなに違うということは、民意を正確に反映しておる選挙制度とは言えないわけでありますから、佐藤君の御指摘のように、この選挙区のあり方というものを、それを一緒に検討して、もっと理想的な改正案ができれば一番好ましいのでありますが、それがそこまでいかないから、定数是正をいつまでも待っておっていいとは私は思わない。  だからこの際、定数是正を切り離して提案して、できるだけ民意を反映さした選挙を行うことが、この段階においてはベターである、こういう選択をいたしたわけでございます。  また、衆議院定数是正参議院の全国区の問題、地方区の定数是正は関連するから、一緒にやるべきじゃないかという御意見であったと思います。  これが一緒にできれば、一番理想的だと私は思います。しかし、衆議院参議院には性格の違いもある。必ずしも一緒でなければいかぬと私は思っていないのです。しかし理想は、その方が理想的だと思います。ところが、参議院の、ことに全国区などについてはいろいろな意見があり、また、参議院のあり方に対する根本的な問題を提起する人もあって、また各政党間でも、この問題に対しては非常な考え方の隔たりがあって、この機会に、これも改正を要する問題ではありますけれども、一つの成案を得るに至らなかったのでございます。  だからといって、参議院のまとまるまで、衆議院に関する公職選挙法も、衆議院に大きく関係するわけでありますから、定数是正とか、そういう問題を、参議院と一緒に足踏みしておったらいいという論理を、私はとらなかったのであります。できるだけでも、一歩でも前進することがいいのではないかということで、佐藤君の御指摘のような、それが理想ではあるけれども、現実がそこにいかぬという事実を踏まえて、少しでも前進したいということで、こういう選択をいたしたわけでございます。  また、今回の改正法案に、六人区以上の選挙区ができるような形になっているが、これは不合理ではないかということでございます。  政府は、いまのような三人から五人までという中選挙区を維持すべきであるという見解でありますから、六人区をつくるという考え方は持っていないわけであります。今回提出いたしました定数是正については、その具体的な分割案については、どうか国会審議を通じて十分御検討の上結論を出してもらいたい、こう考えております。六人区をつくる考えは持っていない。  また、全国区の問題、今回の選挙について一番いろいろな批判を受けた参議院の全国区の改善を、真っ先に取り上げないのは何かということでございます。  参議院の全国区については、各方面から、今回の選挙ばかりではありませんが、特に今回の選挙においては、その弊害面が指摘されておるわけでございまして、これはもう検討すべき大きな課題ではありますが、佐藤君もよくおわかりだと思うのですが、なかなかコンセンサスが得られなかったということで、今後の検討の課題にしたいと思うわけでございます。これはわれわれとしても十分検討いたしたいと思いますし、各政党間においても、この問題は、これは共通のルールでもあるわけですから、検討をしていただきたいと思っております。  それから、政治資金のあり方について、この集め方、あるいはまた使い方、これだけを公開すれば、これを公に明らかにすれば、その金額の制限は要らぬのではないかという佐藤君の御意見でございました。  しかし、私は、どうもこれは無制限であっていいと思わないのです。公開の原則というものが、政治資金の大原則であると同時に、やはり節度が要るのではないか。無制限であっていいとは思いませんので、金額の規制も必要である、こう考えて限度を設けたわけでございます。  また、政治資金に対する私の基本的な考え方の御質問がございました。  私は、政党というものは一体何でできたのか、何で結成されたのか、この原点に立ち戻って考えてみる必要が、自民党ばかりでなく、各政党にもあると思うのであります。すなわち、こういう政治をぜひ実現さしたいという、こういう使命感に燃えて同志が結合したのが政党でありますから、企業に頼まれてつくったものではない、また、組合に頼まれて政党はつくったものではないわけですから、やはり政党の資金というものも、政党結成の本来の姿に返って、政党の主体性を維持するということも大事でありますから、やはりその政党を結成する人、それに対して熱烈に共鳴する人、そういう人々の寄付によって政党の資金は賄うことが、私は理想だと思う。  そういう状態というものを、できるだけ早くつくるべきだと思うわけでございますが、理想であっても現実はそこへいっていない。それだけに政党が安易に流れてはいけない。やはり政党はみずから苦労すべきである。みずからの努力を怠って安易に甘え過ぎてはいけない。政党本来の姿に返って、やはり皆が努力をしていくべきだというのが、政治資金に対する私の基本的考え方でございます。  お答えいたします。(拍手)     〔国務大臣福田一登壇
  37. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま御質問がありました件につきましては、全部総理から御答弁がございましたので、私が、改めて追加することはないと思いますから、御了承を願います。(拍手)     —————————————
  38. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 大柴滋夫君。     〔大柴滋夫君登壇
  39. 大柴滋夫

    ○大柴滋夫君 私は、日本社会党を代表し、ただいま提案された選挙二法について、この改正案では、自由民主党の諸君は御満足かもしれないが、国民の大多数は不満であり、とうてい納得できるものではない、この見地に立って、何がゆえに政府はこの糊塗的改正案でとどまったのか、その根本的考え方と、今後、もし、以下述べるような私どもの改正案が出されたなら、受け入れる用意があるのかどうか、抜本的な態度をお尋ねいたしたいのであります。  総理に御質問したい第一は、この日本では、選挙によってそれぞれの代表を選ぶという制度は、きわめて定着をしていますが、いかなる選挙をする、いかなる人を代表に選ぶかという国民的コンセンサスは、残念ながらきわめて脆弱であります。これは明治二十三年、わが国選挙制度が施行されて以来、歴代の政府が、このことの啓蒙を怠り、金権選挙を許してきたその結果であります。  たとえば、昨年の参議院全国区に選ばれた市川房枝さんと糸山英太郎君との選挙の仕方は、雲泥の差があったと思われます。しかし、後者の悪が国民の目にさらされたのは選挙後でありまして、投票当日は、二人とも国民の代表として選ばれたのも侵しがたい事実であります。  悪い選挙を指摘するのは、選挙中における有権者の任務でありますが、日本選挙には、残念ながらこの風習は定着しておらず、毎度、同じ黒い祭りが繰り返されているわけであります。どういう選挙が理想であるか、その見解を示すのは、民主主義をモットーとする政府の責任であります。  政府は、広く国民の協力を求めて、選挙中の悪摘発の啓蒙のために、都道府県、市町村とも相談して、正しい選挙を目指す中核的機関をつくり、それぞれ予算を計上して、常に民主政治の向上を図る必要があると思います。  総理、いかがですか、その決意のほどを、第一にお示し願いたいのであります。  質問の第二は、参議院全国区のあり方であります。  現在の制度では、どの政党から出ても、印刷費だけで法定選挙費用の千八百万円をオーバーし、五千万円以上の金が必要でありましょう。これは頭の痛い大金であります。  近時また、この全国区制度に乗って、テレビで有名な容姿は端麗であるけれども、自分では政見放送も書けない、歌や踊りのタレントが政党公認となる世の中になりそうであります。これは、国民政治で責任を負う政党の本筋から外れたものと言わざるを得ません。このように、選挙における金力とタレントの横行は、これをいまにして打破しなければ、他の選挙にも蔓延し、その結果は、政党政治家への不信を招くことは必至であります。  私ども社会党は、この傾向を心配して、ほかに方法がありませんので、政党を単位とした拘束式比例代表制を提案いたしました。新聞によれば、三木総理と松野自民党政調会長は、これしかないとして、わが党の案に同調せられたようでありますが、この改正案には影も形も見えないのであります。  今日、この案が生き長らえて政府・与党のどこかにあるのか、それとも完全に死んでしまったのか、その努力のてんまつのほどをお教えいただきたい。と同時に、他によい案がおありなら、その案を決意をもってお示し願いたいのであります。  第三に質問したいことは、最近のインフレによって、選挙にもまた自動車、ポスター政党機関紙等々、余りにも多額の金がかかり過ぎる時代になりました。金がかかればかかるほど、民民主義政治は進展するのでなくて、むしろあるべき政党の立場を忘却し、政治家個人精神を腐敗させるものではないか、深く憂慮にたえません。  金のかからない選挙のためには、選挙公営の徹底しかありません。選挙は、本来、候補者本人がその持てる政策を自分で述べ、有権者は、候補者同士の政策をその場で比較できる、このことが第一義であります。残念ながら、今日、日本の有権者の多くは、候補者政策を聞く機会も少なく、いわんや、候補者同士の政策の比較のできる機会はきわめて僅少であります。政治を生涯の仕事とする者にとって残念至極のことであります。  何ゆえ政府は、これほどまでに普及したテレビを大胆に利用して、政策比較の場を広めないのか、まことに不審にたえません。自民党は口を開けば、東京等テレビの広域エリアは、それはできないことだと逃げていますが、心ある放送関係者は、政府・与党さえその気になれば、一選挙区一回、立会演説会を放映することも可能であり、いまの政見放送を二倍にすることも可能であることを、私どもに語っております。  政策比較の場をテレビと立会演説に求めること、その他、公営選挙の徹底に不退転の決意を示さない限り、選挙は浄化できません。その結果、政党政治家は金を必要とするため大企業に密着し、かつての日本において藩閥や軍部にこびたと同じように、大企業にこびる愚を繰り返すでありましょう。政治が企業の社会的責任、国際的責任を確立すべきいまの時代にあって、政治家が企業の走狗になってしまうとは、国民の不幸、これに過ぐるものはありません。(拍手)  三木総理、あなたは、この私の見解にどのような具体策をお持ちなのか、篤と決意のほどをお示し願いたいのであります。  第四問以下は、福田自治大臣に御質問いたします。  