○高沢寅男君 私は、
所得税法、
法人税法、
租税特別措置法の三法の一部を改正する
法律案に対し、
日本社会党を代表して
反対の
討論を行うものであります。
議員各位も御承知のとおり、この
国会ほど
社会的不公正の是正という合い
言葉の叫ばれた
国会はありません。三木
内閣もまた、
政治の基本姿勢の柱として、この
言葉を強調されているのであります。
インフレによって拡大された
社会的不公正、それは、具体的には所得と資産の格差の拡大となってあらわれているのでありますが、これを是正する最も直接的な、そして最も効果的な方法が、税制の改正であることは申すまでもありません。
ところが、今
国会に
政府より提案された租税三法の改正
法案の
内容は、所得と資産の格差を是正するための急所には全く触れようとしないものであり、その不作為によって、いよいよ大企業と高額所得者に奉仕しようとするものであります。私は、総論においては、
社会的不公正の是正を唱えながら、その行動においては、このような不作為の行為によって不公正拡大を推進している三木
内閣のきわめて悪質な国民欺瞞の態度を、ここに強く糾弾するものであります。(
拍手)
三木
内閣は、
昭和四十九年度のいわゆる二兆円減税を盾にとり、五十年度の所得税減税を、物価調整減税にも遠く及ばない、わずか二千三百九十億円の小幅減税に圧縮したのであります。人的控除の
引き上げによる四人家族の
課税最低限は百八十三万円となりましたが、生計費には課税しないという原則からすれば、年収二百八十万円までは非課税とすべきであるとのわれわれの要求には、はるかに遠いものであります。
重役減税の批判を受けた、問題の給与
所得控除の青天井も、百九十万円の控除頭打ちを設けるべきだとのわれわれの主張を退け、重役、社長クラスには笑いのとまらぬ青天井控除が依然として続けられております。
その他、所得税の関係では、われわれは、勤労大衆の生活の実態に即して、配偶者控除の適用要件である配偶者の所得限度の
引き上げ、通勤費、夜勤手当の非課税、労働組合費控除と寒冷地控除の新設等を要求いたしましたが、これらの要求も無視されております。
給与所得では、四人家族の
課税最低限が百八十三万円になるのに対し、配当所得では、四人家族の
課税最低限が四百四万九千円となるという、不公平の典型をもたらす配当控除制度を廃止せよと言うのに、これを廃止せず、また、キャピタルゲイン課税のため有価証券譲渡所得の課税を復活せよと言うのに、これも復活せず、大金持ちの株式配当所得には、あたかも万里の長城のような保護の城壁をめぐらしております。
法人税の関係では、われわれは、法人の所得の階級に応じて累進
税率を適用するよう主張しておりますが、三木
内閣は、あくまで低率の比例
税率を変えようとしません。問題の、法人の受取配当の益金不算入制度も、法人擬制税のからに閉じこもって、あくまで固守しようとしております。法人間の支払配当で益金不算入となり、したがって、非課税となっているものが約三千億円もあるのであります。
今日、インフレによる不当利得がどこにあらわれているかと言えば、その最たるものは
土地の含み資産であります。
昭和四十一年より四十九年まで十年もたたない間に、
土地の価格は四倍にも上がりました。その結果、
昭和四十八年度末の東京証券取引所の全上場会社の保有する
土地の含み資産は、実に六十八兆円に上っているのであります。この含み資産に対し、資産再評価課税を行うことをわれわれは主張しています。もしこれを実施したならば、かりに一〇%の
税率を適用しても、たちどころに約七兆円の税収が生まれるのであり、これが
社会的不公正を是正する強力な財源となることは、だれの目にも明らかであります。ところが、三木
内閣はこれをやらないのであります。
租税特別措置法では、不公平税制の代表である利子、配当課税の特例が、預金や株式保有の正確な把握ができないという税務行政上の口実で、またもや五年間も延長されるのであります。
医師の
社会保険診療報酬課税の特例も手つかずであります。昨年十二月の税制調査会の答申は、
社会保険診療報酬の収入千五百万円以下の金額に対しては経費控除率を七二%とし、金額の多くなるにつれて順次控除率を引き下げ、収入五千万円を超す金額には控除率を五二%とすることを提案しましたが、少なくもこの提案を、当面の改善案として実行するようわれわれは要求したのでありますが、これも無視されております。
土地譲渡所得では、長期譲渡所得について、
政府案では、特別控除後の譲渡益二千万円以下の部分には二〇%の
税率で課税し、二千万円を超える部分は四分の三を総合課税した場合の上積み税額によることに改正されておりますが、われわれは、この二千万円を超える部分は、全額を総合課税にすることを主張するものであります。
交際費につきましては、それが単に税の不公平の問題にとどまらず、社用支出の乱脈が各種の
社会問題をすら惹起していることから見ても、われわれは、損金算入限度額の
定額部分を三百万円に引き下げ、限度を超える部分は全額を損金不算入とすることにより、交際費への課税を思い切って
強化することを主張しましたが、
政府改正案には受け入れられておりません。
いま、最大の世論の焦点となっている自動車排気ガスの対策では、一方では、保安基準に適合する自動車の物品税の課税標準を軽減するとともに、基準に適合しない高公害車には、現行より一〇%高い
税率で物品税を課することが必要でありますが、三木
内閣は、自動車大メーカーへの配慮から、高公害車対策は逃げの一手であります。
以上、私は、
政府の租税三
法改正案に対する
反対理由の各論を一つ一つ述べてまいりましたが、最後に、もう一つつけ加えたいことは、国の税制と
地方財政との関係であります。
今日、インフレによる支出増とデフレによる税収減のはさみ打ちの中で、すべての
地方自治体の財政は重大な危機に瀕しております。これを解決するには、憲法の定める
地方自治の本旨にふさわしい自主的財源を
地方自治体に保障しなければなりません。
たとえば、一例として、大企業の税負担を大きく軽減している
租税特別措置でありますが、そのはね返りで、
地方自治体の税収は大きな減収となっているのであります。東京都のごときは、
租税特別措置のはね返りによる減収は、年に一千億円にも上るのであります。この
租税特別措置を整理すれば、それだけで
地方自治体の
自主財源は飛躍的に
強化されるのであります。
企業献金の再開を財界に要請する三木
内閣は、こうした問題を解決する意思も能力も全くなく、ひたすらに、財界の許容限度の中で、事なかれの税制改正を小心翼々といじり回しているにすぎないのであります。このような態度で、どうして
社会的不公正が是正できるでしょうか。
私は、三木
内閣が、口に
社会的不公正の是正を唱えつつ、その行動では不公正の拡大を推進していることを重ねて糾弾して、租税三法の一部改正
法案に対する
反対の
討論を終わります。(
拍手)