その第一は、政治資金規正法において、労働組合のカンパと企業献金とを何がゆえに同等に扱ったか、その暴挙についてであります。  労働組合のカンパは、所得税を払った一人一人の労組員の純粋の所得から支出するものであって、だれにも迷惑をかけない性質のものなのであります。一方、企業の献金は、営利を追求する会社が、税金の対象から差し引かれるために、あるいはまた、何らかの利権を期待するためにするものであって、国民にも、その会社末端社員にも納得のいかない部面を持っているのであります。前者は純粋であり、後者は不純なものが含まれていると見なければなりません。何ゆえ同列に扱うのか、理由をお示し願いたい。  その第二は、公開を原則とする政治資金規正において、政党及び政治団体には一万円以上の献金を公開する義務を負わせ、個人や派閥には年百万円まで非公開としています。何ゆえかかる本末転倒のことをするのか。  その第三は、四十二年の改正案では、自民党は企業献金に二千万円までの限度を設けて提案し、今度はその限度を一億五千万円としておりますが、幾ら物価高騰の折といえども、余りの政治資金のエスカレートぶりであります。これはどういうことでありますか。  第四の質問は、過般行われた東京都知事選に見るように、候補者として掲示板にポスターも張らない、公選はがきもろくに出さない、立会演説会にも余り出てこない、こういうような泡沫候補が乱立いたしているわけでありますが、この泡沫候補が正しい選挙を妨害していることも否めない事実であります。供託金を増額することだけでなくて、少なくとも有権者が百万を超えるというような首長選挙等においては、当該選挙区において有権者のある程度の署名推薦をもって立候補の資格とするように制度を変えたらどうか、政府の見解はいかがなものでありましょう。  最後にお尋ねしたいことは、連座制強化と百日裁判の実行であります。  四月十二日の朝日新聞によれば、山梨県富士吉田市において、県会議員選挙の一票が、A候補は五千円、B候補は三千円、C、D候補は二千円で売買されているという事実が暴露されております。わが国の民主主義政治を守るために、かかる者を処断するのは理の当然だろうと思うのであります。  特に必要なことは、選挙の総括責任者、出納責任者、地域主宰者が買収などの罪で刑に処せられた場合は、候補者も同時に失格する、このことが必要であろうと思うのであります。それと同時に、百日裁判が励行されない限り、選挙違反の裁判中に二回当選したというような、まことにばかばかしい現実が生まれているわけであります。  政府の決断を要請する次第でありますけれども、質問を終わるに際して、私は、次のことを強調いたしたいと思います。  日本経済の行方も混沌とし、世界的にも脱アメリカが深まりいく現在、日本政治家の責任は、昨日の比ではないだろうと思うのであります。このときにおける選挙法の改正ほど、ある意味で重要なものはほかにないのではないか。  私は、古い話で恐縮でありますけれども、混乱期に処した政治家の決意について、議会の子と自称する三木総理に次のことを申し上げたいのであります。  昭和五年四月、ロンドン海軍軍縮条約調印に当たって、海軍の天皇統帥権を盾とした猛反対に遭遇した、時の総理大臣濱口雄幸氏は、「この調印は、よし自分が政権を失うとも、よし民政党を失うとも、よし自分の生命を失うとも、日本のためにまとめなければならない。」こう言い切って、軍部の反対を抑えたその教訓であります。  三木総理並びに与党の領袖諸君は、国を思う案であるならば、よしや野党の案であっても、われわれの案に御賛成なさるよう、その勇気と決断を期待して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  40. 三木武夫

    内閣総理大臣(三木武夫君) 大柴君にお答えをいたします。  この公職選挙法及び政治資金規正法改正は、国民の多数は不満であるというような御批判があったわけです。  私自身も、決して満足しておるとは言えません。しかしながら、これは相当な前進であることは間違いない。したがって、百歩前進でなければだめだ、七十歩とか八十歩ではいけないという、そういう議論であっては、一向に物事が前進しないのではないか。これは、やはり政治資金規正法にしても、公職選挙法改正にしても、前進を目指して一歩一歩努力することが現実的であるという判断から、今回の提案を行ったわけであります。  また、選挙運動に対して、何か選挙民の批判が弱いのではないかというような意味の御質問があったと思います。  私は、そうは思わないのですよ。最近において、選挙民の選挙に対する、また政治全般に対しても、批判の目というものは年とともに高まってきている。これは、やはりわれわれは、その大衆の目を政治家は恐れなければならぬ、こう考えておるわけでございます。したがって、日本選挙界の将来というものに、私は極端な悲観論ではないわけです。だんだんと国民の自覚、批判、これはもう候補者は次第に淘汰されてくる、年とともに厳しくなってくる、こう見ておるわけでございます。  したがって、ここで大柴君の御指摘のような、各府県に中核機関を設けて、そして悪を摘発して、もっとそういう面から選挙の粛正を図れという御意見であったが、どうも私は、そういうことまでしなくても、やはり国民の自覚、批判、これはますます厳しくなる傾向でありますから、したがって、その国民の判断にゆだねておいていいのではないか。まあ、きれいな選挙をやる国民運動推進本部というものは、これは常置機関としてあるわけであります。自治省の中にあるわけであります。選挙をきれいにする国民運動推進本部、こういう運動もマンネリにならないように、相当やはり今後も努力をするというような必要は認めます。しかし、いまのところ、大柴君の御指摘のような、何か中枢機関を設けるということは、そういう意思は持っておりません。  また、現在の参議院の全国区制度、これは非常に弊害が多いという御指摘、われわれもそう考えておる。これは、どうしても全国区という制度というのは一遍考え直さなければならぬ。  大柴君は、社会党の提案、すなわち拘束式比例代表制、私は、これは非常に傾聴すべき案だと思っております。自民党の中にも相当な賛成者がおりますので、大柴君の、死んだのか生きておるのかということ、これは死んではいないということでございます。  しかし、全国区の問題については、各党間の考え方というものが非常に大きく違っているわけですね。そういう点で、これは選挙制度というものは、政党間の一つの共通のルールでもありますから、私の勇断だけで押し切れと言っても、これは国会という場もあるわけでございますから、こういう問題は、やはり真剣な課題としてわれわれも検討いたしますが、各政党間においても検討してもらいたい課題でございます。  また、選挙公営をもっと拡大せよということですが、諸外国に比べてみまして、日本選挙公営というのは、ちょっと例を見ないぐらい拡大をされておるわけでございます。  大柴君の御指摘の、テレビの活用というのは、私もそう考えるわけです。何とかこれをもっと活用することが、金のかからない選挙という意味からいっても、その目的を達成できると思いますが、いろいろ地域によったら、時間帯の関係、あるいは技術上の問題もございますので、これはやはり研究さしていただきたい。私も、方向としては、やはりそういうことだと思うのです。  金がかかり過ぎて、このことが、日本の民主政治の根底を覆すことになるという大柴君の御心配に対しては、私も全く同感なんですよ。こんなに金をかけた選挙をやっておってはいけない。これはやはり、選挙というものが余り金に頼らなくて、政策で争われるような選挙にしなければならぬ。  そういう意味で、今回の選挙法にしても、政治資金規正法にしても、やはり選挙の資金にしても、公開、節度、こういうものを一つの大きな柱として改正をいたしまして、大柴君御指摘のような、金のかかる選挙というものを少しでも改善していきたいということで、今回の提案をいたしたわけでございます。  その他のことは、自治大臣からお答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣福田一登壇
  41. 福田一

    国務大臣福田一君) 大柴さんにお答えを申し上げます。  まず、第一の私に対する質問は、組合が出しておる金は純粋なものであるが、しかし、企業が出しておるのは何らかの意図がそれに含まれておるのではないか、こういう意味において、今度の法案の内容が非常に不合理であるというようなお話でございます。  この選挙制度の問題につきましては、二次並びに五次における選挙制度審議会におきましても、実は労働組合に対するものも、余りにそれが多額になるというようなことであっては、これは弊害が生ずる、そういう意味で、やはりこれは制限をすべきものであるということが答申をされておるのであります。大体、企業といっても組合といっても、その構成の内容はいろいろ違っております。私は、組合員だからといって、全部同じ方向に向かっておるとは、現実には考えておりません。また、企業におきましても、私は、社会党を応援している方もあれば、共産党を応援しておる方もあると思うのでございまして、企業だからその献金が悪であるという物の考え方は、実情に合っておらないと私は考えておるものであります。  次に、いままでの法案の内容によりますと二千万円を限度にしたのに、今度の法案では一億五千万円まで広げておるのは、これは非常におかしいではないか、余りにも企業寄りではないか、こういうお話でございます。  この二千万円というものを出しましてから、もうずいぶん年月もたっておりまして、しかも、その間においていろいろな選挙が行われておりますけれども、その場合において、企業が政党に献金をいたしておる内容はだんだん変化をしてきております。特にこの前の参議院選挙等においては、相当膨大な数字が企業から出されたというので、金権政治であるという非常な御非難を受けたわけでございます。そこで、私たちは、やはりこれには一定の限度を設けなければならないというので、一億五千万円という数字を決めたわけでありますけれども、必ずしもこれが絶対善であるとは考えておりません。  それは、すべて政治というものは現実を離れてはございません。やはり現実を踏まえながら、しかも、理想に向かって一歩ずつ前進するというのが、私は政治の姿ではなかろうかと思うのであります。あまりにも理想に走り過ぎて、現実の政治とかけ離れたことをするのでは困ります。したがって、組合の場合におきましても、それに相応して相当な政治献金ができるような数字を入れておるのでございまして、必ずしもこの企業だけに、そういうような大きな限度を設けたわけではないということも、御理解をしていただきたいと思うのであります。  次に、供託金だけを引き上げてみても、多数の泡沫候補が出て、そうしてそれが、たとえばテレビの放送をするような場合でも、時間帯が足りなくて、本当に十分な放送というか、候補者の理念あるいは政策が一般にわかってもらえないという弊害があるではないかという御指摘は、ごもっともな御指摘であると思うのであります。  われわれも、実はこの点については、十分いろいろと検討をいたしたのでございますけれども、しかし、いま御指摘がありましたように、たとえば百万を超えるような都市において首長の選挙でもするような場合には、ある一定数の有権者の推薦で、そうして候補者を決めるということにしてはどうかということでございますが、国民というものは、すべて政治に参画する権利が憲法で保障をされておるわけであります。ところが、そういう制限を設けますと、またその制限を何名にするかということについて、これはなかなか問題点が多いのでございまして、いま大柴さんが言われた弊害があるという点については、私も納得はいたしておりますが、何らかの適当な方法があれば、これは考慮をするとしても、いやしくも、個人の憲法上に認められておるところの権利を、こういう形で制限することがいいかどうかということについては、われわれとして、にわかに賛成をいたしかねますので、現在のような法案を提案いたしておるわけであります。  次に、連座制について、もっと厳重にして、たとえば百日裁判とかなんとかいうようなやり方で、悪いことをしたような候補者、あるいはそうでなくても、会計責任者とか総括責任者が罪が決まったならば、直ちにこの候補者を失格せしめるのが適当ではないか、こういうお話でございます。  実は、私たちもそういう考え方で一時おったわけでございますが、法務省といろいろ検討をいたしてみましたところが、法務関係で言いますには、いやしくも、いかなる罪人であるにしても、本人に何らの弁明の余地を与えずしてその権利を制限するということは、これはどう考えてみても、現行法律のたてまえに反することであるからして、これは、やはりそういうふうに決まった場合においても、本人がそれは違いますという、そういう弁明の余地を与えることが正しい姿であるということになりまして、われわれも、なるほどそれはもっともであるということから、実は大柴さんのお考えになったような案にはいたさなかったわけでございまして、この点もひとつ御了承願いたい。  今後の問題としてどうあるべきかということについて、御検討願うことは別でありますけれども、私は、やはり法務省が考えておる、罪人といえども、何らの弁明も許さないということは不当ではないかという意見については、やはり賛成をせざるを得なかったということを御了承願いたいと思うのであります。(拍手)     —————————————
  42. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 林百郎君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔林百郎君登壇
  43. 林百郎

    ○林百郎君 私は、日本共産党革新共同を代表して、公職選挙法の一部を改正する法律案並びに政治資金規正法の一部を改正する法律案に関して、総理大臣並びに関係大臣に質問をいたします。  まず第一に、総理にただしたいことは、民主主義の基本であり、憲法で明確に保障されている言論、出版、その他一切の表現の自由に対する三木内閣の態度、及び国民主権と議会制民主主義に対する三木内閣政治姿勢そのものについてであります。  昨年十二月二十五日、本院で採択された選挙の明正に関する決議では、「そもそも選挙は議会制民主政治の基盤であり、正々堂々たる政策論争を展開して国民の審判を受けるべきもの」と述べております。  また、総理、あなたは、総理に就任される直前の昨年九月、中央公論誌上で「言論の自由、思想の自由、政治活動の自由、表現の自由などの基本的人権は、絶対に確保すべきものである」と明言されております。  しかるに、今回三木内閣提出した公職選挙法の一部改正案は、第一に、選挙期間中は、選挙に関する報道、評論を掲載した確認団体の機関紙及び一般紙に至るまで無料配布を禁止し、自由な出版表現活動に不当きわまる規制を加えるものであります。  第二に、政党政治団体機関紙誌の号外に至っては、有料、無料を問わず、配布を全面的に禁止するという、かつて見ない言論、表現の自由に対する全面規制が盛り込まれているのであります。これは明らかに民主主義と憲法に対する驚くべき挑戦であります。また、これがさきの全会一致国会決議に明確に反するものであり、さらに総理自身のかつての主張とも相反する無責任きわまりないものであることは明らかであります。(拍手)  この点について、総理の責任ある答弁を求めるものであります。  次は、国民の知る権利に対する保障の問題であります。  日本国憲法にも明らかなように、選挙は議会制民主主義の根幹であります。また、選挙に際しては、主権者である国民がその権利を行使する上で、何物にも拘束されない自由な選択が保障されるべきであります。国民は、選挙期間中こそ、選挙の争点、政党候補者の実績と、その政策並びに理念などを知る権利があります。これは何人も奪うことのできない、国民の固有の権利であります。また、政党は不特定多数の広範な有権者に対して、その政策、主張を十分に知らせる当然の責務を持っていることは、多言を要しません。  しかるに政府案は、選挙期間中、国民政党候補者を選択するのに最も必要な政党政策や主張を知る権利を著しく制限しております。また、政党がこれらのことを国民へ知らせる責務を奪い去ろうとしておるのであります。これはどの先進国にもその例を見ない、民主主義への重大な侵害であると考えられますが、総理は一体どう考えておられるか、その見解をお知らせ願いたい。  総理、さらに重大な問題は、今回の規制の対象が、一般紙誌にまで広げられておる。たとえば朝日、毎日、読売などの新聞から、労働組合、民主団体機関紙誌、業界紙誌、ローカル紙誌、各種の週刊誌までが、選挙に関する報道、評論をしている以上、無料配布による宣伝や拡張行為を含めて、一切の無料配布が禁止されることであります。したがって、選挙中読者の拡張や無料配布を続けるには、選挙の報道、評論を一切やめざるを得ないのであります。これは、かつての治安維持法や新聞紙法、出版法によって発売禁止、削除などのファッショ的な言論弾圧が行われた戦前の暗黒政治への道に通ずるものと言わざるを得ないのであります。  以上の点について、総理の責任ある見解を求めるものであります。  総理は、去る三月十二日、参議院の予算委員会で、わが党の内藤議員に、ビラの洪水が規制の根拠だと答えていますが、これは一部の現象を意図的にとらえて、言論の自由という根本的な国民の権利を否定するのに利用しようとする、まさに暴論と言わざるを得ません。  たとえば、重大な規制を受ける各新聞社も、このたびの法案に対して、この非を次のように指摘しております。  四月五日には、読売新聞の社説は、政党機関紙誌選挙時に啓発宣伝に努めるのは当然であり、紙爆弾の是非は有権者が判断する、政党がみずからの手で首を絞めるような愚は避けた方がよいと主張しております。  また、四月八日には、毎日の社説は、公正な選挙のためにはもっと運動を自由化し、開放的にする必要がある。自民党などは紙爆弾、ビラ公害と誇張し過ぎる。むしろ陰湿な形で行われている銭爆弾、銭公害の方にこそ徹底的にメスを入れるべきだ、こう指摘しております。すなわち、自民党による買収、供応、金権、企業ぐるみ選挙こそが問題であることを明らかにしているのであります。(拍手)  このように、事は言論、表現、結社の自由に関する憲法の諸原則、国民主権と議会制民主主義の原則に対する許しがたい挑戦であると断ぜざるを得ないが、どうか。総理の明快な答弁を求めるものであります。  このことと関連して指摘しておきたいことは、国民の厳しい指弾を受けた企業ぐるみ選挙が、今回の一斉地方選挙でも、大企業を中心に、大規模に行われている問題であります。わが党がさきに明らかにしたように、事もあろうに、自民党の中曽根幹事長は、三月三十一日、日経連の緊急会員懇談会に出席し、企業ぐるみ選挙を要請しているのであります。  わが党は、かかる不法な企業ぐるみ選挙に対し、三木総理に直ちに厳正な措置をとることを申し入れましたが、清潔な政治を主張するあなたが、企業ぐるみ選挙によって国民固有の権利である自由な選択に不当な抑圧を加えることについて、いかなる責任をとられるのか。規制すべきでない言論をあえて規制し、直ちに規制すべき企業ぐるみ選挙は野放しにする、かかる事態について、総理の責任ある答弁を求めるのであります。(拍手)  次に、政治資金規正法の一部を改正する法律案について質問いたします。  今日、国民の厳しい批判を浴びている金権腐敗政治の根源が、自民党を初めとする一部政界と大企業、財界との癒着にあることは、だれの目にも明らかなところであります。現に、三木総理自身、さきに挙げた中央公論の九月号で「企業から多額の献金を受けた候補者は企業の代弁者となり易い。労働組合にかかえられた候補者もまた組合の代弁者となる。」「金権を代表するかのごとくみられる現在の自民党の体質では、インフレにとり組む姿勢が疑われる。」と述べているのであります。  ところが、今回政府から提出された政治資金規正法改正案は、国民の強い要求に反して、企業、労働組合など団体献金を存続させることによって、金権腐敗政治の根源を温存させるものとなっているのであります。政府は限度額を設けたことによって、企業献金に節度を設けたものと言っておられるが、その内容はどうか。改正案によれば、派閥献金も含めれば、最高一億五千万円にも達するようなきわめて高い限度額を設け、その限度額までは政治献金の拡大を合法化するものであり、これこそ政治資金規制どころか、むしろ企業献金拡大法とも言うべき悪法であります。  それは、さらにわが党の調査によっても、全国の株式上場会社千六百六十社について、限度額いっぱいの献金を集めると、実に二百九十億円、非上場会社も含めて集めれば、その額は実に五百億円を超えるという事実によっても端的に示されているのであります。  さらに本法案によると、ある企業の政治献金限度額が守られたとしても、その企業が業界団体や任意団体をつくれば、それらの団体を通じて、政治献金を幾らでも上積みできるという抜け道さえちゃんと準備されているのであります。  このような企業献金をますます拡大奨励する法案の、どこをもって一体節度が守られているというのか、明確に答弁されたい。  また、これは自治大臣にもお尋ねしたいのですが、政党に対する献金は、一万円を超えれば、寄付した者の氏名、住所、職業等の報告義務があるのに、派閥や後援団体については、百万円までは非公開でできると区別されておりますが、これは一体いかなる理由によるのか、総理並びに関係大臣の明確な答弁を求めるものであります。  総理、あなたはこの法の改正によって、自民党のこれまでの深い金権腐敗の政治体質が一体解決できると、本気で考えているのですか、率直かつ明確な答弁を求めます。  日本共産党は、創立以来一貫して財界や大企業からの献金をびた一文もらったことのないただ一つの政党であります。  総理は、わが党がかねてから主張しておる、政治献金の最も正しいあり方として、企業、労組など、一切の団体政治献金を禁止し、寄付個人に限るという主張を直ちに受け入れるべきであると考えるが、その用意があるかどうか、明確な答弁を求める次第であります。(拍手)  さらに、これも総理と自治大臣お二人にお聞きしますが、ここで特に指摘しておきたいことは、今回の政治資金規正法の附則改正についてであります。  これによりますと、労組や民主団体など、いままで選挙中でも一定政治活動が保障されていた団体にさえ、「政治団体」を「政治活動を行う団体」と言いかえることによって、大幅にその活動が規制される危険があるということであります。このような危険な改正は、断じて許すことができないところであります。総理並びに関係大臣、自治大臣の答弁を求めます。  最後に、私は、三木総理が就任当初強調されていた対話と協調の精神という姿勢が、今回の二法案に一体どのように具現されているのか、お尋ねしたいのであります。  言うまでもなく、選挙法の改正は、代議制民主主義の基礎にかかわり、院の構成に重大な影響を与えるという面から見て、慎重に論議され、かつ、各党の合意を得て実行されるべき性質の問題であります。これは三木総理自身、三月十二日の参議院予算委員会で、「自民党一党だけの考えではいけない、選挙運動というものに対しては、一方だけで押し切るということはルールとしての公正を欠きますから、各党でこれを話し合う」と答弁されたことを見ても明らかであります。ところが、政府・自民党は、本院の公職選挙法改正委員会で各党の合意を得た衆議院定数是正案の実行を、参議院全国区制の改正と一括でなければ行わないなどと、こういう勝手なワンパッケージ論で引き延ばしてまいりました。そして、全国区制問題が自民党自身の内部矛盾でまとまらなくなると、今度は、小委員会では全く論議もされず、議題にもなってない政党機関紙、一般紙誌の規制を、突如として、一括にして、しかも一方的に提出するという態度に出てこられたのであります。これこそ、議会の意思を無視するものであります。  総理、これが一体あなたの言う対話と協調の真の姿なのですか。しかも、あなたは、自分の当初の公約に反して、最近行われた一斉地方選挙中においても、かつて前例を見ない、各政党の機関紙に対する警視庁の警告なるものを行って、政党の活動に重大な干渉を加える一方、あなた自身が批判していた田中内閣さえ手をつけられなかった機関紙、一般紙誌の規制を強行しようとしておるのであります。一体、これらの姿勢のどこに対話と協調の精神というものがあるのですか。総理の公約なるものは、全くの見せかけにすぎなかったと言わざるを得ないのであります。(拍手)  一体、三木総理は、みずからの公約に対してどのような責任ある態度を感じておるのか、とろうとするのか、明確な答弁を要求するものであります。  日本共産党革新共同は、今回の公選法、政治資金規正法改正二法案の真のねらいが、一方では正々堂々たる政策論争を通じて国民の審判を受けるという、本来の選挙戦の正道を極度に規制しながら、他方では、利益の誘導や買収、供応、強制など、旧態依然たる金権選挙、企業ぐるみ、官庁ぐるみ選挙など、本来厳しく規制すべき選挙腐敗の道を温存して、こうして、まさに党利党略的な選挙制度の改悪の上に、自民党支配の長期化をねらうものと断ぜざるを得ないのであります。  現に、椎名自民党副総裁が、四月十五日、内外情勢調査会の会合で言明した小選挙区制導入の策動とあわせて考えるならば、事態はいよいよ重大であります。この点について、総理の責任ある答弁を求めるものであります。  わが党は、三木公約と称して、憲法に明確に違反する政党機関紙、一般紙誌に対する規制を持ち出すことは、断じて許すわけにはいきません。いま国民が切実に求めていることは、すでに各党で合意をしておる衆議院定数是正を、まず直ちに実行することであります。また、政治資金規制については、企業、労組献金などを厳重に禁止して、金権腐敗政治の根を完全に断ち切ることであります。  このことを強く私は三木総理に要求して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  44. 三木武夫

    内閣総理大臣(三木武夫君) 林君にお答えをいたします。  林君は、全体を通じてビラの問題、これを中心に論じられたわけでございますが、御指摘の、本院において決議をされた、「選挙は正々堂々と政策論争を展開して国民の審判を受けるべきものであり」とか、あるいはまた、私の中央公論に対して、言論、思想、政治活動、表現の自由は絶対に確保すべきだというようなこと、こういうことは、私の変わらない信念であります。だからこそ、自由社会を守らなければならぬと私は言っておるわけであります。また、憲法の表現の自由、知る権利、こういうものに対しても、当然に、これは厳粛に守るべきがわれわれの責任であることは、もう林君の御指摘を待つまでもないわけでございます。  ところが、私は、その憲法の問題と、今度林君が提起された問題は、別のカテゴリーだと思うのです。最近の選挙運動には、選挙期間、常でない、選挙という限られた選挙運動期間中に、選挙文書というものに対しては、現行の法規においても相当な厳しい制限をしておるわけですね。自由に選挙用の文書は配布してもいいということにはなっていないのですよ、現行選挙法では。それは恐らく、立法の精神は、選挙の場合における公正を維持しようということで、選挙期間中には、選挙文書というものは自由に配布してもいいということになっていない。非常な制限を受けておる。したがって、機関紙の号外という形で、最近、選挙用の文書と変わらないそういう号外が、大量に、無償で、無差別に配布されておる。このことが、どうも選挙の公正を害するのではないかという批判があることは事実ですよ。批判があることは事実です。その批判にひとつこたえようというのが、この今回の改正案になったわけでございます。  したがって、憲法の言論の自由とか表現の自由とか、こういうものとは全然別のカテゴリーである。選挙運動期間の、選挙運動中という限られた期間に、しかも選挙文書に関して、ある程度の制限を加えることが、かえって選挙の公正を維持する道ではないかということでありますから、それはもう憲法とは別のカテゴリーであると私は思うわけであります。これは、公職選挙法の特別委員会においても十分御審議を願いたいと思うわけでございます。  私は、いま申したように、言論の自由とか表現の自由を制限しようという考え方は毛頭ないのです。私自身がそのためにみずから闘おうと思っておるわけですから、そういう考え方はないということは明らかにしておきたいと思うわけでございます。  また、そのことが、新聞の一般紙に対して何らかの規制をするという、そんなことはあろうはずはないのでありまして、一般紙に対しても、あるいは政党の機関紙とか、あるいはまた一般の日刊紙などに対して、制限を加える考えは全然ないのですよ。それは有償である限り、これはもう何らの制限は考えていないのでありますが、号外といっても、選挙文書とも言わるべきような文書が大量、無差別に配布されることが、選挙の公正を維持する道かどうかということに、やはり非常な疑問があって、こういう法案の提出をいたしたわけでございますから、その真意というものは、林君においても十分に御理解を願いたいと思うわけでございます。  それからまた、そのことが、選挙法の、悪質な選挙違反、この規制を免罪するようなつもりはないか。  そんなことは全然ありません。そのことは、今回の公職選挙法改正においても、どこにもそういうふうなにおいも出てきていない。むしろこれは、連座制強化など、悪質な選挙違反に対しては厳しくやりたいということが、今度の改正案内容をなしておるということは、御理解を願いたいわけでございます。  また、政治資金規正法について、企業献金と組合の献金を直ちに禁止せよ、こういう御意見でございます。  私も、政党の資金は、先ほど申しておるように、党費と個人寄付で賄うことが理想だと思いますが、まだ現在それが実行できないことを遺憾に思っておりますが、しかし、これはやはりその理想というものが影をひそめたわけではない。これは自民党自身の問題でありますが、五年後には、政党の経常費については、企業の献金を辞退するという党議の決定を行ったわけでありますから、こういう点において、この問題が、こういう私の一つの理想、原則というものが全然失われたとは、私は思っていないわけでございます。  それからまた、企業ぐるみの選挙について、いろいろな御批判がありました。  企業もまた政治に相当関与できる面があることは当然でございますが、しかし、企業が選挙の自由を妨害したり、買収、利害の誘導など、違法な行為があれば、これはもう法に照らして厳重に処置をすべきことは当然でございます。  また、最後に、いろいろ私のやっておることが、対話と協調の精神に反しているではないかということでございました。  対話と協調ということは、私の重要な政治姿勢でありますから、私は、これを崩すことは絶対にないということでございます。  今度の両法案につきましても、たとえば、その中で一番重要な、民主政治の根幹にも触れるような選挙制度の問題については、これはやはり小委員会等においても十分お話し合いを願ったわけでございまして、法案に出した全部が全部、小委員会で話がまとまったものを出すというわけにはまいりませんけれども、重要なものについては、各党間の話し合いをできるだけやっていこうとしているわけでございます。したがって、対話と協調というこの基本的な姿勢は崩すことはない。  また、今回の選挙法でありますが、選挙法の改正の背後には、何か、小選挙区を実施しようとする意図が布石になっておるのではないかというような御質問があったけれども、今回の改正案の背後には、特別な意図は何にもありません。そういうふうに御承知を願いたいのでございます。  あとは、自治大臣からお答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣福田一登壇
  45. 福田一

    国務大臣福田一君) 林さんにお答えを申し上げます。  ただいま総理から、大部分の問題についてはお答えがございましたので、私は、これを補足して申し上げてみたいと思うのでございますが、大体林さんは、選挙期間中にいろいろの制限を設けるのが問題だということをおっしゃっておるのでありますが、私は、政党政治をやる上から言えば、選挙期間中などを問題にしてはいけないと本当は思っておる。大体、日常座臥、われわれの政治活動というものを国民に知ってもらう努力をすることこそが、これが本当の意味における民主政治のあり方であると思うのであります。(拍手)  同時にまた、その選挙期間中において、ある種の制限が行われることは、はなはだけしからぬ、こういうことでございます。  公共の福祉というものを中心にして、ある程度の制限を設けることは、これは憲法において認められておるところでありまして、そういう意味で、総理はこのお答えを申し上げておったわけでございます。  次に、ビラの規制に関係しまして、日刊紙等でも何か非常な制限をというお話がございました。  われわれが考えておりますのは、総理も申し上げたように、有料でなければいけないということにいたしましたのは、その期間において、たとえば新聞の拡張をいたすために無料で配付するということを認めますというと、そこに弊害が起きる問題が生じますから、ある一定の、二十日間とかあるいは十日間とかいうような一定期間内だけは、ひとつお差し控えを願いたいというのでございまして、この点は、私は日刊紙の方も御理解をしていただけると考えておるのであります。  次に、企業ぐるみの選挙をやることについて、この間、幹事長から何か問題があった、そういうことを言われたということでありますが、幹事長が言ったことは、決して、集まった人に、皆さん全部やってくださいとかいうような意味のことではありません。たとえそう言ったからといって、みんながやるものではありません。選挙というものは、それほど簡単に、何かだれか一人が物を言ったとか、総理が言ったとかということで問題が解決するのなら、いまごろは自民党が全議席を獲得しているはずなんです。(拍手、発言する者あり)そんなものではありません。要するに、私が申し上げておることは……(発言する者あり)聞いてからにしてください。私が申し上げておることは、そういうような会合で話をいたしましても、そういう場合に、あなた方は必ずこれをやってくださいなどというようなことを言えるものではありません。また、そういうことを言っておるのではない。幹事長というものは、そういうような無責任な、また、皆さんから非難を受けるようなことは断じて言っておらないということだけを、ここで明らかにいたしておきます。(拍手)  次に、企業は政治活動をしてもいいじゃないか、また、組合も政治活動をしてもいいというわれわれの考え方は、これは現実の問題として私たちはそのように考えておるのでございまして、ここで一遍に、組合の活動も全部制限する、あるいは企業も全部制限する、そういうような姿は、現実の政治活動としては、私は余り適当でないという判断に立って、このような法案を出しておるということを御理解願いたい。  次に、会社がいろいろな任意団体をつくって金を集めるということにすると、一億五千万円というような限度を非常に超えた額が集まるではないかという御説明だと思うのでございます。  しかし、いやしくもこのような公職選挙法が通り、政治資金規正法が通れば、たとえば鉄鋼組合が二つの団体をつくって、そこからあるいは自民党その他に献金をするというような、そんな非常識なことを国民が許す道理はございません。私は、そのようなことはないと、固く信じておるものでございます。  次に、政党に出した場合は、一万円以上は公開する、それから、ほかの政治団体の場合は百万円までは公開しないでいいということでございます。  これは、やはり寄付者の自由意思というものを尊重していった方がいいのではないかということでございまして、将来、これがたとえば全部個人献金というようなことになれば、これらの問題も順次解決を見ると思いますが、私は、そういう現実を踏まえて、この百万円という数字を規定したということを御理解いただきたい。これは寄付者の意思を尊重するという意味が多分に含まれておるわけでございます。  その次に、附則の改正でもって、労組や企業が今後どういうようなことになるのかさっぱり明らかでないということでございますが、それは総理からお答えをいたしましたから、省略をさせていただきます。  次に、対話と協調というお話でございます。  私も、三木内閣の一員でございますからして、対話と協調ということは常に心がけていかなければならないと考えております。しかし、対話と協調という言葉は、議会政治の立場におきましては、一党だけが反対すれば何もできないというのは、対話と協調だとは私は考えておりません。やはり相当の多数の者、二党なり三党なり、あるいは一党でもよろしゅうございますが、とにかく多数の者がこれがよいということであれば、これを認めるのでなければ、民主主義政治とか議会政治というものは、これは存在の価値をなくしてしまうことになるのであります。この点は御理解をしていただきたいと思うのであります。(拍手)  その次に、警視庁が、この間、都知事の選挙等で警告をしたというのはけしからぬということでございます。  これは、ちゃんと法律規定をされておることを警視庁がやっただけでございます。いやしくも法治国である限りにおいては、法律がある以上は、これが改正されるまではこれを守るということでなければ、議会政治というものは成り立たないと私は思っておるのでございまして、警視庁のとった態度は、当然であると考えておる次第でございます。  なお、いろいろ林さんから御質問がございましたが、私は、この出した法案が、このまま一字一句も直さないで通るのが正しいというふうに主張しておるわけではございません。いろいろ委員会におきまして御審議を願いまして、そうして、われわれも納得がいく限りにおいては、その御意見を尊重して法案の成立を図るというのが、われわれの態度であるということだけここで明らかにいたしまして、私のお答えを終わります。(拍手)     —————————————
  46. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 林孝矩君。     〔林孝矩君登壇
  47. 林孝矩

    ○林孝矩君 私は、政府提案政治資金規正法の一部を改正する法律案及び公職選挙法の一部を改正する法律案に対し、公明党を代表し、質問を行います。総理の率直かつ明確な答弁を求めるものであります。  現行政治資金規正法のもとで、会社その他の団体政治活動に関する寄付が、長年にわたって政治の腐敗に結びついてきたことは、国民のよく知るところであります。  すなわち、過去においては造船疑獄、保全経済会、共和製糖グループ事件等の汚職事件が相次いで引き起こされ、近くは昨年の参議院選挙に象徴されるごとく、未曾有の金権選挙、企業ぐるみ選挙で、まさにその頂点に達した感が深いのであります。  このような政界の不明朗きわまる政治資金のあり方を正し、旧態依然とした政党意識から脱却して、新しい理念のもとに政党の体質を改善し、国民監視のもとで、清潔、公平に、国民国民による国民のための政治を実現することこそ、政党の責務であると考えるものであります。  公明党は、国民の主権を尊重し、議会制民主主義を、名実ともに確立するための基本問題である政治資金規正法については、政治献金を通じ、政治が特定の法人などに支配されることを防ぎ、国民に信頼される政治実現のため、政治資金寄付個人に限る抜本的な改正案を、立党以来七回にわたって国会提出してきたのであります。(拍手)  政治資金を改革し、政治と金の関係を明朗かつ節度あるものにするため、企業献金は三年の経過措置の後、廃止するとは、三木総理みずから掲げた公約でありますが、自民党内の圧力に屈して、今回の改正案は総理の公約から大幅に後退し、「改正法の施行後五年を経過した場合においては、その施行状況を勘案し、」と、まことにあいまいもことして、企業献金の廃止を明記しないのは重大な公約違反であります。  一体、総理は、自民党の金権体質、政財界の癒着が、国民政治不信を増大してきたことに対する責任を、どのように認識しておられるのか、改めて政治と金のあり方について、将来どのように考えられておるのか、具体的に示していただきたいのであります。  また、企業献金についてでありますが、政治献金の本来のあり方は、思想、政治活動の自由の原則に基づく、国民の主権により、自然人の自発性によるべきものであると考えます。自民党に対する企業献金は、従前より割り当てによるものであって、自発性という要件すら満たしておりません。  企業の政治献金は、企業そのものの目的から言って、政治権力との結びつきを必然的にもたらし、企業利益の見返りを期待するものになることは当然の帰結であります。これは、公平であるべき民主政治の基礎原理を侵害する行為であって、国民の間接的な政治参加とみなすことはできないのであります。  改正案は、企業献金及び労組、職員団体の献金額を最高一億円とし、さらに派閥等への献金をその二分の一とし、合わせて、最高一億五千万円に上る献金が可能になることは、過去いずれの改正案より大幅な後退であり、まさに、政治資金規制ではなく、奨励案であると言うべきであります。  総理自身、企業献金は悪ではないと言って前言を翻し、ただ、企業献金の限度額を設けさえすればよしとする姿勢は、依然として政治献金による政治腐敗の根源にメスを入れることをあえて避けるものであり、政界浄化の意思、全くなしと断ずるものであります。企業献金を是として、実質的にこれを奨励しようとさえしている本案の意図に対する、国民の納得のいく答弁を求めるものであります。  さらに、改正案の重立った矛盾を指摘するならば、第一に、個人献金も二千万円を限度額とすることは、個人献金の形での寄付であり、会費であっても、企業役員等の個人名義で企業献金を肩がわりして、企業献金の増加をたくらむことができるだけでなく、第二に、同一の派閥や個人に対する寄付年間百五十万円を超えてはならないと規定していますが、個人の出す党費、会費であればこの規定に触れず、全く無制限で支出できること、第三に、政党への寄付が一万円を超えた場合、その公開を義務化している反面、派閥や個人後援会への寄付が百万円以下であれば、公開の原則を適用せず、多数の寄付を集めても、その出所が不透明であり、第四に、公表された個人献金について、所得の二五%まで控除の優遇措置が講ぜられていますが、少なくとも派閥や国会議員、知事、都道府県会議員などに対する個人献金の税制優遇措置は削除すべきであります。  以上述べましたように、本法案は、個人による拠出を一層強化すると規定しながら、すでに国民世論となっている個人献金への裏づけは何も盛り込まれておらず、しかも、最近に至って、企業献金再開を財界に要請するなど、依然財界依存の体質を温存し、積年の金権政治から脱皮できない本改正案のこれらの問題点について、総理の明確なるお答えをいただきたいのであります。  次に、公職選挙法改正案について、きわめて重要な点にしぼって伺います。  議会政治は、主として政党によって運営されるわけでありますが、その日常活動の一環である政党確認団体機関紙誌または一般紙誌の配布は、選挙期間中は有償に限ると制限し、選挙に関する報道、評論を掲載することを禁止し、事実上、無償の号外頒布禁止しています。これは憲法の言論、表現の自由や国民の知る権利を侵害し、議会制民主主義の根本である政治的意思形成の自由に対する挑戦であって、ファッショ的な暴挙と言わざるを得ません。すなわち、憲法二十一条に明記された結社、表現の自由に抵触する疑いの強い問題であります。批判と選択の自由のないところに政治的意思の自由はないのであります。  選挙運動は、本来自由で開放的であるべきなのが至当でありますが、現行公職選挙法は、全文二百七十三カ条のうち、およそ百カ条近くが禁止制限条項に満ち満ちた、いわゆるべからず法となっています。これに加えて、今回の自民党の党利党略的な措置は、政治的意思形成の過程から批判、選択の自由を奪い、表現の自由も閉鎖しようとするものであり、選挙をますます国民から遠ざけ、政治的無関心層の増大を誘導し、民主主義の生命とも言うべき文書活動を消滅の危機にさらすことになるのであります。  金のかからない選挙の実現という名目で、新聞による政党政策広告の費用を国庫負担とする一方で、特に選挙期間中の号外の内容制限を加えることは、筋違いと言わざるを得ません。  こうして、企業献金存続の意図と同様、権力をもって国民から批判と選択の自由を奪い去ろうとする党略的な策謀は、まさにファシズム的姿勢であると考えます。総理の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)  また、広宣活動の一環としての政党機関紙誌の号外の配布は、党の政策政治路線を有権者に認識してもらうためのものであって、選挙意識の高揚をもたらしてきたのであります。これをむやみに禁止すれば、選挙における政党間の政策論争などが行われなくなる結果、政策論争中心ではなく、選挙そのものの争点をあいまいにする中で陰湿化し、やがて義理や情実が中心となり、取り締まるべき悪質な買収、供応などの腐敗選挙が横行するおそれが増大することは明白であります。  批判されるべき必要以上の配布については、第一義的には有権者の審判にゆだねられるべき問題であって、法による過剰規制は厳に慎むべきであります。何ゆえ国民政治的意思形成を妨げ、何ゆえ金権情実選挙を扇動し、一党一派の利害をごり押ししてまで、有権者不在の姿勢を貫こうとするのか。これはそのまま自由社会の破壊につながるものであり、はなはだ理解に苦しむものであります。当然、この条項は削除されるべきであります。(拍手)  三木総理は、総裁就任前、中央公論の中で、「言論、思想の自由、政治活動の自由、表現の自由、結社の自由などの基本的人権は、絶対に確保すべきものである。これらのものを失うと、社会も文化もみずみずしい濶達さを失うのである」と、まことに濶達な御意見を述べております。  しかるに、改正案に見る憲法軽視の危険な姿勢、時代逆行、有権者べっ視の姿勢は、三木総理のいかなる心境の変化によるものなのか、総理みずからの発言を踏まえて、明確な答弁をお願いするものであります。(拍手)  次に、国会議員選挙で、確認団体が所属候補者数に応じて回数を定めて出す、国庫負担による新聞の政策広告の問題であります。  マスコミの報道するところでは、すでに衆議院選挙で自民党七回、社会、共産党四回、公明、民社党三回と報道しております。これは政治活動そのものに直接差をつけることになり、各党とも公平に同じ回数にするのでなければ不法であると考えますが、これに対する総理の見解を伺います。  最後に、戸別訪問や政治活動の自由化に関して、選挙はできるだけ明るく、自由なものとし、金のかからない運動を推進するためにも、退去義務、訪問時間等、一定基準を定めて戸別訪問を認め、選挙を対話の場に戻すべきであると考えます。すなわち、戸別訪問を自由化し、候補者、運動員、第三者を問わず、これを認めるべきであると思いますが、総理の責任ある明確なる答弁を伺って、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  48. 三木武夫

    内閣総理大臣(三木武夫君) 林君の御質問にお答えをいたします。  先ほどからもしばしば申し上げておりますように、私は、政党の資金というものは、党費、個人寄付によって賄うことが理想だと思っておるわけであります。したがって、かねがねから、三年間で企業献金を廃止してはどうかということを主張してきたのでございます。それが実現できなかったことは遺憾に思っています。この法案においても、五年後に検討するということになっておりますが、自民党は、その法案の検討に先立って、五年後には企業献金を辞退して、みずからの党費と個人寄付によって党の経常費は賄うという党議の決定を行っておるわけであります。したがって、私のそういういままで言ってきた精神、原則は、これは捨ててはいないということは御理解を願いたいのでございます。  それから、企業献金と労働組合団体の献金が最高一億円となって、他の団体への献金二分の一とすれば、最高一億五千万に上るではないかということでございました。  資本金五十億以上の企業については、政治献金は三千万円で制限をされておるわけであります。御指摘のような一億五千万円というのは、資本金が千五十億円以上という企業以上のような、ごく特別な企業であって、一般的企業の例ではない。しかし、それだけの規制をすることでも、従来の企業献金に比較いたしますと、相当厳しい制限になっておるということは、御承知を願いたいのでございます。  また、個人献金を最高二千万円までとしたということは、これは個人は従来無制限であったわけですが、これをやはり二千万円に制限をしたということ、個人の献金というのは、自分の可処分所得の中から出すものであるので、これだけの制限で適当であろうということでいたしたのでございます。  林君が一番に問題にされたのは、共産党の林君も御指摘になったように、選挙運動用の文書というものについて、一番質問の重点があったと思うわけでございます。  これは、私の中央公論に対する論文なども御指摘になって、そして、あるいは憲法の条章等もお引きになって、いかにも言論の圧迫、表現の自由を圧迫、憲法にも違反するような考え方ではないかというふうに言われましたけれども、これは憲法とは全然別なことである。それはわれわれ自身が、もう林君と同じように、表現の自由、言論の自由、これをやはり守るという意図がなければ、政党政治家になれるわけではないわけです。そういうことで、憲法の条章とは関係ないのであって、ただ選挙の公正を維持するという点から、選挙期間中だけです。常には何も制限しないのです。選挙期間の短期間のうち、しかも、選挙期間中は、選挙の文書というものはいろいろ制限を受けているのですから、自由に何でもできるのではないのですから、すでに制限を受けておるのに、選挙運動用の文書と変わらないような政党の機関紙の号外というものを、大量に、無償で、無差別に、戸ごとに配布するということが、選挙の公正を維持していく道であろうかどうかということについては、世間の批判があるということは、林君も御承知を願いたいのでございます。その批判にこたえて、選挙期間中の選挙文書と思われるような文書の配布については、制限を加えようというものでございまして、言論の自由とか表現の自由に対して、いささかもこれに制限を加えようというものではないわけでございます。その点は御承知を願いたいのでございます。  その他のことについては、自治大臣からお答えをいたすことにいたします。(拍手、発言する者あり)
  49. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 内閣総理大臣三木武夫君。     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  50. 三木武夫

    内閣総理大臣(三木武夫君) いろいろと細かい点に触れた御質問でありますので、自治大臣がお答えする方が適当だと思いましたのですが、私への御質問ということでございますので、私からお答えをいたします。  個人に対しての百万円以下という、これを公開しなくてもいいというのは問題ではないかという御指摘がありました。  これはプライバシーの問題等もございますので、公開をしなくてもいいとしたのでありますが、しかし、寄付についても、税法上の優遇措置を受けようとするならば、届け出をして公開をされるわけであります。したがって、私は相当の者が届け出をすることになると思うわけでございます。  また、そういう派閥とか国会議員、知事、都道府県会議員などに対して、二五%の所得控除は削除すべきではないかという考えでしたけれども、やはり林君も個人献金に移行すべきであるというような御意見でありますから、できるだけ個人献金というものを奨励する処置をとっていくことが、そういう社会的慣習というものが日本にできる一つの道である。個人献金というものは税法上全然優遇されないということになってくると、個人政党などに対して、政治に対して献金をしようというような慣習というものはなかなか育たないのではないか。したがって、個人寄付に対しても、税法上の優遇処置をやはりする方が、そういう慣習が生まれてくるために、その方が必要なんではないかという考え方から、さようにいたしたわけでございます。  また、政党の機関紙の号外については、先ほどお答えをしたとおりでございまして、いま御質問のことについては、一通り触れてお答えをいたしたと思いますが、以上でお答えといたします。(拍手、発言する者あり)
  51. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 内閣総理大臣三木武夫君。     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  52. 三木武夫

    内閣総理大臣(三木武夫君) 戸別訪問が、林君の最後の御質問にあったのにお答えをいたしませんでした。  戸別訪問は両論があるわけですね。戸別訪問は許したらいいではないかという意見もありまして、しかし、やはり戸別訪問というのは、現在の段階で、これは違反を誘発するのではないかという、こういう消極論もあって、まだこの問題については最終的な結論が、われわれもなかなか出しにくいので、この改正案の中には、戸別訪問の問題には触れなかったのでございますが、このような問題は、制度全体の中の選挙運動のあり方として、今後やはり慎重に戸別訪問の問題は検討したいと思います。現在最終的な結論は出ておりませんが、やはり今後のあり方として検討すべき課題であると存じます。(拍手)     —————————————
  53. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 玉置一徳君。     〔玉置一徳君登壇
  54. 玉置一徳

    ○玉置一徳君 私は、民社党を代表いたしまして、今回上程されました公職選挙法並びに政治資金規正法の一部を改正する法案に関し、質問をいたしたいと思います。  昨年七月に行われました参議院選挙におきまして、田中内閣の行った余りにも強引な派閥金権選挙と、全国区某候補に見られるような莫大な運動資金の使い方は、問題を起こしました企業ぐるみ選挙とともに、国民に異常なショックを与えずにはおかなかったのであります。四国徳島における県を二分した激烈をきわめた派閥抗争むき出しの選挙戦や、選挙直後、司直の手によって明らかにされるに至りました全国区某候補に見られるがごとき、全く気の遠くなるような莫大な運動資金の醜さをいやというほど見せつけられた国民は、政治不信というより、むしろ選挙政治に対し嫌悪さえ抱くに至ったのであります。  三木総理、あなたも参院選直後、「総裁派閥選挙こそ諸悪の根源である」との名言を残し、副総理の地位を捨てて閣外に去られたのであります。なお、日ならずして福田副総理も、その後を追い閣外に去り、ともに自民党の改革を誓われたのでありました。その後、日ならずして公共料金値上げ主導型の物価上昇が続き、国民のふんまんはやる方なく、目に余る自民党のこうした大企業癒着の体質と企業献金のあり方に国民の非難が集中し、東京電力を初めとする公共事業を営む企業や一連の銀行等が、この国民の非難をかわすために、政治献金の取りやめ、もしくは自粛の声明をせざるを得なくなったのであります。  かくて、田中内閣は、その金権政治姿勢のため、支持率一八%という国民から全く見放された状態の中で、いわゆる田中金脈問題が噴き出し、あえなくも内閣を投げ出さざるを得なくなったのであります。田中内閣の金権金脈問題による総裁退陣は、それ以前にさかのぼる自民党自体の体質に根差しておるのでありまして、日本経済の高度成長を背景として、保守独裁の続く中で国民の要望を吸収する機能を喪失しかけていたものと言わざるを得ないのであります。  そこで、保守本流でなく、むしろ党内では傍流と見られた三木さんが混迷期にある保守党の旗手に選ばれたのでありまして、これは、その清廉さと、自民党の体質改善に取り組む、長い、変わらざる熱意を持ち続けてこられた三木さんこそ最適任とされたためでありましょう。それは、田中首相の金権金脈問題で、国民大衆の心にしみついた汚れた自民党のイメージを洗い落としてほしいとの期待からでありますし、ひいては、国民政治への信頼の回復につながることを期待されたからであります。  就任のあいさつで、三木総裁が課題の第一に、自民党の大胆な改革を挙げられたのも、それにこたえる意味であったでありましょう。  三木総理の一番大きな責務は、したがって、派閥次元に基づく総裁選挙のあり方の改革であり、政治資金規正法の根本的改正及び公職選挙法の果敢なる改正の実施でありまして、速やかに国民政治への信頼を回復し、つなぎとめることが、三木総理に課せられた一番の責務であることは、総理が一番御存じでありましょう。  そこで、三木総理に改めてお伺いをしたいのでありますが、ただいまも申しましたとおり、三木内閣の最大の課題である政治資金規正法改正、また、そのうちの最大の目玉商品は企業献金の廃止であります。  総理の就任前後から企業献金の廃止が、総理、あなたの公約の最大の柱でもありましたし、途中短い準備期間を置いて企業献金を廃止し、個人献金だけにしぼりたいと申されていたのでありましたが、ついに五年後の再検討にゆだねる結果と成り果てました。私は、総理が異常な熱意をもって、これが実現に努力されてきたこともよく承知しておりますが、党側の体制はかたい壁となって三木総理の前に立ちはだかったのであります。  政治資金規制問題は、三木総理の党内指導力、統制力の限界をはからずも国民の前に浮き彫りにしたと言えましょう。総理は、「私はできないことは言わない、言ったことは必ず責任をもって実現をいたします」とおっしゃっておいでになりました。総理は、国民の切なる期待に対し、どのようにおこたえになるのか、今後これが一歩でも前進するように、さらにどのような努力をしようとされるのか、本国会を通じて、国民の皆さんに真剣にお答えをいただきたいと思います。  われわれは、四十二年の選挙制度審議会による政治資金規制に関する答申以来、政治資金規制の最低の条件として、その答申の完全実施を迫り続けてまいりました。なお、三木内閣成立以来、数次にわたって抜本的改正提案するよう、野党各党と一緒に促進をしてきたのでありました。いま、ようやくこれが提案を見るに至ったのでありますが、私は、この際、国民的人気の中で誕生した田中内閣が石もて追われるように退陣したいきさつは、われわれ政治家にとって決して他山の石ではございません。政権は長いことをもってとうとしとするのではありません。三木総理は、三木総理でないとできない、あなたにだけ与えられた使命の実現に本当に邁進していただけることこそ、国民の期待にこたえるゆえんだと思います。  この際、二、三についてお伺いしたいと思います。  限度額の一億円は余りにも過大であり、かえって国民に自民党の企業べったりを印象づけることになると思いますが、国会審議中、自民党においても、野党と協議して修正することが好ましいと思いますが、総理並びに所管大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  なお、この際、企業献金を役員個人名義にすれば、個人献金の形で用を足し得るとの抜け道があると言われておりますが、これを防止するため、どのような方法が対処されるのか、自治大臣にお伺いいたします。  企業献金の廃止と制限に関連しまして、労働組合の献金にも制限を加えようとされております。若干の問題点はあるとしても、そもそも労働組合の献金は企業献金とは全く異質のものでありまして、同列に論ずることは誤りであります。これを削除すべきであると思いますが、総理はどのようにお考えになっておるか、お伺いいたします。  次に、公職選挙法の一部改正について質問をいたします。  その第一は、定数是正についてであります。  衆議院議員定数是正につきましては、現行公職選挙法別表で「本表は、この法律施行の日から五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」と明記されています。しかるに、政府は、昭和三十九年に部分的手直しをしたものの、昭和二十一年の人口調査をもとにつくられた現行定数を三十年間にわたって基本的に変えず、その結果、たとえば四十七年末の総選挙では、群馬三区ではわずか三万七千票で当選する一方、東京七区ではその四倍の十四万四千票で落選するという、著しい定数のアンバランスを引き起こしております。  衆議院議員一人当たりの有権者数は、一番多い千葉一区で四十三万四千六百十五人、一番少ない兵庫五区は七万九千九百十八人で、その比率は五・三倍となっております。この不公正に対する有権者の不平も非常に高まっており、裁判所の判決等も、国会みずから是正すべきであるという意味で、決して不公正でよいという意味ではありません。  人口の地域的な集中傾向が、近時ますます増加の傾向にあります現状にかんがみ、別表に明記されているよう、その都度適宜是正するのが、忠実な法解釈であろうと思われるが、政府は今後どのように対処していこうと思うか、総理並びに自治大臣の御答弁をいただきたいのであります。  この際、ついでに伺っておきたいのは、今回の定数是正は、人口アンバランスの顕著なものをとりあえず取り上げ、二十名の定員増で、公職選挙法特別委員会で各党の合意を得た分を提案されたのであります。政府は、なるべく近い将来、根本的是正を図るよう前向きに取り組み、定数表の付記に示されたとおり実施すべきであろうと思いますが、総理並びに自治大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。  その際、「平均人口より一定率以上オーバーした際は、遅滞なく改正する」と別表付記を訂正すべきであると思いますが、あわせてお答えをいただきたいと思います。  質問の第二は、参議院定数是正についてであります。  昨年の参議院選挙地方区で、大阪の上田卓三さんが六十九万八千票、地方区全国候補者の中で十一番目という大量の得票をしながら次点に泣き、山梨県では中村太郎氏が十七万七千票で当選をしているのが実態であります。衆議院定数是正と同様、速やかにこの問題の処理をしていただきたいと思いますが、いかがでありますか。  質問の第三は、選挙公営の拡大と、選挙のあり方についてであります。  選挙公営の徹底は、選挙の正常化と、金のかからない選挙の一番手っ取り早い方法であり、わが党のかねてより主張してきたところであります。さらに今後一層の選挙公営の拡大を図っていくべきだと思いますが、総理並びに自治大臣はどのようにお考えになっておりますか。その際、政党法の制定が問題になり得ると思われますが、どのようにお考えになっておるか、あわせてお答えをいただきたいと思います。  第四は、選挙管理委員会のあり方についてであります。  選挙管理委員会をして権威あらしめ、選挙の公正を一段と高めることは、民主政治の根幹を維持する上で必要欠くべからざることであります。現在の中央選挙管理委員会拡充強化し、行政府より独立した、裁判所や会計検査院あるいは人事院と同じようにすべきであると思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。  さらに、参議院の全国区問題についてでありますが、金のかからない選挙という点について、保守党某候補のごとき莫大な金を使った者があるからといって、現行選挙制度を廃止し、直ちに比例代表制を導入しようとすることは、いたずらに参議院政党化につながり、二院制の意義を失うことになるおそれがあります。この点を十分考慮して、さらに検討を続けるべきだと思いますが、総理はどのようにお考えになりますか。  最後に、自治大臣にお伺いいたします。  不在投票者の投票につきましては、あるいは入院患者、身体障害者等の投票につきましても、近時十分の配慮をなされつつありますが、船舶乗組員の投票につきまして配慮がなされておりません。数多くの船舶乗組員の固有の権利が生かされておらないのであります。  政府はすみやかに善処すべきであると思いますが、自治大臣はどのようにお考えになっておりますか。お答えをいただきまして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣三木武夫君登壇
  55. 三木武夫

    内閣総理大臣(三木武夫君) 玉置君の御質問にお答えをいたします。  私も、玉置君と同じように、やはり政党が金にまつわる不信を一掃しなければ、政党に対する信用は高まらない、こう思うわけでございます。  ただしかし、政党の活動には莫大な費用が要ることも事実である。その資金というものに対して、公明正大なものであること、また節度を持つこと、こういうことで、今回政治資金規正法改正を行ったわけでございまして、理想的に言えばいろいろ問題はあるにしても、相当な前進である、こう評価をいたしておるわけでございます。私も、三年間で、個人献金、党費に切りかえていくことが理想だということを前々から言ってきておったわけでございますが、実現せなかったことは遺憾でございます。しかし、そういう政治資金規正法は五年後に見直すことになっておるが、そういうことに先立って、自民党は五年後に党の経常費については、企業献金を辞退するという党議の決定を行っておるわけでございますから、私の精神というものは、自民党の中に大きく生かされていると御理解を願いたいのでございます。  それから、政治資金規正法に対しての、寄付の限度額を一億円としたのは何か。  この一億円というのは、先ほどもお答えいたしましたように、資本金が一千億円を超えるような限られた会社、最高限の場合の例でありまして、一般には三千万円という規模になっておるわけでございます。  また、労働組合団体政治資金に対しても規制が行われておるわけでありますが、個々の寄付でないわけですから、全体としての団体寄付に対しては、一応の限度額を決めた方が公平ではないかという考え方から、そういう提案を行ったわけでございます。  次に、定数是正についてのいろいろな御質問がございました。  定数是正については、選挙区のあり方など、根本的問題の検討があると思います。玉置君の言われるように、定数是正というものに根本的な検討を加えよという意見であるとするならば、これはやはり選挙区のあり方とも関連をいたしますので、今後、定数の問題というものは、十分に検討をいたすことにいたしたいと思います。多少の手直しでないですから、玉置君のは根本的な定数を初めからやり直すということでございますから、そういうことで、これは選挙区のあり方も検討して、十分検討いたします。  また、選挙公営を拡大すべきである。  日本は、できるだけのことは拡大を今日までしてきておるわけでありまして、諸外国に比べてみても、これ以上ちょっと拡大というものはないぐらいの拡大をいたしておるのでございますが、今後、適当なものがあれば、公営を拡大することはやぶさかではありません。  また、選挙管理委員会を独立した機関にして、裁判所や会計検査院と同じようにやる、そういう考えは持っておりませんが、選挙管理委員会に権威を持たすということには賛成でございます。  それから、参議院の全国区、玉置君の御意見は社会党の御意見と違って、参議院政党化はよくないのではないか、そういう点も頭に入れて、二院制の本来の意味も頭に入れながら検討すべきだという御意見でございました。  そのように、参議院の全国区は改正をすべきだという意見が多い中で、なかなか意見が各政党間においても大きく隔たり過ぎておりまして、この問題は、一応の結論を得るまでには至っておらないのでございますが、全国区の問題は、これは何らかの改正を必要とする。弊害が非常に出てきておるというのでありますから、今後、これは各党においても十分御検討を願いたい。政府検討をいたそうと思っております。  それから、政党法という問題でございます。  この問題については、政党法というのもなかなかむずかしい法律で、ブラジルとドイツだと思いますが、世界でも二カ国だけしか政党法を持っておる国はないのでありまして、これは、にわかに政党法の制定というものを、玉置君に、いたす所存でございますというお答えはできませんが、今後、これは研究すべき課題ではあると思います。  以上、お答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣福田一登壇
  56. 福田一

    国務大臣福田一君) 玉置さんにお答えを申し上げます。  まず、選挙公報や政見放送をもっと増加してはどうか、こういうようなお話でございます。  これは、選挙管理委員会の能力の問題がございます。それから、テレビの時間帯の問題等がございまして、まあ泡沫候補を制限するような工夫は、先ほども御提案がございましたが、そういうことができれば、これは増加ができるのでありますが、なかなかむずかしい問題がございます。  それから、事前のポスター立て札制限したり、政党機関紙誌制限を加えてはどうかということでございますが、これは法案の中に盛り込んでございます。  次に、船舶乗組員の投票が非常に十分でないというか、非常に不自由であるということでございます。  実は、選挙でもあるということがわかりますれば、投票用紙をその航海に出る船に渡したりするのでありますけれども、投票したものを寄港地でおろして、そして郵送する方法その他において、なかなか問題点がございますので、確かに、船舶乗組員だからといって投票ができないような姿はいいことではございませんが、今後、ひとつ何とか工夫をするようにいたしたいと考えておるところでございます。  次に、連座制強化の問題がございました。  それは先ほどもお答え申し上げましたように、会計責任者とかあるいは総括責任者が選挙違反になれば、当然失効する、当選は無効ということになりますが、しかし、それだからといって、当選人に何らの弁明の余地を与えないというわけにはいきませんので、いままでは検事が告訴をして、そして無効を決定したのでありますが、今度は、一応無効であるけれども、本人がこれを、自分はあの人を会計責任者にしておらなかったんだというような意味の訴訟ができるようにいたしまして、切り捨て御免にならないような方法を考えたわけでございます。  その次は、企業献金をやる場合に、重役が個人名義などでどんどんやれば、幾らでもできるじゃないかというお話でございます。  しかし、そのようなことをいたしますというと、やはり重役の給料をその分だけふやすというようなことでもしなければ、なかなか重役は献金をしないと私は思います。そんなことは社内では認めることはあり得ないと思いますので、実際上の問題といたしましては、そのような個人名義で重役等が献金をするというようなことは、会社の金を出してもらって出すというようなことはあり得ない。また、そういうことをしましても、実際は税制上何ら優遇の措置がございませんから、その人は非常にマイナス面が出てくるということになると思いますので、その心配はないのではないかと考えております。  次に、組合の献金は個人である、企業献金とは相違するのだが、これをどういうふうに考えておるかということでございます。  前々から申し上げておりましたように、第一、第二、第五選挙制度審議会におきましても、やはり組合の献金の問題も制限をすべきであるという答申が出ておりますし、そしてまた、会社といいましても、労働組合会社とは構成員が別個の団体でございますので、この点は、制限するといたしますれば、やはり組合もまた会社制限するというのが公平の原則に合うのではないか、かように考えておるわけでございます。  なお、本日いろいろ御質問が皆様からございましたが、私は、今度出した法案につきまして、これを絶対もう金科玉条として譲らないとか、そういう考え方を持っておりません。皆様方がいろいろ委員会その他において審議をしていただき、あるいは個人的にでも私に忠言を与えていただいて、そうして、それがごもっともであるということであれば、政府部内において、あるいは党内においてもいろいろ連絡をとらしていただいて、政党間の選挙のルールであるというその本旨を踏まえながら、この法案の成立を図るようにいたしたいというのが私の考えでございますので、今後も、いろいろ御支援と御指導を賜りたいと思っておる次第であります。(拍手
  57. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) これにて質疑終了いたしました。      ————◇—————
  58. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時十六分散会